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1977-02-18 第80回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月十八日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君      稻村佐近四郎君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    金子 一平君       川崎 秀二君    木野 晴夫君       北川 石松君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    白浜 仁吉君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    阿部 昭吾君       井上 普方君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       武藤 山治君    村山 喜一君       権藤 恒夫君    坂井 弘一君       坂口  力君    広沢 直樹君       二見 伸明君    古川 雅司君       矢野 絢也君    大内 啓伍君       高橋 高望君    寺前  巖君       藤原ひろ子君    大原 一三君       田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         国土庁水資源局         長       飯塚 敏夫君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房予         算課長     石川  弘君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         工業技術院長  窪田 雅男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省河川局長 栂野 康行君         自治省財政局長 首藤  堯君  委員外出席者         外務省国際連合         局外務参事官  大塚博比呂君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     村山 喜一君   浅井 美幸君     古川 雅司君   広沢 直樹君     権藤 恒夫君   矢野 絢也君     坂口  力君   河村  勝君     高橋 高望君   正森 成二君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   村山 喜一君     多賀谷真稔君   権藤 恒夫君     広沢 直樹君   坂口  力君     矢野 絢也君   古川 雅司君     浅井 美幸君   高橋 高望君     河村  勝君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十一年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十一年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十一年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十一年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑に入ります。  小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 質問に移ります前に、ひとつ資料要求をしておきたいと思うのでございます。  第一番には、外務大臣に対する資料要求でございますが、金大中事件がKCIAのしわざであるということ及び日本の政財界に相当の賄賂が飛ばされておることなどの一連の不正事件に関し、日本外務省に対し昨年中に正式に回答を寄せているというレイナード氏の発言があるのであります。これはこの予算委員会においても、あれは一市民発言等というようなことで軽く扱われて、こういうレイナード氏が外務省に正式に回答を寄せているなどということは一言も外務筋から述べてこなかった。しかし、御本人はちゃんと正式に回答を寄せていると発言されているのであります。この資料はひとつ直ちにわれわれ国会提出をしていただきたい、これが一つであります。  それから、元韓国中央情報部長金炯旭氏、これはアメリカにおける韓国女性ジャーナリスト文明子女史を通じて、金大中事件犯行者リストというものを明らかにされておる。その金炯旭氏への事実の提供者は、当時の駐日公使金在権氏であるということも明らかになっておるのでございます。金炯旭中央情報部長は、金大中事件当時の中央情報部長李厚洛氏の前任者であります。そして西独韓国留学生蒸発事件を指令した人であるとも言われているのであります。これは御承知のとおりだ。韓国政府が、中央情報部長指令下で、西独における反朴の運動をしている韓国の学生をこの金大中氏と同じように拉致してきた。拉致してきて裁判にかけて、そして死刑にしたり無期判決をしたりして、西独政府がこれに対して身柄をもとに返せと言ったときに、自由にいたしまするけれども国内法がありますから、国内法の問題の処理がついた後に身柄を釈放いたします、ちょうど金大中氏に対すると同じようなそういう釈明をしてきたときに、西独政府は何と言ったか。わが西ドイツ独立を侵害し、主権を侵害した、この国際的な重大な侮辱に対して、韓国国内法がおさまるまで身柄を返さぬとは何事だ、断じて相ならぬ、直ちに身柄西独に返せというこの毅然たる要求に従って、一たん死刑または無期判決をしたが、それを全部延期してそのまま身柄西独へ返したことは、首相、あなたも御存じのとおりであります。同じような事犯でありながらも、日本政府西ドイツ政府とが、国家独立主権を守るために、その構えている姿勢に天地水火の違いがあることをわれわれは心から感ずるとともに、この自民党政府の情けない姿に泣きの涙にならざるを得ないのであります。これは全く恥ずかしい。そこで、同じ事犯に対してなぜドイツが強く、なぜ日本が弱いかということについてもろもろの風評が飛ぶわけなんであります。福田総理は、歴代総理の中で人格、識見、ごりっぱな方でありますから、言いたくないけれども、やはり総裁選挙に、あなたと田中角榮総理と争われた総裁選挙にやはり莫大な政治資金韓国朴政権から先物買いで飛んできたというのは、もはや一般風評であります。消そうと思っても消せない風評だ。それから続いて金大中拉致事件については、今度田中総理の手元へ三億円の金が飛んできた。これもいかに政府が強く否定されようとも、もうちまたに流れて、国民の心の中に深く浸透しているのです。ここでだめだ、だめだと言ったところで、国民への疑惑浸透はぬぐいがたい。それをぬぐおうとするのが政治じゃありませんか。私は、あなたはそんなうわさの出るような総理じゃないと思う。なければ、なおさらその潔白をあらゆる手段を通じて明らかにするという努力がついて回らなければならぬ。そういう意味において、いま申し上げましたように、金炯旭氏が明らかに言っているのであります。ちゃんとこういうリストを示しています。この形でやったと言っているのであります。その点は外務省金炯旭氏あるいは同じく在米中の金在権元駐日公使等にちゃんと調査の手はお伸ばしになっていると思いますから、その調査の結果を資料として早急に御提出をいただきたい。これが第二であります。  それから第三番目には、ここにまだあります。李在鉉氏、元在米韓国公報館長で現在西イリノイ大学準教授の李在鉉氏は、日韓癒着について、借款をやるたびに二、三割ずつピンはねを行っている、こういう明確な回答をお出しになっている。これはみんな一市民じゃないのです。りっぱに韓国政府の重要な地位にいた人たちでありますから、こういう方々外務省でちゃんと調査をおやりになっていると思いますから、その調査の結果の資料も御提出をいただきたい。これが三番目であります。  第四番目に申し上げますが、文明子、これは日本の女子大並びに早稲田大学を卒業されたインテリであるということは間違いありません。風評でありまして、あるいは違っているかもしれませんが、私はそのように承っております。ワシントンにおいて、また来日中においてもしばしば言明をしておられる。要求があれば、必要があれば日本国会でもどうぞ私を参考人あるいは証人としてお呼びください、私はいかなる都合をつけてもその要望に応じます、と言っているのであります。そしてその場合、私は公の場において、私の知る限りの事実をくまなく日本国会の中で陳述をいたします、こう確約いたしておるのであります。予算委員長、この文明子女史をこの予算委員会参考人として出頭することを要請される御意思がありますかどうか。あなたに真実を求めるという一片の良心があれば、進んでその要請をお出しになる決意をお持ちになっていると思いますが、いかがでございましょう。
  4. 坪川信三

    坪川委員長 小林君にお答えいたします。  ただいまの指摘されました要望の件につきましては、ただいま突然御提案になった件でもございますので、理事会においてそれぞれ検討いたしたいと思います。
  5. 小林進

    小林(進)委員 理事会で御検討いただくのは結構でございますから、ひとつ前向きに実現するように御努力をいただきたいと思います。  それから、時間もありませんので簡単に申し上げます。警察庁にもお伺いいたしますが、先般金大中拉致事件について捜査中間報告を私は求めてきたわけでございますが、どうもそのときの御回答になかなか了解しがたいものがありますので、私が昭和四十九年二月八日、本予算委員会においてこの金大中拉致事件について質問をいたしました速記録を、私はくまなく読み直してみたのであります。当時の警察庁長官高橋幹夫君であり、当時の警察庁警備局長山本鎮彦君であります。このお二人の答弁をよく読んでみますると、その当時の私に対する回答がむしろ非常に前向きであった、具体的であった、しかも丁寧であった。それからもう三年有余の歳月を経過しているにもかかわらず、そのときの答弁よりはむしろ進歩している傾向は一つもない。だから、私どもをして言わしむれば、三年間一体何の捜査をしておられたのか。こういう一つの疑問が出てくるわけでございまして、それで私は、いま一度質問を繰り返すのであります。当時の山本警備局長は「犯人の中の金東雲には九月五日に任意出頭を求めた、他の五人については現在まで引き続き捜査をしており、まだ確定を見るに至っておりません。」、こう言っているのであります。三年たちましたから、ここら辺はもう進歩してやや確定の域に達したのじゃないかと思いますが、この点はどうか。  第二番目であります。現場から連行した車の捜査。「当時横浜の領事館に勤めていた劉永福副領事が使用しておった品川55も2077の車が疑わしいが、その車は当時廃車になっており、他の館員の所有に帰属しており、ナンバーも変わったのがついているのです。これについては韓国政府の方にその間の事情説明を求めている。」、こう言われているのであります。事情説明を求めているのでありますから、いかなる回答があったか。なおまだ、この問題については捜査を続けておる、こういうふうにも答えられているのでありますから、その後の捜査がどう進展したか、当然説明があってしかるべきだと思います。  第三点を申し上げます。「関西方面に行って、車庫に入って、車庫からエレベーターで上にのぼっていけるような、そういうアパートにしばらくおった。」、これは金大中氏の弁であります。そのような構造の家にしばらくおった。アンの家という表現もあり、これについては「ある程度の疑いのある場所は出てきておりますが、これも間違いなくこの場所であると確定するに至っておりませんので、目下捜査を続けております。」、こういうふうに言われているのであります。疑いのある家もあった、捜査も続けているというのだから、もはやその結論は出てしかるべきだと思いますが、どうなっておりますか。  第四点であります。「海岸に出てモーターボートで船まで行ったというそのボートの捜査も、大阪、神戸、和歌山、全部いたしましたが、確定に至っておらぬ。」、こういう返答でございました。これも三年たっているのでありますから、その後の捜査は進展しているはずであります。どのように進展しているのか承っておきたい。  こういう警備局長言葉を受けて、最後に高橋長官は「確かにまだ捜査に不十分なところがありますので、これをいかにしても真相を明らかにするというのが、私、警察としての責任者でありますので、いまの警視庁を初め関係府県の現体制を維持して、一日も早く真相を明らかにしたいと思います。」、こう答えておられるのであります。こういう実に明確な答えがあるにもかかわらず、三年も経過して、むしろあなたがここで私に答えられた答弁は、この答弁よりは後退していても前進しているところは少しもない。私は、国会に対する約束に一つ違反するところがあると思いますが、どうですか、公安委員長、あなたは私の話を聞いてどうお考えになりますか。国会に対する公約を正しく守っているとお考えになりますか。
  6. 小川平二

    小川国務大臣 お答えいたします。  金大中事件捜査につきましては、今日まで捜査支障を来さない限りで国会に御報告をしておると聞いております。この件の捜査は、ただいま容疑者日本におらない、あるいはまた外交的にはこの問題がすでに決着をしておるという悪条件のもとでありますが、なお継続をいたしておる、かように承知をいたしております。
  7. 小林進

    小林(進)委員 味もそっけもない通り一遍の答弁でございまして、これでは答弁を承るも承らないも同じであります。勉強足りませんな、警察庁長官。  それで、警察庁にお願いいたしますが、こういう前任者のこの国会における公約もあるのでありますから、ひとつ私の要求いたしております金大中拉致事件捜査経過――中間報告をいただくことになっております。もっともこの問題については私だけじゃない、このたびの第八十国会の本会議場においてわが党の成田委員長も、もっとつまびらかに書面をもって捜査の結果を報告すべしということを質問いたしておるのであります。残念ながら、総理大臣からこれに対する明確な答弁はありませんけれども、これはわが党の委員長みずからもその書類提出要求いたしておるのでありますから、どうかいま申し上げました問題も含めて、微に入り細に入り詳しくこの金大中事件捜査の御報告をちょうだいいたしたいと思うのであります。それも早急にちょうだいいたしたい。繰り返して申し上げますけれども捜査支障があるなどという通り一遍の言葉でわれわれの調査権を侵害されることのないようにお願いしておきたいと思うのであります。
  8. 三井脩

    三井政府委員 金大中事件捜査につきましては、いま小林委員御指摘のように、当時警察庁長官以下も国会お答えをしておるところでありますが、われわれも同じような気持ちで、いかにして事案の真相を解明するかということに努めておるわけでございます。したがいまして、その間の捜査成り行き等につきましては、今後の捜査支障のない範囲におきまして御質問の都度お答えをしておるというつもりでございます。  ただいま数点の点についてそれぞれ御質問ございましたが、その後三年にわたり捜査を続けておりますけれども、特に改めて申し上げるような捜査上の新たな内容という点はないわけでございます。したがいまして、この際、捜査継続中でございますので、その内容については御質問に応じてお答えを申し上げるということで御了解をいただきたいというようにお願いいたしたいと思います。
  9. 小林進

    小林(進)委員 繰り返し申し上げますけれども捜査経過についてはあなた方が支障があるというならば支障がある点だけは最小限度に省いても、それの一切の経過はひとつ報告書類としてちょうだいをいたします。これはあたな方の国会に対する責任でありますから、この答弁以外ないと言うならば了承できません。これはいただきます。しかし、ここだけは捜査支障ありという点だけは、最小限にとどめていただくことはやむを得ません。それは私は了承いたします。  それから、委員長にお願いいたします。私どもは、今度の国会はまさに日韓問題で明け暮れいたしております。また毎日の新聞もテレビもそのとおり、見れば日韓問題にどうも報道の中心が置かれておるのであります。われわれは、この問題をそのままに放置しておくことはできぬのであります。国会議員として放置しておくわけにはいきません。予算委員会として放置するわけにはいきません。  そこで、一昨年はこの国会予算委員会における中心は核の問題でありました。日本に一体アメリカの核が存在しているかどうか繰り返し繰り返し論ぜられましたけれども行政当局回答の中にその真実をつかむことはできなかった。そこで、この問題は国会みずからが自主的な行動で問題の解明をしよう、そのために日本予算委員会代表アメリカ議会へ行って、アメリカ議会人とこの問題についてひざを突き合わせるなり会談をして、なおかつ必要あらばアメリカ政府当局にも直接面談をして問題の調査に当たろう、こういうことを提案いたしました。当時の荒舩委員長は、これを積極的に取り上げられたのであります。それはそうだ、国政調査権に任ずべき国会がみずから自主的に調査に行くのは当然だから行こうじゃないかということで、それが当委員会において決定せられたのであります。しかし、いろいろの事情がございましたから直ちにというわけにはいきませんでしたけれども、その年の十二月三日に委員長荒舩さんを団長にして、各党の代表が二名あるいは一名加わって調査に行ったのであります。それでアメリカの下院、上院議員方々とも、この問題について全部忌憚なくお話をいたしました。帰りにはガーター極東艦隊司令長官から政府要人にも皆お会いいたしました。国務省の要人にもお会いしました。そして非常に成果を上げてきたのであります。それからこの国会における核問題の質疑応答は、それによってやや鎮静をしてきたのであります。その報告資料がここにあります。実に貴重な報告資料でありまして、非常に成果があった。そのときにわれわれは、こういうことは成果があるから、一回にとどめることなしに二回、三回と、われわれが予算委員会の中に新しくつくり上げた歴史でありますからこれを継続していこう、こういう打ち合わせができているのであります。  そこで、いまわれわれの前に問題になっておりますこの韓国汚職問題あるいは金大中拉致事件、これはやはり資料やニュースは全部アメリカから飛んできている。あるいはフレーザー委員会ある  いは何とか倫理委員会ウォーカー委員会ですか、あるいはまた韓国のための調査特別委員会アメリカ議会の中に設けられようとしている。それに対してフレーザー委員長等は一体何を言っているか。日本国会はともすると資料をくれ、資料をくれと言っているけれども、みずから自主的に動かないでわれわれの成果だけを資料要求するなどというのは、一体日本国会は何しているのだ、われわれの委員会米韓の癒着問題、米韓汚職問題に対しては徹底的にやるけれども日韓の問題はわれわれの主題目標じゃないのであって、日韓汚職の問題は日本国会みずからおやりになったらいかがです、KCIAもみずからおやりになったらいかがです、こういう皮肉を込めた答弁が返ってきているのでありますが、私は当然だと思います。  そこでこの際、前例もあることでありますから、この韓国金大中拉致事件、汚職事件等を調査のために、この予算委員会においてひとつ編成をし、荒舩委員長の第一回の前例にならって、アメリカ議会調査を兼ねた話し合いに出張なさる、こういう行動に移られるということ。もちろん行かれれば、それはアメリカのフレーザー委員会その他の委員会だけではございません。あるいはSECもやっておりますから、SECにも会われたらいいと思う。それ以外に、いま申し上げましたように、やはり元中央情報部長だの、あるいは元在日韓国公使だの、あるいは情報室長などという、向こうには要人が山ほどいられるのでありますから、その人たちと、こういうマスコミを通じたりジャーナリストを通じて間接にわれわれが情報をとるのじゃなくて、直接われわれがひざを交えて真偽を確かめるということが、私は責任ある国会議員としての行動だと思います。いま二つの目的を求めているのです。そういう編成をこの予算委員会につくってアメリカへ行動をお起こしになる意思があるかどうか。やっていただきたいということを私は要求しているのでありますが、委員長の決意を承っておきたいと思うのであります。
  10. 坪川信三

    坪川委員長 ただいま小林君から御要望されました問題につきましては、非常に重要な問題であることは私も認めます。よって、この問題に関する御指摘の御期待の問題につきましては、それぞれ理事会において前向きの姿勢で検討協議をいたしたい、こう考えております。
  11. 小林進

    小林(進)委員 委員長の御発言、前向きにひとつ理事会で諮るということは、これは非常に前進的でございますので、私は多くの期待を持ちましてその決定されることを待ちたいと思いますが、くどいようでありまするけれども荒舩委員長はそういういままでにない前例、議員と議員同士が問題の真実を追い詰めるという前例をおつくりになった、どうかひとつ現委員長はその前委員長の前例にならって、よき慣行をさらに樹立されることを切に要望いたします。  次に私は、この総括、質問で私が質問する予定で積み残しておりました公営競技の問題について質問をいたしたいと思うのでありまするが、国家予算並びに地方予算の中に、この公営のギャンブルといいましょうか、競技から上がった果実ですね、果実が一体どれくらい含まれているものか、お聞きをしておきたいと思うのであります。
  12. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  自治体の公営競技によりまする収入の中におきまして、私の方の所管の競輪並びにオートレース、これにつきましては、県、市町村の歳入総額に占めます比率は、昭和四十八年度におきましては平均二・七、オートレースの方の歳入総額におきます収益金の比率は、昭和四十九年におきましては平均が二・二でございます。  以上です。
  13. 小林進

    小林(進)委員 私はその所管の個々のものを聞いているのではなくて、国家並びに地方の総予算、総財政の中に一体このギャンブルの金がどれだけ含まれているかということをお聞きしているのであります。あなた方はよろしゅうございます。これは大蔵省か総理大臣ですか。それでは大蔵大臣から……。
  14. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  ただ、小林さん、地方財政で入れておるのは、私の方はちょっとわかりかねますが、国の方を申し上げます。  国の歳入で、公営競技の売上金等の一定の割合を受け入れておりますのは中央競馬会だけでございますが、五十二年度予算において日本中央競馬会納付金は千百二十九億円でありまして、一般会計歳入予算二十八兆五千一百四十三億円の中で〇・四%。それで公債金収入を除く歳入二十兆三百四十三億円の〇・六%に当たっております。地方の方はちょっとわかりかねます。
  15. 小林進

    小林(進)委員 どうも、なんでございますから、私のざっと調べた数字でひとつ申し上げますと、公営ギャンブルは四つあります。それを含めて、いま言われたように中央競馬だけを国で吸い上げておる。それが一千百二十九億。あとは地方自治体に流れているのでありますが、これが大体三千億円。合わせて四千億強、五千億円弱というのが大まかなところであります。この五千億弱の金が、いわゆるばくちの金が国の財政や地方の財政に流れているということは、たばこの益金に比較いたしますと、たばこの方は国、地方を合わせて大体一兆円でありまするから、その半分弱だ。これは大変な金であります。大変な金でありますが、国家財政が困難で、いま財源を夢中になって総理はお尋ねになっておる。そのために減税ができない。そういうさなかに、国家、地方財政両方合わせて五千億近くの金がギャンブルによって潤されているということ。それをやはりこのままに放置していることは、私は一つの行政の失敗だと思います。行政のミスだと思う。  そこで、私はこの問題をその立場から申し上げておるのです。公営競技、すなわち競馬、競輪、オートレース、モーターボート、この四つを公営の競技、それに加えて宝くじ、これを称して公営ギャンブルとでも申しましょうか。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕 五十一年末の宝くじの販売では、後楽園の売り場はもとより、全国の都市における売り場に前日から数千人を超える者が泊まりがけで列をつくり、ついに福岡市では二人の死亡者を出すという恐るべき弊害を出しております。また、中央競馬においては、五千万円の馬券を一人で買った者がいる。それがまた全部外れてしまった。そのために、その外れた馬券を取りに来ないというのです。外れても、馬券はやはり所有者がいるのでありますから、競馬場はどうにも処置できない、どう処置していいのかというのですね。処置に困っておる。こういう法律問題も起こっておる。これはいずれもギャンブルの過熱を示しておるものでありまして、これは宝くじや競馬のみではありません。競輪、オートレース、モーターボート、それぞれ矛盾を内蔵しております。大変矛盾を内蔵しております。これをこのまま放置しておいてよいかどうかという問題でございます。  そこで、逐次御質問をいたしますが、競馬、競輪、オートレース、モーターボートの四つの公営競技の総売上高が一体幾らになっておるか。――待ってくださいよ。いまも言うように、聞くと自分の所管だけぽつりぽつりと言われたのじゃ私の質問にならぬのです。時間の空白になりますから、総合して幾らになっておるかと聞くのです。答えが出ますか。これは総理でしょうな。――おわかりにならなければ、時間を節約する意味において私がひとつお教えをいたします。御教示を申し上げますから、聞いていただきたい。  五十年度では総売上額は三兆九千九百九十四億であります。四兆円であります。それから入場者が一億三千六百五十万人であります。そのほかに宝くじが五十年度が三百五十億円。五十一年度でありますが、これは正確ではありませんが、総売上額が大体四兆二千五百九十八億円です。四兆二千五百億円です。入場者が五十年より若干減りまして一億三千万人。入場者は少し減っております。以上の数字と人員の動員から見ても、聡明な総理はもはや問題の中心をおつかみになったと私は思うのでありますが、これはもうわが国の社会の中に根をおろしておる。そのためにもこれは放置していい問題ではないのであります。内閣自体が取り組まねばならぬと私は思う。これをそのままにしておいて、そしてもろもろの欠点や罪悪を生みながら、ボスの跳梁を許しておるなどということは許されることではありません。  そこで、政治の立場、経済の立場からは、むしろその弊害や短所を除きまして、現実に即してもっと公平妥当な方向にこれを改革すべきである、緊急に改めるべきである。私はこういう立場に立っております。こういう立場に立ちまして日本社会党は――何でも先にやるのが日本社会党、ついてくるのは自由民主党、こういう勘定になるのでありますが、日本社会党は一九七二年から党内に公営競技対策特別委員会というものを設置いたしまして、今日に至るまで五年間にわたって詳細に研究調査を続けてきたのであります。その間、関係各省、関係団体、報道関係者、特に報道関係者からは大変お力添えをいただきました。なおファンを代表する方々から積極的かつ好意的な協力を得まして、大体その全貌をつかむことができたのであります。そしてその中にまだまだ多くの問題点が介在しており、どうしても改革の必要があることを痛感したのであります。  そこで私は、この公営ギャンブルの持つ基本的な問題の数点を明らかにして、関係大臣の責任ある答弁を得たいと思うのであります。  まず第一問といたしまして、公営ギャンブルの収益と国庫納付金制度について私は承りたい。  官房長官、眠たいようでございますが、ちょっとお眠りが必要でございましたら席をお外しになって結構です。あなたが余りこんなにしておいでになりますと、質問する方も気が抜けるものでありますから、どうぞ。  競馬、競輪、オートレース、モーターボートの四競技とも、戦後この法律が成立いたしましてから、昭和二十九年までは目的に沿った産業振興と地方公共団体の財政に寄与するためとしてその収益が国庫に納付されていた。ところが、昭和二十八年の十二月二十八日、競輪、オートレース、モーターボートの三公営競技からの国庫納付金制度を廃止するとともに、国営宝くじの発行もこれを中止をする、そして、地方自治体の宝くじについてもなるべく早期にこれを廃止するということが閣議で決定しているのであります。決定というより閣議の申し合わせがされているのです。  以上に基づきまして、昭和二十九年の十九国会において補助金等の臨時特例等に関する法律が成立をいたしまして、競輪、オートレース、モーターボートの国庫納付金は、国家の予算に計上する制度がここで停止をされたのであります。昭和二十九年の十九国会で停止をされた。  以上の結果、国庫納付金制度は停止され、これに伴い自転車競技法、小型自動車競走法、モーターボート競走法に基づく産業振興費が予算から落ちてしまった。しかし、上記各法の目的から、何らかの方法で産業振興費を支出することが必要であるとの立場から、議員立法として自転車競技法等の臨時特例に関する法律が提出され成立をしたのであります。これが昭和二十九年の五月であります。社会党は反対をいたしております。この法律は一年間の時限立法であったが、その後昭和三十年第二十二国会において同法の有効期限が昭和三十二年三月三十一日まで二カ年間延長されることになりました。  昭和三十二年第二十六国会において、自転車競技法、小型自動車競走法、モーターボート競走法、それぞれの改正法が行われ、以後国庫納付は完全に廃止されました。そして、競輪は日本自転車振興会、オートレースは日本小型自動車振興会、モーターボートは日本船舶振興会、地方競馬は地方競馬全国協会がそれぞれ交付金を取り扱うという制度が確立いたしました。  その後、昭和四十五年、地方財政の収入均てん化が問題になり、地方財政法及び公営企業金融公庫法が改正され、公営競技施行公共団体は、十年間に限り、時限立法であります、売上金の〇・七%を公営企業金融公庫に納付することになったのであります。  以上、ざっと公営競技の収益と国庫納付金制度の変遷を私は申し述べてきました。これに基づいて以下質問をいたします。  まず農林大臣、昭和二十九年以降競輪等からの国庫納付金制度が廃止されているわけです。中央競馬だけなお国庫納付金制度を存続をしている理由は一体何でありますか。これが一つ。  第二点。同じ競馬なのになぜ地方競馬を、これは切り離して地方競馬に移したのか。  第三点であります。中央競馬会法第二十七条に基づく国庫納付金、納付する剰余金、これは百分の十ですが、法定されております。剰余金が法定されております。ことに二十七条第二項に基づく納付金は、同法第三十六条に基づき、酪農振興法二十四条の四第一項の補助金、馬の伝染性貧血症の試験研究施設に要する経費その他の畜産振興に充てなければならぬとされている。それに基づくこの貧血等に対する予算を五十一年度は一体幾ら組んだのか。五十二年度には幾ら計上されているのか。以上、三点についてお伺いいたしたいのであります。
  16. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 小林さん御指摘のように、公営競技の中で競馬だけが中央競馬会において行われており、国庫納付金を納めておる、こういう状況にございます。これは、小林さん御承知のように、国営競馬としてこれが発足をいたしました経緯がございまして、現在これを中央競馬会において行っておる。これには、その他の競技と違いまして、生き物である馬を競技の対象にしておるということ、それの管理の問題、いろいろ特殊な事情がございます。また、これから上がりますところの納付金は、畜産の振興また社会福祉等の方面にこれを主として使う、こういう使途についても明記をされておるところでございます。このあり方につきましては昭和三十六年に長沼答申というものが出まして、三十七年からこの答申の趣旨を踏まえましていろいろな改善、改革を行ってまいったところでございます。今後も、この答申の趣旨を踏まえましていろいろな改善を行ってまいる所存でございます。  その他の事項につきましては、専門的な問題がございますので、事務当局から説明いたします。
  17. 大場敏彦

    ○大場政府委員 中央競馬会の国庫納付金のうち畜産振興費に充当されている予算額でありますが、五十一年度の数字で申し上げますと、畜産振興費予算額全体で約千四百三十六億でございます。その内訳を申し上げますと、酪農振興経費関係が六百四十七億、伝貧が約一億、それからその他の畜産振興が約七百八十二億、こういった状況でございます。
  18. 小林進

    小林(進)委員 私は、馬の伝染性貧血症の試験研究施設に一体どれだけの金を使っているのかということを聞いているのであります。総額一千四百三十六億円を畜産振興に使われているということがわかったけれども、貧血の方に幾ら使っているかということをさっきから聞いている。時間がかかりますからやめましょうか、余り細かいことを聞くのも能じゃありませんから。それとも答えられますか。
  19. 大場敏彦

    ○大場政府委員 伝染性貧血試験研究費として計上しておりますのは、ただいま申し上げましたように、五十一年度予算で申し上げますと、約一億でございます。
  20. 小林進

    小林(進)委員 長沼答申の話はまあ後で私は御質問いたしますが、いやしくも昭和二十八年に閣議の申し合わせで、こういうばくちの金の国庫納付金はやめようということが申し合わせてある。そのときには、もちろんこの申し合わせをするからには、自転車は金物で、馬は生き物だということはわかっておったと思う。そんなことは最初から――政府が決めてから二、三年たって初めて、はあ馬は生き物だとわかったなんという話はそんなことは言わぬでもわかっている。そういう決められたことに基づいて、ほかのばくちは全部国庫納付金をやめているにもかかわらず、なぜ一体、馬だけ中央に残したということは、いまの農林大臣の理屈だけじゃわからぬ。ましてまた、馬が生き物ならば、みんな国庫にしておけばいいのに、なぜ中央競馬と地方競馬に分けたのか、これもわからぬ。わかりません。総理、おわかりになりますか。おわかりになりましたら、総理からひとつ御答弁をいただきたいと思う。何でもおわかりになっている総理でございますから。
  21. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 競馬が特例になっておりますのは、これは競馬が国営競馬ということで発達をしてきた、そのいきさつからそう現状を急に変更するのもいかがであろうか、こういう認識でただいまのような制度になっておる、そういうふうに理解しております。
  22. 小林進

    小林(進)委員 残念ながら総理の御答弁についても、一応閣議で決めたものを変更する理由には、ちゃんとそれ相当の理由がやはり文書で残ってなくちゃならぬであります。それは、正確な御答弁にはならない。しかし、これにこだわっていると時間がありませんから次に移りますが、第二に、大蔵大臣にお伺いいたしますが、昭和二十八年十二月二十八日、公営競技からの国庫納付金制度を廃止する。先ほどから言っている。特に、宝くじの発行をやめ、地方自治体の宝くじも早期に廃止することを閣議で申し合わせた、こういうことは、さっき述べたとおりです。しかるに、地方自治体の発行する宝くじの額は、年々増加するばかりだ。昭和四十五年には地方財政均てん化のために地方財政法及び公営企業金融公庫法が改正をされて、競輪等の売上金の〇・七%が公営企業金融公庫に納付することになったのであります。これは、閣議決定と全く逆だ。これは閣議申し合わせと違反をしていると思うが、一体いかがでございますか。これが一つです。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕  それのみならず、二、三年来、最近です、大蔵省は、ギャンブル税の新設を考えているというようなことが、ちらほら耳に入ってくるのでありまするけれども、この真相は一体どうか。これが第二点です。  地方自治体の財政逼迫に当たり、これは自治省は公営企業金融公庫に対する納付金〇・七%を増額することを考えているというが、一体この点はどうか。これは大蔵大臣にお聞きしているのですよ。この点はどうか。  第三点。以上のごとく最近国、地方ともに公営ギャンブルの収益に依存するという傾向が大変高まっておりまするが、大蔵大臣は、ギャンブル収益に国及び地方自治体の財政が依存する傾向にあるのを一体どう考えられるか。必要上やむを得ずと考えるのか。それは、国家の健全な伸長のためには好ましからざることであるから廃止すべきであるとお考えになっておるのか、お答えをいただきたいと思うのです。
  23. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ここのところ数年来、税制改正に当たりまして、ギャンブルに税をかけるかかけないかということについては、税制調査会等におきまして慎重に検討されておりますけれども、いま小林さんのおっしゃったような、これに対する強い批判の声もあります。それからまた、国家財政上これをやるべきだという声もございます。ギャンブルということは、これは必ずしも私はそれに税をかけることによって正当化するというような、そういうことをするつもりはもちろんないんですけれども、税さえかかっておるんじゃないかということが一つの気休めになるというような気持ちもあるかもしれないといったようなことも考えられまして、これに対しましては、今日まだ甲論乙駁ございまして、慎重に考えておりますが、これについての結論は目下のところ出ておりません。  その他のことにつきましては、政府委員からお答えさせます。
  24. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 ただいまの小林委員の御質問につきましては、大蔵大臣の御答弁で尽きていると思いますが、もうすでに御承知のことと思いますが、二十八年に補助金の臨時特例法を出しましたときに一般的に補助金を削減いたしました。その関係で地方財源の充実というような意味で地方に宝くじ等の収入を移譲したという形になっておりますが、それが増加しているという傾向につきましては私どもちょっと批判を差し控えさせていただきます。
  25. 小林進

    小林(進)委員 まあ甲論乙駁のさなかだとおっしゃいますから、その結論が出るのをお待ちいたしまして、次に通産大臣、農林大臣、運輸大臣、会計検査院長も含めて御質問をいたしたいと思います。  これは同じ質問でありますが、昭和二十九年に自転車競技法等の臨時特例に関する法律が成立をし、その後いろいろの変遷を経ながらも現在競輪、オートレース、モーターボート、地方競馬がそれぞれ中央団体に施行者から売上額の一定率が納付されている。で、関連産業の振興その他の公共の目的など特定の方向に支出をされる制度になっていることは御承知のとおりであります。ここにまた思わざるボスができ上がったり、不明瞭な運営が行れたりして、実にわれわれは公憤にたえないところもあるのでありまするけれども、そこまで言っておりますると時間がかかりますから、これはほかの場所に譲ることにいたしまして、この納付金及び使途について昭和二十九年五月二十六日参議院の商工委員会において、自民党の高橋委員、私も熟知の間でございましたが、こういういい人は惜しむらくは夭折して死んでいく。もはや幽明境を異にいたしておるのでありまするが、この高橋委員質問をいたしまして、この高橋委員が商工委員会において自転車競技法等の臨時特例に関する法律の審議の際、特定の納入金を特定の目的のために使用するものであり、公金であることが明らかであります、これは特定の国家財政の役割りをしている、公金であることが明らかである、それを予算の審議を通さずに交付使用することは憲法、財政法等の精神から見てきわめて異例のことである、私はそれらの法規に違反する疑いがあると思うがいかがという、こういう趣旨の質問をしているのであります。  これに対して、当時の政府委員である大蔵政務次官の植木庚子郎君、残念ながら今回は配所の月をながめるに至りましたが、この植木庚子郎君が、御指摘はまことにごもっともでありまするが、何分一年限りの時限法でございますので、来年は十分研究してまいりますと、こういう答弁をしているのであります。  その来年までの研究がそのままになって今日に至っておるのであります。明快な答弁はついに出ていないのでありまして、しかもこれに対する適確な処置、これも講ぜられないまま放置されているのであります。これを一体どうお考えになるか、これは総理大臣か大蔵大臣にお伺いしておきたいと思うのであります。
  26. 坊秀男

    ○坊国務大臣 公金かどうかという御質問は、これは国庫金かどうかというふうにお受け取りいたすのですが、私はこの納付金が法律に基づきましてそうして納付されるという法律の規定によって納付されるということに相なりますれば、その段階においてこれは公金と申しますか、国庫金と申しますか、そういうふうになっていくものだ、かように考えております。
  27. 小林進

    小林(進)委員 それで、いまの私の質問に対して、そうするとあなたのお考え方はわかりませんが、法律の規定によって納付されるということになれば国庫金だから、そうするとこれは国庫金じゃないということですか。だから、いまのギャンブルの売上金は予算に入ろうと国家財政に入ろうと、やはりこれは国庫納付金で、国庫金じゃないということですか。あるいは国庫金だということですか。どちらになるのですか。
  28. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は、法律が明定しておりますから納付するということで、そこで、これは予算に計上、それに基づいてしておるということで、私は公金だと考えます。
  29. 小林進

    小林(進)委員 ならば、あなたあるいは全ギャンブルの納付金のことについて言われるのか、中央競馬だけに限られるのか、その見解はまだ私明確じゃありませんけれども、ならば、四つの公営競技のいわゆる納付金だな、納付金といいますか、ともかく公金に準ずべきものですね、これに対してはやはり予算の審議もやるべきであるし、あるいは国会の検査にも応ずべきであると思いますが、いかがでございますか。
  30. 坊秀男

    ○坊国務大臣 無論これは国の歳入として予算案に計上されておるというものでございまするから、御審議の対象になるものだと思います。
  31. 小林進

    小林(進)委員 大変重大な御答弁でございました。結構でございます。  それでは、この植木政務次官は、来年は十分に研究してまいりますと言って、今日まで研究の回答がないのでありまするから、いまの回答は非常に重要でありますから、ひとつ文書で改めて明確にお答えをいただきたい。
  32. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いま申し上げましたのは、国の歳入に取り入れられるものは中央競馬会でございまするから、ほかは、これは私の方ではございませんで、ひとつ私の申し上げましたのは中央競馬会の納付金というふうに御理解を願いたいと思います。
  33. 小林進

    小林(進)委員 だから私は、その懸念があったから私の方で前もって言ったでしょう。あなたの答弁は、中央競馬だけのつもりでおっしゃるけれども、それじゃいけませんよ、すべてはそういうふうに扱わなければと私は申し上げたのでありまするけれども、ああいう役人がちょこちょこ来て、耳にささやくと途端にあなたの答弁が変わってしまう。それではいけません。それもこれも含めて、これは重要ですから、ひとつ文書で見識のある答弁をしていただきたいと思います。これはここだけで論じておりますと次へ進みませんから。  そこで、現在、私は申し上げたいのでありますけれども、それぞれの施行者から中央団体に納付されている金は年額大体一号、二号含めてどの程度になっているものか。これは本当に要領よくお答えをいただきたいと思うのであります。
  34. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 自治省の方から御答弁申し上げることかもしれませんが、私の方で把握しましたところによりますと、五十年度決算で、競輪、競艇、オートレース、地方競馬、この収入額が二千八百六十億になっております。
  35. 小林進

    小林(進)委員 大体私の計算と合っているようでございますが、五十年度でこれから中央団体に納付する金が大体三千億円弱であります。これらの金額が、これは中央競馬を除きますからな。除いて、これらの金額が毎年固定化して、特定の目的のために支出されておる。その支出がすなわち先ほどから言うように国の予算の肩がわりをしている。これは肩がわりをしているのですよ。ものも少なくない。先ほどは社会福祉に使っているとか畜産振興に使っているとかいろいろなことがありましたが、ともかく国の予算、財政の肩がわりをしていることは事実だ。それが会計検査院の検査を受けることもなく、また国会はそれに関知することもできないところで動かされているところに、この公営競馬の持つ一つの問題点がある、不明瞭さがあるのであります。確かに高橋君の意見のとおり、憲法及び財政法の精神に反するものと私は考えざるを得ないのでありまして、この点はあえて言えば、中央競馬の方だけは歴史も古いから、私は不明朗の点がそれほどあるとは言わないのであります。それほどあるとは言わないが、ないとも言わないのであります。神に誓ってないなどとおっしゃると、出しますよ、ちゃんと。私は資料をもって物を言っているのでありますから。  そこで、通産大臣、いま申し上げましたこの問題について、通産大臣の立場からどう一体お考えになりますか、お伺いしておきたいのであります。
  36. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘のように昭和二十九年度までは国庫に納付されておりましたが、まず競技の開催主体は地方公共団体でありますことから、その収益金は、関連産業の振興等のほかに、地方公共団体の財源となるべきものとされておりますことと、国の行財政の簡素化という観点から特殊法人を設けまして、収益を財源とした各種の補助事業を効率的に実施するというようなことで、ただいまのような現行の制度に相なっております。  なお、詳細な配分等は政府委員からお答えします。
  37. 小林進

    小林(進)委員 ああいう、大臣なんかおっしゃるとおりでおりますと、利口な役人がそうしてあなたにそういう文章を読ませるのです。あなたもまた、私がもう一時間近くも論議していることをお聞きになっているのかお聞きにならぬのか、同じことを繰り返し読んでおられる。役人が悪いんですよ。そしてあなたに恥をかかしているんです。帰ったらよく訓示しておきなさい。そして新しい大臣なんかみんな役人に足をとられて、満座の中で恥をかかされているのです。いけません。そういうようなことじゃいけません。まず役人の訓練をしていらっしゃい、ここで答弁をするからには。  それで、大臣、もうこれは落第ですから、自治大臣に今度お伺いいたします。  政府昭和三十六年、公営競技調査会というものを設置した。その公営競技全般について、その存廃を含めて諸問題のあり方を諮問しているのであります。その答申を俗称、先ほど言われた長沼答申というのであります。その答申の後段に、「競技場を所用していない施行者については、その資格は限時的なものとし、主務大臣が関係各省と協議して交替させる制度を採用する。」とあるのであります。自治大臣は、この答申に対してどんな制度を設けられているのか。あるいは最近地方財政の窮乏に伴って、公営競技の開催権を持つものと持たざるものとの間に格差が生じている。その収益の均てん化が各方面でやかましく叫ばれているのであります。この長沼答申の実施が答申どおり正確に行われていれば、こういう不均衡に対するせつない叫び声が各方面から出てくるはずがないのであります。一体これを正しく用いられたかどうか、あるいは今後どうする方針であるのかを承っておきたいのであります。
  38. 小川平二

    小川国務大臣 お答えします。  長沼答申が述べておりまする趣旨は、御高承のとおり現行の公営競技はこれを存続せしめる。ただし、これ以上奨励はしない。よって生ずる弊害を是正する。その弊害是正の面におきまして、自治省として行っております措置でございますが、第一には、許可ないし許可の更新に際しまして、できるだけ一部事務組合で施行させるように指導いたしております。  そこで、期限の定めのある地方団体の大多数が現に一部事務組合で施行しておるわけでございまして、これはお言葉にありました均てん化の方向に沿った手段の一つでございます。そこで、たとえば、この競馬におきましては五十四団体のうち三十七団体が現に一部事務組合で行っておる。競輪につきましては百四十九団体のうち百四十八団体が現に一部事務組合で施行しておるという状況になっております。  第二番目は、起債並びに特別交付税で調整をしておるのでございまして、起債の許可に際して、基準財政収入額の一〇〇%以上を収益金に依存しておるというような団体に対しましては場合によっては許可しない。許可いたします場合にも充当率を半分にする。七五%のところに対しては七割にするというようなことで調整をしております。それから交付税につきましても、一定の算式を用いてこれを減らすということをやっておりますのが第二番目。  三番目には、公営企業金融公庫に収益金を納付させることになっておりまして、五十二年度においては〇・九%、これをさらに漸増していく予定になっております。これによりまして、公営企業金融公庫が融資いたします際の金利八・八%を薄めまして七・七%にしておるわけで、融資を受ける地方団体がこれに均てんをするという仕組みになっておるわけでございます。公益競技の収益に強く依存をしておりまするということは、その団体自身にとっても余り好ましいことではございませんし、地方公共団体の間に不公平をもたらす、ひいては行政水準の不均衡をもたらすことでありますから、そこで、このような方法を現在とっておるわけでございます。
  39. 小林進

    小林(進)委員 長沼答申ですね。「競技場を所有していない施行者については、その資格は限時的なものとし、主務大臣が関係各省と協議して交替させる制度を採用する。」、その中で、地方競馬についてはいまの答弁の中でも五十四団体のうち三十七団体が一部事務組合をつくっているということでございますから、まだまだ加入していく。組合に入ってないものも大変多いわけでありまするし、一体各省との協議がどんなぐあいになっているということも御答弁がありません。細かく言えば私どもまだ申し上げたいことがたくさんあるのであります。けれども、時間がありませんから、これはやはり長沼答申をもっともっと正しくやっていただくように努力をしていただかなければならぬと思います。  第五番目として、私は総理大臣一つお伺いいたします。憲法論争であります。昭和四十九年の十二月五日であります。大阪地方裁判所において、中央競馬の、のみ屋事件の判決があったのです。判決文をここに持ってきておりますけれども、そこで穴沢成巳という裁判官は、「国又は地方公共団体がギャンブルを主催することは、憲法一三条の国民の幸福追求に対する権利につき国政上最大の尊重がはらわれなければならないという規定、あるいは一般国民がギャンブルを主催すれば刑法上の罪となるのに国又は地方公共団体が主催すれば罪とならないという意味において憲法一四条の法のもとに平等の規定等に違反する疑いをいだかせるものというべきである。」という、これはこういう判決文です。まあこれはひとつ見ていただきますが、こういう裁判もある。  そこで、私はいまさら憲法論議をしようというのではないが、公営ギャンブルについて現職裁判官の中にもこうした疑義を持っている者があり、これを含めて、この際、公営ギャンブルのあり方をもう一度洗い直してみる必要があると思いますが、これに対する総理の御所見をひとつ承っておきたいのであります。
  40. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公営競技につきましては、いわゆる長沼答申、この線で政府もその公正な運営が図れるようにという努力はしてまいりましたが、なお時世も大変変わってきておりまするから、その答申そのものでいいのかどうかという問題も起こってくるかもしれません。また、その答申を実行するにいたしましても、実行のしぶりについて問題があるかもしれない。そういうことをよく調査、検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  41. 小林進

    小林(進)委員 いまも総理の御答弁がありましたように、昭和三十六年に政府が公営競技調査会というものを設置された、それによって答申があったことは、総理の御答弁のとおりであります。ところが、その後の状況の変化、もちろん時世の移り変わりもありましょうが、それに加えて通産省、運輸省、農林省、自治省、それぞれの省が自分の都合のいい部分だけを実行している。都合の悪いところとか、あるいは同じく中央団体でも抵抗の強いところ、船舶振興会みたいな、そういう抵抗の強いところはそのまま放置をしておいて、そして長沼答申を決して正しく実施をしていないのであります。  私は、その一、二の例を申し上げますと、答申の第十三項目、答申は十三項目から成り立っておるのでありますけれども、その答申の十三項で四つのギャンブルの格差を是正せよと言っている。これは改めておりません。  第一、開催の日数がそれぞればらばらであります。  第二番目には、中央団体の法人格も全部異なっております。競輪やオートレースや地方競馬は、これは特殊法人であります。モーターボート連合会及び船舶振興会は、これは民法上の法人であります。何でこんなに差をつけておくのか、違わしておくのですか。  三番目には、競馬とほかの三つの公営競技とは払戻金の計算方法が違っております。何で一体これは統一しないのですか。  第四番目に、最もはなはだしいのは払戻金の端数切り捨てに関することであります。国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律、昭和二十五年三月三十一日法六十一に、ありますな。法制局長官、わかりますか。これは内容をちょっと聞かせていただきたいのであります。
  42. 真田秀夫

    ○真田政府委員 突然のお尋ねでございますが、たしか国の債権債務についての端数計算の法律がございます。どうも手元に資料がございませんのですが、たしか五十銭未満でしたかを切り捨て、それ以上は一円に切り上げるというようなことじゃなかったかと記憶しておりますが、まあその辺で、私のお答えといたしたいと思います。
  43. 小林進

    小林(進)委員 まあ天下の法制局長官ですから、恥をかかしちゃ悪いですから、その程度にしておきましょう。全部間違っていると言っちゃお気の毒ですから、まあ若干の違いがある程度にしておきますが、これはあなた、後から調べてもらえばよろしいのです。国の債権については、これは切り捨てです。国が債権を持っている場合には端数は切り捨てです。国の債務については切り上げる。これが原則です。これが規定なんです。ところが、このギャンブルは七五%の払い戻しをする義務が課せられているわけでありまするから、私は、この国の法律に準じて端数は切り上げるのが当然だと思うのです。消費者、大衆に対して権力者の側はいつでも一歩下がって、やや控え目、損をするというのは何でありまするけれども、控え目にいくというのが、それが法律の主旨であります。私は、これは切り上げるのが本当だと思っております。ところが、このギャンブルは、これは全部端数を切り捨てにしているのです。切り捨てにしている。その切り捨てをすることによって、昭和五十年だけでも一年間で、これは百九十二億円の金が浮かんでいるのだ。ざっと二百億円ですよ。端数の切り下げ、切り上げと言うけれども、これはだてや酔狂じゃないのです。二百億円のこれは不当利得です。その金はどこへ行ったかわからない。私も調べてよくわからぬ。大体切り捨てをしていることが、財政法及び憲法に準ずる立場から言えば、これはインチキだと思う。これは不正です。しかも、その金がどこへ流れているかわからない。調査するけれどもわからない。これを含めまして、私は、いま申し上げました基本問題も含めて、これはやはりこのままにしておくということはもはや許される現状ではないと思うのであります。そこで、各省がそれぞれなわ張りを張って、隠し財産のようなものをつくって、それで格差をそのままにやっているということは、これは断じて許されるべきことじゃないです。もはや各省のなわ張りなんかに任せておくべきじゃありません。私をして言わせれば、何といっても五兆円産業ですから、四兆円をオーバーして、いま五兆円に至らんとする産業でありますから、あれは、国民に健全なるレジャーを与える、週休二日にでもなりましたら、国民に明朗なレジャーを与えるという立場からもこれは考えなくちゃならぬ。財政の面からも考えねばならぬ。そこで、私は、これは窓口を一つにいたしまして、通産だの自治だの運輸だとかという、悪者とは言いませんけれども、なかなか役人というのはこれは放したがらない。自分たちの権力範囲に置いて、定年になったらそっちへ流れていこうなどというさもしい勘定まで全部しているのでありますから……。そして交付、配分も、これは公平に、あまねく国民に均てんする方向に持っていくべきだと私は思います。そのために、私は、第二次の公営競技調査会、いわゆる長沼調査会が第一次ならば第二次の調査会というものを、官房または総理府に設けることであります。これは各省に出してもだめなのです。通産省なんかに置いたら大変なことになります。官房か総理府の中にこれを置いて、そして必要な諮問をするという、そういう作業に緊急に入っていただくことが問題処理の一番よい具体的な方法じゃないかと私は思いますが、これに対する政府の御答弁をひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。
  44. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃるとおりに、昭和三十六年の長沼答申から十六年を経まして、ずいぶんと態様が変わっております。その間のいろいろほころびを縫いながら現在までやってきたことだと思うのです。しかし、いまおっしゃいましたように、基本的に考え直さなければならぬ時期にも来ておる、このように思いますので、総理以下と御相談申し上げまして、おっしゃいますような第二次の調査会を開くかどうかにつきましては、前向きに検討をいたしたい、かように思います。
  45. 小林進

    小林(進)委員 もちろん総理と御相談をいただかねばならぬと思いますが、ひとつ早急にこれは設置していただきたい。その設置の条件といたしまして、われわれの調査をしていままで申し述べました意見も大いに尊重していただきたいということが一つであります。われわれの意見を尊重していただきたい。それから、ひとつ世論も反映するような調査機関、総務長官の任意機関だとかじゃなくて、ちゃんと法的根拠を明らかにした公的な調査機関を設けていただきたい。任意じゃだめです。あなたの私的調査機関じゃだめです。それから委員の人選についても、国民の納得する、各省のなわ張りみたいなものが入ってきてその中でやらない相談をするような調査会じゃ何にもなりませんから、ひとつ世論が納得するような専門の委員を任命していただきたい。第三番目には、これは期間です。一年と言いたいのでありますが、この調査機関は、非常に能率的に働いて、少なくとも一年半の間にはりっぱな答申が出て直ちにそれが実施できるような期間を設けた調査委員会にしていただきたい。これをお願いいたしまして、内閣の官房か総理府かどこかに設置せられるよう私の希望を申し上げるのでありますが、これに対する総理の御所見を承っておきたいと思うのであります。
  46. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公営競技に関する御所見をいろいろ承りまして、非常に私も裨益するところが多かったと、こういうふうに思います。調査会の設置につきましては、小林委員の御意見も重要な資料といたしまして、早急に考えたいと、かように考えます。
  47. 小林進

    小林(進)委員 せっかく総理の御発言でございますから、これは間もなく実施に移されるものと私は信頼をいたしまして、この問題に対する質問は終わりたいと思います。  次に私は造船不況の問題を、これは十分ばかりで質問をいたします。  造船不況の問題について私は運輸大臣に質問の通告をいたしておきました。運輸大臣のお顔を拝見して思い出すのでありますが、あなたは、例の若狭得治全日空会長を、いま刑事被疑者であるということで、運輸省関係の公式の審議会から彼はその職を辞任すべきである、みずから辞退すべきであるという、公式か非公式か、そういう意見の開陳をせられました。あなたのその発表に基づいて、あの傲慢不遜の若狭得治君も、二十一日の運輸省関係の審議会からすべて職を辞された。私はこれを拝見をいたしまして、近来ない快哉事である。国民もまたそう感知をいたしておるのであります。私は、この点は率直にあなたの物の考え方に敬意を表します。これは答弁は要りません。  そこで委員長に申し上げるのでありまするが、いま若狭得治と申し上げましたら、あなたも御存じでありましょう。御存じでありますね。
  48. 坪川信三

    坪川委員長 存じております。
  49. 小林進

    小林(進)委員 そうでありましょう。これは、前の予算委員会で、いま国を、世界を揺るがしておるいわゆるロッキード問題で彼はこの国会に昨年の二月十六日、三月一日、二回この委員会に証人として出頭を命ぜられました。そして、われわれの前で宣誓をしながら彼は証言台に立った。言うことが少しも納得つかぬのであります。そこで、全日空の前社長の大庭君と二人をこの席で対決をさせてなお事の真実を追求したことは皆さん御承知のとおりであります。にもかかわらず彼は、真実であるがごとく真実であらざるがごとく、実にいんぎん無礼な証言をした。そこでわれわれはいわゆる偽証罪で彼を告訴いたしました。検察庁はこれを受けて、彼の身柄を拘束し、そして国会に対する偽証罪の疑い十分なりとして、いま公判に付せられていることは御承知のとおりであります。この人がいまなお全日空の社長から会長だ。むしろ上のランクへ上がって、まだ実力全日空の第一人者として堂々として天下を闊歩している。国会の証言台に立って偽証罪の罪でいま訴えられて、国民を沸かし、国民に迷惑をかけ、国会にこれほど御迷惑をかけたことに対する反省などというものは一分もないのであります。国会の喚問何物ぞという姿である。私は、思い上がったこの姿は、国会を通じて国民に対する挑戦であるととらざるを得ない。私どもは、四十九年、あの石油ショックから集中論議というものをやりまして、財界、金融界を問わず、企業の大物を全部ここへ呼びました。そこで、財界は民間であり営利追求が目的であろうとも社会的責任はありますよということを繰り返して言って、彼らも、企業家であろうとも常に自己の社会的責任があることを明確にし、納得をして帰った。その民間でもやや公に近い企業の社長が、これほど国会国民に迷惑をかげながら、依然として権力の座に座って、そして何やかやと自由な放言をしているということは、私は断じてその姿勢は了承できません。同じ証人台に立ちましても、あるいは丸紅のごときは――細田君、君は運輸省の若狭君の後輩だか先輩だか知らぬが、わかっているからいいけれども、こっちへ来ていたまえ、私は委員長質問しているのでありますから。(細田委員委員長に呼ばれたものですから」と呼ぶ)
  50. 坪川信三

    坪川委員長 別な話であります。
  51. 小林進

    小林(進)委員 別な話でも、李下に冠を正さずと言うけれども、運輸官僚のことを言っているときに、元運輸官僚がそこに顔を出せば疑いたくもなりますからな。  そこで、そういうことでありますから、同じ比較して彼の方が悪いのですよ。そのとき呼んだ丸紅の方はそれでも、檜山君でも伊藤、大久保でも、世間を騒がせた、非違が明らかになるまでは社長のいすにも座わらぬ、会長のいすにも座わらぬ、専務のいすにも座わらぬと言って、一応謹慎の意を表している。彼我比較対照しても、私は了承できない。  そこで私は、この予算委員会の名において、私の言わんとする忠告を与えていただきたいと思う。君は一体、国会の名において偽証の疑いがあるとして告発されていることに対して、国会や世間に対して責任を感じないのか、省みて良心に恥ずるところはないのか、どういう心境なのかと私は問い合わせていただきたいと思います。その回答によって私は第二、第三の質問をいたしたいと思いますから。委員長、よろしゅうございますか。
  52. 坪川信三

    坪川委員長 小林君にお答えいたします。  告発されていることも承知いたしております。また、これの現時点における立場なども考えてみるときに、われわれ委員会として、また委員長の立場から、これに対する態度のことは慎重を期したいとも思いますし、他党のお考えも聴取したいとも思いますので、いずれ理事会で協議いたしたいと思っております。
  53. 小林進

    小林(進)委員 その理事会の結論を私はお待ちいたしますが、私の意に沿わなければこの問題は何回でも繰り返してやります。  それで、田村運輸大臣にお伺いいたします。これはもう時間もありませんので簡単に申し上げまするけれども、造船界の不況の問題でありまするが、今度はあなたに文句を言うのです。この質問をしようと思ったら、あなたの部下から私は実に不愉快な話を承った。けれども、ここで私が公に言いますと、これはあなたものっぴきのならない、私ものっぴきのならない問題になりまするから、その話は私はここで言いませんが、場所を変えてあなたと二人で話をしましよう。二人で話をするが、私の言うことにあなたが納得されたら、あなたの部下のことですから、ひとつ厳重な処分をしてくださいよ。わかりましたね。それはそこでなくて、ここでひとつ回答していただきましょう。
  54. 田村元

    ○田村国務大臣 どういうことか想像もつきませんが、よくわかりました。(笑声)
  55. 小林進

    小林(進)委員 これが政治家の答弁というものであります。ところが、私にはこれが一番よくわかるのであります。これはだれの、だれの答弁よりもよくわかるのであります。(笑声)  そこで私は、この造船の不況についてお伺いを申し上げまするとともに、現状はどういう対策をお持ちになっているのか、ひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
  56. 田村元

    ○田村国務大臣 最近の海運不況、市況の低迷、タンカーの船腹過剰、まことに困ったものであります。まあ、キャンセルなんかが非常に多いということでございます。特に、造船業もさることながら、その関連工業、関連事業が非常に苦しんでおるということでありまして、経営の悪化が目につきます。何とかしなければならぬということで一生懸命になっておるわけであります。  そこで簡単に数字を申し上げますと、主要造船企業四十社の操業度が、四十九年度を一〇〇といたしますと、五十年度は八九、五十一年度は八一でありましたが、恐らく五十二年度は七五程度、五十三年度は七〇程度になる見込みでございます。それから造船業の従業員数も、ピーク時から見ますと約三万人程度減少しておるということでありまして、金融や雇用等の面においていろいろと対策を講じておるところでございます。  で、昨年十一月に主要造船企業四十社に対しまして、五十二年度及び五十三年度における操業に関する勧告を行いました。五十二年度予算におきましても、まだ原案にすぎませんが、工事量確保に必要な船舶向け輸銀資金が二千四百五十億円、船舶解体業を行う造船下請企業に対する補助金、船舶解体業技術改善費と申しますが、これが一億四千六百二十五万円、中小造船業、造船関連工業等の需要確保のための調査指導費、これが六百四十六万円、それから国内LNG船及び高経済船の建造促進のための調査費が約一千万円、九百六十何万円というものを計上いたしております。それから雇用対策でございますけれども、これはもう労働省の大変なお世話になりまして、雇用対策法によります職業転換給付金制度を適用することにいたしております。このための予算も計上をいたしておるところでございます。しかし、何分にも深刻なことでございますので、必要に応じていろいろな強力な措置をとっていきたい、このように考えておる次第でございます。
  57. 小林進

    小林(進)委員 労働大臣の雇用対策もお伺いしたいのでありますけれども、時間がありませんからこれは割愛をいたしまして、前記対策の一つとして造船下請業の解体業への転換促進については一体どういうようにお考えになっておるのか、これも承っておきたいのであります。
  58. 田村元

    ○田村国務大臣 石油ショック以後の造船不況に伴いまして造船下請業は深刻な影響を受けて、すでに約二万三千人程度の減少を見ております。今後はその技能、技術を活用し得る事業への転換を図る必要がございます。そこで船舶解体業は、造船下請業の持つ技術を活用して資源の確保、それからリサイクルを図るとともに、造船下請業の仕事量の確保及び雇用対策として有望な転換業種であると考えられております。しかしながら、事業転換の過程におきましていろいろな技術的な問題を解決しなければなりません。政府としては、解体企業が軌道に乗るまでの間、解体工程の確立、施設の効率的使用等の試験的要素にかかわるコストを、先ほど申し上げました船舶解体業技術改善費を補助金として交付するために、先ほど御答弁申しましたような予算措置も講じておるところでございます。
  59. 小林進

    小林(進)委員 この解体業を促進していくためには、まず船舶の購入資金が必要でありましょう。それから、いまおっしゃいましたように、解体技術を改善するための国家の補助金もまた必要でありましょう。実際にでき上がった組合、これはお話があったかどうか知りませんが、大体五つのブロック別におつくりになるという計画だと聞いておりますが、その組合に対してやはり年間解体できる船をあっせんしてやらなければならない。加うるに、この仕事を進めていくためには造船業、特に大手の造船業の協力がなければこれを進めていくわけにはいきません。あるいは場所を提供するとか、あるいは大手業者の持つ技術をもって協力をするとか、いろいろ協力がなければならぬ。切断の方法だとか廃棄物の処理方法だとか、いろいろな細かい点の協力がなければいかぬ。そういう大手企業やあるいは船舶購入の資金面のお世話などということは一体どうなっておるのか。
  60. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 まず、購入資金につきましては、通産省にお願いをいたしまして商工中金からの融資の道を考えております。  それから、大手造船業の協力につきましても、私どもこの案を考えます最初からよく指導しておりまして、今後とも御趣旨に沿って指導してまいりたい、こう考えております。
  61. 田村元

    ○田村国務大臣 いま局長が申したとおりでありますが、特にこういう席で小林さんに非常にいいことを言っていただいた。言うなれば、私どもがこれから仕事がやりやすくなるようにヒントを与えていただいたわけです。この点、厚くお礼を申し上げます。別に先ほどほめられたからというわけではありませんが、お礼を申し上げます。  特に私がいま考えておりますのは、たとえば海上保安庁なんかで古い船がありますね、そういうのを回してあげたらどうだろうかということを考えておるのです。これは私が考えるだけじゃいけないのです。恐らく他の省庁にも相当これはあるはずなんですよ。でありますから、その点で各省庁の御協力も賜りたいと思いまして、ちょっと小林さんの御質問にいささか悪乗りしたかもしれませんが、便乗をした次第で、こういうお答えをつけ加えておきたいと思います。
  62. 小林進

    小林(進)委員 いみじくも、私が質問しようと思ったところを運輸大臣に先取りされましたからこれではなんでありまするけれども、やはりこれは、解体船、船がなくては解体できないのであります。そこで問題になるのがいまおっしゃった海上保安庁です。それから防衛庁。三原防衛庁長官にも私はその点ちょっと事前に打ち合わせをしましたけれども、三原さんという人はなかなかりっぱな方ですな。艦船解体の件は――時間がありませんからあなたの非公式な回答を言わせてもらっているのですけれども、自衛隊に解体船はある、その解体船は全部解体組合の方に処理を依頼する意向である、こういう御返事をいただいておる。他に米海軍から無償給与を受けている艦船でダウンするものが相当あるが、これは日米間では、給与時の契約によって、ダウン、いわゆる廃船すればアメリカへ返還することになっておる。そこで目下、アメリカに返還する契約を何とか日本の解体業者の方へ回すわけにはいかないかという交渉もあなたの方でしてくださる、こういう返事だ。これは労働者は助かる。これは非常に助かります。造船関係の労働者、三十三万人といいますけれども、いまそのうち五万人ぐらいはあっぷあっぷしているという現状ですから、こういうふうに積極的にやっていただくと非常にありがたいです。あなたの答弁を求めないで悪いですけれども、そういうふうに積極的に御努力をいただくと同時に、これは海上保安庁、いませんか。――いませんな。そちらの方もあわせて防衛庁長官に右へならえしてひとつ御努力いただきたい。経企庁長官、あなたの方にも関係してきます。あなたの方もできる範囲の御協力をひとつやるようにお願いしておきたいと思います。  以上、時間がありませんからこの程度にして、あとは実績を静かに静かに見せていただくということにしていただきまして、また実績に準じて次に答弁を求めることにしますが、労働大臣、もちろんあなたにも、雇用関係は一番重大でございますので、ひとつあなたもぜひとも御協力をお願いいたしたいと思います。  次に、私の一番専門とする医療問題。やっぱり専門は後へ回すということになって、後へ回すと時間がないということで非常に悲しいのでありますけれども、いま各省の行政の中で一番ばらばらなのは厚生省です。総理大臣お気づきになっておるかどうかわかりませんが、厚生省です。その厚生行政の柱は医療と年金と社会福祉です。その三本の柱の中で一番悪いのは医療です。年金です。これはどうにもならぬ。これは日暮らし省といいまして、その日その日の暮らしで長期の展望が一つもないから、もう医療は財政的に行き詰まっちゃった。年金も財政的に行き詰まっている。どうにもならないところに行っている。これは論じ尽くせば大変でありますけれども、医療問題はその中では特に大変でありますが、国民年金は至極簡単ですから国民年金から申し上げます。  国民年金の財政の現状、国民年金の財政については、昭和五十年度決算及び五十一年度予算においてすでに給付費が保険料収入を上回っている。三十六年から国民年金をやって、まだ支給を開始して数年もたたないうちにもはや保険料収入を上回っている。特に五十一年度予算においては約一千七百億円の積立金の取りくずしを見込んでいる。このままで推移すればここ数年で、過去の国庫負担金の積立額も被保険者が粒々としてためた保険料の積立金も、すべてこれを食いつぶしていくのです。完全な破産状態に陥ることは、これは火を見るよりも明らかなんです。このようなきわめて窮迫した状況に加えて、近時における大幅な物価スライドや年金受給者の急増だ。これは、年金受給者はこれからふえていくばかりです。五年年金、十年年金、二十五年年金。二十五年年金ももうそろそろ来ています。将来にわたってどうしてこの財政を運営していくのか。大蔵省の預金部にも、もはや国民年金の預金は一つも今度の中に入っていない。総理大臣はおわかりになっていると思います。一体この危機はどこから来たか。これを一体どうして打開するのですか。これを打開する方法、危機の状況、総理考えになっておりますか。きょうは時間もありませんから、総理の御所見をひとつ承っておきましょう。
  63. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 確かに、この医療制度の問題、年金問題、これは非常に重大な時期に来ておる。御指摘のとおりでございます。したがいまして、去年から厚生省では、年金については年金制度の基本構想懇談会、これをこしらえて専門家の意見をいま聞いておるところでございますが、何とかひとつことしじゅうにでもこれは大きな洗い直しをしなければならぬ。それらについてはまた専門家の小林さんの意見も十分にお聞きをして考えてまいりたい、かように考えております。
  64. 小林進

    小林(進)委員 これは時間もありませんから、総理にだけ、ひとつ物の考え方の基本として私は申し上げておきたいと思うのでありますけれども国民年金は、被保険者数はだんだん減っていくのです。それから受給者の数は、だんだん年寄りがふえるのと同じでだんだんふえてくる。その中で財政危機というものが目に見えてくる。財政危機が特に火急的にくるのは、これは国民年金の特徴ですが、この第一はいわゆる定額保険料というもの。普通は地方で住民税と所得額と二つ加えて地方税が取られているというように、資産、所得、それから平均、三本立て。ところが、年金には所得に見合ういわゆる保険料というものはないのです、定率定額ですから。これが原因の一つなんだ。こればかりじゃありませんよ。だからといって私は所得額に基づいて大きく税金を上げろというのじゃありませんが、ともかくこれはスタートからちゃんと赤字になるような要素を加えてでき上がっているのです。だから役人にまかせてはだめなんです。総理が、あなたは財政の専門家でいらっしゃるから、この年金の将来をどう見通すか。考え資料でありますから、ひとつお考えおきいただきたいと思います。
  65. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国民年金は、申し上げるまでもございませんけれども、わが国とすると給付水準は相当の水準にきているのです。この間八万円年金、こういうことを申し上げて御論議がありましたが、とにかく水準はかなり高いところにきておるわけでありまして、さあそれに対する財政措置というか、財源の方の体制が十分でない。これは御指摘のとおりでありまして、やはり根本的に考え直さなければならない。いま厚生省でどうしたらいいかということを鋭意検討しておる最中である、こういうふうに御了承願います。
  66. 小林進

    小林(進)委員 時間もありませんので私も残念ですけれども、これは総理に参考までに申し上げておきます。  ここには西村さん、厚生大臣の経験者もいらっしゃいますが、戦後、私は二十四年から厚生行政をずっとながめてきましたけれども、本当に長期の見通しに立って厚生行政をやられた人は斎藤という厚生大臣でした。その斎藤が二人いる。死んだ斎藤はいいので、生きている齋藤はだめなんだ。その死んだ斎藤氏が、社会保障基本法、医療保障基本法、健康保険基本法という法律をつくって長期の見通しに立っていかなければ、日本の医療行政も年金行政も突き当たるぞと言って真剣に取り組んだ。その取り組んだもとは、佐藤総理大臣昭和四十年前後に社労委員会に呼ばれては、これではだめだから基本的に問題を処置しなさい、それでは基本法をつくりましょうと言って、彼はそれを受けてやった。実に涙ぐましい努力をしてくれました。やはりいい人は死んでいきます。その後に生まれたのが齋藤邦吉などという厚生大臣だが、彼は基本法を、そのせっかくつくったものを全部捨ててしまって、まあできることから一つ一つ積み上げていきましょう、その方針でいきますなどといって一切を棒に振ってしまった。朝令暮改です。その結果がいまのこの医療行政の赤字なんです。  またけさも言っておりましたね。いわゆる社会保険が赤字になって、今度はボーナスから二%の保険料を新しく取る、あるいは所得の額を三十八万円に上げる、それからまた入院料も、初診料も今度は六百円にするとかという、ばかの一つ覚えみたいなことを十年一日のごとく繰り返している。そして一年半か二年たつと社会保険の値上げ。社会労働委員会国会といえば何をやるかといったら、社会保険の値上げで朝晩暮らしているのですむ最近社会保険の値上げをやったのはいつですか。一年半前でしょう。一年半前に上げて、もうこんな騒ぎはいたしません、断じてやりません、大丈夫でございますと、口の乾かないうちにまた値上げ問題を出して大騒ぎをするのです。歴史をたずねていけば、わが社会党もこの社会保険料の値上げのために最大の被害を受けて、かつて佐々木委員長、成田書記長なんかみんな手を上げて辞任をしたという大騒動も起こしたのだ。(笑声)そういうばかなことを、皆さん方お笑いになりますけれども、厚生省というのはそれだけ繰り返しているのです。十年一日のごとく繰り返している。そうして繰り返した役人は、やあショックでございますなんて言って自分が手直しして、ちょっとこう薬張りをして、一年か二年半たって値上げをしていくと、そのときにはもう保険局長はやめて次官になったり長官になったりして、自分の任期の期間だけはちゃんとこう薬張りをやる。役人の功名手柄のために国会が踊らされ、社会労働委員会が踊らされ、厚生大臣が踊らされるという、実に愚にもつかないことを繰り返している。私は時間があればその問題を全部解明をしていきたいのでありますが、これは何ぼやったってだめなんですよ。  その一つの理由を申し上げます。国民の医療に対するニードというものは無限なんです。これが国民健康保険を出したスタートの誤りなんです。国民皆保険にして、そして一生懸命予防医学で、自由に医者にかかれるようにしてやればだんだん病人は減っていくだろう、医療に対する要求も減っていくだろう、だから医療の保険制度の完備とともに患者は減っていく、そういう概念のもとにスタートした、これはとんでもない間違いなんです。医療に対するニードというものは、生活が上がり、文化が上がり、程度が高まれば高まるほど医療ニードというものは無限に高まっていくのであります。それがいまのいわゆる医療費の高まりなんですよ。その見通しの上に立ってこれを取り組まなければ問題の処理にならない。ところが役人というものは、全くこれは世の中のガンなんです。特に厚生省というのは朝令暮改、日暮らし省だ。年金財政はもう数年たたずして爆発することはいま私が申し上げましたが、それよりも窮迫を告げているのがこの医療財政ですよ。それを取り組んでいただかなければだめなんです。  私は時間があればその取り組みの内容も個々に申し上げたいのです。いまの医療は、かぜを引いて鼻水が出る、腹が痛い、頭が痛いという者がとんとん飛んでいけば、社会保険ならただだ、国民保険だって三割ぐらい持っていけば治療できる。しかし、いよいよ重病になりまして、これから入院をしなければならないというときには、やれ差額ベッドでございますの、完全看護でございますのといって、医療供給制度は全部だめです、金がなくちゃ。本当に医者を必要とし、入院を必要とする重病患者には、いま国民皆保険は一つもでき上がっておりません。これが逆にならなければいけない。重病患者や、本当に医者を必要とし、入院を必要とする者にこそ手厚い皆保険が温かく先行していかなければならぬ。鼻水が出たり頭が痛いぐらいなら売薬でいいんだ。おまえ、薬屋へ行って薬飲んでいればいい、それで間に合うのです。そういう基本的なものの姿勢が一つもでき上がっていない。そんなことをしゃべっていると時間がありませんが、これは参考までに一つ私は申し上げておきます。  そこで最後の問題は、そういうことをしておいて一体何に逃げているか。これも大蔵省が一番悪い。悪の権化は大蔵省でございますが、それでいまでき上がったのが民間保険というのです。総理、御存じですか。いま民間の生命保険会社がニードとして一番売りたがっているのは民間保険です。民間保険の種類だけでももはや保険会社が四十何種類やって、そして、あなたが病気になって入院したときに、がんになったときに、成人病になったときにこの民間の保険料で保障いたします、こういう制度が、昭和四十九年を契機にいたしまして燎原の火のごとくいまでき上がっている。国民皆保険のときに、何でわれわれの生命、身体、健康をそういう営利を目的とする保険会社に預けなければならぬのですか。これが皆保険ですか。その点をひとつ私は総理にお伺いしておきますよ。
  67. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 小林さんの非常に勇気ある、まことに敬服した発言でありまして、役人云々の項を除いては大体私の選挙公報に書いてあるような話であります。民間保険の問題もやはりそれと裏表の問題でございまして、本当に小林さんがおっしゃるように介護を要する、また入院は一人一部屋でなければ困るという病気もあるわけですが、そういうようなときに保険で全部見れない、そのために民間保険がそいつを補っておるというのも事実でございます。だれしも、健康保険制度、医療保険制度の抜本改正をやれというのはみんな言うんですが、その各論になりますと三つ四つぐらいに分かれちゃって、なかなかむずかしいというのが実情でございますので、どうぞひとつ、今後ともそういう方向でわれわれも話を詰めますから、何分社会党挙げて御協力のほどをお願い申し上げます。
  68. 小林進

    小林(進)委員 私は本当にこの質問をきょうの目にしていたんです。目にしていたんですが、残念ですができません。  ひとつここで結論を申し上げますが、国民皆保険、公的医療というものはこれは全国民に対して強制的に加入させている。強制的にいや応なしに加入させている。そのかわり必要にして最小限度のものはナショナルミニマムで必ず国が責任を持ちます、これが国民皆保険なんですよ。にもかかわらず、それで納得できなくて、みんないま金のある者は民間保険にかかって、そして自分の生命を託している。ここで私はどうしても、公的医療で保障する最低限度というものを、厚生大臣以下、明らかにしてもらわなくちゃいけません。これまでは皆保険で国が責任を持つ、これからは国の責任の範囲でないから、じゃあなた方は民間保険に入りなさい、こういう形にその最低線を引かなければ一体どうなります。同じ病院の中に入っていても、これは民間保険だからといって個人ベッドに入ってお医者さんから大事にしてもらって、おまえは公的保険だから鼻も引っかけないわいということになったら、一体日本の医療制度はどうなりますか。社会保障はどうなりますか。人間の差別、貧富の差別。どんなに貧富の差別があろうとも、事医療に関する限り、病気に関する限りは、憂いなく平等に国が保障してくれるというのが医療保障だ。国民はそう信じている。しかし、どうだ。同じ病院に入っていた、差別をつけられた、おれも民間保険に入りたいが金がないといったときに、一体政府はどうします。その人たちに対して金を出して民間保険に入れてくれますか。総理、入れてくれますか。入れてくれるだけの保障がなければ国民皆保険じゃありません。国民の中に差別をつける。貧乏人と金持ちとの差別をつける。金持ちは伸び伸びと、こっちは入院もできない、医者にもかかれない、というような状態が生まれてくる。同時に、大蔵省はこれをいいことにして、大蔵省は奨励省ですから、医療保障に、厚生省に金を出すのがいやだから、民間保険奨励をやっているんだ。これは事実上、社会保障の壊滅です。国民医療保険の壊滅を一生懸命大蔵省はやっている。厚生省も、民間保険をうんと奨励して、民間保険の利益の対象に国民の健康を持っていかれたら、もはや厚生行政はあってなきがごとしです。それをいいことにして、差額ベッドもそのままだ、あるいは完全看護もそのままだ、無医地区に行ったら早く民間保険に入りなさい、農村なんかに医者はやりません。こういう不完全のままの医療行政が全部定着をしてしまうおそれがある。大変な問題がいま医療荒廃で起きているのでありまして、私は、こんなことは役人に言ったってわかりませんが、総理大臣、頼みと思うのはあなたお一人でございますが、ひとつこういう重大問題にも真剣に取り組んでいただきたいと思います。いかがでございますか。
  69. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 完全医療保障ということは、これはもとより終局の目標としてやっていかなければなりませんけれども、何せ、あなたが御指摘のように医療財政、これが火の車なんです。ですからこの方とうらはらの問題として考えなければならぬ問題です。とにかくお話しの点もごもっともですから、財政問題とあわせ、深く検討いたします。
  70. 小林進

    小林(進)委員 おっしゃるとおりです。私どもは大体医療保障を論ずるときに供給面からばかり論じた。あとは差別をなくせ、医者をもっとよこせ、看護婦もつけろ、完全看護もやれ、何だかんだとやりましたけれども、いまわれわれが与野党ともに一緒になってこの医療、社会保障を論ずるときには財政の面から入っていかなくちゃいかぬ。財政の面からこれを論じて、しかも公平にして均等にして完全なる医療保障をどう持ってくるか。スタートは財政からいかなくちゃならぬ。その面において、総理が財政を見ながらこの問題を処理していくということをおっしゃいましたので、私は非常に期待しておりますから、どうぞ……(「言い逃れのためじゃいけないぞ」と呼ぶ者あり)言い逃れごとじゃいけませんが、ひとつ前向きで、長期の展望に立って処理していただきたい。毎年毎年社会保険料の値上げで国会が振り回されるようなばかなことが二度と再び、あなたの在任中にでき上がらないような歯どめを加えてやっていただくことをお願いいたしたいのであります。  以上をもちまして私の質問を終わります。
  71. 坪川信三

    坪川委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  72. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂口力君。
  73. 坂口力

    坂口委員 五十一年度補正予算と景気問題からお伺いをしたいと思います。  この五十一年度の景気が中だるみ状態になってきたということは、昨年の後半からこれは明らかになっていたわけでありますけれども、私ども大蔵委員会等で大蔵大臣にいろいろこの点を聞いたことがありますが、これは前大平大蔵大臣のときでありますが、大平前大蔵大臣は、そうじゃなくて、これは中だるみではなくて、景気回復は一直線に行くわけではなくて、ジグザグと行くのだから、そのジグザグの一つのひだである、こういう答弁をなすっていたわけです。しかしながら、その景気回復のひだは余りにも大き過ぎた、なかなか上へ行かないということは次第に明らかになってきたわけでありますし、また政府が発表になっておりますいろいろの文書を見ましても、月例経済報告におきましては、十月までわが国経済は順調で底がたい回復過程を進んでおり、景気見通しの実質成長は達成できる、こう言っていたわけであります。十一月の日銀報告は、当面の景気回復テンポは弱過ぎるということを指摘いたしておりますし、また政府の発表いたしました昭和五十一年経済の回顧と課題におきましては、七月から九月までは輸出の鈍化、個人消費の伸び悩み、公共投資削減等によって景気回復のテンポは大きく鈍化し、稼働率は四ないし六月以降上昇がとまっていると報告し、各報告間にもかなりの誤差があるわけであります。  こういうふうな、政府いわゆる関係筋では、一方では景気は順調に回復をしているかのごとき言い方をし、また一方においては景気回復は大きくおくれている点を主張している。この大きなずれが内部にあったと思うわけです。国民の方は、そうしますとどれを信じていったらいいのかということがわからないわけでありますし、私は、こういう景気の動向に大きな関心を持っております中小企業の経営者その他は何を信じて方針を立てればいいかわからない、全くこれは迷惑な話だと思うわけであります。その責任は重大であると思いますが、いかがでございますか。
  74. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ただいま月例の経済報告を御引用になりましたけれども、二月の月例報告におきまして、私どもは次のように申し上げておるわけでございます。「最近の経済情勢をみると、一部で景気回復テンポに持直し気配がみられるものの、こうした動きがなお定着するにはいたつていないため景気は依然として緩慢な回復にとどまっている。」、こういう判断をいたしておるわけでございます。  もろもろの諸表を見てまいりますと、緩慢ながら回復の過程をたどっておることは事実でございます。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕 しかし、もう一息ということが企業においても個人消費においてもあることは事実でございます。また、雇用情勢の問題、企業倒産の問題、あるいは業種別、地域別について非常に苦しい状況のところがあることは十分認識いたしておるところでございます。
  75. 坂口力

    坂口委員 二月の段階ではかなりはっきりしてきているわけでありますが、私が申し上げておるのは、去年の後半、特に秋の段階においてすでに景気が中だるみであることがわかっていたけれども、それに対する認識が非常に少なくて、打つ手がおくれたということを申し上げているわけです。  時間がありませんから、次に、同じにお答えをいただきたいと思いますが、企業の倒産がこうして史上最高になり、あるいはまた完全失業者が百万を超えるという、こういう状態の中で、国民から見れば早くこの補正予算を出してほしいという声もかなり高かったわけでありますし、私どもも、少なくとも十二月当初において決定をすべきではないかということを言ってきたわけであります。まあ、こういう質問をいたしますと、選挙があったからというお答えが恐らく返ってくると思いますけれども、この時点に選挙を設定いたしましたのは自民党政府でありますし、また臨時国会がおくれたのは自民党内の内紛のためであったわけであります。  この景気回復からいきまして、私は総理にもう一つ念を押しておきたいわけでありますけれども、昨年の選挙の設定等も含めて、非常におくれたことに対して大きな責任があると思いますが、いかがでございますか。
  76. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 昨年の景気は、経済の動きとするとまずまず私は順調だった、こういうふうに思うのです。ただ、上半年に非常な高い成長をしたわけです。特に一-三、これが実質一三%、高度成長期にも見ないような大きな成長をした。そういうこともありまして、その後がそう活発な動きになっておらぬ、そういうところで景気停滞感、そして特にミクロで見た場合にいろいろ問題が起きてきておる、こういうことでございます。  そういう問題が起きましたのは世界経済の動きだ、こういうふうに私は見ておるのですが、同時に、財政特例法がおくれちゃったり、あるいは電電公社、国鉄なんかの値上げの問題、これがはかばかしくいかなかった、こういうような問題もあり、そういうことになりましたが、そういうことに十分対処し切れなかったということにつきましては、私ども責任を感じております。
  77. 坂口力

    坂口委員 総理は、電電等の法案がおくれたとか、あるいはまた財特法のおくれだとかいうことをお挙げになりますが、自民党の内部の問題というのは何らお触れにならないわけでありまして、これは非常に責任のある問題だと私は思います。あえて指摘をしておきたいと思います。  また総理は、初め予測した経済成長率の大体いいところに行くではないか、五・六ないし七にはいくではないか、こういうことをおっしゃりたいんだろうと思いますけれども、しかしこの五・六、五・七といいましても、このパーセントの中には、昨年の一月から三月までの三・三%というものを含めて五・六ないし七になるということでありまして、大きなげたばきになっているわけです。だから実質的にはそんなに成長は四月以降はしていないということになります。政府は毎年経済見通しなるものを発表になりますけれども、この経済見通しというものがいままで余り当てにならない。ただ単年のものではなしに何年か、四年ないし五年の中期でいろいろの計画をお出しになることがあります。たとえば、二十年ぐらいさかのぼりますと、鳩山内閣のときには経済自立五カ年計画というものを出されましたし、あるいは岸内閣のときには新長期経済計画というようなものを出された。これは大体五年間ぐらいな間隔で出しておる。これらを見ましても、ほとんど全部初めの計画とはずれて、またずれが非常に大きいわけでありまして、政府がかなりよく伸びますよと言うたときには伸びなかったり、伸びませんぞと言うと伸びている。これはもう逆を言った方が正しいというぐらい狂っているわけです。(「天気予報みたいだ」と呼ぶ者あり)天気予報はこのごろ少々よく当たりますけれども、天気予報以上に当たっていないわけであります。これは一部同じものがございますから、ごらんいただければ一目瞭然です。政府がお出しになったものでございます。  これらの計画というもの、あるいはまた年々お出しになります経済見通しと経済運営の基本的態度というのがございます。きょうは補正の審議でございますが、これは五十二年度のもの、一番新しいものもここにございます。この経済見通しというものを見せていただきますと、これは一体どういうことを言っているのかということがよくわからないわけです。たとえば、昭和五十二年度の経済運営の基本的態度というのがこの中にもございますけれども、その中にどういうことが書いてあるか、こう見ますと、たとえば一例を挙げますと、「安定した生活の確保と住みよい環境の形成を図っていくことが必要とされる。すなわち、昭和五十二年度の経済運営の第一の課題は、均衡のとれた需要の拡大を通じて景気の回復をさらに着実かつ持続的なものとし、雇用の安定を図ることである。」、これは当然のことであります。第二に「物価の安定化の傾向を一層確実なものにすることである。」、第三には「中長期的に我が国が抱えている諸問題の解決のために、引き続き、諸施策の展開を図ることである。」、こういう書き方で、この五十二年度の経済運営の基本的態度というものは一向にわからない。たとえば中小企業の項目では「中小企業の経営の安定化のための施策の推進、科学技術の振興、地域政策の推進等を図ることとする。」。たとえば、中小企業の経営者なら経営者がこの五十二年度の経済の見通しを見て、そして、なるほど日本はこういう行き方をことしするのだなということが果たしてこれでわかるかどうかということです。むしろどちらに転んでもいいようにできているとしか考えられない。これは悪く言えば、五十二年度を五十三年か四年にかえ、年度さえかえたら毎年通用するような書き方にできている。こういう経済の見通しというものを出される場合に、これは単なる経済の見通しということではなしに、言葉では経済運営という言葉がございますけれども、その年の見通しよりも経済運営の目標というものをよりはっきりとさせてもらわねばならない。こういう経済運営でことしは行きますよ、それによってこれだけの成長率になると思いますという、その途中の経済運営の目標というものが全くあいまいだと私は思うのです。これは総理及び経企庁長官にお願いをしたいと思いますが、これからの経済見通しというものについては、もう少し経済運営の目標というそこに論点を置いたものを出してもらいたいと思うし、そしてまた、こういう抽象的なものではなしに、もう少しわかりやすい、国民が見てわかる内容にしてもらいたい。いまのこれでは一向にどうも理解ができない。  最後に「上記各般の政策努力を行うことにより、昭和五十二年度の我が国経済は、実質成長率で六・七%前後の拡大を達成することができるものと考える。」と書いてありますけれども、先ほど言ったような抽象的なことを並べて最後にこう書かれたって、どういう政策目標で行かれるのか一向にわからない。もう少しこの辺のところを今後改めるように私はお願いするわけであります。いかがでございます。
  78. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいま二つの点についてお話があったと思います。  第一の点は、経済見通しと実績の乖離の問題でございます。この点は、御承知のとおり石油ショックの後の四十八年の当初見通しの一〇・七に対して実績が六・四、四十九年は二・五に対してマイナス〇・三と非常に思いがけない石油ショックということによって見通しが狂ったことは事実でございます。しかし五十年以降の問題については、五十年の四・三に対して三・四、それから五十一年は五・六。中の需要項目は、いろいろと輸出が思いがけなく約五十億ドルぐらい当初の見通しよりも伸びておりますから、この輸出ということが大きな要素の一つになりましたけれども、しかし成長としては五・七%程度の実質成長を遂げることができる。したがって、年度中の上昇は確かになだらかなものでございますけれども、高い水準で一挙に上がりましてそれから高い水準でずっと続いておるということは御理解いただきたいわけであります。五・七%程度の成長を、五・六%の見通しに対しておさめたということは御理解いただきたいと思うのでございます。  それからもう一つの経済見通しの点でございますけれども、確かにいろいろ文章について、もう少し一般国民の方が読んでもよくわかるように、なるほどと理解できるような書き方をしていったらどうかという御提案は、私も実はそう考えております。しかし中身については、これは眼光紙背に徹してよく読んでいただけば、かなりわれわれの意図をこの中に盛り込んでおるわけでございまして、決していいかげんに書いておるものではございません。したがって、基本的な態度にいたしましても、この中の分析の中で、わが国の経済が石油危機後三カ年にわたって調整過程を経てまいりまして、先進国の中ではわりあいうまくいっているという認識のもとで、まだ夏以降の、先ほど総理が申されましたように、景気回復のテンポが非常に緩慢である、雇用面がおくれておる、企業倒産が高水準である、そういう厳格な認識に立ちまして、これからどういうことをやっていくかということで、物価の安定と景気の回復ということと、同時にこの路線を五十年の前期経済計画に乗せていくという意欲に満ちておるわけでございます。特にこの中でも、財政面においても、財政健全化の方針に即しながらも、需要創出効果が大きく国民生活の充実と経済社会の基盤に役立つ公共事業等に重点を置くということで、この基本政策、われわれがここに掲げました経済運営の基本的態度に基づいて昭和五十二年度の予算は編成いたしておるわけでございます。細かくお読みいただけばこれはかなり意欲的な中身を持ったものである。しかし、この表現等についてまだ改むべき点があるじゃないかという点については、私もそう思っておりますから、今後努力をしてまいりたいと思っております。
  79. 坂口力

    坂口委員 これだけ抽象的な書き方をいたしますと、それはもうほとんどのものが入ってまいります。だから、もう少し親切に、そして具体的な表現の仕方で、そして政策運営をどうするかということに力点を置いたものをつくってもらいたいと思うし、そして、もしもそれに余り大きな誤りがあるならばその責任の所在を明らかにしてもらいたい。何ぼ違っても、ああ違いましたでは、これは通用しない問題でありまして、もう少しこの経済の見通しとそしてその運営の目標というものを明らかにして、それに大きな間違いがあるならばその責任体制をはっきりする、この点をひとつ明確にしてもらいたいということを一言総理大臣にお伺いをして、次の問題に移っていきたいと思います。
  80. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 なるべく国民にはっきりわかるような書類の作成をしなければならぬと思うのです。しかし、予算を見ましても、予算編成方針といえば二枚か三枚の紙で、大きな考え方はそれを見ればわかるのだけれども、具体的にそれではその考え方をどうやって実現するんだと言えば、こんな厚い予算書になっちゃうわけですからね。なるべくわかりやすい書類にするということにつきましては努力をいたしまするし、また見通しと実績が違う、そういう際におきましては、どこがどうやって違ったんだ、政府の施策で違ったという面につきましては、これはもう責任をもって反省し、またそういうことがないように気をつけていかなければならぬ、かように考えます。
  81. 坂口力

    坂口委員 景気が中だるみで上昇しない理由にはいろいろあると思いますが、その大きな理由に、民間設備投資の停滞あるいはまた国民の消費性向の問題等がございます。また、これらが起こっているその原因につきましてもいろいろあると思うわけでありますけれども、その中でも私はこう思うわけであります。総理もおっしゃいましたとおり、資源有限時代というこの問題を真剣に考えなければならない時代に来ていると思います。また、総理はおっしゃいませんでしたけれども、もう一つ人口倍増時代という、この三十年の間に世界人口は四十億から八十億になっていくという、この二つの足かせの大きな問題があると思いますけれども、こういった中で、資源はない、財源はない、あるいは仕事はない、こういう政治のなんとなく手詰まり型にならざるを得ない、少なくとも国民はその手詰まりを感じざるを得ない状態だと思うわけであります。国民が自分たちの周辺を見て、道路一つのできぐあいにしても遅々として進まない、あるいはまた毎日の新聞やテレビを見てもなかなか明るいニュースというのは出てこない。こういった中で、いわゆる人間の持ちます防御反応と申しますか、熱いものにさわったときに手を引っ込めるのと同じように、国民はこういう状態の中でやはり貯蓄をして自衛に努めなければならない、あるいはまた民間設備投資を控えようじゃないかという、これは一つの防御反応としてあらわれているとも私は思うわけであります。  こういった中で、政治がこれから行うことのできるのは、これからどんどんといままでの高度経済成長のようなことはできないわけでありますから、いまあります社会の構造、仕組みをいかに変えていくかという、この改善方の政策を示したときに、初めて国民は明るさを取り戻すのではないかと思うわけであります。このことについては、総理も全閣僚の皆さん方も異論はないと私は思います。  こういう前提の中で考えてまいりますと、ここに社会保障という問題に突き当たってまいります。午前中も若干御議論があったようでございますが、年金を見ましても、医療を見ましても、これはその一つ一つ、八つにも九つにも分かれている。そして、それはそれらの混合として現在、存在をしている。その年金なら年金を取り上げてみましても、それは過去において一つの企業のいわゆる相互扶助的な点から、あるいはまた一つの職種のお互いの助け合い的なところから発生をした。その段階にとどまったままで今日を迎えているものも中にはあるわけであります。これをこの近代的な国家の中でもう一遍考え直さなければならないということは、これはもう言われてから久しいわけであります。いささか遅きにも失しているわけでありますけれども、これが依然としてそのまま今日まで続いてきているわけであります。一人では生きられないという時代から、一国では生きられないという時代に大きく変わってきている今日でありますから、早くこのことについて政治は基本的な態度を明確にしていく必要があるし、その責任があると考えるわけであります。  三木前総理のときにライフサイクル計画というものが出されまして、その中で福祉の問題も一部触れられましたけれども、余りにも部分的で、私は未熟であったと考える一人であります。こういう現状の中で各種存在いたします年金あるいは医療保険、こういったものを含めたもう少し広い意味で、いままでの行きがかりにとらわれることなく、新しい理念のもとに新しい生存の秩序を求めて社会保障体系というものをつくり上げていかなければならないと思うわけでありますが、まことに遅きに失した感はありますけれども総理大臣はこれらの問題をどのようにとらえ、そして今後この社会保障体系というものをどう位置づけようとしておみえになるか、この辺のお話を伺いたい。
  82. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、いま坂口さんがおっしゃった基本的な考え方については全く同じなんです。つまり、これからわが国が歩む道というものは細くかつ厳しい。高度成長といういままでの路線から安定成長という路線へ転換していかなければならない。それは安定成長でも高度成長でも成長は成長なんですが、量的な成長はできないし、そういうことをまた追求してはならぬ。成長は同じ成長でありましても質の問題ですね。各界各層が均衡のとれた社会を実現する、そのための手段としての成長という考え方をとらなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。そういうことから言いますと、福祉の問題、これは非常に重要な問題にこれからいよいよなっていく、こういうふうに考えております。  福祉と言いましても、私は社会保障のことばかりを言っておるのじゃないのです。生活環境の問題もある、あるいは教育の問題もある。そういうわれわれの生活周辺をめぐるすべての問題を含めてこれを総合的にどうやって実現していくか、こういうことを考えなければならぬ。その福祉政策、これは進めば進むほど一面においてはようございますけれども、しかし同時に、他面それを賄う体制ですね、福祉財政、その面を十分考えなければならぬ。そういうことになりますと、これを一挙に大幅にということはできませんけれども、粘り強くその方向を実現していく、こういう歩みを歩み続けなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  83. 坂口力

    坂口委員 こう考えるべきだと思うというようなお話ではなしに、いまこそ行動を起こさなければならないときでありまして、もう試行を重ねているときではないと思うわけです。私は、総理が、この新しい生存の秩序を求めてその行動を起こされる用意があるかどうか、どういう計画をお持ちかということを、大ざっぱなことをお聞きします。細かいことまで言っていただく必要はありません。その辺のところをお聞きしておるわけです。
  84. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 行動を起こしておるかおらぬかと言えば、もう五十二年度の予算でもごらんのとおり、福祉その他われわれの生活周辺の問題に非常に意を用いておるわけです。公共事業、これはずいぶん今度は盛り込みますが、これも従来の産業中心ということから生活関連中心、こういうふうに動いておりまするし、それから社会保障の問題につきましても長期展望を早く固めたい、そういう中でそれに至る過程の問題を片づけたい、こういうふうに考えて、その構想は逐一申し述べておるとおりでございます。
  85. 坂口力

    坂口委員 では、若干細かな具体的な問題に入る中でまた御答弁をいただきたいと思います。  公明党は「福祉社会トータルプラン」というものを発表いたしましたが、その中で年金について申し上げますれば、国民基本年金制度というものを発表いたしました。これは、現在の被用者年金における期待権あるいは既得権というものを尊重しつつ、これらはいわゆる所得比例年金等として存続させるということをとりながら整理統合をしていこうという考え方でございます。私どもはこれを二階建て年金というふうに呼んでおりますが、とにかく、いままでありますこの各年金の共通部分は確保しながら、いままでの既得権をそれに上乗せをしようという考え方でこれを私たちはつくり上げている。田中前厚生大臣のときに、私的諮問機関として年金制度基本構想懇談会というものを設置されましたし、また三木前総理のライフサイクル計画の中にも、この統合化の計画が中に織り込まれております。現在厚生省におきましてはこれをどのように進めておみえになるか、お伺いしたいと思います。
  86. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 お答えをいたします。  年金問題も各様各般にわたっておりますし、いろいろ内容が違います。いま総理からお答えになりましたように、時代もうんと変わっておる、財政事情も異なっておる。そういうようなときに当たりまして、やはりこれは見直しをしなければならないというような点から、田中前厚生大臣のときに年金に関する基本構想の懇談会というものをこしらえまして、そこで専門家が集まっていま検討をいたしております。一年ぐらい検討すれば大体大まかな方向が出るのではないか、こういうように考えております。
  87. 坂口力

    坂口委員 現在その懇談会においていろいろおやりになっていることは私も承知いたしておりますが、しかし、その懇談会の結果は別にして、厚生大臣として現在この年金問題をどのようにお考えになっているか、そこをお聞きをしたいわけです。
  88. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 専門家が集まって目下検討をしておるところでございますので、私が一方的にこういう考えですと言ってしまうのなら、専門家の意見を聞くことはないわけです。確かに年金問題でいろいろな問題が出ていることは、あなたの御指摘のとおりでございます。したがって、それについては、行き詰まってしまうようなことがあっては困るわけです。まあ開始時期も違うし、あるいは額も違うし、条件などもみんないろいろまちまち、たくさんに分かれておって、違います。したがって、そういうようなものなどについてどういうことが一番いいのかということで、目下検討をしてもらっておるということであります。
  89. 坂口力

    坂口委員 検討してもらっておるのはよくわかるわけでありまして、私は、厚生大臣が現在どうお考えになっているかをお聞きをしておるわけです。  国民年金だけを見ましても、昭和五十一年には三百四十万人が、五十五年になりますと五百二十一万人というふうに受給者がふえてまいります。また厚生年金の方を見ましても、昭和五十一年は百万、これは通算の人を入れましても百三十万、これが昭和五十六年、五年後になりますと百八十万、通算の人を入れますと二百八十万というふうにふえてまいります。六十年になりますと、通算の人を含めますと四百万というふうにふえてくるわけであります。五年くらい後になってしまいますと、これだけ受給者がふえた段階になりますと、現在の体制を整理統合しようと思いましても、これはできっこない。どうしてもこの二、三年のうちに、少なくとも早く決着をつけなければならないと私は思うわけです。これは厚生省、事務当局でも構いませんが、五十五年までほっといていいかどうか、ひとつお答えいただきたい。簡単に。
  90. 木暮保成

    ○木暮政府委員 お答えいたします。  国民年金の場合には、ここに来まして先生のおっしゃるように受給者は非常にふえてまいっておりまして、去年の国会でもって、来年の四月一日の保険料を二千五百円というふうに決めていただいておりますが、五十四年以降はそれでは収支が整わないという見込みでございますので、いい案をこしらえまして御提案申し上げなければならない、こういうふうに考えております。
  91. 坂口力

    坂口委員 とにかく、表現の仕方は違いますけれども、もうほっておけぬということでしょう、いまのままで。もう四年も五年もほっておくことはできぬということでしょう。そういう段階に来ているにもかかわらず、厚生省としてのいままでの考え方は、いまのところ懇談会でいろいろやってもらっておりますから、厚生省としてはありませんとは言えないわけでありまして、何をしておるかということになります。厚生省の中で最も大きな目玉の一つの年金であります。それをもう四年も五年も待てないという状態になってきておるにもかかわらず、いま厚生省として考え方はございません、今回の結果が出ましたらそれに全部従います。それだったら、私は厚生省は何も要らないと思うのです。その辺のところを私は先ほどから大臣にお聞きをしているわけであります。  それじゃもう少し突っ込んでお聞きしますが、以前厚生省の中には基礎年金構想というのがございましたね。これは田中前厚生大臣のときにもおっしゃったことでありまして、ございました。この考え方はいま生きているのですか、死んでいるのですか、どうです。
  92. 木暮保成

    ○木暮政府委員 年金問題は、現在の段階になりますと、各制度を横断的に見まして検討して、次の改革をするというような段階に来ているわけでございます。各制度を横断的に見ます場合に、基礎年金構想というのは一つのプランとして出ておるわけでございますが、そのプランも含めまして年金制度の長期構想懇談会で御検討いただいておるということでございます。
  93. 坂口力

    坂口委員 そういうことを聞いているのじゃなしに、基礎年金構想というのは、まだ厚生省としてはその案をいまも温めておみえになるのかどうか、その考え方を現在もなおかつ持ち続けておみえになるのかどうかということを聞いているわけです。
  94. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ただいまも申し上げましたように、年金制度の今後の改革の一つの構想として有力な構想であるわけでございますが、各制度を横断的に物事を考えなければならないわけでございますので、専門家の先生方にお集まりいただきまして、その点も含めまして御検討をいただいているわけでございます。
  95. 坂口力

    坂口委員 全く人任せで、自分の方で積極的な考え方をお持ちにならない。これだけは、もう少し縮めて議論をしたいと思いますけれども、これだけは私は厚生大臣に伺っておきたい。  私どもがこの福祉社会トータルプランでも示しました国民基本年金制度というものと、それから、現在厚生省にありますところの基確年金構想というものとは、とにかく、いままで八種類なら八種類の年金があるけれども、その中で基礎年金として一律のものを設けて、その上にそれぞれの違った分をいままでの既得権を失わないように継ぎ足していきましょう、この考え方では私これは一致しておると思うのです。  そこで、私は厚生大臣にお聞きしたいのは、とにかく、現在あります年金がばらばらの状態ではいかんともしがたい、これをどうしても統合の方向に持っていかなければならぬということだけはお考えになっているのかどうか、お聞きしておきます。
  96. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 年金の問題は、莫大な金のかかる話なんです。したがいまして、厚生省としてこういうふうにやるのだということをいま断定的には言えない。そのために、公明党で出しておる案なども貴重な参考として、やはり検討の対象に、検討といいますか、参考に見せていただいておるわけです。ですから、いつまでもだらだらやっていくのか。だらだらやっておりません。ことしの秋ごろまでには方向は出したい。しかし、年金の改正というものはそれから準備が必要ですから、秋に仮に出したとしても二年か三年かかかるでしょう。決してだらだらやっておるわけではございません。
  97. 坂口力

    坂口委員 それじゃ、厚生大臣、ことしの秋までにそのおよその結論を出すということをおっしゃいましたが、それを現実に実施するまでに、おっしゃいますように期間はかかると思います。しかし、それじゃ今年度じゅうにあらあらの構想はおまとめになりますか。そして、そこで少なくとも先がた申しました最も大きな大枠であります現在の年金を統合整理しようという方向でまとめるのか、そうでないのか。その辺も懇談会任せで私は知りませんとおっしゃるのか。それくらいなことだけは厚生省としては持っておりますよとおっしゃるのか。それが一つ。  それから、時間がありませんからもう一つ一緒に御答弁いただきたいと思いますが、私たちはここでこれを統合する案を示しましたけれども、その中で少なくとも、これはいろいろ考え方はありますが、国庫負担というものを導入しなければどうしてもやっていけないということです。そういう案を私どもは示しておりますが、その国庫負担の額の多い少ない、それはいろいろありましょう。しかし、国庫負担の導入をやらざるを得ないということだけは確認をしておみえになるかどうか。整理統合という問題と国庫負担の導入というものはどうしてもやらねばならない。そのパーセントは別であります。この二つだけは覚悟を決めてそして懇談会の設置に踏み切っておみえになるかどうか、それをお聞きをしたい。(「大臣の本当の腹を」と呼ぶ者あり)
  98. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 本当の腹を申し上げます。本当の腹を申し上げますが、たとえて申し上げますと、老人の福祉年金にいたしましても、仮に千円上げるということになると、福祉年金の場合は六百億円かかる。まして二万円にするというような話になりますと、それはもうその五倍かかるわけですから、それだけでも三千億必要だ。莫大な金の要る話なんですね。一方、先ほど総理からお話のあったように、ともかく経済問題というのはいままでのような高度成長経済というようなわけには考えられない。そうすると、一方では給付をよくしろ。それじゃ掛金を、いま二千二百円のものをどんどん上げていくのか。これは余り上げたくない。どこらまで上げられるのかという問題が出てくるわけですから、財政の問題、負担の問題とみんな絡んでいるわけですよ。したがって、それは高福祉、高負担にするのだ。たとえば国民の所得に対する租税の負担割合あるいは保険料を含めた負担割合を見ても、日本はともかく二三%、ドイツは四八・五、フランスは四八、イギリスでも四二、こういうふうに、それはヨーロッパの国のように租税と保険料の負担割合を日本の倍みたくするのか、それともしないでやるのか、いろいろ絡んでいる問題がございますので、それはどれだけ負担するのだ、幾ら持つのだ、こう言われましても、なかなかここで幾ら持つということまでまだ固まっておらないわけです。いずれにしても、政府は、持つものは、これはできるだけのものは持つということですから、財政の見通しや租税負担のあり方、保険料の負担のあり方等も絡めて、それでともかく長期的に検討をいたしております。こういうことでございます。
  99. 坂口力

    坂口委員 私が申し上げておりますのは、そこまで細かなどれだけ持つとか持たぬとかというようなところまではここで御答弁をいただこうとは思いません。懇談会にそれをお任せになっていることもよくわかりました。しかし、懇談会に任せてあるからと言うて、厚生省自身が、厚生大臣自身があらあらこういうふうな方向でいきたいというふうなものも何もなしに、懇談会任せということではぐあいが悪いですぞ。そして、そんな細かなことを言っているのではなしに、全く大まかなこととして、その大まかなことの一つとして、少なくとも、現在は厚生年金、国民年金いろいろ分かれている。そして中には、農業や漁業に携わりあるいは自由業に携わる人の中には、どうしても国民年金の低い額でしかいかんともしがたい人もあるわけです。だから、これはどういうふうな職種の人であろうと、それを同じように将来まとめていく、そしてできるだけ不公平を少なくしていくためには統合整理をする以外にはないと思うわけです。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕 その方向すらもわからずに、とにかく初めから何でもかんでも一遍考えてくださいでは、政治家としてあるいは政府として、これは無責任きわまるということを私は申し上げているわけであります。少なくともその辺だけの、そしてそこに国庫補助をどれだけ出さなければならないかというその額は別だけれども、しかし少なくとも多少出さにやならぬという覚悟だけは決めてやっておりますかということを聞いているわけです。簡潔にひとつ、時間がなくなりましたから。
  100. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは皆さんの意見を聞いて厚生省がもちろん決めるんですよ。厚生省、厚生大臣が方角を決めるときは、皆さんに任せっ放しで言うのではなくて、いろいろ変わった意見がみんなあるんですから、みんな同じことを言っているのではなくて、いろいろの違った意見を言っておるのであって、その中から日本の国情に合うもの、これがいいというものを決めていきたい。したがって、基礎年金の共通部分等についてはできるだけ統合できるものがあれば統合というか、あるいはアンバランスなものをバランスとらせるようにしていくか、どっちかも含めてそれはできるだけアンバランスでないようにしたい、これだけははっきり申し上げます。
  101. 坂口力

    坂口委員 総理大臣、いまお聞きいただいたように、年金議論の一つでございますが、ことほどさようにいろいろ複雑な問題もあり、しかもまた、それを取り込まねばならない担当省の取り組みもおくれているわけであります。しかし、先ほど事務当局がお述べになりましたように、これも四年も五年もしてしまったらいかんともしがたくなるわけであります。少なくとも、もういま遅きに失しておりますけれども、譲り譲ってもこの二、三年のうちにはどうしても決着を早くつけて、そうして新しい体制をつくらなければならないわけです。にもかかわらず、懇談会にお願いしてありますのでその結論を待って、そんな悠長なことを言っておれない段階であることは、全部これは厚生省も御存じのはずなんです。だけれども、いままでのあり方というものの過去の歴史等に携わるいろいろありますから、それにとらわれてなかなか決断ができない、こういう段階に来ている。ここは大きな政治力がこの際に私は必要だと思う、これを乗り越えていくだけの。そのために、ひとつ大臣の決意をお聞かせをいただいて、そして次の問題に移りたいと思います。
  102. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 確かに年金問題は放置できないです。特に国民年金、これは給付をあのままにして塩づけにするわけにいきませんから。さらばといって財源を一体どうするんだ。この負担と制度充実との相関関係、これはよほど国民の御理解を得ないと実現できない問題じゃないか。皆さんのトータルプランでも、負担がふえざるを得ない、こういうような見通しをつけておるようでありますが、さあ負担がふえるということになると、これはまた国民的に大きな問題で、そう簡単にはいかないです。そこで、各界各層の意見を結集して、そしてどういうふうにしたらいいのだろうか。負担がふえることを拒否するというならば、これはどうしたって給付の方の伸びをそれだけ抑制しなければならぬ、そういうことになりまするから、これはよほど国民の皆さんの御理解を得ないと、この問題はできない。そこで、厚生省の方では懇談会を設けて、そして十分意見を出してもらって、そして練りに練った構想を固めよう、こうしておるので、これは五十三年中を目標といたしましてそういう新しい構想を出したい。こういうふうに考え、鋭意努力したい、かように考えます。
  103. 坂口力

    坂口委員 もう少し詰めたいところでありますが、時間、一時間以内でございますのでやむを得ません。五十三年中というのは非常に遅いわけでありますけれども、これ以上断じておくらせない、この間にはっきりとした態度をひとつ示していただきたいと思います。  もう一つ、本当は老齢福祉年金についても言いたかったわけです。これは前の田中厚生大臣が五十年度に二万円にするとこの予算委員会でおっしゃった。それが五十二年になってもいまだにできていないわけであります。これは厚生省だけでなくて大蔵省もかかわりのあります問題で、これは大蔵省にも言わなければならない問題でありますけれども、金がない、どうしても出せないというのならば、資金運用部資金でお借りをしてはどうですかという提案を前回五十年の二月のこの予算委員会で大橋議員がしているわけです。しかし、それは制度上むずかしいと言うてお逃げになった。ところが、それから二年の間に国債はどんどん発行されるような形にされますし、また資金運用部資金から一兆円国債で借り出すということもことしはおやりになる。あのときはできないとお投げになったのに、いまは別のことではちゃんとなすっている。一体、やる気がおありになるのかどうかということをもう一つ私は言いたかったわけです。時間がございませんのでこれはもうやりませんけれども、ここで私が言いたかったのは、二万円なら二万円のものを出すのに、どうしてもいま出せない。ことしの予算でいきますと、ことしの老齢福祉年金のシェアは二・七%であります。この二・七%ぐらいのシェアがこれから数年間続くということを覚悟してもらうのなら、一時どこかから借り入れをしてでもそれでも二万円年金はできるじゃないか、それに対してお返しをする方法がありますよ、ということをお手元にプリントとして私はお渡しをしているわけです。三年間、二・七%のシェアをこのまま現在の一万五千円のままでいきますと、五十六年までは二・七%ぐらいのシェアでいかなければならぬ。ところが、一時借り入れをして二万円にして、そうして伸ばしていきますと、それを返すのは五十八年で返しますから、五十九年まで三年間余分に二・七%のシェアを後へ伸ばさなければならない。私はその一つの試算をして、そして償還計画――政府の方は国債でもなかなか償還計画をお出しになりませんけれども、償還計画をつけていまここにお示しした。何かございましたら一言……。一言だけで結構です。
  104. 坊秀男

    ○坊国務大臣 老齢福祉年金をふやすに当たりまして、資金運用部から金を出したらどうか、こういう御意見でございますが、御承知のとおり、資金運用部の資金というものは、これは郵便貯金等国民の預金、積み立てを集めたものでございまして、資金運用部の資金を運用するに当たりまして常に前提として考えますことは、この償還ができるお金ということ。福祉年金の場合には、これは全くそれに使ってしまうお金でございまして、そこで、これに対してストレートに資金運用部のお金を持っていくということにつきましては、これは慎重に考えなければ、いままでも資金運用部のお金というものはそういうところへ……(坂口委員「そういう提案があったということで、私が資金運用部と言っているのではない」と呼ぶ)そういうことでございますので、そのことにつきましてはにわかに同意いたしかねます。
  105. 坂口力

    坂口委員 残念ながらこの議論をしておる暇はございません。  そこで環境庁長官、ひとつお願いをしたいと思いますが、地盤沈下の問題でございますけれども、前々国会ぐらいからこの法案を出す出すと言いながら、これも出さずに今日まで参りました。環境庁のお調べによりましても、全国では五十カ所に上る地盤沈下のところがございますし、そしてゼロメートル地帯というのは十四地域ございます。東京あるいは千葉、大阪湾、伊勢湾というふうにある。塩水化の起こっておりますところも三十二地域に及んでおります。この地域に住む住民は、一刻も早く地盤沈下法を制定して、そして安心して暮らせるようにしてほしい、こう望んでおるわけでございますが、今国会提出になりますかどうか、あわせて御答弁いただきたいと思います。
  106. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 お答えいたします。  坂口さんの御出身のあたりにもゼロメートル地帯がたくさんおありになって御心配と思いますが、環境庁といたしましては、地盤沈下の防止はあくまでも新規の法律をもってすべきだと思います。  なぜならば、従来、対策に用いておりました工業用水法やあるいはビルのための地下水に対する規制の法律等は、あくまでも起こってしまった地盤沈下に対処するだけでございまして、同時に、非常にたくさん使います農業用水や上水道用の水道を規制することができません。ですから、あくまでも新規の立法をするつもりでおりますけれども、一方、工業用水の獲得等々関係省庁にもいろいろな意見がございますが、ようやく煮詰まってまいりましたので、とにかく今国会提出するように、今後、短い期間でございますけれども、積極的に努力をいたします。
  107. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつ、中身にもよりますけれども提出をいただいて、そしていいものをひとつ見せていただきたいと思うわけであります。  通産省にお聞きしたいと思いますが、時間がございませんので……。  建設省の方は地下水法案というものでいくんだということをいままでおっしゃったこともあるわけですけれども、現在どういうふうにお考えになっているのかということと、それから、地盤沈下地帯のたとえば海岸線の堤防等を上げる工事等もやっているわけでありますけれども、どこへ行きましてももう遅々として進まない。ですから、一キロぐらいの海岸線のところでも、年々百メートルぐらいしかいかない。だから、向こうの端までいきましたら、初めやったところはまたもとのところまで下がってしまっているというところがあるわけでありまして、伊勢湾台風のあの大きな台風が参りましたような、ああいうふうな台風が来ないからいいようなものの、あれと同じものが来れば、あの後でかさ上げしたものが全部もう下がってしまっておるわけでありますから、ぜひ建設省の方も、余り自分の方の我ばかり張らずに、ひとつ住民本位に考えて、法案の成立に協力をしてもらわなければならないし、そして積極的にこの海岸線沿いの堤防等の建設等についてもおやりをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  108. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 地盤沈下は、代表的に言えば東京、大阪、三重、ここらが多いわけでございますが、ほかに数たくさんあることも御指摘のとおりでございます。これらに対しましては、たとえばいまお話しになりましたようなこれに対する洪水、高潮の用意だとか、さらに堤防のかさ上げ、そして排水ポンプ、こういうようなものについては十分にやっているつもりでございますけれども、特に五十一年度には予算の三二%増をして三百十八億をかけてこれに万全を期そうというようにやっておるところでございます。したがいまして、これに対してはできる限りのことをして、不安のないような措置をとっているということは、これを見てもわかっていただけるだろう、なお一層その点につきましては努力をいたす覚悟でございます。  さらに、ただいまの法案につきましては、もちろん法案はそうでありますけれども、私の方の考え方もこの中にもあるわけでございまして、これらをあわせまして、もってよりよい法案をつくるということが妥当だろう、このように考えておる次第でございます。
  109. 坂口力

    坂口委員 じゃひとつよろしくお願いをしたいと思います。  最後に、もう一度厚生省に戻りまして、スモンの問題につきましてひとつお聞きをしたいと思います。  去る一月の十七日に最大規模の薬害裁判とも言うべきスモン裁判につきまして、東京地方裁判所可部裁判長より和解案の提示がなされたことは、政府も御承知のとおりでございます。政府はこの和解案を受けるかどうかについて態度決定を迫られております。裁判長は、和解案提示に当たっての所見の中で、国がキノホルムの安全性及び有効性についてしかるべき確認をすることを怠ったと指摘した後、「スモンの原因がキノホルムであるとするかぎり、この悲惨な疾病はまさしく社会的に作られた病というべきであり、右の前提に立つ以上、まず第一に解決の責めを負うべきものが製薬会社であるとしても、国もまた、その職責上、かかる空前の被害の収拾解決に全力を傾注するのを当然とすべく、」「製薬会社と共同して、患者救済の責めに任ずべきものといわなければならない。」、こう述べておるのです。私は全くこのとおりであると考える者の一人でございます。  御承知のように、昭和三十年代に発生したこの悲惨な疾病に苦しむ方々は一万人以上に上ると言われておりまして、患者の皆さん方は根本的治療法のないまま長きにわたって想像を絶する苦痛にさいなまれてきたことは御承知のとおりでございます。長い闘病生活のうちに老いていき、中には死亡された方々もたくさんございます。すべての患者さんは一日も早い救済を待ち望んでおるのであります。  そこで政府は、裁判に加わった方及び加わらない方も含め、これらの患者の方々をどのように救済していくのか、態度決定を迫られている和解案に対する政府の態度というものも含めて、福田総理あるいは渡辺厚生大臣の所見を承りたいと思います。
  110. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これはきわめてむずかしい問題を含んでおります。したがいまして、国といたしましてはまだこれに対してどうするということは決まっておりません。しかしながら、患者の救済ということは、これは最優先的にやらなければならぬというようなことで、難病等に指定を受けられるもの等についてはそれぞれ治療費を無料にする、その他のことで個別の問題についてはやっておるわけであります。
  111. 坂口力

    坂口委員 もう一問だけお願いしたいと思いますが、先般私の方の代表が厚生大臣にお目にかかりましたときには、二月上旬に政府の見解をまとめるということをお答えになっているわけであります。お聞きするところによりますと、二十一日に予定をされておりました裁判所の公判に、一カ月の延期を申し出られたということでございますが、その申し出られた理由、そしてまた、この和解案の中には薬事法の改正を主張しておりますが、これにどう対処されるのか、それもあわせてお答えをいただきたいと思います。  その後、最後に総理大臣からは、このスモンに対する問題と、それから先方の地盤沈下、これは法案が各省庁にまたがっておりまして、なかなか難航をいままでしてまいりました。ひとつ決断をもってこの法案を出すという決意を、後で一番最後にお伺いをして、最後にしたいと思います。
  112. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 和解の勧告が出されておりますが、その内容を実はしさいに検討いたしたわけであります。もちろんこれは法律的にも法務省といろいろ協議をしておるわけであります。ところが御承知のとおり、勧告の内容というものは、いまあなたがお述べになったように、これがスモンに原因するということである限りというようなことをおっしゃっておったり、あるいは国の責任については言っておるんでございますが、製薬会社の責任については触れていない、どういうふうな国だけで責任を持つのか、ともかくこれは製薬会社の問題も当然出てくるはずでございましょうが、それらについても明らかな見解が表明されておらない。それからまたいろいろな事情もございます。法制上の問題等もいろいろございますし、現に和解派もあれば訴訟派もある、それで和解の問題がうまく果たしていくのかどうか、一方において一部の者と和解しても、大部分の者と訴訟するのかどうか、そういうようなことなどについてさらに詰めなければならない問題がございますものですから、国といたしましてはまだ結論が出ておらないということであります。(坂口委員「結論はいつまでに出されますか」と呼ぶ)それはもう少し裁判所の内容等についても聞いてみなければわからない、こう思っております。
  113. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 地盤沈下の問題は重要な問題でありますので、鋭意検討いたしまして、今国会に何とかして法律案の御審議が願えるようにしたいと思って、いま考えておるところでございます。  スモンにつきましては、厚生大臣からお答えしたとおりでございます。
  114. 坪川信三

    坪川委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、村山喜一君。
  115. 村山喜一

    村山(喜)委員 私はまず、福田総理、あなたにお尋ねをいたしたいのですが、五十一年度の一般会計の予算編成に当たりましては、総合予算主義という形の中で、年間途中で補正はやらないんだ、こういうたてまえの中で出発をしたことは御承知のとおりであります。そのために公共事業の予備費等というものまで新たに設定をして、いろいろ論議を取り交わされた経過があります。その中でどうにもならないようになってきて、九月以降の景気の回復のテンポが非常におくれてきた。そういう中から十一月の十二日に経済対策閣僚会議が開かれて、七項目の対策を立てられたわけであります。  ところが、その効果がどういうようなものであったのか、このこともまだお伺いをしなければならないと思いますが、十二月の五日に総選挙がございまして、十二月の二十一日には補正予算の方針と概要を閣議で了解をして、その二十四日に臨時国会福田総理が指名をされたわけでございます。一月の五日に概算の閣議決定が行われて、二月の五日になりましてから国会提出をされた。本日から補正予算の審議が開始をされ、順調にいって二十二日にならなければこれは参議院を通過しない、こういう日程でございます。  初め、景気浮揚のための今年度の公共投資を中心にする一般会計予算編成の方針というものがある中で、これは十二カ月予算ではない、十四カ月予算だ、こういうふうに言われてもおりましたが、事実問題としては十三カ月予算プラス一週間程度のものしかございません。こういう状態の中で補正予算を提出をされなければならない状況に立ち至った。  私はもう少し、出すのであるならば、われわれが昨年、補正予算は景気が落ち込んでいる方向が確認をされる、そういう見通しがついたときには、やはり総合予算主義というからの中に閉じこもっていないで、補正予算を早急に出すべきであるという主張をいたしてきたわけであります。ところが、いやその必要性はないということで今日まで遅延をされた。そしてもうわずかに一カ月と一週間しかない。そういうような状態の中で補正予算を出さなければならない。じゃその効果は一体何を期待をするのかということから、問題を国民の前に明らかにしなければならないと思うのですが、その総合予算主義から――そのときには福田総理は副総理として三木内閣の一員であったわけです。今度そういう形の中で総理に指名を福田さんがされまして、こういう形で補正予算を出されるわけですが、出すのであればもう少し早目に出すべきであったというお考えはありませんか。また、その内容によって、これはどうしても緊急な問題であるから措置をしなければならない。とするならば、災害復旧とかその他はわかりますが、これによって何を期待をするのか、何をねらっているのかということを明確にしていただきたい。
  116. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十一年度予算は総合予算方針のもとに編成されたわけであります。お話のとおりです。私もそれでいけるなという感触を持っておりましたが、災害が予想外に大きい、それから国鉄、電電の値上げ立法がなかなか成立しない、こういうようなことから補正予算を編成せざるを得なくなったわけであります。  しかし同時に、景気の情勢を展望してみますと、どうしてもてこ入れを要する、こういう状態になってきておる。そういう認識のもとに、てこ入ればどうするかというと、五十二年度の予算、こういうことになるわけでありますが、これの成立は三月いっぱいだ、こういうことになります。そういうことを待つ余裕がない。そこで、せっかく提案をする補正予算において公共事業費を盛り込む、そうしてこの五十二年度予算と一体となって景気刺激の役割りを担当させる、これが補正予算の目的でございます。
  117. 村山喜一

    村山(喜)委員 この予算案の内容でございますが、六千百十一億円の歳出の追加を行うという内容でございます。大蔵大臣、この予算案の内容を見ますと、歳入の面において建設国債を二千億円ふやして赤字国債を一千億円減らしている。だからこれについては健全な財政運営を行っているものだというふうにあなたはお考えになるのですか、そうでございませんか。
  118. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の補正予算案におきましては、お説のとおり四条公債を千億円ふやして、それから赤字公債を逆に減らしたということでございますが、この意味において、赤字公債を減らしたということが健全公債主義を打ち破ったというふうには私は考えておりません。
  119. 村山喜一

    村山(喜)委員 考えていらっしゃらない。建設国債が二千億円ふえて赤字国債は一千億円減らしたのだから健全財政になったとは考えていない。考えていらっしゃるのですか、いないのですか、どっちです。
  120. 坊秀男

    ○坊国務大臣 健全財政主義を阻害したとは考えておりません。
  121. 村山喜一

    村山(喜)委員 阻害したとは考えていなければ、大変な国債を発行するけれども、国債の内容においては建設国債の方にウエートを高めたのだからまあまあだ、そういう感触でございますか。
  122. 坊秀男

    ○坊国務大臣 それも質と量とがございまして、私は量というものを無限にそういうふうには考えておりませんけれども、この場合はさように考えておりません。
  123. 村山喜一

    村山(喜)委員 どうもはっきりしないのですが、このたびの補正予算によりまして国債の発行額は七兆三千七百五十億円、一千億円ふえましたね。ふえたということは、これは量ですからその点においてはやむを得ない、感心しないのだけれどもやむを得ない、こういうふうに受けとめていらっしゃるのですか。
  124. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の建設公債をふやすということにつきましては、その公債によってやっていく仕事というものが、これは御承知のとおり公共事業費をふやしていくということでございまするので、今度の予算編成に当たっての方針というものに抵触をしない、その線に向かってやっておる、かように考えております。
  125. 村山喜一

    村山(喜)委員 じゃ、こういうふうに承っていいですか。量がふえたことは遺憾だけれども、しかし質の内容において赤字国債を減らして建設国債にしたのだから、後世の世代に、それだけ公共投資等におけるそういう国民的な資産が残ることになったから、質の面においてはよかった、量の面においてはマイナスである、こういうふうに両方総合的に考えている、こういうふうに受け取ってよろしいですか。
  126. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私が公債の、質と量とのことを申し上げておりまするのは、公債の量が二千億も三千億もふえるというようなことだと、これはとうてい私の気持ちというか私の方針をそのまま忠実にやったと言えませんけれども、この際建設公債が千億ふえたということでございますが、これが健全財政というものに逆行するものではない、私はかように考えております。
  127. 村山喜一

    村山(喜)委員 二千億になったらちょっと不健全になるけれども、一千億程度は何とか健全な線を貫いたのだというその尺度のとり方はちょっと問題があることを指摘をしておきます。  しかし、こういうふうになってまいりますと、これから国債発行に伴ういろいろな問題が派生をしてくるわけです。で、その際、国債管理政策というものをきちっとしておかなければならない段階に――もう従来から言われておるのですが、いまからそのことを具体的に指摘をしたいと思うのですが、その国債管理政策というものについては、どういう段階までいま大臣はお考えになっていらっしゃるのかお伺いをしてみたいと思うのです。  というのは、一月二十五日に日銀の全国銀行の主要勘定の発表がありました。これを見てみますと、外部負債がきわめて大変な、一兆一千百四十三億もふえている。その中でも都銀が約一兆円に近い九千七百二十八億円ふえている。そして国債の引き受けが五十一年においては二兆五千五百億円になっている。それは実質預金増の四一%に該当する。しかもそういうような資金ポジションが悪化をしておりますから、勢い手持ちの債券等を二兆円売却をして需要に対応している、こういう内容が日銀から発表をされております。御承知のとおりです。  また、いまのその全国銀行の国債の保有高が、いまのような情勢が続いていくとするならば、一体五十五年度末にはどういうふうになるんだろうかという推計もされた資料も発表されておりましたが、これによりますると二十四兆三千五百六十億円の国債を抱えなければならない、その量は総資金量の一三・二%に当たるであろう、こういうふうに述べております。  そこで、こういうふうに累積をしていく国債を持っているがためにキャピタルロスが生じて、一つの銀行でも何十億円というキャピタルロスが生じている。有価証券売却損として見積もられるところによりますると、これは四十九年で八百億円、五十年で九百億円、五十一年では一千億に及ぶであろうと言われております。それはなぜかと言えば、流通価格は発行価格に比べて百円に対して二円前後値崩れがしている。だから、言うならば現在の発行価格が不当に高い、低利回りである。したがってこれを自由売却をした場合には買い手がない。だから現在の資金量の一〇%以上は売却を禁止をする、こういうことで国債を管理せざるを得ない。したがって売れば必ずキャピタルロスを生する、こういう形の中で――しかも私がさっき申し上げましたのは建設国債だから健全だ、これは資産的な内容から見た、国民の資産として見た場合にはそういう説もあり得るかもしれないけれども、しかしこれは十年たったら六分の一しかいわゆる返還はしない、六分の五は強制的に借りかえていかざるを得ない、そういう国債ですから、そういう強制的な借りかえがなされている国債については、国債の売買、自由販売を行っても買い手がつくはずがない。  こういう点から考えていくならば、この国債を保有をしていくいまのシンジケート団のシェアの問題等がやはり大きな問題になってくるであろうし、またそういう預金部運用資金やあるいはそういう民間の金融機関に引き受けをお願いをしなければならない。そういう状態がいつまでも続いていくということになりますると、これはどうにもならない摩擦が出てくる。ということになれば、ここで、いままでは御用金調達の国債政策がとられておったものを、やはり市場の実勢に従って、そうして優良な債券として売買が行われるような環境をどうしてつくるかということが国債管理政策にとっては必要な段階に入ってきた。ところが、それについてはどの程度までいま進んでいるのか。これから大量に、特に五十二年度は八兆四千六百億円ですか、八兆四千億円の国債を発行しなければならない。そういう財政事情の中でこの国債がそういう市場で自由に売られていく場合には、値崩れがすることは明らかである。そこで銀行は、そういうような国債は売却が制限されているから、仕方がないので手持ちの債券、特に縁故債などを、あるいは事業債、そういうようなものを売らなければならない。そういうようなものを売ることによりまして、結局、公社債市場における事業債の金利がなかなか下がらないという問題に結びついている。こういう形の中で金利の高位安定というものがいま依然として続いているわけでしょう。これをなだらかな、経済の手を加えない形で、実勢の中でそういうような金利の機能が働くような形というものを考えていかなければならない段階に来ているのではないかと思うのですが、論議を聞いておりますると、公定歩合の操作の問題などが中心になって――それは日銀政策委員会の権限事項ですね。そういうような問題よりも、そういう国債に抱かれた財政、国債管理政策というものをこれから進めていくのに当たって財政当局が考えなければならないものは一体何かということをもう少し国民の前に明らかにしながら、国債というのは国の保証した一番優秀な債券なんだ、これを国民が喜んで買えるような、買っても損をしないようなそういう状態をつくり上げていくために、大蔵大臣はどういう考え方、どういう政策を立ててこれから遂行しようとしていらっしゃるのか、改めて伺いたいと思う。
  128. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お説至極にごもっともだと思います。そこで、今日までの公債の消化等につきましては、市場における企業の資金需要というものがまあまあ順調に行われてきておった。ところが、これから公債財政によりまして政府の公債というものを多額に消化しなければならないというような事態に相なりまして、それで幸いにして景気がだんだんと上昇してまいるということになりますと、これは市場における民間の投資意欲等が上がってくるということは非常に期待すべきことでございますが、そういうことに相なってまいりますと、市場の資金というものが公債の消化と、それから民間資金需要との競合というようなことに相なるということも予想されます。そういったような場合に、これをどうして調整して、両方を満足、充足せしめていくかということが非常に大事なことだ、かように私は考えますが、そういったようなときが目の前へ見えておるということで、そこで公債の管理、それから市場の整備、育成というようなことが非常に大事なことだということになってまいりましょうけれども、大変これは技術的な問題等が絡んでまいりますので、政府委員をしてお答えいたさせます。
  129. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 国債管理政策の重要性という点は、もう先生の御指摘の点で私ども余り意見の違いはないと思いますが、ただ、国債というものをもうすでに十年近く出しておるわけでございますが、私どもとしては、従来からも発行に見合ったいろいろな国債管理政策というものは進めてまいっておるわけでございまして、またかなりきめの細かい施策も行ってきておるわけでございます。ただ、この一、二年の大量な国債発行に対しまして、いまは幸いにして金融環境が非常に緩やかでございますので、さして、いま直ちに問題が起きているわけではございませんが、先生の御指摘のような問題というのは当然に私どもとしても勉強いたしております。これは多分に、金融環境あるいは金融政策、時の状況によりましてかなりいろいろ対応の仕方が違ってまいりますけれども、私どもは、やはり国債も一つの金融商品であり、先生の御指摘のように、持った者がキャピタルロスを生じるというようなことによって大きな被害を受けないように、また、国債が最も安心した国民の金融資産であるという形で定着するためには、やはり発行条件、市場における流通条件、先ほど御指摘になりましたような発行市場、流通市場の有機的な関係というようなものを十分に心しながら政策を進めてまいらなければならぬと思っております。  ただ、これは一概に、簡単に申すわけにまいりません。また、いままで長いこと言われておりました国債、公社債市場の育成というものがなかなか時間がかかって定着しなかったという点は、それはやはり御指摘のような債券に対するいろいろな施策というものが、まだまだ日本の中において定着しておらなかったということもあると思います。したがいまして、そういうことも考えまして、私どもは徐々に時間をかげながらその市場の整備を図っていかなければならないというふうに覚悟いたしております。  したがいまして、いま直ちに具体的にというよりも、いま幸いにしてまだ環境が十分に――現在は、御承知のように短期的でございますけれども国債が非常によく売れております。それから国債に対する問題というのは、将来、指摘されておりますが、現在の時点においてはまだ指摘にとどまっておりますけれども、その段階の間に十分の勉強をいたしたいと思います。  ただ、具体的にはかなり国債の、たとえば担保金融にいたしましても国債流通市場における価格の問題にいたしましても、その都度いろいろな修正を加えながら現状に合わせて勉強し、かつ実際の措置を加えてきておりますので、私どもとしては国債管理対策は十分腰を入れてやってきておるつもりでございます。
  130. 村山喜一

    村山(喜)委員 単に国債だけではありませんで、地方債の場合でも、五十一年度が五兆四千億、五十二年度は五兆五千六百億を予定しておる。うち、五十一年度の縁故債が二兆四千百三十億もある。こういうような問題の消化のために五十五年の残高が二十兆を超すような予想が成り立っている今日、やはり公社債流通市場の整備の問題は、国債の発行条件の弾力化の問題等とあわせて早急に対策を講じておかないと、日銀による買いオペ、成長通貨の増発の――成長通貨の範囲内でしか日銀は買いオペはできませんから、そうなってくると、一たん国債が値崩れをするということになりますると大変な混乱が起こってくるという事態が予想されますだけに、管理政策の問題はきわめて重要な問題でございますから、まあいろいろ研究もされているでしょうが、これから大量発行の国債をどういうふうに管理していくのか、そうして国民に安心してこれは保証づきの優秀な、優良な債券であるという期待感に反しないような結果をつくり上げることができるかどうか、保証づきの国債にできるかどうかということは、まさに財政当局が責任を持ってやらなければならない一番大事な問題だ、私はそう考えるのですが、福田総理は財政通でございますから、その問題についてはどういうふうな方針で指揮をされるのか、総理の見解をお尋ねしておきます。
  131. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ごもっともでございまして、私がつけ加える余地がないくらいに考えるわけであります。かなめは、私は経済運営、適正にやっていかなければならぬ、そして物価騰貴、これをなるべく早く安定化させるということにしなければならぬと思いますると同時に、管理、管理、公債管理といって心配しなければならぬような状態でない状態をつくり上げなければならぬ。それには、とにかく相当多額の公債を発行せざるを得ない展望でございますが、一日も早く赤字公債だけはなくすということをしっかりやり遂げなければならぬ、そういうふうに考えております。
  132. 村山喜一

    村山(喜)委員 次に、一般会計の補正予算書の内容についてお尋ねをいたしますが、この予算書は五十一年度の一般会計の予算の丙号繰越明許費、これは予算総則の第三条で丙号明許費として掲げるものとするということが掲げてございます。したがいまして、今回の補正予算はその丙号の繰越明許費については掲げてないわけでございますが、これはやはり一般会計と一体のものとして補正予算は処理をされるものであるから、丙号、丁号という、もちろん丁号の国庫債務負担行為はないわけだから、丙号の繰越明許費についてはあえてこの補正予算書の中には掲げてない、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  133. 坊秀男

    ○坊国務大臣 そのとおり考えていただいて結構です。
  134. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、私は建設省にお尋ねをいたしますが、この繰越明許の問題については、繰越計算書を財務局に三月の十日までに提出をしなさいという建設省の通達を出されたやに聞いているわけですが、このことは事実ですか。
  135. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 いま先生のお話の件でございますが、財政法第四十三条の規定に基づきまして、繰り越しについては大蔵大臣の承認を要するわけでございますが、その事務手続につきまして昭和四十四年六月二十五日に会計課長より管下機関に通達をいたしたものでございます。
  136. 村山喜一

    村山(喜)委員 地方財政、特に公共事業等の補助等を伴うものについてはそういうような通達を出して大蔵大臣の許可を得るようにしてある。そういうような財政執行の方法をとっていることは承知をいたしております。ところが、このたびの内容を見てまいりますと、建設省の例で具体的に指摘をしてまいりますが、ほとんどの事業費は五十一年度の当初予算で繰越明許の手続をとってあるわけですね。事業費はほとんどそうです。したがいまして、これだけ追加をいたしましても、国の一般会計予算についてはこれは年度を越えて自由に執行ができる、こういう形式がとられておりますね。  そこで私は、五十一年度の予算のその内容を、繰越明許費というものが一体幾らあるのだろうかというので調べてみましたら、四十二項あるのです。その中身は、単なる事業費だけじゃございませんね。中身は日当の旅費から超過勤務手当から補助金から工事雑費から、もうありとあらゆる考えられる筋合いのものはほとんど、よくもこんなにたくさん並べたものだと思うぐらい、庁費から復旧費から協力費から援助費から委託費から調査費から交付金から援護金から、もう大変な二十三の種類にわたって、これが全部繰越明許費でございますと、金額は書いてございませんがそういう種類のものがずっと並べられております。  そこで、地方財政に対しては非常に厳しく、あなた方は執行についてはその計算書を提出をしなさい、こういうことでやかましく言いながら、国が行うものについてはまさに形式主義的な予算の執行しか国会の方にはその同意を求めないで、実際は官僚が思うままに、あるいは政府が思うままにそれを動かしていくという内容のものだと私は見ているわけです。それは違いますか。
  137. 坊秀男

    ○坊国務大臣 繰越明許費は、いまお説によりますれば自由自在に繰り越していいというようなお話もあったやに私にはちょっと聞こえたのでございますけれども、これはもうちゃんと制限がございまして、四月いっぱいということになっておるのだと私は理解しておりますが、違いますか――そういうことで、なお繰越明許費の中には四十何項目というお話もございましたが、その内容の項目につきましては私はつまびらかにいたしておりませんから、それにつきましては政府委員からひとつお答えさせます。
  138. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 村山委員すでに御承知のとおり、繰越明許につきましては昭和二十七年の法律改正で認められたわけでございます。それで、これは経費の性格上翌年度にわたって支出される可能性のある性質によって区分しておりまして、中身は御承知のように公共事業とか施設費とか、あるいは外国からの物品購入費とか経済協力費とか、そういう性格上どうも当年度内に支出する可能性がない場合があり得るものを組んでございます。  中身といたしましては、五十一年度予算の中では、繰越明許の項目の額は全体で五兆九千六百億、ほぼ六兆でございまして、総予算に対して二四%でございます。ただしこれが全部、まあ当然のことでございますが、それが実行上どうしてもやむを得ない場合に繰り越されるわけでございまして、従来の実績など見ますと、五十年度では四・八%とか、そういうぐあいに制限しております。四十九年度、四十八年度のは若干多くて一〇%とかそういうことでございましたが、四十六、四十七は三・一とか四・九とかいうことで、実行においては大いに制約しております。
  139. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは年度を越して使えるというものなんです、大臣。そこで、その繰越明許、なるほどいま主計局長説明をいたしましたように、事業の種目によりましてこれは年度を越して使わなければならないものもあります。特に事業費等は私はそうだと思うのです。ところが中身を調べてみますと、いまあえて説明を抜かしたのだろうと思うのですが、事務費、補助金、超勤手当、日額旅費、工事雑費、工事諸費、対策諸費あるいは教育訓練費、研究開発費、調整金、交付金、調査費、援助金あるいは協力費、援護費、庁費、建造費、まあ建造費は事業でしょうが、購入費、いろいろな名前で二十三ぐらいございますね、この内容を見てみると。こういうようなものまで必要であるからということで繰越明許の承認を求める予算総則が通っているわけですが、私はもう少し財政というものはシビアにやらなければならない問題ではないかと思います。この点は国会の権限の問題とも関係があります。したがいまして、それは自由裁量の余地が働くようにしてもらった方が政府や官僚はいいでしょうけれども、こういうものが果たして必要であるのであろうかということを国会としてはチェックする必要がある。私はこの点についてはこの際検討されることを要請をしておきますが、いかがでございますか。
  140. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいま主計局長が御説明申し上げましたとおり、明許費の一々につきましては、その性質上これはやはり繰り越しをすることができるというふうに考えて今日までやってあるのでございまして、それについて検討をしろというお話でございますならば、むろんこれについて検討することはやぶさかではございませんけれども、私は、今日、この明許費につきまして、これは不適当であるというふうには考えておりません。
  141. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は委員長に要請をしておきたいと思います。繰越明許費として四十二項にわたりまして、大変重要な内容のものが二四%、六兆円も繰り越して使えるようなそういう予算書の提出になっております。このことは、国会において年度主義というものをとっている以上は――地方財政に対しては、大蔵大臣の許可がなければ繰り越しはできない、こういう厳重なコントロールを行いながら、国の財政については非常に自由に行える、四分の一はそういうような財政執行が行われるということは、会計年度の区分を乱用するものだと私は思いますので、必要欠くべからざるものであるのかどうか。内容的にも二十三のいろいろな名前になっております。私はこれについては予算委員会において厳重にチェックしていくべきであると考えておりますので、理事会あたりで御相談をいただいて、今後の財政運営の執行に対する議会としての権威を高めていただくことを要請いたしたいと思いますが、委員長の御所見を承りたい。
  142. 坪川信三

    坪川委員長 村山君の御提言非常に大事でございますので、主計局長、もう一度見解をお述べいただきたいと思います。
  143. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 先ほど御指摘の件のうち一部答弁漏れがございまして、確かに御疑問のように、日当とか教育訓練費とかいろいろな事務費なども明許費の中に入ってございます。ただ、この繰越明許費の要求書をごらんになればわかるとおり、たとえば日額旅費などでございますと、一つの例としては北海道港湾漁港空港整備事業工事諸費、これを繰り越すときは、付帯してこういう事務費も繰り越さないと事業の執行はできないとか、たとえば教育訓練費などにつきましても、防衛本庁の中で調達の実施計画が少し実施できなくて、それに付帯する教育訓練費もやはり実施計画のおくれに伴って繰り越す、こういうような性格でございます。
  144. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、再度そういう必要なものだという当局の説明に対して、本当に必要があるのかどうか。あえて財政の明許繰り越しをやらなければならないような性格のものであるのか。予算が当年度主義に立っている以上は、そういう意味においてはそれだけ議会の権限をあらかじめ行政当局に委譲するわけですから、これは委員長のもとで理事会あたりで十分検討されてしかるべきものだと私は考えるのですが、委員長、そういうふうに取り計らいをされませんか。
  145. 坪川信三

    坪川委員長 ただいま坊大蔵大臣並びに主計局長からそれぞれ御見解をお述べいただきました。これを基礎にいたしまして、われわれといたしましては理事会においてそれぞれ検討をいたしたい、こう考えております。
  146. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこでお尋ねをいたしますが、一般公共事業、災害復旧等に対しまして今回二千六百三十八億の予算案ができております。これはどういうふうに執行されるつもりですか。というのは、予算説明を見てまいりますと、災害復旧の復旧進度を高めていきたい、こういうふうに書いてあります。その復旧の進度はどういうふうに高まっていくのか。それは五十一年度だけに限るのか、あるいは災害復旧は速やかにやらなければならないという原則に立って、五十二年度以降もそういうような措置をとられるつもりであるのかどうか。  さらに、自治大臣の方からは、この執行に伴います裏負担の問題があると思いますが、その裏負担は、地方財政の困難な今日、どういうふうにして実施ができるのか。年度内において、いまごろになって予算が計上されて可決をされたとしても、その契約はどういうふうになる見込みであるのか。特に先日の佐野議員の質問に対しまして、五十一年度の公共事業の契約率は八一%だということでございましたので、この補正が通りました後においては、年度内に執行ができる見通しのものは一体どれだけあるのか、このことについて説明を願いたいと思います。
  147. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 五十一年度の方は別でございましょうが、ついでだから申し上げますけれども、大体五十一年度の建設省所管の公共事業の契約の状況というものは、直轄事業で八七・一%、補助事業で八四・四%、公団事業で七八%、合わせまして八三・一%という状況でございます。したがいまして、補正予算の執行という点につきましてはきわめて時間が短いのでございますけれども、五十一年度当初予算の執行については、昨年の十一月十二日の経済対策閣僚会議の決定もございまして、十一月十七日には事務次官通達等によりまして契約促進方を特に指示しておるところでございまして、これによって契約促進が図られていくであろうと考えますし、特に補正予算につきましては年度内消化可能なものを計上しておりますが、御指摘のとおり執行期間が短いので、実質的な設計協議等は可能な限りの準備を進めておるところでございまして、補正予算成立後速やかに執行できるようにただいま措置を考えておるところでございます。  なお、地方公共団体におきましても、補正予算の成立後直ちに事業に着手できますように、議会の議決の必要なもの等の措置を備えて受け入れ体制の準備を行っているところであります。したがいまして、ただいまのお話の補正予算を二日も早く成立さしていただきたいということを私の方はお願いを申し上げるところであります。したがって、先ほどの三〇%の問題でございますけれども、本年度は特に災害等がございまして、その災害もまれに見る大きな災害等がございましたものですから、三五%というのは、これを今後毎年続けていくという考え方ではなく、本年度は特にこの措置をとる、こういうような考え方で進めていくつもりでございます。
  148. 小川平二

    小川国務大臣 お答えいたします。  公共事業に伴いまする地方負担につきまして数字を申し上げます。一般公共事業の分、国費千七百三十六億に対応いたしまして、地方負担八百七億、これは全額地方債で措置いたします。それから災害復旧分、国費九百二億に対しまして、地方負担二百七十二億、そのうち二百四十七億、およそ九一%になりまするが、これを地方債で賄うことになっております。
  149. 村山喜一

    村山(喜)委員 その地方債は財投のものですか、それとも縁故債ですか。
  150. 小川平二

    小川国務大臣 内訳につきまして、ただいま政府委員からお耳に入れます。
  151. 首藤堯

    ○首藤政府委員 ただいまの地方債の資金内訳でございますが、災害復旧関係のは全部政府資金、それから公共事業の追加分につきましては、八割までが政府資金でございます。
  152. 村山喜一

    村山(喜)委員 総理大臣、お聞きいただいたように、災害復旧の問題は、五十一年度だけ、大きな災害があったから初年度を三五にして、そして復旧の進度を高めたい、こういうお話でございました。しかし、災害復旧は早く措置ができればそれにこしたことはないわけです。住民は二度と同じような災害が起こることを非常に心配をするわけです。ですから、財政の許す限り、また事業執行の能力のある限り、私はその災害復旧の復旧進度というのは高めなければならないものだと考えております。特に、災害の場合はそれだけ住民が大きな被害を受けているわけでございますから、どうなのでしょうね、ことしだけ三五%にして、来年以降はまたもとの三割に下がる、そういうような政治というのはこれはおかしいのじゃないかと思うのですが、いま主管大臣の話を聞いておりますと、ことしだけだこういうお話でございますので、その点は、福田総理はやはり全体の内閣の姿勢を示す意味においても、この問題は、ことしそういうような措置をとれば、来年度の災害発生はどの程度の規模になるかわかりませんが、私は万難を排して、そういうような改良された方針というのは継続をされてしかるべきだ、こう考えるのですが、いかがでございますか。
  153. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 省内でもそういうような議論があったのでございますけれども、特にいままでの建設省としてのあり方、また方針等がございまして、特に本年度はこういう措置をとろうではないか、こういうことになったわけでございまして、お説の点はよくわかります。災害復旧というものは、なるべく早くしなければならないことは当然な義務でありますし、当然そうしなければならぬと考えております。この点については十分大蔵省あたりとも相談をいたしまして、御期待に沿えるような方向に切り開いていきたい、こういうふうに考えております。
  154. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御説はごもっともですから、その方向で検討します。
  155. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、景気政策と物価、政策の問題について、財政、金融の面からただしてまいりたいと思います。  日銀の金融政策上の権限というのは、大まかに言って三つ、公定歩合政策を中心にする貸し出し政策と、公開市場操作と準備預金制度の活用によります金融の調節、そのほかに市中金利の最高限度の決定であるとか、あるいは証券金融の規則であるとかというような権限があるわけですが、金融政策というものが国会で論議をされる場合に、この前も、低金利政策の方向を目指しての発言であろうと私は思うのですが、総理が、公定歩合は預貯金に連動しない形で〇・二五%ぐらいは切り下げられるのではなかろうか、それを受けまして、その後森永日銀総裁が、いまではそういう条件にないけれども、将来はそういうことも考えられるという意味の発言も行っているようでございます。ところが、三月の事業債、AA格債の事業債を、長期金利引き下げの一環として〇・二%程度引き下げることが可能ではないだろうかということがうわさされております。いま不況が続いていく中で、民間の金融における金利に対する負担というのは非常に大きいから、早く公定歩合を下げてもらいたい、金利負担を軽減をしてもらいたいという声は、これはわかるような気がするわけでございますが、しかしながら、物価は下がらない、消費者物価は依然として定期性の預金金利よりも上回っている、こういう中にありましては、一体金融政策というものは、どういう立場からこの問題をとらえていくのかという問題が出てくると思うのです。  そこで、いま長期金融の金利の引き下げの問題、これはどういう方向を目指して大蔵省は、金融政策の問題としては、自分に与えられた権限の中で処理をし、そして指導をしようとしているのか、大蔵大臣の所見を伺いたいのです。
  156. 坊秀男

    ○坊国務大臣 金利につきましては、お説のとおりです。公定歩合というものが非常な基本になるものでございますけれども、この点につきましては、日本銀行の出方というものを、いま緊張のうちに見守っておるというようなことでございます。そこで、今日ただいまの情勢におきましては、早急に金利を下げていかなければならないという必然性は、今日なお私どもはそう考えておりません。しかし将来、日本の財政、経済政策というものを健全にやっていく、円満にやっていくというためには、そういった事態ということは考えなければならない。ただ問題は、いまの銀行の利ざやというものが大変低くなっておるというようなことから考えまして、速やかに公定歩合を下げることによって、貸し出し金利を引き下げていこうということには大変無理があるということと、もう一つは、預金金利の問題が、これは容易ならぬ問題であるというようなことで、慎重に考えておるというのがいまの実態でございます。
  157. 村山喜一

    村山(喜)委員 わかったようなわからぬような話でございますが、それはそれとしていいですが、問題は、これは大蔵省が出しました主要経済指標、一月の八日、一番新しいものです。この中で依然として倒産が続いておりますね。いわゆる東京商工リサーチの五十年度の倒産件数は、一万二千二百四十七件、負債総額は二兆円を超えている、こういう統計数字がここに資料として渡されております。石油ショック以来大変な企業倒産がずっと続いておるわけです。この負債金額をトータルしてみると、六兆ぐらいになると思うのですね。それは一体だれが負担をしてだれがかぶっているのかというのが問題になります。金融機関がかぶっているものもありましょう、あるいは企業間信用同士で、そのために別な取引のある企業が泣いている場合もありましょう。一体こういうような、一年間に二兆円も倒産をしていく、その負債金額が累積して六兆円を超えるような状態になっている、それをどういうふうになっているかという分析をされたことはございますか。そのことを大蔵大臣にお尋ねします。  というのは、これはだれか質問もしただろうと思うのですが、安宅産業ですね、これの大変な借り入れがあるわけです。     〔委員長退席、細田委員長代現着席〕 資産勘定では二千億を超える負債がありますね。そして住友銀行や協和銀行を中心にして融資をした二百の金融機関がありますね。この問題を処理をしていく場合に、融資総額は昨年の九月末で五千二百四十八億円、その中で、六十年ぐらいかからなければ安宅の再建はできないだろう、こういう状態ですね。そうなると、この主力バッターの金融機関がかぶらなければならない。かぶった場合には、貸し倒れ引当金を取り崩すだけではどうにもならぬ、手持ちの有価証券を売り払って整理をしなければならないであろうということが書いてある。またそういう状況です。そこで、お互いにその融資を行ったところがどういう負担をしようかという話し合いに入っている、そういう状況の中で、私は、貸し倒れ引当金というものがどのような状態になっているのかということをもっとシビアに点検をしてみないと、これは大変な砂上の楼閣になっているのではないだろうかという点が心配でなりません。  それは単に安宅だけではなくて、商社金融と言われるものが、今日銀行が相手にしないようなものを引き受けながらやっているという状態があることは大臣も御承知のとおりです。そういう中で過剰な積み増しをやっているものは、これは問題として引当金については規制をしなければなりませんが、償却が十分でない姿であるならば、これはきわめて不健全な財政状態になることも事実でございます。とするならば、こういうふうにして統計数値として出てまいりました企業倒産による負債総額、これがどこがどういうふうにしてかぶって、そしてそれがどのように処理がなされているかということについて明らかにする必要があると私は思うのです。  そこで、そういうような問題の中で、一体いまの金融機関というのは帳簿づらだけを見るともうけ過ぎになっておりますが、本当にそういうような、いわゆる貸し付けのこげつき、もう倒産で取れなかったもの、こういうようなものは十分に償却ができるように指導されておりますか。私は、そういうようなものはできるだけ償却をしないように、貸し倒れ引当金等については非常に厳しく処理がされているというふうに聞いているのですが、そういう状態の中で見せかけの繁栄だけが生まれているとするならば、きわめて重要でございますから、この一万二千件に及ぶ企業倒産と、負債二兆円の処理の問題についてはどのようにされているのか、所管大臣の見解をお尋ねします。
  158. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私から御説明をさせていただきたいと存じます。  最初に、先生の御指摘の倒産企業の負債全体についてどういう処理が行われておるかということでございますが、御指摘のように、金融機関関係と買い掛けその他の別な企業関係と両方ございまして、また、個々の企業の場合それぞれいろいろ態様は違うようでございますので、私ども残念ながらまだ全体の分析をいたしておりません。  それから、金融機関関係のいまの資産状態から見て、これに対応する仕方が十分であるかどうか、こういう御指摘でございますが、現在金融機関の内容に、ところによりまして御指摘のように過去の融資の問題等があるものももちろんないわけではございませんが、現在金融機関としてはこれに対応する体制は整えております。私どもとしましては、必要な償却すべきものが起こりました場合に、それがそのまま残って、おっしゃるように架空的に、何と申しますか、見せかけだけがよくなっておるということのないように、償却すべきものは必ず償却をする、こういうふうに指導をしてまいっておるところでございます。
  159. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、その企業倒産という問題と負債の総額という問題を、これはやはりきちっと押さえておかなければならない問題として指摘をしているわけです。  そこで、一体こういう状態の中で問題として指摘をしなければならないのは、先ほど来一兆円の減税をめぐりまして、公共投資の経済効果の方が大きいとか、あるいは減税の場合にはその効果は半分しかないとかという論議がされておりました。私はその問題は後で触れますが、いまはっきり申し上げておきたいのは、一体それは経済効果という問題の側面だけを見過ぎているのではないか。これが物価に及ぼす影響という問題も、しかも当該年度だけではなくて次年度においてはどういう影響をもたらしていくのか、そういう分析がなされなければならないかと思うのですが、それについては後で総理に見解をお尋ねをしていきたいと思います。  そこで、この主要経済指標の中からこの物価の問題を考えます場合には、稼働率の問題をやはりとらえなければならないかと思うのです。なお、どういう状態の中で――卸売物価が上がってくる中から、その卸売物価のそれぞれの寄与率というものがございますので、その物価の上昇に対する寄与率は、大企業製品でどういうふうになっているのか、あるいは海外市況の原材料の値上がりによりまして物価が上がるような結果になったのか、あるいは為替政策の結果に基づいて物価が上がるのか、卸売物価を中心にいたしまして物価上昇の原因というものについてはやはりきちっとした解析をしてメスを入れておかなければならないかと思うのです。その意味においては、いまの卸売物価の上昇というものはどういうような形の中で出ているのか。これはウエートの置き方やあるいはその上昇率や寄与率等が、大企業製品や中小企業製品あるいは非工業製品等について分析をされたものがあると思うのですが、それに対する上昇寄与率というものは大企業製品で幾らであり、そしてそれに対して卸売物価を上昇させないためにはどういう政策手段を用いたらいいということが言えるのか、考えていらっしゃる点を経済企画庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。  それと同時に、現在の稼働率――五十年度の製造工業の稼働率指数は八三・四ということになっておりますが、この稼働率の指数というものを見て、一体どういうふうに、五十二年度の経済見通しの中ではどこまで持っていこうというふうに考えていらっしゃるのか。これは製品価格の上にも卸売物価の上にも大きく影響が出てくると思いますので、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  160. 倉成正

    ○倉成国務大臣 二つ御質問でございますが、一つは卸売物価の問題、もう一つは稼働率の問題ですが、稼働率についてお答えをいたしたいと思います。  製造業の稼働率指数は、四十五年を一〇〇としまして、五十一年の十一月で八七・一となっております。今後は総需要の伸びを背景としまして、鉱工業生産が逐次増加してまいり、また稼働率も漸次上昇しまして、五十二年度末には稼働率指数は九四程度になるであろう、そのように考えております。  卸売物価の寄与率の細部の分析につきましては、物価局長からお答えをさせたいと思います。
  161. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 卸売物価につきましての大企業性製品と中小企業性製品との寄与度についてただいま数字を持っておりませんけれども、昨年の八月から、五十一年の二月、景気回復期が五十一年の初めから始まっているわけでございますけれども、その段階に比べまして大企業性製品の伸び率が〇・五%ぐらいになっております。これに対しまして中小企業性製品は三・四%ということでございますので、寄与度から見ますとかなり低いのではないかと思われます。  それから、要因別の分析につきましては、これは月によってだいぶ違うのでございますけれども、昨年の四月から七月ぐらいまでの間は海外要因、国内要因ともに上昇の寄与をいたしております。それから八月から九月、それから十月にかけましては、国内要因を打ち消しましてかなり海外要因の方が卸売物価の低下に寄与いたしております。十月以降につきましてはばらばらでございますけれども、国内要因自体が非常に小さくなっておりますので、全体として卸売物価は鎮静しているということでございます。特に本年の一月におきましては海外要因が非常に強く働きまして、卸売物価全体として前月に対しましてマイナス〇・一%ということになっております。  現状は大体以上のとおりでございます。
  162. 村山喜一

    村山(喜)委員 卸売物価の寄与率は、ウエートのとり方によっても違いますが、上昇寄与率では一年間の、これは五十年の七月から五十一年七月までの統計数字で見ますと、大企業製品の寄与率が上昇寄与率全体の五七%という数字がございます。  そこで、私がお尋ねするのは、卸売物価の上昇を経済計画の示す経済見通しの範囲内で抑えていくための政策手段としては、経済企画庁はどういうようなことを考えていらっしゃるのかということをお尋ねしているわけです。その点を説明願うと同時に、消費者物価を政府の見込みの範囲内におさめるためにいま大変悪戦苦闘をしていらっしゃるようでございますが、その消費者物価に対する製品別の寄与率は、農水産物とそれからサービス、特にサービスが高いわけですが、そういうようなものに対する物価を抑制をするためには、どういう政策手段を用いていこうとしていらっしゃるのか、先ほどの稼働率の問題と連動性がある問題だと思いますので、私は尋ねたわけでございます。
  163. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 全体の物価安定の政策の方向につきましては、やはり基本的には総需要管理を適正にするということが基本であろうかと思いますが、そのほか、やはりこれから安定成長段階に入っていきますと、いろいろな意味で物価上昇要因というのが出てまいります。そういう一つといたしましては、農業とか中小企業等の低生産部門の生産性の向上を進めるとか、競争政策を十分にいたしまして価格の適正自由な形成を図っていくとか、そういうような構造的な政策をとっていくということが必要かと思います。同時に、そのときどきの経済情勢、それから物価の状況に即しましては、個別的な物資についての対策を講ずる。同時に、公共料金の改定についても、そのときの物価の情勢、国民生活の動向を考えて決めていくというような全体としての政策を適正に、総合的にやっていくということではないかと考えております。
  164. 村山喜一

    村山(喜)委員 私、担当の局長から聞いてもしようがないので、経済企画庁長官である経済通の倉成さんに答弁を求めたかったわけでございます。しかし答弁をなさらないから結構です。  私は次の問題に入ります。時間がありませんのでお尋ねをしてまいりますが、最近一月の上旬には、大蔵大臣、為替レートが一ドルに対して二百九十二円、それが一月の末には二百八十九円三十銭、四十九年の五月から二年九カ月ぶりに下がった。二月の十五日には一ドルが二百八十円七十銭という相場で、これは三%高の円高だということで出ておりました。それによると、これが順調に物価の上にはね返るならば、一%高になれば卸売物価が〇・一%下がる。だから三%高だから卸売物価が〇・三%下がる、こういう勘定になるのだけれども、これが月間の平均値でまいりますから、卸売物価に与える影響は〇・一五%程度であろう、こういう推定がございました。それであるのかどうか知りませんが、一月の卸売物価は〇・一%下落をしたわけですね。  そうなってくると、為替政策というものによる物価対策というものを私は織り込まなければならないのではないかと実は考えて、いろいろ検討をいたしたのでございます。ところが、これに対しまして、東京の外為市場で日銀が買い支えをやったのではないかという報道がございます。そこで政府筋は一ドル対二百八十五円ぐらい、これが定着をしてくれることを望んでいるんだという報道もございます。となれば、この為替政策というものは、一体どういう政策を大蔵省は用いておられるのか。これについては、お答えをいただきたいのは、大臣の方からお答えをいただきたい。  というのは、一九七六年の一月から五月期にかけまして二十四億ドルに及ぶ外貨準備高が増加をしたわけです。この間に外為会計の払い超が約五千八百億円になっておりますから、日銀は十九億ドルの外貨買い入れをしたのではないかという想定がされます。したがいまして、二十四億ドル外貨準備がふえたうちの十九億ドルは、これは一ドル三百円前後で円相場を買い支えたことを示しているのではないか。そういうことから、今度円安の状態が維持をされてきたけれども、それはきわめて不自然であったというのは、アメリカやイギリスやヨーロッパのECの国々から指摘をされたところが、非難をされる中でたちまち二百九十円台に下がり、二百八十円台に下がっていく、そういうような状態が見られるということから言いまして、いまフロートしているわけですが、これに対してどのような措置を政府としては考えておいでになるのか。私は、今後の卸売物価の上昇を避けていくためには、やはり為替政策というものを織り込みながら、また日本に二百六十六億ドルも外貨準備高が累積をしているという状態の中で、諸外国の非難を避けながらいくためには、わりあい円高基調の中で為替政策というものはながめていくという方向が正しいのでないだろうかと考えるわけでございますが、この点については、これは国際的な政策にも関係をいたしますので、経済政策に関係いたしますから、福田総理大臣からお答えをいただきたい。
  165. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私もお話のとおりの考えです。つまり為替は安定しているがいい。動くとすれば自然の勢い、じりじりと強くなる方に動いたがいい、こういうふうに考えているのです。そういうようなことを乱す要因があれば、そのとき非常に異例的な形で日銀が介入する、こういうことだろうと思います。まあ安定的にじり高であるというような状態にあります限りにおきましては、日本銀行が介入すべきものではない、こういう見解でございます。
  166. 坊秀男

    ○坊国務大臣 総理お答えのとおりでございますが、大蔵省といたしましては、為替の高下に対しまして、乱高下のときには、それは日銀がまあまあいろいろな手を、乱高下だけはないように調整していかなければならぬと思いますが、円が上昇線にあるとか下降線にあるとか普通の場合に全然介入をしてない、私はかように考えております。  ただ、このことにつきましていま御指摘あったように、方々からいろいろなことを言われておりますけれども、それに対しましては、できるだけさような、まあ一種の誤解でございますが、誤解のないように了解を求めておりまして、それはだんだんと効果を発生してきておるということを申し上げることができると思います。
  167. 村山喜一

    村山(喜)委員 そういうような指摘もされております。で、故意にその一ドル三百円前後で円相場を買い支えたのではないか、そのために急激に去年の一月から五月にかけては外貨がふえたのではないか、こういうような指摘がされているわけです。だから、そうではないのだということの証明が後ほどまたいただきたいと思うのですが、まあ乱高下は避けるようにして、自然の流れで円が強くなることが望ましい、こういう構えで処理をしたいということでございますので、まあそういう態度であるならば、卸売物価等に対する影響はいい結果が生まれてくるであろうと思います。したがいまして、卸売物価が上昇をしていく中で消費者物価が上昇をしていくというのが今日の物価上昇の流れでございますので、そういうような面から私は、物価政策の中で為替政策というものを織り込んでいくというのがきわめて重要な段階に入ってきている、特に日本の場合には交易条件が非常に悪いだけに、そういうような指数が低いだけに、このことについては十分配慮を願いたいと考えておりますので、要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、時間がだんだん迫ってまいりましたので税制改革の問題でございます。これはもう何人かの人たちが論議をいたしておりますのでくどくど申し上げませんが、国民生活センター、これは所管は経済企画庁ですか、その中で、五十一年十二月の日本銀行の「貯蓄時報」のナンバー一一〇ですが、これに国民生活センター調査研究部長の川端良子さんという人がレポートを出しておいでになりますね。これを大臣はごらんになりましたか。  内容を見てみると、第一分位から第五分位までずっと傾向を調べておるわけです。そこでいわゆる平均消費性向を全国勤労者世帯で押さえながら調べ上げておるのですが、四十九年は実収入が第一分位の人はマイナス五・〇、消費支出がマイナス一六・九、第五分位の高額所得者の場合には、実収入は一・〇ふえております。消費支出は一三・四ふえている。五十年も実収入は第一分位が三・四ふえておるわけ、だけれども、消費支出はマイナス〇・九だ。それに対して第五分位の場合には、実収入が三・一ふえまして、消費支出も七・〇ふえておる。  そういう状態の中で、貯蓄率というのは、五十年の分析でいきますと、第一分位の人は一一・三%ふえまして二八・五の指数に貯蓄率はなっておる。それに対して第五分位の人はマイナス一四・〇になりまして、貯蓄率は一六%に低下をしている、こういう数字が出ているわけです。その中で分析をした結果、所得は階層間の格差が拡大をしました。  第二には、低所得者ほど生活を切り詰めて、先行き不安のために貯蓄に回しております。  第三に、高所得者はストックが増加して実物資産を取得している。そのかわりフローの面は減少に向かっている。特に昭和四十九年については、そのフローの貯蓄はマイナス三一・一%になっております。  第四に、平均消費性向は、四十五年から四十八年までの間は所得の低い階層ほど高かったけれども、四十九年からは逆転をしておる、こういうことが出ております。  私は、その分析に基づいていま政策の中で立てなければならないものは、この低所得者の二年続きの平均消費性向の減少をどうしたら回復ができるのか。     〔細田委員長代理退席、栗原委員長代理着席〕 高額所得者の場合は、減税をしても貯蓄に回さずに、債券や他の資産ですが、実物資産の取得に回しているのではないか。こういう傾向の中で、どういう経済政策、減税政策とかあるいは財政政策という問題を考えたらいいのかという問題から、やはり減税の問題もとらえていかなければならないのではないか、そういうふうに考えました。  それから第二点は、これは経済企画庁の方で分析された数量計算に基づいたものだと思いますが、福田総理がこの委員会において、公共事業に投資した方が経済効率はいいんだ、経済の効果が高まるという問題で提起をされておりましたが、われわれは、減税という問題を提起した場合には、これによって経済効果を上げるためにというのは第二義的な問題として実は考えておりました。これはやはり低所得者層の生活を守る、ひいてはいま二年続きのそういうような消費減退につながっている所得層の購買力をふやす、そのためにはどうすればいいのかということから問題を提起したわけです。ところが、減税か公共投資かという形で経済効果という問題にすりかえて、当年度の経済効果だけを論議されるという形になってしまったものですから、当該年度だけではなくて翌年度においてそういうような減税効果というものがどうなるのか、しかもそれは、景気に及ぼす影響だけではなくて、物価に及ぼす影響はどういうふうになっていくのか、そういう総合的な立場から減税の問題は考えなければならないのではないかと私は思います。  そこで、その問題については、いままで福田総理はこの席上において、公共投資が経済効果があるんだという立場で終始しておられるわけでございますが、今日の時点においても、やはりそういう低所得者層の生活を守るという立場から、減税の問題についてはさらにもう一回考え直してみるという考え方にお立ちにならないのかどうか、その点についてお尋ねをしたいのです。  特にわれわれは、御承知のように、二回にわたりまして大蔵委員会で所得税の特例に関する法律を、公明党、民社党の協力を得まして提案をいたしておるのでございます。その中では、税額控除方式によって減税を実施をすべきである、そして課税最低限度額を二百九十万円に引き上げると同時に、それに伴って、いまの青天井方式になっている所得税の構造というものを、上の方からは八百五十万円程度以上にはその減税の効果が及ばないような形で処理をすべきであるという提案をしているわけでございますが、そういうようなものをいま、さらにもう一回見直しをしなければならない段階にあるのではないかと私は考えるのでございますが、総理の所見をお伺いしたい。
  168. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の税制改正に当たりまして税額控除主義をとったらどうか、こういうお話でございますが、ただいま中低所得層のところで私どもがやっておりますのは、どうしたってこれは事情が非常に苦しいけれども、やはり中小所得層の負担を軽減せなければならないということで、今度の税制改正を行ったのでございます。それに対しまして、そういうことにかわるに税額控除主義をとったらどうか、ちょうど中小所得層のところで、金額については私もまだはっきりとお聞きしておりませんが、たとえば一人当たり三万円の定額の税額控除をしたらどうか、こういうことでございますが、そういうことで試算をいたしてみますと、いまの税は所得の高まるに従いまして超過累進率を掛けておりますから、下の方でなだらかな上昇の線を所得税額がたどっておるということは、村山さんよく御存じのことでございます。そこで、それを三万円の税額控除ということに変えますと、この下の方のなだらかな線が非常に急上昇するというようなことがございまして、それがしかも、上の方へ行って急上昇ということならまだよろしゅうございます。――まあよろしいこともない、日本の税額は上の方は大変高うございますから、それ以上これをやるというといろいろな副作用も出てくるから、それでよろしいというわけではございませんけれども、税額控除に方式を変えますと、ずっと下の方の所得者というようなところでこのカーブが急上昇するというようなこともこれありまして、ちょっとこれは慎重に考えなければならない、こういうふうにわれわれは考えまして、その税額控除ということにつきましては、ここで踏み切ってその方に変えるという気持ちにはなかなかなれないということでございますが、そこのメカニズムにつきましては、ひとつ政府委員からお答えさせます。
  169. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいま大臣からお答えいたしました税額控除方式の問題でございますが、村山委員おっしゃいましたように、すでに二回にわたって大蔵委員会に具体的な法案が御提出になっておりますので、政府の税制調査会でこの問題を取り上げて御論議をいただきました。  第一の問題としましては、ただいま大蔵大臣が申し上げましたように、所得控除を税額控除に切りかえるということで検討いたしてみますと、非常に累進度がきつくなる。それもかなり上に行ってからきつくなるのじゃなくて、かなり下の方からすぐにきつくなる。ベースアップしたときに税がふえるのは増税だとおっしゃっておられるような環境の中では、下の方で非常に累進度がきつくなるというところには相当問題が多かろう、将来の検討課題であるにしても、いま踏み切るのには相当問題が多いということでございました。  ただ、もう一つの問題は、従来の所得控除はそのままにしておいて、当面の減税分だけを税額控除でその上へ積むのはどうだ。これも御検討いただきましたが、これは、その当時の御議論を思い出してみますと、いわば木に竹を接いだようなことになる、いつまでもそのままにはいくまい、最後にはその竹の方に全部移っていくのか、あるいはある時期にまた竹を木に戻すのかということを考えざるを得ないだろう、竹に移ってしまうと最初に申し上げた問題が出てくるだろう、それから今度は、竹を木に戻すときにはかえって上の方の減税額が、政府が所得控除で考える場合よりももっと大きくなるという問題がどうしても出てくるだろう、したがって、将来竹がいいのか、木がいいのかという問題を十分に吟味した上でないと、当面の減税分を木に竹を接ぐということはやはり適当ではないのではないかという御議論を得まして、今回の税制改正の答申にもその部分は触れておられます。  それからもう一つ、先ほどの御指摘の中で、御提案は政府の税制調査会にも御紹介いたしたわけでございますが、課税最低限二百九十九万円というのは、いわば平均的なサラリーマンは所得税を負担しないでいいということになってしまうので、それはやはり適当でないだろうという御議論があったことも申し添えておきます。
  170. 倉成正

    ○倉成国務大臣 先ほどの消費支出の問題でありますが、村山委員のお読みになった論文は私、読んでおりませんが、最近の傾向だけをちょっと御参考のために申し上げておきたいと思います。  最近の勤労者世帯の可処分所得並びに消費支出を見てまいりますと、消費支出は、五十一年に入りましてから第一分位がずっと一月から十一月まで伸びておりまして、実質消費支出が落ちているのが第五分位。比較的所得の高い層の消費がずっと落ちておるというのが五十一年二月以降の傾向で、十一月までずっとこれが続いておるということで、先ほどお話しの論文とは逆の傾向がある。すなわち、消費性向から見ますと第一分位が高くて第五分位が低い、こういう傾向があるということを申し添えておきたいと思います。  それからもう一つ、減税、公共投資の物価に与える影響の点から、このどちらが物価への影響が大きいかということになりますと、時間の関係もございましょうから結論だけ申しますと、これは公共投資の方が間接的であるということで、事情の関係もございますが、少ないというふうに考えられるわけでございます。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕  それから、先ほど物価の問題について、村山委員のお話がちょっと寄与率の方に重点を置いたものですから物価局長お答えさせましたが、これから先の物価を考える場合に必要なことは、需要面からの物価上昇要因というのは少なくなるかもしれませんけれども、経済の成長が鈍化してまいりますと、どうしても生産性の上昇ができないにかかわらず他のコストが上がっていく。いわゆる賃金コストその他のコストの上昇による物価上昇、あるいは公害やその他の安全的なものをいたすためのコストの上昇、そういうものがいろいろ出てくるということを考えておかなければなりません。そういうことを踏まえながら、これからの物価政策ということを推進していかなければならない、そう心得ております。
  171. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十二年度における公共事業中心の財政構想を変える考えはあるかないか、こういうお話でございますが、これは結論を申し上げますと、変える考えはありません。ただしかし、私はそうかたくななことを言っているわけじゃないのです。皆さんの話もよく承っておるわけでありまして、特に五党首からこぞって一兆円減税というものを迫られるということがあったわけですが、そういう事態を踏まえまして三千五百億円の所得減税を行う、こういうことにいたしておるわけです。金さえありますれば、これはもう幾らでも減税ということを考えたいわけでありますが、いまの財政事情考えますと、なかなかそういうような踏ん切りがつけられないのです。これは国のちょっと先々の、将来のことを考えましてもなかなか踏ん切りはむずかしい、こういうふうに考えております。
  172. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題は、税の集中論議が近いうちにあるようでございますから、その中で十分に詰めてもらいたいと思います。ただ、聞いておりますと、大蔵事務当局の方は税調の答申の結果をもとにして問題を提起をし、答弁をしているようでございます。しかしながら、特例に関する法律案としてわれわれが出すわけでございますが、それが通った後においてはどういうふうにしたらいいかというのは、なだらかに移行をしていくためにはまた方法はあり得るわけでございますから、とにかく、いまの青天井方式になっている高額所得者には有利な税金の負担が――あの二兆円減税のときに青天井方式にしたわけですから、それによって一千万円所得の階層においても、当時の税法の改正によって百五十万円ぐらいの所得税が減額になった、それを昔のものに返していこうじゃないかという考え方が中心でございますから、こういうように苦しいときには、担税能力のある者が負担をするという原則を確立するのが私は当然だと思うのです。そういうような意味から、技術的な問題は多少残るといたしましても、やはりこの際、公共投資という問題だけではなくて、減税という問題を織りまぜながら政策の多様性というものを用いなければ、今日の不況の打開はできない。特に低所得者層に対する生活を守るという立場からいたしましても、政策は多様性をもってやらなければならないという考え方を私は持っておりますので、これらはまた後ほど同僚議員の方からも税の集中論議のときに提起をされるであろうと思いますから、政府が、福田総理は配慮してやったんだけれども、もうどうにもならぬというような答弁の仕方ではなくて、もう少し前向きの形で答弁をしていただきたいということを希望しておきます。  それで最後に、残りました時間になりましたが、いま二月は省エネルギー時代ということでエネルギーの消費節約月間だ、こういうことで答弁をされております。施政方針演説の中でも資源有限、省エネルギー時代だ、こういうお話でございます。私も車で各中央官庁のところを走ってみましたが、消費エネルギー節約月間だというスローガンを掲げて、たれ幕を掲げているのは通産省だけでございますね。ほかのところはございませんね。――あれは経済企画庁でしたか、私が見ましたのはたしか一本しか見ていないのですが、一体どこが責任を持って、だれが取り組んでいらっしゃるのか。私、ずっと調べてみますとわからないわけです。何かこの前経団連などと総理大臣が朝食会をやられたときに、それは園田官房長官が責任を持つのだということで調整役になっていらっしゃるようでございますが、園田官房長官、あなたが窓口でございますか。  というのは、これは通産省なのかあるいは科学技術庁なのか、あるいはどこが責任を持つのか。このエネルギーの問題についてはそれぞれ所管庁が違うと思いますので、一体どこがどういう責任を持って、そして政府としてはどういう立場から、この問題については何を目指してどこまでやろうという形で総合エネルギー政策の樹立、そのほか省エネルギー政策の推進という問題を考えていらっしゃるのか、その点を責任者の方からお答えをいただきたいと思います。
  173. 園田直

    ○園田国務大臣 御承知のとおりにエネルギー行政は、開発研究は科学技術庁、それからこれが事業として発足する場合には通産省、それから船舶の場合が運輸省と、それぞれ分かれております。したがいまして、いろいろな問題で開発がおくれておる今日、総合体制をとることが一番大事でありますから、そこで総合体制をとるためと、もう一つは、今度懇談会の諮問に基づいて、原子力委員会委員会と安全委員会の二つに分けたのを契機に、総合体制をとるために、通産大臣を本部長とする体制をとったわけであります。詳細については所管大臣から御答弁をいたします。
  174. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま官房長官からお話がございましたごとく、エネルギーの問題をあくまでも総合的に推進いたしまするために、内閣におきましては内閣総理大臣を筆頭といたします閣僚推進会議を持ちまするし、その実施を取りまとめていたしまする場合に、通産省を挙げてこの問題に取り組む体制をとっております。御質問のエネルギー節約月間、積極的にエネルギーの給源を求めますることも大事でございまするが、この消費をいかに節約するか、省エネルギーという問題は非常に重大な問題でございますので、政府は挙げてこれに取り組んでおる次第でございます。
  175. 村山喜一

    村山(喜)委員 科学技術振興費の予算を見てみますと、原子力関係は千百八十億円余り五十二年度の予算の中で措置がされている。新しいエネルギーのサンシャイン計画によりますものは、これは四十八億一千七百万円しかないようでございますが、これはもちろん将来のエネルギーだ、原子力はいまのエネルギーだ、そういうとらえ方で処理がされているものなのかどうか。これはやはり非常に注目をする内容でございますので、太陽エネルギーや地熱あるいは合成天然ガス、水素エネルギー、こういうようなものに対する新しい開発体制はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点を主管大臣から説明してください。
  176. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま御指摘のございましたサンシャイン計画でございまするが、昭和四十九年度に発足いたしましてから三年を経過いたしましたところでございます。原子力と比べまして、基礎的な段階にありまするために、昭和五十二年度予算計上額は四十八億七千万円と、原子力関係予算と比べまして小規模な予算となっておりまするが、サンシャイン計画といたしましてはこれが円滑な研究発展をいたし得る、かように存じます。科学技術庁の予算の一千億に対しましてサンシャイン計画の五十億というのは余りに少ないではないかというような御指摘であろうと存じまするが、当該新しいエネルギーの発足ということに焦点を集中いたしましたサンシャイン計画でございますので、この部分につきましての新規開発計画だけを取り扱っております。
  177. 村山喜一

    村山(喜)委員 最近は長期エネルギー計画に対しまして海外から批判の声が出ているようでございますが、この長期計画を見直しをされる計画はございますか。
  178. 田中龍夫

    田中国務大臣 その問題につきましては、この長期計画ができましたときから内外の客観情勢も非常に変化をいたしております。かような次第で、今後の政府の推進対策本部におきまして慎重に検討をしてまいりたい、かように存じております。
  179. 村山喜一

    村山(喜)委員 慎重に対処するということは、これは全体的な検討をし直すということになるんでしょうか。というのは、昭和五十年に政府が決定をいたしました長期エネルギー需給計画というのはこれは作文にすぎない、もう一回今日の新たな情勢を踏まえて洗い直しをすべきだというのはあちらこちらから出ているようでございますが、政府としてはそういうようなのは総合エネルギー対策閣僚会議にかけて、そこでエネルギー政策の大綱を決めて、そして処理をされるものだと思うのですが、それは一体担当の通産大臣としてそういう段取りをつけた上でいま検討中なのでございますか。それともそういう方向へ見直しをやるという立場から検討を進めていらっしゃるのですか。
  180. 田中龍夫

    田中国務大臣 本件は非常に重大な問題でございまして、すでに決定いたしておりまするあるいは原子力発電、あるいはその他の石油、石炭等の問題、これらを十分に今後のあるべき国際情勢やわが国の経済関係をも踏んまえまして目下慎重に研究しよう、こういう体制のもとにございます。
  181. 村山喜一

    村山(喜)委員 慎重に研究をする、そういう段階でございますか。洗い直しをして見直しをやるというそういう方向でございますか、それとも研究段階だ、こういうことでございますか。
  182. 田中龍夫

    田中国務大臣 御指摘のとおりに、これはやっぱり再検討をしなければならぬだろう、かように存じております。
  183. 村山喜一

    村山(喜)委員 まあ見直しをするということでございますから、この見直しをしてもらいたいと思うのですが、この問題はきわめて重要な問題だと思います。そういうような意味から、省エネルギーという立場でいろんな面も見直しをしてもらいたいと思う具体的な例を一つ提起をして、総理の所感も聞きたいと思うのです。  これは日本航空が東京から名古屋、福岡、鹿児島を経て香港に週二回飛んでおります。これは国際線だというのが一つと、路線についての認可がない、運輸権がないというので、これは東京から鹿児島までのお客さんは乗せません。したがいまして、ほとんどがらがらでございます。同じような便がないだろうかと思って調べてみましたら、東京-新潟-ハバロフスクの路線がございます。東京-新潟間は全部空席でございます。なお東京-福岡-マニラという路線があります。これは運輸権はあるけれども、通関の関係で国内線の乗客は乗せないという形で運航がされておりました。どれくらいのガソリンを使うんだろうかというので調べてみましたら、東京から鹿児島までは、ずっとこれを計算すると、一回飛ぶたびに二万二千リットルのガソリンを消化しております。新潟までは八千リットル、福岡までは一万六千リットルでございます。そこで住民が言うのには、こういう資源が貴重な時代にがらがらの飛行機が飛んでいる、ところが一方、全日空の方で飛行機に乗ろうと思ってもなかなか切符が買えない、何とかここら辺は航空政策の中で考えられないのか、こういう声が上がるのは当然でございます。中でも、全部空席にして飛んでいくわけでございますから、この問題は、全部一年間でガソリンのトータルをとってみますと大変な量になるわけでございます。  外国の場合等もいろいろ調べてみたんですが、これはやはり通関の問題やあるいは運輸権の問題やあるいはその他入管手続やその他もありましょうけれども、そこら辺の中で、まあ国際航空の場合には相手国の国内のそういうところをお客さんを運ぶことは禁止されているけれども主権の及ぶ国内においてはそれを禁止する条約等はないようでございます。  しかりとするならば、省資源という立場から、住民の期待にもこたえ、そして行政の問題でいまそのような措置がされているわけでございますが、そこら辺について何か考える方法はないのかということを私は運輸省に提起をしたわけでございます。運輸大臣の答弁を待ちまして、その後、総理の所見をお伺いしたいと思うのです。
  184. 田村元

    ○田村国務大臣 実は私もそれができればいいなと思っておる一員なんですが、ただ問題は、出入国の手続、いまおっしゃった通関手続等で、国内だけ乗降するお客さんも全部調べなければならぬというような厄介な問題があります。そういうことで、恐らく外国もほとんどこういうことをやっていないんだろうと思うのですが、だからといって、何か知恵でも出るんじゃないだろうかとも思ったりもしておりますが、お客様に大変な迷惑をかけるというようなことになっても大変でありますので、しばらくちょっとこれは考えさせてもらいたい、こういうふうに思っております。
  185. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 全く私も同様に存じております。
  186. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題は、路線権の問題もありますし、そういうような通関の問題、あるいは出入国の問題、検疫の問題等の問題もありますけれども考えてみますと、資源有限時代、省エネルギー時代だと言いながら、片一方の方はなかなか切符も買えないほど満席で走らなければならない、片一方の方は何か工夫がこらせればいいのにがらがらあいて、そしてお客さんは一人も乗せないで走っている、こういう運航計画はきわめて国民の目から見た場合には不自然であるというふうに受け取るのが当然だと思うのです。私は、そういうような意味において、これは運輸大臣が十分検討してみたいということでございますから、前向きの形で検討されますことを要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  187. 坪川信三

    坪川委員長 これにて村山君の質疑は終了いたしました。  大内啓伍君。
  188. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、今度の質問を通じまして、論争のための論争はやりたくない。きわめて短い質問ではありますけれども、その短い時間の中から一つでも二つでも政策に前進が起こり、また国民生活に実りが生まれますように心から切望する次第であります。私も民社党の立場にございますが、党利党略を超えて、国家国民の利益を考え質疑を行いたいと思いますので、福田総理以下関係諸大臣におかれましても、誠意ある、そして率直な御答弁をいただきたいと思うのであります。  仏法の教えの真髄といたしまして、「われ人ともに生かす」という言葉がございます。福田総理も恐らく御存じだと思うのでございますが、資源有限時代の中にあり、そして同時に相互依存時代の中にあって、この一つの教えは哲学的な基礎を持つと思うのでありますが、福田総理はいかがお考えでございましょう。
  189. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が協調と連帯とこう言っているのは、まさにそのことを申しておるわけでありまして、私は、この人間社会を動かす行動原理はそれでなければならぬ、そういうふうに考えております。
  190. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、今度のこういう変転する時代にこそ、やはり一国の指導者はそうした哲学を持ちましてこれからの施策をやっていただきたいと思うのであります。  きょうの質疑は補正予算の質疑でございますから、まず冒頭に補正予算関係について一石お伺いをしたいと思うのでありますが、五十一年度の予算の編成にあたりまして、政府は、当初予算におきまして、予備費三千億円あるいは公共事業費の予備費一千五百億円を計上いたしまして、総合予算主義をとるというたてまえをとったのであります。しかし、現実には災害等の発生もございまして補正予算を組まなければならなくなりました。これはやはり景気が順調に回復していないという面も確かにあった。福田総理は覚ておられると思うのでございますが、昨年の通常国会の経済演説においてあなたはこういうふうに演説をされております。  「昭和五十一年度中には企業の生産活動も次第に適正な水準に戻り、また雇用情勢も改善されるなど、経済全般に明るさと安心感が出てくるものと考えております。」これが当時の福田総理の演説でございました。しかし現実は、御案内のとおり、たとえば稼働率一つをとりましても現在は大体八七%ぐらいでございます。昨年の二月は八八%でございます。失業者も大体百万人程度で横ばい、中小企業の倒産も戦後最高のピッチで進んでおることは御存じのとおり。有効求人倍率もなおなおよくないことは御案内のとおりであります。したがいまして、私ども党といたしましては、あの選挙によりまして政治的な空白がございましたが、夏以降急速に景気の中だるみが出てきた、だから、中小企業の立場を救済するために、そして個人消費の伸びを何とか刺激するために、年度内五千億ぐらいの減税をやったらどうかということを十二月十日申し入れた。そして十二月二十日には、野党が一緒になりまして社公民という形で申し入れも行った。もちろんこの五千億という減税は、実際の効果という面におきましていろいろな問題もございましょう。しかし、あの景気の中だるみの中にあって大変苦しんでいた国民や中小企業の皆さんは、やはり何か政府がやってくれるのかなということを期待していた。そして私どもは昨年来補正予算を出せ出せという要求をしてきたが、今日までおくれてしまった。これがやはり今日の景気回復という問題を遅延さした一つの原因だと思うんでございますが、福田総理、いかがでございましょう。
  191. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 補正予算をもっと早く組めば、まあ幾らか様子は変わったかもしれません。しかし、補正予算を審議する国会、これはもう十一月解散、十二月投票、こういうような状態であり、また解散がわかっている、迫っている、そういう状態において、その前におきましても、なかなか国会を開会し補正予算を御審議をお願いするというような環境ではなかったと思うんです。まあしかし、とにかく国会は通常国会が開かれた。そこで、何よりも先に補正予算を御審議願いたいというので、ただいま御審議をお願いしている、こういうことでございますので、おくれましたがひとつなるべく早く成立さしていただきたい、かようにお願い申し上げます。
  192. 大内啓伍

    ○大内委員 総理大臣が補正予算の提出については幾らかおくれたということをお認めになった、これは大変結構だと思うんでございます。  そこで私は、同僚の塚本議員あるいは河村議員が経済問題について相当お伺いをいたしましたので、特に外交問題を中心にいたしましてお伺いをしたいと思うのでございます。  新しい指導者が出るとそこに政策の変化が起こってくる、これはあたりまえであります。福田総理は、その施政方針演説においても、資源有限時代という問題を非常に強調され、経済の年ということもあわせて強調され、経済の安定成長への軟着陸という問題がこれからの重要課題であることを指摘されております。そうなりますと、私は、その限りにおいてはまずまず賛成なのでございますが、その基礎は、言うまでもなく経済の安全保障をどうやって確保するかという問題であります。日本は御存じのように輸入国家でございますし、技術国家でございますし、人口はこの十年大体一・二七%ぐらいの速度で進んできておるわけでございますから、当然経済成長をやらなければならない。そしてそういう中で安定成長をやっていかなければならない。その基礎は、言うまでもなく、エネルギーについて、資源について、食糧について安定的な確保をまず確立する、これが基本でございます。福田総理もそう思っておられると思うのでございます。  ところが、最近、カーター政権によりまして新原子力政策の樹立という問題が出てまいりました。恐らくこれは今月の末ぐらいに一つの案をまとめたいということで作業が進んでいるようでございます。同時にまた、カナダからのウラン供給停止という問題がこの一月に起こってまいりました。御存じのとおりであります。これは言うまでもなく、わが国の経済の安全保障、あるいはエネルギー政策、さらには原子力の平和利用に重大な影響を与え、かつ日本はいまピンチに入っているのです。福田総理はこの重大な問題をどういうふうに受け取っておられますか。
  193. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、資源エネルギー問題というものは、わが国の安全保障というくらいな重要な立場にある、こういうふうにとらえております。そこで経済安全保障体制をどうするか、こういうことになりますれば、やはりわが国とすると新しい資源の開発ということを考えなければならない。同時に、省エネルギー政策を進めなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、省エネルギー政策を進めますと、やはり国の成長率をかなり低く抑えるという必要が出てくるわけです。しかし他面、わが国の社会の活力ということを考えますと、失業者なからしめるという社会を考えなければならない。その接点を一体どこに求めるかというと、やはりある接点を想定しまして、その想定に従って経済運営をやっていかなければならないだろう。それで、われわれいま大体今後十年を展望しまして、六%成長、こういうことを言っておるのですが、これならば何とかして石油の輸入もまあできそうだ。その先々はなかなか苦しい。しかし、昭和六十年というところを展望しますと、まずまずできそうだ。しかしそれから先々のことを考えると、新しいエネルギー源、つまりさしあたり原子力、先々は太陽熱とかまだいろいろ新しい問題があります。その先へいきますとさらに核融合、そういう問題が出てきますが、とにかくさしあたりの問題とすると原子力のエネルギー化をやっていかなければならない。  そういうさなかにおきまして、国際社会では原子力が兵器化されるということに対する警戒が始まってきているわけです。しかし、わが国はその心配はない。しかし現実の動きとすると、その心配がほかの国では出てきておる。そこで、原子力源の提供国におきましては、核拡散について警戒的措置をとる、こういう動きになってくるわけでありまして、わが国といたしましては、原子力源の供給国に対しまして、わが国はとにかく心配はないのだ、それからわが国のみならず、平和的な利用、それはこれからも進めていかなければならぬという立場において説得に努めなければならぬ、こういうふうに考えております。
  194. 大内啓伍

    ○大内委員 実はその問題に隘路が起こっているのであります。恐らくアメリカは二月末までに新原子力政策をまとめようとしているのです。ところがカーター政権は、総理も御存じのとおり、プルトニウムを生み出す再処理技術についてはこれを規制じたいと言っている。もう一つは、再処理実施国に対する新規燃料については供給の停止をしたいと言っている。そして三つ目には、再処理問題がある既存の原子力協定については再交渉をしたいと言っている。これは福田総理、大変な問題です。  いま、ここに電気がついておりますけれども、この一部は原子力発電でございます。もし、カーター政権がそういう形で本当に新原子力政策を進めてきた場合には、いま福田総理がおっしゃっているような、そのような状態で日本が原子力発電をやることはむずかしくなってくる。これは大変だと思うのですが、いかがでしょう。
  195. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまカナダの問題とアメリカの問題とお触れになりましたので……(大内委員「いまはアメリカをやっているのです」と呼ぶ)じゃ、アメリカの方から申し上げますと、アメリカのカーター新政権の原子力政策がどういうことになるかということを大変心配しておるわけでございますが、これにつきまして、先般モンデール副大統領が福田総理のところへ見えましたときにもこの問題について言及があったわけでございます。以来、日本政府として、この原子力平和利用あるいは電力問題大変でございますので、なるべく早く日本から使節団を派遣をしたいというお話をいたしまして、井上原子力委員長代理を長といたします使節団がもう近々日本をたちまして先方に伺いまして、カーター新政権の原子力の新しい政策が固まる前に、ぜひとも日本の立場をよく理解していただいて、支障のないように努力をいたしたい、こういう段階でございます。  カナダのことも先ほどお話しになりましたので、ついでと言っては失礼でございますが、カナダにつきまして一月からイエローケーキの輸出がとめられておるということにつきまして、これも大変御心配になっておられるわけでございます。このカナダとの交渉につきましては、御承知のとおり、インドの核爆発が行われましてから、これが七四年でございますが、七五年にカナダ政府の方から交渉の申し入れがあったわけでございます。昨年核拡散防止条約の批准問題を日本でやっておったものですから、カナダ政府もそれを見守っておったわけで、その条約が締結されましてからまた交渉を再開しよう、こういうことでありますが、この一月からもう交渉を再開をいたして、次のシップメントが三月になるものですから、ぜひとも早急に問題を解決しようというので、交渉が一月になりましてから鋭意進んでおりまして、核の技術の輸出の問題、それから濃縮の関係につきまして、二点だけ残しまして、あとの問題はほぼ話がついたのでございます。残りました二点につきましても鋭意努力を続けておるところでございまして、次のシップメントに間に合うように解決いたしたい、こう考えておるわけでございます。
  196. 大内啓伍

    ○大内委員 その残る二点が非常に重要な問題なんであります。しかしその問題、あとでやります。  もちろん、アメリカが原子力の平和利用の規制を行ってきた背景は、インドの核実験を初めといたしまして、原子力技術の輸出競争が非常に激化してきた、あるいは再処理技術がプラントとして輸出され始めてきた、あるいは最近アフリカが核実験をやった、いろんな背景があると思うのでございます。要は、プルトニウムを使ってそういう核拡散が行われる。プルトニウムというのは、御存じのとおり長崎に落としました原爆の材料でございます。日本でもこれがどんどん生産され始めてきている。そしてアメリカもそういう問題を心配して規制をやろうとしているが、その心配で規制をやられていくと、日本の原子力発電が成り立たなくなっちゃう。  そこで外務大臣にお伺いいたしますが、昨年の十月二十八日フォード声明が出されまして、新原子力政策というものが打ち出されていったわけでありますが、アメリカは事前にキッシンジャー書簡という形で十二カ国に対して秘密に書簡を出しまして、こういう政策でいいだろうかというふうに聞いてきたと思うのでございますが、それは何月何日でございましたか。
  197. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この書簡は秘扱いでございます。もう済んだ話でございますから構わないと思いますが、昨年の十月四日付のキッシンジャー長官の手紙でございます。
  198. 大内啓伍

    ○大内委員 だれあてですか。
  199. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 小坂外務大臣あてでございます。
  200. 大内啓伍

    ○大内委員 これに対して外務省はどういう返事をされましたか。
  201. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これも済んだことだからいいと思いますが、十月十四日に小坂大臣からキッシンジャー長官あてに御返事の書簡を出しておるわけでございます。
  202. 大内啓伍

    ○大内委員 十月のいつですか。
  203. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 十月十四日付でございます。
  204. 大内啓伍

    ○大内委員 実はそれは余り正確ではないように私ども承知しております。と申しますのは、キッシンジャー国務長官から外務大臣にそうした書簡が出された段階で、外務省はその書類を科学技術庁に回しているじゃございませんか。そして科学技術庁は、某課長の名において、アメリカ大使館のERDA、つまり米エネルギー開発局のある方――これは名前を申し上げてもいいのでございますが、この人は外交特権を持っておりません。その人にクレームをつけただけじゃございませんか。ほかに何かやっておられますか。やっていないじゃございませんか。
  205. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 当時のことは私おりませんでわかりませんので、あるいは係官が来ておりますから御説明をさせたいと思いますが、外務省といたしましては、このときの書簡として会談を申し入れておるのでございます。
  206. 大内啓伍

    ○大内委員 それじゃ外務大臣、お伺いしましょう。  十月二十八日にフォード声明が出されました。そのときアメリカの国務省はちゃんとプレスコンファランスをやっております。アメリカの国務省はその記者会見において、日本からは全く返事が来ていないと言明しているじゃございませんか。
  207. 大塚博比呂

    ○大塚説明員 事実関係でございますので、私からお答えさしていただきます。  先生御指摘のとおり、フォード声明の発出に当たりまして、キッシンジャー長官からわが方に事前に通報があったことは事実でございます。その日付も先ほど鳩山大臣からおっしゃったとおりでございます。それに対する回答といたしまして、実は当時小坂外務大臣が国連に御出張になっていた関係もありまして、私どもの方から小坂大臣にお願いしてその回答を寄せましたのが、先ほど鳩山大臣からおっしゃいましたように十月十四日付でございます。  その内容は、日本政府はその書簡をアクノリッジするとともに、日米両国間の立場を調整するために速やかに協議に入りたいという文面の趣旨でございます。  なお、申すまでもないのでございますが、フォード大統領の声明はその後十月二十八日になって出されまして、その直後に御承知のようにアメリカの大統領選挙が行われまして、政権交代があったという事実があるわけでございます。したがいまして、その後になりましてもわれわれは機会あるごとに、先ほど科学技術庁からの係官のレベルでの申し入れについて御言及がございましたけれども、それ以外にも、私どもとしましてはあらゆる機会をとらえまして米側に申し入れをしております。必要ならばそのクロノロジカルな日付によって御説明しても結構でございますけれども、そういうことでございます。
  208. 大内啓伍

    ○大内委員 実はこのフォード新政策というのはきわめて重要な政策でございまして、ソ連もフランスも西ドイツも英国もカナダも、実はその当時それぞれ返事をきちっと出してきた。にもかかわらず、日本政府だけが回答しないとアメリカ国務省が公の記者会見で言っているのであります。じゃ、これに対して抗議されましたか。
  209. 大塚博比呂

    ○大塚説明員 お答えを申し上げます。  事実関係は私ただいまるる御説明いたしましたとおりでございまして、アメリカ政府がフォード声明の直後の新聞記者会見で、そういうふうに具体的に日本から返事がなかったというような事実は私どもとしては記憶いたしておりません。もし万一そういう事実がございましたらば、これは事実と違うわけでございますし、いまの事実は十月十四日付でもって小坂外務大臣の名前での回答が参っております。
  210. 大内啓伍

    ○大内委員 それらの事実関係につきまして私どもも一応調査しておりますので、そういう事実関係があれば後ほど資料として提出するように要求いたします。
  211. 坪川信三

    坪川委員長 外務大臣、お聞き及びのとおりでございますが、いいですね。
  212. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 はい。
  213. 坪川信三

    坪川委員長 さよう取り計らいます。
  214. 大内啓伍

    ○大内委員 実はカナダの問題もきわめて重要でございまして、一月十日ごろからウラン供給の停止が起こっていることは御案内のとおりであります。そして、もしこの状態が続いてまいりますと、二、三年後に原子力発電所へ燃料棒を搬入することが非常に困難になる。それからもう一つは、昭和五十五年ごろと予想される電力危機がだんだん決定化してまいりまして、国民生活に重大な影響を与えることも御案内のとおりであります。また、アメリカ政府直轄工場の濃縮操業スケジュールを狂わせることによりまして損害を与える結果、多額の違約金が請求されることにもなります。  たとえば具体的には、関西電力は三月からその鉱石を買わなければなりません。また、四月には東京電力がそれを買わなければなりません。これが入らなかったら具体的に重大な問題が起こるのでございますが、これは大丈夫という見通しが、通産大臣、つきますか。
  215. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま大内委員から御摘をいただきました問題は非常に重大な問題でございまして、今日も御指摘の一月から引き続きまして、関西電力におきましては三月に、東電におきましては四月に引き取りをいたす計画がございますが、本年一月から引き続いてカナダ側の輸出禁止の措置がございました。日本とカナダとの間では、原子力協定の改定につきまして、原則的な合意が得られれば当然解除されるものでございますが、現在目下交渉を続けております。二点ほどなお妥結をいたしておらない点がございますが、これは外交チャンネルを通じまして妥結いたしますれば、カナダからの引き取りの契約も履行される、かように期待をいたして、なお鋭意交渉を続けておる次第でございます。
  216. 大内啓伍

    ○大内委員 先ほど外務大臣は、一月から鋭意カナダとの交渉を行っているというお話がございましたのですけれども、実はこの問題は、カナダは二年前から提起をしておりまして、改定に応じなければウラン供給を停止する、こう警告をいたしまして、半年ずつ二度にわたりまして交渉期限を延期してきたのです。ところが、日本は、カナダはいずれにしてもウランを売らなければならぬだろう、ウランは売らぬなどということは言わぬだろうということから、これをずるずると引き延ばしまして、結局供給停止という最悪の事態を迎えた、これは日本外交の怠慢だと思いますが、外務大臣、いかがでしょう。
  217. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 先ほども申し上げましたが、七五年に、要するに二年前に申し入れがありました。それから日本といたしまして核防条約をどうしても上げませんといけないというので、その間、核防条約を上げることに専念いたしていたわけでございまして、この核防条約が上がりましてからまた交渉に移った、こういう経過でございます。
  218. 大内啓伍

    ○大内委員 総理、いまお聞きのとおりでございまして、カナダからのウラン供給の停止が続き、あるいはアメリカが新しし形で再処理の規制に入ってまいりますと、日本の原子力の平和利用は本当に壁にぶち当たるのでございます。これはやはり経済の安全保障の基本がまず第一に崩れてくる。つまり、必要エネルギーの確保が行えない。そしてさらには、核拡散防止条約を日本はせっかく批准いたしましたけれども、この意義というものが半減してくる。そしてさらには、わが国の原子力平和利用の構想が破綻する。つまり、核サイクルという日本の構想が崩れてしまうのです。そして三月の二十一、二十二日には日米首脳会談が行われようとし、この中でも当然その問題が論じられると思うのでございます。  福田総理は、日本の原子力の平和利用確保のために具体的にどういう構想をその首脳会談で提案されますか。要求されますか。主張されますか。
  219. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、アメリカの懸念というのはよくわかるのです。わかるけれども、わが国のような平和国家が原子力を平和的に利用するという立場、これにつきましてはアメリカにおいてよき理解をしなければいかぬ、こういうふうに思います。私は最善を尽くします。
  220. 大内啓伍

    ○大内委員 福田総理にどうか御留意をいただきたいことは、このカナダとのウラン交渉をめぐりましても、あるいはフォード新政策に対する日本の対応を見ましても、これは決して適切だとは言えない面があるわけなんです。ですから、日本外交のそういう面での怠慢については十分心を引き締められまして、これは政党政派の問題じゃございません、国民の、国家の利益を守る問題でございますので、どうかいままでのようなずさんな外交が行われませんように、ひとつよろしくお願いしたいと思いますが、決意だけ一言お伺いします。
  221. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 最善を尽くします。
  222. 大内啓伍

    ○大内委員 そこで私は、本当はもっとやりたいのでございますが、なかなか時間がございませんので、次の問題に移らしていただきたいと思うのでございますが、これまでの予算委員会の論議を聞いておりまして、朝鮮問題を中心とする北東アジアの平和構想というものが必ずしも立体的に出ていないように思うのです。部分的にはいろいろ出ている。しかし、日本政府が一体これから北東アジアの平和のためにどういう構想を全体として持ってそれを打ち出していくのか、必ずしも明らかになっていないように私は思うのです。そしてこれは単に日本のみならず、周辺諸国にそのことを伝える意味でも非常に重要だと思います。  これからアメリカは、カーター・ブレジンスキー外交が展開されてまいります。私もブレジンスキー氏とは何回かお会いしたことがございます。そのブレジンスキー、つまりアメリカの外交の推進者であるこの大統領特別補佐官は、日本外交について二つのことを指摘しています。一つは、日本外交というのは、具体的な問題になると、驚くほど明確さを欠き、あやふや、かつあいまいであると言っております。もう一つは、いつも日本外交というのは、アメリカの背後に隠れている、こう言っておるのでございます。  これからの日本というのは、世界景気の回復への貢献を初め、南北問題、北東アジアの平和の問題、たくさんの問題が要求されてきている。したがって、何か向こうから言ってくれば、それに対して受け答えをするという外交じゃなくて、もっと積極的な外交をおやりになったらどうでしょう。積極的な外交とは、国際的な重要な問題に対しまして日本の立場をまず鮮明にするということ、そして内外に示された日本の方針については、誠意を持って、責任を持ってそれを実行していく、そういうことが積極外交だと思うのでございます。福田総理は積極外交をやりたいとお考えですか。
  223. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ積極外交と言いますかね、とにかくわが国が持っておる力を世界の平和、世界の繁栄、この上に反映させる、こういうための積極的な姿勢はぜひとりたい、そういうふうに考えております。
  224. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、いま福田総理からそういうお言葉をいただいたのでございますが、まだまだ日本の外交は受け身の外交のように思われてなりません。たとえば在韓米軍の撤退問題に対する福田総理発言がその一つではないかと思うのであります。もちろん福田総理は、万般のことを考慮しながら、在韓米軍の撤退は基本的に米韓両国間の問題であり、日本は介入する考えはない、恐らくそうおっしゃっているのだろうと思うのです。そして私どももそれについてわからないことはない。しかし、福田総理考えてください、この発言で、在韓米軍の撤退という重要かつ具体的な問題について、日本政府というものは賛成なのか反対なのか全然わからないじゃございませんか。それともわからないようにしておくということが賢明な外交とでも思っておられるのでしょうか。両国間の問題だと突き放された。そして介入しないと突き放された。介入しないというのは、具体的にどういうことですか。
  225. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 介入しないというのは介入しないということですがね。私は別に突き放したとか、そういうばかりじゃないのですよ。朝鮮半島の平和というものがいま微妙な国際バランスの上に立っておる。このバランスが崩れることにつきましては重大な関心を持ち、また崩れないことを期待する、こう言っておるわけでありまして、決して傍観をしておるわけじゃないのです。
  226. 大内啓伍

    ○大内委員 両国の問題であることはもちろん間違いありませんし、そしてそれぞれ主権国家でございますから、日本がとやかく言うべき筋合いのものじゃないかもしれません。しかし、韓国の安全というものは、日本の安全にとって非常に重要な問題だ。それなら日本なりに、韓国というのはこういう状態であってほしい、もっと突っ込んで言われたらどうなんでしょう。介入しない。私は初め、韓国主権を尊重してそう言われたのだろうと思った。アメリカ主権を尊重して、日本は遠慮して福田総理は言われたのだと思った。しかし、福田総理韓国からしてみますと、そういう言葉は、何か自分たちの立場を尊重されたようで、やはり冷たいと思うのですよ。だって、現に介入しないとかなんとかとおっしゃりながら、モンデール会談で、福田総理、ちゃんとお話しになっているじゃございませんか。そしてこの間も鳩山外務大臣は、一月の十七日にピーコック・オーストラリア外相との会談において、在韓米軍撤退問題について、アジアの平和にとって早急の撤退は好ましくないとはっきりした意思表示を言っているじゃございませんか。意見を言っているのでございますから、介入しているじゃございませんか。賛成か反対か、はっきりしているじゃございませんか。どっちなんですか。外務大臣、どう思いますか。
  227. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 介入するということと意見を言うということは、いささか意味が違うように思うのでございます。わが国といたしまして、朝鮮半島の平和あるいは韓国の安全というような問題につきましても大変な関心を持っておるところでございまして、一時伝えられましたように、陸上軍が完全に撤退するのではないかというような、カーターさんがまだ候補の時代にそのようなことが非常に強く伝わりまして、方々にいろいろな心配が出たわけでございます。そういうようなことは大変危険なことではなかろうか、こういう考え方を私どもも持っていたわけでございます。先般、モンデール副大統領が見えましたときに、いろいろなお話がありまして、自分たちとしては、そのような非常な危険を冒すような、安全を損なうようなやり方は考えていないのだというようなお話があったわけでございます。そういうような経過から、私どもといたしまして、朝鮮半島の問題には、とにかくすぐ隣国のことでございますから、関心は持っております。しかし、どうすべきであるというような意見は言うべきでなかろう、こういうふうに考えている次第でございます。
  228. 大内啓伍

    ○大内委員 一月十三日、日米首脳電話会談が行われているわけでございますが、そのときに、カーター米大統領は、日米首脳会議で在韓米軍の削減問題を協議する、こう福田総理に伝えているはずでございます。協議するということは、この問題にかかわるということじゃございませんか。介入しないと言うなら、この問題は日本とは余り関係ございません、どうぞアメリカ韓国でやってくださいと言うのが普通の常識じゃございませんか。
  229. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その電話は私が受け取ったわけでありますが、そういうことは聞いておりません。
  230. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、日米首脳会談では、在韓米軍の削減問題については、福田総理としては、協議する意思はないということですか。
  231. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、アジア情勢全般について協議をしたいと思っているのです。意見の交換をしたいと思っています。その中に当然韓半島の問題が入ってくる、そう考えています。(「韓半島……」と呼ぶ者あり)朝鮮半島の問題が入ってくると思います。
  232. 大内啓伍

    ○大内委員 朝鮮半島の問題を議論されるならば、在韓米軍の引き揚げ問題がその中心課題じゃございませんか。それについて協議するということが介入じゃないのでございますか。介入じゃございませんか。
  233. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私のこの会談に臨む態度は、非常に明確なのです。介入はしない。しかし、朝鮮半島における微妙なバランスが破れることにつきましては、それが破れないことを期待する、こういうことです。
  234. 大内啓伍

    ○大内委員 それじゃ別の聞き方をいたしましょう。  それでは、日米首脳会談においてカーター大統領は、日本総理大臣福田さんとの間で在韓米軍の削減問題を協議したいと言っている。向こうでも言っておりますよ。たくさんデータはございますよ。そうすると、その問題が出たときに、日本政府としては、この問題についてはこう考えますよということはおっしゃいますか。
  235. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま申し上げたような趣旨のことははっきり申し上げます。
  236. 大内啓伍

    ○大内委員 私が聞いているのはそういうことじゃありません。在韓米軍の削減問題について、日本政府としてはこう思うということをおっしゃいますかと聞いているのです。
  237. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島における微妙なバランスが破れることがないように期待しておる、こういうことを明確に申し上げたいと思っております。
  238. 大内啓伍

    ○大内委員 何か奥歯に物がはさまったようで、よくわからないです、本当のところを言うと。これは新聞の記事で書きあらわしたって、なかなかわからない。しかし、二月七日の予算委員会答弁において、鳩山外務大臣はこうおっしゃっていますよ。韓国のバランスを阻害する急激な撤退は好ましくない、だが、長期的に、段階的に慎重に一部削減していくことに反対しているわけではない。削減問題について明確に日本政府外務大臣としての意思表示をしているじゃございませんか。はっきりこの問題に入っているじゃございませんか。外務大臣、どうですか。
  239. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 韓国政府と米国政府との間で、これはまず第一義的に決められるべき問題であるということはいささかも変わっていないわけでございます。私どもの意見といたしまして、われわれとしての考え方を持つことは当然であろう、こう思うわけでございます。
  240. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、大体わかってまいりましたが、たとえば東郷駐米大使はこうおっしゃっておりますよ。これは政府という名において言っておりますよ。「朝鮮半島では、南北両朝鮮の併存が現状では最も現実的な道であり、アメリカ韓国に存在し続けることこそ朝鮮半島における不安定な均衡の崩壊を防ぐ保障である。」これぐらい明確に在韓米軍の評価をやっている発言はございませんよ。総理大臣は先ほどから、意見は言うけれどもこの問題について介入するような発言はしないと言ったって、これ以上の介入の仕方がございますか。これ以上、日本政府の立場を明らかにする立場がございますか。私が申し上げているのは、何も介入するなと言っているのではないのです。この在韓米軍の引き揚げという、あるいは削減という重要な問題について、日本政府はこう思いますよと、素直に日本国民に対してもあるいは諸外国に対しても言うことが大事ではないか。東郷大使だって、外務大臣だって相当はっきり言っているじゃございませんか。  そうすると、お伺いいたします。いま私、読み上げましたこの東郷駐米大使、そして外務大臣、これは相当はっきりおっしゃっておりますが、この言っている趣旨には総理大臣は賛成なんでございますか。
  241. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 人の言うことですからいろいろ微妙な言葉を使いますが、終局的には私の言うとおりに、これは内閣の意見統一をはっきりいたします。
  242. 大内啓伍

    ○大内委員 何かよくわかりませんが、それじゃさらに申し上げましょう。防衛庁は在韓米軍問題に対する見解というものを三原防衛庁長官の了解のもとにまとめておられますよ。それは統合幕僚会議等が中心になりまして次のような重要な問題が少なくとも内部では討議されている。私は大変結構だと思いますよ、内部で討議されるのは。しかし、内部で討議されてそれが伏せられているなら、それはその問題に対して日本が差し出がましいいろいろなことを言っていることにはならない。しかし外部に出ている。どんなことが出ているか。「戦術核は全面的に撤退をしてもやむを得ない。」と言っているのですよ。そして二つ目には、「陸上兵力は、司令部機構を加え、最小限一個旅団の実戦部隊を残すことが適当である。」三つ目には、「米第五空軍の勢力が維持される限り、撤退してもバランスは崩れない。韓国の核武装は、米第七艦隊の核支援保障があれば、それは抑止できる。」在韓米軍の撤退に対する防衛庁の見解がだんだん固まってきているじゃございませんか。しかも、これが日本の新聞に出れば、韓国の方もそして北朝鮮の指導者の方も見る。総理は、介入しない、両国の問題だ、両国の問題だと言っているうちに、日本政府の閣僚やあるいは官僚の皆さんはどんどんどんどんそこから漏れていく発言をしているじゃございませんか。内閣は明らかに不統一じゃございませんか。もう一回統一見解を明らかにしていただきたい。
  243. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が先ほど申し上げておることが内閣の統一見解であります。
  244. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、他の閣僚が言っていることは全部言い過ぎということでございますか。福田総理、どうですか。
  245. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 各閣僚も違ったことを言っているのじゃないと思うのです。閣僚ですからいろいろ言葉が違います。しかし、結局私と同じことを言っている、こういうふうに思っております。
  246. 大内啓伍

    ○大内委員 私は冒頭に、私も民社党という党利党略を離れて、国家国民の利益を守るという立場から質問しますと申し上げました。ですから、そんな答弁は木で鼻をくくったような答弁です。だって北東アジアの平和、朝鮮半島の平和という問題は大変重要な問題でございます。そして日本もこれに対して大きなかかわり合いを持っている。だから、せめて鳩山外務大臣が言っておるように、あるいはすでに防衛庁長官が指示を与えて検討をしているように、その程度のことは総理としても十分検討をしております。大体そういう趣旨でこの問題を理解しております。しかし、この問題は両国の問題でございますから、その決定を変えるような差し出がましいことは申しません、そう言うなら私は素直な答弁だと思うのです。しかも、福田総理も御存じのように、日本という地位はいまやきわめて重大な地位にある。あなたがモンデール会談をやり、そしてカーターさんとの首脳会談をやってその問題を議論すれば、アメリカの政策に対して重大な影響が及ぼされていく。現にカーターさんはこう言っております。「駐韓米軍の撤退計画は、当事国である米国と韓国はもちろん、日本との事前協議を経て慎重に検討いたします。」つまり、日本の意見も聞いて、そしてこの在韓米軍の引き揚げ問題についてはアメリカの意思決定を行いますと言っているじゃございませんか。そこでカーターさんと福田さんが協議すれば、いま鳩山外務大臣が言ってきたようなことを福田総理が言えば、これはアメリカの政策に対したって重大な影響が与えられていくじゃございませんか。その意見を言うということは、それはそっちの問題でございますが、日本が勝手に向こうを向いて議論していますということとは違いますよ。だから、福田総理、もっと正直におっしゃってください。その程度のことは日本政府としても申し上げます、日本総理大臣で本当に朝鮮問題を心配しているなら、北東アジアの平和問題について心配しているなら、そのくらいのことを言ったっていいじゃございませんか。それは両国の問題だから知らないよ、介入しないよ、意見は申しますよ、そんな言い方じゃ国民は納得しませんよ。国会だって何か侮辱されているような感じがするじゃございませんか。いかがでしょう。
  247. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 東郷大使の発言とか私の発言がいささか出過ぎたような発言をしている向きがあります。東郷大使が政府という名前で演説したことについては、いささか――私はというくらいの発言であった方がよかったろうと思います。(発言する者あり)しかし、何分にもそこの点を言っておりますので、そこは私はと言った方がよかったのではないか、そういうふうに私は思います。これから言葉は気をつけなければいけませんが、ただいま御指摘がございましたが、私の発言総理大臣発言とはおのずから重味が大変違ってくるものでございますので、そういう意味で、総理大臣といたしましては大変慎重な発言をなさっておるわけでございますし、韓国としての立場も十分お考えの上御発言になっていることでございますので、私が総理大臣と全く違った考えをしているわけではないと思うのでございますが、発言におきまして総理大臣と私の間にいささか違ったニュアンスを与えるようでは、これは私が相済まなかったわけでございます。しかし、私よりもやはり総理大臣発言が非常に慎重になるということは大内先生も御理解を賜りたい、こう思う次第でございます。
  248. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、外務大臣はいままでのことは言い過ぎたというふうにお認めになるわけでございますね。どうでしょう。
  249. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私ども率直に、この朝鮮半島の問題を考えまして、急激な変更があっては困ると考えておりますし、また、力のバランスが崩れないようなことであれば、これは南にいたしましても北にいたしましても緊張が若干でも緩和する方向に行くことをこいねがっているものでございます。そういう意味で、微妙な力のバランスと申しますか、そういったものが崩れないようなことで、できますれば南北の緊張が次第に緩和の方向に向かうことをわれわれとしては当然のことながら期待をし、祈っておるわけでございますので、そういうふだんの考えていることが口に出たというふうに御了承いただきたいのでございます。
  250. 大内啓伍

    ○大内委員 先ほど若干言い過ぎた面もあったというよろなお話もございましたのでこれ以上深追いはいたしません。  ところで、この問題についていろんなアメリカの意見が日本にもはね返ってきているわけでございますが、ハーバード大学のライシャワー教授は「韓国から米軍が撤退し、韓国が共産化された方が、日本の政情はかえって安定し、日本に有利な状況ができる。」と申されておられます。これはその出典を明らかにしてもいいのでございますが、たとえばスタンフォード研究所のフォスター氏がそれをはっきり聞いておられます。日本外務大臣はこの見解についてはどういうふうに考えておりますか。
  251. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 突然のお尋ねでございますのでいま即座に申し上げる自信はございません。考えさせていただきたいと思います。
  252. 大内啓伍

    ○大内委員 まあそうでしょう。  そこでもう一つの問題についてお伺いをしたいと思うのでございますが、これまで、一九六九年の佐藤・ニクソン会談あるいは一九七五年の三木・フォード会談におきまして、御案内のような韓国条項ないしは新韓国条項というものが出されてきたわけでございますが、福田総理はこの過去の二つの韓国条項には大体賛成でございますか。
  253. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 基本的な認識は同一でございます。
  254. 大内啓伍

    ○大内委員 恐らくこの問題は日米首脳会談におきまして当然日本としても言わなきゃならぬところだと思うのです。これは言葉の使い方そのものもなかなかむずかしい問題でございますが、総理といたしましては、これまでの韓国条項にとらわれることなく、この問題について一つの意見を首脳会談で申される意思がございますか。
  255. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、先ほど申し上げたような趣旨で対処したい、こういうふうに考えております。
  256. 大内啓伍

    ○大内委員 そういたしますと、これまでの二つの韓国条項とは必ずしも同一の文言にはならないかもしれないけれども、これに近い形で首脳会談において福田総理の見解、日本政府の見解が表明されると理解してよろしゅうございますか。
  257. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日本側の見解はそのとおりでございます。
  258. 大内啓伍

    ○大内委員 二月十六日の上原委員質問に対しまして鳩山外務大臣は、佐藤ニクソン、三木・フォード声明は歴史的事実として尊重さるべきだが新しい時代に備えると言ったと伝えられております。これを普通の日本語で解釈いたしますと、時代も変わっている、情勢も変わっているので、韓国条項についても当然再検討が加えられ、新しい事態、情勢を踏まえて日本政府としては韓国条項を言いたいというふうに聞こえますが、外務大臣、そういうおつもりですか。
  259. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま総理大臣からお答えになったのと同じ気持ちでいるわけでございます。過去におきまして、佐藤・ニクソン共同声明、また三木・フォード共同声明というものが積み重なってきておるわけでございまして、恐らく今度福田・カーター会談というものが行われるであろうと思いますが、その結果がどうなるかは、これはいまから申し上げるわけにいきませんが、そういった時々の変遷というものはあるだろう、しかし、基本的な関係とか根本的な考え方は尊重さるべきものだし、そう変わらないものであろうというふうに考えておる次第でございます。
  260. 大内啓伍

    ○大内委員 そういたしますと、この韓国条項については、これまで政府が取り交わしてきたその条項については、時代的な背景を反映したものとしてそれなりに評価するけれども福田内閣としてはフリーハンドをもってカーター政権との話し合いに入る、大統領との話し合いに入る、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  261. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 共同声明が出ますが、それはそのときそのときにおける両首脳の認識を示しているわけでありまして、また、年月が経過した今日になりまして福田・カーター会談が行われるということになりますれば、その今日的時点における認識を両方が述べ合う、そういうことになろうかと思います。
  262. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、韓国条項についてもその情勢を反映した新しい表現というものが工夫されるというふうに理解せざるを得ないわけでありますが、例の福田・モンデール会談後に、これは二月十日でございますけれども、実は、アメリカ政府筋は、「日本政府は既に在韓米地上軍を将来、段階的に撤退させるという米新政権の基本方針については事実上、同意している」、こういう発表がなされておるわけであります。もちろんこれは大変短い会談であったと仄聞をいたしておりますが、福田総理は、在韓米地上軍につきましては、将来撤退されるであろうという認識を持たれたわけでございますか。
  263. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この会談は、物を決めるという会談じゃないのです。両方が意見を述べるというだけのものでありまして、したがって、どっちがどういうふうな意見を述べてそれに了承を与えた、こういうような性格のものじゃありません。アメリカからは撤退問題が述べられましたけれども、それに対しまして私は、先ほど申し上げましたような認識を述べた、こういうことでございます。
  264. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、その福田・モンデール会談にかかわらず、もちろんそういうものが積み重なっていると思うのでございますが、福田総理としては、カーター政権の在韓米軍の取り扱いに対する見通しといたしまして、やはり近い将来に段階的に解消されていくであろうというふうな見通しを持っておられますか。
  265. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ的確な認識はつかめませんと言った方がいいのじゃないでしょうか。
  266. 大内啓伍

    ○大内委員 やはり福田さんはお上手でございますから、なかなか出しませんけれども、しかし、この問題は、一つ一つ詰めてみますと、大体日本政府の輪郭というものは明らかになってくるわけであります。  私は、実はこの在韓米軍という問題を取り扱うに当たりまして、日本政治家としてその現場も見ないで議論することは無責任だと思いまして、零下十何度の中で韓国の最前線まで出かけ、そしてアメリカの地上軍を視察してまいりました。そのアメリカ責任者とも話してまいりました。そして同時に、その当事国である韓国の首脳がどういうふうに考えているのかも、実は直接会って聞いてまいりました。私は、これからは、やはり政治家というのはただ資料だけで議論するのじゃなくて、そういう姿勢が必要だと私自身考えたからなんであります。  そこで、私どももすでにいろいろな形で、南北の軍事的なバランスがどうなっているかということを検討いたしました。そしてその中で在韓米軍がどういう役割りを果たしているかということも検討しました。その中で幾つかの結論も私ども持っているのでございます。しかし、少なくともカーター大統領がその削減の対象としている一番大きな部隊は、言うまでもなく、これは三原防衛庁長官よく御存じでございますが、第二歩兵師団であります。これは一万六千人、その中に韓国兵が二千八百人含まれて、ソウルと休戦ラインの間に展開されている部隊なんであります。これはアメリカにおいても最強の部隊の一つでございます。この部隊につきまして、韓国のこの問題の最高責任者である徐韓国国防部長官は次のように言っております。向こうの言葉でございますから韓半島と言っておりますが、「米軍の存在は、韓半島の抑止力としてだけでなく、東アジア、西太平洋の安全に役立っている。世界的にみても、もし在韓米軍が撤去すれば、現在これに対抗しているソ連軍がワルシャワ軍にふりかわり、ヨーロッパの緊張を高めるかもしれない。」これが一つ。もう一つは「空軍力の強化など撤退の肩代りが考えられるかもしれないが、地上軍には代りえない。地上にあるということで、北の侵攻に対し米の介入をはかるということにつながってくる。その意味で地上軍は重要だ。」と言っておられますが、日本防衛庁長官は、この見解についてはどういう見解をお持ちですか。
  267. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 まずお答えをいたします前に、大内委員、寒冷の厳しい韓国において、現地の在韓部隊、韓国部隊等を十分視察され検討されたその御行動に対しては、私ども敬意を表しておるわけでございます。  いまお尋ねの韓国の司令官の申しました内容について、現在米軍自体が、先ほど総理なり外務大臣も申されたように、いま実際に撤退をいたします具体的な内容がわかりませんし、なおまたアメリカが今日まで申しておりまするように、韓国自体の安定的な体制を覆すようなそういうような状態の中では決して削減はしないであろう。そしてまたその規模なり時期、あるいは代替策等もある程度慎重に考えられてなされるであろうと私ども判断をし、しかし、その推移は先ほどお話しのように、朝鮮半島の安定に対しましても、アジアの平和という問題におきましても、きわめて重要でございまするので、十分な注視をし、その推移を実は関心を持って見ておるわけでございます。その時期に、いま御質問の見解を述べるということは差し控えさしていただきたいと思うのでございます。
  268. 大内啓伍

    ○大内委員 一月十一日、アメリカの上院軍事委員会において、ブラウン・アメリカ国防省長官は次のように言っております。「アメリカの地上軍の縮小に踏み切るのは当を得ている。」アメリカの国防長官は、アメリカの地上軍の縮小は構わない、こう言っているのでございます。アメリカがどういう形でやってくるかわからないから論評を差し控えたいと言っているのでございますが、少なくともカーター大統領は、アメリカの地上軍と核部隊については撤去してもいいのだということをはっきりおっしゃっている。そしてその地上軍の主力として第二歩兵師団というものがあることもはっきりしておる。そしてそのことを防衛庁もきちっと検討しておられる。常に防衛という問題は仮定の問題を想起しながら立てていくのが防衛じゃございませんか。第二歩兵師団が撤退したときには南北のバランスが崩れる、だから危ない、そういうふうに思っておられますか。
  269. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、具体的にその計画が示されない現時点でございまするし、それにお答えするわけにはまいりませんが、防衛庁におきましては、先ほどいろいろな御指摘がございましたが、私、長官自身は、総理の先ほど述べられました方針に沿いながら、しかし重大な問題でございまするので、その推移につきましては十分な研究をしておく必要があるというわけで研究いたしておりまするが、それが先ほどの御指摘のように外部に、皆様方にわかり、あるいは国民に心配をかけるというようなことがありまして、非常に私として責任を感じておる次第でございます。将来そういうことにつきましては、そういうことのないように、しかし十分な推移の注視をし、それに対して研究することは私、命じておることは事実でございまするけれども、その点はそういう立場で、いま具体的に御返答申し上げるということのできないことをお許し願いたいと思います。
  270. 大内啓伍

    ○大内委員 私、さっき読み上げましたように、防衛庁は、間違いなく陸上兵力についても司令部機構をある程度残して、最小限のものをちょっと残しておけばあとは撤退しても構わないという方針を検討していることは間違いない。そしてそれは完全に新聞にすっぱ抜かれている。韓国の人が見たらどう思いますか。アメリカの国防省が見たらどう思いますか。――ちょっと待ってください。まだ質問中です。そしてそういう問題については、まだ明らかにならないからいま論評する限りではない、言っていることとやっていることと違うじゃございませんか。  たとえば核部隊の問題についても、あなたの指令によって検討会が一月十八日持たれているじゃございませんか。そしてその検討会においては、核部隊を残しておく、つまり韓国における核部隊の存続というものは、北において核の配置がない現状においては有効だという結論を出しながら、モンデール会談が済んだ後になると、今度はさっき申し上げたような防衛庁の見解をひそかに取りまとめて、韓国の核部装は、米第七艦隊の核支援の保障があれば大丈夫だから、そんなものは取っ払っても構わない、短い時間の間で全く逆さまなことを言っているじゃございませんか。そういう無責任なことが日本の新聞を通じて国民の世論の中に入り、そして世界的にそれが知られていくのです。防衛庁長官、本当に責任を感じてくださいよ。あなたは本当に日本の安全保障や朝鮮半島の安全保障を考えるなら、もう少し責任を感じて物を言ってくださいよ。またやらしてくださいよ。いかがでしょう。
  271. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 韓国における米軍の削減という問題は重要な問題であるという認識はいたしております。しかし先ほど、私どもといたしましては、具体的に内容がなっていない事態、そしてアメリカ自身、朝鮮半島の安定を損うような体制ではなさらないという受けとめ方をいたしておる時点でございます。しかしその推移は、先ほど申しまするように大事なことでございまするので、勉強はいたしております。しかし、いまこれを庁議において取りまとめたというようなことは全然ございません。ただしかし、勉強いたしておる段階でそれが外部に出たということについては、先ほども申しまするように、長官としての責任を感じておりまするが、それが庁議決定をして、防衛庁の方針でこうでございますということは決してございません。その点だけは御理解賜りたいと思うのでございます。
  272. 大内啓伍

    ○大内委員 もちろん私は形式論を言っているのではございません。庁議として決定したかどうかという問題を言っているのじゃございません。しかし、少なくともこの在韓米軍という重要な問題について、防衛庁が検討することはあたりまえだと思いますよ。そしてそれに対して一つの方針を固めておくということも大事だと思いますよ。しかし、あなたの総理大臣は、この問題は両国の問題であって、日本は介入しないと言っている矢先に、あなたたちの検討している、つまり日本政府が固めるであろう一つの構想がどんどん出ていく、これでは皆さん二元外交になってしまいますよ。  それではもうちょっと事実関係を聞きましょうか。第二歩兵師団、これを削減することについてはなかなかいま言い切れないということでございますが、鳥山にアメリカの三一四航空師団というのがございます。これはアメリカのF4EあるいはF4D戦闘機六十機程度、いま南と北とのバランスは二百十六機対五百八十八機と言われるほど大変なアンバランスがある。それを埋めるために三一四航空師団というものが鳥山におる。これはちゃんと第二歩兵師団をバックアップしておりますよ。ではこの三一四航空師団をバックアップしている在日米軍基地はどこですか。
  273. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 具体的な兵力、なおまた配備等につきましては政府委員から……。
  274. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは結構です、私から申し上げます。このアメリカの空軍をバックアップしておりますのは、横田にございます在日米軍第五空軍並びに第七艦隊の艦載機、さらには沖繩の嘉手納に配置されております三一三航空団、この三つでございます。もし朝鮮半島に緊張が起こった場合に、この朝鮮半島にある在韓米軍三一四航空師団は在日米軍横田の指揮下にございますので、当然日本というのは自動的にこの紛争に巻き込まれる危険があると思いますが、いかがですか。
  275. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 仮定的なそうした判断に基づきますお尋ねについて、具体的にどうだというようなことを御意見申し上げることはできません。
  276. 大内啓伍

    ○大内委員 仮定の問題じゃございませんよ。これは指揮系統の問題でございますよ。現実に韓国にある在韓米軍というものの中の空軍については、横田にある第五空軍がその司令部を持ち、指揮下に置いているじゃございませんか。これは瞬時に起こる紛争の形態であることは、もう想像にかたくないことでございます。そのときにこれがバックアップすることになっているのでございます。自動的に巻き込まれるじゃございませんか。
  277. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 組織、指揮系統がそうであるということと、それからそうした問題が起こるというようなことにつきまして、いまそれを申し上げることはできませんし、またそれ自体は事前協議の問題でございまするから、当然米国からそうした連絡があることだと思うのでございます。きょう私が申し上げることは控えたいと思います。
  278. 大内啓伍

    ○大内委員 条約論でお答えになっておるようでございますけれども、これは恐らく事前協議、間に合いませんよ。それは三原防衛庁長官がよく御存じのとおりです。事前協議、やっている暇ございませんですよ、これは。  しかし、私はもうあと七、八分しか時間がございませんので、残念ながらこの辺である程度打ち切らざるを得ないのでございますが、総理、私はこれから日本政府というものは、北東アジア、朝鮮半島の平和という問題についてアメリカのカーター大統領がこう言ってきた、あるいは韓国政府がこう言ってきたということじゃなくて、日本政府というものはこういう形で北東アジア、朝鮮半島の平和を維持したいと思いますよ、こういう構想をやはり出していくことが重要だと思うのです。北朝鮮との関係は白紙だと言われておりますが、日韓条約を結びまして、北朝鮮についてはこれは白紙でございます。そういう答弁日本政府はこの国会で繰り返して言ってきましたね。では改めて聞きましょう。日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係は、日韓条約から言って白紙だとこれまで言われてきたのでございますが、この見解については福田総理はどういうふうにお考えですか。言ってきたでしょう、これは。
  279. 中江要介

    ○中江政府委員 政府が従来日韓基本関係条約を締結いたしましたとき以来、北朝鮮との関係については白紙になっているという答弁を繰り返してきておりますその意味は、日韓基本関係条約では、朝鮮半島の北の部分については何ら言及していないということでございまして、日本と北朝鮮との関係をどういうふうに今後取り扱いましょうとも、その場合に日韓基本関係条約は妨げにならない、こういうことを申し上げてきたわけでございます。
  280. 大内啓伍

    ○大内委員 そういたしますと、韓国との間に日韓条約を結んだように、北朝鮮との間にもその種の条約を結び得るということでございますか、法律的には。
  281. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問の背後には高度に政治的な判断がありますが、その点を除きまして純粋に法律的にどうかという御質問であれば、おっしゃるとおりでございます。
  282. 大内啓伍

    ○大内委員 総理、いまお聞き及びのとおりでございます。日韓条約が結ばれてから十年余たっておりますが、今日まで北朝鮮とは依然として白紙状態にあり、国交の正常化はもちろん実現されておりません。しかし、条約的にはそういう問題について日本政府としては留保をしている。そこで、日本政府の意思の問題でございますが、主観的に一定の条件が整うならば北朝鮮との間に正常化してもよろしい、国交正常化を考えてもよろしい、こういうふうにお考えでございましょうか。
  283. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は朝鮮半島につきましては、南北が平和統一をされるということが一番好ましい、その環境づくりをすべきである、こういうふうに考えておるわけでありまして、さあ、いま北との間に条約をどうするかというようなことになると、非常に微妙な問題でありまするから、その点は触れさせないでいただきたい、かように考えます。
  284. 大内啓伍

    ○大内委員 もう残されたわずかな時間でございますので、一まとめにお伺いをいたします。  朝鮮半島の平和を構築するための外交的な努力、これは大変これから重要な問題だと思うのです。ただ、南北朝鮮が互いに話し合って、そして問題を解決すればそれで済むといったような状況でないことは、総理も御存じのとおりでございます。第一、北朝鮮は韓国政府を認めておらないのでございます。そういう中で平和的に共存するような方向を見出せと言っても、これはなかなかむずかしい。したがって、そこにこそ国際的な枠組みという問題があると思うのです。ですから、日本政府としては、アメリカに対し、またソ連に対し、中国に対して、南北両鮮の統一ということを基本的な目標に置きながらも、それが実現されるまでの間、武力衝突が起こらないように、アメリカ、ソ連、中国に対して要請をしていくべきだと思いますし、また国交がなくてもアメリカと北朝鮮自身が話し合ったり、あるいは場合によっては、ソ連と韓国との間に日本政府が橋渡しをするというようなことも、これはなかなかむずかしいのでございますが、考えることが重要ではないか。そういうことをやるのが私は日本の外交だと思うのでございます。福田総理のこれらの諸問題に対する基本方針をお伺いをいたしまして、時間が参りましたので終了させていただきたいと思うのでございますが、どうか福田総理、その点についてできるだけ日本政府として親切なお答えをいただけませんか。お願いいたします。
  285. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまの御所見、私全く賛成でございます。ただ、事は急ぐというわけにもまいらぬ客観情勢でございますが、うまずたゆまずそういう目標に向かって日本外交を展開してまいりたい、かように存じます。
  286. 坪川信三

    坪川委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次回は、明十九日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会