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1977-04-12 第80回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月十二日(火曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 小泉純一郎君 理事 保岡 興治君    理事 山下 元利君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 坂口  力君    理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       大石 千八君    鴨田 宗一君       後藤田正晴君    佐野 嘉吉君       砂田 重民君    林  大幹君       原田  憲君    村上 茂利君       村山 達雄君    毛利 松平君       山崎武三郎君    山下 徳夫君       山中 貞則君    伊藤  茂君       池端 清一君    大島  弘君       川口 大助君    川崎 寛治君       沢田  広君    只松 祐治君       村山 喜一君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    大原 一三君       永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         経済企画庁長官         官房参事官   岡島 和男君         経済企画庁長官         官房参事官   柳井 昭司君         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵大臣官房審         議官      山内  宏君         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 岩瀬 義郎君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     副島 有年君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  中村 俊男君         参  考  人         (社団法人公社         債引受協会会         長)      中山 好三君         参  考  人         (財政制度審議         会委員)    館 龍一郎君         参  考  人         (日本大学教         授)      井手 文雄君         参  考  人         (青山学院大学         教授)     原   豊君         参  考  人         (法政大学教         授)      齋藤 博孝君         参  考  人         (立教大学教         授)      和田 八束君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   大原 一三君     小林 正巳君     ————————————— 四月八日  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第七〇号) 同日  大和基地跡地利用に関する請願和田耕作君  紹介)(第二六九九号)  付加価値税新設反対に関する請願池端清一君  紹介)(第二七〇〇号)  同(高沢寅男紹介)(第二七〇一号)  同(荒木宏紹介)(第二七五三号)  葉たばこの生産振興対策に関する請願津川武  一君紹介)(第二七五二号)  税制改正及び税務行政民主化に関する請願(  安藤巌紹介)(第二七九九号)  同(荒木宏紹介)(第二八〇〇号)  同(浦井洋紹介)(第二八〇一号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第二八〇二号)  同(小林政子紹介)(第二八〇三号)  同(柴田睦夫紹介)(第二八〇四号)  同(瀬崎博義紹介)(第二八〇五号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二八〇六号)  同(田中美智子紹介)(第二八〇七号)  同(東中光雄紹介)(第二八〇八号)  同(不破哲三紹介)(第二八〇九号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二八一〇号)  同(正森成二君紹介)(第二八一一号)  同(松本善明紹介)(第二八一二号)  同(三谷秀治紹介)(第二八一三号)  同(安田純治紹介)(第二八一四号)  同(山原健二郎紹介)(第二八一五号)  老齢年金等所得税非課税措置に関する請願  (椎名悦三郎紹介)(第二八二〇号) 同月十二日  付加価値税新設反対に関する請願高橋高望君  紹介)(第二九九八号)  同(伏木和雄紹介)(第二九九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度の公債発行特例に関する法  律案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  ただいまより、本案について参考人から意見を聴取することにいたします。  ただいま御出席になっておられます参考人は、全国銀行協会連合会会長中村俊男君、社団法人公社債引受協会会長中山好三君、財政制度審議会委員館龍一郎君、日本大学教授井手文雄君、青山学院大学教授原豊君、法政大学教授齋藤博孝君、以上の方々であります。  なお、立教大学教授和田八束君は若干おくれて御出席になられることになっております。御了承願います。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  参考人各位には御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本委員会におきましては、目下、昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案を審査いたしておりますが、本法律案について、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見は十分以内程度にお取りまとめをいただき、その後、委員からの質疑にお答え願うことにいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初に中村参考人からお願いいたします。
  3. 中村俊男

    中村参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会中村でございます。  本日は、財政特例法案に関しまして、私ども意見を述べるようにとの御趣旨でお呼び出しをいただいたわけでございますが、特例国債を含む国債問題一般につきまして、私の意見あるいは希望を概括的に申し述べさせていただきたいと存じます。  改めて申すまでもございませんが、わが国経済石油ショックからすでに足かけ四年を経たわけでございますが、この間、幸いにしてわが国経済は、狂乱物価の収束と国際収支改善をなし遂げて、第一の難関だけはどうにか切り抜けたようでございます。しかしながら、景気は、いまだ確かな回復軌道に乗るには至っておりません。最近では、再び景気底割れ懸念する声すら聞かれるほどでございます。  景気が従来のように一気に回復に転ずることができずにおりますのは、石油ショックの後遺症が経済の各面に色濃く残っておりまして、景気自律回復力をきわめて弱いものにしているからであると言われております。こうした不況長期化のもとに、特に企業の体力が限界に近づきつつあり、それだけに、ことしこそは行き詰まった局面の打開をと願う気持ちはまことに切実なものがあるのでございます。  こうした観点からいたしますと、五十二年度予算につきましては、一言で申せば、限られた財源のもとで、財政効率化にも配慮をしながら、景気浮揚の面にも相当の努力を傾けられたものと評価するものでございます。  五十二年度は、八兆四千八百億円の国債発行を予定いたしており、うち四兆五百億円は特例国債となることを避けられないとのことでございますが、これは、長期にわたる経済の停滞の結果、歳入が大幅に減少したためであり、まことにやむを得ないものと考える次第でございます。  私どもといたしましても、経済の安定と国民福祉の充実という見地から、こうした財政運営に御協力申し上げるにやぶさかでなく、国債引き受けについても可能な限り努力してまいる所存でございます。  しかしながら、特例国債発行につきましては、率直なところ、国民経済的な観点から申しまして、問題がないわけではございません。  その第一は、財政硬直化の問題でございます。特例国債が前年度実績を上回り、国債依存度も、前年度並みの三割に及ばんといたしておりますことは、平時財政としてはきわめて異常なことでございます。今後、わが国財政は、巨額の国債を抱え、国債の利払いや償還のための国債費増加に苦しめられることとなりかねません。財政制度見直し効率化につきましては、これまでも十分な御留意がなされてきておられるところではございますが、今後とも、より真剣に取り組まれ、一日も早く財政再建の足がかりをつくられるよう切望いたします。  第二の問題は、インフレーションとの関係でございます。そもそも、国債発行インフレにつながるかどうかは、それが建設国債であれ、特例国債であれ、それほどの相違はございません。それよりも、国債発行による財政支出増加と、それがもたらすマネーサプライ増加、さらには、それらの波及効果としての総需要増大といったものの程度にかかっているわけでございます。わが国経済の現況から判断いたします限り、需給逼迫によるインフレの心配は、当面は、まずないものと考えております。しかしながら、わが国国債発行は、御案内のとおり、そのほとんど全部を銀行引き受けておりますので、理屈の上では、銀行引き受けた分は、ほぼ同額だけ、銀行による対政府信用の供与となり、マネーサプライ増加をもたらすという懸念は残るわけでございます。そうした意味で、政策当局の今後のかじ取りが非常に重要になると推察いたします。  第三の点は、国債の増発が金融市場に及ぼす影響でございます。国債発行国債発行かわり金がいずれ財政支出として市中に支払われることを考えますと、タイムラグを除きますれば、一応、金融市場にとって中立であると申し上げてよいと存じます。そうは申しましても、月平均七千億円、多い月では一兆円を上回る国債発行されることとなりますわけで、これは、月々の市場繁閑を増幅させるおそれが大きいのでございます。私ども引き受け側といたしましては、市場繁閑に応じた計画消化が望ましく、こうした見地からいたしますと、財政特例法案早期成立が望まれる次第でございます。  第四は、国債発行によって民間金融に支障が生じないかという、いわゆるクラウディングアウトの問題でございます。不況のために民間資金需要が鎮静しております結果、これまでのところ、このクラウディングアウトの問題は表面化するには至っておりません。しかしながら、今後、景況が明るさを増してまいりますと、それにつれて、企業資金需要も本格化してまいる可能性がありますので、こうした意味では、民間資金需要が大量の国債発行によってクラウドアウトされる懸念も全くないわけではございません。民間資金需要が台頭してまいるような場合には、税収も増大することが予想されますので、そのような場合には、適時適切に国債発行額の調整が行われ、民間資金需要がクラウドアウトされることのないような政策的配慮を強く希望する次第でございます。  さて、以上申し述べましたように、特例国債発行につきましては、問題がないわけではございませんが、これらは、政策運営のよろしきを得ますれば、何とか解決可能と思われますので、景気浮揚という、国民挙げて期待いたしております大きな目標のためには、特例国債発行は必要やむを得ないものと判断する次第でございます。  それにいたしましても、財政法第四条のたてまえは、決して軽視すべきものではございません。その点、一昨年、昨年に引き続き、特例国債がこうして先生方の厳正な御審議を経ておりますことに敬意を表する次第でございます。  最後に、私ども国債最大引受機関といたしまして、この席をかりましてぜひお願いしておきたいことがございます。それは、国債累増がもたらします種々の問題に対して、国債管理政策のあり方を再検討していただきたいということでございます。と申しますのは、五十二年度発行予定分を加えますと、五十二年度末には、国債発行残高が三十兆円近くに達する見込みでございます。それに伴いまして、私ども銀行に滞留いたします国債保有残高も急増しており、その結果、資産内容硬直化資金ポジションの悪化といった難問を惹起しているのでございますが、こうしたことを放置したままでは、新たな国債をスムーズに発行してまいりますことも困難となりかねないからでございます。  国債管理政策見直しの基本は、何と申しましても市場原理を尊重していくということでなければなりません。  その第一は、発行条件弾力化推進でございます。大量の国債が恒常的に民間資金に依存せざるを得なくなっている今日、理想を申しますと、欧米主要国のように、発行利回り市場実勢利回りを敏感に反映して決められる必要があると存じます。そうなれば、本来の意味市中消化も可能となると存じます。  第二は、流通市場整備でございます。今後、従来とはけた違いの国債市中に滞留することになる以上、流通性を高める二とは不可欠でございまして、この面から流通市場整備は喫緊の課題と申せましょう。たまたま、最近の国債流通市場が堅調な動きを見せておりますなど、こうした国債管理政策見直しに取りかかりやすい環境が整いつつあるようでございます。私どもシ団といたしましても、種々検討してまいる所存でございますので、早急に具体化されますようお願いいたします。  これをもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手
  4. 小渕恵三

    小渕委員長 次に、中山参考人にお願いいたします。
  5. 中山好三

    中山参考人 公社債引受協会中山でございます。  本日は、昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案につきまして意見を述べるようにとのことでございますので、証券界立場から、いささか所見を申し上げ、御参考に供したいと存じます。  さて、私から申し上げるまでもなく、最近のわが国経済は、景気回復が緩慢化いたして、いわゆる中だるみ状態となっており、そのために着実な景気回復と持続的な安定成長路線への円滑な移行が最大課題となっておる状況でございます。これは、昨年、年初以来、輸出拡大中心といたしまして、景気回復の手がかりをつかみましたにもかかわらず、この輸出増加が、個人消費設備投資などの内需の拡大につながらなかったことによるものではないかと思われます。  こうした景気中だるみ長期化によりまして、わが国経済には、幾つかの問題が生じてまいっております。国内的には、企業倒産増大雇用面改善のおくれに加えまして、期待された企業業績回復にも、早くも頭打ちの様相が見え始めておりまして、経営者投資マインドは極度に沈滞化してきておるのが現状でございます。一方、対外的には、輸出拡大に対する批判が高まり、EC諸国を初め、各方面におきまして、摩擦を引き起こしているのが現状であります。したがいまして、この際、国内の需要を喚起し、景気を着実な回復軌道に乗せていくことが緊急の課題であり、財政支出中心とする景気てこ入れ策への期待が非常に高まっている次第でございます。  こうした観点から、私どもは、昭和五十二年度予算案につきまして、景気浮揚国民生活安定化という要請にこたえるものとして評価申し上げ、総じて適切であると考えております。  したがいまして、この予算案と表裏一体の関係にございます本特例公債法案につきましても、現下の経済情勢及び財政状況から見て、やむを得ないものと存じております。むしろ、私どもといたしましては、この特例公債法案による財源を前向き、かつ効果的に活用し、景気早期浮揚を通じまして、できるだけ早く、赤字財政からの脱却が図られることを強く期待するものであります。  この点、昨年、特例公債法案成立がおくれまして、国債発行が年度当初から計画的に行われず、景気回復に悪影響を及ぼしたことを考え合わせますと、本特例公債法案早期成立を特にお願い申し上げたいのであります。  いずれにいたしましても、私ども証券界といたしましては、建設公債とあわせまして、特例公債につきましても全力を挙げて、その消化に取り組み、財政の円滑な運営のため、いささかなりともお役に立ちたいと考えているところであります。  次に、私ども証券界が担当しております国債個人消化につきまして、近況を御報告いたしますとともに、若干のお願いを申し上げ、委員各位の御理解を賜りたいと存じます。  私ども証券界は、昭和四十一年に国債発行が再開されまして以来国債個人消化の持つ意義の重要性を強く認識いたしまして、この十年余りの間、じみちな努力を重ねてまいりました。その結果、今日までの証券界個人消化額は、通算いたしまして二兆三千七百六十二億円に達しておりまして、市中公募額のおよそ一二%を占めるに至っております。  特に、国債大量発行時代を迎えました昭和五十年度半ば以降におきましては、私どもは、販売態勢の強化と国民国債に対する理解の浸透に、総力を挙げて取り組んでまいっております。こうした私ども証券界一丸となっての努力の積み重ねに加えまして、御当局におかれましても、発行条件面での配慮中期割引国債の創設、積極的な国債PR活動など、国債大量発行に即応した適切な施策を講じていただいております。おかげをもちまして、個人消化額飛躍的増大を見ております。  具体的に申しますと、五十年度前半には、月間百八十億円程度でございましたが、昨年五月には七百億円台に乗せ、この三月には、一千三百四十億円に達しております。五十一年度を通算いたしますと、利付国債九千五百二十九億円、割引国債九百八十九億円となりまして、市中消化に占める比率も、利付国債のみで一五・八%という高水準に達している次第でございます。  このような成果を踏まえまして、私どもは、今後とも、国債個人消化促進になお一段の努力を傾けてまいる所存であります。  つきましては、今後さらに、次の事項に関しまして、委員各位の御理解と御配慮を煩わしたいと存じます。  その第一の条件といたしましては、国債発行条件弾力化し、投資対象として常に魅力あるものとしておくことであります。過去におきましては、この点が必ずしも十分でなかったため、私ども証券界といたしましては、その消化に苦慮してまいったのが実情でございます。最近のわが国経済状況から推測いたしますと、当面、国債を含めまして、債券の需給関係は比較的平穏に推移する見通しであります。  しかしながら、今日のわが国公社債市場は、基本的には、かつてない公共債大量発行下にあります。今後の景気回復の動向、資金需要盛り上がりいかんによりましては、消化環境が悪化するという事態も十分想定しておく必要があります。そのような環境変化に対応いたしまして、国債消化を常に円滑に進めてまいりますためには、発行条件を弾力的、かつ適切に設定していく慣行を確立していくことが肝要かと存じます。  その第二といたしましては、発行形態多様化であります。国債が魅力ある金融資産としまして、広く各層に保有されてまいりますためには、国民の多様なニーズに応じまして、各種の国債発行されてまいることが望ましいわけでございます。この点に関しましては、一昨年来、当委員会におかれましても、国債個人消化促進等観点から大変建設的な御議論をちょうだいいたしましたが、本年一月には中期割引国債発行を見るに至った次第でございます。今後とも、償還期限多様化等の一層の推進を含めまして、この面での積極的な施策を引き続きお願い申し上げる次第であります。  なお、最後に、国債流通市場につきまして若干触れさせていただきたいと存じます。  御高承のとおり、公社債流通市場は、近年急速に拡大を見せておりまして、昭和五十一年度の売買高は、全体で七十四兆円という大きな規模に達しております。この中にありまして、国債売買高は、同じく昭和五十一年度の場合、前年度に比べまして二・五倍となり、三兆三千億円に達しておりますが、なお、公社債全体に占めます比率は四・五%と、まだきわめて小さな規模にとどまっているのが現状でございます。  しかし、今後は、発行残高累増に伴いまして、国債売買高は、なお一段と増大してまいるであろうと存じております。そうした中におきまして、国債に対します国民の信頼を高めますとともに、国債金融資産中核として定着させてまいりますためには、国債流通市場整備が大変重要な課題であると考えます。  証券界といたしましては、これまで、国債取引所における売買仕法改善国債個人向け担保金融実施等流通市場整備のため、諸般の政策を講じてまいりました。しかしながら、欧米先進国に見られますように、国債公社債市場における中核的存在として定着させますためには、さきに申し上げました、発行面改善とあわせまして、国債整理基金による買い入れの弾力的実施公開市場操作機動的運用、さらには国債流通金融の一層の拡充等流通円滑化のための諸施策推進していただくことが肝要かと存じます。委員各位並びに関係当局の御理解、御配慮をお願いしたい次第でございます。  以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  6. 小渕恵三

    小渕委員長 次に、館参考人にお願いいたします。
  7. 館龍一郎

    館参考人 ただいま御指名をいただきました館でございます。  私、財政制度審議会委員をしておりますが、委員の一人として、経済学者立場から私の意見を述べさせていただきたい、こういうように思います。  以下三つの点を中心にして私の考えるところを申し上げ、御参考に供したいというように思います。  第一は、公債発行インフレを招来する危険はないかという問題でございます。二番目に、五十二年度の特例公債発行規模という問題についてでございます。それから三番目に、公債発行の歯どめというこの三つの問題について、私の考えるところを述べさせていただきます。  まず第一に、公債発行によってインフレが招来される危険はないかという点について申し上げます。  公債発行についてしばしば懸念される第一の問題は、公債発行インフレを招来するのではないか、あるいはそれを激化するのではないかという問題でございます。  インフレの原因については、いまさら申し上げるまでもなく、非常に多岐にわたるわけでございますが、公債発行という問題との関連インフレが問題になりますのは、主として需要インフレでございます。つまり、需要が供給を超えることによって起こってくるインフレ、それともう一つは、公債発行インフレ心理を招来するということから起こってくるインフレ、この二つが公債発行との関連において主要な問題であると考えるわけであります。  こういう観点から五十二年度の公債発行を考えました場合、公債発行によってインフレが加速される懸念はほとんどないというように言ってよいと私は考えます。  まず第一に、御案内のように、製造工業稼働率指数をとってみましても、依然として八七%前後という低い水準にとどまっておりますし、労働力についても完全失業が百万人に上る。さらに有効求人倍率も依然として〇・六という低い水準にとどまっております。したがって、現在でも依然として相当の需給ギャップがあるということは明らかであります。したがいまして、供給を制限するような措置がとられない限り、需要超過によるインフレが生ずる懸念はほとんどないというように言ってよろしいと考えるわけであります。  一方で、大量の貯蓄が行われ、他方、企業設備投資が停滞しているという状況のもとで、この程度財政の赤字がないとすれば、逆に非常に大量の輸出超過であるとか景気の停滞が生ずるということになるはずであります。と申しますのは、貯蓄は言うまでもなく購買力の吸収でございます。したがいまして、これを相殺するような投資であるとか、財政の赤字支出であるとか、あるいは輸出超過がなければ、購買力の吸収の方が支出を超えてしまいますので、したがって、景気が停滞していくことになると考えるからでございます。  第二に、卸売物価は、これも御案内のように、政府の予想を上回って下がっておるわけでございます。したがいまして、インフレ期待あるいはインフレ心理がここへきて鎮静化していることは明らかであると言ってよいと思います。そこで、先ほども申しましたように、この程度公債発行によって需要インフレが生ずる危険はまずないというように申してよろしいと考えます。ただ、そうは申しましても、物価が上昇しないということではございません。特に消費者物価が上昇しないということではありません。したがいまして、財政の野方図な赤字が行われてよいということを申し上げているわけではございません。  次に、二番目の、当面の特例公債発行についてでございます。  五十二年度の経済は、御案内のように、多額の税の自然増収を期待し得るような状況にはございませんし、また、増税を行い得るような環境でもないわけでございます。一方、歳出については、歳出の削減を行うような状況でないということも、これまた明らかであると思います。したがいまして、この程度の歳出は当然のことというように考えます。もちろん歳出の構成については、私としてもいろいろの意見がございますが、これは本日の課題ではございませんので、省略いたします。  そうであるとすれば、公債発行額がこの程度に上ることはやむを得ないと言わなければなりませんし、赤字公債がこの程度に達することも当然というように言ってよいと思います。やや極端な言い方をいたしますと、公債発行額というのは、本来残差項目、バランス項目という性質を持っております。すなわち、公共的な必要に応じて歳出額が決定され、景気状況に対応して税収見積もりが決定されますと、その差額が公債発行額になるわけであります。そして、特例公債は、これからさらに建設公債を引いた残りという形で発行額が決まってくる。そういう意味でいわばバランス項目という一面を持っているわけであります。もちろん、これは、つまり公債発行額は残差項目であるというのは、非常に極端な表現でありまして、完全に残差項目というわけではなく、同時決定的になされなければならないものではありますが、しかし、残差項目という考え方は公債発行額についてのある一面をよく示しているというように言ってよろしいと思うわけであります。  ところで、この特例公債発行額に対しまして、この程度では公債発行額は不十分であり、さらに赤字公債発行額をふやしても減税や支出増を図るべきであるという有力な意見が一部に見られます。私は景気対策としての減税政策の効果には限界があるというように考えております。また金融政策を伴わない財政政策の効果、特にその長期的効果について過度の期待を置くということは避けなければならないというように考えております。景気対策として当面私が期待することは財政支出が順調に行われるとともに、金利の低下が一層促進されることでございます。  最後公債発行の歯どめについてでございますが、公債発行がそれ自体悪であるというわけではありませんし、必要な場合には大量の公債発行をちゅうちょすべきではないというように私は考えております。しかし公債発行について全く弊害がないのかといいますといろいろの弊害があるわけであります。特に安易な公債発行は多くの弊害を伴うというように考えられます。  まず第一に財政の節度が失われて財政規模の膨張が生じやすいという問題がございます。つまりむだな支出が行われることになりやすいという弊害がまず第一に考えられます。  第二に公債消化促進するために金融政策がゆがめられてしまう危険があるという弊害が考えられます。その結果としてインフレを招来する危険がある、こういう弊害が二番目に考えられるわけでございます。  三番目に公債費の負担の増大財政硬直化を招来するという問題が考えられます。  四番目に公債の利払いが所得分配をゆがめるかもしれないという弊害が考えられます。  したがいまして、財政の健全性というのは経済の健全性に優先すべきものとは考えませんが、しかし財政の健全性を維持するための工夫を図っていくということは非常に重要なことであると私は考えております。このための工夫として、従来、単年度均衡財政の考え方であるとかあるいは安定予算の考え方であるとか完全雇用予算の考え方であるとかいろいろの考え方が財政の研究の中で示されてきたわけでありますが、しかし理論的に完全な原則というのは残念ながら今日まで見出されていないのが現状でございます。  ただ今後の日本の状況を考えますときに、私は市中消化の原則というのは絶対にゆるがせにすべきではないというように考えますし、さらに市中消化についてもできるだけその条件市場実勢に近づけていくという努力を行うべきであるというように考えております。しかしこれらで財政の節度が十分維持されるかといいますと、必ずしもこれでは十分ではないという点がございます。そこで不完全ではありますが、私は経済が安定成長経路に復して順調に発展するという状況になりました場合には、公債発行建設公債の範囲に限るということを財政の一つの原則として維持していく方策を講ずるのが妥当ではないだろうか、こういうように考えている次第でございます。したがいまして、その逆として安定成長軌道に乗らないときには赤字公債発行されるのもやむを得ない、しかし安定成長軌道に復した場合には速やかに赤字公債依存を脱却するということを財政運営のめどにしていくのが一つの方策ではないか、かように考える次第であります。  以上をもちまして、簡単でありますが私の陳述を終わります。(拍手
  8. 小渕恵三

    小渕委員長 どうもありがとうございました。  次に、井手参考人にお願いいたします。
  9. 井手文雄

    井手参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本大学の井手でございます。  本日は財政特例公債の件に関しまして公述の機会を与えられましてありがとうございました。  時間の関係で大体三点ほど申したいと思いますが、一番初めに減債制度のことでございます。それから次に公債問題と税制の問題でありまして、それを二つに分けまして公債の累積と税制の問題、それから今度五十二年度版の財政収支試算表と関連いたしまして税制の問題を申し上げたいと存じます。  現在の減債制度は次のようになっております。毎年次の金額を減債基金として一般会計、特別会計から国債整理基金特別会計に繰り入れ、償還するというのでございますが、次の金額と申しますのは、一つが一般会計における前々年度の国庫剰余金の二分の一以上の金、二番目が一般会計及び特別会計から前年度初めにおける当該会計の長期国債償還額の百分の一・六に相当する金額、三番日が必要に応じ各会計が予算に計上して繰り入れる金額、こういうふうになっております。  こういう減債制度が一応あるわけでございますけれども、これは財政法第四条に認められておりますところのいわゆる建設国債のための減債制度である、こういうふうに考えます。赤字国債財政法におきまして禁止されております。例外規定もございません。そのために特例をもってしか発行できない、こういうことになっておるわけでございます。こういうわけでございますからして赤字国債に対する減債制度というものは別個に設定されなければならないのじゃないか、こういうふうに思います。現在剰余金の繰り入れは一〇〇%になっております。先ほど申しましたように国庫剰余金の二分の一以上の金を繰り入れる、こういうことでありますが、現在は全額繰り入れじゃないかと思います。これは赤字国債の未償還額がゼロになるまで、つまり赤字国債が全部償還され尽くすまでの暫定措置だということだと思います。  こう見てみますと、この剰余金繰入率の引き上げが赤字国債のための減債制度、こういうふうにも考えられますけれども、この考え方は受け取りかねると思います。赤字国債の有無にかかわらず繰入率を高めることが望ましいわけであります。二分の一以上とありますから全額でもいいわけでして、何もこれは赤字国債だからというわけではなくて、建設国債の場合においても二分の一以上でありますから全額でいいわけです。ですからいまの全額繰り入れというのが赤字国債のための特別の措置というのじゃなくて、むしろ赤字、建設というような区別以外、そういうことを抜きにして繰入率を高めていく、こういうことが望ましい。かつて鈴木武雄教授が四分の三以上にすることを提案されておったと思いますが、下限がいまは二分の一、それを四分の三以上にして、四分の三以下には下り得ない、こういうようなことは、この提案はかなり前でございましたけれども、今日の大量国債時代におきましてはまことに、むしろ適切ではないかと存じます。ですから、現在の制度のもとにおいて、特に赤字国債のための減債制度というものが認められておる、設けられておる、こういうふうには考えません。  ついでに申しますと、剰余金繰り入れという方法はきわめて不安定な減債制度だと思います。剰余金は年によりまして異なるからでございます。多いときもあれば少ないこともあるからです。  また、ついでに申しますと、五十二年度のように減税額の積み増しによりまして予算財源不足が見込まれましたので、この剰余金をこの五十二年度には歳入に繰り入れまして国債整理基金特別会計には繰り入れないことになっておりますが、こういう措置は何とかして避けていただきたい、こういうふうに思います。赤字国債のための減債制度といたしましては、現在の百分の一・六という定率繰り入れ制度は建設国債に対するものと考えられますので、赤字国債につきましては、この定率繰り入れを引き上げることが必要だ。赤字国債につきまして別個に、この百分の一・六ではなしに、たとえば、これは非常に高いわけでありますけれども百分の十、こういうような繰入率の制度を設ける。赤字国債についてはそういう繰入率の減債制度を設ける。建設国債については百分の一・六。こういうように分けるべきではなかろうか。百分の一・六というのは建設国債によって形成されました社会資本の耐用年数を大体六十年前後と見まして、この耐用年数の期間中に建設国債償還していく、大体百分の一・六ずつ繰り入れていけばそうなるんだ、こういう勘定になっておるわけです。十年満期としまして、一回発行した後、五回ぐらい借りかえをしていく、借りかえがすでに前提になっておる、こういうことでございますが、赤字国債はそういう社会資本の形成という対象資産がありません。かつまた赤字国債は借りかえをしない、十年なら十年で償還していく、こういうことであれば、百分の一・六というものを建設国債及び赤字国債の見境なく国債全体について適用する、こういうことは理論的にもおかしいと思います。ですから私は、赤字国債が続く限り、累積未償還額が継続する限り、赤字国債についての減債制度といたしまして、この定率繰り入れを百分の一・六よりも相当程度引き上げられた率のものを別個に設定する、こういうような、これは一つの案でありますけれども、こういうように赤字国債についてのかなり強力な、むしろ建設国債よりもシビアな減債制度、こういうものが必要ではなかろうか、理論的にもそれが妥当ではなかろうか、こういうふうに考えております。  時間の関係で詳しい説明は省略いたしまして、次に進みますと、公債の累積と税制の問題であります。  建設国債も赤字国債も、その収入の使途によりまして効果は異なりますけれども、一たん発行され未償還債として累積いたしますと効果は同じでございまして、建設国債と赤字国債というような差はなくなります。建設国債たると赤字国債たるとを問わず、その将来における効果として注目すべきは所得の再分配効果でございます。そのとき税制が不公平であれば、公債の効果は所得の分配の不公平というものをいよいよ激化することになります。公債の累積は税制のいかんによって福祉国家と背馳する所得再分配効果を持つものであることを銘記いたさねばなりません。つまり赤字国債建設国債、これの未償還額が累積する、そうすると当然国債費増大いたします。その国債費は移転的支出でありまして、税金で負担されて支出される、納税者から国債所有者へその所得が移動するわけでございます。そこに所得の再分配効果が起こるわけでして、税金を負担する者と国債所有者、納税者と国債所有者は、一部は合致しますけれども、かなりの部分は食い違っておりまして、納税をする階層と国債を保有する階層とはかなり違ってくる。そこに所得の再分配効果が出てきまして、もしこの税制が不公平であれば所得の再分配効果としましては所得の格差を拡大する、こういうような方向に向かってその効果が出てくるわけでございます。ですから、今後、当局におかれましては、できるだけ早くこの国債依存率を低下せしめよう、こういう努力をなさると思いますけれども、当分はこの国債から脱却することはできないし、その未償還公債の累積額というものも相当膨大なものになります。今度は財政収支試算によりましても五十五年度におきまして国債残高は約六十兆円くらいになるわけであります。そのために国債が毎年約五兆円というものは計上されなければならぬ、この五兆円という移転的支出の再分配効果というものは無視できません。ですから、こういうように国債が累積していけばいくほど、われわれは税制というものに対して注意を怠ってはならない、こういうふうに思います。この納税階層と、それからその税金を受け取る階層との関係、それは国債保有者がどういうものであるか、個人か金融機関かいろいろございます。詳しい説明は時間の関係で省略させていただきます。  次に、国債問題と税制問題でございますが、この五十二年版の財政収支試算によりますと、五十五年度におきましては赤字国債をゼロにするということでございますけれども、結局先ほど申しましたように国債残高は六十兆円近くになっております。そして国債費が毎年五兆円、五十五年度予算における国債費は五兆円、こういうことになっておりますが、とにかくこれは一つの目標になっておる。かなりそういう膨大な国債の累積、国債費ということでありますけれども、ここへ持っていくだけでも相当の努力が必要なわけであります。これによりますと税収が、五十二年度に対しまして五十五年度は約二倍ぐらいに増大しなければなりません。そうして増税をこの五十三、五十四、五十五という三年間に五兆円ぐらいしなければならぬ。大体現在の税制のままで推移しますと、五十五年度は税収が三十兆円ぐらいになる。これは多少の経済成長と自然増収ということがございます。しかしながら、この表におけるような五十五年度の国債残高にまでとどめようということでありますと、自然増収、そういうことだけでは間に合いませんので、租税収入は三十六兆円ぐらいにならなければいかぬ。そのためには増税が必要でありまして、相当、数兆円に及ぶ増税をこの二、三年のうちに行わなければならない、こういうことになります。  そういう増税のプランがここに数量的に出ておりますけれども、大体この計算の背後には、税収の所得弾性値を一・八三ぐらいと前提しているわけですね。所得弾性値を一・八三、約二に近いのですが、それでこの自然増収が出てくる、それにまた増税をする、それでやっとこのつじつまを合わせるような三十六兆円ぐらいの税収に五十五年度はなる、こういうことになっている。ところが、現在の国税の所得弾性値は一・五よりも低いのじゃないかと思うのですね。そうすると、所得弾性値を、一・五より若干低い一・四五ぐらいですか、それを二近い一・八三ぐらいまで引き上げるということは、大きな税制の体質改善ということでなければならぬと思うわけですね。つまり税制の累進構造を非常に高めないとこういう所得弾性値は高くならないわけなんですよ。そうしないと、またこの財政収支試算というものが根底から崩れていって、五十五年度に国債残高が六十兆円どころか、もっとはるかに多くなる、国債費も五兆円どころかはるかに多くなるというようなおそれが出てくる。  こういうように、この税制の大改造によって累進構造化して所得弾性値を二近くまで引き上げるということが前提になっているということが問題なわけですね。これは非常にむずかしいことですけれども、しかし努力しなければならぬわけです。その間においては増税をしなければならぬのです。ですから、その増税のやり方が同時に所得弾性値を高めるようなやり方をしなければならぬ。つまり税制の累進性を高めるような形で増税をしていかなければならぬという非常にむずかしい問題がある。そういうむずかしい租税政策というものを背後に持って、こういう五十二年版の財政収支試算というものができておるわけですね。むずかしいのですけれども、いま言ったようなことに近づけるような努力はしなければならぬわけですね。そういう税制改革をやれば、累進性を高めるということは税制の公平化に役立つことですし、一石二鳥、こういうことになります。ですから、むずかしいけれどもやらなければならない。そのためには、この増税あるいは税制改革というものは必然的に迫られているものでありますが、これを慎重に合目的的にやっていただきたいと思うのです。これはむずかしいわけです。付加価値税というものがあります。付加価値税を導入しなければとても何兆円というような増収はできない。それでは付加価値を導入したら所得弾性値は上がるか下がるか。いまの所得弾性値より下がるかもわからない。そうすると、付加価値税を導入して、その結果今度は自然増収はこのような思惑にいかないわけですからして、そういうような計算も必要なわけですね。  累進性を高めるための増税ということもいろいろありますよ。言われますような特別措置の整理とか税制の公平化による増収、こういうことは、増収をもたらしながら同時に税制全体の累進構造を高めていくということになるのですね。そうすると、この収支試算に合致するわけです。しかしそれだけでは何兆円という収入は足りないかもわからない。そうなると、一体どういうような税を導入するか、どういう改革をするかむずかしいわけで、私はここに適切な回答を持ち得ませんけれども、その辺のところを公債問題と関連して十分慎重にやっていただきたい、こういうことを御当局にお願いを申し上げまして、私の公述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手
  10. 小渕恵三

    小渕委員長 次に原参考人にお願いいたします。
  11. 原豊

    ○原参考人 御指名にあずかりました原でございます。時間もございませんので簡潔に私の意見を述べさしていただきます。  いわゆる財政特例法による特別公債発行につきまして、私は現状ではやむを得ないということでございます。したがって、現状という条件をつけた上で、消極的に賛成をするというのが基本的立場でございます。この立場を説明するために、以上二、三の理由を述べますと同時に、この消極的な理由といたしまして私は少し付帯条件をつけたいと思いますので、この付帯条件をわりあいに広い立場から申し述べたいと思います。以上であります。  まずその理由でございますけれども財政赤字に対しまして、この赤字が大きく出たということに問題がございます、この際これは一応置いておきますけれども。これに対して財政収支のバランスをとるという、そのためには公債発行だけではございません、公債発行のみならず、増税やあるいは政府支出の削減、さらにはその他公共料金の引き上げ等々という手段がございます。本来ならばこういう手段を適切に組み合わせて、最適な形で税収の増大を図るべきでございますけれども、日本経済の現況を前にいたしますならば、そしてさらにその現況を踏まえた場合には、時間的制約も出ますものですから、したがってその選択、組み合わせにつきましてはかなりの制約が出てまいります。  以下、各項目につきまして簡単に考えてみますと、まず増税でございますけれども、この現在のような雇用状況、先ほどから数字的な説明がございましたために省略いたしますが、雇用それから企業倒産、さらには所得の低い伸び、それに加えまして物価も必ずしも低くない、高水準に維持されているという現況を踏まえますと、この条件のもとで、しかも片方で減税ということもやっておるわけですから、したがって増税を図るということはやはり無理でございましょう。景気の点から考えましてもまた国民生活ということから考えましても、この一般的な増税というのは現状では無理であると考えざるを得ない。また仮に可能だといたしましても、これは税制改革を伴いますので、こういうことをやりますならばかなり時間的なものが必要になってまいりますので、早急な財政の必要に間に合わないというタイミングの状況もございます。したがって現状ではこれは無理である。  ただし私は、後の私の付帯条件関連いたしますけれども、中長期にはやはり税制改革を通じて増税を考えなければいけない時点に来ているというふうに認識をしております。ただしその場合には広く国民的合意を求める努力が必要である、そういう前提のもとで、中長期にはそういう時代もやはり予想しなければならないというふうに考えております。  次に、政府支出の大幅な削減ができるかどうかということでございますけれども、すでにこの財政需要拡大したことの反面でございますが、社会資本の充実や公共サービスの拡大、さらには社会保障の向上といった国民的福祉への欲求が非常に増大しております。そういう状況、しかも現在のように景気回復が思わしくないという状況を踏まえますと、これも大幅な削減は現時点では無理である。  さらにその他の手段でございますけれども、公共料金等々の引き上げ等ではこの四兆円に達するような赤字をカバーすることはとうてい無理である。もちろんこういうものもある程度勘案しなければならないにいたしましても、いま申し上げました状況を考えてみますと、残されたものは公債発行しかないであろう、こういう判断でございます。  さらに、もちろんこれは問題がございます。消極的賛成と申しましたけれども、問題があるのは当然でございまして、そこには先ほどから問題になっておりますような物価の問題もございましょう。それから公債償還につきましての硬直化の問題というものもございます。これは過去の政策につきましてのしりぬぐいということがあるかもしれませんですけれども、ともあれ現状を考えます場合には、経済の安定ということを第一に考えなければいけないということでございますから、したがって、公債発行の即効的な効果、それから国民の貯蓄性向はまだ高いという事実というものを踏まえるといたしますと、民間からの借り入れによる特例公債財源としてこの財政赤字を補てんすることは、私は手段としては比較的実行可能であるし、またやむを得ないというふうに判断する次第でございます。  しかも、日本経済現状を見ますならば、国民生活の向上、特に私は福祉の一番中心的な柱というのは雇用の確保だと考えております。もちろん雇用だけではございません。物価の問題もございますから、雇用か物価かというトレードオフの問題もございます。しかし、福祉の根本はやはり雇用の確保でなければならない。いろいろ最近各党でも福祉計画が出ております。努力すれば家を持てる制度をつくるというような提案もございますけれども、職がなければそういうことは実現できないわけでございますので、やはり現状では雇用の安定に最優先度を置くべきだと私は考えておりますし、また、恐らく国民もそういう目標の優先度はある程度理解をしているのじゃなかろうか。しかも現状景気回復が遅々たる状況のもとで、かなり困っている方がいらっしゃいますので、早急に特例公債発行いたしまして予算成立せしめて、経済を安定させるということが国民的な熱望ではなかろうか、このように考えております。  以上が、私が考えております五十二年度特例公債発行につきましての一応賛成する理由でございます。  しかし、先ほど申しましたように、付帯条件をつけたいわけでございます。これは、何らの歯どめもなく、ただ財政赤字が出たからそれを補てんするといった形、何かそれが目的みたいになりまして安易に公債発行される、あるいは今後も増税が考えられるということになりますと、これは大きな問題になってまいりますし、国民からも強い抵抗が出ましょう。公債発行にいたしましても、国民は直ちにインフレと結びつけるような心配を持っているわけでございますので、そのことを考えますと、私は発行するにつきましてはきわめて慎重であってほしいというふうに考える次第でございます。したがって、景気回復が本格化いたしますならば、あるいはこの先ある程度減速いたしましても中成長程度の成長を実現できる可能性が出た場合には、早目に公債依存度を引き下げるというような努力をせざるを得ない、これは当然のことでございましょう。  当局におかれましても、特例公債発行につきましては、先ほどもお話が出ましたように、大蔵省が昨年二月に出されました資料がございますが、五十五年度までに特例公債発行をゼロにするという御計画でございます。これは、急遽出されたということを聞いておりますし、余り詰めた数字ではないということも伺ってはおりますけれども、しかし、そういう条件のもとで考えましても、やはり税制の所得弾性値の計算等々におきましてかなり楽観的な面が見られますし、また、その背景といたしまして、増税必至の数字が挙がっているわけでございます。そうなってまいりますと、この先公債発行をゼロにする、あるいはゼロということにこだわらなくても、依存度を少なくしていくということを考える上には、どういたしましてももう少し詰めた中期的な財政計画を提起する必要がありはしないか、こういうことでございます。  中期的財政計画と申しますと、これは収入を図るだけじゃございませんので、中期的な政策目標をはっきり提出し、そのもとで適切な財政的手段を選択するという形で、組み合わさった財政計画をつくり上げる。そのつくり方はいろいろございますけれども、私は三点ばかり指摘したいと思いますが、その一つは、これからの財政需要拡大、特に社会福祉サービスに対する需要拡大してまいりますので、地方財政当局、地方自治体との関連が非常に重要になってまいりますから、こういう財政計画を立てる場合には、ぜひ中央と地方の関係者が集まりまして財政計画委員会をつくる。ドイツはこれをやっておりますけれども、その委員会のもとで広い意見を聴取しながらこういう計画を立ててほしいということでございます。  さらに、昨年二月に出されました中期財政収支試算でございますけれども、これも政府が出されました中期経済計画と一応リンクして計算されたということを聞いておりますが、これだけでは国民にははっきりいたしません。やはり国民の前に中期財政計画を出す以上は、こういう福祉政策を行うのだ、こういうねらいでやるのだということをはっきりと示して、それと財政計画とをリンクさせる、そして明らかにこういう理由でこういう財源が必要であるという形で国民にはっきり必要性をわからしめるという努力が必要ではなかろうか。そうでなければ、相も変わらず密室財政とか密室予算という形になりまして、何となく数字のつじつまは収支計画で合っておりますけれども、一体どういうわけで本当に必要か、これで一体何をしているかということがはっきりわかりませんから、そういうところを特に私は注意していただきたいと思います。  それから、これと関連いたしまして、今後もいろいろ財政需要増大すると思いますけれども、しかし、過去を振り返ってまいりますと、現在のような国民財政サービスへの要求の拡大、さらには、これは私余り国民を批判したくございませんけれども、いろいろな問題がございますし、それに対応して、高成長期には財政当局におかれましてもやや野方図にこれにこたえたという面があろうかと存じます。そのために、現在の財政は大きなツケを背負った形になっている。これは何とかしてある程度健全な形に直す必要がある。もちろん財政の健全性とは何かということになりますとかなり議論がございますので、はっきりした基準はございませんけれども、赤字国債をいつまでも発行いたしましてその負担が増大するということも困りますので、こういうところを考えながら、これからのあり方を考える場合には、入るをはかるだけでなくて出るを制するという発想が必要であるということでございまして、そのことと関連いたしまして、特に国民の福祉欲求というのは当然の筋でございますから、これをやみくもに抑えることは問題がございますけれども、その福祉に対して、先ほど申しましたように、こういう財政収入が必要であるという形で選択肢を出すとか、さらにはそういう提案をする行政当局自体が自粛をしなければいけない。そういうことで行政支出の効率化を図る。これはいろいろ方式があろうかと存じます。行政監理委員会あるいは財政制度審議会を初めといたしましてしばしば提案されておりますし、一括で減らすとかいろいろあります。具体的な話は後にいたしますが、ともあれ、そういう形で効率化を図るということが前提となるのではなかろうかと思います。  以上のような付帯条件をつけた上で、私は、現状ではやむを得ないという立場から、この法案に対して賛成する次第でございます。  以上であります。(拍手
  12. 小渕恵三

    小渕委員長 次に、齋藤参考人にお願いいたします。
  13. 齋藤博孝

    齋藤参考人 御指名をいただきました法政大学の齋藤でございます。  私は、この特例法案の審議につきまして、この法案の第一条に規定されております文句でございますが、「国民生活国民経済の安定に資するため」発行されるという趣旨でございますが、具体的に申しますと、四兆五百億円の特例国債、つまり赤字公債発行ということでございます。これは何も今年度に始まったわけじゃございませんが、これは憲法の平和条項ということを考えますと、これを補完するという形で現在の財政法昭和二十二年度に成立したと思いますが、その点から考えますと、財政法の空洞化ということになるのではないかというように考えております。その点、昭和五十年度以来の特例法がいまからノーマライズしないようにあってほしいという感じを持っております。  次に、国債市中消化ということでございますが、これは私がここで申し上げるまでもなく委員の各位には御案内のとおり、半ば強制された割り当てでございまして、発行後一年たてば既発債は日本銀行の買いオペの対象になるという点でございます。さらに、買い切りオペレーションという制度がすでに定着しているというようなことがあります。  それから次に問題になろうかと思いますのは、財政法第五条の規定でございますけれども、これは歴史的な問題で恐縮ですが、日本財政の伝統的な方式でありますいわゆる日銀引き受けによる方法を禁止した条項であることは非常にはっきりしておるわけでございますが、財政支出先行方式というもの、その原形を尋ねてみますと、これはすでに非常に古いことであれですが、前世紀の明治二十七年の日清戦争の時期に開発されていたわけでございまして、これは当時兌換制度下においてはともかくといたしまして、特に不換制のもと、つまり管理された通貨制度のもとでは、それはインフレーションの原因を内包している。したがって、それは非常に不健全な方法であるということがはっきりしていたのではないかと思います。そういう理由から、戦後、先ほど申し上げました二十二年の現行財政法で禁止されたという歴史的な事実がございます。この点につきましては、現在の日本銀行法第二十二条は、これも御案内のように、すでに昭和十七年の戦時財政、言いかえますと、軍事財政を賄うということとの非常に密接な関係のもとにつくられたわけでございますが、この点は、いま時間がございませんから、割愛させていただきます。  次に、現在の国債の日銀引き受け禁止の規定も、事実上はしり抜けになってしまっているということでございます。さきに指摘いたしましたように、発行後一年経過した国債であれば、日銀は金融市場から一定限度まで買い入れても差し支えないというようにされていることが、そのしり抜けと申し上げた根拠でございます。  それは、大蔵省がこの国債市中公募を行うに当たって、日銀が既発国債市中から買い入れて公募資金を市場に放出するということが行われます。このことは、政府が財政支出に充てる資金を日銀が回り道をしてと申しますか、迂回的にと申しますか、それを日銀が創出し供給するということになります。だから、日銀の国債買いオペを前提にした国債市中公募というのは、太平洋戦争中に行われた日銀引き受け国債発行の一つの変種であると言うことができるのではないかと思います。  次に、最近非常に注目されるところと思いますが、いわゆる大蔵省証券の発行に関する問題でございます。これは、前年度よりも翌年度に国債発行高が膨張する場合には、市中買いオペだけでは日銀からの市中への資金の供給はうまくいかないことになります。この限り、財政支出の先行方式の効率も低下するというようになろうかと思います。ここに蔵券の果たす役割りがございます。  財政法第七条には、大蔵省証券の発行は認めておりますが、それを日銀に引き受けさせることも当然できるわけでございまして、実態的に申しますと、ほとんど日銀引き受けということになっているかと思います。というよりも、もっぱら日銀の引き受けが常態化しているということでございます。  大蔵省証券の最高発行額は国会で議決されるわけでございますが、それはある一時点の残高の最高でございまして、証券それ自体は短期債でありますから、繰り返し発行できるわけでございます。現に昭和五十年には、実際の蔵券の発行額は、最高額を超えております。昨年は、五月分として八千二百七十億円、六月分として一兆一千百億円、七月分といたしまして三千四百五十億円という発行が続いておりますが、八月分以後のデータが手元にございませんので、確言いたしかねますが、最高額発行限度を超えているのではないかと思われます。その最高額の膨張は、昭和五十年度を画期といたしまして著しいものがございます。大量の国債発行という現実と蔵券の増加というものが歩調を合わしているように考えられます。長期国債発行と大蔵省証券の発行は、いわば相互に持ちつ持たれつと申しますか、依存関係にございまして、国債収入の先取りに日銀が制度的に利用されているというように考えます。  そういうことを考えますと、蔵券によって政府が日銀から借り入れをするということは、長期債を日銀に引き受けさせて借り入れをするのと、日銀を利用する方式には余り変わりはない。いずれの場合にも、政府は財政支出を先行させることが可能であるということだろうと思います。  次に、政府が長期国債発行して、その収入をもって前に引き受けさせられていた蔵券を償還しても、日銀が先に引き受け国債市場に売却して政府に提供した公債金を回収しても、結局は同じようなことになろうかと思います。後者におきましては、日銀が証券を手持ちする期間が少し会計年度からずれるというようなことが違ってくるだろうというように思います。  次に、大戦中の国債の日銀引き受け発行というのは、日銀券が不換の紙券として流通しているもとで行われたことで、国債のこの不健全な発行方法ということは、先ほど申し上げたとおりでございますが、今日においてもまたこの不換の日銀券が流通しておるわけでございます。このもとで大蔵省証券を日銀に引き受けさせて、政府が長期国債発行による収入を先取りするのも、それはインフレーションの原因を含む非常に不健全な方法ではないかというように思います。  そういうことで、やはり長期国債と大蔵省証券の発行とは、相互に制約することも事実でございます。時間の関係で具体的なことは省略いたしますが、以上のことから赤字国債発行国債の日銀引き受け発行を禁止している現在の財政法の基本精神に照らしますと、大蔵省証券の発行総額を国会で議決することはもちろん、それと同様にその発行の方式、あり方とか日銀引き受けの方法などについて、これはやはり有権者の国民のある種の注視と申しますかのもとに置かれる必要があるのではないかというように考えます。  大量の長期国債発行は、国債に抱かれた財政インフレ意味するわけでございまして、いわゆる国債の歯どめ論というものは、その理論的根拠にきわめて乏しいというように考えます。  赤字国債の累積額は、今年度末には先ほども御指摘があったように思いますが、約三十一兆円に達し、一般会計の予算総額を軽く突破いたします。本年度の国債発行額中、その国債収入の約二五%は国債費、これはいわゆる借金返済のための新たな借金ということがどうやら定着していくのではないかという危惧がございます。インフレと重税、この二重の苦しみは、国民に負担がかかっていきます。財政インフレは、財政破綻にやはり通ずるものと考えなくちゃならないと思いますし、財政危機が一層深刻化してまいりますから、いわゆる硬直化問題が大変むずかしい状況を呈するのではないかと思います。  したがいまして、日本の財政の健全化のために当面必要なことは、特例公債発行は中止し、建設国債を縮減していくということ、また、これは非常に古典的な考え方という批判もあろうかと思いますが、財政の均衡回復の方向を確立する必要があるだろうし、日銀の国債買い切りオペはどうしてもやめていただかなければならないというように思います。  以上、簡単でございますが、私の意見陳述といたします。(拍手
  14. 小渕恵三

    小渕委員長 最後に、和田参考人にお願いいたしたいと存じますが、御意見をお伺いいたします前に、一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席を賜り、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、ただいま昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案を審査いたしておりますが、本案につきまして、ただいままで御出席の各参考人から忌憚のない御意見を承ったのでありますが、和田参考人におかれましても、そのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それではお願いいたします。和田参考人
  15. 和田八束

    和田参考人 和田でございます。大学の方で用事がございましておくれましたことをまずおわび申し上げます。  本年度の予算では国債依存率が約三割になることになっておりますが、こうした事態は国際的に見ましても、また日本の財政史の上から見ましても、かなり異常、異例なことであるというふうに考えるわけであります。やはりこういう異常、異例な事態というのはできるだけ早く脱却する必要がある。しからばこうした赤字財政を脱却するにはどのようにしたらいいのかということを中心に若干意見を申し上げたいと思います。  こうした異常、異例な事態といいますのは突然始まったことではなくて、実は四十七年度を境として日本の国債発行額が非常に増加してきたわけであります。この四十七年度以降のいわば放漫財政のツケが今日回ってきておる、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 また四十七年度を境として強調され、広く主張されてきた財政改革が今日までほとんど行われていないという、これがまた今日のこうした異常な赤字財政をもたらしているというふうに言えるわけであります。四十七年度といいますのは、その前にいわゆるドルショックがございまして、国際的にもあるいは国内的にも日本の置かれている状態あるいは経済環境というのが大きく変わったわけでありまして、ここで財政政策あるいは財政の構造というものも大きく変えなければいけないということが広く言われたわけでありますけれども財政改革が行われるのではなくて、逆に放漫財政が続けられてきたというところに今日の問題があるわけであります。私は、財政赤字あるいは国債発行を全面的に否定するわけではありませんけれども国債発行に当たっては、その条件なりあるいは財政のあり方というものと大きなかかわり合いがあるということを強調したいわけであります。  今日の国債問題で一つの大きな問題点であると考えられますのは、今日ここで問題になっておりますのは特例債であるわけですけれども赤字財政の基本的な要因というのは特例債であるよりもむしろ建設国債にあるというふうに私は考えているわけであります。大蔵省がこの三月に出しました財政収支試算によりますと、特例債を減らすというところに主眼を置いて、五十五年度においてゼロにするということが数字の上で出されているわけでありますけれども、この場合でも、実は建設国債の方はむしろふえているわけでありまして、五十二年度の建設国債は四兆四千三百億円でありますが、五十五年度には建設国債だけで六兆七千八百億円である、こういう数字になっているわけであります。したがいまして、特例債は、その計算でいきますと、あるいはその見通しでいきますと、確かにゼロになるわけでありますけれども建設国債は逆に増加して、建設国債だけの依存度が五十五年度では一五・五%である、こういうことになっているわけであります。ちなみに五十二年度の建設国債だけでの依存度は一四・二%でありますので、いずれにいたしましても建設国債はふえるということになっているわけであります。  一般に特例債イコール赤字国債である、こういうことに考えられておりまして、特例債は好ましくないけれども建設国債は構わない、むしろ健全であるという考え方すらあるわけでありますけれども、現実の日本の財政の中で見てみますと、建設国債の方がむしろ不健全であるという結果になっていって、建設国債が不健全なまま累積していくがゆえに特例債がさらにふえる、こういう結果になっているように私は考えるわけであります。  なぜならば、建設国債といいますのは、言うまでもなく公共事業費等の財源に充てるということになっているわけでありますけれども、そういたしますと、わが国の公共事業費といいますのはきわめて硬直的な性格を持っているわけであります。そうしてまた各国の財政構造と比べてみましても、公共事業費というのは非常に高い水準にあるわけであります。このように高い水準であり、しかも景気変動等にかかわりなくかなり硬直的な構造を持っておりますので、その公共事業費等に国債財源が充てられますと、国債が結局のところは財政の中にビルトインされてしまう、組み込まれてしまいまして、そうしてその分だけは、つまり建設国債分だけは一種の経常財源的な形になってくるわけであります。しかも、これは年々ふえ続けるということになるわけであります。  そのように、今日、財政全体の立場から言いましても、産業基盤的な公共事業はなるべく抑制して、むしろ国際水準からいくと高いわけでありますので、これを削減しても福祉あるいは社会保障のウエートを高めなければいけない、こういう課題があるわけでありますけれども、逆に公共事業がふえて、そうしてこれが国債財源によって行われる、こういう形になっているわけであります。したがいまして、建設国債は歯どめになる、これは歯どめを持っておるんだということでありますけれども、歯どめになっていないわけであります。過去の事例から言いましても、建設国債は決して歯どめになっていないわけで、建設国債発行するためにわざわざ公共事業費をふやすあるいは災害復旧事業費をかなり大幅に見込むというふうなことがしばしば行われたわけであります。  さらにまた、建設国債の場合にはこれは自償性があるという意見もあるわけでありますけれども、公共事業は企業的な投資ではありませんので自償性があるとは言えないわけでありまして、この点も論拠がないわけであります。したがいまして、私は、建設国債も赤字国債財政赤字の点では同一であって、これを区別して特例債だけが好ましくなくて建設国債はいいという考え方をとらないわけでありまして、そのような考え方をとると逆に特例債をふやすことも認める結果になってしまうのではないか、赤字国債をも押し上げる効果を持つんではないか、このように考えるわけであります。  そもそも、財政法第四条の考え方から言いましても、国債発行は原則的に禁止されているわけでありまして、ただし財政上やむを得なく発行する場合には公共事業費等の範囲内でなら認められるであろうという意味合いであろうと私は解釈しているわけであります。もちろん私は法律学の専門家ではありませんので、これは一財政学者としての見解でありますけれども、そのように考えているわけですが、現実の解釈は、公共事業費等の範囲ならばどこまででも国債発行できるというふうに逆の解釈になっているところに大いに危険性があるように私は思うわけであります。したがいまして、建設国債もこのいわゆる特例債も含めて考えますと、さきの大蔵省の収支試算によりましても、五十五年度になりますと国債費は四兆七千五百億円、公債収入は六兆七千八百億円ということでありますので、公債金収入の約七割が国債費に相当するということになってまいります。まさにこのような事態というのは赤字財政もきわまれりという感じがするわけであります。こうした事態を迎えない前に早く赤字財政を脱却するということが必要になってくると思うわけであります。  この赤字財政を脱却するということは、単に財務上のバランスの問題として言っているわけではないわけでありまして、そのことを通じて財政の内容を変え、財政の中身を国民福祉重点型に変えるということが主眼でありまして、そのためにも今回の赤字財政の脱却が必要である、こういうことを強調したいわけであります。  それでは、どのようにしてこの赤字財政を脱却することができるのかということでありますけれども、三点ほど次に申し上げます。  第一点は歳出の大幅な洗い直し、再検討ということであります。  聞くところによりますと、アメリカでも近々ゼロベース予算を採用するということが言われているわけでありますが、ゼロベース予算といいますのは予算編成上もかなり大変なことでありまして、毎年これを行うことはできないにいたしましても、少なくとも五年に一回くらいはゼロベースでの洗い直しということを行っていくことが必要ではないか。これなくしてはまた財政の中期計画もできないわけでありまして、財政の計画的運営のためにも、一たん今日までの支出の内容というのを洗い直してみる必要がある。ことに中心になる点としましては、行政機構を改革するということがまず第一に挙げられます。それから第二点としては、地方自治体に対する補助金なども含めてかなり金額と種類の多い補助金を徹底的に整理するということが必要だろうと思います。それから第三番目には、財政構造をやはり福祉型に改めていくために、公共投資の中でも産業基盤的なものがなお依然として大きな地位を占めておるわけでありますので、公共投資の縮減それから防衛費の縮減ということを行う必要があるということであります。そういう点を含めて基礎から財政の再検討をここで早急に行う必要があるということであります。  それから第二番目といたしまして、税の不公平を是正するという方向での税制改革が必要であるということであります。  財源がない、したがって赤字財政であり国債に依存するというふうに言われているわけでありますけれども、しかし、かなりの不公平税制による減収額があるわけでありまして、これを税制改革を行うことによって財源として調達し得るならば、この赤字財政も解消するということになるわけであります。  私たちが参加してやっております国民税制調査会で最近、二兆円以上の収入が不公平税制是正によってあるのではないかという試算を行っております。また、御承知の東京都新財源構想研究会でも二兆円を上回る——ここでは法人三税だけでも二兆六千億円程度の減収があるのだということが言われているわけであります。こうした試案につきましては、必ずしもそれほど減収がないのだという意見もあるわけであります。大蔵省の発表したところによりますと、特別措置分だけで六千億円何がしであるという反論もあることはもちろん承知しておるわけでありますし、また、私どもの試算なり東京都新財源構想研究会の試算なりが一〇〇%正しいというふうにも考えておりませんが、ともかくかなり大幅に不公平があるということは事実としてあるわけでありまして、これを是正するということは必要であります。  それからまた、その不公平税制の中身が、その実態が明らかにされていないということもそうであります。民間なりあるいは地方公共団体の方での試算はあるわけでありますけれども、肝心のデータを持っているところの大蔵省なり国税庁なりの正確な実態報告というものがないわけでありますので、この点でなおこの問題については不明確であるということであります。そしてまたこの税制改革を積極的に進めていくという意欲がなお、政府の方で感じられないわけでありまして、それでは財政改革なり将来の財政問題についての不信というものが国民の間になお根強く存在せざるを得ないということであります。  第三番目には、地方自治体への事務の移譲、財源の移譲、こういうことを行う必要があるのではないかということであります。そのことによって国家財政がより身軽になりまして、国家財政本来の機能、つまりナショナルな意味での調整なり行政という問題、それからナショナルなレベルでの景気政策というものに、もっと機動性を持って積極的に対処できるようにしていくことが必要でありまして、国民生活関連のある財政分野につきましては積極的に地方自治体に移譲し、地方自治体に主体性のある財政にしていくことが必要ではないか。  こういう三点、つまり、歳出の洗い直し、税の不公平是正、地方自治体への行政、財源の移譲ということを行うことによって、今日のこの財政赤字を脱却することができるわけであり、それだけではなくて、わが国財政の体質なり構造というものを改革することができる、こう考えているわけでありますので、そうした方向で御議論をしていただけるようお願いをいたしまして私の意見といたします。(拍手
  16. 山下元利

    山下(元)委員長代理 以上で参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  17. 山下元利

    山下(元)委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。只松祐治君。
  18. 只松祐治

    ○只松委員 きょうはどうも御苦労さまでございます。  公債は、いまいろいろ形式、内容について諸先生方からお話がありましたが、帰するところ国民の借金であります。こういうふうに借金がどんどん多くなって、本年で三十兆円を超す、食糧証券その他を合わせますと本年で四十四兆円になります。五十五年度には、大蔵省試案のA案によっても五十四兆七千億、こういう膨大なものになってまいるわけでございます。  まず最初にお話しになりました中村さんにお尋ねしたいと思いますが、こういう膨大な累積赤字を抱えまして、公債を抱えまして、いまからの日本はとてもじゃないが大変なことになると思いますが、そういう点についてどういう御所感をお持ちになっておるかお聞かせをいただきたい。
  19. 中村俊男

    中村参考人 大変大きな御質問でお答えにも戸惑う次第でございますが、私の感じておりますことを率直に申し上げますと、今回の俗に言う不況というものが、いままでの不況とはどうも性質が非常に違うのではないか、これに対する処置はやはりいろいろと工夫を要するのではないか。これがまたいままでのように、俗に言う循環的な不況というものに金融政策だけで相当な影響を与えるというわけにも今度はいかないのではないか。相当な過剰設備を抱えてしまっておる、それに対してまた、エネルギー問題、資源という問題が非常に大きな問題になり、しかも値段の問題がある、こういうことで、余りこういうことをるる申し上げることも必要ございませんが、そういうわけで今回の不況というものが、俗に言う構造的不況とさえ言われておるようなわけで、これを何とか切り抜けてオイルショック後の需要供給の関係のバランスを早く維持して、それに基づいて経済活動が軌道に乗っていく、その間は何としてもつないでいかなければならないというようなことから、そういう意味で五十五年の国債の問題はともかくといたしまして今回のような措置については、つまり今回も相当な国債が出ているわけでございます、依存率三〇%というのは、戦時を除きまして例外的な、平時においては非常な依存度の高い国債発行額になっておりますけれども、しかしそういう情勢から言いまして、現実の問題としてやむを得ないことではないかという感じを私は持っております。
  20. 只松祐治

    ○只松委員 やむを得ない、やむを得ないということになれば、これは歯どめがなくなってくるわけでございます。三〇%というのは、諸外国にも例を見ない異常なもので、日本国内だけなのですね。あるのは太平洋戦争のさなかぐらいのものである。したがって、私は、やむを得ないという言葉によってこういう問題が処理されるということになれば、これは日本の国家財政を根本から破壊していくと思います。ただ、きょうは皆さん方御参考人としておいでいただいておりますので、論戦しようとは思いませんので、まあお聞きするだけでございますが、ただ、日本の金融機関の代表として、日本の金融財政の中枢におられる中村さんとして、やむを得ないということではなくて、ひとつもう少し深いお考えをいただきたいと私は思っております。  それはそれといたしまして、現在金融機関の預貯金は推定約三百兆円に達しております。その中で都市銀行が二四・六%ぐらいあります。全国の銀行を合わせますと五六・四%。そういう中で、預貸率は五十年度まで大体九〇%を超しておりました。ところが現在は、五十一年度以降は九〇%を割りまして、八七、八%台にとどまっておるわけでございます。そういう意味からは、公債政策を、いまやむを得ないという言葉がありましたけれども、私はむしろ積極的にお進めになっておる向きがありはしないか、こういう懸念を抱くものでございます。私の手元にある資料によりますと、都市銀行の金融機関別の資金のシェアは、五十年度末で三二・一%、これに対して五十一年度及び五十二年度の国債引き受けシェアは、当初予定で三八・八%です。つまり、資金量に比して引き受けが過大になってきているわけです。この点について、いままでは大分文句をおっしゃっていました。ところが、最近企業の投資意欲が鈍ったり、あるいは資金需要の減少で、この資金の運用の転換が必要となってまいりました。必然的に、いま申しますように、有価証券購入の方に向かわなければならない。  時間がないですからあれですが、その上に、他の公社債に比して、近ごろは利子その他が相当有利になってまいりましたね。これは後でも私は質問いたしますけれども、そういうこと等が重なって、金融機関として、むしろ積極的に公債発行して、資金を運用していかなければ、過剰な——御承知のように昔は株を買った、その次は海外投資の材木だ、羊毛だ、綿花だと買い付けた、あげくの果ては国内で土地を買い占めた。買い占めていま困っておりますが、そういう金というのがあり余って、国債を抱かなければならない、こういうふうになっていはしないか、むしろ、やむを得ないというよりも、積極的に国債政策をお進めになっておる向きがありはしないか、こういうふうな懸念を私は持つわけでございますが、いかがでございます。
  21. 中村俊男

    中村参考人 ただいま御指摘の点、預貸率がかつては相当高かったがいまは下がっておる、余剰資金が出たから、それを国債に回すのは得たりや応ということではないかというようなお話の筋でございまするけれども、私ども率直に申し上げまして、ことに都市銀行の話が出ておりまするけれども、第二次大戦後、非常に外貨が外から入ってきたというような、輸出代金が非常に入ってきたというようなほんのひとときを除きまして、私どもがずっと経営上非常に悩んでおりますことは、外部負債がどうしても減らない、ふえていくということなのでございます。これは資金の偏在という問題でいろいろと私どもも問題を提起し、御当局にもお願いいたし、また御当局もいろいろ考えていただいておることでございまするけれども、そういうことで外部負債が減らないということ、ますますふえていくという傾向にあること。もちろん経済成長時代には非常に資金需要がかさみましたものですから、そういうことでやむを得ない、これもやむを得ないという言葉が続くようですが、やむを得ないことで、やはり日本の経済の成長を維持するということから、それに応じていくために、どうしても外部負債が減らない。最近は御承知のような経済情勢でありますので、貸し出しの需要は沈滞いたしてまいりました。したがいまして、その限りにおいて私どもの預貸率も下がってまいりますし、その限りにおいて外部負債というものが減るべきなのでございます。ところが、そのかわりに、今度は民間資金でなく公共資金が非常に膨大になってまいりました。これは国債を含め、地方債を含め、そういうものに対する私どもの御協力の要請が強いわけでありますので、そのためにまた外部負債は減るどころかふえてまいる状態にあるのでございます。したがいまして、そういう点からは、まことにまた従来と同じ問題を都市銀行は抱え込まされておるということに相なりますので、やむなくそういうことになるわけでありますので、決して資金需要が沈滞したから国債を持つことは願ったりだというような気持ちではないことを、ひとつくれぐれも御了承願いたいと思います。
  22. 只松祐治

    ○只松委員 ことしの場合で見ましても、公債予算に対する比率は、日本で大体一三三・八%、アメリカは一二五・三%、イギリスで一二三・七%、西ドイツ、フランスはもっと低うございます。GNPに占める比率は一けた台でございますが、中村さんは、大体幾らぐらいまでならば公債発行して差し支えない、あるいは危険がない、こういうふうにお思いでございますか。対予算比でもGNP比でも結構でございます。
  23. 中村俊男

    中村参考人 まことに私には苦手な御質問で、要するに私は経済学者でもなし、エコノミストでもないものでございますから、そういう御質問にはまことに何とお答えしていいか当惑するものでございます。町の銀行屋でございますので、いわゆる諸外国の比率に対して日本ではどのぐらいまでがいいのかということでございますが、私はそういうことには、まことに残念ながら御回答申し上げかねます。私には不可能でございます。  ただしかし、国債というものは、やはり財政の均衡の上からも、どこまでがいいというよりも、今後依存率をふやさないで、そうして依存率でそれを少しでも減らしていく、発行総額は少しでも少ない方がいいのだ、そういう気持ちを持っておることを申し上げるだけで、ひとつ御勘弁願いたいと思います。
  24. 只松祐治

    ○只松委員 一般論なり、全部の国債から見て、何%までならばいいとか困るとか言いかねる、そういうことだと思いますが、そうすると、あなたの都市銀行というものに限ってみますと、いま市中消化が約九〇%、そのうち都市銀行が三四・二%消化をしておる。昭和五十五年のいわゆる大蔵省試案によりまして五十五兆円の累積残高になるわけですが、そういたしますと、いまのままいくとして、三四・二%掛けますと十八・九兆円、こういうことに大体なるわけでございます。こういうふうに見てまいりますと、大体二十兆円近い公債を都市銀行で抱えることになりますね、日銀やなんかに持っていくとこれは別でございますが、あなたたちが持たれると。そのとき、これも大体類推でございますけれども昭和五十五年にいまのまま都市銀行で預貯金が伸びますと、約六十兆円ぐらいになる。その中で二十兆円近い公債を抱えるということになりますと、大変に金融の硬直化というものを来すと私は思う。国家財政だけじゃなくてあなた方みずからも大変な事態になると思うのですが、そういたしますと、いまおっしゃったように幾らまでならばいいがという他人事では済まされない、あなた方自身の金庫の中にも火がつく、こういうことになりますね。こういう事態に対してどういうふうにお考えになりますか。
  25. 中村俊男

    中村参考人 ただいま五十五年の数字についてお話ございまして、そういうことになりますと確かにこれは相当な国債の保有高になりまして、平時といたしましてはそういう状態はなかったわけであります。戦時状態ということであればそういうこともありましたようにおぼろげながら記憶いたしますけれども、そういうことはないわけでありまするから、これは相当な負担になるわけでございまするが、その場合に、いまのような国債の管理政策流通市場政策によりますというと、全く硬直化してしまうわけでございます。資産が非常に流動性を失うわけでございますので、やはり国債というものは金融機関ばかりでなく、先ほど中山会長のお話もありましたように、個人消化というものにも相当移行していくべき筋のものでありますし、その方がいわゆるインフレ対策としてもより健全であり安全であるということになりますので、そういう状態におきまして、かねがね私どもは、発行条件弾力化、それから流通市場によってそれが必要のときには資金化できるというような市場の育成、そういうことについて十分に今後ともいままで以上に御当局並びに私どもそれから証券界が協力して市場を育成してまいる、そういうことにやはり取っ組んでいかなければならないと思います。現に昨年来いろいろとお願いも申し上げておりまして、今回シ団の中にも国債についてそういう問題の懇談会というものをつくりまして、これはなかなかむずかしい問題でございまするけれども、そういう問題の解決の相当な部分をひとつ十分に検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  26. 只松祐治

    ○只松委員 いまのお答えだけ聞きますと、ごもっとも、まことにそうかなと思いますが、ところが、きょうは新聞はまだ全部持ってきておりませんが、新聞が伝えたりするところによると、実はあなたは逆のことをおっしゃったりされておるわけですね。国債多様化ということをいまおっしゃったし、市中消化というようなことをおっしゃった。ところが、今度中期割引国債が本年一月に額面で九百八十九億円発行されました。よく売れたわけなんです。今後国債個人消化を一層促進するとおっしゃいましたけれども、ところが中期国債は三千億の枠にとどめられました。これはむしろあなたたちがその枠にとどめろということでされたと私は聞いております。新聞等でも見ております。あなたがいまおっしゃっていることは逆だと私は思うのです。  そこで、中期割引国債発行には年度間発行枠というものがあるのか、また、それを決めるのはだれか。あなたのさっきのお話じゃないけれども、あなたの意見なんかが非常に大きなウエートを占めているわけです。あなたたちがお決めになるのかどうか、ひとつ金融界がこの枠三千億、非常に反対をされたということを前提としてお答えいただきたいと思います。
  27. 中村俊男

    中村参考人 私は、国債個人消化、したがって現在の国債多様化、いろいろなニーズに従ってこれを多様化するということには決して反対ではないのでございます。したがいまして、割引国債自体についても、国債発行多様化という見地からは私は決して反対はいたしておりませんが、ただ、私がそのときに指摘いたし、御当局の御配慮を煩わし願ったのは、債券の償還差益に対する税率、税金と預貯金に対する源泉選択課税の税率の間に、同じ金融資産の間に対する税率に不均衡がある、これはちょっと困るので、その不均衡をぜひひとつ直していただきたいんだ、いまの前提で割引という償還差益の商品を金融資産の中にもう一つ組み込むことについては慎重にひとつ考えていただきたいということを強くお願いしたのでございます。  古い話になりまするが、昭和三十五年の政府の税制調査会におきましても、償還差益というものは実質上利子と同じである、したがって預貯金と同じ税率を課すべきであるという答申がすでに出ておるのでございまして、アメリカでも西独でも同じような運用をしていただいておるわけでございます。  ところが、まだわが国では、具体的に申しますと、現在では預貯金の源泉選択課税が三〇%、償還差益は一二%ということで、同じ金融資産の中にそういう不均衡があることは直していただけないか。ですから、その税制さえ直していただければ、私は別に多様化について反対ということではないのでございまして、そういう一つの金融資産を国がまた金融市場の中につくられるということについては、これはぜひ慎重に考えていただきたい。預貯金に対して、私ども国債に、いま御指摘のような割合で相当多額の、いわゆる他の面の国債に御協力を申し上げておるわけでございまするから、そういう点からも不均衡があるということが非常に気になりまして御指摘いたしておるのでございます。どうぞひとつ……。
  28. 只松祐治

    ○只松委員 昨年の九月二十五日のサンケイ新聞、これにあなたと前の大平蔵相のことが書いてある。ちょっと読みます。「一方、この会談の席上、中村全銀協会長は、大平蔵相に対し割引債の償還差益が、利子や配当よりも税制上優遇されている点を取り上げ、政府がこの不公平をそのままにして割引国債を新設することは、問題が多い——とかねてからの持論を展開したといわれる。」、こう出ております。いまあなたも大体そういうことをおっしゃったわけですね。  しかし、それはそれとして認めるといたしますと、私たち社会党が、サラリーマンに対する、いわゆる給与所得者の課税、それと利子分離課税との間は不公平だ、そういう租税特別措置はなくせ、こういうふうに常に言っております。あなたが金融機関内部だけの税制の公平を言われるとするならば、それを演繹するといいますか、あるいはあなたの理論をそのまま展開していきますと、利子も総合課税にする、こういうことを言っておられることと私は思いますが、純理論からするならばあなたもそういうお考えをお持ちであるかどうかお聞かせをいただきたい。
  29. 中村俊男

    中村参考人 私が金融資産の中の税率の不均衡ということを申し上げますと、いつも預金の源泉選択課税がやはり不公平税制の一つであるということを御指摘受けるのでございます。確かにそういう面もないことはないでございましょうけれども、預貯金に対しますいわゆる源泉選択課税というものの制度につきましては、従来からの関係、またそれなりの一つの経済社会的目的でもって創設されておりまして、かつては預貯金金利については税率はゼロであるという時代もあったわけでございます。それがいろいろなことでただいま三〇になり、今度は三五%になるわけでございます。総合課税が預貯金の利息についても公平である、これが原則であるということは否定いたしませんし、そのようにもっていきたいというふうに私自身としては考えております。しかしそれには今度実際上の税務、徴収上のいろいろな問題を整理してまいりませんと、たとえば一例は支払い調書という問題がございまして、各預金者の方々が全部銀行からもらった利息を総合課税として申告しなければならぬ。私どもはお支払いした利息の支払い調書というものを税務署にお出ししなければならない。そういうことによってそれを十分精査していただいて、それによって税の公平を期する。これが私はあるべき姿ではないかと思いますけれども、さて実際に支払い調書の処理、あるいはそれを受け取られる税務御当局の事務体制の問題、こういうことから申しますと、理屈は公平な税制をしかれても実際はなかなかそういかないという面が、何せ非常に口数の多いことでもございますのであり得るので、やはりそういう点を十分御当局とも打ち合わせ、そのやり方にするにしても、少なくも一番合理的な事務の処理体制というものを十分検討してから、いますぐそれをやるということに対しては、これはかえって相当な不公平問題が起きてくるのではないかということを懸念いたしますのが率直な私のただいまの考えでございます。
  30. 只松祐治

    ○只松委員 金融界代表の中村さんが、基本的立場として、技術上いろいろ何かあるとしても利子の総合課税をお認めいただいたことは、私は画期的なことだと思って、ある意味では感謝申し上げたいと思っております。  ついでといってはなんでございますけれども、この公債を減らしていく、なくしていくというためには、当然に税制との関連が出てまいりますが、ことしの一兆円減税にも見られましたように、あなたも人間一人に返れば給与所得者だと思いますが、この給与所得税は容易ではない。そうすると当然に法人税、消費税というものに向かわざるを得ないと思います。大蔵大臣もそのことを明言いたしております。福田総理はこの席上で私に、三%税収をふやさなければならない、こういうことを断言いたしました。そういう中において法人税を一定限度重くしていかなければならない、こういうふうな方向に向かわざるを得ないと思いますが、その点をお認めになるかどうかお聞かせをいただきたい。
  31. 中村俊男

    中村参考人 先ほど参考人先生方からお話がございましたように、税制の改革、構造的にもいろいろ改革するという問題、これは大問題だと思いまして、そういう中で給与所得は仮にそのままにしておいて、あと法人税というものをふやすべきかどうかということ、これは私もそういう単刀直入の御質問に対して、いますぐ率直にそれをお答えする準備も予備知識もございません。もちろん税というものは、企業も含め国民がこれをほどほどに負担してまいらなければならないわけでありますが、ただやはり経済全体を考えましたときに、いま企業というものは相当痛めつけられておりますので、もちろん企業というものが雇用の確保の上に相当重要な役割りを果たしておりますことを前提にいたしまして、企業というものの立場というものも十分考えていかなければならないということも否定できない一つの考え方だと思います。そういうことで、必要やむを得ざるときにはもちろん法人税の増税も必要でありますけれども、何と申しましてもこの構造的不況期を何とか切り抜けてまいる、企業の負担を少しでも軽くしてまいるということもさしあたりの問題としては一概に無視できないポイントではないかと思います。したがいまして、そういう意味からも法人税の増税についても慎重に考えていかなければならない。しかし全体として増税を遂行していかなければならないということになれば、そればかりも言っておられないのではないかというような感じでございまして、まことに要領を得ない御回答で恐縮でございますけれども、お許しを願います。
  32. 只松祐治

    ○只松委員 きょうは参考人でございますので、余り論争はいたしません。どうもありがとうございました。  次に中山さんにお伺いをいたしますけれども、最近国債個人消化が非常にふえてきております。五十一年度では一五・八%、五十年度の六・八%に比べまして非常な伸びを示しております。また月平均で見ますと、四十五年度三十億でした。五十年度には二百五十億、近ごろでは八百億、こういうふうになってきております。このように国債個人消化が進んできたということは、あなたもさっきお話しになっておりましたけれども、それならば国債は全額個人消化にされた方がよいのかどうか、そうでなく個人消化比率というものが一定限度あった方がいいのかどうか、こういう点をひとつお聞かせいただきたいと思います。そのことはお考えが同じなら結構でございますが、違えば中村さんの方からもお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。
  33. 中山好三

    中山参考人 御質問にお答えします。  ただいま御指摘のとおり、おかげさまで個人消化はやっとその緒についてまいりまして、国債発行時におきましては市中を含めまして銀行が九〇%引き受けまして、大体一割を私ども個人消化をするということで国債の販売方法が発足したわけでございますが、最近に至りまして余資運用その他ずっとふえてまいりました関係上、こういうような国民金融資産増大と伴いまして若干個人に認識が高まって、ようやく一五・八%という水準にこぎつけたのが現状でございます。  今後なお大量発行時代に入るので、個人消化という問題、先ほど中村頭取からも御指摘がありましたように、金融機関さんのお手元においてもいろいろ硬直化が生じておる現状でございますから、理想的には個人消化をもう少しふやしていくということが理想ではございますけれども、一気に、大量発行時代に全額個人消化ということはとても不可能かと思うので、発行量に見合いまして、われわれとしては最低を一割をめどにいたしまして、逐次ふやしていきたい、そういう努力をしたいというぐあいに現在考えておる現状でございます。
  34. 只松祐治

    ○只松委員 個人の売買が多くなるということにおなれば、なをさら流通市場という問題が問題になってきます。そうじゃなくて、金融機関の場合でもこれは当然でございますが、ところが、これは年じゅう口癖のように私たちも前から言っておったのですが、流通市場整備整備、こう言われておりますけれども、なかなか具体的には進んでおらないわけですね。その理由というものは一体何であるか、何か抜本的な方策でもあるかどうか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 中山好三

    中山参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  債券というのは店頭取引が大半でございまして、市場はやや値つけ市場というような感じでずっとまいってきたわけでございます。それでまた、この売買がいままでは量的に非常に小さかったわけでありますが、最近に至りまして、宗教法人あるいは学校法人、その他投資信託、機関投資家関係が非常に資金を持つようになりまして活発になってきたことを、それから、いままでどうしても債券の条件というものが弾力化されておらなかった関係上、どうも市場での売買が困難だったわけですが、最近に至ってようやくその点の条件弾力化流通性拡大というようなことに気をつけてまいりました結果、最近では七十三兆円の債券売買をやっておるような現況でございます。その中で市場を通してやっておるのが二兆五千億円、約七十一兆が場外で、いわゆる市場外で取引しているという現況でございます。
  36. 只松祐治

    ○只松委員 これに関連しまして、わが国の個人の金融資産の保有状況を見ますと、預貯金、特に定期性預貯金が非常に多いわけです。いわば間接金融資産比率が多いということにこれはなってくるわけですね。ところが、国民経済の安定成長その他で、今後次第に直接金融のウエートが高くなってくる、これは次にも私はお伺いいたしますけれども、あなたは本当にそういうふうになるとお思いになっておられるか、また、そのための方策、直接金融の方策というものは何か、具体的に証券界としてお考えになっておるかどうか、お答えいただきたい。
  37. 中山好三

    中山参考人 お答えいたします。  方向的にはいま御指摘のとおり、直接金融の線が拡大していくと思っております。それで、それをするためには、やはり金利の実勢に合った発行条件弾力化ということを進めていかなければならないことと、これに伴いまして公社債の担保金融制度を拡大して、そういうものがよりよく円滑な流通をするような背景をつくって、そういう並行的な政策がうまく回るならば、必ずやいままでの間接金融から直接金融の方へ若干移行していくというぐあいに思っております。
  38. 只松祐治

    ○只松委員 これと直接関連はありませんけれども、そういう関連の中で物を考えていきますと、日本の主要な法人の現在の資金形態というものを見ますと、株式が四・三%それから社債が八・六%、合わせて一二・九%になっている。一般的には一四%を割って一三・九%と言われておるわけでありますけれども、これは全法人の平均で、主要な、あなたのところで上場されているような会社は大体一二・九%、一三%を割っているわけですね。逆に銀行の借り入れがしたがって八七・一%。これを諸外国に対比してみますと、アメリカでは株式、社債、いわゆる自己資本が五三・七%、英国が四三・四%、同じ敗戦国から立ち上がった西ドイツで三〇%、こういうふうになっておりますが、これは余りにもひどいと私は思うのです。こういうことと関連して、この直接金融と間接金融の問題、それから自己資本率をどうやって高めていくか、こういうことについて、この際ひとつ御所見を承っておきたいと思います。
  39. 中山好三

    中山参考人 ただいま御指摘のとおり、日本全体が戦後管理経済という一つの大きな枠内でいろいろのことが運営されてきたわけですが、ただいまもお話がありましたように、国債に一つの例をとりましても、一つの管理を行いながらもってきたわけでございますが、国家財政の膨張に伴い、また企業規模に伴い、従来のような、ただ決められた枠内だけの銀行借り入れで事業をやるとかあるいは拡張をするというような、資金需要の面でもいろいろの支障を来しておるのが現状でございますので、いままでの間接金融重点からやや直接金融重点に、先ほど申し上げましたように市場整備発行市場整備あるいは流通市場整備ともども相まって、拡大の方向に御検討願えれば幸いかと思っております。
  40. 只松祐治

    ○只松委員 いろいろお聞きしたいのですが、時間がございませんので、あと館さんにお伺いをしたいと思います。  あなたの御意見の中で、経済が安定軌道に乗らない場合は今後赤字公債を出すのもやむを得ない、こういう御発言があったように私は聞きましたが、そういたしますと、これは大変なことになって、裏を返せば、歯どめというものがそこにはない、こういう議論にもこれは通じてくるわけでございます。  それと、時間がないから一緒にお聞きをいたしますが、財政制度審議会委員を見ますと、会長の桜田さんを初め、何人かの学校の先生もおいでになりますけれども、ほとんどいわば会社、法人関係の方々でございます。私は、本当に中立性を持ちあるいはこれだけ重要な日本の金融財政、したがって当然に税制に関連してくる、こういう問題を審議する委員というものはもっと広範に各界各層にわたり、私たちが一口で言うならば、民主的な委員会であらねばならない、こういうふうに思います。ところが、これでは余りにも一方的過ぎやしないか、きょうはあなたは審議会の代表者ではありませんから、桜田さんではありませんからあれですが、しかし、一応きょう国会に代表者としてお見えになっておりますので、その点私の意見として申し上げるとともに、ひとつあなたの御所見もあわせてお伺いをしておきたい、こういうふうに思います。
  41. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  経済が安定成長軌道に乗って大量の失業が出ないというような状態になったときには赤字公債は出さない、その範囲は建設公債の範囲にとどめるというのが私が申し上げたことでありまして、その裏として、経済が不均衡にあって大量の失業が出るというようなときには、これは必ず出せということではなくて、そういうときには赤字公債を出さざるを得ないという状況も起こってくるだろう、こういうように私は考え、そういう考え方を申し上げたわけです。いろいろの歯どめというのが考えられますけれども、たとえば公債発行にして、公募にすれば、金利が弾力的に動くことによって歯どめとしての機能が働くというような主張もあるわけでございます。しかし、いろいろの歯どめの政策というのがあっても、なかなかそういうものは完全に財政の膨張を抑える力にはならないのであって、むしろ私が申しましたような何かの形を決めた方が一応歯どめとしての力はかえって強く働くんだ、こういうふうに考えて、それを一つのめどとして財政運営をやるべきではないだろうかと、こう申し上げたわけでございます。  それから、二番目の御質問でございますが、一番最初に申し上げましたように、それからただいまの御質問の中にもありましたように、私財政審の委員ではございますけれども財政審の委員というよりもむしろ経済学者としてきょうは出席させていただきたい、こういうことで参ったわけでございます。したがいまして、財政審そのものの意見としてではなくて、単に一経済学者としての意見を申し上げさせていただきますと、構成がなるべく各層を代表するという形にあるということは望ましいというように私は考えます。ただ、審議会にはいろいろの審議会があるというように私は考えておりまして、それがいろいろな利害関係人によって構成されるという形の審議会もあり得ると思うのです。それが審議会としては望ましい形であるということもあり得ると思うわけでございますが、財政制度審議会のような審議会については、利害関係者によってそれが構成されるということは好ましくないのであって、できるだけ中立的な学識経験者を中心に、広い層から広い意見が代表されるという形で審議会が構成されるというのが望ましいというように私は考えております。
  42. 只松祐治

    ○只松委員 最後和田先生にお聞きをいたしますが、本年度三〇%近く、あるいは累積赤字は膨大なものに達する、このことは、おっしゃいましたように、当然に税制と関連をしてくるわけでございまして、税の弾性値一・八を超えるというようなことは、とてもいまの税法下においては考えられないわけでございます。当然に大幅に税制を改正していく、一口で言うならば増税をしなければならない、こういうことになってくるわけでございます。それは、先ほども申しましたように、消費税、もっと具体的にはいわゆる付加価値税と法人税の増徴以外にない、こういうふうにもなってくるわけでございます。そういういろいろな面から、先生といたしましては、どうやったならば民主的な税制というものが確立されるか、また、していかなければならないかということについて第一点。  それから、先生も若干はお述べになりましたけれども、具体的にこの赤字公債をなくしていくにはどうやったらできるか、逆に言うならば、私は、とてもこういう状態のもとでは大蔵省が出しているように昭和五十五年度赤字公債発行を阻止するということは恐らく不可能だろうと思うのです。先生はそういう点についてどうお考えをお持ちになっておるかをお聞かせいただきたい。
  43. 和田八束

    和田参考人 増税を考えざるを得ないという状態のもとで税の改革をどう考えるのかということですけれども、現在のように私が先ほど言いましたように財政改革が行われないでこのままずるずるいくということになりますと、一般的な消費税等での増税ということにならざるを得ないし、そしてまた、大蔵省が試算しているような形での赤字国債の解消ということも不可能であるというふうに言わざるを得ないわけであります。したがいまして、ここではかなり本格的な、思い切った財政の改革というものがどうしても必要になってきている、それ以外にはないのではないかというふうに考えまして、先ほどもその点を申し上げたわけであります。  私は、基本的に税負担を増加させるということにつきましては、それは、わが国の場合に租税負担率が低いわけでありますし、また、今後の福祉を中心としたニーズという点からいいましても税負担を高くせざるを得ない、そしてまた公共部門をもっと大きくしていかなければならないという基本的な考えに立っているわけでありますが、まずしかし、それを言う前に、私は、やっぱり現在の財政の中身自体が問題である。これを、不必要なものを切り捨て、そして必要なものを増大さしていくというふうに改めなければならないわけで、それが前提である。その次には、現在税制がきわめて不公平な状態にあるわけですから、これを是正する。不公平税制を是正することによって税収もふえるということになり、また国民の税に対する認識も改まるということになると思うのです。そして、その上で、それではどのような税負担というのが日本経済の上からいいましても、あるいは国民経済状態からいいましても可能か、あるいはどのような税制が望ましいのかということが議論されなければならないわけですけれども、そういう長期的な観点からいえば、私は、やはり法人税を改革して法人税を増徴するということであり、今日の法人税制ではなくて、仮にそれを法人利潤税というふうにでもいいますと、そのような形で、累進税率をも伴った新しい法人税制というものが考えられなければならないのではないか。そういう意味で、付加価値税は、日本の現在の税制のあり方からいいましても国民の税負担の問題からいいましても支持することはできないということであります。そうした支出面、それから税制面における改革がない限りは、御指摘のように、赤字国債をなくするということは、これは机上の計算だけでございまして、現在の異常、異例な赤字財政の状態というのは解消できないということを強調したかったわけであります。
  44. 山下元利

    山下(元)委員長代理 坂口力君。
  45. 坂口力

    ○坂口委員 各参考人には大変お忙しい中を、きょうはまことにありがとうございました。限られた時間でございますので、すべての参考人の皆さん方にお聞きをしたいわけでございますがそこまで時間的余裕はないと思いますので、三、四名の参考人の皆さん方にお聞きをすることになるかと思います。  まず、井手参考人にお聞きをしたいと思います。先ほどいろいろお話をいただきました中で、一つは所得弾性値を高めるような増税措置の必要性ということをお話しいただきまして、先生もう少しお話があるようでございましたが、時間的な制限がございますので後半少し割愛をされたようでございましたので、この辺まことに興味のあるところやございますので、おつけ加えをいただくところがございましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一点。これは館参考人、それから和田参考人の方からも出たわけでございますが、建設国債の話が出ました。井手参考人は、赤字国債建設国債関係建設国債というものについてどういうふうにお考えになっているか、これをまずお聞きをしたいと思います。後で館参考人和田参考人からもこの建設国債のことにつきましてはもう少しお聞きをしたいと思います。  まず、井手参考人からお願いをしたいと思います。
  46. 井手文雄

    井手参考人 最初の御質問は、所得弾性値を高めるような税制の改革のあり方でございますか。——税収の所得弾性値は、主として税制の累進性に依存するところが多いわけでございます。ですから、弾性値を高めるためにはできるだけ累進税制をして累進構造を持たしめる、こういうことが非常に必要だと思うのですね。ところが、現在は必ずしもそうなっていない。現在の税収、国税だけに限ってみますと、所得課税が中心になっております。個人所得課税と法人所得課税でございますが。個人所得課税、つまりいわゆる所得税ですけれども、これは一〇%から七五%までの超過累進税率、こういうことになっておりますけれどもこれだけ見ますと相当急激な累進構造だというふうに見えますが、実際は必ずしもそうなっていない。ということは、しばしば言われますように、高額所得者が相当減免されておる、配当所得や利子所得の分離課税ということ、その人の所得の中で配当所得や利子所得の占める割合が非常に高い人は分離課税によって税負担が非常に大幅に軽減されるのですけれども、そういう人たちは大体において高額所得層であります。ですから、そういう高額所得層が、そういうような軽減措置によりまして実効税率が相当軽くなっている、こういうようなことがございますので、必ずしも表面的なあの超過累進税率のように累進性は持っていない。所得層と所得層との間においては逆に逆進的になっていることもあり得るんじゃないか、こういうように思います。その他いろいろありますが、国みずからがそういう高額所得層に軽減措置を講じておるということ。  それから今度は、税制そのものは別として、徴税過程においての高額所得層の減免でございますね、減免というか、結果としての。つまり、クロヨンとかトーゴーサンと言われておりますような矛盾、これは主としていろいろの種類の所得の課税当局による捕捉率の問題でありますが、これがとにかく現実にはどうしてもそうなっている。つまり、捕捉率一〇〇%近い捕捉の非常にやさしい所得と、どうしても捕捉が十分にできない所得というのがありますので、どうしてもトーゴーサンとかクロヨンというようなことになるわけです。しかも、そういう捕捉率の低い階層がまた高額所得層という場合が多いんですね。サラリーマンのようなものは、普通の中小所得層は捕捉率が高いわけです。一〇〇%あるいはクロヨンの九〇%、こういうようなことになって、そういう人たちは所得層としては中小所得層である、こういうようなこともあります。  それからまた、給与所得者についての給与所得控除の問題、概算的な必要経費というようなことになっておりますけれども、こういう概算的な必要経費としての給与所得控除というものが妥当かどうかというような問題もあります。  こういうようないろいろな税制そのもの、あるいは徴税段階における矛盾というようなものがありまして、最も典型的に応能原則に合致する租税である、個人所得税が最高の租税である、こういうふうに言われておるのですけれども、現実にはそうはいかないという面が非常にあるわけですね。これはわれわれ客観的にいろいろやってみてそうなっておるわけです。そういう点から見ましても、一番典型的な所得税でそうですから、わが国の現在の税制というのは相当累進性を阻害されている、こういうことになります。  もう一つの法人所得課税、いわゆる法人税、これは現在は原則としては比例課税ということになっておりまして、若干、所得によりまして二段階税率とかいうようなことになったりしておりますが、基本的には比例税率になっておる。そこへもってきて、二段階税率になって所得の少ない、低い中小所得層には軽減税率が適用されるというようなこともございますけれども、基本的には比例税率である、累進税率ではない。これは法人税というものは何であるかというようなことにも関連するわけであります。だから、そこまでいくとやはり実在説だ、擬制説だというてやかましい問題にもなりますけれども、現実はそうなっておる。だから、法人税において必ずしも累進性を持ってないわけですから、こういう法人、個人所得課税を中心としたわが国の国税というものが、相当累進性が阻害されていて、所得弾性値がそう高くないということになるわけなんです。  ですからして、この財政収支試算のように、これは一応の試算であって、必ずしもこれが絶対的なものではないということかもわかりませんけれども、しかし、厳密に、何兆円とか何十兆円だとかいう数字そのものは暫定的、一応まだ試算の段階でしょうけれども、本質的にはこういうことになるわけですね。何とかして公債累積額を、償還公債額を抑えていかなければならない、減らしていかなければならない、国債費も抑えていかなければならない、何年計画でやっていかなければならない、これは一応五十五年度となっておりますけれども、そのためにはその間においてどれだけの成長率でいくだろうか。たとえば名目で平均一三%とか一二・何%とかでいく、そうすると、所得弾性値がこうだから大体税収はこうなる、それじゃいかぬから、これだけの増税をしなければならぬという仕組みでありまして、そういうことは当然こういう財政収支試算が本質的なものを持っているわけです。具体的な数字は別として、大体こういうことになっておる。  ですから、これによりますと、先ほど言いましたように、二まではいきませんけれども、相当高い所得弾性値が要求されておって、その上プラス相当の増税というようなことになる。つまり、一方において所得弾性値を高めながら増税をしていくということですね。それでだんだんと赤字公債をなくする、しかも建設公債はなくすどころかふえていく、ふえ方を減らしていくというのですからして、欲を言えばもっともっと所得弾性値を高め、さらにもっともっと増税をしなければならぬということになる。そういうのは矛盾するわけですね。矛盾しないようにしなければならぬ。増税しながらこの所得弾性値を高めていく。だから、そうなれば具体的に言えば、先ほど申しましたように、利子所得や配当所得の総合課税化とか、そういうような現在高額所得層や資産所得層に向けて行われておる軽減措置というものを排除していく、そうして税制を公平化していく。税制を公平化する、負担の公平化を図るということはだれでも異論はないと思うのですけれども、その公平化がつまり所得弾性値を高めることにもなり公債を抑えていくことにもなるということですからして、これはどうしてもやっていかなければならない。だから、現在のそういうような特別措置なり軽減措置というものは一日も早く整理することが必要である。  それから、今後の増税問題ですけれども、所定の何兆円かの収入を確保するためにはなかなかむ、ずかしい問題であります。だから、細かいことは申しませんけれども、まずこの所得弾性値を高めるための、つまり換言すれば税制の累進構造を高めるような、また換言すれば税制が同時に公平になるような増税というものが考えられなければならぬ。これはさっき言ったように、そういう現在の不公平的な要素を取り払う、特別措置などを取り払うということ。もちろん徴税の機構を合理化して、強化して、クロヨンとかトーゴーサンというようなことのないようにもしなければいかぬ。  それから、同時に、当局では富裕税というようなことも考えられておるようでございますけれども、一遍廃止された富裕税、こういう資産課税というようなものを考えていくことも必要かと思います。そういうことをやった後では付加価値税なりというような問題が次の議題に上るかと思いますが、時間があれしてどうも失礼しました。  それではもう一つの建設国債につきましては、先ほどからいろいろお話もございましたのでちょっと別な角度から申しますと、財政法の第四条で、いわゆる公債を認められるというのは出資金と貸付金と公共事業費となっておる。私から言わせますと、この出資金、貸付金、公共事業費というものを並べてあるのはちょっとおかしいというような気がしますね。出資金や貸付金は自償的というか、国庫的に見て収益的な経費なんです。ところが、公共事業費というのは国民経済的あるいは社会的に意義があるかもわからぬけれども、国庫的に見ると非収益的な経費なんですね。それは、公共事業だって有償的というか自償的というか、有料道路の建設というようなことも考えられますけれども、そういう有料的な公共事業というのはみんな財政投融資の方に行っておりまして、一般会計の公共事業賀というのは非収益的な事業ばかりです。たとえば道路ならばだれでもただで通れるような道路なんです。ですからして自償的じゃないわけですね。そこから収入は出てこない。だから、出資金や貸付金の財源としての公債ということならば、後でその公債の元利払いを可能ならしめるような収入というもの、あるいは収益というものが国庫にもたらされる、そういう意味において、第四条において出資金や貸付金のためならば公債発行していいということは、いわば古典的な均衡予算主義の立場から当然です。ただ、公共事業費ということになりますといま言ったように収益的でありませんので、そういう国債費財源をもたらすような事業ではないわけですね。そういう意味においては出資資金や貸付金とは別なんです。別の経費だ。ですからして、公共事業費のための公債費というものは全くいわゆる特例公債、つまり赤字公債とそういう意味においては同じなんです。どちらも発行すれば国債費というような、あるいは財政硬直化あるいは国債費の支払いということが問題になるような租税なんですね。こういう点では全く同じだ。だから、国債費の累積というものが警戒されなければならぬと同じように、赤字公債の累積額が警戒されなければならぬように、同じような意味において建設国債も警戒されなければならぬ。ところが、特例公債だけが論議をされまして、その論議の陰に隠れて建設国債は甘やかされているというか、建設国債はある程度ふやしてもいいんだというような気持ちが全体的にあるんじゃないか、これは大いに警戒しなければならぬ。建設国債だって赤字国債と同じように後で困るような公債なんですよ。出資金や貸付金のための公債とは違うものである。だから、建設国債と言われておっても二種類あるんだ、そこをお考えいただきたい。出資金や貸付金のための国債と公共事業費のための国債と分けて考えなければならぬ、そういうことを私は考えております。
  47. 坂口力

    ○坂口委員 時間が限られておりますので、もう少しお聞きいたしたいところもございますけれども、これだけにさせていただきたいと思います。  この建設国債に絡みまして、先ほど館参考人は安定経済のときには公債発行建設国債の範囲に限るという御発言がございまして、いま御退席になりましたけれども和田参考人からは建設国債こそ問題であるというような御意見も出たわけでございまして、お見えになりましたら双方からお聞きをしたいと思ったわけでございますが、和田参考人退席されましたので、館参考人から簡単で結構でございますが、もう少しつけ加えていただくことがございましたらひとつお願いをしたいと思います。
  48. 館龍一郎

    館参考人 お答えいたします。  企業の会計でも資本勘定と経常勘定とがあるというのと同じように、やはり国の予算についても資本支出関係予算というものと経常予算とを区別して考えていくという考え方はあり得るんだと思うのです。資本予算というものを別に組むという考え方が経済学者の中にはあるわけであります。それはなぜかといいますと、やはり資本的なものといいますか、資本予算に組み入れられるようなものについて言えば、これは収益はもたらしません。これは財政ですから、したがって収益はもたらしませんけれども、継続的に便益を将来にわたってもたらすというものがあるわけですね。公共事業というものはそういうものになるわけでございます。したがって、それに対する資金の調達を借入金によって行うということは不自然ではないというように考えるわけでございます。ただ、総需要に与える影響という点から言いますと、これは赤字公債建設公債との間に基本的な違いがないという場合が出てくるわけでございます。どの点を中心にして見るか、そこに違いがあるというように私は考えております。
  49. 坂口力

    ○坂口委員 それではあと五分ぐらいでございますので、中村参考人中山参考人の御両人にあわせて御質問を申し上げて、まとめてひとつ引き続きお答えをいただくという形で終わりにさせていただきたいと思います。  中村参考人中山参考人国債の累積増加に対して市場原理見直しあるいはまた公社債市場整備という問題に触れられたわけでございますが、中村参考人の方に対しては実勢利回りを見きわめてから発行利回りをというお話をなすったわけでございますけれども、これは金利の自由化という問題あるいはもう少し下げて弾力化の中というふうに申し上げてもいいかと思うのですが、こういう大きいスケジュールの中で現在この国債の問題をお考えになっているのか、それとも、そうではなしに、まずとりあえずこの公社債市場整備、自由化ということを中心にして、その中でとにかく国債の問題だけをまず手がけてというふうにした方がいいとお考えになっているのかということをひとつお聞きしたいと思うのです。  それから中山参考人の方には、同じようなことをお聞きしたいわけでありますが、あわせて発行形態多様化だとか弾力化ということが行われた場合に、これもその程度によって違いますしむずかしい質問でございますけれども個人消費を何割ぐらい、あるいは何%ぐらいと言ってもいいのですけれども引き受けることが可能である、こういうふうに、これこれの条件を設定して、これこれの条件さえ満たされれば、これぐらいは可能じゃないかというようなお話がございましたら、お聞かせいただきたいと思うのです。お願いいたします。
  50. 中村俊男

    中村参考人 ただいまの御質問、金利の自由化というのは、あるべき姿として、ことにその方面で日本の金融市場の金利機能が非常に硬直し、先進経済諸国と比べて非常にその点ではゆがんでおり、いろいろな問題が起きますので、これは自由化をぜひ進めてまいりたいと思っております。しかしこれはなかなかに、一気にこれを進めますということは実際問題として逆に一時混乱を起こすようなことも考えられますので、金融制度調査会におきましても、金利の自由化は目途とするけれども、まずさしあたり弾力化から進めていこうじゃないかというふうな実際論も出ているようなわけでございます。そういう意味合いにおきまして、私も先ほどの御質問に対しましては、国債流通市場整備ということはなかなか大問題でありまして、ことに発行額の少ない時代にもっと取っ組むべき問題であったのでありましょうけれども、実際問題としては、なかなかそういうふうに踏み切れない。しかしこういうふうに金額が大きくなってまいりますと、これはどうしてもやはり取っ組んでいかなければならない問題でございますので、金利の自由化はさておきましても、さておくといいますか、その段階的、実際的第一歩として、まず国債発行条件市場の乖離が余りないようにひとつしていただきたい。そういたしませんと、私どものお引き受けいたしました国債をすぐに相当額、その期の決算期までに償却いたさなければならないという問題が起きておりまして、お引き受けするというと即ある程度の損失が出るというようなことになりますので、やはりこの点から手をつけていただきたい。手をつけるように、私どもも先ほど申しましたように懇談会をシ団の中に設けて、御当局も必要に応じては参加していただいて、そして証券会社の御協力も得て、その点をいま鋭意進めておるような状態でございます。
  51. 中山好三

    中山参考人 御質問にお答えいたします。  先ほど来只松先生から御質問がありましたように、国債の発足当時から一割というようなことでスタートをいたしました関係上、また証券市場その他の整備というような問題あるいは発行条件弾力化というような問題からいたしまして、われわれとしては現在の発行量を前提といたしますなら、約一〇%を最低として、それ以上増大するように努力してみたいというぐあいに考えております。
  52. 坂口力

    ○坂口委員 それでは時間が参りましたので……。ありがとうございました。
  53. 山下元利

    山下(元)委員長代理 高橋高望君。
  54. 高橋高望

    高橋委員 参考人の諸先輩、お忙しい時間、恐縮でございます。しばらくお願い申し上げます。  どうもきょうは中村と言ってはいけないので、参考人とお呼びさせていただきたいと思います。  中村参考人、先ほど御意見を承っておりまして、国債発行、特に赤字公債やむを得ないという御判断やに承りました。ところが、私たちの立場に立ちますと、国債麻薬説というのがあるくらいでございまして、当然のことながらその展開に当たっては細心の注意が必要かと思います。こういった立場に立ちましたときに、現在参考人立場から政府当局に対してどのような要望を最重点になされますか、その辺をまず伺わせていただきたいと思います。
  55. 中村俊男

    中村参考人 まず第一にお願いいたしたいこと、これはかねがねお願いいたしておりますが、やはり予算国債依存率を、いま三〇%弱でございますが、今年度もそれがふえないようにということをお願いいたしまして、まあしかし横ばいみたいな状態で減らないわけでございますが、これをまず第一に減らしていっていただきたい、国債発行への予算の依存率、これを少しでも減らしていっていただきたいということが第一の御要望でございます。第二には、やはり発行条件市場の実勢に合わせていくようにする、そうすることによって市場が非常に窮屈になりますれば発行条件もお国にとっては負担が多くなる、そういうことにも相なりますので、そういう意味からの歯どめにもなり得る、やはり市場の機能が働く余地があるのではないだろうかというようなこと、大体この二つの点を特に強くお願いいたしておるのでございます。
  56. 高橋高望

    高橋委員 中村参考人に続けてお伺い申し上げるのですが、依存率は、お話しのように三〇%をかろうじて下回るということで続いております。アメリカやイギリスの例もございますように、この国の財政の中で依存率をとりあえずどの程度ぐらいまでにしておいてくれないかなというふうにお考えになられますか。
  57. 中村俊男

    中村参考人 とりあえず、何とお願いいたしましても、どうしても三〇%弱にしか予算が組めないというお話になりますが、まあ本年度、五十二年度の予算の総括、ごく簡単に大略的に申し上げますれば、やむを得ない予算ではないかなというふうに思います。先ほど来申し上げておりますように、いまの経済情勢というものが戦後にない情勢に入っておりまして、しかも非常に見通し難でありますので、こういう情勢のときには実際問題としてあの程度予算を組み、公共投資もふやしておる、そういう予算も組み、それでとにかく景気が息切れをしないように、時間切れせぬようにベストを尽くされるという姿勢から申しますと、あの程度予算は組まなければならない。そういたしますと、税収との関係で、さしあたりあのくらいのことはやむを得ないのじゃないか、しかしこれはできるだけ減らしてまいりたいというところでございます。
  58. 高橋高望

    高橋委員 どうもありがとうございます。  中山参考人に、続けてお伺いをしたいのでございますけれども、いま中村参考人のお話の中から発行条件の検討というお言葉が出てまいりました。先ほどの御意見をいただく中で、魅力のある投資対象としてということをおっしゃいましたが、いまお考えになっておられる、国債が魅力ある投資対象ということになるためにはどのような条件を具備すればよろしいか、この辺について御意見をいただきたいと思います。
  59. 中山好三

    中山参考人 お答えさせていただきます。  魅力のあるということは、まず第一には利回りが非常に実勢に合って、実勢を反映した利回りであるということと、もう一つは券面が日本の場合には十年一本でございましたので、期間その他顧客の選好による多様化が必要ではないかと思うわけです。たまたま先ほども触れましたけれども、一月売り出した中期債が非常に人気がございましたのは、あれが期限が五年ということと割引国債ということで、利札等がついておらないために非常に簡便でわかりやすいというような関係で中期債が人気があったんだと思いますが、そのような条件を備えたいろいろのものを弾力的に出していただきたい。たとえばアメリカあたりでは、金利の高いときには短いものを出す、安いときには長いものを出す、そういうぐあいに、その実勢に応じた多様化が弾力的に行われているように見受けられるわけですが、わが国においてもぜひそういう弾力的な発行を備えていただければ、一般の認識が高まってまいりまして売れ行きもよくなってくるんじゃないか、かように考えております。
  60. 高橋高望

    高橋委員 ありがとうございました。  それでは館参考人にお伺いをしたいと思います。  先ほども坂口委員の方からお尋ねが一部ございましたが、公債発行限度について、安定成長期に入った場合には発行建設公債にとどめるのが原則だろう、こうおつしゃいました。実は、安定成長ということは非常に言葉はやさしいのですけれども、中身のつかまえにくいところでございまして、とかく私たちに論議をもたらすのですが、現在参考人のお立場で、公債発行限度に対する一つの指標としての安定成長、これは大ざっぱに言ってどのようなお考え方でこの表現をなさいましたでしょうか。
  61. 館龍一郎

    館参考人 それではお答えいたします。  大変むずかしい点でございますが、少なくとも経済がほぼ完全雇用に近いという条件になって、そして成長がある程度行われているということが条件というように考えております。ですから、ただいまのように季節調整をしますと百万を超えるような完全失業があるというような状態は、もちろんこれは安定成長ではございません。数学で何%というようには考えておりませんで、いろいろの指標を見て判断していくべきもので、その中で重要なものとして雇用ということを考えたいというように思っております。
  62. 高橋高望

    高橋委員 重ねてで大変恐縮でございますが、そうすると、公債発行に当たっては、やはり数字でとらまえるというよりもそのときどきの政治情勢も勘案する、このように拡大解釈してよろしゅうございますか。
  63. 館龍一郎

    館参考人 ただいま政治条件というようには考えておりませんで、もっぱら経済指標を中心にして考えていくということでございます。どのくらいの成長率がそのときの妥当な成長率かということは一つの問題点でございますが、ただいまのような状態はともかく安定成長路線には乗っておらないわけで、安定成長路線に乗るまでは少し高い成長率をとり、しかる後安定成長路線と考えられます人口の成長率と技術進歩率、それに合わせた成長をしていくというところを一つの目安というように考えておる。
  64. 高橋高望

    高橋委員 ありがとうございました。  それでは井手参考人にお伺いいたしたいと思います。  先ほどお述べになっておられたのですが、実は大変申しわけないことに私の聞き方が少し不十分で、重ねての御発言をいただくことになろうかと思いますが、特例公債、赤字公債の減債方法でございますね、これについて参考人のお考え方を簡明にひとつ重ねてお願い申し上げたいと思います。
  65. 井手文雄

    井手参考人 現在の減債制度、これは財政法その他で規定されておりますけれども、ひっくるめまして一つの減債制度になっておりますが、これはやはり建設国債といいますか、第四条公債を前提としたものであるというふうに考えるわけです。ですからこの特例公債、つまり財政法で否定しておるところの特別の公債を特別に特例法で発行する、こういうときにはそれ自体シビアな減債制度というものが設けられるべきであって、現行の建設国債を前提とした減債制度をそのまま赤字国債にも適用するということは、ちょっと問題があるのじゃないかというふうに考えたわけです。    〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 それで具体的に言いますと、この定率繰り入れ百分の一・六ということで見ましてもわかりますように、あれは明らかに建設国債を対象にして考えられたものである。ですから、借りかえをしないでシビアに十年満期で返済するというようなことが赤字国債において忠実に守られるためには、ああいう百分の一・六の繰り入れというようなことではだめでありまして、たとえばもっと高率の繰入率というものが考えられる。そういうように建設国債に対する減債制度はいまの減債制度ですけれども、赤字国債を出す以上は、赤字国債を対象としたシビアな減債制度というものが必要ではなかろうか、こういうふうに考えたわけであります。
  66. 高橋高望

    高橋委員 参考人に重ねてで恐縮でございますけれども、御承知のように十年で返済する。当委員会で私と大蔵大臣との質疑の中でも、他の債券の何よりも先行してこの特例公債の返済はするというふうに大蔵大臣も答弁をされているところなんですが、現実にそのままお伺いして、参考人、現在の十年でも少々返済としては長いんじゃないか、そのようにお考えになられますか。
  67. 井手文雄

    井手参考人 いまの特例公債が十年では長いかということですね。まあ長いと思いますけれども、現在のいろいろな情勢からして、借りかえなしで十年満期で必ず償還し得るようなシステムになっておれば、それを忠実に実行していただきたい。もっと短くということであっても困難であると思いますので、この十年ということが確実に行われるような減債制度というものが望ましいのではないか、こういうふうに思っております。
  68. 高橋高望

    高橋委員 ありがとうございました。  それでは最後に原参考人にお伺いしたいと思いますが、先ほど入るをはかって出るを制するという財政の基本に立ち返るべきだという御意見がございました。この辺から歳出の見直しのポイントをどこに置くか、この辺について参考人の御意見を改めてお伺いしたいと思います。
  69. 原豊

    ○原参考人 お答えいたします。  私が入るをはかるだけではなくて出るを制せよと申しましたのは、これは必要な財政需要まで抑えろという意味合いでございません。やはりこれからも財政需要国民福祉の向上という観点から見まして拡大する必要はあるわけでございますから、その基本方針は変えたくない。ただ、いままでのことを反省いたしますと、それが必ずしも重要度を中心にした財政支出じゃなかったのじゃないか。そういうところを修正していく。と同時に、また先ほどちょっと申しましたように、財行政の分野におきましてかなり非効率な点があるのじゃなかろうか。こういうことを考えますと、そういうところは手直しをしろという意味で申したわけでございます。  もう少し具体的に述べますと、たとえば先ほど申しましたように、いろいろの窓口を一本化するような問題でありますとか、さらには経費の節減でございます。特に補助金でございますね、それを整理をする。さらには民間に移譲できるものはなるべく移譲していきまして行政の効率化を図るといったこと。それから窓口がたくさんございますが、それも整理するとともに、支出の面でも一元化していくということとか、それから各省庁間て一いま省内におきましてはある程度努力はあるかと思いますけれども、省庁間での支出の調整まで行われていない。こういうところをもう少し総合的に調整していくという、そういう点で見直せば、かなり効果があるんじゃなかろうか、こういう考え方でございます。
  70. 高橋高望

    高橋委員 原参考人に逆にお伺いするのですが、入るをはかる立場に立たれたときに、増税問題に対して、現在では無理だ、しかし中期並びに長期的にはやむを得ないだろうという御判断を示されましたけれども、税の構想について具体的な何かお持ちでいらっしゃいますか。
  71. 原豊

    ○原参考人 お答えいたします。  現在では無理じゃなかろうかというのは非常に短期的な情勢を頭に置いて考えております。しかし、これだけの状況のもとで急速に財政支出を削減することもできませんし、といたしますならば、財政需要拡大が片方でございますので、そういう方向もございますから、やはり入るをはかるための増税は中期的にも考えていかなければならない時点に来ているということでございます。  それで、具体的にということになりますと、かなり問題があろうかと思いますけれども、直接税に偏っております日本の税制でございますが、私は直接税におきましてもまだまだある程度の増徴は可能だと考えております。たとえば、先ほどもお話がございましたけれども、個人所得税なんかにつきましては、確かに非常に高い所得水準になりますと累進度は高いのですけれども、一千万円をちょっと超える程度まではそんなに高くないわけです。諸外国と比較いたしますと、これは地方税を含めての実効税率でございますが、一千万円ちょっとのところで、英米あたりでは約二〇%ぐらいの実効税率になっておると思います。ところが日本は一〇%ちょっとでございますので、こういうところを手直しすることもできましょう。それから法人税でございますけれども、これは余り法人だけを課税対象にすることに、私はこれからの長期的な発展を考えると、問題があろうかと思いますので、そういう立場をとりませんが、まだ少しは利益を上げるところもありますので、この余地はあろうか、こう考えております。  そういうふうにいたしまして、直接税である程度手直しをしつつ、あと考えてみますと、やはりどうしても間接税よりも直接税のバイアスが大き過ぎるということを考えております。それを考えてまいりますと、やはり間接税をもう少し導入する方法も考えていいんじゃなかろうか。ただ、これにつきましては、いろいろ国民の抵抗もございますし、私はかなり誤解もあろうかと考えております。  それから特に付加価値税なんかになってまいりますと、これはやはり実態の研究がそこまで行き届いていないのに何か印象的に非常に反発が強い。町を歩きましても、付加価値税制反対というのが酒屋まで張ってございますので、こういうことはやはり実際に冷静に分析した上で考えてみなければならない。たとえばフランスなんかも、イギリスもそうでございます、ECは導入しておりますけれども、複数税率を使っておりますので、イギリスなどは食糧はゼロレーティングでございまして、税金をかけておりません。ところがペットフード、犬の食物につきましては非常に高い税率を課すとか、そういう形で逆進的にならないような形の調整をやっていくということもできるかと考える。それからこれを導入するときに、ほかでやっておりますように、低所得層につきましては減税というものを抱き合わせで行っていくとか、あるいは技術的に困難な場合にはフランスでフォルフェ制度というような請負見積制度もございますので、いろいろな対策ができます。  そういう点を考えますと、いま申し上げるように、直接税も手直しをする必要もあるし、同時に間接税もこれは税を払うときに自分で選択して払うわけですから、いやなら買わなければいいということも言えるわけなんで、その辺のところをもう少し国民にPRをいたしまして、情勢をだんだんとつくっていきながら、中期的な導入を、国民の反対の少ないような方法を講じていくべきだ、こういう考え方を私は持っております。
  72. 高橋高望

    高橋委員 残念なことに、与えられた時間が参りましたので、各参考人にお礼を申し上げて、私のお尋ねを終わらしていただきます。ありがとうございました。
  73. 小渕恵三

  74. 荒木宏

    荒木委員 参考人の皆さんには御苦労さまでございます。  初めに齋藤参考人にお尋ねをいたしますが、先ほど大蔵省証券の発行につきまして、長期国債とあわせて、相互依存関係に立ち、また相互制約的な関係ということも考えられる、いずれも財政資金の先行方式で日銀を利用する、そういう形では戦前の日銀引き受けの変形であるという趣旨の御意見を伺いました。時間の関係もあったと思いますので、一、二お尋ねをしたいのですが、大蔵省証券は、御案内のように年度内償還ということになっておりますので、そうした点からのまた別の御意見もあろうかと思います。つけ加えてお述べいただくことがございましたら、この機会に御意見を伺いたいと思います。
  75. 齋藤博孝

    齋藤参考人 お答えいたします。  御質問のところを、実は私も数字的にまだ十分統計などを手に入れておりませんので、十分でないかと思いますが、たとえば昨年度は蔵券の最高限度が二兆六千億円でございます。その前、昭和五十年度が二兆二千億円、この五十年度で見ますと、先ほどは省略いたしましたけれども、五十年の四月の残高は四千二十億に統計的になっておりますが、それからずっと九月まで発行されておらないようでございまして、九月が千八百十億円、それから続けて十月、九千九十億円、それから十一月、六千八百九十億円、年末の時期になりまして八千六十億、これは九月から十二月までの四カ月の分を合計し薫も二兆五千八百五十億円ということになります。四月の時点までさかのぼって合計いたしますと、二兆九千八百七十億円となっております。  大蔵省証券は、御承知のように昭和二十四年度以降しばらく発行されておりませんでした。三十九年の十二月に久しぶりに発行されまして、昭和三十九年では五百億円が発行限度でございます。それから四十年度になりますと、かなり一この時点ではまだ貨幣価値が問題で、いまの基準でちょっととらえられませんが、四十年度は二千億円、四十三年度になりますとさらにそれが五千億円の最高発行限度額となっております。それから四十五年まで五千億、四十六年、七年が両者六千億円、それから四十八年度が七千億円、四十九年度が八千億円。こう見てまいりますと、五十年度になりますと、一挙にけた違いの蔵券が発行されております。  そういうことと国債発行額、これの相関とでも申しますか、それを見ますと、五十年度では国債発行高が五兆四千八百億円でございますし、その前年四十九年では二兆四千六百四十八億円、これは一挙にここのところで倍増ということになってまいっておるように思います。それから七六年、昨年でございますが、昨年の蔵券の最高限度は、先ほど申しましたように二兆六千億、その昨年度の国債発行が七兆三千七百五十億円、これはそのうち特例公債が三兆六千五百億円含まれております。それで昨年でございますが、昨年の五月に蔵券の発行額は八千二百七十億円、六月に一兆一千百億円、それから七月になりますと三千四百五十億円。これがその後八月以後十二月まで大蔵省証券の発行がどういうふうになされているのか、私は実は今日ここに参りますまでそこのところを確かめることが残念ながらできませんでしたので申しわけないと思いますが、そういうことを考えながらお話しを申し上げていたわけでございます。
  76. 荒木宏

    荒木委員 中村参考人にお尋ねしたいのでございますが、本年の一月の十日に全銀協の臨時理事会をお開きになりまして、その議事録を拝見したのでございますけれども国債についてというので幾つかの項目の御要望が出ておったように伺いました。国債の依存率はだんだん引き下げていく、それから自然増収があったときにはまず従来どおり市中優先で減額をしてほしい、あるいは財投資金引き受け、運用部資金引き受けの分は市中の方の引き受けが減るようにひとつ考えてほしい、こういった御要望が出ており、さらに大量国債発行の原資を調達するために資金吸収の手段を格別に配慮してほしい、こういうふうな御意見を伺ったわけでございます。先ほど来の参考人の御意見も、協力はする、するけれどもいろいろ注文がある、こういったニュアンスで伺ったわけですけれども国債の大量発行は本年だけでなくて昨年も、あるいは一昨年補正予算でも予定されたことでありますが、いままで、つまり昨年、一昨年ですね、国債の大量発行に向けて政府の方から配慮といいますか、市中銀行の皆さんの方で引き受けなさるについてやりやすいようにこういうことをしてくれたというふうにお考えの向きがありましたら一、二お聞かせいただきたい。  なお、本年について資金吸収手段に格別の配慮とおっしゃっておりますのは、どういったことを具体的に御要望になっているか、お聞かせいただければと思います。
  77. 中村俊男

    中村参考人 国債発行が昨年度から急激にふえてまいりましたので、私ども、先ほどお話ししましたように、ことに都市銀行といたしましては資金偏在論でいつも論議の対象にさせられており、俗に言う外部負債というものが相当にかさんでおる、そういうことから、今後国債が大量に発行されますと、シ団として、またそれを構成いたしております都市銀行として相当なシェアを占めるものでございますから、そういうことで格別にいろいろと御配慮を願いたいという点を要望いたしたわけでありますが、資金吸収手段としてということは、もっぱらいま申しましたように外部負債がどうしても減らない。その外部負債が最近減らないのは、これは明らかに民間部門の資金需要が鎮静したにもかかわらず、国債、地方債等含めた公共部門の資金需要がそれにかわって一かわってというか、出てまいった。数字的にはかわって出てまいるために外部負債が減らないわけでございますので、したがいまして、今後まだひとときもし国債発行量が顕著に減らない限りは、私どもの外部負債を減らす意味でも、資金偏在を調整する意味でも、やはり資金の吸収手段について、新しい預金者のいろいろなニーズにこたえる意味で、私どものいわゆる預金の種類をふやすとか、あるいは私どもが海外のみならず国内においても譲渡性の定期預金を出さしてもらえるとか、複利預金をひとつ考えてもらうとか、そういうような新しい資金吸収手段について配慮をお願いいたしたい、そういう要望なのでございます。
  78. 荒木宏

    荒木委員 もしそういったことが十分できなければ、引き受けについてはどうでしょうか、多少無理がある、こういうことになりましょうか。配慮なくても、やはり当初の引き受けは、それはそれでひとつ考えるんだ、こういうことでございますか。
  79. 中村俊男

    中村参考人 それを考えてもらわなければその引き受けはできないというような、まだまだそれほど緊迫した状態にはなっておりませんので、とにかく私ども日本経済のためには従来も非常に御協力を申し上げてまいって、今後もそういう姿勢をとっておりますので、従来は民間部門が非常な資金の需要で日本の経済を支えておった、今日まで持ってきたということに対する、まあ一生懸命協力と責任を感じてきたわけでございますが、今後もそういう意味で、そういう点の御配慮をぜひお願いいたしたい、私どもの資金偏在の問題についても十分な御考慮をお願いいたしたいということでお願いいたしております。ただいまそういう状態でございまして、それができなければどうだこうだというほどまでにはまだ考えておりません。やはりある程度は御協力を続けていかなければならないのではないかという気持ちはいたしております。
  80. 荒木宏

    荒木委員 中山参考人最後に一言お尋ねいたしますが、先ほど来の御意見も、証券団の引き受けの割合は、昨年も予定よりも大分率が高くなったようでございます。いろいろ管理問題、流通問題について御意見出ておりましたが、ひとつ大いにやっていこうというふうな趣旨で伺ったのでございます。ただ、それにもかかわらず手数料問題が、御案内のとおりかなり長期のお話が出ておるようでございますけれども、私はお伺いしたいと思いますのは、確かに個々の企業で見ますと、たとえば野村証券の引き受けがぐっとふえた、今度は日興証券がそれに負けずにいこうというようなことで、四大証券の方のそうした引き受け拡大というのが進んでおります反面で、職場の方では、国債だけじゃありませんが、公社債のはめ込みのノルマというものが非常に強化されている。つまり、そうした幾つかの証券会社の個人引き受けの率がふえる都度、職場では大変なノルマ強制、労働強化という声が出ておるということを聞いておるわけです。また反面、御案内のように、中小証券業の経営の困難あるいは地方取引所の衰退ということもまた大きな問題になってきておりますので、そうした点から業界全体として、もちろん個人消化の向上のために先ほど来の御意見を伺ったわけですが、そういう、それに伴うアンバランスといいますか、申し上げたような職場、地域的なひずみといいますか、その是正のために、いまのお立場からお考えになっていることをお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  81. 中山好三

    中山参考人 まず最初に、手数料の点でございますが、手数料は、国債に限っては、予定量一割やると一円いただいておるわけでございますが、それ以上やりますと手数料がだんだん減ってくる。これは銀行さんとプール制になってやっていくために、従来、三月は一円になったわけでございますが、よけいやりますと、五十一年度を通じてみると八十七銭になる、減っていくというような手数料体系になっておるので、この点の是正方を当局にお願いしておるわけです。  それからもう一つは、いま御指摘のありました、個人消化がふえるについてノルマが厳しくなって、過当競争があったりいろいろ不都合なことがあるのじゃないかということかと思いますが、これは表面的にはいろいろ言われます。実態は御指摘を受ける面も確かにございますけれども、全体的には社業は各社順調にいっておると思います。  ただ、大証券と中小証券の格差云々という問題がございますが、これは長い歴史の間において自然発生的についた格差でございまして、われわれ大証券におる者も、同業として競争原理を著しく阻害しない範囲内では、できるだけ中小証券にも、いろいろな玉回しだとかあるいは手数料の還元とかそういう調整をいたしながら、業界のバランスをとりながら今日まできたようなわけでございます。いまのような行き方でいくならば、御指摘のような心配は余り起きないでいくのじゃないかというぐあいに私どもは考えておる次第でございます。  御質問のあれにお答えいたしました。
  82. 荒木宏

    荒木委員 どうもありがとうございました。
  83. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十三分休憩      ————◇—————     午後六時七分開議
  84. 山下元利

    山下(元)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長指名により、暫時私が委員長の職務を行います。  昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  質議の申し出がありますので、順次これを許します。荒木宏君。
  85. 荒木宏

    荒木委員 大臣にお尋ねいたしますが、赤字国債をなくしていく道筋について先般財政収支試算というのを拝見いたしました。すでに昨年もケースI、ケースIIということで出されまして、本年はそれをA、Bというふうにかえて提出をされておるのですが、先般来の御説明では、五十年代前期経済計画の概案を財政ベースに引き直して幾つかの前提を置いて計算した、そういう中で五十五年度に赤字国債ゼロにするというお話を伺っておるのでありますが、すでに昨年の論議のときにも政府の担当大臣の決意は伺ったわけであります。しかし、諸般の事情これあり、委員会で答弁をされましたとおりになかなかまいらないという経過が出ておるのです。  そこで私は、大臣の赤字国債をなくしていく道筋、目標、決意、そういったことについて、従来の経過を踏まえて初めに改めてお伺いしたいと思います。
  86. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいまの財政収支試算でございますが、この試算によりますれば、たびたび申し上げておりますとおり、五十五年度の日本の国の財政の姿を描きまして、そしてそこへ達成していくという一応の試算がこの財政収支試算でございますが、われわれといたしましては、五十五年度にはとにもかくにも特例公債から脱却したいというつもりで諸般の準備を進めておるわけでございまして、ぜひともこれを達成する方針でございます。
  87. 荒木宏

    荒木委員 脱却の願望といいますかあるいはそれなりの決意というのはお述べいただいておるわけですが、ただしかし、ことほどさようにまいるか、問題はそういう点であります。  それでお尋ねをいたしますが、あの財政収支試算というものは、一つの計算だろうと思うのです。ケースー、ケースーとおっしゃっているところから見ましても、またいままでの御説明から見ても、先ほど言いました中期計画を財政ベースに引き直した一つの計算である。そうしますと、政策あるいは計画というものは、中身ももちろん大事でありますし、同時にそれを政府として遂行していく手続、形式ということもまた従来から重視されておるのですけれども、あの収支試算といいますのは大蔵省の省議決定でございましたか、あるいは政府の閣議決定でございましたか、形式はいかがですか。
  88. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 大蔵省限りのものでございます。
  89. 荒木宏

    荒木委員 そうしますと、大臣も内閣の重要な閣僚の一人でいられるわけですけれども、政府としては五十五年に赤字公債をゼロにしていくということについての決定なりあるいは了解なり、どういう形でしていらっしゃるのでしょうか。
  90. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 昨年の五月に閣議決定になりました経済企画庁の五十年代前期経済計画の中に、五十年代前半には赤字公債から脱却する、そういう文句が入っておるわけでございいます。
  91. 荒木宏

    荒木委員 その政府として決められた五十年代前半に脱却するという閣議決定の具体化の作業は、当然大蔵省の所管になると思いますが、これはどういうふうな作業状況になっているのですか。
  92. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 それを一般会計サイドに引き直しまして財政収支試算をつくったわけでございますが、五十五年が最終年度で、目標をそこへ置きまして、途中年次は、再三御説明しておりますが、仮の計算である。五十五年の特例公債をゼロにするというところへ向けて、歳出面、歳入面において努力を毎年度、毎年度続けていく、そういう考え方でございます。
  93. 荒木宏

    荒木委員 これは本委員会の論議でもすでにあったと思いますが、財政の中期計画を立てることの是非、また財政法の単年度主義との関係、いろいろな面がこれあると思います。実際に赤字公債をなくしていくための道筋、単に計算のプロセス、いろんな場合がありますよというのではなくて、閣議決定をされたその年次目標に向けての政策的な計画、これはお出しになる予定ですか。それともいまのままで、所与の条件のもとに計算だけはいろいろありますよと、私多少言葉が過ぎるかもしれませんが、傍観者的と申しますか、そう言うと言い過ぎかもしれません、ずいぶんと御努力はなさっていると思うのですけれども、しかしはっきりした、これで行くというのが出せるのか出せないのか、これは大臣いかがでございますか。
  94. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 これも前にも議論になっておりますが、財政収支試算の性格の問題かと思いますが、一つは、EC諸国などがやっておりますような、毎年度の歳入歳出を予定する見積もりをいわゆる計画というかっこうでつくる、そういうような考え方がございます。もう一つの考え方は、プロジェクションとかアウトルックといいますか、展望とか見通しというような表現になりましょうか、ある前提を置きまして計算をする、そういうような考え方があるわけでございますが、私どものは後者のタイプでございまして、毎年度の歳入歳出をきちっと強制力をもってする、いわゆる計画というような考え方ではないわけでございます。そういういわゆる財政計画というものをどうするかというような点につきましては、ただいまお話のありましたようにメリット、デメリットがあるものですから、四十九年のときに一応中間報告がまとまっておりまして指摘がございますが、さらにその後の各国の経験などを踏まえて目下勉強しておる、そういうことでございまして、本年三月に国会にお出ししました財政収支試算はそういうような毎年度の歳入歳出予算をぴしっと予定した、いわゆる計画というような性格のものではないということでございます。
  95. 荒木宏

    荒木委員 そこのところに、全体としまして非常に危険な面があるということも一つは言えるのではなかろうか。先ほど来の御答弁を一口で言いますと、いろんな前提を置いて勉強中で、言うなればフリーハンドの面があるわけですね。一方下敷きになっている中期計画、これは財政収支面だけではなくて、言うまでもなく物価の面あるいは全体としての経済成長の面、租税負担率の面、万般にわたっておるわけですけれども、その中でいろいろ様子を見ながら財政収支のやりくりについて政策運営を進めていく。これはうっかりすると弱いところへうんとしわ寄せが来かねない、私はそういう懸念も大いに感じておるわけです。もちろん整合性ということが要求されますから一義的に手を縛るということではなくて、そのときの全体の経済情勢その他を十分にらむということは必要な面があろうかと思いますけれども、しかしいまま指摘しましたような点で、特に私は物価との関係、こういうことをこれから十分見ていかなければならぬ面があるのじゃないかと思うのです。租税負担率を三%引き上げるということが概案の中で言われておるわけですが、五十年代前期に赤字国債から脱却するということになりますと、租税負担率の引き上げということを従来からの答弁でもおっしゃっていますけれども、どういった歳入をとるかによって、どういうような増税方策をとるかによって、物価に対する影響ということは当然違ってこようかと思うのです。もちろん物価動向は税制だけではありません。ありませんけれども、しかしとるべき税制、税目、税の種類によって物価に大きな影響があるということもまた、過去の経験その他から明らかにされておるところであります。したがって、この租税負担率を三%引き上げる上でいろいろな税目が考えられておりますけれども、物価に対する動向ということを十分注意していかねばならぬ、当然のことだと思うのですが、その点改めてお伺いをしたいと思います。
  96. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御指摘の点は、これから具体的にどういう組み合わせなりどういう税目で物を考えたらよろしいかというときに一つの検討課題であるということは十分意識いたしておりますが、ただいまのところ、まだ具体的な税目なりその幅の検討までは入っていないということは、しばしば申し上げたとおりでございます。
  97. 荒木宏

    荒木委員 せんだって税制調査会のメモを提出されましたけれども、その中に一般消費税、これは付加価値税というのもありましたし、それから取引税というのもありましたし、幾つかの種類の一般消費税の税制の検討がされておるということが報告をされておりました。その中で、一般消費税、付加価値税については大蔵省でも勉強はされておるという趣旨の答弁も伺っております。これを採用したときにいままで大体どのぐらいの物価上昇を来していたか、これは全体の経済環境その他でずいぶん違いますし、国によっても違うのでありますけれども、その勉強の過程の中で、諸外国の例ではどのような上昇率を示していたかということについてはいかがですか。
  98. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 具体的に国ごとにその影響を調べたものというのは実はないように私、思いますけれども、比較的新しく採用された国につきましては研究はいたしてみてございます。この問題は、ただいまおっしゃいました部会長報告の中でも両論出されております。一般的に物価騰貴を招くのではないかという御意見も出ておりますし、それから物価というものと税負担というものとは一応切り離して議論しないといけないのではないかという御議論も出ておりますので、なお今後の検討の一つの大事なテーマであろうと思っております。
  99. 荒木宏

    荒木委員 主税局長、ヨーロッパの方にも調査団、勉強の人たちを出されたということを聞いておるのですけれども、どこでどのぐらいというのはもうわかっているのではないですか。いま税調では勉強中と思いますが、大蔵省としてはもう何年か前、勉強を続けているということを聞いておりましたから、どこでどのぐらい上がったということはつかんでいらっしゃるのじゃないですか。
  100. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 これは、よく言われますのは、オランダの場合には導入の時期の前と後で付加価値税の税率の幅とほぼ同じ、見方によってはそれ以上の物価騰貴を招いたのではないかという判断が一つあるように思います。それからイギリスの場合は、必ずしも上がらなかったという判断と、なかなか統計的には言えないけれどもやはりレストランの食事なんかは上がったんだという判断と、両方出ているようでございます。
  101. 荒木宏

    荒木委員 小出しにしないで、調べられたことがあったら、どこがどのくらいというようなことを、関係があったかどうかというのはこれはもう少し分折しなければならないと思うのですが、しかし結果はわかっているのでしょう、導入のときにどのくらい上がったのか。そのわかっている範囲のことはひとつ報告をしてもらいたいと思います。
  102. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 いままとまったものがないように私、思いますけれども、なお従来の検討結果をもう一度振り返ってみまして、お出しできるものがあればお出しいたします。
  103. 荒木宏

    荒木委員 この点についてのいろいろな指摘や資料は、大蔵省の勉強以外にも出されておるように聞いておりますけれども、いま局長も言われた、オランダの場合には八ないし九%ですか、そのぐらい上がったという指摘もあり、ノルウェーの場合には六%物価騰貴があった、それからルクセンブルクの場合には二%、フランスの場合には一%でしたか、西ドイツの場合もジュッセルドルフの商社の話では、その前後に物価騰貴で大変困ったというふうな報告もあったといういろいろな指摘がされておるように聞いております。そうしますと、それぞれの場合には、そう短絡的、機械的にはもちろん結論は出せぬと思います。さればこそ勉強もやられると思うのですけれども、しかし一般消費税、付加価値税の導入によって物価が騰貴したという事実があったのは、やはり厳然たることであろうかと思うのです。そうすると、どういうことでそれが上がったか、どういう時期に上がったかということは、その検討の非常に重要な中身になろうかと思うのです。いままで大蔵省の検討されたところをひとつ十分にまとめていただいて、そして論議の資料にするために提出をしていただきたいと思うのです。
  104. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 いずれもう少し時間をかけて掘り下げて勉強をしようということに第二部会の方もなっておりますので、そちらでも同様の御検討をいただく機会もあろうかと思います。私どもとしまして手元の資料でどの程度のことが読み取れますか、あるいは別途もう一遍調査をしてみますか、それらをいたしてみました上で、お出しできるものがあればお出しいたしたいと思います。
  105. 荒木宏

    荒木委員 大臣に伺いますけれども、いまの論議を踏まえて、一般消費税の導入が物価に影響を与える、物価を押し上げるということは、政治的に判断されて大臣も当然お認めになると思うのですが、いかがですか。
  106. 坊秀男

    ○坊国務大臣 実は私ももう十年も前になりますか、ヨーロッパへ参りまして、フランスを中心とした付加価値税を調べてきた人間でございますけれども、不思議なことに日本と違うのですね。日本では消費税の税率というものだけ物価の上へ加えておりますけれども、向こうでは物価と税というもの、これはもう国民の観念の問題でしょうが、物価と税というものを非常に分けて考えておる。どっちが正しくて、どっちが正しくないかというようなことは別に批判してみねばならぬけれども、そういうような関係で、付加価値税で税をかければ確かにそのものがその税率だけ上がるわけでございますから、これは税だ、これは物価だというふうに考えておるようでございまして、ここに日本とずいぶん違うなということを感じてまいりました。  それともう一つは、物価に関係をするということは、われわれの考えからいきますと、これはもちろんヨーロッパでも各国とも税率が違いますからね、日本はむしろ付加価値税を、やるかやらぬかは別といたしまして、やるとすれば税率を幾らにするかというようなことによってそこいらのところが違ってくるというふうに私は考えますが、なおひとつ検討し、勉強してみなければはっきりしたことは、むろん付加価値税をやるんだということであるならば、それはもういまごろわかっておるわけですけれども、まだやるともやらぬとも決まっておりませんので、私の頭の中にもそれだけ整理はされていないというような状態でございます。
  107. 荒木宏

    荒木委員 やるかやらぬかということだけじゃなくて、問題は、そういうことをやれば物価に対する影響が必ずあるんではないか、こういうことを伺っておるわけですよ。フランスの方で物価と税と別に考えているかどうか、物の考え方は国によっていろいろ違うと思うのですね。しかし、日本では、税負担が重くなって物価に転嫁をされればやはり物価は上がったというふうに一般は感じているわけですからね。だから、整理の仕方がどうであるかということじゃなくて、日本の場合にも、いろいろな諸国の経験からすれば物価押し上げ要因になるだろう、それは政治的にやはりにらんでおくべきことではないかということを伺っておるわけです。それは大臣、認識されておるのじゃないですか。
  108. 坊秀男

    ○坊国務大臣 とにかく一%の税をかければ百円の物が百一円になるということでございます。その点は私もそのとおりだと思いますよ。
  109. 荒木宏

    荒木委員 そうしますと、もちろん率による影響はいろいろ違うと思うのですけれども、この中期計画では物価は六%というふうに見ておられるのですが、あの立案の段階では付加価値税あるいは一般消費税の導入は、もちろん勉強の段階ですから決めていらっしゃらないと思うのですが、いろいろ勉強の結果、租税負担率三%上昇ということになると、これは物価が六%、五十年代前期ですが、これを押し上げるということはないでしょうね。閣議で決められた六%、これはわれわれは六%でも高いということを言っているのですけれども、それは一応おきまして、政府みずから決められた六%を、一般消費税なりあるいはその他増税の措置をとることによって押し上げられるということはないと思いますが、その点ひとつ確認をさしていただきたいと思います。
  110. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 前期経済計画におきましては、先生御案内のように租税負担率を国民所得対比三%引き上げるということはございますが、これを何税によって、またいつ引き上げるということは予定しておらないわけでございます。しかし、租税負担率三%ということの上昇が行われた場合におきまして、この計画期間内における物価の上昇率につきまして、消費者物価については六%台、計画期間、平均いたしまして六%台、それから五十五年度には六%以下にする、こういうふうな形になっておるわけでございます。  したがいまして、一般消費税を導入した場合にどうかというふうな御質問かと思うわけでございますが、一般消費税をとるのかとらないのかという問題もございますし、それからそれを採用いたします場合に、どういう税率で、どういう条件でするのか、そのときにおけるいろいろ経済情勢というようなものを勘案いたしませんと、軽々にその影響というものは出せないのではないかというふうに考えるわけでございますが、経済計画の基本的な考え方といたしましては、具体的にどういう税が導入されようとも、物価対策というものを強力に遂行いたしまして、計画に掲げておる目標は達成いたしたい、こういうふうな考えでおるわけでございます。
  111. 荒木宏

    荒木委員 企画庁の考えは聞かしていただいたのですが、経済関係閣僚として、また財政担当の大臣として、いまいろいろな増税の方策を勉強中ということなのですが、その内容によっては物価に対する影響というものはかなり違ってくる。政府みずから決めているこの六%目標というのは、どのような税をとろうとも、その増税措置をとることによって六%を変えることはない。いま企画庁はそういう方向で努力したい、こう言ったのですけれども、大蔵大臣のお考えはいかがですか。
  112. 坊秀男

    ○坊国務大臣 新しい税を考えると申しましても、付加価値税一本をいまの税制へ加えていくというようなことは、これはないと思います。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 一般消費税を採用するというようなことが仮にあっても、いまの税体系へこの一本の税を加えていくということでなくて、私はいろいろな角度から見まして、相当複雑な、いまの所得税や法人税をやめてしまうというわけにいくわけのものじゃない、そういったような税をどういうふうに組み合わせていくかということが、相当今後の経済、物価、そういったようなものに影響を持つものであろうと思います。だから、この税をとるから物価が上がるのだ、この税をやれば物価に影響しないのだということをいま考えるわけにはまいらない。税体系をどういうふうに持っていくかによっていろいろな動きが生じてくる、こういうことではないでしょうか。
  113. 荒木宏

    荒木委員 税体系をいろいろなぐあいにとることによってどういうふうに動いてくるか、それはそうだと思うのですが、その結果六%を超えてもやむを得ぬ、こういうことなのかと、こう伺っておるのです。
  114. 坊秀男

    ○坊国務大臣 できるだけその物価の決めた限度と申しますか、それはそこの線を踏み越えたくない、こういうふうに考えております。
  115. 荒木宏

    荒木委員 これは政策目標として出された数字であろうと思いますので、そのこと自体を認めるというのではありませんけれども、しかし、税体系あるいは増収措置、そういうふうな側面だけからの配慮で政府みずからが決めたその目標数値すら守られないということでは、これから物価問題を論ずる場合に非常に大きな問題になろうかと思うのです。ですから、その点は財政再建ということを進める上でも十分念頭に置かれなければならぬ。いわんや中期計画でみずから定めたところは、いやしくもこれは逸脱することがあってはならぬというふうに考えて伺ったわけですけれども、それは大臣、決意、約束として伺ってよろしゅうございますか。
  116. 坊秀男

    ○坊国務大臣 目下のところはその税体系というものが、私の頭の中には、材料はいろいろ出してもらっておりますけれども、それをいろいろな角度から、どれを採用するか、これはどうしよう、こうしょうといって真剣に考えておるところでございますので、私といたしましては、いろいろな角度から考えまして、そうして収入も充足していきたいし、そんなめちゃくちゃな物価の上がりようは、それはそれでいいのだというような考えは持っておりません。  そういうことでございますので、私がいま何か姿を確定的に申し上げておることでないのでございますから、そこの点は御理解を願いたいと思います。
  117. 荒木宏

    荒木委員 それじゃしかし六%なんて決めたって、そのときの言葉だけで、歯どめにも何にもなりゃせぬじゃないですか。やはりそれは目標で、達成するということで打ち出す以上は、それは税体系上の要請はいろいろありましょう、しかし経済のすべての領域が税体系だけで貫徹されるものではないですし、ほかの要請がありますからね。そうだとすると、やはり税体系上の要請もその限りでは低めなければいかぬのじゃないでしょうか。  ですから、先ほどの質問の繰り返しですけれども、六%とおっしゃっているのですから、それを引き継いで、大臣自身もその閣議決定の一人なんですから、それをはみ出すような税体系の構成はしないというのが当然ではないかと思うのですが、その約束をいただけるかと、こう聞いているのです。
  118. 坊秀男

    ○坊国務大臣 物価を決定するものは、私は必ずしも税だけではないと思うのです。いろいろなものが、政策が集合しまして、それで物価を決定していくであろう、こう考えますので、物価の六%という限界を絶対に税によって踏み越さないというようなことはちょっとお約束いたしかねると思うのですよ。もちろん、一般的に見まして、私もその六%というものを決めた人間でございますから、これはどうしたって守っていきたいと思っておりますけれども、いま、税だけからそれを決定するということではないのじゃないでしょうかね。むろん、いろいろなものを総合して物価が決定されるということであり、また物価によっていろいろなものが決定されるというような、非常に複雑なる絡み合いでもって経済というものがそこに生まれてくるのじゃないでしょうか。わけのわからぬことを申しましたが。
  119. 荒木宏

    荒木委員 一般的には物価決定の要因なんというものは複雑に絡み合っておりますから、いろいろな面があるわけですけれども、税だけで六%を超えるかどうかということを言っているのじゃないのです。しかし、どういう税を採用するかによって物価に影響があるということは皆さんもお認めになっている。ですから、そのときにこの六%とおっしゃっておるのを断固として守り抜くという気持ちがなければなかなか守れぬのじゃないでしょうか。ほかの要素だっていろいろあるのですし、対外的な要因だってあるのですから。少なくとも、どういう税目をとるかを決めるときに、同時に物価のこの線をにらんでこいつは守っていくという決意で約束がなければ、これはあってないようなものじゃないでしょうかね。だって、ほかの要因でみんな決まる、こういう筋合いが通るとすれば、これはあってないようなものじゃないか、こういうことで伺っているのですから。その一般的な物価決定の複雑な絡みの方を大臣は強調されますけれども、それはもう当然の前提なのです。税の体系を決めるときに、どういう増税措置をとるかということを決めるときに、この六%を守っていく、十分念頭に置いていく、それは約束をするということを伺っているわけです。
  120. 坊秀男

    ○坊国務大臣 やがて税の体系を決めるときには、物価六%ということを頭の中に置きまして、それを尊重してまいらなければならない、私はかように考えます。
  121. 荒木宏

    荒木委員 関連して一言伺っておきますけれども、現総理が企画庁長官をしておられましたころに物価についての目標を示されたことがあったと思うのですが、企画庁の方お見えになっていますから、一言説明をしていただけませんか。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕
  122. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 先生の御質問は、五十年二月の物価対策特別委員会におきまして、当時経済企画庁長官であった福田総理が、五十一年度中のできるだけ早い時期に少なくとも定期預金金利の水準程度の上昇率に安定させたいというふうなことをおっしゃったことを意味するのではないかと理解しておりますが、そういうことでよろしゅうございます。
  123. 荒木宏

    荒木委員 この点も本院で再々論議をされたところでありますけれども、大臣いかがでしょう。これは関連で一言伺っておくのですが、五十年代前期六%ということをおっしゃっておるのですが、それが定期預金の金利以下だということになりますと、裏から言いますと定期預金の金利はそれよりも下げないということになるのじゃないでしょうか。つまり、片っ方は、閣議決定で五十五年まで六%とおっしゃっている。一方、現総理、当時企画庁長官は、定期預金の金利以下だとおっしゃるのですから、これは言葉のつなぎだけで言えば、定期預金の金利はそれ以上だ、五十年代前期の定期預金の金利はそれ以下には下げないのだというふうに伺ってよろしいですか。
  124. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 預金の金利につきましては、改めて申し上げるまでもなく、そのときどきの経済情勢に応じて判断をすべきものであろうと思います。したがいまして、先ほど先生御指摘の福田企画庁長官の御発言の趣旨は、そういう決意で物価対策を講じられるということであったのではないかと私は理解をいたしております。
  125. 荒木宏

    荒木委員 大臣、政治的にちょっと伺いたいのですが、おっしゃった御本人はいらっしゃらぬのですけれども、決意なら、物価をできるだけ下げていくのだということでしょう。こういうふうに何%何%とおっしゃっておるわけですね。六%というのは閣議決定でしょう。しかも、それは中期的な目標決定ということになっています。問題の絡みは、定期預金の金利を一つの目安としておっしゃっておるわけです。確かに、いま銀行局長御答弁のように、もちろん金利はそのときそのときの経済情勢で決められるべきだと思うのですけれども、やはり目減り補償だとか、いろいろな社会的要請も十分加味されてくる、同時に、物価目標としての社会的、政策的な観点だって当然入る、そういう性質のものだと思うのです。  しかも、所信表明ではっきりお約束になり、たびたび繰り返されておるわけです。六%ということも、もう何遍もおっしゃっておるし、何度も資料で出ております。片や、定期預金の金利以下になるということも繰り返しおっしゃっておる。もう何べんも論議になったところです。経済的な性質は経済情勢で決められるべきことでしょうけれども、あえて政治的におっしゃっているのですから、これは政治的に当然福田内閣として守っていかれることじゃないでしょうか。経済関係閣僚として、また金融も扱っていらっしゃる主務大臣として、その点の御意見を伺いたいと思います。——これは政治的なことですから大臣に伺いたい。
  126. 坊秀男

    ○坊国務大臣 後で答えますから。
  127. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 私なりの理解をいたしましたところでは、金利そのものにつきましては、先ほど申し上げましたように経済情勢に応じて判断すべきものであろうと思います。物価対策につきましては、中期的に見まして現在ある定期預金金利の水準以下に物価を抑えたい、そういう物価対策についての非常な熱意を披瀝されたものと私は理解をいたしております。
  128. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私はエコノミストでないものですから、そういう金利の理論になってきますと、これは勉強させてもらわなければ、いきなり聞かれましてもなかなかわからぬのでございますけれども、要するに、福田現総理は物価についての中長期的な目標を定めまして、そしてそれに向かって諸般の政策をそこへ目標をつけてやっていくという決意を示したのが福田総理の目標であった、そうではなかったろうか、かように考えます。
  129. 荒木宏

    荒木委員 御本人がはっきりおっしゃっておるわけですから、当委員会にお見えの機会に直接御本人に伺うということにさせていただきたいと思うのです。はっきり両方連動させて計画としてそうやるんだとおっしゃっていて、片一方数字が出ているわけですから、私は当然そういったことが問題になると思うのですけれども、これはそのときの機会にさせていただきたいと思いますが、大臣もひとつ総理と十分御連絡、協議を願いたいと思うのです。  最後に、大量国債発行ということになりまして、この引き受け問題に絡むいろいろな問題を伺っておきたいと思うのです。  引き受けにつきましては本日も参考人の御意見がいろいろありました。全銀協の代表からは、引き受けをするについて、引き受け原資の調達のために資金吸収手段のいろいろな配慮も希望したい、こういうお話もありましたし、それからまた個人消化の分、証券団の方は個人消化比率が進んでおるのですけれども、しかし同時に、そのことが直接証券労働者の労働強化、ノルマの強制、しりたたき、こういったことにならないかというふうにお尋ねをしたのに対して、そういう話も聞いているというふうな御意見もあったわけです。こうした銀行それから証券だけではなくて——そういうところでも、もちろん国債引き受けだけではありませんけれども国債の大量発行ということも大いに影響して、そして職場における労働条件の悪化ということがずいぶん問題になっている。国債個人消化すると言っても、実際にはめ込んでいくのは証券労働者がやるわけですから、机に向かっている人だけでできるわけじゃないですから、そういう点から言いまして、特にあわせてきょうお聞きしたいのは、銀行それから証券は前にも本委員会で伺ったことがあるのですが、保険の分野でも、こうした大量発行ということがこれあり、それから経営上の問題その他が絡んで、いろいろと職場におけるノルマの強制ということが非常に進んできている。一つ事例を申し上げて調査、検討、御意見を伺いたいと思うのです。  それは損保業界の東京海上の問題でありますけれども、ゴーゴー作戦というのがありまして、それでひとつ契約高を十分上げていこうということで、課や支店を七つずつグループにしまして、十分成績の上がったところには賞金を出す、成績のよくなかったところにはペナルティーを科す、こういうふうなやり方が行われておって、これにはゴーゴー作戦を成功させようということでレコードまでつくって、大変ノルマ強制、しりたたきをやっている。そのことによって契約者の方にも、実際は料率が下がれば差額を払い戻ししなければならないのに、払い戻しをすれば成績が下がりますから、本来の料率低下により払い戻されるべき差額が契約者に返されないでそのまま滞留している。報道によりますと二万四千件ぐらい返さなければならないのが、四千件ぐらいしか履行されていない。総額は億を超えるのではないかという、いうな計算がやられておるのです。  こうした問題は、前に銀行関係では私は幾つかの銀行の職場の例を引きまして、そして頭取の就任記念だとか、あるいは何周年記念の預金獲得運動だとかいうことの問題を提起したことがあります。それからまた証券の方では、四大証券のある地方支店の一カ月のノルマということで、国債は一億一千万円半強制的に割り当てになる。さばくのに大変な気苦労をしなければならぬということがあるのですが、いま例を挙げました損害保険業界、東京海上の場合も同じような状況が出ておって、しかもそれが契約者に大変な迷惑、被害を及ぼしている。この国債発行だけですべてそういうことが起こったとは言いませんけれども、しかし大量発行がどんどん継続されていく。そうすると、金融機関で言えばポジションの問題がありましょう。それから利ざやの問題もありましょう。あるいは競争激化の問題もありましょう。引き受け側の金融機関で、銀行と言わず、証券と言わず、保険と言わず、こういう形がずっと進んでいくということについて大量の国債発行時代を迎えて当然十分調査をし指導、是正をされなければならぬことだと思うのです。  そこで、一つの例として挙げました東京海上の例について銀行局の方から御答弁をいただきまして、あわせて全体について大臣の方からまとめて御所見を伺って質問を終わりたいと思います。
  130. 副島有年

    ○副島説明員 御指摘の保険金の返戻が過当競争の結果十分行われていないという点につきましては、早速私どもの方でも照会をいたしましたが、新聞の報道にありますのは、昨年の四月一日から長期の火災保険につきまして料率を引き下げた問題に関連してのことであると了解をしておりますが、この引き下げは、先生御案内のように全国一律あらゆる物件に対して行ったのではなくて、地区別あるいは物件別に過去の実績に基づきまして実地検証した結果、部分的な引き下げを行ったわけでございます。したがいまして、一律全物件に関しての引き下げでございますと返戻がかなり早く行われるわけでございますけれども、一々物件と申しますか契約を当たって返還が必要であるかどうかということを審査しなければならないというために、かなり返戻に手間をとったということだというふうに私どもの方では聞いております。  ただ、実際問題におきましては、ことしの二月に、先ほど先生の御指摘のように、二万四千件のうち四千件しか返してないんではないかということで、あわてて督促をして返戻を推進したということでございますけれども、その後精査をいたしましたところ、先ほど申しましたように全物件が料率が引き下げになったんではないということで、実際に返戻の必要のあるものは約一万五千件でございまして、そのうち現在未返戻になっておりますのは約八百件、金額にして六百万程度ということでございます。  ただ、先生御指摘のように、料率が引き下げになりましてからすでに九カ月たっておりますので、私どもとしては、料率の引き下げというものは今後とも絶えずあり得ることでありますので、今後のことを考えまして、今後引き下げた場合にいかに早くこの返戻が行われるかどうかという方策について現在検討しているところでございます。  それから、先生最初に御指摘のありました東京海上のゴーゴー作戦ということにつきましては、私ども実は関知しておりません。現在照会中でございますけれども、損保業界、損保の事業というものは、その損保事業の特性から見まして、いわゆるカルテル料率というものが認められているということから、保険審議会におきましても、むしろ国民見地から公正な競争が行われないおそれがあるということで、公正な競争を行って経営の効率化を図り、もって消費者のサービスを向上するようにしていかなければならないという御指摘を受けております。  ただ、そうは申しましても、競争が激甚になりまして、過当競争になりまして、その結果消費者に迷惑をかけては、これは許されるべきことではございません。また売らんかなという主義で消費者のサービスが行き届かないということであってはいけないということで、私どももそういう見地から損保業界を強く行政指導をしているところでございます。もちろん違法の行為があればこれを取り締まる、厳正な処分をするということは申すまでもございません。
  131. 荒木宏

    荒木委員 いまの件は調査して報告してくれますか。
  132. 副島有年

    ○副島説明員 はい。
  133. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 ただいま御指摘の、保険会社も含めました金融機関全体の競争のあり方の問題でございますが、御指摘のように、こういう免許企業の場合にはいい意味での競争というのがともすれば減殺されまして、店舗ですとか預金の多寡ですとか、そういう形式面の競争に陥りがちだということは御指摘のとおりだと存じます。そういう点につきましては、特にこういう厳しい経済情勢下におきまして、いい意味の競争を助成しますとともに、そういう取引先の利益に直接つながらないような競争は極力自粛をして効率化に努めるということが金融機関として最も大事なことではないかと思います。私どもとしましては、そのときどきの問題をとらえまして、そういう考え方から過当なる競争を自粛するようにということを指導いたしてまいっておりまして、最近では周年運動その他のこういう競争を自粛するというようなことを要請し、かつ具体的にも指導しておるところでございまして、令後もそういう考え方で金融機関に対する行政をやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  134. 荒木宏

    荒木委員 終わります。
  135. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 永原稔君。
  136. 永原稔

    ○永原委員 一、二お伺いいたします。  財政演説においても大臣は、財政体質の改善を図るというようなことを強くおっしゃっておりました。この前の提案理由の説明を拝見しましても「財政体質の改善合理化」、こういうことをお述べになっておりました。特に、歳入におきまして財政の健全化ということになりますと、これは恐らく公債依存度が二九・九、それを二九・七に下げたというようなことが一つの大きな理由になっていると思いますし、経済計画とのバランスで適度の財政規模を維持したということについても、健全化ということに関連してお述べになっているのではないかと思うのです。ところが歳出におきまして、やはり同じように財政体質の改善合理化を図ったというようにお述べになっておりますけれども、歳出の中でどういう点が合理化され、改善されたのか、そういう点についてお教えいただきたいと思います。
  137. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 ことしの一般会計の予算規模が一七・四でございますが、交付税と国債費、そういう特殊要因を除きますと、前年のそのベースで一八%ぐらい伸びておりましたところを一三・六%ぐらいになっておるわけでございます。マクロ的に申しましてそういうような数字が一つ御指摘できるかと思います。  それから、別途個別に考えてみますと、補助金の整理、毎月やっておるわけでございますが、五十一年度かなり大幅にやったわけでございますが、五十一年度に引き続きまして五十二年度の場合も約七百億でございまして、日数で十九ぐらい入れかえをやっております。  そのほか、予算編成に臨みまして、シーリングと申しまして要求の枠を設定いたすことから始まるわけでございますが、昨年の七月に一般的な事務費は一〇%、政策経費は一五%というようなところでたがをはめまして、各省に自主的に経費の優先順位を洗い直してくれないかということを呼びかけたところから始めまして、編成過程でわれわれなりの努力をいたしたと思いますが、まだまだ努力が足りないと思いますが、五十二年度におきましては、マクロ的、ミクロ的に申しましてそのようなふうにやったというふうに考えております。
  138. 永原稔

    ○永原委員 いま公共事業に特に力を入れた点がお答えに出るかと思いましたけれども、公共事業対象経費が四兆四千四百十六億、それに対して、全額といっていいくらい建設公債発行していらっしゃるので、この点について伺おうとしたわけです。しかし、いまお触れになりませんでしたので、そういうような補助金の整理とか、あるいはこれは将来とも振りかえ支出の増大というようなことはどうしても増加していくでしょうけれども、そういうものの増加に対応して歳出の見直しをやっていらっしゃるという事情はわかりましたので、これ以上この点については触れません。  その次に、お配りいただいた税収の資料ですけれども、一月末の租税収入並びに二月末の税の収納状況を拝見してみますと、昨年と比べて収納率が非常に上がっているように思います。特に所得税において昨年同期と比べますと、これは七七・一%、進捗歩合が約二%近く上がっている、こういうような数字を見、あるいは法人税の収納歩合が昨年同期よりは非常に高まっているというようなところから、ことしの税収についてある程度の自然増が期待できるのではないか、こういう気がするのですが、これと経済成長率と何か関係があるかどうか、その点についてお教えいただきたいと思います。
  139. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 五十一年度の成長率につきましては、ほぼ政府見通しどおりの数字になるのではないかと聞かされておりますが、税収の方は、ただいま永原委員がおっしゃいましたように、わかっておりますのは二月末まででございます。二月末の状態で見ますと、昨年度に比べまして進捗率が若干上回っておるということで、昨年の十一月ごろまでは私ども予算額を達成してくれればいいがなという心配をし続けておりましたが、二月末の数字を見ますと、その心配は消えた、むしろ若干でも予算額に比べていわゆる自然増収が出てくるのではないかと思われますけれども、昨年の三月が、実は御記憶のように、制度改正に伴います異常な土地のかけ込み譲渡がありまして、税収が非常に多かったものでございますから、ことしそれほどの大きな譲渡は期待できないというふうな面もございまして、もう少し様子を見させていただきたい。ただ、もうマイナスになることはない、予算額達成は大丈夫、ある程度の自然増収は出るだろうということは申し上げられるようになったと思います。
  140. 永原稔

    ○永原委員 税収がある程度増収になるというようなお話がございました。実は五十一年度に補正予算で九百六十八億の歳出節減を行っていらっしゃるので、繰越金が大変だろうな、こう想像しながら、五十一年度のあの特例公債法律の第三条関係あるいは財政法六条の関係、こういうことについてお伺いしたかったのですが、この点はいろいろの事情がありますので質問はやめておきます。  ただ、本当に増収になりましても、片方で節減をやっていますので大きな繰越金は期待できないだろうな、こういう想像をしておりますが、そういうような見方はよろしいでしょうか。
  141. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 大体それほど大きな金額は期待できない状況にあると思います。
  142. 永原稔

    ○永原委員 話題を変えまして、建設公債特例債について再度お尋ねしたいと思います。  まず、きょうは参考人のいろいろなお話がございました。新自由クラブでは御推薦した方がなかったのですが、たまたま井手文雄教授のお話を承っていて考えを同じゅうして、やはりこういう考えがあるのではないかということをもう一度大臣にお話ししてみたい、こういうつもりなんです。  建設公債あるいは特例債と言っても、両者は財源不足を補うために発行されるという点においては同じだと思います。特に建設公債について財政収支試算を見てまいりますと、少い方のケースAの場合でも五十二年度に四兆四千三百億、五十三年が五兆一千三百億それから五十四年が五兆九千五百億、五十五年が六兆七千八百億、こういうようにだんだんふえております。しかも起債の公債残高を見てまいりましても、五十三年が三十九兆六千億、四十七兆七千億、五十四兆七千億というふうにだんだんふえております。これに対する利子負担がどのくらいになるか、数字は出ておりますけれども、平均金利でいま発行されるものが約八%、全体の金利ですとそういうように高くはなりますまい。仮に昔の六・五%という金利をとりましても、この現債額に対して非常に多くの金利負担になっていくわけです。一%違えばすでに三千数百億違うというような状況になってきております。こういう中でこの建設公債についてやはり一つの歯どめが必要ではないだろうか、こういう気がするのです。特例債については、これはもうゼロにするのだという意思決定によってそれを補う措置をほかに求める、たとえば増税に求めるというようなことも可能でしょう。しかし建設債をこのまま発行を続けていけばこれまた非常に大きな問題になってくると思うのです。公共事業あるいは出資金、貸付金の事業の財源ということ外歯どめがされているように見えますけれども、これは実際の歯どめにはなっていない、これが現実だろうと思います。そういう中で経済計画では十兆円の公共投資というようなことを述べ、それに対応して建設公債がどんどん発行されていくということになるとすると、五十五年以降もこれは非常に大きな問題を残すと思うのです。こういう点について将来どういうお考えをお持ちになっていらっしゃるのかお聞きしてみたいと思います。
  143. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 建設公債の歯どめでございますが、基本的には四十一年にいろいろ御議論がありました際にもあったわけでございますが、一つは国民経済と調和のとれた予算規模を設定するというのがやはり基本かと思うわけでございます。  二番目には、ただいまお話にもございましたように、公債財源で賄う経費を財政法四条のただし書きによりまして公共事業、出資金、貸付金に限定いたしまして、国会で予算総則でその範囲について議決をいただいて、その金額の範囲で公債を出していくというのが第二の基本的な考え方だと思います。  それから三番目には、消化の際にあくまでも市中国民の貯蓄を活用していくという、この三つ建設公債についての歯どめを考えておるわけでございます。  それから将来の問題でございますが、五十五年の公債依存度一五・五くらいになっております。将来については絶対額はふえてまいりますけれども公債の依存度というのは、四十二年の財政制度審議会でも御指摘があったわけでございますが、あのときには数年をかけて五%以下に落としていくのだ。もちろん経済情勢関係するわけでございますが、景気がいい場合には公債建設公債といえどもできるだけ落としていく、そうして景気の悪いときには財政が公共事業を増額できるような運営の余地を絶えず維持できるようにしておくという考え方があのときも議論になったわけでございます。五十五年度以降特例債がなくなった暁、建設公債について基本的にはただいま申しましたような三つの原則と、それから公債依存度は一五%からさらに一〇%へ向け、さらに景気がよければ五%の方へ向けて落としていく、こういうようなことが基本的な考え方だろうと思います。
  144. 永原稔

    ○永原委員 この前、大蔵大臣が公債と戦争論までいろいろお話しくださいまして、高橋財政について、税の自然増でこれを償還するようにがんばったというようなお話をいただきました。少し飛躍論ではあったと思いますけれども、本当に公債について非常に心配になります。いまの減債制度を見てまいりますと、国債整理基金特別会計法によって三つの原則が決められていると思います。法の第二条の二項で前年度首の公債残高の百分の一六、それから二条ノ二でもって割引債のようなものについては利子相当分の年割り額、こういうものを一般会計から繰り入れるように示されていますし、第二条ノ三と財政法の六条の関係で剰余金の二分の一を下らぬ額、予算で定める額を入れるのだというようなことが減債制度の中心をなしていると思います。しかしこの百分の一・六というのは、四十一年、国が公債政策に転換したときにこの率は改正されておりますね。それで百分の一・六というのはやはり六十年の期間を対象にしたものであると思いますので、前提には借りかえがある、こういうように思います。やはりこの法律には第五条で借りかえということが挙げられておりますけれども、こういうものを方法論として取り入れつつ、満期前の償還あるいは買い入れ消却というようなことで公債を返そうとしていらっしゃる、こういうような公債制度というのがすべてに通ずる制度として適当であろうか、ここに私は疑問を持つわけです。財政制度審議会において、五十年の補正予算のときに、この現行の減債制度は公債の銘柄ごとの制度ではないのだ、公債の総合的減債制度としてこれは構成されていて、現行の制度の適用でこの赤字公債にも十分対処し得るというようなことが述べられているように読んでおりますけれども、やはり赤字公債についてもこの原則でいくということにお気持ちは変わりないでしょうか。
  145. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 赤字公債につきましても全く同じように考えております。四十二年に減債制度ができましたときに、戦前債とか外債につきましても同様に考えまして総合的な減債制度として一般財源をどういう方法で公債の消却に充てていくか、そういう制度を総合的な仕組みとして仕組むということから特例債につきましても、全く同じ考え方でいこうという考え方でございます。
  146. 永原稔

    ○永原委員 いま、五十二年度予算の説明、これは読みやすいいい資料だと思いますけれども、これでいろいろ拝見してみまして、国債整理基金特別会計の中で、いろいろ説明が加えられております。「償還期限到来額三千五百四十九億六千百万円と借換額三千百四十億二千五百万円との差額四百九億三千六百万円については、いわゆる現金償還を行う」、こういうように書いてあります。これは、建設公債については「国債発行対象施設の平均的耐用年数を六十年とみて、財政負担の平準化を図りつつ、その期間内に償還していくことを目途としている。従って、四十五年度に発行した国債(七年満期)については、満期到来の際その六十分の七程度は現金償還し、残額は借り換えるのが妥当であると考えられるので、上記のように措置することとしている。」こういう説明が加えられております。借りかえと、それから定率積み立て分でもって償還し、そうしてあとは現金だ、こういう定率でもって現金償還をするというようなことで述べられておりますけれども、剰余金の繰り入れ分はこの現金償還分に入ってこないのでしょうか。その点を教えていただきたいと思います。
  147. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 定率繰り入れと一体のものとして償還財源に充てております。
  148. 永原稔

    ○永原委員 先ほど来、この減債制度で特例債も償還を図るというようにお話しになっております。しかし、この特例債というのは、いつもお答えがありますように、十年で返還する、それでもって片をつけたいのだ、こういうようにおっしゃっております。この減債制度全般で、制度を原則として適用していけば借りかえということも考えられるのではないか、こういう気がするのですけれども、これは方針として十年で返還する、借りかえはしないのだ、こうおっしゃっていますが、その理由は特に何かございましょうか。
  149. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 五十年の補正で年度途中で特例債を出さざるを得なくなりまして、当委員会特例法の御審議をいただいたわけでございます。     〔小泉委員長代理退席、保岡委員長代理着席〕 その際に、四十年のときにいわゆる赤字公債特例債を出したわけでございますが、その際に、その当時は公債が七年ものでございましたが、七年後には現金で完済するということを国会の議論の過程で政府の方がお約束した先例がございます。そういうような議論が五十年度の補正の特例法の御審議の過程でございまして、私どもといたしましては、将来の財政の節度を示すということと、それから国民に対する信頼と理解というようなものを得るために、そういうような措置を五十年度特例債についてもとるべきではないかというように判断いたしまして——ただいま御指摘のように、国債整理基金特別会計法では、借りかえを国会の方で行政府に授権していただいておるわけでございますが、財政制度審議会の法制部会におきましてもいろいろ御議論がございました。あのリポートの中にも書いてございますが、国会の方から政府に授権されているものをあえて立法までして借りかえをやらないということを書くことの意味は何であるかという御指摘がございます。ただその場合にも報告の後の方に書いてございますが、政府の将来における健全財政堅持の決意を示すということであるならば、立法政策として全く理解できないわけでもないというようなリポートになっておりますが、私どもといたしましては、五十年度のときにそういう御議論があったために、五十一年度の特例法の際に借りかえをしないという条文を入れた法律を御審議いただきまして認めていただいたわけでございます。五十二年度の特例法においても、五十一年度と同じように考えまして、そういう決意の表明といたしまして、借りかえをしないという条文を織り込んでおるわけでございます。もちろん公債について借りかえをしないということについてはいろいろ御議論はあろうかと思いますが、ただいま申し上げましたような、特例債を何としても減らしたいという決意の表明として、そういうような立法をお願いしている次第でございます。
  150. 永原稔

    ○永原委員 公債論についてはいろいろ意見が分かれるところだと思います。ただ、借り入れる意思決定して発行するということと返すこととはまた別だろうと思いますけれども意見が合いませんので、別の見方をしまして、借りかえをしない場合、現在の減債制度で定率繰り入れが百分の一・六となっておりますけれども、これをそのまま置いていいのでしょうか。これはやはり建設国債償還するときの考え方で生まれた率であって、こういうように十年で返そうとするならば、この定率繰り入れは当然ふやすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  151. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 ただいま委員が申されましたように、減債制度が個々の公債の信用を保持するというものではなくて、公債全体についての国民理解と協力を仰ぐ、それから財政当局の基本的な健全財政堅持に対する姿勢を示すというような意味合いで始まった制度でございます。したがって、四十二年度に減債制度が始まりました際も、建設公債以外に戦前債なり外債についてもやはり前年度首残高の一・六%ということで繰り入れをやることになったわけでございます。  それから第二点は、われわれ三本柱と言っているわけでございますが、定率繰り入れの分と、先ほども御指摘がございましたが、財政法六条の方の剰余金と、それから国債整理基金特別会計法に書いてございますが、必要に応じて予算繰り入れするという三つのやり方で償還をしていく、借りかえの場合には、これは一般財源による償還でございませんので、一応除きまして、基本的に一般財源による償還というのはその三つである。そうしますと、私どもとしては四十年の赤字の際もそうでございましたが、あれを返すために予算繰り入れをやっております。できるだけ特例公債を早くなくすることが先決でございますが、五十年の補正の際に出た分、五十一年、五十二年の分はただいまの一・六と、剰余金と、必要に応じて行われます予算繰り入れによって、六十年、六十一年、六十二年には完済をするという決意で臨んでおるわけでございます。
  152. 永原稔

    ○永原委員 いま、その三原則の中で百分の一・六の定率繰り入れではとうてい返せないということは明白になっていると思うのです。やはり予算繰り入れということが大きな財源として生きてくるようになると思いますけれども償還表を見てまいりますと、ことしの四兆五百億については五十七年に一千億、六十二年に三兆九千五百億満期払いになっております。これを五十年、五十一年、五十二年発行の中期債を除いた十年ものでもって見ていっても、六十年に返すべき額が二兆二千九百億、六十一年には三兆五千八百二十億、六十二年には三兆九千五百億、こういうのを予算繰り入れを中心にしながら返していかなければならなくなってくるのではないか、こう思うのですが、これは元金だけです。先ほど数字を言いました起債残高に対する金利負担が非常に大きくなってまいりますけれども、これも予算によって計上していかなければならない。こういうものを合わせたものが本当に財政硬直化させるのじゃないか、かえって財政運営を困難にさせるのではないか、こういう気がしてしようがないのですが、これについてどういうようにお考えになりましょうか。
  153. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 御指摘のように、財政硬直化最大のガンは国債費にあるわけでございます。これはどうしても利払いをしなければならぬ。それから元金は返さなければならない。それは確かに御指摘のとおりでございます。したがって、私どもといたしましては何としても特例公債はなくしたいということを願望しておるわけでございます。
  154. 永原稔

    ○永原委員 願望しているのはよくわかるのです。しかし、現実に十年満期のもので六十一年、六十二年はこういうように多額のものを予算上計上しなければならなくなっている。こういう事態ですので、あえて財政負担の平準化を図っていく必要があるのではないか、こういうことを申し上げたいのです。
  155. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 その点は、私どもといたしましては、とりあえず特例債を発行しなくなった段階で検討したらどうか。本年の財政制度審議会の法制部会のリポートにおきましても、そういうような検討をしたらどうだという御意見は出ております。ただ、われわれとしては、ともかく特例債を発行しなくても済むようになるまで、そこを待ってそういうことを検討したらどうかと目下のところは考えているわけでございます。
  156. 永原稔

    ○永原委員 ということは、将来借りかえる場合があり得るということですか。
  157. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 そうではございませんで、必要に応じ予算繰り入れをする、そういうところをどうやって動かすのか。あるいは剰余金は、私どもは四、五月発行規定を書いていただいておりますので、大体出ないように運営しようとしておりますが、摩擦的なものは出得るわけでございます。そういうものが積み上がっていきまして、五十五年、特例債がなくなりたといたしますと、その段階で一体どの程度償還力を持っているか。現に本年の三月末で大体七千五百億ぐらいのものが国債整理基金にたまっておるわけでございます。先ほど御指摘の予算の説明にも書いてございます。それから来年の三月には、アバウトの数字で申しておりますが、九千六百億ぐらいがたまってくる。そういうような定率繰り入れ、それから剰余金、これでどの程度たまっていくのか、そうして特例債の残高が一体最終的にどのくらいになるのか、その段階で予算繰り入れをどうするのか、そういうことを検討したらどうか。あるいはただいまの借りかえの問題もございますが、片一方で公債を出しながら片一方で積んでいくわけでございますから、期限前償還とかそういうような努力も、予算書の償還計画表の下に書いてございますが、期限前償還もあり得るわけでございます。そういうような償還期限到来までの公債管理政策なりあるいは国債整理基金におけるいわゆる償還財源の積み上がり状況なりを見ながら、そういう総合的な特例債の減債について検討をしたらどうだろうかというふうに考えているわけでございます。決して借りかえをすることを検討するということではないわけでございます。
  158. 永原稔

    ○永原委員 十年で償還するということについては非常な努力が要ると思います。特例債と一般の銘柄は違うんじゃない、そういうようなことで減債制度は統一してやるという考え方はわからぬではないですけれども特例債を特例的に扱うならばやはり特例的な減債制度があってしかるべきではないか、こう思うのです。しかもこれは十年で償還するということであるならば、満期払いでなくて元利均等償還というような発行方法をとったらどうでしょうか。
  159. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 その点は再三、四十一年以来議論があるところでございますが、現在、日本のような減債制度をとっている国はないわけでございます。どうしてかと言いますと、片一方で利付の金を借金しながら、片一方で積んでいくわけでございますが、そういうことはより財政硬直化を増すことになるわけでございます。さはさりながら、それでは全然償還に備えて金を積まないでもいいのだろうか。それはそうではない。やはり国民公債に対する信頼と理解を得るということと、財政当局財政健全化に対する節度を示すという意味で現在の総合減債制度ができたということは非常に意義のあることだと思いまして、そういう現在の制度を活用するということで足りるのではないか、あえてただいま御指摘のような特例債を増発しながら特例債を返すための金を置いておくという、現在以上の積み立てまでをやることはなかろうというふうに考えているわけでございます。
  160. 永原稔

    ○永原委員 なかなかしかし、百分の一・六、あるいは剰余金もそうたくさん出ないという状況の中で、これだけ集中してきたものを返すというのは口で言うほどやさしくはないと思いますけれども、いまの答弁でどうしてもほかの方法はとらないということですからやむを得ませんが、この国債整理基金特別会計というのは、基金という意味がどうもはっきりわからないのです。歳入、歳出の予算が収支とんとんになっていますので、基金というものが説明書によって初めてわかるような状況ですが、これは本当ならば基金はこのくらいあるのだということを予算書の中ではっきりすべきものではないか、こう思いますけれども、どうでしょうか。
  161. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 毎年度の基金の残高は、一応歳出権の与えられた歳出の資金も繰り入れられた、その償還も行ったところで年度末の残高が出るわけでございますから、すでにそれは一度予算の審査をくぐった残高でございます。したがいまして、これはいま説明書の中にいわば参考資料という形になっておりますが、予算書に仮に挙げるといたしましても、あくまでそれは参考という形の取り扱いになるかと存じます。したがいまして、いまの御提案はよくわかるわけでございますが、その残高を予算書に掲上しろというお話のようでございますが、これは説明書の方の参考ということで御説明をさせていただいておるわけでございます。
  162. 永原稔

    ○永原委員 財政収支試算を拝見しまして思うのですけれども、先ほどから論議がこれに集中するわけです。しかしケインズの乗数理論が確立してからどうも産業連関表とかあるいは計量モデル方式で経済計画が大はやり、高度成長時代は所得倍増計画など非常に夢を与えるということで意味もあったと思いますけれども、国は地方よりも完結した経済単位ではありますけれども、何か計画に限界を感じます。特にニクソン・ショックあるいはオイルショック以来、ああいう与件の変動によって経済計画が大きく変わっていくわけです。しかもその与件の変動というのはいまの経済計画の中ではとらえられない。そういう中で財政収支と経済計画の関連を余り大きく見過ぎているのではないだろうかという気がしてならないのです。  先ほどもお話が出ておりましたけれども、本来ならばトレンドで歳出額がこのくらいになるのだ、そうしてその財源としてはこのぐらいしか見込めないから、結局税収をこれだけふやさなければならない、そういうような推計がなされて財政収支試算が計算されておりますが、そういうようなことをやりますと、今度政策内容は一体どうだというようなことで論議が集中してくるわけです。何かこういう財政収支試算をやる場合に、現行の税制を基本に置きながら経済との関連において自然増収が幾らになるか、その範囲で歳出がどういう政策が組まれていくか、そういうことを中心に論議すべきではないかと思いますが、ただ数字だけを羅列するとその中にいたずらなる疑惑を招くような論議のみ交わされるおそれがある、そういう気がしてならないのですけれども、どういうようなお考えでこうやっていらっしゃるか。この財政収支試算の立て方について、またこれをおつくりになる気持ちについて伺ってみたい。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
  163. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 御指摘のように、財政収支試算の性格あるいは効用につきまして非常に問題があるわけでございます。一番自由主義経済をとっておりますアメリカの場合の例で申しますと、ニクソンの二年目ぐらいのときにやはり財政硬直化で非常に悩んだわけでございます。そこで、最初は将来の後年度負担だけを計算いたしまして、それで御指摘のような税収をはじき出しまして、その差額を自由財源というふうに言いまして、自由財源が将来こういうふうに小さくなっていく、だから財政運営をしっかりやっていかなければいかぬというような、そういうふうにいわゆる財政収支試算みたいなものをつくったことがあるわけです。その次の段階には、ある前提を置きまして計算をやった。それは計画ではなくてアウトルックというような言葉を使っておりますが、そういうようなものに脱皮して現在に至っております。それから、ドイツの場合の財政計画も相当懐妊期間がありまして、七、八年かかっていろんな議論をやっておるわけでございます。  私どもの場合もかなり前からそういう外国の実情、それからわが国の特色を踏まえていろんなことを考えたわけでございますが、結局、発端は四十九年度の決算で税収がオイルショックの影響を受けまして急減したわけでございます。あのときに、この財政のいわゆる困難な状況を御理解いただくには、やはりこういうような概括的ではございますが収入支出の展望のようなものをつくってみて、それで考えてみるということも非常に重要なんではなかろうかということで、一番最初に手がけたものはそういういまのものよりももっと雑駁なものでございますが、前提をぽっぽっと置きまして計算だけやったわけでございますが、そういうようなものをつくりました。その後、幸いなるかな企画庁の方で経済計画がつくられましたので、そのフレームを使っていろんな前提を置いてつくるわけでございますが、その前提に基づいて一般会計の収入支出のアウトルックをつくってみたわけでございます。確かに出てきました数字について小さいとか大きいとか、歳出面でございますがいろいろ議論が出る可能性がございます。  わが国の場合には一応公共投資については経済企画庁の方で五年間に百兆円というような数字があるわけでございます。その百兆円の中で一般会計にどのくらいの金が来るのか。それから、振替支出については御承知のような五十五年度国民所得の一〇%弱というような目標があるわけでございます。現在の八・何%から一〇%に向けてふやしていくわけでございますが、そういうようなことで振替支出の五十五年の金額があるわけですから、それの一般会計の数字は出てくるわけでございますが、そういうような経済全体のフレームの中で、与えられた前提を使いながら一般会計にそれを翻訳して一応の展望をつくってみる、これは決して意味のないことではないので、いろいろその欠陥もございますし、それからその数字について問題もあろうかと思いますが、きわめて概括的に将来の財政の姿を描きながら毎年度の財政運営をやっていくということも、従来の毎年度毎年度の予算だけで議論をしていただくよりは、より前進だろうと思うわけでございます。もちろん毎年度毎年度の歳入歳出をいわゆる予定していく財政計画みたいなもの、これはそういう強制的な計画というのは西欧諸国の場合でもほとんどやっておりませんけれども、いまの日本のわれわれがやっておりますよりはもうちょっとかた目の財政計画というようなものをつくっている国は、イギリスとかドイツとかございます。そういうようにかたさにソフトからハードまでいろいろバリエーションがあるわけですけれども、われわれのこの収支試算といえども一応五年間の財政展望はできる。しかも、その背後に国民経済の五年の展望を控えて、そういう一般会計の数字ができて組み立っておる。これを手がかりにしながら毎年度の予算編成を考え、国会でも毎年度の予算の御議論をいただく際にこれを参考にして御議論をしていただくということは、われわれとしては一歩前進したというふうに考えてはいるわけでございます。
  164. 永原稔

    ○永原委員 終わります。
  165. 小渕恵三

    小渕委員長 大島弘君。
  166. 大島弘

    ○大島委員 大分夜も更けてまいりましたのでなるべく簡潔に質問いたしますので、ひとつ簡明にお答えいただきたいと思います。  まず最初、用語の定義でございますけれども国債公債の違いですね。公債という方がやや広い、地方債を含めてというふうに感じるのですが、これを特例国債というのか、あるいは特例公債といった方がいいのか、今後の問題とも関連してちょっと用語の定義を御説明いただきたいと思います。
  167. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 法律的な使い方は、確かに御指摘のように国債に関する法律とか国債整理基金特別会計法とかございます。それから財政法四条では公債という言葉を使っております。法律的な議論ちょっとしばらくおきまして、いわゆる経済用語的に申しますと、国債の場合は中央政府の債券である、それから公債という使い方をやった場合には、公共団体を含めた広い意味公共債というような意味で使われる公債という言葉もございますが、私どもとしては、ただいま申しましたような実定法の中に国債公債という言葉がございますので、公債といった場合にも国債意味するように使っておる場合もございます。  ただいま御審議をいただいております五十二年度の特例法の場合には、財政法の用語を使いまして、公債という言葉を使っておるわけでございます。広い意味の場合には、最近では公共債というような使われ方がはやり出しておると思います。
  168. 大島弘

    ○大島委員 本件は国の債務ですから、国債というふうに定義した方がいいように思うのですけれども、今後の問題として検討していただきたいと思います。  第二番目に、国債発行は一時的なものなのかあるいは半恒久的なものなのかということについてお伺いしたいと思うのです。  と申しますのは、各国は一九三〇年代に金本位制を離脱してから管理通貨制になった。好むと好まざるとにかかわらず、各国は公債というのをフィスカルポリシーとして、それを景気調整の財源として使っておる。それが現在まで来ておるということなんです。景気循環の一周期を通して見れば長期的には均衡が成り立って、国債は上昇もしなければ下降もしないという説もあるわけですね。したがって、先ほどお話しのように昭和五十五年には一五%程度、それ以後は一〇%、さらにそれ以後はできれば五%、さらにゼロというふうな政府からの説明があったのでございますけれども、たとえば将来減税のためにどうしても公債が要るんだというような場合にも、公債というのは悪であるから、あくまでも一時的なものであるから、そういうものはやめるべきであるのか、それとも、景気循環の一過程で景気調整的な意味で、たとえば減税のためにはやむを得ない、ほかに財源もないというような場合には公債発行もやむを得ないと見るのか、ちょっとその辺のお考えをお示しいただきたいと思います。
  169. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 決して公債は悪いというふうには申していないわけでございまして、四十一年度の四条公債を導入した場合にも、財政政策の有力なる政策手段が装備されたというふうに、財政演説の中でも当時の大蔵大臣が述べられておりますが、公債は悪だとは決して考えていないわけでございます。ただ、使い方を誤ると、国民生活あるいは福祉に非常に甚大な影響を与えることがありますので、使い方をちゃんとしていかなければいかぬというふうに考えているわけでございます。  それから公債の考え方は、主要国を調べてみますと三つのタイプがあるように思います。一つは日本とか西独で、投資的経費の財源だけに限定して公債を使っていこうという国と、それからフランスみたいな国は、公債はもうやめだ、均衡財政こそいいんだということで、彼らの場合には均衡財政を苦労しながら何とかやっているわけでございます。それからイギリスとかアメリカは、建設公債とかいわゆる一般歳入補てん公債ということを言わないで、収支差額は一般的に公債、そういう三つのタイプがあろうかと思います。私どもとしては、西ドイツの場合もそうでございますが、われわれの将来に資産が残って、将来にも利益が及び、それが回り回って国民経済を引き上げて、将来の税源も涵養できるというような経費の場合に限って公債を出していくという現行財政法の精神というのは、あくまでも堅持しなければいかぬというふうに考えているわけでございます。
  170. 大島弘

    ○大島委員 そうしますと、昭和五十五年度以降においても、場合によっては、たとえば減税のための赤字公債、いわゆる建設公債じゃなくて、そういう発行もあり得る、こう理解していいですか。
  171. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 四十六年のときに、公債依存度が四・五%にまで落ちてきましたときにいわゆる火種論というのがございまして、公債をゼロにすべきか、公債というのは残っている方がいいのか、そういう議論があったわけでございますが、私どもとしては、先ほど申しましたように、公債というのは財政政策の一つの有力な手段、政策手段だというふうに考えておりますから、公債がゼロになるというようなことはあり得ない。建設投資がゼロになるということがないと同様に、財源として公債がゼロということはないと思います。減税のための公債というのは四条で認めていないわけでございます。そういうことだと思います。
  172. 大島弘

    ○大島委員 先ほどから申しましたように、けさほどの参考人からの意見がありましたように、建設公債はいいんだ、その他の公債はすべていけないんだというような考え方自体について、もう一度ひとつよくお考えになっていただきたいと思いまして、この問題に関する私の質問は終わります。  次に、昭和五十五年度までに赤字国債をなくするということ、およそそういうことが可能であるのかどうか。税制改正の問題は別にしましても、景気の問題、成長率の問題、物価の問題、そういうものから見ておよそ可能なものかということについて、以下ごく簡単に御質問したいと思います。まず第一番目に成長率の問題、二番目に景気の問題、三番目に物価の問題、三つに分けまして、そう長い期間じゃなくて、昭和五十五年ということを目安に一応お伺いしてみたいと思うわけでございます。  まず成長率の問題ですが、これは企画庁が専門ですから特にお伺いしたいのですが、昭和三十年代から四十五年までに一二%から一三%まで驚異的な成長をしてきた日本が、今後五%から七%に一応落ち込むということに相なろうかと思います。ヨーロッパ、アメリカなら五%、七%の成長なら非常に好況だという印象があるのですが、日本では五%から七%になると、これは大変だ、いままで一〇%から一二%の成長をしてきたものが半分になるんだ、だとすれば、売り上げは半減をする、設備は半分が遊休になる、これは五十五年までを考えても大変なことだ。この一点から見ても、成長率というのは大変なことになると思うわけですけれども昭和五十五年までに至るわが国経済成長率の問題を企画庁から説明してもらいたいと思うわけです。
  173. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 五十年代前期経済計画におきましては、わが国の今後の経済が、エネルギーだとか、あるいは立地だとか、水、環境、そういうような経済成長要因が強まってくるという中で、一方、社会資本なりあるいは社会保障、こういうような国民生活の充実を図るための諸施策が必要になるわけでございまして、そういうような観点からいたしまして、この計画期間中に大体六%強というようなことを考えたわけでございます。先生がいまおっしゃいましたように、日本は高度成長期におきましては一〇%といいますか、二けた台の成長をやっておった。これが六%になるということで非常に大変なのではないかというふうなことでございますが、わが国の場合におきまして、確かに高度成長を支えてまいりました非常に教育水準の高い労働者、その量あるいは質の問題、さらには設備等につきましてもいろいろ新鋭設備を持っておったというような条件があって高度成長を行ってきたわけでございますが、これらにつきましては、その程度はスローダウンしていくわけでございますけれども、今後ともなお諸外国に比しましてかなりすぐれたものが残るのではないかというふうに考えるわけでございまして、今後、計画期間中におきまして財政金融政策等、需要管理政策のよろしきを得ますれば、やはり六%強という成長は達成できるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  174. 大島弘

    ○大島委員 従来日本では、一〇%以上の成長がなければ企業は減収減益するというジンクス——これはジンクスではなくて、計数的にもはっきり出ていることでございますけれども、一〇%以下であるならば企業は減収減益だ、こういうことで、昭和五十五年まで仮に六、七%の成長が続いた場合の企業は、果たして増収増益が期待できるかどうかということにつきまして、ひとつ御説明願いたいと思います。
  175. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 ただいま日本経済は、石油ショック後のいわゆるデフレと申しますか不況によりまして非常に企業収益率も低かった、こういうことでございまして、たとえば企業収益面で見ますると、これは全産業でございまして日本銀行の短観からとったわけでございますが、五十年度におきましては上期に〇・八四、下期一・三九というふうな数字でございましたが、これはやはり何と申しましても稼動率が低いというようなこともございまして低かったわけでございますが、五十一年度は一・九一、下期におきましては一・九四という形で、下期は、これは見込みの数字でございますが、そのように上昇が見込まれてくるわけでございます。今後公共投資を初めといたします需要管理政策というものが効果をあらわしてくることでございましょうし、それに基づきまして個人消費なり、あるいは民間設備投資輸出等におきましても、昨年度に比較いたしまして、スローダウンするにいたしましても、かなりの水準輸出というものが期待されるわけでございまして、そういうことからいたしまして今後企業の収益も非常に回復してくるものというふうに考えておる次第でございます。
  176. 大島弘

    ○大島委員 非常に楽観的な見解で、そういうことならば非常に結構だと思うのですが、それに関連しまして、従来の成長は設備投資主導型あるいは在庫投資主導型であったことは事実でございますけれども、今後——今後と申しましてもいまの私の議論は一応昭和五十五年度という短期に置きましてお答え願いたいと思うのですが、今後はどういうものの主導型になるのか。たとえば輸出主導型なのか設備投資主導型なのか財政支出主導型なのか、あるいは個人消費主導型なのか、特にどういう点が一番大きな景気回復の主導型となるとお考えですか。
  177. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 過去におきましては投資が投資を呼ぶという形で、かなり設備投資主導型で高度成長というものが行われてきたわけでございますが、今後の計画期間内におきましては、その各分野におきましてそれぞれ着実な需要というものが期待されますならばまた六%強の成長はできるのではないかと考えておるわけでございまして、個人消費について見ますればこの計画期間中に五カ二分の一ということ、政府固定資本形成におきましては七カ四分の一、民間設備投資におきましては実質で約七%、それから民間住宅投資で七カ四分の三、こういう数字を計画におきましては実質の数字として予定しておるわけでございます。これは過去の数字からいたしますと低い数字でございますけれども、こういう各般にわたる需要項目が出てまいりますことを期待しておるわけでございまして、またそのことは可能ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  178. 大島弘

    ○大島委員 私の質問にまともに答えてくれなかったのですが、私は今後はやはり国民消費主導型の経済にならざるを得ないという気がいたすわけです。先ほども申しましたように、とにかく一〇%以上の成長をしたものが五%に、半分に落ちるということであれば、仮に六%から上がって七%、八%になったところでこれはもう大変なことだ。こういう企業の減収減益を踏まえて五十五年までに果たして赤字国債の脱却が可能であるかどうかということを私は非常に疑問に思うわけでございます。  そこで、けさほどたしかに井手参考人意見がありましたように、赤字国債脱却のためには現在の所得弾性値一・四五を二倍にしなければならないというようなことが果たしてできるのかどうか。こういう経済成長率一つを踏まえても五十五年までに赤字国債を脱却するというためには現在の所得弾性値を二倍近く持っていく必要がある、果たしてそういうことが机上の空論じゃなくて現実的に可能であるのかどうかということを主計局の方からもう一遍お願いしたいと思うのです。いまのような経済成長だけの前提を踏まえて果たしてそういうことが可能であるのかどうかということをお伺いしたい。
  179. 山内宏

    ○山内政府委員 当委員会におきましても再三御説明申し上げておるかと存じますが、財政収支試算において前提といたしております五十五年度の税収を確保いたしますためには、その前提となりましたGNPの伸率に対して一・八三という形の伸びが税収においてなければ、いま御指摘のような形での税収サイドからの財政収支試算の全体のまとまりがうまくいかないのは御指摘のとおりでございます。そういう前提にございますので、当然のこととして今後いずれかの時期にいずれかの形で増税を図っていかなければならぬという点も御指摘のとおりでございます。
  180. 大島弘

    ○大島委員 その増税というのはあくまでも累進制を高めるための増税であって、そういう意味税制改正なりあるいは累進制の採用でなければならないと思うのですが、このことにつきましてはまた後ほど申し上げます。  成長率の問題だけにつきましても、ただいま申しましたように五十五年度まではきわめて悲観的だと思うわけでございますが、今度は、景気、物価という面から見てさらにどうなるかということについて御質問いたしたいと思います。  まず現在の景気がいいのか悪いのか、どういうふうになっているのかということでございますけれども、二、三日前に信託大会の席上で、竹内次官は景気回復は非常に緩慢化している、それから森永日銀総裁は足踏み状態である、それから土光会長は停滞色がきわめて強い、経済企画庁は三カ月の認知のおくれが出てきたというふうに、概して非常に悲観的なのでございますけれども、現在の景気並びにこれからの景気状況ということについて簡単に企画庁から御説明いただけますか。
  181. 岡島和男

    ○岡島政府委員 現在の景気の見方について、いま委員御指摘のようにいろいろな意見があったことは新聞紙上で承知をいたしております。ただ企画庁といたしましてあるいは政府といたしましては、わが国経済は基調としては回復過程にあると見ております。御承知のように五十一年の初めにかなり急速な回復を示した後、昨年夏以降回復のテンポが緩やかになっていることは事実でございます。そういうこともございまして昨年の秋に七項目の景気対策を政府として決めたわけでございます。それに引き続きまして御存じのように補正予算成立いたしましたし、また去る三月十一日には公共事業の早期執行を含みます四項目の景気対策を決めたということがございます。それから同日付で日本銀行は公定歩合の引き下げを決定したということでございます。こういうこと、特に四項目の対策におきまして政府の景気回復への姿勢を明らかにし、経済の先行きに対する信頼を取り戻すということを目的として手を打っているわけでございますけれども、こういうような措置によりまして、五十一年度から五十二年度にかけましてわが国経済の着実な回復というものが実現されていくのではないかというふうに見ているわけでございます。最近の指標を見ましてもいろいろ手を打ってまいりました政府支出のようなものにつきましてかなり効果が出ているということもはっきりしておりますし、財政をてこにいたしまして民間自律回復力も次第に回復してくるのではないかと見ているわけでございます。
  182. 大島弘

    ○大島委員 ただ、私が申し上げているのは、五十五年度までに赤字国債をゼロにすることは命がけの飛躍である。そういうためには画期的な景気回復がおよそ望み得られそうもない。われわれ野党の主張も十分入れられずに一兆円減税が実現しなかった。公共投資と言ったって期限のずれがある。こういうことで景気回復——景気が循環するのは当然のことです。しかしその景気回復というのがどの程度回復なのか、若干いまよりよくなる程度なのか、それとも飛躍的な、少なくとも五十五年度赤字国債を消すような今後の景気回復が出るのかどうなのか、またそういう要素が何なのか。戦争が起これば別です。そういうことは別ですけれども、普通の状態でそういうことが五十五年度までに考えられるのかどうかということをお伺いしたい。
  183. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 ただいま調整局の方からお答えがございましたように、五十二年度におきまして公共投資等を中心といたしました総需要管理政策といいますか、成長政策がとられまして、これに基づきまして民間の自律的回復力というものが出てまいりますれば、今後、計画で考えておりますように六%強の成長は達成可能ではないかというふうに考えておるわけでございまして、その中では確かに先生おっしゃるとおりに需要項目といたしまして特別なものを期待しているわけではございません。たとえば民間設備投資で考えてみますると、この計画期間中に実質で七%ということで考えておるわけでございますが、これは四十八年度ベースで考えれば年率一・五%というような需要が出てくればよろしいわけでございます。そういう意味におきまして、個人消費支出も、先ほど申し上げましたように実質で五カ二分の一、こういうようなことでございますので、そういうような民間自律回復力というものは今後大いに期待できるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  184. 大島弘

    ○大島委員 いずれにしましても、景気回復、これはあるにしても、われわれの予想とはおよそ違うものだ。何もよくなる要素は少しもないということをわれわれは思うわけでございますが、さらに、それでは次に物価の面から昭和五十五年度までを一遍検討したいと思います。現在は一体インフレなのか、インフレがおさまったのか。もしインフレであるとすれば、現在の物価は需要超過なのかあるいは供給寡少なのか、そういう点についてちょっと簡単に御説明願いたいと思います。と申しますのは、景気が過熱する、あるいは過剰流動性があるというときになると、総需要抑制政策で一応締める、またいままで締めてきた。しかし現在のインフレというのは、革命的な物価騰貴、石油は四倍になった。小麦や砂糖は三倍になった。羊毛や綿花は二・五倍になった。それから銅やすずや木材というのは二倍になった。ここ数年間で四倍、三倍、二・五倍、二倍、こういう商品がある。福田首相の言う資源枯渇時代、この意味ではぼくは正しいと思うのですが、こういうようないわゆる革命的物価騰貴によるインフレなのか、それともそれ以外の需要面の原因によるインフレなのかあるいはインフレでないのか、その辺につきましてちょっと御説明いただきたいと思います。
  185. 柳井昭司

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  四十八年あるいは九年の物価騰貴につきましては、これはオイルショックを初めといたしまして海外のエネルギーあるいは食糧その他の鉱物資源等の資源価格というものが非常に上がったということ、それとやはり過剰流動性というようなものを背景にいたしまして御案内のように二十数%というような形で物価が上昇したわけでございますが、その後、総需要管理政策を展開することによりまして五十年度におきましては八・八%、それから五十一年度におきましては政府は八%程度ということで見通しておったわけでございますが、異常寒波というような要因等もございまして、三月の全国の数字は出てございませんが、それを推定いたしますと大体八・九%程度になるのではないかというふうに見通しておるわけでございます。ただその場合におきましても物価の基調といたしましては安定化の傾向をたどっておるわけでございまして、季節商品を除きますいわゆる除季商の物価上昇率につきまして見ますと大体八・四%程度というふうなことで、当初政府が考えておりました八%程度というところに行っているのではないかというふうに考えるわけでございます。  それで、これが需要の面から需要過多なのかあるいは供給不足なのかという御質問でございますが、御案内のように現在稼働率指数で見まして一月が八五・八%、こういうような状況でございまして、必ずしも企業の生産活動が十分になっているというふうには考えておらないわけでございます。今後計画期間におきましても五十五年度までに六%以下にするというふうに言っておりまして、従来の高度成長期に比較いたしまして消費者物価の上昇率が高いゆえんのものも、一つはやはり内外の資源的な制約、こういうものからいたしましてコストプッシュ要因と申しますか、それを考えなければならないのではないかということと、もう一つは、やはり成長率が下がってまいります関係からいたしまして生産性というものがどうしても落ちざるを得ないのではないか。そういう面からの賃金コストのプッシュというものが従来に比較いたしまして強くならざるを得ないのではないかというふうなこと。さらには、公共料金につきまして狂乱期におきまして抑制しておったわけでございますが、このままにしておきますとそれぞれの公共事業の円滑な運営が行われないわけでございまして、そういうものの調整も計画期間の前半には必要になるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  そういうようなもろもろの要因からいたしまして、先ほど申し上げましたように、この計画期間中六%、この五十五年度までに六%以下ということで従来よりもやや高い物価上昇率というものを見込んでおるわけでございます。
  186. 大島弘

    ○大島委員 私は、やはり昭和五十五年度までにはいま言ったような革命的な物価騰貴ということが大きく物価を押し上げる、コストプッシュになるということを思いますので、その面からもこの政府の五十五年までの計画は命がけの飛躍といいますか、ほとんど無謀だ。経済成長率の問題、景気の問題、物価の問題から見てほとんど実現不可能、私は、むしろ机上の空論に近いというふうな感じがするわけでございます。  さて現在企業の手元流動性はどうかということでございますけれども、新聞紙上によりますと、輸出はふえている。リーズ・アンド・ラグズで思惑をやる。それから設備投資が大体一巡してさしあたって需要もないということで、相当企業の手元流動性はあるように思うわけです。この場合にどういうふうにするかということが銀行行政の一番大きな問題だろうと私は思うのです。昭和四十八年に田中内閣が例の放漫財政をやったことはもう御存じのことでございます。あのときに、普通であるならば企業は新規借り入れをやめて、既往の貸付金を返済する。なお余裕があれば公社債を保有する。そうして健全な企業経営にする。コールレートは公定歩合以下に下がる。これはもう当然のことですから、そういうふうにすれば。それから銀行は自分の借入金を日銀に返済する。新規貸し付けを抑える。日銀はオペレーションをやって操作をし、あるいは準備率を引き上げる。全般に預貸率を改善する。こういうふうな普通きわめて常識的なことをやるべきであったにかかわらず、あのときは全く逆の方向をやって、つまり企業銀行から不要の貸し付けを押しつけられたということ、その結果、土地や株の投機に走って、これが今日の大きなインフレの原因になっているということは御承知だと思うのです。  いま、昭和五十二年というのは昭和四十八年にやや類似したようなことが、あれほどの規模ではありませんけれども、手元流動性も相当現在のところ緩んでいる。こういう場合に、先ほど私が言いましたような正しい企業のあり方あるいは銀行のあり方あるいは地方銀行のあり方、こういうものを指導しなければ、またあの過ちを繰り返す。銀行というのは悪いですからね。本当に自己中心ですから。そういうことをやるのが、一体これは、大蔵省の主務大臣が必要と認めるときは必要な命令を発することを得という大蔵大臣の責任なのか。あるいは中央銀行の日銀の責任なのか。その点につきまして、大臣いかがお考えですか。私はいま四十八年の過ちをもう一遍繰り返したくないということですが。
  187. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 先生御指摘の四十六、七年ごろの、いわゆる過剰流動性時代の改策のとり方については、いろいろ御批判のあることは承知をいたしておりますが、現在の時点は当時と比べては大分事情が違っているように私は考えております。  企業の手元流動性というのは、どういう指標ではかるかはあれでございますけれども、たとえば売上高に対する手元流動資産の割合というような数字を見ましても、ほぼ平常な状態にある。マネーサプライのふえ方を見ましても、最近は一二、三%台で非常に平静に推移をいたしております。それから、金融機関の資金ポジションども、特別大きな変化をしているわけではございませんし、また金融機関自体は、この前の景気循環の過程の経験から見まして、大変慎重な貸し出し態度をとっておるわけでございます。  これからの金融政策、金融行政のやり方につきましては、御指摘のように大蔵省、日本銀行相ともに機動的、弾力的に対処しなければならないと思っておりますし、また、従来の経験を生かして、これからは対処していかなければならないと考えておりますが、現在の状態は特別金融的に異常な状態が起こっておる、こういうふうには考えておりません。ただ、今後、情勢の推移を慎重に注目して、対処してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  188. 大島弘

    ○大島委員 銀行のことが出ましたので、ちょっと大臣に銀行行政のあり方をお伺いしたいのですが、銀行はもちろん株式会社である。それから、東芝だって株式会社だ。日立だって株式会社だ。どこが違うのかと言いますと、私はやはり公共性だと思うわけです。公共性があればこそ大蔵省が厳重な監督をやっている、こういうことなんです。しかるにかかわらず、公共性を疑われるような行為が間々あると思うわけです。  これは大臣にお伺いした方がいいと思うのですが、たとえば地方に行くと、地銀の頭取あるいは地銀の会長というものが、これは少し本論から離れますけれども、特定の政党の候補者の後援会長になるというようなことはどういうことですか。これは公職選挙法にも触れていない、その他の法律にも触れていない。しかし、そういうことは好ましいことなのか、好ましくないことなのか。地銀、地方銀行というと、地方へ行くと生殺与奪の権を持っていることは大臣も御承知だと思うのです。そういうのが特定の政党の、しかも一人のみならず四人の特定の政党の候補者の後援会長になっているというようなことはいかがなものでしょうか。
  189. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のとおり、銀行というものはほかの商売よりははるかに公共性の強いものだと私は思います。しかし、そこのあるいは頭取やあるいは幹部の人たちが政治に全然介入しちゃいけないということではなかろうと思います。やはりこの人に日本の政治を託するためにはこれを応援するということについては、これに対してだれもがそれはいけないというわけには私はまいるまい。ただ、そのやり方、その後援の仕方、応援の仕方というものにつきましては、それはだれがだれを応援するに当たりましても、非常に不明朗な応援の仕方というものはよろしくないと思いますけれども、特にそういったような公共の地位にある、公共性の強い地位にあるという人はよほど気をつけてやってもらわにゃならぬけれども、しかし、特定の人間を応援しちゃいけないということは、いまのこの社会には、いまの日本の国の制度においては、それは言うわけにはまいるまい、かように考えます。
  190. 大島弘

    ○大島委員 そうしますと、大臣のお考えは程度問題であるということでございますか。
  191. 坊秀男

    ○坊国務大臣 程度は——非常に妥当にして正しい、適当なことであるならば、変に軌道を離れたり何かせぬということであれば、程度というのは、熱意と申しますか、力をどれだけ入れるということでございましょうか、それは私は程度というものについては別に制限はされないことだと思います。
  192. 只松祐治

    ○只松委員 程度というのはなかなかむずかしいわけですね。しかし、これは前回の参議院選挙で企業ぐるみ選挙というのが問題になりまして、批判をされた。そうしてこれは当時の政府におきましても、あるいは財界においても反省をし、以後そういうことはしない、こういうことです。  ところが、私は今回の選挙でもすでに幾つかの事例を見ておりますが、ある金融機関において——実はきょう昼間のときに全銀連の会長も来ておりましたから聞こうかと思ったのですが、きょうは参考人ですから、私はそこまで問題を出さない方がいいだろう、こう思って聞きませんでした。ある金融機関において某候補者を引き連れて、そうしてあいさつに回っておるという具体的事例を私は知っております。今度は、そういうことは前回にもあることですから、絶対しないということが当然のことだと思います。しかし、いま大臣の話を聞くと、程度問題だということでございますが、私はそういうことは程度を超したことだ、もし、こういうことがあるとするならば、何らかの方法をもって注意するなり阻止をするなりされる意図があるかどうか、お聞きをしておきたいと思います。
  193. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私は程度問題と言ったのじゃないのですよ。熱意を持って真剣に力強く応援するということは、これは程度が非常に高い応援の仕方です。しかし、それは非難されるべきものではないと思います。  ただ、その程度にあらずして、応援の仕方、これが不明朗であって、そうして横道へ入る、横へそれる、軌道を外すといったようなことは、これは非難されるべきことであると私は思います。  そういうことですから、日本の国民が政治に入り込むということは、これはもう当然許されたことでありまして、そのやり方のいかんということと程度ということは、私はこれはこんがらからしちゃいけない、かように考えます。
  194. 只松祐治

    ○只松委員 そういうことは、お互い選挙をやっている身だからわかっているわけですよ。金融機関という、大島委員は公共機関という言葉を使いました。金融機関というのは非常な力を持っているわけです。これが関連会社等を回りますと、それは完全な企業ぐるみ以上の役割りを果たすことは事実ですよ。私はきょうは具体的事例は申し上げません。そういうことを踏まえて言っておるのであって、単なる普通の選挙運動ということを言っておるのではない。先ほども言いましたように、企業ぐるみというのは前回やらないということを反省されておる。そういうことが今回、しかも金融機関で行われておる事例を知っておるから、私はあえて関連質問をしておるわけでございまして、そういうときにどうするかということを言っておるのであって、一般的なその程度とか、お互い選挙をやった身ですから存じておりますよ。そういう公共機関である、非常に力を持っておる金融機関がすることに対してどうお考えになるか、重ねてお聞きをしたい。
  195. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私も一般的なお答えをしておるわけです。具体的にどういうことがどうだということが、どこの何がしがこういうことをやっておるということであるならば、それは軌道を外したことであるかあるいはそうでないかということは私も申し上げることができる。私も一般的なことを言っておりますよ、いま申し上げたのは。
  196. 大島弘

    ○大島委員 もう一点、銀行のことについてお伺いしたいのですが、私は虎の門に法律事務所を持っておりますので、しょっちゅう聞くのですが、虎の門金利ということをしょっちゅう聞くわけです。特に最近虎の門金利が一般より高いということを非常に聞くわけでございます。これはどういうことかと申しますと、御存じのように、一般の信託の利率では低過ぎるから、たとえば寄付をしてくれ。いわゆる特利行為ですね。特利行為と見られるようなことが、しかもそれが政府の外郭団体に圧倒的に多いということでございます。たとえば昭和五十年度におきまして都銀の政府の外郭団体に寄付した金額が約七億。昭和五十年度一年度だけです。それから長期信用銀行は六千五百万。信託銀行は二億九千万、約三億。これだけを政府の外郭団体に寄付しております。これは一件十万円以上のものです。五十一年度におきましては、これは沖繩海洋博関係が済みましたので、それにしても、五十一年度は都銀は政府外郭団体に十万円以上出しているものが四億二千九百万、長期信用銀行が五千四百万、それから信託が八千三百万というふうに、非常に多額の金が政府の外郭団体に流れている。もちろんこれらの中には、いわゆる指定寄付金で免税の措置もあり、また社会的にも必要なものは私は何も否定するわけではありません。しかし、こういう寄付をしたからといって、特利的な行為をする、あるいはその他非常に利益を受けるというふうなことがあって、果たしていいものであろうかどうかということでございます。これは個別案件じゃないですから、私は個別的なことは申しませんけれども、厚生省管轄の政府外郭団体におきまして、ある銀行は一千万の寄付をしております。その見返りとして信託を一千万もらっておる。ある銀行は、同じ政府外郭団体ですが、一千五百万の寄付をして、何と二億九千六百万の信託をもらっておる。これでは信託の利益だけで、寄付しても損が全然銀行で出ないというふうなこと。それから通産省認可のある法人におきましては、ある銀行は一千万を寄付している。その見返りとして受信を一千五百万もらっている。同じくある銀行は一千万を寄付して、その見返りとして七千六百万の信託をもらっている。さらにある銀行は一千万の寄付をして、何と四億八百万の見返り、見返りと見ていいと思うのですが、見返りをもらっておる。こういうようなことは果たして大臣としてどういうふうに、銀行行政として好ましいことであるかどうか。この虎の門金利とも考え合わせて、ひとつ御答弁いただきたいと思うのです。
  197. 坊秀男

    ○坊国務大臣 いまたくさんの案件について御例示がありましたが、そういったようなことにつきましては、これは事実そういうことであるならば、これは私はよろしくないと思います。実際そういったような問題を調べてみる。これは調べてみなければ、ただ抽象的にこういったような場合はどうだ、そういった場合にはどうだ、こう言われましても、何とも結論を出しかねますけれども、事実具体的にそういうことがあるということであるならば、やはりそれに対しましては何らかの是正の方法を講じなければなるまいと、さように考えます。
  198. 大島弘

    ○大島委員 私がいま申し上げましたのは、正規の手続で当局から出た資料でございますから、私はあえて個別的な名前は申しませんけれども、もしそういうことがあれば、これは私は非常に好ましくないと思うのです。非常に好ましくないと思いますので、こういうことが現にあることはまずまず事実でございますので、銀行の監督行政をそういう面からもひとつやっていただきたいと思うわけでございます。  もう時間も大分過ぎましたので、最後に金利体系の問題につきまして簡単に質問いたしたいと思います。  国債とかあるいは郵便貯金の政府の金利あるいは政府レートと、あるいは一般の民間レートの一元化ということは必要とお感じですか。それともこういうものは個別でいいとお感じですか。
  199. 後藤達太

    ○後藤(達)政府委員 いま御指摘のお話は、預金貸し出しについての銀行のレートとそれから郵便貯金のレートのことではないかと私、理解をいたしましたのですが、私どもとしては、その両者の金利の決定方式をそのときどきの経済情勢に応じて、並行して弾力的に置くことが望ましいと考えております。
  200. 大島弘

    ○大島委員 国債はすでに三月は六千億というものが消化され、また現在九十八円三十銭、最近のことでございますけれども銀行引き受け価額に等しい、あと発行価額まで四十五銭足らないだけ、発行価額九十八円七十五銭ですから、あと四十五銭足らない、ここまで来ているわけでございます。こういう事態を踏まえて、社債等の民間レートと国債との関係、こういうようなことは今後どうあるべきかということでございますけれでも、簡単にお答えいただきたいと思うのです。
  201. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 いわゆる債券金利の中で、長期のものは長期金利といろいろの関係を持っております。したがいまして、いま御指摘のような国債の価額が上昇してきたということにつきましては、これは一般の債券に一応競合するような事業債、これが一番典型的でございますが、長期金利が下がるのであろうという、現に少し下がってきておりますので、そういう点からいきますと、発行者からすれば、さらに下がることを希望して発行を手控える、それから売る方から見れば、さらに値段が上がるかもしれないということで売り控えるというようなことから、いわゆる市場における玉不足の現象が出てまいります。そういたしますと、どうしてもそれが事業債から地方債、あるいは他の債券、さらに国債にまで及んでくるという状況でございまして、現在は長期金利がやや下がりぎみの状況にございますための債券間におけるいろいろな差異がございます。したがいまして、従来から言えばむしろ国債の金利は安過ぎる、発行条件が悪過ぎるというような非難を受けておった点が、いまはわりかしその国債が売れているというような現象が来ております。しかしながら、いわゆる長期金利の問題は、先ほどからたびたび議論に出ております金利体系全体の動きの中でどういうふうにこれから落ちついていくかということを勘案しながら徐々に決まっていくものでございますから、いまの一時的な現象だけで全体を説明するということは大変むずかしいことだと思いますけれども、いまの状況では国債がやや有利な状況にあらわれております。
  202. 大島弘

    ○大島委員 金利の問題の最後ですけれども、現在の状況では国債金利は引き下げても市中消化は可能だと思うのです。そうして財政の負担を軽減するという考え方と、しかし国債は原則として十年だ、この間の目減りをどう考えるかということ、もう少し上げるべきではないかというふうなこと、こういうことにつきましてどちらの考えを持っておるわけですか。
  203. 岩瀬義郎

    ○岩瀬政府委員 目減り論というのは、どちらかというと短期金利あるいは一、二年程度のものと物価との比較において言われることだと思いますが、国債等十年あるいは七年というような大変長い債券につきましては、これは本来長期金利でございますから、長期のトレンドで見るのが適当であろうかと思います。ただ、日本の長期金利というのは、どちらかというと、わりに短期金利に引っ張られて動くというような傾向がございますので混同されがちでございますけれども、私どもはいまは、全体的に資金需要が弱いわけでございますから、また景気を振興させるためにおきましても、あるいは長期にわたる巨額な借金に耐えかねておる民間企業から見れば金利負担を軽減してもらいたいという希望もございますので、そういう客観情勢からいけば金利が大体下がる傾向に現在はあるのだろうと思います。それに対しまして、いわゆる預貯金金利というものがまだ物価が相当高い状況においてどうあるべきかという議論は、これは目減り論としては当然にあることかもしれませんけれども長期金利と直接に結びついて目減り論というものが存在するというふうには私どもは解釈いたしておりません。
  204. 大島弘

    ○大島委員 それでは最後に大臣にお伺いいたしたいと思います。  一九六一年にケネディが完全雇用と成長率アップのためにこの国を再び前進させると言って大キャンペーンを掲げ、そのときに、断然と赤字財政を敢行したことは御存じだろうと思います。その赤字財政のときに、財政の赤字のときにこそ減税が一番必要だと言った、これがいわゆる新しい経済学と当時言われたものでございますけれども、こういう事例もある。先ほど私が申し上げましたように、成長率の問題あるいは物価の問題あるいは景気の問題、何一つ考えても昭和五十五年度までにはいいことはない、恐らく財政の赤字は非常に続く。その場合に、いわゆる新しい経済学、財政の赤字のときこそ減税論、減税は波及効果を呼び、結局税収につながるという理論と、もう一つはとにかく現在の税制改正、不公正税制の改正と、けさほども参考人が、和田さんでしたか、試算によってもこれで二兆円取れると言っております、この不公正税制の改正と、それから累進税の改正、増税というものはこういう面であって、決して、繰り返しこの前から言いましたようにフランス的なあるいはラテン系的な、そういう間接税あるいは付加価値税的なものではない。その証拠に一九六五年にベトナム戦争へ突入したアメリカが、あれほど学者がこの累進制と税制改正を主張したのですが、結局一〇%の付加税を取って、一九六五年以後初めて貿易収支の赤字を来した、猛烈なインフレを来した。これが現在の病めるアメリカの根本原因だと私は継り返して申すのでございますけれども、先ほど言いましたように昭和五十五年度までの政府の見通しと財政収支試算というのは、まずまずこれは命がけの飛躍といいますか不可能に近いことだが、何をおいてもこれは努力しなければならない。しかし努力する方法が誤っていたのでは何にもならないということを私は特に申し上げたいので、さしあたって必要な場合の減税あるいは累進制あるいは不公正税制の改正、こういうようなものであって、もし付加価値税なんかに進むと、この一九六五年以降のアメリカの失敗を再び繰り返すのだということを私は最後に申し上げたいのですが、これに対してもう一度大臣のお考えを聞かしていただきたいと思うのです。
  205. 坊秀男

    ○坊国務大臣 財政を処理して立て直していくという手段、方法としては、私はいろいろなものがあろうと思うのです。おっしゃられるように、財政が赤字のときにこそ減税をやれといったようなことも一つの考え方ではあろうとは思いますけれども、しかしながら今日の日本の実情の上に立ちまして、果たしてそれが本当に、その当時ケネディがやったというのと同じように日本の国情があるかどうかといったようなことも考えなければなりませんし、それからまたこの赤字財政というものを、これは何といたしましても私どもとしては——私もこれは楽々とやれるものではないと思っております。楽々とやれるものではないと思っておりますけれども、今日この日本に課せられました財政の健全化、すなわち特例公債というものから脱却していくという方法、これはどんなにむずかしかろうともやっていかなければならない。私はそういう方針で、現在課せられたその財政の仕事をそういう方向でやってまいりたい、かように考えております。
  206. 大島弘

    ○大島委員 大臣としてやっていただかなくちゃ困るのでございますけれども、要するに、その方向を誤らないようにしていただきたいというのが私のお願いであります。  少し時間があるようでございますけれども、私の質問はこれで終わります。
  207. 小渕恵三

    小渕委員長 次回は、明十三日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時四十七分散会