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1977-04-22 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十二日(金曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 竹内  猛君    理事 美濃 政市君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    加藤 紘一君       熊谷 義雄君    佐藤  隆君       染谷  誠君    玉沢徳一郎君       羽田野忠文君    平泉  渉君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    岡田 利春君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       吉浦 忠治君    神田  厚君       瀬崎 博義君    津川 武一君       東中 光雄君    伊藤 公介君       菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         農林政務次官  羽田  孜君         水産庁長官   岡安  誠君         水産庁次長   佐々木輝夫君  委員外出席者         参  考  人         (釧路市長)  山口 哲夫君         参  考  人         (東北大学法学         部教授)    山本 草二君         参  考  人         (社団法人大日         本水産会副会         長)      高橋 泰彦君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会専務         理事)     池尻 文二君         参  考  人         (社団法人日本         遠洋底曳網漁業         協会会長)   徳島喜太郎君         参  考  人         (全国漁船労働         組合同盟事務局         長)      北濱 時夫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   中野 四郎君     村上 茂利君   馬場  昇君     塚田 庄平君   東中 光雄君     津川 武一君   菊池福治郎君     伊藤 公介君 同日  辞任         補欠選任   塚田 庄平君     馬場  昇君   津川 武一君     瀬崎 博義君   伊藤 公介君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   瀬崎 博義君     東中 光雄君     ————————————— 四月二十二日  漁業水域に関する暫定措置法案内閣提出第七  四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  領海法案内閣提出第六七号)  漁業水域に関する暫定措置法案内閣提出第七  四号)      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  領海法案を議題とし、審査を進めます。  本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、釧路市長山口哲夫君、東北大学法学部教授山本草二君、社団法人大日水産会会長高橋泰彦君、全国漁業協同組合連合会専務理事池尻文二君、社団法人日本遠洋底曳網漁業協会会長徳島喜太郎君、全国漁船労働組合同盟事務局長北濱時夫君、以上の六名の方々であります。  この際、参考人各位に申し上げます。  参考人各位には御多忙中にもかかわらず委員会に御出席を賜りましてまことにありがとうございます。領海法案につきまして参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、議事の都合上、まず御意見をお一人二十分、山口参考人山本参考人高橋参考人池尻参考人徳島参考人北濱参考人という順序でお述べをいただき、その後委員から質疑がございますのでこれにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、山口参考人にお願いいたします。(拍手
  3. 山口哲夫

    山口参考人 ただいま御指名をいただきました北海道釧路市長山口哲夫でございます。  本委員会の諸先生方におかれましては、日ごろ特に水産問題につきまして格別の御指導を賜っておりますことをこの席をおかりいたしまして厚くお礼を申し上げます。  また本日は、領海法案の御審議に関しまして参考人として所懐の一端を申し述べる機会をお与えいただきましたことは、まことにありがたく、光栄に存ずる次第でございます。  さて、北洋漁業基地市長として、領海法案をめぐる諸問題について意見を述べさせていただきます。  その前に、ソ連二百海里水域から三月三十一日までに日本漁船が全船撤退させられましたことによりまして、各漁業基地におきましては、深刻な事態が発生しておりますので、釧路市の実態中心に御説明を申し上げます。  まず漁業でありますが、現在、釧路港には、約七十隻の北洋転換船沖合い底びき船がいつ出漁できるか、当てもなく係留を余儀なくされております。例年ですと、この時期には連日数千トンのスケソウを中心とした魚が水揚げされている釧路港でありますけれども、いまは沿岸小型船によってほんの数トンの水揚げがしかもしけの合間にされているに過ぎないのであります。  四月一カ月だけをとりましても、昨年の水揚げは五万七千トンでありましたのが、本年は二万八千トンと半減しております。この数字は四月二十日現在のものでありますが、北転船及び沖合い底びき網漁業が再開されない限り、この数字はほとんど変わらないと言えます。  釧路船籍北転船十五隻、沖合い底びき船三十六隻の乗組員約一千人は、いま全員陸上待機を余儀なくされておりますが、操業に伴う歩合給航海日当乗船手当は支給の見通しが立たず、最低保障としての固定給のみで家族を養っていかざるを得ない状況でございます。  一方、これら漁業経営者も四月六日以降は水揚げが完全にストップいたしまして漁業収入が全くとだえておりますので、漁船維持費捻出に頭を痛めているところであります。  水産加工業もいまだかつてない苦境に当面しつつあります。釧路市には約百六十の水産加工場がございまして、スケソウダラだけでも優に一日五千トンは処理する能力を有しております。ここに働く従業員は六千七百人もおりまして、その六六%は婦人労働者であります。中には母子家庭も非常に多くおります。四月八日で原料魚が全くとだえたために、中には冷凍魚を倉から出してきて細々と仕事を続けているところもありますが、釧路市の調査によりますと、全く休業状態に陥った工場が約五〇%、操業短縮して出血操業している工場が四〇%にも上っております。すでに臨時雇用者中心とする被解雇者が一千八百人に達し、なお今後の状況によって増加することは必至でございます。常用従業員に対して最低六〇%の休業補償をする場合、合計で一日約九百万円の賃金支払いが必要であります。原料がストップして以来すでに約半月が経過しておりますので、経営者側の混迷はますます深くなっております。これが水産加工業実態でございます。  次に、関連産業についてであります。  まず、魚市場から市内及び北海道各地水産加工場へ魚を運搬するトラック業界でありますが、釧路市の場合、魚類運送営業トラックは約三百四十台、従業員は約六百人であります。このうち約七分の一の五十台程度は水産物以外の資材輸送などに切りかえることができましたが、他は全く車庫に眠ったままでございます。  次に、魚箱製作工場であります。四月には主として北転船及び沖合い底びき船用の木箱スケソウダラ魚卵製品を詰める箱の製作が十七社、約三百人の従業員によって行われますが、現在ほぼ一〇〇%休業を余儀なくされ、資材の整理、工場内の整とんなど、全く工場収入に結びつかないような仕事でつないでおります。やむを得ず解雇し、雇用保険適用している一工場を除いて間もなく始まるであろうサケマス用魚箱に期待をし、従業員を抱えたまま食いつないでいるところであります。もし、サケマス漁獲量が二百海里内ではゼロということにでもなりますと、さらに大きな痛手を受けることは明らかでございます。  このほかにも関連する業界といたしまして、造船所鉄工場、船具、漁網、内燃機、塗装、電機、さらには油関係漁船への食料品雑貨販売業といったところにも直接の影響が出始めております。  釧路市では、もし外国二百海里水域から全く魚がとれなくなったという最悪の場合を想定いたしまして、市の経済にどのようなマイナス効果があらわれるか、お手元に配布させていただきましたけれども、産業連関分析手法によって解析をいたしてみました。釧路市全市の就業人口は約九万人でありますけれども、これに対しまして約二万人が失業人口約二十万人中約五万人が、また釧路市の総生産額約五千五百億円中二七%の千五百五十億円が影響を受けるという分析の結果に私たち市民は、強いショックを受けたのでありますが、目下の事態が長期化いたしますと、このような恐るべき数字が、現実のものになるという予感がするのでございます。  領海問題、二百海里問題を論じる場合、まず、以上のような水産都市実情を踏まえていただきますことを、この際ぜひ御理解を賜りたいと思う次第でございます。  さて、釧路市は、遠洋漁業基地としての一面のほか、前浜に優良な漁場がありますことから、沖合い漁業沿岸漁業ともまた盛んであります。  特に、十二海里ライン中心とする水域沿岸漁業者にとりまして刺し網、はえなわ、けたびき網などの漁業による重要漁場でありますので、地元ではこの海域における資源の増殖を図り、生産性を高めるため昭和三十年以来並み型魚礁及び大型魚礁設置事業を継続実施してきているところでありますが、御承知のとおり、この沿岸水域にも近年多数の大型外国漁船が押し寄せ、漁具被害その他のトラブルが常に起きております。最近の被害状況は、道東の太平洋海域だけでも昭和四十九年に百六十五件、七千八百六十万円、同五十年が二百六十一件、八千三百四十三万円、五十一年は二百四十八件で八千八百五十二万円となっております。ときには、日本漁船の引く網に外国船トロール網が絡まり、わずか十トン未満の船が何千トンという大型船に引き回され、危うくみずからのロープを切って難を逃れたことも一度ならずございます。  昭和五十年十月漁民の切なる願いによりまして、日ソ漁業操業協定が結ばれ、ソビエトとの間のみにつきましては、一応、漁具被害等についての損害賠償の道が開かれましたが、その後も相手国の無謀としか言いようのない操業によりトラブルは残念ながら続発しております。しかも、この協定では、被害現場検証困難性などから、ついぞ一件の賠償も実現せずに今日に至っております。私も日ソ漁業紛争処理委員会を訪れまして、この問題で損害賠償を求めたこともありますけれども、結局、実情を理解してもらうだけに終わったのはまことに残念でなりません。問題は、これら被害者がすべて零細な沿岸漁民であり、一度でも漁具被害を受けますと、痛烈な打撃となることでございます。しかし、ごく最近では中型漁船にもトラブルが発生しております。三月三十一日、ソ連二百海里水域から撤退した沖合い底びき漁船が細々ながら前浜での操業に移った途端、同じく韓国の大型トロール船無謀操業に妨害され、早々に釧路港に引き揚げざるを得ないという事態が発生いたしました。  しかも、沿岸漁業者との協定により沖合い底びき禁止ラインを引き、その外側操業しているにもかかわらず、外国船は堂々と内側で自由に操業していることは、漁業者にとりまして何としても割り切れないことでございます。業を煮やしたこれら沖合い底びき船は、全船へさきを連ねて海上デモを行うといった、まことに緊迫した状況も生まれております。しかし、水産庁の指示もあってついに四月十六日以来、前浜での操業すらストップしているところでございます。  以上のような被害を防止するとともに、沿岸資源を保護するためには、一日も早く領海十二海里を設定してもらわなければなりません。これは零細中小漁業者の悲願であります。強く実現を望むものでございます。  しかし、沿岸におけるこうした外国船によるトラブルは、領海十二海里によって、相当減少いたしますものの、必ずしも全面解消には至りません。つまり、十二海里の外側でも漁具被害が多数発生しておりますところから、領海拡張とあわせて早急に二百海里漁業専管水域を設定し、外国漁船入漁許可に際し、その防止措置を明確に条件とすることが行われなければ、実効が上がらないと考えるのであります。したがいまして、この両法案をワンセットとして成立させた上で、三カ月以内と言わず、できるだけ短期間のうちに実施されることを心からお願いする次第でございます。  ところで、今次日ソ漁業交渉中断最大要因となりましたいわゆる北方領土をめぐる線引き問題でありますが、私たちといたしましては、この四島周辺漁業ができますことを切に願っております。日本の十二海里及び二百海里が実施に移されるときは、四島を日本固有の領土とし、これを基点に日本側線引きが行われるのは当然といたしましても、強硬姿勢をとるソ連との交渉がスムーズに運ばれるものかどうか、一抹の疑問を感じざるを得ないのであります。  ある新聞報道によりますと、十九日の本委員会におきまして、鈴木農林大臣が、わが国が二百海里漁業水域を設置した場合の北方領土の取り扱いに関しまして、理論上は北方四島周辺水域における日ソ両国線引きがオーバーラップすることになるが、ソ連がこれをすんなり受け入れるかどうか疑問である、ソ連漁業協定を結ばないとの態度に出るかもしれないと述べたと伝えておりますが、仮に、わが国が四島周辺を囲い込んだ線引きをした場合、ソ連側がその報復手段として漁業協定拒否を通告してきたとすれば、私ども水産都市はまさに最悪事態を迎え、町の経済は崩壊の道をたどらざるを得ない結果に追いやられるのでございます。したがいまして、四島周辺での漁業を可能にする方法として、問題水域共同規制水域とし、一定の条件のもとで、日本漁船操業を確保することはでき得ないものでしょうか。  いずれにいたしましても、今次交渉早期妥結を願ってやまないものでございます。  最後に、四月以来の休漁休業状態に対する施策について私たちの要望を申し述べたいと思います。  その一つは、漁業者はもとより、水産加工業者関連産業に対する休業補償、低金利特別融資離職者対策等総合的救済策を緊急に講じてほしいことでございます。  二つは、雇用調整給付金制度業種指定水産加工業及び輸送業など関連業種を含め、四月に遡及し早急に適用されたいことでございます。  三つは、中小企業事業転換対策臨時措置法指定業種水産加工業を含めるとともに、金利の低減、融資枠の拡大など、利用しやすい形に改善していただきたいことであります。  四つは、沖合い底びき漁業中型サケマス流し網漁など、漁船員失業保険金受給資格適用部分について、船員保険法適用が受けられるよう措置されたいことであります。  その他、領海十二海里並びに漁業専管水域二百海里の設定に伴う海上保安体制の強化、拡充をお願いいたしますとともに、今後、考えられます加工原料魚輸入拡大に当たり、中小漁業者並びに中小加工業者立場を十分配慮した措置がとられますと同時に、水産加工振興のための特別立法早期に制定されますようお願いする次第でございます。  以上、政府におかれまして御処置をお願いいたしたいことについて申し上げましたけれども、特に強調してお願いいたしたいことは、休業に対する補償についてでございます。  今回の漁業並びに関連企業、そしてそこに働く人たち休業は、あくまでも国際情勢によって起こった問題でございまして、これら関係者意思にかかわりなく、いわば休業を強いられたものでございます。したがいまして、この間の休業によって受けました損失については、ただ単に融資をされるということではなくして、国家として完全な補償をお願いいたしたいことを特に重ねてお願いを申し上げまして、私の意見の陳述を終わらせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。(拍手
  4. 金子岩三

    金子委員長 どうもありがとうございました。  次に、山本参考人にお願いいたします。
  5. 山本草二

    山本参考人 東北大学国際法を担当しております山本でございます。  本日は、領海法案につきまして、国際法立場から若干の参考意見を申し述べさしていただきます。  この領海法案の各規定を検討いたしますに当たりまして、私といたしましては、特に二つの問題をあらかじめ総論的な意味で申し上げておきたいと思います。  一つは、率直に申しまして、現在の時点で領海法を制定するということは、国際的にはきわめて困難な情勢の中でやらざるを得ないということでございまして、これは、具体的に申し上げますと、海洋法会議動向あるいは各国国内法措置というものを通しまして、一体国際法としていま確定しているものは何であるか、あるいはこれから確実に確定しつつある方向に向かっているというものは何であるか、あるいはまた、まだきわめて不確定要素が強くて、これから国際会議動向によってはどうなるかわからないという要素はいかなるものであるか、そういう種々要素を勘案した上で、日本といたしましては、海洋法会議の成立に積極的に寄与する、あるいは国際法を誠実に遵守するという観点から、海洋法会議の中のある特定方向というものを恣意的に引き抜き出して、海洋法会議を先取りするということはできないわけでございます。そういう意味では、少なくとも現に国際法として確定している、確実に確定する方向に向かっているというものをしさいに点検して選び出さなければならないのではなかろうか。これが第一点でございます。  第二点は、海洋法歴史、これは十二世紀から始まるわけでございますが、その歴史を見てみますと、領海制度というものはまさに一般的な制度でございまして、特定目的のためにつくられた制度ではございません。今回の領海法案沿岸漁業の保護という観点から領海十二海里に踏み切る、そういうことが主要な契機になったことは申すまでもないことでございますけれども、領海法としてこれを成立させる以上は、漁業利益はもちろんでございますけれども、そのほか各種海洋利用関係というものについて妥当な考慮、公正な調整というものを図らざるを得ないわけでございます。特に、海洋法歴史の中におきましては、航行利益尊重するということが至上命令であったわけでございまして、諸先生承知のとおり、ただいま海洋法会議で行われております議論の中でも、たとえば国際海峡とか経済水域とかいったような新しい制度の中でも、航行利益最大限尊重をする。汚染防止というような観点から沿岸国が強い規制権を持つことはあったとしても、外国船舶航行自体無条件に禁止するということは、今日の海洋法の流れの中においても許されないことである。そういう意味で、この領海法案を考えるに当たりましても、航行利益尊重という海洋法を貫いて流れていた大きな要素というものをやはり無視することはできないのではなかろうか、私はそう愚考するわけでございます。  以上が、この領海法案の各規定の具体的な内容を見ていく際の、私がとりました物差しでございます。そういう物差しを前提にして、この領海法案を拝見いたしますと、条文の数はきわめて少ない、形式的にはきわめて簡素なものでございますけれども、いま私が申し上げたこの二つの基本的な観点というものから調べてまいりますと、率直に申し上げまして、大変苦心の労作であるというふうに私は評価をしたいと思うのございます。  まず、領海の幅を十二海里に選ぶということは、御承知のとおり、従来領海の三海里の幅というのはいわば国際的には最小限の幅である、それ以上ふやすときは、関係国との協定、条約によって相手の合意を得て、相対的に三海里以上を認めるという制度であったわけでございますが、今回の十二海里は最大十二海里、十二海里以下を各国がそれぞれの利害関係を考慮して選定するということでございます。したがいまして、この領海法によってわが国は十二海里以下ではない、マキシマム十二海里をわが国の政策として選定するのだということを内外に宣明せざるを得ないわけでございまして、そういう十二海里までという広い幅の中から、特にわが国マキシマム十二を選ぶのであるということを選定するために、この領海法という法律を制定していただく、そういう趣旨になったのではないかと思うのでございまして、これは国際的にも、また国民の権利義務という観点から見ても不可欠のものであったというふうに考えるわけでございます。  しかも、その十二海里まで選ぶということは十二海里までは許されている、十二海里をとってもそれは国際法違反にならないということは当然のことでございまして、そういう意味では、すでにでき上がっている国際慣習法をそのまま自動的に受け入れる、かつての三海里のように自動的に受け入れるというものではございません。最高十二海里までの中のその十二を選ぶという意味では、わが国の自発的、積極的な意思決定というものが、この領海法第一条の中に盛り込まれているというふうに解さなければならないと思うわけでございます。  次に、問題の焦点は国際海峡扱いかと存じますが、これも冒頭申し上げましたとおり、従来の海洋法のもとで公海としての地位を認められ、その存在を認められてきた部分が、今回領海の幅を十二海里に選定するということによって形式的には公海としての地位を失うか、あるいはもうほとんど公海としての性格を失ってしまう、そういう地域をとらえて、特に国際航行にとって重要なルートであると考えられるものについては、やはり最大限航行利益尊重しなければならない、これが海洋法会議動向になっているわけでございますが、そういう傾向から見ますと、やはり本法案におきまして、特定水域というものの扱いについてこのような工夫をこらすということは、私は当然であったのではなかろうかと考えるのでございます。  先ほど申し上げましたとおり、汚染防止とかその他種々目的のために沿岸国各種規制権を持つ、あるいは資源独占権を持つ、これは今日の海洋法一つ動向ではございますけれども、その各国の主権、規制権独占権といったようなものも決して無制限ではあり得ないわけでございまして、一般国際法上、通航それ自体無条件に禁止するというようなことは許されていない、これが現状でございます。  さればといって、今回海洋法会議の最終的な動向が決着を見ない段階におきまして、かなり有力になってきておりますけれども、国際海峡における妨げられない通航というものを先取りしてしまうということは、やはりこれからの海洋法会議動向に対処するという点から、必ずしも賢明ではないのではなかろうか。逆に、従来三海里の中で認められてきた無害通航というものを、新しいこの十二海里、特に国際海峡に該当する部分にそのまま自動的に適用するということも、今日海洋法会議での議論動向というものを見ていけば、あるいは近い将来に修正されざるを得ないだろう。そういうどちらの方向をとってもいま海洋法会議動向というものがまだ不確定である、ある程度の方向というものは見えてきたにしても、まだ決定的に確定したとは言えないというような段階において、妨げられない通航あるいは無害通航、そのいずれかを選択するということは国際的に見ては私はかなりの冒険であろう、どちらかに踏み切れば、海洋法会議がいずれかに決まったときに、あるいは海洋法会議が決まらなかったときに、その後始末という点で日本は国家として大変な苦労をしなければならないのではなかろうか。そういう国家としての冒険というものをいまの段階において行うということは、大変私としては国から見て賢明ではない、国際法的に見ても賢明ではないのではなかろうか、そういう判断を持っているわけでございます。  なお、これから先の問題でございますが、現在国際海峡の問題につきましては、妨げられない通航というものを考えます際に、船種別で物を考えていくか、船が通航するときの仕方、態様によって制限をするかしないかといったような議論海洋法会議で展開されているわけでございまして、無害通航にいたしましても、それは船の通航の態様別で考えていくというのが伝統的であったわけでございまして、したがって本件につきましても、わが国国際法の通常の考え方に立って船の通航の態様別でしかるべき規制というものが行われることはあり得べし、そういう態度をとっているわけでございまして、特定の原子力船とか特定の軍艦とか、そういう船種というものを基準にして自由な通航に対する制限といったようなものを考えるという考え方については、海洋法会議では日本は反対をしておりますし、それは海洋法の伝統から見ても一部の開発途上国等が船種別という規制を主張しておりますけれども、海洋法動向から見ればむしろ態様による区別というものが妥当ではなかろうか、これも御参考までに申し述べておきたいと思うわけでございます。  なお、昨日急にまとまって、本日本院に上程されるそうでございますが、二百海里水域の問題につきまして、とりあえずの私の感触といったようなものを御参考までに申し上げておきたいと思うわけでございます。  海洋法会議では経済水域という形で問題をとらえておりまして、その内容はかなり広範でございます。したがって、海底の鉱物資源の問題とかあるいは汚染の規制の問題とかいろいろな要素を含んでおりまして、現在まだ経済水域の具体的な中身ということについては、海洋法会議でも各国にいろいろな対立のあるところでございます。  そこでこの半年ばかりの各国国内法を制定するに当たりましては、その中からほぼ合意が成立している、確実に国際慣行として確立していくであろうという部分として漁業の問題だけをとらえて、つまり経済水域の中から非常にコントロパーシャルな要素を取って漁業の問題だけをとらえた漁業専管水域という考え方が出てきていることは御高承のとおりでございます。今回わが国が用意されておりますこの二百海里法案というものも、そういう方向のものと私は考えるわけでございまして、したがいまして海洋法会議との関係で申しますと、経済水域そのものを先取りしているのではなくて、経済水域という制度の中でほぼ国際法としてあるいは国際慣行として確立しているか、あるいは確実に確立する方向に向かっていると考えられる要素だけを引き出して法案をおつくりになったというふうに、私は各規定を拝見するとそういう印象を持つわけでございます。  なお、二百海里の中の権利の性質につきましては、各国は専管水域という名前が示しますとおりかなり排他的な管轄権あるいは国によりますと主権的権利という言葉を法律にうたっているわけでございまして、たとえば昨年できましたフランスの二百海里水域法等ではもっと徹底いたしまして、これまで領海の中で行ってきた漁業取り締まりの法律あるいは大陸だなに関する法律、それをそっくりそのまま二百海里に延長するんだといったような規定ぶりになっているのでございまして、一般的には各国、相当沿岸国の主権というものを強めた形で規定をしております。それに比較してみますと、今回の二百海里法案は、私、条文だけで見た限りでございますが、かなり控え目のようでございまして、排他的という言葉も使っておりませんし、主権的という言葉も使っておりません。単に管轄権という言葉を使っておられるだけでございまして、あるいはここらあたりにも海洋法会議に対する対処ぶりというものを御勘考の上相当に控え目の要素を引き抜かれたのではなかろうかというふうに推察しているわけでございます。  ただ、そうなりますと、ここでは外国人の二百海里の中での漁業活動の取り締まり等について、刑法、刑事訴訟法その他の国内法令を適用していくということになるわけでございます。そこで主権的権利でもない、排他的管轄権でもない、ましてや領域ではない、そういうような二百海里水域の中から外国人に対する国内法の域外適用とでも申しますか、そういう根拠を法律的にどうやって説明していくかということがこれから御審議いただく際の一つのポイントになるのではないかというふうに愚考するわけでございます。  私に与えられました時間がもうほとんどございませんので、大変重点だけを申し上げた簡略な意見を申し上げただけでございますけれども、後ほどまた御質疑等で補足させていただくことにいたしまして、とりあえずこれで私の参考意見を終わることにいたします。(拍手
  6. 金子岩三

    金子委員長 どうもありがとうございました。  次に、高橋参考人にお願いいたします。
  7. 高橋泰彦

    高橋参考人 私は、大日本水産会の副会長の高橋泰彦でございます。  私は外国の近海で操業する遠洋漁業のと申しますか、国際漁業と申しますか、そのような面から見て、まず結論的に申し上げまして、領海法案に賛成いたすものでございます。  わが国漁業の発展の一翼を担ってきました日本遠洋漁業というものは、その名前の示すとおりにわが国から遠い海で操業するものでありますが、その実態外国の近海で操業する割合が非常に多いのでございます。したがいまして、外国領海の幅が三海里以上に拡大されると日本漁船操業が制限されるということになりますので、開放された広い海で魚をとりたいという私たち遠洋漁業者の伝統的な考え方からいたしますれば、外国領海の幅が拡大されるということは本来望ましくないというふうに考えてきたものでございます。そういうわけで、従来遠洋漁業関係者として領海十二海里案を積極的に支持しなかったのは、実は日本領海の幅の問題ではなくて外国領海の幅が十二海里になるということになる、そのような結果をおそれて積極的に支持しなかったというふうに考えるものでございます。  ところが、今日では世界で領海十二海里を設定している国が約六十カ国あるようでありますが、海洋法会議動向から見ましても、もはや領海を十二海里とすることに異論を唱える国はほとんど見られなくなったようでございます。また現実の問題としても、わが国外国との間に結ばれた各種漁業協定等を見ましても、領海を公式に認める認めないにかかわらず、事実上相手国の十二海里以内では日本漁船による操業をしないという取り決めになっているものが非常に多いのでございます。したがいまして、いまここでわが国領海を十二海里と仮にいたしましても、関係国に無用の刺激を与え、その結果、日本遠洋漁業操業に支障が出てくるというおそれはもはや事実上なくなったものと考えます。  一方、近年、わが国近海における外国の大型漁船操業によりまして、わが国沿岸漁業に大きな影響を与えることになっております。韓国に近接しております地帯は別といたしましても、実は日本沿岸近くに外国漁船が魚をとりにやってくるというようなことは私どもは想像すらしなかったところでございます。十二海里以内のわが国沿岸漁業を保護するためには、このような事態のもとでは、わが国領海の幅を十二海里にするという積極的な必要が漁業の面から出てまいったわけであります。  要約いたしますと、領海法案について、もはや遠洋漁業と申しますか、そういう立場からいたしましても反対する理由がなくなったということから、一転して積極的に設定する必要が出てきたというふうになるのではないかと私は考えます。  以上が領海法案に賛成する私の意見でございます。  なお、領海法案と関連する漁業水域に関する暫定措置法案についても若干意見を申し述べたいと存じます。  私ども遠洋漁業関係者といたしましては、二百海里にも及ぶ水域沿岸国の管轄のもとに分割して利用されようとするような方向については、本来反対するものでございます。やむを得ない場合であっても、このことが国連海洋法会議のもとに合理的に組み立てられ、各国によって合意された基準のもとに各国が統一のあるルールに従って漁業水域を設定することを期待してまいりました。ところが最近の情勢を見ると、米国、ソ連、EC諸国等が一方的に二百海里水域を設定いたしまして、海洋分割という新しい秩序へ進んでまいりましたことはまことに遺憾ではありますが、一つの動かしがたい現実として認識し、対応せざるを得ないと思うものでございます。  特に今日の日ソ両国漁業交渉にかんがみまして、挙党一致の姿勢のもとに、政府は二百海里法案を提出するようでございますけれども、私はその決断に対し深く敬意を表し、賛成するものでございます。  二百海里の漁業水域を設定することが、いかに周辺の国々に大きな影響を与えるものであるかは、今回の米国及びソ連の二百海里水域の設定のわが国に対する影響ということをごらんになれば、それは明らかであります。したがって、提案されるわが国の二百海里法案は、対ソ連関係上緊急な必要性があることを十分に認めつつも、日本周辺のまだ二百海里水域を設定していないたとえば中国、韓国等の諸国に極力無用の刺激を与えないように、細心の工夫をすることが必要だと思います。  伝えられる法案によりますれば、まず暫定措置であるということが趣旨として明らかであること、外国人の操業について許可制度をとっていること、海洋法会議でも問題になっています覇、高度回遊性の魚種やサケマス等の川に上る魚類につきまして特別の配慮をしているようなこと、さらに最も大切なことは、外国人及び海域については政令で適用しないことを指定することができることといたしまして、変転する国際情勢に機動的に対応できる仕組みとなっておるようでありまして、この趣旨に賛成であります。  以上のように、韓国関係につきましては、政令の運用によって慎重に措置することにつきましては、わが国の九州、山陰の関係者にとってきわめて適当な方策であると思うのでありますが、最近北海道等北方地域におきまして、わが国漁業と韓国漁船との間に現に紛争が起きております。大日本水産会はその他の民間諸団体とともに韓国の民間団体との間に話し合いもし、紛争解決のために努力をしておりますけれども、おのずから民間としての限界があるので、政府は政令の制定を機会に韓国政府との間で協議を行い、責任を持ってこの問題を解決するように努力すべきであるということを要望いたします。  なお、今後の施策にわたる点で恐縮でございますが、国際情勢のもとにわが国漁業が打撃を受けることはある程度避けられないとしても、政府は万全の救済措置を講ずるとともに、一方、安易な輸入措置により漁業者に二重の痛手を及ぼすことのないよう、慎重な対策をとることを要望いたします。  私は、以上の要望を申し上げまして、漁業水域に関する暫定措置法案に賛成する次第でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手
  8. 金子岩三

    金子委員長 どうもありがとうございました。  次に、池尻参考人にお願いいたします。
  9. 池尻文二

    池尻参考人 私は全漁連の専務理事池尻でございます。  私どもは従来、多年にわたりまして関係漁民とともに領海十二海里の実現を訴え続けてまいったわけでございます。数多く漁民大会を開きましたし、また国会議員の皆様方の署名をいただく運動をいたしましたし、その署名も衆参両院七百三十三名のうち六百二十三名、まさに八四%という高率の署名を取りつけるところまで至りました。また、各政党に対しましては、領海十二海里設定の際のいろいろな問題点につきまして公開質問状の形で御意見を聞いてまいりましたし、ありとあらゆる可能な手段をも尽くして訴え続けたわけでございますが、その限りにおきましては本法案の提案がまさに遅きに失したと考える次第でございます。しかしながら、やっとここに至りまして関係漁民にとって長かった暗い夜が明けつつあるという実感でございまして、ぜひとも本法案を皆様方の御協力によりまして早期に成立をさせていただき、漁民の多年の切ない悲願にこたえていただきたいと存ずる次第でございます。  およそ沿岸漁業者にとりまして、漁場に対する執着力というものはまことに異常なものがございます。私もかつては第一線の単協の組合長をしておりましたが、国内の問題でございましても、沿岸漁場に底びき船の違反船がやってまいりますと、監視船その他の取り締まり船の到着を待てないで、沿岸漁業者はみずからの船を総動員をしてこの船を追っかけるわけであります。そしてときには追跡しかねて、そのトロール船のスクリューにロープを巻きつけて、まさに血で血を洗うような紛争を起こした実例を私も知っております。  なお、私は鹿児島でございまして、そのときの漁連の会長さんはすでにお亡くなりになりました皆様方の衆議院の先輩の原捨思先生でございましたが、この方は沿岸、沖合い、遠洋にわたる漁業の非常な功績者でございましたが、終戦後の食糧難のときに、ただ一回食糧増産のために底びき船をやったばっかりに、その後の選挙になりましては、私どもがある漁村に行って運動をやるわけでございますが、かつて底びきをやっただけの経験のために、沿岸漁業者がこのわれわれの組織の大将に票を入れないということが長く続いたことからも察しまして、沿岸漁場というものは、まさに保護してもらわなければそこで漁民は生きられないという実態を物語っておると思います。  近時見られるソ連船あるいは韓国船の操業は、もうすでに皆様方御案内のとおりでございまして、その船団の規模はきわめて大規模でございますし、操業は苛烈にわたっておるわけでございます。まさに大洋漁業の船団が三海里すれすれのところで操業しておるという実態でございます。そのために漁民の受ける被害というものは逐年増大をいたしてまいりまして、このことが今日最小限十二海里の設定というものを強く悲痛な訴えで皆様方にお願いをしてきたゆえんのものでございます。  私は、自国の領土の周辺で、むずかしい議論は知りませんけれども、このような悲惨な事態というものを数年にわたって容認するような、そしてそれに対する有効な手を打たない国は、世界のどこを探してもないと確信をしておるものでございます。そういう意味から、漁業者により大きな国益の前に忍べという説得は絶対に効力のないものであるということを、私は過去の例に照らしましてしみじみと痛感をいたしてまいりました。したがいまして、遅きに失したと申し上げましたけれども、こういう国の基本問題につきまして、単に政府を責めるだけではなく、政党全体がこの機会に強い深い反省をしていただく必要があるのではないか、かようにさえ考えておる次第でございます。  政府も決して傍観しておったわけではございません。昭和五十年十月二十三日に皆様方のお力添えによりまして日ソの漁業操業協定を批准をしていただきまして、漁船漁具の標識、あるいは灯火、信号、その他の操業トラブルの防止につきましては一応のルールづくりをしていただきましたが、御案内のとおり、先ほど申し上げましたように、向こうの船は一万トン級の母船を中心とした三千トンのトロールあるいはまき網で構成されておる大きな集団の操業でございまして、これが昼、夜となく行われるわけでございますので、この協定さえも実際の効果というものは余りなかったと私は信ずる次第でございます。  私ども民間も、先ほど高橋参考人の御報告のとおり、私も昨年第一回の民間の代表といたしまして、特に韓国船の道東沖のトラブル問題の処理につきましては韓国の民間団体と樽俎折衝、その被害の防止のためのあるいはトラブル防止のための措置につきまして話し合いをいたしましたけれども、これまた余り実効が期せられないままに今日に至っておるというのが実情でございまして、いまや皆様方の力におすがりいたしまして、早急にこの十二海里を一日も早く設置していただく以外に最小限度漁業者利益を確保する道はないと信じておる次第でございます。  私は、法案の中で特に問題となるのは、いわゆる国際海峡をどう扱うかの点であろうかと思うものでございます。実は運動を推進するに当たりまして、先ほども申し上げました公開質問状等で各政党の対応性を聴取いたした場合に、政府ははっきり申してはおりませんけれども、何としてもこの国際海峡扱いの問題が各政党のコンセンサスがどうも得られないというのがいわゆる本音で、十二海里の対策が実はおくれてきた一つの大きな原因ではなかったのであろうか、かように考えておる次第でございます。  今日の政府の御提案になった法案の内容では、いわゆる国際海峡につきましては現状のままにしばらく凍結をし、一つには、先ほども御説明がございましたように、国連海洋法会議で、国際海峡通航問題につきましては、現在の無害航行よりもさらに自由な航行を確保するという一つ方向は見出されておりますけれども、いまだファイナルの結論が得られていないということが第一点。それから、ここは先ほど申し上げましたわが国の非核三原則、いわゆる非核の政策と国際海峡が十二海里の設定で完全領海化した場合の非常にむずかしい問題に逢着するわけでございますが、この問題は、いまいかに問題を早期に詰めようとしたって、これはなかなか詰まる問題ではないと判断をされるわけでございまして、したがいまして、現在政府が現状のままで特定海域という制度を設定をして、従来の通航は暫定的に自由の航行を確保するというのは、やはり最上の知恵を発揮したのではないだろうかということで、この点はやむを得ざる措置であるというふうに評価をせざるを得ないと考える次第でございます。  ただ、最初の法律の案のときに私どもが一番困りましたのは、いわゆる三海里のままで据え置かれる海域漁民から、おれたちをどうしてくれるのだという非常に強い訴えが出てまいりました。この問題にはまことに苦労をいたしたわけでございますが、幸いにも、追っかけて出されます二百海里の漁業水域法案の中で、この特定海域部分については外国漁業操業を禁止するという条項が入っておるやに承っておりますので、この点につきましては関係漁民の不安が除かれたものと考えまして、領海法と二百海里の漁業水域のセットの法案を速やかに成立させていただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。  それから、その次に、先ほど日ソ漁業操業協定に触れましたけれども、その協定の大きな柱として、いわゆる損害が起こった場合の和解、仲裁の機関として、日ソ漁業損害賠償請求処理委員会が設置をされまして、一年有半の活動を続けております。不肖私も常任の顧問として、その会議に参画をいたしておるわけでございます。決して委員会はサボタージュしておったり、怠けておったりするものではございません。しかし、先ほど釧路市長さんからもお訴えがございましたが、裁定になったものがまだ一件もございません。ただ二件ほどはモスコーの委員会に書類を送っておりまするし、さらに三十六件につきましては、東京の委員会で近くモスコーに申請をするということになっております。  ここで私が訴えてみたいのは、いわゆる日ソ漁業損害賠償請求処理委員会の中で議論をするにいたしましても、もともとその申請書というのは、日本被害を受けた漁民から出されるわけでございますが、いかに損害賠償請求委員会でいろいろ議論をして、早く損害の額をまとめようといたしましても、相手のあることでございまするし、はっきりとした証拠の裏づけがないというものは、まことにこれを通過させるのに非常な困難が伴うわけでございます。先ほど申し上げましたが、ソ連の船は一万トン級の母船を中心として、キャッチャーも三千トンの船である。それに網をひっかけられた漁業者が確認を求めようとしても、「おうい」と言っても丸ビルの頂上に物を言うようなことで、どうして確認がとれるものでしょうか。それからまた、一番かわいそうなのは、いわゆる刺し網を敷設をして、三、四日して揚げに行きますと、それがずたずたに切られているという漁業者は、これは損害がソ連船であるという実証をすることは全く不可能でございます。したがいまして、この種の問題というものは、いかに書類が完備されておりましても、それは台風でやられたのではないだろうか、あるいは韓国船が切ったのではないか、あるいは日本のほかの船で切られたのではないだろうかという反問に対して、一々、いやそれはあなたのところの船でありますということの論争をするのはまことにむずかしゅうございまして、そういう種類のものが非常に膨大でございます。  したがいまして、私どもは漁業者から請求された、いわゆる請求権のあるものにつきましては、途中で放棄しないで、最後まで、その委員会における交渉がいかにむずかしかろうとも、これは月日をかけてもやらなければならぬと思いますが、私は結果にそう大きな期待はできないと考えておる次第でございます。したがいまして、私どもは、いままで受けてきた関係の漁民の救済の対策につきましては、請求処理委員会の活動は続けながら、これは最後までがんばりますけれども、泣き寝入りをしている漁業者のためには、今度の二百海里の法案ができるのを機会に、何らかの救済の手を差し伸べていただきたいということを、非常にお訴え申し上げたい次第でございます。  今後は、二百海里で少なくともわが国政府が管轄権を持つわけでございますから、ソ連の船といえども、日本政府の許可をもって操業するというふうに、全く地位が逆転をするわけでございますから、十二海里の設定、それから操業秩序の維持、さらに管轄権の行使によって、いろいろな不当なトラブルが仮に起きましても、それが実証可能なところまでできるというような状態に、二百海里法案の成立によって、状態が変わるわけでございますので、この点につきましては、被害漁業者の救済のことにつきまして、あえてお願いを申し上げる次第でございます。  二百海里法案の問題につきましては、先ほども大水の高橋参考人からも申されましたとおり、私はこの二百海里法案ができていよいよ日ソの交渉というものが対等の立場に立って行われるという事態でございますから、一刻も早くこの法案を十二海里法案と一緒に通していただくということが大前提でございますが、先ほども申し上げましたとおり、このわが国漁業構造というものはいろろと複雑の面を持っておりまして、これを急角度にストレートに実施しようといたしましても、先ほどの韓国船の例に漏れなく、道東の沖で韓国船を追い出すということになりますれば、直ちに西の方の線引き問題に火がつく、そういうことになりますると、また西の漁業関係者にとりましては、まことに予期せざる大混乱が起こるという事態も想定をされますので、この点につきましては、いわゆる運営、実施という面からは、きわめて緩やかに、そして弾力を持って、逐次運用を図っていくという現在の政府の二百海里法案というものは、その点できわめて妥当なものではないか、かように考えておる次第でございます。  以上、数点にわたりまして意見を申し上げまして、私の御要望にかえさせていただく次第でございます。  ありがとうございました。(拍手
  10. 金子岩三

    金子委員長 ありがとうございました。  次に、徳島参考人にお願いいたします。
  11. 徳島喜太郎

    徳島参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました日本遠洋底曳網漁業協会会長の徳島でございます。  本日、領海法案並びに二百海里漁業水域に関する暫定措置法案の審議に当たりまして、東シナ海で操業をしております以西底びき網漁業者を代表いたしまして、意見を述べさせていただきたいと思います。  私たち操業する海域は東シナ海でございまして、この漁場は中国大陸から東に広がっておりまする広大な大陸だなでございます。しかも、揚子江、それから黄河、こういうところから魚族の発育に適した栄養分を吐き出される海域でございまして、非常に豊富な底魚資源を形成しているところでございます。  この以西底びき網漁業のもとになっておりまするトロール船による操業は、明治末期から始まっておるわけでございます。私は福岡市でこの漁業を営んでおる一人でございますが、現在この底びきの根拠地は、下関、戸畑、福岡、長崎、佐世保の五カ所を根拠地としております。船の数は五百五隻、総トン数で六万九千トンでございます。各漁業根拠地からシナ海に出漁をいたしまして、平均四十五日くらいの航海でありますが、この間、漁獲物を適時、洋上で転載をいたしまして、鮮度保持のために漁獲してから十日以内に市場に送る、こういうふうな操業をやっております。年間の漁獲高は二十二万トンでありまして、そのうち惣菜物が七〇%、かまぼこの原料でございますつぶし物が三〇%でございます。特にこの海域の魚は質がいいということで関東以西の人たちの嗜好に向いておるわけでございます。売り上げも七百五十億に達する状況でございます。この漁業に従事する乗組員が大体七千名でございます。  先刻申し上げましたように、この漁業は明治の末期から営まれておったのでございますが、第二次世界大戦が終了した時点におきましては、御承知のとおりわが国におきましては、極度の食糧不足、特に動物性たん白質の不足に悩まされたことは御承知のとおりでございます。その当時は北洋や南氷洋の出漁というのは禁止されておりましたので、当時政府は、計画生産の可能な東シナ海の魚の増産ということに重点を置きまして、その時点で一千隻の漁船を急遽建造いたしまして、大増産を行ったわけでございます。そういうことで、いささかでも国民の栄養補給に尽くしたということを、心から誇りとしておるものでございます。  しかしながら、この東シナ海というのは決して平穏な海でなかったのでございます。たとえば、台湾の艦船による不法拿捕事件というのが昭和二十三年の五月から二十九年の十一月まで続いたわけでございます。続きまして、朝鮮動乱の始まりました昭和二十五年の十二月から、中国艦船による日本漁船の銃撃拿捕事件が続いております。さらに昭和二十七年には、韓国が李承晩ラインというものを設定いたしました。これはまさに二百海里時代を先取りしたような線引きをしたわけでございますが、その海域に入りますと、警備艇によって銃撃並びに漁船の拿捕をする、こういうことが続いたのでございます。以上を集計いたしますと、拿捕された漁船は計五百六十六隻、抑留された乗組員が六千八百三十五人に達しております。その中で、銃撃によって死亡した者を含めますと、七十二名の死亡者を出しておるわけでございます。  以上のように、この漁場は、大体昭和四十年に至るまで非常にいい漁場ではございましたけれども、国際的に無秩序な、そして暴力の横行した海域と言っても差し支えないのでございます。私たちは、何とかして平和のうちに操業ができるようにということで、国会及び政府にお願いをいたしまして、日韓会談の合意の成立を願ったのでございますが、昭和二十八年に第一回の会談が行われましたけれども、遅々として進まず、昭和四十年の六月に至って、やっと日韓漁業協定が調印になったような次第でございます。  一方、中国との間には、長い間国交が回復をしなかったので、私たちは、安全操業を確保するには両国漁民同士の友好を基礎として、円満な話し合いをするしか方法がないわけでございます。昭和二十九年の十二月に、底びき、まき網、沿岸漁業を含めまして日中漁業協議会を結成し、そして中国漁業協会と百日にわたる民間交渉を重ねました結果、昭和三十年の四月に至りまして、第一次日中民間漁業協定ができ上がったわけでございます。しかし、二年後の昭和三十三年には長崎の国旗事件が起こりまして、この協定も二年で終わったわけでございます。その後、五年間にわたりましてしんぼう強い努力と交渉を続けまして、やっと昭和三十八年の十一月に第二次の日中民間漁業協定が成立をしたわけでございます。  私たちは、第一次協定ができて以来、二十数年にわたりまして、この民間協定を民間の力で永続させ、守っていこうということで、両国の友好の増進、技術交流、そういうことのために、毎年のごとく中国に友好訪中団を派遣いたしまして、これの維持、存続を図ってまいったわけでございます。また、中国の漁業者の代表を日本にお招きをいたしまして、相互理解を深めながら、今日までこの漁場を守ってまいったわけでございます。幸いにして国交が回復し、昭和五十年の十二月に政府間の協定に移管されるということの経過をたどっているような次第でございます。  また、底魚資源というのは、乱獲すれば資源が衰滅するということは過去の例の示すとおりでございまして、私たちは、この祖先の血と汗で開拓いたしました漁場を守るために、資源保護には特に留意をいたしまして、昭和四十七年には、われわれの保有しておりまする隻数の一五%に当たる百七隻を自主的に減船をして、資源を保護し、そして政府からは利子補給の融資を受けて、経営の安定を図ってまいった次第でございます。  こういった西の底びきの実情につきましては、いままでの説明で十分おわかりいただいたと思うのでございますが、もしこの海域に二百海里の漁業水域を宣言して線引きを行う場合に、われわれの漁場の主たる海域は、中国並びに韓国沿いでございますので、非常に大きな影響を受けるわけでございまして、その線引きがされるということになりますと、日本側海域でとれるものは、二十二万トンのうちの三〇%程度に低落するわけでございます。  海洋法の動きはまだ結論を得ておりませんけれども、昨年の七月にアメリカが漁業管理保存法を制定したときに政府が出された見解といたしまして、二百海里漁業水域の問題は、海洋法会議の決定を見て判断するという態度を表明されておりましたが、これは国際法による秩序維持の尊重という観点から敬意を表しておったわけでございます。また、漁業者国際情勢の急変する中で、大日本水産会中心といたしまして対策を協議いたしました結果、昨年十二月二十七日に意見を集約して、わが国の二百海里漁業水域の設定は、わが国全般の利益となるよう慎重に対処すべきであるという結論に達して、同日農林大臣並びに水産庁長官に陳情を行ったわけでございます。この内容でおわかりのように、日中関係並びに日韓関係の微妙な情勢を考慮して決定された意見と考えるわけでございます。  したがいまして、私たち西日本漁業者といたしましては、二百海里漁業水域に関する暫定措置法の制定について、筋論から申し上げますと、時期尚早ではないかと考えるわけでございます。しかしながら、私たち、お互いに漁業者でありますし、日ソ交渉におきまするソ連の厳しい態度に対抗して、毅然として北洋漁業の漁獲実績を確保するためには、全党一致でもあり、またこれは同時に国民的合意を得られたものでありますので、この政治的な判断に立ってこの法律を急いで制定するということにつきましては、十分の了承をしておるつもりでございます。  そして、政府の説明によりますと、この法の施行に当たりまして、具体的線引きは政令で定めることにしておりまするけれども、相互主義の見地から、中国、韓国との間の海域では、両国が二百海里を実施しない限りわが国線引きはしない。また、外交ルートを通じて中国、韓国に対しては、法制定に至った日本の真意を説明し、両国との摩擦、刺激を生じないように事前に十分努力を尽くしたという説明を受けておるわけでございます。  しかし、私たちが心配をしておりますのは、この法の施行によりまして、西日本海域において、眠っている子供を揺り起こすような結果になりはしないか、相手国にこの日本線引きが連鎖反応を起こすおそれがありはしないかということでございます。対ソ交渉の武器として出される本法でございますが、これによって、ソ連からは十分の成果を得られない、さらにその上に西日本漁場におきまして中国、韓国の線引きということになれば、失われる国益というのは非常に大きなものではないかということを漁業者の一人として憂慮しているわけでございます。  本日の新聞を拝見いたしますと、昨日の本委員会において民社党の神田先生が、わが国二百海里の漁業水域適用から除外される西日本海域ソ連漁船が大挙して押し寄せる懸念がある、こう御指摘をされております。また農林大臣は、仮にそのような事態が起こったときは、中国や韓国と連絡をとって即座に対応する、こういうふうに述べておられます。  さらに、農林大臣の御指摘のとおり、西日本海域は現在、日中、日韓漁業協定で安定した漁業秩序が保たれておるわけでございますが、ソ連船の当海域に進出するようなことがありますれば、やはりこれは安定の基盤は崩れるおそれは十分にあると考えるわけでございます。特に韓国は、先ほど申し上げましたように、昭和二十七年に二百海里法を先取りしたような李ラインを設定した先例のある国でございまして、また、日本措置に対する対応も厳しいものがあるというふうに承っておるわけでございます。  そういうふうなことになれば、先ほど釧路市長さんから御発言のありましたとおり、中小企業を主体とする西日本漁業界におきましては、やはりこの業界の再編成とか、あるいは減船であるとか、乗組員失業問題、それから関連業界の大変な打撃、こういう大きな社会問題を起こすおそれが十分予見されるわけでございます。  私たちは、以上のような観点を十分御理解をいただいて、そしてひとつ、もしこういう事態が発生した場合には、西日本漁業界のために、関連を含めまして、十分な救済措置を講じていただきたいということでございます。  私は、そういう見地から、十二海里の領海拡大することにつきましては、沿岸漁業者保護の立場から賛成でございます。また、二百海里の漁業水域暫定措置法案につきましても、先ほどの理解を前提といたしまして賛成を申し上げる次第でございます。  以上をもちまして、発言を終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手
  12. 金子岩三

    金子委員長 ありがとうございました。  次に、北濱参考人にお願いいたします。
  13. 北濱時夫

    北濱参考人 私は、全国漁船労働組合同盟の北濱でございます。本日の公聴会の参考人として意見を申し述べる機会を与えていただきましたことに対しまして、感謝申し上げる次第でございます。  まず、領海法案に対しまして、参考人として意見を申し述べさしていただきます。  御承知のように、世界における今日の現状を見ますと、百二十四カ国のうち、領海十二海里国はまさに五十九カ国に達しておるわけであります。また、領海十二海里以上を実施している国は八十五カ国にも及んでいるわけでありまして、国際的に大勢を占めている現状にありますことは、ことさら強調する必要はないかと思われます。  また、第三次国連海洋法会議動向は、単一交渉草案の中にも明記されておりますように、領海の幅は十二海里に、国際海峡は妨害されざる通過通航権という新制度が提案をされまして、合意に達しようとしているわけであります。言うまでもないことでありますが、自由通航という概念に立っておりますことは、御承知のとおりだと思います。  一方、わが国の状態でございますが、領海三海里のために、昭和三十年代当初からソ連漁船が北海道沿岸にやってまいりまして、サンマの漁獲の操業に入ったわけでありますが、これが昭和四十三年ごろから船団編成を行い、本格的な操搭乗り出してまいりまして、特にサンマの解禁時期をめぐりまして、北海道と東北の漁業者意見対立がありまして、その調整水産庁は苦慮した一時期があったことを私は記憶いたしておるわけであります。なお、昭和四十五年には、ソ連漁船団も大規模になってまいりまして、沿岸沖合い漁業被害が続出してまいりまして、わが国沿岸沖合い漁民から不満の声が強まってまいったわけであります。領海拡大への声がその当時から強く出てまいりまして、政府に検討を迫ってきたわけでありますが、残念ながら十分な対策検討が行われぬまま今日に至ったわけであります。  参考までに、昭和四十五年当時の領海十二海里国はすでに四十カ国となっていたことでありまして、当時でも世界の大勢となっていたわけであります。海洋への認識の浅さもさることながら、三十年代当初の沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋への国策がしからしめる状況下にあったと言わねばならないと思います。  私は、漁業労働者の立場から率直に言わしていただきますならば、領海拡大は遅きに失した感があると思います。明治政府以来、海洋国家を自負をしてきたわけでございます。そのわが国が、海洋政策を持たぬまま今日に推移してきたことであります。結果として、国際社会が海洋に重大な関心を向けてきていたことを見過ごすことになったのではないかと思われてならないわけであります。沿岸・沖合いに働く漁業労働者は、毎年毎日のごとくソ連漁船団の脅威にさらされながら、操業中断や危険な状態の中での生産活動に従事してきたわけでありますから、人一倍憤りを感じているわけであります。  また反面、海洋自由の原則のもとに諸外国水域で働く漁業労働者の立場を考えますと、父祖伝来から大きな犠牲を払いながら開拓してきました漁場の実績確保もまた大事であります。わが国は世界でただ一つの被爆国でありますから、このことに対する十分な配慮がなされねばなりません。なおまた、わが国の商船、漁船が諸国における国際海峡の数多くを通航しておることに対する配慮も十分に考えねばなりませんことは言うまでもないことでございます。  以上の観点に立ちまして、結論を申し上げてみたいと思うのであります。  一つは、領海十二海里に拡大することは急を要することでありまして、一日も早い領海法の成立をお願いしたいと存じます。  二つは、ソ連との漁業交渉においては、まさに日ソ共通な論議ができる同等な立場をつくる足場固めを図ることが重要だと思われます。  三つは、第三次国連海洋法会議での国際合意が成立するまでは、国際海峡通航に関する新しい概念の先取りに対しましてはわが国としまして慎重な配慮が必要だと思います。四つは、国際合意ができるまでは現在の自由通航が保障される措置が望ましいと存じます。五つは、わが国国際海峡での外国漁船操業を禁止する措置を講じていただかねばならないことであります。六つは、わが国の国是としての非核三原則が空洞化されないような慎重な配慮が望まれるということでございます。  以上、領海法案に対する私の意見を申し述べたわけであります。  次に、昨日国会に提出をされたと聞いております二百海里漁業水域法案につきまして意見を申し述べさせていただきます。  先ほども申し述べましたように、二百海里漁業専管水域の実施もまた今日では一方的宣言が相次ぎまして、まさに漁業新時代の到来と言わなければならない世界の大勢であるわけであります。カラカス会議以来アメラシンゲ議長が一番心配をされておりましたように、海洋分割は国際合意の中でのスムーズな設定、合意を念願にいたしてきたところでありますが、超大国のアメリカが二百海里を制定したことによりまして、まさに二百海里戦国時代に突入しましたことはまことに残念なことだと言わなければならないと思います。そのことが、わが国同様遠洋漁業国であるソ連をしてついに二百海里宣言から、ゆとりのない時期に実施通告となってきたことであります。  今日、わが国との相互入り会い方式に立っているソ連との漁業交渉は、かつてない二百海里内からの撤退という最大の国難に直面していると思います。政府の責任はまさに重大であると言わなければなりません。この国難の打開を図るためには、対等の立場条件設定が急務でありますことはひとしく認められるところであろうと思います。私たち漁業労働者の先達が海洋自由の原則にのっとりまして、パイオニア精神のもとに、長年にわたって大自然の猛威と闘いながら多大なる人命の犠牲を払って受け継がれてきたのが、現状の、今日の漁場開拓のなされてきたところでございます。したがって、伝統的な漁業実績を強く叫ぶのは当然の権利であります。漁業労働者の一生の生活の場でもあるわけであります。加えて、動物性たん白の半分以上を供給している魚の占める位置は、食料産業としても重要であると思います。膨大な数に上る漁業労働者とその家族の生活を守るためには、何としましても漁場確保が絶対要件であります。まして漁業労働者の技術水準は、世界の中で最高の水準であるということであります。よって、国を挙げて強力な、水産外交に全力で投球してもらわねばならないところでございます。  以上申し上げました観点に立ちまして結論を申し述べたいと思います。  二百海里漁業水域法の制定は、まさに急務でありますので、国会における一刻も早い成立をお願いいたしておきたいと思います。さらに、二百海里水域法の設定、実施に合わせ、特に対処を迫られている点を幾つか申し上げてみたいと思います。  一つは、北海道周辺水域におきますところの韓国漁船操業が今日問題化をされていることでございます。この現状打開については、政府としましては速やかに韓国に対し最善の措置を講じ、無謀なる操業の自粛をさせるということでございます。二つは、韓国、中国はいずれ二百海里実施に踏み切ると見られます。しかし、当面は両国との漁業協定遵守の立場を貫く十分な配慮がなされねばならないと思います。三つは、日ソ漁業交渉再開に当たっての決意でありますが、政府は全力を挙げて漁業労働者の生活と職場を守るための実績確保を図っていただきます。そして、出漁が一日も早く再開できますことをこの国会に強く訴えたいと思います。四つ目、最後でありますけれども、大洋州諸国やECなどの諸国はすでに二百海里宣言へ動き出している現状でございます。今後早い機会に、政府間ベースによるなどの水産外交を展開することが急務であると考えられますので、これに対する対応をいまから十分腹をくくっておいていただきたいということをここに強く要請をいたしまして、私の簡潔な御意見といたしたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  14. 金子岩三

    金子委員長 どうもありがとうございました。  以上で、参考人意見の開陳は終わりました。  この際、午後零時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時四十八分休憩      ————◇—————     午後零時三十四分開議
  15. 金子岩三

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  各参考人に対し質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。
  16. 片岡清一

    ○片岡委員 参考人各位には、午前中大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、われわれは法案審議のために大いに益するところがあったことを、心から厚くお礼を申し上げる次第であります。  そこで、お述べになりましたことに対して、二、三の問題について御意見をさらに承りたいと思う次第でございますので、よろしくお願いいたします。  最初に、釧路市長さんの山口参考人にお尋ね申し上げたいのでございますが、市長さんは、いま日ソ漁業の大きな犠牲の中心地の行政に携わっておられます方として、大変いろいろ御苦心をなさっておられます点に、衷心から御同情と申しますか、敬意を表するものでございますが、いままでは領海三海里でございましたからよかったんですが、今度は十二海里になり、さらに二百海里の問題が出てまいりますと、北方四島に近い市長さんのところといたしましては、これからの漁業のやり方というものは大変むずかしくなってくると存じます。先ほど参考人からお話のございましたのは、それらの地域は共同規制水域として、何かお互いに平安に操業ができるようにしてもらいたいという御意見でございました。私がお伺いしたいのは、今度十二海里あるいは二百海里の問題が起こりますと、これは完全にオーバーラップするわけでございます。そういう水域においてどういうふうに——共同規制水域ということが完全に了解ができればいいんですが、それの問題を想定する前に、いままでそれに近いような問題がございましたかどうか、実際どういうふうに漁船操業をしておったのか。いわゆる日本の固有の領土というところで操業をしておったと思うのですが、それが何か聞きますと、コンブ等については民間協定ができておるのだということでありますが、国後、択捉の島の近海における漁業といったようなものが実際どういうふうに行われ、そしてその結果あるいは拿捕されたとか、いろいろな問題が起こったと思いますが、その実情をお聞かせいただきたいと思います。(「根室と違うから知らないだろう」と呼ぶ者あり)何か近いから実情を御存じかと思ったのですが、それでは無理でございますか。共同規制水域のお話がございましたので、それに関連してと思ったのでありますが、そういたしますと、その問題は漁業協同組合の池尻参考人ですか、いままで実際どういうふうになっておったか、どなたか御存じの方、おいでになりませんでしょうか。——おいでになりませんければ、それではよろしゅうございます。  それでは次に、山本参考人にお伺いいたしたいのでございますが、先生は今度の政府案、これはまだ海洋法会議で結論が出ていない、またしかも、国際海峡の問題等について動向がはっきりしない、結論が出ておらぬのだから、それに対して余り先取りをしていろいろな工作をしないで、かえって現状を凍結してやったことには賛成だ、大変賢明な措置であるという御意見をお述べになったのでございますが、私もやはりそうだと存ずるのでございます。ただ一部には、せっかく領海十二海里を宣言しながら、何か自分の主権をみずから制限したようなかっこうになることは、これは国の大事な主権の問題であるから、それは困るんじゃないかという御意見があるのです。先生は先ほど、領海についてはこれは一般的な理由によるものと、あるいは海洋の自由航行という利益尊重する立場と両方あるのだ。一般的な理由というのは、私はやはり領海という一つの領土の拡張といいますか、主権の拡張という意味からの問題があるのだというふうにお伺いするわけですが、そういう立場から言いますと、今後のやり方について先生はどういうふうにお考えになっておるか、それについてちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
  17. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  今回の領海法案の成立によりまして、新しく領海が一応一般的には十二海里になりました場合には、その普通の一般領海十二海里につきましては申すまでもなく無害通航という考え方が全面的に適用されるわけでございまして、この無害通航、先ほどちょっと申し上げましたが、海洋法会議の傾向としては少しずつ船種別で物を考えようという傾向が無害通航の中には入ってきておるわけでございます。ただこれは一般領海の問題でございまして、そういう一般領海についてそういう沿岸国の主権あるいは安全というものが確保されれば一応それで十分ではないか。ところが、国際海峡扱いにつきましては、御承知の一九五八年のさきの領海条約の場合には、格別国際海峡というような概念で通航の性質を区別するというようなことをいたしませんで、これも普通の領海と同じように無害通航を保障せよということをしていただけでございます。  ところが、御高承のとおり、今般の海洋法会議におきましては、通常の領海国際海峡というものをはっきりと概念の上で分けていこう。そしてこの国際海峡につきましては従来とにかく公海としてそれぞれの国がいわば既得権を持っていたんだ。それが今度領海が十二海里に広がることによって、従来の公海として扱われてきた部分が全くなくなってしまう、あるいは非常に狭くなってしまう。そこで、各国いろんな権益を失うわけでございますけれども、その中でせめて自由航行航行の自由ということだけは確保しても、これは沿岸国の安全とか平和とかという点から見て格別の差しさわりはないんじゃないか。そういう前提で通常領海国際海峡というものを分けるのが今般の海洋法会議一つの大きな流れになっておるわけでございます。  そういうことを前提といたしまして午前中のような御説明を申し上げたわけでございまして、いわゆる無害通航というものは普通の今回の新領海については全面的に適用がある。ただ、非常に限られたいわゆる特定水域国際海峡というものに該当する区間についてだけ海洋法会議でも分けようという傾向に来ておりますので、その分け方がどういう形で決着を見るか。決着を見るまでは先取りをしたりあるいは既存の制度をそこにそのまま当てはめるということでは、海洋法会議の決着の仕方次第においてはそこで二重の手直しをしなければならなくなるのではなかろうか。そういう意味で、とりあえず現状を凍結するということによって、外国の権益も害しないし、またわが国の安全とか平和というものもその限りにおいては害されることがないのではなかろうか、そういう観点から御説明を申し上げたわけでございます。
  18. 金子岩三

    金子委員長 それではこの際、先ほどの片岡君の御質問に山口釧路市長がお答えしたいそうです。
  19. 山口哲夫

    山口参考人 大変失礼いたしました。  釧路船籍の船はほとんどその付近では操業いたしておりませんで、根室の漁船操業いたしておるのが大多数だと思います。  それで三つほどありまして、一つはコンブの操業でありますけれども、これは民間協定に基づいて操業をいたしております。それからもう一つは択捉と色丹の関係でございますけれども、日本といたしましてはソ連側の十二海里を認めまして、いわゆるその外側日本漁船操業せざるを得ない、こういう実態でございますから択捉、色丹については入っておりません。そして三つ目には、特に国後地域につきましては、十二海里を引いてまいりますと日本の領土の中に入ってしまう、そのくらい狭いところでございます。したがいまして、ここにつきましては三海里まで入るような形で操業をいたしております。これは特別の協定とかそういうものではなくして、実態としてそういうものがございます。
  20. 片岡清一

    ○片岡委員 ただいまの山本参考人のおっしゃられること、私はまことによくわかるのですが、私の伺いましたのは、先生は、せっかく十二海里にしたのだから十二海里がいいんだということを強調される考え方に対して、それよりもやはり海洋の自由通航というものが重要なんだから、その点から言うと、いまのやり方がいいんだというふうに、そこにポイントを置いて考えておられるかどうかですね。その点をちょっとお伺いしたいわけでございます。
  21. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  領海経済水域とか漁業水域とはもちろん性質が違うわけでございまして、一般的な制度でございます。したがいまして、その中には沿岸漁業の保護といったような考慮が入るのは当然でございますけれども、それといわば相並んでその他の、国としての権益あるいは外国に対する権益というものを保護しなければならないわけでございます。そういう観点から、沿岸漁業利益を保護するという配慮と同時に、やはり国際的に制限を受ける範囲内においては航行利益の保障ということも無視できないんだ。その航行利益の保障というものが、不当に広い範囲で主張されまして、沿岸国の主権とか、権益を害するということであるならば格別でございますけれども、今般のように限られた特定海域、いわゆる国際海峡に該当し得るものというものに限って多少漁業利益というものを制限しても航行利益尊重するということはいたし方のないことではなかろうか。その点は、経済水域とか漁業水域といったような場合とは性格が違うのではなかろうか、そういう趣旨でございます。
  22. 片岡清一

    ○片岡委員 それに関連いたしまして、通航の態様、どういうふうに通航するかという方法の問題、これがいま海洋法会議で論議せられておるのでございます。この方向は、何か新しい通過航行という考え方が出ておるらしいのですが、まだこれは、たとえば原子力船等の場合に、これは通過するだけだから領土に入るんじゃないんだというような考え方が出てくるものか出てこないのか、先生のお見込みはどうでございますか。
  23. 山本草二

    山本参考人 無害通航につきましては、先ほども申し上げましたように、これは船の通航の仕方、態様で無害かどうかを決めていくというのが伝統であったわけでございます。これは国際司法裁判所の判決でも明確に確認されておりまして、たとえば単純に、軍艦が兵器を搭載しているということだけでは無害通航を禁止するわけにはいかないんだ。現実に砲門を開いているとかあるいはすぐにも発砲できるという状態になければ無害通航を禁止するというわけにはいかないんだという趣旨のことを言っているわけでございまして、従来そういうことで、船のそのときどきの具体的な通航の仕方に即して無害かどうかということを認定してきたわけでございます。  今般の海洋法会議におきましては、その点多少、原子力船等に関しましては、無害通航につきまして船種別という考え方が出てきておりまして、いまの段階ではそうでございます。ところが、国際海峡につきましては、先ほど来申し上げましたように、普通の領海とは性質が違うんだということで海洋法会議が問題を進めているわけでございます。したがいまして、沿岸国汚染防止とかその他の配慮から何らかの規制をすることがあったとしても、その規制をするために船舶の通航それ自体無条件に禁止するというようなことはやはり許されない。これが第一点でございます。  それから第二には、その国際海峡を通過する船の種類によって——その船の具体的な通過の仕方ではございませんで、種類によって通すとか通さないとかあるいは規制を加えるとかいうような考え方に対しても、これはわが国はもちろんでございますが、海洋法会議でかなり多くの国が反対をしているわけでございます。  そういう意味で、私は、領海における無害通航というものと国際海峡における通航の自由というものとが、今般の海洋法会議においては概念としてはっきり分けられている、そういう前提に立ちますと、国際海峡におきましても、沿岸国が仮に何らかの規制をする必要があるということが認められたといたしましても、それはせいぜい個々の船が通るときの通り方についての規制ということにとどまるのであって、これこれの種類の艦船であるから、当然に自由通航が禁止されるというような考え方は、やはり今日の海洋法会議の動きから見ても相入れないというふうに考えるわけでございます。
  24. 片岡清一

    ○片岡委員 次に、高橋参考人にお伺い申し上げたいのですが、韓国からの大型漁船が近海に来ていろいろ操業をしてわが国漁業の妨害をしておるのでございます。先ほどの御説明で私最後に聞き漏らしたのですが、韓国方面からの紛争に対しても善処されることを希望するという御意見で、安易な輸入措置によって漁業者に迷惑のかからないようにしてほしいというようなことをおっしゃったのですが、これはどういう意味でございますか。
  25. 高橋泰彦

    高橋参考人 お答えいたします。  実はいま、今度の国際的ないろんな問題に伏在いたしまして、また魚が減るからやはり国民的な食糧を満たすために今後は減った分を輸入すべきである、こういう議論があるわけでございます。そのこと自身について私かれこれ申し上げるわけではございませんけれども、ただ、失われた漁場と申しますか、入って魚をとってはいけないというのに、たとえばその場所でとれた魚をおまえは輸入せよ、おまえは何も日本の船でとる必要はないので、おれの国でとってやるからおまえは輸入しろ、こういうような言い方をされては漁業者は大変困る、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  26. 片岡清一

    ○片岡委員 もう時間がないようですから、最後にもう一つ、今度は徳島参考人にお聞きいたしたいのでございますが、今度の二百海里の漁業水域の問題についてやはり一番御関心の深いのは西側の漁場を持っておられる方々で、すなわち中国ないし韓国との関係の方にとっては大変微妙な問題が起こってくるので、大所高所から賛成するが実はその点を心配しているのだということをおっしゃっておられます。  その点はわれわれもよく理解できるわけでございますが、これについて今後いろいろな問題が起きたときには政府は直ちにこれに即応するように政令でもって措置をする、こういうことでございます。ことに北鮮はいま日本と国交関係がないわけですが、朝鮮民主主義人民共和国との問題でイカ釣りの問題等があるようでございます。これらの問題について特に何かお困りになることがありますか。これはどういうふうに措置をされることを希望されるのですか。ちょっとその点お伺いいたしたいと思います。
  27. 徳島喜太郎

    徳島参考人 お答えいたします。  北朝鮮の問題でございますが、私たちの一番心配しておるのは、日本の二百海里法が施行された場合に韓国がどう反応するかということでございます。日本に対して韓国が反応するようになりますと、三十八度線の線が引かれておりますので、南北両国お互いに隣接する水域という問題で、これは必ず波及するんじゃなかろうか、こういう心配をしております。いま西日本として北朝鮮側に関係のある漁業としては、日本海のイカ釣り、黄海におきまするフグのはえなわ船というふうな問題がありまして、この日本線引きが韓国、それに反応してまた北朝鮮ということになりますと、特に北朝鮮につきましては国交がないだけに、漁民は非常に困るのじゃないかというふうに受けとめております。
  28. 片岡清一

    ○片岡委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  29. 金子岩三

    金子委員長 竹内猛君。
  30. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まず、参考人の皆さんには大変お忙しいところを貴重な御意見ありがとうございます。  最初に釧路山口市長にお尋ねをいたしたいと思いますが、戦後の日ソの漁業交渉の中で本年ほど厳しいものはなかったと思います。その厳しい背景にある政治、経済的なものは何であったか、このことについてまずお伺いをいたしたいと思います。
  31. 山口哲夫

    山口参考人 私は、領土問題が今回の漁業交渉に非常に大きな影響を与えているのではないだろうか、まずかようにも思いますし、また、今日までの日ソ間におけるいろいろな政治的な問題につきましても、この漁業交渉に微妙な影響を与えてきているというふうに実ははだで感じているものでございます。
  32. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私もこの領土問題に問題があると思います。しかしながら、領土問題も漁業も一緒に解決するということは、長い間の歴史から非常に困難なことであろうと思われます。したがってそこで、領海法並びに引き続いて二百海里を決める漁業水域に関する法案早期実現を図らなければならない。そして、対等の立場でこれからいろいろと交渉に入るわけでありますが、そのときに問題になることは、領土の問題をめぐって、当然本来日本の固有の領土である北方四島、これに関してソ連も施政権が及んでおると言っておるし、日本においては固有の領土であるということから今日まで話し合いを続けてきておる。本委員会において鈴木農林大臣はしばしば一九七三年の田中・ブレジネフ会談によってなお戦後未解決の問題として領土問題があると言われております。そういう中でこれからの交渉の中で線引きをすると当然そこがダブることになる。わが日本社会党としては先般の中央委員会においても、この問題は共同規制水域として取り扱いをし、その漁獲については従来の実績というものを尊重しながら話し合いで決めていく、こういう方向で努力をしていこうということにしております。そのときに、これは世論の中でも言われておるし、御意見の中にもありましたように、北方の管理、警備、規制というような問題に関して、現在のような状態では不十分ではないかと思われるわけです。当然のこととしていま北海道には小樽に海上保安庁の第一管区があるわけでありますけれども、小樽では距離にしてもはなはだ遠いわけでありまして、もっともっとその近くにあることが必要だ。私はやはり中心地である釧路にそのようなものができて、そして北方におけるところのいま申し上げたようなことが行われることが望ましいと考えておりますけれども、その直面する市長としてはこの問題についてはどのようなお考えを持っておられるか、この点についてもお伺いします。
  33. 山口哲夫

    山口参考人 二百海里が設定されますと、これは当然両国の間でいろいろとトラブルが生じてくることも考えられるわけでございますけれども、特にいま御指摘がありましたように、私どもの釧路市には海上保安部がございますが、この一海上保安部が他の管区よりも非常に取り扱いの量が多い。しかも、外国船との関係の問題等についても非常にその取り扱い件数が多い。したがいまして、私どもは相当長い間にわたりまして、これは一海上保安部というよりも、いま御指摘がございましたように管区として昇格をしていただけないものだろうかというようにお願いも続けてまいったところでございます。さらに昨年私どもは地元といたしまして陳情の中に、こういう非常に広範囲な対象区域を持っておりますので、やはり航空機をぜひこの地元に設置をしていただきたい、こういうお願いもいたしてまいりました。幸い今後巡視船に航空機を搭載をするという、そういった予算化をしていただいたわけでありますけれども、まだ二年や三年はかかるのではないかと思います。二百海里の問題は直ちに参るわけでございますので、こういった保安整備体制というものもできるだけ早く確立していただければ幸いだというように考えております。
  34. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 なお山口市長の御意見の中にありました最後の点であります。  休業あるいは漁業ができないというような状態をつくっているのは国際的な諸情勢がもたらしむるものであって、地元の怠慢であるとかあるいは何かによって起きたものではないからして、当然それに基づいて生ずる被害等々に関しては国の責任においていろいろやってほしいという御意見には私も同感でありますし、またそうすべきだと思います。私たち日本社会党としては、先般の中央委員会並びに六党の党首会談においても、この問題については強く申し入れをしておるところでありますが、当面の間、この漁業交渉が中断をしている間におけるところの休業等々の問題、さらにこれから第三回の交渉が行われるわけでありますけれども、これもなかなか容易ならざる状態になるかもしれませんし、また二百海里の問題が確定をした場合においては当然のこととして船の取り扱いや魚のとり方についてもいろいろな規制を受けざるを得ないということはもう明らかでありますから、そういう点についての補償の問題等について、私たちは当面融資とかあるいは雇用保障とかさらに転職に対する費用とかいろいろなことについての要請はしておりますが、当面の問題としてこういうようなことをぜひしてほしいということ、なお恒久的な問題として考慮してほしいというような問題が自治体としてまとめてあるならばそれもぜひお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。
  35. 山口哲夫

    山口参考人 先ほども申し述べましたように、一つ休業に伴います漁業者あるいは加工業者、それに関連する各業界、こういったものに対します休業補償というものを政府の責任において早急に行っていただきたい、このことが一つでございます。  もう一つは、休業によりまして、今後も恐らく考えられると思いますけれども、相当の失業者が発生するという心配もございます。私どもは一自治体としてはこれらの失業者を十分に救済する、そういった力がなかなかございません。政府におかれましてはこれまで景気刺激策ということで相当の公共事業を起こされたこともございます。したがって私ども自治体側といたしましては、こういう国家的な問題によって生じた失業者に対しまして自治体として何らかの事業を起こした場合に、たとえば自治体が市民にサービスをするための事業として公園の清掃を行うとかあるいは道路清掃をやるとか、そのほかいろいろと市民に対するサービス事業を起こすことはできますけれども、御存じのとおり地方財政はきわめていま困窮の状態にございますので、政府として特別の補助枠を設けた事業とかあるいは地方特別交付税を行っていただくとか、そういう形をとっていただきまして、水産都市として何らかの形でこれらの失業者の救済事業を起こすことを考えてみたい、こう思うわけでございまして、ぜひそういう点の政府の特段の財政的な援助をお願いしたい、この二つでございます。
  36. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 続いて北濱参考人にお伺いをいたしたいと思います。  漁船の労働者としてやはり今度の問題は大変忍びがたい悩みがたくさんあろうと思いますが、まずこの当面の問題で先ほどもお話がありましたように、当面やはり月給が当たらない点もあるし、将来にわたってもいろいろ心配する点があると思いますが、このような失業状態になっているその状況に対してどのような要請をされるのか、この点についての労働者の立場からの御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  37. 北濱時夫

    北濱参考人 ただいまの御質問でございますが、現在出漁できないで港に待機をしている間の賃金の補償の問題でございます。この件につきましては、固定給制度がございまして、生産奨励金、固定給ほぼ三対七くらいの割合になっておるわけでありますが、この点については船主から完全に支給をさせるというようなことで、そしてできるだけ早く、一日も早く出漁させてもらうことが漁船船員の立場からいって望ましいわけでありますし、それから現状の漁場がいわば完全に確保されていくということ、これが失業という形につながらないわけでありますから、そういう意味において全力でこの日ソ漁業交渉の打開をひとつ図っていただきたいということで、具体的にこれがどういう結果になってくるかわかりませんけれども、その事態になったときには補償問題ということにつきましては、われわれとして政府なり各党にお願いをしなければならないような実態も当然あり得るということでございます。
  38. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 山本参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  領海法あるいはまた漁業水域の暫定措置法、いずれも国連の海洋法会議方向に向かって暫定的なものだと言っている。その国連海洋法会議は来月、五月の二十三日ごろから再開をされるような方向にあります。しかし過去にさかのぼって考えてみると、この海洋法会議においてにわかに好ましい結論が出るとは考えられていない。先生国際法の専門家といたしまして、この国連海洋法会議の見通しというものについてどのようなお考えをお持ちか、お伺いをいたしたいと思います。
  39. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  第一回の国連海洋法会議、一九五八年でございますが、そこでは御高承のとおり四つの条約を分けてつくったわけでございます。今回の第三次国連海洋法会議はそれを一個のまとめた条約にするという形で進んでいるわけでございます。したがいまして、各国の妥協の範囲というものが、たとえば領海なら領海条約の中でだけではございませんで、それが公海に飛んでみたり、汚染に飛んでみたりという、大変その妥協の幅が、範囲が広いために、なかなか単一条約が早期にまとまりますかどうかむずかしいわけでございまして、私も先生御指摘のとおり今度の五月は最後のチャンスだと思うのでございますが、そこで一本の条約ができるという見通しはかなりむずかしいのではないか。そういたしますと、これは考えられる限りで恐らく最後のチャンスだということになりますと、相当近い将来におきまして一本の新しい海洋法条約をつくるという動きを再開することは不可能ではないか。  そこで考えられますのは、この海洋法条約の中身、たくさんあるわけでございますが、そのそれぞれの部分について国内法で先取りする国も出てくる国もございましょうし、海洋法条約に盛り込まれた中のある要素を引き抜いて地域的にあるいは二国間で個々の条約をつくっていく、そういうものがいわば分裂した形で新しい海洋秩序をつくっていくということも懸念されるわけでございまして、先生御指摘のとおりただいまの状況では五月に決着を見る、あるいは五月にそれが瓦解しないで次の会期につないでいけるかどうかという点は私もかなり悲観的でございます。
  40. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次いで、領海十二海里を決定して、なおその中で従来どおり五つの特別海峡というものをつくっていく、こういうことが領海法の附則にあるわけでありますが、本委員会でもこの点が大変問題になっております。国際的に見て領海十二海里にした国がすでにたくさんあるけれども、その国の中で三海里というようなもの、あるいは三海里でなくても結構ですけれども、そういう日本のような特別海域というものをつくった国がございますでしょうか。
  41. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  最近におきまして、少なくとも国連海洋法会議が開催された後におきまして、十二海里に踏み切った中で先生御指摘のような例をとった国は一つもございません。
  42. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 一九五八年四月二十九日、ジュネーブにおいて領海及び接続水域に関する条約というのが結ばれております。この第三章十四条以下に無害通航権の問題がございます。私の知る範囲内では、条約の方が法律よりも優先をするものだと考えておりまして、したがって、法律的に見れば、海洋法会議の見通しはなかなか困難であって、これは暫定である。しかも国際的な考え方からすれば、条約の方が優先し法律は国内的なものでありますから、それに従っていかなければならないということになると、十二海里を決定をして三海里にそれを縮小していくということの意義というものが何としても理解ができないが、この辺の説明をどのようにしたら理解をされるようになるか、この点を最後にお尋ねしたいと思います。
  43. 山本草二

    山本参考人 先ほどもお答えを申し上げましたとおり、第三次海洋法会議開催以後、今回の日本領海法案のような態度をとる先例等を見る国は一つもございません。きょう午前中に冒頭に申し上げましたとおり大変困難な、特異な時期にわが国領海法の制定をせざるを得ない、その意味では大変特異な、ほかの国には先例を見出すことのできない処理をせざるを得ないのではないか、まずそれが前提かと思うわけでございます。  そこで、先生御指摘の一九五八年の領海条約の第三章で言っておりますような意味での領海制度というものが、そのままの形で今回の新しいわが国の十二海里に全面的に適用されるかどうかということが先生の御質問に対するお答えの判断の分かれ目かというふうに考えるわけでございます。  その点、私は午前中から先ほど来お答え申し上げましたとおり、いまの時点におきましては、海洋法一つの流れとして必ずしも五八年の領海制度そのままがこの新しい領海に全面的に適用があるというふうに見ることはむずかしいのじゃないか。そういう意味では、名前は同じでございますけれども、新しく領海十二海里を設定するという場合に、国際海峡というものの特別の地位を全く無視して従来どおりの領海制度をここに拡張するということは、国際的にもやはりむずかしいのではなかろうか、そういう気持ちでございます。
  44. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 貴重な御意見、どうもありがとうございました。
  45. 金子岩三

    金子委員長 島田琢郎君。
  46. 島田琢郎

    ○島田委員 参考人の皆さんには朝来貴重な御意見をお聞かせいただきまして、大変ありがとうございました。御意見に基づきまして若干のお尋ねをしてまいりたいと思います。発言順に、まず山口参考人にお尋ねをいたします。  日本一の水揚げ港として釧路市の当面の日ソ漁業あるいはまた新しい海洋法時代を迎えての悩みは深い、こういう御開陳がございまして、私もまさに同情を禁じ得ないわけであります。大変な御苦労をされているという実態をお聞きいたしましたが、私ども政治の場にある者は、やはり日本の新しい漁業方向というものを的確にしっかりと方向づけをしていく責任があるわけでございます。そうした意味で、特に市長という立場で、しかも日本一の漁港を持っておる立場から、日本漁業政策といいますか水産政策について具体的に当面何を求めようとお考えになっているのか、お考えの中にありますれば披瀝をいただきたいと思います。
  47. 山口哲夫

    山口参考人 国の漁業政策に対する考え方でありますけれども、何と申しましても二百海里の設定によりまして相当の漁獲量の減少はもう避けられない時代が来るのではないかと思います。そういう中で私どもいままで政府にお願いしてまいりましたことは、第一に沿岸漁業を何とか振興さしていただきたい、こういう考え方がございます。昭和五十一年から五十五年にかけまして政府沿岸漁場整備開発事業という五カ年計画で約二千億を予定した事業を起こされておりますけれども、しかし残念ながら、いまこの五カ年計画が七カ年計画に延長されております。しかも、私どもはこの二千億というお金がまだ大蔵省の方としても確定をしていないというふうに聞いておりまして、むしろ二百海里時代を迎えている今日でございますから、五カ年計画を逆に三カ年計画ぐらいに短縮をしてでも沿岸漁場整備を促進していただけないものだろうか、かように考えておることが一つでございます。  それからもう一つは、毎年ソビエトとの間にサケマス漁業交渉が行われておりますけれども、年々漁獲量が減少させられてきております。ソビエトとしても非常に締めつけが厳しくなってきておりますけれども、これらの問題について、今後もっとサケマスふ化事業を拡大することによりまして漁業交渉を有利にしていくことができるのではないだろうか、そういう意味で、各漁協等におきましてもサケマスふ化事業にずいぶん力を入れておりますが、できれば政府立場で、この漁業交渉を有利にするためにもサケマスふ化場の施設を拡大するとともに、研究員の増大を図っていただけないものだろうかというように考えております。  それから、三つ目でございますけれども、いま北海道といたしまして、未開発漁場の開発ということで昭和五十一年度から道が単独で天皇海山の開発の調査を進めております。私どもも水産都市として非常にありがたく思っているわけでありますけれども、なかなか一つの自治体でこれを行うということにはむずかしい点が出てくるのではないだろうかと思います。したがいまして、何とか天皇海山の開発調査につきましては、国の政策として積極的にお取り上げをいただければわれわれ水産都市の自治体としても非常にありがたいというように考えております。  最後に、今後漁獲量が減ってまいりますと、付加価値を高める、そういったことも手伝いまして、加工の研究というものを強化していただけないかと思っております。政府の方といたしましても、最近は多獲性魚、サバとかイワシですけれども、練り製品を開発するためにずいぶん研究していただいておりまして感謝いたしておりますが、今後たん白資源をさらにふやすというためにも、高度な利用を図るためにぜひ政府として加工部門に対する研究を強化していただきたいと思っております。お話に聞きますと、政府水産研究の加工部門は一カ所に集約するという方向に伺っておりますけれども、少なくとも釧路にも北水研が設置されるわけでございますので、現地におきまして加工研究を続けられるような対策を講じていただければ、自治体としてもお手伝いをさせていただく中でこの加工をさらに発展させていただけるのではないか、このような問題についてお願いをしたいと思います。
  48. 島田琢郎

    ○島田委員 次に、山本参考人にお尋ねをいたします。  ただいまも竹内委員から無害通航権の問題などにつきまして先生に対する質問があったわけでありますが、盛んに先生国際海峡ということをおっしゃるわけでありますが、私は国際海峡という定義、この点についてどうも不勉強で、定義的にはこうだというものがよく理解できないのでありますが、この際御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  49. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  かなり俗称としても従来使われてきたわけでございますが、ただ今回の国連海洋法会議の単一草案の中には一応定義めいたものを置いているわけでございます。それは国際航行にまず用いられる重要なルートだということが一つの要件でございます。それからもう一つは、公海公海、あるいは経済水域経済水域の一部をつなぐような国際航行にとって重要な海峡、そういうきわめて抽象的な規定の仕方をしているわけでございます。
  50. 島田琢郎

    ○島田委員 たとえば一日に何隻ここを通るとか、あるいはトン数にしてどれくらいとか、船の総量で国際的な海峡という位置づけをするといったようなものが私にはどうも理解ができないということでお尋ねをしたわけでございますが、その限りにおいて私どもの判断で、私などは持論にしておるのでありますが、海峡の中で国際海峡というふうに言われますと、私は大変抵抗を感じますのが北海道と本州を結びますあの津軽海峡なのであります。従来、津軽海峡などというのは日本列島の庭の一部ではないか。げたばきかはだしで私どもあそこを通って本州にやってき、北海道に帰っていく。本来あそこに国際的海峡という位置づけをするということについては疑問がある、私はこう言ってきました。幅員がどうあろうともあそこは領海だ。三海里、十二海里、二十海里といったようないろいろなことがありましょうが、私はこれを国際海峡という位置づけにするということにはむしろ不合理があって、日本列島の庭先の一部である。ですから、ここにやはり通航権がわが国の主権という立場で掌握されるのはそんなに不都合なことではないばかりか不合理ではない、こういうふうに考えているわけです。ですから五海峡全部の議論をいたしますと、いろいろ先生の御意見もございますようですから、私は特に限定して、津軽海峡なども先生の御判断でもこれは国際海峡として残す方がいいというお考えなんでしょうか、どうでしょうか。
  51. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、津軽海峡が日本の内側の庭みたいなものだ、北海道、青森と大変緊密な関係のある海域だ、実際には御指摘のとおりだと思います。ただ法律的に申し上げますと、従来三海里制度をとっておりましたころに、仮に日本が、たとえば歴史水域だということで津軽海峡全体がいわば日本領海である、あるいは内水であるというようなことを国際的に宣言をし、そして実際にそこを通航する外国船に対して沿岸国としてしかるべき規制というものを積み重ねてきた。そして関係の外国もそれを承認なり黙認してきた。そういういわば歴史的な実績がございまして、国際的には歴史的な水域であるということが確信を持って言えるということであれば、先生御指摘のように全くそのとおりであると思うのでございますが、事実は、三海里時代のことを振り返って見てまいりますと、私がただいま申し上げたような意味での規制も行わなかったし、またそれを歴史水域として外国も承認なり黙認なりしていなかったということはどうも残念ながら事実でございまして、そうなりますと、先生御指摘のような御主張も、まことに国民感情として当然と私も思うのでございますが、どうもその御趣旨も、国際的に主張し他国に対抗していけるというような根拠を持てないという意味で、はなはだ残念でございますけれども、御質問に対しては否定的にお答えせざるを得ない、そういう気持ちでございます。
  52. 島田琢郎

    ○島田委員 次に、池尻参考人にお尋ねをいたします。  先ほどあなたも損害賠償請求委員会のメンバーとして、漁業紛争の処理というのは大変むずかしい、こういうことを深刻に御披瀝でございました。私もこの点について、現地の漁民の間にも、せっかく日ソ漁業操業協定が結ばれて、あるいは日韓漁業協定が結ばれて国際的なルールが確立しているにもかかわらずなかなかその補償が進まない、これはいわゆる現場の検証というものがむずかしいというお話でございますが、そのためにも泣き寝入りを強いられているという人たちに対して早急に何らかの救済だけはしなくてはいけない。そういう意味で、現地から外国漁船被害救済基金制度の設置というような具体的な提案も私は受けているのでございますが、この点についてはいかがでございますか。
  53. 池尻文二

    池尻参考人 お答えをいたします。  日ソの漁業損害賠償請求委員会のことにつきましては、先ほどの陳述で述べたとおりでございます。被害の立証をこちらがやらなければならないということで、ほとんどの案件がシルエット論と申しますか、確実にソ連の何丸がいつどこでこのいかりを切ったということではなくて、たまたま監視船が何月何日の何時ごろソ連船団をこういうある水域で確認をしている。要するに外部の状況をずっと判断していきまして、そこにシルエットでソ連船ではないかということしかできないのが圧倒的に多いわけでございまして、これはソ連側といろいろ議論するときになかなか困難な問題にぶつかるわけでありますということを申し上げました。したがいまして、いま御提案の基金構想につきましては、私は、将来の漁具被害あるいは漁業被害に対する対応としてはまことに的確であろうと思いますが、いま私どもが日ソの請求委員会で取り扱っておりますものは協定発効以前のものも含んでおりまするので、この問題につきましてはやはり今度の二百海里あるいは十二海里の設定を機会に、日本政府が管轄権を有する新しい水域の状態において前向きには基金を利用し、いままでの対策についてはここで何らかの一ピリオドを打って措置してあげてもいいのではないかという気持ちがいたしておる次第でございます。
  54. 島田琢郎

    ○島田委員 いまの池尻参考人の御意見ではございますけれども、しかし政府が責任を持って被害救済をするということが非常に重要なことだと思いますので、これは後ほど御意見を聞かしていただきまして、私ども国会でやらなければならないものがあるとすればやりたいと思います。  最後に、北濱参考人にお尋ねいたしますが、乗組員の皆さん方の苦衷あるいは置かれております実態についてるる御開陳がございまして、私どもも改めて新しい二百海里時代を迎えるに当たって大変なことだという認識を深めた次第であります。その中で特に配置転換対策でありまするけれども、漁業従事者臨時措置法という具体的なお考えを提案されておるようでございます。私は、この際ですからかなり詳しく北濱参考人からお考えを述べていただきたいと思っておりましたが、時間の関係でそれが許されませんので、ごく簡単で結構でございます、ひとつ御披瀝をいただきたいと思います。
  55. 北濱時夫

    北濱参考人 お答えをいたします。  この転換対策が現実的に来るという事態については私どもまことに残念だと思っております。漁船乗組員は、御承知の方が多いかと思いますが、特に中小漁業に働いている漁船船員は小学校の出身とか新制中学の出身者がほとんどでございまして、小さいうちから船に乗りまして一生の職場といたしておるわけであります。これがおかに上がるということになりますと大変なことに相なります。そこで私どもは、この転換対策は現実に海から海へという形で求めてもらった方が一番望ましかろうというふうに率直に考えておるわけであります。  そこで端的に申し上げます。まずこの新しい二百海里時代を迎えて、今後緊急失業対策として起きてきた場合に一体どうするのかということにつきましては、二百海里水域の問題とか十二海里領海とかいうふうに非常に拡大をされていっているわけでありますから、そこへ資源調査とか保護とかいろいろな問題の仕事が大きく生まれてくると思います。そこで、サケマス漁業の指導及び取り締まり業務にその船を転換をさして失業した船員を乗せていくという方法が一つあろうと思います。それから二百海里水域の実施後の監視取り締まり体制、これは現実の保安庁体制では困難であると聞いておりますが、監視体制の船舶、そういう業務に従事をさせる。それから新漁場の開発事業であります。そういうことに転換をさしていく。天皇海山のお話が山口市長からございましたが、そういう公海漁場における開発事業という問題に対して、いわば調査船とかそういう問題に振り向けていく。それからわが国の二百海里内の沖合い漁場資源調査、そういう開発業務に従事をさせる。それからそういうことでどうしても救い得ない問題については、先生御指摘のように漁業従事者臨時措置法という形において救っていかざるを得ないのではないか、このように考えておるわけでございます。
  56. 島田琢郎

    ○島田委員 時間が来ましたが、池尻参考人一つ、私自身もこれから水産政策を進めていく上で知恵をおかりしたいと思っているのでありますが、こういう二百海里時代を迎えてばかりではありませんが、魚の値段、この問題が時の物価を大きく左右するという元凶になりかねません。そういう意味で魚価対策というのは急がれる、しかしほかのものと違って非常に対策がむずかしい、こういうふうにされておりまして、私どもも何が最も有効にして適切ないわゆる魚価対策になり得るかという点ではまだ模索の域を出ないというのが正直なところであります。今回北海道の日ソ漁業の問題の中であわせて非常に心配されますのが魚の値段の高騰の現状であります。全漁連としてはとった魚を高く売られるという立場に立たれることは当然でありましょうけれども、しかし魚価対策というのは非常に緊急を要すると私は思いますので、お知恵をぜひかりたいと思っていますが、一口に言えばどんな対策がいま必要だとお考えでしょうか。
  57. 池尻文二

    池尻参考人 魚価対策は御指摘のとおりなかなかむずかしゅうございます。しかしながら、基本は多獲性大衆魚なり大量的に取引される魚につきまして調整保管を中心にしまして国が手厚いこれに対するバックアップ措置をとるということを柱にしなければならないと思います。農産物の価格支持制度を直ちに魚の方に適応いたしましても、現実はなかなか適応がむずかしいと私は思います。それを一つの主流にいたしまして、単に生産者の価格というところにだけ着目するのではなくて、流通あるいは消費、そういう一貫した一つの対策を、これはじみですけれども、次から次に積み重ねていくより仕方がない、私はかように考えておるわけでございます。
  58. 島田琢郎

    ○島田委員 参考人の皆さんありがとうございました。
  59. 金子岩三

  60. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 六人の各参考人には国民の代表として各階層から貴重な御意見を陳述いただきましてまことにありがたく存じます。本二法案の審議に当たって十分参考にして、今後国民の期待にこたえたい、かように思います。  いまいろいろ陳述いただきましたが、私はまず最初に西日本を代表して見えました社団法人日本遠洋底曳網漁業協会会長徳島喜太郎参考人にお伺いしたいと思います。  漁業水域に関する暫定措置法案が本日午後の本会議で提案をされることになりました。このことはもうずいぶん前から予測されておったことでございますが、本日の参考人にぜひ西日本代表をということで私から提案をして、長崎県知事とともにお二方をお願いしたわけですが、長崎県知事が所用のため折あしく出席できませんものですから、きょうは西日本唯一の代表として徳島会長お見えになっておりますので、どうかそういう自覚に立ってお答えをいただきたいと思います。  実は去る四月十九日に長崎県漁業協同組合連合会、福岡県漁業協同組合連合会、佐賀県玄海漁業協同組合連合会、山口漁業協同組合連合会、そして社団法人日本遠洋底曳網漁業協会、五つの団体から私の方にいろいろと要請がございました。その中でいろいろ述べられたことは、「十二月二十七日意見を集約して「わが国の二百カイリ漁業水域の設定は、わが国全般の利益となるよう慎重に対処すべきである」」としながらも、「その後日ソ間の漁業交渉は難航し、北洋漁場の漁獲実績確保のため、政治的判断として二百カイリ漁業水域の設定を余儀なくされた経緯は、まことに遺憾と存じますが、止むを得ざることと了承致しております。」と言われたのであります。そうして、というのも「西日本水域において、わが国の二百カイリ漁業水域内の漁場価値は薄く、好漁場は中国及び韓国の二百カイリ漁業水域内にあり、もし日本漁船がこれ等の好漁場より排除されることとなれば、西日本漁業者にとっては死命を制せられることとなるわけで、西日本漁業者は、明治末期よりこの水域の開発につとめ、現在ではまき網漁業者、釣漁業者、延繩漁業者及び以西底びき網漁業者は、これら水域で各業種を合せ、約五十万トン(約千五百億円)の漁獲をあげておりますが、その八割は中国及び韓国の二百カイリ漁業水域内の漁獲物であります。従って西日本漁業者にとっては、北海道東北の漁業者が米ソの二百カイリ漁業水域に依存して来たことと何等異るものではない」、こういうようにいろいろ要請がございまして、私も全く西日本におる者として同感でありますが、きょうの陳述で徳島会長は、今回の二法案については賛成の方向を示されましたけれども、いま私がいろいろ申し上げましたように、今回のこの法案については遺憾とは存じますが、やむを得ざることとして了承をいたした、こういうことをおっしゃっておられるわけですけれども、その遺憾とは存ずるがというところを、この機会に西日本を代表してぜひともひとつ明快にさらにお答えをいただきたい、かように思うわけでございます。
  61. 徳島喜太郎

    徳島参考人 お答えをいたします。  西日本漁業界の件につきまして、ただいま大変御親切な御質問をいただきまして感謝にたえない次第でございます。もちろん、こういった大きな漁業界の受ける十字架でございまして、地域によりましては、東で起こったことを強くやると西にはね返るから反対するという立場もとれないことはないと考えるわけでございます。しかしながら、二百海里の問題というのが、これは一つ歴史の大きな流れの中にあるわけでございまして、いま西日本漁業界は安泰でありましても、この流れというものはいずれ避けて通れない問題ではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。したがいまして、日ソ交渉において北海道、東北の人たちが背負っておる十字架というものはいずれ西日本もこれを背負わざるを得ない時期が来るのじゃなかろうか。したがいまして、ただ単に西日本はやってもらいたくないから反対というふうなことだけでは済まないんじゃなかろうか。と申しますのは、与野党一致でこの大問題に取り組んでおられますし、与野党一致というのは国民的合意ができたものという判断をいたしますと、私どもの気持ちといたしましては、慎重にやってほしいというのが心情でございますけれども、しかし、この期に及びましてはそこまで反対というわけにはまいらないわけでございます。したがいまして、先ほど来、午前中に申し上げましたように、西日本におきましては政府といたしましてもあらゆる面で慎重に、細心に手を打っていただいておることは十分承知しておりますので、それを生かすような方向にしていただいて処理をお願いいたしたい。私たちは絶対反対というふうなことでは通らないというふうに判断をいたしまして、漁業者自身が、もう西も東もない、一致してこういったむずかしい苦難の道を打開していかなくちゃならない、そういう方向で十九日の日に先生に御陳情を申し上げたような次第でございます。
  62. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまのことについて、全漁連の池尻参考人にさらにお伺いしますが、西日本を代表して徳島会長から御意見を述べられましたが、全漁連としては、西日本漁業に対しては、いまの問題についてどういうふうに対処する考えであるか、お答えをいただきたいと思います。
  63. 池尻文二

    池尻参考人 徳島参考人から申されたとおりでございます。したがいまして、具体的に申し上げますと、いま起こっている問題は、直ちに太平洋水域に二百海里の線引きは一応なされるわけでございますが、そこで具体的に起こってまいりますのは、先ほど山口市長さんの方から申されました北海道沖の韓国船の問題でございます。したがいまして、韓国も、私は推察をいたしますのに、昔は遠洋漁業を持たない韓国でございましたけれども、最近は一かどの遠洋漁業国になっておりますので、韓国も遠洋漁業利益というものを確保したいという気持ちがいっぱいあろうと思います。したがってその辺を察して、韓国に対する対応というものは、いままでこのことは民間ベースでやっておったわけでございますが、ぜひひとつ今度の二百海里水域適用にはなりましても、対韓国の問題についてはやはり政府が責任を持って秩序を守らせる。韓国もそれを了承するというところから始まっていきませんと、それを直ちにということになりますれば、西日本の方にも影響すること必至というきわめてデリケートな関係がございますので、私どもは先般も、近々でございましたが、東の漁業者と西の漁業者とその辺のことを踏まえて二百海里のこの時代にどう対応するかという一つ漁業者共通の基盤に立っての、要するに対話と申しますか、意見の集約というものも始めておりまして、全国の漁業者というものが二百海里というものを踏まえて、同じ共通の立場でこの問題を解いていこうということに一生懸命努力をしてみたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 東北大学法学部教授山本参考人にお尋ねしますが、先ほど山本参考人から陳述の中に、妨げられない通行を先取りするということで、必ずしも今回の領海法については賢明の策ではない、国家として国際的に見ても冒険だろうと思う、いまの段階では、国家として国際的に見て賢明ではないというような意味の発言がございましたが、私は本法の提案に当たりまして、特定海域を認めることなくすべていわゆる主権が及ぶ十二海里にすべきであるということを先般来しばしば当委員会でも政府にただしてまいったわけでございます。時間の関係で詳しく申し上げられませんけれども、御承知のように第四回の国連海洋法会議のときにアメラシンゲ議長がその最終日に提案したところの非公式単一交渉草案改訂版というのがありますが、その中で、第二条「各国は、一二海里を越えない限度までにおいて領海の幅を設定する権利を有する。」、「越えない限度までにおいて」とあります。今回の法案をずっと審議してまいりますと、附則第二項に「当分の間」というのがありますけれども、私はこのいわゆる特定海域三海里というのは、結局この「当分の間」ということは、海洋法会議を待ってということだと政府は言いますけれども、実際は永久ということで、その陰には核という問題が隠れているということで、これは海洋法会議の結果を待っても、まずこのままであると、こういうふうに理解しております。そうなると、国益に関するいわゆる主権という問題で私は十二海里とすべきである、かように主張しておるわけですけれども、言葉足らずで十分申されませんけれども、先生は十分御検討なさっているわけでございますので、短い時間しかございませんから、簡潔に先生のお考えを再度お述べいただければ幸いに思います。
  65. 山本草二

    山本参考人 先生御指摘のとおり、領海は普通でございましたら一律にあるのが一番普通でございますし、また実施という面でも一番困難が少ないと思うわけでございます。ただ、はなはだ残念ながら、国際海峡という問題だけが領海制度の中から取り抜かれて海洋法会議議論されている最中でございますし、その海洋法会議での議論というものが煮結まってまいりますと、その中からやがて次の新しい国際慣習法なり条約なりができていく芽生えというものが育っていくということは、海洋法会議の成否いかんにかかわりなく事実だと思うわけでございます。それはいずれにしましてもまだこれから先の問題でございまして、どういう方向で落ちつくかということに対して確実な見通しというものを見通せない現在において、とりあえず現状凍結という、実際実施されていく上では大変複雑な形になると思うのでございますけれども、国際的に見ますとそういう方向をとらざるを得ないのではないかというのが私の考えでございます。
  66. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 山本参考人にもう一つお伺いします。  先ほどの陳述の中で、今回の漁業水域に関する暫定措置法案に関連して、控え目の法案である、排他的管轄権でもない、そこで取り締まりについて国内法令を検討する要がある、外国人にどう説明するのかというようなことをおっしゃいましたが、これは、当然許可証の問題とか入漁料の問題、それからまたわが国の法体系では罰金が最高一千万円ということになっているので、今回の本法が施行されますと犯人所有の漁獲物、船舶などを没収できるというようなことになるわけで、実際には外国とはなじまない法律だということが問題になる、そういった意味で法改正をすべきではないかと思うのですが、その辺について先生の御意見を承っておきたいと思うのです。
  67. 山本草二

    山本参考人 御承知のとおり、現在の海洋法会議におきまして、経済水域について沿岸国の絶対的な権利が強過ぎる、そこでもう少しいろいろ国際的な枠づけをはめていこうということで、経済水域とは一体どういう性質のものかということについていろいろな議論があるのは御高承のとおりでございます。極端に申しますと資源領海だという考え方があるわけでございまして、その資源領海という考え方をとれば、違反外国船に対して国内法令を適用していくときの説明はその限りでは非常に楽でございます。また、仮に、資源領海ではない、公海でもなければ領海でもない、新しい水域だ、しかし沿岸国が主権的権利あるいは排他的管轄権を持つ海域だということであれば、それなりに説明も容易ということになるわけでございます。ところが、海洋法会議でそういった沿岸国の極端な権利の主張というものを抑えるために経済水域の性質について公海にかなり近い性質を持った海域だといったような立場をとるといたしますと、にもかかわらず管轄権を持ち、そして国内法令を外国船適用していくという点でそれなりの特別の理由づけというものをしないと、資源領海とか排他的管轄権、主権的権利ということを言う場合よりはやや説明が困難だ。いずれにいたしましても、私が申し上げたのは、今回の法案は国際的な傾向から見て大変控え目の内容のものである、決して海洋会議の極端な方向を先取りしているものではないのだ、その点は私は高く評価すると申し上げて、ただその裏返しとして、外国船にかなり厳しい国内法適用していくというときの特別の理由づけをぜひお考えおきいただきたい、こういう趣旨でございます。
  68. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは、あと若干はしょってお尋ねをいたします。  大日本水産会副会長の高橋参考人に、今回の日ソ漁業交渉に当たっては領土問題でわが国の主張を後退させたり放棄するような妥協は今後もすべきではないと私は思いますし、またわが党の竹入委員長もせんだっての党首会談でも申しておりますように、長期化を恐れてはならぬ、こう言っております。私も、今回の交渉が、地元漁民のことはよくわかるけれども、その漁民のことを思うがゆえに永久に失うようなことはしてはならぬ、こう思います。そういう意味で大日本水産会としては今回の交渉に当たってはどういう決意で、私たちが言っておるようなことで集約しておられるか、改めてお聞きしておきたい。  それから釧路山口参考人に二点簡単にお伺いしておきますが、せんだって、四月十九日、釧路市から御陳情を私の党も受けました。そのときいろいろ聞きましたが、その中で、一、二点ですけれども、運送関係の皆さん方が、会社員であって、日雇いじゃない、ところが今回、いわゆる操業停止によって仕事がなく毎日休業をしておる。もうすでに四、五十人は解雇した。これは社員ですから、なかなか解雇できないけれども、やむなく解雇した事例がある。そして水揚げも一日に四千トンから六千トン揚げておった。それが、御承知のように、いまごろは六、七時間で揚げておったぐらいの時期だったにもかかわらず現在では全然水揚げがないために、ほとんど休業しておる関係で、沿岸の物が若干揚がっておる程度だ。そこで、この運送業の自動車というものはみんな水産向けになっておるのでこれをなかなかほかへ転用するわけにいかない、こういった問題で悩んでおるということですが、その実情をお聞かせいただくのと、解雇状況が深刻になっておることを聞いておりますので、その点お触れいただきたい。  それから、もう一つは、サケマスが事実上六万二千トンで妥結して近く出漁することになろうと思いますが、サケマス漁船は出漁しても後へ残る船は大変憂慮される、こういうことで、その辺、行く者と残る者悲喜こもごも、市長もずいぶん頭が痛いことだと思いますが、その点トラブルがないように十分注意してもらいたいと思うが、その点の状況をちょっとお知らせいただければと思います。  それから、最後にもう一点、簡単でいいですが、全国漁船労働組合同盟の事務局長北濱参考人から、漁船労働組合の生活安定のため当面一番緊急に要請したいことは何であるか、いろいろ申されましたけれども、それをまず一言御答弁いただきたいと思います。  時間がわずかですから、どうぞよろしくお願いします。
  69. 高橋泰彦

    高橋参考人 漁業者といたしましては魚はとりたいのでありますけれども、しかし領土はどうなってもよろしいという考え方は、国民の一人といたしましてそのように考えたことはございません。その意味で、鈴木農林大臣及び各先生方のただいま持っておられる御意見に私どもも全く同意見であるということを申し上げたいと思います。
  70. 山口哲夫

    山口参考人 魚を運ぶトラックは特殊な装備をいたしております。魚の汁がたれないように公害防止もしておりまして、そういう面で他になかなか転用しにくいのがこのトラックでございます。仮にまたトラックが転用できたといたしましても、運ぶものがございません。何せ一日四百台からの魚を運搬するトラックが動いておるわけですから、魚を除いて他のものを運ぶといってもそれだけの品物がございません。したがいまして、いまお話があったように、私も承知しておりますのは、一社では解雇せざるを得なかったということでありますけれども、ほかはほとんど車庫の中に眠ったまま何も動けないでいるというのが実態でございます。  それから、サケマスにつきましては四月三十日に出漁になるわけでございますけれども、サケマスの船団は出れたといたしましても、残念ながらいまスケソウをとっておりましたところの沖合い底びき関係につきましては、日ソ漁業の中断によって出られない。したがって、片方は出るけれども片方は出られないということで、地元におきましては心から喜んでサケマスを送れないという非常に矛盾した気持ちを皆さん持っていると思っております。
  71. 北濱時夫

    北濱参考人 お答えいたします。  いま、日ソ関係の問題で、あらゆる業種がたくさんございます。しかし失業保険金がある程度制度化されておりますのは北転船だけでございまして、それ以外の漁船につきましては失業保険もございません。いろいろ言いたいわけでありますけれども、時間がないそうでありますので、簡単にお答えしますが、当面何をしてもらいたいか。いわばそうなった場合に一番してもらいたいことは受けざらをつくっていただくということでございまして、漁業従事者臨時措置法を早急に制定していただきたい、そのことをお願いしたいわけであります。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 どうも貴重な時間ありがとうございました。
  73. 金子岩三

    金子委員長 神田厚君。
  74. 神田厚

    ○神田委員 参考人の皆さん方には大変遠いところから、また貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございます。  限られた非常に短い十五分の時間でございますので、大変簡単な御質問になって恐縮でございますが、順次御質問をさせていただきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いをいたします。  まず最初に釧路市の山口哲夫市長さんにお伺いいたしたいと思うのでありますが、私は十八日、十九日と二日間、民社党の北洋漁業調査団といたしまして釧路に行きまして、現地調査をしてまいりました。そのときいろいろと現地のいわゆる漁船関係の皆さん方とお話をしてまいったわけでありますけれども、現地の状況釧路のあの港がもう本当に魚が全然揚がらない。そういうふうな魚が一匹も揚がらないような非常にさびしい風景の中で陳情を聞いたりあるいは話し合いをしてきたわけでありますけれども、その中で現在この釧路のいわゆる基地がこういうふうな状況になっているわけでありますけれども、この釧路沖合いでの一番の問題は、やはり北洋漁業と同時に韓国漁船の問題でございますが、この韓国漁船につきましてどういうふうな実態を把握なされておりますか、その点、その船の大きさとか、さらにそれがどこの船籍であるとか、あるいはどこでつくられた船であるとか、そういうことをおわかりになりましたらひとつ御説明願いたいと思います。
  75. 山口哲夫

    山口参考人 大変恐縮でございますけれども、現在手持ちの資料がございません。ただ申し上げられますことは、韓国船は相当大型船でございまして、三千トンから四千トンぐらいの非常に大きな船が沿岸操業していることは事実でございますけれども、その船体が実際どこで建造されているものか、船籍がどこなのか、そういったことについてはなかなか掌握できないという実態でございます。  なお、被害状況につきましても、先ほど大ざっぱに申し上げましたけれども、具体的な数字はいま持っておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  76. 神田厚

    ○神田委員 私どもが現地で聞いてきた話によりますと、相当大きな船、これは全部日本でつくられた船であるというような話でございます。その船に乗りまして三海里近くまで入ってきて夜間のうちに被害を及ぼしておる、こういうような話を聞いてまいりまして、現地の北転船あるいは沖合い底びき船の人たちがその補償をさせられているというのが現状だというような話も聞いてまいりました。そういう中でひとつこのいわゆる漁船被害状況につきましては何とかしなければならないということで、昨日も農林大臣に御質問を申し上げ、漁船及び漁船員の雇用の問題補償の問題についての前向きの回答をいただいておりますので、どうか日本一の釧路市長さんといたしまして海の方にもう少し目を向けていただきまして、いわゆる水産発展のためにこれから先もひとつがんばっていただきたい、こういうふうに考えております。  続きまして東北大学山本先生に御質問申し上げますが、私どもはいわゆる領海十二海里という中で特定海峡の部分に、いわゆるそこだけ三海里にしてしまって公海部分を残すというふうなやり方が国際的な世論の支持を得られるのかどうか、こういうふうなことを非常に心配するのでありますが、その点ひとつ。
  77. 山本草二

    山本参考人 普通の場合でございますと、先ほど来申し述べましたとおり、かなり異例な複雑な制度でございますので、なかなか簡単に理解を得られることは困難かと思います。  ただ、海洋法会議がある意味で大詰めにきておりますこの時点で、新しい十二海里領海法というものに踏み切ったのは日本だけでございまして、そういう意味ではこの法律を制定するに当たって日本の肩にかかっておりますいろいろな国際的な圧力やら背景やらというものは、いまの時点においては十分に了解してもらえることではないか。大変異例なことではございますけれども、意を尽くせば了解してもらえることではなかろうか、私はそう考えているわけでございます。
  78. 神田厚

    ○神田委員 もう一点お伺いいたしたいのでありますが、私どもはいわゆる特定海峡につきましても全部十二海里にしまして、そしてこのある部分につきまして工夫をしまして自由航行帯をつくれ、シーレーンをつくってそこを通るようにしたらどうだ、こういうふうな主張をしているわけでありますが、こういうふうな主張につきましていわゆる国際的な関係から見まして、国際法上の問題あるいは国際的な世論、そういうものがこういうことについてどういうふうに対応するかという点につきまして、簡単で結構でございますが、ひとつお願いいたします。
  79. 山本草二

    山本参考人 先生のその御指摘の案と申しますのは、大変すっきりと申しますか一律で、その限りにおいては非常にすっきりした明快なものだと思うわけでございます。ただ、御指摘のシーレーンにつきましてはたとえばマラッカ海峡沿岸諸国等もそれぞれの観点からそれぞれの背景を持ちまして主張していることでございまして、したがって今回のこの領海法につきまして仮に日本がこのシーレーンというものを取り入れるといたしますと、これはやはり海洋法会議の中のある一つの傾向というものを先取りするということになるでございましょうし、またシーレーンというものを選んだその背景、理由あるいは影響といったようなものが国際的にも非常に波紋を投ずるのではないか。そのことが、どうも、多少神経質かもしれないと思うのでございますが、海洋法会議における日本国際海峡に対する主張というものに対して足手まといになるのではなかろうか。大変失礼でございますが、率直に私はそういう気持ちを持つわけでございまして、そういう観点から、本来でございますと大変すっきりした明快な御案だと思うのでございますけれども、消極的なお答えをさせていただく、そういう意味でございます。
  80. 神田厚

    ○神田委員 次に、大日本水産会高橋副会長さんにお尋ね申し上げたいのでありますが、こういうふうな形で日本漁業でいわゆる魚獲量につきましても全国的に非常に少なくなってきている。こういうふうな中で一部に外国においていわゆる合弁会社をつくって、そしてそこから魚を持ってくるようにしたらいいのではないか、あるいはブラントをつくって、それでプラントの輸出と魚と交換したらいいではないか、こういうような話を聞くのでありますけれども、いわゆる水産会社といたしましてはこういう合弁事業などにつきましての考え方、これは非常に簡単で結構でございますが、あるいはまたこういう構想をお持ちになっているのかどうか、この点につきまして御質問申し上げたいのであります。
  81. 高橋泰彦

    高橋参考人 お答えいたします。  海洋と申しますか、今回の国際的な情勢の変化の中で漁獲が減っていくであろうということにつきましては、残念ながら私どももそのような想定をしております。これに対する対策は、先ほど池尻氏からもお答えしたと思いますが、まず沿岸漁場で増産に努めることが基本でありますが、やはりそのほかに私どもは新しく漁獲を増加する意味で合弁ということも推進しております。これは事実でございますが、ただ実際問題としてそう簡単な問題ではございません。合弁をやれば直ちにそれが事業化され、直ちにそれが日本に対する魚の供給になるというほど簡単に合弁事業が推進できていると思いませんし、むしろ今後力を入れましても、これはなかなかむずかしい事業であるというふうにすら考えておるわけであります。  それからなお、先ほども輸入という問題で私が触れましたけれども、やはりプラントを輸出して、しかもそれによる魚を輸入するということそれ自体を頭から私は否定するものではございません。しかし、私ども漁業者としてひどい目に遭っている漁場そのもので外国が魚をとって、それをプラントによって製品化し、それを直ちに日本に輸出してやるからおまえらはこの漁場から引け、このような論理のもとでは私どもはとうてい簡単に輸入を考えることができませんし、そういう意味でプラントを輸出するということであるならば、私どもはとうてい賛成することはできないというふうに考えておる次第でございます。
  82. 神田厚

    ○神田委員 大変重要な問題についてのお答えをいただいたわけでありますけれども、ちょっと時間の関係で後続けられないのが残念でありますが、やはり私は、合弁にしろあるいはプラントの関係にしろ、聞くところによりますと、いまソ連ではすでに魚価が五割もアップしている、そういうふうなものを今度日本の方へ持ってくるということによりまして、またまた日本の魚が上がってしまう、そういう形になってくるかと思うので、これは大変慎重を要する問題であるというふうに考えております。この点につきましては後で機会がありましたらまたじっくり御質問を申し上げたいと思うのでありますが、合弁やプラントに頼らないで、日本の漁獲というものを日本人の手で確保するというような形でひとつ御努力をいただきたいというふうに思っているわけであります。  続きまして、池尻参考人に御質問申し上げます。  現在の韓国船などの移動の状況あるいはソ連の北洋漁業などを含めまして、小さい漁船に割り当てられる割り当てなどの点につきまして何か御希望がありましたら、非常に簡単で結構でございますから、お答え願いたいと思うのであります。
  83. 池尻文二

    池尻参考人 いまの日ソ交渉の漁獲の割り当てでございましょうか。(神田委員「ええ」と呼ぶ)それは、いまのところどうなるか、前提がわかっておりません。したがって、これくらいわれわれの方で欲しいというふうなことは、全然考えておりません。
  84. 神田厚

    ○神田委員 徳島参考人にお願いいたしておきたいと思いますが、私が申し上げましたのは、いわゆるソ連漁船がこういうふうに回ってくるのを非常に心配してきのう御質問したわけでございまして、ひとつその辺は誤解のないようにお願いしたいと思うのであります。その辺につきましての誤解をひとつ解いていただきたいというふうに考えております。  最後に、北濱参考人にお聞きしたいと思うのであります。  現在の日本漁船は、遠洋漁業で略奪的な漁業をしているというふうに言われておりますが、漁船船員の立場からこれをどういうふうに考えているのか、さらに漁業資源の保護の考え方はどういうふうに考えているか、こういうふうなことにつきまして、さらに今後の日ソ漁業交渉の縮小再編成が必至と見られていることについての船員の転換などにつきましてお答えをいただきたいというふうに思います。
  85. 北濱時夫

    北濱参考人 まず第一点の御質問でございます。  略奪漁業をやっている、乗組員もともに略奪をやっているのだというお話が最近非常に言われておるわけでありますが、私どもはそういう一つの考え方の観点漁業をやっておるわけじゃございませんし、もともと海洋自由の原則の中で、いわば遠洋、遠洋という形の中で今日まで進んできたわけでありますから、資源保護思想という考え方については十分対処してきたつもりでございます。  ただ、一面において日本の場合は技術革新、いわば船に対する技術革新というものは非常に進んでおりまして、それと同時に日本漁船船員は漁労技術が非常に進んでおります。外国の場合には、そういう技術革新とか漁労技術とかいうものについては、一部の国を除きましてはほとんどないというふうに見られるわけです。そういう中で漁労をしていくわけでありますから、その意味で庭先に行って魚をとることがすでに略奪漁業だとそしられているわけでございまして、漁船船員の立場から、純粋に食糧を生産してくるという立場の中で今日までやってきたことでございまして、この点については御理解を賜りたいと思うわけであります。  自然保護思想の問題でございますけれども、これは私どもは現実的に、たとえばマグロが資源的に非常に不足をしてきている、オーストラリアあたりのことにつきましては船の隻数を抑えて、そうして乱獲をしないように、そういう形の自主規制を業界に求めたり水産庁に求めてきているわけであります。従来の水産行政ということを私、率直に言わしてもらいますならば、学問資源論という形の中で資源を論じてきたわけではなくて、政策的な資源論という形の中でのみ行政が行われてきたのではないかというふうに思います。その意味では、行政サイドとして十分に御反省をいただく必要がこの機会に起きてくるのではなかろうか、このように考えております。
  86. 神田厚

    ○神田委員 どうもありがとうございました。
  87. 金子岩三

  88. 瀬崎博義

    瀬崎委員 参考人の皆さん、御苦労さんです。  私ども共産党は、二百海里時代に対処をいたすために、昨年の十二月以来、全漁連を初め水産関係者の皆さんと十二道府県で四十回に及ぶ懇談会を重ねさせていただきまして、皆さんの御協力のもとに生の声をお聞きしながら、二月十四日には二百海里問題への対応と海洋漁業政策に関する提言を発表させていただきまして、日本漁業漁民を守っていくためにわれわれなりの努力をさせていただいたわけであります。  先ほどお話のありました全漁連からの十二海里領海法に関する公開質問にも、わが党は全員お答えを申し上げてまいりました。  時間の関係で全参考人の皆さんに質問できないことを最初にお断りしながら、まず全漁連の池尻参考人にお伺いをしたいと思うのであります。  領海法案では、宗谷、津軽などの五海峡を三海里領海に凍結して、二百海里法案の方でこれらの海域外国漁船操業禁止区域にすることにしております。またこの操業禁止区域には、五海峡のほかに、漁業資源の保護のために必要な区域も含まれることになっておりますが、同じ法案でこれらの禁止区域に適用除外を設けることとしているために、問題になっております韓国漁船などの操業のおそれが依然として残ってくるのではないか。また、ソ連日本の十二海里領海内での操業を強く要求している点について、このソ連側の主張を強めるような可能性につながらないかとも考えるわけであります。こういう政府措置に対するお考えをお聞きしたいのでありますが、あわせてソ連側日本領海内での操業という要求、われわれは不当だと考えておりますが、これに対する御意見も承りたいと思います。
  89. 池尻文二

    池尻参考人 今回の二百海里と十二海里法案の関連でございますが、冒頭に陳述いたしましたように、私は、二百海里法案の提出によりまして五海峡に残されましたいわゆる三海里で凍結されるところの漁業者のために外国船による漁業操業がチェックをされたというところは非常に評価をしておるわけでございます。  それから、その運用に当たりまして、韓国船とソ連船との関係でございますが、今度の二百海里法案によりまして、ソ連船には、いわゆる規制というものが十二海里の外で及んでくるわけでございます。そうした場合に、ソ連船には及んで韓国船は自由ということには実態上してはならない、私はこういうふうに考えております。したがいまして、その辺は先ほども申し上げましたように、暫定的に太平洋岸で操業する韓国船に対しましては、十分両国の政府が責任を持ってその操業の自粛なり規制をしていかなければならない、かように考える次第でございます。  十二海里の中の操業要求に対しましては、これはもう先生御指摘のとおりでございまして、政府としても断固としてはねつけていただきたいと思うわけでございます。
  90. 瀬崎博義

    瀬崎委員 引き続いて池尻参考人にお伺いしたいのでありますが、二百海里時代に入って沿岸沖合い漁業の見直しが、これは当然のことながら強調されてきております。政府沿岸漁場整備開発計画は、昭和五十一年度から七カ年でわずか二千億円の事業投資でありますが、日本近海の整備開発可能面積が十二万平方キロあると言われているわけですから、これではわずか一%の千二百平方キロを整備開発するにすぎないのであります。また、漁業の安定にしても現在、きわめて不十分であることは先ほど来出ているお話のとおりであります。  そこでまず第一点は、私どもは、懇談会の機会に漁業関係者の皆さんからお聞きした意見からも、沿岸漁場整備開発については一年間で二千億円程度の国費を投入すべきではないかと考えます。この点に対するお考えを承りたい。  それから第二点として、魚価安定基金制度を抜本的に改善すべきではないかと考えるのでありますが、この点についての全漁連のお考えを承りたい。  それから第三に、外国沿岸からの締め出しに伴いまして魚の輸入が激増するのではないか、これはいろいろな形で予想されます。この輸入を大手商社や大手の漁業会社任せにしたのでは沿岸漁民利益も守れないと思いますし、水産加工業者また消費者の利益とも相反する結果になるのではないかとわれわれは危惧いたします。この点について全漁連の方で何らかの対策をお考えであれば承りたいと思うのであります。
  91. 池尻文二

    池尻参考人 第一点の沿岸整備は、御承知のとおり七カ年二千億円と決まっております。この金額は、私は決して大きいとは思っておりません。ただ、先生方におわかりいただきたいのは、私どもはこの二千億が一兆円になることを欲しておるわけでございますが、現状の、海の中に投資するいわゆる青写真と申しますか、こういうものがまだ完全にできていないわけであります。したがいまして早急に、二百海里時代が来たわけでございますから、七カ年二千億円にこだわることなく、新しい沿岸漁業の幕あけの展望のもとにこの問題は積極的にやっていただきたい、かように考えておるわけでございます。  それから第二番目の魚価安定基金、これはもう始まったばかりでございまして、これでは私どももまさに隔靴掻痒の感、こういうふうに考えております。しかし、母体が一応でき上がりましたので、この補強にひとつ全力を挙げてみたいと考えておるわけでございます。  それから三点の輸入問題でございますが、まことに日ソ漁業交渉の熾烈な中にいろいろ日本商社の動きがあるということを聞いております。これは非常に遺憾なことだと思っております。しかしながら、原料が不足いたしてまいりますと輸入に頼らざるを得ないという面も出てまいります。したがいまして、私どもはここで一遍輸入制度というものを再検討をしてみたい。それから輸入するに当たりまして、個々別々の形で無秩序に輸入することを避けるために、やはり私ども団体というものができれば力になって統一的にそういうものをこなすことができないかどうかということを含めて検討をいたしておる次第でございます。
  92. 瀬崎博義

    瀬崎委員 次に、山口参考人にお伺いをしたいと思います。  日ソ漁業交渉では、領土問題が焦点になっているわけでありますが、われわれは漁業問題と領土問題はもちろん別個の問題だと考えております。が、領土問題について将来に禍根を残すようなあいまいな態度をとるべきではないということも、私どもの一貫した主張でもあります。そうなりますと、この問題についてはソ連側線引きを留保し、千島列島周辺を共同管理水域とするという主張、これはわれわれの主張なんですが、これが日本側として妥当な解決策の主張ではないかと考えるのです。山口市長さんは、全国に先がけて釧路市の全産業の影響調査を行われたり、あるいはアメリカに交渉に出かけたりしていらっしゃるわけでありますが、このように熱心かつ積極的に手を打っていらっしゃる立場から、今回のこの政府の対ソ交渉についてどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、また、私どものこの提案も含めて、日ソ漁業交渉の打開にどのような御意見をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  93. 山口哲夫

    山口参考人 私どもは、漁業交渉を有利にするためにかりそめにも北方領土の問題が後退することがあってはならないというふうに考えております。北方領土の問題はあくまでも永久の問題でございますので、領土問題は領土問題としてやはり解決していかなければならないだろうと思います。  ただ、陳述で申し上げましたように、非常にこの線引き問題を固執する余り、漁業協定が拒否されるということになりますと、そのために漁業が全然できなくなるという非常に大きな問題も抱えております。したがいまして、私たちといたしましては、いま御提案がありましたような共同管理あるいは共同規制をする中で何とか漁業交渉を有利に進めていただいて、漁業が再開できるように何とかしていただきたいと考えております。
  94. 瀬崎博義

    瀬崎委員 次に、北濱参考人にお伺いしたいと思います。  これはもちろん、漁業関係者の皆さんを初めわれわれも、まず対外交渉を積極的に行って最大限漁獲量の確保に努めるということになるのでありますが、しかし二百海里時代に入れば、これまでのようにいかないことは自明のことだと思うのです。その場合、減船や転廃業が問題になってまいります。一時的な、当面の問題としましては、十八日の与野党党首会談でも、宮本委員長休漁に追い込まれる約一千隻の中小漁業者あるいは一万三千人に及ぶ漁業労働者、さらには水産加工業者水産関係業者やそこで働く労働者に対して、損害補償、緊急融資等として少なくとも千五百億円程度の国費の支出が必要であろうと提起もしているわけであります。  先ほどは、この転業の場合に、海から海へという御提案もあり、それも貴重な御意見としてわれわれも大いに参考にしなければならないと思いますが、いまの政府のやり方ですと結局、中小の漁業経営者に対しておざなりの対策、つまりつなぎ融資とか、ましてや労働者、乗組員の方に対しては、ほとんど打つべき手を打っていない。持に漁業労働者の場合は基本給と歩合給の組み合わせになっておりまして、歩合給の方の比重が高いし、この点についてはほとんど補償がされていない、こういうふうな状況のもとで、先ほどの海から海への場合、それから最悪事態の海からおかへの場合等々も考慮しながら、かつて炭鉱労働者にとられたような離職対策、仮の名前でありますが、漁業離職者対策臨時措置法のような特別立法も検討する必要があるのではないか。そのことによって、他産業への就職を希望する漁業労働者に対して、職業の紹介や訓練、一定期間の生活保障、こういうようなものを法的な裏づけのもとに実施していく、さらには、雇用保険制度の改善なども含めて、この際長期にわたる総合的な対策をとる必要があるのではないかと思うのでありますが、こういう点に対する御見解を求めまして、私の質問は終わりたいと思います。
  95. 北濱時夫

    北濱参考人 お答えいたします。  私どもは、実際に海から海への転換という問題が一番何といっても必要だと思うのであります。その意味では、先ほどもちょっと申し上げたわけでありますが、いろいろな施策がとられていきますと、当然海から海への吸収対策という問題はとれると思います。しかしこれは、仮に何万人もそういう形の失業状態に追い込まれた場合、それを海から海へ転換させる、いわば全部吸収するということは、言うべくして不可能だろうと残念ながら思うのであります。そうしますと、どうしても陸上への転換という問題を考えてもらわなければならないわけでありまして、先生が御指摘のように、それを救うのが漁業従事者臨時措置法制定という形の中で転換をしていただかなければならぬわけであります。先生方に御努力してつくっていただきました一昨年の漁業再建整備特別措置法の中での職業転換給付金の問題につきましては、これは現実に四十歳以上の者でなければ救えないというような制度になっておるわけでありまして、実際にわれわれには失業保険も十分な形がなされておりませんから、その意味ではこういう問題がどうしても必要になってくるでしょうし、そして、鯨などが御承知のような形に相なったときに、鯨関係で失業救済を受けるために七、八百人ほど職安の窓口に来ているわけでありますが、現実的に年齢制限があるために、三百人程度、そのうち陸上へ転換した者がせいぜい百五、六十人程度、こういうことで、非常にそういう面においても、船員が簡単に陸上にぱっぱっと転換できるかということになりますと、一抹の不安がある、そのように考えるわけでありまして、その点を十分にひとつ御検討をいただきたいと思うのであります。
  96. 金子岩三

  97. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 貴重な時間を割いてお出かけをいただいた参考人の皆さん方に、私ども新自由クラブも私たちなりに、領海十二海里、また漁業専管水域二百海里等に関しての主張をしてまいりましたので、すでにいろいろなお話のあったところとはできるだけ重ならない部分を二、三点だけお尋ねをしたいと思います。  まず、東北大学山本先生にお尋ねをしたいのでありますけれども、ことし間もなく行われる国際海洋法会議におきましては、領海十二海里、そして国際海峡に関しては自由に航行ができる自由通過通航帯、これが世界の趨勢だと言われているわけでございますけれども、この国際海洋法会議において、こうした世界の大勢の中で、今回国際海峡に関しては三海里に凍結をするということが、学問的にどういうことになるのか。  また、私ども新自由クラブは、あくまでも領海は十二海里にすべきだ、そして国際海峡に関しては自由通航帯というものを設けて、しかもそれは将来のことを考えますと、もちろん防衛、日本の国を守るという将来のことも考え合わせますと、今日のこの出されておる法案の中では、津軽海峡を初め五つの海峡を三海里に凍結をするということで出ているわけでありますけれども、私たちはあくまでも津軽海峡のみに限定をすべきだ。このことは、やがて国連海洋法会議におきまして、領海十二海里時代、そして国際海峡というものが世界の中でどういう形で通航できるかということが論議されるときに、非常に大事な問題だ。将来を考えれば、私ども今回国際海峡は津軽海峡のみに限るべきだという主張をしておるわけでありますが、先生の学問的な立場からの御見解をお伺いしたいと思います。
  98. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  海洋法会議で、ただいま先生御指摘の国際海峡制度が確立するまでは、現行法といたしましては、三海里の外は公海自由ということになるわけでございます。そこで、この領海法案に当たりまして、ただいま先生御指摘のような形で全部を十二海里にして、そこでたとえば自由通航帯を設けるというような御趣旨かと思いますけれども、それは確かに先ほど来申し上げておりますように、大変すっきりした画一的な方法であって、実際に実施していく上でも非常に困難の少ない、その限りにおいては大変すっきりしたお考えだということはそのとおりと思うわけでございます。  ただ、ただいま申し上げましたように、海洋法会議が成立するまでは、現行法としては領海三海里の外は公海である、この事実をにらみますと、そこにたとえば十二海里にした上で自由通航帯を引くということは、先ほども申し上げましたとおり、これは海洋法会議の中のその部分をいわば先取りするということによって、公海自由のもとでの現行法を、日本の責任において修正するということになるわけでございます。従来日本は、海洋法会議の成果を待って関係国内法を整備する、いわば確認的に国内立法をするという態度をとってこられたわけでございます。その点はそれなりに私は大変賢明であったと思うわけでございまして、現在の時点において領海十二海里法あるいは二百海里法というものを制定する際にも、海洋法会議のある一部の傾向を先取りするということをやれば、これは日本の責任においてその理由といったようなものを国際的に釈明せざるを得なくなるのではないか。そういたしますと、御指摘の中で、自由航行帯の設定ということは、これは今日沿岸国が、汚染防止とかその他さまざまな観点からいろいろのニュアンスをつけて自由航行帯というものを設定するわけでございますので、そこで先生御指摘の案に従ってそういう考え方をこの領海法案に取り入れたとなりますと、海洋法会議に先立って、日本独自の責任において自由通航帯を設定するということの理由づけ、国際的にもそれを釈明をしなければならなくなるわけでございます。しかも、海洋法会議の結末というものがどちらの方向にいくかということは、まだ定かには見きわめ得ない現在におきまして、大変そういった御苦労を重ねられて、国際的に十分納得させ得るような格別の理由というものをおつけいただいても、それがやがてまたいつの日か修正をしなければならないということになるのではなかろうか。そういう意味で、お考えによっては大変こそくかもしれないと思うのでございますけれども、現行法に従って現状凍結という形がどうも私は一番懸命ではないか、そういう趣旨で先ほど来申し上げておるわけでございます。
  99. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もう一点。この領海法、そしてきょう上程をされます二百海里漁業専管水域に関する法案、あわせて外務委員会できょうから本格的な質疑に入りました日韓大陸棚協定、いずれの法案にも非常に重要な意味を持ってくるわけでございますが、竹島の取り扱いについて重ねて山本先生に、竹島が日本に帰属をするという法的な根拠を簡単にお伺いをしたいと思います。
  100. 山本草二

    山本参考人 お答え申し上げます。  先生方御高承のとおり、竹島の問題は国際法的に見ましても十分に日本の固有の領土でございます。したがって、現在韓国が占有しておりますことはこれは不法な占有でございまして、仮に国際司法裁判所等に提訴することができれば、従来の裁判所の判例等から見ましても十分に日本は勝ち得ると思うわけでございます。ただ、現在ではその裁判に付託することを韓国が応じておりませんので、外交上の抗議を重ねるということで終わっておりまして、これが、李承晩宣言以来韓国が事実上竹島を支配してきている、その実績の積み重ねということに対して、そういう進行を阻止する効力として外交上の抗議を重ねるということだけで十分かどうかということは、判例を見ても多少問題が出てくるわけでございます。  それにいたしましても、日本としては当然竹島は日本の固有の領土であるということを主張する十分の根拠はあるわけでございますから、したがって、経済水域あるいはその他関連の国内法適用上、当該竹島を立法上の管轄の対象にするということは当然のことでございます。ただ、これは立法管轄の問題でございまして、その国内法に基づいて実際に現地において国権を発動することができるかどうか、これは、韓国が事実上当該区域を占有しているということとの関連では、実際に現地において日本が国家権力を実現できるということには法律上の障害があろうかと存じます。  したがいまして、少なくとも御指摘の各種の法律の制定に当たりましては、竹島をわが国の固有の領土としてその法律の適用範囲に含めるということ、これはもう国際法上全く正当なことというふうに考えるわけでございます。その法律に基づいて、具体的な行政その他の国家の権力というものを行使するということについては、現状では実力を持ってしない限りは、法的にあえて韓国のそういう事実上の占有を排除してまで実力を行使することができるかどうか、これは実際問題であって、法的にはそこまでは言えないというふうに言わざるを得ないかと思います。  以上でございます。
  101. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 領海十二海里、漁業専管水域二百海里時代に入って、現実に漁業に従事している方々にはすでにいろいろな被害が出てきている。また、新しい事態に備えていかなければならない。私どもすでに漁業に従事される方々からいろいろなお話も伺い、現地にもお伺い申し上げ、実態調査を私どもなりに進めているわけでありますけれども、当面出てくる被害、こうした問題について補償をする、あるいはいろいろといま意見が出ているところでありますけれども、今後の補償問題等について具体的に御意見を伺っておきたいと思うのであります。全漁連の池尻さん、それから同様の内容で徳島さん、山口市長さんにもお尋ねをしたいと思います。
  102. 池尻文二

    池尻参考人 お答えをいたします。  現在行われております日ソ交渉の過程におきまして、出漁できないでおる漁業者に対しましては、政府もその対策を急いでおるわけでございますが、いわゆる休漁補償等を含めて手厚い補償をしていただきたい、かように考えておるわけでございます。  ただし、日ソ交渉が中断をされておりますので、日ソ、いわゆる北洋の漁業全体がどういう終着になるかということはまだ予見をされない状態でございます。もし、決まり方によりますれば、場合によりましては減船を含めての措置ということも考えなければならないわけでございますが、従来減船の方策といたしましては、カツオ・マグロ等のいわゆる共補償と申しますか、残るものがこれを補償して持ち合っていくというシステムでやってきたわけでございますが、今後の苛烈なるいわゆる漁業交渉の結果出てくる減船の問題と申しますのは、それをいわゆるUターン現象をさせて、海から海への転換ということも非常に幅が狭い状態にございますので、この辺が新しい一つの問題の取り組み方として私どもも十分問題を考えていき、政府もまた新しい角度からこの対応が迫られる問題ではないか、かように考えておる次第でございます。
  103. 山口哲夫

    山口参考人 先ほども申し上げましたように、一つには現在北洋漁業が完全にストップしております。したがって、漁業者はもちろんでありますけれども、陸上におきましては加工業者はもうほとんど休業であります。運送業者を初め数々の休業状態が生まれております。したがいまして、これはあくまでも国家的な立場での補償をしていただきたい。国際情勢の変化によって生まれたものでございまして、本人たちの責任にはならないと思うわけでございますので、完全な国家補償を行っていただきたい。  なお、今後あわせて漁獲量の減量ということになりますと、それに伴って同じような問題が生まれてくると思いますので、それに対しましても国家的な立場での完全補償をお願いしてまいりたいと思っております。
  104. 徳島喜太郎

    徳島参考人 お答えいたします。  補償問題につきましては、先ほど池尻参考人から御発言のあったとおり、新しい発想で徹底的に救済していただくという方向に考えておるわけでございます。
  105. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  106. 金子岩三

    金子委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)     —————————————
  107. 金子岩三

    金子委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査中の領海法案について、内閣委員会及び外務委員会からそれぞれ連合審査会を開会いたしたいとの申し出がありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会の日時は、関係両委員長と協議の上決定いたしますが、来る二十五日午前十時から開会する予定でありますので、御承知ください。  この際、暫時休憩いたします。     午後二時五十分休憩      ————◇—————     午後五時六分開議
  109. 金子岩三

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま付託されました漁業水域に関する暫定措置法案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。鈴木農林大臣。     —————————————  漁業水域に関する暫定措置法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  110. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 漁業水域に関する暫定措置法案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  最近における漁業を取り巻く国際情勢を見ますと、米国、ソ連、EC諸国等が相次いで二百海里の漁業水域を設定するなど新しい海洋秩序への急速な歩みがみられます。  わが国における漁業水域の設定につきましては、従来、遠洋漁業国として、他国、特に近隣諸国との間に円滑な漁業秩序を引き続き維持していく必要があることにもかんがみ、第三次国連海洋法会議動向をも見守りつつ慎重に検討してまいりましたが、国際的な二百海里時代の急速な到来に対処するとともに、最近における日ソ漁業交渉の展開をも踏まえ、わが国としても、早急に、漁業面から海洋に係る制度の整備を行う必要が生じております。  このような観点に立って、領海幅員の十二海里への拡張にあわせて、第三次国連海洋法会議の結論が出るまでの間の暫定措置として漁業水域を設定し、その海域においては、わが国漁業及び水産動植物の採捕に関し管轄権を行使するという考え方に立って、本法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一に、漁業水域は、わが国領海の基線から二百海里までの海域のうち領海を除いた海域とし、この海域におきましては、わが国漁業及び水産動植物の採捕に関する管轄権を有することとし、この法律の規定により外国人が行う漁業等を規制することとしております。  なお、昨今の国際情勢にかんがみ、事態の変化に臨機に対応し得るよう、政令で定める海域漁業水域から除外し、また、政令で指定する外国人及び海域にはこの法律案に定める規制措置の全部または一部を適用しないことができることとしております。  第二に、漁業水域における外国人の漁業等についての規制措置であります。すなわち、漁業水域のうち、領海法案において領海の幅員が十二海里にまで拡張されない海域等を外国人の漁業等の禁止海域とし、この禁止海域以外の海域につきましては、外国人は、農林大臣の許可または承認を受けなければ漁業または水産動植物の採捕を行ってはならないこととしております。  この許可は、農林大臣が定める漁獲量の限度の範囲内で、当該外国人の漁業が国際約束等に従って適確に行われることその他政令で定める基準に該当する場合に限り行うこととしております。  また、この漁獲量の限度は、漁業水域における資源動向及びわが国漁業者の漁獲の実情を基礎として、外国人の漁獲の実情外国周辺水域におけるわが国漁業状況等を総合的に考慮して行うこととしております。  第三に、わが国は、わが国起源のサケマス等の湖河性魚種については、漁業水域外側海域におきましても、外国領海及び漁業水域を除いてわが国が管轄権を有するとの見地から、国際的協調のもとにその適切な保存及び管理に努めるものとしております。  第四に、条約に別段の定めがあるときは、この法律によらず、当該条約の規定によることとしております。  最後に、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。  以上が、漁業水域に関する暫定措置案法の提案理由及び主要な内容でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  111. 金子岩三

    金子委員長 引き続き、補足説明を聴取いたします。岡安水産庁長官
  112. 岡安誠

    ○岡安政府委員 漁業水域に関する暫定措置法案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一に、漁業水域の範囲につきましては、わが国領海の基線から二百海里の線までの海域としておりますが、領海及び政令で定める海域は、除外することとしております。  なお、この二百海里の線が外国との中間線を越えているときは、漁業水域の範囲はその中間線までとし、さらに、外国との間で合意された中間線に代わる線があるときは、その線までとすることとしております。  第二に、わが国は、漁業水域において漁業及び水産動植物の採捕に関する管轄権を有することとしておりますが、この管轄権の行使に当たっては、わが国の加盟する国際機関の勧告等を尊重することとしております。  第三に、この法律で言う「外国人」につきましては、日本の国籍を有しない者並びに外国及び外国法に基づいて設立された法人等としております。  第四に、領海法案において領海の幅が十二海里にまで拡張されない海域部分及び水産資源の保護等のため必要な海域として農林大臣の定める海域におきましては、外国人は、漁業または軽易なものを除いた水産動植物の採捕を行ってはならないこととしております。  第五に、外国人は、右の禁止海域を除いた漁業水域におきましては、農林大臣の許可を受けなければ、漁業または水産動植物の採捕を行ってはならないこととしております。ただし、政令で定める高度回遊性魚種に係る漁業または水産動植物の採捕、農林大臣の承認を受けて行う試験研究等のための水産動植物の採捕等につきましては、許可を受けないで行うことができることとしております。  農林大臣が行うこの許可につきましては、外国人の漁業等が国際約束その他の措置により的確に実施されると認められること、一定の区分ごとに農林大臣の定める漁獲量の限度を越えないことその他政令で定める基準に適合すると認めるときでなければ、してはならないこととしております。なお、この漁獲量の限度の決定は、漁業水域における科学的根拠を有する水産資源動向及びわが国漁業者の漁獲の実情を基礎とし、漁業水域における外国人による漁獲の実情外国周辺水域におけるわが国漁業状況等を総合的に考慮して行うこととしております。  第六に、外国人は、許可を受けるときには、入漁料を納付しなければならないこととしております。  第七に、外国人は、禁止海域を除いた漁業水域におきまして試験研究等のために水産動植物の採捕を行おうとするときは、軽易なものを除き、農林大臣の承認を受けなければならないこととしております。  第八に、許可または承認には、制限または条件を付することができることとしております。  第九に、わが国の内水面において産卵する湖河性魚種につきましては、わが国漁業水域の外におきましても、外国領海等を除いて、わが国が管轄権を有するとの見地から、国際的協調のもとに、その適切な保存及び管理に努めるものとしております。  第十に、この法律に定める規制措置につきましては、政令で指定する外国人及び海域には、その全部または一部を適用しないこととすることができることとしております。  第十一に、この法律に規定する事項に関して条約に別段の定めがあるときは、その規定によることとしております。  第十二に、罰則につきましては、この法律の規定に違反した者は罰金に処することとしておりますが、罰金の最高額は、一千万円であります。  最後に、附則の規定により、外国漁業の規制に関する法律の一部を改正し、領海内におきましては、外国人は、漁業に加え新たに、軽易なものを除き水産動植物の採捕を行ってはならないことといたしております。  以上をもちまして、この法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  113. 金子岩三

    金子委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会      ————◇—————