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岡本参考人 地元で働く
仕事と九十日
給付を要求する北海
道連絡会代表委員の
岡本でございます。
本
委員会で
北海道の
季節労働者の
実情と、私
たちの
意見を述べさせていただく
機会を与えられましたことを、心から感謝申し上げる次第でございます。
北海道の
季節労働者は、
建設労働者を中心に約二十九万人で、全国の四割以上を占めております。しかも、その大部分は、地下一メートルまで凍って、水道の本管が凍結するというような零下三十度を超える寒さ、二メートルから三メートルの豪雪等のため、やむなく
冬季間
失業給付金で
生活せざるを得ない
専業季節労働者でございます。私の住んでおります
北海道後志支庁
管内——後志支庁は、小樽市を含めまして一市十九カ町村、東京都の約二倍の面積をその行政区域としておりますが、実は小樽市を除いて——普通後志といいますと、この小樽市が除かれて話をするような
状態になっておりますので、以下そういうふうに申し上げたいと思いますが、この人口は、終戦当時約二十万ございました。それが、急速な過疎の進行で
昭和五十年の国勢
調査では、十五万を割りまして、現在十六カ町村が過疎法の指定を受けております。小樽、岩内両職安の
調査では、後志の
昭和五十年度の
季節労働者の総数は約一万三千人、家族を含めますと、人口の三分の一が
失業給付に頼って
生活をしていることに相なります。この
失業給付金は約三十三億で、これを含めて
管内の
季節労働者の
年間総
収入は約百二十億円で、これが後志の
経済を潤しておったわけでございます。後志の
日本海沿岸九カ町村の漁業生産高は、
昭和四十九年後志支庁水産課の調べで百九億円でございますから、いかに大きい
金額であるかということが、この一事をもっておわかりをいただけるかと思います。
それが
昭和五十一年度になりますと、五十日の一時金となった結果、岩内職安
管内、この
管内は十四カ町村、十万人の人口でありますけれども、この
管内だけで前年比十億円を超える
失業給付が減少となりまして、一人当たりの一時金は十五万三千円、全道
平均よりも非常に低い
金額であります。
平均約十二万円の減収となりました。十五万三千円では、私どものところでは十二月から四月まで
仕事がありませんので、この五カ月間を月三万円で暮らさなければならない。まさに言語に絶する
生活苦でございます。
このため、私の町から三十分ほどの後志支庁がございます倶知安町では、
季節労働者の奥さんが、ことし中学へ入る娘さんに服を買ってやれないために、三月の末にお母さんが、働いてきれいな服を買ってあげると子供に言い残して家出をするという事件が起きました。また十勝
管内士幌町の土木作業員の安保専一さん、五十三歳の方でありますけれども、この人は、この六日の午前に安全かみそりで右頸部を切って自殺をいたしました。私どもの
調査では、
失業給付五十日打ち切りによる
生活苦が原因であります。
以上は、ほんの一例にすぎません。そうしてこれらは
地域経済にも深刻な
影響をもたらしております。岩内商工
会議所の調べでは、昨年一月から三月期に比べまして軒並み商店の売り上げが二割方ダウンをしております。二百海里問題ですでに水産加工業者二件の倒産がうわさをされ、
雇用保険と二百海里とダブルパンチの不況が町の
経済をお先真っ暗なものにしております。
私自身、岩内商工
会議所の会員であり、小さな会社を経営している者でありますけれども、毎日、一体これからどうなるだろうかという不安がぬぐい切れない、こういう
生活を送っているような
状態でございます。
政府は、
仕事がなければ本州に出かせぎに来い、このように言います。しかし、内地も不況でそんなに求人があるわけではございませんし、あったとしましても、こういう例がございます。岩内町の千葉正勝さんという四十三歳の人は、一時金が十三万円しか支給されなかったために、一月の十七日に、岩内職安の紹介で、愛知県へ七人の仲間とともに出かせぎに出ました。ところが、職安の説明とは全く違って、飯場にはストーブはもちろん、火の気は全くなく、寒さにふるえて、しかも手取りは八万
程度とあって、四月いっぱい働く予定を三月半ばで切り上げて帰り、その汽車賃はおまけに自己負担というありさまでございました。この
人たちは、もう本州への出かせぎはこりごりだ、こういうふうに言っております。そうして本州へ出かせぎに出た多くの
労働者は、このような
状態に置かれているというのが
実情でございます。
政府は、
公共事業の発注などでそれでは
対策を考える、このように言っておりますけれども、どうでございましょうか。五十一年度補正予算による
景気浮揚、債務負担行為による
災害復旧工事などの
対策が行われましたが、道の試算でも、これによって救われる
季節労働者は二十四日の
就労で約二万二千人にすぎないわけでございます。これでは二十九万人の
労働者に対して全く焼け石に水の
対策と言わざるを得ません。また、
早期発注による後の
仕事のめどが立たない予算の先食いでは、暮れが心配であります。昨年はほとんどの
労働者が五月初旬の
就労、十一月中旬切り上げというように、例年より一カ月も早く
仕事がなくなりまして、みんなことしは大丈夫だろうかと心配をいたしております。
どんなに財政が苦しくても、何百、何千人もの
季節労働者を目の前にする地方自治体は、これを黙って見過ごすわけにはまいりません。債務負担行為の議決により小樽市は三千四百万円、また黒松内町は八千二百万円の
災害復旧工事を行いました。しかし、これで救われたのは、前者では七千三百人の
季節労働者に対して延べで二千四百人、後者では五百三十名が八日ほど
就労できたにすぎないのであります。また、
管内の六カ町村では、この
災害復旧工事そのものが、災害がないために行われない、こういう
状態であります。したがって当然、
労働者の要求に押されて、自治体は単費による何らかの救済
事業を
実施せざるを得ず、岩内町では約一億円で除排雪
事業、道路や下水の改修工事を行いました。これでも二千六百人を超える
季節労働者が救われたのは、三日間
程度でございます。
季節労働者の緊急
就労事業を何らかの形で
実施している過疎と財政難の町村長の
意見は、国のしりぬぐいは国が自分でやってもらいたい、この一語に尽きます。だからこそ小樽、後志
管内一市十九カ町村のうち一声十七カ町村が九十日
給付を要求する議会決議を行っているわけであります。
政府は、
通年雇用を口にし、奨励金の活用を言います。しかし実際に、それがどれだけ行われるでありましょうか。
北海道開発局開発建設部の非常勤職員三千数百名は、
最高で十カ月しか働くことを許されておりません。小樽
開発建設部岩内出張所の場合、非常勤の女子職員は六カ月で情け容赦もなく首であります。その他の
労働者は、三年前までは九カ月しか働くことを認められず、後は
失業給付をもらうように強制をされておりました。黒松内出張所の場合では、現在でもほとんどが八カ月で首を切られております。そして後は五十日の一時金で
生活をせい、こうであります。
政府の出先機関ですら、
北海道では
通年雇用ができないのに、零細
企業の多い
建設業者がどうしてわずかの
雇用奨励金で冬の五カ月もの間、何人もの
季節労働者を抱えて遊ばせておくことができるでありましょうか。だから、
北海道の
建設業界も九十日
給付の決議を行っているわけであります。
通年雇用の場合に、一年じゅう働くということが前提になります。どうか、冬でも働ける
仕事を政府が積極的につくってくださるよう、当
委員会の
先生方にも心から
お願いをする次第でございます。
季節労働者は、働きたくなくて働かないのではございません。寿都町役場の
調査でも八四%の人が
地元での
仕事を望んでおります。しかし、過疎と不況で
地元に
仕事がないのであります。何カ月も家族と別れて働く
生活を強いられる
季節労働者は、おれ
たちは人間の
生活ではない、せめて人並みの
生活をさせてほしいと悲痛な叫びを上げております。
どうか
季節労働者にせめて冬の間だけでも人間としての
生活を取り戻させ、
地域経済を安定させ、豊かな郷土
日本をつくる上でも、ぜひ
季節労働者の
失業給付を従来の九十日に戻してくださいますよう心から
お願いをいたします。
そのためにも、いま御審議中の
雇用保険等臨時
特例法案を成立させていただきたい、このことを最後に
お願いして、私の
意見を終えさせていただきます。どうもありがとうございました。