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1977-02-24 第80回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年二月二十四日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 正示啓次郎君    理事 木野 晴夫君 理事 近藤 鉄雄君    理事 竹中 修一君 理事 塚田  徹君    理事 木原  実君 理事 谷川 正三君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    宇野  亨君       関谷 勝嗣君    中村 弘海君       藤田 義光君    湊  徹郎君       上田 卓三君    栂野 泰二君       新井 彬之君    柴田 睦夫君       中川 秀直君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林水産技術会         議事務局長   下浦 静平君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 二月二十三日  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二八号)      ————◇—————
  2. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより会議を開きます。  農林省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を求めます。鈴木農林大臣。     —————————————
  3. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農林省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  農林省試験研究機関は、技術改良開発を通じて農林水産業の発展に大きく貢献してきたところでありまして、農林水産業に関する技術高度化要請に伴い、その役割りは、今後ますます重要になると考えております。  筑波研究学園都市は、試験研究及び教育を行うのにふさわしい研究学園都市を建設し、あわせて首都圏既成市街地における人口の過度の集中の緩和に寄与することを目的としてその建設整備が進められており、東京都及びその周辺部に所在する試験研究機関等を同都市に集団的に移転することとしているのであります。  農林省試験研究機関等につきましても、このような方針に従い、筑波研究学園都市建設の一環として近代的な試験研究施設建設整備が進められてまいったのでありますが、昭和五十二年度においては、果樹試験場農業土木試験場植物ウイルス研究所熱帯農業研究センター及び林業試験場施設がおおむね整備されますので、これらの機関を計画的に同都市に移転することが必要となったのであります。  本法律案内容は、右に述べました五つの試験研究機関昭和五十二年度中に筑波研究学園都市に移転するのに伴いまして、その位置の規定が神奈川県、千葉県又は東京都となっているのをそれぞれ茨城県に変更するものであります。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださるようお願い申し上げます。
  4. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  6. 木原実

    木原委員 ただいま設置法説明につきましては承りました。きょうは審議に関連をいたしまして、私たちが関心を持っておる水産行政の問題について幾つか御質問したい、こういうことでございます。  まず、農林大臣は近くソ連においでになると承っておりますけれども、日程がお決まりになりましたかどうか、それから交渉の主たる主題はどの辺にあるのか、お示しを願いたいと思います。
  7. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連は昨年の十二月に最高幹部会令というものを発しまして、二百海里の設定に踏み切ったわけでございます。御承知のように、いままで日ソ漁業関係日ソ漁業条約というものによりまして実施をいたしてまいったわけでございますが、新たに二百海里をソ連宣言をした、こういう新事態を迎えまして、これに対応することが迫られておるわけでございます。イシコフ漁業大臣重光大使を通じまして、新しい事態に対応してこれからの日ソ漁業関係をどう進めていくか、この問題については両国責任者同士で話し合うことがすべての出発点である、それをしないでは交渉に一歩も入れない、こういうことをはっきりソ連側の態度として示してこられたわけでございます。  そこで私は、事の重要性勘案をいたしまして、国会中でございますけれども国会の御承認を得まして来る二十七日東京を出発し、二十八日、三月一日と、できれば二日間イシコフ大臣とひざを突き合わせて今後の日ソ漁業枠組み、新しい二百海里時代を迎えての今後の日ソ漁業関係というものを話し合いをしたい、全般的な意見の交換をいたしたい、こういうことで訪ソをすることにいたしたわけでございます。御協力をお願いいたしたいと思います。
  8. 木原実

    木原委員 これは非常に重大で、しかもむずかしい話が予想されるわけですが、一つは、おっしゃったように昨年十二月十日でしたか、ソ連の二百海里の宣言が行われた。もうあれですか、ソ連最高幹部会令宣言をされたということは、実施されているというふうに受けとめているわけでございますか。
  9. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連は、この幹部会令に基づきましてノルウェー、ECその他とすでに交渉に入っております。私どもも、幹部会令が出た以上はすでに二百海里というものは現実事態になった、こういうぐあいに踏まえまして、その上に立っての新しい日ソ漁業関係を確立をしたい、こういう考えでございます。
  10. 木原実

    木原委員 そうしますと、ソ連の二百海里の専管水域設定は行われた、言葉をかえて言いますと、これをもう認めるという前提交渉にお臨みになる、こういうことでございますか。
  11. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 率直に申し上げますが、御承知のようにアメリカ漁業保存管理法、これは二百海里を前提とするものでございますが、これをソ連がいち早く認めて米ソ漁業協定をつくられた。日本もまたこれに対応しまして、アメリカ専管水域というものを認めるという前提のもとに交渉いたしまして、国会の批准を得なければ基本協定というものは発効しないわけでございますけれども、それには時間がかかりますので、その間は暫定取り決めという行政取り決めによりましてつなぐ、しかし、基本的にはアメリカの二百海里というものを認める前提で進めておるわけでございます。そういうような国際的ないろんな推移を私見ておりまして、ソ連との間にもそういう腹構え話し合いをしていく考えでございます。
  12. 木原実

    木原委員 私ども承知いたしておりますところでは、アメリカとの交渉過程の中では、結果はいま大臣がおっしゃったような結果になりましたけれどもわが国海洋法会議の結論が出るまでは二百海里は認めがたい、こういう立場交渉に当たっていたというのを仄聞をいたしておるわけです。しかし、重ねてお伺いしますけれどもソ連の場合には、アメリカとの交渉経過その他を踏まえて事態推移の中で事実上二百海里は承認をする、それを新しい事態と受けとめて交渉をされる、こういうことでございますね。
  13. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連との間には、御承知のように日ソ漁業条約というものが締結をされて今日まで円滑に実施をされてきておるわけでございます。アメリカの場合におきましては、北西太平洋等漁業条約であるとか、あるいはICNAFの漁業条約という機構はございますけれども、二国間の漁業条約というものはなかったわけでございます。しかし、ソ連の場合は、いま申し上げたように日ソ漁業条約というものは存在する。二百海里時代になりまして一方的にこの条約を破棄してまいりましても、条約の明文によりまして一カ年間は効力を有する、こういうことになっておるわけでございます。そういう点等勘案をし、また、イシコフさんは世界は変わったということを言っておるそうでございますが、ソ連ソ連最高幹部会令で二百海里を設定をしておる、こういう現実を踏まえまして、既存の条約との絡み、その辺の枠組み、そういうものが今回のイシコフ漁業大臣と私の交渉一つの大きな課題になろう、このように考えております。
  14. 木原実

    木原委員 漁業交渉立場から一つはそうなんですけれども、二百海里をそのまま認めるとなりますと、当然のことながら私はいろいろ別の問題があると思うのです。たとえば二百海里の線引きの問題となりますと、われわれ内容をよく承知していないわけですけれども、どうしてもわが国領海にかかってくるという問題が出てくると思うのです。アメリカとの場合には幸いにしてそういう問題がなかったわけですが、ソ連との場合にはやはりわが国領海にどうしても交わってくる側面がある。なかんずく、われわれが領有権領土権主張しておる北方四島の海岸線から二百海里ということになりますと、あるいはまたそういうことが行われるということになりますと、これは事実上経済水域ということですけれども、われわれの領土権主張の根拠というものがやはりなし崩しに崩されていく、こういう側面もこれは伴うのではないかと思うのですが、この御見解はどうですか。後でひとつ外務省の方からも御見解を聞きたいと思います。
  15. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが国国際情勢厳しい二百海里時代の到来を前にいたしまして、また、近年日本近海における外国漁船操業、これに伴いまして沿岸漁業者漁業操業の制約もいろいろ受けております。また、定置性刺し網等被害、漁具の被害等も続発をしておる。また、千葉県の銚子沖等におきましては、その廃棄物投棄等によって漁場も荒廃をしておる。いろいろ被害が出ておるわけでございます。そういうような観点から、沿岸漁業者利益を保護することを緊急にひとつ措置せにゃいかぬ、こういうことでわが国も十二海里を設定をしようという方針を決めまして、私が総理の指名によりましてその担当大臣として取りまとめを急いでおるところでございます。  そういう状況下におきまして、いま木原先生からの北方の四島は固有領土であるということを日本は堅持しておるわけでございますから、また、現在でもそういう立場から北方四島につきましても領海は三海里に設定をされておる、こういう認識を私どもは持っております。この領海幅員を十二海里に拡張しようということでございますから、北方領土につきましても当然これは領海幅員は十二海里になる、こういう認識でございます。  そこで、ソ連の方の十二海里等とオーバーラップする海域が出てくるのではないかという御質問でございますが、この点につきましては、前段で私申し上げたようにこの北方四島は日本固有領土であるという認識でございますから、その面に関する限りはオーバーラップするということは考えられないわけでございます。しかし、現実占有をされておる、日本施政権はそこに及んでいない、こういう厳しい現実があるわけでございますが、これは何といっても根本の領土問題が解決をしない限りはすっきりしないわけでございますけれども、われわれは国民的な願望を背景といたしましてこの領土問題の解決に粘り強く対処していく、したがって、その問題と一緒に領海十二海里の問題もすっきりした形に相なるものと考えております。
  16. 宮澤泰

    宮澤政府委員 お尋ね最高会議幹部令は、ただいま農林大臣から御説明ありましたように昨年の十二月十日に公布されましたので即日発効されたものと思っておりますが、その六条には、細目大臣会議令でさらに定める、こういう規定がございまして、大臣会議令と申しますのは大体政令に当たるものでございますので、細目政令に譲っておる。したがいまして、発効はいたしておりますが、細目はまだ発表も決定もされておらない。お尋ねの二百海里の線引きが行われておるかどうかという点につきましても会議幹部令には何も言及されておりませんので、一応二百海里以上の幅がございますところは想像できますけれども、たとえば外国との距離が二百海里以下の場合に、その中間線をとるのかどうするのかという点は一向にまだわかっておりません。  それから同じく最高会議幹部令の三条におきまして、外国の自然人ないし法人がソ連の二百海里内で操業をする場合には協定その他の合意によってこれを決める、こういうことがございますので、ただいま鈴木大臣イシコフ漁業相要請によりまして訪ソされますのもこのような話し合いを行いに行かれるわけでございます。  それで北方四島につきましても、ただいま申し上げましたような事由でソ連側はこの幹部会令にかかわらずどの辺に線を引くか、あるいはこれをどうするかということを一切明らかにしておりませんので、あるいは鈴木大臣との話し合いの中で先方が持ち出してくるかと思います。それで、もし先方が二百海里あるいはその他のただいまお尋ねのような線を持ち出しました場合にも、ただいま鈴木大臣が御説明されましたように、私どもといたしましてはこの国後、択捉、歯舞群島、色丹島、これは私ども日本固有領土でございまして、そのかねての主張ソ連側幹部会令その他によっていささかも変わるものではない、こういう立場で私ども主張を貫いていきたいと考えております。
  17. 木原実

    木原委員 そうしますと、その線引き部分についてはこれからの交渉だ、こういうふうに理解していいのですか。
  18. 宮澤泰

    宮澤政府委員 私どもはそのように解釈しております。イシコフ漁業相は少なくともハイレベルの話し合いでなければ一切細かいことは話したくない、こう申しておりますので私どももそのように解釈しております。
  19. 木原実

    木原委員 そうしますと大臣、その部分については、二百海里の経済水域にかかわる中身の問題についてはまた別個ですけれども、しかしその線引きにかかわる部分については、ある意味ではたな上げというか長期交渉をしていくというテーブルができる、こういう解釈でよろしいですか。恐らく一回だけの話で、従来の経過に照らしましてもそれではというふうにはなかなかいかないというふうに考えられるわけですが、どうですかその辺については。
  20. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 線引きの問題につきましても、領海の問題と二百海里の問題と二つあるわけでありますが、二百海里の問題につきましては、イシコフ大臣とお会いいたしましてソ連側がどういうことを考え、どういう線引き考えておるか、そういう点も十分把握をした上で日本側としても対応する、こういうことになるわけでありますが、領海の問題につきましては先ほど私が申し上げたとおりでございます。
  21. 木原実

    木原委員 くどいようですけれども領海の問題についてはわれわれとしては譲るべき理由がないわけですから、その部分については線引き交渉の中で少なくともそれについては堅持をしていく。したがって、これはいろいろ妥協の方法、たとえば共同専管水域にするとかいろいろ将来知恵が出るにしましても、その部分については譲ることはない。したがってその部分交渉過程で残して、そして二百海里全体の経済水域設定された場合の個々の話し合いテーブルをつくる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  22. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 領海部分につきましてはあくまでわが国固有領土であり、現在の三海里、その幅員を十二海里に拡張する、こういう基本方針でございまして、一方係争中の領土問題、これにつきましては粘り強く今後折衝してまいる、こういう方針でございます。
  23. 木原実

    木原委員 くどいようですが大事なことなんです。もしその部分というものが行き違った形になるという場合になると、二百海里専管水域設定そのものについてもわれわれはノーと言うこともあり得るというふうに考えていいですか。
  24. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは確かに非常に微妙な問題ではございます。しかし北方の四島につきましては、これはソ連側占有権主張日本固有領土であるという歴史的な、私ども日本民族としてそういう確固たる信念、主張を持っておるわけでございますから、これは一歩も譲るわけにまいりません。したがって、二百海里水域につきましても、北方領土四島を自分の国の領土であるという前提の上に立った二百海里の線引きということにつきましては、われわれはこれに対してはにわかに賛成いたしかねる、このように考えています。
  25. 木原実

    木原委員 従来のソ連側領土問題についての反応その他の経過からしますとこれはなかなかかみ合わないとわれわれは判断せざるを得ないわけです。その場合の対抗措置ですが、かみ合わなかった部分はたな上げをすることができるのか、あるいはまた別途に何か便法が考えられるのか、これはつまり二百海里の問題に入る入り口の問題だと思うのですけれども、いかがでしょう。
  26. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この問題は現在の領海三海里時代現状におきましても同様の問題が存在するわけでございます。しかし北海道等漁民操業生活を守るためということで、この四島周辺における近海操業につきましては特別な話し合い交渉を持ちまして、そして拿捕その他のことのないようにという理解の上に立っての操業がいま行われておる、こういうことでございます。十二海里になりましてもこれは両国主張が真っ向から対立をしておるというようなことでございますから、現実の問題としてはたな上げせざるを得ないということで、その周辺における沿岸漁民操業につきましては、今後も同様の方針で私ども沿岸漁民利益確保してまいりたい、こう考えております。
  27. 木原実

    木原委員 非常にむずかしい入り口の問題がありまして、その点でも、御苦労だと思いますけれども成功を祈りたいと思います。  ただ外務省にお伺いしておきますけれども大臣がいま決意を述べられたわけですが、従来領土問題についての交渉は非常にむずかしい過程をたどってきているわけですね。二百海里の線引きの問題に絡んで、大臣のおっしゃったような方向でたな上げもしくは継続事項としていく、いろいろな形のものも考えられるわけですが、従来の経緯から推して、こういう機会に領土問題についての向こう側の何か展開みたいなものが予想されますか、どうですか。
  28. 宮澤泰

    宮澤政府委員 これは鈴木大臣のおっしゃいましたことに多少補足になるかと思いますが、ただいまの最初の御質問に、日本ソ連の二百海里漁業専管水域を認めたのかという御質問がございまして、鈴木大臣のその点の御答弁の補足でございますが、日本政府立場は、まだこれを全面的に認めておるという立場ではございませんので、もし認めたということになりますと、ソ連側の科します罰金とかあるいは取り締まり権とかその他を全部承知した上で交渉に行かれる、こういうことになるわけでございますが、農林大臣はそういう意味でおっしゃったのではございませんで、これから、向こう側が二百海里というものを宣言した、そういうことを認識して、向こう要請に従って話しに行くと、こういう意味で言われたものと私考えております。  それで、お尋ねの、こういう際にソ連側領土問題云々という点でございますが、ソ連では大臣その他の権根が非常にお互いにはっきりと分かれておりますので、従来、イシコフ大臣がはっきり領土問題としてこの四島の問題を取り上げたというようなことは私記憶しておりませんが、ただ、領海が十二海里、こういう主張ソ連はかねてしておりまして、私どもは従来三海里でございましたので、北方水域におきましても三と十二の差がございまして、これは御承知のような状態現状のままとなっておりますが、今回も、場合によりましてはイシコフが、その十二をもっと広げるというような形で間接的に領土権存在を示すようなことを言ってくることはあり得るかと思いますが、しかし、この点はやはり、ただいま鈴木大臣がおっしゃいましたように、日本主張はかねての主張でございますので、十二であろうと二百であろうと、日本のものであるという主張は相変わらず貫いていくべきもので、鈴木大臣も当然そのようにお話しになると考えております。
  29. 木原実

    木原委員 入り口の問題ですけれども、私どもの懸念するところがそういうことなのですが、これは余り突っ込みましても、また交渉のこれからの過程の問題ですが、いずれにいたしましても問題はきわめて困難であるという認識はわれわれの側にもあります。しかし現実には二百海里の宣言が行われ、その体制にある意味ではわれわれも対応していかなければならないという立場に立たされているわけです。非常に困難なことは予想されますけれども成功を祈りたいと思います。しかし、問題は残して帰ってきていただきたいと思います。いずれにしましても時間のかかる問題だと、こんなふうに考えるわけであります。  そこで、もう少しお伺いしておきたいのですけれども、この際あわせて、漁獲量決定といったようなことが当然二百海里の問題に対応して出てくるのですが、そういう際には、いずれにしましても、この一年間——すでに三月十五日から東京での交渉が予定をされているわけですが、いまの段階ですと、三月十五日の旧来の漁業協定に基づく委員会方式の協議というのは継続してやっていくという腹づもりでございますか。
  30. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたように、現在、日ソ漁業関係規定いたしております日ソ漁業条約というものが存在をしておりますし、仮にソ連側が破棄を通告してまいりましても、一年間は有効であると、こういうことでございます。私どもは、この日ソ漁業条約のたてまえの上に立ちまして、今年出漁のサケ・マス、カニ、ツブ等漁業交渉は、日ソ漁業委員会の場でやってまいりたいというのが基本的な考えでございます。しかしソ連側は、もうすでに二百海里は幹部会令設定をしたのだと、これを新事態であると踏まえておるようでございますから、その辺のかみ合わせというものが非常に微妙かつ重要であると、このように考えております。いずれにしても、御承知のようにわが国の全漁獲量の約四割を占める海外漁業、この四百五十万トンの海外漁業実績のうち三百万トンが北太平洋漁獲をされており、アメリカ並びにカナダの関係では約百三十万トン、ソ連関係で百七十万トンという大きな漁獲がなされておるわけでございます。したがいまして、この漁獲量いかようになるかということは、日本漁業にとりましても、もう死活問題だと申しても過言でないと思うのですが、重大な影響があるわけでございますし、また、たん白食糧の過半を魚類たん白に求めておる国民生活の面からいたしましても、これはきわめて重要な問題でございます。そういう重要性というものを十分踏まえながら、私はこの実績確保ということに全力を挙げて努力をしたいと、こう考えております。
  31. 木原実

    木原委員 大臣おっしゃるように、われわれが受ける影響というものはやはりはかり知れないものがあると思います。ただ、まさに新しい事態で、ソ連側にしてもやはり非常に困難な事情があると思うのですね。アメリカとの交渉の中でも三割ばかり削減をされているとか、あるいは外交的に認めてないECと新たにやはり交渉を始めるとか、いろいろな意味ソ連側の困難な立場もあると思うのです。しかもソ連は、もう大臣御存じのとおり、わが国に次いで世界有数水産国である。というようなことを考えますと、お互いに二百海里で締め出されて、困難な者同士が、ある意味じゃ共通の立場というものもあるわけですね。そうしますと、私は、大臣はベテランですから申し上げるまでもないことですけれども、従来の実績でと、こう言うのですが、実績の中にはいろいろありましてあれするのですが、やはりそういう状態ですから、資源確保なら資源確保という観点で、ソ連長期にわたって協力もし合える、こういう何か新しい提案を持ち、わが国立場をそういう立場から理解をさせる、こういうことがやはり必要でないかと思うのです。したがって、これから長期に資源を確保し、長期漁業ができる、こういう状態両国協力してやっていこうと、こういうような立場も大事じゃないかと思います。したがいまして、将来の漁獲量確保ということについて、実績主義だけではなくて、何かやはりわが方から積極的に提案をする、こういう腹づもり、お考えがございますか。
  32. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 木原先生からきわめて大事な問題についての御指摘がございました。わが国といたしましても、北洋の漁場というものは非常に大事な漁場でございます。そのためには、資源を大事にし、そして資源の再生産が確保されるように関係国が協力し合ってやっていかなければならないという基本的な考えを持っておりますし、そのために、日本技術的にも進んでおりますところの増養殖、栽培漁業、あるいは加工、保蔵、そういうような面につきましてソ連側から協力要請がございますれば、これは進んで協力をしてまいる。すでに御承知のように、サケ・マス資源の増殖のために、日本側提案をいたしまして人工ふ化場等を大々的にやろうじゃないかと、こういう提案もいたしまして、ソ連側もそれを受け入れて、目下場所等の選定等について両国でいろいろ調査もいたしておるところでございます。そういう漁業協力関係と、特に資源の増殖、拡大、資源の維持、保存、こういう問題につきましては、緊密な連携をとりまして対処していきたいと、こう考えております。
  33. 木原実

    木原委員 分割ということは、新しい事態であると同時に、ある意味では不幸な事態でもあるわけですが、しかし、これを福に転ずるためには、大臣おっしゃるように、やはり新しい漁業協力あるいは相互不信の解消といったようなことが非常に大事になってくると思います。これは大臣を信頼して御努力をお願いしたいと思う。  ただ、そういう際に、非常に大事な時期にどうも国内に乱れがあるのではないのか、こういう感じもするわけです。大手の水産会社等がある意味では抜け駆けと考えられるような行動をとりがち——新聞の報道等によりますと、名前を挙げてあれですけれども、大洋漁業などがプラントを向こうへ出す、決済は魚でといったような話があったとかなかったとかいう報道もありますけれども、しかし大臣がせっかくこれから長期にわたっての新しい体制なり、その交渉のためのテーブルをつくられるという非常に大事な時期でございますから、少なくとも国内の業界の中に二百海里に対応するんだといって個々に抜け駆けなり団結を乱すようなことがあったんでは、せっかくの交渉を裏から揺さぶるような形にもなりかねないと思うのです。国内の態勢の引き締めといったようなことについての御見解はどうですか。
  34. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、国内の特に業界の結束、また新しい事態に対応する認識と、それに対する具体的な規律ある行動、これが非常に大事と考えております。  先般、日米の漁業交渉の成果として割り当て量が決まりました直後に、私は業界、各団体の首脳、大手の会社、その幹部の諸君を三番町の農林省分室に集めまして、そして日米漁業交渉の結果はこういう結果にはなったけれども、しかし向こうの監視船の厳重な監督下において向こうのライセンスによって漁業操業をやらざるを得ない、こういう厳しい状況にある、そういう際に、いやしくも取り決めの趣旨に反するような行動等があった場合には、これはその違反を起こした漁船の許可が剥奪されるだけでなしに、日本漁業全体に大きな影響をもたらすものであるというようなことから、業界の自粛と今後の姿勢について私強く要請をしたところでございます。  また、いま具体的に御指摘がございました点につきましても、御承知のようにスケトウダラ等はIQ品になっているわけでございまして、会社等が勝手にできない品種もあるわけでございますから、全体に影響しないような立場に立ちまして十分業界の指導は気をつけてまいりたい、こう考えております。
  35. 木原実

    木原委員 時間がございませんので、これで終わりますけれども、歴史的な交渉だとわれわれも評価をしたいと思います。ぜひ御努力と成功を祈りたいと思います。  それから最後に一つだけ先のことをお伺いしておきたいのですが、いずれにいたしましても、われわれの周辺、もう二百海里時代に好むと好まざるとにかかわらず入ったわけですね。将来の問題ですけれどもわが国もいずれにせよ二百海里の経済水域設定をやらなければならない時期が来るのではないか、こういう感じがするのですが、これは大臣の感触をぜひひとつ。
  36. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二百海里時代に入って、日本が二百海里をどう考えるかという問題でございますが、この点につきましては日本は伝統的な遠洋漁業国家でもあるということで、海洋法会議でいろいろの主張をしてきておるわけでございます。今後海洋法会議の動向等も十分その推移を見守りながら、日本のこの二百海里を設定するかどうかの問題は慎重に考えていきたい、こう考えておりますが、もっと具体的な問題といたしまして、日韓の間には日韓漁業協定というものが現在ございます。また、日中の間にも日中漁業協定というものが現にございまして、これが非常によく機能して何らのトラブルもないようにスムーズにやっておるわけでございます。私は、西日本漁業者の立場考えますと、現在の日韓漁業協定、日中漁業協定確保されておる漁業秩序というものは大事にしていきたい、こういうこともあるわけでございます。  そこで、韓国並びに中国等の二百海里に対する考え方等も十分よく打診もし話し合いもいたしまして、慎重に対処していきたい、こう考えております。
  37. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、鈴切康雄君。
  38. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 農林大臣は二十七日に訪ソをされるということであって、まことに御苦労さまと申し上げたいわけでありますけれどもイシコフ漁業相と会談をされるわけでありまするが、その会談の内容について予測される大きな柱というものはどういうものが会談の内容になるかというふうに御判断をされてましょうか。
  39. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 突然、両責任者で会談することが新情勢下における出発点になるんだということで会談を求めてこられた、こういう経緯もございまして、イシコフさんに直接会ってお考えを聞きませんとはっきりしたことが予測できない、こう思ってはおりますが、しかし、昨年の十二月十日に最高会議幹部会令で二百海里宣言をやられた、これはまさに新しい事態でございます。一方において日ソ漁業条約というものが現に存在をしておるわけでございまして、この新情勢を迎えまして、日ソの今後の漁業関係枠組み、あり方、そういうものを両責任者の間で話し合いをしなければならない、こういうことが根本の課題だ、こう思っております。
  40. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二百海里に伴う漁業専管水域ということになりますと、当然一つ考えられる問題としては、サケ・マスの問題はどうなるんだろうか、それから広大な領海漁業一般についての問題はどうなるのだろうか、あるいは漁獲規制に伴う問題を含めて、あるいは入漁料というようなことの問題も考えられる要素ではないかというふうに思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  41. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 鈴切先生御指摘のように、日ソ漁業関係全般についての意見交換をするということでございますから、サケ・マスの問題も、いろいろな魚種の問題も、あるいは操業秩序の問題等、広範な問題が出てくるのではないか、こう思ってはおりますが、それに対応してどうするかということは、向こうのお考えも聞いた上でないと、私ここで申し上げる段階ではない、この点はひとつ御了承賜りたい、こう思います。
  42. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本来の日ソ漁業条約はサケ・マスが主体であり、そしてニシン、カニが入っておるわけでありますけれども、先ほど魚種の問題というようなお話がありましたのですが、そうなりますと、やはりスケソウダラとかあるいはオヒョウというようなそういう魚種の問題も話題になるんじゃないだろうかというふうにお考えでしょうか。
  43. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 向こうは二百海里専管水域というものを幹部会令宣言をしたというような立場にもございますし、二百海里専管水域内におけるいろいろな魚種を対象としての話し合いも出てくるのではないか、こう予測はされるわけでございます。
  44. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 なかなか微妙な漁業交渉の一環でございますので、それ以上中に入ってしまうとやりにくい点もあると思いますけれども日本は二百海里漁業専管水域設定する意思がおありでしょうか。
  45. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いずれはわが国も、二百海里時代の到来でございますから、これに対応するために二百海里問題というものは常に念頭に置いておるわけでございます。しかし、それをいつどういう時点でやるかという問題につきましては、先ほど申し上げましたように、海洋法会議の動向、それから近隣諸国である、特に日韓、日中漁業協定等もございまして、これが非常に円滑に機能しておるというような事実もございますから、そういう点等にも十分気を配りながら、その時期等については慎重に考えたい、こう思っております。
  46. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海洋法会議の結果というふうにおっしゃっておりますけれども、やはり相互主義という問題をある程度頭に入れておかなければならないと思います。アメリカがすでに二百海里の専管水域設定をしたわけでありまして、それから今度はソ連がそれを宣言をしたということになりますと、日本も、相互主義の考え方からいって米ソに対して、実際に二百海里をやったところの国に対しては二百海里をやるというような相互主義的な考え方というものもやはり十分にお考えになっておられましょうか、その点については……。
  47. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 十分頭の中には置いてございます。
  48. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日韓漁業協定の第一条に、日本は三海里、韓国は十二海里を主張いたしましたね。そのときに、韓国との話し合いの中に、韓国は十二海里をということで、日本の国も特別に十二海里の漁業協定をやったといういきさつがありますから、当然向こうが二百海里ということになれば、こちらが二百海里も何にもしないということになれば、これは漁業者を守る意味においては大変に問題になるわけですから、そういう点は十分頭に置かれて交渉に臨まれるわけですね。
  49. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 対韓国の問題につきましては、先般も韓国の水産庁長官が私のところに表敬にお見えになりました。その際にいろいろ意見の交換もしたわけでございますが、韓国側もやはり遠洋漁業に非常に重点を置いております関係もございまして、二百海里専管水域設定ということには非常に慎重に対処していくという方針のようでございます。今後私どもは、韓国に対しましても中国に対しましても十分緊密な連絡をとりながら誤りない対処をしていきたい、こういう考えでおります。
  50. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私いま韓国の問題は一例を申し上げただけでありまして、ソ連アメリカが二百海里専管水域を決められたわけですが、それに対してはやはり当然相互主義を頭に入れてやっていくのだということだと思うのですけれども、その点の御答弁は後でお願いします。  そこで、二百海里が重複するというような問題も出てくるわけですね。そうした場合に、そのときの線引き中間線をとられるのですか、それとも、中間線をとられないところに対しては一般方向で線引きをされるというようなお考え方で臨まれるのか、どういう点でしょう。
  51. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 アメリカソ連も二百海里を現に宣言をし、実行に移しておるということに対応して、日本側も相互主義の観点から二百海里を考えておくべきである、こういうお話でございますが、全くそのとおりでございまして、私の念頭にも常にその問題があるわけでございます。その時期なり内容なり具体的な措置は十分慎重に考えたい、こういうのが第一点でございます。  第二点の、専管水域がオーバーラップする際にはどうなるかということでございますが、大体各国の慣例からいたしまして、中間線を基線とする、こういうことが通例になっておるようでございますから、そういう点も十分参考にしていきたい、こう考えております。
  52. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 鈴木農林大臣は、訪ソいたしましてイシコフ漁業相やいろいろな方と会談をされると思いますけれども北方漁業領域と北方領土問題は実は密接な関係があるわけでありますけれども大臣は先ほどから、歯舞、色丹、国後、択捉の四島は日本領土であるという観点で、厳然として、もし日本の国が十二海里をやる場合においては、そこも十二海里の設定ということをやりたいということのお話がありましたけれども、昨日外務大臣は、北方領土四島については直ちに十二海里を設定することは慎重であるというような意味合いの御答弁をされたわけでありますけれども、ちょっと食い違いますね。その点はいかがでしょうか。
  53. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 外務大臣の発言、私の発言、総理大臣の発言、いろいろニュアンスが違うのではないかというようなことで問題になったようでございますが、そこで、政府としてその点を明確にしておく必要があるということで取りまとめをいたしましたので、ちょうどいい機会でございますから、発表しておきたい、こう思います。  私としては、北方四島及び竹島は、わが国立場からわが国固有領土であると考えており、領海幅員を拡張する場合、北方四島及び竹島についても十二海里の領海設定を行うと申し上げたわけでございます。  外務大臣はこのことを、わが国として主権を主張しているのであるから、国際的に領海についても主張するのも当然であると申し上げたわけであり、何らそこに食い違いはないと存じております。  しかしながら、問題の本体たる領有権自体につきましては、北方四島については日ソ間で懸案となっており、竹島については日韓間で紛争が存在しており、わが国北方四島及び竹島並びにそれに付随する周辺領海については施政を行い得ない現状であることは否定できないところであり、この限りにおいて総理より、北方四島及び竹島について、領海が三海里から十二海里になるのがたてまえであると申し上げたわけで、答弁に何ら差異はないと考えております。  いずれにしても、北方四島及び竹島について、わが国が十二海里の領海設定する方針に変わりはないということをはっきり政府としては確認いたしております。
  54. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは政府の統一見解というふうに見ていいわけですね。
  55. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 さようでございます。
  56. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まあこの問題については、また時間があるときに質問いたしますけれども、今度の交渉の目的と既存の日ソ漁業条約はどういうふうに考えたらいいでしょうか。今度の漁業交渉は、全く新しい二百海里漁業専管水域立場に立っての交渉であるわけですから、既存の日ソ漁業条約はまず失効されるのではないだろうか、そういうお考えでしょうか。
  57. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のように、日ソの間には日ソ漁業条約存在をしておりまして、有効に機能をいたしておるわけでございます。仮にソ連側がこの条約の破棄を通告をしてまいりましても、一年間は有効である、こういうことになっておるわけでございます。  一方、最高会議幹部会令で昨年十二月十日に二百海里というものをソ連宣言をした、これも新しい事実でございます。  そこで、今回イシコフさんと私がお会いいたしますのは、こういう新事態に対応いたしまして、日ソ間の今後の漁業のあり方、枠組みを話し合う、こういうのが一番重要な中心の問題であるわけでございます。
  58. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり二百海里専管水域ということをソ連が決めた以上は、現行の日ソ漁業条約というものは何らかの変更はされなければならないような状態になるんじゃないだろうかという感じがするわけでありますけれども、いまお話がありましたように、たとえ向こうが破棄をしても一年間は有効であるという立場から、ことしの漁業交渉は何ら差し支えはないというようなお話でありますが、失効されるということになりますと、新しい日ソ間においての基本協定とか基本条約というものは当然考えられると思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  59. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが方といたしましては、日ソ漁業条約というものが存在するわけでございますから、この土俵の上で今度の漁業交渉等も進めていきたいという基本的な考えを持っております。しかし、ソ連側はこれに対して二百海里宣言をしたということで、どういう方針で臨んでまいりますか、この辺が今後の交渉にまつところでございます。  それから、基本協定、仮にソ連の二百海里というものを認めざるを得ないということになりまして新しく操業する場合には、協定というものが考えられる。これはアメリカの場合でもカナダの場合でも同様にしておるわけでございますが、しかし、この基本協定は、今後相当の時間をかけて妥結点を見出していかなければならないという重要な内容のものでございます。と同時に、協定でございますから、これは行政取り決めと違いまして、国会の御承認を得て、政府が批准をして初めて発効する、こういうことにも相なるわけでございまして、そういう意味合いからいたしまして、どう考えてもことしの国会中には間に合わない、来年の国会というような、早く見てもそういうことに相なろうかと思うわけでございます。  そういたしますと、その間における日本操業というものを休止するわけにまいりませんから、その間を現在の日ソ漁業条約枠組みの中で行うかどうかという問題、これは日本側としてはそうあるべきだと考えておりますが、その辺も今後イシコフさんとの会談の一つの重要なポイントになる、こう考えております。
  60. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 なかなか微妙な問題でございますね。一年間有効であるとおっしゃっても、この問題については、かなり慎重に国益を考えながら決めなくちゃならない問題であるわけですから、一年間で結論が出るというわけじゃないと私は思うんですね。政府は、漁業協定に基づいてそれを延長したいというお気持ち、もしそういう場合にはお考えになっておりますけれども、やはり長くなるということになれば、それに対して暫定的な取り決めとか協定ということも考えられるのではないかと思いますけれども、その点はどうでしょう。
  61. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いろいろなことを考えまして、鈴切さんお話しなさっておられるわけでございますが、私としてはこれから交渉に臨むわけでございますから、こういう場合はこう、こういう場合はこうということをいろいろ申し上げかねるという立場は、ひとつ御了承賜りたいと存じます。
  62. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 承知しました。じゃ、日本付近の海峡で、農林大臣が現行三海里で国際海峡は凍結をするというふうなお話があったわけでありますけれども、津軽とそれから宗谷、対馬、大隅等というふうに言われておりますね。等というのは、これは私、大変に問題があると思うんですけれども、やはり十二海里をすると接点ができてしまうようなところは海峡として六、七十カ所あるわけですけれども、国際海峡としてこの等に入る部分をどのようにお考えになっておりましょうか。
  63. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 海峡と称するところを拾ってみますと、六十九あるんだそうでございます。しかし全部が全部、いわゆる国際海峡つまり国際航行に使用されておる海峡でないものもたくさんあるわけでございます。いま海上保安庁を中心に、国際航行の頻度その他実態を調査をいたしまして、いずれこれは最終的に固めていかなければならないと、いま作業中でございます。
  64. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 作業中とおっしゃっても、少なくとも等というあれが入っている以上は、津軽、宗谷、対馬、大隅だけではないということですね。だから、それじゃ考えられる海峡はどこですか。
  65. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まだ四海峡のほかに、これということを私申し上げる段階にございませんで、いま検討中でございますが、この四カ所よりは幾らか広がるだろう、こういうことで予算委員会では等と申し上げた、こういうことでございます。
  66. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 すでに三海里ということで現状凍結をするということになれば、もう現在わからないということはおかしいことであって、すでに検討はされておられると私は思うんですけれども、この四つだけではないんだ、ほかに何カ所か考えておるということでありますから、これはそれ以上は申し上げません。  そこで、きのうの国際海峡で政府の統一見解が出ましたね。その中でちょっと御質問申し上げたいわけでありますけれども、国際海峡三海里現状凍結をするということはこれは国益である——いろいろ検討されたと私は思いますね。頭のいい鈴木農林大臣でありますから、いろいろ考えられた。そのほかに、やはり日本の国というのは、マラッカ海峡を初めとする海上交通の主要国でもあると同時に、貿易として立っていかなければならないという、そういう観点から、まず日本としてはその第一点を国益としてお考えになった。それからもう一つは、やはり政府が言っております日本の国是ですね。国是としての非核三原則、これもやはり三海里であれば、少なくとも日本の権限が及ぶ範囲は問題ない。こういうふうな二つの立場でお考えになって、やはり国益であるというふうに御判断になったと私は思うのです。国務大臣としてもしそういう点に考えがいかないということであれば、問題の国務大臣であると私は思うのですよ。その点はいかがでしょう。
  67. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 領海幅員を三海里から十二海里に拡大をする、その際に国際航行に使用されておるいわゆる国際海峡は現状の変更をしない、こういうのが基本的な政府の考えで、それに基づきましていま立法作業を急いでおる段階でございます。この点につきましては、鈴切先生御承知のように、海洋法会議におきましても一つの重要な政治問題として国際海峡の問題が取り上げられ、審議過程にあるわけでございます。その大勢を見ておりますと、一般の領海よりもより自由な通航制度、通過航行といいますか、そういうような議論が大きな一つの流れになってきておるわけでございますが、しかし、いまだに最終的な結論が出ていないという段階でございます。  そういうようなことを踏まえまして、日本政府は従来から、国土資源の関係からいたしまして海外から原材料、エネルギー等の供給を受けて、そして貿易、海運で国の経済の発展を図っておる、国民生活確保しておる、こういうような立場から国際海峡は現状のままにしてほしい、こういうことを主張をしてきておるわけでございます。わが国がそういう主張をし、そういうことを海洋法会議でも提唱しておる立場からいたしまして、わが国の今回の十二海里設定に当たっても、いわゆる国際海峡と称する部分現状を変更しないでそして海洋法会議決定を見守っていく、当分の間現状を変更しないということが首尾一貫したたてまえではないだろうか、こういう立場をとっておるわけでございます。と同時に、二百海里時代になって、そういう時期に日本近海では外国の漁船が来て相当無秩序な操業をやっておる、沿岸漁民に対する被害も続発をしておる、そういうようなことから、海洋法会議の結論が出るのを待っておるという余裕がない、一日も早く二百海里を設定すべきだ、こういう判断に立っていま申し上げたような決断をした、そういう方向でいま立法作業を急いでおる、こういうことでございます。
  68. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのマラッカ海峡の問題はよくわかっておるのですよ。貿易国であるから、当然そういう意味から言うならば国益の一環として十二海里に対して三海里ということ、またもし十二海里にした場合には、相手方もそういう手段を講ずるということも考えられるからということでそうされたと思うのですけれども、問題は、やはり日本の国是と言われておる非核三原則、鈴木農林大臣の方の考え方でいきますと、そこのところはさわらなくてもいいという感じがまことにするのですけれども、これはどうお考えでしょうか。
  69. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 さわらなくともいいという表現をお使いになりましたけれども、先ほど申し上げたように、現状を変更しないということでございますからその問題は絡んでこないということになるわけでございまして、したがいまして、現状を変更しないという立場から私どもは非核三原則はあくまで堅持をしてまいる、こういう考えでございます。
  70. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国際海峡は国連海洋法会議におきましての無害通航から自由通航へという、核積載艦に対して自由通航をというふうな論議が非常に進められておるわけでありますけれども、国連海洋法会議でもしもその核積載艦に対する自由通航を認めるという結論になった場合には、政府としてはそれを容認されますか。
  71. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まだ海洋法会議では結論が出ていないわけでございますから、予測の上に立ってどうこうということを申し上げられないわけでございますが、この海洋法会議決定、新しい海洋法というものが国際的にオーソライズされました場合に日本がどうするかという問題は、その際において慎重に考慮さるべき問題だ、こう考えております。
  72. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうときには三海里という枠組み設定を取り外されて、十二海里という通常の形にされるということも考えられますか。
  73. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その点は、いま予測の上に立ってどうこう判断する時期でない、こう考えております。
  74. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十二海里の宣言は、これは国内法と違いましてできるわけですけれども、十二海里の宣言は早急におやりになるつもりですか。
  75. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま立法作業を急いでおりまして、三月中には国会提案をし、御審議をお願いしたい、このように考えております。
  76. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実はその法案が通る通らないは国会の問題であるわけですから、それを待ちますと——まあ十二海里は国会を通るもの、そういうふうな考え方ではなくして、やはり十二海里宣言というものは国内法とは別の問題ですからね、その点について切り離してお考えになっておられましょうか。
  77. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは日本の主権の及ぶ範囲を決める領土の延長ということで国民の権利義務にかかわる問題でございますので、政府としては、宣言でなしに立法措置によって国権の最高機関である国会の御審議を得た方がいい、こういう判断でございます。
  78. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私の持ち時間が来たようでございますけれども、いずれにしてもこの問題につきましては大変に微妙な問題であり、鈴木農林大臣もなかなかその心を打ち明けるわけにもいかない問題があったと思いますけれども、ともあれ、これは日本の国益とそれから漁業者を守るという意味において慎重にやられんことを切望するものであります。  以上をもって終わります。
  79. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、受田新吉君。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 お二人の質問者に関連する問題を先に取り上げます。  鈴木農林大臣ソ連漁業相と会談をされるわけですが、この際、あなたは一方においては国務大臣でいらっしゃる。しばしばこういう機会をつかまえて国民として要望していただきたい問題がある。北方領土の返還に対する国民的要請です。国民の中にこれに反対する者は一人もいないと思っております。各党ともその点では一致した目標を持っておるわけです。もちろんイシコフさん以外の人にも何かの機会でお会いになるんじゃないかと思うのですが、北方領土の返還は北方海域に漁業を営む日本漁民の皆さんにとっても大変大事な関心事でございまするが、機会あるごとに国民の要請ソ連の責任者に伝える、真実を尽くして伝えるという御熱意を持っておられるかどうか、これを伺いたい。
  81. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまのところイシコフ漁業大臣とだけの日程が組まれておりまして、モスクワ滞在わずか二日、これは国会の都合もございまして、私、急ぎ帰らなければいけませんが、そういうことで日程がイシコフ大臣とお会いをするというだけにいまのところはなっております。しかし、そういう機会がございますれば、私は先ほど来申し上げますように、北方の四島はわが国固有領土であるという信念を持っておりますし、これは歴史的な事実でもございますので、この国民の願いというものは率直に私は話すつもりでございます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 ソ連専管水域二百海里主張という結論、国際情勢がそういう方向にいっておるという問題とあわせて、漁獲量確保については、海域がいかにあろうと、専管水域がいかにあろうと、漁獲量確保という原則は主張されるわけですね。
  83. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように二百海里漁業専管水域という概念の中には、沿岸国の漁民がまず資源を利用する、余剰があった場合にこれを実績のある各国に配分してやるという余剰原則というものが一方にございます。しかしまた、日本とかソ連とかいうような遠洋漁業国家は、海洋法会議におきましても、漁業実績はこれを尊重すべきであるという立場を強く主張し続けてきておるわけでございます。そういう意味ではソ連も遠洋漁業国家であり、日本も遠洋漁業国家であるということで、私は基本的にはイシコフさんとの間に意見の食い違いはないものだ、こう考えております。そういうような立場から北方海域における漁業実績確保実績の尊重、この点については最善の努力を傾けたい、こう考えております。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 実績の尊重ということに最善の努力を主張するということであります。  私、世上二百海里説を主張するソ連政府のことでもあるので、今後漁獲量が減った場合に魚価が逆に高くなってくるのではないかという、魚価安定の場面からの不安も一つあるわけです。これに対する魚価安定策は、農林省としてもいかなる場合においても食糧資源の確保立場から考えておられるかどうか。
  85. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ソ連との交渉はこれからの問題でございますから……。もう具体的に出てまいりました日米漁業交渉の結果、日本に対する割り当ては、日米友好の歴史の上に立って一一%の削減、実績八九%を確保できた、こういうことになっております。しかしその上に、入漁料として漁労船につきましてはトン当たり一ドル、母船、加工船等についてはトン当たり五十セント、それから漁獲物につきましては船側渡しの価格の三・五%、こういうことで二十億ほどの入漁料を払わなければならない、こういうことになったわけでございます。漁獲量は約一割削減をされ、その上に二十億円程度の入漁料も払わなければいかぬ。昭和四十八年以来の石油ショックによりまして漁業用の燃油は四倍ぐらいにも値上がりをしておるというようなことで、漁業経営が非常に苦しいさなかに、またそういう過重な負担をせざるを得ない、こういうことになるわけでございます。  そこで政府といたしましても、これがもろに消費者である国民の皆さんに魚価の高騰というようなことではね返ってくるようなことになってはこれは大変なことになる、また漁業経営も苦しいというようなこともございますので、この問題は、一遍に直撃を受けてその影響がもろに出てくるという形は何とか避けたいということで、このショックを緩和するために入漁料に対するところの低利資金の融資でありますとか、そういう面も十分考えていきたい、こう思っておりますし、今後は漁獲量が減るわけでございますから、加工あるいは保蔵、流通の改善、そういう加工面等におきまして、とったものを有効に最高度に利用する、国民の食ぜんに供するようにする、そういう面にも今後一層の力を入れていく必要がある、このように考えております。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 苦労していらっしゃる漁民の皆様にも犠牲を少なくしてあげなければならない、一般国民にも魚価安定の恩恵を与えなければならない。政府の施策には大変大事な問題がひそんでおる。いま一面を伺いましたが、これに対して熱心に取り組んでいただきたい。  私、日本漁業者の方ができるだけ公海で自由な漁獲ができる、世界の海を大手を振って営業につけるようにしてあげたいと思っておるのですけれども、朝鮮民主主義人民共和国と韓国との関係がああしたデリケートな関係になっているので——先年松生丸事件というのが起こった。北朝鮮の海域、こちらは公海と考えておったのですが、向こうではすでに自分の方の水域に入っているという主張で、しかも韓国の船が日の丸を掲げて近海漁獲しておるというような説もあるというので、松生丸が拿捕された。非常に悲しい事件が起こっているわけですが、国交が開けていない朝鮮民主主義人民共和国の近海漁業については、その後松生丸事件の教訓をどういうふうに扱っておられますか。
  87. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 松生丸事件、フグ釣りの漁船の問題でございますが、ああいう不幸な事件が起こりましてから、わが国関係漁業者にはあのような拿捕事件等が起こらないように、領海あるいは軍事警戒ラインと申しますか、そういうようなところには十分気をつけて安全操業をするようにということも指導し、周知徹底を図るようにいたしております。  また一方におききまして、日本との国交がございません関係で、日朝の友好親善に努力をされている方々が、民間の漁業協定のようなものをつくったらどうかというような動きもあることを承知をいたしております。私はその成り行きというものを非常な関心を持って見守っておるという段階でございます。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 いずれの国ともこうした漁業関係者が平穏裏に操業ができるように努めていく必要があるわけですが、悲しいことに、北朝鮮すなわち朝鮮民主主義人民共和国との間では、そうした国交上の正式のルートによる取り決めをしていない。非常にそこは不安があるわけです。その不安を解消するための民間漁業協定というようなものは、これは私は当然取り組みをしていいと思うのでございまして、これに対して積極的に取り組む御意思はおありなんですか。
  89. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは、先ほども申し上げましたように、日朝親善友好のために非常に御尽力をなさっておる方々が中心になりましてこの民間協定というようなものをいろいろ御相談をいただいておるということを、私その成り行きを関心を持って見守っておるということで、政府は国交がございませんで交渉権がございませんわけでございますので、この皆さんの御努力の成果というものを見守っておる、こういう段階でございます。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 見守っておるということと、そういう松生丸事件のような悲しい事件が二度と起こらないということとは大変デリケートな関係なんですが、そういう民間漁業協定でも結ばれて、安全操業に不安がないというふうなことを期待しているわけですか。
  91. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これはいまのような観点と、もう一つは、日本関係漁業者がこの朝鮮人民共和国の領海なりあるいは警戒ラインなりというものを侵犯しないように細心の注意をしながら操業するということも一つ大事な問題でございます。この点につきましては、十分県等を通じまして、あるいは漁業団体等を通じまして、その周知徹底を図って指導しておる、こういうことでございます。  もう一つの問題につきましては、先ほど来申し上げるように、友好親善に当たっておられる方々の御尽力というものを、私は恐らくこれが実を結ぶであろうというような期待も含めまして、見守っておるというのが現状でございます。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 私、もう一つ大事な食糧資源確保の問題をきょうは取り上げます。  私は、大変悲しい事件の発生をいまでも忘れておらないのですが、昨年末、東北の農民が冷害のために自殺された事件がございます。大臣、御存じだと思いますが。この農業に希望を持ち、生涯の仕事として精励する農民が自殺するような、ここに大きな日本の農政の欠陥があると私は思うのです。  もう一つ日本の農業後継者養成という、農林省も骨を折っておられると思いますが、その問題につきましても、大学を出て農業経営に従事する数が非常に少ない。最近の統計では、全国で一万人、三%にすぎない学卒の農業就業者。これはどこに原因があるか。農業国として歴史と伝統を持った日本の農業従事者というこの栄光の座につき得ない。大半の者が他の産業に農家の子弟でもついておる。これはどこに欠陥があると思うのか。日本農政に、欠陥がどこかにひそんでおるのじゃないか。農林大臣に御就任になられて、じっとこの日本農政の現時点をながめて、いままで取りきたった農政の上に欠陥はないか。私はあえて指摘しましょう。農業基本法、スタート以来相当の日月がたちました。これには非常に漠然とした規定がありまして、具体的に国の助成等を農林省は責任を持って果たそうというような規定がない。  そこでもう一つ問題が起こるのは、そこから日本農政が場当たり的になっておる。朝令暮改である。昭和三十六年でしたね、大豆の輸入の自由をお認めになりました。いま大豆の自給度は四%。これは農民に対しては大変なショックでした。米作を転換して、他の農産物への転換を要請されました。減反奨励金みたいなものを出して、米作農家を柑橘その他へ転換させられた。ところが、柑橘に転換された農民、米作田をチェンジしてミカンの生産に当たったところが、柑橘の価格が非常に不安定で、また米作に返りたいという要望がたくさん出ておる。これは農林省の農政の朝令暮改、一貫せざる施策の欠陥であって、これについてどうしていったらいいかという、農林大臣の御就任以来の夢がおありだと思うのです。日本農民よ、安んじて鈴木についてこいという意欲を持って、自民党の大物でいらっしゃる鈴木先生への期待が非常に大きいと思うのでございますが、いかがでしょう。鈴木農林大臣の御所見を伺いたい。
  93. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在の日本農業が非常に厳しい環境の中に立っておるわけでございますが、どうしてこういうぐあいに日本の農業が荒廃したのか、こういう反省から出発しなければいかぬ、こう考えておるわけであります。  高度経済成長のもとにおきまして、農村の労働力、特に若い生産労働力というものが他産業へ相当大きく流出をしてまいったわけでございます。と同時に、また農地等の改廃も進んでまいりました。結局農業の振興というのは土地問題であり、その担い手である人の確保の問題である、基本はそうだ、私はこう考えておるわけでございますが、いまのような経済社会の情勢の推移に伴いまして農業がそういう立場に立ってきた、立たされてきたという客観情勢、これもそのとおりだ、私はこう思っております。  私は、そういう意味で、どうしてもこの農村の青年諸君にも農村に定着をし、そうして農業生産のために大事な国民の食糧確保のために働いていただくというためには、日本の農業の将来に対して、明日に対してやはり明るい展望を持たせることが必要だ、こう考えておるわけでございます。そのためには土地改良等の農業基盤の整備、また農村の生活環境の整備、住みよい明るい農村をつくるということも大事でございますし、また他の産業に従事するのと同じような、それに劣らない所得がやはり確保される、農民の生活の安定向上が期せられる、こういう経済的な裏づけも確保しなければならない、こう思うわけでございます。そのためにいろいろ振興のための政府の助成もいたしておりますし、もう一つは、私は価格政策というものをやはり見直していく必要がある。稲作志向の傾向が非常に強まってきております。五十一米穀年度におきましても二百六十万トンからの在庫がある。ところが、御指摘のような大豆であるとか麦であるとかいうようなものは、必要とする作目の自給率は非常に低位にある、こういうような状況にあるわけでございますが、国の政策として、やはりそういうものの自給力も高めなければいかぬ。こう申しましても、選択するのは個々の農民がこれを選択するわけでございますから、やはり稲作農業に劣らない所得が確保されるというような条件、そういうものをつくっていかなければいけない。それは価格の問題、助成政策あるいは土地基盤整備その他の生産組織の問題等も総合的に私は考えまして、そうして稲作偏重でなしに、麦であるとか大豆であるとか野菜であるとか、あるいは果実であるとか養蚕であるとか、そういうような面にもスムーズに転換ができるような環境と条件、そういうものをやはり早くつくって、スムーズにそれが誘導されていくというような体制をつくる必要がある、このように考えております。  また、農民諸君のみずから立ち上がる、希望を持って立ち上がるという意欲を高めるために、その創意と工夫を生かしていただくというために、地域農政特別対策事業というようなものを五十二年度から始めまして、全国で一千カ所ぐらいの個所で、そして部落座談会等も開いていただいたり、わが部落、わが村の農業はどうしようかというようなことをお話し合いを願って、自主的に地域農政を盛り立てていただく、それに対して国も適切な助成や援助をやる、こういうようなことも考えておるわけでありますが、私は、いま申し上げたような方向で日本農業というものを足腰の強い体質にこれを改善、強化をする。また農村の生活環境を整備をする、また総合的な自給力を高めるような価格政策その他を含めて対策も講ずる、また、その担い手である農民の方は、後継者の確保の問題につきましても、ことしも予算でできるだけのことをやったと思っておりますが、今後とも、まだまだ足らないわけでございますから、努力も傾けていきたい、こう考えております。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 大臣、あなたがいま心から思っておられることを素直におっしゃったことで気にかかることがあるのです。それは、農民の皆さんは農民自身で運命を開けというお言葉がちょっと出てきた。それではいけない。農業の基盤整備、それは大変な金がかかる。資本力が非常に少ない農民です。農地利用の集積化にも大変困難な環境である。他の産業と均衡のとれる所得を得る背景は国がつくってやらなければいかぬ。みずから農業経営者が知恵を出してくれというようなお言葉が一つあったのですが、その農業基盤整備のような大事な問題は国が全額国庫負担で用意してあげます、さあ農民立ち上がれ、大学卒業者よ、農業経営者として夢多き将来を築けという、そういう夢を与えるのには、国自身が全額国庫負担ぐらいの決意で基盤整備をやっていただくべきです。それはもう明らかに農業経営者というものは資本力においても、そうした農地を利用する集積化の困難さというものにおいても、大変な苦労をしておるんだ。農場、漁場の確保、そういう問題を含めて、価格安定ということをいまはっきり言われましたから、そのことも含めて、おれたちは農業経営者として生産した物は適当な価格でいつでも国が買ってくれるんだよ、そして、大事な仕事をしようとすれば他の産業とは非常に条件の悪い中で苦労するわれわれに国が全額国庫負担して基盤をつくってくれるんだよ、さあやろう、この産業を、この穀物を増産することによってわれわれの将来に夢が開けるという、そういう条件を農林省つくってあげなければいけない。米作田を転換してくれ、転換のためには、しばらくあいておる期間は減産奨励金を渡そうと、場当たり的なことをやるから、十年もたつと急に情勢が変わってくる。価格は安定しないから、たくさんのミカン生産者ができてきてミカンの価格が急落するというような農林行政の中に、鈴木さんのような力を持った人が農林大臣になった機会に、そうした学卒が喜んで農業経営者になれるような——四十万も卒業する中で一万人しか農村に定着しないような、こうした悲惨な状態を克服するための努力が要る。政府自身も総合的な農業何とかという会議を持っておられましたね。あれ、名前は何と言いましたかね。総合食糧政策の展開というものを出しておられる。それは国庫補助をどうするというような問題が一つも書いてない。もっと裏づけがはっきりしてないといかぬ。一応農民よがんばれという激励演説だけでは農民は立ち上がれないです。国民食糧会議というのを昨年やられた。わが党がかつて食糧基本法を提案したことに対して、強い主張をしたその会議をやられた。やられたけれども、声を聞いただけで具体的にその後どうするかを掘り下げた結論になっておらぬですね。  私もう持ち時間が来ましたから、これに対して一分ほど御答弁いただけば私質問を終わります。
  95. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 受田先生の御主張、お考えと私の申し上げたことと、方向としてはいささかの食い違いもない、私こう考えております。ただその中で、私は、基盤整備あるいは価格の問題その他いろいろなことを総合的にやりますと同時に、最近農村におきましては、お仕着せの農業でなしに、あれをやれ、これをやれという上からの押しつけでなしに、やはり地元から盛り上がる創意と工夫によるわが村の村づくり、明日への村づくり、そういうような機運が高まっており、実はこの地域農政特別対策事業というのには全国から非常な関心もあり、歓迎をされておる。こういうことで、私もそういうこともやはり考えなければいかぬということで努力をいたしておるということを先ほど申し上げたわけでございまして、政府は何にもやらぬで、みんな農民がひとつ自発的にやってくださいということを申し上げたのではないということを御理解を賜りたい、こう思うわけでございます。  ただ、その中で一点、土地改良等を全額国庫でやれ、こういう御主張、これは御意見として拝聴いたしますけれども、いま直ちになかなかそこまでいけないような日本の経済状態でもある。しかし、土地基盤整備事業等には私も特段の努力をしておるつもりでございまして、五十二年度の予算におきましても、一般公共が一二〇・四というような中におきまして、三%程度上回る土地基盤整備等の農林公共事業費を確保して、この問題には特に力を入れて努力をしておる。そういう方向で今後も努力していきたい。  いずれにしても、農政は息の長いものでございますから、私は、短期的なことでなしに長期の展望で、目標を失わずに、着実に農政を展開していく必要がある、こう考えております。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  97. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、柴田睦夫君。
  98. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 設置法の改正案についての提案理由を承りましたが、きょうは、二百海里問題について時間の許す限り質問したいと思います。  二百海里時代の到来というのは、いままでの海洋法秩序の崩壊を意味するわけで、この間の国際的、歴史的経過があるわけで、これを正しく認識する必要があるわけですけれども、いまは二百海里水域というのが世界の大勢となっております。国連海洋法会議の結論が出る前にこういう大勢となったわけですから、この海洋法会議での国際的合意の形成がまたむずかしくなったというような意見もあるわけです。いずれにしろ、魚に対する考え方、とらえ方が国際的に大きく変わってきているわけで、資源保護という観点から、乱獲に対する批判や反省が大きな流れとなって、いつまでも有効利用できる方向を求め始めているわけです。その管理についても、全人類的国際管理という考え方が大きな流れになっております。そこで、わが国漁業のあり方やまた対外交渉のあり方も、こうした国際的な流れの中で転換していく必要があるというように考えるわけです。  そこで、若干の提案をしながら御質問をしたいと思うのです。  政府は、アメリカソ連を初め二百海里設定に踏み切った国との交渉を通じて、いままでの漁業条約あるいは協定の資源保護の立場に立った改善、さらにこれを存続するというようなこと、それから、特に漁獲量の急激な減少をもたらさないような公正な漁業条約協定などの成立に積極的な努力を払わなければならないというように考えるわけです。     〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 その際に、北洋漁場や日本海あるいは以西漁場、南方水域などでの安定した操業を実現するために、乱獲的漁獲を規制できる操業の形態やら規模についての積極的提案を政府は持つ必要がある。そしてまた、関係国との協力による漁業資源の共同調査や共同増殖を実施する。それから、資源の科学的、合理的な管理と持続的な有効利用などを積極的に推進しなければならないというように考えるわけです。北洋水域などのようなところでは、共同管理方式の採用について関係国との交渉を検討しなければならないのじゃないかというように考えます。特に今度ソ連交渉されるわけですけれども、この交渉に当たっては、政府は、歴史的に日本領土であることが明白な南北の千島列島全域については、二百海里漁業専管水域実施を保留するようにソ連交渉する必要があるのじゃないか、このように考えているわけです。そうした問題についての農林大臣の御見解を承りたいと思います。
  99. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 海洋漁業資源が年々枯渇の傾向にある。これは漁獲努力が強化されてきたということもございましょうし、あるいは環境が壊されてきた、こういう公害問題その他の関係もございます。あるいは漁場の荒廃等も拍車をかけておるわけでございます。     〔木野委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、今後水産資源の安定、資源の持続的な生産性を確保する、あるいはさらに進んでは、積極的な増養殖等もやるべきである、これを個々の国だけでなしに国際的な視野に立って進めるべきである、こういう御主張は私も全くそのとおりだと、このように考えておりまして、今後わが国も機会あるごとにそういう努力をしてまいりたい。また、開発途上国等に対しましては、わが国のすぐれた漁業技術あるいは養殖技術、そういうような技術援助、協力等も行いまして、沿岸国で資源をふやし、それを有効に利用する、その国で十分有効に利用した後で余剰があった場合に、初めてこれを世界人類のために活用できるような状態に持っていく、こういう高い立場から漁業に関する協力関係というものを樹立する方向に努力していきたい、こう考えております。  それから日ソ交渉に当たって、ソ連の二百海里専管水域をしばらく休止をさせる、思いとどまるように、また実施を延期させるように、そういう努力をしたらどうかという御提案でございますが、私は基本的には、ソ連も遠洋漁業国家であり、わが国も遠洋漁業国家である。だから、各国がなわ張りを張って封鎖的にやる、あるところでは資源が非常に乏しい、あるところでは資源はあるんだけれども、それを有効に活用するようなことができない、そういう国もあるわけでございます。地下資源、鉱物資源等でありますと、これは掘り出して使っていけば資源はだんだん枯渇するわけでございますけれども、生物である水産資源等においては、その持続的な生産性、許容限度というものをはっきり科学的につかんでやっていく限りにおいては、これは人類全体の食糧問題の上からも大事なことだし、そうすべきだ。とらないからといって魚がむやみにふえるものでもございません。私は、そういう点をよく国際的な話し合いもしながら、秩序ある漁業操業確保されるようにということが必要だと、こう考えております。
  100. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それから、いま関係国によって一方的に二百海里漁業専管水域設定されてきているわけですけれども、もちろん既存の漁業協定を配慮する、そしてまた全国的な関係漁業者の意見を尊重する、そういう中で、国連の海洋法会議で新海洋法の秩序が確立されるまでの間をどうするかという問題ですけれどもわが国の沿岸の二百海里以内の水域については、もういまはやはり漁業専管水域をどうするか。そういう意味では、たとえば漁業専管水域法というようなものの制定を検討する段階ではないかというように考えております。そういうことも含めて、外国漁船操業から沿岸・沖合いの漁業を保護するために、相手国との交渉経過によって二百海里水域設定が必要となるような水域については漁業資源の保護と最適な管理をする、利用の措置を機敏にとることができるように、水域内の生物資源の調査や開発あるいは管理計画を立案する、それから外国漁船の取り扱い措置の決定、こうした問題が検討されなければならないと思うのですけれども、この問題についての所信をお伺いしたいと思います。
  101. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 わが国自身が二百海里漁業専管水域設定する考えがあるかどうかという御質問でございますが、これは先ほど来先生方の御質問に答えておりますように、私も、日本としても絶えずその問題は頭に置いて考えていく必要がある、しかし近隣諸国の動向その他いろいろなことを総合的に判断をして、その時期等については慎重に考えたい、こういうことを申し上げておるわけでありますが、柴田さんに対しましてもそういうことで御了承を賜りたい、こう思うわけでございます。
  102. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 その点については、結局これから先二百海里が大勢になっていくわけですから、そういう中で日本がおくれをとって日本漁獲量が減って、それこそ国民の食糧がなくなるというような事態にならないように、あらゆる場合を考えながら検討していくことが必要であるということを申し上げたいと思います。  それから、二百海里が大勢になってからの日本漁業の問題ですけれども、やはりこういう機会に日本漁業というものを国の基幹産業として位置づける必要がある。そして、多面的に発展させるために、税制や金融面などのこの漁業に対する保護を強めることが非常に重要じゃないかと思うのです。先ほど日本の農業基盤の整備がおくれているという話がありましたけれども、農業の分野に比べても、日本の沿岸・沖合い漁業関係の政策は大きく立ちおくれているというように考えるわけで、そういう意味で、この沿岸・沖合い漁業関係の政策的、制度的措置を抜本的に強化する必要があるというように考えております。  そういう意味では、いままでの大手水産会社本位と言われる、あるいは遠洋漁業優先の漁業政策を、沿岸漁民、中小業者を大事にして沿岸・沖合い漁業を重点とする政策に転換し、漁業制度の民主的な改正を含めて、新しい漁業構造をつくり上げるというような考え方がいまは必要ではないかというように考えております。これについては、いろいろ漁場の整備だとかあるいは漁港の整備あるいは漁価の安定、そのほか試験研究体制、それから乱獲を禁止するとかいろいろな問題があるわけですけれども、二百海里時代を迎えて、日本漁業についての新しい政府の漁業保護の対策、根本についてお伺いしたいと思います。
  103. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日本漁業政策の基本的な考え方はどうか、こういう御質問でございますが、日本漁業の大宗、中心をなしておりますものは中小沿岸漁業者でございます。  先ほど大手会社を保護するような政策をとっておるんじゃないか、こういうようなお話がございましたが、ことしの予算をごらんいただきましても、ほとんどの水産関係の予算というものは中小漁業関係であり、沿岸漁業者を対象としたものであるということは柴田さんも御閲覧いただけばおわかりになるかと思うわけであります。漁港の整備事業にいたしましても、全国津々浦々に散在する漁港を、沿岸漁業者が仕事がしやすいようにということで四百数十港の漁港の整備、これも中小や沿岸の漁業者中心になるわけでございます。  それから、二百海里時代を迎えまして日本列島周辺の沿岸の資源をふやし、沿岸漁業、沖合い漁業を振興しなければいかぬということで五十一年度から出発しております二千億、七カ年計画の漁場開発整備事業、これも沿岸漁業者のためのものである、こういうことが御理解がいただけると思うのでございます。むしろ水産政策の面では大企業のために何もやってくれない、たとえば戦後の海運の復興の場合、海運には相当の助成をしたが、日本の遠洋漁業の復興について何を政府がやってくれたか、こういう批判さえあるようなことでございまして、私の漁業政策は沿岸漁業中心である、こういうことをはっきり御理解を賜りたいと思います。  それからなお、水産の問題を食糧政策の面から位置づけることを明確にすべきである——御主張のとおりでございまして、たん白食糧の半ば以上を供給している水産食糧資源は、これはもう日本民族にとっては非常に大事なものでございますから、食糧政策を考える場合に、この魚類たん白資源というものを考えないで日本の食糧政策は立たない、そういう観点でやってまいる考えでございます。
  104. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 終わります。
  105. 正示啓次郎

    ○正示委員長 最後に、中川秀直君。
  106. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 鈴木農林大臣に二点にしぼって御質問申し上げたいと思います。  まず第一に、今回の二百海里の問題が起きましてから、米ソ間においても漁業交渉がございまして、ソ連側が米国の西海岸の水域で従来の漁獲量を削減をされたというふうに伝え聞いているわけでございますが、その漁獲量が大体何万トンぐらいになっているのかということをちょっとお伺いしたいと思います。  なぜかと申しますと、これまた伝えられるところでございますけれども、米西海岸水域で減らされた漁獲量を、ソ連はみずから宣言をするところの二百海里水域内で他国の——他国のと言っても日本が相当部分を占めるわけでございますが、漁獲量を減らすことによって埋め合わせるというようなことも考えられると聞いておるわけでございますが、そういう中で、わが国がこれから北方漁場においてどのような立場に立っていくのか、漁獲量の点でどういう立場に立つのかということは、そういうようなことから計算をしていく必要性もあると思うのであります。  その点、お答えをいただきまして、と同時にまた、もしそういうふうに減らされていくということになるとすると、もうこれからは外洋漁業に関しては、とる漁業というよりも、とらせていただく漁業にならざるを得ない。とすると、そういう減っていく部分について、わが国民の食糧政策の上から、あるいはとりわけ北方漁場に関しましては、米西海岸水域と違いまして、中小の大変零細な漁民が漁労に従事しているわけでございます。そういう方々の今後の生活という問題が出てこようかと思うわけでございますが、そのようなことについて一括してお答えをちょうだいしたいと思います。
  107. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 米ソ漁業交渉によってソ連がどれだけの漁獲量確保したか、どれだけ減ったか、こういうことでございますが、これはまだ米政府から公式に公表されておりませんのではっきりした数字はつかんでおりませんが、大体大西洋岸、太平洋岸で米側からソ連に割り当てをされた漁獲量は六十四万八千トンから九千トン程度、六十五万トン弱、これはソ連の公式的な過去の実績からいたしますと三〇%ないし二五%程度の削減、こういうぐあいに見られるわけでございます。ソ連は遠洋漁業国家でございまして、七つの海に漁船団を繰り出しておる、こういうようなことでございまして、ECあるいはノルウェー、いまモロッコ等とも交渉をやっておるようでございますが、各国の海域で相当の漁獲量の削減が見られておる、こういうぐあいに私は承知をいたしておるわけであります。そういうような観点から、北太平洋、今度ソ連が二百海里宣言をしたその海域内における漁獲努力を高めてくるであろう、これはもう十分予想されるところでございまして、それが今後のわが国の北洋漁業にも微妙な関係、至大の影響を及ぼしてくるであろう、こういうことは十分認識をしておかなければならない厳しい情勢である、こう考えております。
  108. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 その場合に、今度のイシコフ漁業相との会談によって当然そういった漁獲量の話というものにも触れていかざるを得ないことになるのではないかと思われるので、大臣の御苦労も大変なことだと思われるのでありますが、今回訪ソされて、仮に向こうが一方的に日ソ漁業条約の破棄を通告をする段階になっても、一年間効力がある。しかし、それはわずかに一年であります。恐らく北洋漁業にとって来年の漁獲量というものがどの程度になるかということは、漁民生活のみならず、国民生活にも大変大きな影響を与える問題であります。そういう場合に、当然、その漁獲量話し合いがかなり詰まってきた段階には、その次の年の漁獲量をどうするかということで、日ソ漁業については委員会があるわけでございますけれども、今度の訪ソでそういうものがある程度詰まってきたら、たとえば協定まではいかなくても、次の新しい条約もしくは協定に向けて覚書等を交わされるというようなことがあり得るのかどうか、大臣の見通しというか、お腹構えをちょっとお伺いいたします。
  109. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 お話のようにいろいろな場合が想定をされるわけでございます。現在の日ソ漁業条約を直ちに破棄の通告をしてくるのか、一年ぐらいたって破棄してくるのか、その半ばごろに破棄してくるのか、これも定かでございません。いずれにしても、二百海里ということを向こう幹部会令によって設定をしたということになりますと、早晩新しい秩序、新事態の上に日ソ漁業関係というものを再構築する必要が出てくるわけでございます。その場合に、一挙に基本協定というものを締結をするといいましても、わが国としては国会の御承認を得にゃいかぬというような手続等もございます。また、わが国の歴史的な実績をできるだけ確保するというには相当粘り強い交渉もせにゃいけません。そういうようなことから相当時間がかかる、こう見ております。したがいまして、その間を、現在の日ソ漁業条約というものを相互の話し合いで生かしていくのか、あるいはまたアメリカとの間に結んだような暫定取り決めというものをするのか、これはこれからイシコフさんと話し合いをしてすべて方向が決まってくる、こういうことでございます。  いずれにしても、私は情勢がきわめて厳しいという認識の上に立っておりまして、そのために起こってくるであろういろんな事態、特に北海道その他の北洋で操業しておりますところの中小漁業者の立場をどうするか、これは何としてもこの人たちが歴史的な実績を認めてもらってその上に操業ができるようなことに最大限の努力をせにゃいかぬと考えておりますし、また、そのために削減された漁獲量をカバーするために、日本列島周辺の漁場を開発整備をし、資源をふやし、あるいは積極的に栽培漁業等を盛んにして、そして外で削減された分を日本列島周辺でカバーをする、こういうような施策を強力に今後進めていかなければいけない、こういうことを考えておりまして、五十二年度予算におきましてもそういう方向で必要な予算を皆さんの御協力を得て確保をしておる、こういうことでございます。
  110. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 御努力を切望いたします。  それから最後にもう一点だけ、日韓大陸棚協定日本の大変重要な漁場でございます以西底びき漁場の水産資源の保護の関係についてお伺いをしたいと思います。  御案内のように大陸棚協定が今国会にまた提出をされた。改めてお伺いをしたいと思うのでありますが、まさにあの大陸棚南部の共同開発水域というのは先ほど申し上げましたようにわが国漁業にとっても大変に重要な漁場であるということであります。かつてカリフォルニアで、ある石油の本当に小さな採掘井でございましたが、油が漏れまして、水中はおろか周辺水域のありとあらゆる生物が死んだというケースが一九七一年か七〇年かにあったように覚えておりますが、今度の大陸棚協定は、御案内のように、四条、五条あたりを見ますと、協定の効力発効後には直ちに九カ月以内くらいに探査に入る、大変急ぐ規定さえついている協定でございます。もし、大臣も先ほどおっしゃったように、遠洋で締め出されるとするならば沿近海の漁場を増殖し、また開発をし、維持していかなければならないというそういうお立場からするならば、このわが国の重要な漁場の水産資源を、政府がお出しになっている日韓大陸だな共同開発の中でどうやってお守りになられるのか、農林省としてそういう部分も十分御検討なさっておられるのか、大臣の御見解と今後の御努力をひとつお伺いしたいと思います。
  111. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 日韓大陸棚協定、この中には、中川さん御承知のように、水質の汚濁防止その他につきまして、その海域で操業する漁民の保護、漁民に迷惑をかけないということで条文を特に設けておりまして、十分な配慮がなされるようになっておるわけでございます。  また、これが探査あるいは採掘その他実際の仕事に入ります前には関係漁民と事前に十分話し合いをして、その了承を取りつけるということを義務づけております。恐らくその際におきまして、現実被害等があった場合の補償の問題でありますとか、いろいろな問題が協定をされるであろう、こういうことに考えておりますが、政府としても大事な漁場であり、資源の問題の面からも、特に関係漁民生活の保護、確保ということが大事な問題でありますから、十分関心を払い、指導をし、さようなことがないように配慮してまいりたい、こう考えております。
  112. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 一たん破壊された自然というのはなかなか戻るものではありません。くれぐれも御留意をなさっていただきたい重要な問題だと思います。  終わります。
  113. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次回は、来る三月一日火曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十二分散会      ————◇—————