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1977-02-15 第80回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月十五日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稲村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       川田 正則君    木野 晴夫君       笹山茂太郎君    始関 伊平君       白浜 仁吉君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       阿部 昭吾君    井上 普方君       池端 清一君    石野 久男君       上原 康助君    大出  俊君       小林  進君    佐野 憲治君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       武藤 山治君    坂井 弘一君       谷口 是巨君    広沢 直樹君       二見 伸明君    渡部 一郎君       大内 啓伍君    河村  勝君       高橋 高望君    寺前  巖君       浦井  洋君    大原 一三君       田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         公正取引委員会         委員長     沢田  悌君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         警察庁刑事局長 土金 賢三君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         行政管理庁行政         監察局長    川島 鉄男君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁計画・調         整局長     下河辺 淳君         国土庁土地局長 松本 作衛君         国土庁地方振興         局長      土屋 佳照君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務大臣官房長 松永 信雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         国税庁次長   山橋敬一郎君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      今村 武俊君         厚生省環境衛生         局長      松浦十四郎君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林大臣官房予         算課長     石川  弘君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省自動車局         長       中村 四郎君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         郵政省人事局長 浅尾  宏君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省行政局長 山本  悟君  委員外出席者         自治省行政局選         挙部長     佐藤 順一君         会計検査院長  佐藤 三郎君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         参  考  人         (日本道路公団         総裁)     前田 光嘉君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  大塚  茂君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   森山 欽司君     川田 正則君   藤田 高敏君     池端 清一君   浅井 美幸君     谷口 是巨君   矢野 絢也君     渡部 一郎君   河村  勝君     高橋 高望君   安藤  巖君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   川田 正則君     森山 欽司君   池端 清一君     藤田 高敏君   谷口 是巨君     浅井 美幸君   渡部 一郎君     矢野 絢也君   高橋 高望君     河村  勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。阿部昭吾君。
  3. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 総理大臣、 施政方針演説の中で、現代認識につきまして、根本的な転換をしなければいけないということを強調されました。しかし、いまこの委員会で審議をしております予算、どこを見ましても、根本的な転換をしたというふうに思われるものはどこにも見当たらぬのであります。私は、資源有限時代に入った、いろんな面で根本的な転換をと強調されておるわけでありますから、予算中身もどこか相当本格的な転換をしようとしておるのではないかという観点から、ずいぶん検討してみたのであります。どこにも根本的な転換というのが見当たらぬのであります。結局、福田内閣というのも、いままでと同じで、言葉はあるけれども、マンネリからの脱出は何もないというふうに思わざるを得ないのであります。たとえば減税の問題にしても独禁法の問題にしても、あるいはいまの政治腐敗をどうやって防止をするかという問題につきましても、ほとんどなるほどというものが出てきておらぬわけであります。これは施政方針のみならず、農林省などの予算案中身等を見ましても、どこか本格的な大きな転換というものを遂げているのではないかという期待を持って吟味をしてみたのでありますが、全然それがどこにもない。結局、福田内閣もいままでの延長でしかない。  この数日来、各省のエリート幹部といろいろ議論してみますと、政策には継続性ということがあるんだとうまいことを言っております。これをだんだん議論をしてみますると、なるほど政策には継続性が必要かもしれません。しかし、もっと詰めてみますると、役所のセクショナリズムというのかなわ張り主義というのか、根本的な転換は全然何一つやられていないし、やろうという内容はちっとも見当たらない、こういうふうに私はいまこの予算を概観して痛感するのであります。  そこで、具体的にお伺いしたいのでありますが、今日の人間社会の姿を考えました場合に、資本主義国家言葉をかえて言えば自由社会を守ろう、こうおっしゃるのでありますけれども、自由社会現状は一体どうかというふうに考えますと、社会的不公正はどんどん広がっておる。あるいはインフレや不況、こういう経済混乱がどんどん深まっていっておる。失業もどんどん進んでおる。いろいろな面で、人心の荒廃もなかなか深みから脱し切ることができないという状況にあると思う。  一方、福祉国家を旗印としております西欧諸国の中にも、福祉という面では、あるものを達成したかと思うのでありますが、しかし依然としてやはり失業もあり、経済混乱はなかなか脱し切れない。一方、東ヨーロッパ共産圏の国々を見ますと、憲章77に見られるような人権侵害や自由という問題が問い直される、こういう状況にあると思う。  いま、そういうように現代がいろいろ直面しておる中で、福田さんは言葉では根本的な転換を、その時代認識の上に立って具体的な対応を、こう言われておるのでありますが、具体的なものが何かあるのかといって見ると、これは言葉だけで、ちっとも——予算というのは、やはり理念政策の反映だろうと思うのです。そう言われるわけでありますが、中身は、われわれがうん、なるほどというものはちっとも出てきておらないという感を深くするのであります。  そこでお伺いいたしたいのは、政治腐敗を再び起こさせない、きのうの論議でも、日韓の癒着の問題その他新しい政治腐敗のいろいろな問題点が浮き彫りにされつつあるわけであります。したがって、政治腐敗防止する、何か福田さんの内閣で出てくるのかと思ったら、贈収賄罪法定刑を若干引き上げる、これだけであります。腐敗防止というものが、法定刑をちょっと引き上げるくらいでできるのかどうか。腐敗防止ということに対して福田さんは非常に強調されました。法定刑引き上げだけというのじゃ、これは話にならぬと思うのであります。福田さんの訴えておる施政方針理念一つ限って言えば、政治腐敗を断ち切る。そこで、もっと準備をされておるものがあるのじゃないかと思うのであります。お聞かせをいただきたい。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、ロッキード事件ですね、これは非常に大きな反省の資料としなければならぬ、こういうふうに考えております。つまり、まず第一に、ロッキード事件徹底解明である。これは事件として徹底的に解明するということが非常に今後のためにも大事なことである。しかし、ロッキード事件というのは、私の認識によれば、これはただ単に偶発的に起こってきたのじゃない、これは根があって出てきた、その根をえぐり出すことが大事である、こういうふうに考えるわけであります。  その根というのは、一つはやはり政治が金に流されるというような金中心政治運営、そういう思想に対する反省、つまり、その面では大事なことは、一人一人の政治家姿勢の問題にある、こういうふうに思います。それから同時に、社会がやはり金、金、金という世の中であってはならない、こういうふうに思うのです。私は連帯と協調と、こう言っておりますが、やはり助け合い、そういうところに非常に貴重な人生の行動指針というものがある、こういうふうに考えるわけであります。やはり社会も目を光らせて、そうして正しくない政治を監視するというような風潮になってもらいたい、そういうふうに思います。  それから、制度面からもいろいろ問題があると思う。そこで、行政のあり方、こういうことも再検討しなければならぬ。それから、法的に何かという問題も検討しなければならぬ。法的にといいますと、いまお話しのような贈収賄罪法定刑の問題もあります。  それからもう一つは、私は金のかかる政治根源選挙にある、この選挙制度というものを何か各党合意を得て、金のかからないきれいな選挙をできるような仕組みにしたい、こういうふうに考えておるわけであります。まあこれは自由民主党だけの考え方でやるのは妥当でない、これは各党の共同の土俵でございまするから、各党相談し合って、そういう方向で何かきれいな、そうして金のかからない選挙というものができるんじゃないか、そんなふうな考え方をいたしておるわけであります。
  5. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで、具体的にお伺いいたしますが、選挙制度を変えるということについては各党合意ということを強調されておるわけです。しかし、たとえば参議院選挙は衆議院と違って刻限が決められておるわけです。これは総理大臣、そこで依然として全国区との絡みを強調されておるだけであります。問題は、従来の経過から言って、すでに裁判の訴訟等にもなっておる問題であります一票の重みが違うという面で、地方区の定数是正だけでも今度の選挙に間に合うようにやろうということは当然のことだろうと思う。そういうこともすべて全部ずるずる先へ引きずっていこうという姿勢に終始をしておるというふうにしか見ることができないのであります。  それから、金のかかる選挙、金のかかる政治運動、確かにそのとおりであります。それがまた今日の汚職腐敗を生む温床であったことも事実だろうと思う。そういう面で腐敗根源は、やはり企業献金をやめる、もっと大胆に言えば、政治資金個人献金に限る、こういうふうに踏み切っていくことが、福田さんのおっしゃる根源的な転換をということを言葉で言えば——福田さんはなかなか言葉はいいことを言っているのであります。たとえば、私はまだ印象に深いのでありますが、幹事長のころ、だれよりもだれよりも農民を愛すとか、あるいは根源的な転換とか出直し的改革とか、言葉はずいぶんございました。私はやはり福田さんの内閣は何かやるのではないかというふうに思っておりました。ちっとも態度で示されておらないのであります。行動をもって、事実をもってこれを示していこうというものは何も出てきておらぬように思う。したがって、政治資金個人献金に限る、この踏み切りはやはり一つの、うん、なるほどというものではないかと思う。  あるいは、確かにそうは言っても長い経過があると思う。西ドイツにおきましては、政党の財政を見ますると、党員の負担する党費というものが、保守党もまたいまの与党であります社会民主党も大体四〇%以上、そのくらいにいっておるのであります。それから選挙補償金制度、これが三、四〇%程度。寄付というものの割合は非常に少ないんですね。したがって、たとえて言えば、この西ドイツのような制度というものをどういうふうに認識をされておるか。とにかく根源的な転換出直し的改革をやろうというならやはり一歩前へ進まなければ、言葉だけどんなに言ってもどうにもしようがないのじゃないかと思うのであります。したがって、これはぜひひとつ総理大臣の、なるほど福田さんやるなと、こういうふうにわかるような、言葉だけじゃない、事実をもって示していただきたいというふうに思います。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、金のかからない選挙、これは非常に熱心なんです。何とかして金のかからない選挙制度を確立したい。それがどういう形になるか、これは問いません。小選挙区制、比例代表制、そういうのがいいとかなんとかいろいろ議論ありまするけれども、要は金のかからない選挙制度である、そういうふうに考えておるわけなんです。  そこで、金のかからない選挙制度というものができますれば、私は選挙資金制度は非常に公明になると思うのです。もう企業献金はやめたらどうだというようなお話がありますが、そんな問題はすっ飛んじゃいます。いまお話しのような国家政党活動費を補償するというようなところまで行き得るのだろうと思うのです。そうすれば、国家資金政党はその政党活動を運営するというようなことになる。政治資金問題というのは起こらない、そういうふうにもなり得るわけなんであります。そこで、その根源は何だというと、金のかからない選挙制度を一体どういうふうにするか、こういうことにあるわけでありまして、これはぜひとも各党各派、自分の立場というものもありましょうけれども、それを乗り越えてぜひひとつ胸襟を開いて話し合ってもらいたい。私の念願でございます。
  7. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 くどいようですが、お話としてはわかるのです。しかし、総理大臣はいま急に総理大臣になったのじゃないのです。ずっと長期にわたって日本政府与党の中枢におって、そうして今日、総理大臣日本政治責任者になったわけであります。したがって、いまの御答弁ならば、いままでずっときておったものの域からちっとも一歩も前進しておらぬと思うのです。  畳み込むようですけれども、定数是正は今度の参議院選挙までには間に合いません、やりません、こういうことですか。それから、企業献金はやめるということももっとずるずる、いろいろ相談しなければだめです、こういう意味ですか。あるいはさっきぎくっとしたのでありますが、小選挙区制などということだけ大変強調して言葉にされたのですが、そういうことも考えておる、こういうことなんですか。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 参議院定数是正、それこそ各党各派で早急に相談をしてもらいたい、こういうふうに思っております。また、小選挙制度のことにつきましては、私はさっきはっきり言ったじゃありませんか。それは別に考えているわけじゃないんだ、相談の結果そういうことになれば、それも一案だということなんで、要は金のかからない清潔な選挙である、そういうことを私は意図しておる、こういうふうに御理解願います。
  9. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 考えてみますると、政治最高責任者としての、施政方針で表明されたような、強調されたような根源的な転換、そういう言葉のようなリーダーシップ、政治的指導性というものが、ただいまの御答弁では感じ取ることができないのです。  たとえば、一つの意見として申し上げました西ドイツのような制度、これはどうですか、選挙補償金制度のようなもの。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 金のかからない選挙制度が確立いたしますれば、私は一案だと思って、私の頭の中を常に去来している問題であります。
  11. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 一案ですね。それは検討を始めますか。
  12. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それこそ各党各派相談してもらいたいという中身一つでございます。
  13. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 腐敗防止汚職防止ということについて、現状の段階では法定刑引き上げだけ、次の方法として——恐らくこれだけ日本政治の根底を揺さぶった、ある意味では日本政治の根幹が揺らいだ大問題であります、また揺らぐかもしれない、揺らぎつつある大問題でもあります。したがって、この法定刑引き上げだけというのではいかにもお粗末に過ぎると思うのであります。総理大臣の方ではもっと具体的な、ただ政治家のモラルや何かだけにゆだねられる性格の問題じゃないと思うのであります。したがって、腐敗防止汚職防止という、制度としてしっかりしたものをつくるということは、これまでも相当長い期間、日本政治の屋台骨を揺さぶった問題でありますから、日本政治最高責任者となるまでの間にいろいろな想を練っておられたんじゃないかと思うのであります。しかし、いま今度の国会で福田内閣が登場いたしまして出てまいりましたものは、法定刑のちょっぴりの引き上げという程度では、ちょっと国民は納得しないと思うのであります。いろいろ考えられておることがありますれば、お示しをいただきたい。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、総合的にその問題は考えておる。その中で私が一番重要視しておりますのはこの選挙制度なんです。つまり、金のかからない政治というふうにしなければならぬ。その金のかからない政治というかなめは選挙制度だと私は思う。それで、何とかして金のかからないきれいな選挙ができるような制度改正を行いたい、こういうふうに考えておるのですが、これは事選挙に関係しますから、私ども自由民主党立場だけで物を考えることはできません。そこで、私は党首会談でも申し上げたのですが、これは何とかして各党各派相談をするようにしようじゃありませんか、こういうふうに言っているのです。この問題が片づけば、あるいはドイツの制度を採用する、そういうようなことも有力なる案として考え得られましょうし、政治資金の問題も画期的な改正がなし得るのではあるまいか、そういうふうに考えております。
  15. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 小選挙区制というものが金のかからない選挙である、そういうニュアンスのことを言われるように思うのでありますが、私の認識では、ある意味で言えば、首長選挙などは小選挙区であります。それでも大変に金のかかっている例が多いのであります。私も長い間選挙をやってきました。私は物心つきましてから選挙以外のことをやったことがないのであります。しかし、私は選挙違反というものをいまだかつて経験しておらぬのであります。これは私のささやかな誇りなんであります。そこで、小選挙区、首長のように狭い区域で激突をする選挙で金がかからぬか。そうじゃない。いろいろな金のかかる問題は起こっておるのであります。したがって、小選挙区になれば金がかからぬという認識は、これは的外れではないかというふうに私の経験では思っているのであります。したがって、もっと政党本位の選挙——政党本位の選挙にしても、そうすると小選挙区がいいじゃないかという御意見が出てくるのだと思いますけれども、しかしそれでも選挙については、首長選挙のような例の場合でさえも莫大な金のかかる選挙をやっておる例が非常に多い。したがって、そこの基礎をどのように押さえるかということを制度的に確立をしなければいけないのだと思います。いま腐敗防止汚職防止という国民が最も注目をしておる課題について、わずか法定刑引き上げだけというお粗末な今回の問題の提起のされ方は非常に残念でなりません。  そこで、時間の関係で次に移りますけれども、農業問題であります。  先ほど申し上げましたように、福田さんは、かつて幹事長時代に米価大会に行かれて、だれよりもだれよりも農民を愛すという有名な演説をされました。だれよりもだれよりも農民を愛す総理大臣が今度生まれたのであります。しかし、いま生まれたのではなくて、あれ以来ずっと政府与党の中枢の場に立っておられた総理大臣であります。いま一体農村は、福田さんはだれよりもだれよりも愛すと言われましたけれども、どういう状況にあるか、とにかく惨たんたる状況であります。出かせぎ、冷害、嫁飢饉。最近は、今度政府がしきりに言われました、ぼくらもそれは賛成でありますが、米以外にもっと多角的、重層的な農業の形態をつくらなければいけない。やってきましたけれども、最近豚肉などはキロ当たり五百三、四十円くらいに落ち込んでおる。どうにもこれは成り立たぬのであります。したがって、いろいろな面でこの農業は、だれよりも愛されたはずの農民が、農村が、非常な困難な状況にいまあるわけであります。  そこで、今度の予算の中で、農業政策の分野では何か、うん、なるほど変わったなと思うような点が出るのではないかというふうに、大変にしさいに、何か前進的な部分はないのかというので私は検討してみましたが、何にもありませんでした。何にもない。いままでの全くのあの延長でしかないのであります。たとえば、こういう時期ですから、基盤整備などという分野ですね、これはもうこの不景気でもありますから、ちょうど五十年前の世界の不況のときにアメリカにおいてニューディール政策がとられたように、農業の分野で言えばそのあたりに徹底的な力が入れられるのではないかという期待をしたが、それも何にもない。いままでと全く同じであります。  それから、食糧自給力を高めるということを言われる。高まるのかというと、穀物の自給率などは三八%を割ろうとしておるのであります。私の郷里の東北なんかは農地は一年に一遍しか回転しない。こういうところに裏作でも相当広い面積をやって、これで緑をやろうといえば気候的に無理ですから、えさ栽培でもやらせようとするような政策でも少し、年次計画で百万か二百万ヘクタールくらい全日本にわたってやろうとするのか。米は依然として過剰基調にある。そこで米からほかのものへの転換というものを本当に大胆にやるのであろうかといえば、それもちょぼちょぼなんであります。どこを見ても、うん、これで今度はいよいよ農業の部面も大きな転換をやろうとしておるんだなというふうに感じられるようなものはどこにもないのであります。これは私は、演説やなんかでどうなるという問題ではなくて、やはり政策として、予算として、事業として、実践を通してやっていかなければ解決のつかぬものだと思うのであります。  総理大臣、私はいま農業政策の問題を言っておりますが、農業政策のみならず、三木内閣から福田内閣になったならば、何か農政なら農政の分野で一つの大きな転換があるのじゃないかという期待をみんな持っておったと思うのです。全然それはないですね。あるとおっしゃるのなら、ここはこの通り変えたのだということがありましたならばお示しをいただきたい。私はしさいに検討いたしてみましたけれども、残念ながら福田さんのおっしゃる大転換というのはどこにもない。あったらひとつお示しをいただきたい。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一つ一つの施策を見れば、先ほどあなたもお話をされておりましたが、これは継続性というものがありますから、そう目立って変わってはおらぬかもしれません。しかし大きく見てもらいたいのです。木ばかり見ないで山を見てもらいたい。山の姿は大きく変わろうとしているのですよ。資源有限時代に対応するわが日本社会、また、その中で協調と連帯という活動をし、そういう方向で大きく日本政治が変わりつつある。これはひとつお認めおき願いたい、かように考えます。
  17. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 ぼくは大きくも見ましたし小さくもみんな見てみたのです。どこも変わってないのですよ。変わったのは言葉だけなんです。三木さんは対話政治をやりました。福田さんは協調と連帯。対話政治と協調と連帯というのは一体どこが違うのか。  政策継続性がなければならぬ、そのとおりだと思うのです。だけれども、この継続性という言葉の中に全部役所のセクショナリズム——予算の時期になると、各省、各局、各課、自分のところがどうなるかだけなんですよ。そこに総理大臣なり農林大臣が、今回はここに、基盤整備なら基盤整理に全力を挙げるんだ、あるいは価格政策なら価格政策の問題に全力を挙げるんです、ほかのものはことしはちまっと犠牲だという大胆なリーダーシップがなければ、総理大臣のおっしゃるような木を見て森を見ないなんて、そんな言葉だけどう言ったって——私は木も見たし森も見てみたんです。みんな同じなんですよ。役所の連中と当たって、ちっとも変わりばえしないじゃないかと言ったら政策継続性。さらに突っ込んでみると、日本の農政をどうするかじゃなくて、わが局、わが課がどうなるか、これだけなんですよ。  ぼくは今度の、大転換やろうという施政方針ですから中身を見たら、あたかも私が木ばっかり見て森を見ないみたいなことをおっしゃいますが、そうじゃないのです。私だって選挙を闘い、政治運動を闘っているわけですから、木も見、森も見、いろいろ見なければ政治運動をできないわけであります。ちっとも、全然どこも変わってない。全部総花でマンネリで、転換は何にもないのです。もしここは変えたのだというところがあったら、農林大臣、ひとつ農政の面でお示しいただきたい。変えたというその予算中身も、端的にひとつ時間かけないで。
  18. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 農政を進めるに当たりまして、食糧の総合的な自給力を高めていきたい、そういう観点から、米、稲作復帰志向、これが非常に強いわけでございますけれども、麦でありますとか大豆でありますとかあるいは飼料作物でありますとか、そういう国として必要な作目の総合的な自給力を高めてまいる。また、そのためには日本農業の体質を強化をする。そのためには農業基盤の整備等に力を入れてまいる。さらに、生産体制、価格の問題、いろいろ総合的な施策を進めてまいらなければならぬわけでございますが、五十二年度の予算におきましては、この生産基盤の整備を図るということに重点を置きまして、一般公共事業費が平均として二〇・七%程度でございますが、農業基盤整備には二二・四%と、一般の公共事業費を上回る相当の基盤整備の予算を確保をいたしました。  さらにまた、総合農政の観点から水田の総合利用対策というものを進めるために、転作等に対しまして特別加算金、そういうものも強化をいたしております。  また、農業の担い手である農林漁業者並びに後継者の育成確保、そういう面につきましても特段の意を用いたつもりでございます。
  19. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大臣、特段の意を用いたなどというふうにはぼくは言えないと思うのです。同じなんですよ。  そこで、農協というもの、これは政府で自由になるという筋のものではありません。農協というものの進路を一体どういうふうに考えていらっしゃるのか。  その前に農林大臣、農協法第一条に何と書いてあるか、ちょっと認識を伺いたい。
  20. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私詳しく見直しておりませんが、私も国会に出ます前、漁業協同組合運動を全漁連におりましてやっておりました。そういうことで農協の運動も漁協の運動も同じような協同組合の立場に立っておるわけでございます。農漁民の協同の組織として経済活動、特に販売、購買、信用事業等の協同化を進めて農民、漁民の生活の安定確保を図る、さらにまた、生産面についても指導体制を強化をして生産の協同化、能率化、そういう面にも協同組合は農民のために働いていかなければならない、そういうぐあいに認識をいたしております。
  21. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大体七十点の御答弁と言っていいと思うのであります。  確かに漁協と農協と同じような協同組合の理念を持っておらなければならぬわけで、いまの農協のありようというのがこの理念に合致しているであろうか。  私は現地の農協の幹部や組合員の皆さんといろいろな議論をいたします。そうすると、農協本来の目的は、やはり生産活動というものに最も重点が置かれなければいかぬのです。いま生産活動に全力を投入できる状況にあるかと言えば、そうはいかぬのです。それよりかは、農協がスーパーのようなことをやったり、組合員の購買活動、物を組合員に買わす方のことだけが非常に先行して、組合員の生産と所得をどう伸ばすかというふうなことなど余り力を入れられぬという状況にあるのです。なぜか。たとえば、米だけじゃいかぬから養豚をやりなさい、あるいは肉牛をやりなさい、果樹をやりなさい。価格、その他流通、みんな政策的には非常に弱い。ですから、農協がそういう生産面に組合員を指導いたしますると、政策が確立されておりませんから非常に不安定である。だから、それよりかはやはり全部流通面に、購買活動やスーパーやそういう方に行った方が、組合指導者というのは、組合員は赤字になっても組合は黒字ですということになる。したがって、この農協の進路というものは——少なくとも日本の生産農民の一〇〇%に近いものを組織しておるのであります、この農協を、いまのように政府が自給力を高めようというならば、高める政策にしっかりと結合するようなやり方が出てこなければいけない。それが実際は何にもないでしょう。ばらばらである。今度の政策面でも総合的——総合的というのはこれは大変無難な言葉なんである。この総合的というやつをもう一遍分解すると、やはり各局、各課のセクショナリズム、その美名のもとに何とはなしに惰性、マンネリの中で事がやられておるという性格になっておると思う。こういう時期には、やはりもっと根本的なありようを変えていく。今度の福田内閣の、また鈴木農政の中で結局やはり総合的であり——総合的というのは総花的なんだ。こんなときにはここで変えるのだぞという何かが、私から言えば、たとえば基盤整備の枠を徹底的に広げていく、そうすれば、それは物価高なんかにはね返りません。いまの冷え切っておる農村の中で行われる基盤整備事業ですから、ある意味で言えば、出かせぎの問題や不況の問題や、こういうものを大きくサポートすることになるでしょう。ちっとも、同じでちょぼちょぼなんですよ。あるいはこれからのたん白資源、農林大臣は水産の方の第一人者ですけれども、これが非常にむずかしい状況になってくる。そうすれば、日本の畜産の問題をどうするかということは真剣に考えなければいかぬでしょう。しかし、えさは全部輸入なんです。こういう状況でえさの自給などをどういうふうに達成していくのか。たとえば、私が端的に言うとすれば、裏作なんという問題も真剣に考えてみなければいけない。それを思いつきじゃなくて、やはり五カ年計画で百万ヘクタールとかあるいは十カ年計画で二百万ヘクタールとか、そのくらいのえさをやっていくとか、何か出てくるんじゃないかと思うと、何にも出てこない。言葉は総花。もっと言えば、マンネリ。そして各局、各課、全部なわ張り主義。これはちっとも破れていないのですよ。次にこれを破っていくという方針があったら、ひとつお聞かせをいただきたい。
  22. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 いまの農協のあり方について阿部さんから御指摘がございました。私も、最近における農協が流通面等に重点が置かれて、生産面の指導あるいは生産の組織化、特に兼業農家の保有しております農地等を農協の指導のもとにこれを集約し、効率的に経営をしてその生産を高めていく、そういう面の生産活動、これはぜひ農協運動の大きな柱として推進を願いたい。そういうことで、五十二年度予算におきましても、農協の生産組織化の推進ということにつきまして助成の措置を講ずるように予算措置もいたしておるところでございます。  なお、足腰の強い農林漁業をつくるというために、土地改良等の生産基盤の整備あるいは林道でありますとか農道の整備でありますとか、あるいは漁業におけるところの沿岸漁場の開発整備事業でありますとか、そういう基本的な基盤整備の面に、苦しい、厳しい財政事情の中ではございましたけれども、できるだけの予算の確保ということに努力をしたつもりでございます。  なお、畜産の振興の問題、これはたん白食糧の給源として非常に大事でございますが、畜産三団地という新しい予算の確保もしたわけでございます。  御指摘の草地の造成、改良、そういう面にも今後裏作の問題を含めまして努力をしてまいりたい、このように考えております。
  23. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 総理大臣、ひとつ御提案をしたいのでありますが、土地改良十カ年計画があります。これがことしで五年目でありますが、ことしを加えてちょうど三二、三%だろうと思います。この土地改良基盤整備の十カ年計画は改定すべきだろうと思います。そして、こういう不況期にやはり相当集中的に大胆な基盤整備をやっていくということが必要だと思います。それから裏作といったようなもの、これを思いつきでやるのじゃなくて、五カ年計画ないしは十カ年計画で相当大胆なものを進めていくべきである。  それから第三。いま大体日本の農用地が六百八十万ヘクタールくらいではないかと思います。しかし、この雨にも恵まれております日本の国土の中では、もう二百万ヘクタールくらいの農用地の造成は決して不可能ではない。そういう意味で、農用地造成の長期的な計画、そして年次的な目標、こういうものも持つべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  24. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 農林大臣によく検討していただきます。
  25. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 基盤整備の十カ年計画の進捗状況につきまして、阿部さんお触れになりました。昭和四十八年から十三兆円という計画で進めておるわけであります。ところが、御承知のように石油ショック、総需要抑制政策というような時期に当面をいたしまして、確かにおくれておりまして、その進捗率は三二、三%になっておるところでございますが、しかし、五十二年度の予算べースでまいりますと、この十三兆円の計画は、計画年次におおむね達成できるものと私は考えております。ただ、御指摘のように物価、賃金、その他工事費が単価が上がっておりますから、目標の面積、これはなかなか容易でない、このように考えておりますが、今後単価等の面を十分配慮しながらこの長期計画をできるだけ達成できるように努力をしてまいりたい、このように考えております。  なお、裏作を含めて必要な作目の日給力を高める、そのためには中長期の計画等も立てる必要があるのではないか、こういう御指摘でございますが、ただいまの御示唆に富む御意見をも参考にいたしまして十分研究してまいりたい、このように考えております。
  26. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 米価を中心とする価格対策の問題などいろいろございますが、時間がございませんので、備蓄計画という問題ですね。これは私は、もみ貯蔵方式というものを検討すべき時期。もみをもって貯蔵する。そうでないと、これは農林省の役人の頭だと思いますけれども、古米、古古米を抱え、これがもうただ同然のものになってしまった、したがって、備蓄というのはある限度ということをおっしゃるのです。総理大臣施政方針で強調されておりますように、私はいま全世界的に、食糧問題というのはオイルの問題、油の問題と同じくらい次第に重大な状況に入りつつあると思うのです。そのときに、日本が備蓄し得るものはもう米以外のものはほとんど考えることができないと思うのです。考えたとしても全体の食糧経済の中に影響を与えるような備蓄は困難。備蓄をやろうと思えば、外国から工業生産品の輸出の見返りにいろいろ責め立てられて持ってくるもの程度のことにしかならない、そして国内のいろいろな農産物価格をコントロールするためのことにしかならない。そういう意味で、米は相当大胆な備蓄が可能な客観状況にあると思うのです。これをもみをもって貯蔵していく。こういう方向に一歩踏み出すべき時期に来ていると思うのです。農林大臣、どうでしょう。
  27. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 米の備蓄の問題でございまして、これは昭和四十六年当時のような冷害等の大不作、そういう場合を想定いたしまして、大体あの当時八十万トンぐらいの減収があったように聞いておりますが、二カ年分ぐらいの備蓄をする必要がある。国民の皆さんに御不安を与えないようにということでございますが、私はそういう観点に立ちまして、米の備蓄量は大体二百万トン程度が適当である。これは古米の流通の問題をもあわせ考えまして二百万トン程度。ところが、現在五十一年米穀年度末におきましては二百六十万トンの在庫米があることは御承知のとおりでございます。  そこで、備蓄につきましては、いまもみで備蓄したらどうかという御提案がございましたが、最近は、低温倉庫並びに準低温倉庫というものが大部普及をしてまいっておりまして、もみで備蓄いたしませんでも品質を損ねることなしに十分備蓄できる。もみの場合だと約倍の量の倉庫を必要とする、そういうような効率の問題もございますので、低温倉庫並びに準低温倉庫を整備しつつこの備蓄に万全を期していきたい、このように考えております。  また小麦につきましては、大体百万トン程度の備蓄があれば一応御不安を与えないようにやっていけるのではないか、こう考えておりますが、現在は八十万トン程度の備蓄をいまやっておるところでございます。その他、えさでありますとかあるいは木材の備蓄でありますとか、そういう面にも意を用いて、努力をいたしておるところでございます。
  28. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私の県はサクランボの特産地であります。これが米国からの輸入の問題がこの近年毎年毎年生産者に非常な不安を与えておるのであります。こういう問題が毎年毎年生産者にとって不安を与えるというようなあり方は、先ほどのお話じゃありませんけれども政策継続性とかいろいろなことを言われましても、農業の場合には、特に果樹のような場合に切りかえはそう簡単にいかぬのであります。したがって、相当長期的なめどを持たなければやっていけないわけであります。したがって、こういう問題を毎年毎年生産者が、ことしはアメリカからの輸入があるのじゃないかと言って心配しなければならぬというありようは私はおかしいと思うのです。こういう問題、ここ向こう五年なら五年は心配なし、あるいは向こう十年なら十年は全然心配ありません、アメリカの方は日本では使ってはいけないと言っておる農薬などを使っておって食品公害のおそれもあります、だからここ五年なら五年、十年なら十年は絶対にだめです、こういうぐあいにしっかりした確たるものがないと、毎年毎年どのようになるのかわからぬといったようなことは、これはいけないと思うのです。そういう問題、いま私は私の郷里のこのサクランボ問題を出しましたけれども、ずいぶん方々にいろいろな例があるのであります。したがって、やはり農林大臣はもっとこの作目の種類からいって、長期的に生産者が確信を持てるようなやり方をすべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  29. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 生産農民の方々に安心して農業生産にいそしんでいただけるようにする、これがやはり農政の大きな基本であると私、心得ております。したがいまして、助成の面その他につきましても単年度で打ち切るということなしに継続的にやってまいる、そういう方向で進めておりますが、具体的な問題として山形県等で生産をされますサクランボの問題に関連いたしまして、アメリカ等からのサクランボの輸入についてコドリンガという害虫の殺虫の問題に絡んで、この輸入の問題がいろいろ論議をされておることも承知をいたしております。これはやはり食品検査の面からいって非常に慎重の上にも慎重を期すべき問題だと心得ておりまして、今後私としては、国内の生産者の利益ということも十分頭に置きながら慎重に対処していきたい、こう考えております。
  30. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで、この農業問題で総理大臣一つお伺いしたいのでありますが、一体、日本の農業や農村、農民をどういうふうに考えるのか。言葉で言えば、だれよりもだれよりも愛すなどと言いましたけれども、あれ以降、相対的に日本の農業、農村の位置というのは日本社会全体のいろいろなジャンルの中でだんだん立場は弱まってきている、不安な立場にじりじりと追い込まれていると思うのです。じゃ一体、この農業と農村は日本社会にいままでどんな役割りを果たしたのか。私から言わせますと、お亡くなりになりました池田さんだったと思うのでありますが、かつて民族の苗代だなんて言葉を言われました。確かにそのとおりだと思うのです。たとえば、いまの日本の高度工業社会の人材は一体だれが生み出したのか。たとえば農村自治体は、乏しい財政の中で莫大な教育施設をつくりました。その教育施設は、都市と比べて農村は特別な援助や何かがあったわけじゃないのです。あるいは税や何かの問題でも農村のそういう地帯が特別に優遇されたこともないのです。その中で膨大な教育施設などをつくり、次は、農村の地域社会社会人として世に立っていく人々でない都市工業社会の担い手たるべき人間を全部、長い長い歴史の過程の段階で農村は日本の高度発展のために送り出してきたと思うのです。これが現在の制度の中で、農業や農村に対して、たとえば交付税の傾斜配分を大いに強めるとか、何か特別なことをやられてきたかというと、私は何もなかったように思うのです。  そういう意味で、私は日本全体、世界全体がどのようにこれから変わっていくかという展望をはっきり見きわめなければならぬと思います。思いますけれども、これ以上農村が社会的、経済的いろいろな面でやせ衰えて衰弱していくということは、日本のこれからの進路を非常に危うくするのじゃないか。食糧問題ももちろんですけれども、いろいろな面で。そういう意味で、どうも政策の立て方が何かこうみんな、私が冒頭から言っておりますように総花、バランス、そうして相対的にはどんどん農村は衰えていく。これが三十年間の戦後政治一つの流れではないか。私は、福田総理大臣は、根底的な転換をやろうと言うのならばそのあたりに観点を立てるべきではないかというように思うのですけれども、総理大臣のお考えを聞いておきたい。
  31. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、高度成長を大きく安定成長路線に転換すべしということを前から強調しておるわけです。これはいろいろ意味があるのですが、その一つ考え方の要素として農村問題、これを考えておる。つまり、高度成長でやっていくという社会ではどうしても工業中心なのです。工業の所得は、あの高度成長という中では実質相当高い、牽引車的な役割りをするわけですが、農業の所得は非常に低い。そこに大変な格差が出てくる。そこで自然現象として農村人口が都市に集中していく勢いとなってくる。これは都市集中ということ一つを考えても、あるいは食糧という問題を考えてもゆゆしい事態である。これは、農村の問題を考える根本的な視点というものはどうしても高度成長から生まれてこないのですよ。やはり安定成長路線、その中から農村の問題の解決の糸口が出てくる、こういうふうに前から考えているのです。  そういうことで、だれよりも農村を愛するということにもなるわけでございますが、私は、そういう意味において、いま安定成長路線を定着させようと努力しておる。これは農村政策として非常に大きな転換になってくるだろう、こういうふうに思うのです。農村つまり農業と工業との格差の解消、これが農業政策の非常に大きな支えとなってくる、こういうふうに確信しておるわけです。そういう意味において、基盤的に農業問題は非常に大きな転換時に立ち、同時に農村政策の基盤が与えられつつある、こういうふうに認識しております。
  32. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで文部大臣にお伺いしたいのでありますが、いま、大学入試の問題とか、教育課程の改革の問題とか、いろいろな問題が議題になっておるわけであります。その意味では、三木内閣で快刀乱麻を断つように結論は出なかったけれども、どんどん前へ進んだとは必ずしも言いがたいが、やはり永井文部行政というのはそれなりの観点を示したものというふうに私どもは思うのであります、いろいろ問題はありましても。  そこで、時間の関係でかいつまんで二、三の問題点を指摘いたしますと、大学入試のありようを改める、これは大変重要であります。それから、詰め込み教育じゃない、もっとゆとりのある教育をやっていく、これはいいと思うのです。そうなりますと、どうしても戦後の六・三・三というこの義務教育のあり方、これもやはり根本的に再検討しなければならぬ時期に来たのじゃないか。私の郷里などではほとんどもう高等学校には九八%、九九%まで進学するのであります。事実上、高等学校は義務教育と同じような状況になっておるわけであります。この間、労働大臣と文部大臣が、企業にとって大学出が果たしていいのかどうかなどという議論をされておりましたが、社会もまた、せめて高等学校ぐらい出た者でないと余り相手にしない。ばかでもチョンでも大学を出れば何とかというふうな風潮はまだ依然としてあると思うのであります。そういう意味で、六・三・三という戦後の教育の歴史、それをやはり検討しなければならぬ時期に来たのではないか。われわれの時代と違って、いまはもう小学校に入ります以前に一もっとも、共かせぎをしなければならぬいろいろな情勢ももちろんかかわっているとは思いますけれども、ほとんどの者が幼稚園とか保育所とか、そういういろいろな過程を経て小学校に入ってくるという状況等々いろいろ考えてみますと、やはり六・三・三というこのありようを基本的に再検討すべき時期に来たのではないかと思います。これが一つ。  第二は、高等学校というものは一体何か。先ほど農村地方社会は、都市社会のために、工業社会のために、人材養成のためにものすごい投資をしてきましたと申し上げました。そこで本来、県立高校とか公立高校がそれを全部受け入れられるだけのキャパシティーというものをつくらなければならなかったと思うのです。そういう枠をつくらなければならなかったと思うのですが、そこのところは、生徒数の急増期は、私の郷里のみならず、東北各県をずっと見ておりますと、全部私学に依存したのです。今度、生徒数、児輩数の急減期に一気かせいに入ってまいりました。私学は、率直に言って経営という側面を無視はできないのです。したがって、これから今度急減期に入りますと、私学は大変なのです。公立の高等学校で採った枠、それ以外の者しか私立にはほとんど行かない、これが一般的な流れであります。そういたしますと、私学の高い授業料、高い学費というのが問題になるわけでありますけれども、いままでものすごく私学に負担をさして、今度生徒数の急減期に入りますと、私学は経営的に全部まいってしまうのです。これで果たしていいのか。こういう問題を政府の方では一体どういうふうに考えていらっしゃるのか、お聞きしたいのです。
  33. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 二点の御質問でございました。  最初の、六・三・三制を再検討する時期ではないかとおっしゃいますが、これは過日の中教審の答申でも、阿部委員御指摘のような角度からの指摘がありまして、第一の四、五歳児、幼児教育にはどう取り組むか、このことにつきましては、六・三・三・四の制度の切り方そのものをどうしたらより教育効果が上がるかとか、いろいろな問題がありますので、当面二つに分けまして、長期的には六・三・三という区切方がいいのか悪いのかという問題については、ただいま文部省も学校を指定しまして、実習的な研究資料をいただくために実験みたいなことをしておりますけれども、それよりも、現在、三十年間定着してまいりました六・三・三の制度そのものの内容をいかに充実していったらいいかという当面の対策もございますので、とりあえずは、五歳児の希望する者の全員が入園できるような幼稚園の整備、充実に力を入れるわけでありますし、それから、御指摘の保育所のことは厚生省の管轄でありますが、幼保一元化のための協議も厚生と行っておるわけでございます。  なお、高等学校の位置づけのことについてお話がございましたが、義務教育は六・三の九年間になりましたが、現在、御指摘のように、全国的には九二・六%が高等学校へ進学をしております。しかし、この段階でもなお高等学校への進学という進路を選択しない人がいることもまた事実でありますし、六・三・三の中等教育の後期分、この三年がこれでいいか悪いかということをいろいろ検討した結果、御承知のように、五年制の工業高等専門学校をつくったり、専修学校制度を設けたり、後期中等教育には、それに応じたさまざまな適応を考えた学校制度等もいま並列をしておりまして、六・三・三の基本と、その後期の三年間を五年にするなり、ほかの職業教育に力を入れるなりによって、これが効果が上がるなればそれも一案ではなかろうか。目下いろいろな資料を集めたり、実験的な学校も始まっておりますし、工業高等学校等はすでに始まっておりますけれども、こういった検討は、先生御指摘のように、いろいろな角度から続けておるわけでございます。  なお、二つ目の問題、過疎地域における生徒数の激減に対して、私立の、特に高等学校をどうするか、こういう観点の御質問でありますが、御指摘のように、地域によって高等学校が非常に不足しておるところと、過疎地として生徒数が減ってまいりますところと、近年これが二分化しておることは御指摘のとおりでございます。  そこで、公立高校と私立高校との間で、いかにしてその地域の高等学校教育をうまくやるかというので、文部省といたしましては、かねてから、設置者であります県とかあるいは教育委員会に通達を出して、公立の高等学校と私立の高等学校との協議機関の指導をいたしましたが、なお、生徒数の減少による私立学校の経営という問題に思いをいたさなければならぬのも御指摘のとおりでありますから、さしあたりは、今年度は私学の、特に高等学校以下の助成費を三百億円、これは六六%を超える増加でありましたが、そういった助成費を持つとか、あるいは私学振興財団から私立高等学校に対する経営費の融資の期間延長を図るとか、いろいろ努力はしておりますが、なお生徒数の激減の実態によって、私立高等学校ごとに、こうむるいろいろな影響とか、これから対策を立てるためにどうしたらいいかという問題がありますので、ただいま詳しい事情を各過疎地方ごとに御報告願うように通達を出しておりますが、その返答を待って、実態を正しく把握した上で、さらに検討を重ねていきたい、こう考えております。
  34. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 もっといろいろお尋ねをしたいのでありますが、時間がございません。  そこで、成田空港の問題であります。これは、私は去年もこのことを申し上げました。福田内閣が誕生いたしますると、金に糸目をつけない、断固進め、こういうゴーサインを福田さんは出されました。金に糸目をつけないとおっしゃるのですが、私がお尋ねをいたしたいのは、成田空港を国際空港として本当に機能できるようにするのに、一体どれだけお金がかかるというふうに認識をされているのか。去年私申し上げました。都心から六十七キロほど離れておるのであります。したがって、ここから、外国からのお客さんを都心まで当然運んでこなければならぬわけであります。まさか京成電車で引っ張ってくるわけにはなかなかいかぬでしょう。そこで、新幹線計画がある。これはなかなか金がかかるので、住民パワーもあるし、なかなか進んでおりません。そこで京葉道路、この間私、千葉まで行ってみましたら、ラッシュのときは三時間ほどかかりました。したがって、いま湾岸高速道路、東関東高速自動車道、この整備、あるいは国鉄成田線の整備、いろいろな足回りのことが計画されておるのでありますけれども、どう急いでみましても、相当の年月がかかるということと、費用はどうかということになると、このとおり予算単価はどんどん上がっていきますから、この成田新幹線やあるいは湾岸道路、こういうものを整備するのに、一兆円程度でできるのかどうかという計算を私はしておるのであります。  それから、いまのは四千メーターの滑走路一本です。もう二本の滑走路と二期工事をやらなければいけません。これもいまの予算単価の値上がりを見ますると、四千億でできるのかどうかというふうに私は思います。もっとかかるかもしれません。  それから、これは空港公団大いに反省してもらわなければいかぬのですけれども、成田の飛行場から飛ぶ飛行機は、燃料の要らない飛行機を飛ばす計画を立てたのですよ。だから、燃料輸送施設用地などというものは、土地収用法による起業地から除外してある。だから、これは全部任意で買収しなければいかぬ。いろいろな住民パワーが起こってこれは進みません。しようがないから、鹿島の方から暫定的に三年間運ぼうというので、何項目かの現地要求が出されて、これにも莫大な金を突っ込まなければならぬでしょう。これは三年間のために突っ込む金であります。今度は千葉の方に関係つけようと思うと、これも二十八項目、のみならず、開港を千葉県知事が同意をするためには、二十八項目のこの言い分を認めろといって、いま来ておるわけですね。こういう状況にあるのです。  さらに、大阪判決以降、何せ内陸部のど真ん中につくった飛行場でありますから、騒音公害、これが一体どれだけで話がつくのかという問題は、延々と続いていくでありましょう。したがって、私の大まかな計算で言うと、成田の国際空港を本当に国際空港として機能できるような、少なくとも世界の先進国の国際空港並みの条件整備をちゃんとやるためには、二兆五、六千億か三兆円程度の腹を固めなければ、これはちょっと国際空港らしい状況にはならぬと私は見ておるのです。福田さんは、ほかのところは皆削っておるわけです。一兆円減税もだめ。いまの予算を見たら、どこか大胆なところがあるかといったら、みんなちょぼちょぼなんですね。しかし成田だけは金に糸目つけぬから断固前へ進め、非常なちぐはぐを感じます。  そこで、この成田空港というものを、金に糸目をつけぬからということですが、ひとつその認識をお聞きしておきたい。確かにあそこまでやりました。あそこまでやったものを、いまさらどうにもならぬからしりぬぐいしなければならぬという心境かもしれません。上州の任侠かもしれません。しかし、成田を本当に国際空港として機能させるには、いま言ったとおり、私の大まかな、アバウトな計算でも二兆何千億腹を固めなければいかぬのです。これが一つ。  この間私は羽田へ行きました。東京都にも行ってみました。羽田の沖合いに埋め立て計画があるのですよ。埋め立てて何するんだと言ったら、公園つくるんだというのです。工場地帯や住宅地帯が内にあって、飛行場があって、その沖合い千何ヘクタールを埋め立てて何やるんだと言ったら、ここに公園をつくるというのです。騒音のある飛行場と大田区やあのあたりの間に公園をつくるというのなら話はわかりますね。去年も申し上げましたように、運輸省ではすでに羽田の拡張計画というので、莫大な金をかけて拡張計画案というものをコンサルタントに任してやってきました。私はそこで、飛行場というものを考えると、滑走路がある、これは三本つくる。その三本の滑走路の双方、進入路、飛び立つ方、風向きによっていろいろ変わる。ここに航空保安用施設をつくらなければいかぬのです。航空保安用施設を滑走路の入り口全部につくらなければいかぬのでありますから、これは空港と一体のものであります。この一体のアプローチエリア、つまり航空保安用施設用地は、私は昭和四十二年の土地収用法の審査に携わった一人でありますが、土地収用法による起業地としての事業認定から除外してあるのです。除外してありますから、ここは全部任意で買収しなければいかぬ。したがって、土地収用法をわれわれが四十二年改正に携わったときは、ごね得をなくする、だから事業認定で——あれは四十四年の暮れだと思うのでありますが、これだけの区域が成田空港の用地でありますというので、用地の認定を行ったわけであります。認定を行った時点でごね得をなくさなければいけませんから価格は凍結するのですよ。凍結されました価格はいろいろあるのでありますが、水田で大体百五、六十万くらいで凍結したと思うのです。ところが、本来空港と一体のものである保安用施設用地、その中には問題の妨害鉄塔が二本立っておるのです。これは除外しておる区域なのです。なぜ除外したか。これはどんなに弁解しようと空港公団の過ちなのであります。そのために膨大なむだをやっておるわけです。ごて得がどんどん横行しているのであります。したがって、こういう事実を総理大臣は全部御承知の上で、金に糸目をつけぬからやれと言ってやられたとはぼくは思いたくないのです。やはりもちろんそれは公益を目指して国家権力が成田空港というものを国際空港として始めたのであります。公益を目指しておるからといって、中身はどんなでたらめな、どんな国家に損を与え、むだを与えること、何をやってもよろしいということにはならぬとぼくは思うのであります。したがって、これは具体的にそういう前提を復習の意味で申し上げましたが、空港公団にお伺いいたしますけれども、いまその土地収用法の適用の仕方を間違いましたから、したがって、四千メーター滑走路の双方に七百五十メーターの航空保安施設用地をつくらなければいけなかったのですが、これがつくれない。つくれなくなりましたので、四千メーター滑走路の中に七百五十メーター、保安用施設を埋め込んだ工事をやりましたね。これ、間違いありませんか。間違いなければ間違いなし、そのとおりです、と言っていただきたいと思います。
  35. 大塚茂

    ○大塚参考人 仮の施設としまして、とりあえず七百五十メーター引っ込めた地点につくりましたけれども、四千メーターとしてできるだけ早く全部を使うために、さらにその外側につくるという計画は放棄をいたしておりません。
  36. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大臣、土地収用法の適用を誤ったのです。だから二重工事をやらなければいかぬのです。滑走路の外側に、七百五十メーター外へつけなければならない保安用施設を、そこを土地収用法を適用する、これは建設省で注意したんですよ。運輸省でかたまっておる空港公団は、国家目的のためにやるものは何でもできるんだと思って土地収用法をやらなかったのです。だから中に埋め込んだんです。そしていま今度もう一遍外へ本来のものをつくろう、こういう状況にきておるわけですね。土地収用法の発動をしなかった。事業認定の申請をしなかった。  そこで、空港公団総裁、そういう工事は、でたらめ、勝手、むだだろうと何だろうと、何でもやってもいいということにならぬのですよ。あなたの方の規則もちゃんとある。公団法にもちゃんと書いてある。この中に埋め込む工事、仮にやる工事は、当然運輸省の認可を得てやらなければならぬ工事ですね。この認可、いつとりましたか。私のところに質問主意書で答弁来ておりますけれども、念のために。
  37. 大塚茂

    ○大塚参考人 その七百五十メーター引っ込めましたやつのときは、航空法施行規則のたしか百十七条だと思いましたが、運輸大臣の承認を受けてやりました。(阿部(昭)委員「いつ許可を得たか」と呼ぶ)年月ははっきり覚えておりませんが、恐らく四十八年だったんじゃないかと思っております。
  38. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 でたらめなことを言っちゃいけませんね。ここには昭和五十一年十一月二十五日、滑走路の中に埋め込む工事をやってしまってから認可をとっているのですよ。規則によれば、許可を得なければならないのです。許可を得て工事をしなければいかぬのです。私は、運輸省が土地収用法の運用を間違えたためにそういうむだな工事を二重にやらすなんという許可をよう出すもんだと思っておったら、工事を全部公団でやっちゃってから五十一年の十一月二十五日に許可を受けておるのです。間違いありませんか。
  39. 大塚茂

    ○大塚参考人 先ほど申し上げましたように、航空法施行規則百十七条の第二項によります承認につきましては、四十八年の九月四日に運輸大臣の承認を得ております。  それから、おっしゃられました昨年の十一月二十五日には、これは、それを工事実施計画の認可の中に織り込んで認可を受けた、こういう関係になっております。
  40. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そんなでたらめな答弁するんじゃ、これは審議できませんよ。これは私のところに参りました内閣総理大臣からの私の質問主意書に対する答弁書なんです。この答弁書では、いま言いました日時にそういう認可を与えたなんてこと、全然書いていません。その認可は、昭和五十一年の十一月二十五日に認可を出した、こう書いてあるのです。総理大臣、うその答弁を出すのですか。
  41. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 運輸大臣からお答え申し上げます。
  42. 田村元

    ○田村国務大臣 少し技術的なことで、私もしっかりわかりませんから、航空局長からお答えをさせます。
  43. 高橋寿夫

    高橋(寿)政府委員 お答え申し上げます。  四十八年の六月にただいま先生御指摘の三千二百五十メーターに対応する灯火の移転のための変更認可申請を出したわけでございます。それに対しまして、運輸省は同じく四十八年の九月に承認をいたしました。これは航空法の施行規則七十九条に飛行場の施設の設置基準がございまして、その基準によりがたい一時的の理由があるときには特別に承認をとる、こういう手続になっております。そこで、それによりまして申請を受けまして、四十八年九月に承認をしたわけでございます。  ただ、この点につきましては、昨年の国会でも御指摘がございまして、やはり明確にした方がいいというところから、公団は昨年の秋に工事実施計画の変更認可申請という根っこから変える申請を出しまして、その認可を五十一年十一月二十五日にいたしたわけでございます。  この認可の内容は二通りになっておりまして、一つは三千二百五十メーターに対応する設備の完成は五十二年三月末まで、それから四千メーターの本来の滑走路に対応する施設の完成は五十三年三月末まで、という期限をつけて認可いたしております。
  44. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 総理大臣、私に出しましたこの答弁書は、いまの答弁と違うのです。そうすると、総理大臣の出す答弁書というのは、うそなものということですか。答弁書にはそんな日付に認可を出した一つまり、工事実施計画変更の認可なんですよ。それはいま言われた日付の日には全然そんな認可出しておらぬのです、この総理大臣答弁書では。その場逃れのことはいかぬのですよ。
  45. 田村元

    ○田村国務大臣 非常に専門的なことでありますので、私からお答えすることがいささかちゅうちょされますが、ただ、答弁書の内容といまの答弁とが食い違いがあるとするならば、これは大変なことでございます。でありますから、いま一度航空局長からお答えを申し上げて、この点もし食い違いがあるようでありましたら御究明を願いたい、このように存じます。
  46. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 ちょっとその前に。  私がいま問題にするのは、成田空港というのは、さっき言ったとおり、まだ二兆数千億から三兆円程度突っ込まなければいけないという大変な大事業なんです。したがって、こういう二重工事やなんかむだなこと、ごて得から何からいっぱい起こっているのです。したがって、大目標を持つなら持つほど、現実の事業の進め方もやはり的確に法律に規則に従ってやらなければいかぬものだろうと思う。いま、総理大臣から私のところへ来ておる答弁書に全然ない日取りに運輸省は認可をしたと言うなら——まさかこの答弁書は総理大臣が書いたんじゃないと思う。国会をまるでなめ切った議論の仕方じゃありませんか。そんなかっこうじゃもう審議できませんね。
  47. 高橋寿夫

    高橋(寿)政府委員 お答え申し上げます。  先生からお出しいただきました質問主意書の中でのお尋ねの中身は、工事実施計画変更認可のことについてお尋ねでございましたので、そのことだけお答えしたわけでございまして、決して故意に前の方の施行規則七十九条二項の認可のことを省略したわけではないわけでございます。
  48. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そうすると、いまの滑走路の中に埋め込むものは、工事実施計画の変更と違うんですか。全然違う工事でしょう。工事実施計画では、アプローチエリアというその滑走路の外の方に七百五十メーターの莫大な経費を要する航空保安用施設をつくらなければならぬという工事実施計画を認可しておるわけです。しかし、実際上はそこに、さっき言ったとおり、土地収用法の適用を誤って、やっておりませんでしたから、しょうがない、滑走路の中に仮の工事をもう一遍やらなければいかんかった。仮の工事というのは、実施計画認可とは全然無関係にやっていいということですか。それならば、予算なんかそんなもの、どうでもいいということになるじゃないか。予算なんか全然審議もへったくれも要らぬということになりますよ。
  49. 高橋寿夫

    高橋(寿)政府委員 御説明申し上げます。先ほどお話ししたことの繰り返しになりますけれども、航空法の施行規則七十九条に飛行場の各施設の設置基準が書いてございます。その第二項に「前項の規定にかかわらず、」「工事その他の時的な事情により同項の基準によることができない場合には、運輸大臣の承認を受けて、同項の基準と異なる方式によることができる。」、こういう規定がございまして、これによりまして空港公団は運輸大臣の承認を受ける申請を出しまして、四十八年九月に認可をしたわけでございます。  ただ、このことは先国会で先生御指摘ございましたように、やはり本格的に工事実施計画自体の変更認可をした方がベターではないかという判断から、公団は認可申請をいたしまして、私どもは昨年の秋に認可したわけでございます。
  50. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 ちょっとそこのところ、その答弁ではだめなんです。答弁書と全然違うんですから。
  51. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの件につきましては、理事会においてそれぞれ協議をいたしたいと思います。  御質疑の続行をお願いします。
  52. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 それじゃこの問題は、私はこの新東京国際空港の問題が膨大な国費のむだ遣いを行い、しかもなおかつ全然動きがつかぬというのは、空港公団のこういうでたらめなやり方にすべて原因しておると思います。したがってこの問題は、委員長、ぜひ留保させていただきたい。もっと解明しなければ、金に糸目をつけぬから大いにやれなんて、そんな単純なわけにいかない問題なのであります。  そこで、土地収用法の適用の仕方を間違えたと言いました。先ほど申し上げましたように、現在、一期工事の関係の区域におりました地権者、その皆さんが代替地を得て、そして出ていっておるわけです。ところが、この代替地の値段が十アール当たり一千二百万くらいしておるのです。そうすると、昭和四十四年の暮れ段階で土地収用法で価格の凍結を行ったのですが、それはたしか十アール百五、六十万くらいなんです。ごね得をなくするという目的で土地収用法を改正いたしました。つまり、土地収用法による事業認定時、起業地の認定時で価格は凍結をする、そうしなければごて得が起こりますから。ところが、その以降、この中の皆さんをどんどんいろいろ動かさなければいけない。あるいは本来当然土地収用法の対象としておくべき航空保安用施設用地を除外しておったがゆえに、この皆さんにどんどん土地を明け渡して提供してもらわなければどうにもなりませんから、これには代替地を出すという方式をとっておる。この代替地が十アール当たり一千二百万もしておるのです。そうすると、凍結された値段が百五、六十万、現実にやられておるのは代替地で一千二百万もしておるとなれば、一体これは憲法上の法のもとの平等、土地収用法の価格凍結という精神は全部じゅうりんされたことになりはしませんか。空港公団総裁、どうです。
  53. 大塚茂

    ○大塚参考人 保安用地に事業認定をかけるべきじゃなかったかという点は、これはいろいろ見解があると思いますが、私どもとしましては、できるだけ話し合いによって任意買収で買い上げをしたい、そして末永く近隣の方々と仲よき隣人として空港と周辺ともに栄えていきたい、こういう考え方から事業認定を見送りまして、任意買収をやったわけでございますが、現在すでに公団関係については八八%の買収を終わっております。  それから代替地の問題でございますが、これにつきましては、御承知のように、事業認定の段階で価格が凍結をされております。最初は十アール百四十万でございましたが、現在は物価修正によりまして二百五十万、これは畑の場合でございますが、二百五十万になっております。それに対しまして、従来代替地としましては千葉県にいろいろお世話を願いまして、千葉県が持っておった県有地あるいは千葉県がその後買収をしました土地を百四十万に対して大体九十万でお渡しをする。どうも代替地というのが本当は正確な表現ではないのでございまして、すべて用地は買収でございます。買い上げまして、その買い上げた金で千葉県の持っておる土地をお買いいただく。こういうふうな仕組みになっておりますから、厳密な意味の代替地ではないのでございますが、まあそういう仕組みで四十八年までやってまいりまして、その後千葉県の持っております土地だけではどうも御満足がいただけない場合が多くなりましたので、空港公団自身で近いところの土地を買いまして提供するというようなやり方をとっております。  それの値段は、おっしゃられるように、最近買ったものは十アール千百万のものもございますけれども、これはまだ配分をいたしておりません。それで、これを配分します場合は、ほかの安い土地と抱き合わせまして、平均単価を下げて、そして配分をする、こういうやり方をとっております。いままで空港公団が自分で買って配分をした、いわゆる代替地の平均単価は大体十アール当たり五百万程度でございます。
  54. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 総裁は言い逃れをしちゃいかぬのです。私は冒頭から——東京国際空港というのはこれだけの土地が要るということは決まっておるわけです。それを土地収用法の発動をしなかった場所がいっぱいあるわけですね。手続上ミスをして、あれだけ莫大な金をかけて道路をつくった。その道路を肝心なところで使えぬじゃありませんか。争いになっているじゃありませんか。だから、あなたはそうおっしゃいますけれども、千葉県というのは私は大変金持ちないいところだと思うのでありますけれども、一千何百万で買った土地、しかしこれは千葉県で買うとは書いてない、この登記謄本を見ますと。四千九百平米、これをあなたの方で抵当権設定をやった。吉田さんという人の土地。これは金十五億六千二百何十万という抵当権設定をやっていますね。これを一体坪に換算するとどういうことになるのか。空港公団が代替用の用地目的以外に土地をどんどん買っていいということにはならぬと思いますね。結局、空港公団は、農地法の規定によって、自分の方で農耕地を持つことはできない。だからそこで、千葉県を媒体にしておるわけです。結局は全部国民の税金で、国民の負担になる金を突っ込まなければ最終的な始末はつかないのです。  そこで、総裁、もう一つだけ伺っておきます。  この用地の関係は、代替地は等面積交換、等価格交換ではなくて等面積交換、これは間違いありませんか。それが違うのだったら、現地はみんなひっくり返るのだよ。
  55. 大塚茂

    ○大塚参考人 やり方に二色ございまして、近隣の希望の非常に多い土地につきましては、いわゆる基準配分と申しまして、提供された土地に対して、その何割かの土地を土地で提供する、その他の提供をいただいた土地は金銭で補償する。こういうやり方を四十八年まで、大体千葉県の協力を得てやっておりまして、四十八年以降近隣の土地が非常に高くなったというようなこと、それから基準配分をやりました場合にも、専業農家でございましてどうしても自分たちとしては従来どおりの営農を続けたいという方に対しては、大体一対一の面積に等しい、多少減歩をした場合が多いのでありますが、少し減歩をした程度で、面積的に大体匹敵するようなものをお世話するというやり方をとっております。ですから、基準配分と、それから専業農家で農業を続けたいという方には大体面積の等しいものをお渡しをするという方針でやってきております。
  56. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 総理大臣にお伺いいたしますが、去年から申し上げておりますように、土地収用法の適用を誤ったというところからすべてが始まっておるのです。そのことのために工事は長引く、ごて得は起こる。いろいろな問題が起こって、物すごいむだ、国に対して膨大な損失を与えておるのです。しかし、責任を感じておるような答弁は何にもないのですよ。こんなことで総理大臣、金に糸目をつけないなどと言われても、この事業は進まぬと私は見るのです。したがって、私は総理大臣に、こういう無責任な空港公団の責任の所在を、事実をもうちょっと調査されて、しっかりした解明をされて、それから事をどうするかということを判断してもらわなければいかぬと思うのです。  委員長にお願いいたしますが、残念ながら、総理大臣から参りましたこの答弁書と、いまの航空局長、それから私は先般も成田の公団まで行きました、そのときのいろいろな説明と全部食い違っておるのであります。これではこの問題の十二分な解明がつきませんので、理事会でぜひひとつ十分な解明をしていただくように、この問題を留保させていただいて、時間が来たようでありますから、私の質問を終わります。
  57. 坪川信三

    坪川委員長 承知いたしました。
  58. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 成田空港につきましては、とにかく着工いたしまして十年間もこれがまだ使用開始に至らない、大方の施設ができましてからもまだ五年間、今日の状態で推移しておる。こういうようなことを考えますと、これはとにかくいろいろむずかしい問題がある、私もそう思います。思いますが、一つは、とにかく数千億の金をつぎ込んでその施設がああいう状態にあるということは、政府としても国民に対して責任を持たなければならぬという問題があります。もう一つは、羽田の空港が非常にふくそうしちゃったのです。あの状態で何か事故でも起こったということになったらどういうことになるか。人命というようなことを考えまするときには慄然たるものを感ずるわけであります。そういうようなことから考えまして、成田の空港はとにかく急いでこれが使用開始というところにこぎつけなければならない。それをすることは政府の責任であるというふうな見解でやっておりますが、いろいろ困難な諸問題があることはもう想像できることでございますので、それらの困難な問題は適正にかつ効率的にこれを解決して、万遺憾なきを期してまいりたい、かように考えます。
  59. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 もう一つだけ。  大臣、政府のやること、つまり、国家目的のためにやることは、たとえば認可という手続を受けなければならぬことを受けなくてもよろしい、目的を政府で決めておることならば、手段、方法は何をやっても構わぬということにならぬと私は思うのですが、この認識はいかがでしょうか。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府のやることは、これは法律の執行でございまするから、法律に違反するというようなことがあっては断じて相ならぬわけで、その辺は十分心得ております。
  61. 坪川信三

    坪川委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  62. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の続行をいたします。河村勝君。
  63. 河村勝

    河村委員 きょうは私は、当面の経済問題を中心にお尋ねをするつもりでありますが、冒頭に、領海十二海里と国際海峡の問題について少しお尋ねをいたします。  きのうの藤田議員と外務大臣との質疑応答を聞いておりまして、全く異なる立場ではありますけれども、ただ政府は、今回の国際海峡の領海を三海里という世界に類例のない異常なやり方で設定をして、それについてなぜそうしなければならないかという質問に対して全く正面からお答えにならない。大体こういうこそくなやり方というものに対して非常に不満を持っております。  そこで、まず外務大臣に伺いますが、あなたは、日本立場として、国際海峡のより自由な航行を主張しているんだ、米ソと協調している、そういうお話でありましたが、一体具体的にどういう主張を国際会議の場でやっておられるのか、それをまず聞きます。
  64. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 お答え申し上げます。  国際海洋法会議におきまして、いままでの海峡におきます無害通航ということでは沿岸国の恣意が入り得るということに非常な不安があるというので、領海が拡大した場合には現在の無害通航よりもより自由な通航ということを主張しているわけであります。
  65. 河村勝

    河村委員 そうしますと、ソ連やアメリカが言っているような自由通過権ではなくて、いわば自由通過とそれからいま言われておる無害通航、それとの間くらいのところを日本は主張している、そういうことですか。
  66. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日本といたしましては、自由な通航が好ましいという立場をとっておるわけであります。ただし、沿岸国と申しますか、開発途上国が持っている場合があるわけでありますが、そういった立場と公正な妥協ができればそれでも何とか解決を図りたい、こういう立場をとっておるわけであります。
  67. 河村勝

    河村委員 ではお尋ねをしますが、現在三海里の主張というのはもうすでにないわけですね。米ソも、当初は三海里の主張であったが、海峡沿岸国の十二海里の主張に応じて十二海里説をとっておる。十二海里説をとって、それで自由通過権を認めよ、こう言っておるわけですね。それで沿岸国の方は一定のルールに基づく無害航行、これを主張しておる。日本のものはよくわからないが、その間のちょっと米ソ寄りということでしょうか。しかし、いずれにいたしましても、十二海里説を採用して国際海峡においても十二海里で覆われるものができる、そういう前提で、それで無害航行かあるいは自由通過、その点において争われる。だから、国際海峡も十二海里であることには変わりはない、そうですね。
  68. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの大勢としては、十二海里の方向に固まりつつあるのではないかという観測を持っておる次第であります。  なお、詳細技術的な点がありましたならば、条約局長から御説明さしたいと思います。
  69. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 若干細かい点について補足さしていただきます。  まず第一に、領海の幅員の問題でございますが、現在の海洋法会議におきますところの論議は、領海は十二海里まで認めるということで大体の意見が固まりつつある。ただ、現実の各国の幅員がどうであるかという点になりますと、先生御承知のように、ソ連は十二海里、アメリカは三海里・イギリス・ドイツというのは依然として三海里といろいろまちまちでございますが、新しくでき上がる海洋法においては領海は十二海里まで認めよう、こういう点が第一点であります。  それから、通航の制度につきましては、領海が十二海里になるに伴いまして、国際交通の要衝であるところのいわゆる国際海峡においては、普通の場合の一般の領海における通航制度であるところの無害通航制度では海運の自由が確保せられないということで、いまの海洋法のいわゆる単一草案では通過通航制度というものを設けまして、これで海運の自由を確保しようということになっております。この通過通航制度につきましては、いわゆる沿岸国も、それからもともとの先進国も、大体においてその通過通航制度でいこうということで方角が固まっておりまして、これは無害通航制度ではございません。もともと米ソなどが海洋法会議の当初に主張てしおりましたのは、海峡においては公海のベルトを残すということでありましたけれども、それから米ソの方も一歩歩み寄り、沿岸国の方も歩み寄り、そこででき上がっておるのがいまの通過通航制度ということで、これは無害通航制度よりも船舶がもっと自由に通航できるという制度になっておる、こういう次第でございます。
  70. 河村勝

    河村委員 ですから、ほかの細かいことは別にして、国際海峡においても領海十二海里をとるということには共通の合意ができておる、そういうことなのですね。そうであるならば、今回十二海里説を日本が採用したことは正しい方向であって、現に日本の十二海里以内の沿岸にソ連の大型漁船団が殺到して、そのために非常な被害を受けておる。だから急いでこれをやらなければならぬ、その事情は私ども非常によくわかります。賛成であります。ただ、なぜ三海里にしなければならないのか。いま答弁がありましたように、十二海里説をとるということについては国際的な合意はできている。それにはどこも文句を言うところはないはずだ。だから、そうしておいて、その上で国際海峡についての取り扱いの合意ができるまでの間は、暫定的にいままでの自由航行の形を認めるということであるならば非常にすっきりするわけで、それで少なくとも国際的にはどこからも異議が出ないはずだと思うが、いかがです。
  71. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いまおっしゃいましたような海洋法会議の大勢ではあるわけでありますけれども、まだ海洋法会議の結論が出たわけではないわけでございます。そういう段階におきまして、いま言いました通過通航ということを新しいルールとして日本だけが設けるということにはまだ時期が早過ぎるという判断をしているわけでございまして、その結論がはっきり出るまでのつなぎといたしまして、現状のままにしておく方が一番わかりやすいのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  72. 河村勝

    河村委員 それは答えになっていないのです。私は、十二海里を宣言して、新たな通過通航権を日本が宣言をすると言っているのじゃないのですよ。十二海里については国際的な合意ができている、そこまでは間違いないのですよ。いま合意ができていないのは国際海峡の取り扱いだけなんですね。それをどういう形の通過航行権を認めるかというそこだけが合意していないだけであって、十二海里については別段どこにも異議の出る余地はない。アメリカももうすでに三海里は放棄して、十二海里の中でやろう。さっき条約局長答弁したでしょう。であれば、十二海里を宣言しておいて、そうして国際海峡の自由航行かあるいは通過航行か、そうしたものが決まるまでは暫定的に自由航行を認めるというのであれば、どこの国からも文句を言われる筋合いはないでしょう。そうじゃないのですか。どうも外務大臣は逃げておる。そう思いませんか、総理大臣
  73. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 再度細かな説明になりますので私から……(河村委員「いや、細かい話は要りません」と呼ぶ)はい。アメリカはいまでも三海里でございます。(河村委員現状が三海里だということは知っているよ」と呼ぶ)それから通航制度につきましては、ただいま申しましたように、海洋法会議では、従来の国際法からまいりますと確立された領海の幅というのは三海里というのが伝統的な国際法の考え方だったわけでございます。今度の海洋法会議ができ上がればそれを十二海里にしよう。そうすると、十二海里になると、世界の主要な海峡、百幾つの海峡が領海で覆われてしまうことになる、それでは国際海運の自由にとって大分問題である、そこで通航制度をいま審議しておるわけでございます。その審議しておる内容は、方角として通過通航制度ということでほぼ固まってはおりますけれども、なお論議を尽くすべき点が多々あるわけでございます。したがいまして、今度の海洋法会議も五月末からまた新たに論議を始めるということになっておるわけでございます。
  74. 河村勝

    河村委員 十二海里もそれじゃやっちゃいけないということになるじゃないですか。十二海里もまだ完全な合意ができていないからやっちゃいけないというのなら、何で十二海里の設定をするというのですか。おかしいじゃないですか。
  75. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 もう河村先生もよく御承知のとおりで、海洋法会議の結論が出てすべて措置をした方がいいという、昨年の一月はそのような閣議了解をしておったわけでございます。ところが、海洋法会議の結論がなかなか出ない。じゃ、今度の五月の次の会期におきましてもはっきり出るかということになりますと、これもなかなか実際問題として見通しが立たない。こういう状況でありますので、どこまでも、沿岸漁民をそれまで待たせないということから、今回とにかく水産、沿岸漁業者のためを考えて措置をしたという点を特に御了承いただきたいわけであります。
  76. 河村勝

    河村委員 端的にイエスかノーか返事していただきたい。  十二海里説を採用して、それで国際海峡の取り扱いについては暫定的にいままでどおりの航行方式を認めるということで国際的な非難を受けるおそれがありますか、ありませんか。ないでしょう。
  77. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 十二海里にいたしまして、しかし、そこはすべて自由である、そういうことならば、いままでのとおり公海部分を残しておいた方が私ははっきりしていると考えるのでありまして、諸外国もその方がはっきりしていると私は考えるわけでございまして、やはり領海とする以上は、そこに完全なる主権というものを及ぼすべきである、そこが全く公海と同じであるということであれば公海部分を残すということと余り違いはないのじゃないかと考えるわけであります。
  78. 河村勝

    河村委員 あなたは一九五八年の領海条約を知っていますか。十六条四項、一国の領海になっている海峡の地位は、現在の国際法では、そのような海峡の沿岸国は外国船の無害通航を停止してはならない。だから、海峡については現行の条約機構のもとでも無害通航を禁止してはならないとなって、一般の領海とは区別をして、それで沿岸国の主権を制限しているのですよ。だから、大体これで普通は間に合うのですよ。普通は間に合うけれども、ただ残るのは、ここでもって潜水艦が浮上して通らなければならないという問題だけでしょう。これは私どもは当然わが方としては主張すべきことだと思うのです。一回領海になったからには、安全保障上の見地からも、どこの国の船かわからぬものがこそこそ通るというのは許されないのであって、潜水艦もちゃんと浮上して国旗を掲げて通るべきものだと思う。そういう主張は私は当然すべきだと思うが、いずれにしても、とにかく領海であっても海峡についてはこういうたてまえになっているのですよ。ですから、十二海里を採用して、それでそれを暫定的に自由通航扱いしたところが、ちっともいままでのたてまえと矛盾していないじゃないですか。どうなんです。
  79. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 たびたびで恐縮でございますが、領海条約の十六条の四項というのは、まさに先生御指摘のような制度が国際海峡につきましてあるわけでございます。ただ、先生も御理解いただけると思いますが、この領海条約ができましたのは一九五八年でございます。当時、領海の幅員につきましては、関係国の合意が成立しなかったわけでありますけれども、いずれにせよ、一般的には領海の幅員は三海里までというのが国際法の考え方というような狭い領海の時代での条約でございます。したがいまして、領海の通航については無害通航制度一本ということであったわけで、この領海条約も無害通航制度でできておるわけでございます。ただ、このいわゆる国際的な通航に使用される海峡においては、全くの無害通航制度だけでは不十分であろうということで、当時、いま先生の御指摘のような無害通航を停止してはいけないという特別の制度も設けたわけでございます。  ところで、今般の海洋法会議は、その領海は三海里という概念をもっと飛び越えて、もう少し広い領海を各国とも持てるようにしようということで審議が進んでおるわけでございまして、そうなりますと、三海里から十二海里に広がる場合に、いままで公海であったところの国際海峡が領海で覆われてしまうということになる。そこで、通航制度も新しいものを考える必要があるじゃないかということになりまして、米ソを初め、わが国その他の先進海運国の主張が大いに反映されまして、そしていまの通過通航制度ができ上がりつつある、こういう状況でございます。
  80. 河村勝

    河村委員 どうも公式的な答弁で、その三海里というような狭い領海のもとでも、公海部分がなくなってしまうところですら無害通航を停止してはならないというそういう規定があるわけでしょう。いわんや、それが十二海里に広がったら、必要が拡大しこそすれ、それをもっと縮めていいという話には全然ならないじゃないですか。一体何を答弁しているのです。総理大臣、おかしいと思いませんか。
  81. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 おかしいとは思いません。つまり、まだ海洋法会議の結論が出たわけじゃないのです。出つつある、そういう段階のわが国の立場とすると、なるべく国際海峡も自由航行の方がいい、こういうことにならざるを得ないと思うのです。そういう際のわが国の態度とすると、徹底的な自由航行、つまり現状のままに国際海峡は据え置く、これは私は自然に考えるとそういうふうになりそうだ、こういうふうに思います。
  82. 河村勝

    河村委員 どうも全然あれですね。しかし、この問題で時間をとるのは非常に惜しいので、私は端的に一つお伺いします。  もし十二海里宣言を国際海峡にも及ぼした場合、核積載艦が公海から公海へ平和的に通過をするということは、これは非核三原則の中の核持ち込みになりますか、なりませんか。
  83. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 核の持ち込みということの考え方につきまして統一見解が出ておりますので、領海内に入れば核の持ち込みと考える。したがいまして、もし米軍のそういったことは事前協議の対象になるという解釈をとっておるわけでございます。
  84. 河村勝

    河村委員 そうすると、国際海峡であって公海から公海に平和的に通航するのであっても、やはり核持ち込みになる、そういうことですか。
  85. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いままでの国会におきます御論議あるいはいろいろな統一見解から申しますと、そのようなことになろう、核の通過でありましてもこれは核の持ち込みになる、こういう解釈が行われているわけであります。
  86. 河村勝

    河村委員 あなた方はいま国際会議で主張なさっているときに、それが無害航行か自由航行かは別といたしまして、その際に日本としては、核積載の通航は、国際海峡が領海の部分になってしまった場合、通過はさせないんだという主張はなさっていますか。
  87. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま大臣申されましたのは、御承知の昭和四十三年の統一見解でございますが、これはポラリス等の核の常備艦は、領海条約にいうところの沿岸国の平和、秩序、安全を害しないところの無害通航とは認めない、こういう見解でございます。そして、領海条約でも、それから今般の海洋法会議におけるところの審議でも、無害通航とは何であるかといえば、要するに沿岸国の平和、秩序、安全を害しないで通るということでございます。平和、安全、秩序を害するか否かという点は、第一義的には沿岸国が判断する問題でございます。  わが国といたしましては、沿岸国として、核を装備した軍艦が通航することはわが国の平和、秩序、安全を害しない無害通航とは考えないということでございまして、国際法上の権利に従ってわが方はそういう見解をとっておるということでございます。
  88. 河村勝

    河村委員 そうすると、あなた方は、核積載艦を国際海峡の定義ができても通さないんだという主張は何もなさっておらない。現在の段階で、日本以外の国で核積載艦を通さないと国際会議で主張しているところはありませんね。そうすると、日本だけの主張になってくる。そうすると、核積載艦も通さなければならぬような結論になることは、結論はいつ出るかは別として、当然ですね。そうした場合には、要するにあなた方の見解というのは、本当は通してはいけないけれども、条約で認められれば仕方がないんだ、そういう解釈なんですね。
  89. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 海洋法会議でただいま審議しておりますいわゆる海洋法の非公式単一草案は、いまの仰せられましたいわゆる国際海峡における通航制度としては、あらゆる種類の船舶について無害通航よりももっと自由な通航を認める、いわゆる通過通航を自由に認めるという制度になっておりまして、その制度はあらゆる種類の船舶に適用があるということで審議が行われております。
  90. 河村勝

    河村委員 そういうことになるわけです、総理大臣。核積載艦を通さないというような国際条約ができる可能性はないし、日本もそれは現に主張していないのですよ。だから、結論は見えているわけだ。だから政府は、この非核三原則問題に触れるのがいやだもんで、結局、海峡部分だけは三海里というごまかしをやって時間をかせいで、最後は、国際条約の枠が決まってしまえば、国際条約で決められたのだから仕方がない、こういうことなんですね。それ以外に、いままでの話の経過として結論はないと思います。それでよろしゅうございますね。
  91. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国際海峡と非核三原則との関係につきましては、わが国の権限の及ぶ地域に非核三原則が適用されない、こういうことはない、必ずこれを適用する、こういう方針でございます。
  92. 河村勝

    河村委員 そうしますと、国際条約でどう決まろうと、この非核三原則は守る、そういうことですね。
  93. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の権限の及ぶ海域につきましては、非核三原則は必ず守ってまいる、こういう見解でございます。
  94. 河村勝

    河村委員 重ねてお尋ねしますが、とにかく国際条約で国際海峡が、津軽海峡で言えばこれは十二海里で覆われてしまう。だから主権の及ぶところである。だからそこでは今後条約でもって特に、核積載艦を通さない、通してはならないというものでなくても、核積載艦に触れない国際条約ができるわけですね。そういう場合に、やはり国際海峡は領海ですから、そこには主権が及ぶ、だから核積載艦は通さない、そういうことになるわけですね。
  95. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあその辺は、まだ条約がどうなるかわからないのです。いまわが国といたしましては、その条約がわからない段階において、三海里だ、こう言っておるわけでしょう。でありまするから、三海里はもとよりこれは非核三原則の適用される地域でございますが、それが拡大される、拡大される態様がどういうふうになるか、その辺が問題になってくる、こういう見解でございます。
  96. 河村勝

    河村委員 この問題は、これで上げます。これは必ず後々に問題になります。私どもは、国際海峡について平和的に通過をする場合、潜水艦については浮上せよと主張しているけれども、核の積載の有無にかかわらずそれは核持ち込みにはならないという見解をとっております。あなた方は、それを言いたくない。言うとこじれるということで逃げておられる。しかし、これは避けて通れる問題ではなくなるわけですね。この核問題に限らず、防衛問題についてもとにかく与野党の対立の種になりそうな問題を避けて通って本質的な議論をやらない、それがこの種の問題についての国民合意を妨げている最大の原因だと思う。私は、そういう態度は非常に遺憾だと思います。しかし、総理があくまでもそうした形式論理でがんばられるなら、もうこれで質問はやめます。よろしゅうございますね。  それでは、本題の経済問題に入ります。  一月の末に、総理はモンデール副大統領とお会いになって、五十二年度の財政方針について話をされた。そこで公共事業中心の景気刺激策をとって、実質六・七%の成長を五十二年度内に実現をする、それで国際収支の経常収支を七億ドルの赤字まで持っていく、そういう説明をされてモンデール氏は満足をした、こういう報道でありますね。これは、やはり総理が対外的になさった一種の国際公約ですね。公約みたなものだというふうに私どもは理解をしておりますが、大体そう考えてよろしゅうございますね。
  97. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆる公約なんというふうな理解はしておりませんけれども、わが国といたしましては、世界におけるわが国の立場として、この線は何とかして実現をいたしたい、かように考えております。
  98. 河村勝

    河村委員 アメリカでは大いに期待をしているようでありますね。それで、カーター政権では二年間で三百億ドルの減税をやるというようなこともやっておりまして、これで景気が相当上がってくるかもしれない。日本の方がもしそれに追随できなくて、輸入を来年百億ドルふやすことになっておりますね、これもできないというようなことになりますと、これは国際的に非常な非難を浴びる結果になる、そうでございますね。その点について自信を持って、まあ公約とまでいかなくとも、国際的に宣言をされた。そう理解してよろしゅうございますね。
  99. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 とにかく予算案を提出して、その前提としての経済見通しを、これは世界に向かって発表しているわけですからね。それはもう私はできる限り六・七%成長は実現をしたい、こういうふうに考えておるわけで、国際社会も大いにこれを期待している、かように考えています。
  100. 河村勝

    河村委員 そこで、景気の実態認識の問題に入りますが、総理としては、日本の経済が現在、安定成長路線に向かって順調に進んでいるとたびたび発言をされておりますが、現在でもそう思っておられますか。
  101. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのときどきの小さな波はありまするけれども、流れといたしましては、これは順調に安定の方向へ動いておる、そういう理解でございます。
  102. 河村勝

    河村委員 どうも必ずしも順調にいっていないように思います。  五十一年度の経済実態について、総理は非常に楽観的にごらんになっておられるようであるけれども、マクロの数字で、全部トータルで見るのと、実際、現実の経済の実態というのは、私はずいぶん違うと思う。特にことしの場合、輸出に支えられて一応景気が浮揚した。しかし、輸出関連産業以外の製造業、機械加工を中心にしてほとんどゼロ成長ですね。実際、私ども日本全国を見ているわけではありませんけれども、そうした製造業の下請をやっている中小企業、これなどはもう放漫経営をやっておったところは倒れてしまっておりますが、まじめにやっているところでも、本当に食いつなぎと言ってもよろしい。二次下請以下は全部手形は六カ月、何とかしてそのうちに景気がよくなるのをじいっとがまんしているというところであって、私は非常に厳しい情勢だと思うのです。  しかし、このことは、そう言いましても水かけ論になりますから、ここで意見を伺おうとは思いませんが、数字的に見ましても、政府の見通しというものは非常に甘いのではないか。政府の見通しでは、五十一年度五・七%実質成長する見通しだという説明でありましたね。本当にできるのでしょうか。特に最近、九月以降の状況を見れば、瞬間風速で言えば、七−九月は〇・六か七、十月から十二月は〇・三見当だから五・七%成長そのものが非常に怪しいのだろうと私は思う。それが一つですね。  それからもう一つは、今度の実質五・七%成長が仮にできたとしても、年度内成長率というのは幾らなのですか。年度内成長率というのは、五・七%を達成しても、私どもの試算では二・四%ぐらいしかない。それは今度の場合、一−三月に輸出が急増して、実質で一三%以上の成長をいたしましたから、その分が繰り越しになって、五十二年度の成長分に加算をされている。加算ではない、げたですね。げたとなって働いている。四月−七月は輸出がまだよかった。だからそのげた分を除いて、実質成長というのは二・四%ぐらいであって、しかも、それがほとんど輸出産業と一部の第三次産業の成長ですから、一般製造業というのは事実上ゼロ成長になっている。そういうことに相なる。どうですか、企画庁長官
  103. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話は、五十一年の一−三月が輸出に支えられて急激な成長を遂げた、そこでげたを履いているじゃないか、また、その後、夏ごろから景気の回復のテンポが緩やかになってきておるので、果たして五十一年度において五・七%の成長を達成できるか、こういう御質問のようでございますが、御案内のとおり、現在の景気の回復のテンポが緩やかになっている原因は、一つは世界景気の中だるみから輸出が鈍化したということと、また、個人消費が少し冷え込んだ、また、政府支出が、国会審議の国鉄、電電のおくれやあるいは地方財政の点から足を引っ張りまして、公共支出が伸び悩んだ、こういうことが景気の回復を緩やかにしている原因でございます。したがって、これらの原因を除去していくということが景気回復に大事なことでございまして、御案内のとおり、政府は十一月十二日に七項目でもろもろの、国鉄、電電の予算のおくれを取り戻したり、あるいは住宅二万戸の追加をしたり、そういう七項目の対策を実施をいたしました。その後いろいろな施策をやってまいりまして、現在の状況を考えてまいりますと、個人消費あるいは設備投資、確かに伸びは少し鈍化しておりますけれども、緩やかな回復を示しておる。輸出もまた一ころのようではございませんが、高い水準である。したがって、五・七%程度の成長は十分達成できる、そう考えております。
  104. 河村勝

    河村委員 いま私が伺ったのは、五・七%達成できるとしても、年度内の成長率というのは二・四%ぐらいだろうと言ったのです。その点どうですか。
  105. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまのは、げたを幾ら履いているかという御質問じゃなかろうかと思うわけでありますけれども、まだげたの計算は、ことしの、五十一年の十−十二月の四半期別の国民所得統計、また五十二年の一−三月の統計が正確に出ないと、まだげたの計算ができません。しかし、おおむね三%強のげたを履いている、そう考えたらよろしいのではなかろうか。したがいまして、五・七から三%強を引いた伸びという計算になろうかと思います。
  106. 河村勝

    河村委員 紛らわしい言い方をしなくてもよろしいでしょう。差し引きすれば二・四か二・五%じゃないですか。そういうことを言うのをいやがるという気持ちはわからないことはないけれども、何かごまかそうとするのは弱味があるからとしか考えられない。  実際、もう一つ具体的な数字を見ましても、最近では十−十二月を見ますと、生産もずっと落ちておりますが、出荷の方は〇・四%減っておって、在庫だけはどんどんふえて、四十五年対比で一二七・六%、過去のピークのときに近いぐらい。こういうことは、要するに、過剰人員を抱えてやりくりしているからまるっきり操業を落とすわけにはいかない、つくってはいる、だけれどもそれが出荷ができないから在庫になって積んでおる、こういうことをこの数字は証明しておる。これは企画庁の二月の月例報告ですね。その数字を分析すればそういうことになるのですね。そうでしょう。
  107. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  いま稼働率が非常に低いわけでございまして、昨年の十一月で八七・一という数字でございます。そういうことから、いまお話しのように在庫が若干積み増してきておるということは御指摘のとおりでございます。
  108. 河村勝

    河村委員 そういう実態なんです。ですから、後ほど申し上げたいと思っておりましたけれども、ここは非常に来年度の見通しに影響するところが大きいのですね。いま倉成さんは、政府の見通しの経済指標は大体狂ってないと言っているのですね。だから、大体五・七%ぐらいの成長ができるであろう——ところが、その中身の実態は二・四、五%ぐらいの成長しか年度内ではしていない。  それから、もう一つ狂っている数字があるのです。それは輸出です。だから、この五十二年度の企画庁の経済見通しにはわざわざこれは書いてないのですね。そこのところだけは触れてない。輸出は一一三%の伸びで計画を組んだ、ところが実際には一一九%伸びているのです。六%の違いがある。普通なら、六%も計画以上に輸出が伸びれば、それが契機になって相当大きな成長が可能になったはずだ。ところが、こういう大きなものを入れてなおかつ名目的にやっとこさっとこ政府見通しであって、その中身たるやわずか二・四、五%の成長ということでしょう。そうなると、もう経済実態が変わってきている。いままで企画庁を中心に高度成長時代にいろいろな指標を組み合わせてシミュレーションをやって、大体これだけのデータがそろえばこれくらいの成長をするであろうという計算をずっとやってこられた。しかし、経済の中身が変わってきてしまって、だんだん設備投資を初めなかなか思うように上がってこない。だから自律回復力がなくなってしまった。だから、他の数値が整合性があるということは、逆に、とてもこれでは政府の見通しというのは当たりっこない。六%も輸出がふえて、なおかつ名目的にとんとんだということは重大なことではありませんか。総理、そう思われませんか。
  109. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十一年の経済はわりあいによくいっておる、こういうふうに私は見ておるのです。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 つまり、一−三月におきまして高成長をしたわけですよ。そして、それを踏まえて、その後成長の速度は鈍ってきたけれども、いずれにしても高い一−三月の水準というものをざらにさらに積み上げておる。こういうようなことでありますから、経済活動の量がげたをはいているからどうもこれは年間として見ると低い、決してそういうようなことじゃないのです。景気が高原——と言うと語弊があるかもしれませんけれども、高い水準で動いておる、こういうことなんです。ただ、下半年になりますると、その景気上昇の勢いが非常に鈍化した。いま、横ばいだ、ゼロ成長だというお話でありまするが、ゼロ成長じゃございませんけれども、下半年は大体、非常に大ざっぱに言うと横ばいみたいなかっこうになってきているのです。そこで活力をひとつ入れる必要がある。やはり社会に活力を与えるというためには経済に活力を持たさなければいかぬ、そういうようなことでてこ入れを必要とするのだという認識でいま諸施策の運営をしているわけであります。
  110. 河村勝

    河村委員 いま見通しが間違っておったというようなことは言われるはずもございませんので、私は総理の実態認識とずいぶん実態は違うということだけを、私の意見を申し上げておきます。  そこで、日銀総裁にお伺いをいたします。  昨日円の相場が急騰して二百八十三円まで上がった。そうして日銀が一億ドルないし一億二千万ドルぐらいのドルの買い支えをやったであろうというような報道がされておりますが、実際はどういうことであるか。事実であれば、どういう情勢判断のもとにおやりになったことであるか、それをお伺いいたします。
  111. 森永貞一郎

    ○森永参考人 現在御承知のごとく変動相場制をとっておりますので、日々の為替相場の決定は市場における為替需給の結果に任せてあるわけでございます。昨今国際収支の見通しについてかなり好調であるというような背景もございましたところへ、アメリカのある大学の先生であるクラインさんという方が、円並びにマルクについては一割ぐらいの切り上げをすべきであるということを国会の証言で言ったというような情報が伝わりまして、これは真意はそういう勧告をしたわけではないようでございまして、仮にそうなればどういう影響があるか、いわゆるシミュレーションを発表しただけにとどまるようでございますが、報道ではそれがやはり国内の為替市場に敏感に反映いたしまして、もともと円高の傾向にございますところにそのような報道からさらに円高の傾向が強まりまして、日本が円高になりますとそれがまたロンドン、ニューヨークの市場に反映して、それがまた日本にはね返ってくる、そういうようなことで昨日は二百八十三円まで円高になったわけでございます。  私どもといたしましては、変動相場制でございますので基本的には為替需給の結果に任せておるわけでございますけれども、余りにも一日の下げ幅、あるいは上げ幅でも同じでございますが、大きいようなとき、つまり激動を生じますようなときには、そのことが国民経済にいろいろと悪影響を招きますので、そういうことがないように、ならす意味でのスムージングオペレーションと申しますかをいたしておるわけでございます。昨日の場合は、急激な変動が予測されましたので若干のドル買いの介入をいたしたのは事実でございますが、その金額につきましては、国際的な慣行等もございますので言明を避けたいと存じます。  なお、本日は、ロンドン、ニューヨークの円高の気配が映されまして、一時二百八十円台の相場もございましたが、その後輸入予約が出てまいりましたので、前場引け値では二百八十三円十銭まで戻しておるようでございまして、一応落ちついておるという状態と見ております。
  112. 河村勝

    河村委員 スムージングオペレーションであって、政策的に円安を誘導しようということではないというお考えですね。  それで私は結構だと思いますが、今度の急激な円高の中に、基本的に輸出が強くて輸入が弱いという構造があって、それに、さっきクライン教授のお話が出ましたが、円切り上げの思惑が手伝って、そのために非常に激しく動いたということがあるだろうと思います。同時にそのほかに、日本の現在の金利が外国に比べて割り高であって、そのために外国の資金が日本に流れ込むということがあったのではないか。もしそうであるならば、いろいろな買い支えというような誘導政策は別で、これはやってはならないことであるが、正常なコントロールとして可能ならば、日本の金利は現在ちょうど日本の状態から言えば下げる方が望ましい時期なんですから、下げた方がいい、それは非常に役に立つのではないか、そう思いますが、いかがでございますか。
  113. 森永貞一郎

    ○森永参考人 内外の金利差が余りにも大きくなりますと、お話しのように、不正常な資金の流出入が起こるということは御承知のとおりでございます。現在のところはそれほど不正常な資金の流入があるとは思っておりません。一月の社債等の外国人による買い入れ額は比較的多かった、二億ドルぐらいでございましたが、今月になりましてからは大変落ちついておるようでございまして、内外の金利差が非常に不正常な資金の流入を招いているとは思っておりません。  なお、短期証券でございますが、一時内外の金利差並びに為替の直先の関係などがございまして、大蔵省証券等に対する流入があったこともございますが、最近は大変落ちついた状況でございまして、そのようなたぐいの資金流入は取るに足らない程度でとどまっておりますので、内外の金利差がいま不正常な資金の流入を招いておるというふうには考えておりません。
  114. 河村勝

    河村委員 せんだってのこの委員会で日銀総裁は、公定歩合の引き下げ問題について非常に慎重な発言をしておられました。これは公定歩合のことですからあたりまえのことでございますが、瞬時も念頭を離れたことはないけれども直ちに引き下げは考えていない、まだ経済は失速の危険性はないと思うので、公共事業等による今後の景気の回復等をながめていたいという趣旨の御発言であったと思います。  しかし、経済が失速しそうな状態になったら、金利の引き下げぐらいで間に合うものでないので、もっと強力なカンフル剤が必要だろうと思います。ですから、経済が失速状態になったら大変なんで、公定歩合の引き下げというのは、それほどの異常な状態に対応するものとは私どもは常識的に考えておらないわけであります。  そこで、いま日銀総裁は、内外の金利差はそれほど大きな開きはないとおっしゃいましたが、現実にかなりの金利差があることはお認めになるのだろうと思う。それともう一つ、先ほどもちょっと触れましたけれども、いま多くの製造業を中心にして企業、特に中小企業の場合は無理に一部整理をして、失業者が百万人以上にはなっておりますけれども、しかし、かなり多くの余剰職員を抱えながら仕事をしている。それで、何と申しましても借り入れ依存度がきわめて高い。九〇%近い高さかもしれない。でありまするから、金利負担で非常に苦しんでおりまして、それで、少しでもいいから金利を下げてもらいたい、それでないと、まじめに経営して何とかつじつまが合っても、その金利のためにつぶれてしまうというような声をずいぶん聞いております。そうした実態は御存じであろうと私は思うので、日銀総裁としてもそうした状況は十分御認識になって、やはり何とかしなければならぬというところまではおっしゃれないかもしらぬが、そうしたどうしても必要としている時期に来ているという御認識はないのでしょうか。その点、いかがでございますか。
  115. 森永貞一郎

    ○森永参考人 失速云々という表現はいささか強過ぎたかもしれません。要するに、きわめて緩やかではございますが、景気回復の路線からは外れてはいないというような意味で申し上げたわけでございます。ただ、回復のテンポが余りだらだらしておりますと心理的にもいろいろと悪影響が生じてまいりますので、回復のテンポにややはずみをつける必要があるのじゃないか。それが昨年十一月の政府の七項目の対策であり、今回提案しておられまする補正予算であり、また五十二年度の予算にもそういう方針が引き継がれておると思っておる次第でございます。そういうことによりまして、この一−三月には恐らくいい影響もかなり出てくるのではないかと期待をしておるわけでございます。  かたがた、金融の面では、量的な緩和の方はもう行き過ぎるぐらい、と申しては少し誇張かもしれませんが、十分進んでおりますし、また金利の方も、公定歩合引き下げ以来、引き続き何十カ月にわたりましていまだに低下の傾向が続いておるわけでございます。私は、今後とも金融機関におきましては金利引き下げの努力が続けられることと思っておる次第でございます。  そういうことで、いますぐに具体的に公定歩合の引き下げを考えてはおりません。今後の情勢の推移いかんに係ることでございまして、もし情勢が要すれば、そのときどきの情勢に応じまして適切な対策を打たなければならぬことは当然でございますが、いまのところはしばらく情勢を見きわめたい、そういう考え方をいたしておるわけでございます。  もちろん、これはマクロ的に判断した結果を申し上げているわけでございますが、ミクロ的には、業種によりあるいは企業によりまして、依然として苦しい状態が続いておる業種なり企業もございますことは私どもよく承知いたしております。そういうミクロ的な面につきましては、また私どもなりに金融機関の協力を求めまして、適時適切な対策を講じてまいる所存でございます。
  116. 河村勝

    河村委員 慎重な御答弁、これは仕方がないと思います。福田総理がこの間、〇・二五%ぐらいなら何とか預貯金金利をいじらなくても下げられるが、それ以上はどうも銀行の利ざやの関係で無理だという発言をされましたが、日銀総裁、この辺のところは一体どうなんでしょうか。銀行がそんなにきわどい利ざやであるのかどうかということに非常に疑問を持っているのです。現実に昨年九月期の銀行の収益を見ましても、また増益。増益増益で、どうもちっとも苦しくなさそうだ。金利の引き下げのときには、必ずこういう主張がなされますね。ところが、四十八年の八月から公定歩合を引き上げた時期がございます。このときには公定歩合の引き上げだけがどんどん先行して、八カ月間に公定歩合は四・七五%上がった。その間に預金金利はわずかに一%しか上がらない。上げるときにはどんどん公定歩合が先行していく。それで、下げるときにはなかなか預金金利が下がらないと公定歩合も下げられない。その辺のところはわれわれには非常にわかりにくい。銀行は俗に集団護衛方式などと称して、非常に足の弱いところも道連れにして何とか成り立つようにしようという保護行政をやっておられる状態であるから、一般の企業と違って、もうちょっとその辺のところは納得のいけるような実態を明らかにしてもらわないと、われわれには一体、〇・二五%しか下げられませんと言われても、本当のところはわからないのですね。これは一体、大蔵大臣にお聞きしたらいいのか、日銀総裁にお聞きした方がいいのか、まず日銀総裁にちょっとお伺いします。
  117. 森永貞一郎

    ○森永参考人 先ほど申し上げましたように、金融機関の金利は、公定歩合の引き下げに追随して、もうすでに三十カ月にわたりまして逐次低下を見ておるわけでございます。その結果、各金融機関の利ざやが大変薄くなっておることはこれは事実でございます。たとえば都銀について申し上げますと、最近では四十八年の下期が一番高く〇・八〇%でございましたのが、五十一年の上期には〇・三八%というふうに大変に下がっておるわけでございます。しかし、それにもかかわらず、いまもなお貸出金利引き下げの努力が続けられておるわけでございまして、まだしばらくはその努力が続けられることと思いますが、このように利ざやが全体としてかなり縮小を見てきておるという現状。これも実は全体としての観察を申し上げたわけですが、実際は、金融機関の業態別にあるいは各金融機関別にいろいろ違うわけでございまして、一概には申せませんが、もうそろそろ貸出金利の引き下げが困難になっておる金融機関も中には見受けられるわけでございます。したがって、公定歩合を下げます場合に、公定歩合引き下げの実効が貸出金利に十分に及びますためには、預貯金金利につきましても硬直的でなくやはり弾力的に考えていく必要がある。これは一般論でございまして、具体的に公定歩合の引き下げについてまだ考えていませんので、具体的にどうこうするという問題ではございませんが、一般論としては、預貯金金利の方もやはり弾力的に考える必要があるのではないかと思っております。  なお、仮に公定歩合を引き下げます場合に、預貯金金利を同時に下げるか、あるいは少しおくらしてもいいか、その辺は私ども必ずしも絶対的な問題であるとは考えておりません。一昨年の十月の場合には、同時決着ということで、同時に引き下げるということにいたしましたが、場合によりましては公定歩合が預貯金金利の引き下げの先導役を務めるという場合もあってもいいのではないか。しかし、それは具体的にそう思っているということではございません。一般論として申し上げている次第でございますので、御了承いただきたいと思います。
  118. 河村勝

    河村委員 私どもも、預貯金金利を動かさないで金利を下げることはできるとは思っておりません。だから、弾力化も考えなければなりませんが、当面やはり何といっても預金の目減りですね。総理は先日も、五十五年までには消費者物価を六%以下に抑えるということを言明されました。この決心と見通しには変わりはございませんね。
  119. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 変わりはございません。
  120. 河村勝

    河村委員 そうであれば、私は、預貯金金利を弾力化するために、インデクセーション預金を導入する一つの機会ではないかということを考えている。だから、一般の預金は、定期預金も公定歩合と見合って下げてよろしい。ただそのかわりに、インデクセーション預金をつくって、金利は五%ぐらいでよろしい。たとえば消費者物価がどんどん上がっていった場合には、消費者物価の上がり方の半分くらいをその金利に積み増しする。六%上がれば三%。技術論は別ですよ。要するに、基準金利はうんと低いけれども、もしインフレが進行して目減りが大きくなった場合には、目減りを補償する預金ですね。これはだんだんインフレが進行している時期にはできないけれども、だんだんと鎮静をして、預金金利を下回るところまで持っていくことができる時期には、非常に有効に働いて預貯金金利を弾力化する。これは後に申し上げる金利の自由化等の問題に非常に有効に働くのではないか、私はこう思うのです。この点、総理からでも、大蔵大臣からでも、日銀総裁でも、どなたでも結構でございますから、ちょっと意見を聞かせてください。
  121. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  御指摘のインデクセーションの思想ですね。物価が上がるときに預金が目減りしない、そういうところからお考えのことと思いますが、これをやりますと、一面におきまして、これはどうも預金がインフレに追随していくというようなことも考えなければならない。こういうことからいたしますと、これはよほど慎重に考えなければならないごとであるというふうに考えられるのでございます。そこをひとつ慎重にお考えいただきたい、こういうことでございます。
  122. 河村勝

    河村委員 お考えいただきたいじゃなしに、私は政府に考えてほしいと言っているのであって、インフレに追随するとおっしゃるけれども、私は全部の預金をインデクセーションにしろと言っているのではないのですよ。一般の預金は、定期預金を含めて弾力化なさい、ただ弾力化されたのでは一般大衆は困りますから、当面の金利は低くても、本当に物価が上がって困るときには目減りが補償されるという預金を別につくっておけば、他の預金を下げることも無理なくできる。それで預貯金金利が弾力化できれば、一般の金利の自由化に非常に役に立つであろう、私はそう思っているのですが、日銀総裁いかがですか、実際問題としてそういうことはできませんか。
  123. 森永貞一郎

    ○森永参考人 インフレーションによりまして預金者はいわゆる目減りの損失が起こることは申し上げるまでもございませんが、預金だけでなくて、その他のあらゆる債権についても同じようなことが起こるわけでございます。その反面、債務につきましてはインフレ利得が生ずるわけでございまして、お説は恐らく低額所得者、零細貯蓄についての問題だと思いますが、低額貯蓄だけにそれをとどめ得るかどうか。ブラジルなどでは一部の債権債務についてインデクセーションを実行しておるわけでございますが、そうなりますと、国民経済ないしは国民生活の上においての価値の基準が常に浮動するということに伴う混乱もございましょうし、また国民といたしましては、どうせ物価が上がっても所得がふえるんだからいいじゃないかといったような、物価騰貴に対する抵抗感が失われる。また経営者におきましても、コストを遠慮なく物価に転嫁するというようなことになりまして、国民経済全体として物価騰貴に対する抵抗感が失われるのではないか、そこが私ども一番心配しておるわけでございます。低額貯金に限るといたしましても、その範囲をどうするかということがなかなかむずかしい問題になるわけでございまして、立法上いろいろな支障がございまして、なかなか実現に移し得ないのではないか。ブラジルの経験でも、一時は大変うまくいっておったように見受けられたのでございますが、昨今はやはりインフレ率四、五〇%ということで、貸出金利も五〇%というようなことで、大変国民経済を混乱させておるのが現状でございます。したがいまして、私どもといたしましては、物価を上げないようにするということにあくまでも努力すべきである。それなくしては、やはりこの債権債務者間の不公平は救えないのではないか。したがいまして、私どもといたしましては、卸売物価、消費者物価、いずれも速やかに安定を来すようにということを最大の施策としていかなければならぬのがわが国経済の現状ではないか、そう思っておる次第でございます。
  124. 河村勝

    河村委員 これは御検討いただきます。  そこで、減税問題に入るのでありますが、その前提に、五十二年度の実質六・七%成長、これはいまの五十二年度予算を前提とした限りにおいては実現不可能であろうという想定を私どもはしております。総理は、絶対できるのだ、こうおっしゃって、これはすれ違いなんでございますが、先ほど申し上げたように、昨年の例をごらんになればわかりますように、輸出の見通しが六%もオーバーして非常に大きな働きをしているのに、現実の経済実態というのは、成長率から何から言いましても、さっき申し上げたとおり二・四、五%、その程度の成長しか達成しなかった。そこに私は、いままでと経済構造がまるきり変わっているから、だから、総理はいままでのいろいろな計数その他を御信用になって、公共事業費の二一・二%増、補正予算を入れて二三%というところまで認めましょう、しかし、そこまでやれば何とかなるのだというお話でございますが、それに私は非常に強い懸念を持っております。しかし、これを議論しておりますと、時間ばかりたって結局水かけ論になりますので、その中で、設備投資と個人消費支出の点だけちょっとお伺いいたします。  設備投資の面で、五十一年度実質三・五%から五十二年度は六・九%に上げる。しかし、実際、最近の経済企画庁でおやりになっております企業動向調査等を見ましても、来年度の一−六月で大体前期比一・〇の減、だからふえる要素というのは何にも出てこないのですね。大部分の業界が設備過剰だというふうに判断をしている。だから、ここもまたやはりさっきの経済体質にかかわることなんですけれども、民間の設備投資というものが、いままでは設備の稼働率が八五%から九〇%ぐらいになりますとどんどん先行投資をやってきた。だから、自律回復力が強かった。しかし、最近はもはやそうではなくなってしまって、その原因は要するに資本効率がだんだん悪くなった。それは公害という問題もあれば、先行きの見通しが暗いということもあれば、いろいろございますが、とにかく供給先行型であったものが需要追随型になってしまって、本当に稼働率がうんとぎりぎりまでいかないと設備投資をやらぬというふうにだんだん体質が変わってきている。だから、私は、この設備投資の見込みというのは、いまの公共投資の増加額くらいでもって、それで見通しどおりいけるものではない、そういうふうに考えておりますが、いかがでございますか。
  125. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたしたいと思います。  ただいまのは法人企業投資動向調査報告に基づいたものと思います。それでこれについてはいろいろな見方があろうかと思いますけれども、いろいろな季節調整その他をいたしまして、私ども、やはり緩やかな回復をしている、そういうふうに考えておるわけであります。全般的に申しますと、製造業の方では鉄鋼を中心として確かに弱いと思います。しかし、非製造業の方ではかなり顕著な伸びを示してくる。そういうことで、全体としては計画で見通した程度のものは達成できる、そう考えている次第でございます。
  126. 河村勝

    河村委員 まあそうおっしゃるでしょう、いまだめになるなんということを言えるものじゃありませんから。  それから個人消費支出の方でちょっと一つだけお伺いいたしますが、これまた勤労者世帯に関する限り、一般世帯は別として、消費支出が十一月ごろからマイナスになっているのですね。前年度水準より下がってきておる。こういう状態まで落ち込んでおって、果たして政府の見通しのように名目で一一三・七、実質で五・五%の伸びというのは期待できるのであろうか。  そこで一つ伺いたいのですが、大蔵大臣、政府の税収、所得税の見積もり、その基礎になっております給与所得、これの総額は二二%増を見込んでおりますね。だから、給与所得が二二%増というのは、これは当然ベースアップを予定をしておられるはずです。大体どのくらいのベースアップというものを予定してこの一三%増というのは組んでおられますか。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 坊秀男

    ○坊国務大臣 数字のことでございますから、政府委員からお答えをさせます。
  128. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 五十二年度税収の見積もりの基礎といたしておりますのは、雇用が一・五%増、一人当たり賃金が一一・六%増という計数を用いております。
  129. 河村勝

    河村委員 一一・六ですか。雇用者の伸びが一・五%。そうすると、大体これで見ますると、一一・六%の雇用者所得の伸び、これは大体どのくらいのベースアップというものを前提にしておりますか。これは基準外等も入れての話ですね。そうですね。
  130. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 税収見積もりの基礎に用いておりますのは、一人当たり賃金はその総収入ベースでございまして、非常にマクロ的な積算でございます。その中のベースアップが幾ら、定期外が幾らというような積み上げはいたしておりません。
  131. 河村勝

    河村委員 総理、私どもがこれをいままでの例によって推算をいたしますと、政府のやり方、本当はどうもああいうふうにひっくるめてやっているのじゃないらしくて、やはり計算しておりますね。だから、それを私どもで逆算しますと九・九%くらいなんですね。大体そんなところでございますね。
  132. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 肯定も否定もいたしません。
  133. 河村勝

    河村委員 経企庁長官、これを説明するのですか、九・九%。どうぞやってください。
  134. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えしたいと思います。  ただいまの雇用者所得一三・三%の問題をお尋ねと思うのでありますけれども、国民経済ベースで考えております雇用者所得というのは、賃金、俸給だけではございません。役員の給料や退職金、副業手当、また議員の歳費あるいはチップ等を含んでおるわけでございます。そのほか、社会保険の雇い主負担が入っておるわけでございます。それから賃金、俸給の中でも、定期給与と特別給与、ボーナス等と分かれておりまして、定期給与の中でも所定内給与と残業等の所定外給与と分かれておりまして、いまお話しのものは所定内給与、全体の雇用者所得で考えますと約五〇%、半分を占めておるということでございますので、直接、雇用者所得、国民経済計算における雇用者所得とただいまの春闘という問題とは関係ございません。
  135. 河村勝

    河村委員 そんな説明なら聞かなくてもいいんで、別段私は春闘と言ったつもりはないんでね。語るに落ちたような話であります。  しかし、わかりましたけれども、恐らくこの九・九%ぐらいのベースアップを前提とすれば、いまの財政規模を前提とする限り、減税を大幅にやるか、そうでなければベースアップを十数%やるか、どっちかを選ばないと、恐らくこの消費支出についても目標に達しないであろうし、景気そのものも目標に達しないであろう、私はそう考えております。これはもう御返事は要らないですね。どうせそんなことはないとおっしゃるに決まっているわけですからね。  そこで、一兆円減税の問題に入ります。  私どもは一兆円減税を主張しておりまして、その中身は、ごく簡単に申せば税額控除方式、ただし現金を配って歩くという方式はとても無理なようでありますから、これはあきらめまして、税額控除ですね。でありますから、本人一人三万円、扶養家族、妻も含めて一万円とすれば、標準家庭四人家族の場合で言えば、課税最低限度が二百一万から二百七十二万円まで上がります。でありますから、金額としては一兆円で非常に大きいというわけではないけれども、しかし、通常の基礎控除方式でありますというと、一兆円かけましても、政府のいまのルールでいけば二百三十五万円の人までしか救えませんけれども、これでいけば二百七十二万円ぐらいまで救える。でありますから、これは下に厚いということと、同時に、課税最低限度をうんと上げることによって消費性向が非常に上がるであろう。だから、税金がうんと減ったなという感じが出るようにするというところがねらいでございます。  そういうことを主張しておりますが、総理は前前から、総理の議論を伺う前に、どうも減税はさっぱり需要を創出する効果がないというような御説で、特に一回使ってしまえば波及効果がまるきりないような御説でありましたが、どうもそうでもないようですね。アメリカでは、これは方式が違いますけれども、大体二倍ぐらいの需要拡大をする、そう言っていますね。わが国の場合でも、いま申し上げたような税額控除の方式をとれば、その需要効果というのはだんだん公共事業に接近をしてくる。いままで話がありましたように、公共事業については、土地のウエートが非常に高くなる、あるいは産業関連投資から生活関連投資に変わっていくために、いろんな基礎資材の消費が少なくなって需要効果が減るというようなことで、総理も一兆円でもって一兆七、八千億とおっしゃっているぐらいで、大分下がってきておるわけですね。逆に、どうも最近企画庁などでも数字をおいじりになっているようであるけれども、必ずしもそんな低いものではないようです。ですから、総理も非常にいままで否定的なお考えを述べておられるけれども、総理としても、もしやれるものならやりたい、合理的な財源が見出し得るならば、それでインフレの懸念がないような状態であるならば、減税をできるものならやりたいというくらいのお考えはあるでしょうね。
  136. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 非常に抽象的に言いますと、政治家として、減税というようなことはもう本当に飛びつきたいような気持ちです。一兆円とおっしゃられますが、一兆円どころじゃない、もうできれば三兆円でも五兆円でもやってもらいたい、そういう気持ちですよ。私どもはいま、国民の気持ち、それはよくわかります。これはもう国民とともに胸を痛めておるというのが私どもの実際の立場であります。しかし、減税をやるには金が要るのです。その金が、高度成長期のようにざくざくしている、こういうような状態じゃありません。何とかして公債も発行してその財源を捻出しなければならぬというような世帯の状態ですわね。そういう際に、同じ金であれば一体どっちがいいか、こういう選択の問題になってくるんだろうと思うのです。同じ金、一兆円使う。減税に使えば、対象家庭ですね、三万円とか五万円の減税にはなるでしょう。しかし、それで減税になったなあというような実感がどのくらい持たれるか。ところが、それをしないで、今度はそれを公共投資に使う、こういうことになれば、学校にいたしますと、まあ学校学校といま騒いでおりますが、五千校できるのです。さあ下水道にしたらどのくらいできる、住宅にしたらどのくらいできる、大変なことができるのです、一兆円ですから。しかも、それは国民財産として残るのです。そういうようなことを考え、また将来の財政、いまはもう赤字をどうやってなくすかということが最大の問題だ。そういう際になりますと、さあ減税をして、また将来増税をする、非常にむずかしいことになるのじゃないか、そういうようなことを考えて、この際は減税はしたくないなというのですが、五党一致して要求をしている、こういうような事情もありますので、まあ三千五百億円、この程度のものをいたそうかと、こういうふうな選択をいたした次第でございます。
  137. 河村勝

    河村委員 学校をよけいつくればよろしい、確かにそのとおりでございますが、公共事業だからといってそうむやみに額をふやしたら、実行できるか、施行能力があるかということになると大問題ですね。学校だって土地がなければ建てられないのですから。ですから、土地の手当て等を考えれば、むやみに公共事業を積み増ししたら、それだけ年度内に施工ができるかといったら、私は非常に疑問だと思うので、できることなら、私はやはり公共投資と減税と組み合わしたらよかろう、そう思うのですね。  それで減税の財源について申し上げますけれども、一兆円減税と言いましても、それほど大きなものではないのです。われわれは、政府の三千五百億、これは織り込んでおりますから、それに一兆円プラスするのではございませんから、もとが六千五百億です。それもとりあえず単年度でもよろしい、こう言っているわけです。それで、これに六千五百億まるまる要るかというと、そうではなくて、ここから、所得減税をやることによる税収の増がございますね。これは、仮に一兆円需要効果があるとすれば、それがGNPを押し上げて、それのはね返りが千二百億ぐらいになる計算ですね。それから予備費、予備費が三千五百億とってありますね。これは恐らく今後与野党が折衝の際の財源にとって、少しふくらましてあるのじゃないかと想像しているのでありますが、このうちから千五百億ぐらい回す。それにこの補正予算、まだ出ておりませんけれども補正予算の中で既定経費の節約が九百六十九億あるそうです。間違ったら言ってください。その中には国債の発行がおくれて利子を払わなくてもいいという分もあるようでありますからそれは差し引くとしましても、大体そういう節約ないし不用に立つような予算が五百億やそこら必ず補正で出てくるのですから、こういうものをプラスをするということになりますと大体三千五百億ぐらいの手当てをすれば済むのです。三千五百億くらいの財源でありますとこれはそうむずかしいものではございません。いままで議論をされていましたから細かくは申しませんが、減価償却の耐用年数の年限を五%ぐらい仮に延長するとすればそれだけでもやはり千億以上ぐらい出しますし、交際費課税も限度額を除いて仮に一〇〇%課税すればこれでも七百億ぐらい出る。退職給与引当金などはいろいろ議論のあるところでございましょうが、それでも四兆円くらいある中の五%ぐらいを減らすことによっても八百億ぐらい出てくるのです。それから利子配当分離課税、これを仮に三五%を四〇%に上げればこれも平年度にすれば七百五十億出てくる。貸倒引当金の一〇%、これを対象にすれば五百億。こういうものを足しますと、これのどれを選ぶかということはこれから私は幾らでも議論はできると思うのでありますが、そう大きな影響を及ぼさずに、少なくとも単年度ならばこのくらいのものを出すのはやる気になれば何でもないというような数字であろうと思いますが、総理いかがでございますか。
  138. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  いまの財源の捻出についていろいろの御意見がございました。一兆円減税まではやらぬでも六千五百億やればそれのはね返りが税収として相当返ってくるのじゃないか、こういう御意見なのでございますけれども、それではあと六千五百億何税をどうしてということ等も考えますと、これははね返ってくるのは幾らだ、しかも五十二年度において、これはなかなか不確定要素がたくさんある。それからまた予備費ですね、これは三千五百億組んでございますけれども、それを千五百億ですか、崩したらどうだ、こういうお話でございますけれども、この予備費というものも二十八兆五千億の予算の中で三千五百億というものを組んである。ということは、これはどうも石がきを積んだようなかっこうでございまして、おのずからきちんと計算をして、ただむやみやたらと言うとおかしいですけれども、三千五百億には三千五百億の意味もあるというようなことから考えていきますと、財政当局としてはなかなかそういったようなことに——まだほかにもたくさん御意見ございましたけれども、それではこの減税の財源にということを考えますと、少しやはりそこらあたりに慎重な態度をとらなければならないというようなことでございまして、そういう技術的にも考えなければならない。  なお、総論といたしましては、先ほど総理がお答えになりましたとおり、やはり今度の公共投資ということを、いまはとにかくこれが一番大きな効果を発生するものだ、かように考えておりますので、それで減税とそれから公共投資と両方でもって、あれとこれとでもってやっていこうという考えにはなっておりません。ぎりぎりの場合には一つでもって目的を達成していきたい、かように考えております。
  139. 河村勝

    河村委員 法人関係の税金に手をつけるのは、総理のおっしゃるのには法人がそれだけよけい払うわけです、ですから投資意欲をそぐし、それから給与の支払いにも影響する、だからプラスマイナスすればゼロになってしまうというようなことを言っておりましたね。しかしどうなんでしょう、減税にいたしましても三千五百億を除いた六千五百億分は単年度もよろしいとわれわれは言っておるわけです。そうすると、単年度でもし支出が済むことであってそれによって景気が浮揚してくるという当てがあれば、そうすれば企業の投資意欲は減ると考える方が間違いであって、むしろ一般の産業界も減税は望んでおるわけですよ、それが景気浮揚に役に立つということで。だからそうであるならばこれが投資意欲をうんとそぐという、まあ多少の影響はあるかもしれません、だけれどもそんなに総理のおっしゃるようなことはないし、同時に減税をやれば給与の支払いに影響するしというまるでベースアップを抑えるようなお話でございますが、これはむしろ逆でしょう。一兆円減税をやるということは労使間のベースアップ交渉をする段階においてはむしろ有利に働くのであって、だからかえって実際よりも企業段階で言えばコストアップ要因というものは減る勘定になる。そうでしょう。ですから総理のおっしゃったのは少し違うだろうと私は思うのです。
  140. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は間違ったことは言っておらぬつもりです。つまり、河村さんのお話を聞いていますと、国の財政の方を一部減らして、そしてそれを減税財源にする、一部は法人に重課をいたしましてそして減税財源をつくる、こういうことでございますが、なるほど減税によって国民の中に購買力はそれなりにふえます。これは減税額だけじゃない、目いっぱいじゃないと思いますけれどもふえる。しかし、反面において法人の投資意欲というものにはもう決定的に関係がある、私はこういうふうに思います。その他、法人は相当の消費をしておりますが、法人のもろもろの消費に影響してくる。それから国の財政を減らす。こういうことになれば、それだけまた財政の引き起こすところの購買力に影響するので、それはプラスマイナスすると、どっちがどうか見当は私は非常にむずかしいと思います、あるいは減税の方の効果が少ないかもしらぬ、私は計算しておりませんけれども。  ですから、経済効果から言いますと、河村さんせっかくおっしゃいますけれども、それは決定的な問題じゃありませんよ。問題は財政です。この際減税をするということは、将来これは増税するということになってくるわけだ。この増税が一体簡単にできるか。しかし、とにかく財政のことを考えますと、それはことしで減税すればどうしたって取り返しをしなければならぬくらいの窮迫した情勢ですから。そういうようなことを考えますと、もう減税減税とおっしゃいますけれども、国家国民のことを考えますと、この考え方が非常にむずかしい考え方である、私はそういうふうに思います。
  141. 河村勝

    河村委員 あなたは減税の需要拡大効果というものは非常に軽視されて、公共投資公共投資とおっしゃいますが、公共投資の方が効果が高いことは認めております。だけれども、減税についても単なる一遍こっきりの消費ではなくて、減税分がどれだけ何十%使われるかは別として、物を買えばその消費産業の所得がふえてそれがまた何かに消費をして、やはり乗数効果というのは同じようにあるのですよ。だからこそアメリカでは戻し税という方式をとっているから二〇〇%になる。日本の場合には二〇〇%はいかぬかもしらぬけれども、かなりなものにはなるという試算もできるのですよ。だから、公共投資とまるっきり値打ちが違うんだというお考えは間違いであるということを申し上げて、御検討を願いたいと思うのです。いますぐ減税しますとおっしゃるわけはございませんので、全野党まだ完全に共通の案ではないけれども、およそまとまりつつあるので、なおこれから最後までこれは粘るつもりでございますから、よろしくお願いをいたします。
  142. 坊秀男

    ○坊国務大臣 河村さん、景気浮揚の方法としては幾つか考えなければならぬのだが、私は減税をやるということは、全然こんなものは効果ないんだ、こういうふうに考えておるのじゃございません。ただ、どれをとるかということにつきましては、今日はやはり総理の言われておるとおり公共投資というふうに考えておるのでございまして、この際は一番効果の多いものをとるという考え方でございますので……。
  143. 河村勝

    河村委員 もう時間がなくなってしまいましてほかの問題ができなくなりましたので、最後に国債管理政策について少しだけお尋ねをいたします。  この前、日銀総裁のこの委員会の発言がございまして、時間がございませんので簡単に申しますが、現在の段階ではまだ公債が五十一年度末二十二兆円。その中で日銀保有高が八兆円ですね。いままでのところではまだまだそう混乱はしておらないし、民間資金需要が弱いから、俗に言うクラウディングアウト、民間資金を締め出すような事態は予想されない。同時にマネーサプライも大体正常な状態にあるので、いまのところはそう心配ない。そういうような時期になったときには、租税収入の増加に伴って国債発行の減額を政府に要請するという趣旨のことをおっしゃいましたが、まあそういうことなんでございましょう。しかし、現実には国債が発行されてだんだん累積をしてきますと、その歯どめというのは非常にむずかしくなります。この間も、一遍に市場原理によって、市場価格いかんによって国債が発行できなくなるような状態をつくっていくことによる歯どめ、そういうものは望ましいけれども、当面はまず発行条件の弾力化をしていかなければならぬ、そのくらいのところであろう、という御説でございました。  まず、一つだけ先に伺いたいのですが、財政というものがだんだんふえてまいりますと、それは日銀の責任というのは非常に重いと思うのですね。本当に民間資金と競合する時期になると、日銀の態度いかんによってインフレになるもならないも決定的な影響力を及ぼす。だから、言葉は丁寧におっしゃっても結構でございますが、日銀総裁としてどのような決意をお持ちなのか、決意のほどをまずちょっと伺いたいと思います。
  144. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お答えいたします。  国債の発行がだんだんふえてまいりまして、その結果、マネーサプライが増加する大きな要因がそこに生じておるわけでございます。民間資金の需要が今日のように鎮静しておりますときには格別問題もなく推移しておりますが、将来民間資金がふえました場合に、この国債の消化と民間資金とをどう調整するか、これは大変むずかしい、私どもの非常に重要な責任だと思っておるわけでございまして、そのときどきの情勢に応じまして、短期の調節について遺憾なきを期するだけでなく、マネーサプライが一体どう動くかということに私どもといたしまして重大な関心を持ち続けておるわけでございます。常に過去におけるマネーサプライの動向をしさいに検討し、そのようなマネーサプライのもとにおいてどういう経済情勢が起こっておるか、どういう物価の動きが生じておるか、あるいは国際収支が一体どうなっておるか、そういうことを始終見比べまして、その辺の処理に遺憾なきを期さなければならないわけでございまして、国債だけではございません、民間資金の供給につきましても、そのときどきの情勢に応じて政府にも献策し、また私どもの金融政策の範囲内でできますことにつきましては、遺憾なきを期してまいらなければならない大変重大な責任を感じておる次第でございます。
  145. 河村勝

    河村委員 時間がなくなりましたので、一問だけ総理と日銀総裁に最後にお尋ねをいたします。  私、前々から、最近日銀でだんだんとやり方として定着をしてこられているマネーサプライM2の目標というもの、これにずっと注意してまいりまして、これをひとつもうちょっとオーソライズして、日銀はもちろんそれを守って、その枠の中で民間資金と政府資金の調節をやる。同時に日銀の貸し出しだけでもってコントロールする時期は過ぎてしまって、財政の方が非常に重要になってまいりましたから、そうした目標ができたならば、政府も何らかの形でそれを裏書きをして、一種の共通の目標のようなものにして、それによって過剰流動性がふえたりあるいは政府資金が民間資金を追い出したりまた逆になったりすることをコントロールする、そういう主張をしてまいりましたが、いよいよそれが大事な時期になってきた。本当に公債市場というものが完全にできておればまた事情は違うかもしれませんが、それにしてもこれは大事だと思う。私、おととしまだ福田さんが副総理の時分にそういう点をお伺いしたところが、「政府の方でもひとつ日銀と協力いたしまして、なお、さらにそういう問題を掘り下げ、公債管理政策に資するところがあればと、かように考えたいと存じます。」、こう返事をされておるのですね。もう少しM2というものをオーソライズされたものにして、それによって過剰流動性、インフレ防止、そういうものに働かせたいという主張でありました。その後多分そうした御検討もされてないと思うのですが、いよいよそれが大事な時期になったので、それを日銀総裁総理大臣に最後にお答えをいただいて質問を終わりたいと思います。
  146. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 河村さん御指摘のように、M2という問題は非常に重要な問題だ、こういうふうに見ております。そこで政府日本銀行の間でM2は今月は幾らになった、これから先の見通しはどうだということを非常に論議するようになってきておるわけです。M2というものに着目する、これは非常に大事なことだろうと思うのです。ただ、こればかりで経済診断をするわけにいきません。物価の問題もある、国際収支のこともある、そういうものを総合してある種の判断を下す、こういうことになるわけでありまして、この上ともM2の動きにつきましては重大な関心を持つ。しかし、M2が幾らでなければならぬ、こういうようなことを決定してそして金融を操作するということは、これは相当困難の伴う窮屈なことじゃなかろうか、さように考える次第でございます。
  147. 森永貞一郎

    ○森永参考人 ただいま総理大臣がお答えになりましたとおりでございまして、M2の動きと国民経済の動きないしは物価の動きが一義的に直接結びついているわけではございませんので、いまそれを直ちにターゲットとして、機械的な目標として運用することにはちゅうちょしておる次第でございます。しかし、マネーサプライの動きを重視いたしておりますことは先ほども申し上げたとおりでございまして、当分いまのようなスタンスでまいりたいと思っております。
  148. 河村勝

    河村委員 終わります。
  149. 坪川信三

    坪川委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  150. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まず、総理御就任になりました福田さんにお祝いを申し上げたいと存じます。  早速でございますが、外交問題につきまして何点かお伺いをいたしたいと存じます。  現在、わが国をめぐる諸情勢はきわめて流動的かつ多様でございますし、これに対する対応をしくじれば、重大な問題を惹起することは当然であり、しかも既存のルール、既存の対応を大きく変えなければならぬ問題がたくさんあると存じます。私は、本日は外交問題に対する十個の提案を含む提案をしつつ幾つかお話をお伺いしたいと存じているわけでございます。  まず第一に、日中平和友好条約の早期締結の問題でございますが、過日の公明党第五次訪中団の中国訪問の際、総理からの要請で公明党の竹入委員長福田総理との会談の際、総理が明らかにされました、日中共同声明を遵守する、平和友好条約については相互に立場を理解し、互いに満足な条件で一致すれば交渉を進める、こうしたお話をなさったと報じられているわけでございますが、これは福田内閣の基本的姿勢であると承知してよいものであるかどうかお伺いしたいと存じます。
  151. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおり御了承願います。
  152. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さて、日中平和友好条約の締結については、すでに共同声明が五年前の九月二十九日に発出されており、足かけ四年半という時間がたっているわけでございます。恐らく今年いっぱいぐらいにはめどをつけなければ仕方がないだろうというふうに私たちも思いますし、国民の期待も集まっているところでございます。早期締結に対する福田総理の御熱意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  153. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 早期締結につきましては、これは日中双方がこれを望んでおる、こういうふうに私は理解しております。したがいまして、早期締結への努力を積み重ねて、早く両方が満足し得る状態ができてくるということをこいねがっております。
  154. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もちろん外交は両者で行うものでありますから、期限を切って交渉するということは当然でき得ないわけではございますけれども、交渉の取っかかりは、わが国の意思表示によってかなりなところまで狭めることは可能だろうと思います。したがいまして、そのうちにというのではなく、これに対する総理の御決意と申しますか、どのぐらいにこの締結交渉を始めたいというお気持ちであるか、もし差し支えがないようでしたらお話をいただいた方がいいのではないかと思います。
  155. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 実は北京におります小川大使を呼んでいるのです。もう昨日あたり帰ってきたんじゃないか、こういうふうに思いますが——まだ帰ってきませんか、呼んでおって、一両日中にあるいは二、三日中に当方へ帰ってくる。その報告なんかを聞いて、これからのやり方、そういうことを決めなければならぬがなあと、こういうふうに考えておりますが、いま、いつ、いかなる段取りでこれの交渉を開始するのだということは、ちょっと答弁を差し控えさせていただきます。
  156. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今回の竹入訪中の際に、外務省高官のお話というものがいろいろ表明されまして、右に左に、縦に横に揺れた印象を与えましたことは好ましいことではなく、これについては外務大臣からも釈明がございましたから、私はこの場で何かかんか申し上げるのはやめておこうと思います。しかし、宮沢四原則であるとか小坂三原則であるとか、この調子でいくと、外務大臣御就任の皆様はみんな妙な原則を一々発表されまして、それに対して一々批評がつきまとって、わが国外交の姿勢というのが妨げられるということは余り感心したことではないと私は思います。外交の当事者が表明する意見はおのずからの自己規律があるべきものであり、そして、その言うべき意見というものは外交交渉の取っかかりになりますから、手のうちを早く公開し過ぎることは余り賢明でないし、逆に言えば、それは交渉をわが国にとって非常に不利なものにする可能性さえある。これら基本的案件を外務省当局筋などというのが心得ていないとすれば、それはもう行政指揮の衝に当たられる総理の重大な責任になろうかと私は思うわけであります。十分御監督いただきまして、こういう愚かな事態が二度とないようにしていただきたいと私は希望したいと存じます。  そうして、やはり日中問題というのは、わが国外交にとっては変動する一つの選択肢だと思います。この選択肢がきちっと安定しないと、日中関係についても、日米関係についても、日ソ関係についても、あるいはASEAN諸国の問題についても、全部が動いてくる。どこもふらふら動いている中で、諸外国の圧力をこうむりやすい外交政策というものをやっていかなければならない。ですから、決めるべきところは決断して決める、こうした立場が必要ではないかと、あえて直言して申し上げるわけであります。もう私がほとんど申し上げるまでもないとは思いますが、総理の御見識を承り、かつ早期締結への御決意をもう一回承っておきたい。と申しますのは、先ほどの総理のお話では、どのくらい一生懸命に早期にやろうとしているかは私は全然つかめませんし、私の後ろに立っておりまする、恐らく期待して見ております日本国民にとっては、総理の日中問題に対する御熱意、そうしたもの、取り組みの意欲というものはますますわからないと思うから、あえてお伺いするわけであります。
  157. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日中平和友好条約につきましては、双方がその締結を望んでおるわけですから、これはもうなるべく早く双方が満足し得る条件をつくって、そしてこれを締結する、こういうふうにしたい。そのゆえに北京駐在の小川大使なんかわざわざ呼んで、大使の意見も聞こう、こういうことになっているわけでございます。
  158. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まあ大使を呼び戻したというだけで熱意があるというふうにおっしゃっているわけですが、大使というのはときどき休憩のためにも呼び戻されるものですから、余りそれほど、あなたのおっしゃるほど私は日中問題に対する日本政府姿勢は明快ではないと思います。ただ、総理がいま非常にこの問題に対して慎重な立場をとらざるを得ないお立場にもあろうと私はあえて推察しているわけでありますから、今後の御活躍を期待したいと存じます。  今度は、領海十二海里の問題について申し上げたいと存じます。政府の出された、閣議の了解事項として関係閣僚の間で取りまとめられた文書をちょうだいしたわけでありますが、  一、政府は領海十二海里問題について、関係閣僚の間で協議した結果、沿岸漁民の利益保護等の観点から領海を十二海里(ただし国際海峡については国連海洋法会議の決定を見るまで現状のままとする)に拡張して対処することに意見の一致を見た。  二、この措置については立法を要するので、関係省庁間で至急立法作業に着手する。  三、この問題の担当大臣として農林大臣に取りまとめをお願いすることとする。と、こういうものを私は見せていただいたわけでございますが、これは担当大臣、名前が出ておられるのですから、農林大臣にこういうことになっておるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  159. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 そのとおりになっております。私は国務大臣として取りまとめを総理から命ぜられた、こういうことでございます。
  160. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この文書を拝見する限り、非常に問題がたくさんあるのは御承知のとおりだと思います。鈴木大臣が恐らく火の粉をかぶる気持ちでこれをあえて引き受けられた御心境もわからないではありませんが、そういう御努力や熱意はこの場ではたなに上げておくとしまして、あえて日本国民の利益の立場から厳しく申し上げるのでございますが、大体国際海峡についての定義が明快でないわけですね。日本国としても国際海峡の定義は明快でない。諸外国の間でもいまお話し中で明快ではない。あなたの国際海峡というのはどういうことを意味されているか伺いたい。
  161. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私といたしましては、国際航行に使用されておる海峡、これを国際海峡と、こういうぐあいに認識をしておるわけでございます。
  162. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国際航行に使用されている海峡を国際海峡と申すのでありましたならば、まずいことに日本の持つ海峡群、そのうちの七十数個という海峡は全部国際海峡となるわけであります。それでよろしいんですね。
  163. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 いまお話ありましたように、相当数の海峡があるわけでございますが、国際航行に使用されます頻度でありますとか、あるいはまた国連海洋法会議等で国際海峡に対する論議が行われておりますが、そういう点等も参考にいたしまして、具体的な指定をいたしたい、こういう考えでございます。
  164. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それはまずい御答弁ですね。ということはルールがない。鈴木さんがおなかの中で決めていて、あれが国際海峡らしいと決めると国際海峡となるということを示している。頻度を考えるというけれども、何回以上を頻度とするのかも不明確です。三回通ったら頻度とするのか、十回通ったら頻度とするのか、それも不明確です。いまは世界じゅうでこういう決め方をすればそこらじゅうが国際海峡になってしまうわけでありまして、あなたの方で国際海峡についてはと言われても、国際海峡のこれとこれとこれを国際海峡と認定するというのは、日本国独自の見解です。そしてそういう見解をもしあなたがお決めになって、外務省当局がそれをイエスと言われたら、外務省のいま海洋法会議で議論している連中は、その定義を受け入れて議論しなければならぬじゃありませんか。海洋法会議の真っ最中に何でこんな愚かな、国際海峡についてはと、こういうものを書かれたのか。もし、やられるのだったら私は答えを言いますよ。国際海峡じゃなくて、どことどことどこの海峡についてはというならわかる。何で国際海峡と書くのですか。これは全然エラーじゃありませんか。こんないいかげんな定義を外務省に押しつけて交渉せいと言ったら、外務省はどっちを向いて交渉するのですか。いままで海洋法会議で議論した話は全部取り下げて、わが方の海洋法会議の国際海峡についての定義はこの間からすっぱり変わりました——この国際海峡という言葉は国際法の定義用語なんです。これはまずいと思いませんか。
  165. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 御指摘のように、最終的には、政府として関係省庁の間で十分検討した上で特定をされる、こういうことになると思います。
  166. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは特定せざるを得ないのだろうと思います。特定せざるを得ないと思いますけれども、それはこういう言葉で物を書いてはいかぬということだけは銘記していただきたい。国際海峡という字は大変なんです。外務省の方に聞いていただけばわかるけれども、こんな言葉遣いをやったら最後、えらいことになるということを厳重に御認識いただかなければならない。では今度は、特定するとおっしゃったが、特定することについてのあなたのプランはどういうプランなんですか。
  167. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ただいま申し上げましたように、関係省庁とせっかく検討中でございますから、いずれ法案提出の際までに明らかにいたしたい、こう思っております。
  168. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、きのう海峡名を挙げていろいろおっしゃっておったというのは、あれはあなたが口走られたのか、それともだれかが想像で書かれたものか、その辺はどういうことになっておりますか。
  169. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 渡部さんおっしゃるように、たくさん検討の対象になるものがございますけれども、昨日申し上げましたところの四海峡、これは国際航行に多く利用されておりますので、これらが対象になる、こういう認識でございます。
  170. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いろいろ苦しんでおっしゃっておられるのもわかりますが、私の立場は、すべての海峡に対して領海十二海里を一斉に広げるということが私は妥当だと思います。そうして現行領海条約で規定されている無害通航権を厳格に施行するということの方が、私は話の筋としては通ると思うのです。ところが結局はこの場合、スリランカの場合にも、こうした無害通航権を厳格に施行することによって、こうした問題に対する見識をあらわしている国もあるわけでありますが、なぜ現行領海条約で規定されている無害通航の問題を見ようとしないで、後へ、十二海里と言うべきところを一部だけ三海里に下げようなどという、とんでもないプランをなさろうとなすったのか。それは結局は、核積載艦をすらすら通そうという、非核三原則の例外をつくろうということになったのではないかと数日前から論戦が出ておりますが、それはどうでしょうか。
  171. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 この問題につきましては、御承知のように、ただいま国連海洋法会議で国際海峡の問題は大きな政治課題として検討が進められておる。その方向としては、一般の領海よりももっと自由な航行ができるような方向、こういうことで国際海峡の問題が検討されておるわけでございますが、無害航行等の問題も含めまして、いま国連海洋法会議で検討されておるという段階でございますので、その結論が出るまで暫定的に現状を変更しない、また日本は、しばしば申し上げておるように、マラッカ海峡等いわゆる国際海峡につきましては、現状のままで自由な航行ができるように確保したいという主張をいたしておるところでございます。
  172. 渡部一郎

    渡部(一)委員 マラッカ海峡をいつも出されて御説明になっていますけれども、それは児戯に類した御答弁ですよ。なぜかといえば、海峡通過の場合に日本の領海があったとしても、船舶はそこを自由に無害航行という立場をわが国が堅持しておれば通ることができるのです。マラッカ海峡だって通ることができるのです。日本政府が困っておるのは——日本政府よりもむしろ日本国民が異常に神経を逆立たせているのは、核積載艦、核兵器を持っている船は通さないということについて国民の強い意思があるからです。ですから、核積載艦については無害航行で対抗すればとめることは可能じゃないですか。タンカーは通そうというのです。うちはタンカーを通そうというのです。どこのところだってタンカーを通さないなんと言っているところはないじゃありませんか。十二海里にしたって日本国にしてはタンカーや商船群を全部とめますなんということは何にも意思表示しているわけじゃないじゃありませんか。あなたは核積載艦の問題とタンカー通過の問題とをわざわざごちゃごちゃにしてみせて、そういうことを言われそうだから、国際会議の上ではぐあいが悪いから海洋法会議の結論を待つと言われた。それは私はうなずけませんが、いかがですか。
  173. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 重ねて申し上げるようでございますが、無害航行の問題も含めていま国連海洋法会議でこの問題が論議されておる、まだ結論が出ていない、そういう段階でございます。ところが一方におきまして、現実に二百海里時代も到来をし、日本近海における外国漁船の無秩序な操業、漁具の被害、こういう事態も起こっておりますし、一日も早く漁民の利益保護等の観点から、いわゆる国際海峡の部分を除きまして十二海里を設定をしたい、こういう考えでございます。
  174. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あなたは沿岸漁民の利益、沿岸漁民の利益とおっしゃいましたけれども、あなたが指定されそうな津軽海峡沿岸の漁民はこの案に大反対であることは御承知でございましょう。陳情書が山ほど来ておりますよ。なぜわれわれのところは十二海里にならないのだ、十二海里になるならば全部安全に操業ができるじゃないか、どうしてわが方の海峡だけを三海里に減らすのか、こんなひどい決定があるかと叫んでおるじゃないですか。宗谷海峡だってそうですよ。対馬海峡だってそうですよ。朝鮮海峡だってそうですよ。各海峡ではみんなそういう漁協の動きがありますよ。部分的にいえば、そういう人たちはみんなかんかんになって怒っておりますよ。  また、あなたは漁民の利益とおっしゃるけれども、非核三原則をこういうやり方でなし崩しにするようなやり方をすれば、わが国の漁民だけじゃない、わが国国民全体のマイナスですよ。十二海里は前へ出せばいいんですもの、海洋法会議で別の結論が出たらそのときになって引っ込めたらいいじゃないですか。わが国が最初から主張すべきものは主張して、それから後から下げてくるのは当然じゃないですか。ソビエトだって十二海里と言っておいて、そして日本の要求に応じてそれを交渉しようとする姿勢を示されておるじゃないですか。アメリカだって二百海里の漁業専管水域を設けて高額の入漁料を払うことを要求して、後少しずつ下げてきているじゃないですか。交渉する前からへこましたなんてあなたが最初じゃありませんか。
  175. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 渡部さんから津軽海峡であるとか二、三の海峡につきまして漁民の諸君が反対をしておる、こういうお話があったわけでございますが、私も全漁連等を通じまして漁民全体の立場からの意見も聴取いたしております。また、津軽海峡関係の青森県の漁民諸君にも私も一お会いをいたしました。そういうことで、全体の沿岸漁民の利益保護という大局に立って御協力をいただいておる、御理解をいただいておる、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  176. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あなた御理解をいただいていると言うけれども、漁民は御理解なんか全然していませんよ。あなたのおっしゃるとおり御理解されておるのだったら私のところへ何でそういうものが来ますか。それはあなたは言葉のあやで漁民の問題についてみんなに知らせないようにする言い回しであるだけです。それはよくない言い方だと私は思います。法律的に見たらあなたのお立場はもうめちゃくちゃなんです、このルールは。いまから立法作業をなさるということですから、立法作業の結論を私は見させていただきますけれども、こんなやり方でこの厳格なる当衆議院の各委員会において通過するとは思われません。私がさっきから言ったことに何一つお答えがおできにならぬじゃありませんか。私がこうやって事前に申し上げるのは、あなたに対する友情のあらわれです。もうめちゃくちゃで見るにたえないものが出てくるに決まっている。総理、ここのところで、余りこれはひどい——まあ政治的決断といえば一つの決断かもしれない、だけどこれは余りにもルールが通らなさ過ぎる。だからとても話にならないので、よけい非核三原則をなし崩しにするものではないかという結論が導きられやすいわけですね。  だからいま総理にもう一回お伺いするのですが、昭和四十九年十二月二十五日、参議院内閣委員会において政府が統一見解としてまとめた、口頭発表したものでありますが、ここにプリントされているので読み上げますが、この見解は今日もなおかつお持ちなのかどうかを伺っておきたい。  すなわち「一般国際法上の外国軍艦の無害通航の問題に関して政府昭和四十三年領海条約加入の際明らかにした立場、すなわちポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦によるわが領海の通航は、領海条約第十四条4にいう無害通航とは認めず、したがって、原則としてこれを許可しない権利を留保するとの立場には変更はない。日米安保条約のもとにおいて、米国軍艦は、一般的には同条約及び関係取りきめの規定に従って自由にわが領海通航を行なうことを認められているところ、核の持ち込みが行なわれる場合はすべて事前協議が行なわれることとなる。」こういう決定がございますね。それは御存じでございますね。  これはわが国の領海に対して、ポラリス潜水艦とわざわざ名を打って、これはいまは余り高級な核装備艦ではありませんけれども、ポラリス艦のような常時核装備を有する外国軍艦はわが領海の通航に関しては無害通航とは認めない、だからいかぬ、こういうことですね。原則として許可しないという権利を留保する。それでアメリカのものについては、すべて核の場合は、領海を通過するときは事前協議だ、このお立場は変わっていないのですねと私はお伺いしておるのです。どうですか。
  177. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまお示しになりました四十九年の十二月二十五日だと思いますが、内閣委員会におきまして宮沢国務大臣が答弁をしておられまして、ただいまのところ政府としてはこの見解は変えていないと思う次第であります。  なお、これは大事な問題でございますから、総理大臣から答弁される方がいいかと思います。
  178. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま外務大臣が思っておると言ったとおりでございます。
  179. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、日本の領海の中に——日本の領海が広がりますね、広がった場合は、そこに核積載艦の進入、通過は許さない、そういうことになりますね。外務大臣ですか……
  180. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 当然そのようになろうかと考える次第でございます。
  181. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さて、それでは日本の広がった領海の中で、だれが原子力潜水艦その他核積載艦の進入に対してチェックをなさるのですか。田村さんと三原さんの間には意見の相違があってお互いに話し合いはしないというふうに新聞紙上で対決されておられますから、両大臣にどっちが担当なさり、どの程度の応酬能力があり、その辺のところをここで述べていただきたい。
  182. 田村元

    ○田村国務大臣 海上保安業務につきましては、海上保安庁がこれを担当いたします。本年も、本年といいますか、五十二年度の予算におきましても、十二海里時代を迎えての艦艇、飛行機等の準備をやっております。  自衛隊法八十二条の規定がありますが、これは防衛庁長官が必要と認めるときに、総理大臣の承認を得て所要の行動をとることができるということでありますけれども、これは相当な事態ということになりますから、私どもとしては八十二条の場合におきましても、自衛隊は海上保安庁に対して支援後拠という立場にあるというふうに理解をいたしております。
  183. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほどのお言葉の中に、運輸大臣と防衛庁長官の間に意見の相違があったということでございますが、この点については何ら論争もなければ、意見の相違もございません。  そこで、領海内における潜水艦の問題につきましては、もちろん私どもも平常の自衛行動の中で、そうした無害通航という立場から見て、潜水艦が領海内に入っておるということになりますれば、直ちに私どもは海上保安庁の方に通報をいたします。そういう対処をする考えでおるわけでございます。そして、協力をしてまいるということでございます。
  184. 渡部一郎

    渡部(一)委員 現在の自衛隊及び海上保安庁の能力で、原子力潜水艦のわが国海峡に対する通過状況をどの程度把握されておられるか、また把握する能力があるか、お伺いしたい。
  185. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 日常の自衛行動といたしまして、わが防衛庁におきましては、沿岸水域、水路等に対しましてその情報の収集をいたしておるのでございます。海峡等におきまする問題につきましても、その情報の収集をやっておるわけでございまするが、天候の悪条件とかあるいは必要器材の十分使えないような故障時期等もございまして、完全に海峡通過の状態を把握しておるということにはなりませんけれども、大体まあ九九%ぐらいまでは情報収集はいたしておるわけでございます。  二、三の例を挙げますれば、千島海峡におきましては、大体昭和四十六年から五十年ぐらいの平均値をとりまして、吾四十隻ぐらい、その艦種あるいは国籍等も調査をいたしておるわけでございます。なお、対馬海峡におきましては、大体六十隻ぐらい、宗谷海峡におきまして百十隻ぐらい、そういう今日までの能力と申しまするか、実績でございますが、中に潜水艦がどうだというような細かいことにつきましては、政府委員に必要がございますれば答弁させたいと思います。
  186. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それだけの潜水艦がわが国の周りにうろついているのでありますから、スリランカ政府が一九六四年一月二十三日、各国政府に対し、核兵器を積載した軍艦は許可制度にするという公文書を通告しているわけでありますが、わが国の場合は、核兵器積載艦船の通航は認めがたいということを、同様公文書その他の外交ルート等で通報し、わが国施政権下におけるルールというものを告知せしめることが必要と思われますが、そのような措置をその時点でとるお気持ちがあるかどうか、お伺いしたい。
  187. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 わが国が非核三原則をとっておるということは、世界各国にもよく理解されておるところと思います。ただいまのお尋ねが海峡を通過しておる、こういう点につきましては、公海部分につきましては特に現状におきまして通航を認めない、こういうわけにはいかないわけでございますが、領海内は当然のことで、非核三原則は周知に努めておる。機会あるごとに、たとえば核防条約の批准に際しましても、そのようなわが国の考え方を徹底をさせてあるところでございます。
  188. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは今度外務委員会でもう少し詳しく聞きます。それじゃ御答弁としてはまずいだろうとぼくは思うのだな。それだからそこをあれします。  津軽海峡とか対馬海峡とか宗谷海峡で約二百数十隻の潜水艦がもぐっているということをいまおっしゃいましたね。そのような船が通過しているからこそ、先ほどのような、国際海峡については一部をもとのままにするなどということを鈴木さんがおっしゃらねばならなかった、こういう悲しい事情があったということを裏づけていますね。そうでなければ、わが国はそこを広げるのに何にも遠慮することはなかったはずですね。だから、タンカーの問題を種として議論をするのはおかしい。タンカーの問題はタンカーの問題で応酬すればよい。原子力潜水艦の問題は原子力潜水艦の問題で応酬すればよい。こういう原潜級の、強力な核持ち込み能力がわが国の領海となるべきところにいるという事実と衝突しないために後ろへ下がった、そう言うしかないと思うのですけれども、鈴木さん、その辺はどうなんですか。
  189. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いまの私の説明が足らなかったかもしれませんが、ちょっと補足をさせていただきますが、私が先ほど三海峡の通航船舶のことを申し上げましたが、それは船種でございますとか国籍というようなものは、具体的に潜水艦が何、何が何ということでございますれば政府委員にさせますということを申し上げましたが、それはすべて潜水艦ということではございませんので、御了承賜りたいと思います。
  190. 渡部一郎

    渡部(一)委員 鈴木さんいかがですか。要するに、原子力潜水艦のことを心配して、アメリカとソ連の原子力潜水艦をすいすい通してあげるためにここの三海峡ないし四海峡、わかりませんが、そうした海峡については通るようにしたいというお気持ちでこんな案がまとまったのとは違いますか。
  191. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 渡部さんはそういうぐあいに見ていらっしゃるわけでございますが、私どもは、いま国連海洋法会議でいわゆる国際海峡の通航問題が論議され、まだ結論に至っていないという事態を踏まえまして、しかし一方において沿岸漁民の利益保護を一日も早く図りたい、こういうことで政府の関係閣僚と話し合いをいたしましてそういう結論に達した、こういうことでございます。
  192. 渡部一郎

    渡部(一)委員 こういうふうに御答弁が返ってきたならば、まことに恐縮なんですが、委員長、私、これについては留保させていただきたいと思います。質問に答弁として明快に返ってこない。そして私が言っていることを十分理解しようとしない。逆に言うと、十分理解しているからこそ言おうとしない。苦心惨たんな御答弁が返ってくる。これは野球のピッチャーの球で言うと暴投に属する。これじゃ議論にならない。だから、理解と対話を求めるためには、これはもうちょっとお詰めいただかなければならないと思うので、この辺は留保させていただきたいと思います。委員長、よろしいですか。
  193. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの件につきましては、また理事会でお話し合いながら御期待に沿いたいと思います。
  194. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それから、こうした問題が何回も蒸し返され、紛糾する最大の理由は、非核三原則に対する総理の態度がわれわれに対して明快でないからであります。これは結論から申してまことに険しい言い方になって恐縮ですけれども、総理が現在お持ちの閣僚の中には非核三原則を嘲笑した閣僚がおられるわけです。ですから、そうした問題について御当人からば弁明を聞く必要はなかろうと私は思うのです。そういう非核三原則を頭から嘲笑しているのをそのままあなたは閣僚にされた。国務大臣はいろいろなことを発言する能力がおありです。私はあえてその方の名誉のために名前を言いたくないから、議論がすらすらいくなら名前を言わないで済ましたいと思うのですけれども、どんなことが言われているかというと「核時代にはわれわれは自分の核兵器かあるいは他人の核兵器の使用あるいはその抑止力をもって自分を守らなくてはいけません。」とか、「さて、ここに非核三原則なる非常に奇妙なものがございます。つくらぬ、持たぬ、持ち込まず、妙な火事の標語のようなものでございますけれども、私はどうも、何でこんなものを政府がおつくりになったか、いささか理解に苦しむ。こういうものをつくる必要がどこにあったのかと思いますけれども、これはまさしく先ほど外務大臣がおっしゃいましたように、日本人の核アレルギーと申しますか、むしろ核に対する無知、核時代の防衛に対する無知の所産だと私はあえて申し上げます。」「われわれは、つくらぬ、持たぬがゆえに、場合によっては持ち込まなくてはならない。それでなければ完全な防衛は果たせないと思います。」ここまで言われておるわけですね。  これは公的な場所における御発言でございますから、私ははなはだ遺憾でございますが、こうした方を閣僚に福田さんはお据えになった。平然と抜てきをしてすぱっとお据えになった。自由民主党に数ある中ですっと抜かれた。もちろんいい点があったから抜かれたんだと思います。総理の人事権に対しては私は何にも申し上げるつもりはない。だけれども、非核三原則に対してのこの発言があることは公然たる事実ですからね。閣僚になる前に呼びつけて、君、あれは本音かね、あんなことを言っちゃいかぬよと、総理としておっしゃるのが私は本当だろうと思うのですが、総理はどういうお考えですか。
  195. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まず福田内閣は、非核三原則の厳守につきましてはかたくそういうふうに考えてこれを守っていく、さような基本方針であることを申し上げます。  なお、ある閣僚についてのお話でございますが、これはそのような言動があったというような話を私、聞きましたので、念のため閣僚任命前にその閣僚候補と話をしてみたのです。これは大変誤解があるようであるという話であり、非核三原則につきましてはこれを順守するという話なんで、これはもう全く疑う余地のない態度でございましたので、私は安んじてこれに入閣を求めたわけであります。
  196. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は総理のお言葉ですから、総理のお言葉を信用すべきだと思います。御当人様はどうせ後で記者会見でおっしゃるでしょうから、そのお答えを記者会見を通して私は聞こうと思います。なぜかと言えば、こんな問題について余りにもみっともなさ過ぎるからですね、閣僚の中で。  まだ後にありますが、最近、在韓米軍撤退問題をめぐって某閣僚は、これについて政府方針とまるで違うようなお話を、ある意味では非常に重大な干渉をされるようなことを、ある団体の一員として署名運動をなさったと伺った。総理はそういう問題についてどうお考えか、承っておきたい。
  197. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、さような事実は承知しておりませんです。
  198. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これはやむを得ない。厚生大臣に、私はこの問題に対する経緯をお伺いしたい。
  199. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 そういう事実はございません。
  200. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それではわからないですよ。あなたは明らかに在韓米軍の撤退に対してノーと言われたというのが新聞に堂々出たのに、あなたは抗議もされていない。弁明もされておらないじゃありませんか。それを明快になさらなければならぬ。しかも在韓米軍の問題については、これから総理がアメリカ政府の首脳と会見をなさろうというところである。そしてこの問題に対するわが国の態度というのは慎重をきわめなければならない。それについて不用意な署名運動を閣僚の立場でするとか、そしてその閣僚自身が加わっていた団体がするとか、そんなのは不見識である。閣僚はそういう妙な団体から足を洗わなければならない。これは当然のことじゃありませんか。そんなことはございませんで済むだろうか。総理、どう思われますか。
  201. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのことならば、私はこれは事重大だというふうに考えまして、閣議において一々確かめたわけでありますが、関係閣僚の答えは、さようなものに署名はいたしておりません、参加しておりません、こういうことでございます。
  202. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それなら私はそれも信用しましょう。信用しますが、閣僚は妙な団体に入っていてはならない。これは総理は閣僚全員に対して達しなければならぬ。政府の一員として、政府行動以上の閣議決定の範囲を大幅に逸脱するようなグループの中で発言をするなんということは慎まなければならぬ。閣僚になったら、あなたそのぐらいのことは教えられなければいかぬと私は思いますよ。それはいかがですか。
  203. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 閣僚の言動は、内閣と矛盾するようなことがあっては断じて相ならぬ。これはみんな閣僚はそのとおり了承しております。
  204. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それを注意していただきたいと私は申し上げておるのです。福田さんのために、日本のために、私は申し上げておるのですよ。
  205. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 よく了承しておるわけでございまするから、重ねてというのもどうかと思いますけれども、あなたのたってのお求めでありますれば、これはそういたします。
  206. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それからもう一つ、在韓米軍の撤退をめぐる問題について私はお伺いをしておきたいと思います。  在韓米軍の撤退は新しい米政権の明らかな選挙公約であります。ところが、防衛庁当局の意見といたしまして、本日朝の日経紙上によりますならば、「在韓米軍 陸上実戦部隊残すなら 撤退に反対せず 防衛庁、「首脳会談」へ見解」と、堂々と書かれております。ごらんになりましたか。——これは明快な防衛庁の見解であるかどうか、お伺いしたい。
  207. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 きょうの日経朝刊に出ておったこと、承知いたしておりまするが、そういうことを庁議で決定をして発表するというようなことをやったことはございません。そのことだけははっきり申し上げておきます。
  208. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、在韓米軍の削減には反対しないが、基本的には当分の間は好ましくないとか、あるいは政府考え方をまとめて言うと、基本的には米韓間の問題であり反対はできないが、急激な朝鮮半島の軍事的バランスを崩すべきではなく、そのために在韓米軍の撤退に際しては周辺基地の整備が望ましく、これによって韓国防衛が保障されるべきだというような意見をお持ちだと見ていいわけでしょうか。
  209. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いま申されましたようなことを、先ほども申しましたが、庁内でそういうようなことを決定したことはございません。それからその中で特に最後の項、他に基地云々というようなことも、考えたこともなければ申し上げたこともございません。
  210. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、この問題に関して総理にこれはお伺いしなければなりません、ここまでもう議論になってしまいましたから。アメリカ側と話をする前に余り詳しくお話を求めるのもどうかと思いますけれども、在韓米軍の問題、削減に対して総理はどういう御見識であるのか。まず、この問題について、基本的にはどういう考えであるのか。在韓米軍の撤退に関して韓国の安全は緊要であるという御発言が韓国条項としてすでに存在するわけであります。そういうものも含めてどういうふうに認識されておるか。つまり一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明の韓国条項、三木・フォード共同声明のいわゆる新韓国条項、こうしたものを後ろからなぞっていかれるのか、それとも全然別個の新しい考え方お話し合いをなさるのか、こうした問題について総理の御見解を承ります。
  211. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 在韓米軍の撤退問題は、これはもう基本的には米韓間の問題である、わが国の問題じゃない。わが国はこの問題に介入する立場にはない、こういうことを申し上げておるわけです。ただ、朝鮮半島の問題につきましては、あの平和が微妙な国際均衡の上に成り立っておる、この均衡が崩されるということになりますると、朝鮮半島に不安、動揺が起こる、これは好ましくない、かように考えております。
  212. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、いままでの韓国条項あるいは三木・フォード共同声明の新韓国条項等については、これをさわらずにそのまま維持する、こういう立場からお話し合いをなさるという意味でしょうか。
  213. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ私は佐藤内閣また三木内閣の共同声明の条項を詳しく見ておりませんが、私の考えはただいま申し上げたとおりでございます。
  214. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これから御勉強なさるのかもしれませんが、東郷アメリカ大使は、在韓米軍は重要であるということを去年の十一月の九日、ミネアポリス市の日米協会において演説をされております。また二月の四日、シカゴ市の経済団体において、在韓米軍削減は慎重にしていただきたい、政策に急変はないと確信しているがというようなことも言われているわけであります。こういうように出先で大使が政府立場を大幅に決定するような発言をどんどんなさっていく。そして政府は、総理は、その韓国条項もまだ余りよく見たことないなんて、もう平然としておっしゃる。私は総理に何回もとぼけられたことがあるので、私はもうその表情になれておるのでありますけれども、総理、そうとぼけられないで——大使はどんどん言う。言うときには外務省が了解しているのが当然であり、外務省が了解しているということは、総理が暗黙の了解ないしは指示をなさっていることはもう当然である。勝手なことを大使が言うわけはないだろうと私は思うのですね。  ですから、この問題に対する政府の御見解は、こうしてながめてみますと、もう明らかに在韓米軍の問題についてはある意思表示が行われている段階だと思うわけなんです。ですからお伺いしているわけですね。それは米韓間の問題だと逃げられない、新韓国条項や韓国条項がある以上は。米韓間の問題と言ってすましているわけにいかない、一つは。もう一つは、大使がいろいろとおっしゃっている以上は、これは日本政府のコミットメントである。だからこれに対する御見解はある程度おっしゃらなければいけないのではないか、こう思うわけです。そこでお伺いをいたしております。
  215. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも出先大使の発言が新聞に載りまして、それで外務省でチェックしてみたんです。そうすると、どうも翻訳等において妥当でないところがあるようでございます。決して日本政府の意に反して発言をしておる、こういうふうには言い切れない、そういうような状態だ、こういうふうに聞いておりますが、とにかく本国政府、これの考えておることにもとるような発言はこれはいたさすべきものじゃないし、今後は厳重にその辺は慎むようにいたしたい、かように考えます。
  216. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると福田総理、在韓米軍の削減には日本政府は反対しないんですね、要するに。それが第一問。  それから第二は、その削減に当たって、韓国において余り急激な削減とか、急激な増加とか、そういったことは日本政府は好まないということを、外交ルートその他を通して暗黙にいろいろと、あるいは公然と接触なすっている、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  217. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 基本的には在韓米軍問題は米韓問題である。わが国の問題じゃないんです、これは。そういうふうに御理解願います。ただ、朝鮮半島の平和、これは御承知のとおりな微妙な国際バランスの上に成り立っておる。このバランスが崩れるようなことがあり、したがって朝鮮半島に不安が生ずるというような事態はわが国として好ましくないと思っておる、こういうことでございます。
  218. 渡部一郎

    渡部(一)委員 やっと総理はお答えになりましたので、やっと輪郭が少し出てきたわけです。私、申し上げるのですが、もし対話と協調とおっしゃるのでしたら、この朝鮮半島のさまざまな問題点は、わが国にとって大きな問題点を含む問題であります。先日も同僚議員から、朝鮮問題に関する特別委員会の設置が御提案されておりました、他党の議員ではございましたが。そうしたことも含めまして、これはもう少しフランクに討論をなさっていかないと不明瞭な意識が残っていく。  たとえばKCIAの今度の買収事件であるとか、金大中事件はKCIAの操作であるとか、新聞には報道されております。また、韓国における不実企業の問題であるとか、あるいはさまざまな日本政府の援助というものが不当に使われたのではないか、あるいは汚職に消費されたのではないか、こういう不愉快な議題が次から次へといま累積されているわけですね。私はこういう状況が積み重なっていて友好も親善もない、ある意味では。こういう状況が積み重なっていくことは、わが国の全包囲外交の立場から言っても決して賢明ではない。疑いは晴らす、疑惑は取り除く、両国民の不満は解消するという方向でなければならない。そして正すべきは正す。いけないことはいけないと言う。謝らなければならぬことは謝ると言う。そういうところが王者の風格を持つ堂々たる外交でなければならぬと思う。  こそくの手段でごちょごちょと変な、裏側で親書を交換して、何とか裏で手を握って、ちょんとおさめたみたいな、何か妙な、たとえようがうまく言えませんけれども、何かごちょごちょやっているなという印象、それが私は日韓問題あるいは朝鮮半島問題に対して、非常に不愉快な印象を与えてきたものと思います。この点ひとつ総理は御決断をいただいて、十分この辺明快な対朝鮮半島政策を樹立され、それに対するビヘービアを確立されるよう関係当局に御指示いただきたいと私は思います。
  219. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 対朝鮮半島の外交姿勢、いまこの基本的な考え方を述べられましたが、全く同感です。そのような方向で王者の外交をやってまいります。
  220. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に私は、外交政策あるいは外交問題の審査の基本に関して十項目ばかり提案をしたいと思います。というのは、この場を単なる対決の場ではなく、新しい日本外交の方向性をつくるための場としたいからでございます。多少いろいろ従来の格式にとらわれぬ意見も申し上げますので、よろしく御答弁をいただきたいと存じます。  第一番は、海外投票区の設定の問題でございます。現在海外に居住し、永住し、あるいは長期滞在をしている日本人は非常に多いと伺っております。また選挙期間中、衆議院で二十一日、参議院で二十四日というふうにございますが、その期間海外におられている日本人というのは非常に数が多い。その間にちょうど外出しておられた方が多い。こういう方々はほとんどが投票権を失っておる。また、船舶に乗られて外洋に出られているたくさんの人々は、そのほとんどが投票権がない、こういう状況にあるわけであります。どれぐらいの人数の方が実質的に投票権を喪失しておられるか、つまり実質的に投票ができなくなっておられるか、その辺をまず御担当のところからお伺いしたいと存じます。
  221. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  これは昭和五十一年五月の外務省領事課の調べでございますが、現にその時点で海外に永住しておる人が二十五万九千百十一人、それから長期滞在者十三万七千五百六人、合計いたしまして三十九万六千六百十七人、これらの方々が投票権を行使できないものと理解をいたします。
  222. 渡部一郎

    渡部(一)委員 船舶において、常時海上におられて投票ができない人の数というのはちょっとわからないかと思いますが、常時海上において行動されている船舶に乗っておられる日本人の数というのはわかりますか。
  223. 小川平二

    ○小川国務大臣 これはまことに恐縮でございますが、私どもでは把握をいたしておりません。
  224. 渡部一郎

    渡部(一)委員 また、旅行者としてこの一年間にどれぐらいの人が出ておられたのか。大体二十日間と切ってみて、その間に海外に出ておられる人の数をお伺いしたい。
  225. 佐藤順一

    佐藤説明員 そのことにつきましては、私どもではつまびらかにいたしておりません。
  226. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大体一年間の海外旅行者が約三百万前後、少なくて二百五十万くらいだろうと思いますから、二十日間というと 多くて二十万くらいになろうかと思います。先ほど言われた方が三十九万六千人ですから、足しますと、五十万人ないし六十万人が選挙ができない状況にあるかと思います。  これは私の方でお伺いしてみたわけでございますが、ともかくわが国におきましては、選挙人名簿の被登録資格といたしまして、当該市町村区域内に住所を有することを要件として投票所投票主義というものが厳格に守られておりまするため、要するに投票ができない、また実施するといたしましてもさまざまな特例がなければだめだと思われます。ただ、外国におきましては、代理投票、郵便投票、在外公館における投票等、この三つのやり方で先進諸国におきましては大体こうした者を救済する措置がとられつつあるようでございまして、イギリス、アメリカ、フランス、西ドイツ、ベルギー、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランド、オーストラリアと、規模それからルールはいろいろ違ってはおりますけれども、そういう投票制度が拡充されているように見受けるわけであります。  したがいまして、新しい特例を設けて、あるいは必要ならば所要の立法措置を行うことによって、これらの人々に対してさしあたり一番最初にできるのは、私の見るところ在外公館における不在投票、これは国会議員に限るわけでありますが、これを現に実行できるのではないかと思われる節がございます。  第二番目には、参議院の全国区あるいは地方区の議員に限ることでありますが、海外の人々による海外の人々に対する投票制度、私は仮称海外投票区と名づけましたが、そうしたものを設定するために研究をする段階が来たのではないか、こういうふうに思うのでございますが、この点にしかるべき御返答を賜りたいと思います。
  227. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします  選挙人名簿に登録される要件といたしまして、いまお言葉にありましたような居住要件、その地域に居住をしておるということが要件になっておるわけでございますが、これもまた、いま仰せられました参議院については、全国区については必ずしもこの要件は必要としないかと存じます。  ただ、永住者の問題について考えますると、選挙の管理者は選挙に関する事項を周知徹底させなければならないわけでございますが、果たして海外に永住する方々に対して徹底して、かつ公平にこのことが実行できるだろうか、これは一つの研究を要する問題だと存じます。  それからまた、選挙期間二十三日の間に投票用紙を投票所に送達をするということが可能であるかどうか、これを解決する何らかの方途がないだろうか、これらの点が研究を要する問題だと存じます。  なお、御提案に関連をいたしまして、幾つかの細かい技術的な問題、技術的な困難を解決しなければならない点がございますが、それらの点をよろしければただいま政府委員からお耳に入れさせますが、いかがでございましょう。
  228. 渡部一郎

    渡部(一)委員 結構です。これに対して、現行法律によりましては、問題点があるのは明らかでございます。たとえば選挙犯罪に対して国外犯に指定しないと選挙違反が取り締まれないなんという事項までございますから、問題点はたくさんあるようでございます。そういう問題点があるし、ポスターを張りめぐらすわけにいかぬとか、公報がどうかとか、立候補の名前の徹底がどうとか、いろいろな難点が山積しております。山積しておるにもかかわらず、日本国内とルールを同じくするのではもうとうていできませんから、何らかの形の研究を行い、これらの人に対する侵された法のもとの平等というものを回復する必要があるのじゃないか。つまり、まさに立法措置が必要なんではないか、こう思っておるわけでありまして、総理、お願いしたいのですが、この問題に対する研究、検討、それで新しい前向きな前進の検討をぜひともお願いしたい、こう思っておるわけであります。
  229. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 十分検討いたします。
  230. 渡部一郎

    渡部(一)委員 第二番目は、私が委員会における審議の途上で、特にアメリカへ行ってまいりまして痛感いたしたことがございます。  それは、議員は必ずしも万能でありませんし、さまざまな頭脳スタッフを擁することは事実であります。国会には、国立国会図書館立法調査員の制度があります。また、委員会には委員会調査室の制度がございます。また、衆参議院法制局という、この三つの主要な立法機関スタッフがございますが、これがアメリカの法律に基づいて、ほとんどまねされてつくられた経緯があるわけであります。ところが、向こう側をのぞいてみましたら、いいことはまねしてもいいと私は思うのですけれども、ものすごい差があるわけです。  一つは何かといいますと、まず国会図書館から申し上げますと、国会図書館は全知識の照会としてレファランサーを向こうはつくっておりまして、現在八百五人おります。あらゆる議員の質問、要望というもの、あるいは議員が一般の国民から受けた質問までそこで消化されております。八百五人で。ところが、日本側は何人がおりますかといいますと九十五人であります。約十分の一。しかも、そのうちの半数はベテランでありますが、半数はこれから勉強中というところの方々が多いわけであります。  そして、まずいことは、日本側には資料の提出を求める権限がないわけであります。ですから、議会の名において、あるいは委員会の名において、あるいは議員の名前において資料を集められない。お恵みによって資料が与えられる。ところがアメリカの場合は、委員会代務者として資料提出を要求し、引っ張ってくる権限を持っております。また、衆参の各委員会の協力関係が法律上規定されているのがアメリカ側でありますが、日本は規定はされておりますが、それが動かされたためしがない。したがって、能力的あるいは実務的に非常に多くのマイナス要件を抱えているわけであります。  また、この国会図書館の調査及び立法考査局をもう一回調べてみますと、ここにメンバーを集めるシステムに問題があることが明らかであります。なぜかというと、大学においてはいま教授、助教授がある意味で余っております。この人たちとメンバーを交換することが、互換性ができると非常に多くの人材を導入することが可能なんですが、これが事実上遮断されております。これは文部省の方の規定に欠陥が一つあります。それから、これについてはきょうは御質問はしませんが、それと同時に、委員会調査室の方々や国会図書館の調査及び立法考査局の人々をそういう学問の世界へ転出させるということもできないような仕掛けになっているわけであります。もう一つまずいのは、海外で調査しようとするときの調査旅費さえ持ってないのです。  かくて、国会の調査室というのは、国会図書館というのは、私たちが何か資料を集めようといたしまして一つ何か頼むといたします。そうすると、ほんの数人の議員の質問を受けただけで、事実上機能が麻痺する仕掛けになっておる。これは日本の国会審議の質を向上させるためには重要なポイントだと思います。しかも、この費用の査定が国会で行われるのではなく、最終的には大蔵省で査定される。これについての国会図書館、調査室の拡充あるいは委員会委員部の拡充強化あるいは衆参両議院法制局員の増加等は、急務中の急務ではないかと思われます。総理、これはひとつ指示をしていただきまして、これは何らかの意味で拡充をいたしませんと、この国会の質を高からしめ、国民の負託にこたえるための前進ができがたくなる。この重要なポイントとして着目をしていただきたい。御研究、御検討いただいて、何らかの形の実効ある措置をとっていただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  231. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまのお話は、これは政府の問題というよりは、もっぱら国会の問題のように拝聴したわけでありますが、議院運営委員会ですか、あの辺でひとつ御論議願って、そしてまた成案ができますれば、政府におきましてもできる限りの御協力を申し上げる、かように御了承願います。
  232. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理の御答弁は、まさに法律上はそうなんだろうと思うのですが、総理は、国会の中の最大多数党の党首でいらっしゃいますね。しかも、その立法考査関係あるいは議会委員部あるいはそういう各局に対する費用の支出は、事実上大臣の、総理のお隣りに座っている方がやっておられるわけですね、そのにこにこ笑っている方がやっておられるわけだ。ですから、これはそこに問題点があるのです。だから私は、あなたが適切な指示をされることを望んでいるわけです。そうしませんと、これは進みません。最大多数党ががんばらなければ、これは全然進まない。それで、国会議員というのはばかにされる代名詞にしておくのでは、日本の民主主義は育たない。これをばかなままにしておいていいという考え方に立つのは、それは専制君主かファシストしかない、私はそう思うのです。議会民主主義をよくするためには、ここに着目をしていただかなければならない、あなたの影響性を行使していただかなければならない。そこで私は申し上げておるのであります。ぜひお願いいたします。
  233. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ですから、議院運営委員会等において御論議されて、そして結論が出ますれば、どうせ予算、そういう問題になってくるだろうと思いますので、その際はできる限りの御協力を申し上げると、こういうことを申し上げているわけです。
  234. 渡部一郎

    渡部(一)委員 自民党の総裁としてもがんばってください、お願いします。御答弁をお願いします。
  235. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 自由民主党所属の議院運営委員には、御趣旨のほどを申し伝えておきます。
  236. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次は、外交関係のルールでありますが、私、五つばかり一遍にかためて申し上げたいと思います。ちょっと時間がなくなりぎみでございますので……。  私は、特に条約の審査に関して非常に心配がございますので、ちょっと申し上げたいと思います。  現在、条約の審査に関しましては、毎年毎年条約の審査件数がだんだんだんだん増加する傾向にあります。これは国際的に条約の数というのは多くなる、それに伴う行政協定の数も多くなる、あるいは行政的なさまざまな取り決めも非常に多くなると私は思っております。そこで、これらの処理が外務委員会でだんだん件数が多くなりまして、つっかえてくるようになったわけであります。これが余りつつかえてきますと、今度は外務省はそういう法案を国会へ持ってこない、サインだけしてほっておくということになりかねない。そして今度は出されてくると、十分審査しなければならない審査案件に時間がかけられなくて、もう何もかも一緒になってしまって、審議時間が足らなくなってくるということになってくるわけであります。こういう問題についてはいろいろルールを決めてしなければならないわけでありまして、私は、その意味で幾つかのポイントを指摘しまして、その問題を早めるための何らかの処理をとりたいと存ずるわけであります。  まず第一に、多数の条約の処理に当たって、少なくともその条約を一々長時間かけて審議するというのではなくて、簡略にでき得るものについては十分に簡略にできるよう、外務委員会の審議を集中することの必要性を痛感するわけであります。これは外務委員会の問題でありますが、やはり政府の方から、それはむしろ外務委員会に対して強く要望しなければならぬ問題だと思います。  第二は、条約締結に当たりまして、国会ともっとコミュニケーションをよくしなければならないと思います。このコミュニケーションが非常に悪いために、ある日突然何かが起こるということがあるわけです。特に商品協定の審議に当たりまして、暫定適用制度というのがあるのでありますが、暫定適用が行われて、もう二年も三年も四年も五年もほうり出されておって、そして突然持ってこられる。暫定適用というのですから、すぐ国会の審議を必要とするのに、それをしないでいる。こういう愚かなコミュニケーションの状況というのがあったわけでありますから、こういうものについては、てきぱき報告する。そしてまた、いまの日中共同声明のように重要な案件については、適宜に報告しながらやっていくということが必要なのではないか。これが第二のポイントです。  第三のポイントとしては、条約の修正権の問題であります。憲法の規定によれば、外交案件を処理することは政府の一方的な責務でございますが、また条約については、これを事前事後に承認を求めるということが憲法上の規定でありますが、実際的には、条約をイエスかノーかでやれば、ノーと言わなければならぬものが多過ぎてしまう。付帯的にある部分を修正し、ある部分を追加交渉を命じ、ある部分についてはこれについて留保を付するように国会が言うということはでき得ることではないかと私は思います。まさにこれは国会の実質的な条約修正権というべきものを公認し、かつ現在も原子力エネルギーの問題について日米間に交渉が行われた際、フリードマン書簡という追加文書を科学技術特別委員会の審査中、米側と再交渉の上、提出されたこともありますし、日米安保条約の審議の際、アメリカ側から上院外交委員会を通過するに当たって条件が付せられ、追加書簡がわざわざ交換書簡として交換されたこともありますから、実質的な条約修正というものは公然とこれを認め、そしてやっていっていいのではないかと思うわけであります。これが第三点であります。  第四点目は、多数の条約を一案件にしてかためて出すということで、どれぐらい国会が紛糾しているかわからないのであります。たとえば日韓大陸棚条約のごときはそれでありまして、全然種類の違ったものを、木に竹を接ぐようなものを二つ合わせて一案件にしてまとめてぽんと出そうとする。それだけでも審議要件を失うわけであります。したがって、条約案件は原則として一条約一案件とする。それをかためて、多数案件をかためるかどうかは委員会の判断にゆだねる。これが堂堂たるやり方ではなかろうかと私は思うわけであります。その点を、この際ある程度の原則として確立していただきたいと希望しているものであります。  また第五点は、行政協定であります。これは条約ではありませんから憲法上は事前事後の承認が要らないのでありますが、この行政協定の中には非常に大きな問題点を含むものがございます。この行政協定については、あるいは外交的諸取り決めの、事前事後に国会に対する報告を積極的にする、そういう慣行を樹立することが必要ではなかろうかと思うわけであります。  これらは、いま外務委員会のここ十年間の審議の過程で、ある程度の了解ができつつあるものもございますし、また、これらの問題については、これからずいぶんと研究をしていかなければならぬこともあるかと思いますが、私は、あえてこの五点を、これまで外務委員会の長い間の質疑の間から積み上げてきた問題として、この際、この予算委員会の場所におきまして外務省当局から御説明をいただき、ルールとして固め、外務委員会の審議をすうっといくようにしていきたい、こう思っておるわけであります。
  237. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま渡部先生から大変御理解のある御発言をいただきまして感銘をいたしておるわけであります。  まず第一点の、条約があるいは協定等が最近非常に件数がふえてまいってきておることは確かでございます。また、政府としてはなるべく件数を減らすようにというようなことがよくあるわけでございますが、何分にも国際間でいろいろやっておりますと、ぜひこれは協定なり条約なりつくるべきだ、こういうことも非常に多いわけで、なるべくたくさん仕事をしたいと、こう思うわけでありますが、そういったことから、ただいま非常に件数が多い。そうなってきた場合に、外務委員会の条約審査と申しますかにつきまして大変御理解のあるお言葉を賜りまして、これは本来国会あるいは外務委員会の方でお決めいただくことでありますが、私どももそういったことで御理解をいただくように最大の努力をさしていただきたいと思う次第でございます。  それから、コミュニケーションをよくすることは当然のことでございまして、商品協定の御指摘がございまして、暫定適用して連絡が不十分であったというようなおしかりをいただきましたが、今後ともそのようなことのないように極力コミュニケーションをよくして、特に外務委員会あるいは外務委員会理事会等には密接な連絡をさしていただきたい、こう思う次第でございます。  条約の修正権につきましては、従来からいろいろな国会における論議が積み重ねられてまいっておる次第でございますが、国権の最高機関としての国会の御審議でありますから、国会の御意思というものは何よりも尊重しなければならない、そういうことは当然と思う次第でございます。形式的には外交は行政権の担当ということになっておりまして、条約も、したがいまして相手方のあることでありますから、相手方の了解なしに当方だけ変更するということはできないたてまえでありますので、形式的な修正ということは、これはやはり外交を通しましてしなければならないと思うわけでありまして、実質的な意味のそのような国会の御意思というものは十分政府として尊重することは当然のことと思うわけであります。  それから、一条約は一件にする、あるいは一つの協定は一件にするというのは、これは原則としてはまさにそのとおりだと存じておる次第でありますが、たまたま非常に密接な関係にある二つの件、相手国が同一であったり、また同じ時期に交渉が行われたものなど便宜一本にして御審議をお願いする、御承認をお願いしておるわけであります。そういったことも、物によってはその方が便利だということがあろうと思いますが、これはもう便利の問題でございますので、原則としては一件一案件ということは当然のことと存じておる次第であります。  それから行政協定、国会の御承認をいただかないでやっております行政案件でございますが、これにつきましてもコミュニケーションをよくするという観点から委員会の方に適宜に御連絡を申し上げたいと、こう思う次第でございます。この重要なものにつきましては特に御連絡をよくしてまいりたい、こう思う次第であります。
  238. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま外務大臣まとめて言ってくださった件は、これは外務委員会の審議に対しては画期的なお話になると思いますし、今後の一つのルールづくりの基礎になると思います。  ただ少しはっきりしないのは、条約の修正権でありますので、もう少しお伺いしますが、国会の国政審査権と申しますか条約審査権を侵害しない限界において行動なさることはもうもちろんだろうと思うのですが、その場合に、あるいは留保、あるいは部分的追加交渉の実施、あるいは条約に対する追加協定の提出等は、国会の意思を尊重して行うことであるという意味でお答えになったかどうか、そこのところだけお伺いしたいと思います。
  239. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 たとえば留保という問題につきましては、留保の可能なものにつきまして、政府としては、国会の御意思をもってという場合もあろうかと思いますが、留保自体は政府として行うというふうにやりたいと思っておるわけでございます。  それから、追加交渉をやりましたり、そういったことは、国会の最高の御意思というものが出ました場合には、いろいろ追加交渉をいたしましたりすることは当然のことであろうと思うわけであります。
  240. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、実はこれで初めて、日米安保の議論以来一条約一案件制というものが議論されていた問題に対してようやく決着が、実に三十年近くたってついたわけであります。また、条約の実質的な修正権といいますか、実質的な国会の意思の反映というものに対して、これでも御見解が出たわけでありまして、私はその点は大きく評価したいと存じます。今後も、その辺よい慣行をつくり上げていかなければならぬと思うわけであります。  ここで、ちょっと種類が変わりますが、外務省の外交官の海外在勤の人々のテロや内乱の時期における危険下の勤務に伴う損害に対する補償について、つまり、先日ベトナムやカンボジア等におきましては、在外公館は、内乱で一つの政権が打倒されるまで現地におりました。幸いにしてけが人は出ませんでしたけれども、非常に危険なところに追い込まれました。また、最近ハイジャック事件を初めとするいろいろな問題点がございまして、諸外国では外交官がその犠牲になった例は非常に多いのであります。ところが、わが国におきましてはそういったケースがないために、こうした問題が適当に行われておりません。私は、警察官あるいは海上保安官、入国警備官、麻薬取締官、監獄官吏等に対する公務災害補償法と申しますかの特例というものは、同じく外交官に対しても適用されてしかるべきものではないかと思うわけであります。この問題につきましては、参議院におきまして秦野議員がしばしば意見を述べられたそうでございますが、人事院におかれましても御研究のようでございますが、こうした公務災害のときは何らかの特例を設けられるのが至当だと思いますし、ぜひとも御配慮をいただきたいと思うのであります。
  241. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えをいたします。  いまお述べになりましたとおり、警察官等につきまして、その生命、身体に非常に高度の危険性が予測せられる、そういう状況下において職務執行をやります者につきましては、職務の態様が一般の公務員の場合と違いますので、それについては災害給付の特例を設けております。内容といたしましては、要するに一般のものよりも積み上げた加算制度をとっておるわけでございます。外交官、特に在外公館勤務の職員につきましては、従来からそういう方面についてもやはり検討する必要が出てきたのではないかという点は私たちも考えておりましたし、また、国会等においても御論議があったところでございます。特に、いまお述べになりましたように、最近戦争とか内乱とか、あるいはハイジャックとかいうようなことに関連をいたしまして、外交官につきましても大変危険な状況下においてその職務執行を行わなければならぬという事態が現実に起きてまいりました。といたしますと、幸いこの間のベトナム、カンボジア等におきましては、災害を受けた者こそございませんでしたけれども、もしそのような不幸な事態になりますれば、これは当然警察官等と同じような措置を講じてしかるべきではないかというふうに私たちも考えております。そこで、関係各方面とも鋭意折衝を重ねました結果、大体の結論は得まして、いまのところでは新年度を目途にいたしまして具体化するというめどを持ちまして、目下細目について検討中でございます。御説に従って善処をいたすめどがついております。
  242. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは非常に結構なことだと思います。  あと、警察官の場合に、殉職者に対する、「賞恤金」というむずかしい字を書いておられますが、これは血をあがなう金と書いてあるのでしょうか。この賞じゅつ金というのが死亡時に支給されるのだそうであります。まだ亡くなった方がいないのにこういったことを言うのは不吉な予想でございますけれども、こうした制度につきましても、これは総理府の方で管轄されているところと承りましたが、外務省でも総理府でも、この問題についてお答えをいただきたいと存じます。
  243. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいままでのところ実例がないのでございますが、いろいろな危険な事態も過去にあったわけで、警察官等に認めてありますいろいろな賞じゅつ金、あるいはいろいろな金銭を含めました表彰等も含めて検討しているところでございます。
  244. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あと、政変に遭った場合に、大使館が焼き打ちされまして、それで持っている財産を投げ捨ててこなければならぬという場合が非常に多いわけですね。大使が先頭を切って荷物を担いで逃げたなんとなれば、これは一つ政治行動になりますから、大使の場合は、政変の場合は財産は全部投げ捨てる、わが身もいとわずいるということがきわめて必要な場合というのは、原則論としましてこれからも多いだろうと思います。そういう場合の捨てられていく財産というものは、ベトナムの場合にも十七、八名の館員がおられて三千万円クラスになったというニュースがあるわけであります。案外金額があるわけでございますね。こうしたものについてもきめの細かい配慮をしていただきたいと思うのでございますが、これはどこがお答えいただくといいんでしょうかね、大蔵省でしょうか、外務省でしょうか、外務省の方でもひとつお答えいただきましょうか。
  245. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまいろいろお話ございましたカンボジア、ベトナム大使館で特に被害が多かったわけでございますが、カンボジアでは被災者が八名で損害額は一千万円程度になっております。ベトナム大使館では十七名の被災者で三千九百万円に及んでおるわけでございまして、これに対しまして共済組合の災害の見舞い金という制度がありまして、給付はしておるわけでありますけれども、カンボジアでは被害額に対しましておよそ二二・八%ぐらいにしかならない。ベトナムの場合はもっと低くて一三%ぐらいにしかならないというので、その他は自己負担になってしまった被害が非常に多いという現状でございますので、これらにつきましてはいろいろ改善方を研究しなければならないと思っております。
  246. 渡部一郎

    渡部(一)委員 最後に九番目と十番目の提案を申し上げます。  こういう提案というのは時間がかかるので言いにくいのですけれども、九番目の提案は、翻訳センターを設置しろということであります。これは何かというと、海外交流、国際情報交流が増大しつつある現在、翻訳システムが国家的に充実しないと問題があるという点が非常にふえてきたわけであります。外務省にその能力があるかといいますと、外務省は、外交問題に関する能力としてその能力を持っているために、一般情報あるいは特殊情報についてはそれを翻訳する能力がない。民間の翻訳システムというのは十分でないという状況がございます。また、中近東諸国の言語については非常に薄くて、適切な翻訳システムというのは日本じゅう探してもないという状況であります。それで、国会議員が国会図書館を通じての文献利用に際しても、翻訳不能のために文献が使えないという部分が非常に大量にございます。国会図書館の翻訳能力、これは不十分であります。したがいまして、立法府あるいは行政府、そのおのおのにも要るのかもしれない、まとめてもいいのかもしれない、そこも含めて私はまだ言っているわけではありませんが、どういうやり方にせよ、わが国として翻訳センターを設置して、そうして日本語を外国語に翻訳する、外国語は日本語に翻訳されてくるというシステムが、適切な費用負担で自由に使えるようにすべきであろうと思います。私がアメリカ側に出した日本語の手紙は、アメリカの国会図書館、アメリカの国務省、またアメリカのランゲージサービスというこの三つの局において、三通りに翻訳されまして、アメリカの上院に渡されておる。こうしたシステムが米側にはあるようであります。こういう点を考えますと、わが国においても公的な部分を代表する翻訳センターというものを、仮称でありますが、つくってはいかがかと思うわけでありまして、この点について御提案をいたすわけであります。これは御担当の局がどこか存じませんので、しかるべき御回答をお願いいたします。
  247. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 この問題は私がお答え申し上げますより大蔵大臣にお答えいただいた方がいいかと思うのでございますが、検討さしていただきたいと思います。
  248. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では、その問題の回答は大蔵大臣にひとつお願いすることにしまして、もう一つの問題と一緒にお答えいただきます。  それは中南米局ですね。二十六の国を相手にする中南米局というのが外務省ではできておらないわけであります。今回におきましても、外交担当者挙げての努力にもかかわらず、これが葬られまして、中南米外交に重大な支障を来しております。といいますのは、中南米局を持たないのは先進国家では日本だけでございまして、これは非常にみっともない。日本の閣議の、行政管理の立場から、新設局を設けない厳重な規定というのをお持ちになっているのはわかりますが、減らすばかりが行政改革ではないと思うのです。行政というものが効率的に運用されるためには、こうした局については当然考えなければいけない問題だろうと思うわけでありますね。だから、必要な局はつくっていかなければいかぬと思います。この問題二つは、大蔵大臣にぜひひとつお願いいたします。
  249. 坊秀男

    ○坊国務大臣 二つの局でございますね、いま新たに翻訳局とそれから中南米局、これは五十二年度の予算編成に当たりまして、一つの方はまだ出ていなかったが、予算編成におきまして新しい局はつくらないという方針が決まっておりまして、そういったような方針が決まっておりましたので、予算を査定する編成に際しましても、これは御趣旨に沿うわけにはまいらなかった、こういうことでございます。
  250. 渡部一郎

    渡部(一)委員 だからそれを申し上げているのですよ。要するに、方針が決まっていたからどんな大事な話でも全部つぶすというのなら、あなたは要らないわけですよ。だから、方針があっても、その方針が間違っているなら直せばいいのでしょう。そうしなければ、大蔵大臣はロボットで済むじゃありませんか。そうでしょう。あなたは優秀なお方なのですから、そういう変な方針が出ているときは、あえて閣議に持ち出されて、もう一回話をし直して、これはひとつがんばりましょうとおっしゃるのが総理に対する補弼の責任を全うすることになるのではないですか。そうでしょう。そんなことは私が言うまでもないと思うのですね。ひとつがんばってくださいよ。
  251. 坊秀男

    ○坊国務大臣 予算編成方針というものは、一たん決められましたら、これは大蔵大臣にとっては守らなければならない非常に大事なことであります。そこで、こういったような問題は、いまの財政状態におきまして、改めてまたいろいろなものを整理していくといったような環境にあって、そしてなおまたこれを続けていくかいかないかといったようなことにつきましては、私は今後の審議、検討にあろうと思いますが、今日までできなかったということについては、私は優秀でも何でもありませんけれども、忠実にこれを守った、こういうことでございます。
  252. 渡部一郎

    渡部(一)委員 だめだな、そういう答弁では。そんなものは福田内閣の値打ちを下げるだけの答弁ですよ。値打ちが全然ない。御答弁しない方がよかった。  私はたくさん提案いたしました。私はまじめに提案いたしました。まじめな提案に対してふまじめな回答もいまみたいにありました。総理に申し上げておきますけれども、こういう声を無視してかかるから値打ちが下がるのです。こういう声にまじめに応答しなければいけない。国会を対立とけんかの場所にするのでなくて、対話と協調の場所にするためには、そういうことをきちんと守らなければいけない、私はそれは念を押して申し上げておきたい。お答えは要りませんけれども、私はその辺はきちっとすべきだと思います。  最後に、私はネズミ講の問題に触れたいと存じます。  総理は、昭和四十九年三月九日、私とあなたが予算委員会第二分科会におきまして質疑応答されたことをかすかに覚えておられるかもしれません。そのとき私は、ネズミ講の数々の被害というものをかなり率直に申し上げ、国務大臣でおありであった総理に対し、ずいぶんとこれに対する対策、対処をお願いをいたしました。総理はそのとき、既存の法律の適用で善処できないかどうか、また善処できなければ新しい立法という言い方で、対処を至急検討するとおっしゃいました。それで、これは私は怒っておるわけであります。総理、四十九年ですから、いまから、五十年、五十一年、五十二年ですから、ずいぶん古い話になります。その後対処らしい対処が行われておりません。ネズミ講はますます大きくなり、それと類似のものはだんだん、だんだんふえてきつつあります。ずいぶん取り締まりが行われておりますけれどもふえております。この問題、まことに恐縮ですけれども、ネズミ講の手口をこの場で申し上げるのは控えさせていただきたい。なぜかというと、類似の案件が発生するおそれがあるので言いたくない、だから私はそれを申し上げません。名前も言いたくない、申しません。ただ、検挙組織数が四十九年は四、五十一年で十、こういうふうにふえている実態がございますし、毎日のように類似のものが発生しつつある実情もございます。政府におかれまして、ネズミ講対策に連絡会議を、五十一年の十月になりましてこういう対策がとられたと承りました。私が質問してから二年後であります。そしてなおそのルールはできない。最近は、そこのグループのある幹部はこう言っているそうであります。脱税事件から始まって五年余りも手をつけないでおいて、いまさら違法だと言ったって手おくれだ、こういうふうに新聞記事の中では公言されておるそうであり、国民の一か八かの射幸心に乗るこうしたものが、国民に大きな被害を与えているということは非常にけしからぬことであります。中には、有力な議員でありながら、こうしたものに花輪を持っていき、あるいは秘書を派遣して祝辞を述べるというような不穏当な者さえございます。これは国民の中にいい風潮を決して与えるものじゃない。総理、これは総理の責任ですよ。少なくとも、総理が対策を立てるとおっしゃって、私はじっと待っていたのですから。同僚の議員もその間に何人かが御質問されていると私は思います。だけれども、それから今日までおやりにならないというのはどういうことになるのですか。私は、総理がこれに対する明快かつ厳格な対策を早急におとりになることが、身のあかしを立てられ、まじめな行政をされているという証明になると思うのです。これどうするのですか。私は非常に大きな不満を持ちましてこれを申し上げておるわけであります。
  253. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私、大蔵大臣でしたか、そのとき、あなたとこの問題を予算の分科会の席上でいたしたことを覚えておりますが、自来、この問題は、警察庁を中心といたしまして各省関係者が寄ってその対策、これは相談をしてきておるのです。しかし、いかにもこれは対処がむずかしいということで立法措置なんかできなかったわけでございますが、この連絡協議会においていま検討しておりますのは、出資取締法ですね、そういうものが一体できて、そして現実の取り締まりが一体うまくいくだろうか、こういうような点、その立法の可否等も含めましていま検討しておるということであります。これは時間がたちますればたつほどまたいろいろ被害者も出てくるわけであります。早急に検討いたしまして、そういうことができるかできないか、また、できない場合におきまして、何か行政措置でこういう被害者を救済する道はないかどうかというような点、鋭意努力してみます。
  254. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私の質問は終わります。
  255. 坪川信三

    坪川委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  256. 井上普方

    ○井上(普)委員 まず、文部大臣にお伺いいたしたいと思います。  小学校あるいは中学校を建設する場合、一体どれくらいの費用が要るのか、お伺いいたしたいのであります。
  257. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 お答えいたします。  小学校の場合に例をとりますと、標準が十八学級でありますが、これは大体、ただいまの計算でいきますと、三億三千七百万円というのが平均の建築費用になろうか、こう考えます。
  258. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は小学校をつくる場合と申しました。学校をつくるのに土地代は要らぬものでしょうか。
  259. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御承知のように、学校建築に国費で補助をしておりますのは、建物の二分の一ということをずっとやってまいりましたので、それで、私がいま建物の建築費のことを申し上げたのでありますが、御承知のように、土地もこのごろは大変なことでございますから、今年度予算におきましても、小中学校の用地費の補助という制度も始めまして、五百三十六万八千平方メートルに対し二百八十八億八千八百万円予算を計上して、前年度に比べるとこれは三五・一%アップの計算になっております。
  260. 井上普方

    ○井上(普)委員 建築費につきましては、大体私の調べと同じでございます。  そこで、総理大臣、あなたは先ほど来、一兆円減税しなければ五千校の学校ができるんだ、こうおっしゃった。これは一回だけじゃないのです、二回、三回おっしゃっているのです。あなたはどういう計算のもとでこのことをおっしゃっておられますか、お伺いしたいのです。
  261. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 一兆円あれば学校は幾つ建つかということを大蔵省をして計算せしめたわけであります。五千校です。
  262. 井上普方

    ○井上(普)委員 五千校できますか。
  263. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 これは国費ベースの補助ベースでやっております。要するに、国の予算で一兆円あれば五千校できる、こういうことであります。
  264. 井上普方

    ○井上(普)委員 ここは総理、街頭演説の場所でもないのです。あなたの言動というのは正確を期してもらわなければならない。小学校をつくるのに、私の県でいま調べてみますと、大体十八学級で三億四千万円かかります。その上へ持ってまいりまして土地代が大体七億かかるから、十一億かかるのです。東京の町田市の原小学校の場合も調べてみました。そうすると、これもやはり同じく、これは二十四学級でございますが、標準の十八学級に直しまして大体十一億六千万円かかるのであります。あなたは再々、一兆円減税に反対するお立場としてのお気持ちはわかりますけれども、総理大臣立場としてやはり正確に物を言っていただかなければならない。一兆円あれば五千校学校ができるというのは、私はどうも——どうもと申しますよりは、お取り消しになる必要があると思うのです。どうでございますか。国民に誤解を与えますよ。−総理がここで再三にわたっておっしゃったのだから、主計局長とは何ら関係ない。
  265. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 土地代を除き補助額は五千校に相当する分である、そのように訂正をいたします。
  266. 井上普方

    ○井上(普)委員 訂正されるなら、私もあえて追及いたしませんけれども一だから、私はあえて申しませんけれども、ここは街頭演説の場所じゃないのです。正確なことをおっしゃっていただかなければ困る。国民に誤解を与えます。こういう点をひとつ十分御注意になって、今後も御答弁願いたいと思うのでございます。  それでは、私は政治姿勢についてお伺いしたいと思うのであります。  昨今、汚職事件が続発いたしております。しかも、外国がらみの汚職というのがロッキード事件でもはっきりいたしましたし、あるいは韓国の問題でもうわさされる、あるいはインドネシア問題についてもうわさされる。まことに私は嘆かわしい次第であると思うのであります。と申しまするのは、少なくとも、国政に携わる政治家が外国の金には絶対に手をつけてはならないというのは、これは政治家のモラルである、第一のモラルであると私は考えるのであります。もし外国の金に手をつけておるならば、その外国に対しましてはひけ目を感ぜざるを得ないでございましょう。たとえて言うならば、ロッキード事件の灰色高官の名前はわれわれは十分に知っていない、しかし、アメリカ側はこれは十分に知っておる。そうするならば、その灰色高官が、政府の要職につき、あるいは国政の要職につき、対外折衝をするという場合、アメリカに対して果たしてこれで日本の国益を守るだけの態度がとれるであろうか。こういうことを考えるならば、この外国の金に手をつけるということは、国政に携わる者としましては厳に戒めなければならない第一のモラルであると私は思うのであります。ある自民党の代議士は、国民に対して相済まぬことだ、恥ずかしいことだと言っておやめになった方もおられますが、外国の金をもらって、これを恥とせず、浩然としておられる方々がもしありとするならば、私は非常に遺憾であります。しかし、御承知のように、数多くのうわさされるようなことがある、政治家のモラルの第一歩を踏み外しておる、このように私は考えるのであります。  したがいまして、あらゆる国の政治資金規正法を見ましても、外国人から政治献金を受けてはならないということがまず書いてございます。わが国の政治資金規正法の関係におきましてもこれは言っております。西ドイツにおいてもしかりです。しかし、これに対して、こういうようなことが実際日本においては起こったと思われる。でありますから、これに対する対策として、単にモラルの問題ではなくて、特別に考える必要があるのじゃなかろうかと思うのでございますが、総理、いかがでございましょう。
  267. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政治家が不正の金を取ってはならぬ、これは当然のことでありますが、その中でも、いま井上さんが御指摘の、外国から金を受け取るということは、私はもう罪が非常に重いと思うのです。これは、政治家というものは世界の中でわが国の運営に当たる、そういう際に、いやしくも外国から金を受け取っておるというようなことでは、公正に国益を守るという立場が貫けないと私は思うのです。  しかし、何か措置をする必要があるかというお話でありますが、これは私は正確には申し上げられませんけれども、たしか政治資金規正法か何かで禁ぜられておる、こういうことであるというふうに承知しておりますが、これは禁ぜられておるおらぬにかかわらず、いやしくも、外国の金を政治家が受け取る、あってはならぬことだ、かように考えます。
  268. 井上普方

    ○井上(普)委員 あってはならぬことがあったのです、あるいはそういうことがうわさされておるのです。ここに私どもは権力のおごりというものを感ぜざるを得ないのであります。しかし、いずれにいたしましても、何らかの立法措置なりあるいは外国企業との関係における法律措置を私は講じなければならないと思いますが、いかがでございます。
  269. 福田一

    福田(一)国務大臣 井上さんにお答えをいたします。  実は、法律でそういうものは禁止されているかどうかということが一つの疑問のように見受けますのでお答えをするのでありますが、私が政治資金規正法を自治大臣として改正をいたしまして、一昨年の七月四日にこれが両院を通過いたしました。それまでの日本の法律では、選挙に関して外国人から金をもらってはならないという規定がございまして、罰則も科せられておったわけであります。そこで私は、いやしくも、外国人から金をもらうなどということは、これだけ日本が経済的に発展もし、世界における有力な国家の一員となったのに、その日本政治家が外国人から金をもらうなどということは、これはまことに不見識な話であるし、こういうことは当然禁止すべきであると思いまして、改正をいたしまして、今後はいかなる名目をもってするといえども絶対に外国人から金をもらってはいけない、すなわち、外国人から一円でも十円でも金をもらえばそれは罪であるというふうに法を改正いたしたのが一昨年の七月四日からでございます。そういう事情をひとつ御理解を賜りたいと思うのであります。
  270. 井上普方

    ○井上(普)委員 私もその政治資金規正法で改正のあったということも存じております。しかしながら、その前は、少なくとも国政に携わる政治家が外国の金に手をさわる、汚すということがいかに国賊的な行為であるか、これを十分に知っておるだろうという上において私は書かなかったのだろうと思う。しかしながらやはり出てきた。政治資金規正法だけでいいのだろうかと私は思うのです。これでは不足じゃないだろか。新しい立法を考える必要がございませんか、どうでございましょう。
  271. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、井上さんのお考えも一つの見識であると考えます。しかし、まあ法律でございまして、ここに新しい立法をつくるということになれば、いかなる問題にまず手をつけていいか、たとえば海外から金をもらうという場合でも、海外の子会社等をつくったような場合、そういうところから金が来る場合とか、いろいろこれは解明すべき問題というか、研究すべきことが多々あると思うのであります。したがいまして、政治資金規正法でこれ以上に、いますぐもう一度これを強く改めていくことが妥当であるか、あるいは純然たる立法をする必要があるかということは、これはわれわれとして検討をいたすべき問題であると思いますが、いま具体的にこういうことをすればいいというまでの案がまだできておりません。それは非常に複雑です。御案内のように、これはもう非常に複雑であることはあなたもおわかり願えるだろうと思うのであります。したがいまして、そういうことを含めて十分に検討を重ねるべき問題である、かように私は考えております。
  272. 井上普方

    ○井上(普)委員 企業は非常に多岐にわたった行動をいたしております。実に、多国籍企業の例につきましても、先日小林議員があるいは大出議員がここで質問いたしましたように、海外において幽霊会社をつくる、こういうようなことも数多く行われておる現状であります。したがって、私は、検討されて、しかるべき処置をとらなければ国民の信を得ることばできないと思いますので、なお一層御検討されることを強く望んでおく次第であります。よろしゅうございますか。  さてそこで、中央がかくのとおり非常に汚職が出ました以上、地方におきましても数多くの汚職を出しておるのであります。     〔委員長退席、渋谷委員長代理着席〕 これはもう私が申し上げるまでもなく、非常にたくさんの汚職事件が出てきております。  実はここに「地方自治職員研修」という本を私持っています。これは大体三万五千部ぐらい出ております。そしてこの本は、地方職員の、地方自治体の中堅職員、課長になるとかあるいは課長補佐になる試験のために試験問題がたくさん例示されまして出ておるのであります。で、よく売れるのです。この編集代表を見てみましても、実に有名な行政学の学者が並んでおるのであります。この八月号を見ますというと、特集として「収賄罪で一生を棒に振らないための六章」、いいですか、こういうことが実は特集として出されておるのです。そしてこの中を拝見いたしますと、汚職というものは絶対になくならないんだという論文がここに出ているのです。したがって、おまえたちは汚職をいかにして逃れるかというとらの巻のごとき感がいたすのであります。この「職員研修」を研修の材料としておる自治体はございますか。
  273. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  自治省といたしましては、絶えず公務員倫理の確立、綱紀の維持ということについて自治体を指導いたしておるわけでございまして、いま御指摘のような、いかにすれば刑を免れ得るか、法律をもぐることができるかというようなことを研究するということは、申すまでもなく、自治省の基本的態度とは根本的に異なる問題でございまして、さような記事については私どもの関知するところではございません。  しかし、さような雑誌が時として地方公務員の研修等に使われているということについては聞いておりますので、人事担当者の会議等におきまして自治省の態度というものを一層強く徹底させるような努力をいたしておるわけでございます。その雑誌の題号等にまことに紛らわしい点があるわけでございますから、編集者に対しまして注意を喚起するということもいたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、御指摘のような内容の記事を記載した刊行物が地方公務員の研修会等でテキストのようなことで使用されるというようなことが今後ありませんように、十分注意をするつもりでございます。
  274. 井上普方

    ○井上(普)委員 今後使われぬようにとおっしゃいますが、これは使われた例があるのですよ。昨年の三月号には、「住民運動をいかに抑圧させるか」という特集が出たのであります。そうしましたらそれをコピーいたしまして、広島の市役所はこれを全部の職員にばらまきまして研修したという事実もあるのであります。それほどこの本はわりによく読まれておるのであります。総理、こういう本が出るような世の中になってきておるのです。どうお考えになりましょうか。
  275. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ロッキード事件反省として私はそのことを言っているのです、まず第一に。社会風潮というものが物の世、金の世、そういうふうな風潮になってきておる。そこで、そういう風潮の中で公務員の意識なんかにも非常に退廃的な風潮も出てくるんじゃあるまいか、これはすべてがすべてというわけじゃありませんけれども、そういう傾向があるんじゃあるまいか。やはり金万能、物万能というような社会風潮、これを変えることを努力するということは、私は大変大事なことじゃないかと思うのですよ。ロッキード事件、また地方あたりでいろいろ事件が起こる、そういうものは偶発的に起こったんじゃない、根があって起こったんだ。その根の一つというものは、いま井上さんが指摘しておるそういう風潮である、そういうふうに考えております。
  276. 井上普方

    ○井上(普)委員 そこで、警察白書によりますと、四十九年、五十年と実は公務員の収賄事件というのが非常に数多く出てきておるのであります。そのうち土木建設工事の施工に関したものが大体三五%から二五%ぐらいある。許認可事項の不正が大体二五%、こういうように非常に出てきておるわけでございます。許認可事項についての収賄罪、汚職というものにつきましては、これは行政当局でチェックしてできるんじゃないかと私は思う。許認可事項をいかにして今後少なくしていくか、あるいは見直しするか、あるいはチェック機関を二重、三重にしていくかということをやらなければならないと思うのですが、どうでございます。これは総理大臣でなくても結構でございますが、行管でもお考えになっておられるのでしたらひとつ御答弁願いたいのです。
  277. 西村英一

    ○西村国務大臣 お答えいたします。  とにかく行政は人がやるのでございますから、まあ公務員、それはやはり非常に粛正しなければならぬと思っております。やはり行政はそれぞれ手続がございますが、私の方でも許認可事項についてはこれからもずいぶん気をつけたい。従来もずいぶんやってまいりました。そこで、許認可事項と申しましてもピンからキリまでありまして、今後の問題点は、どういうふうに許認可事項をうまく調整するか、調べるかということを考えなければならぬと思っております。もう毎日毎日、これは中央官庁のみならず、地方も、それぞれ出先機関も、やはり許認可事項があるわけでありまして、それを監視をする方法についてどういうふうにやるかということを気をつけてやるつもりをいたしております。
  278. 井上普方

    ○井上(普)委員 行管の長官、もう少ししっかりしてやっていただかなければ私はだめだと思うのです。総理、もう一度、あなたは許認可事項につきまして徹底した見直しをやる方針はございますか、どうでございましょう。
  279. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのようなことを考えて、しばしばこの席でも申し上げておるわけであります。
  280. 井上普方

    ○井上(普)委員 私はぜひとも期待いたしたいと思います。  続いて、土木建築に関する不正事件がこれまた三〇%前後出ておるのであります。ここで問題になりますのは、指名競争入札にいかにして入るか、これがまずやられております。続いては、いかにして予定価格を知るかということをやられています。その上において業者同士の談合が行われておるのが実態ではなかろうかと思うのであります。しかも、その上にもってまいりまして、有力なる政治家あるいは有力なる官僚の天の声というのが加わって入札が行われておるのが現状じゃないかと私には考えられるのであります。  そこで、私は一つお伺いするのでございますが、国税庁、鹿島建設が昨年の決算におきまして十億円の使途不明金があったということは事実でございますか、どうでございます。
  281. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  御指摘のような法人につきましては、大法人でございますので、私たちといたしましては、重点調査の対象といたしまして一般的には毎年実は調査をしておるというふうな状況でございます。その過程におきまして使途不明金の実態把握ももちろん努めているところでございますけれども、具体的な個々の法人の調査の結果ということになりますと、その点についてはひとつ具体的なお答えをするのを御容赦を願いたいというふうに思っております。
  282. 井上普方

    ○井上(普)委員 御承知のように岐阜県汚職あるいはまた福島県汚職のごとく、知事が絡んだ汚職事件も起こっておる。全国におきまして昭和四十九年度には汚職の起こっておらない県は二つか三つしかないというぐらい汚職が起こっておるのであります。しかも、一番大きいのは、これは岐阜県におきまして間組の専務が絡んだ汚職事件であります。しかし、新聞によりますというと、これはやはり岐阜県の汚職事件に絡みまして、警察当局が鹿島組の会計内容を調べてみますというと、使途不明金として十余億円あがっておるといわれておるのであります。使途不明金として計上し、やはり同じように——まあ、これは税金かかりますから、少なくとも法人税、税金をかけて、二重に払っておるという形です。この点について警察庁はお調べになったことがございますか。いかがでございます。
  283. 土金賢三

    土金政府委員 お答え申し上げます。  岐阜県庁の高官による汚職事件については現在捜査中でございますが、知事の収賄その他の高官の収賄事件について引き続き捜査中でございまして、お尋ねの件についてはいまのところ申し上げられません。
  284. 井上普方

    ○井上(普)委員 事件が起こって何カ月になります。しかしこれも発表できないというのであればやむを得ません。  しからばお伺いするのですが、この汚職に関係いたしました建設会社に対して、国の行政処分はいかにとっておられるか、ひとつ承りたいのであります。
  285. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 汚職事件に関しまして建設業者にとった条項でございますが、最高が三カ月半の当該地方建設局において指名停止の処置を講じたところでありまして、さらに建設省において契約権限を地方建設局長に委任しているのでございますから、従来指名停止、不選定等の処分は汚職が発生した地方建設局の単位で行っておることは御承知のとおりでございますが、いま処分といたしましてはそのような処置をいたしたわけでございます。
  286. 井上普方

    ○井上(普)委員 事、少なくとも会社の専務もしくは常務、これが汚職に問われておる事件について、一地方局だけで処分を済ましていい問題であろうか。どうでございましょう。
  287. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 その会社の長たる者が加わった場合というのは、また別個にあるだろうと思います。細かい点について、それでは専門に処理している方から御説明を申し上げさせます。
  288. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  岐阜県汚職に関連いたしまして、間組に対しましては五十一年九月二十九日から五十二年一月十四日まで不選定その後指名停止の措置をとっております。なお、鹿島建設については五十一年十一月十五日から五十二年三月五日まで不選定または指名停止の措置をとっておるわけでございますが、その後、岐阜県汚職に関しましては熊谷組、森本組、大栄住宅、大西組というものが二月八日に書類送検をされましたので、新しい事実が出てまいりましたので、五十一年二月十四日より当分の間不選定措置をとっといるわけでございます。  いま先生のおっしゃいました当該地建だけでは狭いのではないか、全国にわたってやるべきではないかという御意見ももっともだと思うわけでございますが、現在まで建設省といたしましては、先ほど大臣が申し上げましたように、契約権限はすべて地方建設局長に委任されておりますので、地方建設局の範囲内で当該管内においてそういう措置をとるということにいたしておるわけでございます。  指名停止または不選定につきましては、建設省職員に対する関係におきましては、当該業者には非常に厳しくやっております。さらに建設省以外の地方公共団体その他の官庁につきましては、情状に応じまして、先ほど申し上げましたように、一カ月ないし五カ月の間におきまして不選定または指名停止の措置をとっておるわけでございます。
  289. 井上普方

    ○井上(普)委員 専務あるいは常務、その人が問われておる事件であります。こういう事件に対して果たしてその管内だけで指名停止の行政処分をしていいものであろうか。どうでございましょう。これはいままでの、先ほども総理もおっしゃいましたように、この風潮を直さなければいけないという状況のもとにおいて余りにも甘過ぎやしませんか。しかもそれは二カ月半とか三カ月半という指名停止、これじゃ話にならぬでしょう。どうでございます。そうしてまた建設省だけですか、これをとめておるのは。ほかの農林省あるいは他の省庁においてはとめておりますか。どうでございます。
  290. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 事、汚職の問題につきましては、私もまだ就任してわずかでございますけれども、就任当時からそういうことの絶対にないようにと、特に総理からば、そういう問題は絶対に起こしてはならないし、起こさないようによく職員にも伝えなければならぬ、綱紀粛正という問題は全体の責任であると注意をされておりますので、その問題については強く職員一同にもお話を申し上げてありますし、また、この事件が起こりましてまだ結末が出ておりませんけれども、結果が出ましたらば、いまのままのような考え方でいいか悪いかという点については十分に検討する必要があるだろうと思います。したがいまして、その結果を見ましてというよりも、むしろ、過日もこの問題で、再びこういうことが起こらないように厳罰処置をとるような方法を考えようではないかというようなことも議題に出してあるわけでございます。まだ結論は見ておりませんけれども、そういう話もしてあるところでございまして、したがって、この結末が出ましたら、私の方でも十分に検討を加えて厳重な処置をとるつもりでございます。
  291. 井上普方

    ○井上(普)委員 建設大臣、結末というのはどういうことですか。
  292. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 建設省の方の結果が出まして、そうして先ほどもお話がございましたように、その重役が事実そういう事実があってどうだという結果がはっきりしますれば、私の方もさらにそういう検討を加えていきたい、そういうことでございます。
  293. 井上普方

    ○井上(普)委員 それは結末は出ておるのじゃございませんか。もう専務なり常務なりは起訴されておるんじゃございませんか。裁判の結果まで待つつもりなんですか。どうなんです。
  294. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 まだ結果が明らかになったとは——一応は起訴はされましたけれども、まだその結末がついておらないという面もございます。そういうことで、私の方は、起訴はされたけれども、裁判の結果を待ってというまでは思っておりませんけれども……。そういうような考えの中に立っていま検討を加えておるところでございます。
  295. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 先生から先ほど来お話しになりました、地建単位では狭過ぎるのではないか、いやしくも専務等の役員が逮捕または起訴された場合には、もっと全国的なシステムも考えるべきではないかという点につきましては、今後検討させていただきたいと思っております。速やかに結論を出したいというふうに考えておる次第でございます。  なお付言いたしますれば、建設業者のそういう贈賄等の事件につきましては、ただいまのは発注者としての立場の指名停止、または不選定の問題でございますが、そのほか建設業法による監督処分というのがございまして、情状によりましては全部または一部の営業停止、指示その他の処分ができることになっておりますので、この点につきましてはもう少し事実関係を明白にした上で、法律上の処分でございますので、対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  296. 井上普方

    ○井上(普)委員 ほかの省庁はいかがでございます。特に文部省はどうでございます。御存じございませんか。文部省の建築についての汚職業者に対する処置は、御存じなければ……。御存じないですか、ありますか。——文部省はとめておるはずです。全国的にとめておるのです。各省庁にも厳重な態度をもって臨んでいただきたいと思うのです。  さらに私はここで問題にいたしたいのは、談合罪というのは、談合が公然と行われておるにもかかわらず談合罪の適用が非常に少なくなっておる実情であります。実は、東北六県の電気事業協会それからアルミニウム業界のサッシ関係でありますが、これらの連中が独占禁止法上のいわゆる公正なる取引を阻害したものとしていま審判中なのであります。公正なる取引を害するということになれば、当然談合罪は成立するものだと私は思っておるのですが、司法権はいかにお考えになっておられるのか、この点お伺いしたいのです。
  297. 福田一

    福田(一)国務大臣 法律解釈の問題も含んでおりますので、政府委員から答弁をいたさせます。
  298. 安原美穂

    ○安原政府委員 井上委員御案内のとおり、刑法の九十六条ノ三にありますところの談合罪の構成要件は「公正ナル価格ヲ害シ又ハ不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シタル者」ということになっておりますので、     〔渋谷委員長代理退席、委員長着席〕 公正な価格を害する目的で談合する、あるいは不正の利益を得る目的で談合した場合に刑罰法規の適用があるわけでございまして、公正な価格と申しますのは、最高裁の判例によりますと、自由な競争が行われたならば形成されたであろう価格というふうに考えておるわけでございまして、そういう価格を引き上げたり引き下げたりすことについて談合いたしますと刑罰法規の適用があるわけでございますし、そういう公正な価格を上回る協定をいたしまして、談合いたしましてその差金を得るというようなこと、あるいはいわゆる談合金を得るというようなことが不正の利益を得るということになって処罰の対象になるわけでございます。
  299. 井上普方

    ○井上(普)委員 刑事局長、それでは何ですか、いまのお話でございますと、談合金が動かぬ限りは談合罪は成立しませんか。公正取引委員会においてしておるのは、十三の業者が順番を決めて、価格も決めて、そして官発注に対しても全部順番で入れておる、こういうことを指摘しているのですよ。
  300. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま申し上げましたように「不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ」と、談合金の分配等の約束で談合いたしました場合には、いわゆる不正の利益を上げる目的で談合したということで処罰の対象になるわけでございまして、いま御指摘のように談合金の分配がなくとも、その談合の目的が公正な競争価格を引き下げたり引き上げたりするという目的で談合いたしますれば処罰の対象になるわけでございますから、いま御指摘の具体的な問題についての結論を申し上げるわけにはまいりませんけれども、談合金の分配がなくても、公正な自由競争の結果形成されるであろう価格を引き下げたり引き上げたりする目的があれば、談合も処罰の対象になるわけでございます。
  301. 井上普方

    ○井上(普)委員 しからばこのアルミ業界に対しては、あなた、どういう処置をとりますか。具体的に書いてありますよ。
  302. 安原美穂

    ○安原政府委員 具体的な問題のケースにつきましては、公正取引委員会の所管でございますので、私から申し上げるのは差し控えたいと思います。
  303. 井上普方

    ○井上(普)委員 たとえ公正取引委員会におきましての発表で、審判に——これは審判にかかっておるのでございますが、この事実を見てこれは談合罪に適合すると考えられたら着手しますかどうですか。あなた、これは御存じないんじゃないですか。
  304. 安原美穂

    ○安原政府委員 その具体的なケースは存じません。と申しまのは、ただいままだ公正取引委員会における審判の段階でございまして、その結果告発を検事総長になされた場合にわが検察当局の所管になるわけでございますので、私はその点について申し上げることを控えさせていただきたいと申し上げたわけでございます。
  305. 井上普方

    ○井上(普)委員 それでは警察はどうです、この問題は御存じですか。調べていますか。
  306. 土金賢三

    土金政府委員 お尋ねの問題につきましては、報告は受けておりません。
  307. 井上普方

    ○井上(普)委員 私はこういうことが、公正取引委員会が摘発して審判にもかかろうという事件を司法当局、捜査当局が御存じないということについても、そういうところにもおかしい問題があるんじゃないかと思うのです。この勧告書の内容を見てみますと、明らかに談合罪が適用できるんじゃないかと私は思います。御存じないということでありましたならば、事務怠慢としか言いようがないんじゃないかと思うのであります。それほどまでに談合罪の成立というのは、構成要件が非常にむずかしいようであります。  したがって、昭和四十三年でございましたか、大津事件の判決が出て以来、談合罪に対して捜査当局が捜査する意欲を非常に失っておるように思われるのであります。しかし、現状はどうかといいますならば、もう総理も御存じだろうと思います。あらゆるところでいわゆる談合が行われておると私は思うのです。あいつは談合破りをやったといっただけで、もうその業界から何年もともかく放り出されるというようなケースが起こっておる。ために、この予定価格を知るために公務員に賄賂を贈る、あるいはいかにして指名競争入札制度のもとにおいて指名に入るかということに業者が狂奔する、ここに汚職の温床があると私は思うのです。これを私は直さなければならないと思うのですが、どうでございますか。特に大蔵省に私は承りたいのですが、実は予決令によりますと、一般競争公開入札をやらなきゃならない。ただし書きにおいて指名競争入札、制限入札指名制度というのがある。しかし、大蔵省の職員官舎をつくる際には一般公開入札を行っておるやに承っておるのであります。これによって起こる弊害はございましたか、どうでございます。
  308. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  公務員宿舎の建設については、従来から一般競争入札を原則としております。特に問題はございません。
  309. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、それは弊害がなくスムーズにいかれておることを非常に喜びたいと思うのです。しかしながら、現在の土木の入札につきましては、大体指名競争入札がほとんどといってもいいぐらい行われております。しかも、その上にもってまいりまして不届きなのは、こういうような予定価格をいかに知るか、入札にいかに参加させてもらうか、大津判決にもありますけれども、入札に三回、四回加わったら必ずおまえの順番になるのだということが一般の業者の常識になっておる、そこまで判決は言っているのです。ですから、ここに公務員に対する誘惑が起こり、汚職というものの温床があると思うのであります。したがって、この仕組みを変えなきゃならないと私は思う。私が仕組みを変えなきゃならないと言いますのは、昭和二十五年に実はこのランク制というのを採用いたしました。そしてA、B、C、D、Eという五つのランクと、ものによっては四ランクに分けて、そして入札に加えていくという制度が二十五年に審議会の答申によって実はなされたのであります。しかし、これほど大きく時代の変貌が行われ、経済情勢も変貌が行われてきておるのでございますから、入札制度一般についての根本的な改革をひとつやる御意思があるかどうか、どうでございましょう、総理。
  310. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいまの談合の件でございますけれども、との件はしばしばこういうことがあるというようなお話も承りますけれども、事実それがあったかどうかという点については、なかなか私たちも認識することはできませんけれども、あったとするならばまことに遺憾なことであると思うのであります。したがって、刑法だとか独禁法とかに触れる談合があった場合には、私たちはこれらに対しまして厳重な処置をする考え方でもおりますし、わが国の現行の会計法令のもとにおける入札制度は公正な競争をもってその基本理念としているわけでありますから、これを阻害するような行為があるとするならば排除しなければならない、こう考えておりますし、したがって、お説のような点がもし今後も例があるとするならば、これらに向かって十分われわれは検討しなければならない問題だと考えております。
  311. 井上普方

    ○井上(普)委員 建設大臣、これはこれだけ中央と言わず地方に至るまで建築、土木に関する汚職事件が続発しておる今日です。しかもそれがすべて入札にかかわる問題で多い。このときにやはり基本的に抜本的に考え直す必要があるのじゃないか。  この指名入札制度のやり方については、昭和二十五年審議会をつくって答申して以来一回もやっていないのです、審議会にかけたことはないのです。あのときの経済情勢と現在の経済情勢とは大いに違ってきております。しかも建設省は入札に際しましてジョイントベンチャーなるやり方を導入いたしました。ところが、このジョイントベンチャーを採用するに際しましては、何ら審議会というものにはかけておらないのであります。ただ行政措置としてジョイントベンチャーなる仕組みを行っておるのでありますが、どうでございます。こんなことさえ行政措置一つでやっているのです。審議会の答申すら得ていないのです。私はここらあたりに日本の入札制度それ自体について大きな疑問を持たざるを得ないと思うのであります。  そこで、ジョイントベンチャーの一つ不届きな例を申し上げましょう。ジョイントベンチャーは、いままで私どもが聞かされておるのは、大手と中小企業あるいは地方業者と組ましてやることによって、弱小の業者に対して技術を教えてやる、あるいはまた機械を貸してやる、あるいはまた信用力を補強してやる、中小企業に対しても仕事を多く与えるがためにジョイントベンチャーを組ますのだというのがいままでの御説明でございましたが、そのとおりでございますな。
  312. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 大体基本理念はそういうことでございます。
  313. 井上普方

    ○井上(普)委員 したがって、私どもから考えますならば、いままでの大手と中小の業者との間に大きな格差が昭和三十年代からあったことは私も率直に認めます。機械がなかったというときには、大手業者しか独占してない機械を使わしてジョイントベンチャーを組まして、一つの仕事をやらすというのが中小企業の業者を育成する道であったでございましょう。しかしながら、近ごろになりますと、Aランクの業者同士でジョイントベンチャーを組み、大きな仕事をとっておるというケースが数多く出てきておるのであります。建設省本体にいたしますと、これはダム工事であるとか、そういうような特殊工事と思われるのでありますが、しかし、道路公団におきましては大手の連中が組んでおるジョイントベンチャーがあるのは、一体これはどういう理由なんですか。ひとつお伺いいたしたい。  もう一つ申しますならば、住宅公団において大きいA同士、大手同士がジョイントベンチャーを組んで仕事をしておるというケースがあるのは一体どういうわけなのか、お伺いしたいのです。
  314. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ジョイントベンチャーの目的は先ほど申し上げたとおりでありますが、なかなか工事が大規模化してきたものですから、大きな工事を一会社に渡すということがなかなか困難性もあり、そこで、お互いの技術というものを出し合うというか、協力し合うというか、こういうことにして、より以上の完全な工事を行うために技術を総合的に生かしていこう、そういうようなことで、大手にジョイントベンチャーをやらせるという、こういうような考え方が基礎になっていることもまた事実であります。  道路の方につきましては、道路の方の専門の方からひとつ御答弁を申し上げさせます。
  315. 前田光嘉

    ○前田参考人 当道路公団におきましては、ただいま御指摘ございましたように、AAという格づけを持っておるもののジョイントベンチャーがございますが、当公団は、先ほどお話ございましたように、工事の規模が相当大規模でございまして、しかも大型の機械を使う、あるいはまた土質その他の関係で特に高度の技術を要する場合もございますので、AAという組み合わせもかなりございます。ただ、ここで私はAAと申し上げましたけれども、当公団の分類上このAというのは、実は建設業者のうちでかなり多くのものがAという資格づけを行っております。たとえて申し上げますと、全国平均でAというのは、ある地域で五十数社、場所によりましては六十数社が上から数えてAという場合がございますので、そういう関係上、表面上AAという名前でございますが、内容におきましては中程度の力のところもございますし、また地方における業者におきまして、われわれの方は地元の建設業者を活用する、あるいは地元の能力を利用するという場合におきまして、その地元における有力なものを探しますと、たまたまちょうど全国平均で見て五十番前後にあった場合にはやはりAAということの組み合わせになりますが、実質は中央の大業者が地元の業者と一緒になって地元に適応した仕事をしていこう、こういう実態になっておることを御説明申し上げます。
  316. 南部哲也

    ○南部参考人 お答えいたします。  住宅公団におきましてAAというのもございますが、これはたとえばHPC工法、新しい工法の建築をやった場合に、実は、それを経験した業者が非常に少ないというときに、その技術的な習得を兼ねるということでAA。Aといいましても九十三社私の方ではおります。したがいまして、なかなか習得の機会が少ないというような場合にAAのことがございます。  それからもう一件は非常に金額が張りまして、三十億を超えるというような場合には、これを一社だけにやらせるということにつきまして、受注の公平といいますか機会の均等といいますか、そういうような配慮もございまして、これは大体高層の住宅でございますが、この場合にはAAというような場合がございます。
  317. 井上普方

    ○井上(普)委員 道路公団あるいは本四で非常にむずかしい工事、こういう場合は私はAAの業者のジョイントもあり得るだろうと思う。しかし、それはほとんど例外に近いものであると思う。金額にいたしまして道路公団予算の三二%がAAで組んでおるじゃありませんか。道路公団予算の三二%あるいは二六%をAAが、大手同士が組んで独占しておるのであります。ここに談合ができなかったから組み合わせし、あるいは名義料という金だけを渡して一括一つの業者がやっておる疑いが濃いのであります。あるいはまた、建築工事においてそれほどむずかしい仕事があるとは私は思いません。たとえて言うなら、建築工事でございましたら、住宅公団でございましたら高くてもせいぜい十五階程度だろうと思う。それが一社でできないはずはない。三十億であるがためにと言うんなら二つに分けたらどうです。あるいはこれは一むねでできるわけじゃないんですから、どうせ日当たりの関係なんかもあるんだから、ずっとともかく一括しましても分けて仕事はやっておるはずなんだ。この一〇%近い金額がAAで組まれておる実態を見まして、道路公団並びにこういう公団関係はおかしいんじゃないか。特に住宅公団は、光明池の問題を出すまでもなく、ともかくうわさのあるところにあると思うのであります。したがって、こういうような制度が堂々と行われておる実情を、総理は、強きをくじき弱きを助ける仁侠の精神のあなたは、変える必要があるのじゃないですか。根本的に考えてごらんなさい。そして地方業者を押しのけておる、弱小を押しのけておるというのが実態になってきておる。片方においては、先ほども申しましたように、談合が行われる可能性が非常に強い制度となっておるのであります。もう土建業者の間では、本当に談合が常識になってきておるのです。その中に天の声が入ったりあるいは貸し借りが行われたり、これはもう常識になっておる。これを直そうじゃありませんか、福田さんどうでございます。
  318. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 建設省その他で、まあ主として建設省ですが、いろいろ考えておると思いますけれども、最近のいろんな事件を見ておりまして、やはりこの辺でいろいろ検討してみる必要がある、こういうふうに考えられますので、その方向でよく検討いたします。
  319. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 談合は厳に慎まなければならぬというようなことを事務次官通達でも出してありますし、また先ほどお話しの中小企業の受注の問題につきましても再三事務次官通達をして、発注標準の遵守をしなければいかぬとか、あるいは分割発注を推進せよとか、あるいは共同請負制度の活用を行え、こういうような点については、常にといおうか、年に二回ぐらいは大体通達を出して、そしてこれを厳守しなければいかぬということを申しつけておるようでございます。特にただいまのお話につきましては、さらに十分検討を加えてみる必要があると考えますので、お答えいたします。
  320. 井上普方

    ○井上(普)委員 これはもう根本的な抜本政策をひとつ御検討願いたいと思います。特に総理もお約束されたようでありますので、早急に着手せられんことを望む次第であります。  総理はちょっと出られたのでその間に大蔵省にお伺いいたします。  住宅金融専門会社というのがこのごろ数多くできておるようであります。これはどこが認可してどういう条件で、そのバックは一体どういう連中がやっておるのですか、ひとつお伺いしたいのです。
  321. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  大蔵省が認めておりまする住宅金融専門会社、五社ございます。その五社の住宅ローン金利は、期間十一年から二十五年もので一一・一六%ないし一一・四〇%、御存じのことかと思います。都市銀行等の金利は十一年ないし二十年もので九・〇%となっておりますので、それよりおおむね二%ばかり高くなっておる、こういう現状です。そこで、これは住宅金融専門会社は発足後日も浅いために自己資金が少なくて、また原資調達はほとんど金融機関や保険会社等からの長期借入金で賄っておるわけです。長期プライムレートで借りても九・二%というわけでございますが、そういったような原資に依存しておる現状においては、この金利がちょっと高いのはやむを得ない、こういうことでございますが、住宅金融専門会社は次のような機能を果たすことによって住宅金融に対するパイプを太くしまして、住宅金融の一層の円滑化を期し得るものと考えられるので、その存在意義は大きいものがあろう、かように考えております。  貸し出しに当たっては物的担保主義を徹底させておることにより、預金取引等のない一見の顧客に対してもサービス提供が可能である、担保を厳しく取っておりますから。そこで、住宅貸し付けば一般に企業金融に比較して手続が非常に繁雑であるが、住宅金融会社はこうした事務を専門的に集中して処理することができるのでございます。機関別、地域別の資金偏在を調整し、住宅貸し付けに適した資金をあらゆる方面から集めて、住宅資金の安定した供給を行うことができるというようなわけでございます。  なお、保険会社は、その他の金融機関で住宅ローン機能を十分果たし得ない金融機関にとって住宅ローンを実行する有力な手段となることができる、こういうわけでございます。
  322. 井上普方

    ○井上(普)委員 住宅金融専門会社というものは、すべて後ろに銀行あるいは保険会社が控えておりまして、いままで銀行ローンで貸しておるのを、これをだんだんとその分野を少なくしてこちらの方に回そうとするのであります。いいですか。ですから、金利にいたしましても一一・〇四%、これは何年ものでございますかな、十年もので。二十年で一一・四%であります。そうすると、借入金を二千万円といたしまして二十五年間の借り入れをやって二・四%の金利でございますと、返済総額は、二千万円借りて七千五百六十八万二千五百円払うことになるのです。たまったものじゃありませんよ、これは。しかもこれはなぜつくったんだというと、銀行ローンはやかましく言ってこれは八・七%あるいは九%という低いものだから、これが銀行の子会社的な役割りをして、ここに金を流して、そしてもうけようとする。これは高利貸しの上前をはねるような会社じゃありませんか。こういうのをなぜ大蔵省は認めたのです。五つの会社といいますが、そのメーンバンクはどこどこなんです。
  323. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 大臣の御答弁をちょっと補足をさせていただきたいと存じます。  住宅専門金融会社は制度的には貸し金業でございまして、御承知のように届け出によりまして設立し得るもので、いわば自由営業でございます。ただ、ただいま大臣が申し上げましたように、認めておると申されましたのは、実は七社いま金融機関関係の住宅専門金融会社がございますが、そのうち規模が大きくなったものにつきまして大蔵大臣が直轄の指定をいたしております。それが五社でございます。現実はそういうことでございます。それから、金利等は御指摘のように一一%程度でございます。確かに借入側からお考えになってかなり高い金利だと私どもも思うのでございますが、ただ、先ほども大臣申されましたように、できてまだ間がございません。したがいまして、これから成長する過程だと存じます。それから同時に、これができました以後、銀行自身の住宅ローン、これは非常に大幅に伸ばしております。最近では大体前年比三割ぐらいのペースで銀行自身の住宅ローンも伸びております。将来銀行のやります住宅ローンとこういう専門会社の担当します部門とどういうふうになってまいりますかは、ちょっとまだ見定めないと何とも申し上げかねるのでございますが、現状はそういうことに相なっております。  それから、そのメーンバンクはどこであるかという御指摘でございますが、五社のうち二社は都市銀行がそれぞれ半分ぐらいずつ、都市銀行十三行が五、六行ずつそれぞれなっております。それから一社は信託銀行関係、それから一社は相互銀行の関係でございます。それからもう一社は長期信用銀行と証券会社、これが株主に相なっております。ただ、その資金調達はそれぞれ株主ばかりではございませんで、いろいろな金融機関その他から資金は借りておる実情でございます。
  324. 井上普方

    ○井上(普)委員 これは何ですか、銀行がこの金を貸して、その上まだピンはねするんですよ、これは。いいですか。株式配当も取るのですよ。たまったものじゃないでしょう、消費者は。二千万円借りて毎月均等に返済するとすると、二十五万円毎月払わなければならない。いいですか。そして十年たっても四千五百四十万円まだ残金が残っているんです、二千万円借りて。十年しましても、まだ四千五百四十万円残っているんです。こういうようなことをおいといていいのでしょうか。五年目の残金は六百五十四万円になるんです。こういうような会社をどうお考えになります。
  325. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 ちょっと私手元に金融会社の商品のあれを持っておりませんので、数字的に自信のあることを申し上げられませんで非常に恐縮でございますので、後から調べてお答えさせていただきたいと存じますが、普通の場合には元本と利息と均等で払う形になっております。したがいまして、その償還の形がどちらかと言えば元本の滞留期間が長くなるものでございますから、比較的合わせた総返済額と申しますか、元利合わせたものが高目に出ると思います。私の記憶しておりますのでは一割程度の金利、一割弱の金利でそうして二十年借りまして、大体返済額が元利合わせまして倍ぐらいになると思いました。いま御指摘の点は、たしか一一・四で三倍半ぐらいになるという御指摘でございました。これはちょっとよく数字的に検討さしていただきたいと存じます。
  326. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなた、認可した本人でしょうが、認可をしているのでしょうが、認めておるのでしょうが、大蔵省が。
  327. 後藤達太

    後藤(達)政府委員 大変恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように、専門会社自体はいわば登録だけの自由営業でございます。そして、その商品につきましても私ども認可その他のことをやれる立場では制度的にはございません。したがいまして、その商品の内容を一々実は承知をして勉強しておりませんので、大変恐縮でございますが、調べさせていただきたいと存じます。
  328. 井上普方

    ○井上(普)委員 こういうのを大蔵省はお認めになっておるのです。そしてまた金融会社に対してはあなたは指揮監督権をお持ちになっておるのです。これを放置されるお考えですか。どうですか。
  329. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いま政府委員から申し上げましたとおり、ちょっとこれははっきりしていないようですから、金利計算等についてひとつ調べさせていただきたいです。
  330. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなたが認可させたのでしょう。認めたのでしょう。しかも、金融会社に対しては、あなたに監督する権限があるのでしょうが。私は、このことについて質問するということも通告してありますよ。いまにわかにこれを出したのではないのです。
  331. 坊秀男

    ○坊国務大臣 これは登録の会社でございまして、大蔵大臣は指揮監督する権限は持っていない。ただ登録はしておる、こういうことでございます。それで、私は現在大蔵大臣でございますから、責任回避をするつもりは毛頭ございませんけれども、私が就任したときにはもうできておった。しかし、だからといって、私は責任を回避するつもりは毛頭ございません。(「だからどうするのですか。」と呼ぶ者あり)少し早急に検討させていただきたい。(「少し早急にとは何だ。」と呼ぶ者あり)できるだけ早急に……。
  332. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は住宅問題について質問しようと思ったんだが、こういうようなことをはっきりさせていただかなければ質問できないのです。どうしますか。
  333. 坪川信三

    坪川委員長 井上君に申し上げます。  ただいまの御質疑は非常に重要な問題でもありますので、正確を期する意味においても、大蔵省より至急その資料その他を御検討の上、提出を願いたいと思っております。大蔵大臣、さよう御了承願います。
  334. 井上普方

    ○井上(普)委員 資料が出ない、検討させてくれと言うのでございますから、その資料が出てきた後、ひとつ私は質問させていただきたいと思います。それでなければ住宅問題についての質疑ができません。この点をひとつ委員長にもお取り計らいをお願いいたしたいと思うのであります。
  335. 坪川信三

    坪川委員長 承知しました。
  336. 井上普方

    ○井上(普)委員 続いてお伺いするのでございますが、福田総理大臣行政管理庁長官の際に、宅地につきまして答申を出されました。行監の答申として、あなたが長官で諮問をし、あなたが委員長になってやられておるのですね。あの答申はあなたはやられるとお考えになっておられるのか、その点お伺いしたいのです。
  337. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 あの答申の大方は実現をされた、こういうふうに私は考えております。つまり、あの答申には私も非常に深い関心を持ったのですが、ねらうところは三大都市の宅地問題なんです。そして当時はちょうど石油ショックの起こる前です。あの昭和四十八年、これはもう土地の値段が暴騰する、私は一億不動産屋時代だ、こう言ったあの時代でございます。何とかして住宅政策、そのための土地問題の抜本的改革をしなければならぬ。それで、全国的な規模で土地問題というものを考えたら、これはなかなか雲をつかむような話になりはしないか。そこでまあ東京都圏、近畿圏それから場合によったら中部圏、この三大都市集中地域におきまして宅地問題を何とかしたい、こういうふうに考えました。  その基本的な考え方は、一つは都市人口がふえないような措置、つまりそのためには地方都市開発、これをしなければならぬ。それからもう一つは、とにかく富士山のてっぺんまで地価凍結と言ったらこれはなかなかできるわけじゃございませんから、三大都市につきましては地価の凍結をする、こういう考え方、その二つのことを柱といたしまして、まず必要なことは国土利用計画法である、こういうふうに考え、そしてそれらが盛り込まれて国土利用計画法はその後成立するに至った。そして三大都市圏につきましては地価凍結、いつでも凍結できる体制というものが整った、こういうことで、私もあの答申は大変重大な問題を提起しておるし、またその後も、細かい点はいろいろまだあるようでありますが、大方実現された、こういうふうに考えております。
  338. 井上普方

    ○井上(普)委員 この問題につきましては、私も国土利用計画法の議員立法に参画いたしましてつくらせていただいた一員でございます。しかしあの中には、相当福田さんも思い切ったことをおっしゃっておることがございますね。都内の農地についてはあるいは強権発動をして、地方自治体あるいは公団で代執行してでもこれを取り上げるべきだというような意見を出されておるのであります。そこで、いま三大都市圏におきましては宅地が不足しておる。この際に、あなたのあの考え方でいくならば何らかの政策が出てしかるべきだと思うのでございますけれども、どうでございます。
  339. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、あの答申の大筋、またねらいとするところは実現された、こういうふうに考えております。細かいことのフォローをその後しておりませんけれども、なおあの答申でいいところがある、こういうことになりますればどしどし実行したい、こういうふうに考えます。
  340. 井上普方

    ○井上(普)委員 宅地問題に対する総理の決断と勇気と申しますか、ひとつ私は期待いたしたいのであります。  そこで、もう一つお伺いいたしたいのは、総理は施政方針演説で、つくりましょう、使いましょう、捨てましょうという時代は去ったんだ、こうおっしゃった。これから資源有限化時代に突入したのだから、われわれはその心構えでなければならぬ、こうおっしゃいました。私もそのとおりだと思います。私は大正末期に生まれた者でありますが、やはりもったいないという思想がございまして、明治の生まれの方ならなおひどいだろうと思うのです。やはり私らももったいないという思想がございまして、共感するところ大いにあったのであります。しかし、この政策を一体どういうように実行しておるのだろうかと思いまして、私は予算書を見ました。余り出てきてないですね。つくりましょう、使いましょう、捨てましょうの思想を直すには一体どうするんだという政策は全然出てきていないようにお見受けするのです。そこで、あのつくりましょう、使いましょう、捨てましょうのこれをやめさす政策は一体どこにございますか、お伺いしたいのです。
  341. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 やはりそれは、私が声を大にしてそれを言い続ける、これが最大のかなめである、私はこういうふうに考えます。
  342. 井上普方

    ○井上(普)委員 精神訓話で直る時代じゃございませんよ。やはり私は、これは精神訓話の時代は過ぎた。むしろたとえて言うならば、耐久消費財についても、耐久消費財を長もちさせるというような方法を講じたらどうでしょうか。実情を一つ申し上げてみましょうか。私も大分調べてみたのですけれども、やはり企業の秘密という壁は厚うございます。なかなかわからないところがたくさんある。しかし、国民生活センターというのが企画庁の出先機関としてございまして、いろいろと教えていただきました。そうすると、やはりある程度のものが出てくるのであります。聞いてみますと、電気洗たく機あるいはテレビ、電気掃除機、これらの使用年数は電気洗たく機で四・九年、それからテレビで四・四年、電気掃除機で五・六年、電気冷蔵庫は七・五年というような使用年数であります。これじゃ耐久消費財と言えるかどうか、どうでございましょう。
  343. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 やはり長もちするような製品が流行するというような世の中にしたいと思うのです。それから、やはりモデルチェンジとかなんとかで余りそういうものに逆らうようなやり方はだんだん少なくなるとか、役所の方でも恐らくそういう気持ちでおると思いますけれども、これはなかなか法的にどうというわけにいきませんものですから、そこで手ぬるいというようなお感じがあると思いますが、役所としてはそういう気持ちで対処せしめたい、かように考えております。
  344. 井上普方

    ○井上(普)委員 もう少し長もちさせたいと言うなら、政策が出てこなければならないと私は思うのです。その政策がないじゃありませんか。  実はここに、東京都であるとかあるいは神戸市なんかでは消費者保護条例というのをつくっておるのです。そして耐用年数を書かすのです、あるいはその製造年月日を書かすというように実はやっておりますし、それから——この点何かお話があるんでしたら聞きたいのですが、ともかく、こういうような過半数の都道府県で消費者保護の施設ができておるのです。ところが、国がこれに対して何ら——先ほど言いましたように国民生活センターというのができておりますけれども、個々の収集だけであって、余り実効を上げていないというのが実情であります。そして都道府県においては半数が消費者保護の条例までつくっているのですよ。どうでございます。
  345. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘の耐久消費財でございますが、御指摘のようにいろいろと、一例を申すならば電気冷蔵庫が九年でありますとか、テレビが八年でありますとか、いろいろずっとございます。しかしながら、これもだんだんと品質がよくなりまして、昔のように五年、六年であったものが、大変ライフも延びておるというようなことは一つ事実問題としてございます。  もう一つは、耐久消費財に対しましての消費者団体の声は、部品がないというようなことでございますので、実際は当初のライフよりも相当——あと五年程度は部品がずっと、生産を中止いたしましても部品だけは供給するようにというように指導をいたしておるのでございます。  なおまた、これらの修理その他につきましては、省の方でも強く指導をいたしております。
  346. 井上普方

    ○井上(普)委員 いま、通産大臣、電気洗たく機の耐用年数は九年とおっしゃいましたね。テレビはたしか六年とおっしゃいましたね。それは、その数字はどこから出てきているのです。
  347. 田中龍夫

    田中国務大臣 当初の資料でございますと電気冷蔵庫が五年ないし六年というふうになっておりますが、その後に資料として出てきたものには九年というふうになっておりますので、それは製品がだんだん品質もよくなり延びておるという報告でございます。
  348. 井上普方

    ○井上(普)委員 通産大臣、だから通産省は業界の代表だと言われるのです。この九年というのは、買いかえしたあとの電気洗たく機をまだ使っておる九年だ。その電気洗たく機は二台あって、片一方はぞうきんを洗うとかこういうようなときのみに使っておるのだということが書いてあるのですよ。統計資料のあなた方の見間違いなんです。役人はそういうようなことをやるから業者の代表と言われるのですよ。
  349. 田中龍夫

    田中国務大臣 それは担当の政府委員にお答えさせます。
  350. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の家電製品その他耐久消費財につきましての耐久性を増すためには、第一にやはり生産技術の開発という問題あるいはまた品質管理という問題がございます。しかしながら、いま現実に、御指摘の耐用年数がどうかという点につきましてお答え申し上げますと、法定耐用年数でございますが、テレビは五年でございますし、また冷蔵庫は六年、洗たく機は六年ということでございます。しかしながら、いま大臣からも申し上げましたように、部品がないということで消費者の方方が非常に困るというようなことがございますので、私どもの指導といたしましては、やはり資源を有効に使うという観点でそういうことがあってはならないということで、いわゆる生産がストップいたしました後最低に保有すべき期間は幾らかということを、家電製品の場合には三十二品目につきまして定めまして、ただいま、たとえば冷蔵庫の例でございますと、生産がストップいたしました後の九年は最低保有いたします、さらにそれに加えまして相当の年数を保有すべきである、こういう指導をいたしておりまして、この期間中は修理の要求があった場合には必ず応ずるように、こういう指導を業界に対していたしているわけでございます。
  351. 井上普方

    ○井上(普)委員 法定耐用年数というのは税金上の法定耐用年数なんです。いいですか。減価償却するための法定耐用年数であって、何ら実態とは合っていないのです。平均寿命という言葉を使うのが私は本当だろうと思う。それを言うならば、先ほども申しましたように、非常に短くなってくるのであります。しかも私は、これを分析する際に決して一つの資料でやったのじゃない。国民生活センターから出てきた電気洗たく機の買いかえの理由、なぜ九年もつかというと、二台できたのだ、新しいのを買ったのだ。二台使って、片っ方はぞうきんとか汚いものをとにかく洗たくするために使っておる。使うのは週に一回か二週間に一回ぐらいしか使っていないというものの寿命なんであります、九年というのは。それをもって耐用年数、使用年数と通産省は申しておるのであります。ここにもお茶の水大学の連中が調べた資料があります。これを調べて、両方を比べてみたら寿命というのが大体合うのであります。それは先ほど申しました寿命であります。  ここで私どもは、こういうようなものを、こいつを長くするような方法を政府としてやらなきゃならない。いかにも部品の保有年限というのは行政指導で決めております。法定耐用年数、つくらぬようになってからもつくるようにしております。しかし、実際はといいますと、小売商店に行ってごらんなさい、その部品はございません、もう買いかえしたらどうですかと必ず言われます。そうして新しいものに買いかえさせられます、少しの故障でも。そこで、あなたのおっしゃるように、捨てましょうになって捨ててしまうのです。消費者は決して捨てようという——私らみたいな考え方、もったいないという思想の方々がほとんどなんですよ。やむを得ず捨てさせられておるのです。そして、片方においてはそれが粗大ごみになって社会問題ともなっておるのです。だから、これをもう少し長もちをさせるような方法を——ひとつ検定でもする御意思はございませんか。
  352. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘のお考えとわれわれ全く同じでございまして、少しでも長くもたせまするように、また部品の供給も潤沢にいたしますように、総理の捨てましょうというあれがないように、総理の方針を体しまして努力いたします。
  353. 井上普方

    ○井上(普)委員 実はこう申しまして研究は始めているんです。工業技術院で、これは四十九年から五カ年計画で、実は家電製品の寿命評価等に関する調査研究が行われておるのです。ところが、これがいまから七、八年しなければ定まらぬそうであります。そうすると、もう昭和六十年になってしまう。資源有限時代はどうなってしまうかということです。ここらあたりはこんなままでのやり方でいいのだろうか。これこそ業者に対する、これはもう消費者に対する言いわけにしか過ぎないと思うのですよ。捨てましょうの思想を捨てさせるためには、長もちさせるためには、うんと金をつぎ込んで早くさせたらどうでしょう。どうです。
  354. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘のように、そういうふうなことに対しまして、あるいはセンターを活用しあるいは運動を展開するというようなこともございますが、なおその御方針を体しましてわれわれの方も鋭意努力いたします。
  355. 井上普方

    ○井上(普)委員 鋭意努力しますではだめなんです。もうすでにこの予算に追加でも出してやるぐらいの、費目の流用でもやってこの研究は促進させなければいかぬと思うのですが、総理、どうでしょう。あと七、八年しなければともかく研究は完成せぬというのですよ。(福田内閣総理大臣「しかし、わからないと言うんですよ、あなたの言っているそういう話だけではわからない」と呼ぶ)しかし、わからないじゃ済まぬでしょう。これは通産省からもらった資料なんです。ここにも書いてございますが、これは通産省からもらった、いま言った家庭……。
  356. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 工業技術院につきましてよく調査いたしまして、そのような状態でありますれば、これは促進方をいたします。
  357. 井上普方

    ○井上(普)委員 続いて、私は自動車の問題を取り上げたいと思います。  これは先国会におきまして楢崎議員が国民経済車の構想を発表いたしましたし、特に耐久性について実は質問したところなんであります。私も、一体日本の自動車というのはどれくらい平均寿命があるのだろうか、これだけ外国に輸出されておるのだが、一体外国との比較はどうだろうかと思っていろいろと調べましたが、なかなかそのデータが見つからなかった。ところが、たまたま通産省の機械情報産業局自動車課編「転換期の自動車産業」という本が出ていました。見てみますと、日本の自動車の平均寿命との国際比較がありまして、日本の乗用車は六・八年、アメリカは十一・二年、イギリスは十一・七年、フランスは十一・五年、西ドイツは九・五年、トラックは日本が六・一年、アメリカは十一・〇年、イギリスは七年、フランスは十一年、西ドイツは十・三年という数字が出ておるのです。  それかあらぬか、今度は最近になりまして「間違いだらけのクルマ選び」という本が出てきました。見てみると、書いておるのはなるほどなということばかりです。私も三十一年から自動車を運転しておりますので、なるほどなということばかりなんです。耐久性がともかく日本の自動車は弱い、安全性も弱い、こういうような自動車の状況でありますが、しかし、外国に輸出しておるのは、日本もアメリカにかなりこのごろ車が輸出されております。仕様が違うらしいということしか書けないのですな。  私は、日本からアメリカに輸出した車と国内で使っておる車とが一体どれだけ違うんだろうかと思って、これまた調べに走ったのです。なかなかありません。ようやく見つけたところが、アメリカに輸出した車をまた日本に買い戻してきて、そして東京都で調べています。そうするとやはり出てきた。まず第一番に何が出てきたかというと、これは自動車の部品ですけれども、一番最初にバンパーの厚みが違うのですな。これは安全性の関係で、そうでしょう。これはまだ不確定だけれども、車体の、ボデーの厚みが多少変わっておるように思うという。あるいは足回りも違ってきているんじゃないか。これは総理、決して私がうそやごまかしで想像するのじゃないのです。アメリカのビッグスリー、三つの大きな自動車会社が、壊れやすくあるいは部品をかえやすい自動車を協定してつくっておったという事実があるのです。これは有名な話なんです。あるいは日本の自動車産業もそれをやっておるのじゃなかろうかなという疑いを私は持たざるを得ないのであります。ここらあたり徹底的に調べてみなければならぬと思うのですが、政府としてはやる御意思ございますか、どうです。
  358. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  自動車のライフの問題でございますが、いま大変貴重な資料をお調べいただきまして御注意いただいたわけでありますが、大体私は違ったものを輸出しているとは思っておらないのでございます。むしろ非常に国内的にはモデルチェンジを頻繁にいたしましたり、それから日本はもうこのごろは大分よくなりましたが、道路が舗装されておりますときと悪い道路とは非常にライフも違いますし、それから材質もこのごろは特殊鋼その他が大変よくなっていると存じております。  なお、私も素人でございますから、その本を書きました機械情報局長もいますから、詳細は政府委員からお答えさしたいと存じます。
  359. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  いま先生から御指摘ございました、まず国内車とそれから輸出車が内容においてかなり違うんではないか、こういう御指摘でございますが、たとえばいまおっしゃいました車の前につけますバンパーが厚みが違う、こういった問題は、たとえばアメリカにおきます安全規則の関係で規格が少し違いますので、国内の場合とはやや違うのでございますが、その他、これは量産体制でやっておるものでございまして、基本的には輸出されておるものも国内に売りますものも、仕様その他の違い以外品質上は特段の差がないと私どもは考えておるわけでございます。
  360. 井上普方

    ○井上(普)委員 先ほど申しました「間違いだらけのクルマ選び」というのは、いまベストセラーになっているのです。このベストセラーの中にも「これでも同じクルマか?」といって書いているのです。外国に輸出する場合は「国内仕様よりはるかにシンプルな仕上げであることがわかる。」のだ。量産体制に入っておるからそんなことはなかろう、こうおっしゃいますが、実際自信を持っておっしゃれるのですか、あなたは。バッテリーの大きさが違いますよ。足回りも違いますよ。
  361. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  仕向け地によりまして、たとえばバッテリーの大きさが違いましたり、あるいは寒冷地とか、温度その他の関係がございますので若干の違いはあると思います。特に輸出向けにつきましては、一般の場合に先方からの仕様の指定等から、比較的シンプルな構成になっている場合が多いかと思います。国内の場合にはユーザーの方のいろいろな要求もございまして、かなりいろいろなオプションで、ついている付属品が多いということの差はあろうかと思いますが、生産工程の上で、特に国内車と輸出車につきまして特段の差を設けるというようなことで生産が行われているとは考えておりません。
  362. 井上普方

    ○井上(普)委員 どうです通産省、外国に輸出しておる車と国内との抽出をして、これによって比較検討する御意思ありますか。
  363. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 先生の御指摘でございますので、私どもも十分勉強させていただきたいと思っております。
  364. 井上普方

    ○井上(普)委員 私がもう一つ申したいのは農業機械なんです。もう時間が来ましたので私も短くやります。  農業機械が実は非常にいま売れまして、四千九百億円ぐらい昭和五十年で売れているのです。ところがこれが、本体、エンジンは余り傷まないのだけれども、付属品が非常に傷む。もう苦情だらけなんです。これにつきましては、これは商工、農林水産委員会におきまして再三にわたって論議がされておりますが、あなたのおっしゃる、つくりましょう、使いましょう、捨てましょう、この捨てましょうをひとつ直すためにも、農業機械についてもう一度農林省も検定をするあるいは研究する、こういうことをやっていただきたいと思うのですが、どうでございます。
  365. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  私も、選挙の関係で農村を回りまして、お話のようなことを大変に聞きます。就任いたしましてからも、農業機械の部品の交換性でございますとか、それから銘柄が余りに多様でありますので、いざ農繁期に壊れて困るというようなこともございまして、先般来農業機械につきましては特段にお話のようなことをみずからも痛感いたしておりますので、役所の方を指導いたしたいと存じます。
  366. 井上普方

    ○井上(普)委員 終わります。
  367. 坪川信三

    坪川委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十七分散会