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1977-04-21 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十一日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 山崎平八郎君 理事 竹内  猛君    理事 美濃 政市君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    愛野興一郎君       加藤 紘一君    熊谷 義雄君       中野 四郎君    羽田野忠文君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       柴田 健治君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    松沢 俊昭君       米田 東吾君    武田 一夫君       吉浦 忠治君    神田  厚君       東中 光雄君    正森 成二君       甘利  正君    加地  和君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         内閣官房長官 塩川正十郎君         防衛庁長官官房         防衛審議官   渡邊 伊助君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省条約局長 中島敏次郎君         水産庁長官   岡安  誠君         海上保安庁次長 間   孝君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省欧亜局外         務参事官    加藤 吉弥君         海上保安庁総務         部長      鈴木  登君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     米田 東吾君   東中 光雄君     正森 成二君   菊池福治郎君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   米田 東吾君     岡田 利春君   正森 成二君     東中 光雄君   甘利  正君     加地  和君 同日  辞任         補欠選任   加地  和君     菊池福治郎君     ————————————— 四月二十日  食糧備蓄法の制定に関する請願湊徹郎君紹  介)(第三六〇六号)  沿岸漁場開発整備に関する請願湊徹郎君紹  介)(第三六〇七号)  畜産物輸入規制に関する請願湊徹郎君紹  介)(第三六〇八号)  農畜産物価格保障及び安定対策に関する請願  (馬場昇君紹介)(第三七四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  領海法案内閣提出第六七号)      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  領海法案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米田東吾君。
  3. 米田東吾

    米田委員 私は、領海法案に関連いたしまして、主として日本海漁業関係につきまして、きょうは、大臣並びに水産庁長官、また海上保安庁等にお聞きをしたいと思っておるところでございます。  大臣にお伺いいたしますが、漁業交渉大変御苦労さまでございました。今度の一連のソ連との漁業交渉におきましては、新聞報道等によりましての理解でございますけれども、領土の問題も関連いたしますが、北洋漁業における日本既得権確保と二百海里宣言の中における日本漁業の安定ということが中心になりましてのお話し合いだったようでございます。  そこで、私がお聞きしたいのは、その中に当然含まれておるでありましょうけれども日本海漁業という関係におきましては大体どんなことがお話し合いの対象として出ましたのか、日本海漁業関係については何が話題になりましたでしょうか。また、大臣からどんな点についてお話し合い話題として提供されましたでしょうか、最初にそこらあたりをお聞きをしておきたいと思うのでございます。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日ソ漁業交渉におきましては、ソ連漁業専管水域二百海里内におけるところの規制措置、具体的な操業についての条件方法、そういうものが議題として論議をされますと同時に、ソ連邦最高会議幹部会令に従いまして定められる海域の問題それから日本の二百海里漁業水域設定前提とした、またわが国領海幅員を三海里から十二海里に拡張するということ、それを前提とした問題、そういう問題につきまして交渉がなされたわけでございますが、昨日も御報告申し上げておりますように、協定案文第一条の適用海域の問題、第二条のわが国領海幅員を三海里から十二海里にした場合、さらに二百海里の漁業水域設定した場合、ソ側日本側にどういう姿で入ってくるか、それを規定いたします問題第一条、第二条の問題、これが双方の間で残されておる問題でございます。第二条の問題は、イシコフ漁業大臣と私との間では基本的に合意をいたしておりますが、成文化の問題でソ側の法制上のたてまえとわが方のたてまえと違う点もございまして、成文化段階でまだ最終的に煮詰まっていない、こういう段階でございます。  日本海の問題につきましては、結局、ソ側適用海域の問題に関連をいたします。これは全体の問題として取り上げられておりまして、日本海の問題だけを特定して論議はいたしておりません。
  5. 米田東吾

    米田委員 水産庁長官もおいでだと思うのでありますが、実務的な段階で、日本海水産漁業資源問題等につきまして、あるいは漁獲問題等につきまして、日本海に限ってでございますけれども、何かソ連との間においてお話し合いその他ございませんでしょうか。
  6. 岡安誠

    岡安政府委員 ただいま大臣からお話し申し上げましたとおり、具体的な海域等につきましての話は全く出ておりません。
  7. 米田東吾

    米田委員 日本水産漁業全体の中に占むる日本海漁業資源というものは決して大きいものではないと思うのでありまして、私の推計では約一〇%程度ではないかと思っておりますけれども、それにいたしましても、日本海漁業資源というものは、将来を展望します場合に、日本にとりましてはまことに重要な資源であり、しかも最も日本に近い漁業資源だと私は思うのでありまして、これから二百海里専管水域という国際趨勢考えますときに、日本海漁業をどうするかという問題はまことに重要な問題になってくるのではないかと私は思うのであります。  そういう面からいきまして、特に水産庁長官にお聞きするのでありますけれども日本海の問題がやや軽視とは言いませんが、中心北洋関係であったことはこれはもう私も認めるところでありますが、日本海の問題がほとんど話題にならなかったという情勢につきましては、私はどうもちょっと残念に思うのです。二百海里宣言ソ連日本海適用しないということでもないと私は思うのでありまして、そういう面からいきましてちょっと残念に思いますが、長官は何かこのことについてはお考えがあったのでございましょうか。
  8. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 非常に重要な問題でございますから私から御答弁を申し上げます。  先ほど御説明を申し上げましたように、第一条の線引きの問題、四島絡みの問題が焦点になりまして、これに結局日本海の問題も相関連してくるわけでございます。したがいまして、決して日本海漁業問題というものを私は軽視もしておりませんし、米田さん御指摘のように大変重要な地位を日本漁業にとりましても占めておる。また多数の関係漁民もおるわけでございまして、私は日本海漁業というものを常に頭に置きながら交渉には臨んでおるわけでございますが、具体的な問題としてまだ線引きの問題が煮詰まっておりません関係でそこまで入っていないというだけのことでございます。ソ連考えておりますような日本海線引きを一応想定をいたしました場合にどれだけの漁獲量が一体その中にあるかということも私の頭の中にはきちっとあるわけでございます。たとえば、朝鮮人民共和国周辺海域におけるわが国漁獲量は約六万数千トン。イカが一番多いわけでございまして、四万数千トンそのうちにイカが含まれております。そのほかに底びき、あるいはカニかご漁業、いろいろ重要な漁業資源があるわけでございまして、決してこれが頭の中にないということではなしに、線引きの問題が決まってまいりませんと具体的なそれらの問題についての交渉ということがこちらからも出しにくいし向こうからも出てこない、こういう段階にあることを御了承願いたいと思います。
  9. 米田東吾

    米田委員 その間の事情お話の経過といいますか、そういう事情もあったと思うのでございまして、よくわかります。ただ私は、ややもすると北洋漁業関係の中に隠れて日本海漁場というものが見失われないように、ひとつ大臣観点をはっきりつかんでいただきたいということで申し上げたわけであります。  それで特に最近の新聞報道等によりますと、北洋から締め出された漁船が、これは日本だけじゃなしに韓国あたりでもそのように聞いておりますが日本海に集中しておる、そういう報道等も一部あるようでございますけれども、全体としては水産庁はどのようにつかんでいらっしゃるのでありますか。
  10. 岡安誠

    岡安政府委員 韓国漁船につきましては新聞にも報道されておりますとおり、ソ連邦が二百海里の漁業専管水域設定したことによりまして三月一日以降ソ連邦二百海里の沿岸から退避をいたしまして、相当部分北海道の東の方の太平洋に集結をいたしまして操業するということもありまして、わが国沿岸漁船相当被害を与えたという事実はございます。北海道日本海沿岸につきましても十隻内外があらわれまして操業しておるという情報はございますけれども、主力はやはり北海道の東の太平洋岸に集まっておるというふうに私どもは聞いております。今後変化等もございましょうから、私どもといたしましては韓国漁船操業実情等につきましては韓国政府ともよく連絡をとり、また民間ベースにおきましても連絡をとりながらわが国沿岸漁船操業に支障がないようによく話し合いを行ってまいりたい、かように考えております。
  11. 米田東吾

    米田委員 国内業界等に対する行政指導といいますかこういう面につきましてはどうでございますか。
  12. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは私もきわめて重大視して神経を使っておる点でございまして、四月一日から北洋漁場から締め出しを食ったということで、それが日本海その他の漁場許可証を持っておるということで北海道等沖合い底びき網漁業等操業を始めるということになりますと、沿岸漁業者との間にトラブルを起こす心配があるわけでございます。私はこの際日ソ交渉をやってまいりますためには国内漁業者間でそういう相克、摩擦があってはいけない、こういうことを厳に戒めなければならないということで係官を北海道に派遣をして、関係業界十分情勢を訴えて自粛をするようにということで強力な行政指導をやっておるところでございます。
  13. 米田東吾

    米田委員 日本海漁業のこれからの問題につきましては、大臣からとりあえずはソ連線引きが明確になればいずれまた政府としてもはっきりした方針を示すという御答弁のようでございます。それは理解できるのでありますが、いずれにいたしましても二百海里専管水域という趨勢は、これが国際的に定着化方向に進むというふうに見て私は差し支えないと思っておるわけであります。それから日本におきましても、きょう国会に出されるそうでございますが、いわゆる二百海里法案、この法案関係からいきましても、日本海は二百海里水域で、中間線線引きをするというような御趣旨のようでもございます。そういうような関係から考えますときに、一体日本海漁業というものはどうするのか、そういう二百海里体制の中でどのように今後発展をさせ、あるいは養殖その他を含めまして安定的な漁場として、今後どう確保していくのかということは、本当にこれは政府としても、関係漁民にとりましても、国民もまた、非常に重要なたん白資源でございますので、重大な関心を持っているところでございますが、そういう点につきまして、政府の方で一定の方針あるいは計画というようなものがいまないのかどうか、示されないのかどうか、もう一回私はお聞きをしておきたいと思っております。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いよいよわが国も二百海里漁業水域設定をする。きょうお許しを得て衆議院の当委員会提案趣旨説明をやらしていただく、こういうことになれば、いよいよわが国の二百海里漁業水域設定と、こういうことになるわけでございます。  その際におきまして、日本海における線引きの問題、わが方の二百海里線引きの問題、またこれに対応して、中国あるいは韓国あるいは朝鮮人民共和国ソ連はもとよりでございますが、それらとの間の関係がどうなるか、相互の間にどう線引きがなされるかということで、日本海の新しい漁業秩序というものは非常に重要でございます。太平洋岸の方は、北方四島絡みの問題が片づきますと、後は余り大きなむずかしい問題はわが国の二百海里の設定についてはそうないわけでございますけれども日本海の場合にはそれが非常に重要な問題として提起されてくるわけでございます。この点につきましては、ただいま中国に対しましても、あるいは韓国に対しましても、あるいは外務省外交チャンネルを通じまして豪州にまで、いろいろわが方の考え方針等説明をして、理解を求めておるところでございます。私どもは、そういう隣接諸国考え方も十分踏まえまして、わが方の二百海里の設定に万全を期したい、このように考えております。  と同時に、日本海の方はどうしても海がそれだけ狭くなるわけでございます。そういうことを勘案をいたしまして、すでに水産庁におきましては、日本海沿岸漁業振興、特に栽培漁業等振興につきましては、これに特別な配慮を行っておるところでございまして、現在国立の栽培漁業センターは瀬戸内海にございます。北太平洋にも一カ所設けることに五十二年度の予算で確保されておりますが、国が助成をして県単位でつくられますところの栽培漁業センター、これは日本海側に重点を置きまして、できるだけ各県にこの栽培漁業センターを設置し、そして栽培漁業振興を図る。また、沿岸漁場開発整備事業二千億、七カ年計画、この点におきましても、日本海特殊事情十分勘案をいたしまして、沿岸漁業振興のための施策を強化してまいりたい、このように考えております。
  15. 米田東吾

    米田委員 そこで大臣、ただいまの私の質問に関連いたしましてもう一つお聞きしておきたいのでありますが、いずれにいたしましても、日本海漁業考えます場合に、たとえば日ソにしても日韓にしてもあるいは日中にしても、二国間の漁業協定あるいは多国間の漁業協定というような方向で、将来また新しい秩序というものを維持していくという方向に進むことが一つ考えられると思います。いま一つは、日本海というものを共同のものとして、共同管理海域として、新しい秩序とそれから水産資源管理栽培漁場確保というようなものを共同で進めるというような方向も、一つはまた考えていかれる問題ではないか、こういうふうにも思うのでありますが、いまはまだその計画立案段階に入っていないと御答弁されるかもしれませんけれども、将来の問題として、これらの問題について農林省は検討されているのかどうか、またどういう方向が好ましいとお考えになっていらっしゃるか、このこともちょっとお聞きをしておきたいと思います。
  16. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それぞれ領海というものを設定をしておるわけでございます。わが方も三海里から十二海里に領海幅員を拡大する。領海部分につきましては、これは各国がそれぞれやるわけでございます。  そこで、領海の外の海域につきまして、私は基本的には、ソ連を除きましては相互主義でやっていきたい。相互主義と申しますことは、中国なり韓国なりあるいは朝鮮人民共和国なり、相手国が二百海里をしない場合にはわが国もできるだけ現状のままでやっていきたい、こういう考えを持っております。しかし、それぞれの国が二百海里をやってくるということになりますと、海洋法会議単一草案等観点からいたしますと、そのダブった部分につきましては中間線海域を分けて、そして管轄をするということになります。  いま米田さんは、そういう分割の方法でなしに、領海部分を除いたそういう海域については、共同管理制というような構想でやる考えがあるかどうか、こういう御質問だと思いますが、これは相手国のあることでございまして、私どもは今後十分相手国考えも聞きながら、その情勢によって対応していきたい、こう考えております。
  17. 米田東吾

    米田委員 大臣、私が申し上げましたのは、領海というものをたな上げにして、そして領海も含めて共同管理という意味で申し上げたわけではございません。日本の場合で例にとりますれば、いま領海法が出ておりますから、これが国会を通りますれば十二海里。ソ連の場合でいきますれば、二百海里は多分にソ連考えで、私ども理解するところによりますれば、二百海里は日本の二百海里と質的には違うようであります。領海的な、主権が及ぶような二百海里の設定のように私は理解するわけであります。多少そういう点は違いますけれども日本がいま出そうとしております二百海里漁業専管水域、これが仮に中間線をとって設定されるといたしましょうか。それはそれで認めた上で、漁業管理あるいは最大資源確保等については共同管理をする、共同調査をする、こういうような方向でいかないか。また漁獲量割り当て等につきましては当然共同で、そういういずれかの会議が持たれまして、多国間の協議によるところの結論に従った方向でそれぞれの漁獲量というものが決まっていくと私は思うのでありますけれども、いずれにしても、日本海というものを一つの海としての共同のものとしての方向に持っていくような方向考えられないのかどうか、こういう発想は当たらないのかどうかということを実はお聞きしたわけなのでありまして……。
  18. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは非常に重要な内容を含んでおる御発言と思いますので、整理をして明確に御答弁を申し上げておきたいと思います。  今度十二海里になるわが国領海、この十二海里につきましては、いかなる国との間におきましても、この十二海里領海の中には他国船操業を絶対に認めることはできない。これをまずはっきり申し上げておくわけでございます。  その領海の外、わが国漁業水域設定をされます百八十八海里の部分、この部分が他の国の二百海里水域とダブった場合、オーバーラップした場合には、海洋法会議単一草案等趣旨を踏まえまして、中間線海域を分ける。そして、二百海里法がそこに適用される。つまり、わが国水産資源に対する保存並びに有効利用というわが国主権的権利がそこに行使される、こういうことになります。  そこで、ダブった部分についてお互いにひとつ共同でこの水域資源保存なり漁獲規制なりやろうではないかという相手国の要請があるかないか。あった場合にどうするかという問題につきましては、これは慎重にひとつ考慮をしたい、こう思います。  それから、相手側領海外の二百海里水域の方に、実績に基づいてわが国漁船が入漁する。これは当然協定によってそのことが決められるわけでございます。その場合におきましても、これは全体に当てはまる方針でございますけれども、よその国の二百海里漁業専管水域、これがどうも、アメリカにしてもあるいはソ連の場合におきましても、主権的権利が自分の国にあるんだから、基本的には割り当ては一方的に行う、こういう主張が強いわけでございますけれども、わが方としてはその実績に基づく許容漁獲量設定については十分協議をしながら、また資源調査情報の交換あるいはその漁獲方法、そういう条件、そういうものにつきましてもできるだけ話し合いをしていきたい、こういう考えでございます。  これを整理して、明確にいたしておくわけでございます。
  19. 米田東吾

    米田委員 この問題はまたいずれ機会を見て、もう少し私の方も整理をしてお聞きしたいと思います。  もう一つ大臣、さっき大臣の御答弁にありましたけれども領海法に連動いたしまして二百海里法が出てまいりますと、いまもお話がありましたが、これによりますれば、韓国中国、これには相互主義という御答弁にありましたそういうたてまえからだと思いますが、言うなれば政令適用しない。しかし朝鮮民主主義人民共和国、こことの関係では、国交がないわけでありますから、この相互主義というものはどういうふうに理解されるか私わかりませんけれども、二百海里設定関係ではどうなっていくように政府としては方針を持っていらっしゃるのか、この点まずお聞きしておきたいと思います。
  20. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 米田さん御指摘のように、朝鮮人民共和国との間にはいまだ国交が開かれておりません。そういうような関係で、事前にお話し合いをするとかそういうことはなかなかむずかしい問題でございます。しかし朝鮮人民共和国が二百海里を設定されるというような方針でございますれば、わが方としても、これは当然わが国の二百海里水域というものは設定をするわけでございます。話し合いでどうこうということはできませんにしても、私は基本的にはそのように考えております。しかし、この二百海里法の原則というのは申し上げるまでもなしに、わが国国土沿岸基線から沖合い二百海里、領海十二海里が設定をされ、その外に百八十八海里の漁業水域設定をされる、これはこの二百海里法の基本的なものでございます。ただ、そういう中で、相手国が二百海里をやらない場合におきましては、政令段階でそれを一時適用をしない、こういうだけのことでございまして、基本的にはこの二百海里法というのは日本国土基線から全部に二百海里は設定をされる、こういうことに明確に御理解を願いたい、こう思うわけであります。
  21. 米田東吾

    米田委員 そこで中国韓国、これには外交関係もあるわけでありますし、政府間の接触もあるわけでありますから、いまのところこちらから二百海里で、言葉は悪いけれども、仕掛けるという条件はない、相互主義相手の方がもし国益ということで二百海里が宣言されれば受けざるを得ないということであると思うのでありますが、そのときの準備はしてある。ただ、朝鮮民主主義人民共和国の場合はそれがないわけであります。そこで、いま政府は公式にどういう理解をしていらっしゃるのですか。朝鮮領海は何海里だという理解をしていらっしゃるのですか。それから、朝鮮ではやはりこの海洋法の国際的な趨勢はやはり理解しておるわけでありますから、二百海里についてどういう見解を持っていらっしゃるのか。これは政府間でもやはり私は情報なり何らかのものは持っていらっしゃると思うのでありますけれども、答えていただけませんか。
  22. 中江要介

    中江政府委員 北朝鮮領海が何海里かというのはたびたび問題になるのでございますけれども、私ども海洋法会議その他の会議に出席しております向こう発言その他から見ておりますところでは、十二海里というふうに了解しております。朝鮮半島から南北とも海洋法会議に出席しておりますので、海洋法会議にあらわれております国際的な趨勢は南も北もともに理解しておる、こういうふうな前提で対処をしていけばいいのではないか、こう思います。
  23. 米田東吾

    米田委員 アジア局長、南も北もともに理解していければよろしいのではないかということは、二百海里の問題については同じに理解してよろしい、こういうことでよろしゅうございますか。
  24. 中江要介

    中江政府委員 国連海洋法会議における国際的な趨勢というものは当然理解しておると思いますけれども、それに基づいてどういうふうにそれでは具体的にしようとしているかという点については、先ほど農林大臣の御説明にもありましたように、韓国との間では外交関係がございますので、韓国韓国としてどう考えているかということは比較的正確に把握できますけれども、北朝鮮につきましては、遺憾ながら外交関係がございませんのでその方法は限られている、こういうことでございます。
  25. 米田東吾

    米田委員 そこでひとつお聞きをいたします。これは水産庁にお聞きいたしますけれども、今日ただいまの時点で、朝鮮民主主義人民共和国海域にわたる、要するに領海十二海里と思われるそれ以遠の公海に日本漁船は出漁しておりますか。
  26. 岡安誠

    岡安政府委員 朝鮮人民共和国いわゆる北朝鮮領海の以遠、まあ二百海里近辺でございますけれども、現在、わが国漁船操業いたしております。
  27. 米田東吾

    米田委員 大臣水産庁長官も、これは公式の委員会の場でございますから申し上げておきますが、北朝鮮の正式の国名は朝鮮民主主義人民共和国、こういうことでございますから……。  そうすると、現在でも出漁しておるということでございますね。  そこで私はお聞きしたいのでございますけれども、このように海洋の新しい秩序をめぐりまして、しかも海洋資源確保という面からいきましても、二百海里専管水域方向というものはこれからますます強まるであろうし、ほとんどそれが領海的なものとして今後国際的な普通の認識になっていくということになるのじゃないかと私は思うのであります。要するに二百海里というものはもう常識になっているということになっていくと私は思うのでありますが、そういうこれからの方向考えますときに、日本海を見た場合、ソ連につきましては何だかんだ言いましても国交がありますし、現に漁業交渉が持たれておる。韓国につきましては国交がありますし、また日韓漁業協定も存在する。中国に対しましても国交は存在するわけでありますし、これもまた民間漁業協定というものが存在しておるわけでございます。そのために韓国中国、それぞれいまのところ漁業の面で混乱はない。仮に新しく二百海里の方向に移行するとしても、私はそう困難はないだろうと思うのであります。  問題は朝鮮民主主義人民共和国との関係であります。これは一体このまま国交がないという状態で推移してよろしいのかどうか。この漁業関係一つ考えましても私は非常に重要な問題になってきているのじゃないかと思うのであります。いままでのように三海里時代、それから十二海里時代、これは海を隔てての接触、海峡の関係では私はそう摩擦はないと思うのでありますけれども、好むと好まざるにかかわらず、二百海里の方向が固まってまいりますれば、何といいましても朝鮮民主主義人民共和国とはもうつながってくるわけであります。中間線をとろうと何であろうとつながってくるわけであります。そういうときに、国交がないから、非承認国だからということで政府間の話し合いが持てないという状態が一体いいのかどうか、許されるのかどうかという問題が一つあるだろうと私は思うのです。これは実際素朴に、いま朝鮮海域に出ている石川県の漁民あるいは佐賀県や山口県の漁民は、やはりそのことを心配しております。日々フグだとかあるいはサバだとかスルメだとか、そういうものを追って朝鮮の近海に、近海といいましても領海を侵しておりませんが、出ていきまして漁をしている諸君は二百海里になったときに一体どうなるのだろうか、日本政府は一体どういうふうにわれわれの漁業というものについて見てくれるのだろうか、非常に深刻に心配しておる。私はそれらのことを考えますときに、この問題は改めて政治家として大臣からもひとつ考えていただかなければならぬ問題だろうと思いますし、外務省におきましてもこの問題については真剣に取り上げていただかなければならない問題じゃないか、こう思っておるのでありますけれども、御見解いかがでございましょう。
  28. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 おっしゃるとおり、日本海のその水域で現在操業をしており、また伝統的な実績を持っております漁業者にとりましては、大変重大な関心事であり、心配もされていると思います。ただ、いまのような両国の国交関係が開かれておらない関係もございまして、この朝鮮民主主義人民共和国との漁業問題も、漁業問題だけ切り離して処理するということは非常に困難である、日本の外交全体としての方針の中でこの問題は十分検討されなければならない問題である、このように考えております。
  29. 中江要介

    中江政府委員 政府がこれまで朝鮮民主主義人民共和国との関係で表明しております態度は、これはもう日朝間の民間の接触に御努力いただいております米田先生には先刻御承知のことでございますけれども日本政府としては北朝鮮を敵視するということはないのだ、でき得ることならば事実上の関係を積み重ねていきたいという態度でございますけれども、御記憶にもございましょう、先般、松生丸事件が起きましたときとかそういったときに、私どものとりましたいろいろの措置に対して、北朝鮮側での受け答え方というものが、必ずしも私どもの期待するような方向には動かなかったというようなこともございますけれども、しかし、基本的には日本朝鮮半島全体との関係というのは、日本にとって、いま農林大臣も言われましたように、総合的に見て非常に重要な問題であるという認識のもとに、いままでのスポーツとか文化とかあるいは貿易とか、そういったものに限らずにだんだんと関係を深めることによってまず相互理解をして、信頼関係が打ち立てられないと、政府間の関係と一口で申しましてもなかなか進みにくい。しかし、私どもはそういう努力は重ねていきたい、こう思っております。  したがいまして、いまの漁業の問題につきましても、漁業問題としてその部分だけが何らか直接話をしなければ困るというような事態になりましたときに、いままでの経験からいたしますと、民間レベルでの接触あるいはそういったパイプを通じての意思疎通なり意見交換ということもありましょうし、他方、先ほど私申し上げました国連の海洋法会議には、北朝鮮の方も正式にメンバーとして参加しておりますので、そういう場こそこの海洋の問題を話し合い相互理解をするには適当な場であろうか、こういうふうにも考えておりますが、いまのところは具体的に、どちらからも二百海里を線引きをしようということが出てきておりませんので静観している、こういうことでございます。
  30. 米田東吾

    米田委員 先ほどの私の質問によりまして、いまでも朝鮮の近海には日本漁船が出漁しておるという御答弁をいただいたわけであります。  これは四十九年の統計でありますけれども、私の手元にある統計によりますれば、日本海全体の年間の水揚げ量が百四万四千トン、このうちスルメイカ、これは大臣からも御答弁ありましたけれども朝鮮の近海あるいは沿海州、ソ連の近海も含まれると思いますけれども十万七千トン、サバ類、これはほとんど朝鮮半島の近海になると思いますが三十二万五千トン、このような水揚げ量になっているわけであります。  また、五十年の統計でありますけれども、要するに水産庁が調べた資料によりますと、外国の二百海里水域内で日本はどの程度の水揚げをしているかということについての調査でございます。  外国沿岸の二百海里以内の水域における日本漁獲量、このうち関係する南北朝鮮の二百海里水域内でどの程度あるかということを見ますと、昭和四十九年は二十万九千トン、五十年が二十四万一千トン、これは他のほとんどの海域では漁獲量が減っているのでありますけれども、この南北朝鮮の近海における漁獲量は逆にふえている、こういう統計が私の手元にあるわけであります。  このように、とにかく朝鮮半島の近海には、日本漁場として漁民が絶えず出漁をしておるということでございます。国交関係、政治的な分野はどうあろうと、漁民は魚を追って朝鮮近海に出て漁をしておるという現状であります。このことはやはり大臣水産庁外務省も、現実の問題として直視をしていただかなければならぬし、これは守っていただくという立場に立っていただかなければならぬだろうと私は思います。  そういう観点で、いまの大臣アジア局長の御答弁に関連して、私は再度御質問をするわけであります。  外交関係は、確かにおっしゃるとおり切り売りしたりあるいはある部分的なことだけの外交というのはあり得ないと思いますけれども、何かこれらの関係について好ましい友好的な関係が引き出せるなら、あるいは漁業の安全なりそういうものに貢献するなら、漁民を中心にした民間ベース漁業協定なんと言うと大げさになりますがそれに近いような、それに類するようなものができてもいいんじゃないかと思いますし、そういうものについては政府としても理解をしていただくということがあってもよろしいのではないか。そういうことの積み重ねが将来、日本の外交展開に大きな役立ちになる。いままでの、かつての日本の外交の歴史を見ましても、たとえば日中においても日ソにおいても、そういう大きな民間の力というものが役立って国と国との外交関係の樹立という方向に実を結んでおるわけなんであります。これは歴史であります。そういうことからいきまして、その点については水産庁を預かる農林大臣もまた外務省も、ある程度理解を示されてもいいんじゃないかと私は思いますけれども、いかがでございましょう。
  31. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 米田委員の御意見、私も十分理解をするところでございます。したがいまして、あらゆる角度から検討も加えいろいろな努力をしてみたいものだ、このように考えている次第でございます。
  32. 中江要介

    中江政府委員 かつて国会でも外務大臣の口から、もし日朝間に民間の漁業に関する何らかのアレンジメントができれば、それには特に異存があるわけはない、政府としてはあらゆる日本国民の利益を守るのが責務であるからというような御答弁があったと記憶をいたしておりますが、その考え方にはいまも変わりはございませんし、いまおっしゃいますような日朝間の関係といいましても、これは米田委員の御質問にもありますように朝鮮半島全域の沿岸に絡まっての日本漁民の利益ということになりますと、まず朝鮮半島の南と北の問での漁業秩序というものも私どもとしては非常に望ましいということも言えるわけでございますので、いつも申しておりますように、南北間の対決が激しくならないで、むしろそこに漁業に関しましても調整ができ、また日本との関係でも、あらゆるレベルで関係が改善していくということにつきましては、外務省といたしましては外交関係の有無という差はありましても、その限度内でできる限りの努力をしてみたいということでございます。
  33. 米田東吾

    米田委員 最後に、海上保安庁の長官に来ていただいておりまして恐縮しておりますが、御質問をして終わりたいと思うのであります。  国交のないいわゆる北朝鮮、この海域への日本漁船の出漁というものは年々ふえておりますし、漁民もふえておると私は思います。しかし半面、ここにはほとんど事故も事件もないようであります。一昨年松生丸事件が黄海においてありましたけれども、事日本海海域では北朝鮮との関係においてはないようであります。私は非常に好ましいことだと思います。今後とも漁民の保護、安全操業等について、海上保安庁から積極的な漁民の指導、あわせまして警備の万全を期していただきますようにお願いをしておきたいと思いますし、お考えをお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  34. 間孝

    ○間政府委員 日本海海域におきますところの漁船操業の安全確保という点につきましては、海上保安庁といたしまして、これまでも十分にこれに対しまして関心を払い、また対処いたしてまいったところでございます。具体的には、操業をする漁船に対しまして事前にいろいろな安全操業についての指導を行いますとともに、いろいろと事件が発生いたしました際には、それに応じた措置を講じてきているわけでございます。いま先生のおっしゃいますように、今後いろいろと漁業情勢も変わってくると思いますし、それに応じて私どもの体制なり対策も考えていかなければならないというふうに考えております。  先生にこの席で一つ申し上げることができますことは、これまで従来海上保安庁の体制といたしまして、山陰の地方が飛行機によるところの空からの監視が一つ抜けておったところでございます。こういう点が日本海に対するところの海上保安庁の体制としては一つの弱点でございましたので、五十二年度の予算におきまして美保に新しく航空基地をつくることにいたしました。そしてここにヘリコプターを配置いたしまして、これによりまして日本海の空からの監視、それから救難、これに備えることにいたしております。そのほか日本海方面に配置しております巡視船、現在仙崎から敦賀までの間に実は八隻ございますが、そのうちでかなり老朽の船が多かったわけでございます。しかし、最近老朽船の代替もかなり計画が乗ってまいりまして、一昨年からことしにかけまして、いまの山陰沿岸の海上保安庁の巡視船の性能も相当によくなることになります。そういうことで実質的にはかなり体制の強化がされていくということを申し上げることができると思います。さらに、二百海里の時代を迎えまして、またそういう新しい情勢も出てまいると思いますので、それに応じた体制の強化というものはさらに研究をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  35. 米田東吾

    米田委員 終わります。
  36. 金子岩三

    金子委員長 武田一夫君。
  37. 武田一夫

    ○武田委員 最初に領海問題につきましてお尋ねいたしますが、その前に、大臣が十三日記者会見をされた席上におきまして、いま北方領土も漁業問題もどちらも傷つけることはできない、悪戦苦闘の状態である、こういうふうに述べられたそうでございますが、私、地元の石巻という漁協に帰りましたら、その話を皆さん方が聞いておりまして、非常にがんばっている姿に、われわれも大変だけれども耐え忍んでいくんだ、ひとつ勇気ある決断をもってこの問題の解決に当たっていただきたい、そういう伝言をしていただきたいということを依頼されましたので、一言申し上げて質問に入らせていただきたいと思います。  まず、国際海峡についてでございますが、現状凍結ということ、これは現行の国際法にははっきりとしたものが見当たらない、こういうわけでありますが、こうしたものを国際海峡として取り扱うという限りにおいては、私は、政府の明確な定義があるのではないか、あるはずだと思うのでございますが、その明確な定義についての統一的な見解といいますか、そういうものをまずお聞かせ願いたいと思うわけでございます。
  38. 井口武夫

    ○井口説明員 お答え申し上げます。  現状凍結した五海峡につきましては、これはわが国独自の立場から、やはり外国船舶の通航量が多い、それから大洋と大洋を結ぶという、たとえば太平洋日本海を結ぶというようなことで、国際航行上重要なルートという観点から御存じのとおり選定したわけでございまして、これは海洋法会議の国際海峡の今後でき上がるであろう定義というものとは——まだ定義自身が確定いたしておりませんから、その点ではおのずからまた別の次元の問題がございます。海洋法会議の定義といたしましては、これは従来の国際条約では直接国際海峡を定義したものはございませんけれども海洋法会議ででき上がる草案では、これは公海または経済水域と他の公海または経済水域とを結ぶ国際航行に使用される海峡ということで原則的な規定はございますけれども、定義そのものについても最終的に煮詰まる過程でございまして、その点確定的なことはまだ申し上げられないということでございます。
  39. 武田一夫

    ○武田委員 政府が一部の海峡を現状凍結する、自由航行としようとするねらいは、マラッカ海峡の自由航行が必要だということを強調するわけでありますけれども、現在その海峡におきましては、マレーシアあるいはシンガポール、インドネシアなどが通航規制に踏み切っている、こう考えますと、政府はこの三国に対して規制の撤回を求めることになるのではないかというふうに思うのですが、その点はいかがでございますか。
  40. 井口武夫

    ○井口説明員 このマラッカ海峡に面している国が三つございまして、マレーシア、インドネシア、シンガポールということでございますが、シンガポールは実は領海三海里という立場をとっておりまして、インドネシア、マレーシアは十二海里という立場をとっておりますけれども、現在、安全航行を確保して汚染防止のためのいろいろな措置をとりたいということで三国間で話し合いが行われておることは事実でございまして、先ほど三国の閣僚レベルでのこの問題についての基本的な合意というものが宣言されたことも事実でございますけれども、まだ専門家会合でいろいろ技術的に詰める問題が残っておりますし、その過程で実はわが国からも、たとえば共通海図の作製とか、潮流、潮汐の測量調査とか、航行安全上の援助とか、いろいろな話が行われているわけでございます。  それで、実は通航規制の問題に関しましては、確かに安全航行を確保する観点から、航行分離帯の設置とかあるいは船の底から海底までの距離をどうするとかいうような考え方も出ておりますけれども、実はこういう問題はやはり安全航行、海洋汚染防止の立場からの規制措置でございまして、しかも航行の自由を確保するということと両立させる限度において規制するという考え方でまとまりつつありますので、わが国といたしましては、安全航行の確保という観点からこれは受け入れて差し支えないものであるというふうに考えておりまして、海峡の妨げられざる自由な通航というものと両立し得るのではないかというふうに考えておりますので、そういう観点から通航規制の撤回を求めるという立場はとっておりません。
  41. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま外務省の方からマラッカ海峡のことにつきまして詳細説明があったわけでございますが、私からきわめて簡明直截に申し上げておきますと、あれはUKCの問題、アンダー・キール・システムと申しますか、要するに、大型タンカー等があの海峡を通過をいたします際に、喫水線以下の問題、これは座礁であるとかいろんな事故防止というような観点から関係三国が決めたものでございまして、いわゆる国際海峡に対して沿岸国としてどう対応するかという、いま海洋法会議論議されておるいわゆる国際海峡の問題とは別個の問題、喫水線以下の事故その他安全確保のための限られた範囲内での問題が三国間で合意された、こういうことに御理解をいただきたいと思います。
  42. 武田一夫

    ○武田委員 私たちは、全海域を無条件に十二海里として、国際的通航に使用される海峡は現行の領海条約の規定に基づく無害通航とするというような、こうした方法をなぜ政府がとろうとしないのか疑問なんでございますが、その点についてもう一度、こうした方法というのは政府はとろうとしないのか、反対なわけはどういうわけか、簡潔にひとつお答え願いたいと思います。
  43. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように日本は海洋国家であり海運国家でございます。さらに貿易によって国の経済の発展も図っておる。そういうような観点に立ちまして、いわゆる国際海峡の通航制度というものは現在の無害通航の制度よりもより自由なものが望ましい。そういう観点に立ちまして国際海洋法会議等におきましてもそのことを主張しておるわけでございます。したがいまして、わが国周辺のいわゆる国際海峡につきましてもそういう立場で設定をするということでありませんと首尾一貫をしないわけでございます。よその海域のいわゆる国際海峡には無害通航制度よりももっと自由な通航制度というものを要求しておきながら、自分の国においてはそれよりもきついやり方をやる、こういうことにつきましては、私どもは総合的な国益の観点からそのような措置をとっておる、こういうことを御理解を願いたいと思います。
  44. 武田一夫

    ○武田委員 無害通航というのはすべての外国船舶の通航を一切シャットアウトするというわけではない、これは明らかでありますが、こういうような問題というものは沿岸国の自国の安全保障あるいは経済、政治上のいろんな判断によって規制できるのではないか、こういうふうに考えておりますが、政府の見解はどんなものか、お聞きしたいと思うのでございます。
  45. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 無害通航ということは航行する船舶に一応与えられるわけでございますけれども、それぞれのいわゆる国際海峡の関係国からいろんな条件、規制等が加えられることになります。そういうことが沿岸国によって厳しく相なりますと、先ほど申し上げたような日本の主張、日本の総合的な国益の観点からわが方としては望ましくない、こういうことでございます。
  46. 武田一夫

    ○武田委員 われわれは、政府が非核三原則の適用というものを回避するために変則的なそうした領海制度の設定をして日本主権的な権利の放棄にいこうというような動きを感じてならない。この際、先ほど初めに申し上げましたように、こうした非核三原則という問題の厳格な適用を貫徹するという観点から、海洋法会議の決定を待たずとも、その実行を勇気ある決断をもってすべきである。ある政治家が言っておりましたが、勇気を失うことはすべてを失うことである。いま世界の注目を浴びているだけに勇気ある決断を私はひとつお願いしたいのですが、その点についての政府のお考えをひとつお伺いしたいと思います。
  47. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政府の基本的なこれに対する考え方は、第一は日本の二百海里漁業水域設定することという展望の上に立っておるわけでございますけれども、まず第一点は、領海幅員を十二海里にして、そして近年見られますところの外国漁船沿岸でのトラブル、損害、こういうものを排除したい。したがいまして、原則として十二海里の領海にする、これが第一点でございます。  それから、先ほど来申し上げるように、総合的な国益の面から海洋法会議で主張しておる基本方針に基づいてこの海域については特別な措置を講ずる、つまり現状を変更しない、これが第二点でございます。  第三点は、あくまで非核三原則は堅持する。この三つの要件を満たすように総合判断をして今回のような措置がとられた、このように御理解を賜りたい。
  48. 武田一夫

    ○武田委員 次に、わが国領海十二海里あるいは漁業水域二百海里の実施をするその両法案が今国会で成立するとしたときに、こうした法案の成立というのが対ソ漁業交渉に当たって具体的に何らかのメリットをわが国に与えるものかどうか、その点についての見解を伺いたいと思います。
  49. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、日ソ交渉をずっとやってまいりまして、ソ側と共通の土俵、共通の条件を整えて交渉に当たることが、将来、こういたします、こういう考えですと言うようなことではなしに、具体的にわが国もこうなっておりますと言うことが交渉の上で非常にやりやすいということを身をもって感じておるからでございます。
  50. 武田一夫

    ○武田委員 先日外務省が二百海里法が成立しても甘さは禁物という見出しの内容の話をしておりました。現況から考えますと、二百海里の問題がそうした交渉の決め手になるというのは疑問であるというようなことを言っておりますが、そういうことに対する大臣のお考えとしては、これは間違いなく今後の交渉において一つの大きな武器になるんだという確信がおありでございましょうか。もう一度お伺いいたしたいと思います。
  51. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、これが日ソ交渉の現在の行き詰まりを打開する切り札になるというぐあいには甘くは見ておらないわけでございます。しかし、双方の土俵が共通のものになるということは、交渉におきまして、話し合いの上からいたしましてわが方としてそこにいろいろ足場がしっかりしてくるということに考えておるわけでございまして、このこと自体がオールマイティーの決め手になるというぐあいに私は考えておりません。
  52. 武田一夫

    ○武田委員 交渉に当たって、ソ連側の態度から見て魚と領土問題を絡ませてきているわけですけれども、これを絡ませないでの妥協が可能であるかという問題についての今後の見通しをどういうぐあいにお考えになっておりますか。
  53. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これはしばしば国民の皆さんにも御理解をいただくために申し上げておるところでございますが、わが国固有の領土である北方四島の問題は、日ソの最高首脳の間で一九七三年に戦後未解決の問題を解決して平和条約の締結のための交渉を継続して進めるということが合意をされておるわけでございます。したがって、今後の日ソ平和条約の交渉にいささかの悪い影響、またわが方の主張を損ねるようなことであっては断じていけない、こういうことが第一点でございます。第二点は、北洋の一世紀にわたるわが国漁民の血と汗によって開拓されてきた漁業権益、これもぜひ守らなければならない。そういう二つの命題を達成させるために私努力をいたしておりますが、それは大変困難なことではございます。しかし私は、日ソ両国が、日ソ友好関係の将来に向かっての発展、安定的な基礎を築くのだという大局的な立場に立って話し合いをいたしますならば、困難なことではあるけれども不可能なことではない、そういう立場でこれに取り組んでおるということを御了承賜りたいと思います。
  54. 武田一夫

    ○武田委員 五月にまた再開されるわけですが、再交渉がどういう形で進められるかというのは一つの大きな注目すべき事柄であります。その際、ソ連側がいままで出してきた線引きの問題について譲歩するというような見通しがあるかどうか、その点についてお聞きしたいと思います。
  55. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 閣僚会議決定の海域指定ということでありますれば、これは絶対にのむわけにまいりません。今後、いま申し上げたような観点に立ちまして、ソ連の最高指導部にもよく日ソの将来というものを冷静に御判断を願わなければならないところでございまして、私どもも、おかげさまで国論の統一がしっかりでき上がっておりますし、超党派の御支援もいただいております。また関係業界も歯を食いしばってこの交渉を待っておる。こういう国内体制がしっかりできておりますから、私はそれを背景にし足場にしてソ連側との交渉に当たってまいるつもりでございます。
  56. 武田一夫

    ○武田委員 いま大臣が言われたように総合的に国内挙げての一致協力体制の中で交渉が期待どおりにいくことを私は祈るわけでございますけれども、しかしながら万が一譲歩がないということで妥結が思わしくないということを考えた場合に、政府としては、その際の対応も考える必要があるのじゃないかというように私には思えてならないわけでございますが、その点についてはいかがお考えでございましょうか。
  57. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 四月一日から操業できないで日本漁船は全部係船をして再出漁を待っているわけでございます。四月あるいは五月の間における休漁に対する手当て、今後の救済措置というものは、政府としても十分きめ細かくやってまいるということでございまして、それから先の日ソ交渉がまとまらない場合はどうかという予見を持って交渉に臨もうという考えは私はございません。全力を挙げてこれが打開に当たるつもりでございます。
  58. 武田一夫

    ○武田委員 力強い決意をお聞きしまして非常に心強く思います。  ソ連側が自国内での日本漁船操業を認めるかわりに、日本の十二海里内でのソ連漁船操業を認めよという提案がされておりましたけれども、これに対する政府の正式な見解をお伺いしたいと思います。
  59. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが国領海幅員を三海里から十二海里にするわけでございます。国会の御承認を得ればこれが発効するわけでございまして、領海国土の延長でもあるというようなことで、また、領海法を急いで国会の御承認をお願いをしておるという事情等もございます。私は、この十二海里領海内には、いずれの国の外国漁船といえども絶対に入漁をさせないということは明確にいたしております。その点、イシコフ大臣にも十分徹底するように私から申し上げておるところでございます。
  60. 武田一夫

    ○武田委員 わが国漁業水域二百海里内で万一外国軍隊等による演習、あるいはまた通過などは自由に行うということができるものかどうか、そういうことを現実の問題として考えることもできるのではないかと思いますが、その点についてのお考えをひとつお伺いしたいと思います。
  61. 井口武夫

    ○井口説明員 お答え申し上げます。  漁業水域設定された場合には、これは、漁業資源の保護と漁民の保護というような観点から、漁業操業というものに支障があってはならないということでございますから、もしそのような事態が起こりました場合には、やはり中止を要請するとか、そういう所要の措置が当然講じられるべきだと思っております。
  62. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいまの外務省の御答弁は、先生の御質問趣旨がよく把握できなかった点もあろうかと思うのでありますが、これはあくまで漁業水域、世間で漁業専管水域と言っておりますが、領海の外百八十八海里、この水域につきましては、水産資源保存管理、規制、有効利用、そういうような趣旨設定をされますから、外国の漁船協定を結ばない国、許可を受けないものが来てここでやるということになりますと、これは二百海里法に伴う国の取り締まりなり裁判管轄権に当たるわけでございます。しかし、そうでない一般の船舶がこれを通航するというようなことは、これは妨げない、これは漁業に関する規制海域である、こういうぐあいに明確に御理解を願っておきたいと思います。
  63. 武田一夫

    ○武田委員 次に伺いますが、サケ・マス交渉の結果が、六万二千トン、水産庁は、ほぼ満足の数量である、こういうふうなことでございますが、この結果について、そのとおり満足なものとして受け取っていいものかどうか、ひとつ伺いたいと思います。
  64. 岡安誠

    岡安政府委員 現在モスクワにおきまして、非公式でございますが日ソ漁業委員会交渉が行われております。報道されておりますように、現在六万二千トンという漁獲数量の提示がありましたけれども、これは、ソ連側の六万二千トンの説明は、ソ連沿岸二百海里の外におきまして今年中に日本漁船漁獲を許容すべき数量ということになっておるわけでございます。対比するのは非常にむずかしいわけでございますが、ことしは豊漁年でございますので一昨年の豊漁年、このときには、ソ連沿岸領海外のすべての公海におきまして八万七千トンのクオータということになっております。それと直ちに対比はできないわけでございまして、八万七千トンのクオータのうち、推定でございますけれどもソ連沿岸二百海里内で漁獲されたと思われる数量はほぼ二万トン前後というふうに想定されます。それを引きますと、六万七千トンが二百海里の外で漁獲されたということになりますが、六万七千トンという数字と六万二千トンという数字も直ちに比較は困難である。と申しますのは、やはりサケ・マス資源の状態等を勘案いたしまして、数年来漸次クオータは合意の上減らしております。毎年大体四千トンぐらいが逓減をするというような傾向にございますので、それぞれ勘案いたしますと、今後二百海里内の問題は残りますけれども、ある程度妥当な数字を提示してきたものというふうにわれわれは考えております。
  65. 武田一夫

    ○武田委員 この結果が、こういうようなものは、要するに漁期を失うよりもこういうもので妥協した方がいいんじゃないかというような動きがあったのではないかということも言われていますが、もしこれがこのままいきますと、日ソ漁業条約よりも二百海里時代の新秩序の方が優先するのではないか、それはソ連側の主張を日本は認めたということになるんじゃないかというふうに考えている方もいるようでございますが、そういう点についてはどうお考えになっておりますか。
  66. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は、きわめてソ連の態度が原則に厳しい、三月一日から二百海里水域には幹部会令が適用されておるんだ、こういう原則に立っておるわけでございまして、この原則は幾ら私が、何遍も挑戦をしたわけでございますけれども、これは壁が厚くて突破できない、こういう状況でございます。そこでとりあえず、二百海里内のわが方の実績というものは今後も要求してまいりますが、二百海里の域外、この問題につきましては代表団の諸君も非常に努力をしてもらいました。向こうの代表団の首席代表であるニコノロフ首席代表、これは当初五万七千トンを提示してまいりまして、これ以上自分の段階ではどうにもならない、こういうことであったわけでございますが、最後にイシコフ漁業大臣が、日ソ関係というものを考慮に入れられて五千トンを上積みをしてきた、そこで六万二千トンという数字が出てきた、こういう経過がございまして、これ以上の数字を幾ら粘りに粘って要求してまいりましても、諸般の状況を勘案をいたしますとなかなか困難である。いまこれに対する評価が各方面でなされておると思うのでありますが、水産庁長官からただいま申し上げたように、大体一昨年の豊漁年の漁獲実績から言っても、二百海里の外側では約七万トンの実績。それからまた、二百海里の中の数字は約二万トン。ですから、八万七千トンから域内の二万トンを考慮いたしますと、それに毎年資源保存ということで四千トン前後を漸減をしておるということになると、六万三千トン程度、こうなるわけでございます。それがイシコフ大臣の裁断で六万二千トンまで、あと一千トンの問題でございます。漁期の関係もございますし、あと五百トン、一千トンがんばってみても、漁期を逸したのではことしの目的を達し得ない、こういうことも私ども勘案いたしまして、二百海里の外の部分については、おおむね妥当な漁獲量としてこれを了承するという方向でいま代表団に訓令を出しておるところでございます。
  67. 武田一夫

    ○武田委員 このサケ・マス交渉の結果、流し網漁船等は出漁のパスポートを手に入れた。ところが、母船式船団というのは港にストップだ。こうなりますと片一方は操業できる、片一方が操業できないで指をくわえて見ていなければならないということで、業界内におけるいろいろないざこざといいますか、混乱、そういうものが起こってくるのではないか。また、スケトウの方はこのとおりであるというようなところで不満というものが出てくるということも考えなければならない。そういうことに対してどういうふうに対処をしていくつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  68. 岡安誠

    岡安政府委員 いま流し網と母船式とで差があるようなお話がありましたけれども、サケ・マスにつきましては、これはクオータが決まり、手続が進みますれば、母船式、流し網すべて許可証を発給いたしまして出漁できるわけでございます。いま御指摘のスケトウその他を目的といたしますほかの漁船につきましては、当然これは暫定協定が結ばれなければ出漁できないわけでございます。これも五月初旬に予定されております次回の会談で決着がつくものと考えております。私どもは、やはり漁期がございますので、サケ・マスについて出漁できるときにはこれを出漁させるという方針で臨みたいと思います。
  69. 武田一夫

    ○武田委員 これは大臣にひとつお願いというか提案なんでございますが、私はあちこちの漁場あるいは漁業関係者等にお会いいたしますと、こうした漁業交渉が長引いているためにそういう方々の心労といいますか、苦労というのは極限に近い状態、そういうものを感じます。ある漁民の方などは、私のこの血走った目を見てほしい、こういうふうに言っておりました。こういうような状況の中で、われわれにもっと直に国が状況を説明してもらえないものか。あるいは今後の考え方針等というものについて懇談をしながら、ひとつわれわれの考えも、できれば大臣中心になって、たとえば釧路その他、東北で言えば八戸あるいは石巻、塩釜という大変な地域だけでもまずそういう行動を通して、とにかく国を挙げてのそうした総力戦においてこの問題を解決するのだという決意と行動というものをわれわれにも示してもらいたいという声を伺ったわけでありますが、そうした漁民の切なる願いというものも何らかの形で吸収しながら、次回に行われるでありましょう交渉一つの大きな材料といいますか、そういうものにしていってほしいという私個人の考えもあるのでございます。そういう考え大臣の心の中にあるかどうか伺いたいと思うわけでございます。
  70. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 関係漁民の不安、また困窮の状況、私は本当にはだで感じ、そのとおりに受けとめておるわけでございます。したがって、各関係業界の代表の諸君も、日ソ交渉の顧問団として訪ソを願い、常にその代表の諸君とも毎日情報の交換をし、また交渉の推移も伝えまして、交渉に当たってきたわけでございます。また、こういう交渉中断というような事態になりましたので、顧問団の代表の諸君も直ちに帰国を願って、それぞれの漁業団体にその経過等も十分御報告を願い、業界の方々の御理解を得るようにいたしておるわけでございます。と同時に、政府としても四月、五月の間のこの休漁の問題につきましては、できるだけの救済措置を講ずるということで、いち早く閣議でも方針を決定いたしまして、月内にも緊急の低利のつなぎ融資をやり、問題が全部片づいた後で本格的な救済をするという二段構えでその方もやっておるわけでございます。私自身が塩釜、石巻あるいは八戸、気仙沼、北海道、それはいまにでも飛んで行って事情説明をしたい、こう思うわけでございますけれども、毎日こうして大事な領海法、二百海里法を皆さんの御協力を得てやっておるということでございまして、それができないことを非常に私も残念に思っておりますが、気持ちとしては、関係漁民の心情を思いますとき、全くそのとおりだと存じます。
  71. 武田一夫

    ○武田委員 もう一問質問して午前の部を終わらしていただきたいと思いますが、いよいよ二百海里時代を迎えるに当たりまして、二百海里時代の課題となるべきものはどのようなものがその課題となっていくか、考えられている点がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  72. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、基本的に海洋を分割支配をする、こういうようなことは、人類全体の面から考えますと、いずれ反省の時代が来るのではないか。なわ張りを決めて、そして十分資源有効利用もできない。そういうようなことで人類全体の食糧問題に果たして寄与できるかどうかということを考えますとき、将来領海以外の水域というものは、これを国際的に共同管理をする、そして、資源保存有効利用を人類全体のために図っていく、こうあるべきだと思っておりますが、現実の情勢というものはなかなかそうはいかない、二百海里、二百海里と大勢が動いておる、こういうことでございます。したがいまして、わが国としては漁業外交を強力に展開をしてできるだけ伝統的な実績確保に努める、一方において未開発の新漁場の開発あるいは未利用資源有効利用考える、南氷洋のオキアミのようなものまでわれわれは考えていく必要がある、またイワシ、サバというようなミールだとか魚かすにしておったものもこれはりっぱな大衆魚でございますから、これを食ぜんに供せられるように流通、保蔵、加工の問題、こういう問題も十分必要な施設等もやりまして有効利用考える必要がある、またさらに、これは基本的な問題でございますが、日本列島周辺の沿岸漁場開発整備をし、資源をふやし、また育ててとる漁業栽培漁業等振興して、そして海外で削減される部分日本列島周辺でこれを補完をする、こういう方向で取り組んでいく必要がある、このように考えております。
  73. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃいま大臣答弁なさった問題点を午後から質問させていただくことにいたしまして、午前の部はこれで終わらせていただきたいと思います。
  74. 金子岩三

    金子委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後四時五十五分開議
  75. 金子岩三

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  76. 武田一夫

    ○武田委員 まず最初に海上保安庁に伺います。  最近のことでございますが、福島県の新栄丸という三百五十トンの北転船が幌筵島というところにある柏原というところに出かけていったわけであります。約二十人の乗組員が乗っておりまして、これは同僚がけがで現地で手当てしていたのが治った、迎えに来い、こういうわけで出ていったのですが、この地は当然ソ連の領内でありますので、向こうへ行くライセンスはいただいたのですが、こういう緊張した状況でありますので、非常に不安な面持ちで石巻という港から乗組員が出港したのだそうですが、こういう非常時にはもっと保安庁、保安部あたりの同行などを願って安全を保障してもらえないものかという訴えがあったわけであります。こういう問題につきましてはどういうふうに考えられているのか。北転船でございますから、途中においてもし連絡の不徹底等によって、ときどきソ連の方ではそういうことがあるようでございますので、向こうの巡視船などに拿捕されるというようなことがあったとすれば、これはいろいろな理由をつけたとしても大変な事態になるのではないかという心配があって、たまたま私が行ったときは出発した、それで最近無事に帰ってきたということは聞いておりますけれども、今後の問題を考えると、こういう問題に対してはやはり慎重に取り扱うべきではないかと思うのですが、いかがなものでございましょうか。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕
  77. 間孝

    ○間政府委員 いま先生お話のございましたいわき市の船主の所有しております第二十一新栄丸の乗組員の引き取りの問題につきましては、この船が、乗組員がけがをいたしまして、三月二十八日に柏原に緊急入域をいたしまして、そこで患者を下船させた。そしてそのとき、四月の十九日あるいは二十日に引き取りに来るように、こういう指示をされてきたわけでございまして、いま先生のお話のございましたように、船主の方といたしましてはこの引き取りに当たりまして、こういう情勢のもとで不安が感じられたのだろうと思います。私どもの方に相談が実はございました。その際私どもの方から申し上げましたことは、こういう患者の治った方の引き取りという問題になりますと、海上保安庁の巡視船を出して引き取りを行う、そういうことには当たらない問題でございまして、非常に緊急の場合、けが人が出たというふうな場合に手配をするというのが私どもの巡視船の任務でございますが、一たんもうすでに治った方の場合に巡視船がみずから引き取りに出るというふうなことは、ちょっとこれは私どもとしていたしにくいということでございましたので、その辺の事情お話し申し上げまして、しかしこういう時勢でございますから、なおよく安全を確認した上でおいでになられた方がよろしいということを考えまして、東京にありますソ連の大使館の方に事前に船主から接触されて、そうして大使館の方の何らかの措置をとってもらった上で行かれるようにということを助言を申し上げたわけでございます。船主の方の方ではソ連の大使館の方に行かれまして、ソ連の大使館の方もその事情を承知されて、大丈夫であるというふうな話をされたそうでございまして、その証明書をとって持ってこられた。そこで私どもといたしましても、そういう措置がとられておれば、従来の例から考えましてもこれは大丈夫であるというふうに判断をいたしまして、船主側の方の措置にお任せした、こういう次第でございます。やはりその辺に、海上保安庁の巡視船の、こういう治った患者の引き取りにつきましては、業務上の一つの枠というものがございますということと、それから今回の場合につきましては、確かに先生いまおっしゃったような特殊な事情はございましたけれども、念のためソ連大使館にも接触をしていただいた上で、十分その安全を確認した上で出ていただいた、こういう事情でございますので、その辺のところをひとつよろしく御了解をいただきたいと存じます。
  78. 武田一夫

    ○武田委員 私は善意にとりまして、こういう事態で保安の体制が非常に手薄なのでやむを得ざるものではなかったのか、こういうふうに思っているのですが、今後二百海里水域となりまして監視する場所は非常に広くなってまいりますと、私は、そういう現在の体制の中ではどうも不十分だと思われる点が多少あるわけですが、現在のその保安庁の体制で、そうした今後の日本海周辺の安全保障という問題、その問題についての十分なる体制というのはいまあるのか、あるいはまたこれは非常に手薄だということで、これからその問題については鋭意努力しながら充実しなければならないような状況なのか、その点について伺いたいと思います。
  79. 間孝

    ○間政府委員 新しい海の事態を迎えまして、海上保安庁といたしまして体制の強化ということは今日最も大きな問題になってきておるわけでございます。現在私どもは巡視船を三百十隻、航空機は三十四機持っておりまして、これでわが国沿岸海域秩序の維持と安全の確保に当たっておるわけでございますが、確かにこの領海の範囲が拡大をする、まして二百海里という漁業専管水域設定されるということになりました場合に、現在持っておる船艇あるいは航空機の勢力をもちましては手薄であるという点は、これは私ども十分に認めておるところでございまして、実は私ども、すでにこういう新しい海の秩序を迎える今日の事態におきまして、それに対しての体制の強化ということは、本年度の予算におきましてもすでに一部これを計上をしておりまして、ヘリコプターを搭載する大型の巡視船とかあるいは大型の航空機とか、高速の巡視艇とか、こういったものにつきまして増強の措置がとられておるわけでございます。しかし、これは今日のようなこういう二百海里の専管水域設定というものまで目前のものとして予想したものではございませんで、いよいよそれが現実のものとなってまいりました今日におきましては、この計画自体につきましてももう一度よく練り直さなければいけないというふうに考えておりまして、目下鋭意その作業を進めておるところでございます。
  80. 武田一夫

    ○武田委員 次に移りますけれども、去る十五日、政府が二百海里問題に伴う漁船関係業者の労働者の雇用対策などにつきまして関係省庁と連絡会議を持ったようでありますけれども、その中でどういうことが取り上げられ、そしていまどういうような作業、対策を講じられているか、その問題について最初に伺いたいと思います。
  81. 岡安誠

    岡安政府委員 十五日に閣議了解がございましたのは、北洋漁業に関する当面の対策ということでございまして、三月中に出漁できませんでしたニシンの漁船のほか、四月に入りましても出漁ができなかった各種の漁船につきまして政府として所要の救済措置を講ずる、本格的な救済の措置を講ずるということを決めたことが一つと、しかし本格的な救済措置は少し先にならざるを得ないので、とりあえずこれらの漁船に対しまして特別の緊急融資措置を講ずるということを決めたわけでございます。現在私どもいろいろ調査をいたしておりますが、三月それから四月両方通算をいたしまして出漁不能等に陥りました漁船の数は延べで約二千隻、実数で約一千九百隻ぐらいございます。それらの漁船に対しまして必要な緊急融資をすべく、現在大蔵省等と折衝いたしております。この特別の緊急融資はできるだけ早くできれば今月中にも概要を整えまして実施をいたしたいと思っております。  三番目は、関係の業界、たとえば水産加工業者等に対しましても、影響の度合い等に応じまして所要の措置を講ずることといたしておりますので、私ども漁船の状況とあわせまして現在調査をいたしております。調査ができ次第、これらにつきましても必要な措置を講じてまいりたい、かように考えております。
  82. 武田一夫

    ○武田委員 いま二、三のそういう処置についてお話ございましたけれども、現実問題として具体的にたとえば加工業者が大変な苦労をしている原料不足、それに、たとえば石巻の場合なんかを例にとりますと、大体七割程度は銀行の融資などもできないような状態で苦労している。これは大変でございます。それに船主はたくさんの乗組員を抱えている。これも大変です。また乗組員等も不安の中でどうなるものかと、もう一切のいろいろな要素が絡まっているわけでありまして、そういう方々にこのくらいの期間でこういうようなものが必ずなされるというような確固たるものが出てもよいころではないかとわれわれ思うわけです。というのは、午前中にも申し上げましたけれども、そういう方々に会ったときの話などでは、もうどうしようもないという雰囲気でございまして、これがもし万が一もう一カ月続いたとしたならばわれわれはどうしたらいいんだというのが偽らざる心境でございますし、そういう意味で、もっと具体的に、たとえば休業補償の問題をどうする、ここまでいっている、あるいはまた加工業者に対するそういう問題はこういっている、あるいはまたその船主に対する問題についてはこういっているというような点から、ひとつ具体的に、現在まででわかる範囲で結構ですが、その状況をお話し願って、不安の中にも一筋の安心感を与えていくような方向答弁をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  83. 岡安誠

    岡安政府委員 多少具体的に申し上げますと、ニシン船につきましてはもうすでに三月中の出漁不能というものが三月の初めにわかりましたので、私ども、ニシン船の仕込み資金その他につきまして三月中に決済を要するもの、その他必要な資金につきましてはすでにあっせんをいたしまして融資をいたしております。四月以降の出漁中止船の分につきまして、先ほど申し上げましたように特別の緊急融資措置を講ずるということで、先ほど申し上げましたとおりそれぞれ調査をいたしております。私どもは、後は、どのような範囲の需要に対しまして、どのような金利でもってどのような金融機関から金を貸すかというようなことにつきまして、現在大蔵省と折衝中でございますので、これはもう今月中にもはっきりさせまして、不安の解消に努めたいと思っております。  ただ、加工業その他関連産業につきましては、影響の度合いが非常に複雑といいますか、明らかでない点もございますので、鋭意調査をし、取り進めておりますけれども漁船に対する措置よりも若干おくれるかと思いますが、もちろんこれもなるべく早く対策を明らかにしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  84. 武田一夫

    ○武田委員 正直言いまして、この問題はどちらかというと加工業者の方が深刻です。ですから、若干おくれるというような話がありますけれども、この問題は特に東北、北海道、それから焼津等がありますけれども、ひとつ緊急な何らかの措置を講じていただかないと、大変な事態になるということを私どもははだで感じておりますので、これは答弁は結構でございますが、ひとつ善処をお願いしておきたいと思うのでございます。  次に、こうした大変な事態の中で、最近魚の値段が非常に高くなっているということが主婦の間でささやかれているわけであります。築地市場の調査によりますと、たとえばアジが前年度同期の約二倍くらいの高値になっている。それから、サバが三倍だとか、あるいはまたイワシが六割アップしているとか、塩ザケが一キロ当たり千百円が千四百円になっている等々の話が出ております。サバの水煮のかん詰めが何と二倍になっているということも聞いておりますけれども考えてみますと、こうしたものは二百海里や北洋漁業関係ないようなものばかりでございます。そういうわけで、これはどうも二百海里ということを盾に、また、いつか来た道はなんというその道に行きかねない、あるいは入っているんじゃないかということがちらちら心配の種となっているわけでございますが、そういうような状況がいまどうなっているか、調査あるいはまたそういう報告等がないかどうか、まず初めに伺いたいのでございます。
  85. 岡安誠

    岡安政府委員 魚価のお話でございますが、確かにスケトウダラ等につきましては、一部の産地において異常に高値を示す、多少投機的な要素があるのではあるまいかというようなことを心配して指導もいたしておりますけれども、一般的な魚価について申し上げますと、ことしの一月、全魚種につきましての価格は、対前年比一〇八ということで、一応落ちついているものと思っております。その後二月、三月でございますけれども、魚種によりましては、たとえばスルメイカ等につきましては若干高値を示しておりますが、そう急騰を示しておるというようなものはないというふうに思っております。ただ、先ほど申し上げましたとおり、スケトウダラ等につきまして確かに私ども異常と思われるような価格を示しております。私ども、これらにつきましては、現地におきましてそれぞれ調査を命じております。異常な高値になりますと、投機的な買い付けをした業者が将来いろいろ倒産等のおそれも十分あり得るわけでございますし、ほかの魚価をつり上げるというような要素もございますので、厳重に警告をいたしているという次第でございます。
  86. 武田一夫

    ○武田委員 私は心配するわけですが、どうもモスクワの方なんかに出かけていって魚を輸入しようとする動きが出ているようだ。大手の水産業者の方々などはつい口を漏らしまして、いまのうちにひとつ云々というようなことを言っているというようなことも新聞その他で見るわけでございますが、そういうことがいつのときでも、前回の石油パニック等にあったような問題を引き起こしているわけでございます。この間は燃料でありましたが、これは食べ物でございまして、そういう問題が万が一金の力によって、大手の商社によって何らかの操作が行われるとすれば、これは問題であります。何か聞くところによりますと、大体どんな魚種でも市場に出ている三割を操作すれば、これはどうにでもなるというふうにさえ、価格の操作ができるということも言われているわけでありますから、私はあえてこういう状況の中で、魚価の状況を逐次調べながら対策を講ずるという警戒体制といいますか、そういうものをしきながら消費者にも安心して魚が届くような体制が必要じゃないかと思いますけれども、そういう体制をいまとっておるのか、あるいはまたとろうとして努力しているのか、その点お伺いしたいと思うのです。
  87. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 新聞等で一部、いろいろ報道されておるわけでございますが、私がモスクワに行っております間、大手漁業会社とか商社とかのモスクワにおける蠢動と申しますか、そういうものは全然ございません。また御承知のように、スケトウダラ等はIQ品でございまして、政府は、いま日ソ交渉が重大な局面に立っております際に、この状態を奇貨としてそういう商売をし、暴利をむさぼろうというようなことは絶対に許しません。  なお、長官からも申し上げましたように、国内における魚の不正常な値上がりというものは厳に戒めるように指導を加えておるところでございます。
  88. 武田一夫

    ○武田委員 最近の「エコノミスト」その他雑誌の中では、大手の水産業者が非常にもうかって笑いがとまらないということが載っております。魚価が軒並みの暴騰をしたための現象であるというようなことがありまして、A社が昨年期の五倍に当たる二十一億の利益を上げているとか、B社は七倍の七十億もうけているとか、あるいは赤字であったC社が一挙に二十七億の黒字に転じておる等々の報道がされておりますので、一般の消費者等は、こういうものと兼ね合わせるとやはりあるべきものがあったのかというような疑いの眼でじっと見ている。現実に買いに行くと高いというようなことがございますが、私はこういうような疑いが万々が一ないとしても、今後の一つの大きな問題点として、しっかとしたこういうものに対する指導監督をお願いしたい次第でありますが、その点、決意のほどをまずお聞かせいただきたいと思います。
  89. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま申し上げたとおりでございまして、私は、こういう日ソ漁業問題で難局に立っております際に、反国民的な行為を断じて許すべきでないという態度で、厳しく行政指導もし、臨んでいく考えでございます。
  90. 武田一夫

    ○武田委員 もう一つ関連ある問題ですが、便宜置籍船というものが商船の場合は慣行として認められておるそうですが、漁船の場合はどうなっているわけでしょうか。
  91. 岡安誠

    岡安政府委員 御承知のとおり、一般の商船等につきましては、税金の関係その他のこともございまして、パナマとかいろいろなところで非常に優遇されるところに籍を置きまして実際はいろいろ運用をしているという例がございます。漁船につきましてそういうことがあるかという御質問でございますが、一般的にわが国漁船がそういうことが行われておるとは考えておりませんけれども、よく調べてみたい。国籍が日本にございませんので、水産庁としてはなかなかわかりにくいわけでございますけれども、どういうような資本の系統でどこで活躍しているかというような問題がございます。ただ、私どもはそういうものは操業の方ではすべて外国船として扱っておりますが、あとはそういう船籍で活躍した船の漁獲物がどういう形で日本に入るかという形にしか私どもとしては把握していないわけで、もしわかれば運輸省とも相談をいたしまして調べてはみたいと思っております。
  92. 武田一夫

    ○武田委員 風評ですが、韓国の方にもそれが出没しているらしい。事実、船を売るものがいれば、船をまるまる買いたいというような働きかけが東北の方でちらっとあるわけです。そういうことですから、これはちょっと調べておいて——これからもう見込みがない、韓国の方に売ってしまえ、そうするとそれは向こうで自由に操作できるようです。ですから、これは危険性があります。たとえば船をまるまる売ってやるというようなこと、あるいはまた共同事業というような形でそれが向こうの方の韓国籍になってしまって、それで日本の方でそれがうまくまた品物を持ってくるというようなことになったら大変な問題になるんじゃないかという気がしてなりません。ですから、これは調べておいて、また今後もこういうことがありそうだということをとどめておいて、ひとつ警戒を怠らないようにしてもらいたいと私は思うのです。
  93. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 武田さんの御質問はどういう意味合いであるかよく理解しにくい点があるのですが、ソ連の二百海里の関係におきましては、伝統的な実績を持っておる、そして国交のある日ソの間で漁業交渉をやっておるのでありますが、韓国ソ連との間に国交もない。でございますから、交渉もできない、協定も結べないということでございますから、これは仮に韓国籍にしたところでますます日本漁船よりも立場は悪いわけでございます。いまのお話は、かつて韓国に商社等が仕込みをして、そして南方マグロ等をやった、日本にそういうマグロを陸揚げをする、そういうことがございまして、これも日韓の間で話をつけましてそれを正常化するようにいたしたわけでございます。  今回の日ソ交渉、現在日本漁船が四月一日から休漁のやむなきに至っておる、そういうようなことで、ほかの国へ日本操業できない船が船籍を移してやっているなんということはちょっと常識で考えられない問題でございます。
  94. 武田一夫

    ○武田委員 次の問題に移りますが、沿岸漁業対策ですが、今後の一つの大事な問題は沿岸漁業の問題だと思います。ところが、御承知のとおり高度経済成長の一つの影響としまして、沿岸漁場が非常に汚されております。きれいな水がどんどんなくなっているということで、私はこうした問題が発展の大きな妨げになってきているということを考えたときに、この海洋汚染の危機というものに対する一つの大きな問題というものが取り上げられてくると思います。その問題につきまして、まずどういうふうな対策を講じながらこれを発展の方向へと変えていくか、一点御質問いたします。
  95. 岡安誠

    岡安政府委員 確かに海洋汚染によりまして沿岸漁場の生産力が一時低下をするという現象がここ十年方あったわけでございます。私は実は環境庁におったのでございますけれども、やはり汚染防止の見地から水質汚濁防止法というものが制定され、陸上よりの汚染を根絶するということで、あらゆる規制の強化をしてきたわけでございます。もちろんなかなか根絶というところまではまいりませんけれども、従来のような汚染の進度は明らかにこれは食いとめられたというふうに私ども感じておりますし、非常に汚染が進んでおると言われました瀬戸内海におきましても、最近は昔に比べれば非常に清浄化されつつあるというふうに考えております。もちろん、私どもまだこの状態で満足しているわけではございません。今後とも沿岸漁場確保のためには汚染の防止に万全を期さなければならないと思っておりますし、また埋め立てその他によります好漁場の喪失もできるだけこれは避けるという方針で努力をいたしたい、かように考えております。
  96. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ちょっとこの場をおかりしまして……。  超党派議員団がいまモスクワに行っておりまして、ぜひブレジネフなりコスイギンなり、あるいはポドゴルヌイ議長に会いたい、三首脳のだれかに会いたい、こういうことで交渉しておったわけでございますが、ただいま電報が入りまして、二十一日午前十時十分に第二極東部長から重光大使に対しまして、本日午後四時、ポドゴルヌイ議長と議員団一行が会見するということでありますので、御報告をいたしておきます。
  97. 武田一夫

    ○武田委員 それから同時に大事な問題は、とる漁業からつくる漁業へ、これは何度も言われておるわけでありますけれども栽培漁業あるいは養殖漁業といいますか、特に栽培漁業の状況はどうなっておりますか、簡単に現況をお話し願いたいと思います。
  98. 岡安誠

    岡安政府委員 栽培漁業というのは、種苗をつくり、これを放流をし自然の海流によって育てて漁獲を上げるという方針でございまして、技術的な問題もございますが、現在それぞれ技術的に可能なものから順次拡大をいたしております。まず県にセンターをつくりまして、近海といいますか沿岸に近く生息するような魚種を中心にして栽培漁業を進めております。現在大体二十県等につきまして建設中でございます。一部稼働しておるものもございます。今年度におきましては秋田県に新しくこのセンターを設けるということで充実をいたしております。さらに、沿岸ものよりも少し沖合いに生息するような魚種等も中心にして、五十二年度から三カ年計画をもちまして北日本栽培センターを設けたいと思っております。従来は暖流系の魚を中心にして瀬戸内海の栽培センターを国営でやっておりますけれども、今回は寒流系の魚を中心にして北日本に国営の栽培センターをつくるというような予算も認められているわけでございます。御承知のとおり、今後はつくる漁業栽培漁業というものを沿岸漁場の整備とあわせまして私どもは力を入れてやってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  99. 武田一夫

    ○武田委員 私は二、三の水産試験場を訪ねまして状況を聞いてみました。きょうは私は二つ取り上げたいと思うのですが、一つは、たとえばアイナメのような魚は二、三十キロぐらいしか移動しない、ところが、ほかのは放流しましてどこへ行っちゃったかわからない、そうすると、その県だけで問題解決ができないということで、広域的な中でその利害というものをどうするかという問題が一つ出てきている。これはどうもうまくいっていないようです。これは早急に何らかの対策を講じなければならないと思うのですが、まずこの一点に対する対策。  それからもう一つは、どこへ行っても技術者の不足というのは、これは農業と同じように悲しい宿命といいますか、ある試験場に行きましたら、肝心の水産大学等で学んだ技術者がどこへ行っているかわからないというのです。現実にそこには一人もいません。ここ二年ぐらいは来ていないというのです。そういう立場に携わる肝心の方々が、これもデータをいただきましたが、昭和四十七年に百三十四人の就職決定者のうち水産関係がたった五十二人、五十一年度は百二十二人のうち三十一人、あとはその他というのは何だかわかりませんけれども、明らかに水産関係のところに行ったというのはわずか四分の一しかいないというような、何かむだのような感じさえする。現実に職場に行きますと、そういう人はもっと欲しい、こういう人はやはり長年その場所にいてもらわないと困るのだという切実な悩みがあるわけです。  こういう二点に対して今後どういうふうな対処をしていくかお聞きしまして私の質問を終わりたいと思うのですが、その点よろしくお願いします。
  100. 岡安誠

    岡安政府委員 確かに回遊の範囲が広いような魚につきましては現状ではなかなか県営センターになじみにくいという点もございます。県営センターは、先ほど申し上げましたように沿岸に近いところで回遊するような魚を中心に現在運営をいたしておりますが、将来は県営センター間の連絡をもう少し強化をいたしまして、お互いに有無相通ずるといいますか、そういうような運営の仕方もあるというふうにも考えておりますし、それから、先ほど申し上げましたように、国立のセンターというものも回遊範囲の広い魚につきましては考えたいというふうに思っております。  枝術者の点につきましては、御指摘のとおり、関係の卒業者が必ずしも少ないとは私ども思っておりません。関係の学校からは相当程度の卒業者を見ておりますが、現状は、むしろ求人の方がある程度少ないといいますか、職場が少ないということではなかろうかということで、主にほかの職場を求めまして枝術者が流出をしているというのが現状でございます。しかし、御指摘のとおり、将来私どもはいまより相当程度の求人といいますか枝術者を抱えなければならない現状でもございますので、将来計画をできるだけ早く立てまして、養成等につきまして時間的な差といいますか、タイムラグがないように心がけたいと思っております。現在は確かにほかの職場の方へ流出する度合いが多いというふうにも考えております。
  101. 武田一夫

    ○武田委員 では終わります。
  102. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 神田厚君。
  103. 神田厚

    ○神田委員 農林大臣には、大変なモスクワ交渉からお帰りになりまして、さらに連日遅くまでこの審議に出ていただいておりまして、心からその労をねぎらうものであります。  ただいま大臣おっしゃいましたように、超党派議員団が議長にお会いできたというふうな電報がございましたが、超党派議員団の目的といたしますのは、友好推進とわが国実績確保というふうないろんな問題を含めて行っているわけでありますが、そういうふうなものの内容につきましては何かお話が入っておりますでしょうか。
  104. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 超党派議員団は、御承知のように、国会決議を踏まえまして、あの衆参両院でさきに決議されました趣旨向こうに伝達をする、ソ連の首脳部にじかにこれを訴える、また、国民世論等につきましてもよく国民の声を反映せしめる、また、関係業界の窮状等も訴える、そういう立場で非常に日程等も詰まっております中を御努力を願っておるわけでございまして、私は、この超党派議員団の皆さんがおいでになったことは非常に大局的な意味で成果をおさめつつあるものだ、このように考えております。
  105. 神田厚

    ○神田委員 特に日本国会におきまして領海法案、それから二百海里法案——これは準備されておりますけれども、そういうものが出されるという前提の中で会っているというような状況でございまして、それに対応するソビエト側の対応も、やはり国会決議を踏まえて行っておりますけれども、なかなか厳しいものであるというふうに私ども考えるわけでありますが、農林省及び外務省では、そういうことにつきましては特に新しい事態についての国会超党派派遣議員団との連携というものはおとりになっているのでありましょうか。
  106. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 去る十六日に、私モスクワをたつ前に、ちょうど一時間半ぐらい前にモスクワにお着きになりました。私は早速大使公邸におきまして、超党派議員団の方々にいままでの交渉の経過を相当詳細に御報告を申し上げ、また御意見等も伺ってまいったわけでございます。  なお、三月の段階から終始私どもとともに御努力を願っております重光大使が現地におられまして、ソ側の態度であるとかいろんな情報その他につきましても毎日議員団の方々には御連絡をとっておる、このように存じておるところでございます。
  107. 神田厚

    ○神田委員 どうもありがとうございました。  それでは私領海法案につきまして御質問をまず最初にさせていただきたいというふうに思っているわけであります。  領海十二海里がいま世界の一つの大勢になってきておりまして、日本沿岸漁業を含めて総合的な国益を守るという立場から十二海里の領海を早急に実現しなければならない状況になってきているわけであります。この前、同僚の稲富委員、さらには参議院予算委員会におきまして和田春生委員から私ども考え方につきまして御質問を申し上げておりますけれども、その質問を踏まえました上で私これから質問をさせていただきたいというふうに考えております。  まず第一は、これまで十二海里に消極的というか、むしろ三海里を固執していた政府も、最近におけるソ連漁船団による三海里領海に接した漁獲わが国沿岸漁業が甚大な被害を受けている、こういうような問題から、ようやく十二海里の領海に踏み切ってこの領海法案を現在出してきているわけであります。まず最初に、この領海法案につきまして私どもが疑問として考えておりますのは、領海の幅を狭くする、いわゆる政府案で特定海峡をつくっておりまして、津軽海峡など五つの海峡、水道について、十二海里ではなくてその部分については三海里にしている、このことが第一に日本主権が当然及ぶ領域をみずから狭くしている。したがいまして、われわれが享受すべき国益を大きく損ねるというふうなことを考えているわけでありまして、本当にこういうふうな形でいいのかどうかという問題を一番問題にしたいというふうに考えているわけなのであります。これはこの前の質問の中でも平行線をたどっていた質問でございますけれども、私どもは十二海里にしておいても差し支えがない、こういうふうに考えているのですが、その点御答弁をお願いしたいと思います。
  108. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいまの三海里から領海幅員を十二海里にするこの法案を立案いたしますに当たりまして、三つの点を中心に私ども作案をし  ておるわけでございます。  第一点は、わが国が海洋国家であり海運国家である。そして貿易によって国を立てておる、こういうような立場からいたしまして、国連海洋法会議におきましては、終始いわゆる国際海峡につきましては自由な航行、無害通航よりもより自由な通航制度というものを主張し続けておるわけでございます。そういうような立場から、日本海洋法会議における主張に相反するような、自分はこれに規制を加える、海洋法会議ではより自由な航行を主張する、こういうようなことであってはいけない。そういうような観点から、総合的な国益を守るということが立案に当たっての第一の柱であるわけでございます。  第二の点は、近年日本の近海におきまして外国漁船相当無理な操業をやっておる。そのために日本沿岸漁業者操業の制約を受ける。また漁網、漁具その他の損害を受ける、資源も荒らされる、海上の投棄等によりまして漁場が荒廃をする、そういうものを早急に排除して沿岸漁業を守らねばいかぬ、これが第二の点でございます。  第三の点は、わが国が国是として堅持しておりますところの非核三原則はあくまで堅持してまいる、こういう観点に立ちまして立法化を進めてまいった、こういうことでございますので御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  109. 神田厚

    ○神田委員 この海洋法会議の問題でございますけれども、私どもはこの海洋法会議がいわゆる領海十二海里というものを全然取り上げてこないというふうな形では見てないわけであります。したがいまして、その特定海峡につきましてのいわゆる見通しといいますか、そういうふうなものが海洋法会議の中で一体どういうふうな取り扱いになるのかということを考えてまいりますと、むしろ私どもは、ここでいわゆる特定海峡について十二海里を主張しておいて、さらにそこにいわゆる特定な何らかの工夫を施すというふうな考え方をしておく方がベターである、こういうふうに考えるわけでありますが、その辺のところの海洋法会議の見通しというものにつきましてどういうふうにお考えになっておられるのでありましょうか。
  110. 井口武夫

    ○井口説明員 お答え申し上げます。  海洋法会議では国際海峡の定義というものがございまして、公海と公海を結ぶ国際航行に使用される海峡という定義がございます。ただし、この定義も、原則的な点では大体固まっておりますけれども、最終的にはさらに煮詰める必要がございます。そういう国際海峡に関しまして、妨げられざる通過通航ということで、あらゆる船舶に関しまして航行の自由な権利を行使するということで通過通航制度というものが確立しつつありますけれども、これもまだ新しい制度でございまして、詳細についてはさらに審議中ということでございます。ただ方向といたしましては、従来公海と公海を結び、かつそういう海峡におきましても航行に十分な公海があったわけでございますから、それをなるべく今後も維持するということで、一方では沿岸国の立場もありますけれども、国際社会全体のために国際交通の自由を確保するという観点から、一般領海よりも自由な航行ということでございます。したがって、この通過通航制度というものに大体海洋法会議でも収斂しつつあるということは事実でございまして、今後そういう方向で最終的に案文が固まっていくということが期待されますけれども、まだこの時点においては固まっておりません制度でございますから、その点さらに交渉中ということでございます。
  111. 神田厚

    ○神田委員 私は海洋法会議の中で、政府海洋法会議の結果を待っていろいろやりたい、こういうふうなことをずっと言っているわけでありますけれども、特定海峡の十二海里の問題につきましては、もうすでに海洋法会議のものを先取りして、先に日本の方が特定海峡の問題、いろいろありますが、後で御質問申し上げますけれども、それにしましてもそこをも領海部分とすべきである。海洋法会議の決定がどういうふうな形になろうとも、日本といたしましてはそういうふうな形でやっていくということの方がよいと考えるわけであります。海峡の中に公海部分を残すということが、世界的な世論の支持を得られるということは私は考えられないと思うのでありますが、その点はどういうふうな御認識でございましょうか。
  112. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 民社党の方々の一貫した御主張、私もよく勉強さしていただいておるわけでございますが、海洋法会議の動向を見て先取りをしてまずやったらどうか、こういう御意見でございます。私どもは、海洋法会議論議方向、これがだんだん、ただいま外務省の方から御説明がありましたように、無害通航等よりももっと自由な通航制度という方向に収斂されつつある、固まりつつあるというようなこと等を考えておりまして、まず当面わが方としては、いままで海洋法会議でそういう主張をやってきておるわけでございますので、御提案申し上げておるような現状を変更しないということにいたしまして、そして海洋法会議で幸いにしてそういう方向で、いわゆる国際海峡に対する国際的なコンセンサスが得られた場合におきましては、わが方としてはその時点においてこれに対応していく、こういうことで少しアプローチの仕方が違うということでございます。
  113. 神田厚

    ○神田委員 大変重なった質問で失礼でございますけれども、私どもはやはり当分の間こういうふうな形で進んでいくというふうな形でありますけれども、問題はいろいろ考えられるわけであります。  そうすると、特定海峡がこういうふうな形で海洋法会議で決められるのか。もし、そういうふうなものが延び延びになってきて、たとえば核の問題がいろいろあったりなんかしました場合は、核を主体としました考え方から国際海峡をつくるというふうなことはほかではないわけであります、したがいまして、そうすると、日本の国は永久に公海部分を特定海峡に残していかなければならない、こういうふうな考え方も成り立つわけでありますけれども、この点につきましてはどうでございますか。
  114. 井口武夫

    ○井口説明員 お答え申し上げます。  国際海峡に関しましては、あらゆる船舶の自由な通航を、できる限り沿岸国の立場も両立するような形でありますけれども、これをなるべく自由な形で確保するということで通過通航制度が確立しつつあるわけでございまして、やはり特定の船舶のタイプというようなものを区別するという形ではなくて、あらゆる船舶というものが自由に通航を確保するということが、やはり先ほど大臣からも御説明ありましたように、これはわが国の総合的な国益に合致するということでございまして、そういう形で会議が現在進行しているわけでございます。  したがって、今後でき上がる国際的な制度というものに従って対処するというのが私ども考えでございます。
  115. 神田厚

    ○神田委員 何かちょっとよくわからない答弁であれなんですけれども、私どもはやはりきちんとした日本主権が及ばなければいけない、及ぼすべきである。何でそんなにそこに公海部分を残さなければならないかということ自体が非常に疑問なんであります。したがいまして、核を搭載している潜水艦のいわゆる通過通航をもし見つければ、それに対しまして、そこが領海だということになればわれわれはきちんとして、そこを通ってはいけないということも言えるわけでありますし、公海部分でそのままにしておけば、いつでも自由にどうぞというような形になってしまうわけであります。ですから、その辺のところをどういうふうに考えているのかというふうなことを御質問しているわけであります。
  116. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現状を変更しないわけでございますから、非核三原則の問題が後退をするとかどうとかということには私は当たらない、こういうぐあいに申し上げたいと思うわけでございます。  そこで、神田さんのお説がどういうところにあるかわかりませんけれども、全部十二海里にして、そうして核積載艦は単なる通過であるから核の持ち込みに該当しないのだ、こういう御見解でいまのような御主張をやっておられるのか、また、そういうことでなしに、一切通さないのだという御主張の上に立っておりますのか、これは各党によっていろいろお考えが違うようでございますけれども、その点を明確にしながら御質問いただくと私どもも御答弁しやすい、こう思うわけでございます。
  117. 神田厚

    ○神田委員 ですから、私ども主権が及ぶような形にしておかなければいけないというふうな話をしているわけでありまして、いわゆる公海部分をそこに残しておくということに一番問題があるのだという話をしているわけなのでございます。ですから、まず全部領海部分にしておいて、さらにその通過については工夫をしようというふうなことをいま言っておるわけでありまして、どういうふうに工夫をするかということについてはこれから御質問を申し上げていきたいというふうに考えているわけであります。ですから、このいわゆる特定海峡のたとえば設置の基準につきましても、どういうふうな形でこの五つの海峡だけが設定されたのか、これも私どもはよくわからないのであります。なぜこの五海峡だけいわゆる特定海峡にしたのかということにつきましては、どういうふうにお考えでございますか。
  118. 鈴木登

    鈴木説明員 お答えいたします。  実は、わが国に海峡という名称のつくものは非常に多うございます。そのうち、領海が三海里から十二海里に拡大されますとすなわち公海部分がなくなる海峡といいますものが、私どもの海上保安庁の方でいろいろ調査いたしました結果、大体六十九カ所ぐらいあるだろうということになったわけでございます。その六十九カ所の全部を領海三海里のままに据え置くべきかどうかという点につきましては、いろいろと内閣の方で御検討いただきまして、六十九海峡のうち特に外国船の通航量の多い海峡、それから公海から公海へ通じる海峡というふうなものをひとつ探し出せというふうなことでございまして、そういうふうないま申し上げました基準から探し出しましたのが、いまのお手元にある五海峡ということになったわけでございます。
  119. 神田厚

    ○神田委員 大臣の方はちょっと何か休憩をとりたいという話でございましたが、海上保安庁にこの問題で質問を続けていますので、どうぞ御休憩ください。  それでは通過量の問題で、通過量の資料などにつきましてこれは何か明確に出されてないというふうに私ども考えているのですが、これはどうなんでございますか。全部どういうふうな形で調査をしてそしてこれを出されたのか。いま外国艦船の通過の多いところとかいろいろおっしゃいましたけれども、そのほかこの五つの海峡よりももっと艦船が通っているようなところもあるというふうに考えますが、その辺はいかがでございますか。
  120. 鈴木登

    鈴木説明員 先ほど申し上げました六十九海峡のうち外国船の通航しておる海峡というものは大体私ども現場で把握しておりますが、その六十九海峡全部調査する余裕はございませんので、ほぼ三十八海峡ぐらいにつきまして現実に巡視船を二十四時間あるいは四十八時間そこに張りつけまして、三月と四月の二回にわたりまして調査を実施したわけでございます。その結果その五海峡が非常に多いという結果が判明したわけでございます。  なお、そのほかにももちろん外国船の通航している海峡はございますけれども、それは全部たとえば東京湾とかあるいは大阪湾とかいうふうな日本の港に入る船でございまして、いわゆる国際海峡、国際通航に該当しないということで落としたわけでございます。
  121. 神田厚

    ○神田委員 三十八海峡について二十四時間というのは二日間でございますか。三月と四月にかけて大体ずっと二カ月間にわたって調査をしておったわけでございましょうか。
  122. 鈴木登

    鈴木説明員 御指摘のとおりに三月の二週間、四月の二週間、それぞれ二週間のうちまる二日間巡視船を張りつけました。
  123. 神田厚

    ○神田委員 これは余り言ってもしようがない問題かもしれませんけれども、二週間のうちまる二日間でいわゆる特定海峡をつくるということ自体は、これは突き詰めていけばやはり問題がありますね。一年間なら一年間を通してある程度のものを見ておいて、それで艦船量が多いからそこを特定海峡にするのだというならば理屈としてわかるわけでありますけれども、二週間のうち二日間二十四時間やりましたということではちょっと説得力には欠けるというふうに私ども考えるのでありますが……。
  124. 鈴木登

    鈴木説明員 その点につきましては実はふだんから私どもの方の巡視船が日本沿岸海域を三十年間ずっとパトロールしておりまして、外国船がどの海峡に多く通航しておるかということは私どもの方でほぼ確認しております。ただ何隻通航しておるかということについては実際に巡視船を二十四時間あるいは四十八時間張りつけまして朝から晩まで数え上げるという操作をしなければなかなか具体的な数字はわかりませんけれども、どの海峡に外国船が通航しておるかということはほぼ私どもの方で常時のパトロールを通じて把握しておりますので、その点は御信用いただきとうございます。
  125. 神田厚

    ○神田委員 この問題はこの程度で結構でございますけれども、まあもぐっている潜水艦などは下まで見て探したわけじゃないのでございましょうから、その問題はいろいろあろうと思いますが、いずれにしろ世界のどこの国でもいわゆる不自然な、こういうふうな領海は十二海里、特定海峡だけは三海里というふうな形をとっている国がありますかどうですか、ほかの国の例、前の御質問と重なっているかと思いますけれども……。
  126. 井口武夫

    ○井口説明員 これはフィンランドが、一般の領海の幅は四海里でございますが一部の島につきまして三海里というようなことをやっている例がございます。
  127. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと日本でいまわれわれというか政府の方でやろうとしている考え方と、フィンランドならフィンランドが現在行っていることは性格が違う、性質上違うというふうに考えていいと思うのですが、それはどうでございますか。
  128. 井口武夫

    ○井口説明員 現行国際法上領海幅員というのは一つの国について一定でなければならないというような規定はございませんから、国際法的に確立されている規範の範囲内というかそういう観点から、独自の判断で領海幅員を三海里の現状維持にするということ自体は国際法的に問題はないというふうに考えております。
  129. 神田厚

    ○神田委員 私が聞いているのはそういうことを聞いているわけじゃないのでございまして、特定海峡というものをある国が指定しまして、そしてそこの部分だけ三海里にしてあとは十二海里にするというようなものはほかのいわゆる世界じゅうどこを見てもやってないじゃないか、非常に不自然じゃないかという話をしているわけであります。したがいまして、フィンランドでやっておりますフィンランドでやっておりますというようなことが大変大きい声で言われていたようでありますけれども、フィンランドの場合は日本なんかの場合と事情が違うのだ、そういうふうなことで、この問題について日本だけが特殊な特定な海峡をつくってそういうことをやるというふうなその根拠をどうしてももう一度たださなければならないというふうに考えているわけであります。
  130. 井口武夫

    ○井口説明員 これは先ほど大臣からも御説明ありましたけれども日本全体の観点から言いますと資源輸入国、貿易国、あるいは遠洋漁業というような立場からも、タンカーその他のわが国の船舶が外国の海域、海峡においてもなるべく自由に妨げられないで航行するということが大切でありまして、他方において確かに沿岸漁業とかそういう観点からのわが国の立場というものもありまして、こういう形で独自の判断で領海幅員を原則は十二海里にいたします、けれどもわが国は国際的な主張をしている、しかも海洋法会議で現在新しい制度が確立しつつある過渡期でございますので、そういう観点から五つの海峡については三海里の現状維持ということをしたわけでございます。
  131. 鈴木登

    鈴木説明員 先ほど巡視船による調査は三月、四月と申し上げましたけれども二月、三月の誤りでございます。申しわけございません。
  132. 神田厚

    ○神田委員 魚の問題がたとえば沿岸漁民を保護するというような形でやられたというふうなことであれば、これは全部十二海里の領海にしてしまうことの方が筋が通るわけなんであります。いまの御答弁を聞いておるとちょっとおかしいと思うのであります。ですからなぜ私どもはそれを全部十二海里にしてしまわないのだ、逆にそういうふうなことを御質問したいというふうに思うのでありますが、その点いかがですか。
  133. 岡安誠

    岡安政府委員 今回の領海三海里から十二海里への拡大の動機は、確かに沿岸漁民の強い要望にこたえるということでございます。ただ、要望にこたえて領海を十二海里にした場合には、先ほどるる大臣から申し上げましたとおり、かねてわが国国連海洋法会議その他の場におきまして、国際的な海峡につきましては、領海内の無害通航ではなくて、より自由な通航制度を確保すべきであるという主張をしているわけでございますので、それらを総合的に判断いたしまして、五つの特定海域を設けまして、それらの海域につきましては従来どおり領海三海里に据え置くことが妥当であるという結論に達したわけでございます。いわば総合判断の結果、こういう特別な措置をとったというふうに御理解をいただきたいというように思っております。
  134. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、従来どおり公海としておきながら、その水域を特定海域としているということは、常識からすれば、日本領海であるから国内で特定海域とすることができるというふうに私ども考えているわけです。そうしますと、したがって、公海において特定海域を設けるということは、それは条約によってする場合はそうでありますけれども国内法だけであれば、日本の船舶などについてだけ拘束をすることになるのであるというふうに考えるわけでありますが、法律的にもこれは何か非常に整理がされていないというか、矛盾があるというふうな考え方を私どもは持っているわけであります。その辺はいかがでございますか。
  135. 岡安誠

    岡安政府委員 いかにも日本独自の制度として特定海域制度を設けたのでは、対外的にこれが通用しないのではないかというような御意見でございますが、特定海域につきましては、法律にもございますとおり、従来の領海三海里をそのまま据え置くということでございまして、新たな制約を外国通過船に課するというようなことではございません。したがって、私どもといたしましては、対外的に何ら問題になるような制度ではないというふうに考えております。
  136. 神田厚

    ○神田委員 どうもその辺のところはまだ納得できないところでありますけれども、やはり国際海峡の通過通航の外国艦船の取り扱いにつきましては「政令で定める。」というような形になっておりますけれども、私は、国際海峡を通過通航する外国艦船については、当分の間は別に定める通航帯の自由航行を認める、この当分の間というのは、海洋法会議で合意ができるというその時点までというふうなことを含んでおりますけれども、いわゆる外国艦船について、当分の間シーレーンといいますか、そういうものをつくって、これの自由航行を認めるという考え方を持っているわけでありますが、その辺につきましては、どういうふうなお考えでございますか。
  137. 岡安誠

    岡安政府委員 どうも先生の御提案で、たとえばわれわれの考えておりますような五つの海峡におきまして十二海里の領海設定して、そこに特別なシーレーンというものを設けて自由航行制度を確保したらどうかというような御提案でございます。問題は、国連海洋法会議、まあこれは外務省からお答えいただいた方がいいかもしれませんけれども海洋法会議におきまして、国際海峡につきましてより自由な航行制度を確保したらどうかということは論議をされております。大体そういう方向で漸次収斂されつつあるわけでございますけれども、なおより自由な航行を確保するに当たりましても、たとえばそういうような場所におきまして、汚染等の問題について沿岸国はいかような関係に立つのか、沿岸国の主権は通航する船舶による海洋の汚染についてどのような権限を持つのか、そのようなものに対してどのような主権的権利を保有できるのかというような点、その他なお考え方が固まっていない点があるわけでございます。先生の御指摘のような、新しい制度としてシーレーンを設け、自由航行を確保するといたしましても、そのような関係をどういうふうに処理をするかということにつきましては、また日本独自の制度をそこに確立しなければならないということもございます。そこで、私どもといたしましては、まだ国連海洋法会議ではっきりと固まっていないのだから、そういうようなところにつきましては、とりあえず「当分の間」領海を三海里にとどめまして、かねての主張のとおり、より自由な航行を確保するように措置しておく、新しい制度を設けるのじゃなくて、現状三海里のままに据え置くという考え方をとったわけでございます。それらの点が若干先生の御意見とわれわれが御提案しております法律の内容と違うところではなかろうかというふうに思っております。
  138. 神田厚

    ○神田委員 その主権的なものにつきましては、通る船についてどういうふうな主権を有するかということは、日本国がやはりそこを領海だと認めた上でシーレーンをつくるわけでありますから、それは問題はないわけであります。幾らでもこちらの方で考えて、そういう沿岸汚染の問題や何かにつきましては、領海内を通るわけでありますから、大体全部チェックできるわけであります。ですから、その辺のところは、おっしゃられましたような御心配はないというふうに私は考えるわけでありますけれども、やはりそういうふうな形にしなければ、現在特定海域の問題というのはなかなかうまく進まないんじゃないかという感じを持っておるわけであります。御答弁によりますと、とにかく海洋法会議の結論を待ってからするのだという話でありますが、どうですか、前向きにもう少し、たとえばそういうふうなものも検討するというお考えにはなりませんでしょうか。
  139. 岡安誠

    岡安政府委員 先ほど申し上げましたとおり、私どもは、先生のおっしゃるとおり、たとえば国際海峡等についてシーレーンを設けて自由航行制度を認めるという場合に、沿岸国の主権によりまして汚染問題等についていかようにも処理ができるということ、これはそのとおりでございます。だからこそ、沿岸国の自由な主権の行使をある程度制約するような、より自由な航行制度の確立に向かって現在海洋法会議で検討しているわけでございます。したがって、私どもがこの際、海洋法会議の結論が出る前に日本の独自の考え方によりまして、たとえば通航船舶に対する汚染問題についてわが国主権はこういうものであるということをあらかじめ決めるということがいかがかと申し上げているわけでございます。それこそが、私どものかねがね主張しております、国際的な海峡については勝手な主権行使ではなくて、みんなの合意によるより自由な通航制度を確立いたしたいというような主張でもあり、念願でもあるわけでございます。
  140. 神田厚

    ○神田委員 だから、出されてきた法律案の趣旨考えましても、どれを考えましても、私はその公海部分を残すということ自体に非常に問題があると思うのです。先ほど農林大臣が、いわゆる三つの考え方からこの領海法案を出してきたという話をしているわけですけれども、そのどれ一つをとってみても、そこに公海部分を残しておくということがやはり問題ではないかというふうに考えるわけでありますが、その辺はどうでございますか。
  141. 岡安誠

    岡安政府委員 先生のおっしゃることと政府の案との違いを私なりに理解いたしますと、私ども考え方は、先ほど申し上げましたとおり、国際海峡のようなもの、たとえば五つの特定の海域につきましては、確かに領海を三海里にとどめまして、公海部分を残すわけでございます。先生の御提案は、そういうような海峡につきましては領海を十二海里にして、シーレーンを設けて、そのシーレーンについては自由な通航を確保する。その自由な通航の内容でございますけれども、それが公海のような従来と同じような自由な通航であるならば、これはほとんど違わないわけでございます。ただ、先生のおっしゃることをそのまま受け取りますと、それはあくまでも領海の中でございますので、沿岸国の主権が及び、沿岸国の主権というものは、通過する船舶に対しまして、汚染その他についてやはり意思表示をする、汚染を防止をする、汚染をした場合に対する裁判管轄権等をどうするかということをはっきりしなければならないという点があります。それらの点が現在海洋法会議では明らかにされていない、論議をなされている最中であるという点で、私どもはあらかじめ先取りをしないで、海洋法会議の結論を待って、それまでの間は領海を三海里のままに据え置きたいというふうに考えているわけでございます。
  142. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、たとえば公海の部分にいわゆる魚をとりにきたり何かする外国漁船がいるというような場合については、これはどういうふうにお考えになるわけですか。
  143. 岡安誠

    岡安政府委員 それは私どもが現在提案をいたしたいと思っております二百海里法、要するに漁業水域に関する暫定措置法によりまして、特定海域のうち沿岸から三海里から十二海里の間につきましては外国船による漁業を禁止をするという措置を私ども考えているわけでございます。
  144. 神田厚

    ○神田委員 これはたまたま二百海里の問題がいま一緒に出されましたから、それでカバーができるということでありますけれども、もしも領海法案だけで終わりまして、政府が前に考えておりましたように、二百海里の問題を九月なり十月に先に延ばしてやろうとしていた場合には、その公海の部分に対しましていわゆる外国漁船が入ってきても何もできなかったわけでありますね。そういうことを考えますと、いわゆる法案の精神として考えていきますと、それは二百海里法案を後からかぶせたから、カバーしたからいいというようなものではないというふうに私は考えているわけなんですがね。その辺は、たまたま今度二百海里法案がタイミングよく出ましたから、これによってカバーするという話で、さらには二百海里の中でいわゆる禁漁区域は禁止条項などによってそれをうまくできるというような考え方であろうと思いますけれども、もしここに二百海里法が出なかったら、それじゃその公海部分のところについてはどういうふうにするんだということが当然問題になってきているわけですね。その辺のところはどうですか。
  145. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二百海里法は、いま御指摘になりましたいわゆる国際海峡五海峡、そこの公海部分をカバーする、穴埋めするために二百海里法は急いで制定したものではございません。これはもう御承知のように、二百海里時代に対応するために独自の立場でやらざるを得ない、こういうことであったわけでございます。私ども領海法の面におきましても、このいわゆる国際航行のための五海峡、ここに外国漁船が入ってくることは、何らかの規制措置を講じなければならない、こういう考えを持っておったわけでございまして、いまの二百海里法はそのためを目的としてやったものではないということもひとつ御理解を賜りたいと思います。
  146. 神田厚

    ○神田委員 そのことは十分私どももわかっております。それで、さらにその二百海里法の問題につきましては御質問を後でさしていただきたいというふうに思っているわけでありますけれども、それでは特定海峡の二、三の問題につきまして、その個所別に御質問をひとつ申し上げたいというふうに思っておるのであります。  まず、宗谷海峡でございます。この宗谷海峡につきまして、外務省が五十年の四月二十八日に資料を出しておりますが、この資料には、宗谷−樺太南端が二十二・七海里と書いてある。現在政府が出してきた資料には二十海里と書いてありますね。この辺の違いは、これはどこから来たんでしょうか。
  147. 鈴木登

    鈴木説明員 お答えいたします。  実は外務省の方からこの前委員会にお出しいたしました資料は、私どもの海上保安庁の方でつくったものでありますけれども、当時海洋法会議にいろいろと国際海峡の問題が話題になりましたので、それで外務省の方から日本じゅうにいわゆる海峡と称するものがどれくらいあるのか一度出してみろというふうな非常に忙しい御用命を受けたわけであります。したがいまして、私どもの方は急遽日本の全海図を拾い出しまして七十二海峡を外務省の方に上げたわけでありますけれども外務省の方にはその当時から、とにかく急な作業でありますので、さしあたって当面の資料としてお出しするというコメントをつけましてお出ししたのが、いま御指摘の宗谷海峡が含まれておるわけであります。  その宗谷海峡は、当時お出しいたしましたのは、お手元の方にも地図があろうかと思いますけれども、樺太の南岸と日本側の北端というもののつなぎ方と、それからもう一つ樺太の南端に二丈岩という小さな島がございますが、その島とわが国北海道の北端とを結ぶ方法、この二つの方法があるわけでありますけれども、当初、五十年当時に外務省の方にお出ししましたのは、その二丈岩と結んだものでございます。それで今回また改めてそのどちらを出すかということでずいぶん問題になったのでありますけれども、やはり海峡としては、北海道の北端と樺太の南端とを結んだ方がいいんじゃなかろうかというふうに考えまして、それを今回そういうふうに訂正した次第でございます。
  148. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、二丈岩の領有権というのは、これはソビエトの方にあるのですか。
  149. 鈴木登

    鈴木説明員 失礼いたしました。私ちょっと入れ間違えまして間違えましたが、先ほど申し上げましたのは、最初に出したのがいわゆる遠い方のものでございまして、後から出したのが二丈岩から北海道の北端の方でございます。  それから二丈岩の方は、一応現在ソ連の方が自分の領土だということで主張しております。
  150. 神田厚

    ○神田委員 この二丈岩の領有権の問題については外務省はどういうふうに考えておりますか。ソ連は自分の方だというふうに言っておるようでありますけれども……。
  151. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答えいたします。  戦前のわが国の行政区画の区分の中でも二丈岩は樺太に属しておりました。したがって、これは樺太の一部という認識があると思います。わが国は、昭和二十七年のサンフランシスコ条約におきまして樺太の南部を放棄しております。したがって、現在わが国は二丈岩に対するあらゆる権利、権原を放棄したというのが現状でございます。
  152. 神田厚

    ○神田委員 私は、この数字が、どうも先に出された数字と後の数字と違っていたものですから、率直に疑問を持ったわけでありまして、この宗谷海峡の問題につきましても、いわゆる中間線をつくっておけばいいわけでありますが、なぜ特定海峡としてここをつくらなければならないのかという問題が、率直な疑問としてあるわけでありますが、この辺はやはり、潜水艦が通るからとか、いろいろと話がございますが、そういう場合は別に、これは浮上して通ればいいんだというふうに私ども考えておるわけでありますが、この問題につきましては、時間もありませんから、後の方に譲っていきたいというふうに考えます。  さらに、対馬につきまして具体的に。対馬海峡を二つ特定海峡に指定しておりますけれども、これはどうして二つもあける必要があるのか、非常に単純な御質問でございますけれども、この点につきましてはどうでございますか。
  153. 岡安誠

    岡安政府委員 私ども、対馬の東水道、西水道両方につきまして、外国船舶の通航の量等を調べたわけでございますが、これは、いずれも相当な頻度で外国船舶が通航しているということが一つございます。それから、一つだけあければ通航には差し支えないのではないかというようなことも考えたわけでございますけれども、それぞれ外国船舶の通航につきましては、東なら東、西なら西、その方が適当であるという理由があるようでございます。たとえて申し上げますと、中国の旅順、大連や韓国の仁川等の港から北米のシアトル等へ、それから、ソ連のナホトカから中国の上海へ、というような航行の場合には、対馬海峡の西水道を通航するのが普通のようでございますし、中国の上海等から北米のシアトル等へ航行する場合には、対馬海峡の東水道を通航するというのが通常のケースのようでございます。そういうことを勘案いたしまして、東西両方の水道につきまして特定海域設定をするということにいたしたわけでございます。
  154. 神田厚

    ○神田委員 この海峡問題、まだまだいろいろ御質問したいのでありますが、時間の関係もございますので、次に、二百海里との関係でひとつ御質問を申し上げたいというふうに考えております。  まず、二百海里漁業水域の法律をつくることになりましたが、何回も繰り返していろいろと質問をされておりますけれども、この法律をつくろうとしている意味と、それから、それが日ソ漁業交渉に与える影響について、最初に御質問を申し上げたいというふうに思います。     〔片岡委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが国は、海洋法会議におきまして、単一草案、また、単一草案の改訂版、そういうような線で国際的な合意ができることを希望して努力をいたしておったわけでございます。しかるところ、世界の政治経済のリーダー格であるアメリカが二百海里の宣言をし、法律を制定した、さらにカナダがそれに呼応した、また、遠洋漁業国家であるソ連がこれに追随をした、ECあるいはノルウェーその他の国々もやってきておる、こういうようなことからいたしまして、この二百海里時代にどうしても日本としても対応せざるを得ない、こういうことで今回二百海里水域設定ということに踏み切ることにいたしたわけでございます。また、当面する日ソ漁業交渉におきましても、ソ連領海十二海里、漁業専管水域二百海里、こういう体制を敷いておるわけでございますので、わが国もこれと同じ条件、同じ土俵で交渉をするということがあらゆる面で話がわかりやすい、こういうようなこと等もございまして、国会の各党の御協力をお願いを申し上げておる、こういうことでございます。
  156. 神田厚

    ○神田委員 二百海里の問題というのは、やはり先進国なりあるいはいろいろな国が、これから二十一世紀の中でどういうふうにして自分たちの国の自給力を高めていくかという大きな問題の中から出てきた問題でありまして、したがいまして、海底資源の問題やいろいろな問題も含めて経済水域という形で出てきたわけであります。この漁業専管水域に関しまして、私どもはいまこれをつくっているわけでありますけれども、いまの大臣の御答弁によりますと、同じ土俵に上がって話をするんだと、こういうことで二百海里を準備しているという話でございますけれども、私は、この北方領土の帰属の問題についての主張が非常に隔たっている現在、二百海里を明確に日本宣言するということが果たしてネックにならないかどうかということを非常に心配するわけであります。その辺のところはどういうふうにお考えでございますか。
  157. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、北方四島の問題は、御承知のように戦後未解決の問題ということに両国の首脳の問で合意されておる、こういうことでございますから、これは日ソ友好という大局に立って、その北方の四島は戦後未解決の問題、この実態に沿うたところの二百海里漁業水域設定、こういうことで取り組んでまいりますれば、私は、相互の立場を損ねない、つまり、日ソ平和条約の締結交渉に支障を来さない形で合意に達する道もあるのではないかと、このようにも考えております。これはしかし、ソ連の最高指導部が日本との友好親善関係を将来に向かって一層安定的に発展をさせたいという、そういう立場でぜひ取り組んでもらいたいということを私は念願をいたしておるわけでございます。
  158. 神田厚

    ○神田委員 そういうふうな形で帰属問題が微妙に絡みまして、二百海里を日本宣言することがかえって相手の態度を硬化させるということを私は非常に恐れるものでありますけれども漁業専管水域につきましては、漁民の切実な願いでございますから、私どももこれは強力に推進していかなければならないというふうに考えるわけであります。北方領土、北方の漁業の問題だけでなくて、具体的に線引きにつきましてはどういうふうなお考えをお持ちになっているのか、その点ちょっとお聞きしたいのであります。
  159. 岡安誠

    岡安政府委員 わが国漁業水域につきましては、わが国沿岸二百海里に漁業水域設定するというのが大原則でございます。ただ、政令によりまして、特定の海域につきましてはこれを設定しない、除外をするという規定も設けたいというふうに考えております。これは主として、中国韓国等が現在二百海里の漁業専管水域を設けていないというようなことを考えまして、相互主義という立場から、それらの隣国との関係水域につきましては漁業水域設定を除外するというような案でまいりたいと現在思っている次第でございます。
  160. 神田厚

    ○神田委員 仮定の問題で失礼でございますが、たとえば西日本線引きをしない場合に、ソビエト漁船団がぐうっと回ってきてそこへ魚をとりにきた、こういうふうな場合はどういうふうにするのですか。
  161. 岡安誠

    岡安政府委員 政令で決める海域でございまして、私ども先ほどの対中国、対韓国関係では、日本海の西部、それから東海、黄海等を考えているわけでございますけれども、御指摘のとおり、そういう政令で除外された海域ソ連漁船が来れば、これは当然漁業水域ではございませんので、二百海里法の適用は受けないということになるわけでございます。
  162. 神田厚

    ○神田委員 何ですか、二百海里法をまたそこにつくるわけですか。
  163. 岡安誠

    岡安政府委員 漁業水域法、いわゆる二百海里法の適用は受けないということでございます。
  164. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、韓国中国については、そちらに向けてはいわゆる二百海里の線引きはしない。ソビエト漁船団が大挙してその漁場にとりにきた場合におきましても、やはり二百海里のあれは設けない。つまり、船というのは動いて回るものでありまして、ぐるぐる魚をとりに歩いているわけですね。だから、どこかで線引きされてだめだと言われれば、違うところに行くわけでありますけれども、そういう問題については明確に最初に線引きしたものを守っていくという形になるのでありますか。
  165. 岡安誠

    岡安政府委員 私先ほど申し上げましたとおり、日本漁業水域のうち、適用を除外するといいますか外す海域につきましては、相互主義考え方からそういう措置をとるつもりであるということを申し上げたわけでございまして、ソ連船がもし、これは仮定の問題でございますけれども、大挙してそういう除外された海域漁業をするということになりますれば、当然これはまた考え直しまして、政令でもって改めて適用除外をやめるとかそういう措置をしなければならないというふうに考えております。ですから、適用するように改正をしなければならないということでございます。
  166. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、来たならば適用して、来なければそのままだというような何か非常に釈然としないものになってきますですね。漁場というのは現在日本の周りで限られておりまして、そういう線引きをしてしまうと今度は当然こっちの方へ回ってくるということはあるわけですね。ですから、私は、いろいろ線引きをした上で話し合いができるというような問題もあるかと思うのでありますが、ここだけ最初からあけておきますよ、あとは全部線引きしましたよ、こういうふうな二百海里の漁業専管水域のつくり方自体はやはり問題があるのではないかと思うのですが、その辺いかがでございますか。
  167. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは二百海里法の御審議の過程で十分明らかになる点でございますが、いかような事態にも対応できるようにしておるわけでございます。ただ、ここで神田さんに御理解を賜りたいのは、いま西日本わが国漁業は日中漁業協定日韓漁業協定で非常に安定的に操業確保されておる。これは私は大事にしていきたいという考えを基本的に持っておるわけでございます。そういうようなことで、中国に対しましても、韓国に対しましても、わが方の考え方を十分説明をし、御理解を得るように努力をしておるわけでございまして、先ほど岡安長官から申し上げましたように、中国並びに韓国が進んで先に二百海里専管水域を実施しないという場合におきましては、その対応としては相互主義でやっていきたい。しかし、いま仮定の問題という前提、前置きをされて、ソ連漁船等があの海域に大挙して入ってくるというような事態になりますれば、これまた中国その他とよく理解を求めながらそれに必要な措置は政令で十分とり得る、即時とり得る、こういうことにいたしておるわけでございます。
  168. 神田厚

    ○神田委員 その二百海里の問題につきましていろいろまだ議論をしたいわけでありますが、現在韓国船が北海道沿岸で大挙漁業をしておりまして、しかも相当大きな船が操業しているわけであります。それで近年、韓国漁船相当数の被害を日本沿岸の漁民に対して与えているわけでありますけれども、もちろんこの二百海里の専管水域設定されれば、北海道沖におる韓国漁船というのは何らかの話し合いのもとでその専管水域の外へ出るか、あるいは適用除外か何かで漁業を許されるか、それはわかりませんけれども、そういうふうな形になるかと思うのですが、この漁業被害の問題につきましてこれをどのようにお考えになっていますか。韓国漁船日本沿岸の漁民に対する被害というのは膨大なものですね。これはどういうふうな形で処理をしているのか、あるいはこれから先どういうふうな形でこれを防いでいくつもりでございますか。
  169. 岡安誠

    岡安政府委員 北海道周辺の海域におきます韓国漁船操業によりましてわが国漁船が受けました漁具等の被害につきましては、四十八年度ごろから起こりまして、五十年度以降急激に増加し、特にことしの三月以降、ソ連漁船ソ連沿岸二百海里から外へ出ましてわが国沿岸操業を始めるというようなことが起こりましてから、急激に被害がふえております。私ども従来から韓国との間におきましては、民間ベースで被害の防止、損害の処理等の話し合いをしておりますので、その話し合いを読けるようにいたしておりまして、先般も民間ベースで人がわが国から韓国に参りまして話し合いをいたしたわけでございますが、さらに私どもは、今後二百海里等の設定によりましても、対韓国につきましては現在日韓漁業協定がございますので、海域につきまして例外的に適用をしない海域わが国の西の方に設けると同時に、韓国人に対しましてもこの二百海里法の適用除外をするという考えでございます。  そこで、このような被害の防止につきましては政府ベースでひとつ話し合いを行いたいということで、先般も水産庁から人を派遣いたしまして韓国水産庁の職員といろいろ話し合いをいたしております。話し合いが煮詰まった点もございますし、まだ煮詰まっていない点もございますが、今後さらに精力的にこの話し合いを進めまして、政府ベースにおきます何らかの話し合い、取り決めによりまして、これら被害の防止等はぜひ図ってまいりたい、かように考えております。
  170. 神田厚

    ○神田委員 もし適用除外するというふうな考え方でありますならば、この沿岸漁民に対する被害をこのまま見過ごしたままでいろいろそういうふうなものを認めていくというのは非常におかしいんじゃないかというように私ども考えるわけでありますから、政府ベースできちんとした話し合いができるということでございますならば、それをひとつ——沿岸漁民は非常に困っているのであります。私、釧路の方へ二、三日前行って現地の漁労長の皆さん、漁民の皆さんと話し合いをしてまいりましたけれども漁業被害につきまして大変に神経質になっておりまして困っているという話を聞いてまいりました。  これに対しましては、海上保安庁や北海道のいわゆる道庁船などの指導の問題もあろうかと思うのでありますが、ここで海上保安庁に特に、いわゆる十二海里になって、さらに漁業専管水域二百海里を設定した場合、とてもとても手が回らないんじゃないかというのが一般的な私どもの常識で考えられる点でございますけれども韓国漁船などの被害の状況は、夜間に来て、昼間は沖にいて、夜になって入ってきてさっとやってしまうというような、そういうふうなものもある。ですから、こういうふうなものについてどういうふうな対策を持っているのか、あるいはこれからどういうふうになされるのか、簡単で結構でございますから、御答弁をお願いしたい。
  171. 間孝

    ○間政府委員 まず、この領海の拡大あるいは漁業専管水域二百海里の設定という新しい事態によりまして、海上保安庁の守備範囲が従来に比べまして飛躍的に大きくなりますので、それに対応した海上保安庁の船艇あるいは航空機の勢力を強化するということの必要性は当然出てくるわけでございます。この問題につきましては、今年度の予算におきましても一部増強の計画が盛り込まれておりますけれども、さらに新しい二百海里の漁業水域設定という問題が早まりましたので、こういう新しい事態に即応してわれわれの体制を強化するように計画の練り直しの作業をいま進めておる段階でございます。  そこで、いま先生の御質問のございました韓国漁船によるところの被害の防止対策の問題を取り上げて申し上げますと、この問題につきましては、従来から北海道沿岸海域におきましてそういう被害がございましたので、海上保安庁では巡視船を常時派遣いたしまして、道の監視船と協力いたしまして、これに対する被害の防止のための指導を行ってきたわけでございます。しかし、ことしの三月に入りまして、韓国船の操業隻数が急激に増大いたしまして、わが国沿岸の漁民に対する被害の件数もウナギ登りにふえてまいったわけでございます。  そこで、私どもは従来の巡視船の数をふやしまして、このときには他の管区からも応援派遣をいたしまして、大体襟裳半島を境といたしまして、東側に二隻、西側に二隻、常時二隻の巡視船をここに配置いたしました。そして、航空機をこれに連係して運用いたしまして、空から韓国船の操業している場所をまず確認をいたしますと、そこに巡視船を差し向けまして、いまの日本の漁具の設置状況等を相手方に説明をし、そして、これに対して被害を与えないように警告を与えてきたわけでございます。  最近、私どもの把握しておる情報によりますと、この韓国船の操業場所も北海道の南岸から日本海側の方に一部移ってきておるようでございますので、そういう情勢の変化に対応いたしまして、私どもはいま日本海側の方に巡視船をまた移しまして、そちらの方の警戒をやっておるわけでございます。  先ほど水産庁長官からの話もありましたように、民間の日韓関係者の話し合いが進んでおるようでございます。その影響も出てきておると思いますが、最近では北海道の南岸におきますところの被害の件数は、一時に比べますと非常に少なくなっておりまして、今月に入りましてから現在までの被害件数は三件でございます。韓国船によるところの被害の防止問題は、基本的にはやはり日韓間の話し合いによりまして、韓国側の漁船操業の自粛をしてもらうということによらざるを得ないわけでございますが、私どもは、そういう操業が安全に秩序立って行われるように、常時そういう巡視船なり航空機なりを派遣いたしまして、現場においてこれに対しての指導を行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  172. 神田厚

    ○神田委員 まだ釧路の沖にもいまして、向こうへ移りましたけれども、まだいるのです。いるのはあれなんですけれども、海上保安庁が二百海里になりますとなかなか大変だと思うのです。それだけ手が回らない問題があると思うのですが、ある新聞なんかによりますと、たとえば言葉が通じなくてテープを回して退去せよとか、ここは領海だとか、いろいろこちらの話をしているというふうな話でございますけれども、そういうことではやはり説得力がないわけでありますから、巡視船にきちんと語学のできる人を乗せて、ここはこういうことです、ここへ入ってはだめだというふうなことをちゃんと指令が行き届くような形にしなければならないというふうに思うのであります。これは韓国漁船についてもそうでありますし、あるいは中国漁船についてもそうでありますし、ソビエトの漁船についてもそうだというふうに私ども考えているわけでありますが、そういうふうな面についてのこれからの体制といいますか、そういうものをとっていただきたい、こういうふうに考えて、御要望をしておきます。これは答弁結構でございます。  さらに、先ほどもちょっと問題になっておりましたけれども、この時期にモスクワにおきまして大手商社が魚を買い付けをするというふうなことで非常に暗躍しているというふうな問題が憂慮されているわけでありますが、先ほどの御答弁でそういうことはないというふうに大臣はおっしゃいましたけれども、その辺のところで、こういうふうな一時の便乗値上げみたいな形で国内ではスケソウダラのようないわゆる関係のない魚まで値段が上がってしまう。それからさらには、何か商社が向こうの方で魚の買い占めをやっているんではないだろうかというような国民の疑惑といいますか、疑問といいますか、そういうものをやはり払拭していただかなければいけないと考えているわけでありまして、さらに、零細な漁民に対する今後の対策、これはいわゆる加工業者なども含めまして、これから先、いつごろどういうふうになるか交渉の見通しが立たないわけでありますね、そういうものを含めまして総合的な漁民に対する対策とか、あるいは商社や一般的な日本での不当な魚価の値上がりとかそういうものに対する防止の行政指導とか、そういうことをお伺いしたいと思うのですが、大臣の方からひとつ……。
  173. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の交渉が長引きまして、四月一月からわが国漁船は全面的に北洋漁業から帰らざるを得なかった。私、漁業者の諸君並びにそれに関連する関連産業の方々、そういう方々の焦燥と困窮ということにつきましては本当に心を痛めておるところでございます。したがいまして、これが救済措置につきましてはできるだけの手を打ってまいりたい。当面、この休漁等によって収入の道が断たれた、また出漁のための準備に相当の資金がかかっておるわけでございますから、そういうものの決済、並びに乗組員等の給与の支払い、そういうもののために緊急の低利融資をするように、いま準備を進めておるところでございます。また、関連産業につきましても、その影響の度合いに応じまして同様の措置を講じてまいりたいと存じております。なお、日ソ交渉のめどがつきまして、そしてクオータ等も決定を見た段階におきましては、ある程度の減船の余儀なきに至るような事態も起こるかと思います。そういう事態を十分踏まえまして、つなぎの緊急融資をいたしましたものも含めた本格的な救済措置を講じてまいる、そのようにいたしたいと存じておるところでございます。  なおまた、大手商社あるいは漁業会社等がモスクワに乗り込んで、日本漁船操業できないということを奇貨としてソ連から魚を輸入しよう、そういう点は私も十分警戒をいたしまして、モスクワ滞在中もいろいろ調査もいたしましたが、いまのところそういう動きはございません。また、仮にそういうことがありましても、スケトウダラ等は御承知のようにIQ品でございます。私は、こういうたくさんの漁民が困っておる、そういう中で火事どろ式なそういうようなことは、これは反国民的な行為でございますから、断じて認めるわけにはまいりません。また、こういう際に便乗値上げ等をその他の魚についてやる、買い占めをやるというようなことにつきましても、強く行政指導をいたしておるところでございます。
  174. 神田厚

    ○神田委員 最後に、船主の補償などにつきましては、これはやはり船主だけではなくて、船員の補償というものを考えていただきたい。船員の場合には失業保険の加入なども三分の一程度でありまして、いろいろと問題があるのであります。ですから、このところを細かくお考えをいただきまして、やはり零細な漁船に乗っている漁船員に対しましては、もうあしたのお金もないというのが現状でございます。したがいまして、そういう面におきまして、船員保険の問題やいろいろございまして、各省間にわたっておりますけれども、それらにつきまして調整をとられまして、いつ出港できるかわからない、こういう漁民に対しましての救済措置につきましてもどうか万全を期していただきたいということをお願いいたしたいというふうに考えております。  そしてさらに、ただいまおっしゃられましたように、いわゆる大手の水産会社がこの時期に非常な金もうけをしている。そして、私ども一番切実に聞くのは、この加工業者やあるいは漁船が国際的な入札にどうしても入れない。そういう中で、水産庁水産庁の割当の中で零細な漁民に対し、漁船員に対し、漁船に対して割当を何とかもう少し確保してくれないか、そういうふうな要望をいただいているわけであります。つまり、共同で国際入札なら国際入札するとか、あるいはそうじゃなくて、何か一つの団体をつくっていただいて、そこに割当をもっといただけないか、こういうふうな御要望もあるようでありますけれども、アメリカなどでも大体百万トンぐらいが大手でそれからそうじゃないところは八万トンぐらいしかもらえない、こういうふうな話も聞いておりますけれども、その辺のところもよろしくお願いしたいというふうに最後にお願いしたいのです。
  175. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 漁船員でありますとか、あるいは魚市場で働いておる諸君でありますとか、あるいは加工工場で働いております方々、そういう方々に対しまして、つなぎ融資の際にも、そういう漁船等に対するものは、船主に渡って船主が適当にそれをやるということでなしに、これは船員その他の給料というぐあいにはっきり特定をして、こちらからはっきり使い道を指示してやってまいりたい、こう考えております。  なおまた、漁船員等の雇用の問題あるいは加工会社等の雇用の問題等につきましては、現在ありますところの雇用対策法あるいは雇用保険法、漁業再建整備法、船員保険法、いろいろな制度がございますが、そういう点を十分活用いたしますと同時に、どうしてもそれから漏れるという分野の諸君もあると思います。そういう点を十分調査をいたしまして、それらの方々にも措置ができるように十分検討も加えていきたい、こう思っております。  なお、クオータの問題でございますが、日ソ漁業交渉におきましても、北海道等の十トン、二十トンというような零細な漁船につきましては漁業組合単位でクオータを取りつける、そういう話し合いもつけてございます。そういう点は非常に大事な問題でございますから、そういうような話し合いソ連側とはすでにつけてございます。それを何トンまでにするかという問題が若干残っておりますけれども、御指摘のような方向で対処しておるということを申し上げておく次第であります。
  176. 神田厚

    ○神田委員 大変御丁寧に御答弁ありがとうございました。  それでは終わります。
  177. 金子岩三

    金子委員長 正森成二君。
  178. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、これからしばらくの間領海法について質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、鈴木農林大臣初め水産庁の職員各位には、日ソ漁業交渉について日夜御努力されて非常に御苦労さまでございます。  わが国益を守るために私はあえて申し上げたいと思うのですが、大体領海を十二海里にしなければならないということはすでに昨年の一月段階で正式に閣議として了解をしていたはずであります。それがまる一年間もおくれ、さらにことしに入りましてからも、この領海法を提出するまでに、新聞紙上に報道されているところでは、農林省側は終始領海十二海里にすべきであるという主張に対しまして、外務省側としてはいわゆる漁業専管水域という主張を持ち出しましたために、いたずらに時間を空費して、それが日ソ漁業交渉にもわが方にとって余り有利な影響をもたらさなかった。だからこそいま国会が、与野党一致できる点はできる限り一致してこの法案を成立させるというようになっているのではないかというように私としては思います。  昨年一月にすでに領海十二海里について閣議了解されたと報道されているにもかかわらず今日まで延引した理由が一体どこにあったのか、農林大臣の率直な御見解を承りたいと思います。
  179. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 正森さん御指摘のように、三木内閣当時昨年の一月にそういう閣議了解事項として、この領海幅員を十二海里にしようという方針が決まっておったわけでございますが、そのとき閣議了解の中には、国連海洋法会議の動向等をもう少し見た上で決定をしよう、こういうことであったようでございます。  しかし、福田内閣になりまして、私も農林漁業関係の責任を持つことになりましてから、内外の諸情勢、そういうものを勘案をいたしまして、一日も早く領海十二海里にわが国も踏み切らなければならないという決断をいたしたような次第でございまして、対応がおくれたということに対する御叱正に対しましては私どもも遺憾に存じておる次第であります。
  180. 正森成二

    ○正森委員 外務省関係者に伺いたいのですが、一月二十七日付のある新聞によりますとこう書いてあります。「今だからいえるが、領海問題の最大難関は「身内にある」というのが農林省・水産庁の一致した見方だった。「身内」は、もちろん外務省に象徴される事なかれの消極姿勢という。」こういうぐあいに書いてあるのです。さらに一月二十五日の土壇場の関係閣僚会議でさらに居直って漁業専管水域の問題を持ち出してきた、こういうように報道されております。私は、この報道は恐らく正しいであろうということは、いまの鈴木農林大臣の御答弁の言外に察せられるところであります。外務省は一体なぜわが国益に反してそういうように領海とすることにいままでたび重なる抵抗を行ってきたのか、その理由を率直に国民の前に述べていただきたいと思います。
  181. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  まず、ただいま農林大臣からお話がございましたように、わが国領海幅員を十二海里に拡張するという方針は、昨年の初頭に決まっていたわけでございます。そこのときの閣議の了解にもありましたように、その実施の時期、対応は、いろいろの状況を見ながら判断していこうということでございました。当時私どもはもちろん——これは御理解いただけると思うのでございますが、わが国は海洋の秩序、世界的な秩序の安定性に依存するところ最も大きな国でございます。逆を言えば、海洋の秩序が確立するということを最も願う国の一つでございます。そういう意味におきまして、国連の海洋法会議におきましては、領海幅員の問題も他の主要な問題と一緒に討議が行われておりまして、なろうことであれば、その国連海洋法会議の進展をまって、国際的にも全く調整のついた形でこの問題が決着がつけられれば最もよろしい、わが国の国益にも沿うゆえんであるということで、いましばらく国連の海洋法会議の状況を見たいという気持ちを持っておりましたし、当時の政府の認識でもあったわけでございます。  しかるところ、先生御承知のように、昨年の海洋法会議のニューヨーク会期におきましては——ニューヨークにおいて二度の会期を行ったわけでございますけれども、深海海底の開発の問題がネックになって所期の進展を見せなかった。そういう状況におきまして、わが国といたしましては、やはり沿岸漁民の方々の外国漁船の近海操業化に伴うところの問題というものも政府全体としてもちろん十分に認識しておったわけでございまして、それとの関連で、国際的な動きの急速な歩みということも考えまして、今回領海を十二海里に拡張するということを今年初頭において正式に決定せられたわけでございます。  ただいま、御説ではございますが、領海を十二海里に拡張することに外務省が抵抗したというようなのは、御表現としてはちょっと正確を欠くのではないか。私ども考えはいま申し上げたようなことでございまして、これは政府一体となってやっていたことでございます。政府内部におけるいろいろな御議論はありましたけれども政府全体といたしましては、昨年以来いまのようなことで一体となって動いてまいりました。  また、本年、いよいよ具体的に、領海法案を作成しようという事態になりまして、私どもといたしましても、鈴木農林大臣の御統括のもとに積極的にお手伝いをさせていただきまして今日に至った、こういう状況でございます。
  182. 正森成二

    ○正森委員 まあ外務省の条約局長なら、抵抗いたしましたとも言えないでしょうから、あなたもいまのような答弁をせざるを得ないというように思います。しかし、なろうことならば海洋法秩序が確立するのとともに領海法を制定したいというような、その「なろうこと」という考え方が、海洋法会議の進展の見通しについても全く誤っておるし、そして昨年は海洋法会議の決定を待たずにアメリカが二百海里の漁業専管水域、そういうものを制定する、あるいはECやらソ連がこれに見習うということになってきたわけで、そうなると、なろうことであればの国際的な秩序海洋法会議という場ではできないにもかかわらず、既成事実が次々と出ていき、そのためにわが国民の、特に漁民の利益が侵害されるから、こういう法案の提出に踏み切らざるを得なかったわけでしょう。そういう意味では、こういう外国の状況について一番判断をしなければならない外務省がいささか判断を誤っており、対応が遅きに過ぎるようになったという事実は否定することができないと思うのですね。そういう点を私は指摘をしておいて、外務省というものは外交的な技術的なものを考えるだけではなしに、もう少し政治的な判断をしなければならない。そうでなければ外交技術屋であって、外交というものは政治と離れてしまったものになってしまうということを質問のまず最初に指摘をしておきたい、こういうように思います。  そこで、次に伺いますが、ソ連のわが近海における漁業というものが非常に目立ってきて、中には目に余るものがあるわけですが、ソ連漁船わが国の近海でイワシ、サバ、スケトウダラなどを中心に年間どのぐらい漁獲をしておるのか、その漁獲量の推定金額というものはどれぐらいであるのか、おわかりならお答えください。
  183. 岡安誠

    岡安政府委員 ソ連漁船わが国の近海におきまして昭和三十年代に調査船のようなかっこうで出没しでまいりましたけれども、四十年代に入りまして非常にふえてきたわけでございます。最初はサンマ、サバ等を中心といたしまして漁獲をいたしております。漁獲量につきましては定かな数字はございませんけれども、FAO統計、その他ソ連の発表等から勘案いたしますと、四十六年ごろはサンマ、サバを中心にして約十万トン程度というふうに推定がされます。それが四十八年、四十九年に至りまして二十万トンから二十五万トン程度というふうにふえ、それ以降におきましては、今度はイワシ、サバを中心にいたしまして、これが大体二十万トンから二十五万トン程度、そのほか底魚のスケトウ等もとるに至りまして、それが大体十万トンから十三万トン、推定でございますけれども、五十一年ではおおむね三十万トンから四十万トンの間ぐらいではなかろうかというふうに考えております。  金額ということでございますけれども、ちょっと金額までははじいておりませんけれども、そのような状況となっております。
  184. 正森成二

    ○正森委員 ソ連との間で漁業操業協定というのをつくったわけでございますが、それによってソ連がわが近海で漁民に損害を与えるというのが防げるのではないかということが考えられたわけですが、まだ十分に防ぎ切れていないようであります。私が伝え聞いているところでは、他の同僚議員もその損害額等について御質問になったようですから省略させていただきますが、領海十二海里ということを設定した場合に、わが国主権が及ぶわけですから、そういう損害は何割ぐらい減少することができると予想しておられますか。
  185. 岡安誠

    岡安政府委員 ソ連船によりますわが国漁船の被害は四十九年がピークでございまして、五十年に日ソ操業協定ができまして、それ以後約三分の一ぐらいに減りましたが、最近またふえているというのが現状でございます。  そこで、四十八年以来の通算で考えてみますと、被害の件数は四十八年、四十九年、五十年、五十一年を合計いたしまして千八百七十六件でございます。そのうち十二海里内のものが千十一件、約五四%、十二海里外で起きた事故が八百六十五件、四六%というふうになっておりますので、このままで推移するかどうか問題ではございますけれども領海が十二海里になれば半数以上の被害は防げるというのが一応の推定でございます。
  186. 正森成二

    ○正森委員 鈴木農林大臣に伺いますが、五十二年二月二十三日の予算委員会で藤田高敏委員質問に答えて、いわゆる国際海峡にかかわる部分についてのみ三海里にする理由についてたしか鈴木農林大臣が代表されて政府統一見解をお述べになったと承知しております。この見解というのは現在でも変わっておりませんか、お伺いいたします。
  187. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 変わっておりません。
  188. 正森成二

    ○正森委員 私はこの統一見解に若干の疑問を提出いたしたいというように思うのです。それはなぜかと申しますと、二月十二日に同じく予算委員会で石野久男委員が御質問になっておりますが、それに対して福田総理大臣が要旨こう答えておられるのですね。これはだれに遠慮するわけもない、わが国の立場を尊重する、守る、こういう立場である。核、核と言うが、核のことではない。つまり、わが国の生命線とも言うべきマラッカ海峡の自由通航、これを確保したい。わが国の海峡をみずから封鎖するというようなことになることは非常に矛盾する、こうお答えになり、さらに続いて、安保条約ではない。つまり、わが国とすると、海洋国家であり、どこの国の国際海峡も自由に通航させてもらいたい、そういう念願を持っておるときに、わが国自身が先んじてわが国の国際海峡を封鎖する、こういうようなことは妥当ではない、こういうことを福田総理が言っておられるわけですね。これは総理として言葉のあやでおっしゃられたのかもしれませんけれども、私は非常に正確な表現の言葉ではないと思うのですね。非核三原則を仮に国際海峡に適用するとして、海峡を防潜網か何かで全部封鎖してしまって、そして一般の船舶も絶対に通さない、艦艇も絶対に通さない、文字どおり封鎖するんだというような印象を与える答弁になっているわけです。しかし、野党の多くが言っておりますのはそういう意味での封鎖ではないはずであります。一定の範囲内での非核三原則を守るということであって、船を絶対に通さない、封鎖してしまうというような意味ではないわけなんですね。それをこういう表現をされて、わが国はマラッカ海峡を通らなければいけないんだから、わが国の国際海峡を封鎖するようなことになればあたかもマラッカ海峡を封鎖されてしまうみたいなことをおっしゃる。これは非常に不正確な発言をもって非常に国益にかかわる問題について国民に誤解を与えるような答弁ではないかというように思いますが、いかがですか。
  189. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 総理の御答弁についての御質問でございますが、総理もその後いささか正確を欠いた、こういうようなことで訂正をいたしておるようでございます。
  190. 正森成二

    ○正森委員 私も予算委員会で短い時間に聞きまして、そのときにもたしかそういう答弁があったかもしれないというようにいま思い出しておりますが、ともかく非常に正確な答弁でないからこそそういうぐあいに訂正なさったわけですね。  そこで、私は物の考え方についてこれからしばらく伺いたいと思うのですが、防衛庁がおられると思うのです。他の委員がすでにもう御質問になったはずでございますから私から数字を申し上げてもいいのですが、これは私が予算委員会の総括質問であるいは聞く必要があるかもしれないということで防衛庁に要求して、私に対して二月十日付で防衛庁から答弁のあった資料であります。これによりますと、海上自衛隊が確認した艦艇の通峡隻数、昭和四十六年から昭和五十年の年間平均は、対馬が約百四十隻、うち米艦約二十隻、ソ連約百二十隻。津軽約六十隻、米艦約十隻、ソ連約五十隻。宗谷約百十隻、米艦ゼロ隻、ソ連約百十隻ということになっております。その後昭和五十一年については若干変動して、宗谷海峡については米艦も数隻通っているやに聞いておりますが、この私にいただいた資料でよろしゅうございますか。
  191. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いま先生が申されたとおりでございますが、宗谷海峡を五十一年に数隻米艦が通っているというのは過去五年間に数隻通ったことがあるという中に入っているものでございまして、五十一年度にも数隻通っているようでございます。
  192. 正森成二

    ○正森委員 私が用意した資料でございますが、昭和五十一年七月九日の参議院の外務委員会の議事録に登載されている、外務委員会が視察を行ったときの報告がございます。それは言ってありますからお手元にお持ちだと思いますが、その資料によりますと、こう書いてあるのですね。   ところで、説明によれば津軽海峡を利用する  船舶はかなり多く、青函連絡船及びカーフェリ  ーが毎日一三八便運航しているほか、これと交  差して東西に通過する船舶は近年漸増する傾向  にあり、その地理的重要性は宗谷海峡が氷で閉  ざされる冬期にますます高くなっているとのこ  とである。通過の状況を昭和五十年についてみ  ると、漁船及び五百トン以下の船舶を除いても  総計一万一、〇〇〇隻にのぼり、その内訳は国  内船舶三、五〇〇隻、外国船舶二、五〇〇隻、  その他夜間あるいは濃霧などのために識別でき  なかった国籍不明船舶が五、〇〇〇隻となって  いる。このうち軍艦の通過は、米国が年間一〇  隻程度(昭和五十年は航空母艦一隻と駆逐艦九  隻)であるのに対し、ソ連は年間約四〇隻ない  し五〇隻が通過している。ソ連の通過艦艇は、  そのほとんどが駆逐艦もしくは情報収集艦であ  るが、過去には昭和四十九年に大型巡洋艦の通  過が、また昭和四十八年三月、四月及び九月の  三度にわたって在来型潜水艦の浮上通航が確認  されている。こういう報告になっているわけであります。それは間違いございませんか。
  193. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 実は、先生からの御質問のいまの部分はこちらに参りましていただいたものですから、まだ読んでおりません。ただ、私どもが従来から調べておりましたのは、いま申されたような具体的なのは把握していないと思いますし、いまの御質問の中で津軽海峡を空母が通ったというようなお話しございましたけれども、空母が通ったということは私は記憶ございません。それから、潜水艦も浮上して通ったというのは、かなり前に一度あったように記憶しておりますけれども、ほとんどないというのが実情でございます。
  194. 正森成二

    ○正森委員 そこで、鈴木農林大臣に伺いたいと思うのですけれども、いま私が申し述べて一部防衛局長から訂正がございましたが、なぜ私がこういう数字を言ったかといいますと、たとえば津軽海峡を国際海峡に、つまり両方とも十二海里にした意味での海峡にしまして、まだ海洋法会議で結論が出ておりませんから妨げられざる通過通航の制度というのはないわけですが、両方とも十二海里にしたとしても、これは決して封鎖することにはならないのですね。たとえばこの参議院の調査に載っておりますうち、「漁船及び五百トン以下の船舶を除いても」、こうなっているのですね、「漁船及び五百トン以下の船舶」というのはもちろん自由に通れるわけです。それからそれ以上の、一万一千隻に上る軍艦以外の船、これは全部自由に通れるわけであります。それから軍艦についても、ここではアメリカが約十隻で、ソ連が約四十ないし五十隻というようになっておりますが、非核三原則を適用するとしても、いま防衛局長がお話しになりましたように航空母艦は通っておらない、こういうわけですから、そうすると駆逐艦以下の場合にはこれは核兵器を積んでおらない可能性も十分にあるわけです。それからソ連船について見てもこれはそのほとんどが駆逐艦もしくは情報収集艦だ。在来型の潜水艦が三隻浮上通過しているかと思ったら、それは確認していないというわけですから、そうするとソ連側の情報収集艦とかあるいは駆逐艦の場合にはこれは核兵器を積んでおらない可能性が非常に大きいわけですね。そうすると十二海里にすれば海峡を封鎖してしまうというような、人に誤解を与えるような表現を福田総理はされたけれども、仮に津軽海峡を見ますと、一万数千隻年間に通っておるけれども、その中で無害通航を妨げられる船舶というのはほとんどゼロに等しいわけですね。封鎖なんという概念とはおよそほど遠いわけであります。それであるにもかかわらず、なぜこれらの海峡について十二海里にしないのかということになると、これは合理的な理由がないと思うのですね。十二海里にいたしましても無害通航は認めるわけですから。ただ非核三原則を守るというだけなんですから。核兵器を積載している船が通過通航するのは、たしか昭和四十三年四月十七日の政府の、これは無害とは認められないということによって認めないわけですけれども。そういたしますと、福田総理の言われる封鎖するというようなのは大げさであって、マラッカ海峡との対比を考えましても、一万数千隻はどうぞ御自由にお通りください、こういうことになるわけですから、ちっとも影響はないというように思いますが、それをしもあえてやはり三海里に限定される理由というのは、マラッカ海峡をお持ち出しになるだけではこれは十分な説明にはならない。外務省が非常に心配しておるように、十二海里にすればこれは非核三原則と抵触する可能性がわずかでもある。それを野党に突つかれたら困る。困るから漁民のいろいろな要望があってもここは十二海里にしないということしかあと理由としては残ってこないじゃないですか。私はそう思いますが、率直な御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  195. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 正森先生のいまの御意見、これは非核三原則の問題に政府が重点を置いていわゆる国際海峡である五海峡に対してそういう領海法の際に特別な措置をとった、こういうぐあいに伺えるわけでございますけれども、私どもは当委員会におきましてるる御説明を申し上げておりますように、御承知のようにわが国は海運国家であり、海洋国家であり、また少資源国として海外から自由にとにかく資源等の輸入もし、また貿易もしていきたい、これがわが国の国益に通ずるものである、このように考えております。国連海洋法会議におきましては御承知のように無害通航よりもより自由な通航制度というような方向で議論が収斂をされつつある、こういうことであり、わが国もまたそういう立場に立ちましてこれを主張しておるわけでございます。そういう観点からいたしまして、私ども海洋法会議においてはそういう主張をやっている、しかし自分のところの海峡においては自由な通航制度よりももっときつい制度をとる、これは国際的にも通用しない議論である、このように私は考えるわけでございます。そういうようなことで、海洋法会議において国際的にこの国際海峡の問題についてのコンセンサスが出るまでの間私どもは現状のままにしたい、こういう意味でございます。
  196. 正森成二

    ○正森委員 そういう御答弁をされる鈴木農林大臣の御苦心のほどは十分に評価したいと思いますが、しかしその御答弁は事実によって次々に崩れていっているというように私は思わざるを得ないわけです。これからしばらくその点についてもお話ししたいと思います。  まず第一に、わが国領海を十二海里に広げて海峡について非核三原則の適用を行ったりあるいは無害通航を主張したりすると、総理がたびたび言うておられるように、マラッカ海峡の通過通航について非常に悪影響があるのだということを一貫して言ってこられたわけですね。今度の予算委員会でもそうであります。しかし、私どもが承知しておりますところでは、インドネシア、マレーシア及びシンガポール、この三カ国は「沿岸三国会議共同発表」というのを一九七一年十一月に行っておりますが、その中の第五項で、「インドネシア共和国及びマレイシアの両国政府は、無害通航の原則に従ったマラッカ・シンガポール海峡の国際航行を完全に認めるとともに、同海峡は国際海峡ではないことに合意した。シンガポール政府は、この点に関するインドネシア共和国及びマレイシア両国政府の立場をテーク・ノートした。」こういうぐあいになっているわけであります。つまり、マラッカ海峡の沿岸国がすでにこの海峡は、これは国際海峡ではないのだ、領海なんだ、だから無害通航の原則に従って通航を認めるのだということを一九七一年に言っているわけであります。ですから、その国と同じことをわが国が主張したとしても、それによっていままで以上の報復措置を受けることは何らないわけであります。またこの三国は、私の知る限りでは核兵器積載艦を持っておって、それがわが国の津軽海峡を通過してみたり、あるいは宗谷海峡を通過したりしてみるということは絶対にありません。そうすると、マラッカ海峡を通るためにわざわざ領海を三海里にしておくのだという理由は、この一事をもってしても崩れてしまうのではないかというように思います。  さらにつけ加えますならば、ことしの二月二十四日に「マラッカ・シンガポール海峡の航行安全に関する共同ステートメント」というのを出しました。これは鈴木農林大臣が百も御承知のはずであります。それの第一には「船舶は、マラッカ・シンガポール海峡通航の間は常時、最低三・五メートルの余裕水深(UKC)」、アンダー・キール・クリアランスですね、「を維持し、かつ、特に危険水域航行の際にはあらゆる必要な安全措置をとるものとする。」とか、あるいは航行分離方式を設けるとか、あるいは保険をつけなければならないとか、そういうことをもこれは全部決めているわけですね。これは私の承知しておるところでは、わが国政府関係者及び海運関係者も参加して、初めはUKCが三メートルにしてほしいとか、その前はもう少し厳しい条件を出しておった。しかし結局これはやむを得ないということになって規制されるわけでしょう。だから、一九七一年にすでにこれは領海だ、国際海峡ではない、無害通航の原則で認めるのだと言い、ことしの二月二十四日にはUKCが三・五メートルであるとか、その他のものも制限を課してきているわけですね。わが国としては、好むと好まざるにかかわらずこれは認めなければならない、こういうことになっているときに、わが国だけがおくればせの片思いのように、やはり非核三原則というようなことをやったらマラッカ海峡を通るのに影響があるというようなことを言うのは、言葉が非常に過ぎるかもしれないけれども、まさにナンセンスではありませんか。ですから、私はもっとはっきりと、領海を三海里に制限するのはマラッカ海峡通過のためではなしに、非核三原則のためなんだということをもっと正直におっしゃるなら、これはそれがわが国益に合致するかどうかは別として、なるほど政府はそこがねらいだったのかということはわかる。しかし、海峡を封鎖することになるというようなことを言ってみたり、それからマラッカ海峡を通らなければならないからということを言ってみるというのは、私がいま指摘したことに基づいて、それはことごとく理由にならないというように思いますが、御見解を聞かしていただきたいと思います。
  197. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 当時予算委員会におきまして、総理もマラッカ海峡を一つの例に挙げてそういう御答弁があったわけでございます。また、UKCの問題は、先般関係三国でそういう取り決めができたということも承知をいたしております。しかし、これはいわゆる大型タンカー等があそこを通ります際に、安全を確保する、事故等の防止のためにとられておる措置でございまして、いわゆる沿岸国として、このいろいろな規制の問題等につきまして、海峡そのものとしての国際的な規制というような観点での取り決めではない、安全確保のための措置である、私はこういうぐあいに理解をいたしておるところでございます。  そういうようなことで、確かに当時総理もマラッカ海峡のことを具体的な例として挙げたわけでございますけれども、先ほど申し上げるように、海洋法会議等におきましては、こういう多数の外国船が通航する国際海峡についてはより自由な航行制度、通航制度というものが望ましいというようなことで主張し、わが方もまたそういう立場で主張しておる、これも御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  198. 正森成二

    ○正森委員 いまこの場でおっしゃった言葉の意味は理解しますけれども、しかし論理としては一貫性を欠きますし、総理が口を酸っぱくしてマラッカ海峡を通らなければいけないんだ、あるいは海洋自由の原則から見て自由に通らなければいけないその第一はマラッカ海峡だというようなことを繰り返し繰り返し言われてきておる観点からすれば、事マラッカ海峡に関する限りは、私がいま指摘したことで御立論の根拠は完全に崩れておるというように言わなければならないと思います。  さらにあえて申しますなら、海洋法会議についても関係国は核の問題についても提案をしておるのですね。恐らく鈴木農林大臣はそういう点も御存じでまだ答弁をしておられないと思いますが、私から持ち出しますと、御承知のようにキプロス、ギリシャ、インドネシア、マレーシア、モロッコ、フィリピン、スペイン、イエメンの関係沿岸八カ国が海洋法会議の第二小委員会に条約案を提案しておるのですね。その中ではどういうことを決めて提案しておるかといいますと、海峡というものはやはり領海の一部を構成する以上、一体として取り扱われなければならないということを言っているのですね。そしてどういうことを決めておるかといいますと、こう決めておるのです。「沿岸国は外国軍艦の領海通航について事前の通告または許可を求めることができる。無害通航権を行使する外国軍艦は沿岸国の法令にしたがわなければならず、(a)武器の行使・訓練、(b)乗組員を戦闘配置につけること、(c)艦載機の飛行、(d)武力による威嚇または示威、(e)あらゆる種類の調査活動など、通航に直接関係ない活動をおこなってはならない。」こういうように書いておるわけですね。そして「沿岸国は、(a)原子力船、核兵器運搬船、(b)核物質、または沿岸国をおびやかしあるいは海洋環境をいちじるしく汚染するおそれのあるその他の物質を運ぶ船、(c)海洋環境を調査する船、の領海通航を規制できる。」こういうぐあいにしておるのです。つまり(a)の核兵器運搬船については、事前の通告または許可を要求することができる、それで(b)の海洋汚染をするおそれのある船については、事前の通告と保険証書の携行や指定された航路の使用という条件の全部または一部を課することができる、(c)の調査船については、事前の通告を求めることができるということを提案しておるわけですね。ということは、これは単にマラッカ海峡だけではなしに、ジブラルタル海峡などの沿岸国もこういうことを要求しておるということになるのですね。ですから非核三原則を主張するということは、人類の中でわが国だけが核兵器の実際の被害を受けておるという国からすれば、そういう被害を全然知らない国でさえこれだけ厳しい態度を海洋法会議で主張しておるということからすれば、長崎、広島、ビキニなど三たびわれわれ日本国民が核兵器あるいは核物質の被害を受けて数十万人が死亡しておるという国が、海洋法会議でこれと少なくとも同程度の要求をするというのはまことに当然ではありませんか。私はそういうように思いますし、鈴木農林大臣がUKCというのはタンカーが通るときの安全についてだけ決めておるのだというように問題をややそらされたように承りましたが、そうではなしに、これらの海峡沿岸国は真っ向から、アメリカなどの、核兵器を積んだものも自由にどこでも通れるんだ、おまえさんの領海であっても、事国際海峡であれば、そこのけ、そこのけ、お船が通るということで通れるんだというような大国主義的な主張に対して、断固として拒否するということを条約案として明確に意思表示しているわけであります。私は、日本国民の利益を守ろうとするなら、政府は当然こういう提案を海洋法会議においてすべきであったというように思いますが、外務省、ただの一度でもあなた方はこういう提案をしたことがありますか。
  199. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘になりましたような、マレーシア等を含めました八カ国の提案がありましたことは事実でございます。ただ先生も御承知かと思いますが、これは、一九七三年のただいまの第三次国連海洋法会議が始まります前の、いわば準備をやっておりました拡大海底平和利用委員会での提案でございます。その当時、いま御指摘のような核兵器の搭載艦とかその他タンカーだとか、それから危険な物質を運搬する船とかいろいろな特別の船を挙げまして、それぞれについての規制を定めた提案を行ったわけでございます。  ところが、この提案は、先生もいまおっしゃられましたように海峡と一般の領海とは一体をなすものとして、国際海峡においては特に特別の制度をつくるというような考え方ではなしに、全体としていわゆる無害通航の制度で律すべきである、こういう基本的な考え方でできておるわけでございます。これはまたるるこの委員会その他でも御討議が出ましたけれどもわが国海洋法会議に期待をしておるものは、いわゆる国際海峡においては無害通航の制度では不十分であって、無害通航制度よりももっと自由な通航制度をつくるべきであるということでございまして、事実海洋法会議の一般的方向も、その方向で審議が行われているわけでございます。  それで、この八カ国の提案をやりました諸国も、先ほど申し上げましたような七三年の段階におきましては、沿岸国としての立場から海峡を通航する船舶に対して、わりあいに厳しい態度で規制していくという考え方を持っておりまして、それがいまの八カ国提案にあったわけでございます。ところが、これらの国々自身も、その後海洋法会議が始まり、いろいろの討議を重ねるにつれまして、これらの諸国の態度そのものも変わってまいりまして、いわゆる無害通航制度一点張りということではなしに、むしろいま海洋法会議の大勢が向いておりますところのいわゆる通過通航制度ということを認めよう、その土俵の枠の中で具体的な沿岸国の権限を決めていこう、こういう態度に変わってきているわけでございます。事実、七三年に行われました、八カ国提案のような考え方は、現在までのところ、海洋法会議の討議の基礎になっておりますところの非公式単一草案にも必ずしも反映はされておらないわけでございまして、非公式単一草案は、委員長がその委員会における討議の大勢を見ながら書き流したものでございますけれども、実はその中にも反映されておらない。これら諸国の態度そのものも、だんだん変わってきておるというのが現実でございます。
  200. 正森成二

    ○正森委員 私どもは、時間に制限があるんです。いま長々と説明しましたけれども、私が聞いた、外務省はこういう非核三原則について考慮した提案はしたかという質問には一言も答えていないんですね。答えないで、いろいろと八カ国の提案についての論評をやっておるんですね。私は、そういう論評も後ほど聞かしてもらおうとは思いましたけれども、論評をある程度短い時間でやってもいいけれども外務省としては、こういうことはいたさなかったというようなことを答えなければ、答弁にならないじゃないですか。そんな態度をとっておるから、外務省というのは外交技術屋だということになるんですよ。もう一遍ここへ来て答弁しなさい。
  201. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 失礼申し上げました。  外務省といいますか、政府といたしましては、この海洋法会議に臨むに当たりまして、その国際海峡の通航制度につきましては、無害通航では十分でないという態度と、それから船舶の種類によって規制を行うという考え方には反対である、と申しますのは、船舶の種類別規制ということになりますと、巨大タンカーのねらい打ちというようなところに行く可能性が非常に強い、そういう意味で、わが海運の自由を確保するために、船舶別の規制という考え方は何とかして排除したいという考え方もありまして、この八カ国提案そのものについて、同じような提案をわが国がするというようなことはなかったわけでございます。
  202. 正森成二

    ○正森委員 いまの答弁にしても、三十秒ぐらいで済むものを長々とやりましたね。その態度自体が、いかに外務省というのが身にやましく感じておるかということで、つい言葉が多くなるというように理解せざるを得ないんですね。もう少し、提案はしたことはない、こういうように答えて、そこでなぜだと言われれば、また堂々と答えに来るという態度をとるべきであって、肝心のことは答えないで言いわけだけをたらたらとするというのは、これは男らしい男子のすることじゃないです。そのことを——私は鈴木農林大臣のお顔を見ていますと、いかにもそうだというように瞑目して上を見ておられますが、私はそういうように了解をして、外務省についてこれ以上いろいろ言うのは時間のむだですから、次に進みたいというように思うんです。  しかし、もしそういうようなお考えであるとすると、次はいよいよ塩川官房副長官に伺いたいと思うんですが、先日四月の三日に、領海法等についてNHKの政党討論会がございました。その中で、わが党の岩間議員が言うておるんです。少しあれですが引用して——しませんと、塩川さんがなぜそういう見解を述べられたかということが出てきませんので、速記に基づいて申し上げますから、塩川官房副長官も速記を手元にお持ちだと思いますから、それを場合によったらごらんになっていただきたいと思うんです。  わが党の岩間議員はこう言っているんです。前略いたしますが、「今まで政府の態度では、ことに昭和四十三年に政府見解というものを発表しているわけですが、それによると、常備核装備艦の領海通航を認めないようなことを政府見解として出している。これは日本の平和勢力の要求によってたたかいとられたものだ。そういう立場にたたなければならない政府が、いったい、国連の海洋法会議のなかで、これを本当に努力するのかどうか。被爆国として、あくまで、これを要求して、そして一国の主権と平和を守り抜くという方向に、はっきり腹を固める必要があるのではないかと思う。」「この前の話ですけれど、カラカス会議——これは第三次第二回会議になるのですが——この海洋法会議で、マレーシアとモロッコ、オーマン、イエメンの四カ国が」というのは八カ国の誤りでしょうが、「次のような提案をしているんですね。“核兵器積載艦や原子力船の海峡無害通航を沿岸国は従来よりもきびしく規制することが必要だ”——こういう提案をされているわけですけれど、そういう点からいえば、官房副長官におうかがいしますが、こういう点で努力をされるのか。」  そこで、塩川官房副長官が次のように答弁しておられる。長いですから、非常に失礼ですが前半は省略いたしますが、途中から読みますとこう答えておられる。「私らは、「持ちこまさず」という原則を貫くためには、当然、岩間先生がおっしゃるように国際会議でも主張しなきやならん。ただし、それじゃその船を停止させて実態をいちいち検問して通すかということになってくると、ここが国際会議上の問題になってくると思いまして……そりゃあ、おっしゃる趣旨のことを努力するのは当然のことです。ですから海洋法会議でそういう核兵器絶滅、これはカーター政権も言ってるんですからそれにあわせて、あい呼応してそういう主張は強くいたします。」こういうように言うているんですね。  これは、岩間議員の発言と一体として考えますと、それをやったとして実効を得るためにはいろいろむずかしい問題はある。あるけれども、カーター政権も言っているように核兵器絶滅、これを主張し、それとあわせて海峡についても非核三原則を貫くために、インドネシア、イエメンなどのやっているようなのに相呼応して主張していかなきゃいかぬ、政府はそういうように努力いたしますと、こう答えているんですね。いまの外務省答弁と真っ向から対立するんです。  そこで私は、政治家としての塩川官房副長官に伺いたいんですけれども、まさか塩川官房副長官は、NHKでひとついいところを見せよう、政府はやらないんだけれども、言わなきゃ参議院選挙も近づくし、これは票が少なくなる、だから言うておこうということで、こういう食言をなさったんではないでしょうね、実際にやるつもりでおっしゃったんでしょうね、それをここで明白に答えていただきたい。そうして外務省のいまのような答弁は、政府方針から見て不十分だということを明白におっしゃっていただきたい。
  203. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 先ほど発言の内容を読まれましたが、そこで私も明確に言っておりますことは、核兵器の絶滅について、私はやはりあらゆる国際会議日本は主張すべきだと思うのです。正森さんのおっしゃっている理論をずっと聞いておりましたら、要するに核兵器を積んでおる船だけを区別せよ、こうおっしゃっているように思う。(正森委員「非核三原則との関係ではね」と呼ぶ)ところで、私もその討論会の中で言っておりますように、その区別が実際にむずかしいというところに海洋法会議の悩みがあると思うのです。日本はいままで、あらゆる経済活動を自由にやるということを原則にしてきた。そういう点から見ましても、いままでの考え方から申しまして、海洋はできるだけ自由に、だけれども一定の船に制限をつけるということになりましたら、その一定の船というのは、その国によってとりょうはどのようにもとれるわけでありますから、そこらに制限をつけるべきであるかないかということが海洋法会議の問題となってきておる。だから結局は、海洋法会議の結論を待ってそういう制限をするのかしないのかというような問題は結論を出すべきではないか、こう思うのです。ただし私が言っておりますのは、機会があるたびごとにやはり日本は、核兵器の絶滅、核兵器の絶滅ということは、これは当然非核三原則を堅持しておる日本の国として当然申すべきだ、こう思う次第であります。
  204. 正森成二

    ○正森委員 私はいまの答弁は、NHKを聞いておる数百万の日本国民を欺くものであるというように言わなければならないと思うのですね。私もあのテレビを見ておりましたよ。そして塩川正十郎さんはさすが大阪の出身だけあっていいことをおっしゃるというように私は思ったからこそ、すぐ党の方に速記はとっておるかということで、起こしておいてもらったのです。何ですか、いまのだったら、核兵器の絶滅だけについては言うけれども、何かそれ以上に海洋法会議で非核三原則を貫くための何らかの主張というのはやらないというように、いまの答弁だったら聞こえるのですね。ですけれども、あのNHKのあなたのおっしゃったことというのは、NHKはもちろん録画は残しておりますし、わが党も全部テレビの録音をとっておりますけれども、明白に言っておられるのですよ。「私らは、「持ちこまさず」という原則を貫くためには、当然、岩間先生がおっしゃるように国際会議でも主張しなきやならん。」こうおっしゃっているのです。また、「核兵器絶滅、これはカーター政権も言ってるんですからそれにあわせて、あい呼応してそういう主張は強くいたします。」こう言っているのです。これは核兵器絶滅という主張に合わせて、非核三原則で通過しないようにということを主張いたしますということを言うておるのですね。これはだれが聞いたってそうなんです。それをいまここで、領海法のところで速記録に載る形で出るということになるとぐあいが悪い、しかしNHKなら、これは国民の前で空約束はするというのでは、まことに政党としても、政治家としても、言語道断じゃないですか。
  205. 塩川正十郎

    ○塩川政府委員 そういうふうに一方的におっしゃるのではなくして、それでは私が言ったことを書いてありますから読みます。「ただし、それではその船を停止させてその実態を一々検問して通すかということになってくると、そこが国際法上の問題になってくると思いまして、それはおっしゃる趣旨は私は努力するのが当然だと思う。」そこで、「ですから、海洋法会議等で、そういう核兵器絶滅、これはカーター政権が言っておるのでありますから、それにも合わせて、呼応して、そういう主張は強くいたすべきだ。」私が先ほど言っているのとちっとも変わりません。
  206. 正森成二

    ○正森委員 それはそんなことをおっしゃるといけませんよ。いまあなたがお読みになった部分は、私もひきょうなことはしたくないから冒頭に全部読んでいるのですよ。しかしあなたはそれと同時に、その前に「私らは、「持ちこまさず」という原則を貫くためには、当然、岩間先生がおっしゃるように国際会議でも主張しなきやならん。」、こう言っているじゃありませんか。その岩間先生が何をおっしゃったかと言うと、私が先ほど読み上げたようなことを言ったのです。ですから私は、官房副長官がこの期に及んで、やはり速記録の残る国会の公式の場では言を左右にしておられるというように思わざるを得ない。どうか、すべてのとは言いませんが、何百万という日本国民が聞いておったのですから、御自分の言動については食言ではなしにやはり責任をとられて、そしてNHKでは確かにああ言ったけれども、しかし外務省の意向なり何なりを十分に聞いておらなかったから若干言い過ぎであったとか、あるいは私は自分の信念に基づいたので、通るか通らないかは別として政府外務省部内でも主張するとか、そういうことをおっしゃるのが適切であると思いますが、しかしあなたもここでそういうぐあいに御答弁になったんですから、幾ら言いましても水かけ論になる可能性がありますし、本日は領海法の審議であって、塩川官房副長官の政治責任をどうこうするという、そういう委員会ではございませんから、私のあなたの関係する部門についての質問はこれ以上やりとりすることを避けさせていただいて、次の問題に移らせていただきたいと思います。  鈴木農林大臣、しかし公平に、とらわれずに、いま私どもの問答をお聞きになっておれば、多くのNHKの視聴者には、政府を代表してまいりました官房副長官が、岩間先生がおっしゃるように国際会議でも主張しなければならぬ、こういうぐあいに言われれば、国民として期待を抱くのは当然であり、そして官房副長官の真意がどこにあるにしても、わが政府としては原子爆弾の被害を受けた唯一の国でありますから、そういう主張をすべきであるというように私は思います。それを海洋自由の原則というようなことで、いままで一度も主張をしてこなかったわが政府の態度というものは、批判されなければならないというように思うのです。  そこで鈴木農林大臣に伺いますが、あなたは非核三原則のことではないのだと言っておられますけれども、二百海里法案等についての政審会談の報告というのがございました。政審会談が行われたのですね。そこで領海法案について話が出ましたけれども、野党側が特定海域条項の削除でおおむね一致して、この点を強く迫りました。そうするとどう言ったかと言うと、自民党は非核三原則をどうにかしない限り全域を十二海里にはできない、これは林義郎水産副部会長であります。また塩川官房副長官は、三原則の解釈がシビア過ぎる、もっと柔軟に解釈すれば原則全域十二海里だけでも済んだはずだというように言っておるのですね。これは各党の政審会長が全部おるところで堂々と発言しているのです。それから見ますと、やはり今度特定海域を設け領海を三海里にしたというのは、非核三原則との問題が一番大きな問題だということを福田総理や農林大臣が幾らここで一生懸命否定なさっても、自民党の執行部や政府担当者の一部は、野党の政審会長との会談でちゃんと言っているじゃありませんか。これは責任ある政審会長が全部聞いているのです。それがメモになって私のところに来たのです。どう思われますか。
  207. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政審会長会談の御意見の交換、やりとり、その議論の流れというものを、私実は承知しておらないわけでございます。そういうようなことで、野党の皆さんから非核三原則逃れではないかとか、いろいろな御議論が出たことに関連して、そういう議論に発展していったのではないだろうか、こう推察をいたすだけでございます。その場面におりませんし、まだその記録を読んでおりません。  しかし、この領海法の構想と申しますか、基本的な考え方、これは実は関係閣僚会議で私が提案をし、意見を述べて御賛同を得た、こういうことでございまして、私は先ほど来正森さんに御答弁を申し上げておるような趣旨でこの提案を申し上げておる、こういうことを御理解を願いたいと思います。
  208. 正森成二

    ○正森委員 私はただいまの御説明に必ずしも納得いたしませんけれども、もう時間が迫ってまいりましたので、最後に次の質問に移りたいと思います。  防衛局長に伺いますが、アメリカ側は当初領海は六海里以上には絶対に広げないのだという主張ですね。そして二百海里にしてほしいという発展途上国に対して、いわば交渉能力を高めるために、二百海里を認めるのだったら領海は六海里以下に抑えろということでやってきたように思うのです。それはたとえばアメリカ側の代表でございましたディーンの論文を読みましたり、あるいは国務省の法律顧問のベッカーの論文などを読みますとそれが非常にわかるのです。たとえば「フォーリンアフェアーズ」に載ったディーンの論文を読んでみますと、相当長いのですけれども時間がございませんからごく一部にいたしますと、「エーゲ海、東地中海において、またインドネシア、フィリピン、日本の周辺の海洋において、各島の領海の拡大は、わが艦隊や空軍の作戦能力を阻害するであろう。」こういうように言っておることは周知の事実であります。そこで私は言いたいのですけれども、アメリカはかつてこういう態度をとりながら、いまや自国の漁民の圧力に押されてさっさと二百海里だけは先に決めてしまっているのです。そして領海は十二海里にはさせない。かつて何年か前には、領海は六海里以下に抑えてほしい、そのかわりこれをやってくれるのなら発展途上国の二百海里は認めましょう、こう言っていたのです。ところがいまは、自分はさっさと二百海里にしてしまってそして領海は十二海里には絶対にさせないぞというような態度をとっているのですが、これは非常に大国主義的な態度だというように私としては考えております。  そこで、防衛局長としては領海は十二海里の方がやりやすいのでしょう。そして防衛庁としては、万が一日本周辺でいろんなことがあっても日本海にアメリカの空母が入るなどということは、仮に仮想敵国がソ連であるとすればこれはナンセンスである。撃沈されに入るようなものだ。航空母艦等アメリカの艦船が日本海に入るなどということは考えられない、こういうぐあいに見ているのではありませんか。
  209. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 日本海における作戦の場合にアメリカがどういうような作戦をとるかということは、私ども詳しくは承知いたしておりません。ですから断定的なことは申し上げられないわけでございますが、まあ日本海の中に入る必要性というものは比較的少ないだろうというふうに考えます。
  210. 正森成二

    ○正森委員 ここに最近出ました「自衛隊戦わば」という本があります。これは元陸幕長中村龍平、元海幕長内田一臣、元空幕長石川貫之、こういうそうそうたるあなた方のOBがお書きになったものであります。その本の三百二十ページを読みますと、「日本海には空母ははいらないでしょうかね。」という質問に対して石川さんは「日本海には絶対はいりませんね。」こう言っておるのです。これは少し軍事戦略、戦術を心得る者なら当然のことなんです。いざ戦端が開かれれば日本海ソ連の海になる。そんなところに何も空母が入らなくてもアメリカ側として日本列島の外側から幾らでもやりたいことはやれるわけです。そういう点を考えますと、ソ連というものは宗谷海峡にしろ自分の領海があるわけです。ですからアメリカ側がいま日本が特定海域にしたような海峡を使わなければならないという理由は、私は非常に可能性が少ないというように思うのです。そういう点から考えますと、仮に日米安保条約を前提にするにしても、わが国益から言って領海を三海里に限定する必要はないんじゃないか、それが率直な防衛庁の見解ではないですか。
  211. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 防衛上の観点、軍事的な面から申し上げますと、これは外国の艦船が自由に入ってこられぬ領土的なところが広い方がいいわけでございます。しかし一方、先ほど来農林大臣からも御説明がございましたように、海洋国家としての日本、そしてまた先進工業国としての日本の特性から自由な通航というものを従来から主張しております。したがいまして私どもは、安全保障というものを単に軍事面のみから考えるべきではないと思いまして、エネルギー問題あるいは食糧問題等考えまして広い意味の安全保障の立場から現在のような政府考え方が打ち出されたものというふうに考えておるわけでございます。
  212. 正森成二

    ○正森委員 最後に伺いますが、防衛庁は韓国からのアメリカの核兵器及び地上軍撤退についてのカーター政権の政策はもちろんよく承知しているはずであります。そして当然のことながら、この政策というのがブルッキング研究所で多年研究された民主党の政策に基づいて行われている部分が非常に大きいということも承知しているはずであります。そして、ブルッキング研究所の政策をまとめたものとして、たとえばラルフ・N・クロフが書いた「米国のアジア戦略と日本」という本がございますが、これについても十分に研究しているはずであります。そうではありませんか。
  213. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 韓国からの米陸軍の撤退、戦術核の撤退等につきましては、私どもも関心を持っていろいろな角度から勉強いたしております。
  214. 正森成二

    ○正森委員 これで質問を終わらしていただきますが、鈴木農林大臣に伺います。  いま防衛庁当局も認めましたブルッキング研究所のラルフ・N・クロフの「米国のアジア戦略と日本」の二百三十三ページから二百三十四ページにかけてこういうことが書いてあります。「もう一つ真剣に考えられるかもしれぬ方式は、南北両政府と大国とが半島における武力不行使を約束し、半島を非核地帯として尊重することに同意する二つの協定の組み合せである。たとえば、南北両政府は互に武力を行使しないという非公式とりきめを、やがて正式な政府協定に変え、双方共核兵器を作らず、領土内にもちこませない追加規定をつけることも考えられる。そうすれば四大国もこの協定を支持して、大国自身も半島における武力不行使と半島の非核地帯尊重を約束できるかもしれない。」これは一つの青写真として考えていることであります。  つまり、カーター政権のブレーンでさえこういうことをすでに考えておる。そうだといたしますと、わが国が海峡について非核三原則を適用して日本列島から朝鮮半島にかけて非核地帯をつくろうという考え方を展開することは、ただに日本国民の利益に合致しているだけでなしに、いまやカーター政権のブレーンでさえあり得べき何年か後の東アジアの未来図として描いているのです。いまこそ領海法考える場合に、あるいは海洋法会議わが国の主張をする場合に、こういう長期的なビジョンを立てて物事を考えるべきではないかということをあえて要望いたしまして、それに関する感想を一言だけ伺って質問を終わります。
  215. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来正森さんの御高見を十分私も拝聴し、勉強さしていただきました。  なお、私ここで申し上げておきたいのでありますが、日本共産党が党としての水産政策を御発表になりまして、こういう政策をとったらどうかといって、政策マンとして私も尊敬いたしております上田耕一郎先生が塚田大願さんと一緒にお見えになりました。そのとき私もそのついでにいまの領海法についての構想をお話し申し上げた。そうしたら上田さんは現在よりも前進ですねと言って、評価をしていただいたわけでございます。私は、いろいろの御意見等があると思うのでありますけれども、ぜひこの国会でこの領海法について、日本共産党も御賛同をいただくようにお願いを申し上げたいと存じます。
  216. 正森成二

    ○正森委員 現在の法案がいまよりは前進であるということは、われわれは一貫して主張しております。農林大臣の御主張は、党を代表して確かに承っておきます。  しかし、同時に、私が最後に申し上げた点については御応答がございませんでしたが、その点についても、しかと御記憶にとめておいていただきたいということを申し述べて、私の質問を終わります。
  217. 金子岩三

    金子委員長 加地和君。
  218. 加地和

    加地委員 まず最初に、鈴木農林大臣、モスクワへ行っていただきましていろいろ御奮闘いただきましくどうも御苦労さまでございました。今回の漁業交渉は、文字どおり与野党一致して国内での声援を送っていたわけでございますけれども相手のあることで、また五月には奮起して、ひとついい知恵を持ち寄って、日本の国益にかなうように御努力を願いたいと思います。  そこで、お疲れとは思うのでございますけれども、新自由クラブも一時間与えられておりますので、国民を代表いたしまして質問さしていただきます。  まず第一に、農林大臣が御帰国なさったときの記者会見で、基本的な問題を残して協定のほとんどの部分について意見は一致した、付属書についても成文化は終わっておる、このように発表しておられますけれども、基本的な問題を残してというところを概略御説明願えませんでしょうか。
  219. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基本的問題と申し上げますのは、暫定協定案の第一条、この第一条は幹部会令の適用海域の問題でございます。第二条は、わが国が近く二百海里の漁業水域設定をする、そのことに関連をいたしまして、ソ連の二百海里漁業専管水域の中に暫定協定日本漁船を入れてやるのであるから、日本の二百海里漁業水域の中にも入れてもらう権利を留保する、つまり、入れてもらうことを前提にしてこの協定を結ぶのだ、こういうことをソ側は言っておるわけでございます。  私は、第二条の問題につきましては、日本の二百海里の主権的権利ソ連側が認めて、そして一定の条件のもとにおいてこの二百海里に入ってくるということにつきましては、これは相互主義でございますから、私はそのことははっきり約束をしてよろしい、こういうことを申し上げておるわけでございまして、二条の問題につきましては、基本的にイシコフさんとの間には合意ができております。  ただ、その成文化に当たりまして、第二条の問題については、ソ連の法制の立て方とわが方の法制のたてまえと違う面がございまして、実務家の間の修文化の段階で若干難航しておる。しかし、これは時間をかければ問題なく意見は調うものと考えております。  問題は、第一条の幹部会令の適用海域、この問題が、端的に申し上げますと北方四島の領土絡みの問題でございまして、ソ側の表現、とろうとする線引き、そういうものとわが方の主張は対立をしておる、こういうことでございます。  その他の第三条以下は全部成文化も済んでおります。また、その細目を決めた付属書も全部合意をし、成文化も完了しておる、こういうことでございます。
  220. 加地和

    加地委員 ただいまの第二条の日本の二百海里以内へソ連漁船も入れてくれという意味は、日本沿岸十二海里以内にも当然にソ連の方は入れてもらえるという考えなんでしょうか。
  221. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ちょっと御説明を申し上げるのですが、ソ連の二百海里専管水域と申しますのは、ソ連沿岸基線からはかりまして二百海里、それ全部にこの幹部会令が適用になるわけでございます。その中に十二海里の領海が存在をする、こういう構成になっているわけでございます。わが方のこの十二海里、二百海里の問題というのは、いま御審議をいただいておりますように、基線からはかりまして十二海里の間が領海でございます。そして十二海里の外百八十八海里が漁業水域である、こういう構成になっておるわけでございます。  したがいまして、ソ連の方は根っこから二百海里漁業専管水域であるということでございますから、協定のしようによっては、専管水域でございますから、よその国の漁船も入漁させ得る、こういうことになるわけでございます。しかしわが方は、領海は領土の延長、領土そのものであるということで、絶対に外国漁船はこれには入れない。実績によって一定の条件で入れるのは領海の外百八十八海里の漁業水域である、こういうことになっているわけでございます。  そういう点が、成文化段階におきましてなかなか意見がかみ合わない問題がある、こういうことでございます。
  222. 加地和

    加地委員 そうしますと、ソ連日本沿岸十二海里以内で魚をとることができないということは認めているわけですね。
  223. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 イシコフ漁業大臣との問ではそれははっきり認めております。  ただ、ソ連の法律がそういうたてまえになっておりますから、ソ連の法律をたてまえにいたしますと、領海に対するところの別個の協定がなされれば、合意されれば入ることもできるというたてまえにソ側の方はなっておるわけでございます。われわれの方は、領海につきましては別個の協定もなし得る余地はない、そのことははっきり申し上げておるところでございます。
  224. 加地和

    加地委員 同じ帰国されたときの記者会見で農林大臣は、世界の二大遠洋漁業国家として、両国、日本ソ連はお互いの漁業実績を一〇〇%尊重すべきだ、日ソ間で削減し合っていては他国に実績を認めよとは言えない、こういうりっぱな御発言をなさっておるわけでございますが、果たして、いままで日本ソ連領海あるいは二百海里の漁業専管水域でとっていた魚の量を最大限度確保し、かつソ連にもいままでの実績を最大限度認めるということが、単なる話ではなしに、現実に政治的あるいは条約的な解決で可能な話なんでしょうか。
  225. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、ソ連の雑誌記者の方から羽田の会見の際にいろいろ御質問がありましたので、それに関連をいたしまして基本的な考え方を申し述べたということでございます。  しかし、実際的には、ソ連はアメリカとの交渉におきましても二割以上の漁獲の削減を受けておる、カナダとも同様の削減を受けております。またEC、ノルウエー、アルゼンチンあるいはアイスランド等々におきましても、相当の削減を迫られておるようでございます。そういうような事情から、自分の庭先である北西太平洋海域においては、何とかその削減された分を補いたい、こういう考え方があることも、これは私理解のできるところでございます。  そういうようなことで、二大遠洋漁業国家として第三の国に対しては実績をできるだけ尊重させるという立場にありますけれどもソ側としてはそういう厳しい情勢下にあるわけでございますから、私は、一〇〇%ずつ認め合うということは実際問題としては困難である、しかしできるだけこの漁獲実績というものを、お互いにそれに近いものを認め合うということが望ましいと考えておるところでございます。
  226. 加地和

    加地委員 まだ交渉の途中ではございますけれども漁業の責任者として鈴木農林大臣は、日本側としてたとえば昭和五十一年度実績の何%ぐらいまでは確保できるという見通しを持っておられますか。
  227. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのことがはっきり予測がついておりますれば、大分肩の荷も軽くなるわけでございますが、なかなか予測ができません。しかしここで申し上げられることは、日ソ漁業条約に基づきましてサケ・マスの交渉をやってきたわけでございます。ソ側は、この条約は存在するけれども、今回設定したところのソ連の二百海里漁業専管水域、ここにソ連主権的権利適用する、その漁獲割り当てソ連側が決めるのだという基本的な態度をとっております。  しかし、その二百海里の外の部分につきましては、話し合いが大分進んでまいりました。そして、ニコノロフ首席代表とわが方の荒勝代表との間では、五万七千トンという線を一歩も譲らなかった。ところが、イシコフ大臣が大局的な判断をされた結果、それに五千トンを上積みして六万二千トンという数字を出されたわけでございます。これを一体どう評価するかということでございますが、二百海里の内、外で豊漁年の一昨年には、わが方は大体八万七千トン漁獲をいたしておったわけでございます。そういう実績がございます。それを、二百海里の中でどれだけとったかということを推算いたしますと、約二万トン程度とっております。八万七千トンから二百海里内の二万トンを引きますと、六万七千トンということになります。  いままで日ソ漁業委員会、シャルクの場で、サケ・マスの資源を増強していかなければならないということで漁獲量の漸減方式をとってきておりまして、大体四千トン程度ずつ削減をするようにいたしております。六万七千トンから四千トンの漸減方式でまいりますと、六万三千トンということになるわけでございますが、それに対しましてイシコフ大臣の裁断によって六万二千トンに大体決まった、こういうことでございます。私はこの二百海里の外のサケ・マスの漁獲量、この後退につきましてはまあやむを得ないけれども、漁期の関係その他を考えればこの程度で妥結せざるを得ないということで代表団の諸君に連絡をいたしておるところでございます。  私は、領海の外のこの示されたところの漁獲量というものが、二百海里の中でどういうぐあいになるのか、条件がまるで違いますからそれでもって類推することはできない、こういうことでございます。
  228. 加地和

    加地委員 ただいまのは二百海里外での数字が非常に多いようにも受け取れるのですが、どうでございましょうか、漁民が四月一日から北洋漁業が全然できない、魚一匹もとれないということで不安を持っておるわけでございますけれども大臣として、昨年実績の九割くらいいけるとか、八割くらいいけるとか、およそのことも全くめどがつかないのでしょうか。それともその数量の決め方というものが日本として何ら介入の余地のない、ソ連がいわゆる水域を決めても、漁獲量割り当てという段階ではソ連が一方的に、神様が宣言を下すように一方的なものだからなんでしょうか。また、わが国として、武力というのは当然持たない国であり、持つべきでありませんけれども、何かほかの手段、方法等でわが国の言い分を通す方法というものがないんでしょうか、その点ひとつお尋ねしたい。
  229. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この漁業専管水域というのは、魚類その他の水産資源保存有効利用ということがたてまえになっておりまして、この漁業専管水域につきましてはその沿岸国が主権的権利を行使する、そして余剰があった場合にこれを実績のある国に分かち与えてやる、余剰原則の上に立っておるのが漁業専管水域の基本的な構想なんでございます。  そういうことからいたしまして、いろいろアメリカの場合におきましても、ソ連の場合におきましても、実績国である日本の要望、意見、それから資源に対する科学的な評価、そういうもの等につきましては耳を傾けるわけでございますけれども、最終的には、沿岸国で主権的権利を行使しておるそのアメリカなりソ連というものが決定をする、こういうたてまえに相なっておるわけでございます。  私はそういう事情に置かれております日ソ漁業交渉において、クオータの問題はもとよりでありますが、この暫定協定の締結を早期にやるという立場からいたしますと、やはり日ソの友好関係、これを将来に向かって維持し、発展をさせていくことが両国の将来のためになるということ、また、相手国としての日本ソ連が世界の政治戦略の面からどういうぐあいに位置づけておるのか、評価しておるのか、大事にせねばならぬ国であるのかどうか、そういう点を最高指導部が冷静に判断をし、日ソ友好の将来の立場に立ってこの問題についても判断を下さるべきだ、このようにこいねがっておるところでございます。
  230. 加地和

    加地委員 いま一番大きな問題になっているのが北方領土四島の帰属の問題だと思います。それで、われわれの理解するところでは、ソ連ソ連としていままで言ってきた北方領土四島が自分の国のものであるという前提で線を引いてきておる。ソ連の立場に立つと、よい悪いは別にしてこれ以外の線の引きようはないだろうと思うのです。最初から特殊水域とかなんとかという形でやってくるはずはないと思うのです。わが国の場合も、この際に北方領土四島が日本のものであるということをソ連に認めよという交渉をやっているのか、あるいはこれは永久に玉虫色でしか解決のつかない問題だからソ連は勝手に向こうのものだと言っておれ、日本も勝手にこれは自分のものだと言う。そして日本もその北方領土四島を基準にして線を引く、ソ連も勝手に線を引く、その中での漁業というものについての紛争なんかはどう解決するかはまた別問題として。そこら辺の何か北方領土四島についての、この際はどこまで突っ込んでいくかという点についてどういう方針で臨んでおられたのか、お尋ねしたいのでございます。
  231. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように北方四島、わが方はこれは固有の領土であるという主張、早期返還を求めるというのが民族の悲願でございます。ソ連は戦後三十年にわたってこれを占有しておる。これは現実の姿である。そういうようなことで主張は分かれるわけでございますけれども、しかし一九七三年には、御承知のように当時の田中首相とブレジネフ書記長との間に合意がなされております。戦後未解決の問題を解決して日ソ平和条約の締結の交渉を今後も引き続き継続をする、こういう合意がなされておる。共同声明も発せられておる。私どもは、その戦後未解決の問題今後継続して協議すべき問題、そういうのが実態である、そういう前提の上に立って、この北方四島沖合い海域適用の問題はその実態にふさわしい双方の立場を損なわない形でやるべきだというのが私の考え方でございまして、この際漁業交渉を機会に北方四島の問題を漁業交渉の場において決着をつけるとかなんとかいうようなことは、なかなかこれはできる問題でもないし、またソ側がこの漁業水域設定に当たって、この戦後未解決の問題として平和条約の交渉の課題になっておる問題をさらに既成事実として積み上げていくというようなことについても、私は絶対に容認できない、こう考えております。
  232. 加地和

    加地委員 まあ基本的に私の考えも農林大臣考えも同じなんでございますが、現実に最終的に詰めていく場合に、北方領土四島の周辺でソ連線引きするのをとめさせることが果たしてできるのか、あるいはソ連ソ連で一方的に幹部会令か何かで決めたもので線を引く、日本はまたこの十二海里法あるいは二百海里法で勝手に重なって線を引いた場合に、このときは一体どうなるのでしょうね。戦争でも起こるのでしょうか。
  233. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私はそういう事態を夢にも考えたことがございません。ソ連の最高指導部も、日本とはやはり友好関係を維持、発展さしていきたい、こういう考えを持っておられると思うわけでございます。わが方も同様でございます。したがいまして、この問題は非常に困難な問題ではあるけれども、しかし不可能な問題ではない、私はそういう考え方でこの問題に取り組んでまいりましたし、今後もそういう考えで取り組んでいく方針であります。
  234. 加地和

    加地委員 それではちょっと別の角度から聞きますけれども、いままで北方領土四島の周辺は、四島を中心としてソ連の十二海里の区域になっていたのでしょうか、それとも、ソ連の十二海里法はそのまま適用されないで何か特殊な区域になっておったのでしょうか。特殊な区域であるとすれば、具体的に日本の立場から言うと、どういう便益のあった区域ということになっておるのでしょうか。
  235. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連は、北方四島周辺につきましては現にこれを占有しておるという事実の上に立って十二海里の領海というものを引いておる。でありますから、わが国漁船がこれに近づき、かつ入りますと、拿捕事件等が起こっておったわけでございます。これに対しまして、わが方としては、この北方四島周辺の安全保障、操業の安全というようなことで、長年にわたってその操業の安全を確保するためにソ連側に交渉してきておる、こういうことでございます。
  236. 加地和

    加地委員 そうしますと、先ほど農林大臣は、ソ連の方が北方領土四島を中心として十二海里の線、二百海里の線を引いておるところへ日本も北方領土四島の主権を主張し、そこへ十二海里、二百海里の線を重ねて引くということについて夢にも考えたことがないとおっしゃったのでしょうか、それとも、私が言った戦争でもせなければいかぬのですかという、戦争ということについて夢にも思ったことがないという意味でございますか。
  237. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 両方がそれぞれ引いた場合に戦争に発展するのじゃないか、起こるのじゃないかということをおっしゃったから、そういうことは私、夢にも考えたことがありません、こういうことでございますが、先ほど来、この御審議に当たって明確に申し上げておりますように、日本の領土、その沿岸沖合いには全部二百海里の漁業水域設定する、こういうことで法律の御審議をお願いしておる、こういうことでございます。
  238. 加地和

    加地委員 それではソ連設定する北方領土四島を中心とする十二海里、二百海里の幅がダブってくるということですね。
  239. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  240. 加地和

    加地委員 いままで日本領海内で魚をとる場合に、外国人が魚をとることについての取り締まる法律があったと思うのですが、その法律の適用が北方領土四島周辺では適用除外ということになっていたと思うのでございますが、この法律の改正もこの際あわせておやりになるのでしょうか。
  241. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在、三海里の領海内におきましては外国人漁業規制法ということが適用になるように相なっております。今度はあわせて漁業水域法が御審議を願うことに相なっておりますが、その漁業水域法第五条で外国人の漁業は規制をされる、禁止される、こういうことに相なっております。
  242. 加地和

    加地委員 それではこの十二海里法、二百海里法というのが早期に制定されれば、五月にソ連との漁業交渉に非常に有利な支えになるのでなかろうかと言われておりますが、法律的なことでございますので大臣でなくても専門の方で結構でございますが、ソ連の引いている二百海里と日本の方から引いた二百海里とがダブった区域について、今度つくられようとしておりますところの二百海里法では、ダブる部分については中間線である、こういう規定になっておると思うのでございますが、この中間線でいくというのは国際慣例上も認められておって、そして日本がそのような法律を国会で可決すればソ連としても当然にその中間線というものを尊重してくれる見通しがあるのでしようか。
  243. 岡安誠

    岡安政府委員 漁業水域法の範囲、二百海里の範囲の線引きにつきましては、他国の沿岸からの距離をはかった場合に二百海里がダブる場合には中間線ということになっておりますけれども、いま御指摘の北方四島のように領有が争われているというようなところで中間線という考え方はございません。
  244. 加地和

    加地委員 領土問題というものが問題になっていないところでは中間線でいくというのはもう世界の常識になっているわけですか。
  245. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 もう一遍ちょっと……。
  246. 加地和

    加地委員 領土問題で紛争が起きていないところから引っ張った二百海里の線で、ダブるところは中間線でいくというのはもう国際常識になっておるのでしょうか。ソ連としても当然にその中間線は尊重してくれそうでしょうか。
  247. 岡安誠

    岡安政府委員 いまの御質問は、懸案、未解決の問題となっております北方四島を除いて、それ以外の島から二百海里を引いての中間線という案があるかという御質問だとするならば、これはそういう考え方はございません。やはり領海なり二百海里の線を引く場合に島を飛び越すという考え方は全くないわけでございます。したがって、現に島がある場合にはそれを飛び越して仮に引いてみる、それで中間線を引くというような考え方はございません。
  248. 加地和

    加地委員 私の聞いていることとちょっと違うのです。  たとえば、佐渡島の辺から引いた二百海里とウラジオストクの辺から引いた二百海里と、この中間には領土問題について紛争の起きている場所はないですね。ないと思うのです。そうしますと、そのちょうど佐渡島から引いていった二百海里の線というウラジオストクの辺から引いてきた二百海里の線とがダブる部分、これは中間線でいくというのが国際常識にもなっていて、ソ連という国といえども当然に守ってくれるということが予測されるのかどうかという点です。
  249. 岡安誠

    岡安政府委員 これはそのようになっております。
  250. 加地和

    加地委員 そうしますと、私もちょっと心配性ですから最悪のときを考えてもおるのです。もしソ連の側に立っていきますと、いつまでも交渉がまとまらなければそれだけ日本漁船はやってこないで、悠々と自分の沿岸から二百海里のところでソ連だけが魚をとれるわけですから、ソ連側には早期妥決を必要とする必要性がある面では少ないと思う。そうすると、もし永久にいまのままで話がまとまらない場合に、日本が二百海里をつくって中間線のところまで押し戻したとします。押し戻せるはずなんですね。そうした場合に、日本としてはいわゆるソ連の海の中での漁業実績というものは何割ほど減った歩どまりでいけるのでしょうか。これは私、最悪のときのことだと思うのですけれども、最悪、いわゆるまとまらないで中間線まで押し戻していったときの……。
  251. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そういう最悪のことを考えたことがございません。しかしいまあなたがおっしゃるようなことを前提として申し上げるならば、その実績は百七十万トンである、こういうことが申し上げられます。
  252. 加地和

    加地委員 それでは四月一日以後のいわゆる北洋漁業に従事しておられた方々の被害及びそれに対する補償の問題についてお尋ねしたいのでございます、  水産庁の方にもいろいろな各団体からの陳情書等が行っておると思うのでございますけれども、私の方にもたとえば小樽機船漁業協同組合、留萌機船漁業協同組合の方から「韓国オッタートロール漁船武蔵堆周辺海域操業中止要請に係る陳情書」というものが来ております。  韓国船もいわゆるソ連の引いた二百海里などによって押し出されてきて、そして日本では沿岸漁業資源保護のため国内オッタートロール船の操業禁止をしておる区域で、韓国の大きな五百トン型の船が七隻程度来て、日本人の目の前で、日本人としてはいわゆるとってはいけない区域で悠々と韓国の船が魚をとっておる。そういうことで、日本の底びき船は全く漁業不能、こういう状態でございますけれども韓国に対し、いわゆる日本の漁民ですら資源保護のためにとることが許されていない区域での漁業操業、これを何かとめる方法はないのでしょうか。
  253. 岡安誠

    岡安政府委員 韓国漁船が三月以来ソ連沿岸から退去をする、その船が日本沿岸に参りまして操業するという事態が起こりまして、日本沿岸漁業に対して相当な被害を与えていることは事実でございます。先般も水産庁の職員が韓国へ参りまして、私どもがたとえば沖合い底びきの禁止のラインとかオッタートロールの禁止ラインというようなものについては日本の漁民も漁業を遠慮しているのだから、操業を遠慮をしているのだから、韓国の船も遠慮をしてもらいたいということで話し合いをしたわけでございますが、沖合い底びきのライン等は、これは大体十二海里の中、近辺にございまして、そのところまでは話がついたのでございますが、オッタートロールの禁止ラインというのは相当、もっと沖合にございますので、そこは現在公海である、そういうようなことからまだ話がついておりません。しかし、韓国日本の間におきましては日韓漁業協定等がございまして、円滑に操業をいたしておる間柄でもございますので、今後政府間同士で十分話し合いまして、そのような紛争等が起こらないように私どもとしましては精力的に話し合いを進めていきたいというふうに思っております。
  254. 加地和

    加地委員 日韓漁業についての友好という精神も理解できるのでございますけれども、これは国単位でいきますと友好であっても、たとえば山口県とか島根県から韓国近辺へ行ってとっておられる方は友好で大いに結構なのでしょうけれども、逆に、小樽の近くを漁場にしていて乗り込まれてきておる漁民にとると、日韓友好という美名は、自分らの犠牲ばかり強いられておるじゃないかという気持ちを持っておることは事実だと思うのです。小樽周辺の方についての補償とかなんとかいうことは考えないのでしょうか。あるいはほかのいい漁場割り当てて、日韓円滑に話がつくまでの間でも、小樽、留萌の辺の方の実績がそう損なわれないようにする方法はないのでしょうか。
  255. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は、野方図に韓国漁船操業を認めるということではございません。もとより十二海里の中にはいかなる外国船といえども入れないわけではございますが、この十二海里の外、百八十八海里の中につきましては、韓国漁船実績を評価いたしまして、わが国の百八十八海里の漁業水域、その中における資源保存、それに伴う管理、規制、そういうものを十分尊重することによって、しかも隻数であるとか漁獲量であるとかそういうものも一定の基準によって定めまして、そして認めてやろう、こういうことでございまして、韓国漁船だからといって野方図に、自由に何隻でもやらせるというわけにはまいりません。そういう措置を十分講ずるつもりでございます。
  256. 加地和

    加地委員 いま大臣がおっしゃったことは、二百海里法というものが制定されたときのことなのでしょうか。
  257. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  258. 加地和

    加地委員 それから、漁獲高以外にも、小樽、留萌の辺の方は、漁具あるいは網などをひっかけられたり、また、最近はその網の中にワイヤ等が入っておるために、韓国の船にひっかかって引きずられたときには網を切って逃れるというわけにもいかないので、一日近く韓国の大型漁船に引きずり回されて、これはひょっとすれば転覆の危険性もあるという被害等も出てきておるのでございます。巡視船、監視船あるいは飛行機などの常時配備により漁具被害防止の徹底を期する、こういう要望も出ておりますけれども、何かぴしっとした対策を講じていただいておりますでしょうか。
  259. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在まだ領海幅員が十二海里ということになっておりませんから、三海里−十二海里の間にも、これは公海として韓国漁船が入ってきておる。しかし、実際に起こっておる被害というような問題の処理につきましては、民間の取り決めが日韓の間にございまして、その紛争の処理並びに紛争が起こらないような自粛の措置、そういうものが日韓の民間協定としてなされておるわけでございます。先般も、この四月に入りましてから、韓国にわが方の民間代表が参りまして、そういう問題につきましても話し合いをしてきておるわけでございます。わが方の水産庁からも要請をいたしておりますから、韓国政府におきましても前向きに韓国の民間団体を指導して、こういう紛争なり日本沿岸漁業に対する被害なりが今後起こらないように、いままでの問題については誠意をもってこれを解決する、そういうことに話し合いが進んでおる段階でございます。
  260. 加地和

    加地委員 沖底船になりますと、四月などでは、一隻当たり四、五千万円の水揚げを見込んで、それに伴って手形を切ったり支払い計画を立てておるようでございます。もし不渡りが出てしまいますと、下請加工業者などへの支払いもできないために、その下請業者もつぶれてしまうであろう。そうすると、一月後、二月後にソ連との間で漁業交渉が成立しても、そのときには下請加工業者、企業というものがもう存在しなくなってしまっているおそれがある。そういうことで、つなぎの融資とか補償などの要求が出てきても当然だと思うのでございますけれども、どうも漁民の方方は、政府の方は出してくれるような出してくれないような、具体的にはどうしてくれるのであろうかという心配で毎日明け暮れしておるのでございます。それで、どの機関を通じて、いわゆる融資についてはどういう項目で、いつごろ出すのだ、あるいはまた補償についてはいつごろ、どういうぐあいに出すのだ、そういうことが具体的にいま御発表できますでしょうか。
  261. 岡安誠

    岡安政府委員 いま御指摘になりましたように、四月以降出漁を停止しておる漁船につきましては、いろいろな支払いがあるにもかかわらず漁獲収入がないという事態があります。そこで、それらの方々に対しまして、本格的な救済措置は少し先になると思いますけれども、いま御指摘のように支払い資金に事欠くような場合には緊急の融資措置を、これは私どもいま調査をし、融資をすべき額、金利その他の条件を大蔵省と相談いたしておりますが、今月中にもそれらの考え方を明らかにいたしたいと思っている次第でございます。
  262. 加地和

    加地委員 今月末まで待てないというところも多いと思うのです。これについては、ほかの金融機関を紹介するとか指導するとか、本格的なことが今月の末に決まるまでのそのまたつなぎの対策というのは何か立っておるのでございましょうか、それとも漁民に、自由主義経済だから勝手にせいということになっておるのでしょうか。
  263. 岡安誠

    岡安政府委員 すでにそのようなケースにつきましては、三月中のニシン漁船の出漁中止に当たりまして、私ども融資のあっせんを具体的にいたしております。そういうようなお話がございますれば、都道府県、北海道なら道庁それから道信連等にお申し出いただければあっせんをいたしますし、また直接私どもに御連絡いただきましてもあっせんは申し上げたい、かように考えております。
  264. 加地和

    加地委員 今度は、宮崎県の方々からは、入漁料は全額国庫負担としてほしいという陳情が出ておりますけれども、これについては、水産庁あるいは農林大臣のお考えはどうなのでございましょうか。
  265. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いままではっきり具体的になっておりますのは、アメリカとの間の入漁料の支払いでございます。約二十億、しかもこれは前払いということになっておりますので、政府におきまして、その二十億を三年ぐらいの資金で、金利も安いお金で入漁料の支払いを容易にするようにいたしておるわけでございます。
  266. 加地和

    加地委員 そうしますと、政府の方としては、入漁料はあくまでも漁民の負担、ただし、できるだけ払いやすく融資をつける、こういうお考えのように思います。  それで、二百海里という線がどんどん引かれていっても、私らが聞きますのには、アメリカのような友好関係の国とは、入漁料を支払うことによってかなりの漁業実績確保できる、あるいはニュージーランドなどは、あの周辺は非常な漁場であるけれども、ニュージーランドに住んでおる人間の一割ほどしか魚を食べないとかということも聞いております。今後二百海里の線というものが世界の海に張りめぐらされていったときに、重要なのは、それぞれの国々との入漁料を支払うことによる、いわゆる漁業実績確保ということであろうと思うのでございますけれども、そういう入漁料を支払うことによって、いままでと比べて大体どれくらいの魚の量というものが確保できるのか、あるいは入漁料負担というのはアバウトどのくらいの負担で済むものか、こういう見通しは立っておりますのでしょうか。
  267. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そういう二百海里の設定をし、具体的な入漁料というようなものにつきましては、個々の漁業会社、漁船等がいままで過去におきましてやってきております。これは国によって違うわけでございますが、今後開発途上国等につきましては、入漁料のほかに、経済協力でありますとか、いろいろな条件を出してきておるわけでございます。たとえば、漁港をつくってほしい、あるいは道路をつくってほしい、あるいは漁業技術を学ぶための研修機関をつくってほしい、こういういろいろな要望がございます。私どもは、それが真にその国との友好に寄与し、またその開発途上国の民生の向上なり安定に寄与するというような場合におきましては、できるだけの協力を惜しまない。漁業協力財団というようなものも政府の外郭機関としてあるわけでございます。そういうこともやりまして、そしてその国の沿岸漁業等を振興させて、その国で需要を満たし、余剰がある場合に、そしてわが国に関心のあるものはわが国にも輸出をしてもらう、そういうような相互の利益になるような仕組みで、今後開発途上国等との実績確保ということにつきましてはやってまいりたい、このように考えております。  これは国によっていろいろ違いまして、入漁料だけで片づくところもございますし、いろいろなものをかみ合わせて協力関係をつくっていかなければならない、そういうところもございますから、一概に入漁料は一体幾らになるのだというようなことは、いまここで申し上げるようなはっきりした数字が出てこないわけでございます。また、今後強力に漁業外交、二国間交渉等をやってまいる考えでございますから、できるだけ実績確保するように努力をしていきたい、こう思っております。
  268. 加地和

    加地委員 それでは、基本的に重要な問題を最後にお尋ねいたします。  領海というのは領土と同じく、その国の主権の強く及ぶところでございます。ところが、今回十二海里説に準拠して領海法というものが提案されておりますけれども、特定海域においては、基線からその外側三海里の線とあえてしなければならなかった理由が私たちにはわからないわけなんです。私たちの政党、新自由クラブの方も、国際海峡についての外国船の無害の通過については十分尊重する案を早くから出しておるわけでございます。大原則として十二海里を全部引いてしまって、ただ国際海峡についてはいわゆる自由通航帯というものを設定していく、こういう考えでございます。  政府の方は、あえてなぜ十二海里というところを三海里というように、いわゆる日本の国の主権の及ぶ範囲を九海里も狭められたのか、その点がどうも納得できないのでございますけれども、実質上どうなんでしょうか。われわれの政党が提案しておりますところの、十二海里説を完全にやってしまって、そして国際海峡についてはいわゆる自由通航帯を設けることでは、政府の方はどうしても何かぐあいが悪い理由があるのでしょうか。
  269. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは先ほど正森さんにもお答えをしておるのでありますが、わが国海洋法会議におきまして、現在の通航制度、無害通航よりもより自由な通航制度を主張し、また海洋法会議におきましても、それが有力な意見として、そういう方向に収斂されつつある、こういうことでございます。  わが国は海洋国家であり、海運国家であり、また近代工業国家として貿易の自由、すべての自由を求めておる、そういう立場に立って国連海洋法会議でそういう主張をしておるわけでございますから、わが方におきましても、いわゆる五海峡、国際海峡等につきましては、当分の間現状のままとする、こういうことを領海法の骨子としまして御審議を願っておるわけでございます。新自由クラブのシーレーンを設けるという御意見、これも私よく承知をし、勉強もさしておるわけでございますけれども、この点につきましては、いま申し上げたようなことで、わが方は海洋法会議でそういう主張もし、その線で今回のいわゆる国際海峡についてもそういう取り扱いをしておる、こういうことを御了解を賜りたい、こう思うわけであります。
  270. 加地和

    加地委員 最後に、大臣考えと私の考えとほとんど一致するのでございますけれども、一番基本的なこの三海里に領海を、みずから自分の首を締めるように縛ってしまったという点については何とも、一時間御質問させていただきましたけれども、まだみぞが埋まらないという状況でございます。いままでどうおっしゃったかは、それはそれとして、過ちであるということをお悟りになるであろうと思います。そのときには、過ちを改むるにはばかることなかれということわざもございますので、どうか、われわれの考え、これこそが日本の国益にも合致するものであると思いますので、最後まで御考慮を願いたいと思います。  以上で終わります。
  271. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私どもは過ちを犯しておるとは毛頭考えておりません。しかし、この問題は各党におきましてそれぞれの考え方があるわけでございます。それゆえにこそ、政策担当者、責任者間でお話し合いも願っておる、こういうことでございまして、党首会談におきましても、二百海里法の問題あわせて領海法の問題につきましても各党間でお話し合いをしておる、こういう段階でございまして、私どもは間違った、誤った案をここに提案をしておるということではないということを明確に申し上げて、これに対しても御理解を賜りたいということを申し上げておく次第でございます。
  272. 金子岩三

    金子委員長 次回は、明二十二日金曜日午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後九時二十三分散会