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1977-02-14 第80回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月十四日(月曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稲村佐近四郎君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    川崎 秀二君       北川 石松君    笹山茂太郎君       始関 伊平君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    藤井 勝志君       古井 喜實君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    森山 欽司君       阿部 昭吾君    井上 普方君       石野 久男君    上原 康助君       大出  俊君    小林  進君       佐野 憲治君    藤田 高敏君       武藤 山治君    草野  威君       坂井 弘一君    武田 一夫君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    河村  勝君       安藤  巖君    寺前  巖君       大原 一三君    田川 誠一君       永原  稔君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         国防会議事務局         長       久保 卓也君         総理府統計局長 吉岡 邦夫君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         警察庁刑事局長 土金 賢三君         警察庁警備局長 三井  脩君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         行政管理庁行政         監察局長    川島 鉄男君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       亘理  彰君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 江口 裕通君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         国税庁次長   山橋敬一郎君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         建設省住宅局長 山岡 一男君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第五局長  東島 駿治君         参  考  人         (国際協力事業         団総裁)    法眼 晋作君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   大来佐武郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     北川 石松君   浅井 美幸君     草野  威君   矢野 絢也君     武田 一夫君   柴田 睦夫君     安藤  巖君   大原 一三君     永原  稔君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     木野 晴夫君   草野  威君     浅井 美幸君   武田 一夫君     矢野 絢也君   永原  稔君     大原 一三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  総括質疑を行います。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、代表質問以来特にこの国会で問題になっております減税問題、また当面の外交問題ともいうべき領海十二海里の問題、加えて日中平和友好条約の問題等々を中心にお伺いしたいと思っておりますが、その前に私は、ひとつ政務次官適格性の問題についてお尋ねをしておきたいと思うわけであります。  これはすでに総理新聞雑誌その他で御承知かと思いますが、河本敏夫自民党政調会長の長男がある事件に絡んで恐喝されて、その関係者四人が警視庁に恐喝容疑で逮捕された問題がございます。一月十三日に逮捕されておりますが、この四人の中に、新日本商事という会社の社員の平野という人がおります。この新日本商事は、新日鉄君津進出に際して埋め立て工事の人夫を出して給料をピンはねして成長したと言われておりますが、またこの会社が増資のために千葉銀行大堀支店、現在は君津支店と言っておるようであります、ここに融資を依頼して、これまたこの銀行の役員といさかいがありまして暴力ざたを起こしておるということも聞いております。結局、この銀行との間には三億円の融資が成立をしましたが、これが焦げついておる。これと同じようなケースで、富津農協からも児玉の息子が経営をしておる博栄商事を通じて、これまた数億円の融資を依頼して、融資した金が焦げついて、これが組合長の更迭問題にまで発展しておるということが雑誌新聞の記事に載っておることは総理も御承知だと思います。  そこで、私は総理に注意をしたいのでありますが、この暴力団まがいの新日本商事という会社監査役に、五十一年十月現在の会社の謄本によりますと、某政務次官が名を連ねておった事実がございます。  それでお尋ねいたしたいのでありますが、総理はこういういかがわしい会社監査役に、現在の政務次官の中にそういう人がおるということであれば、それに対してどういう見解を持たれておるかということが一つ。  二つ目の問題は、現在もこの政務次官会社監査役を続けておれば政務次官としての適格性を欠くと思うのでありますが、早急に調査をして処置されることを要求すると同時に、総理政務次官適格性の問題に対する見解を承りたい。  また、調査の結果につきましては当委員会報告をしてもらいたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 調査をいたしまして、当委員会にその結果を御報告申し上げます。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、調査結果ももとより報告をしてもらいたいわけでありますが、いま一通りのこの問題に対する経過を申し上げたわけでありますが、そういう人が政務次官におるということになれば、これは問題じゃないでしょうか。その総理見解をただしておるわけですから、そのことに対する見解表明をしてもらいたい、このように思います。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 具体的な問題について見解を述べろというお話ですが、具体的な事実をよく知っておりませんものですから、調査をいたしまして、その結果並びにそれに対する見解を明らかにしますと、こう申し上げておるわけであります。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは、私が初めてここで問題を提起しましたけれども、すでに新聞雑誌でも出ておることなんです。ですから、こういう事実があるとすれば総理としてはこうだというぐらいなことは当然意思表明ができるのじゃないでしょうか。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 具体的なことがわかりませんと、これは藤田さんの一方的な話だけで判断するわけにはいかない。だから、具体的なことを調査いたしまして、その結果並びにそれに対する所見を御報告申し上げます、こういうことでございます。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、この程度のことで押し問答しておりましても時間がもったいないですから、午後の冒頭、できれば私の質問が終わる直前にその見解を表明してもらうように調査をしてもらいたいと思うのです。どうでしょうか。
  10. 園田直

    園田国務大臣 大臣政務次官の営利を目的とする会社兼職については、大臣法律で禁止してございますが、政務次官も、特にこういう際でありますから、兼職は一切相ならぬと通達してありますけれども、いまの御注意ございますから、詳細、早急に取り調べて御報告いたします。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではそういうことにしていただきまして、本論に入りたいと思います。  まず第一は領海十二海里問題であります。  政府はこの国会領海十二海里法案を提出する予定であると聞いておりますが、法律案を出すのかどうか、提出するとすればその時期はいつごろになるのか、またその所管は何省においてやるのか、お尋ねいたします。
  12. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 沿岸漁民保護等目的領海の幅員を十二海里に広げたいという基本方針のもとに、いまそれに伴う必要な立法の作業に入っておる段階でございます。私が総理からの指名によりましてその担当大臣として取りまとめに当たっておるところでございます。まだ提案の時期等を明確にお話しする段階ではございませんが、三月中には提案をいたしたい、それを目途に進めております。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いま答弁があったわけですが、一月の二十六日、関係閣僚会議で決定をされた内容というのは、いま鈴木農林大臣から答弁のありました、領海は十二海里とする、これは後で問題にいたしたいと思っておりますが、いわゆる国際海峡と言われておるものについては三海里として凍結をする、所管大臣農林大臣とする、こういうことが関係閣僚会議で決定されたやに聞いておるわけでありますが、間違いありませんか。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。農林大臣としてではなしに、国務大臣としてその担当を命ぜられております。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この種の問題は所管大臣としては外務大臣所管するのが私は常識ではないかと思うのですが、国務大臣という肩書きにもしろ農林大臣所管大臣になった、その積極的理由というものを示してもらいたい。  いま一つの問題は、前国会まで領海問題に関する論議としては、政府は第三次国連海洋法会議の結果待ちだ、こういうことで終始してきたと思うのです。ところが、このたびいわば急遽十二海里の方針態度を変更したと思うわけでありますが、そのように海洋法会議の結果待ちというその態度が根本的に変わったというふうに理解してよろしいかどうか。また変わったということであれば、変更したその積極的理由は何か、このことをお聞かせいただきたい。
  16. 真田秀夫

    真田政府委員 御質問の前半の部分について私からお答え申し上げます。  領海の幅を幾らにするか、今度で言えば十二海里にするかどうかということは、これはすぐれて外交的な面もございますが、同時にこれは国内法適用範囲の問題でございますので、国内的な面も持っているわけなんです。それで今度政府でいま作業をいたしておりますのはその国内法の面でございまして、これは各省にまたがるいろいろな問題が含まれておりますので、どなたかの国務大臣にお取りまとめを願わなければ作業がなかなかスムーズに進みません。それで、いまおっしゃいましたように、これは国内法の面でございますので、外務大臣ではなくて他の国務大臣の方にお取りまとめを願う。そのうちで、やはり沿岸漁民の利益の保護ということから事柄が出発した面もございますので、農林大臣であられる鈴木国務大臣にお取りまとめをお願いするということになった次第でございまして、どうも性質から申しましても外務大臣ということではないのだろうというふうに思う次第でございます。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 後段の問題、どうですか。
  18. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 従来政府は、重大な問題でございますので、国連海洋法会議の動向を見た上で判断をする、こういうことであったわけでございますが、その後、御承知のように二百海里の問題が現実の問題となってまいりました。また最近、日本近海における外国漁船団の無秩序操業によりまして漁業秩序が乱され、また漁具等被害相当続発をいたしておる、この事態は放置できない。また、海洋法会議がこの五月にも引き続き開かれるわけでございますが、状況等判断いたしますと、そこで直ちに結論が出るかどうかということも予測できない状況にございます。そういうようなことで沿岸漁民保護を急いで図らねばいかぬ、こういうことで今回の政府方針になった次第でございます。
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そうしますと、海洋法会議結論待ちということが待てなくなった、従来の方針が変わったのだ、こういうふうに理解してよろしいですね。  それと、真田法制局長官が、だれが所管大臣になるのかということについて、私は、所管大臣がだれになるのかというのを決めるのは少なくとも総理じゃないかと思うのですね。ところが、法制局長官がそういう任命大臣に対しての答弁をすることは、いささか常軌を逸しておるのではないかと思いますが、それに対する見解を聞かしてもらいたい。  加えて、私が先ほど質問をしましたが、この領海十二海里問題の方針がこういうふうに変わったという主たる条件はなるほど漁業問題にあるといたしましても、領海の幅を広げるということは、いわゆる主権範囲拡大をするということで、私は、一農林省とかあるいは漁業問題に限る問題ではなくて、これは国際的に非常に大きな影響力を持つ、重大な問題だと思うのですよ。後で問題になってまいりますいわゆる国際海峡というような問題は、国際的に漁業問題も大事だけれども、それ以上に、これまた重要な問題になってくる。そういう全体的な立場から見れば、むしろこれは外務大臣所管するのが、これまた常識ではないかと思うのですが、そのあたり見解を重ねてただしたい。
  20. 園田直

    園田国務大臣 まず最初に御了承を得たいと存じます。  法制局長官説明の中に、この法律説明並びに経緯を説明して、最後に所管大臣鈴木国務大臣に決めたというのは誤りでございまして、取り消しをいたします。これは当然内閣の仕事でございますから、総理指名されたわけであります。  なお、二段目の御質問でございますが、全くおっしゃるとおりでありまして、事は漁業の問題から発生したことではございまするが、十二海里拡大ということは主権拡大でありますから、これは当然農林大臣であるとか外務大臣であるとかという問題ではなくて、条約になれば外務大臣沿岸漁民のことについては農林大臣あるいは海上保安庁運輸大臣、その他汚染の問題では環境庁と、関係がたくさんあるわけでございます。しかも、これを法的に効果を出そうと思えば、国内法その他たくさんございまするので、そこでだれに頼むかということで、こういうことに堪能な鈴木国務大臣総理指名をされたわけで、農林大臣なるがゆえに指名をされたわけではございませんので、御了承を願いたいと思います。
  21. 藤田高敏

    藤田(高)委員 法制局長官答弁はこれは穏当でないということで取り消しをされましたので、それは了承いたしましょう。しかし私は、国務大臣として鈴木農林大臣担当大臣指名したと言いますが、これはやはり今日まで国会において領海問題があるいは領海条約が審議された経過から見ても、外務大臣が適当ではないか。私は、個々の絶対的評価ではありませんが、鈴木農林大臣はきわめて有能な政治家でありまた大臣だというそれ自体を決して否定しているものではない。むしろ行政の筋といいますか、この種の問題を担当する筋の問題として外務大臣の方が適切ではないかということを、これは強く主張をいたしておきます。  続いて、この問題のいわば一つの核心にも触れてくると思うわけでありますが、その前に、政府は十二海里にすることによってわが国沿岸漁民の生活を保護する――現在特にソ連漁業船団によって多くの被害を受けておりますが、こういう被害を十二海里にすることによって防止することができるんだということが一番大きな政治的なねらいだろうと思うのですよ。ところが、そのことが現実的に実行できる見通しがあるかどうか。近く日ソ漁業交渉が始まるようでありますが、たとえば領海を十二海里にした、しかしながらこの交渉の中で、今日三海里近くまでやってきておるソ連漁業の実績というものを一つ既得権益として認めるようなことが起こったといたしますなれば、十二海里にしたその実質的効果というものがなくなると私は思うのですが、この点は漁業交渉見通しを含めて十二海里の外にソ連漁業船団をいわば締め出すことができるかどうか、この点についての見通しを含めての見解を聞かせてもらいたい。
  22. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日本近海における外国船操業被害、具体的にはソ連船団による被害が一番多いわけでございますが、ソ連大型スタントロール操業によりまして、定置性刺し網等漁具被害が大部分でございます。しかも、その定置性刺し網等漁業は十二海里の中が大部分でございまして、領海十二海里になった場合におきましては、大部分その被害は排除できる、このように私は見ておるわけでございます。なおまたそのほか、漁具被害のほかに沿岸漁業者操業秩序というものも確保される、こういうことを総合判断をしたわけでございます。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、交渉に当たってあるいは見通しとしては、現在のソ連漁獲高とか漁業のあり方、それ自体既得権として認めるようなことは起こらないだろう、このように理解してよろしいわけですね。
  24. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のようにソ連もすでに領海十二海里を設定をいたしておりまして、日本漁船は十二海里の中で操業いたしておりません。また、海流その他の事情でそのラインを侵しますと拿捕その他の規制を受けておりますことは御承知のとおりでございます。  そこで、ソ連も十二海里、わが方も領海十二海里、これは相互主義として国際的にも尊重されるもの、このように考えております。
  25. 藤田高敏

    藤田(高)委員 次に、新聞その他でもずいぶん問題になっておりますが、いわゆる国際海峡――領海を十二海里にすると言っておきながら、いわゆる国際海峡と称する地域については、これを三海里として固定化する。なるほど政府主張では、海洋法会議までの暫定措置としてそのような取り扱いをするというようなことが報道されておりますが、なぜそのようなことが三海里にしなければならなかったのか、その積極的理由は何なのかということをお尋ねをいたしたい。  これに関連をして、時間を合理的に使う意味において質問事項をまとめて申し上げたいと思うのですが、いわゆる国際海峡というものの概念規定というものは何に基づくものであろうか。また、国際海峡というものを設定する場合に、その選定基準を何に置くのか。また、そういう国際海峡を設定するとすれば、わが国の場合には何カ所ぐらいこの国際海峡という地域に指定をされるのだろうか。  また、このことに関連をして、一方では十二海里だと言う、ある特定の地域だけは三海里だと言う、そういうことになれば主権の行使の範囲というものが三海里の部分だけが極端に制限をされるわけでありますが、いわゆる国際海峡なるものを指定するとすれば、これは当然この国会審議の中で、こことこことここだという形で法律の中に明記をして検討すべき課題であろうと思いますけれども、聞くところによると、これを政令によって決めようとするような考えがあるやに聞いておりますが、まさか政令によってお決めになることはないと思いますけれども、そのあたり見解を聞かしてもらいたい。
  26. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国際航行に使用されておりますいわゆる国際海峡、これは現状のままと暫定的にいたしたい、こういう考えでございますが、これは御承知のように国連海洋法会議でもいわゆる国際海峡の通航問題は大きな政治問題としていま論議をされておるところでございます。  わが国は、通商航海上の立場からいたしまして、マラッカ海峡等現状を変更してもらっては困る、そういう立場をとっております。貿易で立っております日本としては、そういう主張をいたします立場からいたしまして、日本列島周辺のいわゆる国際海峡についても同様の対応をすべきものだ、このように考えておるわけでございます。  なお、その国際海峡基準をどうするか、こういう問題もございますが、こういう問題は国際航行に使用されておる頻度その他いろいろの角度から、また、国連海洋法会議のこの問題に対する論議動き等も勘案をいたしまして基準を決めるという方向でいませっかく検討中でございます。  なお、何カ所ぐらいになるのか、それを法律で決めるのか政令で扱うのか、こういう御質問でございますが、津軽海峡、宗谷海峡、対馬海峡、大隅海峡等々が国際航行に多く利用されておるということでございますが、その他の海峡につきましても、いま申し上げたようなことを頭に置きながら、どの程度にこれを国際海峡として取り上げるかということは鋭意検討を進めておる段階でございます。  それから、なお、根本問題としての、いわゆる国際海峡を除いた部分は十二海里で、国際海峡部分現状を変更しない、つまり三海里ということになると、国民の法のもとにおける平等性というものが確保できるかどうか、こういう御質問であったと思いますが、これは国民である個人の権利義務の問題を法の前で尊重する、平等に扱うということが憲法にうたわれておる点であると思いますが、これを国の管轄権、主権をどこまでするか、こういう問題につきましては、政府が総合的に国益を踏まえて決定をするということでございまして、国会の御承認を得ればそういうことになるわけでございますが、それによって国民の個人の権利を制約をするということには私どもは考えておりません。  なお、これは法理論の問題でございますから、法制局長官から正確に御答弁を願うことにいたしたい、こう思います。
  27. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一番最後の答弁は、私はそんなことを質問してないのです。質問要項の中に若干入っておったかもわかりませんけれども、まだ法制局長官から見解を聞くような質問はしておりません。  そこで、私、国際海峡と称する地域を何カ所に指定するかということをできれば別の資料ででも欲しいわけでありますが、きょうの論議としては、とりあえずいま鈴木農林大臣が表明されました津軽あるいは宗谷あるいは大隅、少なくともそういう地域国際海峡として取り扱うということですね。そして、そういう海峡は三海里にするんだ、このように理解してよろしいですか。
  28. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私が例示的に申し上げました四海峡、これは国際航行に使用されておる海域でございまして、いわわゆる国際海峡に該当するというぐあいに考えまして、いま検討を進めておるところでございます。
  29. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではお尋ねしますが、一応この四海域というふうに限定して議論をしてみましょう。この四つの地域については三海里でいくんだ、こういうことになれば大幅な主権の制限になると思うが、どうか。このようなみずから主権範囲を制限をするような、そういう法律をつくっておる事例は世界のどこかの国にあるのだろうか。世界的にその類例があるかどうか。これはひとつ外務大臣からお答えを願いたい。
  30. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまの、世界で領海幅が違うようなことをしている国があるかという点につきましては、私ども寡聞にして知らない次第であります。
  31. 藤田高敏

    藤田(高)委員 世界でも類例のないようなことを、わが国で初めてこのようなことをやるというわけですから、そこには世界に類例を見ないような三海里にしなければならない積極的理由があると思うのです。わが国独特の理由があると思うのですよ。その理由というものは何なんだろうか。  これはもうすでに新聞やその他でも一定の論評がなされておりますが、いわゆる非核三原則との関係がここで出てくるのではないか。これはもうきわめて常識的なことだろうと思うのですが、その点はどうでしょうか。その点は、一昨日もマラッカ海峡の問題が出ましたが、マラッカ海峡の問題は、私は、核艦船の問題と一般商船との性格の違いを何かマラッカ海峡にすりかえておるような印象を深くするわけでありますが、そのあたり見解を含めて御答弁を願いたい。
  32. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 いわゆる国際海峡の通航問題というのが国際海洋法会議一つの大きなテーマになっておることは御承知のとおりでございます。そして、わが国は海洋国家でございますので、他の主要なる海洋国家、日本の近辺で言えばアメリカ合衆国でありますとか、ソビエト、一緒になって私どもは国際海峡のより自由なる航行というものを国益に沿うものとして考えており、また主張しておるわけであります。  そういうことから考えて、現在日本がまず十二海里に領海拡大をすることによりまして、今度いわゆる国際海峡になって公海部分のなくなる国際海峡におきまして自由なる通航が阻害されるということになりますと、これは従来わが国として国際社会において主張していることと相矛盾することをすることになりますので、国際海洋法会議の決着がつくまでとりあえず現状にとどめておくべきである、こう考えておる次第でございます。
  33. 藤田高敏

    藤田(高)委員 領海を広げれば、場所によっては公海がなくなるということはもう当然予想されることなんですね。そのわかり切ったことをやる過程で、特に最初から主権範囲を制限するようなことは、独立国家としてこれはいわば無作為の主権の放棄に当たるのではないか。これはどのように考えても、公海がなくなるということで、そこに特別な世界に類例のないことをやるわけですから、世界的にも類例のないような理由がなければこれはやらないということになってくるんじゃないでしょうか。公海がなくなったって、その領海を通航する無害通航というのは国際的な慣例としてもりっぱに存続しておるわけですから、それで何ら支障がないのじゃないか。  問題は、無害航行で支障があるとすれば、核艦船の問題が起こってくるから主権を制限してまでわざと公海部分を残す、こういうことがいま政府がやろうとしておる領海三海里の問題じゃないか、国際海峡に設定をしようとしておる三海里説ではないか、このように考えるのはきわめて常識だと思うのですが、どうでしょうか。
  34. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 たびたび申し上げますが、非核三原則という問題がありますが、この問題につきまして、政府としてはこれを変える意思は毛頭ないわけでございます。私どもは、そうではなくて、いわゆる国際海峡のより自由なる航行、無害通航ということになりますと、どうしても沿岸国の判断によりまして無害であるかどうかということが決められる、こういうことになりますと、たびたび申し上げますが、マラッカ海峡その他におきましても問題が生ずるわけでございますので、どうしてもより自由なる通航を認めるような海洋法会議結論待ちたい、こういうことでございます。  一方、主権の制限につきましては、これは法制局長官の方から御答弁があると思いますが、いま国際海洋法会議におきまして海峡通過の問題があるからといって、日本がその他の地域におきましてどうしても三海里の中におさまっていなければいけないのだということにはならないので、その他の地域におきましてむしろこの際主権範囲を広げる方が国益に沿うところであろうというふうに私は考えるわけで、海洋法会議結論が出なければその他の地域においても広げられるものが広げられないというのはいささかおかしいのではないか、沿岸漁民に欠けることになりはしないか、こう考えている次第でございます。
  35. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは政府がどのように答弁されましょうとも、何度も繰り返しますように、世界に類例のないことをやるというのですから、そこには世界でただ一つ、唯一の積極的理由がなければそのようなことはやるべきでないと思うんですよ。主権の制限をみずからやるわけですからね。そうでしょう。一方では十二海里。全体的にはほとんど十二海里、特定な地域だけが三海里というようなことをやるわけですから、これはどのように考えても、私どもとしては、非核三原則との問題に関連をして手控える体制をとったとしか考えられない。  私はここで思い起こしてもらいたいと思うのですが、昨年の四月の二十七日、例の核防条約国会で承認をされた。そのときに、承認に当たっての単独決議がなされた。この決議の中には、「政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずとの非核三原則が国是として確立されていることにかんがみ、いかなる場合においても、これを忠実に履行する」ということが第一の条件に付されておるわけですね。私は、このたてまえを政府が本当に忠実に履行するということであれば、今回、国際海峡と言われるところに三海里を設定する必要がないと思うのですね。この決議との関連における政府態度はどうか。これはひとつ外務大臣あるいは総理から見解を聞かせてもらいたい。
  36. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいまお述べになりました核防条約の際の決議は、当然のことながら、国是として守り抜く決意でございます。本件とは何のかかわり合いのないこと、とこう考えております。
  37. 藤田高敏

    藤田(高)委員 先ほどから何度もお尋ねいたしておりますが、この地域だけを、国際海峡地域を三海里にするという世界でただ一つ積極的理由は何か、これについてのお答えはないですね。これは三回私は聞いているのだけれども、ない。世界のどこにもないと外務大臣答弁された。世界にどこにもないことを初めて今度やるわけでしょう。そうしたら、世界でただ一つの三海里にこういう主権制限をしなければならぬという、その理由というものはあるのじゃないでしょうか。これが浮き彫りにならないと、領海十二海里に領海拡大しながら、何で三海里に特定な地域だけを暫定的にもしろやらなければいかぬのでしょうか。これは明らかに主権の制限でしょう。主権の制限ということは、独立国家に対してきわめて重大な問題ですよ。部分的な権益を守るという問題よりも、一国の主権をいかにして確保するかというこの観点からいけば、きわめて重大な問題だと私は思う。  そういう点で、そのただ一つともいうべき一番積極的な理由は何か。これはひとつ率直に国民にわかるように答弁してもらいたいと思うんですよ。これはそうしなければわからないですよ。どうですか、外務大臣。引き続いてひとつ総理答弁してください。
  38. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 たびたび御答弁申し上げておるとおり、国際海洋法会議結論が出てから日本領海の十二海里の拡大の問題あるいは二百海里問題に取り組む方針であったわけでございます。これは昨年閣議でも了解されたわけでありますが、他方、この国際海洋法会議が、たとえばことしの夏にもう最終的決着がつくかということになりますと、これがなかなか決着がつくかどうかわからない。こういう事態になりまして、他方アメリカあるいはソ連の方は漁業専管水域を設ける、こういうような時代になりまして、日本として沿岸漁民保護というものを真剣に考えなければならない。こういう事態になりましたものでありますから、国際海洋法会議結論待ち部分結論を待とう、しからざる部分につきまして十二海里に広げよう、こういう決意をしたわけでございますので、ただいまお話しになりました非核三原則、これはもう守り抜く、こういうことのもとにこういった方針を決定した、こう御了解をいただきたいのでございます。(「答弁になっていない」と呼ぶ者あり)
  39. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国がどういう立場にあるかということになると、わが国は資源小国です。資源を世界のあらゆる地域から国際海峡を自由に通航してわが国に運ぶということについては、最も利害を感じている国であります。
  40. 藤田高敏

    藤田(高)委員 二人とも私がこれで四回目質問したことに対して的確な答弁がなされていませんね。それは、資源小国だ、資源を確保するんだ、沿岸漁民の権益なり利益を擁護するんだと。そういうことであれば、三海里よりも十二海里の方が資源を確保し、沿岸漁民の生活を守ることになるのじゃないですか。それは、外務大臣の言うことは全く逆立ちしていますよ。三海里と十二海里でどちらが漁民の権益を守ることができるか。それは津軽海峡一つとってもそうでしょう。十二海里になったら、十二海里の範囲内には他国の漁船が入ることができないということになれば、これは生活を守ることになるじゃないですか。したがって、いま答弁していることは自己矛盾しているわけですね。そういうことではなくて、むしろ別の条件があるから三海里にするんでしょう。いま総理なり外務大臣が言われておる条件からいけば、それは十二海里になった方が権益は守れるということが、これは小学校の生徒でもわかる理屈じゃないですか。それをあえて三海里にするというのは何かということを聞いているんですよ。
  41. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これはもうたびたび申し上げているとおりでございます。日本は海洋国家でございまして、国際海峡のより自由な通航ということに日本は大変国益を持っているわけでありますので、この国際海峡領海を十二海里に広げた場合に、国際海峡になる、公海部分のなくなる海峡につきまして、いわゆる現在よりもより自由なる航行を主張をしているわけであります。そういったことから、国際海峡通航問題の決着がつくまで現状にしておきたいというのが日本考え方で、しかし、そういうことをやっておったならば広げられるべき領海も広げられない、こういうことになりましては漁民保護に欠ける、こういうことでありますので、その他の部分について十二海里を拡張をする、こういうふうに拡張する方を考えますと、その方が総体の日本としての国益を守るゆえんではないか、こういうことで、もっぱら国益を考えての方針である、こう理解をしているわけであります。(藤田委員答弁になっていないですよ。委員長、注意してくださいよ」と呼び、その他発言する者あり)
  42. 坪川信三

  43. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 なぜいわゆる国際海峡につきまして三海里にとどめるか、こういう点はまことに私どもも重大なる問題と考えております。この問題につきましてはずいぶん時間もかけて各省の間でも議論をしてきた問題でございまして、大変重大な問題であると考えておることは御説のとおりと思うのでございます。しかし、今日の段階になりまして、このまま通航問題が解決するまでは日本として領海が広げられないというのもいかがなものであるか、こういうことから今回政府が決意した次第でございますけれども、何分にもいろんな各般の問題を含みますので、後刻また整理をした上で御答弁させていただきたいと思うのでございます。  しかし、大きく申し上げますと、海洋法会議の先進工業国と申しますか、国際海運に非常に依存している国と、そうでない、いわば開発途上国というようなグループとの利害がいろいろ対立する問題がありまして、日本といたしましては、そういったいわゆる工業国家、アメリカあるいはソビエト、こういった国々と利害を共通にしている面が非常に多いわけで、そういうような主張を従来しておったわけでございます。そういう意味からいきまして、いわゆる国際海峡につきましては、現状のまま海洋法の結論が出るまで置いておきたいというのが私どもの考え方でございますので、その点だけ申し述べさせていただきます。
  44. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまの答弁を含めまして、私は納得はいきません。特に、海洋法会議待ちと言いますけれども、この海洋法会議結論は、次回の海洋法会議結論が出るという保証もこれまたどこにもない。  私自身が質問しておる焦点についての答弁がありませんので私から申し上げますが、この問題は主権制限にかかわる重大な問題である。世界にどこにもこのような主権制限をやった国はないという、世界にも類例を見ないということ、これが二つの問題。三つ目は、この問題は後世にわたる重大な問題であるということ。こういう観点から、これはきわめて重大な問題でありますだけに、単に整理をして後刻答弁ということではなくて、整理をして統一的な見解を文書で示してもらいたい。このことについて要求します。
  45. 坪川信三

    坪川委員長 さよう取り計らいたいと思います。
  46. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それは、思うではなくて、やるということですね。そういうことで、私は、これで了解したというわけではなくて、以下の問題については質問を留保したいと思います。  最後に、この問題で相当時間をとったのですが、こういうことになりますと憲法九十五条とのかかわり合いができてくるのじゃないか。この法律ができることによって、いわゆる限られた特定の地域の住民に不利益、不平等な条件が起こってくる。そういうことになれば、憲法九十五条とのかかわり合いにおいて、住民投票をやらなければこの問題の決着がつかないと思うわけですが、この点はどうでしょうか。これはまず外務大臣……(発言する者あり)私が聞くのだから。外務大臣、そして農林大臣、それから法制局長官、その順序で答弁してください。
  47. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 憲法問題でございますので、法制局長官からお答えいただいた方がよろしいかと思いますので……。
  48. 真田秀夫

    真田政府委員 御質問は、領海の幅を定める場合に、一般的には十二海里、いわゆる国際海峡に係る部分については三海里とすることによって、当該沿岸漁民の間に、いろいろ利害の不平等ができるではないかという御質問のようでございますが、これは実は憲法九十五条の問題ではなくて、むしろ、お考えの趣旨から言えば十四条に関連する問題ではないかと思うのでございます。  ところで、この問題は、国際法上、沿岸国がその領海の幅を定めるについては、昔は三海里だということに国際法上、確定しておったという解釈で、わが国でも国内法上、別に三海里だということを決めた法律はないわけでございますけれども、その後、一般国際法がだんだん変化いたしまして、現在では十二海里までは沿岸国が決めてもよろしいんだ、拡張しても、ほかの国は異議を申し立てないというぐらいの国際法ができつつある段階だろうと思うのです。その場合に、十二海里にすることもよろしいのですが、十海里でもいいし九海里でもいいし、それは当該沿岸国の国益に照らして決めればいいわけなんです。  それで今回、日本領海の幅を定めるについて、十二海里と三海里という二色の違った幅の領海部分ができるわけなんですが、これは、そういう一国の領海はすべてその幅が同じでなければならない、違った幅の領海を勝手に決めてはいかぬというような国際法があるとも思えませんので、沿岸国で、つまり日本の国益に即して、あるところは三海里、あるところは十二海里というのを決めようということに、いま現在なっているわけですが、問題はやはり、ある部分について三海里、ある部分について十二海里という差異を設けることが合理的であるかどうか、日本の国益に即しているかどうかが実は問題なんであって、そこが合理的に、二つの幅の違った領海をつくることができるんだということになれば、それはそこの沿岸漁民が、それによって多少の生活上の利益の差異を受けようと、これはいたし方ないのであって、憲法十四条の問題ではないんだというふうにわれわれは考えております。憲法十四条はですね。(藤田(高)委員「私は九十五条を聞いている」と呼ぶ)だから、それはどうも御質問の趣旨は十四条のことを念頭に置いて御質問になっているんだろうというふうに私の方で思いますので、それで十四条の説明をいたしました。  それから九十五条につきましては、九十五条は憲法のうちの「地方自治」という章の中にも書いてありますとおり、これは地方公共団体の権能なり組織なりについて特別法の関係にある場合には、その特別法の適用を受ける地方公共団体の住民投票に付しなさいということが書いてあるわけでございますが、今回の問題は、国の領海の幅をどうするかという問題でございまして、何も地方公共団体をねらい撃ちにして、おまえのところは三海里でがまんしろということを言うわけじゃございませんので、どうも制度の本質から申しまして、これは国の制度の立て方でございますので九十五条ではない、住民投票にはかけなくても違反にはならない、というふうに考えておる次第でございます。
  49. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この憲法九十五条の解釈に基づいて、どういう判断をするかということは、これは政府がやるのではなくて国会がやるのだということは、憲法解釈としても常識化されておると思う。それはそのとおりでしょう。  そこで私の言っておるのは、一つの公共団体のみに適用される、今回のような三海里になれば、その地域の住民にだけ適用されるような問題については、この九十五条というものは、いわゆる特定な地域の住民に不利益もしくは不平等な扱いになるような問題については住民投票に付されて、国会がこれを決めなければならぬ、こういうふうに指摘しておると思うのですよ。そういう観点から私は、これはやはり特定な地域の住民だけが三海里ということで不平等な取り扱い、あるいはまま子扱いをされるような事態が起こっておるのであるから、九十五条の問題が適用されるのじゃないかということを尋ねておるわけです。総理、どうでしょうか。
  50. 真田秀夫

    真田政府委員 先ほども申し上げましたように、憲法の九十五条は「一の地方公共團體のみに適用される特別法」の話でございます。今度の措置によりまして、なるほど漁民の方の間に、住民の方にはそれは多少の違いは出ます。しかし、そういうことが起きましても、憲法九十五条がねらっているのは、ごらんになればおわかりのように、地方自治の本旨、「地方自治」という章の中に書いてあるわけでございまして、地方公共団体に適用がある法律、特別法のことでございまして、そこの住民がその結果どういう処遇、取り扱いを受けるかということは九十五条の問題じゃなくて、もし問題になるとすれば、それはむしろ十四条の問題じゃないか。しかし、十四条についても先ほど申しましたように、これは実は十四条の問題じゃないんだというふうに考えております。  それからなお、ただいま仰せられましたように、ある法律が九十五条のいわゆる地方特別法に当たるかどうかということは、これは地方自治法にも規定がございますけれども、後議の議院の議長様が手続をおとりになるということになっておりますことからも明らかなように、それは最終的には国会で御判断になることでございます。ただ、政府見解はどうかとおっしゃれば、私がいま申し上げたような次第でございます。
  51. 藤田高敏

    藤田(高)委員 憲法解釈論議をやっておりますと、私の質問の時間がなくなりますので、これは本質的には九十五条、憲法にかかわる問題として住民当票に付してでも住民の意思を聞くべき問題であろう。そのことが主権制限にかかわる問題であるだけに、私はそのことを強く主張をいたしておきたいと思います。  そこで、日中問題に入ろうと思ったのですが、ちょっと時間がなくなりましたので、私、減税問題に移りたいと思います。  そこで、まずお尋ねをしたいわけでありますが、この問題は、今国会代表質問以来、相当長時間にわたって議論が交わされた。ところが結果的には、残念でありますが、特に私どもオール野党の主張であります一兆円減税に関する減税問題については、半ば総理の、きわめてかたくなな姿勢によって、一票差の総理であるにもかかわらず、過半数に近い野党の意見を聞こうとしない。私は、本当にこの減税をやろうとするなれば、これはもう少し弾力的な姿勢で対応されてもよろしいのじゃなかろうか、こう思うのでありますが、今日段階では、いまなお半ばすれ違いの現状にありますことを、私はきわめて残念に思っております。  そこで、少し重ねてお尋ねするわけでありますが、減税政策の今日的意義といいましょうか、国民経済の立場からする減税政策の位置づけというものについて、いままでの議論を含めて総理はどのように考えられているか、お尋ねいたしたい。
  52. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この減税論議は、景気政策として減税はどうかということから出発したようでございます。(「不公平是正だ」と呼ぶ者あり)その間、税制の不公平是正とか、そういう問題も絡まってきてはおりますけれども、大きな議論としての、そもそもの出発点は景気論争であった、こういうふうに思います。
  53. 藤田高敏

    藤田(高)委員 景気論争にすりかえたのは総理であり、政府なんですね。私は今日、この減税問題がここまで大きくなった理由は四つあると思うのです、あるいは五つに分かれるかもわかりませんが。  その一つは、この国会で、まだ、そこまで深い議論はなされておりませんが、私はやはり減税の本質というものは、インフレ、物価高からくる国民生活水準の低下をいかにして防止するか、いわゆる目減りの問題ですね。この所得の目減り問題をどうするかという点が、これはもう基本問題として、あるのじゃないか。この点をネグってしまって景気問題に、十中八、九、減税問題をすりかえるということは、いささか問題じゃないか。  二つ目は、なるほど、その減税を、いま言った目減りをやるという、所得水準を保障するという観点から減税をやることは、いわゆる一石二鳥の形で景気刺激策になるという観点があるだろう。  三つ目の観点は、いわゆる、ことしの減税政策として特に国際経済の視点からの緊急的な条件があるだろう。  四つ目の条件は、先ほど不規則発言にも出ておりましたが、私はやはり今日、社会的不公平、税の不公正の是正、この国民的な政治的な要求、こういう観点。  これは、どこを一番大きく取り上げていくかという点については、それぞれ、その人によって若干のニュアンスの違いがあるかもわからぬけれども、私はこういう四点から、ことしの減税問題、減税政策というものを正しく位置づけないと、総理がおっしゃっておるように景気対策だけに減税問題をすりかえて、そうして公共事業の方がより景気の波及効果が大きいのだ、乗数効果が大きいのだということでは済まされないのじゃないか、こう思うわけでありますが、その点に対しての考え方はどうでしょう。これはひとつ所管大臣の大蔵大臣
  54. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま総理が御答弁になられました大綱、方針といたしましては、そのとおりでございますけれども、私は全く、そのとおりだと思っております。ただ問題は、一般理論的と申しますか、一般的に申しますと減税の目的というものはたくさんあろうと思います。減税ということは、これは国民にとりましては負担を軽減するということでございまするから、どこから見ましても、これは歓迎すべきことであり、かつまた、われわれといたしましても何としても考えていかなければならぬ問題であるということは、もう御案内のとおりでございます。  そこで、これを実現していく目的には、いま、たくさんおっしゃいましたが、そういったようなこともございます。ただ問題は、そういったようなことを実現するために減税をしていくに際しましては、現下のこの財政なり経済なりの実情というものも、はっきりと把握いたしまして、そして、その減税の額だとか、あるいは、その減税の方法だとか、そういったようなものを、これを特定していかなければならない、かように私は考えておりますが、現在の財政、経済の情勢というものを、そこで考えてみますと藤田さん御承知のとおり、数年前の高度成長でもって自然増収が非常にどんどんふえていったときと、いまとは全くがらっと違っておりまして、あの高度成長時代にやったような減税ということは、これはとうてい私は今日、これを望むべくしてなかなか困難であるということを考えます。  そういった事態におきまして行う減税は、いろいろとありますが、いま総理がおっしゃられました今日、日本の国で一番大事な問題は何かと申しますと、やはり、これは景気を浮揚してまいりまして、そして安定成長の経済に路線をつないでいくということが一番大事だ、かように考えます。そこで、そういったような目標に従いまして、御審議を願う税制改正案をつくったわけでございますが、今日そういったようなことから考えてみまして、日本の国の所得税負担というものは、各国の負担に比べまして、それほど重いものではない。比較的、相対的には相当軽いものである。そこでまた、日本の国は御案内のとおり大変いま赤字公債による財政を続けておりますが、これはどうしても近い将来におきまして解消をしてまいらなければならないというようなときに、大幅な減税を今日やるというようなことになりますと、この健全財政をやがてつくっていくというようなことに対しまして二重の困難性に遭遇するというようなことも考えられまして、そうして今日、御審議を願うといったような中小所得者に対して、できるだけ、ひとつ負担の軽減を図ろうというような税制案を作成いたしたというような次第でございますので、そこのところをよく御了承願いたいと思います。
  55. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きょうは私は、いわゆる景気浮揚効果の問題は、これはいままで、もうずいぶんやりましたから、余りここは深入りしようと思いません。しかし問題は、これには今日、両論ありますね。問題は、景気を刺激するために公共事業を中心にしてやるのだと言いますが、この公共事業をやる時期あるいは方法、そういったものがもし誤ると、これはインフレの要因にもなりかねない。去年の上半期の実績は、そのことを一番示しておりますね。ですから私は、公共事業万能主義的な物の考え方は、いささか今日のスタグフレーションの中のインフレを抑えていくという観点を軽視し過ぎておるのじゃないかという問題点があるわけです。その点で私は、減税政策を中心とする景気浮揚策をとることの方が、いわゆるインフレなき景気の刺激、こういうことになって、むしろ、そのことの方が、いま大蔵大臣がはしなくも指摘した今日のわが国の経済状態、国民経済に即応するあり方ではないか、こう思うわけです。その点、私ひとつ指摘をし、その見解を後で聞かしてもらいたい。  そこでまず私、時間の関係で具体的な質問に移りますが、先ほど私が四つの観点にしぼって減税政策の今日的意義というものについて指摘をしましたが、そのうちの第一に、実質所得の目減りをどうするのか、この観点について今度の税制改正では、いわゆる所得税で三千五百三十億の減税しかやらない。なるほど、いまの財政事情、国債発行をやっておる状況下の中で、これ以上はできないと言いますが、いわゆる勤労者の立場あるいは今日の税の社会的不公正を是正しようという国民の強い要求から見まするなれば、私は限度の問題としても一兆円というものは適切ではないか。それはたとえば大蔵大臣、去年、減税はなかった、物価は九・二%から三%上がったですね。この物価上昇に伴う所得の目減りは全体として、どれくらいあると思いますか。これは私は時間があれば実は総理府にも、私の手元にもありますが、二週間ほど前に発表した総理府の家計調査報告も聞きたいのですけれども、少なくとも実質的には所得が大幅に去年は下がっておるわけです。その目減りの分は今度の減税の中には全然入ってないでしょう。今度の減税の三千五百三十億というのは、いわゆる物価が七・七%上がったということを前提にして、そうして一定の調整をやろうという性格だろうと思うのです。そういう点からいきますと、去年の減税なし、そうして物価上昇、目減り対策はどうしてくれるのか。この点の要素は今度の減税対策の中には入ってないでしょう。その点はどうでしょうか。
  56. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えいたします。  名目的な所得の上昇したということに対しまして実質的な税をかけるということは、これはできるだけ調整をしていかなければならないということは考えております。  そこで、その必要が一番ある階層はどこかと申しますと、やはり課税最低限の中小所得階級及びその周辺の方々がこれを一番必要とするものであろうと思いまして、そういったようなところに対しましては、これまた御案内のとおり、できるだけの配慮をいたしまして、そして現在、標準家族におきまして百八十二万円という課税最低限をこれを一〇・一%引き上げまして、そうして二百一万円というところへこれを持っていったということでございまして、そういったような関係から申しますと、この階級の方々に対しまして、名目所得が上がったからということで新たに課税をせられるというようなことは避けておるような次第でございまして、なお、その周辺の方々に対しましては、これに対する減税が波及いたしますということで、実質所得が、このあたりにおいて税金によって、これを侵食せられるということはないように気をつけてまいっております。  ところが、そういったようなことで考えてまいりますと、常に減税をする、ところが名目所得が上がってくるというようなことを、これを全部カバーするということは、税によってやっていくということはなかなか困難なことであって、藤田さんには釈迦に説法でございますけれども、所得税というものは所得の多寡、つまり、これによりまして所得税は算定されるということになっておりますので、そこで、ずっとこれを減税することによって、もう全部調整していこうということは、これはなかなか無理なことだということも御理解願えると思います。
  57. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はそういう極論を言っておるのじゃないのです。そういう感覚で私の質問を受けておるとすれば、これはもう全く見当違い。  去年の物価上昇、そして減税がなかった、その目減りはどうかということになりますと、いま大蔵大臣がおっしゃったような観点からいけば、これは平均で一人当たり約二十七万円くらい実質的には所得減になっておる。給与所得者、仮に三千万以上だと思いますが、概算計算しても約九兆円近くの目減りになるんですよ、全体としては。そんなものを減税だけでカバーしろなんという極論は、私は幾ら素人でも言いませんよ。しかし問題は、いま、われわれが社会党なり野党が要求しておる一兆円減税というのは、いま私は去年の例を引いて言えば、その十分の一――いま所得税のいわゆる最低の税率は一〇%ですね。その最低の税率の一〇%程度のものを掛けても約一兆円になるじゃありませんか。去年は全然なかったんですよ。去年の目減りがかれこれ九兆円ある。そうすると、約一割としても九千億、約一兆円じゃないか。これは最低の条件としてどうでしょうかということを、私はいま政府に迫っておるわけですよ。私どものこの主張の合理性というものは政治的にはどうですか、お認めになられるでしょう。この程度のことは、いま言ったように私は一〇〇%やれと言っておるのじゃない、一割の問題を提起しておるのですよ。どうでしょうか。
  58. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、いまの経済、財政状態から考えてみまして、私は、その一兆円の減税ということにつきましては再々、総理が御答弁になっておりますけれども、これは適当ではない、かように考えます。
  59. 藤田高敏

    藤田(高)委員 問題は、現下の財政事情から考えて困難だと、こう言っておりますが、私どものその主張の合理性、その妥当性というものは認めることはできるでしょうか、どうでしょう。問題はやはり、そういうところから発展していかなければ……。
  60. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今日の事態におきましては、実際財政当局といたしましては、それを承知いたしましたと言うわけにはまいりません。
  61. 藤田高敏

    藤田(高)委員 現実的にどのような妥当性があっても――その妥当性だったら妥当性というものをまず認めて、一〇〇%の妥当性を言っておるのじゃない、そのうちのせめて一割の妥当性をお認めになりますかと、それは認めることにやぶさかではありません、しかし果たして、それで財源があるか、現実的に財源があるだろうかと、政府の方はいまのところない、こう言っておる。しかし、われわれとしては、こうすれば財源があるじゃないか。そこで、やはり議会政治というものは、いい意味における妥協、総理の言う協調、私は議会政治というのは正しい意味における妥協だと思うのですよ。政策的にも、できるだけ可能性のある共通点をどこに見出すかということだと思う。いまの大蔵大臣のように、オール・オア・ナッシングじゃないけれども、私が指摘しておるような観点までも否定するようなことでは、これは現実的な議会の正しいかみ合った議論にならないと思うのです。そういう点において私の主張をお認めになるかどうか、重ねてお尋ねする。  それと、いま一つは、ことしの減税は減税、減税と言っておるけれども、これはもうすべての専門家や新聞その他でも報道しておるように、ベアが五%以上になりますと、これは全部、増税になるんですね、増税になる。大蔵省のモデル試算というのは賃上げがなかったら、所得が全然ふえなかったら、ゼロというところに置いておるのですよ。私はこれはきわめて重大な問題だと思うね。ですから、これだけ物価が上がるのでしょう。政府の策定でも七・七%は上がるという前提でしょう。国鉄の運賃も一九%上がる。食管会計のあれも、八・八%ぐらい今度は繰り入れをやらないというのだから、恐らくこれも消費者米価と生産者米価のスライド制をやるのじゃないかと思う。そういうものも上がる。大学の授業料も上がる。こういう要素を加味していきますと、政府の七・七というのは、また去年ぐらい以上のものが、二けたの物価上昇が起こり得るのじゃないか。そういう条件を考えると、全然ベアがないということを前提にした、この物価調整減税というものは調整減税にさえ値しないじゃないか。減税という名が調整減税というものにさえ該当しないじゃないか。むしろこれは増税だ。この実態を大蔵大臣はお認めになるかどうか。私はこれは数字の上でいろいろ試算したものは持っておりますが、これはひとつ、その点を明確にしてもらいたいと思う。
  62. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいま物価調整減税というお話がございますが、むろん今度の税制改正は物価調整にも役割りは全然、演じていないということではございませんけれども、これは物価調整減税ということもさることながら、私は中小所得者に対して、いろいろな観点から、いま、このままの負担ではよろしくない、こういうふうに考えまして、非常に苦しい財政事情から、これらの方々に対する負担を軽減する、こういう意味において考えられたのが今度の、いわゆる物価調整減税というふうにおっしゃっておりますが、その減税であろうと思います。
  63. 藤田高敏

    藤田(高)委員 さっきの三海里じゃないけれども、非常に問題の焦点がかみ合わないですね。言葉のなにで、すりかえをしようとしておる。やはり減税というのは具体的な数字の上にあらわれてくる。サラリーマンで言えば給料袋に数字であらわれてくるのです。そうでしょう。それだけに私は、抽象論議よりも具体的なもので、せっかく三千五百三十億といりものは政府もやりましたよ、財政事情困難の中でやったけれども、結果的にはこういうふうに増税になるのです、国民の皆さん、国債発行するような時期だから勘弁してくれよ、という問題の正しい事実認識をやろうとする姿勢がないのですね。物価調整減税をやったんだ、減税をやったんだと。一般の国民の受けとめ方からいけば、給料袋をもらったらこれは実入りがいいだろう、去年よりもよくなるだろうと思っておると、今度の減税案ではベアが五%上がって所得二百三十万円のところで一年間にわずか三百二十円、月二十六円です。月二十六円の減税があるだけであって、あとは年収二百三十万、三百万、四百万、五百万というどこをとってもベアが八%以上上がった場合には全部増税になるのですね。この事実はお認めになるでしょう、どうです。
  64. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほども申し上げましたが、所得税というものは所得が課税標準でしょう。それで所得が上がるということになりますれば、その人について私は今度減税すれば、その人がベアになってそして所得が上がった場合、もし減税をしなかった場合と比べてみましたら、藤田さんの言われるようにこれは増税になるということではないと思いますが、いかがでございますか。
  65. 藤田高敏

    藤田(高)委員 三千五百三十億の今度の政府の言うところの物価調整減税をやらなかったら、増税になる部分がもっと多くなるということであって、この政府の案でいってもとにかく増税になりますよというこの事実は認めなければいかぬでしょう。そういうことを言っておるわけですよ。それはもう事実そうですよ。いまの答弁から言ってもそういうことなんですよ。私はその点からいきますと、今度物価調整減税と言っておるけれどもこれは減税にはなっておりませんという点を指摘しておきましょう。もうあと三十分しかありませんから、あとの問題もありますので、そういう政府の言うものは決して減税ではないということを指摘をして私は次の質問に移ります。  そこで私は先ほど冒頭挙げた四つの観点のうち国際的な観点からいけば、これはもうすでに前議員が指摘したように世界の景気が非常に沈滞しておる。これを上げるためにはアメリカなり日本なり西ドイツが牽引車的な役割りを果たさなければいかぬ。特に日本の場合は少し輸入をふやして国内需要を喚起してでも世界のそういう要望にこたえていかなければいかぬという現実的な条件が国際的にはあると思うのですね。私はそういう点からいきますと、やはり減税政策によっていまの一石二鳥的な景気浮揚策のてこ入れにもしようし、またそのことの方が効果があるのじゃないかということを主張をしてきたわけでありますが、この問題自身で議論をしますと時間がなくなりますから、そういう立場に国際的には置かれておるという状況の中で減税政策というものがきわめて有効な良策ではないかということを申し上げておきたいと思います。  そこで、総理にこれはお尋ねしたいのですが、総理は五月になるか、近く七カ国首脳会議にも出席することが報道されている。あるいはそれよりも前に訪米をしてカーター大統領にも会見をする、こういう政治日程が組まれておると思うのですが、日米関係においては貿易の不均衡がこれだけ問題になっておる。世界の経済からいけば、国際経済からいけば先ほど指摘したような条件がある。こういうときに国内議論としてはいまわれわれのやりとりで済むかもわかりませんが、どうでしょうか、アメリカに行ってカーター大統領なり、七カ国首脳会議に行ったときに、世界各国は、日本は輸入をふやして国内需要を喚起してひとつ景気を刺激するような政策をとってもらいたい、というのが諸外国の立場じゃないかと私は思う。そういうときにこういう大統領との会談なり首脳会議において、俗悪と言ったら失礼かもわからぬが、福田景気刺激策的なものが国際的に実現できる、了解してもらえる自信がありますか、どうですか。
  66. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、国際社会ではわが国の経済運営は高く評価をされておる、こういうふうな認識でございます。強いて言いますれば、輸出がある特定の国あるいはその一地域に集中的に出ていく、こういうような点について方々の国から苦情がありますけれども、わが国の経済運営の基本につきましてはこれはいささかの批判というものはないと私は思うのです。むしろ高く評価されるという立場にあるように思っております。
  67. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この国際的な視点からするわが国の減税政策についても、これまた私どもの主張の合理性というものが十分あるだろうと思うわけですね。この点もひとつなお議論をしたいところでありますが、時間的な関係で私は次に進みたいと思います。  最後の観点は、私冒頭に指摘をしたいわゆる税の不公平の是正、これは今日の社会的不公正を是正する一つの柱になっておると私は思うのです。この点についてはすでに一定の議論がなされたところでありますが、問題はどういうところを是正するのだということになれば、法人税の中における引当金あるいは租税特別措置の中に盛られておるさまざまな準備金あるいは利子配当といったような資産優遇税制を、少なくとも勤労者の感覚で見て、なるほどその程度だったらやむを得ないだろうというぐらいなところまで税の公平を期するということは今日国民の一致した意見だろうと私は思うのです。そういう立場から検討いたします場合に、一兆円減税の妥当性、その財源をどこから捻出するかということにも関連をするわけでありますが、先ほど事務局を通して総理なり大蔵大臣の手元に私の一つの試算、試案を出しておきました。これは細かいことは一々説明することは時間の関係で省略しますが、すでに石橋書記長なり一昨日の武藤委員からも指摘をいたしましたが、たとえば法人税の貸し倒れ引当金、これは現在どれぐらいあるかといいますと、いわゆる私どもは画一的に中小企業なんかを含めというのではないのです、非常に特徴的なところを申し上げますが、貸し倒れ引当金は現在期末の引当金総額が二兆七千二百七十八億ある。そのうちで資本金十億以上ところが一兆六千七百四十四億ある。これは全体の約六割を占めております。こうい多額の引当金で、今度政府も引当率を千分の八を千分の五に下げようとしておる。ところが、その引き下げ方が半期ごとに〇・五ずつしか下げないのです。今日の財政事情をそこまで強調なさるのであれば、これだけ膨大な引当金があるのですから、どうして一気に千分の五ぐらい、政府がここ二年半なり三年がかりでなし崩し的にやるものを政府原案ぐらいまで引き下げることができないのか。私はその観点からいきますと、まず一兆六千七百四十四億円の約二分の一を取り崩して、そうして法人税の四〇%を掛ければ約三千三百億の財源が出るではありませんか。この方向は政府もここ何年来ちょこちょこと、もう非常になし崩し的ですけれども、われわれの考え方をとりつつあるわけです。なかんずく金融保険関係のなにについては、この間のエコノミストで、かつて主税局長をやった泉さんとか、国鉄総裁をやっておる高木さんとか、あるいは吉国さんとか、こういう人がこぞって金融保険会社の引当金ぐらいわからないものはない、こう言っておるのですね。そういうなにから言っても、国民的な要求から言っても、この際、いわゆる半分取り崩して、その四〇%の税金を取ることが無理であろうか。これは国民の合意を得られると私は思うのですね。あるいは、どうでしょう、同じく退職給与引当金についても、同じようにかれこれ十億以上の退職積立金というのが二兆八千三百億からあるわけですね。この間の一番新しい大蔵省に出されておる有価証券等によりますと、これは一つの例ですが、三菱銀行が五十一年の三月期決算では、驚くなかれ退職給与引当金は期首の残高が二百七十億、そして当期に増加した分が九十八億、そして現実に退職給与引当金として目的どおり使用したものがわずかその一割の九億七千万。実際に法律で指定されておるような目的に合致して使われておるものはわずか一割。しかも期末の残高は期首の残高よりもさらにふえまして、三百六十億の残があるのですね。三菱銀行だけでですよ。これは一般的に退職引当金を崩せと言ったら、労働者は、わしらの退職金に準備しておるものを崩すのかという感覚が出るかもわからぬが、そうではない。これはそういうものに実際的には使われてない。実際使われておるものは、過去の実績から言ったら千分の三ぐらいなんです。千分の三ぐらいしか充当されてないのですね。ですから、これはもう明らかに内部留保になっておる。いわば税金隠しになっておるわけですよ。だから、東京都の新財源構想研究会のように、いわゆる四十九年のあの現状から言っても二兆六千億からの財源がある、わが国に財政危機があるなんというのは、これはおかしい、取るべきところから適切に税金を取らないからこうなんだということを指摘しておるのですね。そういう観点から、私は、とりあえずこの退職引当金と貸し倒れ引当金については現状に即した立場からこういう試算をやりますと、両方でかれこれ九千億近くの財源が出てくるわけです。これは無理をしないで出てくる。こういう具体的な、真摯な提案に対しては、いわゆる謙虚に対応する、そういう立場から答弁をひとつ求めたい。
  68. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えいたします。真剣に考えております。  引当金につきましては先般もお答え申し上げましたが、これは租税特別措置に決めておる政策措置などとは違いまして、会社会計準則に決められたことであり、かつまた商法もこれを認めておるというようなものでございまして、これを頭から否定するということはできないことでございまして……(藤田(高)委員「頭から否定してないでしょう」と呼ぶ)お答え申します。――お答え申します。  それに対して繰入率をどうするかというお話でございますが、それは絶えず現在の状況に即しまして考えていかなければならないことであるということはよく存じ上げておりますけれども いずれも実際の貸し倒れが起こって、それにこれがどう寄与しておるか、あるいは実際の変動に対してどう寄与しておるかということを考えてみますと、いろいろ場合によって違うことがある。たとえば貸し倒れ引当金につきましては金融機関の場合とその他のものの場合とのいろいろな乖離が起こっておりますので、そういったようなことも考えまして、実際に即応するような手だてを今日までやってまいったものでございまして、画一的にこの率を幾らにしてしまうということにつきましては、これは相当の慎重なる態度をもって実態を把握しながらやっていかなければならない、かように考えております。
  69. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の提案は、きわめて現実可能なことを提案しておるのであって、先ほどから言っておりますようにいわゆるオール・オア・ナッシング的なことを言っておるのじゃないんです。  そこまで坊大蔵大臣おっしゃるのであれば、私も大蔵委員を何年かやらしてもらった、大臣とも籍を一緒に置いてきましたが、どうでしょうか。私の記憶に間違いなかったら、たしか四十六年の七月ごろだったと思いますが、預金保険制度というものができた。この預金保険制度をつくるときの主張は、貸し倒れ引当金というようなものは、これは銀行で言えばいわば無利息の原資、無利息の金で資金運用をやっておることになっておるから、この現状を直すためには、いま言った繰り入れ限度額を下げるというだけじゃなくて制度を変えましょうということで、預金保険制度ができた。それから五年もたちますけれども依然として存続しておるのはどういうことなんですか。あなたがおっしゃることからいくのであれば、なぜ預金保険制度にこれを切りかえないのでしょうかね。どうでしょうか、一方ではなるほど顕微鏡でも持ってこなければわからぬほど少しずつ下げていきよる。ところが、片一方ではそれにかわるべき新しい制度というものをつくりながらそちらへ移行しようとしないじゃないですか。どうですかその点。
  70. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  いま藤田さんは、しきりに大企業とかあるいは大金融とかいうようなものについての引当金というようなものは繰入率を縮小していけ、こういうお話でございますけれども、私は、いま先ほど最初に申し上げましたとおり、いまの減税というものは、現在の諸般の環境、現在の財政事情といったようなものも慎重に考慮しつつこれを実現していかなければならないということを申し上げたのですが、そこで、非常に景気の浮揚をしていかなければならないということが常に頭にある。そうすると、そういったような――私は何も大企業の味方をするものでも何でもありませんけれども、そういったようなところをやはり考えていきませんと、いまの一番の大きな目的である景気を浮揚していくということについて大きな影響があるというようなことだと、これはよほど考えなければならないということが一つですよ。  それから預金保険といったようなものは、これは倒産をしたときどうするかという措置を考えたものでありまして、いまやっておりまする引当金といったように法人所得についてこれを計算するのに適正なる計算をしていくためにつくられておるものとはいささかこれは性質が違うのじゃなかろうか、かように考えます。
  71. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この制度をつくるときの委員会の議論は、やはり貸し倒れ引当金のようなものは別に外へ積んでいくことの方がより適切ではないか、中へ積んで引当金として残しておけば、これは内部留保になるじゃないか、そうしてこれはいわゆる税金隠しになるじゃないか、税の体系から言ってもきわめて不合理じゃないかということで保険制度ができた。保険制度ができればそちらへ移行しましょうということであったと思うのですよ。それはどういう知恵づけをしたか知りませんけれども、そういう性格のものさえ否定して、やはりある意味では二重に大企業のこういう引当金等を存続さしていくということは、私はいささかそこに、国民の税の不公正を是正しようということに対して真剣に耳を傾けてない。退職給与引当金でも、どうですか、一番最近の新しいなにからいっても、一兆三千億ある。実際に使用されておるものは、大企業五十社を拾い上げますと、わずか五・七%しか目的に使用されてない。あとは目的外に残されておるわけですからね、使われておるわけですから。こういう不合理は私は積極的に改善すべきじゃないか。  そこで、私はここへいま試算として出したものをぜひやってもらいたいということを強く主張するものですが、現実的にどうですか、現在退職金は二分の一まで積み立てることができるというものを、これを四分の一ぐらいに下げたらどうですか。ある企業によっては、自己否認されることを認めて、従業員が一遍に一〇〇%全部やめてもいいだけの退職金を積んでおるところがある。私はこんなことを許して、それが税金隠しになっておるということを国民が許しますか。そんなことで、社会的不公正の是正とか税の不公正を是正するなんていうことを政府は口にすることができますか。私はこの点をお聞きしたい。  それと時間の関係でもう一つ、せっかく私は試算をしましたから申し上げておきますが、これまたすでに指摘のあった所得税の利子配当であります。  今度政府は、この源泉徴収率を一五から二〇%にする。そうして源泉分離課税を選択した場合は三〇から三五%に引き上げる。われわれの強い要求で、これはもう非常にわかりやすいですね。勤労者の場合は、去年までは百八十三万円に対して、利子配当の場合は四百四万円、約倍ですね。今度は税制改正で四人家族で二百一万円になった。標準家族で二百一万円になった。ところが、この利子配当課税の課税最低限は今度は四百四十万、倍以上になりましたね。さらにその間が開く。これは何としても税の不公平ですね。そういう点からいくと、政府もこれだけの改正をやるんだが、これはどういうことでしょうか、来年の一月の一日から実施すると、こう言うのであります。政府がここまで財源難で国債発行して、われわれが減税することを、これだけ財源があるじゃないかと言っても、財政事情が思うようになりません、こう言っておきながら、この利子配当の問題は実施期日を来年の一月一日にするという。ぜひこれはことしの四月一日に実施したらどうですか。ことしの四月一日から実施するだけで千三百億の財源が浮くのですよ。その程度のことはできぬとは言えないでしょう。かつて土地贈与税の法律をつくるときに、同じような手口でやり変えた。国会で問題になった。四月一日から実施したことあったじゃないですか。私は、そういう現実に言うこととやることが一致しなければ、坊大蔵大臣、これはぼやっとしてくるんじゃないでしょうか。どうでしょう。これは私は本当に真剣にそう思いますよ。実施期日を四月一日ぐらいにすることは、政府がそこまで財政難を口実にするのであれば、来年の一月からできることをなぜこの四月一日からできないのか、その点をお尋ねする。それだけでも千三百億から財源が上がるのでしょう。  それともう一つこの問題で私は腑に落ちないのは、わずか五%引き上げることによって、この利子配当課税の制度を五十五年まで固定化しようとしておるのですね。これはもう政府の税制調査会自身も、これはむしろ総合課税に切りかえるべきである。総合課税に切りかえたら約三倍ぐらい上がりますよ。これで言えば、約四千億ぐらいふえるでしょうね、私の試算からいけば。税制調査会も、もう回を重ねるたびに総合税制に切りかえるべきだと主張しておる問題を、なぜ、財政難を理由にする政府がその実施期日を来年の一月にずらすのか。そうして、その制度を五十五年まで固定化するのか。この点について明確な、ひとつ国民が納得する答弁を願いたい。これは最後に大蔵大臣総理大臣見解を私は聞かしてもらいたいと思うのですよ。そうしないと、何とも国民は納得いきません。われわれ一兆円減税を主張する者も、政府答弁を理解することができませんよ。私は、やはり今日過半数まで占めておる国民のこの代表の意思をもっと素直に、謙虚に現実の中に生かしていく。たとえば、私が一番最初に指摘しておる利子配当課税の問題なんか、やろうと思ったらできるじゃありませんか。どうでしょう。
  72. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申し上げます。  退職引当金についてまず申し上げます。  退職引当金は、引当金として全くこれは典型的なものでありまして、実際問題として、会社の繰り入れば労働協約等に基づいて行われております。税法上の繰入率や累積限度額は、これらの実際の退職給与規程を勘案しつつマクロ的に見た退職までの勤労予定年数やあるいは一定の利子率を用いて計算いたしておりますので、簡単にこれを半減するということはなかなか困難でございます。  それから利子配当課税について申し上げますが、藤田さん、利子配当課税をできるだけ早く実施しろ、こういう御意見でございますが、利子配当の課税制度の変更は銀行等の事務処理に相当広範な影響を及ぼすものである。だから、相当の準備期間というものをやはり置かなければならない。今回の改正は、現行制度の適用期限の途中でございましょう、途中でございますので、預金者にとってもある程度の猶予期間を考慮する必要がある、こういうことでございます。所得税は本来その年の一月一日から十二月までの年分の所得に課税されるものであることは御承知のとおりでございますが、こういうことを勘案いたしまして、昭和五十三年一月一日以後に支払いを受けるべき利子配当について適用することといたしたものでございます。
  73. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 個々の点につきましてはいま大蔵大臣からお答え申し上げたとおりでありますが、要するに、藤田さんは一兆円所得税減税だ、その財源は法人税の方にあるじゃないか、つまり、法人課税を強化して、そうして個人所得減税に回せ、こういう議論でありますが、これはいろいろのお立場がある。四つのお立場をお示しになりましたが、その中で、皆さんから非常に強く主張されました景気的側面、こういうことから言いますと、これは相当問題があると思うのです。つまり、要するに引当金だ、準備金だ、これを取り崩すと言うけれども、法人税の増徴ですからね、これは。要するに法人税の増徴ですよ。その法人税をいまこの時点で増徴する、これは法人消費がそれだけ減ってくるわけですから、つまり法人の投資も減るでしょう、あるいは給与にも影響するかもしらぬ、その他の法人の社会的消費、そういうものも減ってくる。そういうことになると、この景気的側面から言いますると、これはプラス・マイナス・ゼロ、そういうふうになってくるんじゃあるまいか、私はそういうふうに思うのです。その他負担の公正だ何だ、いろいろお話しでありましたけれども、そういう面につきましては、これは見解がいろいろ人によって違ってしかるべきだと私は思うのです。政府だって、これは神様じゃありませんから、これは皆さんの御意見を聞いていろいろ考えていいと思いまするけれども、考え方の基本として、法人税を増徴して所得税減税に回せ、こういう議論の組み立て方、これは私はきわめて問題のある点である、こういうふうに考えます。
  74. 藤田高敏

    藤田(高)委員 最後に一つだけ。  私は、一兆円減税の妥当性というものを四つの観点から指摘したつもりです。現実的に可能な財源はたとえばこういうところにあるじゃないかと。総理はこの間から盛んにいま答弁されたことを主張いたしておりますが、私どもはそういう立場はとりません。しかも、非常に過大な引当金あるいは準備金、きょうは、時間がなくて申し上げませんけれども、価格変動準備金だとかあるいは公害防止の準備金――公害防止の準備金なんか、かれこれ二千億ぐらい積んでおりますね。これはそれこそ、エコノミストで、かつての三主税局長が対談をしておるのを見ますると、これは失敗した、公害防止準備金というものをつくるべきじゃなかったとまで極言をしておりますね。こういうふうになにすると、そのあたりから助言をするような重要な立場におった人が現職を去って二年、三年たった段階で、そういうことをみんな極論をしておるのですよ。こういう立場から言っても、総理、野党のわれわれがいま主張しておることをむげに否定することはできないだろうと私は思うのです。これが一つ。  それと、坊大蔵大臣、あとで集中審議なり何かのところでまた一遍お目にかかりたいと思っておりますが、こういう本質論をやるのに技術論ですりかえるということは、国会政治家論議としてはきわめてひきょうな態度だと私は思いますよ。もっと政治家は、本当の政治論をやらなければいかぬのじゃないでしょうか。私はその意味において、最後の利子配当でも申し上げたように、それでは技術的な論じゃないけれども、来年の一月一日が若干むずかしいとしても、それではなぜこれを五十五年まで固定化するようなことをやるのだろうかというようなことについては、これはどう考えても理解が私はできない。  そこで最後に、一、二分のことはそうがたがた言わぬでいいでしょう。総理お尋ねしたいのですが、これからの議論の発展もあるでしょうが、総理はどんなことがあってもこれ以上の減税はやらないと言明されるのか。それとも野党の考え方に沿ったこれ以上の減税はできないとしても、政府独自の立場で、所得税で言えば三千五百三十億の上に上積みをする減税対策というものを考慮される余地が、今後の議会論争を通じてそういう余地があるかどうか。政府立場で、メンツにこだわらないでやる用意があるかどうか。このことを最後にお尋ねして、私の質問を終わります。
  75. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はそうかたくなな男じゃないのですよ。協調と連帯とまで言っておるわけでありまして、そういうことで国会の御論議、これなんかには終始耳を傾けてお聞きをしておるわけでありますが、いま私どもが提案している税制、これも党首会談で皆さんから一兆円減税だ、こういうお話を承りまして、御意見もそういう中で尊重しなければならぬな、こういうふうに考えまして、実は主税局、大蔵省はもう少し小さい減税案を持ってきたのです。それを可能な限り大きくするというので三千五百億減税といたした次第でございまして、そういういきさつのありましたことも踏まえましてひとつ御審議願いたい、かように考えます。
  76. 坪川信三

    坪川委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  77. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂井弘一君。
  78. 坂井弘一

    ○坂井委員 質問がかなり多岐にわたっておりますので、制約された時間でございますし、御答弁をひとつ簡明にお願いいたしたいと思います。  福田総理が、このロッキード事件の徹底解明は必ず実行いたします、その結果については国会報告をいたしますと約束されたわけでございますが、一体このロッキード事件の徹底解明、この徹底解明はだれがいかなる手段、方法によって解明をするというように総理はお考えになっておるのか、そこのところをひとつ明確にしていただきたいのと、同時にその結果についての報告の時期、いつごろをお考えになっていらっしゃるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  79. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ロッキード事件は御承知のように三つのルートがありますが、その中で全日空、丸紅、この二つのルートにつきましては検察の方の調べは全部済んだわけでありまして、目下公判の維持に全力を尽くしておる。この公判を通じまして解明が行われる、こういうふうに考えております。それからもう一つの児玉、小佐野ルートにつきましては、これは両名が病気のためもう捜査に限界が来たというので壁に突き当たったような段階になっておりますが、健康の回復その他新たなる情勢の展開次第捜査を進める、こういうふうにいたしております。  それから、国会に対する報告につきましては、時期につきまして、これは国会内で御論議願って、そしてその意向なんかをくみ入れて決めたい、かように考えております。
  80. 坂井弘一

    ○坂井委員 いま総理お述べになっていらっしゃいますけれども、ロッキード事件の真相解明、徹底解明ということになりますと、何を申しましても児玉、小佐野ルート、この解明なくして全容の解明はあり得ない。そこで、どうやら公判にも移っておるから、その推移を見守ろう、つまり検察任せのようなことでもっての解明というところにひとつ期待をかけていらっしゃるようでございますが、われわれが元来この事件の解明ということで決意もし、いわゆる国会決議にあらわれたあの精神というものは、いわゆる政治、道義的責任の究明である。少なくともこの事件を生んだところの構造的な解明なくして事件の反省とそこから得る教訓、再発防止というものも出てこない。何よりも大事なことは、犯人探しとは別に、政治、道義的責任を究明する中でこうした事件を生むに至った政策決定のプロセス、たとえばあのエアバスが導入決定される、ドル減らし政策の目玉商品としてあらわれる、それに至る経緯、こういうものをやはり明らかにしていく。どこにどういう間違いがあったのか、こういう政策決定が正しかったのか間違いであったのかというようなことを明らかにするということがやはり政策に一貫して責任を持つこれは政府の役目でなければならぬ。同時に、そのことはやはり国会の責務でもあるわけですね。そういう意味から言いますと、私はここでやはり国政調査権に基づくところの国会におけるところの真相解明、徹底究明、これが何よりも大事だろう。総理が言われたところの徹底解明は、どうにもそういう国会におけるところの究明、これに対して非常に消極的な感じがあるんではないか、こう思われるわけでございますが、ずばり言いますけれども、国会国会議員を初めとする証人喚問、これを再開しようとされた場合にはそれは御賛成でしょうね。国会で決めることでございますけれども。
  81. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それは国会で決めることでありまして、国会の決めることにつきましては何らの意見を差しはさむことはいたしません。
  82. 坂井弘一

    ○坂井委員 いま公判が始まっているわけですけれども、いわゆるそうした折に事件の関係者国会に証人として喚問することが裁判官に対する予断、偏見を与える、あるいはまた検察官の公判維持に悪い影響を及ぼす。したがって、いま直ちに国会議員の証人喚問等は、これはある意味では司法権の侵害というようなことにもなりかねないのではないか。したがって賛成はできないというような意向というものが多分にあるのではないか。たとえば法務大臣福田さんのかつての発言等もそういうところを指しておるんではないか、こう思われるのですけれども、いまのような物の考え方に対して私は真っ向から反対でありまして、何ら差し支えないという立場をとるわけでありますけれども、もちろんこれはやみくもに何でもかんでも、たとえばいま被告人であります人を直ちに喚問するというようなことについては、これはいささかのやっぱり配慮をしなければならぬ。しかし、そうではない事件の関係者等を証人として喚問して国政調査権に基づいてこの真相解明を図るということは、何ら公判維持あるいは裁判官の予断、偏見を与えるものではない、私はこういう考えを持ちますけれども、総理はいかがですか。
  83. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 証人喚問はこれは国会で決めることでありまするから、その決めることについて異議は申し上げませんが、しかし政府が希望するところは、公判に何らかの影響を与えるような証人喚問並びに証人の尋問、そういうものにつきましては、その辺を良識を持ってお考え願いたい。これは切に希望申し上げます。
  84. 坂井弘一

    ○坂井委員 まことに何がしかのやはり配慮、あるいはこの運用において工夫をこらすということは私は大事だろうと思うのですね。それは大事だろうと思うのです。ただ基本認識として、ここでやはりはっきりしておかなければならぬことは、今回の事件に対する国政調査権の活用というもののいわゆる目的の正当性あるいはまた目的の公示性。そのことはつまるところは、まさにこの種の事件をこのままにしてうやむやにするならば日本の民主主義の崩壊にもなりかねないという意識があるわけですね、底流に。したがって、そういう正当性なり公示性ということを考えた場合には、判断した場合には、まさに国政調査権は今日きわめてこの活用は重大な意味を持っておりますし、同時にまたやはり時期を逸しないで引き続き調査活動を行うということが大事だろうと思うのですね。ですから、私はそういう認識に立っておりますので、総理、これ以上この問題につきまして議論をいたしましても、基本認識として一致しておれば、あとは国会の問題といたしまして、われわれの方で早急にその時期等決定いたしまして、証人喚問等を実現したい、こう思っております。  そこで、具体的に問題に入っていきたいと思いますが、確かに、言われますように児玉、小佐野ルート、この解明がなかなか難航しておるということでございますが、現状はいかがでしょうか、見通しとしましては。
  85. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおり児玉、小佐野ルートの解明は非常に重要でございます。しかし、御案内のように二人とも病気のために思うような取り調べが十分にできなかったという事実があるわけでありますが、しかし、御指摘のようにこの問題の解明は非常に重大であると思いますので、捜査本部は縮小はいたしましたけれども、まだ解いておらない。しかも、ことしの三月の半ばには、証券取引委員会にロッキード問題に関するロッキード社の調査特別委員会報告を提出するということに相なっておるところは、これは坂井さんも御案内のとおりであります。そこでその報告についてSECがどういうような措置をとるかというようなことについても十分深い関心を持ち、またその他のことについても、新しい事実が出てまいりました場合には、重ねて取り調べるということも考えていかなければならないという意味合いにおいて、坂井さんと同じような考えでこの問題の解明に捜査本部は臨んでおると私は信じておる次第であります。
  86. 坂井弘一

    ○坂井委員 せっかくいま法務大臣答弁でSECの問題が出ましたので、この機会にお尋ねしておきたいと思いますが、確かにロッキード社の社外重役七人によるところの特別調査委員会、これが長い期間におきまして調査活動を続けてまいりまして、このほどようやくにして調査がまとまった。さきにガルフ石油の例がございますけれども、あのときも非常に膨大な調査活動の結果の資料、これが公表された。その中にさきのニクソン大統領あるいはまた韓国の朴大統領等の名前まで出まして、百三十九人という名前がSECの公表によって明らかにされた。こういう経緯があるわけでございますけれども、恐らくそれと同じような形で今回のロッキード事件につきましてSECはロッキード社から得たそういう調査内容、これを公表するのではないか、こう言われているわけでございますが、この際やはり正式にSECに対してこの資料の提供を要請されてはいかがでしょうか。
  87. 福田一

    福田(一)国務大臣 すでに日米間において司法共助に関する取り決めもあることでありますし、私はその内容についてSECがどういうような取り扱いをするかということを見守りまして、そうしてそのときに当たって公表しないというような場合にどう処置するか。公表すればもはやその必要はないわけでありますけれども、公表をしないという場合もあり得ると思うのでありますが、そういうときにこれを求めるということも必要になってくるのではないかと私は考えております。
  88. 坂井弘一

    ○坂井委員 法務大臣、少し整理していただいた方がいいと思うのですよ。SECの場合はこれは何も司法共助には関係ない話だ。つまり、株主保護のために自主的にロッキード社からの報告を求めたということでしょう。従来これはもう公表されるものです。ただ、公表されてからではこれはいかがかと思いますことと、同時に公表といいましても、それは確かにテレビとかいろいろな報道でもってさっとこう出てくるでしょう。そのときの内容は思わぬ人たちがずっと出てきて、内容にも非常に深みがある、その背景までえぐっておるというようなことになりましたら、またぞろ二度目のショックでしょうね。  しかし、同時にまたそこでこのSECに提出をされた正確な全資料、そういうものをわが方として当然SECに要請をいたしまして、提供願いたいということを事前にお願いするのは筋道じゃないでしょうか。本来的に総理も事件の真相の徹底解明、必ずやります。一つの方法はいまのSECの資料をもらうということも一方法じゃないでしょうか。総理、いかがですか。
  89. 福田一

    福田(一)国務大臣 御説のような考え方も私は一つ考えであると思いますから、十分に考慮いたします。
  90. 坂井弘一

    ○坂井委員 考慮とおっしゃる。この問題はまた後での問題もございますから、あわせてお尋ねすることとしたいと思います。  なお、具体的に一つお尋ねしますが、先ほどの児玉、小佐野、この両人の役割りというものは非常に大きいわけですね。そこで捜査当局にちょっと聞きますが、トライスターの売り込みに関しまして小佐野氏が航空三社、いわゆる日航、全日空、東亜国内航空及び運輸省に対しましてコーチャン氏を伴って一緒に紹介をした、こういう事実ありとして私は実はさきのロッキード特別委員会において指摘をいたしました。私の指摘したことが事実間違いなかったか、確認していただきたいわけです。お答えいただけないでしょうか。
  91. 福田一

    福田(一)国務大臣 その件につきましては、政府委員から答弁いたさせます。
  92. 安原美穂

    ○安原政府委員 小佐野賢治の国内航空三社に対する働きかけの問題につきましては、先般一月二十一日に公訴提起いたしました偽証罪の中で、コーチャン氏を連れて小佐野賢治が東亜国内航空の田中社長に紹介したということがあったにかかわらず、国会における証言においてこれを否定したのは偽証であるということが偽証の公訴事実の内容になっておるわけでございまして、この点につきましては近く開かれるであろう公判におきまして、小佐野氏のいわゆる働きかけをめぐっての冒頭陳述が行われるわけでございますので、その関連においてただいまお尋ねのある事柄の存否につきましても触れるであろうと思われますので、この段階においてはその存否について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  93. 坂井弘一

    ○坂井委員 念のために申し上げておきましょう。  東亜国内航空につきましていまお話しのあったとおりであります。これは起訴状の中にありますことです。全日空四十五年十二月の六日、日本航空四十五年の十二月十七日か、もしくは十八日、運輸省、これは航空局、この前に国会議員の紹介あり、四十六年の十月。私はなぜこのことを言うかといいますと、これは児玉、小佐野ルートの解明に非常に重要な意味を持つがゆえにあえて申し上げているわけであります。  安原さんにこれは重ねて聞いてどうかと思いますけれども、日にちまで確認しようとは思いません。しかし、少なくとも私の言っていることはどうでしょうか。これはこのほかの二つの航空会社、それから運輸省、そういうような行為があったかなかったか。現段階でありますので、御回答はいただけないでしょうか。
  94. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいま申し上げましたとおり、小佐野賢治の偽証の中の一つの事実として東亜国内航空社長にコーチャンの紹介という事実を起訴しておるわけでございまするから、その関連におきまして、小佐野賢治の航空業界に対する働きかけに関する冒頭陳述がいずれなされると思いますので、その段階までお答えを申し上げることを重ねて御容赦願いますようお願い申し上げます。
  95. 坂井弘一

    ○坂井委員 どうしても回答を得られません。非常に残念でございますが、やむを得ないでしょう。でありますれば、ここであえていま一つ運輸省に聞いておかなければなりません。お尋ねいたしますが、東亜国内航空が最初にボーイング727によるところのジェット計画を立てておりました。ところが、それが突如としてダグラス9に計画が変更された。これは変更を余儀なくされたと言った方が正確でしょう。この経緯については、運輸省は御存じですか。
  96. 田村元

    ○田村国務大臣 私、ちょっとその点余りつまびらかにしませんので、政府委員からお答えをさしたいと思います。
  97. 山上孝史

    ○山上政府委員 私、直接関係しておりませんでしたので詳しくは存じておりませんが、当時、東亜国内航空は727をリースをいたしまして、それで使用していたと記憶しております。それを本来自己調達で機材を調達したいということで、会社内部におきまして機種選定委員会等をつくって、いろいろ討議した結果、いま先生御指摘のDC9、この導入に決した、そのように大まかに私は承知しております。
  98. 坂井弘一

    ○坂井委員 もう少しその背景を克明にといいますか、ちょっと整理して申し上げましょう。  実はここに三つ文書があるのですよ。この二つは、これは本当はもっと分厚いものなんです。その中の一部です。東亜国内航空のマル秘です。二つ。それからこれは日本航空の社外秘ですね。これは舞い込んできたというのですか迷い込んできたのです、私の方へ。これを見ますと、この経緯が明らかなんです。つまり、一つは四十六年十月五日の東亜国内航空のマル秘ジェット計画書、これはJALとの関係について、JALとの調整について書かれた文書です。それから同じく東亜国内航空の四十八年の一月二十二日のマル秘、これもその後の経緯について書かれたところのマル秘ジェット計画。それから日本航空五十年十月九日。この一連の資料を見ますと、ここであらわれていることはどういうことかといいますと、元来東亜国内航空が次期ジェット計画の使用機材はボーイング727、こう決めておった。で、ボーイング727につきましては、東亜国内航空が持っておった727を日本航空に三機貸してあった、これを返してもらいましょう、新しく日本航空が持っておりますところのボーイング727を八機リタイアしまして、合計十一機で727のジェット計画を持っておった。ところが、小佐野氏が日航に働きかけをしまして、そのうちの三機を大韓航空にリースパーチェスした。これは結果的には売ってしまうのです。売られてしまったために、せっかくの東亜国内航空の当初のボーイング727によるところのジェット計画がこれが崩れてしまった、できなくなった、こういう一連の経緯を示した資料なんです。大韓航空に売られた飛行機というのは、これは製造番号一八八七四、一八八七五、一八八七六と、この三機ということが日本航空の社外秘資料においても明らかに明示されております。で、そういういきさつによって、つまり日本航空の状況の変化により、当社が希望する時期にこれらジェット機材を譲り受けることがきわめて困難となり、かつこれらを日本航空以外から導入する場合には、同型機の製造がすでに中止されているので、スペック、この手当てが非常に困難である、したがって断念せざるを得ない、というのがこれが東亜国内航空の文書なんです。こういういま申しました一連の小佐野氏が介在いたしました工作につきましては、検察当局はとく御承知かと思いますが、いかがでしょうか。
  99. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいま御指摘のようなボーイングの関係につてきまして、御指摘のような事実を検察当局が知っているというような報告には受けておりません。
  100. 坂井弘一

    ○坂井委員 内容に入って時間を費やしても意味がないかと思います。指摘にとどめておきたいと思います。  ただ、この結論がどうなったかと言いますと、結局この小佐野氏の一連の働きというものが、日本航空に対しましてはボーイング社のボーイング747五機、ダグラス社のDC10六機、全日空に対しましては、ロッキードのいわゆるトライスター二十一機、東亜国内航空に対しましては、いま申しましたダグラス社のDC9十九機、こういうふうに航空三社に対しまして米国三社のエアバス売り込みをうまく振り分けをする、こういうような働きがあったようであります。こういう具体的な内容につきましては、さらにロッキード特別委員会もございますことですから、その中で明らかにしていきたいと思います。  ただ、私がなぜこういう問題をあえて申し上げておりますかと言いますと、冒頭申しましたように、この一連の工作というものがロッキード事件の真相解明に、なかんずく児玉ルートの解明にきわめて重要なかかわり合いを持つがゆえにあえて申し上げているわけでございまして、特にこの一連の働きが、いま問題になっておりますボーイング社の日本に対する売り込み工作、これとも深いつながりがあるということであります。  そこで、先ほど法務大臣、このロッキード問題につきましてはSECの公表がなされるということにつきましてああいう御答弁があったわけでございますが、すでにこのボーイングの海外不正工作、とりわけ日本に対する工作の内容に触れまして、SECでは調査が完了いたしております。しかもその一部につきましてはすでに公表されているとおりでございまして、御案内のとおりでございます。そこで、その中にいわゆる秘密代理人十八人、これは日本人も含まれるということをSECも言っておるわけでございますが、これは非常に無視できない、ロッキードとある意味においては根を一つにする重要な、真相解明のためにも問題であります。したがって、ここでこのようなSECがすでに公式にその内容においてきわめて大きな問題ありという公表をしているわけでございますので、犯罪容疑きわめて濃厚であります。  法務大臣に伺いますが、一般に犯罪容疑濃厚という場合には、当然捜査には着手されるのでしょうね。
  101. 福田一

    福田(一)国務大臣 事実が明らかになった段階においてはもちろん捜査に着手することは当然でございます。ただいまのお話の件だけで、調査し得る事実があるとは捜査当局は信じていないようでございますが、念のために政府委員から答弁をいたさせます。
  102. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいま大臣からお答えなされましたように、ボーイングの売り込み工作に関して犯罪の容疑があるという報告を検察当局からは受けていない次第でございます。
  103. 坂井弘一

    ○坂井委員 法務大臣、これ検察当局から説明をと言ったって無理なんですよ。むしろ政治的にあるいはわが方の政府の姿勢の問題として、これは法務大臣御自身あるいはまた総理が御決断されるべき問題だろうと思うのですね。  私があえて申し上げておりますのは、つまりSECにおいてもそういうきわめて容疑濃厚な内容が公表されているんですよね。日本人も含まれているというんです。もう少し詳しく申しますと、この秘密代理人というのはSECの調査でわかっただけでも十八人あるんだ。その人たちはアジア、南米、中東の各国にまたがる外国人、その中には日本人も含まれる。それから三つ目には、ベネズエラの秘密代理人は、国営航空の副社長ホセ・ピグナ氏である。四つ目、秘密代理人に対して百万ドル――大体三億ですね、単位の金が支出されておる。五つ目、ボーイング社は七百万ドル、二百十億の賄賂を使用した。ということになりますと、これはある意味では、規模的に言いましてもロッキードよりもっと大きいということですね。特に日本人が含まれておるということになりますと、前のロッキード事件と同じように、少なくとも外為違反なり所得税法違反の疑いもさらに強く出てくるわけであります。こういうような事態がすでにありながら、どうして日本政府は、福田内閣調査をしようとしないのでしょうか。やるべきじゃないでしょうか。また困るんじゃないでしょうか。
  104. 福田一

    福田(一)国務大臣 私が申し上げておりますことは、だれが、どのような目的を持って、どこで、いつ、何をしたかと、こういうような事実が、これが事実だと思うのであります。そういう意味合いにおいて、いま御指摘のあったことだけではいわゆる犯罪容疑が存在すると認定することが困難であると検察は認めておるのだと思っております。
  105. 坂井弘一

    ○坂井委員 検察は認めておる――検察はそれはすぐに動けぬでしょうよ。法務大臣、このときにこそ指揮権を発動したらいいんじゃないでしょうかね、やりなさいと言って。それは、まさに政府としての真相解明に対する前向きの姿勢として、あなた自身が御決断されてしかるべき問題だろうと私は思いますね。これは何も――総理お聞きくださいね、私はただ新聞情報とかなんとか言っているんじゃないんですよ。私人が言っているんじゃないですよ。たとえば、レィナード発言なんか、いま私人だなんて言いますけれども、あれは私人のときの発言じゃないんですけれども、まあそれはそれとしましても、れっきとしたSECという公的機関なんです。公的機関が公式に言っているんですよ。それでも黙って手をこまねいておるのですか。それではいかにもおかしいじゃありませんか。また海のかなたからばかんとロッキードと同じようにボーイングの問題がさらに具体的にわが方に降りかかったときに、またあわてふためいてというようなことでは余りにもみっともないじゃありませんか。みっともないとかみっともなくないとかの話ではなくて、もっともっと、より本質的、より根本的な問題という意識が大事だと思います。そういうことを私は言っているのでありますが、あえて答弁がないとしますれば、ここで一つ問題提起をしておきます。  わが方でも調査いたしました。その中で、四十七年当時からの、日商岩井を通じて来ているんですね、ボーイング747五機。あえて言いましょう、売り込み工作と言っておきましょう、それに関係いたしました航空担当重役にまつわる疑惑。その際にボーイング747五機を日本航空が購入する際の特殊な値引き、あえて特殊な値引き、がなされております。その特殊な値引きたるや、まさにあのロッキード事件に見られるような、全日空がトライスターを購入する際のあの一連のからくり、あれにまさに軌を一にしたような形でもって特殊値引きがなされておる。その特殊値引きが政治家に献金されておる。あえて言いましょう、裏献金。こういう事実がある。それを立証する一つの証拠として、ここには、日本航空のボーイング747五機購入の際の契約一覧表がございます。ここでは価格調整ということで表示されてございます。  この機会に会計検査院に伺いますが、少なくとも日本航空は政府出資の法人であります。当然会計検査院の検査対象となっています。このことを意識してかしないかは別といたしましても、少なくとも日本航空の業務内容についての検査をされる過程の中で、いま私が指摘いたします特殊値引きということにつきまして、きわめて強い関心をお持ちであろうと思いますが、多くの答弁は要りません、関心を持っていらっしゃるかどうかについてだけ、まず伺っておきたいと思います。
  106. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のように、日本航空に対しましては日ごろから常に関心を持って検査しておりますが、ただいまの五機の値引きの点、それからその他の全体としての取得価格が適当であるかどうかということについては、ベテランの調査官を特に配しまして厳重に検査しておる段階でございます。今後とも引き続きやっていきたいと、このように思っております。
  107. 坂井弘一

    ○坂井委員 会計検査院の徹底的な前向きな検査を期待いたしております。  そこで総理、伺いますが、この問題は、私はロ特で具体的に触れていきたいと思っておりますが、いずれにいたしましても相当いろいろな問題があるようなんですね。やはりこの機会に政府調査をした方がいいんじゃないでしょうか。まあいま法務大臣もお答えありましたが、それは総理、このままほっておいていい問題とは私は思いません。少なくとも何らかの形で何らかの方法を講じて、この種の問題に対しましても政府が解明に対して責任を持つという姿勢はお示しになった方がよろしいんではなかろうか。このままあいまいにしておくべき筋合いの問題ではなかろうと思いますが、いかがでしょうか。
  108. 福田一

    福田(一)国務大臣 ボーイングの問題については、まだ事実が明らかになっておりませんから、この捜査としては何らやっておりませんけれども、実は外務省を通じてその事実を調べておる段階であります。
  109. 坂井弘一

    ○坂井委員 外務省を通じて事実を調べておる段階――すでに米側とは接触をしておるわけですな。まだ回答は何ら得られていないということなんでしょうか。それと、もう一つお答えいただきたいのですが、そうであるならば、この機会にアメリカ政府に対して正式にボーイングの問題に対する資料の提供の要請をされてはいかがでしょうか。
  110. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま照会をしておる段階でありますから、いかなる報告がなされるか等を見た上で措置をいたしたいと存じます。
  111. 坂井弘一

    ○坂井委員 せっかくお答えいただいたんですが、総理どうでしょうか、もうちょっと積極的に、向こうの報告を待ってということですけれども、それはわからぬではありませんが、余りのんびり構えておる問題でもない。もうちょっと強い姿勢で、せめてもSECにおいては相当な資料があるわけですから、それらの提供ということが考慮できないものだろうか。もちろん一方においては日米司法取り決めの問題もございますが、これはいわゆるロッキード社の問題に関しての取り決めですね。一方、ボーイングの問題なのですよ。ですから、これは別途に司法共助協定等の必要があるのかないのか、あるいはまたそういうことがよろしいのかどうなのか、議論は別といたしましても、何かの形でもう少し積極的にこのボーイング問題に対する米側からの協力要請をする意思はございませんか。
  112. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたとおり、照会をいたしておる段階でございますから、その回答を待ってしかるべき措置をとりたいと考えておると、かように申し上げたわけであります。
  113. 坂井弘一

    ○坂井委員 回答というのはいつごろ来るのですか。もう目鼻はついているのですか。恐らく、そういう要請をされたということは、すでにSECの公表もこれあり、問題意識としてはお持ちになったがゆえに米側に対しましてその内容を問い合わせたということだろうと、こう私は理解するわけですけれども、そうであれば、問い合わせて、問い合わせっ放しだと、いつ来るかわからぬけれどもそのうち来るだろうと、この間の例の一連の日韓問題等における、まさにあれも問い合わせでしょう。その種のような消極的な姿勢であったならば、回答もおのずから知れた回答、つまり中身のない回答に終わってしまう、そういう心配をするわけでありますが、いつ来るのですか。
  114. 福田一

    福田(一)国務大臣 お互いにこういう外交関係のある国の間におきまして物事を処理していきます場合には、一応そういう照会をして、そうして、不満足であればまた何か考えるということもあるでありましょう。第一、先ほど、坂井さんはもっと事件の内容を御存じかもしれませんけれども、幾ら幾らの金が動いたはずであるとか動いたとか、どの金がどう動いたかというような細かいことについては、われわれはもちろん承知もいたしておりませんが、そういうような内容等も、どの程度SECが材料を持っておられるのか。また、伝えるところによると、十八人のいわゆる代理人がおるけれどもこれは公表しないことにすると、こういうことを言っておるところから見ますと、この事件についてはSECはもはや公表をする意思を持っておらないのかもしれない。そういうようなことも考え合わせますと、われわれとしては、一応照会をいたしまして、どういう返事が来るか、それを待った上において、何らかの措置をとる必要があるかどうか、その判断をいたすべきである、かように考えておるわけであります。
  115. 坂井弘一

    ○坂井委員 この種のもやもやしたうっとうしい空気を早く晴らして、明らかにして、そして、確かに法的には何が処断されるべきか、あるいはまた道義的には、政治的には何が非難されるべきかというようなことについて、これはやはり厳然とした立て分けをしながら議論をする必要があると思います。解明していく必要はあると思います。ありますけれども、どうにも政府態度がはっきりしない。へっぴり腰といいますかね、何となくうやむやにしてしまうおそれ、非常にそういう懸念を国民も抱くだろうと思います。そのこと自体が、総理が施政方針でもおっしゃっておりますけれども、やはりこれからの日本の政治というものは、信頼を得ることが何よりも大事であります。そういう観点から私はあえて申し上げておるわけでありまして、何もかもとにかく悪をあばき立てて、ほこりをたたけばいいと、犯人捜しをするんだというような観点で取り上げているのでは決してない。  この際あえてお断りしておきますけれども、国政調査権が発動されるということは、すべからく政治的、道義的あるいはまた社会的、経済的なその背景の中でいかにしてその種の事件が形成されていったのか、そのためには立法府としてどういう処置をすべきであるか、あるいは制度としてどこをどう改めるべきであるか、行政監督権の問題もあるでしょう、そういうことに資するためにもきわめて大事な問題である。一方においてその根底には、やはり民主主義なり日本の議会制民主主義政治体制、こういうものの危機にもつながりかねないというきわめて深刻なものがその底流にあるというようなことを根底に踏まえながら、この種の事件につきましては、すべからく、やはり総理が施政方針でおっしゃったとおり、徹底解明は必ずやらなければならぬと思うのですね。何か、臭いものにふたをしようと、もういいかげんにこんな気分の悪い事件は終わって、いまは不景気なんだから、もうとにもかくにも景気浮揚、不況の脱出、これは大事ですよ、大事なことには違いないけれども、それをもってこういう事件を事実上幕を引こうなんというような考え方、魂胆があるとするならば、これは断じて許されぬということをこの際あえて申し上げておきたいわけであります。  そこで、この問題を聞いてもなかなか答えが出ないようでありますので、先ほど言いましたように、具体的内容については特別委員会において逐次明らかにしていきたいと思います。そういう中で、政府が本当にへっぴり腰であった、なぜそういうことをためらっておったんだ、というようなことであっては国民の不信はなお増長するでしょう。私は、それを心配するがゆえに、あえて調査をされたらいかがでしょうかと、アメリカに対しましても、あえてのこのこと頭を下げるべき問題ではないかもしれませんけれども、せっかく向こうの方が調査が進んでいるとするならば、わが方の調査に資するために資料として提供の要請をしたらいかがでしょうかという、きわめて建設的なことを申し上げているわけでありますので、そういう点につきましてはどうかひとつ真意をおくみ取りいただきたい。あえて申し上げておきたい。  その問題にまた関連いたしまして、例の日韓問題、これはアメリカにおきましては、カーター米大統領が、韓国政府によりますところの米議員の買収事件調査、この調査をするためにアメリカの下院に特別委員会を設置するようにという提案をいたしておりますロバート・ウォーカー下院議員に対しまして書簡を送った。その中で、あなたが、向こうは米韓問題ですね、米韓問題の真相解明のための調査特別委員会を設けたいという趣旨には私は全く賛成であると賛意を表明した。同時に、ベル司法長官にもその旨を伝えました。カーター大統領はきわめてすっきりしておりますね。そういう手紙をロバート・ウォーカー下院議員に送っております。恐らくアメリカにおきましては下院にはこの特別委員会が設置されるでしょうし、同時に動き出すでしょう。一方、わが方はどうかといいますと、この間から議論がありますとおり、これはなかなかみこしを上げようとしないわけでありますが、いま申しましたように、すでにアメリカにおきましての米議会に対する買収工作以上に大きな、大がかりなこの日韓の癒着、黒い金、これがレイナード発言等によっても伝えられておるわけでございますが、総理お尋ねをいたしますが、日韓政界癒着の徹底解明のために、わが方におきましても調査特別委員会を設置した方がよろしかろうと私は思うのですが、総理のお考えはいかがでしょう。
  116. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日韓、米韓と問題がありますが、米韓の場合は、アメリカ政界に対しまして金がばらまかれた、こういう問題が現実の問題として起こっておるわけです。ですから国会調査委員会を設けるというようなことになったのかと思いますが、わが国におきましてはまだそういうような段階ではありません。私は、そういう事実があろうというふうな感じはいたしませんけれども、とにかくいろいろな報道がある。報道に対しましては、これは政府として調査をしますよ。そして、調査の結果何か犯罪容疑があるというようなことになれば、これは捜査をやる、こういう手順を踏むべきだと、こういうふうに考えておるのです。いまいろいろな調査、方々に問い合わせるとかそういう調査はしておるわけですが、まだそれによって犯罪容疑という問題が浮かんでおらないという段階でございます。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 調査しているということですが、調査の結果によってはこれは捜査に踏み切るかどうかということだということですけれども、総理はにおいもないというようなことまでおっしゃっているのですが、あれはにおいがないどころか臭気ふんぷんですね。少なくとも常識的、客観的に、いろいろな報道を見ましても。それをあえてにおいもないなんておっしゃるのは、これはまあ政治的発言だろうと思いますが、ある意味では捜査当局に対する牽制にもなりかねませんよ。ああいう御発言はお慎みになった方がよろしいのじゃないでしょうか。御忠告の意味で申し上げておきます。そのことにあえて触れようとは思いません。  そこで、調査されておるということですけれども、調査段階でどこまでいっているのか知りませんけれども、少なくともこれは捜査をする必要、可能性が非常に大きいのではなかろうかなというぐらいの感触は、総理、お持ちでしょうね。どうでしょうか。
  118. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 調査も完了しておらぬという段階でありまするから、これが捜査事件まで発展する可能性を持つものであるかどうかということはいまこの段階では申し上げかねる、かように御了承願います。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 米下院国際機関小委員会、これはフレーザーさんが委員長ですが、このフレーザー委員長がたとえば金大中事件についてこう言っているのですよ。金大中氏の誘拐事件は、韓国政府がKCIAを通じて行ったものだということが明確にされ、私は得心がいった。この事実については全く疑いがない。しかし、KCIAの日本におけるその他の活動については直接調べてはいない。こういう発言なのです。非常に明快になった、私は得心がいった、と。金大中氏誘拐拉致事件、これはKCIAが関与しておったのだと。これはレイナードさんの発言ではないのですよ。いま機能しておりますところのアメリカの国会の国際機関小委員会、そこでの委員長発言なのです。この発言は非常に重みがある、私はそう思っておりますが、総理大臣、こういう発言がなされたということに対してあなた御自身は一体どういう認識をされ、これに対してどう対処されようとお考えなのか。こういうことになってまいりますと、当然、調査段階はもう過ぎて、真相解明のための何らかの、わが方の具体的なかつ積極的な対処の方法を講じなければならぬではないかと思うのですが、いかがですか。
  120. 福田一

    福田(一)国務大臣 この金大中事件につきましては、私が国家公安委員長時代におきましても実は捜査を続行いたしておりました。なお、ただいまも捜査を続行いたしておると承知をいたしております。その捜査の内容いかんによっては、これはもう当然犯罪として、あるいはその他いろいろな問題についての措置をとらなければならない、かように考えておりますが、先般来この委員会において政府委員報告をいたしておりましたところによりますと、まだその具体的な事実が明らかになっておりません、犯罪事実を的確につかむに至っておりませんという報告をいたしておることは、坂井さんも御案内のとおりでございます。われわれはこの問題について決して関心を持っておらないなどというわけではございません。関心を持っておらないどころか、一生懸命犯罪捜査をいたしておるという段階とお考えを願いたいのであります。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 フレーザー委員長はさらに非常に重要なことを言っているのですね。次のように言っております。もし調査の過程で日本関係する部分が出てきたら、米政府を通じて日本政府に通報することになるかもしれない。そうした範囲でなら喜んで協力する。これはまた大変ですな。これは御親切というよりも、日本政府態度となぜこうも違うのかと思いますね。  私はかつて、ロッキードの例の問題で、超党派でもってアメリカに参りました。あのときもいろいろな人たちに会ってずいぶん話をしたわけですけれども、非常に違うところがある。向こうがこれほどまで関心――いま関心を持っておると言われたが、関心を持たないことはないでしょうが、しかし関心を持つと同時に、すべからく行動に移っておる。それに比べて一体わが方は、これは彼我の差の、余りにも大きな隔たりというよりも、全く相反するような、向こうはやります、こっちはどうしてもやりたくない、これではならぬと思うのですね。いまフレーザー委員長が申しましたように、米政府を通じて日本政府に通報すること、喜んで協力をしたい。総理、どうですか。そこまで言っているのですよ、アメリカの国会は、委員長が。それならば協力してください、お願いします、せっかくのあなたの御好意ある御発言でございますから、と言われてしかるべきじゃないでしょうか。いかがでしよう。
  122. 福田一

    福田(一)国務大臣 坂井さんのお言葉でございますけれども、アメリカにおいては議員を買収したという事実関係がある程度明らかにされておると思うのでございます。したがって、アメリカが非常に積極的な態度に出ることは当然でございます。日本の場合においてはそういう事実がまだございませんからそこまでやっておらないわけでございまして、事実が明らかになればこれは当然やらなければならない問題であると私は考えております。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 事実が明らかになればと言われるが、そういう背景なり事実関係をやはり明らかにしていきたいという、積極的な取り組み姿勢の問題だと思いますよ。少なくとも今回のこの事件、金大中氏拉致事件はまさに韓国の公権力による日本の国家主権を侵害したのではないかと、やはり重要な問題を投げかけられているわけですね。海のかなたのアメリカでもそういうようにはっきり言っているわけですね、日本は侵害されたのだと。それでもって、うちは、いやそれに足るだけの確たる証拠はないというわけで、政治決着、外交決着をつけました。しかし、犯罪捜査としてはなおかついま続けておりますので、その過程の中でその事実関係が明らかになり、具体的な買収工作に加わったような人たちが出てくれば、それはそれなりにまた次の捜査に踏み切るかどうかも考えましょう。また一方において、金大中氏事件についても、これも明らかに公権力が介在したということが、その事実が立証されたら、それから乗り出しましょう。それはおかしいのですよ。そのためにこそ捜査があるのじゃないですか。  また、この種の問題というものは、まさにその辺の判断というものは、政治的にきわめて深刻に受けとめる中でやはり決断すべき問題だと思います。従来のように犯罪捜査とかいうような範疇の中で物を考えておったら、これはいつまでたってもはっきりしない。そのことはやはり日韓両国の将来のために私は不幸なことだと思うのですね。なぜ、そういう最も基本にかかわる重要な主権というような問題に対して、政府がはっきりした態度に出ないのか。ここにまた何かあるのじゃないかということが次のまた迷いとして起こってくるわけですよ。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕 ですから、そういう点についてはあえて御忠告として申し上げておきたいと思う。  またすでに、きようの朝刊によりますと、二月九日の米下院本会議、これは韓国政府による米議員買収容疑について、下院倫理委員会調査権限を与える決議案を満場一致で決議をした。この委員会は証言でありますとか、証拠資料の提出強制権まで持っておるのですね。それで、すでにもう昨年の九月から活動も開始しておるわけですね。委員長さんはフリントさんでありますが、こういうフリント委員会等の調査活動、その内容等々についても、やはりいま少し政府として積極的に何らかの形でその内容を把握するというようなことをお考えになってはどうですか。向こうがどう動こうと全然そういうことは眼中にありませんか。
  124. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、重大な関心を持って日本政府としてはこれを見守っておると存ずるのであります。ただ、坂井さんにお答えをいたしたいと思うのでありますが、いま問題は二つあるのでありまして、金大中事件、金大中が日本から拉致されたか否かという問題は、日本の国権を侵害されたかどうかという問題についてわれわれは重大な関心を持って捜査をいたしておるという段階でございます。これが一点。それから今度は、もしだれかがそういう金大中事件をもみ消すためにだれかに金を送ったという具体的な事実が一つでもあれば、これは捜査に直ちに着手いたさなければなりません。アメリカの場合にはそれが明らかになっておりますので、捜査に着手しておるのはこれは当然だと思いますが、日本の場合においてはまだ具体的事実が一つも出ておりませんからして、アメリカにおける捜査の状況を重大な関心を持って見守っておる。こういう意味であるのでありまして、私たちは決してこの問題についても消極的な態度をとる意思はございません。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 せっかくの御答弁でありますけれども、残念ながら私をして言わしめれば、きわめて消極的であると言わざるを得ません。これは具体的には場所を改めたいと思います。  次の問題としまして、行財政の改革の問題ですが、これは財政危機突破という見地から論ぜられておりますが、それはそれといたしまして、もう一つの側面といいますのは、やはりロッキード事件の一つの反省、教訓というところにもそれを位置づけしなければならぬのじゃないかと思うのです。  そこで総理、先般来いろいろ言われておりますが、総理がお考えになっておりますところのロッキードの反省、教訓からくるところの行財政、特に行政改革の具体的なといいますか、基本的なという方がいいでしょうか、どこのところを反省して、大まかにどこをどう改革したらいいというような一つの腹案というものがございますか。何かお考えだと思いますが。
  126. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、かなめは行政の衝に携わる公務員、この方々が本当に公僕であるという精神に徹しまして、公私の別は明らかにする、身を持するに厳に、また事に臨んで清潔に忠実にというようなところにあると思うのです。  しかし、行政の仕組みの中に欠陥があるかどうか、こういう点につきまして考えなければならぬ点は、ロッキード事件の反省なんかに立ちまして、いわゆる行政の指導面、つまり運輸行政をとり行う、そして各航空業者に対していろんな指導に当たる、そういう際のやり方、この辺に公明を欠く点がどうもあるんじゃないかという感じが持たれるわけであります。そういう点をどういうふうに措置していくか。  それから、さらにさかのぼりまして許認可という問題が非常に、特に運輸省あたりでは多いわけです。この問題を整理していく必要があるかどうか、こういう問題もあるようでございます。  とにかく、いま気がつく点はその辺でございますが、ロッキード事件、再びこういうことは起こしちゃならぬわけですから、行政の仕組みの中にこういうものを醸し出す火種がありますれば、これはどしどし剔択していかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 運輸大臣お尋ねしたいのですが、ロッキード事件、これは運輸省が特に一番所管の省でございますので、五十一年八月二十五日に運輸大臣が運輸行政の総点検の実施に関する訓令をお出しになった。そこで運輸行政全般の見直しを命じられたですね。  具体的にしぼりますけれども、その中で一つ私は審議会のあり方、各種審議会、運輸省ではこの審議会につきましては、大臣どうですか、どういう点検をされましたか。
  128. 田村元

    ○田村国務大臣 まず審議会の委員のリストをずっと見てみました。そして率直に言って、やはりいささか運輸省出身あるいはその他の省庁出身の役人が多過ぎるようですね。でありますから、こういう点で徹底的にこれからチェックしていきたいと考えております。  ただ問題は、やはり専門家が審議会に入った方がよいというような現実面があるというところがございます。それから兼業を禁止されておるというような問題もございます。でありますので、勢い安易に役人上がりを起用するということでございましょうけれども、私自身がずっと点検しておりましていささかの抵抗を感じておることもまた事実でございます。でありますので、この点についてはこれから相当厳しく目を光らしていきたい、また改革もできるだけしていきたいというふうに考えております。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 申し上げるまでもないことでございますけれども、審議会設置の目的の最大のものは、行政の節目節目をひとつチェックしまして、ここに民意を反映さしていく、そうして行政の独走をここでひとつ歯どめをする、そういう役割りというのは非常に大事だと思うのですね。つまり、本来的には行政の補佐的機関ではないはずですね。したがって、いまお述べになりましたが、お役人あるいは国会議員が審議会の構成メンバーに加わることは決して好ましくないということです。にもかかわらずということに相なるわけでありまして、いま御答弁ございましたけれども、確かに専門的な知識云々のことはあるでしょう。あるでしょうが、しかし実態は余りにもひど過ぎるということを私は申し上げたい。そういうことでありますと、政治的な微妙な問題等について厳正中立、公正な立場判断できない、ある意味では行政の隠れみの的な存在になっておる。  特にそのことにつきましては、ロッキード特別委員会においても、あのエアバス導入の際の運輸行政のあり方、そういう中で、各種審議会の動きということに対して政治家が介在する、いろんな動きがありまして、ああいうものが、一つの政策目標というものはここにあったんだ、ある意味では政策便乗型権力汚職、こういう見方もできると思うのですね。したがって、そういう意味で言いましても、審議会は一例ですよ、一例ですけれども、審議会のあり方にも、重大な反省の上に立っての改革というものが試みられなければならぬ。これはもう早急に手がけられる問題なんですね。  こういうことを一把からげて後回しにしてということであってははなはだ困るわけでありまして、ちなみに申し上げますと、たとえば審議会の構成委員について、すでに三十八年九月二十日の閣議口頭了解、三十九年九月二十九日の臨時行政調査会答申、四十年八月十二日の閣議決定、四十二年十月十一日の閣議口頭了解、四十四年四月十一日の閣議決定、こういうずいぶん長い決定。これは何をやったかと言いますと、「国会議員及び行政機関の職員は原則として審議会等の構成委員にしないものとする。」、こうなっておる。この中で、特に臨調答申、改善勧告は、(1)「国会議員を委員に任命しないものとする。」(2)「行政部の職員についても、原則として委員に任命せず、必要に応じて幹事として参加するにとどめる。」。これはそこから得た長年の教訓なんですよ。常にこれが改善されないからというわけで、ここまで臨調答申が強く言っているわけですね。にもかかわらず現状は、というところの実態というものをやはり直視しなければならぬじゃないかということなんです。  現状を見ますと、いま各省庁の審議会といいますのは、全部で二百四十八ですかございます。運輸省だけに焦点を合わして恐縮ですけれども、運輸省せっかく一生懸命おやりになっていらっしゃる。八つありますね、それを見ますと、議員及び行政職員の現役、それからOBがあるのです。このことについては一概には言えないかもしれませんが、しかしそういう者を加えますと、二百二十六名中八十三名、約四割近い人たちが、いわゆる役人、国会議員、公務に関係する人。構成メンバーの約四割。加えないものとするというのが四割近く入っておる。これが実情なんですよ。しかも、こういうことになりますと、天下り云々の問題がまた絡んでまいりまして、なかなかこの改革がむずかしいということが従来の実情であったようであります。しかし、それにはまたおのずから別の意味の弊害が伴うということでありますね。  ですから、思い切ってこれは従来何回かの閣議了解、決定あるいは臨調答申、これを尊重しまして、そして各種審議会からはそのような公務にある者は原則としては全く除くんだ、これは基本原則をもう一回確認すると同時に、思い切ってそういう改革に踏み出しませんか、総理、どうでしょう。
  130. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまのお話、傾聴いたしましたから、検討いたしてみます。
  131. 坂井弘一

    ○坂井委員 早急に、前向きに検討されて、それを実行されることを強く要求しておきたいと思います。  お答えがございましたので、あえて申し上げませんが、特に運輸審議会あたりになりますと、もう全部です、民間なんかないのです、一人も。資料をいただきますと、ただ表づらで出てきたのは、中には民間人もあるのです。もっと調べてみたら元官僚なんですわ。ですから、もう独占しているのです。これで一体運輸審議会で何を審議するんだろうか、こういうことに相なりますね。そういう点についても十分ひとつ意をとどめていただきまして、いま総理の御答弁、前向きに実行に移されますようにお願いをいたしておきたいと思います。  なお、再発防止に関係いたしまして、きょうは具体的な中身に触れる時間がございませんので、その中の一つとして、確かに政治にまつわる金、政治に必要とする政治活動の資金、ここで従来とも政治献金のあり方というものが議論されてきたわけでありますが、さきに私は三木前総理にこういう質問をしたことがあります。政治家個人に対します政治献金、これは政治資金規正法の適用は受けないわけですね。一方、これは所得税法上の適用を受けるわけですけれども、しかし、いただいた金が全部私個人の政治活動に使ってしまいましたということでありますれば、これは何も所得申告の必要もない、ここに一つのやはり大きな盲点があろうというわけで指摘したわけです。  もっと具体的に言いますと、総理、私が仮に一億の金をもらってもいいのですよ、ある人から。あるいはある団体からでも結構です。あなた個人に――政治団体じゃないのです、私の政治後援会は関係ないの、あなた個人に。たとえば福田総理、あなた個人に一億差し上げます、お使いください、じゃありがとうございますといただいた。そしてあなた個人がそれを政治活動のために使った。これはどこにも拘束される、適用される法律はないわけです、使ってしまえば。これはおかしいじゃないですか。三木総理が事務当局に、これは一体どういうことなんだ、これは確かにそう言えばそうだから、これを何とか規制する方法は考えられないものかということで検討を命じられた。その後の経緯についてはさっぱりわからぬわけでありますが、これはどういうふうに検討されてきたのか。あるいはいまの問題、総理は一体どうお考えになるのか。こういうことについて適当な措置といいますか、何らかの方法でもってそういう一つの抜け穴をふさぐといいますか、そういう措置というものが考えられていいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  132. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 確かに坂井さんのおっしゃるとおり、個人に対する政治献金につきましては所得税の問題がありますね。しかし、政治資金規正法上の規制はない。こういうことになっておりますが、これはなかなかむずかしい問題だと私は思うのです。つまり、これを規制するとなれば、今度は政治資金規制団体をつくれば同じような結果になっちゃうわけなんですね。そういうようなことを考えますと、これをどういうふうに処置するかというなかなかむずかしい問題につながってくると思うのですが、私、いまお話しの経過につきましては承知しておりません。坂井さんと三木さんとの間のやりとり、その後の経過ということにつきましては承知しておりませんけれども、今後政治資金規正法の改正問題、そういうことが出てきた場合におきましては、一つの検討課題ということにはならざるを得ない問題であるというふうに理解します。
  133. 坂井弘一

    ○坂井委員 ひとつこれは積極的に取り上げて、何らかの方法というものを考えていただきたいと思います。  関連いたしまして、企業献金の問題ですが、これはなかなか企業献金廃止にはいきなり踏み切れそうにもありませんな、いまの段階では。われわれ個人献金に限ると主張しているわけですけれども。従来、ずっとこう見ますと、特に自民党に対する政治献金の収支報告書から見ましても、公共料金の値上げの前後必ずと言っていいほど多額の金が動くのですね。やはりどうもいただけないですね、これ。ずっと一覧表に出ておりますけれども、これは際立っていますね。公共料金値上げの前後がぐっとふえる。これは一々数字を挙げません。というようなことでありますので、企業献金がいますぐに廃止できないとすれば、せめて公共料金関連企業からの献金ぐらい禁止するというような、実りあるところに行くための一歩前進への具体的な形として、公共料金関連企業だけでもおやめになったらどうでしょうか。いかがでしょう。
  134. 小川平二

    ○小川国務大臣 お答えいたします。  御高承のとおり、改正された政治資金規正法におきましては、政府から補助金を受けておる企業、その他列記されております企業から献金を受けることが選挙に関係あると否とを問わず禁止されておるわけでございます。  ただいま御指摘の問題につきましては、法律の趣旨に照らしましてひとつ慎重に検討をさせていただきます。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 これもなかなか議論が、次に進めたいのですけれども、どうも少しかみ合わないかもわかりません。  次の問題に移りますが、日本航空機製造株式会社。日航製。実は四十八年の三月の当予算委員会におきまして、私、この日航製につきまして、航空機工業振興法を制定したときの国会の附帯決議に反しているではないか。つまり、民間機をつくるという趣旨の日航製にC1という軍用輸送機をつくらした、これは附帯決議に反するということを指摘いたしました。政府がそれを認められた。そこで、その際の政府見解、当時の田中総理大臣の「日航製にC1の試作を発注したことは、航空機工業振興法案審議の際の担当大臣答弁及び国会の附帯決議の趣旨に反するところがあると認められますので、本件については、政府においてすみやかに善処いたします。」、こういう約束がございます。「すみやかに善処いたします。」という約束は履行されましたか。
  136. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいま御質問のC1の問題につきまして、確かに今後善処するということでございました。のみならず、この日航製の問題につきましては、YS11の問題もございまして、今日までその後の経過をたどってまいりますと、廃止するということでございましたが、実際の問題といたしましては、後の百数十機売却いたしました補修等の問題もございまして、そのままなお存続いたしております。いつでもこれを何とか方針どおりにやめたいという気持ちは持っておるわけでございますが、事実問題として、先生よく御承知のとおり、売りました航空機に対しまする整備の問題等が残っております。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 あの当時中曽根通産大臣がこの善処の中身の一つといたしまして、日航製を解散させるということを言明された。自来、もうすでに四年も経過しております。この日航製の解散のめど、いつになったら解散できるのでしょうか。
  138. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  ただいまお話しのとおりに、日航製の解散の問題につきましてはお話しのとおりでございますが、その後五十七年度末までに、赤字も大変累積いたしておりまして三百六十億円の赤字が見込まれておる。この赤字の発生の原因につきましてもいろいろございますが、特に円の切り上げ等によりまする多数の為替差損も出ておるような事態でございます。そこで、この日航製を解散させようと思っておるという旨の御答弁はいたしておりますが、さて、これに対しまして、今後民間に移管しよう、こういう方針は持っておりますが、これだけの赤字を抱え、同時にこれを受け取る受け皿もなかなかないような状態でございます。  かような次第で、さらに詳細な経過並びに技術上の問題につきましては、御質問がございますれば政府委員からお答えいたします。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 私、お尋ねしておりますのは、問題はお約束どおりの解散ができるのかできないのか。解散するとお答えになったのですから、しからば解散の時期のめど、これはいつごろに置いていらっしゃるのか。いろんな情勢があるでしょう、その後の変移は。いまの時点で大体いつになったら、五十七年なら五十七年、六十年なら六十年ごろには解散できそうだ――その場合の解散の形態というのは、いま民間移行ということをおっしゃっていますけれども、確かに民間移行につきましては、五十年の十二月末の閣議におきまして「特殊法人の整理合理化について」の閣議了解、その中で「日本航空機製造株式会社は、その人員及び組織を極力縮減するとともに、引き続き民間移行の可否について検討する。」、こういう了解があるわけですね。「引き続き民間移行の可否について検討する。」、まだするともしないとも言ってないですね、この段階では。ちょっとこれもおかしいですよね。その前に解散しますと言いながら、民間移行の可否についていいかどうかを検討するというのですから、大変おもしろいというか、おかしな表現になっておりますが、いずれにいたしましても、一体この解散のめど、いつごろを想定されていらっしゃいましょうか。
  140. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。ちょっと経緯に関する問題もございますので、私から答弁させていただきます。  先生御指摘の四十八年の参議院での審議の際に、今後日本航空機製造の残っておりますアフターサービス等の業務が終了しました段階で解散する、という方針を当時中曽根通産大臣が申されました。当時私どもは、大体十年ぐらいこの飛行機が一般に稼働しているものと想定をいたしておりました。しかしながら、最近の状況を見ますと、使用期間がかなり長くなってまいっておりまして、このアフターサービスという仕事は、契約をいたしました後の国際的な義務といたしまして、飛行機に対して当然提供しなければならない義務でございますので、これを無責任に放置はできないわけでございます。現在のところ五十七年と当時考えておりました解散の時期というのはかなり先になろうかと実は考えられております。  なお、この飛行機が今後どのような使用期間、使用形態で稼働するかということにつきましての状況も見なければなりませんので、いまどの時点でアフターサービス業務が終わるというめどはちょっとつけがたい状況でございます。  ただいま、また先生御指摘の形態の問題につきましては、閣議了解の線に沿いまして、このアフターサービス業務を適確に引き受けることができる民間があり得るかどうか、その可否につきましては現在検討中でございまして、今後も引き続き検討してまいりたいと考えております。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 これは私は大変大事な問題だろうと思うのですね。大きな赤字を抱えましたね。想定しますと三百六十億、三百七十億近くなんですね。それでまず財政的な赤字処理の計画では、五十七年をめどとして、そうしてそれに対して政府が二百四十億の金をもうすでに出した。五十七年には赤字が一応パアになりまして解消できる。大体この時期を解散のめどにしたいというような意向できたはずでございますが、いまの御答弁によりますと、五十七年にはやはり解散できないということですね。できない理由は、これはやはり国際信義の問題がありますよ。YS11を百八十機量産しまして、各国のエアラインを飛んでいるわけです。これは寿命も長い。アフターサービスをどんどんやっている。これは日の丸の飛行機が飛んでいるわけです。その日の丸の飛行機をつくってくれた日航製が赤字を抱えてしまって、これが解散だなんて政府答弁してしまった。これはちょっと動揺が起こっておりますよ。やはり好ましくないと思うのですよ。いかに国会の附帯決議に反したからといって、その場で善処しますと苦し紛れに言って、善処の中身は何か、解散させることですなんというようなことを軽々に言うべき問題じゃないですね。できもしないことをその場逃れで言うというようなその政治姿勢を私は糾弾したいわけですよ。もっとなぜ正直におっしゃらないのか。まだこの赤字はかさみますよ、本当に。まだ出さなければいけないでしょう。五十七年からもっと六十年、六十五年、あるいは七十年ぐらいまで延びるかもしれない。延びれば延びるほどこの赤字については国が補てんするわけです、どんどんどんどんと。そういうことにならざるを得ない実情にある。どこまでどうなるかわかりませんけれども、赤字はふえるでしょう。いかがですか。
  142. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  現在の日本航空機製造の経営の状況でございますが、いま先生御指摘の三百六十億円の赤字対策を五十七年度までを想定して終了いたしまして、基本的にはその予想しました線で現在経営が行われております。ただ、その後の円の変動相場制への移行に伴いまして若干の為替差損が出ていることは事実でございます。しかしながら、これも今後の為替相場の変更あるいは企業努力による吸収といったようなことから、将来どの程度の経営状態になるのかということにつきましては、いまここで明確には申し上げかねるというのが実情でございます。  なお、これに関連いたしまして、四十八年の当時の中曽根通産大臣のおっしゃいましたことにつきましては、当時アフターサービス事業の終了に伴いまして解散をする。つまり、日本航空機製造には新しく仕事をやらせるわけではなくて、いわば清算的な仕事、従来残っておりましたアフターサービス事業に専念させる、こういう御方針でおっしゃったことにつきましては、私どもも基本的には現在もそういう考え方でまいっておりまして、何もそこには矛盾はないものと私は理解いたしております。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 いずれにいたしましても、赤字はまだふえることは間違いないですね。ふえる赤字に対しましては国が手当てせざる得ない。これは実情的にはそうだろうと思うのです。その責任云々は別といたしまして、それはそうせざるを得ないと思います。そういう問題があるということ、それはひとつ十分に御認識をしておいていただきたいということが一つであります。  それから、日航製の解体か解散と言った方がいいんでしょうか、これが形としては民間移行。この民間移行する相手先というのは、YS11の後継機でありますところのYXの開発のための主体といいますか母体というのでしょうか、となるいわゆる民間輸送機開発協会、この民間輸送機開発協会に日航製は移行していく、こういうことでございましょうか。
  144. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 御指摘の民間輸送機開発協会は四十八年の三月にできたわけでございますが、これはYXという次期民間輸送機を開発するためにつくられた協会でございまして、いわゆる日本航空機製造をそのまま引き継ぐというようなことは予定をいたしておりません。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 その問題、あれですな。大蔵大臣、これをちょっと御説明いただけないでしょうか。いまの日航製に関しまして、予算書の八ページ、一般会計予算総則ですね。「日本航空機製造株式会社借入金に係る債務」、これは第十一条に基づきまして国が債務保証をしているわけですね。この「借入金に係る債務」、これは一体何ですか、御説明いただきたい。
  146. 坊秀男

    ○坊国務大臣 政府委員をしてお答えさせます。
  147. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 日本航空機製造が通産省所管でございますので、事業計画の関連もございますので私の方からお答えさせていただきます。  政府保証を行っておりますのは、日本航空機製造の従来の売掛金の回収によります収入等、あるいはまたアフターサービス事業によります支出等、収支の差額につきましては、日本航空機製造は一般の企業のように金がなかなか借りられないということでございまして、政府保証によりましてこの不足資金につきましての政府の保証を行っているものでございまして、五十一年までの借り入れの金額を申し上げますと、たとえば予算上では五十年は四十億の保証の枠で、実際の借り入れは三十二億でございましたし、また五十一年度におきましては保証の枠が四十億で、実際の借り入れも四十億行っております。また五十二年度予算につきましては五十五億お願いをいたしておりまして、この額は、たとえば四十七年が百二十三億でございまして、年々逐次減少いたしてまいっておりまして、若干の前後はございますにいたしましても、今後逐次この額は減っていくものと考えております。
  148. 坂井弘一

    ○坂井委員 これを政府保証をする法的規定、根拠規定は、航空機工業振興法の一部を改正する法律、附則第三条の二に基づくのですね。附則三条の二というのは一体どういう解釈になるのですか、御説明ください。
  149. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 お答えいたします。  航空機工業振興法の附則第三条の二は「政府は、当分の間、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第三条の規定にかかわらず」、途中省略いたしますが、「保証契約をすることができる。」という規定がございまして、この規定によりまして政府保証を行っているわけでございますが、先ほど通産省の熊谷局長から御説明いたしましたように、日航製につきましては、売りましたところの飛行機の代金が毎年入ってまいります。あるいはまたそれに対していろいろな業務をまだ続けておりますから、支払いも必要でございます。そういったような主として短期の資金が要りますが、これは金融機関から借り入れざるを得ません。しかし、これは日航製そのものに十分の担保があるわけでもございませんので、政府がこの法律に基づきまして、その保証契約によりまして民間からの借入金をやっておるわけでございます。これは時間が経過いたしますに従いまして借入金の額は減少していくわけでございますが、先ほど先生が御指摘のように、アフターサービスも続けなければなりませんし、それからまた延べ払いでございますから、飛行機の代金はこれからもどんどん入ってくるわけでございます。そういった金額でもって回収していく。あるいはまた、仕事を続けていくにおきましては今後もなお借入金も続けていかなければいかぬ。そういう関係の、主として民間からの短期借り入れに対する政府の保証ということでございます。
  150. 坂井弘一

    ○坂井委員 もう念のために伺うこともないかと思いますけれども、つまり附則三条の二による政府保証は短期運用資金のための政府保証であって、長期運用資金ではありませんね。そういたしますと、これは昭和三十六年からずっと続いてきておるわけですね。日航製はやがては解散。これは移行――どういう解体で、どこにどう行くか知りませんが、いずれにしましても、アフターサービス業務を全部終わりまして日航製が役割りを全部終えた、その時点では日航製はどこかに行ってしまうわけですね。つまり日航製が解散するときの財務処分の法的根拠というのが一体あるのですか、いかがでしょう。
  151. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  日本航空機製造が解散といったような事態になりました場合の、たとえばいま御指摘の政府保証による借り入れといったようなものの処理につきましては、会社の最終的な資産処理によってこれを処理するということになろうかと考えております。
  152. 坂井弘一

    ○坂井委員 こういうことについては予算総則で御検討いただきたいですな。つまり、順調に事業を進めていく、そこに利益も生ずる、ですから短期でもって政府が債務保証をしましょう。わかるわけですよ。そういうことを繰り返しずっと来たということはよくわかるわけですが、もうすでに解散が決まっておるのですね。しかも赤字を抱えておる。まだふえるだろうというのですね。それが最終年度までこういう債務保証を繰り返し繰り返しやっていって、あげくの果てには、ことしは、五十二年度は五十五億ついておりますけれども、最終年度においてもさらに債務保証をせざるを得なくなった場合には、その債務保証は結局国に支払いの義務が生じますね。こういうあり方が、予算総則の中で、短期運用資金として政府保証として単年度ごとに認めることがよろしいのかどうなのかという是非の議論というものをもう一回考え、検討する必要があると思うのですね。どうでしょうか。腹組みとして正直におっしゃってください。恐らく最終段階においては、政府はこの債務保証をいまさら切るわけにいかぬでしょう。ですから、日航製に支払い能力なしとするならば政府がそれを肩がわりをする、支払い義務が政府に生ずるということで、何がしかの手だてをして政府において出さざるを得ないということも当然考えられますね。
  153. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたが、その時点におきましての日本航空機製造が持っております資産の処分等によって充当するのがたてまえかと考えております。その時点におきましての処理につきまして、その時点で判断をするということかと考えます。
  154. 坂井弘一

    ○坂井委員 この時点で判断することはできないと公式にはそう言うしかないのですよ。ないけれども、実態から推していくならば、これだけの赤字を抱えた会社であります。赤字は抱えておる、これはもう絶対に減りはしません。するはずがない。アフターサービスは続けなければいかぬわけです。補用部品等は細々とやっています。こんなのは収益が上がるはずがない。むしろアフターサービスの方でどんどん金が要るわけです。世界の空を飛んでいるのですから、最終五機までは、これは日航製としてはどうしてもアフターサービスをせざるを得ないという義務が国際上生じておるわけです。そういうことがいい悪いは別としましても、とどのつまりは、やはり赤字が重なるものだから、政府がそれに対してさらに債務保証をして、結局は解散時においては政府資金をもってそれに充当する、赤字の穴埋めをするということにならざるを得ないでしょうということを、いまからあらかじめ御指摘を申し上げておるわけです。そういう段階において、この予算総則にありますような、短期運用でございますという形でもって五十五億の債務保証をつけることの是非について、もう少しやはり慎重であらねばならないのではないかという点を指摘をしておるわけであります。  なお、私はこのことにつきまして、財務状況を一遍調べようと思いまして、ずっと見たのですよ。予算の参照書、それから政府出資主要法人の財務諸表が出ておりますところの財政法二十八条による予算参考書類。日航製は政府出資の特殊法人でありますから、四十二億ですか、これだけ大きな赤字を抱えておる。政府も二百四十億つぎ込んでおる。ですから、主要法人として参考書類に出てくるだろうと思って見ましたら、どこにもないのです、日航製については。これは奇妙なことだなと思ってずいぶんいろいろ聞いてみましたけれども、ちょっと解せませんね。これはまたこの次の議論といたしたいと思いますが、いずれにいたしましても、そういう問題を抱えておるということを十分ひとつ御承知おきいただきたい。  そこで、この問題から詰まるところは次のYXの開発の問題だろうと思うのですが、このYXの開発につきまして、ボーイング社との間で共同開発をやろうというわけで計画は六年越しに進めてきた。ところが、昨年の十月には、ボーイング社との交渉におきましては、五十二年の十二月には試作機の製造に着手する、そういう方針を決めながら、同時にそのことにつきましては航空機工業審議会もこれを了承した。そこまで進んでおりながら、ボーイング社が突然覚書調印の延期を求めてきた。交渉再開はこの秋になるというようなことが一部伝えられておりますが、一体この共同開発の見通し、見込みはあるのですか、ボーイング社との間に。
  155. 田中龍夫

    田中国務大臣 本件につきましては、いろいろと経緯もあることでございますので、政府委員をしてお答えいたさせます。
  156. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 御指摘のYXの共同開発事業の最近の状況につきまして御報告申し上げます。  先生御指摘のとおり、四十六年に航空機工業審議会のYX開発専門委員会におきまして、ボーイング社との共同開発の方向で交渉を進めるという方針が決められまして以来、今日まで交渉が続いておりまして、昨年の夏場ごろまでにかなりの進展もあったのでございますが、現段階は、ボーイングにおきまして本事業の最終的な評価作業が行われておりまして、今日ただいまは交渉が中断しておる状況でございます。しかし、近くボーイングの方のそういった作業が終了次第、交渉が再開されるということになろうかと考えております。  私どもとしましては、今日までかなりの期間を経ております最大の理由は、特に石油ショック後の航空需要の予測が非常にむずかしくなってまいっておる、現実に四十九年、五十年という時点はエアラインが大幅赤字を各国とも抱えた時期でございまして、新しい飛行機の開発という問題はかなり先にならざるを得なかったということでございます。いまボーイング社が検討しておりますのは、そういった需要の動向にうまくミートしながら、どういう種類の飛行機を、そしてまたどのタイミングで開発に着手するか、この辺のところを最終的に検討している段階でございまして、民間航空機というものの性格上やむを得ない面があろうというふうに考えておるわけでございます。  私どもとしましては、今後ボーイング社との交渉も従来どおり続けますが、しかし、これは交渉事でございますので、交渉が成立しない場合には、さらに他の国との共同開発事業というようなことも考えざるを得ない場合もあろうかと思いますが、従来の交渉の経緯を踏まえて、今後柔軟に対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  157. 坂井弘一

    ○坂井委員 わかったようなわからぬようなことですが、要するに、それはほかにもいろいろ考えなければいかぬと思いますよ。予算査定の段階でも、これは最初ゼロになったのですよね。復活しまして十億九千万つきましたな。おそらくボーイングとの交渉再開を打ち切るわけにいかぬでしょう。その場合に、従来七X七で来たのですね。つまり、二百人から二百四十人乗り、中型。それがどうやら最近ボーイングは七N七、もうちょっと小型、これも言い出しておる。一体わが方の基本方針として、基本的な構えとして、七X七をとるのですか、七N七をとるのですか。少なくとも方針としては大体決まっているのじゃないでしょうか。どうですか。
  158. 熊谷善二

    ○熊谷政府委員 日本側の考えておりますYXは、ちょうどボーイング社の七X七という計画に該当する二百人席のものでございまして、先生御指摘の七N七計画というのは、これは百六十人前後のものでございまして、これは具体的にどの程度の内容になりますかはまだ非常に不明なところが多うございますが、私どもとしては、従来、YX、これが日本考えております機種でございまして、これと七X七との合体ということを考えておるわけでございまして、この方針は今日も変わっておりません。それで参りたいと考えております。
  159. 坂井弘一

    ○坂井委員 間もなく時間が来そうですか、総理、これはぜひお考えいただきたいと思いますが、私は、YS11、それからYXの共同開発ということ、こういう航空機産業、これは確かに技術革新の先端に立つ、言うなれば集約型の産業ですね、ですから、これのもたらすところの技術革新への波及効果というものは非常に大きかろうと思います。特に、総理がおっしゃるところの資源有限時代、あるいは高度成長からこれからいよいよ安定成長へ移行せざるを得ない、そういう内外の情勢から考えてみますと、将来のわが国の経済ないしそれを支えるところの日本の産業構造の内容、あるいはその質的な転換というものを支えるいわゆる技術革新というものの一つのリード役を果たすであろう航空機産業というもの、これに対する政策的な、国家見地に立った位置づけというようなものが非常にあいまいになってきたのではないか。そういう点についてはもう一回見直しをしまして、きちんとした位置づけをしませんと、YSの失敗をまたぞろこのYXでも繰り返す。その間、国の予算、金をどんどんつぎ込んでいって全く死に金になってしまう。それで国際的に見てもわが方の信用を失墜するというようなことを繰り返すようなことがあっては、これは断じてならぬと思うのですね。ただ、一方においてもう一つ注意をしなければならぬことは、ともするとこの種の産業が防衛需要、この依存度が非常に高い。したがって、前に指摘しましたように、せっかく民間機をつくるといったものが軍用機をつくってしまう、しかもこれをまた輸出しようというような動きにまで発展していく、こういうことは、これまた断じてならぬことですね。そういうことをにらみ合わせながら、今後の日本の航空機産業というものをどうしていくのか、本気になって育成するのかどうなのか。いまのような形で、中途半端でやるのか。ほとんど主体は向こうでやって、うちの方は胴体の頭としっぽの部分だけ受け持って、エンジンとか技術革新に一番役立つ部分は外国でやってもらいます、うちはただ市場開拓のためにうまくいけばちょっともうかるかもわからぬからちょっと乗っておきます。あるいは先進国だとかなんとか言われるものですから、背伸びをしまして、おつき合い上仕方がないであろうというようなことなのかどうなのか、もっとはっきりしなければいかぬ。そういう点について総理、どうお考えになりますか。
  160. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 航空機産業にわが国において本格的に取り組むかどうかとなると、これは非常にむずかしい問題のようです。つまり軍需ですね。それを除いて民需だけで航空機産業を堂々とやっていくということはもう至難のことじゃないか。そういうふうに思うのですが、そういう中で、お話しのように、エレクトロニクス時代です、その時代でエレクトロニクスのかたまりとも申すべき航空機産業を持たないということは、またわが国として大変妥当でないような面もあるわけで、いずれにしても非常に判断のむずかしい問題でありますので、そういう基本的な問題につきましてはなおよく考えてみます。
  161. 坂井弘一

    ○坂井委員 最後に一問。  田中総理の公判におきまして検察側が、冒頭陳述でも明らかになっておりますけれども、いわゆる受け取った五億円というものは賄賂である、こういうことを陳述いたしておりますが、当然、有罪になったらこれは没収されるということでしょうけれども、無罪の場合はこれはもらい得である、いろんなことを言われておるわけでありますけれども、国税当局、これについてはどうするんですか。課税されるのですか、どうなんですか。
  162. 坊秀男

    ○坊国務大臣 まだ何らの決定がされておりませんけれども、いよいよ没収されるということになりますれば、これは所得というものはございません。もし、そうでないということであったならば、そのときの事情に従いまして国税庁は腹を決めて慎重に図っていかなければならない、かように考えております。
  163. 坂井弘一

    ○坂井委員 終わります。
  164. 坪川信三

    坪川委員長 これにて坂井君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  165. 坪川信三

    坪川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  国際協力事業団総裁及び海外経済協力基金総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  167. 坪川信三

    坪川委員長 それでは、大出俊君。
  168. 大出俊

    ○大出委員 質問が大筋で三つございまして、いずれも少し承らなければならない羽目になっておりますので、できるだけ要点につきましての御答弁をいただきたいのであります。  最初に、在韓米軍の撤退問題をめぐりましての防衛、外交にかかわります問題を少し承っておきたいのであります。  ところで、先般、朝日新聞だと思いましたが、いま国防会議の事務局長さんでございましょうか、防衛庁の前次官久保卓也さんから、撤退反対に関する論文が出されておりました。これは昨年の十一月十一日の朝日新聞でございますが、「日本の安全のうえからも、アジアの安定という立場からも、在韓米軍の削減、とくに地上軍の撤退は安易に考えられてはならない。」こう決めつけておられるのでありますが、不思議な気がするのでありますけれども、日本の軍隊が何も撤退するのじゃないのでありまして、外国の軍隊が外国から撤退をするという筋合いの理屈であります。ところが、日本の防衛庁の前次官、現国防会議事務局長が「安易に考えられてはならない。」などと言い出すというのはどうもちょっとぴんとこないのでありますけれども、ほかの国の軍隊で、これは日本の軍隊じゃない。これはどういう趣旨なのか御答弁をいただきたいのであります。
  169. 久保卓也

    ○久保政府委員 十一月の投稿でありますが、当時私は御承知のように浪人中でありますので意見が申せたと思いますが、申しました趣旨というのは、当時のカーターさんが当初から、四、五年後には在韓米地上軍を撤退させることができる、こういう言い方できておりました。この趣旨というのは、御承知のように、一九八〇年ごろには南北の軍事的なバランスが成り立つという韓国側の見方がある。きわめて軍事的な見方であると私は思ったわけであります。朝鮮半島の問題は、軍事的な問題であるよりもむしろ政治的社会的経済的な問題である、そういう点を認識してほしいということを申したつもりであります。
  170. 大出俊

    ○大出委員 その後も丸山防衛庁次官、この方もいろいろ発言をしているわけでありますが、後から立ち入った質問をいたしますけれども。かつまた外務省関係の方もずいぶんいろんなことを言っておられるわけであります。  そこでまず承りたいのでありますが、対国民ということをまず考えなければいけないわけでありまして、カーター政権が在韓米軍を撤退させるという言い方をした途端に、防衛庁も外務省も総上げで反対だという大騒動が起こった。一体、アメリカ側がどういう意図で、何を考えて撤退しようと言っているのかということについての国民が納得のいく分析は何も表に出されていない。こういう無責任な政府当局の、要路の方々でございますから、対国民という意味でまことに迷惑でございます。  そこで、三原防衛庁長官に承りたいのですけれども、一体カーター政権は何をもって在韓米軍の撤退、主として地上軍でございましょうが、核を含んでおりますが、これを打ち出したのかという背景について、どう分析をなさっているのか。かつ長官は、久保理論ではありませんけれども、これにまた反対だとおっしゃるのか。いかがでございますか。
  171. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  カーター政権の構想というのは、新しい政権になったから出たものだとは受けとめておりません。一九七〇年代、ニクソン・ドクトリン以来のアメリカの方針ではないかと思っているわけでございます。防衛庁としては、あわてておるというような状態ではございません。そしてまた、具体的にまだカーター政権が計画を示したわけでもございませんし、この事態について注視はいたしておりますけれども、そういう構えでおるわけでございます。
  172. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと時間かかりますから、三原さんどっかにいてくださいよ。  実はあわてていないというお話なんですが、じゃ何であわてて丸山次官以下がたがた言ったんだということになる。外務省もそうであります。  そこで、もう一歩突っ込んで承りますが、まだその段階ではないと言うんだが、一九六九年七月のいわゆるグアム・ドクトリン、ニクソン・ドクトリン以来のものだと言うならば、その線上にあるということになる。そうなると、結果的に撤退をするというふうに見て差し支えないのではないかと思うのだが、そこはどうお考えでございますか。
  173. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 その線上で削減というようなものが行われるであろうという見方をしなければならぬのではないかと考えておりますけれども、それについては慎重な配慮がなされるであろうし、韓国はもちろんでございますが、日本等にも十分な審議、連絡がなされるものであろう、そう受けとめておるのでございます。
  174. 大出俊

    ○大出委員 これはただ単にカーター氏の選挙にあてての政策というものじゃないですね。ここにも資料がございますけれども、これは昨年七月の民主党大会で綱領として採択されているのですね。民主党大会の綱領採択になっているわけであります。在韓米地上軍の段階的撤退、これが一つ。韓国にある戦術核兵器の撤収、これが二つ。この二つを中心にカーター氏が選挙の際に公約として話をした、こういうことですね。したがいまして、ということになると、これはいま私が質問いたしましたように、民主党というアメリカの政党が国民に責任を負っている。そして、選挙をやってカーターが政権の座についた。ならば、当然実行されなければこれはおかしいことになる。つまり、延長線上にあると同時に、実行されると見なければならぬ。  そうだとすると、そこで残る問題は、その間に、いろいろアメリカ側は段階的撤退と言っているんだが、それなりの方策、手だてを講ずるであろうというふうにいまおっしゃるのだが、それは一体具体的に言うとどういうことになりそうでございますか、そこから一歩先に進んでお答えいただきたい。
  175. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 アメリカは、アジア、特に朝鮮半島の安定に急激な変化が起こるようなことがあってはならないというような立場もとるであろうと思いまするし、なおまた、これを取り巻きますアジア情勢、特にアメリカ、ソ連、中国等のそうした大国、三極の関係等も、これまた朝鮮半島に安定が持続されることを期待をいたしておりまするので、それらの関連等考慮されながら私は進められていくであろうという考えを持っておるのでございます。
  176. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、念を押しておきますが、防衛庁長官としては、このアメリカの政策に対して了解し得るとお考えでございますか。
  177. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 この点は、私は大きな日本の国政、政策の問題だと思いますので、私がいま独断でどうだということを言うことは差し控えていかねばならぬと思いますので、御了承願いたいと思います。
  178. 大出俊

    ○大出委員 この間、わが党の小林進先輩の質問に対しまして、鳩山外務大臣は、東郷アメリカ大使の発言をとらえての質問について、了解しているかのごとき実は答弁になっている。そこで、しからば不統一ではないかとつかれて調べてみるとこうなったわけですね。もう一遍はっきり承りたいのですが、アメリカのモンデール副大統領も来られたわけでありますけれども、東郷大使は帰りに一緒に飛行機に乗っていったそうでありますけれども、アメリカ側のこの政策に対してあなたは了解をしているのでございますか。だから、東郷大使の言い分と多少ニュアンスが違うのですか。はっきりしていただきたい。
  179. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 アメリカ軍の撤退問題と言われている問題は、まことに重大な問題でございますので、日本政府としてどう対処するかということを決めた段階にはまだ至ってないわけでございまして、その前のいろいろな段階で、先般の東郷大使の話、演説と言われているものにつきましても、日本政府としては、朝鮮半島あるいは韓国にいろいろな軍事的な意味で瓦解するようなことはアメリカ当局としてもしないであろうというような発言をいたしておるので、一つの観測的な説明、演説であるというふうに御理解願いたいと思います。
  180. 大出俊

    ○大出委員 となると、これは大分違うので、この東郷大使の演説というのは、わが方の発言に応じて物を言うと長くなりますから気をつけますけれども、この在韓米軍削減は慎重にやってくれという趣旨なんですね、大筋言えば。したがって、アメリカの方もモンデール氏が来て慎重にやると言っているんだから、その意味では了解できることになるのではないかと思うのですが、モンデールさんにお会いになったんだから、総理から承りましょう。いかがでございましょう。
  181. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 モンデール副大統領は、これは何も日米間で意見の決着を見ようという趣旨で来たんじゃないのです。意見の交換をしよう、こういうことです。その点を御理解願いたいのですがね。モンデール副大統領は、カーター大統領が選挙中、アメリカの在韓地上軍、これを段階的に削減する、こういうことを言っておるので、恐らくそういうことになるでしょう、なるでしょうが、その段階的というのは現実的なものになるでありましょう、こういうことを言っておるのです。言っておるということだけの話でありまして、日米が意見が一致したとかなんとか、そういうような性格のものじゃございません。
  182. 大出俊

    ○大出委員 このモンデール氏に総理がお会いになる前の記者会見だと思うのでありますが、在韓米軍の撤退というのはアメリカと韓国の問題である、あなたそういう趣旨のことをおっしゃいましたね。私が冒頭に触れたようなことをあなたはおっしゃいましたね。米韓二国の問題、いまでもそう考えておりますか。
  183. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いまでもさように考えております。
  184. 大出俊

    ○大出委員 中身の議論をしますと時間がなくなりますから、ひとつ枠を決めたいと思って聞いているのでありますが、そこで、二つ質問いたします。  「在韓米軍の段階的撤退」、日本すでに了解という新聞の記事がある。モンデール氏が来て、総理に、カーター政権のこの問題に対する説明をいろいろした。これはいまお認めになっておる。説明をした。いい、悪いじゃない。これに対して総理の方も総理考えを述べた。したがって、日本側はこれを理解したとアメリカ側は受け取っている。つまり、カーター政権のこの在韓米軍撤退政策というものを理解したと受け取っている。したがって、将来予想される日本政府との緊密な協議というのは、撤退それ自体の是非をめぐってではなくて、その時期や規模に焦点がしぼられることになろう、こう理解してよろしゅうございますか。
  185. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 在韓米地上軍の問題は、これは米韓間の問題ですから、わが方としては介入はいたしません。ただ、意見を述べるということはあると思うのですが、意見はもう決めているんです。つまり、朝鮮半島における微妙なバランス、これが破れるというようなことがあっては困るじゃないか、こういうようなことでございます。
  186. 大出俊

    ○大出委員 これは軍事的、政治的、外交的に朝鮮半島におけるバランスを損なわないようにという意見を決めているというわけですね。損なわなければ撤退に反対をしないということになる。そう理解していいんでしょう。
  187. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  188. 大出俊

    ○大出委員 防衛庁に一つ承りますが、反対一辺倒というのはどうもあんまり利口なやり方じゃない。一言で言えば不利である。三原さん、「防衛庁が首相に進言へ」という記事が実はある。長い記事なんですがね。中身は一々ごもっともな点がある。どうも反対だ反対だと言っていたんじゃぐあいが悪いというのですな。せっかく取り上げましたから、時間がもったいないですけれども、ちょっと言いますが、まずは、米国の北東アジア政策全体の枠組みは在韓米軍撤退があっても変わらないだろう、したがって、それなりのバランスをとって撤退を考えるんだろう、こういう前提で考えてみて、ブルッキングス研究所の研究結果などを引用されまして、そういう結果になる。そこで、いまお話しのニクソン・ドクトリンの延長線だ。それから、ちょうど七一年のニクソン・ドクトリン当時に、二年にかけましてフォーカス・レチナ作戦などやってみせて、四万人撤退しましたね、このときに。こういうこともあるのだから、幾ら反対だと言ってみたって、アメリカは結果的に撤退をするだろう、さっきちょっとそれに触れられましたね。あなたの方はそういうふうに分析をした。ドル防衛に基づく軍縮が迫られているという事情もある。あるいは対韓問題といういろいろな問題も実は抱えておるというようなものもあって、結果的に撤退が行われることは、やがて来るであろう。片や自主防衛五カ年計画という韓国の方針一つあるというようなことをあなた方は頭に置かれて、撤退対象は、陸海空三万九千人のうち、陸軍の第四ミサイルコマンドと第三十八防空砲兵旅団のナイキハーキュリーズ及びホーク部隊、これは六千です、これが撤退ということになるんだろう。これらは七百発の戦術核を持っている。これは前にいろいろな方の発言がございました。したがって、これもある時点までいけば移ることになるのではないかというふうな分析をされて、一つの心配は、韓国政府に、はだしであっても核を持とうなどという気持ちを起こさせるというような心配があるとか、あるいは米軍撤退によって韓国経済から外資が逃げるというようなことが起こりはせぬかというような心配があるとか、日本も二十三億ドルを超えるという大変な投資をしているということもある、などというようなことをずっと並べて、かといって、日本が経済、軍事両面でアメリカの肩がわりをするなどというようなことが残念ながらできる筋合いでもない。ということになると、余りここで反対だ反対だと言うことは、それなら米韓両方から日本の肩がわりを迫られるということにだってなりかねないというふうなところまで分析をすると、反対一辺倒は不利であるという結論を防衛庁はお持ちだ。防衛庁のクラブの方々とも二、三日前からいろいろな話をしてみましたが、新聞記事は、ここに書いてありますが、おおむねそんなふうなところで防衛庁の考え総理に進言をする、こういうふうに載っているのですけれども、そう大きな違いはございませんか。
  189. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  いま、きわめて具体的な中身等が出たようでございますけれども、総理に対しましてそれほど具体的な中身まで申し上げたことはございません。恐らく記者の諸君が、いろいろな情勢研究をいたしておるものをスクープされたものと思うのでございます。そういうような具体的なところまで総理に申し上げておりません。
  190. 大出俊

    ○大出委員 それではどこまで申し上げたのですか。
  191. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 総理に対しましては、先ほど申し上げましたように、現在の朝鮮半島の軍事情勢、それから周辺のいままで一昨年以来の動き等を見て、いま対立しておる中でございますけれども、鎮静の状態にございます。アメリカの企図するものは、決して一挙にどうだということではないと思いますので、そういうことは恐らく慎重な配慮でなされるものと思いまするし、アジアの安定、平和という立場でそういうことを情勢判断して進めると思いまするので、そういうことで米軍の削減については対処いたしたいと防衛庁は考えております。大要そういうことを総理に申し上げたところでございます。
  192. 大出俊

    ○大出委員 総論を考えれば、いま私が読み上げたこととそう違いはない、各論が抜けているだけであります。三原さんもそう細かいことをおっしゃる方でないから、まあ大体おおむねそんなところだということになりますな、これは。  そこで結論を求めたいのでありますが、三十分足らずでやりませんと、あとが間に合いませんから。  総理に承りたいのでありますが、あしたですかあさってですかようわかりませんけれども、日本と韓国の議員の皆さんとの、議員連盟の方々の、日韓議員連盟と申し上げたらいいのでしょうか、この方々の第六回総会がホテル・ニューオータニで開かれるわけですね。ここで韓国側は、これは報道によるとですが、在韓米軍撤退に反対であるということをこの議連総会に提案をして、日韓両関係議員が集まった総意として決議をする、決める、採択をする、そういう方向で実は原案をおつくりになっているようであります。総理もこれはあいさつか何かに恐らくおいでになるのでしょうな。そこで、共同声明という形になるのだとすれば、あるいは実質的に共同声明らしいものになるのだとすれば、ここで日韓議員連盟の名において在韓米軍撤退反対をお決めになるということは、私は、政治的に大変大きな、これは私としては全く賛成のできない重大問題だというふうに実は思っているわけであります。  なぜならば、福田内閣の皆さんは、私が皆さん存じ上げておる仲のいい方ばかりですけれども、悪意で言うのじゃありませんけれども、どうも韓国の内閣の義兄弟みたいな感じが実はするのですよ。なぜかといいますと、日韓議員連盟に御加入になっておられる現職閣僚の方は、大蔵大臣の坊さんがまず入っておられる。威勢のいいところで厚生大臣の渡辺さんがお入りになっている。田中龍夫通産大臣もお入りになっている。長谷川建設大臣もお入りになっている。西村行政管理庁長官もお入りになっている。もちろん三原防衛庁長官もお入りになっている。宇野科学技術庁長官もお入りになっていて、合計七名なんですね。七名、ここにおいでになるのですね。となりますと、いま総理は私に確かに条件を付しました。政治的なあるいは外交的な、軍事的なバランスというものを損なわないようにという前提で撤退には反対をしない、アメリカと韓国の相互の問題である、日本は介入をしない。にもかかわらず、ここで在韓米軍撤退反対とお決めになるとすると、この議連には七名、七閣僚入っておられる。大変なことに私はなると思う。これは明確な御答弁をいただいておきたい、国民の皆さんのために。いかがでございますか。
  193. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日韓議連にどなたが加盟しようと、これは国際間でずいぶん議連があるのですから、その点は余り神経質にならぬでおいていただきたいということを希望しますが、私は、この会合で撤兵反対という決議ですね、これはちょっと問題があるのじゃないかと思うのですね。私はこう言っているのですから、少なくとも、わが自由民主党の議員におきましては私の考え方を体してやってもらいたい。つまり撤兵問題は、これは米韓間の問題である、わが方が介入すべき問題ではない。わが方の意見としては、朝鮮半島の微妙なバランスが失われないようなことを希望する、こういうことなんですから、それを体して行動してもらいたいという考えを持っております。
  194. 大出俊

    ○大出委員 それでは念を押しておきますが、少なくとも福田さん、総理がそうおっしゃったのですから、福田内閣に列せられておる閣僚の皆さんは、閣内不統一という問題が起こらぬ限り、在韓米軍撤退に関して御賛同にはならぬはずだ。これは一人一人お聞きしなくたって――総理はいま一人一人聞けと言うけれども、時間がなくなるだけですからね。右総代でひとつ責任を負いますか。
  195. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 閣僚の行動につきましては、閣僚は私の意を体して行動するということを確信します。
  196. 大出俊

    ○大出委員 この点だけは明らかにしておきたいと思いまして質問を申し上げたわけでありますが、私は、いまのカーター政権の考え方というものは、ブルッキングス研究所の、いまに始まったわけじゃありませんが、累次にわたる分析を見ましても、二年間ぐらいのところを見越して、何とかソビエトとの関係もSALTIIなどというものをめぐって調整をしたい。さらに中国との関係においても、台湾問題がありますけれども、もう一歩進めた形で講和ということに持っていきたい。あわせて、人権問題で韓国を責めておりますが、片や北に対しては相当手を尽くしたチャンネルをお持ちのようである。すでに相当きわどいところまでいっている。一つ間違うと、そう遠からぬときに話が始まるんじゃないかとさえ思われる。なぜならば、ワシントン・ポストなどはすでに北の共和国の平壌に送る記者の選定までしているという事実がある。となってくると、七二年当時の雪解けという状態だって出てきかねない。そういう大きな新しい国際的な枠組みというものを頭に置きながら進めていると思っている。簡単に撤退と言っているわけではない。だから、そういう意味で、総理答弁で当面了解できるわけでありますけれども、ぜひひとつ、対国民という問題でありますから、やたらどうも、とたんに防衛庁の皆さんはわいわい始まる、外務省の方々は勝手にいろいろしゃべられるということになると、説明がないのだから国民は迷う。これは慎重にお願いを申し上げておきたいと存じます。  次に、日韓問題について続けて質問をいたしたいのでありますが、先ほども公明党の坂井さんからお話が幾つか出ておりましたが、私も実はこの国会に、小林進議員からも話がありましたように、やはり日韓問題調査特別委員会、そういうことでも結構でございますが、おつくりになってしかるべきであろう、御賛同を得たいと思っているわけであります。  そこで、一番最初に金大中氏の事件につきましてお伺いをしていきたいのであります。当時の田中伊三次法務大臣その他、私が当時金大中問題の質問を累次いたしました当時から私は大変に疑問に思っていた。そこで、アメリカにおいでになります韓国人の文明子さん、このジャーナリストの方が、十三日のわが国新聞に幾つか朝刊に大変大きく載っているわけでありますけれども、この人が、金在権当時の駐日大使館の公使、この方にアメリカにおきまして細かく聞いた。この金在権氏が、韓国の中央情報部のかつての部長でございました、この金在権氏の上司でございますが、「金炯旭元KCIA部長に語ったところによると、」ということで細かい記事がございます。大変に詳しい。私も細かく調べていた一人としてなるほどと思う点がたくさんある。  そこで、この記事によりますと、これは、金在権氏はその後朴大統領以下の方と反りが合わぬということで、アメリカに行きまして、アメリカに移り住んだようでありますが、ここで明らかにされておりますことは、今回のこの金大中事件というのは、金在権氏の話によると、朴正煕大統領が頂点でこの拉致作戦を命令をした。李厚洛KCIA部長、この方が命令を受けて、作戦全体の監督は金致烈同次長、そしてKCIA本部で作戦総指揮をとったのは李哲煕同次長補、そして東京における拉致グループの責任者は金在権公使その人、それにソウルから特派された尹振元、この方はKCIA工作第一団長だそうでありますが、実戦指揮をこの人がとった。そして金大中氏が梁一東民主統一党党首と会談をした東京のホテル・グランドパレスを襲って金大中氏を連れ去った。  この拉致の実行者は、尹英老KCIAソウル金浦空港責任者から転じた駐日大使館参事官、その方と、それから現場に指紋を残した金東雲駐日大使館一等書記官、柳春国同大使館二等書記官、劉永福――劉永福さんは当時大きな問題になりました。この人は横浜の韓国総領事館におられる方であります。こういうことになっているのだということで、大変細かく――こんなに細かく普通じゃわかりません。  ところで、私は、この問題について、まず承りたいのは、警察庁の三井警備局長だと思いましたが、六名をマークした。この中の金東雲氏は指紋を残した、こういうわけですね。いま私が読み上げました名前、ちょうどこれは、こっちに来なかった人を除きますと六名になる。この方々の名前を御存じかどうかということ、また、関心をお持ちになったかどうかということ、いまだにどうもKCIAの犯行と断じかねておられるそぶりの答弁でございましたが、まずもってそこから承りたいのであります。
  197. 三井脩

    ○三井政府委員 先般お答えいたしました、この事件についての犯人はおおむね六名とわれわれの捜査の結果考えておりますが、このうちの一名については、いろいろの証人その他の関係で、金東雲が容疑が濃いと考えております。あとの五名は名前その他全くわかっておりません。もとより証人あるいは被害者、目撃等がありますので、人数は六名とわかりましたけれども、それの身長その他の一応の特徴というのはわかりますけれども、これがだれに当たるのかという点については皆目見当ついておりません。したがいまして、けさの新聞にありました名前の挙がっておる六名と、このわれわれの見ておる五名と、どういうように関連するのかという点については、結びつきは全く現在のところつかめておらないという現状でございます。
  198. 大出俊

    ○大出委員 これは金在権氏などは当時日本におった公使でございましょう。名前ぐらい当時からわかっていたはずでしょう。横浜の領事さん、この方だって、劉永福さんだって、当時これは問題になった人でしょう。あなた方はそんなことを言うけれども、私だって当時調べたんだから。いまの答弁は、あのころのあなた方の答弁より大分後退しているじゃないですか。捜査を続けていると言ったんじゃないですか。これはまことにもって不可解な答弁を承ることになる。しかも、実はこの金在権という方がアメリカにおることは――ここに私、持っておりますのはフレーザー委員会、先ほども話が出ましたが、フレーザー委員会の議事録ですよ、原文です。英文と私が暇を見て訳したのと両方ありますが、原文です。この中に書いてあることと文明子さんが言っていることがぴたり合っているところが何カ所もある。レイナード氏がここで言っていることの中にも関係がある。レイナード氏がここで言っている、この中にも、このレイナードさんという人はニューヨークで会議をやっていて、ここに書いてありますが、十一時ごろに、これは時差があるんでしょう、同じ八日の十一時にこれを聞いている。すぐこれはKCIAのしわざなりということで手を打っておられる。ところが、残念ながらこの事件が起こる前、数週間の間、つまりこの拉致事件という陰謀、「アプロット ツー キドナップ」とちゃんと書いてある。「キドナップ ヒム」、つまり、金大中氏を誘拐をするという陰謀についての何らの情報を持っていなかったが、これはKCIAのしわざなりということで、生命の安全をすぐ保障しなきゃならない。アメリカの政府が、「ディープリー コンサーンド」と書いてありますけれども、「ジス マンズ セーフティー」、まずこの金大中氏の安全をアメリカ政府考えなければいかぬということで行動を起こしている。情報はなかったが、すぐ行動を起こしている。そして勧告の警告声明を出して、そしてアメリカの在韓大使館から高い地位の方が直接韓国政府に物を言いに行って、足に重荷がついたのをとめさした、大阪から船に乗せられて縛られて、全部証言していますよ。  文明子さんの言っているこの最後のくだりのところというのは、文明子さんがここに書いているのとびたり一致している、そんな不的確な情報じゃない。しかも、金在権氏はアメリカにいることはわかっていた。なぜならば、このフレーザー委員会で名前を変えてアメリカにいること、ロサンゼルスにいることをレイナード氏がちゃんと当時証言をしている。金基完という名前でロサンゼルスにいるとちゃんと証言している。これは外務省でお持ちの議事録なんだからあなた方だって持っているはずだ。それならば、あなた方に熱意があるならば、金在権氏が話しているこの中にも載っているのだから、なぜ一体調べる気にならない。もう一遍聞きますが、いまの答弁なんというものは全くひどいもので話にならぬ。答え直してください。
  199. 三井脩

    ○三井政府委員 いまお名前を挙げられた六名ですけれども、そういう人の名前は金在権が当時公使としておったとか尹英老が参事官としておったとかということは私たち知っております。ただ、犯罪の捜査として、この事件についてそういう人たちがどういう容疑があるかという観点から捜査をいたしましたところその結びつきが出てこない、したがって容疑を持つに至っておらない、こういうことでございます。  それからまた、いままでも金布権が当時この事件に絡んでいるのじゃないかという点につきましては告訴、告発――告発という形でわれわれもそういう趣旨は伺っておるわけでありまして、そういう点からも捜査をいたしておるわけでございます。  なお、今回新聞に出ました文明子女史の話につきましては、金在権氏自身が自分でやった、こういうふうに言っておるという点がいままでと違うわけでありまして、いままで今度言われておった内容のことはいろいろ言われております。私たちもこれを捜査上参考としておるわけでございますけれども、本人が言っておるという点が新しい点でございます。ただ、あれを見てもわかりますように、金在権本人が文明子氏に話したのではなくて、金炯旭氏に話したのを文明子氏が金炯旭氏から聞いたという意味では二重の伝聞ということになっておるわけでございまして、しかしこういう点につきましても、ああいう報道もあることでありますので、私たちが今後の捜査の中でこれを処理してまいりたいと考えております。
  200. 大出俊

    ○大出委員 それではアメリカにおられる金炯旭さんの居どころは明確なんだから、あなた直接何でおいでにならない。それから、金在権氏の御子息さんがちゃんと大学にいっておられるのですから、そこまではっきりわかっておるんじゃないですか。居所を変えているといったって連絡があるんだから、子供なんだから。あなた方何でしからは一そこまでの熱意がなければならぬでしょう。さっき法務大臣主権の侵害事件だとおっしゃっているでしょう。それならなぜこの記事について、角度が変わっているのだから、そこまで努力をなさらぬのですか。おやりになりますか。
  201. 三井脩

    ○三井政府委員 昨日の新聞報道で初めて知ったわけでございますので、その点につきましては今後の捜査、事案の解明という観点から十分に考えてまいりたいと思います。
  202. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと法務大臣に承りたいのですが、いま三井さんからそういう答弁がありまして、そういうことを十分に考えていきたい。つまり、私の言っているのは、行って直接――どうもレイナード氏の発言というのは、もう時間がありませんから深く触れませんが、向こうのアメリカ側との連絡をいろいろ私なりにとりましていろいろ調べてみました。そうしたところが、この新聞記者の方や日本の議員さんに話すときに待ってくれという条件がついているのですね。ちゃんと相談をしている人がある。ライシャワー前駐日大使とかコーエン教授に調べてみるとちゃんと相談している。その上でレイナード氏は話している。このコーエン教授だとかライシャワー氏というのは民主党のいまの政権の背景におる中心ですよ。コーエン氏なんというのは、民主党内閣になったら国務長官じゃないかなんて言われた人ですよ。そうでしょう。そうすると、不用意な発言じゃない。そうだとすれば、あなた方は当然これはいまの金炯旭氏だとかあるいは金在権氏だとかアメリカにいるんだから、やはりこれは直ちに手を打つべきですよ。いかがでございますか。主権の侵害にかかわる問題ですから、大臣、いかがでございますか。
  203. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういうような報道があったことについては重大な関心は持っておりますが、いまあなたがおっしゃったように、そのライシャワーさんにレイナードさんが相談をされてからやったとか、あるいはその他の重要な人物と相談をしてからやったというお話でございますが、それだからといってその事実自体について、それはもう間違いのないものであるということになるかどうか。やった本人が、実はおれがやったんだ、こういうことを言えば、これは問題ございません。しかし、それを聞いた人がまた新聞社の文さんという女史に伝えた、こういうことがいま出ておるのはあなたも御承知のとおりでございまして、まあまた聞きのまた聞きみたいなことになっておるわけでありますから、何も私はそれを否定するわけではありませんが、間接的なことでございますからそういう事実を十分に注視をしていく必要がある、かように考えておるのであります。こんなことを申し上げては恐縮ですけれども、海外のことでいろいろの問題が情報として出てきたからということで何でも軽々に動くべきものだとは私は思っておりません。やはり慎重にその事実を確かめた上で処理をいたすことが捜査当局としての責任である、私はかように考えております。捜査当局というのは何らかのことが出たからすぐに動くべきかどうか、事実というものを確かめてから動くというのが捜査当局の責任である、また義務でもある、こう私は思うております。
  204. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんからよけい言いませんが、金基完という名前でロサンゼルスにいるということをレイナード氏はちゃんと証言をしている。そのことは新聞にも出ているとおりで、いまになれば、この新聞に書いてある、ここにも載っている。そうすると、ただ単なる話じゃない。そうすれば、あなたが事実かどうかを確かめてからと言うのなら、事実かどうかをまず確かめることをやらなければいかぬじゃないですか。あたりまえじゃないですか。事実かどうかを確かめてみて、事実なら金在権氏に会うこともいいじゃないですか。金炯旭氏に会うことも事実を確かめる意味で必要じゃないですか。その上で事実ならば、嘱託尋問という方式だってあったじゃないですか。ロッキードだって海の向こうから出てきたのでしょうが。私が昨年の、いまから言えば一昨年の十二月二十六日にプロクシマィヤー委員会の議事録によって外務省に質問をした。山崎アメリカ局長は、ロッキードのホートン会長の指摘を私がしたら、まだ具体的な中身でないからそう調査できないということを言った。後になって私が、出てしまってから、あのとき言ったじゃないかと言ったら、いや大変申しわけない。そういう熱意じゃ困るのです、そういう状態じゃ、姿勢じゃ。だから、大臣、事実かどうかを確かめることから始められたらいかがですか。これだけの問題じゃないですか。
  205. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほど三井警備局長は確かめると言っておるのでございまして、私はそのことについて確かめるなと言ったわけではございません。その報告を聞いた上で措置をいたしたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  206. 大出俊

    ○大出委員 それじゃ、三井警備局長の言っておりますように、事実かどうかを確かめる、その報告を聞いた上でと念を押しておきます。だから私はやはり何かの委員会国会につくるべきだと言っているのですよ。たくさんいろいろな問題があるのだから。こういう席では時間がなくなるんだから。あなたがすらっと最初からそう答弁してくれればいいんです。  ところで、韓国にかかわる幾つかの問題を続いて承りたいのですが、住友商事が絡む肥料の不正輸入に関する摘発が韓国で行われている。ここに私が持っておりますのは、これは住友商事に通産省が事情聴取をして私によこした回答であります。大変に大きな違いがあります。これによりますと、アメリカ住友商事、これは資本は全額日本の住友であります。これが韓国に肥料の輸入をした。大変たくさんであります。ところが、ソウル地検が二十三日に一つの発表をいたしました。ここでは大韓航空の社長の趙重勲さん、問題の方でありますが、この方の問題は後からまた改めて御質問いたしますが、財界トップ四人の方、これが起訴されております。さらに農水産部長であるとかあるいは同部次長であるとか、たくさん逮捕されておりますが、との肥料の輸入をほぼ一手に買い占めていた太平連合の白承斌、この方が主犯だということになっている。で、実際の輸入価格よりも二六%も高く偽って、つまり韓国の農協その他から金を取った。この手口で七四年、七五年の二年間で不正にかせいだ金が七百八十万ドル。だから二十三億ぐらいですよ。二十三億から二十五億ぐらいになりますね。ところで、この差額を米国の秘密口座に隠した、ところが大韓航空の社長の趙重勲さん等はウオンで金を白承斌社長に渡して、隠したアメリカに行ってアメリカでドルをとる、こういう芸当をやっておった、だから一緒に起訴をされた、こういうわけです。  やり方はどうかというと、日本の住友商事は――この肥料輸出の大口でありますけれども、この子会社のアメリカ住友、大口でありますけれども、この地検発表の記事によりますというと、水増し請求を出している。つまり米国住友が韓国に肥料を売った。それを二〇%から最高三〇%ぐらいの水増し請求を出して、その差金をアメリカにドルで秘密口座をつくって隠しておいて――これは何に使ったかわかりませんよ。いろいろな問題があります、後から申し上げますが。そこに大変大きくかかわりを持っているのが実は住友だ、これは御存じでございますか。
  207. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま大出委員のお話は、新聞等によりまして知りまして、役所の方といたし一ましても直ちに調査を始めたわけでございますが、何といいましても韓国におきまするアメリカ法人の住友商事、これはダミー会社でございますけれども、その実態把握にはなかなか不明な点が多うございます。
  208. 大出俊

    ○大出委員 アメリカ住友、ダミー会社で不明の点が多い、とこう言う。ならば、疑惑がますます深くなるということになるじゃないですか。しかも、これは小林進委員質問をなさった。簡単な事件じゃないのですよ、時間がないから残念ですけれども。実は十四日に立って、さっき私が指摘をした日韓議員連盟においでになることになっていた大物の一人洪炳喆さん、この方は小林進先生が質問をなさいました。この人はアメリカのFBIやその他の訓練を受けているKCIAの方。この人は朴大統領に言われて議員に立候補した。この人は例の金大中事件のときに日本に来ていて、うろうろしているというとおかしいのですけれども、前からずっと、七月二十六日から八月十三日までおって、こうやっている、金大中氏の東京上野のタカラホテルの集会にまでそっと顔をお出しになっている、こういう方です。この人はアメリカでFBI、CIAの両方から特殊教育を受けている。この事件でこの方が逮捕されたわけですよ。  しかも、ここで肥料を太平連合が一手に引き受けて輸入をする。この方はその政治的根回しをなさった。それで五千五百万ウォン、約三千万、これを七四年、七五年当時受け取った。これが問題になって出たわけだ。十四日に立ってこうちへ来たら、金大中の問題もあるので、私もそれなりにこの人に間接的に聞いてもらおうと思って実は待っていたわけです。ところが、ぽんと逮捕された。最近よくあるんですね。文鮮明さんのやっているニンジンの会社、製薬会社、文鮮明さんは会長、ここの社長さんなんかが、アメリカで問題になったら、すっぽり逮捕された。こうなってくると、どうも私は予防検束じゃないかという気がするのですね。まことに不愉快。しかも韓国の、つまりある種の報道によりますと、ただ単なる肥料輸入会社の社長だけでできる筋合いのことでないと書いてある。これには大変な裏がある。これだけの差額の金づくりをしたのです。その金は一体どこに使われたか、アメリカ側だって注目している。朴東宮氏の問題がある。朴東宣氏はインドネシアLNGとも絡んで日本とも関係がある。ジャパンラインとも密接な関係がある。しかも、三光汽船の契約相手であるゴタス・ラーセン社の秘密代理人でもある。冗談になる問題じゃないのです。  そこで、この回答を見ると、きわめてよくこの住友商事は知っているが、一カ所だけ隠している。一九七四年から七五年の二カ年間、これは私に対する回答、文書になっている。「韓国への輸出に関し総額八九百万ドル」ですから、これを億に直しますと、八九と書いて百万ドル、二百六十七億になります。大変な額の取引、これをやっている。そして「太平連合は当方のオファーとの間に四%の差があった」と言う。よく知っているのです。四%だ。そして「太平連合は当方との取引で三百八十万ドル程度の差益を生じ、口銭として同会社に帰属した」、そこまで知っているのなら、当然その水増し請求をしなければおかしいのだが、それをやっていない、こう言う。ところが韓国のソウル地検の発表によれば、水増し請求が出ている。これは大変なことですよ。三百八十万ドル程度の差益、当方のオファーの価格より高い。差益を出した、太平連合が。三百八十万ドルといったら、十一億四千万円ぐらいになるのですよ。そうでしょう。こういうもの。じゃこの金一体どこへ、どういう約束になって、どうなったのか、疑えば切りがない。一体洪炳喆さんが向こうの受けざらなら、これはさっきダミーで疑いがいろいろ、あるとおっしゃるけれども、それならこっち側にも何かいなければ、日本の商社なんだから。おかしなことになりはしませんか。いいですよ。時間がないですから、待ってください。だから私は調査特別委員会か何かつくらなければいかぬと申し上げておる。お答えになってください。
  209. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたしますが、ただいま私の申し上げた一〇〇%の子会社であるから、その点で不明な点があるということを申し上げたのでありますが、大出委員の表現がちょっと、私かえって妙なふうにとられる、誤解がありますから訂正いたします。この点は数回にわたりまして住友商事から事情を、新聞報道の結果、聴取いたしました。そうして、これが韓国の太平連合を通じまして化学肥料を韓国に輸出しました。平均四%程度の高い価格で韓国農協に売り渡し、差額を口銭として取得していたものでございまして、なお住友商事アメリカは太平連合と韓国農協との価格交渉には関与せず、また現時点では太平連合と一切関係を持っていない、こういう報告でございます。以上でございます。
  210. 大出俊

    ○大出委員 これはひとつ承っておきますが、この問題が出てきたのは去年の十二月二十五日なんですよ。そしてこの捜査が伸びてきて、洪炳喆さんという議員さんが逮捕されたのは、これは今月の十一日なんですよ。その今月の十一日の発表に「住友商事外」になっているのです。これは住友商事が一番大きいのです。「肥料不正輸入事件は住友商事の子会社の米国住友商事などから」となっている。ほかのは書いてない。「水増し請求をしてもらい」ということになっている。「その差額七百八十万ドル(二十三億四千万円)を海外に積み立てた」こうなっている。「韓国では最大の財産隠匿事件でもある」こうなっている。いいですか、これはつい二、三日前――きょうは十四日ですか、二日前です。いいですか、そうすると、ここには関係ないというけれども、水増し請求を出しているのは住友商事の子会社と明確に書いてある。もしそうならば、住友商事の子会社が水増し請求をして不正な金の積み立てに一役買っていたとすると、これは捜査当局から言って、どういうことになりますか。
  211. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま大出委員からいろいろのお話を承りましたが、私の方では初めて承る話でございます。なおまた、住友商事を呼びまして質問をいたしました担当官もおりますので、必要があればお答えいたさせます。
  212. 大出俊

    ○大出委員 それではひとつ、御存じないとおっしゃるのだから仕方がないので、これは気をつけないと刑事事件まで構成しますよ。そう見ていい。しかも大変根が深い。  次に承ります。この韓国の地下鉄の問題、これなんかは、私は当時松浦利尚君と一緒にずいぶん調べた。もう疑問だらけです。しかも、決算委員会で松浦君が質問した。私は時間がなくてやりませんでしたが、、質問を二回にわたってしてみたが、疑問だらけ。何一つ解明できない。韓国の国会もこの地下鉄の事件に関して調査委員会をつくった、これもうやむや。だから、うやむやのままに終わっている。捨ててはおけない。そこへ持ってまいりまして李在鉉さん、これもまた福田さんに言わせると海の向こうの情報だとおっしゃるかもしらぬが、この人もおととしと去年、フレーザー委員会に出ているのですよ。大変確度の高い証言をしているという有名な人です。なぜならば、これは元在米韓国公報館長なんですよ。公報、つまり公の情報が入ってくるところですよ。だから、一番よく知っている、当事者なんだから。この方が、ソウルの地下鉄の問題については二、三割のピンはねがあったと明確に言っている。韓国の政府高官や有力実業家から得た信憑性のきわめて高い情報をもとに「ソウルの地下鉄の車両購入にからんではなはだしい水増しが行われ」ここは御丁寧で言いたくないのですが、しかし書いてあるのだから読ましてください。「朴政権と日本の韓国ロビー・グループが取引額の二割から三割に相当する金を折半したと聞いている」、これは書いてあるのだから勘弁してください。これは朝日新聞の朝刊、二月七日です。中身は細かく書いてあります。  そこで承ります。時間がありませんから簡単に行きます。これは名前が変わりましたが、海外経済協力基金と当時言った。いま国際と名前が変わっているのだと思いますけれども、一体幾ら金をお出しになったのですか、ドル援助で、つまり政府借款の形で。そこで、この地下鉄というのは日本連合というのが契約のこちら側です。向こうは韓国の調達庁です。一体、総額幾ら。私の手元にある資料によれば、百五十億円の支出、百八十六両の地下鉄の車両をつくる。その百八十六両というのは、日立が六十両、川崎重工が三十九両、日本車輌が三十九両、東急車輌が二十四両、近畿車輌が二十四両、こうなっているわけです。ちょうど四十五年、これのつまり工事が始まったのが。朴大統領三回目の選挙のときであります。このころには実は園田さんなども――官房長官、きょうはちょっと下を向いて寝ているようだから起こしますが、官房長官も韓国へこのときは行っておられたですよ、児玉誉士夫さん、町井久之さんらと一緒に。つまり、それは後から聞きますが――目が覚めたようですな、園田さん。どうも質問しているところを寝ておられるとおもしろくないものだから。  ところで、これを逆算して割ると、これは大変高いことになる。地下鉄の一車両がおおむね六千四百万円近いものになる。こういうことなんですが、ここのところ、ひとつまず事業団からお答え願いたい。
  213. 大来佐武郎

    ○大来参考人 この件につきましては、海外経済協力基金が直借として担当しておりまして、名前は協力基金は当時から変わっておりません。ただ、これができましたころは、私はまだ総裁をやっておりませんで、前任者の時代でございまして、総額、LAの金額は二百七十二億四千万円でございましたが、実行額は二百七十二億一千万円ということになっております。
  214. 大出俊

    ○大出委員 実はこれは協力資金に当時資料要求を出しましたら、経済企画庁から差しとめを食ったといってお出しにならない。不可解なんですよ、実は。借している金は国民の税金ですから。そうなると、さっき申し上げた日本連合、三菱商事が代表幹事、丸紅が副幹事、日商岩井、東芝、日本連合をつくっていますね。ここと韓国の調達庁。私は相手がこのときの出さない理由を、何で差しとめたんだと言ったら、相手は韓国だからと言う。だから日韓外相会議もあるのですからね、議員連盟だって外相会議だってあるのだから、何もおかしくないものならば、この間の契約を何でお出しいただけない。向こうの了解を得て、ひとつ出してください。お出しください。でないと、これの解明がつかない。なぜならば、いまお話を承りましたように、金を出した。出して百八十六両を百五十億円でつくった。だからこれを割りますと、一車両当たりどうしても六千万円超えてしまう。正確に言っておく必要がありそうですから正確に申し上げますけれども、これを見ると六千四百万円近いのですね。  ところで、日本の国内における地下鉄価格は、当時、これは二つ申し上げますが、一九七〇年十二月ですから、これでいきますと、東京都の購入価格、交流、直流ございますけれども、完成車で三千五百八十八万円、これが六千四百万円超えているのですね。これは放任はできない。直流、交流、値段は幾らも違わない。日本国内で何百万という差です。しかも、ここでもう一遍だけ念を押しておきますが、技術協力事業団、おいでになりますね。この方々が一九七〇年十二月、韓国においでになった。そしていまの問題の前提として、都市交通計画調査報告書なるものをお出しになっておる。間違いないですね。簡単に答えてください。
  215. 法眼晋作

    ○法眼参考人 間違いございません。
  216. 大出俊

    ○大出委員 この調査報告によると、何と地下鉄一車両は直流、交流二つに分けて、直流電車の場合には一億三千二百ウォン、四車両連結ですから、これを一車両平均に直しますと日本の金に換算して交流電車の場合は二千五百万、直流電車の場合には二千二百万、計画書ではこうなっている。改めてこれを出してください。そして日本連合と韓国調達庁の計画を改めて出してください。一体この倍になっている、一車両当たり三千万の金はどこへ行ったんだ。これは韓国は寒いから暖房に金がかかる。そんなことを言ったって、日本だって暖房ついているんですよ。交流、直流の切りかえに金がかかる。一千万かかったってまだ二千万足らない。どこか行っちゃった。そんなものは理由にならない。軌道が少しぐらい広ければ一体幾ら金がかかる。それも理由にならない。倍にはならない。したがって、この資料をどうしても出していただきたい。  確かに海の向こうの話だけれども、李在鉉という公報館長をやっていた、情報の衝にいた人から、二割から三割のピンはねがあるということを明らかにされて、朝日新聞日本の大新聞がお書きになったんだから、放任はできない。資料を出してください。いかがですか。
  217. 大来佐武郎

    ○大来参考人 本件につきましては、昭和四十八年の九月でございましたか、衆議院の決算委員会でも御質問がいろいろございました。当時、いろいろ日本の都営の地下鉄の車両の価格等も調べたわけでございますが、御承知のように、当時世界的なインフレもございまして、資材の価格が急上昇している時期でございました。ただいま大出委員は半額と申されましたが、東京でも同じ、もっと韓国と調達の時期が近いケース、八号線の場合は五千八百万円でございましたか、いまの韓国の場合と非常に接近しております。当時、基金といたしましても一応の価格チェックをしたようでございますが、それほどかけ離れたものではない。三千数百万という数字、あるいは事業団の調査は時期的にかなり前の数字でございます。
  218. 大出俊

    ○大出委員 私は、だから資料を出してくれと言っている。いいですか。同じ年度のものをここでちゃんと調べているんです。四十六年の、つまり東京都の広報室が発表した数字、四十六年八十二両購入している。これが三千五百八十四万円ですよ。四十七年――四十六年、四十七年、これはたしかインフレの時期だけれども、四十七年のものを調べれば三千五百八十八万円で、三万円しかふえていないじゃないですか。ちゃんと東京都買っているじゃないですか。一つも違っていないじゃないですか。全部これは資料をとってある。だから、契約をなぜお出しにならぬのですか。そして、あわせてひとつ積算の根拠たるべきものをお出し願いたい。いまのようなことは一つもおっしゃらない、当時の答弁ここに全部あります。議事録もある。そんなことはいま初めておっしゃる。この議事録は四十八年九月二十日。この議事録によると、皆さんの方は寒いところだから、軌道が少し広い、それから交流、直流の切りかえ、その三つしか言わない。それじゃ半分という理屈が成り立たない。いまになったらそんなことを言い出す。そのときは一つも、そんなことはだれも言っていない。出してくれませんか。時間がないので、積算の根拠を出してください。
  219. 大来佐武郎

    ○大来参考人 当時の四十八年の議事録をごらん願いますと、私が五千八百万円の例を申し上げた議事の記録がございます。後ほどチェックをいたしてお目にかけますけれども、この詳細な資料につきましては、当時の委員会でも御請求がございましたが、これは韓国と限りませんで、相手国政府日本の民間との契約に関する事項は発表できないという形になっておりますので、この数字の詳細な内容について契約書等の発表はできませんということを申し上げたわけでございますけれども、当時委員の方で一応の内容をチェックしたいということで、別室で御相談をしたことがございます。そのときに一応の御了解を得たように、私どもは思っておるわけでございます。
  220. 大出俊

    ○大出委員 その別室の話は私は知りません、公の委員会質問でございますから。皆さんは別室がお好きで、よくやっておられるからそういうことをおっしゃるんだと思うのですが、別室は危なくていけません。  そこで、別室の話を一つして韓国問題の結論を出したいのでありますが……(「別室で発表したのかよ、これは重大な問題だぞ、大出君」と呼び、その他発言する者あり)もう一つ同じ趣旨のものがありますから、後で改めていまの点は再度承ります。いまの別室の話は聞き捨てならぬ話で……。
  221. 大来佐武郎

    ○大来参考人 当時の議事録に基づいて御答弁申し上げます。  この議事録の中に、  ○宇都宮委員長 先ほどの松浦委員の資料要求について、大来海外経済協力基金総裁に発言を求めます。  ○大来参考人 先ほどの松浦委員からの御質問調査いたしまして、別室におきまして契約書については委員のお手元で御確認を願いました。 こういう議事録がございます。それから、この部分につながりまして、  一番最近の東京の八号線、成増-明石間につきましての車両一両当たりの予算価格が五千七百七十万円になっております。これはたとえば東西線につきましては四千三百七十万円、 こういうふうに、これはそのときの決算委員会の議事録でございます。
  222. 大出俊

    ○大出委員 この種の契約は国民の税金が財源になっているわけでありますから、やれ別室だとかちょうちんだとかいう、私はそういう不明朗なことにしないでほしいのです。ずばり出してもらいたい。いけなければ相手国に話してくれればいい。いまあなたが説明したことから言ったって、それでも約六百万違う、そうでしょう。五千万のものを六百万違えば一割以上違うでしょう。それじゃ非常に不愉快なことになる。なぜならば、時間がないから細かく言いませんが、ここに浦項製鉄所をめぐる重大な疑惑がある。これを一つつけ加えて言いますが、いいですか、最初この浦項製鉄所について話を持っていったのは住友商事なんです。韓国の政府の要路の方です。ここで名前を挙げるのは御無礼だから挙げませんが、住友商事に話をした。住友商事のいまの会長の津田さん、当時社長です。そして柴山幸雄社長、この人も同席していた。だから柴山幸雄社長と会長の津田久さん、ここで韓国側の言い分は、「本日うかがったのは、実は韓国政府が浦項に建設を計画している総合製鉄所のことについてです。韓国では初めての一貫生産方式ですが、その事業を住友商事に引き受けてもらいたい。おたくが窓口になって、すべてをとりまとめてほしい。」との開口一番の話。津田会長さんが「大きな話ですね。どういう計画なんですか。くわしく事情を聞かせて下さい。」と言ったら、それから説明をされて、「おたくに全部おまかせする代わりに、この浦項の事業費から少なくとも一割以上のカネをつくり出してもらいたい。」こう言うわけです。津田さんはびっくりする。韓国のその方は「一割以上のカネができるように手だてして、そのカネを韓国政権の方に献金してほしいのです。」ちゃんとここに書いてある。津田さんは「それは無理というもんです。このような大型プロジェクトには多数のメーカーが参加します。それらの企業に、こうした性質の、多額のカネをひねり出させることは難しい。」韓国の方は「何とかやってもらえませんか。」「とてもできかねます。」津田さんはきちっと断っている。その後、何回も来ているのですね、ここに書いてありますが。結局、この商談は三菱に行ったのです。三菱商事が担当することになって、三井物産、丸紅、伊藤忠、トーメン、これでつくられた、浦項の製鉄所は。  これはちゃんとした名前を挙げて、朝日新聞が日曜ごとに特集している「総合商社」というところで明確に実名で載せている。私もそれなりに責任があるから調べてみました。本当の話です。そうすると、三菱に行った、三菱の方でこの商談が成り立ったというふうに考えれば、一つ間違うと、同じように金はつくり出されているかもしれない。そこで記者の諸君は、田部文一郎三菱商事社長に会っておられる。津田さんはこう言っているんだがという話なんですね。そうしたら「ワイロの問題? 当該国のモラルに照らして、常識程度なのか、行き過ぎかということだろう」と、こう言っている。否定していない。  さっき私は住友の話をしました。お調べいただくことになりました。地下鉄の話をいたしました。いま答弁をなさいましたが、それでも六百万近い差がある。一車両についてですよ。一割を超えている。この話も一割だ。だから、私は、いまやまさにこの種の問題はうわさの段階は過ぎていると実は思っているのです。うわさの段階は過ぎている。ならばどうするか。対国民という意味で責任を負わねばならぬ。だから、私はこの津田さんという方にもこの席にお見えをいただきたいのです。柴山さんにもお見えをいただきたい。田部文一郎三菱商事社長さんにもおいでいただきたい。そうすればいやでもはっきりするじゃありませんか。韓国政府の方といったって、皆さんが話して韓国政府と話がつかぬことはないでしょう。  これは田中通産大臣に私が質問するのは妙だけれども、一等樹交勲章という一番てっぺんの勲章をおもらいになっているのじゃないですか、韓国から、朴さんから。本当の話ですよ。ここにちゃんと書いてある。  それから、さっきちょっと口にしたからついでに言っておきますけれども、これはここに書いてありますよ。田中龍夫さんが、これは偉い人と一緒なんですね、皆さん、佐藤栄作さん、椎名悦三郎さん、牛場信彦さん、岸信介さん、船田中さん、矢次一夫さん、田中龍夫さん、こうなっている。一等樹交勲章をお受けになっているでしょう。それだけ功績があったわけでしょう。きのうやきょうの仲じゃないんだから、お調べいただけばわかるでしょう。  園田さんだって、ちょうどこの地下鉄の着工のころに町井久之さんと一緒に韓国旅行なさったでしょう。官房長官、いかがですか。
  223. 園田直

    園田国務大臣 地下鉄工事のときかどうか全く存じませんが、韓国旅行はいたしました。町井さんや児玉さんと行ったわけではなくて、財界の方七名ぐらいと観光旅行をいたしました。
  224. 大出俊

    ○大出委員 もし違っていれば、これはここに書いてあるのが違っているのですから。朝日ジャーナルの昨年の六月十一日号でございます。ここにちゃんと、萩原吉太郎さんとか、園田さんとか、永田雅一さんとか、東亜相互企業の、これは朴東宣さんの関係で名前ばかり出てまいりますが、町井久之さんだとか、皆さん一緒においでになったんですね。野村証券の会長の瀬川さんだとか野村証券副社長の村田宗忠さん、たくさんおいでになっています。ちょうどそれが四十五年十一月ですから、同じころであります。つまり、そういう方々なんですから、これは韓国に話してくれればいいんじゃないですか、いまの資料を出すぐらいのことは。そうしてください。  次に、時間がなくなりますので、インドネシアのLNGに関する問題を少し聞かしていただきたいのであります。先ほどの資料要求は改めていたします。  このLNG問題も、私は大変に重大な問題だ、臭気ふんぷんというか、伏魔殿だという気がするのであります。調べてみればみるほどまことに奇々怪々であります。  それから一つ落としておりますけれども、ついでに、先ほどの海外経済協力基金の方に承りたいのですが、ソウルに半島ホテルというのがありますけれども、この半島ホテル、これは大きなホテルに建てかえるということで、五十億ばかりの金をお出しになっておりますが、後で一緒に答えていただきます。  まず、このインドネシアのLNG問題というのは、インドネシアの二カ所、アルンという鉱区がございます。北スマトラであります。こちらの方は一九七一年十一月、それからもう一つ、東カリマンタンのバダク、両方にガス田が開発をされた。これを日本に送ってくる。アルンのLNGというのは、年間八百万トンのうち半分を日本、半分を米国。それからバダクの方が三百五十万トン。だから、合計七百五十万トンのLNGを日本に送ってくることになる。これが民間の話し合いから始まって、ナショナルプロジェクトに発展をした。この間には中山素平さんであるとか田中清玄さんであるとか、いろいろな方が関係をなさっている。両角次官が当時政府を代表されたり通産、外務の両方の顧問になったりして行かれておる。こういう経過がございます。  そこで、時間がなくなっておりますので、ここに一体どのくらいの金を、つまり政府の責任における借款という形、それから輸銀融資という形でつぎ込んでおられるのか、追加融資を含めて簡単に御説明いただきます。
  225. 田中龍夫

    田中国務大臣 LNGにつきますただいまのお話、プルタミナとユーザー五社との締結の内容でございます。担当政府委員からお答えいたさせます。
  226. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 第一次と第二次、合計いたしまして十四億二千万ドルでございます。このうち経済協力基金から五百六十億、輸銀と市中の協調で十一億二千九百万ドル、ユーザーから九千百万ドルであります。
  227. 大出俊

    ○大出委員 四千四百億を超える金が投入されている。輸銀融資の方は、私に対する通産省の回答によりますと、一部輸銀と書いてありますが、実は追加融資以前のものにおいて八〇%輸銀と書いてあります。だから、ほとんど国民の金であります。  そこでまず一つ承りますのは、この問題をめぐって二つに分かれるわけでありますが、本来の二つの鉱区から入ってくるLNGの単価の問題と、契約がFOBじゃございませんので、したがいまして輸送するタンカーの問題がございます。そのタンカーの方の関係などをめぐりまして、ニューヨークの仲裁裁判が行われております。パーマ石油、これは英国の石油会社でありますが、パーマ石油のつまり内紛でございます。アラステア・ダウンという会長が、これは昨年の八月二十三日でありますが、仲裁裁判の法廷で、法廷記録に明確になっておりますが、証言をいたしております。これによりますと、高い地位にある日本の海運高官に三百万ドルの賄賂を贈った、こういうわけです。これは実はこれにアメリカのSECが注目して調査を始めた。この賄賂の行き先、これが以来いろいろ問題になっております。ところが、仲介者というのがはっきりしてまいりました。SECも調べておりますし、いろいろなところが調べております。仲介したのがバーミューダのトンネル会社フォンタス社、フォンタス社というのはだれのものかというと、ほかならぬ朴東宣氏であります。これは大変大きな問題になったわけであります。  ここで二人の方が証言をしております。一人はアラステア・ダウン会長、もう一人は会長ではない、社長であります。この裁判記録等についてお調べになったことがございますか。また、中身を御承知でございますか。
  228. 田中龍夫

    田中国務大臣 いまのような詳細な経過につきましては、よく存じませんので政府委員から答えさせます。
  229. 大出俊

    ○大出委員 簡単に答えてください。
  230. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先生御承知のように、インドネシアLNGはCIF建てで輸入いたすことになっております。したがいまして、輸送に関しましてはプルタミナ側が責任を持って折衝をいたしておるわけでございまして、御指摘のような事実について私たちとしては関知いたしておらないわけでございます。  ただ、リチャードソンがそのマラッド・タイトル・イレブンの適用に当たりまして、若干そういうことがあったやに新聞にリリースしておることは承知いたしております。
  231. 大出俊

    ○大出委員 この高田富之さんが出した質問が三木内閣当時ございまして、ここでも、CIF建てだから輸送についてはプルタミナが責任を負っているんだからわが方は関知せずという、きわめて通り一遍の木で鼻をくくったような答弁をしているのですね。文書で回答している。私の質問をここに書いたものがございますが、通産省からこれを書いていただいて回答を求めた。これに対する福田内閣の回答も同じことを言ってきておる。CIF建て、つまりCIFという契約だからプルタミナの側がパーマ・オイル・カンパニーを使って輸送するのだから、孫会社ですけれども輸送するのだからわが方に関係ない、こう言う。ところが、関係大ありなんですね。  まず第一に、さっきお話がございましたように、二億ドル、これがまず政府の責任における借款。金を貸した。あとは輸銀融資、八〇%輸銀、何と四千四百億を超える金、ほとんどこれは国民の税金。輸銀というのは、資本金は国民の税金ですよ。あとは運用部の金なんかです。そうすると、これによって日本はナショナルプロジェクトをつくって開発させているわけだから、その相手方が輸送を頼んだ会社なんだから、その結果いかんによっては日本の、しかも物価上昇の引き金にもなりかねない、LNG単価に響くんだから。そういう意味で当然かかわりがあり過ぎる、責任を負わなければならぬのに、そういう答弁をするというのは何事か。私は、これは後でこの問題をあなたの方でお出しにならぬというのなら、それこそ審議のしようがない、さっきもそうなんだが、その前に申し上げておきます。  もう一つ大きな理由は、このパーマ・オイルの子会社のまた子会社が契約の相手方、この契約の相手方の株主になっているのは一体どことどこですか。
  232. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 パーマ・ガス・トランスポーテーション社というのがプルタミナとの間に輸送契約を結んでおるわけでございますが、これはパーマ・オイルUK社の孫会社と申しますか、パーマ・オイル・タンカーズ社という、パーマ・オイルUKの一〇〇%子会社の子会社という関係になっております。
  233. 大出俊

    ○大出委員 あなた、そういうことを言うんですな。ガス・カンパニーというのは、アメリカのSECに指摘されて、トンネル会社と言われてあわててつくった会社じゃないですか。元の契約は、あなた、そんなことになっていますか。物事すべて逃げようとしちゃいけませんよ。プルタミナとパーマスト・イースト・ショッピング・コーポレーション、つまり、これがトンネル会社だという指摘を受けた。ガスはあわててつくったんだ。そうでしょうが。だから、このSECに指摘されたトンネル会社の株は、一体どこが持っているのだと聞いている。
  234. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 プルタミナが当初輸送契約の対象といたしましたのは、御指摘のとおりパーマスト・イースト・ショッピング社でございます。これはリベリア法人でございますが、株主はパーマ・オイル・タンカー八四・三七五%、オーバーシーズ・ナショナル・ガス一〇・六二五%。当時でございまして、まだ確認いたしておりませんが、そのほかにファーイースト・オイルが五%。このファーイースト・オイルにつきましては、その後、この五%の株式を売却する手続を進めておる。確認いたしておりませんが、昨年の七月、売却の手続を進める、こういうことになっております。
  235. 大出俊

    ○大出委員 これはここに明確な記録がありますが、ニューヨークの仲裁裁判所で明るみに出たわけですから、パーマ・オイル・ショッピング社というのはこれは全くのトンネル会社。パーマ・オイル・タンカーズが持っておる株は五七・二五%ですよ。うそ言いなさい。ストウ総裁の香港のエドナ、これが二〇%ですよ。日本の三井が中心になってつくったファーイースト・オイル、これが五%ですよ。冗談言っちゃいけませんよ、明確に調べたのだから。SECの側がここまで調査して出しているじゃないですか。あと少し入っていますが、そんなものは関係ない。
  236. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、昨年の八月二十日時点で当方が調査したものでございまして、その後の情勢についてはまだ十分確認いたしておりません。
  237. 大出俊

    ○大出委員 そういうこそくなことをするのですね。これはSECにたたかれたのです。あわててあなた方いろいろなことをする。もうトンネル会社ばかりつくっている、片っ端から。それこそトンネルだらけだ。話にも何にもならぬトンネル。(「やみトンネルだ」と呼ぶ者あり)そうだ、やみだ。全くのやみトンネル。  いいですか、もう一遍言いますが、いま私が指摘したようなパーマ・オイル・タンカーズ、パーマ・オイルの子会社、これが五七・二五%、それからインドネシアのプルタミナの総裁ストウ氏が持っておる香港の会社エドナ、これは悪名高い会社、これが二〇%、それから日本のファーイースト・オイル、三井中心です、これが五%。しかも出資額に応じて利益を分配するという趣旨の文書が交換されている。いいですか。したがってこのペーパーカンパニー、パーマ・オイル・シッピング社、SECにこれは指摘されたじゃないですか。皆さんの方は大騒ぎになったんだ。なぜならば、日本のこのファーイースト・オイルというのは、この契約書に出てくるんだ。証人になっておる。東澄夫、ファーイースト・オイル・トレーディング社、これが売り主のイブン・ストウ総裁と、買い主の関西のユーザー五社、この間に証人になって、プルタミナとの間の契約書ができている。このときに利益配分が決まっている。決まっているから、英国のパーマスト・シッビング社、後からパーマストと言っているのだけれども、孫会社一つつくって、全くのペーパーカンパニーでその株の割り振りを決めた。割り振りを決めて、日本側が五%の配当、つまり利益の五%の配分を受けるように仕組まれた。しかもこの会社の輸送契約を、このトンネル会社、パーマスト・シッピング、これがプルタミナと契約を結んだのじゃないですか。四十八年十二月三日、これが出発じゃないですか。これがさんざんっぱらたたかれて、SECでも大騒ぎになってたたかれて、利権配分会社である、利権配分トンネル会社であるとやられて、日本のファーイースト・オイル・トレーディング、東澄夫さんの、三井その他が中心になっている、インドネシアと全部やみトンネルがつながっている会社、これも利権配分の会社だと指摘をされて大騒ぎになったんじゃないですか。そういうでたらめな答弁をしてはいけませんよ、自信を持って調べているのだから。  まずもってこの二つルートがある。一つはこういう利権配分が決められていて、ジャパン・ラインが入ってまいりまして、タンカーのキャンセルという問題等をめぐって表街道ではパーマ・オイルから三百万ドル朴東宣が取ったことになっている。だが、SECが調査するとそうでない。流れていっている先は二つあることが明らかになっている。その二つの先、これは裁判所でも述べられています。香港のエドナ社、こっちから流れていっている贈賄のルートというものが一つある。それから例の朴東宣のバーミューダのトンネル会社フォンタス社、これを使って流しているのがある。これがSECで問題にした中心点なんですね。あなた方、この大変な利権、これが背景にあってハイ・シッピング・オフィシャル・イン・ジャパン、つまり日本の海運高官に三百万ドル、二回に分けて贈賄が行われている、この方。そして日本会社が株主なんだから関係がないことなんかない。それともう一つは、今度はタンカーの建造、パーマ・オイルがゼネラルダイナミックスにタンカーを七隻頼んでいる。七隻頼んでいるのだが、その一隻について五百万ドルというリベートが、これは大変前から業界の間で流されている。  ところが今度は船価の値上げ、つまり一億ドルで一隻のタンカーをつくることになっていた。これが昨年ゼネラルダイナミックスは一億ドルを一億五千五百万ドルに値上げすると言い出した。大騒動が起こったわけですよ。インドネシアのプルタミナとの契約の関係で、つまり当初契約というのは建造費が高くなったものを全部日本がかぶることになっていたのだから。いみじくも五〇%強の値上げなんだが、強の部分の五百万ドルというのは、この一隻のリベートの五百万ドルに当たるのだ。一億ドルの建造費を五〇%値上げをする。五百万ドルおまけをつけて一億五千五百万ドルに値上げをする。大騒動が起こったでしょうが。皆さんの方は大騒ぎをしてパーマ・オイルを東京に呼んだじゃないですか。呼んで、ユーザー五社を入れて値上げの相談をしたじゃないですか。それで覚書をつくったじゃないですか。この覚書さえあなた方は出さぬじゃないですか。それで二ドル三十三セントというとんでもない、ほかのLNGに比べて何と一五%以上も高い価格を決めたじゃないですか。ここらの覚書も契約も一切合財あなた方は出さぬ。タンカーに関する限りはCIFの契約だから日本関係ないとうそぶく。大変な四千四百億もの国民の金を投入していて、しかもその輸送部門の変わり方によって大変なLNGの値上げになることはわかっていて、そういう契約が結んであって、質問書を公式文書で出したって――高田富之さんは法律に従って出した。関係ないと言う。私が予算委員会質問するからと文書をやったって、あなた方は関係がないと言う。そういうことで一体審議はできますか。答えてください。
  238. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 何度も繰り返しますが、CIF建てでやっておりますので、輸送契約は直接にはプルタミナとパーマ・オイルで交渉したわけでございまして、日本側といたしましては、もちろん御指摘のように、運賃が高くなるということについては非常に強いケアをいたしておりました。そういったこともございまして、フレートのエスカレーションクローズを限定いたしまして、船価の上昇が輸送費につながらないように、昨年の追加融資をする際に、こちらとしても強くプッシュしたわけでございまして、相手国の政府による仕様あるいは規格の変更以外のものはエスカレーションクローズの対象にしないといったような措置を講じておるわけでございまして、パーマあるいはプルタミナとの輸送契約につきましては、直接的にはわれわれはタッチしておらないわけでございます。
  239. 大出俊

    ○大出委員 だから契約を出してくれというんだ。いいですか。だから契約を出してくれと言っているんだが、契約の第四条に輸送と揚げ荷第一項となっていて、ここに売り主はこれこれこういうわけで一九七三年九月二十三日付でプルタミナとパーマスト・イースト・シッピングでこういうふうに契約をしたと契約本文に載っているじゃないですか。関連があるじゃないですか、明確に。この契約書の中に含まれているじゃないですか。しかも、さっき申し上げたファーイースト・オイル・トレーディング、これもおかしな会社で利権配分会社と言われているけれども、これがこの当初契約に基づくこの契約書に載っているパーマスト・イースト・シッピング・コーポレーションの株主じゃないですか。株主でいてトンネル会社がわからぬはずが初めからないじゃないですか。SECに指摘される前にわかっているじゃないですか、利権の分け取りを相談したんだから。そうでしょう。だから出せないんじゃないですか、あなた方は。そうでしょう。河本氏がしきりに詰められて、あわてて、私がいま申し上げた昨年の八月、九月一日に覚書に調印したけれども、LNGタンカー一隻について船価が一億というこの当時の契約でいけば、上がった分だけ日本がかぶることになっているんだ。時間があれは後から説明するけれども、それを全部かぶる筋合いのものを、一億を一億五千五百万ドルと上げてきた。それは全部日本が輸入するLNGの単価にかぶるから、そうでなくたってたたかれてえらいことになるので、あなた方がパーマ・オイルを呼んで東京で会合を開いて、どういう条件で、半分だけGDが持つ、あと半分を日本とインドネシアが持つ、日本が三・五、インドネシアが一・五というふうにしたのか。三億七千五百万ドルの追加融資で前の契約を変えることに成功したと言っているけれども、これは大変にくさい。だからその覚書を出しなさいと言っているんだ。  いいですか、もう一遍言い直すけれども、プルタミナとの販売契約書、これは日本が相手なんだから出しなさい。それから、これに付随しているんだから、これに書いてあるんだから、パーマスト・イーストとプルタミナの間の輸送に関する契約書、そうして、昨年の八月から交渉を始めて、何とべらぼうに高い二ドル三十三セントものLNG単価を決めて覚書がつくられているんだが、この覚書、三つ出しなさい。四億からの国民の税金を使っているんだから出しなさい。それでなければ審議できやせぬじゃないか。もとの契約もなくて、修正しましたで済むか。
  240. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、販売契約でございますが、これはやはり私契約でございますので、政府として提出することはできません。  それから、輸送契約の方は、これは日本側が当事者でございませんで、プルタミナとパーマ・オイルとの関係での契約でございます。あわせて私契約でございます。そういった点から、われわれとしてはこの契約を提出できないわけでございます。  それから、覚書というものはどういった意味でおっしゃっておるのかはっきりいたしませんが、この輸送契約ができる段階においてわれわれは覚書の交換はいたしておりません。
  241. 大出俊

    ○大出委員 輸送契約じゃないよ、ごまかしてはいけませんよ。去年改めて東京に呼んでやり直しをしたんじゃないですか。それに覚書と名がついているじゃないですか。それを出せと言っているんだ。何も輸送契約の覚書、そんなことを言ってはいない。出さなければ審議ができないじゃないですか。河本通産大臣は田英夫君の参議院における質問に答えて、当初契約で確かに御指摘のような点もあったから修正をしたと言うんだが、当初契約も出さなければ修正契約も出さなければ、何を対象にして審議すればいいのですか、四千万もの金を出しておいて。しかもプルタミナ自体は二十七億ドルも赤字で、いつぶっつぶれるかわかりゃせぬじゃないですか。裁判が四つも七つも起こっていて、日本のオイルを積んだ船が差し押さえまで食っていて。冗談言っちゃいけませんよ。審議できませんよ、そんなことでは。国民に責任を負えない。質問できない。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいま大出君が資料要求しました。これは昨年末、解散前の国会で、私あるいは横路委員からもいろいろ資料要求をその点についてやっておるわけであります。これが出てこなければ、その疑惑を持たれておる本件の深層部に迫れない。参議院でも田委員からもやっていただいておる。だからこの資料の提出の方法について、私は理事会でじっくりと御相談申し上げたい。したがって、いまのところこの問題は留保させていただきたいと思うのです、先へ進めないから。どうでしょう。
  243. 坪川信三

    坪川委員長 田中通産大臣に申し上げますが、非常に重大な問題でもございますので、責任大臣としての見解をお述べいただきたいと思います。
  244. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまエネルギー庁長官が申し上げたごとく、本件は私契約でございますので資料をお出しできないということは、私も正当であると存じます。しかしながら、事も非常に重大でございますので、できますれば理事会にお取り上げ願いとうございます。
  245. 坪川信三

    坪川委員長 いま両委員からの御要求に対しましては、理事会において改めて十分協議をいたしたいと思います。  大出君の御質疑を続行願います。
  246. 大出俊

    ○大出委員 私はなぜこういうことを言うかといいますと、これは一昨日でございますか、やはりLNG問題の質問が出ました。これは大蔵省の資料によって見ますと、アラスカ、ブルネイ、アブダビ、いろいろLNGが入ってきているわけですね。ところが、百万BTUという計算をするのですけれども、このアラスカ関係が五十二・ニセント、この間共産党の方が問題になさいましたブルネイ、これは四十八・六セント、アブダビが一ドル、インドネシアが一ドル二十九セント。五十一年の一月から三月のCIF価格、これでいきますと、いま申し上げた契約時の価格が、大蔵省の貿易月報によりますと、今度はアラスカードル六十五セント、ブルネイが一ドル八十五セント、アブダビが一ドル九十セント、そしてインドネシアが、さっき申し上げた昨年のもので何と二ドル三セントを超えちゃった。もう一遍言いますよ。アラスカードル六十五セント。この間問題になったブルネイが一ドル八十五セン十。高いというのでタックスヘーブンのところにトンネル会社をつくったじゃないか。アブダビが一ドル九十セント。全部一ドル台ですよ。それが何とインドネシアは二ドル三十三セントなんですね。計算の仕方によっては二ドル四十セントになる。去年の改定覚書をするときに何でこんなべらぼうに高いものになったんだ。  なぜ私はこれを強く言うかというと、この間の話でも、これは関西五社なら五社、全部電気であり、ガスである。製鉄である。全部一般の家庭にはね返るじゃないですか。しかも業界を調べてみたら、百万BTU当たりの単価二ドル三十三セントというのは三年先の価格だというのです。そんなものをいま先取りして結ばれたら、ほかの方のものだって理由があれば上げたくてしょうがないんだ、全部高い価格にシフトしてくるというのだ。何でそんなことをするのか。ほかだって聞いてごらんなさい。迷惑がっているから。なぜそんな理由があるかというのだ、問題は。何かがなければそんなことになりゃせんじゃないですか。これは重大な疑惑だ。一隻つくるについて五百万ドルのリベート。一億ドルのものがわずか一年ばかりで一億五千五百万ドルにはね上がってくるばかなことはない、幾ら物価が上がったって。そこへもってきて、このSECが調べた限り、二つのルートで賄賂が流れている。一つはさっき申し上げたフォンタス。朴東宣。もう一つはエドナ社。プルタミナで働いていた元船長さんのロビン・ローという人がいる。この人がいまエドナ社を切り回している。この人を通じてもう一つのルートで金が流れている。  その両方の金がどこへ行ったかといえば、アメリカと日本だという。今月の月刊世界だって書いているじゃないですか。これはアメリカのリチャードソン商務長官が言っているのだ、朴東宣を仲介とする三百万ドルの不正。ここまで言っていれば単なるうわさじゃない。だから、この問題を解明するためには、こんな全く一方的な、船価は上がったら全部それは日本でございます。タンカーの輸送は向こうがかってにやります、それはリベートが幾らでも取れる、FOBじゃないのだから。しかも二つの価格を決めて、石油が上がったら青天井で上げます、石油が上がらなかったら一年たったら三%値上げします、どっちかをとります、そんな契約を結ぶばかがどこの世の中にいますか。みんな日本の国民がかぶるじゃないですか。それがたたかれて修正をしたと称するその修正の中身も、もとの契約も、新聞で見るしかないなんというようなことを国会議員にさせておきますか、あなた方は。そんなことで国民に責任負えますか。冗談言っちゃいけませんよ。そんなことでは審議にも何もなりゃせんじゃないですか。  だから、私は、日本・インドネシア、日本・韓国、この問題を徹底的に解明する委員会国会がつくることをなぜお認めにならぬのかと言う。さっきから申し上げておりますように、官房長官だって韓国を知らぬわけじゃない。まして通産大臣はよく知り過ぎておられる。七人の閣僚の方々が日韓議員連盟にお入りになっている。福田さんだって韓国はよく御存じである。そうだとすれば、何でもっとこの問題を御協力願えぬのかと私は逆に聞きたい。単なるうわさの段階は過ぎましたよ。そうでしょう。  ところで、最後に承りますが、さっきの半島ホテルに金を出しておりますか。
  247. 大来佐武郎

    ○大来参考人 これは全然出しておりません。一文も出しておりません。  なお、地下鉄の件につきましては、外国の注文であるとか一回限りの注文であるとか、多少日本の国内の場合と違いがございますので、その点つけ加えて申し上げます。
  248. 大出俊

    ○大出委員 それは言いわけは必要ないんだが、委員長、最後ですが、先ほど二つの資料要求を私はしたはずです。この地下鉄に関する契約、これも相手国は韓国ですから、隣の国なんだから、調達庁、そっちに了解を得れば出せるというのだから、得て出していただきたい。それから、いまのLNGの契約、出していただきたい。  それから、私は先ほど韓国の例を挙げましたときに、住友商事の社長さんの話もいたしました。お呼びをいただきたい。ファー・イースト・オイル・トレーディング・カン。ハニーなるおかしげな会社が三井さんを中心にできている。東澄夫さん、この方にもおいでをいただきたい。興銀の中山素平さんにも出ていただきたい。仲介をされた田中清玄さんにも出てきていただきたい。  皆さん現においでになる方々ばかりなんだから、その方々にお話しをいただければこの疑惑の解明はできなくはない。いまの政府の皆さんにやる意思がおありになるかならないかだけのことだ。幾ら私契約だって出させる方法は幾らでもあるじゃないですか。その意思がないんじゃ、幾ら国民が疑惑を持とうと、国会は責任を持って解明のしょうがないことになる。これは私はやめていただきたい。  総理に最後に承りたいのですが、私は、日韓問題にせよ、レイナード氏発言にせよ、LNG問題にせよ、金大中事件にせよ、地下鉄問題にせよ、今度の住友の問題にせよ、国民の皆さんは、新聞にこれだけ載っている限りは、たくさんな疑惑、疑問が、聞いてみればみんなそれは新聞で見ているのだから頭にある。そのことをやはりどとかで国会は責任を持って、どういう結果になるにせよ、最大限の努力はしなければ相済まぬという気が私はするのです。努力をしたができないことも、人間がやるのだからあり得るけれども、しかし、その努力をしようとしないという姿勢が見えることについて私は非常に不満足だ。そういう意味で総理に、これらの疑惑は払拭をしないと、与党、野党の問題ではない、政治不信につながりかねないから言う。そういう意味で、これはぜひひとつ前向きでお取り組み願いたいと思うので、最後に承っておきたい。
  249. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 民間の人などがいろいろ言ったこと、ことに韓国の問題なんかでいろいろなことが言われておる。これは日本の政治の信用にかかわる問題ですから、これは政府としては調査をいたします。捜査ということは、調査の結果でないと捜査権は発動しませんから、その辺はお含みおき願います。  それから、国会調査するかどうかということは、国会でお決め願いたい。国会の国政調査に対しましては政府はできる限り御協力申し上げます。
  250. 坪川信三

    坪川委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  251. 坪川信三

    坪川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  明十五日、新東京国際空港公団総裁日本銀行総裁、日本道路公団総裁及び日本住宅公団総裁の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明十五日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会