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1977-03-15 第80回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十五日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 美濃 政市君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    加藤 紘一君       久野 忠治君    佐藤  隆君       玉沢徳一郎君    中野 四郎君       羽田野忠文君    平泉  渉君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       湯山  勇君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林水産技術会         議事務局長   下浦 静平君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   藍原 義邦君         林野庁林政部長 小笠原正男君         水産庁長官   岡安  誠君  委員外出席者         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 荒木 昭一君         参  考  人         (日本植物病理         学会会長)   伊藤 一雄君         参  考  人         (世界野生生物         基金日本委員会         常任理事)   池田眞次郎君         参  考  人         (全国森林組合         連合会会長)  喜多 正治君         参  考  人         (愛媛大学教         授)      石原  保君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     嶺  一三君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     武藤 山治君   津川 武一君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     馬場  昇君   松本 善明君     津川 武一君 同月十二日  辞任         補欠選任   竹内  猛君     大出  俊君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     竹内  猛君 同月十四日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     小林  進君   野坂 浩賢君     上原 康助君   吉浦 忠治君     岡本 富夫君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     野坂 浩賢君   小林  進君     小川 国彦君   岡本 富夫君     吉浦 忠治君 同月十五日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     湯山  勇君   柴田 健治君     石野 久男君   野坂 浩賢君     安宅 常彦君   武田 一夫君     岡本 富夫君 同日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     野坂 浩賢君   石野 久男君     柴田 健治君   湯山  勇君     岡田 利春君   岡本 富夫君     武田 一夫君 同日  理事竹内猛君同月十二日委員辞任につき、その  補欠として竹内猛君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  連合審査会開会に関する件  松くい虫防除特別措置法案内閣提出第二六  号)  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会譲を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事竹内猛君が去る十二日、委員辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、理事竹内猛君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 金子岩三

    金子委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、これを許します。稲富稜人君
  5. 稲富稜人

    稲富委員 私は、先般農林大臣から承りました農林大臣所信表明に対しまして若干の質問をいたしたいと思うのであります。  まず農林大臣は、その所信表明の中において「経済社会の土台とも言うべき農林水産業役割りはきわめて重大であり、その健全な発展なくしてわが国の真の繁栄はない」とまで言及されております。もちろんかくのごとき意見は、今日まで表現こそ違いますけれども、歴代の農林大臣がことごとく、農林水産業重大性にかんがみて大いにこれが発展努力するということはしばしば申されているのであります。ところが、それにもかかわらずこの所信表明の中において農林大臣は、「わが国農業現状を見ると、高度経済成長の過程で農家所得及び生活水準は向上したものの、労働力の過度の流出農地壊廃進行等により体質脆弱化していることは否めない」ことであると正直に申されておるごとく、実際現在の日本農業の実情というものは憂慮にたえないものがあるのであります。  そこで、第一に大臣にお尋ねしたいことは、かような現象の起因がどこにあるかということをまず大臣は御認識になっているか、その点を承りたいと思うのでございます。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は所信表明でも、戦中、戦後、特に高度経済成長時代に入りまして、農村から優秀な生産労働力が他産業流出をした、また、りっぱな農地壊廃をした、そのことが日本農業体質脆弱化した、そういうことを率直に私述べまして、今後この日本農業体質を強化する、生産体制を整備する、また農業担い手である農林漁業者並びに後継者育成確保を図ることが基本である、こういうことを述べたわけでございます。その原因はどこにあるのか、こういうお尋ねでございますが、私はやはり他産業の飛躍的な拡大振興に伴いまして、多くの生産労働力が必要であった。一方において、農林漁業は、他の産業に比べて所得の面におきましても、また都市農村との生活環境格差の面におきましても、いろいろの悪条件下に置かれておったと思います。そういうようなことが、いま申し上げたような他産業への労働力流出というような状況になり、高度経済成長の間でますます他産業農林漁業との間の所得格差が広がっていった、こういうことがわが国農林漁業脆弱化をもたらした主な原因である、このように考えておるわけでごいざます。
  7. 稲富稜人

    稲富委員 ただいま農林大臣現状に対して率直なお考えをお述べになったと思うのございます。しかし私は、もう一つこれを突っ込んで検討する必要がないか、かように考えます。それは、大臣も申されておりますように、農家所得及び生活水準が向上したということは、決して農家農業収入によって所得が増大したのではなくして、農外所得が増大したということに大きな原因がある。こういうことになったことはどこにあるかというと、これはやはり自民党内閣農林業及び水産業に対する基本的な政治姿勢にあったのではないかということを、おのずからこれは反省しながらこの際ひとつ再検討をしてやらなければいけない問題ではないか、私はかように考えます。  なぜそういうことを申し上げるかというと、御承知のとおり、三十六年に農業基本法制定後、自民党政府は財界の農業国際分業論に余りに片寄り過ぎたのではないか。したがってこの際、農林漁業の持つ国家的使命が重大であるということを確認して、日本農業を将来いかに位置づけるか、こういうことをひとつ検討して、これが具体的な決定をするということが、私は今後の重大なる農政使命ではないか、かように考えます。私はいま大臣が御答弁なさったもう一つその奥を追究して、そうしてわれわれは検討する必要があるのじゃないかということを考えるわけでございますが、これに対する大臣の御所見を承りたいと思うのでございます。
  8. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は長期にわたる自由民主党の政権が農林漁業を軽視した、こういうぐあには見ておりません。国土資源関係制約もございます。それから、どうしても農業というのは息の長い努力の積み重ねによって初めてしっかりした農業というものができ上がると考えております。特に日本は、置かれておる条件のもとにおきましては何といっても集約的な高度の農業技術また経営合理化ということを要請されておるわけでございます。そういうきわめて厳しい制約の中で、他産業との間の格差をなくして、全国土が均衡のとれた発展農村都市に劣らない文化的な高い水準生活が送れるようにというためには、農業政策というものも他の非常に広大な農地等を所有しておりますところのアメリカ等とは違った厳しさがある、またむずかしさがある。それに向かって努力はしてきておるわけでありますが、他産業成長発展が非常に目覚ましいだけに、その格差というものがなかなか縮まらなかった、これを率直に私は認めるわけでございます。私どもは、そういう中におきましての十分な構造政策なり生産政策、あるいは価格政策なり農村環境整備施策なり、従事者確保問題等において十分でなかったという反省の上に立ちまして、今後は日本農業をしっかりしたものに育てていくように最善を尽くしたいと考えております。
  9. 稲富稜人

    稲富委員 時間が非常に制約されておりますので、私もかいつまんでお尋ねいたしますのでできるだけ簡単に御答弁をお願いしたいと思うのでございます。  もちろん、自民党内閣大臣といたしましては、わが国の長い間の自民党農政が悪かったんだということは言えないだろうと思うのでございます。その点が私と大臣との意見の相違する点であると思うのでございますが、先刻も申し上げましたように、農業国際分業論に支配されて、どうも日本農業がおろそかになったという取り扱い方、いわゆる農産物海外依存政策というものが非常にとられた、ここに非常に大きな原因があったと私は考えております。食糧においてもしかりであります。  それで、私はそういう観点から具体的に二、三点お尋ねいたしたいと思うのでございます。  まず国民食糧安定供給を図ることでありますが、これに対して、大臣所信表明の中にも「将来にわたり国民食糧安定供給確保農林水産業振興を図るため、総合的な政策を強力に推進することがいまや緊急の政策課題となっている」と述べられております。このことについては、私は、実に数年前世界食糧危機が叫ばれたときに、わが国国民食糧に対する不安を与えないようにするためには、政府は速やかに漁業を含む食糧基本法を制定すべきであるということを提唱いたしました。その当時、この問題に対しては自民党政府としても余り関心がなかったようでございます。しかしながら、最近におきましてはこの問題が議論の中に定着いたしまして、政府といたしましても昨年は漁業を含む総合食糧政策を樹立するということを発表されております。しかしながら、これはいままだ具体的には実行されておりません。それで私は、この際、この重大なる食糧問題を単なる行政的な問題として解決するのではなくして、やはり食糧基本法という立法措置によって一つ日本食糧対策を樹立するということが最も必要ではないかと考えるわけでございますが、これに対する大臣のお考えを承りたいと思うのでございます。
  10. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まずもって農業国際分業というようなものは私のとらざるところでございます。食糧国民生活の最低の安全保障でございますから、できるだけ食糧自給自足ができるようにしなければいけない、こういう基本的な考えを持っておるわけでございます。そしてこの食糧自給度を高めて、食糧についていささかの不安も国民の皆さんに与えないようにするためには、国民的なコンセンサスというものが非常に大事であると考えるわけでございます。先生はそれを食糧基本法のようなものをつくったらどうかという御発想でございますが、政府におきましても農政審議会等を通じて農産物自給長期見通しを閣議で決定をし、さらに内閣国民食糧会議というようなものをつくりまして、国民的な基盤の上に立って食糧の総合的な自給力確保を図り、日本食糧問題の解決を図っていこうということでございまして、基本的な先生のお考えとは全く同じ方向で努力をしておるということを申し上げておきたいと思います。
  11. 稲富稜人

    稲富委員 この食糧の問題につきましては、従来とも政府食糧自給自足体制確立するということを言われております。大臣も今回の所信表明の中におきましても、生産が可能である農産物については極力国内で賄うというようなことを申されておるのでございます。しかるにもかかわらず、本年度におきましても米の生産調整をやられる計画であるということを聞いております。またアメリカに対してはすでに三百万トンの小麦の買い付けをやるという話を進められているということを聞くのでございます。こういうことを聞きますと、食糧自給体制をやると言いながらもやられることは何だか合致しない、こういう疑惑を特に農民は持つわけでございまして、この点に対しては、この際政府ははっきりした態度をとって、本当に食糧自給自足体制を進めるとするならば、日本にできる米をわざわざ生産調整をして海外から小麦を買い入れるというようなことがいいかどうか、こういう問題に対しても十分考える必要があるのではないか、私はこういうことを考えるわけであります。  さらにまた、私たちが最近特に考えますことは、基盤の弱いわが国農業を着実に育成する必要があるわけでございますが、最近の農畜産物輸入施策を見ると、去る一月の日豪閣僚委員会において、関係者の強硬な反対があったにもかかわらず、輸入牛肉二万トンの追加を行われる等、依然として農業の実態を無視した施策が進められておることを私たちは最も遺憾であると考えます。これは農民生産意欲を阻害するのみか、農政に対する農民の不信というものが一層増大するような結果になるということをわれわれは十分ここで認識をして、政府もこういう問題に対して十分な反省の中に立って今後処していかなければならない、かように考えます。  最近におきます日本の各国に対する貿易大幅出超、こういうことが問題になりますと、日本工業製品を輸出するその見返りとして日本への畜産物輸入に対して強い圧力がかかっている、こういうこともわれわれ承っております。たとえばECとの関係では乳製品等農産物加工品輸入拡大が大きな政治問題となっております。また対米関係では、従来のオレンジ、果汁等自由化圧力のほか、最近においてはあるいはサクランボの輸入の解禁を迫られているということも聞いております。また韓国、中国との間には生糸あるいは絹製品輸入拡大が要請されておる、こういうことも聞いております。こういうような輸入圧力に対して、本来やるべき日本工業製品等輸出規制をやらずして、ただ農業にこれをしわ寄せする、こういうことは農民生産意欲を非常に阻害するものであり、健全な日本農業確立するという意味からも、こういう問題が非常に大きな問題ではないか。私たちは、農民しわ寄せをしないような確固たる農政確立することが非常に大切であると思いますが、こういうことに対しましての大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  12. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は就任以来、総合的な食糧自給力を高める、そしてできるだけ国内自給体制というものを一日も早く確立をしたい、ただ、まだ自給率の乏しい農産物畜産物等につきましては、これを補う意味輸入を安定的に図って、消費者である国民生活の安定も期さなければならない、やはり基本国内における自給自足体制確立への努力、それに水をかけるような輸入というようなものは絶対にこれを排除する、こういうことを基本として考えておるわけでございます。  いま稲富先生は、豪州の肉の問題をお話しになりました。これも長い間の問題、経済問題から政治問題に発展しかかっておった問題を、私が就任早々私の責任で処理いたしたものでございますから、その間のいきさつを簡単に申し上げますが、五十年度に肉の輸入再開をいたしました。六月に再開をして前年度七万五千トンで入れたわけでございます。しかし、国内生産も伸びておりますけれども、消費もまた伸びておるということで、五十一年度は上期、下期を合わせて八万トンが限度であるということで、強い要請等もありましたけれども、八万トンに抑えた。それで御承知のように学校給食あるいはホテル用として特別枠がございますが、そのうち五千トンだけ特別枠から追加をすることにいたしまして、その半量の二千五百トンは五十二年度先食いである、こういうことでやりましたわけでありまして、これはわが国需給事情から見て私は妥当なものである、このように考えております。  なお、EC等輸入攻勢に対しましても、これは鉱工業等輸出品、それの貿易のアンバランスのしわ寄せ農林物質あるいは酪農品等で入れる、そういうような考え方ではございません。これに対しては国内需給とにらみ合わせて強くこの抑制に努力をしておる、こういう段階でございます。
  13. 稲富稜人

    稲富委員 この問題だけでいろいろ問答をしておりますと時間がありませんので、いずれまたの機会に譲ります。  次に、ただいまも大臣の御答弁の中にあったのでございますが、所信表明の中において「生産担い手及び後継者確保価格の安定と所得確保等各般施策を推進してまいる所存であります。」と申されております。これは実に結構ずくめな話でございます。具体的に承っておりますと時間がございませんので、その中において後継者確保の問題について、いまも大臣も非常に重大な問題だと仰せになりましたので、これに対してお尋ねしたいと思いますが、政府は、今回後継者確保するために新たに県の農業者研修教育施設における研修教育あるいは後継者育成資金の枠を拡大する、いろいろ苦心をなさっておることは私も認めます。しかしながら、後継者育成するということは、私はこういうような小手先の問題ではなくして、後継者がもっと希望を持って農業経営に当たられるような、こういうような農村をつくり上げさえすれば、おのずから後継者は残るものだ、ここに私は重点を置かなければいけないと思うのでございます。たとえば例を申し上げますと、私たち農村に行きますと役場の職員、高等学校の卒業生が給料が七万六千円でございます。これはボーナスがつきます。左官、大工の日給というものは七千五百円でございます。昔は大工さんが一カ月働くと米一俵になるといっておりました。いまでは二日かそこら働けば米一俵になる。こういうものを比較した場合に、農村の青年に農村にとどまって後継者として農業経営をしろということに私は非常に無理があると思う。やはり後継者をつくろうとするならば、農業をやっても引き合うのだ、農業希望を持てるのだ、こういうような農政確立しさえすれば、おのずから私は後継者確保されてくる、かように考えます。これがためには先刻も大臣も申されましたような農産物価格対策というものに対して真剣にわれわれは取り組んでいく、こういうことも非常に必要である、かように考えるわけでございますが、これに対する大臣の御所見を承りたい。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 稲富先生おっしゃるように、農業従事者また後継者の養成と確保、これを図るためには、日本の明日の農業に対して魅力のある明るい展望を持たせることが基本である、全くそのとおりでございます。私はそういう意味地域農政特別対策事業等も新たに起こすことにいたしたわけでございますが、なお農産物価格問題につきましては、稲作だけでなしに、他の麦や大豆あるいは飼料作物等わが国が必要とする農作物をつくりましても、その間に所得において余り大きな格差がない、そういうような条件環境をつくることが必要であるということで、価格政策につきましても省内に価格政策検討委員会というものを設けまして、鋭意相対価格の是正につきましていま検討を進めておるところでございます。
  15. 稲富稜人

    稲富委員 時間がありませんので、それでは次に、大臣所信表明の中におきまして「食糧管理制度の適正、円滑な運営に努める」と述べられ、さらに、「このためにも、両米価の逆ざやの段階的解消等適切な価格決定を行ってまいりたいと考えております。」こう言われております。この意味は現在の食管法というものを堅持していく、こういうものを前提として言われておるものだ、こう私は解釈をいたしております。  それで私はこの機会大臣に申し上げたいと思いますことは、これは私は一昨年から大臣にしばしば要望いたしておるのでございますが、いよいよ本年度米価決定の時期も参ります。私は、この米価決定方式というものを従来十数年間やってきた与党自民党政府とのなれ合い、と言ったらおしかりを受けるかわかりませんけれども、こういうような米価決定方式というものは再検討する必要があるんじゃないか。十数年間同じことをやって、そうして米審に諮問するときには、すでにこれはもう大体政府の方針は決まっておって米審諮問案を出す、その後は自民党政府との間で決めるというような状態、それがためには全国から数万人の人々が中央に動員され、何億という金を消費しながら米価闘争をやらなくちゃいけない、こういうような従来やってまいりましたような米価決定方式というものは、これは当然ひとつ再検討して、もっと生産者政府との間にこの算定方式等を十分練り合うような方式を採用するということをこの際考えるべきではないかということが一つ。さらにまた、大臣の言葉の中にもありますように、この食糧管理制度の適正なしかも円滑なる運営に努めようということでありますならば、現在の米審委員構成におきましても、少なくとも生産者代表というものがその構成人員の三分の一は占めなければ私は適正な運営とは言えない、かように考えます。それがため米価審議会委員生産者代表が三分の一、消費者代表三分の一、中立委員を三分の一にする、こういうようなことにすることが本当に適正な運営がなされるゆえんではないか、かように私は考えるわけでございますが、これに対する大臣所見を承りたいと思うのでございます。
  16. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、生産者米価算定につきましては、食管法の精神に基づきまして再生産確保され、また稲作農民生活所得確保されるように物価、賃金等考えながら、そういう基本的な考え方の上で生産者米価決定されるべきものである。そのためには生産者米価算定ルールというものがはっきり確立をして、それを政治的にいろいろの運用をする、決定に当たっていろいろ政治的な要素がそこに加味されてくるというようなことは私は適当でない、やはり食管法を踏まえてのはっきりした算定ルールというものが一日も早く、きちっと国民的なコンセンサスになるように確立することが必要だ、このように考えております。また今年度米価決定に当りましても、そういう立場に立ちまして生産農民の諸君も納得するような米価をひとつ決定をしたい、このように考えております。  なお、米審構成につきまして、いろいろの御意見があります。三者構成とかいろいろの御意見がございますが、いま任期中でもございますので、直ちにどうこうということではございませんが、稲富先生等の御意見も十分踏まえまして今後検討してまいりたいと考えております。
  17. 稲富稜人

    稲富委員 米価決定算定方式等に対しましては、いま大臣も十分検討されるということでありますが、従来のようなおざなりの決定をやらないで、本当に農民が納得し、すべての国民コンセンサスを得ることができるような米価決定をやることが私は妥当であると思いますので、これに対しては大臣の特段の御努力をお願い申し上げたい、かように考えます。  次に、大臣の特にお得意な水産政策につきましてお伺いいたしたいと思います。  まず、水産物の需要と生産長期見通しについてであります。政府は昭和五十年五月十六日の閣議決定におきまして、農業基本法第八条第一項の規定に基づく「農産物の需要と生産長期見通し」において、その参考付表で水産物についてもその長期見通しを立てております。これはたとえ参考付表とはいえ、水産物の需要見通しを策定する際の基礎となるものであり、政府の一応の見解であると理解されるのであります。これによると昭和六十年の国内仕向け量は一千三百五十二万一千トンに対し、生産量を一千百九十五万三千トンとしておられます。これは五十年五月十六日の閣議決定でございます。ところが現在のような漁業をめぐる国際情勢を考える場合、わが国において約手二百万トンにも及ぶ生産を上げることは不可能に近いと考えるのであります。  この点につきましては、昨年の通常国会で漁業再建整備特別措置法の審議に際して、改めて水産物の需要と生産長期見通しを作成するよう全会一致で、委員会では附帯決議をつけておるのであります。ところが、今回米国が二百海里内におけるわが国に対する漁獲割り当てを決定し、さらにソ連がまた二百海里内におけるわが国漁業に対する規制について一応の目安がついた現在、早急にこの長期見通しを改定し、国内体制の整備に備える必要がある、かように私は思いますが、これに対する大臣の御所信を承りたいと思うのでございます。
  18. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 水産物を含めて食糧長期見通しを立てて、それに向かって総合的な施策を進めていく、こういうことが大事なことでございますが、稲富先生御指摘のように、その当時の千二百万トン目標の計画が、最近における二百海里時代という厳しい状況になってまいりまして、海外における漁場の削減というものが、どうも避けて通れないという厳しい状況下に置かれております。したがいまして、当面千二百万トンの漁獲量の確保ということは、私も非常に困難であるということを率直にここに認めるものでございます。しかし、長期的な展望に立ちます場合におきましては、新しい未開発の漁場の開発でありますとか、あるいはとった漁獲物の可食部分を多くするように加工、保蔵、流通の問題の合理化を図る、そういう努力をしなければなりません。また、あわせて日本列島周辺の沿岸、沖合いの漁業というものを振興する、これによって海外で失った分を補っていく、こういう政策を強力に展開しなければならない、そういうことで国民のたん白食糧の五一%以上を賄っておる水産食糧というものにつきましては、今後一層最大限の努力が必要だ、このように考えております。
  19. 稲富稜人

    稲富委員 これにつきましては大臣もただいまお答えになったことでございますが、さらに私は念を押してこの際希望を申し上げ、大臣の御意向を承りたいと思いますのは、農業基本法第八条には、「政府は、重要な農産物につき、需要及び生産長期見通しをたて、これを公表しなければならない。」旨の規定があります。ところが漁業に関する基本法とも言うべき沿岸漁業振興法には、それに該当する規定はありません。よって、ただいまも大臣が言われたように、今後二百海里内の漁業を計画的に振興する必要上、やはり沿岸漁業に大いに力を注がなければいけない、こういうことを考えるときに、ぜひともこの際沿岸漁業振興法を改正しなければならないのではないか、そして沿岸漁業というものをもっと推進し、これを守る、伸ばす、こういうことを考えなければいけないのではないか、かように私は考えますが、これに対する大臣の見解を承りたいと思います。
  20. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 沿岸漁業振興の要請はますます強まってきておるわけでございますが、私は当面は漁業法の運用、沿岸漁業振興法の問題さら一に沿岸漁場開発整備事業の推進、こういうものを新しい情勢に対応するように弾力的に運用することによって、おおむね目標を達成することができる、こう考えておりますが、今後状況を見ながら沿岸漁業振興法等の見直しにつきましても十分検討を加えたいと思います。
  21. 稲富稜人

    稲富委員 次に、漁業経営対策について伺います。  今後、わが国漁業者が外国の漁業専管水域内で漁業を続けるためには、莫大なる額の入漁料を支払う必要が生ずることは御承知のとおりであります。すなわち、来年度においては米国に対して約二十億円の入漁料を支払わねばならない、こういうことが言われておるのであります。これに対して政府は総額約一億三千四百万円の利子補給を行うこととしておられます。これは当然なことと思いますが、入漁料を魚価に上乗せするということはなかなか困難な問題であります。すなわちその全部が漁業者の負担となることは御承知のとおりであります。よって、私は、この際、入漁料については、漁業経営が安定するまでの間、政府がその全額を助成すべきである、かように思いますが、これに対する大臣の御所見を承りたいと思うのでございます。
  22. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、石油ショック以来漁業用燃油初め漁業用資材も高騰いたしておりまして、漁業経営はなかなか困難な状況下に置かれております。その上に入漁料を払わなければならない、これが経営に対する非常な圧迫になる、また、それが魚価にはね返ってきて国民の生計に大きな影響を与えてはいけない、こういうことを私も考えておりまして、そのためには、今回のアメリカ等の入漁料の支払いに対しましては、政府がこれに融資並びに利子補給をやりまして、その影響が直線的に漁業経営なりあるいは魚価に影響しないように、そのショックを緩和するような措置を講じておるところでございます。  今後、ソ連との交渉その他を見まして、その上でなおまた対策等を講ずる考えでございます。
  23. 稲富稜人

    稲富委員 いろいろまた重ねてお尋ねしたいこともありますけれども、またの機会に譲ることにいたしまして、次の質問に移ります。  次に、減船対策について承りたいと思います。  漁業再建整備特別措置法が施行されて以来実施された減船は、遠洋カツオ・マグロ漁業であり、また北方トロール漁業の減船が計画されておると言われております。これは両減船とも再建整備法に基づく自主減船でありますが、今後予想される減船は、この方式には耐え得るような業界だけではないのであります。よって、今後の減船に当っては、そのすべてを一律に取り扱うことなく、当該業界の経営状況を見きわめ、直接助成を含む適切なる方式を採用する必要があると思います。これに対する大臣考えを承りたいと思います。
  24. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 お説のとおり、対米交渉の結果は一一%の漁獲量の削減というような程度にとどまりましたので、これを調査船等にチャーターするとかあるいは南方の漁場に漁場転換をするとか、そういうようなことでできるだけ業界の出血というものを最小限度に食いとめるようにいたしました。  しかし、日ソ交渉等はきわめて厳しいものがございます。きょうからの交渉でございますので、全力を挙げますが、その結果いかんによりましては、いまの相当の漁獲量の削減、それに伴う減船並びに業界の再編成、こういうような事態に立ち至りますれば、とうてい業界の共補償等では乗り切れない、こういう事態にも相なると思うわけでございまして、十分国としての必要なる助成措置、救済措置というものは考えていきたい。  五十二年度予算編成に当たりましても、私は、現実のものとしてまだ減船等の事態が起こっておりませんので、予算要求はいたしませんでしたけれども、大蔵大臣に対して、五十二年度年度中にそういう事態になるかもしれない、そういう際には、予備費その他所要の財政的な要求をしたいということも強く留保事項として大蔵大臣にも申し述べておるところでございます。
  25. 稲富稜人

    稲富委員 ついでに、ただいま申しました漁船助成を行う場合の基準、こういうことに対しても、いまはっきりわかるならば明確にひとつこの際しておいてもらいたい、かように考えます。これは後で答弁をいただきます。  次に、漁船労働者の雇用問題についてお伺いいたします。  わが国の漁船のうち、外国の沿岸二百海里内で操業するものは約一万隻、その乗組員数は約十五万人に及ぶと言われております。最近における米国、ソ連の漁業専管水域設定に見られるごとき国際的漁業規制の強化の傾向は、今後ますます強くなるものと思われます。これに伴いまして漁業を営む企業の経営悪化の状況は進行し、以前のように各企業の漁業部門の縮小の過程で払ってきた経営改善の努力の限界を超えるであろうということが予測されるのであります。これがために、減船による労働者の職場喪失は、国際規制いかんでたちまちにして大量に発生するのが特徴であります。一時に陸上の大工場並みの規模で発生するのであります。このような予測と実態の中で、漁船労働者は未曽有の職場喪失の危険を目前にして生活を脅かされているというのが現状であります。長年の間特殊な生活、労働環境に置かれたこれらの人々の転職はきわめて困難であり、かつ深刻なものがあると思います。よって、私は、この際、当該企業の企業努力を助長するため施策を講ずることはもちろんでありますが、昭和三十三年に施行された駐留軍関係離職者等臨時措置法または昭和三十四年の炭鉱離職者臨時措置法等の例にならい、この際、漁業離職者臨時措置法なるものを制定し、漁業離職者に対する職業訓練の実施、再就職に関する援護等につき特段の措置を講ずることによって、その職業及び生活の安定を期する必要があると思いますが、これに対する大臣の御所見を承りたいと思います。
  26. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これからどういう程度の、どういう規模の減船等の措置を講じなければならないか、この問題につきましては、私は、単に減船をさせるということでなしに、一つの企業体をつくって、三人なり五人なりの経営者が一体になって、そしてこの二百海里時代という厳しい状況の中で、長期にわたって日本漁業が安定をし、経営確保ができるように、そういう観点で体質の強化をこの機会にやるような考え基本にして再編成をやっていきたい、こう考えております。  一番頭の痛い問題は、いま御指摘になりましたように、漁船員、漁労に従事している従業員の諸君の職場の確保の問題でございます。この点につきましては、ただいまお話しの炭鉱労働者の救済対策等の先例もございますが、そういう点も十分参考にいたしまして、これらの職場確保、雇用の安定等、救済措置につきましては十分考えていきたいと考えております。
  27. 稲富稜人

    稲富委員 次に、最後に一つお尋ねいたしたいと思いますことは、さらにわが国の二百海里の問題でございます。いつ、政府は二百海里宣言をどのような形で行うつもりでいらっしゃいますか。この点についてお尋ねしたいと思うのでございます。  さらに、先般農林大臣はソビエトに行かれまして漁業交渉をやられまして、非常な御苦労をなさったことに対しては、深くわれわれは敬意を表するのございますが、その交渉を承っておりますと、何か領土問題は一切避けて漁業交渉をやられたというような感を深くするのございます。これは領土問題を論ずれば漁業交渉がまずくなるから、意識してそれをやられたものであるか、あるいはまた、領土問題は外交交渉に一切任せていこう、こういうことで触れられなかったのであるか、あるいは相手が漁業大臣であるがゆえに領土問題に触れなかったのであるか、この辺のことをひとつ承りたいと思う。なぜならば、やはり二百海里の宣言をするということになりますと、当然これは領土問題というものは見逃すことができない問題になるのでございますので、この領土問題を度外視して二百海里の問題というものを宣言されるつもりであるかどうか、この点もありますので、あわせてこの点を承りたいと思うのであります。
  28. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二百海里時代が現実のものになってまいりまして、私も海洋法会議の動向というものに細心の注意を払っておったところでございます。来る五月から、単一草案に基づきまして国連海洋法会議でこの問題が討議されることになるわけでございますが、私はそれを見きわめた上で、できるだけ早い機会日本も二百海里を設定すべきものだ、このように考えておりまして、イシコフ漁業大臣との交渉の際にも、近く日本も二百海里専管水域を設定する方針であるということを打ち出しまして、これを交換書簡の中に明記をいたしておるところでございます。今国会に御審議を煩わす領海十二海里、そして二百海里、こういう同じ条件のもとに今後の二百海里時代の漁業交渉をやらなければ国益を守ることができない、こういう判断に基づくものでございます。  この二百海里の実施の態様についてでございますが、私はこれは相互主義でいったらどうだろうか、こう考えております。日本の近隣には、韓国あり、中国ありということでございますが、韓国なり中国が二百海里をおやりにならないという場合におきましては、日本もあえて西の方に二百海里を設定する必要はない。現在、韓国漁業協定なり日中漁業協定で西日本漁業は安定的に操業が確保されておる、こういう状況にございますので、私は相互主義でこの二百海里の設定の海域等は決めてよろしい、こういうぐあいに考えております。  さて、イシコフさんとの漁業交渉で、領土問題をどうも避けてやっているようだ、こういう御指摘がございました。この北方領土の問題は、すでに御承知のように、一九七三年にモスクワにおいて、田中総理とブレジネフ書記長との最高首脳の間で、戦後の未解決の問題を解決して日ソの平和条約を締結する交渉を今後も継続する、こういうことが確認をされております。そして、その後日ソの外務大臣間で、この戦後未解決の問題の中には北方四島を含むんだということも確認をされておる、そういうことでございますので、私は漁業交渉におきまして、これから交渉しようというその問題に触れて漁業交渉をするということは適当でない、こう考えまして、ソ連の二百海里というものを一応認めるという前提の上に立って、日ソの長期にわたる今後の相互の利益に合致するような漁業の取り決めをしたい、こういう方針で臨んだわけでございます。
  29. 稲富稜人

    稲富委員 質問したいことはたくさんありますけれども、時間がありませんのであと一問にしぼりまして、またの機会にすることにいたします。  次にお尋ねいたしたいと思いますことは、土地改良事業についてお尋ねいたしたいと思います。  農業基盤整備事業というものが非常に拡大されておりますことは御承知のとおりでございまして、これは本年度におきましても、その予算面におきまして非常に増大しております。これに対しましては、非常に工期がおくれるということ、農民の負担が大きいということに対する農民の苦痛が非常にあります。それで、この問題に対しては、何としても工期を早めるということ、そうして農民の負担を減少するということ、こういうことを考えて事業を推進していくように、これは政府としても特段に考えるべき問題ではないか、かように考えます。  さらに、この土地改良事業が進みますと、農業近代化の結果、農作業に対する機械化が進行してまいります。その結果、御承知のとおり農村においては、不合理な機械導入等によりまして、機械貧乏というものが今日の農村の実情であるのでございます。それで、これに対しまして農林省は、昭和四十九年以降、農業機械銀行導入パイロット事業というものを実施されております。その効果について、この際ひとつ経過を明らかにすると同時に、このパイロット事業というものを将来どのようにしていこうという考え方を持っておられるのかということを承りたいと思います。  さらにもう一点。最近農林省は、関係のいろんな事業というものが行われております。この事業に対する請負は、会計法第二十九条の三によって、「請負その他の契約を締結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。」こういうことになっております。しかもこれに対しては、農林省としては政令をつくって応ずるということになっておるのでございますが、農林省といたしましては、こういう請負に対しては「その指名競争に参加する業者を指名する場合、地方農政局長等は指名競争参加者選定会議に図り、当該競争に付する契約の」云々と書いてあります。果たしてこういうような、会計法に示されておるようなこういう方法でこれが実行されておるのであるかどうか、この点を承りたいと思います。この二点だけ承りたいと思います。
  30. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 土地改良等、農業基盤整備のための農林公共についての地元負担なり、あるいは関係農民の負担を軽減するように、もっと力を入れるべきではないか、こういう御質問でございますが、私どもも、できるだけ関係農民の負担を軽くするようにということを基本にいたしまして、予算編成の際に努力をいたしておるところでございますが、なかなかこの補助率、国庫負担率の引き上げというのは、今日の財政困難の際でもあって思うように進んでいないということが、率直なところでございます。しかし、この地元負担なり、あるいは関係農民の負担分につきましては、農林漁業金融公庫でありますとか、あるいは制度資金でありますとか、そういう低利、長期の資金等の融資とあわせまして、関係農民の負担をできるだけ長期に軽くしていくようにという配慮を進めてまいりたいと思っております。  なお、農業機械銀行及び請負の問題は、実態問題でございますから、事務当局から御説明いたします。
  31. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 農業機械の効率的な利用を促進するという角度から、農業機械銀行の推進につきまして、四十七年から実は政府は助成を始めてまいったわけでございます。パイロット事業として実施しておりますのは、四十九年からでございます。そこで、その最初の八地区も含めまして、現在助成の対象としてやっておりますのが六十地区あるわけでございます。始まったばかりですから、いまここで成果を評価するにはまだ早いという感じはいたしますが、一応私どもの調べておりますところでは、大体受託農家、つまり機械を使いまして作業を受託してやっておる農家は、六十地区の平均で百十六戸、それから委託農家は千百九戸ということでございまして、その面積は、受託農家が大体平均十一町歩くらいのものを委託を受けてやっておるというかっこうになっております。この面積も、四十九年度と五十年度を比較しますと、若干ながらふえております。こういうようなことで、だんだんとその規模拡大といいますか、受託規模の拡大の兆しが見えておるのではないかというふうに思います。  こういう形で効率的に土地利用あるいは機械利用をしていくということになりますと、かなりの成果が将来期待されると思いますが、まだまだそのあっせんをする土地の零細性でございますとか、それから手数料徴収の困難性の問題でございますとか、いろいろの問題を抱えております。私どもとしましては、これらの問題を従来の経過を踏まえて検討の上、さらに改善をして推進してまいりたいというふうに思っております。
  32. 森整治

    ○森(整)政府委員 指名競争入札の件についてのお尋ねにお答えいたしますが、土地改良の指名競争入札につきましては、先生御指摘のように、農林省といたしましても、一定の基準を設けまして指名業者を選定することにしておりまして、そこで公正な競争が阻害されることのないように処置をしておるつもりでございます。しかしながら、かねがね承るところによりますと、業者が営業活動を数年前から始めるというようなことでそういう競争が阻害されるようなことのないように、われわれとしても今後十分細心の注意を払って処置してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  33. 稲富稜人

    稲富委員 いろいろお尋ねしたいことがありますけれども、時間が参りましたので、私の質問はこれで打ち切ります。
  34. 金子岩三

    金子委員長 これにて農林大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  35. 金子岩三

    金子委員長 次に、松くい虫防除特別措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。馬場昇君。
  36. 馬場昇

    馬場(昇)委員 まず、農林大臣に御質問を申し上げます。  松はもみじをしないわけですけれども、その松がもみじをし、その果てには枯死してしまう、こういう状況が出ておるわけでございますけれども、この状況を見ますと、松は今日までの日本の林野、森林行政というものの貧困を見ておるような気がいたします。松がもみじをするというようなこの事態は、林政に対する言うならば天の警告ではないか、こういうぐあいに行政をする者は素直に受けとめる必要があるのではないか、私はこういうぐあいに思うのです。  日本の林野、森林行政というものは、経済性追求の視点が多くて、人減らし、山荒らし行政と言われてきたのですけれども、人命の尊重や自然環境保全を軽視したと私は見るわけでございます。あの悲惨な振動病がたくさん起きていますし、労働災害も非常に多発しておるわけでございます。これはまさに人命軽視のあらわれでございますし、さらに一方、大面積皆伐だとか大規模林道だとか、さらに除草剤の空中散布など、自然環境を破壊してきたと言っても言い過ぎではないと思うのです。  こういう林政に対して、今日農林大臣はどのような反省をなさっておるかということについて、まず第一にお尋ねいたしたいと思います。
  37. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが国の森林・林業は、これは国民生活に必要な木材等の資源を供給いたしますと同時に、国土の保全、また水資源の涵養、そういうような公益的な機能も持っておると思うわけでございまして、私どもは、そういう重要性というものを十分踏まえまして、今後の木材の生産性を向上する、そのためには森林資源を維持、培養するということに力を入れますと同時に、国土保全等の観点から第五次の治山整備計画等も設定をいたしまして、この森林・林業事業の今後の健全な発展というものを図ってまいりたい、このように考えております。  また、どうしてもこの森林・林業を健全に守り、発展をさしてまいりますためには、やはり山村というものがいまのようにだんだん過疎化が進んでいくというような状況の中では、これの目的を達成することができない、どうしてもこの山村の経済並びに生活環境等の整備も図りまして、そして山を守るという環境条件をつくっていかなければならないと思います。  また、林業に従事する方々の振動病その他の障害発生等につきましては、できるだけこれを未然に防止するということにつきまして対策を講じますと同時に、白ろう病等にかかった方々の医療の問題、そういう問題につきましても、今後とも一層努力をいたしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  38. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間がございませんので、質問した事項について端的にお答えいただきたいと思います。  いま答弁を聞いておりましても、松がもみじして枯れて死んでいく、あるいは人命軽視の振動病などがたくさん起こっておる、さらには自然環境破壊も起こっておる、こういうような日本の林政に対して厳粛な反省がない限り今後の林政の発展はあり得ない、そういうものをどういうぐあいに反省しておられるかということをお尋ねしたわけです。そういうことにつきまして端的にお答えいただきたいと思うのです。  さらに、つけ加えて言うならば、自民党政府高度経済成長政策というものは、農村から労働力を取り上げてしまったし、あるいは山村からもそうですし、漁村からもそうでした。とりわけ、土地につきましては乱開発が行われ、その高度成長政策の中から山の採算性が失われまして、林家、林業労働者からさえも山を愛するというその心まで奪ってしまったんじゃないかとさえ私は思います。林家、林業経営者、この人たちも森林を放棄したと言っても過言ではないと思うのです。松について言いましても、松くい虫も恐らくこれは何万年あるいは何千万年も前から松と共存しておったんじゃないかと私は思います。そして突如として異変が起きて松を全滅させるというようなことは、いままでなかったわけです。ところが、今日は全滅しそうな状況で蔓延しておるわけでございます。しかし、害虫によって動植物というものが全滅したという歴史は私は余り知りません。やはり滅びるとするならば、これはやはり乱獲だとか乱開発だとかいう人為的な要因が非常に多いと思うのです。私は、そういう意味で、虫に対する対策というよりも林業に対する姿勢ということこそ問われなければならないのじゃないかと思うのです。そういう問題について、もう多くを答弁してもらう必要はありませんけれども、大臣の今日までの林政に対する反省とか、責任とか、そういうことについて端的に一言お答えいただきたいと思うのです。
  39. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 戦中戦後、さらに高度経済成長時代で乱伐、過伐あるいは乱開発、いろいろの問題が確かに起こりました。これはわれわれ政治に携わる者として深く反省をしなければならない。その反省の上に立って、先ほど申し上げましたように、森林の重要性、こういうものを踏まえまして今後最善を尽くしたいということを申し上げた次第でございます。
  40. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、松くい虫防除特別措置法に係る質問を申し上げたいのですけれども、この松くい虫防除、松枯れ防除に対する国民の要望というものは、また私もこの前の七十八国会で大石農林大臣にこの問題について質問をし、要望もしたところでございますけれども、結論から一口で申し上げますと、いま出ておりますような松くい虫防除特別措置法というような法律をつくってくれというのが国民の要望じゃないと思うのです。松枯れ対策特別措置法、こういうような法律をつくってくれ、特別立法をしてくれというのが国民の願いであり、私もこの前の国会で質問をし、それについて大石農林大臣からもその趣旨でやるという答弁があったところでございます。  すなわち、中身を申し上げますと、大臣、やはり飛行機から農薬をまくということだけではなしに、やはり発生源というのは枯損木、そこから発生するわけですから、そもそも発生源対策というのが最も重要であろうと思うのです。その枯損木政策に大幅の国の助成をして、あるいは国営でというくらいな気持ちで、枯損木対策をまず重視をする、こういう観点が法律の中に一つ必要じゃないか。  もう一つは、やはり被害跡地、これは後で具体的に申し上げますけれども、ものすごいものがありますし、災害も起こっておるのです。この被害跡地に国の責任でもってバランスのとれたりっぱな森林をつくる、これが当面急務の問題じゃないかと私は思うのです。  それからもう一つは、先ほど大臣もちょっと触れられましたけれども、駆除しようと思っても人手がない、労働力がないという状況もございますし、壊滅に瀕した林業労働者というものを確保する対策、その労働条件の向上、こういうものを——空中散布が必要とあればいままでそれをやっているのですけれども、その上にいま言ったようなものを含めた抜本的な松枯れ対策特別措置法、こういうものをつくらなければ抜本的な対策にならない、私はこういうぐあいに思いますし、大石農林大臣も、さきの国会で私がそういうことを質問いたしましたら、国家的事業として検討するというような御答弁がございました。このことにつきましては、前のことを議論しようと思いませんけれども、いま私が言ったような抜本的な法律をつくるべきじゃなかったかということについての農林大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  41. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生から松くい虫の発生の問題についていろいろお話ございましたけれども、松くい虫でこのように激甚な被害を受けました事例は、終戦直後にもございました。その後一時衰微いたしておりましたけれども、最近また急激に蔓延しておるわけでございます。その原因についてはいろいろあろうかと思いますけれども、私ども現在松くい虫防除の特別な措置法を出しておりますのは、この激甚的な被害を受けた松くい虫を何とか微害程度の被害に抑え、そして経常的な防除方法で対応できる方途はないかということで、林業試験場を中心にいたしまして研究した経過をもとにいたしまして、航空機による薬剤の散布が最も安全で、なお最も適確に防除できるという考え方から、ただいまの特別措置法を国会に提案しておるわけでございます。  先生のおっしゃいましたように、松くい虫の防除ではなくて、松枯れの防除というようなお話もされましたけれども、確かに前の国会でそういう御質問がなされたということは、私も承っております。私どもも、この松くい虫防除の制度をどういうふうに考えていったらいいかという過程におきましては、いろいろの問題を検討いたしました。しかしながら、私どもの考え方としては、現在森林病害虫等防除の法律がございます。その法律でやっていくには、どうしてもこの急激な被害を防除できない、やはりこれを急激に抑えるには何とか別途の方法をとらなければいけない。そのために特別措置法というものをわれわれといたしましては提案いたしまして、緊急にこれを防除しようということで、先生がおっしゃいました跡地の造林の問題あるいはその他これに付随する問題につきましては、現在ございますいろいろな補助要綱、補助体系あるいはそれぞれの法律による措置法によりまして対応できるという見通しが立ちましたので、航空機による薬剤の防除を中心にした特別措置法を提案したわけでございます。
  42. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、いまの答弁には納得できません。たとえば、枯損木対策をいまの法律で対処できる、金がないからやらないじゃありませんか。採算性がとれないからやらないじゃありませんか。国の助成をいまよりも大幅にやらない限りできないわけですよ。労働力確保だってそうでしょう。いまの法律じゃできないから、いまのような壊滅した労働力の状態になっているでしょう。それはいまの法律じゃできないわけです。そういう点についてはまた後で追及いたしますが、いまの答弁では全然納得できません。  次に、農林大臣に御質問申し上げますが、いまの点についてのお考えがあったら答弁を補足してください。  具体的な質問にいまから入るわけですけれども、その前に、とにかくこの法律案の提案をめぐって、私は農林、林野当局の動きにいま非常に問題点を感じております。  まずその第一は、この法律案が提案されるや、ものすごい市町村、県、森林組合なんかの陳情がございます。これは私は当然なことだろう、こういうぐあいに思うのですけれども、具体的な中身はきょうはこの場所では申し上げませんけれども、その陳情が林野当局の、あるいは農林当局の指令、指示というような形で動いておるような気がいたします。補助金をえさにして手下を使ってというと言葉が悪いですけれども、そういうような陳情のさせ方をやっておられるような気がしてなりません。  さらに第二は、スパイとまでは言いませんけれども、情報を探って、それを下部に流して、長ざおを使って運動させておられるというようなことを感じます。たとえば、この法律は本日ただいまから審議が始まったわけでございますけれども、審議もしていないのに、それで各野党は慎重に対処しようと言っていま一生懸命研究しておる最中なのに、A党は賛成なんだ、B党は反対なんだ、C党の中にはだれだれ議員が賛成なんだ、だれだれ議員が反対なんだと、まさに理事会の中で議論されたようなことを、また林野当局が各議員とお会いして説明をしたときの話、そういうようなものを下部に流して、きょう会うとあしたはもう地元からそういうことがはね返ってくる、こういうような態度をたびたび私は経験をいたしました。  もう一つは、これは問題があるといって問題を提起しておられます学者とか団体があります。反対をしておられます団体なんかもあります。そういう人たちに対して本当に敵対視しておるような態度をとっておる。こういう人々は、松を守ろう、山を愛しよう、自然を愛しようということで動いておられます日本国民なんです。それを林野行政当局が敵対視するような態度をとっておる。こういうようなことは私は非常に残念に思うのです。林野当局がとっております態度については、私は、何か思い詰めた異常ささえ感じますし、行き過ぎを感ぜざるを得ないのです。このことは松くい虫から追い詰められておるということ以外に、何かから追い詰められておるようなあわてた姿じゃないか、こういうことさえ私は疑わざるを得ない。そういう問題について林野当局、農林当局のとっておられます私がいま言いましたような態度について、大臣の御見解、御感想をお聞かせいただきたいと思います。
  43. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま馬場さんから端的なおしかりをちょうだいしたわけでございますが、私は、もしさような不謹慎なことがありとすれば、これはきわめて私の本意に沿わないところでございます。山を守り、森林を守ってまいりますためには、役所だけでできることではございませんで、本当にその地域の住民並びに森林関係者の心からなる御協力をいただいて初めてできることで・ございますので、今後そういうような気持ちで進めてまいりたい、このように考えております。
  44. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ただいまの問題については具体的事例がございますから、これは別の機会に具体的事例を取り上げて責任を明らかにしていただきたいと思います。  次に、私は、松枯れ原因について、その徹底究明のあり方について御質問いたしたいと思います。  これは長官で結構でございますけれども、松枯れの原因はマツノマダラカミキリを運び屋とするマツノザイセンチュウだけと思っておられるのですか、どうですか。
  45. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 一般的に松が枯れます場合には、マツノザイセンチュウによる松枯れと、そのほか菌によります枯れ、あるいは自然枯死、その原因につきましてはいろいろな自然環境の変化による枯死もあろうと思いますけれども、そういうふうな一般的な松の枯れはございますけれども、今回のように激甚な被害が出るような松の枯れにつきましては、マダラカミキリが運びましたマツノザイセンチュウによる枯れというふうにわれわれは考えております。
  46. 馬場昇

    馬場(昇)委員 激甚な枯れ方をした枯れ松の中からの材線虫の検出率は、学者の研究によりますと五二・二%という報告を私は調査した学者の方から聞いております。そしてまた、材線虫の接種実験でも松が枯れなかったというような報告も聞いておるわけでございます。それから、空散した後にマツノマダラカミキリの死骸が余りなかった、こういうことも聞いておるわけでございます。こういう点についての林野庁の見解をお聞かせ願いたい。
  47. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま直ちに細かい資料をちょっと私手持ちございませんけれども、いま先生おっしゃいましたような空散をしても枯れがとまらなかった、あるいはマダラカミキリがいなかったというような事例につきましては、私どもにおいてはその事例事例につきまして調査をいたしまして、マダラカミキリに対します空中散布につきましては、適確な効果があるというふうにわれわれとしては判断いたしております。
  48. 馬場昇

    馬場(昇)委員 全然答弁になっていないわけです。私は幾つかの例を申し上げて学者の研究を申し上げたのですけれども、これはいまの話によりますと答弁になっておりませんが、さっきの答弁によりますと、激甚被害はマツノマダラカミキリが運んだマツノザイセンチュウだとおっしゃったわけですから、さっき言ったような学者の研究というのは間違いと考えておられるのかもしれませんが、この問題については全然調べてもおられないようですから、調べてもらいたいということで結構です。  次に、これは長官、乱開発だとかそれとも手入れが不十分だったんだとか、あるいは初期の防除がまずかったんだとか、山の管理にも激甚の被害を出しておるという松枯れの原因があるんじゃないですか。端的に答えてください。
  49. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま激甚な松の枯損が発生しております原因といたしましては、ただいま先生が乱開発等おっしゃいましたけれども、私どもの調査によりますと、まず第一点といたしましては、従来松は山村あるいは一般的にも燃料として使われておりました。そういう観点から、最近エネルギー革命等によりまして松が燃料として使われなくなった。そのために松材の枯れ枝の採取その他あるいはまきとしての使用というものはきわめて激減してしまった。あるいは、これは先生の御説明にもございましたけれども、農山村労働力の減少によりまして、確かにいままでは枯れたものを適確に駆除しておったものが、駆除する労働力確保が非常に困難になったという問題もあったかと思います。また、そのほか一般的に松が用材としてあるいは坑木として利用されておりましたけれども、そういうものが非常に少なくなりまして、したがいまして、松に対しまして、森林所有者そのものが、松の害が出ましたときに防除する意欲が非常に減退してしまったというようないろいろなもろもろな問題が重なりまして、マツノザイセンチュウを運ぶマツノマダラカミキリが発生しやすい松林の状況になったためにマダラカミキリが多数に発生いたしまして、ただいまの激甚な被害が出たというふうにわれわれは考えております。
  50. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、大気汚染には関係はないか、公害と関係があるんじゃないかということについて御質問申し上げたいと思うのですけれども、大阪営林局がつくりましたところの姫路事業区での第二次地域施業計画の中で、営林局は次のように説明をいたしております。「この被害の態様は、」これは松くい虫の被害の態様ですけれども、「臨海重化学工業に近い林野に激害地が多く見受けられることから、被害の第一要因は大気の汚染により立木が衰弱すること。第二要因はマツノマダラカミキリによる材線虫の運搬、衰弱した松内での材線虫の異常な増殖、加害による養分、水分の不足——松の枯死という因果関係があるといわれています。」これは大阪営林局がつくりましたところの施業計画に説明してある事項でございます。第一の要因というのは大気汚染だというようなことをここで言っておるわけでございます。  次に、岡山県の場合でも調べてみましたところ、調査に行きましたのですけれども、知事は最初、大気汚染説というのをとっておった、しかし最近はそれを引っ込めておる、こういうことも聞いておるわけでございます。  そこでまた、学者、研究者の調査によりますと、大気汚染地帯にやはり激害地が多いという結果もデータとして私は聞いておるわけでございますし、また、松の年輪解析というものを見ても、やはり大気汚染というのが影響して松が衰弱しておる、こういう調査結果も聞いておるわけでございますけれども、この松枯れについての大気汚染との関係について、林野庁はどう考えておられるのですか。
  51. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 まず最初に、先生がおっしゃいました大阪営林局の森林計画に、大気汚染説である、こう書いているというお話でございましたけれども、これにつきましては大気汚染であるという説があるという書き方になっておりまして、大気汚染だというふうに断定いたしているものではございません。したがいまして、大阪営林局としては、その後の松の枯損に対する対応といたしましては、薬剤の散布あるいは伐倒という形でやっておりますけれども、そういう形で、当初私が申し上げましたような考え方でただいま防除をしておるわけでございます。  それから大気汚染と松の枯れの問題でございますけれども、確かに亜硫酸ガスに対しまして樹木の抵抗性を見ました場合には、クロマツは中程度、アカマツはやややわいというふうに言われております。しかしながら、マツノザイセンチュウで枯れます場合には、この枯れる松は、夏の盛りから秋の初めにかけまして一斉に大量に枯死する状況になります。大気汚染で枯れます場合には、年間を通じまして徐々に衰弱いたしまして、年間を通じて枯死が見られる状況でございまして、枯死の現況そのものもきわめて違っております。それから松くい虫で枯れますものにつきましては、松やにが全然出なくなります。大気汚染で枯れますものにつきましては、本当に枯れるまで松やにが出ております。こういう点、林業試験場の調査結果、研究結果によってわかっておりますので、私どもは、今回の激甚の被害はマツノザイセンチュウによるものであるというふうに考えております。
  52. 馬場昇

    馬場(昇)委員 少なくとも、やはり大気汚染というようなもので松が衰弱をするということは、事実、そういう衰弱をしておるところにマツノザイセンチュウが入っていく、だから被害が多くなるのだ、この因果関係というのをお認めになりませんか。  それから次に、大臣にお聞きしたいのですけれども、いろいろまたいまから質問いたしますけれども、私が林野庁に聞いた範囲におきましては、すべて林野庁の試験場、こういうところで調べたものばかりでございまして、まあ中立と言えば語弊がありますけれども、民間だとか研究者だとか、そういうところの調査結果というのは林野庁が採用しておられないような気がします。一方的なような気がするわけでございます。だから、疑問の提起があっているのですから、納得のできるような調査を公開で堂々と行うというようなことをなさるおつもりはないのか。そして、国民を納得させるだけの研究成果を出す気持ちはないのかということです。  この前私がこの委員会で質問いたしましたときに、大石長官はこう言われました。天然の中のいろいろな循環の輪がどこか壊れているのではないかと思う、各方面で広く研究してみたい、こういうことも言われたわけでございまして、マツノマダラカミキリを運び屋とする線虫だけではないし、自然の循環の輪のどこかが壊れているような気がする、それも公開で調査をしてみたいとおっしゃいましたわけですけれども、一方的な庁内だけの調査でなしに、公開の納得するような調査をする気持ちはないかということを、基本的な態度として大臣にお聞きしておきたいと思います。  それから、長官の方に次にお尋ねいたしますけれども一緒にお答え願いたいのですが、運び屋でありますところのマツノマダラカミキリの発生状況、どういうぐあいに発生したかという発生状況、過去のマツノマダラカミキリの発生状況、ずっと過去からこういうぐあいに、ある年はこうだった、ある年はこうだったというような発生状況、現在の生息状況、こういうものの調査をした資料があるのか、あればいまここで説明要りませんけれども、私にこの資料を出していただきたいと思います。
  53. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来馬場先生林野庁長官の問答を聞いておりまして、この因果関係というのは非常に判定しにくい、むずかしい問題であろう、こう私感じておるわけでありますが、この問題は林野庁並びに林業試験場等の内部機関だけの調査なり研究なり、それだけで事足るというぐあいに私考えておりません。できるだけ各方面の御意見等も十分有力な参考意見として、あらゆる角度から研究をされるべきものだ、このように考えております。林野庁の諸君も部外の意見というものには一切耳を貸さぬ、そういうことじゃないとは思いますけれども、いま御指摘のように部内の資料や研究の結果だけではなしに、広く各方面の有力な意見というものに十分耳を傾けながら研究していきたい、こう思います。
  54. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま大臣から御答弁ございましたけれども、私ども、何も林野庁だけで研究しようとは思っておりませんけれども、たまたま被害が大きかったために四十三年から四十六年にかけまして四年間、林業試験場でプロジェクトチームをつくりまして研究開発をしたわけでございまして、私どもといたしましては、これは国立林業試験場等が中心になりましたものでございますけれども、その研究成果につきましては、先生御存じかもしれませんけれども、日本応用動物昆虫学会賞あるいは読売農学賞、日本農学会賞、日本林学会賞等の賞を受けておりますので、そういう専門家のお集りの学会等で賞を受けておるという研究でございますので、これは一般的にやはり評価していいものではなかろうかというふうにわれわれは考えております。  それから、マダラカミキリの発生状況でございますけれども、先生おっしゃいました過去の資料と現在の生息状況でございますが、松の枯損の、先ほど申し上げましたようなメカニズムにつきましては、いま申し上げましたように最近解明されたものでございまして、古くからのマツノマダラカミキリの発生密度についてのものは残念ながらございませんけれども、最近和歌山県の潮岬のクロマツの平地林での調査結果から推計いたしますと、全発生期間を通じまして一ヘクタール九百六十本の枯死木から一万九百四十九の成虫が脱出したことになっておりますけれども、このような激甚地はきわめて少なく、通常は大体五千頭前後ではないかというふうに推定されております。それからまた、いま申し上げました調査によりますと、全発生期間中の一日当たりの最大羽化率は五・六%でございまして、これから推定いたしますと、一日当たり最大発生数は六百三十頭ぐらいではなかろうかというふうに考えております。しかしながら、いま申し上げましたのはきわめて激甚な林分での調査でございますので、通常では百頭から四百頭ではなかろうかというふうに考えられております。
  55. 馬場昇

    馬場(昇)委員 林業試験場で研究したのが何とかの賞をもらったとえらいいばっておられますけれども、確かに、たとえばマツノマダラカミキリが運んでそのセンチュウが入って枯れる、このメカニズムを発見したのはやはりいい研究でしょう、それで賞をもらったんだから。私の言ったのは、たとえば大気汚染とかその他に関係がないか、こういうようなことの研究が不十分じゃないかということですから、そういう面については、大臣がやはり公開で広く研究したいと言われますから、ぜひそのようにやっていただきたいと思うのです。  次に、空散いたしますところのスミチオンが中心でしょうが、その有機燐剤の人体に与える影響についてお尋ねいたしたいと思います。  散布をしている農薬の種類、それを製造しております会社、そして五十一年に使用した量というものを端的にお答えいただきたい。
  56. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 松くい虫の防除に使用しております薬剤は、MEP剤、それからNAC剤でございます。MEP剤の製造株式会社はヤシマ産業株式会社及びサンケイ化学株式会社でございますし、NAC剤は北興化学工業株式会社でございます。  それから、五十一年度に使用します見込みの量は、MEP剤で百五十四トン、NAC剤で二十五トンでございます。
  57. 馬場昇

    馬場(昇)委員 このスミチオンというのはどこでつくっているのですか。
  58. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま私が申し上げましたMEP剤が商品名でスミチオンと言われておりますけれども、原液は住友化学でつくっておりまして、それを利用するために最終的な農薬としてつくっておりますのが、先ほど申し上げましたような二つの会社でございます。
  59. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これは人体に与える影響はないのかということです。林野庁は低毒性だというようなことを言っておられますけれども、低毒性というのは急性毒性が低いだけであって、慢性あるいは特殊毒性の安全性というようなのは確認されていないんじゃないか、私はこう判断するのですけれども、そういう意味を含めまして、人体に与える影響はないのかということが第一です。  第二は、慢性の毒性が心配だということを多くの研究者も言っておられます。住民も言っておられるのです。そして、具体的に視神経障害があるということを言っておる人もおられます。さらに具体的に、福岡県の、松林の近所におります児童十七名を検診したところ四名が有機燐剤による障害があると診断された、こういう報告も私は聞いておるのですけれども、こういうことについての御見解をお伺いしたいと思います。
  60. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 人間に対します安全性の問題を御指摘になったと思うわけでございますが、このMEP剤、商品名スミチオンは、先生もいまおっしゃいましたように、毒物及び劇物取締法に基づきます毒物あるいは劇物の指定を受けていないいわゆる普通物でございます。  それから、慢性毒性の関係につきましては、農作物あるいは土壌、水におきます残留期間が短くて、農薬取締法には、そういう残留性が強くて被害を生ずるおそれのある農薬につきましては、作物残留性、土壌残留性、水質汚濁性というような角度から政令で特に指定をいたしまして規制をするという制度がございます。この政令の指定は環境庁が主管してやるわけでございますけれども、この指定も受けていない農薬でございまして、害虫の防除について広く使用されているものでございます。  なお、このMEP剤につきましては、人体に対する影響を食品衛生法の観点からチェックすることになっておりまして、これは厚生省がやっておるわけでございますが、農産物ごとに食品衛生法に基づきます食品規格基準としての残留基準を決めておるわけでございます。これは作物ごとに同じでございまして、〇・二PPmということで残留基準が設定をされております。この残留基準を超えるような使用は人体に対する影響がございますので、したがいまして、農林省といたしましては、この厚生省のつくりました残留基準に即応いたしまして、農薬の使用につき安全使用基準を定め、作物等を通じて人体に影響するということのないように指導をしておるところでございます。したがいまして、この使用基準に従って使用するということになれば人体に対する影響というのは一応避けられるというふうに考えておるわけでございます。  なお、いま先生御指摘になりました有機燐剤によって視野狭窄を伴う目の障害が生ずるという説があることは私どもも聞いておるわけでございますが、現在、これにつきましては学界内で必ずしも結論が出ておらない、定説になっておらないというふうに伺っておるわけでございます。
  61. 馬場昇

    馬場(昇)委員 事人の生命にかかわるような大切な問題をいともたんたんと、人体に対する被害はないんだ、使用基準さえ守れば大丈夫だと言われます。その生命に対する恐れを知らない言い方に私は非常に問題を感ずるわけでございます。私たちもこういうところは詳しくないわけでございますけれども、大臣、政治論といいますか常識論で考えた場合に、いかに低毒性といっても毒と書・いてあるわけですから、毒ですから、無害な農薬はないと私は思うのですよ。そういうことは過去にあるわけです。たとえばDDTの問題にしても私たちは経験している。大いに使わせておいて、これは禁止だ。BHCの例を見てもまたしかりです。使っておって、これは危いと言って禁止だ。そしてまた、行政当局というのは、かつてBHCを松くい虫に散布したという例も農林省、林野庁は持っておるわけです。たとえば多数の中毒患者が発生してパラチオンが禁止になっております。残留が進行してから水銀農薬が禁止されておる。こういうようなことを考えてみますと、いまの答弁では、被害が出るまで安全だ、こういうような行政のように聞こえてなりません。こういう問題について、低毒性といえども無害という農薬はないのだ、害はあるのだという、生命を大切にする行政というのが必要じゃないかというぐあいに思いますが、これについての大臣の政治家としての常識的なお答えをお願いいたしたいと思うのです。  次に、環境庁来ておられると思いますけれども、環境庁にお尋ねしたいのですけれども、あわせて答弁してください。  農薬散布従事者並びにその周辺の人たちに、念には念を入れて一斉健診をする必要があろう、健康調査をする必要があろう、こういうぐあいに思うのですけれども、これについての環境庁の御見解もあわせて聞きたい。
  62. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 馬場さん御指摘のように、毒物劇物という殺虫剤でございますから、きわめて低毒性のものであるといいましても、その使用に当たりましては十分慎重な準備と配慮が必要であると、私こう考えておるわけでありまして、散布に当たりましては、その当該地域の人間はもとよりでございますが、あるいは養蜂であるとかあるいは養魚であるとか、いろいろなものに対しまして、十分な事前の配慮、散布に当たっての万全の準備、そういう配慮が徹底しなければならない、このように考えておりますし、この点につきましては、環境庁とも十分連絡をし、また、環境庁からのいろいろの要望なり御意見というものも伺いまして、緊密な連携のもとに、馬場さん御指摘のような、いささかの被害もないようにという慎重な取り扱いをしてまいりたい、このように考えております。
  63. 荒木昭一

    ○荒木説明員 いま先生から御指摘がございました、スミチオンについての空中散布について、周辺の住民等の健康調査をしたらどうかというお話でございますけれども、従来、スミチオンにつきましては、その使用方法を遵守して散布すれば、人体に対する影響はそれほどないものというふうにも私ども考えておりまして、従来特に健康調査をやってきてはおりません。  なお、農林省の方で、農薬の安全かつ適正な使用を確保するという見地から、また、農薬による危被害の防止を図るということで、毎年厚生省それから都道府県と一緒になりまして、農薬の危害防止運動を展開しておるわけでございまして、今後、環境庁といたしましても、農林省、厚生省と一緒にこういった運動の中に入って、そういう危被害が起こらないようにしてまいりたいというふうに考えております。
  64. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これはやはり慎重にやるべきだし、ぜひ周辺住民とか散布従事者の健康診断というのは取り上げてやっていただきたいと思うのです。  次に、これは資料を求めたいわけですけれども、先ほどスミチオンの原液は住友化学がつくっておるというお話がございました。住友化学は、三十五年から稲作の病虫駆除用としてこれを開発したのは私も知っております。そして、四十八年にはパインテックス10というのを出して、これを林野庁はまいているのです。四十九年にはスミパークE40というのを出している。そして五十年には、先ほど言われておりますスミチオン乳剤50と、こういうぐあいに毎年毎年成分も変えております。なぜこんなに毎年成分を変えなければならぬのかということでございます。それは、この四十八年、四十九年に空中散布をいたしました薬の中にEDBというのが入っておるのです。このEDBというのは、アメリカで発がん性ありと指摘されておるわけでございます。そうしたらすぐこれを成分から五十年は外しております。このようにして毎年農薬の成分を変えている。そして、発がん性があると言われるものを使っておって、それを指摘されたら外しておる、こういう経過を私は調査で聞いておるわけでございます。そういうことでございますので、その辺の、毎年なぜ変えておるのか、そして発がん性のEDBというのは四十八年、四十九年に空中散布したのに入っておったのかどうかという点について確認を願いたいと思いますし、私が聞いているところによりますと、住友化学では毒性研究というのをずっといま続けておると聞いておりますし、膨大な資料があるというぐあいに聞いております。こういうことにつきまして、国で毒性研究は余りやっておられないようでございますから、この住友化学の毒性研究をした資料というものを、ぜひ住友に話をしていただいて、国会に出していただきたい。その交渉経過を報告していただきたいということを申し上げておきたいと思います。長官、いかがですか。
  65. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 住友化学が自社で、または他の専門的な試験研究機関に頼みましていろいろの角度から毒性試験等をやっておるわけでございますが、これらの研究成果は非常に膨大なものでございますけれども、よろしければ私どもの方でそれの要点を要約をさしていただきまして御提出したいと思います。
  66. 馬場昇

    馬場(昇)委員 毎年薬の成分を変えておる、発がん性物質があったんじゃないかということについてはどうですか。
  67. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 EDBの毒性につきましては、米国で発がん性の疑いがあるのではないかという情報を私どもも承知しておりますが、詳細なことは私どもまだ把握をしておらないわけでございます。なお、林野庁から伺いますと、林野庁は、昭和五十年以降はEDBを含有する薬剤は松くい虫防除の航空散布には使っていないということでございます。
  68. 馬場昇

    馬場(昇)委員 発がん性の疑いがあると言われたのを知っておりながらそれを調査もしていないというようなことは、はなはだもって怠慢だと思うのです。この辺についてはまた後で指摘したいと思うのです。  次に、スミチオンの空中散布の自然生態系に与える影響についてお尋ねをいたしたいと思います。  実際私は調査に行ったのですけれども、ここに実は、見られればわかると思うのですけれども、これは高砂市の空中散布の地図ですけれども、これは長官そこから見てわかりますかね、色を塗っておりますけれども、この緑の部分をずっとまいたわけですよ。まさにこの地形は入り組んでおりまして、とにかく高低、があるし、カーブがある、こういうところでございますので、ここの住民に聞きましたら、ヘリコプターが飛んできて、急に地形が入り組んでおるところは回れないのだというので無差別にまいているというような話も聞いたわけでございますけれども、このスミチオンを樹冠にまくということでマダラカミキリを殺すわけですけれども、これは樹冠に残るのは何%ぐらいだと思っておられるのですか。私の調べでは、ほかのところに、大体七〇%から九〇%は無差別爆撃に使われて、本当に樹冠に残るのは一〇%から三〇%だと、こういうぐあいに聞いておるのですが、それはいかがでございますか。  それからもう一つは、今度はいままでの四倍以上まくわけですから、ヘリコプターなんていうものはあるのか。そして、そのヘリコプターでまく技術者というのはおるのか。それで、そういういままでまいた経験で、高圧線なんかもあるわけですから、たとえば業者が法令や指導によって、よく注意事項を守ってきちんとまいたのかどうか、こういう点に非常に私は疑問を持っておりますので、御見解を聞いておきたいと思うのです。  それからもう一つは、スミチオンの空中散布で、浴びた生物はほとんど死滅してしまって、一時的にその地域は無生物状態になるんだ、こういうようなことも実は聞いておるのですけれども、こういうような自然生態系に与える影響は全然ないと思っているのか、あると思っているのか。時間が非常にありませんものですから、端的にお答えをいただきたい。あるかないかで結構です。  それからまた、一時的には効果がたとえあったにしても——私は岡山を調査に行きましたけれども、操山という山なんかも三年まいた、まだ枯損木があるのですよ、枯れているのがあるのです。これはことし枯れたのだ、結局毎年、だから四年目もまくのだと言っておられます。だから、これは散布をやめたらまた発生する、またまかなければならぬ、ずっとスミチオンをまいて農薬づけにしなければ松枯れは退治できないのだ、こういうぐあいに言われておるのですけれども、五年で効果があるのかどうか、その後はどうなるのか、こういうことについて具体的にお答え願いたいと思います。  また基本的なことで、いまのお答えのあった後大臣にお尋ねしたいのですけれども、私の考えでは、自然というのはやはり非常に長い目で見なければならないわけでございますし、性急に自然の営みというものに何かを働きかけようとしますと必ず被害がまた何かそこから出てくるのではないか、こういうぐあいに思います。松枯れというのも、本当を言えばもう十年ぐらい前から、こんなようなやつでも十年ぐらい前からきているわけでございます。だから、こういうことについては性急にいろいろ疑問があるのをやるのではなしに、やはり長い年月をかけて根本的に研究を続けながら退治をした方がいいのではないか、こういうような気もするのです。退治するのにやはり少し長い時間をかけた方がいいのではないか、それが自然のおきてではないかと私は思うのですけれども、それに対してどうかということをお尋ねししたいと思うのです。  さらに基本的な考え方として、危ないのだ、危なくないのだ、それがはっきりわからなければ外政をする者は安全のサイドに立って行政をすべきではないかと私は思うのですけれども、行政の基本、そういうことについていかが考えておられるかお尋ねしたいと思います。
  69. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 御質問が非常にたくさんございましたが、第一点の、まいた場合に地形が非常に入り乱れているところではいわゆるドリフトといいますか、目的地にちゃんと落ちないではないかという御指摘だろうと思いますけれども、一般的にある程度森林がうっ閉しております場合には、ヘリコプターからまきました薬剤は九〇%その樹冠に付着するというわれわれの調査結果になっております。しかしながら、いま先生御指摘のように、これからの松くい虫の空中散布につきましてはこれからいろいろと御審議願うわけでございますが、現在われわれが考えておりますのは、そういう地形その他を十分勘案いたしまして、効果の高いところ、そうして早く防除をしなければいけないところ、重要なところ、そういうところを十分調査いたしまして、それを対象にしてまいていくという考え方でおります。  それから、ヘリコプターの数でございますけれども、現在百五十二機おりまして、大体このヘリコプターで五十二年度は空中散布ができるというふうに考えております。  それから、生態系との関連でございますけれども、確かにこれは昆虫を防除するための薬剤でございますので、まきました一時点では昆虫の数は減るというふうにデータは出ておりますけれども、大体三週間ぐらいいたしますと復元してまいりまして、一年後の調査によりますとほとんどまかないところと変わりがないという調査結果になっております。  それから、五年でまいて本当に効果があるのかという御指摘でございましたけれども、現在までの調査結果によりますと、激甚地では、被害本数率が大体五%以上のところでございますけれども、大体三年でよかろう、それから中害地では、一%から五%の間でございますから、二年ぐらい、微害地では、被害木本数が一%未満のところでございますけれども、大体一年間継続して実行いたしますれば、私どもが考えております終息型の微害、これは被害本数でおおむね一%未満の森林にするということでございますけれども、大体そういう形になるであろうというふうに調査いたしております。  それから、長い期間かかってやればいいではないかという先生の御指摘ございましたけれども、私どもといたしましては、いま申し上げましたように激甚な被害を抑えまして、そうして通常のきわめて微被害的な状況に戻し、そして後は主として伐倒駆除を中心にした防除をやっていけば日本の松は的確に保持できるという調査研究に基づきまして早急に対応し、できるだけ早く日本の松を健全なものにしていこうという考え方で、この五年間で早急に実施するという体制をとっておるわけでございます。
  70. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 自然生態にある程度の影響、変化を与えるということは事実のようでございますけれども、ただいまも林野庁長官から申し述べましたように、それは短期間のうちに回復をする、過去の事例においても回復をする、こういうことを認めておるわけでございます。そういうようなことから、この激甚な松くい虫の被害が進行しておる中で他に有効な具体的な方法がありますれば別でございますけれども、いまのところこのスミチオンの空中散布というものが効果的であり、これによって激甚なこの被害を防止できる、こういう考えで進めておるわけでございます。
  71. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣にお願いしておきたいのですけれども、やはりその疑問が提起されるというならば安全のサイドに立って行政をするというのが基本だと私は思います。過去にそういう疑問を解明せぬままやってものすごい被害を出したことがありますし、話は違いますけれども、たとえば私の郷里の水俣病だって毒じゃないんだと言っていたのに悲惨な状況が起こった経験を持っているわけですから、疑問がありましたならばぜひ安全のサイドに立った行政というものをやるという基本姿勢を持っていただきたいと思うのです。  次に、この法律案を見てみまして、地域住民の意向をどう尊重するか、こういう点について質問申し上げたいと思うのですけれども、この空中散布について緊急な場合は森林所有者であっても不服申し立てが二週間の余裕しかありません。ましていわんや地域住民の意向というのは全然顧みない、こういう強権的な法律案の内容になっているわけでございます。  岡山県の瀬戸町というところへ調べに行きましたところが、もう三年間まいているのですけれども、そこの町長さんは住民とは話し合いをしたことはない、区長さんにだけ話したんだ、こういうことを言っておられるわけでございます。そうしながら、ここに地図を持っておりますが、住民と話してなくて区長さんと話したと言いながら、これが瀬戸町の地図ですけれども、ここに黄色く塗っておりますように、その町全体の大体四〇%から四五%の面積のところにまいておられるわけです。地域住民に御相談なく全町の半分ぐらいにこの農薬をまかれる、こういう事態も実は起こっているわけでございます。  また、岡山県に調査に行きましたところが、岡山県と市町村が農薬は安全だという文書を出しております。この文書は林野庁の言ったようなことを非常に書いてあるわけでございまして、低毒性の薬剤であるんだとか、だからもう人畜はもちろん鳥類、魚類なども安全であることが各種の試験で明らかになっておりますとか、全文もありますけれども、ものすごく問題ないんだというような出し方をしてあるんですよ。やはり危ないところを危ないと出さなければ本当の住民に対する指導とは思われないのですけれども、ものすごく楽観した文書が出ておるわけでございます。  そういうことで、やはり地元に対する対策は十分とらなければならないとともに、これは大臣にまた総括的に聞きたいのですけれども、地元の住民にたとえば強い反対があればこの種のものはやはり強制、強行できないんじゃないか。やはり賛否両論があって対立を激しくして、地元に問題があればやはり話し合いをすべきであって、そこには強行はできないのじゃなかろうかと私は思うのですが、いかがでございますか。
  72. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほど私申し上げましたように、虫を防除する薬でございますから絶対に安全ということはございませんし、その安全の度合いにつきましては先ほど局長の方から御説明があったとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますようにきわめて安全性が高く、そして的確にやれるという考え方で、先ほど大臣の御説明がございましたように、これ以外の技術的な方法が現在ないのだ、したがって、われわれとしては的確に、そして安全性を十分確認しながら対応してやっていこうということで考えておりますし、そのために地元におきましては説明会だとか回覧板だとかあるいは有線放送、宣伝カー、こういうもので従来からもやっておりますし、いま先生が御指摘のような、ただビラしかまかないという地方がもしございましたら、これにつきましても今後私どもとして十分その辺の指導はしてまいりたいというふうに考えておりますが、さらに五十二年度からは松くい虫の防除のための推進連絡協議会というものをつくりまして、この協議会におきまして、実施計画の策定前後に関係行政機関あるいは市町村長、森林所有者、利害関係者等、地元代表者の意見を十分聞くことによりまして地元の意向も十分反映していくように対応していきたいというふうに考えておりますし、私どもといたしましても、日本の松を守るために地元の方々の御理解は十分得て対応していきたいというふうに考えております。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたように、反対があるところはどうするのだというお話でございますけれども、反対がある方方につきましては、松の重要性、そして松が守れませんと周りの松に伝播するというきわめて大きな問題がございますので、その辺を十分御理解をいただくように、私といたしましても徹底して努カしてまいりたいというふうに考えております。
  73. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま林野庁長官からも御答弁を申し上げたのでありますが、これが実施に当たりましては関係地域の住民の皆さんに十分理解を求め、またその作業に当たりましては気象条件、天候その他いろいろなこと等も十分検討の上で安全性を確保できるように実施をいたすわけでございますが、地域住民の方々にいたしましても松は枯らしたくない、しかし安全性についての疑問があるということが反対の理由であろうか、こう思うのでありまして、そういう安全性の問題につきましては十分御納得のいくように、私どもも研究成果等を基礎にいたしまして御理解を願うように努力したい、こう思っております。
  74. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この法律案でまた問題の一つは、やはり強権で、地域の住民の意向を無視してあるいは森林所有者の意向をも無視してまくというような点もあるわけでございますが、そういう点は今後、いまの説明では納得できませんので、詰めていきたいと思います。  そこで、いまたびたび大臣も長官もこれ以外に方法はないのだということを盛んに言われますけれども、私は方法はあると思うのです。また多くの研究者とか地域の人たちも、こうしたらどうだという提言も行われておるのですよ。そういう点については率直に耳を傾ければ方法はあると私は思います。そういうことで、きょうは具体的な議論は時間がないのでできないのですけれども、その中の一つとしてどういう研究をなさっておられるかということも聞きたいのです。たとえばマツノマダラカミキリだけに対する、それを殺す空中散布でしょう。だから、材線虫に対する対策というのは研究がどの辺まで行われておるのか。材線虫対策がきちんと確立されますと、この空中散布をしなくてもいいわけですから、そういう問題について材線虫に対してはどういう、それを直接殺す方法を研究していないのか。あるいはまた、これは将来の展望ですけれども、材線虫に強い松の育成ということも当然必要だと思うのです。昭和四十七年にNHKで「明日への記録」というので数回放映されたことがあるのですけれども、この線虫を食うダニが映し出されておった。ダニが線虫を食っているわけです。ところが農林省の試験場なんかではこういうダニの研究発表とかなんかほとんどない。私は知らない。そういう意味も含めましてそういう天敵——事実NHKで放映しているのですから、そういう問題もありますし、あるいは線虫に直接きく薬剤というような問題、そういうほかの方法の開発というのにどれだけ熱意を持ってやっておられるかということを、時間がありませんから端的にお答えいただきたいと思うのです。
  75. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生御指摘のようにマツノマダラカミキリあるいはマツノザイセンチュウを防除するための研究といたしましては、いま私どもが申し上げました空中散布が唯一無二であるということでは将来においてはないであろう、しかしながら現時点では先ほど申し上げたような状況でこれをやっておりますけれども、いま林業試験場におきましてはマツノザイセンチュウを直接防除する研究といたしまして、松に対する直接浸透性の薬剤の注入あるいは土壌に薬を使用することによりまして薬剤成分の樹体への移行等の方法による場合の有効薬剤の選択と使用の方法に関する研究、こういうことも実施いたしております。それからいま申し上げましたような点につきましては、研究成果として一部に予防効果も認められておりますけれども、まだ技術的に解決を要する問題が非常に多いということになっております。また天敵に関しましては、マツノザイセンチュウに対して有効な天敵についての実用化の見通しが現時点ではまだ得られておりません。したがいまして、今後マツノマダラカミキリを対象にした研究を推進することにいたしまして、五十二年度からは松くい虫の天敵等利用による防除新技術に関する研究に着手することにいたしております。そのほか試験場におきましてあるいは育種場におきまして、抵抗性の品質の創出というものも現在進めておりまして、私どもといたしましても、いま申し上げましたように、薬をまくこと、空中散布をやることが絶対無二ということではなくて、今後できるだけ早くいろいろな方法を開発しながら日本の松を守る技術を開発していこうという努力をしている次第でございます。
  76. 馬場昇

    馬場(昇)委員 まだいろいろたくさんありますけれども、時間がございませんので、次に被害対策とその補償です。  姫路に調査に行ったのですけれども、ミツバチがやられた。ところが被害の話を営林署に言っているけれども、まだ全然賠償も被害の補償もない、こういうようなことも言われておりました。いま、被害が出た場合、補償をするのかしないのかということについてお尋ねしておきたいと思います。もちろんハチの巣箱の移動とかなんとかという問題に対する経費はどうするのか、こういうことでございます。
  77. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 私どもの原則といたしましては、被害が出ないように十分措置をして対応しようというのが原則でございます。したがいまして、五十二年度の予算におきましては、この被害防止対策を十分に講ずるためにその対応をいたしておりますし、また先生がおっしゃいましたように、もし被害が出たらどうするのだということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、もし被害が出まして、それが国または都道府県に責任があるという場合には、当然これは損害賠償法に基づきます賠償を行うことになると思いますけれども、基本的には被害が出ないような対応を十分して予防対策をやろうという考え方でございます。
  78. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私が姫路市で聞きました被害はもうミツバチが全滅しているのですよ。営林署に被害要求も出ているのです。これにはどうされますか。
  79. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生がおっしゃいました兵庫県の例だろうと思いますけれども、これは薬をまきますときに各業者への徹底を十分依頼いたしますとともに、空中散布の実施前に県の出先機関あるいは市町村、営林署等が業者ごとに電話あるいは訪問によりまして直接連絡を行うとともに、散布の前日には各戸へのビラの配布、市町村の広報車を利用した呼びかけ、こういうことを周知徹底を図っております。ところが先生の御指摘の件でございますけれども、ある業者につきましては被害対策を行わなかったために被害が発生した、そういう事例が出ております。これにつきましては、被害が発生いたしまして直ちに申し出がなかったためにすぐには把握ができませんでした。しかしながら、四カ月経過いたしまして、被害者からハチが全滅したと補償要求が出されておりますために、目下その補償の話し合いを続けておる段階でございます。
  80. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、補助金の問題についてお尋ねいたしたいと思うのですけれども、この法律が通りますと補助率を上げるんだ、こういうことになっているわけでございますけれども、私はずっと数県調査に行きましたところ、とにかくいまの法律でも補助率が上がればいいんですよというような話でございました。極端に言うと補助率を上げるという法律だけつくってもらえばいいんですよというようなこともあったわけでございますが、問題は私は地方自治体あるいは森林保有者というのはそういう財政負担でものすごく困っているのは事実なんですよね。ところがずっと補助率の経過を見てみますと、空散いたしますと地元とか本人負担は八分の一だ、地上散布しますと四分の一だ、伐倒処理をいたしますと六分の三負担しなければならぬ。ずっと国の行政の補助というものが空散したのを一番優遇しておる。そして伐倒して原理的なやつをやったのには補助律が低い、こういうようなことでずっと地方自治体とか森林保有者の世論というものを空散の方向に持っていくような補助金の使い方がいままでされております。そこで、今回のやつは、たとえば三分の二とか、これは私は補助率は今回の法律の上げるもので四分の三ぐらいに上げなければいかぬと思いますけれども、それはそれとして後で議論するといたしましても、問題は一番最初に大臣に質問しましたように、その枯損木を伐倒して処理をする、これが駆除の原点ですから、そこにも補助金をよけい出すという考え方がないのか。それから跡地の造林、ここにいままでよりも補助金をよけい出すという考え方がないのか、その点についてお尋ねしておきます。
  81. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 伐倒駆除につきましては、先生も十分御存じかと思いますけれども、木は一応利用価値があるわけでございます。したがいまして、私どもといたしますと、切って出しまして利用価値のあるものにつきましては、切って出す経費についてもしそれがマイナスになるようなものにつきましては、全額の伐倒駆除費を出しておりますけれども、またしかしながらその一部がやはり利用価値のあるものにつきましては、伐倒駆除費の中から考え方として木代金というものが差っ引かれなければなりませんので、そういう意味から伐倒駆除に対する補助金の算定をしているわけでございまして、伐倒駆除された方々が損失が出ないような対応の仕方の補助をしておるわけでございます。  跡地につきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、ただいま造林事業の中で松くい虫の跡地につきましては、一般の造林が四〇%の補助に対しまして五二%にするとか、あるいは土地が悪いところにつきましての造林につきましては特別なまた助成の方法がございますし、さらには保安林につきましては国と県でやるという形で現在の造林体系の中で対応できるんではないかというふうに考えております。
  82. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、法律案の内容についてですけれども、内容に入る時間もございませんが、この法律が閣議決定されますときに環境庁長官と農林大臣との間で合意事項ができたというぐあいに報道されております。その中身についても私は五点あったということを聞いておるわけでございますけれども、この農林大臣環境庁長官の合意というのはたとえば法律の中でどうなるのか、あるいは法律の中でなしに行政の中でどうなるのか、この辺について、またこの合意事項は覚書として名前を書いて調印されているのか、口頭でやっておられるのか、そういう合意というのですか、覚書というのですかよく知りませんけれども、農林大臣環境庁長官の、これを新聞では環境庁長官の条件ということも書いておりましたが、どういう形で取り結ばれたのか、それが法律、行政の中でどう生きるのかということについて大臣にお聞きしておきたいと思います。
  83. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この法律の実施に当たりまして十分環境に対する影響等を未然に防ぐという環境保全の問題、いろいろあったわけでございますが、これは両省の関係事務当局で事前に十分話し合いがついておりまして、別に意見の食い違いというものはなかったわけでございます。それを両大臣の間で確認をし合うということで処理いたした次第ございます。
  84. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま大臣から基本的な考え方を御説明いたしましたけれども、具体的に私から申し上げますと、五点ございまして、まず第一点は、基本方針において特別防除の実施に当たり環境の保全に配慮する旨明記してほしいという要望がございました。これにつきましては、本法の第三条に基づく基本方針に明記することにいたしております。  それから二番目に、トキ等の絶滅の危機にある特殊鳥類の生息地、貴重な動植物の保存地区等については特別防除の対象地域から除いてほしいという御要望がございます。これにつきましては、基本方針及び通達等により措置することにいたしております。  それから三番目に、実施に当たっては十分地域住民に説明し、薬剤の安全かつ適正な使用に努めてほしいという御要望がございます。これは特別防除の実施に当たりましては十分配慮すべき事業でございまして、通達等により十分徹底して指導する考えでございます。  それから四番目に、特別防除による環境への影響について必要な調査を実施し、調査結果等について環境庁に資料を提出してほしいという御要望がございます。これにつきましては、五十二年度以降調査を行いまして環境庁に対し適宜資料を提供することにいたしております。  最後に、航空防除以外の新たな防除技術等の開発に努めてほしいという御要望がございますが、これは、先ほど来申し上げましたように、試験場等を中心にいたしまして現在もやっておりますし、今後とも積極的に充実してまいる考え方でございます。
  85. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、第五条二項について、それから第七条も関連するのですけれども、私に言わせますと強権規定みたいなのが入っていますね。これをなぜつくらなければならなかったのかということについて聞いておきたいと思います。  それから予算の問題ですけれども、この法律が通らなければ五十二年度の空中散布面積が九万四百ヘクタールですか、そのうちの特別措置の国営一万八千百ヘクタール、県営の四万二千五百ヘクタール、計六万六百ヘクタール、二十一億円の予算が使えないというぐあいに聞いているんですけれども、これは本当にこれが通らなければ使えないのですか、その辺についてお伺いしておきたいと思います。
  86. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 五条二項の規定について先生からお話ございましたけれども、これにつきましては、これは現在行われています現行法にもこの規定はございます。私どもこれを乱用するつもりは毛頭ございませんけれども、どうしても緊急に特別防除を実施しなければならない場合が出た場合には、やはりこういう形で緊急にまきませんとなかなか対応ができないということで、現行法と同様な対応をしておるわけでございます。  それから、予算の問題でございますけれども、ただいま御審議願っております法案は予算関連法案でございまして、農林大臣が命令にかえてみずから行う特別防除に係る経費あるいは都道府県知事が命令にかえてみずから行う特別防除に係る経費に対する国の補助金等につきましては、本法案が成立しなければ、これを執行することができない状況になっております。
  87. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間が来たわけでございますけれども、私まだ五、六点質問をやろうと思ったのを時間がなかったのでできなかったわけでございますが、いまお聞きした範囲内におきましても、私の納得できない部分が非常に多うございます。私は、端的にいまの私の気持ちを申し上げますならば、私が言ったような内容を含めて、よりりっぱなものにして提案をし直してもらいたいぐらいの気持ちでございます。そういうものについていま答弁を求めようと思いませんけれども、まだまだ問題がいっぱいあるわけでございます。  時間が来ましたので、残りの質問を後に回すことにいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  88. 金子岩三

    金子委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十三分開議
  89. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  松くい虫防除特別措置法案について、参考人から意見を聴取することといたします。本日御出席の参考人は、日本植物病理学会会長伊藤一雄君、世界野生生物基金日本委員会常任理事池田眞次郎君、全国森林組合連合会会長喜多正治君、愛媛大学教授石原保君、東京大学名誉教授嶺一三君、以上の五名の方々であります。  この際、参考人各位に申し上げます。参考人各位には、御多忙中にもかかわらず、委員会に御出席を賜りましてまことにありがとうございます。松くい虫防除特別措置法案につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。なお、議事の都合上、まず御意見をお一人十五分、伊藤参考人、池田参考人、喜多参考人、石原参考人、嶺参考人という順序でお述べをいただき、その後委員から質疑がございますので、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、伊藤参考人にお願いいたします。
  90. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 松くい虫というのは大変よく知られた呼び名でございますが、松くい虫という特定の昆虫が存在するわけではございません。松の枝、幹に穴をあけるたちのせん孔性の昆虫、これを総称して松くい虫というのでございまして、総数六十種以上と言われ、なお主要なものだけでも十種類と言われております。  現在問題になっております松の枯れ、これはいわゆる松くい虫が松の皮の中をかじって、荒らして、そのために枯れるのだ、こういうふうに長い間考えられておりました。ところがその後、ごく最近の研究でございますが、この松くい虫と称するものはどれも健全な松を枯らす力はないということで、それならば何が一体松を枯らすのだろうかということでいろいろな研究が進められまして、マツノザイセンチュウという非常に小さい、一ミリメーターにも満たない線虫が松の木の中の水を通す管を壊すから、松はしおれ、やがて枯れるということがわかったわけでございます。ただいま持ってきましたこの管びんの中にマツノザイセンチュウが、これだけで十万匹入っております。こういうふうなことで、松を枯らす元凶はマツノザイセンチュウという非常に下等な動物であるということがわかったわけでございますが、この材線虫には足も手も羽もございません。それではどうして松の木に入るのだろうかということで、その後研究が行われました結果、マツノマダラカミキリと申します従来松くい虫の主要種とされたもの、これがこの線虫を持って媒介するのだということがわかりました。要するに、現在問題になっております松枯れは、マツノザイセンチユウを病原体とし、マツノマダラカミキリによって媒介伝播される伝染病だということになったわけでございます。こうなりますと、松枯れに、マツノマダラカミキリという虫が運び屋として一部役目を果たしていますけれども、それを松くい虫の被害というのは不当でございまして、学問的に正しくはマツノザイセンチュウ病、こういうふうに呼ぶべきだと思います。  それならば、どんなメカニズムでもって枯らすのだろうかということでございますが、これがマツノマダラカミキリでございます。この虫の体の中に材線虫がたくさん入っております。このマダラカミキリの成虫は五月ごろから飛び回りまして、交尾産卵期を控えまして盛んに松の枝をかじる。そのかじった傷口から、みずから体に持っております小さな材線虫をくっつけまして、その傷口から松の木の中に入って、そして猛烈な勢いでふえて松を枯らす、こういう順序になるわけでございます。  このようなことで、これを防除するということになりますと、まず伝染病学の原則に従いまして、この種の病気においては、病原体よりもその伝播者、運び屋をたたくというのが原則でございます。身近な例を申し上げますと、われわれのマラリア熱病という病気がございますが、これはマラリア原虫というごく下等な動物が病原体でございまして、それを伝播する運び屋が蚊であるということで、蚊をたたくというのが原則でございます。このようなことで、松枯れを防止するためにマダラカミキリをたたくという原則のもとに立てられたのが薬剤防除法でございます。いま申し上げましたように、この運び屋が飛び回るのが五月の下旬からでございますから、その時期にある種の薬をまきましてこの虫自体を殺すと同時に枝先に薬をつけましてその薬のついた枝をかじったものが死ぬ、こういう段取りでございます。このたび法案に出ております使う薬を見ますとMEP剤、商品名スミチオンでございますがこれになっております。この薬は非常に厳密な日本の農薬取締法の諸検査を経まして、最も低毒性でありまた最も分解しやすいというふうな薬で世界的に定評のある薬でございますから、これは一番いい方法だと思います。  ところでこの薬を使うとしましてまく時期、量でございます。先ほど申しましたように五月の下旬からですが、五月の下旬と六月の中旬に二回MEP剤の三%液をヘクタール当たり六十リットルというのが標準になっておりまして二回まく。ヘクタール当たり三%液六十リットルというのは非常に微量なわけでございます。  ところで、私も特に空中散布の場合につきましていろいろな批判のあることを存じております。古い時代ならばいざ知らず、最近におきましてはただある病気あるいはある虫を防ぐために薬を使って効果があればいいというものではございません。やはりいろいろな環境、自然界に対する影響は慎重に検討しなければならないというのがわれわれ植物病理学の立場でございます。そういう観点に立ちましていろいろ環境に対する影響も調べております。まず一つは下床植物、松林の下に生えているいろいろな植物に対する影響はどうであろうか。ときによりましてはネジキとかナツハゼにごく小さい薬の斑点ができたという報告もございますけれども、大部分はほとんど問題にならないということ、が言われております。  第二点は、落ちた薬が地面に達しまして土の中の微生物に対する影響はどうであるかという点でございます。これもこの薬の性質上速やかに分解するということでまずほとんど問題がない。  それから今度は林地に降りました水、雨が流れていきますが、その流下水に対する影響はどうかということを調べたわけですが、これも問題がない。  次に、非常に懸念されますのは野鳥類に対する影響でございます。ちょうど空中散布する時期の五月の下旬から六月の中旬というのは野鳥の繁殖期に相当するものですから、非常に懸念されるところでございます。これにつきましては、まずモニターが散布以前と散布後にずっと林の中を歩きまして鳥の状態を調べた結果、薬をまいてどうという影響はないと出ております。  次には、実際この薬をまくところに鳥をもっていきまして空中散布による薬を浴びせてやった、こういう実験がございます。これにつきましても使った鳥は限られてはおりますけれども、その後の成長、繁殖には影響はないということでございます。  次には、非常に過酷な実験でございますけれども、実際に今度はスミチオンを烏に食べさせてやった。そうしますとこれはある程度以上を食わせますと死ぬのは当然でございます。食わせてやった実験と、それから実際にまいた場所に落ちる虫、それから野草、これを食べる鳥類がごく普通でございますので、そうして死んだ昆虫やら野草にどれくらいこの薬がつくかということをはかりまして、それと薬を食わしてやった実験とを照らし合わせた結果、三%液ヘクタール当たり六十リットル二回散布ならばまずこの心配はなかろうというふうなことが言われております。  次には、昆虫相に及ぼす影響でございます。これは空中散布しますとある程度林内における昆虫が死ぬのは避けられません。ところがその後の経過を調べますと、早いものでは三週間遅くも明くる年までにはもとの昆虫相に返る、こういう結果が出ております。  なお、別途クリ園で同じようにこの薬剤空中散布をやった実験がございます。これは過去五カ年間にわたってクリ園に薬をまきました。その後の昆虫相の推移を調べたかなり詳しい研究でございます。まいた当座は昆虫相が非常に単純になる、それからまた特にアブラムシ類が多くなったということはアブラムシ類の天敵でありますテントウムシ類が死んだのだというようなことでございます。そうでございますけれども、その後二年たったら全くもとの昆虫相に返ったという報告がございます。このようなことで、まず三%MEP剤をヘクタール当たり大十リットル、これの二回散布ならばそうこの心配はないであろう、かように考える次第でございます。  次には、薬剤を使う以外にこの松枯れを防ぐ方法がないのかという点でございます。  まず一つは、天敵を使ったらどうだ。確かに病原体でありますマツノザイセンチュウにもそれからまたその運び屋でありますマダラカミキリにも天敵はございます。ところがその天敵類を保護しあるいは増殖しましてこの松枯れを防ぐという方に持っていけるような強力なものはございません。これは今後また努力しましてこの方面の研究を進めなければならぬ問題ではございますが、現在のところそのような強力な天敵はございません。  次には、材線虫に強い松を植えたらどうかということであります。これができれば恐らく理想的な枯損防止法でございましょう。この点につきましても諸研究が行われておりまして、日本在来のアカマツあるいはクロマツの中でもごく少数ながら材線虫に強いものが見つかっております。それからまた外国種の松には非常に強いものがございます。こういうようにいま研究が緒についたばかりでして、永年作物の通性からしましてこれを実際に利用するまでにはまだかなりの年数がかかるだろう、こういうふうに見ざるを得ません。  第三点は、においの物質を持っていくという誘引剤と申しますかそれを林の中に持っていく、そうして運び屋でありますマダラカミキリをそこに集めて処分するという方法です。大変魅力的なテーマでございます。確かに市販されている誘引剤なるものにはある程度集まってはきますけれども、これによって松枯れを防除できるというふうなものでは目下のところございません。このようなことで、現在のところいささか思い過ごしの方方もおられると思いますけれども、このしょうけつをきわめております松枯れを防ぐためには、私も決して理想的な方法とは申しませんけれども薬剤散布に頼るしかない、かように考えるわけでございます。  次には、この防除法の実行上についての意見を申し述べます。  まず第一点は、再々申し上げますように、松枯れは伝染病であるという点を一層認識していただきたいと思います。それは私ども方々を見ますと、隣に真っ赤に枯れている松がありながらそれをほったらかしておいてそのわきで一生懸命薬をまいている。卑近な例を挙げますと、コレラ患者をわきに置いてそしてコレラを予防すると同じなんです。そういう点からいいまして材線虫によって枯れた松、これはもう立木駆除というふうな方法があるわけでございますからそれを徹底していただきたいというのが第一点でございます。  それから、いま一点は、この材線虫、マダラカミキリ、これは被害を受けて枯れた丸太の中に住んでいるわけでございますが、それをいままで被害がなかったところに運び込んで新たな被害を起こしている実例が少なからずございます。これも被害木の移動禁止というふうなことがあるわけでございますから、こういう点を御留意願いたいと思います。  それから三つ目には、再々申し上げますように、薬というのはいわばもろ刃の剣でございまして、ある点におきましてはそれは有効であっても、ひっくり返せばそれはまた害になるというものでございます。薬剤の散布濃度、それから散布量、これは厳守してほしいと思います。よくこの三%液を六十リッター二回まくのはめんどうくさい、倍にしてまいたら一遍で済むじゃないかという話を聞きます。これはよくありません。  一つは、このマダラカミキリが成虫になって飛ぶ時期を押さえることが非常にむずかしい点もございますけれども、一遍だけでは効果において確実性が欠けるといううらみが間々あります。  いま一点は、薬剤を多くやりました場合には、やはりいろいろな生態系に及ぼす影響がそれほど長くなる、こういう薬をやればやるほど影響が長く後に響くという確かなデータがございます。  このようなことから、決してたくさんの薬を一遍にまくということはせずに、先ほど来申し上げております薬の濃さ、それからまたまく量、これは厳守すべきだと思います。  さらに、よく松枯れのために薬をまいたらお蚕さんが死んだとか、ミツハチが死んだとかという批判を受けます。この薬をまいた桑を直後蚕に食わせますというと、これは一匹残らず死にます。それからまた、ミツバチがこの薬を浴びますというと、これはまた問題なしに全部死んでしまう。こういうものに対しましては、現在のところお蚕さんに大丈夫であり、ミツバチにも大丈夫だと、しかしマダラカミキリだけ殺すという薬はこの世の中にございません。ですから、こういう被害の予防につきましては、万端の事前の処置をお願いしたい、かように思います。  なお、実行するに当たっては、間々末端までこういう思想が徹底しないうらみがございますから、これは担当されるところで末端の現場まで徹底されるよう特に御注意願いたい、かように思います。  以上でございます。
  91. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、池田参考人にお願いいたします。
  92. 池田眞次郎

    ○池田参考人 私は、鳥獣の問題、それから環境保全の問題、これを専攻しております一員でございます。その立場から本日私の意見を開陳いたしたいと存じます。  最初に総論的なことを申し上げますが、今度の松くい虫防除特別措置法の制定に当たりまして、この法の主要目的としておいでになるところは木材の量の確保、それから景観の保全あるいは水源涵養、その他いろいろあるようでございますが、そういうことを基準にして国土保全をする、そのために松くい虫で被害を受けている松を、航空機を使いまして空中から薬剤を散布して、これを駆除し松を保護する、そういう目的で効率を上げ、そして国土の保全を全うしたいというようなことがこの法の御趣旨だと解釈しております。  これを私の方の技術的な面から一応解析してみますと、松くい虫についての生物学的な研究、それから薬剤の化学的性能の検討、それから駆除の方法並びにその効果、こういうものにつきましての調査研究は非常にりっぱなものがなされていると私は解釈しております。いわば現時日本での最高レベルでの技術の集結というふうに私は解釈しております。  ただし、ここで一つだけ私が疑問に思う点がございます。それは松くい虫それ自体についての御研究は非常に高度のレベルに達しておりますけれども、この松くい虫のためにまきます薬剤によって影響を受けるであろうという範囲内の野外での御研究が少し不足しているんではないかというふうに私は感得いたしております。松くい虫の方の研究は、それぞれの分野の専門の方々が担当なさって非常に高度の技術を持ち、十分に研究、検討されておると思いますが、野外での長期にわたります鳥獣をも含めまして環境への影響試験というものの資料がいささか不足しておるんじゃないかというふうに私は感得しております。特に鳥獣類、魚類、これは水生生物も含む範囲でございますが、こういうものにつきまして薬剤散布をいたしましたときにどういう影響を及ぼすのかというような野外での調査、研究が、現在まで私が知り得ました範囲では少なくとも十分であるとは申されないというふうに私は解釈しております。昭和四十八年以来本年までで足かけ五カ年間、空中散布によりまして松くい虫の非常に効率的な駆除をなさり、その実績を上げておるという事実がございますが、その間に、経年的に毎年、長期間にわたりまして野生鳥獣あるいは魚類あるいは環境に影響を及ぼす調査というものがなされたんだろうとは思いますが、決して十分とは申せないということでございます。この点に私は、薬剤を航空機によって散布するというこの現象に対して多少一つの不安感を持つものでございます。  総括的に申し上げますと、薬剤の散布とい一うことは、自然にあります有機体あるいはこれを簡単に申し上げますと生物でございますが、生物に対して何らかの作用を及ぼすからこそこの薬をまくわけでございます。したがいまして、非常に低濃度であり、分解能が非常に早いというような薬品であっても、目標とする生物以外の生物にその薬品の影響が及ばないとは断言できないというふうに考えるわけでございます。もし全く及ばない薬でしたらば、これはまく意義がないというふうに私は感じております。  それでは、どういう形の影響がここで生ずるかということは、二つの場合を私は考えております。その第一の場合は、直接の影響でございます。これは申すまでもございません。薬剤をまいて、そこですぐ即効的に顕著にその結果があらわれる、これはわれわれの目で確認し得られますから問題はないと思いますが、第二の間接的な影響という点に私は問題が残ると思います。しかも、この間接的の影響というのは、従来こういう作業の中でとかく見落とされる傾向がございました。ということは、直接何もそこに目に見えるはっきりした現象があらわれないものですから、これが見落とされるという傾向がございました。  薬剤類というものは、一度体内に吸収されますと、程度の多かれ少なかれの差はございますが、その一部が体内に蓄積されるという現象がございます。この蓄積されます薬剤は、有効成分が人間なり動物の体の中の筋肉とかあるいは脂肪という層の中に蓄積されます。そして、その生体が弱ってきますと、脂肪分解を起こして、エネルギーをその脂肪分解によって補うという段階になりまして、脂肪の中に溶けておりました有効成分というのが体内に流れ出て、そしていろんな機能に障害を及ぼしてくるという現象がございます。  それではどういう経路によって体内にこれが入るか、体内に持ち込まれるかという問題は、主として食物からだと解釈されます。特に鳥獣類に関しましては、御承知のように鳥類は羽毛がございますし、獣類は体毛がございます。ですから、直接皮膚から浸透してくるということは余り考えられない。どうしても食物から来る。薬剤によって汚染されました食物を摂取することによって、体内にこの薬剤が持ち込まれるということが考えられます。これは、私の方で申しますと、食物連鎖という現象がございます。珪藻類あるいは浮遊生物、そういうものを小型の動物が食べて育っていく、その小型の動物をさらにそれより少し大きい動物が食べていく、順々にこれを食用として食べていく、これを食物連鎖と申します。たとえば、空中散布によって水が汚染されるというと、そこの珪藻類の中に、非常にごく微量ですが、この成分が保有される。その珪藻類を食べた小型の魚の中に、その珪藻類を通じてある程度の量が蓄積される。そのまた蓄積されたものをさらにそれよりも大型のものが食べると、またそれが蓄積される、こういうふうに各生物間に非常に食物連鎖を通じて広く行き渡り、しかも蓄積される量がだんだん多くなってくるという現象がございます。その結果どういうことが起こるかと申し上げますと、鳥類では、いろいろ薬剤がございますから、薬剤によって違いますけれども、殺鼠剤にいたしましても、殺虫剤にいたしましても、殺菌剤でも除草剤でも、ある程度の量が体内に蓄積されますと、ふ化率、産卵率、そういうものが低下してまいります。また軟卵を——軟卵と申しますのは、普通の卵でなくてからのやわらかくなった卵、軟卵を産む場合がございます。これは当然ふ化いたしません。要するに、不妊症を起こしてくるというような現象がございます。さらにこれが進展いたしますと、御承知のように催奇性あるいは発がん性というようなものをそこで誘発してまいる。さらにそれを深く追求いたしますと、遺伝因子すら変えていくと言う学者がおります。こうなりますと、非常に長い間知らず知らずの間にわれわれの体内に蓄積されたものは、非常に恐しい作用をするというふうに一応考えていいのではないかというふうに私は考えております。  さて、これから具体的にこのスミチオンの問題に入ります。スミチオンは非常によく研究されておりまして、確かに低毒性であり、そして分解能が非常に早いということは、紛れもない事実でございます。これは科学的に証明されておる事実でございまして、議論の余地はないと思います。しかもネズミ類、マウスあるいはウサギ、ある場合には人間すら使って、これの毒性試験をやっておいでになるということから、非常にしっかりした薬剤の性能をつかんでおいでになるということは、私は一応認めるつもりでおります。また御承知のように、WHO、世界保健機構というものがこれの使用を認めている、そういう国際的の部署もあるということでございます。  しかしながら、私の考えでは、あくまでも野外で自然の生態系の中で起こった現象というのは、必ずしも実験室の中で科学的にこれを解析し、追求していった結果とは同一ではない場合があるということで、たとえばある動物が死んでおった、これをとってきてそれを分析してみたらば、その中にスミチオンの有効成分がなかった、だからこれは大丈夫だということは、ある一定時期での問題であって、これを長期間という目で見ますと、必ずしも私は信じがたい点があるんじゃないかという点でございます。すなわち、長年月に経過していった過程で、生物体内にこのスミチオンならスミチオンの有効成分が蓄積されていかないという保証にはなっていないというふうに、私は考えるわけでございます。  このような基本的な考えの上に立ちまして、今度のこのスミチオン航空散布に対しまして、私は四つの疑問点を持ちたいと思っております。  その第一は、航空機によって散布いたしましたことは、すでに五カ年間の実績があるが、その間に長時間かけまして、野外での現象、環境への影響あるいは鳥獣、魚類への影響の資料が第一不足しておる。実施する前にはもう少しこの資料が確保されなければならぬじゃないかという点が第一点でございます。  第二点が、散布の時期が五月ないし六月ということでございます。これは松くい虫を駆除する上でも最適であると同時に、一般生物界の繁栄に対して非常に重要な時期なのでございます。ここに重なっているという点に、一つ私は不安の要素を持っておるわけでございます。  第三番目に、一回の散布区域は、大体二カ所以上をもって一単位とするというふうに表現されておると私は承知しております。具体的な面積は示されておらないのですが、当然これはある程度の広い範囲を考えておいでになるというふうに解釈いたしますが、何といっても航空機をもって薬剤を散布するということは、広範囲にこれをまかなければその効率は低下する、これは当然なことだと思います。したがいまして、この薬剤が散布されます区域は、一回がかなり広範にわたるのじゃないかという点が、第三点の私の不安な点でございます。  第四点は、これはあるいは直接的な害、現象と申せるかもしれませんが、スミチオンは水溶液でまかれるというふうに伺っております。水溶液でまかれるということは、ちょうど繁殖期の巣におります小鳥類のひなに水分がかかるということでございます。そうしますと、体温の異常発散を起こしまして死ぬひなが出てくるという心配でございます。これは、それならば自然に雨が降ったらどうなるのかというような御疑問があると思いますが、雨が降る場合は、親鳥が上にかぶさってそれを防いでやる、たとえ多少ぬれても、再びそこに親鳥が帰ってきてこれを温めるということで保護している、これは自然の現象でございます。航空散布の場合には、第一に考えられることは、飛行機が森林の上に参りますと、そこにおります鳥は全部一時そこを退避いたします。これが、一回、二回と飛行機が繰り返しますと、かなりの時間巣に戻ってまいりません。これは、私、実際に山で自身で経験しておることから申し上げておるわけでございます。そうしますと、水分によって体がぬらされたひなが死ぬ危険性がある。  以上の四点が私の疑問といたします点でございます。したがいまして、この点をひとつもう少し追及していただくという点が私の希望でございます。したがいまして、現在のままでは、この航空機によりますスミチオン散布に対して全面的に賛成をいたすというわけにはまいりません。多少そこに私は疑義をはさんでおるという姿勢でございます。  なお、蛇足と思いますが、最初に法の目的を申し上げました。国土保全ということを申し上げました。国土保全のために松を救うのだというこの目的は、確かに一理あると思います。しかしながら、松を完全に保護するために薬剤をまいて、われわれが生活しております場所を汚染するということが国土保全とどういう価値判断をなさるか、この点の検討がもう少し必要なのじゃないかと私は思うのでございます。この点をもう少しよく御検討いただきまして、その上でこのスミチオンを散布する、しない、あるいはどういう方法でやるというようなことを御決定願いたい、かように希望するわけでございます。  以上で私の話を終わります。
  93. 菅波茂

    ○菅波委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、喜多参考人にお願いいたします。
  94. 喜多正治

    ○喜多参考人 ただいま委員長から御紹介いただきました、私、全国森林組合連合会会長の喜多でございます。     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕  今回機会をお与えいただきましたので、松くい虫防除特別措置法案につきまして、私どもの系統組織を構成いたしておりまする百八十万林家、大半は農林家でございますが、これらの声を代表いたしまして意見を申し上げたいと存じます。  私どもは、森林が農林家の経営の一環として、家計に役立つということだけでなく、自然環境の保全にも大きな役割りを持つものであるということをよく存じておりまして、かねてから森林の維持管理に努めてまいっておるのでございます。戦後の経過を見ましても、私どもは荒廃した山の復旧に力を注ぎ、ひたすら造林に努力をいたしてまいりました。その面積は、約六百万ヘクタールに及んでおるのでございます。その主なものは、杉、ヒノキ、そしてこの問題の松でございます。  この中で、松は造林面積の約一五%を占めておりまするが、その特徴といたしまして、杉やヒノキの育ちにくい海岸地帯、また里山地帯、さらに山の尾根地帯、こういったやせた土地に最もよく育つ貴重な樹種でございまして、松林が防風、防潮、また水資源の涵養、さらにまた観光、特に日本の風景にはなくてはならない松、こういうことで大きな役割りを果たしてきたことは、これは申し上げるまでもございません。この大切な松の大敵が御存じのように松くい虫でございまして、戦後御承知のように大被害を記録いたしました。その当時、官民挙げての努力で一たん軽微となったのでございまするが、最近、漸次盛り返してまいりました。四、五年前から再び非常な勢いで蔓延してまいりました。いまや西日本から東日本、宮城県の松島のところまで及んでおりまして、関係するところは三十六都府県に達すると言われておるのでございます。このままで推移いたしまするならば、日本列島からいまに松はなくなってしまうのではなかろうか、憂えの声が全国各地の同志から出てまいりまして、その抜本的対策の樹立が待望されるに至ったのでございます。  この間、私どもも当局に対しまして、早急にこの虫の生態を明らかにして防除対策を立ててもらいたい、再三要望を申し上げておるのでございます。御存じのように、水稲におきましてはあの二化メイ虫、これはつとに当局の手で生態が解明されまして、発生予察の制度が打ち立てられております。こうした前例もあるのでございます。すでに国会におかれましても、四十二年と記憶いたしておりまするが、森林病害虫等防除法改正の際の附帯決議で、同様の趣旨が盛られたことを思い出すのでございます。幸いにして、この虫は国立林業試験場特別研究チームによりまする熱心な研究の結果、マツノマダラカミキリを媒介とするマツノザイセンチュウ、これだということが解明されたのでございまして、何といっても、これは大きな功績と言わなければならないと私は存ずる次第でございます。  さらにまた、この虫の被害防除の方法といたしまして、ヘリコプターによりまする薬剤空中散布が最も努果的なんだ、またその薬剤といたしましても、国の指定薬剤、先ほど来話もございましたが、スミチオン乳剤、これを使用する限りは他に悪影響を及ぼさないということが実証されておるのでございます。もとより私どもは適切な天敵等が発見されて、これによることが実際的だというふうになってくれば、これが一番私は理想的ではなかろうかと思っております。だが、残念ながら目下のところはその段階には至っておりません。いまのところ私どもには実際的な方法として、こうしたヘリコプター散布による方法以外にはないのでございます。こうして四十八年以来私どもの組織体でございまする森林組合系統におきましても、県や市町村とタイアップいたしまして、この薬剤の空中散布による松くい虫防除、これをかなり広く実施してまいっておるのでございます。  しかしながら、現行法では防除は森林所有者の個人防除だ、これをたてまえにいたしておりまするために、最近のように森林組合が県や市町村と一緒になりまして、いわゆる共同防除、これによって広い範囲にしかも一斉に行おうという場合、どうも都合の悪いことが起きてくるのでございます。たとえば、不在森林所有者、これが大分おります。しかもこれらの方々は遠方に住んでおる。連絡に手間取っておるといううちに適期を失してしまうというふうなこともございまして、なかなかうまくいきにくい、こういう実情にございます。どうしてもこの際、事業の持つ公共性、こういった点から申し上げましても、国営防除をうんと充実する、また県営防除の一段の強化を図る、これが非常に現段階では必要だということを痛感せざるを得ないのでございます。  以上の点からいたしまして、今回の特別措置法はまことに時宜に適したものであり、私どもはその実現を強く望むものでございます。  繰り返し申し上げたいのでございますが、私ども農林家は松くい虫の被害にいま非常に悩んでおります。したがって、その防除に努力を傾けてまいったのでありまするが、現状はもう実は耐え切れない限界に来ておるのです。もしこのままに放置いたしまする場合におきましては、日本の松の木はその大半がこの虫にやられて、ついには幻の木になってしまわないとは一体だれが保証できましょうか。これでは大ごとでございます。いまこそ松くい虫の被害を断ち切りまして松を救いたい、私ども森林組合系統組織全体としてのこれは強い要望でございます。それには先ほど申し上げましたように、現段階では薬を空中散布するというほか方法がないのでございまして、特にあわせて申し上げたいのは、その防除時期の問題でございます。すなわち、マツノマダラカミキリが羽化して飛び立つ五、六月、松の小枝を食害いたしまするこの五、六月の時期が一番大事でございまして、この時期をつかまえまして薬剤散布をしなければ効果がない。時期が非常に問題でございます。すでにこの方法によりまして、ここ数年かなりな実績をおさめてまいったのであります。  つきましては、先生方の温かい御理解のもとにこの法案が一日も早く成立いたしまして、本年度の防除の適期にうまく間に合うように、そして日本列島に松の緑が鮮やかによみがえるように心から念願するものでございます。私は、森林組合系統百八十万組織の本当に切実な声を代表いたしまして、重ねてこの法案の早期成立につきまして先生方のこの上とものお力添えを切にお願いを申し上げる次第でございます。どうかよろしくお願いを申し上げます。
  95. 金子岩三

    金子委員長 どうもありがとうございました。  次に、石原参考人にお願いいたします。
  96. 石原保

    ○石原参考人 私は愛媛大学の石原でございます。  実は、スミチオンで退治しようとしておりますマツノマダラカミキリ、これはかつては非常に珍しい昆虫であったのです。それがなぜこんなに大発生したかという問題についてまず御説明申し上げたいと思うのでありますが、戦後間もなく、昭和二十二年のことであります。アメリカの天然資源局のオースチン博士、この方は日本でかすみ網の使用を禁止された方でありまして、この方がツグミの渡ってきたのを一網打尽にして殺した死骸を見ましてびっくりされまして、この鳥が生きておったら森林の多くの害虫を食べたであろうのにというので、当時はGHQの力が強かったものですから、かすみ網を禁止さしたわけですが、その方が、自然のバランスという問題を取り上げられまして、この森林というものが非常に人生にとって大事である。その森林を守る。森林というものは野鳥に生息と繁殖の場を与え、野鳥はそのかわりに森林の害虫を退治してくれる。これが一つのバランスの例であるということを申されました。また横浜国立大学の宮脇教授が「植物と人間」という本の中に、歴史的に見まして、自然林を大切にしない民族は滅びておるということを書いておられます。これはNHKブックスにあります。そういうことで、歴史的にも自然林は大事なんであります。  ところが、戦後材木の需要に追われまして、至るところの天然林というものはまる坊主にされてしまいまして、鳥獣の繁殖の場は非常になくなった現状であります。また一方、殺虫剤の農薬というものが強力なものができまして、水田にまかれるようになりました。確かにそのおかげで毎年豊かな実りが期待されるようになったのでありますから、その点は食糧不足の日本人に非常に助かったのです。ところが、水田という限られた場所にまかれた農薬のために、現在ほとんどの場所でイナゴ、タガメ、ゲンゴロウというものは絶滅です。種切れになりました。種切れになってから農薬を規制しても、もうこの生物たちは再び戻ってはまいりません。そういうことになる前に考えなければなりません。こういった自然界のアンバランスが現在の松くい虫の大発生を招いたものと私は信じております。  そこで現在、航空散布すれば最も有効であるというスミチオンでありますけれども、これはすでにDDTを六年余りまいたアメリカの例でカーソンの「サイレント・スプリング」で、ニレの木の立ち枯れ病を媒介する木くい虫を退治するためにDDTを六年間航空散布をやったけれども、八六%のニレが枯れてしまったという教訓がございます。スミチオンは低毒性であるし、速分解性があるからというお話でありますけれども、水田に使う約百倍の濃度を空から散布をするのであります。事実、きょう名前を出すことを御了解を得たのですけれども、高松の第一高等学校の豊嶋弘先生が実験したのですが、散布地の山でカスミサンショウウオの幼生、オタマジャクシ、これを調べたところが〇・一PPmでそれは水腫ができて死んでしまう。アオカビの発育が一〇〇PPmで正常の三分の一になる。一〇〇〇PPmでは全く停止してしまう。ところが航空散布に使われる濃度は五万PPmという高濃度のものであったという報告をしておられます。これは高松の図書館の印刷物に書いておられます。それから、最近いただいた練馬区の石神井の方でありますが、主婦からの手紙をちょっと御紹介しますと「私共の住んでおります地域では、スミチオンの原液が殺虫用にと区役所から町会組織を通じて配給されております。去年の六月中旬、これをうっかり二〜三倍程度にうすめて散布したため、これが井戸水を汚染し、それを気づかずに飲用したため、家族全員に症状が出、とりわけ私の場合約半年間、半病人としてすごし、現在もまだ完全には回復しておりません。」これは数日前にいただいた原文のままを読んだわけです。人体にも有害なことはこれでわかります。  それでは、スミチオンを空散した場合にどれくらいの虫が死ぬかといいますと、これは木の上に住んでいる虫だけでありますが、下に白い布を置きまして、そして空散で死んだ虫を集めたところ、これは莫大なものです。これはアリなんかは普通拾おうと思っても見つからぬのですけれども、白布の上だったら見つかります。これは一ヘクタール当たりに換算いたしますと、アリ類が百二十万以上、これはマツノマダラカミキリの卵を食うヒメアリも含んでおります。それからアリ以外の昆虫が七十九万、それからダニ、このダニも天敵がございますが、ダニとクモ類十六万五千、合計一ヘクタール当たり二百十五万匹、これは地上のものは含んでおりません。これだけのものが死んでしまいます。したがって、そういう散布で死んだネズミであるとか野鳥というものは、普通であればアリがそこへ土を運んで、そして土を乗せてそれを浄化してくれますが、ネズミの死体も野鳥の死体もそのままであるのが確認されております。天敵ももちろん死んでしまいますから、マツノマダラカミキリの繁殖にはかえっていい都合を生ずるわけであります。  殺虫剤空散を続けますと、一時的にその地区は被害が軽減するのは事実でありますけれども、ゴルフ場であるとか松並木は全然効果がありません。その点、神戸や岡山のゴルフ場の方から、幾らまいてもかえって被害木が増大するだけだというのをちょうだいしまして、私が殺虫剤を使うなら浸透性殺虫剤がいいということをお教えしたところが、ことしは大分見通しができて、喜んでお手紙をちょうだいしております。  時間の関係で余り詳しいことは省略いたします。  林野庁の報告では、いままでは三カ年継続してやれ、第一年目に大体三分の一被害が軽減する、第二年目に十分の一になって、三年たてば大体なくなるんだということで、地方に散布を強行してまいりましたけれども、これは実情は有効であったところはまずないと言っていいと私は思います。ずっと調べましたけれども、虹ノ松原なんか非常に効果があったという報告がありましたけれども、全然効いていないということを有力な方から手紙をいただいております。  ではどうしたらいいかというと、まず、免疫性系統の発見または育成でありますけれども、これはある程度見つかっているようであります。こういった系統を見つけた人を保護する内容を盛り込んで、何とかそういう農産種苗法改正案をつくったらどうかという提案をしてくださった方もあります。そのために熱意を持ってやれば免疫性の系統が見つかるんじゃないかということです。  それから、殺虫剤を用いるのなら浸透性殺虫剤、これは使い方が三つほどございます。バンディング法とかカートリッジ法とかあるいはナイフ法とかございますけれども、まず一番簡単なカートリッジを使って、ちょうどくぎを打ち込むようにしてやれば薬液が入る。そうしますと、マツノマダラカミキリの幼虫も材線虫も死んでしまいます。これは案外浸透性殺虫剤には弱いようでありまして、これでゴルフ場等はかなり助かっております。ですから、名勝地の松であるとか公園の松、これは浸透性殺虫剤を使えばいくのではないかと考えております。  井戸水を汚染する心配がなければ、粒剤を根元へまいておけば、雨で溶けた浸透性殺虫剤が根から吸い込まれまして、これでも有効であります。現在各林業試験場等でもある薬会社がテストされておりますけれども、一本に対して一キロから三キロぐらいの粒剤を根元へまいたのが全部有効であるという判定が出ております。  それから、松は経済的な価値がかなり下がったものですから、ヒノキ等による代植、あるいはまた広葉樹のウバメガシで緑化しまして、その間に系統の強い松を混植して緑の回復を図るというふうな方法もいいと思います。  そのほか、えさ木誘殺という方法もございますけれども、これも少なくとも殺虫剤の空散よりも多くのマダラカミキリを殺すことは確かであります。  しかし、私は、自然のバランスをこの機会に回復さすことを本気に考えませんと、日本人は悔いを千載に残すんじゃないか、こういう心配をするわけでありまして、航空散布は私は根本的に反計でございます。
  97. 金子岩三

    金子委員長 どうもありがとうございました。  次に嶺参考人にお願いいたします。
  98. 嶺一三

    ○嶺参考人 私は、林業経営学の専門でございますが、自然保護に関しましても深い関心と熱意を持っておりまして、自然保護協会の評議員もやっておるのでございます。  ただいま問題になっております松くい虫の防除の法案につきましては、松が日本の林業にとりましてもあるいは国土の保全、風致の維持等においても非常に重要なものであるという面から、松くい虫の被害によってこれがだんだんと枯れていく、この被害を早く防除しなければ大変なことになる、こういう声も強いのでございますし、一方、それに対して、現在提案されているスミチオンの空中散布あるいは地上散布等によりまして他の生物に影響が非常に大きいということで、こういうまだ毒性の多い方法は実施すべきでない、こういう意見も強いのでございます。  これらはそれぞれ専門家の方々の御研究でございますので、それぞれ根拠は十分あるとは存ずるのでございますが、結局は私は、人間にたとえますならば、伝染病にかかっているかあるいはかかるおそれが非常に多い、そういう場合に、予防あるいは治療のいい薬ができた、それを与える、飲むなりあるいは予防注射をするなりして病気を治すあるいは蔓延を防ぐ方がよろしいか、それとも、まだ毒性があるあるいは毒性はそれほどないという説もあるけれども、その保証が十分つきかねる現在においては、空中散布等は実施すべきでない、こういうような専門家あるいは国民の一部の方の御意見がありまして、これをどちらをとるかは、結局専門家あるいはその専門家の見解を検討されまして議会の皆様方が、良識ある国民の納得のいくような処置をとられるべきであるということになるかと思うのでございます。  先ほどのお話にも出ましたけれども、こういうような大きな予算もとって、いろいろな反対があるにもかかわらず防除をしなければならないということは、国土の保全あるいは木材資源の培養というような点から重要であるということもございますが、もう一つ強調してほしいということは、松は日本国民なり文化にとりまして非常に関係の深いものであって、古来から詩や歌、俳句、文学、能だとかいろいろな面、あるいは絵画でも松が主体になっておるものが多いし、日常生活でも、松というものは恐らく日本の木のうちで最も人間生活に密着している木である。それから、安芸の宮島、天ノ橋立、松島という日本三景、あるいは日本の有名な名園、個人の庭でも、それから東海道その他の松の街道であるとか、至るところに松が非常に国民生活にあるいは情操の涵養に重要な役目を果たしてきたということであります。この東京の中でも、皇居前の広場あるいは堀端のクロマツであるとか明治神宮の社殿のアカマツであるとか、こういうものがもし枯れるということであれば、これは非常に遺憾なことであるというようなことも強調してほしいというような国民の声もあるのであります。しかしながら、そういうものを防除するのに、現在の解明されました空中散布が有効であるかどうか。有効であるという説がある反面、これはそれほど役に立たない、あるいは松くい虫以外の原因による松の枯損もある、その重大な原因は大気汚染あるいは乱開発、乱伐、こういうようなことであるというような説もあるのでありまして、これらも私はその一つ原因であるとは思うのでありますが、一方全然大気汚染あるいは乱伐等のない離れ島でも松くい虫、材線虫による枯損が出ているというようなことの報告もございまして、これはどちらもあると思うのございます。  結局先ほども申しましたように、日本のいまの現状としては、松も非常に大事である。松が枯れてなくなる。全然なくなるということはないと思いますけれども、松が非常に枯れてしまう、百年、二百年もかけてせっかく育った名勝の松あるいは名園の松が枯れてしまうと、再び復元をすることは容易でないというか、もう至難なことでもございますが、またその反面、もしいまの防除の方策が適切でなくて、生態系に非常に大きな後遺症を残すとか、あるいは人畜に被害があるとかいうようなことであれば、犠牲はやむを得ない、松が枯れてもいたし方ない、こういうことになるわけでございますが、それがそれほどの被害はない、またいろいろな人畜に対する実験もした結果、薬害はほとんど認められないというような実験もあるということになりますと、そのどちらをとるか、信頼するかということは、被害の防除にスミチオンの空中散布あるいは地上散布をすでに実行いたしまして相当の効果をおさめたと賛成論者の方がおっしゃる宮島であるとかそういうような場所と、それから全然空中散布、地上散布をいたさなかった松の被害の大きかったところ、この両方をいろいろな専門家がよく慎重に公正に調べて、果たして効果が十分あったかなかったか、あるいは他の有効な生物に対して非常な被害があったのか、それともそれらは大した被害でない、あるいは被害があっても間もなく回復のできるものであるかどうか、そういうようなことは、よく調べればある程度わかることかと思うのであります。ただし、その調べる際にも公正な立場で相手の方の主張にも耳を傾けて十分に検討をするというような態度でありませんと、いつまでも平行線をたどって終結がつかないわけでございますし、すでにこれは現段階におきましては、そういう調査をして、そして法案を通すか通さないかを御決定になるというような時期的の余裕はないと存ずるのでございますから、皆さん方がいろいろな学者なり専門家のおっしゃるところをよく御検討になりまして、どちらをとるかということを御決定になりまして、そしてもし防除をすることが有効であり、また薬害等の影響はそれほどないか、あるいは多少あっても松の枯損を防止した方がより適切であるというようなことであれば、一日も早く法案を通さないと、ますます被害が拡大するということになるかと思うのであります。しかしながら、もし薬害が非常に大きい、あるいは将来取り返しのつかないような後遺症が残るという見解を皆さんが支持されますならば、これはそういう法案を強行すべきでないと思うのでありますが、その反面、名勝の松あるいは各地の松、これは恐らくもう北海道を除く本州、四国、九州では、どこでも松を見ない町村はないと思うのでありますが、そういうところで松がだんだんと枯れていっても、これは大の虫を助けるためにやむを得ないことであるという覚悟をしなければならないと思うのであります。  いずれにしましても、結局いずれの方々も国を憂え、国民を愛するという心情から出た論争であると思いますので、今後もし法案が通った場合には、それに対する反対の方々が懸念される公衆衛生の関係とか、農業や畜産、水産関係、野生の鳥獣の関係等に対する防除を十分に注意をして、地域の住民の方々にもよく納得のいく方法で行う。もしまた万一被害を生じた場合には、適切な補償等の措置も必要かと思います。また逆に、法案はこの際通すべきでないということになりました場合には、松が各所で枯損が続けて出ることはやむを得ないというようなことになるかと思いますが、その場合にも、被害の補償とか、あるいは景観、風致、いろいろな点におけるマイナス面について適切な考慮をしていただきたいと思うのであります。  これは蛇足でございますけれども、病虫害に限りませんが、激害、激しい被害が出まして、初めてそこで大騒ぎをして、研究者に急に研究をして早く解決をしろとか、対策を責め立てられることがよくございますけれども、こういう点につきましては、平素から、害が出ない前からいろいろと研究に対して力を入れて、そうして被害が仮に出ても大きくならないうちに防除するということが非常に必要であるということをつけ加えまして、議員の諸先生方の適切なる御判断をお願いいたしたいと思います。
  99. 金子岩三

    金子委員長 どうもありがとうございました。  以上で、参考人の意見開陳は終わりました。     —————————————
  100. 金子岩三

    金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井勇君。
  101. 今井勇

    ○今井委員 私は愛媛大学の石原先生に絞りまし  て、いささか御質問を申し上げたいと思います。  時間の関係でずっと全部言ってしまいますので、恐縮でございますが、要点だけ覚えていただきたいと思います。  私は先生の御所論を詳しく読みました。また、きょう先生の御開陳も拝聴をいたしまして、基本的に非常に疑問があるのは、先生の御所論の中で、他の論文の引用が大変多いわけでございます。あの人がこう言った、あれはこう書いたというので、少なくも科学者というのは、自分が実際に行い、確かめたものだけが真実でありまして、それをもとにして議論を発展させて、それを補足するのが科学者である、私はそう信じております。私も土木のエンジニアの一人でありますから、そう信じますが、先生の御所論を拝見しまして、逆であるような感じがしてなりません。したがって、私はこの道では素人でありますが、以下四点についてお尋ねいたします。  先生の御所論の中でマツノマダラカミキリというのはいまでこそ四国で大発生するが、終戦ごろには四国では未記録であった珍種であると言っておられます。ところが私の調べたところによりますと、こんなことはもうすでに一九三一年「続日本の甲蟲」という雑誌にはっきり出ております。体長は二十から二十五ミリ、しかも分布は本州、四国、台湾、シナと書いてあります。さらに一九三八年「あきつ」という、四国の土佐でありましょうが、土佐を主とした四国産カミキリ科目録の九十三番でこの虫が高知市大杉村で採集されておるといって、この文献が出ております。そういう簡単なことすら先生がお調べになっていないのが大変残念でございます。  第二点は、先生はマツノザイセンチュウに抵抗力がある松の系統の発見、または育成が成功しておると言われておりますが、私の調べたところによりますと、この問題につきましては昭和四十八年から五十年度に国立林業試験場を中心といたしまして実施をされました「マツ類材線虫の防除に関する研究」に基づきまして五十一年度から国立林木育種場が実施いたしておりますが、私は、まだ導入育種、交雑育種あるいは選抜育種のいずれにおいても事業化の段階にはなっていない、このように確認いたしております。どのような根拠で先生がそのような御所論を出されたのか理解に苦しみます。  以上が文献の問題でありまして、あと二つは先生はヒメアリというのは天敵であると言っておられます。天敵というのは、われわれ素人が考えますと、それがいるためにその虫がほとんど生息しないまでに卓越した効果があるのが天敵であろうと思うのですが、ヒメアリというのは私の調べたところによりますと、このマダラカミキリの卵を食べるわけであります。天然というのはよくしたものでありまして、マダラカミキリは平方メートル当たり二十匹ぐらいしか成虫にならない。しかし神様はたくさんの卵を生ませるわけであります。したがって、成虫を食べるのであればいざ知らず、卵を食べるだけでは天敵たり得ない、そういうふうに思うわけであります。  それから、先生は防除策としてえさ木の誘殺法を用いたらよろしい、こうお書きになっておりますが、確かにえさ木に行って誘殺されますのは産卵期のマダラカミキリでありますから、そのマダラカミキリはすでに羽化後に後食してザイセンチュウをもう松の木に侵入させた後でありますから、確かに翌年度の生息密度を低下させることには効果はありましょうが、当面の枯損を防止するには必ずしも有効ではない。したがって、現在のように大変な勢いで松が枯れております時点におきましては、やや当を失する対策であろう、私はかように考えます。  以上、四点について先生の御見解を承りたいと思います。
  102. 石原保

    ○石原参考人 お答え申し上げます。  まず第一の問題、これは記録があることは知っておりました。林野庁にこの間伺ったときも、前にもあるじゃないかというお話を伺いましたけれども、当時の昆虫の文献の間違い、つまりこの種類だという間違いが非常に多いのです。たとえば皆さん、チョウなんか十分研究されておりますけれども、その中でギフチョウというものすら私が四国に行ったときは四国の記録にはあるのです。あるけれども、おるかおらぬかというのは問題になっていた。これは確かに四国の昆虫であるという資料をずっと集めております。日本の国立大学の中で私の研究室が少なくとも昆虫類では一番充実しておると私は信じております。そういうことで、以前の記録はあったりなかったり、本によっても、たとえば井の頭公園に平山さんの甲虫やカミキリが専門の平山博物館というのがございます。その方は昆虫類、カミキリムシとかクワガタとか非常に好きな方ですが、その人の本にも四国はわざわざ省いてある。そういうようなことで、当時の記録は私は信じておりません。ただ、私が四国に終戦後間もなく行きまして、足摺岬の付近でとりました。非常に貴重な標本として現在大事にしております。ですから、当時はいいかげんであったということでギフチョウも私は信じていないわけです。  第二の問題。これはいろいろな生物に抵抗力のある系統というものは多かれ少なかれ普通あるものなんです。クリは天然のものは大分やられましたけれども、それも免疫性のあるものが育種によってでき、現在はクリの実もできております。すでにことしの一月四日NHKがテレビで放映しました。それをお調べください。熊本の林業試験場で成功したとわざわざテレビで注入する写真までやってくどいぐらいまで紹介してくださいましたから、現在もすでに成功しているらしいとそれには書いたのです。  それから第三の問題。天敵という問題は、ある天敵だけで害虫を駆除するものが天敵だろうとおっしゃいますけれども、これは全然違います。天敵というものは多かれ少なかれどんなものにもあるのです。その天敵があってバランスが保たれておる。もうちょっと簡単に申しますと、どんな生物にも自然界には天敵というものがあるものです。卑近な例を申し上げますと、カエルをヘビが食う、カエルの天敵はヘビであるペビの天敵は実はナメクジ。これはちょっと私信じかねるのですが、ヘビに聞いてみないとわからぬけれども、ナメクジのぬるぬるしたのをいやがるようですね。そのナメクジをカエルが食べるわけです。三つお互いに天敵がある。これが三つの関係、三すくみの説と言いますけれども、自然界はこういった因果の関係が、あるものは四角、あるものは五角、無限につながっておるものが自然界のバランスなんです。それがバランスが保たれているところであれば、何らかの原因でそこに破綻が生じましても、バランスの程度によりまして、いずれはその破綻はもとに戻るものなんです。結局大きな天変地異等があって破綻が大きければ、それだけ時間がかかる。農薬の空散なんというのもその大きい破綻をつくる原因と私は信じているからこういうことを申し上げたのです。  第四の問題。樹木誘殺では手ぬるいのじゃないか。確かにそのとおりですけれども、私さっき申し上げたのは、少なくともある程度の個体数が死ぬものですから、航空散布でゼロから数匹殺すよりもましだということを申し上げたので、これが有効とは申し上げておりません。  以上であります。
  103. 今井勇

    ○今井委員 終わります。
  104. 金子岩三

    金子委員長 馬場昇君。
  105. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は五人の参考人の方から貴重な意見を聞きましたので、五人に平等にお尋ねをいたしたいと思います。時間が非常に限られておりますので、答弁のあった後また時間があれば再質問いたしたいと思います。  まず最初に、伊藤参考人にお尋ねいたしたいわけでありますが、実際枯死いたしました松を調べてみますと、マツノザイセンチユウが全然発見されなかった、出てこなかったという資料を私知っておるわけですけれども、そういう点から言いますと、松枯れの原因というのがマツノザイセンチュウだけじゃないのじゃないか、ほかにそういう虫がおるのじゃなかろうかという疑問を持つのですが、それに対する見解を一つ。  それからいま一つは、今度の法律で二回散布するわけですが、いままで散布したのもそうですけれども、大体マツノマダラカミキリがふ化いたしますのが五月から八月ごろまでだと言われておるわけですが、残留期間が二週間といたしますと、結局早いところは五月末から六月初めまで、そのときはまだふ化して出てきていない。そのころまく。そうすると、二週間の残留期間で、そのころふ化したものはやられるかもしれない。それからまたもう一回まく。ところが五月から八月までの間で二回では足らないのじゃないか。本当にきちんとやろうと思えば、三回あるいは四回要るのじゃないか、こういうぐあいに思うのですけれども、そんなにたくさんまくと、これまた自然の生態系だとか人体その他に被害を及ぼすというような意味で不完全なまき方をしているんじゃないか、こういう考え方を持つのですが、その辺に対しての御見解をお伺いしたいと思うのです。  それからいま一つは、先生は、植物とか微生物とか水とか野鳥とか、こういうものに影響はないというぐあいに言い切られたように記憶しているのですが、どこの研究でそういうことをおっしゃったのか、どの資料でおっしゃったのかということでございます。  次に、池田参考人にお尋ねいたしたいと思います。  結論だけ聞きますが、スミチオンの散布によって人体に蓄積された場合に人体に悪影響はないのかどうか、スミチオンの人体への蓄積による被害はないのかどうか、こういうことについてお尋ねしたいと思います。  それから、先生の御意見に私も共鳴するところが多いのですけれども、やはり野外試験というのが少ない、また、さらに言うならば、室内だけであるし、室内というのは狭い意味でありますけれども、広い意味の室内だけであるわけですし、さらに言うならば、農林省関係の試験場というのが主になっておるようでございますが、野外実験と言われましたのは、広く公開をして、そして多くの人々に開かれた実験ということも含まれておるのじゃないかと思うのですけれども、そういう問題について、やはり林野庁とか試験場とかというものに対して研究者としてどういう試験をやってもらいたいんだ、共同にやろうじゃないかという御提言がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。  それから喜多参考人にお尋ねいたしたいと思うのです。  私は、実は昨年の十月ごろだったかと思いますが、この委員会で松枯れの抜本的な対策について大石農林大臣に質問をし、要求もいたしました。そのときにはあなた方の森林組合等の陳情あるいは市町村、県等の陳情を受けまして、それはもっともだということで追及したわけです。ところ。が、そのときの追及あるいはその陳情というのは、いま参考人は、この法律は百八十万林家の本当に血のにじむような願いであるから早く通してくれというような意味の発言がございましたけれども、そのときの陳情は、私が聞きましたのは、松枯れ対策の抜本的なことをやってくれ、りっぱな法律をつくってくれというのがそのときの皆さん方の願いじゃなかったただろうか、こういうぐあいに私は思うわけでございます。そうした場合に、本当に松枯れの防除というならば、先ほどどなたか先生がおっしゃいましたように、伝染病だから枯れた松をそのままにしておけば、これは病人をそこに置いているようなものだ、私もまさにそうだと思うのです。だから枯れた木を、個人の力ではどうにもならぬようになっているのですから、国の力でもってそれを完全に除去する、そういうことをきちんと抜本的対策に入れるべきだというような点と、もう一つは跡地の問題です。やはり跡地は自分で造林できないという実情にある。そういう跡地の造林を国の責任でもってやるべきだというような問題。それから壊滅に瀕したような労働力、こういうものをやはりきちんと確保する対策を国で立てるべきだ、こういう点。それから補助金というものをもう少したくさんやるんだ、そういうものを含めた、松くい虫防除じゃなしに、松枯れ対策の抜本的な法律をつくれというのが皆さん方の願いじゃなかったのかと思うのです。今度の法律を見たんだが、そう出ていない。だからこそ百八十万の林家がこの法律をりっぱなものに変えてくれというのが今日の願いじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。  それからもう一つは、森林病害虫等防除法がいまあるわけです。これでやってみて、何が支障だったのかということについてお聞きしたいのです。  先ほど不在の山林地主がおる、だからそういう者に連絡や何かがとりにくいとか言われましたけれども、外国におるのもそうおるわけじゃないし、そういう不在の山林所有者に連絡がとれないために、それでまかれなかったというのはないのじゃないかと私は思うのですけれども、現在までの隘路は何であったかということです。  それから最後に、本当に空中散布は人体とかその他自然生態糸に被害がないと思っておられるのかどうかということについてお伺いします。  その次に石原参考人にお尋ねしたい。とにかく大気汚染が原因だというような研究者の報告があるわけでございますが、先生は大気汚染説というような立場をとっておられるのかどうかということと、ここに四国の湯山先生もおられるのですけれども湯山先生から聞いた話によりますと瀬戸内海のたくさんの島の中にも被害の多い島も確かにある。ところが全然被害のない島もある。たとえば大島の吉海町というのですか、こういうところは被害が少ない、あるいはない。同じ瀬戸内海でも被害がない島がある。こういうものを見て、それから防除のきっかけとなるような何か対策が出てくるというようなことは考えられないか、その辺について先生のお考えがあればお聞きしたいということでございます。  それからもう一つは、確かにいま参考人のお話を聞いておりましても、あるいは日本国民の世論というのも、まさに国論を二分しているような状況でございます。生物に被害があると言う人、ないと言う人、それから自然環境に被害があると言う人、ないと言う人、まさに二分しているのですが、しかし、こういう問題というのはやはり徹底究明しなければいかぬわけでございますので、こういう点で、ただいま片や林野庁の試験関係は皆問題ないと言っているわけですから、問題があると言う学者あるいは研究者を集めて公開討論ぐらい国民の前できちんとやるべきだと私は思うのですけれども、そういう問題についての御見解をお伺いいたしたいと思います。  次に、嶺参考人にお聞きしたいと思います。  松枯れの原因についてでございますけれども、激甚被害のところについてお尋ねするわけです。松枯れの激甚被害が出ておる。そこの原因はマツノザイセンチュウだけと思っておられるのか、あるいは大気汚染とか乱開発とか、そういうものの複合した形でそういう激甚被害が出てきておるのか、そういう松枯れの原因についての先生の御見解をお伺いをしたいと思うのです。  それから、この法律を通すべきか通すべからざるべきかということで、先生、通す場合にはこうだ、通さない場合にはこうだ、いろいろおっしゃったわけでございますけれども、私は、やはりそういうふうに悩んでいる国民も大分おると思うのです。これは先生の御見解を聞きたいのですけれども、そういうときにこそ判断するものは国会だというぐあいに私には聞こえたのです。国会も確かにそうかもしれませんけれども、この問題に関する限りは国民が決める。この問題に関する国民というのは、私はやはりそこの地域住民だろうと思うのです。だから、地域住民がそれに判断を下すべきだ。迷うときに、やるかやらないか判断を下すべきだ、私はこういうぐあいに思うのですけれども、それに対する先生の御見解をお聞きしたいと思います。  十八分までだそうでございますから、簡潔にひとつ……。
  106. 金子岩三

    金子委員長 伊藤参考人、要点を簡潔に御答弁願います。
  107. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 ただいまの第一の点、枯れた松を調べたってザイセンチュウがおらないじゃないか、ほかの原因もあるじゃないか、こういう御質問でございます。  われわれが、ある微生物がある病気の病原体だと断定するためには国際的に定められたルールがございます。コッホの四原則と申しますけれども、これをすべて満足しなければならないというルールがございます。それによって詳細綿密な、マツノザイセンチュウというのは松を枯らすという事実がたくさんあるのです。これによりましてマツノザイセンチュウは健全な松を枯らすのは疑いないということで、これはもう日本の学界でも世界の学界でも広く認められておるところでございます。  なお、先生の御質問の、ザイセンチュウ以外に松を枯らす原因はないか。ございます。これは根の病気によっても枯れますし、それからまた、御承知のように、大気汚染にも松は弱い木だということは言えると思います。これが第一点のお答えでございます。  次に第二点。五月の下旬から六月の中旬、たった二回の散布では足らないではないか、こういう御指摘でございます。  調べた結果によりますと、空中散布しまして松の枝に着きました薬は約三週間——これはその枝を食った八〇%のマツノマダラカミキリが死ぬという結果が出ております。確かに完璧な防除を目的としますと、先生御指摘のように、もう一回まかなければなりません、現に、貴重だと言われておりますゴルフ場の松を防ぐために三回あるいは四回まいて完全に防除しております。そういうことで、われわれも完全防除をいたしたいのですけれども、やはり幾ら低毒性であっても薬をまくという懸念から完全防除は望めない。それから、七月、八月になりますとマダラカミキリの数が非常に少なくなります。総体的に少なくなるという点から、まずまずここら辺のところでというのが事実でございます。  第三点、いろいろな被害で枯れたものはどうかということでございますが、手近にまとまったものとしましては、本日持ってこなかったのでございますが、農林水産航空協会に各地方の林業試験場それから国立林業試験場、全部のものをかいつまんだ文献がございます。  なお、野鳥に薬を食わして試験したというのは、近いうちに農林省から出るはずでございますけれども、ごく概要はこの赤い本の中に、これは実は私が書いた本でございますが、かいつまんで書いてございます。  以上でございます。
  108. 池田眞次郎

    ○池田参考人 お答えいたします。  第一点の人体に対します試験は、これは薬のメーカーがやっております。もちろん影響があるかないかの試験ではございませんで、許容最高量の基準を求めた試験でございます。二十一日間一定量の薬剤を人間に投与いたしまして、その結果、異常が出る限度を求めた試験でございます。ですから、原則的に申しまして、薬剤が人体に影響がないという実験ではございません。  第二点は、野外での調査の具体的な方法という御質問だったと思います。私は、先ほどの意見開陳の際に申し上げましたように、いままでは間接的な影響はとかく軽く見られてきた。こういう問題は非常に重大であるから、実際にやるときは鳥獣あるいは環境を扱う専門家を必ず加えて、そうして観察によってデータを積み重ねていくようなことが必要だということを申し上げたいと思います。  なお、どういう方法をやるかということは、時間がかかりますので、詳細なことは申し上げません。もしそういうことが実現しましたら、これは当然考慮いたして実施しなければならぬ問題だと存じております。  以上でございます。
  109. 喜多正治

    ○喜多参考人 第一点の松枯れ対策かあるいは松くい虫対策かという点でございますが、きょうは松くい虫防除の特別法案でございますから、その法案につきましては、私どもぜひ御了解をお願い申し上げたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  先生御指摘の、跡地の造林も含めた松枯れ対策、これは非常に重要でございます。これは当局の協力も得ながら、われわれも万全の措置を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、現行法だけではどうしていけないのかという点でございますが、先ほど申し上げましたように、現行法では個人個人の防除という点に力点がございまして、とてもいまの激甚災には対応がしにくい、これはどうしても共同防除で計画的にやらなければいけない、本法に盛られておりますような内容でなければなかなかうまくいかないという点が一つ。もう一つは、現行制度では市町村等の自治体に負担がかかり過ぎまして、とても対応がしにくい、そこで国営なり県営等の大幅な拡充によってやっていきたい、このような点でございます。  第三点の、薬による被害はあるのかないのかという点でございますが、私ども、山に住んでおる連中の声を聞きますと、いまのところそう心配したようなことはないのでございます。これは専門家の方がいらっしゃいますので、細かい科学的なことはそこら辺に任せざるを得ないと思いますけれども、いまのところは私ども、それほどの大きな点は感じてはいないのでございます。
  110. 石原保

    ○石原参考人 まず、大気汚染で松が枯れることがあるかどうか、私の意見を述べよということでございますけれども、確かにそういうこともございます。松は亜硫酸ガスに弱い木でありますから、ある程度弱ったものに松くい虫がつくということは宮島等で証明されております。それから、阪神地方で松が枯れるのも、自動車の排気ガスが主原因であった例もあるようであります。もっともそういう場所では、松より梅の方が弱いものですから、梅が先に枯れるようです。  それから、被害のない島もあるし、被害のひどい島もあるというお話でございますけれども、確かにまだ線虫を持っていない、マダラカミキリの入っていない島は安全でございます。けれども、いつ入るかわからない。この点、私も非常に心配しているわけであります。と申しますのは、マツノマダラカミキリと線虫の関係は、ちょうど腸チフス菌とそれを媒介するハエのような関係でありまして、殺虫剤でハエを退治したらいいという理論ですけれども、腸チフス菌を消毒することも考えなければいけない。ハエを全滅させればいいのですけれども、一部でどんどん発生させておれば、これは意味がないのじゃないか、そういうことで私は私の意見をつくったわけであります。  以上であります。
  111. 嶺一三

    ○嶺参考人 松枯れの原因につきましては、私は、材線虫と木くい虫、当面問題になっておるこの被害が最も大きいとは思いますが、そのほかの原因による松枯れも確かにございますし、また、大気汚染その他の複合によって松が弱って、それにつきやすいということもある。いろいろな場合があると考えております。  それから、この法律を決めるのは、議会の諸先生方が、良識のある国民に納得のいくようなという公式論を述べましたが、結局、現在の松の枯損の状態が非常に激しいということと、その毒性については、いろいろ問題はあるが、林業関係の試験研究機関だけでなくて、保健衛生の関係その他からも相当検討された上で、それほど激しい被害はないであろうというような報告が出ている以上、いまの状況では、私としては、まず当面の問題として防除をやり、同時に研究を重ねて、もっと害の少ない防除法を解明することが必要である。しかしながら、松林自体を、広葉樹や何かを交えて健全な松林に仕立て上げるとか、あるいは抵抗性の強い松をふやすということも確かに非常に重要なことではございますが、当面の間には合わない、そういうことを待っていたのでは松林が非常に大きな被害を受けるであろうと考えております。
  112. 馬場昇

    馬場(昇)委員 終わります。
  113. 金子岩三

  114. 柴田健治

    柴田(健)委員 まず、森林組合連合会長にお尋ねしたいのですが、松くい虫は、四十年代になって材線虫という根拠が確認されたわけです。それまでは一般の松くい虫論で、戦後、岡山県の場合は大発生をして、われわれは三年間苦労したのですが、その時分には復員者、引き揚げ者、農村の次三男ということで労働力があった。今日は正直に言ってそういうものがない。高度成長政策で、山に対する政策というものが、国の誤りから山を荒らすだけは荒らしたがこの保護政策というものはやっていない、そういう結果がいま出てきたと思うのですが、そういう面から、四十年代、四十二、三年ごろから順次発生してきた。特にこの三、四年が非常に異常発生ということで本当に大変なことになった。それまでにみずからの山をみずから守らなければならぬ使命を持っておる森林組合という組織がなぜ今日まで放任したのか、正直に言ってわれわれはその点が疑問なんですよ。この責任を感じておられるのかどうか、これをまず聞きたいのです。
  115. 喜多正治

    ○喜多参考人 いまの、松くい虫がしょうけつをきわめる前に森林組合でどう対処をしてきたかという点でございますが、御指摘のように非常に労働力が減ってきております。非常にいまむずかしい時代でございます。私どもは、いままでは伐倒、剥皮、焼却という非常に手のかかる駆除方法、撲滅方法をとってきたわけでございますが、労働力が足りないので非常に難儀をきわめておった。ちょうどそのときに、今回のヘリコプターによりまする薬剤散布、この方法が試験場で解明されまして、現在それによりましてぜひひとつ根本的にやっつけてやりたいという段階でございます。
  116. 柴田健治

    柴田(健)委員 伊藤参考人と次は石原参考人に聞きたいのですが、スミチオン系なりセビモール系の薬剤の使用量、年間、たとえば五十年における全使用量は、スミチオン系が二千百七十六トン、そのうち林業用に使ったのが百七十トン。スミチオン系の薬剤を山に使った。それからたんぼに使った。たとえば稲、豆類、リンゴ、ミカン、ナシ、モモ、カキ、ブドウ、茶、野菜、全部このスミチオン系を使っているのです。これは山だけについて生物論、植物論としてとらえるのでなしに、こういうスミチオン系の薬剤散布を論ずるならば、国土全体に対しての物の考え方、これをひとつ基調としてとらえて論争を起こしていかないと、山だけの問題ではこれは解決しないと私は思う。そういう面から見て両参考人はどういうとらえ方をしておるのかお聞きしたい。
  117. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 おっしゃるとおり、わが国のスミチオン総生産額の林業に占めている割合はたったの五%か七%でございます。いわゆる農業、園芸、衛生、害虫駆除に広く使われている薬でございます。  それで、全般的に見よということでございますが、私、農業の方余りつまびらかでございませんけれども、とにかく日本国土に占める森林の面積は七〇%、それから森林の面積は二千五百万ヘクタールといわれております。林業に限定しますならば、この計画によってまかれる面積というものは二千五百万ヘクタールのうちのわずかなものだと思います。そういうことで、こういう薬をやることは事林業に関する限りは大きなトラブルはなかろうではないか、かように考えております。
  118. 石原保

    ○石原参考人 方々にスミチオンが使われているのに林業だけ問題にする必要はないのではないかという御趣旨だと思います。私は実は「農業昆虫大要」という本を「養賢堂」から出しておりまして、いま九判、ロングセラーの一つでございます。この本にも、農薬というものはできるだけ狭い範囲で使うべきものだとはっきり書いてございます。害虫駆除の欄に、たとえば水田でも稲の弱い苗代期、こういうものには使うべきだけれども、なるべく水田には大々的には使わぬ方がよいということを書いております。現在栃木県あたりの水田地帯でも、稲のヒメトビウンカを駆除するために殺虫剤の空散をやっております。水田です。これはバイジットという薬でありまして、その殺虫効果は自然界でも四カ月から五カ月たっても一〇〇%の殺虫率を失わない強力な薬、これを空からまいております。このことにも私反対いたしまして、新聞に書いたことがございます。要するに、私は、殺虫剤というものは多かれ少なかれ生物に害があるのだからできるだけ小範囲に使うべきものだ、空散でなく、さっき申し上げたように木自体に殺虫効果を及ぼす注入法、こういうものをとるべきだということを申し上げておるわけでございます。  ついでに申し上げますけれども、スミチオン年産五千トン、国内の二千トン、林業には百六十トン使われているようでありまして、残りは海外に輸出されております。海外でも多少の批判はあるようでありますけれども、それはここでは省略いたします。  以上です。
  119. 柴田健治

    柴田(健)委員 石原参考人に聞きたいのです。石原さんは二月二十日付朝日新聞に、「殺虫剤空中散布は蛮行」、こういう題目で書かれた。この中を読んでみて、たとえば一〇PPm、一〇〇PPm、一〇〇〇PPm、空中散布使用濃度は実に五万PPm、こう書いてある。五万PPmというのは大変なものなんです。これはどういう資料を使われて確認されたのか、われわれ一つ疑問を持っている。  それから、先ほど浸透性の殺虫剤を使ったらいいという御発言があった。浸透性の殺虫剤というものはどういう農薬なのか。  この二つの点をひとつ聞かせていただきたい。
  120. 石原保

    ○石原参考人 さっきの濃厚な五万ppmという数字は、香川でそういうのが使われたということを豊嶋弘教諭が高松の図書館から出ております雑誌に発表してございます。香川ではそういうのを使われた。しかも、彼は、きょうは御了解を得たのですけれども、いろんな資料を自分の意図する以外に使用された、たとえばスミチオン散布に対して非常に心配したこういう疑いがあるとかいうことは全部省かれて県のあれに載ったということを言って非常に不満を持っておられます。  それからもう一つは、浸透性殺虫剤、これはシステミックインセクティサイドと申しまして、植物体を有毒化するものでありまして、その使い方は、たとえば松の場合は、水和剤と言いまして水に溶かす薬とそれから粒剤がございます。水和剤の場合は、水に溶かしまして、それを松の幹にきりで穴をあけてそこにたたえるような形で注入するわけです。それからカートリッジというのは、外国で使われておりますものは五ミリから二十五ミリのしんちゆまたはアルミ製の筒でありまして、先がV状に切り込みがあるのです。それを木に打ち込みましてそれに薬液をつけるのです。そして注入させる。第三は、ナイフ法と申しまして、ナイフを木の幹に入れまして、その柄のところに薬液の容器をやって徐々に薬を入れる。そういう方法でやっております。ヨーロッパ等ではカラマツのツツミノガとかあるいはスリップスという害虫がおりますけれども、それの駆除に効果を挙げておりますが、ただ、これは木の樹液の流動が盛んになったときにいいということであります。  それから、私が自分で研究してないじゃないかという御指摘を受けましたけれども、私は、うちの学生にも大分やらしておりますし、愛媛県の方は私直接には協力しておりませんけれども、その後のなにはずいぶん自分で研究に行っております。  以上です。
  121. 柴田健治

    柴田(健)委員 もう一回全森連の喜多さんにお尋ねしたいのですが、いま大気汚染説も出たし、公害論——われわれは虫だと、こう思っている。大気汚染説で、公害論をとられると、われわれ一つ心配することがある。理由は、この地域は大気汚染でもう松は育たないんだ、こういう位置づけをされたら、森林法の適用除外で地目変換の申請が出てくる。そうすると、たとえば瀬戸内海地域は土砂流失の保安林が多い。瀬戸内海の沿岸は民有林は大体保安林が多い地域であって、森林法の適用を受けている。ところが、もう松が育たないという位置づけをされると、そこにまた乱開発、乱売買が起きてくる。不動産屋がねらっている。原野に地目変換を申請して、地目変換が行われた場合に、また山の売買が行われるという心配がある。それから自分の山が保安林の指定を受けたら、八十年間固定資産税を払っていないんだから、それだけ責任を持って山を守らなければならぬ任務がある。山林地主はそれだけの義務がある。それをやろうとせずして、またそういうものを悪用して森林法の適用から除外された場合に、山は完全に売り買いができる。また乱開発ができる。そういう可能性が出てくる。日本人というのは悪知恵の方が多いやつが中におるから、法の盲点を幾らでも突いてくる。そういう場合に、松が枯れてしまってどうにもならぬ、そういう問題が起きてくる可能性をわれわれは心配しておる。全森連としては、そういう問題が起きてこないと信じておられるか、起きてくると思われるか伺っておきたい。
  122. 喜多正治

    ○喜多参考人 大気汚染の問題、これは非常にむずかしい問題でございまして、いま先生の御指摘のようなことになりますと、これはまことに大きな問題だと思うのです。いまの段階では、クロマツはわりあい強いのです。アカマツが若干弱いという性格を持っておりますけれども、まだ大気汚染でやられるという段階までは幸い来ていないんじゃないか。しかし、御指摘のように乱開発の対象となるようなことになりますと、これは大ごとでございますから、それで私どもは少なくとも山は、何といいますか、お互いの手を強く結び合って、妙なところに渡さないように、できるだけおれたちの山はおれたちで守ろうじゃないかという運動を前々から展開いたしておるのですけれども、いずれにいたしましても、先生の御心配になるようなこういった乱開発は、私は厳に抑えるべきじゃないかというふうに思うわけでございます。
  123. 柴田健治

    柴田(健)委員 嶺参考人に聞きたいのですが、嶺先生は中立論を言われたんですが、生物論、植物論どちらも大事だ、まことにそのとおり。それは薬剤を散布しないのが一番条件がいいんです。条件はいい。ところがわれわれ農民の立場から言うと、もう封建社会の時代から時の権力者に米や麦を物納で取られ、いまは安い価格で取られる。そして昔からヒエやアワやキビやソバをささやかにつくりながら食ってきた。それが要するに虫や鳥にやられてきた。農民は気象条件で苦しみ、一方では権力者に苦しめられ、一方では虫や鳥に苦しめられてきた。それから天敵論であろうと益鳥論であろうと、論は分かれます、学者的には、昆虫類、野鳥類——けれども人間は、守るためにはいろいろな敵と闘ってきた。そういう歴史がある。そういう気持ちから申し上げると、人体に影響する限りはやめなければならぬということはだれでもわかる。それから人体に影響があるかないか、せいぜい皆さん方が公正に判断をしてどちらかに決めなさいといって、要するに選択論を迫られた。選択論ということは、理屈としては抽象論的にはわかる。けれども、われわれの立場から言うと、生物も大事だが、植物がなければ生物が育たぬじゃないか、こういう気持ち、それをわれわれ人間として人体に影響が本当に出るなら全部農薬をとめなければならぬ。それを片一方は黙っておってここだけこう言うのは、理屈が通らぬから、その点で学者として本当に農薬がいけないならもうぴしゃっととめる意思表示をすべきではないか。ただ選択論で、あなた任せのような発言は私は学者としてはおかしいという気持ちがするのですが、見解を聞いておきたい。
  124. 嶺一三

    ○嶺参考人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、私は自然保護と言いましても、植物主体の自然保護もあれば、動物を主体にする自然保護もあり、また植物の場合でも、いろいろな種類によって保護の対象、一方を助長すれば一方は駆除しなければならないというようなことも起こり得ると思うのであります。たとえばいま御説明がありましたが、農業の立場で農作物に被害を与える雑草も等しく植物でございますが、これを駆除しなければ人間が望む植物というか、食物は供給できない。こういう意味におきまして、私は松が国土の保全なりあるいは国民の情操の点なりあるいは用材の生産と、こういう面において非常に重要だと考えるのでございます。そういう意味におきまして、この防除法案に私個人としては賛成でございますが、しかしながら、もし人畜に非常に被害があるということであれば、松を犠牲にすることもやむを得ないだろう。しかしながら、これは私の専門外でもございますが、そういうことはすでに数年にわたってスミチオンを散布をした場所がございますので、そういうところで人畜に果たしてどれだけの被害があったか、あるいは他の生態系に非常に重要な影響があったかどうか、それを判断をして上で決めていただきたい、こういうことでございまして、ただ現段階におきましてはそれを調べるという時間的な余裕もないかと存じますので、議員の先生方に専門家のおっしゃることを判断した上で決めていただきたいということを申し上げた次第でございますが、私個人としましては、現在のところ仮に多少の、全然被害がないとは言えないかと思いますが、多少の被害があっても、これはWH。でも認めているということでございますので、それよりも松くい虫の防除の方が現段階においては重要なことであろうと考えております。ただ、それが人畜その他あるいは蓄積されて将来の遺伝にまで及ぶということをもしお信じになるとすれば、これはそういう反対があっても、もしそれが懸念が非常に大きいということであれば、それも考慮しなければならないと申し上げた次第でございます。
  125. 金子岩三

  126. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 松枯れの原因について各参考人にお尋ねをいたします。  林業試験場のデータや学者、研究者等の調査の結果では、一つには、研究の積み重ねで、運び屋マダラカミキリによるマツノザイセンチュウ説、すなわち松くい虫説、今回本法の提案されている主な内容であります。二つには、吉岡金市龍谷大学教授が言っておりますように大気汚染説。三つには、複合原因論。四つには、林の移り変わりの過程で起こる平常な姿とする説。五つには、これらをひっくるめまして、遠因、近因、直接、間接いろいろ複合し合って起きているとも言える。大別して五つぐらいになると思うのですが、きょうはせっかく参考人五人そろって来ていただきましたが、いままでいろいろ断片的な答弁がありましたけれども、私は改めて各参考人に、一人一人名指しをしますので、時間の制約もあるし、簡潔に一、二、三というように、若干の注釈を加えても結構ですが、原因が何に起因するのかお答えをいただきたいのです。これが最大の問題であります。原因がわかれば対策がとれるわけです。マツノマダラカミキリのみでは、また材線虫のみでは片手落ちということも言えます。原因と対策を考えるとどうしても原因究明ということが大事になります。たとえばがんでもその病原菌がわかればがんの治療が徹底できるということが言えます。現段階では大変むずかしいところがあると思いますが、いろいろ薬剤散布その他の問題が論議されます。また、明日も私長時間にわたって政府に見解をただすわけでありますが、ここらが一番大変な問題になりますので、的確にいま言った理由で簡明にお答えをいただきたい。そして私の参考に供していただきたい。このことを切にお願いしておきます。  そういった趣旨で、まず、世界野生生物基金日本委員会常任理事池田眞次郎参考人から御意見を伺いたいと思います。
  127. 池田眞次郎

    ○池田参考人 お答えいたします。  私は二つの要因が併合してこれに影響していると判断しております。それは環境が悪化し、松が弱る。それに松くい虫がつきまして、そしてこのしょうけつが起こっている。かように判断しております。  以上で終わります。
  128. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 二番目に愛媛大学教授石原保参考人から御意見を伺いたいと思います。
  129. 石原保

    ○石原参考人 お答えいたします。  簡潔にというお話でございますけれども、すでに私お話し申し上げましたように、現在ではこれは林業試験場の非常にりっぱな研究の結果で多くの枯死がマツノマダラカミキリの運ぶ材線虫のためであることは皆さん認めておられるところであります。ところが、場所によりましては排気ガスのために松が弱りまして、そこにマダラカミキリがくっつくという場合もあるわけでございます。また、ある場合には、これは場所にもよりますけれども、台風の後、松が台風のために根を痛める。そうすると根が弱りますから弱り目にたたり目といいますか、そういう弱ったところに好んでマツノマダラカミキリは産卵、繁殖いたします。かつてはキクイムシなんかもずいぶんこういうところで出たのでありまして、こういう場合も松枯れを起こしたのであります。すべてどれが原因かと言われましても、時により場所により違いますので、ただ現在問題になっているのはマツノマダラカミキリであると申し上げるほかないと思います。
  130. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本植物病理学会会長伊藤一雄参考人から御意見をお伺いいたします。
  131. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 ただいましょうけつをきわめております松枯れの原因はマツノザイセンチュウが病原体だということは、もうたくさんの研究結果から誤りないことでございまして、このマツノザイセンチュウは全く健全な松の木を枯らす能力を持っておるものでございます。それから大気汚染によっても松が枯れることは事実です。それからその他の障害によっても松は枯れます。なお、このマツノマダラカミキリを含めまして、いわゆる松くい虫というのは健全な松の木に入る能力を持っておりません。多くの場合、材線虫によって枯れかかって初めて松くい虫が産卵し、そして皮の下で幼虫化するという順序をとります。  以上でございます。
  132. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、全国森林組合連合会会長喜多正治参考人から御意見をお伺いしたいと思います。
  133. 喜多正治

    ○喜多参考人 私は科学者ではございませんので、経験だけから申し上げますが、国立の林業試験場で開発いたしましたヘリコプターでの薬剤散布、これが一番効くようでございまして、結局原因はマツノマダラカミキリによる材線虫、こういうことだと思いますが、なお、申し上げたいのは、非常に弱っておる松の木ほど当然一番早く枯れちゃうわけでありまして、大気汚染等も今後は大いに関心を持つべきではないかというふうには考えております。
  134. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、東京大学名誉教授嶺一三先生から御意見をお伺いしたいと思います。
  135. 嶺一三

    ○嶺参考人 私は、ただいま御指摘になりました一、二、三、四のいずれも松の枯れる原因に含まれていると思うのでございますが、現在の非常にしょうけつをきわめておるのはマツノザイセンチュウとそれを運ぶキクイムシであると考えるのであります。なお、大気汚染によって松島の松が枯れて、これを伐採して調べたところ、松くい虫は見つからなかったという報告はございますが、これは恐らく事実と思いますけれども、マツノザイセンチュウやキクイムシは気温の低いところでは比較的繁殖が少ないということの研究者の報告がございますので、松島ではあるいはほかの原因の方が多かったかもしれませんが、関東以西におきまして、特に海岸地方ではマツノザイセンチュウとキクイムシによる、いま問題になっておる防除法が最も効果的かと考えます。  もう一つの問題は、松林は自然の植生の推移からいって当然だんだんと衰退をして、松の減るのが自然の勢いである、こういう生態学者の説もございます。これは、私もその方では多少いろいろ検討はしておるのでございますが、確かにそういうせいもございまして、松は地力の衰えたところによく生える木でございますが、だんだんと森林の扱いがよくなったりあるいは条件がよくなりますと、南の方では常緑の広葉樹、北の方では落葉の広葉樹がだんだんと入ってまいりまして、地力、が肥えてまいりますと、松以外の木が盛んになってくるのでございますが、そういうことはある意味においては生産力の増強からいって望ましいことと言えるのでございますが、ただ残念ながら、そういうような状況の土地ばかりではない、むしろそういう土地は少ないのでありまして、海岸地方であるとかあるいは花崗岩が風化した土壌であるとかあるいは火山灰地等におきましては、なかなか松以外の木が茂るというような状況になってこない。そういう意味で松はやはり依然として重要な林業の目的樹種であり、同時にまた風致であるとか国民の情操を養う意味において非常に重要なものである、こういうふうに考えておるのであります。こういうようないろいろな原因が絡まり合いまして、ある場合には大気汚染が非常に重要な要素になることもあるし、その他のこともあるかと思いますが、現段階においてはいわゆる松くい虫といいますか、材線虫と木くい虫が一番大きな被害を与えていると考えております。
  136. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 嶺参考人から適切な意見の陳述がございまして、私もさらに確信を強めたわけですが、あなたは中立の立場ですけれども、時間があれば最後にいろいろあなたに要望申し上げたかったのですけれども、時間が迫ってまいりますので、どうかひとつ、皆さんもう少し老骨にむちうっていただくといっては失礼ですけれども、真剣に取り組んでいただいて、もっとはっきりしたものを早く解明できるようにぜひひとつ、期待をかけておりますので、よろしくお願いしたい。質問する時間がなくなりますので、それだけつけ加えておきます。  そこで、いま嶺参考人からもはしなくも話がございましたが、確かにこれは五月、六月にかけて九州から中国、関東、そして松島、一部すでに青森にもその被害が出始めているということをちゃんと現地から言ってきております。恐らくそうであろうと思っております。近く調査にも行きたいと思っていますが、北限はいまのところ宮城県の仙台ということになっておりますけれども、気候の差によってだんだんこれがおくれていくのは当然のことだと思います。  そこで、私は伊藤参考人にあえてお伺いしたいのは、一つの松林で、松林というのは林分が下から上まで、たとえばやせ地であっても、松に適した山であっても、これは下から上までは相当標高差もあります。そういったときに、松のおくてとわせとやはりあるわけですね。そうすると羽化の時期もだらだらするわけです。さっき伊藤参考人は、薬剤散布の効果は三週間ぐらいとおっしゃいましたけれども、もちろん雨が降れば二枚にして流れる。林野庁の説明、われわれの認識しているところでは、薬剤の薬効というものは大体二週間が限度である、かように見ておる。あなたはたしか三週間というふうにおっしゃった。仮に百歩譲って三週間としても、一つの山でも下と上では大分寒さも違っている。そうすると、羽化がだらだらしますと三週間越して四週間もかかる。ひょっとすると一カ月ぐらいの間だらだらとマツノマダラカミキリのいわゆる羽化というものが行われる。そうすると一回ぐらいの散布では——激害型の地域では五カ年間に三回ということになっていますけれども、一回の散布ではせっかくまいてもとても消滅できない。しょっちゅうまかなければならぬ、何回もまかなければならぬというようなことになってきます。そういうように一つの山でも広大な面積になると、百五十ヘクタール以上やろうというのですから、相当な面積の場合も考えられる。そうしますと平たん地のように一律ではございません。そうなってくると、このような前提が崩れると松くい虫の被害というものはおさまらぬということが起きてくるのですが、その点は、石原さんはさっき大分自信を持った陳述をされておられたけれども、どういうふうにあなたは説明されるのか参考までにお聞きしたい。
  137. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 いま松山の高さとその被害のことだろうと思います。これは確かに霧島における結果によりましても、海抜四百メートル超しますというと、すでに温度関係でもって枯損は出ません。しょうけつをきわめております九州ですら四百メートル以上になりますというと、温度関係でもってもうマツノザイセンチュウは作用できません。それ以下の問題だろうと思うのです。そうしますというと、確かに気温等によってこのマツノマダラカミキリの羽化脱出に多少の差がありましても、五月下旬から六月の中旬というほぼ一月間にほとんどもう九割ぐらいは入ってしまうわけでございます。  そこで、先ほどから二週間三週間と言っていますけれども、雨の問題ですが、実は一たん松の枝についた薬は、雨が降りましてもかなりに有効成分を残すということで、大体散布後三週間たってもマダラカミキリの八〇%は殺すということで、もう極端な高低差がない限り、いま申し上げた時期の範囲に入ると思います。  以上でございます。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いろいろ詰めておる時間はございませんけれども、一応聞きおくことにしまして、伊藤参考人にさらにお伺いしますけれども、いまのでちょっと思い出しましたが、さっき冒頭陳述の中で、あなたは、松くい虫の防除のために空中散布すると松枝に薬がかかって、それを食べて松くい虫は死ぬ、これがいま言われている殺虫法でありますけれども、そのほかに、虫も殺すと同時にというようなことを陳述の中でおっしゃいましたが、薬が直接にかかって死ぬというふうな意味に解していいのですか。その点どうでございますか。
  139. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 そのとおりでございます。虫の体に薬がつきましても虫は死にますし、それからまた薬のついた枝を食べましてもマダラカミキリは死にます。
  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点は一応わかりました。本委員会でいろいろ論議することにいたしますので、参考までに聞いておきます。  次に、石原参考人にお伺いしますけれども、さっき浸透性殺虫剤という話がございました。もちろん各参考人のお話を聞いていても、また林野庁の説明も、またわれわれの考えも、空中散布必ずしもいいわけではない、また自然保護団体でも全面的にこれを中止してくれという意味でもない、こういうふうに解しておりますが、その方法、時期、環境、いろいろなことを考えてのことでございますけれども、空中散布をせずに何とかほかにかわる方法があれば一番いいわけです。それがないために問題を大変醸し出しておりますが、先ほど石原参考人から浸透性殺虫剤のお話が出ました。いろいろ御意見を伺いましたが、私の調査では、これはまだ試験段階ですけれども、カートリッジ式の松くい虫の防除薬というものでありまして、これは日本カーリット株式会社が開発したらしいのですが、私は何も会社の名前を宣伝するために言うわけではありませんけれども、このカートリッジ式松くい虫防除薬というものは現在試験段階で、農薬登録を行っていないので正式名称はまだ決まっておりません。聞くところによると、ガラスの小さなアンプルを埋め込んで松の樹体内から薬が移動して材線虫を殺す、こういうものでありますが、やる方法はまたいろいろ、この薬がはっきりすれば開発のしようもあると思いますけれども、現段階ではそういうことでいま試験中であります。実用化には一年ないし一年半ぐらいかかるというふうに言われておりまして、こういったものがもっと早く開発されて試験結果も効果があって適切であるというならば、こんな大騒ぎして今回の松くい虫の特別法案なんか出さなくても済んだわけなんですけれども、残念ながら林野庁の怠慢もあってこういうようなことがおくれにおくれておる。残念であるけれどもいまからでも遅くないので、こういったものを開発して何とか簡単に、そして自然保護が保たれながら効果が出るように願っておるわけですけれども、石原参考人は先ほどから浸透性殺虫剤のことをいろいろおっしゃいましたが、これとは全然違うような感じがするのだけれども、こういったことを聞いておられませんか。もし聞いてなければ、こういったものがありますのでひとつ研究して、国民が安心するように、日本の松が枯れないために最大努力をしてもらいたい。またほかの参考人にも努力してもらいたい。またほかの参考人で、こういったものを聞いておってきょう陳述になっていなければ一言漏らしていただくと私も大いに意を強くする、かように思うのですが、どうか石原参考人、またほかの参考人でも、もしそういったことを聞いておられたらお答えをいただきたい。
  141. 石原保

    ○石原参考人 お答え申し上げます。  その会社名も知っておりますし、それは私も作成を激励しておるものであります。その薬はテラピアPというものです。浸透性が非常に強い。会社の名前は申しませんけれども、これは東京にございます。  それから、ついでにちょっと御参考のために申し上げたいのですけれども、「森林防疫ニュース」という林野庁から出しているものですが、これの二十五巻の十二号、二十ページに殺虫効果が二カ月続くと書いてあります。それから、同じく二十二巻の一号の十四ページにも約二カ月と書いてあります。これは私が気に入らぬ数字ですけれども、こういうものを出すこと自体私は反対でございます。
  142. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 いまのカートリッジ法でございますが、これは実は国立林業試験場で、過去四年間やっております。そして、小径木ならばおおよそ防除できる見通しがつきましたが、まだ大径木には至っておりません。ただ、御承知のようにカートリッジ法は一本一本処理するものですから、貴重木とかそういうものならば可能でありましょうけれども、森林地帯において適用できるものだろうかという懸念がございます。いま一つは、先生おっしゃったように、薬自体の問題がございます。
  143. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、これで残念ですが終わります。  どうも各参考人、貴重な御意見をありがとうございました。
  144. 金子岩三

    金子委員長 神田厚君。
  145. 神田厚

    ○神田委員 大変本日は貴重な御意見を各参考人の皆さん方からお聞きしたわけでございますが、順次五人の参考人の方に御質問を申し上げたいと思っているわけであります。  まず最初に、伊藤参考人に御質問を申し上げたいのでございますが、伊藤先生は長い間国立林業試験場におられまして、この松くい虫の問題につきまして大変御熱心に御研究をなされているわけでありますが、いろいろ問題になっております空中散布の問題につきまして、このスミチオンのいわゆる濃度の問題などは、大体どの程度の濃度であれば、いわゆる人畜に被害がなくてマツノマダラカミキリに効果がある、どの程度の濃度が適当というふうにお考えなのか、こういう点一点と、さらに、どんどん、どんどん松が枯れて、北限がずっと北へいっているわけでありますけれども、その場合に、これはただ単にマツノザイセンチュウだけが原因であるのか、そうではなくて、先生方の御研究によりますと、東北地方の海岸地区につきましては、もっと違う病原菌によるものもある、こういうふうなことも御著書によりまして勉強させていただいたのでありますけれども、そういうことを含めまして、これは材線虫だけの問題を追及していけばいい問題なのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  146. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 お答えいたします。  ただいま、空中散布する場合のスミチオンの濃度、それから用量の問題でございますが、スミチオン三%、それを一ヘクタール当たり六十リッター、これで防除効果は卓抜でありますし、また、この程度ならば環境に及ぼす影響はまず心配ないだろう、かように考えております。  それから、だんだんに松枯れが北に進んでいるではないかという御質問でございます。実は、先一生御承知のように、現在石巻付近が北限になっております。それからまた、南の方でございますが、かつては沖繩本島にはマダラカミキリも材線虫もおりませんでした。これは恐らく、特にこれは沖繩の場合は証明できておりますが、この材線虫によって枯れた松丸太を運んで新しい伝染源をつくった、こういうふうに見ざるを得ないと思います。  それからいま一つ、ほかにこの松を枯らす原因があるのではないか、そのとおりでございます。特に先生御指摘の、東北地方の海岸林でかつては松くい虫の被害型と称されたものがございましたが、それを調べた結果、ツチクラゲという病原菌によって根が腐る、そのために枯れる、枯れかかってからいわゆる松くい虫が入った、こういうふうな事実はございます。  以上でございます。
  147. 神田厚

    ○神田委員 したがいまして、私は、これはマツノザイセンチュウの問題もそうでございますけれども、ただいま先生おっしゃいましたように、いわゆる東北の海岸地方で起こっていると言われているツチクラゲの根腐れの問題につきましても、同時にやはりこれを防除していくような形もとっていかなければどんどんまた北の方へいくのではないかというふうに考えているわけであります。  大変短い時間でいろいろお聞きしなければなりませんので、突っ込んだお話になりませんで恐縮でございますが、次に池田参考人にちょっとお尋ねいたしたいと思うのであります。  航空散布について数々の疑問をお出しになられました、私もなるほどと思うところがたくさんあるのでありますけれども、それでは、その航空散布にかわる方法、ただいまカートリッジとか浸透法とかいろいろ言われておりますけれども、そのほかに、池田参考人といたしましては、この航空散布に変わって、何か違った方法で松くい虫を食いとめる方法をお考えでありますかどうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  148. 池田眞次郎

    ○池田参考人 お答えいたします。  航空散布によります防除法にかわる適切な方法というのは、いまのところでは私はないと思います。  ただ、広範囲に一時にそういう薬剤を散布するのをやめていただいて、地域を選択していただきます。航空散布でできないような場合もあると思います。それはある程度私はいたし方ないと思います。そういうことをやる必要がないところは、従来用いられております方法の最もその地域に適当な方法をとってやっていっていただけないだろうか、このように私は考えておるわけでございます。特に、航空散布にかわるべき非常に効率のいい方法というのは、私は目下のところ存じておりません。  以上でございます。
  149. 神田厚

    ○神田委員 地域においていろいろ工夫してやってみろというようなお話でございますが、これはなかなかむずかしい問題で、その効果の問題がいろいろ先ほどから議論されておりまして、むずかしい。したがって、航空散布が一番効くのではないかというふうな議論になっているわけでありますけれども、先生は何か積極的なこれにかわる御意見をお持ちだったらば非常に参考になると思いまして私お聞きしたわけでありますが、ひとつその点また御研究いただければと思っております。  続きまして喜多参考人にお伺いいたしたいのでありますけれども、問題はいろいろございますけれども、池田参考人から、航空散布についてはいろいろな疑問がある、そういう中で、喜多参考人は、森林組合長といたしまして、過去、いわゆる薬剤散布の御経験をお持ちであろうと思うのでありますが、その点から、薬剤散布につきまして一その被害の状況やあるいは効果、そういうことにつきましてお聞きしたいと思うのでございます。
  150. 喜多正治

    ○喜多参考人 効果の点は、これは非常にある、もういまの段階ではこれ以外にはないというふうに考えております。  ただ問題は、いろいろな悪影響の問題でございましょう。これにつきましても、絶対これ以外はだめだというような悪影響まではもちろんございません。ただ、近辺のミツバチ、それから養蚕、ここら辺の心配はございます。これにつきましては事前にいろいろ相談いたしまして措置を講じておりますので、まずまず大きな心配はない、いまのところやはり薬剤散布しかない、こういう結論でございます。
  151. 神田厚

    ○神田委員 いま御指摘になられましたように、一番問題になりますのはやはり安全性の問題、皆さんいま論議されておるのはその点でございますけれども、特にこのスミチオンの問題につきまして養蚕あるいはミツバチ、それから養魚、そういうものについて非常に心配がある、現実にやはり被害が出ておるような状況もある、こういうことから考えまして、農作物に対しますいわゆる危被害についてきちんとそういう措置をとった上でなければやるべきでないというふうに考えているわけでありますけれども、すでに茨城とか兵庫とか数県の地区におきまして、これに対しまして、いわゆるスミチオンの航空散布について反対であるというふうな意見も聞いておるのですけれども、こういうことにつきましては、森林組合といたしましてはどういうふうな態度、姿勢でお進みになるのか、それをお聞きしたいと思います。
  152. 喜多正治

    ○喜多参考人 実施につきましては、先生御心配のようなことがないようにできるだけ万全の措置をとらなければならない、これは当然でございます。そこで、実施をいたしまする中心であります県、さらに市町村、それから私ども、その他関係者、これは非常に緊密に連絡をいたしまして、事前に、ミツバチでありますればその巣箱を覆うとか、あるいはしばらくの間ほかへ持っていくとかいうふうな措置を講ずる等いろいろやっておるのでございます。いまのところ事前の措置を講じますればまずまず大丈夫、こういうことでございまして、もちろん天敵等の方法による駆除ができれば一番いいのですけれども、いまの段階ではやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  153. 神田厚

    ○神田委員 お話しでございますけれども、これは政府の方との関係でもございますが、危被害防止のための予算が非常に少ない。そういう中で本当にいまおっしゃったような形で地域のそういう養蚕をやっている人たち、あるいはミツバチを飼っている人たち、あるいは養魚池をそこに持っている人たち、そういう人たちとの協議がうまくいって、そしてきちんとした危被害が防止できるのかどうか、私は非常に疑問な点があるのでございますが、森林組合といたしましてやはりその辺のところを考慮に入れまして、これは非常に大事な問題でありますので、農作物の被害の問題につきましては格段の姿勢を示していただきたい、こういうふうに考えております。  さらに次に、石原参考人にお聞きしたいのでありますけれども、先ほど私お聞きしておりまして非常にショッキングな資料をお聞かせいただきました。一ヘクタール当たりの実験の結果、動物の死骸とかそういうものが、アリが百二十万匹以上、ダニが十六万とか、全部で二百十五万匹以上のそういうものが死んだというような御発言がございましたけれども、これはどういうふうな形で、どういうふうな御実験をなされたのかちょっとお聞きしたいのであります。
  154. 石原保

    ○石原参考人 お答え申し上げます。  これは日本でも数カ所やっておるのでありますけれども、三・五平方メートルの白布を空散地区にところどころ置きまして、空散の後にそこに落ちた昆虫を数えまして、そしてそれを換算した数でございます。それで大体豊橋の付近であるとか、香川であるとか、愛媛であるとか、方々で資料がありますけれども、大体この数字は一致しております。
  155. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、それは同じ薬の濃度で同じような条件のもとでやってそういうふうな結果が出たということでございますか。
  156. 石原保

    ○石原参考人 さようでございます。
  157. 神田厚

    ○神田委員 それが事実であるとすれば、どういうふうな薬をどういうふうに使ったのかというところまでちょっと教えていただきたいのでございます。
  158. 石原保

    ○石原参考人 それは地方の営林局、営林署の指導によって薬剤の航空散布、スミチオンの航空散布が行われた結果でございます。  大体毎年同じ濃度と思いますけれども、多少違った——どれくらい違っているかは私存じませんけれども、例年大体同じであります。
  159. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、具体的に何ppmというようなそういうふうなものは、いま資料をお持ちにならないわけでございますか。
  160. 石原保

    ○石原参考人 さっき申し上げましたように、香川県の場合は、ppmにあらわすと五万ppmに相当するという結果が出ております。
  161. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、五万ppmで散布した場合にはこういうふうな薬害が出る、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  162. 石原保

    ○石原参考人 さようでございます。その他いろいろ細かい資料はありますけれども、それで結構でございます。
  163. 神田厚

    ○神田委員 私は、どうも大変なこういう数字を見せられますと、これは非常に疑問に思う点もあるのでございますが、やはりこれから後の議論といたしまして、きちんとした、どういう状況のもとでどういうふうにまかれて、どういうふうな結果が出たのかともう少し調べて、また委員会で御質疑したいと思っております。  次に、最後に、嶺参考人にお聞きしたいと思っております。  嶺先生、非常に建設的な御意見をいろいろ出されておられるようでありますけれども、やはり松くい虫の防除の問題は、私どもはどうしても時期を失しないでやらなければならない問題である、そういう中で、論議が非常に不十分な中でやられようとしていることにつきまして大変残念に思っているわけなのでありますけれども、いわゆる公平な立場から見まして、この空中散布の問題につきましては、先生はどういうふうなお考えでありますか、お聞きしたいと思うのでございます。
  164. 嶺一三

    ○嶺参考人 確かにまだいろいろな対立する意見がございます際に、もっと慎重にいろいろ調査をした上で実施すべきであるというような意見もあるかと思いますが、そういう時期を待っていたのではもう肝心の松が続々と枯れていくというようなことでございますので、現段階におきましては、多少いろいろ問題はあるかと思いますが、大局的に見て薬害なりあるいは副作用なりのその懸念よりも松が枯れることを防除する方が急務であるというような見解が国民の納得を得れば、速やかに実施すべきである、こういうように私どもは考えておる次第でございます。  それで、空中散布につきましてもいろいろな問題はあるかと思いますが、私どもも、最初は、空中で薬をまきまして果たして十分な効果があるかどうかということ、むしろ私は、他の虫を殺すとか生態系に影響があるとかいうことよりも、ザイセンチュウを運ぶ木くい虫を十分に殺すことができるような散布ができるかどうかということの方が心配だったのでございますが、実際に実施をされました場所、たとえば広島県の宮島を見まして、私の心配していたことよりも予想外によく松の枯損が防がれており、宮島の中でもある大学の施設だけは自然を破壊するというのに反対で薬剤散布がされていないところがございますが、その付近には依然として松が枯れている現状を見まして、いまの空中散布がかなり有効で、私どもの心配した点は解消したと考えまして、そういう意味で、空中散布を実施することは私個人としてはいまの段階で必要なことではないか、ただし、これに対するいろんな反対意見にも十分耳を傾けて、それに対する対策なり研究は十分した上で、さらに効果が大きくて害の少ない方法を検討すべきであるということは、これも議論の余地はないと考えております。
  165. 金子岩三

    金子委員長 時間が経過しました。神田君は終わりました。  津川武一君。
  166. 津川武一

    津川委員 伊藤さんと石原さんにお尋ねいたします。私たちの覚えているところでは、戦後一回、今度一回と大量発生を見たわけでありますが、今回の大量発生の原因について何かお考えございましょうか。
  167. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 実は大変むずかしい御質問でございます。先生のおっしゃるように、戦後昭和二十四年に大発生いたしまして百万立方メートル以上の被害を出しました。そのときは時たまたまアメリカ軍の占領下にありましたが、当時の防除法としましては、枯れた木を徹底的に運び出して皮をはいで焼けという方法しかございませんでした。実はこれが、いまから考えましても、徹底的にやれば、この病原体であるザイセンチュウもいなくなる、それからその運び屋であるマダラカミキリも死ぬということで、やはり徹底的にやれば有効な方法だと思います。当時占領下にあるわけですから、絶対的な権限を持ってとにかく人海戦術でもって徹底的にやったということが恐らく原因でずっと被害が落ちたと思います。  ところで、その後どうしても大きな原因考えられますのは燃料革命だと思います。当時は燃料も少ないものですから、松の枯れるのを待ってそれを切って燃料にするというケースが多かったのでございますが、現在になりますと、もう裏の山の枯れ木を切ってきてたきぎにしましょうなどというのはだれもやらない。そのことで結局この病原体であるザイセンチュウ、その運び屋であるマダラカミキリが非常にふえた、そういうことが原因になって今日のようなしょうけつをきわめたというふうなことが一つの見方と思います。
  168. 石原保

    ○石原参考人 私は、最初に申し上げましたように、もうちょっと天然林を皆伐でなくて一部を残しておいていただきたかったと思うのです。ああいうまる坊主にしない限りはこういう問題は起こらなかったのではないか。さっき申しましたように、水田の場合は食糧ためにある程度やむを得なかった点もあります。また、林野庁としましては森林の需要が大きいからやっぱりやむを得なかったのだというお話もあるかもしれませんけれども、やはり現在はちょっともう手おくれになってしまった。結局森林を大事にしない国民は滅びていくという言葉もさっき御紹介しましたけれども、森林というものは太陽のエネルギーをずっと受けとめて人生に豊かなエネルギーを供給してくれる場所なんで、簡単な天日ぶろなんかとは違うのであります。そういう森林をもっと大事にしなかった報いが現在の日本人に来ておる。日本人が最初に遭遇した困難ではないかと考えて私は心配しております。
  169. 津川武一

    津川委員 次は池田さんと石原さんにお尋ねいたします。  先ほどもちょっと問題が出ましたけれども、なぜ森林だけを問題にするのかということ。私は青森県出身ですが、私たちの青森県でリンゴの主産地帯にこんなふうな防御暦があるのです。これに最低スミチオン三回、年五回内散布させて十五年たっているわけなんです。この間のことが余り問題にならないでいまなぜ山のことだけが問題になるようになったのか、そこいらあたりを池田さんと石原さんにお尋ねしてみたいわけであります。
  170. 池田眞次郎

    ○池田参考人 お答え申し上げます。  農業の方で使っておいでになる範囲でございますが、われわれの家庭でも花壇あたりでときどきこういうものを使っておりますが、この使い方の問題があると思うのでございます。ごく小範囲にたとえば何か手に持った容器でこれを散布するというようなことでありましたらば、そう大して問題として取り上げる必要はないと私は思います。ただし、それが個々がやりましても集団的に非常に広域にわたるという憂いはございますけれども、一斉でないということ、これが一つ農業上の農薬の使い方の特徴だと存じます。しかし、環境を汚染することには間違いはないと確信しております。  なぜ森林のこのたびの問題を取り上げたかと申しますと、私は、広範囲にそして同時にこれを散布するという点に非常に問題がある、かように考えております。したがいまして、森林での航空散布ということを私は取り上げて問題としておるわけでございます。  以上でございます。
  171. 石原保

    ○石原参考人 お答え申し上げます。  水田であるとかあるいは果樹園であるとかこういう農耕地というものは、自然のバランスが最も不安定な場所であります。したがって、農薬を使わぬ限りは農業生産がまず上げられない場所であります。現在青森リンゴが三回の農薬で済んでいるというのはまだ少ない方で、かつては二十一回ぐらいかけておりました。それだけ強い薬をまた有効に使えるようになったので非常に結構なことと思いますけれども、要するに殺虫剤というものは限定された範囲に私は使いたい。ちょうど果樹園のリンゴかあるいはたんぼの稲のように、薬をかければ松の緑は保たれますけれども、永久にそこは薬をまかなければならないようになります。それを心配して私は反対意見を述べている次第であります。
  172. 津川武一

    津川委員 池田さんにもう一度お尋ねしますが、リンゴは二万五千ヘクタールなんです。皆さんが一斉におやりになる。時期も同じなんです。そこで、それを問題になさらないでこれを問題になさったところに私が一つ不信を抱く点がある。もう一つ、池田さんと石原さんにお伺いしますが、それだけまいておって、あと鳥類や昆虫類や植物にどんな影響を及ぼしたかお調べになっておいでになっているかどうか、この二つ、重ねてお願いします。
  173. 池田眞次郎

    ○池田参考人 お答えいたします。  農業の方で使いますのを問題にしてないという御見解だと思いますが、私はそのつもりではなかったのでございます。農薬に対してはどんな場合でも非常にこれを問題に取り上げておったと思います。しかし具体的にこのように法律化するとかそういう問題がございませんから、結局表面に出なかったというふうに御理解いただきたいと存じます。  それからもう一つの御質問は……
  174. 津川武一

    津川委員 影響をお調べになっておわかりになっているかどうかです。
  175. 池田眞次郎

    ○池田参考人 それはまことに申しわけないのでございますが、そういう環境との関連での徹底した調査研究はいままでにほとんどやられておりません。非常に断片的な、たとえばみつを運搬するハチがいなくなるとか、そのために今度は農薬を使うかわりにシジュウカラの巣箱をそこにかけてシジュウカラを誘引いたしまして、昆虫をふやしてリンゴの受精の能率を上げるという実験が青森で一カ所あったと私は記憶し、その報告はいただいておりますが、そういう手法が広く全般にとられたということは聞いておりません。申しわけございませんが、そういう点についての資料というものはほとんど私は見ておりませんし、自分でも持っておりません。それだからこそ今度こういう問題が起こったときに非常に困るんじゃないかというふうに解釈しております。  以上でございます。
  176. 石原保

    ○石原参考人 お答え申し上げます。  私は四国なものですから青森のリンゴ園は直接見ておりませんけれども、青森のリンゴ園はやはり地上散布でありまして航空散布ではありません。根本的に、ある限定された範囲に農薬が散布される環境であります。しかしながら、こういう場所でも農薬の、特に殺虫剤の散布はできるだけ制限すべきものでありまして、たとえば島根県であるとか徳島県であるとかいうところはナシの産地でございます。ところが余り殺虫剤をかけますと花粉を媒介する昆虫がいなくなりまして、人が一々花粉媒介してやらなければならぬわけであります。現に東北でもそういう花粉媒介昆虫がいなくなりまして、それまで受精にほとんど関係ないと考えられておりましたノラハナアブあるいはツツハナバチというものをわざわざ人為的にふやして果樹園に持っていって花粉媒介をさしておる現状であります。野鳥についてはリンゴ園の野鳥は私まだ調べておりません。
  177. 津川武一

    津川委員 そこで今度は喜多参考人にお伺いしますが、いま石原さんがはしなくもいいことを言ってくださったのです。かけていくといつまでもかけていなければならない。そこで五年の時限立法でしょう。おやりになってみて壊滅されてなかったならばどうされるかという問題なんです。そうするとまた前の状態に返るのかどうか。この点でもう一つ伊藤さんなり石原さん教えていただければいいのですが、私は同時に医者なんです。梅毒と淋病を退治したときに中途半端にやると勢いを盛り返してくる。さあ今度これで中途半端にやって、やめてしまったら盛り返してきて大変なことになりはしないかという心配がある。そこで、時限立法五年で終わったときに皆さんどうされるか。私は時限立法で五年で全滅できるとは思っておりませんが、そこいらあたりまず喜多さんに答えていただいて、永久にやらなければならぬ、盛り返すのじゃないかという心配などというものは伊藤さんなり石原さんなりからまた教えていただければと思ます。
  178. 喜多正治

    ○喜多参考人 私どもはこの松くい虫退治に関します限りは当局を信頼しているわけです。当局は五年、まずこれでという自信を持っていると思いますが、私も自信を持ってやりたいのです。これはやってみなければわかりませんけれども、万が一、五年でやっつけることができないとしましても、私はいまの御心配のようにずっとこれから長い期間やらなくちゃいけないということはないと思うのです。若干延びることはあるといたしましてもとにかく思い切ってやりたいと思っております。
  179. 伊藤一雄

    ○伊藤参考人 おっしゃるとおり未来永劫に薬をまいて松枯れを防ぐという考え方ではございません。まず二年なら二年、三年なら三年やりますと、現在しょうけつをきわめております松枯れはずっと少なくなってくる。多少出るかもわかりません。そうした場合には、空散という方法をやらないで、残りは少しの本数ですから一本一本切りなさいと申し上げているのです。現実に、先ほどから出ますけれども、宮島の場合過去三年間まきまして非常に減ったという点で、たしか去年あたりからやめているはずです。それでも多少出るかもわかりません。それならば一本一本めんどうでも切りなさい、こういう考え方でございます。
  180. 石原保

    ○石原参考人 実は宮島というところは、私旧制高等学校のときにしょっちゅう行ったところで、私の名前のついた虫までとってあそこの昆虫相は非常に大事なところなんです。あれを空散されたとき私非常に胸が痛んだのでありますけれども、あの松が枯れたのは、しばしば言われておりますようにもともと対岸の石油コンビナートの亜硫酸ガスのために松が弱って、弱るとあれがつくわけであります。いま、石油ショック以来不景気が来まして、同時に排煙の規制が行われたために、松の枯死がとまるのは当然であります。それ以外に三カ年殺虫剤の空散をやって効果の上がった場所というのは私は知りません。  それからここに農林省の「松くい虫防除特別措置法案参考資料」の中で第六の「松くい虫が運ぶ線虫類による松林の被害の推移」というのがございます。これを見ますと、BHCの散布をやめた途端に松くい虫の被害が物すごい勢いで出ています。ですからこういう形になることをわれわれは恐れているわけです。第六図ですか、これを見ていただくと私の申し上げたいことは御理解いただけると思います。要するに空散は本当に気休めで役に立たぬと信じております。
  181. 津川武一

    津川委員 池田参考人にお願いしますが、松島湾なんです。これもかなりやられてきていて、これに空中散布したときにスミチオンが全部海中に落ちてしまった。こういう調査だとか被害——山の中で地上に落ちるのと違いましてあそこは養殖地帯なんですが、ここいらへの影響なんかはどんなふうに心配されるのでしょうか。
  182. 池田眞次郎

    ○池田参考人 申し上げます。  農薬散布による影響が鳥獣が非常に大きく取り上げられておりますが、魚類に対しても私は非常に大きな影響を持っていると確信しております。ただ具体的に調査しました資料が余りございませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、たとえば殺鼠剤なんかを空中散布いたしますときに粒子が川に落ちます。それが解けてマスの養殖場等に流れ込むという問題がございまして、多少この問題を調査したことがございます。しかし、そのはっきりした結果はまだ結局はっきり出ないまま過ごされましたもので、私はその結果をはっきり知りません。ですから、ここではっきり申し上げることができません。直接そういう害も非常に心配なんでございますが、水が汚染するということが私は大きな問題だと思います。それは、先ほど冒頭に申し上げました食物連鎖的の関係から、川の小動物が汚染しまして、それが海に流れ出ます。そして今度海の魚がそういうものを食べて、そしてウミネコとかカモメ、ウというようなものが——これはBHCでございますけれども、兵庫県の日本海側の海岸で採集しましたそういうカモメ類から、致死量には達しておりませんが、かなり多量に出ておる実験結果がございます。これは私、データを持っております。それで、当然水産にも影響があるというふうに私は考えております。
  183. 津川武一

    津川委員 最後に、いま池田さんが言われた野外実験、私も人体実験にかなりぶつかってみて、一番大事なのは社会的な実験、薬をやっていて社会的にどうなっていくか、今度の場合も野外実験というのは非常に大事なことなんですが、これは実際に私は人体実験の場合、社会実験をやれと言っても、政府はやってくれないのです。野外実験をやる道、どうすればやりいいか、これをお伺いして、私の質問を終わります。
  184. 池田眞次郎

    ○池田参考人 野外実験は私は絶対に必要だと思います。ということは、自然というものの機構は非常に複雑でございます。ですから、単なる実験室内での一つの反応がそのまま野外でそのとおり起こるかどうかということは私は疑問だと思います。たとえば、体の中に入りましたものでも、鳥は御承知のように四十度ぐらいの体温がございます。温度と化学変化というのは並行するそうでございますから、われわれがインスペクションするよりは鳥類のように体温の高い動物がそれを飲みました場合の方が化学反応が非常に速い、こういうことが生理的には言えると思います。それから、今度の場合はそういうことはあり得ないとは思いますが、複合汚染というような問題もここで考えられます。野外にまかれた薬がある程度そこで変質をする、化学的性質を変えてくる、そうすると違った影響が出てくるというようなこともあり得ることがございます。そういう点でどうしても野外実験というのをもう少し金と時間と人をつぎ込んででもやるべきじゃないかというふうに私は考えております。
  185. 金子岩三

    金子委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)     —————————————
  186. 金子岩三

    金子委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査中の松くい虫防除特別措置法案について、公害対策並びに環境保全特別委員会から連合審査会を開会いたしたい旨の申し入れがありました。これを受諾し、公害対策並びに環境保全特別委員会と連合審査会を開会することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会は、公害対策並びに環境保全特別委員長と協議の上、明十六日午後零時三十分より開会することといたしますので、御承知願います。  次回は、明十六日水曜日午前十時三十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会