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1977-05-24 第80回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月二十四日(火曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 羽田野忠文君 理事 濱野 清吾君    理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君       小坂善太郎君    坂田 道太君       田中伊三次君    二階堂 進君       福永 健司君    飯田 忠雄君       長谷雄幸久君    正森 成二君       加地  和君  出席国務大臣         法 務 大 臣 福田  一君  出席政府委員         法務政務次官  塩崎  潤君         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君  委員外出席者         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 五月二十日  少年法改悪反対に関する請願(松本善明君紹  介)(第五八四三号)  同(長谷川正三君紹介)(第六一〇九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第七六  号)      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    上村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出刑法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。福田法務大臣。     —————————————  刑法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 福田一

    福田(一)国務大臣 刑法の一部を改正する法律案について、提案理由を御説明いたします。  この法律案は、単純収賄事前収賄第三者収賄事後収賄及びあっせん収賄の各罪の法定刑長期をそれぞれ五年に引き上げること、受託収賄罪法定刑長期を七年に引き上げること並びにあっせん贈賄罪法定刑中、懲役の長期を三年に、罰金多額を五千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により百万円)にそれぞれ引き上げることを内容とするものであります。  なお、単純収賄事前収賄第三者収賄事後収賄及びあっせん収賄の各罪の法定刑長期を五年に引き上げることにより、これらの罪の公訴時効期間現行の三年から五年に延長されることになります。  このように、収賄罪等法定刑引き上げ法改正を行うことは、近時、贈収賄事件が増加し、かつ、悪質化する傾向にある実情にかんがみ、この種事犯に対し、事案に応じた適切な科刑実現を図り、かつ一般予防的効果を期するため、きわめて緊要なことであると考え、この法律案提出することとした次第であります。  以上が刑法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  4. 上村千一郎

    上村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 上村千一郎

    上村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保岡興治君。
  6. 保岡興治

    保岡委員 今回の刑法改正案は、その提案理由に、事案に対して適切な科刑実現を図り、かつ一般予防的効果を期するためにきわめて緊要なことであるとされておりますけれども現行刑法法定刑では、適切な科刑実現を期し得ない理由を明確にしてほしいと思います。特に刑法は、国民にとって最も身近な基本法一つであります。そういった意味で、強い法的安定性の見地から、その体系理論整合性が強く要請されます。そういった意味で、一部改正というものはきわめて慎重に扱わなければならないことであろうと思うのでありますが、この際かかる改正案を出されたその根拠という意味で、明確にしていただければ幸いでございます。
  7. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘いただきましたように、刑法という基本法の一部改正でございますから、慎重を期さなければならないことは申すまでもないところでございます。  しかしながら、最近における贈収賄罪発生検挙状況を見ますと逐年、刑法犯一般につきましては横ばいないし減少の傾向にありますのに対しまして、累増の傾向にございます。ことに、御承知のいわゆるロッキード事件におきまして、過去に例を見ない多額贈収賄事件公判請求をされておりますようなことも考え合わせますと、今後、逐次発生が予想されます多額収賄等の悪質な事犯につきまして、その事犯に即した量刑を行うという必要性が痛感されるわけでございます。また、そういうように法定刑引き上げを図りますことによりまして、収賄罪多発化を防遏し、一般予防的な効果も上げることができると思うのでございます。  さらに副次的効果といたしまして、右のように法定刑引き上げをいたしますことによりまして、受託収賄罪及び枉法収賄罪を除きます収賄罪につきましては、公訴時効期間が従来の三年から五年になる、こういうことになるわけでございまして、これらを総合勘案いたしますと、今後における公務員の綱紀の粛正のために相当な寄与をなし得るものではないか、かように存じておるわけでございます。
  8. 保岡興治

    保岡委員 今回の改正は、いずれも現行法定刑を二年引き上げるものでありますが、その合理的根拠について御説明を願いたいと思います。
  9. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現行三年ないし五年となっております法定刑引き上げます場合に、現行刑法典全体のバランスから考えまして、一段階ずつ引き上げていくということにいたしますると、刑法典全体系から見まして、このたび御提案申し上げましたような五年ないし七年、こういう法定刑が妥当ではないか、それがまた他の罰則とのバランスも崩さないで、一応法定刑引き上げ効果をおさめ得る妥当な線ではないか、かように考えております。
  10. 保岡興治

    保岡委員 いろいろまたお聞きしたい点もあるのですが、実は今回の法改正案は、いわゆるロッキード事件を契機に、再発防止対策一つとして出てきたものでありますけれども、そのいわゆるロッキード事件に関して、去る十八日の当委員会において、同僚飯田忠雄委員から、その処理に関して法務検察当局等の取り扱い人権上問題ありとして御質疑がなされました。その点に関して、私の質問関連質問として、同僚委員山崎武三郎君、それから二階堂進君より御質問があるようでございますので、これをお許しいただきたいと思います。
  11. 上村千一郎

  12. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 ついこの間、飯田議員からるるいわゆる灰色高官公表問題について、法務当局に御質問がございました。帰するところ、灰色高官として認定したその根拠資料提出せよという質問に対して、法務当局側公判に支障を及ぼすから絶対できないということで終始した感がございました。  私は角度を変えまして質問してみたいと思います。と申しますのは、ことしの初めごろ、橋本登美三郎議員より二階堂議員に対して手紙がございました。その手紙内容は、かいつまんで言えば、おれは起訴されてそして自分清廉潔白を主張する機会が与えられて非常にうれしい。しかるに君は気の毒だ。未来永劫にわたって灰色である。子々孫々末代に至るまで灰色である。この灰色というのを取り払う機会がないという、まことにかわいそうだという趣旨手紙を私もそばで見ました。一体、この手紙に象徴されるこのことでございますけれども起訴されたいわゆる黒色と称せられる方々公判廷において自分無実を主張する機会がございます。そのために憲法並びに刑事訴訟法は、るる人権保障規定というのを抜かりなく完備しております。ところが、灰色とされた方々は、無実であるということを主張する機会はないわけでございまして、全く未来永劫にわたって灰色と言われたまま、子々孫々にまで伝わっていくというこの現実処理の仕方は、法律不備があるのか、灰色という特殊な人種をつくり出したこれに不備が、違法性があったのか、いずれかであるだろうと思うわけでございまして、このことについてお尋ねしたいと思うわけであります。  まず政府の方は、灰色高官というのが出されたいきさつについて、従来の質疑を通して出てきた結論は、憲法第六十二条に言う国政調査権に基づきまして、そして国会法第百四条に言うこの規定に基づきまして、政府に対して資料要求したということでございます。この資料要求に対しまして政府法務当局資料出したということが、いわゆる灰色高官の出されたいきさつでございますが、憲法たりとも、国会法たりとも、議長裁定たりとも、いわゆる刑事訴訟法においてこの資料出してよろしいという明文の規定がない以上は絶対に出されなかったはずだろうと思うわけでございます。したがいまして、私は、法務当局側灰色高官資料を提出し法律的根拠はどこにそれを求めたのか、まず第一点、これをお伺いしたいわけです。
  13. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 政府といたしましては、ロッキード事件の発覚に伴いまして、まずもって捜査当局において捜査を展開したわけでございますが、全体の流れを通じまして刑事責任の追及は法務検察当局の職責でありますけれども関係の方の政治的道義的責任については国会で取り上げられるべきであって、したがって、そのような方々の定義とか基準というようなものの決定やその氏名等公表は、まさしく国会責任判断で行われるのが相当であり、政府はみずからの責任においてこれを公表すべきではないという基本的な態度をとってまいったのでございますが、先ほども指摘のように、昨年四月二十一日の両院議長裁定におきまして、国会政治的道義的責任の有無について調査をする、したがって、国会国政調査権行使に当たっては、政府刑事訴訟法立法趣旨をも踏まえた上で最善協力を行うものとするという裁定がございまして、これに従いまして、もし国会におきまして道義的政治的責任のある者という基準等をお決めになられましたならば、政府といたしましても、刑事訴訟法立法趣旨と法令の許す範囲内で参考資料を提供するなどいたしまして、国政調査権行使最善協力を惜しまないということを申しておったわけでございます。  しかしながら、ただいま御指摘ありましたように、一方において特定の個人の氏名等に関する資料を明らかにするということにつきましては、関係人人権保障し、今後における捜査裁判に対する影響を防ぐ等の必要性、それから、元来、検察当局公訴を提起しない者につきましてなしました判断は、裁判の場合におけるような確定力を持っておらないわけでございます。そういう諸点にかんがみまして、なるべくその開示を差し控えたいということで、その旨お答えを申し上げておりまして、仮に最大限の協力ということで明らかにするといたしました場合には、ぜひ秘密会でお願いしたいというふうにお願いしておったわけでございます。  ところで、昨年十一月二日、ロッキード特別委員会におきまして、いわゆる三十ユニット関係の五名を政治的道義的責任ある者とするということを明らかにされましたので、政府といたしましては、ただいままで述べましたような理由で、当時の三木総理大臣から秘密会を希望する旨申し述べられまして、同委員会秘密会とする旨の決定を待って、国会法百四条に基づきましてその氏名等を御報告した次第でございます。  以上が、私どもがとりました事柄の法的根拠を含めてのお答えでございます。
  14. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 憲法第六十三条並びに国会法第百四条があったとしても、刑事訴訟法出してよろしいという法文がない以上は出せないのではないかという私の質問ですけれども、どの条文に基づいていわゆる不起訴関係書類をまとめて出したのか、この質問です。
  15. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまのお尋ねは、国会側のことではなくて、今度は法務検察側法的根拠というお尋ねでございます。  順序といたしまして、国会から国政調査権に基づく報告あるいは記録提出の御要求がありました場合には、対応する官公署におきまして、特段事情のない限りこれに応ずる義務があるということは、先ほど来御指摘憲法六十二条あるいは国会法百四条に照らして明らかであると思います。一方におきまして、刑事訴訟法は、たとえば四十七条あるいは百九十六条等に照らしまして、訴訟関係者等人権を保護し、かつ捜査裁判に不当な影響が及ぶことを防止しようという、そういうシステムをとっておるわけでございます。  そこで、私どもが先般の国政調査権に基づく御要求に対して種々判断の結果、御存じのような資料提出いたしましたのは、刑事訴訟法四十七条本文及び同条ただし書き、これの趣旨にのっとりまして、公益上の必要がある場合に該当するかどうか、公益上の必要がある場合において関係書類出し得る限界はどこかということを十分検討いたしました結果、議長裁定趣旨に見られます強度の公益性、こういうものを判断いたしますと、このたびお出しをしたような形での、またそういう内容での提出が、刑事訴訟法四十七条本文及びただし書き趣旨にのっとった限界である、かように考えて処置したわけでございます。
  16. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 刑事訴訟法第四十七条、この規定がなかったらどうしましたか。
  17. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 刑事訴訟法四十七条の規定と申しますのは、先ほど申し上げましたような百九十六条等も含めました刑事訴訟全体のいわゆる密行性と申しますか、捜査密行性、それから裁判前の記録秘匿という精神をあらわしたものでございますから、四十七条という条文がない場合には、刑訴の全趣旨解釈して決めることだろうと思います。
  18. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 この刑事訴訟法第四十七条、これに不起訴関係の場合も該当するということでお出しになったということは従来の答弁から十分わかっていることでございますが、この刑事訴訟法第四十七条、これは素直に読みますと、「訴訟に関する書類は、公判開延前には、これを公にしてはならない。但し、」云々と書いてあるわけでございます。「公判開延前には、これを公にしてはならない。」という規定でございまして、起訴しない事件というのはこの中に含まれないというのが私は素直な解釈だろうと思うわけでございます。だからこそ、不起訴になった方の関係書類というのは一切公にしない。したがって、その限りにおいて、被疑者ないし参考人の名誉というのは未来永劫に保障されているわけでございます。この不起訴になった方々名前が表に出るということは絶対ないわけでございます。だから、私は、この四十七条というのも不起訴になった場合にはこれは含まれない、こういうふうに解釈するのが当然のことだろうと思うし、立法趣旨というのも、裁判に対する影響を防ぐ意味からこういう規定を設けたという趣旨でございますが、この点に対する解釈、当然法務省側は含まれる、そういうふうにお考えだろうと思いますが、いかがでしょうか。
  19. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 刑事訴訟法四十七条本文及びそのただし書き規定は、立法経緯等に徴するまでもなく、およそ訴訟関係書類というのは公判で明らかにするまでは秘匿をしなければならない、特段事情がない場合には秘匿をすべきであるという趣旨規定と解されるわけでございまして、ただいま御指摘がありましたけれども、不起訴記録が四十七条に言う「訴訟に関する書類」に含まれるというのは現在学界の多数説でもございますし、最高裁判所行政解釈にもなっております。さらに当該判例もございまして、ほぼ確立されている実務上の見解だと思います。たとえば交通事故に遭われたような方が民事訴訟を起こされます。そういう場合に、現場の実況見分調書でございますとか、事故に遭って亡くなられたような人の調書、こういうものは他にかけがえもございませんので、そういうものは、不起訴記録の一部でありましても、民事裁判上の御要望があれば提出するというような扱いをしておりますように、不起訴記録は四十七条の適用を受ける書類として、その趣旨に従って取り扱っておる次第でございます。
  20. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 不起訴関係書類が四十七条に含まれる、そのように解釈して、そして不起訴書類法務当局側ロッキード特別委員会秘密会にお出しになったわけでございます。ロッキード特別委員会秘密会出したというのは、この四十七条のただし書き、「相当と認められる場合」というこの相当性を考慮してお出しになったのだろうというふうに、従来の答弁経緯並びにこの法文解釈からそう認められるわけでございます。秘密会というのは、名前が表に漏れない、こういう配慮からだろうと思います、人権を配慮して。ところが、現実にはぱっと漏れてしまって、日本じゅう知れ渡ったというこの現実。ここからいわゆる灰色高官というのができ上がってしまったというこの経緯があるわけでございます。  ところが、灰色高官という判断をしたところは、法務当局側灰色高官という判断をして、かくかくしかじかが灰色高官だ、いわゆる四名が灰色高官だということで、そのとおりきちっと確定力を持って、あるいはそれに近い力を持って、ロッキード特別委員会秘密会にお出しになったものか、それとも、出された資料もとにして、ロッキード特別委員会判断した結果、これは灰色高官判断して間違いないというふうに判断した結果発表したものなのか、どっちなのかということでございます。法務当局側が、灰色高官は四名、名前はかくかくしかじかということを書いて、このとおり間違いございませんと出したのか、あるいはロッキード特別委員会に、かくかくしかじかが該当するものと思量されますけれども判断ください、最終的な責任国会ロッキード特別委員会が背負ってくださいというふうで、最終的な判断権者ロッキード特別委員会がやったものなのかどうか、その辺のことについてお聞きいたします。
  21. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 御承知のように、昨年十月十五日、前法務大臣の時代でございますが、ロッキード事件に関して中間報告をいたしたわけでございます。その中間報告の中で、いわゆる三十ユニットの行方につきまして、そのうち五百万円及び二百万円が橋本氏及び佐藤氏に行っておる、その余の二千三百万円は、昭和四十七年十月末ごろから十一月初旬ごろにかけて五回にわたり国会議員五名に贈った事実が捜査の結果認められた、その五名の方の内訳としては、金員そのもの授受はあるけれども、「職務に関する対価であることが認定できないため収賄罪の成立は認められないが、右金員授受趣旨ロッキード社航空機売り込み関連があると認められるもの 二名」、それから「ロッキード社から流入した金員そのもの授受はあるが、請託の事実が認められないため単純収賄罪となり、三年の公訴時効が完成していると認められるもの 三名」、こういう御報告を申し上げたわけでございます。  この御報告関連いたしまして、ロッキード特別委員会におきまして、慎重御審議の結果と思いますが、この五名の国会議員方々政治的道義的責任あるものとお認めになったわけでございまして、そういうものと認めたから、ここでは名前が出ておりませんが、その氏名等委員会報告するようにというお話がございました。  そこで、私どもといたしましては、もちろん、これらの氏名被疑事実等につきましては、先ほど来申し上げておりますように、裁判と同じような確定力を有する処分を受けたものではございませんから、そういうこともあり、また、それらの方々人権保障の問題、さらには、将来の捜査裁判に及ぼす影響問題等を考慮いたすべきものだと私どもも思っておりましたし、国会におかれましては、それらの諸点十分念頭に置かれまして種々御審議の結果、公表当否等はお決めになるもの、こういうふうに考えながらお出しをしたわけでございます。
  22. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 ただいまの法務省出し経緯、これについて十一月二日秘密会で、具体的な名前を書いて、内容も書いてお出しになったわけですね。  この内容でございますけれども、これは法務省側が、検察当局が調べたその捜査結果をもとにして、そして検察当局判断を基礎にしてお書きになった報告書だろうと思うわけでございます。ところが、いわゆる灰色高官として、参考人として取り調べを受けられた方々のこの言い分並びにそれを立証する関係書類並びに関係証言、それの要約した報告内容というのはゼロでございますね。一切、その点についてはロッキード特別委員会並びに秘密会には出されてないわけでございます。法務省の方がそういうお調べになったものをロッキード特別委員会の方にお出しになったとすれば、最終的にロッキード特別委員会責任においてそれを判断して公表したとするのだったならば、法務当局側法務当局側収集資料並びに被疑者側参考人側のこの言い分両方の生の材料をそのまま出して、このとおりでございます。あとは国会責任において判断してくださいというのが本当ではなかったのか。そうすれば、国会の方もいろいろ言い分を聞いて、そしてどういうふうにするか、現在の国会のたてまえ上、知りませんよ。しかし、そういう両方言い分を併記して出しておけば、いわゆる灰色高官側言い分というもの主張する機会がそこで与えられたのではないかと思うわけでございます。それを片っ方側の方を全部切ってしまって、法務当局側言い分だけをばっと出したものですから、片っ方側の言い分というのが永久に閉ざされたのじゃないか、そこに欠陥があるのじゃないか、そこにきわめて違法性妥当性を欠いたものがあるのではないかと思うわけでございます。この報告書のつくり方は、片っ方の結論だけを出して片っ方は出さないということでございます。いわゆる片っ方の、通常起訴された場合は片っ方の言い分というのが公判廷に出てくるわけでございますが、今回のこの灰色高官扱いについては、片っ方の言い分というのはそのまま法務当局側の方が全部削ってしまった。恐らく法務当局に言わせると、これはうそだ、こう言うことでありましょう。うそだと言っても、これは起訴された場合は、公判廷で、おれは本当だということを主張する権利があるわけでございますが、今回のこの灰色高官の場合については、これは何にもないわけでございます。せめて、いわゆる四名の灰色高官言い分はかくかくしかじかである、それを証する書面はこれがある、関係証言はこれがあるということを同時に出してお出しになれば、これは法務当局側の方も、自分の方でいま確定力はないというわけでございます。全くそのとおりでございます。裁判所ではないのですから。捜査資料出しさえすればいいのですから。その捜査資料自分の都合のいいところだけ取って、片っ方を切っちゃったというところに、今日のこの紛糾の原因があるのではないかと思うわけでございます。だからこそ、未来永劫に、おまえたちの言い分は永久にこれはもうだめだということになる、どこに持っていっていいかわからないわけでございます。裁判所に行ったって、これは受け付けてくれようがないわけでございます。関係資料出してくれさえすれば、これは飯田委員出したように、関係資料出してくれれば、これはだれだれが言っている、これがうそだということになれば、その人を相手取って名誉棄損か何かで裁判を起こせば、それで公判廷に上りますけれども、まだその関係資料も出ていないこの段階においては、どうしていいか、法律上の権利行使する、これが全部遮断されている。ここに重大な誤りがあったのではないかと思うわけでございます。せめて、秘密会にお出しになったこれを見ても、一人一人について、このいまの認定についてはだれだれだれだれあるいは嘱託尋問の結果、あるいはだれだれの供述ということが全部書かれる。これに基づいてこういうような事実を認定したんだということが書いてあるわけでございます。反対のことについては、こういう言い分があるということだけ言ってくれさえすれば、この機会を、法務省の方がそれを言ってくれさえすれば、これはロッキード委員会の方においてそれをもう一遍蒸し返すことができたわけでございますが、そこを言ってくれなかったということであります。ここに、法務当局側の重大な誤りないし妥当性を欠いたのではないかというそ判断を私は聞きたいわけでございます。なぜなら、法務当局というのは裁判所ではないわけでございます。事実に対する確定力を持たぬわけでございますから、持たないところはやはりそれらしく、集めた資料というのを生のまま全部出したか、それを整理して出したのだったら、片っ方の言い分も整理をして出しさえすれば、あとは国会がそれを認めた、認めたこの国会について、これは誤りがあるのだったら、国会の内部のことでございますから、そこで言い分を言えばいいわけでございます。これを一方的にすうっといったというところに、灰色高官というのが永久にその権利を閉ざされたという根本がそこにある、私はそう思っておりますけれども、いかがでございますか。
  23. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほど来御説明しましたように、中間報告にあらわれておった五名の人について、その氏名、それから幾ら金を受け取ったか等を明らかにせよということでありましたので、秘密会でその限度で明らかにしたわけでございます。仮に、その当該秘密会におきましていろいろ御質疑があれば、法務当局としても答え得る限度でお答えしたかもしれません。しかしながら、一般論として申し上げまして、先ほど御指摘の当該報告におきましても、認定した証拠関係については具体的なことは書いておりません。非常に抽象的に表現をしております。これと申しますのも、すでに再々申し上げておりますように、刑事事件の証拠関係を明らかにするということは、いわゆる道義的責任ありとされました方一人のみならず、その他の関係人の名誉にも関する場合がございますし、また、現に一連の中の一部の関係にある事実につきまして公訴が提起されておりまして、密接不可分の関係にある、事実関係にあると認定されておりますので、それらの公判に対する影響というものも考慮せざるを得ないわけでございまして、したがいまして、そういうような諸般の事情からあのような御報告になったわけでございます。
  24. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 時間がございませんから、終わります。
  25. 上村千一郎

  26. 二階堂進

    二階堂委員 時間が約三十分ということであります。私は、こういう質問の場所に立ったことは余りなく、受ける立場ばかりでございまして、少し勝手が悪いのでございますが、限られた時間内におきまして、主として人権問題憲法保障されておる、刑事訴訟法の精神に貫かれているこの人権の問題について、検察行政及び法務行政につきまして、私は、どうしても納得のできない二、三の問題がありますから、ここで政府当局に若干お尋ねをいたしておきたいと思うのであります。  私は法律学者でもありませんし、全く法律には素人であります。がしかし、ロッキード捜査問題に関連して、最近、憲法刑事訴訟法の精神に貫かれている人権という問題が余りにも軽んぜられつつあるのではないかということを私は非常に心配しているものであります。  そういう立場から、私は主として人権の問題についてお尋ねをいたしますが、第一点が、いろいろな事実関係については、ここは裁判所でもありませんから、これはほかの方法で私は真相の究明を法的手続をとっていたしたいというふうにも考えております。ただ、いまその資料を四十七条の規定に基づいて出した、あるいは出したのが違法ではないか、いろいろな質問がされておりますが、ただ、私は、法を守るというのは政府の厳然たる態度でなければならぬ。しかも、司法当局、法務当局というものは、法を守れなくなったら、憲法を守れなくなったら、刑事訴訟法の精神を守れなくなったら、法の秩序というものは混乱するばかりであります。私は、先ほど来秘密会でどうとかこうとかいう話もありますが、いやしくも立法、行政、司法というものは完全に独立の体系を持っておらなければならぬものと思っております。司法に対して立法府が干渉したり、あるいは立法府に対して司法が干渉したりするようなことは、これはいささかもあってはならぬ、こう思うのでありますが、法務大臣、その点はどうなんでございますか。
  27. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりだと思っております。
  28. 二階堂進

    二階堂委員 そこで私は、いろいろなことはくどくどしく申し上げたくはありませんが、ここに田中先生もおられます。法学士、弁護士でもあるし、私は尊敬しておる先輩であります。しかし、五十二年の二月二十五日の予算委員会において、田中先生が坪川委員長の要請に応じて報告があって、このいきさつについてるるお述べになっております。私はこれを見て、これは田中先生個人としての御発言か委員会全体としての御発言かわかりませんが、これは容易ならぬことが述べられておる。田中さん自身から述べられておる。これは当時のロッキード特別委員会委員長であります。これを見まして、全くこういう感覚で一体国会が法を守れるのかという、これはどういうことかと申しますと、私どもは十一月四日に十分間の意見の開陳を許されました。判決文みたいなものが私のところにきたのは昨年の十一月三日の朝であります。読み上げられた十一月四日、国会解散直前であります。そのことにも関連していろいろ言っておられますが、こういうことが言われておることは、これは私は許すことのできないような感じがするわけであります。田中先生が最後に、「法務省は四十七条の精神にのっとって実に熱心に粘り強く公表反対をした。」——これはそうあるべきだと私は思いますよ。公表辞退もあるべきだ。これが法務省当局、法体系を守るという司法当局の厳然たる態度でなければいかぬ。反対をしたが、これを委員長が腕ずくで、「腕をめくって詰め寄って、いやがるものを無理に承諾をさして秘密会に持ち込んだということが事の真相であります。」こういうことが言われております。あなた方は反対したと当時の新聞にも書いてある。公表することは、前例もないし、刑事訴訟法の精神にも反するから出さないのだと反対をしたが、委員長のこの言葉をそのまま引用いたしますと、「腕をめくって詰め寄って、いやがるものを無理に承諾をさして秘密会に持ち込んだということが事の真相」だ、こう言っておる。これは当時のロッキード委員会委員会の総意見であるのか、あるいはまた委員長一人のお考えなのかわかりません。しかし、こういう態度に、検察当局憲法を守らなければいけない、法の精神を守らなければならぬものが、詰め寄られて、そしてそれを無理に承諾をさせて秘密会に持ち込んだ。こういう立法府の圧力に司法当局が屈したと言われてもしようがないじゃないですか。そういう態度が法務省当局として、司法当局として許されていいのかどうかという問題は、これは人権を守る立場において私は重大な問題があると思いますので、こういうことに対して何ら一言反論もない、その点は、屈したのですか。詰められて、無理だというものを、秘密会に持ち込んで、そして承諾させたと書いてある。この言葉から言いますと、はなはだ失礼ですが、田中さん、腕ずくで、あなた、強引にやって発表しろと、こういうことを言われたと、これは本人が言っているのですから間違いないでしょう。そういう言動に対して、三権の分立、明らかに司法権の独立性というものを守らなければいかぬものが、こういう国会委員会において守られなかったと私は考えざるを得ないが、この点について一体どういうことであったのか、明らかにしていただきたい。余り説明は要りませんん、私は時間もないですから。
  29. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまの御質問は、簡潔に答えるようにということでございますが、イエス、ノーで答えられる問題でございませんので、若干御説明させていただきます。  ただいま御指摘になりました本年二月二十五日の委員会における田中先生の御発言につきましては、そういう御発言があったことは承知しておりますが、どういうお気持ちで仰せになりましたのか、伺ったことがございませんからわかりません。ただ申し上げられることは、法務当局としては決して田中先生のあるいは委員会の圧力に屈して不当に資料をお出ししたというような気持ちは全然持っておりません。先ほど山崎委員の御質問につきましてるるお答え申し上げましたような経緯によりまして、刑事訴訟法四十七条の精神によって、かつ議長裁定趣旨を踏まえて国政調査に御協力申し上げる限界は、秘密会でこの程度と、こういう判断を四十七条ただし書き相当性判断としていたしまして、法務当局としては法に反するところがないという確信のもとにお出ししておるわけでございます。
  30. 二階堂進

    二階堂委員 そういう説明をされても私は納得できません。屈して出した——当時の新聞も、法務省当局は公表に対して非常な抵抗をしたと書いてある。にもかかわらず、秘密会にこういう資料が出されて、秘密会なんか守れるものじゃない、従来の経緯から見て。その資料が二、三時間後には全部新聞社、放送局に流れて発表されておる。しかも、その内容が、先ほど山崎委員質問されましたとおり、私も九月の初旬に検察当局から、どうしても私の参考意見を聴取じたいということで、私の望む時間に私の言う場所に伺いますから事情を聞かしてくださいと言ってきた。そして私は、言われておるようなことについて、全部そうではありません、素直に参考意見の調書をとって持って帰っております。ところがこの中間報告の中には、私ども四名は、特に私に関して申しますと、職務権限がないが大型導入に関係し、その対価として金五百万円を受け取ったと認定すると書いてある。一方的な認定じゃありませんか。私は裁判を受ける場所もありません。しかも、こういうふうに言われて、まだ田中さんが言ったことはたくさんあります。読みません。余りむちゃくちゃなことを言われて一むちゃくちゃというのは田中さんの言っていることがむちゃくちゃなんです。そういうことを言われて、それで灰色などと言って、それで選挙前だ。そんなものは要らない、資料を出す必要はない、おれの権限で何でもやれるというがごとき発言もされております。そうして道義的政治的責任は選挙において厳しく追及されました。これは政治家として当然のことかもわかりません。しかし、私も述べておるこの参考意見というものを一片の紙切れみたいにほごにされてしまったのでは、私は裁判を受ける権利がありませんから、場所がありませんから、私の名誉というものは侵害されている。孫の末まで、歴史の続く限り灰色灰色と言われる。私だけじゃありません、家内も子供も親戚も。私はそういうことを、一体人権をだれが守るのか。立法府が司法当局に対してこういう干渉をしたと受け取られる発言をしておられる。しかも、それが特別委員長なんだ。そんなことが許されていいのかどうかということを私は本当にまじめに考えて——無理やりに承諾させたと書いてある。あなたはそういうことはなかったとおっしゃるけれども、当時の委員長はこう言っておるのですよ、無理やりに。そういうことは許されてならないと私は思います。許されてはならない。厳然として法の精神を守り、憲法を守るのが国会責任でもあるし、また、法の秩序を守るという検察当局法務省当局の責任でなければ、義務でなければいかぬ。そういうものが片りんもこの中にうかがわれていない。そのために私どもは、事実関係については、これはここで争う場所でもありませんから申し上げませんが、大変なことなんですよ。そういう態度はあってはならぬと私は思いますが、これは法務大臣、どうなんですか。私はそうだと思いますが、間違っておると言われるなら間違っておりますと、こう答えてください。
  31. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま刑事局長が答えたとおり、法務省としては、法の精神を踏まえながら、しかも議長裁定がございましたので、それが公益上の必要であるという意味合いで提出をいたしたのでございまして、当時の田中委員長の発言については、これは国会において発言をされたことでございますから、私が批評することは差し控えさしていただきたい。
  32. 二階堂進

    二階堂委員 大体いままでの速記録を見ると、それは私も非常に何か重たい気持ちなんですよ、あなたに対してね。これは前のときに起こった事件ですから。しかし職務上関連がありますからね。だけれども、これは、田中さんお笑いになっておりますけれども、これはあなたの発言も非常に反省をしてもらわなければならぬことがある。委員長だから何でもできるというものじゃないでしょう。委員会の総意を受けて腕ずくでやったと、仮にあなた方野党の諸君の議論をもし問題に触れたなら、あなた方は黙っておるわけはないでしょう、政府が言ったとか自民党の議員が言ったというのは、あなた方。これは失礼ですがね、そうでしょう。私はそう思いますよ。私は、そういうことは厳然として法の体系、法の秩序というものを守るのがあなた方の責任なんですよ。それを秘密会だから漏れない。漏れてしまうのですよ。それは法務大臣としては、国会のやられたことは云々する立場にございませんと、これはそういうことでしょうけれども、これは今後悪例を残すことになりますから。私は法務大臣に、それは間違っておりましたと答弁を求めようと思っておらない、それは国会がおやりになることですから。しかし、国会であっても、このやりとりのいきさつは、検察当局法務省当局に対して立法府は明らかに重大な干渉をしたというふうに受け取らざるを得ない発言なんですよ。この文章を読むと、素直に受け取るとそうだと、こういうふうにお考えになりませんか、お感じになりませんか。同じ答弁だったら私はもう要りませんよ。
  33. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 国会でおやりになりますことについては、論評を避けさせていただきたいと思います。
  34. 二階堂進

    二階堂委員 以上、私は、こういう処置については衆議院議長に対しても適当な措置をお考え願いたいということを私は後日申し入れるつもりでおります。これは許すことのできないことだと思いますから。  もう一点、私は、時間もありませんからお伺いしますが、昨年の八月二十六日の検察庁の検事豊島さんと記者懇において、夕方、私ども四名が事情聴取を済ませた、済んだという発言をしておられるということであります。新聞記者の諸君からも聞きました。昨年の八月二十六日。それをまた確認するために、司法クラブの幹事の方が、書いていいですか、いいですよ、名誉棄損にもならぬということを豊島という広報担当の検事が言われたということが耳に入りました。その晩の十一時のNHKのニュースでは、灰色高官だと言って私を含めて四人の名前が全部言われている。そうして経歴も事実関係も、金も取ったと、こういうことが発表された。そして二十七日の新聞には各紙、各放送、二階堂外四名灰色、金を取ったんだ、こういう放送がなされた。私は夜の十一時のニュースを聞いてびっくりいたしました。そういう昨年の八月二十六日までに、私を含めて四人、検察当局から事情聴取を受けた事実は全くない。全くないのに、ロッキード事件を担当している法務検察側の広報担当と言われております豊島さんが、済んだよ、書いてもいいよ。ある人の言によると名誉棄損にもならぬと言われた。私はこれは確認をいたしておりませんよ。しかし、新聞社の方からそういう情報でございました。だから二十七日の朝刊には全部こういうことが発表されている。でかい活字で、各紙です。全国に、世界に向かって放送もされた。それからというものはこれは大変なことでございました。新聞社の一線の方々も朝から晩まで、ぼくの私宅にも来られて、六時ごろからベルを押される。隣近所にも聞いて歩かれる。私はえらい被害を、じゅうりんを受けました。それで私は、新聞社にもNHKにも、そういう事実は全くありませんということを何遍も繰り返して言ったが、聞いてもらえない。翌二十七日には法務省の高瀬検事正が記者会見をされて、これは遺憾であった、そういう談話がそのような記事になるヒントを与えたとするならばまことに遺憾でございました。そして、言わずもがなのこと、そういうことを言っちまったものだから、近く四人については事情聴取をいたしますということまで言われておる。捜査当局に当たる検察側がそういうことを言っていいんですか。何の事実もないことを検察当局は報道機関に発表して、その以後というものは、八月以来というものは、私は二カ月にわたって大変な人権と自由の束縛を受けました。侵害を受けました。私の家内なんか東京のアパートに住まっておれなくなって、アメリカの息子のところまで逃げ出しました。私もホテルに住まわなければならなくなった。私の家内の友人がタクシーに乗った。私はタクシーで着がえのために帰ったことがあります。そのタクシーにわざわざ私の家内の友人が乗ったところが、いまおりたのは二階堂だ、けしからぬやつだ、車をぶつけて殺してやろうかしらん、こんなことまで言っているのですよ。その友人が私の家内に電話をして、もうタクシーに乗りなさんな、あなたを殺すというやつがおりますよ、こういうことであった。私は限りなき行動の自由を束縛されました。人権も侵害されました。それから毎日ですよ。ここで高瀬検事正が、それは遺憾でございました。法務省の官房長が自民党の法務部会に来まして遺憾の意を表明し、その検事に対しましては厳重注意をいたしましたということを承りました。私は、ないことをなぜ検察当局はそんなことを言ってこういう発表をされたのか。これはそういう立場になった者でなければわかりませんですよ。朝から五台も十台も一線の記者諸君がつきまとっておる。なぜそんなにするかと言ったら、上の方から命令でございますと言う。私がホテルに行って便所に入ったら、便所の中まで来て、おるかおらぬか確かめる。これはそういうものを受けた者でなければわからぬですよ。そういうことをされたというこの原因をつくったのは、豊島さんという広報担当の次席検事だ。そういうことがあったんですか。新聞が全部書いているんですよ。放送が全部放送しているんですよ。加藤さんもおられますけれども事情聴取を受けた覚えはないとおっしゃる。なぜこういうことを検察当局が事前に、事実もないことを言わなければいかぬのか。そういう姿勢で人の人権が守れますか。事実があったのかなかったのか。なかったとおっしゃるなら、新聞が勝手にこういうものを書いたということになるのですよ。二十七日の新聞の中には、事情聴取が受けられていないということを高瀬検事正がしゃべっておりますから、読者に対しては御迷惑をかけましたと書いてある、おわびをいたしますと書いてある。全部の新聞と全部の放送機関が挙げて灰色灰色だと説明した。それだから、九月の初旬になって検察当局から、何とかして事情聴取、参考意見として意見を聞かしてくれと来られた。私のおるところで、いつでも何時でもいいですからお伺いします、そして事情聴取も私ちゃんと述べているのですよ、事実についてなかったということを。そんなものは全然無視されておるでしょう。こういうことをやられたのでは、一政治家も、一政党も、検察がマスコミと一緒に組んでこんなことを平気でやったならば、個人の人権とか、政党とか、一内閣であってもつぶされるじゃありませんか。こういう人がまだ検察当局のいすに座っているということは、私にしてみれば許すことのできないことだと思いますが、その事実があったのかなかったのか、あったとするならばどういう処置をあなた方はお考えになったのか、お聞かせ願いたい。
  35. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 東京地方検察庁の次席検事は東京地検のスポークスマンをいたしております。私事にわたって恐縮ですが、そのことは、私自身が豊島の前任者でございますから、よく存じております。午前と夕方と、各一時間記者会見をいたします。それから、事件があれば、夜九時から十二時ごろまで新聞記者がうちの中を歩き回っておる状態でございます。そういう間にありまして、検察は、いつだれを調べたとか調べないとか、いつ逮捕するとかしないとか、そういう捜査の手順等につきましては一切言わないという方針でやってまいっておるわけでございます。  ところで、具体的な状況について私ども調査をいたしましたので、その結果に基づきまして御報告いたします。  お尋ねいただきました先生も官房長官等なさいましたので、新聞記者諸君の感覚と申しますかはよくおわかりと思いますが、ただいま御指摘の昨年八月二十五日、六日ごろと申しますのは、ちょうど三十ユニット関係捜査が緒につきまして、橋本、佐藤両氏が逮捕、勾留されておりまして、したがって、新聞記者仲間では、三十ユニット関係の一連の方々はこの勾留中に取り調べを行わなければ、その橋本、佐藤両氏の処分ができかねるのではないかという観測があったようでございまして、非常にその関係方々の身辺をしつこく追っておったようでございます。皆さん方のお宅をずっと張り込む等、非常にしつこい追随をしておったようでございます。したがいまして、毎日行いますスポークスマンの記者会見におきましても、もっぱらその点が焦点になっておりましたので、常に言を左右にしておったわけでございますが、たまたま八月二十五日の夜、スポークスマンの自宅に新聞記者の方々が勢ぞろいをされまして雑談をしております間に、ふっとこの三十ユニット関係者の数名の国会議員についてはもう調べたのかどうかという質問があった際に、肯定的にも否定的にもとられ得るような答え方をしたのでございます。それを受けた新聞記者の方々は、先ほど申し上げましたような状況から、いわゆる三十ユニット関係高官の取り調べ必至というふうにお考えになっておりましたことからだと思いますが、はからずもそれを肯定的に受けとめられたようでございます。  ところで問題は、その受けとめられた後で、先ほどは幹事の記者とおっしゃいましたが、幹事さんではございませんけれども、一たん全員辞去した後、二名の新聞記者の方がだめ押しに来られました。そのときに、率直に申せば、調べていないよと一言言えばよかったのではないかと思いますけれども、それに対してはっきりした応答をしなかったようでございます。そのために、そのようなスポークスマンの態度がただいま御指摘のような報道を誘発する一因となったことは、どうも否定できないように思うわけでございます。ただ、私も経験がございますが、検察のスポークスマンとして、そこで調べてないよと言えば、いままでとってきた態度がおかしくなりますので、そういうやむを得ざる事情もあったと思います。しかしながら、結果においては、ただいま御指摘のような重大な、遺憾な状況になったわけでございまして、したがいまして、八月二十六日、新聞の出ました日の夜、東京の検事正が関係者の名誉のために異例の談話を発表したわけでございます。しかしながら、これまで検察としてやってきた態度は今後とも堅持していきたいと思っております。
  36. 二階堂進

    二階堂委員 そうすると、確認しておきますが、はっきり言わなかった、新聞が書いたのは、それでは新聞が勝手に書いた、こういうふうに理解しておられるわけですね。新聞が勝手に書いたんだ、これは重大なことですよ。人の人権や名誉に関する大変なことが全部図表入りで出ておるのですよ。それは確認に行ったら、書いてもいいよと言ったと言う人がおるのですよ。逃げちゃだめですよ。新聞が勝手に、放送が勝手にやったということですか。これは大変なことですよ。いいですか。そういうことがにおうようなことを言ったんだということはどうして言えないのですか、私はあなた方に対して強制する何もありませんけれども。  しかも、これは八月三十日の朝日新聞に「どうなる灰色高官処理」ということで書いてありますが、これは、とにかく地検当局は、「すでに事情聴取したと受け取れる状況をかなり具体的に発言した。通例はいわない性格のものだけに、「ここまでいうからには」と朝日新聞を含め各新聞、放送が、二十五−二十六日に一斉にニュースを流した。ところが検察はその翌日、「事情聴取」の事実はないとしながらも「当庁関係者の発言内容がそのヒントになったとすれば若干適切を欠くものが……」という地検検事正談話を出さざるをえなくなった。」これは「異例の検事正談話」と書いてある。「検察側は「今後に大きな教訓を残した」といっているが、当日の地検当局者の発言が全くの事実無根だったとはいい切れないフシもまだ残っている。」と書いてある。これは朝日新聞にロッキード事件灰色高官処理について書いてある、これは八月三十日。そういう事実があったのですよ。  私も記者会見を何遍もやっておりますが、あなたは新聞記者の諸君がどうもそれは勝手に受け取ったんだろうという発言をされた。しかし、こんなでかい活字になって毎日毎日書かれて、たまったものじゃない。それで国会では、もう解散前の国会だ、四の五の言うな、道義的政治的責任を追及するのは国会の最高の使命だ、憲法もあったものじゃない、法律もあったものじゃない、やれと言って、それで無理やりに強姦された形で納得さして発表したと書いてある、田中さんが言っているのですよ。そのために私は、私も日本の国民の一人でありますよ。国会議員でありますから道義的政治的責任が厳しく追及されるのはあたりまえだと思っている。しかし、私でなかったら、一般の国民がこういう処置を受けたならば、これは死んでしまうですよ。殺されてしまうですよ。検察と国会が一緒になってこういう事態を巻き起こす、あるいは検察が新聞、報道機関と一緒になっていろんなことをやるといったならば、これは法の秩序というものは保たれませんよ。こんなことが許されていいのかどうか。私はこのために大変な人権と自由の束縛を受けた。殺してやるという者が出てきた。おれないのです。私は二カ月余りホテルに住まっておりました。大変な出費もいたしました。あなた方の方のこういう一方的発言によって受けたこの人権侵害というものは、一体だれがどうして救済してくれるのですか。その責任を何とかしてとらせるという決意が法務大臣にありますか。そういう人がいま現職におるのですよ。そういう検事が、法の精神を一番守らなければならぬ人ですよ、その人がこんなことを平気で言って、限りない人権を——私だけじゃありませんよ、受けたということは私は何としても納得のできないことなんですよ それに対して言いわけばかり言って反省もしない。そういう態度でいいですか。それで、これは新聞が勝手に書いたんだ、こう受け取っていいですか、法務大臣
  37. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 調査の結果でございますから、私からまずお答えいたします。  私もその記事は全部知っておりますが、それらの記事の中で、検察が発表してその結果で書かれたものは一つもございません。いきさつは先ほど申し上げたとおりでございます。
  38. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、事実その当時は在任しておりませんでしたが、その後の事情を聞いてみますと、私も新聞社におったことがあるものですからあれですが、質問をしたときに、肯定しないでも肯定ととられるような発言をいたしますと、肯定したことにして書く場合があると思うのでございます。しかし、いま仰せになったように、これは非常に重大な問題であったので、当時の法務大臣も特にその点は当人を呼んで注意をしたということを承っておるのでございまして、そのようなものをそのままにほうっておいていいかというお話でございますが、決してそのままにほうっておいたわけではない、そういうことは慎重にしなければならないということを厳重注意したと承っておるのであります。それだけでは不足であるからということでありますればまた別でありますが、新聞社との関係におきましては間々こういうようなことも起きますので、今後はそういうことのないように検察当局を十分戒めてまいりたい。私といたしましては、今後の措置といたしまして絶対にそのようなことのないように処置をいたすように、さらに一段と戒告をいたしたいと存じておる次第でございます。
  39. 二階堂進

    二階堂委員 もうあと時間がありませんから、私はこれ以上質問いたしませんが、これは人権に関する重大な問題ですよ。しかも、法を守り人権を守らなければいかぬという検察当局は、かりそめにもあいまいなことを言って、それで書かれたその責任は挙げて新聞社にあるんだ、新聞社が六感を働かせて書いたんだろう。一社ならそういうことがありますよ。全部の新聞ですよ、全部の放送ですよ。それを毎日やられたのですよ。それで、国会ではそれを受けて灰色だと決めつけて——いま裁判を受けている人が灰色でしょう。それが白になるか黒になるか。灰色と言われて、しかも道義的政治的責任は追及すべきだという議長裁定国会議員ですから当然でしょう。厳しい道義的政治的責任は追及されて選挙に臨みました。ありとあらゆる迫害を受けました。法を守る当事者で、責任者でしょう。最近は国会の議論を見てみても、立法府が司法に対して干渉してみたり、起訴をせぬか、早くやりなさいということをやってみたり、司法当局が行政府に対して干渉してみたり、そのけじめがだんだんなくなっているということは、憲法の一番大事な人権を守るということが非常に軽んじられてきつつあるということを、私は身を持って体験した。これは私一個の問題ではありません。憲法保障されている人権というものは永久の権利として認めなければいかぬと書いてある。それがロッキードで、政治的道義的責任は追及しなければいかぬと言って世論も騒ぐ、一億国民の世論にこたえるのが最大の義務だといっておる。それが度を超して、検察のあいまいな資料を一方的に押しつけてみたり、はっきりもしないことをはっきりしたような印象を与えるような発言をして、そして人の人権が傷つけられるという、こんなことが許されたら、日本の国も、法律も国民の人権も守れたものではありませんですよ。私は、時間があれば、まだたくさん調べたこともあるし勉強したこともあります、お尋ねいたしたいことはたくさんありますけれども、またいつか機会を得て、野党議員の御了解をいただきまして、人権問題について国会も集中審議ぐらいする機会を持っていいと思うのですよ。余りにも弱き者の人権が軽んじられておる傾向があるということを、法務大臣自身もお認めになっていると思いますよ。マスコミの方にも行き過ぎがあるようでございます。私の車を追っかけてくる、赤信号が出てもどんどん通って追っかけてこられる。なぜそんなことをやるかと言うと、上からの命令でございますと言う。上からの命令だといって交通規則を破っていいというものじゃありません。そうでしょう。行き過ぎはありますよ。そのために限りなき人権を傷められて泣いておる弱い人もおると思うのですよ。そういう者は国会こそが守っていかなければいかぬじゃありませんか。しかも、守るところの本尊がいいかげんなことを言ってみたり、平気でおる、ここに問題がある。私は、粛然とえりを正して、こういう問題に対しまして厳正な処置をせられることを、広く国民の人権を守る立場において当局に心からお願いを申し上げておきます。私はこのために、間違っておったことを言ってけしからぬとおっしゃるなら、どうにでも裁かれても結構でございます。しかし、私は、国会議員である以上、憲法を守り国民の人権を守るのが最大の責任だと考えておるのですよ。これは恐らく野党の諸君も賛成くださると思います。こんなことが余りに多いのですよ。野党の諸君も天下を取ったならば、こんなことをやられたらえらいことになりますよ。そうじゃありませんか、皆さん。真剣に私は申し上げておる。どうか、人権を守る、こういう問題について、国会委員会においてももう少し真剣に取り上げていただきたい。お願いを申し上げまして、私の質問を、まだありますが、いずれ機会を得てまた発言をいたしたいと思います。
  40. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの御要望に対しましては、政府といたしましても、十分意を用いてそのようなことのないように処置をいたしてまいりたいと思います。
  41. 上村千一郎

    上村委員長 横山利秋君。
  42. 横山利秋

    ○横山委員 二階堂さんの御質問を聞きまして、心情わかるところはございますが、二階堂さんを初め三人の方が、人権とはおっしゃいますけれども、その中には、立法府であります国会の運営についてのかなりの批判があるようであります。そのことになりますと、私ども決して黙ってはおれません。事は人権以上に、日本の政治史を揺り動かすようなロッキード事件でございました。その大きな源を外れて、ただ人権だけを議論しておったのでは、本末を誤るおそれがあると思うのであります。  二階堂さんに対します疑問は、昨年の十一月四日、ロッキード委員会で田中委員長から言われております。   元内閣官房長官二階堂進。   ロッキード事件捜査の経過において得られた資料、すなわち、全日空関係者及び丸紅関係者の供述、米国における嘱託証人尋問の結果等によれば、二階堂進は、昭和四十七年七月七日から同四十九年十一月十一日までの間、内閣官房長官であったものであるところ、昭和四十七年十一月初旬ころ、東京都内において合日空株式会社代表取締役社長若狭得治らより依頼を受けた丸紅株式会社取締役伊藤宏から、ロッキード社から流入したいわゆる三十ユニットの領収証に見合う三千万円の一部である現金五百万円を、全日空がL一〇一一型航空機を導入することについて尽力した謝礼の趣旨もとに受領したと認められるが、右金員は内閣官房長官としての職務に関する対価であることが認定できないために、収賄罪の成立は認められない。   これに関して二階堂君から委員外発言を求められております。これを許します。 そこで二階堂さんがおっしゃったことは、要するに、売り込みに関し金銭をもらわない、関係者も丸紅や全日空からももらわない、伊藤とは会ったことはない、尽力の依頼も受けない、在官中、退官後も事実はない、こういう問答に終わっておるわけであります。  そしていま三人のお方からの御質問がございましたけれども、三人のお方は御存じかどうかわからないのでありますが、私は意外に思いました。一九七五年九月八日、自由民主党から、いわゆる灰色高官公表基準が出ております。その自民党の基準の中で、「いわゆる「灰色高官」として一般に公表すべきもの (この場合は氏名、受領金品額、事実の大要を明かにするものとする)一、ロッキード事件の金品の授受による収賄罪その他の成立が認められるが、公訴時効の完成により不起訴となるもの(時効不起訴) 二、ロッキード事件の金品授受による収賄罪その他の犯罪の成立が認められるが、軽微又は情状により不起訴となるもの(微罪等不起訴) 三、ロッキード社の売込みに関し依頼を受け、ロッキード事件の金品の授受があったが、職務権限なきため罪とはならないもの(罪不成立)」これが自民党から出ておりますいわゆる灰色高官公表基準であります。この基準に適合をすると認められるものが、田中委員長ロッキード委員会報告をされた二階堂さんのものである。まずそう考えてよろしいでしょうね。
  43. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私どもといたしましては、自民党でどうお決めになったかはともかく、ロッキード特別委員会でお決めになったものをそのまま受けとめまして対処したわけでございます。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 ロッキード委員会決められたものは、当然与党であります自由民主党の灰色高官公表基準が基礎になっておる。私ども野党はそれよりももっと詳しい公表基準提案をしたのでありますけれども、少なくともそれは最小限のものとなってこのロッキード委員会において決まっておるわけであります。したがいまして、少なくとも与党の中から出されました公表基準に該当をする人、その人が二階堂さんほかである。そのことを御存じの上で、何か自分たちで決め基準に適合をしたについて不満があるような御資間をされるというのは、私は大変意外に思っておるわけであります。自民党を代表しておっしゃったのか、全く自民党の党の方針に外れておっしゃったのか知りませんけれども、このことをまず第一に明らかにしておかなければならぬと思います。  次にお伺いをいたしたいのは、二階堂さんは十一月四日、「私は、丸紅の伊藤宏なる人物は全く知りません。会ったこともありません。伊藤宏は、保釈後、読売新聞社の記者に対し、私に金銭を渡した旨の全く虚偽の発言をし、その旨の新聞報道が九月十三日の読売新聞に報道されております。私は、弁護士とも相談の上、名誉棄損による民事上、刑事上の責任を追及する所存であります。近くその手続をとります。それ以外に私の立場を救済する方法はありません。」とおっしゃっていますが、民事上、刑事上の追及の手続をおとりになったでしょうか。
  45. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 民事上のことは法務当局ではわかりません。刑事上の手続をおとりになったという報告はまだ受けておりません。
  46. 横山利秋

    ○横山委員 「それ以外に私の立場を救済する方法はありません。」とおっしゃっておる。そうであるならば、私は、この速記録に載っておることでございますから、当然おやりになっておると思っておるわけでありますが、どういうわけかそれをおやりになっていないのであります。私に言わせれば、「それ以外に私の立場を救済する方法はありません。」とは思わないのであります。これはどなたにもお答えができないのでありますが、ロッキード委員会で私どもは中曽根さんを初め多くの皆さんを証人として御出席を要望いたしております。中曽根さんがこの間お出になりました。そういう意味から言うと、二階堂さんの救済の道、もし御本人の主張いたします救済の道があるとするならば、堂々と国会で、単に人権の問題でなくて、自分に与えられた疑惑を晴らすという意味におきましても、ロッキード委員会において、ひとつ堂々と御出席なさって、御発言をされ答弁をされるということが私は望ましいことだ。ここで、その事件の中に起こりました派生的な問題、なるほどこれは二階堂さんにとりましては、最後の法務省の手落ちとも思われますことにつきましては同情を禁じ得ません。得ませんけれども、そういうことのよって来る根本に立ち向かわずして、人権の派生的に起こりました——派生的と言っては失礼でございますけれども、そのことだけにどんなにここの机をおたたきになりましても、国民の疑惑は晴れない、こう私は思っておるわけでありますから、この議事を通じて二階堂さんが、決してそれ以外に私の立場を救済する道はありませんと言っておりながら、民事、刑事の手続をおとりにならないならば、せめて国会ロッキード委員会に御出席なさって、そして堂々と本質を争うということをなさることを、私は衷心期待をいたしたいのであります。  第三番目に、なるほど御本人のおっしゃいますように、灰色高官というままで未来永劫冤罪を受ける、このことについては私も全くある意味では御同情にたえないのであります。そこで、二階堂さんが言われますように、このままで済むかという点について、法務省にまた聞きたいのであります。これらの灰色高官はあの報告のままに終わるのであるか、灰色高官であるから、罪とならずということになっておるから、それでそのままに済ますのであるか、たとえば黒色高官の裁判の過程において新たなる証拠が出てくることがあるであろう、そういう点については、この灰色のままでなくして、裁判の過程あるいはいろいろなその後の証拠の収集等によって、それが本当に白であるか黒であるかということについて、法務大臣はおやりになる気持ちがあるか、明らかにする必要、時期があるだろうか、そういうことについて、二階堂さんの立場と私どもの立場とはちょっと違いますが、灰色高官のまま、これで未来永劫であるかという点については若干の疑問がございます。  そこで御質問は、その後の黒色高官等についての裁判の過程、あるいはその後の法廷外調査の過程で、灰色高官についていろいろと新しい事実が挙がったかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  47. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 御質問の御趣旨を的確に把握していないかもしれませんけれども、現在公訴を提起されております橋本、佐藤両氏の関係公判におきまして、それと密接不可分の関係にあるという意味におきまして、その余の方々の行動についてもあるいは立証がなされることがあるかもしれませんが、そういうことは予想されますが、ただいまお尋ねのように、いわゆる灰色と現在言われておられます方々が、何らかのことで、法廷上、法廷外のことで白になるというようなのは、私どもの手続に関する知識ではちょっと考えにくいことだと思っております。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 この田中委員長報告によりますと、「右金員は内閣官房長官としての職務に関する対価であることが認定できないために、」となっております。一体、内閣官房長官というものはどういうものなのかという点であります。内閣法におきます内閣官房長官の任務は、「内閣官房は、閣議事項の整理その他内閣の庶務、閣議に係る重要事項に関する総合調整その他行政各部の施策にに関する統一保持上必要な総合調整及び内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務を掌る。」等となっております。この内閣官房長官の業務、任務というものを、ここに書いてあるようなことを消極的に解するか、つまり極端に言いますと、内閣のお取り持ち役あるいは小使役と解するか、あるいは内閣の中で、あるときには総理大臣にかわり、あるときには意向を受けて重要な判断をして調整をする、指示を与える、そういうように積極的に解するか、そのいずれでございましょう。
  49. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 直接のお答えにならないかもしれませんけれども、内閣官房長官が具体的な行政行為について何らかの責任ある立場にお立ちになります場合は、内閣法十二条二項によります「行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整」、こういう権限を御発動になる場合がこれに当たるのではないかと思っております。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 確かに、この十二条に書いてあります項目をどう解釈するかについては、法規的にもかなり問題があろうかと思います。しかし、世間の常識というものがある。われわれ政治家の常識というものがある。国務大臣を兼務する内閣官房長官が内閣におけるきわめて重要な役職であることは言うまでもありません。私は、「官房長官としての職務に関する対価であることが認定できない」という言葉の中には、官房長官の政治的な役割り、重要な任務というものについての評価が間違っておりはせぬかという感じがいたします。これは私の意見であります。  次に、人権と政治家の問題がございます。私どもお互いに選挙で争って国会に出ております。お互いが一様に言いますことは、政治家としては自分のプライバシーというものはある程度放棄をしておる人間だと思っておるわけであります。私を見てください、私は清廉潔白な誠意ある生活を生涯を通じて行います、どうぞ私に至らぬところがありましたら監視をしてください、どうぞいけなかったら批判をしてください、そういう意味合いにおいて公職者はすべてプライバシーをほとんど放棄をして出てくる。だから、国民の監視の目は、われわれ国会議員もとより、県会、市会、町村会に至りますまで厳しい。厳しいことに対して私どもは受忍義務があると思っているのです。そうでなければおかしいと思っておるわけであります。  それが、国民一般のプライバシー、人権の問題と全く平等にわれわれの地位を置いて、われわれのプライバシーにいささかなりとも容喙するものについては、人権を盾にしてそれに対して怒るということについては、私は政治家としてはいかがなものであろうかと思う。政治家というものは、諸先輩や同僚諸君に対して大変恐縮でございますけれども、李下に冠を整えず瓜田にくつを入れず、その中国の昔からの言葉を金科玉条にしなければならないとお互いに自戒をしておることだと思うのであります。この点について法務大臣はどうお考えになりますか。
  51. 福田一

    福田(一)国務大臣 政治家は別であるという考え方でなく、政治家も一般人であるという考え方に立って解釈すべきか、あるいは政治家としてこうあるべきかということについては、私は、政治をやっている本人は、いまあなたがおっしゃったような立場、考え方でいるべきだと思っております。政治家というものは当然のことであります。  しかし、今度は法を適用するという場合において、そういう疑義の起こるようなことはできるならば差し控えた方がいいんじゃないか、私はこういう感じを持っておるわけでございます。私自身は、当然いまあなたのおっしゃったように、いかなる批判も受けなければならないとは思っておりますけれども、しかし、ほかの人のことを処理する場合というようなときには、私は、実はこれはおしかりを受けるかもしれませんけれども、政治家というものはこういうことをしてはいけないんだというようなことをもっと厳正に処理していかなければいかぬじゃないか。たとえば、私は、立候補以来いまでも非常に不愉快に思っていることは、夏と冬の年賀状だとかなんとかというものは絶対出さぬようにしよう、こういうことをいつも議長名でもって議運などで決められますけれども、どうも守っておられないのが実情なんであります。こういうことではいけないんじゃないか。もっと、こういう意味において、そういうことをしたらこうなるぞというような処分規定までつけてちゃんとするというようにした方がいいんじゃないか、私はこう思っておるので、あれだけはいつも恒例のように議院運営委員会決められますけれども、実にどうも守られておらない実情を見ると、私は実はまことに不愉快に思っておる。だから、議員というものはこういうことはしてはいけないんだ、こうなったらば、これは刑事訴訟法なんかとは別に、特別法、何かそういうものでもつくって、お互いに反省する、そういう姿勢をとるようにしたらどうかなという気が私はいたしております。これは事実でございます。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 なるほど人権擁護に関する規定の中には、われわれが別格官幣大社になっておるわけではありません。しかしながら、お互いにその立場で長年政治活動をしてきたし、お互いがまたそれが正しいことだと信じてやってきたのであります。法務省あるいは国税庁が、行政的にも、最近税金の申告についても、政治家に対して特に厳しくなっておるような気がいたします。私はそれでいいと思っているのです。もしできるならば、法律をもってわれわれは所得の公表をする、そこまで進むべきだ、そう私どもは考えているわけであります。あなたのおっしゃる年賀郵便だとかなんとかというものは人権の問題ではありません。私がきょう問題にいたしましたのは、人権ということについて、政治家がみずからの人権を余り言うべき立場にはないのではないか、それはみずから放棄した受忍義務が苦しくともあるのではないか。二階堂さんが体験されたようなことは、個人としては本当にお気の毒ではある。しかし、それをもってしてすべての政治家が国民におのれの人権を訴える、もちろん私もすべてと言っておるわけではありません。余りにもひどいプライバシーだとか、政治生活と全然無関係な問題まで言っているわけではありません。しかし、原則としてわれわれは政治家としてのプライバシーを放棄した、国民の批判を受ける受忍義務のある人間である、それを忘れてはならない、そう考えているわけであります。  以上をもって私の質問を終わります。
  53. 上村千一郎

    上村委員長 次回は、明二十五日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十八分散会