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1977-03-23 第80回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二十三日(水曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 羽田野忠文君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君       木村 武雄君    篠田 弘作君       田中伊三次君    福永 健司君       山崎武三郎君    島本 虎三君       西宮  弘君    日野 市朗君       米田 東吾君    飯田 忠雄君       長谷雄幸久君    正森 成二君       加地  和君    鳩山 邦夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 福田  一君  出席政府委員         法務大臣官房長 藤島  昭君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   加藤  晶君         法務省民事局参         事官      浦野 雄幸君         法務省刑事局総         務課長     俵谷 利幸君         最高裁判所事務         総局民事局長  井口 牧郎君         最高裁判所事務         総局刑事局長  岡垣  勲君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 本日の会議に付した案件  証人等被害についての給付に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第四七号)      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    上村委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所井口民事局長岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上村千一郎

    上村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 上村千一郎

    上村委員長 内閣提出証人等被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎武三郎君。
  5. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 法案内容に入る前に、まず、この制度昭和三十三年に発足してから現在までの給付実情について説明してください。
  6. 俵谷利幸

    俵谷説明員 事務的なことでございますので、私から説明させていただきます。  まず、この法案でございますが、これができましたのは昭和三十三年でございます。その後施行されたわけでございますが、昭和三十六年に療養給付が二件、休業給付が一件ございました。それから三十九年に遺族給付が一件、葬祭給付が一件、四十四年に療養給付が一件、休業給付が一件ということで、事例といたしましては四事例になります。件数にいたしまして七件ということでございます。その後は適用された事例がございません。  以上でございます。
  7. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 給付件数が非常に少ないようでございますけれども、どうしてこういうふうに該当事件が少ないのか、その辺の事情説明してください。
  8. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように件数が非常に少のうございますが、この点につきまして調査いたしてみますと、いろいろなことが考えられると思いますが、まず、こういう証人等被害給付になじみが深いと申しますか、関連が深いと思われる事件といたしまして、たとえば証人威迫の罪というような事件があるわけでございます。これを試みに昭和四十五年から四十九年までを見てみますと、検察庁が受理いたしました事件が大体六十件前後、多いときで四十七年に七十四件、四十九年が五十七件、こういうことになっておるのでございます。こういう事件が、あるいは証人被害を受ける、あるいは疾病にかかるということが考えられる事件でございます。しかしながら、中身を見ましたところが、実際に負傷するに至ったという事例は非常に少ないわけでございます。中には数件、傷を負った、傷害を受けたという者もございますが、これらにつきましては、たとえば加害者被害者の間で親族関係があったという場合は給付しないことができるという規定がございますし、それから、当事者間で示談がついて十分な弁償がされておるといったような事情がございまして、具体的に適用される事例というのが少なかったというのが実情でございます。さようなことでこの法律適用件数というのが非常に少ない、こういうふうに承知いたしております。
  9. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 今回、給付の種類について、新たに傷病給付を新設して、現行打ち切り給付を廃止したようでございますが、その理由は何ですか。
  10. 俵谷利幸

    俵谷説明員 現在の給付状態でございますが、これは御案内のように、療養給付障害給付という大きな二本立てになっております。療養給付といいますものは、けがをしたあるいは疾病になった場合に、治療を受けるあるいはその治療費を出してもらうという内容になります。同時に、仕事ができない場合に休業給付を受けるということになっておるわけでございます。それから、障害給付は、廃疾となった場合、つまり身体障害が出て、機能の障害が起きておるという状態、しかし一応療養は終わっておるという状態でございます。ところが、現実を見ますと、まだ療養の必要はある、事実的には廃疾に近い状態になっているが、手当てをすれば治る可能性があるという状態にある方が見受けられるといいますか、考えられておるわけでございます。そういう人らに対しましては、障害手当を出すということは、これは治っておりませんからできないわけです。そういたしますと、実際上は廃疾に近いという人に対する給付状況が薄いのではないかということになりますので、そういう事実上廃疾に近い状態にある人の手当てを厚くするために傷病給付というものを新設しよう、そして従来の休業給付にかえまして、それより厚い傷病給付がもらえることにしまして、手厚くしようというのが、傷病給付を新設しようとする理由でございます。
  11. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 傷病給付について二、三お聞きしたいと思いますけれども、まず初めに、傷病給付の場合どの程度廃疾に対して支給することになるのですか、お聞きします。
  12. 俵谷利幸

    俵谷説明員 傷病給付におきます廃疾をどの程度のものを把握するかという点でございますが、これはこの法律が成立いたしました場合に、施行令におきまして決めるという考え方をとっております。どういうものになるかという点でございますが、現在の施行令別表身体障害程度等が決められております。この施行令別表の中で廃疾状態の重いものが定められておりますが、その重い一級から三級の状態にあるものにつきまして、傷病給付につきましても一級から三級の程度のものといたしまして給付を決めたいというふうに考えておるわけでございます。  具体的に申しますと、一級廃疾状態といいますものは、現在の一級内容になっておりますように、たとえば両眼が失明しておる人というようなものが挙がっておりますし、二級といたしましては、片方の目、一眼が失明し、かつ他の目の視力が〇・〇二以下になっておるといった廃疾状態のものを二級、それから三級につきましては、一眼が失明して、かつ他眼の視力が〇・〇六以下という状態になっておる人、この辺を三級といたしたい。このような格づけと申しますか、内容を考えておる状況でございます。
  13. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 また、傷病給付の場合、「治ついていない場合」というふうになっていますが、これはどのぐらいの期間を経過した場合をいうのか。また、廃疾認定はだれがどのような方法でするのか、説明してください。
  14. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように、傷病給付は、被害者が負傷し、または疾病にかかり治っていない場合に存する廃疾に対しまして給付をするわけでございますが、この治っていない場合の起算点をどう把握するかという御質問だと思います。これは同じように施行令によりまして定められることになると考えますが、療養を始めまして一年六カ月を経過してもまだ傷病が治らない場合に支給を開始するということを考えております。つまり、一年六カ月経過後にまだ治っていない場合に傷病給付対象になるという考え方でございます。  なお、この一年六カ月というのは、なぜそういうふうに考えたかという点でございますが、これは同じような法律が各種ございまして、その中に国家公務員災害補償法というのがございます。これにこの御審議いただいております法案傷病給付相当するものとしまして傷病補償年金というのが定められております。これが療養開始後一年六カ月を経過しても治らない場合という規定をいたしております。また、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律というのがございまして、これに同じく傷病給付が今回新設される予定でございます。これも同じく一年六カ月ということになっておりますので、この並びから考えまして、一年六カ月は相当ではないかということで、一年六カ月というふうに考えたわけでございます。  それから、廃疾認定をどのようにやるか、こういう問題でございますが、この手続の細目につきましても施行令によって定められることになるわけでございます。これは本人が医師の意見、つまり診断書のようなものでございますが、これを出しまして、傷病給付年金請求書を出しまして法務大臣決定する、こういう手続になるように予定しております。  以上でございます。
  15. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 実際に支給される傷病給付額最高最低は、普通の場合どのぐらいになるのでしょうか。そしてまた、施行令四条二項ただし書きに、「その額が、被害者の通常得ている収入日額に比して著しく公正を欠くとき」と書いてありますけれども、これはどのような場合なのか、また、現行給付基礎額は近く改定される予定と聞いていますが、どうなんでしょうか、お答えください。
  16. 俵谷利幸

    俵谷説明員 実際に支給される傷病給付額最高最低というお尋ねでございます。この傷病年金給付額最高最低につきましては、級によって違うことは先ほどお話ししたことでもおわかりいただけると思いますが、別表一級に当たる場合、つまり両眼が失明したような場合を計算いたしてみますと、下限が百三十一万四千六百円から上限が二百二十五万三千六百円、これが一年間の年金ということになります。それから、二級の場合でございますが、これは、片目が失明して、かつ他眼の視力が〇・〇二以下になった、こういう場合でございます。これが百十六万三千四百円から百九十九万四千四百円までの金額、三級の場合が百二万九千円から百七十六万四千円、こういう金額になるわけでございます。  それから、この金額の計算でございますが、これは給付基礎額倍率を掛けるということになっておりまして、給付基礎額は現在のところ、一日四千二百円から七千二百円以内ということになっております。これに別表で定めます倍率を乗じました金額が、先ほど申した金額になってくるのでございます。  それから、施行令四条ただし書きで「給付基礎額は、四千二百円とする。ただし、その額が、被害者の通常得ている収入日額に比して著しく公正を欠くときは、七千二百円を超えない範囲内においてこれを増額した額をもつて給付基礎額とすることができる。」こう書いてある点の御質問でございますが、これは、給付決定いたします際に、四千二百円では安過ぎるというような場合には七千二百円までも上げられるということでございまして、結局本人社会的身分とか経済状態等、いろいろな状況を考えまして、著しく公正を失するという場合には引き上げることができる、こういうことでございまして、妥当な金額裁定できるように幅を持たせてあるということでございます。  それから、近く給付基礎額が改正されるのではないか、こういう御指摘でございますが、この給」付基礎額は、この法律ができましたときに、警察官の給与というものが一応の基準になりまして決められた経緯がございます。そういった関係で、警察官の俸給が改正されますと、それに応じまして逐次基礎額の改定が行われる、こういう運びになっております。したがいまして、近くまた改正される、こういうことが予想されるわけでございます。
  17. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 提案理由説明によりますと、廃疾状態が重い者に対して休業給付かわり傷病給付支給するというふうにしてある、これはどういうことなのか。また、本来休業給付傷病給付というのは制度趣旨が違うので、両者の併給ということもあり得るのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  18. 俵谷利幸

    俵谷説明員 提案理由説明で、休業給付かわり傷病給付支給する、こう申し上げておるわけでございますが、これはどういうことかという御質問でございます。  先ほど申し上げましたように、現在は療養給付を受けて、つまり治療もしくは治療費支給を受けて休業給付を併給できる、こういうことになっておるわけでございます。これは仕事ができないことの損失等にかんがみまして休業給付が出せる、こういうことになっておるわけでございますが、この休業給付は現在のところ給付基礎額の六〇%以内ということになっておるわけでございます。これを傷病給付にいたしますと給付の率を最高八六%から六七%までの間で一級、二級、三級に応じまして支給するということにいたしまして、つまり手厚い年金を与えるということにするわけでございます。そういたしますと、これは休業給付、つまり働かないことによります損失等も含むということになりますので、休業給付も含む傷病手当傷病給付傷病年金ということになりますからこれは併給しなくてもいいことになる、かように考えておるわけでございます。
  19. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 療養給付と並行して支給されることになると考えるわけですけれども、療養給付というのは、入院費などについてもすべて実費が支払われるようなことになるのかどうか、御説明ください。
  20. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように、療養給付と並行して傷病給付支給されるということになります。この療養給付につきましては、施行令の第二条に規定されておりまして、「療養相当と認められるもの又はこれに要する費用」を支給する、こういうことになっております。診察であるとか薬剤、治療材料支給、あるいは病院または診療所への収容というようなことになっておりますから、御指摘入院費用につきましても、相当のものである限り給付されるということになるわけでございます。
  21. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 証人等療養給付傷病給付現実請求した場合、支払われるまでの手続はどのようになるのか、御説明ください。
  22. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この給付手続でございますが、これは給付対象といいますか、給付内容によって若干違うわけでございます。法律上は法務大臣裁定することにされておりますが、療養給付につきましては、事柄が、緊急に療養をさせなければならない、あるいは費用を速やかに出さなければならない、こういった事柄に属しますので、できるだけ近くの方で手続が行われることが望ましいわけでございます。そういうような観点から、この事件が起きました、つまり行為地を管轄いたします地方裁判所に対応する地方検察庁検事正支給手続決定をするということになっておるわけでございます。もちろん請求者から検事正にあてまして療養給付請求書を提出する、それに基づきまして、検事正法律上の要件を充足するかどうかを検討いたしまして速やかに決定をする、こういうことになっておるわけでございます。  それから傷病給付に関する手続でございますが、これにつきましては、法務大臣裁定するという原則の方で行われることになるというふうに考えております。これにつきましても、同じように給付請求書検事正を経由して法務大臣に提出する、こういうことにいたしまして、検事正が所要の意見法務大臣あてに具申をいたしまして、そこで裁定が行われる、かような運びにいたしたいと考えておるわけでございます。  以上でございます。
  23. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 なお、いまの法務大臣裁定に不服がある場合、行政不服審査法、これによる不服申し立てというのは可能かどうか。どうなんでしょうか。
  24. 俵谷利幸

    俵谷説明員 行政不服審査法によりまして不服の申し立てをすることは可能でございます。
  25. 山崎武三郎

    山崎(武)委員 終わります。
  26. 上村千一郎

    上村委員長 次に、横山利秋君。
  27. 横山利秋

    横山委員 大臣にまずこの法律案について篤と聞いていただきたいことがございます。  大臣は恐らく十分審査をなさったと思うのでありますけれども、この法律は、いまも質問がございましたように、提出いたしました資料を見ますと、三十四年に一件、三十六年に一件、三十八年に一件、四十三年に一件。一年に一件もないんですね。まことにこの法律効果というものが十分でない。この証人の出頭の被害について、えらい迷惑かけた、あなた傷負って申しわけないから国が弁償してあげるという、非常に法律そのものとしては貴重な法律だと思う。非常に貴重な法律。それが本当に該当事案が一年一件もないのであろうか、本当にそうであろうかと私は疑問を生ずるわけです。新聞で毎日見ますと、お礼参りなんか続出していますね。その中にはもちろん傷を負った者も命をとられた者もあるが、しかしそれ以前のものでも枚挙にいとまがないと思うのであります。どうしてそれが、この法律で一年に一件もないのであろうか。なぜこの法律効果が及ぼしていないのだろうか。被害を受けた証人たちはこの法律が存在することを知っているだろうか。教えておるだろうか。積極的にこの支給をすべき立場にある人がこの法律を運用しておるだろうか。まことに私は疑問なしとしないのであります。  そこで、私に許された時間は三十分でございますから、時間の節約上、委員長、ちょっとお許しを願ってこれを配っていただきたいと思います。委員長大臣、それから各党一枚ずつあったら配ってください。  それで、もう一つ大臣に考えてもらいたいことは、今度法務省も一生懸命になって刑事被害者補償法を法制化することに相なっております。きょう配付されました「自由と正義」の中には、日本弁護士会立案刑事被害補償法案が全文出ています。聞きますと、法務省でも相当の作業が進捗しておるそうでありますが、私は、この刑事被害者補償法案のようなものとこれらの問題とを見比べてみる気持ちになるわけであります。刑事被害者検察陣に何の責任はありません。赤軍派のようなものが乱暴して無事の人が傷を負った、気の毒だからと言うて、数十億の問題でしょうね、これ国会を通れば。数十億の問題。それが出る。ところが、警察が何かの誤りを犯した、裁判誤判をした、そして警察に協力をして被害を受けた。本来ならば——自宅被害を受けた者は別ですよ。この例を見ますと、三十四年は裁判所の中でやられておる、四十三年も裁判所の中でやられた。警備は一体何しておったのか、警察は一体何をしておったのか、こういうことにもなるわけですが、少なくとも、私の言いたいのは、刑事被害については相当超党派の覚悟で、超党派でみなやってやろうと数十億の支出をしようとしている。こちらの方、つまり国検察陣裁判、それが誤判をした、誤りを犯した、間違い犯人をつかまえた、おれが悪かったから弁償するというときには、まことにみみっちい話であります。まことにみみっちい話であります。  ですから、私は、少なくともこの法律案について、いま全部の皆さんに渡ったかどうか知らぬけれども、七つの提案をしておるわけであります。  一つは、検察官証人等に本法律趣旨を告知する様にすること。聞きますと、告知をしておらぬのであります。この法律は第九条で、「この法律による給付を受ける権利は、これを受けようとする者の請求に基いて、法務大臣裁定する。」請求しなければならぬのですからね。わしゃ被害を受けましたからひとつ弁償してちょうだいと言わなければやらぬのでありますから、ちゃんと証人等に証言を求めるときにはその趣旨を告知する。  二番目には、支給事実があったときは被害者請求をまたず検察官立件をして手続をすること。積極的にやれ、請求がなくても立件をする義務がある、そういうふうにしろ。  三番目は、脅迫軟禁等の場合の給付について検討すること。確かにこの法律身体被害がなければいかぬ。傷を負ったか殺されたか、どっちかでなければいかぬということになっています。しかし、その百倍も千倍も、電話をかけておどかしたりあるいは軟禁したり、そういうことは枚挙にいとまがないじゃありませんか。むしろ証人参考人が遠慮するのはそういうときです。傷を負ったからといって駆け込む前に、電話をかけた、やれ道端で立ちふさがった、ヘビを送ってきた、爆弾のような偽造物を送ってきたという場合の方が、よほど百倍も千倍もある。だから、脅迫軟禁等の場合の給付について検討すること。  それからその次が、私の三の問題でありますが、第二条の二項にこういうことが書いてある。「自己実験した事実を供述する者及び他人の刑事事件について裁判所又は裁判官に対し自己実験した事実を供述する者であって証人以外のものをいう。」参考人の定義ですね。「自己実験した事実」というのは一体どういう意味だろうか。つまり実験した事実でなければ、この法律による参考人ではない。実験した事実以外のことで見聞きしたことを言ったことによっては、これは実験にならない。だから補償対象にならない。そういう反面解釈が生まれるのであろうか。また、四条には——四条というのはおかしな条文でございまして、「次の各号の一に該当するときは、前条に規定する給付の全部又は一部をしないことができる。」と書いてありますが、その一号は「証人若しくは参考人又は被害者」、二号は「証人等」、三号は「証人又は参考人」。この間、どうしてこういうふうに書き方四条の一、二、三で違うのかと言ったら、くどくど御説明を受けました。要するに、この法律というものは、できる限り証人等被害について給付をしないで済ませたいという思想があらわれている。実験だとか、四条のやらないときのことを一、二、三で書き方がなぜこう違うのか、私にはわからないのですが、要するに、この思想というものは、なるべくやらないでおこう、できるならばちびりたい、つまり、法律効果が余り広がることを恐れておる、こういう考えが横溢しておると思うのであります。だから、四条の三号はうそのことを言ったときにはいかぬぞということでありますが、少なくとも一、二などについて、たとえば二号が「証人等にも、その責に帰すべき行為があったとき。」となっておりますが、その「責」というのは一体どういう意味であるか。私は法律用語をよくわかりませんで知らぬのですけれども、何とかして少しは減らしたい、何とかして出さぬでおけるものなら出したくない、こういう気持ちがこの法律の中に横溢しておるのではないか。  それから第五は、かねて私の持論でございますが、この間西ドイツ刑事補償法を勉強する機会に恵まれました。私は、この西ドイツ刑事補償法と、私の修正意見について、先般裁判費用弁護士費用なんかは改正をされましたけれども、西ドイツでは罪の軽減された場合の補償をされておるわけであります。つまり、お前は殺人だ、殺人罪だといって起訴され、地裁であるいは高裁で殺人罪になった。ところが最高裁で、殺人ではない、死んだ理由は違っておった、傷害罪だ、こういう場合があり得るわけですね。そういう場合は罪が軽減されたということになる。ところが、いま刑事補償法では、シロで無罪でなければいかぬ、無罪でなければ補償しない、こういうことになっていますね。この前有名な事件無罪になった人がある。無罪になったけれども、併合審理となっていた銃砲等禁止令違反、折り畳み式ナイフ所持罰金五千円とした、こう書いてあります。常識的に言えば無罪になった。けれども五千円の罰金はあった。しかし、これはやはり刑事補償法適用になるようでありますが、私の言うのは、殺人であったのではなくて傷害であったという、罪が軽減された場合も補償対象にすべきではないか。  第六に、被疑者補償規程、これも過ぐる国会で何回も何回も私が言っているのでありますが、検察陣で被疑者と思っておったら間違っておったという場合ですね。それは先般政府部内の自主的な判断をもちまして、検察陣立件にするとか、改善方法が若干とられましたが、この機会に被疑者補償規程を法制化するとともに、これまた私の懸案の警察官の逮捕——これは警察官の不法逮捕ですな。不法逮捕などに対する補償適用せよ。警察官が現場で、起訴に至らない、警察署段階において間違い犯人、不法逮捕、そういう場合がある。えらい済まなんだなで済んでおる。それが社会の世論になりますと、愛知県議会のように、県議会を開いてそれが不法であったことを認め、五十万円の特別支出を県議会で決めなければならぬほど、警察官の間違い逮捕などについては何らの補償制度がないのでありますから、被疑者補償規程を法制化するとともに、これを含めよ。  第七に、刑事被害者補償法を、先ほども触れたわけでありますが、次期国会に提出をしてもらいたい。  いろいろありますが、きのう大分時間をいただきましたので、私はきょうはこれをこの法律案に付帯して、政府側の意見を聞きたいと思うのであります。もしどうも私の言うことがお聞き取れくださらなければ、同僚諸君の御意見を聞きながらこれを附帯決議として出したいと思っておるのでありますが、大臣が、一々ごもっとも、横山委員の言うことは本当にごもっともと言われるならば、ここで終わってもよろしゅうございます。
  28. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいま御提示をいただきました七項目の問題につきまして、これを附帯決議にしてはどうかという御提案であると思うのでございますが、これは委員会においてよく御検討を願いまして、附帯決議になった場合には、私としてはこれは尊重をする、こういうことで申し上げるよりない。いまここで結構でございますと言っては、委員会の審議といいますか、皆さんのあれになるので、なかなかお話を聞いておるとごもっともな御意見が多いと思いますけれども、私がここで結構ですということを申し上げることは、委員の皆様の御研究といいますか、御検討にまたしていただきたいと思います。
  29. 横山利秋

    横山委員 順序があべこべなんですよ。附帯決議にするかせぬかをあなたに聞いているのじゃないですよ。この七項目の内容についてあなたの御意見を聞いているのだから、だから内容についてごもっともと言われれば、それで私はいいと言うのですよ。附帯決議をした方がいいかどうかを聞いているのじゃないのですから、内容についての御答弁をしてください。その御答弁が満足することであるならば、何も附帯決議にする必要はないではないかと私は思っているということを参考のために言っただけなんです。
  30. 俵谷利幸

    俵谷説明員 若干事務的な面から御説明を申し上げることをお許しいただきたいと思います。  御提案の附帯決議の項目でございますが、まず第一に、検察官証人等に本法律趣旨を告知するようにすること、こういうことでございます。各被害者等がこういう法律がある、したがって請求を受けられる……(横山委員被害者ではありません、被害者になる前の問題です」と呼ぶ)そういう法律があることをよく知っておることは必要でございますし、この法律ができました昭和三十三年並びにその後の昭和三十五年でございますが、刑事局長が、この法律につきまして関係者によく周知させるとともに、その運用に十分留意するように、こういう通達を出しておりますが、考え方によりまして、取り調べの前に一々あなたけがした場合はこうですよというようなことを言って、たとえば証人等に刺激を与えると、かえってびびってしまうというような場合も考えられないわけではございませんので、(横山委員「それは言いようですよ」と呼ぶ)その辺はうまく周知徹底をするということになろうかと思いますが、そういったことも考えながら、検察といたしましても十分にこれが徹底するように努めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、そういう措置をとることにつきましては検討に値するんじゃないか、こういうふうに思います。  それから支給事実があったときは被害者請求をまたずに検察官立件をして手続をすること、こういうことでございますが、こういう事件が起きますと、検察庁事件が送られてくるわけでございますから、検事の方もよく把握できるわけでございます。したがって、これを積極的に立件するというような方向に持っていくことは当然だろうと思います。(横山委員「義務づけなければいかぬ」と呼ぶ)先生御提案の被疑者補償規程の問題につきましても、過日大臣訓令を改正していただきまして、そのように改めたわけでございます。そういった点を検討することが相当ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから脅迫軟禁等の場合の給付について検討すること、こういうのが三項目目にございますが、精神的な慰謝料といいますか、精神的な損害につきましてこれをどうするか、こういう問題につきましては、そういう損害が生じた事件、あるいは生じたかどうか、その額がどの程度になるか、こういった問題は、具体的な事件事情なりあるいは具体的な個人の状況なりによって非常に違ってくるということでございまして、類型的にこれを規定するというのは、法律的な技術的な面で困難があるのではなかろうか。御意見は拝聴するに足ることだろう、こういうふうに考えておる次第でございます。(横山委員「どっち向きの答弁だかよくわからぬ、やるのかやらぬのか」と呼ぶ)非常にむずかしいことではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。(横山委員「むずかしいということはやらぬということか」と呼ぶ)検討さしていただくということでございます。(横山委員「前向きにか、後ろ向きにか」と呼ぶ)前も、横も、後ろも、斜めも見ずに、全く公正な立場で検討したい、こういうことでございます。  それから、御指摘の法四条給付制限の規定でございますが、これは御指摘のような面もあるわけでございまするけれども、事情に応じまして裁量的に出さない場合もあり得るということで、国民の感情なり事件の具体的な状況に応じまして適切に運用できる、こういうふうに理解しておりますが、御指摘のような面が感ぜられるということも事実ではないか、こういうふうに考えます。  それから刑事補償法に罪の軽減された場合の補償を検討したらどうか、こういう御提案でございます。御指摘のように、西独の法律にはこういうものがあるというふうに伺っております。その正確な内容につきましてはまだ承知いたしておりませんが、その運用状況につきましても承知いたしておりません。しかし、おっしゃられるような問題は検討に値することだろう、こういうふうに思っております。  それから被疑者補償規程を法制化する、こういう御提案でございます。長年先生が主張しておられるところで、私どももよく承知をし理解をしておるつもりでございまするけれども、これにつきましては、当面、先般の補償規程の改正によりまして相当に賄われておる。まだ満足すべき状態にあるとは思っておりませんが、その運用によりまして、法制化をまつまでもなくやれるのではなかろうか、かように考えております。  それから、警察官の逮捕などに対する補償適用したらどうか、こういうことがございますが、警察官が刑事手続によりまして逮捕して、身柄を釈放して送ってくる、警察段階で釈放してしまったという場合でございましても、刑事補償法によりますれば、犯罪捜査を行ったことになりますので、捜査が終わりましたら速やかに検察官に送致するということになっておりますので、検察官の段階で補償が行われる、こういうことになろうと思います。逮捕されなければ、これは別でございます。  それから刑事被害者補償法を次期国会に提出することという問題でございまするが、これにつきましては、関係省庁と協議を重ねておりまして、速やかに成案を得たい、こういう段階でございますので、御了承いただきたい、こういうふうに思います。事務的にはそのように考えております。
  31. 横山利秋

    横山委員 事務的にはそのように承知いたしますとおっしゃるのですが、今度政治的にはどうなのかという大臣の決断を仰がなければなりません。  その前に、いま事務的にお話しくださいましたが、西独の罪の軽減された場合の補償について、ひとつ次回にあなたの方から、簡潔なものでいいのでありますが、資料をわれわれに、配付を願いたい。これが一つ。それから二つ目は、被疑者補償規程をこの前改正してからどういう結果がその前後に生じたかという資料をひとつ配付をお願いしたい。事務当局に対する二つのお願いであります。  そこで、大臣にもう一度だけ聞きますけれども、三の脅迫軟禁等の場合、これが枚挙にいとまがないということを大臣お忘れになってはいけません。この法律適用されるのは一年に一件もない。三年ごとに一件くらいですね。そんなばかなことはないですよ。その百倍、千倍が脅迫、軟禁の場合なんですね。だから、そこまで及ぼさなければ意味がない。むずかしいことはわかるけれども、やる気があるかないかですよ。  その次は、被疑者補償規程の六の下の方の警察官の間違い逮捕、これはあなたはおれの所管じゃない、警察庁長官の所管だとおっしゃるかもしらぬが、一連の体系なんです。裁判無罪になった場合、検察庁で被疑者補償規程を適用する場合、警察官が間違い逮捕をした場合、この三つは一連の流れなんです。裁判のときだけは補償してある。検察庁の場合だけは被疑者補償規程を内部的に、まあ気の毒したなと言って涙金を出す。警察官の間違いの場合は知らぬ顔、こういう状況なんだから、その一連の体系をとれ、こう言っているのです。だから、大臣が一遍警察庁長官、国家公安委員長とよく御相談なすって、この辺のことを整理をしてもらいたい。  それから七番は、まあ事情は私も知っております。あなたの方でどういう状況にあるか、事情は知っております。だから、これは法務大臣の政治力いかんと言っては失礼な話でありますが、あなたの政治力でどうしても次の国会に出してもらいたい、こういうことなんであります。私の言わんとすることは百も二百もあなたは御存じのことでございますから、次期国会に出してもらいたい。  以上、いかがですか。
  32. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 お配りをいただいた案が附帯決議ということになっておりましたので、先ほどはあのようにお答えをいたしたわけでありますが、内容についてみますと、私はごもっともな点が多いと思います。しかし、ここで私がこれは必ず出しますとか、こうしますとかいうことを申し上げるにはもう少しやはり時間をかして……(横山委員「二十五日までですよ、この法案は」と呼ぶ)二十五日でも、まだきょう一日でも勉強させていただく時間があると思いますから、やはり十分に検討さしていただいてお答えをするのが、責任のある立場の者としては当然じゃないかと思っております。私はお約束をすればやらなければいかぬと思っておるものですから、慎重にお答えをいたしておるつもりであります。
  33. 横山利秋

    横山委員 それでは大臣、いま、きょうでもあしたでもとおっしゃるのでありますから、二十五日の理事会にひとつ御検討の結果をお知らせくださいまして、そしてそこで私どもの判断をいたしたいと思います。  以上で、質問を終わります。
  34. 上村千一郎

    上村委員長 次に、日野市朗君。
  35. 日野市朗

    ○日野委員 本法案についてこれから何点か伺うのでありますが、一応これは予算を伴うものでありますが、今年度は予算がどのくらい措置されておるか、いままでどのくらい措置をされてきたものであるか。この件数を見ると、いままで本法が適用されてきた件数は非常に少ないように理解するわけでありますが、どの程度のものがずっと予算措置をされてきているのか、お答えを願いたいと思います。
  36. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この法律関係の予算でございますが、年間十万円が計上されております。ただ、これは金額的には非常に少のうございますが、補充費系統の予算でございますので、随時大蔵当局から支出していただける、こういうことになっておりますので、たとえば昭和三十九年でございましたか、このときには百二万円の給付をした実例もございます。したがいまして、事案が発生いたしました際にはこれに対応できる、こういうたてまえになっております。
  37. 日野市朗

    ○日野委員 いま伺いますと、毎年十万円という非常に何かかわいらしい予算がついているわけでありますが、いまの国家予算二十数兆という中で十万円というのは、やはり一般の国民に対しても、与える印象からいうといかがなものかというふうに思わざるを得ないのでございます。それに、この法律を見てみますと、どういう場合に給付をしていくかという点についてはかなり法務大臣の裁量にかかわる部分が多いのではなかろうかというふうにも感じますので、そういう点から、これはそういう際に給付をするかどうかということについての迷いが生じたり、場合によって少ない給付の額を定めたりするというようなことがあっては、一応被害者を保護するというたてまえの本法の運用上からこれは好ましくないというふうに考えざるを得ないので、ことしは無理でも、来年あたりからもう少し、別に大盤振る舞いをしろということではありませんが、何としても十万円などという額になりますと、人をばかにするなという感じも若干いたしますので、これをかなり思い切って、使い残したら返せばいいわけでありますから、少し上げる考えがおありかどうか、この辺大臣に伺っておきたいと思います。
  38. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ごもっともな御質問だと思うのでございますが、金額は非常に少ないのでありますけれども、大蔵省との関係では、具体的事実が出て必要とある場合にはこれはもう追加するというか、増額するという話し合いが一応ついておるわけですが、しかしそれにしてもいかにもどうも十万円というのはいささか少額に過ぎるという御指摘はごもっともな御意見として、今後十分に注意をいたしたいと存じます。
  39. 日野市朗

    ○日野委員 この法律案の改正点の中身に立ち入ってちょっと伺ってまいります。  この法律案、非常に簡単なようであります。また今度改正される法律自体も決してむずかしい、また内容の膨大な法律ではないのでありますけれども、私読んでみて、この法律、非常にわかりにくうございます。それで伺ってまいるわけでありますけれども、まず、療養給付ですね。ここには括弧書きがしてあって「被害者が負傷し又は疾病にかかった場合における必要な療養又は当該療養に要する費用給付」こうございます。私は、この用語自体、これは法律用語全体がむずかしいのだと言ってしまえばそれきりなんですが、それにしても、この法律の括弧書きの中の説明療養給付内容が的確につかめる国民は一体どのくらいいるであろうかということに思いをいたしますと、かなりこれは難解であるというふうに考えざるを得ないのでございます。これと同種の規定がございます国家公務員の災害補償法、それにその規定がありますけれども、その規定によりますと、第十一条、この「療養相当と認められるもの」として「左に掲げるものであって、療養相当と認められるものとする。」という規定がありまして、そこには一号から六号まで、「診察」、「薬剤又は治療材料支給」、「処置、手術その他の治療」、「病院又は診療所への収容」、「看護」、「移送」、このように細かく説明がいたしてありますけれども、この証人等被害に関する法律、この本法——これから本法というふうに呼ばしていただきますが、この本法についてはもう少し丁寧にここいらは説明しておかないと、解釈をする場合に非常に疑念が出てくるのではないかと考えられます。この点についてどのようにこの療養給付の中身を考えておいでになりますか。
  40. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように、この給付の種類につきまして、本法は第五条で規定いたしておるわけでございます。療養給付といたしまして御指摘のような用語が使ってございまして、やや難解でございまして、これは御指摘のとおりだと思います。  ただ、この療養給付内容をどういうふうに規定していくかというのは、御指摘の他の法律では法律自体に書いてあるわけでございますが、本法では施行令にその点を詳しく書いておるわけでございます。施行令の第二条に、たとえば療養給付につきましては療養給付内容を詳しく書いてあるわけでございます。二条の一号が「診察」、二号が「薬剤又は治療材料支給」、それから三号が「処置、手術その他の治療」、四号が「病院又は診療所への収容」、五が「看護」、六が「移送」、こういうような事項を列挙いたしまして、これが御指摘法律では法律に入っておるわけでございますが、やや細目的な取り決めということでございますので、本法につきましては施行令に定めておるということでございます。若干その法律と政令の違いはございますが、内容につきましては政令を見ていただければ理解できる、こういうことだろうと思っております。
  41. 日野市朗

    ○日野委員 いま施行令説明がありました。それはそれなりに施行令においても国家公務員災害補償法と同じような取り決めがしてあるのだ、そこで説明がちゃんとしてあるのだということをおっしゃりたいのだと思うのでありますが、要は、これは法律としてこのようになっているとこの解釈の基準を施行令で示すというばかりではなくて、この解釈上にも非常に大きな問題が出てくるであろう。というのは、このような療養補償の場合、従来の民事事件における損害賠償の訴訟等の実務では、この中に慰謝料を含めていく。慰謝料というのは精神的な損害賠償でありますが、その慰謝料を含めていくということに非常に実務が苦労しているという例がございます。でありますから、実務の面はこの法律なんかよりも一歩進んだ形をとっていて、精神的な損害賠償をも認めていく、そしてそれについて、いろいろ障害程度によって図表を組み合わせたりして、現実には慰謝料の額を算定している。これは実務の面での非常にすぐれた仕事だと思うのでありますが、そういう慰謝料の算定もやっているようであります。この療養給付の場合、慰謝料というものは施行令の条文からは読み取れないわけでありますけれども、療養給付の「当該療養に要する費用」という点から見て、こういう精神的なものをも加味しないと、何か片手落ちのような感じが私にはするわけであります。この点について、いかがでしょうか。
  42. 俵谷利幸

    俵谷説明員 療養給付に慰謝料が入るのか入らないのか明示されていないという御指摘でございますが、療養給付は、この法律の条文なりあるいは施行令でもおわかりいただけますように、慰謝料というものは含んでおりませんで、負傷しまたは疾病にかかった場合における必要な療養給付、あるいはその療養に要した費用給付ということで、その内容規定しておるわけでございます。したがいまして、慰謝料は含んでいないというものでございます。もちろん慰謝料につきましては、民事訴訟等で請求できるということでございまして、それはこの法律の第八条の「損害賠償との関係」におきましても読み取れるだろうというふうに考えられるわけでございます。
  43. 日野市朗

    ○日野委員 次に、傷病給付について伺っていきます。  傷病給付の括弧の中を読みますと、「被害者が負傷し又は疾病にかかり治つていない場合において存する廃疾に対する給付」という説明であります。これも非常に難解だと私は思うのですね。これは同じような条文が国家公務員災害補償法にあって、それの概念的な知識を持ち合わせている者であれば、これについて、ああ、あのところに同じような規定があって、あれと同じようなものなんだなということを思い浮かべることができますけれども、一般国民がこれを読んで、果たしてよく理解ができるだろうかということを私は非常に懸念を持つわけであります。これをもっとわかりやすくするためには、本当は国家公務員災害補償法のように詳しい説明といいますか、詳しくこれを規定して、わかりやすくする方がベターではないかというような感じを持っているのですが、その点について、いかがでしょう。
  44. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の御意見はごもっともの点もあるように思いますが、法律でどういうことを規定し、あと細目を施行令なり訓令等で規定するという一つの法技術的なやり方がございまして、国民にわかりやすくするという点では若干難点があるかもしれませんが、技術的に正確なものをつくっていく、そして法律は大網だけを決めていくという考え方をとりますと、こういう規定の仕方もある程度やむを得ないのじゃないかという感じがする次第でございます。この傷病給付の定義にいたしましても、御指摘のような感じがあることはごもっともでございます。  それからもう一つは、この法律は、御指摘のように、警察関係法律あるいは国家公務員災害補償法と一連の法案でございますので、それらと並んでつくられておるといった点もございましてこのような規定の仕方になっておるということでございます。さように御理解を賜りたいというふうに思っております。
  45. 日野市朗

    ○日野委員 それから障害給付、これはいわゆる後遺症に関する規定でありますね。
  46. 俵谷利幸

    俵谷説明員 さようでございます。「被害者が負傷し又は疾病にかかり治った場合において、なお存する身体障害に対する給付」ということでございます。
  47. 日野市朗

    ○日野委員 今度は、障害給付傷病給付、この二つの給付関係についてお尋ねをしたいのであります。  傷病給付は、「被害者が負傷し又は疾病にかかり治っていない場合において存する廃疾に対する給付」であります。通常の損害賠償請求事件または労災保険法などで扱っているいままでのいわゆる後遺症という言葉で表現されてきているものは、一応治癒はした、しかし何らかの後遺障害が残っているという場合をこれは後遺症として扱っているわけでありますが、この傷病給付に言うものは、従来の後遺症とは異なったものとして理解しなければならないものかどうか、伺いたいと思います。
  48. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように、障害給付は、一応治療が終わった、そして後遺症が残っておるというものについて、従来の伝統的な考え方で理解されるべき給付でございます。それから傷病給付と申しますのは、新しく設けたわけでございますが、まだ治っていないけれどもなお実際上廃疾に近い状態にある、もっと申し上げますと、まだ治療の余地はある、事実上、たとえば両眼等が見えない状態になっておる、しかしまだ治療すれば手当ての余地はある、そういう場合に、療養をしながら、かつ廃疾に近い状態補償すると申しましょうか、手当てをしていく、給付をしていくということで新しくつくったものでございます。現実治療はしなければならない、つまり療養給付は受けなければならない、しかし、廃疾に準じた手厚い給付も受けさせなければいけない、こういった状態の者に対して給付を考えようというものでございますから、若干新しい考え方給付を厚くしようということになろうかと存じます。
  49. 日野市朗

    ○日野委員 新しい給付というふうにおっしゃったのでありますが、現在このような制度をとっている法規にはどんなものがございましょう。
  50. 俵谷利幸

    俵谷説明員 現に適用されている法律はございませんが、四月一日から適用されるものといたしまして、国家公務員災害補償法等があるわけでございます。なお、これに並びまして、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律がこの証人被害法案と同じ規定を盛り込もうとしておるということでございます。
  51. 日野市朗

    ○日野委員 こういう考え方は、従来の労災保険の場合、それからいろいろな不法行為による損害賠償請求事件、つまり、民法、自賠法などの法律に基づく損害賠償請求事件といったものよりも一歩進んだところにあるというふうに私は思うわけでございます。そのこと自体は決して非難さるべきことでもないというふうに私は思うのですが、しかし、一方考えますと、国家公務員災害補償法というような法律は、労働基準法よりも労働者の立場、労働条件等をさらに向上させるように努力しなければならないという根拠規定に基づいて、非常に補償程度も高くなったものというふうに私は考えているわけです。そういうふうに理解しているわけです。でありますから、国家公務員の災害補償法の場合は一般の損害賠償事件なんかよりも高い水準が維持されて、私はそれは納得できると思うのです。しかし、一般の民事または自賠責または労災事件等、それらの被害補償はある程度低く抑えられている現状であるにもかかわらず、証人等被害についてのみこのような高い補償水準を法律に観念的に持ち込むということについて、私は若干の違和感を覚えているわけであります。  そこでちょっと伺っておきたいのですが、この法律によるこれらの給付ですね、このような法律を特に定めて高い補償水準を維持しなければならないと考えるその根拠は一体どこにあるのだろうか。そのことについて若干の疑問なきを得ないのでちょっと御説明をいただきたいと思います。
  52. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の点でございますが、労働者等の災害補償等についてどういうふうな補償内容を盛り込んでいくか、これは私どもの所管ではございませんで、労働省あたりで御検討いただくことだろうと思います。私どもの法律関係でこういうものを立案いたしておりまするのは、刑事事件の公正かつ適正な裁判が運営されますように、証人等がいろいろな危害を加えられる、そういうことのために証言等が曲げられる、あるいは出頭等が困難になる、そういうことを排除、防止いたすために相当補償をする、こういうことでこの法律ができたわけでございまして、その内容を実態に応じましてより合理的にかつ充実していくというのが私どもの立場でございますので、さように御理解いただきたいと思っております。
  53. 日野市朗

    ○日野委員 国家公務員の災害補償法や何かは、労働基準法、さらに憲法に基づく水準の引き上げ、労働条件の引き上げというようなことは、実定法上の非常に強い根拠を持っていることはわかるのです。ですから、そっちの方でこういう高水準の補償給付、これを維持するのは非常によくわかるのですが、果たしてこのような警察官に対するものとか証人に対するものは、ここまできてはちょっと現行行われているいろいろな同種の給付の体系、それから損害賠償の体系、そういったものから見ると、ちょっと高過ぎるように思うのですね。この法律による現在までの適用例なんかを見ると非常に少ないようでありますし、額だって必ずしも多くはないように思うのです。こういう法令が特に先走りをしているような感じがぬぐえないものですから、証人の出頭義務を確保するとか、参考人の出頭、供述を確保するというようなそういったことがそれなりの価値があることはわかります。しかし、実定法上の価値がこれほどの給付によって果たして裏打ちされるほどのものであろうかどうかという点について疑問があるわけです。ですからその点について伺っているのです。
  54. 俵谷利幸

    俵谷説明員 こういった刑事裁判の適正な運用に協力して、それが原因となりまして傷害を受けたり疾病になったりした。そういう者にどういう内容給付を、補償を盛り込むか、こういうことでございまするけれども、私どもは、いま内容が厚過ぎるのではないか、こういう御批判をいただいたわけでございますが、むしろ低過ぎるんじゃないか、こういう御批判も実はあろうかと心配しておったわけでございます。本当にこれが十分なものであって、刑事補償がより円滑に行われるということであったらはなはだ幸いである、かように考えざるを得ないわけでございます。ほかの法律関係でどうかということになりますと、これは所管省庁でお考えいただくという以外に私どもとしましてはちょっとお答えしようがないと思います。もっとも関連する法律につきましては、それぞれ各省庁と連携をとっておりますので、私どもの方でこういう改正をやっておるということにつきましても、警察当局なりあるいは他の所管省庁におきましては承知しており、また情報交換しておる、こういうことでございます。
  55. 日野市朗

    ○日野委員 国家公務員災害補償法によりますと、傷病補償、これについてもかなり事細かな規定がございます。それによりますと、「職員が公務上負傷し、若しくは疾病にかかり、又は通勤により負傷し、若しくは疾病にかかり、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後一年六月を経過した日において次の各号のいずれにも該当する場合又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなった場合には、国は、その状態が継続している期間、傷病補償年金支給する。」ということになって、一号と二号にそれぞれかなり明瞭な要件の規定があるわけです。ところが本法についてこれを見ますと、さっき山崎委員質問に対しても一年六月という言葉が出てきていたようでありますけれども、この一年六月がこれから政令によって定められる。一応傷病の開始から傷病手当支給の基準時までは一年六月が一応の基準であるというふうに理解してよろしいのでございましょうか。
  56. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のとおりでございます。
  57. 日野市朗

    ○日野委員 どうもこの法律を読んでみますと、一年六月という一応の基準、これはこの法律からは必ずしも明らかではないわけですね。どうも、警察官の職務に協力援助したという同種の法律ですね、これを見ますと、これは国家公務員の災害補償法を基準とするようなことが、提出されている資料から読み取れるわけでありますが、法務省でお出しになったこの資料からは必ずしもそれが明確でないし、法律の条文上もこう書いてありますね。「警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律による災害給付に関するこれらの事項を参酌して政令で定める。」第六条でありますが、そうすると、どうも考え方としては迂遠なので、場合によってはこの一年六月という期間、これが短縮され、延ばされるというようなことがあっても全然おかしくないような感じを受けるのであります。その点について、この一年六月というのは、もうすでに確定した方針としてお持ちなのかどうか、その点について伺います。
  58. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この傷病給付をいつから開始するかという点につきましては、御指摘国家公務員災害補償法、それから御指摘警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律、これと並んで同じ線で考えておるわけでございます。警察関係の法令につきましても、その実施開始時期等につきましては、同じように政令で定める、こういうことになっておるわけでございます。国家公務員災害補償法につきましては、これは法律で書いてございますのでございますが、その内容につきましては、本法案と全く同じということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  59. 日野市朗

    ○日野委員 傷病給付について、具体的な内容について伺います。  別表ですね。この資料に出されております九ページの別表でございますが、これは、施行令別表であろうと思います。この一級の一に「両眼が失明したもの」というふうな規定があるわけです。この両眼の失明というこれを一例として考えてみたいと思うのですが、両眼が失明状態にあって、これが治癒される可能性があるということで現在治療中である。そのうちに一年六カ月が、これは確定したものではないと思いますけれども、まず一年六カ月が経過した。それで、いまだにまだ失明中であるが、これが治癒されて視力が回復する可能性があるということで治療している場合、そのような場合は、これは傷病手当、これも当然のこととして支給されるのだ、このように伺ってよろしゅうございましょうか。
  60. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように傷病給付支給される、その上に療養給付支給される、こういうことになるわけでございます。
  61. 日野市朗

    ○日野委員 それで、この両眼がそのうち治療して回復した。そして、視力が落ちるかどうかは別として、視力は一応回復したという場合、そのような場合はどうなりますか。
  62. 俵谷利幸

    俵谷説明員 そのように治癒いたしました場合に、今度は廃疾が残ることになりまするから、その等級に応じまして、障害給付支給される、こういうことになるわけでございます。
  63. 日野市朗

    ○日野委員 この改正案の条文を見ますと、必ずしもそこのところは明らかではないのですが、一方国家公務員災害補償法規定なんかを見ますと、こういう疑問が起こってくるわけですが、まず二つの傷害がある。二つの傷害を受けた。たとえば、手と足両方に傷害を受けた。そして片っ方、一上肢を失った。一上肢、これの方はもう傷口もふさがってこれ以上治る見通しはないということで、そっちの方の治療はとめている。それから下肢の方は現在治療中である。こういう場合、普通の民事の損害賠償の場合なんかは、この場合も一応まだ治療中として扱っていくというふうな考え方が、これはほぼ確定しているように思うのであります。こういう場合は本法なんかの適用ではどういうふうになっているのでしょう。
  64. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のような状態でございますると、なお治癒しない傷病があるということでございまするから、療養給付を受けられるということになります。それから手の方は廃疾という状態が残るわけでございまするから、これは等級に応じまして傷病給付対象になり得る、かように考えるわけでございます。
  65. 日野市朗

    ○日野委員 ちょっとさっき聞き漏らしましたので、伺っておきますが、療養給付で栄養費、雑費というようなものが施行令の中にも見当たらないようですが、従来どういう取り扱いをしてきたか、これからどういう取り扱いをしていくか。それから温泉治療というようなもの、これをどういうふうに扱ってきたのか。それからあんまさんの費用、これはどういうふうに扱ってきたのか、これからどうなるか。
  66. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この法律施行令の第二条の解釈によりまして、たとえば温泉治療等がその症状に対しまして相当であるかどうかというようなことによってそれが認められるというようなことになるであろうと存じます。  それから栄養剤というようなものも、治療に必要であるかどうかということで担当医師の判断等客観的に相当と認められるようなものにつきましては、これが療養給付内容といたしまして入ってくる、かように理解をしております。
  67. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  68. 上村千一郎

    上村委員長 次に、飯田忠雄君。
  69. 飯田忠雄

    ○飯田委員 このたびの法律案を拝見さしていただきましたが、この御改正になる点だけなら余り問題が起こらないと思います。しかし、本法そのものにつきまして検討してみますと、まだまだほかに改正すべき重要な点があるのではないか、こういうふうに思われるわけです。  したがいまして、そういう点につきまして二、三御質問申し上げますが、まずその前提としまして、この法律案法務省という銘を打って出されておりますので、この法律提案なさる部局の問題について御説明をいただきたいと思います。つまり、法律案は政府、内閣からお出しになるのですが、その法律案の提出する法的根拠はどこにあるのかという問題、またどの機関が出すのが正しいのかという問題、そういう問題についてまずお尋ねいたします。
  70. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御案内のように、各省庁それぞれ所管事務が行政組織法なり設置法によって決まっておるわけでございます。法務省につきましては法務省設置法でその所管事務が決まっておるわけでございまするが、設置法第二条の九号に「司法制度及び法務に関する法令案の作成に関する事項」というのが法務省の所管事務の一つとして提示されております。本法の立案につきましては、この条項に従いまして当省の所管になるもの、かように考えておりますし、従来そのように扱ってきたわけでございます。
  71. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私は、法律体系というものには二つの体系があると考えるのです。一つは支配者の立場からの法律体系、もう一つはいわゆる明治憲法下でいう国民、つまり被支配者の立場からの法律体系とあると思います。従来の憲法のもとにおける法律体系でありますならば、政府側で一方的にお決めになって国民の中にどのような差別をなさっても差し支えはないと思いますが、現在の憲法下における法律体系ではそうはいかぬと思うのですね。御承知のように、現在の憲法ではすべて国民がもとだ、こうなっております。国民を離れて政府もないし法律もないのでございますので、その国民の立場からすべて考えるということが必要ではなかろうかと思います。  そこで問題になりますのがこの証人なんですが、証人といいましても、必ずしも刑事裁判における証人だけとは限りません。民事裁判のものもございますし、あるいは議院証言法による証人もございますし、あるいは裁判官弾劾法による証人もございますし、あるいはまた国家公務員法による証人もございます。しかも、こうした証人は全部宣誓義務を負わされておりまして、もしうそをつけば法律による処罰がなされる、このようなものでございます。そうしますと、証人というものは、刑事裁判証人であろうと、民事裁判証人であろうと、議院証言法の証人であろうと、弾劾裁判証人であろうと、証人としては同じ地位だという認定をせざるを得ないわけでございます。ところが、この法律を見ますと、刑事裁判証人だけが保護される、こういうことはどうでしょうか、憲法の法のもとにおける平等、こういう問題に抵触いたさないでしょうか。どうですか。
  72. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の問題は、立法政策の根幹に触れるようなことではなかろうか、かように感じておる次第でございます。おっしゃるように、あらゆる法律なり行政は国民のために行われるということだろうと思いますが、私どもも公務員の一人といたしまして、国民の公僕の一人ということで、国民のためになる立法をし行政を行っていくという責任があるだろうと存じております。  そこで先生御指摘のように、証人という点に視点を置きまして、これを一律に、一律にと申しますか、証人被害補償ということで考えていく、こういう立場も十分あり得るというふうに理解いたします。ただ、この証人被害等につきましてどのような被害の場合の給付をつくっていくか、どういう内容を盛っていくかという問題は、その前に、この証人制度を、規定といいましょうか、各分野における証人がどのように理解され、どのような証言を要求してどういう措置を講じておるか、それに対してはどのような保護をすべきか、こういったことが各証人制度におきまして考えられておるのではないか。刑事事件に関して申しますると、刑事訴訟法によりまして実体的真実をあくまでも追求する、こういう厳しい真実発見義務があるわけでございます。それにふさわしい証言を求める、そういたしますと、厳しい場面に立たされた証人被害を手厚く補償しなければならない、こういう実体的な必要性が出てくるわけであります。こういった実体的な必要性なり実質的な理由、要請なり、そういうものが各証人制度によって若干の違いがあるんではなかろうか、かように考えられるわけでございます。  それはそれといたしまして、刑事事件に関します証人被害給付につきましては、たとえば暴力事件等につきましては証人が非常に危険な目に遭わされる、あるいは傷害を受けるという具体的な必要性なり実態があるわけでございます。これに対して、とりあえず立法によりまして、証人被害補償を立法化してやっていくということにつきましては、これは合理的な理由がある、そういう場合には、他の場合に補償が行われないといたしましても、憲法十四条の平等の原則に反しないだろう、そういう趣旨最高裁の判例もあるように理解しておりますが、そういうことで憲法に抵触するようなことはないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  73. 飯田忠雄

    ○飯田委員 ただいまのお話によりますと、刑事証人は非常にむずかしい、また厳しいものだから特に保護する必要がある、ほかのものはその必要はないように聞こえますが、しかし、こういう証人の性質につきましては法の立場からは同じだと思います。うそをつけば刑罰で処罰される。被害をこうむるかどうかという問題は、これは別の問題なんですね。被害をこうむるという問題は別の問題ですが、どの証人にもあるのです。たとえば、このたび裁判官弾劾裁判が行われました。この裁判において証人の山本思外里、読売新聞の社会部長ですが、この人は、弾劾裁判所の方からの要求である、いわゆる被訴追者に接触した新聞記者、その名前を明かすようにということを言うたにもかかわらず拒否しております。その拒否した理由は、証人として出てくれば身辺的な迫害が及ぶ、だから記者を保護するためにできない、こういう証言をしておるのです。このことは、ああいうような刑事裁判でないものでも証人というものに対しては危害が及ぶ、それを明らかに示しておるものと言わなければなりません。また、いわゆる議院証言法によりますところの証人にいたしましても、いままでの事例では身辺的な迫害が来たということは新聞に載っていませんけれども、しかし、重大な身辺上の迫害あるいは経済上の迫害が及ぶということを示すような証言を公判廷で述べられております。証人というものは、その証人に対してあらゆる迫害が来る、それはどの証人だって同じなんです。そういう状況下にありまして、必ずしも刑事証人だけが保護されなければならぬということではないと思います。  それからもう一つ、そういうように国側で刑事証人だけが重要だというふうに決めてしまって、その者だけを保護する、ほかの証人に対しては顧慮しないという考え方は、これはやはり支配者の立場に立つ考え方です。国民の立場に立っていない。そういう点におきまして、私は憲法の前文並びに十四条、これに触れる疑いが多分にある、こう思うのです。この問題は、法務大臣がおいでにならぬので、法務大臣の御意見はお伺いするわけにはいきませんが、法務大臣の御答弁をいただくために留保いたしたいと思いますが、その前にそれに関してお答え願うことがありますればお願いいたしたいと思います。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
  74. 俵谷利幸

    俵谷説明員 ちょっと御説明が足りなくてあるいは誤解を招いたのではないかと心配するわけですが、私は、刑事事件だけを優先してやるんだ、こういうつもりで申し上げたのではございませんで、法務省の所管事務といたしまして刑事事件に関する証人被害手当てをするという仕事がございますのでこの作業をしております、こういうことでございます。もちろん他の分野におきます証人につきましては、それぞれ重要な事項について証言を求めるということでございますし、それぞれ具体的な実情があるわけでございます。それを否定しておるわけではございませんで、ただ、それは所管省庁が別にあってそこがおやりになることであろう、こういうふうにいまのところ、きわめて役人的かもしれませんが考えておるわけでございまして、さように御理解いただきたいと思います。これを否定するわけではございません。  それから、憲法云々の問題につきましては、そういう実体的な必要性があり緊急性があるという場合におきましては、他の取り扱いは別といたしまして、こういう給付充実を図る、こういった取り扱いをしても憲法違反にはならないのではないか、こういう判例の立場に立ちまして申し上げておる次第でございます。
  75. 飯田忠雄

    ○飯田委員 ただいま最高裁の判例があるとおっしゃいましたが、こういう問題についての最高裁の判例は私寡聞にして知らないのですが、どういうのでございますか。
  76. 俵谷利幸

    俵谷説明員 私、具体的にこういう案件について判例があると申し上げておるわけではございません。そこは、再び言葉が足りなかったかと思いますが、私が引用と申しますか、申し上げております判例は、昭和三十九年五月二十七日の最高裁大法廷判決でございます。この趣旨は、憲法十四条一項の平等の要請は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り、差別的な取り扱いをすることを禁止する趣旨と解すべきである、これを反面解釈で、こういう趣旨の判決もございます、それに従って考えますれば、刑事事件証人等につきまして被害補償をすることも憲法違反ではなかろう、こういうふうに申し上げておる次第でございます。
  77. 飯田忠雄

    ○飯田委員 ただいまの判例、合理的な何とかとおっしゃいましたね。これで、たとえば現在証人にはいろいろの証人がある、そのいろいろの証人を等しく保護する方が合理的なのか、一つだけ取り上げて刑事証人だけを保護するのが合理的なのか、この点は憲法の精神からいってどちらが合理的でしょうか。
  78. 俵谷利幸

    俵谷説明員 その場合にどういうふうな政策をとるかというのが立法政策ということになるのではなかろうか、どれをとりましても憲法十四条に直ちに違反するということではなかろうというふうに思います。
  79. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これは大変重要な問題でございます。私はここで水かけ論をする意思はございませんが、こういう一つの国民が等しく国のために証言台に立って証言するという奉仕をする、そのことにおいては変わりはない。そういう証人が、ある場合には保護されある場合には保護されないという現在の法律体系そのものに疑問を持つのです。先ほど私が、この法律案をお出しになる政府の部局はどこかということをお聞きしました。法務省だ。しかも、これは法務省の所管に限って出すのだとおっしゃいました。今日そういうことをしろということが一体憲法出どこに根拠がありますか。これは行政組織法第二条の趣旨はどうなっておりましょうか。これは総合的にやるのじゃありませんか。
  80. 俵谷利幸

    俵谷説明員 国全体として立法政策をどうするか、こういう問題になりますと、これは行政組織の頂点にあります内閣等におきまして調整をして方針を決定する、こういうことになるのであろうと存じます。ただ、現在までの立法の運用の実際と申しますか、運用の実情は、各省庁が所管事務に関しまして必要な立法措置も講ずる、こういうことになっておることを申し上げておるわけでございます。
  81. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いまの御答弁は、これは先ほどから私がしばしば申し上げております支配者の立場からの考え方なんです。こういう国民全体の問題について、それから証人といいましてもあらゆる国民が証人に立つ可能性がありますから、国民全体の問題です。こういう問題につきまして法律をおつくりになるときに、法務省の所管だけでやるとか、農林省の所管だけでやるとかいったような、一つの省のからにこもった法律案を出されましたのでは、これは一つの部局ごとに同じ事項について法律がたくさんできるということになります。そのような煩わしい法律をつくること自体が、国民のためには大変不幸なことではありませんか。私は、こういう同じ事項については一本にまとめるのが当然政府の役目である、そういう法律案をお出しになるのが正しい、こう考えますが、どうです。
  82. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の点につきましては、最初に申し上げましたように、立法政策の基本に関することでございまして、これはいろいろお考えがあろうと思います。御指摘のような御意見につきましては、傾聴に値すべきものであるということは最初に申し上げたとおりでございます。ただ、私が申し上げましたように、法務省の所管事務につきましてはこちらでやっておりますが、これは関係各省庁あるいは同じような法律をつくるべきじゃないかというような、各省庁、これは御指摘のことにつながるかと思いますが、これを全然無視してあるいは連絡もとらないでやっておるということではございませんで、たとえば先ほど来申し上げておりますように、国家公務員災害補償法でございますとか、あるいは警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律の一部の改正、こういう問題はこの問題と同じ系統に属しますので、そういう事柄につきましては現在でも連絡をとりながらやらしていただいておる、こういう実情でございます。
  83. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私が御質問申し上げましたのは、いまのようなことじゃないのです。たとえば証人につきましてはいろいろな証人ございますね。刑事訴訟法に基づくもののほかに、議院証言法、裁判官弾劾法それから人事院規則、これは規則の十三の二、規則の十三の一、この二つ、すなわち、勤務条件に関する行政措置の要求、これの八条です。それから不利益処分についての不服申立て、これの三十八条、四十一条、四十四条以下四十八条まで、そこにやはり証人が決められておりまして、この証人はすべて宣誓義務を負う、そして虚偽の陳述をしたときには法律の制裁を受ける、こう書いてあるのですよ。証人の地位については全部同じなんです。そうでありますならば、証人が人身危害をこうむったときに、これに対して補償する制度というものは一本でなければならぬ。国では一本でなければならぬのです。これは警察官仕事に援助したとか、海上保安官の仕事に援助してけがしたとか、それとは違う。あれは証言の問題じゃないのですよ。事項が違う。この場合は同じく証人の問題ですから、証人の問題についてはやはり一本にまとめた法律でないことには、国民の側から見ればまことに不公平だ、奇異な感じがいたします。  そこで、現在の行政組織というものが、実は国民の立場から本当に考えておるかどうか疑わしいと私は思うのです。こういう法律案を政府でお出しになる場合は、証人というものが幾色かあるならば、これは各省が寄って閣議においてお決めになる、当然のことなんです。それをおやりにならないで、法務省の所管だけだということでお出しになるから、こういう不公平な憲法違反の疑いがある法律になってくるというふうに私は思います。この点につきましては大臣に御答弁をお願いいたしたいのでよろしくお願いします。  これは繰り返しておっても始まりませんので、次に進みます。  証人被害についての給付法律は、これによりますと、刑事事件証人と以外の証人にも適用するといいのですけれども、そうなっていない。そこで、そういうように法律改正をなさったらどうか。つまり「証人又は参考人の供述及び出頭を確保し、もって刑罰法令の適正かつ迅速な適用実現に寄与する」、こういうふうに法律に書いてあります。その目的を達成するために、刑事事件に限らないで、民事事件においても人事事件においても行政事件においても同様なんだから、それを全部含めた法律に改正することができませんか。どうです。
  84. 俵谷利幸

    俵谷説明員 私どもの所管といたしましては、現在出しております案のように、当面刑事事件につきまして証人被害給付を行うということで足りるのではないか、かように考えておるわけでございます。御意見は傾聴に値すべきものがあるということは先ほど来申しておるとおりでございます。
  85. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これは御意見は傾聴に値するといったような問題じゃないのですよ。これはもう明らかに差別です。証人というものは国民が皆つき得ますね。その中で刑事証人という、これは身分じゃありませんか。刑事証人という身分とそれ以外の証人という身分によって差別をしておる。これは憲法十四条をごらんになってください。どうなっていますか。
  86. 俵谷利幸

    俵谷説明員 憲法十四条は、法のもとにおきまして何人も平等を保障する、こういう規定であると承知いたしております。証人につきましては、身分であるかどうか議論があろうと思いますが、自己の経験した事実を証言する立場にある者ということでございます。身分と言っていいかどうか若干の疑念があるのではないか、かように考えますが、いずれにしましても、当面、刑事事件証人につきましてはこういう被害補償をする必要性がある、かように判断しておるわけでございます。
  87. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私がいま身分と言いましたのは、証人そのものの問題じゃないのですよ、何人かの証人がおるのに、その中で刑事証人だけを保護されるんだから。刑事証人、民事証人、人事証人、こうありますよ。その刑事証人ということが一つの身分に当たりはしないか、憲法に書いてある身分に当たりはしないかということをお聞きしておるので、これは私は当たると考えますが、皆さんの方で当たらないとお考えになるなら、これはもう一度憲法をよく御研究願いたい。憲法の前文に立ち返って、日本の憲法並びに法律はだれのために存在し、だれのためにつくるのだ、このことを御理解願いたいと思います。これも最終的には大臣がおいでにならぬので、どうもこれはらちが明かぬので、大臣の答弁を求めます。  次に進みますが、議院証言法だとか弾劾裁判法にも証人規定しております。この証人被害に遭った場合に、今度出される法律を改正して、それによってこれを救済できないか、こういうことについて事務当局に私、前にお尋ねいたしました。そのときの御返答はこういうことだったのです。議院証言法とか弾劾裁判法というのは国会の方なんだ、国会の方で国会に呼び出されてなした証人だから、それは国会がめんどうを見るのがあたりまえなんで、国会の方で法律をつくったらいい、こうおっしゃるのです。ところが、私、後で考えてみた。いろいろ研究してみましたら、どうもそうならない。つまりいまここで被害に遭った証人給付を与えるのは何かということを考えてみますと、証人被害は国会の外で犯罪によって負うのですね。身体にけがを受けたり命をとられるのですから、これは国会内の問題じゃありません。国会外の問題。しかも国会外で起こった犯罪であります。その犯罪によって国会で証言した証人がけがをした、それに対して給付をするという問題ですから、その国民に対してお金を与えるという問題です、具体的にですよ。国の職員、たとえば衆議院の職員に対して月給を払うという問題とは違う。これは衆議院の内部の問題じゃない。外の国民の問題です。それに金を支給するという問題は、これは明らかに行政事務じゃありませんか。これは立法じゃないのです。行政事務です。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕 行政事務を国会がやる必要はありません。それをやれば、かえって憲法違反だ。行政事務は内閣の所管であります。内閣の所管であるなら、たとえ議院証言法による証人であろうと、弾劾裁判法による証人であろうと、これは全部この法律補償されるべきだ。もしそうでないということをおっしゃるなら、私は反論したいのは、現在刑事証人というのは裁判所で証言するのです。司法機関で証言する。司法機関で証言する者は政府で補償して、立法機関で証言する者は補償しないという、そういうこと自体矛盾じゃありませんか。合理性がない。私はそのように考えるのですが、どうでございましょうか。
  88. 俵谷利幸

    俵谷説明員 裁判所で原因があって、それが原因となりまして傷病を受けたその者に対する給付を行政機関がやっておる、それはおかしいじゃないか、こういう御質問だろうと思います。裁判所は、御案内のように司法権を純粋に行使するということでございまして、それに伴いまして派生しました行政的な事柄につきまして、あるいはそれの立法事務につきましては法務省が担当するというたてまえになっております。したがいまして、そういう問題も法務省なり法務省管下の機関が行っても別に不都合はないんではないか、かように考えるわけでございます。  それから、国会の議院証言法等によりまして、傷害を受ける証人等がおられた場合に、それをやはり行政機関がやっていいのではないか、こういう御質問かと思います。御指摘のような御意見でございますと、要するに、傷害とかそういうことが発生するのは多くの場合国会の外だから、それは行政機関がやってもいいのじゃないか、こういうことじゃないかと思いまするが、証人被害を受けた場合に給付する原因と申しまするものは、それが発生したところでそれに関する給付を行うということになってまいりますると、国会のことを申して大変恐縮に存じまするが、国会が議院証言法等について御所管になるということであれば、国会でお手当てになるのが当面の措置ではなかろうか、かように考えるわけでございます。どういう説明をしたか存じませんが、恐らくそういう感覚で申したのではなかろうかというふうに思います。法務省でやれと大変ありがたいお言葉をいただいておるわけでございまするけれども、現在におきましては、私ども法務省の所管になる、かようには考えていないわけでございます。
  89. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これは法務省の所管とかどうとかいう問題ではなくて、内閣の所管ではないかということを申し上げているのです。内閣の所管。これは行政ですね。明らかにこれは給付行政です。行政であるならば当然内閣が責任を負うべき問題で、それをどこの省でおやりになろうと、それは内閣内部の問題、国民の知らぬことです。どこでも構わないのです。国民としては、とにかく証人として出ていってやったためにけがをした、あるいは殺されたという場合には補償してほしい、こういうことはどんな証人であろうと同じ要求だと私は思います。それをどこが補償するかどうかといったような問題を内閣内部の立場で云々されるのは、これはやはり明治憲法流の考え方だと私は思います。あくまでも支配者の立場から、官僚的な立場からの考え方だと思います。国民の立場に立っていないというふうに考えます。これはここで議論しておりましてもなかなか論議が尽きませんが、この点も根本的に内閣自身で、法務大臣ばかりではなしに、総理大臣以下全員で考えていただかないと困ると思う問題です。  そこで次に移ります。証人等被害についての給付に関する法律の第七条から八条の規定がございます。これは証人等被害についての給付に関する法律によって被害者補償をするのを排除しておる規定であります。つまり、ほかの方で損害賠償をもらったらもうこの法律によるところの給付はしない、またほかの法律で別の金がもらえるのならこれは支給しない、こういうことが書いてある条文でございます。  そこでお尋ねいたしたいのですが、証人等被害についての給付に関する法律は、これは犯罪被害者補償法の特別法だと私は考えるわけです。犯罪被害者補償法という法律がある場合は、この二重給付を排除してもいいと思います。それは損害賠償をもらえばそれで済むのですから、あるいは犯人が払えば済むのですからいいのです。ところが証人等被害についての場合は、犯人が払ったから済むといったようなものじゃございません。これは国が証人として来てもらって証言をしてもらった、そのおかげで裁判がうまくいった、こういう利益を与えている問題です。つまり国に奉仕している。この証人が国に奉仕したために殺された、あるいはけがをした、こういうのでありますならば、当然普通の一般法としての犯罪被害者補償法の原理とは違った原理が適用にならなければならぬ、こう思います。この現行の出ております証人等被害についての給付に関する法律考え方は、一般的な犯罪被害者補償法の考え方でどうもつくられておるように思うのです。そして国に対する奉仕に対する感謝の念とかお礼の念とか報償という点は一つも含まれておりません。国民は何も国のためにわざわざ出てきて奉仕して証言する必要というものはないわけだが、もともと裁判をうまくやるために全体の立場として、国民に対して、済まぬがどうぞ出てきてくれないかということを国が要請しているのですから、その要請に対して出ていった国民が受けた犯罪効果の問題と、それから何にもないときに普通の犯罪によって受けた被害者の犯罪効果の問題は同じじゃないはずなんだね。当然、証人等被害についての給付の場合は一般の被害者補償法とは違った原理、つまり二重給付を認めるものでなければならぬ。ほかの方で損害賠償をお取りになっても、それとは別に、国のために尽くしたのだから、そのためにけがしたのだから補償してあげましょう、こういうものでなかったら筋が通らぬわけです。そういう私が申し上げましたような立場に立って法律がつくられておりますのならば、これは国民の立場の法律であります。したがいまして、当然七条、八条というものは削られてこなければならぬ。  そこで、私は提案をいたしますが、いま申しましたような理由で、この証人等被害についての給付に関する法律は犯罪被害補償法の特別法なのだから、七条及び八条は削除するというふうに改正なさるのが正しいのではないか、こう思います。どうですか。
  90. 俵谷利幸

    俵谷説明員 犯罪被害者補償法につきましては、いまどういう内容にするかということを含めまして法務省関係担当官のところで慎重に検討しておるところでございます。これと証人被害給付法律との関係がどうなるか、これは将来の問題でございます。ただ、現在のこの法律考え方は、刑事司法の適正かつ公正な運営に資するということでございまして、この給付の財源も国民の税金から支給されるということでございますから、国民一般の公平感覚、社会的公正、公平の感覚を損なうようなものであってはならない、こういうような配慮もあろうかと存じます。そういうことで、これは不法行為によって被害が生じて、それに対して給付するということでございますから、不法行為をやった者に対して、それから賠償をさせるというのがもともとの筋でございます。これから賠償を受けた場合には、それを控除して、二重の、重複の給付状態は避ける、こういうことで七条、八条が規定されておるというふうに理解いたしております。そういうことでございますので、現在のたてまえといたしましてはこの七条、八条の規定でよろしいのではないか、かように考えておる次第でございます。
  91. 飯田忠雄

    ○飯田委員 そうすると、証人として出てきて証言をしてくれたためにけがをしたけれども、それはもし犯人が賠償すればそれでもう補償はしてやらぬ、それが筋道だ、こういうお考えのように私聞きましたが、それでよろしゅうございますか。
  92. 俵谷利幸

    俵谷説明員 まず、不法行為を行って、その者の行為によりまして傷害なり疾病が発生したということになりますと、その原因者が賠償の責めに任ずるというのは、事柄の当然ではないかというふうに考えます。それとは別に、証人被害給付についてはこれを手厚くして、公正な証言なり司法の捜査機関の活動が十分公正に行われるように、協力等が得られるようにしようというのが趣旨でございますので、加害者本人が払えばそれでいいんだ、こういう考え方でないことはもちろんでございます。そのためにこの法律をつくっておるわけでございますから、それとは別に証人として被害を受けた場合に補償しようというのがこの法律の精神であろう、かように理解しています。
  93. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これは法務大臣の先般のお話でも、犯罪被害者補償法、これは検討中だというお話がございましたし、ただいまもそういうお話がございました。この法律というものは、学者がいろいろ研究をいたしまして、大体の内容はわかっているのですよ。私もこの問題は研究いたしまして、今度私の方の党から法律案として出しております。提出しております。こういう法律内容というものは、決して国民が国家に奉仕したからその分について補償するというのじゃなくて、犯罪に遭って非常に気の毒な立場にあるので補償をするという、いわゆる保険的なあるいは福祉的な意味を持つ。しかしこの証人等被害についての場合は、福祉的な問題じゃないでしょう。これは明らかに国家に奉仕したそれに対するお礼じゃありませんか。この場合に、別に被害をこうむらなかった場合は、こうむらなかったのだから旅費その他の点でお礼をして済ませる。しかし、証人がけがをした場合、死んだ場合は、これは当然そうした旅費、日当その他を支給するという程度じゃ済まない。当然もっとお礼の程度を深めていかなければならぬ、こういう思想だと思うのですよ。この問題は決して犯罪被害者補償法のようなそうした福祉的な原理からできておるものじゃない。むしろ報償的な意味が多分に含まれておると考えなければならぬ。そうでなければこの法律は要らぬ。たとえば犯罪被害者補償法ができましたときにはこの法律は要らぬということになる。そんなことにならないでしょう。あれができてもこれは十分に存在価値があると思いますよ。どうですか。
  94. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように犯罪被害者補償法と考えられております補償法と、それから証人被害給付に関する法律、この趣旨は全く別のものでございまして、それぞれ存在の意義があり、その意義に従って運用されるべきものだ、かように考えております。
  95. 飯田忠雄

    ○飯田委員 そこで、そういう法律の精神でございますならば、当然私は現行法は改正をいたしまして、現行法の七条、八条は削除するという改正案が出てこなければならぬと思います。これはぜひ御検討を願いたいと思うのです。いまこの改正案をお出しになったので、これだけの改正案だけじゃ足らぬじゃないかということを申し上げている。まだたくさんあるのですよ、改正すべき点は。その点をお考え願いたい。しかも、これは法務省だけの問題じゃないと思いますが、この現行法だけの問題につきましても法務省の御責任においてそういう問題は考えていただかなければならぬ、このように考えておるわけです。この法律につきまして根本的な問題、まだ未解決の点が相当ございますが、その次に進みます。  まず犯罪事実の範囲につきまして、法律は「他人からその身体又は生命に害を加えられた場合」、こういうふうに限定しております。証人参考人に対する加害としましては、殺人傷害だけを予定しておりますが、そのほかにも証人が受ける被害というものはたくさんあると思うのです。たとえば今度の国会における証言につきまして、いまのロッキード事件においていろいろ裁判が行われておるその中における証言につきましても、圧迫が相当あった、つまり国会でうそを言わなければ首にしてしまうと思われるようなそういう圧迫があったので、やむを得ずうそを言うたといったような、言葉はちょっと違いますが、そういう意味にとれる証言をいまの裁判でしているわけですね。ということになりますと、非常に、傷害程度よりもっと重い精神的な圧迫あるいは経済的な圧迫、身分上の圧迫が加えられる、そういう地位に証人というものは置かれることがしばしばあるわけなんです。そういうものについても何らか補償することがありはしないか、そういうことを補償しなければ、この法律が目的としておりますることは必ずしも保証されないのじゃないか。つまり証人が出てくる、また公平な本当の真実を述べる、そういうことを担保するためにこの法律はつくるのだという趣旨のものでございます。しかし、ちょっとしたけがよりももっと深刻な自由侵害を加えられる、自由加害ですね、こういうものについて、もし判定できるという状態であればそれについても補償するというものでなければ、この法律の本来の意味が失われるのじゃないか、こういうふうに考えられますが、その点はどうでございましょうか。
  96. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の点は、現在の法律によりますれば、証人等が他人からその身体または生命に害を加えられたときに限って補償をする、給付をする、こういうことになっておるので、精神的な損害、簡単に申して慰謝料ということになるのでございましょうか、そういったものについても給付をすべきではないか、こういう御意見のように承知いたしましたが、これは先ほど来他の委員からも御指摘のあったところでございます。非常に考えるべき問題であるとは存じまするが、それをどのように扱うかということにつきましては、立法技術的にもまた実態的な計算なりをいたします際にも非常に困難な問題が多い、かように考えておりますので、私ども考えてみたいとは思いまするが、なかなか困難な問題がある、かようにお答え申し上げます。
  97. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いまの点はひとつ考えていただくということで済まします。  次に移りますが、この法律によりますと、証人参考人、または被害者加害者との間に親族関係、これは事実上の婚姻関係も含むとなっておりますが、親族関係がある場合には給付しないことができる、こうなっております。特に遺族給付が、遺族と加害者との間に親族関係があればしなくてもいい。しなくてもいいのじゃなしに、しないのですね。遺族給付はないのです、その場合は。それから葬祭給付の場合は、加害者親族関係にない葬祭執行者のみに支給される、つまり葬祭給付加害者と親戚関係があったらもう支給しない、葬祭給付はないのだ、こうなっております。  この問題について私きわめて不思議に思うのですが、親族関係にあるということが現在の日本の法体系上どれほどの意味を持つかという問題です。また、事実上の問題としましてもどれほどの意味を持つか疑わしい。たとえば警察庁の調査によりますと、殺人事件の被疑者と被害者との関係を調べたものがございまするが、九百四十八名の殺人事件について調べたところ、親子、きょうだい、親族関係にあった者は三百二十一名です。九百四十八名のうち三百二十一名は親族関係、それから知人、友人関係にある者は四百一名です。関係が全くなかったというのは二百十六名でございます。不明が十名、こうなっております。これからいきましても、親族関係の犯罪における地位というものは余り重要な地位ではない。親類であろうと知人、友人であろうと、あるいは関係がなかろうと、犯罪が起こる率は同じなんですね。ほとんど同じです。親族だから殺さぬとかそういうことはないわけです。  そこで、証人参考人または被害者、これと加害者との間に親族関係があるから給付しないというのは大変不思議なことだと思います。これは憲法のたてまえに反するだけじゃなしに、事実の問題に反すると私は思います。  それからまた、親族関係にある者が不利な証言をするということはきわめて重要な決意を要することです。その場合に補償しない、これはちょっと筋が通らぬじゃありませんか。どうでしょう。
  98. 俵谷利幸

    俵谷説明員 ただいま御指摘の問題でございまするが、法律の第四条給付をしないことができる場合を列挙いたしておるわけでございます。全面的に給付をしないと、こういうことではございませんで、具体的な事情に応じまして給付を制限できる、あるいは給付をすることもできる、こういう規定でございます。問題は、運用によりまして適正にその事件に適した措置ができるのではないか、かように考えております。現在のこの規定の仕方は、たとえば証言をした者が被告人の身内の者であってそれがけがをした、それに対して国が補償するというのは、犯人と証人との関係で若干社会的な感覚からするといかがだろうか、こういうことで立案されたものと承知いたしておりますが、さような場合も、事案によっては給付する場合もあり得るし、事案によっては給付しない場合が妥当である、こういう場合も考えて制定をされておるものと思います。
  99. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いまのお話によりますと、給付する場合もあるからいいじゃないか、こういうお話のようですが、ただ遺族給付はどうです。遺族給付はしないでしょう。これはもうはっきり遺族給付の定義が下してあります。遺族と加害者との間に親族関係がないことですね。あれば給付されないと書いてある。そうすると、証人がけがをした場合は給付されるけれども、殺されてしまった場合には何にも補償しない。これはかわいそうじゃありませんかな、遺族は。実際に親族の犯罪についてこれを他人の立場からもう正直に証言した、そのために殺されてしまった、その遺族は路頭に迷う、こういう状態が放置されていいという考え方自体、私は非常に納得がいかないのですが、どうでしょう。
  100. 俵谷利幸

    俵谷説明員 現行法は、御指摘のように、遺族給付の場合には支給しない、こういうことになっておるわけでございます。これはただいま申しましたような観点から立法されたものと理解しております。
  101. 飯田忠雄

    ○飯田委員 どうもお話が私はっきりわかりませんが、立法された趣旨のことを私はお尋ねしているのじゃないのですよ。こういう不合理が生ずる規定があるが、この規定を改正することが必要だが、どう考えられるかということなんです。そして、もっともだと思われたら改正されたらどうだ、こういうことを尋ねているのです。
  102. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の御意見につきましては、十分に検討したいと思います。
  103. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それではいまの点、ひとつ御検討を願いたいと思います。  それで次に、別の問題に移りますが、証人等被害についての給付に関する法律施行令、これに給付基礎額とか別表が書いてありますね。これについては御質問があったかもしれませんが、私は実はこの席にやむを得ぬ事情でおりませんでしたので、もしお聞かせ願えればありがたいと思います。お願いします。
  104. 俵谷利幸

    俵谷説明員 今度傷病給付を新しく設ける、こういう改正でございまするが、その傷病給付内容、等級等をどうするか、こういう御質問だろうと思います。これにつきましては、現在障害給付につきまして法律施行令別表で詳しい定めがございます。現在はこの身体障害程度一級から十四級まで定めておるわけでございまするが、傷病給付年金的な給付、しかも廃疾状態に近い、療養の必要がある、なお治ってはいない、廃疾状態にあって傷病年金的な給付をしなければいかぬ、こういうものに考えておるわけでございまするので、この現在の別表身体障害一級から三級程度のものにつきまして、それぞれ具体的に傷病給付を決めたい。一級の人につきましては、現在の身体障害一級程度の人に対しまして一級支給をする。その率でございまするが、給付基礎額の八六%、一日四千二百円から七千二百円までの間の給付、これが基礎額でございます。これに対しまして、一級でございますると三百十三倍の倍数を乗じまして、それを年金として給付する、こういうことで、具体的にその障害程度はどういうものかと申しますると、たとえば両眼が失明したもの、こういうのが一級障害一つ状況として提起されております。そのほかそしゃく及び言語の機能を廃しておるもの、こういった者が一級になっております。二級はどういうことかと申しますると、一眼が失明し、かつ、他眼の視力が〇・〇二以下になったもの、こういう程度障害——傷病手当でございますと廃疾ということになりますが、そういう状態の者につきましては、百分の七十六という率によりまして二百七十七倍を掛けて年金を算出する、こういうことに考えておるわけでございます。それから三級につきましては、一眼が失明し、かつ、他眼の視力が〇・〇六以下になったもの、こういう程度障害が残っておる人につきまして、三級の傷病給付を出すということを考えておるわけでございます。
  105. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いまの点は了解いたしましたが、ただここで給付基礎額を四千幾ら、こうお決めになったその基礎は一体どうしてできたかという問題、それから倍数、たとえば三百十三倍、こうなっていますが、一年は三石六十五日ありますね。それをわざわざ三百十三と切られた根拠はどこにあるのか、そういう根拠についてお聞かせください。
  106. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この給付基礎額でございまするが、この基礎をどこに持っていくかというのは立法当初からいろいろ議論があったようでございます。この意見一つの中に、事柄警察官等の職務に協力する、あるいは証言等するわけでございまするから、警察に出頭して供述をするわけでございますから、比較的近い警察官の給与並みに考えたらどうか、こういった御意見があったように承知しておるわけでございます。その警察官の給与の平均日額、これを算出いたしまして、これに倍数を掛けておるというのが従来からの運営の仕方でございます。もっと具体的に申し上げますと、一日の給付基礎額が四千二百円と申しまするのは、警察官の一番下のランクの方、それから七千二百円と申しますのは、地方の警察官最高の警視クラスの給与、これが基準になっておる、かように承知いたしておるのでございます。  倍数の問題でございまするが、これは国家公務員災害補償法倍率をそのまま準用しておる。これは警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律も同じでございます。そういう意味で、これは一つの並びの法案でございまするので、その間に均衡をとって考えてある、こういうものでございます。
  107. 飯田忠雄

    ○飯田委員 大体わかりました。  ただここで少し不思議なのは、警察官最低の俸給でおやりになるという点は国家財政上やむを得ぬとしまして、それは一日でしょう。一年は三百六十五日あるでしょう。それをどうして三百十三で切ってしまわれたのか。これはほかの法律にならうというだけではちょっと理由にならないと思いますが……。
  108. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の点でございまするが、これは当初はもっと低い倍率であったわけでございます。それを数次の改正を経まして三百十三倍というふうに現在なってきておるということでございます。一年が三百六十五日でございますから、これから何%かディスカウントをして三百十三にした、こういうことではございません。いままで努力して引き上げてまいってきたものの結果が三百十三になっておる、こういうことでございます。
  109. 飯田忠雄

    ○飯田委員 この点につきましても、立法をするときに、常に立法者が支配者の立場、恩恵的な立場に立っておるという点、私はこれを指摘したいのです。国民の立場に立つ法律であるなら、そういう余り根拠もないことでつかみ金を上げるような形で法律を決めるなどということはおかしいのです。あり得ないのです。そういう点につきましても、今度のこの改正案のついでに申し上げては申しわけないけれども、いままでの法律というものが、どの法律も全部上から、お上から恩恵を施してやるという形でつくられる、それでは困るわけです。そうじゃなしに、本当に国民の立場からはどういうものが要求されるかということで立法していただきたい、こう思うわけです。これはお尋ねしてもどうもしようがないので、これからの立法をなさるときの問題としてぜひ御研究を願いたいと思います。これは大臣の方に申し上げるのが正しいかもしれません。  それでは次に移ります。これは少しく法技術的な問題になりまして恐縮ですが、法解釈上問題の起こる点でございまするのでごしんぼう願います。  「給付の要件」としまして、現行法によりますと、証人または参考人が、刑事事件に関し裁判所等に対し供述その他の目的で出頭しようとしたときと書いてあります。そのときに加害された、これを要件としておりますが、ここに何々「により」と書いてあります。この何々「により」という言葉の意味がはなはだ明瞭でないわけです。この何何「により」ということは、直接原因を指すのか、あるいは間接原因も含むのかということが非常にあいまいでございます。たとえば新聞に「橋本元運輸相刺さる」こういう記事がございましたが、これは橋本元運輸相が証言に出る、裁判所へ行くということがわかりてからある一定の日にちがたってからやられておるのですね。そうしますと、この「により」ということは時間の点においてどの辺までの間のことを含むのか。あるいは直接原因、つまり証言をしたことのためにやられたのか、あるいは証言に関連してやられたことまでも含むのか。たとえば証言のために裁判所へ出頭しておった。そこへ行きずりの人が来て刺した。こういう場合に、証言のために裁判所へ来ておる者を刺したのでしょう。この場合には一体該当するかどうかという問題、これは実際問題として立証の問題が非常に困難な点が入ってきます。それでお尋ねするわけです。
  110. 俵谷利幸

    俵谷説明員 橋本元運輸大臣の例を御引用になりましたが、橋本氏の場合は証人ではございませんで被告人でございますので、このケースは本法の対象にはならないのじゃないかと考えます。  それから、この三条の給付の要件が、御指摘のように「証人又は参考人刑事事件に関し裁判所裁判官又は捜査機関に対し供述をし、又は供述の目的で出頭し、若しくは出頭しようとしたことにより、」これが一つの要件になっておりまして、他人から身体、生命に被害を受けた、こういう場合に補償するということになっております。この解釈としましては、証言あるいは出頭しようとしたこととそれが原因になって傷害等の結果が発生したこと、この間に因果関係が要るというふうに解釈いたしております。したがって、全く無関係の人がふらっと入ってきて裁判所におる人を突き刺したという場合はこの対象にはならない、一般の犯罪被害補償の問題になるのではないか、かように考えております。
  111. 飯田忠雄

    ○飯田委員 先ほどの橋本運輸相の例は被疑者であるということはわかっているのですが、そういうこととは無関係で、期間の問題を言ったのですよ。  それで、いま無関係の者は含まないとおっしゃいましたね。この無関係という意味は、証人だということを意識しておる、意味がわかっておるという場合は関係があって、意識していない場合は無関係、こう考えていいのかどうかお尋ねします。
  112. 俵谷利幸

    俵谷説明員 ある人が証人として証言をするために裁判所へ来ておって、その証言に不満を持って、あるいは証言をしたことに関しまして加害をした、こういう場合に入ってくるわけでございます。
  113. 飯田忠雄

    ○飯田委員 それは言葉で言えばそうですね。たとえば責任無能力者の例を挙げましょう。責任無能力者でも故意もありますよ。過失もありますよ。刑法によりますと、責任無能力者の行為と書いてありますから責任無能力者も行為をなし得る。ですから、その限りにおいては意識があるのです。その責任無能力者がなぜ責任無能力とされるかというと、是非善悪の区別がつかぬからと言われていますね。是非善悪の区別のつかぬような能力の人が、そういう状態の人が証人だとか証言というその内容を理解できるかどうかといいますと、はなはだ疑わしいのです。そこで、実際はその人は平生は普通の人であったのですが、あの人を殺すために、証人をやっつけるために、酒を飲んでぐでんぐでんになった。そうすると自己がわからぬようになるでしょう。そういうような形で刺した。その場合に責任無能力ということで、いままでの例でいけば無罪になりますな。私は無罪にするのはおかしいと思うのですが、いままでの裁判官は無罪にしています。そういう場合に、この人は行為時において証人だということをはっきり意識していない。わからなかったということになりましょう。そういう論法になりますな。実際はわかっているのですよ。そういう場合に補償されないのでしょうか、どうですか。
  114. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のような場合に、その事件自体が責任能力があるかないかはまた別の裁判で判断されるわけでございますが、この法律適用につきましては、少なくとも証人という認識を持っておる。後で気違いだいうことで無能力者になる場合でございましても、そういう認識を持って加害したということになれば、この法律対象として給付を受けられる、こういうふうに考えております。
  115. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私がお尋ねしましたのは、行為時において責任無能力の状態になるのですよ。そういう場合に補償されるのかということなんです。
  116. 俵谷利幸

    俵谷説明員 はなはだむずかしい説明になろうかと思います。自分が証人をやっつけてやろうと思って、心神喪失になるような状態を利用してやるということになれば、これはまた故意があって、それはそういう加害行為に対しましては、恐らくその人の裁判でも有罪になる場合があるだろうと思います。無罪になる場合もあるでございましょうけれども……。そういう場合にはもちろん給付対象に考えていいと思います。具体的にもっと申し上げますならば、行為の際に証人だという——潜在的意識かあるいは明白な意識かは別としまして、証人として来ておる、あれはけしからぬというような意識をもって刺した、しかし後に心神喪失で無罪になるという場合でも、これは補償対象になる、かように考えるべきものだと思っています。
  117. 飯田忠雄

    ○飯田委員 こういう問題をなぜ私がお尋ねしたかと言いますと、従来からとかく行政官庁の方での法律解釈というのは、給付を受ける者に不利益な解釈をなさるのです。大抵の場合そうなんです。有利な解釈は絶対なさらない。それでくどくどお尋ねしたのですが、解釈上どっちへ転んでもいいような場合、つまり解釈の仕方では給付ができる、解釈の仕方ではできないという場合、できるだけ給付を受ける人の立場に立った行政解釈をとるような御指導を従来なされておりますか。     〔委員長退席、羽田町委員長代理着席〕
  118. 俵谷利幸

    俵谷説明員 証人被害給付法に限りませんで、たとえば被疑者補償規程の運用等につきましても、積極的にその時点時点で判断を加えて、この法律の本旨に従った運用がされるように刑事局長通達で十分注意をいたしております。また御案内のように、検察庁におきましては検事正会同とかあるいは次席会同という幹部の会同がございますが、その際に、私ども資料を用意いたしまして、こういうケース、こういう事件について給付件数が少ない、もう少し積極的に補償なり給付をするようにということは累次伝達をいたしておる、こういうことでございます。
  119. 飯田忠雄

    ○飯田委員 本日御質問申し上げました点を要約しますと、この証人等被害についての給付に関する法律は、今度御提案になった点については別に問題はないけれども、そのほかの点において改正しなければならぬ点が多々ある、こういうことを申し上げたのです。それで改正しなければならぬものは早急に改正をしていただきたい。そうでなければ、この法律自体が憲法違反の疑いを受けるということを申し上げたのです。ぜひこの問題を解決をしていただきたいと思います。  きょうは、大臣がおいでになればこの問題をもっと詰めていきたいと考えておりましたが、おいでになりませんので……(「もうじき来ます」と呼ぶ者あり)それじゃ大臣がおいでになりましたら、この問題をぜひお聞きしたいと思います。それまでの間もう一つお伺いをいたしましょう。  それは証人等被害についての給付に関する法律に直接の問題ではありませんが、関連する問題としまして、ただいま申し上げました責任無能力の問題なんですが、この責任無能力という問題は、裁判過程において発見されて無罪になるということが多いわけですね。裁判の前においてはそうじゃないんですよ。そうしますと、証人被害を受けましたときに補償を受けるわけなんですが、そのときには裁判の結果を待ってなさるのか。つまり、これは刑事事件ですからね。あるいは、そうでなしに、その前にあらかじめなさるのか。この点はどうでしょうか。時期の点がどうもはっきりしていません。
  120. 俵谷利幸

    俵谷説明員 こういう事例が発生いたしましたならば速やかに給付決定を行う、こういう運用でございます。裁判の結果がどうなるかというようなことは必ずしもその時点においては考えませんで、その時点におきましてその行為に対しまして給付をすべきか否かを決定する、こういうことでございます。
  121. 飯田忠雄

    ○飯田委員 大体本日この法律につきましての疑問点はお尋ねを終わりました。  ただ、根本的な問題で、こういう法律を出す場合に、これは政府として内閣としてどういう形で統一をとって法律としてお出しになるのか。その点についての御答弁はまだいただいておりません。  それからまた、この法律自体が刑事事件だけに限っておるということにおいて、憲法に言う法のもとにおける平等の原則に反しておる疑いが多分にあるので、そうしますと、そういう疑いを残した法律として存在せしめるということには疑問があります。それで、意見が違いまして、法務省の方では憲法違反でないとおっしゃる、私の方では憲法違反だと言うた、両方の意見が対立した場合は、国民にとってより補償できる方の解釈に従いまして、憲法違反だと言う者と憲法違反でないと言う者とありましたら、憲法違反の疑いがあるようなものはないように直すのが筋じゃないか、私はこう思うんですよ。そういう点につきましても、法務省の見解を余り強く固執なさらぬで、もっと国民の立場から、この証人等被害法律は一般的な証人補償の問題としてつくりかえていただきたい、こう思います。そうでないと、大変国民としては困る。各省が出したらいいじゃないか、こうおっしゃるんですが、それでは困るんですよ。各省ごとに出されたんでは、国民は一体自分の証人としての補償はどこでやってくれるかということで大変困ります。そういう点につきましても、私がここで学者としての立場からいいかげんなことを言うた、そういうふうにおとりにならぬで、ぜひこの問題は真剣に考えてほしい、こう思います。  こういうことを言うちゃ申しわけないですけれども、私の地元の方からの話では、とかくどうも法務省の出先の方の窓口はかた過ぎる、こういう非難があります。それで、そういう非難を受けないためにも、できるだけやわらかく受け入れてくださるように御努力を願いたいと思います。  それで、私の質問はこれに関してはもうこれだけしかありません。ただ、きょうは大臣がおいでになればいまの点をお聞きしたいと思ったんですが、そのほか関連事項としまして、責任無能力者の問題につきまして、これまで無罪判決がたくさんあるんですよ。これは、調べてみたんですが、私が調べた限りでも三十三件の責任無能力で無罪になって、しかも殺人事件無罪になって、しかも刑事補償がなされておる事例がございます。人を殺して、そして無罪になって、しかも金を取っている、こういう件数が三十三件もある。これはちょっとどうかと思います。しかも、責任無能力の場合は明らかに故意もあるし、過失もある。これはそうですね。故意、過失がなかったら行為は形成しません。ですからあるのですが、そういう故意、過失をもってやった殺人に対してこういうことになるということは、国民の立場から見れば大変納得のいかぬことであると思います。  なぜこういうことになるかといいますと、結局刑法の条文どおりに判決がなされていないからだと私は思います。裁判というものは法律の学者の意見によってなすべきものではなくて、憲法と法律に基づいてのみ、あるいは判例に基づいてのみなすというのがたてまえでございます。一番根本的には憲法と法令です。刑法の条文を見ますと、責任無能力者は罪とならずとは書いてないのです。責任無能力者につきましては罰しないと書いてある。しかも、責任無能力者が行った行為そのものは明らかに違法行為であります。その客観的に存在する、刑法の第二編に列挙せられた犯罪類型、これに該当する行為をして、しかもそれは違法行為だ。そういうものが、たまたま行為者の内的に存在する事情によって消えてしまうということはおかしいと私は思うのですよ。結局それは、刑罰を科するのがいいかどうかといったような刑事政策的な目的から刑罰を科さないというだけですから、その刑罰を科さないというものならば、無罪じゃないわけです。刑罰を科さぬからといって無罪じゃありません。有罪なんです。有罪だけれども、刑事政策上刑罰を科さないのです。そうであるならば、こうした殺人事件について無罪の判決をすること自体が問題ではないかと私は思います。  そこで、こういう殺人事件について無罪の判決がされるのは、刑事訴訟法の中に不処罰の判決をする場合のことが書いてない。規定されておりません。無罪判決をする場合はこういう場合だと書いてありますが、処罰をしない、罰しない場合の判決というものがあるはずなのに、それを無視して刑事訴訟法がつくられている。ここに問題があると思います。そこで私は、こういう問題を国民の側から納得がいくように改正することが必要だと思うのです。現在までの刑法の学者が頭の中でいろいろ御研究になって述べられたのが犯罪概念でありますが、あの犯罪概念そのものが刑法典によっていない。ここに問題がある。しかも、裁判というものは学説によって行うものでなしに、憲法及び法律の条文そのものによって行わねばならぬ。しかも裁判官がそういう態度をとっていない。ここに私は問題があると思うのです。  そこで、そういうことを言うてみても始まりませんので、いままではそれはほとんど慣習法的にそうなっちゃったんだから、そういう慣習法的にできてしまった状態を直すために、もとに戻すために刑事補償法の改正が必要だ、こう思いますね。本来は改正しなくともいいんですよ。いいんだけれども、改正しなければ裁判官の頭が治らぬから改正する必要がある。また刑事訴訟法の改正も必要だ。こう思いますが、この点はどうですか。
  122. 俵谷利幸

    俵谷説明員 ただいま、責任無能力を理由として無罪の判決を受けた者に対して刑事補償をするというのはおかしいのではないか、こういう一つの御指摘があったわけでございます。これにつきまして、昭和三十三年から五十一年までの間に補償決定があったものを調べてみますと、これは三十三人ありますが、そのうち二十名がこの補償を受けておる、こういうことでございまして、まことに国民感情と申しますか、一般人の感じといたしましては若干奇異な面もないわけではございません。しかし、これは憲法上の規定で、拘禁等を受けて無罪裁判を受けた者については補償する、こういう規定がございまして、その中には無罪の区別をしていない、こういうことでございますので、いままでのところ、これについては刑事補償を行うという解釈なり運用になっておる、こういうことでございます。これを省くかどうかというのは、もし憲法の解釈で許されるとするならば、一つの立法政策ということになろうかと思います。非常にむずかしい問題でございますので勉強してみたい、かように考えております。
  123. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いまの問題、これは私が事実に基づいてまず犯罪とは何かということを定義づけるようにしなければいかぬということと、もう一つは、裁判をいたします場合は、学者の学説でやられたのでは困る、法律の条文どおりやってほしい、こういうことなんですね。法律の条文どおりやれば間違いはないのですよ。そうすれば、無罪判決ではなくて有罪だが罰しないという不処罰の判決をする場合があります。そうすれば、憲法の四十条の規定に反するような結果は出てこない。憲法規定と実際が合わないというのは、憲法が悪いのではなくて運用をしている人の法解釈がおかしいから起こった問題だと私は考えるのですよ。こういう点、ぜひ御研究いただきたいと思います。  私は、こういうことを申しましても、別に司法権に介入しようとしているのではありません。学問上の問題としていままでの判決に対する批判をしているのであります。司法権への介入じゃありませんよ。そういう点は御理解願いたい。  それから、いま大臣おいでになりましたので、先ほどから保留しておきました点について御質問を申し上げたいと思います。それはこういうことなんです。この証人等被害についての給付に関する法律の一部改正の法律案が出されました。改正部分そのものは別に問題になることはありません。これで結構ですよ。いいのですが、この法そのものが憲法の条文に照らして大変疑わしい点がございます。また、そのほか改正した方が、国民の立場からはこうあるべきだという点がありますし、まだほかにたくさんあるからその改正をひとつ考えていただきたい、こういうことをお願いしたのです。  それで、特に最初にお尋ねするのは、こういう証人等被害についての給付に関する法律証人にはいろいろの証人があります。必ずしも刑事証人だけではない。民事訴訟法に基づく証人、それから国家公務員法に基づく証人、それから裁判官弾劾法に基づく証人、あるいはまた議院証言法に基づく証人、いろいろございます。いろいろ証人があって、しかもその証人はすべて宣誓をして、もし虚偽の陳述をすれば法律によって処分される、こういうものなんです。そういう証人の地位においては、刑事証人も民事証人も弾劾証人も、それから国家公務員法による証人も議院法による証人も皆同じ地位なんです。変わりはない。同じ地位であります。それにもかかわらず、その証言をしたことによって刑事証人だけは補償される。ほかの証人補償されない。これは同じ証人でありながら一部の者だけを補償するというのであれば、これは身分によるところの——刑事証人という身分、民事証人という身分、弾劾証人という身分ですね。身分によって差別するものじゃないか。それであるならば、憲法の十四条の法のもとにおける平等に反するじゃありませんか。当然証人というのは、すべての証人について同じように補償しなければならぬ。ところが、そうなっていない。なっていない原因を聞いてみましたら、法務省の所管として、証人等被害に関する法律というものは、刑事事件だとか民事事件だけが法務省の所管なんだから、ほかのものは法務省の所管じゃないからやらなかったとおっしゃる。  そこで、御質問申し上げたいのは、法律案というものは一体法務省として国会に提出するという法的根拠がどこにあるのかということをお聞きしたのがまず第一。それから、これは当然内閣としてお出しになるのが正しいので、内閣ならば当然閣議においてあらゆる証人についての問題を案になさって内閣一本として出されてくるのが当然じゃないか。そうであるなら、法務省の所管に入ってないからというだけで、刑事事件だけに固執なさるのは、これは筋が通らぬではないか。ですから、全部の証人についての補償法に変えられたらどうか、こういう質問なんです。どうですか。
  124. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 法律は、御案内のように、法務省関係であっても、内閣において提出をいたすものでございますから、そういう意味では、法務省だけの関係でやったということでは、お説のとおり理屈が合わないことになると私は存じます。ただ、法律というものは、御案内のように、すべてのものを考えてそして法律をつくるというのが筋としては結構でございますが、同時にまた、ある程度被害があるとかいうような具体的な事実があって、それを何とか抑える、あるいは救済する、あるいはこれに対する適当な措置をするというような意味法律をつくっていく場合もあるかと私は考えておるのです。いま先生のおっしゃるような立場から言えば、これは民事の事件であろうが、議院証言法であろうが、何であろうが、とにかく同じような立場において救済されなければならないというお考えは理屈に合わないと私は決して申し上げるわけではございませんけれども、具体的にそういう必要性のあるものからやっていくという場合もお許しを願っていいのではないだろうかという感じも私はいたすわけであります。そうしてそれを施行いたしまして、特にまた非常に均衡を失するとかあるいはまたそういうような具体的な被害事実が出ているというような場合には直していく。直すというか新しく追加するというか、法改正をするというか、そういうような措置をとっていくという形も一つの立法政策としては考えていいのじゃないだろうか。これは理屈を申し上げてまことに恐縮なんですが、これは感じでございまして、私は実は法律学者ではございませんから余り偉そうなことは言えないのでありますが、そういうふうなことも許されるのではないだろうか。ということは、大体法律というのは余りよけいつくらぬ方がいいのですね、本当を言えば。自由主義国家の中においてはできるだけ少ない方がいいのです。しかし、被害があったのを救済しないでいいという理屈は一つもございませんから、これは全部カバーしていけばいいのですが、刑事事件なんかにつきまして、そういうようなケースがどのくらいあったかと言えば、いままでは、表に出なかったかもしれませんけれども、非常に少ないケースでもある。しかし、やはりこの際法律をつくった方がいいということで、今回こういうように立法さしていただこうといたしておるわけなんでございまして、先生のおっしゃることはよくわれわれとして頭の中に入れておきまして、具体的にまたそういうような例等がございますれば、そのときにまた法律を直すなりあるいは出さしていただくなりさしていただいてはいかがであろうか。これは私の考え方でございますが、私といたしましては、さしあたりこれでひとつお認めを願いたい、かように考える次第でございます。
  125. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これは先般こういう質問を申し上げた点と重複すると思いますが、私が質問申し上げましたのは、証人というものは必ずしも刑事証人だけじゃない。いろいろな証人がある。現に今度弾劾裁判をやりましたが、弾劾裁判の席上でも、証人である山本思外里、読売の社会部長ですが、この人は、弾劾裁判所の方で被訴追人に接触した記者の名前を明かしてくれということを言うたにもかかわらず、拒否しました。その拒否した理由は、もし明かして、その記者を弾劾裁判所証人として呼ぶとその記者の身辺に危難が及ぶ、危ない、だから名前を明かせない、こういう証言をしております。そうしますと、証人というものは必ずしも刑事証人だけがそういう危難にさらされるんじゃなくて、そのほかの証人だって皆そういう危険があるわけです。山本証人は、この弾劾裁判所証人については身分保障がない、だからだめだ、こう言っているのです。それで、あらゆる証人、いろいろの証人についてはそれぞれ危険があるのですから、そうした証人について補償をするということは当然国の立場だと思います。  先ほども申し上げましたが、今日の憲法は国民を基調とした憲法でございますね。明治憲法のような上からの支配者の法ではありません。いわゆる支配者である国民、国民の側に立った憲法でありまして、そのもとの法であります。そうでありますならば、為政者の立場からの立法は憲法の精神に反する。あくまでも政治される側のことを考えながら立法することが必要だと思います。国民はいつどこへどういう証人として呼び出されるかわからない。現に証人はたくさんありますよ。刑事証人のほかに民事証人、それから人事院に呼び出される証人、それからまた今度の弾劾裁判所証人、議院証言法の証人、いろいろあります。これからまた法律ができるたびに証人というものはうんとふえる。そのたびにこの証人被害給付に関する法律を各省ごとに一々出しておったんでは、国民は大変迷惑なんです。自分の救済策はどこであろうかといって探さなければならぬ。それでは困るので、やはり一本にまとめてほしい。しかも、こうした証人に対する被害給付というのは余り起こらないとしてあるんだが、つくれば案外あるのです。ことに刑事事件だけがたくさんあるという証拠もございません。  そういう実際上の問題のほかに、根本的な問題で、私は、法律的に言いますと、たくさんある証人の中で刑事証人だけを取り上げてそれだけ補償するというのは、憲法の十四条違反の疑いがある、こう思うのです。つまり身分によって差別する。つまり、同じ証人でありながら、刑事証人だけ差別してよくするという考え方ですからね。だから、この法のたてまえとして、憲法下における憲法に基づく法ですから、憲法の精神が通っておる法にしてもらわぬと困る。そういう意味におきましても、これは当然すべての証人被害についての法として改正されることが妥当だ。そうでなければ、憲法違反の疑いを残したままの法です。それで、法務省の見解が憲法違反じゃない、私の見解は憲法違反といった場合、両方を対比した場合に疑いがあるものを、それじゃ法務省意見だけをとってそれで押し通すんだというのは余りにも上からの法律的、解釈です。つまり支配者の法のたてまえをあくまでも通そうとなさる。今日の自由民主党の政権下というのはそうした支配者の法じゃないはずですよ。明らかに自由民主なんですから、当然国民の側の法体系でなければならぬはずでしょう。それがそうなっていないところに問題がある。ですから根本的にお考えになって、この「刑事事件」という言葉を省くだけでいいのですから、それで事済むことなんですから、それであるならそういう御処置をおとりになるのが正しいと私は思うのですが、その御処置をとることができないとおっしゃる法的根拠は一体どこにあるのかということを申し上げた。事実問題じゃありませんよ。法律上の憲法違反の疑いがあるから、それを疑いがないようになさったらどうかという問題です。これが一点です。このことをお尋ねしたい。
  126. 俵谷利幸

    俵谷説明員 失礼でございますが、私から御説明させていただきます。  先ほど来申し上げておりますように、各分野におきまして必要性があってどういう立法をするかということは、それぞれ行政を担当しているところがとりあえず考えるべきことであろうというふうに御説明申し上げたわけでございます。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕 それを内閣といたしまして、個々の立法につきましても内閣で審査をされ、内閣の方針としてお出しになるわけでございまするけれども、統一的にこれを立法するかどうかというのは一つの立法政策に属することでございますので、非常に傾聴に値する御意見とは存じますが、いまのやり方で、責任を持っておる各所管庁がそれぞれ必要性に応じて立法しておるということで当面はいいのではなかろうか、かように事務的には考えておるわけでございます。そういうことで御理解をいただきたいというふうに思っております。
  127. 飯田忠雄

    ○飯田委員 この問題につきましては、いまのような御答弁ではちょっと困るのですよ。これは私の問いに対する答弁にならない。つまり、私はこれは憲法違反だと言っているのですよ。だから、憲法違反でないようにしてくれと言っているので、もしこれが憲法違反ではないと言うなら、こういうわけで憲法違反ではないということをはっきり証明なさらなければいかぬのだが、いままでの御説明ではそういう証言はなかった。これはたとえ法務省で憲法違反でないという御証明をなさっても、その証明は私どもには納得がいかぬというわけですから、それは御研究願うことが必要ですよ。  この問題余り言うておってもしようがないから、その次に行きます。この問題は留保します。ぜひもう一度検討して、結果をお聞きしたいと思いますので、ひとつよろしくお願いします。  それから、この法律の七条、八条というのは二重給付を禁止する条文なんです。つまり、被害に遭った場合に、もし犯人の方から損害賠償を受けたならばこれはもう支給しないとか、あるいはほかの法律で特別の支給法律があればこれは支給しないとか、こういうふうなことが書いてあるのですよ。だから、それはおかしいじゃないか。この証人等被害給付に関する法律は、そうした福祉的な恩恵的なものじゃないのです。これはわかりやすい言葉で言えば、国のために働いてくれてそのためにけがをしたのだから、それに対する報償として差し上げる、こういうものじゃないかと思うのです。たとえば、証人においでになれば、旅費も支給されます、日当も支給されますね。この場合にけがをなさったのだから、旅費、日当のほかに治療代も出そう、こういう考えが根本だと思うのです。そうでなければならぬわけだ。そういうような立場で考えまするならば、この法律の七条、八条の二重給付をしないといったようなのは問題がある、こう考えるのです。  大臣が前に犯罪被害者補償法をつくるとおっしゃいましたね。いま研究中だとおっしゃいましたね。犯罪被害者補償法のたてまえならば、それは二重給付を禁止してもいいのです、これは福祉の問題だから。犯罪のためにけがをして大変に困っている人がおるから救うてあげようという、福祉ですからね。それはいいですよ。この場合は福祉じゃないのですよ。一種のお礼の意味を持つわけですね。そうであるならば、当然二重給付を認めるのがあたりまえじゃないか、こういう問題が一つです。この問題についてぜひ御研究願いたい。そして、これを排除するような法律案にしてほしい、こういうことなんです。  それからもう一つ、私、時間が来たので、ついでに質問内容を申しますと、遺族給付につきまして、親戚の場合は支給しない、認めないとなっています。加害者被害者が親戚の場合は認めないというのですよ。しかし、先ほども申しましたが、今日親類であるか親子であるかといったようなことは、殺人事件については余り大きな要素ではないのです。これは統計が示すのです。先ほど示しましたが、もうほとんど同じなんですよ。しかも、今日の法律体系からいきますと、親戚だから国はめんどうを見てやらぬといったような考え方誤りじゃないか。ですから、遺族給付というものにつきまして、親族であっても証言をしたことによって殺された、その遺族が困っている、その場合は、当然国がめんどうを見るのがあたりまえじゃないか、こう私は考えるわけです。それで、遺族給付の定義を改める必要がある、こういうわけですね。こういう点は、実は事務当局の御答弁でははっきりしなかったので、大臣にお伺いするということで延ばしておったのです。ひとつよろしくお願いします。
  128. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいま御提言がございました件については、一応研究をさせていただきたいと思います。
  129. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これで私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  130. 上村千一郎

    上村委員長 次に、加地君。
  131. 加地和

    ○加地委員 順番が後の方でございますので、ひょっとすると重複する点があるかもわかりませんけれども、御容赦願いたいのでございます。  いま提案になっています証人等被害についての給付に関する法律の一部改正案、これはたしか昭和三十三年に、それまで証人として法廷へ出頭した人に対するところの危害、それに対する補償を盛り込んだ法律としてかなり鳴り物入りで制定された法律であったと私は記憶するのでございます。ところが、昭和五十二年度については、一応予算関係法案ではなしに、形の上だけ十万円の予算が盛り込まれておるというような実情なんでございますが、昭和三十三年以前と以後とでこの証人被害ということについて大分事情が変わってきたのでございましょうか、その点ちょっと最初にお尋ねしたいのです。
  132. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御案内のように、この法律昭和三十三年にできたわけでございます。そのころ、一部の暴力団と申しましょうか、こういうところで暴力的な犯罪がかなり起こされる、そして証人等がいわゆるお礼参り等というようなことで危害を受ける場合がある、そして証人等が十分な証言をしない、こういうような事態が指摘されたわけでございます。その事態に対処いたしますために、このお礼参りの処罰法規を刑法典に盛り込むとともに、証人等被害に関しましてもこの給付支給しようということでできたわけでございます。  その後の運用状況は、けさほど申し上げておりますように、昭和三十六年以後四十四年までに事例としては四例、件数にいたしまして七件があった。その後は、幸いにしてと申しますか、あるいは暗数が多少あるのかもしれませんが、給付した事例はない、こういうことでございます。その事例の具体的な事情につきましても、証人威迫罪というようなものはございますけれども、危害を加えられた、身体、生命に傷害を受けたり廃疾になったりしたようなケースはなかった、そこでこの給付対象になった事例はなかった、こういうことになっているわけでございます。しかしながら法制的には、どういうことが生ずるかわかりませんので、事態に即した、時代の進展に応じた法制を整えておく必要があるということで、今回関連の法規の改正も行われますので、法務省といたしましてもこの証人被害給付法の改正をお願いしておる、こういうことでございます。
  133. 加地和

    ○加地委員 三十三年以後のことはかなりわかったのですが、この法律を最初に制定したころの状況ですね、三十三年以前にもしこの法律があればこの法律適用を受けたであろうと思われるような事例はどのくらいあったのですか。
  134. 俵谷利幸

    俵谷説明員 その点につきましては、ただいまつまびらかにいたしておりません。
  135. 加地和

    ○加地委員 私がしばしば聞きますのには、やはり法廷へ証人として出ていくのを非常にこわがる人があります。これは暴力団の紛争に関連したような場合には、上手に証言をしてくれないということなどが原因となって、京都あたりでは暴力団のピストル抗争事件に発展しておる例がしばしばあるように聞いておるのです。この法律適用をずばり受けるようなケースは起こってないかもしれないけれども、実際には証人が法廷で真実を語るという態勢が、事例がないからということででき上がっているものではなかろうと思うのですけれども、そういう点についてはどう把握しておられますか。
  136. 俵谷利幸

    俵谷説明員 そのような事例があるかないか、これは一つは取り締まり政策、取り締まりがどのように行われておるかということとも関連するわけでございます。しかし、現、実にそういう事件が仮にないといたしましても、法制的には完備した制度を盛っておくということが必要だということはもちろんでございます。まあ暴力団と申しますか、その事件等の第一線でどういうふうになっておるかということにつきましては、ただいま具体的に承知はいたしておりませんけれども、そういうこの法律適用を受けるような事態があってはならない、しかし仮に事例があった場合には十分補償ができる、こういう体制にしておくべきであろう、かように考えておる次第でございます。
  137. 加地和

    ○加地委員 この法律被害が起きた後始末についての法律なんですけれども、証人が危害を受けないようにする方策といいますか一まあ法律はないと思うのですけれども、方策というのは法務省裁判所あるいは警察の方ではどのように配慮しておられますでしょうか。
  138. 俵谷利幸

    俵谷説明員 一つは、暴力団の犯罪と申しますか、これは暴力団のあり方というものを、そういう犯罪を起こさないように規制する、犯罪があれば一〇〇%検挙できるようにするということが、この種の事犯の発生を防止できる一つの要素であろうと思います。それからもう一つは、具体的な事件でこういう事態が発生することが予想される事件もあり得るわけでございます。そういう事件の公判でございますとか捜査等に当たりましては、関係機関が十分連絡し合いまして、関係者に対しまして十分な保護措置を講ずる、たとえば裁判等でございましたら、裁判所等とも十分連絡をとって情報交換をして、こういう事態が起きないように警備なり防衛の措置を講ずるということが必要だろうと思います。ケースによりましてはそういう措置を現地の実情に応じましてとっているように聞いております。
  139. 加地和

    ○加地委員 もし本人がどうしても警察に、裁判所へ行くのについてきてほしいとか保護してほしいとかいう要請があれば、そういう要望にはこたえていただけるようになっているのでしょうか。
  140. 俵谷利幸

    俵谷説明員 そのような場合には、所轄の警察機関なり検察機関におきまして適切な措置を講ずることだろうと思っております。
  141. 加藤晶

    ○加藤説明員 ただいま御質問のありましたような状態で保護を求めるというふうなことがございますれば、具体的情状に応じまして、警察官を派遣して警備に当たらせる、あるいはそのほかのいろいろな保護措置というものを講じてきておりますし、これからもそういうことをやっていくということでございます。
  142. 加地和

    ○加地委員 私が体験した例で、裁判所から証人として喚問されておるけれども、結局うそを言えば偽証罪になる、本当のことを言えばどちらかの暴力団から殺されるかもしれない、どうしたらいいかというような相談を受ける場合があるのです。よく考えてみますと、忠ならんとすれば孝ならず、孝ならんとすれば忠ならずというようなジレンマにその人は陥っているかっこうになるのですね。そうしていろいろと法規を研究してみますと、日本の法律の場合には、証人として不出頭あるいは宣誓を拒否した場合の刑罰というのが非常に軽いのですね。罰金五千円以下とかあるいは三十日以下の拘留になっておりまして、それと同じような性質のものであろうと思うのですけれども、いわゆる議院証言法で不出頭、宣誓拒否の刑罰を見てみますと、一年以下の刑罰というぐあいに、同じような事柄でありながら刑罰の重さに非常に開きがあるわけなんですね。それで、私の場合には、本人にどうのこうのと教えるわけにはいきませんけれども、法廷へ出てうそをついたときには十年以下の刑罰だ、裁判所へ出ないときには五千円以下だ、あとはおまえが考えろというようなことを教えてやらなければならなかったという体験を持っておるのです。  それで、この話をもとにして二、三お聞きしたいのですけれども、議院証言法とか刑事訴訟法、民事訴訟法で証人として出頭すべき立場の人の法律的な性質は全部一緒だろうと思うのですけれども、この三つの法律の間に大きな取り締まり罰則についての開きがあり過ぎるという点についてはどう思われますか。これでいいのでしょうか、あるいは是正しなければいかぬのでしょうか。
  143. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘のように、刑事訴訟法あるいは議院証言法あるいは民事訴訟法等の証人に関します制裁につきましては、それぞれ刑罰の差異があるということは御指摘のとおりでございます。これを同じでいいか悪いか、統一すべきではないか、こういうような御意見ではないかと思われるのでございますが、証人に対しましてどのように証言を確保するか、あるいはこれを断った場合にどのように制裁を加えるべきかということにつきましては、その証言を求める事項でございますとか、あるいはその機関の性質でございますとか、いろいろその証人に対します要請と申しましょうか。そういったいろいろな事柄に応じましてそれぞれ必要な制裁措置も決まるのであろう、証言の手続その他も決まるのであろう、かように考えるわけでございます。したがって、一律にこれを全部同じ制裁で規制するというようなことについてはいかがであろうか、かような感じを持っておるわけでございます。また先ほど来申し上げてもおりますが、それぞれの法律を所管するところも違っておりますので、私どもから一概にこれはどうだこうだということはちょっと発言を差し控えさせていただきたい、かように考えております。
  144. 加地和

    ○加地委員 それじゃ、民事訴訟法あるいは刑事訴訟法の不出頭あるいは宣誓拒否の刑罰について、少なくともこれが低過ぎるから何とか改正しなければならないというような研究は全然なさっておらないということになるのですか。
  145. 俵谷利幸

    俵谷説明員 刑事局の所管いたしておりますのは、直接的には刑事訴訟法関係でございますが、これにつきまして、当面、特にそれで不都合であるというようなことは感じてはおりませんが、まあ法律でございますから、常々、どの程度の刑罰が必要であるか、どういう規制の仕方が適当であるかということにつきましては、常時研究いたしておるということでございます。
  146. 加地和

    ○加地委員 民事訴訟法の不出頭、宣誓拒否については、どなたか御答弁いただける方は来ていただいていませんでしょうか。
  147. 浦野雄幸

    ○浦野説明員 民事訴訟法の不出頭あるいは宣誓拒否につきましても、先生御指摘のように五千円以下の罰金あるいは拘留となっておりまして、これは刑事訴訟法の証人の場合と横並びになっておりまして、その均衡を保っているのだろうというぐあいに思っております。ただ、実質的にはこれは過料が別にかかりますけれども、過料の五千円と横並びになっておりまして、過料自身の額も現在の貨幣価値にいたしますと低過ぎる感じがいたしますし、これも私ども民事局の内部では、時代に即応した額に上げるべきであろうというような意味では検討いたしております。
  148. 加地和

    ○加地委員 私は、いろいろと裁判の遅延あるいは証人の不出頭ということのために、関係者がいろいろと準備をしたりあるいは時間をやりくりして集まっても、行ってみたら証人が来ていないということで、しばしば貴重な法廷が開かれる時間を空費していると思うのです。そういう意味において、私が先ほど挙げたように、証人として出廷し証言をすれば殺されるかもしれないというような人については、正当な理由があって出廷できない、宣誓ができないというような救済措置を講ずるべきであって、やはり議院証言法などと少なくとも同じ程度のいわゆる刑罰の上限を上げていって、運用については情状によってそれを適当に配分していくというやり方でないと、いまの裁判所が、国民みんながある程度尊敬は持っているけれども、場合によってはまた裁判所なんて行っても行かぬでもどうでもいいものだ、そのうちに何とか片がついてしまうという、いわゆる証人としての義務というものが国民の義務でありながら、これが軽視されている面があると思うのですけれども、私のこういう意見に対してはどのように当局はお考えでございましょうか。
  149. 俵谷利幸

    俵谷説明員 証人は適正な裁判を遂行いたします上できわめて重要な証拠の一つになるものでございます。したがって、この確保につきましては慎重に絶えず検討しておかなければいけない、かように考えています。これで刑罰を一般的に上げたらすぐに証人の確保ができるかとか、あるいは証人の証言を確保するために給付を十分に厚くすればそれですぐできるかというようなことにはならぬだろうと思います。世論の啓発であるとか各般の手を打って、証人に安心して証言してもらえるような状態に置く、その一環として証人被害給付の充実も図っていくという考え方で対処すべきだろうと思います。ただ刑罰を上げるということだけでは問題も片づかないのではなかろうか。一般的に社会情勢、経済情勢が変化してまいっておりますので、それに見合った罰金額の引き上げとかいうことは考えなければならぬことだろうというふうに思います。これは証人に対する制裁だけでなくて、ほかの制裁とのバランスということからも考えなくてはならぬ問題だろう、かように考えております。
  150. 加地和

    ○加地委員 私はいまの御答弁とは違う考えを持っております。たとえば議院証言法の場合に、運用についていろいろ問題がありますけれども、一年以下の刑罰というものがあるために、証人として出頭が決まった人は、よほど医者の診断書でもない限り、ほとんど出頭が確保できておるという実績ですね。それからまた、一年以下の刑罰が重過ぎるという議論を私は聞いたことはありません。また宣誓拒否についても——鬼頭氏が取り調べを受けておるようでございますけれども、これについても重過ぎるという議論を聞いたことがありません。そういう意味において、議院証言法程度の罰則というのは必要最小限度の規定じゃなかろうかと思っております。  いまの課長の話を聞いておりますと、証人の出頭を確保するのに刑罰を上げただけでは意味がないという答弁の趣旨もわからぬことはありませんけれども、そのほか、世論の啓発云々とおっしゃいましたけれども、証人出頭確保のための世論啓発の努力というのは果たして具体的になされているのでしょうか。今回の法律の改正も、世論啓発の一環の意味を持つかもしれませんけれども、現在の裁判制度の不合理というものに目を覆って、現状肯定の何もしない主義というような、精神的なところからどうも出てきておる答弁のように聞こえてしまうのですよ。ですから、私の意見もひとつ御参考にしていただいて、また現場の裁判所での実情も把握していただいて、適正な裁判が行われるということのために御努力を願いたいと思います。  それと、現在、証人として出頭しなかった者に対して勾引するという規定がございます。この勾引も、実際には三回、四回と裁判所に出てこなかったときに初めて勾引状が発せられるようでありまして、一回来なかったので二回目にすぐ勾引をするというようなことはないようなんです。これもいま私が指摘しましたのと同じように、やや裁判なれをした悪質な人から裁判所が軽視されてしまっておるというようなことになってきておるのじゃないかと思うのですけれども、証人の出頭確保のための勾引状の執行については、大体どのような基準で、どのような体制で行われておるのでございましょうか。
  151. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 勾引状を発付し、あるいは執行するについて特段各裁判所で基準を特ち合わせておるわけではございません。ただ、各裁判所でそれぞれ経験しておるところと思いますけれども、勾引状を発付しましただけで、その執行に至らないで、事実上任意に出頭していただくという事例はかなりあろうかと思います。  ただ、それはそれといたしまして、何分にも裁判所としては、一般の国民の方々に裁判所の審理に証人として御協力を願うという立場にあるわけでございますし、また、なるべくならば任意に正しい証言を得たいということのために、強制力を用いてまで法廷に出頭していただくということをできる限り避けたいというのが、一般の裁判官の心情であろうと思います。私ども、その心情はあながち一概に不当とも申せないのではないかというふうに考えておりますし、それぞれの事案に応じて各裁判所で考えて運用しておることでございますので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  152. 加地和

    ○加地委員 私は、このごろの現場の裁判官の方の勾引とかそういうことについての決断力というものが、仕事が忙し過ぎるということのせいか、決断すべきときに決断をなさらない方が非常に多いということを遺憾に思います。  それでは、次の質問に移りまして、普通に証人が呼び出し状をもらって裁判所へ出頭した場合の旅費、日当の件なんですが、いまはどんな基準になっているのでしょうか。私も実際にまちまちの金額が決められておるように思いまして、この基準がもう、一つはっきりしないので、この場で改めてちょっと教えていただきたいのですけれども。
  153. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 証人の旅費、日当につきましては、これも民事、刑事訴訟それぞれ根拠になる法律は違いますけれども、結局最高裁判所が定めた基準に従って各裁判所が決めるという点では、民事も刑事も同様であることは御承知のとおりでございます。  それで、その最高限というものが最高裁判所の規則で決まっておりまして、たとえば日当の場合をとりますれば、五十一年七月から最高額三千五百円以内で裁判所が決めるということになっておるわけでございますが、それはただ最高限はそうで、その内訳、どの程度の時間証言されたか、あるいは裁判所へ来るまでにどれだけの手数がかかったのか、あるいは待ち時間がどれくらいあったのか、それからその証人裁判所へ出頭することによって、要するに得べかりし利益をどの程度失ったかというふうな、いろいろな事情を考えて、それで各庁で基準をつくって支給しておられるということになっております。
  154. 加地和

    ○加地委員 私は、これはかなり実情を無視した金額だと思うのです。たとえば民事訴訟に関して、医者なんかを証人に呼ぼうとしても、現在裁判所の方では、なかなか医者などを証人に呼んでくれません。その障害になっているのは、裁判官不足ということのほかに、わざわざ収入の多い医者に証人として出てきてもらっても十分なことができない金額ですね、三千五百円では。そういうことから、実際にできるだけむずかしい専門的内容についての証人調べというのが裁判所で行われなくなってきてしまっている原因の一つに、この証人の旅費、日当というものが絡んでいるのじゃないかという気もするのです。私は、最高限度額というものであれば、実情に合うように一万円でも二万月でも上限は決めておいて、その中の運用基準というものはきめ細かく、別に働いているより証人に出て行った方がもうかるんだというようなことにしなくてもいいと思いますけれども、やはり上限というのはもっとゆとりのあるものに決める必要があるのじゃないかと思いますが、どうお考えですか。
  155. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 いま御指摘のとおりに、上限をぐっと大きく定めて、その中できめ細かくというのも確かにすぐれたお考えであるとは思いますけれども、さて現実にそれではどの程度のものを決めるのがいいのかということになりますと、これは運用の状況というものも各裁判官がそれぞれの事件についてお決めになることでもございますし、証人の中にもいろいろな人がおりますし、私どもとしましては、現在の上限が必ずしも多い、額だというふうにはとても申し上げられませんけれども、これを少しでも毎年の経済事情等に応じてふやしていくということによって努力するほかさしあたりはやむを得まいというふうに考えております。  先ほどちょっとお話の出ましたお医者さんのような特殊の場合でございますけれども、これは日当の額がどうこうということよりも、お仕事の性質上、手を放せない患者さんだとかいうふうなことでなかなか期日を明けて出にくい。しかも、多くの場合裁判所の期日というのは先に決まって、それから証人を呼び出すというふうなことが多いわけでございますが、しかし証人によっては、たとえば先ほどのお医者さんなんかの場合は、期日の幾つかのうちどの期日が御都合がよろしいでしょうかというふうなことを言って、できるだけ御都合がつくように努力はしておるわけでございますが、しかし、先ほど申し上げましたように、なかなか手が放せないということが大きな原因になっておると私どもは解しております。
  156. 加地和

    ○加地委員 証人の旅費、日当というのが、どうも家を出て家に帰るまでの時間計算というのか、あるいはしゃべっている間の時間計算というのか、証人というのは往々にして前の日の晩から寝られなかったとか、あるいは古いことなので関係文書をいろいろ当たって、できるだけ正確な証言ができるようにしようとしておられる方の例も私はたくさん知っているのです。そういうように、芝居でいえば表舞台でやっている時間とか、表にあらわれたものだけでは計算はできないと私は思うのです。芝居なんかでも、そこに至るまでの練習というかけいこというものに何倍かの努力が払われるのと同じようなことだろうと思うのです。そういう意味において、最高限度の三千五百円というのは三倍にも四倍にも上限を上げ、また運用についても、少な目というよりはちょっと多目くらいの運用の仕方の方が証人の出頭確保をしやすいのではなかろうかと私は思います。これも将来いろいろと御検討を賜りたいと思います。  それと、あと二、三証人関係でお聞きしたいのですけれども、現在の民事裁判では、一たん当事者が裁判所証人の旅費、日当を予納して、それをまた裁判所の会計から証人の方へ払ってもらうのが筋道だろうと思うのですけれども、どうも最近では、そういう場合に、裁判所の会計を通って証人の方まで金がいくのは二度手間だというので、関係者同士で適当に金を払っておいてくださいという指示が裁判所からなされるわけなんです。ところが、これは事情をよく知っている者にとっては二度手間を省く意味もあっていいかと思うのですけれども、どうも事情を知らない傍聴人などから見れば、あの証人はあの人から金をもらって裁判所へ出てきた人かということで、その証言内容等についても要らざる疑惑を持たしてしまっておる運用の仕方じゃないかと思うのです。それで、私なんかの場合にも、そういう疑惑がお互いに残ってはいけないと思いますので、わざわざ大きな声を出して、こういうぐあいに二度手間をなくすシステムなので、本当は裁判所へ納めて、裁判所からあなたもらうのだけれども、私から払う。ところで裁判所、幾らこの方に払ったらよろしいかということを言って、そして裁判所金額を言ってもらって、きっちりの金額をお渡しするというように神経を使っているのです。そこまで神経を使わないでさっさと渡しておる方もあります。また、その場で渡さないで、証人と一緒に廊下に出ていって、後で裁判所で決める何倍かを払っておられる方もあるように思います。こうしますと、現在の運用の仕方というのは、国民に疑惑を与えておるのみならず、場合によっては金で証言を買うという風潮に一役買っておるという面があるのではなかろうかと思うのですが、現在のこの合理化の行き過ぎともいうべき証人旅費、日当の払い方について、裁判所の方はどのようにお考えになりますでしょうか。
  157. 井口牧郎

    井口最高裁判所長官代理者 民事事件証人の旅費、日当は、法律の定めるところによりまして申請当事者に予納させることになっております。これは予納がございませんと裁判所証人支給できないということでございまして、当事者から直接にそれを支払いをさせるということは、裁判に対する国民の信頼の上からも決して好ましいことではないことは加地委員の御指摘のとおりでございます。私どもの承知しておりますところでは、極力当事者に予納義務を励行していただくよう各裁判所に御努力を願っているはずでございますし、この手続は多く書記官事務にかかわりますので、書記官の事務としてもそういう指導が全国的になされているはずでございます。  ただ、大変遺憾なことでございますけれども、事が現金出納に関することでございますために、会計法上非常にやかましい制約がございます。勢い手続がある程度煩瑣になることはやむを得ないところでございまして、こういったことから、私どもの理解では、ともしますと当事者あるいは代理人の方から予納をしないで、中間省略をいたしまして証人に直接払うということを御希望になる向きがむしろ多いのではないかというふうに考えております。これはそういう例が多いとは私ども決して考えておりませんけれども、このような取り扱いを各裁判所が勧奨いたしましたり、あるいは許容したりしておりますとは私は全く考えておりませんし、私どももとよりさようなふうに考えておるものではございません。しかし、そういったルーズな扱いがある程度ありますことは遺憾ながら事実でございますので、今後ともこういった事務の改善に十分努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  158. 加地和

    ○加地委員 新自由クラブは教育立国だから特に言うわけじゃないのですけれども、裁判の場というのは重要な国民教育の場だと私は思うのです。ですから、会計法上の煩わしさという点について、その手続をある程度合理化、簡略化する方法なり何なりで、国民の前には裁判所というところは一番最後の、世の中がどんなにゆがんでいても何もかもちゃんとやってくれるところだという、重要な教育の場でもあるということを御認識の上、今後の指導に当たっていただきたいと思います。  それからもう一つは、この前も速記官不足の問題、速記官の生理休暇、産休などにもかかわらずいろいろとこき使われておるというような点についての質問がございましたけれども、証人調書というものは、私たちが後から点検してみても、どうも事実と反対の要点筆記の調書がとられておるということがしばしばあります。私自身もある問題について証人として出頭したのですけれども、どうも全体の感じからいくと逆の意味のことを言ったような調書になっておりまして、一時間ほどの証言でありましたけれども、三十カ所ほど訂正してもらったという例があるのです。ところが、これは民事訴訟法がつくられたときと時代が変わって、現在テープレコーダーが非常に普及しておるのでございますけれども、このテープレコーダーを法廷の中へ持ち込んでおる弁護士もあります。それからまた、メモを傍聴席でとっておる人もあります。また、これに対し厳格に規制をする裁判官もあれば、規制をしないという人もあります。たてまえとしての運用は、このテープレコーダーなりあるいは傍聴席でのいわゆる筆記なりはどういうことになっているのでございましょうか。
  159. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問、あるいは民事事件に関しての御体験からの御質問かもしれませんが、刑事事件でも同じことでございますので、便宜私からお答え申し上げますが、録音機の使用につきましては、これは刑事訴訟関係では刑事訴訟規則の四十七条で裁判長の許可によって録音することができるとなっておるわけであります。それから民事訴訟規則の十条は、これは裁判所が必要があると認めるときは録取させることができる、いずれにいたしましても、その事件を現に審理しておる受訴裁判所の裁量に任されているというのがたてまえでございます。
  160. 加地和

    ○加地委員 許可を受けないでテープをとったりした場合は、どういうことになるのでしょうか。
  161. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 許可を受けないで録音をしているという状況を発見いたしますと、裁判長は自分が許可していないのだから恐らくそれをやめさせるであろうというふうに思います。そのやめなさいという命令をいたすわけでございますけれども、それを聞かなければ、裁判長の命令に従わなかったということで、法廷秩序維持の問題にもなるかもしれませんし、あるいは退廷させることになるかもしれませんし、そこら辺のところはそのときの状況によると思います。とられたテープそのものはどうなるかということになれば、それはその場でそういうものは消しなさいというふうな措置をとられる場合もあり得ると思います。
  162. 加地和

    ○加地委員 実際の運用として、この許可の願いがあったら許可しておられるのでしょうか。
  163. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 これは先ほど申し上げましたとおりに、たてまえもそうでありますけれども、実際問題として、裁判長がその事件事件に応じて許可する場合もあればしない場合もある。では、そんなことを言ったって全体としてはどうなんだろうかと言われれば、恐らく許可されない場合の方が多いのではないかと思っております。それは結局、録音テープで録取することを認めますと、当事者の訴訟の準備なりあるいは後の点検なりという点では非常に便利であることは、これはもう間違いないところだと思います。しかし、そういったプラスの面のほかに、マイナスの面としまして、証人が非常に発言しにくくなる、自由に発言してもらえなくなるおそれがあるとか、あるいはそのとった録音テープを、法廷の記録というものはこれは裁判だけにしか使えないものだと思いますけれども、それを一定の宣伝目的のために利用されるとか、そういったマイナス面がございまして、裁判長としては、事件の性質その他を考えて、それからまた一方、裁判所としても速記官がつくなりあるいは録音をとるなりして、できるだけ忠実な調書をつくることに努力をしているわけでございますから、それを利用していただけば事足りるというふうに考える場合には、許可しないという措置をとっている例が多いのではないかと想像します。
  164. 加地和

    ○加地委員 私はほとんど許可がなされてないと思います。そうして、いまおっしゃいましたマイナスの面というのも考慮しなくちゃいけないと思うのですけれども、やはり裁判というのは真実こそが最高の指導理念であろうと思うのですね。そうしますと、程度の悪い要点筆記が裁判の判決を下す根拠になっていくとすれば大変なことだと思うのですね。特に裁判官もよくかわられますし、また長期裁判というものもたくさんございます。そういう意味で、裁判所の正確な調書をつくらせるという意味においても、最高裁で判決が下り、終わりになるまでの間、テープレコーダーと要点筆記と、ともに制度的に保存しておく、もし調書で間違っておる点があれば、間違いは人間にはありがちのことですから改めていったらいいと思うのですね。そうしないと、要点筆記だけが後に残った証拠だということでは、裁判もいいかげんなものだなという気持ちが国民の中に出てきてしまうのではないかと思うのです。このテープを最後まで保存するという問題は、これは余り無理な提案ではなかろうと思うのですけれども、どのようにお考えになりますか。
  165. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 お話の初めに調書がいろいろ間違いが多かったというお話もございましたけれども、これは私どもとしましてはそういうことがないように十分に努力しなければならぬと思いますし、録音テープで録取するということが非常に有効な手段でありますから、各地方裁判所、高等裁判所等にも録音機を配付しまして、普通の書記官でも、大体現在はその録音機でとったもので逐語の調書をつくる例が多いようになってきているというふうに考えております。  あと、その録音テープを残しておくという問題が最後にございましたけれども、この点につきましては、どういうふうな形で法律上どういうふうな資格のあるものとして考えていったらいいのか、そこら辺のところは大いに検討しなければならないというふうに考えておりますので、ここでのお答えはちょっと留保させていただきたいと存じます。
  166. 加地和

    ○加地委員 証人調べのときに録音機を使っておられる書記官の方はたくさんあります。ところが、一たん調書ができてしまうと、録音機と調書との食い違いということが指摘されることを多分恐れておられるんだろうと思うのですけれども、それではあの録音をちょっともう一回聞かしてくれと言えば、それはもう消してしまいましたということになってしまうのですね。ですから、私は、裁判で使われるところの小道具類も時代とともに変わっていくものでございますから、この録音のテープ保存ということについては、有能な方方が最高裁の方にも集まっておられるのでございますから、時代に即応した規則なり法律改正をやっていただけるように要望いたしておきます。  それでは私の質問は、これで一応終わります。
  167. 上村千一郎

    上村委員長 次回は、明後二十五日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十分散会