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横山委員 大臣にまずこの
法律案について篤と聞いていただきたいことがございます。
大臣は恐らく
十分審査をなさったと思うのでありますけれども、この
法律は、いまも
質問がございましたように、提出いたしました資料を見ますと、三十四年に一件、三十六年に一件、三十八年に一件、四十三年に一件。一年に一件もないんですね。まことにこの
法律効果というものが十分でない。この
証人の出頭の
被害について、えらい迷惑かけた、あなた傷負って申しわけないから国が弁償してあげるという、非常に
法律そのものとしては貴重な
法律だと思う。非常に貴重な
法律。それが本当に
該当事案が一年一件もないのであろうか、本当にそうであろうかと私は疑問を生ずるわけです。新聞で毎日見ますと、お礼参りなんか続出していますね。その中にはもちろん傷を負った者も命をとられた者もあるが、しかしそれ以前のものでも
枚挙にいとまがないと思うのであります。どうしてそれが、この
法律で一年に一件もないのであろうか。なぜこの
法律効果が及ぼしていないのだろうか。
被害を受けた
証人たちはこの
法律が存在することを知っているだろうか。教えておるだろうか。積極的にこの
支給をすべき立場にある人がこの
法律を運用しておるだろうか。まことに私は疑問なしとしないのであります。
そこで、私に許された時間は三十分でございますから、時間の節約上、
委員長、ちょっとお許しを願ってこれを配っていただきたいと思います。
委員長、
大臣、それから各党一枚ずつあったら配ってください。
それで、もう
一つ大臣に考えてもらいたいことは、今度
法務省も一生懸命になって
刑事被害者補償法を法制化することに相なっております。きょう配付されました「自由と正義」の中には、
日本弁護士会立案の
刑事被害補償法案が全文出ています。聞きますと、
法務省でも
相当の作業が進捗しておるそうでありますが、私は、この
刑事被害者補償法案のようなものとこれらの問題とを見比べてみる
気持ちになるわけであります。
刑事被害者は
検察陣に何の責任はありません。
赤軍派のようなものが乱暴して無事の人が傷を負った、気の毒だからと言うて、数十億の問題でしょうね、これ国会を通れば。数十億の問題。それが出る。ところが、
警察が何かの
誤りを犯した、
裁判で
誤判をした、そして
警察に協力をして
被害を受けた。本来ならば
——自宅で
被害を受けた者は別ですよ。この例を見ますと、三十四年は
裁判所の中でやられておる、四十三年も
裁判所の中でやられた。警備は一体何しておったのか、
警察は一体何をしておったのか、こういうことにもなるわけですが、少なくとも、私の言いたいのは、
刑事被害については
相当の
超党派の覚悟で、
超党派でみなやってやろうと数十億の支出をしようとしている。こちらの方、
つまり国、
検察陣、
裁判、それが
誤判をした、
誤りを犯した、
間違い犯人をつかまえた、おれが悪かったから弁償するというときには、まことにみみっちい話であります。まことにみみっちい話であります。
ですから、私は、少なくともこの
法律案について、いま全部の皆さんに渡ったかどうか知らぬけれども、七つの
提案をしておるわけであります。
一つは、
検察官は
証人等に本
法律の
趣旨を告知する様にすること。聞きますと、告知をしておらぬのであります。この
法律は第九条で、「この
法律による
給付を受ける権利は、これを受けようとする者の
請求に基いて、
法務大臣が
裁定する。」
請求しなければならぬのですからね。
わしゃ被害を受けましたからひとつ弁償してちょうだいと言わなければやらぬのでありますから、ちゃんと
証人等に証言を求めるときにはその
趣旨を告知する。
二番目には、
支給事実があったときは
被害者の
請求をまたず
検察官が
立件をして
手続をすること。積極的にやれ、
請求がなくても
立件をする義務がある、そういうふうにしろ。
三番目は、
脅迫、
軟禁等の場合の
給付について検討すること。確かにこの
法律は
身体に
被害がなければいかぬ。傷を負ったか殺されたか、どっちかでなければいかぬということになっています。しかし、その百倍も千倍も、
電話をかけておどかしたりあるいは軟禁したり、そういうことは
枚挙にいとまがないじゃありませんか。むしろ
証人や
参考人が遠慮するのはそういうときです。傷を負ったからといって駆け込む前に、
電話をかけた、やれ道端で立ちふさがった、ヘビを送ってきた、爆弾のような
偽造物を送ってきたという場合の方が、よほど百倍も千倍もある。だから、
脅迫、
軟禁等の場合の
給付について検討すること。
それからその次が、私の三の問題でありますが、第二条の二項にこういうことが書いてある。「
自己の
実験した事実を供述する者及び他人の
刑事事件について
裁判所又は
裁判官に対し
自己の
実験した事実を供述する者であって
証人以外のものをいう。」
参考人の定義ですね。「
自己の
実験した事実」というのは一体どういう
意味だろうか。つまり
実験した事実でなければ、この
法律による
参考人ではない。
実験した事実以外のことで見聞きしたことを言ったことによっては、これは
実験にならない。だから
補償の
対象にならない。そういう反面解釈が生まれるのであろうか。また、
四条には
——四条というのはおかしな条文でございまして、「次の各号の一に該当するときは、前条に
規定する
給付の全部又は一部をしないことができる。」と書いてありますが、その一号は「
証人若しくは
参考人又は
被害者」、二号は「
証人等」、三号は「
証人又は
参考人」。この間、どうしてこういうふうに
書き方が
四条の一、二、三で違うのかと言ったら、くどくど御
説明を受けました。要するに、この
法律というものは、できる限り
証人等の
被害について
給付をしないで済ませたいという
思想があらわれている。
実験だとか、
四条のやらないときのことを一、二、三で
書き方がなぜこう違うのか、私にはわからないのですが、要するに、この
思想というものは、なるべくやらないでおこう、できるならばちびりたい、つまり、
法律効果が余り広がることを恐れておる、こういう考えが横溢しておると思うのであります。だから、
四条の三号はうそのことを言ったときにはいかぬぞということでありますが、少なくとも一、二などについて、たとえば二号が「
証人等にも、その責に帰すべき
行為があったとき。」となっておりますが、その「責」というのは一体どういう
意味であるか。私は
法律用語をよくわかりませんで知らぬのですけれども、何とかして少しは減らしたい、何とかして出さぬでおけるものなら出したくない、こういう
気持ちがこの
法律の中に横溢しておるのではないか。
それから第五は、かねて私の持論でございますが、この間
西ドイツの
刑事補償法を勉強する機会に恵まれました。私は、この
西ドイツの
刑事補償法と、私の
修正意見について、先般
裁判費用、
弁護士費用なんかは改正をされましたけれども、
西ドイツでは罪の軽減された場合の
補償をされておるわけであります。つまり、お前は
殺人だ、
殺人罪だといって起訴され、地裁であるいは高裁で
殺人罪になった。ところが
最高裁で、
殺人ではない、死んだ
理由は違っておった、
傷害罪だ、こういう場合があり得るわけですね。そういう場合は罪が軽減されたということになる。ところが、いま
刑事補償法では、シロで
無罪でなければいかぬ、
無罪でなければ
補償しない、こういうことになっていますね。この前有名な
事件で
無罪になった人がある。
無罪になったけれども、
併合審理となっていた
銃砲等禁止令違反、折り畳み
式ナイフ所持は
罰金五千円とした、こう書いてあります。常識的に言えば
無罪になった。けれども五千円の
罰金はあった。しかし、これはやはり
刑事補償法の
適用になるようでありますが、私の言うのは、
殺人であったのではなくて
傷害であったという、罪が軽減された場合も
補償の
対象にすべきではないか。
第六に、被疑者
補償規程、これも過ぐる国会で何回も何回も私が言っているのでありますが、
検察陣で被疑者と思っておったら間違っておったという場合ですね。それは先般政府部内の自主的な判断をもちまして、
検察陣の
立件にするとか、改善方法が若干とられましたが、この機会に被疑者
補償規程を法制化するとともに、これまた私の懸案の
警察官の逮捕
——これは
警察官の不法逮捕ですな。不法逮捕などに対する
補償を
適用せよ。
警察官が現場で、起訴に至らない、
警察署段階において
間違い犯人、不法逮捕、そういう場合がある。えらい済まなんだなで済んでおる。それが社会の世論になりますと、愛知県議会のように、県議会を開いてそれが不法であったことを認め、五十万円の特別支出を県議会で決めなければならぬほど、
警察官の間違い逮捕などについては何らの
補償の
制度がないのでありますから、被疑者
補償規程を法制化するとともに、これを含めよ。
第七に、
刑事被害者補償法を、先ほども触れたわけでありますが、次期国会に提出をしてもらいたい。
いろいろありますが、きのう大分時間をいただきましたので、私はきょうはこれをこの
法律案に付帯して、政府側の
意見を聞きたいと思うのであります。もしどうも私の言うことがお聞き取れくださらなければ、同僚諸君の御
意見を聞きながらこれを附帯決議として出したいと思っておるのでありますが、
大臣が、一々ごもっとも、
横山委員の言うことは本当にごもっともと言われるならば、ここで終わってもよろしゅうございます。