運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-06-08 第80回国会 衆議院 商工委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年六月八日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君 理事 玉置 一徳君       青木 正久君    鹿野 道彦君       粕谷  茂君    北川 石松君       藏内 修治君    佐々木義武君       島村 宜伸君    楢橋  進君       西銘 順治君    萩原 幸雄君       林  義郎君    堀之内久男君       村上 茂利君    湯川  宏君       渡部 恒三君    渡辺 秀央君       岡田 哲児君    加藤 清二君       久保  等君    後藤  茂君       清水  勇君    渡辺 三郎君       長田 武士君    玉城 栄一君       西中  清君    宮田 早苗君       安田 純治君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    栗原 昭平君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         中小企業庁長官 岸田 文武君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  柳館  栄君         大蔵省証券局企         業財務課長   森  卓也君         通商産業省産業         政策局商政課長 野々内 隆君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   田中 正巳君     安倍晋太郎君 同月八日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     堀之内久男君   粕谷  茂君     渡部 恒三君   辻  英雄君     村上 茂利君   中西 啓介君     湯川  宏君   前田治一郎君     北川 石松君   中村 重光君     久保  等君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     前田治一郎君   堀之内久男君     安倍晋太郎君   村上 茂利君     辻  英雄君   湯川  宏君     中西 啓介君   渡部 恒三君     粕谷  茂君   久保  等君     中村 重光君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  閉会審査申し出に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 起立多数。よって、本案は閉会審査申し出をすることに決しました。  次に、松本忠助君外三名提出  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法   律案  小規模事業者生業安定資金融通特別措置法案  及び  伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を   改正する法律案 並びに  通商産業基本施策に関する件  中小企業に関する件  資源エネルギーに関する件  特許及び工業技術に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件  鉱業と一般公益との調整等に関する件 以上の各案件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、各案件は、閉会審査申し出をすることに決しました。  次に、閉会審査案件付託になりました場合、今国会に設置いたしましたエネルギー鉱物資源問題小委員会及び流通問題小委員会は、閉会中もこれを存置し、調査を続けることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、両小委員及び両小委員長従前どおりとし、その辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会審査におきまして、委員会及び小委員会において、参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合は、参考人の出頭を求めることとし、日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会審査に当たり、委員派遣を行う必要が生じました場合には、その調査事項派遣委員派遣地並びにその承認手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  9. 野呂恭一

    野呂委員長 この際、申し上げます。  本委員会付託になりました請願は二百十二件であります。各請願の取り扱いにつきましては、先般来理事会において慎重に検討を重ねましたところ、委員会の採否の決定は保留することになりましたので、さよう御了承願います。  なお、今国会におきまして本委員会に参考送付されております陳情書は十九件であります。お手元に配付しておきましたので、御了承願います。      ————◇—————
  10. 野呂恭一

    野呂委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤茂君。
  11. 後藤茂

    後藤委員 まず、通産大臣にお伺いをしたいわけでございますけれども、実は、昨日、日本砂鉄飾磨工場中型加熱炉爆発事故がございました。これはインゴット溶解圧延のため加熱作業中に加熱炉底部にある耐火れんがに亀裂が起こって、約百キロばかりのノロが流出をしたという事故でございます。この六月三日にも、実は、神戸製鋼所の加古川製鉄所で二号高炉爆発をいたしました。これまた炉底部から約千二百度の銑鉄が噴出をしているわけです。  この二つの事故は大変象徴的な事故ではないかと私は思うのです。起こっております事故そのものは、幸い神戸製鋼の場合には人命に支障を来しませんでした。しかし、日本砂鉄の場合には六名ばかりけが人が出ております。私は神戸製鋼事故の方は行ってみたのですけれども、高炉の底の耐火れんがのところの目地に千二百度の高熱の銑鉄が入り込んできて、その外壁を突き破って出ている。そして水とぶつかって爆発したということになるわけですが、私が象徴的な事故だと申し上げますのは、ともに鉄鋼産業が非常に不況ですので、したがって、こうした事故は事前に察知できていると私は思うのですけれども、一寸延ばしに改修なりあるいは安全のための投資というものが怠られているのではないだろうかというように考えさせられたわけです。後ほどこれはまた御質問申し上げますけれども、確かに鉄鋼あるいは平電炉は大変な状況にございます。したがって、そういった安全対策投資をするよりも足元にもっと火がついているということはわかるわけですけれども、こういった事故について——さらにもう一つ申し上げますと、四月二十七日に、出光興産の兵庫製油所でも六万キロリットルのタンク攪拌機の取りつけ部分が破損をいたしまして、そして約六百八十キロの原油が流出したという事故もある。この三つとも幸い地域の住民の皆さん方への影響がなかったからよかったのですけれども、不況、好況にかかわらず、工場安全、工場保安という問題に対しては真剣な配慮、取り組み、監視が必要であろうと私は思います。  そういう意味で、通産省として、こういった工場保安工場安全に対してどのような指導をいままでされているのか、この事故と絡んでどのように安全対策をこれから強化されようとしているのか、それを冒頭にお伺いしたいと思います。
  12. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘事故のような、まことに不測のことが起こりましたことははなはだ遺憾でございます。  当省といたしましては、産業生産施設に対しまする保安、安全という問題については最も意を用いておるところでございまして、工場安全のみならず、さらにまた炭鉱、ひいてはまた原子炉等を控えておりまする発電所の安全、これらの安全という問題につきましては特段の配慮とまた機構的な整備をいたしつつある次第でございまするが、ただいまお話の日本砂鉄並びに神戸製鋼の問題につきましては、担当官が参っておりますので、政府委員からお答えをいたさせます。
  13. 天谷直弘

    天谷政府委員 日本砂鉄鋼業事故につきましては、現在まだ情報を収集中でございますので、この件につきましてはまだちょっと正確なお答えはできませんので御容赦をお願いしたいと思います。  神戸製鋼事故につきましては、ただいまの先生の御指摘のとおり、炉底部れんが目地の間から溶銑が流出してしまったということでございまして、これにつきましては、そういう事故を防止するために温度計炉底部の要所要所に挿入をしてあるわけでございますけれども、その温度計の配置してないところからたまたまそういう事故が起きたということでございますので、今後はそういう事故を防止するために温度計配置等につきましてさらに慎重な考慮をするようにということで、こういう事故の再発を防止すべく会社にも注意をいたしておるところでございます。  鉄鋼業工場は非常に広大でございますから、これの全域につきまして通産省が一々手をとり足をとり指導するということは不可能でございますので、会社に対しましてそういう技術上の事故あるいはまた人災と申しますか、人間の不注意から起こる事故等種々ございますので、これらにつきましては、人命尊重あるいは公害防止等の見地から常に細心の注意を怠らないようにということはかねがね注意をいたしておるところでございますが、ともかく、今回のように事故が起こりまして世間に対してお騒がせしたり、あるいは人身事故が発生したりいたしましたことはまことに遺憾と存じておる次第でございまして、今後はこういうことがないように細心の注意を払うよう、さらに会社に対しまして注意を喚起いたしたいと存じております。
  14. 後藤茂

    後藤委員 この問題につきましては、先ほども言いましたように、私も神戸製鋼の現地に行ってみましたけれども、言われますように温度計等が取りつけてあった。しかし、それがどのように動いておったかということについて十分に御説明が聞けなかったわけですけれども、ただ、私は見まして、新鋭設備新鋭高炉等には落とし穴があるのじゃないだろうかと思ったのです。つまり、昔の高炉の場合はそういった炉底から溶銑が出るということをよく経験しているわけですが、ところが、新鋭高炉になりますと、そういうことは絶対安全であるといいますか、事故はもう起こらないのだという機械あるいは設備に対する過信があるように私には思えたのです。  ですから、恐らく温度計は作動していると思うのですね。二百度から三百度ぐらい上がったらもう直ちに対策を講ずるわけですけれども、ところが、まだ大丈夫だろうというような気持ちで一日延ばしに延ばしておったのではないかということが一つと、それから先ほど申し上げましたように鉄鋼大変不況ですから、こういった安全保安対策については、意識的とは申しませんけれども、やはり投資がおろそかになってきているのではないかという心配を実はするわけなのです。特に、日本砂鉄の場合にもそういう面がないだろうか、あるいは安全教育といいますか、こういうような問題につきましてもそういうことがないだろうかと私は心配するわけです。したがって、とりわけこの新鋭設備あるいは不況産業におきましての安全、保安のための投資といいますか、点検といいますか、これは要望として申し上げておきたいと思うのですけれども、ぜひひとつ御指導を強化していただきたい。労働者に大きな災害が起こるということは大変なことですから、何にも増して優先的に取り組んでいただきたいということをまず冒頭に申し上げておきたいと思います。     〔委員長退席山崎(拓)委員長代理着席〕  そこで、たくさんの不況業種があるわけですけれども、きょうは会期末ですべての点に触れている時間的ゆとりがございませんので、その中でぜひひとつお聞かせをいただきたいのは、不況業種の中でもいま象徴的な産業になっております平電炉関係についてお聞きをしたいわけです。  そこで、特に、小棒につきましては昨年十一月から不況カルテルに入っているようでございますが、この実施成果は一体どういうようになっているのか。あるいは、最近では、不況カルテルをやってみたけれどもなかなか実効が上がらないので価格カルテルに入っていかなければならないんじゃないかということも聞いておったわけですが、この不況カルテルの今日までの実施状況をどのように把握されておりますか、お聞きをしたいと思います。
  15. 天谷直弘

    天谷政府委員 昨年十一月以来不況カルテル実施いたしておるわけでございますけれども、先生の御指摘のとおり、不況カルテルにもかかわらず平電炉主要産品である小棒の価格は低迷を続けておる状況でございます。五万円前後のところを低迷いたしておりまして価格回復がはかばかしくないという状況でございます。  カルテルの主要なねらいはもちろん現在のコスト割れ価格コストに近い方に回復させるということでございますけれども、カルテル加入各社で七十五万トンに生産を制限しているわけでございますが、在庫も余り減りませんし、価格回復をしないという状況が続いております。かかる状況になっております主たる原因は、予想以上に需要の冷え込みが厳しいということが一番大きな問題でございますが、そのほかに、平電炉業界の方が資金的に非常に苦しくなっておりましてなかなか売り腰を強くできないという状況がございまして、買い手の方からこの売り腰の弱さを見透かされまして買いたたかれるという事情もございまして、カルテル実施中にもかかわらず、在庫あるいは価格の面につきまして期待しているような成果がまだ上がっていないというのが実情でございます。
  16. 後藤茂

    後藤委員 平電炉基本問題研究会の方の答申もあるようでございますので、また後でそれに触れたいと思うのですけれども、通産省のこの平電炉問題に対する取り組みが大変弱いのではないかという感じが私はするわけです。  先ほどの局長答弁の中で触れておられますように、不況カルテルに入って、そこで市況と見合わせていきながら何とか一寸刻み状況の推移を見守って、そして市況回復を図っていこうという面もある。あるいはこのカルテル過程でもなりふり構わない業界という面もあるようでございますけれども、その中から自然淘汰されていくのを待つというような姿勢もあるんじゃないだろうか。結局、この不況カルテルによって、本来もっと構造改善に対して政府業界も真剣に取り組んでいかなければならなかった、その課題に対して、結果的には必要な産業構造転換がどうも手おくれになってきたというように私には思えてならないわけです。この間も、百十五億円の負債を抱えて南部製鋼が五月に会社整理に入ってきています。  通産省といたしましても、あるいは業界内部におきましても、倒れてくれるところがたくさん出てくれたら構造改善がやりいいと見ておった面がないかというふうに思えるのですけれども、局長、いかがでございましょうか。
  17. 天谷直弘

    天谷政府委員 平電炉業界の現状を見ますと、御承知のとおり、七十四社ございますうち債務超過会社が大部分であり、正確な数字はわかっておりませんが、多分七十社前後に達するであろうと思われます。これは常識的に考えますと、自由競争経済社会におきましてはあり得ないような状況になっておるわけでございます。本来ならば、自由競争の原理が働きますならば、もっと早い段階におきまして債務超過会社整理が起こるはずでございまして、経済論理が働くはずでございますが、平電炉業界の場合にはそれが働かないで、現段階に至るまでほとんど脱落する企業がなくて、そのかわり全部が債務超過になってしまうという、ちょっとアブノーマルな事態に陥っておるというのが実情でございます。  この実情のいい悪いはいま別にいたしまして、こういう実情を一体どう打開するかということが現在われわれの直面している問題でございます。普通の経済常識から言えば、債務超過になっておる企業は全部倒産してもある意味では不思議はないということかと思いますけれども、しかし、そういうことをやりますと、経済論理としてはともかくとして、社会問題も起こしますし、労働問題も起こしますし、金融界の大混乱も起こすでありましょうから、そういうことはぜひとも回避をいたしたいというのがわれわれの基本的な立場でございまして、これを回避しながらいかにして体質改善していくかということに苦慮をいたしておるわけでございます。  不況カルテル等をやりますと、本来ならば淘汰されるべき企業が淘汰されずに温存されてしまって構造改善がおくれるというような見方も業界の中にございます。しかしながら、完全な自由競争にしておきますと相次いで企業が倒産するようなことが起こるかと考えられますので不況カルテル等実施しておるわけでございますし、近く工業組合を設立いたしましてさらにカルテル長期化を図ろうというようなことも考えておるわけでございます。  そういうことで、できるだけ連鎖倒産のような形を防ぎながら、そこで過剰設備廃棄とかいうことで体質改善をし、七十四社のうちでも健全な企業につきましては、将来平電炉業というのは日本経済にとって非常に必要な産業でございますから体質健全化を図っていく。しかし、その過程におきまして余りにも不健全化してどうにもならない企業につきましては、合併であるとかあるいは転廃業というようなことである程度の整理はやむを得ないのではないかと思います。しかし、そういうことによって起こる労働者の困窮であるとか金融的な混乱であるとかいう社会的な摩擦最小限にしながら、そういう構造改善あるいは再編成を進めていきたいと苦慮いたしている次第でございます。
  18. 後藤茂

    後藤委員 答申に基づきまして再建計画に対する各メーカー別ヒアリングをずっとされて、大体終わったのではないかと思うわけですけれども、局長、そのヒアリングで平電炉構造転換確信を大体固められたでしょうか。
  19. 天谷直弘

    天谷政府委員 何と言いましても、不況業種構造改善の一番の基本は、その業界構造不況という病気にかかっておるとみずから診断をし、そしてその病気を治すために相当の手術をしてもよろしい、手術台に上る覚悟がありますという、こういうような決意をすることが根本でございます。幸か不幸か、この平電炉業界はみずから構造不況業種であると診断をし、かつ手術台に上りますということを業界一致——まあ若干の例外はございますが、ほぼ業界一致でそういう決心をしたわけでございますから、これが構造改革の非常に重要な第一歩であり、その第一歩が踏み出されたというふうに考えております。  次に、各企業に対しまして個別のヒヤリングを行ったわけでございますが、このヒヤリングの結果得た感触によりますと、研究会答申によりますと三百三十万トンの設備廃棄が必要であるということになっておるわけでございますが、個別の企業の心づもりを内々でお伺いしたところによりますと、これらを合計いたしますと三百三十万トンという廃棄目標は達成可能であるという心証をいま得ておるところでございます。
  20. 後藤茂

    後藤委員 手術台に上って五十三年度中に三百三十万トンの廃棄をする確信を大体持たれているという答弁でございますけれども、それに対して、いまの御答弁をお聞きいたしておりますと、業界が自主的におやりなさいという面がどうもまだ強いように思うのです。  この平電炉業界はそう簡単にはできがたいのではないかというように私には実は思えてならないわけですが、この点はどうでしょうか。
  21. 天谷直弘

    天谷政府委員 構造改善に当たりましては三つばかり問題があろうかと存じます。  これは答申指摘しておるところでございますが、第一番目には、過剰設備廃棄という構造改善をする以上新設備の設置ということを抑制しなければならぬことは自明の理でございます。したがいまして、これにつきましては先週金曜日に鉄鋼部会を開催いたしまして、ここで平電炉の新設を原則として禁止する方針を固めておる次第でございます。これにつきましては業界の大体の合意を得ておりますから、そういう方針でわれわれは行政指導をいたしたいと考えておるわけでございます。これにつきましても、もちろん法律があるわけではございませんから一方的に禁止することは困難でございますが、われわれとしましては行政指導ベースで新設備の抑制をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、第二番目の問題といたしましては、設備廃棄をいたしますと、そこで必ず失業問題というものが発生せざるを得ないわけでございます。あるいは職場の配置転換というようなことが起こってまいります。この点につきましては労働省と緊密な連絡をとりまして、雇用保険法に基づく種々の制度をフルに活用いたしまして労働者摩擦最小限にとどめたいと考えております。あるいはまた高炉業界等にも依頼をいたしまして、労働者転職等に対しまして十分な協力を仰ぎたいということを申しており、そういう方向で高炉業界等指導をしていくつもりでございます。  それから、もう一つ廃棄に伴う問題といたしましては金融の問題がございます。設備廃棄をいたしますと、それに伴いまして種々運転資金がどうしても必要になってまいるわけでございまして、この調達をいかにするかという問題がございますが、これにつきましては非常にむずかしい問題でございまして、金融ベースに乗せるといたしましても、担保がない場合に一体その金融ベースに乗るであろうかという非常に厄介な問題がございまして、名案が余りないわけでございますが、これにつきましては、関係の商社あるいは銀行に対しまして通産省の方から、できるだけの協力をするようにということを再三要請をいたしておる次第でございます。  こういう問題につきましては、通産省が一方的に強制をするような法律的権限を現在持っているわけではございませんので、先生にはあるいは非常になまぬるいというお感じをお持ちかとも存じますが、現在の法制のもとにおきましては、われわれといたしましてはそういう各方面との協力ベースで物事を進めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  22. 後藤茂

    後藤委員 対策について、雇用の問題や金融の問題等にまで概括的に触れていただいたわけですけれども、その中身をもう少し聞いてみたいと思うのです。つまり、先ほどから何回も申し上げておりますように、通産省はもう少し積極的にこの問題に入っていかなければならないのではないだろうか、単なる行政指導程度ではこの問題は解決しないのではないだろうかと私は思うのです。  と申しますのは、たとえば「産業構造の長期ビジョン」を私は読んだわけでありますが、これの関係のところを読んでみますと、これは昨年の八月に発表になった五十一年度版なんですけれども、実は、鉄鋼につきましては、昨年もうすでに平電炉にいたしましても相当な苦境に陥っているのに、そこに出されたこの「長期ビジョン」の中では大変明るく展望を出しているんですね。たとえば「今後の需要構造の変化」を見てみますと、先進国に比べまして、鋼一人当たりの消費量は同水準に達しているが、蓄積量ではまだ先進国に遠く及ばないということになっています。また、「社会資本充実の要請を反映して、政府固定資本形成に伴う鋼材消費の増加がみられる。」とか、あるいは「民間住宅投資に関連する鋼材消費は、投資額の増加、建築構造の変化を反映して増加する。」とか、あるいは「個人消費支出関連の鋼材消費のウェイトはそれほど変化しない。」ということで、一覧表までつけまして、四十五年と五十五年と六十年を対比いたしまして、個人消費支出、民間住宅投資、それから政府固定資本形成、間接輸出というものがすべてパーセンテージは上がっていっている、問題は民間設備投資が若干落ち込むことであろう、というようなことが指摘をされているのです。昨年もうすでに苦境に入りまして大変な構造不況に陥っているときに、なおかつ通産省の「長期ビジョン」では非常に明るい甘い展望がなされているわけであります。  あるいは「七〇年代の鉄鋼業」というのを私が読んでみますと、確かに石油ショック前であるから見通しが非常に大きく狂ったということはわかりますけれども、特に平電炉の需要というものは、これから相当大きな設備投資をしてもなおかつ需要に対して供給が追いつかないんだという考え方で書かれているわけです。最近は大変な赤字を計上しているわけですけれども、それが本来の市場メカニズムの中においては当然全部倒れてしまうような経営実態にあるにもかかわらず倒れないのは、商社なり銀行なりが相当つぎ込んでいる、倒すわけにはいかない、雇用問題はもちろんありますけれども、という状況ですが、いろいろ商社、銀行等に聞いてみますと、やはり政府指導というものがあった、平電炉関係というものの設備投資は今後相当強めていかなければ予想される需要に対して追いつかない、こういう指導があったから私たちも一生懸命融資をし協力をしてきた、と、こういうふうに言われてきているわけです。  これも一々読み上げることは時間の都合で差し控えたいと思いますけれども、たとえばこの「各論」の中を見ても、公共投資だとか都市生活環境の改善等の面で平電炉が小形条鋼類の第一義的な供給者として果たす役割りは大変大きい。その伸びは粗鋼全体の伸びが七・二%であるのに対して一一・四%だ、全体の伸びを大幅に上回る伸びが期待できるんだという見通しを立てているわけです。そしてこのような状況のもとで、その当時計画されていた平電炉設備拡張によって、五十二年度までには二千百二十五万トンの能力が粗鋼ベースで生まれる、これに対して平電炉が賄う需要量は千九百二十八万トンだ、九割操業を前提とする、設備計画が全部完了しても五十二年度段階ではなお六万トンの能力不足が生ずる、と、こういう指摘がされているわけです。  先ほども指摘を申し上げましたように、石油ショック前ということを差し引きましても、これからの産業構造、つまり産構審が一九六九年に出しましたあの見方から見ましても大変過剰な需要展望をしたのではないだろうか。そして、それに踊らされたといいますか、刺激をされて設備過剰投資に入っていった。鉄鋼の方をずっと見てみますと、これは大変な貧乏性というのか、政府がガイドポストを設定するよりももっと大きく設備をしておかなければならないのではないかという、鉄は国家なり的な発想が業界にはどうもあるように思うのです。もしああやって政府が言っているのに設備不足というようなことになったのでは、これは鉄鋼界の権威にかかわるというところもあるのではないかということで設備投資を急いだのではないか。ところが、最近の状況を見てみますと、がらりそれが変わってきた。この見通しの誤りということを私は特に強く指摘するということではなくて、そこから引き出しておきたいのは、先ほど何回も御指摘を申し上げておりますように、行政指導だけではいまのこの平電炉というものの構造改善というのは非常にむずかしいのではないだろうか。特別措置法的なものが必要になってくるのではないかという気が実はするわけです。手を汚さないでのこの構造改善はできないだろうと私は思います。  そういう意味で、もっと自信と確信を持って乗り出していっていいのではないかという気がするわけですけれども、いかがでございましょうか。
  23. 天谷直弘

    天谷政府委員 各種の政府が発表いたします計画に関しましては、その計画を発表する段階におきましてはうそをつくつもりは毛頭ないわけでございまして、人知の限りを尽くして見通しをやっておるわけでございますが、そこが人間の悲しさでございまして、後で振り返ってみれば、結果的に見ますと誤った計画というものはずいぶんたくさんございます。ぴたりと当たっている計画の方が少ないのではないだろうかというような気がいたしまして、その辺はまことに汗顔の至りということでございます。  鉄鋼の需要見通しにつきましても、御指摘のとおり、「七〇年代の鉄鋼業」とかあるいは「産業構造の長期ビジョン」等に出ております数字は、現段階におきましては明らかに過大でございます。したがいまして、先週の鉄鋼部会におきましてはこの数字の改定を行いまして、昭和五十五年の鉄鋼需要につきましては一億二千七百万トンないし一億三千万トンというようなふうに数字を大幅に下方に修正をいたしておる次第でございます。     〔山崎(拓)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕  それで、そういう計画等もございまして、過大な設備投資が行われたのであるから政府はもっと強力な行政をすべきであるという御指摘でございますが、われわれとしましては、現在一般的に構造不況と言われている業種が平電炉のほかにも幾つかございますので、こういう構造不況業種の窮境を救うためにいかなる行政指導をすべきか、それに法的な措置が必要であるかどうかということにつきましては現在検討をいたしておる段階でございます。法律でやりますといい面もあれば悪い面もありましていろいろ利害がございますので、果たして法律をつくった方がいいのか、必要であるのか、あるいは公正取引委員会その他といろいろな折衝が必要でございますが、果たして法制が可能であるのかどうか等々現在検討中でございまして、仮にこの法律が必要だということになりましても、これは次の通常国会提出するということになるのではなかろうかというふうに考えます。その辺はまだ検討中でございます。  ところが、平電炉は現在目前の問題でございまして、来年の春ごろでき上がる法律で平電炉を処理すると——処理といいますか、治療するというのはタイミングとしてちょっと遅過ぎるかと存じますので、現在そういう法律は別個の問題として検討はいたしておりますが、平電炉につきましてはその法律ではなくて、行政指導ベースでできる限りのことをいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  24. 後藤茂

    後藤委員 確かに、特別法をつくっていくということは、平電炉だけじゃないわけですから検討を加えていかなければならない面はたくさんあると思うのですけれども、ただ、今度の不況産業、横造不況と言われておる各種の業界をずっと見てみますと、やはり行政指導程度ではなかなかくくっていくことができないものを持っておると思うのですね。それだけに単なる行政指導ではさらにまた傷口を深くしていくのではないかと思います。もちろん、仮に立法措置を講ずるとすれば来年の課題になっていくのかわかりませんけれども、先ほど中小企業団体法に基づく商工組合でさらに対策を講じていくということを言われましたが、いまの不況カルテルでもなかなかどうもうまくいかない。商工組合で独禁法の適用除外としてやっていくにしても、恐らく同じような事態がこのまま続いていくのではないかと思います。そして、それにたえられなくて、先ほど申し上げましたような倒産、自然淘汰というものがそのまま進んでいく。そうすると、一生懸命商社なり銀行なりが支えていくところまでいったところはいいでしょうけれども、しかし、そうでないとこうはストレートに雇用問題に入っていくわけですね。ですから、特別措置法なりあるいは単なる行政指導ということでなしに考えてもらいたいと私は思うわけです。  たとえば金融の問題につきましても、これは昨日全銀協の会長さんの村本さんが記者会見をいたしまして、銀行としては見通しもなく漫然と赤字融資を続けることは不況業種についてはできないというように述べているようです。平電炉基本問題研究会の報告書を見ますと、「政府金融機関等においても、必要資金の融資等について支援することが要請される。」と書いてあるが、この「必要資金の融資等について支援することが要請される。」という程度だけでは、いまの全銀協の会長が指摘しておるそれ以上に出てこないだろうと私は思います。問題は、担保物件もない、そして累積赤字が大変な赤字になってきているんだといたしますと、何が担保になるかということを恐らく求めてくるだろうと思います。その担保を一体どう考えていくのか。そのためには、単なる行政指導では、いままでがいままでですから銀行としてもなかなか動かないのではないかと思います。  もう一つ、ついででございますが、開銀による特別融資の問題等も考えられていかなければならないと私は思います。ただ、いまの開銀の融資分野からいたしますと、こういう産業再編成だとかあるいは設備廃棄、そのための転廃業等のための運転資金というものはなかなか貸し出しができない、融資ができないということになっているのだと思うのです。これまた開銀法の改正等も考えてみなければならない段階に来ていると思うのですが、あわせてお伺いをしたいと思います。
  25. 天谷直弘

    天谷政府委員 金融機関につきましては、平電炉業界の窮状に対しましてできるだけ御協力をお願いいたしておるわけでございます。これを仮に立法するにいたしましても、金融機関や商社に対しまして法的な強制を加えるということは不可能であり、あるいは現実的でもないというふうに存じますから、これはあくまでも協力ベースで相談ずくでお願いをするというのが唯一の行き方ではなかろうかというふうに私は考えております。  それから、開銀法の改正の問題につきましては、まことに恐縮でございますが、私は担当ではございませんので御容赦をお願いしたいと思います。
  26. 後藤茂

    後藤委員 確かに大蔵省の方でございますので、どうするこうするということはあるかと思いますけれども、物の考え方をお聞きしてみたかったわけです。  つまり、局長は先ほどから行政指導金融面等についてもいろいろと協力をしたいと言われているし、あるいは平電炉基本問題研究会の報告書では、いま読み上げましたように融資を必要とするということを指摘して支援することを要請しているわけですから、要請されておる当事者がこのことについてどういう働きかけをしており、あるいは見通しを持ってきているのか、この点を実はお聞きしたかったわけです。開銀法を改正するとかしないとかということを局長がやりますとかやりませんとかということは言えないと思いますけれども、その答申を出された当事者でございますから、それに基づいて金融問題等が円滑にいかなければ、今度の構造改善というのはできないと私は思うのですよ。先立つものはもう銭だと思うのです。資金だと思うのです。その資金の手当てがつかないで、あるいは個々の企業がとか、あるいは系列グループとしてとか幾ら言いましてもできないだろうと思うのです。そのうちに商社なり銀行なりが手を上げまして、先ほど言いました南部製鋼のような整理、倒産に入っていかなければならぬということが、これからもう持ちこたえられなくて続いていくんではないかと思います。ただし、そういうめどがある程度展望できればここで構造改善に真剣に取り組むという方向になるだろうと思うのですが、この点をお聞きしたかったわけです。
  27. 天谷直弘

    天谷政府委員 個々の平電炉業金融問題につきましては、各企業ごとの構造改善計画と申しますか、設備廃棄計画等がこれから次第に出そろってまいりますので、そういう個々の企業廃棄計画に基づきまして、Aの企業についてはどこの銀行とどこの商社に協力を依頼するということに個別になってまいりまして——一般的に全銀協に対しましての依頼はしておりますけれども、今後は個々の企業の問題が出てまいりますから、ケース・バイ・ケースで銀行、商社等に対してできるだけ協力をお願いする方針でございます。  ただ、これは、銀行、商社も慈善事業をやっているわけではございませんので、その協力の限度というものはございますでしょうし、われわれとしてはできるだけよけい協力をお願いしたいし、銀行の方は村本全銀協会長の発言にもございますように、銀行としてのルールなり銀行の業務の方針というものがございますでしょうから、そういうものをケース・バイ・ケースで突き合わせながら進んでいくということではなかろうかというふうに思っております。
  28. 後藤茂

    後藤委員 それから、もう一つ、これからの構造改善の中で、ただ主百三十万トン過剰であるから五十三年度中に廃棄をしていくんだという、その廃棄が急がれまして、さてこれからの小棒なりあるいは小形形鋼等の市場というものをどのように見ているのかという裏づけが足りないように私は実は思うのです。  お聞きいたしたところによりますと、小棒の需要というのは、建築用が六〇%で土木用が三〇%だと言われているようです。今度の予算におきましても、住宅だとか公共事業等の拡大については積極的に取り組むのだということになっていますが、しかし、かつてと違いまして、これが実際に小棒の需要を拡大していく方向にはどうもなっていないように思うのですね。最近は公共事業や住宅開発等もほとんどが土地代金あるいは工事費等に食われておりまして、そういった鉄筋の方の需要が投下される資本量に比べて非常に小さくなってきているのではないかと思うのです。それから住宅建設にいたしましても、公的な住宅は鉄筋が多いでしょうけれども、民間自力建設というのはまだ木造が主流を占めているのではないかと私は思うのです。  関連して伺うわけですが、住宅の鉄筋、つまり小棒等を必要とする鉄筋住宅の比率は、これはこれからは伸びていくのでしょうけれども、どのくらいといま見ておられるのですか。それとあわせて、これからの構造改善に対しましては、その需要の裏づけというものをどのようにされようとしているのか、お伺いしたいと思います。
  29. 天谷直弘

    天谷政府委員 恐縮でございますけれども、いま先生が最後に御質問になりました住宅の中における鉄筋住宅の比率につきましてはただいまデータを持ち合わせておりませんので、これは後刻調査をさせてお答え申し上げたいと存じます。  一般的に申しまして、公共事業あるいは政府資本形成の小棒誘発計数がどうも落ちておるという感じはわれわれも抱いておるわけでございます。その理由は、たとえば港湾建設にいたしましても、大規模な一級港湾を建設いたしますときには小棒をよけい食いますが、他方中小港湾の整備というようなことでございますと余り小棒を食わないということでございます。あるいは道路建設も、高速道路等の建設は非常に大量に小棒を消費いたしますけれども、地方の道路等の場合でございますと余り小棒を食わないということになってまいりまして、そういう影響があらわれておるのではなかろうかというふうに考えております。  ただ、これはきわめてあたりまえのことでございますが、その一級港湾をつくるか地方の港湾を整備するか、どういう道路をつくるかということの方は別の見地から決定されることでございまして、小棒を使うために道路をつくれというわけにもなかなかまいりませんのでございまして、われわれとしましては、これは非常に残念なことでございますけれども、現在の公共投資の方向としては小棒の消費の計数がどうも落ちておるのではなかろうかというふうな気がいたしております。しかしながら、われわれとしましても、小棒を誘発するような公共投資を特にやれということはなかなか主張しにくいことでございますので、一般的に民間設備投資が落ちておる折から、一般的に公共投資をできるだけ拡大するという基本的な方針でさらに進んでいくということが必要なのではなかろうかというふうに考えております。
  30. 後藤茂

    後藤委員 時間がございませんので、通産省の方には最後に申し上げておきますが、私が申し上げておりますのは、いままで平電炉産業が占めております重要なウエートというものを私たちはもう一度ここで再確認をしておいてみたいと思うのです。ただ、その場合に一つの大きな不安を持っておりますのは、三百九十万トンを——まあ、高炉六十万トンの廃棄ということになるのでしょうか、三百三十万トンを仮に廃棄したとして、これをしたからこれからの展望は安定した展望を持ち得るということに果たしてなるのかどうかということに対する不安感を非常に強く持っているわけですね。ですから、そのために道路をつくれだとか、一級港湾をこうしろとかということはないにいたしましても、やはり、このような基礎産業というものはよほど見通しをきちっと立ててやって、そして需給に誤りのないようにしていかなければこれは市場メカニズムの中にゆだねていくべきものではないと私は思うのです。そういう意味でいろいろと産業構造の長期ビジョンを立てられたり、あるいは七〇年代の鉄鋼業というような構想を打ち立てられたり、あるいはまたこれからも立てられると思うのですけれども、それは非常に大きなよりどころになっているだろうと私は思います。  そういう意味で、これからもその責任はお感じいただきまして、単なる行政指導でおまえたち自主的に構造改善をやれ、そうでなければ生き残れないぞというようなことだけではなくて、もっと積極的に手をつけて、たとえば先ほど言いましたように、特別措置の問題とかあるいは金融等につきましてもぜひ援助をということではなくて、もっと政府が担保していく、その政策を強化していただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、最後に労働省に伺いますが、いま局長の方から大体の雇用の問題についてもお答えをいただいたわけですけれども、私も、実は、「平電炉基本問題研究会報告書」は基本的にはこの方向にいかざるを得ないのではないかと思っているのですけれども、何分にも大変な雇用問題が起こってまいります。これから一年足らずの間に三百三十万トンの設備廃棄していくということになってまいりますとストレートに雇用問題にぶつかってくると思うのです。そこで、こういう構造不況に立ち入った企業に働く労働者が、しかも、政府としてもある程度の見通しを立てておったのに基づいて設備投資をしてきた、その産業に働く労働者が大きな犠牲を受けるということは何としても絶対に排除していきたいというように考えますし、その点は政府としても同じ見解であろうと思います。  そこで、幸い雇用保険法も通ってまいっておりますし、その雇用保険法不況業種として、これから十月ですかに発足をする、その中に業種指定を明確にしていくべきではないだろうかと思います。そして、雇用安定資金の活用等につきましても、いろいろな制度的な活用を図っていくべきです。そして、もちろん個々の企業の中におきましては、それぞれのシフト、仕事がえだとか、あるいは時間短縮だとか、あるいは他の部門への転換だとか、それに伴ういろいろな職業訓練だとか、いろいろな資金の援助等もあるのでしょうけれども、労働省としては、三百三十万トンの設備廃棄されても、それに伴う摩擦的な失業も出さないように時間をかけて雇用対策を確立していただきたいと思います。  その対策についてお伺いをしたいと思います。
  31. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 先ほど来からのお話がありましたように、平電炉の関係で構造改善対策が検討されておるということは私どもも所管の官庁であります通産省から聞いておりますし、その際、当該事業の労働者の方々の雇用の問題ということが一つの非常に重要な問題であるという認識は当然持っておりますし、そういう観点から、構造改善に当たりましても、それら労働者の方々の雇用の安定について十分配慮していただくように通産省とも協議をいたしておるところでございます。また、そういう観点から具体的には本年の二月から雇用調整給付金の対象業種に平電炉の関係をすでに指定しておりますし、先ほど先生からもお話がありましたような雇用安定資金制度の創設を内容といたします雇用保険法の改正が五月の十三日に成立いたしておりますので、十月一日から施行でございますけれども、こういう雇用安定資金制度の活用等も図りまして、失業の防止とか雇用の安定を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  雇用安定資金制度におきましては、産業構造転換等の場合にも一定の助成措置をするということを新たに設けたわけでございますので、具体的には十月一日からの施行で業種指定をするわけでございまして、その指定基準等につきましては中央職業安定審議会の審議を経て決定するということで現在作業を進めておりますけれども、所管の官庁であります通産省とも十分協議しながら業種指定ということについて検討してまいりたいということで考えております。
  32. 後藤茂

    後藤委員 終わります。
  33. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 久保等君。
  34. 久保等

    久保(等)委員 私も非常に時間が限られておりますので、できるだけ簡潔な質問をいたしますので、簡潔にお答えを願いたいと思うのです。  私の質問をいたしたい問題は、最近、香川県の多度津町に、原子力発電関係に関連して、いわゆる振動試験を実施をするために多度津の工学試験所を設けようという計画があるようでございまして、そのことに関連してお尋ねしたいと思うのですが、原子力発電所に使いますいろいろの機器によって耐震性を確かめるための振動試験をやるということで、工学試験所を多度津町に設置することに方針を決められて地元にもいろいろ働きかけておられるようでありますが、一般的な科学技術の試験等については、茨城県の筑波に総合的な試験所等がすでに設けられておるわけでありまして、この国立防災科学技術センターにすでに耐震試験の設備等も設けられておるようであります。したがって、そういった設備を使って試験をすることができないものなのかどうなのか。あるいはまた仮にそういった設備が使用できないとしても、あの筑波に新しく用地を確保して試験所を設置するといったようなことができないものかどうか。あえて遠くの頼戸内海の反対側であります四国の多度津にこういった施設を設けるということ自体、なぜここにその場所を求めたのか。そのことについて簡単にお答え願いたいと思うのです。
  35. 武田康

    ○武田政府委員 お答えいたします。  ただいまお尋ねの多度津の試験所の件でございますけれども、実は、原子力発電に関連いたしまして、原子力発電を構成する機器等々の信頼性を実証的に試験するということが大変大切だということでございまして、そういう意味で原子力工学試験センターが設立され、かたがた、その原子力工学試験センターの一つの重要な業務といたしまして、先生指摘の耐震性の実証試験をということがテーマになったわけでございます。  ところで、実は、原子力発電所は御存じのように非常に重量物等がございまして、大きな構造物がございます。これを非常に小型なもので試験をいたしまして、それを十倍、二十倍に換算してこれでどうだろうというやり方もございますけれども、なるべく実物大に近いもので実証的に試験をするということが国民の方々の御信頼を結果的に得る一番の方法ではないだろうかというような反省がございまして、かなりな重量物を載せられるような振動台をつくりたい、目方にいたしまして一千トンぐらいのものでございますが、そういう振動台を使ってテストをしなければ有効性がない、というようなことでございます。  現在でも日本の中に、先生の御指摘の国立防災センター等を含めまして十数台振動台が現にございまして、いろいろなテストをいたしておりますけれども、残念ながら、私どもが目標としております大きさといいますか、目方に比べますとちょっと小さ過ぎまして、そこで新たに大きなものをつくらなければいけないというのが一つの答えでございます。  ところで、振動台そのものは、小さいものは別に特に問題はございませんが、大きなものになりますとやはりある程度の敷地がございませんと、周りとの関係で、周辺の方々に御迷惑を全くかけないというふうにはなかなかなりにくい面がございます。しかし、これはいろいろ心配して微妙な計算をすればということでございまして、いままでの振動台でそういう実績があるわけではございませんが、そういうことも慎重に考えまして、大体十万坪ぐらいの敷地が得られる場所を選定しようということであります。  それから、かたがた、そういうものを置くわけでございますから、土地の状況なりなんなり、いろいろ立地条件というものがございます。そこで、日本の中で二、三十カ所いろいろ候補地を考えまして、机上の調べ等々もございますが、そういう調べもいたしました上、多度津の町の、現在センターが考えており町にいろいろ御相談しております場所が最も適切な場所というようなことになったわけでございまして、そういう点で現在センターが町にいろいろ御説明をしており、町で検討されておる段階でございますけれども、これが御理解を得るような方向で進むことを私どもとしては期待しておるわけでございます。
  36. 久保等

    久保(等)委員 昨年の三月に設立せられました原子力工学試験センター、これは財団法人のようですが、このセンターの事業の内容には、核燃料の実証的な試験をやるというようなことも業務内容としてもちろん掲げられておるわけですが、そういったようなこともあり、今回多度津に工学試験所が設けられるということと考え合わせて、将来核燃料の持ち込みがやはり考えられるのではないかということで地元では非常に不安を持ち、あるいはまた疑念を持ってこの設置の問題について非常に強く反対をし、反対運動が現に起こっておるわけなんです。  この問題については、われわれはもちろん核燃料の持ち込みというようなことが将来絶対あってはならぬと思いますが、原子力工学試験センターには、業務内容としてそういったことがもちろん明記せられておるわけですし、それとの関連において、この問題について一体どう考えておられるのか、お答え願いたいと思います。
  37. 武田康

    ○武田政府委員 原子力工学試験センターの業務といたしましては、先生の御指摘のような核燃料の信頼性の試験というものも重要な項目の一つとして含まれております。ただ、核燃料を取り扱うということになりますと、それなりの設備のあるところでなければなりませんし、あるいは、新たな場所であればそれなりの設備をしなければいけないわけでございます。  そこで、核燃料の信頼性テストはすでにスタートしかけております。これは専門用語でございますが、ホットラボといって、核燃料を少し使いました後に放射線等がそこからかなり出ているというようなものも扱い得るような試験設備でございますが、たとえば日本原子力研究所とか、あるいは民間にもそういうたぐいの試験ができるような設備を持っているところもございますが、そういうところであるとか、あるいは現実の発電所の中に入っているときにどんなぐあいになるだろうかとか——これは発電所の中でなければできませんが、そういうそれ向きのしかるべき場所を選びまして、すでに現在スタートしかけているわけでございます。  実は、多度津につきましては、スペース的には、先ほど振動台をある程度離さなければいけないと申し上げましたが、その中で、振動台の近くでほかの試験をすることは不可能ではございません。現にスペースがあるものでございますから、一般の方に住んでいただくわけじゃございませんが、試験ということは不可能ではございませんで、今後につきましては何か考える余地がございまして、その辺が、先生の御指摘のように、スペースがあるので核燃料の試験を将来ここでするおそれがあるのじゃないかというような不安なり疑念のもとになったかと思われるわけでございますが、実は、あの場所で核燃料の試験をするのは大変なことでございまして、すでにほかに場所もあることでございますから、センターとしては核燃料を持ち込んでの試験をあそこですることは現在考えておりませんし、今後も計画しないと言っておるのが現状でございます。  そのセンターを指導監督する立場にございます通産省といたしましても、多度津の町のあのスペースで核燃料の試験をするというのは適切ではないと思っておりまして、センターが現在考えておらず、今後ともそういう核燃料を持ち込んでの試験はしないという考え方は適切だと思い、私どももそう指導するつもりでございます。  なお、もう一点だけ申し上げますと、原子力の中の機器にもいろいろございまして、たとえば核燃料を入れるような耐圧容器の試験をするときに、中に燃料が入っていないと試験にならないのではないかというような疑念もあろうかと思います。ただ、耐震性の問題は、そういう構造がどうなるかということがわかればいいわけでございますので、ウラン等核燃料の入っていない、いわば模型みたいなものを、必要であれば原子炉容器のがらの中に入れれば相互の関係がわかるわけでございまして、耐震性を調べるという観点からも核燃料を持ち込む必要は毛頭ないわけでございます。  以上のようなことでございまして、センターとしても全く考えていないようでございますし、私どもとしても、今後ともセンターがあそこで核燃料を持ち込んでのテストをすることは適切でないと考えており、今後ともそういう先生の御指摘のような疑念の起こることのないような指導をいたしたいと思っておるのが現状でございます。
  38. 久保等

    久保(等)委員 それでは、核燃料の持ち込みといったようなことは考えてもいないし、また、将来も絶対そういったことはあり得ないというふうに断言されておると理解してよろしゅうございますか。
  39. 武田康

    ○武田政府委員 多度津の試験所、あの場所につきましては御指摘のとおりでございます。
  40. 久保等

    久保(等)委員 同時に、いろいろ試験をやる過程において、汚水の排水問題であるとか、騒音であるとか、あるいは振動であるとかというようなことも予想せられるわけですが、こういった問題に対しては、どういう対策といいますか、措置を講ずるお考えですか。
  41. 武田康

    ○武田政府委員 多度津の試験所は工場ではございませんので、水を大量に使ったりするようなものではございませんが、しかし、中に何十人かの人が住むわけでございますし、また、機械の手入れ等をするわけでございますので、小なりといえども汚水のようなものが発生する可能性はあるわけでございます。それから、一方、振動につきましては、もとが振動台でございますので振動が伝わるのではないかという御疑念があるのは当然かと思います。それから、また、振動と音というのは非常に似たようなものでございますから、騒音につきましても同様な懸念をお持ちになるのも、これまた当然かと思います。  ところで、汚水につきましても、騒音につきましても、振動につきましても、それぞれその環境基準的なものが設定されている場合がございます。それにつきましては、振動台の中心部から敷地境界まで数百メートル、二百メートルから五百メートルぐらいございますし、また、そのすぐ先は工場でございまして、その先は民家が大体一キロぐらい離れたところになっているかと思いますけれども、いずれの場所につきましても、そういう基準を満たすことはもちろん、御迷惑をかけることにならないようにするというようなことをセンターは考えておりますし、私どももそういう指導をし、また、当該町のそういう環境基準等を厳守させるべきポジションにおられる町の方もそういう指導をされるものと思っております。  一言づけ加えますと、振動につきましては、実は振動台でかなり揺らすわけでございますが、非常に大きな基礎をつくりまして、その大きな基礎の上にその振動する部分を載せるというかっこうでございまして、基礎そのものがそんなにたくさん揺れるわけではございません。かたがた、先ほど申し上げましたように数百メートルの離隔距離がございますので、敷地周辺におきましては、あるいは民家においてはもちろんでございますが、ほとんど人体に感ずることがない程度というようなレベルでございまして、御心配のようなことにはならないと思っている次第でございます。
  42. 久保等

    久保(等)委員 問題は、特に振動の問題について私自体も非常に疑念を持つのですが、なるほど非常に大きなコンクリート基礎をつくられるのですけれども、この基礎自体について、大きさあるいは高さといったものをちょっと簡単に答えてもらえませんか。
  43. 武田康

    ○武田政府委員 お答えいたします。  振動台そのものが、その上に物を載せて揺らす部分でございますが、これが十五メートル四方でございます。載せる目方が大体最大で千トンと考えております。一方、振動台はその下にコンクリートの大きな基礎で支えておりまして、コンクリートの目方で言いますと十五万トンでございます。それが砂れき層の堅固な地盤の上に載っかっているというかっこうでございまして、それだけ目方の重いものの上に千トンというものが載っている。これは人間に比べれば重いわけでございますが、コンクリの基礎に比べれば非常に軽いものでございます。ですから、軽いものが相当動いても基礎は動かない。もちろん勘定いたしますと微量に動くわけでございますけれども、そういうようなことになっているわけでございます。
  44. 久保等

    久保(等)委員 コンクリート基礎の外側では全然振動というものはないという状態なんでしょうか。やはり、多少はその基礎部分外にも伝わっていく、振動の影響はあるんだということなんですか。どういうことになるのですか。
  45. 武田康

    ○武田政府委員 専門屋さんに計算いたさせますと、振動台の上に載っかっているものは大地震と同じように振動いたします。基礎の方はいわば微小地震以下のものでございますが、計算をいたしますとある程度の振動をいたします。  それから、先ほど申し上げたことでございますけれども、そこから数百メートル離れました敷地周辺等におきましては、計算によりますと人体がほとんど感じない程度というような振動でございまして、たとえば国道をトラックか何かが通り、その国道の横のちょっと離れたところでその振動を感ずるか感じないかということと比べても少ないかもしれぬ、と、こんなような計算でございます。これは数字で計算をいたしますと、かなり揺れている振動体がございますと、いかにその基礎が重くても計算上はある程度の振動は当然出てくるわけでございますが、それが距離が離れるに従いまして減衰するといいますか、だんだん小さくなっていくというようなカーブが描かれまして、その結果は先ほど申し上げたようなものでございます。
  46. 久保等

    久保(等)委員 これは多少でもそういった振動の影響が近くに影響するという問題があるとすると、この多度津の場所そのものが適当ではない。なぜかといいますと、あの地域にはすぐ隣に昭和石油のタンクが実はあるわけなんです。これは本当に隣接して、最も近いところに昭和石油のタンクがあります。そうでなくても瀬戸内海汚染の問題で、先般岡山の水島の石油の流出事故があって大騒ぎをしたことは御承知のとおりです。したがって、体に感ずる感じないは別として、とにかく多少でも振動するということになってくれば、平常状態においてもとかくそういったタンク等が傾くとかなんとかいうことはもってのほかなんですが、傾かないにいたしましても亀裂を生ぜしめるとか、またそのことを促進するとか、とにかく何らかの影響を及ばさざるを得ないと思うのです。  しかも、限られたきわめて短期間だけの試験ということではなくて、とにかく将来無期限に長期の間試験をやっていこうというのですから、そういったことによる被害が考えられる。そうだとすると、この工学試験所のすぐ隣に隣接しております昭和石油の会社がある現場を私はちょっと見たのですが、このガソリンタンクとか、こういったタンクに及ぼす影響等を考えると、場所柄から言っても適当でないと私は考えるのですが、この点についてはどんなふうにお考えですか。
  47. 武田康

    ○武田政府委員 現在計画しております多度津の地点のすぐ隣には、先生の御指摘のような昭和石油のタンクがございます。四、五百メートル離れていたかと思いますけれども……。  それで、先ほど申し上げましたように、振動そのものは計算でございますからゼロという数字は出てまいりません。しかし、先ほど御説明いたしましたように、敷地境界では感ずるか感じないか程度以下でございますし、一方石油タンクにつきましても、これだけの距離が離れてこういうものがあるとどうだろうかということで専門屋に計算をさせ、検討させておりまして、その結論だけ申し上げますと、全く心配することはないということでございます。  そういう意味で、計算としてはゼロという数字ではございませんけれども、先生がおっしゃるような意味の影響及び被害はないということでお考えいただき、御理解いただければと思います。
  48. 久保等

    久保(等)委員 その問題についてはやはり今後に問題があると思うのですが、この基礎部分を載せる地質、地層の試験等をおやりになったと思うのですが、その調査なり試験をやられたのはどの程度どういったものをやられたのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  49. 武田康

    ○武田政府委員 多度津の地点の基礎につきましては、ボーリングの調査とかあるいは振動がどういうふうに伝わるのだろうかという加振テストとでも言うようなテストをいたしております。  そこで、ボーリング調査の結果によりますと、八メートルとか、十メートルとか、そのくらいのところに先ほど申し上げましたような十五万トンのコンクリートを載せて十分安定しているというような基礎を発見いたしております。これはボーリングを数本やっております。  それから、先ほど申し上げましたもう一つのテストは、振動波がどんなぐあいに伝わるかなということでございまして、先ほど申し上げましたような敷地周辺でどう、それから実際に地震のように揺れている部分でどう、コンクリの基盤でどう、そしてそれが途中でどう低減していくかというようなことを検討いたしますときの一つの基礎になっているわけでございます。  そこで、私ともの調査——これはセンターがやり、私どももレビューしたものでございますけれども、その結果では、基礎を置く地盤につきましては何ら心配がないという判断でございます。
  50. 久保等

    久保(等)委員 時間がありませんから次に移りますが、この多度津に設置する方針をお決めになったのはいつお決めになったのか、そして、この多度津の地元に対しての通告というか、申し入れ等は、いつだれがだれを相手に申し込みをせられたのか、ここのところをお尋ねしたいと思うのです。
  51. 武田康

    ○武田政府委員 原子力工学試験センターは、五十一年三月設立以来、その耐震実験をどこで行うかという立地場所選びの下調べを鋭意してまいりました。そして、その結果、五十一年の九月二十四日だったと思いますけれども、多度津の町が一番いい、多度津の候補地が一番いいという答えが出て、そこで、多度津の町長さんに試験センターめ理事長からここに立地させてもらえないだろうかというお願いをし、それ以来御説明をし、お願いをし、かついろいろ御相談をしているということでございます。
  52. 久保等

    久保(等)委員 地元に対してどういったふうな話し合いをせられて、現状はどうなっておられるように理解をしておられるのか、お尋ねしたいと思います。
  53. 武田康

    ○武田政府委員 先ほど申し上げましたように、スタートは昨年九月二十四日に町長にお願いしたというのがスタートでございます。  ところで、多度津の町には前々から臨時土地造成事業特別委員会というのがおありのようでございまして、こういった土地の問題をお扱いのようでございます。そこでいろいろ検討され、また、公害対策の審議会がおありのようでございまして、ここでも検討され、それからことしに入りましてから原子力工学試験センターの調査特別委員会というのを設置されたようでございまして、そこが中心になって、このセンターを受け入れていいのかどうかという検討をなさっているようでございまして、ことしの二月以来、この六月上旬まで七回にわたりましてその調査特別委員会が開かれ、その過程でセンターもいろいろ専門的な御説明をし、一方、特別委員会のメンバーの方々は、日本にすでにございますほかの場所の振動台等もお調べになっているというような経緯であると承知いたしております。
  54. 久保等

    久保(等)委員 ですから、センターの方から地元の方へ出向いて何回ぐらい話し合いをせられたのか。現地へおいでになっていろいろな話し合いをせられたり、説明をせられたり、その回数は何回ぐらいになるのか。現地での状況をお聞きしたいと思います。
  55. 武田康

    ○武田政府委員 センターから地元への御説明というのは、説明会というような形式もあれば、町の事務当局への御説明というのもあれば、いろいろあるようでございますが、センターが多数の方にお集まりいただいて地元説明会とでも称すべきような形で御説明をしたのがことしの三月に一回あると聞いております。  そのほか、町当局あるいは先ほど申し上げました委員会の方からのこういうことはどうだというお問い合わせに対しては、センターの理事等々が何度も現地に赴いて御説明をしているというふうに私ども聞いております。
  56. 久保等

    久保(等)委員 地元では非常に関心があり、また、特に強い反対運動等もある関係で、この問題について非常に真剣に取り組んでおり、あるいはいろいろと類似のところの実地調査なんかもやって、非常に熱心にそういう調査をやっておることは資源エネルギー庁もおわかりいただけると思うのですが、それだけに、地元への積極的な状況の説明なり、いろいろ疑問のある点については説明をせられることが非常に重要だと私は思うのです。特に、予算の編成なり予算の使用状況等を見てみても、すでに昭和五十年度から予算が編成せられて今日に至っておるわけですけれども、いまお話があったように、多度津町に設置することを決めたのは去年の九月で、まだ一年にならぬわけであります。  昭和五十年度にすでに補助金等ももちろんついた予算が編成せられて、金を確保することの方がずっと先行してしまって、現実に最も関係の深い地元に話が始まったのが昨年の九月といった点を考えてみても、話し合いをすることが先である。それが決定すれば予算が必要なことは当然ですけれども、予算の方が二、三年も先んじて編成せられたという経過から見ても、地元の意見なり考え方を聞くことについて軽視せられておったのじゃないか、また、軽視する考え方があったのじゃないかと思われるのですが、その点はいかがですか。
  57. 武田康

    ○武田政府委員 予算と実行面の差といいますか、それにつきましては先生の御指摘のとおりで、五十年度から予算を計上しておりましたけれども、先ほど申し上げましたような全国の二十、三十の候補地の中からどう選んでいくか、具体的に振動台というのでどういう設計をするかということ以前に、アウトラインでございますが、そういったものがおくれまして、現実にここが一番いい候補地と考えて多度津の町にお願いしたのが昨年の九月になった次第でございます。  それから、地元の御意見なり御意向でございますけれども、これにつきましては、こういう大きな施設をつくります場合には、ほかのものでも同様かと思いますが、建設も長くかかり、運営も長くやるものでございますので、当該地元の御理解と御協力がなければうまくいく性質のものではございません。御理解と御協力と同時並行いたしまして、あるいはその前段階で地元の方々といろいろお話し合いをし、いろいろ御意見を伺い、その中で適切なものは取り入れ、また、地元の方々と仲よくやっていけるように話し合いをすること等々が必要なことは当然でございまして、候補地としてここが一番適切だというふうになった昨年の九月以来、センターとしてはそういう努力をしていると思っております。  私どもといたしましても、センターが地元の御理解と御協力を得られるようにいろいろ御説明をし、御意見を伺うというのは誠心誠意やってもらいたいと思ってそういう指導をしている次第でございます。
  58. 久保等

    久保(等)委員 それから、「多度津工学試験所のあらまし」というパンフレットをおつくりになって配付をせられたり何かしておるのですが、この中にも、「地元にはこのような利益があります」という見出しで、「大規模な建設工事に伴う労働力や資材の調達を通じて、町や周辺地域の経済活動に大きく寄与することになります。」と書かれております。特に、「町や周辺地域の経済活動に大きく寄与することになります。」というところは非常に特筆して太文字で書かれておるのですが、地元からすると、自分の多度津の町なりその周辺に対して、一体この建設工事をやることによってどの程度のメリットがあるかということになりますと、まさにほとんどゼロに近いのです。建設工事をやります請負会社は恐らく大工事会社であると思うのですが、こういうようなことも誇大宣伝的なきらいが多分にあると私は思うのです。そして、先ほどもちょっと申し上げたように、予算の方は、実は多度津に決まる二年も前に編成せられておる。何か頭から押しつけるようなことや、さらに誇大宣伝をしてメリットが非常にあるのだといったようなことを考えておられることも地元に対して謙虚な態度で話し合われることにはならないと私は思うのです。こういう点についても十分に留意をせられ、注意をせられる必要があると思うのです。  だから、もしメリットがあるのならば、こういうように具体的にあるのだとここで説明をお願いできるならぜひひとつお願いしたいと思うのです。もう時間がないですから、簡単で結構です。
  59. 武田康

    ○武田政府委員 先ほどの資料の中に、一つは固定資産税の話が出ております。研究機関につきましては、研究機関の性質いかんでは固定資産税を出さなくていいというケースがございますが、このセンターにつきましては固定資産税を納めるという考え方でございますし、また、地方税法上もそういう扱いになるわけでございます。これは見方次第ではございますけれども、年間三、四億からスタートいたしまして、数年間で十数億円になるというふうに私どもは理解しているわけでございます。  それから、センターとしては、実は運転に入った後の運転は専門屋でございますけれども、建設工事の期間はなるべく地元の方々に参加していただくというか、そういうような意味で土木工事等々もたくさんございますし、また、資材の調達のうちで当該地元でできるものもあろうと考えておるようでございます。それは数量的にこうだと言うことはなかなかむずかしいわけでございますが、できるだけそういう努力をしたいということをセンターが言っておるわけでございまして、私どももできるものがあればそういう指導をしたいと思っておる次第でございます。
  60. 久保等

    久保(等)委員 では、最後にお尋ねいたしますが、この設置の問題について、地元でも、たとえば反対をせられる方々は署名をしておられる。私の聞くところでは約六千名近い反対の方々の署名がある。これは賛成の方々の倍以上になるようでありますが、そういう動き等を見てみますと、先ほど来申し上げますように、地元の住民の方々に十分に理解と納得を得られる努力を今後一層熱心にやらなければならぬと思いますし、また、先ほどもちょっと指摘したような振動問題に関連する公害問題についても、隣にいわば非常に危険な昭和石油のタンクがある。そういう場所に設置することについては私自身とうてい納得するわけにはまいらないわけですけれども、とにかくそういったこと等を考えると、結局地元の理解なり納得が得られない限り着工すべきではない。  これは結論的なお尋ねなのですが、そういうふうに理解いたしますけれども、いかがでしょうか。
  61. 武田康

    ○武田政府委員 先生の御指摘のとおり、地元の御理解、御協力、納得というのは非常に大切なことでございまして、これは何も建設に限らず、運転であろうと何であろうと、そういうことをやるべく未来永劫に努力を続けなければいけないことだと思います。私どもはそういう努力をセンターがすることを期待いたしております。  一方、最初に申し上げましたように、原子力発電所のいろいろな部分を構成しますところの、その部分につきましての耐震性の実物大に近い実証試験というのは非常に大切なことでございまして、先ほど来申し上げましたように、騒音につきましてもそのほかにつきましても、周辺に御迷惑をかけるような性質のものではございませんので、現在町の方の調査特別委員会で鋭意御検討中でございますけれども、私ども通産省といたしましては、地元の御協力と御理解を得て、こういう試験設備ができるだけ早い時期にできるということを期待しているわけでございます。
  62. 久保等

    久保(等)委員 最後に、資料要求というほどではありませんが、五十一年度の予算について、これはもうすでに年度も過ぎておりますから、作業的には決算といいますか、そういった整理を当然しておられると思うのです。五十一年度の予算の状況はわかりますが、これがどの程度執行せられたのか、これをまた後ほど資料でお願いしたいと思います。  同時に、本日は時間がございませんので私も十分にお尋ねすることができませんでしたので、また後日適当な機会を見てお尋ねしたいと思いますが、繰り返すようでありますが、地元の十分な理解を得るための最善の努力をぜひしていただきたいと思いますが、その点について一言だけお答え願いたいと思います。
  63. 武田康

    ○武田政府委員 第一点の五十一年度の決算でございますが、ちょっと手元に数字を持ち合わせておりませんので、後ほど調べまして改めて御報告をさせていただきたいと思います。  それから、地元の御理解と御協力ということはぜひとも必要なことでございまして、今後とも未来永劫に努力を続けるべき性質のものだと思っております。ただ、大変重要であり、かつ、周辺には御迷惑をかけるようなものではございませんので、私どもとしてはできるだけ早く地元の御理解を得て、これが進行するようなことを期待しているわけでございます。
  64. 久保等

    久保(等)委員 ありがとうございました。終わります。
  65. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 松本忠助君。
  66. 松本忠助

    松本(忠)委員 最初に大臣にお尋ね申し上げたいわけでございますが、現在の経済界の動向を見ますと、景気はいつ回復するかということではなかろうかと思うわけでございますが、通産省が先月の二十六日に発表いたしましたわが国の鉱工業生産動向から見てみましても、三月は二月に対比しますと二・五%の伸びで、四月は三月に対比するとわずかに一%の伸びで、連続で伸びたとはいいながらもきわめて低い水準に終わったことがわかるのであります。これによりまして、三月の時点で中だるみを脱出したと見られておりました景気が四月でやや上昇はしたけれども、五月に再び落ち込み、六月も横ばいになるのではなかろうかというような観測が非常に強まっているわけでございます。  そこで、大臣はこの景気の回復についてどのように思っていらっしゃるのか。明るい見通しを持つことはまだ当分できないと私は思っておりますけれども、大臣の御見解はいかがでございましょうか、まず最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  67. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  まず、景気の回復の中で一番重要なことは仕事の問題でございます。ことに、予算編成に当たりましても、景気刺激の効果の最も多い公共投資に重点を置いた本年度予算でございます。予算ができました直後、大蔵当局を中心といたしまして、ことしは景気刺激のために、総予算の中で上期に五〇%ではなく七三%をぜひとも出していこう、その中においても、特に公共投資の関係が政府予算で十兆、地方予算で八兆、合計十八兆の公共投資を特に四−六の第一・四半期に五割をこなしていきたいということで、そういう点では、非常に財政主導型の予算編成並びに施行を督促いたしておるような次第でございます。  私ども各地に参りまして県庁並びに各方面に当たってみましても、御案内のとおりに、何分景気の非常な落ち込みということから例年のような回復状態ではないにいたしましても、それだけの業務量が発注されますれば必然的に仕事は出ていくということで、特にその中におきましても中小企業への官公需、われわれの方の政府直接の関係のものは三四%というシェアを決めて、できるだけ地元の中小のものに出したいというふうな措置をいたしております。こういうことから、統計のいろいろな資料はございますが、はかばかしくないことは事実でございますけれども、公共投資に一番必要なセメントのごときは最近になりましてから非常に伸びが出ており、昨日もいい報告を受けたような次第でございます。しかしながら、一般の分から言いますと、能力に対しまするいわゆる稼働率というものが非常に低いというふうなことから、すぐに設備投資の方に民間のものがいくというまでに至らないで、いまの余力をずっと食いつつあるということは言えると思うのであります。  在庫状況その他を勘案いたしましても、緩慢ながら所期の方向に向かってすべり出したというふうに考えておる次第でございまして、その点はどうぞよろしく御了承いただきたいと思います。
  68. 松本忠助

    松本(忠)委員 本年度の予算を決定するに当たりまして、予算委員会で減税であるとかあるいは公共投資であるとかいうことが大きな問題になりまして論争が繰り広げられたことは御承知のとおりでありますが、いずれにしましても、公共投資に予算を大幅に、特に上半期に使おうというようなことは、当然参議院選挙を目当てにしての票かせぎだというふうなことも言われておるわけであります。それはともかくとしまして、われわれといたしましても、官公需の中でも中小企業に大幅に比率を増加して、五〇%以上はぜひとも中小企業に官公需を振り向けてほしいというような要望も重ねてまいったわけでございますが、とにかく、ここのところずっといろいろの情報を聞いてみましても倒産が非常に多いわけでございます。特に中小企業の倒産が増加を続けているわけでございますが、これにつきましても私は中小企業庁長官にお尋ねをいたしたいわけでございます。  倒産をどうにかして食いとめたいということをわれわれは要望し、そして、また、現在の不況状況中小企業に一番厳しくのしかかっておりますので、非常に弱い立場にある下請企業に何とか温かい光を与えてあげたいと思っているわけでございます。そういう意味から、わが党でも下請代金支払遅延等防止法の一部改正の法律案まで提案しているわけでございますけれども、下請代金の未払いというところは依然として多いわけです。下請代金が未払いのためについに倒産に追い込まれたという例は枚挙にいとまがないわけでございます。  そこで、全国各地に下請代金の未払いが相当起きているように思いますけれども、当局としてはその件数、金額等を把握していらっしゃるかどうか、この点をまず伺いたいわけであります。
  69. 岸田文武

    ○岸田政府委員 下請代金支払遅延等防止法によりますと、親企業が発注にかかわる物品を下請事業者から受領した日から起算いたしまして六十日以内に支払わなければならないということになっておることは御承知のとおりでございます。それを過ぎますと支払い遅延ないし未払いということになるわけでございます。  こういった意味での支払い遅延の件数につきましては、中小企業庁の調査によりますと、五十一年十月から十二月の間で二百十一件が掌握されておるところでございます。これを一年に延ばしてみますと、年間で八百五十件程度の事案が中小企業庁の調査でも問題になっておるということが言えるかと思うわけでございます。
  70. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまお答えをいただきましたけれども、どういう業種にこれが多いのでしょうか。業種別に把握していらっしゃいましたらお答えをいただきたいわけですが、それから地域的にはどうなのか。地域社会の景気の動向というものも非常に密接な影響がございますので、業種別あるいは地域的にどのような状況になっているか、把握していらっしゃいましたらお答えをいただきたいと思います。
  71. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど五十一年十月から十二月で二百十一件の問題が指摘をされたということを御報告申し上げましたが、それを業種別に分けてみますと、繊維で六件、一般機械で三十二件、電気機械関係で三十一件、輸送機械器具関係で十二件、それから鉄鋼関係で十三件というような内容になっておるわけでございます。  なお、地域別の状況はどうかというお尋ねでございますが、私どももまだ地域別の集計をいたしておりません。もし必要がございますれば、時間をいただければそういった報告もできるかと思います。
  72. 松本忠助

    松本(忠)委員 私どもはどうしても東北方面が非常にそういう動向が多いように伺っているものですから、そこで特に地域の問題をお伺いしたわけでございますが、地域別の資料は後ほど御提出くだされば結構でございますので、ぜひお願いしたいと思うわけでございます。  そこで、四十五年の十二月に下請中小企業振興法というものが制定されまして、この法の運用がなされてきているわけでございますが、下請という特殊なあり方から来る種々の問題がいまだに山積し、片づかないでおるわけでございますが、とにかく、下請取引の円滑化を図ることによって下請中小企業を振興しようとする公益法人としての下請企業振興協会というものが昭和四十五年から設置されて、国庫補助額も年々増加いたしてまいりましたけれども、この協会の業務の一つとして「下請取引のあっせん」というふうに書かれてありますが、これは具体的にどういうふうに実施されているのかを伺いたいわけでございます。  特に、ここ数年来不況の風が日本列島を吹きすさんでおりまして、これに痛めつけられております中小企業、零細企業という方々でございますので、したがいまして、下請企業の実際上のあっせんされた数字というものを、オイルショック前とオイルショック後というふうに大別をしていただいて結構でございますが、三年ぐらいの間にどのような変化があったか、お示しをいただきたいと思います。
  73. 岸田文武

    ○岸田政府委員 下請企業振興協会の具体的な業務のやり方でございますが、実情は次に申し上げるようなやり方でやっておるわけでございます。  一方で発注を希望する企業、これは下請の業者の方々でございますが、こういう方がおられる。これらの方々が希望があればその企業名と、それからどういうものを注文を受けたいかということを下請企業振興協会へ登録をされるわけでございます。そして、他方で注文を出したい親企業がございますが、この親企業の方々においても、ひとついい下請がほしいという希望がありますと、企業名と、それからどういうものを注文したいということを同じく振興協会へ登録をするわけでございます。振興協会におきましては、その両方の登録リストを見まして、これならば両方結びつけてうまい関係ができるのではないかということになりますとあっせんに入る。こういう段取りを踏んで事務処理をいたしておるところでございます。  あっせん件数でございますが、まず、昨年のあっせん件数を御報告申し上げますと、全国で一万六千五百七十件のあっせんをいたしております。そのうちあっせんが成立したものが四千三百九十件という報告を受けております。  ここ数年間におけるあっせん件数の推移でございますが、不況下で非常に仕事がないということが言われております中にありまして、このあっせん件数だけは毎年着実にふえておるということが言えるかと思います。数字を御報告いたしますと、四十八年度であっせん件数が約一万一千件でございます。それが四十九年度に約一万二千件に上がり、それから五十年度で一万三千七百件程度、それから五十一年度で一万六千五百七十件、こういった形で着実に伸びておるという点を御報告申し上げたいと思います。
  74. 松本忠助

    松本(忠)委員 いま長官からあっせんの件数は伺ったわけでございますが、最初の五十一年度が一万六千五百七十に対して四千三百九十のあっせんが成立したということですね。  いまお伺いしましたところでは、四十八年度の一万一千、あるいは四十九年度の一万二千、あるいは五十年度の一万三千七百という概数のお答えがございましたが、それに対しましてあっせんの成立した件数というのは一体どれくらいになるのですか。
  75. 岸田文武

    ○岸田政府委員 あっせんの成立した件数で御報告申し上げますと、四十八年度で三千百十五件、四十九年度で三千九十七件、五十年度で三千四百十五件、それから五十一年度で先ほど申し上げましたように四千三百九十件という形でございまして、あっせんに対して大体三割程度は成立をしておるということが言えるかと思います。
  76. 松本忠助

    松本(忠)委員 いま概数のお答えがございましたけれども、これは私どもの計算では三割までいかないと思うのですね。五十一年度が一万六千五百七十に対して四千三百九十ということになると、二六・五ということになりますけれども、その前の五十年度のごときは二五%を欠けておるようにも思いますし、四十九年度で大体二五%程度で、三割にはなかなかいかないのじゃないかと思うのですけれども、そこまであっせんが成立しない原因というのは一体どういうところにあるのでしょうか。
  77. 岸田文武

    ○岸田政府委員 これは私も下請企業振興協会の仕事についていろいろ聞いたことがございますので、その経験から申し上げるのですが、一番の問題は、下請の方で本当にそれを受けるだけの体制ができるかどうかということが一つの問題かと思っておるわけでございます。設備の内容はどうかというようなことで技術的にうまく合わなかったり、あるいは値段の問題でいいところまでいってもうまくまとまらなかったりということで、あっせんの当事者がいろいろ苦労しておることは事実でございます。しかしながら、この不況の中でもあっせん件数が、特にあっせん成立件数がふえておるという点は、あっせんをしております当事者が並み並みならぬ苦労をしておる成果であろうと思っております。  私どもは、この仕事は非常にじみな仕事でございますが、しかし大切な仕事であるというふうに考えております。下請企業振興協会も逐次各府県にふやしてまいりましたが、ようやく今年度予算によりまして全国各府県にこの下請企業振興協会が設置されるというところまでまいりました。私どもも今後ともこのあっせんの仕事には力を入れてまいりたいと思っておるところでございます。
  78. 松本忠助

    松本(忠)委員 ぜひこのあっせんが成功し、そしてお互いに仕事ができ、同時にまた代金の支払いが円滑にいくように私は希望するわけでございます。  そこで、長官と公取委員長に御出席をいただいておりますので、私が以下申し上げますことはわれわれが調査した結果でございますが、こういう実情を聞いていただいて、それに対して当局としてどのようなお考えがあるかをお伺いしたいわけでございます。  繊維産業が非常に長期の不況の中で構造上多くの問題を持っておることは御承知のとおりでございますが、繊維産業の中でも特に縫製業者及びメーカーからの下請構造に関して伺っておきたいわけで、これは実例をもって申し上げたいわけでありますが、これは東北のある地方でのことです。はっきり申し上げますと、われわれが調査いたしましたのは秋田県でございますが、この中で、大メーカーが製品の加工を下請に出すときに、私どもも初めて耳にした言葉でありますけれども、ふれ屋と称するブローカーを使っております。そして下請の零細縫製業者に仕事を出しまして、衣服の加工をさせます。ところが、納品をいたしましても加工代金の不払いがあるとか、あるいは期限前に納品をいたしましても常識外の一部手直しを要求されるということがありまして、やっと納めましても納期の期限切れであるとかいうふうに言われて加工賃を支払わないというようなことがあるわけであります。そして、零細業者が経営に行き詰まりまして倒産に陥っている例が少なくないわけでございます。  これは縫製業の下請過程にも種々の問題はあると思うのでありますけれども、こういう中間ブローカーがメーカーと下請の零細業者との間に介在して甘い汁を吸っているように見受けられるわけでございますし、また、メーカーもなれ合いでやっているような節もあるのでございますが、この実態を少し長くなりますけれども申し上げてみたいわけでございます。  秋田県の農村の中で、相当に富俗な農家あるいは山林を所有していて何か事業をもくろんでいる人たちに対しまして、東京の有名な工業用ミシンの営業マンがまず接触をする。そして、縫製業の有利な点を吹き込んで、仕事もあっせんするという条件で工業用ミシンを売り込むわけです。そして工場を建築いたしまして、ミシンの据えつけが終わり、約束どおりに東京から仕事が来ます。そして一年ぐらいたちますとだんだん仕事がふえて、しかも仕事にもなれ、加工賃はきちんと入ってくるので工場の増設をし、さらに工業用ミシンを買い込むと途端に仕事が来なくなってくる。こういう例を私どもは二、三聞いたわけでございます。手をあけておりまして、何とか仕事をやりたいということで若干の焦りが出てきたところに、先ほど申し上げました工業用ミシンの有名な会社の営業マンの紹介でふれ屋と称する者が有利な仕事を持ってあらわれるわけです。そこで飛びつく思いで仕事をするわけでありますが、こういう順序で秋田県の片田舎の無知な農家のだんなさん方を食い物にしている状態がございます。  このふれ屋と称する中間ブローカーは東京の繁華街にビルを構えているかのごとき名刺を持って訪れてまいりますが、これは後に発見したわけでありますけれども、行ってみるとビルの中の一室に数名で部屋を借り、電話は共用で一本、机が一つ、女子事務員は一名、そして電話の受け付けはできますけれども非常に通話中が多いということでございます。むしろ受話器を外しておいて、時間を決めて受話器をかけて、その数分だけは外部との連絡が可能にしておくというのではなかろうかと思われるくらいでございます。そして、メーカーとの連絡あるいはブローカー仲間との連絡はやれるようにしておくわけで、まことに手の込んだやり方をしているようでございます。  もちろん、こういうことは、数カ月後に加工賃が入らなくなり、連絡もとぎれましたので、いたたまれなくなってそれらの業者が上京してきて初めて発見した状態でございますが、このようなふれ屋と称する者が、レインコートならば○○印という指折りのメーカーの仕事を持ってくるわけでございます。そのメーカー製造を証明するところの、どこの製品という小さなきれがえりのところなんかについていますが、ああいうものまでも持ち込んできて製品に縫いつけろというようなことで、手の込んだ芝居をして信用をさせます。したがって、無知な方々は有名企業の渉外業務を一手に取り仕切っているかのごとき印象を受けますので、契約書も取り交わさないでまず仕事を始めるわけです。それは先ほど申し上げましたようなせっぱ詰まっている状況だからやむを得ないのだろうと思うのでありますけれども、現に契約書は取り交わしておりません。ここいらに問題があるわけであります。  もちろん、このふれ屋と有名な工業用ミシンのメーカーの営業マンとは何らかのつながりがあることは後日判明したわけでございますが、こういう人物を通じないと零細企業は下請仕事ができません。有名メーカーと直接契約で仕事をしているということはまことに少ないのが実情であります。先ほども申し上げましたように、レインコートなら〇〇印と言われるほどのメーカーさんでも、直接自分の工場で加工製造するということはなくて、むしろそういう東北の各地にまで原反を運んで加工をさせ、その製品を東京に持ち帰るということは往復の運賃をかけても採算が合うようであります。そしてこれはこの間にはいろいろな問題があるのでありますが、中間に入りましたふれ屋と称するブローカーを通じてでないと仕事も入らない。加工賃も入らない。たとえて言いますと、ボタンのごとき部品の一部分が来ないためにいつまでも完成品として納品ができない、それさえ来れば完成品として納品ができるのですが、参りませんので納期限ぎりぎりまで待つ、そうするとその部品が届きますので、昼夜兼行でボタンをつけて納品をするとわずかながら期限切れとなるということで、それが加工賃不払いの原因となってくるわけであります。  納期に間に合わなくなる原因というのはむしろメーカー側にあるのではなかろうかと思われるわけでありまして、零細な下請加工側にはないわけでございますけれども、時期外れで売り物にならないということのクレームがついて、結局、加工した方では、それではしょうがないから原反と部品代は払いましょう、だから製品を返してもらいたいと言いますと、なかなかその製品を返してくれない。もう加工賃は要りませんから、原反と部品代を払いますから製品を返してほしいと言っても返さない。これも後日判明したわけでございますが、こういう製品がバザーとか大特売とかいうところですでに販売済みでございますので、現品はもうメーカー側にもないのです。メーカー側は加工賃は払わないで、現品は販売済みであるにもかかわらず無理難題をふれ屋を通じて言ってくるわけでございます。そういうことでいたたまれなくなって交渉に上京してみまして初めて実情がわかりまして、先ほど申し上げたようなことになるわけであります。  こういう問題が起きましてその事務所に行ってみると一回ぐらいはいるわけですが、二回目に行ってみるとその事務所が移転してしまってわからなくなってしまっている。田舎のおじいさんたちが東京の町をうろうろしながらその移転した事務所を探して歩くわけだけれども、結局どうにもならなくなって最終的には倒産に追い込まれているという実情があります。  非常に長々と実情を申し上げたわけでございますが、このようなブローカーを取り締まることはできないのかどうかという点を私は一応伺いたいわけでございます。  それから、公取の委員長さんに伺いたい点は、このようなブローカーは自己資本もございませんし、いわゆる一匹オオカミという部類でございまして、仲介あっせんをした行為についても責任逃れをいたしますし、また、こういうブローカーであることを万々承知で使い、しかもなれ合いではなかろうかとさえ感ぜられる行為をするメーカーに対しても法律上から問題にできないのかどうかという点を私は伺いたいわけでございます。  これは中小企業庁長官と公取の委員長さんからお答えをいただきたいと思います。
  79. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話を伺っておりましたが、これは善良な中小企業者がいわば食い物になっておるというような感じかと思います。これはやはり一つの大きな問題ではないかという感じがいたします。  率直に申し上げますと、いまのようなケースであれば、ある意味では刑法の問題にもなるような問題も含まれているような感じがいたします。ただ、私どもの関係から言いますと、当面下請代金支払遅延等防止法等によってどの程度までカバーできるかという面で、いまお話しいただいたケースについて具体的にもう一度先生からも内容をお伺いし、私どもとしてどういう対応ができるかというようなことも考えてみたいと思っておるところでございます。  特に、いまお話を伺っておりまして感じますことは、そのブローカーといいますか、ふれ屋とおっしゃいました者の法律的な性格がどうであるか、また、その資本金がどの程度であるか、この辺のところが下請代金支払遅延等防止法を適用するときの一つのポイントになってまいろうかと思いますので、その辺の実情なども聞かせていただければと思うわけでございます。  ただ、一般的に申しまして、いまたまたま秋田の事例をお示しいただいたわけでございますが、縫製加工等を中心とした繊維業界の賃加工形態には様々な問題がほかにもあるように聞いておるところでございます。したがいまして、生活産業局におきましても、こういった取引条件の適正化のための新しい委員会組織を設けまして、これからこの辺の改善をどうやったらいいのかということを根本的に考えようというような体制が進んでおるように聞いておりますので、私どもも、実情を掌握した限りにおきましては生活産業局と連絡をして、そういった新しいルールづくりの改善に資してまいりたいと思うわけでございます。  特に、お話の中で書面の交付の問題にお触れになりましたが、これはいざ問題になりましても書面がございませんと結局は水かけ論になってしまうおそれがございますので、書面の確実な交付、あるいは下請を受けるときには必ず書面を交換し合うというようなことについては一層励行を図る必要があるのではないかとお話を伺いながら感じておったところでございまして、この辺も今後とも努力をいたしたいと思うわけでございます。
  80. 澤田悌

    ○澤田政府委員 御指摘のような事例はまことに困った問題でございまして、これが独占禁止法なりあるいは下請法の規定によって処理できるものであれば、私どもも具体的な問題を検討してこれに臨みたいと思うのでございますが、いま長官からもお話もございましたように、その実態が法律の規定によって取り締まり得るものかどうか、その点がなおなかなか不明確でございます。  たとえばふれ屋と申しますか、ブローカーが下請法二条五項のような規定に合うものでありますれば、これまた対応の仕方もあるわけでございます。また、納期が過ぎたからといって代金を払わないというような問題についても、その責任の所在がどうなっておるか、どういう原因によってそうなったかというようなことが明確でないとまた直接対象とできない点もありますし、それから、契約がないという点も非常に問題でございます。  それで、事態は御指摘のようにまことに困った問題でございますので、私どもの方の独禁法なり下請法で対処し得るものかどうか、具体的な問題をよく伺いまして対処してまいりたいと考える次第でございます。
  81. 松本忠助

    松本(忠)委員 先ほど企業庁長官からお話がございました下請企業振興協会のあっせんの成立が三割を切っているというような現状も、希望する仕事が単価でもなかなか折り合わない場合もありますけれども、実際上手をあけているのだけれども契約書を取り交わして仕事をやるというふうなことになかなかならないということが実情です。もう飛びつくような思いで仕事をするわけで、それにはそれなりの理由があるわけでございますけれども、零細の企業の方々にしてみますと、仕事の切れるのが本当に一番こわいわけです。細々でもいいから仕事をしたい、確実に加工賃が入って、従業員にはきちっと支払いをしたい、給料は払ってやりたいというふうに願っているわけですけれども、なかなかこれができないわけです。  特に地方の場合は、近隣の娘さんあたりをバスで送り迎えして使っている縫製業者がかなりいまして、もう大変な出費でございます。知人の娘さんですから給料は払わないわけにいかないわけですね。単なる都会の親企業のように払ってくれないから払えないのだというようなわけにいきませんで、知り合いの人の娘さんに頼んで来てもらってミシンを踏んでもらっているわけですから、たとえ加工賃が入らなくてもお給料の支払いはどうしてもしなければならない。それをしないとあの人のうちは何だということになり、顔に傷がつくわけです。無理に無理を重ね、やりくり算段をしました結果が要するに倒産ということになってしまうわけです。  先ほどお話がありました下請企業振興協会というお名前はあります。活動もしているようです。しかし、実際問題としてへ先ほどお答えになったような三割程度しかあっせんが成立しない方々に、下請企業振興協会というものがあるのだけれども申し込んだことはあるかと聞いてみますと、名前すら知らない方が多いんですね。こういう零細企業者に対しまして融資の窓口がかたく閉ざされているのが実情です。市中銀行では全く相手にいたしません。県の商工会を通じまして国金へ言いましてもなかなか融資の対象にはされてはおりません。最終的には高利の金融業者から融通を受けて利息の支払いにアップアップしているというのが状態でございます。こういう点を考えてみましたときに、何らかの対策はないものかということが一つです。  それから、下請業者とブローカーの間での仕事の話ができる場合に契約書を交わすことということは非常にまれでございます。もちろん、これがありませんために後日の問題になってもどうにも解決がつかないというのが現状なんですね。契約書を取り交わさない、それでも仕事をしなければならないというこういう人たちに対して何とかして契約書を取り交わしてから仕事を始めるべきじゃないかとわれわれが言っても、実情はそうはいかないのですというふうな苦衷を訴えられるわけでありますが、こういうものに対する指導をどうしたらいいのか、この点を簡単にお答えいただきたいと思うわけでございます。
  82. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまのお話の中の振興協会の存在も知らない企業がたくさんあるという点は、御指摘をいただきまして、中小企業施策はやはり使われるためにあるのであって、少しでも多くの中小企業の方々に施策の内容を理解していただき、また利用していただくように努力しなければならないと私どもも思っておるところでございます。御指摘をいただきましたのを機会に、この下請あっせん業務について少し集中的にPRをするということを考えてみたいと思うわけでございます。  それから、書面の交付が実際問題としてなかなかむずかしいという点につきましては、私どもも一応標準的な下請契約書のフォームなどもつくってこれを普及するように努力しておるわけでございますが、本当に零細な方々のための簡便なフォームというようなものが工夫できないかという点も少し部内で勉強いたしてみたいと思いますので、時間をちょうだいいたしたいと思います。
  83. 松本忠助

    松本(忠)委員 それで、最後に大臣にお伺いをいたしまして終わりたいと思いますが、この繊維産業、特に下請業界の縫製業者の方々は業界における構造的な不況体質というものに攻められて二重、三重の苦しみをなめているわけでございまして、何としましてもこれらの業界の皆さんが安心して仕事ができるようにしてあげなければならないと私は思うわけでございますが、これは別に繊維産業に限るわけではございません。どの産業を見ましてもこれに類似した行為が非常に多いわけでございまして、そして中小企業者が倒産に追い込まれておるような状態でございます。そこで政府系の三金融機関緊急融資というものも一応行われているわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、これも実際上なかなか急場に間に合わない。そして結局長不況の結果は、担保や国の保証限度の枠を使い切っている中小企業が多いものですから、この融資の基準も非常に厳しいために救済がされないのが実情でございます。そして行き着くところは倒産ということになるわけでございます。  そこで、通産省は、今後の中小企業の倒産防止策といたしまして、国が出資する事業団を設けて、債権が焦げついた中小企業に対して一定の割合の保険金を支払うという連鎖倒産防止保険制度を新設しようというようなお話を聞いておりますが、私どもも、中小企業の健全な発達を育成する立場からこの制度はぜひとも必要であろうかと考えているわけでございますが、通産省といたしましてはこの制度をどのように企画され、行政の上に発揮していこうとされているのか。また、この制度は一面なれ合いの倒産によって制度悪用を招く危険性もあるのではないかというふうにも考えられるわけでございますが、この点について大臣としてはどのようなお考えをお持ちなのかを伺いまして終わりたいと思います。
  84. 田中龍夫

    田中国務大臣 連鎖倒産の防止の問題につきましては、過般来、本年の二月でございますか、通産局を通じまして特に通達を出しまして、現地におきますいろいろときめの細かい指導をいたすことにいたしたのでございまするが、ただいま御指摘のような連鎖倒産防止保険の制度というものは、できるならば必要であると私どもも考えておるのでございます。  いま御指摘になりましたように、これを悪用するようないろいろな面もなきにしもあらずでございまするけれども、しかし、どうしたならば本制度が制度としてりっぱなものができるか、ただいま一応検討をいたしておるところでございます。
  85. 松本忠助

    松本(忠)委員 終わります。
  86. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 玉置一徳君。
  87. 玉置一徳

    ○玉置委員 きょうは時間もありませんので直截簡明に問題点に入っていきたいと思いますが、この間の約束だったけれども、自民党ももう少し来ておった方が体裁はいいと思いますね。  そこで、きょうの新聞を見ましたら、三菱グループがサウジアラビアにプラント輸出をする、いわゆる石油化学コンビナートをつくることについて話し合いをするというようなことで、合弁企業に入っていくということが出ておりました。そして若干の政府資金の出資というような趣旨のことが載っておったわけでありますが、プラント輸出が思い切って伸びるように、日本の設備投資が少ない場合にこれが一つの活路を見出す唯一の方法であるというのでわれわれも積極的に応援をしておったわけであります。ことに、サウジアラビアとの問題は、きょうまでどちらかというとこちらが不渡り手形のような約束ばかりをしておりまして、相当な不信を醸しておることも事実でありました。  こういうようなときにこういう問題が出てまいったということは十分前向きにとらえていただきたいと私は思うのですが、政府、ことに通産省の御意見を伺いたいことと、それから政府資金を出資する場合はどのような機関をつくってやっておいきになるおつもりかということ、この二点につきまして御答弁をいただきたいと思います。
  88. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、先般もナーゼル企画相が来られまして、外務大臣や私どもも具体的にお話をいたしたのでありますが、しかしながら、日本がコミットばかりをして一向にそれを実行しないという問題がございます。すでにフランスとかドイツがそのプラントについて、日本がやらないならばやりましょうということをオファーもしてきておるということでありまして、私どもは、当初の三菱の一応の話が一遍中断いたしてしまったのでありますが、それを再開して何とかしたいと思っておるやさきでございましたので、ぜひわれわれの方の年来の要望を実現したいと申したところが、ナーゼル大臣が、日本はもうこれで十三年間口約束だけで不履行を続けておられるので、外国がそれに対してやろうというのを、それはいけない、ぜひ自分の方にといまさらおっしゃることの方がなかなか無理でしょうというような、実を言うとわれわれとしては大変困った応答があったのであります。  しかしながら、ようやくその運びと相なったことは結構なことだと存じますが、何はともあれ、これらにつきましては相当慎重に事を運ばなければなりません。そして、そのいまの機構、あるいはまたプラント自体、さらに誘導品あたりの販路というふうな問題も重要な検討の対象でございますので、まだ具体的に最終的なものではございませんが、事務当局においてだんだんと話を詰めておりますから、詳細にわたりましては事務当局から御説明をいたさせます。
  89. 玉置一徳

    ○玉置委員 これは皆さんにも通知してなくて突然言ったものですから大臣の考え方だけで結構ですが、前向きにとらえておやりになるかどうかということだけでいいです。
  90. 田中龍夫

    田中国務大臣 それでは、もう少しお話をいたします。  その後有名なニューズウイークの支社のハリー・カーンさんが見えた、ときに、自分はサウジアラビアからいまこっちへ帰ってきたのだが、向こうの方における日本の評判が非常に悪い、どうしてそんなに日本が批判を受けるのかということについて自分も非常に心配ですということも言われました。  それから、サウジアラビアというものの中近東におきまする対日関係ですが、あそこは人口こそ二百数十万と小さいのでありますけれども、御承知のように油の面からするならば日本といたしましては最も重要な産油国の一つでございまして、そういう点から、今度のプラントはいまの三十万トンのエチレンプラントでありまして、なお誘導品等々がございまするが、三菱のようなところでありませんと、できました製品を今度はサウジアラビアにかわりましてさばかなければならぬということがありまして、特に、日本等の市場はもう満ぱいでございますけれども、世界に向かっての御協力をサウジアラビアのためにしてあげるというふうなことで、そういう点では非常に共存共栄的なプラントの一つであろうと私は考えておりますので、これはぜひ実現いたしたいものだと、かように考えております。
  91. 玉置一徳

    ○玉置委員 新聞に報じておるところによりますと、プラント輸出が日本は技術その他価格におきまして合いましても、その他の金融政策とか政府の後援のぐあいによりまして、せっかくの一番札を取りながら落札に至らないということが間々報じられておりますので十分にいろいろな方式が考えられなければならないと思いますが、特にエネルギーの問題で一番大切なサウジアラビアのことでありますから、高度な政治的な判断でもってこういう問題が実るように御努力をいただきたいと思いますので、お願いをしておきたいと思います。  それから、もう一つ不況産業のことでございますが、私はかねて数回にわたりまして予算委員会等で主張してきたことですが、金融もしくは金利の引き下げについて、あるいはまた金利の引き下げだけじゃなくて、公共事業でもって景気を刺激し、牽引力となって景気回復をするというようなことについていままで政府は平面的な重点施策をおとりになっておったような感じがするのですが、われわれが主張しておりましたのは、石油ショック以前のような景気回復が可能であれば別でありますけれども、そこまでいき切るようなものではあり得ないし、さすれば、不況業種に対してはきめの細かい手を打っていかなければ全体としての景気の停滞を回復し、不況の感じを払拭していくことができない、個別にそれぞれの手を打たなければならないんじゃないかということを強調してきましたけれども、ようやくこのごろ通産省も積極的に不況産業に取り組むような姿勢が出てきたような感じがいたしますが、これにつきまして大臣はどのような御意図でお進めなのか、お答えをいただきたいと思います。
  92. 田中龍夫

    田中国務大臣 不況産業の中におきましても、やはり業種別にいろいろと趣を異にしていると存じます。巷間において最も言われておりまする繊維産業、あるいは平電炉等の鉄鋼関係、あるいはアルミでありますとか、その他セメントとかいろいろな業態がございますが、これらのものの対策もいろいろと考えてまいらなくてはなりません。特に繊維産業のごときに至りましては、一方においてはかっての高度成長の時代から、昔から日本の繊維工業というものは世界的にも覇を唱えておったわけでありまするが、他方、韓国とか台湾とか中国とか、近隣の後発国がどんどんと同種の業種をやっていき、その間におきまする労賃その他の問題もございまして、下から非常に突き上げられてまいっておるような構造的なものがございます。これらにつきましては、それを維持する努力ばかりいたしておってもならぬのでありまして、設備その他につきましては構造改善をして、整理するものは整理をし、同時にぜい肉を落として活力を新たに与えていかなければならぬというふうな面もございます。  そういう点につきましては、昨日の閣議におきましても、特に不況を対象といたしました数業種に対しまして業態別にきめの細かい対策を練ってまいろうというようなことを決めたわけでございますが、今後これに対して取り組んでまいりますに当たりましては、どうぞ皆様方の御協力のほどをひとえにお願いいたします。
  93. 玉置一徳

    ○玉置委員 不況業種のものは、過剰設備と、その稼働率が非常に悪いという点に問題点があるわけでありますので、これはある程度の過剰設備廃棄しない限り普通の状態に戻り得ない。そこで、雇用の問題は今度安定資金制度が十月一日から発効いたしますけれども、中長期の施策をより講ぜざるを得ないのじゃないだろうかと思うのですが、ことに構造改善実施に伴いましての施策については労働省と十分な協議をいただきたいと思います。  二番目には、たとえば平電炉におきましては、労働組合の諸君まで、このままではもう全部が野たれ死にします。だから構造改善に踏み切りなさいという賛意まで表して協力をしていただいておるにもかかわらず、某メーカーでありますけれども、いま新規の設備投資を思い切ってやろうとしておるようなことを聞くのでありますが、そういうものに対してはどういうように処置されますか。行政指導のやり方を何か考えていただかなければならないと思いますが、大臣、御所感はどうですか。
  94. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内の設備改善といいますか、スクラップ化という問題に対しまして、われわれは別途な、それを廃棄できますだけの資金、買い取り資金を用意しなければならないと同時に、また、それがいまお話しのようにせっかく政府の方でそういう処置をとりましても、物置から出してきたような古い機械を高く売って、それでまた新しい機械を買って自分だけが生き延びようというようなことであってはなりませんので、その点はやはり組合としてお互いが共助的に監視しながら、スクラップ化に対して共同の連帯感を持ちながら整理していくということにいたさなければならぬと考えております。
  95. 玉置一徳

    ○玉置委員 組合に入っていない企業らしいので、何らかの措置を講じていただきたいと思います。
  96. 天谷直弘

    天谷政府委員 いまの先生の御指摘の点は非常にむずかしい問題でございます。現在の法律制度のもとにおきましては、そういう企業に対する法的規制というのは非常に困難でございます。われわれといたしましては、鉄鋼部会の中に平電炉設備投資調整の小委員会を一応つくりまして、そこで平電炉の新増設を原則として禁止するというルールをつくろうとしておるわけでございます。しかし、これはやはり行政指導のルールでございますから、聞かないという企業に対しましては強制力は持っておりません。ですから、現段階におきましては、できるだけ説得ベースで抑制に努めたいと考えておるわけでございます。  しかし、七月以降になりまして中小企業団体法に基づく商工組合が結成された場合には、そのアウトサイダー規制命令の余地も出てまいりますので、そういうアウトサイダー規制命令を出せるかどうかということにつきましては、その段階でよく検討をいたしたいと考えております。     〔中島(源)委員長代理退席、橋口委員長代理着席
  97. 玉置一徳

    ○玉置委員 次に、苛性ソーダの問題で若干の質問を申し上げたいと思うのです。  まず、天谷局長にお伺いしたいのですが、水銀法の第二次転換は、これは大体いつごろどのような計画実施をし、また延期をするのか、簡明にお答えをいただきたい。
  98. 天谷直弘

    天谷政府委員 昨日、ソーダ工業製法転換推進対策委員会を開催いたしまして、その委員会の下部機構といたしまして、イオン交換膜法技術評価専門委員会を設置することに決めました。  この専門委員会はまだ人選は進んでおりませんで、これから任命をしなければいかぬわけでございますけれども、主として学者に委員になっていただきまして、一応の目途といたしましては十月くらいまでにイオン交換膜法の技術評価をしていただくということになっております。この技術評価が十月までに円滑に進むかどうかよくわかりませんが、ともかくそういう努力をしたいということでございます。  その技術評価の結果によりまして、そこで技術的にも経済的にもイオン交換膜法は十分実用可能であるという結論が出てまいりますならば、今度はそういう結論に立脚して個別の企業転換計画を詰めていきたいというふうに考えております。他方、イオン交換膜法はまだ技術的に確立していない、経済的には著しく不経済であるというようなことでありますれば、そういう個別の転換計画を進めるということはもう少し待たなければならない、こういうことになるのではなかろうかと思います。
  99. 玉置一徳

    ○玉置委員 十月から発足する、その判定によって事が決まっていく、こういうことですね。
  100. 天谷直弘

    天谷政府委員 失礼でございますけれども、十月から発足するのではなくて、発足は間もなく発足するのでございますが、一応のめどといたしまして十月末までに技術評価の結論を得たい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  101. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで、問題は、第一次転換の組に対する不公平是正をどうするかという問題だと思うのですが、私は、国家賠償法やら何やらというようなことを大げさに質問しようというのではありません。  当時、水銀に対する漁民その他の猛烈な反対がありまして、工場が閉鎖されるというようなことまで事態が進んだわけでありまして、三木前総理が環境庁長官をしておいでになったときだと思いますが、水銀法を速やかに隔膜法その他に転換しなさいということを環境庁として出したこともある意味ではやむを得なかったのじゃないかと思うのです。そこで隔膜法に変わったところが、水銀法のような形で、その品質、価格等々がうまくいかない、しかも思い切った投資をしてしまった、さらに次の第二次はイオン交換膜法に評価をされた後に安定的に入っていくということで、ここでも、現在の第二次転換組でもうすでに終わっておらなければいかぬくらいな時期にいまなっておるわけですが、この第一次の隔膜法による転換技術的にも経済的にも必ずしも満点でないというのでじっと待っており、それとの差が非常にできてしまった。これは別に国が全部賠償せいという意味ではありませんけれども、これは本当に今後とも化学の問題ではこういう事態も起こり得る可能性はないことはないと思うのです。  技術的に転換をしてみたところが、さらに経済的にも技術的にも優秀なものができたということになれば、前のものが本当に非常に困難な状態に入ってしまうということはあると思うのです。ただ、それが自然に行われておるのでなしに、若干国の行政が関与してここへ来てしまったということになりますので、これについては、この不公正是正のために国も積極的に努力する義務だけはあると思うのです。  そこで、この格差解消についてどのようなことを重点に努力しておいでになるのか。御説明をいただきたいと思います。
  102. 天谷直弘

    天谷政府委員 この転換組と非転換組との格差発生という問題は、五十三年三月末までに全面転換をいたしますならばその問題は比較的短期間で解消する問題でございますけれども、非常に残念なことでございますが、未転換組が転換を強行するということは先ほど来申し上げたような説明で困難であるということで、どうしても格差という問題が発生せざるを得ない状況であるわけでございます。  この格差の解消ということはきわめて必要なことでございますので、たとえば固定資産税であるとか特別償却とかいう面で若干の努力は講じているわけでございますが、これだけでもって格差全部が縮まるということはとうてい困難でございます。したがいまして、現在やっておりますことは、コスト差決済という制度を通じまして、未転換組から転換組に対しましてトン当たり五千円のコスト差決済ということをやらせまして、それを通じて格差の是正を図っているわけでございますが、それでもなおかつまだ必ずしも十分とは言えないというのが実情でございます。  われわれといたしましても、このコスト差の一層の是正に努めなければいけないというふうに考えておりますけれども、いろいろ問題がございます。最大の問題は未転換組のメーカーが大部分弱小中小メーカーでございまして、経営的にも非常に苦しい状態になっておるというようなことがありまして、五千円よりもう少し上げなければいけないと思いますが、そう急には経営的にもなかなかむずかしい問題がございます。  われわれとしましては、こういう問題につきましては、役所が一方的にこれは何千円がよろしいということを決めて強引に押しつけるということは行政のあり方として必ずしも望ましいあり方ではないと思っておりますので、できるだけ業界ベースで転換組と未転換組の間で意思の疎通を図り、どうしてもうまくいかぬというときには最後的に役所に調整を依頼したいということであれば、われわれもまたその依頼を受けて調整しなければいかぬと思っておりますが、現段階におきましては、できるだけ業界間での利害の調整を図るようにし、われわれはそれを後押ししたいというふうに考えております。
  103. 玉置一徳

    ○玉置委員 自由経済の世の中と言いながら、このごろは雇用の問題その他社会上のいろいろな問題もありまして、自由経済だから倒れていくものは倒れていけというようなわけにはまいらぬ世の中でございます。まして、いわんや、三木環境庁長官の決断による順番で来たわけでありますから、行政介入をせざるを得なかった性格のものでありますだけに、その不公平を業者間でという形でいつまでも放置することはどうかと私は思うのです。だから、これは、積極的と待っておるのとちょうど真ん中ぐらいをぼちぼちおやりになる時期じゃないだろうかというような感じがいたします。  つまり、今度の第三次のやつがこのまま突入するということになれば、またそれでよかったかと思いますけれども、これからやや長期にわたるぞというような感じが出てきた今日でありますからもう少し積極的におっしゃったっていいのじゃないだろうかという感じが私はするのですが、どうお思いになりますか。
  104. 天谷直弘

    天谷政府委員 これは出し手の方と取り手の方とで利害が非常に反する問題でございまして、おっしゃいましたように、非常に積極的な方と消極的な待つ方との中間といいますか、その辺はどの辺が中間であるかデリケートなところでありますが、仰せのような方向でやりたいと思っております。
  105. 玉置一徳

    ○玉置委員 工業塩の輸入に若干の手を加えるということはでき得ませんか。
  106. 天谷直弘

    天谷政府委員 先生のおっしゃる御趣旨は、工業塩の輸入に手を加えて隔膜法の方の操業率を上げろということでございましょうか。
  107. 玉置一徳

    ○玉置委員 輸入の関税で操作するわけにはいきませんかということです。
  108. 天谷直弘

    天谷政府委員 輸入割り当てによりましてそのコスト差決済そのものを調整しろということでございますとすれば、それをこういう公式の場におきまして通産省が認めるわけにはまいらないかと存じます。
  109. 玉置一徳

    ○玉置委員 公式の場で認められなかったら非公式の場で認められるという形になると思うのですが、それはどういう意味ですか。
  110. 天谷直弘

    天谷政府委員 塩の割当は、やはり、その需要だとか工場の能力だとかいうものに従って割り当てるべきものであって、何千円のコスト差決済に同意しないものには塩を割り当てないというようなやり方は行政としてちょっとむずかしいのではないかと思います。
  111. 玉置一徳

    ○玉置委員 それでは、隔膜法と水銀法との稼働率の調整をする方法はいかがなものですか。
  112. 天谷直弘

    天谷政府委員 隔膜法の稼働率を高くして水銀法の稼働率の方を低くすることによって調整できないかという御趣旨かと存じますが、そういうやり方というのは全くできないことはないと思いますが、ただ、それをやや大幅にやろうといたしますと、すべてユーザーがついているわけでございまして、たとえばその水銀法の工場の周りには塩素のユーザーというものがございます。塩素は遠距離に運搬することは困難でございます。ですから、ある水銀法の工場の稼働率を著しく下げるというようなことをいたしますとそのユーザーが困ってしまうという問題が出てまいりますし、あるいはまた、御承知のように、この水銀法の苛性ソーダでなければ使えないというユーザーもいるわけでございますから、そのユーザーを困らせてしまうような調整ということはむずかしいわけでございます。  全く不可能とは申し上げませんけれども、大幅な調整というのはいろいろむずかしい問題があると思いますので、よく検討してみなければいけないというふうに思います。
  113. 玉置一徳

    ○玉置委員 固定資産税が現在五分の二免除されているわけです。これは当時こういう事態を想定せずに優先組にそういうことをしたんだろうと思いますが、いま格差を是正しなければならない事態に若干なってきたという時点においては、この点はもう少し思い切った固定資産税の免除という方式をとり得ないかどうか、伺います。
  114. 天谷直弘

    天谷政府委員 税制全般にかかわる問題でございますので、われわれとしましてはそういうことが実現するのが望ましいと存じますが、なお税務当局とよく相談をしなければいけないと思います。
  115. 玉置一徳

    ○玉置委員 隔膜法がどうしても濃縮分が足らぬからもう一回蒸気で重油を使って濃縮しなければいかぬということについて、重油関税を思い切って下げるとか免除するというような方法はないかどうか、伺いたい。
  116. 天谷直弘

    天谷政府委員 重油の特定用途に対する輸入関税の免税という方法でございますが、この方法につきましては従来大蔵当局といろいろ析衝をしたようでございますけれども、これまでのところはそういうやり方というものは税務技術上きわめて問題があるとか、免除された重油が果たしてそういうふうに特定用途にちゃんと使われているかどうか、そういうエンフォース等につきまして非常に問題があるとか、あるいはその関税当局といたしましては、もしどうしてもそういうコスト差是正の必要があるならば補助金とか別途の方法でやるべきであって、関税制度を使用するのはおかしいとか、いろいろ反対がございまして、現在までのところ実現はいたしておりませんが、なお検討を続けたいと思います。
  117. 玉置一徳

    ○玉置委員 一番直接に政府がやり得るのは、開銀融資あるいは市中銀行の協力を求めて金利をできるだけ下げるということだと思うが、これについて努力される意思があるかどうか、伺いたい。
  118. 天谷直弘

    天谷政府委員 開銀の金利につきましては現在七・七%が適用されておりまして、再優遇金利に非常に近い形になっておりますが、今後ともその引き下げの努力を続けたいと考えております。
  119. 玉置一徳

    ○玉置委員 輸入品に関税賦課をして、その賦課を不公正の是正に充てるということはできないかどうか、伺いたい。
  120. 天谷直弘

    天谷政府委員 輸入品に関税をかけるという方法は、これはガット十九条の問題でございまして、すなわち代償を出すとか、そういう国際的なルールに従ってやらない限りはそれはむずかしいと思います。
  121. 玉置一徳

    ○玉置委員 最後に大臣にお伺いしたいのですが、問題は時の情勢の必要に基づいてやった行政指導でありますけれども、その行政指導が非常にむずかしい状態に逢着した。そして、今後ともこういうことが必ずしも起こらないという保証はないと思うのです。したがって、そういう場合の不公正是正について、大企業中小企業という分け方はあり得ると思いますが、まあこのくらいの会社だったら言われるとおり先にやらなければいかぬなという、先発組が不幸になっておるという現状を踏まえまして、行政指導によってできる限りのことを考えなければいかぬのじゃないかという感じがします。そういうことを役所として誠意を示されない限り、今後いろいろな業種転換等々をやるときには、もしもだめだったときに、こういう場合にはどうしてくれるという一札を役所からとるというような形になってもいけませんから、そういう信頼にこたえるためにも思い切ったことをやらなければ、いままでの既応の概念だけではこれはなかなかうまくいかないのではないか、開銀の融資の金利はこれだけでございますなんと言っておったのでは話にならぬのじゃないか、このように思うのです。  たとえば、これは中小企業のことでございますけれども、十五年間無利子という金利もあり得るわけでありますから、ある意味ではそういうところに匹敵する事態じゃないだろうかという感じもいたします。だから、開銀融資七・七が最低の七・五までというくらいのことは当然のことであり、その他、こういう場合に本当に今後とも起こり得るという場合に、せめてこれだけの救済は国が本当は出すべきであるけれども、行政指導したのだからせめてこれだけのことはというような気持ちでやっていただかないと後々に続く行政指導にひびが入ってはいかぬのじゃないだろうかという感じがしますが、大臣、積極的にこれに取り組んでいただけるかどうか、伺いたい。
  122. 田中龍夫

    田中国務大臣 当該隔膜法の問題につきまして、私どもは行政官として深い反省をしなければいけないと思っております。ムードにだけ押されて、かような技術的な問題を簡単に処理したところに反省を必要とするところがあると私は思います。ことに、化繊関係のような高級苛性ソーダを必要とするものは、普通の隔膜法のごとき程度の苛性ソーダでは使用不能であるということも技術的にはわかり得たと思うのでありますが、そういう点、私どもは行政官としていろいろな事態に直面いたしましても、技術屋としての信念なりあるいは行政官としての立場というものもしっかりと踏まえて今後行政をしなければならぬと思います。  ついては、その結果として起きましたいまのような問題を速やかに調整しなければならぬということはすでにわが方から環境庁の方にはお願いをいたしておりまして、その是正を図ろうといたしております。それに伴いましての損害の問題をただいま先生のおっしゃいましたような開銀その他の特別措置によってカバーしていくかどうかという問題もございましょうし、あるいは、また、その他諸般の救済と申しますか、行政処置もございましょうし、今後なお勉強をしてまいりたい、かように考えております。
  123. 玉置一徳

    ○玉置委員 最後に、一点だけ生活産業局長にお伺いしておきます。  構造改善構造改善と言いましても、過剰設備廃棄するというだけが能じゃなくて、やはり、後進国、発展途上国の追い上げとかいろいろな問題がありますから、それにたえ得るような体質構造改善をするんだということの本質が、ややもすると現在の不況を乗り切るカルテルをずっと引っ張るんだというような形にえてしてなりやすいんじゃないだろうかと思うのですが、こういうことを十分念頭に置いていただいて不況業種構造改善というものを考えていただかなければいけません。  なお、きょうの新聞を見ておりますと、全銀協の会長が「構造不況業種救済に無制限な融資せぬ」ということを言っています。これは見出しでちょっと粗っぽいんですけれども、中を見てみれば当然のことを書いておるわけですが、こんなときに当然のことを何もわざわざ銀行の協会長に教えてもらわぬでもだれでも知っていることなんで、これは頂門の一針として言いよったんじゃないかと思いますけれども、局長、こんなことにおどかされてあれしておったらいかぬので、ひとつ馬力を上げて気張っていただかぬといかぬと思いますが、どのようにお考えになっておりますか。
  124. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  構造改善の問題につきましては全く先生のおっしゃいますとおりでございまして、当面の不況に惑わされず、むしろ長期的な観点から体制の立て直しをしっかりやっていかなければならぬと思いますので、御趣旨のような方向で鋭意努めてまいりたいと思います。  それから、二点目の、全銀協の会長の新聞の記事を私もけさ見たわけでございますが、私どもとしては、五月三十一日でございましたか、当面の不況に対しましての協力の依頼をしたわけでございまして、これは新聞の伝えますところがどの程度正確であるかわかりませんが、私どもとしてはぜひ協力をして大いにやっていただきたいという趣旨でございますので、先生のお言葉もいただきまして大変ありがたいことだと思いますので、強力に進めてまいりたいというように思っております。
  125. 橋口隆

    ○橋口委員長代理 安田純治君。
  126. 安田純治

    ○安田委員 きょうは通産大臣が最後まではいらっしゃらないということですので先に通産大臣にお伺いすることが集中するわけでございますが、その都合上最初の答弁は非常に簡単に明瞭にしていただきたいと思います。  今日のわが国経済の実体にかんがみて、大商社など巨大企業が負っている社会的責任はますます重大なものになっていると考えるわけでありますが、しかるに、四十八年にいわゆる商社批判の大きな国民世論がわき起こった以後も依然として大商社、巨大企業の反社会的行為は後を絶っておりません。その悪徳商法の被害を受けて倒産に追いやられた中小企業は数少なくないのでありますが、私は、本日、その一つの事例として、大商社の伊藤忠商事と西武百貨店がぐるになった反社会的行為を問題にしたいと思うのであります。  第一の問題は、伊藤忠商事と西部百貨店が昭和四十八年十一月から五十一年二月まで三年近くの間続けてきた架空売り上げの問題でありますが、その手口をかいつまんで申しますと、まず西武百貨店がAという中小企業に指示をいたしまして、その中小企業のAが伊藤忠に商品を売ったという形をとります。これは実際には商品は全然動いておりませんが、そのときの単価を仮に百円といたしますと、伊藤忠はそれを百二十円で西武百貨店に売る、西武はそれをまた今度百四十円でもとの中小企業のAに売るという形で、こういう三角取引でぐるぐる回されるわけであります。しかし、商品はちっとも動いておりませんが、中小企業は百四十円で仕入れて百円で売る結果になりますから、四十円損します。伊藤忠は百円で仕入れて百二十円で売り、西武は百二十円で仕入れて百四十円で売るわけですから、大企業の二社が二十円ずつもうけて中小企業に四十円の損が集中するという、こういう回し商法とでも呼びましょうか、しかもこれが実体のない架空のものとして取引されているのであります。具体的実例を挙げますと、群馬県の館林市の中小企業の館林ドレスと西武、伊藤忠の間でこういう架空取引があったことは事実であります。  商社、百貨店の中小企業への金融としての側面については後で問題にいたしますけれども、まず、いま申し上げた形の架空取引があった事実は通産省として確認されましたかどうか、お伺いしたいと思います。
  127. 山口和男

    ○山口政府委員 御指摘の架空取引と申しますのは、実際の売買を目的とするものではなくて、むしろ信用供与の一手段として形式的に商品売買の形をとるというような取引を指すといたしますと、このような事実がこの館林ドレス、西武、伊藤忠の間にあったということにつきまして、そういう事実があったという報告を受けております。
  128. 安田純治

    ○安田委員 館林ドレスの従業員や税理士の方の長期間にわたる洗い出し作業の結果判明した架空取引額は実に十三億五千三百万円に上っております。  伊藤忠商事及び西武百貨店はこういう意味の架空取引はなかったと否定していますか、それとも行ったことを認めていますか、端的にお答えいただきたい。
  129. 山口和男

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  こういった手形の金額が数億になるという話は伺っておりますが、伊藤忠の方は事実は知らないというように申しております。
  130. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、伊藤忠は事実は知らないというふうに言っているということですか。
  131. 野々内隆

    ○野々内説明員 私ども、担当の者を呼びまして事情を聴取いたしましたところ、伊藤忠の方からは取引があった事実については認めておりますが、それがそういう形で三角取引であったということについては、その当時は知らなかったというような報告をいたしております。  それから、西武百貨店の方からは、その当時の責任者が現在いないのでその当時の裏の事情はわからないと言っていますが、しかし、そういう取引があったという事実については認めております。
  132. 安田純治

    ○安田委員 ここに、西武作成の文書で、架空売り上げを行っていることを裏づけるものがあります。これは館林の未払い金を要求した際の西武側が作成した文書でございますけれども、これば前にそちらの方にも資料としてお渡ししていると思いますが、ここを見ますと、「資料2」の欄外に7という番号が振ってあるところでございますが、ここにりっぱに「架空売上に付き商品なし」と書いてありますね。だから、少なくとも西武はわかっていたことは事実だと思うのです。  問題は、伊藤忠はそうすると商品は実際動いたと当時思っておったという答えなんでしょうか。
  133. 野々内隆

    ○野々内説明員 お答えいたします。  伊藤忠からの口頭の報告によりますと、通常、そういう取引の場合には商品を売る方から商品を受け取る方に対して伝票が行って、商品を受け取った方から受け取ったという旨の通知があれば、それでもって取引が完了するという形をとっている、したがって、伊藤忠としては実際に物が館林ドレスから西武に動いたかどうかということについては確認をしていない、西武から物を確かに受領したという通知があって、それで取引が完了している、かような報告を受け取っております。
  134. 安田純治

    ○安田委員 では、この伊藤忠の方の認識についてはまた後から時間があれば質問いたしますけれども、少なくとも西武は架空の取引があった、売り上げがあったということは認めておるわけであります。  しかも、重要なことは、このような架空取引は単に西武、伊藤忠、館林ドレスとの三角関係だけではなくて、ほかにもあるということであります。これは前にお渡ししてあったと思いますが、「資料3」という番号が入っておる伝票がここにございますけれども、それによりますと、まず品物はジャンパーとズボンを各種合わせて一万六千二百六十着となっているわけであります。これはもちろん商品は架空でございますが、五十年の八月二十日に館林ドレスがダイケンセンイの東京支店に二千五百四十一万一千八百円で売って、同じ日にダイケンセンイが西武に二千六百十七万九千五百四十円で売って、そして二カ月後に今度は西武が最初の出発点である館林ドレスにそのものを二千八百三万八千二百円で売っているという伝票になっておるわけであります。この結果は、館林ドレスは二百六十二万六千四百円の損、ダイケンセンイは七十六万七千七百四十円のもうけ、西武は百八十五万八千六百六十円のもうけということになりまして、こういうようなことが西武、ダイケンセンイ、館林ドレス間でも行われているという実例があります。  伊藤忠商事もほかにも架空取引を行っていると私は聞いております。私が聞き及んだだけで五社あります。そのうち実に四社は倒産しているのでありますが、伊藤忠はほかにはこういうケースがないと明言しているのですかどうか、通産省にお伺いしたいと思います。     〔橋口委員長代理退席、委員長着席〕
  135. 野々内隆

    ○野々内説明員 お答え申し上げます。  伊藤忠からは、先ほどから問題になっております館林、西武の件以外につきまして、そういう取引があるかどうかということについては事情を聴取いたしておりませんので、現在お答えはちょっといたしかねます。  ただ、一般論といたしまして、同一の相手との間で売りと買いを行うということは将来不祥事につながるおそれがあるということで、社内では厳しく戒めておるという一般論としての報告は受け取っております。
  136. 安田純治

    ○安田委員 通産大臣、この架空取引の概要はおわかりいただけたと思います。  そこで、大臣の時間の都合がございますので、全貌を明らかにしてからお伺いしたいケースでありますが大臣にお伺いしたいのですけれども、大商社や百貨店がこういう架空の売り上げを行っているという事実について、好ましいものと考えられるかどうか、それから今後どう措置をされるか、伺いたいわけであります。  館林ドレス一社だけだと十三億円という金額でございますけれども、しかし、十社、数十社あるいは何百社という企業間取引で仮に行われているとしたら、これは放置できない問題であると言わざるを得ないと思うのであります。  先ほど申し上げましたように、私の聞き及んだだけでも五社あって、そのうちの四社は倒産している。伊藤忠は他の商社でもこういうことはやっているのだと述べたということも聞いておりますけれども、このような行為が望ましいと考えられるかどうか、今後どう措置されるのか、大臣の見解を伺いたいと思います。
  137. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまお話しのような次第でございますれば、まことに不都合な気がいたす次第であります。ただ、企業間の取引といいますか、企業間同士の契約というものの裏といいますか、それがどういうことになっておるのか私どもはよくわかりませんし、また、それが信用供与の何らかの一つの便法として行われたのかどうか詳細はわかりませんが、お話しのような次第でございますればまことに不都合なきわみだろうと思います。  これを放置しておいてよろしいかどうかということについては、取引上の商行為といたしまして逸脱した一つの場合もあり得るが、しかしながら、通産省といたしましての、行政官庁としての立場は、原則として私企業に介入しないというたてまえは別個でございます。そういう点と相関連いたしまして、これが犯罪を構成するとか刑事上の問題になるとかいうようなことに至った場合には、それは当然別な立場から行政権の介入を必要とする、かように考えます。
  138. 安田純治

    ○安田委員 大臣の時間の都合があって、全貌を細かく明らかにしない前に御見解を伺ったわけですけれども、実は、これは刑事上の犯罪にもなるのではないかというふうに私どもは考えておりまして、この後の質問で警察庁や何かにもお伺いしたいと思っておりますが、私どもとしてはこれはいろいろな面で違法性につながっていくと思いますし、これからの質問でそれを明らかにしたいとは思っておるわけですが、通産大臣におかれましてもぜひ調査をして、こういうことがないように措置していただくようにお願いしたいと思うのであります。大臣の御都合の時間がおありでしょうからこれで通産大臣に対する質問は終わりますが、その辺はできるだけよろしくお願い申し上げます。  次に、私が聞き及んだ範囲でのこういう商法によって被害を受けた会社のリストがここにございますが、これは十社に上っておるわけであります。私の口から公表はしない方が当の中小企業の今後のために適切だと考えて公表はいたしませんけれども、通産当局にリストを提供しますので、引き続き調査するように要求いたします。これは調査を約束していただけますかどうか、伺いたい。
  139. 山口和男

    ○山口政府委員 一種の信用供与形態ということでこういった取引が行われるということは聞いておりますが、そういう信用供与ということになりますと、これも私企業間の商行為に属する事項だということになるわけでございまして、それが関係法規に照らしまして適法に行われているということでありますならば、これは行政機関が直接これに介入していくということは必ずしも適当ではないのじゃないかというように考えております。
  140. 安田純治

    ○安田委員 その点はもう一遍後で念を押しますけれども、次に、大蔵省に伺います。  私の方の調査では、伊藤忠は、信用供与というか、端的に言えば金融のために行ったというふうに言っていると聞いておるわけであります。大蔵省の調査ではどうでしたでしょうか、伺いたいわけですが、この架空売り上げによる利益がもし売上利益として計上されていれば会計処理上適切でないということになると思いますが、この点について大蔵省の御見解を伺いたいと思います。
  141. 森卓也

    ○森説明員 お答えをいたします。  金融ということは結果でございまして、形の上では一応商品を仕入れて、そしてそれが売り上げという形になっておりますし、先ほど通産省の方から御答弁がありましたように、伊藤忠が手形を振り出しました際には西武百貨店の商品の納品書の受領印がございますので、伊藤忠は当時といたしましては商品の売買の資金繰りを助けたということでございますので、伊藤忠の経理状況は、当時としましては、仕入れとそれから売り上げを立てたということは間違いではなかっただろうと思われます。
  142. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、伊藤忠は西武と館林間の信用供与といいますかの一つの手助けとして中に入ったんだということは、最初は認識がなくて、事実取引だというふうに認識しておったという回答なんですか。それとも、最初から実はそういう信用供与の意味があったんだということをわかっていたということなんですか。はっきりしてください。
  143. 森卓也

    ○森説明員 実際に西武と館林ドレスとの間で商品が動いているという認識のもとに、その間の資金的な援助をするということのために手形を振り出したということのようでございます。
  144. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、少なくとも伊藤忠としては売買益として上げるのはお処しいのじゃないでしょうか。
  145. 森卓也

    ○森説明員 現時点で見ますと、実際には商品が動いていなかったようでございますから、商品の裏づけのない単なる手形の振り出しということになりますので、完全な金融ということになりますから、いまの段階で見ますと売買益であるということは誤りだということになろうかと思います。
  146. 安田純治

    ○安田委員 少なくともいまの時点で架空の取引だということがわかれば、商品が動いていないということになって単なる金融を図ったのだということになれば、こめ会計処理上の問題は適切でなかった、客観的な実態を反映していないということを言わざるを得ないと思うのです。  そういう意味では、後になって見れば少なくとも好ましくない会計処理であったということは言えると思いますけれども、どうでしょうか。
  147. 森卓也

    ○森説明員 先ほど申し上げましたように、現時点で見ますと、売買ということで会計処理をいたしましたことは好ましくなかったということは言えるわけでございます。
  148. 安田純治

    ○安田委員 次に、経済企画庁に伺うわけでございますが、企画庁は、経済見通し、消費動向などの調査、分析に当たって、大商社や百貨店の売上統計はその資料として活用していると思うのであります。ところが、先ほど来明らかにしてきましたように、実際は実体のない、金融を図るためのものですけれども、商品が動いたような形を帳簿上とっておる。このような実体のない売り上げも少なからずあるという実情がわかってきたわけでありますが、経済企画庁としてはこの事態をどうお考えになりますでしょうか、お伺いします。
  149. 宮崎勇

    ○宮崎政府委員 お答えいたします。  ただいま具体的にお挙げになりました例につきましては所管の官庁からお答えした方がよろしいかと思いますが、一般的な消費動向等の調査に使います資料は、その一つの例として代表的な三十三商社の——現在は合併したものもございまして二十九社になるわけでございますが、それらの資料は一応会社の申告と申しますか、報告によります売り上げでございますので、個々にそのようなものが含まれているかどうかということは一概に言えないと思います。
  150. 安田純治

    ○安田委員 先ほど挙げました館林ドレスだけではなくて、相当の数これをやっておるらしいということはわかるわけでありまして、そういう点では統計上数字的に見れば相当の有意な数になるのではないかと思うのですけれども、それでもいまのお答えでよろしいのでしょうか。
  151. 宮崎勇

    ○宮崎政府委員 お答えいたします。  私どもが徴収しておりますその種の資料は、景気の動向について参考にするためでございます。したがいまして、統計の連続性という点から言えば、もし仮に今期について前期と同じような基準で報告をしているとすれば傾向は一応つかめるわけでございます。もちろん、内容につきまして御指摘のような点がその調査期間に変更があったとすれば、そういう調査上のバイアスは生じ得るということは十分に考えられるわけでございますが、長期的に資料をトレースいたしておりますとその種の変更というものはある程度是正できると考えております。
  152. 安田純治

    ○安田委員 少なくとも、こういうように実際に商品が動いていない空売り、空買いがどんどん行われれば、日本の経済の実態と合わない数字が実際に出てくるわけだと思うのですよ。だから、そういう意味では統計上好ましいことではないと思うのですが、どうでしょうか。
  153. 宮崎勇

    ○宮崎政府委員 その調査が具体的な商品の数量的な移動を調査するというようなものであって、仮に架空の帳面上だけで動いておるというようなことだとすれば、御指摘のような実態とかけ離れるということは十分にございます。  その点は、たとえば一般の売上統計から品目の実態的な数量の移動を把握するために物価でデフレートしたりインフレートすることがございますが、その場合にも同じような問題が生じやすいという点は御指摘のとおりであります。
  154. 安田純治

    ○安田委員 次に、公正取引委員会に伺いたいのですけれども、このような西武、伊藤忠、そして館林ドレスのような三者間取引においては必ず中小企業だけが損をしているわけであります。中小企業が高く買って安く売るという仕組みが西武の指示で三年間続けられてきたわけです。これは悪いようにはしないから言うとおりについてこいというようなことで、しかも、単にその取引だけではなくて、実際の取引も西武との間にございますので、いわばそういう継続的な経済関係、取引関係の中でこうした架空取引も行われておる。そして、一定の段階に来て大企業の意思でストップということになると、その瞬間にたちまち倒産の憂き目を見るわけです。それまではぐるぐる回していますから、赤字はだんだん帳簿上積み重なりますけれども、いいのですが、あるとき突然ストップを食わせられると、それで倒産ということになるわけであります。  これは結局大企業がその優越的地位を利用して初めてできることであって、もし経済的に優越的な地位がなければこんなばかな取引に中小企業が応ずるわけはないのです。結局、大企業の優越的な地位を利用してそれを行うわけですから、独禁法上の不公正な取引に該当すると思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  155. 澤田悌

    ○澤田政府委員 御指摘の件は具体的な問題として御指摘でございますし、また、実態が私どももよくわからない点もございますが、これが独占禁止法上のいわゆる不公正な取引に該当するかどうかということはもう少し具体的に調べてみませんと何とも申せない点が多いのでございまして、必要があれば当事者から事情を直接聞くというようなことによりまして事態を検討してまいりたいと思います。
  156. 安田純治

    ○安田委員 昭和五十年の一月二十二日付の総合商社に関する第二回調査報告の一つのケースに、いまの館林ドレスのケースにきわめて類似していると思うケースがございます。その二十ページの「総合商社の取引上の地位の利用」というところのIですが、「A(以下総合商社をさす。)は、Bに融資した後、Bが従来問屋から直接仕入れていた商品の一部についてAを名目的に経由させ、これについて眠口銭を徴収した。」ということが出ておりますが、館林ドレスと西武、伊藤忠の関係はちょうどこれによく似ておると言わざるを得ないと思うのですよ。  ですから、公取委員会としてはどのようにこれに対処されるか、もう一遍はっきりお答えいただきたいと思います。
  157. 澤田悌

    ○澤田政府委員 この件は先ほども申しましたようにきわめて具体的に御指摘でございますが、それが商社のいわゆる眠り口銭のケースに該当するかどうか、これも実態がよくわからない点もございますので、具体的に調べないと申しにくい点もございますのでこの席で申し上げることは差し控えたいと思いますが、先ほども申しましたように、実態を明らかにする手段をとりまして対処したいと考えております。
  158. 安田純治

    ○安田委員 そういう点で、公取は毅然としてこういう大企業、大商社の悪徳商法にぜひメスを入れていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  次に、警察庁に対して伺いたいわけですけれども、これはいままでの議論の中でおわかりいただけると思いますが、館林ドレスの資金繰りが悪化するということで救済するために融資をしたのだという考え方についてでございますが、もしそうだとしたならば、二九%、二三%あるいは一八%などという高率の利益となっているものもあるわけであります。売買の利益だったら倍もうけようが三倍もうけようが原則としていいのかもしれませんが、しかし、高金利の取り締まりなどから見ますと、売買益として上げればいいものでも金融として取ればこれは高金利の取り締まりに当たるのではないかというふうにも思われるわけです。  わかりやすいものを例にとりますと、昭和四十九年六月二十七日の取引を見ますと、芯地を——これは服の芯地でしょうけれども、これを単価二百五十二円で西武から館林ドレスが買わされておったのですが、四日後の七月一日に二百二十円で売らされている形になっているわけです。これを計算してみますと、もしこれが金融を図るためにやったのだとするならば、四日間で一四・五%の利益があるわけであります。そこで、いわゆる出資法といいますか、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律は日歩三十銭以上の高金利を罰則をもって禁じているのですが、これはどう考えてもこれに該当するのではないかと考えられるわけであります。  ちなみに判例なんかを見ましても、「判例時報」の六百二十三号で、いわゆる不動産を売買、再売買の形をとって実際は金融——これは代金の形で貸し付けて、金を貸した場合は再売買だ、違約をする、と、こういうことで賃貸料などの名目で利息を取るというケースで、大阪地裁の判例が昭和四十五年十月にあるようでありますが、そのほかよく高利貸しなどが動産を譲渡担保の形で公正証書で買った形にしてそれを貸し付ける、そして賃貸料の名目で非常に高いお金を取る、これは賃貸料だから幾ら取ったっていいじゃないか、しかも動産ですから家賃の取り締まりもない、地代家賃統制令にもひっかからぬという、こういうような悪らつなことで高金利の取り締まりを逃れているようなケースがたくさん見受けられるわけであります。  そこで、この館林ドレスと西武と伊藤忠の関係で見ますと、いま申し上げました伊藤忠は四日間で少なくとも一四・五%を売買益の形で上げているわけですが、実際はこれは品物は何も動いていない。売買の形をとった金融であるということになれば、この出資法の九条において、言うまでもなく「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は授受は、金銭の貸付又は金銭の貸借とみなす。」という規定がございまして、もし金銭貸借となればこれは高金利の取り締まりにはっきり当たるわけでございまして、これを売買益という形でごまかすというのは許されないと思うのでございますが、警察庁のお考えをお伺いしたいと思います。
  159. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問にありました具体的な事案につきましては、私ども詳細に存じ上げておりませんのでここで断言的なことを申し上げるわけにはまいりませんけれども、一般論として申し上げますと、御指摘のように一日当たり〇・三%を超える利息を取って金を貸し付けたということになれば、当然出資法違反になるわけでございます。
  160. 安田純治

    ○安田委員 お伺いしたいのは、この貸し付けが単純な形でなくて物の売買の形をとって、売買益の形をとって、実際は金融を図るための利息、手数料だという場合に、これは当然出資法の金銭の貸借に当たるかどうか、それをお答えいただきたいと思います。
  161. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  いかなる形において行われようと、それが金銭の貸し付けであると認められる限りにおいては違反になるわけでございます。
  162. 安田純治

    ○安田委員 それでは、少なくともこのケースの場合は金融を図る目的であったということを商社も西武も認めているわけでございますから、これは通産省の調べで金融を図る目的だったということは認めているわけですから、ぜひこのケースをお取り調べいただきたいというふうに思うのですが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  163. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  警察が犯罪がある場合には捜査するということになっておるわけでございます。したがいまして、特に告訴であるとかあるいは告発であるとかというようなことがございますれば、当然警察は捜査をしなければならないということになるわけでございます。  ただ、本件について捜査をするとかあるいはしないというようなことをこういう席で申し上げるのは適当ではないと考えますので、御了承を願いたいと思います。
  164. 安田純治

    ○安田委員 捜査するお立場からはそうでしょうが、告訴、告発がなくても聞き込みでも捜査できるケースがある。これは親告罪でなければできるわけですから、そういう一般的な条件はあるということで承っておきたいと思います。  時間が来ましたので最後に申し上げますけれども、なぜこういう取引が始まっていたのかということについて行政官庁に私が調査をお願いしましたら、みんな疑問に思うわけであります。これはお渡ししました「資料6」にあるわけですが、西武百貨店と伊藤忠の勧めで館林ドレスが行った韓国での作業服製造が失敗しまして、その損害を負担させられた。これはその損を埋め合わせてやるからという西武の言い分を信じて、とにかく売買の形で手形を振り出せ、あるいは伊藤忠に売ったことにして伊藤忠から手形をもらえ、それを割り引いて使って、そして西武に対する手形を落としておけという、こういうことで始まったわけであります。その後も一時立てかえを強要されたケースも数多いし、その一覧表もあるわけであります。時間がございませんのでその点は省きますけれども、西武百貨店、伊藤忠がぐるになって行ったこの商法が、何ら法令による罰を受けないのだ、あるいは何ら法令に触れないのだ、私企業間の自由な取引なんだということにもしなるとすればこれは大きな問題であるというふうに言わざるを得ないと思います。  いままでお話し申し上げたところからわかるように、高金利取り締まりにも当たるんじゃないか、あるいは不公正取引に当たるんじゃないかといろいろ考えられるわけでありまして、これは当然経済の撹乱行為、反社会的な行為として厳しい措置を受けるべきものであると考えるわけであります。これは刑事上の問題になるか、あるいは行政指導上の問題だけでとどまるかはわかりませんけれども、政府におかれましてもぜひ厳格な調査と措置をなさることを重ねて要求いたしまして、私の質問を終わるわけであります。公取委も警察庁もその点をぜひよろしくお願いしたいと思います。  終わります。      ————◇—————
  165. 野呂恭一

    野呂委員長 今国会の最後の委員会における審議を終了するに当たり、一言ごあいさつ申し上げます。  昨年十二月三十日に召集された今国会は明六月九日をもって百六十二日間の長期にわたる会期を終了いたすことになります。  この間、当委員会といたしましては、通商産業基本施策あるいは景気浮揚対策など、当面する諸問題について国民の要請にこたえるべく熱心な論議を展開してまいりました。また、独禁法改正案、分野調整法案など重要法案につきましても、委員各位におかれましては終始熱心に審査に当たられ、国民の負託にこたえられてまいりました。私は、委員各位のこの御労苦に対し深く敬意を表する次第であります。  また、当委員会が互いに厳しい論議を展開しながらも円満なる運営が行われましたことはひとえに理事及び委員の御支援、御協力によるものでありまして、あわせて政府を初め関係当局の御支援に対し衷心より御礼を申し上げる次第であります。  今後とも委員各位の御自愛と御健闘をお祈りし、簡単でありますがごあいさつといたします。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後二時十一分散会