○稲富
委員 私は、今回締結されました
日ソ漁業協定の
内容に対しまして、率直に申し上げまして決して満足するものではございません。かえって、将来に対して多くの不安と疑問というものを残しておるというような感じがいたします。
しかし、今回
農林大臣が、長い間の粘り強さと非常な
努力によりまして、その
交渉の結果、ここまでこの
協定を運んでこられたというその熱意と
努力に対しましては、これを高く評価するとともに、多大の敬意を表することにやぶさかではございません。この機会に、その御労苦に対しましては厚く感謝の意を表したいと存じます。
しかしながら、これは今後
わが国としての重大な問題でもありますので、今後の問題として私たちが対処するについて、疑問のある点に対しては率直に若干のお尋ねを申し上げたい、かように
考えております。
持ち時間がわずか二十分でございますので、かいつまみまして簡略に申し上げますから、その点あしからず御了承願いたいと思うのでございます。
まず今回の
協定の第一条でございます。第一条には、御承知のとおり「この
協定は、千九百七十六年十二月十日付けの」 「ソヴィエト社会主義共和国連邦最高
会議幹部会令第六条及びソヴィエト社会主義共和国連邦
政府の決定に従って定められる
北西太平洋のソヴィエト社会主義共和国連邦
沿岸に接続する
海域において
日本国の国民及び
漁船が
漁獲を行う
手続及び
条件を定めることを目的とする。」とありまして、いわゆる最高
会議幹部会令の第六条によるものであるということをはっきりうたってあります。ところが、この第六条には、これはもう私が申さなくても御承知のとおり、
ソ連邦沿岸に接続する領土の問題というものがやはりはっきりうたってあるわけでございます。
先刻からの
農林大臣の御答弁を承っておりますと、今回の
協定においては領土問題には
一つも触れてない、ただ
漁業問題としてこれは解決されたんだ、これはもちろん大臣の非常な
努力の結果そういう結果になった、こういうように解釈をしていらっしゃるようでございますが、私は率直に申し上げまして、実はこの点について果たしてそう解釈していいかどうであるか、ここに非常に大きな疑惑を持つわけでございます。すなわち、第八条におきましては御承知のとおり「
相互の
関係における諸問題についても、いずれの
政府の
立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」、こういうふうにはっきりうたってあります。そうなりますと、やはりこの幹部会令第六条の問題というものが第一条において非常に大きなウエートを占めているのじゃないか、こういうことをわれわれは
考えるわけでございます。
それで
農林大臣は、イシコフ
漁業相との間でこの点ははっきり確約をした、こうおっしゃいますが、はなはだ失礼でございますが、それではイシコフ
漁業相がその幹部
会議の意思までも動かし得るだけの権能があるかどうかという問題が起こってくる。今後当然
ソ日協定が結ばれる場合におきましてもこういう問題が起こってきはしないかということを非常に懸念するわけでございます。第二回目の
交渉におきましても、すでに
農林大臣とイシコフ
漁業相の間にある程度の了解をとった。ところがやはり最高
会議幹部会の閣僚
会議の結果においてそれがとうとう実現しなかった、こういうような前例もあるがゆえに、私はこの点に対して一抹の不安を感ずるわけなんです。はなはだ失礼でございますが、これが口約束であるか、あるいは交換公文でも
相互の間に交換し合ってその点が約束されたというなら別でございますけれ
ども、この点に対してどういうような状態であったかということを、私は不安でありますがために、はなはだ失礼なことになるかもわかりませんけれ
ども、ひとつ大臣の所感を率直に承りたい、かように
考えます。