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1977-02-09 第80回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月九日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坪川 信三君    理事 大村 襄治君 理事 栗原 祐幸君    理事 澁谷 直藏君 理事 田中 正巳君    理事 細田 吉藏君 理事 安宅 常彦君    理事 楢崎弥之助君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       稻葉  修君   稲村佐近四郎君       越智 通雄君    金子 一平君       川崎 秀二君    木野 晴夫君       笹山茂太郎君    始関 伊平君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森山 欽司君    井上 普方君       石野 久男君    上原 康助君       大出  俊君    小林  進君       佐野 憲治君    多賀谷真稔君       藤田 高敏君    武藤 山治君       浅井 美幸君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       矢野 絢也君    大内 啓伍君       河村  勝君    塚本 三郎君       工藤  晃君    寺前  巖君       大原 一三君    田川 誠一君       西岡 武夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 福田  一君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       小川 平二君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      藤田 正明君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      西村 英一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 田沢 吉郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    今村 久明君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         防衛庁参事官  水間  明君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁人事教育         局長      竹岡 勝美君         防衛庁経理局長 原   徹君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         国土庁土地局長 松本 作衛君         国土庁地方振興         局長      土屋 佳照君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 旦  弘昌君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省証券局長 安井  誠君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      藤岡眞佐夫君         国税庁次長   山橋敬一郎君         国税庁調査査察         部長      系  光家君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      吉里 邦夫君         文部省体育局長 安養寺重夫君         文部省管理局長 犬丸  直君         文化庁長官   安嶋  彌君         厚生大臣官房会         計課長     持永 和見君         厚生省社会局長 曾根田郁夫君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         水産庁長官   岡安  誠君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  熊谷 善二君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         中小企業庁長官 岸田 文武君         海上保安庁次長 間   孝君         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君  委員外出席者         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     南部 哲也君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     塚本 三郎君   大原 一三君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     大内 啓伍君   西岡 武夫君     大原 一三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計予算  昭和五十二年度特別会計予算  昭和五十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 坪川信三

    坪川委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計予算昭和五十二年度特別会計予算及び昭和五十二年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  この際、国会予算修正問題についての昨日の政府統一見解につきまして、重要な問題でありますので、理事会協議により、この際特に野党各党発言を許します。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、予算修正に対する党の見解を公式に表明したいと思います。  わが党の予算修正についての公式の見解は、内閣法制局予算修正についての見解は、「国会予算修正については、増額修正を含めて可能と考える」としながらも、「国会予算修正は、内閣予算提案権侵害しない範囲内において可能と考えられる。」としている。しかし、財政における国会中心主義を明示する憲法趣旨、すなわち憲法財政民主主義原則からすれば、国会予算修正権については、法律上、理論上、限界はないと解すべきである。以上であります。  いま少しわが党の見解説明をいたしたいと思いますが、言うならば、きのうの統一見解は、簡単に言えば予算提案権政府にある、国会の方はその修正は限定的にできるのだという、行政を上に置いた考え方であります。わが党の見解はその逆でありまして、基本的に、憲法趣旨からしても、予算修正権国会にある、しかも限界はないのだ、そしてあと何ほどかの制約はあるであろう、簡単に言えばこういう逆の考え方であります。  この国会における予算修正権の問題は、古くて新しい問題である。なぜ新しいか。これは現実に、野党各党は一致して本予算に関する修正、つまり一兆円減税をすべきだという立場に立っておる。これが現実の課題としてある。しかも、昨年末の総選挙の結果生まれた与野党伯仲のこの国会の情勢である。そういう背景においてこの問題が新しいと私たちは判断をしておるのであります。  特にわが党は、戦後一貫してこの提出予算に対する国会修正権問題を論じてまいりました。新しいところを見ましても、過去十年来、基本的に、数回にわたってこの問題を予算委員会においてもやっておるのであります。  たとえば、わが党の横山委員が、四十三年二月二十六日の衆議院予算委員会において、閣議決定後における予算修正問題について論争をいたしております。あるいはまた四十五年三月三日、参議院予算委員会において、わが党の鈴木強、亡くなられた木村禧八郎両氏がやられております。あるいはまた四十六年一月三十日、衆議院予算委員会において、辻原委員が、まさに昨日問題になった款項等も含めて論議をやっております。特に公明党の矢野書記長も提起された、例の昭和二十三年二月二十六日の両院法規委員会における議長への勧告の問題は、四十五年三月三日の参議院予算委員会において、亡くなられた木村禧八郎氏が、この勧告を明らかにしながら政府見解を求めておるところであります。  で、昨日の政府から示された統一見解なるものは、国会予算修正権解釈の問題について、行政府、特に内閣法制局が一方的に判断をして、あたかも確定解釈について、それが専権事項であるかのごとき、そういう認識のもとにこの問題を扱っておる。これはまさに行政府立法府に対する挑戦以外の何物でもない。立法府に対する行政権侵害です。特に行政府といいましても、その中で予算編成について絶対的な力を持っている大蔵省の今日の立場からすれば、むしろ大蔵官僚立法府に対する侵害であると断言せざるを得ないのであります。断じてわれわれは容認できません。  しかも、いま申し上げたとおり、過去何回も論争が繰り返された。政府はその都度見解を部分的には変えてきております。しかし、それでもなお、今回の統一見解はまた新しい拡張解釈が加えられた。ということは、いままでは款項等新設問題が主として論じられた。今回の統一見解においては項内容修正まで否定するという拡大解釈が新しく今回加えられた。で、私は、そういう点において、どうしても昨日出された政府統一見解再考要求しなければならない。しかも、皆さん方が出されたきのうの統一見解によりますと、「内閣予算提案権国会審議権調整の問題であり」、これは、きょうは質疑ができませんけれども、だれがやるのですか、一体。どちらに主導権があるのですか。あるいはまた「国会予算修正は、内閣予算提案権侵害しない範囲において可能と考えられる。」、こう言っておりますけれども侵害しないかどうかも、その範囲については一体だれが判断するのですか。あるいは「一般的に言って、内閣予算提案権との関係からむずかしかろうと考える。」というのは一体どういうことなんですか。あるいは、その次に、「また、かりに、項の新設でなくても、既存の項の内容が全く変わってしまうような修正であれば、同様の趣旨から問題がある。」、問題があるとは一体何ですか。それから一番最後に、「個々のケースに即して判断すべき問題である」、これはだれが判断するのですか。すべてあいまいである。  われわれは、いま申し上げた判断の主体は、まさにこれは国会にある、われわれにあると判断をするわけであります。つまり、あなた方が言っている予算基本的性格に重大な変更を来す修正であるかどうかのそういう判断というものは国会において検討すべき問題でありまして、したがって、款、項等新設の是非問題も同様に国会判断すべきものである、このようにわれわれは考えます。これがまさに昭和二十三年二月二十六日の両院法規委員会議長に対する勧告趣旨である、そしてそれは今日までずっと生きておる、これがわれわれの見解であります。  予算の成立は国民が一日も早く待っておるところでありましょう。したがって、私どもは本問題について決着を早くしたい。そういう点で、昨日の統一見解に対する再考要求するとともに、その再考に対する政府の回答をでき得ればこの総括審議が終わるまでに出していただきたい。  以上であります。(拍手
  4. 坪川信三

    坪川委員長 竹本孫一君。(発言する者あり)御静粛に願います。
  5. 竹本孫一

    竹本委員 民社党を代表いたしまして、五つのポイントを申し上げたいと思います。  第一は、資源有限時代とよく総理は言われますけれども憲法も有限であるということであります。明治憲法並びに明治憲法的解釈は、昭和のいまは通じない。これは限界があるということであります。  第二は、新しい日本国憲法によれば、四十一条でございますか、国会国権最高機関であるとはっきり書いてありますので、先ほど来いろいろ御議論が出ましたけれども、だれが判断するかというような問題につきましても、国会国権最高機関であるということを根底に置いて考えたいと思います。  八十六条で予算について審議権国会にありますけれども審議をする場合に、修正は一切できないといったような審議の仕方というものは考えられません。また、国会予算否決する場合もあるわけですから、全部の否決はできるけれども、一部の否決、否定はできないということも論理に合いません。そういう意味において、国会は、予算を減額する、あるいは項を廃除、削減するという消極的修正も、あるいは予算をふやす、あるいは項を新設するというような積極的修正もともに法律的には可能であると考えます。  第三に、内閣憲法七十三条によりまして予算提案権を持っている、これはまた厳として侵すべきものでないのでありますから、国会修正権についても内在的な制約があるというふうに私どもは考えております。そこで、一方の提案権、一方の審議権、この二つがあるのでございますから、それをどう調和させていくかということは、憲法は初めから総理の言われる協調連帯考え方に立って、両者の協議協力というものを前提にして考えておる、私はそう思うのです。そういう意味で、総理の御答弁の中に、ちょっと理解しかねたのでございますけれども解釈は厳格でなければならぬ、運用ケース・バイ・ケースである、こういう考えのようでございましたけれども、私はそれはちょっと違うと思うのです。憲法そのもの連帯協調に立っておる。最高機関編成権とこう二つあるわけですから、その調和憲法は初めから前提に図って考えておる。したがって、憲法解釈そのものが両方の調和を図るようにでき上がっておるんだ。それに従って厳粛に運用すればいいんで、運用で広げたり縮めたりすることはできない、むしろ憲法解釈は厳格でなければならぬと私の方から申し上げたいと思います。  そういう意味に立って考えますと、この間の統一見解は、いまも御指摘がありましたけれども、第一に、お示しの「項の新設の問題については」というあの項は要らないことだ。あそこのところはない方が答案としてはりっぱですよ。筋も通ります。骨を折ってしかられるというやつだ。あれはない方がよろしいと私は思いますが、まああったから仕方がないが、特にその中で、いまお話もありましたように、項の新設は「むずかしかろうと考える。」と書いてあるのだが、きわめてむずかしい表現になっておる。憲法解釈から言えば、可能であるか不可能であるか、二つに一つしかないのです。ある場合には可能である、ある場合にはそれはできないんだ、そう言うならばまだわかるんですね。それを「むずかしかろうと考える。」というずいぶん謙遜した表現になっておるけれども、むずかしい表現でかえって混乱をさしておるというふうに思います。私は、二つの絶対的なものがありますから、その協調連帯の中で、ある場合には可能になる、ある場合には不可能になるというふうにして、「むずかしかろう」というような説明はかえって混乱させる。むしろそう言うならば、地方自治法の九十七条に書いてありますように、国会は増額して議決することを妨げない、しかし長の提案権は侵すことができない、ああいう解釈の方がよっぽどはっきりするということをひとつアドバイスしておきたいと思います。  最後に、こうした問題で、いまも要請がありましたように、政府もまたひとつ明確な、しかも前向きの結論を出していただいて、去年も一年間、御承知のように国会混乱政策不況経済は大変な混乱不況に陥りましたが、ことしはそういうことのないように、ひとつ政府はできるだけ速やかに、集中審議の終わるころにはあるいは集中審議の前に、予算総括の終わるころには結論を出していただいて、国会混乱によって減税問題あるいは景気回復の問題が政策不況に陥ることのないように御努力を願いたい。  要請をいたしまして、民社党見解を終わります。(拍手
  6. 坪川信三

  7. 寺前巖

    寺前委員 私は、日本共産党革新協同を代表して、昨日の国会予算修正についての政府見解に対するわが党の見解を述べたいと思います。  言うまでもなく、国会国民代表機関であり、国権最高機関であります。政府が提出したところの予算案件について、これを審議し、これを議決ないしは否決ないしは修正するというのは、当然の国会に課せられた責務であるとともに権利であります。これにあたかも制限を加えるがごとき見解というのは、この主権在民国会に対する挑戦と言わなければなりません。  今日国民景気回復国民生活防衛のための施策を切実に求めておりますが、今度の昭和五十二年度の予算案を見ると、依然として大企業本位公共投資重点型で、国民の暮らしと経営を守るには十分でないという見解をとらなければなりません。これからこれらについての審議が進んでいくわけでありますが、この審査の過程の中において必要とあれば予算修正ということも起こってくるのは当然であります。したがって、これから審議されていこうという当初において、政府がこういう見解をとるということは、ゆゆしき問題だと言わなければなりません。政府予算を作成して国会に提出する権限責務があることは、憲法の定めているところであります。しかし同時に、国権最高機関である国会が、先ほどから申し上げておりますように、議案として審議をし、議決または否決をするその権限修正権、これは当然のことであって、憲法第八十六条、国会法第五十七条の二並びに三、及び衆議院規則第四十七条に照らしても明らかであります。さらに、財政法第十九条も、国会歳出額修正する場合の財源措置政府に明確に義務づけておるのであります。  政府見解はまた、国会予算修正権を認めながらも、施策表現である項の新設変更はむずかしいとして拒否している。しかし、予算修正とは施策変更であります。施策変更のない修正はあり得ません。この見解を発展させていくとするならば、当然、項だけではなくして目についても、施策変更であるから修正できないという論に発展せざるを得ないことになります。これはまさに、国会修正権を全面的に否定することに通ずるものであります。  一方で予算修正権を認めながら、もう一方では最終的にはそれを否定するという政府見解は、きわめて自己矛盾に満ちた内容であり、その誤りは明らかであります。  これを現実的に見ても、たとえば防衛庁本庁予算の項を見ると、そこに潜水艦建造費というのがあります。一艦二百五十六億円もする潜水艦。こんなものはちょっとやめて、そうして国民生活に使えという国民要求は当然出てくるでしょう。ことしの予算を見ても、この潜水艦建造費三億九千百万円というのが出てきます。学童保育の方の予算を見ると、一億八百万円。これをやめろという施策変更を求めるのは国民の声として当然じゃありませんか。国会でもまたそれは問題になるでしょう。そうすると、政府見解によると、施策関係するということで変更できないということになっていくじゃありませんか。単に防衛に関する国会審議でも、予算に手をつけることができないというような、きわめて不合理なものにならざるを得ないのであります。  論理上も実際上も、かくのごとくにその矛盾は明白であります。政府見解は、まさに国会修正権審議権に対する不当な介入であり、国権最高機関であり国民代表機関である国会の機能を著しく侵害するものであって、断じて許すことはできません。  かつての明治憲法は、修正権について、廃除、削減に限られ、金額を増したり新たな款項を設けたりすることはできないとしておりました。今回の政府見解は、主権在民民主主義原則と全く相入れない、主権在君、天皇制時代明治憲法的発想の踏襲にほかなりません。  同時に、この考え方は、昭和三十五年二月二十二日の予算委員会での、当時の総理大臣、かつて戦前東條内閣商工大臣であった岸信介氏が、予算の「増額修正というようなことは、」「できないと解釈するのが適当であろう」との戦前からのこの考え方、それと軌を一にする反動的なものと言わなければなりません。私は、政府が昨日示された見解を速やかに撤回されることを強く要求するものであります。  最後に、わが党は、政府見解がどうあろうと、予算をどのように修正するかは国会自身が決めるものであるという自明の理を改めて強調するとともに、この政府見解には何ら拘束されるものでないことを明らかにして発言を終わります。
  8. 坪川信三

  9. 田川誠一

    田川委員 新自由クラブを代表して意見を述べます。  政府統一見解については新自由クラブとしてもこれを認めるわけにはいきません。  政府予算提案権を理由に国会修正権を大幅に縮小しようとする意図は、憲法に示された国の唯一の立法機関としての権限行政府が大きな制限を加えることになります。このことは与党とか野党とかという立場を離れて、立法府の一員として見逃すことのできないゆゆしい重大問題であります。  政府見解に対する反対の理由は、まず、政府の言うように、「国会予算修正は、内閣予算提案権侵害しない範囲」であるとするようになったならば、国会予算修正権が事実上奪われてしまうことになるからであります。政府見解が、「提案権侵害しない範囲」と言っているのは、一体その範囲をどこまで指すのでしょうか。政府の都合によってその範囲が伸縮自在に決められてはたまったものではありません。これでは国会立法府としての権限が著しく侵害されることになります。  また、政府見解によりますと「一般的に」と断ってはいるけれども予算修正の段階で予算案の項を新たに起こすこともむずかしいと言っております。これでは政府案に対して国会が新しい政策を打ち出していくことが不可能となり、立法府修正権行政府ががんじがらめに縛ってしまうことになります。  さらに政府見解が、修正によって項の内容が全く変わってしまうこともむずかしいと述べていることに至っては、断じてこれを認めるわけにはまいりません。  政府は、国会修正がどの範囲までできるかは具体的なケースに即して判断すると言っていますが、国会再開以来、野党の一兆円減税の主張に対して福田総理大臣が示しているあの硬直した態度、ひとりよがりの姿勢から見ますと、昨日の政府見解ではわれわれの予算修正さえも法的に不可能ときめつけられてしまうおそれが出てきます。  財政における国会中心主義を明示している憲法趣旨からすれば、国会予算修正権については、法的には限界はないものとわれわれは考えております。  しかし、この問題については憲法上、法律上いろいろ議論のあることも承知しております。  政府には、絶対多数の与党の上にあぐらをかいていた思い上がりの気持ちがまだ抜け切れていないように見えてなりません。いまは政府・与党が数の力で反対意見を押しつぶすことのできる時代ではなくなっていることを政府・与党は十分に認識し、昨日の予算修正に対する政府見解をもう一度謙虚に考え直すべきであります。  五十二年度予算案を早く成立させ、少しでも早くわが国の経済を安定させていきたいという気持ちを私たちは強く抱いております。だからこそ、政府は昨日の統一見解を撤回して、速やかに、遅くとも総括質問の終わるころまでには国会修正権を尊重する態度を改めて表明するよう努力することを要望して私の見解表明を終わります。(拍手
  10. 坪川信三

    坪川委員長 本問題に関し、ただいま各党からそれぞれの見解が申し述べられましたが、重要な問題でありますので、政府はその趣旨に沿って努力されるよう、委員長よりも要望いたしておきます。  福田内閣総理大臣
  11. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 委員長お話しのように、本件はきわめて重大な問題でありますので、慎重に、かつ速やかに検討いたしまして政府見解を明らかにしたい、かように存じます。     —————————————
  12. 坪川信三

    坪川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  日本住宅公団総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  14. 坪川信三

    坪川委員長 続いて、総括質疑を行います。矢野絢也君
  15. 矢野絢也

    矢野委員 昨日より、予算修正権に関しまして憲法解釈を歪曲した政府答弁で、本予算委員会が休憩になっておりました。各党の予定されました質問時間帯の変更や、理事会で長時間御協議を願ったことなど、委員長を初め与野党各党よりの御協力に対しまして心より感謝をし、御礼を申し上げる次第でございます。  私といたしましては、立法府予算修正権につきまして、款や項の付加修正政府提案権侵害である、このような政府統一見解に一向納得をいたしておりません。議会制民主主義の原点にかかわる問題でございますので、これは重大な、今後引き続き論議をしていかなければならない問題であると思います。私は、この件につきまして政府見解が発表されますときまで質問を留保し、次の質問に移らしていただきたいと思います。  一応、中断という形で質問があちらこちら前後しておるわけでございますが、最初に竹島の領有問題につきましてお伺いしておきたいと思うのです。  総理はこれにつきましては、わが国の領海拡大に関しまして、竹島は日本の固有の領土である、このように発言をされております。この発言は、私としても当然のことであると考えております。しかし、韓国側では、韓国政府、民間各界は一斉に強い反発をしておる。また、報道によれば、竹島に韓国が国旗を立て、コンクリート製のがっちりした建物、トーチカじゃないかなんて言われているわけでありますけれども、あるいは海洋警備隊が駐在しておる、このような報道がございます。  そこで、改めてもう一度政府の竹島領有権について確認をしておきたいとともに、十八日に予定されております日韓外相会談でこの問題が議題となるのかどうか。あるいは報道によれば韓国側は議題にしたくない、しない、このような態度のようでありますが、日本側として議題にしていく考えなのかどうなのか、この点について伺いたいと思います。
  16. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 竹島問題につきまして、先方の外務大臣が来日されるときに議題になるかどうかという点でございますが、先方の外務大臣はほかの用がありまして日本に立ち寄るということで、どういう議題になるかはまだ承っておりませんけれども、そのようなことで、初めから議題を決めて会談をするというようなことではないだろうというふうに観測しておりまして、ただいまのところでは竹島問題が提起されるかどうか、恐らくないのではないかと見ておりますし、私どもの方からいまとりたてて竹島問題をもう一度議論をするということも考えておらない次第でございます。
  17. 矢野絢也

    矢野委員 これは非常におかしな御答弁でありまして、これほど両国間の重大な問題になっておる、しかも意見が食い違っておる、こういう客観状況にもかかわらず、こちらからそういう問題を提起しない、これは一体どういうことなんでしょうか。総理からお答え願いたい。
  18. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 竹島はわが日本国の固有の領土でありますから、これはそういう主張をしておるわけであります。  そこで、領海が今度は拡大される。そういうことになれば当然この領海は拡大される、こういうふうに考えておるわけでありまして、それにつきましていま韓国政府の方から何ら意見は述べられておらない。新聞等でいろいろ報ぜられておりますけれども、あれは韓国の政党間においてああいう議論が行われているという報道でありまして、韓国政府の方からいま何らの意思表示があるというふうには聞いておりませんです。
  19. 矢野絢也

    矢野委員 おかしな話でありまして、現実に国旗が立っておるし、建造物があって、しかも軍隊が駐留しておる、こういう状況にもかかわらず、いまの総理のお答えでは、韓国政府は正式に竹島についての権利を、みずからの領土であるというこの権利を主張していない、韓国政府が正式に主張していない、このような御答弁であるやに聞こえますが、そのとおりですか。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういうことじゃないのです。つまり、領海十二海里、このことについて私が本会議において発言をした、あれについて韓国の新聞等でいろいろ反論がある、そこで、日本の方の新聞でもそれが転載されておるというが、しさいに検討してみますると、その反論というのは韓国の政党における反論である、政府側でこの反論をしておるということではないのだという、当面の十二海里問題についての私の国会における発言について私はいま申し上げた、こういうことでございます。
  21. 矢野絢也

    矢野委員 それじゃ日本政府として、この問題について正式に韓国政府協議をし、会談をするというつもりはいまのところない、こういうことですか。
  22. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 領海が十二海里になると、政府はそのような方針を決めておりますが、そういう点につきましては先方とよくお話し合いをしたいと思っております。  ただ、竹島の領有問題につきましては、長い間の大変むずかしい懸案になっておりますので、いまこれをまたここでもう一度領有問題としてこれに取り組む、まだそこまで考えていないということを申し上げておるのでございまして……(「固有の領土だと言っておる」と呼ぶ者あり)固有の領土という点につきましては、わが方といたしましても、順次巡視艇で巡回するとか、また外交チャスネルを通じましてたびたび抗議を申し込んでおるところでございます。  ただ、この領有問題に決着をつけるというような意味で会談をするということは、この際そこまでは考えていないということでございます。
  23. 矢野絢也

    矢野委員 領海問題で協議する、領土問題では協議しない、こんなおかしな話があるでしょうか。よその国の領土にこちらの領海なんか設定できるはずがないのでありまして、領海問題を協議する場合、当然領土であるかどうかは議論されなくちゃならない、外務大臣のお話は全く矛盾しております。(発言する者多し)
  24. 坪川信三

    坪川委員長 静粛に願います。
  25. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 領海の点でございますが、三海里という領海が十二海里に拡大される、こういう点につきまして、これは竹島だけに限らず、問題があるわけでございますので、そういった点につきましては当然話が出るだろう、しかし竹島の領有問題、大変むずかしい問題、いままたこれを領有問題としてこの際問題にするにはちょっと時期が適当でないというふうに考えておる次第であります。
  26. 矢野絢也

    矢野委員 この問題引き続き同僚議員から議論していきたいと思っておりますが、結論的に総理に伺いたいのでありますけれども、日韓両国の感情的な対立の火種にしてはならない、私はこの問題そう思います。しかし、どうも日本政府の態度というのは、いま聞いておりましても納得できません。たとえば、国際司法裁判所のような第三者機関にこの問題をゆだねる、こういう気持ちはお持ちかどうか。  それからもう一つは、昭和四十年に韓国の李東元外務部長官が、交換公文の中に竹島は紛争処理の対象となり得ない、このように韓国の国会で答弁をされておるわけであります。この交換公文では、両国間の紛争は外交チャンネルを通じて解決とかあるいは調停によって解決を図るとかいうような趣旨があるわけでございますが、この交換公文の中で竹島というのはもう含まれておらないのかどうなのか。つまり、紛争処理の対象とはもうなり得ないという韓国の外務部長官の意見が正しいのかどうか。この二点について総理から最終的にお答えをいただきたいと思います。
  27. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 国際司法裁判所に対する提訴という点でございますが、これはわが方からそのような主張をしたこともあるわけでございますが、先方の応訴が得られない。また先方は応訴する意思もないということを言明しておりますので、これは事実上むずかしかろう、こう思うのでございます。そういうような問題も含めまして、先般の交換公文は広く表現をされておるもの、こう私ども解釈をいたしております。
  28. 矢野絢也

    矢野委員 それでは次の問題に移ります。  昨日途中になりました国債問題について結論ができなかったものですから、引き続き……。  いずれにしてもこの国債問題、低利回りの国債が大量に民間金融機関に滞留する、保有される。これは当然金融機関の収益というものを圧迫するわけですね。たとえば国債利回りについては八・二二七%ですね。長期プライムレートは九・二%ですね。それから五十年下期のそれぞれの銀行の平均資金コストでいきますと、都銀は七・九%です。国債は八・二二七%ですね。きわめてわずかな差しかない。あるいは地方銀行では七・九一、相互銀行では八・五五、信用金庫では八・七、これは国債利回り以上の資金コストになっておるわけですね。こういう状況において国債が大量に滞留するという状況は、これは当然民間金融機関として、こういったところは営利事業でございますから、貸出金利の引き上げあるいはまた政治的に預金金利の引き下げという動きが高まってくると見なくてはならない。つまり価格転嫁というものが庶民大衆や企業に押しつけられるということが十分予想される。このことについてどのような対処をされていかれるつもりか。  第二点は、それではいかぬということで、再び日銀の信用供与という形でのお金の供給量の増大、マネーサプライの増大、これが十分予想されるわけでありますが、これについてどのような歯どめをしていかれるか。これはインフレにつながり、国民生活を破壊することにつながってくるわけですね。この一点、二点についてお答えをいただきたいと思います。
  29. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 第一の国債の消化というかそういう問題ですが、これはやはり国債を喜んで消化してくださる、こういう条件の整備、これは大事だろう、こういうふうに思うのです。そのためには一般の金利水準というものが低くなる、そして国債が割り安でない、こういう状態がいいと思うのです。ところが、一般の金利水準は何だ、こう言いますと、これは預金金利、これが非常にむずかしい問題になってくるのです。ことに郵便貯金金利がなかなかむずかしい、そういうことでありますが、とにかく預金金利につきましても将来は何か考えなければいかぬ、こういうふうに考えます。  それからマネーサプライ、この問題につきましては、これはやはり経済の運営を適正にする、こういうことの一点だろうと思うのです。そして国債、金が要る、そういう際に民間資金を圧迫したい、民間資金がそう過剰にならぬ、過剰要請が出てこないというような経済運営、これが大事だ、こういうふうに考えます。
  30. 矢野絢也

    矢野委員 私は昨日来、この金融のメカニズムを通じてマネーサプライが増大し、かつ、インフレにつながるのではないかということを具体的に指摘しておるつもりでありますが、総理の答えは、希望的な願望をいまお述べになったにすぎないと思います。いずれにしても、そのような価格転嫁あるいはマネーサプライ増大、インフレ、これを避けるためには、根本的にはやはり政府の国債管理政策というものを転換する必要があるのじゃないかと私は思います。私の論点は、いままでのような管理政策よりも、市中の実勢価格に応じた国債発行条件の弾力化、これは金利体系の硬直化を防ぐことにもなるし、あるいは国債発行の自動的な歯どめにもなってくると思うのです。  いままでやってこられた国債管理政策、これの特徴を申し上げますと、一つは、発行する国債の種類の限定ということですね。これはもう言うまでもないと思います。もう説明したことです。もう一つは、利回りの低位固定化、できるだけ国債費を安く上げたいという立場から、利回りをできるだけ低く抑えたいという気持ちが強いようです。これが一点。  第二点は、銀行中心の国債割り当て発行、そして事実上の民間銀行が保有しておる国債の売買禁止、抑制、これは事実上の禁止ですね。そして期間が来たらこれを強制借りかえするということですね。  第三点は、取引所市場における価格維持政策、そしてその管理価格による日本銀行の買いオペ、こういったことが管理政策の中身だろうと私は理解しております。国債大量発行時代には、もうこういうやり方は事実上無理になってきたのではないか、こう思うんですよ。  まず、第二点で指摘しました、銀行が保有する国債の売買禁止、これはなぜそんなことになるか。これは、金融機関の国債は、仮に市中に売却される。そうすると、大量に出ていきますと、流通市場においてレート、債券価格が下がるという形で利回りが上がっていく。そうすると、利回りが上がれば、今度政府が国債発行すると、その高い利回りで発行しなくてはならぬということに追い込まれますから、できるだけ利回りが高くならないようにしてほしい。つまり、安い利回りでの固定化ができなくなってくるということです。だから銀行に売るなということになる。もう一つは、国債を償還するに当たって借りかえをしなくてはならぬ。国債整理基金特別会計による財源だけではとてもとても賄えない。そこで償還不可能ということになってしまって、借りかえをやる、ということになるわけですね。ところが、市場に流通してしまうと、持ち主が個人だとか普通の企業だとかになってしまうと、もう借りかえということができなくなってくる。銀行でまとめて持ってもらう方が借りかえができるということですね。こういう事情から、銀行の持っておる国債を事実上売るなというようなことになっておるわけですね。まず、こういう売買禁止をやっておる、この事実を政府は認められるかどうか。これが一点であります。  それからもう一つは、証券会社によって、大手証券会社七社が流通市場において協調買いをやる。これは大蔵省行政指導、はっきり言えば圧力ということですね。なぜそういうことになるか。それは流通面で事実上決まっていく国債利回り、これと発行レートが余り矛盾してくるとぐあいが悪い。低利回り、低コストの国債発行を非常に困難にしていく。だから、証券会社に事実上命令をして、一定の価格を維持するように協調買いをせい、しかもそれは、きわめてけしからぬことは、そのように価格を一定につり上げておくことによって、民間銀行が保有している国債、これを日銀に買いオペをしてもらうときに、そのときのいわば基準価格というものがつり上げられた形で設定できるわけです。銀行に損をかけなくても済む、あるいはまた買いオペでなくても会計上の損失というものを銀行に発生させなくても済むという、まことに御親切な配慮からそういうことが行われているわけですね。こういうような売却禁止あるいは管理価格を買い支えによってつくっていく、こういうやり方を事実やっておられるかどうか、これをまず確認したいと思います。
  31. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま銀行、証券会社、これに何を求めているかという点については後刻政府委員からお答えを申し上げますが、とにかくいま国債の問題は非常にむずかしい問題で、終局的には、矢野さんがおっしゃるように自由な競争というか、自由な流通ですね、自由な流通ということを目指してこれはやっていかなければ、本当の国債管理政策というふうにはならない。ところが、いまにわかに急な国債が出だしたというので、かなり無理をしておることも事実でございます。基本的には私は、金利政策、特に預金金利、ここに問題がある、こういうふうに考えておるのです。これは郵便貯金問題等がありまして非常にむずかしい問題だ。そういう問題はありますけれども、だんだん国債消化問題、そういう問題を進める上においてどうするか、基本的な点はどこにあるかという点を進めて、そして問題を解決していく、こういうふうにしたいと考えております。
  32. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 いまの矢野先生の御質問の中で、国債に対しまして将来大量発行——現在大量発行に入ったわけですが、大量発行下における国債管理政策というものが重要であるということにつきまして、私どもはそれは全く同感でございます。ただ、いままでも管理政策というものは当然に私どもで持っておったわけでございます。いま御指摘の中で、いろいろな点の御指摘がございましたが、技術的な問題でございますので私から……。  銀行について実は売買禁止をしているという御指摘がございましたけれども、そういう事実は全くございません。現に中小金融機関等につきましては相当の量を売却し、また買い込みをやっております。それから、銀行の中でも都銀あたりは実際上は市中から買う場合はございますけれども、売る例というものはほとんどわずかでございます。それはどういうことかと申しますと、いままでは量が少のうございましたから、それに対して一年以上たちますと日本銀行のオペの対象になり得るというようなこともございまして、市場に売る必要もなかったということが言えるかと思います。今後は、やはり御指摘のような点は、オペの対象に外れたものというものがある程度たまってくるということは考えられます。これにつきましては、私どもとして、先ほど御指摘のような管理、政策の一環として検討をしなければならない問題とは意識いたしておりますが、銀行に対して売るなというような指示をいたしたこともございませんし、これは事実認識の違いかと思います。  それから借りかえの問題でございますが、これは強制などはいたしておりませんで、世話人会等でよく相談をしながら、一部は償還をし、一部は借りかえという形をとっておりまして、要はこういうものは全部国債管理政策の中の一つとしてやっておるわけでございます。  それから取引所の価格でございますが、これは、いま私が申し上げました銀行の保有が九割、個人が一割でございますから、証券会社を通じて一割の国債を売っておるわけでございます。そうしますと、それは当然に個人投資家が売りたいというような時期が参りましたときに、それを扱う価格の基準というものがなくてはならない。また、それが大口な売りがあったときに、それに自由に任しておきますと、価格の低落というものが、ほんのわずかな量のために乱高下しなければいかぬ。これはまた個人投資家にとってみても避けなければならないことです。また、それは国債に対する信頼を失うことになりますから、世界各国ともそういうような形におきましてはいろんな組織を持っておりますが、私どもは、むしろ取引所において協調的な形で、場合によって買いがないときに証券会社が買いに応じ、そして後日売り処分をやっておるということでございまして、それがまた基準価格、唯一の国債の市場価格でございます。同時に、その市場価格は——大変長くなって恐縮でございますけれども、非常に流通性を持っておりますので、いま個人の国債というのは非常に売れております。それをごらんになっても、国債の管理価格というか国債の価格というものは、私どもは決して低位のものとは考えておりません。  それから買いオペをつり上げるためにというお話でございましたけれども、これは、市場価格というものがあります以上、日本銀行はその市場価格に従ってオペをやっておるわけでございますから、その点につきましては、価格政策というものは、むしろ国債の安定価格というものが必要だというふうにしていまやられておるその価格に日本銀行が従っておるということでございます。  いずれにいたしましても、技術的な問題でございますのでお答えいたしましたが、国債管理政策の重要性というのは今後ますます深まっていくことは私ども承知いたしておりますので、十分の検討をするつもりでございます。
  33. 矢野絢也

    矢野委員 総理の先ほどの答えは、政府の国債管理政策に問題があることをお認めになりながらも、それについての改善策をむしろ預金金利の引き下げという形に求めようとしておられる。これは非常に重大な問題だと思いますよ。このインフレの時代、庶民大衆が将来の生活設計のために預金をする、それを政府のいわば御用金調達と言うと言い過ぎかもわかりませんが、そういった立場での国債管理政策、これがだんだんもう破綻してきておる、維持できなくなってきておる、それを維持するために預金金利の引き下げも考えざるを得ないというような意味の御答弁は、これは大変問題だと思います。  それからもう一つは、いまいろいろ理財局長からお話がありましたけれども、事実関係については、ここで議論しても始まりませんが、これは間違いない事実です。場合によっては銀行の人々にここへ来てもらって証言してもらってもいい。いままでの少量国債発行時代なら、買いオペと発行額が大体見合っておるというようなことで何とかこれはやっていける。おつき合いもできる。これからの問題として私は問題提起をしておるわけでありまして、これからとてもとてもそんなことはできない。そこで、そのような事実上の売買禁止というものはたまったものじゃないという立場で、しかも、それが貸出金利の引き上げ、預金金利の引き下げという形で価格転嫁が行われる危険性もあるし、マネーサプライの増大、インフレという形の危険性もある。だから、今後の問題として私は指摘しておるわけであります。  いずれにしても、この際、公取委員長に伺っておきたいわけでありますが、国債を大量にこれから発行する。そのためにますます銀行引き受けというものに依存せざるを得ない。しかもその銀行引き受けされた大量の国債が市場に流通することについては、政府としては歓迎しない。相場が乱高下することによって発行条件が事実上弾力化していくということは好ましくない。そこで、私が指摘したような意味においての管理政策が行われるというようなことは、金利の自由化と逆行する金利凍結政策あるいは金利体系の硬直化というものをもたらすという意味において、公正な商取引という言葉が当てはまるかどうかわかりませんが、公正なやり方であるかどうか。公取委員長の御見解を承っておきたいと思います。
  34. 澤田悌

    ○澤田政府委員 御指摘のような国債管理政策の問題につきましては先ほど理財局長からお話がございました。私どももそういったような事実はないものと理解をいたしております。もし国債流通市場での公正な競争メカニズムを阻害いたしますような強制を伴う施策が行われるといたしますれば、これは独禁政策上好ましいものとは言えないと考えております。
  35. 矢野絢也

    矢野委員 引き続きこの問題は同僚議員から質問をしていきます。  問題を変えますが、政府は今回物価調整減税ということで、国税で三千五百三十億、地方税で七百九十億、合わせて四千三百二十億ですか、この減税をおやりになったわけでありますけれども、これは調べてみますと、標準家族、四人家族の課税最低限現行百八十三万円が二百一万五千円ということに引き上げになる。年収三百万円の家族で申しますと、年額一万四千七百円の減税ということになるらしいのですね。しかし、仮にこれが一〇%の賃金上昇、ここで三百三十万ということに収入がなるわけですけれども、その場合、減税後の納めなくちゃならない税金は八万九千四百円ということで、昨年の納めた税金七万六千八百円に比べますと一万二千六百円多く納めることになるわけですね。  一〇%、これは一つの例で申し上げているわけでありますけれども、物価上昇が非常に激しいという中において、一〇%、八%の賃金上昇は生活防衛のために当然のことだ。その当然のベアケースを考えましても事実上の増税になるというこの事実。  あるいはまた、ベースアップ率を〇%、五%、八%、一〇%、このように想定をいたしましていろいろな計算をしていくと、これは大蔵省の計数でありますけれども、こういうことになるのです。所得税、住民税合わせた税額が五十一年度より減るのは、年収二百三十万円の場合はベースアップ率が〇か五%、この場合だけ税金は減る。八%とか一〇%というのはものすごく税金がふえる。あるいは年収三百万円でベースアップゼロ——これは四人家族の場合で申し上げているのです。それ以外、ゼロ以外のベースアップ、つまり五%とか八%、これは当然税金がふえる。あるいは年収百六十万円でベアなしの独身者、この場合だけ税金がふえない。しかし、ベアがあった場合はこれは税金がふえる。こういうことで、実質減税への国民の期待は結果的には大きく裏切られたことになっておるわけですね。  そんなベースアップ分まで課税対象額に加算して計算されたんじゃたまったものじゃないとおっしゃるかもわかりませんけれども、物価調整減税でしょう。物価が上がった分だけ当然所得はふやさなくちゃ生活はやっていけない。その所得上昇を前提としてこの減税を検討しますと、いま申し上げたごく、若干の例以外はほとんどが実質増税になる。このことについて政府は、これでも物価調整減税なんだ、こういうようなことをおっしゃるお気持ちがあるかどうか、お聞きしたいと思うのです。
  36. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度の税制改正で減税にならぬじゃないかという説をなす者がありますが、これは減税になっているということは明白であります。これは個々の事例につきまして当たっていただきますればそのようになっておるわけであります。これはよく大蔵省におきましても検討しておりますが、資料を差し上げても結構でありますが、この三千五百億円の減税をして減税にならぬということがおかしいのであって、これはかなり物価調整上裨益するところの多い減税である、かように考えます。
  37. 矢野絢也

    矢野委員 それは三千五百億ですか、四千三百億ですか、減税をされているわけですから、そうじゃないということを言っているわけじゃない。しかし、物価調整のための減税だと言われるには、このようなベースアップとの関連において、しかもそのベースアップは物価上昇との関連において、できるかできないかは別としても、当然やらなくちゃいかぬ、生活を下げないためには。そういう観点から考えれば、これは事実上の減税にならぬ、このことを指摘しておきたいと思うのですよ。  そこで、経済企画庁が昨年十二月十四日発表された「昭和五十一年経済の回顧と課題」、この中で、国内民間需要の半分以上を占める個人消費の伸びが、四月−六月以降、過去の回復過程に比べて非常に低かった。特に全世帯の六割を占める勤労者世帯の伸びが著しく鈍化しておる。それが消費全般の伸び悩みの主たる原因になっておる。こういう分析を経済企画庁はされておるわけですね。景気回復に当たって、個人消費の伸びが停滞——景気が渋滞しておる原因は個人消費の伸び悩みである、こういった分析もされております。消費だけじゃない、設備投資や在庫投資その他の伸び悩みが足踏みに大きな関連があることは、私は否定しません。当然でしょう。大きな原因でしょう。しかし、個人消費の伸び悩み、特に全世帯の六割を占める勤労者世帯の消費の伸び悩み、これが景気回復の大きな妨げになっておる、こういう判断政府の文献においてもされておるわけです。  そこで、私は伺いたいのでありますけれども、昨年の国会におきましても、すべての野党が、景気対策として公共事業それ自体は否定するものじゃないけれども、しかしその公共事業も生活関連に力点を置くべきだ、あるいはまた、公共事業よりも福祉の充実あるいは所得減税、こういった形で勤労者、低所得者、お年寄り、こういった方々の可処分所得をふやす、消費を伸ばす、それが景気対策としてきわめて重要であることを力説しておるわけであります。そのことを福田さんは、そういうことは考え違いだと言わんばかりに否定をされておりました。そして去年減税はなさらなかった。こういう経過がございますが、昨年の十二月の経済企画庁のこの文献によりましても、私たちが昨年春の国会で指摘したことが結果としてやはり正しかったことが証明されておるじゃありませんか。個人消費の伸び悩み、これが景気回復の大きなブレーキになっておるということを述べておるじゃありませんか。私は、同じ失敗をことしもまたやろうとしておるのじゃないかという心配を持っておるわけでございまして、単に資源節約時代だから消費するな、そのために減税なんてとんでもない、大幅一兆円減税なんてとんでもない、こういう精神的な訓話だけでは処理できない問題じゃないかと考えているのです。  私たちが一兆円減税ということを主張いたしますのも、何も高額所得者を減税してあげなさいなんて言っているわけじゃないのです。むしろ、限界消費性向から見ましてもあるいは限界貯蓄性向から見ましても、所得の少ない方々が、この物価高、不景気の中で実質所得が減っていく、その中で生活を切り詰めるという形で消費の減退が発生しているわけですよ。こういった方々に、生活を人並みぐらいの水準にまで引き上げるための所得補償、そのための福祉とか減税というものは決して浪費でもなければ何でもないのです。社会正義から考えても、あたりまえの政策を私どもが一兆円減税という形で要望しているわけなんですよ。そんな、高額所得者に減税してあげいなんて言っているわけじゃない。むしろ高額所得者や利益の多い企業からはいままで以上に税金をいただいて、その分を低所得者や勤労者や福祉で暮らしている方々に割り振るという配分の変更をやろうじゃありませんかということを申し上げているのであって、この私の論理は決して総理の言う資源節約の論理矛盾するものじゃないのですよ。配分の変更をやろうじゃないか、しかもその配分は、この物価上昇で、所得が少なくて生活が切り詰められておる、こういった方々に配分しようということを言っているわけですから、あなたの言う節約時代の論理とは決して矛盾しないのです。こういった立場から、この一兆円減税について大胆な決意をされるべきであると思いますが、総理見解を——同じ話はもう聞き飽きております。また資源節約というあれは修身の教科書にでも書いておけばいいのです。私も資源節約だということはわかっておるのです。そういう意味じゃなくして、配分の変換によって浪費にならない形で有効需要を高めていく、それが景気回復の決め手になる。政府の文献においても、この景気回復の足踏みは国内需要の足踏み、しかも勤労者所帯あるいは低所得層の消費の伸び悩みがこの景気回復の妨げになっておることを明確に指摘しているのですよ。この点について総理の御見解を承りたい。
  38. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 矢野さんの政党で、まだどういう具体的な構想を考えておられるのか私は承知しておらないのです。ですから、それがわかれば幾らでもお答えいたしますけれども、なかなかお答えいたしがたい面があるのです。しかし、野党の皆さんの中には、多くの人が七百万円所得だとか一千万円所得でありますとか、そういう線を引きまして、それ以下の所得の家庭に対しまして三万円とか四万円を一律に支給をする、これは税じゃありません。そういう形になれば税じゃなくて交付金ですよ。ばらまきなんて、私はそんなことは言いませんが、とにかく一律に配付をしよう、こういうような性質のものであるようなものが多うございます。そういうことが頭にありながら私は申し上げているのですよ。そういう三万円、四万円それぞれ交付しまして、そしてそれがその一つの家庭にとりまして何がしかの効果がありましょうか。それよりは、とにかく三万円、四万円を集めますればこれが一兆円になるのですから、一兆円の金があれば一体どのくらいのことができるか。これはもういま緊切な問題、いろいろありますが、下水道にいたしましても、あるいは高等学校の建設にいたしましても、それだけの金があれば大変なことができるのです。そういう後に残るものをみんなして出し合って、そしてここでやって、こういう景気の悪いときだからそういう仕事をやって共同の財産を残す、その方がいいじゃないか。三万円、四万円を使ってしまうよりはその方が民族として、国としてよっぽどいいことじゃないか、こういうふうに考えるのですよ。そういうようなことを考える。  それから、まだ私がはっきりしないのは、皆さんの提案の財源を一体どうするのだ。赤字公債をふやせというような人はよもやあるまいと思うのですが、赤字公債じゃなくてほかの方から税金を取ってきたらどうだ、こう言いますが、そうしますれば取られた方の購買力が今度減るのですよ。法人税は一体どうなのだ、こういう説もありますが、それは法人の設備投資をしようと思っておった、その設備はやめようか、こういうことにもなりまするし、さあ月給を上げようと思っておったけれども、これもひとつやめておこうじゃないかということにもなりまするし、財源を税に求めようという考えであるとするならば、これは私は景気に及ぼす影響というものは非常に少ない、非常に制約されたものであろう、こういうふうに思うのです。いずれにいたしましても、公明党からこういう案はどうだということになれば精細に所見を申し上げます。
  39. 矢野絢也

    矢野委員 四万円、五万円を使ってしまうよりも云々というお話がありましたけれども、その発想は問題だと思うのです。総理はお金持ちだから、四万円、五万円は大したことないというお考えなのかもしれませんけれども、先ほど申し上げておる物価上昇で生活が非常に圧迫されておる庶民大衆の家計において、四万、五万というのはきわめて重要な意味を持ってくる。決してこれをむだ遣いするということじゃないのです。そのことをまず指摘しておきたいと思います。  それからもう一つは、この公共事業について、共通の財産として云々というお話がありました。そのこと自体私は頭から否定するものではない。公共事業か減税か、オール・オア・ナッシングの議論で私は言っているわけじゃないのです。そのバランスが大事だということを先ほどから議論しているわけですよ。たとえば、高額所得者や大企業の大きな利益を上げているところから税金を取れば、そこの購買力が減るとあなたはおっしゃった。しかし私は、所得の内容を見れば、そういう高額所得者の消費は非常にぜいたくなものに消費されておるというこの事実を、あなたはやはり忘れてはいかぬと思うのですよ。そういうところの消費、ぜいたくなものに対する消費は多少減ってもいいじゃありませんか。法人について、そういったところの内部留保が減ることによって設備投資が減退するかもわからぬという議論、これは私は一応認めます。これは考えなくてはならぬ問題でしょう。だから、私は昨日、租税特別措置法を改めて、新しい今日の時点における政策目標に沿った租税特別措置を考えるなら考えてもいいじゃないか、そういう今日の経済目標に合致しないような特別措置はやめてしまいなさいということを指摘しているわけなんです。私は決してオール・オア・ナッシングのわけのわからぬことを言っているわけじゃない。  そこで、公共事業を非常に高く評価しておられるわけでありますけれども、これは一応需要をつくり出す効果が大きい、あるいは即効性もある、こういうような評価がメリットとしてあることは私も認めます。しかし、これは逆にデメリットとして、ボトルネックインフレが発生するとか、地域的差があるとか、業種的な差がある。素材関係——鉄鋼とかセメント、あるいは建築土木関係、こういったところは公共事業によって第一次的に潤うかもわかりませんけれども、私が申し上げているのは、生産活動の中で非常に大きなウエートを占めておる第三次産業部門、こういったところには直接の影響がない。間接的にはあるかもわかりません。しかも、この第三次産業部門の雇用効果というものは、非常に現在大きいわけです。この第一次、第二次産業部門の失業を、第三次産業部門で吸収しているじゃありませんか。ですから、むしろ消費を伸ばすことによって、そういった産業部門の発展を期待することの方が、景気対策としては効き目があるということを私は指摘しておきたい。それと減税は直接消費者のマインドに訴える効果もあります。さらにまた地域差や業種差もない。しかも選択性が強い。あなたはたったの四万円みたいな言い方をなさいますけれども、この四万円をどう消費していくかというのは非常に選択性が強い、影響力が大きい、われわれはそう考えているのです。  いずれにしても、政府が公共事業ということで、昨年これが景気対策の決め手、主力部隊だという鳴り物入りの宣伝で公共事業優先の景気対策をおやりになりましたけれども、少なくとも去年の実績から見る限り、公共事業優先の景気対策は効き目がなかった、こう言わざるを得ませんよ。現に公共事業の消化だって、建設省のデータをいろいろチェックいたしましたが、たとえば、政府固定資本形成の面で見ますと、昨年の七月から九月期は、対前年期比で伸び率がゼロ、横ばいです。さらに五十一年の一月から九月の対前年比で公共事業の動きを見ますと、建設着工床面積、これで申し上げますと、確かに総計では一二・六%というプラスをしておりますけれども、しかし、このうち国の関係はプラス一・二%しかふえておらない、あれだけ公共投資をぶち込みながら。逆に都道府県関係はマイナス一〇・五%ということで大幅に落ち込んでおる。市区町村では〇・九%マイナスである。これは建設着工の床面積で申し上げたデータであります。つまり、幾ら公共投資だ公共投資だと言っても、国の増加はたったの一・二%、都道府県はマイナス一〇・五%、市区町村は〇・九%。あるいはまた建設受注の面で申し上げても、総計はマイナス〇・七ということになっておりますが、官公庁関係はマイナス三・八というふうに、むしろ全体よりも低くなっておる、マイナスである。こういったことから見ても、公共投資優先の景気対策というものが、余り効果がないのじゃないか。  さらにまたもう一つの問題点は、この公共投資の乗数効果というものが非常に阻害されておる原因の一つとして、用地買収費に余りにも巨額の予算が食われ過ぎておる。たとえば、東京の関係で国道十五号線、これは総事業量の六三%が土地代。これは千十五メートル伸ばす、幅四十二メートルの工事で、総工費が九十一億七千百万円、この九十一億の中で用地補償費が五十八億一千。六三%です。あるいは国道四号線で申し上げると、用地補償費で全体の八一%も土地代に食われておる。これは百十七億の総事業費のうち九十四億六千万円、八一%が用地補償費に食われておるのですね。これはほとんどが地主さんから銀行という形で、有効需要をつくり出すという効果から見て余りこれは期待できない、こう言わざるを得ません。  この公共事業の景気対策としての乗数効果、これは私は頭から低いとは言いませんけれども景気対策としておやりになるのであればもう少し乗数効果の高まるやり方、それは一つは実施の面での地方財政に対するてこ入れということもありますし、もう一つは、用地費が余り要らない公共事業というところに力点を置かれた方がいいのじゃないかという気がするのです。その具体的な問題として生活関連主導、これが有効であるという認識を私たちは持っておりますけれども、いままで公共事業の範疇に入っておらなかった学校教育施設や保健所、こういうものの整備も公共事業関係費で促進をされるべきではないか、これが一点。  第二点は、老朽校舎の建てかえ、これも用地代が要らないで公共事業の効果が出ます。これは現在、老朽校舎で改築を要するものが六百八十三万一千平方メートルということになっているわけですね。非常に数多くの校舎が老朽化しておる。これを政府の補助率ベース、これが低いのですけれども、仮にこのベースですべての老朽校舎、六百八十三万一千平方メートルを改築する、こういう仮定で計算をしますと、二千三百八十七億、これで老朽校舎すべてが改築される。一遍にやれと言ってもそれは無理だということはわかっておりますけれども、要するに、金額というものはこの程度の予算ですべての老朽校舎の改築ができるのですよということを申し上げているわけです。つまり、用地買収費に八〇%も食われる公共事業よりも、こちらの方がよっぽど教育環境の改善、景気対策両面から見てプラスになる、これが二点。  第三点は、公立小学校、中学校の屋内運動場、体育館、この設備を備えていない学校、これがずいぶん多いわけです。こういう老朽校舎の解消とともに屋内体育館の整備、これも土地代要りません。乗数効果として非常に高い。これが第三点。  第四点は河川整備事業、これは用地費がほとんど不要でありますし、しかも国民の財産、生命を守るという立場から必要な仕事であります。これはかなりことしはふやしましたというお答えがあるかもわかりませんけれども、五十年末現在でわずか一二・八七%しか整備されておらない。八七%以上、つまり総延長で六万四千百キロメートルが未整備。周辺住民に対して非常に危険を与えているわけですね。こういうことから見て河川整備事業、これにより一層の力点を置いた公共事業の配分がいいのではないか、いまのが四点。  次は五点でありますけれども、農業基盤整備。これも用地費が要らないし、しかも人件費が二八%という形で、人件費やあるいはそういった面での支出が多くなって、土地代というのはほとんどゼロ——ゼロとまでは言いませんけれども、少なくて済むわけですね。こういう農業基盤整備事業に力点を置く。  あるいは公営住宅の建てかえ、これはまさに用地費が不要でありますし、住宅問題解決のためにきわめて有効な施策であると私たちは思うのです。  こういう具体的な公共事業の内容転換、これが有効需要を高め、景気回復という立場から有効ではないかというふうに思いますが、総理の所見を、時間も余りありませんので、簡潔にお願い申し上げたいと思います。
  40. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公共事業を行うに当たりましても効率よく使え、こういうお話でございます。そうして公共事業を行う場合の制約条件は一つは地方財政だ——これは地方財政、いわゆる裏負担の対策は十分にいたしております。  それから、土地買収という問題があるのじゃないか、こういうお話でありますが、私どもが、公共事業は減税に比べまして景気対策上は効率的である、これは文句ないところである、こう申し上げておるのは、土地買収費なんというのは考えないんです。たとえば私どもは、きのうも申し上げましたが、大ざっぱな計算でございますが、土地買収費二割を——大体二割でございます。二割を差し引いたその残りが実際公共事業として需要を喚起するものである、そういうようなことで計算しておりますが、それにいたしましても、減税の場合よりは倍の需要創出効果がある、大体これは定説じゃないか、こういうふうに思っております。  しかし、実際問題といたしまして、公共事業をやるという場合に土地買収に平均して二割以上金がかかるというようなことでありますれば、これは非常に非効率的であります。当面の経済の年と言うにいたしましては非効率的である。そこで、なるべく公共事業を執行する場合に土地の要らないものを考えることがよろしい。そういうことは矢野さんのおっしゃるとおりに考えておりまして、私も、いまいろいろお話がありました、この際老朽校舎をどんどんやるというようなことをしたらどうであろうかとか、河川の整備をやる、農業基盤の整備をやる、大変この際土地はそう要らぬし、いいじゃないか、こういうようなことも申し上げたわけでありますので、大体そういう方向で予算案は処置されておる、こういうふうに考えますが、なお詳しい点につきましては関係当局からお答え申し上げます。
  41. 矢野絢也

    矢野委員 総理が幾らそういう用地代の要らない公共事業、たとえば生活関連に力点を置きたいんだと意見を述べられましても、公共事業全体の三〇%が道路予算です。しかもその道路予算というものは、もちろん特定財源だけじゃないと思いますけれども、たとえば一兆円のガソリン税というものが主たる財源になってくる、こういうような財政構造におけるあの種の硬直化、特定財源という形で硬直化しておる。このいわば高度成長時代の名残りとも言うべき財政構造それ自体を変えなければ、幾ら総理がそこでそういうふうに変えていきたいと思っておりますと申されましても、それにはおのずから限度があるのじゃないかという議論を私は昨日申し上げたわけなんです。  特に私がここで指摘しておきたいことは、住宅建設の問題、これがきわめて重要なウエートを持つと思うのです。私、総理景気回復は住宅中心がいいのだというふうに言っておられた、その趣旨は結構だと思いますけれども、実際はそれほど国民の深刻な住宅難、たとえば住宅困窮者が一千万世帯おるということになっておりますけれども、こういう方々の要望にこたえた住宅政策になっておらないと思います。各論になりますけれども、公庫住宅の融資にいたしましても、木造の個人貸し付け、これは前提条件として土地所有者あるいはもしくは土地を借りられる人、こういう人には融資しましょうということになっております。あるいはマンション融資にしましても、返済能力のある限られた人に限定されておる。こういうやり方では、住宅困窮者の希望というものは満たされないし、家賃の安い公営住宅以外に道がないということになってくるのです。しかも公営とか公団住宅は、後ほど、と言っても余り時間がなくなりましたけれども、非常に高い、狭い、遠いというような悪条件で、決して国民の期待にこたえるものではない。こういう公庫住宅の融資の問題、こういったことをひとつぜひ検討願いたい。  それとあわせて、たとえば民間銀行から住宅ローンで借金をいたしますと、一千万円借りますと、年利九%、二十年間毎月八万九千九百八十七円の支払いということになるわけです。これは九万円のローンを払っていくというようなことになりますと大変な負担でありまして、そのこと自体が消費性向を引き下げると申しますか、景気の停滞の大きな原因にもなっておるわけですね。  そこで、私は、家賃あるいはこのローンという問題について具体的に伺っていきたいと思うわけでありますけれども、一つは、東京、大阪など大都市におきまして木賃アパートの家賃が非常に高くなっております。入居者の家計が非常に圧迫されておる。東京共同住宅協会の調査によりますと、昨年三月現在の都内における木賃アパート、二DKですね、平均家賃四万三千四百円。これは木賃アパートに入っていらっしゃる方々に大変失礼な言い方でありますけれども、収入が多いということであれば別なところへ行きたいというお気持ちもあるわけでしょうから、決して所得が多い方と思いません。こういう方々にとっては大変な負担になっておる。あるいは公営住宅、この家賃も非常に最近は上がってきております。五十年度は二万二千三百円、これが五十五年度には傾斜家賃制度ということで三万五千八百円、こういうようなケースもあるわけです。東京の都営住宅の場合は三DKで三万七百円というような高家賃になっておる。  これは何とか木賃アパート、民間借家あるいは公営住宅についての何らかの家賃補助、これを所得税減税もしくは何らかの控除、支給という形で考えることはできないだろうかということが一つ。あるいはまた、公団家賃の場合でも、家賃の原価構成で申し上げて、公租公課と地代相当額だけで約四〇%も占めておる。非常に高い比率になって、これが公団住宅の家賃を引き上げておる主たる原因になっております。こういう公租公課については、これはやはり住宅公団が負担する、交付金というような形で。これは地方自治体の財源になってきておるわけでありますから、住宅公団が負担するという考え方をとることはできないだろうか。あるいはまた、実際問題、原価の重要な部分である公団の金利、これは借入金に対する金利、これが非常に大きな要素になっておる。これに対する利子補給ということが考えられないものであるかどうか。あるいはまた、現在住宅ローンを利用しておる人々、これはたとえば四十九年度から五十二年度の場合の住宅建設の戸数五百九十万戸ということでありますけれども、その九〇%に当たる民間住宅五百三十四五尺そのうち約七〇%に相当する三百七十万戸の方々が、民間金融機関より大体年利九%以上の高利融資を受けておるわけですね。この金利負担、これを簡単に計算しますと、この四十九年−五十二年の四年間における民間金融機関の住宅ローン貸出額は約十兆円という計算になります。一〇%と計算して、その利用者の払っている金利は一兆円ということになるわけですね。十兆円に対する一〇%。一人当たりの平均借入額は、十兆円割る三百七十万世帯で二百七十万円ということでありますが、年間利子支払い額は約二十五万円、平均で申し上げて。こういう金額になっております。これをたとえば金利二%分を減税という形で計算しますと、十兆円の借り入れ残高、四十九年から五十二年ですね、十兆円の二%でありますから、財源として、二%利子補給をするとすれば、約二千億円の財源でできる。しかも、これは五年間というふうに時限的に制定すれば、将来のそういう財政上の負担になることもないだろうし、当面の不況克服のための住宅建築促進の有効な刺激的効果が出てくるというふうにも思うわけであります。  あれこれいろいろ申し上げましたけれども、民間借家、公営住宅、公団住宅あるいは民間ローン、こういったことについて、衣食というものは何とか形がついておるけれども、衣食住の住がまだ整っておらない現況にかんがみて、政府の強力な対策というものをお願いしておきたいと思います。もう時間がございませんから、これは答弁を本当はお願いしたいのでありますけれども……。  最後に、これは質問ということでお願いしたいわけでありますけれども、戦後最高を記録した豪雪、これは各地に甚大な被害をもたらしております。この二月七日現在で死傷者が二百数十名、家屋の全半壊が千七百件、道路の損壊百八十一カ所、陸の孤島となった地域もあるし、学校は休校、生鮮食料品の入荷ストップ、財源不足の道府県、市町村、これはもういま大変な状態になっておるわけであります。被災地住民は雪おろしに日当一万円の負担をいま強いられておるという状況であります。これについての対策、これを伺って質問を終わりたいと思います。
  42. 田澤吉郎

    ○田沢国務大臣 お答えいたします。  今回の豪雪に対する対策についてでございますが、昨八日の日に関係閣僚会議を開きまして、その結果、五十二年度豪雪対策本部を政府内につくりました。それで、関係省庁の連絡会議の第一回目をきのう開きまして、本日から十二日までの間、新潟、青森に現地調査に出すことにいたしております。  今回の対策としては、まず正確に被害状況を把握するということが第一でございます。それに各関係省庁と連絡し、また地元との十分な協議をしながらこの対策に当たるわけでございますが、特に交通の確保がいま一番必要なのでございます。ですから、除雪対策を精力的に進めてまいっております。  矢野さん御心配のいろいろな点については、各省の連絡協議会等において十分協議をして万全の対策を講じてまいりたいと思います。  なお、この除雪費その他については十分配慮してまいりたいと考えておりますので、どうぞひとつ御理解をいただきたいと思います。
  43. 矢野絢也

    矢野委員 この豪雪で苦しんでいらっしゃる方方、いまの大臣の答弁、何とか言葉だけに終わらないで実行してもらいたいという気持ちで聞いていらっしゃると思います。これにつきましても、国として、関係地域の地方自治体に対する十分な財政援助その他も御配慮願いたいということを最後に御要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手
  44. 坪川信三

    坪川委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  45. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、先日来行われておりました総理の施政方針演説を中心とし、提示されました予算案に対しまして御質問をしてまいりたいと思います。  まず最初に、総理の姿勢をお伺いしたいと存じます。  昨年暮れの総選挙におきまして、保革伯仲の国民の審判が下されました。したがいまして、当予算委員会も、五十名の定数のところ、与党自民党と私ども野党合わせては二十五対二十五という伯仲の国会になりました。戦後三十年、日本の政治は、残念でありましたけれども、自民党の内閣中心の政治だと断ぜざるを得ませんでした。しかし、もはや内閣は、決められたその行政執行の舞台であって、国政全般は本国会が中心に政治の舞台が移ったと私ども判断いたしております。閣僚及び総理の姿勢を伺わなければなりません。昨日の混乱の一端もそれに尽きるのではないか、あくまで、国の中心は内閣ではなくしてこの国会が国政の中心で、内閣行政執行の舞台である。これは憲法に基づく政治の本来の姿にやっと戦後三十年たって戻ったと私どもは自覚いたしております。総理、いかがでしょう。
  46. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、もともと弾力的な考え方をする性向があるわけでありまして、いたずらに硬直的な姿勢は前々からとっておりません。まして、今日のように国会の運営の面を見ますと与野党伯仲である、そういう時代におきましては、いよいよもって協調連帯考え方でやっていかなければならぬと、かたくそういうふうに考えておるわけであります。  御指摘の国会行政府がどういう関係にあるかという問題でありますが、これは、そのあり方は憲法においてはっきり決められておる、その憲法の規定に従いまして、その応用、運用、そういう面においては、政府といたしましては、国会にできる限り御協議いたし、国会との関係を円滑にひとつ運営してまいりたい、こういうふうに考えております。
  47. 塚本三郎

    塚本委員 円滑は当然のことでございます。問題は、国政の中心が内閣にあるのだという考え方だけはこの際お改めいただきたい。それでなかったら円滑に進みませんよ。あくまでも、本院及び参議院という国会が中心にかわったのだ、その基本認識にお立ちにならないと、昨日のような問題が——いまここで昨日のことを追及するつもりはございませんけれども総理御自身国民のその御審判を素直にお受けになるという態度に切りかえられないと、福田内閣はこれからもしばしばこういう事態が起こりますよということを先に申し上げたかったのです。いかがでしょう。
  48. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国会国権最高機関ですから、その辺は十分に心得ていかなければならぬ。ただ、行政府は、国会のもとにおきまして、またその下における行為を行うわけでございます。そのやり方につきましては憲法に細かく規定をしておるわけでありますから、この憲法のルールを外れるわけにはいかぬ。しかし、あくまでも、考え方としては、国会国権最高機関であるという認識に立っておることはもちろんでございます。
  49. 塚本三郎

    塚本委員 立法府だけではなく、国政の最高機関というふうに、政治の中心が国会なんだというふうに御認識をいただいておると受けとめて話を進めてまいりたいと思っております。  二十五対二十五という本予算委員会において、予算編成権をお持ちの内閣が、各大臣さんが、これから御執行なさる大切な予算というものは是が非でも内閣の意思を通して通さなければならぬと考えるのは当然の責任であり、常識だと思います。にもかかわらず、どうして委員長を与党の方からお出しになって少数に転落する道をおとりになったのか、私はその総理のお考え方がわからぬのです。大臣さんたちが、みずから要求し編成なさったその予算案を、一番大切な予算委員会において、少数になってでも委員長をわが党から出したいというお気持ちはどこにあるのでしょうか、いかがでしょう。
  50. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 委員長をどういうふうに決めるかということは、各党でよく相談をいたしまして決めておるわけであります。  それから、その前提として各委員会の委員の割り振り、これをどうするか、これも従来のしきたり等がありまして、なかなかむずかしいルールがあるようでございますけれども、これも各党が相談をして決めておる、こういうことで、私の方からこうしたいのだというようなことでやっておるわけじゃございません。
  51. 塚本三郎

    塚本委員 福田総理は三木内閣の副総理でございました。三木内閣当時、私どもはしばしば苦い経験を持っております。それはどういうことかといいますと、内閣総理大臣としては前向きの御答弁をこの舞台や本会議でなさるのです。ところが、それを国会の問題でございますと言って、その重苦しい問題は、自民党の仲間の人たちを悪者にすると言うと御無礼でございますけれども、もし自民党の方々が御反対をなさるのだったら、総理大臣総裁でございますから、与党として、自民党として、それはノーという結論を持っておりますのでできませんと、総理大臣もお答えにならなかったら、議院内閣制の総理総裁立場は勤まらないと考えるのが常識であります。議院運営委員会でお決めになったと言いますけれども、議院運営委員会において、野党の私たちが委員長ちょうだいといって何度折衝しましても、自民党はノーと言って議運は進みません。自民党さんがお断りになっているのです。そのとき、私ども、選挙の結果から見て、福田内閣ができたときに、福田さん大変だな、これは敵ながらという表現はどうかと思いますけれども、私も御心配申し上げました。どうぞ、閣僚のお使いになる予算は大切であります、したがって、委員長は社会党さんお取りいただけませんか、予算委員会は二十五欲しいのです、そうおっしゃるのがあなたの立場だと私は思っておりました。そうしたら、さっさと委員長を自民党さんからお出しになって、みずから少数に転落をなさったのです。げすな言葉で言いますならば、戦後三十年、自民党さんと内閣は、いつの舞台でも床柱を背にしょって正面に座るというそのお気持ちがいまだ変わっていないのではないか、庶民はそう思っておりますよ。私は、お願いしてでも社会党さんに委員長を取ってください、そうおっしゃるのが総理総裁立場だと思っておりました。いかがでしょう。
  52. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国会の運営につきましての細かい問題になりますと、これは議院運営委員会でありますとか、あるいは国会対策委員長間でありますとか、そういうところでよく相談をするわけなんです。その相談の一々の問題につきまして、自由民主党総裁、あなたひとつどう考えるのかというようなことの相談を受けるような状態ではございません。これは塚本さんもよくその辺はおわかりになっておられることじゃないかと思いますが、これは出先で円満に決まれば、それに対しまして私どもがとやかく言うという立場にはないわけでありまして、いま御指摘の委員長の問題、委員会の構成の問題、そういう問題につきましては、各党間において十分に協議を尽くしまして決められたものである、そういう理解でございます。
  53. 塚本三郎

    塚本委員 坪川委員長がごりっぱな方であることは御信頼申し上げております。したがって、そのことを非難してみたり、自民党さんが委員長をお取りになったことは話し合いで決まったことですけれども、私は、この伯仲時代における政府の姿勢、特に福田内閣総理大臣の姿勢を伺っておきたいと思ってこう申し上げたわけであります。  総理、この予算案を通じて国民が一番心配しておりますことは、本会議を通じましても一兆円減税の可否をめぐって論戦が展開されております。もちろん、それはお互いの論拠があってのことでございます。しかし、それとともに心配いたしておりますのは、この二十八兆数千億という予算案がおくれることを心配しておるのです。月間にして二兆五千億ほどの公共投資を初めいわゆる政府財政が流れていきます。産業界は景気回復のためにそれを大変待ち受けておいでになる。そのときに、きのう一日あのようなことがあっただけでも、産業界は、これは先行きどうなるのだ、心配しておいでになるのです。野党といえども、もはや、雇用不安の時代において景気回復がどんなに大切なことかということは、政府以上に心配しておると申し上げておきます。したがって、対立する議論のときには、やはりこういう事態になったのだから、国会中心に素直に話し合いをしていただいて、一兆円をどうするかということの、いわゆるどちらがその中身を盛り込ませることができたかということを一どちらが有利かということもいわゆる政策実現のプリンシプルの問題であります。しかし、それとともに、もしそれができた、できないという結果によって、半月間あるいは一カ月予算案の執行がおくれるならば、もっともっと景気回復は痛手を受けると私たちは承知いたしております。  かつての与野党の対立時代は、皆様方が、与党が、最後には数で押し切るという常套手段をお使いになりました。今度は反対になってしまったことは御自覚のとおりです。したがって、もはや具体的議論がある程度成ったならば、素直に話し合いをなさらないと、一兆円減税の問題だけではございません、あらゆる問題についてこうなる。その被害は国民がお受けになるんだ。そのことをはっきりと御認識の上に立って、本委員会を初め国会運営の衝に当たっていただきたいと思います。いかがでしょう。
  54. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私の内閣は、野党の皆さんとも素直にあらゆる問題について協議をしていきたいと思います。ただ、政府・与党がそういう立場になるだけでは、私は、円満な国会運営はできないと思うのです。野党の方でも、私どものあるいは与党の言うことにつきまして、本当にざっくばらんな理解を持っていただく、そして公正な判断をしていただく、与党も野党政府もみんな国家、国民のために論議をする、そういうことであればおのずから道は開けていく、かように考えます。
  55. 塚本三郎

    塚本委員 すでに新聞初めマスコミにおきましては、今回の国会の論戦を非常に高く評価をいたしております。かつての野党野党が違ったんだというふうな言い方もされております。私たちは、過去を反省して、そうして与党以上に国民に責任を果たそう、こういう立場で、いままでは、自民党と内閣がこうしたいこうしたいとおっしゃったやつを、ノーノーと言っていたのです。反対に、あらゆる論戦を聞いてみても、社会党さんにしても、公明党さんにしても、こうなさったらどうですか、こうなさったらどうですか、具体的な建設的な提案が引き続いて行われております。野党もそういう形になってきたんだから、それに対応する与党の、いや与党と申し上げるよりも、福田総理を初めとする内閣の対応姿勢が、まだその柔軟姿勢をお持ちにならないということに私たちはいら立ちを持っております。しかし、これから私は一つ一つお尋ねをしてまいりたいと思っております。  先ほど言及いたしましたように、総理総裁を区別しなさるな。それは、副総理であった福田さんは、十分そのことは御判断いただいておったと思います。たとえば、独禁法の改正におきましても、総理は、ここで賛成の意を表されながら、国会議決ができなかったといって、反対なさった自民党のみずからは総裁であるという責任を感じておるような御発言が少しもなかった。あるいはロッキード事件における証人喚問でも、総理大臣は前向きに御答弁をいただいたのですけれども、いざ具体的になりますると、自民党の方々がなかなか色よい返事をしていただけなかった。参議院の定数是正のごときは、全く前向きの御判断をしていただいておりましても、いざ現場になりますると、これが反対になってくる。もし私どもが無理にそれを進めようとしても、混乱が起こるだけだ。しかし、自民党さんが反対な場合には、総理大臣としても、やはり個人的な意見ではなくして、総裁として国民の前に、それは私は反対でございますとおっしゃらないと、混乱してしまうのです。テレビ向けで国民に対してはいいことをおっしゃっておって、実際に何にもできていないじゃないかということになると、野党の私たちがだだをこねておるようにしか受け取られておらない。国民に対する宣伝だけ総理大臣がなさって実体はついてこないということでは困るのです。そういう、独禁法改正にしても、ロッキード事件における証人喚問にいたしましても、参議院の定数是正にいたしましても、おっしゃったことは、きちっと自民党さんに、私が発言をし約束をしたんだから、あるいは憲法違反という判決が出たんだから、これは改めなさいと、総裁としてきちっと自民党の仲間の皆様方にも、一部御反対があるならば説得をなさるのが、総理総裁としての議院内閣制における首長の務めだと思いますが、どうお考えでしょうか。
  56. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 総理大臣は同時に自由民主党の総裁です。でありまするから、総裁の責任ということも常に踏んまえて行動しなければならぬ、こういうふうに思います。したがって、総理大臣として国会等において発言をしたということにつきましては、与党である自由民主党に対しましても責任を持たなければならぬ、こういうふうに考えております。  独占禁止法の話がありましたが、私は、これはまあ念を押しておくわけでありまするが、まだこの問題につきまして自由民主党としてどういう案を提出するかということは申し上げておりません。いま、与野党と話し合っていかなければならぬ問題である。野党立場というものは私は承知しておるけれども、与党の方の理解も得なければならぬ。この与党の理解を得るための調整、いま努力中である、こういうふうに申し上げておるわけでありまするが、そのことにつきましては、私は責任を持つ。その他の問題につきましても、国会で申し上げたことにつきましては、与党の総裁として責任を持ちます。
  57. 塚本三郎

    塚本委員 結構です。前内閣のようなことにならないように御希望申し上げます。  十二時で一たん休憩ということでありますが、一つだけお伺いしておきます。  独禁法や証人喚問の問題は各委員会において細かく論及されることでしょう。  参議院の定数是正につきまして、今日のような事態は憲法違反だということをきちっと判決が出ております。ただし、今度の選挙は無効とはしないということを前選挙のときに判決が出ております。したがって、迎える参議院選については、七月行われる参議院選については、少なくとも地方区の定数是正だけはすべきだということは判決の趣旨からして当然であります。これはぜひ具体的に、自民党さん、テーブルに着いて話を進めてください、こういうふうに総裁としてお進めいただくことが当然のお約束だと思いますが、いかがでしょう。
  58. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ロッキード事件を反省しますときに、これはやはり金のかからない政治、そのためには金のかからないきれいな選挙制度、このことを考える必要がある、私はそういうふうに考えておるわけなんです。そういうことから、私は、選挙制度、また政治資金規正法、全部にわたって、各党において話し合いをしなければならぬだろう、そういうふうに思うのでありますが、その相談の過程において、急ぐものもありましょう、急ぐものは、決まったならば、それはその時期においてこれを実施するというふうにしたらいいじゃないか、こういうふうに思っております。いずれにいたしましても、選挙制度という問題、それにまつわる政治資金規正法の問題、そういう問題まで含めまして、これは各政党の共通の土俵の場でありまするから、これは自由民主党が言うということで決まるべき問題でもない。また、野党の皆さんがおっしゃるということで決まるべき問題じゃない。各党が相談し合って、そうして合意を得て実現をすべきものである、こういうふうに考えております。
  59. 塚本三郎

    塚本委員 総理民主主義の根幹は選挙の制度にあることはわかっております。したがって、資金規正法、制度の問題ともまた根幹であることも承知いたしております。なるがためにこそ、昨年の資金規正法が通りました。そのとき、衆議院は定数是正をすでに二回行っておるのです。参議院は一回も行っていないのです。鳥取県のごときは二十万票で当選なさるのです。東京は八十万要るのです。四倍の人のいわゆる支持を受けなければ当選できないのです。あるいは、北海道はいま八名の定数です。神奈川県は四名です。しかし、今日これをきちっとその当時の水準にしたならば、八名の北海道が六名に変わって、四名の神奈川県が八名になるという計算が出ておるのです。だからこそ、憲法違反という判決が出たのです。だからこそ、本衆議院においては二回の定数是正がなされたのです。にもかかわらず、参議院だけは、まさか自民党さんに不利だからやらないとおっしゃるとは申し上げませんけれども、これほどまでに大きな格差が出ておる。民主主義の根幹に触れる問題を、いま資金規正法、昨年改正したばかりのことを持ち出して逃げ込もうとするような御答弁は、国民は納得しないと思います。これは七月に行われるのですから、少なくとも、話し合いのできる問題だけテーブルに着いて間に合わせていただくことが必要だと思います。いかがでしょう。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 参議院の選挙制度の問題につきましては、全国区をどうするか、こういう問題もあるのです。これは議員の中に、この際、地方区の定数是正、この問題もあるけれども、同時に、参議院の全国区につきましても、これは一緒にこの際やったらどうだという説もあるし、そういういろいろな議論がありまするけれども、それらを全部各党がさらけ出して、そうして話し合って、その決着のついたものから実行する、こういうことにしたらどうだろう、こういうふうに存じまして、自由民主党に対しましても、野党と話し合いをするようにということをお願いをしておるわけであります。
  61. 塚本三郎

    塚本委員 全国区の問題の絡みのあることも承知いたしております。しかしながら、全国区はまた根幹に触れる問題でございますので、地方区の定数だけなぶろうじゃないかという話が一時進んだのです。(「最高裁の判決もあるじゃないか」と呼ぶ者あり)しかも、いま後ろの、御意見が出ておりますように、最高裁の判決で憲法違反という断定がなされておるのです。ですから、できる問題だけはやりましょうという形で、この定数是正には全国区制は別途検討するということを自民党の方でも御認識があるのです。だから、全国区制は並行いたしますけれども、絡ませないように、ぜひ地方区だけは是正しましょう、こういうふうな意見も自民党の中にあるのです。したがって、逃げ込まずに、この際は地方区だけ定数是正をまずやる、それで全国区ができればそれにこしたことはない、こういうふうにお扱いいただくわけにいきませんか。
  62. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御指摘の点も含みまして各政党間で話し合いをする、こういうことにすることが私は妥当である、こういうふうに考えております。
  63. 塚本三郎

    塚本委員 お昼のあれですから次に移りたいと思いますが、最後にこのことだけ、総理、御認識いただきたいと思います。  これは実は、資金規正法等の議論がなされたときに、「参議院地方区の定数については、人口の動態の著しい変化にもとづきこれを是正する要あることを認め、次期参議院通常選挙を目途として実施するよう取り計らう。この場合公職選挙法改正の過去の事例を参照するものとする。なお、全国区制度の改正については別途検討をすすめる。」というふうなお約束をいたしまして、参議院の安井議員会長の御署名をいただいておることも総理はきちっと御自覚いただきまして、全国区がどうでもいいと申し上げるつもりはありません、しかし、参議院さん自身も、自民党の議員会長が、別途考慮をする、できれば一緒にしたい、しかし、できないからといって定数是正だけはおくらすというつもりはない、こういう御署名をいただいておりますので、十分総裁として主導権を発揮していただきたい。お答えだけいただいて、委員長の御指示がありますから休憩に入ります。
  64. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 各党間において早急に話し合いを進めるということにいたしたいと存じます。
  65. 坪川信三

    坪川委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  66. 坪川信三

    坪川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の続行をいたします。塚本三郎君。
  67. 塚本三郎

    塚本委員 国際経済問題を最初にお尋ねいたします。  日本経済が対外貿易に依存するところ大であることは申し上げるまでもございません。したがって、国際経済の問題はひとり経済の問題だけではなく、外交問題と絡み合っておるわけです。ところが、最近の日本政府の外交の態度を振り返ってみますと、きわめて弱い態度、言うべきことを言い得ない、先ほどの矢野委員の御質問の中にも竹島問題が出てまいりましたけれども、できるだけそういうめんどうなものは避けて通りたいという姿がありありと見えてまいります。それは役人外交の限界を示すものではないかというふうに思っております。しかし、経済外交の場合は、そういうことをされると経済は大変迷惑をするということがたくさんあります。したがって、私たちは日本に軍備があろうがなかろうが言うべきことはきちっと言う、そういう態度が相手方にもまた信頼を受けるゆえんだと思っております。したがって、弱い強いの問題は論外として、言うべきことは言わなければいけないと思います。しかしそれは、なすべきことをなしていないがために言いたいことも言えない、こういうことも振り返ってみる必要があると思います。そういう観点に立って、日本の経済と外交は協力援助をすべきものはきちっと見劣りなく協力をいたします、そのかわり独立国としてこれだけは許すことができませんぞと、けじめをつけていくことが大切だと思います。ところが、お役人さんの経済外交を見ておりますると、めんどうな問題は次へ次へと延ばされていく。このことによって経済界は大変迷惑を受けております。そういう点のけじめをつけることが必要だということをまず最初に申し上げまして、問題を具体的に提起してみたいと思います。  きのうきょうの新聞では、ECから、ヨーロッパ諸国から、ベアリングに対するダンピング課税を要求されております。恐らくこれはECだけではなく、同じようなことがアメリカにおいてもこれからどんどんと出てくることを心配いたしております。このとき、アメリカ及びECに対する貿易の均衡を必要とすることは当然であります。一体総理、これはどうなさるのか、具体的に方針をお聞きしたいと思います。EC及びアメリカとの貿易の不均衡を是正することの具体的な方針です。
  68. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まず、ECとの貿易不均衡の問題でありますが、基本的にECとの間の関係は、貿易外収支の点もあわせ考えなければならぬ、こういうふうに思うのです。  たとえばフランスであると、貿易上から言えばフランスはわが国から輸出超過である。しかしながら今度は旅行者が行く、その落とす金は莫大である、差し引きずるとまず均衡の状態だ、こういうことですね。イギリスにつきましてもそういう問題があるわけです。ですから、貿易全体としての不均衡問題というのは、私はECとの間にはそう大きな問題じゃない、そういうふうに思います。ただ、わが国の輸出製品がある時期にある一カ所に殺到していく、これが問題なのだろう、こういうふうに思います。ですから、ECとの経済調整、これは個別物資につきまして業界がまず自粛をしなければならぬ。その業界の自粛の背景として、政府もこれをそのような方向で指導しなければならぬ。貿易のことでありまするからいろいろ細かい問題は起きてくると思いまするけれども、大局的にそう大きな問題はない、私はこういうふうに見ております。  それからアメリカの場合は様相が少し違いまして、これは五十一年で見ますると五十三億ドルの輸出超過である。それに対しまして二十二、三億ドルの貿易外の赤字であるというのですから、それを差し引きましてもわが国は三十億ドルの黒字バランスになっておる。これはアメリカとすると相当大きな問題であろうと思います。ですからこの問題は、そのような問題のあることを踏まえて業界が気をつけなければならぬし、また政府としても気をつけてまいらなければならぬ、こういうふうに考えます。アメリカとの間に多少の問題はありましょうが、これから日本の経済回復基調に向かいまするし、輸入もだんだんと多くなるでしょう。輸出につきましては、政府の指導のもと業界も——ヨーロッパに対しまして一時集中豪雨的なものがあったというような批判を受けておりますが、アメリカに対しましてもそういう傾向がなしとしなかったのです。その是正も行われるでありましょうし、私は、そうトラブルなしにやっていける、かように考えております。
  69. 塚本三郎

    塚本委員 そういう楽観的な見方で果たしていいのでしょうか。現にすでにECはダンピング課税と、きちっと向こうから報復的な措置をしてきてしまったのです。確かに日本の輸出入のバランスから見れば、そんなに大きな黒字ではない。しかしながら、EC及びアメリカとの輸出入においては、一つの方法はいまおっしゃったように貿易外で旅行者がたくさん香水を買ったりあるいはまたお酒を買ってきたりやってきております。それを貿易勘定にきちっと計算をして、おたくの国からこれだけ買ってきましたよということが提示できるようにして納得をさせる必要があると思います。しかし、日本の国際収支のバランスを調べてみますと、一番問題なのは対アラブからの石油を買ってきておるその赤字の穴埋めをEC及びアメリカに背負わせておる、こういう勘定になっておるはずであります。  昨年一年間を例にとりますと、二百十億ドルという油を買ってきております。しかし、これに見合うだけの品物を実は輸出しておりません。したがって、このアラブを中心とする油を買っておるその相手国との間においては、日本の国は八十億ドルという買い過ぎになってきておるんです。この八十億ドルの赤字の穴埋めをきちっとアメリカに五十億ドル、ECに三十億ドルと背負わしておるんです。だから、貿易の均衡をとりましょうと約束をするとき、日本経済全体として実はアラブとの関係の油の代金をどこで穴埋めをするかということをきちっと腹に置いていかなかったら、日本は対外貿易輸出入において、先行きは大変な混乱を招くことは申し上げるまでもないと思います。この見通しをきちっとなさることがいま一番必要なことだ。その見通しをきちっと立ててからヨーロッパにおいでにならないと、ヨーロッパにおきまして、総理は先進国首脳会議においでになるという意向を漏らしておいでになりますが、先ごろわが党の佐々木副委員長が本会議で御質問申し上げたように、このまま行きましたならば、確かにアメリカにおいては五十億ドル、ヨーロッパにおいて三十億ドルの輸出超過になっておることは間違いないんですから、これ是正しなさいと言って、まあ善意でおいでになるでしょうけれども総理だけが各国から被告席に立たされて是正を迫られる、こうなりかねませんよ。一体、その見通しは総理お持ちでしょうか。
  70. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはなかなかむずかしい問題でありまして、ことに石油の価格が五倍にはね上がった、その影響は大変なものだろうと思うのです。ですから、石油ショックの翌年、四十九年ですか、あの年のアラブ諸国に対する貿易バランスは実に百三十億ドルの赤字ですよ。一年間に百三十億ドルの赤字というのですから、これはびっくりするような大赤字でございます。それからその翌年の五十年度になりますと、やや減りましたけれども、その赤字が百億ドル。それから去年になりますと、まだ調べがついておりませんけれども多少減っていると思いまするけれども、(塚本委員「八十億ドル」と呼ぶ)まあそれに近い数字が出てくるんじゃないか。わが日本は、とにかく国際収支、どこの国でもそうでありまするけれども、これを厳守していかなければならぬ、堅持していかなければならぬ。そういうときにある一地域から百億ドル内外の赤字がある。そのバランスをどうするんだというと、いままでは、いま御指摘のように他の地域との黒字をもって賄っておった、こういうことになりますが、その状態を長続きさせることはこれは許されないと思うのです。やはりこれは逐次改善しなければならぬ。  その改善の道はどうかというと、やはり私はアラブ諸国等に対しましてこれは輸出をする。この輸出と申しましても、あそこにそれだけの消費購買力があるわけじゃない。そこで、プラント等の開発資材輸出、こういうことになるだろう、こういうふうに思うのです。五十二年度の予算でも、その点には特に配意いたしまして、そしてボンド融資制度を始めますとか、その他プラント融資を助成いたしますとか、そういう施策をとっておるわけでありますが、急に百億ドル内外の赤字をなくすというわけにはまいりませんけれども、百三十億ドルから百億ドル、それからさらにどのくらいになりますか、八十億ドルくらいになりますか、そういうふうに対アラビアの貿易バランス、これを改善していく、これは非常に重大なことである、こういうふうに考えまして、そのような努力をいたしたいと存じます。
  71. 塚本三郎

    塚本委員 私もいまこうすべきだという解決の策を持っておりません。これは大変むずかしい問題であることも承知いたしております。百三十億ドルの赤字がやっと八十億ドルに縮まった。それだけプラント等の輸出によってアラブとの赤字の穴埋めが、差が縮まってきたということですが、よく調べてみると、アラブ人の頭の中には、油を売ってやった、物をやったのだから何か売ってよこせという、向こう自身が輸入をしたがっておる。ところが、日本は売ってあげるものがないものだから、技術と労力でプラントと、こうくるのです。これはアラブの諸君にとっては物で売ってやったら物で売ってよこせとというようなことで、武器等を売れという要求等も出ておるようであります。しかし、日本はそれはできない立場に立っておることは御承知のとおりです。したがってプラント輸出には相手方との関係において限界がある。もういっぱい、精いっぱい、百三十億ドルといいますのは、二百十億ドル買っておるのですから、百億ドルを超えるところのそういうものに対する輸出で伸ばしてきたのです。だから、プラント輸出にはもう限界が来ておるということですから、これ以上対アラブとの、すなわちエネルギーの問題については根本的にいわゆるエネルギー問題として具体的に検討しなければならないときになってきた。いままでのように油がすべてでございますという形では、もちろん地球上におけるエネルギーの問題の立場とともに、日本はそれ以上に対アラブとの関係における輸出入のバランスをとるためにも、エネルギーの問題を具体的に考えていかなかったら、やはりECやアメリカに対する、その赤字のしわ寄せがその両国に行っておる。それを先進国首脳会議などでわかりましたとバランスをとったら、日本のエネルギーの問題がパンクをしてしまう、こういう実態にあるということを私どもは心配しております。解決策を持っておりませんので、私はこうしなさいといま申し上げる立場にはありませんけれども、しかし、そのことは総理みずからが十分に御検討いただいて、いわゆるエネルギーの問題は日本の国においては寸刻を争う重要な問題だという立場に立ってこのことを御検討いただく必要があると思います。いかがでしょう。
  72. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりに考えております。
  73. 塚本三郎

    塚本委員 具体的に進めていただきたいと思います。  そこでもう一つ、私、国際経済の問題で突っ込んでお話をお聞きしたいと思っておりましたが、時間が次の問題と幾つかありますので、早く次の問題に移りたいと思います。  一つだけ。私は昨年の十月本委員会におきまして総理からパプア・ニューギニアの問題を例に引いて、外交の自主性のなさ、それはこちらが援助すべきものを全然援助をしていないので、向こうから開き直られても言うべき言葉がなかった。これはいけないことだ。したがって、きちっと無償で日本の政府はかくなるごとく援助をしたいと思う。途上国からはたくさんの材料を仕入れてきております。ところが、民間投資だけに任せておりますから、投資を受けた相手の国におきましては、日本からの援助はひもつきばかりでございます。こう言って怒って、ついにその仕打ちのような形で民間投資の会社が取り上げられてしまった、こういう例を出しました。政府代表を派遣するとお約束をいただきまして、政府代表がおいでになったのです。おいでになったけれども、相手方では、総理だけではなく閣僚にさえも会わしていただけずに、実は素手で帰ってきたと報告だけ伺っておりますが、その後どうなったんでしょうか。
  74. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 パプア・ニューギニアのパームオイルの工場のことだと思います。昨年の十月に塚本先生の御注意がありまして、政府代表が出かけたことも伺っておりますが、その後、接収となった後の補償の問題がいろいろ問題が残っておるということを聞いております。補償につきましては、パプア・ニューギニアの国内法で審査委員が任命をされて、そしていろいろ査定に入っているようでございますが、どうもその金額がなかなか日本の会社の投資額に比べて不十分ではないかという問題を伺っておりますので、これらにつきましては一次的に担当の企業の方で御折衝いただいて、そしてそれが十分解決しないときに外務省として何かできることがありましたならば御協力を申し上げたい、こういう状況でございます。
  75. 塚本三郎

    塚本委員 中身なんかそう大した問題だと——私は本委員会で大げさに取り上げる問題ではないかもしれません。しかし、政府の代表がわざわざ現地に行きまして、総理のみならず一般閣僚にも面会することができずに帰ってこられたというこの事実を、総理何とお考えになりますか。
  76. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、企画庁長官のとき塚本さんからそのお話を親しく承りまして、当時は大変事情には詳しかったのですが、その後のいきさつは実は承知しないのです。そういうようなことで、いまわが国の特使が向こうの閣僚にも会えなかったというようなことについては承知しておりませんけれども、そういうことであったとすればまことに遺憾なことである、かように存じます。
  77. 塚本三郎

    塚本委員 外務大臣、いまごろおいでになっても相手方は逃げるかもしれませんぞ、きちっとソマレ首席大臣が帰ってくるときを見計らって行きなさい、こういうことで、大丈夫でございますという返事で、それでわざわざ政府代表がおいでになったにかかわらず、相手を見下げるつもりはありませんけれども、一国を代表し、本院でお約束をなさった政府の代表がおいでになって、二百万の人口の国の総理だけではなく一般の大臣にさえ会うことができずに政府代表が帰ってきたということは恥ずかしいことだと私は残念に思っております。きちっとそのことをソマレ首席大臣に話をなさって、そうして、私たちはいままで無償援助はしておりませんでした、これからこういう援助もさしていただこう、ましてや戦争中にパプア・ニューギニアにおいてはたくさんの御迷惑をかけた、そして万を数えるところの先輩も亡くなっておる、だから政府として協力をすべきことはこれこれでございます。しかし、民間投資会社を法律によって黙って召し上げるというやり方は、これはいけないと警告を何度も発しておったはずだから、きちっとそのことは協力することはする、そして民間投資は民間投資、けじめをつけなさいということで出ていただいたのです。それがなされずに、こうしてその賠償の問題のいい悪いということで議論をしなければならぬことはきわめて残念。先ほど申し上げたように、外交というものがなすべきことがなされていないからこそ、実は言うべきことが言えないのではないか。私は外務大臣に強く御要望申し上げておきたい。担当局長にもおいでになるときにきちっと御注意申し上げたはずです。お出になるときに大使にまで出発には事情は御説明申し上げたはずです。うるさいから会わせずに追い返したというやり方が駐在大使のやり方ではないかとさえも私は悪推量いたしております。一体日本の外交、これでよろしいのでしょうか、その姿勢をお伺いしたい、外務大臣。
  78. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私も、外務省に参りました前のことでございますので、自信を持って申し上げるわけにいかないわけでございますけれども、向こうの担当大臣に会えなかったという事実も伺っております。先方ではいろんな理由を設けておるわけで、その事実がどうかということも私自身自信があるわけではございませんけれども、そのようなことが民間企業に対しましていろんな御迷惑をおかけするというようなことになりますとこれは大変でございますので、今後ともそのようなことのないように努力をいたす所存でございます。
  79. 塚本三郎

    塚本委員 このことについては、ひとりわが国だけではないのです。世界銀行とのジョイントベンチャー、合弁のいわゆる向こうの政府はいま計画があるんです。私は、このことの経過の途中において、ワシントンで世界銀行にも会ってきたんです。アジア局長は、まことに現地のやり方はけしからぬ、私からも注意いたしますとして注意してくださったんです。本月の二十二日にはわざわざアジア局長が私を訪ねておいでになることになっているのです。世界銀行みずからがこのやり方は間違いだと言って、そしてわざわざ御注意なさったけれども、法律によって取り上げた。だから心配なさって、この国に融資すべきかどうかについてわざわざ世界銀行のバトー・アジア局長が私を訪ねておいでになることになっている。世界銀行でさえもそこまで御心配なさっておいでになるのにかかわらず、日本政府がこの態度なんです。日本の外交というものは場当たりでもって、いま大臣がいみじくもおっしゃった、私のときでありませんので確信を持っては申し上げられませんとおっしゃったように、閣僚が次々とおかわりになり、担当局長さんが次々とおかわりになりまするから、その都度私は御注意と御説明を申し上げておってこんな始末になったんです。この点は、大臣がきちっとその点の姿勢を正していただきまするように私は強く御要望申し上げます。総理から一言御発言いただきたい。
  80. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 あのようなことが再び起こらないように最善の努力をいたします。
  81. 塚本三郎

    塚本委員 通産大臣、その企業についてはきちっと、いまや投資保険をかけて、きちっと手続が進んでおるようでございます。担当局長はそのように作業をなさっておいでになりますが、きちっとそういう適用をして、そうして所要の各金融機関等の手続と、法に定まったいわゆる保険の手続等をなさることをここでお約束いただきたい。
  82. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  本件に関しましての外国政府の接収等によりました企業に対しまする損害に対しまして、海外投資保険の法令の約款の定めるところによりまして保険金を支払うべきものと考えます。この点ははっきりと前向きに処理いたすことをお約束いたします。
  83. 塚本三郎

    塚本委員 幾つかそういう問題がいまできてきておるのですから、この点時間がございませんから、こういう個々の例だけ申し上げておったら話が進みませんから切り上げさしていただきますが、援助は援助として、政府は、南北問題あるいは途上国問題と世界から指摘されるような状態にはならないようにきちっと御協力、特に日本の国は材料を分けていただかなければならないのですから、彼らが本気になって怒ったら、日本の経済の根幹が揺るぐことは御承知のとおりです。だから、協力すべきものはきちっと他の国から非難を受けないようになさい。それでないと、言うべきことが言われなくなる。この基本原則が一番問題です。パプア・ニューギニアの事件はその一つの例として私は注意深く見守っておったので申し上げたのでありまして、そのほかに幾つかあります。ウランの輸入の問題もあります。いろいろな問題があります。しかし、いまそれを取り上げておったのでは時間がなくなってきますので、十分にそのことだけ御注意を申し上げておきます。いかがでしょう。
  84. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今後ああいうようなことが起こらないように最善を尽くします。
  85. 塚本三郎

    塚本委員 それから総理、ECですでにダンピングの税の適用がなされた。これはECだけの問題と受け取ってはいけません。このことを強く御要望申し上げておきます。財界の諸君も、ECの金額は大したことがない、しかしながらアメリカにこれがうつらなければいいんだがという声が出てきておるのでございます。しかし、やはり日本人の感覚としますと、いわゆる東の方のアメリカ、西の方のヨーロッパという感覚があるんです。しかし、地球は丸いんです。大西洋をはさんでアメリカとヨーロッパとは全く同根なんです。申し上げるまでもなく、あの三十五年前の太平洋戦争のときに、ヨーロッパとの関係がアメリカに飛火しないという情勢分析が日本の敗戦につながった最も大きな原因だと史家は言っております。歴史家はそう言っております。ECではそれだけやられても金額は大したことはない、アメリカに飛び火していかなければいいんだという考え方は、これは危険です。ヨーロッパで起きたことは必ずアメリカに飛び火するということをきちっと腹の中に置いて経済の問題を扱っていただかなければならぬというふうに私どもは心配をいたしております。  学者の諸君に聞いてみますと、すでにヨーロッパ及びアメリカにおいては黄禍論——黄禍論というのは、はだの黄色い日本人が世界の経済を荒らし回っておるということの議論だそうでございます。これはアメリカの諸君もヨーロッパの諸君も同じような言葉を出してきておる。升が小さいので、ヨーロッパだけが先にダンピング課税というもので悲鳴を上げてきた、こういうことだと思うのです。したがって、最初申し上げたように、日本経済がアラブの油によって生きておる。その油の赤字というものの穴埋めを、ヨーロッパとアメリカにその穴埋めをしていただいておる。これを除去するとすると、日本の国はエネルギー源をどこに求めるか。あるいは、八十億ドルに縮まったけれども、八十億ドルと言えば膨大な金額です。この金額をどこによってバランスをとるかということを、五月でしたか、総理がおいでになりまするまでに、きちっと国内がやっていかれるような見通しを立ててロンドンにおいでにならなかったら、総理は再び被告席に立たされる、このことを改めて申し上げて、総理の決意を伺いたい。
  86. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ECの問題は、ボールベアリングですね。あの問題はまあ一つの小さな事件といえば語弊があるかもしれませんけれども、一つの問題でありますが、ああいう問題が積み重なりますと、これが大きな問題に発展してくるということを私は非常に心配しておるのです。  世界中が貿易をしておるんですから、その間に小さなトラブルが各所、随所に起こる、これは私は避けられないと思いまするけれども、これが積み重なりになりまして、世界が再び保護貿易主義体制という体制転換をするようになると、これはまあ大変なことになるだろうと思う。これは、ひとり経済の問題じゃない、政治的混乱に発展してくる、私はこういうふうに思うのです。そういう危険性をはらんだこれからの世界情勢ですから、そういうことを再びしちゃならぬ。そのためには私は、とにかく世界で三極の日米欧、その一つと言われるところの日本の立場というものは非常に重大だと思うのです。これは日本という個人的な立場ばかりじゃありません。世界政治の上から大事だと、こういうふうに考えまして、再びそういう不幸な保護貿易体制というものに落ち込まないように、そういう立場にある日本としては最大の努力をしなければならぬ。これはひとり日本のためじゃありません、世界のためである、そういう認識に立ちまして、今後国際経済に臨んでいきたい、かように考えます。
  87. 塚本三郎

    塚本委員 具体的に提示できるようにひとつお考えをいただかないと本当に大変なことになるということを心配しておりますので、御勘案いただきたいと思います。  国内経済に移りたいと思っておりましたが、労働大臣がどうしてもお出にならなければならぬお約束があるそうでございますから、順序を振りかえて労働大臣にお尋ねをいたします。  定年制の延長という問題でございます。日本がこの十数年来飛躍的な経済の発展ができたのは、幾つかの要素があると思います。しかし、最も大きな要素に労働力の問題があったと思います。戦後たくさん生まれた諸君が二十代、そしてまた三十代という働き盛りの一番いい労働力、そのかたまりが、この十年来の日本の姿であったと思います。そして、お年寄りの方は戦争でずいぶん亡くなっておる。苦労して、寿命が短い。そして、戦後は子供の生まれる数が少なくなった。働き手ばかりの集団が日本の状態でございました。これが日本の産業と経済の発展において最も大きな力になったことは否定できません。  ところが、二十年たちますると、この働き手が、扶養家族というと言い過ぎになるかもしれませんが、五十代、六十代となってくるとき、この人たちが定年によって労働の職場から離れなければならなくなってくる。そうして若い諸君の数が少ない、その少ない諸君がこの人たちを養わなければならないという事態がやってまいることは統計上明らかです。具体的に結論を申し上げると、定年の延長が現労働界だけではなく、産業界にとっても最も大きな問題として爼上に上せられたと思います。御見解を伺いたい。
  88. 石田博英

    ○石田国務大臣 定年制の問題が現在労働界だけじゃなくて経済界を通じても重要な課題となってきておる、しかも将来の人口構造を考えますときに、これを放置できない問題である。これは全く塚本さんと同意見でございます。  わが国の定年制というものは一体いつ始まったのか、いろいろな説がございますが、明治十八年に日本郵船ができ上がったときに、その規定の中で、五十五歳になったら進退伺いを出せというものが入っておった。これが最初だという説もありますし、明治三十五年に同じように日本郵船で休職規定というものができて、五十五歳になったら休職になる、一定の猶予期間を置いてやめてもらう、こういう規定が生まれたのが最初だという説もございますが、いずれにいたしましても、その時代の日本人の平均寿命は大体四十三歳から四十五歳。いまは御承知のように七十歳を超えた現在、五十五歳定年制というものはそういう面から見てもきわめて不当なものである。  もう一つは、やはり定年というものは社会保障とつながなければならないと思うのですが、年金等の給付の開始は六十五歳であります。しかし、もう一つ別に考えますと、わが国の人事管理体系あるいは雇用制度、それから年功序列型賃金体系、そういうものが別の背景として存在しているのでありまして、そういうものの処理を並行して行わないと実効が上がらない。そこで、とりあえずの目標を六十歳定年制の普及というところに置きまして、これに対して中高年雇用促進に関する特別措置法の成立によって各企業とも六%、その年代層の人の雇用義務を課しているわけであります。それからまた、中高年の雇用に対する給付金等の制度も実施をいたしておるわけでございまして、六十歳定年制の普及を目指して努力をしておりまする結果、五十年度の段階で大体、六十歳定年制に三六%くらいなってきておるように思います。それから、いわゆる大企業は特に低かったのでありますけれども、これも一九%近くまでに伸びてまいってきておる実情でありますが、一方、労働力の不足を補うという意味からも、定年制の延長というものを、これは雇用政策の一つの大きな柱として努力をいたしていくつもりでございます。
  89. 塚本三郎

    塚本委員 労働大臣、五十年代に十何%とか二十何%というのは、これはテンポがおそ過ぎると思うのです。もう年金の立場から言いますならば、いまは七人に一人ずつお年寄りを年金で養っておるという計算のようでございますが、二十年たちますると四人で一人を養わなければなりません。しかし、これは五年間定年を延長すれば、五年間だけは年金を掛けてくださる方に回るんですね、もらうんじゃなくして。ですから、いわゆる年金の方は払わなくてもいいし、出してくださるのですから十年間のいわゆる五十五歳から六十五歳までの間というものを五年間六十歳まで延ばしてくだされば、これはいわゆる十年分の穴埋めができることも計算ができておるのでございます。したがって、五十年代に二〇%とか一九%とかというようなことでなくして、もっと速いテンポで、具体的に計算をなさって、数字で出てくるのですから、作業を進めていただくことはいかがでしょう。
  90. 石田博英

    ○石田国務大臣 いまの私の説明が不十分であったかどうかわかりませんが、全企業について言いますと三六%くらいにいまなりました。これは五年間で約倍以上になった。ただ、大企業の場合は、系列企業へ移っていくということがありますものですから、どうしても六十歳定年制の普及がおくれがちであります。しかし、それでも五年前の一一%前後から一八%、一九%になってはきております。しかし、いまおっしゃるように、社会保障とのつなぎをつけなければならない。したがって、社会保障の部門は厚生省の所管でございますが、いま御指摘のように、私どもの方で定年延長の努力をすれば、それはまだ六十五歳になりませんからもらう方ではないのですけれども、しかし、掛ける方になることは間違いないのですから、そういう意味において、今度は給付開始の年齢の点についても御配慮を願いたいものだ。しかしながら、いまおっしゃったように、われわれの平均寿命が違ってきているのですから、この五十五歳定年制が生まれたときと比べてみると全く違ってきているのです。そういう状態の中で、いま申しましたような、それを阻止しておった要件、人事管理面とかあるいは賃金原資の問題とか、あるいはまたそのほか年功序列型賃金体系とか、そういうものとの調整をやりながら、六十歳定年制の全般的普及に向かって、それを目標として私どもはとりあえず努力する。しかし、それで終わるのではなくて、やはり社会保障と完全に結びつくような定年制の延長を企図していきたいと、こう考えております。
  91. 塚本三郎

    塚本委員 総理大臣、お聞きいただきましたような状態になってきております。いみじくも労働大臣が漏らされましたように、大企業が、関連企業に横滑りをしていく。そして、行くところのないところは、大きな資本力、宣伝力に任せて中小企業分野にどっかりと割り込んでいく。それは分野調整法の問題でこれから研究をして国内経済として述べていきたいと思いますが、同じように、お役人の方々が特殊法人等をつくって、そして定年延長をみずからおつくりになっておいでになる。行政改革の問題で言及してみたいと思いますが。悪意があってお役人さんおやりになるということよりも、実際は、もう五十歳になったら、局長さんたち、次行く先をお探しになっておいでになる、率直に申し上げて。民間へ行きますと、二年間という歯どめがありますから、その間何かしなければならぬけれども、公庫、公団等、整理しなければならないところを整理できないというのは、定年制の問題が——年代で区切っておるわけじゃありませんけれども、そういう問題が行政改革を不可能にしておる根幹になってきておるということに、総理お気づきになりませんか。いかがでしょう。
  92. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 定年制と行政改革の問題ですね、いま伺っておって、ああ、そういう関係もあるかなあと、こういう感じもいたしましたが、確かにそんな関係もあるような感じもします。しかし、行政改革というのは、定年制という問題はかりの問題じゃない、もっと基本的な立場から検討をいたしたいと、かように考えております。
  93. 塚本三郎

    塚本委員 ばかりでないことは承知をいたしております。鳩山外務大臣やあるいはまた相沢前主計局長のように、特殊法人に横滑りせずに議員になっておいでになったことはおみごとだと思っております。大部分の局長さんたちは、ほとんど分け入って、これは大蔵省の分野だ、これは建設省の分野だ、こう言って、特殊法人が整理の勧告を受けておるところへみんな割り込んでおいでになるのですよ。そういう形で高級官僚が中心になってやっている。民間も右へならえです。だから、もうそういう関連企業は、希望の星と言われる、そこのトップにはなり得ないようになっておる。なる人を希望の星と言って、わずかにこの人だけはトップになるかもしれないと、こう言っておるわけです。上から天下りにみんなやってくる、こういう状態になっておるのです。そればかりではございませんが、最も大きな要素がこの定年制の問題にかかわりを持っておる。日本の全行政の中で、もはや人生わずか五十年というときが七十年になってきた、この問題を踏まえて労働力の問題を検討していただかなければならぬ事態になってきたということでございます。定年になって、そして給与が半分になって、そして全く知らない職場に行って、かつて部下と言うと語弊がありますけれども、こちらから指示をした諸君に頭を下げて行かなければいけない。このことのショックというものは大変なものであります。五十歳になった私みずからが考えてみて、大変なことだなあと思っております。物理的自然現象として二十歳延びたんだから、もう五十歳と言ってみたって六十歳と言ってみたって、りっぱに働いていただき得る状態です。したがって、具体的にもっともっと——もちろん終身雇用制の問題やあるいはまたいろいろな問題等があることも承知をいたしております。てきぱきとしていかなかったならば、いかに行政改革の問題や中小企業産業分野の問題等を手がけてみても、力の強いお得意様が資本力、宣伝力をもってマスコミを抱えてどっかとあぐらをかいてしまったら、商店街は一遍に吹っ飛んでしまうんですよ。これが今日の中小企業問題の一番大きな問題にもかかわり合いを持っておる。私は、もちろん政府や雇用者だけの問題ではないと思っております。定年になってその高給な人をいつまでも温存さしていたら新陳代謝も図れない、若い諸君の昇進の道はどうだということもあります。具体的に、進んだ労働組合の中では、定年が延長されたならば、その条件がとれるならば、ベースアップについても再検討してみようじゃないか、自分たちの老後の灰色を見たときには、いま高く上がっていくよりも、五十五ですとんと落ちるよりも、六十まで傾斜で上がっていくためには、自分たちもやはりベースアップに対して、企業は一つの升ですから、だから十分にそのことを検討しなければならない、進んだ労働組合においてはすでにそこまで検討しておるところもあるのであります。おみごとだと私は敬服をいたしております。どうぞ、そのことを考えて、日本の行政の行き詰まりの万般にかかわる問題が定年制延長の議論だということを提言申し上げておきますので、具体的なこれが実行方に対するあらゆる問題について努力をされるお約束を総理からいただきたいと思います。
  94. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 定年制問題と行政改革の問題が深くかかわっておるということはよくわかりました。つきましては、行政改革を進めるという際にはあわせて定年制の問題につきましてもなおさらに検討する、こういうふうにいたしたいと存じます。
  95. 塚本三郎

    塚本委員 国内経済問題に移ってまいります。  資源有限時代ということを総理はしばしば繰り返しておいでになります。十分承知をいたしております。私は、一月三十日にこの場所において、副総理であったあなたと一時間にわたって安定成長の必要性の議論をして完全にその点では意見の一致を見ました。速記録がここにございますので、改めて私は読み直してみました。しかし、安定成長を実現し、混乱を避けるためには、どうしても企業は自己資本率をふやしていかなければいけない。私が二〇%と申し上げたとき、いや、実際は一六%しか自分の資本はないんですと総理がお答えになったのです。八四%は借入資金で企業は賄っておるのが平均数値だと御説明になりました。ここでもって銀行の高い金利を払っていくためには、安定成長で生産を差し控えておったならば、企業はやっていかれないことは当然です。不景気なときには生産をストップして、損をしてでも企業するということは、これは倒産につながります。いや、ストップをしなくても、それをいわゆる制限してやっていかれるようにするためには、金利の負担を軽くしなければならない。それがためには、自己の資本率一六%をたとえば倍額増資をして三二%にさせる。もう一回倍額増資をすれば六四%になります。もちろんそんな単純にはいきませんけれども、単純に事の見通しを立てるならそうなります。株価は平均二百円です。それが、倍額に増資して百円、もう一遍増資をして五十円、こういう額面になって一〇%の配当金があるならば、国民は、郵便局に持っていくよりも、あるいはまた銀行に預金を持っていくよりも、自分の勤めておる会社の株を買うでしょう。株を買えということを前幹事長中曽根さんは言い続けておいでになったはずです。私はいいことだと思います。そうできるように自己の資本率をふやすことによって、少なくとも設備は自己資本によって、そして運転資金を金融機関に、こういう形にすべきだという私の提言に対して、副総理であったあなたは全く同感でありますというふうに御返事なさって、しかしことしじゅうに具体的に手がけなかったら破産、倒産が続出しますよと申し上げて、私はくどくそのことの実施方を迫ったはずでございます。どれくらい進んだでしょうか。
  96. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは実際問題とするとそう進んでおらぬと思います。むしろ、企業は売り食いをしている、こういうような状態で、この資産内容というのは悪化に悪化を続けておる、こういうふうに思います。やはり、経済情勢が回復いたしまして、そして企業収益が上がるようになる、そういうようなことになりませんとただいまの問題は解決しない。  それから、同時に、この資本比率が悪化したことはどこから起こってきたのだということを考えてみますると、これはやはり経済が国全体として、暴走というか、いわゆる高度成長で成長のテンポが速過ぎた。そこで、設備をします、事業を拡大しますという際に、自己資本を調達するいとまがない。そこで安易に借り入れ資本に頼るということになったわけでありますが、私はこれからはそういう経済運営はすべきではないということを主張しておるわけです。つまり、いわゆる安定成長路線でいかなければならぬ、これがこの資本比率の問題のかなめである、私はこういうふうに思っておりますが、基盤としては、そういう資本比率改善の基盤がこれから定着していくわけです。  ただ、いかにもいままでの資本比率が悪い。そこで借金依存でやる。借金の利息負担というものが重苦しくおおいかぶさってくる。そういう中で、雪だるま式にまた悪化するというような状態もありますので、そう簡単にはいきませんけれども、これは粘り強くそういう努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思います。  それから、この税金などにつきましても、そういう自己資本を充実するという考え方ではありませんけれども、そういう内部保留金を充実をするという結果になる施策が非常に多いわけでありますから、こういう問題につきましても、一概にあれは特別措置だからいかないのだというようなことで片づけることは、私はあなたのいまの御議論からしても何か問題があるような感じがいたしました。
  97. 塚本三郎

    塚本委員 安定成長になってから自己資本率をふやすという意見は一つの見識だと思います。しかし、私どもの意見は、自己資本が少ないから安定成長にならないということを指摘をしておったはずでございます。借入金ばかりだから、だからこそ実は不景気になっても、いや、もっとたくさんの生産をしなかったならば金利が払えない、危ないぞと言われて、銀行に実は差し押さえられてしまう。回ってさえいけば赤字が少しくらいふえても何ともないといういまの世相でございます。したがって、実は自己資本の充実を図ることが先だと私は心配しているのです。そうでなかったら実は安定成長にならないのです。  過日、私はアメリカのロサンゼルスで、ある商社と企業の支店長にお会いしました。こういうことを言うのです。政治家に申し上げるけれども、もうこれ以上アメリカに品物を送ってくださると三月が限界でございます。六月になったら私たち支店長はアメリカから追い出されると覚悟しなければなりません、だから早く国内で景気回復に全力を挙げていただきたい、しかし業界を振り返ってみると、いまの状態ではアメリカに売らざるを得ない状態に立っておる、しかもその売り方が悪いんです。こういうふうに表現しておる。  もう少しわかりやすく申し上げてみますると、たとえば鉄の棒をアメリカに売って、アメリカでそれをパイプにいたします。ところが、日本でパイプをアメリカに売りますと、鉄の棒を売ったと同じような価格でパイプがアメリカに売られているんです。そうすると、アメリカ人の感覚では、いや日本の製鉄会社は、アメリカに対する鉄の棒と、そして自分の、日本の国内に売るときと価格が違っておる、安く売るから、パイプにする工賃を上乗せしてこられるのだ、だから二重価格でやっておるからけしからぬ、とこうしかられる。ところが実際には、日本の高炉メーカーは同じ値段で出しておる。ということは、同じ値段でもらっても日本の国のいわゆるパイプ屋さんは工賃はただなんです。工賃はただでパイプにつくって売っておるのです。マイナスでも売って、そのお金で回していかなかったならばつぶされるのです。こういう実態になっておるのです。アメリカ人にはどうしてもそのことが理解していただけません。損をして仕事をして売っておるなんということはあり得ない、そんなばかなことは、とこう言うのです。向こうは金利というもの、資本力というものの限界というものを知っておるが、日本ではまるきり借金だから、銀行に押さえられて企業ができなくなるという実態がどうしても理解されません。工賃はただにしてパイプにして売っておるということは、アメリカには納得されないんだと言うのです。おわかりでしょう。そのある鋼管会社の、そういう赤字で工賃はただにしても売らなければならない事態になっておることも、総理、おわかりだと思います。最も大切なことは、そうしてわざわざ安くたたき売りをいま業界はしてでも——どれだけ損をしておるかわかりません。中国の商談があった、あわてておえら方たちがおいでになります。実はコストより安く売っておるのです。なぜならば、流れてさえいくならば、銀行に押さえられて企業がストップされる心配はない、採算など合うはずがない、と堂々と公言しておるのです。それは、採算に合わないときには企業をストップして市況の回復を待つという資本主義本来の機能というものが失われてしまっておる。  自己資本主義だとあなたはここでおっしゃっておる、自己資本主義にすべきだと新しい言葉を副総理のときにおっしゃっておいでになる、全くそのとおりだと思います。ところが、それができないから景気回復とおっしゃるが、ますます景気回復がこれはできなくなってまいりますよ。ところが、実際国民全体にしてみるならば、借りる金があるということは預けているところの国民が一方にあるという事実なんです。借りられるということは実は借りられるだけの担保力があるということなんです。それを銀行を通して借りるのでなく、表に出して、自己の資本率を高めて、そうして市況が悪くなったときには生産を制限して市況の回復を待つ、こういう自己資本主義の本来の姿に戻すように努力をなさいということで、ことしじゅうにやりますと、こう速記録に書いてあるが、ますます悪くなってきております。三木さんだからできなかったとは言わせませんぞ。やはり、副総理としてあなたは経済の全責任を持っておいでになったのです。これは具体的に、もちろん安定成長に行かれるように景気回復、私は大賛成です。しかし、それが前提ではない。その一面に、実際に中小企業の人たちは自分の奥さん名義なりいろいろな名義で実は預金を持っておるのです。それを表に出して、そして資本の中に組み入れさせるような方策を講じなかったら、金融だけがでぶでぶに太って、企業だけが利息を払うためにこまの舞い倒れか自転車操業になっておる、このことを指摘しておいたはずでございます。いかかでしょう。
  98. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 塚本さんの御指摘は私は全く正しいと思うのです。経済が安定する、また経済社会が安定するということを考えますと、やはり会社、企業の自己資本がもっともっと充実されるということが実現されないと本当の経済社会の安定と言えないと思うのです。しかし、とにかくこれだけ自己資本比率が悪化してまいりますと、利息の支払いのためにまた借金をしなければならぬというような企業も相当あると思うのです。そういうような状態で、にわかにこれを改善するということは非常にむずかしい。しかし、去年塚本さんから御指摘もありましたので、自己資本比率を充実する、これは大変大事な問題だ、だからこの問題、何か施策があればその施策を進めるようにという指示はしてあるわけであります。しかし、方向としてはそういうことは全く御説のとおりと思いますけれども、この自己資本比率問題が解決しなければ不況はよくなりませんよというそういう性格のものでもない。こういうような認識のもとに景気回復させ、同時に自己資本比率もこれに並行して進めていきたい、かように考えております。
  99. 塚本三郎

    塚本委員 こだわっておりません。しかし総理、庶民が株を買うときには配当を当てにして買うのじゃないのです。大部分は増資を当てにして実は買っておるのです。大体、らしき企業はほとんど二百円を超えておるのです。自動車のごときは六百円から八百円になっておるのです。電機もすでに二百円から三百円になっておる。額面は五十円ですよ。ですから、銀行だけに一切任せずに庶民が参加するようになさい。悪くても百円なんですよ。倍額増資をすれば五十円に下がって、一〇%の配当がいただけるなら額面どおりで配当がくるでしょう。百円だから一〇%の配当が五%に下がるだけでしょう。二百円なら二・五%に下がるのでしょう。だから、配当なんか当てにしなくて銀行へ持っていくのです。できないのじゃないのですよ。やる気がないからだ。いま額面五十円の株価なんてありますか。ほとんど百円じゃありませんか。一番悪いと言われる、赤字だという鉄関係だってこんな状態でしょう。だから、みんな増資をするというならば庶民は相当に協力をするのです。あるいは労働組合の諸君は参加という言葉を使っておいでになる。参加は、組合員の数よりも、やはり組合員がその企業の株を持つことによって参加するというのも一つの方法でございます。  中小企業者は、そういうような架名や奥様方の名義でそれを裏預金とするということを担保力として借りておるのです。これを表へ出すのです。表に出しますと、税務署が実に厳しく、いわゆる推定の税をかけてくるものだから、帳簿がきちっとしていないものだから、依然として隠した架名やあるいは身内の名前で実は預金をしておる。これを表に出してあげるということがいま一番大事じゃないでしょうか。こういう場合に、中小企業の体質を改善するならば、租税の特別措置を何らかの工夫をなさって適用なさって決して私たちは反対いたしません。いずれにいたしましても、昨年心配なさっておられた心配が——現在なおばたばたと破産、倒産が続いてきております。それだけがすべてではありませんけれども、おやりになる気があるならば直ちにでも相当部分改善されるという見通しを持っておるから私は申し上げるのです。手をつけてください。いかがでしょう。
  100. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御趣旨の点は、この前も申し上げましたが、大事な点でありますので、なお鋭意検討いたしてこれを進めたい、かように考えます。
  101. 塚本三郎

    塚本委員 景気回復につきまして、さらに減税を中心として景気回復の議論が重ねられております。しかし私は、景気回復のために公共事業の実施については決して否定はいたしておりません。これが最も大きな力になるということも承知をいたしております。  ここで御要望申し上げておきます。この予算が成立をして公共事業が発注される場合に、恐らく建設屋さんが飛びついてくるでしょう。しかし、いま最も不況カルテル等をつくって、先ほどの議論の中にもありましたように、鉄鋼、セメント、合板等公共投資に使われるべきそういう相手方が、この予算が成立することによってすぐ浮かび上がるとまではいかないにしても、少なくとも破産、倒産が食いとめられるようにすべきだと私は思います。その具体的なものを、ただめんどうだから建設会社に発注してしまえばいいということになると、建設屋さんはまたそれから素材をどんどんたたいたりという形で、依然としてこの大変な事態が引き続くというふうに言われておるのでございます。この際、どうでしょうか。不況カルテルを公取によって認められておる業種で、あるいは具体的に捕捉のできるものだけは、全部とは言いませんけれども、できるものは直ちにそれを建設省なりそういうものが買い付けるなり予約をしておいて、そうして建設会社にすべてを任せないようにして、業界の救済あるいは景気回復ということに具体的に手をつけていただくことがいま最も大切だという声がありますが、いかがでしょう。
  102. 田中龍夫

    田中国務大臣 塚本先生のいろいろな御構想に対しまして、われわれも非常に同感をいたすものがあります。ただいまの建設企業に対しましての倒産防止その他、案でございますが、私どもも初めて承りました先生の御意見でございます。まじめに研究さしていただきます。
  103. 塚本三郎

    塚本委員 たとえば、五十年の建設省所管に必要な資材量というのをとってみました。五十年には、鉄鋼は三百八十九万トンをお使いになっておられる、セメントにおきましては千四百六十万トンお使いになっておられる。恐らく五十二年の今年はセメントにおいてはこれが千七、八百万トンに伸び、鉄鋼においては、五十年が三百八十九万トンですから、今年は恐らく四百万トンを超えて四百五十万トンぐらいにはなるのではないか。よろしゅうございますか、大臣。せめて百万トンだけ、全部というわけにいきませんね、せめて百万トンだけ建設省が買ってくださるならば、いま六万円というコストです。市場においては五万四千円から五万五千円です。いまこれを買っておけば、政府は絶対損をいたしません。しかし、これで手をつけてくだされば、業界は回復はしませんけれども、破産、倒産だけは確実に食いとめることができる。全額というわけにいきません。せめて二〇%か三〇%です。これぐらいは建設省が手をつけてもらいたい。現物買い入れはかつてやったことがあります。ただ、人件費等の問題があって建設省は難色を示すでしょうという御意見を伺いました。それならば、業界がカルテルを結んでおりますから、したがってその中で流通部会がみずから、ゼネコンなり建設会社が言われたら、それだけをすっと必要なものを持っていくというふうに一切の作業は業界がいたします。これを、一年間かかって買いたたかれてだらだらやられたら、これはたまったものじゃありません。政府は建設会社救済のために言っているだけじゃないかという非難もあるのは、このことであります。具体的に独禁でもって公取が何とか助けてあげなければならないと不況カルテルに指定した業種ぐらいは、予算の決まった中においてそういう作業をなさって、いま破産を免れる、食いとめる作業だけでもしていただくべきだと思いますが、いかがでしょう。
  104. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまも申し上げましたように、塚本先生の、あるいは企業健全化に対しまする御構想でありますとか、あるいはただいまの御提案のような建設業者と資材供給業者との間の連携の問題でありますとか、これらの新しい御構想につきまして、私どもも、この深刻な不況対策といたしまして研究をさせていただきとうございます。
  105. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、研究だけじゃ間に合わないのです。三月までになったらこれらの業界は三〇%はもうつぶれるというのが指導者の見通しなんです。だから、回復とまではいくのは無理ですけれども、しかし政府は損をしないのですよ、いまコストより安いのだから。せめて買うことができなかったならば、それらだけはきちっと在庫融資だけでもここでするという約束をなさいませんか。
  106. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの御構想でございまするが、以上のような資材並びに業界との需給関係でありますとか価格形成の問題でありますとかは、いままでは市場にゆだねる一つのルールになっております。それに対しましての新しい御構想でございますので、関連方面も多々あることでございまするし、いまお話し申し上げたように、先生のこの緊迫いたしました不況対策としての真剣な御意見に対しまして、われわれも前向きに研究し、同時に各省の間でまた話し合いもしてみたい、かように思います。いまここで即答することだけはちょっと避けさせていただきます。
  107. 塚本三郎

    塚本委員 総理、お聞きのように大変な事態になっておる。総理もしばしば公共事業の必要性というものとこの不況対策については御発言いただいたのです。やってくださるならばそこまできめ細かくおやりにならないと、あえて建設会社の救済だけになるということですから、だからいまこういう事態を具体的に救済をしていかなければ何にもならないということですから、かつては高いとき、トン当たり十万円を超えたときには、通産大臣が御指示なさって、そうして放出をなさったことがあるのです。トン当たり同じ品物が十万円を超えたときには、市場放出を四十八年には通産大臣が指示なさって、業界は苦しいけれどもある程度協力をしたと彼らは言っておるのです。さらにまたその当時におきましては、これからの見通しとして年間千五百万トンの製造が必要だからということで、設備の増強も御指導なさったのです。そのとおりにやってきたらこの始末じゃありませんか。もちろんその責任は、油の関係と資源の問題がありまするから、私はここでそのことを追及する意思はございません。しかし、そこまで業界を指導し、そして物のないときには放出をさせたんだから、今度厳しいときにはせめて、政府が黙って買い取って備蓄してくれというのじゃないのです、予算に計上してあるところのその数量のうちで二〇%か三〇%だけ先に手を打っておきなさい、そうするならば、動かないところの業界が動いていくことによって破産、倒産が食いとめられます、これが景気回復じゃありませんか。具体的にそういう施策について何らかの手を打ってちょうだいということの強い要望があるのです。総理、いかがでしょう。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 平炉事業対策としてそれを実行すれば、かなり有効な効果を上げるだろう、こういうふうに思いますが、これはかなりいろいろ準備もしなければならぬ、多々いろいろ問題があると思います。したがって、ここでそういう方法をやるというお約束はいたしかねますが、大変貴重な構想であるという見解に立ちまして、鋭意ひとつ検討してみます。
  109. 塚本三郎

    塚本委員 鋭意検討するということですが、もう一刻を争う問題です。三月までになれば三〇%はつぶれますぞ、指導者がそこまで悲鳴を上げておる。実際そうなんですから、その点を一つ申し上げておきます。  ついでに、発注なさる場合に、政府関係の事業というのは大きな建設屋さんがほとんど先取りなさってしまうのです。発注されるところのお役所はその方が安心だから。これは傷が少なくて済むでしょう。しかし実際にはそれをピンはねして、実際行うのは各地方における地場の建設屋さんが仕事をするのです。何のことはない、大きな会社はその名義人となってピンはねをしておるだけなんです。結果においてはお役所はピンはねの援助者になってしまうのです。(「せめてそれだけでもやりましょうや」と呼ぶ者あり)いい御意見がいま社会党さんから出ましたように、建設会社がやってくださるならいいですよ、大建設会社はくぎ一本持っておりますか、ハンマー一丁持っておりますか、極端な表現ですけれども……(「ハンマーぐらいはある」と呼ぶ者あり)ハンマーぐらいはあるかもしれぬという意見ですけれども、そんなものですよ。設計と管理が中心になっておって、その子会社の孫のひこぐらいが現場を行っておるのです。そのときには皆様方のお組みになったその予算は半分ぐらいになっているのですよ。これはいけませんね。せめて、景気回復ということをおっしゃるんだったら、地場企業に直接に参入させて、そういうふうな施策をお立てになりますことが、政府がやっておりますところの中小企業の発注確保に関する法の制定の精神にものっとると思います。これはどなたに——建設大臣ですか。
  110. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 先ほどの資材の件につきましても、お説のとおりでございますけれども、実際請負額を渡すときには実勢価格で渡すわけでございますから、そうおっしゃるほどの大きな相違はないのじゃないでしょうか。私の方はそういうふうな見方をしております。したがって、いまのお話の孫とか下請の問題でございますけれども、この方は責任を十分に持たせてもありますし、したがって、ただ単にその会社におっしゃるほどのことはなくて、ある部分的なものはそういうことにはなっておるけれども、全体がそうだということはない、私どもはそう考えております。
  111. 塚本三郎

    塚本委員 建設大臣、それは認識が違っております。もうこれは、やはり地場に直接にやっていただくという基本的な方針を固めていただかないといけないと思うのです。それでなかったら景気回復にはなりません。あえて私は大きな建設会社を非難する意思はございませんけれども、もう地元の中小の建設屋さんはそのことを大変な問題として取り上げてきておるのでございます。私はもっともだと思うのです。これはやはり具体的に基本にそういうことを持たなかったら、中小企業に官公需の発注の法律を生かす意味にもならぬと思うのです。総理、この点はきちっと、そういうことに中心の考え方を持っていただくということの御答弁をいただきたいと思います。
  112. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府考え方はお話のとおりの考え方をしておるのです。それで、中小企業への発注の機会をより多く与えよう、こういうので、この数年間、目標を設定してはその目標の実現に努力してきておるということでございます。ただ、その目標がそう高くなりませんのは、これはやはり小さい業者に適当なように一つの事業を分割することが困難なものが相当あるわけなんです。そういうものはなかなかむずかしゅうございますが、できる限りの範囲内におきましては、中小企業、特に地元のというか、地場業者、そういう方々に機会が与えられるようにという努力をいたしております。この上ともいたします。
  113. 塚本三郎

    塚本委員 ぜひそれを、できる限りやっていくという御答弁をいただきましたので、期待申し上げておりますから。  次は、中小企業産業分野の確保に関する法律、分野調整法という意見といま二つあります。しかしいずれにしても、今国会において中小企業の産業分野を守るための御意思だけは各党が一致しておることは御理解いただいておると思います。  自由経済というのは、自由にして公正な競争でなければなりません。単なる自由のときには、強い者だけの自由になります。たとえが妥当であるかどうかわかりませんけれど、ウサギがいる中に一匹、オオカミかライオンが入ってまいります。そうすると、おのおのやりたいことをすれば、御承知のとおり、それは自由ではなくして弱肉強食の世界になってしまうんです。アフリカのジャングルでもあるまいし、文化国の日本において、野放しにしてそれが自由だというわけにはもはやまいらなくなってしまいました。オオカミやライオンはウサギの取り分を食うだけじゃないのです。ウサギは中小企業者、オオカミ、ライオンは大企業、それはお客様をとるだけではなくして、ウサギそのものを食べてしまうんです。おわかりでしょうか。ここなんです。力があるから二倍や三倍食うぐらいのことで、そう中小企業者がぎゃあぎゃあ言うんじゃないんです。オオカミやライオンは、野菜畑の野菜を全部食べる前に、まずそのウサギを食べるんです。これが今日における自由競争だと政府が御判断なさったら、それは自由ではなくして弱肉強食なんです。そこまで実は大企業と中小企業は、いわゆる相克の間柄になってきておるということです。したがって、どうしてもこの際、ウサギや犬やネコというものと、オオカミやライオンやあるいはまたそういう猛獣とは一定のさくを設けなければならない事態になってきておる、これが分野調整法の基本原理だと思います。ぜひ制定の御意思をここで御答弁いただきたい。
  114. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 中小企業事業分野確保、これは非常に重要な問題である、こういうふうに考えておりまして、そういう立法をする方向でただいまこれも検討中である、かように御了承願います。
  115. 塚本三郎

    塚本委員 政府案は検討なさっておいでになるようです。聞くところによると、調整法と、こう言う。大企業と中小企業と調整する。紛争の生じたときに調整すると、こう言うのです。だめなんですよ、それでは。紛争が起きないようにあらかじめ予防すること、事前的に法律によって、過去にも食い荒らしてしまったんだから、食い荒らさないように——起きてから調整ではだめなんです。だから分野を確保してください。いわゆるきちっと需要に対して供給が果たされて伝統的にその分野を守っておるものについては——もちろん自由競争や合理化やそういうものを否定しようとは思いません。しかし、せめてオオカミは二倍、三倍の野菜は食べても、お隣におるところのウサギまでは食べなさるな。それがためにはそこにある程度のさくを入れなければならない。これは分野の調整じゃないんです。事前的に予防的にしなかったらだめなんです。したがって、私どもは分野の確保、こういうふうに申し上げておるんです。その向きでおやりいただきたいと思います。どうでしょうか。
  116. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御意見のございました分野調整法の問題でありまするが、審議会の方からの答申が参っておりまして、目下、鋭意その問題について法制を急いでおる次第であります。  ただいまの御指摘のような業種指定という御意見でございます。しかしながら、業種指定ということは、いまのところそれを何とか調整をいたすような方法で考慮すべきではないかということで、ただいまお話しのような態度でもって臨んでおります。この問題はなお話を詰めまして、鋭意、今国会にはぜひ立法いたしたい、総理を初めそういう決意でございますので、なお今後ともに御相談を申し上げてまいりたい、かように存じます。
  117. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、ちょっとおわかりにならぬようで残念ですけれども、業種指定の問題に行く前なんです。起きてから調整するんじゃいけませんよ。だからあらかじめ事前的に予防的に、そういうことが過去においてたくさんできてきたから、だから業種にまで行く前に、きちっと分野を確保してあげなかったらだめです。弱肉強食はまず改めるという基本方針を打ち立てるためには、調整法ではなくして確保の法律にしなさい、こう言っておるのです。
  118. 田中龍夫

    田中国務大臣 お話のとおりでございます。その問題につきまして目下私のところで法制化を急いでおりますので、また御相談をいたします。  調整の問題でございまするが、いまのお話の、指定の前に両者が相はむようなことがないように、中小企業をいかに守るかということにわれわれ真剣な努力をいたしておるところでございます。
  119. 塚本三郎

    塚本委員 具体的に申し上げてみますと、もうあなたのところで、通産省では中小企業庁が中心になりまして、設備の近代化、合理化、ずいぶん御努力いただきました。小さいところの業種が大企業に対して太刀打ちするためには協業化、そういうことまでいろいろな助成をしていただきました。ところが、それが大臣、一面においてはそうしていただいたことがあだになっておるのです。だから申し上げるのです。  私は家具屋でございますけれど、家具屋というのは、いわゆるスチール家具という合理化のできたものはもはや家具屋じゃないのです。大企業が持っていってしまったのですよ。かつてはわが家具屋の分野でありましたけれど、合理化ができて、協業化ができて、そうしていわゆる機械だけで、資本と宣伝力だけでできれば、大企業がぽかっと来てみんな持っていってしまったのです。わが家具屋の分野がなくなったのですよ。もうそのうちに洋家具もなくなって、漆塗りの職人さんの仕事以外は家具屋の仕事はなくなってしまうのです。合理化さえできなかったならば中小企業の分野で残されたのです、薄利で。設備ができ機械ができ、宣伝力ができますると、百年の伝統を誇ります仕事が一朝にして資本力によって取り上げられるのです。合理化さえしてくれなかったならばという中小企業の声が大臣の耳に入らぬですか。合理化はいいことです。だけれど、合理化した後いわゆる素人でも機械でできるということになったときに、先ほどの定年のやり場所がないから、そうして工場が合理化されると余っているから、その人たちがどおんとつくって、そうして全国的な宣伝網によってさあっと取り上げられてしまうのですよ。これじゃどうなりますか。合理化しなかったらよかった、といま中小企業メーカーは泣いておるのですよ。幾つでも例を挙げたならば——電気器具だってそうじゃありませんか。あらゆるものがそうなっておりますよ。だから私は例を申し上げて納得をしていただこうと思ったのですが、時間に制限がありますから……。  賢明な大臣だからおわかりだと思います。もはや紛争じゃないのですよ。紛争しておる間にとられてしまうのです。だから確保してあげなさい。その基本が決まったならば、それから分野の問題について話し合いをすることは結構でございます。だから、あくまでもこれは確保する法律でなかったら意義をなしませんというように申し上げておるのです。総理、御納得いったでしょうか。
  120. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 法律の名前にこだわる必要は私はないと思うのです、調整であろうが確保であろうが。しかし目指すところは、これは中小企業の事業分野を守る、つまり確保する、そういうことにあるわけなんでありまして、その言葉にそうこだわる必要はない。鋭意検討しておりますから、また検討の段階において各党の御意見も承るようにいたします。
  121. 塚本三郎

    塚本委員 基本的な認識をきちっとお持ちいただかないと、せっかく合理化ができたものが、中小企業の育成のために中小企業庁の御努力があだになっておる部面が、これはすべてだとは申し上げませんけれども非常に多い。皆様方も選挙区をお持ちですから、そういう人たちの声というもの入っていると思います。だから、この際は、調教じゃない、きちっと確保する、名前はともかく、確保するという実が上がるようにしていただきたいと思います。どうです。
  122. 田中龍夫

    田中国務大臣 われわれ中小企業庁のいたしております努力の点は、先生よく御承知のとおりでございます。  それで、お話のように、この業種の公正妥当な、客観的な基準の設定が非常に困難でございます。それはよく御承知のとおりでございますので、これを総合的に勘案いたしました弾力的な、的確な、業種分野にかかわる紛争を解決したい、こういう姿を望んでおりますので、ただいまお話しのような分野をきちんと法制的に決めるというのもなかなか困難でありますことはよく御承知のとおりでございます。また御相談をいたしながら進めてまいりたいと存じます。
  123. 塚本三郎

    塚本委員 問屋街でもって小売りを大々的にやる。そこから仕入れた人たちはもはや商売ができなくなってしまう。あるいはまた、大きなホテル等借り切って、チャリティーショーという名前でもって、そして大きな問屋とメーカーが一体となって大々的に宣伝をする。チャリティーだとおっしゃるもんだから、新聞からテレビまで放送してくださる。実際には何のことはない、全部そういうのが商店街や中小企業者を圧殺する。こういうような形で、そうして五万円か十万円、実はマスコミ、社聞社に寄付をして、これがチャリティーショーだ、こうなんです。億という金を売りさばかれて、そうして一カ月分の売り上げはもうほとんどなくなってしまうのが商店街の姿です。消費者の立場から言えば、安くていいものと言いまするけれども、しかし、いま申し上げたように、あくまでもお隣のウサギさんを殺さずにおいていただきたいということなんです。こんなことが随所に起こってきておるのでございます。  だから、消費者を無視するつもりはありませんけれども、しかし、やはり業界の乱立は自粛をさしてきちっとやらせなければなりません。そのことは当然そちらそちらで指導していただきましょう。だけれども、あくまでも既存の業者が、権益だとは申し上げませんけれども、まじめにやってきたものが資本力、宣伝力だけで参入して皆殺しにするようなやり方は、この際顕著にあらわれておるので、いまこそ確保する法律をつくってほしいということを強く要望する次第でございます。  それから次に、歩積み両建ての禁止の問題であります。昨年一月にもこの問題を取り上げてみました。そうしてまた、秋にもこの問題を取り上げてみました。若干改善の努力は見えておりますが、実は上がっておりません。大平大蔵大臣のときにお約束をいただきまして、実際に歩積み両建てをさせられておるところのその借り入れ者に対するアンケートをとっていただきました。そのアンケートがいくというわけで、支店長さんたちは、あれは拘束じゃございませんから、自由に使っていただいて結構だ——開聞以来だ、支店長さんが預金を使っていただいて結構だとふれて回ったのは。これはいい現象だと思います。その結果でもなおかつ二〇%から三〇%が苦情を申し出てきておるというアンケートになっておるはずでございます。なぜそんなにしてまで歩積み両建てを金融機関はやらなければならぬのでしょうか。なぜ大蔵省の指示が届かないのでしょうか。大蔵大臣、どう御判断なさいますか。
  124. 坊秀男

    ○坊国務大臣 歩積み両建ての問題は、日本の国の金融界にわだかまっておる非常に不愉快な問題でございまして、私どももこの解決にいろいろと腐心をしてまいったわけでございますが、仰せのとおり、昨年の三月、大蔵省は、中小企業者に対しまして歩積み両建てのアンケートを実施したわけですが、その結果、金融機関が拘束性の預金としての措置をとって、これはいまのお話にもございましたが、まさに銀行側の言うこととは逆のようなことでございますが、金融界が拘束性の預金としての措置をとっていないにもかかわらず、債務者側において事実上払い戻すことが困難であると考えている預金があって、それで実際にも払い戻すことができなかったという、そういう事例もあったわけでございますが、そこで、最近における歩積み両建て預金問題の大部分は、このようないわゆるにらみ預金と申しますか、にらみ預金に起因しているものと思われたので、その解消を図ることを主眼として、昨年新たな通達を出して、そして改善を指示したところでございます。企業に対するアンケート調査につきましては、本年も実施するつもりでございますが、新通達による措置が本年四月から完全実施されることとなっておりますので、その実施状況を見た上、四月以降しかるべき期間を置いて、なるべく速やかに次回の調査をして、そして改善してまいりたい、かように考えております。
  125. 塚本三郎

    塚本委員 「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」は、独禁法の第二条の違反に当たるのです。公取の立場から言うなら、これは独禁法違反です。だからもう法律をおつくりになったらどうでしょうか。歩積み両建て禁止法をわが党はきちっと用意いたしておりますから、御検討いただいて、立法措置を講ずるという方向に進まなければ実現できませんよ。大臣、どうでしょう。
  126. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおり、これは何とかして解決しなければならぬ問題であることは、もう大変痛感いたしております。しかし、金融の問題というのは、やはり市場の状態だとかあるいは経済の実勢だとかいったようなもの、これも深くキャッチいたしつつやっていかなければならない。おっしゃるとおり、歩積み両建てというものは、私も非常に不愉快な問題として何とか解決をせにゃならぬと思っておりますが、いろいろと御意見を承り、私は、この問題については何としてもできるだけ速やかにひとつ解決の方途を見出したい、いろいろ御意見を承らせていただきたい、かように思っております。
  127. 塚本三郎

    塚本委員 なぜ金融機関はこういうことをしなければならないのでしょうか。その理由がわからないのです。貸してあげるというお金が必要ならば、日本銀行から借りてきて、そして貸してあげればいいのですよ。それをなぜ無理に借りたい人に対して預金を召し上げるのでしょうか。なぜそういうことをやっておるのかおわかりになりますか。大臣、どうでしょう。
  128. 坊秀男

    ○坊国務大臣 やはりこれは、私は金融家でも何でもございませんけれども、金融業、銀行という商売が全くガラス箱で行われておるということで、それが徹底的に行われておるということならこういうこともなかろうと思う。できるだけやはり許される範囲において利益を上げていきたいということがそういう商売上、そういったことを全然——私はそれに賛成してもおりませんし、さようなことはあってはならない、こう思っておりますが、現実とわれわれの考えておるかくあるべきというところにそれだけのギャップがある。そのギャップは、仰せられるとおりこれはどんなことがあっても埋めていかなければならない、こういうことでございます。
  129. 塚本三郎

    塚本委員 ことしもアンケート調査を行うというお約束はいただきましたが、法律制定にはまだお約束いただいておりません。そこで、実は最初、いや借りたい人もあるのだから、だからやはり借りるとともに貯金をしなさい、そして多くの中小企業者に相互銀行や信用金庫等は貸してあげたいのだから、いわゆる借りた人は預金して、また他にも広げなさい、こういう一面を持っておると私は思っておったのです。そうじゃないのですよ。無理にそういう拘束預金までして預った預金は、大臣、おわかりでしょう、大銀行に持っていっているのですよ。自分のところで貸しているのは少ないのですよ。これどういうことでしょうか。借りたい人から預金まで取って、そうしてもっと多くの人に貸してあげるためならば、相互銀行の相互援助のそういう精神で、私はそんなにぎゃあぎゃあと何回もこんなこと取り上げるつもりありません。集まっておるもののうちの相当部分を都市銀行にまとめて貸しておるのですよ。なぜそんなことをするのでしょうか。その分だけは気前よく貸してあげたらどうでしょうか。差し詰まるところは、金利の利幅をよけいとりたいためだというのが大蔵省の御回答のようであります。それならそんなものやめてしまって、そしていわゆる貸出預金はこれだけ要るのですから、だから貸出預金をこれだけにしなさいということでもって、貸出金利をきちっとパーセントをやって——借りたい人に預金を迫って、そして自分の借りている二〇%から三〇%、だんだん積んでいきますから四〇%、五〇%がずいぶんあるのですよ。なぜそんなことをなさるのでしょうか。相互銀行間における中小企業者に預った金を貸しておるならば、私はそんな非難しませんが、これの相当部分が大銀行にいっているのです。金がなかったら日本銀行からなぜ借りぬのですかと言ったら、余っていますというのですよ。余っているから大銀行に預けておるというのですよ。これはどういうことでしょうか。中小企業の生き血を吸うために相互銀行や信金がおるとは思いません。必要ならば日銀もそれを貸してあげましょうと言ってくださるではありませんか。それだったら借りたい人にだけは預金を取りなさるな。もはやそれがすでに十何年来の議論ではありませんか。法律をつくる以外にないと思いますが、どうでしょうか。
  130. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お話しのような事実を私も聞かぬじゃございません。しかし、金融の問題を法律で画一的に決めるということは、これがなかなか問題の多いことでございますので、いま塚本さんに対しまして、財政当局として仰せのとおり法律を規定いたしますというところまではちょっと申し上げかねるような次第でございます。
  131. 塚本三郎

    塚本委員 強くその道の方向で検討していただきたい。  それから、景気回復するために、この際一%ぐらい貸出金利を下げたらどうでしょうか。預金金利まで下げなければという、郵便貯金の話をすぐお持ち出しになりますけれども、それができなかったら、百歩譲って〇・五%でもいいから下げる。景気回復につきましては最も近道だと思いますよ。〇・五%ならばどうでしょうか。総理いかがでしょう。
  132. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 事公定歩合の問題になりますと、これは日本銀行が非常に神経を使いまして、さあ国際社会の中でわが国の金利水準はどうか、また国内におきまして、さあ金融の緩慢の状況から見て金利水準はどうかとか、いろんな角度からきわめて慎重に総合的に検討しておるのです。その慎重かつ総合的に検討しておるその問題について、政府がいろいろな政策的な見地から口を差しはさむということは適当でない、こういうような考え方で、従来とも政府はこの問題には口を差しはさまないようにしておるわけでございますが、しかし、やはり経済が安定的に運営されなきやならぬということを考えますと、いまのわが国の金利水準というものは、国際社会から見ますると、日、米、独とこう言われますが、米、独あたりに比べると、かなり高い水準にあるわけです。それから国内から見ましても、景気回復というようなことを考えると、低い方が実はいいわけなんです。でございまするけれども、まあ、低くするというようなことになりますると、預金金利の問題が起こってくるわけなんです。預金金利の問題は、そう簡単に日銀あるいは政府がこれをサポートいたしましても、そう簡単には動かぬ。また同時に、物価のいまの情勢を考えるとき、いわゆる目減り問題というようなものがありまして、そう簡単に動かすことができないのです。そういうようなことで、日本銀行が慎重な態度をとっておりますけれども政府としてこれに対して、そうか、全然関与しません、こういう態度も、これは基本的な態度としてはそうだけれども、無関心であるというわけじゃないのです。重大な関心を持ってこれを見守っていきたい。
  133. 塚本三郎

    塚本委員 なぜ預金金利と連動させなければいけないのかということです。預金金利を下げなければならぬという理論を私たちは持っているのじゃないのですよ。〇・五%ぐらいのことでしたら、預金に手をつけなくたってやれるじゃありませんか。貸し倒れ準備金がどれだけふえているか御存じでしょう。不良貸付を慫慂するわけではございませんけれども、昨年貸し倒れ準備金一〇%を八%に下げていただきました。野党の私たちは五%にしなさいと言ったけれども、八%になさった。たまにはそういう安い貸出金利にして、そうして貸し倒れ準備金に手をつけて、それが足りませんということが起こってきたっていいじゃありませんか。産業界が金利支払いのためにばたばたとつぶれていくときに、よろいかぶとで銀行だけは、金融機関だけはなぜ重装備させておかなければならぬのでしょうか。一体貸し倒れ準備金がどれだけあるか。私はとってみたのですけれども、租税特別措置によっていま積み重なっているのが一兆六千億ほどになっているのですよ。一兆六千億ですよ、総理。(「それで一兆円減税できる」と呼ぶ者あり)この税金だけだって半分ぐらい出ますよ。私は預金者に対する、あるいは借り入れたところのものはその人たちに戻してあげるためにも、この際は、一%が無理であったならば、預金金利に連動させなくて、貸出金利だけ、公定歩合を下げることによって連動して下げていただいて、そして景気回復し、投資を広げていただくという意味をもって、〇・五%だけやるとここでお約束なさったらどうでしょうか。たまには、こんなときぐらいは銀行屋さんも、自分たちが国家へその部分の相当部分は納付すべき金が一兆六千億ですよ。この金をたばっておいて、たまには、それがなくなって八%に削られたけれども、特別措置によってもう一遍一〇%に戻してちょうだいと金融機関が堂々と言ってこられるほどに、借入者に対するサービスをなさるべきだと思います。総理、踏み切ったらどうでしょう。
  134. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公定歩合を下げた場合に、それに連動して貸出金利を下げ得る限度、預金金利をそのままとした場合です、それは大体〇・二五%ぐらいであろう、こういうふうに言われております。〇・五ということになりますと、これは大銀行は私はこなし得ると思うのです。しかし、中小金融機関はなかなかむずかしいというのが、これも通説でございます。しかし、金利問題は、これはいま塚本さんの御指摘の局面ばかりでなくて、もっといろいろ考慮しなければならぬ問題があるのでありまして、私もこれは決して無関心じゃありません。介入はしません、こう言っておりまするけれども、重大な関心を持っておるわけでありまするから、しばらくお任せおき願いたい、かように考えます。
  135. 塚本三郎

    塚本委員 金融機関がそういう姿勢をとっていただかなかったら、産業界はかわいそうだと思うのです。銀行に対する金利を払うために私たちは働かされておるのです、こういうふうに言っており、自分たちだけ、危険なときはと言ってどんどんとよろいかぶとに身を固めて、本当に銀行だけは重装備さして、一兆六千億という、もし貸し倒れになったときの金だけがそんなにたばっておる。もうこの際、やはりこれに手をつけていくべきじゃないか。そこまで危険なところまで、お客様と同じ運命にさらされてみてこそ、初めていわゆる景気回復に一緒に手を携えて努力しようではないか——やはりこの際は、十年先を見るならばいまのうちに、もう三年間縮まっておるのだから、設備投資をしていかなかったら、やがて国際競争力で太刀打ちできない、だから投資を伸ばさなければならない、産業界はそう思っているのです。だけれども、金利負担に耐えかねておる。総理経済通ですからおわかりのはずです。だから、どうぞこの問題は、一%と申し上げましたが、せめて〇・五%だけでも直ちに実施するように強く要求をいたしておきます。  一兆円減税について各党から強い要求を出しております。総理、物価調整減税という言葉を国民は何のことかわからない、物価調整減税というのは何のことかよくわからないのです。三百万円の所得を持った人が八%物価が上がれば三、八、二十四万円買うべき中身が少なくなる、財布の目方が下がる。だから、それがためにその分だけは調整してくださるという素朴な期待があるのです。開いてみたならば一戸当たり平均一万円か一万二、三千円。二十四万円の実は物価高に対する損失に対して、実際に物価調整物価調整とおっしゃるから、二十四万円まるまる減税にしてくださるとは思いませんけれども、しかし実は物価調整に値しない減税であって、それは減税ではなくして、それだけ高くなることによって、ベースアップが来ることによって率が多くなるということだから、むしろ負担増になっておることは先ほどの委員が指摘したとおりなんです。物価調整減税という意味総理はどういう意味国民におっしゃっておいでになりましょうか。
  136. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度の税制改正案が、これは物価調整だというふうには申し上げておらないのです。物価調整という意味もある、こういうふうに申し上げておるわけであります。しかし、いま御指摘の点につきましては、これは完全に物価調整になっております。つまり物価が上がりました、実質手取りが減りました、それを優に償って余りある程度の減税をしておる。これが大変何か誤解があるようで、とにかくあれだけの減税をするのに減税になっておらぬという人まであるのです。とんでもない話です。これは減税になっておるわけでありまするが、その具体的な数字を、この際大事なことでありますから申し上げたいと思います。政府委員からお聞き取りお願い申し上げます。
  137. 塚本三郎

    塚本委員 いいです、もう私時間がありませんから。  国民は素朴に、八%物価が上がったなら、三百万円の所得の平均の方ならば、三、八、二十四万円だけ買う物がだめになってきた、預金もそれだけ中身が目減りしてきた、それを調整するためだったら実は相当数の調整をしていただいてこそ物価調整だと受けとめておりましたら、何とそれが二十四万円の物価高に対する損害で一万円か一万二千円でございます。これから労働運動の努力によってベースアップでカバーしていただいても、それは今度は税率が高いところに適用になってまいりまするから、差し引きすると、ゼロとは言いませんけれども、減税に値しないという見解を私どもはとっておるのです。それを物価調整という意味に言っているんじゃないとおっしゃったが、物価調整意味も含めてという御意見でありまするが、それには余りにも値しない中身だということを国民は受けとめておるというふうにお考えいただいて、私たちはもっと減税をなさいということでこれから強くお願いをすることになろうと存じます。  そこで、わが党がもう何度も申し上げておりまするように、民間企業が大変な経費節約を行っております。ところが、お役所だけは、まあきのうから、相当なさったような御判断ありますけれども、ところが実際にはそれがなされていないんです。実は上がっていないんです。この際思い切ってそういう改革を具体的になさるべきだと思いますが、行管庁の長官いかがでしょう。
  138. 西村英一

    ○西村国務大臣 行政改革を断行すべきだということは本会議でもたびたびお聞きしましたし、またそのときに総理も、これが財政の苦しい折だから積極的に取り組みたいということはたびたび申したのでございます。しかし、まあいままで政府は全然やらなかったというわけでもございませんが、特殊法人の整理にしましても昭和四十二年にいろいろやりました。愛知用水公団等九法人を整理再編成したのでございます。また佐藤内閣の折にも一省庁一局を整理しましたが、現在私たちが取り組んでおる特殊法人の整理の問題は、五十年の十二月に閣議了解をしまして、百十三ある法人からいろいろ審査をしまして十八法人に対して廃止あるは吸収あるいはまた規模を小さくするというようなことで進められておるのでございまして、そのうちで八郎潟新農村建設事業団及び電力用炭販売株式会社、この問題については合意をいたしましてこの国会に法案を提出するようになっております。その他の十六法人につきましては、その閣議了解の了承につきましては、期限を決めましてやはり五十二年度中に整理しようとか、いろいろ検討しようとかいうものがございますが、真っ先にそれに取り組んでおる次第でございます。  また地方の出先機関の問題についても全然やらなかったわけではございませんが、たとえば、食糧事務所の出張所とか、あるいは統計情報事務所の出張所とか、あるいはまた法務省の登記所の問題等相当に数は減っております。これを決められたのは昭和四十五年でございますが、そのときに目標はつくってやっておりまして、目標以上にいっておるところもありますが、まだ目標に達していないところもございます。  そういうわけで、今度総理も私も、やはり財政が厳しいのでございますから少しでも行政コストを下げたいという気持ちはいっぱいでございますが、どういうふうな手段でどういうような行政機構を対象にして考えていきたいかということを今後の大きい問題にいたしておるのでございますから、御了承を賜りたいと思います。
  139. 塚本三郎

    塚本委員 私ども民社党は、安上がりの行政を希望しておるわけではございません。やはりいい行政をしていただきたい。しかし、民間が努力しておるその税金で動いておるお役所だから、それに劣らないだけのむだを省き密度のある行政をしていただきたい。特にあの三十九年の答申の中で、政府の人事政策のしわ寄せを受けている、——はっきりと言っているのです。先ほど申し上げた、定年になった人がどんどん入っていくものだから、つぶすにつぶせないという形になって、使命が終わったのに新しい仕事をやっているのですよ。たとえば学校給食会のような、脱脂粉乳のためにつくった、もうそれが終わったのです。そうしたら小麦を受け入れるときた。最近は米を扱うとおっしゃる。そういう形で、実は生き残るために天下りの養老院をつくっておるのです。政府の人事政策のしわ寄せを受けておる。だから、今日下からまじめに働いておいでになる方たちが、上からどんどん来てしまうから上へ行かれないのです。そういう形になっておるのです。行政管理のできないのは、人事政策のしわ寄せなんです。  もっと極端なことを私は、あるいは暴言と受け取られるかもしれませんが、ここまで考えていただかなければ行政改革はできませんよ。地方には中央官庁の局があります。あれを廃止したらどうでしょうか。通産局、農政局を初め地方における局を廃止したらどうでしょうか。あんなものがあるために、実は住民だってどれだけ迷惑しておるかわかりませんよ。日本じゅうがもはや電話で直通で通ずるのですから、新幹線で日帰りができるのですから、飛行機で日帰りができるのだから。通信、交通のできないときには、それだけの必要性があって設けられたものであります。地方の局をきちっと間引きしてしまったらどうでしょうか。人事だって、県におけるところの商工部長は通産省が人事を行っているのですよ。同じじゃありませんか。貸し付けのときに、六百万円までは商工部長、それを超えたならば通産局長とこうなんですよね。そんなものは幾らでも整理統合できるじゃありませんか。思い切ってそこまでやって、民間企業がぜい肉をしぼり取ろうとするときに、中央官庁がこんな形でだらだら、ふやさないというだけでもって、これでは私は実は上がらないと思います。具体的にそこまで手をつけてみられるということが必要だと思います。そうして、なおかつ必要なものは中央から日帰りすればいいじゃありませんか。総理、どう思いますか。
  140. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 行政機構の問題は人員の整理という問題にもつながる。そういうことで、そう簡単な問題じゃないのだけれども、とにかく時代は変わってきたので、いままでのような行政機構でいいのかということは、これは十分見直す必要がある、こういう認識でございます。  そういう認識に立ちまして、五十二年度は冗費を節約——冗費というか、とにかく一般の官庁の経費は思い切って節約をしたわけなんです。これはごらん願えればはっきりするところでございますが、同時に機構の問題がある。この問題は、われわれ政府としては、新発足早々でございますので、手がつかなかったのでございますが、この問題は、次の課題といたしまして検討してみたいと思っているのです。それで、私の見当としては、八月ごろまでには成案を得たい。それから、それで法律を必要とするというようなものにつきましては五十三年度の御審議、それから法律を必要としない、こういうものにつきましては直ちに実行する、そういう考えです。
  141. 塚本三郎

    塚本委員 八月までに評価されるべき行財政の改革案を示したいということは、すでにわが党木島参議院議員の質問に対してお答えいただきました。しかも、これは国会で特別委員会等を設けて、国会協力をしてくれるならばやりやすい、役所だけではやりにくいということもお認めいただきました。わが党は大いに賛成をして、八月までに各党がみんな御協力申し上げましょう。そして国民の期待にこたえるために、八月のいわゆる政府が出されるところの改革案に対して私たちも協力申し上げたいと思いますので、それを組み入れていただいて具体的に実施をしていただきたいということの提言をさらに申し上げますが、いかがでしょう。
  142. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 行政機構の改革は、政府だけでやろうとしてもなかなかむずかしい問題で、国会がこれに御協力をしてくださると言えば、私どもは大変力強く思います。何とぞ御協力のほどお願い申し上げます。
  143. 塚本三郎

    塚本委員 具体的にひとつ各党の意見を聞いていただいて、その具体案をつくっていただきたいと思います。  もうあと三、四分しか時間がありませんから、最後に、教育の問題の中で、実は父兄の負担が大変だということはもはや相当の問題になってきております。私どもは、この際、少なくとも父兄に対する教育費を軽減させるためにこういうことを考えていただきたいと提言申し上げます。調べてみますと、義務教育を終わって高校と大学に入っておる生徒さんたちが納めるところの年間の授業料と入学金に伴って払わなければならない設備負担金、いわゆる学生となるための必要最低限払っておる費用が年間幾らあるかと調べてみたら、一兆円なんです。公立が千二百億ほどでしょうか。私立が九千億近い負担を父兄になされておるのです。これをこの際、どうしても国家有為の人材を教育するということだから、その一兆円の父兄に対する負担というもの——公立は少ない、いま申し上げましたように千二百億ほどです。私立は九千億近いのです。この負担は、国家有為の人材を養うためだから、最低限授業料と入学金だけは経費とみなして、税の対象から省くということにしていただきますと、私立におきましては高校生でも相当の金額になります。三万円ほどになるはずでございます。大学の場合は五万円ほどの減税になるわけであります。公立の場合は、高校におきまして四千円くらいです。大学において一万五千円ほどであります。総計いたしまして約千五百億円の減税になるわけであります。もちろん、お医者さん等たくさん施設費を取るところは、これは制限をつけなければなりませんが、平均いたしますると、三十万円、五十万円という授業料、施設付帯費というもの、二人、三人という子供を抱えた父兄は所得の半分近くをこれで失ってしまうのです。だから、せめて私学振興助成法によって私学に対する援助をなさっておられるが、もう一つ、公立と私立の幅を狭めるためにも、国家有為の人材を養成するというその大義名分のもとに、高校生、大学生は、私立と公立のいわゆる双方ともに、その最低限として、経費としてこれを税の対象から外す、こういうふうにお取り計らいがいただきたい、こういう希望を申し上げますが、いかがでしょう。
  144. 坊秀男

    ○坊国務大臣 塚本さんの御意見、非常に重大なる御意見だと思います。次代を背負う日本の国民を育てるために、教育ということは非常に大事です。国としても大事です。国家として、投資と言うのは悪いかもしれませんけれども、教育投資、それからもう一つの面は、やはり個人がしっかり勉強して、だんだん国家有為の人間になる、こういう欲望も人間にはあるわけです。教育には二つの面があろうと思います。  そこで、そういうことをやっていくために、国のためにりっぱな人材をつくるという面におきましては、いまおっしゃられました、税でもって負担を軽減していく方法と、それから国が教育の施設とかあるいは経常費だとか、そういったようなものに対しまして、これは支出、投資の面においてこれを尊重していくということと、両方あろうと思うのです。  そこで私は、教育にとって一番適当なのは、やはり国がそういったような施設あるいは経常費といったようなものにうんと力を注いでいくということが大変妥当である、適当なことである。学校へ行く者に対しまして、親の負担を軽からしめるということになってまいりますと、すべてが大学へ行くというわけでもございません。行く人と行かない人とできてくるといったようなこともありまして、これはこの際、御意見でございますけれども、教育に対する経費を軽減するために税を軽くしていくということよりも、やはり国が教育というものに金ができるだけかからないような方法をとっていくということが非常に妥当なことであろう、かように私は考えております。
  145. 塚本三郎

    塚本委員 時間が来ましたから……。ありがとうございました。
  146. 坪川信三

    坪川委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、工藤晃君。
  147. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、総理並びに閣僚に、施政方針演説に見られます一般方針、基本方針並びに予算案に関連しまして質問いたします。  初めに、総理の政治姿勢にかかわる問題といたしまして、その一つといたしまして、総理の教育勅語に関する発言について質問します。  総理は、二月五日、わが党春日参議院議員の質問に対し、「教育勅語の示しておる人の道というものは、これは今日においても脈々として生きておるし、またこれを生かしていかなければならぬと、こういうふうに考えるのであります。」と答弁されましたが、教育勅語について戦後衆議院におきましてどのような決議が行われたか、どのような内容のものか御存じでしょうか。
  148. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、正確に承知しておりませんけれども、教育勅語はこれは廃棄する、こういうふうになっておるというふうに理解をいたしております。
  149. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) この決議についてはっきり覚えていないということであのような発言をされたとするならば、きわめて重大なことだと考えます。この教育勅語は、昭和二十三年六月十九日、衆議院において、教育勅語等排除に関する決議が満場一致で採択され、そして憲法九十八条の本旨に従って排除されたものであります。九十八条とはもとより、憲法は国の最高の法規である、それに反する詔勅などは効力を有しないというものでありますが、この内容は、このときの決議の引用となりますが、「これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明らかに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よって」「これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。」というふうに述べてあるわけであります。  ところが総理発言は、これは参議院における速記録も私、読ませていただきましたが、教育勅語の示しておる人の道というのは生きている、生かさなければならない、こういうことになりますと、まさに排除したところの国民道徳の基本方針、それとして扱われることを排除したにもかかわらず、教育の上で国民道徳の人の道として生かさなければならない、こういう発言になっているわけでありまして、この決議に照らしましてきわめて重大だと言わなければなりませんが、一体その点はどうお考えになるでしょうか。
  150. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、教育勅語は廃棄はされましたけれども、あの中で、人はどういうふうな立場でなければならぬかという部門、これは私の言うまさに協調連帯ということを力説されておるように思うのですよ。「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」、まことに私は人の道だと思うのです。これこそは日本社会においてさらにさらに推し進めていかなければならぬ人間原理である、私はこういうふうに考えております。
  151. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの御発言でありますが、しかし、教育勅語の内容は一体どういうものであるか。ここは私が全部読み上げるわけにはいきませんが、「教育ノ淵源亦実ニ此ニ存ス」と言って、そのもとである教育の大もと、根本理念、それは何かというとあの神話的国体観、皇国史観そのものであります。     〔委員長退席、細田委員長代理着席〕 そしてまた、ここで協調連帯の模範であるかのようにいま言われましたところの人の道は、単なる人の道ではなしに、忠君愛国の臣民の道、主権在君のそのもとでの臣民の道が述べられている。だから、いまの「爾臣民父母ニ孝ニ」という一番最後のところは「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」として、「一旦緩急アレハ」、これは防衛の戦争か侵略戦争か、ともかく侵略戦争であっても、「義勇公ニ奉シ」そして「皇運ヲ扶翼スヘシ」、こういうものになっているではありませんか。それでもなおこれはいまも必要な人の道だと言われるのですか。
  152. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 工藤さん、私は、教育勅語は廃棄された、こう言っているのですよ。これを復活すべしという議論を言っているわけじゃないので、あの中にある人間の道、これは私は、古今東西を通じて誤らざる道である、こういうふうに考えており、私が主張しておる協調連帯そのものを説いておるということを申し上げておるわけであります。
  153. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) この排除に関する決議は、国民の道徳としてのそういういま総理が言われたような指導原理的性格として残る、そういうことがないように、そしてこれは、新しい憲法の精神と根本的に反するし、教育基本法とももちろん反します、それだからこそ排除するということを決議したわけでありまして、いまの発言というのは、明らかにこの決議に対する軽視であり、また同時に、この決議が盛り込んでおりますところの憲法九十八条、そしてまた、これは憲法にかかわるならば、国家公務員が九十九条におきまして憲法をしっかり擁護しなければならないということに対して、著しく反するお答えだと断ぜざるを得ません。いま総理は、人の道として古今東西に、このようなことを言いました。どうしてこの忠君愛国が古今東西なんでしょうか。そしてまた、この古今東西ということは教育勅語そのものの中にあるのです。「之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス」、この「中外ニ施シテ悖ラス」ということになりますと、これはまさにあのアジアに対する大侵略戦争の一つの理念にもなるわけであります。外にこれを広げる。ここに盛られた理念、これがあの明治旧憲法と一体なるものであることは明らかであります。そして、ここで排除したということは、何か国民道徳としていいものがあるけれども、しかし排除するというのでなしに、これが国民道徳のいわば古今に通じて通用するものであるかのような扱いを受けてはならないから排除した、こういうふうになっているではありませんか。その点どうでしょうか。
  154. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 工藤さんは、この「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」、こういうことを否定されるのですか。私は、そういうことはこれは本当に人の道だと思うのですよ。それが私の言う協調連帯だ。やはり人間は大いに自己練摩をしなければならぬ。そして練摩したその成果を互いに分かち合う、そこでいい社会ができるのだ、そういうことを頭に置いて人は行動しなければならぬというようなことを言っておる。この部面につきましては、これは今日の社会においても生きておるし、また、今後さらに足らないところがあれば充実していかなければならぬ原理である、私はそういうふうに考えております。
  155. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 総理は孝行だとか夫婦相和しだとか、そのようなことばかり言っておりますが、しかし、これ全体、さっき言ったように、教育の大もと、淵源はあの皇国史観にあって、そうしてここでいういわゆる道徳というものは、臣民の道として、「一旦緩急アレハ義勇公に奉シ」「天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」、そしてあの侵略戦争で三百万を超える国民が命を奪われ、二千万を超えるアジアの人々の命、こういうものがこれと結びついているわけであります。何かこの一部分だけ取り出して、ここは人の道である、これがさつき私が何度も言いましたように、この昭和二十三年六月十九日、衆議院におけるこの決議、その精神に全く反するわけですよ。なぜこの決議を行ったか。これがいかにも道徳の規範として、国民道徳、指導的原理であるかのように続いている、そういう誤解を与えてはならないからこの決議が行われたわけであります。同様に、参議院においても教育勅語失効確認の決議が行われたわけであります。それにもかかわらず、なおこれが、教育勅語で述べられている道徳は古今東西通用するものだ、このような御発言は、決してこれは認めるわけにはいかないし、明らかにこの国会決議に対する軽視、違反であり、また同時に、憲法に対する反憲法的な態度だと言わなければなりません。その点、改めてこの発言につきまして誤解の生まれないように取り消されることを私は要求します。
  156. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私の発言は取り消しはいたしません。私は、教育勅語は廃棄されたということはよく承知しているのですよ。しかし、あれに述べられておる人の道についての部分は、これは私は、今日の社会においても必要である、こういうことを言っておるので、私の言っておる協調連帯、これとちっとも違わない原理を述べておるということでありまして、あなたとは所感が違いまするけれども、私は、私のこの考え方が正しい、こういうふうに確信をいたしております。
  157. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) じゃ、もう一度、この決議そのものの中にはこのように述べられております。「今日もなお国民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、従来の行政上の措置が不十分であったがためである。」と言って、憲法第九十八条の本旨に基づいて排除することをこの衆議院において宣言したわけであります。ところが、いまの発言、これは取り消さない。取り消さないという意味は、いま言ったように、この中のいわゆる道徳的に書いてある部分というのはまさに協調連帯だ、いまも生かさなければならない。完全にこれと矛盾するではありませんか。矛盾するだけでなしに、総理協調連帯の中身は実にこういうところかということをみずから明らかにすることになりますよ。旧憲法的な感覚の協調連帯だ、それでもいいのですか。私は、総理が参議院において発言された内容、ここにおいて発言された内容、きわめて重大でありますから、この決議に関して、また憲法との関連に関して誤解のないように取り消すことを改めて要求いたします。
  158. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この点は、幾ら要求されても取り消しはいたしません。特に教育勅語の中に  「博愛衆ニ及ホシ」なんというのはいいところじゃないかと思うのです。私は、ぜひああいう考え方でやっていきたい、かように考えます。
  159. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 総理は大変がんこに取り消さないと言われます。     〔細田委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、この決議に関しまして、憲法に基づいて排除された教育勅語、この内容をあくまで国民道徳の規範であるかのようなそのような発言はきわめて重大であり、共産党・革新共同はこの問題をあくまで追及するものでありますが、しかし同時に、このことを私がここで特に追及しましたのは、このこと自体の重要性と並んで、昨日来のここにおけるいろいろな質疑の中で政府が示しましたところの予算修正に関する国会権限に関する発言、それはまさに行政府立法府の上にあるというあの旧憲法的感覚、それをそのまま再現したと思わざるを得ない。それときわめて共通したものがある。そういうことから、福田内閣の体質をあらわすものとして、われわれは徹底的にこれを追及しなければならないと考えまして、次の質問に移ります。  さて、総理は、資源有限化時代ということを新内閣政策の前提とされました。施政方針演説の中で、人類が貴重な資源を使い荒らしたとか、資源小国のわが国は、資源を世界じゅから順調に入手できなければ、一刻も生きていけない立場にあります、このようなことを述べておられます。  しかし総理、第一に、日本ほどこの三十年を超える自民党政治のもとを振り返ってみて、自国の資源をむだにした国があるでしょうか。日本ほど自国の資源を粗末に扱い、荒廃させた国があるでしょうか。これはエネルギーについて言うならば、あの石炭、石油に対する自由化を行いながら、一方ではわが国には二百億トンの埋蔵量、そしてまた実収炭量三十二億トン、こういう資源を持ちながら、昭和三十五年のころ炭鉱の数は六百以上、いまや三十、そうして第一次エネルギー供給に占めるところの石炭の比率は、当時の三四%からいまや三%、こういうことになってしまったわけであります。これは西ドイツ、アメリカ、イギリスなどと比べてみても、きわめて驚くべき低落であります。  五七年に政府が招待した、そして調査団であったところのソフレミンの報告が、日本ではまだまだ石炭を採掘する可能性がある。そうして、かなり深いところを掘っているから、炭鉱を大事にしなければいけない。大事にしていくならば、一九七〇年ごろには七千万トン以上それが採掘可能である。このような見通しも当時はあったわけであります。ところが、石炭、他の鉱物資源、水産資源、あるいは水、そしてまた公害によって、ただでさえ資源小国と言いながら、日本の資源を荒廃せさてきた。  そしてまた第二に、日本ほど資源を大量に消費し、エネルギーを消費する産業を世界に例のない早さでどんどん拡大する、そういう例もなかったし、そしてまた、いわゆる使い捨て時代というのも、実はこれはすべて大企業のマーケティング、販売政策と結びついて広がったわけでありますが、たとえば、日本経済調査協議会の昨年発表しました資料によりましても、アメリカやヨーロッパの自動車の耐用年限は十一年、十年、ところが、日本は六・五年。もし、アメリカ並みの耐用年限にするならば、国内向けの自動車の生産は約四割減らせる、こういうことも指摘されているわけであります。  このように、いま資源有限化時代を唱えておられますが、そして資源小国と言われておりますが、これまでの政治を振り返ってみて、このように自国の資源を粗末にしたこと、あるいはこのような資源エネルギー浪費型の産業ばかり拡大したことに対して、いまどのように反省されておられるか、総理の御意見を伺いたいと思います。
  160. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 資源有限ということは、私、いま初めて言っているわけではないのです。この問題はもう数年前から私は言っていることなんですが、そういうこと言いましてもなかなか説得力がない。世の中の流れはとうとうとして、さあつくりましょう、使いましょう、捨てましょう、こういう流れになっちゃって今日に至ったわけですが、しかし私は、石油ショックというものが、これだけの大きな混乱を世界じゆうに投げかけましたけれども、非常に大きな反省を与えた、こういうふうに思うのです。私が資源有限ということを申し上げて、そして響きを持つという状態になってきていると思いますけれども、これは私は石油ショック、あれがあったからだ、こういうふうに思うのです。ああいう状態がなくて私が資源有限、有限と言っても、なかなか世の中は理解してくださらないのじゃないかというような感じさえいたすわけでありますが、とにかく厳しいことを言う。これは言いたくないことでもあり、そんな感じにもなりますし、また言うことのむずかしい問題ではございますけれども、しかし、本当に国のためを思い、国民のことを考えると厳しいことでも率直に事実を明らかにしなければならぬというので、私は前から資源有限ということを言っておるのですが、工藤さん御指摘の、そうは言うがいままでの世の中で、あるいはいままでの政治の流れの中でわが国が資源をむだ遣いしなかったかとか、あるいは資源政策、そういうようなことにおいて誤りはなかったかといえば、率直に申し上げまして私は誤りもあったと思うのですよ。しかし、とにかくああいう勢いで世の中の風潮が流れる、あるいは政治の流れもそれに沿わなければならぬ、そういう中におきまして、やはり石炭よりは石油が安いや、石炭はそろそろ、ということにいたしまして、エネルギーは石油の方に依存しましょうやというような空気にならざるを得なかったこともまた御納得いただけるのじゃないかと思いますが、しかし、先見の明というか、そういうことが足りなくて、そして資源政策、エネルギー政策の一つ一つの取り扱いにおきまして間違いがなかった、こういうふうには申し上げられません。
  161. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 総理はいま、石炭よりか石油が安いやとか、経済効率とか、そういうことでこういう道をとったと言いますが、同時にまた、先ほど私が指摘したことに対しまして必ずしも率直に御返答されないで、私はいつも唱えていたと言いますが、総理はこれまで何度も経済閣僚を歴任されたこともあり、そういう方の発言として言えば大変無責任さを感ずるわけであります。そこで、農業をこのように崩壊させたことや石炭を崩壊させたことに対して過去いつも言われたことは、経済の効率化第一ということで、本当にわが国の、わが民族の二十年先、三十年先の本当の自主的な発展、それを考えないためにこのようなことが起きた、この点についてもう一度反省のお言葉を聞かしていただきたいと思います。
  162. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 資源エネルギー問題が非常に重大な問題になってきておる、こういう御指摘、工藤さんなんかの方じゃいつごろからされておりますか。別に質問しているわけじゃないのです。私が自問しているわけでありますが、私はこの問題はもう数年前から言っているのです。この間の施政方針演説でも、大蔵大臣としてこの壇上からこう申し上げた、また経済企画庁長官としてそれはこう申し上げたということまで言っておるわけでありますが、環境が熟しませんとなかなかこれに対する御理解というものができないんですよ。率直に申し上げまして、当時の国民の受け取り方、あるいは経済界等の受け取り方は、何だ福田さんの言うことは、あれは貧乏神の言うことじゃないかというくらいの受け取り方なんです。しかし石油ショックが起こってからはそうじゃないのです。ああ福田さんの言うことは真剣に考えなければならぬ、こういうことになっておるわけですよ。しかし、そういう社会風潮が出てくる前の段階におきまして、それはなかなか国際社会におきましても資源有限問題というものはびまんした形じゃない、そういう背景でありますから、わが国自体の資源エネルギー政策として、これは十年前、二十年前のことを考えて言うのですが、そのとき資源有限時代が十年後、二十年後に来たる、こういう認識が乏しく、したがって政策の選択、こういうことにおいてエラーがなかったというふうには言えません。率直に言ってエラーもあった、こういうふうに申し上げられることでありますけれども、しかしまあ大体大局的に見て、私はそう大きなエラーがあったというふうには思いません。
  163. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 日本共産党は、たとえば六 〇年代の初めから綱領のもとで一貫して言ってきたことは、日本経済の自主的で平和的な発展、つり合いのとれた発展ということであります。そしてまたそこで、あの石炭を破壊し石油に急激に転換する政策に対しては一貫して反対してまいりましたが、自民党の政治はそれを一貫して進めてきたわけであります。このことをとりましても、基本的にはエラーがなかったと言うことは間違っていると思いますが、私はさらに先へ問題を進めたいと思います。  総理が資源有限化時代を今日の時点でいろいろ言われる、これは前から言っていることだと言われますが、少なくとも施政方針演説で言われていることを聞く限り、どうも資源有限化時代を総理が憂えている、その憂え方を憂えざるを得ないというのが率直な感じであります。  たとえば資源有限化時代を言われるときに、必ず国民の個人的消費の抑制の口実にしているように思われるわけであります。資源有限化時代である、もう国民の消費は伸ばすわけにいかぬ、国債を買ってもらわなければいけない、これがまた野党がこぞって要求している一兆円減税に対する答えの一つでもあります。ところが、これは政府の家計調査によりましても、昭和四十五年から五十年の五年間をとりまして、各階層別に見まして低所得者第一分位をとりますと、消費支出の上では何と二%減っているわけであります。住居費に至っては約二〇%減っている。被服費に至っては一七・八%減っているわけであります。このようにこの期間、自民党政治が起こした経済危機のもとで、スタグフレーションのもとで国民、とりわけ低所得者層は消費を減らさなければならない。何とかここを高めなければならない、そういう再建をやらなければならないときに、今度は総理はことさら資源有源化時代と言って、消費を伸ばしてはならないというきわめて矛盾したことを言っているわけであります。また、資源有限化と言うとき、エネルギーをとっても、家庭用の消費は全体の八・六%、鉄鋼だけでも一九・七%であります。資源有限化時代と言ってもっぱら一般の国民、働く国民の消費を抑えるような口実に使い、他方では公共事業は大いに伸ばそう。あの本土と四国との三本の橋を一遍につくるということになりますと、鋼材約百三十二万トン、東京タワー三百五十基分、コンクリート約六百十二万トン、霞が関ビルで十二倍、このような資源がこういうところに使われる、こういう方向は放置し、そうして個人消費は抑える、こういうことで言われております。きわめて矛盾したことだと言わざるを得ませんが、この点について総理見解を伺いたいと思います。
  164. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 工藤さんのおっしゃることはどういうことをおっしゃっているのかよくわかりませんが、消費は着実に伸びているのですよ。それから私の言っていることは、消費を抑えるということを言っているわけじゃないのです。これも伸ばすということを言っているのです。ただ、減税というような政策手段まで通じて無理やりに消費をしてください、これがお国のためですよ、景気回復するためですよという姿勢はとりたくない、こういうことを言っているので、五十二年度の予算もしさいに検討していただきたいのですが、国民消費は実質価値において五%ぐらいは伸ばそう、こういうことを計画しておるわけで、決して私が消費を意識的に抑えるというような考え方は持っておりません。その消費というものが一体どこから出てくるかということを私は問題にしているのです。つまり、経済活動が活発になって、そうして実入りがよくなって、そうして消費が伸びる、こういうことを期待しておるわけで、ちょっと何か私の考え方、また私の言っていることを曲解されておるのか、誤解されておるのか、そういうような感じがいたします。  そこで、これまでの国民の生活もちっとも伸びないというようなお話しですが、そんなことはない、これは大変な伸び方だ。ただ、石油ショックによってあの翌年、経済活動がとにかくマイナス成長だというふうになる。したがって、国民の消費も伸びないというあれはありましたけれども、その後着実に回復しておりまして、いまはとにかくあらゆる面におきましてわが国の経済社会の回復状態、あの石油ショックからの立ち上がり状態、これはアメリカ、日本、ドイツと言われるぐらいの状態になっておるということを申し上げます。
  165. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 総理は消費が着実に伸びていると言いました。私がいま挙げた数字は、はっきりと家計調査に基づいて昭和四十五年から五十年、これは総理府統計局であります。それで、特に第一五分位、低所得者層について言っているわけであります。これはそれ以外の数字は出てこないわけであります。このように、伸びるどころか、特に被服費とか住居費関係、それは減らさざるを得ない。全体としての消費水準も下がっている、この五年間に。そういう数字が出てきている。さらにまた、この減税問題については、またそれが景気とどういう関係があるか後で私はここで質問する予定でありますからこれ以上やりませんが、しかし、あの一兆円減税の中身というのはまさにこういう人たちの生活も持ち上げなければいけない、守らなければいけない、そういうことを含めて出しているのであります。そして、この問題はまた後に回すこととしまして、いま言いましたように、資源有限化時代と言いながら、実は個人消費の方は抑えようとしながら、同時に他方では大企業の設備投資やあるいはまた公共事業でも大型プロジェクト、そういった問題について、むつ小川原にしろ列島改造型のいろいろなプロジェクトをさらに進めようとしておりますが、しかし、これまであの新全総に基づいていろいろ大型プロジェクトをやられた、これが列島改造にも引き継がれた、そのため多くの環境破壊が行われた。このことにつきまして、たとえば公害問題の専門家であります宮本憲一氏は、いまアセスメントが問題にされなければならない、これはやらなければいけないけれども、一番大事なことは、これまでの新全総などによって進められたいろいろな開発が一体どういう結果をもたらしたのか、そのモニタリング、それを明らかにしてその上でこそ三全総へ進むべきである、こういう発言もされておりますし、もっともなことだと思います。この問題に関しまして、あの六九年策定されました新全総の総点検について、これまで八項目のうち六項目まではその点検が発表されておりますが、一番肝心な工業基地問題とその対策及び開発関係法の改正などの総点検が、作業開始後五年にもなるのにまだ発表されておりませんが、その作業はどうなっておりますか。いつ発表されますか。
  166. 田澤吉郎

    ○田沢国務大臣 お答えいたします。  工藤さん御承知のように、新全総は昭和四十四年につくられたものでございまして、これは高度経済政策の上に乗った一つの長期経済計画、長期国土計画なんでございまして、昭和五十年に国土審議会において、この長期国土計画は見直すべきである、それからその後ずっとこの見直しを始めてきているわけでございます。そこで、安定経済に切りかえられた現在、工業大型プロジェクトの問題はもちろんでございますが、交通、通信体系あるいは教育、文化、あるいは医療等の総合的な面を考えながら三全総の策定のためにいま作業を進めているという段階でございまして、でき得ますならば今年の九月、秋ごろまでにはこの三全総の策定を終わりたい、こう考えております。
  167. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまのお答えは私の聞いたことにお答えになっていないのですが、工業基地問題とその対策、開発関係法の改正などの総点検はいつ発表するのか、そのことを聞いているわけであります。
  168. 田澤吉郎

    ○田沢国務大臣 その点についてはただいま作業中でございますので、いましばらくお待ちを願いたいと思います。
  169. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これまで何度も作業中、作業中ということばかり聞いてまいりました。これまでの開発政策の中でその特徴というのは、いつも大型の工業開発を先導させ、そうしてあとをやっていく、こういう方式であります。これが日本の環境の大きな破壊をもたらしたことは明らかであります。このようなときに、この工業開発の点検、それが真っ先にやられなければならないこともまた明らかであります。ところが、間もなく三全総をつくると言っておられるのに、作業中、作業中と言っていつまでも発表しない。これは一体どういうわけでありますか。
  170. 田澤吉郎

    ○田沢国務大臣 お答えいたします。  工藤さん御承知のように、長期の国土計画というのは、私たちが理想とする日本の国土をつくり上げるために、時代の動きをとらえて長期計画を立てているわけでございます。ですから、まず第一に私たちは、この国土の適正な利用を図りまして、そうして最も健康な文化的な生活環境をつくるということが第一でございます。  それからもう一つは、やはり国土の均衡ある発展を図ることによって、国民が将来ともやはり安全で、そして豊かで、そして住みよい生活ができるような地域社会をつくるということなんでございます。そういう面から考えてまいりますというと、この理想の姿をつくるには、ただいま過疎過密の問題がございますよ。(工藤(晃)委員(共)「この総点検いつ発表するのか」と呼ぶ)ですから、そういう点から考えまして、私たちはやはり過密の問題である首都圏の整備というものをまず考えなければいかぬ。その整備をいろいろ進めてまいりましても、やはり人口の増加というものはどうしても首都圏にありますから、これを地方に分散してまいらなければならない。(工藤(晃)委員(共)「私の質問に答えてください」と呼ぶ)ですから、そういう意味で地方開発というものをしていかなければならないわけでございますから、そういう発想の上でつくられているのが地方開発なんでございます。それを基礎にしながら私たちはいまその総点検の作業を進めておる段階であるということを申し上げたいのでございます。
  171. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) そこを出すまでに何と長々といろいろ言われるんです。時間がなくなりますが、ともかくこの総点検がおくれている。一日も早く急ぐということを約束してください。(発言する者あり)
  172. 坪川信三

    坪川委員長 不規則発言は御遠慮ください。
  173. 田澤吉郎

    ○田沢国務大臣 できるだけ早く急ぐようにいたします。
  174. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 政府はこの総点検に五年かけて作業している。まだかかると言う。それが三全総の間際になって初めて発表される、これでは国民がこれを本当に見て点検し、考えることができません。その意味で、三全総の策定に当たっては、この過去の総点検に基づいて、国会におきましてもあるいは国民的にも十分審議して、その審議が十分盛り込まれてこの次の開発計画がつくられなければならないし、そのためにはいま進められているところの問題の大型工業開発などは凍結すべきであると考えますが、その点いかがでしょうか。
  175. 田澤吉郎

    ○田沢国務大臣 お答えいたします。  ただいまの大型プロジェクトの将来の問題につきましても、総点検とあわせてこれから検討してまいりたいと考えております。
  176. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの資源有限化問題と関連しまして、これまで国内の環境を破壊し、資源を破壊してきたその過ちを絶対繰り返してはならないと私は重ねて要求するものであります。  しかし、時間がありませんので、次に物価問題について質問を行います。  私たちはいまの日本経済の現状を、戦後アメリカへの従属、依存や、そしてまた大資本本位の非常に急速な高度成長を進めた、そこから生まれた非常に深刻な構造的危機だと考えますが、しかし、この問題の原因についての分析、原因論、こういうことは一応省くといたしましても、過去何回もあった不況期からの回復のときと比べて明らかに違う点、大きく異なる点があります。たとえば過去不況から回復へ向かうとき、大体在庫率一一〇%ぐらいのところで卸売物価の上昇が始まったところが、いまは一四〇%ぐらい、非常に在庫の大きいところで物価の上昇が始まっております。消費者物価もほぼ二けた台が続いております。その上、財政の赤字がきわめて大きい、こういうことになっております。だとすると、いまわれわれも何とか景気回復しなければいけないと考えておりますが、景気対策を行う場合にはインフレ抑制に大きな力を注ぎつつ慎重に進めることが大事である。今日ではインフレの抑制こそ積極的な景気対策である、このように考えますが、最近の物価動向を見ますと、とりわけ卸売物価の上昇を見ますと、過去と比べて明らかに一つの変化があります。  過去は、御存じのように、大企業と中小企業の物価を見ますと、大体中小企業の方の上がり方が早かった、大企業の方が比較的安定していた。それはそのはずで、大企業の方が大きな合理化をやってコストを下げることができたから当然のことであり、また事実上値段を下げないことによってつり上げがあったわけでありますが、それをさておいても、最近は日本銀行の卸売物価を見ましても、七三年、石油危機の年を基準にして昨年十一月を見ますと、大企業性の卸売物価は四一・七%、中小企業性は三〇・四%、農林水産物は三七・八%、このようになっており、これにウエートを考慮するならば、寄与率で約五八%にもなっているわけであります。これは総理府が発表した消費者物価におきましても、七六年は大企業が七・五%、中小企業が五・八%、寄与率で前者が一七・四%、後者が一五・八%、消費者物価においてさえ大企業の値上がりが大きく比重を占めるようになってきている。このように、今日景気対策と言っても、物価を安定させながら、インフレを抑えながらやらなければいけないときに、物価の動向はこのようになってきております。政府が幾ら物価の目標を掲げても、この大企業物価に対する対策なしには目標が達成できないと考えますが、総理、いかがでしょうか。
  177. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 大企業物価というと大方卸売物価になるわけです。それから消費者物価というと農林物資とか中小企業物資の価格である、こういうふうに言っていいんじゃないかと思いますが、変化は出てきておるのです、この石油ショック前とその後におきましては。一つは、石油ショックを資源有限時代、まさにそういうことが世界で非常に意識的に定着してくる。そうしますと、海外からの輸入物資が高くなるのです。石油は五倍になりましたけれども、石油ばかりじゃありません。農作物だけはそのときのできふできで上がったり下がったりしておりまするけれども、他の資源につきましては大体非常な高騰の傾向になってくる、そういう問題が一つあるわけです。  それからもう一つは、賃金は上がります。上がりますが、そのショック前におきましては高度成長ですから生産の規模、生産の量が拡大する、そこで生産性は向上する一そういう中で賃金の赤字というものを吸収し得たわけなんですけれども、その後におきましてはそれができなくなる。つまり、成長が低いものですから、賃金が上がればそれがまた直撃的に物価にはね返る、こういうようなことで、いわゆる高度成長期におきましてはほとんど卸売物価というものが動かない、横ばいであったわけですが、それが消費者物価になりますると五、六%ぐらいずつ毎年上がったのです。なぜかと言いますると、ただいま申し上げましたように、大企業の方は高度成長だから賃金が上がる、そういう上がりがありましてもその上がりを経営の中に吸収し得た、こういうことです。ところが、消費者物価の場合はどうかというと、中小企業あるいは農林漁業、そういうようなものであるものですから、賃金が上がってもこれを吸収できないのです。そこで格差というものがあったのですが、今回は、異変後というものは、卸売物価、消費者物価、これが連動してというほどにはなりませんけれども、非常に乖離が近接してくる、こういう傾向を持っておるわけであります。  今後の対策といたしましては、これは高度成長をとるわけにいきません。いきませんから、その中で企業の経営の合理化、こういうようなこと々進めてもらう。また、同時に政府におきましても製品の需給がどうなるか、そういうようなことをじっとにらんで、そういう乖離ができないように誘導するとか、そういうことで需要供給の関係から価格が高騰しないように気をつけるとか、いろいろ対策はとらなければならぬ、こういうふうに考えております。  消費者物価につきましては、これもやはり需給というものが非常に大事である。特に消費者物価の中では食料品が大きなウエートを占めるわけでありますが、これも農林省を中心といたしまして需給に十分気をつけて、そうしてその高騰をなだらかなものにしていかなければならぬ、こういうふうに考えているのです。いまかなり基調的には安定の基調になっておるのです。それから、これから先々を考えましても、海外で異変がある、こういうことになれば格別でございまするけれども、まずまず私はこの基調は続け得ると思いまするし、また続けさせなければならない、こういうふうに考える。ことしの三月時点の消費者物価は(工藤(晃)委員(共)「大企業の価格の対策をどうするかと言っている、それを聞いているのですから」と呼ぶ)年間上昇率が八%台ぐらいですが、来年の三月時点は何とかして七%台に持っていきたい。  大企業に対する対策いかんというお話でございますが、それは先ほど申し上げたとおりでございます。
  178. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私の質問は、最近の物価動向の中で、大企業の卸売物価の値上がりの割合が非常に大きくて、全体を押し上げているということを日本銀行の卸売物価統計などで示して、これが大事だからどういう対策をとられるかという質問をしたのに、総理はそのまま答えないで、いろいろよけいなことを言われたように思いますが、時間を省くためにもつと先へ進みますが、たとえば公正取引委員会が昨年十月発表しました調査によりましても、三社で七〇%以上占めている、そういうところでは、非常に価格の硬直化があらわれていて、それが前回の不況とも異なる、こういうことが指摘されておりますし、日本銀行調査月報の昨年十二月号におきましても、生産調整実施企業の割合が多い鉄鋼、非鉄などでは価格上昇が総じて大きくなっているということがこういう調査においても明らかになっておるわけであります。  そこで、私は具体的な例に入りますが、大手六社の鉄鋼価格は、過去三年四回引き上げられました。厚板は四万一千円から七万一千五百円など、三万円も引き上げられております。公正取引委員会は、この問題につきましてこれまで一次製品の独禁法違反事件二件、そのほか三度の調査を行いました。この一次製品の違反というのは、特殊鋼及びステンレス鋼板などであります。ところが、この三度の調査、その中の第三次調査の報告によりますと、「次の点は、メーカー間において事前に意思の連絡があったことを疑わせるが、調査の結果、それを確認することはできなかった。」このような内容になっておりますが、この点につきまして、公正取引委員長、その内容について御説明願います。
  179. 澤田悌

    ○澤田政府委員 鋼材の値上げに関しましては、過去二年間御指摘のように三回ございまして、それぞれにつきまして公正取引委員会といたしましては、メーカー及びユーザー等からの事情聴取によって実態を調査いたしたのでございます。調査の結果は、いずれの場合につきましても問題点の指摘はいたしましたが、独禁法に違反する行為が介在していた事実は認められなかったのはただいまの御指摘のとおりでございます。
  180. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの委員長のお話ですが、事前に意思の連絡があったことを疑わせる事実はたくさんあるといろいろ挙げております。たとえば値上げの公表時期が全く一致である。公表の値上げ幅、これも大変近い。たとえば冷延コイルをとりますと、川鉄が値上げ幅一万二百円、住金も一万二百円、あと鋼管が一万円。もうほとんど接近している。熱延コイルは、住金が八千二百円、新日鉄が八千二百円、もう百円台まで一致している。このように値上げの幅が一致し、そしてまた、実は報告したところのコストはどうなっているか。これはばらばらなのに、値上げする公表価格の方が全く一致している。それでもなお、疑わせるが確認することができなかった。一体それはどこに問題があるのですか。
  181. 澤田悌

    ○澤田政府委員 いろいろな角度から事情を調査いたしたのでございますが、御指摘のように短期間に値上げの意思を公表され、また決定が行われ、それから各社それぞれの値上げ幅が非常に近似しておるというようなことが問題でございますので、そういう点を中心に、これが独禁法のいわゆる不当な取引制限に該当するかどうかという点を中心に調査をいたしたわけでございますが、先ほども申しましたように、そういう違反の事実は確認することができませんでした。
  182. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) このように公正取引委員会が確認できないというような結論だったわけでありますが、ここにいま日本の経済国民生活の重大な問題があると私は考えます。なぜならば、いまの産業は非常に集中が進んでいる。そしてまた、これまではわりあい規模の似たような企業が五社、十社いて、そこでカルテルをつくる。こういう状態でいると、競争も行われることはあるわけでありますが、そういうときと違って、新日鉄体制が生まれて以後の鉄鋼のように、新日鉄を中心にしてごく少数で全体を占めるようになる、いわゆる寡占の体制であります。支配的な巨大企業によって全体が動かされるような体制になった。ところが、これまでいまの独禁法を運用して公正取引委員会がなかなか確認できないということは、何年何月、何々ホテルのどの部屋で、これこれの会社のこういう担当の人が集まってこういう協定を行った、この証拠が押さえられなかった、だからこれは違反として摘発できなかった。恐らくそう言われるのだと思います。しかし、いまのように日本の産業がこの鉄鋼に代表されるような寡占体制、少数支配の体制になってきますと、まさにこういう協議などやらなくても一斉に値上げがやられる、このことは明らかであります。電話をかけてもいいし、電話をかけなくてもいい。あるいはまた、昨年で言いますと、四月中旬に新日鉄の平井社長が記者会見で上げ幅を発表する、同じ日に神戸本社で川崎製鉄の藤本社長がやはりやる。これだけでもうすっと同調がやられる。最近もそうです。二月四日に新日鉄の社長が、六、七月に五千円くらいアップする、昨日また川鉄の藤本社長がやはり記者会見をする。こういうことをすれば、いやがおうでも同調ということが起きてしまう、そのような経済の構造になってしまったわけであります。  しかし、こういうときに、いまの独禁法で公正取引委員会がとても摘発できない、こういうお手上げ状態を続けていていいのでありましょうか。ここが問題であります。鋼材が一万円上がる。社会、国民生活全体として五千億円、六千億円、そういう負担がかかります。鋼材の二次、三次、いろいろ下請加工は、大きなメーカーが次々と値上げする、六カ月ごとぐらいに値上げする、そのために何とかして価格を上げようとすると、またこちらが上がってしまう、本当に苦しめられているわけであります。したがって、このような少数集中体制でお手上げ、これは絶対に打ち破らなければなりませんし、この点につきまして先ほど来私が質問している、いまの福田内閣の姿勢が問われるわけでありますが、こういう大企業が少数集中して簡単に同調値上げできるようなことに対してどういう対策をとられる決意であるか、その点総理に伺います。
  183. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まず工藤さんは、少数寡占体制というものについてどういう考え方か、こういう話でございますが、わが日本のように国土も小さく、また資源に乏しい国とすると、わが国民の幸福また経済社会の発展というものを考えていく場合に、ある程度の寡占体制というのは、これはやむを得ないと思うのです。とにかくこの小さい日本がほとんど素手というような状態のも一とで、世界で二位だ、三位だという地位を与えられておる、こういうことは寡占体制というか、これは企業がある程度の規模を持ってきたというところに根幹的な理由があるわけでありまして、これを否定したら、私は日本社会の今日というものは非常な変化になってくるだろうと思う。ただ、そういうふうに巨大化した企業のビヘービアといいますか、行動が社会に対して害悪を及ぼすということがあれば、その点をこそわれわれは監視し、是正をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでありまして、行き過ぎがありますれば、公正取引委員会等の機構もあるし、通産省の行政指導という問題もあるわけでありますから、その点は十分気をつけまして、社会に悪い影響を及ぼさないようにということにつきましては、これは十分配慮をしてまいります。
  184. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いま総理発言の中には、寡占体制はやむを得ない、資源小国だから。これはまたとんでもないことであります。先ほど挙げた鉄鋼の例からすれば、いまや日本の鉄鋼の新日鉄は世界一の鉄鋼になっている、そしてまた輸出面においても世界一になっているわけであります。そしてそれが世界的にも問題になっているわけであります。そして先ほど言いましたように、もし被害があればと言いますが、このように相次ぐ鉄鋼の鋼材の値上げによりまして国民は大きな被害を受けているし、そしてまた現に公正取引委員会が三度にわたって調査しても、まるで明らかに同調値上げであるけれども最後の確証が出てこないということでほったらかされざるを得ないということになっているわけでありますが、ここが問題だと思うのです。どうしてもそれだからこそ、このように日本経済の構造が大きく変わったからこそ、それにふさわしいその体制をとらなければ、大企業の物価上昇がますます激しくなり、国民が苦しめられるわけであります。その点におきまして、私はどうしても独占禁止法の改正を今国会でやらなければならないと思いますが、それについて、あの二年前衆議院におきまして五党修正案、その線をまずどうしても通さなければならない、こう考えますが、その点につきまして、総理、お答え願います。
  185. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私の独占禁止法に対する基本的な考え方は、これは今国会であの問題の決着をつけたい、こういうふうに考えておるわけであります。ただ、この前の五党修正案が参議院において審議未了になってしまった、あの経過を考えますと、あれは自由民主党の中にあれに反対だという動きが出てまいりまして、そしてそれが主たる原因となってあのような形になったというふうに私は理解しておるのです。さて、決着を得るためには野党の理解も得なければならぬ、同時に与党の理解も得なければならぬ、そういうふうに考えておりまして、野党の御意見につきましては、これは党首会談を通じましてつぶさに承りました。つまり、つぶれたあの五党修正案、これをたたき台にして、そして相談をしたらどうだろうというような大方の御意見でございましたが、さあ与党の方は一体それではどうだ、こう言いますと、まだそこまではっきりした意見の調整ができておりません。主たる問題は営業譲渡に関するあの点なんです。その点をどういうふうに扱うかというような点をめぐりまして、まだいま意見の調整をしておるという最中でございますが、いずれにしても野党だけが賛成されたってこの法案は決着に至らないのです。与党の方だって賛成しなければならぬ、こういうことでございますから、与党、野党を通じて完全な合意が得られた、そういう形に持っていって、そして決着をつけたいのだ、こういう考えでございます。
  186. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) この独禁法の問題でいまの発言、これはまさに新しい内閣の体質が問われている。私たちはよく、自民党は大企業本位だと言います。大変御不満のようであります。しかし、大企業本位でありませんか。大企業の横暴を規制しようとする。このように寡占体制になって全く次から次へと値上げがやられる。国民が苦しめられている。二年前にあの修正案が衆議院を通って、そして成立しているならば、この二年間もっと対策が進められたはずであります。国民はこのため、この二年間苦しんだわけであります。しかるにこの時点に至って、その後の情勢から言って、これほど大企業の物価上昇が卸売物価も上げる、消費者物価も上げる、そのようなときになって、そしてまたあの新日鉄や川鉄は悠々と記者会見をやって、また値上げをしますよ。これに対してお手上げ状態、絶対あってはならないと思うのです。だから、どうしてもこの国会で改正をやらなければならないし、それをやる一番の早道、唯一の道というのは、この前衆議院を通ったあれ以外にないではありませんか。このことは明白なのであります。改めて、先ほどは自民党と言いましたが、本当に総理が大企業本位と言われるのがいやならば、国民立場に立つならば、この問題に対してもう一度はっきりした御返事をお願いします。
  187. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は決して大企業本位ではありません。国民本位でございます。そういう立場に立って諸事万端を処理しておりますが、事独占禁止法になりますと、これは早くとにかく決着をつけた方がいいのではないかと思うのです。これを宙ぶらりんにしておくと、工藤さんが心配されるように、また独占禁止法の実効が上がることがおくれてくる、こういうことになるんで、多少、国会ですから協調連帯で譲り合っていいのではないでしょうか。そして早く通す。この前の国会であの五党修正案が流れたといういきさつも、私、よく反省してみなければならぬ、こういうふうに考えますが、そういうことを考えますと、私どもがまとめようとする方向が一体どういう方向にいくかということは、これは別ですよ、別といたしまして、とにかく与党の方の調整もしなければならぬ。それでなければこの国会で処理するというわけにいきませんから、そのことを申し上げておるわけであります。
  188. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 大変無責任な御回答だと思います。あの二年前、わが党も独自案を出しました。その独自案の線から見ればいろいろ不満な点がありました。しかし、まさにわが党こそ協調連帯で何とか通さなければいけない、不満がありましたが、しかし一歩前進ということを踏まえて、そして同時にあれに賛成し、つまり新しいあれがあったわけであります。そういうことを考えて、問題は、総理の方があのとき自民党として通しておきながら、いまになっていろいろ口実を設ける。これはもう明らかにおくらして握りつぶすことであります。そういう点で総理のいまの発言、きわめて無責任でありますが、さらに私は先へ進むため、特に多国籍企業の問題について取り上げたいと思います。  ロッキード事件やそれからあの狂乱物価のときのメジャーなどの便乗値上げなど、いまや多国籍企業問題というのは日本の国民の生活にとって、政治にとって、きわめて重大な問題となってきているわけであります。多国籍企業が日本の総合商社と結びつき、政府高官を買収し、腐らせ、内政干渉をする。そしてまた物価のつり上げをやる。こういうことに対しまして、国連におきましても多国籍企業の規制問題はすでに取り上げられております。こういうときであります。日本における多国籍企業の実態は一体どうなっているのか、どのような調査を行っているのか。この点私は、多国籍企業というときは、もちろんアメリカなど外国の多国籍企業で日本へ進出しているもの、並びに日本の総合商社など日本の大企業で多国籍企業になっていっているもの、そういうものを含めてでありますが、一体どのような調査を行っているか、伺います。
  189. 田中龍夫

    田中国務大臣 工藤さんにお答えいたします。  多国籍企業と申す中には、外国の多国籍企業の日本に対する進出の問題と、それから日本の多国籍企業が海外に進出いたしておりまする問題と双方あると存じます。日本の多国籍企業と言われまする大企業が海外に進出いたしまするにつきましては、御案内かとも存じまするが、四十八年でありますか、民間の経団連等々を中心といたしました、多国籍企業に対しまする一応の、発展途上国に対しまする投資の行動基準というようなものが四十八年に出されておりまするが、その後に至りまして、国連の方におきましても、昨年六月のOECDにおきましては、多国籍企業の行動指針が採択されまして、わが省といたしましては、この指針を遵守されまするように各企業に通達をいたしております。なお、詳細な点につきましては、御質問がございますれば、政府委員をしてお答えします。
  190. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これまでどのような調査を行っているか、こういう質問でありましたが、それに対してはっきりしたお答えありませんでしたが、その資料は追って提出お願いしたいと思います。  さて、私は具体的な問題について伺いますが、最近、東京ガス、大阪ガス、東京電力などの値上げが相次ぎました。福田内閣になりましてから、大阪ガスの値上げを認可しております。その中で燃料費の上昇が理由の一つとされ、特にその中でLNG、液化天然ガスの上昇も挙げられておりますが、LNGの輸入価格が四十七年十二月以降、急上昇しておりますが、その原因は一体何か、この値上げは避けられない値上げであったかどうか、一体どこか調査したかどうか、伺います。
  191. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、ここ二、三年の間、LNGの輸入価格が急上昇しております。これは一つには、オイルショックによる売り手市場化の傾向があるということと、それから工藤委員も御承知と思いますが、五十年の六月にガボンでOPECの総会がございまして、それまで余り顧みられなかった天然ガスにつきましても、むしろ原油価格とスライドすべきである、あるいは一部におきましては、むしろLNGのメリットをそれに勘案すべきであるといったような方向が出てまいりまして、そういったものが総じて輸入LNG価格の上昇の原因になっておるというふうに理解いたしております。
  192. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまガボン総会のお話がありましたが、私は、当委員会に表を配っております。LNGの輸入価格の動きであります。そしてこの表によりますと、ガボン総会があったのは五十年であります。問題は、四十九年になる前から、四十八年十月、十一月、そのころから急速に上がり出しております。そしてここでは、日本がこれまで輸入していたブルネイとアラスカの通関統計によりますところの価格が出されておりますが、このブルネイのLNGの方が四十九年にかけて急速に上がり出した。ガボン総会ははるかに後であります。  しかも、ついでに申し上げますと、このブルネイはOPECには参加しておりません。アラスカの方も、もちろんそうであります。参加していないのですが、ともかく上がり出したし、この動きは石油と比べても、石油の通関統計での上がり方の方が、まだ二カ月、三カ月おくれて出てくるものが突然として出てきた、きわめて不自然の値上がりでありますが、このような値上げについてこのときから調査したかどうか、これをさっき伺ったわけであります。改めてお答え願います。
  193. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  アラスカの方からの九十六万トン、ブルネイの方の五百十四万トン等々につきまして、政府委員をして詳細お答えいたします。
  194. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、ガボン総会が一つの契機になっておりますが、それ以前、オイルショック以降、そういう傾向が出てきたということでございます。  ただいま御指摘の点につきましては、実はブルネイのLNGにつきましては契約が二つございまして、一つはその輸入価格を固定するという契約でございますが、四十七年の二月に増量引き取り契約を結んでおりまして、こちらの方の部分につきましてはスライド条項と申しますか、原油価格の上昇に即応して引き上げる、こういう契約になっておったわけでございます。そういったところから、四十八年の十一月と申しますのは、いわゆるオイルショックの翌月に当たりまして、それを反映いたしましてブルネイからの輸入LNGの価格が上昇してきた、こういうことでございますが、日本側といたしましても、そういったエスカレーションクローズによりまして、原油価格との関連で大幅な値上がりを来すということに対しまして、やはり懸念いたす立場にあったわけでございます。  一方、ブルネイサイドといたしまして、当初契約が固定価格制度になっておる、これはやはり好ましくないという立場がございまして、その後両当事者でいろいろと検討を進めました結果、四十九年の五月以降、事実上両方の契約を一本にして、互いに価格については売買両当事者間で交渉するという形になっておるわけでございます。
  195. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまブルネイと言われましたが、それはブルネイ政府ですか、一体相手はどこですか。
  196. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ブルネイのLNGの取引の関係を申し上げまする、天然ガス生産から液化、販売、輸送、それから買い主、こういう形になるわけでございますが、第一次的には東京電力、東京ガス、大阪ガス、こういったユーザーは、輸送と販売の業に当たりますコールド・ガス・トレーディングと交渉するということになろうかと思います。コールド・ガス・トレーディングがそれに応じまして、ブルネイ政府とも交渉することもあろうかと思います。第一次的には、コールド・ガス・トレーディングとの関係において交渉をすると理解いたしております。
  197. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの御答弁のように、東京電力や大阪ガス、東京ガス、それが直接契約しているのはコールド・ガス・トレーディングであります。そしていまの御答弁のように、恐らくというようなことでブルネイ政府が出てくるわけでありますが、ここでの質問を速めるために私たちの調査結果について簡単に述べたいと思います。  このようにブルネイLNGとの契約で、東京ガスなどはLNGを買っておりますが、その間に、LNGを売るためにつくった会社、コールド・ガス・トレーディングが介在している。シェル五〇%、三菱五〇%であります。どこにつくられているか、英領のバーミューダであります。カリブ海であります。なぜブルネイにつくらなかったのか、あるいはなぜ日本につくらなかったのか。これは明らかに税金のかからない国、タックスヘーブンにつくられたペーパーカンパニーであります。  実際の業務はどこでやっているか、この図をお渡ししてあります。問題は、ブルネイ・シェルがここで天然ガスを採掘して、この資本はこういう関係になっておりますが、もう一つブルネイ・LNG、これがシェル四五%、三菱商事四五%、ブルネイ政府一〇%、これは後から参加したわけであります。ここで液化ガスにする。そしてこれは荷の動きとしてはここから貿易が行われるわけでありますが、しかしこの間にわざわざコールド・ガス・トレーディングをバーミューダにつくった。しかも、そこで実際の貿易の業務はやらないで、貿易の業務はどこでやっているかというと、日本にもう一つ日本LNGという、やはりシェル、三菱五〇%ずつの合弁会社をつくり、そこがタンカー配船を初め、いろいろ貿易業務を行っているわけであります。なぜバーミューダにわざわざコールド・ガス・トレーディングをつくったのか、そのため値段がどう動いたか、ここのところが問題であります。  この問題を見ますと、シェルと三菱商事はこういう仕掛けをつくることにより想像を超える利益を上げている。商事の営業報告書、これは四十九年度以降配当金の受け取りは大変ふえております。昨年の三月期三百十八億円、これは前の期に比べ二百十億円ふえているわけであります。昨年の九月期、中間の営業決算でありますが、百九十九億円になっております。そして私たちは商事に問い合わせたところが、この五十一年度三月期の営業決算のうちの受取配当のうちの約百億円と九月期の約百億円はブルネイのLNG関連から配当を受けた、こういう答えを受けたわけであります。約百億円であります。  五十一年四月から九月、その間に二百二十一万五千トンが入りました。トン当たり平均二万九千円でありますが、この三菱商事の百億円というのは明らかに、これは五〇%・五〇%でありますから、シェルも同様の送金を受けている。そうなりますと合わせると二百億円になりますが、これはトン当たりの価格にしますと実に約九千円になるわけであります。二万九千円の約三一%、これが三菱商事やシェルなどの配当金になったと推定されるわけであります。もちろんこれが価格を持ち上げた分のすべてだと考えられません。なぜならば、私たちはまだバーミューダにつくられたところのコールド・ガス、それが実際そこに利益をどれだけためているか、この実情はわからないわけであります。  しかしいずれにせよ、東京ガスや大阪ガス、東京電力などはいま値上げを繰り返しているわけでありますが、このようにシェルや三菱商事によってつり上げられた価格によって燃料費がふえた、そしてまたそれを消費者に転嫁する、こういうことになっていることは明らかなのであります。そしてこのやり方が、いまでは多国籍企業というものにとってはごくあたりまえな移転価格、トランスファープライシングのやり方なんです。多国籍企業というのは、海外に子会社をいっぱいつくる、全体として利益を最大限にやろうとするとき、こことこことの間の取引価格をいろいろ操作し、そして税金のかからないところでうんと利益が出るようにする。それを通すと、その後大変な価格で買わされる。とりわけLNGのような独占的な品目になると、これは大変な値上がりになってこのようになったわけでありますが、私はここで、公益事業の会社がこのようにつり上げられた買い付けをしていることに対して、もう一度、これまでの通産行政は一体何をやってきたか、これをどうするのか、この点について伺いたいと思います。
  198. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  多国籍企業の詳細な分析につきまして、大変に参考になります資料をちょうだいいたしましてありがとうございます。なお、これらの問題につきましては、産業行政といたしましても今後十分調査をいたしたいと存じます。
  199. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 最近大阪ガスの値上げの認可もやられましたね、福田内閣として。そういうときに、こういう価格で買わされた燃料費が入っているわけであります。これは詳しく調査して、そうして不当な値上げであるならば指導して、交渉して価格を引き下げさせ、同時に、これはまた消費者に対しても値下げを指導する、そこまで答弁すべきではありませんか。その点いかがですか。
  200. 田中龍夫

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、特に多国籍企業の問題につきましては、OECDにおきましても積極的にこれらの議論が行われまして、そうしてこの活動状況の方針が決定せられております。通産省といたしましては、この方針にのっとりまして、これを遵守するように産業界に指示をいたしますとともに、今後もこのOECDの方針並びに行動基準につきましてさらに調査を進めてまいりたいと存じます。  先般の大阪ガスの値上げの問題につきましては、これは御案内のとおりに、ガス料金につきましては原価主義をとるということに法的に決定いたしております。かような次第で、他のいままでのガス料金等の価格決定、それに準じて詳細な分析をし、同時に積み上げ作業の結果あの決定をいたした次第でございまして、御報告いたします。
  201. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私は、いま通産大臣に、実際にあった大阪ガス、東京ガスなどのこれまでの値上げ、とりわけ大阪ガスにつきましては今度の新内閣になってからのことでありますが、それについて、このように価格の面で大きな疑問、問題点が出てきた、それを踏まえまして、再びこれを調査し、その上で適正であったかどうか、それをやるかどうか、このことを伺っているわけであります。その点についてお答え願いたい。
  202. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま大臣がお答えいたしましたように、電力あるいはガス料金の改定に当たりましては、一方で国民生活に与える影響、物価への反映ということも十分配慮すると同時に、安定供給を確保するために事業法に基づく原価主義によって査定いたしておるわけでございます。ガス会社、電力会社等におきましても、燃料の安定供給とあわせまして、できるだけ安くこれを購入し得るようにという努力は当然のこととして十分にやっておるわけでございますが、先ほども少し触れましたように、オイルショック以降売り手市場化しておる。値上げに当たりましても、いろいろとその内容なり理由等についてもただしておるわけでございますが、結果として必ずしもこちらの意見が十分通らないといったようなことが実態ではなかろうかと思うわけでございますが、われわれといたしましても、さらに一層公益事業の安定性、公益性の立場に立って一段と努力するように指導してまいりたいと思います。
  203. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) このように、いまやLNGの価格がどう決まるのか見るときにも、こういう国際的な背景を調査しながらやらなければならない、これはもう常識になっているのです。先ほどOECDの行動基準を配ったと言いますが、紙切れ一枚配っただけだ。しかし問題は、配るのはいいけれども、なぜ実際に大阪ガスや何かが価格を決めるときにどういう仕組みでなっているのか、不当かどうか、それを調査しなければならない、それをやらない。これがきわめて重大なのであります。その点で、私はこの問題はあくまで追及し、価格の再交渉をやらさせ、下げさせる、さらに消費者にそれを還元させる。強く要求するとともに、さらに質問を先に進めることとします。  あのタックスヘーブンと言われる税金のかからない国は一体どこか。日本の企業、あるいはまた日本に直接物を売っている外国の企業で、そこを中継している企業はどこにあるどういう企業であるか。そしてまた、脱税はないか、違法はないか、価格操作はないか。これに対してこれまでどういう調査を行ったのか。これからするつもりか。
  204. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御質問の第一点のいわゆるタックスヘーブンとはどこかということでございますが、これは正確な定義はないわけでございますけれども、一番狭い意味で申せば、その地にある企業に対して所得税も法人税も課税しない、つまり所得税法も法人税法もないというのが一番狭い意味でのタックスヘーブンと言われておるように思います。その意味では、先ほどの御質問の中に出てきましたバーミューダにはそのような税がないようでございますから——これはバーミューダではございませんでしたか、バーミューダはそれに該当するだろうと思います。そのほかにバハマとか、ケイマンとかいうような国もそういう国であるというふうに承知しております。  現実に日本企業がそういうところにどのように出ておるのかという点につきましては、国税庁から、わかりますればお答えいたしたいと思います。
  205. 山橋敬一郎

    ○山橋政府委員 お答えいたします。  タックスヘーブンに関連するところの税務上の問題でございますけれども、先ほどの先生のお話の、どの程度の企業が出ているかというふうな問題については、実はそのような観点から統計をとっておりません。ただ、わが国におきますところのいわゆる多国籍企業と言われますところのものは、ほとんど大規模な法人でございますので、こういう法人につきましては、実は調査する頻度とか日数というものは格段の配慮を行っているのが通例でございます。その調査におきましては、ただいまお話のございましたように、海外子会社等の決算書を確認をいたしましたり、また、それの間の往復文書等を検討いたしましたりして、課税のための実態の把握に鋭意努めておるところでございます。また、必要がございますれば、外国に調査官を派遣をいたしましたり、あるいは租税条約に基づくところの情報交換によりまして、課税上の情報の収集に努めておるというのが現在の状況でございます。
  206. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) このように、大阪ガス問題につきましても、LNGの価格は一体どうなっているか調査もろくにしないし、また、タックスヘブンと言われるところにどういう企業があるかという統計もない、こういうありさまであります。  そこで私は総理に伺いますが、これは、私がさっき新日鉄体制、それを質問したことと共通した問題があるのです。高度成長と言って日本の経済は非常に大きな変化が起きた、それが日本の産業面など、経済面ではごく少数の企業への集中、それが進んだし、同時にそれだけでなしに、このように多国籍企業がアメリカからも来る、日本の企業自体がなっていく、そして海外の子会社を使いながら値段を上げたり脱税をしたり、そういうことがまさに常態になっている。そしてまた、そこであのロッキード事件やいろいろな事件が起きたのではありませんか。ロッキード事件だけでありません。いろいろな事件が問題にされております。いま三菱商事を挙げましたが、ロッキード事件ではあの三井物産が田中角榮に働きかけた、こういうことも出されています。私は全部挙げませんが、こういうように、まさにここから国民生活がいろいろな被害を受けている、腐敗が生まれている。それだからこそ国際的には多国籍企業に対する規制ということは重大問題になっていて、そして国連においてもいろいろな規制をやらなければならない。進んでおります。OECDの立場はむしろ多国籍企業を擁護する、それがたてまえでありますが、そこでさえあの行動の基準というのは、多国籍企業というのはいろいろな国の経済で重大な影響を持つようになった、とりわけ多国籍企業というのは一体何をやっているかわけがわからぬ、だから中を公開しなければいけない。それと同時に、先ほど言いました移転価格、それはやらないようにしようではないか、そういうことさえ決めているのであります。  ところが、こういうふうに国際的には大きな問題になりながら、そして日本ではこのようにさまざまな重大事件が起きながらも、これに対してこれまでの自民党の政治は何もやってこなかったし、野放しにしている、これがきわめて常態であります。先ほどのガスの値段を挙げるまでもなく、国民の暮らしを守るためにも、この多国籍企業対策きわめて重大であります。これに対してどういう態度をとるかということで政府の政治姿勢も問われていると思います。総理、お答えください。
  207. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 多国籍企業に限らず、企業がその行状を正すということはきわめて大事なことである、こういうふうに思います。  多国籍企業におきましては、これは政府の指導を強化するという考えでございますが、同時に、いま御承知のように国連でこの問題をどういうふうに処置するかということについて協議が進められておるわけでありますが、わが国としてもこの協議に積極的に参加して、有効な結論が得られるようにという配慮をしていきたい、かように考えております。
  208. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 多国籍企業の問題について私が質問した中に、国連の問題もあります。たとえばまたOECDの行動基準の問題も挙げました。ところが、このOECDの行動基準問題につきましても、ただ一枚の紙でよろしく願いますと回しただけであります。それが事実ですね。ところが、本当にこのように多国籍企業によって国民が被害を受けている、あるいはまたロッキード事件その他が起きている、このようなときに、積極的に多国籍企業の行動基準やあるいはまた規制の基準、さらにまたその経理や営業状態を国民に公開する、こういうことをやってこそ初めて対策と呼ぶことができるのでありますが、ただ国連の会議に出ているというだけでは問題になりません。このような具体的で積極的な対策をいまこそとるべきではありませんか。その点について重ねて質問します。
  209. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 一言だけ御理解いただきたいのです。  先ほど、一枚の紙っぺらというお話でございましたが、外務省ではこのようなものを一万部刷りまして、各企業あるいは団体等に御配布申し上げて御理解を賜っておりますので、その点だけ、御理解いただきたいと思います。
  210. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私が一枚の紙っぺらと言いましたのは、一枚の通達をつけて、恐らくそういうパンフもつけたでありましょう。しかし問題は、そういうパンフを配っただけでどうしてそれが実現できるのでしょうか。そこが問題であります。それで何か規制が行われるかのように考えるところが、そこがまた大問題だと思うのです。だからこそ私は、具体的に規制の基準や行動の基準をはっきりさせて、どのように守らせるか、そういう対策こそやれ、こういうように主張しているのであります。総理、お答え願います。
  211. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、多国籍企業の世界的規模におきまする経済活動あるいはまた日本の大企業の海外進出等につきまするいわゆる多国籍企業なるものの検討、分析、さらに今後は重大な産業政策の上から言いましても影響があることでございます。われわれはこの問題につきまして、今後ともになお一層検討をいたし、調査を進めたいと考えております。
  212. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いや、総理にお答えをお願いしました。
  213. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま通産大臣から申し上げましたように、この問題はなかなかややこしい問題ではございまするけれども、これは重要な問題でもあるわけでありますから、通産大臣申し上げたような方針で検討してまいりたい、かように考えます。
  214. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これまでの質問を通じましても、大企業の支配の体制や多国籍企業の支配の体制に対して全く対策がないし、しかもまた明確な、その横暴を規制する、そういう決意が見られない。このことが問題であるし、また、いまの大変な経済危機のもとで、国民生活の危機のもとで、国民はインフレにより、物価上昇により苦しめられている。その根源というのは、先ほど私が言ったような大企業が一つ大きくあるわけでありますが、これが野放しにされている、ここが重大な点であります。したがって、わが党としましては、独禁法の改正並びに多国籍企業に対する規制を具体化することを強く要求しながら、次の問題として景気対策、税財政問題に移ります。  わが党・革新共同は、他の野党とともに一兆円減税を要求しておりますし、その内容は、先ほど私が家計調査によって説明したように、それこそこの長い間に生活を低下させなければならない、そういう人たちにまず向けられるような減税、あるいはそこへいろいろ渡されなければならない負の減税といったような内容、そういう内容のものでなければならない。そしてまた、その財源につきましては私たちはすでにいろいろ示しておりますが、しかしこの問題につきましてもはっきり言っておかなければならないことは、いまの問題というのは、ただ単純に公共事業か減税か、ここが必ずしも最大の争点ではない。減税をやらなければいけないというのは、さっき言いましたように、まさに働く国民の生活が押し下げられている、ここを引き上げる、そのことなしには景気回復はないし、これはもうきわめて明らかなことでありますし、また、景気回復というときには当然これは公共事業を伸ばさなければならないけれども、問題はこの公共事業の内容が問題だ。もちろんその規模も問題であります。  そういうことでわが党はこれまで、いまの経済体制、経済の状況に即して日本経済の再建を五カ年でやらなければならないけれども、その第一の柱というのはインフレ抑制、物価抑制、大衆減税、そして実質所得を引き上げて国民の購買力を高める、こういう方向への切りかえでなければならないと言ってきた。ところが、先ほども言いましたように、大企業価格への対応がないだけでなしに、これほどインフレを抑えなければならないまさにそのただ中で、これまであったインフレに対する歯どめさえも外そうとしている。その一つが国鉄運賃の決定方式、法定制を事実上廃止するような方向、そしてまた国債依存率を事実上三〇%続ける。国債依存率の比率は、予算に対する比率では若干コンマ以下のところで減ったと言われますが、政府の見通しのGNPに対する比率で言うならば四・三%から四・四%と高まっているわけであります。こういう放漫な方向というのは、明らかに歯どめを外すことになるわけであります。  そういうことで従来型の景気対策というのは今日きわめて危険だと思いますが、それにつきましても私は、最近総理が、日本とアメリカと西ドイツが景気機関車になる、このようなことにつきまして、私ももちろん日本の経済が好転して世界経済によい影響を及ぼす、これは当然のことだと思いますが、しかしいまとっている政策というのは、よその国と比べてもきわめて異常なインフレ政策、そこへ突き進んでいるということを指摘せざるを得ないわけであります。  その一つの例といたしまして、最近大蔵省の英国記者団に対するPRの資料を見ましたが、このPRの資料によりますと、三カ国が機関車になると言いますが、日本の物価上昇というのはOECDの平均の七・五%というところよりも消費者物価がはるかに高いところにある。九・五%。そして政府の目標では、これは対前年度比で八・四%であります。OECDは九・五%、このように見ております。ところが他の機関車であるアメリカは大体消費者物価は五・一%、あるいは西ドイツは四%、そういうところで政策を進めようとしているわけでありますが、機関車になる、機関車になると言って、日本だけがOECD全体の平均よりもさらに高いところにありながらも、依然として高い消費者物価を目標にしながら、そして日本だけが高度をねらおうとしている。これは赤字財政の赤字比率から見ても日本だけがずば抜けている、きわめて乱暴な行き方だと判断せざるを得ません。こういうことをやりますと、機関車、機関車と言いながら日本だけが飛び抜けて大変なインフレに走ってしまう、こういうおそれを強く感じるわけでありますが、この点につきまして総理の御見解を伺いたいと思います。
  215. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 三カ国をとってみると、三カ国それぞれ特殊な事情がありまするから、その内容は必ずしも一緒じゃありません。しかし総合してみまして、この三カ国は他の先進諸国の中でもとにかく一段と先端を走っておる、こう言うことができると思うのです。経済の運営の上で非常に大事な問題点は、一つは成長率、一つは国際収支、一つは物価でありますが、その点につきますると、わが国がとにかく三カ国の中では成長率は一番高いのです。それから国際収支、これはわが国はドイツまでは及びませんけれども、アメリカよりはよろしい、こういう状態になっておる。物価につきましては、これはアメリカにもドイツにもまだ及ばぬ、こういう状態でございます。総合しますと、とにかくどこの国も、この三カ国が機関車的な立場になければならぬ、こういうふうに言っておるわけなんです。物価について、高いのは、わが国が資源を海外に依存しておる最も比率の高い国であります。その資源が資源有限という背景の中で逐次上がっておるということ、それから、やはりわが国は高度成長時に非常に賃金が高かった、その後を受けまして、他の国に比べまして賃金が高い水準にある、こういうこと、そういうような問題がありまして、それでコストが、原材料の点からいいましても、人件費のコストからいいましても高いものですから、そこで物価水準も押し上げられる、こういうような状態にあります。と同時に、わが国ではあの石油ショック脱出のために相当ラジカルな、非常な措置をとったわけです。その一つとして公共料金抑制政策、まあ全部が全部抑制というわけじゃありませんけれども、基本として抑制政策をとった。これはそうとり続けられないのです。そこで改定期に来ている。こういう問題がありまして、また公共料金が物価をコストとして引き上げる、こういうような問題もあるわけであります。  そういうようなことで、物価につきましては他の国に劣りまするけれども、国際収支につきましてはかなりいい水準にあり、またGNP、成長におきましては最も高いところに位しておる。こういうことで、総合してみますと、三極とも言われまするけれども、まあまあそんなところじゃないか、そんなような感じでございます。
  216. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 実は英国記者団へのPRの後で、ある新聞は、日本はこれほど物価上昇をがまんしても景気上昇をするということを盛んに説明した、このように伝えられたわけであります。もちろん私は参加しておりませんから真偽はわかりませんが、少なくともそのとき配られた資料を見れば、なるほどそうだ、そういう説明にしかならないし、むしろこういう資料を国民説明した方が今度の予算内容がよくわかるとさえ私は思ったわけでありますが、明らかに日本の財政のあり方、インフレ政策に対して、抑えるという考え方が弱いという点を強く感じざるを得ない。しかも、具体的には、この公債発行の放漫財政とともに公共料金の歯どめも次々とはずしていく、こういうことが重なっているわけであります。それだからこそ、このようなインフレ政策では日本経済の再建はできないし、景気の浮揚も実はできない、そこが問題なのだとこれほど繰り返しているわけであります。  さらに、このような日本経済の立て直し、これは一兆円減税をやらなければなりません。物価を安定させなければなりませんが、同時にいま投資が行き詰まっている。公共投資もいろいろ問題を起こしている。もう今度は生活基盤でなければならないということでありますが、しかしこの公共事業も、生活基盤といってもただ数字合わせ的に公共事業の中での比率、それを示すだけではだめで、実際に本当に庶民のための住宅が建つようになるのか、建ち出すのかどうか、実際に下水道が建設できるようになるのかどうか、この問題はいろいろ論じられておりますので私はこれ以上述べませんけれども、公共下水道一つをとりましても、多くの市で公共下水道をつくるときに実際の計画の半分ぐらいしか補助対象にならない。もっとならない例がある。たとえば六百ミリ管、それ以下だと対象にならない、こういうことの超過負担、こういうものも重なっている。それだからこそ、私たちは、地方財政の危機打開がこのような生活基盤を守る公共投資を実際に動かすためにも必要だと強調しているわけであります。  ところで、この問題をめぐりまして総理が、本会議におきまして、何か公共事業の方は雇用をふやすけれども国民の消費が伸びることは雇用をふやさないようなことを述べられましたが、その点、いかがでしょうか。
  217. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 減税でありますと納税者に対して、各党の案でいろいろ違いがあるようですが、三万円、四万円ぐらいの金が支給される、こういうことになるわけでありますが、それで直ちに雇用が起こってくるというふうには私は思いません。これは間接的に回り回って何がしかの効果はある。しかし公共事業でありますれば、いま御指摘の下水道にいたしましても、もうすぐ人夫が要る。その人夫の中には納税者でない人も多数おるだろうと思うし、あるいは東北新幹線が始まるといえば、これは膨大な人が必要になってくるわけでありますから、雇用のチャンスが出てくる。学校建築をやれば学校建築でも出てくる。いろいろ直接的に雇用のチャンスが増大されるということで、私が本会議において申し上げたことに間違いはないと思います。
  218. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 総理はいま、公共事業の方は雇用がどんどんということを述べられましたが、しかし、雇用問題を考えるときに、働いている人、雇用者、その約六割は中小企業で働いていることは明らかであります。そして問題は、この中小企業が本当に守られるかどうかがこれからの雇用対策の一番大事な点と強調してもいいと思います。  このようなときに、たとえば、四十九年度に発表しました中小企業白書によりますと、個人消費の波及効果は大企業と中小企業とで一体どうなっているだろうか。個人消費の波及効果は、中小企業が五六・六%、大企業が四三・四%。これに対して設備投資などの波及効果は、中小企業が四一・九%、そしてまた大企業が五八・一%、こうなっている。なお、ついでに申しますと、これは一九七〇年の数字となっていますが、六〇年について言うならば、個人消費の波及効果は、中小企業が六四・九%とはるかに高い。これは白書にあります。それで、ずっと大企業がこここのところ進出してきたわけでありますが、これをとめるという問題はもちろんあります。われわれは中小企業の分野確保で要求しておりますが、それはさておいても、この雇用問題を考えるときに、個人消費を伸ばすこと——なお、この白書によりますと、とりわけ衣服や食生活、これの中小企業への波及がきわめて大きいということが出ております。このことを見ても、何か個人消費の方は雇用問題と関係ない、これは誤っていると思いますが、その点どうでしょうか。
  219. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 個人消費が雇用問題に関係はないと、こう申し上げておるわけじゃないのです。減税よりも公共投資の方が雇用効果は大きい、これは私は絶対的に大きいと思っております。そのことを申し上げておるわけであります。
  220. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 減税よりも公共投資が大きい、例の乗数効果とか、これは確かに経済の教科書には書いてあります。しかし、経済の教科書に書いてあるというのは、ごく単純化した条件のもとで問題が計算されるだけのことであります。もちろん私も公共投資はそういうものがないなどと言っておりませんが、しかし、いま政策を選択するというときに、先ほど言いましたように、雇用問題をとっても、本当に中小企業を守らなければいけない、そうして個人消費の伸びということは直接中小企業への波及が大きい、これは中小企業白書も認めておるところであります。したがって、教科書に書いてあることで、こっちよりこっちが大きいからこっちを選ぶ、これは生きた政治、生きた政策でありません。生きた政策というのは、本当に国民のいまの生活の実態、日本経済が当面している矛盾はどこにあるのか、その中で本当に国民の消費を高めながら景気を高めていく、再建していく、これをどうしても柱にしなければならないというときに、それと結びついて国民生活擁護の対策の一つとしての減税が出てくる。そしてまた、それが中小企業への波及もあるし、雇用を大きくする、失業者を減らす、こういうことにもなるわけであります。  時間もありませんので、ここでひとつ、公共事業ということを言いましたが、特に中小企業に対して官公需の五〇%どうしても確保しなければならないと思いますが、どのようにしてやるか、その対策、決意、計画をお聞かせ願いたいと思います。
  221. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  中小企業対策の重要な一環といたしまして、官公需を特に中小企業に向けるということでございます。その中で、いわゆる地方まで入れまするとほぼ五〇%という目標は出ておりまするけれども現実の問題といたしましては、国、公社、公団だけですとその係数は三十数%、その程度まで参っておりまして、それに地方自治体を加えまするとほぼ五〇%になっておる。しかしながら、政府といたしましては、でき得る限りこれを中小企業に向けることによりまして、景気の振興なりさらにまた波及効果を大ならしめよう、かように存じております。
  222. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 官公需中小企業受注確保法においては、方針を決めなければならないと示されておりますが、どうしても今度は五〇%という目標、しかも、その目標を達成するだけでなしに、実際各省庁がどのようにしてやるか、そこまでやらなければ問題は解決しません。分割発注をやるとか、いろいろな援助、親切に手を差し伸べて初めてこれは達成するわけでありますが、そういう血の通った対策をやるかどうか、改めて伺います。
  223. 田中龍夫

    田中国務大臣 その点でございまするが、特に御案内のとおりの景気対策といたしまして、過ぐる二月の四日にも各通産局長に指示をいたしまして、末端まで浸透させるべく努力をいたしておりまするが、特に通産局を中心といたしました各地方庁並びに公共団体との懇切な、綿密な指導、それからまた、それに対しまする配慮を特に本省から通達もいたしまして努力をいたしております。
  224. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これはきわめて重大な問題でありますが、さらに私は、いま問題になっている一兆円減税を初めとしてわが党が要求している諸政策の財源問題とも関連し、またいかに日本経済の今後の方向を経済民主主義に沿って再建の方向に向けるか、その一つの焦点になっている問題として、高度成長時代、高度成長を推し進めた財政、税制、金融のいろいろな仕組みを根本的に転換しなければならない。こういうことと関連しまして、大企業の実際の税の負担率が中小企業よりも低くならないような措置をとろう、特別の減免税の地方税へのはね返りの遮断措置をとろう、このことを提案するものであります。もちろん具体的には貸し倒れ引当金だとか海外投資損失準備金だとか、いろいろ出しておりますが、その問題を省いて、ともかく大企業の実際の税の負担が中小企業よりも軽い、これだけはなくす、せめてそこへ踏み出す。もちろんもっと高くするのが当然でありますが、そこでそういう方向へ向けるかどうか、その点に限ってごく簡単にお答え願いたいと思います。
  225. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の法人税制は、御承知のように二段階制をとっておるわけです。大企業に重く中小企業に軽く、しかも中小企業は二八%という税率にいまなっておるわけでございまして、これは中小企業を相当重視した政策が進められておるということでありまして、何を理由にしてそういうお話をされるのか。もう制度自体がそんなに中小企業をかばっておるということで御理解願いたいと思います。
  226. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) それはもうこれまでの国会のいろいろの論議を通しても、そのような言い方というのは全く成り立たないわけであります。これは大蔵省の方が示した資料によりましても、たとえば四十六年度に資本金百億円以上が三〇・一、資本金一億円から百億円未満が三三・〇、一億円以下が三二・〇、最近までずっとこういう傾向が続いているわけでありまして、そのような二八%と四〇%、これはあたりまえのことであります。実際の負担はどうかと聞いているわけでありますが、時間がありませんので、この問題について私は具体的な提案をします。  この問題をめぐりまして、確かに大蔵省の方の見解と、そしてまた東京都などの計算、あるいはまたわが党も計算しております。わが党の計算によりますと、七四年、資本金百億円以上が大体三六%、五千万から一億未満が四六%ぐらい、このようなことになるわけであります。この計算の開き、これは大蔵省でも逆累進は認めざるを得ないわけでありますが、さらに、なぜ大きな開きがあるかといいますと、これもよくこれまでの論議で知られているように、政府の方が、これまで受取配当、いろいろの会社が外から投資した配当が来ても益金に入れない、これはもう計算に入れないとか、引当金制度、それによって税金を免れてもその方も入れないとか、このほか特別償却の計算の方法、いろいろあるわけであります。しかし、これらの準備金にしろ、引当金にしろ、いろいろな特別償却にしろ何にしろ、明らかにこれは大昔からあった制度ではありません。シャウプ税制勧告以後、五〇年代、六〇年代、次々とつけ加えられてきて、そして大企業の資本蓄積をスピードアップするのに役立ったわけであります。しかも、この問題につきましてなぜ逆累進が出てくるかというと、これははっきりしているのです。いろいろな制度があります。償却の特別制度あるいはまた引当金がありますけれども、これは大企業ほど多く利用できるのです。たとえば海外投資損失準備金といったって、中小企業はこの制度は利用できない。受取配当、小さな企業にどうして利用できますか。益金不算入、銀行だとか商社、それができるのです。  ですから、大蔵省の法人企業の実態という調査によりましても、それぞれの資本の規模別で利用率を見ると、大体五千万から一億を境にして、その上はほとんどが利用する、それ以下は余りできい、こういう差が出てくるのと、同時にもう一つ、大企業ほどいろいろの種類の制度をあわせて利用できるわけであります。そこからこういう差が出るわけであります。私はこのことを恩典集積、恩典集中の利益、特別措置集中の利益、特別措置が大企業に集中して利用できる、そこから来るこの逆累進だ。これは税金だけでありません。開発銀行の融資を見ても輸出入銀行の融資を見ても、あるいはまたいろいろな地域開発、こういうものを見ても、大企業にいろいろな種類の利益が集積するようになっているわけであります。利用できる。たてまえとしては中小企業も利用できるようになっておりますが、大企業にしか利用できない。そこから四六対三〇というような大きな開きが出ているわけであります。たとえば、私が計算したところによりますと、資本金一億円未満の中小企業にとって言うと、いろいろな制度を利用することによって元の所得から減らせる分というのが、税金のかかる所得、この減らせる分というのが大体六、七%ぐらいになっています。ところが、資本金百億円以上になりますと二五%ぐらいもこれを減らせるようになっている、そこから逆累進が出ているのでありますから、私たちは、共産党・革新共同は、もちろん個々のあの貸し倒れ引当金だとかそういうものについて改善の要求を具体的に掲げておりますが、それと並んで、当面の措置として、大企業の方が中小企業よりも負担が軽くならないようにするために、せめて、いろいろな制度を利用してもよろしいけれども、それによって税金のかかる所得が前の所得から比べて減る比率が、たとえば中小企業が六%なら六%、そこに天井を設けて、それによって平等な状態をつくろう、こういう提案をするわけでありますが、この点についてどうでありましょうか。
  227. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいまの御指摘の諸般の引当金、これはもう御存じのとおりでございますけれども、これはその法人の経理計算に際しまして、経理基準においてもうそれを認められておって、むしろそれを強制されておる。これは経理基準におきましても商法においても決められたことで、それをやらないというわけにはまいらないということでございますし、それからその配当について御指摘になりましたが、受取配当を益金不算入ということ、それから配当について軽課しておるといったようなことは、これはもう法人税の根幹の問題でございまして、所得税と法人税との間で二重課税といったようなことになるということは、どうしたってこれは調整していかなければならない。もちろんこれは問題でございます。問題でございますけれども、これの根本的な、抜本的な改正はやっていかなければならない、かように私も考えておりますけれども、ただ卒然としていま申し上げました益金不算入だとか、あるいは配当軽課だとかといったようなものをやめちまうというようなことは、これは西欧各国の立法例におきましても、全部そういうのと同じ方式をとっておるというわけではありませんけれども、そういったような原則が行われておるということでございますので、われわれといたしましては、もちろんこれはすべていいことで理想的なものだ、そんなことは、これは人間がつくったものでございますから思ってはおりませんけれども、これはやはり適時適切に考えていかなければならない。卒然としてやっていこうというようなことでは、これは大変な問題になる、かように考えております。
  228. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 大蔵省の態度というのはきわめてがんこだと思うのです。いろいろな理屈というのはみんな後からついておるのです。初めはどうしたか。これは大蔵省におられましたところの主税局長を歴任されました方、泉美之松氏、吉国二郎氏、高木文雄氏がエコノミストの「産業政策」で証言を行っております。「戦後産業史への証言」であります。これを見ますと、いろいろおもしろいことが述べられておりますが、これは高木さんが「特別償却はいったいだれが考えたんですか。やっぱり平田さん……。」そうすると泉氏が「平田さんだね。あの人が昼、財界人と懇談すると、うっかりできないんだ。帰ってきたら、「おい、これはどうじゃ」とくるんだなあ。」財界人と会って次々といろいろな制度が誕生した。あるいはまた退職給与引当金についても、そのもとは、あのアメリカ軍の自動車修理工場、そこでアメリカ軍が退職金を用意しないので、この対策ということで最初つくられた。しかし問題として言えば、会社が倒れたときに、退職給与引当金というのがどこか積んであるわけではないから、労働者の債権はさっぱり確保されないという問題点も指摘されておりますが、戦後こういう税制というのはこのようにして次々と生まれ、その後でいろいろな理屈もつけられてきたわけであります。そして企業会計原則との一致とかいろいろ言いますが、たとえば貸し倒れ引当金、これは金融機関が少しずつでも是正せざるを得ない、これは問題点があるからであります。  そういうことで、私は引き続きこの高度成長政策、その財政、金融、税制、その根本的な転換を要求するとともに、次に、日韓腐敗関係の問題に移ります。  日韓腐敗問題、この問題をめぐってさまざまな証人、証言はふえるばかりであります。これはもう時間もありませんから繰り返しませんが、一九七〇年から七四年までアメリカの国務省韓国部長の地位にあったレイナード氏は、わが党の橋本参議院議員に対し、また各紙日本特派員に対し、電話インタビューで、日本の名誉と主権関係する重大な発言を繰り返していることは御存じのとおりでありますが、そこで一、二の点について伺います。  レイナード氏は、一九七三年九月十二日ソウルで開かれた米韓安保定期協議に出席した当時国務省極東担当のスナイダー国務次官補が東京で法眼晋作外務次官と会談したこと、いいですか、これが一つ。同じころ、レイナード氏自身も東京において当時の高島外務省アジア局長と会談したと確言しております。  外務省に伺いますが、この二つの会談は行われましたか。
  229. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 最初のスナイダー氏と法眼前次官との会談は、どうも御両者に問い合わせてみたのでありますけれども、全く記憶がない、このようなことはなかったとおっしゃっております。  それから高島前局長は、いまオランダの大使でおりますが、オランダへ聞きましたところ、特に会議という意味ではなくて、韓国からの帰りに外務省に寄られたことがある、これは手帳に書いてあるというので、その会われたということは事実であろうと思います。
  230. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまのような回答、これでは問題は明らかになりませんし、きわめて重大であります。レイナード氏は、この会談で日米両国政府当局とも金大中事件がKCIAのしわざであることに何の疑いも抱いてなかったとはっきり言っているわけであります。そうだとすると、日本政府は、韓国の公権力が日本政府の承諾もなく違法に日本国内で行使されたことを知っていたことになり、主権侵害を知っていたということになるわけであります。実に重大であり、この会談の内容はどうしても明らかにしなければなりません。外国政府に聞くまでもなく、なぜ日本国内の問題、それを調査しないのですか。直ちに調査して報告すべきであります。
  231. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私ども調べられる限りにおいては調査をいたしておりますけれども、KCIAが関与しているというようなことは、私どもの調査ではそういった結果は出ておらないということを御報告申し上げます。
  232. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 時間が参りました。委員長、この予算委員会におきまして、法眼晋作氏、高島益郎氏を予算委員会の証人として喚問することを共産党・革新共同は要求いたします。  これをもって私の質問を終わります。(拍手
  233. 坪川信三

    坪川委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。  次に、西岡武夫君。
  234. 西岡武夫

    西岡委員 私は、新自由クラブを代表いたしまして、福田総理及び関係閣僚に御質問申し上げる前に、委員長に一言申し上げたいことがございます。  現在、わが国が置かれております現状は、あらゆる制度、あらゆるこれまでの仕組みを根本的に改革をしなければいけない、そういう時代を迎えていると私どもは認識いたしております。そうした中にあって、私どもは、何よりもまず国会審議のあり方を根本的に改革しなければいけないのではないか。具体的に申しますと、国会審議をもっと効率的に、また、国会審議の機能を強化する、そのために私どもは努力をしなければいけないのではないかと思います。今日まで慣行として何の不思議もなく行われてまいっております数々の国会におけるあり方を改めるべきではないか。たとえば予算委員会において、他の委員会は全くその機能を停止している、予算委員会が開かれている間じゅう、少なくとも総括質問が行われている間は他の委員会は一切開かれていない、これはまことにおかしなことでありまして、そういう意味からも、私ども新自由クラブは、少なくとも、まず手始めといたしまして、私どもが質問をいたします場合には、答弁を要求しております大臣以外の方々は御出席をいただかなくても結構である、また、役所の役人の皆さん方がたくさんこの予算委員会を支えるために来ておられますけれども、こういう皆様方も出席をしていただくには及びません、こう考えるわけでございます。  このことについて、委員長におかれましては、どうか適切な御処置をいただきたい。質問に入ります前に、まず要望を申し上げる次第でございます。
  235. 坪川信三

    坪川委員長 ただいまの西岡君の御提言につきましては、予算委員会の長い慣行もございますので、理事会において篤と検討することといたします。御了承を願います。
  236. 西岡武夫

    西岡委員 私は、この機会に具体的にぜひ実行していただきたいと思うわけでございますが、残念ながら、なかなかいまこの時点でこれまでの慣行を直ちに破るということができないというようでございますので、本日は新自由クラブとして福田内閣に質問を申し上げるのが主たる目的でございますので、これ以上この問題については深追いはいたしません。しかし、どうか閣僚の皆さん方も、一日じゅうこの予算委員会に縛りつけられておられるわけでございますから、それぞれの行政停滞を招かないために、所要のお仕事がございますれば御自由に御退席をいただきたい。このことだけを申し上げさせていただきます。  私は、すでに各党からそれぞれの問題についての質問が行われておりますので、できるだけ重複を避けまして、視点を変えまして、福田総理を初め関係大臣に質問を申し上げたいと思うわけでございます。  まず初めに総理に御質問いたしますが……(「委員長、おかしいじゃないか、何をやっているのだ」と呼び、その他発言する者あり)委員長発言中です、私の発言中ですから。委員長、私の発言中ですから。——よろしゅうございますか。
  237. 坪川信三

    坪川委員長 どうぞ。
  238. 西岡武夫

    西岡委員 まず総理にお尋ねをいたします。  総理の基本的な政治に取り組む姿勢についてお尋ねを申し上げたいと思いますが、総理は、総理として協調連帯ということを強く前面に出されております。そうして、この資源有限時代をいかに乗り切るかという基本的な御認識に立ってこれからの政治を進めていかれよう、このように施政方針演説において述べられているわけでございますが……(発言する者あり)
  239. 坪川信三

    坪川委員長 静粛に願います。
  240. 西岡武夫

    西岡委員 私も総理の基本的な御認識については全く同感でございます。ただ問題なのは……(発言する者あり)静かにしてください。発言中です。静かにしてください。
  241. 坪川信三

    坪川委員長 静粛に願います。
  242. 西岡武夫

    西岡委員 私がもう一つどうも納得できませんのは、総理の御認識が協調連帯ということだけを強調されるところに終わっているわけでありまして、これは何も協調連帯というのは政治の目的でも何でもない、一つの姿勢にしかすぎないと思います。私どもが認識をいたしますのは、いまわが国が置かれているこの現状は、根本的に日本の政治の仕組み、経済のシステム、こういったものを抜本的に改革すべきときを迎えているのではないか、自由主義経済体制というものがやはり的確に機能しにくくなっている部分が出てきているのではないか、こういう認識を持っているわけでございますが、こういうような諸制度の改革について、その必要性について総理はどのように御認識になっておられるのか、その点をまず承りたいと思います。
  243. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、二つのことを言っているのですよ。資源有限時代、そういう認識に立って、それから協調連帯という精神でこの世の中は運営していかなければならぬ、こういうことを申し上げているのです。そこで、しばしば申し上げておりまするとおり、そういう認識に立つときは、国も地方公共団体も企業も家庭も、みんなその姿勢転換を行わなければならぬ。姿勢転換というのは、あなたの言葉で言えば改革ですよ。変化を求めるわけだ。そういうことを申し上げておるわけで、これはしばしばそういうことを言っているのです。
  244. 西岡武夫

    西岡委員 私がお尋ねをいたしておりますのは、その具体的な方向について、どういうような改革を目指しておられるのか、それを承っているわけです。
  245. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはどういう改革と言えば、これは非常に多角的でありますが、まず経済の面におきましては、いままでのような高度成長政策はできない。したがいまして、社会を一体どうするか、そういう問題につきましては、これはもう乏しきを憂えず等しからざるを憂う、そういうような心構えの考え方が必要であろう。つまり、成長の量よりも質でもある、こういうことを申し上げておるわけです。そういう時代になりますと、人々の心構えというもの、つまり文明論といいますか、あるいは人生観、そういうものについての評価あるいは見方、そういうものも変わってこなければならぬだろう。そういうことから考えると、やはり非常に厳しい道でありますので、その中ではやはり連帯協調、つまり助け合い、補い合い、責任の分かち合い、こういう考え方が非常に大事になってくるであろう。私は、今日の社会は、エゴというものが出過ぎていると思うのです。このエゴへの挑戦といいますか、その辺が非常に大事なことになってくるだろう、こういうことを申し上げておるのですよ。目指すところは、わが日本の国を世界において尊敬されるような国にしなければならぬ、また尊敬されるような日本国民というものをつくり上げなければならぬ、そういうことを目指すということを申し上げております。
  246. 西岡武夫

    西岡委員 総理は、日本のいまの政治のシステム、経済のシステム全体にかなり大胆な改革を加えなければいけないということについては、そのようにお考えでしょうか。
  247. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そう思います。大胆な改革を加えなければならぬ。しかし、これはなかなかむずかしいので、いまあなたが御提案になりました国会における審議の改革の御提案ですね、これだってそう簡単に行われないでしょう。なかなかこれは容易なことではない。そういう中で私は、やはり自由民主党、これは何と言ったって多数党であり、一票差ではあるけれども絶対過半数を持っておるのですから、政権に対して責任のある立場ですから、自由民主党の出直しというか改革、これをやってみたい、これはぜひ断行したい、こういうふうに考えております。
  248. 西岡武夫

    西岡委員 私ども新自由クラブは、私どもに課せられた使命は、この日本の自由な社会というものをよりよいものに改革をしながら、私どもの子供たちや孫たちの時代にどうやって正しく引き継いでいくか、ここに私どもの使命がある、このように考えます。その中で、いま申し上げたように、よほど思い切った大胆な改革を行わない限りそのことは達成され得ないだろう、そういうふうに認識をいたします。そうしてその中でも、結局のところ日本の将来を決定するものは広い意味での教育にある、こう考えたわけであります。私ども新自由クラブが教育立国を唱えて、教育を国政の中心に据えるべきであると主張している理由は実はここにございます。この内容についてごく簡単に申し上げますと、実は三点ございます。  一つは、総理も御指摘になりましたように、これから資源がだんだん乏しくなっていくだろう。この資源有限時代の中にあって、私どもの子供たちや孫たちの時代に、日本の国を支えていく次の世代の国民が本当に自立的な精神を持った強い個人に育ってもらわなければ、日本のこの自由な社会を支えていくことは不可能だろう。これも結局のところ教育の成果にまつほかはないだろう、これが第一点です。  第二点は、これも資源有限時代とのかかわりにおいて、日本が未来に向かって発展をしていくためには、広い意味での学術の振興、科学技術の振興ということにまつほかはない。エネルギーの問題一つ取り上げてみても、まさに日本の運命はそこにかけられているであろう、これが第二点であります。  三番目の問題は、いまわれわれが置かれているこのいまの時代は、明治維新以来私どもの先輩が営々として西洋文明というものを目標に置いて努力をしてきた。ところが、いまここに来て、西洋文明そのものが大きな壁にぶち当たっている。ここで私どもが考えなければならないことは、日本の伝統、文化というものをもう一度見直して、そこに新しい価値を見出していくべきだ。これにしか日本民族が未来に向かって、不透明な未来に向かってこれを切り開いていく道はないのではないか、このように考えているわけでございますが、総理のお考え方を承りたいと思います。
  249. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは全く私が考えていることと同じようなことをお聞きするわけでございます。私は、世の中が非常に変わってきて、その中でわが国の行く道というものが狭く厳しいと思うのです。そういう中で、わが日本の国というものを、これを本当に世界でも誇り得るような国にしていくという道は、教育以外にないと思う。私は、ことしは——ことしはと厳重に言っているのですよ、ことしは内外ともに経済の年である、こういうふうに言っておりますが、長期的には、私は人間開発という言葉を使っているのですが、これ以外にないだろう。つまり、資源有限時代の本当にわが国の財産は何だと言えば、私は日本民族だと思うのです。この一人一人の日本国民というものを世界に冠たる日本人に育て上げる、知、徳、体、この三つの面におきまして、そういうすばらしい日本人に築き上げる、これができれば、資源有限時代と言うけれども、その資源をまたわれわれの知恵から開発することもできるのです。また、なければないでそれに対応する知恵を開発することもできるのです。しかも、わが日本というものはいい伝統も持っておるわけなんです。それをまた反省というか顧み、これを育て上げる。また同時に、新しいものも勇敢に求めていく。こういうようなことにすれば、私は、私どもの考えているこの考え方というものは必ず実現できる、問題は教育だ、こういうふうに考えております。
  250. 西岡武夫

    西岡委員 総理も全く私ども新自由クラブと同じような御認識に立っているということを承ったわけでございますが、ここに一つの図表を持ってまいりました。これは文部省の所管の予算が国の予算の中で占められている比率をあらわした数字、図表でございます。これで明らかなように、この赤線のところが年々シェア、文部省の予算が国の予算の中で占めている比率がだんだん低下していったところが赤線で示されております。青線がそれをだんだんまた回復させていった過程でございますが、いま総理は、まさに教育に日本の運命がかけられているとおっしゃった。ところが、福田内閣が初めて手がけられた予算でまた文部省の予算が低下した。これはどういうことでしょうか。
  251. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは予算の中におけるシェアという問題は、もう少し分析して論じてもらいたいのです。ことしは予算の規模が非常に大きくなっているのです。ことしというか五十二年度ですね。なぜかというと、五十一年度にあれだけの国債を発行した、その利息負担、これが大きくのしかかってくるわけです。それから地方財政でしょう。これはあれだけの手当てをしなければならぬ、こういうことになる。この臨時的な要素があるわけです。それから、私が申し上げましたように、教育というが、これは長期的な問題だ、ことしの問題とすると経済の年である、こういうふうに申し上げましたね。経済のための公共投資、これも伸ばさなければならぬ。ですから、いまそういうお考えでありますれば、これは公債費と地方財政対策費とそれから公共事業費を除いて考えてもらいたいのです。そうすれば、教育についてどういうふうに力を入れているか、いま私は数字は持っておりませんけれども、御理解願える、かように存じます。
  252. 西岡武夫

    西岡委員 私は、総理のお言葉でございますが、時の政府が文教に、文部行政にどれだけ力を入れるかということが具体的な数字としてあらわれるのは、やはり文部省の予算である。したがって、文部省の予算についてどれだけ政府が力を入れたかということがそのことを示す唯一の指標であろうと思いますので、あえてこの表をごらんに供したわけでございますが、文部大臣の御感想を承りたい。
  253. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 お示しの数字は確かにそのとおりでありますけれども、文部省予算内容を一つ一つ細かくながめてみまして、私どもがやりたいと思っておる問題についての内容がどうなっておるか。山高きがゆえにとうとからずと申しますが、お金の額の多寡だけで御判定いただかないで、いろいろな柱を立てて一生懸命やっておるということも御理解いただきたいと思いまして、私の感想は、私なりにその与えられた予算の枠内で全力を挙げて誠意を持ってこの職責を遂行していきたい、こう考えております。
  254. 西岡武夫

    西岡委員 文部大臣のお話につきましては、細かい予算内容の分析は文教委員会等を通じて今後させていただくことにいたしまして、これは大臣のお話ですけれども、文部省の予算にどれだけの金額が組まれているかということによってその内閣が文教にどれだけ力を入れているかということをあらわすわけでありまして、やはり山は高くなければとうとくない、こう申し上げる以外にございません。  次に、科学技術庁長官にお尋ねをいたしますが、先ほど、教育を重視するという中で、学術の振興、科学技術の振興の中に日本の将来というものを初めて見出すことができるのだということを申し上げたわけです。そうした中で、現在の日本の科学技術に関する予算の全体の姿一これは果たして未来を切り開いていくだけのエネルギーを持っているものであるかどうか、私ははなはだ疑問であろうと思います。その点について、長官のお考え方をまず初めに承りたいと思います。
  255. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 科学技術関係予算は、三段階に分けてお考え賜るとよく御了解賜ると思うのですが、まず、科学技術庁プロパーの予算が二千三百億、そして他の省庁の関係予算を合わせますと約四千億、そこへ大学関係の科学技術振興予算を合わせますと八千七百億、これが昭和五十二年度における科学技術関係予算でございます。これは伸び率から申しますと一一%でございますから、平均伸び率よりはるかに低いということが言い得るのではないかと存じます。  しかしながら、内容的に考えますと、たとえばエネルギー等の問題は本当に焦眉の急を告げております。御指摘のとおりに、資源有限時代、しかも資源小国のわが国としてどこに何を求めるかということになれば、エネルギー一つを考えましても、今日のようなわが国のプランそのままに将来石油が入ってくるであろうかということ等をも考えますと、すでに産油国自体におきましても、いまやコンビナートをつくったり、あるいは原子力発電所をつくりまして、燃料そのものではなくして原料として天与の石油を用いる、こういう思想転換をいたしておりますし、産業転換をいたしております。そういう点から考えましても、やはりわれわれとしては原子力等々に重点を置いておりまして、平均では一一%でありますが、原子力は一八・八%、さらには、海洋におきましては一七・九%、地震等々におきましても五九%、内容内容によりまして平均値より相当高く伸びた予算もある次第でございます。  しかし、総体的に考えました場合には、やはりわが国は他国に比しまして余り高い水準ではないということだけは言い得るのではないかと存じます。
  256. 西岡武夫

    西岡委員 長官が御指摘のとおり、科学技術の関係予算は、アメリカやソ連、フランス、西ドイツ等々と比較をいたしましてもまだまだ非常に低い。こういったことでは、本当に日本の将来を展望した場合に、エネルギーの問題だけをとってみても、石油が枯渇をする時代はもう目の前に来ている。いろいろな説がございますけれども、一一九八〇年代の前半に石油の供給がこれ以上ふえないという事態を迎えるであろう。しかし、一方においては、太陽熱の本格的な利用であるとか、核融合の実用化、こういったものが本当に動き出すのは今世紀中には無理だろうと言われている。そうした中で、エネルギーの問題だけをとってもどうしても谷間を迎える。この谷間をどう乗り越えるかということが日本にとっては大変な問題であろうと思うのです。  そういうことを考えますと、もっと真剣に、本格的に学術の振興、科学技術の振興に努力をしなければいけないのではないかと思うわけでございますが、どういう御決意を持って、またどういう見通しを持っておられるのか。特に原子力の問題について、長官の所管としてこの行政を進めておられるわけでございますけれども、いまのような状態で、一体日本のエネルギーというものにどういう見通しを長官としてはお持ちなのか、そこのところを少し承りたい。
  257. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 御指摘のとおりに、石油の消費量がいまのまま進んでいくであろうかということは、大変むずかしいとされておりますし、また、一九八〇年初頭においては第二のパニックがあるのじゃないかとすらささやかれている面もあるわけでございます。たとえば昭和六十年、すなわち一九八五年を基準にとりまして、一応私たちは、いまのパイの伸び方でまいりますと、その年の経済成長率もとにかく六%台は確保したい、そういう計算で考えますと、石油は四億八千五百万キロリッターぐらい必要でございます。しかし、それが入るであろうかということをやはり考えておかなくちゃなりません。さすれば、当然それにかわるべきエネルギーの開発が焦眉の急でございます。  いまおっしゃいましたとおりに、原子力開発の中にもいろいろ段階がありまして、人類究極の目的と言われる核融合は、二十一世紀を迎えて三十年ぐらいたたないことには無理であろう、こう言われますから、昨今そのことを論じておりましても、研究はどんどんと進めましても実効は上がらないと存じます。したがいまして、実効の上がるエネルギーの代替性の開発、これに今後は力を入れていきたいと思うのでありますが、それがためには、やはり科学技術の開発が最大の重要課題でありますと同時に、わが国は原子力と申しますとアレルギーがございますから、どういたしましても、もっともっと原子力産業そのものの安全性を国民の方々にも確認をしていただき、そして国民にそうした問題を受容していただく、これはパブリックアクセプタンスと言いますが、そういうふうな方向へ政治を持っていきたい、かように存じておる次第であります。
  258. 西岡武夫

    西岡委員 総理にお尋ねをいたしますが、いま指摘を申し上げましたように、わが国の学術、科学技術の振興にかけている力というものはまだまだ不足している。今後、福田内閣として、学術の振興の問題にもっと本格的に取り組む、これしか日本の将来を切り開いていく道はないのだという御認識に立ってそのことに取り組んでいただくかどうか、その決意を承りたいと思います。
  259. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その点は先ほど申し上げたとおりであります。われわれは、われわれの知恵でこれからの世界情勢の変化に対応するほかはない。そういうことになりますれば、教育の問題だとか、また同時に、それを補うところの学術、科学という問題、そういうものに本当に真剣に取り組まないと、これはえらいことになってくるのではないかと思うのですよ。いま科学技術庁長官からお話がありましたけれども、二十一世紀になると新しいエネルギーが開発される可能性が考えられると私は思うのですね。しかし、それまでのつなぎということになりますると、これはなかなかいろいろ問題が出てくる。この五年、十年ぐらいはあるいはもつかもしれませんけれども、その先になるといろいろな変化が出てくる。その変化に対応するためには、やはり科学技術、それからその根底としての教育、それを重視しなければならぬ、さように考えています。
  260. 西岡武夫

    西岡委員 今度、福田内閣として学術の振興に格段の努力をしていただくということを期待をいたしまして、次の問題に移ります。  教育界の現状について総理の御認識を承りたいと思うのです。  先般、先月の二十八日から四日間、埼玉県におきまして日教組の教育研究集会が開かれております。その中で槇枝委員長がこういうことをあいさつの中で述べているわけです。教師は内なる荒廃を克服する勇気を持たなければならない、こういうことを教研集会でのあいさつで述べております。このことは、教育界が、いかに教育の現場が荒廃しているか、そうしてまた、教研集会を通じて教師の皆さん方からいろいろな教育の現場の実態というものが発表され、討論が行われておりますけれども、その中で、児童、生徒の非行という問題が非常に大きな問題になってきている。こういった日本の教育の現状を考えるときに、本当に私自身も反省をしなければいけないと思うのです。ロッキードの事件に代表される不祥事件、これが本当に政治の不信を呼んだ。このことが教育全体にどれだけの悪い影響を与えたか、私自身も深く反省をしなければいけないと思います。そういう認識に立って、私どもは、教育界のその現状をどう打開していけばいいのか、このことを真剣に考えなければいけない、そういうときを迎えていると思うわけであります。  その中で、特に私が申し上げたいのは、いろいろなデータによりますと、教育界が、学校教育の現場が、違法な行為によってじゅうりんをされている。総理も御承知のとおりに、日教組の指令によって行われる違法ストというものがこれまでに何回となく繰り返されている。ごく最近のデータだけをとってみますと、過去五年間に日教組が中央指令によって全国の組織に流して違法ストを行った回数が十一回、これに参加した教師は延べ二百四十万人に上っております。これが教育界の実態です。教師がみずから、法律はもう全く守らなくてもいいのだ、違法行為というものが常套化している、違法行為について教育界が麻痺してしまっている、こういったことが片一方であって、子供たちの非行がふえた、これはある意味では因果応報という感じもいたします。教師の皆さん方もそれで苦しんでいる。こういう教育界の実態について総理の御認識はどうか、まず承りたいと思います。
  261. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 教育はひとり学校教育だけじゃないと私は思うのです。家庭の教育、社会の教育、これも非常に大事だと思います。そこで、いま教育地獄の問題とか、いろいろ学校教育の側面において問題があります。これは父兄の悩みを解決しなければならぬという立場に置かれておりますが、しかしそういう面よりも何よりも、私は非常に大事なのは社会風潮、これは本当に、いま非行というようなお話がありましたが、そういうことを考えましても、その根源は私は今日の社会風潮というところにあるのじゃないかと思うのです。やはり人間はいかにあるべきかということについての認識、これが非常に希薄になってきた。そうして物、物、物、金、金、金、そういうふうな風潮になってきてしまった。その辺が私は教育問題を論ずる最も大きな論点になっていかなければならぬのじゃないか、そういうふうに思います。私は、いま御指摘の日教組の問題なんか、そういう風潮に世の中全体がなっていく、そういう中において初めて解決されるのじゃないかというふうな感じがします。  あなたも、まだ新自由クラブに行かれる前、ずいぶん教育のことに御熱心であったわけでありまして、そして人確法というようなものもあなたの提唱によるところ、これが非常に多いわけでございますが、あのときあなたは、これをぜひやりましょうや、そうすれば日教組の問題が解決されるのですよ、こういうようなことのお話がありましたが、私はやはりこの問題は、社会風潮、これが今日の状態から大きく改善されまして、そして人間はかくあるべきものだ、人間社会というものはこういうふうになければならぬというような考え方が父兄の間にも浸透するということになると自然に解決されていくのじゃないか、そういうことがないとなかなか、あなたがずいぶん努力されてもできなかった、こういうむずかしい問題でございますので、むずかしいなというような感じもしてならないのであります。
  262. 西岡武夫

    西岡委員 総理のおっしゃっていることもよくわかるわけです。単に教育界だけの問題ではない、まずやはり政治が姿勢を正さなければいけない、これは本当に私どもの責任であろうと思いますが、私はそういう反省に立って、教育の現場がいかに乱れているかということを申し上げているわけで、これについて、文部省がわが国の教育全体についての最終的な責任を負っている、文部大臣が負っている、これは事実でございますが、小学校、中学校、高等学校についての直接の教育の行政の責任者はだれか、総理御存じでございますか。
  263. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 地方行政において地方の教育を直接的に担当するのは、地方の教育委員会の委員長、教育長、しかし最終的には文部省に参ることは御指摘のとおりでございます。
  264. 西岡武夫

    西岡委員 総理が小学校、中学校、高等学校の教育行政についての直接の責任者というものをすぐお答えになれない、その程度しか教育問題について御認識がないというのは非常に残念でございますが、なぜ私がこういうことを申し上げているかといいますと、いま文部大臣からお答えがありました教育委員会の教育委員、その中で教育委員長という方が選ばれるわけですから、その教育委員長が直接的な責任者です。ところが、この教育委員というのは非常勤なんです。この点を文部大臣、どうお考えですか。
  265. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これはいろいろな接触をいたしておりますけれども、それぞれの地方において十分に職責を果たしていただいておる、私はこう理解をいたしております。
  266. 西岡武夫

    西岡委員 そういうことをお聞きしているのではないのです。非常勤の状況で一体教育行政の責任をとれるのか、それをお尋ねしているのです。どうお考えですか。
  267. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 非常勤でありましても、その都度その都度ということではなくて、任命は一貫されておるわけでありますし、責任を持っておやり願っておるわけでありますから、私は責任を果たしていただいておる、こう判断をいたします。
  268. 西岡武夫

    西岡委員 教育委員会が直接の教育行政についての責任を負っているわけでありますが、教育委員会は教育委員の合議制によって教育行政が進められているわけです。しかも、小学校、中学校、高等学校について、先ほど指摘をいたしましたような学校の現場というものが非常に混乱している状況である。全国全部がそうだとは申しませんけれども、相当の地域において、相当の学校において、私どもがとても想像できないようなそういう無法地帯のような学校さえ出てきている。そういうような実態を踏まえて考えれば、教育委員というものが非常勤ということであっていいのだろうか、そういう疑問をお感じになりませんか。
  269. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 学校の現場の荒廃の問題、それは確かに御指摘のとおりですが、それと教育委員のいまのあり方とが直接の関連を持っている、そのことだけでそうなっておるという判断は私はいまのところいたしておりません。いろいろな問題があって、いろいろな整備をしなければならぬことはたくさんございますし、指摘されなければならぬ問題もたくさんありますけれども、直ちにそこから手をつけて、それが私の疑問だというふうにはどうしてもお答え申し上げられません。
  270. 西岡武夫

    西岡委員 問題をはぐらかしてもらっては困ります。私が申し上げているのは、やはり小学校、中学校、高等学校の学校教育というのは、まさに制度としての教育の基本でありますから、そこをきちっとやはり文部省としても押さえるべきではないか。押さえると申しますのは、きちっとした教育委員会の制度というものが本当に常時機能するような仕組みにすべきではないか。そういう意味では、教育委員というものは常に非常勤ではなくて常勤するという姿にするのがあたりまえではないか。それは何も学校の現場の問題をそれによって解決するということではもちろんございませんけれども、そういうところにも問題があるのではないか、それを申し上げているわけで、これを改革するお考えはございませんか。
  271. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 教育委員会というのは、西岡先生十分御承知のように、教育の基本についていろいろ審議をしておるわけでありまして、ですから私は、それを直ちに常勤にするということよりも、教育の現場の荒廃を救うためには、いろいろほかの問題がたくさんありますから、ほかの問題との関連において私の方としても考えますけれども、いま直ちにこの基本を扱っておる教育委員会が非常勤だからといってそれを取りやめなければならぬとは思いません。むしろ教育長が責任を持ってそれを担当しておる、現場の毎日毎日の問題はやっておりますから、それぞれに応じて解決をしていきたいと思います。
  272. 西岡武夫

    西岡委員 文部大臣いまお話しでございますけれども、教育長というのは事務の責任者でございます。したがって、その地域の教育委員は本来的にその地域の小学校、中学校、高等学校の教育行政について全責任を負うという仕組みになっているのですよ。それが非常勤なのはおかしいと申し上げているわけです。もちろん教育委員会の制度、いまの教育行政の仕組み全体についてもっと根本的に考え直さなければならないという面もございます。しかし、いまここでは、とにもかくにもそこぐらい手をつけたらどうかということを申し上げているわけです。どうですか。
  273. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 学校教育の問題は、国家百年の大計と言われるようにずいぶん長い一貫した問題でありまして、西岡先生のそのせっかくの御提案で、まずそこから手をつけろということでございますけれども、やはり私たちは、歴代の文部大臣がずっと積み重ねてこられたいろいろな問題点の指摘、あるいは関係のいろいろな方からの御指摘に従って、ようやくいま芽が出始めて手をつけられておる問題があるわけです。ですから、いま直ちに学校の現場の問題について何から手をつけようとしておるかと言えば、正直に申し上げれば、教育課程の改善の問題あるいは上の大学の入学試験の問題、そういう具体的に芽が出始めてきておる問題は、これは手をつけて後ろ戻りしないように、方向を見失わないように前進させてまいりますが、いま直ちに教育委員会の非常勤の問題から手をつけて、これを常勤に変えるということは、ちょっといまここで即答できませんし、また教育委員会にはそれぞれ職責を果たしていただいておる、教育の基本についてはおやり願っておると私ども判断いたしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  274. 西岡武夫

    西岡委員 これはまた不思議なことを御答弁になったわけでして、いまお話がありましたように、教育課程の改革にも手をつけている、そういうような、文部省が積極的にいろいろな改革をすることが、実際に教育の現場において行われるのは教育委員会を通じてなんですよ。その体制が、全く非常勤の教育委員によって教育委員会が運営されるというような状態で、そういうことが実際の学校教育の現場にきちっとした形で行き渡っていくのか、その体制をきちっとつくるべきではないか、責任体制を確立すべきではないかと申し上げているわけです。そうでしょう。
  275. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 教育委員長が責任を持っており、責任体制を持っていまやっておることは最初に申し上げたとおりでありますけれども、私は、非常勤だからといってその責任が果たしていないとは考えられませんので、これはもしいろいろ具体的な実例等がありましたら、さらにいろいろ私は調査をしてみます。
  276. 西岡武夫

    西岡委員 総理、これは非常に重要な問題なんです。現在の教育委員会制度には、先ほども申し上げましたように、根本的な問題がございますが、地方の教育委員会がだんだん残念ながら形骸化していっている。これが実態です。そうした中で、教育委員が非常勤だという形で一体責任がとれるのか、このことを私は申し上げているわけで、総理はこの問題についてどうお考えでしょうか。
  277. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 西岡さんが、教育委員会が形骸化している、こういう面を指摘しておりますが、そんな感じがしないでもありませんが、さて、そうだといたしました場合に、教育委員を常勤にするということでこれが解決できるかどうかというと、さあ、そういう常勤か非常勤かという問題じゃないような感じがするのですが、何せ文部大臣が調査してみる、こう言うのですから、その調査の結果を待って私も考えてみます。
  278. 西岡武夫

    西岡委員 文部大臣に申し上げますが、これはやはり教育行政の基本、根幹にかかわる問題です。この問題は調査しなければわからないというような、そんなばかな話ないでしょう。おわかりなんでしょう。
  279. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 私は責任を果たしてもらっておると理解しておりますから、その旨お答えをしたのであるし、御承知のように、教育委員というのは民間のいろいろな方の御協力も願ってやっておるわけでありまして、また、その基本を決める者が絶えず常勤にならなければ責任が負えない、常勤であれば責任が負えるというようなふうにも理解しませんが、私がここで主観的に、独断的にそう思っておることがもし間違いであるとするなれば、私がどこが間違っておったのかを、みずからを省みて調査してみようと言っておるのでありますから、現在の心境は、責任を果たしてもらっておる。しかも、民間の方々がやってもらっておるわけでありますから、そのすべてを常勤にして縛ることが一体できるのかできないのか、いいのか悪いのかという新しい問題も出てまいりましょうし、毎日毎日の問題は教育長が専門職として負っておるわけでありますし、だから、基本の問題を議論してもらう教育委員会は非常勤で責任を果たしていただいておる、私はこう判断しておりますから、それが間違いであるなれば、帰ってもう一回みずから調査してみよう、こういうことであります。
  280. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はいま教育委員会が形骸化しておるというあなたのお話を聞きまして、それでそういう面があるかもしれないということを申し上げましたが、形骸化しておるんだという前提には立っておらないのです。もし形骸化しておるという際におきまして、常勤か非常勤か、この問題で解決はできないんだということなんです。ちょっと誤解を与えてはいけませんものですから、そう申し上げたわけであります。
  281. 西岡武夫

    西岡委員 私がこの問題を特に取り上げましたのは、先ほども指摘をいたしましたような違法な行為というものがそのまま野放しになっている、あるいは地域によりましては教師の人事というような問題にまで組合が介入している、こういうような実態もあるわけです。これをいまのようなままで放置していたのでは、教育委員会も、非常勤というような形で責任がとれて、教育が一番大事だと言いながら、大体非常勤の人に任せられるのですか、そういう意味で申し上げたわけで、このことをやはりきちっと踏まえて御検討いただきたい。要望をしておきます。  次の問題に移ります。  日本の教育のいろいろな問題の中で、国民全体がいま最も強く改善を求めております問題の一つに入試の問題がございます。これは大学の入試の問題と高等学校に入る入試の問題と二つの問題がございますが、特にまず大学の入試制度、現在の入試制度が日本の教育全体に多くの害悪を流している。これはもういろいろと申し上げるまでもなく、国民全体が共通の認識を持っている問題です。これについて文部省はどういう改革の案を持っておられるのか。もちろん文部大臣は、当然こういう質問をいたしますと、国立大学協会が共通一次試験を昭和五十四年度から実施するようにしておりますというお答えがあると思いますが、これは確かに一つの前進ではございますけれども、現在問題になっている大学入試を改善する決め手にはなりません。どうお考えでしょうか。
  282. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 私の答えようとした答弁、そのとおりでございまして、入学試験の問題というのは、よく報道なんかによりましても、入試地獄という言葉がつけられるほど大変深刻な問題になっておることは御承知のとおりであります。したがって、昭和四十六年の入試問題懇談会の意見とかあるいはいろいろ調査研究をしてきた結果、ようやく国立大学協会の方で共通の一次試験をやろう。これについては、その下にあります高等学校の教育で誠実に高等学校の教育課程を学んできたならば、それで解答できるような、難問奇問から受験生を解放するという、教育上にも大変効果のある問題点も指摘されておる。  それから、公立学校協会の方は、この共通一次試験に参加をしたいという要請がされておることは御承知のとおりであります。私どもは、大学というのは数においても私立大学が非常に多数を占めるわけでありますから、私立大学もこれに参加をしてもらえるような方向が理想だと考えておりますので、私立大学の参加できるような方向に目下私立大学側とは協議を進めておるわけであります。  大学の入学試験の改正は、その共通一次試験から手をつけて、それから第二次試験は各大学ごとに個々に別々におやりになるということでありますが、このことについては、受験生の負担が必要以上に増さないように、科目を制限するとかあるいは面接や小論文にするとかいろいろなことを考えるわけでありますが、それと高等学校時代の調査書を活用して、三つを一体にした判断をしますと、受験生がペーパーテスト一回一発主義で判断をされるというような、少なくともいまの受験制度の落ち込んでおる深刻な状況を少しずつでも改善し、打破していくことができるではなかろうか、こう考えております。
  283. 西岡武夫

    西岡委員 私が申し上げているのは、共通一次試験が行われて、さらに各大学が個別で行う試験が、いまのような状態ですと少なくとも四教科以上行われるのではないか。これでは二重負担になるだけでして、共通一次テストというのは一つの前進ですけれども、いまのような各大学が行う試験というものをそのままにしておいたのでは、単なる文部省の行政指導ということだけではどうも科目を少なくしていくということが不可能であろう。そうであるならば、共通一次試験というのはもう一つ負担を受験生に課すだけであって、何の改善にもならない。したがって、各大学が少なくとも受験生のそれぞれの個性というものを引き出していくということに注目するならば、原則は一科目だけでいいじゃないか、このことを新自由クラブとしてはすでに提案をしているわけです。ところが、なかなか文部省としてはこれに積極的にお答えにならないようでございますが、いまのような共通一次試験だけでは改善できない、これをかねてくどくどと申し上げているわけです。ですから、それだけで改善だということにはならないということは文部省もお認めになっているはずでありまして、それではいつまでにいまのいわゆる入試地獄と言われている状況を解消できるのか、その見通しをごく簡単で結構ですから承りたい。
  284. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 一次試験のことだけでなく、二次試験のことについても私どもが意を用いておることは先ほど申し上げたとおりでございますし、それにできれば高等学校在学中の調査書の活用ということ、それをすべてを包含して受験生の負担にならないように指導していかなければならぬのはおっしゃるとおりだと思いますし、私どももそういう考えでおりますし、また、昭和四十六年の大学入試問題懇談会の御報告もそのことを明確に書いておりますので、その線から逸脱しないようにしていきたいと思います。  いつ解消できるかと、こうおっしゃいますと、とりあえずは五十四年度の国立大学、公立大学の第一次共通試験からスタートすることに決まっておりますが、まだ私立大学がそこへ参加するという意思表示がございませんので、できるだけ早くそういった理想の形に近づくように努力をしていきますが、何年から全部ということはちょっとここでは申し上げられません。努力を一生懸命続けてまいります。
  285. 西岡武夫

    西岡委員 文部大臣、新自由クラブ、私どもが提案をいたしております入試改善のための試案、これはあくまでも試案でありまして、私どもとしてはこれで絶対的な案であるという思い上がった考えは決して持っているわけではありませんけれども、やはりこれだけ害悪を与えているという共通の認識が持たれている入試というものを、いまの文部大臣の御答弁のように、いつから改善されるかわからない、やるだけやってみる……。共通一次試験までこぎつけるのに一体何年かかっているとお思いですか。これは五十四年から実施するといまおっしゃいましたけれども、五十四年から実施されるとして大体八年がかりですよ。一体いつになったら改善できるのか、これをやはり示す必要がある。
  286. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 この問題についてはずいぶん前から議論されて積み重ねがあったことは申し上げておりますし、昭和四十六年に中間の案をいただいたことも申し上げましたし、それから国立大学協会が過去三年間にわたっていろいろなテストを繰り返してこられた、そういったこともよく承知しております。そして五十四年から国立大学と公立大学でスタートするということ、そこまではようやくこぎつけた。そのために今年度文部省といたしましては大学入試センターの開設、それから八万人の高校生を対象にする試験、これをぜひやりたい、予算措置をしてお願いをしておるところであります。
  287. 西岡武夫

    西岡委員 私は、この入試の問題で、塾の問題を初めとして、本当に幼稚園の子供たちから大学の入試という問題が弊害になって、それぞれの、小学校は小学校でなければできない教育、中学校は中学校、高等学校は高等学校でなければできない教育そのものが大きくゆがめられているんだ。毎年毎年この弊害が蓄積をしていっているわけですね。ですから、文部省としては大学のいまの入試について弊害があると認めたならば、直ちにやらなければいまの子供たちに対して申しわけない、こうでなければならないと思うのです。私は、この問題について今後根気強く入試の改善を政府にも迫ってまいりたいと思います。総理もこの問題についてはどうかぜひ強い関心を持っていただいて、真剣にお取り組みをいただきたい。強く要望をいたします。どうも文部大臣は御自分の御判断というものを少しも交えられないで御答弁がなされておりますので、期待をいたしましたずばりとした御答弁をいただけないで残念でございますが、これ以上質問いたしましても押し問答のようでございますから、後刻これも文教委員会において詰めた議論をさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕  次の問題は六・三・三・四の学校制度の問題であります。この六・三・三・四の学校制度の問題につきましては、私ども新自由クラブは、やはりこの辺で、昭和二十二年の教育制度の改革が行われてから三十年経過した今日、いま未来にたえ得る学校制度というものをつくる必要があるのではないか、その責任があるのではないか、こう考えます。六・三・三・四の学校制度については、実に幼稚園の問題から始まりまして幅の広い問題がございますが、私はここで問題をしぼりまして、高等学校の位置づけの問題から六・三制の改革の問題は当然政府としても真剣に取り組まなければならない時期を迎えているということを中心に話を進めたいと思います。  高等学校の進学率は、御承知のとおり地域によってはほとんど一〇〇%近く進学しております。全国の平均でも九三%近くになっております。もうここ数年いたしますと、高等学校というものに対しては義務教育化すべきではないかと、もうすでにその声も強く起こってきているわけでありまして、これに当然こたえなければならない。ところが、現在のところ文部省はようやく重い腰を上げて、文部省というよりは建設省文部係のような考え方に立って、建物の問題だけをようやく手をつけておられる。ところが高等学校の教育については、教育課程の改革を仮に行ったとしても、一体現在の高等学校における教育をどれだけの生徒が理解しているのか。まあ一説によりますと、現状では三分の一の生徒しか理解していないと言われる。そういう状況の中で、どんどん事態は進んでいって、義務教育化の要求が非常に高まってきている。これを一体どう考えるのか。高等学校をどう位置づけるのか。この問題からだけでも六・三・三制という問題は再検討を迫られているというふうに私は認識をするわけでありますが、この点、文部大臣のお考えを承りたい。
  288. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 高等学校の問題を中心に御質問でございましたが、中等教育の中に占める中学校と高等学校のあり方について、さきの中教審の答申でも問題点を指摘され、その後いろいろ西岡委員議論のような問題が起こっておることは文部省としても十分検討をいたしておるところであります。  基本を申し上げますと、中学校と高等学校と一貫学校のようにしてしまって、そしてせっかく九三%近くも行っておるなれば、義務制にしたらどうかという角度の御意見のあることもよく承知しております。しかし、いま中学校の卒業時期における生徒の多様な要求といいますか、必ずしも高等学校進学という進路を選択しない人もいることもまた事実でありますし、それから現在の後期中等教育が、三年間の高等学校のみならず、これはよく御承知と思いますが、高等工業専門学校のように五年制の新しい制度であるとか、あるいは職業教育を施す産業教育高校とか普通科高校とか、いま高等学校のあり方というものはいろいろ分かれております。  同時にまた、中学校と高等学校の教育内容の関連一貫性はやはり持った方がいいということで、教育課程の改定については、学校の制度そのものをどう変えていくか、あるいは高等学校を義務化にするかどうかという問題は、これはまだいろいろ問題点がありますからそこまで決めておりませんが、教育課程の内容で一貫性が持ち得るような調査検討をただいま行っておりますし、御承知のように、教育の実証的な資料を得るための研究校を今年度から指定をして、教育課程の一貫をするための実証的な研究の資料を得よう、こういう努力も今年から始めておるところでありまして、高等学校の位置づけということについては、ただ単に建物だけじゃなく、内容にわたってもいろいろな点から検討しておることを御理解いただきたいと思います。
  289. 西岡武夫

    西岡委員 検討ばかりして何の実行もしないということではいけないわけでありまして、私が指摘をいたしておりますのは、とにかく中学校の三年から高等学校の一年に進むときの人間性の発達段階というのは非常に大切である。大体十一歳から十五歳までの子供たちの発達の段階というものは、まさに知的構造というものが高まる時期であるし、また、人間の感応性というものも非常に最高潮に高まるとさえ言われている。そういう時期に、いまのように高等学校がこれだけ進学率が高くなっていながら、なお中学校から高等学校に進むために大変な試験勉強をしなければいけない、これが直接的には塾というものを繁盛させているという結果になっている。この塾の発達というのは、ある意味では自然発生的な意味もありまして、学校教育ではもうどうにもならないということで、これは文部省に対する不信任のあらわれでさえあると私は思うのです。そういう状態というものを放置していながら、文部省としてはいつまで一体検討されるのですか。したがって、一つの考え方は、中学校を一年延長するあるいは二年延長して義務教育化するというような考え方もあろうかと思います。こういう問題に、もうそろそろ答えを出さなければいけない時期が来ているのではないか。文部省ももういままでにさんざん検討しているのですよ。その点を文部大臣としてどうお考えになるか。
  290. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 いろいろな検討を続けてきておることは申し上げたとおりですが、ことしからはその実証的な研究資料を得たいというので、研究校を指定してそういった資料ももらおう、それから御承知のように、教育問題というのは混乱を防がなければならぬ面もありますので、手のひらを返したように急激なものではなくて、たとえばそういったことを検討するときも、少なくとも二十年、三十年という目盛りで考えなければならぬということを中教審も支持しておりますし、私どももただ黙って足踏みして検討しているのではなくて、時代の要請にこたえて切りかえていった方がいいという自信がついたら、これは勇敢に踏み出さなければならぬと思って検討しておるわけであります。いまはいろいろなものを取り集めておる最中でございますので、いろいろな問題があることもどうぞ御了承いただきたいと思います。
  291. 西岡武夫

    西岡委員 これも残念ながら明快なお答えをいただけません。残念ですけれども、次の大学問題に問題を進めたいと思います。  大学の問題につきましては、かつての大学紛争のときに、わが国の大学制度全体を根本的に改めるべきであるという非常な関係者の意識あるいは世論の高まりというものを見せたわけでございますけれども、いつの間にかそういう内的な改革のエネルギーも、見ているところによるとなくなってしまっている。一方でどんどんどんどん大学の進学率も高まってきている。私は、大学に多くの国民皆さん方が進んでいかれるという、そういう知的欲求というものの高まりこそが日本の将来というものを支える唯一の力だというふうに思います。しかし、一面、大学にもうみんなが入ってしまうということになれば、大学の知的な牽引力と申しましょうか、そういうものは一体どうなるんだろうか、大学全体が本当に弱体化するのではないか、衰弱していくのではないか、そういうおそれも持っているわけです。そういうことで、本当に日本の社会全体の知的牽引力の役割りを果たし得る、そういう真の学問の府としての大学というものを考えなければいけないときに来ているのではないか。     〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕 これは、やはり大学院を強化して連合の大学院大学というようなものをつくるときを迎えているのではないか、そういうふうな認識を持っているわけでありますが、その後どうも大学院大学というものをつくれるように制度だけはなっておりますけれども、そういう大学の質的な向上のための努力というものがとだえている、これが実態だと思います。この点を文部省としてはどういうふうにお考えなのか、ぜひ承りたい。
  292. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 高等教育につきましては、これはいろいろな問題点があって、たとえば学校間格差の是正とか国立、公立並びに私学の学校間の問題あるいは地域のばらつきの問題、いろいろあります。また、御指摘のように、大学に同世代年齢の四〇%近くが進むようになれば、さらにその上に専門の学術研究の大学院大学のようなものあるいは大学院の存在そのものも、おっしゃるように各大学の教科が集まるもの、あるいは学部と離れた大学院、いろいろな構想が出てきておることは事実でございます。文部省としましてもいろいろな新しに要望にこたえる研究機関、大学院を設置しようとしていろいろな構想を出しておることは御承知のとおりでございますし、それから大学そのものにおいても大学間の単位の互換の制度であるとか、あるいはまた大学においていろいろ教育課程をつくるときの弾力化の問題であるとか、毎年きめの細かい制度を出して、あくまでもこれは大学が自主的な判断で改革をしていってもらう。それに対してできるだけ環境条件を整備して、それがやりやすいように協力をしていく、こういう基本姿勢で取り組んでおるところでございます。
  293. 西岡武夫

    西岡委員 いまの日本の大学の改革というのは非常に困難であるということは、私もよく理解をいたしておりますが、ひとつ提案を申し上げたい。  大学の問題が大学紛争のときに論じられましたときには、大学の管理運営のあり方というのが非常に大きな問題になりました。これはなかなかそう簡単にいかない問題だということは、私自身も身をもって体験をしたところでございますが、御承知のとおりに、その後大学の改革というのは自分の手によっては全く進められておりません。そこでひとつ、大学の本当に内部の改革を促すために、教官の任期制というものを導入する考えは文部省としてはないのか。また教授の業績を——これはもちろん学会という自主的なものが評価するということになりますけれども、大学の教授の皆さん方が五年なら五年に一遍、自分の業績というものをきちっと発表して、その業績の結果が客観的に正しく評価される。もちろんそれは何も文部省にやれということを言っているわけではないわけで、学者みずからの手によってそれを自己評価する。この任期制と業績評価制度というものをわが国の大学、特に国立大学に導入すれば、日本の大学は大きく変わると思います。この点は総理に承りましょうか。どうお考えでしょうか。
  294. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これはただいま突然の御提案でございますので、教官の任期制とか業績評価制ということにつきましては、これはいままで、率直に言って私は検討したことがございませんでしたので、考えてみましょう。そのかわり、いろいろな問題がほかにあると思います。大学の教授は大学の中自体で、お互いにそれぞれの中で切磋琢磨をしながら業績を上げておるのでしょうから、そういったこと等も考えて、これは研究課題、御提案として承っておきます。
  295. 西岡武夫

    西岡委員 これもちょっと不思議なことなのですけれども、文部大臣は、初めて突然のこととおっしゃいましたけれども、そんなことはないのです。これはもう大学紛争のときから問題になってきた課題でありまして、現に東大がみずから改革案を作成をいたしまして、これは結局最後にはやらないということを決めた改革案でございますけれども、東大がみずからまとめた改革案にも、当初は、いまの任期制の問題は入っていたのです。途中で抜けたのです。私は、この問題がわが国の大学を改革する決め手になり得ると思うのです。これは過去のことはどうでもいいわけですから、文部大臣として、それはぜひやってみたい、そうお答えいただきたい。
  296. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 東大の改革案の途中まであったかどうかは私は寡聞にして知りませんでしたけれども、御提案は、いまが私にとっては最初でありましたから、これは私としても慎重に検討さしていただいて、後ほど文教委員会でお答えをいたしたいと思います。
  297. 西岡武夫

    西岡委員 もう一つ、これはちょっと質の違う問題でございますが、国立大学に夜間学部をつくってもらいたいという非常な強い要望がございます。私は、国立大学の講座を昼夜開講制にすることによって、事実上夜間学部をつくるのと同じ効果を持ち得ると思うのです。これは、もう本当にいつでも自分の都合のいい時間に学べるというような体制をつくることが、いま国立大学にとっては緊急の課題であろうと思うのです。この昼夜開講制というものを積極的に文部省として国立大学に導入するという考えはございませんか。
  298. 坪川信三

  299. 西岡武夫

    西岡委員 いや、文部大臣に聞いているのです。
  300. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 国立大学の夜間学部は、現在広島に一カ所あるということでありますけれども、国立大学の授業の昼夜兼行制といいますか、できるだけいろいろな立場の人々にも国立大学の授業が聞かれるように、国立大学の学生になるチャンスを与えるということは、私は方向としては間違っていないと思いますから、これは検討さしていただきます。
  301. 西岡武夫

    西岡委員 ただいまの文部大臣の御答弁は、文部省として国立大学の昼夜開講制を実行するというふうに御答弁をいただいたというふうに受けとめます。  教育の問題については、そのほか幼児教育の問題、幼保一元化の問題、いろいろ多くの問題があるわけでございますが、これも文教委員会において問題を詰めることにいたしまして、教育問題につきまして最後に、文化庁の長官は見えておりますか。——わが国の国語政策についてごく簡単にお尋ねを申し上げたいと思います。  今日まで、戦後のわが国の国語政策というものは、一つ例にとりましても、送りがなの問題にいたしましても、非常に混乱をして、一体送りがなというのをどういうふうに使ったらいいか、全く国民全体は惑わされることが多かったというふうに思います。  それから、つい先ごろの国語審議会の方から発表をされました試案、新漢字表試案というものも、いままで使っていた漢字をギロチンにかけて、もうこれは外してしまうというような試案が出されておりますけれども、一国の国語というものをそう簡単に、十年や二十年ぐらいの時代の動きの中で、使われる頻度が少なくなったからこれはもう除いてしまうとか、そういうふうに大きく揺れていいものかどうか、私は根本的にこれは疑問があると思うのです。こういう点を一体政府はどうお考えになるのか。できれば総理の御感想をちょっと承りたい。
  302. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま御質問のように、国語がわが国の文化の継承、発展に非常に重要な役割りを持っておるということは御指摘のとおりだと思います。戦後の国語政策といたしましては、御承知のとおり日本語が平明である、美しく豊かなものであるということをねらいといたしまして各種の改革を行ってきたわけでございます。ただいま御指摘の、先月中間的に発表になりました新漢字表の試案でございますが、これは、従来の当用漢字表が制限的なものでございましたことを改めまして、目安としての千九百字をお示ししたわけでございます。これも最終的に決定をしたということではございませんで、今後約二年間広く各方面の意見を聞きました上で決定をいたしたいというふうに考えておりますが、その基本は目安ということでございます。御承知のとおり、従来の当用漢字表は終戦後間もなく決まったわけでございまして、今日まで約三十年間の使用のいわば実績があるわけでございます。この内容につきましてはいろいろな方面から御意見等もございましたので、使用頻度だけではございませんが、それを中心といたしまして若干の取捨選択をして、新しい漢字表の検討を進めておるということでございます。
  303. 西岡武夫

    西岡委員 私は、やはり国語というものを大切にするということは、先ほども指摘をいたしましたように、日本のこれからの、未来に向かっての発展のために非常に大切な基礎的なことであろうと思います。そうした中で、いままでのような国語審議会、何か学者の皆さん方が二手に分かれて多数意見でどうだこうだということではなくて、もっと本格的な、日本語というものを風格あらしめるための、そういう民間の——文部省がこれはやるべきことではないと思いますが、民間にそういうようなものをつくって、いまのような国語審議会のような、審議会というようなあり方ではないものを、権威あるものをつくって、そこが、たとえば外来語にいたしましても、この外来語は本当に日本語として日常使っていいものであるという格づけをするとか、乱れたいろいろな日本語の使い方についての一つの指針を示すとか、あるいはもっと日本の方言というようなものについても大切にしていくとか、そういうような高度な国語政策というものを展開できるような仕組みを考えるべきではないか。これは文化庁の長官にお尋ねしてもちょっと無理だと思いますので、総理のお考えをぜひ承りたいと思います。
  304. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国語を大事にするということは私は大賛成です。ただ、その機構といたしまして、国語審議会はこれを廃止するか、あるいはそれと並行いたしまして別の何かをおつくりになる、こういうお話でありますが、いま私は、行政機構を何とかして改革、整理したい、こういうふうに考えているのです。そういうことで頭がいっぱいなものですから、なかなか共感を覚えがたい、こういうことを申し上げます。
  305. 西岡武夫

    西岡委員 私がお尋ねをしておりますのは、何も政府の内部機構としてそういうものをつくるということを申し上げているのではないのです。国語政策というのはやっぱりそうあるべきではないと考えますから。これは設置の性格が違いますけれども、わが国には芸術院というようなものもありますが、そういう機関がそういう役割りをもっと積極的にしてもいいのではないかなという感じもございます。したがって、できるだけ民間にそういうような仕組みというものはつくるべきだというふうに考えているわけで、そのことを御提案申し上げているわけでございますが、文化庁の長官、いかがですか。
  306. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 国語の大切なことは御指摘のとおりだと思いますが、そのために民間の機関をつくるということは、ただいま総理からも御答弁がございましたように、私ども、初めてのお話でもございますし、そこまでは考えていないわけでございます。現在の体制といたしましては、御承知のとおり国語審議会というものがございます。同時に国語研究所というものがございまして、表裏一体になりまして国語の改善に努力をいたしておるわけでございます。そういう体制で私どもは今後ともやはり進めていくべきであろうと考えますが、同時に、芸術院のお話がございまして、この芸術院はこれまた御承知のとおり栄誉機関ということが基本でございます。ただ、文化に関する重要事項について建議をすることができるという規定がございます。私ども国語問題につきましても芸術院から何らかの御意見の表明があるということはこれは歓迎はいたしますけれども、しかし、国語改善についての調査、審議、研究というものは、やはり国語審議会なり国語研究所なりを中核として今後とも進めていくことが適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  307. 西岡武夫

    西岡委員 文化庁の長官の答弁は私は納得できません。いままでの戦後の日本の国語政策というものが全くなってないではないかということを冒頭に申し上げているわけで、いまのような仕組みでは確固たる国語政策というものは展開し得ないのではないか、根本的にその考えを改めるべきだということを申し上げているわけです。文部大臣、いかがでしょうか、改めるということを一言だけお答えください。
  308. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 御指摘の点は理解できないわけではございませんが、ただ、反省といたしまして、現在の国語審議会のああいった審議の方向だけでいいかどうかという点については、私どもさらに考えてまいりたい。つまり、かな遣いの問題でございますとか漢字表の問題だけをいま取り扱っているわけでございますが、さらに広げまして、御指摘の外来語の問題でございますとか、敬語の問題でございますとか、その他広い国語問題がいろいろあるわけでございますから、逐次そういう方面にも審議の対象を広げていきたいというふうに考えておるわけでございまして、全体的な取り組みといたしましてはそうした方向で考えさせていただきたいというふうに考えます。
  309. 西岡武夫

    西岡委員 以上で教育問題についての若干の質問を終わるわけでございますが、私がきょう指摘をいたしました教育問題は広い教育問題のごく一部の問題にしかすぎません。しかし、きょうの質疑を通じて明らかになったのは、福田内閣は教育こそ国の基本である、教育を最も矢切にするということを総理も施政方針演説の中でお述べになったわけですけれども、具体的に何にも改革の案もなければこれを断行するお考えもない。予算も、いろいろな御説明はございましたけれども、実質的にここ四、五年かかって文部省の予算が国の予算の中で占める割合を伸ばしてきたのがダウンした。そういう数字の否定できない結果が出てきているわけでありまして、もっと教育を大事にすると総理がおっしゃるのならば、一つ一つの問題について具体的な教育改革の考え方を早急に固めていただきたい、そうして国民の前に、福田内閣は教育改革についてこういうことを実行するということを早急にお示しをいただきたい、このことを要望をいたします。いかがでしょうか。
  310. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 西岡さん、この予算の規模をごらんになりまして、それで、どうも福田内閣は文教予算、科学技術予算を軽視するというような印象のようでございますが、さにあらず、文部省の予算は人件費が非常に多いのですよ。そこで、その他の予算、これを見ますと、五十一年度の伸びは一七%でありますが、五十二年度は実に二〇%も伸ばしているわけなんです。それから、先ほど申し上げましたことしの予算は、国債費、交付税、社会保障費、公共事業費、これを非常に伸ばしておるわけなんですが、それを除いた予算の中における構成比は実に三〇%を超える、こういうような状態だ。それで、五十一年度は二九%であった。予算の上からも文教、科学技術につきましては、これを重視しているということをはっきり申し上げます。
  311. 西岡武夫

    西岡委員 総理、そういうことをおっしゃってもらっては困ります。文部省の予算の中に占めている人件費の割合が高いということ、これはもう当然のことであります。まさに教育の中心は教師なんですから、人がまさに教育の中心なんですから、人件費の割合が高いのはこれはもう当然のことで、それが教育の予算なんです。ですから、それを除いてあとの物件費の伸びがこうだという、そういう理屈はまさにおかしいわけで、いまの日本の財政の苦しい状況の中で、本当ならばもっと教師もふやしたい、それがずっと抑えられているわけで、人件費が多いからという、そういうような形で教育の予算というものを御説明いただくというのは、教育の問題を御理解いただいていないと申し上げるほかないわけでございます。まことに残念でございます。  次の問題に移ります。  経済の問題でございますが、私は、いま日本の経済政策で最も大事なことは、どうすれば安定成長路線に速やかに日本の経済を乗せ得るかというところにあろうかと思います。これに全力を注がなきゃならない。その安定成長路線の上に乗せて初めて、中期的、長期的な日本の将来の展望というものが出てくるのであろう、こう考えます。  そのために、安定成長路線に乗せるためには、総理が口を酸っぱくして指摘されておられるように、公共事業、これも大事です。それと、私どもは減税ということを強く主張しているわけです。もう一つは金利を引き下げる、この三つの柱で日本の経済を浮揚させなければ、とてもこれだけの落ち込みを見せた日本の経済というものを浮揚させることは不可能だ、こういうことを主張しているわけです。もう一つ、三つの柱と申しましたけれども、その三つの政策が一緒になって与える心理的な効果、これが四番目の効果として出てくると思うのです。これが大切だ。このことを強く主張しているわけでございますけれども総理は一向にそのことに耳をかそうとされません。  私ども新自由クラブは、減税のやり方につきましては、先般社会党の石橋書記長が提案をされました戻し税の方式、細かい内容は別といたしまして、大体社会党の石橋さんからの御提案の案に賛成でございます。ただ問題なのは、財源の問題について私どもの認識と社会党の認識とが違っているという点であります。  私ども新自由クラブは、もちろん租税特別措置法を洗い直すという問題であるとか新しい税を新設するというような問題、これは中期的に日本の経済を展望したときに、ある程度の税の負担増というものはやむを得ないという考えに立っておりますし、その税をもう少し負担していただこうと国民皆さん方に言う前に、税の不公正というものを是正するということもしなければならない。ただ、問題なのは、いま緊急の課題として経済を浮揚させなければいけない。ところが、そういう議論がなかなかまとまらない。そこで、新自由クラブとしては、当面あえて国債を増額発行してでも減税をやるべきではないかということを提案しているわけです。この提案について総理はどうお考えになるのか、まず初めにお伺いをいたしたいと思います。
  312. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、経済は安定路線に向かって順調に進んでおる、こういうふうに見ておるのです。つまり、あの石油ショックが起きてから三年になりますが、この間四十九年度のマイナス成長、これが今日六・七%の成長を五十二年度において展望できる、こういう状態になってきておる。それから物価はどうだというと、あの狂乱、これが全く影がなくなりまして、いま七・七%の物価が五十二年度には展望できる。国際収支はどうだ、こういうと、大体均衡の状態になっている、こういう状態でございます。  ただ、今日この時点の状態を申し上げますと、世界の経済の総不振、こういう中でわが国の経済もまた非常な不振の状態であります。この状態は、この際としてはどうしてもてこ入れを要する、こういう認識なんですよ。  そこで、そのてこ入れの手段としては、公共事業費をこの際大幅に拡大する、こういうこと。いま西岡さんが減税をさらにやれい、こういうお話であります。その財源は公債だ、こういうお話でございますが、いま私は安定成長路線にわが国の経済は前進しているというふうに申し上げましたが、まだ後遺症がある。この後遺症の最大の問題は財政です。とにかく一般会計の財源を三割も国債に依存しなければならぬ、この状態は、いまの展望とするとそう簡単に直せるというような状態じゃないのです。そういう状態が長く続いたら一体どうなるのだろうかということを本当に心配しているのです。  しかし、一方においては景気をよくしなければならぬという問題もあるので、あえて公共事業費を伸ばしまして、そうして経済に活力を与えようということを考えているのですが、それでもとにかく六・七%成長が展望できる、こういうのです。この成長の高さというものは世界先進諸国の中でわが国が第一なんですから、まあこの辺で国民の皆さんにも御満足いただかなければならぬ。  これを一歩誤りますると本当にゆゆしい事態になるんじゃないかということを心配しておるのです。西岡さんは、その上にさらに一兆円規模の減税をする、こういうお話。しかもその財源は公債だ、こう言う。それでは一体国の財政はどうなっておるのだろうか。財政はどうなってもよいとして、一体社会秩序というものがどうなっていくのだろう。財政インフレ、こういうようなことになりかねない。私は非常にそれを心配しております。そういう立場から、せっかくの御提案でありまするけれども、私はどうもこれは賛成できない、こういう結論でございます。
  313. 西岡武夫

    西岡委員 総理のお話でございますけれども、私どもはいまの日本の経済の構造からいって公共事業、しかもそれは私どもに言わせますと、まだまだ不十分だというふうに思うのですけれども、いまのような公共事業だけに頼って景気を浮揚させるということでは、六・七%の成長は達成できないのではないかという前提に立って議論をしているわけです。それはもう申し上げるまでもないことでございますが、日本の国民総支出の中で消費支出というものが占めている率というものがもう五六%くらいになっている。こういう日本の経済の構造から考えても、いま私どもは決して浪費を奨励しようということを申し上げているわけではないわけです。これは消費を刺激する以外に日本の経済を浮揚するもう一つの決め手はないではないですかということを申し上げているわけです。そして日本の経済がとにかくいまの財政の危機という状況は私どもも認識をいたしております。後でそれを打開する提案を申し上げたいと思っておりますが、そういう財政の危機をまさに解消するためにも、景気をとにかく浮揚させなければ全く悪循環になるではないですか。そのために、いま現在国債を全く発行していない状況で、総理が国債の発行については大変なことになるということをおっしゃるならばわかりますけれども、すでに国債の依存率が二九・七%というところにあって、それが三〇%をちょっと超えるという状況になるのがもう大混乱が起きて、二九・七%が混乱が起きないというのは一体どこに根拠があるのか、全く私は疑問だと思うのです。  ですから、ここで景気を浮揚させることができれば、その決め手として減税を行うべきだ。それもいままでのような減税のやり方ではなくて、戻し税、これは税というよりは、私どもはこれを二つに分けて考えておりますが、納税者に対しては五十年度の税を払い戻すというような形でもいいと思います。非納税者に対しては特別給付金、まさに総理が御指摘になった給付金という形になろうかと思いますが、それを一度に、社会党さんが御提案になっておられるように、給与所得者については大体四万五千円程度というような思い切った減税を、新機軸の減税をやることによってこれを浮揚させることができるではないかということを提案しているわけです。  そのために私どもは、二カ年間に限った引き充ての国債を発行すべきだ、それしかいまのところ時間的にも間に合わないではないか、そう考えて、二年間に限った国債を発行してそれの財源として充てる、そしてこの二年間に租税特別措置法の洗い直しであるとか新税の問題、私どもは当初富裕税の新設ということも提案したわけです。ところが、これは技術的にもなかなか間に合わない。なかなかむずかしい。資産の把握というのがむずかしい。そういう技術的な問題もあって、その議論だけをしていたのでは間に合わないから、あえて国債の発行ということを提案しているわけで、これは総理も素直に私どもの提案を受けとめていただいていいのではないか、こう考えますが、いかがでしょうか。
  314. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも素直にいただけませんね。と申しますのは、いまもう日本の財政は、私はこれを見ておりますと、ぎりぎり精いっぱいの危機路線で運営されておる、こういうふうに思われるのですよ。それをとにかく、国債発行の依存度三〇%という関門を設けて、そしてその中に財政の規模を押し込もうという努力をしている最中、そこへ、その関門は構わぬ、三一%になっても構わぬじゃないかといえば、今度は三二%でも構わぬじゃないかという理論になる。三二%といえば三三%でも構わぬじゃないかという、そんななまやさしい事態じゃないのです。私どもは日本社会というものを考えている。これを財政インフレというような状態に持っていったら大変なことになる。私どもはぎりぎり精いっぱいの厳しい運営をいまいたしておる財政である。そこへまた国債を追加するというようなことは、私は非常に危険な考え方である、こうさえ思われてならないのです。  それから、景気浮揚のためだからいいじゃないか、こう言うが、私どもの公共事業を中心とした五十二年度予算でもとにかく六・七%の成長が見込まれる、これを信じておるわけであります。それができないんじゃないかというような御疑念でありまするが、私は、できると思いまするけれども、できなくたってそれはしようがないかもしれない。それは公債をどんどん出して、そして日本の経済秩序を混乱する、こういう事態に比べれば、多少六・七が六・五になり、六・四になるくらいのことは軽いことじゃないか、そういうふうに思えるのです。  また、減税の方式は戻し税方式である、こういうお話でございます。しかも一、二年だ、こういうお話でございますが、一、二年たってそれをなくすということになったら、今度それだけ増税になるわけですから、これはまた国民はどういう感触を持ちましょうか。直接税がこれだけ重い重いと言われている際に、直接税の増税になる。  それからまた、一律に幾らかというけれども、これは三万円か四万円です。三万円か四万円皆さんにやって、これが何がしかの家庭への貢献になるんだろうか。それよりは、それを全部合わせれば一兆円になるのですから、それを仮に公共事業、あなたの関心を持つ高等学校建設をすると五千校できますよ。しかも、消費されてしまうのではなくて、これが国民財産として残るのですから、私は国家、国民から見て、公共事業費にこれを投資した方がよほどいい、こういうふうに思えてならないのです。  結論として私は、御提案でありまするけれどもいただけませんとはっきり申し上げます。
  315. 西岡武夫

    西岡委員 総理、日本の経済の構造をそれではどう御認識なんでしょうか。
  316. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 抽象的に構造はどうかと言われても、お答えはなかなかむずかしゅうございますが、現状につきましては先ほどお答えいたしたとおりでございます。
  317. 西岡武夫

    西岡委員 私が申し上げているのは、先ほども触れましたように、国民総支出の中で占めている消費支出というものが五六%だ。公共事業も確かに景気を浮揚させるためには決め手になります。しかし、それだけでは足りないという状況になっているのではないですかということを申し上げているわけです。  それは具体的に申しますと、政府の固定資本形成というものは、国民総支出の中で占めております率というのは八%から九%くらい、そういう中で、日本の経済全体を押し上げる力としては力不足ではないですかということを申し上げているわけです。それはどうなんでしょうか。
  318. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それは消費が五七%になることは事実ですよ。しかし消費は、これは財政政策の影響とかなんとかで増大するわけです。——何%と見てましたかね。
  319. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  個人消費支出の五十年度から五十一年度に対する伸び率は、名目で一三・六%、実質で四六%、着実に伸びております。五十二年度の見通しにいたしましても名目で一三・七%程度の伸びをいたす予定でございます。
  320. 西岡武夫

    西岡委員 どうもこれは、各党野党がこぞって減税の問題を主張いたしておりますのに対して、総理のお答えはいずれも同じく全く意見を受けないというような御姿勢でございまして、非常に残念に思うわけですけれども、実際それでは国民の生活というのは一体どうなっているのか。三万円や四万円でどうということはないではないかというような御指摘でございますけれども総理府統計局が一月二十八日に発表いたしました十一月の全国の勤労者世帯の家計調査の報告でございますが、可処分所得が名目では確かに八・四%アップしておりますけれども、実質的にはマイナス〇・六%になっている。その中で消費支出については総体として実質対前年度同月比マイナス〇・八%、前の年よりも低くなっている。これは総理府が示している数字です。その内訳を申しますと、食料費についてもマイナス〇・九%になっている。被服についてはマイナス〇・八%、雑費、これがマイナス三・四%。この雑費の中には教育費とかそういったものもみんな入っているわけですけれども、こういう実態になっているわけですね。これをどうお考えになるのでしょうか。
  321. 倉成正

    ○倉成国務大臣 数字のことでございますから私からお答えいたしたいと思います。  個人消費支出の実質可処分所得についてのお尋ねでございますけれども、四十五年から四十八年まで着実に伸びてまいりましたけれども、四十九年は御承知のように狂乱物価時でございますし、また非常に経済が低成長をいたすきっかけになった年でございまして、この年が横ばいで、五十年さらに伸びてまいりまして、五十一年に入りましてから、五月から実質の可処分所得が若干落ち込んでおるのは御指摘のとおりでございます。  ただし、いま消費支出の点についてお触れになりましたけれども、消費支出は、非常に御関心を持っておられます第一分位、非常に所得の少ない層の方々、それから第二分位、これらの方々の消費というのはずっと軒並みに伸びておるわけでございまして、特に第一分位の消費は五十一年の一月二・四、二月一二・八、三月一二・一、四月二二・二、五月一七・〇、六月一九・四、七月二二・九、八月二〇・一、九月二六・六、十月一七・二、いま御指摘の十一月は一〇・九と、第一分位に関する限りは消費支出は着実な伸びを示しておるというのが現実でございます。しかし、物価が非常にまだ高い水準でありますから、何とか一日も早く物価を安定させて、さらに着実な消費ができるように努めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  322. 西岡武夫

    西岡委員 現在わが国の経済は、失業は百万人台になっている。ただ、この失業の数字ですけれども、稼働率が、私の手元の資料では八一・一%程度だろう。このことは、各企業が本来ならば失業をしてしまうような労働力というものを抱えている、企業の犠牲において失業者が出ていないという事態が続いているということであろうと思うのです。そのことも計算をいたしますと、二百万人ぐらいの労働力というものが遊んでいるというふうに見ていいのではないか。そうしていま申し上げた稼働率が八一・一%ということになれば、結局、日本のいまの国民の持っている能力というものがそれだけ十二分に活用されていないということを意味していると思うのです。これをどうやって十二分に活用していくか、そのためには、くどいようですけれども、公共事業だけでは力不足ではないか。三つの柱、減税と金利の引き下げということと、三つ合わして、この十二分に活用されていない日本の持っている力というものをいま発揮させなければいけないのではないか。そうしなければ、総理も御心配になっておる財政の問題というものも悪循環が起こっていくのではないか、そういうことを申し上げているわけで、その点は総理もかたくなに自己を御主張にならないでぜひお認めをいただきたいと思いますが、ぜひもう一言お願いいたします。
  323. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、日本の経済社会全体のことを考えているのです。財政も健全でなければならぬ。同時に経済もその背景として健全でなければならぬ。それを両全させるには一体どういうふうにするかというと、私どもがいま考えておるぎりぎりいっぱいの公債発行、その公債発行を財源といたしまして公共事業を行う。また同時に、西岡さんから言わせればささやかかもしれませんけれども、三千五百億円、中央、地方を入れますと四千三百億円の減税も行う。この辺が最も妥当なところじゃないか。それに追いかけて、また公債を増発してそうして消費を刺激する、これはどうかなという感じがしてならないのです。せっかくの御提案でございまするけれども、賛成できません。
  324. 西岡武夫

    西岡委員 総理のお話でございますが、私はやはりいまここで思い切った景気を浮揚させるための、総理のおっしゃるような減税の方式ではない、現在の三千五百三十億の減税の方式ではない新しい方式をとらなければ悔いを残すというふうに御指摘を申し上げておきたいと思います。  そこで次に私どもは、総理が先ほどから再三おっしゃいました財政の硬直化、日本の財政のいまの危機的状況というものを、私どももまさにそういう事態を迎えている、そのために速やかに景気を浮揚させて財政というものも好転させるようにしていかなければいけないということをるる申し上げたわけでございますが、それだけでもこれは当面を何とか切り抜けるということだけでして、根本的な日本の財政の建て直しには通じません。  そこで、具体的な御提案を申し上げたいと思うのです。現在の日本の財政というものがこういう硬直化の状況をもたらした、これは国債の発行が三十一兆というような累積を見たというこういう状況を迎えたのは、一つは異常な経済の状態だったわけですけれども、すでに昭和四十三年のころからわが国の財政の硬直化という問題が大きく取り上げられてきたわけです。現在は当時よりさらに事態は悪化してきている、そういうふうに私も認識をいたします。その原因を探ってまいりますと、ずばり言って予算編成のあり方にあるのではないか。これはもう申し上げるまでもなく、わが国の予算編成というのは増分主義というものをとっておりまして、前年度より幾らプラスしたかというその増分の、ふえた分だけを査定の対象にする。したがって、その施策、その個々の政策の根っこからその是非を論ずるということは実際問題としてはやってこなかったわけです。ここに実は根本の問題があろうかと思うのです。この認識については総理はどうお考えでしょうか。
  325. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆる既定経費ですね、これにつきましても、大蔵省ではこれを毎年毎年見直しをしておる、こういうふうに私は理解をいたしております。しかし、御指摘のように、この見直しということが徹底するということは非常に大事なことでありますから、さらにさらにこれを徹底さすべきである、かように考えます。
  326. 西岡武夫

    西岡委員 私が提案をいたしますその根本的な改革の案は、いままで予算編成というのは政府だけにゆだねられていたわけですけれども、こういう新しい日本の財政の状況、また日本の置かれているこれからの困難な将来というものを考えたときに、予算編成の仕組みの過程を根本的にこの際考え直したらどうか。  具体的な提案として、政府が各省来年度の予算を編成をいたします。各省が大蔵省にそれぞれの省の概算要求を八月の末に出すわけでございますけれども、その前に国会が国の基本的な政策の優先順位あるいは税制のあり方、公債政策のあり方、そうした基本的な問題について十分審議をして基本方針をまず確立する、その基本方針に従って政府予算編成の作業をする、そういう仕組みに変えなければ、いまの予算の硬直化状況というものも解決されなければ、いまの財政の危機の状況というものも打開できないのではないか。  実はこういうことを提案をいたしますのは、これからもっともっと予算編成の過程というものを国民全体にもよく理解をしていただいて、国民皆さん方が本当に親しみやすい、わかりやすい予算というものをつくり上げる努力をしていかなければいけないのではないか。国会審議も、昨日矢野さんが指摘をされましたようにいろいろ問題がある。これは実際問題としていままで政府が提案をしてきた予算、これは膨大な、量的に言っても構造的に言っても大変な予算の編成作業でありますから、それの結果を国会に提出される。これは非常に短期間に、特にことしの場合などはできるだけ早く予算を成立させなければ日本の景気に大きな悪影響を与えるだろう。これはしかし、ことしに限らず、毎年毎年時間的には常に国会の場はせき立てられたような形で予算審議しなければいけない、これでは国会予算に対して十分に意見を反映させるということは事実上できない。そういうことが積み重なって、また政府自身も膨大な官僚機構に依存した形で予算編成作業をやってきている。それが予算の硬直化という現象を生んできている。したがって、いま私が申し上げたようなそういう編成過程に国会も具体的な、やはり基本的な部分について意見を述べていくという仕組みをつくるべきではないか。そういうときがもうすでに来ているのではないか。そして一方では、国会がそういう基本方針を決めて、それに基づいて政府予算編成をやる、その予算の執行については政党や議員がみだりに行政に介入しない、こういうことをきちっと確立すべきだろう。これは事柄は若干違いますけれども、そういうようなところが不明確になっているということがロッキードの問題などを生んでいく原因になっていると私は思うのです。そういう抜本的な改革をするということについて、総理はどうお考えでしょうか。
  327. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 予算の編成をどういう、ふうにするかということは、これはもう恐らく——私は明治のことは知りませんよ、大正のことも知りませんけれども、それ以来問題になっているんじゃないかと思うのです。私は昭和の初期から予算の編成に何らかの形においてずっと関係しておりますが、その都度、予算は一体どういうふうな手順でやる、編成権はどこに置くのだというような議論が繰り返されて結局今日に至っておるのですが、予算の編成の手順、それから段取り、そういうことについては、これはもう常に考えなければなりませんけれども、いまお話しのように、もうことしの夏ごろから各党で相談してというようなことを考えますと、なかなかこれは意見は一致しないのじゃないですか。一致しないままにごたごたして時日を経過しちゃう。まさに私は、そういうような仕組みは船頭多くして船山に上る、こういうようなことになっちゃうのじゃないか、こういうふうに思うのです。しかし、西岡さんのおっしゃるその気持ちはよくわかる。それは私が考えている気持ちなんです。各界各党の意見もよく聞かなければならぬ。そのとおりに思うのです。そこで私は、非常に迫られた時間でございましたけれども、そういうわずかな時間のうちで野党の党首と予算問題を中心にいたしまして会談をするというようなことまでやったのですが、そういうのをもう前広にやっていくというようなことなら、私は現実的な手法として考えられるのじゃないか。あなたのお気持ちはよくわかる。わかるけれども、さあみんなして相談して結論を得て、そうしてそれに従って政府予算を編成してなんということは、これは言うべくしてできることではない、そんな感じがします。
  328. 西岡武夫

    西岡委員 それは総理、お話ですけれども、そんなことでは日本のいまの財政の状況、それから予算の編成というものについてのあり方というものはいつまでたっても改善できない。与党と野党との勢力がこうして伯仲している状況、野党も常に、もういままでとは全く状況が違うわけですから、具体的に国民に対して責任を負うという立場に立っているわけです。したがって、予算編成の問題についても、いままでのように予算編成が密室で行われているのを、予算編成の作業を進めるに当たってのいろいろなデータ、資料というものを国会に公開して、こういう苦しい状況だ、そうした中で一体政策の優先順位をどこに置くのか、公債政策はどうあるべきなのか、そういうことを真剣に国会政府予算編成の作業の前に毎年常時行う、その時期は大体、ことしは参議院選挙がございますから、実際問題としては参議院選挙が終わった時点しかございませんでしょうけれども原則としては六月から七月ぐらいに予算委員会なら予算委員会、あるいは特別委員会を設けてもいいと思いますけれども、まあ予算委員会がその仕事をしていく、そうした中で一つの基本的な方針というものをきちっと定める、これは私は可能だと思うのです。そうした中で、初めて私は財政の硬直化の問題というものも解決する手だてが生まれるというふうに思うわけです。どうでしょうか。
  329. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、それはなかなかむずかしいと思います。つまり、各党ともみんな御意見があるわけですよ。それを一まとめにしてということ、これはできればそんなすばらしいことはないと私は思うけれども、実際問題として、西岡さん、それができるというふうにお考えですか。そうして、予算編成の基盤ができたというふうに言えるようなそういう基本方針がいまの現実の六党の間ででき上がるというふうに考えられるのでしょうか。私はそれはとても考えられない。しかし、あなたのおっしゃる、みんなの意見を、各党のあるいは各界の意見を広く聞かなければならぬ、それは私は同感です。ですから、この首脳会談を昨年の暮れやりましたが、ああいうことを前広にやるとか、そういういろいろな工夫は私は考えられると思いまするけれども、基本方針について各与党野党全部一致して、それを基盤として予算を編成する、そんなことは現実的に私は考えられませんがね。
  330. 西岡武夫

    西岡委員 私は、いまの日本の置かれている財政の状況というものをそういう場を設けることによって国民皆さん方にも十分理解していただく。そういう国民皆さん方予算編成というものが密室で行われているという状況を打開して、国民皆さん方もそれに参加する。日本が置かれている苦しい状況、財政の状況というものも、そういう過程を通じて初めて国民皆さん方に理解されるわけですから、そういう努力をやる時期に来ているのではないですか、そういうことを申し上げているわけです。それは困難だと思います。私もそれはそう簡単にいく問題ではないと思いますが、いままでのような発想ではやっていけないところに来ている。総理もそうお考えでございましょう。そういう試みをやる、ほかにありましょうか。いままで四十三年のときにも具体的に相当な努力をやろうということで、いろいろな意見が出されて、亡くなった当時の大蔵省の村上孝太郎次官などがその問題を積極的に取り上げたこともあったわけですね。ところが、結局それも未発に終わった。こういう中で、ぜひそういう試みをやってみるべきだ。もう一度総理のお考えをお願いいたします。
  331. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 あなたのお考えの気持ちはわかります。ですから、いろいろ工夫はしてみますけれども、夏ごろの段階において与野党が意見が一致して、そして予算の編成の基本ができて、そしてそれをもとにして予算を編成する、この手順は私は最初の段階で行き詰まっちゃうと思うのです。与野党予算の編成の大綱についてこれ一致するはずが私はないと思うのですよ。いろいろ工夫はしてみますが、どうも現実的でない、かように考えます。
  332. 西岡武夫

    西岡委員 それでは一歩下がって具体的な提案を申し上げます。いま、気持ちはわかると総理おっしゃったわけですから、その予算編成の問題、財政の硬直化をどう打開するかという問題について、今年度の、五十二年度の予算が成立をした時点で国会に直ちに特別委員会を設置して、その問題をどういう手法でやるかという問題を国会で議論しよう、この提案には総理としていかがでしょうか。
  333. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういう具体的な目標を設定してその議論をするというなら、私は無意味だと思いますね。つまり、与野党が基本的な考え方について、いまの現状において一致するということは、私はとうていこれは考えられないと思うのです。というのは、五人の人が予算の編成をすると言ったって、これはとてもできません——六人ですか、与党を入れて六人の人が。政府部内だってそうなんです。各省がみんな寄って予算の編成ということはとうていできません。これはやはり大蔵省というものがあって、その一人の人がその一人の頭でみんなの意見を聞きながらこれを編成する、こういうことなんですから。私は、党首会談ということを言っておりまするけれども、この党首会談等を通じて、野党の皆さんがどういう考え方をしておるかということを十分そしゃくして、可能な限度においてそれを採用していくというような行き方ならば私は考えられるのじゃないか、そういうふうに思いますがね。とにかく六人で予算編成をしようと言ったって、これはとてもできません。これは一人の人が編成するほかはない、かように考えます。
  334. 西岡武夫

    西岡委員 私は各党全部で予算編成作業をやれということを言っておるのではないのです。来年度の予算の政策の優先順位、どれが一番大事なのかということについて、総理協調連帯ということを掲げておられるわけでしょう、少なくとも政策の優先順位、日本にとっていま何が大事なのかということについての与野党のコンセンサス、合意というのは私はあり得ると思うのですね。そういう努力をする以外に、これはいまの日本の財政の状況というもの、あるいは日本の困難ないろいろな問題を打開していく道はないではないですかという提案をしているわけです。これはぜひ御検討をいただきたい。
  335. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考えてはみますけれども、なかなかむずかしそうな問題であるという所感でございます。
  336. 西岡武夫

    西岡委員 それから、もう時間もわずかになりましたので、もう一つ具体的な提案をいたします。  非常に変化の激しい時代に私どもは生きているわけでありますが、いまの予算の問題とも関連をいたしまして、基本的な法律というものは別として、大体法律は時限立法というものを原則とする。ある時間がたてば、五年なら五年、そこで全部の制度を洗い直すというくらいの考え方で臨まなければいけないときではないだろうか。基本法は別です。基本法はみだりにそう変えるべきではないでしょうけれども、普通の法律については時限立法で、必ず五年なら五年たったらば全部全体から見直していくという考え方をとるときが来ているのではないか、この点についてどうお考えでしょうか。
  337. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それは私は考え方として理解できます。できますが、具体的にはケース・バイ・ケース判断すべき問題である。すべて五年とか三年とか、そういうわけにはいかないので、ケース・バイ・ケース判断であろう、かように存じます。
  338. 西岡武夫

    西岡委員 もう一つ提案をいたします。  地方財政の問題が非常に大きな問題に本年度の予算編成の過程でもなったわけですけれども、いまの地方の行政の仕組みというものをそのままにしておいて地方財政の問題を根本的に解決できないと思うのです。私はやっぱりこの際思い切って、地方自治体というものの仕事はこれとこれだ、国の本来責任を持つべき仕事はこれとこれななんだというふうに再整理する。地方と国の行政の再配分ということに本格的に取り組まなければ、よく言われるいわゆる補助金行政というものを打開しようと言ったって、これはなかなか不可能だと思うのです。その点に手をつけられるお考えはございませんか。
  339. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これも考え方としては理解できます。しかし、具体的にはかなり困難を伴う問題でありますので、私ども行政の改革ということを言っておりますが、これは中央地方を通じての改革なんです。中央だけやって地方は改革しないでいいというものじゃない。しかし中央が地方に対して、地方自治の精神から言って強制することはできませんけれども、中央がこの改革に乗出すと言いますれば、地方もまた改革に乗り出す。また、相交錯する問題もありまするが、それは相協力してやる、こういうふうにすべきものである、かように考えます。
  340. 西岡武夫

    西岡委員 冒頭に申し上げましたように、日本が置かれている状況はあらゆる制度、あらゆるシステムというものを根本的に改革をしなければいけない時期を迎えている、こういうふうに私どもは認識をするわけでありまして、総理がそういう認識に立って、もっと具体的な案をひっ提げて大胆にいろいろな問題点にメスを入れていかれるということを強く最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手
  341. 坪川信三

    坪川委員長 これにて西岡君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  342. 坪川信三

    坪川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  来る十二日、日本銀行総裁の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  343. 坪川信三

    坪川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、来る十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十一分散会