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1977-03-22 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二十二日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 美濃 政市君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    熊谷 義雄君       染谷  誠君    玉沢徳一郎君       中野 四郎君    羽田野忠文君       平泉  渉君    森   清君       森田 欽二君    小川 国彦君       岡田 利春君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       馬場  昇君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    吉浦 忠治君       津川 武一君    菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君  出席政府委員         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         林野庁長官   藍原 義邦君         林野庁林政部長 小笠原正男君  委員外出席者         環境庁長官官房         参事官     宇野  佐君         水産庁研究開発         部漁場保全課長 森川  貫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     津川 武一君     ————————————— 三月十九日  北海道の昭和五十二年産米事前売り渡し限度数  量適正配分に関する請願芳賀貢紹介)(第  一六三〇号)  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願外四件  (田川誠一紹介)(第一六七九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  松くい虫防除特別措置法案内閣提出第二六  号)      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  松くい虫防除特別措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田健治君。
  3. 柴田健治

    柴田(健)委員 松くい虫防除特別措置法案に関連をして質疑をいたしたいと思いますが、与えられた時間内で質疑を終わりたいと思いますので、ひとつ簡潔にお答えを願いたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいのは、この法案国有林公有林民有林、この三つ日本の二千五百万ヘクタールの山林原野面積の中で、どこに、民有林重点に置いて考えた法案なのか、国有林公有林含めて全部一括に含めてこの法案を考えて立法措置をしたのか、この点まず聞いておきたいと思う。
  4. 藍原義邦

    藍原政府委員 松くい虫によります松の枯損につきましては、先生十分御存じのとおり、全国で百八万立方程度のものが枯損いたしております。そのうちの百万ちょっとが民有林でございます。国有林は約五万程度でございまして、ほとんどは民有林でございます。したがいまして、私どもといたしましても、この特別措置法案につきましては、主体は民有林という形になります。しかしながら、やはり松くい虫の防除をいたしますためには民有林国有林一体になりましてやらなければこの蔓延を防げませんので、個所によりましては国有林民有林タイアップしてやる個所もございますけれども被害そのもの性格から申し上げますと、民有林中心と申し上げていいのではなかろうかというふうに考えております。
  5. 柴田健治

    柴田(健)委員 問題は、この松くい虫というのは運び屋と、そして材線虫という線虫被害、この位置づけをどうしておるのか、われわれその点が疑問なんですよ。ただ、特別防除で空散ができるようにすると、空散はもう運び屋だけを対象にする。線虫対策というのになると、また別の考え方に何か観点を置かなければならぬのではなかろうかという気がするのですが、これは一貫性がある。けれども、これは目に見えない、肉眼では見えないものを虫と言えるかどうかという気がするわけですが、線虫に対しての位置づけ運び屋に対する位置づけ、この点を明確にしておかないとあいまいになってくるという心配がある。人間で言えば、赤痢だとか腸チフスというのは目に見えない菌なんですね、虫ではあるけれども菌だ。ところが、線虫肉眼では見えない。これに対する位置づけをはっきりしないと、われわれの立場から申し上げると、運び屋は別として、線虫はとにかく植物伝染病だというような位置づけをすべきではないかという気がするわけですね。この点の位置づけはどう理解しておるのか。
  6. 藍原義邦

    藍原政府委員 私ども試験研究の結果、ただいま全国蔓延しております松の枯損につきましては、最終的な原因は、マツノザイセンチュウが松の樹体内に入りまして、樹脂細胞等に大量にこれが発生するために松が枯損するという研究結果がわかっておりますけれども、それを運びますのがマツノマダラカミキリであるということ。一般的に、いま先生一種伝染病ではないかとおっしゃいましたけれども病気の場合でもその病原菌を運ぶ媒体というものがございます。たとえば蚊を退治いたしますと、ある一種病気がなくなるということもございましょうし、それと同じように松の枯損につきましても、マダラカミキリマツノザイセンチュウを運びまして松を枯らすという一つのメカニズムが研究されております。したがいまして、私どもといたしますれば、最終的にはマツノザイセンチュウを松の中で繁殖しない方法を考えればいいのかもしれませんけれども、松の樹体の中でこれが生活をいたしますために、これにつきましてはまだはっきりわかっておりません。今後いろいろ研究しなければいけない問題が多々ございます。当面、いまその運び屋でございますマダラカミキリ撲滅いたしますれば、マツノザイセンチュウが運ばれることがなくなりまして松の枯損がなくなるという、そういう形でマツノマダラカミキリをまず撲滅するという方途をとりまして蔓延しておる松の枯損防除しようというのがねらいでございます。
  7. 柴田健治

    柴田(健)委員 問題は、伐倒駆除という意見がある。終戦後われわれは伐倒駆除をやったのですが、伐倒駆除線虫が入ったやつを伐倒して駆除するわけです。これも有効適切なんです。ところが、それだけでは、運び屋が依然としてたくさん飛んでおるということになればこれはどうにもならない。その点、運び屋撲滅した方が線虫撲滅されるのか、線虫を先に伐倒処理でやったら、マダラカミキリが何ぼ飛んでおってもこれは影響ないのか、その点どちらが大切なのか。われわれには伐倒駆除というのが一番いいということも言えないし、と言うて、この方が効果があるのか。  もう一つは、注入方式をやったらどうかという意見もちらほら出ておるのですが、その場合に、空散の場合の効果と伐倒駆除効果と、そして注入効果、この三つのうち特に焼却駆除というのが一番いいようなんですが、焼却というのがまた大変なんですね。われわれはやった経験がありますが、とにかく一山を全部伐採していくというのが一番いいのでありましょうけれども、松の枯損は中に飛び飛び枯損するわけですよ。それをかき分けるわけじゃないが、山の中に入ってそこだけをねらって切ってくるということは、切った木を引き出すのが大変な作業なんです。そういう作業をわれわれみずからやった経験から見て、どちらが一番やりやすいものかという一つの悩みが出てくるのですが、林野庁としてはどういう見解を持っているか。
  8. 藍原義邦

    藍原政府委員 松くい虫の被害原因がはっきりいたしません時代におきましては、伐倒駆除中心にしてこの撲滅を図るという対応をしてまいりました。しかしながら、伐倒駆除ではなかなか対応ができない、また松くい虫の防除が年々広がってまいります、そういう経過の中で研究結果、松くい虫が運ぶマツノザイセンチュウが松の枯損原因であるということがわかりました。そういう研究結果と被害広がり等両方を勘案いたしますと、ただいまたとえば松の被害の状況を見ますと、材積で四十八年に九十万立方でございましたのが、五十一年には大体百三万立方になるであろうというように推定されております。この倍率は一・一四倍でございます。それに引きかえまして面積の方は、四十八年に十七万ヘクタールでございましたものが四十二万ヘクタールになっておりまして、その倍率は二・四倍でございます。材積的には一応ふえてはおりますけれども微増傾向の横ばい、ところが面積はきわめて急増いたしております。これは松の枯損全国的に非常に大きな広がりをもってふえてきたということでございまして、これでは伐倒駆除だけではなかなか対応できない。また、伐倒駆除そのものは技術的には病気にかかりましたものの対応でございます。ところが、マダラカミキリが運びますマツノザイセンチュウ蔓延を防ぐためには、病気にかかったものに対応するのではなかなか間に合わない、やはりその事前予防策というものが何よりも必要であろうというように考えております。そういう両面から、私どもは、この広がった松の枯損を何よりも早く終息させるためには予防がまず大事であるし、予防のためにはヘリコプターによる空中散布、これが現時点では一番適応しておるというように考えておりますが、あわせまして、個所によりましては伐倒駆除等も併用することもございます。  それから先生のおっしゃいました木に注入する方法等のこと、これにつきましてもただいま研究しておりますけれども、いまの研究段階では十センチ内外の小径木では効果を示すということはわかっておりますけれども、大径木についてのこれからの問題についてはなお研究をしなければいけない問題もございますし、またこの大量のものを一本一本注入するということは、言うべくしてきわめて困難な問題がございます。したがいまして、先ほど申し上げました四十二万ヘクタールに及ぶ大面積被害をまず何よりも終息させるためには、まず予防重点を置いてこれからの蔓延を防ぐということを第一義にわれわれとしては考えておる次第でございます。
  9. 柴田健治

    柴田(健)委員 いま長官は、線虫撲滅には予防ということを考えて空散をしたい、実際は撲滅というのは伐倒駆除で、伐倒して焼却という両面をやった方がより一層効果的だ。空散は予防である、本当の撲滅は伐倒駆除というのが最終でなければならぬというように受け取れる、そういう答弁のように聞こえたのですが、そうですか。
  10. 藍原義邦

    藍原政府委員 私が申し上げましたのは、被害が微害になれば伐倒駆除処理対応できるであろう、しかしながら、いまのように大量に発生しておりますときには、一本一本伐倒駆除と申しますのは言うべくして不可能でございます。さらにまた、伐倒駆除というのは病気にかかったものを処理するのでございまして、病気にかかるまでの対応ということになりますと、やはり薬によりまして病気にかからないような対応をすることが何よりも必要だろうと思います。先ほど先生おっしゃいましたように、一種伝染病的な性格のものであるとすれば、よけいその予防に精力を注ぐことがわれわれとしても必要だと思いますし、そういう意味から薬によります防除、これをまず第一義的にわれわれは考えておる次第でございます。
  11. 柴田健治

    柴田(健)委員 環境庁長官お見えになったからちょっとお尋ねしておきたいのですが、環境庁は、自然保護環境保全人間の生命に影響するものをいろいろ守っていくという、そういう最大の任務を持つ機関であるということはわれわれは理解しておるのですけれども、この松くい虫の法案について長官閣議決定前にいろいろと意見を出されました。新聞にも報道されましたが、時間がございませんから簡単にお答え願いたいのですが、環境庁から林野庁の方にこういうことをしてほしいという五項目要望事項が出されております。この要望事項の中で、法案の第三条の「基本方針」の中に、とにかく環境保全に十分配慮するようにという希望意見が出ておる。この点で具体的にはどういうものを希望しておるのか、これが第一点。それから、今日までこの松くい虫が相当蔓延しておるわけですが、その間環境庁は自然を守る立場でどういう調査をしてどういう助言指導をしてきたのか、これが第二点。そしてまた、たとえば山火事が起きる、山火事は自然も環境も全部破壊するのですが、日本ほど山火事や火災が多い国はない。この山火事に対して環境庁は今日まで自然保護環境保護についてどういう関心を持って関係機関にどういう要請をしてきたのか。この三点をまず長官から聞いておきたい。
  12. 石原慎太郎

    石原国務大臣 お答えいたします。  今回、松くい虫の防除のための薬を散布する、その薬をまく結果、松くい虫は除去されましても、他の昆虫が死んだり、あるいは養蚕でありますとか養蜂にいろいろな影響を与えるということも言われておりましたし、そういった意味では、松は救われるにしても、その副産物として他の環境条件が損なわれたり、あるいは他の自然条件をもとにした仕事が阻害されたりすることがあってはならないということで、そういう意味自然保護という条項を加えて申し込みをしたわけでございます。  それから、事前にどのような調査が行われていたか、また山火事についてのいままでの環境庁姿勢につきましては政府委員から答弁させていただきます。
  13. 信澤清

    信澤政府委員 第一の問題は、ただいま大臣が御答弁申し上げたようなことでございますが、そのほか、まだ私どもとしては薬剤散布に伴う人間に対する被害、こういう問題も環境保全上の問題だというふうに考えております。この点は農林省の御理解をいただいております。  それから第二番目に、事前にどんな調査をしたかという点でございますが、率直に申し上げまして組織的計画的にこの問題の対策について私ども調査研究いたしたことはございません。ただ環境庁が、各省庁研究機関等につきましていろいろ環境保全上の研究をおやりになるという場合に、予算を一括計上しまして後で移しかえております。たしかその中で林業試験場その他にこの問題について研究予算を組んだことがございます。  それからもう一つ。私ども自身国立公園の管理をいたしておりますので、国立公園内部の問題といたしましては、いまの先生お話しの伐倒焼却の問題あるいは薬剤地上散布、ちょっと空中散布まで経験ございませんが、そういった個々の事例についての経験なり調査はいたしております。  それから山火事の問題は、大変申しわけございませんが、先生おっしゃるように山火事に関連して他の省庁にいるいろ申し上げたことはございません。
  14. 柴田健治

    柴田(健)委員 環境庁日本列島全体の環境保全について常時関心を持って監視というか、それぞれの機関連絡をとりながら自然保護に全力を挙げていかなければならぬ任務がある。人がやろうとするとどうだこうだと言うその以前の問題として、基本的に自然保護にどういう助言をすべきかということは平時から調査をしておかなければならぬと私は思う。それなのに、四十二万ヘクタールにも蔓延してきたこの松枯れの問題これに対して環境庁は一片の調査もしていないというのはおかしい。だから、たとえばどこの県ではどの地域が何年度に発生した、そして何年度にはどの辺まで広がってきたというくらいは調査をしておくべきではないか。それによって関係省庁とこの話し合いを常時しながら、どういう駆除をしたらいいのかということは平素から取り組んでやるべきである。それができないで何が環境庁かという疑問をわれわれは持たざるを得ない。その点、今後の姿勢について、長官はいままでこの至らぬところをどう反省をして改善をしていこうとするのか。その基本的な姿勢をまず聞いておきたい。
  15. 石原慎太郎

    石原国務大臣 御指摘のとおりでございまして、実はこの松くい虫の法案が問題になりました時点で調査が非常に未徹底だったということを痛感いたしまして、散布されます以前に本年度において環境庁なりの調査をいたさせております。そしてまた、散布が行われました後も何らかの方法環境庁としての調査をするつもりでございます。
  16. 柴田健治

    柴田(健)委員 われわれは農民立場から言うと、この間、参考人石原参考人という国家公務員の愛媛大学の教授が言われたのですが、ダニのことも言われた。われわれはダニだとかアブだとかブトだとか、まあ山林原野にいろいろな虫がおるわけですが、正直に言うて、この虫によって農民は非常に苦しんできた。ダニが牛にたかったら牛の成長はとまってしまうし、毛色は悪くなるし、話にならぬ。アブでも二十七種類ぐらいおるわけですが、そのアブ人畜にどういう影響を与えておるか。それは昆虫学者から言うと、虫というのは全部大事だということを言われるでしょう。けれどもわれわれ農民立場から言うと、一方では気象条件で苦しめられて、一方では鳥や虫でいじめられて、一方では時の政府権力者によっていじめられる。それこそ四面楚歌の戦いの中で日本農民は生きてきた歴史を持っている。われわれは、人畜影響があるかどうかということが基本にならなければならぬし、人畜影響があるとするならば、環境庁山林であろうと田畑であろうと何であろうと農薬を全面禁止する運動を起こしたらどうかという気がする。人畜に与える影響がある、当然あるでしょう。それだからわれわれは、あなたが言われる人畜影響があるとするならば、もうあらゆる農薬を全部とめる、使用禁止をする、そこまで踏み切って運動を起こさないと、環境庁任務というものは果たせないと私は思う。その点について長官はどう考えるか。
  17. 石原慎太郎

    石原国務大臣 しかし、そういう極端な論を出しますと、やはりそれによって損われる、たとえば農民方々も非常に御迷惑されますでしょうし、今回の松くい虫の場合にも松を救うことも大事でございますけれども、また一方、この散布に非常に懸念を持たれる方々が、それによって自然のサイクルと申しましょうか、その中で必要な他の昆虫までをよけいに殺してしまうおそれがあるということで非常に懸念を持たれて、陳情おいでになって、二律背反に苦しんだわけでございます。でございますから、そこのあんばいというものをいかにとるかということで、環境庁ならず農林省の方も御苦労なさっていると思いますので、自然保護という見地から農薬を全部廃止するというような極端な論は環境庁としても持ってはおらないわけでございます。
  18. 柴田健治

    柴田(健)委員 まあ長官も忙しいようですから、もう一点聞きますが、環境庁生物——われわれの立場から言うと、この法案については選択を迫られた法案だと思っているのです。生物が大事なのか植物が大事なのかという選択を迫られた法案だ、どちらを取るべきか。生物も大事だが植物も大事だ。どちらが大事かということで、われわれはいま政府当局から選択を押しつけられている。どちらを選ぶか。生物重点を置くべきか植物重点を置くか。環境庁としてはどちらに重点を置かれるのか、まずこの法案に対しての見解を聞いておきたい。
  19. 石原慎太郎

    石原国務大臣 当面松の被害が非常に進んでおりますので、これをここで食いとめるということの意味では、環境庁見解としても、選択としては今回松をとったということになると思います。  実は環境庁がこの問題につきまして五項目の申し入れをいたしましたのも、直前に自然環境保全審議会委員をしていらっしゃる中村さんを指導者にされましたグループの方々が、本来なら林野庁に伺われるべきものだと思いますけれども環境庁の方へおいでになりまして、私もその陳情をつぶさにお聞きしまして、それぞれ論にいわれのあるところと思いましたので林野庁の方へ御紹介し、そこでお話し合いをいただきまして、ある部分については了解をいただいたわけでございます。そういう意味で、現況松被害がここまで進んだ段階では、環境庁としても当面松を救うということを第一義に考えたということでございますが、しかし一方では空中散布をすることでいろいろな被害副産物としてもたらされる、それを最小限に食いとめる必要もあると思いましたので、環境庁見解を添えたわけでございます。
  20. 柴田健治

    柴田(健)委員 もう長官はお帰りになってよろしい。  次に、林野庁にお尋ねしたいのですが、この間石原参考人に、朝日新聞に出ておるのを私ちょっと聞いたのですが、五万ppmというのは大変な濃度なんですが、実際こういうものをやったところがある。これが正式に新聞にも出、本人の口からも言われ、しかも国家公務員の大学の教授ですよ、これはもう信用できると思うのです。こういう方が発言し、文書に書いたことについて一われわれはどうしても常識的には考えられぬ、五万ppmというのは。こういう濃度は累積を計算して発表したのか、どこでどうなったのか、その確認林野庁はすべきだと思う。この点についてお聞きしたい。
  21. 藍原義邦

    藍原政府委員 ただいま先生が御指摘されました五万ppmは、石原参考人が高松の高校の先生がそういうことを言っておられるという話をされたというふうに私聞いておりますけれども、申しわけございませんがその先生との連絡がとれませんで、まだ確認はいたしておりません。しかしながら五万ppmというのは私どもも使っておりませんが、一般的に五万ppmというのは、たとえば家庭でゴキブリを退治するために使いますスプレー、あの中に入っている液体はたしか五万ppmでございます。それから私どもが現在使っておりますスミチオンは大体三%の液でございますので、三万ppmのものを噴霧状にいたしまして使うことにいたしております。したがいまして、これが噴霧状になりました場合、空気中で例をとりますと、空気中に大体一ヘクタール当たり一.八キロ散布することにいたしておりますが、二十メートルのところから投下いたしますので、空気中では大体〇・〇〇九九ppmぐらいになるであろうというふうに考えております。それからもしこれが一立方水中に落ちたといたしますと、〇.一八ppmぐらいの水中濃度になろうと思います。しかしながら水の場合はそれがそこに停滞しておるわけではございませんし、一般的に流れますので、さらにもっと薄まるというふうに考えられます。それから土壌十センチの厚さの中にもし落ちたような場合には一・八ppmでございますが、これも土壌十センチの中に落ちましても分解が非常に早うございますから、落ちました当初は濃いかもしれませんが、すぐにこの濃度は薄まるというふうに考えております。したがいまして、五万ppmというものがどこから出たか私たちよくわかりませんけれども、非常にその辺につきましては、参考人の御発言については、ある意味誤解をされておられるのではなかろうかというふうにわれわれ考えております。
  22. 柴田健治

    柴田(健)委員 私はどうも、林野庁がいままでいろいろな調査研究というものが足らないから、いろいろな人々が自分の研究したことをどんどん出して、そういういろいろな誤解を与える、それぞれの学者がそれぞれの立場見解を言う、その点、農林省として重大な責任があるのではなかろうか、そういう気がするのです。この点について、もう少し農林省責任を持って、明快に指導なり説明なり何でもできるような、そういうものをちゃんと持っておらなければいかぬと私は思うのですね。この点について私は大臣に、ちょっと見解を聞いておきたいのです。
  23. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農林省といたしましても、林業試験場その他農林省関係機関を動員いたしまして調査研究もし、また四年間にわたって実験的に実施もやりましてその成果をおさめてきておるところでございます。しかし、農林省としては、政府機関だけでなしに、民間各方面の御意見等に対しても耳をかすだけの必要があるということで、いろいろ各方面の御意見等を伺っておるわけでございますけれども、しかし基本的には、柴田先生御指摘のように、責任官庁である農林省がもっと確信のある研究等について各方面に対して明確にこれを周知徹底せしめるという努力が必要である、このように考えております。
  24. 柴田健治

    柴田(健)委員 大分調査しておられると思いますが、今日まで空散をやったところもあるわけですから、そういう地域、また農薬全体、薬剤散布における土壌汚染、そしてまた作物汚染、水質汚染、そういう汚染度、それから後遺症として、後遺症論が大分出ておるわけですから、その残留性における後遺症というものはどういう形で、どういう関連をもっておるのか、そういう研究をしておられると思うのです。今度の空散に伴ってそれぞれに対応する調査機能、どうせ環境庁はあの申し入れを受けて調査報告しなければならないのですから、そういう調査機能はどういうことであるのか。いままで調査したのはこうだとか、そういう点の見解を聞いておきたい。
  25. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 いま御指摘の問題でございますが、まずスミチオンについて残留性の問題が問題になろうかと思います。作物残留性につきましては、農林省環境庁がずっと調査報告をしてきたわけでございまして、食品衛生法に基づきまして各作物内の残留基準が〇・二ppmということに決められておるわけでございますが、それに対応して、どういう使い方をすればどの程度残留するかということを調べてまいりまして、それに基づいて作物に対します残留の安全性というものを確保するためにこの薬剤の使用方法というものを決めておるわけでございます。使用期間なり使用回数というものは決まっております。したがいまして、こういう形で使われる限りにおいては安全であるということが言えるわけでございます。また土壌残留性の問題では、環境庁がまとめた資料がございますが、スミチオンについて見ますと、半減期が長いもので二十二日ということになっております。これはいまは使っておりませんが、かつて使いましたBHC、DDTなどが、半減期が三年とか四年という期間でございまして、これに比べて残留性が非常に少ない、分解性が早いということが言えます。また、農作物一般によく使用されます有機燐剤であるダイアジノン、これが半減期が八十四日という結果も出ておりまして、これに比べて四分の一程度であるということで少ないわけでございます。なお、水中におきます残留性につきまして農林省は委託調査で千葉県で調べた結果がございますが、これによりますと、松くい虫防除のための使い方ということでMEPをまいたときに調べた結果がございますが、これによりましても、これは散布後三日までの間、計九回、サンプリングを行いまして河川中のMEPの定量分析をしたわけでございますが、その際に検出されました濃度につきましても、最大で〇・〇〇一四ppmというような数値が出ておりまして、二十四時間たてばほとんど検出されないということで、分解性が早いということが報告をされております。かような調査結果がございまして、適正使用をすれば残留性も少ないし安全である。なお、人体に対しまして、慢性毒性で発がん性ないし催奇形性があるかどうかというような問題につきましても、スミチオンの登録の際に審査をしておりまして、これにつきましては発がん性も催奇形性も認められておらないということでございます。
  26. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣、今日松くい虫の空散だけでなしに、放牧場も空散をやっておる。これは畜産局が助成を出してやっておる。それから、いろいろなことで空散をやっているわけですね。その空散をやっておる牧野改良はもう相当奥地なんですが、奥地においてどういう指導をしておるのか——私たちは、余り多い空散をやるなよ、こう言うのだけれども、いや、もう空散をやらぬと、とても牧草のいろいろな病害虫の駆除ができないのだ、手動であるとか地上散布であるとかというものはもうとてもできないということで空中散布をやっておる。これらの空散について、いままで農林省に対してどういう意見が出てきたのか、どういう見解というか異議が出たのか、住民からどういう意見が出てきたか、一遍でも出てきたことを聞かれたことがあるかどうか、まず大臣にその見解を聞きたい。
  27. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま柴田先生御指摘の奥山等における牧草地に空散をしておるということに対する組織的な苦情なりそういう陳情等は、私、就任以来まだ聞いておりません。しかし、松くい虫の場合は、先ほど柴田先生御指摘になりましたように、最近における激害、また蔓延状況というような事態に当面いたしまして、まさにこれは伝染病的な角度で、緊急かつ計画的にこの防除を空散によってやる必要がある。また、従来の森林病害虫防除法等によって命令でやっておりましたものを、直接農林大臣あるいは都道府県知事が責任者になってこれを実施をするというようなことが必要である。こういうぐあいに私は認識をいたしております。まさに伝染病的な問題として、緊急かつ早期にこの被害を終息させなければならない、このように考えておるところでございます。
  28. 柴田健治

    柴田(健)委員 一方では大気汚染説も出ておる。われわれはどうも大気汚染説は疑問を持っておるのですけれども学者は大気汚染説を盛んに言うのです。それで、この大気汚染説と松くい虫との関係、たとえば植林をして十年、二十年、三十年、五十年、松というものは案外ほかのものには強いけれども、虫には弱いということはわれわれよく聞いてきた。けれども、自然に枯損をしていく松、そしてまたほかの病害虫でやられる枯損率、そういう率の問題はいままで林野庁はどういう調査をしてきたか。それから大気汚染説をとられると、どうせこの地域は大気汚染の地域だからもう何を植えてもだめだ、こうなったら森林法の指定から解除しなければならぬ。林野に地目変換しなければならぬ。地目変換の申請が出たら拒否できない。公害説をとるとそういうことになってしまう。また、売買、乱開発が起きる可能性が出る。だから大気汚染説をとるということは、大変な将来の見通し等を考えて農林省はこれをはっきりしないと、これは大変な事態になってくるという心配がある。その点について大臣はどういう見解を持っておるか。
  29. 藍原義邦

    藍原政府委員 松の枯損につきましては、マダラカミキリという媒体によりますマツノザイセンチュウばかりでなくて、一般的には、樹木でございますから、老齢過熟になりますと恒常的に枯損するものもございますし、または風害等によりまして挫折あるいは根返りというような形で枯れる場面がございます。また、寒冷地等の方にいきますと、ツチクラゲという菌によりまして根腐れが起こりまして枯れる場合もございますし、またマツケムシという毛虫類がございますが、ああいうもので葉が食われまして枯れる場合等々ございます。  したがいまして、松の枯損というのは恒常的にはいろいろな形で枯れる場合があるわけでございますけれども、今回大量に発生しておりますものは、試験場で発生地をそれぞれ検査いたしまして、マツノザイセンチュウがその幹の中にいるということを確認いたしております。そういうことで、これはマツノザイセンチュウによる樹脂その他の流動の停止による枯死であるというふうにわれわれ考えておりますが、大気汚染の問題につきましても試験場ではすでに前からいろいろ研究いたしております。  その研究によりますと、たとえば昭和五十年、五十一年度におきましてマツノザイセンチュウを接種いたしまして、それに〇・〇五ppmあるいは〇・二ppmの濃度の亜硫酸ガスを長時間薫煙いたしまして実験いたしております。その結果によりますと、〇・二ppmの場合には、亜硫酸ガスの薫煙区では枯れの進み方が薫煙しない区に比較いたしまして、一、二週間早くなっておりますけれども、六週間後には逆に薫煙しなかった区の方がかえって枯死木が多いというような試験結果も出ておりますし、〇・〇五ppmの場合では、亜硫酸ガスの薫煙の影響はほとんどなかったということも試験結果で出ております。  このように亜硫酸ガスと松の枯死という問題につきましてはいろいろ言われておりますが、今後さらに研究、解明しなければいけない問題はあろうかと思いますけれども、松が確かに亜硫酸ガスに弱いことは言われておりますが、そのために松が全滅するという事態はいままでも発生しておらないと思いますし、また今回の大枯損は、先ほど申し上げましたように、マツノザイセンチュウによる枯損であるというふうにわれわれ考えております。  それから薫煙を処理しなかった場合の実験でございますけれどもマツノザイセンチュウを千頭以上接種した場合には八〇%近いものが枯死してしまっております。こういう観点から見ましても、ただいま大量に枯死しておりますのはマツノザイセンチュウであるというふうにわれわれ考えておるわけでございます。  それから先生がおっしゃいました、では松の枯損状況はどうなのかということでございますが、これにつきましては、非常に申しわけございませんが、従来、松を植えますのは、先生御存じのとおり三千本ないし三千五百本植えますけれども、その後、劣勢木だとか被圧木だとか枯損木、そういうものを切ってまいりまして、六十年ぐらいになりますと大体三百本程度になるのではなかろうか。それで八十年にはどのくらいになるかということを調べたのがございますけれども、その場合でも、八十年になりますと大体二百五本ぐらいで、大体〇・八%ぐらいは老衰等によるいろいろな問題で枯損するのではなかろうかというデータが現在ございまして、それ以外にはいまのところ調査した例はございません。
  30. 柴田健治

    柴田(健)委員 場所によっては風害や雪害や、またいろいろな形で枯れていくのもある。そういうものはやはり平素から地域的には調査しておかないと、これから人間の知恵が発達してくるといろいろな意見が出てくる。林野庁はそれに対応するだけの権威のある、そういう自信の持てるような説明ができるそういう資料を用意しておかないと、人に言われるとじきによろめいていくようではみんなが疑問を持ってくるのです。今度の法案で実施要綱というものが具体的に細かく決められると思うのですが、実施要綱の中で、風速によって、たとえば五メートル以上の風速の場合、それは地上十五メートル、三十メートルということでメートルによって風速が変わってまいりますけれども、この風速まで実施要綱の中には基準を入れるのか。ただ防除作業員、防除員に対する予備訓練をさせていくのか、何日間訓練させるのか、どういう講習をさせていくのか、またどういう形で健康診断をさせていくのか、それから作業員についてはどういう作業衣を着していくのかとか、そういうきめの細かい基準というか、そういう実施要綱を明確にしないとなかなか理解ができないのではないかと、こう思うのですが、この実施要綱の中で主にどういうところを重点にきめの細かいやつを決めていこうとするのか、考え方を明らかにしておいていただきたい。
  31. 藍原義邦

    藍原政府委員 空散をいたします場合、農林省の農林水産航空事業実施指導要領というのがございます。それに大体地上一・五メートルの位置におきます風速が秒速五メートルを超えるときには空散を行わないというふうに決められておりまして、私どもといたしましてもこれを遵守するつもりでおります。  それから、ちなみに申し上げますと、空散いたします場合に空中で非常に微粒子になりますけれども、私どもがまきますスミチオンの微粒子は大体二百ミクロンから四百ミクロンぐらいの大きさでございまして、いま申し上げました秒速五メートル以下でまきました場合には、この粒子であるならば目的地以外にこれが飛散することはない、そしてこれが目的物に的確に落下するという実験データになっております。  それから、実施要綱に決めます問題は、いま先生がおっしゃいましたように、私どもといたしましても非常にきめの細かい実施要綱を考えております。  例を申し上げますと、たとえばどういう機種を使うのか、あるいは散布の装置はどうするのか、航空従事者に対してはどういう対応で技術訓練をし、さらには健康上の留意をするか、あるいは散布区域はどうするのか、散布資材はどうするのか、また散布量はどういうふうにするのか、輸送量はどうやってやるか、散布時期はどうするのか、散布の飛行方法はどうするのか、その他必要な事項につきましては、散布従事者の心得、薬剤の取り扱い、散布後の措置等々、安全の万全を期する意味におきまして、飛行から薬の取り扱いからその前後の措置まで的確に、この仕事に当たる者が十分認識し得るような方途を考えて基準をつくりますし、また、それぞれの実施する県におきましても研修会あるいは訓練、指導等を十分的確に行いまして、安全につきましては万全を期してまいる考え方でございます。
  32. 柴田健治

    柴田(健)委員 この空散については時期の問題があるのですが、もう都道府県から——何県は何月の何日ごろからやるという大体の計画がいまからなされておると思うのです、時期を選ぶことが必要ですから。そういう計画が現在上がってきておるのかどうか。たとえば五月の末から始めるところがあるだろうし、六月になって始めるところもありましょうが、ただ足並みをそろえるといったって気象条件がいろいろ違うし、だからそういう計画が上がってきておるのかどうかという問題が第一点。それから、要するに倉林業行政は——農林大臣によく聞いてもらいたいのですが、いままで林業行政は国有林を主体に物を考えてきた。ここに大きな落とし穴というか手落ちが起きたと思うのです。民有林に対してただ治山関係だけを少しやる、林道関係を少しやるだけであって、要するに山をつくる、造林という考え方を都道府県に対して一つ指導していない。これから山をどうつくっていくかということを考えなければ、植林だけしたら山がつくれるものじゃない。植林も造林の一部門だ。間伐を含めて山の掃除をどうさせていくのか、松くい虫の病害虫対策をどうしていくのか、植林をどうしていくのか、計画性が一つもない。なぜこんな欠陥を生む。昭和二十九年に地方自治法を改正して、あなたらが林務部を廃止してしまった。人口二百万以下のところは林務部をなくしてしまった。そのために、今日造林行政に対する、山をつくる行政が一つもなされていない。都道府県の林務行政が十分指導性が発揮できるような機構の問題について何ら指導していないところに大きな問題があると私は思う。たとえば自然保護の問題は、各都道府県に環境部をつくらして、時代の花か知らないけれども、思いつきで環境部をつくったかどうか知らないけれども環境部へ自然保護係を入れてしまって、手足のないものが自然保護できるはずがない。なぜ林務行政の中で自然保護係としてそういうものを残さないのか。そういう矛盾を各都道府県は皆持っている。この機能を発揮させるような機構改革にどういう助言をこれからしていこうとするのか、まず大臣にこの点を聞きたいのです。  それから、補助率の問題われわれは植物の法定伝染病として位置づけをしろということを長年言うてきた。私は四十二年からこの松くい虫の問題を何回となくこの委員会で質問をいたしました。それからもう普通の公共事業の補助率ではだめだ。とにかく予備費を使ってでも思い切って財政投資をして駆除しないと大変なことになるということを何回となく申し上げた。ことしこれだけやります、来年またここをやります、とにかく普通の公共事業のように年次別に計画を立ててやる、こんなことだったらもう広がるのはあたりまえのことなんです。蔓延するのはあたりまえのことだ。だから、予備費を使っても思い切って駆除対策をやるという位置づけをするのが正しいと私は思う。今日までそれを信じてきた。それをやらなかった。そして普通の森林病害虫防除法じゃできないのなら、立法措置をやるなら立法措置をやる。今度の補助率を見ると三分の二に上がる。けれども基準をどうする、補助金の中身、先ほど実施要項の中でこういうことをやります、こう言われた。その点について算定基礎をどうしていくのか、人件費をどのくらい見るのか、そういう諸雑費の中でどれとどれと見ていくのか、そういう補助要項についてわれわれはまだ疑問を持っている。ただ補助を上げるからやりなさいというのではなしに、国が全責任を持って思い切って財政投資をすべきだと思う。こういう考え方に立っているのですが、この点についての見解を聞きたいのです。
  33. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 林務行政についての御質問がございました。森林・林業は国民経済の中でも木材の供給等大変大きな役割りを果たしておりますし、また自然環境の保全あるいは水資源の涵養、そういう公共的な使命も持っておるわけでございまして、最近国有林民有林とを問わず、この公益的な機能ということも非常に高く評価をされてきておる段階でございます。したがいまして、県によりまして林務部等の廃止もなされておるところもございますけれども、しかし最近における国民の世論というものが、森林・林業に対して公益性を含めて非常に高まっておるという状況を踏まえまして、今後林務行政が十分これらの目的に合致するように指導してまいりたい、このように考えております。  なお、補助基準等の問題につきましては、林野庁長官から説明をいたさせます。
  34. 藍原義邦

    藍原政府委員 補助率の問題でございますけれども、補助率につきましては先生御指摘のとおり、現行法では二分の一のものを特別措置法につきましては三分の二ということでただいま御審議願っておるわけでございますが、一般的に言いまして、災害に対応しております治山事業の補助率も三分の二でございます。したがいまして、この松くい虫の防除のための補助率を、一般の気象災害によります治山事業の補助率よりも高めるということは非常に困難ではなかろうかというようにわれわれは考えておりますが、その補助率の算定基準におきましては、私ども雑費を含めまして十分検討いたして対応いたしておりますけれども、さらにこれにつきましては今後とも努力してまいりたいと考えております。
  35. 柴田健治

    柴田(健)委員 三分の一だとか三分の二だとか二分の一だとか、補助率の基準はそれぞれ決めてある。ところが実際は実態に合ってない。だから結局地方負担分がふえておる。それから補助率の枠内に入れるものと入れないものが出てくる。その点は、今度の法案についてはそういうことをしないように、全部あらゆる品目、地方公共団体が要請したことは算定基礎の中に入れる。そして適正な価格でこの率を出していく。たとえば賃金でもそうです。山で働くということは大変なことなんです。普通では働けない。山に行けば作業衣は破れる、いろいろな形で山の作業というものはそう簡単にできるものではない。空散ができる地域とできない地域の配分を、たとえば二十ヘクタールの山を空散でやるけれども、ぐるりは民家があったり、いろいろな関係でできない。その場合にどういう処理をするのか、都道府県の計画の中で出てくるだろうと私は思う。その前に一律に空散でということで割り切ってしまったのでは、これはもう部分駆除であって、全体の駆除をしたとは言えないと私は思う。  それから、都道府県が出してきた要望については、本件に関する限りは全部算定基礎に入れます、こういう姿勢があってほしいのですが、あるかないか聞いておきたい。
  36. 藍原義邦

    藍原政府委員 私ども補助の内容につきましては、その実態に合うようにできるだけ現在も努力いたしておりますし、今後とも努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  37. 柴田健治

    柴田(健)委員 最後に、この法案の修正意見も出るわけです。たとえば三条だとか五条だとか七条だとか八条だとか、いろいろ修正の意見も出てくるのですが、われわれは七条、八条、問題は損害補償、十分に気をつけて注意をしてこの害を出さないように、被害を出さないようにやりますということが法の文章に書いてある。それだけ書く限りはその裏がなければいけない、補償というもの、損害賠償というものがなければならない、その点について見解を聞いておきたいのですが、補償のあり方、損害賠償のあり方についてどういう考えを持っておられるのか。それから法案の修正をやるというとあなたはのまぬと言うでしょう。出した案は結構ですというわけにいかぬから、それは拒否される答弁だろうと思うけれども、われわれは修正するか、思い切って附帯決議をつけるか、これから結論を出していかなければならぬ、そういうことをわれわれは考えておるわけです。とにかく大臣にお聞きしたいのですが、この補償の問題について一つだけ聞いておきたいのです。
  38. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私どもは、基本的には空散によりまして、人畜はもとより自然環境等に危被害を与えないようにということで、県やまた実施いたします地区の地域住民等と十分協議をいたしまして、また薬剤被害等に対する安全性の問題等につきましても十分説明をいたし、理解と協力を得ることにあらゆる努力を傾けてまいる考えでございます。  しかしながら、もし空散等によりまして被害が出たというような場合におきましては、国家賠償法によってその賠償の責めに任ずる、そのためにヘリコプターの運転士等も公務員としての責任ある立場においてこれを実施してまいる、このように考えておるところでございます。  なお、法案の修正等の御意見があるやに伺うわけでございますけれども、ただいままでの当委員会の御審議の経過等を私拝聴しておりまして、私どもこの立案に当たりましてそういう点についても十分な配慮をいたしたつもりでございます。特に環境保全の問題等につきましては、基本方針でもそれをはっきりするつもりでございますし、いまのところ当委員会の皆さん方の御理解、御協力によりまして、法案の修正等がなくとも十分御心配の点が確保できる、こういう気持ちでおる次第でございます。
  39. 柴田健治

    柴田(健)委員 わかりました。
  40. 金子岩三

    金子委員長 竹内猛君。
  41. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 松くい虫の防除特別措置法案について、もうすでにわが党の多くの委員の質問があり、同時に参考人あるいは合同の委員会も開いたりしていろいろと進めてまいりましたし、わが日本社会党は現地調査を行って、現地の実態も調査をしてまいりました。そういう中で、いままでの質疑の中でまだ多くの点についてたださなければならない点があります。こういうことをただしながら、誠意ある答弁を得ることによってこの問題を処理をしていかなければならない、こういうふうに考えておりますが、これからの何点かの質問について、関係者の誠意ある答弁を求めたいと思います。  まず第一に、森林病虫害防除法に基づいて今日までいろいろと病虫害の処理をしてきたわけでありますが、特に松枯れの問題については、マツノザイセンチュウ、その運搬者であるマツノマダラカミキリが主たる原因であるということを四十八年から確認をし、これに対していよいよ空散防除の方式をとらなければならない、こういうぐあいな形で提案をされている。特に今度の特別措置法案は五年間ということで立法を試みたのは、現在までの法律では、私有権があり、松くい虫という単に所有者の松の山だけではなくて、他の所有者の山、または国有林公有林にも影響を及ぼす、こういう関係からして、国の責任と費用によって、受忍義務を負わせて空中散布という方法によって実施をする、こういうように理解をしていいのか、この法案の立案をした前提の概略についてはそういうふうなものでいいのか、まず確認をしたいと思います。
  42. 藍原義邦

    藍原政府委員 法案の考え方としては、先生がいまおっしゃいましたとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、一刻も早くこの蔓延した松くい虫の枯損を防止するために、受忍義務を森林所有者等に与えまして国並びに都道府県が直接執行いたしまして、早急にこの松くい虫を退治しようということでございます。
  43. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 法案に対する考え方は大体一致をしておりますが、しかしこの法案は大変不幸な出発をしているというふうに私は考える。この問題は、そんなに重要な法案であるにもかかわらず、今日までたとえば山の所有者あるいは森林組合等々からは強く松くい虫の処理法案というものをつくってもらいたい、あるいはこうしてほしいという要望はない。本委員会ではしばしばこの松くい虫の質疑が行われましたが、それがない。ところが、農林省がこの法案を出すや否や、森林組合なりあるいは自治体から強くこれを実行してほしいという要求が出ました。これを見ると、やはりいままで自治体の費用や分担でやっていたその防除を国の費用によってやる。つまり金が欲しいからだというような受け取れ方もしないわけではない。金さえもらえばいいんだという考え方にならないとも限らない。この点についても、なぜいままでこんな重要な、四十万町歩以上の松くい虫の蔓延があるにもかかわらずそういう声が出なかったかということについては、一体どういうことに考えたらいいのか。
  44. 藍原義邦

    藍原政府委員 松くい虫の被害につきましては、このメカニズムがわかりますまでは、主として伐倒駆除中心にしてやってまいりました。しかしながら、試験場の研究成果によりましてこのメカニズムがわかりまして、それ以来過去四年にわたりまして実験的に空中散布をやってきたわけでございます。ところが、材積的には四十八年に比べまして約一・一四倍の被害でございますけれども面積的には二・四倍の大きな被害になっております。ということは、被害の量として地区的にまとまってなくて、これがだんだん大きくばらばらに広がっておるということ、そのために個人個人の命令ではなかなかこれは対応できないということ、こういうことがこの四、五年の間にわかりまして、都道府県等につきましても、従来から早く何かこの対応を考えてほしい、ことに空中散布という方法はいままでやった方法ではございません。新しい方法として考えられた方法でございます。したがいまして、そういうものをやるためには、やはり個人個人の命令ではなくて、まとまった一つの計画に立って基本的な方法で一致してやりませんと、個々ばらばらにやられたのではこの対応はできないということが、この空中散布方法について各県やってまいりました結果わかってきたわけでございます。したがいまして、県の要望はここ数年来私どもの方には非常に強く上がってきておりました。しかしながら私どもといたしましても、いままでやりました結果を十分踏まえて、どうやったらできるのか、どうやったら一番安全に確実にできるのか、その辺の実験データその他がまとまりますまではなかなかこれにも踏み切れなかったわけでございますし、それがやっとある意味でまとまりましたので、ここでこういう方法で、新しい特別措置法というかっこうでやろうというふうに考えたわけでございまして、先生がおっしゃるように、確かに県とすれば金がよけいある方がいいということはこれはあたりまえでございますけれども、そういうことではなくて、やはりいま私が申し上げましたような、計画的に、そしてまとまりを持って、一つの国全体あるいは県まとまって、一つ方法によって撲滅していきたいという要望はきわめて強いということで、その陳情その他が盛んに行われていたというふうにわれわれ理解いたしております。
  45. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次に、環境庁にお伺いしたいわけですが、先ほど石原長官もここに見えて柴田委員の質問に対して答えをしておりますが、この法案を提出するに当たって、二月十四日に環境関係の団体から強い申し入れを受けた。そして環境庁では十五日に提出すべき法案について、これに対する異議を唱え、そして二月十八日に五つの要望をつけ加えて、この法案の提出に同意をしたということになっております。このことは間違いないと思うけれども、それは事実かどうか、その点についてまずお伺いします。
  46. 宇野佐

    ○宇野説明員 先生いま御指摘のとおり、十四日に自然保護団体、これは先ほど長官も申し上げました中村さんほかの方でございますが、参られまして、陳情がございました。これは事実でございます。環境庁長官の方ではその段階でこの方々の御意見林野庁の方に聞いていただこうということで御紹介いたしまして、翌日林野庁の方でいろいろ御意見を聞かれたというふうに承っております。十五日の閣議の件でございますが、私どもの方ではその当時この法案が正式に閣議にかかっている、十五日の閣議にかかるというふうに伺っていなかったわけでございます。  それから、十八日でございますが、これは御指摘のとおり農林大臣環境庁長官の方から五項目の件について申し入れをしたということはそのとおりでございます。
  47. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その五項目の点についての先ほどの長官の話、石原長官は松を守るのは大事だということを言われたわけですが、やはり松を守ることは大事だが、同時に、それに関連のある人命なりその他の虫なり、チョウなり、いろいろなものに対しても非常に大事だ、こういうふうに言われているわけですが、この法案に関する限りは第三条に関する問題であって、環境保全ということは具体的にどういう意味であり、それに対する処置というのはどういう処置なのか、環境保全と処置について、その内容の具体的な問題……。
  48. 宇野佐

    ○宇野説明員 環境保全の問題でございますが、私どもはこの空散の実行に当たりましては環境保全に十分注意をしてやっていただきたいということでございまして、これを法案の第三条に基づいて作成されます基本方針に具体的に書いていただきたい、こういうふうに申し入れをしております。このことについては農林省の方でも書くというふうに了解されておるはずでございます。この環境保全の内容につきましては、水質汚濁、土壌汚染、その他の公害関係がございます。それと、さらに自然保護の問題を含めまして、私ども環境保全と呼んでおるものでございます。  実行の措置でございますが、これは基本方針が作成されますと、この法律によりまして関係行政機関に協議されるということになってございます。私どもの方にも当然協議がございます。したがいまして、そのときに当然チェックされるわけでございますし、問題はないと思っております。さらに実行につきましては、林野庁並びに環境庁の方から、それぞれの県の担当部局がございますが、こういう方に通達を出しまして、現場の方におきましても意思疎通を図り、そごのないように指導してまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  49. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これについて林野庁はどういう……。
  50. 藍原義邦

    藍原政府委員 環境保全に配慮するということにつきましては、これは当然のことでございますし、法律上は第三条に基づきましてつくります基本方針にはっきりとうたう予定にいたしておりますが、今回私どもが行います松くい虫の防除そのものは、確かに森林の木材資源としての価値を維持させるためのものもございます。しかしながら、先生方御存じのように、たとえば宮島だとかあるいは天の橋立だとか、その他防風、防潮林だとか、その付近の生活しておられる方々の生活環境を維持するために現在植えられております、あるいは現在生立しております森林を保護するためにこの防除をやるわけでございまして、環境の保全を維持するためにこの松くい虫防除散布をやるのだということで、考え方としては私どもは同じだと思います。そういう意味からも、この点については十分対応してまいりますし、基本方針にはっきり明記することにいたしております。
  51. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次いで、これも環境庁に関係がありますが、特殊鳥類生息地、貴重な動植物の保存地とはどういう鳥類で、どこに、あるいはどういう形で存在をしておるかということについての具体的な要望があるのですから、それについては具体的なものがあるはずだから、その地域とそれから種類、これについて明らかにされたい。
  52. 宇野佐

    ○宇野説明員 お答え申し上げます。  特殊鳥類といいますのは、「本邦又は本邦以外の地域において絶滅のおそれのある鳥類」として、特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律というのがございますが、これに基づきまして、総理府令で定められているトキ、アホウドリ、ライチョウ、タンチョウ等の二十八種類の鳥類を特殊鳥類と言っておるわけでございます。ただ、特殊鳥類の中で松林に関係のあるものとなりますとぐっと少なくなりまして、新潟県の佐渡のトキ、あるいはわが国の中部の山岳地帯に主として生息しておりますニホンイヌワシあるいは沖繩本島の琉球松の林に生息するホントウアカヒゲ、この三種類ぐらいではないかと考えております。この中で実際に松くい虫の被害が出ておるかどうか、こういう問題がございますので、たとえば新潟県等ではまだ出ていないというふうに聞いておりますが、これらの特殊鳥類の生息地に松くい虫の防除のための空中散布はやらないようにしていただきたい、こういう申し入れをしたところでございます。  それから貴重な動植物の保存地区でございますが、これは具体的に申しますと、自然環境保全法で指定いたします自然環境保全、地域の野生動植物保護地区等が当たってくると思うわけでございますが、現在これらにつきましても、実際現地に当たりまして、被害の状況、こういうものを調査中でございます。具体的にはまだどこの何というふうには私どもの方でも申し上げられない段階でございます。
  53. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 かなり抽象的なことであるだけに——しかし、世の中はそういうような見方じゃないですよ。ああいう申し入れをすると、あたかもどっかにそういう大問題が起こっていて、これは大変だというふうに受けるわけです。だから、評論家の集まりじゃないんだから、そういうような申し入れは慎重にやってもらわなければ実際困る。まずそういうことについて環境庁に注意をしなければならない。申し入れをするのにはよほどしっかりした根拠でもって申し入れをしてもらわなければ、どこにどういうものが住んでいて、これは絶対必要なんだ、守らなければいけないのだ、こういうことにしてもらわないとまずいと思いますから、今後もこれは注意をしなければいけないと思います。世論を沸き立たすのは結構だけれども、そういうことじゃ余り意味がない。そういうところは防除しないでほしいということだと思いますから、それはいいです。  その次の問題は、薬剤散布における山林所有者とそこの居住者との関係、こういう問題が大変重要な問題になってまいります。大体山の周辺に住んでいる者がその山の所有者であるとは限らない。たとえば、東京のある金持ちがある地域の山を持っている。こういう形で所有権というものとそこに居住している居住者の居住権というかあるいは生活権というか、これは一致をしておりません。ところでこの法律によると、空中散布をする場合には、所有者はこれに対して異議を唱えることはできる。しかし、居住者あるいは生活権を持っておる者は、それに異議を唱えるということは、何か物を言うことはできないことになっておるのでしょう。まずその点はどうですか。
  54. 藍原義邦

    藍原政府委員 法律上所有者が異議を申し立てることができるようになっておりますのは、七条で受忍義務を与えております。したがいまして、受忍義務を与える以上、やはり私権を制限するわけでございますから、それに対しまして異議の申し立てができるような規定を設けたわけでございます。  ところが、先生いま御指摘のございました、居住者の問題でございますけれども、これは先ほど来御説明いたしておりますけれども、私どもこの空中散布をやります場合には、県にはそれぞれ連絡協議会等設けまして、関係行政機関あるいは関係市町村、さらには関係住民の代表の方々等に入っていただきまして、実施計画をつくる前あるいは後に十分御意見を承るという方途を考えておりますし、さらにまた実施をいたしますそれぞれの地域につきましても、その地域地域におきましてPRあるいは説明会等々をやりまして、十分御理解をいただいてやっていこうというふうに考えておる次第でございます。そういう点で、地元の方々の御意見等は十分反映できるというふうに考えておりますし、さらに私どもがやります空中散布は、先ほども申し上げましたけれども、要はその地域にございます、いわゆる森林の公益的機能であります環境保全等を十分高めようというのがねらいでございます。そういう点でねらいは同じでございますし、私どももその辺につきましては十分配慮して、対応する心構えでございます。
  55. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題は第一条というか、基本目的の環境保全という項目と、それから、いまの——所有者が物を言うことはわかる。これは当然のことだと思うんですが、こういう権利があるかどうかは別にしても、そこに生活をしている者は、そこで生活している従来の権利がある。あるいはまた居住をしてきた権利がある。というのは、そこに魚を飼い、あるいは農畜産物を育成をしているわけですから、むしろ山を持っている者よりもそこで生活している者の方が、毎日の生活に大事なんだ。その人の意見というものを十分に反映をしてもらわなければ、この法律になかなか同意が与えられないわけです。もう一度大臣、ひとつこの点答弁してください。
  56. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 地域住民の居住権というものを大事にしなければならない、これは当然のことでございまして、居住権というのは、健康で快適な生活ができるようにという立場といいますか、権利といいますか、そういうものがあると思います。  ところが、最近における松くい虫の被害、激害の状況を見ておりますと、その地域住民の方々の緑を守ろう、あるいはまた水資源の涵養を図っていかなければならない、あるいは防風林、防潮林というような、そういう公益的な機能、保安林、こういうものを守っていかにゃいかぬ。これも地域住民の快適で健康な生活を確保するという面から大事なことでございまして、私どもは、これは居住権とは相矛盾しない、このように考えております。ただ、薬剤散布による人畜に与える被害であるとか、あるいはこの生態系を大きく壊すとかいうような問題もございます。この公害の問題もございますから、これが実施に当たりましては、十分地域住民に説明をし、御理解を願い、また公害等の起こらないような万全な措置を講じてまいる、こういうことを考えておるわけでございます。
  57. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次に、特別防除による環境への影響について調査し、調査の結果について環境庁に資料を提供してほしい。こういうことは、これは環境庁の方ですが、この法律の実施に当たって、これは仮に法律が通ったと仮定した場合ですが、環境庁の許可を得なければ、この特別防除はできないというのかどうなのか、この点はどうですか。
  58. 宇野佐

    ○宇野説明員 いまの調査の件とこの実施問題とは別でございます。
  59. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 林野庁はこれについてどうですか。
  60. 藍原義邦

    藍原政府委員 私どもでは、安全の確認調査といたしまして、定点を設けましていろいろな調査をやることにいたしております。たとえば、調査項目としては野生鳥類にどうか、あるいは昆虫類にどうか、土壌動物にどうか、あるいは土壌残留はどうか、水質検査はどうだということをやろうというふうに考えておりますけれども、これは環境庁とも十分連絡を密にして、その円滑な実施を図るという意味でやるものでございまして、防除の実施が環境庁の許可を要するものであるというふうには考えておりません。
  61. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今度、防除方法に関するものでありますけれども、自衛隊あるいはアメリカの駐留軍の駐とん地等の秘密を要するところ、それから公園、学校、住宅さらには防風林、防潮林というようないろいろなところに松林がある。——三つのものを言っているわけです。だから、自衛隊やアメリカの中どんどん入っていってもいいですか、上から見てもいいですか。それから公園や学校や住宅や神社、仏閣等は、人間が集まるでしょう。それから防潮林や防風林は細長いでしょう。こういうところに松くい虫がおりますね。その防除方法として、こういうところは空散防除ができないでしょう。どういう防除方法がありますか。
  62. 藍原義邦

    藍原政府委員 先生、自衛隊とか米軍基地とか公園とかおっしゃいましたので、それぞれについて御説明いたしたいと思います。  自衛隊の基地につきましては、これは防衛庁が基本方針に即しまして松林の被害防除を行うのが原則でございますが、従来から林野庁では防衛庁ばかりではございませんで、そのほか国有として持っておるものがございます。そういう関係官庁と十分連絡をとりまして、松くい虫防除事業連絡会議というものを開催いたしまして、松くい虫の防除を積極的にしていただくように要請いたしておりますし、またそれぞれの官庁におきましては、それに十分対応していただいております。  それから米軍基地についてでございますが、これは米軍が実施することがたてまえになっております。したがいまして、外務省と従来からも十分連絡を保ちながら、米軍当局に必要な松くい虫の防除の実施を要請いたしておりまして、いままでにおきましても沖繩の米軍基地内等におきましては、松くい虫の防除が伐倒駆除で行われております。  それから公園とか学校とか住宅地、神社というものでございますけれども、一例を申し上げますと宮島がございます。宮島は、過去五十年まで三年まきました。その場合に、山側は空中散布でまきましたけれども、神社がございますところあるいは居住地の付近は、地上散布あるいは一部伐倒駆除というような形でまいております。  このように、人が非常に出入りいたしまして、その制限がむずかしい、あるいはそのそばに危険ではなかろうかというものがございますような場合には、私どもといたしましては地上散布あるいは伐倒駆除対応するという考え方でございます。  それから防風、防潮林の例でございますけれども、これもある程度幅の広いものにつきましては空中散布をやりますけれども、いままでの例といたしましてたとえば天の橋立等のようなところに  つきましては、これは私どもでいままでも地上散布でやっておりますし、それから奈良の公園のように松が疎林のところ、これも地上散布対応いたしております。
  63. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この法案の提出の過程において、林野庁関係の労働組合の方からこの法案は余り好ましくない、こういう意味の話がございました。この問題は主として民有林の問題ではあるけれども林野庁の組合の皆さんとの間にはこの法案を取り扱うことについて何らかの話なり調整なり、そういうものができているのか。なぜ一体こういう法案を出すときにこのような問題が——労使関係の問題であるよりは、これは別な意味の問題だと思う。法案が反動的である、空中防除方法は危険である、むしろ事前予防をして、そして伐倒、注入方式によってやる方がより安全だし、環境が守れる、こういう意味の話だと思うし、これは一つの理屈だと思うのです。私はそういうふうに思うのですが、この辺のところは今日どういうふうに調整されておるのか。
  64. 藍原義邦

    藍原政府委員 林野庁には二つの労働組合がございますけれども、この法案の提出に当たりまして、二月十四日、十六日にそれぞれの組合にこの法案の必要性、安全性等につきまして当局側から説明はいたしております。しかしながら、私の方では、いま先生おっしゃいましたように、確かに労働組合の一部において反対の意向があるようにも聞いておりますけれども、労働組合として本法案に反対である旨の申し入れば私の方には正式には参っておりません。
  65. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまのように、組合としては反対ではないと、こういうふうに理解をされたわけですか。
  66. 藍原義邦

    藍原政府委員 正式の申し入れは受けておりません。
  67. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題についてはこれ以上触れないけれども、今後この法案をめぐっていろいろな問題にかかわり合いがあることですから、やはりこういう問題については事前話し合いをしてうまく進めていかなければいけないと私は思うのです。一つの政策上の問題なんです。  次の問題は、一定規模の問題について、たとえば百五十ヘクタール以上のものについては都道府県知事の申し出のあったものに関してその意見を聞いていろいろ義務づけてやる、こうなっておるけれども、この一定規模という百五十ヘクタール以下の問題、これについてはどういうふうにされるのか。一ヘクタールの中に松の木が何本あったらこれを松林というのかどうなのか、この辺はこの法案の中でどういうふうに理解をされるか。
  68. 藍原義邦

    藍原政府委員 一概にどのくらい松があったらそれを松林と見るのか、これは非常にむずかしい問題でございますけれども、私どもとしては今回の特別防除をやる場合には、保安林等公益的機能その他重要な松林、それから放置しておきますとさらに被害蔓延するであろうといういわゆる先端部分、こういうものを特別防除をやろうということでございまして、その場合、都道府県知事から協議がございまして、農林大臣が直接執行するものが大体百五十ヘクタール以上というふうに考えておる次第でございます。したがいまして、それ以下のものにつきましても、いま申し上げましたような重要なものであれば、これは都道府県が執行する形になります。
  69. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほど所有権と居住権、生活権のことで申し上げたわけですが、これには受忍義務というものが課されている。だから私有権のものについては異議の申し立てができるんだ、こういうふうな話であったわけです。先ほどの答弁の中に地域のものも地域の協議会あるいは松くい虫対策協議会あるいは森林審議会等々をつくってやるということになっているのですが、この場合に居住者の中からやはり意見を出したいという場合に、地域に住んでいる者、たとえば東京の人が宮城県の何とかという町で松くい虫の処理をしようといったときに、そこに行って異議を出すことはどうかと思うけれども、その地元の者がやはりそこへ参加をして物を言うということについては、これは妥当だと思うわけです。そういう点についてどう取り扱われるか、もう一度この点を確かめておきたい。
  70. 藍原義邦

    藍原政府委員 先ほども御説明いたしましたように、協議会の中に地区の代表も入っていただきますし、また地区の説明会のときには地元の方々の御意見等は十分拝聴できるような対応を考えております。
  71. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そのことは法律上どういうようなあるいは具体的にどこでそういう取り扱いをされるのか。
  72. 藍原義邦

    藍原政府委員 それは、協議会につきまして実施計画を立てます前あるいは後で十分そういう説明をいたしますし、それから県でつくりますそういう実施計画に基づいてそれぞれの現地で実行いたします場合に、その現地について地区の説明会で住民の方々の御意見を聞くということにいたしておりまして、これはそれぞれの運用方針で十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  73. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それは実施計画というのは省令なり政令なり……。
  74. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま申し上げました実施計画は県の段階の実施計画をつくる場合のことを申し上げたわけでございますが、そのほか基本方針につきましても、私どもとしては、地元の方々に十分御説明できるようなことを考えていくことを基本方針の中にも盛りこんでいくつもりでございます。
  75. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは大臣に質問しますが、私たちはこの法案を審議するに当たって慎重に審議していかなければならないし、それからこの法案の結論を見た暁においても、これは非常に厳しい責任があると考えております。というのは、やはりスミチオンという薬は何といっても内容に厳しいものを持っている。だからこの実施に当たっては慎重の上にも慎重を期さなければならない。そこでこの法案の取り扱いの後に、できるだけ立法機関としてもその行方については責任を持って、一定の期間は監視というかそういうような形でこの問題を取り扱っていきたい。聞くところによると文教委員会でも大学入試問題を通じて、その法案の趣旨には同意を与えるが、その過程においては十分に監視をしていくというような形での小委員会などを設けて事後の取り扱いに対する注意をしていくということを聞いております。こういうことについての慎重の上にも慎重を期するという考え方はないかどうか。
  76. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この法律の適用、運営につきましては、いま御指摘になりましたように、慎重の上にも慎重を期してまいらなければならない、私はこのように厳しく受けとめておるわけでございます。低毒性の農薬とはいいましても、やはりある程度の毒性があるわけでございますから、環境の保全並びにそれによる公害等が起こらないように、十分周到な準備また御理解、御協力を得て、実施に当たりましては慎重の上にも慎重を期してまいりたい、このように考えております。
  77. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今度は財政上の問題について質問しますが、マツノザイセンチュウ並びにカミキリの問題は、これは一種伝染病性格を持っているということは、すでに参考人意見でもあったわけです。ところが、五年間でこれを絶滅するというわけですが、別にこの材線虫は計画的にふえるわけでもないし計画的に減るわけでもない。いろいろな条件でふえたり減ったりもするし、一応の五年間という目安をつけることは理解できるけれども、土地改良と違って五年間に何カ所、どれだけの面積をやるというようなものではないだろうと思う。急速に蔓延した場合には、いま三十五億という予算があるけれども、これだけで間に合わなかったときにはこの財政的な弾力性というものは考えられているのかどうなのか、これはどうですか。
  78. 藍原義邦

    藍原政府委員 私どもがやろうといたしております特別防除、これは空中散布でございますし、予防性格を持っております。したがいまして、いま被害が出ております四十数万ヘクタールに対しましてこういう形で対応すれば、五年間のうちに、私どもが目標といたしておりますヘクタール当たりの立木本数、枯損の本数が一%以下になるであろうということで一応対応して、五年間でやろうというふうに考えておりまして、これは計画的にできるというふうに考えておりますが、先生御指摘のように、立木伐倒駆除につきましては、これは被害の発生後出てくる問題でございます。ですから、こういう問題につきましては従来も予備費を流用させていただきまして、枯損木がふえた場合には立木伐倒をやった事例もございます。したがいまして、今後こういうものが予想以上に発生した場合には、あるいはそういう予備費を流用して伐倒するということはあり得るかもしれませんけれども、ヘリコプターによります空散防除につきましては計画的に実行し得るというふうに考えております。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 伝染病的存在のものですから、土地改良とかそういうことと違って予定どおりに進まない場合もあるし進む場合もある。だから財政的なものは予備費などを準備して弾力性を持たせなければ、かたい形ではだめだ、こういうふうに思うし、補助率についても、今度は確かにそれは三分の二ということでしょう。というわけですが、こういう問題にもさらに検討を、国が受忍義務を負わせてやるわけだから、もっとやれ、こういう要求もある。こういう財政上の弾力化ということについてはどうですか。もう一度……。
  80. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま申し上げましたように、確かに基本的には計画的にやり得るというふうに考えておりますが、先生おっしゃるように、伝染病的な性格もございます。したがいまして、その点につきましては私どもも弾力的には対応していきたいというふうに考えております。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほど柴田委員の質問に対して大臣から、万一事故があった場合には国家賠償法によるところの賠償という問題が話がありました。私の県の県議会で先般松くい虫の問題についての質疑を行っております。これは本三月県会です。そのときの答弁の中に、万一事故があった場合においての財政的な予算的処置がない、こういう話なんです。これはあってはいけない。あってはいけないが、ないという保証はありません。こういう場合に国家賠償法というようなものは、これは大変長い裁判をしなければならない。新潟県の加治川の洪水の問題にしてもいまだに結論は出ておりません。ハチみつやあるいは養蚕、こういうものが明らかにスミチオンによるところの被害であるということがわかっているにもかかわらず、これに対して国家賠償法などというものを使っていろいろな裁判などをやるということは、これは大変むずかしいことになるわけですから、もっとこの賠償処置というか救済処置というものが明確でない限り、これはこの法案の生命とも言うべきものに対する非常に厳しい立場に立たざるを得ない、こういうふうに考えるわけですが、もう一度あの柴田委員に対しての答弁の続きをひとつ大臣から明らかにしてもらいたい。
  82. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど柴田さんの御質問に対して答えたとおりでございますが、国家賠償法の財政的な裏づけの問題は予備費で対処する考えでございます。  なお、加治川等の例をお引きになって、長くかかるのではないか、こういう疑問を投げかけておられるわけでございますけれども、この空散による被害は比較的早くわかるわけでございまして、またそういう場合の科学的な分析その他で因果関係も明確になることでございますので、迅速に的確に対処してまいる考えでございます。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そうすると、国家賠償法というややこしい問題でなくても処理ができるというふうに理解をしていいかどうか。
  84. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま大臣が申し上げましたのは、スミチオンを散布して、私どもとしては被害がないように対応を十分いたしますけれども、万一被害が出た場合にはその因果関係はわりあいとわかりやすく解明できる。まきました時点、すぐそれを分析いたしますれば、これがスミチオンによる被害であるかどうかは、因果関係はわりあいと早くわかり得るということで、そういう因果関係につきましては、いま問題になっておりますいろいろな問題に比べれば、はっきり明瞭にわかり得るものでございますから、国家賠償法によりまして誠意を持って対応するという大臣の御答弁だというふうに考えております。
  85. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題についてはなお、これはまた残った明日の時間もあるからそのとき詰めることにして、次に移りますが、第八条には、「農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさない」こととしてあるけれども、「その他の事業」の「その他」とは何を指すのか。
  86. 藍原義邦

    藍原政府委員 事例として農業等を挙げましたけれども、「その他」とは、その他、この空中散布をいたします場合に、その近在にございますいろいろの産業を指しておりますし、たとえば入り込みの多い観光地、先ほど申し上げましたような宮島の例を引きますればそういうことも考えられますし、農業、漁業に限ったということではございませんで、その他の産業、関連いたしますものを全部指しております。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その「その他」というものについて、これはどこで明らかにするのか、どういう場所でそれは明らかにされるのか。
  88. 藍原義邦

    藍原政府委員 それは地域によっていろいろございますので、私どもとしてはどれでもいいと思いますし、具体的にそれがわかりましたら、それぞれの県の実施計画の中でうたわれるというふうに考えております。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この防除に当たる者が、どういう資格の者がこれは防除に当たるのか、何か会社に委託をするのか、それとも直接にやるのか、この点はどうですか。
  90. 藍原義邦

    藍原政府委員 空中散布につきましては県が航空会社に委託することになります。
  91. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その責任はだれがとるのですか。
  92. 藍原義邦

    藍原政府委員 それは都道府県知事がとることになります。
  93. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その防除する者の能力、資格、こういうものはどういうものでなければならないのか。
  94. 藍原義邦

    藍原政府委員 先ほども運用基準を御説明いたしたと思いますけれども、運用基準の中でそれらにつきましてははっきり明定していきたいというふうに考えております。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題もきわめて重要な問題だと思うのです。その空散防除をする者は、知事がこれに委託をする、その委託会社の委託をする者の資格、どういうような能力を持った者がこれに当たるのか。この法案の審議の過程をほとんど知らない者がこれに当たって、そして今度はそれに被害が起こったら、おれたちは薬をまいただけで後のことは知りませんというようなことでは、これはまことに危険きわまりないものであって、このこと自体が大変重要なことだから、この辺はしっかり詰めていかなければならないが、どうですか、もう少ししっかりした形のものは出てこないですか。
  96. 藍原義邦

    藍原政府委員 先ほど運用基準の中で明定すると申し上げましたけれども、現在ございます農林水産航空事業の実施指導要領の中にもこれは明定されております。読み上げてみますと、「この事業に従事する操縦士及び整備士は、農林水産航空協会が行う農林水産航空技術、技能向上事業に基づく研修を修了し、技能認定証の交付を受けたものとする。」というふうに明定されております。
  97. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはもっと慎重な、厳密な要求をしないわけにはいきませんから、まだ後に残しておかなければならないと思います。  そこで、ミツバチであるとかあるいは養蚕というものの時期と散布の時期がほぼ同じ時期になるであろう。私はミツバチを飼った経験があるからミツバチのことはよくわかるわけですが、ミツバチというのは一つの特殊な繁殖の形を持っているわけで、ハチそのものよりも雌バチの行方が大事なわけです。そういうことになっておりますが、やはり花の咲く時期でありますから、これは時期が大体同じです。そこで、ミツバチとかなんとかいうものについては、仮に被害があった場合に何を基準に被害を補償していくのか、その補償基準について伺いたい。
  98. 藍原義邦

    藍原政府委員 ミツバチに対します対応といたしましては、実施区域及びその周辺でみつをとっております場合には、その辺でみつをとらないようにするために巣箱の一時移動だとかあるいは巣門の閉鎖をいたしまして冷却をするとか、こういう措置を講ずるようにまずいたしております。これに対する未然防止の対策費としても予算を計上いたしておりますけれども、これが万一被害が出た場合の対応の仕方につきましては、これから十分検討いたしまして詰めていくつもりでおります。
  99. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ミツバチが求めているみつというのは花からとってくるのだから、箱だけ移動してもだめなんです。花の方に問題がある、みつは花の中にあるのだから。箱の中にはみつをためるわけでしょう。だから、これは両方ですよ。箱ばかり考えてはだめですよ。花の中にスミチオンが入っていたらこれはみつの中に入るじゃないですか。だから、そういうことを私は注意をするわけなんだ。ミツバチを飼った経験があるからそういうことが言えるのだ、皆さんはどうかわからないけれども。だから、そういう点まで含めてこれは検討しなければいけないということなんだ。  時間の関係から次に行きますが、まいた後でだめになってしまった跡地はどうされるのか、跡地利用については特別に何か考えがあるのかどうなのか。
  100. 藍原義邦

    藍原政府委員 松くい虫の被害を受けました跡地につきましては、もう一度松を造林できるところあるいは造林できないところいろいろございます。したがいまして、まず第一にその地質なり土壌調査をしなければいけないというふうに考えておりますが、その結果、松はもうここでは育たないというようなところにつきましては、樹種転換を図りますためその土壌に適した樹種を植栽するような方向を考えておりますし、そのほか、今後の課題といたしましては、松の樹種の中でマツノザイセンチュウに抵抗性の強いもの、こういうものを早く見つけ出してそういうものを植えていくような技術の開発を現在進めております。そういう意味で、そういう今後とも松を植えます地域につきましては、土壌の肥料木になりますハンノキだとかヤシャブシだとかこういうものを植えまして、そして土壌の肥沃とあわせまして松の発育が十分行われるような対応を今後とも考えていきたいというふうに考えております。
  101. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間がないから最後のあれですが、なお残った部分については最終的に明日の質疑で整理をすることにいたします。  三月二日の毎日新聞の社説を見ると、松くい虫のことについて論説が出ております。「何よりも心配なのは法律の運用面である。法律の条文や林野庁の説明は、薬剤の安全かつ適正な使用と、被害防止に万全を期すことになっている。しかし実際に薬剤散布するのは、都府県から委託された業者であり、法令や指導による注意事項が末端まで厳重に守られるかどうか。不安が残る。とりわけ住宅、学校、水源地、桑園や果樹園、牧草地、養魚場などの周辺では、万一の事故が起きてもいけない。」、そういう意味において、法律の運営問題ということと空散防除に対する歯どめをかけるべきだ、こういうことで結んであります。これはどれだけ議論をしても、すでにある面は平行線であり、ある面は決断を迫られている、こういう問題だと思う。そういうときに、この法案を処理する段階でやはり政治的決断を迫られるわけですから、その決断については、まず自然を破壊をしない、環境を守りながら、同時に松枯れを退治をして松を守っていく、こういう二つの面を守る、こういう立場に立ってこの問題に対応していかなければならないと私は考えている。この点について農林大臣として決意を表明をしてもらいたいと思うのです。
  102. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおりでございまして、環境の保全並びに人畜その他農産物等に対する危被害、そういうようなものはこの法律の運用によって未然に防止するように、慎重の上にも慎重にその執行に当たりましては十分監督、指導もしてまいる考えでございます。
  103. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大体これで私の質問が終わるわけですが、先ほども柴田委員の質問並びに一番最初に馬場委員からのいろいろな質問があり、そして参考人あるいは連合審査等を経ていろいろな質疑を交わしたわけですが、わが党の中としては、これからまたこの問題に対する条文の吟味、いまの答弁を十分に参考にしてこの法案に対する最終的な対応をしたいと思いますので、若干の時間をもらわなければならないので、委員長の方においてこれはそういう作業をする時間まではしばらく採決などということはしないようにひとつしてもらいたい、こういうふうに要望をして、私の質問は終わりたいと思います。
  104. 金子岩三

    金子委員長 武田一夫君。
  105. 武田一夫

    ○武田委員 私から二、三お尋ねしますが、いろいろと各委員の質問、それに対する答えを聞いておりますと、スミチオン、名のとおり、どうも黒々とした「墨チオン」であるような感じがしてなりません。これは「澄みチオン」にしたい、私はこう思います。そういう意味で、いまハチみつの問題が出ましたけれども、ミツバチの件につきまして、先日、私の住んでいる宮城県の協会の会長が来まして、大変なことだ、ハチの存在というのを農林省は知っているのか、その役目というのを知っているのかというのをよく聞いてもらいたい、こういうことを私に訴えてまいりましたが、その点、ハチの働く役目についてどのように認識しているか、まずお聞きしたい。簡単で結構でございます。
  106. 藍原義邦

    藍原政府委員 私ども林野庁におきましても、養蜂の方々が森林内に養蜂箱を設置されまして、いろいろな種類のハチみつをとっておられることは、十分われわれも認識いたしております。したがいまして、私どもといたしましても、森林の中にハチが好んでとりますホオノキだとかいろいろございます、そういう樹種が今後とも森林の中に生育するような方途を考えながら森林施業をいたしておりますし、また松林がなくなれば、ある意味ではそういうミツバチがとります樹種も減る場合もございます。したがいまして、われわれとしては当然森林を健全に育てる中で、先生がおっしゃいましたような養蜂業者と相並んで、森林というものは今後とも健全に生育させなければいけないという気構えで森林の施業をやっておりますので、ハチみつ等、ミツバチ行政の重要性につきましては十分私ども認識いたしております。
  107. 武田一夫

    ○武田委員 長官は、ミツバチが広域昆虫という名前のつけられていることを御存じですか。
  108. 藍原義邦

    藍原政府委員 コウエキ昆虫でございますか。コウエキというのは……。
  109. 武田一夫

    ○武田委員 広い地域にわたるという……。
  110. 藍原義邦

    藍原政府委員 それは存じております。
  111. 武田一夫

    ○武田委員 なぜそういう名前がつけられましたか。どうしてそういう名前がつけられておりますか。
  112. 藍原義邦

    藍原政府委員 その名前がついた理由については、私も十分存じておりません。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 これは交配のときに、花から花に舞いますわね。そしてそれは植物、果樹にかなりの影響力があるわけです。そのときにこういう散布がされますと、当然、先ほどの質問にもありましたように、その期間ハチを移動させたとしても、その期間に花が実を結ぶ時期であるならば、果樹に対する影響というのは、これは特に大きいわけです。ナシの花が咲いて実が結ぶころ、六月、七月、リンゴやカキやその他のたくさんの果物がございますが、これが正常に動かなくなりますと、奇形、変形、味が悪い、それから季節がずれてしまって値段も安くたたかれるというような、そういう影響があるというのは御存じですか。
  114. 藍原義邦

    藍原政府委員 私もハチみつについては専門でございませんので、その辺までは詳しくは存じておりません。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 そうした万全の対策というものを考えないでこうした重大な問題を性急にやるというのは、これはもってのほかだと私は思います。まあこれはこの辺にしておきます。  次に、もう一つ水産庁に伺いますが、水産庁としましては、このスミチオンを使用した場合、海の方ももちろん、川、沼等にいろいろすんでおる魚、エビ、いろいろなものがあります。東北では川からエビをとってそれを酒のつまみに食べる、そういう習慣のところもあります。ドジョウもとっております。そういうところに間違いなく影響がない薬であるかどうか、確かなるそういう確信を持っているのかどうかお聞きしたい。水産庁にお願いします。
  116. 森川貫

    ○森川説明員 先生御指摘のとおり、松くい虫の特別防除に関しましては、水産業界といたしましても、漁業被害の発生につきまして懸念しておりまして、また水産行政の立場からも重要な問題であるというふうに考えておりまして、水産庁といたしましては、漁業被害の未然防止に万全を期するように、松くい虫防除特別措置法案の今国会の提出に当たりまして、林野庁とも事前に十分協議いたしまして次のような点について了解を得ております。  すなわち、まず第一に、実施計画の策定及び特別防除の実施に当たりましては、都道府県に設けられております松くい虫防除推進連絡会議を通じまして、水産担当部局及び漁業団体と十分協議をする。二番目に、特別防除による水産生物への影響につきまして必要な調査を実施する。三番目に、特別防除によりまして水産被害が生じないような必要な被害防止の措置に万全を期する等、都道府県を指導する、こういうふうに了解をいたしております。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 現実にエビ類には被害があったあるいはあるらしいという情報が、ニュースがあるわけです。それで、私、地元の水産試験場の方にちょっと聞いたのですが、こういうふうな文書を私手にしましたので、ちょっと読んでみます。  これは「水産庁に対する緊急要望」というタイトルです。そうして「農薬使用の規制について」という内容で、途中たくさんありますが、略して、こういうふうな一カ所がございます。「有機燐剤やカーバイト等を主力とする農薬に置き換えられている。」云々、こういうふうにありまして、この「有機燐剤やカーバイト系農薬が海を汚染している場合、海産動物に与える影響は魚種によっては極めて顕著なものがあることも次第に明らかにされつつある。」しかも、「最近マツクイ虫防除のため、全国的規模で農薬撒布の計画が立法処置をともなって一斉に行なわれようとしているが、ことの重大性にかんがみて、内水面および沿岸漁場の保全という観点から憂慮に耐えないものである。」というような、そういう内容の要望書が出ておるわけです。これは御存じですか。出ておりませんか。
  118. 森川貫

    ○森川説明員 全国漁業団体組合連合会の方から、確かに先生御指摘のような御意見も伺っております。  確かに、スミチオン等の薬剤による空中散布を水産生物、特にエビ等の甲殻類に対して影響を与えることが従来からの資料でも予測されております。そこで、空中散布の実施に当たりまして、重要なこういった水産動植物の増養殖場につきましての松くい虫防除の特別措置につきましては、第八条に基づく被害防止対策が講じられない場合にあっては、特別防除を実施しない旨を基本方針に定めるというふうになっております。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 ある試験場の場長さんは、これはもう非常に有害であると私は確信している、そういう意味で私も非常にこのことは心配している、こういうふうな方がいるわけです。これは全国的にそういう方がいるのではないか。そういうことを考えたときに、水産庁としては本当にこれが間違いがなく、魚介類に対する被害がないというものでなければ、たとえ林野庁がどう言おうと、農林省がどう言おうと、それを本当に人体に対する影響度から考えた場合に、しっかりと確かめた上でなければ同意することはできないと思います。そういう点で、どういう考えでこの合意書というものを取り交わして、そしてそれで全く間違いなく安全にいくと考えているのかどうか、この一点をお聞きしたい。
  120. 森川貫

    ○森川説明員 水産動植物に与える影響につきまして私ども懸念しておりますので、十分事前散布方法その他につきまして林野庁と協議いたしまして、基本計画の中にも定め、かつまた都道府県が実施する場合には、先ほど申し上げましたような協議会を通じまして十分事前連絡をして、被害が起こらないような形で実施をするというふうに考えておりますので、御心配のようなことはないと思っております。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 五年間やるわけですから、よく私も見ていまして、もしそういう種類のものが出たとき水産庁に持ってまいります。シャコエビというのを御存じですね。すしのいいネタとしておいしい、これもわが宮城県の近海ではとれておりますので、そういうものが万が一被害があったときには大変だというので、水産の関係の方々も甲殻類、エビ類等に被害があるということを非常に心配しております。この点よくお考えの上ひとつ仕事を進めていただきたいと思います。  次に移りますが、原因について、どうも松くい虫、線虫がその原因であるということに非常に確信を持っておいでのようでございますが、やはりその原因というのは間違いなくその線虫によるものであるというふうにお思いでございましょうか、重ねてお伺いいたします。
  122. 藍原義邦

    藍原政府委員 松の枯損には、いろいろな原因枯損することはございます。ことに東北地方におきましてはツチクラゲという菌で根腐れになって枯損することもございます。しかしながら、今回のように全国的に大量に、それも一時期に大量に枯損するという、これにつきましては試験場が個々に調査をした結果、マツノマダラカミキリが媒介いたしますマツノザイセンチュウによる枯損であるというふうにわれわれは考えております。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 宮城県に石巻という市がございます。その周辺には有名な松島、松があって松島でございます。松がなければ島松島になるんじゃないかと周辺の方が非常に心配しておりますが、そういう地域において、初期の段階においては枯れた松の三割ぐらいには線虫が見つからなかった、これは昭和四十八年度の研究「ザイセンチュウの分布図」に明らかでありまして、それは林野庁昭和四十九年三月に発刊したものでございます。しかもこうした現象は単なる宮城県の例ばかりではございませんで、全国至るところに初期の段階ではこうした現象が見られます。しかも宮城県で国立林業試験場調査を依頼して昭和五十一年の四月から十二月、その間に調査した結果を見ますと、報告は恐らくいっていると思います。そうしますと、松島の場合は全くマツノザイセンチュウは検出されない、これは四月から十二月の調査のデータでございまして、県全体としましてもその検出率は二一・九%と、まことに少ない、こういうようなデータが出ておりますが、これは一つのデータとして県が国の方へこれはお願いしたデータでございます。こうしたことを考えましても、やはり私は単にこの材線虫だけの原因ではないのではないかと思いますが、この点重ねて伺いたいと思います。
  124. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま先生がおっしゃいましたのは、宮城県で初めてマツノザイセンチュウが発見されましたのは、五十年の十月石巻市において発見されております。続いてその市の周辺の女川町にかけましてほぼ連続的に分布していることが調査の結果わかりまして、今後宮城県につきましても精密な検査が必要だというふうに考えておった次第でございます。  ところで、マツノザイセンチュウが松島等において発見されなかったということは、宮城県におきましては、いま申し上げましたように初めてマツノザイセンチュウが発見されましたので、松島へ蔓延を防ぐために徹底して松の被害木の駆除をやっております。したがいまして、五十年度末からこういう徹底駆除を開始いたしました。そのために五十一年の春までには被害木がほとんど伐倒されておりまして、松島では被害木から検出するということができませんでした。たまたま五十一年の十月に松島の沖にございます福浦島と申しますか、ここで枯損木がございましたので、それを伐倒して調査いたしまして、調査の場合に二十五度で保温し続けて調査したわけでございますけれども、その中からマツノザイセンチュウが多く検出されております。こういうことから、マツノザイセンチュウが松島におきましても存在することは確認されたわけでございます。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 そうしますと、いずれにしても線虫説というのはこれはもう間違いない、こういうことだと思うのですが、この間のサンケイの「アピール」の欄に対して、林野庁の森林保全課で、これもやはりいま長官の言われたように、松くい虫というのは大気汚染でないというふうな、そうして確信を持った答えとして、間違いなくこれは、松枯れの原因というのはほかの説はないんだということを言っておるのですけれども、その中にこういう一カ所があります。石廊崎、潮岬、種子島、屋久島、壱岐、対馬、鹿児島県など、大気汚染のおそれの全くない条件下で行われた苗木に対する実験でも激害が発生しているとして、これはそういう地域、大気汚染の全くないところでも松がどんどん枯れていく、そういう例としてそういう地域を出しておるわけであります。これは新聞で保全課の方で出したわけですから間違いないですね。  ところが、そういう汚染になりそうな原因は全くないというような、たとえば対馬、壱岐、種子島に、ちゃんとこのように九州電力の調査による火力発電所がきちっとあるわけです。松島におきましても仙台火力発電所はすぐそばでございます。いまたくさん松が枯れているという石巻は製紙工場がたくさんございまして、大気汚染のひどいところでございます。こういう事実をこれはどういうふうに説明していただけるか、お聞きしたいと思います。
  126. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま先生がおっしゃいましたのは事例として挙げられたわけでございますが、そのほかに私どもは試験場なり育種場で、全然そういうSO2のないところでマツノザイセンチュウを松に接種いたしまして、そうして枯損状況を調べております。その場合と、それからそれにまたSO2等を薫煙いたしましてやった場合と、どうなるかという比較研究をやりまして、その結果SO2等を薫煙しない個所におきましても八〇%近い枯損をいたしております。そういうもろもろの観点から、マツノザイセンチュウによる枯死であるというふうに私どもは判定しておる次第でございます。
  127. 武田一夫

    ○武田委員 それでは長官に聞きますけれども、冬枯れとか夏枯れというものが松にあることは御存じだと思いますが、どういう状況になりますか。
  128. 藍原義邦

    藍原政府委員 松につきましても、先ほど私が申し上げましたように、マツノザイセンチュウ以外で枯れもございます。したがいまして、松の葉の方から赤く枯れてくる事例がございますけれども、私どもが申し上げておりますマツノザイセンチュウで枯れます場合には一斉に八月、九月、夏の終わり、秋の初めに一斉に枯れるという形で、一般的に枯れます場合には、一年じゅう枯れる場合がございますし、特にいま先生がおっしゃいましたように夏とか冬に枯れる場合もございますけれども、このマツノザイセンチュウの枯れにつきましては八月から九月にかけまして一斉に枯れるというところが特徴でございます。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 これは調べたところによりますと、冬枯れの松は黄色っぽくあるいは青っぽく枯れる、そして夏枯れというのは赤っぽく枯れる。  これは岡山県林業試験場の報告、岡山県農林部林政課長のきちっとした判こもあります。吉岡博士が調べを依頼して、その答えとして返ってきた文書ですが、これを見ますると、冬の松枯れでは線虫は検出されていない、こういう答えが返っております。ということは、これは大気汚染でも枯れるという一つの証拠になるのではないかと私は考えておりますが、どうでしょうか。
  130. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま申し上げましたように、マツノザイセンチュウで枯れます場合には夏の終わりから秋の初めにかけて一斉に枯れるわけでございまして、そのほかの時期に枯れます松も確かにございます。しかし、それが大気汚染によるものかどうか、これはさらにいろいろな因子があろうと思いますので、さっき申し上げましたツチクラゲで枯れる場合もございますし、またマツケムシで枯れる場合もございます。いろいろ枯れる原因がございますので、十分調べてみないとわからない問題ではなかろうかと思います。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 三木前総理が環境庁長官のときに、昭和四十八年の六月ですが、大気汚染が松の樹勢を弱め、その結果線虫をはびこらせる重要な要因になっている、こういうふうな答弁をされています。ここに私はやはり大気汚染との因果関係というのは否定できない問題として当時の三木環境庁長官はこういう答弁をしたのだと思います。それに対してはどう考えますか。
  132. 藍原義邦

    藍原政府委員 私ども林業試験場研究によりますと、マダラカミキリが枯れた松に卵を産みつける場合に、松の樹脂が出ておりますと卵はそのために死んでしまう。ところが、マダラカミキリが運びましたマツノザイセンチュウで枯れました場合には樹脂が全く停止いたします。したがいまして、マツノザイセンチュウによって枯れた松は樹脂が直ちに停止いたしますし、それ以外で、たとえば大気その他いろいろな関係で枯死します松については、樹脂が直ちに停止するということではなくて、だんだんと少なくなって最後に樹脂が出なくなるという、その枯れる過程が違っております。そういう点で、私どもマツノマダラカミキリの運びます材線虫による枯れとその他の枯れとは現段階では技術的にはっきり区別ができるというふうに考えております。
  133. 武田一夫

    ○武田委員 原因については私はそんな単純な問題ではないというふうに考えますが、時間の関係上次に移ります。  それでは、ダニ線虫との関係についてちょっとお聞きしたいのでございますが、どういう因果関係がございますか。
  134. 藍原義邦

    藍原政府委員 ダニ線虫の関係については、ただいま試験場もいろいろ調べることにいたしておりますけれども、いままでの段階でははっきりどういう因果関係があるかということは学問的にまだつかめておりません。
  135. 武田一夫

    ○武田委員 つかんでいないとすれば、いまそういうものを研究しながらあるいはいろんな学説等発表したりしている方々意見というのはある程度聞いていると思いますが、これは天敵の役割りということを過小評価しているんじゃないかと私は思う。  その一つの例としまして、松山にいる石川教授の論文に「マツノマダラカミキリに見出された“中気門ダニ類”について」というのがありますけれども、その中で、マツノマダラカミキリから二種類のダニが見出された。宿主は一九七五年六月愛媛県大洲町のクロマツから採集された。これらのダニは宿主幼虫抗道において主としてマツノザイセンチュウを捕食しているが、宿主の卵を食すことも考えられるというふうな、そういう論文を出しているわけであります。ということは、大気中に多くの種類のダニ類がいるということはわかっておりますが、そのダニというのが非常に大気汚染に弱い性格を持っている、そのためにそういう薬をまきますとやられてしまう、そして線虫をはびこらせていくという因果関係を持っている、こういうふうにこの方は仰せになっているわけでありますけれども、こういうような天敵の役割りというものに対するそういう研究が十分なされていないとするならば、それを抜きにしてただ薬を散布するだけでは許されない、私はこういうふうに思いますが、これは大臣見解をお聞きしたいと思います。
  136. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 天敵とマツノザイセンチュウマダラカミキリの因果関係、これは今後も私ども注目して研究を進めてまいりたい、このように考えておりますが、しかし先般来林野庁当局から御説明申し上げておりますように、最近における松林の激害はマツノザイセンチュウによる被害がはっきり確認されておる。また、四年間の実験的実施におきましてもこの空散が非常な効果をおさめておる、こういう事実に着目をいたしまして、伝染病的に拡大しております被害を急速に終息させたい、こういうことで今回の法案の提案になったわけでございます。
  137. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたから、最後に、成果が上がっているというのは一応認めたといたしましても、その成果の後に来るものがどういうものかという、そういうだれでも納得できるような研究成果というもの、原因究明というものがなされないでこうしたものを空中から散布するということは私は非常に問題だと思います。そういう観点から、やはり大きく言えば人命尊重という立場と自然環境の保全という立場から、これはもっと慎重かつ厳密なそういう研究結果を踏まえた上でのそういう散布でなければならないし、またそういう使用でなければならない、私はそういうふうに考えますが、もう一度そういう危険に対しまして大臣の決意と今後に対する対処方を聞いて、私は質問を終わりたいと思います。
  138. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたように、ダニその他の天敵とマダラカミキリの関係、マツノザイセンチュウとの因果関係、これは今後も重要な課題として検討を進めてまいりたいと考えております。しかし、その結果がはっきり把握できるまで今日のような被害の急激な拡大を放置することは私どもはできないと考えておりまして、しかもこれは四年間の実験実施によりまして十分な成果をおさめておるということでございますので、先ほど来申し上げますように、公害問題、自然環境の保全等につきましては十分細心の注意を払いながらこれを実施してまいりたい、このように考えております。
  139. 武田一夫

    ○武田委員 以上で終わります。
  140. 金子岩三

    金子委員長 次回は、明二十三日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十分散会