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1977-04-21 第80回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十一日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君       青木 正久君    鹿野 道彦君       粕谷  茂君    藏内 修治君       島村 宜伸君    田中 正巳君       辻  英雄君    中西 啓介君       楢橋  進君    林  義郎君       前田治一郎君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    加藤 清二君       後藤  茂君    清水  勇君       武部  文君    中村 重光君       渡辺 三郎君    長田 武士君       宮田 早苗君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房審議官    栗原 昭平君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁指導         部長      小松 国男君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局指導課長   河内 莊治君         農林省食品流通         局企業振興課長 江上 幸夫君         建設省計画局建         設振興課長   中川 澄人君         自治省行政局行         政課長     鹿児島重治君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業事業活動機会確保のための大企  業者事業活動調整に関する法律案内閣提  出第七一号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 時間の制約があるそうですから端的に質問をしますから、お答えもまた端的に願います。  中小企業分野法提出というものは、中小企業業界は言うまでもなく、各方面からこの提出が強く求められてまいりましたし、われわれ各野党といたしましても、早くから分野法法律案を提案していたわけです。ところが、何ゆえか中小企業庁が、中小企業に最も理解を示し、中小企業育成強化を図っていかなければならない庁であるにもかかわらず、腰が重くてなかなか立ち上がらなかった。これは大企業の圧迫といったようなことがあったということは否定できないわけなんですが、それらの点を勘案して、大臣はどうすべきかということについて決断をしなければならなかったのに、歴代大臣においてなかなかこれをやらなかった。そこで、田中通産大臣が生まれまして、前から中小企業審議会において検討はしておりましたが、ここで提出に踏み切ったわけです。  なぜにこの分野法提出を渋ってきたのか、そのことについて端的に一応大臣からお答えをいただきたいし、具体的な点については長官からお答えをしていただきたいと思うのです。
  4. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  従来からの経過は別といたしまして、いまや高度成長時代から安定成長と申しますか、低成長と申しますか、そういうことに相なりますと、いままでのままの姿ではなく構造的に非常に変化をしてくる。それに対応して、いわゆる大企業中小企業に対しまする圧力というものも必然的にふえてまいったのがきょうこのごろの客観情勢だろう、かように存ずるのでございます。  そういうことからいたしましても、われわれはあくまでも中小企業を擁護し、守っていかなければならないという一面が新たに出たわけでありまして、もちろん消費者、大衆の利益考えることが最も重要な問題でありまするが、それとあわせまして中小企業をここで擁護しようということでございます。  また、その中におきまして、御案内のとおりに大規模小売店舗法というものが一方にあり、さらに商調法というものがあり、つまり言えば、小売関係というもの、小商売という意味じゃなく、いわゆる不特定多数の消費者に対しまする販売をいたしております商業関係、卸を除きました商業関係の方は大店法と商調法というものがございまして、それにおいて紛争の調停、あるいはまた規模適正化というものをいたしております。それを除きました分野、すなわち製造業あるいは卸業あるいはサービス業分野におきまして大企業圧力を加えてまいっておりまする中小企業を守っていこうということが今回御審議をお願いいたしました法の中核でございます。  さような意味におきまして、中村先生は従来からもその方の御専門でよく御承知の次第でございますが、いままでの経過を踏まえまして、この段階においてひとつ新たな法制を必要とするというのが今回の分野調整法に相なった次第でございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 長官お答えの前に大臣にもう一つ聞いてみたいことがあるのですが、高成長時代から低成長時代に入ってきて、中小企業の果たす役割りは非常に大きい。したがって、中小企業育成強化中小企業を守っていかなければならぬという、そういう考え方の上に立って分野法を今度提出したということなんですが、百尺竿頭一歩を進めて、これまた私ども法律案を提案し、強く要求してまいりました中小企業省設置もまた踏み切る必要があるのではないかと思うが、その点についてはどうお考えになっておられますか。
  6. 田中龍夫

    田中国務大臣 その点につきましては、これまた先生よく御承知のとおりに、中小企業と大企業というものは本質的に対立関係にあるものではないのでございまして、ある段階におきましては系列化ということが非常に強く叫ばれた時代もございます。ただ、いわゆる大きな経営規模か小さな規模かということでございますが、中には中小企業でなくてはならないような特殊な分野もなきにしもあらずでございますけれども、しかしながら、そう考えてまいりますと、中小企業を守っていくためにも総合的な姿において行政を運営し、その中において中小規模業者を守っていこうというようなことでなければならないと思うのでございまして、これを規模というものを中心にして横割りにすぱっと切って、そして新しい一省を設けますことはかえって中小業者の方々の利益にもならない、むしろ一連の包括的な中において中小規模業界を守っていこう、かように私は考える次第でございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 中小企業省設置することがあたかも大企業中小企業というものが対決することになるんだという大臣考え方は私どもはいただけないですね。現在は自民党政権だ。その自民党政権の中で各省関係する問題を総合的に調整をし、政策展開をやっているわけなんだから、中小企業省設置は、大企業対決するためにこれを設けろということを私どもは要求しているのではない。事業数において、あるいは従業員数において、あるいは生産、出荷の面において、高度経済成長政策はまたそれなりに、なかんずく低成長時代における中小企業の果たす役割り国民経済の健全な発展を図っていくために中小企業にそれが要求されておる。ならば、政府中小企業政策を強力積極的に推進していくために中小企業省設置して、それが専門的に中小企業振興発展を図っていき、そして総合的に調整していかなければならないことは大企業を所管する省、仮にそれが通産省そのままの名称であるとするならば、通産省中小企業省との間で行うでありましょうし、また、中小企業政策各省にまたがっており、ばらばらになっているので、中小企業庁でこれを掌握していないということもあるので、中小企業省設置するということは各省ばらばらになっている中小企業政策一つの省にまとめて、これを総合的に推進していくことになるわけなんだから、そういう面において中小企業省設置するということは当然でなければならぬ。  大臣のいまの認識は誤っておると私は考えるのですが、私の言うことに反論があるならばもう一度お答えをいただきたい。
  8. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えをいたします。  いま私の申し上げた対立するという表現が、対決という言葉を使った関係から少し強く響き過ぎたかもしれませんが、私は、実はそういう意味ではございません。御承知のように、企業数から言いましても日本の九九%近い、九七、八%が中小企業と申してもよろしいのであります。それから、また、従業員数から申しましても就労人口の七割、総人口の七〇%が中小企業と申してもよろしいのであります。同時に、また、大企業と言われるものはえてして中小企業生産をむしろコンポジションする企業体をなしておるものも相当ございまして、つまり、申すならば中小企業の海の中に浮かんだ船みたいなものが大企業と思ってもよろしいのではないかとさえ思うのであります。  つまり、言うならば、大企業といい中小企業といい、経営の形こそ異なりますけれども、あるいは農林業あるいは商工業というふうな意味から申すならばこれは一つのものであって、それを分割することは両者の産業政策上のプラスになるとは決して思わないということを申し上げたいと存じておるのでございまして、私どもは、包括的な商工行政の中における大きな経営規模か小さな経営規模かというもので、その関係をしかも一体として運営するところに行政の最も重要性があるのじゃないかと思うのでありまして、これを二つの省に分割することによりまして効率的にいいとは決して考えておらないのであります。そのことだけを申し上げておきます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 いま大臣お答えになったように、大企業中小企業との政策展開というものがきわめて円滑に妥当性を持って推進されておるとするならば、あえて私ども中小企業省設置を主張するものではない。しかし、現実にはそうじゃない。日本経済の二重構造、親企業下請企業関係は、絶えず景気変動バウンド役中小企業下請企業が負わされてきている。中小企業は大企業の絶えず下積みといったような形になっている。取引関係においても大企業優位性を持って、その地位を利用して中小企業に対して絶えず脅威を与えているという、この現実を否定することはできないと私は思う。ヨーロッパの国々においては、大企業はモラルというものを持っている。したがって、そこで働く労働者賃金も、大企業中小企業との間には日本のような格段の違いはない。それらの問題に目をつむって、中小企業省設置することは、いま対決という言葉は改められたのだけれども、何か大企業中小企業との関係がうまくいかない、政策が総合的に整合性を持って展開することにならないんだという考え方は、何と言葉を飾られようとも、大企業利益を優先させていく考え方の上に立っておるということを私は指摘しなければなりません。  しかし、時間の関係がありますから改めてこの点については議論をしたいと思うのですが、私どもは、中小企業省設置するということの前に、これだけはできるであろうということ、つまり、中小企業庁長官閣議に出席させること、そのことはできるのではないかということを言うわけだが、これに対して今日までそのことが実現をされていないが、大臣はこの点についてはどうお考えになっているか、また、このことを推進していこうとお考えになりますか。
  10. 田中龍夫

    田中国務大臣 私は、省の分割という問題が国家のために、あるいはまた商工行政のためによいということならば別に何らやぶさかではございませんけれども、いま申し上げたような意味合いにおきまして、よしんばそれを分けたといたしましても、果たして行政効率化を招くものだろうか——ただいま中村先生がおっしゃるように、この問題はまた改めていろいろとお話し合いを申し上げたいわけでありますけれども、いまの私の所見では、むしろ一体として運営し、また、同時に、大企業に対する政策に対して、中小零細企業に対する政策はむしろ社会保障的な、あるいはまた御審議をいただいておりまする共済法のような福祉的な面とか、あるいはまた金融に対する特別な措置とか、むしろ一体に運営することによって効率化を期した方がいいという心境に私はただいまあるわけでございます。(中村(重)委員長官閣議出席の問題は」と呼ぶ)  これは省としての新しい制度になりますれば、行政法に基づきまして長官閣議出席ということもございまするが、いまのところでは、八条機関と申しますか、そういうことで、そういう考えには立っておりません。
  11. 小松国男

    岸田政府委員 中小企業分野へ大企業が進出し、そこで問題が起こるという課題は、いわば古くからある問題でございます。それを受けまして、御承知のとおり、中小企業基本法におきましても、中小企業事業機会の適正な確保を図るべき旨がうたわれておるところでございます。  このような問題につきましては、従来から、問題が起こりますごとにお互いに話し合いをして解決するように指導をし、また、それでも十分対応できない場合には主務大臣が間に入りまして両方の意見を聞きながら、何とか中小企業経営の維持ができるようにということで行政指導を続けてまいったわけでございまして、私どもは、いま過去の経緯を振り返ってみまして、それなりの成果を上げてきたのではないかと思っておるところでございます。     〔委員長退席中島(源)委員長代理着     席〕  ただ、先ほど大臣からもお話がございましたように、近年になりまして非常に問題が多くなってきたわけで、その背影には、不況が非常に長く続いていることと、日本経済全体が従来の高度成長時代から安定成長時代に移ってきたということがあるように思われるわけでございまして、したがいまして、こういった新しい事態に対してどう対応すべきか、私どもも内部ではいろいろな議論をいたしておりまして、一方では行政指導体制を少しでも強化するという努力も続けてまいりましたし、また、その一環として中小企業分野問題に関する調整官という制度を五十一年度から発足させ、また、各商工会議所あるいは中小企業団体にモニターを配置しまして、問題をなるべく早目にキャッチし、うまく解決するための努力を重ねてきた経緯先生承知のとおりでございます。  ただ、問題が非常に多くなってきたことと、また、経済情勢も次第に変わってきつつある中にあって、ちょうど昨年の五月に国会各党一致の御決議をいただきまして、政府としてこの問題について新しいルールづくりに積極的に取り組むべきであるという御決議をいただきましたことが、私どもとしては従来のやり方に対してもう一歩前進を図るべきであるというふうに腹を決める一つのきっかけになったと考えておるところでございます。  御承知のとおり、それ以来中小企業政策審議会の中に特別の小委員会を設け、何らかの新しいルールづくり立法の形でどういうふうに具体化していくかということについて鋭意詰めました結果を尊重しまして御提案申し上げておりますような新しい立法を用意した、こういう経緯でございます。
  12. 中村重光

    中村(重)委員 経緯お答えのとおりであろうが、いずれにしても重い腰をなかなか上げなかった。そこで本委員会において法制定決議全会一致で行ったということで、ようやく重い腰を上げたというのが実態なんだ。  そこで、昭和三十八年に制定された中小企業基本法十九条に、「中小企業者事業活動機会の適正な確保を図るため、」云々ということが明定されているが、私ども昭和三十八年の十二月に、第四十六回国会において、中小企業事業分野確保に関する法律案提出をした。政府は当然基本法趣旨に基づいて中小企業分野法提出をすべきであったと考えるのであるけれども、申し上げたようにようやく今日提案をするという形になったのですが、この基本法趣旨、精神というものをどう理解しておられましたか。
  13. 小松国男

    岸田政府委員 基本法の十九条におきましては、「国は、中小企業者以外の者の事業活動による中小企業者利益の不当な侵害を防止し、中小企業事業活動機会の適正な確保を図るため、紛争処理のための機構の整備等必要な施策を講ずるものとする。」とうたってございます。この条文を受けましていろいろな施策がすでに展開をいたしておりますが、具体的に申しますと、一つは、この基本法が成立しましてから間もなく中小企業団体法を改正いたしまして、新しく特殊契約という制度を設けまして、大企業が進出して中小企業が打撃を受けるという場合には大企業中小企業団体、具体的には商工組合がその被害の防止のために具体的内容を取り決めて協定を結ぶという制度が発足しました。この制度自体がうまく使われてきたかどうかという点が問題でございますが、この法律を直接に引用して具体的な措置をとるというような形はケースとして少のうございますが、いわばそういう条文を背景にした事実上のいろいろな調整というものが現にいろいろ行われてきたと私ども理解をいたしておりますし、それが行政指導につながり、先ほど申し上げたような経緯につながっておると理解をいたしております。  そのほか、この事業機会の適正な確保のための手段といたしましては、たとえば官公需対策につきまして、少しでも中小企業事業機会を与えようというためにいろいろの努力をしておりますことも御承知のとおりでございますし、また、それらの施策に加えまして、問題が起こりますごとにこの条文を念頭に置いた措置をやってまいったという経緯になっておるわけでございます。
  14. 中村重光

    中村(重)委員 いまお答えになったようなことは中小企業政策の一般的な問題である。特殊契約の問題も緊急避難にすぎなかったということです。ほとんど効果を発揮していない。したがって、中小企業振興というものに役立ったということは、どんなにひいき目に見ても言えないのです。  いま私が指摘をし、いまお答えになったようなことについても、この基本法制定に当たって、立法者の意識の中には分野法制定ということが考え方であったということは否定できないのです。私どもはこの基本法審議に当たったわけですが、当時は農業の、現在行っている購買事業という、規制の問題まで真剣に議論をしたという経過があるわけです。恐らく田中通産大臣は当時関心をお持ちになっておられたでしょうし、その後この商工委員会委員あるいは理事として私どもと運営に当たってきたということがあるわけですから、これは私のいまの指摘を否定はなさらぬだろうと私は思うのです。にもかかわらず今日に至るまで分野法制定をサボってきたという政府の責任は何としても免れ得ないということを指摘いたしたいというふうに私は考えます。  それから、中小企業庁設置法の第一条の目的規定をどう理解をし、認識をしておられますか。
  15. 小松国男

    岸田政府委員 第一条の目的を読ましていただきますと、「国の中小企業に関する政策目標は、中小企業国民経済において果たすべき重要な使命にかんがみて、国民経済成長発展に即応し、中小企業経済的社会的制約による不利を是正するとともに、中小企業者の自主的な努力を助長し、企業間における生産性等の諸格差が是正されるように中小企業生産性及び取引条件が向上することを目途として、中小企業成長発展を図り、あわせて中小企業従事者経済的社会的地位の向上に資することにあるものとする。」とございまして、私どもは、大臣からもお答えをいたしましたように、中小企業日本経済の中で長年にわたって非常に大きな役割りを果たしてきたと認識をいたしております。中小企業の活躍と努力なしには今日の日本経済というものはなかったと申しても過言ではないと思います。また、それなるがゆえに、世界の各国におきましても日本中小企業が注目をされておるという今日の状況かと思っておるところでございます。  ただ、そうは申しましても、この条文の中にございますように、中小企業が小さいことによるいろいろな不利があるということは率直に認める必要があるだろうと思っております。たとえば、初任給こそ大企業中小企業格差はほとんどなくなってまいりましたが、年齢がたてばたつほど賃金格差がある。また、職種の違いもいろいろありましょうが、現に生産性格差も存在をいたしておるところでございます。さらに、資金的な制約ということから技術開発力の面でも問題があり、あるいは大きな投資をしてスケールメリットを得ようというような点についても大企業に比べると問題が残っておる。さらに、また、中小企業は数が多いがゆえに販路の面でも過当競争に陥りやすい。こういったさまざまの弱い点があることを何とかして中小企業対策の中でうまく解決をしていくということが特に大切なことではなかろうかと思っておるところでございます。  中小企業はいまいろいろの弱い面があるというふうに申しましたが、逆に申しますと、小さいなるがゆえにかなり機動性を持っておる。新しい事態に対して機敏に対応できる。また、経営者従業員とがいわば一体的経営に当たりながら物事に処し得るさまざまな利点も持っておるわけでございます。私どもとしては、そういう利点を極力伸ばしながら、そして先ほど申し上げましたようないろいろな不利な点を是正していくということが中小企業政策として特に大切なことではないか、また、そういう努力をすれば中小企業の将来というものも新しい道が開けていくのではないか、こういう希望を持ちながら精いっぱいの努力を続けたいと思っておるところでございます。  私の理解しておりますこの第一条の考え方についてとりあえず御説明をさせていただきましたが、今後ともいろいろ御叱正をいただきたいと思います。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 そっけない答弁も困るのだけれども、余り御丁寧な答弁も時間の関係上困るから、余り重複しないように答えていただきたいのですね。  中小企業のための事業機会確保ということを設置法法律目的の中にうたっていることをお読みになったと思う。これはいまお答えになったような政策展開をしなければならぬというふうにお考えになって、それなりにやっておられるのだろうけれども、それが十分できないということは法的根拠がないということですよ。恐らく、あなたは、この分野法制定を待って、これは活発に積極的に自信を持ってやろうという決意を持っておられるでしょうし、そして、その決意の上に立って私ども質問にもお答えになっていらっしゃると思う。気持ちはいまお答えになったようなことでいままでもずっと対処しようということであったのだろうと思うのだが、申し上げたように、法的根拠がなかったということで、これは歴代中小企業庁長官の意に沿った政策展開ができなかったということを反省される必要があると私は思う。  それから、中小企業基本法の第一条に「政策目標」があり、その目標達成のための施策というのが第三条にあるのですが、その第七号に「中小企業者以外の者の事業活動調整等によつて中小企業事業活動機会の適正な確保を図ること。」とあるのですが、この点についてはどのように認識をし、また、対応しなければならないと考えてこられましたか。
  17. 小松国男

    岸田政府委員 この第三条七号については、「国の施策」といたしましていま御指摘のような条文が用意されておりまして、それをさらに特定条文として具体化したものが十九条であると私ども理解をいたしておるところでございますが、したがいまして、中小企業基本法制定当時からこういう問題についての問題意識があり、それを円満に解決するための努力をすべきだということが国の施策として要請され、また、中小企業庁自身の課題になってきたと受けとめておるところでございます。これを受けまして先ほど来申し上げておりますような特殊契約という制度を創設し、また、個々め案件についてはできるだけの解決を図る努力を続けてきたという経緯であると理解をいたしております。
  18. 中村重光

    中村(重)委員 同じような指摘になりますからこれは省略いたしますが、いずれにしても、基本法目的と、それからいま申し上げた第七号の趣旨設置法目的というようなことから当然中小企業事業分野法というものを制定すべきであったということだけは否定することはできないということを認識されるべきだということを申し上げておきたいと思うのです。  昭和四十年代の後半から、分野問題をめぐり、中小企業と大企業紛争というものが非常に増加をしているのですが、具体的な例としてどういうものがあるかということについて申し上げるとまたあなたがずいぶん長い時間で具体例をお述べになるだろうから、私の方から二、三の点を申し上げると、まず軽印刷業界に大日本印刷の進出というものがあり、それから、紙器、ダンボール業界に対する本州製紙の進出、ヤクルトの子会社の豆腐業界への進出、森永乳業の豆腐業界に対する進出、もやし業界へのユニチカの進出、それから総合商社の目に余るクリーニング業界に対するところの進出といったようにもろもろの問題がある。ところが、いまお答えになったようないわゆる行政指導ということによってはこのことがなかなかうまくいかなかった。目に余る大企業の横暴というもので推移してきたということは言えると私は思うのです。  そこで、政府自民党は、大企業利益擁護といったような点から、私どもが要求をしてまいりました中小企業事業分野確保に関する法律に対して一片の誠意を示さず、審議をやることができなかったということなんですけれども、遅きに失したとは言いながら、今回委員会全会一致決議に基づいて分野法制定に踏み切ったということは一応評価をしたい。文句を言うことばかりが能ではありませんから、評価すべき点は評価すべき点として申し上げることに私はあえてちゅうちょするものではないわけなんです。  ところが、大企業の進出が目に余る状態であり、これを何とか規制して、日本経済発展のために国民経済の健全な推進を図っていくというような点から、中小企業に対してのいわゆる位置づけをしていく、中小企業に対する役割りを果たさしていくということになってまいりますと、当然業種指定というものがなされなければならないと私は考えるのだけれども政府案の中には残念ながら業種指定というものはなされていないが、この点はなぜに業種指定ということを強く審議会にお求めにならなかったのか。
  19. 小松国男

    岸田政府委員 先ほどの質問に返りまして恐縮でございますが、私どもがこの立法問題に真剣に取り組みました当初におきまして、実は、ほかの国にこういう立法例がないではないかとか、あるいはこれをやると自由競争の阻害になるのではないかというさまざまな議論がございました。ただ、私どもは、自由競争の中にもやはり一定のルールが必要であり、大企業が突如として進出したために中小企業があしたの経営にも困るという企業がたくさんあらわれるというようなことは社会的にも一つの問題でございますし、それと同時に、経済的に見ましても、従来の投下した資本がむだになるとか、あるいは従業員のいままでの経験がむだになってしまうということはやはり問題ではないかということを議論いたしまして、新しいルールのための立法が必要であり、また、それができることによっていままでの行政指導がさらに裏づけのある強いものになっていくということを期待して立法に至ったという経緯でございます。  お尋ねの、業種指定をすべきではないかという点につきましては、先ほどお話を申し上げました中小企業政策審議会におけるこの問題についての小委員会でも非常に議論の焦点になったところでございます。業種を特定いたしまして、その業種については、大企業が入ってくることについて許可制をとるとかあるいは届け出制をとる等々によってチェックをしていくというやり方がとれれば、確かにこの問題を解決するためには直截簡明な方法でありこういった意味合いにおきまして中小企業団体からもそういう要望があったことを私ども承知をいたしております。  ただ、この業種指定という方式は、一つには競争政策上いろいろ問題があるのではないかという点が問題点かと思いますし、それから第二の問題といたしましてはもっと実務的な問題でございまして、一体どういう業種を指定すべきかということが実務的に非常に困難があるという点が議論の第二として出されたわけでございます。もっと具体的に申しますと、大企業が進出して中小企業が打撃を受けること、これが問題の発端でございますが、大企業一体いかなる業種へどういう形で出るかということをあらかじめ予測することが不可能でございます。その意味におきまして、どの業種を指定すべきかということについてのまず事務的な難点が出てまいります。それに加えまして、そういう難点を避けるためにはある程度幅広く業種指定をしてはどうかというような御意見もございました。  そうなりますと、たとえば中小企業が出荷比率七割以上を占めておりますような製造業の業種数を数えてみますと、全製造業の業種数五百四十七の中の三百二十七、約六割を占めるというような実情でございまして、製造業全体の六割を占める業種について一つ一つチェックをし、それについてよいとか悪いとかというようなことを事前にチェックするということになりますと、日本経済全体の歯車の回転がおくれてしまいますし、また、事務的にもそれを処理できることではない。これはまた仮にやりましても後で問題が起こる可能性も残しておるという点が私どもとしては問題であろうと思っておるところでございます。  したがいまして、確かに一つの問題として十分議論をいたしたところではございますが、中小企業政策審議会でもやはりこれはとることは無理であろう、また適切であるまいという結論に達しましたし、私ども中小企業政策審議会のそのようなお考え方は妥当しておるのではないかと思っておるところでございます。
  20. 中村重光

    中村(重)委員 冒頭の私の質問に対する大臣の答えの中で、消費者利益を守ることを考える必要があり、あわせて大店舗法とか商調法で小売関係紛争調整を図りたいとおっしゃったが、この分野法制定することが消費者側の利益を阻害するというようなことが政府考え方あるいは審議会の審議の中で相当根強くあったのではないかと思うが、その点に対する認識はどうかという点ですね。  それから、いま長官お答えになった業種指定をすることについてですが、どういう業種を指定をするかということについて、確かに非常に困難な面があるということは私は否定をしないのですが、しかし、歯車が回らないということは私どもとしては理解ができないのですね。業種指定をしても、その業種の中に絶対に大企業が進出してはいけないというような固定した考え方をお持ちになる必要はない。指定をしているけれども、その指定している業種の中に大企業が進出していくということがどの程度中小企業に脅威を与えていくのか、与えるのか与えないのかという判断の上に立っての大企業の進出ということもあり得るであろうし、また、現に、中小企業から大きい企業へ出世をしてくるところの大企業というものの進出を阻むものではないわけだから、もっと弾力的に柔軟性を持ってやり、一応の基準としてこういうものが適当であるという業種指定をするということは何も歯車がとまるということにはならないのではないかというように私は考えるが、それらの点の検討はしませんでしたか。  まず最初に大臣から、消費者利益の阻害といったような——いわゆる阻害という表現はお使いになりませんでしたが、守ることを考えてということの意味はどういうことを意味しているのかということをお答えいただいて、そして具体的な質問に対しては長官から答えてください。
  21. 田中龍夫

    田中国務大臣 業種指定をするかしないかという問題について、この審議会におきまして相当真剣に論議を続けられたという次第につきましては長官からお答えをいたしたいと存じますが、業種指定をすることによりましてどの業種を指定していいかということはなかなか判別がむずかしいし、また、指定してまいりますると次から次にいろいろとまた指定を要するものも出てくる。結局、非常に大きな部分についての業種指定ということになりますればかえってまた自由経済のよさというものを阻害をするというような論議もあったやに聞いておりますが、その点は、審議会の論議の問題は長官からお答えいたします。
  22. 小松国男

    岸田政府委員 第一にお話のございました消費者との関連の問題でございますが、中小企業政策審議会のメンバーは、有沢中小企業政策審議会会長がみずから小委員長になられまして、メンバーとしましては中小企業団体の代表の方々、それから大企業関係の方々、そして消費者代表の方々、学者の方々、あるいは新聞界の方々等、各界の意見を公正に反映するような形で人選が行われ、そしてそれらの方々の中で何とかコンセンサスを得るような形で努力をしようということで、御承知のとおり十数回にわたる審議を重ねたわけでございます。  その間にありまして、消費者代表の方々からは、大企業の進出を阻止することによってよりよい商品がより安く提供される機会を減少させるのではないかということ、あるいは消費者には選ぶ権利があるということから、余り強い規制をされることはいかがであろうかという意見がございましたことは事実でございます。しかし、他面、中小企業の方々からは、現実にいろいろなケースに遭遇している立場からしまして、ほうっておけばわれわれの経営が困難になるだけではなくて日本経済全体にも影響を及ぼすことになりかねないという意見があり、いわば当初は両様の意見があったわけでございます。しかしながら、この問題については、両方の意見を何とか一つのルールにまでまとめるということがぜひとも必要であるということで、話し合い話し合いを重ねてコンセンサスづくりをしたいというのが正直な経緯でございます。  それから、第二にお話がございました業種指定の問題につきましては、先ほどあらましのことを申し上げましたが、正直に申しますと、一つの業種を仮に指定いたした場合に、それと同じような事情があるということでほかの業種の方から持ってこられましたときには、何らかの物差しがないとこれは無限に広がってしまうおそれがございます。中小企業の方々とすれば、こういうかさの中に入って少しでも不安を少なくしたいとお考えになるのはやはり当然でございますが、しかしながら、その面に着目いたしましてどんどんふやしていくということになりますと問題が出てまいるといいますか、いわば製造業のほとんど全部の分野について、中小企業庁ないしその他の所管官庁がゴーのサインを出すまでは動けないというような仕掛けになって本当にいいものだろうかという点が問題でございまして、もう少ししぼった要件の書き方はないかということもいろいろ議論をしてみました。たとえば零細な企業の方々のウエートに君目するようなルールづくりの方法はないかというようなことも中で議論がございました。しかしながら、現実に起こっておりますケースは必ずしも零細な方々だけの問題ではなくて、少し大きな中小企業も含んだ問題が現に出てきております。  したがいまして、この辺についての統一的なルールづくりというものはやはり吟味をし、吟味をしましてもむずかしいというのが審議会の結論であったわけでございます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、業種指定を行わなかったということは、無限に広がるとおっしゃるんだけれども、私どもはそうは考えないのですね。事業数の九九%は中小企業でしょう。その中に孜々営々として中小企業が築いてきた分野で大企業が資本力をバックにして何のモラルも持たないで中小企業を圧迫しており、そしてこれを倒産に追い込む、このことは経済政策の面あるいは社会政策の面から適当ではないんだという考え方の上に立って私どもは業種指定を主張しているわけなんです。  消費者利益の問題といったようなことについてはいろいろあったのだけれども事業分野制定分野法をつくるということ、業種指定の問題、これが消費者利益を阻害するという結論的なものでなかったとするならばそれ以上申し上げないのですけれども消費者利益を保護するという立場から中小企業分野法の成立に対して難色を示し、業種指定ということについて、これを抑えていこうとする考え方があるならば、それは私ども考え方とは逆であるということを私は申し上げたいのです。ともかく中小企業が倒産するということになってまいりますと、大企業の寡占化ということが進んでくることは否定できません。大企業の寡占化ということは、言うまでもなくこれは寡占価格というものをつくり上げる、さらに画一的な生産とサービスというものが行われてくる、あるいは地場産業をつぶしてしまうことによって日本の伝統工芸というものが失われてしまうということで、これは大変に重大な問題である。文化的な面から言ってもそういうことが言えるのではなかろうかという考え方の上に私は立ちます。  それから、中小企業と大企業と比較すると、中小企業は近代化が全く行われていないのだという認識もあるようでありますけれども、私はそうではないと思う。いろいろ具体例がありますけれども、たとえば軽印刷の場合に端的にこれがあらわれているんではないでしょうか。軽印刷業界は、構造改善ということでプリントショップを開発し、近代化を図ってきた。進出をしてトラブルを起こしました大日本印刷と比較をして、技術の面においてもサービスの面においても何ら遜色はない。こういう例は多い。  だから、政府が取り組まなければならないことは、ともかく中小企業の近代化を図り、中小企業発展に対して、その役割りをいかんなく発揮させるということでなければならないというように私は考えるが、その点に対して、中小企業の進出が中小企業自体の近代化をおくらしてくるんだ、消費者利益を阻害することになるんだという認識がもしあるならば、これを改めてもらいたいということを私は申し上げておきたいと思います。  それから、憲法上の問題といったようなこともいろいろ議論になったのではないかと思いますけれども、その点はどうなんですか。
  24. 小松国男

    岸田政府委員 いろいろな点についてお尋ねがございましたが、私どもは、中小企業日本経済の中において非常に大きな役割りを果たしており、そしてその中で小企業の方々が安心して仕事に励んでいただけるようにするというのが中小企業庁の使命であると心得ておるところでございます。そして、中小企業の方々がそれぞれ合理化に努力をされ、そしてそれによって消費者利益にもこたえ、また、日本経済発展にも寄与されるという姿になることを何とかお手伝いしていきたいという思いで毎日毎日一生懸命仕事をしておるところでございます。その気持ちにおきましては先生と全然変わるところがないと私は思っておるところでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、業種指定というやり方をやりますことはいろいろな問題がございます。先ほどは主として技術的な問題を申し上げましたけれども、そのほかにいま憲法の問題についてお触れになりましたが、実は、憲法に定める営業の自由ということとの関係は、業種指定におきましてはやはり一つ議論の課題であろうと思っておるところでございます。ただ、これは公共の福祉に適合するときにはある程度の制限をつけられる、また、それは必要最小限度の制限である、こういう理解でございます。そういう理解の上に立って現実を見てみますと、中小企業が大企業の進出によってばたばた倒れるというようなことは、日本経済全体の福祉というか、日本経済全体の社会的あるいは経済的な視点からしましてやはり問題があるわけでございまして、そこにある程度の規制をするということは説明がし得ると思いますものの、ただ、業種指定のような形まで行きますと、果たしてそれが妥当であるかどうかという点はやはり吟味をしてみなければならない問題ではないかと思っております。  同様に、競争政策上におきましても同じような問題があるのではないかと感じておるところでございます。私どもは、中小企業の方々が対応のいとまもないほどの打撃を受けるということは何としても避けなければなりません。何とか時間を与えて、その間に中小企業自身が合理化し、近代化し、大企業に負けないような力をつけるという、そういった時間を与えることは中小企業政策としても特に配慮しなければならない要素だと、かように考えておるところでございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますからこの点については多くを申し上げませんが、ただ、あなたの答弁言葉じりをとらえるという意味で私は申し上げるのではないのでありますが、やはり憲法上の問題ということにあなたも若干ひっかかっているということを私は指摘しなければならないのです。まあ、営業の自由というのは憲法の表には出てこないが、しかし、「職業選択の自由」ということが出てくるわけでございますけれども、この営業の自由というものは無限であるとは私は考えないのです。  今日許認可事業というものがあるわけですが、それは社会的公序との関連ということから当然考えるべきでありましょうし、また、許認可の事業というものもそういう面から政府はこれを認めてきているんだというように考えるわけです。中小企業分野確保したとしても、公共の秩序あるいは社会的公正の観点あるいは経済政策という点からこれは当然容認されなければならないというように私ども考える。私ども中小企業者事業分野確保に関する法律案を提案して、そして業種指定というものが私どもの案の中にありますのは、憲法論議も十分行って、その自信の上に立って提案をしているわけでありますから、だから、その点に対しての政府認識というものが、もし憲法上の問題ありとするならばこれを改めていただきたいということを申し上げておきたいと思うのであります。大企業の自由ということ、そのことはある意味においては中小企業の自由を阻害してくる、この中小企業事業分野確保というものは、いわゆる中小企業の営業の自由を確保する道にもつながるんだという認識の上に立っていることも改めて申し上げておきたいと思います。  今日、中小企業の倒産や失業者の増大を防ぐために、雇用機会確保を図るといったような面からもそのことが必要でありましょうし、先ほど申し上げました中小企業基本法趣旨あるいは中小企業庁設置法にこの分野法制定というものが要求をされておるということも、解釈はいろいろありましょうけれども、やはり、憲法論議というものが十分なされた上に立って政府みずからが提案をしているということを否定できないということを私は申し上げておきたいと思います。  次に、公取委員長がお見えになっていらっしゃいますからお尋ねをするわけですが、独禁法と分野法は相反するというような意見があるわけですね。一方には分野法は競争制限であるという意見もあります。いま本委員会において審議をされております独禁法の改正問題は、これは市場経済の中で公正競争を促進する、このことは二つ相反するものであるというような意見もあるわけでありますが、この点に対しては公取委員長はどう理解しておられるか。  時間の関係がありますからあわせて申し上げますが、中小企業協同組合の共同行為に対しては独禁法の適用除外になっているわけでありますが、この点をどう受けとめておられるのか、伺ってみたいと思います。
  26. 澤田悌

    ○澤田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の独占禁止法の除外規定はそのとおりでございまして、中小企業単独では大企業になかなか対抗することがむずかしいというような観点から、団結によって初めて経済上の競争単位となり得るというような中小企業者の組合につきまして、御指摘のようにその競争単位を認めることが公正でしかも自由な競争を実質的に促進することになるという観点で、独占禁止法二十四条は一定の条件のもとで法律の適用を除外しておるのでございまして、これは中小企業保護の観点から今後も重要な点であろうと考えておるわけでございます。  それで、お尋ねの、今回御審議に相なっておりますいわゆる分野法の問題で、これは独占禁止法の観点からどうかという問題でございまするが、私ども考え方から申しますと、大企業中小企業も、消費者大衆との関係におきましては独禁法に言われる事業者でございます。優良な商品を廉価に供給してもらうことが消費者にとって望ましいのでありますが、そういう意味におきまして、消費者の観点からいろいろと考慮が加えられることが必要であるということを希望としてこの立法化の過程で申し上げてきたわけでございます。  もちろん、大企業と弱い立場の中小企業保護のための調和ということは冒頭に申しましたように重大な問題でございまして、その調和を図るためにいろいろ御苦心なさったこの法律でございますので、その点につきましては私ども少しも問題はないと考えるのでありますが、と同時に、いま申しましたような消費者との調和、短期的に長期的に消費者という立場を考えた調和、大企業中小企業消費者の三者の調和、ということをひとつ御考慮に入れていただきたいということを申してきたわけでございます。  と同時に、もう一点独禁法の立場から申しますと、大企業がその優越した力を乱用して中小企業分野に進出してくるというような場合には、当然不公正な取引といたしまして法規に照らして厳正な対応をとるわけでございますが、本問題の経過等をずっと考えてみますと、そういう独禁法上のいわゆる不公正な取引ということで処理し得ない問題、あるいはその守備範囲を越えた問題、あるいは若干次元を越えた問題ということになってきているように私は理解をいたしておるのでありまして、そういう観点から今回の立法がなされたというふうに理解をいたします。  したがいまして、その二点、消費者利益ということと、それから公正にして自由な競争、独禁法のたてまえで言うそういう競争制限法になるようなことを最小限度にとどめて、しかも先ほど申しましたような大企業中小企業の調和が図れること、これが私の希望するところでございます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 調和がとれなければならない。ところが、現実には、大企業中小企業との間には公正競争というものが行われているとは考えられない。分野法制定によって中小企業は近代化を図ることで中小企業間の競争というものが公正に行われて、消費者利益を守る、こういうようなことでなければ法制といえども目的に沿うことにはならないというように私は考えるのです。いまの御答弁の中からも、いまの私ども考え方が独禁政策上問題があるというようにはならないということについて確信を持つことになるわけであります。  時間的な関係がありますから具体的なことで二、三お尋ねをいたしますが、この第五条に、業種指定にかかるものであろうと思うのでありますが、事前チェックがなされることになっておりますが、これは調査の規定ということになっておるのですね。ところが、余りに多くのしぼりがかかってきておる。条文を読んでみて思うのだが、どうしてこのような「大規模」であるとかあるいは著しいであるとかといったしぼりをかけるのか。大企業の進出によって現実問題にしてどのような影響が行われるのか、大規模とはどういうことなのかということの判断は中小企業ではなかなかなし得ないということですね。ところが、そういうものがなければ申し出ができないというようなしぼりになってきている。これはやはり問題である。実際はそのようなしぼりではなくて、大企業の進出の動きがある、それが特定中小企業に対して脅威を与えるということが判断できる場合に申し出ができるというように改めていくのでなければ、この法律というものは、まずその分野法をつくるけれども現実にはこの法律を働かせないというような、そういう意図の上に立ってこの条文がつくられておるという感じがしてならないわけですが、その点はどうなのか。端的にお答えをいただきます。
  28. 小松国男

    岸田政府委員 大企業が進出しましたときに、なるべく早くその状況をキャッチしまして問題の解決に当たるということが問題解決のための一番有効な手段であろうと思っております。さらに有効なのは業種指定ではないかという御意見もあろうかと思いますが、それは先ほど申しましたような理由で避けるといたしますと、やはり、いま御指摘のような調査のような条文を設けまして問題を早くキャッチするという体制をつくろうと考えた次第でございます。したがいまして、その立法趣旨からいたしますと、この要件を非常にきつくするということは私どもの本旨ではございません。  実は、「大規模な」というような定義の書き方につきましても、立法段階でずいぶんいろいろの議論がございました。こういう場合はいい、こういう場合は悪いと、そういった例をずっと並べましていろいろな線の引き方を考えておきましたが、そういうようなしゃくし定規な線の引き方よりはふんわりした「大規模な」という形で表現をしておきまして、あとは実際の運用によってカバーするということがかえって実情に即した運用を可能にするのではないかと思っておるところでございます。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 もう一点の問題点は、この法律は地方段階のチェックがないということですね。やはり、特定の地域に限っては地方経済振興という立場から都道府県知事がチェックするという道を開く必要もありましょうし、また、申し出の場合に、中小企業団体だけではなくて都道府県知事も申し出ができるというような道を開いていく必要があるのではないかという点が考えられます。この点が一点。  もう一つは、小売業をなぜに対象にしなかったのかということですね。聞きますと、これは審議会の方で、大臣お答えになったわけでありますけれども、大店法であるとかあるいは商調法であるとか、これによって法秩序を守っていくのだ、紛争の処理をしていくのだということでありますけれども分野法と大店法、商調法というのは立法趣旨が違う。これはもう具体的に内容を申し上げなくてもよろしいでしょうが、大店法というのは量的な規制である。商調法というのは、市場であるとか、市場と市場間の関係、あるいは市場と個々の中小業者との関係調整、さらには購買会事業に対するところの調整ということになっているのです。したがって、この分野法の中に小売を入れないのはこの二法によってやるんだということにはならないのではないか。分野法に入れましてもこれが重複することにはならないと考えるのでありますが、この点はどうなのか。どうしても小売業が無理であるという場合に、これは大臣お答えになったわけでありますから、当然商調法あるいは大店法の改正を行う。商調法ももうほとんど働いていない。この分野法との関連がなくとも商調法自体が有効に働くように改正をする必要があると私は思うのでありますが、なかんずくこれが分野法の中に入れないでということになってまいりますと、小売業の関係は商調法あるいは大店法の改正を行う必要がある、そのように考えるわけでありますけれども、この点はどうお考えになっていらっしゃるのかという点。  それから、もうおわかりになっておられることでございますが次にお尋ねすることは、第七条によってこれは勧告を行うという形になってきています。その勧告に従わなかった場合は公表するということになっています。ところが、この調整段階において中小業者が大企業の進出に反対をする、そして調査の結果勧告をするということになってまいりますと、当然これは表に出るわけであります。当該大企業の名前が表に出る。出た後で公表をいたしましても痛手は感じない。たとえば独禁法違反であるとかカルテル行為あるいは公害のたれ流しということによって公表されるということになってまいりますと企業のダメージになってまいりましょうけれども消費者感情というものもあるわけでありますから、したがって、この勧告に従わなかったという場合に必ずしも企業のダメージにならない。そうなってまいりますと、「勧告」「公表」ということではなくて「命令」「罰則」ということでなければせっかくつくりました法律が仏つくって魂入れずという形になってまいりましょうが、この点は本会議質問におきましても総理並びに通産大臣は抵抗をなさいませんでした。  だから、本委員会において修正をするという場合におきましては、政府も当然——これは立法機関の意思によってやることでありますから言うまでもないことでありますけれども、これに抵抗するということはないのか。  あわせて申し上げましたが、もう十分御理解になっていらっしゃることでありますからお答えもできましょうし、それぞれひとつお答えをいただきます。
  30. 小松国男

    岸田政府委員 この法律主務大臣調整という形になっておるのに対して、都道府県知事活用の道はないかという第一のお尋ねでございますが、たとえば製造業の場合でございますと、特定の府県に工場ができましても、その製品はかなり広く都道府県の境を越えて、場合によっては全国に流通するというような性格がございます。その意味におきまして、都道府県知事の調整というのはやっても余り実益がない形になるのではないかということから、やはり、主務官庁が責任を持って調整をするという形をとった次第でございます。  それから、第二点にお尋ねのございました小売商を外した理由はいかんという点でございますが、いまお話の中にもございましたように、小売商につきましては、地域的な調整ということがやはり事の性質上なじむのではないかということで、その意味におきまして、従来から大規模店舗法におきましても、商工会議所あるいは商工会の中に置かれます商調協において事前にいろいろ調整を図るというようなやり方が組み込まれておりますし、それから、いわゆる商調法におきましては、先生は市場の規制のことについてお触れになりましたが、別途商調法の中には十五条から十八条に「あっせん」「勧告」「調停」という規定が用意されておりまして、これは都道府県知事がその責めに当たるという形になっております。  いずれにせよ、地方的な調整ということが問題を解決するためになじむのではないかということからこの体系から除外いたしまして、また、いまの商調法におきましても、法律条文をごらんになればおわかりのとおり、中小小売商とそれ以外の者との関係等さまざまの問題につきまして、かなり機動的に動けるようになっておることは御承知のとおりでございます。  実績が少ないという点の御指摘もございましたが、いわば、あの条文を背景にして現実に問題を解決した、行政指導によって解決したという事例はかなりの数に上っておるところでございます。  それから、第三番目にお尋ねのございました「勧告」「公表」では不十分ではないかという点につきましては、これまた審議会でかなり議論が交わされたところでございます。命令なり罰則なりというようなことになりますと、その要件は非常にシビアなものになってまいりますし、どういう要件を備えた場合にどういう命令を出せるというようなことがはっきり条文の中にうたい込まれることになるわけでございます。しかし、いま御提案申しております法律のように万般の領域をカバーするということになりますと一つ一つのケースを積み上げるわけにもいきませんので、やはり、一般的なルールとしてはソフトなものにならざるを得ないという感じがするわけでございます。  仮に命令をこの条文の中に入れますと相当要件が限られてしまいますし、また、その前提となる勧告自体の要件もしぼっていかざるを得ません。それよりはむしろ勧告を幅広く弾力的に使って、出てくるさまざまな問題に対して機動的に対応する方が問題を解決するのにはよりベターなのではないかと私ども考えまして、御提案を申し上げた次第でございます。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 小売の問題については、分野法というのは、ある業種に対して大企業の進出をチェックするということをたてまえとしているわけだから、これを製造業サービス業にしぼるということは適当ではないということを改めて申し上げますが、これに対する大臣考え方を伺いたい。  それから、商調法の改正ということも大臣は十分お考えになっていらっしゃいましょうが、これはもうほとんど働かないですね。きわめておざなりなものです。だから、これも分野法趣旨を取り入れた形で、これに小売を譲るというのであるならば、当然この商調法が有効に働かなければならない。したがって、商調法の改正というものは当然なされなければならぬと思います。  それから、「勧告」「公表」の問題は、本会議におきましても「命令」「罰則」ということを与野党ともに主張いたしました。これに対して総理、通産大臣も抵抗していないわけでありますから、当然分野法においてこの「命令」「罰則」という形で本委員会において修正の話し合いがなされるであろうと私は考えますが、この点に対してはもちろん大臣は抵抗はなされず、快く受け入れられるだろうと私は考えるわけでありますから、その三点に対してお答えをいただきます。
  32. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま長官がお話し申し上げたごとくに、この分野法の対象をなしております製造業卸業サービス業等は、むしろ一小区域の狭域の問題よりも広域あるいはまた国家的な全体の問題とも関連いたしますので、かような意味におきましての通産大臣の所掌事項としての面を持っておるわけであります。  なお、これに対する商調法との関係あるいはさらにこの後におきます問題でございますが、私ども審議会の答申をいただきまして、そしてその面において十分審議もいたし、検討もいたして本案を御提出申し上げているわけであります。しかしながら、御案内のとおりに、立法府の問題と行政府関係もございます。これらの法律制定等の問題につきまして、立法府の皆様方のなおいろいろの御調整につきましては、もちろん政府といたしましてもこれに対しまして今後ともに御相談もいたさなければならぬ、かように考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、この分野法制定というのは、単に機械的に調整をするというのではなくて、私どもが提案をしておりますように、中小企業事業分野確保するという観点に立って、中小企業経済政策、社会政策の点から国民経済に寄与する役割りを果たさせるという精神に立って政策展開をされなければ、せっかく成立をいたしましても、無数の中小企業立法と同じように全く働かないというような形になってくるわけであります。  その点に対してどのような決意と信念を持って大臣は対処していこうとお考えになるのか、その点を一つ伺って、具体的な問題を留保いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  34. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘のように、中小企業の問題は、一分野法の問題やらあるいは一商調法の問題だけではなく、非常に大きな一つ日本といたしましての社会問題でもあり、経済問題でもあり、また、国家経済の基盤をなす問題でもございます。  御説のとおり、私ども、これらはおのおのの一つの面だけで理解できるものではございませんで、全体を包括的に見直すという段階もある時期には当然必要であろうと考えておりますが、今回のこの新しい分野の問題につきましてはただいま申し上げたような考え方で進んでまいっておる次第でございます。
  35. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 前田治一郎君。
  36. 前田治一郎

    ○前田委員 分野法についてお尋ねいたしますが、与えられた時間が一時間でございまして、往復と考えますと御答弁の時間は三十分ですので、そのおつもりで時間を節約してお答えを願いたいと思うのでございます。  通産大臣にお尋ねしておきますが、先ほども質問に出ておりましたけれども、今回の分野法は、従来から中小企業が大部分を占める分野に大企業が進出するのを調整するための分野法ということになっておるのでありますが、その分野法は小売業を除くという除外規定がございまして、小売業というものは分野法の適用を受けない、いわゆる分野法によって保護を受けないということになっております。ところが、その小売業は他の法律によってこれをカバーしようというお考えでございますけれども、私はつらつら案ずるに、通産省という役所は製造とか加工とか貿易とかいうことにはなかなか熱心でございますけれども、いわゆる小売業に対しては非常に疎外感を持っていらっしゃるのじゃないかというふうな気がしてなりません。これは分野法に小売業を除外しておるから言うのじゃありませんけれども、ふだんの姿勢がどうも小売業者に対して冷淡なような気がするのでございます。  通産大臣としてはよもやそういうお考えはございませんでしょうけれども、小売業に対してどういうふうなお考えを持っていらっしゃるのか。たとえば分野法に関連する法律、すなわち小売業者がよって立つところの法律というものを改正してはどうかということを先ほども中村委員がおっしゃっておりましたけれども、いまは分野法だ、そのことについては後日にしたいというようなお言葉でございました。この分野法審議する過程において、通産大臣の御所見として、いや商調法は小売市場の調整であって、小売店が十店舗以上で、そしてその中に一カ店でも生鮮食料品を販売する店がある場合はこの法律にひっかけて、そして知事の認可、許可がなければ設置を許さないのだ、そういう法律になっておるんですという御説明がありましょうが、それなればそれは大資本、大企業を抑止するのじゃなくして、中小企業者自体の仲間同士の相互牽制、相互調整ということになってしまって、これを称して自繩自縛に陥っている法律と言うこともできると私は思うのでございます。  大店舗法にいたしましても、これはまた後に詳しく触れますけれども、非常にざる法的な性格を持っている。百貨店法を少し衣がえをしてスーパーマーケットにも適用しようとしたところに無理があると私は思うのでございますけれども、制限面積にいたしましても三千平米、九百坪以上ではありませんか。あるいは地方都市においては千五百平米です。そのような大きな店舗というものは普通小売商店等では絶対に存在しないと私は思います。百貨店以外にはそれだけの大きな売り場面積は必要ないのであって、言いかえると法外な途方もない面積を示して、それ以下なれば自由にやれるじゃないか、それ以上の場合は届け出をしなさいというようなざる法的性格を持った法律である。これに依存して小売業者が安閑と営業することは困難だと私は思うのです。  また、中小企業団体の組織に関する法律でしたか、そういう名前の法律がございますが、これでは企業組合とかあるいは商工組合の設立を規定しておりまして、それもまた中小企業者である商工業者が自繩自縛に陥るような、自分たちだけで調整を行う、大企業にはそれは及ばないということになっておりまして、それらの法律に依存しろと言いましても、それはもうお互いごっこの相互牽制をし合うだけであって、いわゆる中小企業の敵である大企業にはそれらの法律をもって立ち向かうことができなくなっておるじゃないですか。こういうような状態の中でこの分野法が小売業を除外して——まあ分野法自体も製造業、加工業のための法律でありますけれども、これはずいぶんなまぬるい法律だと私は思っておりますが、それにしてもこの分野法から除外して小売業者はあっちに行きなさいという態度、これをもってしても通産省は小売業に対してきわめて冷淡であると言わざるを得ないと私は思うのでございますが、この辺の所見を通産大臣から承りたいと思います。
  37. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  私も商工省の出身でございますし、また、商工委員をずっとやっておりましたので、これらの経過につきましては存じ上げておるつもりでございますが、なお改めて通産大臣として就任をいたしまして、いかに通産省というところが中小企業問題に連日取り組んでおるかということに、当局の立場になりまして驚くほどでございます。  実を申すならば、この中小企業と申すのは経営規模が小さいというだけの話でございまして、その業態というものはまたそれこそ千差万別ございますし、同時に、また、企業というものは生き物でございますから、企業同士の間の経済活動というものはおのおの契約自由の原則に従いまして、業界あるいは企業同士のいろいろな契約がございます。しかも、経営規模が小さいということによりましての業態の、あるいは大企業との間の調整、あるいは業界同士の紛争、あるいはそれに対しまするいわゆる国の行政としての指導、こういうものは本当に驚くほどに、量的に見ましても、あるいはまた質的に見ましても、多岐多様にわたっておるような状態でございます。  そういうことを前提に踏まえまして今回分野法というものが審議されたわけでありますが、るる申し上げるように、審議会をつくりまして、有沢先生のもとに、あるいは消費者代表、あるいは経営者、あるいはその他各方面の方々に集まっていただきまして審議を重ねました中におきまして、審議をすればするほどいかに多岐多様にわたるものかということがますます明瞭に相なりまして、当初は業種指定ということが案外楽にできると思っておったところが、いろいろ検討いたしますればいたしますほど業種指定というものが実はだんだんできなくなってしまったような経過もございます。  かようなことで、ここに業種指定というものは一応外れたわけでございますが、さらに、また、その間におきまして、製造業卸業あるいはサービス業というふうな分野と、それからいわゆる不特定の大衆に対します商行為でありまする小売業と大規模の店舗の、この商業の関係とを分けまして、そして製造業並びに卸、サービスというものを対象に今回御提案申し上げたようなものが出たわけでございます。  小売に対しまして非常に風当たりの厳しい今日のような客観情勢でございますが、特に高度成長から低成長に切りかえた日本経済の現状はいまや構造的にも胎動期に入っておりまして、何といいましても弱い中小企業圧力がかかってくるのを私ども通産省といたしましては省を挙げて守り抜いていこうという気持ちでいっぱいでありまして、今回の分野調整法もそういう気持ちのもとに審議の過程を経、また貫かれておるということをこの際一言申し上げておきたい、かように存じます。
  38. 前田治一郎

    ○前田委員 たとえばこの分野法の入り口は、一定の要件を備えた中小企業団体通産省へ調査を申し出るということから始まるわけでございますが、ところが、この法案のどこを読んでみましても、そういう申し出を待たずとも通産省自体が中小企業と大企業との紛争が起こる気配を察知したときには自主的に調査を開始するんだという条項がございません。全く一方的に中小企業団体の申し出がなければ動かないんだというような組み立て方になっておりまして、私はそこでどうも水臭いなという気がさっきからしておったのでございます。  通産大臣の御所見はよくわかりましたけれども、こういう点で、この法律をこのままでお書きになったとすれば他の小売商業関連法令も改正する意思はお持ちじゃないのかなという気持ちも私はしますが、先ほども中村委員がおっしゃっていましたが、私もまた関連法令の商調法とか大店法はぜひ改正しなければならないというふうに考えております。  先ほどお尋ねしましたのは、その改正をするというような言質をとろうという気持ちはございませんけれども、通産大臣としてのその辺のお考えのほどをお聞かせ願えれば大変ありがたいと思って先ほどの質問をいたしましたが、もう一度これをお尋ねいたしまして、通産大臣個人のお考えで結構ですが、何かお聞かせいただけませんでしょうか。そうすれば大臣のお考え、方針というものが省内に響き渡るわけでございまして、大臣自体にそういう考えがなければ各局をいかに叱咤激励してもその考えになってこないだろうという前提のもとのお尋ねでございますので、よろしくお願いします。
  39. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府といたしましていろいろと考えました末に成案を得て御提案申し上げた本分野調整法律でございますが、もちろん、ただいま申し上げるように中小商工業の問題というものは大変にいろいろな問題を内包いたしておりますので、また同時に客観情勢の変化によりましても常にこれを修正し、改めていかなければならないのは国家として当然のことでございます。私どもは、ただいま政府として御提案申し上げましたこの法案に対しましても、ぜひとも一日も速やかにこれが通過いたしますようにお願いを申し上げておる次第でございます。  また、先生方の中小企業に対しましての御熱意というものもよくわかる次第でありますと同時に、この中小企業問題というものは、実は、日本国家といたしましての、また経済活動といたしましての最も大事な基盤をなすものであると考える次第でありまして、いろいろな御意見や、あるいはまたこれに対します政策の御研究もあると存じます。  私ども政府といたしまして提案を申し上げて、ぜひこの法案の速やかな成立をお願いを申し上げると同時に、立法府といたしましての皆様方の御活動を制約するということは行政府の者といたしましてはでき得ないことでありますことも当然のことでございます。
  40. 前田治一郎

    ○前田委員 この法律案は、われわれ五党共同決議をいたしまして要望して、それにこたえて提案をしてもらった法律案であるということはよく承知しておるのでございます。だから、そこまでしてくださった通産大臣に無理を言おうとは思いませんが、しかし、分野法分野法と略して言っておりますけれども、ずっと前にできておる商調法だって、私はここにちょっと控えてみたのですけれども紛争のあっせん、調停、勧告、報告徴収あるいは立入検査というような義務を業者側に課しておりまして、しかも罰則がついております。罰金一万円でしたか、罰則がついておる。非常に厳しい姿勢が示されておると思うのでございますけれども分野調整法もその程度の内容で実は立法をしてほしかったのでございます。  そこで、自由主義経済だからというふうなお考えがあるかもしれませんが、さっきも憲法問題が出ておりましたけれども、しかし、いかに自由主義であっても、やはり、それは無限じゃなしに限界があるというふうに私は考えております。ことに、公共の秩序のために必要とあれば制限を加えるべきであるし、この分野法はそのための法律でもあるんじゃないかと私は思うのでございます。  大変しつこいようですけれども、もう一点だけ本件について通産大臣の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  41. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘のとおりでございます。  自由というものの限界というものがやはりあるわけでありまして、自己の自由を主張いたしますると同時に、また、他人の自由も尊重しなければならぬというのが民主主義でございます。と同時に、国家といたしましては、過度の自由のためにかえって社会、公共が害されるというときには、当然そこには制約を設けていかなければならぬということは憲法上の問題でありまして、大企業中小企業の問題にいたしましても、かような一線というものは確立しておかなければならぬ、これが一つの本当の意味中小企業を守るゆえんでもあろう、かように存じましたものがこの分野調整法となってあらわれておる、かようにお考えいただきます。
  42. 前田治一郎

    ○前田委員 通産大臣は、どこかの国の大臣がお見えだそうでございまして時間をお急ぎでございましょうから、私の大臣に対する質問はこれで終わりましたので、どうぞ御退席願って結構でございます。  中小企業庁長官にお尋ねしますが、先ほど通産大臣のお言葉がありましたとおり、自由に対する解釈、そういうふうな基本理念でいくなれば、私は先ほども言いましたが、一定の要件を備えた中小企業団体の申し出があって初めて調査をするんだ、調査をした結果はその中小企業団体に通知をしてやるんだと、こう書いてあるのですけれども、さて、その後どうなるのかというと、中小企業団体と当該大企業との話し合いと申しますか、そういうことで円満に解決するようにしてもらうんだというふうな決め方でございます。それで、通産省行政庁としてそのあっせんをしようというふうなことが少しも書いてありません。そして、今度は、中小企業団体の要請があれば審議会にかけるんだと、まことに回りくどい、しかも気が抜けてしまったサイダーのような処理方法が規定されておりまして、そういう点で、せっかく法律をつくるのだからもう少しけじめをつけた決め方ができなかったのかというふうに私は考えておるのでございますけれども、その辺はなぜこんなに中途半端と申しますか、気の抜けた条項になったのか、中小企業庁長官から基本的にその辺の御説明をお願いしたいと思います。
  43. 小松国男

    岸田政府委員 その前に、大臣答弁に関連をいたしまして、中小企業行政の中で商業、特に小売業が置き去られているのではないかという点につきまして一言申し上げさせていただきたいと存じます。  御承知のとおり、小売商は全国で百五十万軒ございます。日本の小売の八割を中小小売業者が占めており、数から申しましても製造業よりはるかに多い事業所を抱えておるわけでございまして、中小企業政策の中では非常に大事な分野だというふうに考えております。これらの中小企業の方々がいわば一般消費者に対する生活必需品の供給の窓口になっておるわけで、それらの方々が本当に能率よく、かつまた安定した経営ができるようにということで、私どもも一生懸命努力をいたしておるところでございます。  続きまして、ただいまお尋ねのございました、いま御提案申し上げております法案の内容につきまして、まず調査の段階が非常に要件が厳し過ぎるのではないかという点につきまして、私どもは、先ほどの答弁の中で触れましたように、現に中小企業分野調整に関する調整官という制度を持っておりますし、また、各商工会議所及びその他の中小企業団体にこの問題に関するモニターを約三百人ほど配置いたしておりまして、問題があるかどうかということについて絶えずチェックをする仕掛けを用意いたしております。これは事実問題として私どもの当然の役割りとして行うわけでございますが、法律的な形に直します場合には、調査の申し出、それから調整の申し出、そして調整というような順序を踏んで形を整える必要があるから、いま申し上げましたような御提案の形になったわけでございます。  その際に団体を活用するということにつきましては、実を申しますと、これは中小企業の方々が個々の立場で見られますと、一つの問題に対する受け方が千差万別でございます。やはり、日本経済全体として放置できないような大きな問題ということをこの法律の課題といたしますと、団体として意思統一し、団体として問題ありというような判定が先行いたしますことが問題を解決するための便宜な方法であるというふうに一つ考えております。  それと同時に、両当事者の間の問題解決といいましても、無数の人を対象にして一つ一つ解決するということは恐らく不可能でございまして、当事者をしぼって、中小企業の代表の方々とのお話し合いにおいて大筋を決めていくというようなやり方が実際問題としてはやむを得ない方法ではないかと思っておるところでございます。  それと同時に、一方で大企業調整すると同時に、中小企業の方々にもこの際積極的に近代化、合理化をしていただく、そういう指導をしていただくのもやはり中小企業団体でございまして、以上のような観点から組合を一つの窓口にするという制度をとった次第でございます。
  44. 前田治一郎

    ○前田委員 いま御答弁でちょっと触れられましたけれども、近代化、高度化を図ってもらうのだというふうなことは、これはこの分野法の末尾の条項に書いてございますけれども、それは俗に言うやぶへびなんですね。おまえたちが非常に時代おくれの事業をやっておるから大企業が出てくるのじゃないか、しようがないじゃないか、おまえたちひとつ近代化しろよ、指導してやろうというような精神があらわに出ておるように私は思うのでございます。非常にきつい言い方になりましたけれども、確かにそういう点があらわれておるというふうに思います。  この分野法では、一時停止の勧告、それから事業の開始または拡大の時期を繰り下げるということ、そして規模を縮小するという三点しか勧告できないことになっております。そして勧告に従わなかったら公表するというのですけれども、果たしてそれで効果があるかどうか、私は非常に疑念を持っております。  お尋ねしますが、一定の要件を備えた中小企業団体とありますが、一定の要件とはどういうことをお考えになっているか。それから、公表するとありますけれども、それはどのような方法でどの程度の公表をなさるのか、その点をお伺いいたします。
  45. 小松国男

    岸田政府委員 先にお話のございました指導の問題でございますが、中小企業の方々はこれからの国際競争力強化という意味合いからも、また、消費者に喜ばれる中小企業になろうという意味合いからも、絶えず近代化、合理化のためには努力をしておられると思います。私どもは、それを支援するために近代化促進法の特定業種等に指定をいたしまして、現に応援いたしております。過去に分野調整の問題が起こりまして、その解決にいろいろ腐心をした業種の中にも、すでにこういった特定業種等になりまして、合理化、近代化に励んでおられるという方々がございますし、私どももそういう方々については特段に力を入れて応援をいたしたいと思っておるところでございます。  第二にお尋ねのございました中小企業団体の範囲でございますが、私どもがいま念頭に置いておりますのは商工組合商工組合連合会、それからそれと同じような実質を有する団体として一定の要件を備えます環衛組合、事業協同組合、それから特定の場合には社団法人等も申し出団体に加えてはどうかというふうに考えておるところでございます。
  46. 前田治一郎

    ○前田委員 少し細かな質問になりますけれども、第二条の第二項に大企業者の定義が示されておるのでありますけれども、この第一号に括弧書きとしまして「会社及び個人に限る。」となっておりますが、これは非常に意味深長なふうに読めるのであります。さらにまた続いて第二号に「出資口数の総数又は出資価額の総額の」云々という字句がございますが、この辺は会社ではない企業体をあらわしておると思うのでございますが、どういうふうな企業体をお考えになっておるのか、御説明願えませんか。
  47. 小松国男

    岸田政府委員 大企業の定義におきまして、いま御指摘がございましたような括弧書きがつけてございますが、この表現につきましては、実は、審議会の段階で生協、農協等の扱いをどうするかということがいろいろ議論されましたことが背景にあるわけでございます。現に、生協、農協等が中小企業分野と競合する活動をし、問題を起こしている事例がいろいろあるということを私ども承知をいたしております。ただ、そのほとんどが、いわばこの法律の適用除外としております小売業の分野に属すること、それから生協、農協につきましては、それぞれ根拠の法律におきまして、員外利用の規制について必要な規定が設けられておるというようなことがございますので、それらの問題はこの分野法と申しますか、事業調整法の対象としなくて、むしろそれぞれの法律の運用、改善によってカバーをしていきたいし、また、今後問題があれば別途議論をするというような形で当面処理をすることにいたした次第でございます。  それから、口数の表現があるのはどういう背景かということでございますが、御承知のとおり株式会社の場合には株式数でございますが、有限会社、合名会社、合資会社等につきましては口数という形をとっておりますのでそのような表現を加えた次第でございます。
  48. 前田治一郎

    ○前田委員 私は、生協を別に敵視しようとは思いませんけれども、兵庫県神戸市に神戸灘生協という名前でしたか、物すごく大きな生協がありますが、あそこでたしか豆腐なんかをつくっておったんじゃないかと思いますが、そういうようなのはこの分野法では見逃しするわけですか。
  49. 小松国男

    岸田政府委員 小売業への進出ということになりますと、この法律の形からしますと適用除外として処理し、小売商業調整法等の体系にゆだねられるわけでございますが、いまお話しのございました小売業としてやっているものが製造業へ進出する、まさに逆の形でございますが、こういう場合にも一般的にはこの法律の適用を受けるものと理解をいたしております。
  50. 前田治一郎

    ○前田委員 ところが、適用を受けるものは「会社及び個人に限る」という条件がついておるんでしょう。生協では適用しがたいじゃないかということになるんですが、しかもあの生協はずいぶんたくさんの店舗を持って、大がかりな組織になっておりますけれども、員外除外といいましてもこれはだれでも入れる。百円でしたか、出資金を払えばだれでもいつでも入れるというような組織で組合化されておる。ある一定の団地なら団地での生協とは全然違うんですね。地域で広く商売をしているという、もうあれだったら大企業と言うても過言じゃないくらいの組織なり規模、設備でございますけれども、それでも「会社及び個人に限る」となっておるから、これはもう適用されないということになると思うんですが、いかがでしょうか。
  51. 小松国男

    岸田政府委員 御指摘のございました生協の員外利用の問題は、私どももかねてから小売商団体等からいろいろの御要望があり、また、問題が指摘されておるということも十分承知をいたしております。私自身も地方におりましたときに、現にいろいろの体験を持っておるところでございます。  ただ、御承知のとおり、生協につきましては、員外利用は原則としても許可制にかかっておりまして、普通であれば組合員のためにやるということがたてまえになっておるわけでございます。さらに、その許可をするに当たっては関連中小企業者への影響に配慮しなければならないという特別の条文が別途用意をされております。したがいまして、法律の形としては一応中小企業者への配慮について必要な規定は用意されておると私ども理解しておりますものの、現実にはいろいろの問題が起こっておる。そうなりますと、やはりいまあります法律をいかに運用するかということが基本的な問題になってくるのではないかと思っておるところでございます。  したがいまして、私どもも大きな問題がございますれば厚生省等へも連絡をいたしております。また、地方の都道府県知事の協力も得まして、実際にこのせっかく設けられております法律をうまく運用され、そして現地で問題を起こさないで済ませるようにということで指導してまいりたいと思っておるところでございます。
  52. 前田治一郎

    ○前田委員 そこで、「大企業者」という字句の定義の問題なんですが、先ほど言っておりますように非常に大規模な生協も網から抜けてしまう。それから、また、出資口数あるいは株式数等で一応大企業の子会社的なものは適用するようになっていますけれども、別に出資というかっこうじゃなしに貸付金ということで、しかも会社の規模中小企業の枠の一億円以下で小さな型の会社をこしらえて、従業員も少なくして、必要な従業員は全部下請にやらせておるというようなかっこうにしてしまって、そして大企業、大商社あたりから貸付金ということで融資を受けてきて、それでこの中小企業者の長年にわたる分野を撹乱しようという、そういう計画をされる人もあると私は思うのです。  だから、一概にこの分野法においてくくられておるような大企業者という定義づけでもってかかったら幾らでも網を抜けて泳ぐことができるわけでございまして、そういうような網を抜けるものをなくするために、もっとがんじがらめな幅の広い規制の方法、大企業者の定義を決めておかなければいけないというふうに私は思うのでございます。だから、個人の自分自身は中小企業と言うにふさわしいような存在の人でありましても、大商社、大企業あるいは銀行とうまく話がつきましたら、資金を法に触れないように上手に引っ張り出してきて、そして大規模の設備をして中小業者を圧迫するような事業を開始することができると思うのです。それが網から抜けてしまったんじゃ何にもならないと思いますので、「大企業者」というふうな字句じゃなしに、大規模業者とかあるいは大規模事業計画者とかいうふうな表現にした方がよくはないかと思うのです。  別に字句にこだわるわけじゃありませんが、私が言いました網を抜けようとするような考え方、それは必ずできてくると思いますが、それをどう防いでいくかということについて長官の御所見を承っておきたいと思います。
  53. 小松国男

    岸田政府委員 御提案申し上げております法律の第二条の「定義」の中で第二項を用意いたしまして、大企業者の範囲を定めております。いまお話がございましたのは特に第二号の問題が中心であろうかと思いますが、私どもがこの第二号を設けましたのは、大企業者が自分では直接進出せずに、いわゆるダミーを設けて進出する場合を何とかして防ごうという意味合いから特に設けた条文でございます。  ごらんをいただきますとおわかりのとおり、「発行済株式の総数、出資口数の総数又は出資価額の総額の二分の一以上に相当する数又は額の株式又は出資を所有する関係その他その事業活動を実質的に支配することが可能なものとして主務省令で定める関係を持つているもの」と大変複雑な表現になっておりますものの、簡単に申しますと、出資比率二分の一以上の資本的支配関係を代表的な事例として出しながら、その他事業活動を実質的に支配することが可能なものとして主務省令で定めるものもあわせて対象にするということにいたしております。  そうなりますと主務省令でどういうものを定めるかということが問題になってまいりますが、私どもは、たとえば人的な支配といたしまして、単独の大企業によって役員の過半数が占められている場合であるとか、あるいは子会社ではなくて孫会社をつくるというような場合も、やはり主務省令で定めて、ダミーとして規制をするということが適当ではないかと思っておるところでございます。このダミーに関する他の立法例もいろいろございますので、十分実情に沿うような形でこの主務省令の内容を決めていきたいと思っておるところでございます。
  54. 前田治一郎

    ○前田委員 私も、ダミーというふうな単純な表現をしたのでは法網をくぐる者がたくさん出てくるというように案じておりましたが、そうでなしに、実質的に支配をするあの字句にひっかけて主務省令を完全に決めてもらったらその辺のところは補いがつくのではないかというふうに思いますけれども、しかし、それでもなおかついけませんね。「大企業者」というこの定義づけをよほど慎重にしなければいけないと私は思うのです。大企業者というと中小企業に対する大企業というように考えがちでございますから、それじゃ困るので、そこで大企業の定義というものが条文を設けてあるのだけれども、結局のところ非常に不安な条文だけれども、もう頼るのは主務省令ということだけになってまいります。  その主務省令でどのように——いまのダミーじゃなしに、また孫会社じゃなしに、もっと巧妙な、全く取引としての貸借関係というふうなことで金を引っ張ってきて、涼しい顔をして、それで商社の意向をくんで、大企業の意向をくんで中小企業を圧迫して事業をやる者があるだろうと思うのですが、そういうものまで網にひっかけていくためにはどういうふうな主務省令をお考えになっておるのか、条項で結構ですから、簡単にひとつ……。
  55. 小松国男

    岸田政府委員 いま御指摘の点は、実質的に支配するということの実態を見きわめて、そしてこの立法趣旨に照らしてふさわしいような内容を決めるということになろうと思います。したがいまして、これは、ケースを積み重ねるごとにこういう脱法があるという事例が見つかりました場合には、それをカバーするような主務省令の改正を行うことが必要だろうと思います。  先ほど申しましたのは、とりあえず私どもが思い浮かびましたことを例示として申し上げたわけでございますが、この法律施行までにさらによく実態を調べて、適当な内容の省令をつくるように努力をいたしたいと思います。
  56. 前田治一郎

    ○前田委員 そこで、分野法製造業なり加工業を対象とした法律であり、小売業は商調法なり大店法があるじゃないかということになってくるのでございますけれども、これからしばらく小売業についてのみお尋ねをしたいと思います。  商調法というのは、さっきもちょっと触れましたけれども、小売業者相互間の相互規制といいますか、相互牽制をさせるというふうなねらいで、しかも非常に厳しい法律になっております。内容が厳しい。許可制をとり、罰則を設け、距離制限も設ける。大変厳しゅうございます。もう一つ法律の大店法は、御承知のとおり非常にぬるま湯につかったような法律である。その二つの法律を押しつけて、小売業者はこれでカバーしていきなさいというようなことになるから、それで通産省は小売業者に冷たいのじゃないかというような質問を私はしてみたわけでございます。  それじゃ小売業者に対してこの分野法でお考えになっておるような圧迫、たとえば大規模店舗の進出による小売市場なり小売店の疲弊を救済するために現在のこの二つの法律で——まあ中小企業団体の組織に関する法律ですか、これの商工組合も入れれば三つになりますけれども、そんなところで小売業者を擁護してやることができるとお考えかどうか、まずその辺から伺いたいと思います。
  57. 小松国男

    岸田政府委員 この法律の対象から小売商を除外いたしましたのは、いわば小売商というものは本来の性格からして非常に地域に密着した産業であり、問題を解決するためにはそれぞれの地域の実情に応じた解決をするというのが一番ふさわしい、まさにそのために大規模店舗法があり、商調法があり、大規模店舗法においては商調協というような組織を活用して地元の実情を反映する、また、商調法においては都道府県知事が第一線に立ってあっせん、勧告、調停をする、こういう仕掛けが用意をされておる、このことが念頭にございまして適用除外をしたわけでございます。したがって、この小売商をめぐる紛争問題についてもう手を触れる必要はないというようなことではなくて、むしろ、この法律に入れるよりはもっとふさわしい道具が現に用意をされておるということから適用除外にしたというのが正直な気持ちでございます。  その際に、いまの大店法なり商調法なりが問題解決のために十分うまく使われているかどうかという点につきましては、私どもは大規模店舗法については直接所管の立場にはございませんものの、見ておりますと、三千平米あるいは千五百平米以上の大規模店舗の出店についてはいろいろの調整が現に行われてきておりますし、また、いま申し上げました基準面積以下のものにつきましても、現に通産局等で個々に問題を解決するために努力を重ねておられるわけであります。  さらに、商調法につきましては、確かにこの条文自体を運用した実績は乏しゅうございますが、この条文のあることを背景にして、現に都道府県知事の段階調整をされた事例はかなりの数に上っておると思っておるところでございます。私どもは商調法を所管いたしておりましてもう一度条文を振り返ってみますと、条文の内容自体は、中小小売商とその他の者との間の紛争という意味合いで、メーカーの直販の問題あるいは卸の直販の問題、あるいは先ほど御指摘のございました生協、農協の問題、こういった問題を含めまして幅広く使えるという意味合いからしますと、先ほど申しました地域的調整の問題がなじむという性格の違いに加えまして、実質的にもかなり使える可能性を持っている道具であると思っておるところでございます。それをもっとうまく使うようにするために、私どもは近く何らかの通達を用意いたしまして、そして具体的にこれがうまく使えるような指導をやっていきたいと思っておるところでございます。  なお、一般論といたしまして、小売についていろいろの問題が起こっておりますことは私どもも十分承知をいたしております。商調法ができましてからもうすでに十数年たっておりますし、大規模店舗法ができましてかれこれ三年を経過いたしましたが、その間における経済情勢の変化がいまの大規模店舗法なり商調法のあり方について新しい課題を要請しているのではないかという点については、私どもなりにやはり十分吟味をしてみる必要があると思っておるところでございます。
  58. 前田治一郎

    ○前田委員 商調法は仰せのとおりでありますけれども、ここで私が強調しておきたいのは、あの商調法で小売市場が規制されていることです。小売市場というものはさほど大きなものじゃないのですよね。五十坪あるいは百坪というふうな市場もたくさんある。言いかえると、大規模店舗法で決めておる面積以下のずっと狭い面積の店舗、しかもそうたくさん店がない市場が多いのですけれども、大阪に特に小売市場が多いと言われておりますが、そういう状態である。それを規制を厳しくやっているのですが、小売市場を建築したりしている、いわゆる店舗提供をしている業者というのは案外に大企業じゃなしに中小企業者が多いというふうに私は見ております。大企業は、特にスーパーマーケットなんかはそんなばかなことはしないのです。スーパー経営者がそういう店舗を設置した場合は、これは自分で販売を直営せずにいろいろな業者を百貨店みたいに入れて販売しておるところもあると聞いておりますけれども、それはしかしスーパーマーケットとしての、大規模店舗としての法適用を受けるものだから、商調法の小売市場じゃないのだということによって、平気で、大阪でしたら三千平米、地方都市でしたら千五百平米以下なれば開業ができるようになっている。この辺が非常に不公平があると私は思うのであります。  通産省中小企業庁では、この商調法の適用を受ける業者とそれから大店法の適用を受ける業者を——これは非常に質が違うのでありますけれども、彼此比較してみますと大変不公平であるということにお気づきになっているかどうか、お尋ねいたします。
  59. 小松国男

    岸田政府委員 私の承知しておりますところでは、大規模店舗法ができる前に、御承知のとおり百貨店法というものが戦前から、一時中断の時期を経て長い歴史を持っておるわけでございます。当時は許可制ということで法律が用意をされ、またそれに従って運用されておったものが、その後果たしてそういうような形でいいものだろうかどうだろうかということについて、非常に真剣な、しかも長い議論が行われた上、今日の大規模店舗法に移ったという歴史的経過を踏んだと承知いたしております。  特にその際問題になりましたのは、一方では確かに中小小売店の事業機会確保ということを重大な課題として受けとめなければならないが、同時に流通の近代化なりあるいは消費者利益ということにも配慮していかなければならない、その三つの意見をどう調和するかということについて議論が重ねられたあげくいまのような法律体系に移っていったという経緯であると承知をいたしております。  そうなりますと、今度はいま御指摘のように商調法との具体的関係いかんということが問題になってまいりますが、商調法の中で、市場の規制はいまお話にもございましたように許可制になっておりまして、大規模店舗法が届け出制を原則にしておりますのと形が違っておることは御指摘のとおりでございます。  市場の問題は、私の記憶では、たしか震災後ぐらいに公設市場ができ、それにならって私設市場ができたという大変古い歴史を持った存在でございまして、戦後の状況を振り返ってみますと、一般の小売商の中で、一つは百貨店という大きな存在があり、他の一つの存在として市場という集団形態があり、それ以外は個々の小売商が全国に散在をしておる。こういう形が前提になって小売商業調整法ができたのではないかと理解をいたしております。  正直に申しますと、その後いろいろの経済情勢の変化ができてまいりました。集団形態というのも、伝統的な市場以外に寄り合い百貨店等の形態が出てまいりましたし、また、ショッピングセンターの中にテナントを入れるというような形態も出てまいりました。  こういったごく最近の新しい情勢にいまの商調法が本当にうまく合っているかどうかというような点はやはりいろいろ考えなければならない問題があるだろうと思っておるところでございます。また、御指摘のように大規模店舗法とのバランス論というのも当然出てまいろうかと思います。  私どもは、こういった新しい課題に対応いたしましてどう考えるべきかというようなことにつきましても先ほど申しましたように真剣に議論をし、小売商全体のあり方の一環として考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  60. 前田治一郎

    ○前田委員 時間がありませんので答弁はなるべく簡単に願いたいのです。  そこで、小売市場は商調法で非常に厳しく規制をしておる。そして、スーパーマーケット等は大店法で非常に寛大な規制をしておる。両方とも同じような商品を売っておる。小売市場は十店舗以上ということで規制を受けるのですけれども、では、スーパーの方は十店舗以上に相当する売り場がないかというと、十店舗以上に相当する広い売り場を持っている。これを舶来語を使って、やれスーパーマーケットだとかショッピングセンターというふうなことで考えないで、あるいは大規模店舗とかいうふうなむずかしいことを言わないで、いっそのこと、そういう形態の販売店は全部あれは小売市場だというふうに法律上ではみなすことにしてもいいというふうに私は考えておるのでありますけれども、あの大店法で個々の小売業の集団ともみなされるスーパーマーケットが非常に寛大であるというところに、政府は大資本、大企業に対して寛大であって小規模零細業者に対しては過酷であるというふうな感を私どもは持つわけでございます。  そこで、あの商調法と大店舗法なんかは合わせて一本にしてしまって、法律の整理をやりまして、そしてスーパーマーケット等のようなものも小売市場と同じ程度の規制をかけていくというふうな法改正が必要であると私は思いますが、もう時間がありませんからこれを長官からお尋ねして——大店法は産政局の所管でしたかね。本来は産政局と少し議論したいのですけれども中小企業庁長官にその点の所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  61. 小松国男

    岸田政府委員 小売商がその本来の役割りをフルに発揮していただけるように私どももいろいろ知恵をこらしておるところでございます。正直に申しますと、大規模店舗の進出に伴って打撃を受ける、これを何とかショックを緩和するというような方策と、他面では中小企業自身が力を合わせて大規模店舗に対抗するような力を蓄えること、これを応援していく、両面で一生懸命中小企業対策、特に中小小売商対策を進めていくということが必要なのではないかと思っておるところでございます。  いまお尋ねの中小小売店を守るための各種の施策について、大規模店舗法あるいは商調法等の関係についてもっともっと勉強し、場合によっては一体にするようなことも考えてはどうかというようなことは、私どもも、先ほど来申しておりますように、小売商に関する規制のあり方については、新しいいろいろの情勢を踏まえ、なおかつ国民経済の中における小売商の役割りというものを念頭に置きながら、この際、産業政策局とも一緒に勉強していきたいと思っておるところでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  62. 前田治一郎

    ○前田委員 私の大阪では、もう日々のごとく次から次へと大資本、大企業経営する店舗が進出しかけて、それによって周辺の小売商店、小売市場がびっくり動転いたしまして、それをやられたのではわれわれはもう完全に死に絶えなければならないというようなことで反対運動を起こし、われわれに陳情するということが頻発いたしております。これは大規模店舗法の内容が不備であるからだというふうに考えますが、商調法と大店法をさっき言いましたような方向でぜひとも改正すべきであると私は思うのですが、それをこの分野法審議と並行してぜひ政府提案として出してもらうぐらいの意気込みが欲しいというふうに私は考えております。  その御努力を要望いたしまして、私の本日の質問を終わります。
  63. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後四時五十七分開議
  64. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君。
  65. 佐野進

    ○佐野(進)委員 中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律案につきまして、社会党の立場から大いなる感慨を込めて、大臣以下関係者の皆さん方に質問をしてみたいと思います。  と申し上げますことは、この委員会でこの問題が提案されるに至りました経過の中で、歴代の通産大臣、あるいはまた中小企業庁長官関係局長に対して激しい口調というか、厳しい態度というか、人間的にはいささか反省をしなければならないような状況の中で追及を続けてきた。そういうような関係からきょうこの委員会質疑をすることができるようになったことに対して大変大きないろいろな意味における感懐を持っておるわけであります。そういう意味において、私は、通産当局が上げることのできないと思われた重い腰を上げてこの問題に取り組まれた熱意に対しては心から敬意を表しておきたいと思うのであります。  この間、中小企業庁を初め通産当局あるいは関係者が通産省としての立場に立っては大変苦しい状況下に置かれたと思うのでありますが、今日置かれておる中小企業者の厳しい情勢を察知せられて本案の作成をされたということに対しては、その努力を多とするとともに、しかしながらこの成案が得られた状況の中においては大変不満であるという立場に立たざるを得ないということ、努力は認めるにしても結果としてはわれわれの立場からすればきわめて不十分であるという思いを持ちながら質問をしてみたいと思うのであります。  そこで、まず基本的な問題といたしまして通産大臣と公正取引委員長質問をしてみたいと思うのであります。  この問題が国会商工委員会におけるところの全会一致決議に至りました間におきまして、時の通産大臣あるいは公取委員長はいろいろな形の中で見解の表明をなされました。しかし、通産大臣としては、その事情の厳しい情勢下にあることをおおむね認めるとともに、中小企業者の自主的な努力によって、そしてまた及ぶ限りの通産行政の力を尽くすことによってこの問題の処理を図りたい、したがってできれば行政指導の形において解決したいということを繰り返し述べられ、政治的な問題として、公正取引委員長はやむを得ないとしても、このような問題については、これまた行政指導行政的な形の中においてできるだけ解決を見られることが必要ではないかというようなことを言われておったわけであります。  しかし、その後における情勢の変化、当委員会における二回にわたるところの決議等を受けまして通産大臣の発言も変わってまいったわけであります。お二方はその後この問題が提案をされる状況の中で着任をなされ、いまこの委員会審議に当たっておられるわけでありますけれども田中通産大臣といたしましては、私どもにとってはきわめて不満足であるというこの法律案につきましてこれから十分審議を尽くしていくわけでございますけれども、結果的に与野党を含めて総合的に不満であるという背景の中で、この問題に対して十分審議をした経過の中で、一定の結論を出したいと私どもは念願いたしておるわけでありますが、委員会に出されたところの結論についてはこれを尊重していかれるお気持ちがあるかどうか、この点をまずお伺いしてみたいと思うのであります。  独禁法のたてまえ上から、競争を制限するような形になる本法案に対しては好ましくないが、政治的な部面としてこの問題についてはやむを得ないものとして認めるという見解を前委員長は発言され、あなたもそのような意味における発言をしておられると私どもは聞いておるわけでございますが、今日の大企業中小企業紛争が大企業の力に任せる状況の中における紛争と——紛争というよりもむしろ犠牲者が犠牲をなくするという形の中でみずからを守ろうとする形でそれらの運動が展開され、今日法案として提案されておるわけでございますが、これらがある程度与野党一致の状況の中に強化された内容をもって可決せられるというような状況に至りました場合、あなた方はどのような判断に立たれるか。この点についてお二方にまず基本的な問題として質問をしたいと思うのであります。
  66. 田中龍夫

    田中国務大臣 佐野先生の、今日までの非常に長い商工委員会の過去を振り返られましての、まことに温情あふれる御表現のもとに、本法案の提案について今日までの経過を感慨を持ってごらんになったというお言葉は私どももまことに胸を打つものがございます。  本当に未曽有とも言うべきこの不況の中における中小商工業の現状いうものを国家として国民として守り、これを救い上げていかなければならないと私は思いますが、同時に、また、中小企業というものがわが国の経済の特色でもありまするけれども経済のベースは中小企業であるとさえ思っておるのでありまして、私どもはここに通産行政をお預かりいたす者として、審議会の御答申を待って、その中の消費者生産者、あるいはまた言論界等各方面の真剣な御審議の結果本案をつくったわけでございます。私どもの中におきましてもいろいろと論議が残っておることは当然でございまするが、しかし、中小企業庁といたしましては、また通産省といたしましては、政府案としてここに御提示申し上げたわけでございます。これをもとに大いに議論もしていただき、大いに御審議を尽くしていただきたいのでございます。  私どもは行政府の者として政府案を御提示いたしましたが、皆様方は立法府とされましての別な御見識とお立場があるわけでございますが、何はともあれよかれと思う一念から中小企業の育成保護というものは愛情を持って貫きたい、われわれも皆様方と同じ気持ちでもってこれから本案の審議を尽くさせていただきたい、かように私は存ずる次第であります。
  67. 澤田悌

    ○澤田政府委員 お答えを申し上げます。  このような重要な法案が国会の日程に上るということにつきましては、やはり大きな時代的な背景というものを感ずるわけでございまして、かねがね申しますように、大企業中小企業の間には調和を図らなければならない幾多の問題がございます。この分野調整の問題もその重要な問題の一つだと考えます。  こういう問題を解決するにつきまして、私はときどき申すのでありますが、独占禁止法のたてまえから申しますと公正にして自由な競争が行われ、関係当事者が共存共栄できるような方式がとられることが望ましい、つまり、大企業中小企業もそれぞれの特色を生かして繁栄する、公正な競争裏に消費者のために奉仕するということが独占禁止法第一条の目的にもかなうものである、こういうように思うのでありますが、しかし、このごろの様相を考えますと、競争法のたてまえだけで重要問題を解決するということは非常にむずかしい事態が起こってまいっておるのでありまして、これは自由競争秩序を維持するための独禁法のたてまえと、それからむずかしい問題を解決するための統制法を必要とするという事態、このむずかしい接点を示すものではないかと思うのでございます。  私どもとしては、分野調整問題につきましては、大企業中小企業調整を図ることは非常に重要なことでございますから、それを立法化いたすに当たりましては、できるだけ公正な競争を制限しないで消費者利益を損なうことのないような内容が望ましいということをかねがね申し上げてまいった次第でありますが、今回の政府案は各方面の意見を集めた中小企業政策審議会の答申に基づいて作成されたものでありますけれども国会におきましての御審議の結果の御意見の一致するところが定められまするならば、その結果を私どもは尊重することは申すまでもないところと考えておる次第でございます。
  68. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、きょうは各省にも関係局の人たちにもそれぞれおいでを願っておるわけですが、通産大臣質問をいたします。  公正取引委員長は、いまお話しのように、それぞれの調整の中で本法が成立された場合は虚心に協力をするという形でございますが、いわゆる中小企業問題は通産省中小企業庁だけじゃなくて、政府間に非常に広範に関係を持つ省庁が多いわけでございますが、それらと十分折衝せられ、連絡は十分行われ、本法が施行された場合いささかのトラブルもなく完全に執行されるような状況下になっていると私は判断するのですが、そう理解していいかどうか、審議に入る前にまずこの点の大臣の見解を承っておきたいと思います。
  69. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおり、各業態の中に大企業中小企業はあるわけでございまして、先生の御質問は、建設省の関係におきましても大企業と地元、零細な中小企業がある、あるいはまた農林省関係におきましても、水産関係におきまして大企業中小企業があるというふうな意味であろうと存じますが、さような面におきましては、この分野調整法をお出しいたしますにつきましては、もちろん関係各省庁合意のもとに、また御提案だけではなく、今後も関係各省庁みんながこれの円滑な執行につきまして責任を持つ次第でございます。
  70. 佐野進

    ○佐野(進)委員 きょうは私は一時間三十分の予定で質問することになっておりましたが、本会議がおくれた関係上時間が大幅に短縮いたしましたので、総括的な面についてなお聞きたい点がたくさんあるわけでございますが、これは各個別の問題に入りましたときにそれぞれ聞くことにいたしまして、質問をはしょって進んでまいりたいと思います。  そこで、まず私はこの法律案の内容についていろいろ検討いたしたのでありますけれども、幾つか大きく目につく点があるわけであります。なお、その目につく点の中で、原則的な面についてはけさほど中村委員の方から質問がなされて、それぞれ答弁が行われておりますので、私はいま少しく突っ込んだ形の中でこの問題についての質疑を続けていきたいと思います。  まず、第一に、私どもはこの法律案をいまでも分野法ないし分野確保法、あるいは分野調整法という言葉を使って呼んでおるわけでありますが、この法案のどこを見ても「分野」という字がほとんどと言っていいほど使われていないわけであります。そして、また、表題におきましても、「事業活動調整」という形の中において書かれておりますが、分野調整という言葉も使われていないわけであります。  分野調整法あるいは分野法分野確保法というような文字がなぜに意識的という形の中において消されているのか、これは原則的な問題でありますので、この点についての見解を明らかにしていただきたいと思います。
  71. 小松国男

    岸田政府委員 いわゆる分野調整という用語は、特定事業分野分野ぐるみ中小企業確保するという発想のもとでの調整というようにとられるおそれがあるのではないかということが私ども部内で議論しておりましたときの問題になった点でございます。  御承知のとおり、一般的には、特定の業種をとってみましても、その中には大企業中小企業が併存いたしておる状況でございます。その意味で、特定事業分野中小企業向けの特別の領域であるというふうな誤解を避ける方が適切ではないかという意味で、立法段階でいろいろ検討いたしました際に分野調整という用語を省略した次第でございます。  なお、途中の段階におきまして、「分野をめぐる紛争調整」というような一段下がった言い方はないかという御議論もございましたが、そうなりますと、むしろ大企業中小企業がお互いにかみ合っておる中で政府が横から見ていて行司役をするというような姿勢にとられかねないという点もございまして、ずいぶんいろいろな議論をいたしましたが、最終的にはいま御提案申しておりますように、中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律という大変長い名前になったわけでございます。  ごらんをいただきますとおわかりになりますとおり、中小企業基本法第十九条で定めております中小企業の「事業活動機会の適正な確保」という基本精神を何とかこの表題の中にもうたい込みたい、また、そういう基本精神のもとに中小企業経営の安定ないし発展を図るために大企業者事業活動調整するんだということを何とか表題自身の中にもうたいたいという、こういったねらいといいますか、思いがこの表題の中に込められておるというふうに御理解をいただきたいと思っておるところでございます。
  72. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの答弁では満足できないのです。たとえば自民党の案でも各党の案でも、いわゆる世論という形の中では、一つ分野の中におけるところの問題点としてこれをとらえ、それを確保するのか調整するのかということが問題だったわけです。この表題の中では「調整」という文字が残って「分野」という字が消えているわけです。したがって、だれが考えても、「調整」だけ残っているという形は、分野確保法という形の名称よりも分野調整するという形になる。そして、さらに、分野調整から「分野」だけが抜かれて「調整」だけが残った。  したがって、この場合においてはっきりしておかなければならないことは、この問題であなたが言われるのは、この「分野」を抜いた意味は、本質的に中小企業者の立場を守るという形の中において抜いたということである。しかし、そうではなくして、「分野」という文字をこの際残しておけば、情勢の変化に応じては、相変わらず大企業がその力に任せて出た場合においても、この法律のたてまえは調整をするんだという形の中で、公平だという形の中で大企業者の立場を守ることもできる、その余地を残しておいたんだというようにも解釈できるわけであります。  したがって、この際は速記録なりその他の中ではっきりすると同時に、少なくとも本法のどこかの部面に「分野」という名を記入することによって、あなたがいま言われることの意味を強調した形の中で、分野を守っている中小企業の立場に立ってこの法律があるのだ、いわゆる行司役としての立場よりも中小企業者の立場に立つ法律だということを明確にしておくべきではないかと考えるのですが、その点はいかがですか。
  73. 小松国男

    岸田政府委員 私どもも、各産業活動の中で中小企業がどういう地位を占め、どういう役割りを果たしているかということをいろいろ勉強いたしてみました。過去数年の実績をとらえてみますと、たとえば中小企業が出荷比率の中で七割以上を占めております業種、これが三百二十余りございます。それから逆に大企業が七割以上を占めておるという業種が七十余りございます。そして、その両方にも属しない業種が百三十余りといった実情にあるわけでございます。しかも、その業種の中身が時の経過とともにかなり変わっておるという実態が別途の調査で明らかになっております。そういたしますと、この業種は中小企業のための特別の業種であるというようなことは経済の実態から言ってなかなか言いにくいということが背景にありまして、先ほど申しましたように、中小企業のための分野というような言葉をあえて避けたという経緯でございます。  ただ、そうは申しましても、この法律を立案する趣旨が、何とかして中小企業者の方々に本当に安心して仕事をしていただけるようにするということを基本的な目的としておりますことはもうお話し申し上げるまでもないことでございまして、まさにそういう気持ちがあればこそ、「中小企業事業活動機会確保のための」ということを、大変長うございますが題名の中に積極的にうたい込んだわけでございます。  したがいまして、その題名自体から、私どもが何とかして中小企業事業機会を守ろうという気持ちであることをお察しいただきたいと思います。
  74. 佐野進

    ○佐野(進)委員 察するにしても、表現が表現でありますから後で誤解を生むといけませんので、私はこの条文その他の中に「分野」の字を残したいという希望を強く持ち、それらについてさらに積極的に努力してみたいということだけを申し上げておきたいと思うのであります。  次に、この法律を全体として見てまいりますと、第一条に「大企業者の大規模な」とあって、以下、「大企業者」とか「大規模な」という形の名前が相当多く出ているわけです。各項目にほとんど、「大企業者の大規模な」とか、あるいは「同種の事業につき大規模な」とか、いわゆる「大規模な」という表現があるが、これはそういう表現の中で大企業者の立場を守っておるのではないか。  こういうような新たに進出することを計画した大企業が単なる大規模企業者であるという形の中で、その範囲はどこが大規模なのか。たとえば新日鉄であるとか、麒麟麦酒であるとか、いま言われておるような企業の独占的な状態あるいは寡占的な状況にある大企業が、その企業の行う意味におけるところの「大規模な」ということになりますれば、相当程度大きな影響を与えることになりますから世の中の批判にさらされますが、それ程度には大きくなく、しかしながら中小企業者にとっては非常に大きなシェアを占めておる企業があるわけであります。そしてその企業が大規模な事業をやるといたしましても、一般的な認識からいたしますればそう大規模なものではない。しかし、その大規模ではないけれども、その業種にとっては非常に大きな打撃を与えるものであるというような解釈に逢着する場合がたくさんあるわけであります。したがって、これをどう理解するか、これをどう判断するかということは大変むずかしい問題になってくるわけでありまして、その問題の結論をつけるまででも大変時間がかかり、中小企業者に影響を与える大企業者の大規模企業の進出は、この法文をそのまま解釈するとどんどん進められていく可能性を持っておるわけです。  したがって、この「大企業者の大規模な」というような形をそのままこの法文の中で生かすということになると、先ほど申し上げましたとおり非常に大きな危険性がある。しかも、この危険性は、この本法の根本的な理念に反する形の中で大企業者が大規模な進出を図っていくことに役立つような、そういうような形の中で理解される可能性があると思うのであります。  したがって、この大企業者というものの「大規模な」というのを、むしろ、新たにその企業を計画し、それを行うという形の中に問題が発生する可能性が出たときにそれぞれの措置を講ずることのできるような状況にしておくことが最も望ましいのではないかと私は判断するわけですが、この点について大臣に、と言いたいのでございますが、長官、ひとつ答弁をしてください。原則的な問題ですから本当は大臣に答えていただきたいのですが……。
  75. 小松国男

    岸田政府委員 この法律で使っております「大企業者の大規模な事業の開始又は事業の大規模な拡大」といいますのは、大企業が設備の新増設等を行い、それによって従来の事業規模を一段と拡大し、それによって需給バランスが大きく崩れるというような事業活動を表現したものでございますが、実は、この表現に至ります前に、一体どういう事業の開始または拡大を対象とするかということについていろいろなケースを挙げまして、これは入るこれは入らないというように議論を詰めてまいったわけでございます。たとえば設備はそのままで稼働率だけ上がった場合はどうであるかとか、あるいは一時休業してもう一度再開した場合はどうであるかとか、こういったケースについて厳密に書きますと、一つ一つ、これはいいこれは悪いというようなことを条文に書かなければならないことになるかとも思いますが、それではかえって千差万別な大企業の進出について画一的な処理になり、実情に沿わないおそれがある、細かい議論はいろいろあるにしても、やはりある程度の簡潔な表現でくくった方が機動的に対応できるであろうという意味で、表現を苦心をいたしまして、「大規模な」という字句に整理をいたしたという経緯でございます。  ただ、大企業の進出によって中小企業がいろいろな打撃を受ける、それが日本経済全体のためにも問題であるし、また個々の中小企業にとっては大変であるといった意味合いからこの立法ができております経緯からいたしますと、この辺は業種、業態に応じてきめ細かい運用が可能になるような表現という方が運用としてはやはりはるかに実情に沿えるのではないかと感じておるところでございます。
  76. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間がありませんから余り具体的な例はそれぞれ申し上げることはできませんが、大臣長官、こういうことがあるんですね。  たとえばユニチカが、栃木県のある一つの工場が遊休施設ができたからといってそこの工場の一部にもやしの設備をつくった。工場のほんの一部です。日本全国に散在する工場の施設の中のほんの一部の工場に一つの施設をつくった。ところが、それは、全関東に供給するいままでの何十社からの業者が生活をしておった、その業者の供給するシェアよりもその工場でつくり上げるもやしの量の方が大きいということになるんですね。ユニチカにとっては千分の一か百分の一かの施設であっても、その地域に散在する関東全域のもやし業者について言えば死命を制する施設になっていくんですね。このようなことはこれからどんどん起こるわけですよ。そういうときに、これは本当に大規模じゃないんですよ。本当に小規模なんです。その大企業者にとってはほんのちっちゃな事例なんです。ところが、その地域にとってはこれは死命を制するほどの大打撃を与えるのです。これは「大企業者の大規模な」という形の中においては、このようなことはいわゆる大規模な進出じゃないわけですよ。そういうことをわれわれは心配しているわけですよ。したがって、そういうことが今日置かれている関係業界の中においてはもう多々あるわけですよ。だから、私は、この「大規模な」というようなことよりも、むしろ「新たな」という形のことの方がより適切だと判断するわけです。これはまた後で問題にするといたしまして、さらに追及し、質問をしてみたいと思うのであります。  これと同じで、今回の法律の柱の中で最も重要な意味を持つ、いわゆる事前調査の問題の中でもこういうことが言われておるんです。第五条第一項の中に「拡大の時期、規模その他の主務省令で定める事項のうち自ら調査することが困難であるものについて調査するよう申し出ることができる。」となっているんです。「その他の主務省令で定める事項のうち」の「定める事項」というのは大変ですね。そのうちで、「自ら調査することが困難であるものについて」中小企業団体はこれを申し出ることができるという形になっているんですね。  そういうような形に限定されていった場合、たとえばいまのような形の中でもやし工場ができ上がり、これが全県的に影響を与えるというようなことになった場合にどうするのかということについては、それはもう死活の問題ですからやりますが、全国的にぼろぼろじわじわと出てきたというような場合においては、そういうことがわからないうちに具体的な影響を与えるような状況になってくる。そして、そのような具体的な影響を与えるような状況になったときに、みずからその調査をすることが困難であると判断する状況まで待たなければならない。あるいはみずから判断できなくとも、そのようなことは全国的な動きでありますから、政府なり都道府県なり知事なりはその状況を把握することができるわけです。  そういったときに都道府県、地方公共団体なり政府みずからがその調査をするということの方がより適切ではないかと思うわけですね。それをやらないということは、みずからその責任を逃れ、特にこの段階の中で地方公共団体が何らそれらの問題について関与することができ得ない条文であるということは、今日大規模小売店舗法のその地方における条例化が進められつつあるほど地方行政はこれらの問題に対して深刻に関係しておる。その状況の中でこういうように枠をはめているということは、前項とも関連いたしますけれども、きわめて不適切な条文であると判断せざるを得ないのでありまするが、大臣、いかがでしょうか。  同時に、また、自治省の方がおいでになっておられると思いますが、地方公共団体がこの事前チェックの段階におけるところの調査等の問題に直接関係されないで地方行政が混乱する例もたくさんあるわけでございまするが、そのような影響を及ぼすような事実があったときに、こういう問題について都道府県知事に主務大臣が報告をする、連絡をとる、そしてその報告、連絡に伴い、これに対して「自ら調査することが困難であるもの」以外を含めて調査をされることの方がより適切ではないかと判断いたしますが、自治省の御見解はいかがでありますか。  この二点について説明をしてください。
  77. 田中龍夫

    田中国務大臣 原則の問題について、また特に本法の重大な「大企業者」あるいはまた「大規模」あるいは「調査」の問題でございますが、そういうふうに先生がいろいろとお考えになりましても、どうもこれは相対的な問題であったり、主観的な問題であったり、なかなかむずかしい、——かようなことが審議会の審議の中においてもいろいろ論じられたのだろうと存ずる次第でございますが、私は一緒に審議したこともないのでございまして、政府委員からかわってお答えをいたさせます。
  78. 小松国男

    岸田政府委員 問題をなるべく早くキャッチして解決のための手を打つということが一番肝要でございます。その意味におきまして、通産省調整官を設け、また、モニターを設けていろいろ実情の調査に当たっておりますが、中小企業者の方方におかれましても、やはり問題があったときにはすぐ解決のための動作に移っていただく必要がございます。  そういった際に、中小企業団体みずからでは力の及ばないところを何とか政府の力をもってカバーし、それによって問題解決のための動作を早く進めるという意味合いからこの条文が特に設けられたわけでございまして、その立法趣旨からいたしまして、これを特に制限的に使うという気持ちはございません。
  79. 佐野進

    ○佐野(進)委員 中小企業政策審議会の答申の際において盛られていなかった事項が、本法が政府案として作成される過程の中で盛り込まれたという努力については、冒頭申し上げたとおり私も評価をしているわけです。評価をしておりますが、いまも申し上げましたとおり、この条文そのままを読みますと、骨抜きというか、実際上さてこれを具体的に発動することができる条件としては非常に大きな歯どめがかかっているのではないかという点について聞いたわけであります。  特に、都道府県知事の問題については——都道府県知事だけでなく市町村長も含めますけれども、その権限、その置かれている今日の状況下において、地方自治体がこれら中小企業者関係するところが非常に多いわけでございますが、自治省の見解をこの際聞いておきたいと思います。
  80. 鹿児島重治

    ○鹿児島説明員 お答えいたします。  地元の産業を育成するという地方公共団体の立場をお考えいただきました御指摘、まことにごもっともだと思っておりますが、私ども自治省といたしましては、この法案のそれぞれの規定にそういう都道府県知事の権限を規定するということにつきまして、若干技術的になって恐縮でございますが、いささか疑問を持っております。と申しますのは、この五条の調査の申し出にいたしましても、あるいは七条の調整につきましての勧告の規定にいたしましても、それぞれこれは国として大規模調整についての規定でございまして、地方公共団体の立場におきまして自主的にそれぞれ主務大臣なりあるいは審議会なりに意見を申し出ることができるということでございますれば、あえて法律の規定をまつまでもなく、地方団体はそのように行動をするであろうということを私どもは期待いたしておるわけでございます。
  81. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、自治省にお伺いしますが、第五条の事前調査の申し出をしたいと思ったときは中小企業団体と同じように申し出ができる、審議会その他の条文の中でやれるというように判断されておる、こういうぐあいに私ども理解してよろしゅうございますか。この条文の中に入っていなくとも条文と同じ効果は出せるということですね。
  82. 鹿児島重治

    ○鹿児島説明員 御指摘のとおりでございます。
  83. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、そういうように理解をいたしまして、私は、この第五条の第一項のうちの「自ら調査することが困難であるもの」というのは、この説明その他の状況から言いまして不必要であるという印象を受けておるということを申し添えて、次に進みたいと思います。  次は、第七条であります。これは「調整勧告」の問題でありますが、この項で、これは第五条と関係があるわけでございますが、主務大臣は、前条第一項の規定による申し出があった場合にあって、同項に規定する事態が生ずるおそれがあり、かつ当該申し出をした中小企業団体及び当該申し出に係る大企業者の間において、当該事態の発生を回避することが困難であると認められる場合において云々というようなことになっておるわけでありますが、この第七条の調整勧告は中小企業団体の申し出があった場合にのみ発令される、この条項は主務大臣の調査の結果に基づいてみずから判断して勧告することができる、こういうことがより適切ではないかと私は思うのでありますが、長官、どうですか。
  84. 小松国男

    岸田政府委員 申し出の当事者を中小企業団体といたしました背景としましては、一つは、個々の中小企業者の方々はそれぞれさまざまな立場を持っておられまして、一つの大企業の進出についても意見が分かれてくる。それらについて、やはり中小企業団体の中で思想統一をして問題を挙げていただくということが実際問題としては非常に事務を促進することになるわけでございますし、また、この進出に伴う問題を解決しますときにも、個々の中小企業の方々と御相談してすべての方の納得をいただくということでは解決のための時間が幾らあっても足りないということが懸念されますので、中小企業団体の方を一つの当事者として、その方々で思想統一をしてもらったことを背景に事を進めるというのが一番解決の早道ではないかと思っておるところでございます。  なお、また、中小企業自身も一方で大企業に対する調整を行うと同時に、中小企業自身も近代化、合理化を進めていかなければならないわけでございますが、そういった近代化、合理化の指導に当たるのも中小企業団体でございます。こういった意味におきまして、中小企業団体というものを表に立てて処理する方法をこの法律の中で取り入れたわけでございます。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、それが悪いと言っているんじゃないんですよ。そのことはそれでよろしい。ただ、しかし、それに限定するゆえに、たとえば中小企業団体の中で一人の特定の人が意図的にその結論に対して反対的な行動をとることによって大多数の構成者がその意思決定を行うことができ得ず、その申し出ができ得ないとしたならば、そのことによって発生する影響はきわめて深刻であろうと思うのであります。たとえば大企業の回し者がいた、それが何人か意識的にその行動に入った、しかし、全体の中小企業者は、相当数の者は、そのことによってどうにもならない状況、申し出をすることができないという状況、団体の決議を行うことができないという状況、その中においてそのような事態がいたずらに悪い方向に遷延されるということになったならば、これは大変なことだと思うのです。  だから、あなたの言われることはそれでいいのです。しかし、その場合においても、それを使うという形の中においてこの条項そのものは不必要ではないか、むしろ弊害規定の一つになるのではないか、こういうような感じがいたしますので、その点について私はお尋ねをしておるわけです。
  86. 小松国男

    岸田政府委員 先ほど申しましたように、実務上の観点から、個々の、何百あるか何千あるか、関係中小企業の方々の納得を得るということはかえって時間を要するという点が私どもとしては一番ひっかかりになったわけでございますが、さりとて団体で処理をするというときに、いま御懸念のようなことが起こってはまた問題でございます。  私どもは、団体の意思決定の方式につきましてはそれぞれの自主的なルールによって処理をされるというふうに理解をいたしております。必ずしもこういう総会の決議を経なければならないというようなかたいことを申すつもりはございません。
  87. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それはあなたのいまの見解ですが、法律条文として残るわけですから、条文として残ったものについてもし間違いがあれば、これはまた法律的に係争になるわけでございますから、そのようなことについてはできる限り将来に問題を残さないようにする必要があるのではないかと申し上げているわけです。  したがって、この条項についてはこれまた後に問題にしたいと思うわけでございますが、同じくこの条項で問題になるのは、当事者間で事態の発生を回避することが困難である場合に限定をしているわけです。同じことなんですね。したがって、このことについてはあなたの答弁がありますから、時間の関係もございますので長くは質問いたしませんが、いまの条項の持つ意味は非常に多くの危険性と問題性を持つということを指摘しておきたいと思います。  次に、第七条第三項ですが、これは先ほども議論がありましたが、具体的な問題として私は質問してみたいと思うのでございますけれども、勧告に従わない場合にその旨を公表するというのですが、公表だけで勧告に従わせるような効果を上げることはできないということは、それだけで効果があらわれるならだれもそんなに罰則をつくったり、ほかの刑法においてのそれぞれの条項が出現する必要はないわけです。しかも、倫理を外れた大企業の行為によって今日中小企業者が不測の困難な状況の中にあることはあなたもよく知っておられることです。したがって、あなたが中小企業者のためにこの法律をつくっているんだと考えられたならば、できる限り中小企業者が守られるような形の中で、しかもこの法律の発動によって大企業の横暴なる行為がいささかなりとも、心理的であってもよろしいが、なお具体的にとどめられるようにする幅をできるだけ多くする必要があるのではないか。これはもう常識だと思うのですね。  そういう場合において、けさほども質問がございましたけれども、公表程度でなくして勧告、そして勧告に従わせることができない場合は罰則、制裁規定を適用する、そのために勧告、命令というような形の中で処理されるというようにしたらどうか。これはもうあなたは答弁はできないだろうということを前提にしておるわけですが、しかし、そういうような議論がなかったのかあったのか、議論があったけれどもやむを得ずこういうようなことになったのかどうか、その点くらいはここで適切な答弁をしておいてください。     〔中島(源)委員長代理退席、山崎(拓)     委員長代理着席〕
  88. 小松国男

    岸田政府委員 私ども、大企業の進出問題についてはたくさんのケースを手がけまして、その都度苦労をしてまいりましたが、私はいま振り返ってみまして、過去の行政指導はやはりそれなりの成果を上げてきたのではないかと思っております。一つのケースにつきまして大企業中小企業の実情を話し、そしてある程度の自制を求めるという場合に、大企業の方々は大体その意を了としてしかるべき調整に応じてもらったと思っております。  具体的なケースとして理科医ガラスのケースというのがよく問題になるわけでございますが、確かに第一回目の調整に際しましてはかなりルーズな調整でございましたが、第二回目の調整以降は約束は守られておりますし、それによって特にいま大きな支障が出ておるという現実ではないと思います。  また、軽印刷の問題につきましても、当初直営店舗の解釈をめぐりましてトラブルがございました。しかし、それも一応落着を見ました後は、大企業の側におきましては、約束をしたものは一応守るという体制で今日まで至っておるかと思っております。  もちろん、これからもいろいろな問題が出てまいります。しかし、そういうような場合に対してどういうルールで対処するかということは審議会でも非常に議論の的になった点でございます。率直に申しますと、命令、罰則という強い規制を望む声が私どもの耳にも入っておりますものの、もし命令、罰則というようなことになりますと、一つは競争政策上のいろいろむずかしい理念の問題もございますが、正直に申しますと、命令を出すということになりますと発動要件を非常に限定的に書かざるを得ないと、法律上そういうふうに私ども理解をいたしておりますし、さらに、その前提となる勧告自体の発動要件も制約をされてきます。  したがって、私どもは、これからいろいろのケースが起こってきます場合に、余り限定的な勧告、命令というやり方よりは、むしろ広く弾力的な活用のできる勧告という方式の方が事態をおさめるためには機動的に、また効果的に使えるのではないかという気持ちでいまおるところでございます。こういった点がまた同時に審議会の議論におけるおおむねの方向ではないかと理解をいたしております。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その審議会におけるおおむねの議論がわれわれは不満だということを前提にしながら、あなたはどうなのかということをいま聞いているわけですよ。したがって、いまこの問題を審議する場合において、与野党を含めてだれもが、第三項の「勧告」と「その旨を公表する」ということだけではだめだ。勧告に従うべきものを命令し、命令に従わなかった場合においては適当な罰則を適用する。同時に、このことは第九条の「一時停止勧告」についても同様の措置を講ずるべきだ。これでは経過を報告するということだけにしかとどまらないと思うのです  この問題については、この法律に魂を入れる、この法律が真に中小企業者のためになるというような形の中においては欠くことのできないものである。このことだけは指摘し、このことについてはわれわれとしては強い決意を持って対応せざるを得ないということを申し上げておきたいと思うのであります。  そして、また、同時に、いまお話がございましたけれども、かつての行政指導それなりの効果を上げたとして幾つかの事例を報告なされましたが、私どももその点についてはそれぞれの問題に直接関係し、あるいは間接的に関係しておりますので、あなた以上にその内容については知っておる一人だと私は自負をいたしております。したがって、それらの問題が不備であるという形の中でそれぞれの人たちが促進協議会をつくり、分野法をつくろうという運動の中心になっていま努力をされておるわけです。  そこで、関係者の方々にも御出席願っておりますから、一つ二つ具体的な例について質問してみたいと思いますが、生活産業局の担当しておる問題といたしましては、いわゆる本州製紙のニューパックですか、工場がつくられるという形の中で非常に深刻な問題となり、なお今日解決され得ないという形の中で、問題は、大企業が虎視たんたんとして進出の機会をうかがっているということの中で非常にむずかしい状況になっておるということです。さらに、産政局所管の中においては、三越が葬祭部門を常設する形の中で、小規模企業のこれらの方々の中では、大企業として特に日本に冠たる名を持っている三越のような大百貨店がそのようなことを行いつつあるということについてどういう経過になっておるのか。  もしこの法律が成立した場合においては、それらの人々が再びそのような意欲を持ってそれぞれに進出してこようというがごときことはもう断じてなくなってしまう。特に命令、罰則の規定がここに加わるならば、そのことだけにおいて、もはや、そういう弱者をいじめる形の中でみずからだけが生き延びればいいという大企業者のその考え方はなくなってしまう。  そう判断をされますので、行政指導を適用しつつあるこの二業種について、その実情を簡潔でよろしゅうございますから報告をしておいていただきたいと思います。
  90. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  新潟におきますところの本州ニューパックの進出に関する問題でございますが、本州ニューパック、本州製紙の系統の会社でございますが、以前から新潟はいいマーケットであるというふうなことから進出の意図があったわけでございますが、たまたま新潟県白根市から誘致がございまして、それを機会に白根市に、新潟進出を企画いたしたわけでございます。当時、四十九年でございますが、本州ニューパックの新潟進出計画が具体化いたしました段階で地元業者及び団体等が進出反対の意向を表明いたしまして、各方面へ陳情があったというふうに承知いたしております。  これに対しまして、私ども関係者間でのお話し合いということを勧めてまいったわけでございますが、県の方とされましても行政指導によりまして四十九年十一月に調停案を提示されまして、地元業者、団体等に打診をされたわけでございますが、地元団体等は回答を保留されたままというふうな状態に相なっておるわけでございます。  ところで、現状につきまして見まするに、現在のところ、その後工場新設計画というものは一とんざを来したといいますか、一応中断されたままになっておりまして、その後の動きはない、こういう状態に相なっております。  以上、御報告申し上げます。
  91. 山口和男

    ○山口政府委員 先生の御指摘の三越の葬祭業進出に関しましては、昨年の五月に三越が葬祭業に進出いたしまして、全葬連の方からこれは葬祭業を圧迫するという異議がございまして、当事者間で話し合いを行いましたが、直ちに結論を得るに至らなかったものでございますから、私どもの商務課の方に仲介、あっせんの依頼がございまして、昨年十月に両者一緒に立ち合いましてお話し合いをいたしました結果、両者間で、三越は三越日本橋本店以外のところでは当分の間葬祭業を行わないという形で合意が成立いたしております。  以上の状況でございます。
  92. 佐野進

    ○佐野(進)委員 当分の間やらないわけですから、いつやるかわからないわけです。したがって、法律ができれば当分の間が永久にということになることが当然であろうと思いますので、法律の持つ意味、そして勧告、命令の持つ意味、罰則適用の持つ意味は非常に重要であるということを私は指摘しておきたいと思います。  そこで、私は、第七条第四項の問題について、この法律を実施するに当たり非常に重要な問題であると考えますので聞いておきたいと思います。  建設省、農林省、厚生省はそれぞれ中小企業団体を数多く抱えておられるわけであります。そして、紛争の起こりやすい業種を持っておるわけであります。そういたしますと、当然それぞれの省庁においてこの法律の適用が行われるという形になるわけでございますが、それぞれの省庁におきましては、この第四項の「主務大臣は、第一項の規定による勧告をするとき又はしないこととするときは、あらかじめ、通商産業大臣の意見を聴かなければならない。」という、いわゆる中小企業分野の問題につきましては——この法律は「分野」ではございませんが、この法律の適用につきましては、通商産業大臣の意見を聞いた上でその措置をなされるということになるわけでございますが、それがいまのこの法律を適用する際、通商産業大臣の意見を聞かずともそれができるということと関連いたしまして不都合があるのかないのか。そして、いままで行ってこられたところの目下紛争中の事件に対して、通商産業大臣にその問題をお聞きになるときにどのような経路をもってお聞きにならんとするのか、その点をまずお聞きしておきたいと思います。時間がありませんから簡単でよろしいです。
  93. 江上幸夫

    ○江上説明員 農林関連業種のいわゆる分野調整問題につきましては、主務大臣としての農林大臣が農林関連中小企業事業活動機会の適正な確保の観点から責任を持って本法の施行に当たることとしております。  法第七条の規定に基づき「調整勧告」をするとき、またはしないこととするときに通産大臣の意見を聞くことにつきましては、法の運用が業種別に偏することなく中小企業事業活動機会の適正な確保が図られるというような観点から行われるものというふうに解しております。
  94. 中川澄人

    ○中川説明員 主務大臣といたしましては審議会の意見を聞くというような手続を経て勧告いたすわけでございまして、基本的な問題について通産大臣の意見をお聞きするというふうには理解いたしておりません。
  95. 河内莊治

    ○河内説明員 御指摘の点でございますが、中小企業庁と十分密接な連絡をとることによりまして、法の運用について業種別に偏ることなく実施するための趣旨ということでございます。  そういうことでございますので、十分連絡をとってまいりたい、かように考えております。
  96. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣はこの問題についてはどのような手続をおとりになるつもりですか。長官でもいいです。
  97. 小松国男

    岸田政府委員 これは主務大臣におかれまして具体的な勧告をすること……
  98. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いや、通産省としてどうするかということです。あなたが取り扱うのか、直接大臣が取り扱うのか。
  99. 小松国男

    岸田政府委員 実務的には、この条文中小企業をお預かりする通産大臣が意見を聞くというふうに理解をいたしております。
  100. 佐野進

    ○佐野(進)委員 通産大臣、そうするとこれは通産省が取り扱うのか、実際上の事務としては中小企業庁が取り扱うのか、どうなんですか。これは将来の問題としては重要な問題ですよ。どっちかということだけでいいです。
  101. 田中龍夫

    田中国務大臣 通産大臣でございましょうね。
  102. 佐野進

    ○佐野(進)委員 あなたが取り扱うのですか。中小企業庁じゃないですね。
  103. 田中龍夫

    田中国務大臣 現実には中小企業庁に書類が行くでしょうけれども、受けるのは通産大臣であろうと存じます。
  104. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから困っちゃうのですよね。だから、私ども理解としては、通産省の中に中小企業庁があるけれども中小企業問題については中小企業庁が担当しているから、「主務大臣」ということは事務的には中小企業庁長官と読みかえていいかどうかということなんですよ。いいならいい、悪いなら悪いと言ってくれればいいのです。
  105. 小松国男

    岸田政府委員 所掌事務からいたしますと中小企業庁において取り扱うということになろうと思います。
  106. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間がないので、その点についてはその程度にしておきたいと思います。  そうすると、私は、この第七条の中でこれから考え方をちょっと申し述べて、大臣ないし中小企業庁長官の御見解を聞いておきたいと思うのでありますが、この問題は、いまお話しのように、各省のそれぞれの主務大臣の立場は明らかにされておるのですが、地方公共団体の立場というものが明らかにされていないわけです。そういうような問題についてどうお考えになるかということと、主務大臣がそれぞれの問題を行うときに中小企業庁の方に連絡をとりますけれども、第五条の「調査」を行った結果、「それぞれの主務大臣が必要とするときは第一項の措置を講ずることができる」というようなことはどうなのか。これは長官、あなたが実務的なやり方をするということでありますから、その点を聞いておきたいと思います。  それから、第二番目は、「主務大臣は第一項の措置を講ずるため、必要と認めるときはあらかじめ都道府県知事の意見を聞くことができる」ということはどうか。これは要するにいまの「調整勧告」の問題に関して、その措置を行う際におけるところの主務大臣と都道府県知事の立場をどう位置づけるかということについて聞いておるわけであります。  さらに、その次は、「主務大臣は第一項の勧告及び第三項の命令」これは命令になった場合ですが、「命令を行ったときは、関係業者及び事業者団体にその内容を通知させなければならない」これは「公表」でもよろしいわけですが、いまのこの条文から言えば、公表を行ったときは関係業者及び事業者団体にその内容を通知させなければならない。このことは「調整勧告」というこの第七条の持つ意味が非常に重要な形の中において実施される条項であります。  いま急にここで質問したので、それはいいですとか悪いですと言えないでしょうけれども・検討に値する余地があるのかないのか、その程度のことについてはひとつ御見解を示していただきたい。
  107. 田中龍夫

    田中国務大臣 私も、この条文の整理に当たりましての法制局との交渉を存じ上げないのでありますが、一応考えられますことは、たとえば事前調査なんかの場合、最後の現地におけるいろいろな円満な調整をお願いしますには、どうしても県知事あたりに収拾の労をとってもらわないとできないのじゃないかということでありまして、私自身が知事をやっておりました体験に徴しましても、本省の大臣がどうこうという名目にはなっており、また、長官がおられますけれども、現地におけるいろいろな円満な処理というものは、地元の公共団体というふうに表現されておりますけれども、やはり県知事等々に当然収拾の労をとってもらうものだと心得ております。これは誤っておるかもしれませんが……。
  108. 佐野進

    ○佐野(進)委員 自治省、どうですか。
  109. 鹿児島重治

    ○鹿児島説明員 この法案の第七条の規定につきましては、私ども関係省庁間の事務の調整の規定というぐあいに理解いたしております。したがいまして、地元の公益を代表するという形で地方公共団体の長が関係機関あるいは審議会等に意見を表明する機会は十分にあり得るものと考えております。
  110. 小松国男

    岸田政府委員 問題によりましては、地方ごとの特殊な事情を頭に入れて調整に当たるということが必要な場合が当然あろうかと思います。     〔山崎(拓)委員長代理退席、中島(源)     委員長代理着席〕  その意味におきまして、御提案申し上げました条文の第十一条の四項という規定がございまして、「審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」という、この規定を活用してまいりたいと思っておるところでございます。
  111. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、時間がだんだん迫ってまいりましたので、なお聞くべき点がたくさんあるわけでございますから一応次に進みたいと思うのでありますけれども、第十一条に「通商産業省に、附属機関として、中小企業調整審議会を置く。」と書いてあるわけですが、法律の名称の中に「分野」という字がどこにもなくなったのですから、せめて中小企業調整審議会を分野調整審議会というような名にしておかれれば非常に首尾一貫してよろしいと私は思うのでありますが、この点についてはいかがですか。検討に値するかどうか。そう大したことないでしょう。
  112. 小松国男

    岸田政府委員 先ほど申しましたように、分野調整という言葉を私どももふだんお互いの間で使いながら、法律的に使うということになりますと先ほど申し上げましたような点がやはり引っかかりになったものでございますから、この審議会の名前におきましても「調整審議会」という名前をつけた経緯がございます。経緯だけをひとつお含みおきいただきたいと存じます。
  113. 佐野進

    ○佐野(進)委員 分野調整と言ったって、われわれはそれだけでも気に入らない。分野確保にしたいと思っているのです。ところが、分野調整から調整だけを残して分野を取ってしまったら何が残るのか。結局何も残らないじゃないですか。残ったものは悪い印象だけだ。調整だけする。行政指導よりももっと悪い感じがする。内容は別ですよ。この法律が何も残らない悪い法律だと言っているのじゃないですよ。少なくともこの条項の中に、審議会の名称の中に「分野」を入れることが、あなたが主張され、大臣が先ほどから説明されている趣旨を生かす上に最も適切だと思うわけですが、これは意見として申し上げます。  最後の条項になりますが、十三条ですが、この問題は非常に重要であり、かつ、この問題に関連して目下小売商業調整特別措置法の改正が行われようとしておるわけです。したがって、なぜこの条文の中にその条項を生かすことができないのか。たとえばこの法律の当初の要綱では、「大企業者が小売業その他他の法令の規定に基づき」云云という形の中において小売業を排除しているわけです。対象の業種として除いているわけです。にもかかわらず「(飲食店業を除く。)」と括弧書きを新たに入れたわけです。小売業を除いて飲食店業を入れる。飲食店業を入れるだけの幅があるならば、「政令で定める物品を販売する小売業を除く」と決めてなぜ悪いのか。これは十三条の条文の後で「政令で定める」云々ということが出てきておるわけでございますから、そのような「適用除外」の中で、そういう条項との関連の中であえて強調してここで「(飲食店業を除く。)」と書かれる意味が首尾一貫しない。しないどころの騒ぎじゃなく、むしろ感情的に処理されておるのではないか。  小売商業調整法を改正するというむずかしい仕事を押しつける中で、結局小売商業調整法の改正もできない、結果的に小売業を締め出してしまえ、しかし飲食店業だけはここで生かしてやろうということは、頭のいい長官としては、ちょっと頭がよ過ぎてそんな変な表現になったのじゃないか。われわれの立場からすればずいぶん弱い者いじめじゃないかということになる。  先ほど来小売業の問題については大臣その他からたびたびお話もあり、本会議におけるお話もあるわけですが、「(飲食店業を除く。)」ならば、「政令で定める物品を販売する小売業を除く」という文字を入れることがなぜできないのですか。政令で決めるのですから、後で「他の法令において講じられている業種で政令で定めるものに属する事業につき、」云々という形もありますので、それでいいのじゃないかと考えるわけですが、いかがですか。
  114. 小松国男

    岸田政府委員 考え過ぎではないかという御意見でございますが、私どもは非常に素直に考えた  つもりでございます。  この新しい立法は、製造業、卸売業、サービス業等々各般の業種についての一般的なルールを示したものでございますが、ただ、小売業につきましては、御承知のとおり大規模店舗法があり、商調法があり、別のルールがすでに先行しておる。しかも、そのルールを見ると、内容としては、地域的の調整をし、また、この法律考えております運用以上の運用も可能であるし、また、弾力的な運用も可能である。こういう道具がすでにできておることでありますから適用除外にしたという経緯でございまして、小売業をのけものにするとか取り残すというような趣旨では決してございません。
  115. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この項についてじっくり議論したいと思っておったのですが、時間がないので残念です。時間を削られたのでしようがない。  それでは、私は申し上げますが、「飲食店業」というものを特に入れた趣旨というものは、それぞれの理由があるならば、適用除外の政令の措置はそこに面接該当いたしませんが、この法律に準じた取り扱いをするお考えがあると判断してよろしいのかどうか、この点をひとつ明確にしていただきたい。簡単でいいです。
  116. 小松国男

    岸田政府委員 既存の法律があるがゆえに外したということを申し上げましたが、大規模店舗法及び小売商業調整法は一般の消費者に対する物品の販売を業としておる狭い意味での小売業を対象としておりますので、飲食店は対象といたしておりません。したがって、飲食店につきましては新しく提案しております法律でカバーするという考え方でございます。
  117. 佐野進

    ○佐野(進)委員 さすがの長官だからうまいぐあいに逃げていますが、私がここをまた追及していると時間がなくなりますからやめます。  小売商業調整法を私どもは今度の国会でこの法案と関連して同時に改正をしたい、できるならば全会一致をもって本委員会において本国会中に処理をしたいと考えておりますが、その考えについて大臣ないし長官に伺いたいのですが、この法律の一環といういまの長官答弁と関連してどのように判断されますか。
  118. 田中龍夫

    田中国務大臣 私も余り具体的なことはわからないのでありますが、この法制ができます過程において、環境衛生関係十七団体の中で三団体だけが小売になり、あとはサービスになるとかなんとかいろいろな経過がありまして、どれがサービス業であり、どれが小売になるかなかなかむずかしい限界でございまして、そういうようなことからいろいろ問題があったと思うのでございます。たとえば、すし屋はサービスでありますが、氷屋は小売でありますとか、いろいろなかなか限界のむずかしいところがあったやに聞いております。  なお、以下詳細なことは長官からお答えいたします。
  119. 小松国男

    岸田政府委員 この法律の適用除外になったために特に不利になるというような扱いでは不公平であろうと思います。商調法におきましては、先ほど申しましたようにさまざまな運用が可能である。その辺の魅力を持っておりますが、なお条文をしさいに比べてみますとこの条文と違っておる点が幾つかございます。  私どもは、当面は運用によりまして、都道府県の指導によってカバーをするというようなことを考えておるところでございます。
  120. 佐野進

    ○佐野(進)委員 いまの最後の答弁は何と言ったのですか。運用によってカバーをするということですか。
  121. 小松国男

    岸田政府委員 商調法の十五条から十八条の施行に関する新しい通達を用意いたしたいと思っております。  そこで、たとえばこの条文に入れております事前調査の規定は商調法にはないわけでございますが、都道府県においてもし調査の申し出があったときには、都道府県の行政指導としてそういうことができるものならやってほしいといった意味の内容を盛り込んではどうかと考えておるところでございます。
  122. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、この法律が施行せられた場合、この法律と同様の効果が発揮されるような措置を小売商業調整法において対応させるように努力をしていきたいというのが考え方でありますから、私どもが本国会において商調法を同時に改正するための手続をとらんとする際積極的に協力をしてくださる意思があるかないか、この点を明らかにしてください。
  123. 小松国男

    岸田政府委員 この国会の御意見におきましてそのような措置がとられることになりましたときには、私どもは尊重させていただきます。
  124. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、小売商業調整法の問題については、大臣、いまの長官答弁でよろしいですね。
  125. 田中龍夫

    田中国務大臣 結構でございます。
  126. 佐野進

    ○佐野(進)委員 通産省の態度が明らかになりましたので、私どももそのように対応してまいりたいと思います。  そこで、時間が参りましたので私は最後の要望を申し上げてみたいと思うわけでございますが、まず、第一の要望は、この法律第十五条の「十万円以下の罰金」はいかにも少な過ぎるので、いま少しくこれを上げる形の中において対応していただくべきではないかということを申し上げておきたいと思うのです。  さて冒頭に私は、中小企業庁長官、さらにはまた大臣、公正取引委員長に対して、本法案を提案されたことに対して非常に大きな感銘を受けながらこの審議に当たっているということを申し上げました。そして、一時間十五分の時間でございますので十分なる質疑を行うことはでき得ませんでしたけれども大臣長官、公取委員長その他各省の人々も私の言わんとするところは御理解なされたことと思うわけでございますが、最後に、本法の成立及びこれが施行に際して、いま不況下に苦しみ、前途に対して不安を持つ中小企業者に明るい展望を切り開くために、法律の運用に当たっては十分なる配慮をしていただきたいということを申し上げて、まだ始まったばかりで結論が出ていないので大変恐縮ですが、私の質問はこれで終わりたいと思いますので、大臣及び公取委員長長官の御見解を聞いて質問を終わりたいと思います。
  127. 田中龍夫

    田中国務大臣 私ども政府といたしましても全く先生と同じ気持ちでございまして、本法の制定によりまして皆さんに喜んでいただき、また、中小企業の今後のあり方につきましても何らかの明るい兆しができたならば望外の幸せと存じます。
  128. 澤田悌

    ○澤田政府委員 御審議の上、御意見の一致します法案が通過いたしますれば、独禁行政の立場からもそれを尊重し、また同時に独禁法の立場を尊重された運営がなされますようにこいねがいながら尊重することを申し上げる次第でございます。
  129. 小松国男

    岸田政府委員 私も着任しまして早速この問題にぶつかりまして、自来長い間自分なりに苦労もし、勉強もいたしてまいりましたが、何とかこの法律がうまく使われるように私どもとしてもできるだけの努力を払っていきたいと思います。
  130. 佐野進

    ○佐野(進)委員 質問を終わります。
  131. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 長田武士君。
  132. 長田武士

    ○長田委員 近年、中小企業事業分野への大企業の進出は、巨大な資本力を背景に直接、あるいは子会社を通し、ダンピングなどの手段を用いて中小企業企業者の存立基盤を脅かしておるわけでありますが、こういう大企業の進出は中小企業経営従業員の生活を奪うだけではなく、独占的な市場支配を一層強化し、価格のつり上げを図るなど弊害すら生じておるわけであります。  そこで、政府は、中小企業者が安心して経営に専念でき、従業員が安心して生活を守ることができ、かつ、中小企業が健全な発展をすることによって国民経済の向上により積極的な役割りを果たせるよう努力すべきでありますが、にもかかわらず、今回提出されました本法案は、中小企業者の要望をよそに業種指定を設けず、また、小売業を対象外としておる。そして大企業に対しては勧告と公表のみで命令と罰則は除外というように骨抜きの姿勢が明らかであります。  政府は、本法の提出に当たって中小企業者に対してどのような配慮をされたのか、御答弁をいただきたいのであります。大臣にお願いします。
  133. 田中龍夫

    田中国務大臣 先ほど来申しておりますように、いまや高度成長から低成長へ、構造的にも非常に胎動期にあるわけでございます。その間において中小企業にひずみがまいる。つまり、言えば、中小企業につらい状態が出てくるということにつきまして、現実にも倒産やあるいはまたいろいろなむずかしい問題があるわけでありますが、こういうふうな面におきまして、特に製造業卸業並びにサービス業につきましての大企業圧力に対してわれわれは守っていかなければならぬ。こういうふうなたてまえのもとに考えた次第でございます。
  134. 長田武士

    ○長田委員 わが党は、昭和五十年十月から十二月にかけまして中小企業の実態調査を実施いたしましたが、その結果、中小企業事業分野に対していかに大企業が進出し、また進出の動きがあったか明らかであるわけであります。たとえば製造業界においては三八%の中小企業者が大企業の進出を受け、その動きがあると答えており、非製造業では五九%、卸売業では四九%、小売業では実に六三%となっております。これに対して中小企業者が大企業と競争できる、あるいは話し合いができると答えておるのは、製造業では一七%、非製造業では三〇%、卸売業では一七%、小売業二三%と、大企業の進出に対する中小企業の対抗力といいますか、それはきわめて弱いものであります。さらに、各業種別にその進出状況を見ましても、ほとんどの業界で、過半数の中小企業者が大企業の進出があるとか、そうした動きがあると訴えておるわけであります。  こういう状況を当局はいかに認識をされておるか、また、各業界に対して実態調査をされておるかどうか、あわせて御質問をいたします。
  135. 小松国男

    岸田政府委員 私どもも、中小企業の活動分野に対しまして大企業が進出する状況をいろいろ調査いたしておるところでございます。もちろん、具体的な案件として取り上げられました場合にはその都度背景を調べ、そして中小企業への影響というものを把握して個別に対応策を立てておるわけでございますが、別途、一般的に、中小企業に対しましての大企業の進出の状況あるいはそれに対する心構え等についての調査もいたしております。  ちょうどいま手元にそのデータを持っておりませんが、そのような調査をいたしておりますことは事実でございます。
  136. 長田武士

    ○長田委員 そこで、本法は非常に長い法案名となっておりますが、要するにこの法案の目的は、中小企業基本法の中に定められました中小企業事業機会確保ということだと私は考えております。従来も政府中小企業事業機会確保ということで努力してきたと言ってきたのでありますが、まあ、それには実効が上がらなかった、したがって本法の提出となったという経緯でありますけれども、こうした経過を見ますと、大企業事業活動調整ということは、従来のようなあいまいなものでなくて、本法は中小企業事業活動機会確保に最重点が置かれなければならないと理解するわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  137. 田中龍夫

    田中国務大臣 本法の制定それ自体がただいま仰せられたとおりでありまして、そこがわれわれの期待するところでございます。
  138. 長田武士

    ○長田委員 本法第一条の「目的」では「中小企業事業活動機会を適正に確保し、」となっておりますが、この「目的」から見れば、自由競争という制度の中においても、大企業の進出の歯どめとなる何らかの業種指定がない限り本法は空洞化してしまう。まあ、それは当然だと思います。  そこで、政府中小企業事業活動機会の適正な確保について真剣に取り組もうと考えるならば、当然政令かあるいは省令で具体的な最大公約数の業種指定について線引きをすべきではないかと思いますが、この点についての大臣の御見解を伺いたいと思います。
  139. 田中龍夫

    田中国務大臣 先ほど来申し上げるように、この業種指定の問題を審議会の方では何とかできないだろうかということでいろいろと研究をされたわけでありますが、一応常識的にはそういう言葉は使いやすいのでございますが、具体的なケースになりますると、さあ一つ一つこれはどうだこれはどうだと詰めてまいりまするとなかなか業種指定というものは実は困難である等々——いまの審議会には消費者代表もおられますし、あるいはまた中小企業の代表や公益団体の代表や学者の方や評論家もおられたのでありますが、結局いろいろと審議を重ねられました末に業種指定は無理であるというのが答申となって出てまいったわけでございます。
  140. 長田武士

    ○長田委員 先ほどの御答弁を伺っていますと、業種指定については技術的に非常に問題がある。もう一面、営業の自由という問題について提起されておったわけでありますが、大企業中小企業とを全く同一次元でもって位置づける。競争させる。果たしてそれで公正な競争ができるかどうか、それが果たして公正な競争と言えるかどうか、その点はいかがでしょうか。
  141. 小松国男

    岸田政府委員 大企業特定分野に進出します場合に、大企業にとりましてはほんの余技であるといたしましても、それが中小企業にとっては非常に大きな打撃を受けるというケースはまさに間々起こり得ることでございます。こういった場合に、いままで平穏に仕事をしてきた中小企業の方々があしたからの経営に悩むというようなことになり、また、それが単に特定の方々だけではなくて、かなり広い層にまで及ぶということになりますと、これはやはり一つの社会問題でもございますし、また、同時に、国民経済的に見ましても一つの問題であろうと思っておるわけでございます。そういう場合には、一般的に言われております自由競争というような考え方あるいは営業の自由というような考え方についてもある程度のルールが必要であろうと考えておるところでございます。  そういった考え方に立ちましてこの法案を検討いたしたわけでございますが、ただ、お話の中にございますように、業種指定をしたらどうかという点につきましては、先ほど来御説明をいたしておりますようないろいろの問題がございまして、やはりこれはとるのが適当ではないかと考えた次第でございます。
  142. 長田武士

    ○長田委員 実は、午前中の答弁で、営業の自由ということに関しまして、公共の福祉のためにある程度の制限を加える必要を認めるという趣旨の発言を長官がされておりますが、このことは業種指定を取り入れるという余地もあると私は受け取っておるのですが、そこで、中小企業が営々として築いてきた事業分野が大企業の進出によって倒産しましたり、あるいはやむを得ず事業の転換を図るというところに追い込まれるわけであります。  私は、中小企業が営々として築いたその業種、この点については少なくとも業種指定は可能だと思いますが、どうでしょうか。
  143. 小松国男

    岸田政府委員 私どもも、各業種におきまして中小企業が占めておりますシェアはどうであるか、また、どういう役割りを果たしているかということを個別にいろいろ調べてみておりますが、ただ、その調べてみました結果を見ますと、特定の業種におきまして中小企業の占めるシェアというのは時々刻々かなり変わっておるということが事実でございます。  従来は大企業が主導型であったものが、数年たつと今度は中小企業の方が主導性を持ってその業界をリードするというような事例、あるいはその逆の事例、さまざまなケースが出てまいりまして、この業種こそは中小企業の聖域であるというようなことはなかなか一概に断定しにくいのではないかと思っておるところでございます。
  144. 長田武士

    ○長田委員 次に、昨日来の独禁法の質疑の中で、一方で独占禁止法改正を論議し、他方では競争制限的な分野調整法審議するのは矛盾するのではないかとの意見が出されたわけでありますが、本日の御答弁で矛盾しないという公取委員長の御発言がありましたが、これに対する大臣の御見解はいかがでしょうか。
  145. 田中龍夫

    田中国務大臣 現実の社会というものは、極端に割り切って表現をすればいろいろな結論が出ますが、具体的な面におきまして、一方に独禁法を論議し、そして公正な取引、自由な活動というものを論じながら、他方においては、現実の構造変化に対しましての大企業中小企業に対しまする圧力に対して、これを適正に行政として守っていくということを論じ、両方同時に審議いたしましても、これは当然経済現実の問題の処理でありまして、それを哲学的に割り切って矛盾であるのどうのということは行政庁としては考えるべきではない、むしろ現実の対象に対してこれに善処するというのが政府のあり方であろう、かように存じます。
  146. 長田武士

    ○長田委員 次に、近年小売業界に対する大企業の進出は非常に多いわけでありますが、大きな社会問題ともなっております。昭和五十年度の中小企業白書を見ましても、大企業の進出によって最も影響を受けておるのは小売業であるわけであります。さらに、先ほど申し上げましたわが党の実態調査においても、小売業は実に六三%ものものが大企業からの影響を受けておるという実情であります。  それなのに本法ではなぜ小売業を適用除外とされたのか、この点について御答弁をいただきます。
  147. 田中龍夫

    田中国務大臣 先ほど来申し上げますように、小売というものは不特定の顧客に対しまして物品を販売するのが小売でございまして、そういう点では、その小売の中の大きなものは大規模店舗法によります大型の小売であります。それから、商調法に規定されておりますのは小型の小売でございます。両方ともいま申し上げたように不特定の顧客に対して販売をいたす商業でございます。今度の分野調整法の対象といたしましたのは製造業と卸売業とサービス業でございまして、その点は一応一線を画しておる、かように存じます。  卸売の場合は、商業ではございまするが、問屋対特定のチェーンの小売に卸すというふうなかっこうになりますから、その点は、先生のおっしゃったように小売とどうこうという問題は——一方においては商調法におきまして小売対他の分野調整をし、他方、本法におきましては製造業、卸売業、サービス業というふうなものを行政対象にした立法をいたした、かように考えております。
  148. 長田武士

    ○長田委員 大店法あるいは商調法の運用で十分であるというような御見解でありますけれども、これが十分に機能して運用されていないために、小売業界からも本法の対象としてほしいという要望がたくさん実は参っておるのであります。  一歩譲って伺いますけれども大臣、大店法、商調法を改正する考え方はございますか。
  149. 田中龍夫

    田中国務大臣 いろいろと客観情勢の変化によりまして、大店舗法をつくりました当時の沿革、つまり百貨店法からスーパーになり、それから寄り合いの店舗になったりなんかして、だんだんと大店法の内容そのものも変化いたしておりますが、商調法の小売の方もまた客観情勢の変化がございます。さような意味におきまして、大店舗法あるいは商調法というものが現行の法律どおりでよろしいのかということに相なりますと、これは周囲の事情によりまして他日これらのものを検討いたさなければならぬでございましょうが、今回におきましては、御審議を願っておりますのは、いまの小売関係を除きました製造業、卸売業、サービス業を対象にいたしました分野におきまして御審議を賜っておる次第であります。
  150. 長田武士

    ○長田委員 過日の新聞報道によりますと、自民党では商調法の改正案を今国会提出すべきであるとの見解が出されておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
  151. 田中龍夫

    田中国務大臣 われわれは政府といたしまして本法を御提案申し上げておるようなわけでありまして、自民党がどのような動きをし、また、御意見をお持ちか、それはまた私からお答えもできませんし、私どもと立場も違うと存じます。
  152. 長田武士

    ○長田委員 それでは、大臣としては、商調法、大店法は改正すべきであるという考え方はお持ちですか、お持ちではないのですか。明確にお答え願いたいのです。
  153. 田中龍夫

    田中国務大臣 いろいろの客観情勢その他経済関係の変化によりましてそういうことが必要に相なった段階におきましては当然考えなければならぬことは、これは政府といたしましても当然の責務でございます。
  154. 長田武士

    ○長田委員 現行の商調法は機能しておると当局はお考えでしょうか。機能しておるかどうか。
  155. 小松国男

    岸田政府委員 商調法の中にはずいぶんいろいろの規定が含まれております。たとえば購買会に関する規制の問題、あるいは小売市場に関する規制の問題、さらに中小小売商とその他の者との間の紛争に関してあっせん、勧告、調停をする規定等々、さまざまな内容が含まれております。全体として機能しておるかという点は、内容がさまざまでございますから、一概にはお答えしにくいかと思っております。  その中で、購買会の規制が余り動いておりません。それから小売市場に関する規制は、各府県においてそれぞれ許可制の運用に当たっておられます。ただ、最近小売市場の内容自体が相当実質的に変わってきておるという点は一つの考慮すべき事項ではないかと思っております。  それから、勧告、あっせん、調停の規定でございますが、これはこの条文自体を動かして紛争が処理されたという事例は数が少のうございますが、いわばこの条文があることを背景にして都道府県知事が事実上行政指導のかっこうで問題を処理されたというケースはかなりの数に上っておる、かように理解いたしております。
  156. 長田武士

    ○長田委員 有効に機能していないために自民党内でも改正を主張しておると私は見ておるわけであります。  次に、大規模小売店舗のことについてお尋ねをするわけでありますが、現在各地方自治体が独自で大企業の小売店舗規制の条例化を図っておりますが、これらの実態はどうなっておるか、お示しをいただきたいと思います。
  157. 山口和男

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  現在、条例によりまして小売店舗についての調整のルールを決めておられます県が一件、市と町で八件、計九件ございます。そのほかに指導要綱というような形でそういったルールを決めておられます県が十二件、市と町で十四件、計二十六件ございます。合計いたしまして三十五件が何らかの形でそういう調整のルールを持っておられます。
  158. 長田武士

    ○長田委員 政府は三月二十六日に大店法の法律と条例との関係につきまして見解を示したわけでありますが、この見解の中にある「合理的と考えられる内容を有する」ということについて具体的に説明をしていただきたいのであります。また、合理的でないとする場合はどういう場合を指すか。この点をお願いいたします。
  159. 山口和男

    ○山口政府委員 この条例につきましての統一見解を先般お示し申し上げたわけでございますが、その中で申し上げました条例の内容が合理的であるか否かという点につきましては、やはり、その地域の実態あるいは規制の態様等を総合的に勘案いたしまして判断されるべきものと考えております。  基準面積は、大店舗法によりまして、指定都市の場合には三千平方メートル以上、その他千五百平方メートル以上というのが基準面積になっておりますが、この大店舗法の対象になっております基準面積以上の店舗については、その規制の必要性が強いというようなところから法律によって規制が設けられておるわけでございまして、そういった趣旨から見まして、一般的に規制の必要性があると考えられるような基準面積未満の店舗、ある程度それを下回っておるというような店舗につきましては、そういうものにつきまして特段の事情なくあるいは法律と同じような厳しい規制を設けるという場合、先ほど申し上げましたような地域の特殊性あるいはその他を総合勘案して合理的であるかどうかというような判断をしてみるべきものと考えております。
  160. 長田武士

    ○長田委員 いまの合理性という問題でありますけれども、地域の特殊性でございますか、それが合理性ですか。
  161. 山口和男

    ○山口政府委員 地域の特殊性によりまして、その規制の態様その他につきましていろいろなケースがあると思われます。そういった点も勘案いたしまして合理的であるのかどうかというような判断をすべきものと考えております。
  162. 長田武士

    ○長田委員 私はこの統一見解を見まして非常に納得がいかないのであります。と申しますのは、この「合理的と考えられる内容を有する条例を制定して規制を行うことは、ただちに違法であるとは言い難い」というのは、どちらともとれるというようなことでございます。このような見解を出されても実用面では効果はないのではないか、統一見解としても非常にあいまいなものではないかと考えますが、通産大臣、どうでしょうか。
  163. 田中龍夫

    田中国務大臣 法制局のその見解に対しましては、政府の統一見解でありますからやむを得ませんけれども、私どもの立場からいたしますと、やはり、政府の真意としましては今後も御相談を要する内容じゃないかと考えております。
  164. 長田武士

    ○長田委員 公正取引委員会は、地方自治体の条例の制定化についてはどのような見解をお持ちでしょうか。
  165. 澤田悌

    ○澤田政府委員 お答え申し上げます。  独禁政策上のたてまえは申すまでもございませんが、公正かつ自由な競争を促進して消費者利益を図るという観点から申しますと、一般論としては市場への新規参入を制限するということはどうも好ましいとは申せないわけでございます。  しかし、先ほど来のお話のように、最近、地方自治体におきまして、大店法による規制基準未満の規模の店舗の進出規制強化の動きが各地にあるわけでございます。これについては先ほども話に出ました政府の統一見解がございまして、直ちには違法ではない、こういうことでございますけれども、独占禁止法の観点からも考えまして、行き過ぎた規制に陥らないように、地方の実態に即した限界において慎重に対処してほしい、かように考えておるわけでございます。
  166. 長田武士

    ○長田委員 どのような条例の場合独禁法上好ましくないということでしょうか。
  167. 澤田悌

    ○澤田政府委員 その条例自体が違法ではないという統一見解を前提にして考えるわけでございますが、それぞれの地方の実情は恐らく違うと存じます。その地方の実態に応じた、先ほど合理的という言葉がございましたが、そこに無理のない限界、したがいまして、大店法において規制されております基準をほんのちょっと外してその地方の実態に合わないというような進出をするという場合に、条例によって規制されることがいけないというふうには申せないが、そういうことは避けるべきだ、しかし、それが相当規模を落としたもの、それまでも新規参入を制限することはいいかどうかということは独禁政策の精神も考えて適当に考慮してもらいたい、こういうことになろうかと存じます。
  168. 長田武士

    ○長田委員 実は、私が申し上げたいのは、大規模小売店舗法が有効に機能していない、そのために条例の制定ということになってきたということでありまして、大規模小売店舗法の改正を求める声が非常に強いわけであります。一般に、大規模の小売店舗の進出を許可制にすべきである、あるいは対象基準面積を引き下げるべきであるとの意見がたくさん出ておりますが、こうした意見に対して当局はどう考えていらっしゃいますか。
  169. 田中龍夫

  170. 山口和男

    ○山口政府委員 小売に対する規制の問題につきましては、御高承のとおり、現在高度成長期から安定成長期に入るという関係で、いろいろな経済的あるいは社会的な構造変化のある時期を背景にいたしまして、これからの小売業のあり方はいかにあるべきか、あるいは小売業の振興をどういうように図っていくべきか、そういった点を総合的に勘案いたしましてその対応を考えるべきであろうというように考えております。  このような観点から、この問題につきましてはできるだけ多くの関係者の方々の御意見を伺いまして、それを調整いたしまして検討をしてまいりたいと考えております。
  171. 長田武士

    ○長田委員 そのような大店法についての改正も考えておるということでありますので、次に内容に入ります。  本法の第五条についてお伺いしたいわけでありますが、ここに述べられておりますことは、中小企業団体について、「その構成員の大部分が中小企業者である団体であつて政令で定める要件に該当するもの」とありますけれども、具体的に「政令で定める要件」というのはどういうものでしょうか。
  172. 小松国男

    岸田政府委員 本法の申し出適格を持つ団体としましては、商工組合商工組合連合会のほか、これと同等の実質を有する団体として一定の要件を備える環衛組合、事業協同組合、社団法人等を政令で定めたいと思っております。  従来のいろいろの事例を見ておりましても、大体これらの方々が当事者として問題を提起され、そして調整に当たっておられるというのが実例でございます。
  173. 長田武士

    ○長田委員 中小企業団体の中では事業協同組合が多く存在いたしておりますが、事業協同組合はすべて入ることになっておるのかどうか。また、政令で指定されない団体でも、統一した意見をもって調整してもらいたいという申し出があった場合に、全くこれを無視するのか、あるいはまた政令で指定されない大きな団体で、完全に意思統一がされなければ申し出はできないのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  174. 小松国男

    岸田政府委員 内容についてはいまさらに詰めておりますが、私どもがいま考えております中小企業団体の要件としましては、一つは同業者の団体であること、それから当然のことながら中小企業者の団体であること、さらに地域の広がりとしましては都道府県ないしそれを越えるような地域的な広がりを持った団体というものを当面念頭に置いております。そして、その地区における同業者の一定部分以上を構成員としているということが一つの要件になるのではないかと考えておるところでございます。
  175. 長田武士

    ○長田委員 中小企業団体からの調査の申し出について、主務大臣は当該申し出に相当の理由があると認めたときには調査を行うことになっておりますが、その「相当の理由」ということはどういうことか、また、調査の前の段階で相当の理由ということを大臣が判断できるかどうか、その理由が判断できるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  176. 小松国男

    岸田政府委員 第五条第二項で「相当の理由があると認めるとき」という表現がございますが、これは大企業者中小企業者経営の安定に悪影響を及ぼすおそれのある進出計画を有しているというふうに申し出適格団体が判断したこと、それから、同時に、当該団体が第六条の申し出を適切な時点で行うために必要な大企業の進出に関する情報をみずから収集することが困難であると判定したこと、この二点について妥当と思われる理由があると主務大臣が判断したときにこの規定に該当する、このように理解をしております。
  177. 長田武士

    ○長田委員 調査の前の段階でそういう判断はできるのでしょうか。
  178. 小松国男

    岸田政府委員 中小企業の方々が日ごろ仕事をしておられまして、いろいろの情報が業界を通じあるいは地域を通じて入ってくると思います。どうもあの企業が進出をするらしいとか、どうもこの地点にねらいをつけているそうだというような情報がきましても、それだけでは本当に自分にどの程度の影響があるかということがなかなかわかりません。やはり、一体どの企業がどの程度の規模でどこへ進出してきてという内容がはっきりわかりませんと、実際の影響というものが身にしみてわからないわけでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着     席〕  したがって、中小企業自身もいろいろお調べになるでしょうが、やはりおのずから限界があるという場合には早速主務大臣に申し出ていただきまして、そして主務大臣がそれをお手伝いする、主務大臣としてわかる範囲のことを調べて情報を提供してあげるというのがこの制度趣旨でございます。  「相当の理由がある」といいます表現はいまのような趣旨に即して理解をすべきものではないかと思っておるところでございます。
  179. 長田武士

    ○長田委員 中小企業団体から中小企業にとっては全く大きな問題でございますその申し出がございますと、主務大臣はそれを受けて調査を行うわけでありますが、実際問題として、主務大臣がこれは相当の理由がないとする場合だってあり得るわけでございましょう。この点はどうでしょうか。
  180. 小松国男

    岸田政府委員 この規定の趣旨は、制限的に申し出を排除するための要件として書いたものではございません。まさに中小企業者として知りたいことが自分では知り得ないといった場合には主務大臣が調査のお手伝いをしましょうという意味で書かれたものであると私ども理解をいたしております。
  181. 長田武士

    ○長田委員 そうしますと、中小企業団体が調査の申し出をした場合、一〇〇%主務大臣はこれを前向きでやりますか。
  182. 小松国男

    岸田政府委員 当然に周知の事実になっておることは中小企業団体としてわかっておると思いますが、それ以外のところでこういう点がわからないというような申し出があれば、当然私どもはそれを受けて、調べられるだけのものは調べるというのが基本的な姿勢であろうと思います。
  183. 長田武士

    ○長田委員 次に、五条では、「中小企業者経営の安定に悪影響を及ぼすおそれのある大規模な事業の開始又は事業の大規模な拡大の計画を有していると認めるときは、」主務大臣に対して調査を申し出ることができるとなっておりますが、情報の収集能力がきわめて弱い中小企業がこうした情報をキャッチするのは、大企業の商品あるいは製品が市場に出回った時点であります。大企業がある程度市場に進出してきた段階でなくてはキャッチできないと私は思うわけでありますが、このような場合、大企業に対して本法ではどのような処置を講ずるのか。もうすでに事業が開始されて、製品、商品が回ってくる時点でキャッチする、申し出があった、その場合にどう対処しますか。
  184. 小松国男

    岸田政府委員 いまお話がありましたように、既成事実が進行してしまってから、さあ大変だ、問題を解決しなければならないというようなことになりますと調整自体もかなり難航すると、私ども従来の事例でそう感じておるところであります。したがいまして、なるべく早く問題をキャッチし、問題に対する適切な手を打っていくということが必要でございます。その意味におきまして事前調査の規定も特に設けたいという経緯でございまして、これをうまく活用していきたいと思っております。  もちろん、そのほかに通産省自身にもこの調整問題に関するモニターがおりますので、これらについても情報を鋭意集めて問題の事前解決に努力していきたいと思っておるところでございます。  従来の事例をいろいろ見てみますと、確かに御指摘のように既成事実がかなり進んでしまってから問題が起こるという例もございますが、かなりの部分につきましてはそういう計画があるというような段階から問題がキャッチされまして、そしてその計画自体をどうするかということで中小企業団体側からいろいろの働きかけが行われ、そして役所が入って問題を解決するという、こういう事例も非常に多いわけでございます。
  185. 長田武士

    ○長田委員 すでに進出してしまっておる大企業についても何らかの改善処置を規定すべきではないかと私は思いますが、この点はどうでしょうか。
  186. 小松国男

    岸田政府委員 ある程度進出が既定の事実になっており、それが結果として中小企業経営に大きな影響を及ぼすということは放置するわけにはまいりません。まさにそのためにこの法律ができ、そしてその法律の中に「勧告」という制度が用意されておるわけでございます。したがいまして、私どもは、これでは大変だということで、中小企業団体から勧告の申し出がありますと早速実態を調べて、そして中小企業調整審議会の委員の意見を聞いて必要な勧告をするということを的確にやってまいりたいと思います。そして、その勧告につきましては、単にこれから先ふやさないというだけではなくて、過去のでき上がった事実自体についても必要な調整の対象にやはりなり得るのではないかと思っておるところでございます。  さらに、こういった調整をするためにかなり時間がかかってしまって、その間に既成事実がさらに進んでしまうというようなことが懸念されますので、特に「一時停止勧告」という条文を設けまして、必要なときには審議会の意見を聞きまして大企業の計画の進行に対してストップをかける、いわば現状凍結を大企業に要請する、こういう道も開かれておるところでございまして、少しでも既成事実が進行し、その既成事実の上にあぐらをかくというようなことがないようにこの法律を運営していきたいと思っておるところでございます。
  187. 長田武士

    ○長田委員 具体的にお伺いしますが、工場を建設してしまった、あるいは従業員も雇ってしまった、設備も機械も全部入れてしまった、操業を開始して商品、製品が回ってきてしまっている、流通しておるというような、そういう段階で強い処置というものはありますか。
  188. 小松国男

    岸田政府委員 その事実ができましてから何年もたって、その間ある程度中小企業の方々の経営も維持されているという昔話ならばいざ知らず、当面新しい工場ができて問題が起こったというようなときには、やはり、勧告の中におきまして、操業率を下げてほしいとか、あるいは設備の稼働をこういうふうにしてほしいとか、あるいは販路をこういうふうな形に限定してほしいとか、さまざまな内容の勧告が予定し得ると考えておるところでございます。
  189. 長田武士

    ○長田委員 そういう意味でも、この「調査」の問題でございますが、大企業に対する強力な調査権は持っていないと私は考えておりますが、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  190. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま長官お答えしたように、調査権というものの完璧は期しがたい次第でありますが、しかし、調査をするということは効果は政治的に非常にあるのではないかと私は考えております。  現実の実態の調査につきましては、現地の調整官もおりましょうし、それからまたいろいろな公共団体等の、あるいは組合等のニュースも入ってまいるでありましょうから、そういう点では、調査というものの完璧と申しますか、データーの収集には困らないのではないかと私は考えます。
  191. 長田武士

    ○長田委員 それでは、この調査を大企業が拒否した場合、当局はどう対応されますか。
  192. 小松国男

    岸田政府委員 いままでの経験からいたしますと、大企業に対して進出計画の内容をどういうふうなものであるかと問い合わせましたときには、これを拒否されるというような事例は余り経験いたしておりません。特に、今回の法律ができまして、調整の申し出をしましてから後の調査につきましては、まさに強制的な調査になるわけでございまして、その前段階の調査自体もかなり強い意味を持っておるというふうに私ども理解しておりますし、また、調査の対象になる大企業もそういう受けとめ方をするのではないかと思っておるところでございます。
  193. 長田武士

    ○長田委員 この調査に当ってはどのような組織形態で臨むのか、構成人員はどのくらいと考えておるのか、お伺いしたいわけであります。  さらに、この種の問題は地域性が非常に強いわけでありまして、速やかに調査結果をもたらすためにも調査権を都道府県知事に委任する方がよいのではないかと考えられますが、その点はいかがでしょうか。
  194. 小松国男

    岸田政府委員 この調査に当たりますのは、まさにその業種を所管しております各省主務大臣でございます。現実には、たとえば繊維に関して問題があれば通産省の生活産業局がその衝に当たるということでございます。  それで、大企業の方々においても、そういうルートで調査が依頼をされれば、やはりこれは誠実に応ずるというのが常識でございましょうし、また、従来からやっておりました実績を見ましても、それについて拒否するというようなことは余り経験いたしておりません。
  195. 長田武士

    ○長田委員 都道府県知事に委任するという点はどうですか。
  196. 小松国男

    岸田政府委員 いま考えております段階では、むしろ各所管原局のルートが一番従来からの御縁も深いし、また、実態を把握するのにも業界の事情をよく知っておる。そういった意味からすれば、主務大臣を通ずるルートが適切なのではないかと思っております。  ただ、場合によりまして、特殊の地域的な事情があります場合に都道府県の協力を仰ぐというようなこともケースとしてはあり得るであろうと考えておるところでございます。
  197. 長田武士

    ○長田委員 次に、第七条の「調整勧告」についてお伺いするわけでありますが、当局は勧告、公表規定のみで大企業の進出に歯どめをかけることができるとお考えでしょうか。
  198. 小松国男

    岸田政府委員 私ども、従来から、いろいろの問題が起こりますたびに一つ一つ実態を調べ、大企業の自粛ないし調整指導してまいったわけでございますが、最近におきましては中小企業の問題についての認識というものが次第に強まってまいりまして、特にこの分野調整に関する問題が国会でも非常に議論された経緯というものは大企業もよく承知をいたしております。現に、経済団体の中でもこういった問題についてのみずからのモラルを確立しようではないかというような動きが出ておるような状況でございます。  いま申し上げましたような客観的な背景におきまして、勧告はそれなりに尊重されるというふうに私どもは信じております。従来の経験に照らしましても、特に今度新しい法律ができたというようなことを受けましてこういった意味合いが一層強くなるのではないかと思っておるところでございます。
  199. 長田武士

    ○長田委員 先ほどちょっと触れましたけれども、公表しても大企業がこれを無視して事業分野の拡大を図ってしまった場合、当局は中小企業者からの申し出に対してどう対処されますか。そして、ほかに中小企業に対する救済措置を講ずる考えがあるかどうか。この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  200. 小松国男

    岸田政府委員 それこそがまさにこの条文における「勧告」の役割りであり、また、私どももそこに大きな期待を抱いておるところでございます。  たとえ既成事実ができておりましても、その既成事実が中小企業経営に著しい悪影響を及ぼすというようなときには当然操業度を下げるとか規模を縮小するとかいうような措置が講ぜられてしかるべきでございますし、また、白紙還元というようなことだってケースによっては必要になってくるのではないかと思っておるところでございます。  中小企業調整審議会におきまして申し出をした中小企業団体の意見も十分聞き、また、相手方たる大企業の言い分も聞き、さらに関係者の意見を徴して公正にまとめられた調整の案というものは、大企業として、いまの状況からすれば、これを無視してかかるというようなことは許されがたいことではないかと私は感じておるところでございます。
  201. 長田武士

    ○長田委員 大規模小売店舗法においては「変更命令」が規定されております。本法においても勧告に従わない場合には命令措置を設けるべきと考えるが、その点はどうでしょうか。命令に従わない場合には当然何らかの罰則規定を設ける必要があると私は考えておりますが、あわせてお答えをいただきたいと思っております。
  202. 小松国男

    岸田政府委員 いまの自由経済体制の中で私企業の自由な営業活動を拘束するような命令ないし罰則を出すということはある程度限定された場合になってくるのではないかと思っておるところでございます。それがどうしても必要なような公共の福祉上の理由が立証され、また、規制される側において不測の損害を与えるというようなことのないような配慮をした上での命令ということになろうかと思います。  いまのお話の中に大規模店舗法には「命令」があるではないかというようなお尋ねがございましたが、大規模店舗法の場合には規制の対象をはっきり明示いたしておりまして、政令都市であれば三千平米以上、その他の都市であれば千五百平米以上というような数字が具体的に用意されておりますれば、それ以上の面積の進出であれば当然中小企業経営には相当大きな影響を及ぼすであろうということがあらかじめ予見されるわけでございます。さらに、また、大規模店舗の場合には、対象が特定しておりますために事前届け出制をとっております。そういった措置がいわば前段階になっておりますことに加えまして、命令の内容も、開店日の繰り下げ、店舗面積の減少、開店時刻の繰り上げ、休日日数の増加というふうに限定的に列挙されておるという仕掛けになっておるわけでございます。  大規模店舗の場合と比べますと、今回御提案申し上げております法律は小売業を除くあらゆる分野についての一般法でございまして、起こり得る場合についてどういう影響があるのかということを事前に一般論として予定をすることができませんし、また、勧告の内容も非常にバラエティーのあるものでございまして、それをすべて命令に結びつけるということはやはり法律上いろいろの問題があるのではないか、その辺についての慎重な配慮が必要ではないか、このように感じておるところでございます。
  203. 長田武士

    ○長田委員 時間がありませんので次の問題に移りたいと思います。  中小企業調整審議会の中に中小企業関係の代表は何名ぐらいお入れになる予定でしょうか。
  204. 小松国男

    岸田政府委員 これは、製造業、卸売業、サービス業等、もうほとんど各般の業種にわたる問題でございますが、各業種の実情に明るい人をそれぞれ一人ずつ選ぶというようなことになりますれば何百人あっても足りないわけでございまして、地域別あるいは業種別にいろいろの組織ができておりますので、そういった組織を代表するような形で業界の方々の代表を選んでいってはどうかと私どもは思っておるところでございます。全体でたしか二十人のメンバーでございますが、大体半数ぐらいはそういう業界の実情に明るい方を選んではどうかといまとりあえず思っておるところでございますが、なおさらに詰めてみたいと思います。  また、審議会を運営いたします場合には、一つの事案ごとに小委員会のようなものを設けまして、そこで公正な判断をし、最後に審議会に仰ぐというようなやり方を考えてみてはどうかということも中でいろいろ議論をいたしておりますが、その場合にはなるべく公正、中立な方がこれに当たるというようなやり方の方がベターなのではないかと思っておるところでございます。
  205. 長田武士

    ○長田委員 特に、中小企業の団体についての関係者の代表については十分配慮をいただきたいと思っております。  私は重点的な項目についてその問題点を取り上げてお伺いしたわけでありますが、いままでの自民党や社会党や、そして私の質問によって政府案の矛盾点もある程度明らかにされたわけであります。  よって、本法案の修正について通産大臣はどうお考えでしょうか。
  206. 小松国男

    岸田政府委員 私どもが御提案申し上げました法案は、従来からの長い歴史的経過を踏まえまして、何とか中小企業の方々の事業機会確保を図りたいといった意味合いでの新しいルールづくりを行いたいという気持ちから検討を重ねてきたものでございまして、その間にありまして、御承知のとおり、中小企業政策審議会でも特に十数回の議論を重ねていただきましたが、当初はこれは非常になまぬる過ぎるというような御意見がある一方、規制自体不要ではないかというような両極端の愚見がございました。しかしながら、これはやはり新しいルールづくりとして国民各層の意見を一つにまとめるということが特に大事であるということを一同考えまして、何とか一つのまとまった線を出すために特に最後の数回苦労したわけでございます。その意味におきまして、私どもは、政府自身といたしましては、この案を考えました背景を篤と御理解を賜りたいというのが正直な気持ちでございます。  もちろん、先ほど来御意見がございますように、国会では別の高度の政治的な御判断もあり得るというような御意見もいろいろございました。もちろんそれは尊重するわけでございますが、私どもの気持ちないし私どもがこういうふうに提案を申し上げました背景というものについても十分御理解を賜りたいと思っておるところでございます。
  207. 長田武士

    ○長田委員 通産大臣、いかがですか。
  208. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま長官からお答えいたしたとおりでありまして、一番今日まで苦労を重ねました長官といたしましては、この法案に対しましてもずいぶんいろいろと意見もあると思います。なお、また、本案が審議会の場においていろいろと論議を尽くされて、そしてかような段階において成案となったわけでありますが、しかし、ただいまもいろいろと御意見のありますように、客観情勢のいろいろな変化に伴いまして、これが十分である、これでもってもう万事が解決したのだということにはもちろん相なっておりませんことは御案内のとおりであります。また、さらに、そういうふうな幾多の御意見を加えましてよりよいものになる時期もあろうと存じます。
  209. 長田武士

    ○長田委員 それでは、最後に、当面の問題について何点かお伺いしたいと思います。  いまや中小企業の倒産は年々増加の一途をたどって、三月においては、東京商工リサーチの調べによりますと、倒産件数が史上最悪の千七百件台を突破するという、きわめて厳しい事態に立ち至っております。こうした記録的な倒産状況について政府一体どのような現状認識を持ち、さらに、企業の倒産対策としていかなる措置を講じようとしておるのか、その点を簡単にお答え願いたいと思います。
  210. 田中龍夫

    田中国務大臣 御指摘のとおりに、三月に千七百五件という最高の倒産件数でございました。われわれは、本件に際しまして、特にいままででも倒産防止の業種指定等をいたしまして、信用補完の面におきましてはきめの細かい指導を重ねておりましたが、特に連鎖倒産防止のための金融の特別措置を先般決定いたしまして、期限の延長でありますとかいろいろな措置を決定いたし、同時に、末端の通産局を通じまして現地のきめの細かい指導を開始した次第であります。  要は、たとえば全体の、政府関係三金融機関の資金枠も三兆六千億でありますとか、あるいはまた無担保保証の分も四千七百億というような資金枠はありましても、枠だけではだめなんでありまして、問題は仕事がないということがむしろ最大の悩みになっておる次第であります。そういうことから、御案内のとおりに、過ぐる三月の十一日には特に四項目の景気対策を決定し、あるいは予算の成立に伴いまして、さらにこれを公共投資等は上半期に七三%をぜひとも完遂するということで、大蔵大臣が本部長になりまして推進対策をいたしておるような次第でありまして、仕事の面におきましても、予算の決定あるいはまたその他いろいろな面におきましても、注文それ自体が発注がありますように全力を挙げて指導いたしておるような次第でございます。
  211. 長田武士

    ○長田委員 こうした中で連鎖倒産を食いとめるために、ただいま御答弁いただきましたとおり、政府系の中小企業金融三機関から緊急融資を決めたと言われたわけでありますが、その内容についてちょっと御説明を願いたいと思います。
  212. 小松国男

    岸田政府委員 御指摘の緊急融資の内容はおよそ次のとおりでございます。  まず、第一に、中小企業金融公庫及び沖繩金融公庫の中小企業資金につきましては二千万円、それから国民金融公庫及び沖繩公庫の生業資金につきましては五百万円の別枠融資限度を設定いたしました。  第二に、貸付期間は実情に応じまして五年以内、据え賢き期間は一年以内と予定いたしております。  第三番目に、担保徴求に当たりましては、経営の実情に応じ弾力的に配慮するように指示をいたしてございます。特に、国民金融公庫及び沖繩公庫の生業資金につきましては、原則として無担保で貸し出しをすることができるようにと考えておるところでございます。  それから、第四点といたしましては貸し出し利率でございますが、一応通常利率といたしておりますが、ただし、特別の場合には金利の軽減を図ることができるものとするという内容でございます。
  213. 長田武士

    ○長田委員 利率は年利幾らですか。
  214. 小松国男

    岸田政府委員 沖繩公庫ではちょっと違いますが、一般的には八・九%が現状でございます。
  215. 長田武士

    ○長田委員 公定歩合が一%下がっても八・九%でしょうか。
  216. 小松国男

    岸田政府委員 今回公定歩合が引き下げられまして、それに従いまして今後短期金利、長期金利の見直しが行われると思います。いまの八・九%はいわば資金コストの面から積み上げられた数字でございます。そういう前提が変わってまいりますれば、いまの公庫の貸し出し金利自体も再検討されるということになろうと考えております。
  217. 長田武士

    ○長田委員 この利率を見ますと、八・九%というのは中小企業に対しては非常に負担が重いと思いますね。一%下がって、大体八%ないし八・一%ということも換算されるわけでありますけれども、もう少し下がりませんか。
  218. 小松国男

    岸田政府委員 中小企業にとりましては、金利の問題は、いわば景気刺激の手段という意識よりも、むしろ企業のコストの中で金利が非常に大きな負担になっておるという点が実感として問題になっておるのではないかと思っておるところでございます。私どももこういった実情をよく聞いておりますので、金利が引き下げられるような環境になったならば少しでも下げてもらうように、今後とも大蔵省と折衝いたしたいと思っておるところでございます。
  219. 長田武士

    ○長田委員 どうかひとつ、利率については引き下げをお願いしたいと思っております。  先ほど大臣から官公需の問題でお話がございまして、公共事業の上半期契約率を七三%に高めるというお話でございましたが、そのうち、中小企業者に対してどの程度の影響があるとお考えでしょうか。
  220. 田中龍夫

    田中国務大臣 先ほど申しましたのは官公需ではございません。つまり、五十二年度の予算が通過いたしましたに当たりまして、特に公共投資等を中心といたしまして、予算の執行を上半期に七三%までに指導する、こういうことでございます。  官公需の面におきましては、御案内のとおりに、五十二年度の分におきましては官公需の関係は三四・二%でありますか、さらにそれは各省庁別にでき得る限り政府の資金が中小企業に向けられますように——また、同時に、県あるいは市町村、公共団体といったようなものを加えますと、官公需関係あるいは公共団体関係は約五〇%程度が中小企業の方に回るのじゃないか、それにいたしましても相当強い指導がなければ相ならぬ、かように存じておる次第でございます。
  221. 長田武士

    ○長田委員 それでは、私の持ち時間が参りましたので最後に要望を申し上げておきます。  わが国の経済は高度経済成長時代から安定成長へと大きな転換期を迎えておるわけでありますが、このときに当たりまして、かつての大企業の自由を放任した市場競争によって生じた社会的不公正を速やかに是正することこそ当面の急務だと私は考えております。したがって、この分野調整法案が社会的不公正是正の一環となるように、政府みずからが本法の運用について強力かつ実効性のある法案となりますように努力されるよう要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  222. 野呂恭一

    野呂委員長 宮田早苗君。
  223. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣、大変お忙しいようでございますので一問だけ大臣お答えを願って、後は退席をしていただきたいと思います。  中小企業を取り巻く環境は大変厳しいわけでございます。ほとんどの方々が将来展望を持っていないのじゃないかと思います。だから、今度の法案もこの展望を切り開くということも一つのねらいになっておると思います。ところが、藩閥大分関心を持っておりましただけに、出てまいりました法案そのものが案外に期待外れという意見が大変多いわけでございます。  そこで、この法案で果たして中小企業分野が守られ、同時に将来展望がこの法律の成立によって切り開かれるものかどうかということと、もう一つの問題は、今日の不況は構造的な不況と言っても当たっておると思いますけれども、この打開がこの法案を成立させることによって可能になるものかどうか、このことについて、これは基本的な考え方でございますので大臣の所見を述べていただきたいと思います。
  224. 田中龍夫

    田中国務大臣 御指摘のように、分野調整法あるいは業種指定というようなことが過ぐる選挙を通じましても大変に喧伝せられたわけでございます。たまたま分野調整あるいは業種指定というのはごろが非常によろしいわけでございまして、私ども中小企業対策を口にする者は、当然選挙戦におきましても申したことを自分の体験から申し上げます。しかしながら、ただいま実際の中小企業の現状というものは、本法ができましたからこれで翻然としてすべての問題が解決してしまうというものではないことは当然でございまして、御案内のとおりに、本法自体も、製造業あるいはサービス業卸業というふうなものに対象を限定いたし、同時に、また、その中におきましても、御期待のように、命令権あるいは罰則というものもついておりませんし、さらにこれに対しましては明確な分野確定ということもできておらないというようないろいろの御不満もあると存じますが、本法を制定するまでの間に有識者の皆さん方にお集まりいただいて、特に消費者代表あるいはまたその他各方面の頭脳を結集いたしまして審議会をつくったわけであります。まじめに一つ一つの事例から検討いたしてまいりますと、つまり総論では簡単に言えることも各論になってまいりますとなかなかあれやこれや問題が多くて簡単にいかぬ、その簡単にいかぬということが審議会の非常に大きな反省であったと思うのでありますが、ふたをあけてみると申しますか、結論の得たところはただいまごらんに入れるようなまことにモデレートなものになってしまったわけであります。  同時に、また、大企業中小企業圧迫という言葉の中にはいろいろ事例も数多い中でありますが、しかし、大規模店舗法に基づいて行うことと商調法によって行えることといろいろの面があるわけでありまして、具体的には今回の事業活動機会確保法と同時に大規模店舗法、商調法と、この三者を両々相まって活用すればある程度の成果も得られるんではないかと思います。  さて、それだけではなく、ただいま問題になっておりますいろいろな中小企業の幾多の悩みにつきましても、あるいは資金面あるいはまた信用補完の上におきます不況対策につきましても、不況業種指定でありますとか、あるいは倒産防止のことでありますとか、その他地方公共団体あるいは県知事さんあたりの御協力によりましていろいろの施策が立てられるし、当面いたしております中小企業の悩みというものは、総合的に銘柄の多いいろいろなものを活用いたすことによりまして、中小企業庁を中心といたしましてぜひ所期の目的を完徹したいと思います。  また、同時に、本法におきましても、これが今後将来ともに絶対に動かせないというものでもないわけでありまして、御提案申し上げました政府案といたしましてはぜひともこれで御了承をいただかなければ相ならぬと存じますが、しかしながら、数年後におきます客観情勢の変化等がございますれば、やはりこれを調整しなければならぬというような状態にも相なるものと存じます。また、われわれは政府といたしまして御提案申し上げます以外にも、政党といたしましてのいろいろな御見解のあることも承知いたしておる次第でございます。
  225. 宮田早苗

    ○宮田委員 大臣、せっかくお急ぎでありますので要望を一つしておきます。  熱心に論議をされてこの法案を提出までこぎつけていただいたという努力には評価をいたしますが、これに対してはかつてない期待が非常に強いわけです。だから、せっかく法律をつくって実効が上がらなければこれは期待を裏切ることになるわけですから、そのためにこの法案をこの商工委員会審議をしておるわけでございますから、審議の過程の中でふぐあいな点は直さなければならぬということになると思いますが、その際大臣はかたくななお気持ちを持たれなくて、柔軟な姿勢でこの審議経過を見て、その上で最終的な判断をしていただきますように、まず要望をしておきます。  お忙しいようでございますから結構でございます。
  226. 田中龍夫

    田中国務大臣 いろいろと御配意まことにありがとうございます。せっかく宮田先生から私の方に御質問が出ております中で一、二お答えをいたしまして退席をお許しいただきたいと存じます。  御質問でありますが、事前調査という問題が今度入っておりますことは御了承のとおりであります。同時に、この事前調査に対します行政効果でありますが、この事前調査をいたしますことと相まちまして、いろいろな申し出によりまして速やかに実態を把握できますれば、さらに勧告の中におきましても御承知のとおりに一時停止という勧告もでき得るわけであります。こういうことによって大企業の無法な一方的な進出をあらかじめ食いとめて、そして地元の中小企業の方々との調整、お話し合いに入ることもできると存ずるのでございます。  そういうことがたまたま先生の御質問の冒頭にございましたのでお答えをいたしまして、本日はこれでお許しをいただきます。  ありがとうございました。
  227. 宮田早苗

    ○宮田委員 公取委員長一つお伺いいたしますが、政府案にあります調査、勧告、公表といった大企業の中小分野への進出の歯どめでは法律の効果が薄れるということを私ども主張してまいっておるのでございますが、関係する中小企業諸団体の主張も実はこの点にウエートがかかっていると思うわけであります。  先日も本会議で公取委員長質問しようという考えを持っておりましたが、本委員会でということで改めてお伺いするわけでございますが、そこで、私どもの主張は先ほど申し上げたとおりですけれども業界団体は、一方には政府案以上に強制力のある法律にすると独禁法上問題ありとする意見もあるわけでありまして、自由競争の制限ということから公取の御見解をまず承っておきたいと思います。
  228. 澤田悌

    ○澤田政府委員 私ども、かねがね、大企業中小企業がいわゆる分野調整問題で調和を図るための立法が行われますときには、独禁法のたてまえの公正にして自由な競争、ひいては消費者利益というようなことの損なわれないようにというような希望を申し上げておった次第でありますが、この法案をただいま御指摘のように命令あるいは罰則という形のものを含んだ強制力のある法律にもしいたした場合に原案と比べてどうかというお尋ねの御趣旨と存じますが、独占禁止法のたてまえから申しますと新規参入ができにくくなる、それから政府案よりも競争制限される度合いが強まるということはやはり否定できない問題であろうかと考えるわけでございます。
  229. 宮田早苗

    ○宮田委員 公取委員長、もうこれで結構ですからどうぞ……。  それでは、この法案のまず基本的な考え方と申しますか、「最近における中小企業をめぐる諸情勢の変化にかんがみ、」云々ということについてちょっとお伺いをいたしますが、この諸情勢の変化については今日の不況は、言うならば高成長から安定成長に変わったわけですが、構造の問題が一つと、それから弊害の問題があるわけでございまして、本案が提案された基本的な考えである「中小企業をめぐる諸情勢の変化にかんがみ、」という、この「変化」ということについての基本的な考え方をまず中小企業庁としてお示しを願いたいと思います。
  230. 小松国男

    岸田政府委員 私ども中小企業をお預かりしておりまして、昨今の情勢というものはまことに厳しいものがあるというふうに痛感をいたしておるところでございます。戦後かつてない長い不況の中で何とか生き延びていかなければならない。そして、日本経済を支える推進力としての力を蓄えていかなければならない。さらに、それに加えまして、これから長い目で見ますと、従来のような高度成長時代から安定成長時代に移ってまいります。こういった時代では、正直に申しますと、座ってのんびりしていて、そして経営が何とかなるというような甘い考え方は許されない時代であろうと思っておるところでございます。  私自身は、中小企業はある意味では機動力も持ち、独創性も持ち、また経営者従業員とが本当に一体感を持っているというような特色も持っておりますし、こういったいい点を何とか伸ばしていくということが特に大切であると思いながら、他面で、いま申し上げましたようなさまざまな環境が従来からとかく持っておりました中小企業の小さいなりのいろいろな弱点というものを一層表へ出す傾向があり、ここのところが一番問題ではないかと思っておるところでございます。  他面、大企業にとりましても決して甘い世の中ではない。そのことから、いままでの事業そのままの継続ではなく、何か新しい商売はないかというようなことも当然考えるわけでございまして、大企業自身としてはいわば一つの多角化の手段であるものが中小企業にとっては致命的な問題になるという場合、やはり、従来の高度成長の場合よりも問題としてはたくさん出てまいりましょうし、それから、出てきた場合の影響というものも一層強くなるであろうと感じておるところでございます。  私どもは、こういう事態を踏まえて、大企業中小企業との間の新しいルールづくりが必要だし、従来のような行政指導をさらに一歩超えた、法律の裏づけのあるルールづくりというものがこの際必要であると考えましたのが法律を提案させていただいた理由でございます。
  231. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、第一条の目的についてちょっとお伺いしておきますが、「一般消費者等の利益の保護に配慮しつつ、」ということなんですが、「その事業活動調整することにより、中小企業事業活動機会を適正に確保し」云々という点についてですが、この問題については消費者利益事業活動の両面を配慮することにあると思うわけです。  そこで、端的に言わせていただきますが、消費者考え方はよい物を安くという考え方に立つわけであります。しかし、事業者はその事業を守るという考え方に立つわけでございますが、この点について、両面非常にむずかしい問題だと思いますけれども、この法案そのものの目的が達成できるかどうか、第一条の問題についてお伺いいたします。
  232. 小松国男

    岸田政府委員 この法律は、基本的には中小企業事業活動機会を適正に確保するということがねらいでございまして、まさに中小企業基本法十九条を受けて、それを具体化したものであると理解をいたしております。ただし、その場合にも、あわせて消費者利益の保護という観点も忘れるわけにはまいりません。と申しますのは、中小企業国民経済の中でそれなりの評価を受け、またそれなり役割りを果たすということは、長い目で見てやはり消費者のために喜ばれるものであるということが必要であると考えておるからでございます。  したがいまして、大企業が突然出てまいりまして、そして中小企業がばたばた倒れるということは放置すべからざる重大問題であり、それを調整するためにあらゆる措置を講ずるということは当然必要なことでございますが、しかし、それだからといって、中小企業特定のかきねをつくってその中で安住するというようなことがないように、長い目で見て消費者に喜ばれるような中小企業になってもらうように、これはこの法律の施行と並行いたしまして私どもとしても考えておかなければならない要素であると理解をいたしておるところでございます。
  233. 宮田早苗

    ○宮田委員 次にお伺いいたしますのは、「大企業者」の定義についてであります。  第二条第二項において大企業者の定義をしているわけでございますが、「事業活動を実質的に支配することが可能なもの」云々という条文ですが、これは大手が代表権のある役員を送り込んでいるという意味なのかどうか。また、「省令で定める関係」とはどのような内容になるか。  もう一遍申しますと、大手が代表権のある役員を送り込んでいるとというような意味を持っているものか。もう一つは、「省令で定める関係」というのがありますが、これはどのような内容になるものか。この二つをお伺いいたします。
  234. 小松国男

    岸田政府委員 大企業の定義に特に第二項を設けました趣旨は、大企業自身が中小企業分野へ進出するという場合だけではなくて、それがダミーを通じて進出をするという場合もあわせて調整の対象にしたいという考え方でございます。  現に、従来の事例をいろいろ見ておりますと、大企業自身が直接出てくる場合よりはダミーを通ずる場合というのがかえって多いような実情でございまして、ここの辺に歯どめをつけませんとしり抜けになってしまうということが懸念されたからでございます。  第二項におきましては、例示といたしまして出資比率二分の一以上の資本的支配関係を有するケースというものを挙げておりますが、いまお話がございましたように、省令におきましてそれ以外の具体的なケースをカバーして、実質的にしり抜けにならないような工夫をしていきたいと思っております。  お話の中に出ておりました人的な支配関係につきましても、単独の大企業によって役員の過半数が占められておるというようなケースはダミーとしての疑いを受ける可能性が非常に多いと私どもは思っておりますし、また、子会社だけではなくて、孫会社のような形式をとった場合にも実質的に大企業が支配しておるという関係が認められる場合がかなりあるのではないかと思っておるところでございます。  いずれにせよ、進出のいろいろな事例をよく見ながら、これに対して適切に対応できるような省令の内容を考えていきたいと思っておるところでございます。
  235. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つ、役員の問題についてお伺いいたしますが、役員派遣といっても、身分上完全に切れてしまっておる場合が多いわけです。大手企業の社員がいわゆる出向ということで役員になっておる場合の影響力とは大分違うわけでございます。そこらをどう解釈したらよろしいか、お伺いいたします。
  236. 小松国男

    岸田政府委員 具体的なケースについて見ますと、なかなか微妙な場合がいろいろ出てくるのだろうと思いますが、ただ、この条文を設けました趣旨趣旨でございますので、たとえば親会社と兼務している場合は当然といたしましても、一たん辞職して、しかも帰りが確実に約束されているといった場合には一種のダミーとして考えられる場合もかなりあるのではないかと思います。  私どもとしては、余り形式的にとらわれずに、実質をよくにらみながら省令の内容を考えていきたいと思っておるところでございます。
  237. 宮田早苗

    ○宮田委員 大手の孫会社方式の問題についてお伺いいたしますが、大手が特定中小企業分野に進出しようという場合、手の込んだ方法が当然考えられるわけです。子会社の子会社あるいは複数の子会社が一社当たり株式の持ち分が二分の一にならないようにする方法もあるわけです。いろいろな手が考えられるわけですが、株式あるいは支配力の及ぶ関係、つまりダミーをどう規制していくかということ、この点も重要なことではないかと思いますが、その点についてお伺いいたします。
  238. 小松国男

    岸田政府委員 これもまたいろいろ微妙なケースにわたろうかと思っております。  先ほどの答弁の中にも少し触れましたように、子会社の形をとらずに孫会社の形をとる場合にもやはりダミーとして見なければならない場合がかなりあるだろうという感じがいたしております。それから、人的なつながりというものも、内容を見てみますと非常にデリケートな場合が当然あり得ると感じております。また、お話の中にありましたように、単一の会社という場合は非常にはっきりするわけでございますが、やはり、複数の会社の場合にも問題になり得る可能性はある。これが非常にたくさんな数になってしまえばまた支配関係が薄れてしまう場合もあるかと思いますが、複数の会社が親会社になっている場合、これは少し気をつけてルールづくりのときには考えておかなければならない問題じゃないかと思っておるところでございます。
  239. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つお伺いいたしますが、孫会社の対子会社、対親会社への依存度、普通売上比率ということと思いますが、それは必ずしも高くないんじゃないか。仮に五〇%以下としましょう。そんな関係の場合、大企業者の中小分野への進出と見ることになりますかどうか、この点もお聞きいたします。
  240. 小松国男

    岸田政府委員 私どもは、中で議論いたしておりますときには、必ずしも売上高に関する依存度というだけではなくて、やはり子会社と孫会社との資本所有関係も大きなファクターになるのではないか、また、その場合における人的なつながりということも問題になり得るのではないかというようなさまざまな議論をいたしておるところでございます。  実は、このダミーの問題につきましては、他のいろいろな法令、私の記憶ではたしか外資に関する法律でも同じような問題がございまして、ダミーを規制する先例があったと思います。そのほかに幾つかの法律が先輩としてございますので、そういった先例におけるダミーの扱いというものもよく勉強いたしまして、しかし、気持ちといたしましては、私どもが先ほどから申し上げておりますように、実質的に大企業が出てくるのと同じような効果を持つものを押さえていく、こういう気持ちで内容を詰めてみたいと考えておるところでございます。
  241. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、ちょっと質問を変えまして、大手進出の調査の問題についてお聞きをいたします。  大企業者の事業開始または大規模な拡大の計画を事前に中小企業団体が察知するのはなかなかむずかしいと思うのです。政府はそのために紛争処理体制の強化、整備を図ることにしているのでございますが、中小企業調整官一人の動員くらいで間に合うものかどうか。  細かな話になりますが、用地手当てが表ざたになります第一段階と思いますが、これは不動産業者が買収から造成に当たると思うのですが、ちょっとした区画の団地造成は買い主はだれかとか、何ができるのかとか、こういう調査をしなければならない。大手の工場にある空き地でくい打ちや資材の運び込みが始まった段階でも同じことが言えるのじゃないかと思うのですが、実態と法の運用、ここをどうお考えになっておられるか、その点をお伺いいたします。
  242. 小松国男

    岸田政府委員 まさにむずかしい現実問題についてお触れになったと思います。  私ども、従来から分野調整官を使い、あるいは分野問題に関するモニターを使っていろいろ実情の把握に努めておりますが、それによってすでに問題が解決への糸口を見出したというケースもかなりの数に現に上っておるところでございます。しかし、おのずから数には限界がございまして、大企業の活動すべてについて目を光らすことは実際問題としてはおのずから限界があることは御理解いただけるだろうと思います。従来の実績ないし実情を見ておりますと、業界の方々はかなりいろいろとそういう点の情報といいますか、勘といいますか、それをお持ちになっておられまして、たとえば業界の仲間でのいろいろなお話であるとか、あるいは地域の中におけるいろいろなお話であるとか、そういったことが端緒になって問題が浮かび上がり、そしてそれに関する調整問題に発展するというケースがたくさんございます。したがって、私どもは、政府としてもやれるだけのことはやり、また、業界としても一つの端緒をつかんでいただいたら主務大臣に申し出ていただいて私どももお手伝いをするということをうまくかみ合わせていくことが必要であろうと思っておるわけでございます。  いまお話しございましたような、たとえば土地の手当てなどの段階は一番むずかしいところではないかと思います。建物が建つとかあるいは機械が入るという段階になりますと問題は非常にはっきりするわけでございますが、できれば少しでも早い段階から問題を押さえ、解決への糸口を探すことが必要でございます。  その辺のところは、運用をどうするかということを部内でもいろいろこれから研究させていただきたいと思います。
  243. 宮田早苗

    ○宮田委員 関連がございますが、第五条の第一項の最後のくだりに「自ら調査することが困難であるものについて」とありますが、「困難」と限定しているのは何か意味があるかどうか。
  244. 小松国男

    岸田政府委員 これは、私どもは調査の申し出を制限的に運用するために特に入れたという気持ちはさらさらございません。中小企業の方々もそれぞれいろいろの情報を持っておられて、それでキャッチされた情報もありましょうし、あるいは新聞等で公知の事実になった事情もございましょうし、そういったものは当然中小企業の方も心得ておられるという前提で、やはり、自分の力では探せない、もう少し細かいことを知りたいというような御希望のあったときに調査の申し出をされ、われわれがそれを受けて調査をするということを念頭に置いた条文でございます。
  245. 宮田早苗

    ○宮田委員 大規模な進出という用語についてちょっとお伺いいたします。  大事業者の進出による影響については、全国的な規模のものとブロックあるいは都道府県単位といったものとがあろうと思いますが、すべての場合について主務大臣が調査に当たり通知をするというふうに理解してよろしいものかどうか、まずお伺いいたします。
  246. 小松国男

    岸田政府委員 大規模な事業の開始または拡大の意味するところでございますが、私どもは、設備の新増設等が行われ、それによって大企業の事業能力が大幅に拡大し、その結果として従来の業界の需給バランスが大きく狂ってくるというようなことになれば、当然中小企業にもいろいろな影響が出てくると考えておるところでございます。  この場合の商圏の範囲でございますが、これは業種業態によってかなり違ってくると思います。私どもは、ある程度の数の中小企業者に影響を及ぼす、そしてそれらの経営に打撃を与えるということになりますと、余り局地的なものはなかなかそういうところまでいかない、少し広がりのあるような事案が調整の対象に通常なってくるのであろうと思いながら、その範囲はおのずから業種業態によって違ってくると理解をいたしておるところでございます。
  247. 宮田早苗

    ○宮田委員 紛争の及ぶ範囲が狭い地域に限定されたことが十分予測されるわけです。  関係諸団体の意見として、中央の中小企業調整審議会の下部機構の設置を望む声が非常に強いわけであります。各省庁にまたがる問題でもございますのでどうかと思いますけれども、どういう機構をお考えになっておるのか。  これに関連して質問を続けますが、審議会の中に労働組合、従業員の代表というものが考えられていないように見ておりますが、なぜ考えていないのか。審議会の中には直接関係者であります代表をやはり入れるべきじゃないかというふうに思いますが、その点はどうですか。
  248. 小松国男

    岸田政府委員 私どもは、審議会の運営につきまして、一応中央で一本で処理するということをとりあえずのスタートとしては考えておるところでございます。  と申しますのは、従来私どももたくさんの紛争の事例に遭遇いたしましたが、中央において問題として取り上げ、そして中央において処理するというケースが大体ほとんどでございます。一部都道府県のお力をかりるというようなケースもございましたが、大部分は中央で処理をしてまいりましたし、また、そのことが最後のおさめのためにも役に立ってきたように思っておるところでございます。したがって、当初のスタートとしては中央で統一的に処理をするという体制をとりまして、さらにこの法律を運用しました経験の上に立って、もっと新しい工夫が必要であれば、そのときにまた考えるというような段階を踏むことをお許しいただきたいと思うわけでございます。  それから、審議会の構成でございますが、私どもまだそこまでよく詰めて議論をいたしておりません。委員の中に労働を代表する方を入れるということも一つの御意見であろうと思います。  なお私どもも研究させていただきたいと思います。
  249. 宮田早苗

    ○宮田委員 時間が参りましたから最後にいたしますが、大企業の進出が既成事実となって中小企業に甚大な影響が出始め、さらに倒産といった企業の存立にかかわるようなことがあらわれることを想定して「調整勧告」がありますが、最も不幸な事態となった場合の倒産、廃業、幸いにして影響が軽微でも、個別企業あるいは同業団体と大手との間に補償問題等が出てくることも考えられるわけですが、こういう状態になったときにはどのような措置をなさるか、それをお聞きいたしまして質問を終わります。
  250. 小松国男

    岸田政府委員 いまお話しの点でございますが、まず、一つ中小企業との関係で申しますと、中小企業が大企業の進出によって倒産の憂き目を見ないで済むようにするのがまさにこの法律趣旨でございます。その意味におきまして、この法律制定されました暁におきましては、このことに特に頭を用いながら迅速に問題を解決し、そして中小企業事業機会を適正に確保できるようにするというために一生懸命の努力を払ってまいりたいと思っております。  なお、また、たしか、大企業との関係で場合によっては損害賠償の問題が起こり得るのではないかというお尋ねであったかと思いますが、これは勧告自体が審議会の議を経ました公平なものであり、そしてその勧告に大企業自身も従うという前提においてこの制度が用意をされておりますので、いま御提案申し上げました法律の範囲内で大企業からの損害賠償の問題が起こるということは余り懸念をしなくてもいいのではないかと思っておるところでございます。
  251. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  252. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、明二十二日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時六分散会