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1977-04-14 第80回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月十四日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 西宮  弘君    理事 青木 正久君 理事 加藤 紘一君    理事 片岡 清一君 理事 金子 みつ君    理事 武部  文君 理事 中川 嘉美君    理事 米沢  隆君       関谷 勝嗣君    友納 武人君       中西 啓介君    中村  靖君       平泉  渉君    中村  茂君       宮地 正介君    藤原ひろ子君       依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局長    後藤 英輔君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       水口  昭君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君  委員外出席者         青少年対策本部         参事官     石瀬  博君         警察庁刑事局保         安部少年課長  仁平 圀雄君         法務大臣官房参         事官      吉野  衛君         法務省民事局参         事官      元木  伸君         国税庁間税部酒         税課長     吉田 哲朗君         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     白井  實君         文部省社会教育         局青少年教育課         長       柴沼  晉君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 仲村 英一君         厚生省保険局保         険課長     小島 弘仲君         農林省食品流通         局流通企画課長 鴻巣 健治君         農林省食品流通         局商業課長   堤  恒雄君         農林省食品流通         局砂糖類課長  牛尾 藤治君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    杉山  弘君         中小企業庁長官         官房調査課長  菅野 道雄君         中小企業庁計画         部金融課長   松尾 成美君         運輸大臣官房政         策計画官    金田 好生君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    芦田 茂男君     ————————————— 四月八日  公共料金値上げ反対等に関する請願林孝矩  君紹介)(第二七五四号) 同月十二日  公共料金値上げ反対等に関する請願外二件  (川俣健二郎紹介)(第二九〇五号)  同(上坂昇紹介)(第三〇六二号)  同(後藤茂紹介)(第三〇六三号)  同(佐野憲治紹介)(第三〇六四号)  同(栂野泰二紹介)(第三〇六五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 西宮弘

    西宮委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮地正介君。
  3. 宮地正介

    宮地委員 経企庁長官、きょうは最近の景気停滞の問題などにつきまして初めに御質問をしたいと思います。  五十二年度の景気見通しにつきましては、六・七%、こういうことでその見通しを立てているわけでございますが、すでに最近、民間研究機関であります山一証券などにおきましても、一月に発表いたしました第一次の見通しである六・四%を五・五%に下方修正をしてきておる。大変強気と言われております国民経済研究協会におきましても、去る十一日に約〇・九%の下方修正をしてきているわけでございます。こういうようなことから、政府として当然当初の目標に対しては最大の努力をしていく決意はお持ちと思います。ここで改めて、こういうような最近の景気停滞に対して、その達成見通しに対して、実現できるのかどうか、これについて最初にお伺いしたいと思います。
  4. 倉成正

    倉成国務大臣 五十二年度の景気見通しでありますが、五十一年度につきましては、一−三月が昨年の十−十二月に比べましてマクロとしてはかなり高い水準上昇になるんじゃなかろうかというふうにわれわれ考えております。また、在庫の面におきましても、一−三月で在庫調整がおおむね終わった、こういうふうに考えてまいりますと、さらに景気もだんだん、マクロとして見ると回復してくると考えるわけでございます。  そこで、民間機関のいろいろな見通しでありますけれども、現在は御承知のように、製造業稼働率指数が低い。特に鉄鋼を初めとするそういう基礎素材方面設備投資意欲等が余りないというところから、構造的な不況業種感じが非常に強く出ておると思うのです。したがって、設備投資個人消費その他の見通しというのは、前途に対する不安というか気迷いというか、そういうものに非常に影響を受けている、経済が論理というよりも心理的な要素で動いておるということでございます。たとえば昨年の四、五月ごろの景気見通しということになりますと、いろいろな見方がありまして、政府見通しはちょっと低過ぎるんじゃないかというようなこと、そういうことも、宮地委員承知のとおり、各方面の資料に出ておりますね。それと同じように、現在の時点で民間機関が見ると、少し弱気で出ているということはあると思いますけれども、私どもとしては、財政をてことして、予算ももう十六日には成立するということになっておるわけでありますし、これを前倒しにやる、あるいは住宅についても九万戸の募集をやるというような施策で進めてまいれば、民間設備投資もあるいは個人消費も若干出てくるんじゃないだろうか。  そういうことで各需要項目考えてまいりますと、輸出については五十一年度のような大幅な伸びは期待できませんけれども、それでもかなりまだ高い水準で推移するということを考えますと、私どもは当初の見通しの六・七%というのは、相当努力をしなければならないということは考えておりますけれども、いまこれを修正しようとか、達成ができないというふうには考えておりません。
  5. 宮地正介

    宮地委員 確かにいま長官のおっしゃるように、相当な努力をしないと当初見通しは不可能ではないか。特にいまもお話ありましたけれども、過日、日本不動産銀行設備投資の五十一年度、五十二年度の調査結果を見ましても、実質の設備投資が約八%近く前年に比べて冷えておる、こういうようなデータも出ておるわけでございますし、また、さきの日銀における全国支店長会議においても、各支店長から、景気の冷え込みに対しては深刻な報告がされているわけでございます。特にそういう中から、大阪を中心とした繊維などの不況によりまして、公定歩合の再引き下げを求める声も多く出ておる、こういうような報告日銀支店長会議でもされておるわけでございまして、また本日の新聞報道によりましても、政府自身としても、総理も公定歩合引き下げその他七項目景気回復対処策というものを検討しておる、こういうふうに深刻に政府自身も受けとめておるようでございます。そういう中において、いつごろこの停滞した景気回復させることができるか、これはまさに国民生活にとって重大な問題ではないか。  そういうことで、経企庁長官としてこの停滞した景気をいつごろに上昇気流に乗せる考えであるのか、その辺の決意見通しを伺いたいと思います。
  6. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま宮地委員のお話でありますが、政府がいま七項目その他検討しているというのは、何かのお間違いじゃないかと思います。党の方でいろいろ議論をされていることは聞いておりますけれども政府としてはまだそういうことを検討している段階ではございません。  そのことはさておきまして、まず昭和五十二年度の景気につきましては、各需要項目を検討いたしましても、力が非常に少ない。したがって、この力を出す契機を何に求めるか、財政支出ということで、財政支出の中で特に需要創出効果の高い公共事業中心とした予算編成を行ったことは御承知のとおりでございます。さらに先般、各党の合意によりまして三千億の減税ということがさらに追加になった。そういうことでございますので、五十二年度の予算が成立する、そしてこれを積極的に前倒しで契約も進めていくということで各省庁にお願いをし、また地方団体にもお願いして、予算成立とともにすぐ事業が着手できるような手配を整えておるところでございます。  したがって、こういうことになればやはりかなり各方面好影響を及ぼしてくると思うのであります。昨年の十一月やりました七項目それから補正予算というのは、御案内のとおり、現在効果を出しておるわけです。この現在の効果については、公共工事請負金額が、ことしの一月には前年同月と比較いたしまして六・三%アップ、二月には一八・四%ということで、三月には恐らく四割近く上がるのではないかということで、公共工事請負金額というのはかなり多く出てきておるわけでございます。また住宅投資につきましても、一月は前月比一四・六%上がっているということで、やはりその補正予算や七項目効果というものがこの数カ月あらわれてきているところでございます。したがって、新年度予算というのはこれで、本塁打のような大きな力はありませんけれども、私はかなりの効果を及ぼしてくるというふうに思います。そして輸出もかなりまだ高水準であります。いろいろな制約条件がありますけれども、かなり高水準状況にあるということでありますから、徐々に景気回復してくるというふうに思うわけです。  しかし、根本的に過去の高度成長のときとは非常に違う、五・七%、六・七%といいましても、過去の高度成長のときの半分程度成長でありますから、企業家にとってはどうも過去のイメージがまだ頭にあるものですから、なかなか景気感は出てこないという問題が一つあろうかと思います。  それからもう一つは、ただいま宮地委員お話しのように、繊維やあるいはその他造船、平電炉、製糖等々の構造的な不況業種がありますので、その業種側から見ると、景気が出てきたという感じが出ることは大変むずかしいと思うわけであります。したがって、本当の景気感が全体にみなぎるというのはなかなか簡単にはいかないと思うのですけれども、まあ五十三年の三月、来年の三月ごろには稼働率指数が九四%程度にいくようにということで私ども考えておるわけでありますので、徐々にでありますけれども景気回復の過程をたどっていく、しかし従来の景気回復のパターンとは大変違った緩やかなものである、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  7. 宮地正介

    宮地委員 大変に苦しい御答弁のようでございます。決して明るい材料ばかりではないのではないか。特に最近の円高傾向という問題につきましても、ある面では、この円の急騰というものが国際収支均衡回復というものを逆に悪化させるだけではなくして、むしろ輸出の出血あるいは企業採算の悪化、輸入減退という悪循環にもなりかねない、そういう状況にもなっているわけでございまして、そういうような状況から、逆に産業界景気を冷やすおそれもあるのではないか。そういうことで、当初政府円高歓迎のような姿勢を持っておりましたけれども景気という面から見れば、逆にこれは慎重に対処しなくてはならない問題ではないか、こう思うわけでございます。経企庁長官として、この円高傾向景気という面についてどのようにとらえておられるか、伺いたいと思います。
  8. 倉成正

    倉成国務大臣 円高は確かに、輸入という面から見ますと原材料その他の輸入価格が安くなるということで、卸売物価の安定という点については好影響をもたらすと思うわけでございます。これは最近国際商品市況が、ロイター指数その他を見ましても、かなり上がっているわけですけれども、それを円高で打ち消しているという面があるわけでございます。こういう点からは日本経済によい影響を与えると申しても差し支えないと思うわけでございます。また消費者物価についても、これが直接すぐは響きませんけれども、だんだん波及していくということも考えられるわけです。  しかし、いまお話しのように、余り極端な円高になってくると、輸出の面で非常に採算の苦しい業種も出てくるということも考えられるわけでございますから、為替相場というのはやはり需給関係で決まるものでございますから、そのときの円の実勢を示すものでありまして、これが非常に乱高下するということになると好ましくないわけであります。しかし、実勢を反映するという点から見ますと、これは為替相場実勢に任せるというのが政府基本的態度であります。しかし、余り高いことになると大変大きな影響を及ぼしてくるということが考えられるわけでございます。  それから、輸出の場合でありますけれども円高の場合に輸出価格を上げることのできる業種日本だけで輸出しているという場合、日本だけではないけれども、特に日本商品が優秀で品質がよい、したがって国際競争力が非常にあるというようなものについては輸出価格を上げることができるわけです。しかし、なかなかそうできない品物もあるわけですね、開発途上国との競合関係その他で、なかなか上げることができないものがある。具体的に申せば繊維みたいなものでしょう。そういうものはなかなか苦しいということが言えるわけでございますから、業種によって大分影響度が違うと思いますけれども、私どもはやはり極端な円高というものは日本経済にかなり大きな影響を与えるのじゃなかろうか、そう思っておる次第でございます。
  9. 宮地正介

    宮地委員 やはり景気と最近の一ドル二百七十円という急騰との関係というものは見逃せない重要な問題であろうと私、思います。  ここで確認をしておきたいのですが、経企庁長官が先日、十二日の閣議終了後の記者会見で、最近のじり高傾向に対しまして、一時的には一ドル二百七十円を割るかもしれないが、実勢としての円の水準はもっと安いのではないか、こういうような発言があったように私ども報道記事理解をしているわけでございます。現在の円相場をどのように評価をされておるのか、この辺が、もしも過大に評価しているようであれば、これは問題ではないか。現在の実勢というものを経企庁長官としてどういうふうにとらえておるのか、この辺についての認識の問題でございますが、伺いたいと思います。
  10. 倉成正

    倉成国務大臣 新聞記事は必ずしも私の真意を正しく伝えていないと思いますけれども、私が言ったのは、いま円高傾向が非常に続いておる、したがって一時的に二百七十円を割ることがあるかもしれない、なぜ円高かというと、いま輸出が非常に好調である、その他いろいろなほかの要素も、若干海外の要素等もありますけれども基本的にはやはり輸出が好調であって黒字であるということが一番大きな原因である、したがってこれからもいつまでもこの円高を続けるとは限らない、そういう意味のことを言ったわけでございます。したがって、余り極端な円高になると非常に苦しい業種も出てくるのじゃなかろうか、しかしいつまでもこういう状況が続くとは限らないということを申し上げたつもりでございます。したがって、政府としてはやはり為替実勢に一応任せるという立場でございますけれども、しかし、非常な乱高下があったり、為替相場に投機的な要素が出てくるということは防がなければならない、これが基本的な姿勢でございます。
  11. 宮地正介

    宮地委員 さらに、景気に伴いまして最近の大きな問題は、やはり公共料金の相次ぐ値上げの問題であろうと思います。  その前に、私は、この景気停滞によって不況倒産というものが最近相次いでおる。特に三月の倒産の件数は千七百件を超えておる。十九カ月にわたって連続一千件の中小企業倒産を数えておる。中小企業庁に伺いたいわけでございますが、まずこの不況倒産実態がどのようになっておるのか、また、それに対する中小企業対策としてどのように手を打たれておるのか、その辺について伺いたいと思います。
  12. 菅野道雄

    菅野説明員 倒産原因でございますが、民間信用調査機関調査東京商工リサーチというところの調査によりますと、いわゆる最近の景気回復のテンポのおくれを反映いたしまして、販売不振とか売掛金回収難あるいは不況しわよせといった、いわゆる不況影響と見られる倒産割合が、ここのところ非常に高い割合を示しておりまして、五十一年度の合計で申しますと五一・三%、この三カ月、一月、二月、三月について申し上げますと五一・四%、五二・一%、五二・六%というふうな水準で推移しております。  対策につきましては、金融課長の方から。
  13. 松尾成美

    松尾説明員 倒産状況につきましては、いま調査課長から申し上げたところでございますが、こういう深刻な事態に対処いたしまして、私どもとしてまず二月三日に各通産局に対して通達を発しまして、中小企業倒産防止につきましてこれをいわば迎え討つと申しますか、そういう体制をつくろうということをいたしまして、これで通産局中心になりまして、財務局あるいは日銀支店、それから各県中小企業関係金融機関でネットワークをつくりまして、これで体制をつくったわけでございます。これまでに延べ二十五回ほど会議を開きまして、それぞれで倒産対策打ち合わせをいたしました。そういう体制のもとで、従来使っておりました政府系中小企業機関融資あるいは信用補完制度の活用あるいは下請企業振興協会仕事あっせんなどやってまいったわけでございます。  先ほど御指摘のありましたように、三月も非常に高水準で、今後も楽観を許さないというようなことがここしばらくは続くのではなかろうか。いずれ基本的には景気が立ち直ってくることが基本でございますけれども、それまでの間中小企業対策としては手をこまねいているわけにはまいりませんので、一昨日、実は関係各省とも相談をいたしまして、特に中小企業倒産対策緊急融資というものを中小企業関係の三機関でやることにいたしました。内容を概略申しますと、中小公庫、国民公庫において別枠の融資をつくりまして、また特定の場合には適用金利を軽減する、あるいは償還期間担保等条件を緩くするというようなことをやっていく。この武器を加えまして、私どもとしては個別に起こってくる倒産につきましてきめ細かく手を打ってまいりたいというふうに考えております。
  14. 宮地正介

    宮地委員 経企庁長官中小企業不況倒産という問題、これは大変深刻な問題であろうと思います。通産省初め中小企業庁ども、いまお話しのように、政府系金融機関の枠の拡大だとかそういうことで、金融面あるいは仕事の面、あらゆる面で努力はされておると思いますが、やはりこの景気のかじ取りである経企庁から、さらに大蔵省あるいは通産、こういうところに、相当深刻な不況倒産に対する防止という面で——特にひずみを受けるのは中小零細企業が一番であろうと私は思うのです。やはり実態は、私もいろいろとお会いしておりますけれども、最近の相談事金融相談だけではなくて、仕事がない、そういう深刻な状態にあるわけでございまして、こういう不況倒産の相次ぐこの深刻な事態に対して、経企庁長官としてでき得れば関係閣僚会議など開いて積極的にそのリーダーシップをとっていくべきではないか、こう思うわけですが、この点についてのお考えを伺いたい。
  15. 倉成正

    倉成国務大臣 景気の低迷と申しますか、マクロで申せば緩やかな回復をしているといいましても、非常に緩やかでありますので、早く言えば、大変くたびれたというのが実態ではなかろうかと思います。私も中小企業を経営している繊維その他の友人がたくさんおりまして、細かく実態を伺っております。したがって、まじめに努力をしておって倒産に追い込まれる、放漫経営その他の自己の責任でなくて、まじめに一生懸命やっているけれども倒産に追い込まれるということは、これはまことに残念なことでありますので、何とかひとつ、基本的には景気全体が回復してくるということが基本ではなかろうかと思うわけでございます。  ただ、一つ、先ほどもお話しいたしましたように、大変構造的な要因を含んだ産業業種があるわけでございますね。ここは多少景気が出てきたからといってすぐ立ち直るというわけにはなかなかいかない、やはりある程度の手術をしなければならない部門もあろうかと思いますので、そういうものについては個別の対策というのを真剣に取り組んでいかなければならないのではなかろうかと思っております。通産大臣ともあるいは大蔵大臣ともしょっちゅうお目にかかっておりますので、これらのことは関係閣僚会議という形をとるかどうかという形式論は別といたしまして、しょっちゅう一緒でございますから、絶えず意見を交換いたしておるような次第でございまして、いま通産省からお話しになりました中小企業倒産に対処する金融措置というのも、そういうわれわれの話し合いの所産だと思っております。
  16. 宮地正介

    宮地委員 もう一面の景気と大きな関係のある公共料金値上げの問題であります。  これから国鉄運賃値上げあるいは健保料金値上げタクシーバス航空運賃、私鉄などメジロ押し公共料金値上げが予想されておるわけでございまして、これは片一方では国民生活から見れば、景気不況停滞しておる、もう一面物価の面を見ていくと、何か政府主導型の公共料金値上げが相次いでくる、踏んだりけったりではないか、こういう感じ国民は抱いていると思います。  私は長官に伺う前に運輸省に、どういうような実態値上げがされていくのか、この点について、国鉄健保タクシーバス航空運賃などの値上げ実態というものを、時間がありませんので、どうか簡単に御説明いただきたいと思います。
  17. 金田好生

    金田説明員 ただいま運輸省関係運賃料金改定申請が出ておりますものといたしましては、東京都の関係では東京都営地下鉄バス路面電車、それから営団の地下鉄、それから都で運営をしております民間の九社のバス会社がございます。タクシーにつきましては、六大都市タクシーを初めといたしまして全国各地から申請が出てまいってきております。そのほか貸し切りバスにつきましては、沖繩を除きまして全国から申請が出てまいっております。  それから、今後の問題といたしましては、申請をするのはあくまでも申請者の意思でございますので、確実なところを申し上げるわけにはまいりませんが、予想されるものといたしましては、国鉄運賃料金のほか、過去の改定の推移などから見まして改定申請がなされるであろうと私どもとして推定いたしておるものとしては、民営鉄道バス、旅客船、タクシー航空といったものの一部、通運とか路線トラックなどが考えられようかと思います。
  18. 小島弘仲

    小島説明員 今国会に健康保険法改正法案を提案申し上げておりますが、その主な内容は当面の制度運営を確保するための財政難対策であります。  改正事項は四つの事項に分かれておりまして、一つは、標準報酬月額上限引き上げでございます。これは現行三十二万という頭打ちなのを三十八万まで賃金の伸びに応じて引き上げる、これによって影響を受ける方々は月収が三十三万以上の高額の方でございます。  第二は特別保険料。これは主な財政対策となっているものでございますが、ボーナスに着目いたしまして、それを二%、労使折半でそれぞれ一%ずつ御負担いただくという内容になっておりますが、五十二年度の政管被保険者の一人当たり平均ボーナス額は四十四万六千円程度かと思いますので、これによる一人当たりの負担額というのは四千四百五、六十円程度でなかろうかと推算いたしております。  第三が一部負担金の引き上げでございまして、現在被保険者本人にかかります一部負担金は、初診時二百円、入院時一日当たり六十円を一カ月間、二つの一部負担制度がございますが、これは四十二年の法改正においてこういう形に定められたものでございまして、その後十年程度経過しております。その間被保険者本人の一人当たり医療費の伸びを見ますと三・六倍程度になっておりますし、標準報酬月額の平均的な伸びで見ますと四・二倍ほどになっております。したがって、これらにまたスライド的な引き上げを行おうとするものでございまして、初診時一部負担金を二百円から七百円に、入院時一部負担金を一日六十円を二百円に引き上げようとするものでございますが、平均的な被保険者一人当たり初診回数は、政管の場合は二・七回程度でございます。組合の場合は二・四回程度でございますので、政管の場合は平均的に見ますと年間で千三百円、組合の場合は千二百円程度、そんなところだと思います。
  19. 宮地正介

    宮地委員 要するに、われわれは反対でありますけれども国鉄も九月から一九%の値上げが予定されておる。地下鉄にいたしましても一番近いところの六十円が八十円になります。バスにいたしましても七十円が九十円、あるいはタクシーにしても基本料金は二百八十円から三百五十円が申請されておる。航空運賃も二〇%前後九月ごろに上がるのではないか。このように公共料金値上げというものがメジロ押しにどんどんこれから出てくるわけですね。  そういうことで、先ほどお話ししましたように、一方では景気は大変不況である、一方では公共料金はどんどん火がつけられておる、国民生活はまさに踏んだりけったりではないか。こういう中でどういう経済のかじ取りをしていくか、これは非常にむずかしい問題であろうと思います。しかし、そういう中でやはり何といってもいま国民の最大の政治課題は、物価の安定であり、この景気不況脱出であるということは、これはもう論をまたないわけであります。そういう点についてのかじ取りに対して、経企庁長官としてどういう重大な決意で今後臨んでいくのか、これについて伺いたいと思います。
  20. 倉成正

    倉成国務大臣 五十二年度の予算の中で直接消費者物価に響くものは、ただいまお話し国鉄運賃値上げ九月からの一九%、それから電電の四月からの基本料の値上げということでございます。この二つ合わせましておおむね〇・六%程度というふうに考えておるわけでございます。  いまお話しのように、物価の安定という見地から考えますと、公共料金をできるだけ低く抑えることができれば一番いいわけでございますけれども、ただ、基本的に公共料金をどう考えるかという問題について、やはり国民的なコンセンサスが必要であるということを私は予算委員会でもしばしば申し上げておるわけでございます。それはどういうことかと申しますと、私は、公共料金というのは徹底的な経営の合理化がなければならない、まずこれが第一の条件だと思います。経営を徹底的に合理化する、国民生活と非常に密接な関係があるからいやしくもむだがあってはならない、これが経営についての第一点です。第二点は、そういう徹底的な経営の合理化をやった上でやはり経営が成り立つような形で公共料金は決められるべきものじゃなかろうか、その負担は受益者の負担の程度に応じて負担していただくべきものではなかろうかと考えておるわけであります。先ほど運輸省の説明の中にありましたけれども東京都の都営バスあるいは地下鉄というものの値上げ申請がされております。物価について一番詳しい、そして物価の美濃部と言われているような東京都が値上げ申請してこられる、そしてそれについては各党の方々もある程度理解を示しておられるということは、やはり公共料金というのが非常にむずかしいということを示しておるわけでございます。  公共料金を抑えてしまいますとどういうことになるかといいますと、結局それは、財政で全部カバーすることができれば値上げをいつまでも抑えることができると思います。しかし、これには相当問題が残っておるということは御承知のとおりです。そうすると、いつかは正常な状態に戻さなければならない。その時期を誤ると後で大きなツケが来る。これは単に答弁のための答申を申し上げているのじゃなくて、私も実は企画庁あるいは大蔵省あるいは党の政策責任者で十数年来、もう二十年近く物価の問題に取り組んできました一員として、これはなかなかむずかしいなということを考えておるわけでございます。  何とか物価状況を見ながら正常の状態にどういうふうに戻していくかというタイムが一番大事じゃないか。そのタイムを誤ると、狂乱物価のときにまた公共料金を正常な状態にということで上げてしまえば、これは狂乱物価に輪をかけるわけでありますから、やはりこのときは少々無理でもひとつ抑えるということで、狂乱物価のときに非常に低く抑えたわけです。ところが、やはりいつかの時期にこれを調整していかなければいけない。そしてこれを早くやっておかなければ、また後にいつまでも尾を引いて大きな値上げをしていかなければならないということになるものですから、五十一年、五十二年あたりをめどにして、ひとつ公共料金をある程度調整していこうと考えたのが私ども基本的な姿勢であったわけでございます。  私どもとしては、抑えることができればもうこれにこしたことはないし、そして、仮に公共料金を抑えてもなおかつ経営もうまくいくし、やっていけるという名案があれば、いろいろ御教示をいただきたいと思うのですけれども、そういう名案はあらゆる学者を動員し、あらゆる知恵を動員しましてもなかなか出てまいりません。したがって、私どもとしては、先ほども申しましたように、経営の徹底的な合理化、そしてその上に立って適正な料金というものを考えていく、しかし、他の物価の動向というのを慎重に見ながらこれの適正化を図っていくというのが姿勢でございます。ですから、宮地委員のお気持ちと私の気持ちは一緒なんですけれども、これをただ抑えればいいというものではないというところに政策当局者としては苦労があることを御理解いただきたいと思うのです。
  21. 宮地正介

    宮地委員 公共料金については他の委員会でまたゆっくり審議を尽くしていきたいと思います。ただ、基本的には、もっともっと財政の再建対策とか、現在果たして経営の健全なる運営がなされているのか、そういう値上げをする前にやるべき、メスを入れるべきところは入れていかなければいけない。そういう点を放置したままで、ただ赤字のツケが国民値上げとしてしわ寄せされてくる、こういうやり方であってはならない。こういう意味合いにおいて、むしろ物価の安定という面では経企庁は慎重にその辺に対処していただきたい、こういうふうに要望したいと思います。  最後に、独禁法問題について公取委員長に少し伺いたいと思います。  本日、衆議院の商工委員会に付託をされ、趣旨説明がされたと言われております今回の独禁法改正に伴う政府の第三次案に対しまして、公取委員長は、最近の記者会見あるいは発言の中で、特に問題となっておりますいわゆる企業分割問題に対しまして、分割に必要な要件を満たしている企業はいまのところないと思うというような発言をされております。何か、公取委員会は、本来、独禁法運用のお目付であり番人である、そういう立場である委員長の重要な職に対して、いまからみずから手を縛ると言いますか、どうも産業界あるいは通産省の非常な突き上げに対して少し配慮し過ぎるのではないか、こういう感じがするわけでありますが、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  22. 澤田悌

    ○澤田政府委員 今度の政府の改正案につきましては、私、従来から、独禁法の前向きの改正が必要である、その際には、七十五国会におきまして衆議院で全会一致で修正可決されました案の線に沿って考えらるべきものであるという二点を一貫して申してきたのであります。その線から申しますと、今度の改正案は、その修正案に全く同じというわけではありませんが、その線に沿って考えられたものだという点で評価をいたしておるわけでございます。  ただいま御指摘の点につきましては、国会において御質問がございましたし、新聞記者会見等でも質問があったわけでございます。その趣旨は、大体、独占的状態に関して措置の対象となるような弊害をもたらしている業種、企業が現実にあるのかという御趣旨の御質問が多いのでございますが、その関係者にとってみますと、どうも行き過ぎた懸念を持っておるようでございます。そういうことを考えまして、いわゆる九業種ということが言われていますけれども、法案にございます独占的状態の五つの条件、これに該当しておる具体的な企業というのは現時点においてはない、こう申しておる次第でございまして、決してそれが公正取引委員会姿勢の後退であるとか、あるいは今後の運用に支障のあるような発言というふうには私、全然考えていない次第でございまして、今後、該当するような事態があれば、それに厳正に対応するのは申すまでもない、そう考えておる次第でございます。
  23. 宮地正介

    宮地委員 昨日の記者会見におきましても、強制調査の問題についても非常に柔軟な姿勢の発言が新聞で報道されております。今回、政府の第三次案が出されましてから、公取の見解、そして公取委員長の参議院予算委員会などの発言あるいは昨日の記者会見、こう一連の委員長の発言というものを追ってみますと、どうもだんだん産業界あるいは通産省の意向、そういう方向に解釈、運用がいく柔軟な姿勢が示されているんではないか。これは私一人だけではないと思います。この独禁法の改正案に当たっては、厳然たる姿勢で公取委員会が臨んでいきませんと、何か形骸化された方向に走ってしまうのではないか、こう危惧をするわけでございます。  公取委員長としてぜひ、もっともっと厳然たる姿勢で対処していただきたいし、私たちは七十五通常国会の五党修正案の線で修正をしていきたい、こういう要求をも持っているわけでございます。公取委員会として余り弱腰の、産業界通産省の突き上げにどうも屈しているのではないか、そういう発言にも受け取ることもできるわけでございまして、どうか誤解のないようにその姿勢の根底には厳然たるものがあるのだ、そういうふうに受けとめてよろしいのでしょうか、その点について伺いたいと思います。
  24. 澤田悌

    ○澤田政府委員 御趣旨、御期待のとおり受けとめていただいて結構でございます。冒頭に申しましたように、私どもの一貫した考え方は、最近の経済社会、寡占化の進行している状況等にかんがみて改正強化は必要である、その方向は、先ほども申しましたように、いわゆる五党修正案の線で考えてみるべきである、それが基本となるべきであるということは一貫して変わらない基本姿勢でございます。したがいまして、法案がああいう形で出されまして、これは御審議になる問題でございますけれども、速やかに成立することをこいねがっておるわけでございますが、その上におきましては、いまおっしゃいました御趣旨によって厳正に運用に努めるということを申し上げておく次第でございます。
  25. 宮地正介

    宮地委員 最後に、これは法務省に伺うわけでございますが、特にこの独禁法改正の問題の中で、いまお話しの営業の一部譲渡、いわゆる企業分割の命令の問題と株主総会との関係について、今回の改正案でいきますと、公正取引委員会の命令というものは株主総会の決議を拘束しない、こういう立場を明確にしているわけでございます。商法という面においては、営業譲渡には株主総会の決議が必要となっている。こういうふうになってまいりますと、独禁法改正との調整というものが当然必要になってくるわけでございます。その調整をどのように考えておるのか、または今後商法の改正ということも検討しているのかどうか、これを伺って、私の質問を終わりにしたいと思います。
  26. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  商法の営業の一部譲渡というのは、二百四十五条によりまして株主総会の特別決議が要るということになっているわけでございますけれども、公取委から企業分割の命令が出るということになりますと、手続といたしましては、まず取締役会が分割の案をつくりまして、これを株主総会に提案するということになろうかと思います。そこで、株主総会といたしましては、もちろん会社の機関一つでございますから、命令を受けた会社の一部としましてこれを可決すると申しますか、そういう責務は当然あろうかと思います。ただ、分割の方法といたしましてはいろいろ方法がございまして、中身によりましては非常に株主に不利である、あるいは会社に不利である、必要以上に不利な提案がなされるということも考えられるわけでございまして、そこまで株主総会が協力する義務というものはないのではないか。さらに、取締役会においてもっといい案と申しますか、そういうものを出してほしいというようなことで、否決するというようなこともあり得ていいのではなかろうか、このように思っております。したがいまして、もし否決されましたら、取締役会としては再度議案を提出するということになるかと思います。したがいまして、もし、株主総会としまして妥当な案であるのに否決してしまったということになりますと、これは当然審決違反ということになるかと思いますけれども、必ずしも株主総会と申しますのは独立の人格を持っておりませんので、これを処罰の対象とすることはできないということもあろうかと思います。  なお、法律の改正の問題でございますけれども、独禁法による企業分割の命令というものは非常に特殊な場合でございまして、一般法としての商法にこれを盛るということはどうか、このように考えておりますので、もしやるとすれば、特別法の問題として考えなければいけないのではないか、このように考えております。
  27. 西宮弘

    西宮委員長 宮地君の質疑は終了いたしました。  次は、藤原ひろ子君。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
  28. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、自動販売機の問題について質問をしたいと思います。  ここに日本自動販売機工業会の資料がございますが、これによりますと、昭和五十一年の十二月現在の各種自動販売機の普及台数は、五十一年一年間で三十万台ふえまして約三百十万台でございます。これは国民三十六人に対して一台自動販売機を持つという割合ではありませんか。大都市は言うに及ばず、農山村までにも普及いたしまして、まさに全国津々浦々、日本じゅう自動販売機のないという地域は見当たらないと言ってよいと思います。この自動販売機によります中身商品の売り上げ額を調べてみますと、何と一兆七千四百九十九億七千四万円、赤ちゃんからお年寄りまで国民一人当たり年間約一万五千円自動販売機で買い物をしている、こういうことになるわけでございます。  通産省にお尋ねをいたしますが、このように自動販売機が物すごい勢いで普及をしてきた原因はどこにあるとお考えになっておりますか、お答えをいただきたいと思います。
  29. 杉山弘

    ○杉山説明員 お答えいたします。  いま先生御指摘のございましたような自動販売機の急速な普及の原因につきまして、大きく分けますと、売り手の側の要請、それから買い手の側のメリット、こう二つあろうかと思います。売り手の側におきましては、最近御承知のような人手不足がございますので、これに対応した自動化の要請といったものが考えられると思います。そういった売り手の側からいたしますと、省力化、自動化の要請にこたえるという点で自動販売機が受け入れられてきたもの、こういうふうに理解しております。それから買い手の側におきましては、時間、場所に制約されずに買い物ができる。その上、自動販売機でございますから、対人的な関係なしに買い物ができる、こういった面で買い手としても自動販売機による品物の購入につきましていろいろメリットがある。こういった売り手の側、買い手の側、双方の自動販売機に対する利点が認められ、今日のような急速な普及を見たもの、こういうふうに理解をいたしております。
  30. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは、この自動販売機が国民生活の中で一体どんな役割りを果たしているのか、そのよい面と悪い面があるというふうに思いますが、あわせて通産省にお答えいただきたいと思います。
  31. 杉山弘

    ○杉山説明員 自動販売機によります販売の利点につきましては、ただいま申し上げましたようなことでございます。特に先生お尋ねの国民生活の面におけるメリットということになりますと、先ほどの御質問に対してお答え申し上げました、買い手の側の自動販売機による品物の購入に対するメリット、すなわち、時間的な制約、商店閉鎖後でも買い物ができる、それから自動販売機が各所に設置をされますと、従来の店舗まで行かなくても手近な自動販売機で買える、こういった場所的な制約から解放される、それから対人的な販売面での煩わしさを避けられる、こういった面が国民生活に対する利便の向上ということで総括できるかと思います。  他方、自動販売機の普及によりますデメリットと申しますか、悪い方の影響ということで考えてみますと、いろいろございますが、たとえば最近問題になっておりますのは、自動販売機の設置が不完全なために人身傷害を起こすという事例も散見されるようになってきております。それからまた中身商品が外からでは手にとって見えないという点での中身商品に対する消費者の不信と申しますか、そういった面、それから自動販売機で買い物します際に、自動販売機が故障いたしまして、お金を入れましても品物が出てこない、ないしはつり銭が十分出てこない、こういった面でのいろいろな問題等々が考えられる。その他青少年の非行に対する影響といったような問題、巷間伝えられておりますポルノ雑誌の販売等で問題が起こっておる、こういうふうに理解いたしております。
  32. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いまのお答えですと、自動販売機は便利でよいものだ、こういうことで一般化、普及化している、こういう状態でございますが、私は少し観点を変えまして、この問題を検討していきたいというふうに思います。  そこで、まず大蔵省にお尋ねをいたしますが、酒、たばこを未成年者が自動販売機で手に入れないようにするために、いままでどのような対策をとってこられましたのでしょうか、御説明をお願いいたします。
  33. 吉田哲朗

    ○吉田説明員 お尋ねの件でございますけれども、自動販売機は現在相当普及をいたしております。特に酒販店は零細な小売業者が多いという点で省力化に役立つというメリットがあるわけでございますが、他方、いま御指摘のような未成年者の飲酒防止、こういう観点からは問題もございます。したがいまして、私どもとしましては、機会あるごとに関係業界に対しまして未成年者の飲酒防止に配慮するよう要望しております。とともに、具体的には酒類の販売につきまして自動販売機を設置する場合には、一つは販売の責任者を定めるということ、それからいま一つは未成年者の飲酒が禁止されておる、こういう旨のステッカーを自動販売機に貼付する、こういった措置の励行を求めてきたわけでございます。それから酒販店の軒先にあるものを除きまして、それ以外の場所における自動販売機の設置は四十八年七月以降は原則としてこれを認めないことといたしております。また、私どもとしまして小売酒販組合中央会とも協議いたしまして、小売酒販組合中央会の方では、五十年の四月からでございますが、午後十一時から翌日午前五時までの間の自動販売機による酒類の販売はこれを停止することを決めまして、傘下組合員にその励行を求めている、こういったようなことでございます。
  34. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 警察本部のこの調査によりますと、少年に対する喫煙補導の状況は、昭和四十六年は三千七百三十三人、これを一〇〇として計算いたしますと、昭和五十年は五千八百一人、こういうことで一五五・四%の増という状況でございます。中でも、特に心が痛みます問題は、十四歳未満の少年の増加が大変著しいということです。昭和四十六年を一〇〇といたしまして、昭和五十年には二五八%の増加率、つまり倍以上という現状であるわけです。  それでは、少年たちはどうしてたばこを手に入れるのか、これを調べてみますと、自動販売機が三一・五%であり、補導した喫煙少年中のほぼ三人に一人が自用目的で自動販売機を利用しているわけでございます。  また、自動販売機のポルノ雑誌の影響を受けているという少年の非行の例がございます。たとえば中学三年生の十四歳の女の子、そのほか中学一、二年生四名で非行をしているわけでございますが、こういうふうに書いてあります。「少女らは、交友関係にあり、夏休み中、自動販売機からポルノ雑誌数冊(週刊、単行本等)を買い求めて回し読みをしているうちに、売春記事などに興味をもち家出した。その後、同女らは新宿の盛り場などでポルノ雑誌の実験を試み、一人一回五〇〇〇〜一〇〇〇〇円の謝礼で売春を行い、それぞれ補導されるまで五名〜八名の男性と売春し、その謝礼金を遊興、飲食費に使うほか家出後の生活費にあてていた。」また足立区に住んでおりますBという十六歳の少年は、「自動販売機で売られていた雑誌の女の裸体写真に刺激され、女便所をのぞいた」、板橋区に住んでおります大学一年生ですが、「少年は、これまでに飲酒、喫煙はしたことのないまじめな学生であったが、高校三年のはじめころから、わいせつ本に異常な興味をもち、書店や自動販売機等からポルノ雑誌を購入していた。」まだまだ例を挙げれば枚挙にいとまがないという状態でございます。  そこで、警察庁にお尋ねいたしますが、自動販売機を利用しての影響からくる青少年の非行の傾向は、ある地域に限られているのか、私が調査しましたこういったところに限られているのか、それとも全国的な傾向なのかどうか、お尋ね申し上げます。
  35. 仁平圀雄

    ○仁平説明員 全国的な傾向につきましては、いま御指摘のとおり、こういったポルノ雑誌等の自動販売機の影響と認められる事犯はふえておるということでございます。それが各地によって受ける影響が異なるのだということにつきましては、はっきりしたデータは持ち合わせておりません。大体少年非行の要因といいますのは、いろいろな条件が競合しておるわけでございまして、たとえばポルノ雑誌が影響したというふうに端的には言えないわけであります。そういったポルノ雑誌等有害な社会環境が少年非行に直接的な影響を与えた非行はどれくらいあるかということで申し上げますと、これまでの調査によりますと、約一割でございます。
  36. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 対面販売ではないという自動販売機は、人に見られて都合の悪いものを大変便利に手に入れる、こういうことができる特徴を持っております。また自動販売機は販売をする品物が一目でわかる、こういう仕組みになっております。これが子供を持つ親の心配の種でありますし、今日全国的な問題になっておりますポルノ雑誌の自動販売機です。  いま全国各地でPTAや学校の先生方など、子供の環境を守るために自動販売機によるポルノ雑誌の販売をやめてほしいという運動が進んでおります。昨年の十月二十八日には、当委員会におきましてもわが党の小林議員がこの問題に触れまして、設置場所等について適切な対策をとるように要求をいたしましたが、文部省はこれについてどのような処置をなさったのか、お答えをいただきたいと思います。
  37. 柴沼晉

    柴沼説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、こういうポルノ雑誌等の自動販売機が生徒に対して、ことに心身の発達段階の未熟な児童生徒に対して大きな影響を与えているということで、文部省としても大変憂慮いたしております。学校教育の面につきましては、学校の教科あるいは教科外の生徒指導体制の確立ということを通じて、児童生徒がそういう自動販売機等を安易に使うことのないようにという指導をしてまいりたいと思っておりますし、また社会教育の面で申しますと、こういう活動は、先生御指摘のとおり、地域ぐるみの活動でなければ効果が上がらないということで、一つは、昭和五十二年度の予算政府原案の中におきましてもPTAの地域活動促進費というのを新規に計上いたしております。それからさらに、青少年が孤独に陥ったり連帯感が失われているということからそういうことも起きるということで、青少年の仲間づくりの運動というようなものも新しく予算政府原案に計上しております。そのほか、青少年がこういうことに関与しないようにということで、情操を高めるために芸術劇場とかスポーツクラブあるいは青少年教育施設を完備してまいりたい、そのようなことをいろいろと提唱してきております。  また先生御質問の、昨年の小林先生の御質問にも関連しまして、その後総理府等とも関係課長会議等も持ちまして、文部省としては直接の規制する立場にはないわけでございますけれども、これについて善処方をお願いも申し上げておりますし、また幸いなことに、出版業界なんかでも自粛の動き等が幾らかずつでも見えてきている、そのように承っております。
  38. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、先日、吹田市に参りまして、青少年対策室の方や青少年の環境をよくする会の事務局長さん、母親連絡会の方々とお話をさせていただきました。自動販売機を媒体として販売されるものから子供たちをどうして守るのか、皆さんは大変深刻に考えておられます。吹田市ではPTAや自治会、防犯協議会や民生委員協議会、母親連絡会や地域婦人会など二十二団体もの方々が一緒になりまして、青少年の環境をよくする会をつくり、子供を守る運動を進めておられます。  また、私の住んでおります京都でも、退廃文化をなくし健全な文化を育てる運動交流会、これが生まれまして、教職員組合や新日本婦人の会、子供を守る会、マスコミ共闘など十七団体もの方々が集まって、何とかしなければならないと真剣に考えて取り組んでおります。  私はここに、京都市の中京区でお母さんたちと先生たちが自分たちで足を運び自分たちの手でつくった自動販売機がどのように設置されているのか、状況が一目でわかります地図を持ってまいりました。これによりますと、京都市中京区というのは人口が約八万八千人の地域ですが、この中にポルノ専門のものが十五カ所あります。一般の雑誌が二十二、この中にはポルノに近いものが含まれております。スキンが十六。酒、ビールが八十一。たばこは百二十一設置されているわけです。これはみんな青少年には使わせたくない、こういう自動販売機ではありませんか。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕  東京の足立区では、昨年の十二月十一日土曜日に、教組の先生方が分会で一斉に区内の全域を調査したら、ポルノ雑誌等自動販売機が合計百九十五台ある、こういうことが判明をいたしました。  文部省と総理府にお尋ねをいたしますが、自動販売機が子供に影響を与えていることについて、あなたたちはどうお考えになっているのですか。やはりこれは子供にとっても大変便利なものでよいものだと考えておられるのでしょうか、いかがでしょうか。
  39. 石瀬博

    ○石瀬説明員 総理府からお答えいたしたいと思います。  御指摘のように、ポルノ雑誌等が自動販売機により無差別に販売されておる、青少年が安易に購入しているという実態につきましては、私ども総理府といたしましても、青少年の健全な育成を図る立場から、非常に憂慮すべきことであるというふうに考えておるわけでございます。最近各府県では青少年の保護育成に関する条例を制定または改正いたしまして、自動販売機による有害図書の販売を規制しようとしているところもございますし、いまほどお話のございましたように、各地域の住民の方々の地域活動とか、あるいはまた関係業界に対する自主規制を求める動きというものは非常に活発になってきておるわけでございまして、私どもといたしましても、今後非行に関係のある省庁とも十分な連絡をとる、あるいはまた青少年育成国民会議というふうな団体もございますので、そういったところとも十分な連絡をとりながら、少年をめぐる悪い環境ができるだけ排除できるように今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  40. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私はここに青少年大阪府民会議と大阪府が合同主催いたしました出版物自動販売機と青少年に関する懇談会の報告書を持っております。この中で豊中市の代表は、せめてポルノ雑誌は自動販売機による販売はやめて対面販売にしてもらえないか、こういう意見を出しておられます。これは子供のことを真剣に考えている人なら当然の意見だと私は思いますが、このときに参加していた大阪通産局の代表の方は、販売の簡略化、省力化という観点から自動販売機の普及促進を図る、こういう意味の発言をしておられます。通産省としては今日でもこの考え方に変わりはありませんか。つまり、省力化できるし、消費者にとっては便利なのだからというふうに考えておられるのでしょうか、いかがでしょうか。
  41. 杉山弘

    ○杉山説明員 お答えいたします。  自動販売機の利点につきましては先ほど御答弁をしたようなことでございます。と申しましても、私ども自動販売機の設置を促進しているという対策はいままでのところとっておりません。特に御指摘の雑誌の販売機につきましてでございますが、いま先生いろいろ御指摘になりましたような好ましくない事態もございますので、こういった点機構的にある程度そういったものの生産の中止ができないかということも検討をしていましたのですが、これは一般の雑誌の販売をする自動販売機と構造的には全く異なりませんので、これをポルノ雑誌が販売されるからといって一律に雑誌の自動販売機の生産を規制するのはいかがなものであろうかというふうにも考えております。  ただ、売り方につきましては、いま先生おっしゃいましたように、できるだけ対面販売ができればということでございますので、今後こういった雑誌の販売につきましてはできるだけ店舗内において販売をさせる等、ポルノ雑誌の自動販売機による販売の悪影響が少しでも少なくなるように指導いたしたい、かように考えております。
  42. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 さらに、私は自動販売機を中身商品だけの問題として考えるわけにはいかない、こういうふうに思います。子供の教育にとりましても重大な問題だと思います。毎日新聞の三月五日付の「編集者への手紙」、この欄には「自動販売時代への警告」と題しました文章がございます。その中には「子供は、お金を入れたのに、キカイの中のオジさんは、品物を出さずに、黙って隠れていると私に訴える。何度も体験した」と書かれております。これはお金を入れたのに品物が出てこないという問題だけではありません。百円玉を入れれば物がころんと落ちてくるという安易な物の手に入れる入れ方は、子供たちに物はどうしてつくられるのか、こういう生産労働に対する価値観を狂わせる、科学的認識を阻害する何物でもありません。  自動販売機というものが、このような面から見ましても、子供の発達にとって重大な影響を及ぼしているということを文部省は一体どう考えているのですか、またこの対策をどう立てておられるのですか、御答弁願いたいと思います。
  43. 白井實

    ○白井説明員 先生のおっしゃいましたように、子供の教育についてあずかっております私どもといたしましては、そういった安易な発想というものを子供が持つことにつきましては好ましいことではないというふうに考えております。そういったことで学校教育の中でいろいろそれに対する対応はしておるわけでございまして、教科、道徳、特活、それから生徒指導というようなことで総合的に指導しておるわけでございます。  また、先ほど青少年対策本部の方から触れましたように、学校当局としましても社会教育団体、そういったものとも十分連絡をとりながら生徒が非行等に陥らないようなことで指導していきたいということで、行政当局としては指導しております。
  44. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 時間がございませんから、この問題の最後に経企庁長官にお伺いを申し上げます。  私は決して自動販売機をなくせ、こういう立場からお話をしているのではありません。昭和四十六年の末で百三十九万台であったものが五十一年の末では三百万台を超える、こういうことで二倍以上にもなっております。これを大人にとって便利だからということだけで考えてはいけない、こう思うわけです。次の世代を担う子供たちに大きな被害を与え、日本の将来にかかわる問題だ、これを主張しているわけです。  吹田の市議会では、三月の議会で、青少年に有害な不健全図書を自動販売機から追放することに関する要望決議を行いまして、総理と文部大臣あてに送られております。また大阪の府議会でも、青少年に有害な自動販売機の規制に関する要望決議を行っております。  消費者保護を担当される経企庁長官として、消費者の中に含まれるこれら青少年のことも考えて、自動販売機の問題を考えていただきたい、私はこういうふうに思いますが、いかがお考えでしょうか、承りたいと思います。
  45. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま藤原委員の御質問にお答えして、各省庁からお答えをいたしている話をずっと聞いておりまして、自動販売機が今日三百十万台という大変な数になってきておる。大変便利な反面、多くのものがまた失われつつある。ちょうど薬の副作用が出てきているというようなものではないかと思うわけでございます。われわれの身近なものでは、電車などに乗るときの切符を自動的に買う自動販売機、こういうものはもう日常生活に不可欠のものになっておるわけでありますけれども、いま委員のお話しのように、子供の教育という面から非常に大きな影響を及ぼしておるということは、私ども痛切に感じておるところでございます。この件は、消費者保護という観点よりも、むしろ青少年対策の見地から取り組むべきものではなかろうかと思うわけでございます。  消費者保護に関しましては、各県で消費者保護条例によって規制を行っている団体が、東京都や三重県や島根県、岡山県、福岡県、また市で、政令都市では名古屋とか神戸とかございますけれども、これらは管理者、責任者の氏名、名称あるいは住所、所在地、電話番号、連絡事項を表示させるというのが大部分でございまして、中身の方まで入っておりません。青少年の条例による自動販売機の規制をやっている県もあるということを私ども新聞報道等で伺っておるわけでございますけれども、いずれにしましても、文部省を中心として警察庁あるいは法務省その他関係各省で真剣に新しい事態に応じて検討をすべきものであろうと思います。私どもも消費者保護の立場としての官庁でございますので、これらの各省の方々と御相談をしながら、総理府、警察庁、文部省その他中心となってひとつ御検討をいただくように、私の方からも強く御要望したいと思っております。
  46. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 きょうずらりと皆さんにお越しいただきましたのにあらわれておりますように、この自動販売機の問題は、大変各省庁にまたがっているわけでございます。そんな点で、先ほど申しましたように、子供たちは消費者の中に含まれているのだ、青少年たちのことも含んでいるという立場から、ぜひいまお答えいただきましたように、この各省庁と連絡をとり、特に強力にこの問題を御検討いただき、善処していただきますように、このことが一日も早いことが、本当に全国的な運動になっておられる皆さん方の強い願いだということを指摘いたしまして、次に移りたいと思います。
  47. 倉成正

    倉成国務大臣 本問題の取りまとめは、決してなわ張りを申すわけではございませんが、総理府が中心となるのが適当ではないかと私、思っております。しかし、消費者行政の立場から、私どもひとつ全体としてのお手伝いをさせていただこうと思っております。
  48. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いまの大臣の御答弁のとおり、経企庁でも奮闘するが、総理府が責任を持つべきだ、取りまとめをすべきだというお話でございます。特によろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、私は、この自動販売機の普及と運用に当たっての問題について少し質問をしたい、こういうふうに思います。  政府は、去る五十年の十一月十日付で「自動販売機に対する統一ステッカー貼付の実施について」、こういう通達を出しておられるわけです。これは大蔵省、農林省、通産省、厚生省の四省の名前で出ておりますが、各省ごとに、これがどれだけ実施されているのかどうか、その結果を御報告いただきたいと思います。
  49. 杉山弘

    ○杉山説明員 先生いま御指摘のように、一昨年の十一月に四省庁共同いたしまして、自動販売機に統一ステッカーを貼付するように指導いたしたわけでございます。その内容は御存じだと思いますが、一昨年の十二月一日以降に生産される自動販売機につきましては、メーカー段階ですべて統一ステッカーを貼付しまして出荷をする、こういうふうにいたしております。その意味におきまして、メーカー段階での一昨年十二月以降の貼付は完全に行われでいるものというふうに私ども考えております。ただ、その段階ですでに出回っておりました自動販売機につきましては、その自動販売機を利用して商品を売る関係の省庁を通じて、できるだけ所有者に所有する自動販売機に統一ステッカーを貼付していただくよう指導をお願いしたわけでございます。  私どもも、実は私ども通産省が委嘱をしております消費者モニターを通じましてその貼付状況の現状について調査を実施しております。現在集計中でございます。最終的な調査結果がまだ判明しておりませんので、この場でお答えいたしかねますことははなはだ残念でございますが、ただ、一部の府県等で実施をされました調査結果から見ますと、概略でございますが、約四割を超えるものにつきまして統一ステッカーがすでに貼付をされている。東京都、埼玉県それから広島県の消費者協会等の調査がそういうデータを出しておりますので、半分近いものにつきましては御指摘のとおりステッカーの貼付がされているもの、こういうふうに私ども理解をいたしております。
  50. 仲村英一

    ○仲村説明員 食品の自動販売機の普及もかなり普及してまいっておるのが実態でございますが、食品につきましては、従来から食品衛生法に基づきまして調理を行う者については許可の対象業種にする。そういう観点から、従来食品衛生監視員というのが都道府県におりますけれども、そういう監視員の指導に任せておるのが実態でございますが、この統一ステッカーにつきましてどの程度ステッカーが張られているかということについてだけの調査を、私ども現実にまだ実施しておらないのが実情でございます。
  51. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 農林省でございますが、農林省といたしましては、昭和五十年の十一月に四省合同で決めました統一ステッカーを張るという実施要項に従いまして、食品流通局長、それから食糧庁長官、畜産局長、それぞれ関係団体十一団体に通達をいたしました。その後いろいろ実情を見てみますと、必ずしも貼付というものが励行されておりませんので、昨年七月に関係の二十団体を重ねて呼びまして、私の方から、私がその場に直接出席をいたしまして、励行されていないから重ねて励行するように、かつ、その時期に自動販売機が倒れまして人身事故を起こしたこともありましたものですから、置き方について重ねて注意をして、実施要項等もお渡しいたしました。そういう形で周知徹底を図っているところでございます。
  52. 吉田哲朗

    ○吉田説明員 酒類の自動販売機につきましては、統一ステッカーは全国小売酒販組合中央会を通じまして、各県単位組合の組織を通じて全業者に配付をしております。また国税局、税務署等におきましても、それが守られるように指導をいたしておるところでございます。  そのステッカーの貼付状況については、正確な数字は持っておりませんですが、先ほども申し上げましたように、酒類の自動販売機はほとんどが酒類販売業者の店内あるいは軒先にございますので、私どもとしましては、貼付状況の実施度は相当高いものと確信をいたしております。
  53. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 では、国民生活局長さんにお尋ねをいたしますが、いまのずっと各省のお答えで、完全実施というのはなかなかされていないという現状が明らかになったわけですが、消費者の立場から見て、完全実施されなくてもよいものなのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  54. 井川博

    ○井川政府委員 自動販売機につきましては、実はかつて五十年の十一月でございますか、主婦連に対しまして生活の一般的な条項の委託をしました中にも自動販売機の条項がございます。自動販売機についての必要性等につきましては、実は九割以上が、やり方いかんであるけれども、必要であるという答えが返ってきたわけですが、その中でどういうことが問題かというところに、いま先生のお話のありました、要するに責任者がわからない、問題があるときにどこへ通知していいかわからないというのが挙がってまいっておるわけでございます。ちょうど時を同じゅうして、先ほど四省庁から説明があったわけでございますが、大蔵、通産、農林、厚生の四省の通達も出ておりますし、各省庁の指導もされ始めたわけでありまして、われわれといたしましては、この指導が徹底をいたしますことを見守っているという状況でございます。いまお話がございましたように、むずかしい点もございますけれども、まだ十分ではない、ひとつ関係各省格段に努力をしていただいて、徹底をしてもらいたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  55. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 東京都が昨年の九月二十六日から十月一日までの間に行っております抽出調査によりますと、自動販売機の統一ステッカー、これをきちんと完全に張っている、完全記入をしているというものは、食品関係では三一・七%、雑誌関係は三五・九%ということになっております。もちろん政府の通達は管理者が常駐している施設のものは除く、こういうことになっておりますので、この数字がその実態をあらわしているとは思いませんけれども、完全実施されていないことは事実だと思います。私も実際歩いて調べてみましたが、張ってないもの、また張ってあっても何も書いてない未記入のものがたくさんありました。これを完全に張らせるということは無理なことでしょうか。通産、大蔵、農林、厚生、そして企画庁に、時間がありませんので、無理なのかどうか、簡単に答えていただきたいと思います。
  56. 杉山弘

    ○杉山説明員 先ほどお答え申し上げましたように、メーカー段階での新規商品についてのステッカーの貼付は、すでに完全実施をしておるわけでございますが、そのステッカーに必要記載事項を記入するというのは、あくまで末端の所有者、管理者ということになるわけでございまして、そういうところにつきましては、私ども初め関係省庁から、先ほど先生御指摘の通達等によりまして指導をしておるわけでございますが、記入の状況について、まだ徹底してないというのも御指摘のとおりでございます。こういった点につきましても、私どもといたしまして今後さらに一層指導の徹底を図って、できるだけ必要事項が記載されるように指導してまいりたい、かように考えております。
  57. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 農林省といたしましても、今後とも指導の徹底を図ってまいりたいと思います。
  58. 仲村英一

    ○仲村説明員 五十一年一月に私ども通牒を出しまして、社団法人の日本食品衛生協会というのがございまして、全国各県に支部を持っておりますので、その団体を通じまして、貼付の普及を図ることになっておりますが、今後ともできるだけ自動販売機の統一ステッカーの貼付につきましては指導徹底を図っていきたいと思っております。
  59. 吉田哲朗

    ○吉田説明員 酒類の自動販売機につきましては、酒団法に基づく組合組織がございますので、これを通じまして、さらに実施の向上に努めてまいりたい、かように考えております。
  60. 井川博

    ○井川政府委員 関係各省努力によりまして、ステッカー貼付の完全実施が可能だと考えております。
  61. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 登録をしなければならない業種などは、皆さん方のいまの指導でできるのでしょうが、日用品だとか出版物のようなものは指導するところがありません。部屋に来ていただいていろいろ教えていただこうと思いましたが、大変、私、困難をしたわけです。ルートがないと思うわけです。だから大変むずかしいだろう、こういうふうに思います。特に、この雑誌の場合は大変むずかしい、こういうふうに思うわけです。私はここに新聞の広告を持っておりますけれども、これを見ますと、粗利益が六割から七割ある、こう言っております。何を売るのかと言えば、ポルノの雑誌です。こんなところはなかなか表に出たがらない。私はポルノの本も少し調べてみましたが、中には出版社の名前だけで、所在地も発行者の名前も書いてない。こういうものがありますが、こんなものを売るのですから、当然販売者の名前などはなかなか出せないと思います。  そこで、法務省にお尋ねをいたしますが、民法で定められております売買のルール、第五百六十条とか六十一条、六十三条、六十五条、六十六条、六十七条、五百七十条というふうにあるわけですが、売り主の責任というのは、自動販売機によって物を販売する場合も、これは適用されるのでしょうか。いかがでしょう。
  62. 吉野衛

    ○吉野説明員 自動販売機による雑誌の販売も民法にある売買でございます。われわれ普通これを現物売買の一形態と呼んでおりますが、そういう観点からいたしますと、当然、民法の売買に関する諸規定が適用になると考えております。
  63. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 適用されるとしましたならば、その責任を果たすための体制として、この自動販売機の管理者名といいますか、販売者名は当然明らかにしておく義務が法律的にもあるというふうに思いますが、その点は法務省、いかがでしょうか。
  64. 吉野衛

    ○吉野説明員 一般的に、たとえば自動販売機や設置しているところでは、店先ですと、店の主人がいわばその自動販売機の販売者の委託を受けて売るとか、あるいはみずからが売り主となって売っているというような形で販売されているのだろうと思います。したがって、売り主がだれであるか、それがわからないという形での売買というのは通常考えられないというふうに思います。
  65. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 考えられないことがいま現実にちまたにあふれているわけです。  最後に、長官にお尋ねをしたいと思います。  自動販売機を利用した人なら大部分の人が一度ならず経験しておりますことですが、お金を入れたにもかかわらず品物が出てこない、それを言おうとしても相手はいない、管理者もわからない、こんなことでは消費者は泣き寝入りをするよりほかに仕方がないわけです。自動販売機といっても、昔と違いまして大変いろいろなものが出てきております。これからはもっと多種多様なものが出てくるだろうと予想されるわけです。それがいまのままでは消費者は苦情を持っていくところが保証されておりません。民法で言えば債務不履行の状態になっているということが明らかになりました。こんなことは許されないことだし、当然のこととして、自動販売機を使って物を販売する者にも、店頭販売をするのと同じ義務を果たさせるような制度をつくるべきだ、私はこういうふうに思いますが、この点、経企庁の御答弁をお願いしたいと思います。
  66. 倉成正

    倉成国務大臣 現在の制度で形式的には保護されておっても、実際的にはいまお話しのように、なかなかうまく機能してないというのが実情ではなかろうかと思います。これをどういう形で処理していくかということでありますが、当面は、先ほど各省庁からお話しのように、各省庁で最大限の努力をしていただいて、消費者の方がそういう思いをしないようにすることが一番大事なことであると思います。  しかし、それ以上踏み込んで何か法律的な規制か何かというような意味の御質問ではないかと思いますが、その点については、やはり関係各省庁で十分検討を要することではなかろうかと思います。しかし、問題意識としては藤原委員のお話にありました点は私どもまことにそのとおりに考えておりますので、ひとつ十分検討をいたしてみたいと思っております。
  67. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 るる述べました中で明らかになりましたとおりに、仕組みの裏をくぐってこういったことがやられている、これが消費者の立場として大変な迷惑をこうむっているということです。こういう中で、先ほど御答弁にもありましたように、東京都などは条例で規制するというようなことをして一生懸命奮闘しておられるわけです。自治体はこのことで大変努力をしております。こういう中で、国で何らかの制度を検討するという時期が来ているというふうに思います。もちろん大臣がおっしゃいますように、各省庁が最大限の努力を払わなければならない、また連携をとりながら前進をさせていかなければならない、これは当然のことでございますが、先ほど申しましたように、自動販売機を使って物を販売する人たちにも店頭販売をするのと同じ義務を課するというふうな制度をぜひ検討していただきたい。私、強く要望いたしまして終わりたいと思いますが、もう一度、検討を急いでやっていただけるかどうかという点だけお答えいただきたいと思います。
  68. 倉成正

    倉成国務大臣 問題意識としては、ただいま藤原委員のお話のとおり、私どもはまさにそのとおりだと思います。これをどういう形で規制していくかという問題については、関係各省庁それぞれの意見もあろうと思いますので、十分な検討をいたしてまいりたいと思っております。
  69. 西宮弘

    西宮委員長 藤原ひろ子君の質問は終わりました。  次は、依田実君。
  70. 依田実

    ○依田委員 きょうは時間もそうありませんですが、いま行われております砂糖の支持カルテルにつきましてお尋ねをいたしたい、こういうふうに思うのであります。  最初に、この砂糖が昨年の十二月から支持カルテルになったわけでありますけれども、その前に、支持カルテルですから、公取と農林省と協議が行われているはずだと思うのでありますけれども、この間の事情をひとつ公取の方から御説明をいただけたらと、こういうふうに思います。
  71. 澤田悌

    ○澤田政府委員 砂糖のカルテルにつきましては、いまお話しのように、五十一年の末ごろ非常に業界の状態が悪いものですから、農林省からカルテルについての協議があったわけでございます。それで、その内容を検討いたしまして同意をいたしたのでございますが、その後三カ月たってもなお状況が変わりませんので、この延長の協議に応じまして、現在カルテルが続いておりまして、その期限は五月三十一日というふうになっておる次第でございます。
  72. 依田実

    ○依田委員 支持カルテルになりましたのですが、公取の方では要件が整っておるという御判断をされたと思うのでありますけれども、その御判断をされた理由の要件というのは、どういうところにありましょう。
  73. 澤田悌

    ○澤田政府委員 その期間についてはただいま申し上げましたが、その他の共同行為の内容でございますけれども、実施期間内の精製糖の総販売量の限度をおおむね六十万トンとするということが一つ、それから共同行為の円滑な実施を図るために運営委員会を設置してその仕事に当たる、それから共同行為の違反者は運営委員会に違約金を支払うというような点が主な内容でございます。  それで、協議に応じました理由でございますが、先ほど申しましたように、五十一年末ごろ需給のバランスが非常に崩れておりまして、精製糖の価格がいわゆる安定下限見合い価格と申しますか、それを下回っておるということが中心でございました。さらに、カルテルを認めましても、一般に消費者、それから関連業者等の利益を不当に害するようなことはないであろうと認められたこと、それから共同行為参加者間で不当に差別的なことが行われていないということが認められたこと等で、内容的に申しても差し支えないものとして協議に応じた次第でございます。
  74. 依田実

    ○依田委員 確かに精糖会社は一千億円に達する赤字を抱えて大変だ、こういうことでそれなりの理解はあるのでありますけれども、しかし、このカルテルを結ばなくちゃならなかった一つ原因の中に、巷間言われております豪州から高い砂糖を日本側は契約してしまった。ちょうどオイルショックのすぐ後の一九七四年に豪州糖を六十万トン、五年にわたって輸入する、こういう契約をされた。当時はロンドン相場も非常に高かった、豪州の砂糖は安いからいいじゃないか、こういうことで契約をなさったんじゃないかと思うのでありますけれども、案に外れて相場が逆へ行ってしまった、このままでは大損、こういうことになっていまの状態へ追い込まれてきているのではないかと思いますので、ちょっと、その豪州糖の契約、この間の事情についていろいろ御質問させていただきたいと思うのであります。  当時の砂糖の相場、そしてまた豪州の相場、契約の内容、それから契約当事者、この辺についてひとつ農林省の方から御説明いただきたいと思います。
  75. 牛尾藤治

    牛尾説明員 いま先生おっしゃいましたように、昭和四十九年の十二月に俗に日豪砂糖協定と言われている民間協定が調印されました。  その当時の国際糖価でございますが、先ほど先生がおっしゃいましたように、オイルショックの後の国際的な資源問題もございましたし、特に砂糖の国際需給がきわめて逼迫しておりまして、たしか四十九年十一月が国際糖価の最高値でございました。月間平均五百六十六ポンドと記憶いたしております。調印がなされましたのが翌月でございまして、当時四百六十ポンド前後でございました。それから豪州糖の価格と先生おっしゃいましたが、日本輸入しておりますものは大体ロンドン相場を中心に値決めがされておりますものですから、一般のほかの砂糖と同様に、その当時の国際価格で輸入されておったものでございます。  それから、契約の内容でございますが、これも先生おっしゃいましたように、各年六十万トン、一九七五年七月から一九八〇年六月まで五年間でございますから、三百万トンに相なります。価格は米ドル建て、豪ドル建てで、固定価格と俗に言われておりますが、契約の中に条項が書き込まれております。  契約当事者でございますが、日本側は、豪州の砂糖はいわゆる粗糖、原料糖でございますが、その粗糖の需要者、そのほとんどが精製糖業者でございますが、三十三社連名でございます。豪州は豪州の制度上クインズランド州が一手輸出をいたしておりまして、その州政府の代理人、CSR社という会社が向こう側の契約当事者でございます。
  76. 依田実

    ○依田委員 商社などにいろいろ聞いてみますと、砂糖を契約する場合、特に長期にわたりまして、そしてまた大量であります。六十万トンというと、日本が入れておる大体四分の一になるということでございますけれども、それだけの契約をするのに、幾らオイルショックの後で砂糖が不足しているとはいえ、砂糖というのは相場がありまして非常に変動が激しい。これを一定の価格で長期に契約したという、この間の事情はどうなっておるのでしょうか。
  77. 牛尾藤治

    牛尾説明員 先ほども申し上げましたように、当時の国際的な資源問題、特に農産物の資源問題は大きな問題でございました。たとえば小麦、大豆、飼料穀物などにつきましても、アメリカその他と長期的な話し合いを進めた経緯がございます。砂糖も重要な消費者物資でございますし、当時、砂糖の価格が高い、特に砂糖の量が確保されないというのが非常に大きな問題でございましたが、現実の国際市場を見ましても、砂糖を急に増産する能力のある国はごく限られておったわけでございます。そういう国の代表的なものの一つにオーストラリアがございました。そこで、砂糖につきましても、政府といたしまして長期にわたる安定的な供給の確保ということは、国策と言ってもよろしいかと思いますが、大いにこれを推奨したわけでございます。  そのときに、豪州の事情からいたしましても、日本に対しては市場を求めたいというほかに、豪州もキビの生産者あるいはキビの加工業者を国内に持っております。そういうところの特に生産農民の所得安定という見地もございまして、あの激変する国際相場のフロートに応じまして農家所得が変動することは困るという観点から、国際相場のままでなしに、ある程度価格を固定といいますか、事前にわかるようにしてほしいというのが強い要請でございました。  そういう観点から、民間協定の話し合いの中で、その当時の国際価格からは約半値に相当いたしますけれども、将来国際糖価が仮に下がりましても、五年間通してみれば売買両当事者がほぼ納得し得ると当時考えられた線で合意に至った、このように承知しております。
  78. 依田実

    ○依田委員 皮肉にも約半年後、いわゆる船積みをする段階から砂糖相場が下がってしまって、この契約は外れてしまったわけでありますけれども、この場合に、いま課長のお話の中に国策としてというお話がございました。契約は、先ほど御説明のように、一応民間ベースということで契約がされているはずでございますけれども、その間に農林省が指導をされたことがあるのでしょうか。
  79. 牛尾藤治

    牛尾説明員 農林省といたしましては、これは先生御承知と思いますが、砂糖の長期契約は豪州のみではございませんで、オーストラリアの協定締結と相前後いたしまして、台湾とかタイとか南アフリカ、あるいはブラジルというふうに長期契約がどんどん締結されております。先ほど申し上げましたように、そういう長期安定的な供給の確保という面からオーストラリアの長期契約の締結も推進したわけでございますが、協定の個別の条文と申しますか具体的な契約の中身、これは売買、つまりコマーシャルな事項でもございますので、その条項の中身に立ち至って介入したかというお尋ねであれば、それは民間が主体になって判断して決められた、こうお答えするのが適当かと存じます。
  80. 依田実

    ○依田委員 契約内容に介入するのではなくて、豪州のこの安い砂糖をいま買っておいたらどうだろう、こういうようなことはおっしゃらなかったでしょうか。
  81. 牛尾藤治

    牛尾説明員 オーストラリアは当初は政府間協定を希望しておりまして、政府を交渉の当事者として初めは参ったわけでございます。しかしながら、わが国は自由貿易の大前提をとっておりますので、それはできないということで、後で民間契約に移りました。それで、よく業界なりほかの方からも言われるわけでございますけれども政府が向こうの申し出を一通り聞きました際に、先方は固定価格を、インデクセーション方式と申しましたか、オーストラリアの物価上昇にスライドして毎年変えていく案を大いに固執いたしておりました。それはまだ政府が話を聞いておる段階では、政府はそういうことは日本としては受け入れられないだろうということは申したことはございます。それ以外の点につきましては、記録をたどってみますと、毎月いろいろな価格の案が両当事者からぶつけられております。役所側といたしましては、そのインデクセーション方式にははっきり物を言ったことはございますが、具体的な価格についてはどうごうということは言っておりません。ただ、業界の方も契約当時の国際糖価はかなり高い、将来下がるということはもとより予想しておりまして、その予想の程度は、いま先生おっしゃったように、予想と実際と違ったわけでございますが、五カ年間通じてということは、業界もその当時かなりそういうことを考えたようだということは事実だと思います。
  82. 依田実

    ○依田委員 これは日本側は三十三社共同ということなんでございますけれども、聞くところによると、三井物産、三菱商事、それに連なる系列の大手精糖会社、こういうところがこの安い砂糖を入れて、ひとつ日本の精糖業界の再編成の主導権を握る、つまり、ほかより有利な条件でこれを輸入して、この際ひとつ業界の主導権確立のために利用しようじゃないか、こういうような考えがあったと一部に言われておるわけでありますけれども、その辺については農林省はいかがお考えでしょうか。
  83. 牛尾藤治

    牛尾説明員 日本とオーストラリアの砂糖の長期契約は、それまで長年の間豪州から砂糖を輸入しておりましたのは、先生御指摘の三井物産と三菱商事だけでございまして、その他の商社なりは——実際に入るのはみんな商社でございますが、オーストラリアには購入地盤を持っておらなかったということは事実でございます。  なお、先ほどから申し上げましたタイでありますとかブラジルでありますとか、あるいは南アフリカ、そういうところの長契はそれぞれ関係の商社なりメーカーがやっておりまして、政府が推奨した長期契約は、三井、三菱だけが何かしたということはないわけでございます。
  84. 依田実

    ○依田委員 それは私もはっきりまだ調べがつかないのでありますけれども、もしうまくいったら日本の精糖業界の再編成の指導権を握ろう。相場が曲がっちゃった、さあこれは大変だから、ひとつカルテルをお願いしたい、これじゃ民間企業として少し考え方が甘いんじゃないか、こういうふうに思うのであります。  その辺は後にいたしまして、その後、実際問題として高い砂糖が入ってきてしまう、これじゃ精糖会社としては大変だ、片っ方じゃ、何とかして豪州側にひとつ契約を改定してくれぬか、つまり価格を安くしてくれぬか、こういうようなことを交渉しているというふうに聞いておるのであります。ことし二月には向こうからサリバンという方が来ていろいろ日本側と話し合って、その後ローリーという砂糖部長も来ておる。日豪間で、民間といえば民間でありますけれども、いろいろ話し合いが行われているようでございますが、現状といいますか、豪州とのその後の話し合いの内容について農林省はどういうふうに聞いていらっしゃいますか。
  85. 牛尾藤治

    牛尾説明員 砂糖の長期契約の条項の中身は、価格は明記されているわけでございますが、先ほどから先生おっしゃっておりますような状況から、日本の精糖業界は大幅な赤字を抱え、非常な苦況に陥っております。それで昨年の六月ごろからでございますか、業界の方から豪州側に対して契約価格改定の申し出をいたしました。それで現在二月から民間交渉も行われておることは事実でございます。  現在までのところ、豪州の生産者大会というものがありましたり、あるいは先ほど申し上げました豪州としての砂糖の国策と申しますか、砂糖あるいはキビの値段を安定した価格で供給していく、そういう問題から見ますと、日本に対して簡単に価格は引き下げ得ないという先方の事情もございます。そういうことで、二月に交渉を開始されまして、三月に一たん交渉担当者は帰国いたしましたけれども、また今月早々来日いたしまして、今週初めから再度民間交渉が始まっております。  現在までのところ、豪州側からは具体的な引き上げ案——引き上げ案があればあるいはそれに当然条件がつくかとも思いますが、そういう具体案はまだ提示はいたしておりません。ただ、本年の六月末までは価格の引き下げには応じがたい、こう言っておりますし、話し合いがまとまれば七月以降のものにつきまして若干の譲歩を考えておる節も見受けられる、現在のところこういうふうに聞いております。
  86. 依田実

    ○依田委員 向こう側も五年間の長期契約ですから、いろいろ設備投資なりそういうものもしている。だから、なかなか日本側との交渉に応じられないだろうと思うのです。いま課長からちょっと、今回一回、六月までは応じられないけれども、砂糖年度は七月からですから、その後応じられるかもしれないという感触のお話がございました。今回だけという話もあるやに伺っておるのですが、その場合は救済措置を考えてくれ、こういうことを豪州側が言っている、こういうことでございますけれども、救済措置とかそういうものはどういうことを意味しておるのでしょうか。
  87. 牛尾藤治

    牛尾説明員 CSRの交渉担当者がときどき農林省初め各省を表敬いたしまして、意見の交換もなされております。私がいままで聞きました限りでは、救済措置を豪州から要求するという意味ではなしに、現在国際糖価が下がり、業界が苦境に陥っている。これは豪州の立場から見ましても、長期契約の期間あるいはその後も考えますならば、日本は豪州の砂糖の重要な市場でございますから、そういう点も考えまして現在交渉に臨んでいるのではないかと思われますけれども、国際糖価が下がり、業界が苦しいから、俗に申し上げれば、お得意様が大変だから多少の配慮はするということを仮にやるといたしましても、その後国際糖価が下がればまた同じことを言ってこられるというのでは、豪州の政策的な立場も何もない。したがいまして、今回一度きりでそれ以後はもう再びかかる引き下げ要求がないようなセーフガードと申しましょうか、そういうことを豪州側としては強く希望いたしておる向きがございます。
  88. 依田実

    ○依田委員 確かに日本側の精糖会社がひん曲がってしまうと、豪州側としても大いに困るところであります。そこで、いま非常に交渉が難航しておるわけであります。課長がちょうど言われたセーフガード、こういうことで、一応いまは民間ベースの交渉が行われておるわけでありますけれども、ある段階で政府、農林省なり外務省、こういうところがこれにタッチするお考えがあるかどうか、お伺いさせていただきます。
  89. 牛尾藤治

    牛尾説明員 農林省といたしましては、精糖業界の窮迫した状況は放置し得ないとも考えておりますし、また日本と豪州の貿易経済、そういう全体の問題にも波及いたします。それから、先ほど申し上げましたように、豪州と日本の砂糖の長期の安定的供給、これは豪州にも大事であれば、現在価格は残念ながら妙な状況になっておりますけれども、安定的輸入という見地からは日本にも大事な問題でございます。そういう見地から政府としても側面的ないろいろな支援を考えておりまして、たとえば本年の一月、日豪閣僚委員会が開催されました。そのときに農林大臣から連邦政府の大臣に対しまして、そういう日豪全体の問題、貿易問題その他を配慮して適切な措置をとられるよう善処方を要請したこともございます。また、これは私からお答えしていいのかどうかわかりませんけれども、そのときの閣僚委員会の全体会議の外務大臣の冒頭ステートメントの中でも、日豪砂糖問題の円満な解決の重要性に触れられたと聞いております。
  90. 依田実

    ○依田委員 一応この支持カルテル、二回目は五月で切れるわけでございますけれども、いま各社の減産状況、そしてまた十二月に実施される前の価格、そしていまの価格、この間の価格の変化についてお話しをしていただきたいと思います。
  91. 牛尾藤治

    牛尾説明員 カルテルの実施前は、砂糖の価格はいわば極端なコスト割れと申しましょうか、その当時の国際糖価から見まして二百円台が加工、販売のコストに原糖コストなどを加えた価格と思われておったのでございますが、十月の平均価格が百七十五円、これは東京の卸売価格の上白のキロ当たりの値段でございます。百七十五円でございますから、極端な言い方をすれば、砂糖を一キロ販売するたびに業界、これは会社によってずいぶん格差がございますが、キロ当たり三十円あるいは二十数円という赤字が出ておったわけでございます。それから十二月に第一次カルテルが発足いたしました際は、その市況回復はそうはかばかしくございませんで、百九十円台で低迷いたしておりました。第二次カルテルになりまして、カルテルの効果と申し上げていいかどうかわかりませんが価格にやや反映いたしまして、現在、東京の上白卸売価格は二百九円から二百十円ぐらいということに相なっております。
  92. 依田実

    ○依田委員 これは五月に切れるわけでありますけれども、現在の価格の二百九円、これはいわゆる適正価格といいますか、見合い価格といいますか、そういうものからすると、一応カルテルの条件にはならない、こういうことだろうと思うのでありますけれども公正取引委員会の方にお尋ねをいたします。もし五月以降、農林省の方からもう一度協議があった場合、いまの状態で要件が整っておるかどうか、どういうふうにお考えになりましょう。
  93. 澤田悌

    ○澤田政府委員 ただいまもお話がありましたように、この三月ごろから精製糖の価格がかなり上昇いたしまして、安定下限価格をかなり上回っておる状況になってきております。農林省からさらにカルテル延長の協議がありました場合は、法の要件に照らして検討いたすわけでありますが、この価格の状況は、その際、かなり問題点であるというふうに考えております。
  94. 依田実

    ○依田委員 その問題点であるというお答えでありますけれども、これは、もうカルテルを続けるわけにはいかないという問題の価格なんでしょうか、それとも、このくらいの価格ではまだ業界が安定しないという問題の価格なんでしょうか。
  95. 澤田悌

    ○澤田政府委員 カルテルを認めるには難点となるという意味での問題でございます。
  96. 依田実

    ○依田委員 しかし、私が思うに、支持カルテルが外れますと、いまの状態では精糖業界が果たして安定するかどうか、非常に疑問じゃないか。相変わらず豪州から高い砂糖が入ってくる、こういう中で農林省はこの五月以降、つまり外れた六月以降、精糖業界の安定化にどういう構想をお持ちになっておりましょうか。
  97. 牛尾藤治

    牛尾説明員 現在の精糖業界の極端に窮迫した状況原因考えますると、豪州糖というのも確かにそのうちの一つではございましょうが、やはり砂糖の需要が停滞しておるという状況一つ根っこにあろうかと思います。  それと、砂糖業界と言いますよりも、砂糖製造の特質も絡むわけでございましょうが、どうも過当競争的体質がございまして、本来であれば業界全体として適正なコストを市価に反映させられればいいわけでございます。たとえば豪州糖が少々高くてもそれは適正なコストと見ていただければ、それが市価に反映されればそれなりに業界は安定し得るわけでございます。それがいまの業界の体質はやや過当競争的でございまして、そういう点が一つの大きな問題であろうと思います。この点は一朝一夕に解決するのはなかなかむずかしいとは思いますけれども、幾ら支持カルテルあるいは不況カルテルということを繰り返しましても、やはり業界の体質の健全化を図らなければ、どうも基本的な問題がなかなか解決しない。  そういう観点から、三月にカルテルの支持がございましたときに、農林省から業界に対しまして、みずからの業界をみずから体質改善していくためにはどういう問題点を考えるか、これに対してどういうことを考えていくのか、業界の中で十分検討するようにということを強く申し添えてございます。現在、業界の中で数人のメンバーによりまして、たしか体質改善委員会と称しておったと記憶しておりますが、かなりまじめに議論が進んでおります。それが六月からすぐに反映するかどうかは別にいたしましても、そういう業界が自分の足で立っていこうとする意欲を、この際みずから検討してつくり上げることが何よりも大事であろう、こう思いまして、そういう議論がある程度まとまりました段階では、その中身について役所も詳しく聞き、役所ができることは応援していくことも考えてまいりたい、このように考えております。
  98. 依田実

    ○依田委員 砂糖は前は、消費が年々大体六%くらい伸びておった。ここへきて頭打ち。どんぶりの大きさが大きくならないのですから、いまの業者の数からいえば過当競争に相なるわけであります。そこで、対策委員会、体質改善委員会ができておるわけでありますけれども、いまの課長の御説明にもあったように、六月以降間に合うのかどうか非常に疑問だろう、こう思います。その場合には不況カルテルになるのでしょうか。
  99. 牛尾藤治

    牛尾説明員 砂糖の価格が暴落いたします際には、単純なる需給問題を離れた場合も間々ございます。早く言えば、適正な数量を売るにいたしましても、他の会社がどういう行動に出るかわからないということで、必要以上に結果的に過当競争の憂き目を見ることもございます。業界がその体質を改善すると言いまして、個別の会社の合理化、近代化の問題と業界全体としての合理化、近代化の問題との真剣な議論が続きますれば、少なくとも業界の間にございます疑心暗鬼といいますか相互不信、こういうものがある程度払拭されれば、現在の価格がまた安定下限価格を一挙に割るようなことにならずに済むかもしれないとは思っております。  いずれにせよ、この業界の長年持っておりました体質が一朝一夕に変わることはむずかしいかと思いますが、現在の業界の体質改善委員会、業界の中でコストカルテルという言葉を使っておりますが、そういうものにどう取り組んでいくかという姿勢は、過去になかった程度のかなり意欲的なものと見受けられますので、その検討結果に期待してまいりたいと思っております。
  100. 依田実

    ○依田委員 もう時間が余りありませんので、先ほどからのお話の中でこの支持カルテルと豪州糖の輸入とが直接結びつくかどうか、これはいろいろ問題のあるところかもしれませんけれども、ここでひとつ話題を変えさせていただきます。  今度の豪州糖の輸入の契約の仕方あるいは相場観、こういうものを見ると、どうも日本というのは、いまや生産大国になっておりますけれども経済大国にはなっていない。つまり、汗水流して物をつくる、この努力だけでございまして、頭で世界の金を集める万ではとんと不十分じゃないか、不得意じゃないか、こう思うのであります。これは金融市場の方もそうでありますし、また商品関係の市場もそういう感じがするわけであります。いままでの長い伝統、蓄積がございませんから、すぐに東京に世界的な金融市場だとか商品市場というのは無理かと思います。しかし、長い目で見ると、日本は単に物をつくるだけではなくて、世界の金を頭脳一つで集めてくるという努力もしなければならぬのじゃないか。いま、われわれが海外旅行に行くにも、その保険は大体アメリカの大きい保険会社にみんな吸い取られてしまう、こういう状態であります。  そういう意味で、日本商品市場といいますか、商品取引所、これをひとつ世界的なものにシカゴとかロンドンとかいうようなところのようにすぐには相なりませんけれども、少なくとも東南アジアの物資や何かに関する限りは東京でヘッジができる、このくらいの商品取引所というものをつくらなければいかぬのじゃないか。そうしませんと、今度のように相場を間違ってしまう、そういうものに熟練しない、こういうことになるんじゃないかと思うのであります。  農林省の関係の万に伺います。日本のこの商品取引所、これは今後、日本経済大国になる中で、いまの状態でいいのか、あるいはこれを長期にわたって大きく育成する、そういう方向にあるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  101. 堤恒雄

    ○堤説明員 お答えいたします。  商品取引所は物資によって農林省と通産省と所管が分かれておりますけれども、私の方の農産物関係で申し上げますと、現在砂糖とかあるいは小豆、大豆、さらには生糸関係、こういうものを上場しているわけでございます。十二取引所現在あるわけでございます。  先生お話しのように、商品取引所も戦後再開されてもう二十五年の歴史を持つわけでございまして、私ども商品取引所を所管しておる立場から申しますと、お話しのように、わが国の経済、なかんずく流通経済の発展に大きく寄与する方向に行くことが望ましいのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。しかしながら、商品取引所は当然のことながら、その物資についての生産なり消費なり、そういうことについて集散地であるという実態がかなりの程度ないと、なかなか先生がいまお話がありましたような方向に地盤を築いていくことはむずかしいという側面があるわけでございます。そういう点からいいますと、御案内のように、生糸取引所について言えば、生産量について見ても、消費量といいますか、そういうことについて見ても、日本が圧倒的な地位を占めているわけでございまして、事実上国際的な価格指標を生み出す取引所になっているわけでございます。ところが、ほかの商品について言えば、大豆にしてもあるいは砂糖にしてもほとんど大部分を輸入に依存する、こういう実態でございますので、なかなか日本での価格指標というものが国際的な指標になり得るというところまでいけない、こういう実態があるわけでございます。  ただ、私どもとしては、やはり砂糖にしても非常に大きな輸入国でございますし、大豆についても最大の輸入国である、こういう実態から言えば、少なくとも消費地の商品取引所としてそういう国際的な指導的役割りを果たし得るものに伸びることが望ましいと考えているわけでございます。したがって、そのためにはやはり、いまそれぞれの上場商品に幾つかの複数の取引所があるわけですけれども、こういうものの統合の問題とか、それから市場管理その他について国際的に信用を得るようなそういう指導をしていかなければいけないのではないかと考えておるところでございます。
  102. 依田実

    ○依田委員 輸入大豆の商品が上場になって、いまじゃヘッジの場として非常に機能しておる。あるいはまた東南アジア、いろいろな食料の関係でたとえば干しシイタケとかそういうものも上場してもいいのじゃないかという気もいたします。  いずれにいたしましても、私の申し上げたいのは、今度の豪州糖の輸入、その後の経過、こういうものを踏まえまして、日本もそろそろいわゆる経済大国、本来の経済大国になる必要があるのじゃないか、そのためには金融市場、そしてまた商品市場、そういうものの整備がそろそろ急がれるのじゃないか、こういうふうに思いまして、きょうはいろいろ御質問をさせていただいたわけであります。  もう本会議も近いわけで、これで終わらせていただきます。
  103. 西宮弘

    西宮委員長 依田実君の質問はこれで終了いたします。  次回は公報をもってお知らせすることとして、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十四分散会