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1977-05-19 第80回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月十九日(木曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 西宮  弘君    理事 青木 正久君 理事 加藤 紘一君    理事 片岡 清一君 理事 砂田 重民君    理事 金子 みつ君 理事 武部  文君    理事 中川 嘉美君 理事 米沢  隆君       中村  靖君    平泉  渉君       堀内 光雄君    中村  茂君       馬場猪太郎君    宮地 正介君       荒木  宏君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  柳館  栄君         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         大蔵省銀行局総         務課長     宮本 保孝君         国税庁直税部審         理課長     掃部  實君         通商産業省産業         政策局商政課長 野々内 隆君         参  考  人         (悪徳商法被害         者対策委員会会         長)      堺  次夫君         参  考  人         (食堂経営者) 西  隆史君         参  考  人         (東京大学教         授)      竹内 昭夫君         参  考  人         (弁護士)   下光 軍二君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君     ————————————— 委員の異動 五月十九日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     荒木  宏君   大成 正雄君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   荒木  宏君     藤原ひろ子君     ————————————— 五月十八日  公共料金値上げ反対等に関する請願(村山富  市君紹介)(第五三六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件(連鎖販売ネズミ講等  に関する問題)      ————◇—————
  2. 西宮弘

    西宮委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件、特に連鎖販売ネズミ講等に関する問題について調査を進めます。  本日は、本問題調査のため、参考人として、悪徳商法被害者対策委員会会長堺次夫君、食堂経営者西隆史君、東京大学教授竹内昭夫君、以上の方々に御出席をいただいております。  なお、弁護士下光軍二君が御出席ただくことになっておりますが、若干おくれて出席をいたします。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、本日御多用中のところ御出席ただき、まことにありがとうございました。  いわゆるマルチレベル商法は、商売の知識、経験の乏しい一般個人対象組織拡大を主眼とするため、その限界から被害者発生は必然的であります。  当委員会におきましては、一昨年以来、マルチ商法について参考人を招致する等鋭意調査を進め、すでに二度にわたりこれが規制等について決議も行い、これに基づいて昨年十二月、訪問販売等に関する法律が施行され、契約の際、マルチ業者取引条件等重要事項について書面による通知義務等が課せられることになりましたが、今日なおこれによる被害者が後を絶たず、特に未成年者被害が及んでいることは、まことに憂慮にたえないところであります。  これと並んで、最近いわゆるネズミ講による被害者が続出しておりますが、ネズミ講は物品の販売を伴わない点ではマルチ商法とは異なるものの、組織拡大、いわゆる人狩りという点は同様であり、被害者発生は必然的と考えられます。  去る三月三十日、長野地裁は、ネズミ講入会契約は公序良俗に反するものとして民法第九十条により無効と言わざるを得ないと判示し、講元に対し出資金の返還を命じたところでありますが、本日は、これら連鎖販売ネズミ講等に関する問題について、関係各位参考人として御出席をいただき、調査を進めることといたした次第であります。何とぞ忌憚のない御意見をお聞かせくださるようお願い申し上げます。  次に、議事の進め方といたしましては、まず参考人お一人十分程度ずつ要約して御意見を賜り、その後委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人委員長の許可を得て御発言をお願いいたします。  それでは最初に、堺参考人にお願いいたします。堺君。
  3. 堺次夫

    堺参考人 私は、悪徳商法被害者対策委員会会長の堺と申します。  私どもの会は、これまでいわゆる世上言われておりますマルチ商法撲滅運動並びにそれを取り締まる法律制定運動及び被害者被害回復指導を行ってまいりました。すでに四年目に入っております。実は私がこのマルチ商法の問題につきまして国会の場でその被害社会悪性を訴えるのは、これがもう四回目でございます。四年連続で出席しております。裏返して言うならば、被害は一向におさまっていないということでございます。  昨年十二月三日より、おかげさまでマルチ商法等を取り締まる訪問販売等に関する法律をつくっていただいたわけでございますが、この法律そのものは、マルチ商法全面禁止法ではございません。いわば行為規制法でございますけれども、一応この行為規制法を使いまして一昨日、第一号の摘発が行われた。これは大変私ども喜ばしく思っております。特に、これまでに被害者総数が推定で二百万人とも言われておりますし、その被害者の中には、私どもが確認しただけでも自殺者が五人、未遂が一件ございます。うち一人は、高校生の自殺事件です。未遂の一件は主婦の自殺です。  このように大変な人間破壊あるいは社会破壊が行われるのがこのマルチ商法の特徴でございまして、これまでにもこの国会の場で何回もその問題性を追及していただいたわけでございます。しかし、近ごろになりまして、このマルチ商法はますます拡大の一途でございます。被害者もいまや都会から地方、あるいはまた被害者層も社会的に弱者と言われるような存在の低所得者層、学歴もどちらかと言えば低い方々、あるいは身体障害者方々とか生活保護家庭方々が、このマルチ商法のえじきになっている。そのような悲惨な被害が、ますます悲惨に広がっていこうとしておるわけでございます。  この状態のときに、いまや最大手のマルチ企業であるベストラインと、それからまた未成年者食い物にしている典型的な例であるライフを摘発していただいたということは、これは一つの評価でございますけれども適用条文訪問販売等に関する法律の第十五条でございまして、これはいわば形式犯、つまり入ろうとする者に対して、この会社の中身を記載した書面を渡さなかったというだけのことでございまして、この条文だけの適用であれば、なるほどマスコミは大きく取り扱っていただいておりますが、これはマルチ商法撲滅の決め手にはなりません。この訪問販売等に関する法律の運用次第にかかってくるわけですが、特にその中の十二条、十三条をうまく運用していただきたいということを、強くここにお願いするものであります。  私ども調査をした範囲でございますと、たとえばベストラインを例にとってみますと、入会に当たりまして集団催眠説明会と呼ばれる説明会勧誘会があるわけでございますが、この席上においで、ベストラインは世界的大企業である、創立者アメリカのいろんな賞をもらったすばらしい経営者である、あるいはまたすぐ金がもうかるというようなことを言っておるわけでございますが、ベストライン・プロダクツは、アメリカにおきましてはすでに一九七三年の六月に、カリフォルニア法務局によって役員らが告発され、五億五千万円の罰金処分にされているわけです。並びに創立者のウィリアム・ベイリーというのは、昨年六月にカリフォルニア裁判所において三億円の罰金刑が下されているわけです。こういうことを隠して説明会をやっているということは、これは明らかに十二条違反である、私どもそれを考えるわけです。この十二条違反であるということは、第二十二条によりましてその責任者刑罰を科すことができる。特に一年以下の懲役あるいは五十万円以下の罰金という刑罰があるわけですが、この十二条と二十二条、これをうまく使っていただきませんと、これはマルチ商法撲滅にはなり得ないということでございます。それをここにお願いするものであります。  また、マルチ商法ネズミ講は、これは根が同一でございまして、ネズミ講につきましては再三、以前から問題になりながら、いまだもって規制する法律がないということでございます。むろん、出資法あるいは詐欺罪適用された者もありますが、巧妙なもの、たとえば先日長野地裁で民事の訴訟で敗訴した方のいわゆる通称天下一家の会、第一相互経済研究所は、これはいまのところ取り締まる法律がないということを私ども聞いております。しかし、被害がふえる一方でございまして、特に近ごろでは資金繰りに苦しむ中小企業者とか、あるいは社会的に弱者方々入ろうとするわけでございます。  一般的には、マルチ商法にせよネズミ講にせよ、入る側に甘さがあるのじゃないか、もうかりもしないものに簡単につられてしまい過ぎるんではないかという論があるわけですが、これはその巧妙な勧誘法というものを理解しない限り、なぜ誘われていくのかということはよくわからないわけです。大変に詐欺性のある勧誘方法をやっているわけです。ですから、マルチ商法については一応不十分ながら、全面禁止法が本当に望ましかったんですが、一応行為規制法である法律がつくられた。しかし、マルチ商法の根幹であるネズミ講については野放しであるというのは、これは法的に見て大変不公平である。ですから、このネズミ講についても全面禁止法をぜひともつくっていただきたい。  マルチ商法商品は流れておるように見えます。介在しているように見えますけれども、実は商品ただの媒介にすぎません、商品は流れておりません。マルチ商法は、結局はヘッドハンティング人狩りでございまして、会員を連れてくれば、セールスマンを連れてくれば金になる。商品を売るよりもセールスマンを連れてきた方が金になるという商法でございまして、人狩りに走るようになっているわけです。ということは、もう根が一緒である。それをなぜネズミ講の方は取り締まれないかということは、大変疑問を感ずるわけです。ぜひともこれを取り締まっていただきたいと思います。  また、近ごろネズミ講一つの例としまして、学生相手ネズミ講が大変目立っております。これは池袋とかあるいは新宿、渋谷など、あるいは大阪の梅田の地下街などで、名刺大の大きさのカードを渡しまして、海外旅行に安く行ける、あるいは電化製品が安く買える、一緒生協みたいな組織をつくりましょうと言って、誘う者があります。しかし、そこに行ってみますと、実は人を連れてくればお金になるという、これは学生相手ネズミ講にすぎません。こういうものがあるわけでございまして、ネズミ講のいわゆる波及悪性というものが大変ここで問題になっているわけです。  ネズミ講を放置することによって、ある意味では不労所得を推奨するわけでございますから、いまや世の中の、余りいい風潮ではありませんけれども拝金風潮というものに対して助長をしていると言っても過言じゃないわけです。やはりこの風潮は排さなければいけないわけでして、ぜひともここでマルチ商法については強い摘発を望み、十二条、十三条をうまく使っていただき、悪いものに対してはすぐさま役員は逮捕し、あるいは営業停止命令をかけるということをやっていただきませんと、被害はふえる一方です。昨日も朝、朝刊が出まして、電話が一日だけで八十本入っております。朝五時半から夜の十二時まで鳴りっ放しでした。いま被害の大きさが大変に問題になっておるわけでございまして、ぜひともこれをお願いしたいと思います。  ネズミ講につきましては、ぜひともこれを取り締まる禁止法を制定していただきたい、それを強くお願いいたしまして、私の意見といたします。
  4. 西宮弘

    西宮委員長 ありがとうございました。  次に、西参考人にお願いいたします。
  5. 西隆史

    西参考人 私は自分経験を通して、きょうこれからのネズミ講に対する禁止法をつくっていただきたいと思っております。  私は、ちょうど四十六年の二月ごろ、長野県にネズミ講が蔓延してきている、とにかく朝から夜寝るまで町じゅうがネズミ講の話でごった返している状態で、友人のうちに遊びに行ったら、五十万の現金が入った郵便局からの封筒が朝二、三通届いている。夕方になるとまた五十万の現金封筒が入っている。そうすると、一日で二百万の金がぽんと入ってくるわけです。これは何だと言ったら、いや、ネズミ講だというわけで、入らないかと勧められたけれども、全然見も知らないところから金が飛び込んでくるのは不思議でしようがないということで、多少疑問もありまして、最初は全然相手にしなかったんです。  そうしたらそのうち新潟県の妙高保養所というものを彼らが買って、いわゆるオープン式をするときにみんな招かれて行ったんです。長野から二百名か三百名ぐらいの人たちが集まって祝賀会をしたのです。そうしたら、ちょうどそのときに熊本本部内村健一息子、いまの副会長文伴という人と、いまやめましたけれども、織方という常務が来て、それでいろいろネズミ講に対する説明を聞きました。そうしたら、彼らはこのネズミ講は助け合い運動だ、だから絶対に心配はしないで入れば助かるんだというような説明と、あとは、ちょうどそのときに税金の問題が本部では相当いろいろあったらしいんです。そうしたら、このネズミ講の収入は絶対に現行の税法ではひっかかる対象にならないから、心配しないでとにかくやってもらいたい、うちの方もその点では絶対安心だからというような説明があって、あとは、もしも万が一このネズミ講に異変があってできないような状態になったときには、現在二百億の資産がある、ほとんどそれは国債を買っているんで、その利息で現在、講の運営をしているので、とにかく利息だけでも使い切れないから、二百億から還付金がどんどんふえる状態なんだから絶対心配しないで、何かのときにはその金をもって必ず末端の人には補償するということを数百名の前で彼らは言っているんです。それで私も、じゃ、そのくらいのことならまず何かあったときには大丈夫だろうというようなことと、もう一つは、やはり世間づき合いというものがあるわけで、友達おい入れ入れと言うときに、やたらに断り切れないような関係人間というのはあると思うんです。この話を聞いて、ぼくも一口六十万、三口百八十万入った。  そうして長野の市内で自分も他人に勧誘しようと思って、あっちこっち話を勧めてみたが、なかなか人が言うことを聞いてくれないんですよ。それでしようがないから、神奈川県の横浜まで自分の学校の友達勧誘に来たんです。ちょうど来たその日が熊本で国税局の査察があった日なんで、新聞を見たらその事件が大きく出ていた。それでもぼくは、彼らが二百億円の資産があるから何があっても心配するなという話を信用して、その手紙を持って自分友達のところへ勧誘に行ったんですよ。実はこういうように税金騒ぎしているんだけれども、彼の説明では絶対税金には問題ないからひとつ入らないかというような説明をして、ぼくは長野へ帰ったわけなんです。  長野へ帰ってみたら、とにかく長野の町じゅうが火をつけたようにごった返しているんです。どういうわけかというと、もうこれはやりきれない。なぜかというと、新聞であれだけ騒ぐと、やはり世間の常識というものはこれに背を向いているんだという一つの感覚がみんなわかるわけなんですよ。だから、これはもうだめだ、お金を返してもらいたい。勧めた人と勧められた関係けんかが絶えないわけなんです。中には暴力団が一緒に来て手形を無理やりに切り落とされたとか、夜中押し込んで行ってとにかく金を返せとか、そういうように言われると、結局、金は使ったわ、返す力はないし、責められると何とも答弁ができないわけなんですよ。そうすると、もう家族ぐるみ夜逃げしなければならないんです。長野には志賀高原というスキー場で有名なところがありますけれども、そこのある人が村じゅうの人に勧めたわけです。そうしたら、結局は全部入っちゃったら、持っていくところがなくなっちゃったんです。それでその人は村八部になっちゃった。とにかく苦しい生活をしているわけです。  そういうようなことが起きて、ぼくもとにかく自業自得で、自分で進んで入ったんならしようがないだろうということでいたんだけれども、毎晩何百名ずつ、戸倉には保養所があるんですけれども、そこに集まって会議を開いて、どうするか。それで、じゃ一回熊本へ行ってみようじゃないかということで、そこらの集まった会合の中で、あなたひとつかわりに代理で行ってもらえないかという要請があったので、私は皆さんから四万五千円のカンパをもらって熊本に初めて行ってきたんです。それがちょうど六月の十四日。十五日が向こうの大会なんですね。いまの本館の落成式記念大会というので行ったわけです。行ってみたら、なるほど六月十五日は内村健一自分誕生日のお祝いをするために全国から人を集めているわけなんです。そうして税金問題で国じゅうが騒いでいるさなかに自分誕生日をやっているんですね。  それともう一つは、いままでぼくらの手元にあるいろいろな組織の問題で見ていると、会長が一人終身で、あと常務が七人というのが第一相互経済研究所実態なんですけれども、その日に行ったら副会長というのが出てきたんです。これはだれかというと、内村息子、いまの副会長ですけれども文伴というので、あの当時二十一か二ぐらいの若僧ですね。そういうのが副会長ということで、その大会の中で席を切って顔を出したわけです。ぼくはそれを見て本当に驚いたわけなんです。こんなに何十万の人間が国内の各地でいろいろごった返し、社会問題が起きているのに、自分誕生日の祝いをするために呼びつけておいて、しかもその中で自分勝手に息子を副会長に据えておいて、それでああいう騒ぎをしている。それで息子は何をしているかというと、財政担当の副会長なんです。その当時七十億の資産があったと言っていますから、七十億の金の番を自分息子がやっているわけなんです。おやじが会長息子が副会長で金を握っているわけです。あと理事というのは、みんな自分ただの兵隊、飾り物なんです。そういうことを見ていると、なるほど、これはぼくらが初め聞いた話とは全然実態が違うなということで、その日の夜、内村健一と各県代表三名ずつ約五、六十人集まって会議をしたわけなんです。とにかくこれをどうするか。世間でこれだけ非難を受けているならその理由はどこにあるかということと、あとはこの被害を受けた人に対する手当てをどういうふうにするか。いろいろ聞いてみたけれども、全然それらしい返事はないんですよ。国がつぶしたら国が責任をとってもらいたいということと、あと新聞が騒ぐのはあれはでたらめなんだというような話で、全然取りつく島がないんです。  それで、ぼくも家に帰りましたけれども、幾ら考えても、こんな何十万人の人間食い物にして、人間の良心の一かけらもない人間にわれわれが金を取られたということを考えると、実に寝ても覚めてもいられないわけです。それともう一つは、さっき申し上げたように、その地域社会においては朝から晩までネズミ講けんかなんです。入るときは仲がよくて、入りましょうとか、入ればもうかるんだとかいうような誘いで入って、あとは損をしたものだから——この六十万というのは、やはり個人にしては大きい金なんですよ。だから、これを返せ、返せないとかいうことで、とにかく全国至るところで、新聞にも出て御存じだと思いますけれども、岐阜県のある人は自殺したとか、ある人は夜逃げしたとか、それで入るときも、いま言ったように、高利貸しに金を借りて入ったが、金が入らないからいられないので、結局長野から名古屋まで子供をぞろぞろ連れて逃げるとか、そういうような騒ぎがあるので、どうにもおさめる方法がないのです。  それで、私はこういうような社会問題に対して何とか方法を考えなければならないということで、これは内村と話をすることはとても無理だということで、じゃひとつ裁判をしようかと、その目的は結局内村に対して姿勢をただすことと、もう一つは、この各地方に起こっておる社会問題、これを鎮静するために、とにかく最初入るときは仲よくて入ったのだから、これでけんかしないで、責任内村健一にあるのだから、この人に対してわれわれは責任をとらせるべきだから、一応そういう内輪げんかは絶対にしないでもらいたいというようなことを、皆さんに訴えながら委任状を集めて、いわゆる裁判をしたわけなんですけれども、この裁判も実際六年の時間がかかりました。それで金もないし、いわゆる下光軍弁護士に会っていろいろ相談したのです。金はないのだと。とにかく、じゃこれは社会問題でほっておけないからやりましょうということで、私も下光軍弁護士も本当に自分の力でこの裁判を六年耐えたのです。  それで、あと細かいことをたくさん申し上げたいことありますけれども、時間がないそうで、意見だけ申し上げます。  それで、さっきも堺参考人からの話がありましたけれども法律をつくるということも、マルチ規制法みたいなものでなくて、いわゆる禁止をしてもらう法律をつくってもらいたい。それはなぜか。何というか、法律権利の主張というのは、当事者主義の原則で、幾ら法律ができても自分権利を主張しない限りは、その権利はあり得ないわけです。だから、このいま約二百万人ぐらいの被害者が全部個人個人裁判ができるかというと、できない相談なんです。しかも五十万、六十万の債権を持って弁護士に頼んでも、とても弁護士相手にならないと思うのです。運よく私の方はいわゆる六百名、七百名という多数の人があって、下光軍二さんみたいな弁護士がいらして、それでこの裁判ができたのであって、私もこの弁護士に会うまでは何人かの弁護士に会ったのです。だれも相手にしてくれませんでした。いろいろ理由はあったと思いますけれども。そういうことで、とにかくこの法律をつくっていただきたい。それにはいわゆる禁止法——これはやってはだめだ、やればもう刑事事件になるのだというようなことでぜひお願いいたします。  それともう一つ最後に申し上げたいことは、私たち詐欺で告訴した事件がありますけれども、これも再審までやって二つとも不起訴になりました。だから、これも私ら被害者としては本当に不可解で、実際そういう具体的な事例がたくさんあるし、最近も講の会員に対しては本当にだましているのです、絶体大丈夫だからと。次の会員になっているから金を持ってこいというような方法をやったり、あるいは幹部が金をもらって自分のポッポに入れて、それも数百万なんです。そういう事件がいっぱいあるわけなんだ。それでも詐欺にならないとかなるとかということと、二律背反でなかなかむずかしいのだとおっしゃるなら、被害者刑事責任を負いますよ。そういうふうにしないと、この問題はけりがつかないと思うのです。だから、私が被害者であれば、私もその詐欺に対する責任があるなら責任をとる、そのかわり内村にもはっきり責任をとってもらって、この事件のけりをつけてもらいたい。そうしないと——これはいま私のところにこういうように、これは全国から来ている手紙なんですよ。もうひどい話がたくさんありますけれども一つだけ時間をかりてお読みしたいと思います。「天下一家の被害者はもう私丈で沢山です。このままにしておいたら悲惨な人達がどんどん増えて行きます。だからこの極悪なねずみ講に一日も早く法的規制をして頂いて、つぶさなければならないと思いました。」あと切らします。「代議士や有力者が沢山入っているそうで、力関係において中々困難な事と聞いて居りますが、この様な事が此後も罷り通ったとしたら、日本は実に情ない国で御座います。必らず勝訴したいもので御座います。」  これは裁判に参加してやはり勝ちたいという御意向なんですけれども、こういう例、あるいはいま言ったように、高利貸しに金を借りに行ったら、無理にその金をネズミ講に入れさしたり、あるいは最近、土建業者においては元請と下請の関係において、元請から仕事をもらうために無理に入れさせられる事例が相当あるのです。そういうような例だとか、もう言えば切りがないし、一応時間がないので……。  そのような状況でありますから、何とかこの際、本当に禁止をして、絶対できないようにひとつしてもらいたいと思います。
  6. 西宮弘

    西宮委員長 ありがとうございました。  次に、竹内参考人にお願いいたします。
  7. 竹内昭夫

    竹内参考人 私はこの問題に関心を持ちましたのは、昭和四十六年五月七日、NHKのドキュメンタリー番組でネズミ講というものについて初めて知ったときであります。そしてこれはゆゆしいことだと考えまして、すぐ「商事法務」という雑誌の五百六十四号に、四十六年六月でございますが、「ネズミ講の法的規制」という小さい論文を書きました。その中で次のように述べておりますので、それを引用させていただきます。  内村式のネズミ講は、十万円払うと当時は五百二十八万円になって返ってくるという説明であったわけでございますが、「会員が増え続けるという前提が続く限り、次々と一〇万円で五二八万円を入手しうるということになるが、もちろん問題は会員になる者の数が無限ではないという点にある。会がどんどん発展して加入者が尽きたときには、一〇万円を出資したものの、どこからも送金されて来ないという無数の会員を残して、会は終りをつげる。内村所長は、人間は次々と生まれてくるのだから会員がなくなることはないと強弁していたらしい。本当にそうなら、国民所得の増大を目ざす各国の政府は、とっくに全国民強制加入のネズミ講をはじめていたことだろう。しかし、全国民を強制的に加入させたところで、どの夫婦も」——これは各人が二人加入させるということでございますから、夫婦でありますと、「どの夫婦も四ツ子をもうけ、それがたちまち成人して、また四ツ子を生むという文字通りネズミ算式な人口増加を伴わぬ限り、たちまちゆきづまる。送金ごっこをしているだけで投資額が五〇倍にふえるというような話は、話としてもばかばかしい限りであるが、会員が増えて会が発展すればするほど、最後に泣く被害者がふえるというのが、ネズミ講の仕組みである。ネズミ講は必ず被害者を生む。被害者がどれだけにとどまるかは、ネズミ講が何時つぶれるかによる。早くつぶれればつぶれるほど、被害者は少なくてすむというだけで、被害者を出さないで終ることは決してないのである。」ということを述べまして、出資受入法とか証券取引法とかいう法律をこの場合に動かせないというのならば、新しい法律を一刻も早くつくる必要があるということを申したわけでございます。  それで、現在の、一人で二人ずつ加入させるというやり方をとりますと、計算すればすぐわかることでございましょうが、恐らく三十世代ぐらいで地球上の全人口はこれに加入するという勘定になるのではなかろうか。そうだとしますと、一週間に一世代ずつ加入することに成功するとすれば、恐らく半年かそこらで地球上の人間は全部これに入るということになるでありましょう。私は現に入っておらないわけであります。ということは、その勧誘がいかに困難かということでございまして、もうネズミ講なるものが発足して十年もたっておるのに、少なくとも私は入っていないということは、その勧誘がいかに困難かということを示しているわけであります。そのことはとりもなおさず、途中で泣いている人間がいかに多いかということを意味しているわけでございます。  マルチも、ネズミ講と同様の問題を含んでおります。客観的に有限なはずの人狩りが無限に続くかのように錯覚させる、そう言って人を欺くという点では同じことであります。  先ほど、堺参考人それから西さんから、これは行為規制であって禁止規定ではないというふうに言われましたけれども、私もこの法案の審議に参加した者の一人として申し上げますと、われわれは実質的禁止をねらったものでございます。もちろん、もう頭ごなしに、こういうことを言い出した者は片っ端から刑務所へぶち込むというやり方はしておりません。なぜそういうやり方をしなかったかと申しますと、マルチというものは大体が、その発端がそうでございますように、外資系企業であります。したがって、張本人は海外にいる。それで国内においてロボットみたいな者を使いまして、それを責任者にする。そういう人間を刑務所へぶち込むといったところで、やはり次から次へと悪いやつは出てくるだろう。したがって、そういうことではなしに、われわれとしては、マルチに公正にやれと言いさえすれば、それはできなくなるはずなんです。マルチが行えるということは、すなわち不公正だから成り立つのです。公正にやりなさいと言いさえすれば、マルチというものはそもそも成り立たないわけです。したがって、マルチに、言ってみれば、公正さという消毒剤を加えることによってこれを禁止しようというのが、この訪販法のねらっていたところであります。  今回の摘発についても、先ほど両参考人から言われましたように、発端は十五条の違反だということで行われているようでございますが、私は、調べていけば当然十二条違反ということが問題になってくるのではなかろうかと考えております。  それは、去年の五月十八日、この委員会ではございませんが、衆議院の商工委員会で申したことでございますが、仮にたった一人のセールスマンを使いましてマルチ商法を始めまして、一カ月に一人ずつ新たな勧誘ができるという前提で計算をいたしましても、三十二カ月後にはやはり地球上の全人口がこれに加入してしまうという計算になります。したがいまして、一カ月に一人募集に成功するというときには、三十二カ月後にはだれも加入させることはできなくなりますということを同時に言わなければならないはずであります。そうしなければ、十二条に定めておりますような重要な事項についての不実告知ということになるはずでありまして、わかりやすく申しますと、マルチに加入すれば、自分が泣くか多くの他人を泣かせるか、そのいずれかになるということを告げなければ、それは重要な事項の不実告知だというふうに解釈すべきものではなかろうか、私はそのように前回商工委員会では申しましたし、いまでもそのように考えております。  マルチの場合には、程度は別として、ともかく商品流通に伴う利益というものもあり得るわけでございますけれどもネズミ講の場合には、お金を送ったり送り返したりしているだけのことでございまして、これで金がふえるというなら、だれも苦労する者はないはずであります。こういうものすら禁止されていないのに、ともかく商品流通に伴う利益というものが若干なりともあるマルチについてまず規制するというのはいかがなものかということが、訪問販売等に関する法律の制定過程で当然議論されたわけでありまして、その前にネズミ講というものが規制されておれば、マルチについても同じようなやり方をするのだ、同じような考え方をこれに及ぼし得るのだということは簡単に出てきたはずであります。ネズミ講の方で野放しになっておりますから——野放しというのは、少なくとも立法的には野放しになっておりますから、したがって、訪販法の審議のときにはそれをやりにくかったということが言えるわけでございます。  それから、訪問販売等に関する法律について私が意見を述べましてかちまた一年たちました。私がテレビを見て小さな論文を書いたときからはすでに六年がたっております。その間国税庁は、ネズミ講講元から税金を取ろうといたしました。しかし、税金を取るということは、要するにどろぼうからでも国として分け前をいただくというだけのことでございまして、被害者の方の救済を全うしようというつもりでないことは言うまでもございません。税金を取らない方がいいか、取る方がいいかと言えば、私も、取った方がいい、こう思うのに決まっているわけでございますけれども、取ったからといって、ネズミ講がなくなるわけのものでもない。  国税庁はそのようなことをいたしましたし、それから会員主導型の二、三のネズミ講につきましては、警察あるいは検察庁ががんばって起訴し、有罪判決を得たものもございます。それから長野地裁では、先ほど、被害者の方と弁護士の方の努力によりまして、入会金を返せという判決が下った。このような形でいろいろな被害者の救済それから被害拡大の防止のための努力がある程度行われたということは事実でございますが、その間新たな立法措置が全くなされなかったということは、非常に重大なことではなかろうか。私は、国会議員の皆様方に、立法府として国民に対する政治的な責任を果たすということがこれで全うされているのだろうかという点について、十分お考えいただきたい、このように感ずるわけであります。  国じゅうにペスト、コレラが蔓延しているのに六年間も、あるいはネズミ講が発足し始めてからだといたしますと十年間も、何らの立法措置がとられなかったということ、これは非常に情けないと思うのです。立法の能率という点から見て、はなはだ残念なことだというふうに感ずるものでございます。  もちろん、できのよいスマートな法律をつくるということになりますと、これはネズミ講の形態が千差万別でございますから、それはなかなかむずかしいという議論もあり得るかと思います。全面禁止をいたしまして、それに刑罰を科するということにいたしましても、その構成要件をどのように決めるかということは、技術的に相当むずかしい問題であるということは私も存じております。しかしながら、現在の状況を見ておりますと、できのいいスマートな法律をつくるためにはどうやったらいいかということを考えている時期じゃないのじゃないかというふうに思うわけでありまして、スマートなできのいい、見ばえのいい法律ができないというのなら、不細工でも何でもいいから、現在やっているネズミ講の類型を全部書き出して、これだけはやってはいかぬ、それを主導、募集したものは刑罰に処するというやり方をして、それをさらにもぐるものが出てきたら、次の通常国会でまたお直しになったらいいじゃないか。次の国会法律を改正することは、いまの状況を放置するのに比べれば、その方がはるかにいいというふうに考えるわけであります。  もちろん、先ほど西さんもおっしゃいましたように、それにひっかかるというのは甘さがある、これは確かにそのとおりでありましょう。法律の中には、言ってみれば、ばかは死ななきゃ治らないという考え方でできている法律もないではありません。しかし、投資家保護とか消費者保護というのは、そういう考え方では成り立たないわけであります。人が愚かであるという弱みにつけ込むやつは許さないという考え方をとらなければ、投資家保護だの消費者保護だのというのはそもそも成り立たないわけでありますから、そんなものにひっかかるのは甘いではないか、自分ももうけようとしたのであろう、そういうものは損をしても仕方がないではないかというようなことを言っておったのでは話にならない、私はこう思うわけであります。  その意味で、こういうインチキなことを取り締まる法律というものは一刻も早く行われるべきである。それはあたかも、国じゅうにペストやコレラが蔓延してきたというふうな場合には、ともかく応急処置をとるということが当然必要なことであります。法律的にはこれはペストやコレラと同じことでございますから、そのような観点から、とにかく急ぐことが必要だということを繰り返し申し上げようと思います。
  8. 西宮弘

    西宮委員長 どうもありがとうございました。
  9. 西宮弘

    西宮委員長 それでは、これより質疑に入ります。  この際、参考人各位にお願い申し上げますが、時間の都合上、委員からの質疑に対する御答弁は、要領よく、簡潔にお願い申し上げます。また、委員に対しては質疑はできないことになっておりますので、この点も御了承をお願い申し上げます。  それでは、片岡君。
  10. 片岡清一

    ○片岡委員 私、いまお話を伺いまして、その弊害が非常に大きい、そしてまたそれに泣いておる人たちが非常に多いということをいまさらのごとく感じまして、戦慄を覚えるものでございます。  それで、最初にお三人の方々にお伺いいたしたいのでございますが、これがマスコミでもまた人の言の葉の上でも口コミでも、インチキなものである、そして非常にこわいものだということが相当行き渡っておると思うにかかわりませず、こういうものがどんどん広がるということは、遊んでおって何とかもうける法はないかという人の弱み、そういう愚かさというものにつけ込んでくる、すきがあるということが一つだと思いますが、それからいま竹内先生も、最初ひっかかったのは皆愚かなものだということですが、最近のいろいろなものを見てみますと、相当上層階級の人たちが入っておる、中には代議士も入っておる——入っておるのかそれに関連しておるというのか、そういうことが言われておることもありまして、私は非常に残念に思うわけですが、そういうことが人をだます一つの大きな支えになっておるというか、そういうことからなるのか、それとも何か一つの網が張ってあって、その網でうまくかぶせていくような組織的な何かがあるのか。たとえば先ほど西参考人からお話がございましたように、何か店を開くときに来て説明をしたという話を聞いておるのですが、それはどういうことで、何か店を開くことについてそういう場所をだれが知らせたのか、そういうことがどうして熊本の情報でわかったのか、そういうようなことをちょっとあわせて、どうしてなかなかやまないのか、どんどん広がっていくかというその原因ですね、理由、そういうものをちょっと、それぞれお三人の方にお伺いしたいと思います。
  11. 堺次夫

    堺参考人 マルチ商法の場合でございますが、すでにもう社会問題化して六年になっております。しかし、いまだもって被害がおさまっていないということですが、この原因は、一つには、マルチ企業側の勧誘がますます巧妙になっているということが言えると思います。たとえば、法律がつくられたわけでございますが、この法律はいわば許容基準を与えたかっこうになっていると言っても過言じゃないわけでございまして、当方はこの法律によって守られているんだというようなことを言っているところがあります。それからうちのところはマルチではない、ダイレクトセールスだとかあるいはフランチャイズ商法だとか言っている。それを聞いている人が真に受けるわけですけれども、何で真に受けるかといいますと、口こみで広がってくるからです。いわゆる話を持ってくる人が見も知らぬ他人であればやはり警戒するはずです。ところが、この話を持ってくる人が、自分の親族あるいは会社の同僚あるいは会社の上司とかそういう方々が、ちょっといい話があるから行ってみよう、あるいは一杯飲もう、あるいは地方から出てきた学生が孤独感に悩んでいるときに、ちょうどいまごろの時期でございますが、同郷の人間が集まって話をするんだというように、その個人個人の信頼関係があるのが、いつまでたってもついていってしまう、そしてついていくと、催眠術にかかってしまうというのがその原因です。  私見ではございますけれども、社会構造的に言いますならば、一つには、高度成長の過程におきまして入っている層を私ども調べてみたところ、ほとんどの方が、自分はどの程度の階層であるかという質問に対しまして、中の下とかあるいは下の上と答えております。この層は家を持っていないわけです、あるいは車も持っていない。それからなかなか管理職にもなれないということで、誘われた方が車ぐらいはすぐ持てる、家がすぐ建つ、土地が手に入るというような、本人が潜在的に持っている欲求、それから夢というか、そういうものを現実化のように目の前に引っ張り出してやる、あるいは馬の首の前にニンジンをぶら下げて、おまけに後ろをむちでたたくような、こういう説明をやるから続いていくんだと思います。
  12. 西隆史

    西参考人 いまさっき申し上げた店の開店じゃなくて、私の申し上げ方がまずかったのかわからないけれども、ある一つのブロックに、会員のふえそうなところに保養所を設けるのです。それはお金を出して、ある保養所を、一つの旅館のつぶれたものを買って、それをみんなに、じゃ飲めや食えやここでやりなさいというようなお祝いをするときにみんなが呼ばれていったのが、実はいまのおっしゃる開店の話なんです。  それと、入る条件ですけれども、いま堺さんが申し上げたような同じような心情だと思いますけれども、実際いろいろ、手元にもう一つのこういう手紙がありますから、ちょっとお読みします。これは東京都板橋区成増四の一六の一五、池本為人という方からの手紙ですけれども、これはこう言っておられますよ。「有名な政治家の秘書(三木前首相の秘書)や会社の重役等が入っているという事で(名刺を沢山勧誘員が持っておりました)知っている人の名前がいっぱい出てきましたので安心して入会しました。」というような一つの条件と、もう一つは、最近、いま言ったように、非常に巧妙だということでこういう例があるのですよ。これは東京都新宿区百人町、須田輝久さん、この人は薬剤師です。自分に勧めた人がこう言っておる。「断じてネズミ講ではない事を説明し、某氏は、入会後、数人の子を作り見事事業を再建させた等数々の成功例を見せ私を信用させました。」こういうようなことで、いま彼らは絶対これはネズミ講でないんだということを言っているのです、どこへ行っても。  それと、最近法案ができるというようなうわさが出ているから、彼らはそれをどういうふうに言っているかというと、今度第一相互経済研究所だけしかできないように法案をつくってくれるんだ、その法律によってわれわれはできるんだというような説明をしていることと、もう一つは、詐欺不起訴になった問題なんかも、ここに証拠書類をきょうはちょっとお出ししようと思って準備をしてきましたけれども、不起訴処分になったということは、罪にならないのだ、非常に安心できるのだというような、こういうものを彼らはつくってばらまいているのです。  それと、いま言ったように、弱者救済という立場に立てば、こういう有名人の肩書きを彼らは利用しているわけなんです。だから、利用されている者は下のやつを食いつぶしているものだし、下の者は結局食い荒らされる、悲惨な立場に置かれるでしょう。これも彼らが使っているチラシですけれども、ここにやはり政治家が出ているのですよ。行ってちょうちん担いで祝辞を述べているわけ。そうすると、彼らはどういうふうにこれを利用するかというと、こういう偉い政治家も入っているんだ、安心して入りなさいよ。これはもうここにも何人も出ている。なぜこういうふうに、朝から晩まで新聞が騒いでいるところへ政治家が顔を出してくるのですか。どういうことですか、これ。だから、入る連中は、いま言ったように、有名人が入っているから入るのだ。だから、だまされた者が悪いという論理は成り立たぬのです。社会条件からしても、やはり金がない者は苦しいのだ。
  13. 西宮弘

    西宮委員長 質問に対するお答えだけにしていただきます。
  14. 西隆史

    西参考人 それからもう一つ、きのう東京の本部に行ったら、こういう新聞を彼らは持っていたのです。ちょっと一部だけ読みますけれども、こういうことなんです。「“ネズミ講”の風船玉は、放っておいてもパチンとはねるとタカをくくっていた政府は、日本武道館にうねる大活力にあわて出した。十月十四日の衆議院物価問題特別対策委員会で天下一家の会が取上げられ、六省庁間で、ネズミ講対策連絡会議を開き具体的に規制方法の検討を急ぐと政府は答えた。天下一家には、裏も表もない。秘密の扉がない。検察庁も、国税庁も、さあ、いらっしゃい、とパンティ脱いでの丸ッ裸である。」こういうような、政府を食ったみたいな新聞を彼らの部屋に置いておいて、飾って、みんなに配っているのです。ぼくはきのう行って、済まぬ、これを一枚ちょうだいと言って、四、五枚コピーをとってきょう持ってきました。  こんなような環境で、やはりわれわれはついそういうような、ネズミ講ではないのだ、法律にも触れないのだ、こういう偉い人がたくさん入っているのだとかということを言われれば、やはり六十万入れて三千三百万金が取れると言われれば、これは大変な魅力ですよ。金が支配するこの世の中でしょう。そうだと思います。
  15. 竹内昭夫

    竹内参考人 どういう理由かということでございますが、一つは、やはり人間のだれしも持っている弱みがつかれているということだろうと思います。先ほど私は愚かさだということを申しました。しかし、人間だれしも欲はあるわけでございますし、それからだれしもそういう心理的な盲点というものは当然持っているはずでございます。そういうところを巧みにつくように、先ほど申しましたように、お金が一挙にもうかるとか、それから有名人に弱いという人間の心理をつくとか、それからマルチの場合で申しますと、かたかなの英語をむやみに使うとか、勧誘会は非常に豪華なホテルの一室を使って、しかも真っ暗にして催眠的な雰囲気の中で行うとかというふうな形でもって、人間の愚かさと申しますか、人間の弱みをつかまえる手段が一〇〇%利用されておるということが、これがびまんしていくゆえんだろうと思います。親類縁者、友人から勧誘されれば、ついそれを信用するというのは、これも人間の弱みでありまして、そういうところを利用して食い込んでいこうとしておるのが、これがなかなか根絶できない理由ではなかろうか、このように思います。
  16. 片岡清一

    ○片岡委員 堺参考人一つだけお願いします。  暴力団式の一つの網を持ってやっていくという組織がありますか、その点。
  17. 堺次夫

    堺参考人 どのような……。
  18. 片岡清一

    ○片岡委員 天下一家のように、何か各県に組織を持っておどかしながらやっていくという、何か特定した組織があるかどうか、それを。
  19. 堺次夫

    堺参考人 ネズミ講の方でございますね。——私の聞いておる範囲では、やはり各県のいわゆる県庁所在地にそれぞれ支部がありまして、その支部の人が中心になってやっていくわけですけれども、すでにお金を得た、もうかった人間説明をさせるのですね。そうすると、信頼度というか信用度が増すからです。  暴力団の話も聞いておるわけです。結局六十万円で三千三百万円になるというコースがあるわけですが、こういうものがやはり暴力団の資金かせぎに使われるということは十二分に考えられることで、はっきりとしたデータとして挙がっておるわけじゃございませんけれども、そういうことはあり得るだろうと思います。これは大変な、ゆゆしき問題です。
  20. 西宮弘

    西宮委員長 武部文君。
  21. 武部文

    ○武部委員 私は二つお尋ねをいたします。最初西参考人にお願いします。  勧誘方法についていろいろお話がありましたが、この天下一家の会の勧誘の仕方について、実はこのマルチ商法摘発された日だと思いますが、一昨日、都内の主婦の方が七人そろって私のところへ来られました。そうして勧誘の仕方について自分たちがどういう勧誘をされたかということを述べられたのです。長野県で現実にあなた方はそういう被害に遭っておられるわけですが、これから述べるこの七人の主婦の皆さんが述べたこととあなた方の方に同じようなことがあったのかどうか、これを聞きたいのであります。  その際、勧誘員はどういうことを言ったかというと、元金が保証される、名義変更は可能である。信用入会である、知り合いを入れなさい。三番目は、ネズミではない、それは八代で終わるからだ。それから四番目は、これは相互の助け合い運動である。これは先ほどちょっと述べておられたですね。しかし、現実に主婦の実感としては、助け合い運動どころか、これは殺し合いだというようなことを述べていました。それから、話を聞いたらすぐ金を払いなさい、もし下の人が金がなければ立てかえて払ってあげなさい、ある一定の時期になると二度三度と繰り返して入るから絶対に損にはならぬ。それから、生命保険の人や銀行員は誘ってはならぬ。それは商売がたきだから反対する。次は、主人には絶対に言うな、男はけちだからだめだ、こういうことを言っていますね。それから、つぶれることは絶対にない、なぜならば国債を買っておるからだ、福祉に力を入れておる、いいことをやっておるからつぶれることは絶対にないんだ。それから、法律には触れておらない、議員がたくさん入っておるから心配はない、こういうことも言っていますね。これは噴飯物ですが、加山雄三や高峰三枝子も入っておるし、加山雄三はこれで借金を返した、こういうことを言っておるのですね。警視庁の人や弁護士の奥さんも入っておる——ここに警察庁の方もいらっしゃるが、そういうことも勧誘の中に入っておりますね。それから、金のない人は誘うな、友達のない人も誘うな、口の軽い人も誘うな。そういうことで、友達の多い人で金のない人には立てかえてあげなさい。具体的には、そういうので立てかえて払ってあげた、自分はその立てかえが戻ってこぬから全然だめになったとか、それから、下を誘ったらその下ができないために自分がその損害を負担してあげて友達関係も断絶してしまった、非常に親しかった友達がだめになってしまったというような、具体的な例がたくさん述べられました。それから、説明会ではお金の入った人に話をしてもらって礼をしなさい、それはいま堺参考人のお話がちょっとありましたが、金をもうけた人、そのもうけた人は信用があってもうけたのだから、その人から聞きなさい。財団法人、これは後で問題にしなければなりませんが、財団法人になるのは信用度があるからだ、国が保証したようなものだ、ただのネズミに財団法人の認可がつくわけがない。それから、国債を大量に買って国に協力しておるんだ。私、聞いて全部これを書き上げたわけですが、ざっと挙げればこういうことを被害者の七人の方が述べられました。西さんの方で、こういうようなことが現実にあったかどうか、それがまず一点です。  それから、竹内先生にちょっとお伺いしたいのですが、このネズミ講は海外に存在するかどうか。それから、海外で日本から輸出されたネズミ講摘発をされたということを聞いておるわけですが、そのようなことを御存じでしょうか。それから、外国で取り締まりの法律があるかどうか、もし御承知ならば、その内容をお知らせいただきたい、この二点であります。
  22. 西隆史

    西参考人 いまのことですけれども、ほとんど同じような状況であります。それと、名義変更をしてくれるとか、すぐ金を出しなさい、これはあなたの下にもう人が決まっておるんだよ、すぐ金は入るんだというようなことをしきりに言っているし、この手紙の中にもそういうように言われて入ったということを書いたのが何通もあります。  読み上げる時間がないけれども、そういうことと、あとは、いまさっき申し上げたように、最近はとにかく絶対ネズミ講じゃないんだということを相当言っているのです。うちにはこのごろ毎日のごとく手紙や電話が来ますけれども、ほとんどそういうような問い合わせなんです。絶対ネズミ講じゃないんだ、法律に触れないんだというようなことを言って誘っています。  生命保険の人や銀行員は入れるなということは、これはちょっと状況が違うので、長野の場合は、信用組合の支店長が先頭に立って入って町じゅう勧めたものだから、そこらの商売人がみんな入っておる。あとは結局、お金が取れないものだから、パーマ屋をやっている女の人なんですけれども自分関係のない他人の分まで千五百万ぐらい借金をしょって、銀行から金を借りて、いまでも毎月月賦で払っているような状況があるのです。  それは去年の六月に東京地裁で裁判を起こした原告の一人ですけれども、そういう状況で、実際一人入れると六十万、それが積もって三千二百万となれば、一人を誘うということは大変な仕事なんです。だから、親きょうだいでも、その一人の加入者に対する奪い合いっこが当然生じて系列化ができるから、結局そういうことで、親戚の仲も悪くなったとかという例も実際私の近所にはあります。  以上、大体そういうようなことで、有名人が入ったということは、こういう新聞を御存じだと思いますけれども、いろいろなことがこういうふうにちゃんと出ていますからね。だから、こういうものを見れば、恐らくただの誹謗じゃないと思う。実際われわれはやはりそうだなと首をかしげるようなことがあると思うのです。
  23. 竹内昭夫

    竹内参考人 海外にこういうものが存在するかということでございますが、私はその点は自信を持ってお答えできません。存在するのかしないのか、私にはよくわかりません。  日本から進出したものが摘発された、あるいは進出したという新聞は私も読みました。そうして全く情けないと申しますか、国辱ものだというふうに感じました。このことはマルチが問題になりましたときに、日本でもそれが問題になった当時、アメリカでは、アメリカの連邦政府はこれをつぶしたわけでございますが、そのときに連邦政府の役人が、おれたちはともかくアメリカではこれをつぶした、しかしこいつらは日本へ行ってまたやるだろう、南アメリカへ行ってまたやるだろう、それが情けないと語ったことを、私はタイムという雑誌で読んだ記憶がございます。私は、日本のネズミ講が海外へ行ってやっているというのを聞きまして、日本でもたたきつぶされていないものが海外でやっているとすれば海外の人たちは日本に対して一体どう思うだろうかということを感じて、アメリカの役人以上に情けない感じがしたわけでございます。  ただ一つ私がいま思い出しましたのは、カリフォルニア州にはエンドレスチェーンというものを禁止するという法律がございまして、それを発起し、企画し、推進した者は刑罰に処するという規定がございます。それを見た記憶がございます。このエンドレスチェーンなるものが一体どういう定義、規定になっておるのかということを私は調べることができませんでしたものですから、それがこのネズミ講にそのまま当てはまるかどうか、これはいま断言はできませんけれども、しかし、そういう規定があった。そして、考えようによってはマルチもネズミ講もこのエンドレスチェーンといったものに当てはめて抑えるということも、あるいはその法律の決め方いかんによってはできるのかなというふうに、いま思い出しているところでございます。
  24. 武部文

    ○武部委員 竹内先生にちょっとお伺いいたしますが、いまカリフォルニア州の話が出ましたが、これはロサンゼルスで適用された正常経済妨害罪、これによってつぶされた、そういうことですか。
  25. 竹内昭夫

    竹内参考人 いいえ、私が読みましたのは、このマルチについてどう立法するかということを検討しているときでございましたから、それは大分前でございます。しかもそのときに調べた法律では、エンドレスチェーンというものはいかぬ、それは刑罰をもって禁止するという規定があったということを見たということでございますので、いまおっしゃいました法律とは違うのではないかと思いますが、自信がございません。
  26. 西宮弘

    西宮委員長 質疑の途中でございますが、ただいま下光参考人が御出席になりました。  本日は御多用中のところ、御出席ただきましてまことにありがとうございます。  マルチ販売ネズミ講等に関する問題について、十分程度御要約して御意見を承りたいと思います。  下光参考人
  27. 下光軍二

    ○下光参考人 私は長いこと弁護士をしておりますが、戦後、ある無料法律相談所の相談員をやっておりまして、いろいろと一般庶民からの悩み事を聞いておるわけでございます。その相談を受けております中に、ネズミ講のことがたびたび出たわけでございますが、過去におきまして、皆様御承知のように、最初はたしか保全経済会というようなことで世間を騒がせました。その次には相互株式というようなことでやはり大分問題になりました。その後もいろいろとこれに類するような社会問題が次々と出てきております。たとえば畜犬、犬の子供を預って、それを育てて高く買い取るというようなこと。それから、近くはマンション投資と申しまして、一つのマンションの部屋を何十人、何百人の共同所有にして、それから賃料を取って利益を上げるのだというようなことで、いろいろ問題を起こしましたけれども、過去においてこういうような経済活動におけるいまのような場合には、大抵責任者が処罰されております。大体皆様御承知のとおりだと思います。  このネズミ講もやはりこれに類するものだ。早い話が、結局はうまい話をもって人間の弱みにつけ込んで暴利をむさぼっておるということになるわけで、私はほっておけないというようなふうに感じまして、法律相談なんかを受けた場合には、新聞、雑誌で、これにひっかかりなさんなというようなことを警告してまいったのであります。そういうようなことを書いておりますうちに、被害者方々から何とかならぬだろうかというような話がありまして、それで、私は詐欺罪が成立するんではないかというような考えで、告訴に踏み切りました。しかし、告訴の方は検察庁の方で、先般皆様御承知のように不起訴、詐欺の疑いはあるけれども公判廷における立証に自信がないというようなことで不起訴になっておるわけでございます。私は検察庁に申し入れをしたのでございます。立証に自信がないというのならば私らの方に協力を求めてもらいたいというようなことも、いろいろと意見を具申したのでございますけれども、この詐欺罪の取り調べにおいては私たち意見は一度も聞かれたことがないのでございます。しかも私が警察に告訴状を持っていって——それは私は一番最初長野県の松本警察、その次には長野県の長野市の警察、それから静岡警察に告訴したのでございますけれども、告訴状を置いてくるのにけんか腰で置いてくるような状況だったのでございます。ですから、検察当局の方での取り調べというのは、私の立場から言いますと、はなはだ遺憾でございました。  そこで私の方は、民事でそれは許されないんだということの烙印を押さなければならないというような意味合いで、民事の訴訟を昭和四十七年の二月に長野地裁に起こしたわけでございます。それがようやくことしの三月三十日に、私たちの要求するような公序良俗違反であるという烙印を押した判決になったわけでございますが、ずいぶん長い期間を要したわけです。  ですが、これで一応違法だという烙印は押されましたけれども会員の救済にはとてもこの烙印だけでは十分でない。といいますのは、訴訟というもので各個人が救済を求めるということになるわけでございますが、皆様御承知のように、訴訟に踏み切るということは、現在の仕組みでは大変むずかしい。費用がかかり、先ほども申し上げましたように、日にちがずいぶんかかるわけでございます。四十七年から五十二年の三月まで五年間を要しております。こんなに待っておるわけにいかないわけですね。どうしてもこれはやはり立法的な処置で禁止してもらわなければ、一般庶民はどうしても助からない。この判決の中にも、これははっきりと理由の中で言っておりますけれども、この講は必ず行き詰まるんだということと、それから詐欺的な方法勧誘をしている、勧めているというようなこと、まあ誇大宣伝ですね。それから不当な入会金を取っておるというようなこと。それからさらに、勤労意欲を失わしめる、正常な経済生活、経済取引を害するというようなこともありまして、結局、公序良俗違反だというようなことになったわけでございますけれども、いま申しましたように、これはやはり禁止するという立法的な処置がない以上、われわれ国民の安定した生活といいますか、経済生活を乱されるようなことを防ぐことはできないのでございます。そういうような意味合いで、特に私たちは立法的な処置をお願いしたいわけでございます。  しかもこのネズミ講は、まず第一にマルチ商法に利用されているということが言えるわけでございます。そのほか、最近私の相談を受けた例の中では、暴力団がこのネズミ講を利用して拡大を図っているというのが、ある繁華街で各飲食店、飲み屋なんかでは、大体用心棒のような立場の人たちがこのネズミ講に入らぬとおまえたちのめんどうを見てやらないぞというようなことを言って、強制的にこのネズミ講に加入させているというような事実。それから、これは銀座での話でございますけれども、これもやはり私の相談を受けた中の一例でございますが、高利貸し、いまのサラリーローンでございますが、これがやはり金を貸してもらいたいと言ってきた債務者に、金を貸すけれどもネズミ講に入れ、ネズミ講に入らなければ貸さない、ネズミ講に入れば、掛金をわずか納めれば、後から入ってくるからそれで弁済をしてくれれば楽に弁済できるのだしというようなことで、金に困っておる債務者に強要してネズミ講への加入を図っている。それからさらに、私の相談を受けた例では、中小企業が最近不景気で非常に金詰まりで困っている。この中小企業経営者にいろいろ働きかけて、銀行はなかなか融資してくれないが、私の方のこの講に入れば金はどんどん入るのだというようなことを言いまして、社長以下全社員を全部加入せしめた。ところが、加入はしたけれども後が続かないし、結局はその事業は倒産してしまった。大体、事業しておるよりもネズミ講拡大の方に一生懸命になった方が金になるというような気風がその会社の中ではみなぎってきまして、それで会社の仕事をほっぽり出してネズミ講会員の加入に奔走する。当然、会社の方がだめになるのはわかり切った話でございます。そういうような例が大分出てきておるわけでございます。  しかも私がいろいろ取り扱ったケース、長野県では五百数十人、それからいま静岡で四十人の被害者から訴訟を起こしておりますし、それから東京でも百八人の依頼者から訴訟を起こしております。さらにまた、いま今度の判決があって後、続々と全国から何とか救済してもらいたいというふうな手紙が参っております。  そういうことでございますけれども、日本の訴訟制度の不備欠陥といいますか、少額訴訟は大変むずかしい、費用倒れになる。ことに弁護士さんが少額訴訟については受けつけてくれない。やはり弁護士さんも商売でやっているわけでございますから、金にならぬ、手数がかかる、そういう事件は敬遠されます。弁護士連合会でも少額訴訟をどうするかというようなことが現在問題になっているのでございますけれども、これについてのはっきりした対策は立てられておりません。  そんなようなことで、このネズミ講本部内村の方では、それをよいことにして、公序良俗違反だけではとてもつぶれるものではない、個人個人が訴訟を起こせるものでもないしというようなことで、たかをくくっているわけでございます。そういうようなことで、私はこのネズミ講について禁止の立法措置をしていただきたい。  この禁止ということは、私は多少でもこのネズミ講が社会に裨益するところがあれば、制限でよろしいと思うのです。しかし、このネズミ講は社会に利益をもたらすことは何もない、一つもありません。もうけているのは内村だけがもうけている。本部並びにその幹部がもうけております。今度の長者番付、多額納税者の発表がございました。一昨年ですか、ですから五十年度の内村の収入は四千七、八百万円、ところが、昨年の申告額は二億七千万円というふうになっております。そして月給が一カ月一千万。月給一千万を取っている日本人は彼以外にはいないのじゃないかというふうに私は思います。しかもこの入会金というものは会の金であると自分は強く主張しながら、その中からこのようなお金を取っておるのでございますけれども、この会であるかどうかということも、この判決ではこれは内村個人の事業である、内村個人の財産になっているのだということをはっきりとうたっております。  それから、私がまだちょっとつけ加えたいのは、国税局が四十六年にこの査察をしていま差し押さえをしておりますけれども、その異議の訴えを内村健一は起こしておるのです。この異議の訴え、民事の訴訟ですけれども、私の訴訟よりもよっぽど早くから始まっておるのに、まだ結審しない。これはまだ何年かかるかわからぬというような遅々たる進行状況なんでございます。これは私は一体国税局の方が本気でこの訴訟をやる気になっておられるのかどうか、非常に疑問に思っておるわけです。そしてまた私は、政府がこの問題についてどうしてこういうふうなことを放任しているのかというふうなことを残念に思いまして、去年六月東京で起こした訴訟では、早く政府はこの取り締まり規定を設けろという訴訟は起こせませんので、そういう意味を含めて、国家はいままで怠慢でこの取り締まり規定を設けなかったということは被害者に対して責任があるはずだということで、国家に対して慰謝料を払えという訴訟を、そういう請求も含めて起こしております。そのほかに私は、法務省にも、早く立法措置を講じてもらいたいということを昨年の九月に上申しておりますけれども、どうも一向に進捗しないのはこれは何ゆえであろうかと私は非常に残念に思っております。私の耳にはやはり政府の要人あるいは代議士の名もちらほらと入ってきておるわけでございますが、私はかねて個人的な考えで、ロッキードという問題はずいぶん世の中を騒がしたけれども、私はこのネズミ講はこのロッキードにまさるとも劣らないものではないかというくらいな考えを持っておるのでございます。  そういうわけでございますので、何とか国会で早く禁止の立法措置を講じていただきたい、そういうふうに思っておる次第でございます。
  28. 西宮弘

    西宮委員長 どうもありがとうございました。
  29. 西宮弘

    西宮委員長 それでは質疑を続行いたします。宮地正介君。
  30. 宮地正介

    ○宮地委員 参考人皆さんには大変にお忙しい中、国会にまでお出かけいただきまして御苦労さまでございます。  時間が限られておりますので、一、二御質問をしたいと思います。  最初堺参考人でございますが、先ほどの御説明の中で、被害者がマルチによりまして二百万人おられる。そのうち、すでに自殺者が五人、未遂が一人。その自殺者の中には高校生まで含まれている、未遂では主婦の方がお一人いらっしゃる。大変残念なことであろうと思います。なぜこのように追い込まれるに至ったのか、もう少し国民の皆さんにわかりやすく、名前は控えていただいて結構でございますが、その概要について御説明ただければと思います。  また、勧誘方法についてるる御説明がありましたが、聞くところによりますと、勧誘をするために、マルチにいたしましてもネズミにいたしましても、研修会などをやっているという話を聞いております。その研修会の会場ではどういうようなことが勧誘としてされておるのか、もしおわかりでしたら、御説明をいただきたいと思います。  また、竹内参考人と下光弁護士さんには、特に法規制ということでるるお話がありました。マルチあるいはネズミ、こういうものについて全面禁止あるいは応急的な法規制を立法府である国会はすぐに急ぐべきであるとおしかりをいただいたわけでございます。私たちもいまいろいろと研究調査をしているわけでございますが、具体的にどのようなステップで踏み込んでいったらいいのか、その点についてもし御意見などがあれば、お伺いしたい、このように思います。  また、西参考人被害者の一人ということで、今回代表として長野地裁で闘われたわけでございます。その裁判の闘いの中で、具体的にそのやりとりの中から、国民の皆さんにもう少し、こういうことが明らかになったということで御説明ただくようなことがあれば、さらにお教えいただきたい。よろしくお願いいたします。
  31. 堺次夫

    堺参考人 マルチの被害者、参加者がいわゆる異常な状態に追い込まれていくのはなぜかという御質問でございますが、これはやはり説明会のときに、あすにでもすぐ百万あるいは二百万入ってくるという断定的気分になるわけです。ということは、仮にきょう組織に入るためのお金を借りてきても、すぐお金が返ってくると思うわけです。借金を苦とも思わないわけです。ですから、入る本人たちにしてみれば、いわゆるリスクが全くないと思い込んでいるわけです。ですから、競馬、競輪の被害者が競馬会とか主催者の方へ金を請求していくというのとはちょっと違うわけです。  たとえば大阪の高校生の場合ですが、六万五千円のお金を借りていたわけです。これはサラリーマン金融から借りたのです。毎月利息を支払う時期が参ります。お金がすぐ入ってくると思うものですから、簡単にお金を借りて入った。しかしそのお金は入らない。買ってきた商品、仕入れてきた商品——商品を仕入れないとその地位が得られないような仕組みのものもありますから、その商品を売ろうとする。しかし話のとおりに売れない。大体マルチが扱っている商品は、欠陥品とか第三者が見て価値がないものが大半なんです。あるいは値段が高い。たとえば一例ですが、ホリデイ・マジックの化粧品というものは欠陥化粧品であることが明らかになっておりますし、もうすでに倒産したエー・ピー・オー・ジャパンの扱っていたマークIIという自動車の出力がアップするあるいは排気ガスが減少するという装置は、通産省の調べでその効果がないというように発表がなされております。要するに、その商品が売れないわけです、換金性がないわけです。元を取ろうと思っても商品が売れないものですから、結局、人狩りに走る。人狩りに走っても、人はなかなか入ってくれない。借金の利息、督促には追われてくる。そこで追い込まれていくわけです。これが多額になればなるほどその悲惨さが目立つわけで、そして自殺に追い込まれていったというケースがあるわけです。  また、単にお金被害だけで済んでおりませんで、いたたまれなくなるわけですね。自分が信じ込んで人を誘っておりますから、やはり人から白い目で見られるようになります。あるいは、いざ気がついてみたら一というのは、入るときは盲信状態で入るわけですが、これが気がつくまでに平均して大体三カ月かかっております。被害に気がつくまでに三カ月ということは、この間に、自分が信じ込んでいるわけですから、自分が加害者になることさえあるわけです。被害者が加害者化するところがこのマルチの恐ろしいところなんです。気がついたときに、自分被害者でありながら下からも請求される。あなたが誘ってくれなければ私はこういう被害に遭わなかったのに、というようなことを言われる。いたたまれなくて夜逃げをした、あるいは町を歩けなくなってノイローゼになって自殺に追い込まれていくということです。  それから、勧誘のときの説明内容でございますけれども、これはもう大変多種多様にわたっているわけですが、雑誌に発表しておりますのでちょっと読ませていただきます。いままで、昨年、一昨年、その前あたりで問題になっておりました大手三大マルチ企業にエー・ピー・オー・ジャパン、ホリデイ・マジック、ジェッカー・フランチャイズ・チェーンという会社があるのですが、これはもうすでに倒産しております。これもすでに摘発などされたわけですが、彼らはこのように言っております。  「私たちの会社は、マルチではありません。ダイレクトセールスなのです。ホリディ、APOなどと同列視してもらうと迷惑です。ああいう連中は商品などどうでも良かったから、価値のない商品を扱って問題を引起こしたのです。」これは実はエー・ピー・オーから飛び出した連中が同じシステムをやっているくせに、エー・ピー・オーとは違うのだということを言っているわけです。そうすると、相対的に聞いている方は、なるほどエー・ピー・オーは悪いけれどもこの会社はいいのかというように錯覚を覚えるわけです。商品などどうでもよかったと言っても、いまその企業が扱っている商品も価値はないわけです。しかし、相手を非難することによって自分のところの地位が相対的に上がるわけです。  「私たちは違う。まず世界的大企業です。商品は市場性もあるので、価値が高い。この組織拡大システムも五カ年計画です。」と限定をしているのです。いつまでも続けるわけじゃないのだ。「一九七七年には、コカコーラやポーラのような企業となる。あなた方は役員となっていただき、その時には固定給です。しかも、その営業所の権利は高く売ることもできる。」いま六十万円のものが、あるいは一千万くらいで売れることがあり得るというようなことも言うわけです。  「コーラやヤクルトも同じ方法で伸びて来たのです。」実名をどんどん挙げます。  「私たちがあまりに伸びるために、同業者が妬み、マスコミ等で嫌がらせをしてきますが気にすることはありません。コーラだって、一時たたかれたでしょう。」いわゆる詐話術に大変たけているわけです。  「たたいている新聞を良く見てみなさい。同業者のPRが必ず掲載されているでしょう。」「新聞、テレビなど見るから気になるのです。もう見ないことです……」と言って、閉鎖社会の中に追い込んでいく、これが手口です。ここが一番うまいところなんです。  そういう状況です。いろいろあるのでありますが、大体主な点を申し上げました。
  32. 西宮弘

    西宮委員長 下光参考人竹内参考人に立法措置の問題で、どちらでも結構です。
  33. 下光軍二

    ○下光参考人 立法措置については、当局の方に専門家がいられるわけですからそれに任せて、やはり詐欺罪適用ができるようにしていただければいいんではないか。要するに、うまいことを言って金もうけをしているわけです。そして被害者はふえるばっかり、損害を受けているわけでございますから、私たちはこれを端的にとらえまして、詐欺になるのだと。そしてその自分たち詐欺性をカムフラージュするために、あらゆる手段、方法を尽くしているわけです。  一つの話が、宗教を持ち込んできている。それから天下一家の会は、心、和、平和を求めているのだというようなことを言っておるわけですが、この講と何らの関係はないわけです。それに名称なんかも第一相互経済研究所、研究所というような名前をつけているわけですね。ですから、私も法廷で、研究所と名前をつけている以上は何か研究しているのだろうと言って、質問したのでございますが、研究しているものは何もない。何をやっているかといったら、ネズミ講だけをやっているというようなことです。それから今度は、財団法人天下一家の会というようなものをつくりました。公益法人にしたくてならなかったわけですが、許可してくれない。そこで、熊本に戦後間もなく財団法人肥後会というのがあったわけです。これは戦災者なんかを援護するための財団法人でございますが、これが有名無実で眠っておった。それを買い取って天下一家の会という名称に変えて、しかも役員を全部ずらりと変えてしまったというようなことをしておるのですが、これはただ熊本県内だけしか事業範囲はないのにかかわらず、いま東京の九段に建物を建てましたけれども、そこに持ってきて、財団法人天下一家の会というようなことで、それからこういうパンフレットにも、財団法人になったのだ、これからは福祉事業をやるのだというようなことを盛んに宣伝しております。それで、私がやはり法廷でこの財団法人の目的を一つ一つ挙げまして、この点についての事業はどうだ、まだやっておりません、これはどうだ、それは逐次将来にやる見込みですというようなことで、十幾つこの財団法人の目的があるわけですけれども、これは一つとしてやっていなかったのであります。  そういうようにカムフラージュといいますか、人の目をくらますということに非常にたけているわけです。検察庁はこれにひっかかってしまったと私は思っているわけです。ですから、民事の方でも、私たちは、公序良俗違反、公の秩序、善良の風俗に反するものだというほかに、やはり民事においてもこれは詐欺になるのだというような意味合いで、予備的な請求として詐欺ということを持ってきておるわけでございます。  そういうようなわけでございますので、詐欺罪としてなかなか取り上げられないというふうに検察庁は申しておられるのですが、それはやはり何とか詐欺罪適用が受けられるように、立法措置を講じていただきたいというふうに考えております。
  34. 西宮弘

    西宮委員長 竹内参考人、いかがでしょうか。
  35. 竹内昭夫

    竹内参考人 先ほどの御質問、具体的にどのようなステップで踏み込んでいったらいいのかということでございますが、その意味が私には必ずしも正確に理解できておらないかもしれません。立法のステップとしては、申すまでもなく政府提案と議員提案ということがあるわけでございまして、私どもとしましては、政府提案でやっていただいても構わないし、議員提案でやっていただいてももちろんそれは構わない。ただ、その内容といたしまして、これはいろいろな考え方があり得ると思います。現在そのいわゆる会主導型のものについては出資受入法を活用しておるということでございますが、六年前に私が若干検討いたしましたときには、出資受入法を適用することは無理ではないかという議論も相当強かったわけであります。しかし、いわゆる会員主導型のものについては、それの適用も困難であるということになりますと、同じような経済的目的を達するシステムであるにもかかわらず、ちょっと形を変えると、片方はひっかかる、片方はひっかからないということになってしまう。これは明らかにおかしいわけでございます。私は、その出資受入法を活用することは、とりあえずの問題としてはこれは大変結構なことだと思いますけれども、やはり本筋といたしましては、ネズミ講禁止するための特別の法律をつくるべきだろうというふうに思います。  それは詐欺罪に当たるか当たらないか、これは議論のいろいろあるところでございますけれども、かつて適用がまずいという判断が出ているという以上は、国会において、それは詐欺罪に当たるのだから詐欺罪でやれと言っても、これはやはり司法の判断でございますから、これは無理なことです。そうだとすれば、やはり特別の法律をつくるべきである。  その場合に、私は刑罰でもって禁止するということが最も望ましいのではないかと思っておりますけれども、そのいわゆる首謀者と、それからその下にあってその勧誘に従事している者——勧誘に従事している者にも、先ほど西参考人もおっしゃいましたけれども責任を負えというのなら自分も負うということをおっしゃいました。堺さんもおっしゃいましたように、ネズミ講とかマルチというのは、被害者が実は潜在的な加害者なんだというところにこの仕掛けがあるわけでございまして、そういう意味では、被害者も加害者であったかもしれないのでございますし、また、加害することを意図はしてなくても、主観的にはそう気づいていなくても、結果的にはそういうことになったかもしれない。そうだとすれば、それについても、勧誘行為はしてはならないという意味で刑事責任を問うということも考えられるわけでございますが、この場合に首謀者とはもちろん格差をつけるということは当然のことでございまして、一番の大もとについては厳しい制裁を科す、それ以外の者については、責任を問うけれども、それは緩やかなもの、軽いものであるのは当然のことだというふうに思います。  政府でやる場合に、一体どの省庁がやるかというふうなことになりますと、これは各省庁の設置法で決まっておることでございまして、私、各省庁の設置法を一々洗っておりませんけれども、この設置法なるものも、ネズミ講なんというものが出てくるということは考えないでできておるわけでございますから、いまになって設置法を見てみますと、それはおれの役所じゃない、おれの役所じゃないということになるのも、これはある意味で事の成り行きからして自然なことでございます。その意味で私は、政府としては、検討する、検討すると言われながら一向に結論が出てこないというのは、やはりそのあたりに一つの問題があるのかなと思っておりますけれども、それは政府全体として、どの役所がやるのが事の本質として適当かということを判断していただくべきである。  議員の方々といたしましては、政府がやらないのならひとつおれたちの手でやるということをやっていただければ、私は拍手喝采を惜しむものではありません。
  36. 西宮弘

  37. 西隆史

    西参考人 ちょっとさっきの質問がわかりにくいのですけれども裁判の経過を申し上げるのですか、さもなければ、裁判の内容なんですか。
  38. 宮地正介

    ○宮地委員 被害者として、たとえば経過の中でいろいろとやりとりがあったと思いますね。その中で、たとえば私の方で、こんなばかげたやりとりが本当にあったのだろうかという資料があるわけです。たとえば、先ほど内村証人と弁護人の間で、未成年者の問題とか、あるいは資格の問題でネコの問題であるとか、こういうような、われわれから見まして本当に国民の常識には値しないような論議があったように聞いておるわけです。その辺のところを少しお話しいただきたい。
  39. 西隆史

    西参考人 お答えします。  いまのそれは「週刊新潮」の文だと思いますけれども、それは実際裁判の記録です。それと、そのような状況だというのは、仮に六十万円口だと、法人しか入れない規定になっております。綱領では。それでも実際は、いま言ったように、いわゆるネコもしゃくしも入るんだし、もう一つは、内村健一の第一相互経済研究所の下に、いわゆるブロック、ブロックで何々会、何々会と組織ができていて、その連中が一生懸命集めるわけだ。金になる、商売になるのだったら集めるでしょう。それを集めるのには結局手数料を取るのですよ。中間搾取をやるわけです。それでお金内村のところに持っていくわけです。内村は当然それを認めているわけなんです。  ぼくは前に、四十六年八月八日の諮問委員会のときにその諮問委員に選ばれまして、それでその問題をぼくは質問したことがあるのです。あなた、自分でこれをやっている問題で、下に下部の組織があって、それがまた手数料を取りながら中間搾取をやっているのはおかしいじゃないか、どっちみち結論はあなたの責任になるのだから何とか方法を考えろと言ったら、何ともそれには返事はできない。お金さえ持ってくれば、下で何をしようが関係ないというような発言も実際ありました。  だから、内村にしてみれば、下は生きようが死のうが全然それは関係ないのです。だから、ネコだろうがしゃくしだろうが、何でも名義だけ入れてお金を送れば、それで内村は、はいよろしゅうございますというのが実際、現状だし、現在もそういうかっこうでやっておるのが実情であります。
  40. 西宮弘

    西宮委員長 米沢隆君。
  41. 米沢隆

    ○米沢委員 最初堺参考人と下光参考人竹内参考人に。  この訪販法制定の際に同じような意見聴取が行われ、竹内参考人はこう述べておられます。たとえばマルチ商法をやっておる会社が会員を獲得する場合、先ほどもおっしゃったように、ある程度の規模に達するともう参加者を募ることは不可能になるから、わが社の商売はある程度発展しますとデッドロックに乗り上げてもはや発展しなくなります、そのときには非常に多くの人が泣くことになりますと告げない限り、第十二条に言う重要な事実を告げないということになりはしないか。確かにいまのマルチ商法はこういうかっこうでやられております関係では、いまやっておられるマルチ商法はほとんどが第十二条違反になるのではないか、そう思います。しかし、現在のところ取り締まることはできない、取り締まられていない。そういうことで、マルチに対して公正であることを求めればマルチは必ずなくなるものだという考え方に立っているのがこの法律の考え方である、その精神で法の運用をやってほしいという注文をつけておられますし、先ほど堺参考人も、もう少し十二条の運用を厳しく適用してほしいという話がございました。  後でこんなのはすべて禁止するという議論もありましたけれども、それ以前に、現行法でマルチ商法等を取り締まる場合、現在どこに問題があるのか。考えてみますと、法律そのものに整備されていない部分があるのかもしれない。当時、この法律が議論される場合、御承知のとおり、クーリングオフの期間の問題とか、その後の措置の問題とか問題になりました。そういうものがないがゆえにいまだに被害者が続出することになっておるのか、それともまた、行政の怠慢といいましょうか、たるみといいましょうか、法は取り締まるように整備はできておるけれども、行政そのものに体制上整わない面があるとか、情報不足を解消する努力が足りないとか、いろいろな原因があると思うのですね。そのあたりについて、現在の被害状況を見ながらどういう判断をなさっておるかというのが第一点。  それから第二点は、この理論を、さっきの竹内参考人の話を突き詰めていきますと、公正なマルチなんてない、いいマルチなんてない、現在の法律は、御存じのとおり、ある程度マルチ商法も合法的なものだと認めている、いわゆるマルチ商法にも法益を受けているという一面があるのですね。そういう意味で、先ほどおっしゃったように、これを最終的に、全面的に禁止する、マルチ商法でもネズミ講でも全面的に禁止するといった場合、まだいろいろ問題があるといってこの前も委員会で問題になったわけですから、結局、マルチ商法あるいはネズミ講というのは受ける法益はないと解釈していいのかどうか、そういう法的な理論構成ができるのかどうか、そのあたりを竹内参考人にお聞かせいただきたいと思います。  それから、これは西参考人と下光参考人にお伺いしたいのでありますが、いわゆる長野地裁裁判を通じて、結局、金を持っておる被害者であればいろいろと弁護士さんを雇ってやれるのでありますが、こういう形で金のない方がたくさんおられる、そういう皆さん被害を訴訟の段階に持っていくというのは大変厳しいことである、そういう話がありました。それで、今後の裁判を通じて、集団訴訟のあり方等に、今後まだまだ新しい裁判が広がっていくと思いますので、そういう意味で、いい指導をされる一面がありますかどうか、ぜひ御参考までに聞かしていただきたいと思います。  以上でございます。
  42. 堺次夫

    堺参考人 マルチ商法を現在完全撲滅できないでいるのはなぜかという御質問でございますが、一つには、マルチ商法の形態が大変複雑になっておりまして、そしてまた、この組織の特異性から、アメーバーのように、ある一定の大きさになりますと、どんどん分裂していきます。きょう一社だったものがあす十社になり、それがまた十社になるということは十二分に考えられます。ですから、私どももいまマルチが日本の国内に一体幾つあるのかということはつかみ切っていないのです。いまのところ、われわれがマークしておりますのは大体三十社ぐらいありますが、通産省では四十五社だとおっしゃっておられますし、警察庁は四十社だと言っておられるようですが、これが、たとえば一昨日手入れがありましたけれども、恐らくこの後、手入れを受けた会社の中堅幹部が飛び出して、また新たにつくることが考えられます。ですから、大変つかみにくいということはあるのじゃないかと思うのです。  それからもう一つは、マルチ商法が、先ほどから何回も申し上げておりますが、大変巧妙になってきているということですね。一般の商形態によく似させております。旧型マルチと新型マルチという時代をもしつけるとするならば、いまや新型マルチの時代でございまして、旧型マルチというのは、人を連れてくれば勧誘料という名目ですぐお金をやる、こういう方式を使っていたわけです。ところが現在は、それが独禁法第十九条違反ということが断定されたために、何段階か地位がある、そうすると、それぞれ商品を仕入れる金額の差額がある、その差額のリベートを勧誘料方式で使っている。オーバーライド方式というのですが、このように切りかえている点が大変むずかしいということも聞いております。しかし、竹内先生の昨年仰せられた論理、そしてきょう仰せられた論理は私は全く同感でございまして、マルチじゃないと言っていれば、これは明らかに十二条違反です。私はそう考えます。  大体、昨年法律ができ上がるときに衆議院の附帯決議では次のようなことが定まっております。附帯決議の内容でございますが、  訪問販売業者の交付書面及び通信販売業者の広告における商品の性能又は品質の表示について検討するとともに、連鎖販売業者の取引契約締結前に交付する書面について、連鎖販売業者である旨を明示するほか、商品の種類、性能、品質、販売条件等の表示を検討すること。 この附帯決議がついているのですが、いま通産省はそのような指導はまだなされていないようです。これをやれば、ある程度は被害も減るのじゃないかと思うのです。ただ連鎖販売業といっても、それがマルチ商法であると判断できる人はもう本当に少数ですから、その点、もう少しうまい方法を考える必要があると思います。  それからまた、被害者被害に気がつくまでに、入って洗脳状態から覚めるまでに大体三カ月かかっておりますので、十二月三日の施行でございましたから、法律施行後の被害者がいまごろぼつぼつ出かかっているわけです。ですから、今後どんどん被害者が上がってまいりますので、これを積極的に警察庁で摘発に向かってがんばっていただきたいと思っております。
  43. 竹内昭夫

    竹内参考人 御質問の御趣旨は、マルチについて訪問販売法がどの程度の実効性があるのかということじゃないかと思います。  法律というのは、申すまでもなく、つくればそれがひとり歩きするわけではございませんで、被害者が自主的にその法律を使うとか、あるいは行政庁がこれを活用するということがあって初めて動くわけです。今回は、御承知のように、数日前にようやく第一回の摘発が行われたということでございまして、私自身は、マルチについて昨年の暮れに施行されました訪販法がどの程度の実効性を持っておるのかということの結論を出すには、まだ早過ぎるのではないかというふうに考えております。そして、先ほど御引用になりましたこととほぼ同じことを、この訪問販売等に関する法律についての簡単な書物を私も書きましたが、その中で述べております。先ほど申しましたように、マルチに加盟すれば自分が泣くか多くの他人を泣かせるか、そのいずれかになるということを告げなければマルチについての重要事実についての不告知になるという解釈をとりますと、マルチの勧誘を行うことは実際問題として不可能である。新しい加盟者が出てきた場合には、その勧誘はまず十二条に違反していると考えてよいだろうという考え方を私は述べておるわけでございます。自分が泣くか、より多くの他人を泣かせるか、どっちを選びますか、どっちかになりますよと言われて、それでも入りましょう、人を泣かせるのは悪いから私が泣くために入りましょう、そんなばかな人はいるはずはありません。自分は幾ら多くの人を泣かせても自分さえ金をもうければいい、人を泣かせに入りましょうと言うほど悪い人もまずいないだろう。そうだとしますと、この法律のもとでマルチが広がるのは、やはり十二条違反が行われていると考えるのもむしろ自然ではなかろうか。そういう意味で、そのような解釈に基づいてこの法律が運用されれば、私はマルチというものはまず絶滅していくのではないか。その絶滅できるかどうかということは、この法律の解釈と運用にかかっているわけでございます。したがって、ごく二、三日前にこの法律が初めて発動されたという段階でこの法律の実効性があるかないかということについて結論を出すのは、まだちょっと早過ぎるのではないか。私も、実効性がない、やはりこれでももぐれるのだという人間が出てきた場合には、これは先ほど申しましたように、またすぐ急いで改正して、それでももぐれないような法律にする必要があるということは前回も申し上げたとおりでございます。その点、改正の必要性ということにつきましての検討を怠るべきでないということは私も常々感じております。まだ結論はちょっと早いと思います。
  44. 米沢隆

    ○米沢委員 全面禁止をもししようとした場合に、結局、法理論的にそれを禁止していいという理論ができるのかどうか。
  45. 竹内昭夫

    竹内参考人 これは先ほど申しましたように、ネズミ講と申しますのは、商品流通という要素を全く欠いておるわけでございますね。マルチの方は、これは先ほど来御説明のように、チェーンストア式だとかフランチャイズ式だとか、いろいろな、つまり形としてはほかのもの、従来公正に行われてきたものを借用することによってカムフラージュしております。したがって、マルチを規制する場合には、マルチを規制するけれども、しかしほかのもの、社会的な弊害のないものにまで迷惑を及ぼすということは適当でないというふうに考えます。したがって、その範囲をどう書くかということが問題になり、その立法的な規制につきましても技術的にいろいろむずかしい問題があったわけでございますけれどもネズミ講の場合には、先ほど来お話しのように、これはお金の送りっこをしているだけのことでございます。それが金がふえて返ってくるなんということは、およそ正常な常識からしては考えられない。必ず非常に多くの人が泣くからこそ、お金がふえて返ってくる。そうだとすれば、その講全体について考えますと、それは詐欺そのものをいわばシステマチックに行っていると考えられるわけでございます。そうだとすれば、これはストレートに禁止する。  そして、先ほどの罰則につきましても、私は、出資受入法は確か三年以下の懲役だったと思いますけれども、三年以下の懲役というのは私は甘過ぎるのではないかと思っております。と申しますのは、刑法の詐欺罪は十年以下と言われております。たった一人の人間をだましても、事によると十年以下の懲役になる。ところが、ネズミ講の場合には、最後に何千万の人間が泣くかわからない。そういう詐欺的な仕組みをいわばシステマチックにつくってそれを実行するというわけでございますから、その被害者の数から言っても、単純な一人の人間をだますとかだまさないとかという問題よりははるかに重大である。そうだとすれば、これはストレートに禁止してしまって、しかもその罰則につきましては、首謀者につきましてはきわめて厳しいものをかけるというのが事の軽重から言っても妥当ではないか、このように考えます。
  46. 下光軍二

    ○下光参考人 訴訟で回復といいますか、訴訟で救済するのはなかなかむずかしいということについて申し上げます。  長野地裁においての入会金を返せという訴訟は、被害額から言いますときわめて一部分。入会金というのは、大体講の必要な金の二割から二割五分、たとえば中小企業ですと、六十万円まず出資するわけですが、入会金はその中の十万円にすぎません。それから親しき友の会は四万円のうち一万円が入会金、それからマイハウスといって、家を建てるときの金をつくるのにこの方法がいいといって売り出したのが十万円口で、そのうち二万円が入会金でございます。ですから、入会金はごく一部の損害の回復ということになるわけでして、私はそれでは不十分だというので、静岡で起こしておる裁判では、入会金のみならず、他の人に送った金も全部賠償してもらいたい。ですから、六十万円口であれば本部に十万円、五十万円は先輩会員に送っておるのでございますが、この金も本部の方で返還すべき義務があるのだということで、六十万円を請求しております。裁判所がそれをどういうふうに認めてくれるか、多分私は認めてくれると思うのでありますが、そうなりますと、出した金を全部回復する、こういうことになるのですが、大体被害者といいますのは、先ほど竹内参考人からもおっしゃられたように、入る人自身もやはり多少肩身の狭い思いをする。だから、返してくれなんというようなことで問題を起こしますと、何だ、欲をかいてそんな常識で考えられないようなものに入るからだ、入る方が悪いのじゃないかというようなふうにとられる。そこにやはり訴えに踏み切る場合に一つの隘路があるわけです。と同時に、やはり現在の訴訟制度には、わずかな金のことでいろいろ手間暇つぶして、お金まで使ってめんどうくさいというので多くの人はそこまで路み切らないわけです。そこがまたネズミ講本部の方では一つのポイントになっておると思われるのですが、そういうことで泣き寝入りしないで、やはりこれは弱味につけ込んでいるのですから、金が欲しい欲しいと思うその心を、こうすれば簡単に入るのだというようなことで、人間というのはとにかくおぼれる者はわらをもつかむ思いで、金が欲しいというときにそういう話がぼっとあるものだから、つい——普通の精神状態ならばそんな講なんかに入るわけはないのだけれども、そういうことで入ったり、あるいは雰囲気——商法にはいろいろな方法があるようですが、その雰囲気を盛り上げてそれで加入させるというようなことで入るわけです。  さて、その被害の回復については、少額訴訟ほど手間暇かかって費用が割り高になる。弁護士の報酬なんかも、金額が高くなるに従って低くなっていく。金額が少ないものになりますと報酬が高くなるというようなことになっておりますので、わずかな金ですと、そういうことでやっても損だということになりがちなんです。そこで、一応集団訴訟という形をとらざるを得ないことになるわけです。やはり集団訴訟といってもなかなか人数をまとめるということはむずかしい。たくさんまとめなくても、請求金額百万円になるくらい集めれば独立した訴訟の手続が、やはり弁護士さんの方でも百万円となれば、弁護士さんの報酬というのは大体一割から二割というようなことになるわけですから、まあまあ何とかやってもらえるんじゃないか。忙しい弁護士さんはやってくれないかもしれませんが、若い、弁護士になりたてのような人たちに、勉強のためにでもやってもらうというようなことにでもなるわけですね。ですから、中小企業という六十万円口の場合には、一人でも六十万円でございますから、それが二、三人集まれば、まあまあ一応訴訟を提起するのには可能な状態になってくるというふうに思います。ですから、とにかく人数は一人でも多い方がいいんですが、やはり手続とすれば、千人であろうが百人であろうが三人であろうが、同じ手続なんですね。同じ手間暇かかるわけで、人数が多くなれば費用の負担も軽くなる。ですから、何百人ということになりますと、そんな一割、二割出さなくても、三分とか五分とかいうような費用でできるということになると思うのです。それで、最初やはり少なくとも経費としては大体一割ぐらいは考えておかなくてはならない。最初に必要なのはその一割の中の半分かあるいは三分の一程度はやはり出して、それであとは最後に済んだときにお払いするというような形でやればできないことはないというふうに思うのです。弁護士さんもこういう事件になりますと、普通のただ金の貸し借りというよりも、やはり社会正義というようなたてまえからやってくれると思うのです。また、やらなければならないというふうに弁護士法ではなっております。個人的な弁護士さんの知り合いがない場合は、その土地の弁護士会に申し入れでもして、適当な人をあっせんしてもらうというような方法でやればできるというふうに考えております。
  47. 西隆史

    西参考人 私のいまの裁判の経騒からちょっと申し上げたいと思います。  最初査察があった以後、内村に会った印象としては、とにかく会員の言うことを全然聞こうとしないということ、相手にしないのです。なぜかというと、弁護士に聞いてみたらこうだとか、検事に聞いてみたらこうだとか、会員内村健一そのものとの話し合いではどんな約束をしても、この会に対するいわゆる法的な影響力がないんだ。だから、そんなら幾らやってもむだだということを、会うたびに人の前でみんなに言っておるわけです。それで、これは困った、こんなことを言われるなら、ぼくは熊本まで何をしに行ったかわけがわからない。だから、そうするなら、ひとつ個人じゃなくて、彼に自分の住んでいる地域の代表だと言えば——じゃそれらしく委任状でもとろうじゃないかということを私が考えて、全国各地から来ているいわゆるその当時の支部長だとか副支部長だとか、そういう幹部がいるので、その人たちに訴えを起こしたのです。こういう内村なんだから、とにかくあなたたちは話をしたいなら自分の地元へ行って委任状をとりなさいよ、それでぼくも自分の地元へ帰ってみんなに訴えたのです。いわゆるこういう状況だからあなたたち委任状をもらいたい、そしてその委任状を持って内村と話をすれば彼は多少は聞くだろう、それでどうしてもだめなら裁判に踏み切ろうということで、ぼくは委任状もらいの運動を始めたのです。  その当時も、いまもちょっと話が出ましたけれども裁判をするのに困難なことと、もう一つは、委任状を出せば、これ全然未組織人たちなんだから、ぼくの顔も知らないし、わからないわけだから、委任状をやれば何か自分の財産でも取られるのじゃないかという心配を持ったり、あとはどろぼうに追い銭だ。ネズミ講でだまされて金を取られて、裁判をやる委任状を持たして金取られる、これは二重三重に取られる。委任状をくれない人もいるわけです。だから、とにかく金はいいから委任状だけよこせというようなことで、委任状を集めて内村と話し合いを始めたのが、結局結論的には話し合いができずに、裁判に持ち込みました。  それで、一般的に見てみると、とにかく自分はだまされたという意識は非常に強いけれども、じゃこの方法をどうするかということは、皆さん余りわかってないのですよ。だから、結局私もその点で、じゃ何とかそれができなければ裁判だということで委任状を集めたけれども、ほかの地方はそれができなくて、だから心の中では朝から晩まで、内村にだまされたくやしさに、寝られない、病気になっているとかいうけれども、やはりいま言ったように、弁護士に持っていくまでの問題、少額だから、六十万円損した、内村に十万円返してもらおうと思えば、弁護士に十万円出して裁判をやってもらうということはとてもできない相談だろうというようなことで、なかなか裁判の問題にもやはり個人が考え切れないいろいろな難問題をしょっているから、これだけの少人数ですけれども、本当は全国的にこれはいわゆる二、三百人の会員が全部裁判をすればいいんですよ。それは結局さっき申し上げたように、当事者主義の原則だから、自分でしなければならないのです。政府がやってくれるわけじゃないのです。そういうむずかしい問題をわれわれはしょっているということだと思います。
  48. 西宮弘

    西宮委員長 中村茂君。
  49. 中村茂

    中村(茂)委員 私、実は四月の二十六日の本委員会でこの問題を取り上げて、七つの省庁を呼んで、このネズミ講が何か法律にひっかかるところはないのかということで、いろいろ聞いたわけでありますけれども、一口に言うと、どの法律を見てもなじまないとか、どうも適用させるのは困難だ、こういうことで、政府としても、いずれ規制の方法で考えるか禁止方法で考えるか、いろいろ対策を立てている、こういう話でございました。  それを前提にしてちょっとお聞きしたいと思うのですけれども、先ほどいろいろお話がありましたように、物が介在していないわけでありますから、私も、規制ということよりもこれは禁止方法一本でいかざるを得ないのじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。先ほどもそういう立場で竹内参考人はいろいろお話しになっておりますけれども、やはり規制というよりも、もうこの問題は禁止でいく方法以外にはないのか、それともまだ規制の余地があるのか、その点について竹内参考人にひとつお聞きしたいと思います。  それから下光参考人にお聞きしたいと思うのですけれども、先ほどもいろいろ話が出ておりましたし、また武部委員の方からも若干話があったわけであります。特に勧誘の場合に、財団法人の許可を得るくらいなんだから、ネズミ講は違法じゃないのだ、こういうことで勧誘したというお話があったのですが、そこで、これから申し上げる点について弁護士の立場でどういうふうに対処したらいいものか、お聞きしたいと思うのです。私の手元に実は「財団法人肥後厚生会寄附行為」という財団法人の趣意書とその内容があるわけなんです。調べてみますと、これが四十八年の五月に天下一家の会ということで名称変更になっている。ですから、実はこれを買収したような形になっているわけです。そして昭和二十二年のこれを創設した当時は十八万円でありましたが、天下一家の会に名称変更になると、十二億八千万円に基本資産がふえているわけであります。役員内村健一氏を筆頭にして、親族がほとんど役員になっているようであります。ところが、これは自分たちがこういうふうに改正しているだけであって、厚生省を調べても熊本県を調べても、この届けが実はないわけです。この財団法人は熊本県知事に対して申請してこれをとっておる。しかも自分たちが勝手に変更しているだけで、熊本県にもこの変更の届けがない。熊本県ということになると、私はこの財団法人というものは、熊本県の中で三条で言っている、目的にしている行為ができるものではないか、こういうふうに思うのです。  先ほどからいろいろ意見が出ておりますが、私の手元にも若干のパンフレットがあるわけですけれども、この天下一家の会の事業として全国十一カ所に研修保養所をつくっている。私のところの長野県の戸倉にもこの保養所がございまして、屋根に大きく天下一家の会、こういう看板が実は出ているわけであります。そうなってくると、これは熊本県ばかりではなしに、全国に十一のこういうものをつくって、このプリントでは、「あなたの研修保養所」というふうに書いて、ずっと十一並んでいるわけですが、本物は屋根の上に天下一家の会というふうに書いてあるわけですから、その財団法人の研修保養所である。そしてその行為が認可されているこの寄付行為の財団法人が熊本県ということになって、よその県まではいり込んできてその事業をやっているということになると、何かに違反するような気もするし、いわゆる自称でこれをやっているような形態にもなるし、ですから、こういうものは熊本県で財団法人を取り消すことができるのではないかという感じがするわけですけれども法律的にいかがでしょうか。  それから、西参考人にお聞きしたいわけですけれども裁判を起こして原告としてずっとやってこられた中で、いままでいろいろありましたが、その中で脅迫とかまたはそれを妨害するとか、そういう行為はなかったのでしょうか。  次に堺参考人にお聞きしますが、いま西参考人にお聞きしましたように、悪徳商法被害者対策委員会でいままでマルチの問題を取り扱ってきたわけですけれども、その中でその運動に対しての妨害とか、そういう行為の経験おありでしょうか。その点についてお聞きしたいと思います。
  50. 竹内昭夫

    竹内参考人 行政的な規制立法をするかストレートに禁止立法をするかということでございますけれども、私もこれはストレートな禁止立法をするのが妥当であるというふうに考えております。その理由は二つあろうかと思います。  一つは、マルチというのは、先ほども御指摘のように、商品の流通という要素をそこに含んでおります。それが結果的には欠陥商品でどれだけ売れないものであるにせよ、ともかく商品の流通という要素を含んでおりますから、したがいまして、マルチを変えて、普通の手数料式でセールスマンを使って販売するという組織に変えて残るということは、これはあり得るわけでありまして、それまでいけないということはちっともないと私は思います。  ところが、このネズミ講というのは、人狩りをいたしませんと全く残るものはゼロになるわけでございまして、マルチは仮に人狩りという要素を除いても物流というものが残る、その意味で健全化という形で生き残らせる余地はないではないわけですけれども、こちらの方は健全なネズミ講というのはおよそあり得ないわけでございまして、そういうネズミ講を健全化するための行政的規制をすると言っても、これは話にならないというのが一つ。  それからもう一つ理由は、ある行為を禁止するためにはいろいろなテクニックがもちろん立法上はあり得ると思います。私も刑事罰を科するだけが能だとは思っておりません。ただしかしながら、仮にこういうことも話さなければならない、こういうことも話さなければならないということをいろいろ全部決めまして、そしてそれに違反したら刑事罰を科すというようなやり方をいたしましても、そういうことを話したか話さないかということ自体がまず水かけ論になる。水かけ論にならないためには、こういう書面を交付したということの証拠を残すために、そのコピーに判こでも押してもらってとっておけというようなやり方をせざるを得ないと思いますけれども、仮にぎりぎり詰めていきましても、こういうことをやる連中でございますから、その行政的な規制立法をやりますと、またさっきのお話ではございませんが、自分たちはこの法律を守っておる、いわば普良なるネズミだというふうなことを言って、またこれを商売の種にすらしかねないということも考えられるわけでありまして、その二つの理由から、私もお説のように、これはもうストレートに禁止してしまう、その罰則としては、特に首謀者それから中核的な人間、これは相当重い刑罰を科するというふうなやり方が適当ではなかろうかと思います。
  51. 下光軍二

    ○下光参考人 この財団法人天下一家の会というのが元財団法人肥後厚生会であったということは私、先ほどちょっと指摘したわけでございますが、これの定款の変更といいますか、役員の変更なんかについて届け出がなかったということは初めて伺うわけでございまして、この財団法人の場合に、役員の変更の場合にも、役員について適当であるかどうかというようなことを監督官庁は審査する権限があるのではないか。と同時に、この資産の増額なんかについても、やはり許可を要する事項ではないかと思うのでございますので、これはまだその点について法律的に私の方では検討しておりませんが、今後そういうことがあれば、よく調べた上でまたその責任を追及したいというふうに考えております。  ただ保養所に天下一家の会という看板が出ておるということでございますが、これも内村一流の巧妙なやり方が一つあらわれておるわけでございます。天下一家の会というのは第一相互経済研究所と同体異名だ、同じものでそれについて二つの名前があるんだ、それは第一相互経済研究所というのと天下一家の会という名前が二つついているんだ、最初はこういう説明だったのです。ところが、現在は天下一家の会というものが一番上にあって、その下に第一相互経済研究所、それから財団法人天下一家の会、それから宗教法人大観宮という、阿蘇山のふもとに何かお宮があるらしいのですが、そのお宮を何か抱き込んで、その三つが天下一家の会の下に属するものだと言っているわけです。ですから、総合したものが天下一家の会というものと、もう一つ下に財団法人天下一家の会と、天下一家の会といってもそういう非常に紛らわしい表現で、天下一家の会と言う場合に、どっちの天下一家の会を指すのか、これがわからないようなやり方をしておるわけでございます。それで、どの出版物を見ましても、天下一家の会、第一相互経済研究所内村健一、こういうふうに、必ず二つの名前を重ねて使っておるのです。その辺が非常にあいまいですし、紛らわしい。やはりこれは人の目をごまかすために、そういうような表現を使っているんではないかというふうに私は思っております。
  52. 西隆史

    西参考人 いまのにちょっと補足させていただいて、あとの答弁をいたします。  これは向こうから出ている、六十万円会員に配られる文書なんですけれども、この中に「主旨」と「綱領」という規約を刷ったものがございます。この第七条に「本研究所」、本研究所というのは第一相互経済研究所なんですが、「本研究所、同体異名の会は政治政党、他宗教、他思想に偏せず平和な中道を取り本来の主旨に従い真理を貫く(天下一家)ことにある。」こういうふうに書いてあります。ですから、いま言うように、天下一家の会と第一相互経済研究所というのはいつも異名同体だということと、もう一つは、本部の幹部の名刺は必ず二つ刷ってあるのです。第一相互経済研究所と天下一家の会という肩書きで名刺を刷っているけれども地方役員には第一相互経済研究所の名前を使わせないのです。これはなぜかというと、第一相互経済研究所というのは、ネズミ講の金を取ったりやったりするところの所轄なんだから、地方の幹部は、おまえは幹部だと言っておきながら、天下一家の会のいわゆる助けるんだ殺すんだというそういうことに対しては口をはさんでも、第一相互経済研究所に対しては口を出すなというようなことで、とにかく地方の幹部には、肩書きは持たせているけれども、名刺はそういうように使い分けさせておるのが実情であります。  それと脅迫の件ですけれども、私が最初ネズミ講裁判をやるために、全国を回ったりいろいろ説明したりしたときに、中にはいろいろ私の運動に対して誹謗したり、裁判はできないんだ、あんなのの言うこと聞いちゃだめだというような妨害がたくさんありました。それと最近は、判決で勝訴をとった以後は、たまに家に夜、恐喝の電話が来るのです。それでひどいのになると、殺すとか刺すとか、夜中の十一時、一時半ごろかかってくるというようなことで、特に、私の女房が店をやっていますけれども、そこへ閉店間際ごろに電話が来るのです。私は、きょうここへ出席するために、下光先生と打ち合わせるためにきのう来て泊まりました。夜、家へ電話を入れてみたら、家へまた恐喝の電話が来ているのです。とにかくいろいろそういうことが実際ありますけれども、そんなことを気にしていたんじゃとてもやれないし、恐らく殺すことはないだろうと思いますけれども、そういう経過であります。
  53. 堺次夫

    堺参考人 マルチ撲滅運動に対しての妨害、脅迫もやはりございます。けさほど出てまいりますときに、午前七時にいやがらせ電話が一本あったばかりです。大企業から金をもらっているんじゃないかということをくどくど言っておりました。五十年の三月には、当時の最大マルチ企業であったエー・ピー・オー・ジャパン側の販売員、いわゆる洗脳されている販売具なんですが、会社側の役員とともに私を連行拉致いたしまして、十五時間監禁をされました。これは会社側役員が十一名逮捕されているはずです。  いやがらせ電話もその都度いっぱい入っておりますが、今後恐らくまだまだあろうかと思います。しかし、屈しないで闘っていきたいと思っております。
  54. 西宮弘

  55. 荒木宏

    荒木委員 参考人皆さんには大変御苦労さまでございました。また、先ほど来貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。  初めに堺参考人にお伺いをいたしますが、ネズミ講それからマルチ商法につきましては、行為規制それから組織規制、いずれも本委員会でも論議があり、また立法の議論がなされているのでありますが、私はこうした点で適切な対策がとられるということは非常に重要なことだと思うのです。同時に、一般の国民の中にその実態が明らかになる、そしてその是非弁別がそれぞれの立場においてなされるようにさまざまな手だてを講ずる。これまた政治のもう一つの大事な役割りではなかろうかと思います。  そこで、参考人皆さん方はそうした点で大変御苦労いただいておるわけでありますが、特に堺参考人被害者皆さん方の委員会の代表の立場でいろんな取り組みを進めていらっしゃると聞いておりますので、現在のこうした自主的な被害者皆さん方の組織の状況、それからまた、こうしたことを未然に防ぐための運動を進めていらっしゃるのですが、政府あるいは自治体などに対する御要望があれば、ぜひ質疑の参考としてお聞かせをいただきたい、かように思います。これが一つであります。  特にその中で、先ほどの御意見ですと、学生あるいは青少年、未成年者、こういった中に新たな被害が広がっておるということでありますから、政府所管で申しますとこれは文部省になりますけれども、特にそうしたその後の新しい被害状況なども含めてぜひ御要望を伺いたいと思います。あるいはまた、運動をお進めになる上で、私、若干拝見いたしますと、財政上のいろんな援助についてもお訴えの文書を拝見いたしましたのですが、そうしたことも含めてお聞かせいただければありがたいと思います。  それから、竹内参考人にお尋ねをしたいと思いますが、先般来国会での論議で、マルチ商法につきましては、先ほど来もいろいろ出ておりましたが、いいマルチと悪いマルチ、中には灰色のマルチというような論議もございまして、その線引きにいろいろと問題解明すべき点がある。いろいろ取りざたをされましてから立法措置がおくれた一つ理由としても、政府委員の方からそういった趣旨の意見開陳もございました。  先ほど先生のお話でございますと、本来非生産的なネズミ講というのが増勢要素を持っておる。マルチの中には、そうしたネズミ講的な要素とそれから随伴する物流的要素がある、物流関係はそれはそれでまだ存続が認められるのではないか。概略こういう趣旨の御意見と伺ったのでありますが、先ほど申しました、いいマルチ、悪いマルチあるいは灰色のマルチ、こういう中には、いまの契約自由の原則と申しますか、資本主義社会、自由主義社会と言われておりますけれども、そうした社会の基本的な法原理といいますか、それとの兼ね合いがその論議の根底にあるようにも思われるのであります。  そこで一つは、先ほど先生の御意見でございましたネズミ講的要素に対しては禁止をする、そして物流的要素については手続規制、様式規制、行為規制を適切に行いながら存続を認める、こういう趣旨の御意見であるのかどうか、少し付言をして御説明をいただきたいと思うのです。  それからもう一点は、この基本的な原理との兼ね合いで、やはり政治とのかかわり合いを私どもは抜きにするわけにはいかぬと思うのであります。もちろん、立法措置はその重要な部分を占めておるわけであります。四十六、七年ごろから上陸をしてきて、その後蔓延をしたと言われておりますが、そういたしますと、経済社会情勢との関係、いわばマルチ繁殖の、ネズミ講繁殖の背景と申しますか、そうしたこととのかかわり合い、あるいは一般的な政府の社会経済政策とのかかわり合い、そうしたことについて、これはあるいは先生の御専門の外であろうかとも思われますけれども、御研究を続けていらっしゃる立場で、ひとつお聞かせいただきますようなお許しございましたら、ぜひお願い申し上げたいと思います。  なお、兼ねまして、国際的な広がりも言われておるわけでございますが、資本主義社会あるいは発展途上国、それからまた社会主義社会、世界にはいろいろな経済社会体制がございますけれども、その中におけるネズミ講、マルチの繁殖の社会体制とのかかわり合い、そうしたことなどにも、もしお触れいただきますればありがたいと思います。
  56. 堺次夫

    堺参考人 現在、当会が指導しておりますマルチ被害者の団体が七団体ございます。全国的に組織をつくっておるわけでございますが、近ごろ目立っておりますのは、やはり学生を含む未成年者、若年者層の被害訴えが目立っておりまして、あるいはまた、知識程度がどちらかと言えば低い方、こう言っては悪いのでございますけれども、低い方の訴えが多いわけです。ということは、送ってくる被害訴え状を見ればわかるのですけれども、便せんに書いている例というのは本当に少なくて、ノートの切れ端に書いたり、あるいは新聞広告のチラシの裏側に誤字あるいはひらがなばかりの字で訴えてこられたり、こういうような状況になっておりますから、被害者組織をつくるという方もなかなかむずかしゅうございます。  被害者にとっては、やはりお金が返ってくることが第一番でございまして、現在当方でその指導もやっておるわけでございますが、これまでに被害者を救ったといいますのは、ホリデイ・マジックで団体交渉を成功させまして、直接間接に約四千人を救い、二十五億円を取り戻したのが一番大きいのですけれどもベストラインについては、当会で一応出資金の九割以上は返還させております。また、そういうようにしなさいということで約束はさせておるわけですが、これは成功した方の例でして、エー・ピー・オーはもうつぶれてしまいましたし、ジェッカーは、これまた計画倒産で逃げてしまいましたし、被害者を救うという点については大変限界があるのです。ということは、被害者の側もなかなか集まってこないということも言えるわけです。  それから、政府、自治体への要望なんでございますが、一つには、現在つくっていただいた訪問販売等に関する法律の特に十二条、十三条、ここを厳しく運用してほしいということでございます。これをやっていけば、現在問題になっておりますものについては、ある程度処置がなされる。  それから同時に、予防措置としまして、一般市民に対する啓蒙をもう少し図っていただきたいと思うわけです。政府の方でも、ネズミが走っておる絵とかあるいは週刊誌とかテレビとかでずいぶんPRをやっていただいたわけでございますけれども、どうもいま入っている被害者に聞いてみると、そういうものは見なかったとか、あるいはそういうものが出ていたとしてもわからなかったとか言っております。それからまた、東京とか大阪ではずいぶん新聞に書いていただいておるわけですが、地方の方では、マルチのマの字さえ知らないという傾向が見られますので、いわゆる被害の集中している地域あるいは被害の集中している階層に対してのPRが必要ではなかろうかと思うのです。これをできたらお願いしたいわけです。  それから、昨年も私、述べておるのですが、地方から都会へ出てきて、東京なりあるいは大阪へ出ていった人々がなれかかったころに、マルチとか学生相手ネズミ講にかかりやすい状況にありますので、できましたら、文部省が、三月あるいは二月あたりに出ていく前に、都会生活のガイダンスみたいなものをつくっていただいて、それをもとに出ていく人たちに対して教育をやってもらいたい。大体いま被害者の大学生に聞いてみますと、内容証明さえ知らないのが大半でございまして、もう少しこういう実務教育をやってもらえないものかということを強く訴えたいと思います。  それから、当会の財政状況でございますが、当会はいまはまだ政府の援助金とかあるいは地方公共団体からの援助金はございません。被害者のカンパあるいは一般市民のカンパそれから青年団員のカンパ、そしてそれぞれの応援団のアルバイトで賄っておるわけですが、被害者の訴えてくる手紙の大半が返信用切手を入れておりませんで、せめて返信用切手ぐらい、どこからか回していただければいいなと思っております。  それからまた、地方新聞社を動かしてPRをやってもらうことが一番効果的であるわけですが、当方ずいぶんやっておるのですけれども、そのたびに出かけていかなければいけない、あるいは電話をかけなければいけない。この料金が昨年の値上げで相当に響いております。こういうところを何か御援助をお願いできればということを思うのです。  以上でございます。
  57. 竹内昭夫

    竹内参考人 いいマルチ、悪いマルチ、灰色のマルチというふうなことが問題になったということでございますが、私は自分の書いた「特殊販売規制法」から引用させていただきますと、「訪問販売等に関する法律の一条では、「この法律は、訪問販売及び通信販売に係る取引並びに連鎖販売取引を公正にし、」云々と定めているのは、いささか適切を欠くのではないかと思われる。けだし右の規定によれば、「公正な連鎖販売取引」というものが成り立ち得るかのように思われるからである。しかし、「公正な訪問販売」、「公正な通信販売」はもちろん成り立ち得るが、実際問題として、少なくとも、「公正なマルチ」というものはあり得ないであろう。……「公正なマルチ」というのは、あたかも「安全なペスト」、「無害なコレラ」というように概念矛盾ではないかと考える。」というふうに私は考えておりますし、書いております。したがって、灰色のマルチとか、いいマルチというものはないのではないか。マルチというものはみんな悪いものだ。  そこで、マルチというものを実質的に禁止するというのが産業構造審議会の答申であったわけでありまして、その禁止する手段としてどういう方法を用いるかということにわれわれは腐心したわけでございます。刑罰を決めてそれが一番適切だということであれば、もちろんそうしたでありましょう。しかしながら、先ほど申しましたように、マルチをやっているものというのは、大抵本物のボスというのは海外におります。私が審議に参画しておりましたときに、スワイプ・ジャパンというものの責任者、これはカナダ人の弁護士でございますが、オーストラリアに住んでおりまして、それが日本人の弁護士を連れて私に会いに参りました。私は証人がいないと後で何を言われるか困りますから、立会人を置いて会いましたところが、その者が申しますには、自分たちも、先ほどのお話のとおりでございまして、ホリディ・マジックとかなんとか、あれはけしからぬ、だからああいうのは抑えるような法律をつくってほしい、しかし自分たちは生き残れるような法律にしてほしいということをるる申しました。そして必要があればいつでもオーストラリアから飛んでくるから、日本人の弁護士に電話一本入れてくれ、そうすれば幾らでも自分たちの会の実情について説明するということを申しました。私はそういう人に会って時間をつぶすつもりはございませんから、もうそれ以上は会いませんけれども、その例で見ますように、たとえばカナダ人がオーストラリアに本部を置いて、その子会社だけを日本につくってマルチをやっておるというふうな場合に、刑罰規定でかけたところで、結局つかまるのは日本にいるわら人形にすぎない。そういうことであれば刑罰規定を置いただけでは十分な救済にならないのではないか。私どもはむしろそういう意味で、刑罰規定のほかの方法でもって、より実質的な禁止の効果を上げるような手段はないのかということを考えたわけであります。それは先ほど申しましたような、十二条における重要な事項についての不告知あるいは不実告知はいけないとか、その他もろもろの手段をここで用意したわけでございます。したがいまして、私どもはマルチの中のネズミ的な要素は禁止する、そして物流的要素は残っても構わない、それは普通のセールス販売になるわけでございますから、それは構わないという考え方であの法律をつくった。その人狩りの要素がこれで完全に絶滅できるかどうかということは、これはちょっと待たなければ仕方がない。しかしながら、ネズミ講につきましては、物流的要素というのは残る余地はないわけでございますから、これはもう禁止するということが適当であろうというふうに思います。  そうして、マルチとかネズミ講というものが発生してくる社会経済的な背景ということでございますが、これは私、専門外でよくわかりません。やはり人間のいわば弱みにつけ込むやからが出てきたということでございましょうが、背景といたしましては、私はこれはある程度豊かな社会になって初めて生まれてくるものであろうと思います。マルチというものがアメリカ禁止されたときに日本へ乗り込んできたのは何かと申しますと、やはりマルチにとって巨大な市場だというところで乗り込んできたわけでございまして、うまく言えば、金を引き出せる人間が相当いるところでなければこういうものは発生するはずがない。そういう意味で、戦後しばらくの間の高度経済成長というものがある程度成功したということも、実は欧米の裏がここに出てきているということも言えなくはない。ただ、それと同時に、専門家の方々が分析されれば、いろいろな社会的な経済的な、あるいは心理的な要素を御指摘になるでございましょうけれども、私、一介の法律屋でございますからその辺は不案内でございまして、専門家の方々の御研究にまちたい、かように思っております。
  58. 西宮弘

    西宮委員長 あと参考人もあれですか、よろしゅうございますか。  それでは、午後二時から委員会を再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時十三分開議
  59. 青木正久

    ○青木委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武部文君。
  60. 武部文

    ○武部委員 最初堺参考人にお尋ねいたしますが、午前中に、都内の盛り場で学生相手に形の変わった、一見マルチのようなネズミ講的なものが横行しておるというお話があったわけです。私の手元にカードがございます。このカードはライフ・アンド・レジャー・コンサルタント、こういうものを手渡して勧誘しておるということを承知しておるわけですが、もうちょっと具体的な内容を説明願いたいのであります。  立ったついでにもう一つ質問をいたします。マルチの摘発が行われたわけでありますが、このことについては前の委員会で警察庁の方から八都道府県、十五件にわたって内偵中であるという答弁がございました。そのうち今回は二県一都で摘発が行われたようでありますが、今後の取り締まりをどのように考えておられるか。また今回の摘発は第十五条によって摘発したように新聞では報じられておりますが、一体その根拠は何であったのか、これを最初にお伺いしたいのであります。これは警察庁であります。  それから通産省、きょうも参考人皆さんからお話がございましたが、訪販法の十二条に言う「重要な事項」、一体これを通産省はどういうふうに理解をしておるか、それをこの際お伺いしておきたいと思います。とりあえず以上です。
  61. 堺次夫

    堺参考人 学生相手ネズミ講でございますが、マルチ形態をとっております。新宿とか渋谷の盛り場でこのような名刺大の大きさのカードを配っております。あるいはたくさんの人がつかまえてキャッチセールスをする場合もあるわけですが、これにはこういうことを書いております。「生活共同体&アルバイトコンサルタント 若い君のためのナウなアルバイトができました。一日一時間−一時間半の時間が取れる君ならば一ケ月で五万〜十五万円の収入になるアルバイトです。興味のある方は詳しい説明をしますから、ぜひ一度説明会場に来て下さい。決っして疑わしいアルバイトではありません。心配でしたらおまわりさんと一諸に来られてもかまいませんよ。折角考えたアイデアを真似される事が心配な故、この紙面で詳しく説明出来ないのが残念です。何しろユニークでナウなバイト(副業)です。」補足がありまして、「女性の方も多数参加しています。高校生不可」と書いてあります。地図が書いてありまして、この場所に行きますと、ここの中では——被害者の訴え状が来ておりますので、ちょっと御紹介いたします。  「室の中に入った。中では、はでな女の子や男の子がいて、一つのつくえに三つのいすをいっしょに、それが六つぐらい置いてあって説明していた。私達も説明を聞くために窓側の一つの机につれていかれ、女の人を前にJTCの説明を聞かされました。その内容は、「JTCというのは、生活共同体といって、現在、物価増昇のおり、少こしでも楽な生活をしようとする共同体で全国に二万人を目標に、この共同体を組織しようとしているため、あなたたちの若い人達の協力が必要だから、是非このクラブに入会して宣伝を手伝ってほしいの。それからこのクラブに入会すると、海外旅行や高級な洋服とか電機器具が安く手に入るし、とっても楽しいことがあるのよ」などといって海外旅行に行った写真一枚を見せ、店の名前が書いてある紙を、ちらっと見せた。それからこのクラブの説明書とか、規則などを見せた。私達はだいたい目を通し、問いかけた。「このクラブの方法は、ネズミコに似ているけど、どこが違うのですか」すると、「ネズミコとは、自分の子分がやめた場合、お金自分で負担しなければならないが、JTCはそんな損なことはしなくてもいいのよ。一人入会させれば、一万円入ってくるし、自分入会させた人がまた別な人を入会させれば五千円だまってても自分の所に入ってきて、誰かがやめても、お金を出すようなことはしなくてもいいのよ。」といわれながらも、納得はできなくって入会金の内訳とかいろいろ聞いているうちに三十分ぐらい立ってしまい、回りの人たちなんかは、説明が終わるとすぐにサインして帰っていくような状態でした。」それでこの人は誘われて、だんだん興奮状態につられて結局サインをするわけです。そしてその後は「JTCというのは、すごく立派なことをするようなことをいい、入ることを進め、「入会金は、一人二万八千円で高いけれど、もし今二万八千円なかったら貸してあげるから、一人入会させれば一万だから三人入会させれば、三万円で二千円おつりがくるのよ。」と言って誘うわけです。それでその女の子たちは千円あるいは二千円しか持っていないわけです。そのときに、誘う側の方がお金を貸していわゆる借用書を書かせるわけです。個人個人の貸借関係にしてしまって、その後は金を払えということを、今度は打って変わったように、脅迫的に言ってくるわけです。これは女の子二人なんですが、この人たちが今度は同じようなカードをまた買わされて自分が配るわけです。それでもそんなに来るわけはありませんから、結局入会させることはできなくて、また道に立っていると、物すごく罪悪感を感じ恐ろしくなったそうです。すぐ帰ってしまい、それ以来ずっと行っていなかったのですが、五十二年の一月十一日、六時三十分ごろ家に電話が来て、その内容はお金を払えということを言っているわけです。  こういうように、いわゆる盛り場でカードを配ってやっている。これは商品を安く買える、あるいは海外旅行に安く行けるとは言っておりますが、実際にはそういうことはなかなかないようで、単に人狩りにすぎない。これは学生相手ネズミ講と言えると思います。この被害は、毎年ちょうどいまごろの時期、地方からの上京者がなれかかったころに出ておりまして、もうすでに昭和五十年五月ごろから、あるいはその前の新聞に出ております。五十年五月にも「奇怪な「生活協同体」少年ら逆に借金苦」ということで大きく新聞に出ております。これがいまのところ訪問販売法でも独禁法でも取り締まれないと聞いております。こういうものがいわゆるネズミ講にはあるわけです。やはり未成年とか学生が多いわけですけれども被害者が大変多いのです。金額が小さいですから訴えはなかなか上がってまいりませんが、警視庁にはずいぶん生活相談があると聞いております。近ごろではこれが分裂に分裂を重ねまして、私ども調べた範囲では、現在都内に四組織、それから大阪とか名古屋の方でもこういう勧誘が行われているようです。こういうことから考えても、やはりネズミ講の及ぼす影響は大変大きいものがありまして、ネズミ講禁止する法律をぜひともお願いしたいと思うのです。
  62. 武部文

    ○武部委員 先ほど警察庁と通産省にお尋ねいたしましたが、それは後に回しまして、いまの答弁で大体のことがわかりました。確かにそういうことがこのカードに書かれておるようですが、警察庁の方はこういう組織があることを御存じなのか。もし御存じなら、こういう勧誘方法はいわゆる訪販法で取り締まることができると思っておられるか。それをまず最初警察庁にお伺いをして、公取の方には、こういう商品が安く買えるとか海外旅行に行けるとか、こういう役務提供というのは独禁法の対象になりはしないかと思うのですが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  63. 柳館栄

    柳館説明員 お答えを申し上げます。  ただいま先生の御質問になりましたのは、私どもは役務提供型と呼んでおりますけれども、これが九組織あるという報告を受けております。  なお、これについて何か取り締まりの法律があるかということでございますけれども、訪販法にはひっかかってまいらないと考えております。
  64. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えします。  ネズミ講については私どもとしましてまだ十分検討しているわけではございませんけれども、事務段階で検討しました結果としましては、一般的に申し上げまして、いま先生御指摘になりましたような言辞は確かに不当表示だと思います。しかしながら、独禁法で不当表示を禁止しておりますのは、それが不当な顧客誘引になり、公正な競争を阻害するということでございまして、いわば通常の経済活動を前提としましてその中で公正な競争を確保したいということが独禁法のねらいでございます。ところが、ネズミ講と呼ばれるような行為につきましては、これがそもそも独禁法が考えているような通常の経済活動なのかどうなのか、さらに細かく言いますと、一体どこの分野の公正な競争を阻害するのか、少し平仄の合わない問題がございまして、いまのところそれ以上の検討はいたしておらない次第でございます。
  65. 武部文

    ○武部委員 取り締まりが可能なのかどうか、いま警察庁の方では訪販法は適用できぬという話でございましたが、大体被害者というのは、午前中にも話がありましたようなものと同じです。マルチの被害者とも大体似たり寄ったりということになるわけですが、この程度のものならばいまの法律では取り締まることが不可能であるかどうか、そのようにお考えになっておるかどうか、警察庁、どうでしょうか。
  66. 柳館栄

    柳館説明員 勧誘の過程等においてたとえばほかの刑法であるとかいう法律に触れる場合は、当然取り締まりの対象になるわけでございますけれどもただいまのようなことをやったから訪販法違反になるというぐあいには考えていないということでございます。
  67. 武部文

    ○武部委員 それでは、今度のマルチ摘発について、訪販法第十五条、十二条、十三条、七条、いろいろございますが、どの法律適用しておやりになったのか、まず最初にそれを。
  68. 柳館栄

    柳館説明員 五月十七日に一部二県の摘発があったわけでございますけれども、これの適用法条は法第十五条、さらに両罰規定を規定しております第二十四条でございます。
  69. 武部文

    ○武部委員 通産省、十二条「重要な事項」という点についての認識。
  70. 野々内隆

    ○野々内説明員 法十二条にございます「重要な事項」は、一般的に申しますと、取引をするための意思決定の要素となるような事項ということが言えるかと思いますが、具体的には個々の事例に即して判断をしなければならないと考えております。それで、この十二条には故意に事実を告げないという行為と不実のことを告げるという行為と二種類の行為が規制されておりますが、前者の故意に事実を告げない行為につきましては、相手方が当該事項を知らずに取引することがその相手方にとって不利となるような事項が一般的に問題になると思いますが、一般的には特定負担とか相手方の負担する債務の内容がこれに当たるであろうと考えております。それから不実のことを告げる行為につきましては、うそをつくわけですから、これよりも若干広く考えていいのではないかと考えております。
  71. 武部文

    ○武部委員 堺参考人にお尋ねいたしますが、そうすると、きょうあなたが午前中にお述べになったマルチ企業のいろいろ具体的な法違反、その事実の中で十二条違反というのは、端的にどういうふうに考えておられるか、それをちょっとお伺いしたい。
  72. 堺次夫

    堺参考人 私どもの判断では、「重要な事項」といいますのは、ただいま政府の方からお答えがありましたように、それを聞いていなかったら入っていなかったであろうということでございますから、大変範囲が広いと解釈しております。しかし、どうもいまの政府の御答弁だけでは、私どもの考えている範囲が一致するのかどうかちょっと疑問を感じます。たとえば摘発されたベストラインの例を一つとってみましても、説明会の会場で——ども勧誘会のテープを入手しておりますが、その中で八十八万円相当の商品を六十三万円で買うことができる、六十三万円出せば八十八万円相当の商品を買って特約店という地位に入れるということを言っておりますが、実際は商品を定価で売ったとしましても六十七万五千四百円しかございません。ここにまずうそがあります。被害者に聞いてみますと、みんなこれは二十万円ほど利益があると思い込んでおります。それからまた、世界的大企業である、そして映画を見せて、海外ではあたかも隆盛の一途であるようなことを見せていながら、実際は海外ではもう倒産をしており、あるいはまた経営者罰金刑が下されたり、いろいろ告発をされている、こういうことを隠しているわけで、これを聞いていたら入っていないという人が大半でございます。われわれに訴えてくる人に聞いてみますと、それをもし聞いていれば入っていなかったと答えます。これが果たして十二条の「重要な事項」に入るのかどうか、私は入ると思っておるのですが。
  73. 武部文

    ○武部委員 警察庁にもう一遍お伺いいたしますが、今度の摘発でなぜ十二条を適用しなかったか、ちょっと私は疑問に思っておるのですが、御承知のように、不当な勧誘と、十五条は書面の交付の問題ですね。ですから、十二条の適用で今度は摘発されたものだとばかり思っておったのですが、その点はいかがですか。
  74. 柳館栄

    柳館説明員 私ども摘発してまいります場合には、法的にもあるいは事実的にも裁判にたえ得るということから出発するわけでございます。したがいまして、今回は十五条で出発したわけでございますけれども、しかし、捜査の過程において十二条違反ということが明確になってまいりますれば、当然そういう違反の捜査もいたすわけでございます。
  75. 武部文

    ○武部委員 わかりました。  下光参考人にちょっとお尋ねいたしますが、きょうお述べになったいろんな事例、あるいは特に判決文の全文がここにございまして、私、全部目を通してみたわけですが、これは明白な判決であって、私どもこれは高く評価できると思います。犠牲者が出る、それは行き詰まるから犠牲者が出るんだということになるわけですが、この行き詰まるという理由についても、向こうの説明は、八代でもって打ち切るからこれは行き詰まらないというようなことを言って勧誘をしておるというのは、勧誘方法として私が午前中に述べた中にもございました。このネズミ講の中に救済方法被害を受けた者に対して救済をするような方法というものがあるのかどうか、そういう点がこの裁判の過程でどうなったかということをひとつお伺いをいたしたいし、下光参考人がこの裁判を手がけられて、損害を受ける者は大体総会員数のどのくらいになるというふうに思っておられるのか。このままでずっと進んでいくと、大体どのくらいの者がもうけて、どのくらいの者が全部損を受けるんだという、大体比率はどのくらいになるとお考えでしょうか、それをちょっとお伺いしたいのです。
  76. 下光軍二

    ○下光参考人 どれくらいな者が目的どおりの金額が入るかというのは、これは私たちはそこまでの正確な数字はつかんでおりませんけれども、大体、前に査察が入ったときに、国税局の方でお調べになっているわけです。ですから、その点についての数字は国税局の方でお聞きくださるとはっきりするかと思うのですが、私たちが審理の過程で得た心証によれば、やはり実際にネズミ講の言っておる金額を得た人というのは、十万人に一人か二十万人に一人かぐらいしかいないのではないかというふうに思われます。  それで、審理の過程でも、そのほか全額ではないけれども、一部分やはり入った金があるという人たちも相当いるわけです。原告の中にも、最小限度孫会員といいますか、自分の二代下から送られてくる金が二人分大体来るわけなんです。ですから、六十万円口であれば、自分お金を送るのは一番の会員に送るか六番の会員に送るか、それで自分が入るのは八番なんです。常に八番なんです。それで六番会員に送る人と、二人勧誘をしますけれども、そのうちの一人は六番会員の方に送る、それから一人は一番会員の方に送る、こういうふうになるわけですが、それが結局一人が二人、二人が四人というふうになってきますので、自分勧誘した人からは送ってくるわけではありませんが、私が一人勧誘した、二人勧誘しますね。そうすると、その勧誘した人たちがまた勧誘する。だから、その勧誘した孫会員といいますが、その孫会員の中の二人が私のところに送ってくるわけです。ですから、それは送ってくるとすれば、一人が五十万円ずつですから、百万円になるわけです。それで六十万円出して、それで二人から送られてくると、百万円入った、差し引き四十万円のもうけがあるじゃないかということが言われるわけですし、この原告の中にもそういう人たちがおったわけです。ですから、おったんだから、相手の方では、内村の方では、損じゃなくてもうけているじゃないか、だから入会金を払う必要はないじゃないか、こういうような抗弁を出しておるのです。それはまた送った人ともらった人の法律関係があるわけですけれども、とにかくこの長野裁判はこの講自体が無効なんだから、払った入会金も返還してもらう権利があるというようなことで入会金だけの返還を求めたわけで、それでもうかったかもうからぬかということは、これはほかの法律問題になる。送った人と送られた人の問題ですが、これも公序良俗に反するのではないかというようなことになるわけです。しかし、会員同士の争いということは私たちとしては適当でないし、それから、そもそも自分が六番会員に送らなければならぬ、送りますけれども、その送ること自体は本部からどこのだれそれに送れといって指示が来るわけです。それで送るわけです。ですから、その送った金もこっちの自由意思で送ったんじゃなくて、本部からの指示によって送ったんだから、結局その送った金も本部責任で私の方に返してくれということが言えるはずだしというので、先ほど申し上げましたように、長野裁判所ではなくて、静岡の裁判所でそれの請求が認められるかどうかという訴訟も起こしておるわけです。私は多分それもやはり本部の方で返還しろという判決が出るというふうに思っておりますけれども、そんなようなことで、利益があったとかなかったとかというようなことも問題になっておりますが、そういうことで、これは全部本部責任だというふうに考えております。  それで、救済の方法は別に何もない。内村はこの講はお互いの助け合い運動だと言っていながら、会員の救済については何ら施すところがありません。内村の方で会員のためにやっているのは、保養所の使用と、それと交通事故なんかでけがした場合に弔慰金として見舞い金を出すのだというようなことを言っておりますが、これはやはり人をつるためのえさにすぎないと私は考えております。
  77. 青木正久

    ○青木委員長代理 片岡清一君。
  78. 片岡清一

    ○片岡委員 警察庁の方にお伺いしたいのですが、とにかくもうすでに四、五年前から新聞のあちこちに相当出ておるわけです。     〔青木委員長代理退席、武部委員長代理着席〕 それで、こういうだれが聞いてもふらちなことが横行しておるということを警察庁はもちろん知っておられたんだろうと思いますが、いつごろからわかっておるのですか。
  79. 柳館栄

    柳館説明員 ただいまの御質問がマルチ商法であるのか……(片岡委員「いや、ネズミです」と呼ぶ)ネズミにつきましては、ネズミが始められた直後から知っておるわけでございます。それで、御承知のように、それにつきましては出資法に違反するものと出資法に違反しない形態のものがあるわけでございます。そして出資法によってとらえられるものにつきましては、その都度摘発をいたしましてつぶしてきておるわけでございます。ただ、残っておりますのが、いま問題になっております第一相互経済研究所のような場合がひっかからない、こういうことなんでございます。
  80. 片岡清一

    ○片岡委員 それでは、警察庁が知ったというのは、どういうことで知ったのか。特に私がお聞きしたいのは、こういうひどい目に遭っているということで各警察署の窓口へいろいろ相談に来たりあるいは陳情に来たり、これを何とかしてもらいたいという告訴といいますか、そういうようなものを受けられたことが全国的に相当ありますかどうですか。
  81. 柳館栄

    柳館説明員 ネズミの場合には、私ども摘発をしようといたすわけでございます。そうしますと、これはもうちょっと待ってくれ、いま自分が元を取るまでは待ってくれ、こういうことになるわけでございます。それで元を取ってしまいますと、またなかなか協力を得にくくなるというのが実態でございます。しかしながら、中には私どもの方に訴えてくる者もあるわけでございます。そういったもの全体を総合判断しまして、これは証拠上も確実にいけるということになったときに摘発に乗り出しておるというのが実態でございます。
  82. 片岡清一

    ○片岡委員 もう一つ、その訴えの中で、特に何とかしてくれ、あるいはまた青少年の補導の立場、保安の立場でこれは捨てておけないというように警察が認識をするに至った場合がありますかないですか、その点だけをちょっと。
  83. 柳館栄

    柳館説明員 私どもはこれは基本的に好ましくないものであるというぐあいに考えておるわけでございます。したがいまして、これが青少年に及んでいくということは、大人の場合以上にけしからぬことだというぐあいに思っておるわけでございます。
  84. 片岡清一

    ○片岡委員 そういう訴えがありましたかどうですか。
  85. 柳館栄

    柳館説明員 青少年から具体的な訴えがあったということは、いま聞いておりません。
  86. 片岡清一

    ○片岡委員 そういうことが全国的に警察の防犯、補導の立場で問題になったことがありますか。
  87. 柳館栄

    柳館説明員 青少年あるいは婦人等がこのネズミに関連してきたというのは、比較的最近の傾向ではないかと思っております。しかし、そういうことで直接私どもの方に訴えてきたというのは、聞いておらないわけでございます。
  88. 片岡清一

    ○片岡委員 それでは、あなたが先ほどお話しになったのは、警察としてこれは公判維持ができるかどうかが問題なんだ、公判維持ができればさっきのマルチの問題でも十二条、十三条かを当然適用してやるのだ、こういうことですが、これは犯罪として摘発するというのも警察の役目であるけれども、もう一つは、防犯の立場があると私は思うのですよ。これは犯罪になるかならぬかはいろいろ問題がありましょう。詐欺になるかあるいは出資法違反になるかということについてはかなり問題があるようですが、しかし、少なくとも防犯の立場から、こういうことが横行しておるのでは社会の公安を害するという立場から、何とか手を打たなければならぬということを警察の立場で相当考えらるべきだと私は思うのですが、そういうことがなぜいままでなかったのか。あるいはまた、そういうことがあったとしたら、これを立法するために当然手を打つべきであったと思うのですが、立法するときはどうすればいいかというようなことについて、防犯の立場から、警察庁において研究されたことがあるかどうか、それをお願いいたしたい。
  89. 柳館栄

    柳館説明員 私どもが行動を起こす場合には、公判維持が可能かどうかということが非常にポイントになるわけでございます。しかしながら、先生のおっしゃるように、防犯的な観点からこれを見るということもまた重要なことだと考えておるわけでございます。したがいまして、今回の摘発に当たりましても、私どもは罪名としては書面不交付という罪名ではございますけれども、しかし、それがマスコミ等によって大きく取り上げられることによる防犯効果というものをどう上げるかというところに、実は非常に苦心をいたした点もあるわけであります。  それからもう一つ、防犯の観点から法律立法等についてどうかというお尋ねでございますけれども、これにつきましては、現在、関係省庁が集まりまして、検討を重ねておるところでございます。
  90. 片岡清一

    ○片岡委員 もう一ついまのに関連しまして、人の弱みにつけ込んでやるのですから、これはこういうインチキなものであるということを当然警察が防犯運動の中で取り上げるべきだ、当然そういうことが取り上げられておってしかるべきだったと私は思うのです。そういう点で、何か恐れをなしてというか、はれものにさわるというような態度を警察がとってきたように思うのですが、そういう点はもう一歩踏み込んで、こういうことがあるのならば、各市町村に皆防犯協会があるのですから、そういうのを通じてもう少しみんなに知らせるというような方法をなぜとらなかったのか。何か防犯協会の運動の中に取り上げておるのか取り上げていないのか、そういう点をひとつお伺いしたいと思います。
  91. 柳館栄

    柳館説明員 私ども、ネズミにつきましては、はれものにさわるというような気持ちは一つも持ってございません。もっと積極的にやりたいというぐあいに考えておるわけでございます。  また、防犯運動においてそれを取り上げないのかという御指摘でございますが、いま警察の防犯運動を行う場合の組織と申しますのは、やや地域防犯的な感じがあるわけでございます。そして特に都会の防犯組織というものは非常に組織的にも弱い、むしろ田舎の方が強いわけでございます。したがって、そういうところを通してどの程度の効果があるかという感じもいたさないわけではないわけでございまして、それよりも私ども、もちろんそれも大切でございますけれども、それ以上に現在はマスコミを通してやることが一番大きな効果があるのではなかろうかというぐあいに考えて、機会のあるごとに広報に努めておるところであります。ただ、私どもが広報いたしましても、マスコミは決して取り上げるわけではございません。やはり事件のような形をとったときにあわせてそういう防犯的な意味合いの記事を書いていただく、こういう形になるわけでございます。従前の防犯運動——秋の防犯運動であるとかあるいは春の防犯運動であるとかいうことをやっておりますけれども、その際には、それはまたそれで別なねらいがありますので、いままで防犯運動としてネズミ講に気をつけなさいということをやったことはございません。
  92. 武部文

    ○武部委員長代理 加藤紘一君。
  93. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 私はいま警察庁の方、かなりしっかりやっていらっしゃると思いますけれども、しかし、現在の法体制のもとではどうも限界があります。たとえば警察庁がネズミ講というものはけしからぬことでございますといって公文書を流しまして、各市町村でやれと言っても、じゃあこれはなぜいかぬものかという訴訟をネズミの側から出されたら、きちっとそれに抗弁できるかというようなこともあって、立法の問題にまで立ち入って論じない限り、警察庁の努力にも法的に限界があるのじゃないかなという感じが私はするわけです。  そこで、法務省に立法上のいろいろな御意見を私たちの参考のために聞かせていただきたいのですが、私はこのネズミというのは必ず損をする仕組みなことは明らかだと思うのですね。そうしますと、もし全員が必ずもうかりますという宣伝をし理屈づけをして勧誘したならば、これは詐欺罪になるという意味で、私は必ず何か守るべき法益というのはあるような気がいたします。それから、これは全員が損するのでもない、一部の人がもうかるから問題が複雑で発生するわけですけれども、しかし、一部の人がもうかるというならば一つのギャンブルみたいな性格がありまして、仮にその一部の人でももうかるのですよといっても、ギャンブルというような性格のものは競馬、競輪でさえ国の方は取り締まって、特殊な自治体等でなければ許されないという一応の規定に法律がなっているわけですね。ですから、その両方から見て、何か守るべき法益があって立法の可能性があるように思うのですけれども、昨年来からの各省協議によれば、どうしてもそこがひとつしっかり結論が出ないのでなかなかやれないという、いまちゅうちょしている段階のようですけれども、どうしても立法に踏み切れない技術的な問題がどこにあるのかということを、ここでお示し願いたいと思います。
  94. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  大変重要な問題でございますので、いささか説明員の立場を逸脱するかもしれませんが、私の個人的な体験も交えまして御説明しつつ、あわせて法務省の立場ということで御説明を申し上げたいと思います。  実は私、数年前に東京地検の特捜部の検事をしておりまして、このネズミ講にかかわる事件を直接担当したことがございました。その際に、いわゆる講の関係者、講の会員と申す方々でございましょうか、数にいたしまして大体数十名の方々から直接事情をお聞きしたことがございました。以下は捜査の秘密とも関連いたしますものですが、それに差しさわりのない限度におきまして御説明いたしたいと思います。  まず、その中でほぼ二十名ないし三十名に一名の割りで元金を回収し若干なりとも利得を上げたという方がございました。そこで、ひとつ忌憚のない意見をということで、もうかる秘訣を教えてくれ、こうお尋ねしましたところが、要するに自分の下にまず子の会員をつける、それからその下にさらに孫会員をつけるということで、基本的に一種のピラミッド型をこういうふうに構成していくことがこの場合は必要なんだろう、そういうことで、しかし、子の会員をつけたというだけではなかなかこれは自分のところには利益は戻ってこない、そこで子のしりをたたいて孫をつくらせる、さらに今度は孫のしりをたたいてひ孫をつくらせるということで、ほとんど四六時中不眠不休の活動をして、数カ月にわたるそういう活動をして、ようやく元金とそれから若干の利得をおさめることができたというふうに、しみじみ述懐しておりました。しかし、一回覚めて考えてみますと、それだけの努力を自分の稼業なり本来の商売なりに傾注すれば、さらにその十倍、二十倍の利得も上げ得たのだろうということで本人も反省を交えつつ、もうこりごりですというふうなことを申しておりました。それは言うならば、被害者が加害者に転化したいわゆる利得を上げた方々の立場だろうと思います。  それから次は、純然たる被害者、要するに、とられっぱなしという方々のことですが、これは私、一番聞きたかったのは、この講に加入した動機が一体どこにあるのかということです。先ほど来先生方からいろいろ御披露がございましたが、いずれにしましても、この講は論理的に成り立つものではない、どこかで破綻するということは、いわば国民的な常識でもあろうかと思います。そこで、私が聞きたかったのは、そういう常識を踏まえつつ、知りつつ入ったのかということでした。大体の方のお答えは、知っておりました。いずれにしましても、こういうことが成り立つものではないということはわかっておりました。それではなぜ入ったのかという次の質問になるわけですが、それに対するお答えとしましては、自分だけはうまくもうかるのではないか、万が一ということを、僥幸をかなり当てにしました、そして子供をつくる、あるいはまた孫をつくるというふうに、二、三日駆け回ってみたが、これはなかなかむずかしい、とても思うようには集まらない、そのうち煩わしくなって、失った金もそう大きい額ではないので、この際もうこういうことから手を引こうと思って、若干の入会金なりあるいは先輩会員に送金した金銭というものを失いつつその講から脱会した、いずれにいたしましても、いまはもうしみじみ反省しておりますというふうな述懐でございました。恐らく最近のネズミ講の形態というものは、いろいろな形があるのだろうとは思いますけれども、末端に行きますと、私がいま御披露したような形が大部分であろうと思います。  そこで、お尋ねの直接の御趣旨にかかわるわけでございますけれども、このような事例に対していかに法的規制を加えていくかということですが、先ほど来先生方の間からも、全面禁止を考えてはどうかというお話がございました。確かに、全面的に禁止するということもそれなりの理由は十分あろうことかと思いますけれども、法務省が担当いたします法律と申しますのは、御承知のとおり、刑法とか少年法とか、刑事に関するいわゆる基本法令でございます。これは窃盗なり殺人なり強盗なり、あるいは麻薬の取引というふうに、そのこと自体きわめて反道徳的な要素の強い行為でございます。いわゆるわれわれ自然犯ないし刑法犯というふうに申しております。法務省が仮にこれを立案するというふうにいたしますれば、一番問題となるのは、こういうふうな末端会員までを含めたこの講全体を反社会的な行為であるというふうに規定いたしまして——先ほど来何か二百万人の方が加入しておられるという話もございました。いずれにいたしましても、あらゆる社会の各階層にわたる方々、中にはほんの一時の出来心から加入した方もありましょうし、中には生活に困って大いにもうけてやろうということで加入した方もあろう、いろいろな動機があろうと思います。これらをひっくるめまして刑事罰の対象にするということには、いささか私、疑問を感じておるところでございまして、これは私のみならず、法務省の幹部もすべて同じ考えだろうと思います。  そこで、一番問題になるのは、こういう連中を走らせてその上で汁を吸っている者をどうするかということだろうと思います。そこら辺の扱いは、むしろ刑事罰という大きな取り上げ方よりは、行政的な規制あるいは行政罰という取り上げ方が過当なのではないかというふうに私個人としては考えております。  なお、法務省全体として詰めた意見ではございませんので、その辺はあしからず御了承いただきたいと思います。
  95. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 その辺がいま問題の核心だろうと思うのですが、たとえば賭博を禁止しておりますね。これは勧進元もそれから金をかけた人もやられるわけですね。いま刑事課長のお話を聞きますと、最初から成り立つものではないと思ったけれども、おれだけは、何というか、ゾロ目を当てることができるかもしれぬというような一種のギャンブルという性格がかなり強い。それで賭博の場合も、これはかける方も勧進元も両方やられるわけですね。かける方はたかだか五千円とか一万円、これを何とかうまくというので一般の善良な市民がやっていくのを取り締まっているわけでしょう。それと同じに考えれば、どうしてそこでいわゆるネズミ講というギャンブルを取り締まりできないかという、その差がわからないのですが、説明お願いいたします。
  96. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 賭博のことを申し忘れまして大変失礼いたしました。  御承知のとおり、賭博というものは刑法に規定がございますとおり、偶然の輸贏によって財物を賭して賭事ないし博戯をするということでございまして、偶然の輸贏、要するに、かけマージャンにいたしましてもその他の競馬にいたしましても、偶然性で支配されるというところが賭博の反社会性の最も強いところでございます。これに対しまして、本件のネズミ講の場合は、偶然性と申しますよりは、要するに本人の努力が必要なようでございます。後続会員を何十人。何百人と不眠不休の活躍でかき集めてくるという本人の努力にすべてがかかっているようでございまして、かけマージャンとはいささか違いまして、そういう努力を、またある意味でこれがけしからぬということを言っていいのかどうか、この辺もまた各人各様のいろんな考え方があるのではないかというふうに思っております。
  97. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 そうなりますと、こっちもなかなかむずかしいなと思うのですけれども、しかし、最後になると努力を幾らしたってだめな時点に参りますね。そうすると、この辺でも、その人でもまだ努力すればもうかるからという観点が入るからかけマージャンとはまた違う、こういう感じでございますか。そこについてお伺いしたいのと、その点について下光参考人法律の専門家として、何かそこに賭博と同一性が見られないのか、立法論的な根拠というのを、サゼスチョンか何かないか、お伺いしたいと思います。最初に刑事課長にお伺いいたします。
  98. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 何かえたいの知れない金が動いているということにおきましては、かけマージャンと同一に評価できる面もあろうかと思います。しかし、基本的には、先ほど申し上げましたとおり、偶然の事実で金銭を賭するというのが賭博罪でございまして、本人の努力いかんによっては入るか入らないかということが決まるということは、非常に忌憚のない言い方をしますれば、われわれの日常の仕事と同じ面もあるわけでございます。われわれの仕事とネズミ講一緒にすると大変失礼な言い方かもしれませんが、そういう面もあるわけでございます。
  99. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 そうすると、最後に何ぼ努力しても報われないという段階になりますと、それは当初からわかっていることであって、一般の人は入るときもうすでに知っていたから、それは入った人の責任だ、こういう感じになるわけでございますか。
  100. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 大変冷たいような申し上げ方でお気にさわるかもしれませんが、いずれにいたしましても、詐欺罪の構成要件ということでとらえていきますれば、被害者が錯誤に陥るということがこの場合は基本的に必要なわけでありまして、錯誤に陥れしめるということはどういうことかと申しますと、もうかる可能性のきわめて少ない話をいかにも誇大に宣伝して確実にもうかる、こういうことで相手方を錯誤に陥れしめる、それで金銭を提供させるということで詐欺罪が成立するわけでございます。したがいまして、いろんなネズミ講のやり方があるので一概に申し上げることははなはだ危険だと思いますけれども熊本地検が四十八年に捜査しました詐欺事件では、やはりその点が一番重要な問題になりまして、いま一歩踏み切ってそういう被害者詐欺被害者ということで保護して、公判を請求するということには検事として踏み切りがたかったという面があったようでございます。
  101. 下光軍二

    ○下光参考人 その点につきまして私は法務省と見解を異にするわけでございますが、民事の裁判における過程におきましてもその問題が中心になったわけでございます。といいますのは、やはりこれは行き詰まることはもう確実なんだ、ネズミ算式でふえていくということは絶対にあり得ないことだ、その証拠は幾らも出てきておるわけでございます。長野地方がもう行き詰まってしまった、今度は富山の方へ行く、富山の方がまた行き詰まったということで、新しい土地を開拓していくわけですね。ですから、次から次に場所が移行して、かわって盛んになっていっておるわけです。しかも、この講に加入する人というのは、大体証人の言葉によりますと、幾ら勧誘しましても二十人に一人か二人ぐらいしか入ってくれない、これは大体国民的な常識だということが先ほど来話題になっておりますように、やはり信ずる人というのは少ないということになるわけですね。まして日本の人口全部が二十七代か八代で入ってしまうという計算も出るわけでございます。したがいまして、一地方長野県の例でも長野市で行き詰まった、今度は松本へ行く、松本でも行き詰まった、今度はしようがないから自分たちの知人を頼って東京だ、横浜だへ来るけれども、そこでもなかなか、東京、横浜はさすがに知識人といいますか常識人……。
  102. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 行き詰まるというところはみんな認めておりますので、そこはちょっと省いていただきます。
  103. 下光軍二

    ○下光参考人 それと、さらに問題なのは、内村の言葉によっても、先ほどちょっと出ましたけれども、新しい加入者というのはネコでもいいのだ、ネコでも会員になる資格がある。未成年者はもちろん、戸籍謄本を取るわけでもありませんし、無能力者であろうが何であろうが構わないのだ。それからまた、会員うちで死亡したりすれば、そこから進行はしないわけです。そこでまた二人勧誘しなければならぬけれども、そういうこともできなくなってくるわけですね。そういうことで、どうしても内村が言うような過程を経てその掛金といいますか贈与金というものを得るということは非常に困難な場合が多いし、そして内村の宣伝によりますと、非常にそれを誇大に宣伝している。  私は熊本の検察庁に告訴したときに、検事正に会っていろいろ事情も述べましたし、それから後でまた行ったのですけれども、最近またもう一度告訴したいと思って相談に行ったわけですが、非常に冷たくあしらわれる。私も予約して行ったわけじゃないのですけれども、行きましたとき次席というものがおりまして、ちょっと待ってくれと言う。待っている場所が物置小屋、ほこりのたまったタイプとか何だとかいろいろな物を置いてある部屋で、手錠をはめられた被告人なんかと一緒に待たされて、それで後でいろいろ話を聞かされたのですけれども、捜査についての検察庁の態度というものはすこぶる冷たいものがある。そして私を一度呼んでもらいたい、証人なら幾らでもあるのだ、私のところでは訴訟を五、六百人やっているのだからと言っても、一人も私に事情を説明してくれと言ってこられたことはないのですから、そういう点で私は非常に残念でならないのです。
  104. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 どうもありがとうございました。  それで刑事課長さんにもう一度お伺いいたしますが、いまの私たちの議論の前提には、入っておりますほとんどの人、先ほど特捜時代にお聞きになった被害者のほとんどが、どうせこれは行き詰まるものだと思っているという前提があるわけですね。ところが、それがなかった場合は、これは完全に詐欺罪になるわけであって、熊本地検でも、その加入者がほぼ全員、システムとしてもうかるという信念を持たされたならば詐欺罪が成立するはずであって、その裁判の公判維持もできるということになると思うのですけれども、その確信が持てなかったということですか。全員がどうせこれはもうかるものではないということを知っていたということなんですか。
  105. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  きわめて形式的に申し上げますれば、先ほど私が申したとおり、全員が確実にもうかる、まことにぼろい話であるということで勧誘した。内容的に見ますれば、決してそういうものではない、いずれ論理的に破綻することは必然というわけでございますから、そこに欺罔行為があることは先生御指摘のとおり、形式的には詐欺罪が成立いたします。  ただし、一体そういうふうな事例が仮定の問題にしろ考えられるのだろうかというところに私ども一つの悩みと申しましょうか、問題意識があるわけでございまして、先ほど今日的な常識と申し上げましたが、社会のさまざまな各階層の人々のそれぞれの考えあるいは常識、それは異なるわけですから、一概にこれが常識である、これが常識でないという言い方はできないかとも思いますが、しかし、いずれにいたしましても、社会の平均人を標準として裁判所は恐らく判断なさるであろう、そういう場合に平均人なら気がつくであろうことを知らなかったということは、検事側としてはそのことを立証して裁判官を説得することの自信がなかなか持てない、こういうことでございます。
  106. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 その平均人の判断能力というもの、たとえば検事さんなんといったら司法試験を合格された特別の判断力をお持ちの方であって、自分たちの基準から普通の人の判断力、平均値を本来あるべき姿としてかなり高く見過ぎていはしまいかというあたりが、ちらっと心によぎることはなかったのでしょうか。
  107. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  問題の本筋を外れまして恐縮でございますが、社会の平均人がどの辺にあるか、これは確かにいろいろ議論のあるところでございまして、われわれは、要するに社会の通常人、言うならば社会のごく普通の生活をしている方々の考え方ということをいつも社会通念という概念で取り上げてきて考えておるわけです。本件の場合はどうかとお尋ねでございますけれども、本件につきましては、文字どおり社会の平均人で構成されております検察審査会におきまして、これはとうていむずかしいという御判断でございまして、これをつけ加えさせていただきたいと思います。
  108. 武部文

    ○武部委員長代理 佐藤刑事課長に私がちょっと質問いたしますが、私が午前中に七人の御婦人の具体的な例を十二、三項目挙げましたが、あのことはお聞きになっておったでしょうか。午前中に出席しておられたでしょうか。
  109. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 聞いております。その前提で結構でございます。
  110. 武部文

    ○武部委員長代理 そういたしますと、私はこの七人の御婦人の方から具体的に聞いたことを羅列して申し上げました。この人たちは行き詰まるなどということは全然知らなかった、話を聞いてこれはいいことだ、これならばと思って自分たちも入ったんだ、こういうことを七人全員が言っているわけです。あなたのさっきの検事時代のお話によりますと、成り立つものではないと知っていた、全員がそうだとおっしゃったわけですが、私がきょう申し上げたのは全然それとは真反対に、この人たちはそういうことは毛頭考えてもいなかった、入って金を納めて、やり出してみて、これはおかしいなと感じたということを七人ともおっしゃっておるのですが、その点いかがでしょうか。
  111. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 私の数年前の体験でございましたので、それがすべてであるというわけにはいかない。もちろん、いろんな形の被害者がおられると思います。委員長にそういうふうな陳情をした方ももちろんおられると思います。あるいは検察に対していろいろな状況から陳述をした被害者もおると思いますが、いずれにいたしましても、そういう被害者をすべてひっくるめまして、一体これは平均的な社会人としてこういうふうな欺罔の方法に素直に簡単にひっかかるものであろうかなというところの疑問がなお払拭できない、こういうことでございます。
  112. 武部文

    ○武部委員長代理 続けてもう一つ伺いますが、あなたは裁判の判決文をお読みになったでしょうか。あの判決の全文を通して見ますと、あの中に流れておるところの判決文の思想というのは、私が申し上げた七人の御婦人の被害状況、そういうものを根底に置いて、ほとんどの人がそういうお立場に追い込まれてあのようなことになったんだ、したがってこれは公序良俗に反するということで判決を出されたように私は読んでみて考えたし、この御婦人たちの御意見も聞いてそのように思ったのですが、そうなってくると、あなたがさつき詐欺罪の構成としておっしゃったように、被害者を錯誤に陥れたということになるように私は思うのですが、いかがでしょうか。これをもう一遍お伺いいたします。
  113. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  こういう行為が社会的に見てりっぱな行為である、許される行為であるということは私も決して申し上げておりませんし、まことにけしからぬ行為であるということにおきましては、本日御出席方々と全く同意見でございます。ただ、それを刑法的にどういうふうに評価するかというところに非常に大きい問題があるわけでございます。その点はひとつ御理解いただきたいと思います。  それから、民事判決の関係でございますが、これも御承知のとおり、民事と刑事というものは基本的に性格を異にいたしまして、いわゆる証拠の優越性、民事の場合には、双方の出し合った証拠がどちらが優越するかというところで結論が出るわけでございますが、刑事の場合には、憲法の基本原則からいきましても、疑わしきは罰しないということで、九九・九%までの立証義務を検察官が負わなければならない。たとえ一抹の不安でも裁判官の頭をよぎれば、その事件は遺憾ながら無罪ということにならざるを得ない、そういう非情な、過酷な運命をまたわれわれも負っておるわけでありまして、ひとつその立場も御理解いただきたいと思うわけでございます。
  114. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 いまの裁判関係ですけれども、立法的にできないとするならば、行政措置でやる以外にはないということになりますね。それで、現行法の中でも限界があるとすれば、かなり行政措置ということになって、経済企画庁とか通産省とか大蔵省の銀行局とか、こんな話になるわけです。しかし、まだ下級審ですから何とも言えませんけれども、仮にこれが最高裁においても支持されて公序良俗に反するというような判決が出たとするならば、明らかに公序良俗に反するものを、適当にやめなさいとか、このケースはいいけれどもこのケースは悪いんですよというような行政措置というのは絶対できない本質的な性格を持つものであって、したがって、どうしても立法的な、何らかの刑法的な措置をとらざるを得ない仕組みになるのではないかと思うのですが、法理論的には、何かその辺は私たちの考えておることは混乱しているのでしょうか、御教示願いたいと思います。
  115. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 大変恐縮でございますが、私は刑法的な立法はちょっといろいろ疑問があるのではないかというふうに申し上げたわけでございます。言うならば、刑法犯としてとらえることはまだ時期が早いのではないか、こういう感覚でございまして、これをマルチ的な扱いをする、いわゆる行政規制、行政罰則の対象としていくということにつきましては、それぞれ関係行政庁の御判断が先行いたしまして、その段階でどうしても行政罰を加えて規制したいという関係省庁の御判断がもしありますれば、行政罰則の適正運用という観点から、法務省としても十分に協力していきたいということでございます。決して立法的に否定的なことを申し上げておるわけではないので、ひとつ……。
  116. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 それじゃ最後に、その点について大蔵省の銀行局、それからこれは経済企画庁になるのでしょうか、その可能性があるのか、いまの法務省の見解についての各省の立場をお聞きいたしたいと思います。どうもこの話は、最終的になりますとややこしいので、各省庁でボールの投げっこみたいな感じになっているのが根本だろうなというふうに私は感じるのですけれども、ここで他省庁の御見解をお伺いして、私の最後を片岡さんにお渡しいたします。
  117. 宮本保孝

    ○宮本説明員 大蔵省といたしましては、きょう午前中以来の御議論、まことにごもっともだと思います。  ただ、銀行行政上これを取り締まることができるかどうかという点につきましてはかなり疑問を持っておりまして、つまり消費者保護であるとか社会秩序の維持というふうな観点から行政罰の対象にすることが妥当ではないのかなという感じがいたしております。
  118. 井川博

    ○井川政府委員 御案内のように、七省庁の間の一応事務方という立場もございます。実はわれわれ七省庁、この間からも御答弁で申し上げておりますように、きょうの話もお聞きいただいてわかりますとおり、好ましくない、何とかしなくちゃいけないという感じではいるわけですが、突っ込んでまいりますと、いまお聞き及びのように、大変むずかしい問題を持っておるわけでございます。少なくともいままでのところ、その問題を越えて、ここという結論が出ていない。何とかしなくちゃいけないという感じだけは強いけれども、まだそこまでいっていないという実情でございまして、両方ともまだいろいろ問題を持っているということを申し上げたいと思います。
  119. 片岡清一

    ○片岡委員 私、刑事課長さんにお伺いしたいのですが、先ほどからいろいろの御意見をお述べになったのですが、それを聞いておりますと、それは悪いには悪いがまだ刑法的に犯罪としてどうもとっちめていくには少し間があるというような、何か手ぬるいお考えをここで表明せられたのですが、それが外へ出ていきますと、これは大変なことになって、彼らをますます勇気づけると私は思うのです。  それでお伺いしたいのは、とにかく子や孫の間におる人は、確かにこれは成り立つものか成り立たぬものか十分認識していなかったということは言えるのですが、ただしかし、少なくともこの内村という男が、とにかくこれは世界じゅうがネズミ講になってくれても最後はやはりだめだということは十分承知をしていて、これは相手を欺罔する犯意は私は十分あったと思うのです。そういう大きな基本的なもとの大ネズミが相手を欺罔する、多くの人を欺罔するという犯意を十分持ちながら、それを隠してやる。そうすると、ひっかかった人はとにかくその欺罔によってひっかかったのだということが言い得るので、少なくとも人を欺罔して財物を取得したという場合には、何か私は、犯意を十分持っておる者に対しては何らかの方法でこれを処罰してなければいかぬと思うのです。その行為によって何億という大きな財産をつくって、そしてだれが見ても、このやろうと思うようなことをやっているわけなんです。それをいまの法体系ではなかなかむずかしいからといって、公判維持ができないかららといってそのままにしておくということに対して、私は大変ここに矛盾を感ずるのでございます。  そういう意味で、少なくともこの内村というのはもう人を欺罔することをはっきり意識し、そして犯意を持ちながらやっておる、こういうことに対して何らかの措置を講じなければならぬと思うのですが、そのためには何か法律構成としてどういう法律構成をしたらいいかというようなことを御研究になったことがあるかないか。またそういうことについて何か見込みがあるものかないものか、われわれ立法機関として今後考えていきたいのですが、それに対する何かサゼスチョンがあればお願いをしたいと思うのです。その犯意があるにもかかわらずほったらかしておくことで法務省としてそれで、まあ満足じゃないでしょうが、仕方がないということでほったらかしておいていいものかどうか、そういう感じについてもひとつあわせてお伺いしたいと思うのです。
  120. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 先ほど、刑法犯的な取り上げ方をいたしますということを前提にして考えれば、講元も含めて会員全員の反社会性という形でなければなかなかこれはとらえにくい、それをとらえることについてはいささか疑義がある、善良な会員も相当数ございましょうし、二百万人という人を対象にしてそれぞれ処罰、取り締まり、規制していくということも、刑法犯的な取り締まりを行っていくということもかなりむずかしい問題であろうと思います。  ただし、他人からそういう金を取得しまして、いろいろと安逸をむさぼるというふうなことに対しての反社会性ということはそれなりにあろうかと思います。それをどういう形で立法化していくかということは、先ほど来私、申し上げましたとおり、刑事罰というとらえ方よりはむしろ行政罰的なとらえ方がいいのではなかろうか。ただし、その行政罰につきましては、それぞれの所管関係庁がございますので、その辺と十分に意見を詰めてみませんと、いまにわかに私から申し上げることは適当でないように思いますので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  121. 片岡清一

    ○片岡委員 ちょっといまの御説明で、また私も刑法のことはよくわからぬものですからきわめて感じの問題ですが、いまおっしゃったのは、胴元を初め二百万なら二百万の全員が犯意を持っておらなければならぬというようなことが犯罪成立の条件になるのですか。私は胴元だけがとにかく犯意を持っておるということで何か詐欺罪で取り締まりができないか、その点もう一遍お伺いしたいと思います。
  122. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 先ほど御指摘のありましたように、賭博の場合には、賭博行為の反社会性ということに着目いたしまして、胴元であっても一般の参加者であっても、これは刑法の処罰の対象になるという扱い方をしております。こういうふうに講全体の反社会性、それが今日の道徳にきわめて反する行為であって、かつ刑法的にも放置できないという評価に達した段階におきまして初めて刑法の対象として取り上げるということに相なるわけで、ただ単に他人のところからいろいろなことを言って利益を吸い上げておるということでありますれば、それは一つの例としては所得税法でこれを現在裁判中でございます。これなどは明らかにその所得を不法に集めたというところに着目して構成しておるのだろうと思いますが、いずれにいたしましても、そういう金の流れを追いかけて、その一番頂点に位する者をどういうふうに考えるかということになりますと、刑法を離れたむしろ行政法規の分野の話かなというふうに感じておる次第です。
  123. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 いまの論議、本当の核心にいきますと、ギャンブルの場合には偶然性である、ネズミの場合には努力すれば何とか得るものがある場合がある、こういうところに議論が詰まっておると思うのです。しかし、ネズミの場合の努力するという行為自体、友達をいっぱい勧誘するという自体、それはいずれだめになってしまうのをだんだん広げていくわけですから、だんだん相手が絶対にもうからないという段階に近づけていく行為という努力を続けていくというのであって、それは偶然性なんかよりももっと反社会的な感じがすると思うのですが、その辺についての御比較はお考えになったことはございませんか。
  124. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  ある意味では同じように考えてもよろしいのかもしれません。ただし、賭博の場合には、これは古来、ローマ法以来反社会的な行為であるということで、人類の発生と同時に、言うならば処罰の対象とされてきたという確固たる伝統があるわけでございます。ネズミが発生いたしまして何年になるのやら私、詳しいことはわかりませんが、最近特に社会問題化しつつあるというところに一つの取り上げられておる問題があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、人類の発生以来社会的に悪であると言われてきた賭博と、いま現在にわかに同等に評価していいかどうか、その辺の踏み切りの問題と考えてもよろしいのかもしれません。
  125. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 ローマ法まで来ますと、なかなか大変な議論になっちゃうのですが、もう一回繰り返しますが、その努力するという行為自体が、最初の部分は詐欺ではないのですね。まだ自分が子を勧誘する、そういう段階はまだこの子供もまだまだ下を広げられるかもしれないから詐欺ではないのかもしれませんけれども、もう一%か二%は詐欺の部類に入っているわけですね、絶対あなたももうかるからと。それをどんどん広げていくということは、詐欺の比率がだんだん大きくなってくる努力を続けているわけなんで、それは明らかに、確かにネズミはローマ法以来なかったのでしょうけれども詐欺というのはローマ時代からこれは悪いことだということになっていたのじゃないでしょうか。
  126. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 問題の本筋を外れたような形になって大変恐縮に存じておりますが、一番肝心なところは、ネズミ講の場合に、これを反社会的な行為であるといま先生おっしゃいましたとおり、どんどん下に詐欺的な行為が広がっていくということ、それはそのとおりかもしれません。その場合には、先ほど私、いろいろな設例として申し上げました、ほんの軽い気持ちからその先輩会員に何千円か何万円かを送金して入ったという二百万近い、いわゆるわれわれの周辺に所在している一般の国民までも巻き込んだ罪をつくる必要があることになるわけでありまして、そのことの当否ということを考えざるを得ないのではなかろうかというふうに思うわけです。
  127. 片岡清一

    ○片岡委員 どうもその点がわからないのです。子や孫を何も一緒に処罰する必要はないと私は思うのです。胴元が一番問題じゃないのですか。胴元だけを対象にして詐欺を立てるわけにいかぬのですか。その点がどうもわからぬのですが、もう一度。講全体をやらなければならぬという、どういう刑法上の必要性があるのでしょうか。
  128. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 講全体を立てる行き方というものは、先ほど関係の方から御指摘のことで、それに対するお答えとして申し述べたわけでございます。  それから、講の一番親元に所在するものについてはどういうふうな処罰体系を考えていくかということは、先ほど先生の御質問に対してお答えしたとおりでございまして、いま現在におきましては、やはり行政罰的な取り扱いが一番いいのかなというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、これは関係省庁と十分協議しなければいかぬ問題でございます。
  129. 片岡清一

    ○片岡委員 それは詐欺罪でどうしてできないのでしょうか。
  130. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 これは先ほど御説明したとおりでございます。
  131. 片岡清一

    ○片岡委員 それがちょっとわからないのです。私は頭が悪くてよくわからない。
  132. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 簡単に申し上げますと、被害者側が、そういうふうな完全にもうかる話であると言って全員の被害者が乗っかった話ではないのじゃないかというところでございます。
  133. 片岡清一

    ○片岡委員 それは子や孫は欺罔されるという意識はないかもしれませんよ。ところが、少なくとも内村本人は、これはもう成り立たぬことを成り立つように言って相手を欺罔しよう、こういう意思が、十分犯意があると私は思うのですが、その犯意をなぜ罰せられないのか、詐欺として罰せられないのか、その点がよくわからないのですが。
  134. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 確実にもうかる可能性のきわめて少ないことを、その事実を押し隠しまして、確実にもうかることであるということで被害者をだましまして、これに金を投ずるとあすにでも何百万円という金が入ってくるのだなと思って金を提供したということは、これはりっぱな詐欺でございます。本件の場合には、先ほど私いろいろな例で申し上げましたが、もうかる可能性はきわめて少ないということは被害者も十分御承知の上のケースがかなりあるのではないか。一体その可能性が少ないか、あるいは高いかということにつきましては、一般社会人のレベルで考えまして、こういう論理的に破綻の必然性の来るような講に加入することは、確実にもうかるというふうに一般人が果たして思うであろうかどうか。完全に思うのであるというところまで立証いたしませんと、裁判としては有罪を獲得することはできない、そこの疑問でございます。おわかりいただけたでございましょうか。
  135. 片岡清一

    ○片岡委員 どうもよくわからないのですが、それは中には欺罔されることを承知の上でやっている人がおるかも存じません。しかし、最初に言いかけてきたその胴元の内村は、少なくともこれは組織的に——組織的にですよ、個々別々じゃなしに、その特定の者に対して詐欺をしようという、また詐欺をされるかもしれぬことを期待してやったということでないかもしれませんけれども、全体としてはこれはもう詐欺であることははっきりしておるし、また、自分詐欺をするという認識のもとに犯意を持ちながらやっているのだと私は思うのです。だから、その全体がそういう認識を持たなければ犯罪にならぬというのは私はおかしいので、少なくとも詐欺をされたと思って不平不満に思い、それでこれを何とかしてやろうと思っておる人が相当多数おる。全部が全部でないにしても、相当多数の者がおるというときに、なぜそれが詐欺罪として摘発できないか、また処分の対象にできないのか、それがどうも私には納得がいかないのです。一般の人がわかるようにおっしゃっていただきたい。そうでないと、これは大変な問題になると思うのです。きょう審議をしたが、法務省の刑事課長さんは、もうこれは大丈夫なんだ、何もないんだということになったということになると、これは大変な問題になると私は思います。
  136. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 これは検察審査会の中で取り上げていることでございますので一部御紹介いたしますが、このような会員勧誘の困難性につきまして、被疑者自身、実際の勧誘が相当むずかしいであろうことは十分承知していたということ、それから被害者側におきましても、後続会員勧誘の困難性ということは十分認識できたことではなかろうかということで、ごく簡単に申し上げますと、要するに、だまされて金を出した、錯誤に陥って金を出したということにはならないのではなかろうか、その辺に疑問がある、完全にだまされて出したということを立証することはきわめてむずかしい問題である、こういうことでございます。
  137. 片岡清一

    ○片岡委員 先ほど委員長が例を引かれました七人の方ですね、これは完全に欺罔されているのですね。だから、それは最初から承知の上で、これは自分さえもうかればいいんだというばくちのつもりでやったのと、完全に最初から欺罔をせられて、それでしばらくたってから初めて気がついた——西参考人なんかもそのようですが、初めはやはりだまされた、こう思っておる人がかなりたくさんおる。そのたくさんおる人の意見がたくさんあれば、それで十分犯罪を構成するのじゃないかという気がいたすのですが、どうも、全部が欺罔されないと犯罪にならないのだという理屈が私にはわからないのです。
  138. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 私、冒頭に、ネズミ講にもいろいろな形態がございますので一概に論ずることは危険であるがというふうにお断り申し上げておいたはずでございますが、いずれにいたしましても、私が取り扱った事例あるいは熊本で取り扱った事例等は、詐欺罪の立証はむずかしいということでございまして、また別な角度から別な検討を加えて、また被害者の供述も、別な事件につきましては御指摘のような詐欺罪の成否ということも十分考えられるだろうというふうに思っております。ですから、私と先生とそう見解の相違はないようにも思います。
  139. 片岡清一

    ○片岡委員 最後ですが、私はそれをお聞きしたかったのです。どれもこれも何も詐欺にならぬのだというようなお話になると、これは社会的に相当大きな波紋を描きますし、それは内村本人に非常に大きな武器を与えてしまうということになって、これからさらにその被害が大きく伸びると思うのです。ですから、いま刑事課長がおっしゃったように、自分最初に扱ったときは、大体みんな知っておってやっておったようだ、しかし、最近の、そういうことで学生もだまされ、被害が相当大きい、それでしかも、いずれも初めは知らないで完全に欺罔されてやっておるという場合には、これはやはり詐欺罪が成り立つ可能性があるのだとおっしゃるなら、私はそう言うていただきたいのです。そうでないと、これは大変な問題だと私は思います。そういうふうに理解していいわけですね。
  140. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 それでけっこうでございます。
  141. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 私は、法務省当局が、たとえば一般に何かはやりみたいに、これは悪いんだ、悪いんだと世の中の人が言うものを、すぐ、はい、それは悪いんです、刑法で書き込みますというようなことは、よっぽどしっかりしないとできない。挙証責任がほぼ一〇〇%ある法務省としても、刑法的な規制はできないのはわかりますけれども、刑事課長さんのいまおっしゃったことを言いますと、通常の神経だったらこれはわかっているはずですからギャンブルです、ギャンブルよりもうちょっといいのは努力すればもうかる、偶然性に支配されないものでございます。それより下の知識水準で判断力のない者は、だまされたのがばかでございます。泣き寝入りになります、こういうような感じなんですね。  それで竹内参考人が午前中言っておったのは、知識がなかった者、判断力がなかった者はそれはしようがないんだと言ってしまえば、消費者行政というのは成り立たないんだということ、この自動車が欠陥商品であるかということは、機械工学的か何学的か知らないけれども、よく見ればわかったはずなのに買った方が悪いということじゃ消費者保護行政はできませんよという話でしたね。いま乙の論議をずっと推し進めていきますと、やはりそうなると消費者行政を扱っているところかなということになってしまうのですけれども、そうすると責任が経企庁にいってしまいそうですか、大臣、その辺はいかがですか。みんながおかしいと思っていながら、結局はきょうの会議で、どこも問題があります、やれませんということで終わったのじゃ、片岡先生がおっしゃったように、かなり問題だと思うのです。
  142. 井川博

    ○井川政府委員 実は、先ほどの協議会の中での議論をここで申し上げるのもどうかと思います。ただ、現実といたしまして、われわれは消費者保護基本法をこの前、委員会でつくっていただいたのを持っておるわけでございます。これは消費生活の安定のために消費者の利益を保護するというふうなことで、商品の製造工程その他わからぬ者を保護するというたてまえになっておるわけでございます。現在のネズミ講の議論は、どちらかと言えば、人のそうした弱みにつけ込んで非常に苦境に陥れるとか、あるいはそれを主宰した者がきわめて巨大な利得を得るというふうな問題ではなかろうか。いわゆる一般の消費者保護という観念とは多少違うという考え方は持っております。  しかしながら、一般庶民の問題でございますし、われわれといたしましても総理府の一員として捨ててはおけないというふうな感じから、関係省庁集まっていろいろそういう面の検討をいたしておるわけでございますが、先生が言われました、すぐ、だから消費者保護の観点からこれをどういうふうにつくるかということになると、われわれとしてもすぐには頭に浮かばないという感じでございます。
  143. 武部文

    ○武部委員長代理 宮地正介君。
  144. 宮地正介

    ○宮地委員 ただいまるるお話がありましたけれども、きょうは消費者保護行政のトップであります大臣もお見えでございます。大臣から答弁をいただくに当たりまして、大臣の見解として私、伺いたいのですが、いわゆるマルチの大手でありますベストライン・プロダクツあるいはライフ社、こういうものが訪問販売等に関する法律違反であるということでこの十七日に摘発をされました。またネズミ講につきましても、長野地裁で三十日に、公序良俗に反するということで、下級でございますが、原告の勝訴の判決が出たわけでございます。  ただいま局長からもお話がありましたが、やはり国民生活を守るという立場から、ここで経済企画庁が事務局として昨年六月以来関係七省庁の連絡協議会のかなめになっているわけでございますし、こういう背景、また、こういうものがはびこってくるその背景には経済不況という時期がたまたま合致しているという経済環境もあるわけでございます。こういうような二つの事件といいますか、こういうものをとらえた中、また、ただいまるる議論の交わされた中において、国民生活を本当に秩序ある中で守る、こういう立場から、大臣としてどのような御見解があるか、伺いたいと思います。
  145. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私、実は午前中ほかの委員会がございまして出席できませんでしたけれども参考人の各位の皆さんから大変生々しい御意見をいろいろ承ったということで、その内容についてつぶさに報告をいただいております。また午後、私がこの委員会出席いたしましてからも、それぞれ各委員から御熱心な御討議をいただいておるわけでございます。  恐らく皆様の共通した御意見は、何かしなければならない、しかし、そのしなければならないことが、法務省の刑事課長の答弁にもありますように、なかなかいろいろな点で障害がある、むずかしい問題があるというところではなかろうかと思います。したがって、経済企画庁が事務局になってここしばらくやっているわけでありますけれども、今時の段階でこうしたらよろしいという結論をまだ出すに至っておりません。しかし、被害がむしろ、だんだん広がっていく、そしてネズミ講の状況というのを座視するわけにはいかないという点については、私どもやはり皆様と同じ考えを持っておるわけでございますので、これはよく皆様からもお知恵をおかりしながら、関係省庁とさらに熱心に相談をしてみたい、そう思っておる次第でございます。
  146. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、先ほどからいろいろ論議を呼んでいるわけですが、何といっても、一つは、できるだけ早い機会にこういう被害を防止する、これにはやはり何らかの手を打たなければいけない。一つは、新規立法の検討とか、また経済企画庁としてすぐできる問題は、国民生活センターを利用いたしまして、テレビだとかあるいはパンフレットなどのPRによりまして、こういうような内容で国民に実際に被害が出ておる、どうかこういうことでだまされないようにしてほしい、こういうようなことをむしろ積極的にいまやる時期ではないか、こういうふうに思うわけでございますが、そういう考え、また計画をお持ちであるか、伺いたいと思います。
  147. 倉成正

    ○倉成国務大臣 まことにごもっともな御質問だと思います。私どもそういう考え方を持っております。その詳細について担当局長からお答えしたいと思います。
  148. 井川博

    ○井川政府委員 実は経済企画庁は、先ほど申し上げましたように、消費者保護基本法を所管いたしておりまして、その中で消費者教育、消費者啓発という分野を大きく持っておるわけでございます。この問題につきましても、根本問題は、先ほどからいろいろ議論も出ておりますように、そういうことがこの世であろうはずがない、そういう常識ないしはそういう感じを一般の消費者に本当に植えつけていくことだろう。特に最近当委員会でもいろいろお話を承って、ネズミ講に対するPRも大いにやりたい、実は今月末までにお話しの国民生活センター等でも、パンフレットをつくって一般消費者に配布すべくいま準備をしておるところでございまして、今後できるだけ機会を見つけましてそのPRに努めてまいりたいと考えておるわけであります。
  149. 宮地正介

    ○宮地委員 ここで通産省に一言お伺いしたいわけであります。  だんだんこういうような時代背景でございますから、マルチにいたしましても、あるいはネズミ講にいたしましても、先ほどはからずも参考人の中からペストとか、いろいろ病源菌の名前が出たわけであります。抵抗力がだんだん強くなってくると思います。非常に巧妙になってくると思うのであります。特に訪問販売等に関する法律適用などについても、非常に巧妙にまだまだ穴をすり抜けてマルチが現実に横行しておる。こういうことから、この問題についてもきちっとした、そのような抜け穴にならないように、言うならば、ざる法にならないように検討していくべきではないか、このように思うわけでございますが、そういう点、今回の摘発を機にしてさらに積極的に対応策を検討していく考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  150. 野々内隆

    ○野々内説明員 この法律適用につきましては、いろいろな機会に私どもの方からできるだけ厳しく適用したいという方針について御説明をしておったと思いますが、今回の警察庁の摘発につきましても、内々法律適用の仕方、解釈につきましてお打ち合わせをしておりましたところでございまして、今後ともできるだけ厳しく適用してまいりたい、かように存じております。
  151. 宮地正介

    ○宮地委員 昨年、一部のネズミ講が米国のロサンゼルスに上陸を試みたそうでございますが、正常経済妨害罪というアメリカ法律にひっかかりまして成功しなかったという事例があるようでございます。こういう法律について研究をされておるのかどうか。また、日本の現在の法律でこのような法律と対応できるものがないのかあるのか、あるいは新規立法をどうしてもここで考える、こういうような立場で検討されているのかどうか、これは経企庁かと思いますが。
  152. 井川博

    ○井川政府委員 そういう法律があることは聞き知っておりますが、まだ現実に手にいたしておりません。  それから、先ほどから問題になっておりますように、事ネズミ講に関しましては、これを取り締まるあるいは禁止をする法律がないということでございまして、それにかわる法律はございません。ただ関係各省と協力をしながら勉強してまいりたいと思っております。
  153. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に、時間がありませんので、これは大臣に伺いたいと思うのでございますが、昨年の十一月に、当時の三木総理が議長になりまして消費者会議を開きまして、ネズミ講を規制していこう、特に本年度中に消費者保護行政の目玉にしていくべきではないか、こういうことで発足をしたようでございます。いろいろ午前、午後の論議を通じて聞いておりますと、各省庁がなかなか決め手がない、国民から見ますと、どうも御都合主義で逃げているのじゃないかという感じさえもするわけでございます。一国の総理が議長として消費者会議を開いたこの問題からしても、いろいろむずかしい点があると思いますが、経済企画庁長官がぜひその中心といいますかリーダーシップをとりまして、新規立法を考えていく方向で政府部内の取りまとめ、根回しをしていく、そういう御決意があるかどうか、伺いたいと思います。
  154. 倉成正

    ○倉成国務大臣 昨年の十一月二十六日に第九回の消費者保護会議が行われまして、そこでは四つの点を決定いたしたわけでございます。  一つは、現行法令による取り締まり、監視の強化ということでございます。現行法令の中で最大の努力をしてネズミ講に類するものを取り締まっていくということが一点であろうと思います。これは現在も行われておるし、これからも強く行っていくべきであると考えております。  それから第二番目は、ネズミ講の危険性の消費者啓発ということでございます。先ほど局長からお答えいたしましたとおり、今月末にはただいま御指摘のようなパンフレットができますので、これを全国にも配布いたしまして、この危険性を消費者に啓蒙するということでございます。これもパンフレット程度では十分でないので、各報道機関にもいろいろお願いをして、いろいろな機会にテレビその他を通じてネズミ講被害を受けた実態を知らせるという努力もいたしたいと思うわけでございます。  それから第三番目は、利得者に対する課税の徹底ということで、国税庁の関係になろうかと思いますが、これも徹底的にやっていただく。  そして第四番目には、出資法の改正を含めて早急な新規立法の検討ということがうたわれておるわけでございます。  きょうこの委員会においてもいろいろ御意見が出たのを承りましたので、関係各省いろいろな問題点があることは事実でございますが、よく関係当局の御意見を伺ってまいりたいと思っておる次第でござます。
  155. 武部文

    ○武部委員長代理 米沢隆君。
  156. 米沢隆

    ○米沢委員 いろいろと御質問したかったのでありますが、時間がありませんので一言お聞かせいただきたいと思います。  ネズミ講の取り締まりにつきましては、先ほど来の議論からおわかりのとおり、大変立法的に技術的にむずかしい、この会議で明らかになったのはそれぐらいのことではなかろうか、そう思います。しかしながら、ネズミ講そのものは、先ほど来の話にありますように、反社会的な性格を持ち、同時にまた公序良俗に反するものだという裁判所の例が出てくるように、行政罰にしろあるいは刑事罰にしろ、何らかの形で取り締まりの法律をつくり、一歩でも前進することがいまのところ一番必要ではないか、こう思うのです。  そこで経済企画庁、大蔵省、法務省、通産省、警察当局、このネズミ講の取り締まり法というものを何らかの形で出発させる気持ちがおありかどうか、各省庁から聞かせていただきたいと思うのです。何とかして取り締まりを強化する方向で法の検討をしなければならぬと考えておられる方は、イエス一言で結構です。しかし、ノーと言われる場合、特にノーではないけれども技術的に非常にむずかしくて結果的にはだめだろうとおっしゃる方は、理由を付してノーと言っていただきたいと思います。  それから、先ほど来御要望もありましたけれども、結果的には、こういうものがいつまでもずっと各省庁の責任のなすり合いで何もできないということは、被害者がますます多くなることでありますから、ぜひ企画庁長官等がリーダーシップをとってこういう新しい立法に踏み出すように督励をしていただきたいと思うのであります。いま一番国民が知りたいのは、検討はなされておるけれども一体いつごろにそのめどが立つであろうかという、逆にまた、やろうとする場合には、一応のめどを立てて一応の結論を出すという、そのめどを明示してもらうことが私は非常に必要なことだろうと思いますので、めどをぜひ示していただきたい。  この二点だけ御質問して終わりたいと思います。
  157. 野々内隆

    ○野々内説明員 通産省はマルチの取り締まりを担当する者といたしまして、この問題は同じような問題ということで、マルチの経験を生かして協議会に御協力しているわけでございます。何とかしなければならないという感じは十分持っておりますが、いま実は私ども課員二人をマルチ専属にいたしまして毎日、調査、苦情処理に当たらせております。非常にむずかしいということも十分わかっておりますが、できるだけ協議会に協力をしていくという方向で考えたいと思っております。
  158. 掃部實

    ○掃部説明員 お答えいたします。  国税当局といたしましては、従来からネズミ講に対する課税の徹底を期しておるところでございまして、今後とも充実した調査を行って十分な課税をやっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  159. 宮本保孝

    ○宮本説明員 先ほど申し上げましたように、銀行行政的規制にはなじまないと思いますけれども、私どもといたしましても、何らかの規制が必要と思っております。各省庁の協議会に十分御協力申し上げていきたいと思います。
  160. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 先ほど申し上げたとおりでございまして、関係省庁とも十分協議の上、対処してまいりたい、かように考えております。
  161. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  公正取引委員会といたしましては、ちょっとお答えしにくいのですけれども、と申しますのは、先ほど申し上げましたように、ちょっと行為の性質が違う。どう申しますか、先ほど賭博や詐欺の話が出ましたけれども、これも確かにある意味では不当表示でございますが、われわれの取り締まっている目的が少し違うので、この問題につきましては、なかなか私の方で積極的に何かお手伝いするということはむずかしいかと思います。しかし、マルチに関しては、一、二のものは独禁法で適用しておりますので、私ども経験が何かのお役に立ちますならば、そういう意味で御協力したいと思っております。
  162. 柳館栄

    柳館説明員 何らかの形の法規制が必要であろうと思っております。もしそういう法律が制定されまするならば、私ども全力を挙げて取り締まりをしてまいりたいと思っております。
  163. 倉成正

    ○倉成国務大臣 本委員会における経緯を踏まえまして、関係各省非常にまたがるところが多い問題でありますので、新規の規制あるいは禁止について十分相談してまいりたいと思っております。  また、いついつまでということは、これは関係各省との相談事でございますので、いまここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、なるべく早くということであろうかと思います。
  164. 武部文

    ○武部委員長代理 荒木宏君。
  165. 荒木宏

    荒木委員 長官に一、二お尋ね申し上げたいと思います。  いま、これからとられる対策を幾つかお聞かせをいただきました。私はやはり、午前来の論議でいろいろな法律上の問題点も指摘されまして、それらは基本的なことも含めて十分論議を深めなければならぬと思うのです。参考人の御意見の中では、何といいますか、先の百よりもいまの五十というか、少し荒くてもいいから早くというお言葉もありましたが、法規制、行為規制あるいは組織規制ということにつきましての立法上の問題点は、これは可及的速やかに、しかし、きっちり詰めなければならぬ点はあると思います。  ただ、訪販法のあの論議の中でも、ずいぶん政府の対応が遅いということは各党の委員からも指摘されました。私は、いま長官から伺った幾つかの対策ですね、それはそれで精力的にお進めいただきたいと思いますが、同時に、いますぐにでもやれることが幾つもあるのではないか。たとえば四十八年の二月十七日のことでありますが、エー・ピー・オー・ジャパンの総会が京都の国際会議場でございました。ここに現閣僚の一人であられる石原慎太郎長官が、当時は政府の閣僚というお立場ではなかったと思いますが、御出席になって、資格は定かでございませんが、来賓のような立場でご参加になっている。これは広報資料に出ておるそうでございます。私もその関係者から耳にしたのでございますが、参考人の御意見の中にも、そうした有力者がいま社会的な批判を受けておる団体に関与されておる、そのことが一つはこうした団体の活動にさおさしておるというふうな御意見がございました。  そこで、一般公務員あるいは特別公務員、こうした立場にある人たちの、こういうネズミ講なりあるいはマルチ商法と言われる組織への関与について厳しく自制をすべきだ、これは早速、長官のお立場でなり、あるいは閣議に御提案をいただいて御了解をいただくことは可能ではなかろうかと思うのです。そうしたことで、ひとつ長官の御決意をお伺いしたいと思います。  それから、こうした立法作業が新しい社会事態に対処しますときには、どうしてもいろいろな関係の問題点の討議あるいは整合性の検討ということが必要でございまして、間々時期を失するきらいがあるのですけれども、同時に一般的な行政指導の活用ということも従来取り上げられてきたところでありまして、たとえば先年の石油ショックの折には、私どももあの石油企業の買い占め売り惜しみと言われた事態について国会で論議をいたしました。たしか私が提起をいたしましたゼネラル石油の場合は、即日担当大臣が関係者を役所に呼ばれて、そして政府としての意向と、それからそれに対してとるべき民間側の対策が厳しく申し渡されて、是正の行政指導を進められたということもございましたので、せっかく本日こうして参考人皆さんにもお見えいただき、論議も重ねてまいったわけでありますが、同僚委員の御指摘にもありましたように、結局むずかしいということがわかったというだけでは、私は有効な論議であったとは言いかねる面もあろうと思います。本日とは申し上げませんけれども、そうした幾つかすでにもうわかっておる組織もございます。長官のお立場として、これは御所管の点もありましょうけれども、事務方をお引き受けいただいております省庁の責任者として、直接の行政指導を直ちにお進めいただきたい。これは効果の点、もちろんございます。しかし、それらは総合的な対策の一環として、かつまた政府の積極的な姿勢を示す一つのよすがとしてでもぜひ御検討をいただきたい、かように思っております。  それから、時間の点がございますから、あわせて御質問申し上げますが、もう一点は、私は全体の組織法律的にどうとらえるか、いろいろな見方があろうと思います。行為規制の点やあるいは組織規制あるいは組織禁止といったような原則的な対処の仕方が幾つかあるわけですけれども、しかし、いずれにしましても、これは本来有限であるべきものがエンドレスであるかのように言われるというところに問題があることは、もう間々指摘をされたとおりでございまして、同時にそのエネルギーといいますか、その推進力といいますか、プロモーターになるものが実は利殖動機である。そのこと自体は、いまの資本主義社会の原理の上では全面否定はなかなかむずかしいと思います。だといたしますと、むしろこうした点での対策として、法律的な規制、行政指導が一つの大きな側面、役割りを持つとともに、他方、国民的な世論あるいは運動の果たす役割りというものもまた非常に大きいと思います。政府はPRその他をいろいろ考えていらっしゃるようですけれども、ちょうどポルノ雑誌追放の問題が起こりましたですね。言論、表現の自由との兼ね合いその他が論議をされました。各地域で自主的な追放運動が起こり、それが地方議会の決議になり、条例制定となって、そして進みつつあるというふうな事例に徴しますときに、本日御参加いただいております参考人皆さん方も、その点で果たしていらっしゃる役割りというものは私は非常に大きいものがあると思う。そうした参考人皆さんからいただいた御意見の中に、運動に対する政府の助成、あるいはその運動の中から出てきておる対策、たとえば青少年に対する学校教育の場での一つの具体的な措置の提案もございました。これは法律的な原理原則に絡まる問題というよりも、直ちに行政の中で執行していただける性質のもの、またそのことがせっかくお見えいただいた参考人の御意見に報いることにもなるかと思います。  以上、三点について長官の方から御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。
  166. 倉成正

    ○倉成国務大臣 第一の点につきましては、私は事実関係をよく承知しておりませんので、ここで論評は差し控えたいと思いますが、政治的、道義的な立場から政治家がいやしくも批判を受けるような行動はすべきでない、そういう立場から私も努力をしてまいりたいと思っております。  第二点は、いわゆる行政指導の問題でございますが、いかなる方法が適切であるかということは十分検討してまいりたいと思いますが、先ほどから申し上げましたように、やはりこういう被害にかからないような啓蒙を最大限にやるということと、それから、現在の法律の中でもやれることがあるわけでございますから、これを徹底的にやるというのが当面のとるべき手段ではなかろうかと思います。  それから第三点で、参考人方々の非常な生々しい御意見、これの中でわれわれが参考にすべき点は十分各省庁において取り上げていただいて、そして今後の参考にさしていただきたいと思う次第でございます。
  167. 荒木宏

    荒木委員 ちょっと長官、御答弁が、的は外れておりませんけれども、少し水増しをされておるようにお聞きしたのですけれども、私はそうした閣僚、政務次官あるいは政府関係の立場にあられる方々に対して、閣議でもってあるいは大臣のお名前で、具体的に自粛するようにという通達なり措置をおとり願えるかどうか、この点をお聞きしたわけであります。これが一つ。  それから同時に、行政指導の面では、それに限るわけではないのですが、先年のああしたときにもとられたように、たとえば今週中にでも一偏呼び出されて、ひとつおっしゃったらどうですか、こう申し上げておるわけです。余り個別の具体的な例として申し上げたのでいかがかと思う面もありますけれども、せっかく論議も重ねたことでございますから、その点でひとつお答えを願いたいと思います。
  168. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私もその事実関係をよく承知していないので、これを閣議の議題にするのが適当であるかどうかというのは、ひとつ私の判断にお任せいただきたいと思うわけでございます。ただいまの御趣旨はよく承りました。  それから第二の問題、行政指導ということで、荒木委員のお話は恐らくこういう関係の団体の人を呼び出すか何か、そういうことを想定しておられるのかもしれませんけれども、私はどういうやり方が一番適切であるかということは、やはりもう少しよく検討してみるべきじゃなかろうかと思いますので、この点もただいまのお話は十分承りましたけれども関係各省と相談をしながら、やはり監視、啓蒙ということに最重点を注いでいくということが、当面とるべき最大の道ではなかろうかと考えている次第でございます。
  169. 荒木宏

    荒木委員 くどいようですけれども、長官、それでは事実関係を御調査ただきまして、そうして事実が判明いたしましたら適切な処置をおとりいただきたいと思います。
  170. 倉成正

    ○倉成国務大臣 方法についてはお任せいただくとして、ただいまの御趣旨は十分体して善処したいと思います。
  171. 片岡清一

    ○片岡委員 ちょっと要望を一つだけ簡単に。  いまPRの問題について倉成大臣からお話がございました。ちょっと私の思いつきでございますが、きょう自治省は見えておりませんが、これは立法をするにしても、いろいろな対策を講ずるにしても、ちょっと暇がかかると思います。ところが、この被害がだんだん大きくなるおそれがございますので、ことにきょうこういうことをやったのに、どうもすぐ打つ手がないんだということになるとぐあいが悪いと思いますので、私が思いつくのには、各市町村に市町村報がございます。これは各戸に渡っておりまして、これは大抵各戸の人たちが見ますので、自治省からこういう話がきょうあって、これはひっかからぬようにしなさいということを各市町村報を通じて普及してもらう、こういうことをひとつ大臣が自治大臣におっしゃっていただきたい、ぜひひとつお願いしたいと思います。
  172. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまの片岡委員の御提言、まことにごもっともでございます。近く都道府県の消費者行政の担当部長会議を開きます。したがいまして、この席でこのネズミ講の問題についても、われわれの持っておる資料を提供いたしまして、府県や市町村のそういうPR紙に掲載するようにお願いをしたいと思います。ありがとうございました。
  173. 武部文

    ○武部委員長代理 参考人各位には、お忙しいところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十六分散会