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1977-04-20 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 山崎平八郎君 理事 竹内  猛君    理事 美濃 政市君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    愛野興一郎君       加藤 紘一君    佐藤  隆君       中野 四郎君    平泉  渉君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    馬場  昇君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       吉浦 忠治君    神田  厚君       東中 光雄君    甘利  正君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         防衛庁長官官房         防衛審議官   渡邊 伊助君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         水産庁長官   岡安  誠君         海上保安庁次長 間   孝君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省欧亜局外         務参事官    加藤 吉弥君         外務省欧亜局東         欧第一課長   都甲 岳洋君         海上保安庁総務         部長      鈴木  登君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   菊池福治郎君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   甘利  正君     菊池福治郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  領海法案内閣提出第六七号)      ――――◇―――――
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  領海法案を議題とし、審査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井勇君。
  3. 今井勇

    今井委員 昨日の自由民主党の片岡清一議員に続きまして、私は日ソ漁業交渉の問題並びに領海法案の問題について若干の質疑をいたしたいと存じます。  まず冒頭、今時日ソ漁業交渉に当たりまして農林大臣は二度にわたって訪ソをされ、日ソ間において未解決の問題として最高首脳の間で確認をされております国後、択捉等四島の返還という国民的熱望に対し、いささかもこれを阻害することのないような慎重な配慮と、一世紀にわたってわが国漁民が営々と築いてまいりました北洋におきます百七十万トンに及ぶ漁業権益とをあわせ守り抜くという決意努力をされましたが、先方のかたい態度によりまして合意に達せず帰国されたわけでございまして、この間の御労苦を本当に心からおねぎらいをいたしますとともに、今後のことにつきまして大臣の御所信をお伺いいたしたいと存じます。  昨日も各議員から、いろいろな方面からの御質疑がございましたので、重複を避けまして三点について御質疑をいたしたいと思います。  昨日も大臣は、北方領土の問題と北洋漁業権益擁護という二大命題をともに満足させることは非常に困難ではあるが、解決できない不可能なことではないという信念でこれからの交渉に当たろうというふうにかたい決意をお述べになりました。私も全く同感でございまして、その大臣の御決意を満腔の敬意を表して御支援をするわけでありますが、さらに御言及になりまして、再度の訪ソは五月六日から十日の間というふうな目途をお述べになりました。  そこでお伺いしたい第一点は、現在、日本ソ連との間には日ソ漁業協定が生きておる。それに基づきまして、現在でもわが政府荒勝代表モスクワ日ソ漁業委員会をやっておられる。その漁業委員会における交渉が、だんだんと漁期も迫ってまいりますので大変案じておりますが、荒勝・ニコノロフ間の交渉大臣が行かれるまでにどのようなことになっておるのか、まず状況の御説明大臣の御見解とを承りたいと思います。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私の日ソ漁業交渉に臨む基本的な姿勢、方針を御理解賜りまして心からなる御激励を賜りましたことに対しまして、深く御礼を申し上げる次第であります。  ただいま現在存在をしており、なお機能しておりますところの日ソ漁業条約、その交渉はどういうぐあいになっておるのか、一体漁期に間に合うようにこれが行われる見通しがあるのか、こういう御質問でございますが、ソ連側日ソ漁業条約の存在しておることは十分銘記しておると思いますけれども、しかし一方におきまして、それはソ連幹部会令の執行による二百海里域内と二百海里の外側公海、こういうものを峻別しておる、きわめてはっきりその原則というものを貫こうとしておるということは、私とイシコフ大臣との交渉の間において十分認められたところでございます。私は、この条約が生きておる限りにおいて二百海里の内外ともに一体としてこの交渉がなされるべきであるというわが方の基本方針は変えてはおりません。しかしソ側がいまのような、すでに三月一日から幹部会令は二百海里の域内においては適用されておるのだというようなことで、この基本的な問題でいつまでもその主張相互に突っ張っておりますとなかなか――一方において漁期も迫っておるという事情もございますので、現実的な処理の方法としまして、とりあえず日ソの間で意見の一致を見ております二百海里域外の問題、いわゆる公海上の漁獲量交渉荒勝代表に指示いたしまして、現在モスクワにおいてやっておるわけでございます。  私は、日ソ主張大分接近をしてきておりまして、きわめて近い機会に、私ども主張の一〇〇%通るとは思いませんけれども相互の互譲によって妥結点を見出すのではないか、このように感じておるところでございます。また、これは筋論からいたしまして、東京交渉をやっておるわけでございますから、それが休会になっておるということで、日ソ双方が歩み寄ってある妥結点を見出した場合においては、東京において再開をしてこれを正式に決定すべきである、この方針はぜひ貫いてまいりたい、このように考えております。
  5. 今井勇

    今井委員 いまの大臣の御決意、まことにそのとおりであろうと思います。新聞の報ずるところによりますれば、豊漁年であるにもかかわらずなかなか厳しい態度主張しておるようでございまして、これからの交渉の過程もございましょうから、これ以上のことをお聞きするつもりはございませんが、ただいまの大臣の御決意をわれわれも大いにバックアップいたしまして、円満に妥結できますように心からお祈りする次第でございます。  第二点は、昨日も各委員から質疑がございました補償の問題でございます。  その前に政府委員にお尋ねしておきたいと思います。  交渉中断わが国漁船ソ連二百海里内への出漁中止が長期化しておりますが、出漁中止に伴います損失、これは漁民のみならず関連産業がたくさんございますが、まずその実態について、昨日も概略の御説明がございましたが、再度ただいまわかっている限りの数字をお述べいただきたいと思います。
  6. 岡安誠

    岡安政府委員 今回の交渉中断によりまして、現在関係漁船等出漁中止をいたしておるわけでございます。ニシンにつきましては三月一日以降、その他の漁船につきましても四月一日以降、ソ連の二百海里の水域から引き揚げておるわけでございまして、その影響を受けております漁船の数は、私ども現在までに把握いたしておりますのは延べで約二千隻でございます。それで実数では、きのうは千八百隻と申し上げましたけれども、その後少し上がりまして、千九百隻の船がいろいろ影響を受けて現在休漁その他をしている状態でございます。  これらの船に対しましては、休漁に伴いまして資金繰り等いろいろな困難を来しておりますので、とりあえずの暫定措置といたしまして緊急融資措置をいたしたいということで、現在大蔵省ともその詰めをいたしておりますが、所要金額等につきましては現在まだ詰めをいたしておる段階でございまして、申し上げる段階ではないわけでございます。その他の関連加工業者等につきましても、現在その影響度等につきまして急いで調査をいたしておる段階でございます。
  7. 今井勇

    今井委員 そこで、これは要望しておきますが、非常に多種多様な業界にわたって影響があろうと思います。したがって、その担当省といいましょうか、それぞれ各省に分かれると思いますが、今回の問題については水産庁窓口になりまして、それらのものを一元的に把握して対応されるように切に要望しておきますが、これはよろしゅうございますか。
  8. 岡安誠

    岡安政府委員 農林省におきましては、すでに対策本部を事務次官を長といたしまして設置いたしております。御指摘のとおり、いろいろな方面影響がございますので、担当省は分かれておりますけれども水産庁が第一義的には窓口になりまして取りまとめ、推進方はやってまいりたい、かように考えております。
  9. 今井勇

    今井委員 これらの損失等につきましては、昨日も大臣から、とりあえず低利の融資をする、今後の新しい体制に伴いましてそれぞれ救済措置をやっていくというはっきりしたお答えがありました。  そこで、さらにもう一歩それを進めまして、今後のおおむねのスケジュールは一体どう考えるのか。ということは、昨日も大臣が、本年の十二月三十一日までの期間があるのであるからその間の状況を見て、魚のとれぐあいあるいは漁区の決定のぐあい等を勘案して、最後救済措置は決めるのだ、こうおっしゃいました。私もそういう基本的な方針はわかりますが、漁民あるいは関連産業が非常に心配をされておることは間違いないことでありますから、政府は可及的速やかに今後の大まかなスケジュールを決めて、これを関係漁民並びに関係のそういった方々に示すことがやはり大事であろうと思うわけでございまして、そういうことに対して、政府はどのような心構えを持っておられるか、言明をいただきたいと思います。
  10. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘の点は、関係漁業者並びに関連業者等が非常に心配をしておることだと思います。したがいまして、各業界代表十分協議をしながら、納得できるような形で具体的に措置してまいりたいと考えております。
  11. 今井勇

    今井委員 ただいまの問題は、非常に多岐にわたりますだけに、よほどきめの細かい対策を講じていかなければなりませんので、なお一層の努力を要望いたします。  三番目の問題は、今後の問題でございます。ミグ戦闘機日本に不法侵入いたしまして、わが国ではその戦闘機を送り返したわけでありますが、きのうきょうの新聞を見ましても、事もあろうに、それに対して七百七十万ルーブルという巨額の損害賠償を支払えということをソ連わが国政府に言ってまいったという報道がございました。まず、この事実関係だけを外務省にお伺いしておきたいと思いますが、このような事態が本当にあったのかどうか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  12. 都甲岳洋

    都甲説明員 お答え申し上げます。  昨年、御承知のような経緯ミグ事件が起こりまして、十一月十五日に日立におきましてソ連側ミグ機を引き渡したわけでございますけれども、その後ソ連側から機体の状態について不満が表明されたことがございます。  その後で日本側からソ連側に対しまして、百里基地から日立港までの運送費用及び梱包費用、それから函館の空港においてミグ機によって生じた施設の損壊費用等請求を提起した経緯がございます。  昨年の年末になりまして一部新聞に報道されておりますようなソ連側からの請求があったという事実はございます。
  13. 今井勇

    今井委員 私は、少なくも国民の一人として考えてまいりましても、人の家に不法に侵入をしてきて、その戦闘機が返された、しかもそれが傷んでおったから、三十億に及ぶような金をよこせと言ってくるということは、まことに理不尽のような気がいたします。今度鈴木農林大臣が行かれまして漁業交渉の中で出ておりました問題の一つとして、昨日も質疑がございましたが、領海三海里と十二海里の間の操業をさせろというようなことといい、ただいまのミグ戦闘機損害賠償請求態度といい、どうも一脈通ずるものがあるように思うわけであります。われわれ国民としてはまことに納得のいかない、ふんまんやる方ない気持ちがするのであります。  したがって、今後、農林大臣は再度訪ソされましてこの困難な日ソ漁業交渉をされるわけでありますが、これにはどうしてもわれわれ一億国民の強力な国論の統一したバックアップが必要であると思います。と同時に、われわれがただいま審議しております領海法、今後間もなく出てくるであろう二百海里の漁業水域法律、これを一日も早く成立させまして、同じ土俵で強力な御交渉を願うようにするということがまずやるべきことであろう、私はこう考えておりますが、今後の漁業交渉についての大臣の御所見を賜りたいと存じます。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、モスクワ交渉をしておる段階から、国会におきましては超党派の御激励をちょうだいしており、また、国論も大きく結集をされてきておるということを背後に感じまして、その力強い背景のもとに、昨日来申し上げております不動の方針を堅持して交渉に当たうてまいったわけでございますが、十七日に帰ってまいりまして、国内のかつてない国論結集といいますか、また、一昨日は党首会談等を通じまして、各党が党派を超えてこの対ソ交渉に当たらなければならない、いろいろの言い分は各党にそれぞれおありになるわけでありますけれども、そういうものを乗り越えて、そして各党一致でわが方の方針一つにしてこれに当たらなければならない、こういう実情をはだでくみ取りまして、この結集された国論、外交上、戦後かつてないこの超党派の御支援というものに私は非常に感激をいたしておるわけであります。私は、そういうことを踏まえまして、今後は一層わが国方針を貫くために、微力でありますけれども最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  15. 今井勇

    今井委員 さらに昨日の六党の国会対策委員長会談でも、その第五項目に、われわれ国会としては、日ソ漁業交渉北方領土に関する決議を行おうじゃないかということが申し合わせをされておりまして、その実現にわれわれも努力をいたしたいと存じます。このような国論、世論の強力なバックアップを受けられまして、さらに御精進あらんことをお願いをする次第でございます。  それから最後に、二百海里の問題については御答弁は要りませんが、私は基本的な考え方を申し述べておきたいと存じます。  現在政府が出さんとしております二百海里の法案漁業に関するものであるようでありますが、将来のことを考えますれば、漁業のみならず海底資源も含めたいわゆる経済水域主張というものをやるべきだ、私はこのように考えております。ただいま各国、先進国ではまだそれまでを含めたものを二百海里として宣言をされ、あるいは国内的に法制度を整えられておられないようでありますが、だからといってわが国が二百海里の漁業水域だけでよろしいということには相ならぬと思うわけであります。したがって、今後われわれは経済水域、いわゆる上も下も含めた経済水域をやるべきだと私は考えておりますので、政府もそのような線に沿って鋭意御検討あらんことを要望しておきたいと存じます。これは答弁は要りません。  次に、時間もだんだんたつようでありますから、領海法案についての質疑をいたしたいと存じます。  先般、昭和五十一年の十月二十六日に衆議院の農林水産委員会では決議をいたしております。その決議は、御存じのとおり領海十二海里の早期実現水産食料の確保に関する件でございました。このような決議が実りまして、今回領海法案が出てまいっております。そこで、このときにも議論になったわけでありますが、近年、わが国の近海において、外国大型漁船操業等により沿岸漁業者等が一部操業不能に追い込まれる等甚大な被害をこうむっておるので、速やかに領海の幅を十二海里にして、このようなことのないようにせよという意味の一項目がございます。そこでこの法律が施行をされ、領海の幅が広がったことによって、たとえばソ連漁船によるわが国沿岸漁業漁具被害あるいは漁場制約等についてどの程度の効果を期待しておるのか、御答弁をいただきたい。
  16. 岡安誠

    岡安政府委員 ソ連漁船によりますわが国漁業被害の大半は、現在まで定置性刺し網等による漁具被害、これが大部分でございます。この定置性刺し網漁業漁場というのは、一部の地域を除きますと、その大部分は距岸十二海里の中にございます。したがって、領海が十二海里ということになりまして、外国船操業が排除されますならば、いままで発生いたしましたような漁具被害はその相当部分が防止できるというふうに考えております。     〔委員長退席山崎(、平)委員長代理着席〕 それ以外にもやはり十二海里以内に外国船が入ってこないということになりますと、従来小型船外国大型船操業によりまして自由な操業ができないので休漁のやむなきに追い込まれるというような問題もございましたし、それからわが国沖合い底びき網漁業禁止ライン等が十二海里の内外にあるわけでございますが、そういう漁業秩序の維持ということにも大いに役立つのじゃなかろうかというふうに考えております。さらには、ソ連漁船等廃棄物等を投棄いたしまして漁場が荒廃するという事実もたくさんございましたけれども、そういうような操業条件が著しく改善されるものというふうに考えておる次第でございます。
  17. 今井勇

    今井委員 そこで、領海法が施行された場合に、現在非常に問題になっております北方四島あるいは竹島、こういうものについて、一体領海はどうなるのか伺いたい。
  18. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは申し上げるまでもなく、当然わが国の領土に対しましては、現在、低潮線から三海里の領海線が設定されておるわけでありますが、その幅員が十二海里に拡大をされる、こういうことになるわけでございます。
  19. 今井勇

    今井委員 明快でありますのでそれでよろしいかと思います。  そこで、日本が十二海里にいたしまして、外国領海との境界線はどういうことになりますか。
  20. 岡安誠

    岡安政府委員 わが国領海が十二海里になりましたことによりまして、外国沿岸十二海里の領海重複をするというような場合には中間線をもってその領海境界とするというのが領海法等によりまして確立された基準でございますので、今回わが国が三海里の領海を十二海里にいたしましてもそういうことになるわけでございます。
  21. 今井勇

    今井委員 少し法案内容について細かい問題になりますが領海法の第二条第一項の規定におきまして「内水である瀬戸内海」というふうになっております。この瀬戸内海内水とします根拠は一体何であるのか、ひとつ説明をしてもらいたい。
  22. 岡安誠

    岡安政府委員 内水という問題につきましては必ずしも明確な条約国際法等があるわけではございませんけれども慣習国際法といたしましては、瀬戸内海は内海として内水の地位を有するということがすでにかつての裁判その他の事例によりましても確立いたしておりますし、また瀬戸内海につきまして従来私ども内水として扱ってきたことにつきましても国際的に全く異議が出ておらなかったわけでございます。そこで私どもも今後も従来と同様瀬戸内海内水として取り扱うということにしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  23. 今井勇

    今井委員 そこで続いて瀬戸内海についての基線の問題でありますが、「政令で定める線を基線とする。」こう言っておりますが、これは一体どのように定めるのですか。
  24. 岡安誠

    岡安政府委員 御指摘のとおり現在の領海法案におきましては二条一項のただし書きにおきまして「内水である瀬戸内海については、他の海域との魔界として政令で定める線を基線とする。」ということにいたしております。この「他の海域との境界として定める線」でございますけれども、これは瀬戸内海三つの出入り口でございます紀伊水道、豊後水道、それから関門海峡にその線を引きたいと考えておりまして、その基線から外側十二海里までが領海ということになるわけでございます。
  25. 今井勇

    今井委員 それからさらに第二条の第二項で基線に関する事項政令で定めるというふうに書いてありますが、一体この政令は何を定めるわけでありますか。その内容は何か、ひとつ御説明いただきたい。
  26. 岡安誠

    岡安政府委員 この政令内容二つございまして、まず二条一項本文に規定する線を基線として用いる場合の基準というのが一つと、その他基線を定めるに当たって必要な事項というふうに二つに分かれるわけでございます。その前段につきましてまず低潮線について書かれるわけでございますが、それは海図に記載されている低潮線を用いるというようなことをこの政令で定めたいと思っております。それ以外につきましては湾口に引かれる直線とか湾内に引かれる直線とか河口に引かれる直線につきまして政令で具体的に書きたいと思っております。後段につきましては湾の定義というようなものを政令で明らかにいたしたい、かように考えております。
  27. 今井勇

    今井委員 それからこの法律の附則の方でありますが、いわゆる国際海峡の問題についてお伺いしたいのでありますが、この法律では国際海峡のような水域につきましては領海の幅を現在のままでとどめる現状凍結ということにいたしております。このような措置をとりますことは一体国際法上問題はないのか、私は何か疑義があるような気がいたします。これについて政府見解をただしておきたい。
  28. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  領海の幅につきましては特定の場所について一般のその国の領海の幅よりも狭くするということを禁止するような規定は実はございません。したがって、わが国が今回領海十二海里にした場合に特定海域について三海里にするということについて国際法上問題が生ずるというふうには考えておりません。実は領海条約六条でも領海の幅の引き方についての規定がございますが、これは技術的な規定でございまして、私どもといたしましてはほかにも、現にフィンランドなんかは領海は四海里でありましてもある種の島については三海里という例もございまして、そういう場合に国際法上問題が生ずることはないというふうに考えております。
  29. 今井勇

    今井委員 そこで特定海域として五つ海峡を列挙してありますが、国会予算委員会答弁等見ましても、七十数カ所もあるというものを五つに限定をされておるわけでございます。この選定についてはいずれ具体的な基準があってこのようになったものと理解するわけでありますが、その選定の具体的な基準についてどのようなものを考えておってこのようになったのか、ひとつそれを説明していただきたい。
  30. 岡安誠

    岡安政府委員 具体的な基準として私どもが考えましたのは大体三つございまして、その一つは、海峡の現況が、まず船舶航行に適するような公海部分が存在するけれども領海が十二海里に拡張されました場合にはこのような公海部分がなくなってしまうか、または非常に小さくなりまして航行に適するようにならなくなる、そういうような海峡であることが一つと、それからこの海峡公海公海、たとえば太平洋と日本海というようなそういう公海公海を結ぶような位置にある海峡であるということと、それからもう一つわが国に向かって航行する船舶ということじゃなくて、三国間といいますか通過通航といいますか、そういう通過通航するような外国船舶の頻度が比較的高い海峡であるというような三つ基準を考えまして選定をいたしたものでございます。
  31. 今井勇

    今井委員 いま述べられたその三つの具体的な選定基準というものと、わが国も参加をいたしましていまやっております例の海洋法会議における単一草案の国際海峡というものの定義との関係について伺いたいのですが、五海峡選定基準と国連海洋法会議で考えております国際海峡というものの定義、これは漠然としてあるようでございますが、一体それは整合性があるのですか。
  32. 井口武夫

    井口説明員 実はこのたびの領海法におきまして特定海峡を定めた場合の考え方につきましては、ただいま岡安水産庁長官から御説明申し上げたとおりでございまして、これは新しくでき上がるであろう海洋法条約国際海峡の定義そのものとは直接関係がないわけでございまして、審議の内容とかそういうものは参考にいたしましたけれどもわが国の国内法においてこの国際海峡の新しい定義とか基準ということを設けたわけではございません。ただ、確かに海洋法会議の現在の改定単一草案におきましては、公海もしくは経済水域と他の公海もしくは経済水域とをつなぐ国際航行に使用される海峡国際海峡というふうに書いてございますが、さらに幾つかの補足的な規定がございまして、まだ定義についても最終的に煮詰まる過程でございまして、その点なお煮詰まりぐあいを見ませんと、定義も最終的に固まっているということは申し上げられない現状でございます。
  33. 今井勇

    今井委員 そうすると、このいまの本法に言う特定海域、これは国際海峡とは言ってないのでありますが、海洋法会議でこれから決まるであろう国際海峡というものの定義とが整合性がないと、今後いろいろ問題を生ずるおそれがあるのではないか、こう思うのですが、その点外務、大丈夫ですか。
  34. 井口武夫

    井口説明員 その点につきましてはまだ交渉の過程でございまして、改定単一草案も最終的にどういうふうに固まるかということで決まってくる問題でございますから、確定的なことは申し上げられませんけれども、考え方といたしましては公海公海とを結び国際航行に使用される海峡というものが基本的な考えでございまして、外国船舶の通航量も多い、しかも大洋と大洋を結ぶというようなことでございますから、恐らく最終的にでき上がるであろう国際海峡の中に含まれるというふうに思われますけれども、まだ確定的なことは申し上げられないという段階でございます。
  35. 今井勇

    今井委員 そうなると、もう一つ念を押しておきたいと思うのですが、この五海峡の数が海洋法会議の決まり方によってはふえもするあるいは減りもするということがあり得るというふうに理解をしていいのか、あるいはいまの常識をもっていろいろ議論されておる内容からすればこの五つが妥当であって、これは当分の間変わらないものと考えるべきなのか、どちらを考えておられるか、御答弁願います。
  36. 井口武夫

    井口説明員 ただいまの御質問に関しましては、実は五海峡に関しましては当分の間変わらないという点は御質問のとおりでございますが、それ以外の海峡があり得るかどうかという点に関しましては、いま申し上げましたように海洋法条約の単一草案が最終的に煮詰まる過程でございまして、その決まりぐあいを見ませんとまだ確定的なことは申し上げられませんけれども、あるいはそれ以外のものもあり得るかもしれませんけれども、これはやはり交渉最後の煮詰まりぐあいということを見きわめたいと思っております。
  37. 今井勇

    今井委員 そこで、ちょっと話題を変えまして、その特定海域における操業の問題、特に外国人の操業の問題についてちょっとただしておきたいと思いますが、たとえば津軽海峡をとりまして考えますと、三海里で現状凍結でありますから、真ん中の部分公海であるわけであります。したがって、常識的に考えれば、そこで外国人が操業してもいいわけでありますが、今度の二百海里法案ではそれを一体どういうふうに考えておられるのか。私の聞いておりますところでは、外国人の操業を禁止をするということに聞いておりますが、そう了解してよろしいのでございますか。
  38. 岡安誠

    岡安政府委員 いま検討いたしております二百海里法案におきましては、領海法で決められました特定海域のうち領海、まあ三海里内の領海でございますけれども、三海里内の領海から十二海里に達するまでの間につきましては外国人の漁船による操業を禁止するという方向で現在検討をいたしております。
  39. 今井勇

    今井委員 そうすると、具体的には津軽海峡ではそういう外国船操業があり得ない、こう理解していいですね。
  40. 岡安誠

    岡安政府委員 津軽海峡に仮に十二海里の領海が引かれましたとするならば、その大部分が閉鎖をされますので、そういう閉鎖されると考えられるようなところにつきましては、全面的に外国人の操業を禁止するということになるわけでございます。
  41. 今井勇

    今井委員 これは大臣にちょっと念を押しておきたいと思いますが、昨日も議員からの質疑に対して明快に御答弁になっておりましたが、この二百海里の法案に対しまして韓国であるとかあるいはまた中国であるとか現在それぞれ漁業協定、漁業条約を結んでうまくいっているところについては、あえてこちらからしかけることはないんだということを明快に御答弁になりましたが、これは念を押しておきたいと思いますが、それで間違いございませんか。
  42. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  43. 今井勇

    今井委員 特にこれは西の方で、私どもも西の方におります者の一人でございますが、大変心配をする向きがございます。したがいまして、このようなことで日本の国が国論を統一して事に当たらねばならないときに、北の方はそれでいいかも知れぬが西の方は困るということがもし万一ありますと大変な事態になりますので、実は心配をして念を押しておるわけでございます。  そこで細かいことになりますが、その五つ特定海域のそれぞれの範囲というのは、これはどのように一体線引きをするのですか。その十二海里と三海里のすり合わせをどうするのか、ひとつ具体的な問題として御答弁をいただきたい。
  44. 岡安誠

    岡安政府委員 この五つ特定海域の範囲の具体的な線引きでございますが、これは政令でいたしたいというふうに考えております。その考え方について申し上げますと、この特定海域につきましては、いわゆる国際海峡のような水域については当分の間現状を変更しないという方針が決まっておりますので、そういう考え方を前提にいたしまして、まずその特定海域、具体的な特定海域におきます船舶航行の一般的な方向、どういうような航路をとって航行しておるかということ、それからの船舶航行上一般的に必要と考えられます海域の広さ、そういうものをまず考慮いたしまして、通常、海峡と言われておりますような部分、それからそれに隣接しまして一体となって考えられます海域というようなものを特定海域といたしまして具体的に範囲を画定をいたしたい、かように考えております。
  45. 今井勇

    今井委員 その範囲を決めます期間等が、施行は「この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内」で云々とありますのは、多分そういうふうな技術的な面の問題が多分にあろうと思いますが、そういうふうな理解でよろしいですか。
  46. 岡安誠

    岡安政府委員 この法律の施行に要する期間は二つの考え方がございまして、一つは、おっしゃいますように、この法律の施行のために必要な具体的な期間ということが一つと、それからこれは特に対外的に影響を生ずるわけでございますので、外国の方々、人々に対する周知徹底の期間といいますか、それぞれ両方を考えまして一応施行に要する期間を検討いたしておるわけでございます。
  47. 今井勇

    今井委員 日ソ漁業交渉の背景を考えますれば、この法律が通りました後、なるべく一日でも早く施行されることが望ましいことは昨日の大臣の御答弁でもあったわけでございます。いまの政府委員答弁によりますと、技術的な面のかみ合わせもあるようであります。これは大臣からお聞きしたいと思いますが、われわれの気持ちとしては一日も早くやりたいというふうな気持ちが非常に強いわけでございますので、この「政令で定める日」というものを大臣は一体ぎりぎりどのくらいまで考えておられて一日も早くとおっしゃっているのか、ひとつ大臣のお考えを承りたいと思います。
  48. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 明確に何日ごろまでということは申し上げかねるわけでございますが、政府としては、ただいま岡安長官から申し上げましたように、二つの要件を十分満たすことができればできるだけ早く実施をいたしたい、このように考えております。
  49. 今井勇

    今井委員 これは要望いたしておきますが、「三月を超えない範囲内」でありますから、一カ月でもあるいは二カ月でもよろしいのであろうと思います。極力縮めることの努力を、ひとつ政府部内でも督励をしてやっていただきたいと思います。  それからもう一つ特定海域現状凍結措置というのは、昨日の御答弁にもありますとおり、日本が世界の海を自由に通ることのためにも、国際海峡におけるいわゆる無害通航よりも、より自由な通過通航を確保したいという念願があり、そのような主張を海洋法会議でやっておる、日本がそういう基本的な立場であるからこそ、今度の十二海里の問題でも、津軽海峡のような場合には現状のままにしておかなければ日本の言っておることの一貫性がないというふうに私は理解をいたしておるわけであります。したがって、これはあくまでも暫定の措置というふうなものでなければならないわけであります。したがいまして、なるべく早く海洋法会議等における国際海峡の世界各国の意見の一致を見て、それによってわが国がそれを全面的に施行をするということでなければならぬと思いますが、このようなことについて、大臣の御所見は昨日から何遍か聞いておりますが、非常に大事な問題でございますので、再度大臣の基本的な考え方をお聞きしておきたいと思います。
  50. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いわゆる国際海峡につきましては、ただいま今井委員からお話がありましたように、日本は海洋国家であり、海運国家であり、また近代工業先進国である、貿易に依存する点も非常に大きいわけでございます。そういうような総合的な国益を踏まえまして、一般の領海における通航よりも、より自由な通航制度というものが国連海洋法会議でも大勢として論議をされておりますし、わが国もそういう立場で主張をいたしておる、そういうことから、主張していながらわが方はそれとまた違った制約を加えたところの通航制度をとるということは、これは日本主張というものが海洋法会議等における主張と矛盾をするということもあるわけでございます。  と同時に、いろいろ御意見の中には、無害通航という制度もあるではないか、それぞれの国に無害通航に対する権限というものがあるではないか、こういうことが言われております。このいわゆる国際海峡に隣接をしております諸外国がこの無害通航権というものをどういうぐあいに行使するかというようなことは、わが国としては非常に重大な関心を持っておるわけでございます。具体的に申し上げますと、日本の大型タンカー、巨大タンカー等が航行している国際海峡におきまして、その国際海峡に隣接をしておる国が無害通航に対するどういう権限を適用し、どういう対応をするか、油をたくさん積んだところの大型タンカーが通ることはいろいろの危険があるということで無害通航権を行使してくる、厳しい対応をしてくるというようなことでは、わが国としては非常に困るわけでございます。私どもはそういう国益を総合的に判断をいたしまして、やはりこれは無害通航よりも、より自由な通航制度というものが必要である、こういう主張に立っておるわけでありまして、そういう立場からわが国もそういうような方針を貫いていくべきである、こう考えておるわけであります。
  51. 今井勇

    今井委員 まさにそのとおりであります。しかし政府がそのように決断され、このような法律を出された以上、やがて開会されるであろう来るべき海洋法会議におきまして、強力にわが国主張を述べ、一日も早く各国のコンセンサスを得まして、そういった無害通航より、より自由な通航が、国際海峡において各国とも認められた通航ができるようにする努力を、さらにこれを義務を負うわけでございます。大臣のおっしゃいますように、現在の無害通航といいましても、その無害であるかどうかは沿岸国が判断をするわけでありますから、確かに日本のようなより自由な通航をしたい国にとりましては困るわけでございます。したがって、この法律の「当分の間、」というものが、一日も早く各国のコンセンサスになりまして、国際海峡が堂々と通れるようにわが国が大いに努力をするということが必要であろうと思いますが、決意のほどを承っておきたいと思います。
  52. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今後の海洋法会議におきましても、わが国主張が通るように、今後とも最善の努力をしてまいりたいと考えております。
  53. 今井勇

    今井委員 時間も来たようですが、最後に一問だけ。  昨日も同様な質問がございましたが、領海が十二海里に拡張されることによります警備体制の問題でございます。これは繰り返し今後とも十分の警備体制を強化してまいりますという御答弁がありました。もちろんそういうことでなければならないと思います。私はさらに突っ込んで、なかなかむずかしい問題であろうと思いますが、年次計画を速やかに立てられるべきであると思います。ただ一日も早く云々ということではいけないのでありまして、すでに政府として決意をされ、法案を提出され、一日も早く通そうという時代でございますから、一体海上保安庁が現在どのような計画を立てておられるのか、もしその年次計画がなければ一日も早く立てるべきであるということを私は主張したいと思いますが、それについて御見解を賜りたい。
  54. 間孝

    ○間政府委員 海上保安庁の体制の強化の問題につきましては、昨日も御質問をいただきまして、またほかの委員会におきましてもこれまで大ぜいの先生方からこの問題について御質問もいただき、また御激励もいただいておるところでございまして、海上保安庁としましては、今日この問題が非常に重要な問題であるというふうな受けとめ方をいたしておるわけでございます。  今後の進め方につきまして、いまお話のございましたように当然これはしっかりした計画を持っていかなければならないというふうに私どもも思っております。そういう意味におきまして、現在その計画を具体的にどうするか、これはやはり今後予想されるいろいろな事態を想定いたしまして、細かな形でつくっていかなければならないというふうに考えますので、ことしの予算をつくります段階におきましても、すでにそういう一つの計画は持っておったわけでございますが、最近また新しい二百海里の水域を急いで設定をするという事態にもなってまいりましたので、ただいま計画についてもう一度見直しを行っておるわけでございます。いずれにいたしましても、ただいま先生の御質問にございましたような趣旨に沿ってこの問題を考えていきたいと思っております。
  55. 今井勇

    今井委員 ちょっと不満なんですが、日ソ漁業交渉の問題については、補償等について事務次官を長とする政府部内の体制を固めたという農林大臣からのお話もございました。これは私は両方とも大事だと思うわけでございます。漁民の補償、これも大事でありますが、領海を広げたことによる警備体制の強化、これはいずれが軽でいずれが重であるかは判断しかねるほど大事な問題であるわけでございます。したがって、当然やはり海上保安庁では、庁内にその計画を立て警備体制を強化する組織を一日も早くつくるべきだ、私はそのように思うわけでございます。これは農林大臣、ひとつ国務大臣として御督励をいただきたい。いかがですか。
  56. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今井委員の御意見は全くそのとおりでございまして、海上保安庁の警備体制を早急に計画的に増強する、整備する、同時に海上自衛隊等との緊密な連携という問題につきましても万全を期する必要がある、こう考えておりますので、近い機会に関係閣僚の間で協議をいたしまして、この方針は確立をしたい、こう考えております。
  57. 今井勇

    今井委員 ただいまの国務大臣としての鈴木農林大臣の御答弁に満幅の信頼を寄せます。ぜひ実現をしていただきたい。最後にそれを御要望して、私の質問を終わります。
  58. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 馬場昇君。
  59. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 日ソ漁業交渉につきましては、同僚委員から昨日からたくさんの質問が出ております。私も時間がありましたら後段の部分で申し上げたいと思いますが、時間の関係上、まず最初に領海法について御質問を申し上げたいと思います。  この領海法の提案の理由の中に、外国船操業によって被害を受けている沿岸漁業者の切実な要望にこたえてこの領海法を提案したのだ、こういうことを大臣も言われておりますし、理由の中にも書いてあるわけでございます。もちろん私は当然なことであろう、こういうぐあいに思うのですけれども、この領海法というのは、単に被害を受けた漁業者の要望があったからこれをつくるのだということではなしに、私は日本の主権の拡大という物すごく重要な歴史的な法案ではないか、さらに言うならば日本の領土の拡大というぐあいにも考えていいような物すごく重要な提案ではないか、こういうぐあいに思うのですけれども大臣の御見解をお聞きしておきたいと思うのです。
  60. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 領海の幅員を三海里から十二海里に拡大する、これはまさに領土の延長というような重要な意味合いを持つわけでございますから、馬場委員の御指摘のとおりでございます。ただ、このことを今回緊急に政府が提案し、国会の御承認を得たいと申し上げておりますことは、馬場委員からもお話がありましたように、近年における外国漁船わが国沿岸における秩序を破ったところの操業の実態、これは一日も早く沿岸漁業者の操業の制約や、また漁具、漁網等の被害、あるいは資源の損害、そういうようなものを排除しなければいけない、こういうような緊急性もございまして、提案理由の中にその点を強調いたしたわけでございますけれども、本質的にはその問題を超えて重要な意味合いを持っておるということは、御指摘のとおりでございます。
  61. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 いま大臣が言われたのと私も同じ見解でございますし、ましていわんや日ソ漁業交渉のための武器に使うためにだけやったのだ、こういうことでは絶対ないと私は思います。  そこで、この法案内容の附則二項に、特定海域を設定しておるわけでございます。この特定海域については、現在の三海里のままにしてあるわけでございますが、そういたしますと、この特定海域については、いま大臣も言われましたように、領土の延長というような重大な意義を持つ法律であるわけでございますから、特定海域を三海里にするということは、言うならば主権の放棄ではないのか、こういうような考えを私は持っているのですけれども、これについて大臣はどうお考えですか。
  62. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは当分の間現状のままでこれを変更しない、こういうことでございますから、私は主権の放棄というぐあいには考えておりません。先ほども今井委員お答えをいたしましたように、わが国が海洋国家であり、海運国家であり、また先進工業国である、貿易によって国の経済の発展、国民生活の向上安定というものを求めておるわが国としては、総合的な国益という観点に立ちまして、いわゆる国際海峡というところは一般の領海における航行、さらに無害通航ということよりもより自由な航行が確保されなければならない、そういう立場でわが国が海洋法会議等において強くこれを主張しておるという立場からいたしましても、大洋と大洋を結びますところの要衝のいわゆる国際海峡、これは私はそういう意味合いで措置をすることがわが国方針に合致するものである、このように考えております。  なお、具体的には、るるお話を申し上げておりますように、近く国会の御審議を煩わしますところの漁業水域法、二百海里法の附則におきまして、十分これらの海域における外国漁船操業は、これを規制することができる措置をあわせて実施いたしてまいる考えでございますので、具体的にこのことによって国民損失をこうむる、差別待遇を受けるということのないような措置もあわせて講じまして、そして実質的な主権の放棄、それによる国民の不平等な扱いというものがないように措置してまいる方針でございます。
  63. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 ただいまの大臣の御答弁では私は納得ができないのです。言われるところの経済的な利益、こういうようなものはわからないでもございません。しかしながら、経済的利益、だから領土にも等しきものの権利を放棄する、こういうような感じに私は受け取れるわけでございまして、そういうことになりますと日本の領土に対する主張というのはそのくらいのものか、こういう感じを私は受けるわけです。そのことがたとえば今度の日ソ漁業交渉におきましてソ連が押してくる態度日本の領土に対する考えはそのくらいのものかというこの事実が、ソ連がどんどん押してくるという態度の背景にもなっておるのではなかろうか、こういうことさえ私は心配するわけでございます。私は、領土というような主権というものは、経済的利益よりもあくまでそこを大切にする、そういうことが大切ではなかろうかと思うのです。  これについて議論をしておりますと大変長くなるわけでございますが、大臣答弁には納得できないし、いま言ったような考え方を私は持っておるということをここでまず主張しておきたいと思うのです。  そこで、具体的に国際的な立場からこういうものをどう考えられておるのかということについて御質問したいのですけれども、十二海里を設定しておる国というのは約六十カ国近く現在あります。その中で日本のようにその一部特定海域を三海里だとか十二海里にしておって、一部の部分をそれよりも引っ込めておる、こういうようなことをしておる国が乙の六十カ国近くの中でどのくらいあるのかということにつきまして、これは外務省が詳しいかもしれませんけれども、詳しい方から御答弁をいただきたいと思います。
  64. 井口武夫

    井口説明員 この点につきましては、十二海里領海を設定している国の中では、特に三海里というような形で一部の海域を指定している国はございません。しかしながら、北欧のフィンランドでは一般の領海幅のほかに特定の島につきまして幅を狭くしておるというような事例がございます。
  65. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 大臣、いまの答弁を聞いても十二海里を設定しておる国で、一部特定海域で三海里なんかにしている国は世界じゅうにない。そうなってまいりますと、まさに国際的に非常識な行動だ、こう見られても仕方がないのじゃないかと私は思うのですが、この辺について、大臣はどうですか。
  66. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これはただいま外務省の方から御答弁申し上げたように、フィンランド等におきましては領海四海里制度をとっているわけでありますけれども、三海里の地域もある、こういうことを申し上げたのでありますが、わが国の場合におきましてはたまたま、よその六十カ国近い国はすでに既往において領海幅というものを画定をいたしておりますが、わが国が十二海里に踏み切るという時点におきましては、御承知のように海洋法会議というものが国連によっていまその論議が続けられておる、そういう海洋法会議の場におきまして、いわゆる国際海峡につきましては、一般の通航制度よりもより自由な通航制度という議論が大勢を占めつつある、こういう情勢というものは私どもは着目しなければならない。そういうものを全然無視して――新たに領海の幅員を広げようとするわが国は、やはりそういうことを国連の場においても主張しておるわけでございますから、そういうものを十分考慮に入れながら措置をするということは私は妥当である。すでに決定をしておる六十カ国、それは国連でそういう問題が起こらない時点において決定をしたことである。しかし、わが国は現在国会に提案をして御審議を願っておる。そういう場合におきまして、国連海洋法会議においてはそういう情勢にある、その情勢を踏まえてやるということは、私はこれは妥当な判断である、このように考えております。
  67. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 どうもわからないわけですけれども、海洋法会議がそういう情勢にあると言われますけれども、海洋法会議の情勢を見誤って今日のような状態を惹起しておるのではないかと私は思うのです。十二海里がどうだ、二百海里がどうだ、こういう国際的な常識、海洋法会議の議論、この分析を誤って今日のような事態を引き起こしておる、こういうふうに私は思うのですが、大臣、何と言いましても、早くやろうが遅くやろうが、六十分の一というようなことが私は常識とは考えられない。そして海洋法会議の趨勢とは私には考えられない。たとえばいまの国際海峡に隣接する国もおおむね領海は十二海里ですよ。現在やっているのです。たとえば多分後で出るかと思いますけれども、マラッカ海峡の問題にいたしましても、シンガポールだけが三海里であって、マレーシアとかインドネシアとか、こういう国は各国一律に十二海里をやっておるわけです。だから私は一歩譲って考えたにいたしましても、やはり日本は十二海里を全部引いて、そしてマレーシアやインドネシアがマラッカ海峡でやっておりますように、当分の間自由航行を認めるんだ、こういうような態度をとることこそが国際常識ではないかと私は思うのです。どうでしょう。
  68. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そこで議論の分かれるところでございまして、海洋法会議におきましては、いわゆる国際海峡において、そこに隣接する沿岸国がいろいろの恣意的、と言っては語弊がございますけれども、その国の方針、判断で国際航行にいろいろな規制を加える余地があるわけでございます。そういうことであると、日本のような立場に置かれております海洋国家、海運国家、海外から原材料を輸入をして、そして加工貿易をしておる、それで国が立っておるという国から見ますと、そういういわゆる国際海峡に隣接する国の一方的な方針、恣意によって、そういう自由な航行が阻害されるというようなことでは、わが国としては困る、こういう立場で海洋法会議でも主張をいたしておるところでございます。これはアメリカもそういう立場に立っておりますし、工業先進国はそういう方向で主張しておる。こういう主張をしながら一方においてわが方においては一般の自由航行よりもより厳しい条件――まあ馬場さんはどういうお考えでいまのような御主張をなさっておるかはわかりませんが、べたに十二海里にして無害航行でもやったらどうかというような御意見であるかどうかは、これは後でお聞かせを願いたいと思いますけれども、もしそういうことでありますと、私ども主張しておところとは違う。無害航行というようなことで、日本の大型タンカー等が通航する、油を積んでおるから非常に危険が伴う、だからいろんな条件をつける、こういうことではわが国としては非常に困るわけでございます。そういうような観点からわが方がこの海洋法会議主張しておるその主張方針に基づいて、わが国国際海峡についてもそういう方針をとってまいるということは首尾一貫した政策に立つものである、こう申し上げてよろしいと思います。
  69. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 首尾一貫してはおるかもしれませんけれども、私はそれがある意味において国際常識を離れたひとりよがりだというような感じがしますし、どう見ても目先の利益といいますか、そういうもののため便宜的な対応をしておるような気がしてしようがないのでございます。  では、そう言うならば、海洋法会議国際海峡の自由航行問題というのが――日本主張は先ほど言われましたのでわかりましたが、海洋法会議国際海峡の自由航行問題がどういうぐあいになるだろうか、いまの情勢はどうか、将来日本主張するようになるのかどうか。この海洋法会議の分析といいますか見通し、こういうものはどうお考えになっておられますか。
  70. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  海洋法会議におきましては先進海運国、これは日本や英国のような国でございますが、国際貿易に依存しておりますので、国際交通がなるべく自由であるということが国益であるという考え方からなるべく自由な航行主張する国と、それに対じまして沿岸国の利益というものを優先させたいということで無害航行というような立場をとる国もございましたけれども、やはり大勢といたしまして国際交通のためになるべく自由な航行を維持するということが優勢になりまして、実は二年前に海洋法会議で単一草案というのができたわけでございますけれども、この単一草案では妨げられざる通過通航という形でこの草案が固まりつつありまして、これは国際航行に使用される国際海峡においては航行の自由が行使される、それから上空飛行も自由な権利が行使されるという形で規定されておりまして、現在は海峡沿岸国も大体この単一草案の規定というものを受け入れる方向で事態が収斂しつつあるというのが現状でございます。
  71. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 次に、さらに具体的に伺います。  先ほども質問があったようでございますけれども特定海峡を宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡の東水道、対馬海峡の西水道、大隅海峡、この五つに決めておるわけでございます。わが国には七十近くの海峡があるわけですけれども、この五つに決定した理由をお聞かせいただきたいと思うのです。
  72. 岡安誠

    岡安政府委員 五つ海峡に限定して提案を私どもしております具体的な理由を申し上げますと、三つございまして、一つは、現在は船舶航行に適するような公海部分が残っているような海峡であるけれども領海が十二海里に拡張されたとしたならばほとんどそれが閉鎖されてしまうか、残った公海部分が非常に少なくて船舶航行に適しないような状態になる、そういう海峡であるということでございます。それからもう一つは、その海峡公海公海を結ぶような位置にある海峡であるということ、それからもう一つは、現在その海峡を通航する外国船舶の通航の頻度が比較的高い海峡ということ、そういう三つ基準を頭に置きまして五つ選定いたしたわけでございます。
  73. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 いま三つの理由はわかりましたけれども、たとえば第三点目の外国船舶の通航の頻度が高いというのは何か基準があるのですか。勘で大体受け取っているのであろうか。いや月にこれだけ通るとか年にこれだけ通るとか、そういうぐあいに基準が何か頻度についてございますか。  さらにもう一つは基本的に、この五つ特定海峡をつくったわけですから、これはやはりいま言った三つの条件でこの五つをつくったということをたとえば海洋法会議で、日本はこうやっているんだ、このようにしなさいと国際的にも各国に要請できるようなそれは基準ですか。胸を張って国際的にこういう基準で行きましょうというように要請できる基準としてお考えになっておられるのかどうか。
  74. 岡安誠

    岡安政府委員 頻度が比較的高いと申し上げたわけでございまして、具体的に月とか年間何隻以上というような数字的な基準があるわけではございません。私どもこの五つ海峡選定するに当たりまして海上保安庁にお願いをいたしまして、現在におきます通航の現状を調査していただいたわけでございますが、その調査結果を検討いたしまして選んだということでございます。  それから二番目のお話でございますが、しからばそういうような基準なり現状を踏まえて海洋法会議でもって主張するかという御指摘でございますけれども、私どもは、この法案に書いてございますとおり当分の間の暫定的な措置でございます。これはやはり国連海洋法会議で現在論議されておりますようなよわ自由な海峡の通航制度というものが確立するまでの間の暫定的な措置でございますので、このような制度を外国主張するというような考えはございません。
  75. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 ずっといままで質問を続けてきたのですけれども、どうしても国際的に見てもちょっと孤立しておるようですし、さらに便宜的過ぎるというような感じもするわけです。これはざっくばらんに言いまして、大臣は多分そうじゃないとお答えになると思うのですけれども、私はやはり何といってもこういう便法をとったということは、自由航行ということは主張はわからぬでもないのですけれども、国際情勢からいって先ほどからるる言っておるとおりでございますので、ソ連とかアメリカに対するやはり核積載艦の自由航行を認めるというような配慮をしたのじゃないか、こういう感じがするのです。これは多分大臣はこの場所では否定されると思うのですけれども、私はそういう感じがいたします。そうすれば、先ほどから言っておりますように、やはり領土とか主権とかに対する日本態度というのが本当にこんなに簡単なものだということを表明しておるような感じがするわけでございます。  さらにたとえば、いや経済的にこれは国益だという答弁もさっきあったのですけれども、そういうときに一番言われますマラッカ海峡、そのマラッカ海峡を配慮したとするならば、これまた基本的に言うならば、石油を積んだ船をあそこを通してもらいたい、それを制約してもらいたくない、そういう経済的利益というものでもって領土という主権を放棄した、こういうような感じがしないわけでもございません。  たとえば、マラッカ海峡について言いますならば、わが国がこの五つ海峡についてこういう便法をとったからといって、マラッカ海峡に隣接する諸国には余り経済的その他の関係はないというぐあいにも思います。  さらに、こういう問題についてマラッカ海峡沿岸諸国、そういうものとたとえば何らかの話し合いといいますか、何かの気持ちの打診といいますか、そういうものをやったことがあるのかどうか。  こういう問題について端的に二点、ソ連やアメリカに対して配慮したのじゃないか、マラッカ海峡を通してもらいたいというようなことでもってこういう便法をとったのじゃないか、そういうことについてどうですか。
  76. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 このようないわゆる国際海峡につきまして、日本がこの法案で特別な措置を講ずるということは、アメリカに対しても、ソ連に対しても気がねをしたとかどうとかいうことでもございませんし、日米安保条約にも全然関係のないことでございます。先ほども申し上げたように、日本が国連海洋法会議でより自由な通航制度というものを主張しておる立場につきましては、これは御理解いただけると思うのですが、そういう主張を国際会議の場で主張しながら、日本はそれに逆行したような方針をとるというようなことは、これは矛盾したことになるわけでございまして、今後海洋法会議で、わが国が国益を踏まえてそういう主張をしてまいることについて非常なマイナスになる、やはり首尾一貫した方針で国内措置も外交的主張もやる必要がある、このように考えております。  マラッカ海峡の問題が出ましたけれども、先般、マラッカ海峡沿岸国、隣接国におきまして、あの海峡に対する通航上一定の基準というものを決めたようでございますけれども、これは通航制度そのものではなしに、あの海峡が非常に狭いという関係、大型タンカーがたくさん通るという関係、そういう点からいたしまして、喫水線からこれだけの深さのものは通ることは危ない、そういうような立場からああいう規制と措置がとられた、こういうぐあいに私は理解をいたしておるわけでございます。そのほかにも、ジブラルタル海峡もあればいろんな海峡が、国際航行の面におきまして海運上自由な航行が要請される海峡がたくさんあるわけでございます。  私はそういうような観点から、日本は今回この法案で、そういう方向で各党の御理解を賜りたい、こういう考えでございます。
  77. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 自由航行主張というのはいいとして、やはり日本の主権を基盤の上にそういう主張をすべきだと思うのです。  もう一点。この特定海域問題について、特定海域周辺の住民の主権が制限されておる。そうなってきますと、法のもとに平等ではないわけです。こういうことは憲法違反じゃないかというような気がいたします。先ほどの質問で、大臣が、二百海里法案の中で、この三海里から十二海里の間で外国漁船操業は認めないということを書くのだ、こういうようなことを言われたのですけれども、私はいまの領海法は、これはやはりいま言ったようにその特定海域周辺の住民を差別しておる、法のもとで平等でない、憲法違反だと思う。この領海法の中でなぜそういうことを書かないのか。  この憲法違反の問題と、それから二百海里水域法律で書くようなことをなぜ領海法の中で書かないのか、これについて御答弁願いたい。
  78. 岡安誠

    岡安政府委員 御質問が二点ございまして、最初は法の前の平等の点の御質問でございますが、本当は法制局の方からお答えをすべきでございますが、私がかわって答弁をいたしますと、憲法十四条というのは、先生御承知のとおり、個人の人格の価値はすべて平等であるという理念に基づいて、国民個人の地位あるいは立場に関する法令の制定及び適用については、そのような理念に反するようなことをしてはならないということが書かれているわけでございます。今回、領海の拡張に関しまして、一般的には十二海里であるけれども特定のところについて三海里のままに据え置くということは、十四条に言っておりますように平等ということに反するわけではないわけでございまして、領海を十二海里にするところとそのままに据え置くというところが出るということは、何もこれは沿岸住民、特に沿岸漁民に対して不平等な扱いをするということにはならないというふうに私どもは考えております。  それから二番目の、そういう救済措置が仮に必要とするならば、二百海里の方で救済措置をするならば領海法救済措置をしたらどうかという御質問でございますけれども、やはり領海法というのは領海自体にかかわることを規定をするというのが法律のたてまえであろうというふうに考えております。形式論ではなはだ恐縮でございますけれども特定海域として残されるところにつきましては、領海は依然として三海里でございますので、その三海里を越える部分につきましては、これは領海ではないわけです。したがって、領海でない部分につきましての規定領海法に置くということはいかがか。そこで、私どもといたしましては、そこにおいて操業をされるような日本国の漁民の利害等を考えまして、二百海里法の中におきまして、そういうような部分につきまして外国船操業を禁止をするというような措置をとりまして、関係漁民影響というものに対しまして配慮をいたすつもりでございます。
  79. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 次に、特定海域の設定と非核三原則との関係について御質問を申し上げたいと思うのですが、特定海域を設定せずに領海を十二海里にしますと、さっき言ったような津軽海峡、こういうものを核積載艦が通過することは非核三原則に触れるかどうか、いかがですか。
  80. 井口武夫

    井口説明員 ただいまの御質問の件につきましては、四十三年の統一見解というのがございまして、これがまた四十九年に再確認されておりますけれども、核常備艦に関しまして、領海を通過する場合には無害航行とは認めないということで、その場合には許可しないという立場を従来からもとっております。
  81. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 国際海洋法会議で、国際海峡の自由航行主張されるわけですが、それは、十二海里を私たちは宣言するわけでございますけれども国際海峡の自由航行主張するということは、いまのような十二海里を設定する情勢の中で、わが国の非核三原則とはどういうかかわりになりますか。
  82. 井口武夫

    井口説明員 国際海峡につきましては、先生御存じのとおり、一般領海とは違う、妨げられざる通過通航制度ということで収斂しつつあるわけでございまして、これは船舶に関しましては、あらゆる船舶が迅速な通過をできるという制度でございます。これは先ほどから大臣の御答弁にもありますとおり、わが国といたしましては、貿易立国あるいは遠洋漁業国、資源輸入国でございますから、タンカー、遠洋漁船、その他あらゆる種類の船舶の差別されざる通過通航というのが総合的な国益に資するという立場から対処してまいっておるわけでございます。  それから、非核三原則の問題に関しましては、当然、わが国の主権の及ぶ範囲においてこれを維持するというたてまえで臨んできております。
  83. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 これは国務大臣たる鈴木大臣に聞くのですが、いろいろいままで質問しましたけれども、私了解できていないのです。やはり特定海域など設けなくて、そこも十二海里にする、そして一般船の航行は自由に認める、核積載船は認めない、このことがいまの日本の行政の中で一番いいことではないか。そして、いろいろ無理をするよりも、このことが非核三原則を持つわが国にとって最も忠実な方法ではないか。それで、世界から核兵器をなくする、また核軍備の軍縮をするという理想実現に向かって、こういうサイドからもそういう態度をとることが最も適当ではないか。また、そういう核積載船を認めない、このことをとることは、何も経済上、貿易上、たとえばマラッカ海峡沿岸諸国といえども、そういう方法をとることは喜ぶのではないか、それこそ日本のとるべき道ではないか、こういうぐあいに私は思うのですけれども、どうですか。
  84. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政府方針とは違うということを前提にして御答弁を申し上げます。つまり、いま馬場さんがおっしゃったことについての私の見解を申し述べるもので、政府方針は別でございまして、その領海法に盛られておるとおりでございます。  私は、馬場さんのおっしゃるようにした場合、現状の国際情勢下におきまして、それが果たして賢明な方法であるのかどうか。もとより核兵器の廃絶をする、速やかに核兵器というものを地球上から根絶をする、こういうことは、被爆国であり、非核三原則を世界に鮮明にしておる日本としては、今後も強く国際の場において主張すべき外交の基本だ、このように考えてはおります。  しかし、現状からいたしまして、馬場さんの御所論のような立場でいった場合に、果たしてそれが現実に行われるかどうか。もし核兵器を塔載したところの潜水艦等が通過をする、無害通航であるから、これは浮上して、そしてそれに装備をしておるところのものを全部遮蔽をして通れとか、一切通ってはいかぬとかいうようなことになるわけでございます。それをもし相手国が無視してきた場合、それに対して、国の方針としてそれを貫こうとすれば、日本の自衛力でもってそれを阻止するというようなことにならざるを得ない、国の権威の面からもそうせざるを得ないわけでございます。恐らく馬場さんも、そのときはそうせねばいかぬ、こういう御主張だと思うのでありますが、日本の自衛力でもってそれを阻止する、武力紛争が起こってもそれをやるのだ、こういうことをお考えになっておるのかどうか、こういう問題も起こってくるわけでございまして、私どもがとっておる政策は全然別でございますが、馬場さんがおっしゃったような御意見を前提として私の見解を述べろということになると、どうもそういう問題が起こってくるのではないか。平和を希求する日本として、この現実の問題にどう対応するのかという問題が問われるのではないだろうか、こう思うわけでございます。
  85. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 法案を審議しておりますから、ここで個人の議論をする気はないのですけれども、私が言いましたのは、先ほどから言ったとおりの見解でございます。  そこで、今度は具体的な話に移ります。これはもう大臣が何回も答弁なさっておりますけれども、この領海法というのは、日ソ漁業交渉にまた行かれるわけですから、この国会におきましても全党一致、そして全国民一致した気持ちで、もろ手を挙げて賛成をする、そういうような形で成立することが一番望ましい、これは大臣もそう言っておられるとおりでございます。  ところが、特定海域の設定の問題、こういう問題等につきましては、先ほどから私がるる申し上げておりますように、幾多の疑問を私はまだ持っておって、釈然としていないのです。この問題は私だけじゃございませんで、先ほど行われました党首会談でもそのことが議論になったと私は聞いておりまして、党首会談でも検討すべき課題だということで約束されたやに聞いておりまして、政策担当者会議などでもそれが相談されるのだということも聞いております。そしてまた、昨日開かれました国対委員長会談でも、全党一致を見るように各党間で努力をしよう、こういうようなお話し合いができたということも聞いておるわけでございますし、政府態度としても、園田官房長官は、そういう全党一致の問題について具体的にどうするか何らか検討する必要があろう、こういうぐあいに言っておるわけでございます。だから、いま私がいろいろ申し上げました問題点、疑問点、こういうものについて全政党が釈然とするように、領海法が成立する前に十分話し合う。そして修正する必要があれば修正をする。そして全政党、全国民一致した形で領海法を通す、これが一番いいんじゃないか、こういうぐあいに思います。こういう問題について、鈴木大臣の御見解をお聞きしておきたいと思います。
  86. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 馬場さんがおっしゃったとおりでございまして、領海法及び漁業水域法、この両法案はぜひ各党一致、全会一致で通るようにすることが、諸般の情勢から見て最も望ましいことである。そういうようなことで、政府におきましても、またわが自由民主党におきましても、御意見の一致が見られることを念願しながら各党とも話し合いを政策担当者の間でやっていただくということにつきましては、私もこの間党首会談に出ておりましたので、そのように念願をいたしておるところでございます。
  87. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 ぜひ精力的に話し合いをしていただいて、修正すべき点があれば修正をして、全党一致で通るように担当大臣としても御努力いただきたいと思います。  次に、まだ提案されておりませんけれども関連がありますので、漁業水域法について質問を一、二申し上げておきたいと思うのです。  伝えられる法律案によりますと、漁業水域に関する暫定措置法案、こういう名前で出るようでございますが、これは率直な質問ですけれども、これはなぜ海底鉱物資源等も含めた経済水域に関する措置法案というようにならなかったのか、また経済水域という問題については将来どういう方向で考えておられるのか、この点についてちょっと聞いておきたいと思います。
  88. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが国は御承知のように遠洋漁業国家でございます。わが国は一貫して今日まで、国連海洋法会議で国際的な合意ができるだけ早くつくられることを望んで努力をしてきたわけでございます。しかるに、水産資源の問題につきまして、単一草案が提案をされてきた、だんだん収斂をされてきた、もう一歩これからさらに各国が英知をしぼってその結論を見出してほしい、こういう念願を持っておったわけでありますが、世界政治の面でも、また世界経済の面でもリーダーであるところのアメリカが海洋法会議の結論を待たないで漁業専管水域二百海里法を通した、それに連動してカナダもとった、ソ連もまた今回三月一日から二百海里宣言をやった、こういうようなことになってきております。  そこで、わが国としては、こういう現実の厳しい環境の中で、主張主張としても、どうしても当面の対応策を考えなければならないというようなことで、今回二百海里水域法を暫定措置法として提案をし、御審議を願う。これは海洋法会議で統一草案の方向で世界的に合意がなされることを念願をし、希求をしておるわけでございます。そういう意味合いで、今回暫定措置法としてこれを提案をした、こういう趣旨でございます。
  89. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 時間が余りございませんが、あと二、三点質問いたしたいと思うのです。  経済水域問題についてのお答えがなかったわけですけれども、そこで、アメリカがとった、カナダがとった、ソ連がとった、こういう苦しい日ソ漁業交渉を強いられておる、やむなくとった、そういう経過はよく存じ上げておるわけでございます。そこで日本がとる場合、これはもういろいろ配慮なさっておられると思いますけれども、そういういままでの経過があるわけでございますから、関係いたしますところの中国だとか朝鮮民主主義人民共和国だとか韓国だとか、その他は十四条で除外してあるようでございますけれども、やはりそことの連絡とか連携とか了解工作とか、こういうことをよくとっておかないと、このことによってまた後でトラブルが起きては困るわけであります。その辺については諸国とのコンセンサスも十分得ておられるだろうと思いますけれども、これは十分やっていただきたいと思います。  そこで、最後に一括してさらに漁業交渉について一言だけ大臣に質問を申し上げておきたいと思います。日ソ漁業交渉について、これはもう言うまでもないのですが、この問題については非常に国論が盛り上がっておるわけでございますけれども政府国会も、そして漁業界も国民も、この問題について感情的にならないで、国益の尊重と日ソの友好親善関係の樹立ということを基本に置いて冷静な態度で臨むべきであろうと思っておりますし、またそのような態度ソ連にも望むべきであろうと思っておるわけでございます。  この日ソ漁業交渉を見てみますと、いままでの日本の対ソの外交姿勢や、あるいは領海とか漁業水域問題に対する対処の仕方、こういう問題についてやはり問題があったと私は思います。そういう意味におきまして、これまでの対ソ外交の姿勢やあるいは領海とか経済水域等の情勢の分析等の誤り、甘かった点、そういうことにつきまして、政府はこの際自己批判をやり、反省をやるべきであろうと思います。鈴木大臣が、領土と魚は別である、領土の権利も後退させなくて、漁業権益も確保すべきである、こういう交渉姿勢をとっておられることには全く賛成でございます。  ここで御質問申し上げたいのは、現状を見ますと、領土問題というのは決して避けて通れない問題だ。ソ連の方もそういうことを持ち出してそこが隘路になっておるわけでございますから、領土問題を避けて漁業問題だけという交渉ではなしに、むしろこの際領土問題にも積極的に取り組む姿勢というものが政府にあっていいんじゃないか、そのことが前向きな積極的な日ソ漁業交渉になるのじゃないかと思います。そしてできればこの機会が一番いいのですけれども、少し時間がたっても、今後に問題を残さないように、北方領土の問題は戦後の未解決の問題であることをはっきりさして、そして平和条約の締結をするときにこの問題は協議して話し合うのだ、そして日本にとっては日本の領土を返してもらうのだ、こういうような、どこまでいくか知りませんけれども、きちんとした、最低田中総理とブレジネフ書記長との話し合い、これも少しあいまいになっておりますけれども、さらにそれを基盤にしてはっきりさせた何らかの取り決めというようなことをする必要があろう、こういうぐあいに思いますし、そういう立場から何としてもこの際総理大臣やあるいは外務大臣がやはりソ連に赴いて、びしっとした領土問題というものも話し合いをつける、そういう積極的な態度が必要ではないか、こういうぐあいに思うのです。そういう問題について担当大臣鈴木大臣の御見解をお聞きしておきたいと思います。
  90. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 北方四島、これはわが国固有の領土である、この返還を求めて、そして日ソ平和条約を締結をする、これがわが国の不動の方針でもあるし、日本民族全体の悲願でもある。このことは一九七三年の田中・ブレジネフ最高首脳の間で、戦後未解決の問題を解決をして平和条約の締結をするということで合意がなされた。それを受けまして日ソ両国の外務大臣が交互に東京で、あるいはモスクワで定期協議をやっていく、こういう領土問題に対しましては両政府間の交渉が続けられておるわけでございます。私はそのことを踏まえまして、この交渉にいささかの悪い影響も与えてはいけない、日本の立場を損なうことがあってはいけない、こういうことを基本的な大きな柱に踏まえております。と同時に、北洋におけるわが国の一世紀にわたるこの漁業権益、これはどうしても守り抜かなければいかぬ、こういう二つの命題を達成するために取り組んできたわけでございます。したがって領土問題を避けて、魚だけでこの問題が解決されればいいというようには考えておりません。いま申し上げた領土問題の両国の首脳の合意、それについての両国の外務大臣交渉の継続、これを前提としながらこれに悪影響を与えないという立場におきまして、一方において漁業権益はあくまで守っていくのだ、こういう基本姿勢で取り組んでおるわけでございます。私はこの際、日ソ国民が冷静に日ソの友好関係を将来に向かって発展をさせなければいけないという立場に立って、冷静にひとつ対処すべきだという馬場さんの御意見、これは全く同感でございます。そういう意味で、私はソ連の最高指導部が日本との友好関係、この維持と発展、そういう大局に立って、今後の漁業交渉に当たってもイシコフ大臣にそういう点を十分反映をさせるようにソ連指導部の賢明な判断を私はこいねがってやまない次第でございます。
  91. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 ぜひ日ソ平和条約という問題も直接総理が乗り出して、領土問題等含めて真剣に、しかも早く解決するようにこの問題をやらなければ、今後やはりこういう日ソ漁業交渉でいろいろ問題になっておりますようなことが起きないとも限らない。そういうことで、ぜひ全政府を挙げて総理大臣等が積極的に前に出てがんばっていただきますようにお願いをしておきたいと思います。  時間が来ましたので、質問を終わります。
  92. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 この際暫時休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十四分開議
  93. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  94. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、今回提案されております領海法案を中心にして、若干の質問をいたしたいというふうに思います。  まず、質問に先立ちまして、福田内閣の誕生に伴いまして鈴木農林大臣が農政を担当することになったわけでございますが、当面多年の懸案でありました領海法担当の国務大臣といたしまして、また日ソ漁業交渉打開のための政府間折衝の代表として、連日寝食を忘れて大変な御努力をされておることについて、私自身心から敬意を表したいというふうに思います。  私自身も十数年来党の水産政策委員長ということで水産関係の責任を担当してまいりましたし、また本委員会に長年席を置きまして、わが国の水産業の振興のためには専門的な立場から取り組んできたつもりでございます。  今回の法案を中心にした議論をするに当たりまして、従来の政府・自民党が領海法案等を含めて歴史的に対応してきた経過というものを顧みますと、われわれとして一定の厳しい批判がないわけではございません。そのことにも若干触れまするけれども、しかし、当面する情勢からいたしますと、やはりわが党としても筋道を立てた協力をすべきである、こういうふうに考えます。したがって、領海法案、さらに二十一日以降提出予定の二百海里漁業水域法案につきましても、党首会談あるいは国対委員長会談等が持たれて寄り寄り話が進められておりますが、与野党の合意を得てこれらの問題を速やかに処理をして、鈴木農林大臣が望んでおられる来月六日以降の訪ソに間に合わせる、共通の土俵で日ソ漁業交渉に当たるということについてはわれわれとしても基本的に賛成であります。  そこで、領海法案に入ります前に、まず総論的な点で若干お伺いをいたしたいと思います。  その第一は、日ソ漁業交渉に関する問題であります。これは昨日来同僚議員によって熱心に議論がされておりますし、鈴木農林大臣自身も誠実にそれらの質問に答えておられるわけでありまして、これらの問題にこれからどう対応するか、当面の情勢はどうであるかということについては私自身も一定の判断を持っておるわけでございます。私はたまたま本年から日ソ友好議員連盟の事務局長という仕事を仰せつかりまして、今日の日ソ漁業交渉の問題に関連をして日ソ議連としてもこれまでに何回か常任理事会等を持ちまして、国会自身も超党派的な衆参両院における決議ということを背景にして今日超党派議員団が訪ソしておるわけでありますけれども、われわれ自身も日ソ友好親善という高次の立場に立ちながら、なおかつわが国の国益を守るためにできる限りのバックアップをしなければならないという立場で寄り寄り協議してまいりました。  そういうことで、日ソ議連として日ソ漁業交渉に対しソ連政府に申し上げるべきことについて相談をまずいたしました。その結果、各党共通してまとまりました意見は四つございまして、一つは、現行の日ソ漁業条約は有効に働いておる、それを念頭に置いてやはり考えてもらいたい。第二番目は、ソ連側領海十二海里内における入漁を要求しておるけれども、われわれとしてはこれを認めることはできない。第三番目としては、ソ連がすでに引いております二百海里の漁業専管水域内においてわが国の伝統的な漁業実績というものを最大限認めてもらいたい。第四番目としては、戦後未解決の問題として懸案になっております領土問題については漁業問題と絡ませずに、これはやはり日ソ、平和友好条約を結ぶ際の問題として処理をするよう配慮してもらいたい。これが日ソ議連で相談をしたときの日ソ漁業交渉等に対する基本的な見解でございました。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 これをソ連のポリャンスキー駐日大使にわれわれ代表団が行って率直にそのことの申し入れをいたし、また日ソ議連の石田会長から、代表団が訪ソするときに、相手国に対して親書をその趣旨に基づいて伝えてもらう、こういう形をとったわけでございます。  同時に、残念なことに国会決議に基づく超党派議員団がなかなか訪ソできないという事態が出てまいりましたので、鈴木農林大臣交渉中断の直前に再度ポリャンスキー駐日ソ連大使に会見をいたしまして、これは国会決議に基づく超党派議員団であるから、日ソ友好親善の立場からも、日ソ議連としても強くその訪ソ実現を望んでおる、こういうことで、訪ソされる超党派議員団の団長であります櫻内団長も含めてその趣旨を強く伝えたわけでございまして、それに対してソ連大使は、速やかにソ連政府に連絡をして、速やかな機会に回答を出すということで、数日中に受け入れるという回答が来て、今日訪ソしておることは御案内のとおりであります。  したがって、鈴木農林大臣が言っておられますように、今後やはり困難な日ソ漁業交渉に臨むに当たっては、まず第一に国論の統一、さらに超党派的な支援、また関係漁業者の忍耐、こういう三つがそろえば、いわゆるどんな困難があっても必ず妥結に向かうと判断をしておるというふうに言っておられるわけでありますが、とかく外交、防衛各般の問題について、あるいは国内の政策上の問題についても、与野党で激しく意見の対立することが従来ございましたけれども、今度ほど鈴木農林大臣が望んでおられるように、国論一致超党派的な支援関係漁業者の忍耐、こういう条件が整備されたことはかつてないというふうに思うのであります。そういう中で、一方においては戦後未解決の問題の領土問題について禍根を残さないような処理をやはり政府折衝の中でやっていかなければならぬ。同時にまた、多年にわたる血と汗の結晶の北洋漁業における漁業実績というものを最大限に確保しなければならぬということで、中断された今日の日ソ漁業交渉の再開に備えておられると思うのでありますが、昨日来いろいろ議論がございましたけれども、この際私からも改めて再開の日ソ漁業交渉に臨む農林大臣決意というものを承っておきたいと思うのであります。
  95. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 角屋先生が多年にわたってわが国漁業政策のために御尽力をいただいてきた、特におくれております沿岸漁業沿岸漁民のために御尽瘁をいただいておりまして、いつも御意見を拝聴し、またいろいろ御指導もいただいておりまして、この機会に深く感謝を申し上げるわけでございます。  日ソ漁業交渉中断をいたしましたが、五月の上旬に再開をするということで約束ができております。それに当たって、国論はまさに一本に結集をされており、超党派の御支援もいただいておる、また、関係漁民の諸君も非常に不安と困窮の中で歯を食いしばって、わが方の立場を損ねないでこの協定が結ばれることをこいねがっておる、こういうことを私、ひしひしと感じておるわけでございます。こういう背景の中で三たび訪ソをするわけでございますが、それに当たりまして共通の土俵、共通の基盤をつくらなければいけないということにつきましても深い御理解を賜りまして、ただいま御審議をいただいておる領海法、また二百海里水域法につきましても、当委員会の皆さんの大変な精力的な、また御理解のある御審議をいただいておりますと同時に、各党の政策担当者あるいは国対等におきましても並行して大所高所から早期成立のためにお骨折りをいただいておる、まことに感謝にたえないところでございます。  日ソ交渉に当たります私の基本姿勢は、しばしば明確にいたしておるわけでありますが、北方四島、わが国固有の領土でありますこの領土問題、この今後の交渉にいささかの悪い影響があってはいけない、わが方の立場を損ねるようなことがあってはいけない、これが一つの重要な柱でございます。と同時に、一世紀にわたりわが国漁民の諸君が血と汗で開拓をした北洋漁業権益、これも守っていかなければならない。この二つの命題に向かって、私は困難ではあるけれども、この全国民的な御支援の上に立って交渉をすれば、困難ではあるが、不可能ではない、こういう信念でこれに取り組んでおるところであり、また今後も一貫してそういう立場で交渉に当たる考えでございます。  なお、角屋さんのお話の中で、日ソ漁業条約は現存しておるのであるからあくまでサケ、マス、ニシンについては日ソ漁業委員会の場においてこれを処理すべきであるという御主張は、全くそのとおりでございます。そういう線で今日までやってきたわけでございますが、ソ連側の立場は三月一日から幹部会令が二百海里水域の中に施行されておる、ソ連の主権的権利は二百海里の中にもうすでに実施をされておるんだ、非常にこの原則をかたく堅持して譲らないという状況でございますが、とにかくそれでは二百海里の外の公海部分、まずこの問題をひとつ片づけようではないかということで、代表の諸君にもそれをお願いをいたしまして、精力的にいま交渉をやっております。ソ側もこの公海上におけるところの規制並びに漁獲割り当てにつきましては大分歩み寄ってきておるわけでございまして、きわめて近日中にこの二百海里の外の部分につきましては合意ができるのではないかという期待を私持っておるところでございます。  いずれにしても漁期というものがございますから、漁期を逸しましては、幾ら多くのクォータを獲得いたしましても、これはことしの実質上の効果をもたらすことにはならないということで、この二百海里外の公海上のクォータ、規制方法等速やかに妥結をして、そして操業に入る、それと並行して二百海里内の問題についても早く結論を出す。その際、角屋さん御指摘のように、やはりあくまでシャルクの場で決定すべきことでございますから、再開をして、東京で最終的な署名をする、こういう立場を堅持しておるところでございます。  今後、領海法並びにわが方の二百海里法、これが国会の御承認を得ました場合におきましては、この新しい基盤、条件の上に立って、強力にソ側交渉してまいりたい、こう考えております。
  96. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先ほど馬場委員からもお話がありましたように、日ソ漁業交渉の問題は、やはり冷静な態度で粘り強く、わが国主張実現するようにひとつ鈴木農林大臣としても最大限の御努力を願いたい、こういうふうに考えております。  第二番目の問題として、御案内のとおり、来る五月二十三日から第三次国連海洋法会議の第六会期がニューヨークで開かれるわけでございます。当面の日ソ漁業交渉あるいは領海法あるいは二百海里漁業水域法、こういうものに目を奪われて、いわゆる国際的に新しい海洋法体制をどうつくるかということの合意を得る努力というのをいささかも怠ってはならないというふうに私どもは思います。第三次国連海洋法会議は、第一会期がニューヨークで昭和四十八年に開会をされて以降、回を重ねておること五回に及びまして、今度第六回目の会期が開かれる。第三会期目においては、議長から非公式の単一交渉草案が示され、第四会期におきましては、さらにそれの改訂版が示されました。しかしながら、いまだ国際的合意に至らずして今日に及んでおる。しかもそういう中で、アメリカにしろソ連にしろECにしろ、相当多くの国々が、漁業専管水域二百海里の先取りという形ですでに実施に移してきておる。わが国も、それとの対応の関係もこれあり、二百海里の漁業水域法を決定しようとしておるわけでございます。  そういうふうな状況が各国で先取りで出てまいりますと、本舞台であります国連の海洋法会議の今後の行方はどうなるかという点については、必ずしも危惧なしとしないのでありまして、本来日本は、アメリカやソ連や各国が、経済水域二百海里に関連をして漁業専管水域二百海里をとることの先行については厳しく批判をしてきた立場にございます。しかし、諸般の情勢上これに対応せざるを得ないということで、今日提案をされようとしておることは、これは客観情勢上やむを得ないと思うわけでありますが、やはり本舞台であります第三次国連海洋法会議を通じて新たな海洋法体制をつくるということが、国際的には基本でなければならないというふうに思います。  そういう点で、わが国昭和四十九年のカラカス会議においては、経済水域二百海里については反対であるということを、当時の小木曽代表が本会議の席上で代表として意見を述べ、各国からはエクセプトジャパンというふうに言われるような主張をなしてきて今日に至っておるわけでありますが、農林大臣としてこの第六会期に臨む基本的な認識、基本的な考え方というものをどういうふうに持っておられるか。これは、日ソ漁業交渉や二法案の議論で寧日ない状態でありましてそこまで手が及ばないということではなかろうと思うのでございまして、この際、国際会議に臨む基本的な構えというものについて方針を明らかにしてもらいたい。  同時に、わが党としては、いわゆるわが国の国是とも言うべき非核三原則の堅持ということを強く主張し、これは同時に、わが党のみならず、全党あるいは国民の共通的な願いでもあるというふうに思うわけでありますが、こいねがわくは、鈴木農林大臣はあらゆる機会にわが国の立場というものを鮮明にしていくということを言われたわけでありますが、これは今後合意がされるであろう国際海峡等も含む問題にかかわる重要な問題でありまして、これからのこういった第三次国連海洋法会議の舞台においてもわが国のそういった主張を明らかにするということが必要である。最終段階においてこれが採択に付せられる場合においても、非核三原則の問題についてはわが国はその権利を留保するといったような態度を鮮明にすべきではないかというふうにも考えるわけでありまして、これらの問題も含めて農林大臣のお考えを承りたいと思います。
  97. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国連海洋法会議、今後のこれに対応するわが国の基本的な方針、姿勢というものにつきまして御所見が述べられたわけでございますが、これは全く私も同感でございます。同じような意見を持っておるわけでございます。  各国によりましては、二百海里時代とこう言っておるわけでございますけれども、三百海里、四百海里というような漁業専管水域あるいは経済水域を設定しておるところもある、しようとしておるところもある。せっかく単一草案というものが委員長のもとにつくられまして、これをベースとして討議を今後も続けよう、こういうことでございますから、わが国もこれに対して熱意を持って、世界的なコンセンサスができるように、その方向に向かって努力をしなければいけない。アメリカ、カナダ、ソ連、EC等々がそれを先取りして二百海里の漁業専管水域を設定した、そのことによって海洋法会議が空洞化されるようなことがあってはいけない、私はそのように存じております。  また、ああいう場におきまして、これは海洋法会議だけではございませんが、国際的な会議の場におきましては、わが国の核の絶滅というような問題について、これは声を大きくして世界全体に訴えていくということが必要であろう、これが今後の日本外交の一つの大きな基本でなければならない、こういうぐあいに考えておるところでございます。
  98. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 第三番目の問題は、新しい海洋法体制に進むような状況の中で、日米交渉を見てもあるいは日ソの当面する漁業交渉を見ても、あるいは経済水域二百海里に関連をして、当面は切り抜けられるにしても、今後、韓国あるいは中国が経済水域に取り組んでくるというふうなことがあるとすれば、そういう事態における相手国の経済水域で一体漁獲はどうなるだろうかというふうなことを考えてみても、漁業に従事する、沿岸、沖合い、遠洋漁業も含めて、わが国漁業者は、日本の水産業の将来いかんということについては非常に不安と心配を持っておるというふうに率直に思うのであります。  農林大臣国会きっての水産通ということで、今日までも豊富な経綸と経験を持っておられるわけでありますけれども、こういう状況の中で、これから短期的にも長期的にもわが国の水産業の将来をどうするかということについて、やはり明確な考え方を樹立していくということが必要だろうというふうに私は思うのであります。  もちろん、当面の問題としては、新しい海洋法体制下における相手国の漁業専管水域内において漁業実績を確保するための強力な漁業外交の展開ということは当然重要な問題でありますけれども、同時に、わが国のこれから成立をし実施をされていく領海十二海里あるいは経済水域二百海里、当面は二百海里漁業水域というふうな中における積極的な漁場開発、またこの漁場開発についても、科学的な調査研究というふうなことも並行しながら、予算についても思い切った予算を投入して、計画的に漁場の整備、開発というものを進めるということが当然必要でありますし、同時に、一千万トンを超える漁獲高の相当部分が相手国の関係で早晩大きく削減をされる可能性を持っておる。だとするならば、わが国国民食糧、動物性たん白資源を安定的に確保するという立場からも、これから積極的な新漁場の開発もやっていかなければならぬ。また、注目をされております南極オキアミの開発についても、政府みずからこれに手をかして、積極的にこういうものに対する取り組みというものもやっていく必要があるだろうというふうに思うわけでありまして、長期展望に立ってわが国水産業の今後をどうするかということに対する方策を示すことが、今日まで水産日本としてわが国漁業振興に従事してきた関係者の期待にこたえるゆえんである。その点については、水産関係に豊富な経験と卓越した見識を持っておられる鈴木農林大臣の在任中に、そういう方面についての具体的な考え方を取りまとめるということに努力すべきじゃないか。当面のことに追われておるということだけではなしに、将来の展望に立ったそういうものに対する道筋を明らかにしていく必要があるというふうにも思うわけでありますが、そういった問題について農林大臣の所信を承りたいと思います。
  99. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 海洋新秩序時代に対応するわが国漁業政策を見直していく、そして、この新しい時代に対応する漁業政策というものを確立する必要があるという御指摘には全く同感であり、そのとおりでございます。私は、当面漁業外交を強力に展開いたしまして、それぞれ関係のあります、実績を持っておる国々との間の友好の基礎の上に立って、わが国の漁獲実績をできるだけ確保するということをいたしますと同時に、新しい漁場の開発、また新しい漁業資源の有効利用という面につきましても、民間だけに任せておくのでなしに、政府並びに政府関係機関の総力を挙げて取り組んでいかなければならない、このように考えております。  と同時に、日本列島周辺の漁場は、やり方によって将来十分資源をふやし、また沿岸並びに沖合い漁業を振興できるという期待と展望を持っておるわけでございます。専門家の研究によりますと、日本列島周辺には、二百メーターよりも浅い部分、資源的に見て水産資源の一番増殖の可能な海域が三千万ヘクタールある。現在増養殖並びに栽培漁業等に利用されておりますものは、わずかに百五万ヘクタールあるいは百十万ヘクタールという程度でございます。これを今後三分の一のせめて一千万ヘクタールを開発、利用するということになれば、この海域だけで一千万トンの漁獲増が期待できるとさえ言われておるわけでございます。したがいまして、五十一年度から出発をいたしました二千億、七カ年計画の年次を繰り上げて、もっともっと沿岸漁場の開発、整備と資源の増強、さらに栽培漁業等の振興を図って、そして日本列島周辺で水産物の確保を図っていくという政策を強力に進めなければならない、このように考えております。  また、南氷洋のオキアミの問題も出たわけでございますが、それもいま政府の外郭機関によってやらしておりますし、民間の研究につきましても、それをバックアップするような対策も講じております。  と同時に、日本の近海でとれますところのイワシとかサバとか、そういうような多獲性の魚族を最高度に利用して、そしてミールだとか肥料に落とすのでなしに、大部分を食ぜんに供するような保蔵、加工の問題、流通の問題等を十分再吟味して、これが成果をおさめるように進めていく必要がある、このように考えております。  角屋さん御指摘のように、この新しい海洋時代に対応するところの日本漁業政策を再吟味し、これを強化し、急速にこれを実施してまいるという方向でひとつ取り組んでいきたい、このように考えております。
  100. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいまの大臣答弁とも関連して、私が特にこの際触れておきたいと思いますのは、当面の厳しい漁業情勢の中で漁業従事者の雇用安定をどう考えるかという問題であります。  私は、たまたま三月十五日に、日本漁業を守る会主催の当面の漁業政策に関する討論集会というのに党代表で出て、いろいろ討論したのでありますが、テーマは、漁業外交、漁業生産構造、雇用対策三つに分かれておったわけでありますけれども、特に議論の集中したのは、わが国漁業労働者、関連産業労働者の雇用の問題について、今後どういうふうにさばいていくかということに非常に重大な関心が寄せられたわけであります。  顧みますと、わが国漁業労働者の雇用の法体系というものは、残念ながら陸上に比してきわめておくれておるという現状にある。そういう状態の中で今日厳しい雇用問題が出てきておる。今後の国際漁業の進展いかんによっては、かつて炭鉱の場合あるいは駐留軍関係離職者の場合に講じたような、いわゆる臨時の立法もしなければならぬということも出るでありましょうし、またその点では、漁業再建整備特別措置法に基づく手当てだけでは必ずしも十分にいかないというふうに予測するわけでありまして、現行の法体系についても、今日の情勢に合わして改善すべきものはやはり積極的に改善をして、今後の漁業労働者の雇用安定に貢献をするような施策を積極的に進めるという姿勢が問われておるというふうに思うわけでありまして、これらの問題についても政府の考え方を聞いておきたいと思います。
  101. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、いま御指摘のように新しい海洋分割時代、二百海里時代ということになりますと、どうしても海外におけるわが国漁業活動というものが大きな制約を受ける、それに伴って漁業に従事しておりますところの方々の雇用問題というものが大きな問題として出てくるわけでございます。今度の日ソ漁業交渉の結果というものはそれに非常に大きなウエートを持つことになるわけでありますが、私は基本的に、漁業に従事し漁船に乗って生活をしてきた諸君がおかに上がっても、本当に持っておる技術なり資質を十分に伸ばしていくということはなかなか困難だ、こう思います。そこで、できるだけ今後沿岸並びに沖合い漁業の振興によってそういう分野に、具体的には増養殖、栽培漁業、そういう方面にそれらの海で働いてまいりましたところの人々が仕事ができるように、そういう方向に誘導してまいりたい、このようにも考えております。  なおまた、この雇用対策の問題につきまして、大型漁船に乗り組んでおる諸君の処遇につきましてはわりあいに法制的にも制度的にも確立しておるわけでございますけれども、五トン、十トンというような零細な漁船に乗り、沿岸漁業に従事しておる漁業労働者の諸君の処遇の問題、職を離れた場合のそれに対する措置というものはこれは不十分である、このように私も存じておるわけでございます。そういうような観点からそういう人たちの雇用の問題、処遇の問題ということにつきましても全体として制度的にもこれを検討を進める必要がある、早急にその対策を確立する必要がある、こう考えております。  なおまた、私は常に考えておるわけでございますが、一般貨客船に乗っておりますところの船員の諸君と漁業に従事しておる諸君との処遇問題、雇用問題あるいは保険の問題等がどうも一つでいいのかどうかという疑問を実は持っておるのでございます。漁業の場合におきましては固定給のほかに歩合制度というものもあるわけでございます。そういうようなことで、この漁業の実態に即したところの漁船員の船員法というようなもの、そういうものについても検討をしてみる必要があるのではないか、こういう考えも持っておるわけでございます。  なお、今回の日ソ漁業交渉の結果、日本の漁獲実績がどこまで認められるかという問題が大きな問題でございます。日米漁業交渉では一一%程度の削減にとどまったということでございますが、これとても来年以降なかなか厳しいものがあろうかと思います。その際に減船等がもし余儀なくされるということになりますと、当面のこの雇用問題というものが大きな社会問題であり、政治問題になるわけでございます。炭鉱離職者の問題等につきましてもお触れになりましたが、あの当時は雇用対策法というものがなかった、また漁業再建整備法というようなものもなかった、そういう時代でございまして、炭鉱離職者に対する特別なあれは立法をやったわけでございますが、一応雇用対策法なり漁業再建整備法というようなものがございますから、これによって対応できるかどうか、なおそれを超えた大きな問題になってくるのかどうか、この結果を見た上で政府としても考えなければならない問題だ、このように存じております。
  102. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので、領海法案についてお尋ねをいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、わが国領海三海里というのは明治三年の太政官布告に由来をしておるということでございますが、今回大変おくればせながら領海十二海里にするという法案を提案することに相なったわけでございます。なぜおくればせながらということを申し上げるかと申し上げますれば、結局領海十二海里の問題については特に最近数年来この早期実現国会でも強く要請をされてまいっておりまして、参議院の農林水産委員会では五十年の七月三日に領海十二海里の早期宣言に関する決議が全会一致で行われるということがございましたし、衆議院農林水産委員会でも政府の対応にしびれを切らしまして五十一年の十月二十六日、私が趣旨説明をやって、全会一致で早期にこれを実現すべきであるということを決議してきた経緯がございます。今日になってみますと、数年前にこの領海問題について片づけておけば、日ソ漁業交渉の中でイシコフ漁業相から領海十二海里内の漁業実績を要請される、あるいは入漁を要請されるということは解決済みということに相なっておったであろうというふうにも思うわけでありまして、そういう点については、やはり歴代農林大臣の責任ということにも相なりましょうけれども、結局今日の時点になって鈴木農林大臣が断を下す。この法案そのものについては議論はございますけれども、そういうことについてはやはり政府の対応が遅きに失したということを私は率直に指摘せざるを得ないわけでありますが、その点いかがでございますか。
  103. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 もう数年前から衆議院並びに参議院の農林水産委員会等におきまして、時代の流れを敏感にとらえられてそういう御意見が強く出ておったということは私承知をいたしております。それに政府の方が十分おこたえすることができなかった、また対応がおくれたということにつきましては、私も率直にそれを認めるところでございます。
  104. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局この領海法を早期に提案をし、成立をさせるということのおくれた理由の中には、特に第三次国連海洋法会議が始まりましてから、恐らく政府としては領海経済水域国際海峡、この三つをワンパッケージとして一括処理をしたい。国連海洋法会議の合意が得られる前に先行して領海にしろ、経済水域にしろ、これを先取りするということは避けたい、これは善意に解釈する場合にはそういう考え方も底辺にあったろうと思います。しかし同時に、領海そのものについてやはりちゅうちょしたゆえんのものは、言うと言わないとにかかわらず、国際海峡と非核三原則とのかかわり合いをどう処理するかということであったことは間違いはないのであります。表向き答弁するにしろ、答弁しないにしろ、この問題がなければ恐らく数年前に領海法だけは先に片づいておったと思うのでありまして、これがおくれてきた事由の中には、わが国の国是とも言うべき非核三原則とのかかわり合いについて政府自身が非常に苦慮した。この問題に対する解答がなかなかつけがたい。これは単に政府・与党ばかりでなしに、率直に言って与野党を通じて国際海峡と非核三原則とのかかわり合いをどう答案を出すかということについては、なかなかの難問であるというふうに私自身も思うのであります。  それは、現に数年前に全漁連の及川会長からの各党に対する質問状に対して、成田委員長、サブタイトルで水産政策委員長の私を含めて党の見解を全漁連に文書で申し上げました際にも、この答弁の中で、非核三原則に基づく暫定措置を講じ、領海十二海里の早期宣言を行う、こういうポイントについての考え方を述べたわけでありますが、そういうことにやはり触れざるを得ないほどこの問題は非常に難問題であります。  本年の二月四日に「わが国漁業をめぐる領海十二海里、経済水域二百海里設定に関する党のこれまでの取り組みと今後の対策について」という党見解を私が国際局長や外交部会長と取りまとめた際にも議論が多く存在したのは、国際海峡と非核三原則とのかかわり合いについてどうするかということであったわけです。これは単に政府・与党だけの問題でなしに、与野党を通じて答案をどう出すのかということが求められておった。政府自身について言えば、そのことのゆえにこの問題がなかなか出し得なかったということが背景としてあるだろうと思います。われわれとしては、この両問題の裁き方として、やはり非核三原則というのはわが国の国是としてあくまでも守らなければならない。同時に、明治以来今日まで続いてきた領海三海里によって、いわゆる公海部分、それがいわゆる国際海峡として使われてきたという従来の実績、そしてまた、いずれ決定されるであろう国際海峡、それまでにつなぐ過程において、いわゆる現行国際法領海及び接続水域に関する条約で言っておる無害通航権に基づくいわゆる国際海峡の通過はそのままの形でいいのかどうかということについても真剣な議論をいたしました。その結果、二月四日に取りまとめた中では、核積載艦の通過通航はこれを認められない、しかし、一般商船等の通過通航権はこれを認めるという党見解を出したわけでございます。これはやはり現状があり、そして将来国際海峡が明定される、その間をつなぐものとしていわば第三次国連海洋法会議で今日議論され、大勢を占めておる国際海峡における通過通航権というものについては、核積載船以外については日本は先取りしてこれを認めるということを考え方としてとるべきではないかということを党見解として出したわけであります。  その場合にお伺いをしたいのは、今日いわゆる国際海峡というのは国際法上どういう法的根拠に立っておるのであるか、この点は外務省の方からで結構でありますが、それをお答え願いたい。
  105. 井口武夫

    井口説明員 お答えを申し上げます。  いわゆる国際海峡ということが議論をされておりますけれども国際海峡というものが非常に取り上げられましたのは、まさにこの第三次国連海洋法会議でございまして、これはやはり領海の幅員を十二海里にするということとのパッケージの関係で自由な通過通航を認めるという考えから、国際海峡というものの定義を煮詰めていこうということが背景にあったわけでございまして、実は先生の言われる以前の問題といたしましては、ダーダネルス、ボスポラス海峡とか、あるいはマゼラン海峡とか、あるいはデンマークの周辺に海峡がございますが、こういう特定海峡につきまして、海峡沿岸国と海峡利用国とが特殊な地域的な条約を結んだ例はありますが、国際海峡そのものを国際法的に一般的に定めて、この通航制度を決めたという形の一般条約はございませんで、この五八年の領海条約でも国際海峡ということで規定されているわけではございません。その背景といたしましては、領海三海里が過去において確立された国際法規範でございましたから、そういたしますと、大部分の国際交通の要衝の海峡では、いわゆる国際海峡に該当するものになると思いますけれども、そういうところでは、幅広い公海の帯がありまして、そこで何ら妨げられることなく公海の自由というものが存在していたわけでございまして、それが領海十二海里という形になります結果、世界で非常に多くの国際航行に使用される水路が領海で閉ざされるということになりますので、いままで公海の自由というのがあって、公海公海を結ぶ水路においては、自由に通れたわけでございますから、これをどうやって確保するかということで、通過通航の制度が固まりつつあるわけでございます。  それで、先生の御指摘のありました船のタイプの問題に関しましては、これは海洋法会議でも、あらゆる船舶は、速やかなる妨げられざる通過通航の権利を有するという形で現在交渉が妥結する方向に動いておるわけでございますが、なお、通過通航制度の具体的内容につきまして、これはまだ交渉の過程で、形成過程の問題もございまして、さらに詰められているということで、まだ具体的に確立された内容というところまで固まっていないのが現状でございます。  なお、わが国といたしましては、やはり先ほどから申し上げておりますように、タンカーであるとか遠洋漁船とかいろいろなタイプの船が世界じゅうを航行しておりますし、特定の船種別の規制をするというような形の態度というものが、わが国の総合的な国益の立場からしてなかなかとることは困難であるということでございます。
  106. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 答弁者にお願いしておきたいのですけれども、あらかじめ質問の点についてはお知らせをしておいて、まだ相当残っているわけでございますが、なるべく質問が全部終わらぬようにということで丁寧に答弁されるということではなかろうと思いますけれども、簡潔にひとつお答え願いたいと思います。  いま外務省の方からお答えになった長々とした答弁では必ずしも明確でないのですが、強いていわゆる国際海峡というものを法的に求めるとすれば、恐らく領海及び接続水域に関する条約の第十六条第四項、ここに「外国船舶の無害通航は、公海の一部分公海の他の部分又は外国領海との間における国際航行に使用される海峡においては、停止してはならない。」とあります。これは無害通航でありますが、ここが恐らく国際条約上は唯一の国際海峡の法的根拠であるというふうに私は思っておるのでありまして、国際海峡国際海峡と盛んに言って、それはちゃんと考えていかなければならないとか、あるいはマラッカ海峡について、その他についてとこういろいろ言われますけれども国際法上オーソライズされた条約的なものの根拠は何かということになれば、恐らく領海及び接続水域条約第十六条第四項、いま読みましたところに法的根拠があるというふうに思うのであります。それを今度の第三次国連海洋法会議の中では新たに国際海峡というものを条約上明らかにしよう、こういう動きが進んでおりまして、今度政府五つ特定海域についてこの変則的な三海里をとろうとするのも、そういったやはり国連海洋法会議の動向に合わしてこれ自身がわが国の国益にかなうゆえんであるというふうに総理も鈴木農林大臣もそれぞれの機会に答弁をされておるわけでありますけれども、国際的に言えば、わが国領海十二海里の拡大に伴っていわゆる一律にそれを適用し、無害通航権というものに基づいて第十六条第四項を保障すれば、それで国際的な非難を現状において受けるゆえんはないというふうに逆に申すことも可能であります。しかし、先ほど私が党見解をまとめる過程について述べたときにも申し上げましたように、やはり将来の国際海峡というものの経過的な道筋としてもっと一歩前進すべきではないかということで党の見解をまとめたわけでありますけれども、この五つ海峡問題について、今井さんからの御質問の中でも出ましたが、この国際海峡というものがいずれかの機会に明定された場合、いまあらかじめ予見をして特定海域五つ設けておりますけれども、私は恐らくこれよりは少しくふえるというふうに見ざるを得ない。  そこで、外務省でも結構でありますがお伺いをしたいのでありますけれども、これはまだ未確定要素でオーソライズされておりませんけれども、いま単一草案の改定版で言われているような方向で国際海峡がまとまります場合は、国際海峡がそれぞれの沿岸国でどう決まってくるだろうかというのは、国連のしかるべき機関がそれに対する指示権的なものを持ち得るのか、あるいは沿岸国の自主的判断で、先ほど選考基準とか選定基準とか言ったけれども、七十近いところでこことこことここというふうにこういうものが決められると見るのか、あるいは条約ができればそのままそれを適用すると幾つになるか決まってくるというふうに解釈すべきなのか。また沿岸国のナショナリズムによって本来国際海峡になるべきところが、そういうことを沿岸国が準備しないという場合においてはその紛争処理というものは国際司法裁判所がやるという形になるのか、あるいは別途の機関になると予測しておられるのか、これらの問題についてお答えを願いたいと思います。
  107. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  この海洋法会議国際海峡に関する草案はまだ最終的に煮詰まる前でございまして、先生の御指摘の点に関しましてもさらに煮詰めるという過程にございますが、国際海峡の定義そのものも通過制度との関連でまだ最終的に確定していないわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、恐らく五海峡というものは、仮に草案がいまのままで固まりましたらば恐らく該当することになるだろうと思われますが、そもそも国際海峡というのが新しい制度でございますから、今回の特定海域というのは、これも先ほど申し上げましたとおり、改定単一草案で今後でき上がる基準というものとは別に、わが国の総合的な国益の観点から、しかも先ほど申し上げましたような基準から選定いたしたわけでございます。  なお、海洋法会議で今後草案が固まった場合に国際海峡というようなものがほかにあり得るかということにつきましては、まだやはり確定的なことは申し上げられませんし、あるいはあるということになるかもしれませんけれども、それがどういうものであるかということは、これも草案の最終的なでき上がりぐあいによると思います。  それから先生御指摘海峡を定める手続に関しましては、単一草案で具体的な形では書いてありません。これは海洋法条約自身が非常に広範ないろいろな問題を原則的に規定したというわけでございますが、やはりこれは沿岸国、利用国双方の観点というものが反映される問題であろうと思いますし、意見が違った場合に国際的に紛争を解決する手続というのも、海洋法条約四つのテキストのうちの一つで現在交渉中なわけでございます。  なお、国際機関が確かに今後一つの役割りを果たすということは予定されておりまして、たとえば安全航路帯あるいは航行分離帯というようなものをつくる場合に、国際機関にアプローチするという趣旨の規定が現在改定単一草案に入っていることも事実でございます。
  108. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 残念ながら大体時間も参ったようでありますので、なお深めたいというふうに考えておりました点については同僚議員からさらに質疑が続くわけでありますので、それに譲りたいというふうに思います。  最後に、後ほど出されてまいります二百海里漁業水域法案の問題について、一点だけお伺いをしておきたいと思うのです。  政府の考えでは、鈴木農林大臣がしばしば答弁の中でも申されておられますように、ソ連関係というか、北洋関係の方に対しては線引きが行われ、いわゆる韓国あるいは北朝鮮、中国という関係部分については適用除外的な措置の二段構えでこれまたいこう、こういう考えのようであります。私は、今日、漁業専管水域二百海里をとるとすれば、現状の国際的な関係においてはそれもやむを得ないだろうというふうに率直に思います。二月四日にこの二百海里の漁業経済水域に対する対応をどうするかについては、われわれ自身も情勢の判断の甘さがあったというふうに思うのは、その中でいわゆる日ソ、日米あるいは日中、日韓、こういうものの関係国との漁業交渉あるいは国連海洋法会議の動向を見て慎重に対応するという答えを出しておったのでありますけれども、その前にやはり対応せざるを得ないというところに私自身がまとめる段階でも経済水域の対応については率直に甘さがあったというふうに思います。しかし、甘さがあったというよりも、現実に動いておる日韓の漁業協定あるいは日中の漁業協定というものはやはり有効に働いてもらわなければならぬ。それを考える場合には、対北洋だけをにらんで経済水域の線を引くというわけにはまいらないというわが国自身の漁業の持っておる制約があるということもあったわけであります。しかも、こいねがわくは国連海洋法会議の合意を得てやりたいという気持ちも基本にあったわけでありまして、それはともかくとして、これを実施する場合に、あらかじめ関係国、特に西側の部分である韓国あるいは中国等、これはどういう接触で感触を得ておるのか、あるいは今後相手国がどういう対応をしてくるだろうと判断をしておるのか。これらの問題についてお伺いして、私の質問を終わらしていただきたいというふうに思います。
  109. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基本的には、この二百海里漁業水域法の適用の問題は、相互主義でやってまいりたい。そこで、ただいま韓国とは外交チャンネルと同時に、人も派遣をいたしましていろいろ話し合いを進めております。中国に対しましては、外交チャンネルを通じてこれまた向こうの意向を十分打診をしておる、わが方の考え方も伝えてございます。私は、韓国並びに中国がわが方の考え方を理解をしていただくことが一番望ましいことだ、こう考えておりますが、いずれにしても、相互主義で乙の二百海里の適用水域というものは決めてまいりたい。できるだけ現在の日中漁業協定、日韓漁業協定、これが有効に、しかも円滑に何らのトラブルなしに行われておるという現在の漁業秩序、これを大事にしていきたいという気持ちを持って対応してまいりたいと考えております。
  110. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に、先ほど来申しておりますように、当面する日ソ漁業交渉あるいは国際的ないろいろな問題に対する対応、これに今後成果を生み出されるよう期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  111. 金子岩三

    金子委員長 小川国彦君。
  112. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は今回の領海法案関連をいたしまして、領土問題に対する自民党政府のこれまでの取り組み、そういうものが今日事ここに至った経過としてはその責任がきわめて大きい、こういうふうに考えるわけであります。特に竹島の問題、南千島の問題を見ましても、日本政府のこれらに対する対応というものはきわめて不明確で、こうした点をあいまいにして今日まで進んできた。特に南千島の問題につきましては、自民党政府がこれまで北方領土問題を活発に主張し、交渉し、事あるごとにこれをやってきた、そういう経過は寡聞にして聞かないわけであります。  日ソ領土問題の交渉は古くは第一次のロンドン交渉、一九五五年六月から九月、松本・マリク会談、第二次のロンドン交渉、一九五六年一月から三月、同じく松本・マリク交渉、それから第一次モスクワ交渉が一九五六年七月、重光外相と松本全権、それから第二次モスクワ交渉は一九五六年十月、鳩山総理、河野農相、松本全権、それからソ連側がブルガーニン、フルシチョフ、このときにおいて河野農林大臣がイシコフ漁業大臣に対して、歯舞、色丹は即時返還し、米国が沖繩、小笠原を返還するときに国後、択捉を返還する提案がなされた、こういうような提案がなされたような経過もございます。あるいはまた、一九五五年十月、米国政府はクリール諸島の範囲に関する日本政府の質問に対する回答の中で「米国は、日本が国後・択捉は千島列島の一部でないという理由で、これを日本に返還するよう、ソ連を説くことに反対せず、また、その返還についてソ連と協定に達することも反対しない」こういうアメリカの回答が寄せられております。  それからまた、新安保条約の締結に関連しまして、ソ連政府は一九六〇年一月二十七日付の対日覚書で、日本領土からの全外国軍隊の撤退を歯舞、色丹の日本への引き渡しの条件として追加してきた。これに対し日本政府は、同年二月六日付の対ソ覚書で、共同宣言の内容の一方的変更は承認できないと抗議した。  それから、一九六七年七月二十二日、コスイギン首相はモスクワで三木外相に対し、これは自分の思いつきであるが、平和条約の問題にどうアプローチしたらよいか、中間的なものをつくる可能性を両国外交機関で検討してみてはどうかと提案した、こういう経過があります。  それからさらに一九七三年十月十日、田中総理の訪ソに際しての日ソ共同声明で、一九七四年の適当な時期に両国間で平和条約の締結交渉を継続することに合意したと発表された。  こういったような経過があるわけでございますが、こうした何回かの節目のようなときが日ソ間の外交の折衝の中でありながら、日本政府、自民党政府が一貫してこの間政権を担当してきたわけですが、この間において日ソの北方四島の問題についてこれを明確にする努力というものが果たして日本政府でなされてきたのだろうか、そういう点については私どもはきわめて疑問に思うわけです。そういう日本政府のきわめてあいまいな態度、もっと端的に言えば横着な態度、こういうことが、ソ連が南千島にかん詰め工場のようなものをつくって日本の報道関係者にこれを見せるとか、あるいはまた竹島の問題にしましても、竹島に韓国の兵隊が派遣されて空に向かって銃を構えている、そういうようなものまで報道されておりながら外務省の当局というのはこうした問題に対して一体きちんとした外交交渉をやっているのだろうか、こういうことを私どもは率直に疑問に感ずるわけなんであります。一方ではシベリア開発の問題あるいはまた魚の問題が起こってきているわけですが、そういう際において魚の問題とかシベリア開発の問題だけ思い立ったように日ソ間の外交交渉を展開するのではなくて、こうした領土の問題を基本的に詰めていく、そういう粘り強い日本の外交の姿勢というものは残念ながらなかったんじゃないか、こういうふうに私どもは理解をしているわけなんですが、果たしていま私が申し上げたこの節目節目のとき、あるいは今日まで一貫した自民党内閣のもとで日ソの領土問題というものを精力的に詰めてきた経過はあるのかどうか、この辺を外務当局とそれから農相、それぞれからひとつ見解を承りたいと思います。
  113. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  北方四島の返還を実現して平和条約を結ぶということがわが国民の念願であると同時に、これによって日ソ関係が、善隣友好関係が初めて安定的な基礎に置かれるという認識は、私どもも強く持っている次第でございます。過去三十年近くにわたる日ソ関係におきまして、終始一貫この点を目標といたしまして私ども努力を重ねてきたと信じております。  今後の方針につきましては、できるだけ早い時期に、適当な機会を見て鳩山外相がモスクワを訪れ、平和条約交渉の継続を図るということは、すでにたびたび国会でも大臣から説明されたとおりでございます。
  114. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 対ソ交渉北方領土の問題についての経過を具体的に小川さんからずっとお話があり、加藤参事官から外務省の基本的な考え方、取り組み方というものをお話があったわけでございます。  私は農林大臣として、今度の交渉の責任者として切実にはだで感じておりますことは、何といっても日ソ友好関係の将来に向かっての発展というものは、この北方四島の問題を解決せずしては真の友好関係の樹立はできない、また漁業問題にいたしましても常に背後にはそういう問題が存在をするということで、本当にはだでそれを感じておるわけでございます。私も国務大臣の一人といたしまして、今後そういう日ソ友好関係の発展のためには、ぜひこの戦後三十年の懸案事項を両国が大局的な立場に立って解決をすべきであるという観点に立って、私も努力をしてまいりたい、こう思っております。
  115. 小川国彦

    ○小川(国)委員 重光外務大臣以降、自民党の外務大臣というのは大変な数に上っておりまして、高碕外相、石橋湛山、岸信介、石井光次郎、藤山愛一郎、小坂善太郎、池田勇人、川島正次郎、これは代理ですね、大平正芳、宮津壷三、椎名悦三郎、佐藤榮作、田中角榮、これは代理ですね。三木武夫、田中伊三次、愛知揆一、大平正芳、宮澤喜一、福田赳夫――福田総理もやっていますね。それから三木武夫、田中角榮、中曾根康弘、二階堂進、木村俊夫、宮澤喜一、三木武夫、小坂善太郎、鳩山威一郎、亡くなられた方もおりますし、それからずっと現職で活躍していらっしゃる自民党の歴代外務大臣もいらっしゃって、重光さんから数えますと、昭和二十九年以降でございますから、大変な年月がたっているのです。第一次ロンドン交渉というのは重光さんのときに始まって、その次に河野さんが引き継いだ形でやっているわけですが、その間外務大臣訪ソをされてこうした日ソの領土問題について取り組んだ、こういう経過はおありになるのでございましょうか。
  116. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  私も手元に詳しい記録は全部持っておりませんけれども、外務大臣訪ソをされて検討されたという事例はあると思います。さらに近くは昨年の九月、当時の小坂外務大臣がニューヨークにおきましてこの問題をグロムイコと相談されております。詳しい記録は別途調査の結果お養え申し上げますけれども、機会があるごとに外務大臣訪ソしたり、あるいは昨年の一月のごとく、グロムイコ外務大臣を本邦に迎えてこの問題を話す、その他国連の場等を利用いたしましてあらゆる機会をとらえてこの問題に取り組んでおります。
  117. 小川国彦

    ○小川(国)委員 外務省の方大ぜいおいでになるのですが、記憶で結構でございますから、外務大臣訪ソされた方、どういう方を記憶されているか、恐らく皆さんの記憶にないほどそういう具体的な領土問題に対する日ソ交渉というものはないがしろにされてきたのではないか、こういうふうに思うわけなんです。いま何か小坂外相がニューヨークでという話がありましたが、モスクワでというのなら話もわかるのです。日ソ交渉というのは東京モスクワでやるのが当然だと思うのですけれども、外相が訪ソされるなりあるいは東京でなり、それぞれ外相間において領土問題について話し合った、日ソの領土問題、北方四島について話し合った、皆さんの方でこういう記録、記録がなかったら記憶でも結構ですから御答弁願いたい。
  118. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま手元にあります記録では、まず一九六六年一月、当時の椎名外務大臣訪ソをされ、グロムイコ外相とこの問題について話し合っております。  次いで一九六六年の七月、グロムイコ外相が日本に参りましてこの問題を議論しております。  一九六七年の七月に三木外務大臣訪ソいたしまして、コスイギン首相及びグロムイコ外相と話し合いをしております。  一九六九年の九月に、愛知外務大臣訪ソをしております。  一九七二年の一月、グロムイコ外務大臣が訪日して平和条約の問題を話し合っております。  一九七二年の十月でございますが、大平外務大臣訪ソして話し合いをしております。  一九七五年の一月に宮澤外務大臣が同じく訪ソをしております。  それから先ほど申しましたとおり、昨年の一月にグロムイコ外務大臣が訪日いたしましてこの問題を話し合っております。  その後は、これも先ほど申し上げましたとおり、昨年の九月、ニューヨークにおきまして、小坂大臣とグロムイコ大臣の会談が設けられております。  以上でございます。
  119. 小川国彦

    ○小川(国)委員 二年に一遍くらいは思い出したようにやっておられる。ひどいのは三年に一遍くらいやっておられる。領土問題というのは、一国と一国の何百年かあるいは何千年かの歴史を支配する土地でありますから、やはり政府自体がもっと真剣に閣僚クラスの間で行ったり来たり話し合われるというようなことがなければならないし、それからいまお会いになったことはわかったのですが、そういう中でどういう主張をされてきたか、その点についてはいかがでございましょうか。
  120. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりましたとおり、北方四島は日本国有の領土である。したがって、これを一刻も早く日本に返還して、それによって平和条約を結び、日ソ関係を安定的な基礎の上に置く、こういう目標のもとに話し合いを進めてきた次第でございます。  言うまでもなく歯舞群島、色丹島、これは北海道の一部でございます。国後島、択捉島はこれもまた日本の固有の領土でございまして、サンフランシスコ条約に言う千島列島に 含まれない。したがって当然この四島については一括返還を実現する、これが日本ソ連との関係を友好かつ安定的な基礎に置くゆえんであるという趣旨の話を続けてまいった次第でございます。
  121. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いまの御答弁の中にありましたように、四島一括返還、こういう目標のもとにやってきたということはわかるのですが、私ども寡聞にして、これまでの自民党内閣の取り組みの中で、ときどき町の中で北方領土の返還という看板は見ますけれども政府がこれを日本の子々孫々に至るまでの重要な問題だというふうにとらえて領土問題と取り組んできたというのは、残念ながらいままでの外相間の政府挙げての折衝の中でそういうことがあったということは、今日こういう問題が起こってきて初めてそういう領土問題が大きくクローズアップされている。その段階に及んでも、外務大臣がしりを持ち上げてソ連へ行って領土問題を交渉しようという考えもまだない。切り離していくという政府の考え方はわかりますが、相手方のソ連があくまでもこれを絡めて考えているとするならば、鈴木農相と一緒に鳩山外相も訪ソをして、同時にこの問題の話し合いを始める。別個なら別個の人がちゃんと行って話し合いを始めるくらいの用意なりがあってしかるべきじゃないか。これは外務省を預かっている皆さんの事務当局もそのぐらいの考え方を持ってしかるべきだと思うのですが、きょうは欧亜局の参事官と官房の外務参事官とお二人見えていられるので、皆さんは外相の訪ソの問題についてはどういうふうに考えておられるかお伺いしたいと思います。
  122. 加藤吉弥

    加藤説明員 ただいま先生も御指摘になりましたように、漁業の問題と領土問題とはおのずから次元を異にする問題でございます。したがって、漁業問題だけのために外務大臣訪ソをするということは考えておりません。ただし、先ほど申し上げましたとおり、平和条約の問題、それから日ソ外相会議のためということで、鳩山大臣が今年中のできるだけ早い時期に適当な機会をとらえて訪ソする御意向をお持ちであることは重ねて申し上げたいと存じます。
  123. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは、自民党の中の有力閣僚で、副総理格とも言われる鈴木農林大臣にも、やはり自民党の重要な閣僚の一人として、ひとつ鳩山さんあなたも一緒に行って、領土問題は領土問題として外相ベースで話し合うべきじゃないかと、そういうようなことを、これは自民党内閣としても当然お考えになっておやりにならなければならない問題じゃないかと思うのですが、農林大臣は魚のことを一生懸命やってくださるのは非常に結構なことなのでございますけれども、そういう領土問題が絡まってきている状況の中で、平和条約というような問題はもちろんあるが、その平和条約の中の最も重要な問題はこの北方四島の問題にかかってきているわけですから、その点ではやはり閣内で、鳩山外相に対して訪ソすべきだというような議論はないのかどうか、それからその時期も、いま事務当局は年内、できるだけ早い時期、こういう表現で言っておられるのですが、これをもう少し具体化した形で、少なくともこの連休明けには鈴木農相も訪ソされる、そこには二百海里の問題も領海の問題もひっ提げていかれるのですが、待っている相手は、やはりこの北万四島の問題を抱えて待っているわけですから、その点では私は、外相訪ソというものも当然閣内で論議され、意思統一をされて、外相訪ソというものを早める、あるいはまた、同時に行う、このぐらいの考え方をひとつ農相自身も持たないと、ひとりでお荷物をしょって苦しんでいるんじゃなかろうかというのが私どもの推察するところでありますので、その点ひとつ鈴木農相、内閣の枢要閣僚としてどういうふうに考えておられるか、承りたいと思います。
  124. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、しばしば申し上げておりますように、ずっとこの北方四島の問題につきまして、民族的悲願の上に立って歴代内閣が努力をしてきた、しかし、この問題は、非常に壁の厚い、むずかしい問題があるわけでございますが、しかし、近くは一九七三年に、当時の田中首相がモスクワでブレジネフ書記長と会って、そして、戦後未解決の問題を解決して平和条約の締結の交渉をやる、早く平和条約を結ぼうではないか――その戦後未解決の問題というのは、日ソ間には北方四島の領土問題以外に未解決の問題はないわけでございまして、その点を私は非常に大事に考えておるわけでございます。それを踏まえて、外務大臣間で交互に相手国を訪問し合って、平和条約交渉の折衝をやっておる、こういうことでございます。  私は、小川さんに率直に申し上げたいのでありますけれども、この問題はむずかしい問題だけに、粘り強く交渉しなければならないし、時間がかかるのではないか、こう認識をしておるわけでございます。したがって、その問題が片づかなければ当面する漁業問題の解決ができないんだということになると、これはなかなか容易ならぬことになる。せめてブレジネフ・田中、当時の総理との合意事項、この問題は未解決の問題として今後平和条約の締結の大前提として処理さるべきものだと、こういうことをソ連側も十分踏まえて漁業交渉に臨んでもらいたい。わが方がこの漁業交渉と絡んで領土問題を特に有利にしよう、これを機会にやろうというようなことを言っているのではございません。戦後未解決の問題、これはブレジネフ・田中の合意によってやるんだと、こういう基礎の上に立って、その実態にふさわしい条件の上に立って漁業問題を交渉する、私は、これでいいと思うのです。ところが、それをもし、これはもう解決済みのものだというような前提の上に立って向こうが線引き等をやってくるということであれば、漁業交渉はにっちもさっちもいかぬと、ここに問題があるわけでございます。私は、この一九七三年の確認事項、この基礎の上に立って漁業交渉がなされれば、相互の立場を損ねないでまとめる方法があるのではないか、おのずからそこから問題の解決点が出てくるのではないか、このように考えております。このことは、閣内におきましても、総理初め外務大臣、他の閣僚にもよく話し合いをいたしておるところでございます。
  125. 小川国彦

    ○小川(国)委員 鈴木農相の考えていることもわかるんですが、物にはきっかけというものがあると思うのです。それで、いまおっしゃるように、一九七三年十月の田中総理との話し合いはもちろんございます。それを継続してやらなければならぬということはわかるんですが、もうそれから四年たっているわけです。当然外務省もこの領土問題については、いまこそ話し合うべきときが来たのではないか。そういうときに、鈴木農相の腹のうちを考えてはなんですけれども漁業問題を主にして交渉に行くんだからと、それだけで行きたいという気持ちはわかりますが、待っている相手は、どうしたってこれは領土問題を含めた問題で出てきているわけですから、その辺のところは外務大臣も来ておりますから外務大臣とひとつ交渉願いたい、外務大臣もそのことで乗り込んでまいりました、ということで、領土問題は外相の方に任せまして、そして漁業問題について農相が専念する、そういう区分け方をはっきりして行くべきじゃないのか。何か領土問題と漁業問題とひっ絡めて玉虫色というような形の交渉をこれからも継続しようなんという考え方で行ったら、農相はもう一回空身で帰ってくるんじゃないか。そういう結論で帰ってこざるを得ないんじゃないか。行くならば、福田内閣も、日本の国運を背負って行く、と言っては大げさかもしれませんが、それぐらいの重大な問題なんですから、これはやはり外相も含めて交渉に臨んで、そういう問題があればそれは外務省間ベースで交渉に入る、そのぐらいの英断がなかったら、この問題はもう一遍農相は空身で帰ってくることになりやしませんか。
  126. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題の取り扱いの問題は、先般の各党の党首会談でもいろいろ話し合いがなされたところでございます。しかし、各党の党首の皆さんは、領土問題を解決をして漁業問題を解決するということはいままでの経緯等から見てそれはなかなか問題がある、領土問題の解決というめどをつけようということには、まだ今後時間がかかるだろう、こういう認識では各党の党首も認識を一にした、私は列席をしましてそういう感じを受けたわけでございます。そこで私としては、平和条約の今後の交渉にいささかも差しさわりがないように、わが方の立場を損なわないように、そういうことをしっかりと踏まえながら、漁業問題としてこの打開策を講じていきたい、こういう立場で交渉に臨んでおるわけでございます。
  127. 小川国彦

    ○小川(国)委員 くどいようですが、農林大臣、今度この連休明けに参りまして、この北方四島の領土問題抜きに漁業問題の解決ができるとお考えですか。
  128. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 抜きにしてということを私は言う必要はないと思うのです。先ほど申し上げたように一九七三年の田中・ブレジネフ会談における合意、戦後未解決の問題である、今後この問題は誠意を持って両国で交渉していこうではないか、そしてできるだけ早く日ソの平和条約を締結をする、日ソの友好関係を安定的なものにしていこう、こういうことがベースになればその実態に沿うたような漁業交渉というものは可能である、私はこう思うわけでございます。
  129. 小川国彦

    ○小川(国)委員 鈴木農相の考えるベースのとおりに相手のベースが来てくれればいいわけですが、私はどうもその点には疑問を感ずる。私は何も鳩山外相がいま訪ソして直ちにこの領土問題の結論が出るとは考えません。これはやはり一年、二年あるいは五年、十年かかる交渉になるかもしれません。しかし、物に潮どきというものがあれば、やはりこの際日本は領土問題も漁業問題もそれぞれ担当大臣が行って、そうして最も能動的に最も活動的にこれらの問題を総体として取り組む、こういう内閣の考え方というものがあってもいいのではないかというふうに考えるのですが、その点について、鈴木農相、もう一遍ひとつ御答弁を……。
  130. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 小川さんの言わんとするところは私も非常によくわかるのです。わかるのですが、率直に申し上げまして、小川さんのような方向で外務大臣訪ソをされるあるいは総理が訪ソをされる、そして領土問題を真っ正面から交渉する、そうした場合に、それではひとつ領土問題の交渉をやりましょう、結論が出るまで漁業の方は待ってください、こういうように向こうから出てまいりますと、これはなかなか、漁業交渉というのは百年交渉になりかねない。私は、そうでなしに、日ソの現状というのはこの北方四島の問題に関しましては戦後未解決の問題としてこれからもひとつ交渉をして平和条約の締結をしようというこの事実、この現状、これを踏まえてその実態に沿うような立場で漁業交渉をする以外にない、このように考えるわけでございます。小川さんの言わんとすることは私も非常によくわかるわけでございますけれども、私どもはそういう考えで日ソ漁業交渉に臨んでおる、こういうことも御理解を賜りたいと思います。
  131. 小川国彦

    ○小川(国)委員 くどいようですけれども、私は、外交交渉というのは、やはり外務省というのは力があるかないかそれは別にしまして、その一つの農業問題、漁業問題を話し合うにしても、外交ベースというものが一つあると思うのです。そういう点では、主として漁業問題で行くにしましても、外務省の協力なり、三人寄ればじゃありませんが、農相と外相と行って、それぞれの事務当局がついていけばそれなりの知恵も出てくるし、考えも出てくる、そういうようなところをお考えになれないものかどうか。  それからもう一つ、どうしてもずらすというならば、鳩山訪ソというものはどういう時期にということを閣内では考えておられるか。
  132. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、いま小川さんから御発言がありましたように、国と国との交渉の場合には漁業問題は漁業問題、経済協力の問題は経済協力の問題、文化交流の問題は文化交流の問題、こういうぐあいに切り離して外交は展開をされておったのでは成果が上がらない、やはりあらゆる分野の問題をグローバルに、しりに火がついてからでなしに、平素そういう観点で外交というのは展開をされなければならない、このように考えております。しかも、それは半年や一年でできる問題ではなしに、やはり長年のそういうようなアプローチ、グローバルな総合的な観点に立った交渉、そういう努力の積み重ねの上にすべて個々の問題というのが円滑に処理されるべきものだ、このように考えております。その点は小川さんと同意見でございまして、今後政府全体としてそういう視点に立って外交の展開をすべきものだ、こう考えております。
  133. 小川国彦

    ○小川(国)委員 農林大臣非常に答弁がお上手なので、私の的確なあれが出ていないのですが、この領土問題について話し合いすべき時期を福田内閣としてはどういう時点に考えておられるか、鳩山訪ソの時期をどういうふうに考えておられるか。
  134. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 総理からも先般お話しがございましたが、ひとつできるだけ早い機会に鳩山外務大臣にも訪ソをしてもらわなければいかぬ、国会の都合等もございますが、ひとつできるだけ早くやろうではないかということでは総理の御意向も私伺っておるところでございます。
  135. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その時期はまだ明確でないわけですか。
  136. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まだ何月ということは決まっておりませんが、国会でも終わりますれば早い機会に実現するものだ、私はそう受けとめております。
  137. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは、望むらくは、もう一度領土問題が蒸し返されて、そのことの中で難航することのないように、私の意見も十分お含み願って、ひとつ政府の意思統一を図って事に臨んでいただきたい、こういうふうに考えます。  それからもう一つ、竹島の問題でございますが、これも外務当局にお伺いをしたいのでございますが、二百海里の問題に関連しましてこの竹島の現状というものについてどの程度韓国との外交交渉は持ってこられておるのか、それから二百海里に関連をしてその辺の主張をどういうふうに韓国の当局と折衝してこられておるか、その点をお伺いします。
  138. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  竹島に関しましては、御存じのとおり日韓漁業協定もございまして、これは島根県ということで、日韓漁業協定に基づく日本漁業水域というものがございますし、それから、この間も、たしかきのうでございましたか、アジア局の担当課長も韓国に参りまして、漁業に関しましては韓国とは随時接触しているわけでございます。
  139. 小川国彦

    ○小川(国)委員 漁業問題の折衝は、その協定なりその後の交渉経過はわかるのですが、領土問題の折衝はいつおやりになるのでございますか。
  140. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  竹島に関しましては、これは歴史的な事実に照らしても日本の領土であるということでございますし、それから日韓条約締結の際にも、交換公文で紛争解決手続というものも定められておるわけでございます。  それから、文書、口頭によって随時、竹島はわが国の領土であって、韓国の官憲の即時退去ということを要求いたしておりますので、この点、竹島はわが国の領土であるというわが国の立場を外交的に明らかにしてまいっております。
  141. 小川国彦

    ○小川(国)委員 明らかにしてきているのはわかるのですけれども、何か外務省のこのやり方というのを見ていますと、横着というか怠惰というか、言葉が過ぎると思うかもしれませんが、そういう状況が非常に見られるわけです。これなどは定期の閣僚会議どもありますが、そういう席ではっきり皆さん外務省の方で、外務大臣から言うとか総理大臣から言うとか、そういうことをなすったことはございますか。
  142. 井口武夫

    井口説明員 ただいまの問題に関しましては、今国会におきましても、御存じのとおり、総理大臣、外務大臣からたびたび日本の立場につきましては国会でも明らかにしてあるところでございます。  それから、いま申し上げましたように、随時口頭または文書で、竹島の領有権というものに関しては、対外的に日本の立場を表明してきております。
  143. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その口頭とか文書というのが、これがまた外務省の場合全然だめなんですよ。  私、身近な銚子の漁業被害の問題で、外務省の方に銚子の地域の漁民と一緒に何遍も陳情に行ったりしているのですが、もう十年来ソ連船の被害の問題があっても、外務省はこれを口頭でソ連の大使館に言って、ソ連の大使館からお呼びがあると口頭で御返事をもらって帰ってくる、文書でやっていないのですね。  だから、あなた方の方に聞くと、外務省の手続というのは何か私聞いたのでは、最初に口頭で言ってくるのを本当の口頭でやってくる、メモを渡さずにやってくる、その次はメモのみを届ける、それからメモつきの口頭、それからメモランダムがつくもの、書簡の形式、それから口上書と、何か幾つも種類があるのだそうでございますが、銚子の漁民の問題などは、何か口頭で言って口頭で回答をもらうというので、何も書きつけはないわけですね。これは銚子の漁民のかあちゃんでさえあきれて、われわれだって勘定の請求に行くときにはツケ持って行くと言うのですよ。外務省漁民被害を受けているのにツケを持たずに大使館に行ってたんじゃ役に立たねえのじゃないか、これは銚子の漁民のかあちゃんでさえそう思うわけなんですが、一体この竹島の問題などについて、外務省はどういうような形式、たとえば今度官房長官がソ連に行ったときに持っていった書簡ですか、どういう形式が一番上で、どういう形式でこの竹島の問題、銚子の問題を含めてですが、やっていらっしゃるのか。
  144. 井口武夫

    井口説明員 実は竹島の抗議に関しましては、過去二十数年間、数十回にわたってわが方で行ってきておりますが、実はその詳細については、本日アジア局の出席者が別の用件で当委員会に参っておりませんので、その点の詳細な御説明を申し上げられないのは申しわけないと思います。  なお、銚子の件に関しまして、欧亜局の方からお答え申し上げます。
  145. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  外交慣例に従いまして、特にソ連との場合、どういうときに文書でやり、どういうときに口頭でやるか、外交慣例その他を参照しながら、その都度最も適当な方法でやっている次第でございます。  銚子の問題につきましては、本年の一月二十六日と二月九日の二回にわたって、これは口頭で申し入れておりますが、ただそのときに、参考資料として写真とか廃棄物のいろいろなデスクリプションですか、そういうものは別途の紙として渡してございます。
  146. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そういうわけだから農林大臣も連れていってくれないような始末になるのではないかと思うのです。この銚子の漁民の問題についても、皆さん方は、南太平洋で核実験が行われた抗議とか、ミグ戦闘機が来たときの抗議とか、こういうのは口上書というので、何かえらい人のちゃんと判をついたやつでやっているわけです。ところが銚子の漁民の問題になると、七千万も一億も被害が出ておりながら、そういう問題についてきちんと文書でやろうというような姿勢がないわけです。こういうだらだらした横着な姿勢が、日ソの領土問題など、こういうときに出てくるのだと私は思うのです。やはり外務省がもっとしゃんとしてやらないと、こういう問題が全く解決をしない。ですから、銚子の漁民の問題であれ、ミグ戦闘機の問題であれ、やはり国益に関する問題についてはきちんと文書でやる、こういう姿勢を外務当局は持たなければならぬと思うのです。  竹島問題についてはどういう形でやっているか、これはちょっと答弁できないわけですね。
  147. 井口武夫

    井口説明員 竹島に関しましても口上書で抗議したわけでございます。
  148. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その口上書には外務大臣が署名するのですか、局長が署名するのですか。  それから、最終的にはいつ竹島問題について韓国に口上書を出されているのですか。
  149. 井口武夫

    井口説明員 この口上書というのは、実は三人称の形でございまして、政府の、たとえば外務省から大使館、あるいは現地の大使館から相手の外務省という形で、正式な官印が押してある文書でございます。
  150. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その官印はだれの印でございますか。
  151. 井口武夫

    井口説明員 これは外務省の官印でございます。
  152. 小川国彦

    ○小川(国)委員 一番新しい時点で竹島について出されたのはいつですか。
  153. 井口武夫

    井口説明員 これはいま申し上げましたように、申しわけないのですが、アジア局の担当部局が、本日この委員会に、実はその御質問が必ずしも予想されておりませんので参っておりませんから、その日時について直接手持ちの資料はいまございません。
  154. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これについては後ほど、竹島問題について政府がどういう内容の文書で、何回これまで韓国に正式な口上書の申し入れをしてきているか、これを資料としてお出しいただきたいと思いますが、これは委員長にお願いをしたいと思います。  それから、同僚議員からも質問がありましたが、日ソ操業協定の問題で漁業損害賠償請求処理委員会というものがつくられておりまして、ここで五十一年三月五日に設置されてやっているわけですが、いままでの延べ件数が千六十一件、賠償請求額が五億七千万と、こういう数字が出されて、うち二件がモスクワへ送付された、こういう報告が出ているのですが、私ども漁業損害賠償請求処理委員会というのをいろいろ取り組み状況を調べてみますと、まあ悪口を言ってはなんですが、御隠居さんの委員会じゃないかと思うぐらいきわめて仕事がスムーズに進んでおりません。たとえば銚子の第三共盛丸の佐藤貞雄さんというのが昭和四十九年十一月二十五日に事故が発生しまして、七十九万五千八百九十一円の損害額を出した。これが今度モスクワに送られた二件のうちの一件になっているわけですが、この当事者に聞きますと、大変な、一尺近い厚さの書類を用意させられた。それが七十九万円の損害賠償を取るのに五十万円ぐらい経費がかかった。とてもじゃないが、こういうことではこの処理委員会に持ち込んでお願いするだけばかばかしいことだというふうな実感を持っておられるのですね。そういう形でまだ千六十一件も問題が控えていて、しかも両方から出ている委員が二人ずつ、それで何か委員会の開催状況もきわめて停滞している。ソ連側からは日本漁業の侵害の問題では大変な賠償金を取られておるわけです。一方でそういう賠償金がどしどし取り立てられているのに、こういう処理委員会の中の運営では本当にスローペースでやっておって、これでは日本漁民の問題は浮かばれないのじゃないかというふうに思うのです。この組織の問題については、運営が現状で妥当だと考えておられるかどうか、もっとスピーディーにこの問題を処理していくという考え方は持っていないのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  155. 岡安誠

    岡安政府委員 現在、日ソ漁業損害賠償請求処理委員会が受理しております件数は七百五十二件でございます。これは操業協定が締結される二年間前にさかのぼりまして事故については受理をするということで、一挙にどっと出されてきたということでたまっているわけでございますが、そのうち現在審議をいたしておりますのが三十六件でございまして、そのうち二件がモスクワへ送られておるというのが現状でございます。  確かに、発足いたしましてから処理済み件数というのが非常に少ないことは私ども遺憾に思っておりますが、これも毎回申し上げておりますけれども、ともかく新しい仕事を始めたものでございますので、委員並びに委員会の事務局がふなれであるのみならず、被害を申請する側におきましても相当ふなれな点がございまして、書類が往復したというようなこともたくさんあったやに聞いております。今後は私ども、このたまっております案件をできるだけ早く処理するように、委員会の事務当局の処理能力もぜひ上げたいと思っておりますし、申請者側におきましてもなれてこられると思いますので、従来より以上に少しスピードアップして処理いたしたいと思っております。  なお、申し上げておきますけれどもソ連の方からは賠償金が取られて、こちらはこういうようなかっこうでおかしいではないかという御指摘がございますけれどもソ連の方で、どういうケースか私存じておりませんけれども、賠償金が取られるということを考えますと、恐らくそれは領海侵犯とかいろいろそういう規制違反のことでソ連に対して賠償金が取られるケースだと思いますけれども、いま損害処理委員会でやっておりますのは、いわば公海におきます事故である民事の損害賠償のケースでございますので、やはりおのずから違った処理をせざるを得ないということ、これはひとつ御理解をいただきたいというふうに思っております。
  156. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ソ連やアメリカに拿捕されたりなんかしております被害は六億六千三百万ということなんです。これは大変な額でありまして、その中には漁民領海内か領海外かすれすれの場合がある。そういう場合であっても、結局これを裁判で争ったりなんかしておりますと船を抑留されたりして非常に被害が大きい、泣く泣く罰金を払って早くけりをつけよう、こういう事例が非常に多いと聞くわけなんです。ですから、一方においてはこうした拿捕されたり罰金を払わされたり、そういう問題が厳しく行われております。六億六千万にも上る被害が厳しくやられている、そういう状況の中で、一方日本の方の被害を受けている問題がどうもこういう処理委員会の中で思うように進まないということは大変残念なことで、私は水産庁長官にもぜひこの組織の内容をもう少し御検討いただいて、やはり裁判でも四人の裁判官で全部そろわなければだめだということですから、それでこの七百件ですか、延べ一千件ですか、これを処理するのはちょっと大変だと思うのですね。だからこれをもっと機構を充実してスピーディーな審理が行われるように、これはぜひ今後においてこの改革に取り組んでいただきたいと思います。  それから最後農林大臣に、いろいろ地元でうわさが飛んで心配をしておりますので、一点だけただしたいのですが、日ソ交渉の中で、ソ連が銚子沖のイワシ漁場だけに限ってイワシやサバをとらせてほしい、こういう要求があった。これは、ソ連にしてみますとイワシやサバの暖流性の魚というものに非常に魅力を感じて、これはもうつい最近、三、四日前にもソ連船団が来て銚子沖で操業している、こういう状況で、きのうはしけでちょっと確認できなかったのですが、ごく最近、依然として近海十二海里内で操業しているという実態があるわけです。そういう中で、サバ、イワシからさらにカツオ・マグロ、こういう暖流性の魚というものに対してソ連が魅力を感じているということは十分あるんじゃないか。それだけに、この十二海里の領海法が設定されても、今後の交渉でもう一度この十二海里内のイワシやそういう暖流の魚をひとつとらせてくれ、こういう要望が出てくるのじゃないか、そういうおそれを沿岸漁民は非常に強く持っているわけなんです。  それで、大臣の留守中の当委員会では、この問題はまだ流動的である、こういう答弁がなされているわけです。十二海里内の操業ソ連は断念したというふうに一時伝えられたのですが、当委員会では、まだ流動的である。したがって、二百海里の問題と絡めてもう一遍この問題が蒸し返されるおそれはないのかどうか。この点の結論ははっきり出ているのかどうか。それから蒸し返された場合に、大臣として十二海里内ははっきり断る、こういう決意をもって最後まで臨まれるかどうか、その点を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  157. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが方の十二海里の中で、ソ連側が幾ら要望いたしましても、絶対にこれは操業させることはない、このことはイシコフ大臣にも私は明確に申し上げております。そしてイワシ等につきまして欲しい場合には、ソ連の二百海里の中でとったわが国が関心を持っておるものと、価格をそれぞれ適正に評価して物々交換をしてもよろしい、こういう問題につきまして、価格の評価等について実務者にイシコフ大臣は命じて研究もさしておる、こういう状況でございまして、領土の延長である領海の中では、ソ連漁船の入漁を認めるというようなことは絶対にない、また、私はその考えは毛頭ないということを明確にここでも申し上げておきますし、イシコフ大臣にもそのとおり申し上げておるところでございます。
  158. 金子岩三

    金子委員長 松沢俊昭君。
  159. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 領海法の問題について御質問申し上げたいと思います。  鈴木農林大臣には、大変むずかしい問題を抱えていままで努力をしてきておられることにつきまして、敬意を表します。  私は、この二百海里問題、漁業問題、これはやはり漁業と領土という二つの難問題を抱えておりますので、大変むずかしい問題であろうと考えております。そこで、われわれはこういうようなむずかしい問題になったところの背景というものを分析してかかっていかなければならぬじゃないか、こう思うわけであります。  新しい海洋時代ということが言われておりますけれども、そもそも二百海里問題というのを出したのは、開発途上国であるところのいわゆる第三世界、それが先進国の資源を初めとする経済収奪に反対して、そして自主、自力更生の民族経済の発展のために資源の主権の確立を目指す、そういう主張から出したものである。そして第三世界の海洋におけるところの主権確立の主張は、国連の海洋法会議を中心にして広げられてまいりまして、そして一九七二年、ケニアの提案以来、領海十二海里、経済水域二百海里の設定と、これが世界の大勢を占めるに至った、こういう経過があると思うわけなんであります。  その当時、アメリカ、ソ連、こういういわゆる超大国と言われる国々は、本来第三世界の主張でありました二百海里問題等につきましては、賛意を表していなかったわけですね。それが今度逆に、一方的に二百海里漁業専管水域を実施するとともに、他方では、国際海峡に米ソの艦船が自由に通航できるように自由通航帯を設けるというようなことでいま動いている、こういう世界の一つの動きであろうと考えているわけであります。だから、こういう国際情勢の中で米ソが動いてきている、それを食いとめるということは非常にむずかしい情勢になっているのじゃないかというふうに考えております。  それから、もう一つの問題といたしましては、やはりソ連の内部事情というのもあると思うわけであります。それは、一つはやはりソ連の農業政策、食糧政策といいますか、これはやはり失敗したということが伝えられておりますし、農業問題というものもそううまくいっていないということも聞いているわけであります。それで魚の方に手を出すというようなことになっていると思います。  それから、もう一つはやはり軍事的な問題というのもあるのじゃないか、これがやはり領土に対するところのいままで日本側の方に話してきた話と違った話を持ち出してきている、こういうことも考えられるような気がするわけなのであります。  そういう点につきまして、交渉の任に当たっておられますところの鈴木農林大臣はどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  160. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は松沢さんの分析なさっておられる見方、これは私も似たような分析を実はしておりますし、認識をいたしておるわけでございます。海洋分割時代、これは言葉をかえますと資源の分捕り合戦というような感じがしてならない。果たしてこのことが人類全体のこの天与の資源を有効に保存をし活用する見地から見て妥当なものであるかどうかということについては、私はまた別の意見を実は持っておるわけでございます。沿岸国が二百海里専管水域を設定する、その二百海里内の資源の保存と有効利用というものを十分図って、これを自国の国民の食糧問題の解決に、そして、余裕があればこれをよそにも提供する、人類全体にこの水産食糧資源を提供するという観点に立ち、そういう方向で実行をしていく、効果を上げていく、こういうことであれば、私は、そのことの限りにおいて当然のことである、こう思うわけでございます。そうでなしに、まだ自分の国ではその二百海里内の水産資源を十分とるすべもない、また、日本のように魚をたん白食糧の中心に置いて、それを効果的に利用するという情勢にもない、しかし、なわ張りだけはちゃんとしておいて、そして、自分も余りとれないが人にもとらせない、こういう姿が果たして人類全体から見て適当なものであるかどうか。地下資源その他のものであれば、これは、掘り出していくということになればだんだん資源は減っていくけれども、水産資源のようなものは、世代交代が常に行われておる、とらなくてもこれは死滅していくわけですね。ですから、適正にこれを漁獲をして、再生産可能な限度においてこれをとっていくということ・これを利用していくということは必要であるけれども、そうでない、ただなわ張りだけを広げておいて、自分もとるすべがない、人にもとらせない、こういうことであってはいけない、私はそういうぐあいに思っております。  また、第二の問題、ソ連が、異常低温のために家畜の飼料等穀物の生産が落ち込んだ、そこで、ある時期において大量に家畜を撲殺せざるを得なかった、畜産は、その回復には相当長い年月がかかる、それを補うために魚肉たん白を積極的にとって国民に提供をする、これは当然考えられることであり、また、そういう方向に行っておりますことを私も承知をいたしておるわけでございます。  第三の点につきましては、これは常に領土問題その他たくさんの問題を抱えておる国でございまして、この問題は、各国との関連もございまして、なかなかむずかしい問題である。それには軍事的な問題も背景にあろうかと思います。いずれにしても、それらの問題を分析してまいりますと、この新海洋時代というものは、わが国にとってはなかなか厳しい情勢にあると、こう認識をいたしております。
  161. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで私は、さっき小川委員の方からも領土の問題というのが出されたわけでありますが、この領土問題は、外務省の方で一体解決のめどというのがあるのかどうか、また、そういう自信を持っておられるのかどうか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  162. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  過去三十年にわたって粘り強くこの問題の解決に努力してまいりました。今後ともこの努力を続けていく所存でございますが、御承知のとおり、かかる重大な問題に対処するに当たっては、やはり強い国論支援というものが必要であろうかと考えております。幸いにして、この面につきましては、国を挙げての世論の統一というのが進んでおりますように見受けられますので、こういう力強い世論の支援というものを背景にして、今後とも一層努力していく所存でございます。
  163. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私は、国論の統一というのは、もちろん必要であることは申し上げるまでもないと思います。しかし、さっきからこの領土問題の議論をいろいろ聞いておりますと、北方四島ということを言っておられるわけなんです。いつから北方四島になったのか、その点はやはり明確にしてもらいたいと思います。私は、率直に申し上げますが、日本の領土というのは千島列島全域が領土になっているんじゃないか、こういうぐあいに実は考えているわけであります。それは、歴史からいきましても、安政元年に日魯通交条約、これは得撫島の北の方はロシアのものであって、南の方が日本のものだという取り決めをやっておりますが、その後明治八年に樺太千島交換条約が結ばれておるわけでございまして、これは別に暴力によって奪い取ったわけではないわけであります。むしろ、考えようによっては、その当時ロシアの方が力が強くて日本の方が弱かったものですから、樺太は向こうの方にやってしまって千島列島をこっちの方でもらうという結果になっているんじゃないか、こういうぐあいに思われるわけであります。そして、その後カイロ宣言というのもございます。カイロ宣言の場合におきましても、これはイギリス、アメリカ、中国、この三国間の宣言でございまして、領土不拡大の原則を鮮明にし、日本が暴力と脅迫によって略取したその地域から日本を駆逐するというのが戦争目的の一つであると、こういう宣言をやっているわけであります。ですから、こういう歴史的な経過を踏まえて考えていった場合、北方の四島だけでなしに、千島列島全体というものが日本の領土である、これだけははっきりしていると思うわけであります。これをどうして、いつのときに北方四島というふうに限定したのか、そしてまた、これは水産庁に聞きますけれども、千島列島全体が日本の領土であるという場合、その地域からとれる漁獲量というものがどういう影響を受けるのであるか、どの程度日本に有利になるのであるか、その点もひとつお伺いしたいと思うわけであります。
  164. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  いつから北方四島という概念が固まったかというお尋ねであろうと存じますが、これは昭和二十七年わが国がサンフランシスコ平和条約を受諾したときからと私どもは承知しております。御承知のとおり、サンンフランシスコ平和条約におきましては次のとおり規定されております。「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」この条件のもとに平和条約を締結したとき以来私どもは北方四島という概念を固めたとお答えしてよろしいかと存じます。
  165. 岡安誠

    岡安政府委員 北洋漁場全体で、特に北洋漁場のうちソ連沿岸から二百海里以内の水産物につきましては、これも一応推定でございますけれども、毎年推定をいたしましてはじいております。ただ、御指摘のように、千島列島全体につきましてその周辺でどれだけかというような推定はいままでいたしたことがございませんので、ちょっといま数字を持ち合わせておりません。
  166. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣にお伺いしますけれども、いまの外務省の方の答弁からしますと、サンフランシスコ平和条約によって北方四島になったんだ、こういう御答弁でありましたが、樺太を返すのは話はわかります。だけれども、千島列島をソ連に返す、そういう理由というものはないと私は思います。また、そこには放棄はしたけれどもソ連のものになるような、そういう表現というものはないと私は思うわけなのであります。そういう点で、北方領土というものはやはり千島全域を含むというふうに解釈して差し支えない、こう思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  167. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま松沢さんおっしゃった歴史的な経過からいたしますと、そういう見解というものも私はりっぱな見解である、こういうぐあいに思っております。しかし、サンフランシスコで講和条約を結ぶ、そういう歴史的な瞬間において日本の首席代表であった当時の吉田総理大臣がそういう決断をされたということは、それがこの講和後、日本の領土問題に対するところの基本的なベースになってきておるということも否めない事実であろう、このように思っております。
  168. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私は、北方領土ということになると四鳥だけでなしに千島列島全体を指して言っているものというふうにいままでも解釈してまいりましたし、これからもまたそれを日本としては主張していかなければならないと実は考えておるわけであります。  そこで、この千島列島全体の問題に絡みまして防衛庁に聞くわけであります。  まず軍事的な問題でありますが、いまソ連というのは超大国になって、そして中国側なんかではソ連社会帝国主義という、そういう表現を実は使っておるわけなのであります。私もまさにそういうような国に変質しているんじゃないかというような考え方を実は持っておるわけでありますが、そのソ連の海軍力、それから空軍力、こういうものはどういう状態で太平洋の方に来ているのか。それからアメリカもやはり超大国なのでありまして、結局いま日本が非常に困っているのは、この二つの超大国の覇権争いが北洋漁業の問題においても大変困る結果に実はなっておると思うわけであります。そういう意味で、アメリカの方の海軍の軍事力というのはどのようになって、どのようにして動いているのかこれを聞かせていただきたいと思います。
  169. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 米ソの海軍力の実態について申し上げます。  現在ソ連は隻数で一言いますと二千六百七十隻、約四百五十四万トンの艦艇を有しております。これに対しましてアメリカは七百六十隻、五百四十七万トンの艦艇を保有いたしております。  アメリカとソ連の海軍力の特徴と申しますと、アメリカは空母を十三隻持っておりまして、いわゆるその機動部隊といいますか、この空母を中心とした海上勢力というものを持っております。これに対しましてソ連の特徴は、潜水艦がアメリカの約三倍、三百九十隻持っておりまして、潜水艦の力というものがアメリカに比べて際立って大きいということが言えると思います。  このうち質が非常によくなってまいっておりまして、この十年間くらいの間にソ連の潜水艦は、三百九十隻のうちの約三分の一、百三十五隻が原子力潜水艦にかわっております。アメリカの約百二十隻の潜水艦のうち百隻が原子力潜水艦になっておりますが、いま申し上げましたように、大ざっぱに申し上げますと、空母を中心にした機動力を中心としたものがアメリカの海軍力でありまして、ソ連は潜水艦を中心にしているということが言えようかと思います。  ただ、この特徴を申し上げますと、アメリカの海軍といいますのは――御承知のように自由主義諸国というものは太平洋、大西洋、それを隔てて友好国と同盟を結んでいるわけでございます。したがいまして、海上における安全な航海ができるということに非常に大きなウエートが置かれているわけでございます。ソ連は、この十年間の状況を見ますと、従来は沿岸防備ということを主力といたしました海軍力でございましたが、だんだん艦艇が大型化されてまいりました。巡洋艦にいたしましても駆逐艦にいたしましても大型化されました。さらに原子力潜水艦が増強されまして、外いう自信を持っておられるのかどうか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  170. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  過去三十年にわたって粘り強くこの問題の解決に努力してまいりました。今後ともこの努力を続けていく所存でございますが、御承知のとおり、かかる重大な問題に対処するに当たっては、やはり強い国論支援というものが必要であろうかと考えております。幸いにして、この面につきましては、国を挙げての世論の統一というのが進んでおりますように見受けられますので、こういう力強い世論の支援というものを背景にして、今後とも一層努力していく所存でございます。
  171. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私は、国論の統一というのは、もちろん必要であることは申し上げるまでもないと思います。しかし、さっきからこの領土問題の議論をいろいろ聞いておりますと、北方四島ということを言っておられるわけなんです。いつから北方四島になったのか、その点はやはり明確にしてもらいたいと思います。私は、率直に申し上げますが、日本の領土というのは千島列島全域が領土になっているんじゃないか、こういうぐあいに実は考えているわけであります。それは、歴史からいきましても、安政元年に日魯通交条約、これは得撫島の北の方はロシアのものであって、南の方が日本のものだという取り決めをやっておりますが、その後明治八年に樺太千島交換条約が結ばれておるわけでございまして、これは別に暴力によって奪い取ったわけではないわけであります。むしろ、考えようによっては、その当時ロシアの方が力が強くて日本の方が弱かったものですから、樺太は向こうの方にやってしまって千島列島をこっちの方でもらうという結果になっているんじゃないか、こういうぐあいに思われるわけであります。そして、その後カイロ宣言というのもございます。カイロ宣言の場合におきましても、これはイギリス、アメリカ、中国、この三国間の宣言でございまして、領土不拡大の原則を鮮明にし、日本が暴力と脅迫によって略取したその地域から日本を駆逐するというのが戦争目的の一つであると、こういう宣言をやっているわけであります。ですから、こういう歴史的な経過を踏まえて考えていった場合、北方の四島だけでなしに、千島列島全体というものが日本の領土である、これだけははっきりしていると思うわけであります。これをどうして、いつのときに北方四島というふうに限定したのか、そしてまた、これは水産庁に聞きますけれども、千島列島全体が日本の領土であるという場合、その地域からとれる漁獲量というものがどういう影響を受けるのであるか、どの程度日本に有利になるのであるか、その点もひとつお伺いしたいと思うわけであります。
  172. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答え申し上げます。  いつから北方四島という概念が固まったかというお尋ねであろうと存じますが、これは昭和二十七年わが国がサンフランシスコ平和条約を受諾したときからと私どもは承知しております。御承知のとおり、サンンフランシスコ平和条約におきましては次のとおり規定されております。「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」この条件のもとに平和条約を締結したとき以来私どもは北方四島という概念を固めたとお答えしてよろしいかと存じます。
  173. 岡安誠

    岡安政府委員 北洋漁場全体で、特に北洋漁場のうちソ連沿岸から二百海里以内の水産物につきましては、これも一応推定でございますけれども、毎年推定をいたしましてはじいております。ただ、御指摘のように、千島列島全体につきましてその周辺でどれだけかというような推定はいままでいたしたことがございませんので、ちょっといま数字を持ち合わせておりません。
  174. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣にお伺いしますけれども、いまの外務省の方の答弁からしますと、サンフランシスコ平和条約によって北方四島になったんだ、こういう御答弁でありましたが、樺太を返すのは話はわかります。だけれども、千島列島をソ連に返す、そういう理由というものはないと私は思います。また、そこには放棄はしたけれどもソ連のものになるような、そういう表現というものはないと私は思うわけなのであります。そういう点で、北方領土というものはやはり千島全域を含むというふうに解釈して差し支えない、こう思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  175. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま松沢さんおっしゃった歴史的な経過からいたしますと、そういう見解というものも私はりっぱな見解である、こういうぐあいに思っております。しかし、サンフランシスコで講和条約を結ぶ、そういう歴史的な瞬間において日本の首席代表であった当時の吉田総理大臣がそういう決断をされたということは、それがこの講和後、日本の領土問題に対するところの基本的なベースになってきておるということも否めない事実であろう、このように思っております。
  176. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私は、北方領土ということになると四鳥だけでなしに千島列島全体を指して言っているものというふうにいままでも解釈してまいりましたし、これからもまたそれを日本としては主張していかなければならないと実は考えておるわけであります。  そこで、この千島列島全体の問題に絡みまして防衛庁に聞くわけであります。  まず軍事的な問題でありますが、いまソ連というのは超大国になって、そして中国側なんかではソ連社会帝国主義という、そういう表現を実は使っておるわけなのであります。私もまさにそういうような国に変質しているんじゃないかというような考え方を実は持っておるわけでありますが、そのソ連の海軍力、それから空軍力、こういうものはどういう状態で太平洋の方に来ているのか。それからアメリカもやはり超大国なのでありまして、結局いま日本が非常に困っているのは、この二つの超大国の覇権争いが北洋漁業の問題においても大変困る結果に実はなっておると思うわけであります。そういう意味で、アメリカの方の海軍の軍事力というのはどのようになって、どのようにして動いているのかこれを聞かせていただきたいと思います。
  177. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 米ソの海軍力の実態について申し上げます。  現在ソ連は隻数で一言いますと二千六百七十隻、約四百五十四万トンの艦艇を有しております。これに対しましてアメリカは七百六十隻、五百四十七万トンの艦艇を保有いたしております。  アメリカとソ連の海軍力の特徴と申しますと、アメリカは空母を十三隻持っておりまして、いわゆるその機動部隊といいますか、この空母を中心とした海上勢力というものを持っております。これに対しましてソ連の特徴は、潜水艦がアメリカの約三倍、三百九十隻持っておりまして、潜水艦の力というものがアメリカに比べて際立って大きいということが言えると思います。  このうち質が非常によくなってまいっておりまして、この十年間くらいの間にソ連の潜水艦は、三百九十隻のうちの約三分の一、百三十五隻が原子力潜水艦にかわっております。アメリカの約百二十隻の潜水艦のうち百隻が原子力潜水艦になっておりますが、いま申し上げましたように、大ざっぱに申し上げますと、空母を中心にした機動力を中心としたものがアメリカの海軍力でありまして、ソ連は潜水艦を中心にしているということが言えようかと思います。  ただ、この特徴を申し上げますと、アメリカの海軍といいますのは――御承知のように自由主義諸国というものは太平洋、大西洋、それを隔てて友好国と同盟を結んでいるわけでございます。したがいまして、海上における安全な航海ができるということに非常に大きなウエートが置かれているわけでございます。ソ連は、この十年間の状況を見ますと、従来は沿岸防備ということを主力といたしました海軍力でございましたが、だんだん艦艇が大型化されてまいりました。巡洋艦にいたしましても駆逐艦にいたしましても大型化されました。さらに原子力潜水艦が増強されまして、外ふうにしてだらだらやっているうちにどんどんと、ここはソ連のものであって、ソ連としては離すことのできない領土になってしまっているのじゃないでしょうか。要するに、こういう状態の中で領土問題と分離をして漁場問題をうまく解決をつければいいじゃないか、確かに漁場問題は大変な問題であります。だけれども、こういう方向で進んでいるところの現状認識をやった上に立ってやはり日本の外交は進められていかなければならない、私はそのように考えるわけなんでありますが、大臣はどうお考えになっているか。  それからもう一つの問題でありますが、五海峡でいま防衛庁の方から艦船の通過をしているところの状況説明されたわけであります。これは十二海里をやるということになれば、それは津軽海峡も宗谷海峡も全部やはり十二海里にしてやってしまえば、あとは無害通航権というのは国際的に、第三次海洋法会議の草案なんかを見ましても、これは当然の権利として認めるという姿勢になっているわけでありますから、したがって、別にそこのところだけは三海里にしておかなければならないというものではないと思うわけなんであります。むしろこれを十二海里にしまして、そして日本領海というふうにしてきちんと規定をして、そして無害通航を認めていくことが日本の国防上からいっても私は正しいあり方なんじゃないか、わざわざ主権をみずから放棄するなんということは、これはおかしな話なんじゃないか。しかし、これはそういうことでないのであって、一定の取引のために必要なんだ、こういう政治的な配慮によって三海里にされているのか、この点も私はわからぬわけなんでありまして、そういう点、農林大臣農林大臣なりにいろいろなことがあるならばあるなりにはっきりとしてもらいたい、こういうぐあいに考えるわけであります。
  178. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この北方四島の領土問題、このわが国固有の領土を一日も早く返還をさせたい、これは民族の悲願でもあるわけでございます。でありますから、外務省を初めとしまして政府全体としても日ソ平和条約締結の大前提としてこの問題を解決をすることに努力をいたしておるところでございます。しかしこの問題は、松沢先生もよく御理解なさっておるところだろうと思うのでありますが、なかなか半年や一年や二年で解決をするということではない。相当息の長い交渉努力、この積み重ねの上に立って、しかも日ソ友好の維持発展を図っていくというためにはこの問題が解決されなければいけない。そうでないと安定的な日ソ関係というものは確立をしないということを、わが方は常にそう考えておりますが、ソ連の最高指導部がそういうような観点に立ってこれに取り組んでもらわなければならない、このように思っております。  それから五海峡の問題につきましてはるるお話を申し上げておりますように、総合的な国益という観点から、海洋国、海運国、近代工業国家として資源をよその国に求めておる、そしていわゆる国際海峡については無害航行よりもより自由な航行が望ましい、こういう主張を海洋法会議日本はやっておるわけであります。その日本が、主張主張、自分のやることは自分のやることで別だ、これでは日本が国際間において十分にその主張を通すことができない、このように思うわけでございます。私はそういう観点に立ちまして、いま松沢さんは防衛庁から潜水艦の問題であるとかいろいろなことを確認をされました、私はそういうことについていろいろお考えいただいておることもよくわかるわけでございますけれども、無害通航の権利がある、これは相手がそれに従うか従わないかという問題もございます。それに従わない場合にそういうことを日本方針として確立しておいてそれを実行できない場合には国の権威をかえって失墜をする、こういう問題も私はあろうかと思います。しかし私どもは、そういう軍事的な問題は別といたしまして、先ほど来申し上げるようにわが国は総合的な国益の観点から無害航行よりもより自由な航行が望ましいという立場に立って、海洋法会議でもその主張を続けておる。ぜひそういう方向に持っていきたい、今後もその努力をしてまいりたい、そういう立場に立っていわゆるわが国国際海峡につきましてもそういう方針領海法をお願いをする、こういうことでございます。
  179. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これは海洋法会議の改定単一交渉草案ですが、これには横浜市大の鷲見先生なんかも見解を実は出しておられるわけなんでありますが、無害通航権というのは領海を持っている国から許可を得なければならないというものではないのであって、当然の権利として無害通航権というのがあるのだ、実はこういう解釈をなされているわけなんであります。したがって、日本の場合におきましては多分にマラッカ海峡が頭の中にあると思うわけであります。もちろん、この前祥和丸の事件というのがございましたが、ああいうようなことをやってもらっては困るというわけでありまして、そういうことでない、つまり沿岸国の平和、秩序、安全を害さない限りということになっているわけでありますから、したがって、要するに、日本領海を設定する場合におきまして、五つ海峡だけは特定海峡にして、そこだけは三海里にしておかなければならないというものではないと私は思うわけですね。だから、私はいま大臣に聞いたわけでありますが、それは、そういうふうにして、ソビエトは超大国でありますから、いま防衛庁の方からお話があったような軍事力を持っているわけでありますから、したがって、魚をとるためにソ連の艦船がそこのところを通ることができなくなる、そうなればソ連も大変困るだろう、だから、その部分ソ連の軍事的活動を制約しないようなことをやるから、ひとつおまえら魚をとらせてくれというような、駆け引きの材料にお使いになっているような気がするのです。領海というのは領土とほぼ同じであって、主権なんであります。主権を譲り渡して魚をとらせてもらうというような考え方がもしもあるとするならば、これは将来に大きな禍根を残すというぐあいに実は考えるわけであります。そういう点で、無害通航権というものは当然の権利としてあるのだとするならば、無害通航にしてやっていく。そうすれば、日本の近海というのはソ連やあるいはアメリカに軍事的に脅かされる心配もなくなりますし、この地帯というのはいわゆる非核三原則が守られ、そして非核地帯というのができ上がっていくのじゃないか。そういう方向で日本の将来というものを決めていかなければならぬじゃないかというふうに私は考えるわけであります。そういう点で政府の方から御答弁をいただきたいと思います。
  180. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 松沢さんがおっしゃっておるのですけれども、いわゆる五つ国際海峡をいま御提案申し上げておるのは、現状に固定するから魚をとらせてくれというような考え方でこの五海峡法案ができ上がっておるというものではございません。この問題につきましては、しばしば申し上げておりますように、総合的な国益の観点、さらにまた日本が海洋法会議主張しておる立場をみずから実践をするという立場でやっておるわけでございまして、いまのような、取引のためにやっておるということは毛頭ないということをはっきりここで明らかにしておきたいと思います。
  181. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 無害通航権に対する横浜市大の鷲見先生の見解をさっき私は述べたわけでありますが、外務省の方ではどうお考えになっているのですか。
  182. 井口武夫

    井口説明員 お答え申し上げます。  無害航行に関しましては、これは確かに長い間かかって築き上げられた海洋法の中で、本来領海というものが全面的に主権の及ぶところでございますけれども外国の船が無害である限りは通すという形の制度でございます。ただ、その無害ということの認定、すなわち、その国の安全、平和、秩序というものに反するというこの認定権は、沿岸国の裁量権の幅が非常に広いという問題がございまして、海外の海域におきまして、タンカーあるいは遠洋漁船というようなものに関しましても、いろいろ海洋国家といたしまして、海洋先進国すべてが、そういう意味で無害航行では不十分だという観点から、先生御指摘のとおり、妨げられない通過通航権は自由に行使するということで、むしろ沿岸国のそういう裁量権を制約するという形で、無害航行よりも自由な航行を認めるという形で、海洋法会議交渉が煮詰まっておるわけでございまして、その点ではやはり無害航行では不十分であるというふうに考えているわけでございます。
  183. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私は、そういう考え方があるから、第三世界の人たちが要するに先進国見解について反対をするという立場になると思うわけであります。考えてみますならば、それは古いところの秩序が崩壊しようとしておりまして、新しいところの秩序が世界的にでき上がろうとしておるわけです。いまその過渡的な段階だと私は思っております。ソ連もアメリカもやはりわがままなやり方をいままでずっと続けてきたわけであります。日本もやはりそういう意味におきましては、それに追随してやってきておるわけであります。それに対して第三世界の人たちの反発を買っていることだけは間違いないのじゃないですか。だから、無害で通航するという場合においては差し支えないわけであります。差し支えないのを何かやろうとするから不便を感ずるのであって、領海を持っておるところの沿岸国に被害をかけたり、あるいはまたその他の損害を与えるような行為をやらないということであるならば、これは一向差し支えないのじゃないですか、私はそう思うのです。何かわがままなことをやろうと思えば、非常に不都合になるのじゃないですか。私はそういう意味で、古い秩序から新しい秩序ができ上がりつつあるという前提の上に立って、日本の海洋政策を打ち出していかない限りにおきましては、日本はやはり孤立する以外にないと思うわけであります。  そういう意味で、この五つ海峡に対して三海里にするなんというような考え方は間違っているし、日本の主権をみずから放棄するものであります。そしてまた、大臣は国益を考えると言う。国益を考えるとするならば、主権を放棄するというのはどう考えてみても、私は国益に反すると思うわけであります。そういう点でもう一回考え方を示していただきたいと思います。
  184. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、こういうぐあいに考えております。わが国は海洋国家であり、海運国家であり、遠洋漁業国家であり、また先進工業国として資源小国でもある。海外に資源を求め、貿易によって国を立てておる。また今後いかなる情勢の変化があっても、日本民族が生き抜いていきますためには、そういう国際環境というものを維持発展をさしていくということを外交の基本にしなければならない、それと同時に、貿易の面におきましても、関税障壁であるとか、そういうようなものをできるだけ取り払って、そして自由な貿易ができるようにする、これが日本の大きな国策でなければならない、私はこのように考えるわけでございます。そういうような観点から、先ほど申し上げたように総合的な国益ということを申し上げておるわけでございます。  しかも、海洋法会議におきましては、日本、アメリカ、ソ連だけが言っているのではない、多くの自由国家がそういうことを主張し、それが海洋法会議のこの国際海峡に対する有力な意見にもなっておる、こういうことも申し上げておるわけでございます。  主権の放棄ということを、もう一点としてお話がありました。私は、憲法に定めるところの国民の権利、これを現状に固定いたしましても、基本的な国民の権利を阻害するものではない、一番関係の深い漁業者につきましても、外国漁船操業からは二百海里法の制定等によって完全にこれを守ることができる、こういうことで補完をしながら総合的な国益を守っていこう、こういうことでございまして、現状に凍結することが日本の主権を放棄する、具体的にどういう面でその主権の放棄ということにつながり、それがどういう国民に大きな不利を与えるか、こういう問題もいろいろ考えてみたわけでございますけれども、私どもの判断によりますと、決してそういう面での国民の権利等についても制約を加えるものではない、国益は十分守られる、こういう見解を持っておるわけでございます。
  185. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 時間が参りましたので終わりますけれども、この領海法の問題は、きっかけが多分に漁業の問題から出発しましてここまで来たわけなんでありますが、とにかく大変困難な交渉というのをこれからも続けていかれると思います。そういう点では、超党派でそれなりにバックアップする、こういうことで党首会談なんかも持たれているわけなんでありますが、せっかくがんばっていただきたいと思います。  ただ、五海峡特定海域、この問題につきましては、私は承服するわけにはまいらぬわけなんでありまして、その点も大臣からやはり十分に検討していただきたい、こう思います。  それから、最後でありますけれども領海法の審議なんでありますから、したがって領海法が適用された場合どういう領海になるんだか、そういう図面くらいはやはり資料としてこの委員会に提出してもらいたい、こういうことを要請いたしまして質問を終わりたいと思います。
  186. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 五海峡に関するところの線引きの図面その他は、すぐに当委員会に提出することにいたします。
  187. 金子岩三

    金子委員長 吉浦忠治君。
  188. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣、大変御苦労さまでございました。  十七日にお帰りになってお疲れのところ、引き続いて委員会で連日大変お疲れのところだと思いますが、お帰りになったときも、水産団体等から、横幕で、大臣本当に御苦労さまでしたというふうな真心からの――大臣のこの問題の対処の仕方というものに、私は大変心から感動いたしているわけでございます。そういうわけで、どうか体にお気をつけになって、またこれからが大変でございますので、ぜひお願いをしたいと思いますが、私は、日ソ漁業交渉の経過と、それから、北海道並びに東北の漁民の方々の救済と、それから、領海にまつわる防衛問題等で、短かい時間ですけれどもお尋ねをしたいと思います。特に、大臣が何か五時からお出かけのようでございますので、なるべく簡潔にしてもらえば早く終わるように私も進めてまいりますので、できれば四時四十五分ごろに終わりたい、こう思っておりますから、よろしくお願い申し上げます。  最初に、大臣が最善を尽くされたその功績というものは私ははかり知れないものがあると思いますが、この交渉が不調に終わった最大の原因を簡潔にお答えを願いたい。
  189. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私の微力のいたすところ、国民の皆さんが喜んでいただけるような結論を得ないで中断して帰ってまいりましたのに対しまして、御丁重な御慰労、御鞭撻を賜りましてありがとうございます。  この日ソ交渉が、代表団の諸君の連日連夜の努力にもかかわらず、いまだ協定文第一条並びに第二条の成文化、この問題が残されておる、その他は全部完了いたしておりますが、中断のやむなきに至ったということは、まさに第一条の問題、つまり北方四島絡みの、領土絡みの問題につきまして適用海域をどうするか、その表現をどうするかということが日ソ間の全く対立点であり平行線であって、この打開がなかなかできなかった、そういうところにございます。
  190. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣モスクワにおいて交渉の途中に心境を話されたのが新聞に報道されておりました。いま北方四島絡みの線引きの問題と漁業の問題との板ばさみで、一ミリか一センチかの余裕しか与えられていない大臣の心境を述べられておりまして、一ミリぐらいのやいばの上を行ったり来たりしているようでは解決はおぼつかないというふうに私も心配をしていたものでありますけれども、結果的には中断のやむなきに至ったわけでありますが、その第四回会談においてソ連側にどんな修正案をお示しになったのかをちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  191. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、あくまで両国の責任者同士で合意いたしましたところの三月三日のあのソ連沿岸に接続する北西太平洋の海域で、かつ幹部会令の適用を受ける海域、これを終始主張をいたしてきたわけでございます。  私からは、一九七七年二月二十四日の閣僚会議決定の適用海域という、あのソ連の原案では絶対にのめないということで、その表現を変えてほしい、こういうことを主張した。それに対しましてイシコフ漁業大臣から示されましたのが幹部会令第何条と、かつ、ソ連の表現は国内法ということになりますが、それによって定められた海域、こういうような表現のものが出てきたわけでございます。私は、幹部会令の第何条という条項を明示し、それとソ連の国内法に従って定められた海域ということであっては結局同じことではないか、閣僚会議決定と同じことではないかということで、これも合意に至らなかった、こういうことでございます。
  192. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、大臣を大変信頼をして申し上げているわけでありますけれども、イシコフ漁業相と大臣の場合、同じ立場ということを離れても、ずいぶん私は親しい間柄であると、こう受け取っておるわけであります。したがいまして、恐らく大臣を除いてはこの交渉はもっともっと厳しかったのではないか。まあ園田特使等の前後から見ましても、大臣に対する心遣いというものがずいぶんくみ取れたように私は思っております。  その中で大臣は、できれば来月の五日ごろに交渉の再開をやりたいというふうに言われておるわけでありますが、どういう案があってそういうことをはっきりと申されたのか、その点をお伺いしたいと思います。
  193. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 最初に、イシコフ大臣とは、私が農林大臣を引き受ける前、在野時代から、日本においでになれば個人的なつき合いもございますし、信頼関係、友情関係もございます。しかしながら、公人としてテーブルにつきますと、ソ連という国はなかなか原則の厳しい国でございまして、特に第一条の問題等につきましては、イシコフ大臣に与えられておるところの交渉の幅と申しましょうか、それは非常に狭いものであるように私は感じたわけでございます。全部、上の方からの指示ないしはそれと相談しなければできない、そういうことを非常に感じ取ってまいりまして、それだけに厳しく受けとめておるところでございます。  そういうようなことで、交渉が、あの段階におきましては、もうお互いに出すべきカードと言うと語弊がございますけれども、出すべき意見というものは相当出し尽くしてあるというような状況に置かれております。しかし、私としては一遍帰国をいたしまして、総理以下政府の首脳また国会の御意見、各政党の御意見等も十分お伺いをして、再度想を練らなければいけない。また具体的にお願いを申し上げておりますところの領海法、十二海里法、共通の土俵づくり、そういう基盤の上に立って再度交渉をした方が、そこに打開策も生まれてくるのではないか、こういうことで考えておる次第でございます。
  194. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 再開後の交渉がどういう形で行われるかというふうな面で大変私も希望を持って質問をいたしているわけでありますが、再び交渉が開かれたとしても、この領土問題が出てまいりますと大変厳しい交渉になりはしないか、こういうふうに思っております。同じ土俵でということで領海法なり二百海里法が急がれているようであります。言うなれば、この農林水産委員会に付託をされまして、法案の審議でなくて政治的な次元における審議の進め方のように感じまして私は心配している者の一人でございます。したがいまして、政治的な判断と申しますか、党首会談等も行われて進められている内容が、その領海法、二百海里法の審議が先にいくのでなくて政治的な判断の方が先にいっていやしないかなというふうな心配をいたしております。したがいまして、領土問題等で大臣が明確に同じ土俵をつくれば交渉はたやすくいくというふうなことでなくて、私が先ほど申し上げましたように、信頼関係の上に、古い伝統とそういう実績を持った中で、イシコフ漁業相の場合は何年大臣をやっていらっしゃるか知りませんが、恐らく二十数年漁業相ではなかろうかと思います。日本の場合には政権がかわるごとに大臣がかわるわけでありまして、どちらかといえば、そういう面からすれば鈴木大臣のような方が、私が冒頭申し上げましたように大変適任であるわけでありますが、今後どういうふうに政局が変わるかもわからないわけでありまして、そういうためにもこの委員会等できちっとしたものを立てておかないといけないのじゃないかというふうに私は思っておるわけです。したがいまして、外務省等から領土問題を譲歩するとか譲歩しないとかいうふうないろいろなうわさといいますか新聞等で騒がれた問題等がございまして、その付近の一致をきちっと見ないと、大臣がどれほど意気込んで同じ土俵をつくったとしてもむずかしいのではないか、そういう面のお考えはどういうふうに持っていらっしゃるか、お尋ねをしたいと思います。
  195. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は交渉に当たりまして常に朝早く五時ごろ目を覚ましますと、自分でその日の会談に臨む構想を練りまして、その後午前九時に大使館に参りまして、大使以下、また本省から派遣をされておりますところの外務省加藤参事官、斎藤条約課長、それに農林省の岡安長官等幹部にお集まりを願って私の考えを述べ、あらゆる角度からそれを検討し御意見をちょうだいをして、これできようは臨むぞと、こういうことで、まさに農林省も外務省も渾然一体になって交渉に当たってきておるわけでございます。その間、重光駐ソ大使ももとより御一緒にいろいろ御相談をしてやってきておるわけでございます。そういう意味におきまして、私は出先の交渉におきましては、外務省と農林省の間にはいささかの、みじんの意見の食い違いもない、また事前にこういう方針できょうの会談に臨むということは東京の方にも御連絡を申し上げ、会談の後にはその経過等も詳細に御連絡を申し上げておる、こういうことでやっておりますし、今後もその体制でやってまいりたい、こう思っております。
  196. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣の心境はよくわかりましたのですけれども、やはり超党派でもってこの問題に当たろうというときでもありますし、同じ政府の中で同一意見が出なければならないような事態のときに、その取り組み方が少し甘いのではないか。いま大臣はそのようにおっしゃいますけれども、現実はそうではない面もあるのじゃないかというようなことを心配しているわけですが、もう一度くどいようですが、大臣お答えを願いたいと思います。
  197. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も交渉をしておりまして、国内における新聞等はしさいに目を通しております。国論の動向、また国会の動き、そういうものもよく注意をしております。と同時に、ソ連側日本のそういう国論だとか国会の模様に大分神経を使っておるようでございます。私が知るときは、恐らくソ側日本新聞の記事等、日ソ漁業交渉に関する問題はしさいに分析をしてきておると思います。日本は世界の中でも一番自由な国であり、言論は縦横無尽でございます。でございますから、今日のような、私が帰ってまいりましてからの国論はまさに完全に一致しておる、国会超党派で御支援を願っておる、こういう体制が今後の交渉に非常に有益である、大きな力になる、このように私は信じております。
  198. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 むずかしい問題でありますけれども、私はいま大臣お答え少し心配をいたしております。と申しますのは、ソ連日本の国内の様子が手にとるようにわかっておるようであります。したがいまして、ここで私どもが発言をいたしておりますのも、だれが反対をし、だれが賛成をしているかまで全部わかっておるようであります。私どもソ連の様子は全然わからないわけでありまして、大臣にその旨を問いながらお尋ねしておるわけでありますが、日本状態は手にとるように相手方にわかり、私どもは何もわからないという中でこういう審議を進めなければならない、相手国のことを進めなければならない。反対をした議員はどういう議員であるかまでチェックされているような状態をも私はちょっと伺いましたが、それは別といたしましても、それほど知られておるのが現状でございます。  私が大臣にお尋ねをしたいことは、イシコフさんのその態度というものも、決して日本に対しては悪意を持っていらっしゃるわけではないわけであります。どちらかと言うと、人間を比べているわけではありませんが、鈴木大臣の方がお兄さんのような立場で話ができるのじゃないかなあというふうに私は思っておるわけです。したがいまして、いろいろな面で指導的な、示唆的な方向づけが鈴木大臣の場合にはイシコフさんに通じるのじゃないかなあと、これは私の考えでございますけれども、そういう考えを持っておるわけですが、この話の最後の、第四回の会談のときにどういうニュアンスであったかをちょっとお尋ねをいたしたい。
  199. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 イシコフさんは三十年も漁業大臣をおやりになっておって、毎年一遍と言ってもいいぐらい日本においでになっておる方でございます。日本の各方面の人とも交友がございましょうし、また、日本漁業の実情というものは一番よく御承知の方でございます。私は、ソ連でも屈指の知日家である、こういうぐあいに評価をいたしておりますし、人間的にも信頼できるりっぱな方だ、こう思っております。でありますから、ソ連の最高指導部から与えられた原則、そして一方においては日ソ漁業問題を何とか円満にまとめていきたい、こういうお考えで非常に苦慮されておられると思います。恐らく日ソ間の漁業問題というのは、日ソを結ぶ友好のかけ橋である、こういうぐあいに評価もされておると思います。私は、イシコフさんの善意と、日本との友好を求めるお気持ち、これはいまもそのとおり評価をいたしておるところでございます。十六日にお別れの午さん会を大臣室でやっていただいたわけでございますが、そのときできるだけ早くひとつまたお会いしましょう。日ソ漁業問題がいつまでもこういう状態であるということは、日ソ友好関係に決してプラスにはならない。自分もその間にEC、ノルウェー、デンマーク等の漁業交渉の問題を片づけてくるから、できるだけ早くお会いをして、そしてこの残された問題は一条と二条でございますから、早くこれにひとつ結論を出したいものだということを心情を込めてお話になっておったわけでございます。  ただいま日ソ漁業条約に基づくところのソ連の二百海里域外のサケ・マスの問題で、わが方の荒勝代表が残りまして、向こうと話し合いをいたしておるところでございますが、この方にもイシコフさんの考え方が大分反映をしておるようでございまして、私は、二百海里の外のサケ・マスの漁獲量あるいは取り扱い等はきわめて近いうちに妥結を見るものだ、このようにも考えております。
  200. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 いま大臣の方からサケ・マスの荒勝、ニコロノフ首席代表の話がありましたので、お尋ねをいたしたいのですが、きょうの三時からでございますか、最後の会談が持たれるということでございますが、どのようになさるのか。訓令を受けた上で中断して帰られるのか、または仮調印なりなさるのか、そういう面を大臣に率直にお尋ねをしたいと思います。
  201. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は基本方針だけは代表団に指示をいたしておりますけれども、すべては代表団の交渉努力に期待をいたしておる、こういう段階でございますが、先ほど申し上げたような空気でもございますので、近く二百海里の外の部分については妥結を見るものであろう、このように期待をしております。
  202. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣、期待ですか、それとも仮調印までいくのでございますか、もう一度お尋ねをしたい。
  203. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は非常に期待を寄せております。
  204. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 政治的答弁というのは非常にむずかしいところがあるようでございまして、私もよくわからないのでありますけれども、そうなりますと、日ソ関係の将来を考えて長期展望に立った場合に、大局的判断に迫られてまいりますが、恐らくソ連の方も――この漁業問題等について、大臣は五日ごろになれば再開の見通しが立てられるのじゃないかということで、いま国内法を急いでおるわけですけれども、そうなりますと、大臣みずから、三度目の訪ソになりますが、お出かけになる御意思がございますか。
  205. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は困難な交渉ではございますけれども、この交渉をまとめ上げるというのが私に課せられた責任だ、このように考えております。     〔委員長退席今井委員長代理着席
  206. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ソ連としても恐らく私は、それほど長く中断をする意思はないんじゃないかというふうに思っているわけです。シベリア開発の問題等から、あるいは先ほど大臣から述べられましたように日ソ友好の問題というふうなことからして、長い期間ではないだろうというふうに思っておりますけれども漁民の方々の心情というのは、これは毎日毎日不安がつのるばかりではないかというふうに思っております。したがいまして、この漁民の方々に対して、操業できなくなったのは、これは何と申しましても政府の責任であります。したがいまして、つなぎ融資の問題でありますとか、あるいはそういう漁民対策等について、いろいろ閣議決定もなされて考えていらっしゃるようでございますが、簡潔にお答え願いたいと思います。
  207. 岡安誠

    岡安政府委員 四月十五日の閣議におきまして、救済対策につきまして了解が出されておりますが、簡単に申し上げますと、三月、四月と交渉中断しておりまして、操業ができない漁船員等の方々に対しましては、いずれ本格的な救済策を講ずることといたしておりますけれども、とりあえず緊急に必要とする融資措置を講ずるということにいたしております。それからまた、関連する加工業等の企業につきましても、調査が届き次第、影響の度合いに応じまして、所要の救済策を講ずるということにいたしまして、現在調査をし、施策を進めている最中でございます。
  208. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 救済問題について、ちょっとお尋ねをいたしておきたい。あともう一、二問、大臣お答えを願いたいんですけれども、その前に北海道の漁民の方々の強い要望等もありまして、雇用調整給付金制度というようなものをぜひつくってもらいたい。水産加工業及び関連輸送業の方にも雇用の安定、労働者の生活安定のために早急に指定業種にしてもらいたいという要望がございますが、この点についてお答えを願いたいと思います。
  209. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、現在雇用対策法並びに漁業者につきましては、漁業再建整備法というので雇用対策も実施できるようになっておりますが、いま御指摘の業種関連の面におきましては、それだけでは対象にならない不十分な点もございますので、これは前向きで検討してみたいと思っております。ただ、法律をつくるかどうか、これはなかなかむずかしい、急を要する問題でございますから、それとは別に関連企業に対する救済措置ということにつきましても、熱意を持って努力したい、こう思っております。
  210. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 同じような項目でございますが、中小企業事業転換対策臨時措置法というふうなものを、いわゆる加工原料の絶対量が不足してまいりました関係もございますし、水産加工業等が営業できないような状態も想定されるわけでありますから、その措置法等の制定も急いでもらいたいし、低金利に対する融資枠等の拡大もぜひ図ってもらいたいというふうに考えているわけでございます。よろしいでしょうか、お答え願いたい。
  211. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほどの問題につきましては、雇用保険法の方で加工業者等の問題は、ぜひ追加してできるようにいたしたい、こう考えております。  その他の、ただいま中小企業関係のお話もございましたが、これも前向きでひとつ検討してみたいと思っております。
  212. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 細かい項目ばかりで申しわけございませんが、漁船員の失業保険金というふうなものも適用していただきたいと思うんです。いわゆる漁船の乗組員の失業保険金の受給というものは、沖合い底びき網漁業、中型サケ・マス流し網漁業等については、その適用がなされていないわけであります。したがいまして、この漁船員の失業保険金受給というものが、やはり生活の面でどうしても、特に二百海里問題等が実現してまいりますと、その乗組員の生活が極度に不安定な状態になりはしないか。そういう面で、失業保険金の受給の適用というものもぜひお考え願いたいと思いますが、この点について……。
  213. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げました雇用対策法並びに漁業再建整備法等でどれだけカバーできるか、またどの部分が外れるか、そういうことをいますっと調査をし、検討いたしております。したがいまして、いま御指摘になったような業種は、なかなかたくさんの漁業者が操業しておる、乗組員が働いておるということでもございますので、それが脱落しないような措置を十分検討いたします。
  214. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間の関係で、大臣になるべく早く私も余裕の時間をつくっていただきたいと思って、大変急いでいるわけでございますが、大臣が十七日の帰国のあいさつの最後の中で、再開交渉の見通しに触れて、国論一致超党派的な支援関係漁業者の忍耐があれば、困難でも必ず妥結に向かうと考える、こういうふうに述べられたわけでありますが、大臣の確信あふれるその言葉に力強さを感ずるわけでございますけれども、何か大臣の心に決めていらっしゃること、また最後のときにイシコフさんが私案を示されたようでありますけれども、もしも述べることができるならばお述べになっていただきたいと思います。
  215. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、羽田空港でいまお話しになったようなことを述べますと同時に、強調した点は、ソ連の最高指導部が日ソ友好関係を維持増進させるために、日ソ関係をどう進めるのか、どう位置づけるのか、これを今後の日ソ関係の維持発展のために最高首脳部でよく考えてほしいんだということを申し上げておるわけでございます。これはモスクワの最高指導部に対して、私が切にそのことを希望しておるということでもあるわけでございます。ここが、本当に日ソ友好関係というものを大事に考えておるかおらぬかということが、結局今度の交渉がうまくいくかいかぬかというまた一つの大きな要素でもあるわけでございます。  イシコフさんの私案の概略につきましては、先ほどちょっと申し上げたようなことでございます。
  216. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣、お忙しいようですから、もう結構でございます。あと、防衛庁関係にお尋ねをしたいと思いますので、時間の許す限りお願いしたいと思います。  領海十二海里の実施によって、領海、海空の拡大をもたらしますが、これに対する防衛庁の対応に変化はないかどうか、また海上保安庁はどういう考え方を持っていらっしゃるかを、まず最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  217. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 防衛庁といたしましては、有事の際の行動というのは領海、領空に限られておりません。したがいまして、有事の際の防衛上の問題というのはないと考えております。  それから平時におきましては、防衛庁が持っておりますのは、領空侵犯措置というのを持っておりますが、現在三マイルの領空で領空侵犯措置をとっておりますけれども、今度の領海法によりましても、それよりも悪くなる状態というのはございませんので、直ちに問題があるというふうには考えていないわけでございます。
  218. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 特定海域の問題等について、同僚議員等から何回も質問が出ておりますが、純粋に防衛上から好ましいものではないのではないかというふうに思います。特に特定海域の設定は、これに伴う領空も特定化することを意味していますし、防衛上からも困難な問題が生じてくるのではないかというふうに思いますが、この点いかがでございましょうか。
  219. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いわゆる軍事行動の面、狭い意味の防衛上の観点からするならば、いわゆる領土が広がって、よその国の艦艇、航空機が自由に動けないところが広がるということは、望ましいことであることは間違いございません。しかしながら、安全保障という観点からいたしますと、いろいろな要素がございます。したがいまして、その軍事的な面というのも一つの要素でございますが、同時に、わが国のような場合には、エネルギーの問題もございますし、食糧の問題もあろうかと思います。  先ほど来大臣の方から御説明がございましたように、全体の国益から判断して五海峡というのが現状のままということになったわけでございまして、いまお話にございましたけれども、現状のままということはいまより悪いということではないわけでございます。したがいまして、私どもはそういう受けとめ方で、従来と変わりはないというふうに判断いたしておるわけでございます。
  220. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 中でも津軽海峡を含む特定海域の設定は、特定空域の設定となるわけでありまして、他国の航空機も領空を侵害しない限り自由に飛行できるわけであります。  そこで伺いますが、現在津軽海峡公海上における他国の航空機の飛行は、どういう実態かをお尋ねをしたいと思います。
  221. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 最初に申された点が、私どもの認識とやや違う点があるかと思いますが、津軽海峡は現在三海里でございまして、現在の状況と変わらないということでございます。そして、この三海里以外の公海上をジェット機のようなハイスピードのものは、なかなか領海を侵さなく通るということはむずかしいと思われまして、現在までのところ、ソ連の軍用機が津軽海峡の上を通過したということはございません。
  222. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今後の問題として、津軽海峡上空のソ連の軍用機の飛行問題が発生するのではないかというふうに私は見ておりますが、この見通しについてどうでございましょうか。
  223. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 それは、現在議論されております海洋法の議論の結果に待たなければならないと思いますが、私どもはその際も現状より不利にならないように望んでおります。  そしてまた、今度の領海法におきましてあすこを三海里に残しておくということは、現状と変わらないということでございますので、三海里で残ってもあすこをジェット機が通るというようなことはほとんどない、まずないというふうに判断をいたしております。
  224. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 特定海域における公海上において、第三国間同士の艦船等による紛争が生じた場合、漁民等、わが国被害を受けた場合にどうするのかをお尋ねをしたいと思います。
  225. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 いまの御質問は、領海の外でよその国同士が紛争を起こして、それが及んできたということで、これは現在でも領海の外の場合にどうなるかということになると思いますが、その場合に、一つの判断といたしまして、暴力的な不法行為によってわが国民の人命、財産が危険であるというような判断のときには、現在の自衛隊法の八十二条の発動によりまして、警備行動を実施することができるようになっております。  それからまた、それがわが国の安全に直接侵害があり、そして侵略ということになりますと、防衛出動ということになろうかと思います。
  226. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 想定の話をしてはどうかと思いますけれども、頻繁にソ連の軍用機が飛行するような状態になった場合に、航空自衛隊の体制というものは現体制で支障がないかどうか、人員の面あるいは整備等の面においてお尋ねをしたい。
  227. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 それは非常にむずかしい問題でございますが、現在でも、平時におきまして一日に一回、全国的に見ますとスクランブルに上がっているという状況でございます。これが大幅にふえるということになりますと、やはり、現在の十個飛行隊、十八機の編成でもって二十四時間常に二機が上がっていける状況になっているわけでございますが、その回数がさらにきわめて多くなるということになりますと、その待機する飛行機の問題あるいはパイロットの問題、そういうことがあろうかと思いますが、少なくとも現在の三海里に凍結しておくというだけではそういう事態になるとは私どもは考えていないわけでございます。
  228. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 海上保安庁と、また海上自衛隊の方でございますか、航空の方でございますが、やはり領海が広がるという問題については、これは相当研究なさっているのではないかというふうに思います。  私は、先ほど申し上げましたように、第三国との紛争が起こった場合に、当然領海が広がるわけでありますので、その領海内におけるいわゆる他国の侵犯等が、潜水艦でありますとかいろいろなものが逃げ延びてくるような場合も起こってくるでありましょうし、そういう問題で防衛庁はどういうふうに判断をなさっているのかお尋ねしたいと思います。
  229. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 これは領海法の問題のときにも政府の中でもいろいろ議論されました。しかしながら、御承知のようにわが国の体制といたしましては、平時におきます領海内の不法行為につきましては、海上保安庁がその責任を負っているわけでございます。したがいまして、いま申されましたように、十二海里になり、さらに二百海里の漁業水域ということになりますと、当然海上保安庁が第一義的な責任を負うわけでございますが、私どもの方といたしましてもいろいろな面で御協力はできるというふうに考えております。たとえば、御承知のように海上自衛隊は公海上で訓練をいたしております。したがいまして、そういうときに不審船舶を発見するというようなことになりますと、それを直ちに海上保安庁の方に連絡をするというようなこともできると思います。あるいはまた、日本漁船が二百海里の中で不審に思われる外国漁船などを発見して、それが海上保安庁の方に情報として上がってまいりますと、私どもの方の飛行機に連絡がございますと、直ちにその地域を監視するというようなことも可能でございますし、そういった意味で、海上自衛隊は公海上で常時訓練をいたしておりますので、その間、現行法の範囲の中である程度御協力ができるというふうに考えておるわけでございます。
  230. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 過日の田村運輸大臣答弁によりますと、海上保安庁の能力で十分に対応できるというふうなことを大みえを切っていらっしゃるようでありますが、「わが国の海上保安庁は航洋力を有する巡視船が一〇〇隻程度で、固定翼航空機も十数機、巡視船は鈍速で武装はゼロに近い」こういうのでありますから、これでは四百五十万平方キロに及ぶ経済水域の維持というものは非常にむずかしくなってくるんじゃないか、こういう点でお尋ねをいたしたい。
  231. 鈴木登

    鈴木説明員 お答えいたします。  大臣の方からお答えいたしましたのは恐らく――私ども三百十隻の巡視船艇を全国に配置してございます。そのうち約百隻近くが大型巡視船、その他が小型の巡視艇ということでございます。航空機につきましても、ヘリコプターそれから固定翼を含めまして三十四機を全国に配置しております。特にこれから十二海里あるいは二百海里対策といたしましては、その巡視船艇、航空機を全国ばらばらに全域に配置するという必要もございませんので、いろいろ水産庁の方あるいは漁業組合の方と連絡をとりまして、重点海域というものは決まっておりますので、その重点海域にいま申し上げました巡視船艇、航空機を配備する、そういうことで十分やっていける。なお、やはりより充実させる必要がございますので、五十二年度予算におきましてもかなりの充実を図っておりますし、それから先につきましても、なおこれから整備を図っていきたい、検討したいというふうに考えております。
  232. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 主要国の中で沿岸警備隊を持たないのは日本だけじゃないかというふうに思うのです。アメリカにおいても沿岸警備隊を持っておりますし、そういう面でどういう考え方を持っていらっしゃるかをちょっとお尋ねをしたい。
  233. 鈴木登

    鈴木説明員 先生の質問の沿岸警備隊とおっしゃいますのは、米国のコーストガードのことだと思いますけれども、世界の主要国はコーストガードのようないわゆる海岸を警備する警察隊のようなものを持っております。これはソ連におきましてもあるいは韓国におきましても持っております。世界で一番大きな勢力を持っておりますのはアメリカでありますし、わが国の海上保安庁は世界でいわば二番目の規模のコーストガードでございます。
  234. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、急ぎます。  農林省関係にお尋ねをいたしますが、本来北方領土というものは日本固有の領土でありながら、いろいろいま問題が起こっているわけであります。同僚議員が質問いたしておりますので、なるべく重複することは避けますが、現在は、現実の問題として北方領土ソ連の占有下にあるわけでありまして、その北海道と北方領土の間の海域というものが日ソ両国に管轄されているような状態であります。その管轄の基準となっているものは何なのか、そのような基準がないとしたならば、いままで同地域における日本漁船ソ連に拿捕されている限界は北海道沿岸から何海里というふうになっているのか、明快にお答え願いたいと思います。
  235. 鈴木登

    鈴木説明員 北海道周辺において拿捕されておりますのは、いわゆるソ連領海内でございます。
  236. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 何海里となっているかをお尋ねしたのでありますが、領海内というのは何海里内に入り込んでいるかどうかを……。
  237. 鈴木登

    鈴木説明員 ソ連領海は十二海里になっております。
  238. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 十二海里内で捕らえられておる問題ではないわけです。もう少し明快に答えてもらいたい。
  239. 鈴木登

    鈴木説明員 北方四島周辺におきましてはほぼ三海里以内のところで拿捕されてございます。その他のところにつきましては十二海里以内というふうな感じなのであります。
  240. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 安全操業の問題がどうなっているかが北方漁民の方々の重大な問題です。力がないというふうなことで一蹴されたのでは――日ソ友好ということで、基調になるべきものが友好問題だけで、いま日本は力ずくのものがないわけでありまして、力よりも強いのは私は友好だと思っておるわけです。もう少し明快に、そういう面の交渉なり何かを政府は責任を持たなければいけない。そういう点でもう一度責任者の方から、何海里のところで操業すれば拿捕されないというふうな明快な線があるわけじゃありませんか、お答え願いたい。
  241. 鈴木登

    鈴木説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御質問は、現実に大体どの辺の海域日本漁船が拿捕されておるのかという御質問だと思いまして、そのとおりお答えしたわけでございますけれども、私どもいままでの過去の拿捕地点というものを存じておりますので、漁船に対しましては、従来その辺で拿捕されておるからその辺に余り立ち入らないようにというふうな指導をやっておるわけでございます。
  242. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ちょっと時間がありませんので先へ進みますが、銚子沖の調査を私はしてまいりました。銚子沖におけるソ連船の操業状態は余りにも横暴であります。仮に十二海里の領海法が成立をいたしましても、大陸だなと申しますか、イワシとかサバ等が生息をしている地域は十二海里内でなくても多いわけでありまして、二十海里程度のところにソ連漁船が五、六十隻ひしめいているわけであります。言うなれば、日本漁船は夜になれば帰ってまいります。夜でなくても一たんは帰るわけでありますが、そうして翌日、多分この付近がたくさんの魚群の集まるところだということで乗り出していきますと、そこにはほとんどもういなくなっている。ところが、ソ連船のいるところは必ず魚群が集まっているということで、先ほどのイシコフさんの話じゃありませんけれども、ずっと続いて漁業に従事していて、ほとんどその場所から魚群を追っかけている、そういう操業をやっている船団、そこへ日本の小型漁船が参りましてもはじき飛ばされてしまう。ですから、日本領海のところからまず二十海里近くまでの間に日本船団がいるし、そのソ連船団の先にまた日本船団が行くというふうに、まるで力ずくのところには危なくて寄りつけなくて――被害状況は時間の関係で述べられませんけれども、大変悩みながら操業しなければならないという問題したがいまして、政府は、領海法、二百海里法を決めなくても、もう少し何とか打つ手はないものかどうか。そういう問題は長い間の懸案であると言いながら今日まで漁民の方々のその不安を一掃するような対策は実に手ぬるい。そういう面でも少し誠意のある答弁をしていただきたいと思います。
  243. 岡安誠

    岡安政府委員 私どもも、ソ連船の日本近海におきます操業が非常に頻繁になってきた、多数を占めてきたということによりまして、沿岸漁船被害をこうむり、その被害も非常にふえてきたということは、非常に残念に思っているわけでございます。  しかし、従来はともかくもわが国領海は三海里でございまして、三海里以遠は公海ということでございますので、ソ連と話し合いをいたしましても、公海上の漁業であるということでなかなか話し合いの余地がなかったわけでございますが、四十九年度の被害の多発にかんがみまして精力的に交渉いたしました結果、五十年の末に日ソ漁業操業協定というものができたわけでございます。この操業協定では操業の仕方といいますかルールをつくりまして、わが国の網その他につきましては標識をつけるとか、船の航行についても基準を設けるとかいうことによりまして被害の発生を防止する。そのような規則のほかに、損害があった場合の処理の規定が書かれているわけでございます。これで現在処理をいたしておりますが、今回御審議を願っております十二海里領海、これができれば、少なくとも千葉県沖におきまして現在被害をこうむっておりますタコつぼ等の漁業、これはほぼ十二海里以内でございますので、この被害は防止ができる。それから廃棄物等による汚染の問題につきましても、十二海里以内ではソ連船の操業ができませんのでそれも除去できると思います。ただ十二海里以遠になりますと、漁業水域ではございますが一応外国船操業につきましては国と国との相談によりまして秩序ある操業は認めるというたてまえでございます。ただ、十二海里以遠の水域におきましても今後御提案する法案の中では、水産資源の保護、それから漁業調整のために必要がある場合には一定の区域につきまして外国船漁業を禁止をするということもできることになっておりますので、それらの点を十分勘案をいたしまして秩序ある操業ができるように、わが国漁船も円滑に操業ができるように配慮をしてまいりたい、かように考えております。
  244. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 くどいようですけれども日ソ漁業操業協定の中で、現実に被害を受けていらっしゃる方々のお声を聞きますと、網を切られたからといってすぐにその問題が――それを現実にソ連の船が証明をしないと証拠にならないということでありますが、ソ連がそういう自分たちが被害を与えていながらそれを認めるわけはないわけでありまして、かん詰めの空きかんからベルトコンベヤーまで捨てております。要らない網は全部捨ててしまうというふうな状態です。無秩序と言っていいと思うのですが、そういう状態で補償を求めたとしても、その委員会がソ連まで来い。モスクワで協議するからモスクワまで来い。先ほど同僚議員の方から質問がありましたけれどもモスクワまで行ってその裁判をやっていたのではらちが明かない、そういう現実の問題、八百件あっても何件も処理できないという現実の問題が起こっているのに、政府はただ数の上だけ、いま検討しているとか、いま起こった問題だからこれから必ず前向きにやっていきますというようなことですけれども、そういうなまぬるいことでなくて、もう少し現実的に、どういうふうにすれば早急に漁民の方々が安心できるような体制がとれるのか、漁民の立場に立って考えなければならないし、ただ机の上だけで操業協定ができているから大丈夫だという考え方ではなくて、十分な検討を要することではないかと私は思います。  最後に、時間になりましたので、北方領土のような例は他にないかと言えば、先ほど同僚議員の質問の竹島、尖閣列島の例がありますが、これは二月の五日に参議院の代表質問にお答えになった福田総理大臣が、領海十二海里は竹島も尖閣列島も当然だと言われて、その後少し中身が変わってきたような答弁もあったわけであります。不安な点がございますが、この領海十二海里の設定はどうなっているのか。特に竹島は韓国側が建物を構築して監視体制をとっていると言われていますけれども、こういう点に対して政府はどのようにお考えになっていらっしゃるかお答え願いたい。
  245. 井口武夫

    井口説明員 これは領海十二海里拡張に伴いまして当然竹島にもそれが及ぶということでございます。
  246. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に御要望をして終わりにしたいと思いますが、行政組織を繁雑にすることは公明党は決して望むものではありませんけれども、水産資源は国民生活を支える有力な食糧資源であります。したがいまして、世界の七分の一の水産高を上げている日本が、その行政機関において、水産庁長官を前にして大変失礼でありますけれども、長官が力がないという意味で私は申し上げているのじゃないのです。水産庁を水産省に昇格をして、いわゆる同じ土俵でと言うならば二百海里法だけが同じ土俵じゃないでしょうし、イシコフさんも漁業相でありまして、日本も担当の水産大臣なりいわゆる専門の漁業相というものが必要になってきた時代ではないか。これはソ連の問題だけじゃない。対外的な問題だけじゃない。これからは二百海里法が制定され、もちろん領海法が制定をされた後も、国内における操業問題は大きな問題になろうと思います。いわゆるソ連さえ問題が片づけばいいという問題じゃありません。いわゆる大船団と小規模ないわゆる小型の船による紛争等が今後は起こるでありましょうし、こういういわゆる戦国時代のような時代が来るかもしれません。したがいまして、秩序ある専門の大臣を必要とするようなときが来ているのじゃないかと私は思っております。行政を拡大しようという意味じゃありませんけれども、そういう点で担当の専門家を、いわゆる水産省というものを設置すべきときが来ているのじゃないかと私は考えておりますし、この点をできるならば水産庁長官お答え願って、私の質問を終わりにしたいと思います。
  247. 岡安誠

    岡安政府委員 どうも私の答弁でいいかどうか非常に疑問に思いますけれども、事務当局としてお答えをいたしたいと思います。  先生の御意見が、現在のように多事多難といいますか、非常に分野が広くなってきた現情勢に対応して、水産庁の事務処理機能を整備拡充すべきであるという御意見なら全くそのとおりでございまして、私どもも現時点に対応するようにしなければならないと考えております。ただ、行政機構を庁から省に格上げしたらどうかという御意見、私ども別に格上げすることに反対ではございません。ただ、格上げしなければ何もできないかという点になりますと多少意見もあるわけでございます。私どもといたしまして、水産専門の庁ではございますけれども、最近の事務を処理いたしてまいりますと、国内事務でもそうでございますし、特に対外的な交渉段階におきましても水産だけで対応し得ることばかりではございません。むしろ第一次産業といたしましての農業、林業と合わせて水産業が外交の分野でともに共同歩調をとるということ、これが非常に必要な段階をしみじみ痛感をいたしております。むしろ外交の面におきましては、いろいろ本日、また昨日来も御質問がありましたとおり、農林省だけで交渉ができない面もたくさんあるわけでございます。むしろ分野を特殊化することが対外的な交渉力を強めるのか、それとも弱めるのか、これは大いに検討をすべき事柄ではなかろうかというふうにも考えております。しかし、ともかく私どもといたしまして、非力は十分痛感をいたしておりますので、今後さらに力を蓄えるように努力はいたしたいと考えております。
  248. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 しっかりがんばってください。
  249. 今井勇

    今井委員長代理 次回は、明二十一日木曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時八分散会