○正森
委員 そういう御
答弁をされる
鈴木農林
大臣の御苦心のほどは十分に評価したいと思いますが、しかしその御
答弁は事実によって次々に崩れていっているというように私は思わざるを得ないわけです。これからしばらくその点についても
お話ししたいと思います。
まず第一に、
わが国が
領海を十二海里に広げて海峡について非核三原則の
適用を行ったりあるいは無害通航を主張したりすると、総理がたびたび言うておられるように、マラッカ海峡の通過通航について非常に悪影響があるのだということを一貫して言ってこられたわけですね。今度の予算
委員会でもそうであります。しかし、私
どもが承知しておりますところでは、インドネシア、マレーシア及びシンガポール、この三カ国は「
沿岸三国
会議共同発表」というのを一九七一年十一月に行っておりますが、その中の第五項で、「インドネシア共和国及びマレイシアの両国
政府は、無害通航の原則に従ったマラッカ・シンガポール海峡の国際航行を完全に認めるとともに、同海峡は国際海峡ではないことに合意した。シンガポール
政府は、この点に関するインドネシア共和国及びマレイシア両国
政府の立場をテーク・ノートした。」こういうぐあいになっているわけであります。つまり、マラッカ海峡の
沿岸国がすでにこの海峡は、これは国際海峡ではないのだ、
領海なんだ、だから無害通航の原則に従って通航を認めるのだということを一九七一年に言っているわけであります。ですから、その国と同じことを
わが国が主張したとしても、それによっていままで以上の報復措置を受けることは何らないわけであります。またこの三国は、私の知る限りでは核兵器積載艦を持っておって、それが
わが国の津軽海峡を通過してみたり、あるいは宗谷海峡を通過したりしてみるということは絶対にありません。そうすると、マラッカ海峡を通るためにわざわざ
領海を三海里にしておくのだという理由は、この一事をもってしても崩れてしまうのではないかというように思います。
さらにつけ加えますならば、ことしの二月二十四日に「マラッカ・シンガポール海峡の航行安全に関する
共同ステートメント」というのを出しました。これは
鈴木農林
大臣が百も御承知のはずであります。それの第一には「船舶は、マラッカ・シンガポール海峡通航の間は常時、最低三・五メートルの余裕水深(UKC)」、アンダー・キール・クリアランスですね、「を維持し、かつ、特に危険
水域航行の際にはあらゆる必要な安全措置をとるものとする。」とか、あるいは航行分離方式を設けるとか、あるいは保険をつけなければならないとか、そういうことをもこれは全部決めているわけですね。これは私の承知しておるところでは、
わが国の
政府関係者及び海運
関係者も参加して、初めはUKCが三メートルにしてほしいとか、その前はもう少し厳しい
条件を出しておった。しかし結局これはやむを得ないということになって規制されるわけでしょう。だから、一九七一年にすでにこれは
領海だ、国際海峡ではない、無害通航の原則で認めるのだと言い、ことしの二月二十四日にはUKCが三・五メートルであるとか、その他のものも制限を課してきているわけですね。
わが国としては、好むと好まざるにかかわらずこれは認めなければならない、こういうことになっているときに、
わが国だけがおくればせの片思いのように、やはり非核三原則というようなことをやったらマラッカ海峡を通るのに影響があるというようなことを言うのは、言葉が非常に過ぎるかもしれないけれ
ども、まさにナンセンスではありませんか。ですから、私はもっとはっきりと、
領海を三海里に制限するのはマラッカ海峡通過のためではなしに、非核三原則のためなんだということをもっと正直におっしゃるなら、これはそれが
わが国益に合致するかどうかは別として、なるほど
政府はそこがねらいだったのかということはわかる。しかし、海峡を封鎖することになるというようなことを言ってみたり、それからマラッカ海峡を通らなければならないからということを言ってみるというのは、私がいま
指摘したことに基づいて、それはことごとく理由にならないというように思いますが、御見解を聞かしていただきたいと思います。