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1977-04-26 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十六日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  萬君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 美濃 政市君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       愛野興一郎君    加藤 紘一君       久野 忠治君    熊谷 義雄君       佐藤  隆君    染谷  誠君       羽田野忠文君    平泉  渉君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    岡田 利春君       岡田 春夫君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    野村 光雄君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    川合  武君       菊池福治郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         農林大臣官房長 澤邊  守君         水産庁長官   岡安  誠君         海上保安庁次長 間   孝君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省欧亜局外         務参事官    加藤 吉弥君         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         大蔵省主計局主         計官      宍倉 宗夫君         社会保険庁医療         保険部船員保険         課長      川崎 幸雄君         海上保安庁総務         部長      鈴木  登君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月二十五日  辞任         補欠選任   村上 茂利君     中野 四郎君   東中 光雄君     津川 武一君 同月二十六日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     岡田 春夫君   菊池福治郎君     川合  武君 同日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     角屋堅次郎君   川合  武君     菊池福治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  領海法案内閣提出第六七号)  漁業水域に関する暫定措置法案内閣提出第七  四号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  すなわち、外務委員会においてただいま審査中の日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部の境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部の共同開発に関する協定の締結について承認を求めるの件について、連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会の日時は、外務委員長協議の上決定いたしますが、本日午前十一時開会する予定でありますので、御了承ください。      ————◇—————
  4. 金子岩三

    金子委員長 領海法案及び漁業水域に関する暫定措置法案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  5. 岡田春夫

    岡田(春)委員 昨日の連合審査の際における御答弁についてまだ納得のできない幾つかの点があるわけでございます。こういう点を、きょうは四十分でございますが、質問を続行させていただきたいと思います。  まず最初に、けさの新聞を拝見しますと、サケマス漁業交渉最後の段階で暗礁に乗り上げた。これは予見されておった問題であったかどうか知りませんが、しかしながら、こういう事態になったことについて、その原因は一体どこにあるのか、そして、今後政府としてはどういうふうになさるつもりであるのか、こういう点について、まず農林大臣から伺いたいと思います。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 大変御心配をかけておりまして恐縮をいたしております。  ただいま岡田さんから御質問がございましたサケマスソ連の二百海里外の公海上、つまり日ソ漁業条約に基づく公海上の漁獲割り当てにつきまして、さきに六万二千トンということで合意をいたしておったわけでございます。その取り決めの議事録につきまして、日ソ漁業条約公海上における漁獲量はこうである、なお、二百海里の中においてはわが方としては実績もあるわけでございますから、それについてわが方としては漁獲割り当てについての留保をしておく、こういう議事録にいたしたいということで、漁業相との間では、荒勝代表の連絡によりますと、九九%まで合意なされておりまして、二十五日に署名もする、なお、ニコノロフ代表は二十八日に東京に参りまして、日ソ漁業交渉を再開して、東京で調印をする、こういうところまでいっておったわけでございます。しかるところ、突然、一九七七年の二月二十四日、ソ連邦閣僚会議決定適用海域の問題が出てきたわけでございます。これは私とイシコフ大臣との間の四回にわたる交渉でも、一条問題は領土絡みの問題ということで妥結に至らないでおったわけでございます。その問題を議事録の際にまた持ち出してきた。これは、漁業省ニコノロフ代表は、至上命令であって自分としてはどうにもならぬ、こういう釈明をしておるようでございます。これはなかなか根が深い問題であると私は受けとめておるわけでございまして、荒勝代表には日程を延期させて、さらに交渉継続をやるように指示いたしておりますけれども、私もどうしても一日も早く参りまして、メーデー明け早々にでもイシコフ漁業大臣と会談をして、一条問題とともに事態早期解決を図りたい、このように考えておる次第でございます。
  7. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの御答弁を伺っていると、事前にはそのような話は全然なかったんだけれども、突然至上命令によってそういうことが行われた、こういう御答弁でございますが、至上命令というのは具体的に言ってどういうことを意味するのですか。そこら辺の点について伺いたいのが一点。  第二点は、私は、この問題を通じても、領土問題というものでソ連側はきわめてかたい態度をとっている、こういうことになると、今後五月交渉と言われているあなたの漁業交渉においても、領土問題はきわめて厚い壁にならざるを得ないであろう。相当長期を決意せざるを得ないであろう。しかし日本の民族の願いとしては、領土問題は絶対に譲るべきではない、こういう立場を堅持してもらわなければならないことは昨日もお話を申し上げたとおりです。そういう点を含めて御決意のほどをもう一度伺いたい点が第二点であります。
  8. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 至上命令と申しますのはソ連の内部のことでございまして、一体、党の政治局の方であるのかあるいは閣僚会議であるのか、その辺がどうもまだ明確になっておりません。恐らく議事録等署名をいたしますためにはソ連外務省とも協議をするでありましょうし、その上の方ともするかもしれません。そういうようなことで、私どもはいずれにしても漁業相イシコフ大臣の了承まで得てもう九九%合意し、署名は時間まで打ち合わせて行われることになっておったことが急に変わったという事態を重視いたしておるわけでございます。と同時に、岡田さんがおっしゃるように領土問題についてのソ連の壁が厚いということでありますと、この交渉はなかなか困難な問題である、このように認識をいたしておるわけでございます。しかし、私がきのうも岡田さんにも申し上げましたように、日ソ友好関係維持発展をさせることが両国の相互の利益にも合致することであり、また世界の平和の上からも重要な問題でございますので、ソ連最高指導部が大局に立って日ソ友好関係の将来のために十分考慮してほしいということを心から願っておるものでございます。
  9. 岡田春夫

    岡田(春)委員 領土問題に関連をして伺っておきますが、いまも御答弁の中にあった二月二十四日の閣僚会議決定、これが出されたことに対して、日本政府態度としては、少なくとも北方四島というのは日本固有領土である、したがって、この固有領土に対して不法占有をしているという意味のきのうの外務大臣答弁もございました。この不法占有をしている北方領土について線引きを行った。そして具体的な線引き閣僚会議決定で行われたということであるならば、日本政府としてこれに対してどういう対応を行ったのか。外務省抗議声明でも行ったのか、抗議申し入れをやったのか、ここら辺の点を明らかにしてもらいたい。
  10. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいまおっしゃいました大臣会議決定が発表されましたことに伴いまして、日本政府は二月二十五日に官房長官談話を発表いたしまして、ソ連側がこのような一方的措置をとったことは遺憾であってわが国としてはこれを認めることができない、こういう談話を発表いたしますと同時に、佐藤外務次官ポリャンスキー大使を招致いたしまして同趣旨の声明をいたしました。
  11. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、時間も大分進んでまいりましたので、昨日の継続を若干いたしてまいります。  私の昨日質問した問題の一つとして、領海法の中で中間線規定がないではないか、この中間線規定について一体どうなっているんだということの質問をいたしました。その具体的な例として、択捉海峡の場合に中間線で線を引くのかどうなのか、こういう点を質問をしたのでございますが、もう一度確認する意味において伺っておきたいのですが、外務省としてこれはどういうことになりますか。領海線択捉海峡に引くんですか、どうなんですか。その場合に中間線をとるのですか、どうですか。
  12. 井口武夫

    井口説明員 当然そういう場合に中間線になるということでございます。
  13. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、なるというんじゃなくて、引くんですかどうなんですか。現実に引くんですか。
  14. 井口武夫

    井口説明員 これは、領海条約によって、相対している二国間におきましては、中間線を越えて領海を拡張できないということでございますから、その一般的原則に従って、中間線を越えては拡張できないという立場でございます。
  15. 岡田春夫

    岡田(春)委員 引くのかどうかと聞いている。引くのか引かないのかと聞いている。それだけ答弁してください。
  16. 井口武夫

    井口説明員 引くということになります。
  17. 岡田春夫

    岡田(春)委員 引くわけですね。そうすると、それは何海里ですか、十一海里ですね。
  18. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。十一海里です。
  19. 岡田春夫

    岡田(春)委員 宗谷海峡の場合には二十海里で特定地域にしましたね。択捉海峡特定地域にしないという根拠はどういうところにあるのですか。
  20. 岡安誠

    岡安政府委員 特定海域海域に決めておるわけでございますけれども、これはやはり、間隔が二十四海里以内で一応十二海里、十二海里ということになりますと閉じてしまうような海域であることとか、それから、第三国といいますかの外国船の航行が非常に頻度が高いとか、いろいろ理由があるわけでございますが、そういうようなことを考えますれば、私どもは、今回は五特定海域だけが、とりあえず特定海域に指定する必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。
  21. 岡田春夫

    岡田(春)委員 岡安水産庁長官の御答弁もいま伺ったのですが、宗谷海峡はそういう第三国の船が通る、だから三海里以上にしない。択捉海峡は完全に二つに分けてしまうわけですね。第三国の船は通らなくて構わない、こういうことですね。そういうように理解してもよろしいですな。
  22. 岡安誠

    岡安政府委員 現状におきましては特定海域に指定する必要がないという考えでございます。
  23. 岡田春夫

    岡田(春)委員 必要のないという根拠は、第三国の船は通らなくてもいいという一つ理由があるわけでしょう。そうじゃないのですか。
  24. 岡安誠

    岡安政府委員 最も大きな理由は、外国船の通航につきまして現状必ずしもつまびらかでないという点もございますし、推定いたしましてもそう頻度は高くないのだろうという想定がございますので、今回は特定海域に指定をしないということでございます。
  25. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その線を引くことは、中間に十一海里の線を引くと先ほど御答弁ですが、これは領海法の中に中間線という規定がない、それならば国際条約に基づいてこれは当然受け入れるべきものとしてこれを準用する、こういうことになると思うのですが、日本国内法措置というものをとらなくてもいいのですか。
  26. 岡安誠

    岡安政府委員 これはすでに私どもが受け入れております条約とそれから国内法との関係でございますけれども、特別に国内法で準用その他の措置を必要としないというのがわれわれの解釈でございます。
  27. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その法的な根拠はどこにありますか。
  28. 岡安誠

    岡安政府委員 憲法の九十八条におきまして、わが国条約につきまして署名をし、それの批准と手続が完了いたしますれば国内法と同様の効果があるということになっておりますので、従来もそのような措置で諸制度が運営されておりましたので、今回もそのようにいたすつもりでございます。と申しますのは、領海条約との関係、きのうからいろいろ御質問ございますけれども中間線のみならすほかのいろいろ規定——規定といいますか、制度領海条約に書いてございます。同じようなことを書いていかぬということはございませんけれども、書きますと領海条約とほとんど同じようなことを全部書き込むということになるわけでございます。それで、私ども今回基線につきましては、領海条約にございますいろいろな原則を選択をいたしまして、直線基線は採用しないということから領海法にはっきり書いたわけでございますが、それ以外の領海条約の定めにつきましてはもっぱら私どもはそのとおり受け入れるといいますか、施行されるというように考えておりますので、改めて領海法規定を要しないというふうに考えておるわけでございます。
  29. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたのいまの答弁を聞いていると、領海条約のすべてのものを書かなければならないという意味のことをおっしゃるけれども、そういう問題じゃないですよ。主権範囲統治権範囲に関する問題ですから、これを条約をそのまま準用するというような、そういう方法をとるべきではないと私は思う。あなたその根拠は何かということを伺ったら、憲法九十八条二項でしょう。ところが憲法九十八条二項というのは条約尊重義務ですよ。一般的な精神規定ですよ。尊重義務というものが、直ちに国内法律をそういう形で、法律的なことを創設せずにそれによって規定できるという解釈にはならないと思う。そういう点は、尊重義務というものを乱用することになると思う。これは国内法において規定しなければいけない問題です。この点はどう思いますか。
  30. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは先ほど来政府委員の方から御答弁申し上げておるとおりで十分足るとは思いますけれども岡田さんのこれは主権の及ぶ範囲を明確に国内法でもやった方がいい、こういうことで、私ども主権の及ぶ範囲ということはこれで明確とは思っておりますけれども、さらに国内法でもそれを明確にした方がよろしい、こいう御意見、これは十分尊重いたしまして、政府部内で前向きで検討いたします。
  31. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、農林大臣の御答弁を伺っていると、前向きに検討するということはこの法律の修正を含むというように理解してもよろしいですか。
  32. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのように御理解いただいて結構です。
  33. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その点は、それでは前向きということがどういう前向きかちょっとまだわかりませんが、法律改正を含むという意味だということを理解して、委員の皆さんも、この法律の審議の経過の中でこの点が具体化されることを期待いたします。  それから、先ほど九十八条の二項、これは重要な点ですから岡安さんに伺っておきますが、そういう先例があるかのごときお話があったが、先例があるなら具体的にお示しください。先例がありますか。ないでしょう。あるならあると、具体的にお答えください。
  34. 岡安誠

    岡安政府委員 本来ならば、こういう関係法制局の方から御答弁すべきかと思いますけれども、私どもはいままで法律制度を扱っております立場から申し上げますと、先ほど申し上げましたようなことが従来からの慣例であると思っておりますが、たとえばこれはこういう御答弁ではちょっとおかしいかもしれませんけれども昭和二十五年に衆議院におきましてやはりそういう御論理がございまして、当時の佐藤政府委員、これは法制局長官と思いますけれども条約法律との関係におきましては、これは元の憲法時代から政府立場は大体一貫していると申し上げてよろしいと思うのでありますが、条約が締結されまして、その内容に国内法的な事項を持っておる。それが無事締結されて、従って官報に公布されるということになりますれば、それは法律と同等の力を持つという建前で近年まで、」云々というふうに答弁をいたしておるわけでございます。私どもも従来から、憲法条約との関係はそのようなものであるというふうに考え、また運用をしてきたわけでございます。
  35. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、それは先例にはならないでしょう。それは解釈でしょう。あなたは先例があるとおっしゃるのだから、それなら先例をお示しなさいと私は言っている。ただ、時間がないからもうこの程度にします。  それではもう一点伺っておきますが、先ほどの中間線の点は大臣が前向きの形で処理をする、それは法律改正を含めて前向きに処理をする、こういう御意見でございました。  そこでもう一つ。この中間線の問題を含めてそれ以外に十二海里のところ、三海里のところ、こういう領海の線ができるわけですね。これを一般に公示するのはどういう方法をとりますか。それは、あなたの方のお好きな領海条約を読みましょう。領海条約の十二条に、いわゆる中間線の場合についての規定がございます。第二項に「向かい合っているか又は隣接している二国の領海の間の境界線は、沿岸国が公認する大縮尺海図に記載しなければならない。」これは大陸だなの場合においても、鮫瀬問題でいろいろ問題になっておりますね。ああいう問題をお考えいただいてもおわかりのように、必ず海図にこれを明示しなければならないはずなんです。今度の場合は、いま言った中間線の十一海里の点を含めて、十二海里、三海里の線の公示の方法、これはどういう方法で行われるのか、この点を伺いたいと思います。
  36. 鈴木登

    鈴木説明員 お答えいたします。海上保安庁の者でございます。  いま先生から御質問の点は三点あろうかと思います。一つは純粋に単純に領海十二海里の線と、それから二番目はいま御指摘のいわゆる択捉中間線の問題、それから三番目は特定海域のいわゆる三海里に据え置くところの問題、この三つの問題のうち最初の問題とそれから最後の問題、これは領海条約の方に特に大縮尺海図に明記しろという規定はございません。  それから、二番目の問題の中間線の点につきましては、領海条約の中で大縮尺明示しろ、これは先生の御指摘のとおりでございます。したがいまして、領海条約に基づきまして一応その中間線の方は、私どももこの法律が通りましたら関係各省とも打ち合わせの上、その中間線海図明示するつもりでございます。  それから十二海里の方は、これは低潮線から自動的にはかられますので、この点については明示するつもりはございません。  それから特定海域の点につきましては、これは従来から本委員会におきましてもたびたび議論されておりますとおり、世界に初めてのような特殊な例でございますので、やはり航海者に対する便宜の点、それから漁業者に対する便宜の点から考えましてこれを海図明示したいと思っております。それを海図明示いたしますとともに、先生指摘のどうやって一般に公示するんだということにつきましては私どもの方で「水路通報」を毎月発行しておりますが、その「水路通報」を発行いたしまして、これは英文でも日本文でも発行いたしますので、それを全世界にばらまくつもりでございます。
  37. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、択捉海峡中間線明示をする、それから三海里の特定海域五つのところは明示をする、十二海里のところは明示をしない、そんな地図が一般国民にわかりますか。どうなんですか。
  38. 鈴木登

    鈴木説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、この書き方については関係各省ともう一度打ち合わせて書くつもりでありますけれども原則だけを申し上げまして、その特定海域領海の線とそれから中間線の点につきましては、中間線の方は条約で要求されておりますし、それから三海里の点については条約で要求されてはおりませんけれども航海者あるいは漁民の便宜のためにちゃんと書きまして、それを「水路通報」で公示いたします。(発言する者あり)
  39. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまもここからも御発言もあったように、そんな地図わからないじゃないか。本当にわからないと思いますよ。あなた、これから御相談になるそうですから、やはり十二海里を含めた線を明示しませんと、ちょっとあなた頭の中で思い浮かべてみてくださいよ、たとえば択捉海峡のところのそこだけ線を引いて周りは書いてない、宗谷海峡のところ、こう線を引いて北海道の周りは何も書いてない、それから東北に来ても何も書いてないで、津軽海峡のところだけ書くのか、そんな地図見たって、これは何の線だかわからないでしょう。やはりこれは全体として線を引く中でそれを明示しないと私は明らかにならないと思う。そういう点でもし御意見があればお聞かせください。
  40. 鈴木登

    鈴木説明員 どうもお答えが不正確で申しわけございません。実は海図というのは全部で千数百枚ございまして、そのうちに大縮尺というのは一枚しかございません。たとえば宗谷海峡につきましての大縮尺はこれぐらいの大きさのものが一枚しかございませんで、それ一枚に書けばもちろん三海里部分も当然その中には入ってくるということになりますので、そういうことでお許しいただきたいと思います。
  41. 岡田春夫

    岡田(春)委員 全体として線を引くように希望いたしておきます。  それから、もう時間が二、三分しかありませんので、今度政令の概要をきょうお出しいただいたんですが、農林大臣のせっかくの御努力を私も多といたします。ただ、いまお出しいただいていますぐ質問しろと言われても、これはなかなか私も質問しにくいわけです。  ただ一つだけ私伺っておきますが、領海法の第二条第二項の「基線として用いる場合の基準」、この基準というのは具体的に何を意味しますか。これは政令の中にあるんですか、どうなんですか。これは、「政令で定める。」こういうことになっていますが、政令のどの部分に当たってどういうことになるのか、この機会に御説明を願っておきたいと思います。
  42. 岡安誠

    岡安政府委員 いま「領海法案政令規定見込事項」というのをお手元にお配りいたしてあると思いますが、その第二のところに「法第二条第二項の政令は、」というふうに書いてございまして、前項「本文に規定する線を基線として用いる場合の基準」それはここにございますとおり、低潮線につきましては海図に記載されている低潮線を用いるというようなことでございます。その他ここにありますように、「湾口に引かれる直線についてはその天然の入口」云々というような基準政令で定めたいというふうに考えておるわけでございます。
  43. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、いま私もこれを読んでちょっと判断できない点もあるのですが、岡安さん、ここにもあなたの御説明の後の方に問題点ありますね。「その他基線を定めるに当たって必要な事項として湾の定義等を定める見込み。」「その他」ということは一体何ですか。いわゆる政令の内容を私は聞きたいときのうから言っているのは、この法律二条二項の中に「その他基線を定めるに当たって必要な事項は、政令で定める。」と、こうあるでしょう。その政令の具体的な内容は何かということを私は伺ったわけだ。それを資料でお出しになったわけだ。ところがその資料を見たら、また「その他基線を定めるに当たって必要な事項として」の「湾」ということは一つ出ているけれども、それ以外にその他というものもあるのですか。
  44. 岡安誠

    岡安政府委員 二条二項の政令記載事項は二つのグループに分かれまして、御指摘のとおり「基線として用いる場合の基準」というグループと「その他基線を定めるに当たって必要な事項」というふうに分かれるわけでございまして、「その他」につきましてはお手元に例示としまして「湾の定義」というのがございますけれども、それ以外では「低潮高地」というものの定義、たとえば潮が満潮のときには隠れてしまいますけれども、これが干潮になった場合には頭を出すというようなものを低潮高地と言っておりますけれども、それはどういうものであるかというような定義、これは一応領海を定める場合に重要な事項でございますので、そういうことをこの政令で定めたいというふうに思っておるわけでございます。
  45. 岡田春夫

    岡田(春)委員 政令の問題についていろいろ質問をしたい点ももう少し調べてみたら出てくると思いますけれども、私の時間も大体これでいっぱいでございますので、あとは農林水産委員の専門の皆さんがこれはおやりになるだろうと思いますから、私の質問はこれで終わります。
  46. 金子岩三

    金子委員長 美濃政市君。
  47. 美濃政市

    ○美濃委員 領海法並びに漁業水域の暫定措置法について若干の質問をいたしたいと思います。  かなり審議も長時間にわたっておりますが、しかし大切な問題でありますので、重複はいたしますけれども、簡単に第一の問題点として領海法の附則の二、特定海域についてまず最初にお尋ねしたいと思います。  すでに繰り返されておりますが、私が聞いておってこの問題だけわからないわけですね。いろいろ質疑を通し、あるいはいろいろの角度から検討いたしましても、領海の幅は海洋法会議の全体を通じてみても国際的に十二海里ということが大勢であります。もう一つは、国際海峡に隣接する世界の各国もおおむね領海十二海里で決定されております。そうすると、どうしてわが国だけが現状を凍結という世界に例のない変則的な法律をつくるのか、これがどうしても私にはわかりません。いままでの質疑の中ではわからないわけです。わからない理由を申し上げますと、農林大臣説明もこの面は、——他の面は非常に御苦労されて、農林大臣の言われておることは全部わかります。他の面は私どもも同調できるが、単に抽象的に国際海峡のより自由な通航制度を目指すためということだけで、日本国としてこれこれの国益上、あるいはこれこれの理由に基づいてどうしてもこうしたい、この具体性がありません。ただ、より自由な国際海峡の通航制度を目指すため、あるいは日本のように貿易の多い国という全く客観的な表現でありまして、具体性がない。  それからもう一つは、外務省意見を審議の中ですべて聞いておりますと、きのうの合同審査あたりで、これはそういうふうにはっきり言っているわけではないけれども、私の受ける主観を含めて申し上げますと、海峡を通航する外国船に核装備の疑いがあっても、尋ねることはできるが確認する方法がない。それ以降は私どもの主観が入るのでありますが、だから、わが国の非核三原則のたてまえからは、三海里に凍結しておくことが無難であるという態度に見えてくるわけですね。言葉ではそこまでは表現しませんけれども、確認する方法がないということはきのうも言っておりますね。だから非核三原則のたてまえからいけば、三海里に凍結しておくことが、この五つの海峡はいずれも広いですから、そういう災いが残らない、非核三原則のたてまえから無難であるという判断にほかならないのではないかという理解しかできないわけです。  しかし、前段に申し上げたように、国際慣行やあるいは海洋法会議の国際的条件を見ておると、私個人だけではなく、社会党としては、これは十二海里の無害通航で、現行条約で十分こなせるのではないか。どうもこの三海里の凍結をするということは、結局前からも質疑が交わされておるように、いわゆる日本領海主権というたてまえからいけば三海里に凍結するということはまことに変則的な、何かどう考えても国際的に卑屈な態度としか受け取れない。日本国としてとるべき態度ではないのではないか、その結論しか私どもには出てこないわけです。ここはこの法律の一番大きな一つのかなめでありますから、これはやはり解釈を変えるべきだと思うのですが、私どもはそう考えるわけです。重ねてこの点ひとつお伺いしておきたいと思います。
  48. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 領海十二海里を設定しております国は、世界でも六十カ国ぐらいあるわけでございます。その中で、日本のようにいわゆる国際海峡について現状のままにしておく、つまり三海里になる、他は十二海里であるということは、世界に類例がないということもそのとおりでございます。  しかし、全然ないわけではないわけでございまして、フィンランド等におきましては、あの国は領海四海里をとっておりますが、一部では三海里をとっておるというところもございます。しかしそれは例外としても、六十カ国の十二海里領海というのは、おおむね既往においてそういう十二海里が設定をされたということでございまして、現在国連海洋法会議におきまして、いわゆる国際海峡については一般の無害通航の制度よりもより自由な通航制度というものが、単一草案等におきましてもそういう方向に収斂をされつつある、議論がそういう方向に向いておる。またわが国も海洋国家であり、海運国家である。また近代工業国家として海外から資源、エネルギーを輸入をし、また自由な通商航海によって経済の発展を図っておる。そういう意味では貿易立国であるというような総合的な国益を踏まえまして、海洋法会議におきましては、わが国はより自由な通航制度というものを主張してきておるわけでございます。これは皆さんもよく御存じのところでございます。そういう主張をやっておりますわが国としては、日本列島周辺のいわゆる国際海峡についても、そういう主張の線に沿うて措置をするということが首尾一貫した政策の上に立つものである、このように私どもは考えておるところでございます。社会党の皆さんの御主張もよく私承知をいたしておりますが、政府立場はそういうことであるということで御理解を賜りたいと思うわけであります。
  49. 美濃政市

    ○美濃委員 この問題については、いままで各委員から並行線で質疑が行われておりますので、この法案の取り扱いを最後どうするかという次の段階に入っております。そのときにこの問題をまた別の角度で国会内部で取り上げられると思いますので、時間の関係もありまして、これ以上この問題については質疑を続けません。しかしこれは、あくまで私どもの考えはきちっと申し上げておきましたから、この考え方は最後まで変わらない。私どもの考えに間違いはない、こういうふうに考えておるということをこの機会にはっきり申し上げて、これから法案の最終の取り扱いの詰めに入るわけです。  次に、もう一つお尋ねをしておきたいと思いますが、これから大臣が再度訪ソをされての日ソ漁業交渉というのはきわめて重大な事態に直面しておると思うのです。したがって、この法案が提出されて、再三にわたり質疑の中で大臣から国会として要請されております、いわゆる同じ土俵にしてくれ、これは私どもも同じ土俵にして今度の交渉農林大臣が臨めるようにしなければならぬ、これは素直に受けとめて、この日程も、大臣も相当疲れるなと私どもも見ておりますけれども、御存じのような長時間、これはやはり間に合わすように私どもも努力をしておるわけです。大臣が訪ソするまでに間に合わせなければならぬということで、懸命に私ども努力しておるわけですが、その中でどう考えても、これまでの質疑にもございました施行が公布後三カ月以内というのはあんまりのんびりし過ぎているのじゃないか。国会は真剣になって、現地調査もしなければならぬというので、日曜日も使ってその日程を消化しているんだ。にもかかわらず、施行が公布後三カ月以内というのは余りにものんびりし過ぎている。以内と表示されているわけですから、ここでどうこうと言うのじゃないが、三カ月以内であれば、土俵はできたけれども回しを締めないで土俵に上がるようなことになる。やはり弱いと思うのです。それは大臣が訪ソするまでに施行もしていくということは、日程的には、施行というものには日にちも要るということはわかります。だけれども、施行がごく近いというきちっとした姿勢で行くのと——三カ月以内に施行するんだというのは回しを締めないで土俵に上がったようなものである。ですから、ぜひ一カ月以内には施行をするという決意の表明をしてもらいたいと思います。これはできるはずです。これだけの重要な問題ですから、三カ月となっているが、一カ月以内には大体諸準備を整えて施行の段階に入る、この決意の表明をここでいただきたいと思います。
  50. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまの美濃さんの御発言の中で重要な問題が二つございます。  一つは、私が五月の上旬に訪ソをする際にぜひ共通の土俵で交渉したい、そのことが果たして交渉に有利であるかどうかという御意見がその中に入っておると思います。この点につきましては、いま漁業協定交渉で残されておりますものは、第一条の問題と第二条の問題。第二条は修文化の問題があるわけでございます。そういう場合に、わが国領海の幅員十二海里、そしてその外に百八十八海里の漁業水域を設定する。これが国会の御承認を得ておるんだ、政令は、これは物理的な問題として、できるだけ早くやるんだ、こういうことと、まだ国会の御承認も得ていない、どうなるかわからぬということでは、これは交渉に当たりまして立場が非常に弱い、こう私は考えるわけでございます。特に第二条の問題は、御承知のように三—十二海里の問題がございます。そういう問題もありますので、はっきり国会の御承認を得て、わが国領海は十二海里である、こういう立場交渉をいたしますれば、第二条の問題なんかは非常にすっきりしてくるわけでございます。そういう意味で、ぜひ私の訪ソ前に各党の御理解、御協力をお願い申し上げたい、こういうことを重ねて御要請を申し上げるところでございます。  なお第二点の問題、国会でこれだけ日曜日も返上して一生懸命やっているのに、施行期日が公布の日から三カ月以内ということはのんびりしているじゃないかというお話でございますが、この点につきましては、私どもは、三カ月以内だからまあじっくり三カ月かけてやるんだ、こういう意味ではございません。事務当局におきましても、関係各省庁で、できるだけ早くこれを公布したい、また政令等に基づいて所要の措置を講じたい、そういう気持ちで取り組んでおります。と同時に、隣接関係国に十分それを周知せしめる必要があるというようなことでございますので、もっぱらこれはそういう必要不可欠な時間というものが必要であるということを念頭に置きまして、しかし御質問の御趣旨を踏まえて、三カ月以内ではあるけれども一日も早くこれを実施するように政府としては努力をする、こういうことで御理解をいただきたいと思うわけであります。
  51. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、領土問題の関連についてお尋ねしたいと思います。時間の関係で、広さにおいても漁業関連においても一番関係の多い北方領土を対象にしてお尋ねしたいと思いますが、竹島についても同様の趣旨だというふうに御理解を願っておきたいと思います。  今回の質疑中、外務省のどなただったでしょうか、私は聞いておったのですが、私の聞き違いもあろうかと思いますので確認をしておきたいと思いますが、北方海域における拿捕はどういう状況で起きておるかという問いに対して、拿捕されておる海域ソ連領海内と答えられたと思うのですが、これは間違いありませんか。
  52. 鈴木登

    鈴木説明員 そのとおりでございます。ソ連の、通称領海内での拿捕だけでございます。
  53. 美濃政市

    ○美濃委員 これは失礼しました。外務省でなくて保安庁がお答えになったのですね。  そこで私は疑義があるわけです。これは言葉が足らないのか、そういうふうに思っておるのか、今回提案されておりますいわゆる領海の参考図を見ても、四島には十二海里をかぶせて参考図ができております。私はこれは重要な問題だと思うのです。私の認識しておる範囲では、この四島は、この領海法案の参考図と同じ十二海里が日本領海として確保でき、同様に、これはさらに今回の漁業水域の二百海里がかぶさったとしたなら、恐らく拿捕されておるのはその中だと思うのです。たまたまサハリンの近くに行って、四島周辺から離れたところの拿捕ということもないことはないけれども、いままでの拿捕件数の大半はここで起きておる。ですから、船がとられればやはり船体保険も適用する。特に拿捕保険を適用しておる。ソ連領海で拿捕されておりますということになった場合、ソ連領海ですから、これは外国の領海に入って密漁しておるということになるんでしょう。一方的に日本の漁民が悪くて拿捕保険や何かを適用することはもってのほかということになるのですね。私どもはそう解釈していないのですね。この審議の中でも繰り返されておるように不法占拠である、わが領海なんだ、だからそこで漁業をするのは、ソ連との現況の対立はあったとしても、日本国としてはその正当性を主張しなければならぬし、その中から起きた損害については当然制度の上で救済しなければならぬというたてまえに立っておるのじゃないですか。私は、ソ連領海内で拿捕を受けておりますという表現については了解することはできないと思います。これは解釈はきちっとしてもらわなければ、それが一件もないとは言いませんが、拿捕の大半はいま言ったそういう海域の中で起きておるんだ。われわれはそれはやはり正当性を主張していく立場でなければならぬ。ソ連海域の中で拿捕されておるのですということになれば、これは解釈がとんでもないことになると思うのです。どうですか。
  54. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それは、ソ連領土でありその外のソ連領海であるという場合には、拿捕保険は適用しないわけでございます。わが方は、わが国領土でありわが国領海である、そこで不法に拿捕というような事件が発生したからこれは気の毒である、救済が必要であるということで拿捕保険を適用する。これは認めていないということが前提でやっておるわけでございますから、これは御了承いただきたいと思います。
  55. 美濃政市

    ○美濃委員 いまの大臣答弁であれば、私はそれで了解できるのです。そういうふうに修正されますね。いいですね。保安庁もいまの大臣のように修正をしてもらいたいと思います。
  56. 鈴木登

    鈴木説明員 四島周辺につきましては、ソ連領海内という言葉で申し上げたのは正鵠を欠くと思います。  私どもは拿捕統計をとっておりまして、大体どの辺のところで一番拿捕が多いかということを把握したくて、いわゆる四島周辺については島から三海里の範囲内で日本の漁船の拿捕が多いということを申し上げるべきところを、いわゆるソ連領海内と申し上げた次第でございます。
  57. 美濃政市

    ○美濃委員 いずれにしてもいまの答弁はちょっとあいまいだと思いますね。海上保安庁大臣が言われたようにもう少しすきっとこの問題は整理をしておいてもらわないと問題があると私は思うのです。
  58. 鈴木登

    鈴木説明員 お答えいたします。  外務省、それから水産庁の方とも詰めまして、この表現方法をできるだけ改めるようにいたします。
  59. 美濃政市

    ○美濃委員 そこで、これからの交渉で、いわゆる領土と漁業を分離して交渉を進めるというその進め方については、私は異議ありません。しかし、どこまで分離できるかという問題が出てくると思うのですね。たとえば今回、土俵をつくってくれと言うから土俵をつくっていくわけであります。  その前に一つお尋ねしておきますが、十二海里あるいは二百海里の問題の線引きについても、地図が出てきておりませんけれども、二百海里も同様にこの四島にはかぶせる、こう理解して間違いございませんね。
  60. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  61. 美濃政市

    ○美濃委員 そこで、これからこの交渉に入って、やはりいま申し上げたこの二法の適用の問題というものをまずソビエトが完全に認めれば、領海を完全に認めるということは並行して領土問題を解決するということになると思うのですが、そこまで交渉がいくということは、いますぐ早期に、今度の訪ソで期待できるとは私は思いませんけれども、しかし、少なくとも二法に基づいて領海あるいは漁業水域をかぶせた以上、その主張は交渉の中で当然に行わなければならぬでしょう。  もう一つここで承っておきたいことは、従来は、いま申し上げたように、私の選挙区でありますあの根室の目の先で、肉眼で見えますから、われわれの見ておる前でソ連の監視艇に日本の漁船が拿捕されるという、われわれは心理的にまことに断腸の思いを繰り返しておるわけです。そういう問題がこの二法によってどこまで期待できるのか。大臣として、従来と違った効果がこの二法の制定によってどこまで見込めるのか、承っておきたい。
  62. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の一連の日ソ漁業交渉、これは総理も本会議場でも、また予算委員会等でも、領土と漁業の問題は切り離して早期に解決をしたい、こう申し上げておるわけでありますが、これは領土問題を全然念頭に置かないで漁業問題として解決をするのだ、そういう交渉をするのだ、こういう意味ではないわけでございます。この北方四島は戦後未解決の問題である。ソ連は現にここを占有し、施政を行っておる。わが方は、歴史的にも固有領土である、こういう主張をやっておるわけであります。したがって、これは一九七三年の田中・ブレジネフ会談の共同声明にも明確なように、戦後未解決の問題を解決して日ソ平和条約の締結の交渉継続をして行う、こういうことに合意をしております。いま日ソの間におきまして戦後未解決の問題というのは、この北万四島の問題以外にないわけでございます。そういうようなことで、私は漁業の交渉はやっておるわけでありますけれども、常に念頭にこのことを置きまして、今後の日ソ平和条約交渉にいささかも悪い影響があってはいけない、わが方の主張を損ねるようなことがあってはいけない、こういうはっきりした立場を堅持いたしましていま交渉に当たっておる、こういうことで、領土の問題を解決しなければ漁業の協定ができないのだということになりますと、美濃さんも御指摘のようにこれは百日交渉になるのか、三年、五年かかるのか、そういうことになりますから、いま申し上げたような基本的な考え方で漁業問題の交渉に当たっておる、こういうことが総理がおっしゃるところの領土問題と漁業の問題は切り離してこれを交渉する、こういう趣旨であるということをまず御理解を賜りたいと思います。  さらに、御審議をお願い申し上げておる海洋二法案、いままでは、私は三月三日のイシコフ漁業大臣との合意によりまして書簡の交換をやりました。その中にわが方も近く漁業水域法、二百海里法を制定するのだ、こういうことを申し上げておりますが、それはしかし政府の方針として言っていることであって、国会の御承認をまだ得ていない、こういうことでございます。今回は、超党派的な御支援を賜りまして、これが成立をする、こういうことになりますれば、向こうもはっきりこの事実を認識をして、またわが方としても、こういうことになったということをよく説明をし、その相互の理解の上に立って、共通の土俵ができておるのだという前提に立って具体的な交渉を進められる。私は、これは交渉に当たってわが方としては非常に条件が整ったものである、このように考えております。それをどういうぐあいに相手方が受けとめますか、これは今後の交渉にまつところではございますけれども、私はわが方の立場というものはここにはっきりしてくるということを申し上げておきたいと思います。
  63. 美濃政市

    ○美濃委員 私も確かに領土問題と漁業交渉を分離して交渉する、これには異議はございません。同感でありますけれども、ただいま言った線引きその他と絡んできまして、やはり二者択一を迫られる面に交渉の面ではどうしてもぶつかってくるのじゃないか。ぶつかってきたときに日本政府として極端に避けると、今回の法案審議の中でいろいろ質疑にも出ておりますように、領土に対するソビエトの既得権というものが高まって、私が前段に申し上げたように線引きがソビエトに了解されるということ、領土問題が解決するということ、そこまでいくことはきわめて至難であり、今度の交渉でそこを農林大臣にやってきなさいと言うのじゃないですが、やはり外交交渉の中でそこを極端に避けると領土放棄につながるような弱腰になってしまう。しかし、領土問題を真っ向から振りかざせば、その問題が今度エスカレートしていきますから漁業問題に入れない、こういう場面が出てくるだろうと私は思います。そこらの緊急度合いをいまここでお尋ねをしません。緊急度合いを失することなく、毅然として、卑屈な態度にならないで、いやしくも切り離すというのだから、領土に対して日本はもうあきらめたのだなというような感触を少なくともソビエトに持たれないように、領土問題についても毅然たる態度交渉をやってもらいたい、こう思うわけです。そこの兼ね合いは確かにあると思いますけれども……。
  64. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 皆さんにはその点非常によく御理解をちょうだいいたしておるわけでございまして、本当に感謝をいたしておるわけでございます。  私はしばしば当委員会におきましても本会議でも申し上げておりますように、この北方四島はわが国固有領土であるという立場に立ちまして、今後の日ソ平和条約交渉に差しさわりのないように、何らの影響のないようにということ、これが大きな柱でございます。と同時に、一世紀にわたってわが国の漁民諸君があらゆる困難を乗り越えて開拓をしてまいりましたところの北洋の漁業権益、これも守らなければいけない、この二つの命題を達成するということが、私に課せられた任務である、こう心得ております。したがいまして、魚のために今後の領土交渉に悪影響を及ぼすなどということは断じてございません。もしそういうことができれば、こんなに苦労せぬでも私は漁業問題は解決できる問題だ、このように存じます。この二つの命題、これは特に北方四島に対する民族の悲願というものを十分腹にわきまえておりますから、この二つの命題を達成するように、そのことは大変困難な問題ではあるけれども、将来に向かっての日ソ友好関係維持発展ということを、両国の指導者が本当に心からこいねがっておるのであれば困難ではあるが、これが打開は不可能ではないだろう、そこに希望を置きながら私は全力を尽くしたい、こう思っておるわけでございます。
  65. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、これはこの法律とは直接関係ございませんけれども、いろいろの交渉を進める上においての関連はあろうと私は思うのですが、質疑も出ておりましたけれども措置方針というのが、私が聞いておる範囲では明確でなかった。それはミグ戦闘機に対する損害賠償の要求、毎日新聞では三十億と書いておりましたけれども、具体的には外務省に来ておると思うのですが、損害賠償は幾ら要求されておるか。日本政府としてこれに対してどういう措置をするという方針を決めておるのか、これを承っておきたいと思うのです。
  66. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいま損害賠償として幾ら要求してきたかというお尋ねでございましたが、これは外務大臣からも最近お答えをいたしたことがほかの場でございますが、この問題は、損害賠償を請求してきたという事実はございます。ただ、その金額その他につきましては、ソ連側との話し合いによりまして、これは外へ発表しないことにしよう、そういう話でございましたので、その内容については申し上げることを控えさせていただきたいと思います。ただ、そのような損害請求が参りましたときに、日本側としてはこれはとうていそういうものを受け入れられる性質のものではない、その場でこれを拒否いたしました。
  67. 美濃政市

    ○美濃委員 もう一つ参考としてお尋ねしておきます。  これは外務省の方にお尋ねいたしますが、私はずっと各国を歩きました。全部の国を歩いておりませんけれども、私の歩いた範囲で、大体その国、その国の大使館というものはよくその国のことを理解して、それぞれの国で日本の出先として親善を旨として活躍されておりますが、率直に言ってソビエト大使館は、これはアメリカに次ぐ大使館で八十名ぐらいですね。それで全部の人には会っておりません。大使に会ったのですけれども、私が行くと大使館に一晩招待してくれるのですね。日本料理をごちそうになってきました。そういう話の中で私の受けた感じでは、非常に反ソ、他の国の大使館よりも駐在している国に対する反感を持って駐在しておる。理解しようとする態度が少ないのじゃないか。そういう中から出るのだろうと思うのだが、共同声明あたりに対する解釈の相違などというものが、他の国よりもかなり多く出ておるのじゃないか。共同声明の後で実行に当たると今度解釈の相違が出てくる。これはやはり日ソの外交というものを進めるに当たって、大使館というものは私の立場から言うときわめて親ソになれとは申し上げませんけれども、大使館は駐在しておる国をもっともっと勉強して、理解を深めるという態度が必要ではないか、特に近くなるとかならぬとかいう問題は別にしても。どうも反感心を持って駐在しておると見受けたのですが、非常に私は問題を感じておるわけです。外務省の幹部としてはこの問題について、そういう私の考えが違っておるのか、私はそういうふうに見ておるのですが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  68. 宮澤泰

    宮澤政府委員 異なった体制の国におきまして、日本の国益を守りながら、その範囲におきまして隣邦であるソ連との善隣関係友好関係を深めていく、大使以下、そのような心構えで勤務をいたしておりますので、特に反ソである、そういうことではないと私は考えております。
  69. 美濃政市

    ○美濃委員 しかし、私はこれをしつこくは申し上げませんけれども、私はそういうふうに見た。物の見方は自由かもしれませんけれども、そういう点ひとつ外務省でもちょっと注意をして見てもらいたい。あるいは私の見方が違っておるかもしれません。ここで私の持説をあくまで押しつけようとはしませんけれども、私はどうもそういう感じがいたしますから、そうでなければ幸いですけれども、いま局長が言われたような態度、私の見た態度はそうなっていない、こういうふうに見てきたので、その点よく注意をしてもらいたい。
  70. 宮澤泰

    宮澤政府委員 私どもの考えは、ただいま申し上げたとおりでございますが、なおおっしゃいました点につきましては、私ども、今後とも十分に自戒をいたしたいと考えております。
  71. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、内政問題について、これから行う国内措置についてお尋ねしたいと思います。  以下、これから私の時間は四十八分までございますけれども外務省の方、それから保安庁の方はお休み願って結構であります。  第一に、今回いわゆる二百海里外のサケマスが決まって、暫定調印の運びになった。その量は大体三〇%減というふうに聞いておりますが、これは昨年の三〇%減で間違いございませんか。
  72. 岡安誠

    岡安政府委員 いままでに、日ソ漁業委員会で内々話し合われましたことしのソ連側二百海里外のサケマス漁獲量は六万二千トンでございます。昨年が八万トンということでございますので、昨年対比約七七%ということになるわけでございます。
  73. 美濃政市

    ○美濃委員 かなり大幅な量になりますが、これにつきましての体制、体制ということは減船方式とかあるいは母船をどのくらい減らすとか、そして、私どもはできるだけ漁業をしておる漁民の利益はやはり最大限守らなければならぬと思うわけですね。実際に魚をとって生活している漁民の生活というものは、まず第一義に置かなければならぬだろう、こういうことになってくる。いままでに水産庁としてお考えになっておること、それから具体的に決まっておれば決まったことをこの際ひとつお聞きしておきたいと思います。
  74. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほど申し上げましたとおり、現在、日ソ漁業委員会の今年度のサケマス漁獲につきましても最終的に合意に達しておりませんので、こういうふうに実行するという段階にまで行っておりませんけれども漁獲量は大体六万二千トンということで合意いたしておりますので、私どもは、これに即した操業ということを現在検討いたしておるわけでございます。ソ連側も、昨年に対比いたしまして八万トンが六万二千トンということでございますので、漁獲量が削減された量に応じまして操業隻数は減少してほしいという強い意思がございますので、私どもも今後の経営の円滑化、さらに合理化等を考えまして、おおむね昨年対比の漁獲量の減に見合うぐらいの減船をお願いいたしまして、現在、それぞれの業界の代表者の方々と御相談をいたしておるわけでございます。  ただ、母船につきましては、やはり従来からの操業の経緯、経営の状況等も考え合わせまして、これは現在十船団ございますけれども、母船はこれを六隻にする、四隻減、こういうことで現在御相談をいたしておるわけでございます。今後の二百海里体制下におきまして、北洋サケマスの操業というものは相当厳しい状態に直面し、今後もそういう状態は続くだろうと考えますので、この際、体質の改善等を含めまして、厳しいお願いではございますけれども、それぞれの業界に減船をお願いをいたしまして、整々とした体制で出漁ができるように私どもは願っておるわけでございます。
  75. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま水産庁長官から御説明申し上げた方針で臨んでおるわけでございますが、この問題に対する私の基本的な考え方を明らかにしておきたいと思います。  私は、母船式のサケマス漁業におきまして、独航船は御承知のように中小漁業者でございます。この中小漁業者の独航船の諸君の減船は、できるだけ、漁獲量に見合いますけれども、これを二〇%ないし三〇%の間にとどめたい、このように考えております。しかし、母船の方は、これはこれからの厳しい北洋の操業事情等を勘案をいたしまして、この際適正規模のものに削減をしたい、このように考えております。現在、一母船当たり独航船は三十一、二隻でございます。その船団としての経営の状況を見ておりますと、母船経費に四割もかかっておるのでございます。これは母船の投資その他運航の経費等に比べて、独航船の付属するところの隻数が足らないということでございます。そこで、十隻のうち六隻減船すると、独航船は大体四十一、二隻付属してまいることになります。そういたしますと、母船の経営の適正規模に見合ったところの独航船ということになるわけでございまして、経営全体が非常に安定をするわけでございます。当委員会におきましても、この際大企業に偏ることなく、むしろ中小漁業者立場を十分考えてやるべきだという御意見をよく伺っておりますし、私もそういう考えでございます。そういう意味合いから、独航船の方は二〇%ないし三〇%にいたしますけれども、母船の方は、いま申し上げたような事情で四割の削減にするという方針で臨んでおるということを御理解をいただきたいと思います。
  76. 美濃政市

    ○美濃委員 よくわかりました。いまの大臣の方針は大体私も同感でありますから、ぜひそういう線で進めてもらいたいと思います。  同時に、減船等によって起こる損害は、経営が大きいのだから損害が多くてもいいじゃないか、そうはまいりませんし、また大きければ大きいなりに、そこには人も使っておるわけでありますから、そういう人の問題を含めて、起きる現象に対する損害補てんの措置政府として講じなければならぬと思います。それにつきましては、これは新聞で見た範囲ですけれども、一応いまのところ百五十億の緊急融資が決まったというふうに新聞は報じておりますが、この融資だけではだめだと私は思います。損害の査定や何かに手間取るし、あるいは用意をした漁業ができないわけでございますから、とりあえずそういう緊急融資をもって一時その損害を補てんしておくということについてはやむを得ないと思いますが、融資だけで打ち切るんだということではいけないと私は思います。損害を見るとともに、それに対する措置政府が十分にしなければ、今度日本の二百海里の中の沖合いで実力行使の漁業が起きないとは言えないと思います。そういうことが起こっても生きるための手段ですから、極端に密漁として処罰することもできないという非常にめんどうな問題に転化された場合に困ると思います。私の考えは、こういう二百海里時代を迎えると、一面、漁業交渉によって、ソビエト水域あるいはアメリカ水域その他の水域でいままでの実績に基づいて実績維持を図るということは大切だと思いますけれども、それだけの手段では、長期的に見た場合、二百海里時代を迎えてこの問題はだんだん厳しくなってくると思います。そうすると、今回この二法が通るとともに、特に漁業水域の暫定措置法の通過に伴って、一面わが国海域における魚の保存なりあるいは養殖等を図って、自分の海を大切にしてその中で魚資源あるいは魚たん白を確保していくという両面でなければならぬと私は思うわけですね。そういうふうに考えると、資源を荒らす底びきとかそういう漁法というものはできるだけ制限していかなければならぬだろうし、年々これが厳しくなるのではないかということを懸念しておるわけです。そういう漁法でもって、その転じた者が沖合いで実力漁業を始めたのでは、資源をとり尽くして、日本の将来の漁業にいい結果を及ぼさぬことははっきりしているわけですから、そうしないためには、政府は思い切って損害——漁民がみずから起こした損害ではないわけで、国際環境から派生する損害である。先ほど大臣お話しされておりましたが、北海道だけに限らずわが国の漁民が開拓した漁場をこういう二百海里時代ということで失うわけでありますから、その損害は十分政府が補てんして、転業なり人の問題についても新しい働き先が見つかるようにして、そういう現象が起きないようにしなければならぬと思うのです。ひとつ大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  77. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回、四月一日から交渉が中断のやむなきに至りましたために、多くの漁船が操業を中止いたしまして、それぞれの母港に引き揚げておるというような、不幸な、お気の毒な事態に対しまして、政府としては、それだけ所得がないわけでございますので、とりあえず緊急融資をやるということで、百五十億、金利は三%という低利の資金をつなぎ資金として融資をすることにしたわけでございます。この緊急融資は、今月中に末端の漁業者等に届くように急いで手当てをいたしておるところでございます。その際、漁業経営者がその資金を大部分使ってしまうのではなしに、まず乗組員の諸君に、固定給なり何なり収入がないわけでございますから、はっきり特定をしてそれが行き渡るようにしたい。それから漁網、漁具その他の購入の手形を出しておるその決済がある、そういう問題もまじめにひとつ支払いをやってもらいたい、つまり、関連産業にも影響を及ぼさないようにできるだけやってほしい、そういうことでこの百五十億の緊急融資の使途につきましては、行政指導を十分やってまいる考えでございます。  なお、加工業者等の関連産業につきましては、ただいまその影響の度合いを調査をいたしておりますから、早急にその実態を把握いたしまして、追っかけて緊急つなぎ融資をやってまいりたい、こう考えております。  なお、美濃さんも御指摘のように、日ソ漁業交渉が最終的な決着を見ましてどれだけの船が減船の余儀なきに至るかというようなことを把握した上で、今度は、いま緊急融資をいたしましたものも含めて本格的な救済の措置を講ずる、こういう二段の対策を進めるつもりでございます。私は、この厳しい二百海里時代に対応いたしまして、それに即応したところの漁業界の体制というものをはっきり確立しなければならない。そのためには政府としても、できるだけの救済措置を講じてまいる、そういう方針で臨んでおることを申し上げておきたいと思います。
  78. 美濃政市

    ○美濃委員 次に、昨日水産庁長官に、恒久的な対策で資料を差し上げておきました、御検討いただいたと思うのですけれども、これからのいわゆる漁業交渉の中で、北海道の漁業者あるいは漁業団体が要望しております領海十二海里、それから共同漁業権海域内、それからオッタートロール試験操業規制海域内、その三海域内においては外国船の漁業が行われないように規制してもらいたい、そのほか数点にわたって差し上げておいたのです。これに対する水産庁としての見解をひとつ承りたい。
  79. 岡安誠

    岡安政府委員 それでは、いまお話しの漁業水域法が施行されました暁におきまして、北海道周辺におきます外国人漁船の操業に対する規制をどうするかという御質問でございますが、まず領海内におきましては、当然のことながら、これは外国人漁業規制法によりまして外国人の漁業は禁止いたします。  それから、領海の外側におきます共同漁業権区域はどうするかという点でございますけれども、この区域につきましては、漁業権が実質的に侵害されないよう規制措置を講ずるつもりでございます。  それから、オッタートロール禁止ライン内においてはどうするかということでございますけれども、これは沖合い底びき網漁場の操業秩序を維持するため外国船の操業を規制をすべきであるというふうに考えておりますので、そのような方向で、この漁業水域法により対処いたしたいと思っております。  それ以外にも、たとえば操業期間はどうするかとか、これは自主的な申し合わせのようでございますけれども、沿岸底びき網漁業者の操業協定海域というようなところがあるようでございますけれども、それらにつきましても、当然、現在行われております調整上必要な期間なり調整上必要な操業制限地域等につきましては、できるだけそれを尊重する方向でこの法律を運用してまいりたい、かように考えております。
  80. 美濃政市

    ○美濃委員 もう一件、損害の問題で、韓国あるいはソ連の漁船が北海道近海において——北海道だけではないわけですね、全国的と言ってもいいわけですが、主として北海道近海ですが、漁網あるいは漁具に、やはりトロール船等で大きな損害を与えておる、その総額は北海道だけで七億九千万円、これはもう道庁からも水産庁にこの金額は届いておると思います。これに対する対策はどういうふうにおとりになることになりますか、お伺いしておきたいと思うのです。
  81. 岡安誠

    岡安政府委員 確かに北海道周辺におきましては、ソ連漁船のみならず、最近におきましては韓国漁船によりまして、沿岸漁民の漁具、漁網等の被害が非常に莫大な量に上っております。  ソ連船につきましては、領海法が制定、施行されれば、当然その相当部分の被害は防止できると思っておりますが、また二百海里法といいますか、漁業水域法の制定によりましても、秩序ある操業を期待できると思います。  すでに起こった損害につきましては、現在損害賠償請求処理委員会がございますので、この処理能力を格段に上げるということによりまして、漁民のこうむった被害が早くてん補されるように、私ども御援助を申し上げてまいりたいと思っております。  韓国船による被害につきましても同様でございますけれども、この処理につきましては、現在まだ具体的な処理機構というものができ上がっておりません。昨年一回会合いたしまして、基本的な方向では合意を見たわけでございますが、ことしの第二回の会合におきましては、操業を遠慮してもらうような地域についての話し合いが合意できなかった関係から、損害処理機構につきましてもまだ話し合いが進んでおりません。この点につきましては政府におきましても、その話し合いの進行を援助いたしたいと思っております。先ほども職員を韓国に派遣いたしましていろいろ相談を進めておりますが、さらに次回以降、政府の方も積極的に韓国船操業の自粛を要望するような何かの話し合いを決めたいと思いますし、その話し合いの中で損害についての処理につきましても、早急に機構が整備できるように援助をいたしてまいりたい、かように考えております。
  82. 美濃政市

    ○美濃委員 二百海里時代を迎えた漁業問題は非常に多いと思います。本日は、定められた時間がございますので、あと、国内措置として行わなければならない問題も、農林大臣が今度お帰りになってから、いろいろまだ問題は山積しておると思いますので、また別の日程の中でいろいろ私どもの考えを申し上げ、また御意見を承りたいと思います。  本日は以上をもって終わりますが、どうかひとつ重要な段階でありますから、大臣も健康に注意されて、この重大な任務を日本国の国益のために果たしていただきたいと思います。  以上で終わります。
  83. 金子岩三

    金子委員長 竹内猛君。
  84. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 領海法並びに漁業水域に関する暫定措置法案について、大臣質問いたします。  最初に、大臣が再三にわたって訪ソをされ、なおかつ、厳しいソ連の政治情勢の中でまた訪ソされる方向にあると聞いております。これは大変御苦労なことでありますけれども、その成功をともに祈りたいと思います。  そこで、問題は、日ソ交渉の基調になっているものは何かということなのです。最も重要な問題は何かということに関して、私たちはこの委員会を通じ、あるいはまた連合審査会を通じて大臣答弁などを聞いてまいりましたが、それは何といっても領土の問題であることは間違いがないわけだが、領土の問題も大事だけれども、当面は魚の問題がやはり大事である、領土も大事だが魚も大事だということでこれを分けて取り上げていく、こういう方向で来たと思います。  先般、本会議においてわが党の新盛議員がこのことについての一定の評価を下したわけでありますけれども、しかし、きょうの新聞を見ると、どうしても領土問題を避けて通れないという実情にあることは間違いがない。だから、そうだとすれば、領土問題は領土問題としてやはり主張すべきものは堂々と主張しながら、なおその上で友好を深める立場から魚の問題については取り上げていくということについて、大臣はこの段階でどのようにお考えか承りたい。
  85. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソ交渉に当たりましての私の基本的な考え方、姿勢は、しばしば本会議場におきまして、また当委員会におきましてお話を申し上げておるとおりでございます。  先ほども申し上げましたように、この北方四島の問題は戦後未解決の問題である、これは今後平和条約交渉の核心でございますから、外務大臣等の定期閣僚会議におきましてこれは解決をしなければならない問題だ、しかし、いままでの経緯からいたしまして相当時間のかかる問題だ、こう考えております。したがいまして、私が漁業交渉をするに当たりまして、まず領土問題についての決着をつけて、そして漁業問題をやるのだということになりますと、これは百日交渉になりますか、三年、五年の時間がかかる。こういうことでは緊急を要する漁業問題の処理はできない、解決はできないということで、私は、北方四島の問題は日ソ間における戦後未解決の問題である、こういう前提の上に立ちまして、それに即応したところの漁業の取り決め、特に領土絡みの第一条の問題はそういう立場に立って取り組んでいきたい、このように考えておるところでございます。
  86. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまの御答弁にもかかわらず、きのうもサケマスのところで、六万二千トンの調印の寸前にやはりこの領土問題が出て、調印が中断をされたということになると、どうしてもこの領土問題を避けて通ることはできない。避けようとしても避けられない。なおかつ、十二海里あるいは二百海里の法案が間もなく衆参両院を通過をした場合においても、なおさらこの問題が浮き彫りにされてくるということは明らかであります。そのときに、やはりこの領土問題を領土問題として取り上げながら、それを主張しながら漁業の問題を話し合うという、この二元的な方向において交渉するという考え方に依然として変化はないかどうか、もう一度お伺いします。
  87. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基本的には方針は変わりません。この北方四島の今後の問題の解決、日ソ平和条約交渉に当たって、わが方の立場を害するようなことがあってはいけない、悪影響をもたらすようなことがあってはいけない、これが基本でございます。と同時に、一世紀にわたるところの北洋の漁業権益も守っていかなければならない。この二つの命題、これを達成するのが私の任務だと心得ておるわけでございます。したがいまして、具体的な交渉に当たっては、その基本の上に立ってどういうぐあいに話し合いを進めるかという点につきましては、これからの交渉の問題にもかかわる問題でございますから、ここで申し上げることはお許しをいただきたい、こう思います。
  88. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大臣お話によると、今度の訪ソの一つの目的は、前回十分に尽くされなかった問題としての暫定協定の第一条、第二条のその条文の整理、すなわち法体系に違いがあるから、そこを整理をするには短時間でこれは話ができそうである、もし長くなると百日交渉になるであろう、こういうぐあいに言われておりますが、この段階において、いまこの厳しい状況の中で、しかも二法の成立のその土俵をつくった上において交渉されたときに、この見通しについてはどうでしょうか。
  89. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 第二条の問題につきましては、具体的にはわが方の領海三海里、十二海里の中の問題、この表現をどうするか。ソ連の方は、ソ連邦沿岸に接続するところの二百海里全部が漁業専管水域でございます。わが方は、本邦の沿岸沖合い十二海里までが領海であり、その外側百八十八海里が漁業水域である、こういう法体系の相違がございますが、そのことが今回の領海法の成立ということになりますれば、きわめて明確になってくるわけでございます。しかも、この問題につきましてはイシコフ大臣とは政治的には意見の一致を見ておるわけでございますから、法制的にはっきりわが方の十二海里というものが確立をすれば、私は、この問題は実務者の間の交渉でもわりあいに早く解決できる、このように考えております。  問題は第一条でございます。領土絡みの第一条の問題でございます。そういうことでございますが、これはわが方の二百海里水域を踏まえて、これをいかにこの交渉で生かしていくかということにつきましては、私もいろいろ構想を練っておるわけでございまして、その具体的な話し合いの案につきましては交渉を通じて明らかにしてまいりたい、こう思っております。
  90. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 外務省にお伺いしますが、日ソの経済関係あるいは輸出入の関係等、大ざっぱに言って、最近の状況、どういうものを中心に、輸出、輸入の総額はどういうふうになっておるのか、この点をお伺いします。
  91. 宮澤泰

    宮澤政府委員 貿易でございますが、まず最近の通関統計にあらわれましたところを申し上げます。  一九七四年、輸出は十億九千六百万ドル、輸入が十四億一千八百万ドル、合計二十五億千四百万ドルでございます。一九七五年におきましては、わが国の輸出が十六億二千六百万ドル、輸入が十一億七千万ドル、合計二十七億九千六百万ドル、昨年の一九七六年におきましては輸出が二十二億五千六百万ドル、輸入が十一億六千六百万ドル、合計三十四億二千二百万ドルでございます。  輸出品目につきましては、日本から出します輸出品目は大宗は鉄鋼と金属製品、これが輸出総額の大体三割、三六%でございます。続いて機械設備、これが大体三五%、それから化学品のようなものが一一%でございまして、輸入の方では、木材が大体輸入総額の三六%、それから鉱物性原燃料、すなわち原料炭、石油、石油製品等でございまして、これが二〇%、それから繊維原料、綿花、麻等で、これが一五%程度でございます。大体、製品を出しまして原料を入れておる、こういうパターンでございます。
  92. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 われわれは、日ソの友好という問題のその基本の中に、経済、文化、スポーツ、こういうものがあり、いまお話があったように、主として原料を輸入して加工して出していく、そういうパターンになっておるということが明らかになりましたが、そこで漁業の問題はきわめて大きな問題であり、どうしてもこれは領土問題に関係してくる。  今度は外務省の方にお尋ねするが、外務大臣は年内に訪ソをするということを言われたけれども、これはいつごろ訪ソをするような日程になっているのか、その辺はどういうことになっているのか。
  93. 宮澤泰

    宮澤政府委員 鳩山大臣はなるべく早い機会に訪ソして、領土問題を解決するための平和条約交渉をやりたい、本年夏以降なるべく早い時期と、こういうふうにおっしゃっておりますが、これはわが国内の事情及びソ連側の要人の都合等もございますので、まだいつごろということは私の方から申し上げる立場でございません。まだ決まっておりません。
  94. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先般本委員会でわが党の小川委員外務省日ソの友好あるいは平和条約の締結に向かうところの努力というものがかなり足りないのではないか、そのために漁民が、漁業者が大変骨を折っているということについて幾つかの事実を挙げて要請をしました。これは農林大臣だけの努力ではなくて国を挙げて努力をしなければならない。ところが、どうもソ連に対する平和友好、こういう動きが足りないのではないか、こういうぐあいに思っております。だから、この機会に早く外務大臣等々の交渉があって、そうして十二海里、二百海里という領土に関する問題でありますから、当然これは外務省が前面に出て交渉していかなければならない問題だろう、こういうぐあいに思うけれども、もう一度その辺の決意等についての方向についてお聞かせ願いたい。
  95. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいままでの交渉鈴木農林大臣が代表してこれを行ってこられましたが、日本側は大使館、在ソ大使も御協力をして、事務当局におきましては水産庁と外務省が協力をしながらやってまいったわけでございますが、ただいまおっしゃいました点は私から外務大臣にもお伝えいたしまして、事務当局としても十分に検討して積極的に対処いたしたいと考えております。
  96. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう一つ私は外務省に要請しますが、たとえばシベリア開発の問題にしてもあるいはミグ25の取り扱いにしても、こういうすべての問題がやはり漁業問題、そしていまの問題にかかわってきている、こういうことを思うと、外務省がこのいまの状況に果たす役割りは非常に大きいものがある。だから、これはなるべく早い機会に実現をしてもらいたい、こういうことを要請します。  続いて、これは後ほど総理大臣に対してわが党の方からも質問があると思いますが、政府がかわった場合に総理大臣は必ずアメリカには新しい大統領と話しには行くけれどもソ連には余り熱心に訪問をされたことがない、どうもソ連をきらうという傾向にあるようだ、これではいけないと思う。アメリカの方には行きやすいから行くけれどもソ連の方はどうも訪問しにくい。それは平和条約もできておらないということであるけれども、国交は回復しているわけですから訪問をして、そして多くの懸案事項をもっと粘り強く解決するような方向に進めていかなければいけないのではないか、こういうぐあいに私は考えている。閣僚の一人である、そして骨を折られている鈴木農林大臣は総理大臣にそういうようなことについて進言をしたことがあるかどうか、これはひとつ大いに閣内で努力をしてもらいたいと思うけれども、いかがでしょうか。
  97. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は総理に対して直接訪ソをお勧めしたということはございません。しかし、何といっても近隣諸国との友好親善関係ということはわが国の平和と安全と繁栄のために不可欠のことだ、こう考えております。そういう意味合いから、やはり両国の首脳が互いに訪問し合って、そしてひざを突き合わせて広い分野にわたって話し合いをするということはきわめて大事なことだ、私はこのように考えております。一九七三年には田中首相が訪ソをされました。その際、ブレジネフ書記長、コスイギン首相等の訪日を要請してある、御招待を申し上げておるわけでございますが、いまだにこれが実現をしていないという状況でございます。しかし、今後やはり近隣諸国の首脳間の相互の訪問、またひざを突き合わせた、腹を割った会談ということが大事なことだ、私はこのように考えておるところでございます。
  98. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この際、国連海洋法会議の問題についてお伺いをしたいと思います。  先般参考人の意見を聞いた中で、学者の中から、国連海洋法会議というものは非常に将来が暗い、こういうようなお話がありました。なるほど第三回の海洋法会議の中で多くの問題が出ているけれども、いま海洋の分割時代と言われるそういう時代に入ってきて、しかも海面だけではなくて地下資源まで問題にしよう、いまわれわれは専管水域の問題になっておりますけれども、経済水域としてこの問題をとらえるというような動きがずっとある。そのような状況の中で見通しがなかなか暗いということから、アメリカ、カナダ、あるいはソ連というような先進国がどんどん二百海里を宣言する、こういうような状態であるわけでありますが、この海洋法会議の前途に対してどのような展望と見通しを持っておられるのか、これはどうでしょうか。
  99. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  国連海洋法会議の展望を述べよという御指摘でございますが、ただいまお話のございましたように、国連の海洋法会議におきまして行われております審議は、海洋の秩序全般にわたりましてきわめて複雑多岐な問題を取り上げて審議を行っておるわけでございます。いま先生から御指摘のありましたようないろいろな問題が論議せられておりまして、従来その複雑多岐にわたる大きな問題を消化しなければならないという関係、特に海底資源の開発という問題が非常な会議の促進を妨げる要因になりまして、昨年の会議などは大方の期待したほどの進展を見なかったわけでございます。そのような状況にかんがみまして各国とも会議関係者は非常に反省をいたしまして、今回、五月二十三日からニューヨークにおいて行われますところの第六会期におきましては、まず当初にこの前の会議の進展を阻んだところの深海海底の開発の問題を集中的に取り上げて、主席レベルで二、三週間にわたってこれをやって、この解決を待ってほかの問題にも取り組むというようなことで、大変な情熱を燃やして次の会期に臨もうという姿勢にあるわけでございます。  もちろん、先生指摘のようにいろいろむずかしい問題もございますので、一刀両断のもとにその進展が図られるというふうにはだれしも楽観していないわけでございまして、この第六会期がどの程度まで進展を見るか、果たして実質的合意まで到達するかどうかという点は、私どももかたずをのんで各国の動向を注視しておるという段階でございます。
  100. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 なぜそういうことをお尋ねしたかというと、この二法案はいずれも暫定措置法で、その暫定とは国連海洋法会議の結論待ち、こういうふうになっておるわけであります。そうすると、大体いつごろこの結論が出てこの法案が暫定でなくなり、しかもそれが確定というふうになるのは一体いつごろであろうか、この見通しはどうですか。
  101. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま申し上げましたように、会議が扱っております広範な諸問題について、すべてにつきまして実質的な合意に今会期で達するかどうかという点が一つの焦点でございますが、私どもは当面その結論については楽観を許さないという状況だと思っております。  ただ、いずれにいたしましても早期の妥結のためにわが国としてはできる限りの努力をいたしたいと考えておりまして、もし今会期で実質的な妥結に至らないということになりますれば当然第七会期を開くという形になるかと思いますが、いずれにしろ現在の段階では、明快に具体的にいつということを申し上げるのはまだ尚早、軽率の感を免れないのではないかというふうに考えております。
  102. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次に、いま最も問題になっているのは千島列島に関することでありますが、これは国際法上から見ても歴史的に見ても日本固有領土であるし、そのことは日ソ通商条約、千島樺太交換条約やヤルタ宣言からいっても明らかであり、政府はこの経過というものを厳粛な事実として認めて、一九五六年十月十九日の日ソ共同宣言に基づいて平和条約を締結し、北方領土の問題の解決に努力をすべきである、こういうふうに北方領土の問題については私どもは考えておるのですが、この点についてはどうでしょうか。
  103. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいまおっしゃいました日ソ共同宣言におきまして、宣言の後で平和条約交渉をいたすという合意ができておりまして、それに基づいて日本側は鋭意その交渉を進めようと努力を続けておるわけでございます。
  104. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 続いて、ソ連は千島の四島はソ連の施政下にあるからとして二百海里の線引きをする、またわが国も当然固有領土として二百海里の線引きをしなければならない、そういう場合にこの線がダブってくることになるということは前から指摘されたとおりです。そこでこの領土の問題については、さきの田中・ブレジネフ共同声明によるところの戦後未解決の問題であるとしばしば農林大臣が言われている線に沿って領土の問題は懸案事項としてしばらく除くとしても、その上に引かれた水域について、暫定的共同規制水域とし、日ソ両国の共同による円満な管理規制方式によるものとして早急に暫定協定を結ぶような努力をすべきではないか、こういうふうに私どもは考えておるけれども、この点について大臣のお考えはどうでしょうか。
  105. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 一つの有力な御提案である、このように評価をいたしておるわけでございます。問題は、ソ連側がそれに応じてくるかどうか、そういう一点にかかっておるわけでございまして、いまの竹内さんの御提案につきましては、私どもも今後十分検討してまいりたい、こう思っております。
  106. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私はこれは重要な問題だと思いますし、そういうことが総理の言葉の中からも出てきたように思いますが、この問題はぜひ実現をしてほしいということを強く要望したいと思います。  その場合において、二百海里内におけるところの日本の漁船の操業、漁獲量等々においての取り扱いについては、資源保護に留意をしつつこれまでの実績を考慮しながら従来の方式をとるべきだと思うけれども、そういうことが前提になったときに、その取り扱いはどのようにされたらいいのかということについて大臣のお考えを承りたい。
  107. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたように、まず前提について日ソ両国が相互の理解に達するかどうかという問題が大きな問題としてあるわけでございます。そういう際において、その海域の問題をどういうぐあいに扱うかという問題につきましては、これはいまここで議論をする段階ではない、このように存じております。
  108. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 領海法で十二海里を引いて、その中に従来どおり三海里とする五つの特別海峡を認める、こういうことについての議論はすでにずいぶんしてまいりました。そのときに、この問題はいわゆる国際的に見て、自分の領海を広めながらその主権を狭めていくということで、これはわが国が初めてのことであるということは、学者の意見としても出ておりますが、それが国益に資するものである、日本は海洋国家であり、工業国家であり、貿易国家であるから、それは国益なんだ、その国益に資するという国益、こういう国益があるんだということを第一、第二というように一つずつ挙げてわかりやすく説明していただきたい。
  109. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点につきましては、先ほど来鈴木農林大臣からるる御説明がございましたように、わが国といたしましては、国連の海洋法会議におきまして領海を十二海里に拡張するに当たって、従来の公海部分が消滅するかまたは航行に十分な公海部分が残らないような国際海峡、世界における交通の要衝たるところの国際海峡において船舶の自由な通航制度を確立するという方向で審議が行われているわけでございまして、まさにいま先生のおっしゃられましたように、海洋国、先進工業国家たるわが国といたしまして、海洋法会議の審議がそういう方向で固まっていくことがわが国の国益に資するゆえんであるということで、この会議に臨んでいるわけでございます。  そこで今回領海を十二海里に拡張するに当たっても、このようなわが国の基本的な方針を損なうような措置をとるべきでない、そして国連の海洋法会議におきまして国際海峡におけるところの通航制度の確立するのを待つことがわが国の国益に資するゆえんであるというふうに信じて特定海峡の現状を凍結するというふうにすべきであると考えた次第でございます。
  110. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう一度その点について確認をしたいのですが、非核三原則というもの、これもしばしば予算委員会で質疑があったわけですけれども、これにかかわりはないのだということで、それを避けているのではないか、こういうことを言われておりますけれども、この点についての説明はどうされますか。
  111. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点につきましても、衆議院の予算委員会におきまして鈴木農林大臣から御説明のありました統一見解にも明らかにされておりますとおり、わが国が今回十二海里に領海を拡張するに当たって、特定の海峡については現状を凍結するということは非核三原則との関係からではないということを御説明申し上げておるわけでございまして、それはまさに、いま申し上げましたように、いわゆる国際海峡における通航制度、一般領海におけるよりもより自由な通航制度の確立を期するという見地からの措置でありまして、非核三原則云々との関係からではない、こういうことでございます。
  112. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 海上保安庁にお尋ねをしますが、領海が四倍になる、そして専管水域が二百海里という形になっていくと、この警備、規制、こういうような問題が当然起こってまいります。このこともすでに本委員会でしばしば議論になりましたが、現在の海上保安庁の状態でこれを——強化拡大三カ年計画というものがあるそうですが、三カ年間は待っておれないでしょう。少なくともこれは、決定すれば三カ月以内に実施するという、われわれはもっと早く実施をしてもらいたい、こういうぐあいに思って、この点は修正をしようという形で考えておるわけですから、したがって、三カ年というようなのんびりした期間ではこれはとても間に合わない。  そこで、海上保安庁の方にこの警戒とかあるいは規制とかその他この問題に伴う諸案件というものはどうしても担当してもらわなければ困るだろう、そのための人員あるいは船であるとか飛行機であるとか、そういう機材ですね、それから、この法案との関係でそういう財政的な問題についてどういうふうな計画があるのか伺いたい。あわせて大蔵省からもこの点についてはどのような考え方を持たれておるのか聞いておきたい。私はこの法案をつくるということは大変責任を感ずる。責任を感ずるというのは、つくってしまえばそれでいいということでなくて、これに伴う諸般の整備をやはりやり上げなければならない。そのためには財政的にもちゃんと支えてあるということでなければいけないと思う。この辺についてのやや細かい報告をお願いしたい。
  113. 間孝

    ○間政府委員 領海のあるいはこの漁業水域の警備の問題につきましては、海上保安庁海上保安庁法の第二条によりまして第一義的な任務を負っておるわけでございます。今回、領海範囲が拡大され、あるいは漁業水域が設定されるというふうなことになりました場合、当然そこに業務の増加ということは考えられるわけでございまして、これに対する対応策というものは私ども考えていかなければならないところでございます。  現在、海上保安庁は三百十隻の巡視船艇と三十四機の航空機を持っておりまして、それぞれ全国に、船艇につきましては百三十二の基地に、航空機につきましては十二の基地にこれを配置いたしまして、沿岸の海域の警戒をいたしておるわけでございます。今回、こういう領海範囲拡大あるいは漁業専管水域の設定という事態を迎えまして、さしあたりはこの現在持っております船艇、航空機を最も有効に活用いたしまして、これの任務の達成に当たるわけでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、特に今回のこの漁業水域の問題につきましては、漁場とかあるいは漁期といったようなものを考えまして、外国の漁船が操業する海域に重点的に船艇、航空機を運用いたします。そうして、海と空と一体となった監視体制をとっていきたいというふうに考えておるわけでございます。  しかし、全体的に見ますと、何といいましても業務の増ということがございますので、これに対する体制の強化ということが必要でございます。すでにこの五十二年度の予算におきまして、ヘリコプターを搭載する巡視船一隻、大型の航空機一機、三十メートル型高速巡視艇二隻、ヘリコプター一機などの船艇、航空機の増加が予算上措置されております。しかし、これは今後考られます業務の増に対してわれわれが対応するその第一着手として実は考えておったわけでございます。  最近、こういう漁業の専管水域という問題が焦眉の問題となってまいりまして、すでに三カ月以内にこれが実施される、こういう状態になりました。これは私どもの当初予想しておりましたよりも非常に早くなったということでございますので、私どもの整備の計画というものもこれに合わせて練り直して、その実施を急がなければならないということでございます。具体的には、目下それについての検討を進めておる段階でございます。
  114. 宍倉宗夫

    ○宍倉説明員 新しい海洋秩序に対応いたしまして、五十二年度予算におきましては、ただいま海上保安庁の方から御説明ございましたように、大型の巡視船、これはヘリコプターを搭載できるほどのものでございます、を初めといたしまして、金額で百六億円、前年度に対しまして六七%という、私どもとしてはできるだけの予算を計上したつもりでございます。  ただ、今般領海が十二海里となり、また漁業専管水域が設定されるというようなことになりますれば海上の警備範囲も飛躍的に広がることになりますので、そうした場合におきまして、警備の程度、警備の方法など新しい警備体制のあり方というものが検討されることになろうかと思います。私どもといたしましては、その検討結果を踏まえまして、五十三年度予算編成におきまして慎重に対処してまいりたいと考えております。
  115. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま海上保安庁の方から話がありましたが、やはり領海が四倍になり、そして専管水域が二百海里という非常に大きな変化があるわけでありますから、早く計画を立てて、財政的な裏づけと、そして人間を養成して万遺憾なく任務につけるようにしていかなければならないということを強く私は要請したいと思います。計画があるようでありますから、ひとつそれを具体的に進めるようにお願いしたいと思います。  続いて、暫定措置法の問題でありますが、これもすでに委員会で質疑をし尽くされてきておりますが、その中で気にかかることがあります。それは、二百海里を実施する場合に、中国であるとか韓国であるとか、あるいは国交のない朝鮮民主主義人民共和国等々は除外する、こういうふうになっている。そしてそのところにはそれぞれルートを通じて話をしておるのだ、こういう報告があります。ところがそれに対する答えというものがどうなっているかということはまだ聞いたことがない。この辺はどういうふうになっているのか。この法案ときわめて深い関係があるから、その辺についての細かい話をお聞かせ願いたい。
  116. 岡安誠

    岡安政府委員 私ども今回漁業水域に関する法律を御審議願うに当たりまして、特に密接な関係があります韓国、中国に対しましては、それぞれ外交ルートを通じましてわれわれの法案の考え方、施行に対する考え方等を説明いたしたわけでございますが、特に韓国に対しましては韓国の御要望もありまして、水産庁並びに外務省から職員を派遣いたしまして、さらに詳細にわれわれの考え方を説明いたしたわけでございます。両国ともわれわれの考え方は了解したと思いますけれども、それに対してどうするかという態度は、まだ正式には明らかにいたしておりません。それぞれ世界の海洋新秩序に対します動きというものをじっと見守っているのではないかというふうに考えております。  そこで、私どもは少なくとも両国が現在二百海里漁業専管水域等を設定いたしておらないわけでございまして、また現に日韓、日中とも漁業協定が存在いたしまして、円滑な操業が行われておりますので、今回制定をお願いいたしておりますわが国漁業水域に関する暫定措置法におきましては、韓国並びに中国に関連する海域につきましては適用除外をいたしまして、二百海里の漁業水域には指定をしないといいますか、そういう措置をとりたいというふうに考えておるわけでございます。
  117. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまのようなお話は前から聞いているわけですが、相互主義でそれぞれの国とは協定がある。日中漁業協定、日韓漁業協定があると言われるが、朝鮮民主主義人民共和国との間には何の話もない。私たちはそういう大事な国との間では、少なくとも民間におけるルートはあるはずだから、そういうルートでも使って、そしてこの問題についての了解を求めるというような努力はしておられるのかどうか、それはどうですか。
  118. 岡安誠

    岡安政府委員 確かに朝鮮民主主義人民共和国との関係におきましては、政府間も国交はございませんし、漁業関係の民間の話し合いというものも余り進んでない、現実になっておらないというふうに考えております。  同国の沿岸で、確かに私ども約六万トン余の漁獲をいたしております。したがって、朝鮮民主主義人民共和国との関係におきましてどう対処するかということになるわけでございますが、先ほど申し述べましたとおり韓国との関係で、私ども日本海の西部並びに黄海、東海等につきましては、この漁業水域の適用除外をいたしたいというふうに思っておりますので、そういたしますと、おのずから朝鮮民主主義人民共和国との関係も、直接的にはこの漁業水域法の適用が除外されるということになろうかと思っております。
  119. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 やはり政令によってすべてを措置するということで、きのうわが党の岡田春夫委員からも、かなり政令が多過ぎはしないかということで、政令の内容も見せていただきましたが、なおいろいろな問題点があります。  そこで、先ほどの朝の質疑の中で、大臣中間線に対する資料を提供するという話でありましたが、それはいつ出していただけますか。
  120. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 岡田委員の御質問に対して、私前向きで検討するということを申し上げておるわけでございますが、私どもは、基本的には領海条約で十分確保されておるというぐあいには考えておりますけれども、しかし領土領海にかかわることであるから明確にしておいた方がいいという御主張、これもよくわかるわけございます。したがいまして、各党一致で御協議をいただきまして、各党で修正しようということであれば政府としては異存はございません。
  121. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 本法案に対しては、わが党を初め各党から修正案なり附帯決議なりいろいろの要望なりが出ておりますから、当然この問題については岡田委員質問に対して答えたその線によって資料を出してこれを討議する、こういうことで、明日の理事会には出してほしい、こういうことを要請します。——明日の理事会で討議をしますが、その討議の素材になるものを出してもらいたい、こういうことです。
  122. 岡安誠

    岡安政府委員 御検討の素材等は提出いたしたいと思っております。
  123. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 日ソ交渉によるところのソ連の船のわが国における操業制限水域の決め方と、韓国船の操業制限水域の決め方とをどうするかということについて御質問します。
  124. 岡安誠

    岡安政府委員 恐縮でございますが、もう一度お願いいたします。
  125. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 日ソ交渉によって、ソ連船のわが国における操業制限水域の決め方と、韓国船の操業制限水域の決め方をどうするか……。
  126. 岡安誠

    岡安政府委員 原則といたしまして、外国船漁業水域内に入りまして操業する場合には農林大臣の許可を得なければならないわけでございますし、許可を受けるに当たりましては許可にいろいろ条件を付するつもりでございます。したがって、その条件の中におきましては、操業を遠慮すべき区域とか操業の方法とかいろいろ書かれるわけでございますけれども、そういうような秩序を守っていただければ、従来より以上に外国船によります操業はわが国に非常な損害を与えるというようなこともなく整々と行われるのではあるまいかというふうに考えております。したがって、この法律が施行されまして、ソ連船がわが国の二百海里内の漁業水域に入って操業する場合には、当然まず日ソ両国におきます約束ができ上がりまして、その約束に基づきまして私どもは許可証を交付し、条件を付して操業を許可するということになるわけでございます。
  127. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は先ほどから中国、韓国それから朝鮮民主主義人民共和国のことをいろいろ話をしてきましたが、これは従来の関係があるから二百海里の適用から除外をするんだ、政令で除外をするんだ、こういうふうに言われておりますね。そうすると、今度はソ連は二百海里の外だということで、その方面に大挙して出ていくというおそれがある。こういう場合にどういうふうにするか。必ずそれに対しては、それに対する対応があるはずだ。その関係国からあるはずだ。これを予想した場合に、二百海里というのはやはりすべての国に適用をすべきではないか、こういうふうに思うのですが、これに対してどのように答えられるか。
  128. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来水産庁長官から方針を述べておるわけでございますが、日中の関係は日中漁業協定がございまして、安定的に操業が確保されておる、日韓の間にも日韓漁業協定が存在いたしまして、これまた何らのトラブルなしに安定的操業が確保されておる、こういう状況でございますので、わが方から進んでやる考えはいまのところ持っておりません。ただ、相手国が二百海里をおやりになるということであれば、これは直ちに政令に基づきまして、間髪を入れずにわが方も二百海里をやる、こういう方針で対処いたしておるわけでございます。  そのほか、そういう海域に他の国の漁船が大挙して入っていくというような状況、いまのところ考えられませんけれども、情勢はきわめて流動的でございますから、そういう問題につきましても対応を誤らぬように善処してまいる所存でございます。
  129. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私はもう一問伺いまして島田委員とかわります。  大蔵省の古橋主計官にお尋ねします。  当面する漁民あるいは漁業労働者あるいは加工業者、関連業者、こういう方々の現在の心配というものは非常に深いものがあります。これに対してわが日本社会党は、過般の執行委員会等を通じて幾つかの要請をしてまいりましたが、いま各地で関係業者が大会をやり、悲痛な叫びを上げている。先ほども美濃委員から話がありましたように、この問題は漁民の怠慢やあるいは漁民の責任によって起きている問題ではありません。しかもあるところでは漁場が失われる、いままでの船ではもう漁業ができない、こういうようなことさえ心配をされているときに、依然として融資という方向をとっている。私は融資ではなくて、これはまさに国の責任で補償でやるべきだ、こういうぐあいに考えたい。融資というのは、いずれは返さなければならない。仮にそれが三分であろうと二分であろうと、元金は元金として返さなければならない。国際情勢あるいは政治情勢の変化とはいえ、当然これは起こるべくして起きたものでありますから、この責任については当然国が負担をしていくということがあたりまえではないか。この点についての基本的な考え方をお尋ねをしたい。
  130. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私が担当の責任大臣でございますから、私から明確に申し上げておくわけでございます。  先ほどもお話を申し上げましたように、当面休漁の余儀なきに至った四月中の手当てとしまして緊急のつなぎ融資をやるわけでございます。百五十億、金利は三%の低利資金でございます。しかし、これは日ソ漁業協定が締結がなされ、またクォータ等も決まりまして、減船その他もやらざるを得ない、こうなりました場合には、第二段とし  て本格的な救済措置を講ずる。その際に当たりまして、いまのつなぎ融資は当然救済措置の中に吸収をされて処理される、こういうぐあいに御理解を賜りたいと思うわけでございます。  なお、加工業者その他の関連業者につきましては、影響の度合いをいま調査をし、把握に努めております。それがはっきりいたしました段階におきまして、追っかけてこの方も緊急つなぎ融資をやりたい、このように考えておるところでございます。
  131. 金子岩三

    金子委員長 関連して、島田琢郎君。
  132. 島田琢郎

    ○島田委員 竹内委員の補償の問題の続きで私はもう少し念を押したいと思うのですが、今回のこの日ソ漁業の中断、行き詰まりが非常に末端の各層にわたって大変大きな影響をもたらし、政府もやむを得ず減船を指示し、これらの最小限の補償をしなければならぬという決意に立たれたようでありますが、これを進めるに当たって特に私は配慮をすべきだと思う点が一つあります。幾つかあるのでありますが、時間の関係一つだけ大臣の考え方を聞いておきたいと思います。  ただいまつなぎの措置であるというふうにおっしゃっているわけでありますが、減船に伴う補償の基準にしようと考えているのは、具体的に言えばどういう点なのか。というのは、母船式のものもあり、あるいは中小の漁船もあり、これを一律のクォータでやりますと、受ける被害の度合いというのは非常に違ってきます。これは私が申し上げるまでもなく大臣はよくおわかりだと思うのですが、大手の場合はもうけが多少減る、こういうことで済みますけれども、しかし中小はそれで生活をしているわけでございますから、これはもういわゆる直撃の打撃を受けるわけです。ですから、これを一律の、いわゆるクォータを同じにしたやり方で補償するということになりますれば、末端はこれは不公平ということになってしまう。この点はどうお考えですか。
  133. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 クォータにつきましては、業態別に過去の実績その他を勘案いたしまして適正にクォータを決めるわけでございます。もとより、それをやります際におきましては、水産庁が業界とよく協議をいたしまして納得のいくような配分をいたしたい、このように考えております。  なお、サケマスの母船式漁業を考えました場合におきましては、その主力をなすものは独航船でございます。独航船は中小漁業者である、こういうようなことからいたしまして、私はこの中小漁業者である独航船の減船の割合はできるだけクォータと見合った最小限度のものにしたい、二〇%ないし三〇%。しかし母船の方は、現在の状況では母船一隻に対して独航船が三十一、二隻、その結果、母船経費が船団としての経費の四〇%を超えておる、こういう不合理がそこにあるわけでございます。適正規模は、私どもは一母船に対して、母船の大きさにもよりますけれども、大体四十一、二隻が適正である。そういたしますと、全体の船団の経費の中での母船の経費というものがそれだけ下がるわけでございます。三〇%になりますか、二五、六%になりますか、そうなりますと、ここに独航船の方からのサケを買い上げる価格にも影響してくる、こういうようなことで、そういう点も十分配慮しながら、中小漁業者である独航船業者等の立場を十分配慮してまいる考えでございます。
  134. 島田琢郎

    ○島田委員 さらに、海員組合の皆さんが、きょうは農林省と外務省に座り込みをいまもやっておるわけであります。それだけ深刻な側面を浮き彫りにしていると私は思います。先ほども美濃委員質問の中で相当程度大臣からお答えがございましたが、私はちょっと確認の意味で、いままでのやり方はケース・バイ・ケースといいますか、一つの現象が出てきたらそれに手当てをするような、こういうやり方でありますけれども、これは大臣が盛んにおっしゃる当面のつなぎであって、最終的にはきちっとしたことをやるんだということの理解はできるのですけれども、この海員組合の皆さん方というのは直ちにこれを失業という状態に追い込まれているわけでございますから、この辺のところがやはり不安なので、その心情を私思いやりますと、やはり正確な大臣のお考えをお聞きせざるを得ない、こう思ってもう一度これを念押しするのであります。  私はこの間現地に出かけましたら、盛んに皆さんから御意見がございましたのは、北海道におけるあの炭鉱の問題ですね。炭鉱離職者臨時措置法あるいはそのほかの産炭のいわゆる問題が起こったときに、いろいろな措置をやりました。ああいう方式を今度も漁船労働者のためにとってほしい、つくってほしい、漁船労働者ばかりではありませんけれども、きょう座り込みをしている海員組合の人たちの保障をするという意味では、しっかりとした雇用保障制度というものをやはり確立してもらいたい、これが政策的な要求として出ておるわけでございます。ですから、私はこの際、どろなわ式だというふうなそしりを免れるためにも、しっかりした制度を確立するということに踏み切ってもらいたい、こう思うのですが、いかがでございますか。
  135. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 海員組合の諸君初め、本当に船に乗って働いている諸君の雇用問題、これは最も重視していかなければならない問題と心得ております。私は、そういう意味で海から陸へ転職の余儀なきに至る方、これは雇用対策法によって措置してまいる考えでございます。さらに海から海へ転職をする場合には、漁業再建整備特別措置法というのがございますから、それによって対処してまいりたい。また船員保険法等による給付の道もあるわけでございます。  私は、海員組合に入っておられるような方々は比較的そういう制度によってそれぞれ手当てができる、こう考えておりますが、十トン、十五トンというようなきわめて零細な漁船に乗っておる諸君は、現行の制度ではカバーできない、それから漏れる面が出てくるのではないか、そのようなことを実は心配をいたしておるわけでございます。そういう実態を十分把握した上でこれに対する十分な対策をとりたい、このように考えておるわけでございます。  炭鉱の再建整備問題が起こった際に、炭鉱離職者に対する臨時特別の立法がなされたことを私も承知をいたしております。しかし、その際には雇用対策法というものも制度的に確立をしていないという時期でございました。そういうようなこと等もございますから、現行の制度、法体系の中でどれだけ雇用対策が進められるか、救済措置がとられるか、そしてまた、現行の制度、法体系の中ではそれから漏れるものがあるかないか、そういうものを十分把握した上で対策を講じたい、このように考えております。
  136. 島田琢郎

    ○島田委員 この議論は、時間がかかるものですから、いまの大臣の御答弁で私はあとやめますけれども、船員保険法で救済し切れないということははっきりしておりまして、実態は二〇%ぐらいしか加入しておらぬというようなことがございますが、ただ後段で、そうした零細乗組合の救済を具体的にどうするかという点について十分配慮したいというお考えでございますから、私はこれでやめますが、皆さんが心配されているこの状況に的確に政府は対応する、そういう姿勢で、私の申し上げた雇用保障制度というものを早急に確立せよ、こういう考え方を踏まえてやるんだ、こういうふうに理解していいでしょうか。
  137. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま新しい制度、法案というようなものをお話しになったようでございますけれども、それは先ほど私が御答弁申し上げた中で、もし現行の制度、法体系の中で漏れるものがあった場合には私も前向きで対策を講ずる、こういうことで御理解おきを賜りたいと思います。
  138. 島田琢郎

    ○島田委員 いや、実は大臣、私は現行で救える部分のところを言っているのではなくて、むしろ救えないところについてどうするのかということをお聞きしているわけです。いまお答えになったようなことではとても私は心配なものですから、だからそういう救えない部分を新しい制度をつくって対応してもらいたいという、この要求についてはいかがですか。
  139. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そういう現行の制度、法体系の中で漏れるものがあったならばそれに対応するような十分な措置を講じますということは、いまの御発言の趣旨と全く同じである、こういうことを申し上げております。
  140. 島田琢郎

    ○島田委員 それから、お答えは要りません、もう時間が来ましたから一言だけ申し上げておきますが、先ほど竹内委員から北方領土線引きの話が出ましたが、大臣は各党が合意をすればということを前提にされてお答えになったようですが、私はそれはおかしいと思うので、これは憲法九十八条の二項、条約措置という点でそういう理解はできるけれども、そうではなくて、法律明示せよという要求に対して、外務省からは岡田春夫委員に対してお答えがあったと思うのです。ですから、それは各党が合意をすればというような前提に立つのではなくて、政府として法案を修正して出し直すべきであるという主張をしたはずでございますから、その点についてはどうも私は納得できないのであります。
  141. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政府の原案では、国際的にもうコンセンサスができており、権威のある領海条約、この加盟国であるわが国は、この条約国内法と全く同じような効力を持つというようなことで、十分政府の原案でもその点は確保されておる、中間線の問題ですが、そういうぐあいに考えております。しかし各党、各派の方々が、そうであってもこれは領土と同じような領海の問題であるから、国内法にも明示した方がよろしい、こういうことで御意見が一致すれば、政府としては国会の修正は御異存を申し上げるようなことはいたしません、こう申し上げておる。政府がこれで十分確保されておるという考えを持っておりますから、政府みずからが修正をするということは、私は考えておりません。
  142. 島田琢郎

    ○島田委員 終わります。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  143. 今井勇

    ○今井委員長代理 速記をとめて。     〔速記中止〕
  144. 今井勇

    ○今井委員長代理 速記を始めて。  野村光雄君。
  145. 野村光雄

    ○野村委員 私は、いま日本国にとりまして最大の課題になっております日ソ漁業交渉に関します一連の問題につきまして、ただいまから担当の鈴木大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、実は私は去る十六日より二十二日までの間国会の訪ソ団の一員といたしまして現地に行ってまいりました。幸い現地の大使館におきまして鈴木大臣とも直接お目にかかれまして、その当時二回にわたりましたところの、大臣の精力的なモスクワにおきますところの非常に苦労を積み重ねての交渉の具体的な経緯、経過につきまして大使館で伺ったわけでございますが、この一連の並み並みならぬ大臣の御苦労に対しましては、はだで感じてまいりました私として心から労をねぎらいたい、こんな気持ちでおります。  そこで、あのとき大臣からいろいろの経過をお伺いいたしまして以来、滞在六日間にわたりましてソ連側の各要人と私どもも会見をいたしまして、その都度いろいろの本国の代表としてのわれわれ訪ソ団の意思を伝えるとともに、各要人の日本に対する考え方というものをあらあらこの目で見、耳で聞き、はだで感じてまいったわけでございます。  そこで私が痛切にはだで感じてまいりました問題は、この容易ならざる日ソ漁業交渉の行き詰まりの打開の一切の根本というものは、何と言っても日ソ間の基本的な信頼と友好のきずなというものをもう一度ここで見直していく必要があるのではないかということを私は痛切に感じたわけでございます。その信頼と友好というものが根底から失われた中で第三回目の交渉というものが継続した場合に、結局は力と力の対決の交渉にならざるを得ない。もしこういうふうであるならば、私はさらに最悪の時代が来るのではないか、こういうものを感じたわけでございますけれども、連続二回にわたりました長期間にわたる日ソ漁業交渉の中で、日本に対して持っておりますソ連の基本的な反日感情、またこの混乱した漁業交渉の行き詰まりによる日本国民の反ソ感情、ぬぐうべくしてぬぐい切れないものがお互いにできている、こういうものが両者の首脳の中に根強くあるのではないかということを私は感じ取ってまいったわけですけれども、この点に対して大臣としてはどのように認識していらっしゃるのか、基本的な問題についてまずお伺いをいたしたいと思うのであります。
  146. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソ平和宣言、これが鳩山内閣の際にできましてから二十数年を経過するわけでございます。その間、日ソ両国間にはいろいろな経緯、紆余曲折があったと思います。しかし日本政府日ソ友好関係、時に隣接をした国柄でございますから、体制の違いがありましてもそれなりの努力をやってきた、人事交流の面におきましても、あるいは文化、スポーツの面におきましても、さらに経済、貿易の面におきましても努力をし、また発展もしてきたわけでございます。しかし、私は、それが十分であった、こういうぐあいには言い切れない面がある、こう思っております。しかし、これは今後におきまして両国の指導者、また各政党、国会も、国民の皆さんも、冷静に判断をしていかなければいけない。日ソ友好関係を将来に向かって維持発展をさせるのだ、これがアジアの平和、繁栄につながる問題でもある、こういう観点に立って日ソ関係というものを将来に向かって大いに維持発展をさせる、こういうことが必要だと思います。私は特に希望するのでありますが、日ソ両方ともに冷静に、しかも将来の日ソ関係を考えたところのステーツマンシップが必要である、このようにこいねがっておるところでございます。そういう中においてでなければなかなかこの困難な問題は円満に妥結することができない、私は二回の訪ソを通じましてそのことを身にしみて感じ取っておるわけでございます。
  147. 野村光雄

    ○野村委員 まあ大臣、実は、私はもう少し本質的なことをお聞きをしたかったわけですけれども……。  大臣が非常に努力をなさいまして、できるだけ友好ムードを根底に盛り上げながら、そして所期の目的を達成しよう、こういう一歩高い次元に立ってそれなりに努力をしていらっしゃるということについては、冒頭申し上げましたとおり、その労苦に対して——私は行ってみた一人として、これはもう日本でわれわれが考えている以上の難関、非常にむずかしい交渉というものがあるのだということをはだで感じてきたわけですけれども、ただ私は、各要人に会いまして、端的に向こうのいずれの高官からも必ず言われました問題は、日本は親善友好とか善隣友好とか口先だけでは言うけれどもということで、ミグの問題が非常に具体的に指摘をされて出ておりました。確かにいま大臣がおっしゃいましたように、かつてのあの険悪な戦後の時代から比較いたしまして、この三十年来、日ソの間の友好ムードというものは、いろいろな交流の中からだんだんと氷解いたしまして、先ほど大臣がおっしゃいましたように、文化交流とか経済とかスポーツとか、こういうものを通しての友好ムードというものは確かにそれなりの成果は出てきておったと思いますけれども、あの一つの不幸なミグという事件以来、日本に持っている根底的なそういう不信感というものが、ともすると今度の日ソ交渉の中のどこかに災いとなって残っているんじゃないか、こういう感じを受けてきたわけでありますけれども大臣はその点に対しどういう感じを持ってきていらっしゃるのか、率直にお尋ねいたしたいわけです。
  148. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 野村さん初め超党派国会派遣議員団の方々がソ連の最高首脳にお会いになりまして、そういうミグ事件の不幸な出来事、このことが向こうから指摘をされた、話題になったということも私、承知をいたしております。これは確かに日ソ友好関係に一時期水をかけたと申しますか、そういうことはあったと思います。しかし、これは偶発的な事柄でございまして、ソ連政府がやらせたことでもないし、また日本政府が国際慣例等を無視したむちゃなことをやったわけでもございませんし、ああいう偶発的な出来事によって日ソの間にすき間風が吹いたというようなことは、私は非常に残念に思っておるわけでございます。しかし、私とイシコフ大臣の間におきましては、ミグのミの字も出ませんし、この日ソ漁業関係というものは日ソ間における友好のかけ橋である、これはできるだけ大事にしなければならない、こういう漁業問題の責任者としての共通の考え方の上に立って交渉を進めてまいりましたから、私は野村さんやなんかのように鮮烈にこのミグ事件というものを感じなかったわけでございます。しかし、御指摘をいただきますと、確かにこれは偶発的な不幸な事件ではあったけれども、まあ水をかけたと申しますか、そういうことがあったのではないか、このように感じております。
  149. 野村光雄

    ○野村委員 いまの大臣の御答弁を聞いていますと、確かに不幸な事件であったけれども大臣の正式な日ソ漁業交渉の段階におきましては、両者とも幸いこのミグ問題に対してはミグのミの字も出なかった、こういう御答弁をいただいたわけです。私は率直に言いまして、確かに漁業交渉という一つの枠内でのレベルの交渉でありますがゆえに、ミグ問題は向こうも出さなかったんだろう。しかし、われわれの立場に立ったときに初めて、行くところ行くところミグの問題が出たということは、大臣とイシコフ漁業相との両者においては出なくとも、本質的にはこういうものが非常に災いの一つの要因になっているのではないかという感触を私は受けてきたわけでございます。この問題に対しましては、後ほど外務省関係の方々にさらにお尋ねをいたしたいと思いますので、後に譲ります。  次に、この際大臣にお尋ねをいたしたいことは、せっかく今月末に出漁を期待しておりましたサケマス漁業船団の月末出漁が、仮調印が延期されたためにできなくなったという最悪の事態が起きてまいっております。  まず、この仮調印が延期された理由の中に、やはり領土問題というものが最大の要因として含まれている、こういうように私どもは認識をしているわけでありますけれども大臣は、この仮調印が延期のやむなきに至った最大の要因は那辺にあるのか、この点をどのように御認識なさっていらっしゃるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  150. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 荒勝代表からの連絡によりますと、漁業省のニコノロフ主席代表ほかとの話し合いによりまして、双方の意見はほとんど合意に達しまして、九九%まで二十五日に署名をする、二十八日にはわが方の主張のとおり東京でシャルクを再開をして、そこで調印をする、こういうところまでいっておったわけでございますが、急にソ側の態度が変わってきた。ニコノロフ首席代表の言葉をもって表現すれば、これは至上命令であるからどうも自分の方としては署名をするわけにはいかない、こういうことを言っておるわけでございます。それは協定の第一条の問題、領土絡みのこの適用海域の問題、これを議定書に明示せよ、こういう土壇場において、しかも至上命令としてそれが出てきたというところに原因があることはそのとおりであろうと思うわけでございます。しかし、わが方としては、荒勝代表に対しまして、九九%まで漁業省関係者とは合意しておった問題でございますから、十分話し合いを継続をして、この問題をもとの線に戻して、円満な署名が一日も早くなされるように、こういうことを指令をいたしておるところでございます。
  151. 野村光雄

    ○野村委員 九九%まで交渉が、まず仮調印という段階までいっていたものが、突如として急変したわけでございますけれども、そういたしますと、大臣としての今後のサケマス問題の解決の対応策としては、これからさらに行われようとするところの一連のロソ漁業交渉の中で、これを一括議題として、大臣訪ソの折に解決しようとしているのか、また当然サケマスサケマスとして、二百海里外の問題でもありますし、別の問題としてこの問題を早急に解決しようとしているのか、この対応策と見通し等についてお伺いいたしたいと思います。
  152. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 このサケマスの問題は、もう申し上げるまでもなしに、日ソ漁業条約に基づくものでございます。したがいまして、特に二百海里域外の公海上の問題でもございますから、これはほかのものとは違う、分離して早期解決を図る、こういう基本的な方針は毫も変わっておりません。  しかし、その原因が、先ほど申し上げましたように、協定第一条の一九七七年二月二十四日のあの閣僚会議決定の線、こういうことが具体的に出てきておるわけでございますから、別個の問題として処理をするたてまえでございますけれども、結局一条問題と一体をなすものだ、絡んでおる、こういう感じがしてならないわけでございます。  そういうようなこと等を勘案をいたしまして、私は、メーデーから五日間は向こうの行事があるというようなことで、六日あたりの訪ソを実は考えておったわけでございますけれども、この訪ソの時期を繰り上げまして、できるだけ早くこの問題も解決をしたい、こう考えておるところでございます。
  153. 野村光雄

    ○野村委員 本会議がございまして、一応一時……
  154. 今井勇

    ○今井委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  155. 今井勇

    ○今井委員長代理 速記を始めて。
  156. 野村光雄

    ○野村委員 失礼しました。私は本会議があるものと思っていましたから、そのつもりで順序もございますと思ってあれしたのですが、それでは一応休憩前にもう一点だけお尋ねいたしまして、休憩後、ただいま大臣からお話のございました協定の二百海里の海域線引き問題、すなわち第一条、第二条問題を若干触れたいと思います。  ただいま大臣の御答弁の中に、来月の一日ないし二日ごろに三度目の訪ソ、こういうお考えが明らかにされたわけですけれども、今度の三回目の訪ソというものに対しましては、当然私が申し上げるまでもなく、一回よりか二回、二回よりか三回、非常に責任も重い、土壇場まで追い詰められてきたような感じをいたしておるわけでございますけれども、今回の第三回目の訪ソに当たりましての大臣の見通しと決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  157. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、わが国のこれに臨むところの体制というものは、前二回の訪ソの場合と非常に大きく変わってきておると思います。  今日ほど国論が一致したこともございません。外交問題でこのように一致したこともございません。また、超党派の心からなる御支援もいただいております。その結果として、領海法、二百海里法も私が出発する前にぜひ衆参両院を通じて成立を図っていただきたいという念願も持っておるわけでございますが、もしそういうことになりますれば、前二回の交渉とは異なり、わが方の交渉に対する体制というものは非常に安定的なものに相なってくる、このように私は心強く思っておるわけでございます。  しかし、一方において、今回のサケマスの問題に見られるように、ソ側の基本的な姿勢、基本的な考え方というものはいささかの変化もないようにも思います。したがいまして、私は基本的にはなかなかそうなまやさしい交渉ではない、このように存じております。  しかし、私は本会議場並びに当委員会でしばしば申し上げておりますように、今後の日ソ平和条約交渉、戦後未解決のこの領土問題、この交渉にいささかの支障も来さないように、わが方の立場を損ねないように、そして一方において、一世紀にわたりわが国漁民諸君が培ってきたところの北洋の漁業権益、これをあくまでも守らなければいかぬ、そういう二つの命題を達成するために全力を挙げて国民の皆さんの御期待に沿うべく、微力でありますけれども努力をする、この決意にはいささかの動揺も後退もございません。そういうつもりで取り組んでまいる考えでございます。
  158. 今井勇

    ○今井委員長代理 この際、午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  159. 金子岩三

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野村光雄君。
  160. 野村光雄

    ○野村委員 それでは、午前に引き続きまして、大臣質問いたしてまいります。  先ほど午前中に大臣の御答弁がございました第三回目の今回の訪ソというものが、大げさな言葉で言うと日本の運命を左右するような責任があるんじゃないか、こういうふうに私も受けとめておりますし、大臣もそのような立場に立って非常に責任を感じていらっしゃるようであります。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 そこで大臣は、今回の第三回の訪ソに、いよいよ待望の日本自身の二百海里というものを国会で議決をいただいて行くことによって、今日まで一回目、二回目と交渉をいたしてまいりましたこの交渉の経緯からいって、本質的な大きな力が加わった、加わるんだ、こういう意味の先ほど御発言、御答弁がございました。  そこで私は、率直に大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、かつて大臣が第一回目に訪ソなさいましたときの帰国後のこの委員会におきまして、私は大臣の労苦は労苦としても、あの第一回のときにすでに対応策が遅きに失したのじゃないか、さらに対応に甘さがあったんじゃないかということを御指摘申し上げました。しかし大臣は、やはり責任の立場上これをお認めになるということはできなかったんだろうと思いますけれども、しかし私は、政治家といえども政府といえども、人間である以上勘違いも失敗も、ときには間違いも、神仏でない以上私はあると思う。そういう面から、率直な立場として、いまここまで追い詰められた立場の中で、あと数日間に追った中でようやく二百海里を政府として上程し、そして議決をいただかなければならない時間的な問題になって、二百海里問題というものがいま爼上に上っておる段階でありますけれども、ここまで時間的な追い詰められた中で、しかも言いかえるならば、昔のことわざにもありますけれども、どろぼうをつかまえてなわをなうということわざのように私は感じてならないのでありますけれども、率直に、やはりこの面に対しては遅きに失した、対応の仕方に手抜かりなり甘さがあった、表現は別としても、大臣は率直にこの点をどのように受けとめていらっしゃるのか、この点をまず最初にお尋ねいたしたいと思います。
  161. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ます、対応がおくれたのではないか、こういう御叱正でございますが、これは野村さんの御認識も同じだと思うのでありますが、わが国は漁業国家であり、また海洋の自由というのを長年にわたって主張し続けてきておるわけでございます。そういうようなことから、海洋法会議の単一草案もできたことであり、この単一草案によって国際的なコンセンサスができることを待ち望んでおったわけでございます。わが方から先んじて二百海里をやるというようなことは、これは私は適当でなかった、こう思います。しかし、世界のリーダーであるアメリカが、まず海洋法会議の審議の途中において二百海里法案を成立をさせた。カナダもこれに続いた。さらに日本と並ぶ漁業国家であるソ連も二百海里を宣言をした。EC、ノルウェー、アイスランド相次いでそういう状況になってまいりました。こういう状況で、わが方としては、これはやむを得ざる措置として暫定法ということで今回提案申し上げておるのもそのゆえんでございますが、二百海里漁業水域に踏み切った、こういう経過でございます。  しかし、経過は経過としても、日ソ問題を考えました場合において、結果論として対応がおくれたということにつきましては、率直に私も認めるところでございます。  それから日ソ交渉に当たっての政府の考え方が甘かったのではないかという御指摘の問題がございます。私は、第一次の訪ソに当たりましてイシコフ大臣と、領土問題とは切り離して漁業問題として二百海里時代の今後の日ソ漁業のあるべき姿、どういう北西太平洋の漁業秩序を確立するか、こういうことで話し合いをいたしました結果、御承知のように三月三日に合意をしたわけでございます。その時点におきましては、私どもはこれは日ソ友好という大局に立っての話し合い、また漁業問題が日ソ間の友好のかけ橋である、こういう善意と信頼、そういうような観点からこれができたということで、私は暫定取り決めも円滑に結ばれるのではないか、こういう受けとめ方をしたわけでございます。恐らく私は皆さんもそのようにお考えになったと思うわけでございます。しかるところ、第一条におきまして、北方四島領土絡みの、一九七七年二月二十四日の閣僚会議決定の線の適用海域の条文案が出てきたわけでございます。  私は終始、三月三日の鈴木・イシコフの合意のあの線、適用海域としてはっきりうたっておるわけでございますから、あれをそのまま移しかえることを主張した。これは当然のことだと思います。両国の漁業の責任者同士が合意をし、調印をしたということは、両国はこれに縛られることでございますから、責任があることでございますから、私はそれを主張した。ある意味では、ソ連の方針が大きく急カーブに変わってきたということを指摘せざるを得ない。そういうことを指して政府日ソ交渉に臨む態度は甘かったと、こういうおしかりであれば、これも甘んじて私は受けざるを得ない、こう思いますけれども、経過はそのようであるということを御認識を賜りたいと思うわけであります。
  162. 野村光雄

    ○野村委員 まあ、大臣が率直に対応に対するところの手おくれをある程度お認めになられ、また対応の仕方に対して、まあ甘かったと言えば甘かったかもしれない。こういう人間大臣としての率直な感じを承りまして、私は、政治の対応の姿勢というものはやはり基本的には失敗も、また勘違いもあるわけですから、反省の中に立って初めて新しい前進というものがあろう、こういうふうに認識いたしまして、率直にそれなりに私どもも評価する次第でございます。  さてここで、いよいよ第三回の訪ソに当たりまして、最大の課題としていま残されております問題は、何と申しましても第一条の二百海里の線引き、すなわち領土問題であろう、このように認識いたしております。  私が訪ソいたしまして直接イシコフ漁業相にお伺いいたしました、その話し合いの中におきましては、イシコフ漁業相自身も、できるだけ鈴木農相とは領土問題というものを避けて円満解決をしたい、こういう気持ちには変わりない、こういうような率直なお考えを私なりにお聞きいたしてまいりましたし、当時の鈴木農相御自身も、今日まで一貫して、願わくは、両者とも領土を除いて漁業交渉が円満に解決できるならばこれに越したことはないという基本的姿勢で今日まで努力をなさってきた、それはそれなりに私は評価をするわけでありますけれども、しかし事ここに至りました以上、この領土問題というものを抜きにして最終的な打開の道はないだろう、このような感じを私は率直に受けとめてきておるわけでございますけれども、この第一条の線引き問題に対して、これから来月早々の最終段階における両者の交渉に臨むところの領土に対する大臣の基本的な考え方、御見解を承りたいと思います。
  163. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、この北方四島の問題、これを背景とした第一条の適用海域の問題、これは日ソ両国がこの北方四島は戦後未解決の問題である、こういうありのままの姿、これを前提とするならば、仮に領土問題の絡みがあっても、解決点を見出すことができる、こう思います。  ところがそうでなしに、現に占有をし、施政をしいておるのであるからこの問題は解決済みである、こういう立場でソ側が参りますと、これはなかなか解決できない問題である。また漁業問題を契機に、わが方でも、北方四島に対する固有領土であるという立場を二歩でも、三歩でも、五歩でも前進をさせようということになりますと、これは平和条約交渉でやるべき問題だという観点から見ますと、むしろ、日本がこれを領土絡みとしてこの問題でがんばっておるということになりかねない、ソ側からはそういう批判をするでありましょう。  私は、どっちをとりましても、漁業問題を円滑に、早期に解決する道ではない。これはやはり戦後未解決の問題、そしてこれは平和条約交渉の中で時間をかけても処理されるべき問題である。こういうことを日ソ両方が十分腹にわきまえて、それに即応したところの漁業協定ということを取り結ぶのであるということになれば、私は必ず解決点は見出せる、このように考えております。
  164. 野村光雄

    ○野村委員 そこで、大臣に私は率直にお尋ねしたいのでございますけれども、これは現時点で立場上非常にむずかしいという点があれば、その点は御考慮の上御答弁賜って差し支えないと思っております、これからの大事な問題でありますから。  ただ、今日までの交渉に携わりました当事者である大臣として、この領土というものに対して、先ほど大臣が触れておりましたとおり、ソ連がすなわち解決済みとして、領土権というものを腹に持っておる、そういう中で今回の交渉が非常に難航しているんじゃないかと私なりに想像しているわけですけれども大臣ソ連の真意、腹の中は、この領土問題に対して、この漁業交渉に対してどのような考えを根底に持っておると認識していらっしゃるか、抽象的かもしれませんけれども、お尋ねしたいと思います。
  165. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連側がこの北方四島を現に占有をし、施政を行っておる、そのことをもって領土問題は解決済みである、こういう認識でこの問題に取り組んでおるのであるかどうかという問題は、イシコフ漁業大臣と私は、領土の問題は避けて、漁業問題として話し合おうということで、領土の問題は一言も出ておりません。むしろ野村さんは議員団としてより高い最高幹部会議長にもお会いになっているわけでありますから、むしろ野村さんのはだで感じてきた、またソ連首脳がどうもこう考えているようだということをお聞かせいただくと大変参考になる、こう存じております。
  166. 野村光雄

    ○野村委員 質問者と何かすりかわったような感じでございますけれども、私の質問の中に私の感じが入っているわけでありまして、立場もございましょうし、これからの交渉に携わる大臣として、十分これらの問題がわかっていながら、公開の場所で発言できないのであろうか、こういうふうに受けとめられますので、この辺にいたします。  次に、十二海里問題に対して若干お尋ねいたしますけれども大臣は、今日までの交渉によりまして、当初言われておりました日本が十二海里に拡大いたしました暁に、この十二海里内におきますところのソ連漁船によるところの操業、こういう当初の意思が一応交渉の経過によりまして解消した、こういうふうに大臣はお受けとめになってお帰りになっていらっしゃるようですが、この点は間違いないのか、確認をいたしたいと思います。
  167. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この点はイシコフ漁業大臣との間にはわが方の立場というものは十分理解をされております。また、その一つの裏づけとしまして、私からわが国の三—十二海里の間のイワシ、バ等の今日までの漁獲量は、これを十二海里の外の百八十八海里の漁業水域の中の実績算定の中に加算をいたしましょう、そうしてそれをもとにしてクォータも決めましょうということもイシコフ大臣に申し上げているわけでございます。したがいまして、イシコフ大臣との間には十二海里の中にはソ連漁船といえども、その他の外国漁船といえども一切入漁は認めないということは、きわめて明確になっておるわけでございます。しかし、さてそれを実務家の段階におろしまして、成文化するということになりますと、この前も御説明申し上げたと思うのですが、ソ連の漁業専管水域というのは、幹部会令というのは、ソ連邦沿岸沖合い二百海里、基線から二百海里を漁業専管水域に見ておるわけでございます。そういう法体系になっております。わが方は、本邦の低潮線から十二海里までが領海である、その領海の外に百八十八海里の漁業専管水域がある、こういう法体系になっておるわけでございます。したがいまして、向こうの方は根っこから漁業専管水域でございますから、二百海里の中には漁業協定によってはよその国の漁船も入漁せしめ得るという法の解釈、これは成り立つわけでございます。わが方は百八十八海里の漁業水域にしか入れられない、こういうことでございます。そこで今回わが方が十二海里領海法、そして漁業水域法、こういうものが成立をいたしますと、その点がはっきりするわけでございます。  そういうことで、第二条の問題は、きわめて簡明になってきた、整理がしやすくなってきた、このように考えております。イシコフ大臣もこの点は鈴木大臣意見が一致しておることであるから、多少時間がかかっても、第二条の問題は実務家の間でも結論が出るだろうとあの当時でさえ楽観しておったのでありますが、今回のことによって一層その点はやりやすくなった、このように私は考えております。
  168. 野村光雄

    ○野村委員 私たちが先般代表で訪ソさせていただきました目的は、一切交渉が目的でございません。そういう中で、イシコフ漁業相みずから十二海里問題に対して触れた内容の話と、大臣が受けとめていらっしゃる内容と、若干食い違いがあるのじゃないかということを懸念いたしますので、これから再交渉に当たります大臣の参考にしていただいて、さらに再交渉で確認をしていただく必要があるのじゃないかという懸念がございます。  ということは、約三時間の会談でございましたけれども、その中で当然第二条問題がイシコフ漁業相から話がございまして、イシコフ漁業相はこう言っておりました。日本が近く十二海里実施の場合、繰業させないと言った、これは日本政府の権利に属することで、私の口をはさむ余地のない問題である、私は隣国としてすべて常時とらしてくれという考えではないのだ、操業したいというときに、領海内は、お互いに話し合って解決し得るもの、こういうふうな——私はきちっとした速記をしてきたわけですけれども、必要なときに話し合いをすれば、必要な量ぐらいはとらしてもらえるのだ、こういうニュアンスで受けとめておるようでございますけれども、この点に対しては、間違いなく大臣のおっしゃるような立場で両者が納得しているのかどうなのかということに懸念がございますので、お話を申し上げたわけでございますけれども、この点について……。
  169. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまの野村さんが速記をとってこられたこと、私非常に貴重なことだと思います。その前段は、明らかに日本政府が決める問題である、日本政府が決める問題であるということを明確に言っておる。これは私が言っておることであります。後段の方は、そうであっても、ソ連側としてはそういう願望を持っておるんだという表現であろうかと思います。しかし、私は十二海里の中で、そういう取り決めとか協定をする意思はございません。この国会の場を通じまして、はっきりと責任者として国民の前に明らかにしておく次第でございます。
  170. 野村光雄

    ○野村委員 次に、十二海里問題に関連いたしまして、実はたまたまこの訪ソ団一行がイシコフ漁業相にお会いをいたしましたときに、団長以外に私ども若干の時間が与えられまして、率直に要望なり意見を申し上げる機会がありまして、実は先般来この委員会で何回かにわたりまして、水産庁等に対しまして質問いたしておりました沿岸漁民の紛争処理問題につきまして、御存じのとおり、現在東京におきますところの紛争処理委員会に上程されております案件七百十三件、ソ連にすでに二件送付されております。この問題が遅々として一向に交渉が進んでいない、これはとりもなおさず、多くの沿岸漁民が非常な被害を受けた中でますます反ソ感情が上局まってきている、日ソ友好という親善の中からも、一日も早くこの沿岸漁民の漁網、漁具に対する損害の賠償、この紛争処理の話し合いを早く進めるべきであると強い要望を申し上げたわけですけれども、たまたまその中で、最後にこの問題にイシコフ漁業相が触れまして、こういう御答弁がございました。私はこのことを早速考慮いたしたいと思っております、ちょうど東京から担当者がモスクワに来ており、紛争処理は早まるものと思います。このようにきわめて前向きの御答弁がございました。漁業相にお会いいたしましたのは十八日でございまして、その後、帰りのたしか二十一日でございましたが、大使館にお寄りいたしましたときに、この十八日イシコフ漁業相にお会いいたしました直後、御存じのとおりイシコフ漁業相は北欧に出発なさいましたわけですけれども、その出発直前に、モスクワの紛争処理委員会の責任者にこのことをできるだけ早期に解決するよう指示を与えた、このようなお話を承って私は帰国いたしたわけでございます。  いずれにいたしましても、大臣としては、一連の今回の日ソ漁業交渉の中で大きな課題になっておりますこの沿岸漁民の紛争問題に対してどのように対応し、お話し合いがなされてきていたのか、その点、大臣漁業交渉の中でこの問題に触れたのか触れないのか、またその点の感触等もお伺いいたしたいと思いますし、また水産庁の方からも、今後の対応に対しての基本的な姿勢もあわせてお伺いいたしたいと思います。
  171. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は、日ソ漁業操業協定ができ、その後紛争処理委員会がつくられ、しばらくそれが軌道に乗るまで仕事が進まなかったわけでございますが、その後双方の呼吸がだんだん合ってまいりまして、その処理を前向きでやろう、こういう方向に向いておりますことは御承知のとおりでございます。  それでは、先般二回の訪ソ、その交渉においてこの問題を持ち出したかどうか、こういうお尋ねでございますが、これは日ソの漁業協定をああいう困難な中で早期に解決をしなければならないということでございますから、私は、その問題を交渉に当たっている私として持ち出すのは、その場所といいタイミングといい、余り賢明なことではない、このように考えておったわけでございます。しかし、日ソ友好親善の大任を持って訪ソをされた野村さん初め皆さん方からそのことをおっしゃっていただいたということは、私、大変うれしく存ずるわけでございまして、感謝を申し上げる次第でございます。  わが方の海域にかかわる問題でございまして、これは今後、わが方の漁業水域内に迎え入れるソ日漁業協定と申しますか、日ソ漁業協定と言うからソ日漁業協定と申しますか、そういう協定の際に当然まずもってこういう問題をはっきり処理しなければ、日本漁業水域内に入る問題というのは、これは相関連している問題でございますから、私としてはそういう際に根本的な処理をしたい、こういう腹構えでおることを明らかにしておきたいと思います。
  172. 岡安誠

    岡安政府委員 それでは、処理状況並びに今後の見通しを若干申し上げますが、おかげさまで損害賠償請求処理委員会の仕事も進捗をいたしまして、受理件数七百五十二件、現在審査中の案件数三十七件、うちモスクワへの送付済み件数三件ということになっております。これはいま先生指摘のとおり、それぞれ日本側並びにソ側の委員がおりまして案件を処理するわけでございますが、両方の委員がその気になって審議を促進しなければならぬということがございますが、いま先生お話で、わが国委員もまたソ側の委員も一生懸命処理を進めていただくということになれば、さらに審議が促進されるだろうと思います。  それから、もう一点やはりネックがございまして、いろいろ審議をしていただく際の資料等につきまして、まだ非常に不完全なものが多いわけでございます。それらにつきましては補正資料を御提出いただくように申請者の方々にお願いをしておりますが、そういうような手続が必ずしも従来は円滑にいっていなかった点がございますが、今後は私どもも少し精力的に指導をいたしまして、すべてを円滑に進め得るように努力をいたしたいというふうに思っております。
  173. 野村光雄

    ○野村委員 鈴木農相にはあと一点だけお聞きいたしまして、後、外務省関係に移りたいと思いますが、いずれにいたしましても、第三次目の訪ソ、大任を負われまして出発なさるわけでありますけれども、よもや今度第三回目がまた暗礁に乗り上げて第四回目の訪ソ、こういうことはあり得ないだろうし、またあってはならない、このように私自身考えております。大臣も恐らくそういう決意であろうかと思います。しかし、横たわっております諸問題はそう簡単なものではないと同時に、私が訪ソ団の一人として受けとめてまいりました感触から申しまして、これから大臣が訪ソなさいまして対応なさいます相手のイシコフ漁業相、確かに約三十年にわたるところの漁業大臣として、ソ連ではこれにまさる方はいない、漁業問題に対しては権威のある方とお聞きいたしてまいりましたけれども、しかし、いかんせん、ソ連の政治のあり方から見まして、たとえ明るいとは言いながら、イシコフ漁業相に与えておられるところの権限、こういうものに対してはおのずから限度があると私は見てまいりました。そういう中で、最高会議幹部会のこういう結論による以外に、イシコフ漁業相みずからの考えなり権限において鈴木農相との最終的な段階というものに結局は限度がある、こういう観点から、私は、最終的には両国間の最高の政治レベルの折衝も当然必要になってくるのじゃないか、こういうように思っておりますけれども大臣の三たび目の訪ソに対するところの最終的な、究極的なお考えなり決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  174. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も野村さんと同じような認識を持っておるのでありますが、しかし、わが政府としての、また国会としてのこれに対してとるべき対応はいろいろやってきたわけでございます。福田総理の親書を携行して園田官房長官が訪ソをし、コスイギン首相にも会いまして、日ソ友好関係維持発展という大局に立って当面の問題についても円満にひとつ解決をしようではないかという総理の真意もお伝えをしてあるわけであります。また国会では、超党派の院の決議もちょうだいをしておるし、各党の超党派の御支援もいただいておる。また、国民世論もいまや一つに結集をされておる。国会におきましては、領海法あるいは漁業水域法、こういう問題につきましても審議の促進を図って共通の土俵をつくるべく大変御協力をいただいておる。こういうように、政府としても、国会としても、国民世論の面からいたしましても、条件が大分整ってきておる、前二回の場合と大分状況が違っておるということを、私は力強く感じておるわけでございます。  ただ、そういうような日本の世論なり国会なり首相の特使なりあるいは訪ソ議員団なり、日本の全体の動きというものを、ソ連最高指導部は一体どう受けとめておるか、また、日本との友好関係を将来に向かって維持発展させていきたいという考え方を持っておられるのかどうか、その認識が深まったのかどうか、こういう点がこれからの日ソ漁業交渉の成否を決める大きな基盤である、私はこのように考えております。そういうようなことで、私は、皆さんの御期待に背かないように、微力ではありますけれども最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  175. 野村光雄

    ○野村委員 だんだん時間が迫ってまいりまして、時間がございませんから一括して御質問いたしておきます。  もう一つ、恐れ入りますけれども鈴木大臣からこの際どうしてもお伺いいたしておきたいのですが、今回の日ソ漁業交渉の行き詰まりにおきまして起きておりますところの多くの関係漁民の方々に対する休業補償、融資対策、こういう問題は政府といたしましてもすでに前向きな姿勢で御検討なさっていらっしゃるようでございます。これらの不安におののく多くの関係漁民なり労働者に対して一日も早くとりあえず当面の生活の安定を保障する必要がある、これは早期に対応いたしていただきたいということを、私は漁民にかわって心から願う一人でありますけれども、この休業補償、融資対策につきまして、今日これらの各漁業団体、加工業者、または労働団体が受けております被害の金額なり状況なりは、一体どのように掌握なさっていらっしゃるのか、これが一点と、この補償なり融資対策はいつごろをめどとして、どのような具体策を通して対応なさろうとするのか。この休業補償並びに融資対策につきまして、御答弁をいただきたいと思います。  次に、外務省の方にお尋ねいたします。  先ほど来鈴木大臣からお答えいただいてわかってまいりました、関連する問題でございますけれども、私どもが訪ソいたしまして、各関係要人の中から盛んに出てまいりました問題は、結局、いかに日ソ友好、親善を唱えても、口先だけでなくて行動が伴わない限りは、われわれは信用することができない、その最大の事件としてミグ問題をいずれの要人も口に出しておりました。外務省といたしましては、このミグ問題に対してどのようにソ連に対して対応なさってこられたのか。私どもは、むしろ日本が被害者の立場にあるのじゃないか、こういう認識で今日までおったわけでありますけれどもソ連に行きますと、ソ連自身が被害者の立場にある、認識がお互いに百八十度転換いたしておりまして、わが国民の持っている実態というものを認識せしめる対応策がどうも手ぬるかったのではないか、こういう感触を受けて帰ってまいった次第であります。このミグ問題に対する日ソ間の対応の今日までの経過、経緯、そして今後の対応策をお聞きしたい。同時に、このミグ問題はやはり多かれ少なかれ日ソ漁業交渉の中で大きなみぞとなって今日までの経過をたどってきた、こういう認識を私は持っておりますけれども外務省のこれらに対する認識はどうなのか。  もう一つは、先ほど来の、これからの第三回目の交渉に当たって最後の問題である領土問題でありますけれども、これに対して外務省は、各関係省庁と連携してどのような基本的な姿勢で臨もうとしていらっしゃるのか、外務省御自身の、漁業交渉に関連した領土問題に対する認識と対応策をお伺いいたしたいと思います。
  176. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 四月一日から、わが国の多数の漁船は北洋の漁業を休漁のやむなきに至っておるわけでございます。政府としてはこれが救済措置の万全を期さなければならないということで、さきに閣議でその方針を決めたわけでございますが、それに基づきまして、当面漁船経営者並びに漁船乗組員、そういう方々に対しまして、四月分として百五十億の金利三%の低利資金を緊急つなぎ融資をすることに決定をいたしまして、今月中に末端までこれが届くようにということで作業を急いでおる段階でございます。  なお、これはあくまで当面の緊急の措置でございまして、日ソ漁業交渉が決着がつき、クォータも決まってまいりますれば、今度はそのクォータに見合ったところの新しい操業体制というものをつくらなければなりません。そういう際に、減船の余儀なきに至るものもございます。転職の余儀なきに至る方もあるわけでございます。そういう方々に対しましては、本格的な救済措置を講ずる、その本格的な救済措置をいたします場合には、当面のつなぎ融資をしたものは救済措置の中に組み込まれていく、こういうことにしたいと考えております。  なお、漁船船員、乗組員の雇用問題につきましては、現在御承知のように海から陸への対策としては雇用対策法がございます。海から海への雇用対策としては、漁業再建整備法がございます。また船員保険法もあり、いろいろの制度がいま確立をしておるわけでございますから、それによって十分な措置を講じてまいりたい。ただ、その場合に、五トンとか十トンとかいうような零細な漁船の乗組員、漁業者の諸君が、現在あります制度、法体系の中で十分カバーできないという場合におきましては、別途これらを救済するような措置もあわせて考えていきたい、このように考えております。  なお、加工業者等に対しましては、関連産業に対しましては、ただいまこの休漁の影響の度合いというものを調査をいたしておりますが、それが把握でき次第、漁業者に対するところのつなぎ融資と同じような措置をこれらの業者にもやってまいりたい、このように考えております。
  177. 加藤吉弥

    加藤説明員 外務省関係の御質問にお答え申し上げます。  まずミグ事件でございますが、御記憶のとおり、この事件が発生いたしましたのは昨年の九月六日でございます。ミグを日立港からソ連船に返しました日付が十一月十五日、この間約三カ月余りでございます。私どもはこの事件の処理に当たりましては、主権国家としての誇りとそれに伴う当然の権利、これに従って、かつ国際法、国際慣例、そういう前例に徴して全く恥じることのない処理ぶりをしたと考えております。日ソ友好関係全般というものにも深く思いをいたしまして、できる限り相手側を刺激しないように、極度の慎重さと、それからとるべき措置も最小限度にとどめるという心持ちで対処してまいりました。  いずれにいたしましても、この事件は日ソ双方にとりましてはなはだ不幸な事件ではございましたけれども、私どもの認識といたしましては、これが日ソ関係を基本的に悪くする、そういう性質のものではないと考えております。御指摘のとおり、ソ連側ではみずからを被害者として考えておる、日本側はそうではなかった、こういうギャップは一体どこから来たのか、これをどういうふうにしていったらいいのかというお尋ねでございますが、これはやはり双方が冷静沈着な態度で相互理解を進めていくということに尽きるのではないかと思います。この観点からすれば、はしなくも漁業交渉を通じまして、いわば挙国一致と申すべき態勢ができ上がり、二回にわたる鈴木大臣の訪ソ、さらには園田官房長官が総理の特使として訪ソされ、それに続いて超党派の先生方の議員団が行かれ、いままた漁業関係の労組が訪問しておる、こういう日本の各層、各レベルの方々が互いに交流を進め、お互いの考え方を率直に交換していくということ、これが日ソ関係を誤解あらしめないために非常に有益なことであると考える次第でございます。  それから御質問の第二点、いままで漁業交渉外務省はいかなる態度で取り組んできたか、これからどういう態度で臨むのかという御質問でございますが、過去二回にわたります鈴木大臣の訪ソには、当然のことながら外務省としても関係部局の責任者が随行しておりまして、いわば政府一丸として交渉に当たってまいった次第でございます。今後も、鈴木大臣の御訪ソに当たって、私ども外務省としての責任を果たすために全力を挙げて鈴木大臣に協力してまいりたいと存じております。  各省庁の関係、連絡等についても御質問がございましたが、私どもは従来、各省庁の間の意見調整、そういうことに非常な熱意をもって当たってまいりました。今後とも、こういう関係で、いやしくも政府の内部で意見の相違とか分裂のようなものが起こることのないように極力努力してまいる所存でございます。  なお、領土問題という基本的な問題の解決に当たりましては、かねがねこの国会の場で鳩山大臣からもあるいは総理からも申し上げられておりますとおり、できるだけ早い機会に、今年じゅうに機会を見て、鳩山外務大臣ソ連を訪問され、平和条約交渉領土問題の話し合いを進めるという所存でございます。繰り返して申し上げておきます。  以上でございます。
  178. 野村光雄

    ○野村委員 時間でございますので質問はこれで終わりますけれども鈴木大臣、非常に責任の重い、しかも全国民の注目の的になってまいります最終段階の重責を担われまして、非常にむずかしい相手でありますソ連に第三回目の訪ソをなさるわけでございますけれども、どうかひとつ、くれぐれもお体に御注意なさいまして、国民の期待にこたえるようなりっぱな成果をおさめられて御帰国なさいますことを心から熱望いたしまして、質問を終えさせていただきます。
  179. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  180. 神田厚

    ○神田委員 鈴木農林大臣から連日、まことに御熱心な御答弁をいただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございますが、またまた新聞報道その他によりまして、北洋の問題が、日ソ関係が非常にむずかしい局面を迎えることになりました。このことにつきまして、いろいろ各委員からの御質問があったかと思うのでありますが、私どもはまずこの二百海里法案につきまして、この法律をつくる意味といいますか、こういうものが、現在のロソ交渉、さらにはいわゆるサケマスの二百海里外の問題の交渉の暗礁の乗り上げ、そして韓国が二百海里宣言をするというような態度を表明している、こういういろいろな状況を考えますと、二百海里法案をつくって同じ土俵に乗って交渉を進めるという意味が何か少し変わってきたというふうに私どもは考えるわけでありますけれども、その点につきましてどうでございますか。
  181. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 近隣諸国の動きもきわめて流動的でございますから、二百海里法案の成立が何か意義が変わってきたのではないか、こういう見方も一部成り立つと思いますけれども、基本的には変わっていない、私、こう思います。仮に日ソ交渉一つとらえてみましても、わが方はソ連の二百海里の中に伝統的な実績に基づきまして入漁をいたすわけでございます。またソ連の漁船も、わが方が二百海里の漁業水域を設定したことによりまして、日本側と協定を結んで初めて入ってこられるということになったわけでございます。このことは大変重要な意味を持つわけでございまして、わが国の漁船だけが向こうの二百海里専管水域に入っていく、日本は二百海里の漁業水域を持たない、自由に操業するという場合におきましては、このこと一つをとりましても重要な意味を持つものだ、このように御理解がいけると思うわけでございます。  なお、韓国あるいは中国、この関係は、日韓漁業協定なり日中漁業協定というもので西日本の漁業秩序が安定的に確保されておるということで私どもこれを大事にしていきたい、相手国から先んじて二百海里を設定してこない限りにおいてわが方からそれをやるという考えはない、わが方の方針というものを十分理解してもらえるように説明も申し上げておる、こういうことでございます。今後またいろいろの流動する情勢に対応いたしまして、政令等によりまして十分対処できる、このように考えております。
  182. 神田厚

    ○神田委員 私どもは、この二百海里法案というものを一つの大きな武器としまして、それで対ソ交渉なりあるいは各国との交渉に臨めるものとして持ってきたわけでありますけれども、私はどうも現在二百海里法案そのものが、ただいま大臣おっしゃいましたけれども、少し足かせになっている、手かせになっている、こういうような感じも持つのであります。二百海里法案を通すことによって得られるものは一体何なのだろうかということをもう一度よく考えていかなければならないと思うわけでありますけれども、ただいま大臣の御答弁をいただきました、そういう中でも私どもはこの法案を早く通さなければならないのか、それともこの法案を持っていて、そして対ソ交渉に臨んでいかれた方がよろしいのか、私はこの辺のところもひとつ率直にお聞きしたいというふうに思っているのですが、いかがでございますか。
  183. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは交渉事でございますから、できるだけ共通の土俵、それを持って話し合いをする。これをいかように活用するかという問題はこれからの交渉の問題であり、私がその国民的な輿望をひっ下げて、国会が早期に御承認をいただいたこのことを十分意義あらしむるようにやってまいる、そういう努力をいたしたい、こう考えております。
  184. 神田厚

    ○神田委員 大変懸念した問題を私どもはこの二百海里の問題で持っていたわけでありますけれども、いよいよそれが表面に出てきたといいますか、領土問題が非常に前面に出てきてしまったわけであります。この領土問題が前面に出てきたというふうなことで、これから先、日本政府がいわゆる領有権の主張もあわせてこれを前面に押し出して交渉を進めていくというようなことが一部伝えられておりますけれども、私は、事ここに至りました関係上、その二百海里の問題だけではなくて、領土問題というものをやはりある程度この場で前面に出して主張をしていかなければならないというふうに考えるわけでありますが、その辺のところはいかがでございますか。
  185. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私の基本的な考え方は、この北方四島の問題は戦後未解決の問題である、この状態、この現実を日ソ双方がそのとおりに踏まえて、その前提の上に立って漁業関係の話し合いを進めていく、つまり具体的には適用海域の問題等が出てくるわけでございます。私は、戦後三十年続いたこの領土問題を漁業交渉を通じて一挙に解決をする、また解決をしなければ漁業交渉は一歩もできないんだ、さようには考えておりません。前段で申し上げましたように、戦後未解決の問題、日ソ両国がそういうことを確認しておけば、それに相応したところの漁業水域の適用というような第一条の問題もおのずからそこに解決点を見出すもの、このように考えております。
  186. 神田厚

    ○神田委員 なかなかむずかしい問題でございまして、領土ともはや切り離せないという一つの認識を大臣初め外務省関係の方にも持っていただかなければならないんじゃないか、そういう事態にすでにもう直面してきている、このままでは日ソ漁業交渉そのものはにっちもさっちもいかない、一歩も進まないというふうな考え方に私は立たざるを得ないのでありますが、大臣、その点はどうでございましょうか。
  187. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、そのことを申し上げておるわけでございます。この北方四島の問題は、残念ながら戦後未解決の問題、これは息の長い日ソ平和条約交渉の過程で処理さるべき問題である。これが領土問題でございます。このことを前提として、そして漁業水域の適用の問題等が話し合われるということであれば、おのずから解決点は見出せる、全然領土問題をのけて、この時点で魚だけの問題というわけにはまいらないという認識は私も同じように持っておりますが、その領土問題は、これをはっきり決着をつけなければ漁業問題の解決はできないんだという考え方には私はくみしない。現状は未解決の問題、これから平和条約交渉の中でこれを解決していくんだ、こういう現実を踏まえた、日ソ双方が漁業問題をそういう観点で話し合えば、結論がおのずから出てくるであろう、こういう認識でございます。
  188. 神田厚

    ○神田委員 大臣のかたい決意を聞きまして、ひとつそういうことで御奮闘いただきたいというふうに思うわけでありますが、きょうは二百海里法案に限りましての質疑でございますので、本日、まあ政令の具体的なものも出されましたものですから、そういうものも含めてひとつ御質問をさせていただきたいというふうに考えております。  この政令が急に出されまして、非常に急いだ形でつくられておりまして、私どもこれを読ましていただきまして、やはり非常に問題の多い部分を含んでいるというふうに考えているわけであります。  まず第一に、「漁業水域に関する暫定措置法案政令規定見込事項」というこの一番目の「漁業水域に関する暫定措置法第三条第三項の政令で定める海域は、日本海西部、東海、黄海及び東海に隣接する太平洋南西部の一部の海域とする見込み。」と書かれてございます。この「一部の海域とする見込み」というこの一部の海域というのはどういうところをお指しになるのでしょうか。
  189. 岡安誠

    岡安政府委員 政令見込事項の第一に書いてございます「第三条第三項の政令で定める海域」と申しますのは、これは漁業水域から除外される海域ということでございます。  私ども考えておりますのは、しばしば御説明申し上げましたとおり、隣国である韓国、中国等の関係を考えまして、まず日本海の西部、それから東海、黄海を考えておるわけでございますが、御質問の東海に隣接する太平洋南西部の一部と申しますのは、東海と南西諸島を境にいたしまして隣接いたしております太平洋の一部でございます。  なぜこの太平洋の一部を除外水域として考えているかということを若干申し上げますと、この海域は中国が関心を有すると考えられる海域でございます。ここに漁業水域を設定いたしますと、るる申し上げておりますように、中国との関係では現在日中漁業協定によりまして円滑に漁業が行われておりますそういう漁業秩序に影響を及ぼすおそれがあるというふうに考えられますので、黄海、それから東海と合わせまして、この南西諸島を境として東海に隣接いたします太平洋の一部を除外をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  190. 神田厚

    ○神田委員 この適用除外の問題は非常に大きい問題でございまして、なお質問を続けさしていただくわけでございますが、私は、やはり漁業水域について、二百海里の場合、全体的な線引きをして、そしていわゆる総合的な漁業の問題で、ある国についてはこれを抜く、特定の外国人のあれについては抜く、こういうふうな考え方が基本にならなければならないというふうに考えているわけでありますけれども、そういう御認識でこの法律案を読んでよろしいのでございますか。
  191. 岡安誠

    岡安政府委員 原則は、この二百海里の漁業水域法につきましては、わが国の沿岸二百海里につきましてはすべて漁業水域ということになるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、相手国がまだ二百海里を引いていないというような海域につきましては、やはり漁業水域として設定しておかないで、その関係水域につきましては除外をするということの方が両国間の漁業関係を円滑に維持をするということに役立つであろうというふうに考えているわけでございまして、この三条三項によります海域の除外、それからあわせまして十四条によります外国人についての除外、両方で参りたい、かように考えているわけであります。
  192. 神田厚

    ○神田委員 これは表と裏の関係といいますか、そういう関係であるかと思うのですが、ソ連あたりは、いわゆる韓国や中国に対してだけ適用除外をしている、いわゆる特典を与えているというような感じを持っておりまして、そういう反発が非常に強いというような報道も聞いているわけであります。このことがまた一つ漁業交渉の大きな問題にもなってくるというふうな話も聞いております。したがいまして、そういう場合には、やはり一律に引いておきまして、韓国なり中国なりについては、いわゆる漁業協定でうまくいっているからこう抜くのだというような形でのこの法律案の運用というものはできないものでしょうか。
  193. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私とイシコフ漁業大臣との間におきましては、日本も近く二百海里漁業水域法を制定する方針であるということをはっきり申し上げて理解を求めておるところでございます。そういう際には、自分の方の二百海里の専管水域にも日本の漁船の操業を認めるのであるから、ソ連の漁船の日本漁業水域内における操業も認めてもらう、その権利を留保するということまで話し合いができておるわけでございます。したがいまして、日ソ関係におきましては、この二百海里自体に対してお互いに入漁し合うという基本的なことでは合意しておる、あとの中国であるとか韓国であるとかいう問題につきましては、わが国はあくまで相互主義である、相手国がやらない場合には、こちらからしかけるというようなことはしない、こういうたてまえでございまして、ソ連側からそのことをもってどうこう言われるというような筋合いではない、これははっきりいたしておることでございます。
  194. 神田厚

    ○神田委員 はっきりイシコフさんとのお話し合いがあったというふうに御言明なされておりますけれども、それでもなおかついろいろ言われておりますですね。ですから、その辺は大臣のお言葉を信じてやっていくわけでありますが、私どもは、この適用除外が北方の問題について非常に足かせになっては困るというふうな考え方も一面では持っているわけであります。したがいまして、そういう御質問をしたわけでありますが、この適用除外は、具体的にどこのものについてどこの海域を除外するというふうなことをあらかじめお決めになるようなお考えはございますかどうか、その点をちょっと聞きたいのですが……。
  195. 岡安誠

    岡安政府委員 いまの御質問は恐らく十四条の関係ではなかろうかというふうに思います。三条の方では、これはともかくも政令で指定いたします予定の日本海西部、東海、黄海、それから東海に隣接します太平洋南西部の一部につきましては、すべての外国人につきましてこれは適用漁業水域ではないわけでございます。あと、いまお話しの具体的に海域を指定してということになりますと、十四条で当該規定ごと、これは五条から十一条までいろいろそれぞれの規制があるわけでございますけれども、それらの具体的な規制の規定につきまして、規制の規定ごとに外国人を指定しまして、その外国人についてはこの海域というようなセットでもって適用除外をするということを実は考えておるわけでございます。
  196. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、現在では、いますぐどこをどうというふうなお考えはないわけでございますね。
  197. 岡安誠

    岡安政府委員 現在私ども十四条で考えておりますのは、しばしば申し上げておりますように韓国人、それから中国人につきまして、この海域はすべての漁業水域というものを指定いたしたいというふうに思っております。
  198. 神田厚

    ○神田委員 そこのところでちょっと御質問したいのであります。  全域にわたりましてこれを適用しないということにしますと、いわゆる特定海峡の公海部分の問題についてはどういうふうになりますか。
  199. 岡安誠

    岡安政府委員 韓国人につきましては若干御説明をしなければならないと思いますけれども特定海域のうち対馬海峡の東水道、西水道につきましては、現在日韓漁業協定によりまして十二海里の漁業に関する水域、いわば漁業専管水域が設定されておりまして、それによって韓国人の漁業は禁止をされておるということがございます。したがって、この漁業水域につきましての規制は、漁業水域法に関します規制が及ばなくても、日韓漁業協定に基づきます規定が働くというような関係があります。  それ以外の、津軽海峡等の特定海域公海部分につきましては、漁業水域に関する法律の五条、これを適用除外しないということにいたしますと、外国人につきましてはこの五条の規定によりまして漁業が禁止をされるというような関係になるわけでございます。
  200. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、第五条の問題で、全部津軽海峡なども韓国人、いわゆる外国人の漁船は操業させない、禁止をする、こういうふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  201. 岡安誠

    岡安政府委員 現在そのような考え方で進んでいるわけでございます。
  202. 神田厚

    ○神田委員 現実には津軽海峡の中にも韓国の漁船が相当入ってきているということを私ども調査に行って聞いてきているわけであります。そういうふうな形でありますと、この五条と十四条の関係というものは、ある部分においては適用してある部分においては適用を除外するというような非常に矛盾をした関係になるのではないかという心配をするわけでございますが、その辺のところはいかがでございますか。
  203. 岡安誠

    岡安政府委員 実はこれは非常にむずかしい関係がございまして、先ほど私、五条につきましてそういう方針ということを申し上げたわけでございますが、現在日韓の関係では、日韓漁業協定というものがございます。この協定の効力、現在もちろん有効に働いているわけでございますけれども、それと漁業水域法の働く余地といいますか、関係との問題でございますが、これは日韓の間で種々協議をいたしまして、最終的に決着をつけなければならない問題でございますので、私そのようにいろいろ申し上げております。問題はそういう特定海域の問題のほかに、韓国漁船につきましては北海道の周辺におきましていろいろ操業をいたしまして、現在トラブルを起こしております。先ほど申し上げましたように漁業水域に関する法律によりまして、対韓国につきましては、漁業水域の一部の海域を除外をするとともに、韓国人については適用除外を考えておりますけれども、北海道周辺漁場におきます操業秩序維持のためには、別途政府間で相談をいたしまして、約束によりまして操業の秩序維持というものを考えたいと思っているわけでございます。  その一環といたしまして、いま申し上げましたように、漁業水域に関する法律の五条によりまして、津軽海峡等の特定海域について漁業を禁止する方向でいくのか、それとも別途、先ほど申し上げました新しく韓国との間で結ばれるであろう協定によりまして漁業の自粛を求めるかということは、これは韓国といろいろ話し合ってみたいというふうに思っております。
  204. 神田厚

    ○神田委員 韓国漁船の被害の状況の問題が出ましたものですから、そのことに関連しまして御質問申し上げます。  現在民間で結ばれている漁業の紛争のいろいろな話し合いというのは、ほとんど進行しないというのが現実でございます。一方、韓国との間で漁業協定がつくられておりますけれども、その中には、いわゆる韓国漁船による日本漁船に対する被害の問題というのは触れられてない。そうしますと、これは早急に日本と韓国との政府の間で漁業操業協定のようなものをつくって被害の防止に努めなければならない。もうすでに去年、おととしと相当膨大な被害が出ているわけであります。これを民間だけに任しておくということはやはり問題がある。私はこの日韓のいわゆる漁業操業協定によって韓国漁船による被害をともかくなくすという努力を政府がなさらなければならないというふうに考えているわけですが、その点いかがでございますか。
  205. 岡安誠

    岡安政府委員 確かに、北海道周辺におきます韓国漁船の操業によります被害の防止のために、民間の話し合いを昨年から始めまして、被害防止のための措置を講ずるということにつきましては合意に達したわけでございますけれども、ことしの二月、その細目等につきまして話し合いましても、まだ具体的な細目についての話し合いが煮詰まっておりません。これらの促進のためには、やはり政府も積極的に援助をするということでなければならないというふうに考えまして、先般も水産庁並びに外務省の職員を韓国に派遭いたしまして、そういうような問題につきまして話し合いを行ったわけでございますが、今後はさらに政府間で積極的に話し合いを行いまして、政府間の協定による被害の防止策をとるか、それとも、政府間の話し合いの結果、民間による損害防止並びに損害賠償請求処理の機構をつくるか、これは政府が主導的に話し合って決めてまいりたい、かように考えております。
  206. 神田厚

    ○神田委員 これは大事な問題ですから、念を押すようで大変恐縮でございますが、ことしじゅうといいますか、すぐにでも日韓の漁業の操業協定を結んで被害を防止するためのこの御努力を——どうですか、いつごろまでにこれはできますか、やっていただけますか。
  207. 岡安誠

    岡安政府委員 この二百海里法ができれば、また私ども韓国政府とも接触しなければならないと思っております。接触をいたしまして、できるだけ早く成果が上がるように努力をいたしたいと思います。  いつまでという御質問でございますけれども、相手との間に合意が成立いたしませんと効果は上がらないわけでございますので、できるだけ早く成果が上がるように努力をいたしたいと思っております。
  208. 神田厚

    ○神田委員 ソ連との関係で非常にお忙しい鈴木農林大臣でございますから、農林大臣自身が行って韓国漁船による被害防止のためのいわゆる日韓の漁業操業協定を結ぶということは非常にむずかしいかと思いますが、そういうことについてのお考えは農林大臣いかがでございますか。
  209. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 民間協定でなしに早急に政府間の取り決めをしたい、このように考えております。
  210. 神田厚

    ○神田委員 このことが私ども調査に行きまして一番訴えられたことでございますので、どうか早く操業協定を結んで、いわゆる日韓の漁業協定で抜けております被害の防止の問題その他につきまして細かい処理をしていただきたいと考えております。よろしくお願いいたしたいと思います。  続きまして、政令規定見込事項の第五番目に書かれております第七条の問題でございます。七条の第二項には「漁獲量の限度の決定は、政令で定めるところにより、漁業水域における科学的根拠を有する水産資源の動向及び我が国漁業者の漁獲の実情を基礎とし、漁業水域における外国人による漁獲の実情、外国周辺水域における我が国漁業の状況等を総合的に考慮して行われなければならない。」こういうふうに書いてありまして、「農林大臣漁獲量の限度を決定する場合における関係者の意見の聴取等漁獲量の限度の決定の手続について定める」、この関係者の意見の聴取というのはどういうふうなことでございますか。どういうふうな機関をお考えになっておられますか。
  211. 岡安誠

    岡安政府委員 これはここにございますとおり、限度決定につきましては、まず水産資源の動向と漁業者の漁獲の実情、いわば余剰があるかないかという余剰原則のような考え方のほかに、外国人がその水域で現在どれだけ漁業をしている実績があるかという点、それからわが国の漁船が当該外国でどれだけとっているか、また逆に言えば入漁を許されているかということを総合的に考えるわけでございますが、これらにつきましては関係者、たとえば漁民の代表者、学識経験者その他しかるべき方々の意見を聞き出しまして決めたいというふうに思っております。どういう機関に諮るということまではまだ決めておりませんけれども、私どもは科学的なデータ等に基づきますと同時に、それに対します関係者の意見もあわせ総合的に考慮をいたしたいということを政令で定めたいと思っておるわけでございます。
  212. 神田厚

    ○神田委員 アメリカなどでは地域管理委員会というものをつくっていろいろやっておられるようでありますが、日本の場合でもそういう地方の漁業の実情を聞くような機関を具体的につくって、学識経験者でも何でもいいです、いろいろな形での具体的な機関をつくって漁獲量の限度の決定をなさる、そういうふうな気持ちで理解してよろしゅうございますか。簡単で結構でございます。
  213. 岡安誠

    岡安政府委員 まだそういう常設の機関のようなものをつくることはいまのところ考えておりません。むしろこれは非常に流動的でもございますし、関係者をどこの範囲に限定をするかという問題もございますので、ひとつ検討させていただきたいと思っております。
  214. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いずれこの問題ははっきり制度的にも考えてみたいと思っております。現在、海区調整委員会というのがございますし、また県単位でなしに二、三県、数県にまたがる連合海区調整委員会というのもございます。中央には全国の海区漁業調整委員会というのもございます。資源の保存あるいは繁殖、保護あるいは漁業の規制、そういうものについての機関があるわけでございますが、そういうものを活用したらいいか、または新しい漁業水域法に基づき、これを基礎にしまして運用上適当にこれを確保するという意味合いから別途の機関をつくったらいいか、これは十分研究して対処をしたいと思っております。
  215. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、詳しくいろいろ聞けないで残念でございます。  続きまして、韓国からのあるいはソ連からの水産加工物の輸入の状況をひとつお聞かせいただきたい。と申しますのは、日本近海におきまして韓国漁船等が非常に多くの操業をしておりまして、それが韓国本土で加工されて日本に輸入されている、こういうふうなものが年々ふえているのではないかというふうに考えるわけでありますが、その辺のことを、簡単で結構でございますから、お知らせ願いたいというふうに思うのであります。
  216. 岡安誠

    岡安政府委員 現在水産物の輸入状況、これは昭和五十一年でございますけれども、全体で金額にいたしまして五千六百三十六億四千九百万円というのが全世界からの水産物の輸入の状況でございますが、うち韓国からの輸入は千百五十七億五千二百万円ということになっておりまして、大体二〇%程度でございます。その内訳でございますが、特に御質問の加工品は塩、乾、薫製等を含む調製品は、昭和五十年で恐縮でございますが、五十年で大体百五十七億ということになっております。最も多いのはイカの調製品で七十一億、それから塩、乾、薫製のウニの卵が十八億というのが主なものでございます。
  217. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、これの輸入の窓口になっておるのはどこでございますか。商社などはどういうふうな関係でこれに関与しておりますか。
  218. 岡安誠

    岡安政府委員 これは輸入商社ごとに割り当てておりますけれども、特に大手の商社ということでなくて、わりあい中小の商社が主なようでございます。
  219. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、韓国輸入の大部分は商社が取り扱っておるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  220. 岡安誠

    岡安政府委員 さようでございます。
  221. 神田厚

    ○神田委員 私はこれを非常に心配しますのは、日本の近海で韓国がたくさん魚などをとって、そしてそれを韓国で加工して日本に輸出してくる、こういうふうなものをやはりある程度これから先見ていかなければならないんじゃないかというふうな感じを強くするわけであります。そういうふうなことでお聞きしたのでありますが、時間の都合でまた後で機会がございましたならば、もう少し詳しくお話しをさせていただきたいというふうに考えております。  さらに最後に二点並べて御質問申し上げて終わりにしたいと思うのであります。  まず最初に、先ほどもお話がございました船員の保険の中で、いわゆる失業保険の対象になってないのが相当数ある。この問題につきましてもう少し厚生省の指導を強めていただきまして、船員でありながら、いわゆる二百海里法案の中で大変また失業者が出てくるというような状況がございます。雇用の面も含めまして先ほど大臣から御丁寧な御答弁がございましたが、特に船員法から漏れております失業保険者などの問題について質問を申し上げ、最後海上保安庁につきましては、二百海里時代に対応する警備体制が非常に手薄になってきているということ。私ども二百海里をもしゃるならば、本当に警備するというふうなことで考えるならば、一番の問題は飛行機の問題です。もう少し航空機をきちんと整備して配備させてもらわなければこれの警備ができないのではないか、こういうふうなことも含めて、航空機やその他通信施設の関係、そういうものにつきまして最後に二省から御答弁をお願いいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  222. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 ただいまの船員保険の御質問でございますけれども、漁船員の失業部門の適用につきましては、現在通年雇用の場合に行われているわけでございますけれども制度的問題は別といたしましても、近年漁船員の雇用形態の変化というものも考えられるところでございますので、都道府県に対しましてはその実態を十分把握しまして適用漏れのないようにやっていただくということで、最近指導を強めておるところでございますけれども、今後一層指導を徹底してまいりたいと考えております。
  223. 間孝

    ○間政府委員 二百海里の時代を迎えまして、海上保安庁の警備体制を整備する上におきまして航空機が必要であるということはまさに御指摘のとおりでございます。私どももそのような方向で現在整備計画を練り直しておるわけでございますが、具体的にはすでに今年度の予算にも一部計上されておりますけれども、ヘリコプターを搭載した大型巡視船とか、あるいは大型の飛行機YS11を今年度予算に計上しておりますが、これもさらにふやしたいと思っております。またヘリコプターもふやす必要があると思っております。それから通信施設の整備につきましても、今後の二百海里の情報をとるという面におきまして通信施設が完備されなければならないというふうに思いますので、この点についての整備計画も現在検討をいたしておるところでございます。
  224. 神田厚

    ○神田委員 これで質問を終わりますが、どうぞ大臣、これから訪ソされます中で大変な難行苦行でございます。私ども誠実な大臣のいろいろな御答弁を大変ありがたく思っておりますけれども日本国民の悲願でございますこの領土問題、そして魚の問題、とにかく全力投球で、体に十分気をつけて交渉に当たっていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  225. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  226. 津川武一

    津川委員 初めに鈴木農林大臣、二回、三回と交渉御苦労さまです。私たちもソ連を訪ねてみて大変な状態だということがわかってまいりましたので、一層の御奮闘をお願いする次第でございます。  そこで第一の問題は、鈴木・イシコフ第二回会談の中断を余儀なくせしめたものは、あなたからの報告を聞いてもわかるとおり、領土問題、ようやく妥結するかに見えたサケマスの二百海里以外の漁獲量の六万二千トンへの出漁、これを間に合わせなくしたのも、向こうが日ソ漁業条約の線でなく、ソ連閣僚会議決定の二月の線を持ち出した、このようなことがきのう起きております。私たちはこのことに強く抗議するものであります。私たちの党としても問題の打開は急がなければならないので、ソ連の共産党に私たちの党の代表を送って、事態を進めることをきのうソ連大使館に申し込んでおきましたということも明らかにしておきます。  そこで、サケマスの漁期も迫っておる、こういう情勢に当たって、補償も融資も大事だけれども、漁民にとっては漁業をするということが第一義的な要求でございます。これに対して出漁できる時期を早めなければならぬ、この点について大臣の方針がありましたら聞かしていただきたいと思います。
  227. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソ漁業条約に基づくサケマスの二百海里域外の公海上の部分についての操業の問題、これがニコノロフ首席代表その他漁業省の諸君と、わが方の荒勝首席代表等との交渉によりまして、荒勝代表の報告をもってすれば、九九%まで話し合いが進んでおった。二十五日にそれに署名して、そして二十八日に東京でシャルクを再開して調印をする、こういう段階まで来ておったのが、適用海域のあの第一条の問題をソ側が突如として出してきた。これに対してわが方の代表の諸君は、それは話が違うじゃないか、ほとんど合意しておって、調印のサインの段階まできておるということで大分その実行を迫ったようでありますが、これは至上命令である、こういうことで、自分らとしてはいかんともなしがたい、どうもそういうことを総合勘案いたしますと、漁業協定第一条の適用海域の問題、これはやはり大きな問題点になっておるわけでございます。私はそれに対しましてすぐに水産庁長官からわが方の対応策を指示して、交渉をなお続けてもらっておるのでありますけれども、私もそういう事態を踏まえまして、訪ソの時期を早めて来月の二日ないし三日ころには訪ソをいたしまして、もしそれまでに片づいておらなければ私もみずからその打開に当たりたい。いまおっしゃるようにサケマスには漁期がございますので、その漁期を逸しないように早期に解決したい、このように考えております。
  228. 津川武一

    津川委員 漁期と、もう一つ漁民と国民の関心は、いままでとってきた漁獲量が急激に減らないということであります。減らしてはならぬということです。これがまた課題だと思いますが、私たちソ連に行ってみました。幹部の皆さんに会ってみて何と言っているか。二百海里を設定したのはソ連のイニシアではない。アメリカ、カナダ、ECなどがやったから、自分たちは消極的に守らなければならぬからやる。だが、このための損害は六割、六百万トン、この失われるものを補うことは容易でない。そこで自分で設定する領海内でとることが必要だ。北洋における完全利用に関心がある。北洋の二百海里の中においてソ連は全部の魚をとる能力を持っておる。これが彼らの言い分であります。こうなってくると漁獲量の急激なる減少が考えられます。そこで彼らは繰り返して言う。だが日本には設定した二百海里の中における伝統的実績があるからこれも重んじなければならぬ、ただしソ連主権を行使してと、こうなってまいります。そうすると漁獲量についてかなり厳しい協定になる心配があると思います。これでは大変であります。私たちもその立場から大きく国民とともにやらなければならぬが、事に当たるのは政府であります。この漁獲量の維持に対する農林省、政府態度、決意などというものがありましたらひとつ教えてください。
  229. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 北洋の漁場はわが方の漁民が長年にわたって開拓をし、今日のような成果を上げてきたところでございます。なおまたいろいろの批判をなす者がございますけれども、わが方としてはやはり北洋の資源の持続的な生産性、このことを常に念頭に置きましてやってきたことも御承知のところでございます。したがって、今後におきましても資源の適正な評価の上に立って漁獲量というものが決められるべきだと考えております。おっしゃるとおりソ連の漁船隊をもってすれば北洋の漁業資源というものは相当量自力でとれる。またわが国はそれ以上にわが国漁業水域内においては十分それをとり得る能力を持っておるわけでございます。しかし、これはそれぞれの実績をお互いに尊重し合って適正に漁獲量の割り当てをし合う、相互の依存をする。これは魚種も違う面もございますから、一種類の魚だけがたくさんとれても、やはり消費の嗜好ということを考えますと、それに対応していろいろな種類の魚がとれるということが必要でございますから、北洋でとれない魚は日本漁業水域内でもとれる。たとえばイワシのようなものはソ連が非常に関心を持っておるわけです。わが方は、日本の水域の中よりも北洋におけるカニであるとかサケマスであるとかスケトウであるとかいうものに関心を持っておる。こういうことでありますから、同じようにとれば全部とれる能力を持っておってもやはり相互に実績を尊重し合ってやる、これが私は相互依存の関係だと考えております。いま御指摘のようにソ連もカナダ、アメリカあるいはEC、ノルウェー、さらにアイスランド、いろいろの方面で漁業交渉が苦しい状況にあることも承知をいたしております。しかし私は、基本的には日ソ両国というのは世界における二大遠洋漁業国家でありますから、相互に割り当て量を大幅に削り合うのでなしに、できるだけ大幅に尊重し合って、今後他の国々に対しても漁獲量の尊重、実績の尊重を訴えていくという立場でなければいけないと考えております。
  230. 津川武一

    津川委員 あなたとイシコフ漁業大臣との第二回交渉で問題が解決しなかった暫定協定の第一条の線引きの問題。われわれがポドゴルヌイ最高会議幹部会議長に会ってみましたら、お互いに実態に即して考えよう、実態に即した解決の協議をしようというわけです。きょうあなたもこの席で実態に即した解決をしようと言っています。あなたから説明を聞いた、イシコフ漁業相からも説明を聞いたら、イシコフ漁業相は漁業協定の漁獲のことだけ委託されておってそれ以外のものは私の権限でないといって領土の問題になってくると逃げる。あなたは一九七三年の田中・ブレジネフ会談で領土問題が未解決であるからこれにいささかの影響も及ぼすような処置をとらないとはしなくも決意をされておる。そう言っていながらあなたとイシコフの間では領土問題のことは話し合いになっていない。ところが領土問題を話し合うことなしに、イシコフとの間で、彼らは二月二十四日の閣僚会議線引きをしようとしている。ポドゴルヌイ元首は実態に即して考えようと言っている。これはソ連が千島を占領しておるという現状を考えるということです。あなたはここで実態に即してと言うが、少し慎んでもらいたい。漁獲の割り当てや漁業のやり方や魚のとり方が実態に即してと言うならいい。領土が、千島が占領されておるという実態に即してと言うのがソ連の幹部です。したがって、懸命にがんばるあなたにこの際的確に領土問題を問題にしてもらわなければならぬ。しかし領土問題を解決するには長い時間かかる。それこそ三百日になるか三年かかるかわからない。だが未解決だということを確認しておいて、それは別な会議に譲ってでもここのところは進めなければならぬ。あなたのいま進めている問題は、そのことを確認しないで線引きをさせられる、したがってこれは千島はソ連の物なりという承認を与え、彼らが自分の領土だと言っているのに追認を与える結果になります。ここらであなたの決意を聞かなければならぬ。これが一つ。  あなたが懸命にやっていることはわれわれは認める。だが、あなたに預けられている問題がそうだとすれば、魚の問題と並べて領土問題が同時に並行すればこれは解決する、そのときそれはそうなっていてもいい。だから同時に鳩山外務大臣なり総理なりがあなたの漁業交渉と並んで行かなければならぬ。そうでないと、懸命なる努力のあなたにして非常に大きな禍根を将来に残す、千島はソ連の物なりという追認を与える、そんな交渉の結果になる心配があるとわれわれはこの間行ってきてみて感じてきたわけです。この点のことをひとつ答えていただきます。
  231. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 津川さんから御注意というか御鞭撻の意味でのいまの発言がなされたと思うわけでございますけれども、私がしばしば申し上げておりますように、この北方領土の問題は戦後未解決の問題である、この前提の上に立って漁業交渉はなされなければならない。日ソ双方が戦後未解決の問題だ。田中・ブレジネフの間で合意されて共同声明まで発した、このことを前提としてやれば、おのずから漁業の問題も解決点を見出せるであろう、そういう前提を置きながら、その現実を踏まえてということを私は申し上げておるわけでございます。ただ、いまのソ連の幹部会議長が現実を踏まえてと言うのは、私の言っているこの戦後未解決の問題、これを踏まえてということでない。戦後三十年これを占有しておるという現実、施政を行っているという現実、それを踏まえてということでありとすれば、これは私の言っていることと全く違う、そういうことでございまして、その点は私もはっきりわきまえてやっておるわけでございます。そうでなければ、もうとうに降参をしておるわけでございます。私は、長い間交渉に当たりまして、その点は一歩も譲ってない。したがって、宮本委員長からもお話があったところの、この漁業交渉の結果があのソ連の占有ということを追認をするようなことがあってはいけない、そのとおりでございます。でありますから、今後の平和条約交渉等にいささかの影響があってはいけない、わが方の主張を損ねてはいけない、私は国会でも繰り返しそのことを鮮明にしておるし、そういう心構えでこの漁業交渉に当たっておるということは国民全部が認識をしていただいておる、こう思っております。
  232. 津川武一

    津川委員 この点さらに私たちは、あと総理大臣と、領土問題と漁業の問題、少し詰めてみたいと思います。その議論は後で参考にしていただければと思います。  そこで、二百海里でございますが、十四条で韓国の漁船は日本のどの二百海里の中にでも入れることになっております。これだと大変なことになりますので、私たちはこの二百海里については、  一つにはこの外国人漁業規則の適用除外について、これを野放しにするのではなく、たとえば底びき規制などのわが国漁業者に対する規制を考慮した必要な制限を行うことが必要かと思って、そういう修正をしなければならないかと考えております。  第二には、いろいろなものを決めるときに関係漁民の意思を尊重する、意見を聞くなどの処置が必要になってくるかと思います。こういう点での幾つかの修正も考えておりますが、そこでこの十四条、政令を見せていただきましたが、大韓民国及び中華人民共和国について漁業水域全般にわたり適用しないという旨のことを決めておりますが、この間三月の二十五日の参議院の農林水産常任委員会でわが党の塚田委員質問に対してあなたは、「線引きをいたしました北海道その他の海域において、韓国であろうとソ連であろうと外国船の操業につきましては、実績をもとにいたしまして、そして漁業協定等を取り結んで新しい秩序の漁業操業の体制を確立する、」ここで韓国であろうとソ連であろうとと、こう言っておりますが、今度の十四条の政令を見せてもらいましたら、韓国と中国、これはどっちが本当なんです。
  233. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私が申し上げたことがそのとおりでございます。と申しますことは、このわが方の漁業水域の中におきましては実績等を十分勘案をし、またわが国の漁業資源の関係を十分勘案をし、あるいは底びきの禁漁区域等があった場合にはそういう場所では操業をさせない、こういうことをやるわけでございます。野放しに韓国の漁船であるからといってやらせるわけではございません。協定、そういうものをきちっと、政府であろうと民間であろうと、いずれにしても秩序ある操業が確保される、その実績、それを超えない範囲でやらせる、こういうことを考えておるわけでございまして、韓国の漁船だからといって野方図に、野放しにやらせるということではございません。
  234. 津川武一

    津川委員 そうすると、韓国はいま、北海道周辺のこれから二百海里の線引きをする中で、五百トンないし四千トンの漁船で底びき網漁法をやっておる。日本は、この底びき漁法を規制して百二十四トン以上のものはやらしていません。これはこのままやらせますか。それとも、日本の百二十四トン以上はやらせてない、ここいらあたりで、韓国の底びき漁業を規制しますか。規制しなければ、現在ソ連の二百海里で北洋を追い出された韓国の漁船が北海道周辺に来ている。八戸沖、三陸沖、銚子にまで来る心配がある。われわれは西日本の漁業を守るために、いま直ちに二百海里を西の方にやることはいけないと思うが、このとりほうだいの漁業資源荒らし漁法をこのまま認めておいていいか。したがって、こういう点で法の修正も必要と思いますし、実態をどうするのか、法はこれでいいのか、この点を答えていただきます。
  235. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在の時点におきましては、申し上げるまでもなしに三海里の外は公海である、こういうようなことで、外国漁船の規制ということは三海里の外ではできないということになっております。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 その現状をとらえて、そのまま十二海里領海時代、あるいは二百海里漁業水域時代、そういうものにそのまま当てはめて御議論をなさっているように私は思うわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、今度は漁業水域の中に対しましてはわが国は管轄権を持つわけでございますから、その点は、いまの操業の規模、操業の条件、それから適正なクォータ、そういうものをきちっとしまして秩序ある操業を確保する、また法律は修正をしませんでも、そういうぐあいになし得るようにできておるわけでございます。
  236. 津川武一

    津川委員 いませっかく北海道の日高沖の漁民たちが百二十四トン以上は自粛している、そこで資源を守っている。腹一匹運動だって、とってくるスケソウの卵を一匹ずつ流して、放流して資源を養っている。ここへ四千トンの韓国の船が来たのでは、たまったもんじゃない。したがって、抽象的な言葉でなく、これは、韓国船を規制する。それから、あの沖では六月一日から八月三十一日まで漁業を禁止している、中止している。これに対して第十四条の政令で韓国の船が自由に出て、とれるというのなら大変な話なんです。ここのところを具体的な措置をするかしないかということなんです。
  237. 岡安誠

    岡安政府委員 十四条は、もうしばしば申し上げましたとおり、韓国が現在二百海里の専管水域を設定していないということを考えまして、相互主義とと言いますか、ということで、私どもとしましては、韓国漁船に対しまして漁業水域の規制を課さないということで適用除外をするわけでございますが、御指摘のような韓国漁船が現在も相当大活動をいたしまして、北海道沿岸漁民に対しましていろいろ被害を与えておるという事実を私どもよく承知いたしております。  そこで、私どもは、外国漁船に対しましては当然わが国の漁船が受けているような制約、たとえば底びき網の禁止ラインとかオッタートロールの禁止ライン、またいま御指摘の漁期についての制約等は、わが国の漁民が受けているような制約は当然外国の漁船にも課さなければならないというふうに思っております。そこで韓国の漁船に対しましては、私ども先ほどから申し上げましたとおり、別途政府協定を結びまして、韓国漁民にも秩序ある操業をしてもらうというような、秩序ある操業に向かって私どもは規制をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  238. 津川武一

    津川委員 もっと具体的に、五百トンないし四千トンの韓国船の底びき、これを許すのかということ。日本は百二十四トン以上はとめているのだ。具体的に答えてください。
  239. 岡安誠

    岡安政府委員 わが国の漁船が受けている制約と同様な制約は受けてもらうように、私ども措置をいたしたいというふうに思っております。
  240. 津川武一

    津川委員 これを政府協定でやりますか、民間協定でやりますか。
  241. 岡安誠

    岡安政府委員 政府間の協定でやりたいというふうに思っております。
  242. 津川武一

    津川委員 民間協定はいままで守られていなかったから、ぜひとも政府協定でやらなければならぬ。  そこでもう一つ領海内におけるソ連の漁業です。私たちソ連に行ってイシコフとも話し、聞いてみました。鈴木農林大臣からモスクワで報告も聞きました。これは暫定協定の第二条。いろいろなことでどう文章に載るか、成文化の表現が残っている。ソ連日本の上領海内に入ることをあきらめたかのように伺いました。ところがイシコフ漁業相は、日本ソ連の友好を守りましょう、お互いに伝統を守りましょう、ソ連の設定した二百海里の中における日本の伝統とその伝統的実績は尊重しましょう、だから、われわれも日本が設定する十二海里領海の中に実績がある、これをひとつ入れてもらうことが相互主義だ、第二条で本質的な意見の違いがここにあると言って、まだあきらめてないようです。ここで私たちは、さらにさらに強力な交渉をして一歩も譲ってはいけないと思いますが、これから始まる協定の中で、万が一にもこのようなことになるような妥協はないでしょうね。念を押すために聞いてみます。
  243. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど津川さんと御一緒に行かれた野村さんからもその点御質問がありました。イシコフ漁業大臣が言われたこと、野村さんはそれを速記にとっておいでになっております。その前段で、日本は十二海里領海の中においては操業をさせない、こう言っておる、そのことはよくわかる。ただ、自分の方の法律においては二百海里全体が漁業専管水域であるということから、両国の別途の協定によって操業をさしてもらいたい気持ちを持っている、こういうことですね。それは向こうの願望でございます。私は、はっきり領海十二海里と百八十八海里のこの漁業水域というものは区別をして、領海の中には絶対入れないということを再三繰り返してイシコフ大臣には申し上げておる、そのことはそのとおり受けとめておる。ただ、別途に協定をして、何らか入れてほしいという願望を持っているということも私は承知しておりますが、これは絶対にやるつもりはございません。そういうようなことから、三—十二海里の間のソ連現状における実績は、領海の外の百八十八海里のクォータの算定の基礎、その中に加算をして、それを前提としてクォータを決めましょうという配慮までしておるわけでございます。そういう事情をはっきり申し上げて、私がどういう腹でこの第二条の問題に取り組んでおるかということは十分御理解がいけると思います。絶対にそういうことはいたしませんから。
  244. 津川武一

    津川委員 別途でも入れないというから、その点、向こうが十二海里領海内に入らないように、最後までがんばっていただきたいと思います。  これで私の質問を終わりますが、またソ連に行かれるそうで、大臣、ひとつ元気でがんばってください。  終わります。     —————————————
  245. 金子岩三

    金子委員長 先般、領海法案について審査の参考資料にするため、北海道に委員を派遣したのでありますが、この際、派遣委員から報告を聴取いたします。今井勇君。
  246. 今井勇

    ○今井委員 領海法案審査のため、私のほか八名の委員及び二名の現地参加の委員をもって、去る四月二十三日、二十四日の両日にわたり調査をしてまいりましたので、その概要を御報告申し上げます。  まず、調査日程について申し上げます。  第一日目の四月二十三日は、海上保安庁の協力を得て、同庁のYS11型機に搭乗し、銚子沖、金華山沖、三陸沖へと北上し、その間、わが国近海における外国漁船の操業状況等を視察した後、本案において特定海域として規定されている津軽海峡の上空に至り、その地形及び船舶の通過状況等を視察し、函館空港に到着いたしました。  次いで、函館市内において函館市長及び地元漁業関係者等から実情説明、陳情等を聴取した後、札幌市に参りました。  第二日目の四月二十四日は、札幌市内において、北海道知事及び北海道漁業関係者の代表から、北海道漁業の現状等の説明及び陳情等を聴取した後、千歳市の水産庁北海道さけ・ますふ化場等を視察し、帰途についたのであります。  次に、調査の概要について申し上げます。  われわれは、羽田から函館に向かう途中で、高度約二百五十メートルの低空から外国漁船の操業状況を視察いたしましたが、銚子沖約十海里、鹿島沖約二十二海里、那珂湊沖約十五海里の海域で、総計約五十隻の数千トン程度と見られるソ連母船、加工船、底びき網漁船が操業している現場を目の当たりに見たのであります。その海域には、わが国漁船の姿は全くなく、海上保安庁の巡視船が監視を続けておりました。  次いで、津軽海峡に至り、同海峡の地形、青函連絡船の航路等、わが国船舶の通過状況及び外国船舶の航行等をつぶさに視察した後、函館市に到着いたしました。  函館市におきましては、矢野函館市長、三浦渡島管内漁業協同組合副会長等、四人の代表者から地元漁業の実情説明及び陳情等を聴取し、矢野市長からは、函館市の総出荷額千七百億円のうち約五百億円が水産関連物資によるもので、北洋漁業の盛衰が地元経済に及ぼす影響はきわめて深刻である旨、同市における水産業の果たす役割りの重要性についての説明があり、さらに津軽海峡においては道南の一市二十七町村の約千四百隻に上る零細漁船が操業し、年間五万五千トン、約百七十億円の漁獲を揚げているという実情から、外国漁船操業の完全排除を初め、日ソ漁業交渉の中断に伴う休漁及び今後予想される減船などに関連して、完全な補償、緊急融資、水産加工業者への特別救済措置及び漁業離職者等に対する雇用の安定、重大な影響を受ける地方財政の援助救済等について万全を期するよう強く要望されると同時に、長期的視野に立ち、北洋漁業及びその関連業の体制整備が行えるように金融制度、漁業制度等の抜本的見直しが必要である旨の発言がありました。  また、各発言者から異口同音に、領海法案及び漁業水域に関する暫定措置法案の早期成立を図るようこれまた強く要望され、また、ソ連漁船、韓国漁船の操業に伴う零細漁民の被害の実態調査とその損害賠償が全く行われていないことに対する善処方を切々と訴えられ、あわせて、被害の国による立てかえ払いについて要望されました。  さらに、二百海里漁業水域の設定に当たり、その警備体制の拡充を図ること、北海道周辺については適用除外の海域及び外国人を指定しないこと等が要望され、やむを得ず適用除外とする場合には、予想される漁具被害等の恒久的救済制度として、国による被害救済基金制度を確立するようその構想について説明を受けたのであります。  われわれは、これらの説明、要望について、さらに詳細な説明を求めるとともに、いわゆる海洋二法案の早期成立を図ること、日ソ漁業交渉については、万全の救済措置を背景にし、将来に禍根を残さないよう毅然たる態度で当たる決意であることを表明してまいりました。  次に、札幌市におきましては、堂垣内北海道知事、浜森稚内市長、兼平北海道海洋法対策委員会会長等七人の方々から意見を聴取いたしました。  函館市における説明、陳情等と重複する点は割愛して、その概要を御報告申し上げます。  まず、北海道知事から、北海道における総漁獲量二百六十五万トンのうち百六万トンをソ連二百海里内で揚げている旨の北洋漁業の重要性、四十九年から今年の三月までに二千七百十件、約八億円にも上る外国漁船の操業に伴う漁具等の被害の実態、さらには、日ソ漁業交渉に伴い社会不安をも来している漁業都市の現状及びこれに対処し北海道が講じた措置等について説明を聴取するとともに、漁業者等に対し、国がまず緊急に行うべき措置として、休業補償、減船補償及び緊急融資、水産加工業者等に対する措置として、休業、操業短縮に対する特別救済措置、雇用者に対する措置として、再就職の促進、雇用調整給付金制度の適用範囲の拡大等について特段の措置を講ずるよう要望され、さらに恒久対策として、遠洋漁業等の体制整備、水産業に関する基本法の制定とこれに基づく強力な施策の推進を要望されたのであります。  また、稚内市長からは、日ソ漁業交渉の中断により四月以降に同市の水産業が受けた被害は七十億円、すなわち、同市生産販売実績の約七割に達し、市の経済活動全体がとまっているという窮状を悲痛な表情で訴えられたのであります。  このほか、他の発言者から、サケマス漁船の減船に対する国の直接助成、関連業者の負債の償還期限の延長等について要望がなされました。  これらの要望に対し、まず私から調査団を代表して領海法案並びに二百海里法案の早期成立に向け、その施行期日の検討も含めて努力すること、水産業者等の被害救済のための特別立法については政府をして研究させ、早い機会に成立するよう努力することをお約束申し上げ、さらに二百海里漁業水域の設定に当たり、漁業禁止区域については完全保護を図らなければならない旨を申し上げてまいりました。  次いで、各党の派遣委員から、以上の説明、要望に対する質疑並びに意見が開陳されました。  この後水産庁北海道さけ・ますふ化場のふ化施設等を視察し、全調査日程を終了した次第であります。  終わりに、今回の調査に当たり御協力をいただきました道、市を初め関係諸団体の各位に対し、深甚なる謝意を表しまして、御報告を終わります。(拍手)
  247. 金子岩三

    金子委員長 以上で派遣委員からの報告聴取は終わりました。     —————————————
  248. 金子岩三

    金子委員長 引き続き、領海法案及び漁業水域に関する暫定措置法案の両案について、内閣総理大臣に対する質疑を行います。柴田健治君。
  249. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 領海法漁業水域の暫定措置の二法についていよいよ大詰めの段階を迎えたわけでありまして、私は社会党を代表して最後の締めくくりということで御質問を申し上げたいと思うのであります。  同僚議員がそれぞれの立場主権問題を中心とし、また漁業補償を含めた各般にわたる問題、また国際法に関連をする問題、また領土問題というように各般にわたって質疑を続けてまいりました。そういう中で、私はこの二つの法案がいかに重要な法案であるかということを改めて認識をし、そしてまたこの質疑を終了するに当たって特に総理大臣においでを願って確認すべき点は確認しておきたい、こう思ってお願いを申し上げたわけでありますが、とにもかくにも与えられた時間が一時間でありますから、要点だけ御質問をいたしたいと思います。  特に私は、日本のこれからの漁業振興についてどうあるべきかということを総理から十分考え方を明らかにしてもらいたい。そういうものを踏まえて、そしていままでの日本の漁業に対する考え方、そしてまた国際会議である海洋法会議の見通し、そして外交のあり方、これをひとつ総理に聞きたいのでありますが、何としてもこの法案に関連をして今日まで海洋法会議で経済水域という立場で審議をしてこられただろう、こういう判断に立って——国連の第三次の海洋法会議が開催されたのは一九七三年であり、昭和四十八年であります。それから四年間歳月がたっておるわけでありますが、準備期間を入れると七、八年かかっておる。その七、八年の間に日本政府はどういう態度をとったのか、その対応策をどう考えておったのだろうかというような感じをこの法案の審議に当たって痛切に感じたわけであります。この海洋法会議というものについて、日本の資源問題という立場で国際情勢の推移を見きわめて慎重な態度をとるということは歴代の自民党政府が答えてきた点でありますけれども、何としても福田内閣が実現したときには資源有限時代に入った、こういう言葉を盛んに使われました。その資源有限時代に入りながら、この海洋法会議で経済水域の設定ということを目標に、今次の海洋法会議がまたこの五月二十三日から行われるという時期をいま迎えておる。迎えておりながら、今度の漁業水域の暫定措置というものは、海洋法会議の結論を待ってからという悠長な、そういう考え方でいままでずるずる引っ張ってきた。とりあえず暫定という言葉を使った、暫定という言葉は見通しなり展望があって初めて暫定という言葉が生まれてくるとわれわれは判断している。それにもかかわらず、第三次の海洋法会議、この見通し、どういう判断をしておるのか。それで、それに対応する日本の外交、私は外務大臣を悪く言うんじゃないんですけれども、今度の本問題を審議するに当たってだれが外務大臣だろうかという私は疑問を持っておる。福田総理が外務大臣なのか、園田官房長官外務大臣だろうか、鈴木農林大臣外務大臣だろうか、鳩山外務大臣が本当の外務大臣だろうか、だれが外務大臣だろうかという疑問を持ちながらこの法案の審議の推移を見きわめてまいりました。そういうことを考えながら、これからの海洋法会議の見通し、そしてこれからの日本の外交のあり方、これらについて総理の見解を聞きたいと思う。
  250. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ただいま世界が非常な転換期に入っておると思うのです。一九七〇年代という時代にいまわれわれは生きておるわけでございますが、その初めからいまお話のございました資源有限時代、こういう意識がだんだんとつのってきておる、そういう中で国々の間にはナショナリズムという、そういう動きがまた出てきておるわけであります。  そういう世界情勢の中で、わが日本といたしますと、何としてもわが日本は工業国家でございまするから、これはやはり自由貿易体制というものを堅持しなければならぬ立場である。また世界が再び保護貿易体制なんかになっては困る。同時にそういうナショナリズム、この意識は海洋にまで波及をしてきておるわけであります。そういうことで、海洋に新しい秩序を与えなければならぬ、こういうことから海洋法会議というような試みが始まってきたわけでありますが、こういう中でわが日本といたしますと、やはり公海の自由、工業国家として通商の自由を主張する、しかし漁業国家といたしましては、公海の自由を主張しなければならぬ立場にある、これは私は御理解願えるところではあるまいか、そういうふうに思うわけでありまするが、この海洋法会議を通じましてなるべく公海自由の原則、これが可能な限り維持されるようにという立場に立っての行動をしてきたわけであります。  しかしこの問題はなかなかむずかしい問題でありまして、前回のカラカス会議、これにおきましてはあんなに長い期間をかけましたけれども、ついに結論を出し得ないということになった。その原因は、私は一つはやはり主要な漁業国家間の話し合いといいますか、この準備態勢が不足しておったんではあるまいか、そういうふうに思うのであります。そういうようなことから、五月に開かれまするところの次の海洋法会議におきましては下準備をしてかかりましょうという努力がいま続けられておるわけでありますが、私は、従来わが国がとってきておりまするところの公海の自由の立場、これがなるべく新しい海洋秩序の中で、まあ世の中が変わってきておりますからそのままというわけにはまいりません、しかし、なるべく多くそれが取り入れられていくというように努力をいたしておるところでございまして、そういう方向でこの次の海洋法会議が成功するということを期待し、わが国といたしましては努力をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  251. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 総理大臣のいまの現状認識というものがわれわれから言うと非常に差異があるわけですが、私は、これからの食糧問題の一環の中で魚介類のたん白資源というものは今日まで大きな比重を占めてきたし、これからも大きな比重を占めていくだろう。問題は日本の漁業の現状認識というもの、そういうものをわれわれ社会党としてはもう長い間、同僚議員からあらゆる角度からの質疑を通じて今日まで本委員会でも論戦をしてまいりました。そして、第一次の海洋法会議からもう二十年近く年数が経過しておるわけですから、その間早く領海法をつくるべきではないかということでやかましく論戦をした経過がある。われわれは、昨年度に領海法を出すべきではないか、そして今年度になってこの国会で漁業水域の暫定措置法、要するに二百海里法を出すであろう、こういう予測をしておった。なぜこの領海法と二百海里の漁業水域法、これを一遍に出してきたのか。どういう原因でこういうことになったのか。福田内閣みずから非核三原則論にこだわり過ぎる。それは外務省がこだわり過ぎて、農林省の方は早くやりたいという強い希望を持ちながら今日までずるずるに、いま日ソ漁業交渉が暗礁に乗り上げて、農林大臣がもう三回も四回も行かなければならぬというような事態になっておるそのさなかにやれ法案を通せ——いままで何ら対応策もやらないし、その事前の手も打たないで法案だけ出して、われわれにはおしりから火がつくようにやってくれやってくれと言って、どうも少しどろなわ式もひど過ぎると私は思う。こういうことを考えますときに、何としても日本の漁業の現状認識というものを総理大臣が知らないのじゃないか。  そういう立場でお尋ね申し上げたいのですが、とにかく今度の日ソ漁業交渉を見るときに、日本の外交措置というものが、非常に見通しの甘さというか、常に楽観論に立って、毎年毎年サケマスの漁業協定なりそういうものだけにこだわり過ぎる。日ソの親善友好の基本は漁業問題が基本であるということは、もうだれしも長い歴史の中でそう理解してきた。その漁業問題ですらいまやどうにもならない。いま北洋漁業だけでなしに、南洋漁業、要するに遠洋漁業全体、沖合い漁業、沿岸漁業、そういうものを含めて全体の思い切った抜本策を考えなければならぬときが来た。やはりそういう抜本策を立てるためには現状認識というものを誤ってはならない。この現状認識を総理大臣はどう理解しておるのか、まずその点をお尋ねをしたい、こう思うのですが、いかがですか。
  252. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は海洋の状態が、先ほども申し上げましたが新しい時代に入ってきた。新しい時代には新しい時代の秩序が要るわけであります。その秩序を模索しつつあるというのが現状ではあるまいか、そういうふうに考えておるわけです。  新しい秩序をどういうふうに形成するかということになりますと、私ども日本の国は、何といっても世界第一の漁業国でございます。そしてその漁業も、近海で漁業を行うということ、これはもちろんでありますけれども、遠く他国の周辺におきまして漁業をする。ですから、ソビエト・ロシアについていいますれば、わが国のソビエト・ロシアの領域の周辺の漁獲、それは非常に多いのです。これに反して、ソビエト・ロシアのわが国の領域の周辺における漁獲は、比べるとかなり少ないわけであります。そういうことを考えますとき、やはり領海の幅は狭い方がわが日本としては有利なわけでございます。  そういうことで、わが国といたしましては、他のある国々が十二海里説をとりましたけれどもわが国としては三海里説を堅持してまいった。しかし最近になりますと、特にソビエト・ロシアの漁船、そういうものがわが国の領域の周辺に出没いたしまして、そしてわが国の漁民を刺激する、こういうようなことが頻発をする、こういう状態になってきた。そういう状態を踏まえまして、さあこの辺でわが国も十二海里領海、これをとらなければならぬだろうかという決心をするに至ったわけであります。  同時に、二百海里問題につきましては、これもまた、わが国とすればそんな特殊水域のできないことを希望するのです。しかしながら、アメリカ、EC、それからソビエト・ロシア、カナダ、こういう国々が二百海里水域という施策を打ち出してきた。こういうことになりますと、これはわが国もまた対応の構えをしなければならない、こういう立場に立たされたわけでありまして、そういう問題がふくそうしてまいりましたので、まことに御迷惑な次第でございましたが、この二つの法案を時期を同じゅうして御審議を願わなければならない、こういうことになったわけであります。何とぞひとつ御協力のほどをお願い申し上げたいと思います。
  253. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 総理大臣は、非常にこの法案の提出がおくれたということは認められたのですが、責任をもう少し感じてもらわなければ困る。責任の問題についてはどう感じられておるのか、ひとつお答え願いたい。
  254. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、歴代内閣は、国益を守る、つまり公海の自由、これをできる限りわが国立場からいいますれば堅持してまいるということ、これに力点を置いて対処してきた、こういうふうに思うのです。そういう立場でありましたが、最近他国船がわが国の近海に出没してわが国の漁民を脅かす、こういうようなことになりましたので、十二海里という踏ん切りをしたわけでありますが、それと時を同じゅういたしまして、二百海里、これを海洋法会議決定を待たずして若干の国々が打ち出してきた。ことにわが国と非常に漁業上の関係の多いアメリカ、ソビエトがそういう挙に出たということで、これもまたこの時点において対処しなければならない、こういうことになったわけであります。結果から見るとちょっと出おくれたというようなところもありますが、政府の意のあるところはその辺にあったのだということもまた御理解願いたい、かように存じます。
  255. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 日本はどういう考えでやっておるのかわれわれはわからぬ。この法案の中で、領海法でも五カ所の特定海峡をみずから主権放棄、そして漁業水域の暫定の、要するに二百海里の問題についても適用除外の地域をつくっておる。内政、外交含めて余りにも差別的なやり方というような感じを受けるのですが、そういう感じは総理大臣持っておられませんか。  そして私は、あなたが本当に日本の総理大臣で、日本の民族の精神の持ち主なら、この五つの特定海峡の中で特に私はあなたに理解してもらいたいのは津軽海峡です。津軽海峡は、これは世界に類例を見ない日本独特の海峡であります。海上、海中、海底を含めて、日本の動脈、国土の動脈があの底に走っている。いま膨大な資本投下をして海底トンネルを掘り、海底ケーブルをつける、これはもう世界に類例を見ない海峡であります。それをみずから主権放棄をするようなやり方というものは、日本の民族にとってどうしても納得ができない。あなたが本当に日本の総理大臣ならどういうお考えを持っておるのか、その点をひとつあわせてお答え願いたい。
  256. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま海洋新秩序につきましては海洋法会議でその具体化を急いでおるわけであります。この海洋法会議におきまして、国際海峡につきましては、従来のように自由な通航が保障されるような方法は何かないかということを模索しておる最中でありまして、恐らく何らかの結論が出ると思う。そういう際に、とにかくこの公海の自由ということを主張しなければならぬわが国といたしますと、わが国が進んで積極的にいまお示しのような津軽海峡等につきまして全部これが領海だというたてまえをとってしまうのはいささか早計ということになりはしないか、海洋法会議の結論を待って対処するということの方がいいのではあるまいか、そういうふうに考えまして、特定の海峡につきましては例外的措置をとる、こういうことにいたしたわけでありまして、決して主権云々というようなことにつきまして、私どもはこれを放棄するというような考え方ではありませんから……。
  257. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 総理は海洋法会議の結論ということを言われましたが、もう第三次の海洋法会議、それで海洋法会議では経済水域論、出発点はそれが基本で論議をしてきた経過がある。この経済水域論の中から漁業水域論が分離されて出てきた。アメリカだってカナダだってどこの国だって、もう二百海里宣言した国は六十近くある。国連海洋法会議の結論を待った国がどこにあるか。それぞれの国の主体性、そして主権を重んじて、国益を考えて漁業専管水域を宣言してきた。日本だけが国連海洋法会議の結論を待ってという言葉を使うのは、どうも独立国としては嘆かわしい考え方だと私は思うのです。よその国が海洋法会議の結論を待ってというそういう姿勢をとっておるならいざ知らずも、よその国はもうどんどんやっちゃった。日本だけが海洋法会議の結論を待つ、こういう姿勢だから後手後手に回ると私は思うのですが、余りにもどうも、何というか、見通しの甘さというか、見通しがなさ過ぎるという、そういう非難を国民の中から受けざるを得ないと私は思うのです。  それを一つ指摘しながら、今度のこの問題で、これからの日本は好むと好まざるとにかかわらず外交というものを避けて通るわけにはいかない宿命的弱さを持っている。だから外交問題には特に十分な配慮と慎重な態度が必要だと私は思うのですが、資源のない国であるだけに外交を避けて通るわけにはいかない。その重要な、日本国にとって一番大事な外交問題の責任を持つ外務大臣、福田内閣で目玉商品として任命されたのかどうかわかりませんが、私は何としてもお粗末な外務大臣だと言わざるを得ない。  農林大臣も来月早々訪ソしなければならぬ。これは領土問題が関連をしている。国際法の関係もある。いろいろ、もろもろ考えたら、この領海法については農林委員会で審議すべきではないとわれわれは思っておる。外務か内閣でやるべきだと思う。それを、鈴木農林大臣農林大臣としてやるのではない、国務大臣としてやるんだ、こういう考え方に立って農林委員会にこの法案がおりてきた。それらを考えて直ちに福田内閣は内閣を改造すべきだと私は思う。内閣を改造する考えがあるかどうかお聞かせ願いたい、重要なときを迎えているから。
  258. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ただいま私は内閣を改造するという考え方はいたしておりませんです。
  259. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 鳩山さん個人がいいかどうか知らないけれども、それぞれの委員会答弁を聞いていると危なっかしい。それぞれの国、アメリカだってカナダだって、方々の国々と漁業協定を結んでおる。これからこの条約がそれぞれ廃棄通告が出てくる。そういう廃棄通告を迎えて、新たな外交戦を展開しなければならぬときに、福田総理の自信過剰から、外交はおれに任せろ、財政はおれに任せろということで、大蔵大臣外務大臣は適切な人を任命したのか知らないけれども、正直に言って、とにかく見通しというものは非常に厳しい。  今度は北洋だけじゃない。南方、オーストラリアからニュージーランド、いずれ八月以降には向こうも二百海里宣言が出てくるでしょう。その場合に農畜産物と交換条件で漁場に、二百海里の区域内に入れてくれるかどうか、大きな山場を迎えてくると思う。そういうときに一々農林大臣が出ていかなければならぬという、そんな不細工な国がどこにある。そういう見通しを考えた場合には、もうこの辺で内閣改造すべきだ、みそをつけぬ前に改造すべきだ、これを強く私は意見として申し上げておきます。  それからそれにあわせて、いまの外務省のこの機構でいいのかどうか。もう一つは、農林省の中の水産庁もいまの機構でいいのかどうか、これを一つわれわれは疑問を持っている。いまの機構でこれだけの多様性を含めた、この複雑怪奇な、あらゆる国々との外交問題なりそうした資源問題を含めた外交を考えたときには、いまの水産庁の機構、外務省の機構というもので果たして対応できるのだろうか、どうだろうか。この点について総理の見解を聞きたい。
  260. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、いま外務省あるいは水産庁に機構としてそう問題があるというふうな考えは持っておりませんが、やはり海洋新秩序の時代でありまするから、外務省にいたしましても水産庁といたしましても、漁業外交、こういうような見地に立った努力をもっともっとするような体制に移らなければいかぬ、こういうふうに考えております。それは機構の問題ということでなくて、あるいは水産庁に渉外的というか外交的な機能というものをもっと強化いたしますとか、外務省におきまして、また海洋問題についての見識というものをもっともっと涵養いたしますとか、そういう機能の強化、新しい海洋法時代、海洋新秩序の時代に向かってそういうような努力、これは大いにしなければならぬ、こういうふうに考えまして、そのような工夫はいたしたい、かように考えております。
  261. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 思い切った外交と、力強いそして国民に信頼されるようないろいろな事件処理、たとえば長い間ソ連の軍艦に拿捕されたり漁船に被害を受けたり、韓国漁船から被害を受けて、いま五百七十件ほど事件があって、解決の見通しはたった二件だ。もう長年かかっている。その事務処理もできない。政治折衝もできなければ事務処理もできないという、こんなお粗末な国がどこにありますか、正直に言って。もう恥かしくてそれは国民に言われやしませんと私は思う。そういう被害を受けた漁民は、一日も早く解決してもらいたい、補償してもらいたい。それと零細な漁民は自己資本を投下して、負債を抱えて、そして被害を受けて、外務省を通じていろいろ話し合う。口頭で抗議をしたり、文書で申し入れるだけで、何にも事務処理を本気でやろうとしない日本外務省の姿。水産庁でもそうですよ。恐らく領海は広がる。それはもう警備の問題もありましょう。けれども、いろいろな紛争が起きてくる。この紛争処理なり、また今度の漁業交渉においての減船問題を含めて、いろいろ資料作成が大変だと私は思う。適切なる、そして敏速なる事務処理をしなければならぬと私は思う。それが、いま水産庁には、昼夜兼行でやっても私は恐らくそれだけの機構であり、人員であり、能力はないと思うのです。私は、総理は知らぬのじゃないかと思う。総理に報告する農林大臣が悪いのかどうか知らないけれども、どちらが総理大臣か、われわれはこの間、鈴木さんが総理大臣をやったらどうかと言うてやじったのですが、とにかくもう少し機構の問題を含めてこれは内部の体制固めをする必要がある、こう考えているので、もう一回力強い答弁を願いたい。
  262. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 機構といいますと、また局をつくれ、ふやせだとか部をふやせだとか、あるいは漁業省にしろとか、いろいろそういうことがあると思いますが、そういうような考えは私は持っておりませんけれども、機能につきましては大いに充実して、これから漁業外交並びに漁業行政、これに遺憾のないようにいたします。
  263. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 次に、この際漁業基本法をつくったらどうか。そして、一方では、日本は海洋国日本、こういうことを総理もよく言われる。海洋国日本というのは、どういう発想からそういう言葉が生まれるのか、そういうことを考えたときに、思い切って海洋開発基本法をこしらえるか、漁業基本法をこしらえるか、新しい立法措置をして国民の協力を得るための立法措置をひとつとる必要がある、こういう判断をわれわれしておるわけです。これについて総理大臣の見解を聞いておきたい。
  264. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま法制的な面から言いますと、漁業法その他いろいろな法制が整備されておるわけでありまして、法制の立場から漁業の問題に対処する、不備であるというような感じは持っておりませんけれども、とにかく海洋新秩序、新しい時代に入ってきたわけでございますので、いろいろ検討した上、もしそういう不備な点があるということが発見されまするならば、これはいつでもこの法的な整備、その問題を手がけなければいけない、こういうふうに考えております。
  265. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 次に、これからは海洋国日本としての真価を発揮するためには、そういう立法措置とあわせて、りっぱな人材を養成しなければならぬ、そういう立場からお尋ねを申し上げたいのですが、問題は、漁場開発はただ投資したらいいというものではない。それぞれ専門的に、日本が持っておる力いっぱいの技術を発揮しなければならぬ。そのためには人材を養成する必要があるとわれわれは思っておるわけですが、今日、海洋学というか、海洋工学というか、そういう面で技術員の養成については東京水産大学、東海大学、大体この二つがあるという程度でありまして、そして四十八年に東京水産大学が講座として海洋物理、漁場工学、海洋環境科学というような専門課程で人材を養成をしておるわけですが、これだけでは十分でないし、またこれらの卒業生が就職に困っておるというような実態、こういうことで果たして海洋国日本と言えるのかどうか。私は、この前、永井文部大臣が就任されて間もなく、予算委員会で申し上げたことがある。いずれ領海法なり国連海洋法会議の動向との関連で、日本は海上、海中、海底を含めて、思い切って海洋開発しなければならぬときが来るであろう、それに備えて海洋大学をつくったらどうか、こういうことを問題提起しました。いいことだ、こういうことは言われたけれども、やる意思がなかった。この辺で、もう海洋大学をつくる必要があるかないか、私は、あると思ってお尋ね申し上げるのですが、ひとつ総理大臣の見解を聞きたい。
  266. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま海洋問題、水産問題、そういうような問題につきましては水産大学がある。そのほかに、普通の国立大学、公立大学等におきましても水産を研究する講座、こういうものがありまして、かなりその方面の教育施設は整備されておる、こういうふうに伺っておりまするけれども、なお新しい海洋秩序の時代、これに対応いたしまして、欠くるところがないかどうか、この点につきましては十分検討してみたいと思います。
  267. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 次に、総理大臣とあわせて農林大臣にも聞きたいのですが、漁場開発について、今年度の予算でも多少予算措置をしておられますけれども、本当に漁場整備事業が順調にいくのかどうか、基礎的な調査が不完全かどうかわかりませんが、行政管理庁の方からも指摘されておるようですが、これらの点について、思いつきの漁場開発整備でなしに、本当に実のある漁場開発の整備事業として、日本近海の、沿岸を含めて、また沖合いを含めてひとつ考えるときが来たのではないか、こういう気持ちを持っておりますので、この点についての見解を聞いておきたい。
  268. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二百海里時代が到来いたしまして、海外における日本の遠洋漁業、これが大きな制約を受けておるわけでございます。したがいまして、海外の伝統的なわが国の実績の確保には全力を挙げますが、どうしても漁獲量は削減の余儀なきに至る、こういう厳しい情勢下にございますので、わが国日本列島周辺の沿岸、沖合いの漁場を積極的に開発をし、資源をふやし、また進んで栽培漁業等を盛んにするという政策をとっていかなければならぬわけでございます。この点につきましては、国会の御賛同も得まして、五十一年度から二千億、七カ年の沿岸漁場開発整備事業、これを公共事業として実施をいたしておるわけでございます。今年度も四〇%程度前年度対比で予算は伸びておりますけれども、こういう情勢下になってまいりましたので、五十三年度以降におきましてはこの実行年度を繰り上げまして、ひとつ十分な予算措置も講じまして、これに取り組んでまいりたい。その際問題になりますのは、柴田さんからも御指摘になりましたように、この海洋の水産工学と申しますか、そういう面の研究が少しおくれております。沿岸漁場の開発整備をいたしますためにはどうしても総合的に海の状況を調査をし、研究をし、それに実効の上がるような沿岸漁場の開発整備事業をやる必要がある、このように考えております。今後ともこの点には最善の努力をいたしたい、こう思っております。
  269. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 もう時間が余りないですから、ちょっと急ぎますが、問題は養殖漁業のいまのあり方、これをひとついよいよ検討してもらわなければならぬと思うのですが、養殖漁業、増殖漁業、どちらも大事なんでありますが、今日この養殖漁業のえさの関係から見るあり方というものを、われわれは長年もう少し研究しなさいということを唱えてまいりましたけれども、農林省の方は余り研究もしないというやり方だった。  いまハマチの養殖をやっている。年間九万二千トンほどの数量を水揚げをしておるわけですが、九万二千トンのハマチ養殖について、イワシを七十万トン以上も食べさせている。栄養価値論から言うと、イワシはたん白資源の中で一番高いと言われて一番栄養価値がある。その栄養価値があるイワシをハマチに食わして、そのハマチを人間が食うという間接的な摂取をやっているわけですが、何としてもこの七十二万トンほどのイワシを、もう少し直接人間が食べるということを考えて、ハマチ養殖に対するえさの研究開発というものを思い切ってやったらどうか、こういう点で一つわれわれは疑問を持っておる。この点の養殖漁業のあり方についてひとつ考え方を聞いておきたい点が一つ。  それからもう一つは、内水面漁業。私は中国は非常にりっぱだと思う。あれだけ広範な海を持っておりながら、淡水漁業を中心にしてたん白資源を求めている。だから、中国料理はこの淡水魚がほとんどである。だから、われわれ長年言ってきたのですが、日本もため池でも国内には二十六万カ所ある、河川もある、そして琵琶湖であるとか宍道湖であるとか、いろいろ湖水がある、内水面湖水がある。これらをもっとフルに活用していく。いま内水面における淡水漁業は大体十九万トン、二十万トン足らずの水揚げだ。これでは本当に漁業振興をやっておるとは言えない。だから、内水面漁業にもっと思い切って力を入れていくという研究開発なり、そうした面にどういう目を向けていくのか、考え方をひとつ明らかにしておいていただきたい、こう思います。
  270. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 第一点は、養殖漁業、栽培漁業の振興ということは、これは御指摘のとおり非常に重要な問題でございます。その際、養殖漁業をやる場合にえさの問題があるわけでございます。いま御指摘のように、ハマチあるいは養鰻、そういうようなものに貴重なイワシ等を七倍もやっている。大体一貫目のハマチに対して七貫目のえさが必要であるというようなことでございまして、私どもは、この点は今後のえさの問題、養殖漁業のあり方というものを根本から検討し直す必要がある、このように考えております。  イワシ、サバというような多獲性の魚族は、こういう状況下にあるわけでございますので、できるだけ食ぜんに供せられるように、貯蔵、加工、流通の問題を整備しながら、できるだけこれを食糧に回すという政策をとってまいりたい、そのためには、それらに代替するところのえさの問題を研究開発する必要があると考えております。  と同時に、このふ化放流事業、こういうものも盛んにしていく必要があると私は存じております。サケマスもふ化放流事業をやっておるわけでありますが、これが七万トン以上の生産もあるというようなことでございますから、今後そういう方面に力を入れてまいりたいと考えております。
  271. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私は、最後の締めくくり質問ということになって、それぞれの同僚議員からいろいろ質問されたので、一応漁業振興の大筋の考え方をお尋ね申し上げたのですが、この法案の質疑の終了を迎えておるわけですけれども、この論議をしてみて、これは法案の修正もわれわれはやらなければならぬ、そしてまた、本院で特別決議もしなければならぬだろう、法案に対する附帯決議もつけなければならぬだろうということで、まだ審議は相当考えなければならぬだろう、こう思っておるわけでありますが、とにかく総理大臣に私は、この際思い切って、これだけ国民の世論を沸かしておる日ソ漁業、これを解決するかどうか、福田内閣の生命にかかわる、寿命にかかわると思うのです。われわれはそういう気持ちを持っておりますから、農林大臣に任せるというのじゃなくして、総理大臣みずからこの際ソ連に出向いていく、そういう勇気と決断——田中角榮さんじゃないけれども、勇気と決断を今日国民はあなたに求めておると思うのです。それをどう受けとめて決断するか、私はこの際総理大臣みずから訪ソすべきだと思うのですが、見解を聞きたいのです。
  272. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この日ソ漁業問題が、私がソビエトへ出向いてまいりましてそれで解決する上に有効である、こういうことであれば、私はいまでも飛んで行ってそういたします。ところが、いま問題はこういうことであります。漁民はもう一日千秋の思いで出漁をあすかあさってかといって待ちあぐねておる。そうしてこの漁民の願いをかなえてやらなければならぬ。ところが一方、この交渉領土問題と絡まりを持つ様相もある。この領土問題と漁業問題が絡まりを持ちますと、領土問題というものは、これは御承知のとおり、そう簡単には解決できない問題です。これはもうとにかく戦後三十年の問題で、特に二十二年間日ソ間でずっと争われてきて、今日なお結論を得ない、こういう問題です。事が漁業問題と領土問題が絡まるということになりましたならば、領土問題の解決を見るまでは漁業問題は解決しない、こういうことになってしまう。そこで、私ども最初から、この問題は漁業と絡ましてはならぬ、漁業と領土は別の次元の問題である、漁業は漁業、領土領土、そういう立場においてこれを解決しなければならぬ、こういうふうに考えております。この華本線は曲げることはできないと私は思うのです。そういう立場から私どもはこの漁業交渉を非常に注意深く取り扱っておるわけであります。  鈴木・イシコフ会談の第一回目が行われた、この行われた交渉が中断をする、こういうことになる、再開させなければならぬ、そういう際に、あるいは外務大臣が行ってその再開のための交渉をする、こういう方法があったかもしれない。ところが、もし外務大臣が行ってこの交渉に当たるということになったならば、これはやはり領土問題と絡まりを持ってくるのです。そういうようなことを避けるために、これは外務大臣の派遣を避けて、園田官房長官を派遣をするという配慮をいたしたわけでございます。私は、この問題の解決というものは、漁業問題と絡ませたら本当に大変な長期間を要する交渉になって、そして漁業問題はその間どういうふうになるか、漁民の願いは一体どうなるんだということを考えると、これは截然と分けてこの交渉を貫かなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。  そういう立場から、漁業担当大臣であるところの鈴木農林大臣イシコフ漁業大臣との交渉、これでやっていくんだという基本姿勢を堅持してまいりたい、こういうふうに考えております。
  273. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 総理大臣は私はぜひ行かなければならぬ、それが総理大臣の任務ではないかと思うのです。国のこうした重大なときに総理大臣がそういう言葉で避けて通ろうとする姿勢——日本の権力構造とソ連の権力構造はおのずから違うということはわかっている。たとえば最高幹部会議そして閣僚会議、だけれども、底に流れておるものは一緒なんです。ただ、日本政府が勝手に判断をして言っておるのじゃないかという気がするわけです。この際、相手が領土問題も絡ませてきておるということはみんな知っておる。だから、魚をとるか領土をとるかという問題になる。二者択一になる。それは明らかに総理大臣が行ってけじめをつけてくる。けんかをするにはけんかをしてくるだけの勇気がなければならぬ。それが総理大臣としての任務ではないだろうか。その分けてくるだけのけじめをつけるのが総理大臣じゃないですか。われわれはそういう判断をしておる。  あの単独講和条約を結んだ時分から領土と絡んでいることはちゃんとわかっている。それをいまになって、絡んでおるから絡んでおるからと言って、そういうことで避けて通るというのは、私は日本国の総理大臣としては不適任だと思う。この点はひとつ重大な決意をして、直ちに乗り込んでもらいたい、これを強く要求しておきたい。  それから総理大臣、時間が参りましたから最後に、「週刊ポスト」というのを読んでみた。事実かどうかわからない。けれども、この「週刊ポスト」の、日本の会社、企業だろうから、まさかこんなでたらめを書くとは思わない。多少根拠があると私は思う。「日ソ漁業戦争の裏でボロ儲けを企む“悪い奴”」とこう出ている。すでに六つの大水産会社と七つの商社がタラコ買いにソ連に行っておるという。これが事実なら、この企業は日本人じゃない。いま日本の漁民はもう路頭に迷う。いま悲惨な状態を迎えている。北海道のこの全体の産業構造をどうして変えるか。産業構造全体に影響するような事態を迎えているのに日本の商社がこういうぶざまなことをする。直ちにこれは真相調査を政府はすべきです。政府が調査をして国会に報告すべきだと私は思う。総理大臣にこの見解を聞いておきたい。
  274. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この国難ともいえるような重大なときに、商社があるいは大漁業会社がそういう行動に出る、そういう意図を持って、営利の意図を持って私利をたくらむというようなことは考えられませんが、これは農林省で十分監視しております。調査しておりまするから、これはいつでも報告できます。
  275. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 以上をもって、私の持ち時間を終わりましたので、終わります。
  276. 金子岩三

  277. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 領海法漁業水域に関する暫定措置法について、福田総理に質問をいたします。  去る四月十九日から今日まで十数回にわたって質問をしてまいりました。本日は限られた時間の中で、総括的に福田総理に対して問題点を指摘し、法案の修正をぜひともやるべきだ、かようにわが党は主張しておりますので、その線に沿って法案の修正をお願いしたい、かように思うわけでございます。  まず、領土問題と漁業問題は切り離して日ソ漁業交渉をすべきだというのは、わが公明党もそういう主張でございますが、現に事態は、領土と漁業問題を切り離しては進展しない状況になっているのは御存じのとおりです。特に二、三日前からそのような状態が顕著にあらわれてまいりました。この問題はわれわれはもうかねがねから指摘をしているところでございます。  そこで、総理大臣わが国があくまで切り離し論でいけば決裂以外にないということになるのではないか。三回目の訪ソを前に鈴木農林大臣も大変重責を担っておりますが、鈴木農林大臣を訪ソさせるに当たって、私はそのような決裂でみじめな姿で帰すということは、漁民にとっても、また本人にとっても大変忍びないことであります。そこで、ソ連が今後とも自国の主張を変えない場合は、日本として譲歩する余地があるのかどうか、対応策を考えているのか、ここで発表できなければ、対応策を十分考えて鈴木農林大臣に持っていかせる、こういうふうに総理は決意をしておられるのか、その点まず冒頭お答えをいただきたい。
  278. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この漁業交渉というのは、もう毎年毎年なかなかこれはむずかしい問題でありまして、やはり二百海里水域問題なんというものがないときにおきましても容易じゃないのです。私も十八年前になりますか、農林大臣のとき、日ソ漁業交渉というのがありました。やはりモスコーに乗り込んだのですが、一週間かそこらで片づくかと思ったら、なかなかそういかない。延々と三十三日モスコーに滞在いたしたわけであります。そこへ今回はこの二百海里問題という新しい問題が絡まっておりますので、鈴木農林大臣の行うこの交渉はまことに容易じゃない、本当に鈴木農林大臣は骨身を削るような思いの交渉をしておるわけでございます。  しかし、一方領土の問題というのがあるのです。この漁業交渉によって領土問題のわが国立場を傷つけるということが断じてあってはならぬ、こういうふうに思うのです。でありますから、一番いい交渉の進め方というものは、領土の問題というものはこれは領土の問題として別途交渉いたしましょうや、領土の問題を片づけて平和条約を結びましょうや、こういうことにしておいて、漁業は漁業としての解決をするということ、これに私はかなめがある、こういうふうに見ておるわけであります。いずれにいたしましても、わが国領土に関する立場、主張、これを傷つけることは断じてしない、そういう範囲内において鈴木農林大臣がいろいろな工夫をする、こういうふうに御理解願います。
  279. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、いまのような状態で交渉に当たっても、また三たび同じことを繰り返すということになる。これはもうだれもがそう考えております。もしこの交渉で決裂すればこれは大変なことになる。そういった意味で、総理としては、鈴木農林大臣に十分対応策というものを考えて今回は行かせる決意でおるのか、また今回のこの交渉に当たって私は何らかの事態解決の方途を見出すべくいろいろと検討はされておると思うけれども、その辺は十分対応策を持って行かせる、こういうふうに総理は考えておるのか、その点を聞いているのです。簡潔にお答えください。
  280. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いかなる事態がありましても、これに国益を踏まえて対応する、そういう構えで農林大臣はモスコーに赴くわけであります。  しかし、お断りしておきますが、領土問題に関するわが国立場を悪くする、こういうことは絶対にいたしたくない、いたさない、その範囲内において、あらゆる対応の構えを相談いたしまし北上モスクワに参る、かように御理解願います。
  281. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 総理大臣領土のことについては切り離してということで、絶対これには触れないという強い御答弁でありますが、北方四島の周辺海域に対して二百海里漁業水域策定に伴う線引きを行うことはソビエト側の強い反発を買うということは御承知のとおりです。私は、実はきのうの連合審査のときに、岡安水産庁長官を通じ、鈴木農林大臣に対しても、この領土問題を避けては通れないということはたびたび申し上げております。そして、公開の席でいろいろ質問をするとはばかる問題もあるので、私は鈴木農林大臣に耳打ちをして、この問題について、いわゆる領土問題で線引きの問題が大変問題になるが、どの辺まであなたは決意を持っているかということを聞いたら、心配はない、二百海里水域の線引きをしても心配はないという返事が返ってきましたので、私は、あえてきょう質問をすべく準備をしておりますが、果たせるかな、きのうサケマスの出漁を前に仮調印を見送るということが昨晩報道され、けさまた新聞、テレビで見まして、われわれも愕然といたしました。漁民の驚きもまたひとしおでございます。そういったことが現に証拠としてあらわれている。従来の考えから、もうすでに二、三日前からすごく事態が変わってきていることは十分総理大臣も御承知である、かように思うわけです。  そこで、線引きを当然と考えたら、ソ連側がそれに対して領土権の侵害であり、ソ連に対する非友好的発言として強硬に反論し、漁業交渉を打ち切るような事態になってくる、こういったことできのうも警告しておったわけですが、そのとおりになってきております。そこで、きのうも連合審査会でいろいろ質問の中で、外務大臣はこの線引きを、二百海里の線を引いても、これはたてまえとしてこういった立場でいく、こういうふうに言われました。私はそんなたてまえで、後退をするような線引き、いわゆる架空の期待、潜在的主権、こういうふうにわれわれは申しておりますが、そういう線引きでどうして避けて通れるか、領土問題は避けて通れない、かように実は思って憤りを感じております。私は、魚を買って領土を売ってはならぬ、かようにかねがね言っておりますけれども、この点について総理はどういうふうに考えておられますか、その点を明らかにしていただきたい。
  282. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私はちょっと違うので、私の方では領土問題についてのわが国の主張、これはいささかも傷つけることがあってはならぬ、同時に、わが国の漁業権益とも申すべき百余年にわたって培った漁場、これにおける漁獲、これも失ってはならぬ、両方をひとつ確保しなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。そこにまたむずかしさもある、こういうことでございます。線引きの問題に触れられましたが、北方四島、これはわが国固有領土、これがわが国領土についての立場でございますから、二百海里漁業水域ということに相なりますれば、わが国もまた二百海里水域、その固有領土に引くこと、これは当然そういうことになる、かように御理解願います。
  283. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 福田総理に私は重大な問題を提起して、当委員会でさらに御認識をいただいていろいろと御検討いただきたいと思う。  今回の漁業水域に関する暫定措置法案に関しましていまも若干論議してまいりましたが、公海に関する条約というものがあることは御存じだと思います。一九五八年四月二十九日ジュネーブにおいて締結、日本国は一九六八年四月二十六日国会で承認されております。この公海に関する条約によれば、第二条に公海の自由の原則規定され、その中に航行の自由、漁獲の自由、海底電線及び海底パイプラインを敷設する自由、四番目に公海の上空を飛行する自由等が明記されております。それゆえに、公海上に適用になる国内法を一方的に規定しても、外国漁船を規制することは法律上はできないということになっております。すなわち条約があればよいわけです。公海上において外国の漁船を取り締まるためには、漁業条約において定める必要があるわけでございます。すなわち旗国主義と言われまして、領海主権が及ぶけれども公海主権が及ばないのであります。公海上は日本の旗をつけたものは日本が取り締まることができる、ソ連の旗をつけたものはソ連が取り締まることができる、こういうことになっておることは当然であります。また国際条約に基づかない二百海里法というものを規定しても、法律上は効力がなく、実力によって取り締まり、外国の抗議を排除するとすれば、それだけの実力を当方に持つ必要がある、こういうことに理論からはなるわけです。さりとてわが国憲法九条で戦争を放棄している。わが国が実力をもって武力行為に出るようなことは毛頭考えられません。  そこで、このような実力がなかったならば、二百海里漁業水域を設定することなく、相手方の二百海里主張に対しては、公海における漁業の自由というものを理由にその主張の緩和を求める以外にない、いわゆる頭を下げてお願いするよりないということになるわけです。しかし、今回領海法と二百海里漁業水域法が一緒に提案されておりますので、いまこれをどうということにはなりませんけれども、同じ土俵で、対等の立場交渉に当たりたいという鈴木農林大臣の気持ちもよくわかるわけですが、再三当委員会質問してただしてきましたけれども、さればとて、二百海里法案を国会で可決しても、領海法特定海域における公海部分外国船による航行を防ぐことはできないのであります。  私たちも二十三、二十四日、日曜、土曜を返上して海上保安庁のYS11型機に乗りまして、超党派で銚子沖から三陸沖、津軽海峡、そうして北海道の各団体、漁民に会ってきました。一同皆、早く設定をしてくれ、早く領海法を通してくれということを言っております。よくわかります。漁民はこれをどうとらえているか。政府は二百海里法案をかぶせると、いわゆる五海峡の三海里は凍結しても、二百海里法でカバーできる、こういった意味のことを言われて、国民は素朴な考えで、二百海里は一緒にセットになって法案が施行されれば、何とか外国船の排除ができて、いわゆる国益が守れる、漁業も安心して操業ができる、こういうふうな解釈を皆さんしているのです。私はそのことを疑問に思い、ずっと検討してまいりましたが、この公海に関する条約等を見てくると、二百海里の法案を設定しても、網をかぶせても何ら効力を発しないということが明らかになってまいったわけです。すなわち、五海峡の公海部分外国船が出漁しても、地元漁民が退船を希望し、外国船の排除を強く要請しても実際できない、かように私は思うのであります。政府は二百海里漁業水域を設定すればカバーできるとして、国民も素朴に理解をしてそう思っているけれども、実際そういったことにはならない。  そこで私はこの問題については、ソ連の二百海里内へわが国の漁船が入りますと、いわゆる拿捕されたり連行されたりします。違法として連行するわけですから、これに対してわれわれは抗議を申し込むということになります。日本の国も二百海里を設定して、ソ連も二百海里を一方的にやったが、ソ連日本条約をまた新たに結べば、またこれが相互にいわゆる有効になってまいりますけれども、そういった例は外国にないわけである。またそういったことは事実上無理であります。いわゆるどちらも一方的になるわけです。そうなってきますと、ソ連の方で拿捕され、そうしてわが国は、先ほども言いましたように北方四島を含めまして今度線引きをやりますけれども、その線引きの中身というものは実に弱い、いわば架空の二百海里、また潜在的主権みたいなことになります。鈴木農林大臣ソ連交渉に行って三たびやる。向こうからこの領土問題を絡めて線引き問題が出てきますと、鈴木大臣どうなるか。領海法案、これは魚の問題でいろいろ論議ができますけれども、二百海里問題は裏を返せば領土問題です。そういったものを抱えて、鈴木農林大臣に行け行けと言っても、向こうでこの線引きを含めて、何だおまえの方は勝手にやりたいだけやったじゃないかということになってきますと、大変なデッドロックに打ち上げる、かように思うので、私は大変にこの点心配をいたしております。  そこで、二百海里を設定しても、ソ連条約を結んで国家権力が及ぼし得るようなことをしなければだめである。そこで、海洋分割時代とは言え、関係国間で条約を結ばないとできないわけですけれども、このようなことがないわけでございますので、米ソについても、二百海里の宣言をしたことはいわば強国が実力でやったわけでありまして、法秩序にかなっていないわけであります。こういった意味から、わが国のこの弱々しい二百海里線は、むしろこれをやることによって、ソ連の方はけしからぬと言ってますます強圧的に出てくる、かように思う。これは国難である。福田総理も、重大な時期を迎えたとしてこれに対して堂々と対処をしていかなければならない、かように思うわけで、私は、福田総理はこれをどう理解し、こういったいわゆる公海に関する条約から今回の二百海里線、そして五海峡における公海部分が残る問題、こういった問題について、あなたは責任者として国民にどうこたえようとしておられるか。明快にこの席で答えていただきたい。
  284. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 今回、津軽海峡等につきましては三海里という考え方でございますが、そうしますと、津軽海峡の中に公海部分が残る、これは御説のとおりでございます。その公海におきまして漁民の利益をどういうふうに守るかという御趣旨かと思いますが、これは二百海里の水域の中には入るわけでありますから、当然わが国漁業水域としての法的な適用を受ける地域になる、こういうことでございます。問題は、津軽海峡に限りませんけれども、二百海里というような幅の広い漁業水域を設定する、その際のわが海上保安庁の管理能力、これが私は問題になる、こういうふうに思うのです。これにつきましては、海上保安庁の管理能力を強化する、これはそう急にというわけにもまいりませんけれども、少し時間をかけても急速にこれを整備いたしまして、領海の方はもとよりでありますが、漁業水域につきましても、わが国の管理が十分に行き届くようにぜひいたしたい、さように考えておる次第でございます。
  285. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間も迫ってきましたが、的確な答弁がないので残念ですが、そういったことでは承知できませんけれども、あともう一、二、どうしても聞いておきたいことがございますので、この機会に福田総理にお答えをいただきたい。  五海峡のうちで、宗谷海峡については距離がちょうど二十海里あります。ソ連側が十二海里の領海をすでに設定をしているのに対しまして、わが国がなぜ遠慮して三海里のままにとどめようとするのか、全く理解することはできないのであります。交渉は対等であり、公平という立場からスタートするのが当然であり、このような交渉態度は、日本の主張すべき領域をみずから一方的に放棄し、そして屈服する屈辱外交以外の何物でもない、かように私は訴えておるわけです。ゆえに日本も十二海里として十海里の中間線をとるべきだと私は思うのです。二十海里ですから、双方十海里ずつで中間線をとるというのが当然じゃないか。国益を損ずるわけでございますから、私は、主権の放棄につながるようなこういったことをせずに、この五海峡、特に宗谷海峡なんかについてはあたりまえじゃないか、かように思う。何でこんなに遠慮するのか。その点総理から明らかにしていただきたい。
  286. 岡安誠

    岡安政府委員 おっしゃるとおり、宗谷海峡につきましては二十海里というところになるわけでございまして、十二海里そのまま領海が延長されますれば、中間線というわけでございます。  そこで、私ども特定海域宗谷海峡に設けるに際しまして、いろいろ検討いたしましたけれども特定海域を設定するというのは、まさにわが国の方針、総合的な国益に照らしましてわが国が設定をするということになるわけでございます。そこで、ソ連がどう考えているかということは一応別でございますので、わが国わが国として特定海域を設定する以上、わが国領海として当然中間線まで延びるところにつきまして特定海域を設定し、公海部分として残すというような措置をいたしたわけでございます。
  287. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 きょうは総理に対する総括的な質問をしているのですから、総理が答えなければいかぬのに、総理が答えないということは、まだまだ総理も不勉強だし、真剣にこの問題に取り組んで国民のためにやってやろうとはしていない、私はこういうふうに申し上げたい。いまお聞きになったとおりです。いまの質問に対する答弁をひとつ総理からお答えいただきたい。
  288. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ただいま水産庁長官からお答えしたとおりなんでございますから、そのとおり御了承願います。
  289. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、もう一つですが、津軽海峡の問題も先ほど質問に出たようでありますが、私たち北海道に行きました。御存じのように三海里では外国船が今度は自由に来ます。先ほど言ったように、二百海里法で網をかぶせても効果がない。そうなりますと、地元の漁民は、韓国船、ソ連漁船、外国船は絶対に十二海里の中に入れるな、これは当然です。しかし、三海里だと、その公海部分中間外国船が来るわけです。二百海里といえども、いわゆる二百海里から十二海里引いた百八十八海里といえども外国船を入れてくれるなと言いましても、そうはいかない。これはまた外交交渉によってやる入漁権、また漁獲量その他いろいろ、これはまた検討してお互いに話し合うことは当然でございましょうが、いずれにしてもそういうように海峡の間に公海ができるということは大変なことであり、漁民は物すごい憤りと、また反発をしております。そういったことで、私は津軽海峡についても、五海峡すべてそうですが、特に津軽は、御存じのようにこの海底にケーブルがある。新幹線の動脈も通っている。万一事故があったら大惨事が起きる。こういった日本の国益に関する産業の動脈、これは何としても守らなければならぬ。これは総理は重大な責任がある。そういった意味で、われわれは十二海里を五海峡といえども全部設定すべきである、かように思うのです。その点で、この質問が終わった後、いろいろ与野党を挙げて超党派で検討してこの問題を詰めることにいたしておりますけれども、総理もひとつ勇断をもってこの問題についてどう対処するか、十二海里設定の方向で進む、かように決意を述べてもらいたいと思うが、お答えをいただきたい。
  290. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 特定海峡につきましていろいろ各党の間に御意見があることはよく承知しておりますが、どうもいろいろ考えてみますけれども、いま政府が御提案申し上げているように、海洋法会議の成り行きを見て、そしてその際具体的、最終的な決断を下す、暫定的にただいまの段階といたしましては三海里にとどめておくということが一番常識的な行き方ではあるまいか、そういうふうに考えておるわけであります。ぜひひとつ御賛成のほどをお願い申し上げます。
  291. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 福田総理、最後にあなたにひとつ決意のほどをお伺いしておきたいと思うのですが、先ほどからはしょった質問でいろいろ申し上げてきましたけれども日ソ漁業交渉はいま中断し、大きなデッドロックに打ち上げていることは御承知のとおりです。避けて通れない問題があります。むしろソ連が二百海里を一方的に宣言したから、わが国もそれに対抗して同じ土俵、同じ交渉の場をつくるということで二百海里法案をばたばたと提出した。  さて、この二百海里法を持っていけば、ソ連はますます対抗意識を持つ。二百海里宣言を出したから日本も持ってきたということになる。そうすると、どうしても領土が絡んでくる。これを強力に押すとなれば、結局架空の二百海里みたいな、ああいう北方四島においても、また線引きにおいても、ソ連だけ線引きをやって、そして中国、韓国はどうするんだ、こういった問題になってきて、いわゆるわが国における南北戦争みたいなことが起きてくるということで、大変西日本漁業者も心配するし、われわれもまたこれに対する対策をいろいろ日夜頭を痛めておることは事実でありますが、いずれにしても領土問題が絡んできていることはもう事実であります。  そこで、前からいろいろ総理は答弁しておられるけれども、前と事態が変わってきたのです。私は総理が本当に訪ソすべきである。いまこそ当たって砕ける、勇断をもってやるべきだ、かように思うわけです。総理は以前の委員会でも、私が行けば領土の問題に絡むので、いまは時期でない、こういうふうに答えておられますが、総理は行く意思はもちろんあると私は思うのですけれども、総理自身は大きな認識の誤りをしておりはせぬか。というのは、確かにあなたは漁業と領土の切り離しを前提としていらっしゃるようでありますけれども、ここ数日の動きを見ても、先ほどから例を挙げますとおり、漁業問題の解決が領土問題に絡み、領土問題の解決が漁業問題にというように両者が絡み合って一向に進展しない状況下になっております。こういう事態を招いてきておるということは、総理としてきわめて重大な責任である、かように自覚すべきである。こういった意味から、この際総理みずからが出向いて、捨て身で交渉に当たり解決の方途を見出す、このような決意であなたは全国民のためにむしろ勇断をふるってこの際行くべきである、こういうふうに思うのですが、あなたの決意を私はお伺いしたい、かように思います。
  292. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、この問題は国益を踏まえて、わが国立場において、国民の重大な関心の問題であるこの領土の問題について、今後のわが国の主張を傷つける、こういうようなことが断じてあってはならないという立場で漁業問題を解決していきたい、こういうふうに考えているのです。そのためにはどうしても漁業は漁業、領土領土、そういうたてまえを貫き通すほかこれは道はないのです。この間、私は五党首とも会談をいたしましたが、領土領土、漁業は漁業、この領土に寸分の傷がつくようなことがあっては相ならぬ、毅然として対処せよ、こういうようなお話でございますが、私も毅然として対処するという考えでございます。
  293. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 質問を終わります。
  294. 金子岩三

  295. 稲富稜人

    ○稲富委員 総理、忙しい中を来ていただきましたのでいろいろお伺いしたいこともありますし、また私たち総理の耳に入れておきたいこともあるのでありますけれども、遺憾ながら私の持ち時間がわずかでございますので、ただ一、二点につきまして、総理の耳にぜひ入れておいて今後十分ひとつ決意していただきたい、こういう点を希望を述べまして、私の質問をいたしたいと思うのでございます。  最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、これは先日鈴木農林大臣にも私はお尋ねした問題でございますが、今回領海法がここに提案されるに当たりまして、つくづく私たちが考えますことは、実はこれは総理もすでに御承知のとおりでございますが、昭和四十八年以来ソ連漁船団が日本の近海において非常な横暴なる操業をいたしまして、これがために日本漁民に多大な損害を与えておることは御承知のとおりであります。この損害高等はすでに総理も御存じであると思いますが、昭和四十八年から五十二年まで莫大な損害であります。その都度私たちは農林省から外務省を通じまして、日本近海におけるそういうソ連船の操業というものに対する抗議を申し込むこと、さらに漁民に与えた損害に対する賠償の要求をしなければいけないのではないか、当然ソ連はこれを補償すべきである、こういうことを私たちはしばしば要望してまいりました。しかもこの損害を与えた区域というのが、ほとんどが今回設定されます十二海里以内において行われておるというのが現状でございます。そういう点から私たちは早くから十二海里の問題を早く制定せよ。かつて、御承知のとおり四十九年、カラカスで第三次海洋法会議の第二回会期が開催されましたときも、すでに日本は十二海里を宣言してこの海洋法会議へ臨むべきではないか、こういうことをわれわれは申したのでございますけれども、どうも政府といたしましてはあるいは何にこだわっていらっしゃったのか、一向こういう問題に対しては立ち上がらなかった。聞くところによりますと、これに対してソビエトに対しては八回ほど抗議を申し込まれたそうでございます。損害補償等も要求されたけれども、何ら得るところはなかったということを聞くのであります。こういう点から言いますと、今日までわが国外務省がとってまいりましたソ連のこういうような行為に対する抗議、外交交渉というものが余りに甘過ぎたのではないか、こういう点が今回日本がここに急にこの領海法を制定して早く日本を守らなければいけない、こういうようなことになったのではないか、かように私たちは考えます。  この点から、私たちはいままで、その日本漁民に与えた大きな被害、しかも長い間ソ連船が日本の近海において魚をとったことを彼らはいま既得権だと称しておる。こういう点を見るときに、確かにこれは日本の外交上の非常な政治の怠慢があったのではないか、こういうことを私は考えます。最高責任者である総理としていかにこれを受けとめ、いかにこれを解釈していらっしゃるか、今後の参考にもなることでありますから、過去のこの実態に対しての総理の感想と申しますか、これに対する考え方を私は承りたいと思うのでございます。
  296. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 わが国世界における漁業大国という言葉を使われるくらい巨大な漁業をやっておるわけであります。それで外国の領域、その周辺で漁獲する、これが非常に多いわけです。ソビエトに例をとりますれば、わが国領土の周辺でソビエトが漁獲をする、わが国はソビエトの領域の周辺で漁獲をする。わが国の方がソビエトの漁獲に比べますと五、六倍も多いわけであります。そういうようなことで漁業水域というもの、これがなるべく自由な体制にあった方がいいんだ、こういう基本的な問題があるわけなんです。そういうことから領海につきましてはなるべくずっと長い間続いた三海里が続くように、また大陸だなでありますとかあるいは漁業水域でありますとか、そういうような傾向が始まってきましたけれども、これが一般化しない方がいいんだ、そういう立場にあったものですから、ついわが国としては一部の国が採用したような十二海里水域という方向への踏ん切りがつけ得られなかった、またつけない方が妥当である、こういうふうな考え方のもとに三海里説をずっととってきたのでありますが、最近特にソビエトの漁船がわが国の周辺でずいぶんわが国の漁民を脅かすというような傾向が多くなり、わが国の漁民が十二海里拡張を強く求めるという傾向も出てきておりましたので、そういう事情を考えますと、もうこの辺で踏ん切りをつけなければならぬかな、こういうことで十二海里説を採用する、こういうことになったわけであります。いろいろ考えたのですが、結果からいたしますと二百海里問題とちょっと紛淆を生ずる、こういうような時期になりまして大変皆さんに御迷惑をかけますが、いろいろ国益全体のことを考えてそういう態度をとってきたということは御理解願いたい、かように存じます。
  297. 稲富稜人

    ○稲富委員 もちろん日本世界の各国において漁業をやっておることは承知しております。しかしながらソビエトが日本の漁民あるいは漁具に直接意識的に損害を与える、こういうような不法な行為は日本の漁民としてはやっていないと思うのでございます。こういうような不法な行為に対しては、われわれはどこまでも日本の漁民の権利を守り生活を守るためにはい遠慮なくソビエト側に対して交渉すべきであった、私はかように考えます。こういう点に対して遠慮したということに今日ソビエトに対する非常な弱さがあったのではないか、かように考えます。この点から考えて、私は今回のソビエトに対する漁業交渉に対しましても余りにも甘い考え方が政府にあるのではないか、かように考えます。  はなはだ失礼でございますけれども、先刻から総理大臣はソビエト・ロシアという言葉をしばしばお使いになりますけれども、いまではソビエト・ロシアという言葉は私たちは一向聞かぬ言葉で、実に古い言葉でございまして、いまではソビエト社会主義共和国連邦というのが本当の名で、略しますとソ連邦というのが本当なんです。ロシアというような考え方自体がソビエトに対する認識というものがまだ非常に欠けているのではないか、私はかように考えるわけです。  私は、今回鈴木農林大臣漁業交渉をやられて非常に苦心されておることを知っております。しかしながら、これが漁業交渉のみで片づくかどうか、私はここに非常に問題があると思うのでございます。私は、日本政府は単なる漁業交渉によって一切解決するものだ、こういう自信を持って進められておると思うし、またそういうつもりで領海領土問題等には一切触れないでひとつ漁業のみで解決しよう、ここに鈴木農林大臣の苦しい点もあることを私は知っています。ところが漁業交渉によってイシコフ漁業相鈴木農林大臣との間に話を進められて、せっかくその交渉が進んでおりましても、やはりソビエトの連邦最高会議幹部会の指令によりますとそれはお流れになる、こういうような国としての特殊な事情なんです。イシコフ漁業相がどれほどの権限を持っておるか、そういう人と交渉しなくてはいけないということになってくる。  しかも、今回二百海里の設定に当たりまして政府は北部だけに二百海里を設定された。私はこの間、鈴木農林大臣に対しましては、北部だけに二百海里を設定するということになるとソビエトはこれに対して対抗して何か反撃に出るようなことがありませんかということを質問いたしました。これに対しましても鈴木農林大臣としては、やはりソビエトとの善隣友好の関係を保っていくからそういうことは起こらないだろう、こういうことを表面では言っていらっしゃいました。ところがソビエトは、これに対して直ちに反撃をして声明を出しております。いよいよ二百海里の問題が出てまいりますと、やはりおのずからこの線引きの問題が起こってまいります。そうしますと領土問題というものは、われわれは触れまいと思っても触れざるを得ないということになってくるわけでございます。こういう点も一応頭に入れておかなくてはいけないのではないか。一切の領土問題を度外視してわれわれの考えるように漁業だけの問題でこの交渉ができるかどうか、こういう点も十分含みを持って交渉するところに苦しい点があるだろうけれども、私たちはその点も考えなくてはいけないんじゃないかと思うのでございます。これに対して総理大臣としては、単なる漁業問題だけでこれは解決するのだ、領土問題に一切触れないでソビエトは応ずるのだ、こういうような確信がおありなのかどうか、この点を承りたいと思うのでございます。
  298. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 これは先刻来申し上げておりますように、漁業は漁業、領土領土という形で解決するほかないのです。領土問題を論じたら、これはどのくらいの時間を要して決着になるのか、これは見当がつきませんよ。漁民はそれを待っておるわけにはいかぬ。ですから私は、もう次元の違うこの二つの問題は切り離して解決しなければならぬ、これがまたこの漁業問題解決のかなめである、こういうふうに考えておるので、ちょっとソビエト連邦が考え方を変えればもう簡単に解決できる性格のものだと思うのです。その辺とにかく皆さんひとつ応援していただきたいのです。これは漁業は漁業だ、領土領土、別じゃないか、別の問題として解決しようということで、ぜひひとつ御支援を願いたい。そのとおりにいたしたいと思います。
  299. 稲富稜人

    ○稲富委員 もちろん私たちも、領土領土の問題として解決し、漁業は漁業の問題として解決しなくちゃいけない、漁業交渉としてこの問題を解決しなければいけない、かように考えております。魚はいつでもとれます。領土は一たび失ったら永久にとることはできません。それがためにわれわれは決して漁業のために国を売るようなことがあっては絶対にいけない、かように考えます。しかしながら、われわれはそういう希望を持っておるけれども、もしもソ連として領土問題を含まなければ漁業問題の解決ができないというような段階に立ち至ったならば、総理大臣みずからがソビエトに乗り込んで領土問題を解決する、これだけの熱意を総理大臣としてはあらかじめ持っていて、そして領土問題を漁業問題とともに解決する、拙速を図ることによってわが国の永久の不幸を来すことがあってはいけない、かように私は考えます。われわれは漁業問題で解決することを希望いたしますけれども、もしも領土問題が絡んできたような場合があったならば、総理大臣みずからがソビエトに乗り込んでいって、そして領土問題とともにこれを解決するだけの情熱をお持ちになっておるかどうか、この点に対する総理の決意を承りたいと思うのであります。
  300. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 国益を踏まえまして毅然として対処しますから、ぜひひとつ挙国一致、御協力のほどをお願い申し上げます。
  301. 稲富稜人

    ○稲富委員 挙国一致の考え方でやっていくとおっしゃるけれども、いま申しましたようにこれは行動でございます。その行動を起こすためには、総理がこちらから号令をかけておったのではいけないので、本当に挙国一致であるならば、国民の総意はそこにあるわけなんですから、領土は一歩でも譲ってはいけない、漁業の問題は有利に解決しなければいけない、それだからその国民の総意をくんで総理大臣みずからが乗り込んでいく、これがやはり総理大臣として国民にこたえる当然の道である、かように私は考えるからその総理の決意を私は承るのです。国民のこの希望を満たすためには、もしもそういう場合が生じた場合はあなたみずからが行くだけの決意のほどがあるかどうかということを私は承ればいいわけなんです。その点を私は承っておるわけなんであります。
  302. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 私は、私がソビエト連邦を訪問することが必要だという段階になるならばいつでも訪問します。これはもうその決意でありますが、いまそれをやりますと領土交渉の問題になってしまうのです。これは百日交渉だなんて言う人がありますが、百日で片づきますか、これは。私はそんな簡単な問題じゃないと思うのです。そういうようなことを考えまするときに、この際は領土領土、漁業は漁業、これで行けというので皆さんから御激励をいただきたい、こういうふうに考えます。
  303. 稲富稜人

    ○稲富委員 私もそれを希望しますよ。ところが今回は二百海里という問題を生じておるだけに、おのずから領土に対する線引きの問題等が具体的な問題として起こってくるからそういう必要が起こりはしないかということをわれわれは懸念をしておるわけなんです。私たちは、どこまでも領土領土、漁業は漁業として切り離してこれは考えるべき問題であるということは、それは総理と考えは同じです。しかし相手の国というものは本当に腹がわからないわけなんです。それだから、もしもそういう場合があったらあなたみずからが行って、そして領土問題も解決する。ただ漁業問題を解決するという拙速の余りに、日本国民の悲願である領土問題を売るようなことがあっては絶対いけない、そういう点から、総理のこれに対する十分な決意と行動というものを特に私は希望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  304. 金子岩三

  305. 津川武一

    津川委員 総理、九九%妥結するかに見えておったソ連の二百海里以外のサケマス漁業が、日ソ漁業条約で決められている線ではいけないという、領土をはっきりさしたソ連の最高幹部会議決定、それを踏まえたソ連閣僚会議の線でなければならぬというので、暗礁に乗り上げて、政府はそれは承認するわけにいかないから引き続き交渉するようにという訓令を出しております。これは私は正しいと思います。  第二次鈴木・イシコフ会談が、領土問題を含めた第一条、向こうの閣僚会議の決めた線でのめということになったので、のめなくなって鈴木大臣が帰っております。これも私は正しいと思います。  そこで、私もこの間超党派議員団の一人として行ってみました。容易じゃないです。ポドゴルヌイ最高幹部会議長、日本の元首に当たりますが、何と言ったかというと、お互いに実情に即して考えよう——実情に即して事を進めようというこの考え方には二つのことがあります。一つは、ソ連が現在千島を占領しておる現実、もう一つには日本の漁業がソ連の二百海里内で操業しているという現実、イシコフと鈴木さんが、領土問題は関係ないと言って漁業問題を進めています。だが引かれる線は、ソ連領土に含んだ、領土内に入れられた線で決められます。  こうなりますと、ソ連の不当に占領しておる千島を、われわれはソ連領として確認したり、追認したりすることになります。これはいけないと思いますし、政府態度もそれはいけないと考えているようです。どうしてこのようになるのか、私たちの方の態度が弱いからじゃないか。総理はいま毅然としてやると言っている、それはよろしい。  ところで、毅然としてやるということはどういうことかというと、千島は一体だれの領土かということをはっきりと宣言をしなければならぬ。総理は千島のどこどこが日本のものだと考えておりますか、まずこれを聞かしていただきます。
  306. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いわゆる北万四島、これが日本固有領土である、かように考えております。
  307. 津川武一

    津川委員 そこに一つの問題があります。私たちは、歴史的に正しい視点に立って、国際間の正しい視野に立って言うならば、毅然たる態度日本に出てまいります。  この点で総理に質問しますが、一八五五年の日魯通好条約ではどうなっているか、日本とロシアの境界はどうなっているかというと——このときはロシアです——北千島はロシア、南千島は日本、こう決めております。したがって、南千島四島、北方領土四島、これは日本固有領土であります。  もう一つ、二十年後の一八七五年に樺太千島交換条約が行われている。そこで、樺太全部はロシアにやる、そのかわりとして千島全島を日本に渡す、これが樺太千島交換条約でありますが、この二つの条約は、このとおり正しいと思って総理が受け継いでおりますか。両国間に正しく交換された条約であります。いかがでございますか。
  308. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 それは承知しております。
  309. 津川武一

    津川委員 そうすると、総理が承知しているとすれば、千島全島が日本のもの。ここのところに大事な問題がある。それから今日までどのように変化したか。  一九〇五年のポーツマス条約、日露戦争の後で日本は戦勝国として南樺太を取った。これがその後の領土の変化です。ところが今度の戦争の処理に当たって、ヤルタ協定でどうなったかというと、これはソ連がアメリカとイギリスに日本国との戦争に参加することを協定したものであって、そのときの領土処理問題は「樺太の南部及びこれに隣接するすべての島は、ソヴィエト連邦に返還する。」——「返還する。」こういうことです。次に、「千島列島は、ソヴィエト連邦に引渡す。」樺太はもともとソ連のものだから「返還する。」千島は、日本のものをソ連に「引渡す。」こういう言葉遣いをしております。しかしこれは秘密協定だ。日本が承認していない。現在ソ連領土問題は解決済みだと言っている理由一つにヤルタ協定がある。私たちは絶対にこのヤルタ協定は認めない、日本も承認していない。この点は、総理の考え方はいかがですか。
  310. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 ヤルタ協定につきましては詳しいことを私は承知しておりませんけれども、そんなようないきさつのあったことは聞いておりますが、ただ、その後事態は変わっておるのです。つまり平和条約ができた。そのとき日本は千島列島を放棄する、こういうことになったわけであります。  その千島列島が一体どういう範囲のものであるかということが問題なんです。私どもは、固有領土であるところの歯舞、色丹、国後、択捉、北方四島は、これは平和条約にいういわゆる千島には含まれない、こういう見解であり、また平和条約で最も重要な当事者であったアメリカにおきましてもさような見解をとっておるわけであります。  したがいまして、いわゆる北千島、これにつきましてはわが国といたしましては領有権を主張する根拠を持たない、しかし、いわゆるこの北方四島につきましては、固有領土としてこれを主張すべき立場にある、こういうふうに考えております。
  311. 津川武一

    津川委員 はしなくも、一国の総理の主権観、領土観が出ました。  一八七五年の樺太千島交換条約では、樺太は全部ロシア、千島列島全部が日本——読みましょうか。「全露西亜皇帝陛下は第一款に記せる樺太島の権理を受し代として其後胤に至る迄現今所領「クリル」群島」以下十八島全部挙げて日本です。少し勉強してください。これが変わっていないのです。  それをサンフランシスコ条約であなたは放棄したと言っている。北千島は日本のものではないと言っているが、そこで、サンフランシスコ条約はどうなっているか。第二条(c)項「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部」、この「権利、権原及び請求権を放棄する。」いいですか、千島列島はこのままでいっている。樺太は、戦争をやった「ポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部」、はっきり区別されておる。いまあなたに北千島を日本領土だと主張せよと言っても、うんと言わないかもわからぬ。少し歴史的な、国際法的な勉強をしていただきたい。  そこで、このサンフランシスコ条約の第二条(c)項、これは正しいと思いますか。日本が放棄したこの点は、国際法上、国際間のモラルや条約として正しいと思いますか。どうですか。
  312. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 平和条約は、わが国がこれに調印したのですから、当然それを正しいものと思わなければならぬし、それを履行しなければならぬ立場にある、そういうふうに考えております。  いま津川さんいろいろおっしゃいますが、これは津川さんの政党で、この領土問題について私どもと違った見解があることはよく承知しておるのです。しかし、わが国の結んだ条約、その解釈、そういう立場からいきまして、どうも千島全列島がわが国がいま主権の主張をなし得る立場にある、こういうふうな考え方をとることはできないのじゃないか。政府は統一見解として、わが国の主張し得る、主張すべき北方領土とはいわゆる北方四島である、こういう見解でございます。
  313. 津川武一

    津川委員 歴史的に、国際的に確認されているもう一つの問題は、一九四三年のカイロ宣言、これを追認した一九四五年のポツダム宣言、ここでは、戦勝国は特別な利益を得てはいけない、領土拡大はやらないと言っている。これが国際的に通用している戦争処理の法則だ、これは御存じですね。この法則からいうと、日本が千島列島を放棄したことは間違いです。  そこで、千島全島が、北千島も日本のものだというのが共産党の私見だと言うが、そうじゃないのです。たったいま配られている、稻富さんが持っている国会の啓蒙書の中にはっきりこれは書いてあります。少し勉強していただきたい。  そこで、ポツダム宣言でもカイロ宣言でも、国際的な概念となっている戦争処理に違反しておるこのサンフランシスコ平和条約の第二条(c)項は廃棄を通告して、そういう形で、正しい立場ソ連との交渉に当たる。あなたが言われている領土の問題は、百日かかるか十年かかるかわかりません。そこで、漁業は漁業として一方に鈴木・イシコフ会談を始めて、そして外務大臣とやって、領土の問題をここでは決まっていないのだということをやって、それが休んでもいいから続けて、この両頭立てでいかなければならないのに、ポトゴルヌイ最高幹部会議長が言うように、鈴木・イシコフ会談で言うように、領土関係ないという一線を引く、その中での操業を押しつけられる、それは領土を追認することになる。そこで、どうしても鈴木・イシコフ会談の出発の前提に、お互いに領土は未決定なんだ、未解決なんだという確認の上でやるというならよろしい。鳩山外務大臣が行って、とにかくこの問題を起こそう、議論が違うのだから、ここのところが大事なんです。あなたは領土領土、漁業は漁業とやるから大変な事態が起きて、サケマスもこうなる。今度はソ連の二百海里の宣言でも、われわれはまた不当にもソ連の不当な領土を確認させられたり追認させられたりするようになる。  そこで、あなたに端的に意見を聞いてみる。サンフランシスコ条約第二条(c)項、これは廃棄を通告してみて、毅然として歴史的な国際的なモラル、正義に立って事を処してみませんか。いかがでございます。
  314. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 平和条約を廃棄すると言ったって、この平和条約にはソビエト・ロシアは参加していないのですよ。ですから、これは何のことにもなりはしないのです。津川さんは、漁業交渉に当たって領土問題についての既成事実を追認するな、こういうお話ですが、これは追認はいたしません。これは毅然としてそんなようなことはいたしませんが、その領土問題のわが国の主張はいわゆる北方四島である、こういう見解に立ってその態度を堅持してまいりたい、かように考えております。
  315. 津川武一

    津川委員 総理大臣、これで終わりにしますが、サンフランシスコ条約の二条(c)項、ソ連はこれに参加していないが、ソ連領土問題を解決したときの彼らの大きな理由は、日本は放棄したというのです。われわれは平和条約全部を廃棄しろとは言わない。第二条の(c)項だけ廃棄を宣言したらどうか。この点が、本当に問題を解決するためには、非常にかなめになっておりますので、重ねて要求して、私の質問を終わります。
  316. 金子岩三

    金子委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十六分散会