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1977-04-15 第80回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月十五日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 橋本龍太郎君    理事 斉藤滋与史君 理事 戸井田三郎君    理事 中山 正暉君 理事 葉梨 信行君    理事 枝村 要作君 理事 村山 富市君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       大坪健一郎君    加藤 紘一君       川田 正則君    菅波  茂君       湯川  宏君    安島 友義君       池端 清一君    大原  亨君       川本 敏美君    渋沢 利久君       田邊  誠君    森井 忠良君       草川 昭三君    古寺  宏君      平石磨作太郎君    西田 八郎君       浦井  洋君    工藤  晃君  出席政府委員         労働省職業安定         局長      北川 俊夫君  委員外出席者         参  考  人         (住友ゴム工業         株式会社会長) 下川 常雄君         参  考  人         (全北海道労働         組合協議会議         長)      田村  武君         参  考  人         (士別市長)  國井 英吉君         参  考  人         (全日本労働総         同盟生活福祉局         長)      小寺  勇君         参  考  人         (地元で働く仕         事と九十日給付         を要求する北海         道連絡会代表委         員)      岡本 正巳君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   田口 一男君     池端 清一君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     田口 一男君     ————————————— 四月十四日  健康保険法び船員保険法の一部を改正する法律  案(内閣提出第三五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用失業対策に関する件      ————◇—————
  2. 橋本龍太郎

    橋本委員長 これより会議を開きます。  雇用失業対策に関する件について調査を進めます。  本件調査のため、本日、参考人として住友ゴム工業株式会社会長下川常雄君、全北海道労働組合協議会議長田村武君、士別市長國井英吉君、全日本労働同盟生活福祉局長小寺勇君及び地元で働く仕事と九十日給付を要求する北海道連絡会代表委員岡本正巳君、以上五名の方々に御出席いただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。  本日は、雇用問題全般について、おのおののお立場から何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いをいたします。  なお、議事の都合上、最初に御意見をおのおの十分程度に要約してお述べをいただき、その後、各委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。  また、念のため申し上げますが、参考人から委員への質疑はできないことになっておりますので、御了承を願います。  それでは、まず下川参考人からお願いをいたします。
  3. 下川常雄

    下川参考人 ただいま御指名にあずかりました下川でございます。  昨年の十月に、日経連の第四回欧米経済事情調査団の一員としまして、アメリカ、西独、フランス、英国の四カ国の主として労働経済事情調査しましたが、各国とも雇用情勢が悪化しておりまして、これが対策には政労使者一体となって取り組んでおるのを非常に深く印象を受けました。  その節、各国から共通して雇用問題について質問を受けましたのは、日本では景気が中だるみで不景気だというが、失業者は百万程度で、失業率は二%弱じゃないか、これは非常に低いがどういうわけだというような質問を、四カ国各国から共通のように受けました。  そのとき私、申し上げましたのは、欧米日本との雇用慣行が基本的に違うことがその理由ではないかと思う、御承知のように、欧米では仕事がなくなりますと、直ちにレイオフ制度解雇をいたしますが、日本では仕事がなくなって操業率が減りましても、何とかこれを一時帰休とかそういうことで解雇をできるだけ避けるという慣行をしいております、それがために逆に企業過剰雇用者を抱いておる、これが失業率が低い主な原因だということを申し上げました。現在でも企業では多数の過剰雇用者を抱いておる実態でございまして、これが企業の収益を非常に圧迫いたしております。  また、西独の総同盟に参りましたときに、幹部の方がわれわれに申されましたのは、われわれは現在就職している者の名目賃上げよりも、現在失業している者に対し職を与えることの方がより重要だと考えておるというお言葉がございました。  昨年末、日経連賃金問題研究委員会で発表しました報告書の中にも、副題に「インフレ防止雇用拡大に労使の協力を」ということを書きましたが、これは物価の安定と雇用維持拡大が当面の緊急問題であるというふうに考えて副題をつけたわけでございます。  次に、雇用保険法の一部を改正して、新たに雇用安定事業実施しようとする法律案につきましては、日経連では数回にわたりまして雇用特別委員会を開きまして審議いたしまして、昨年の十二月三日に、日経連雇用特別委員長名で——私が委員長でございますが、委員長名労働省要望書を提出いたしました。もちろん、他の経済団体でございます経団連及び日本商工会議所の同意も得ております。現在もこの考え方は変わっておりません。  すなわち、この法律案が、景気の変動や産業構造変化に対応して雇用の安定のために諸施設を円滑に実施させることにつきましては、まことに時宜に適した法律案でございまして、ぜひとも本国会で成立させていただき、早期に効果が上がるようにしていただきたと思います。  ただ、雇用保険料事業主負担を新たに積み増すことにつきましては、各業界とも反対でございまして、ことに中小企業団体からは、本制度については利用機会が少ないという意見も出ました。もっとも、われわれが労働省から内示されましたときには、雇用保険料の加算が千分の一でございましたが、いま提出されております法律案を見ますと、千分の〇・五に半減しておりますので、これは若干われわれの意見を取り入れていただいたのではないかというふうに考えております。  いま企業雇用問題について当面しております二、三の問題を申し上げたいと思います。  第一は、先ほどから申し上げております過剰雇用の問題でございまして、これが、それぞれ過剰雇用者を抱えて苦慮をしておるのが実態でございます。さらに最近、綿紡業界羊毛業界からも、操短による過剰雇用者の処置について御相談を受けております。近く造船業界からも、この問題が発生するのではないかと心配しております。  これら過剰雇用者に対しましては、雇用調整給付金制度利用させていただいて、一時帰休制実施するつもりでございますが、実施しまして、この対策はいわば消極的の対策でございますが、われわれとしましては、さらに一歩進めまして、これらの過剰雇用者を訓練いたしまして、求人を欲しておる業種に対して、それに適するような訓練をいたして、その業界に送り込むというようなことも考えております。  次に、雇用構造変化、特に労働人口高齢化について申し上げたいと思います。  御承知のように、四十五歳から六十四歳までの中高年層労働人口は、欧米の四倍のスピードで進んでおります。これがため、労働力構成が、従来のピラミッド型から筒型に変化しつつあります。いま企業では、この急増する中高年者に対しまして、全員が生きがいを感じ、その労働力が積極的に生かされる対策を講じつつあります。  すなわち、従来のピラミッド型のときには、中高年者になりますと、それぞれ監督者になっておりましたが、これからは多くの人が一般従業員としてやらなければならない、そういうことで、これらの一般従業員としての能力の開発あるいは職務の再編成ということに努力をいたしている次第でございます。  なお、こういう人たち特殊技能といいますか、そういうものを従来の監督者として優遇しておったのと同じような取り扱いも考えたいと思っております。できれば、こういうスペシャリストに対して、国家でも何か資格制度をつくっていただければ、さらに一層有意義なことだと思います。  以上で終わります。
  4. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、田村参考人お願いいたします。
  5. 田村武

    田村参考人 私は、全北海道労働組合協議会田村であります。  このたび、尊敬する衆議院社会労働委員会におきまして、雇用失業対策について意見を述べる機会を与えていただきまして、非常に光栄に存じますし、感謝しております。本当にありがとうございます。  私は、まず第一に、北海道季節労働者実態について訴えまして、雇用確保生活保障、とりわけ失業給付九十日の復活についてお願いしたいと思います。  北海道における季節労働者は、雇用保険短期特例給付を受給している者だけでも二十八万九千人を数えるのであります。これらの人々収入によって生活をしています家族を含めますと、百万人を超えることになると思うのであります。  これらの人々は、昭和五十年の雇用保険法の制定、そして五十一年三月末の経過措置の期限切れによりまして、五十日分の特例給付のみでこの正月と冬を過ごすことになったわけであります。この五十日分の金額は、平均約十八万円弱との発表もありますが、これは最も高い方の数字でありまして、われわれの調査では、男子でも十四ないし十五万円と見られております。しかも、北海道季節労働者は、内地と違って、そのほとんどが夏場季節労働専業とするものでありまして、少なくとも正月を含む十二月からの冬季の四カ月間というのは、この金だけで生活せざるを得ないのが実態であります。  ですから、その生活の悲惨さは筆舌に尽くしがたいものがありますし、私が見聞する範囲でも、食事の回数を減らすとか、なるべくおなかを減らさないようにするために寝ているとか、あるいは電灯もつけないで、北海道の冬空のもとで暖房も極力節約しながらじっと寝ているといった状況が随所に見受けられるのであります。まさに人権問題であると言っても過言でないと考えます。したがいまして、生活保護に転落する者も出てくるのは当然であります。  北海道調査からは、生活保護受給決定件数中、季節労働者が何人いるかを正確に知ることは不可能でありますが、稼働していない者の生保受給者増加数は、世帯数で見ると、十一月に比べて十二月には七百二世帯が増加しております。さらに一月には三百九十六世帯が増加しておりまして、この増加した分のほとんどが季節労働者世帯と見ることができると思うのであります。しかも、季節労働者が五十日分の給付を使い果たし、生活が最も苦しくなるのは二月からでありますので、この数字は急増するものと思われます。  ちなみに網走管内の紋別市では十世帯網走市では十六世帯、北見市では十一世帯季節労働者生活保護を申請し、このうち三十世帯決定を見ているという状況であります。  こうした実態を踏まえて、私たちは、北海道及び各市町村当局に緊急の対策を求めたのでありますが、三月二十八日現在で、八十二の市町村において十万円から十二万円程度生活資金貸し付け実施するに至っております。うち、北海道がその財源措置として、市町村振興資金の中から融資しているのが二十市町、一億四千八百二十万円になっているのであります。しかし、こういう対策の持つ意義は大きく評価するのでありますけれども、しょせんは貸し付けでありますので、夏場の少ない収入の中から利子を含めて返済の義務を負うとすれば、これもまた今後に大きな問題を抱えていると言わなければならないと思います。  そこで私たちは、働く仕事確保と、どうしても仕事がない場合の生活保障のための失業給付の引き上げ、とりわけ九十日給付復活を要求してきたのでありますが、国は、雇用の場の創設による就業確保と、通年雇用促進を図るという方向は示しますが、現在を生きるために苦しんでいる人々の切実な要求であります失業給付の九十日復活については耳を傾けてくれないのであります。文字や言葉で幾らいいことを言ってもらいましても、腹はふくらまないのであります。  また、緊急対策として公共事業の繰り上げ実施早期発注によって対処するというのでありますが、果たしてこのことが季節労働者就労確保に連なっているのでしょうか、私は、非常に大きな疑問を抱きます。  北海道労働部は、この公共事業に紹介された季節労働者の数を発表しておりませんので、全体の数字を申し上げることはできませんが、道が知事の専決で行った景気浮揚災害復旧の二百十億円と言われる公共事業のうち、私たち調査することのできた留萌と帯広の管内事業について見ますと、請負業者手持ち労働者で作業を行っているのが主でありまして、職業安定所の紹介による就労者は皆無であります。この状態は他の地域でも同様だろうというように思います。  また、北海道開発局が十二月に追加予算を組んで実施をしました事業を見ましても、工事材料の購入などに重点が置かれておりまして、労賃部分にはほとんど回っていないのが実情であります。  さらに、公共事業発注の際は職業安定所に通報することになっているにもかかわらず、道の土木現業所からのものか一件という事例さえあります。通報制度自体が十分守られていないと言うことができるのであります。失業者就労確保という一定政策目標をもって行われる公共事業において、その目標の追求がなおざりになっていることは、重大な問題であると指摘せざるを得ないと思うのであります。  以上述べましたとおり、今日までの雇用促進生活資金貸し付け等対策では、季節労働者雇用生活はほとんど救えないのであります。もちろん私は、就労の場を拡大することを否定するものではありません。むしろ大いに歓迎をいたしますし、これを進めていただいて、働いた収入生活を安定させることを強く望んでおります。しかし、北海道季節労働者実態及び北海道就業構造等から見まして、当面する緊急対策として、生活保障としての九十日給付を何らかの形で復活しない限り、問題は解決しないことを強調したいのであります。  北海道は、昨年の冷害によって農業所得が激減をし、その上、御承知のとおり二百海里設定に伴う漁業関連労働者雇用不安がこれに追い打ちをかけて、大変な不安が巻き起こっているのであります。けさのテレビの報道を聞きまして、さらに深刻な感じに襲われておるのであります。  したがいまして、北海道雇用失業問題は、ひとり季節労働者生活問題だけではなくて、北海道経済全体、ひいては北海道という地域社会の存立にかかわる、重大な影響を及ぼす問題だと考えるのであります。したがいまして、緊急失業対策的な観点で対策を講ぜられるよう切にお願いしたいのであります。  確かに、九十日給付復活には、数々の議論があるのは承知をしておりますが、どういう制度として行うかは別にしても、従来あった九十日分と五十日分の差、すなわち四十日分の給付北海道に限ってでも実施されますよう特に御要請を申し上げる次第であります。  次に、日雇い労働者求職給付について申し上げたいと思います。  日雇労働求職給付金は一級、二級、三級と三つの区分になっておりまして、日額賃金三千五百四十円以上の者はすべて一級とされているのでありますが、この失業給付は二千七百七十円が限度であります。いま、建設とか港湾とか林業など、こういうような業種におきます屋外の日雇い労働者日額賃金は相当高くなっているのであります。しかるに、この失業給付最高二千七百七十円では、全く実情にそぐわないようになっております。一般保険者求職給付基本手当に比べましても、給付率給付額とも大変に見劣りのする制度となっております。新たな給付の新設と受給資格要件の緩和は緊急の問題だと考えます。このことは、雇用保険法創設に当たっての中職審の答申の中でも改善措置が求められておりますし、本国会において当然に改正をしていただきまして、雇用保険法第一条の目的が日雇い労働者にも正しく生かされますようにお願い申し上げたいと思います。  以上申し述べましたが、労働者は安心して働けることが一番幸せでありますし、みんなそれを願っているのであります。しかし現実は、それを受け入れてくれない非常に厳しいものであります。働くに職もなく、生活に苦しんでいる最も恵まれない層の人たちを救うために、その人たちに生きる希望を与えていただきますために、国権の最高機関であります国会の御英断を切にお願い申し上げまして、私の意見を終わらしていただきます。
  6. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、國井参考人お願いいたします。
  7. 國井英吉

    國井参考人 ただいま御紹介いただきました北海道士別市長國井でございます。私は、特に北海道季節労働実態と、これに関連します短期雇用特例保険について申し述べたいと思います。  北海道は、御承知のように積雪多量であり、零度未満の日が年間を通じまして九十日以上も続く地帯があるという、非常な積雪寒冷地帯でございます。一年の半分は冬であるということでございます。このようなきわめて厳しい気象条件の中で、独特な季節的集約労働形態を発展させてきたところでございます。かつて北海道は、恵まれた農林水産業、一次産業に依存する度合いが多かったわけでございますけれども、二次、三次産業の発達、さらにはまた、就業構造近代化とともに雇用労働者も増加いたしまして、今日の産業構造に変貌してまいったのでございますけれども、この寒冷積雪という気象条件だけはどうにもならないわけでございます。気象に特に影響を受けやすい建設等産業におきましては、冬の半年は全くその経済活動を停滞せざるを得ないという実情にあるわけでございまして、したがいまして、季節的要因に支配されます労働形態をとらざるを得ないわけでございます。つまり、労働者方々は、年間のある一定季節について就業し、あとの期間失業状態を繰り返すという生活でございます。  北海道季節労働者の数は、一口に三十万と言われておるわけでございますけれども、その八七%が夏季就労型でございます。圧倒的に多いわけでございまして、農業あるいは漁業等のいわゆる兼業型の余暇利用就労される率は全体の一三%にすぎないわけでございまして、北海道季節労働者はほとんどが専業であり、夏季就労型であるということが北海道季節労働者の特色であると思うわけでございます。したがいまして、季節労働者生活は、就業中に得た賃金だけでなしに、離職後における、いわゆる失業中における失業保険を含めて生活をしておるわけでございまして、現在の収入で、男がおよそ百五十九万円、女が八十一万円という収入で、過去二十数年聞こういった生活のサイクルで過ごしてきておるわけでございます。  このような北海道独特の労働形態の中で、昭和五十一年度から特例一時金制度が全面施行されたわけでございます。いわゆる従来の制度から四十日分がカットされるということになったわけでございまして、これは従来の季節労働者年間収入のおよそ一〇%に当たるということであります。北海道全体の額で申し上げますと三百五十二億ということでございますから、大変な金額になるわけでございまして、季節労働者生活への影響はきわめて厳しく、深刻なものがあるわけでございまして、ただいまも田村参考人からお話しされたような実情にあるわけでございます。同時に、これは季節労働者方々の問題であるとともに、この季節労働依存度の高い市町村におきますところの産業経済の面で非常に大きな影響を受けておるわけでございます。  一時金の支給ということで別の職に就労することができるという利点は、夏季就労型でなく冬季就労型の地域、あるいは年間を通じて労働することのできる仕事のある地帯におきましては、私は、確かに有利なことであると思います。しかし、北海道のように積雪寒冷、しかも働き場所、冬場の事業が容易にない地帯におきましては大変なことでございます。特に北海道の三十万近い季節労働者の中の産業別就労状況を見ますと、その八〇%、二十二万人くらいが建設産業に従事しておる労務者でありますから、特にこれは大変な苦労をせざるを得ないわけであります。しかも長期にわたる不況の影響を受けまして、他府県への出かせぎは、これまたなかなか容易なわざではないわけでございます。  私の町では、昨年の十一月に特例保険者意向調査をいたしたのでございます。士別市の対象人員は二千七百六十八名でございます。残念ながら回収率が悪く、七百七十七人という回収率でございましたけれども、この中で特に出かせぎに行くことができるかどうかということを中心に調査いたしたのでございますが、ぜひ出かせぎに行きたいという者が全体の七九%、六百十三人おったのでございます。しかし、その時点で実際に働き先の決まっていた方々は五十三名であります。三月末現在ではこれが百八名になっておるわけでございまして、いかに他府県への出かせぎがいまの状態で容易なものではない、大変なことであるかということは、うなずくことができるのではないか。働きたくとも働き場所がないのでございます。  先ほどと同じような話になりますけれども、一時金平均十六万円といたしますと、十二月から三月末まで、月四万円で生活をしなければならないということになるわけであります。特に寒冷地帯の冬の生活というものは、燃料費を初め大変な生活費がかさむわけでございますから、労務者方々生活がいかに苦しいかということが、私は容易に理解していただけるものと、このように考える次第でございます。  北海道市長会といたしましても、これらの事態を憂慮いたしまして、過去数次にわたりまして雇用保険制度改善季節労働者就労対策につきまして、国に対して強く御要請を申し上げたところでございます。  さらにまた、私ども市町村自体といたしましても、生活資金貸付事業就労対策事業を進めておるところでございますけれども、これは救済というまでにはとうてい及びもつかないことはもちろんでございます。  以上申し上げましたように、夏季就労冬季失業、しかも、これが専業としての季節労務者でありますから、九十日から四十日カットされたということは、この期間に平準した働き場所のない北海道労務者にとりましては、大変な問題でございます。同時に、これはひとり労務者方々のみならず、北海道開発北海道産業経済のすべてにかかわる重要な問題と思うのでございます。  どうぞ先生方におかれましては、北海道実情を十分に御理解いただきまして、長期的、総合的な雇用施策を早急に確立していただきたいと思う次第でございます。  同時に、これが実施され、実現を見るまでの間、短期雇用保険者に対する四十日カット分の回復につきまして、特例措置を考慮していただきますように強くお願いを申し上げる次第でございます。  簡単でございますが、以上で終わりたいと思います。
  8. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、小寺参考人お願いいたします。
  9. 小寺勇

    小寺参考人 同盟小寺でございます。  私は、二つの角度から御意見を申し上げたいと思います。  第一は、今度の雇用保険法改正内容そのものでありまして、それから第二は、高齢化社会に備えますところの定年問題でありまして、その二つの問題につきまして、これから若干御説明を申し上げたいと思います。  まず、第一の雇用保険法の今次改正の問題でありますが、この雇用保険法の今次改正の目玉が、雇用安定事業創設というところにありまして、それに関連しまして保険料の負担、さらに雇用安定資金の創設、こういう構想が出されております。  私ども同盟も、御承知のように繊維産業あるいは造船産業を抱えておりまして、そうしたところから考えまして、このような雇用安定事業創設という観点につきましては、基本的に賛意を表するものであります。  したがいまして、そうした原則的な姿勢から、せっかく生まれますこの制度でありますので、これがさらに補強されていく方向、画竜点睛という意味におきまして三、四点の問題を出しまして、御検討を煩わしたいと思うわけであります。  まず第一点でありますが、この制度がせっかく創設されますに当たりまして、その重要な点は、雇用行政のできるだけ、一元化というのは当面困難であると思いますので、一貫化という考え方を貫いてほしいというふうに思うわけであります。  この安定事業でも、内容を見ますとおわかりのとおり、無論失業予防という観点からの雇用調整給付金の給付とか、あるいは産業構造の場合の休業補償の問題といった観点もございますけれども、重要な点は、いずれの場合にしましても、再就職なり職業転換がいかに円滑に行われるかというために教育なり訓練を重視しておるというところであります。したがいまして、こうした訓練行政と同時に、その訓練目的に照合しまして新しい職業に転換できるというその連携動作、この二つが密接に関係づけられていく、できるだけ企画の面ではそれは一元化されていってしかるべきではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。したがいまして、そうした観点からの行政体制というものをできるだけ一貫化するために検討をしてほしいものだというふうに考えます。これが第一であります。  第二の問題は、この雇用安定事業の内容であります。内容を見ますと、雇用調整給付金とか休業補償の問題という観点と同時に、先ほど申しましたように、訓練問題が重視されております。  そこで、この訓練の内容でありますが、私も、訓練につきましては、素人でありましてよくわからない点が多いわけですが、少なくとも私どもが現在聞いております内容は、現在の職業訓練の実態から見ますと、新しい要請になかなか沿いかねておるのではなかろうかという問題が一つ出ております。  それから、さらに女子労働者の場合の受講促進という観点がどうも薄いのではなかろうかという問題も出ておるわけであります。したがいまして、そうした要望にこたえていくためには、もちろん公共職業訓練所の充実、拡大ということが重要でございますが、それに加えまして、せっかく現在ありますところの各種学校を活用することも、この際思い切って考えるべきではなかろうかというふうに思います。同時に、現代の要請に合わせまして職業訓練の多様化ということも必要ではなかろうかというふうに考えるわけであります。そうした訓練の、現在の要請にこたえ得る訓練の仕方がどうあるべきかということ、これを十分御検討いただきたいと思うわけであります。  それから、さらに第二の問題は、最初に日経連の方からお話がありましたが、中小企業事業主にとって、そうした職業訓練の機会創設する機会というのが非常に少ないという問題が出されておりました。もちろん、これは共同化しまして、事業主が共同的に職業訓練所を設立するという道があるわけでありますけれども、現実はなかなかそこまでいってないというようでありまして、せっかくそうした道があることでありますので、中小企業にとりましても、これが十分活用できるように考えていく必要があるのじゃないかというのが訓練上の第二点の問題であります。  それから、第三の点としまして、財政上の問題も指摘せざるを得ないと思います。  これから、これだけ多様な雇用安定事業創設ということに踏み切るわけでございますが、その場合の財政上の問題を見ますと、まず第一に国の補助が全くされていない、第二に事業主負担で千分の一程度のささやかな発足という財政基盤も事業主側の事情で千分の〇・五に半減しておる。考えていただきたいのは、雇用保険法が発足しまして、五十年には例の雇用調整給付金が、石油ショック以来の雇用事情に対処する問題として発動されました。五十年の実績を見ますと、雇用調整給付金だけでも約五百五十億支出を見ておるわけであります。ところが、今度の事業主負担によりますところの規模を見ますと、大体二百七、八十億にしかすぎない拠出になってまいると思います。こうしたささやかな積み立てといいますか拠出額にのみ頼りましてこんな大きな事業ができるかどうか、これは大変疑問があるところであります。  したがいまして、そうしたことから考えまして、この安定事業を支えるところの安定資金の財政を強化していくということ、これをぜひ検討していただきたい、このように思います。  第四点は、管理運営の問題であります。私どもは、実は新しい事業は大変な内容がございますので、できるだけ合同組織、行政委員会というふうなものも一時考えたわけでありますけれども、現在の状況から見ますと、なかなかこれは問題がありそうでありますので、労働大臣と労働四団体との間で政労会議というのを持つことになりました。そうした政労会議を持ちまして、大きな雇用安定事業の運営等についての考え方、意見交換をしていくということは、これまた大切なことでありますが、そのほかに直接的にこの雇用安定資金を有効に活用していくために、あるいは運営状況を確実に把握し、問題があれば機動的に迅速に改正ができる、そうした議論、意見交換をする場所というのが必要ではなかろうかと思います。  そのためには、現在、職業安定審議会というのがございますけれども、その機能からいいまして、十分その要請にこたえ得るかどうか疑問がございますので、職業安定審議会の機能強化ということも十分考えていただく中で、さらに新しい雇用安定資金の運営のための機構が考えられると、これは現実的に最も望ましいことではなかろうかというふうに考えられるわけでありますので、その点を要望いたしたいと思います。  最後に、時間の関係で簡単に申し上げますが、定年延長問題に触れさしていただきたいと思います。  御承知のように、これからわが国は急速に高齢化社会に入っていくことになります。また、平均寿命も昔の五十歳から現在は七十歳を突破いたしております。昔の定年から考えますと、二十歳ぐらいの平均寿命の延長という状況になっております。これらの人たち雇用をいかに考えるかということは、これから先の日本の社会的な事情を安定さすことにも非常に重要な問題があろうかと思います。そうした点を十分御勘案いただきまして、少なくとも定年につきましては、六十歳以上を目指すという奨励策を国会としてぜひお考えいただきたいものだというふうに考えるわけであります。  時間の関係で簡単でありますが、以上で終わります。
  10. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、岡本参考人お願いいたします。
  11. 岡本正巳

    岡本参考人 地元で働く仕事と九十日給付を要求する北海道連絡会代表委員の岡本でございます。  本委員会北海道季節労働者実情と、私たち意見を述べさせていただく機会を与えられましたことを、心から感謝申し上げる次第でございます。  北海道季節労働者は、建設労働者を中心に約二十九万人で、全国の四割以上を占めております。しかも、その大部分は、地下一メートルまで凍って、水道の本管が凍結するというような零下三十度を超える寒さ、二メートルから三メートルの豪雪等のため、やむなく冬季失業給付金で生活せざるを得ない専業季節労働者でございます。私の住んでおります北海道後志支庁管内——後志支庁は、小樽市を含めまして一市十九カ町村、東京都の約二倍の面積をその行政区域としておりますが、実は小樽市を除いて——普通後志といいますと、この小樽市が除かれて話をするような状態になっておりますので、以下そういうふうに申し上げたいと思いますが、この人口は、終戦当時約二十万ございました。それが、急速な過疎の進行で昭和五十年の国勢調査では、十五万を割りまして、現在十六カ町村が過疎法の指定を受けております。小樽、岩内両職安の調査では、後志の昭和五十年度の季節労働者の総数は約一万三千人、家族を含めますと、人口の三分の一が失業給付に頼って生活をしていることに相なります。この失業給付金は約三十三億で、これを含めて管内季節労働者年間収入は約百二十億円で、これが後志の経済を潤しておったわけでございます。後志の日本海沿岸九カ町村の漁業生産高は、昭和四十九年後志支庁水産課の調べで百九億円でございますから、いかに大きい金額であるかということが、この一事をもっておわかりをいただけるかと思います。  それが昭和五十一年度になりますと、五十日の一時金となった結果、岩内職安管内、この管内は十四カ町村、十万人の人口でありますけれども、この管内だけで前年比十億円を超える失業給付が減少となりまして、一人当たりの一時金は十五万三千円、全道平均よりも非常に低い金額であります。平均約十二万円の減収となりました。十五万三千円では、私どものところでは十二月から四月まで仕事がありませんので、この五カ月間を月三万円で暮らさなければならない。まさに言語に絶する生活苦でございます。  このため、私の町から三十分ほどの後志支庁がございます倶知安町では、季節労働者の奥さんが、ことし中学へ入る娘さんに服を買ってやれないために、三月の末にお母さんが、働いてきれいな服を買ってあげると子供に言い残して家出をするという事件が起きました。また十勝管内士幌町の土木作業員の安保専一さん、五十三歳の方でありますけれども、この人は、この六日の午前に安全かみそりで右頸部を切って自殺をいたしました。私どもの調査では、失業給付五十日打ち切りによる生活苦が原因であります。  以上は、ほんの一例にすぎません。そうしてこれらは地域経済にも深刻な影響をもたらしております。岩内商工会議所の調べでは、昨年一月から三月期に比べまして軒並み商店の売り上げが二割方ダウンをしております。二百海里問題ですでに水産加工業者二件の倒産がうわさをされ、雇用保険と二百海里とダブルパンチの不況が町の経済をお先真っ暗なものにしております。  私自身、岩内商工会議所の会員であり、小さな会社を経営している者でありますけれども、毎日、一体これからどうなるだろうかという不安がぬぐい切れない、こういう生活を送っているような状態でございます。  政府は、仕事がなければ本州に出かせぎに来い、このように言います。しかし、内地も不況でそんなに求人があるわけではございませんし、あったとしましても、こういう例がございます。岩内町の千葉正勝さんという四十三歳の人は、一時金が十三万円しか支給されなかったために、一月の十七日に、岩内職安の紹介で、愛知県へ七人の仲間とともに出かせぎに出ました。ところが、職安の説明とは全く違って、飯場にはストーブはもちろん、火の気は全くなく、寒さにふるえて、しかも手取りは八万程度とあって、四月いっぱい働く予定を三月半ばで切り上げて帰り、その汽車賃はおまけに自己負担というありさまでございました。この人たちは、もう本州への出かせぎはこりごりだ、こういうふうに言っております。そうして本州へ出かせぎに出た多くの労働者は、このような状態に置かれているというのが実情でございます。  政府は、公共事業の発注などでそれでは対策を考える、このように言っておりますけれども、どうでございましょうか。五十一年度補正予算による景気浮揚、債務負担行為による災害復旧工事などの対策が行われましたが、道の試算でも、これによって救われる季節労働者は二十四日の就労で約二万二千人にすぎないわけでございます。これでは二十九万人の労働者に対して全く焼け石に水の対策と言わざるを得ません。また、早期発注による後の仕事のめどが立たない予算の先食いでは、暮れが心配であります。昨年はほとんどの労働者が五月初旬の就労、十一月中旬切り上げというように、例年より一カ月も早く仕事がなくなりまして、みんなことしは大丈夫だろうかと心配をいたしております。  どんなに財政が苦しくても、何百、何千人もの季節労働者を目の前にする地方自治体は、これを黙って見過ごすわけにはまいりません。債務負担行為の議決により小樽市は三千四百万円、また黒松内町は八千二百万円の災害復旧工事を行いました。しかし、これで救われたのは、前者では七千三百人の季節労働者に対して延べで二千四百人、後者では五百三十名が八日ほど就労できたにすぎないのであります。また、管内の六カ町村では、この災害復旧工事そのものが、災害がないために行われない、こういう状態であります。したがって当然、労働者の要求に押されて、自治体は単費による何らかの救済事業実施せざるを得ず、岩内町では約一億円で除排雪事業、道路や下水の改修工事を行いました。これでも二千六百人を超える季節労働者が救われたのは、三日間程度でございます。  季節労働者の緊急就労事業を何らかの形で実施している過疎と財政難の町村長の意見は、国のしりぬぐいは国が自分でやってもらいたい、この一語に尽きます。だからこそ小樽、後志管内一市十九カ町村のうち一声十七カ町村が九十日給付を要求する議会決議を行っているわけであります。  政府は、通年雇用を口にし、奨励金の活用を言います。しかし実際に、それがどれだけ行われるでありましょうか。北海道開発局開発建設部の非常勤職員三千数百名は、最高で十カ月しか働くことを許されておりません。小樽開発建設部岩内出張所の場合、非常勤の女子職員は六カ月で情け容赦もなく首であります。その他の労働者は、三年前までは九カ月しか働くことを認められず、後は失業給付をもらうように強制をされておりました。黒松内出張所の場合では、現在でもほとんどが八カ月で首を切られております。そして後は五十日の一時金で生活をせい、こうであります。  政府の出先機関ですら、北海道では通年雇用ができないのに、零細企業の多い建設業者がどうしてわずかの雇用奨励金で冬の五カ月もの間、何人もの季節労働者を抱えて遊ばせておくことができるでありましょうか。だから、北海道建設業界も九十日給付の決議を行っているわけであります。通年雇用の場合に、一年じゅう働くということが前提になります。どうか、冬でも働ける仕事を政府が積極的につくってくださるよう、当委員会先生方にも心からお願いをする次第でございます。  季節労働者は、働きたくなくて働かないのではございません。寿都町役場の調査でも八四%の人が地元での仕事を望んでおります。しかし、過疎と不況で地元仕事がないのであります。何カ月も家族と別れて働く生活を強いられる季節労働者は、おれたちは人間の生活ではない、せめて人並みの生活をさせてほしいと悲痛な叫びを上げております。  どうか季節労働者にせめて冬の間だけでも人間としての生活を取り戻させ、地域経済を安定させ、豊かな郷土日本をつくる上でも、ぜひ季節労働者失業給付を従来の九十日に戻してくださいますよう心からお願いをいたします。  そのためにも、いま御審議中の雇用保険等臨時特例法案を成立させていただきたい、このことを最後にお願いして、私の意見を終えさせていただきます。どうもありがとうございました。
  12. 橋本龍太郎

    橋本委員長 以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 橋本龍太郎

    橋本委員長 委員各位に申し上げますが、参考人方々、それぞれ非常にお時間を繰り合わせていただいておりますので、理事会で定められましたそれぞれの持ち時間を厳守されますようお願いをいたします。  これより質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯川宏君。     〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
  14. 湯川宏

    ○湯川委員 ただいま参考人の各位から、雇用に関する非常に重要な事態に関した、具体的なお話を含めての御意見をお伺いいたしたのでございますが、これに関連いたしまして参考人の方に二、三お伺いを申し上げたいと思います。  初めに下川参考人にお伺いいたしたいと思いますが、御承知のように景気は昨年以来、一般的には回復基調にあると言われておりますけれども、どうしても中だるみの影響はひしひしと迫っておる。もちろん経済企画庁あたりでは、昨年暮れからことし二−三月にかけまして、マクロでは幾らか上向きになっておるということを言われています。また、アメリカや西ドイツあたりでは、一時心配されておったよりはややよろしい方向に動いておるというふうな最近の情報も聞かされるのでありますが、わが国の場合に、この景気回復のテンポがどういうふうになってくるかということは、なかなか定かに見きわめがたい状況でありますが、雇用の面での回復が特に問題が多いというふうに思われます。  雇用の回復が遅い、大幅におくれておる一番大きい原因は、やはり企業の側における求人意欲が余り盛り上がってこない、したがって、新規の採用を手控えておるというふうなことが一番大きな原因かと思われます。もちろん今日の一般的な経営の責任者の立場から、減量経営とか減量作戦とか、あるいはこれに関連した厳しい姿勢で臨んでいかなければならないという御事情も、われわれよくわかるのでございますが、最近の二、三カ月の残業時間等だけを調べた指数を見ますと、残業時間につきましては、わりあい明るい数字が出ておるように思われるのであります。  いま下川さんが冒頭に、綿紡なり羊毛あるいは造船の将来等を含めまして、過剰労働過剰雇用のことを訴えられた、そのこともよくわからないではございませんが、今日われわれが五十二年度の成長率を一応六・七%というめどを置いて努力をしておるわけでございますが、こういうことを踏まえまして、企業の側から見まして、今日の景気の回復の動向といいますか、あるいは経済成長についてどの程度になれば一般によしとされるような雇用の動きが出てくるのであろうかということがわれわれの大きい関心でございますが、その回復の度合いといいますか、成長率から見てどの程度のところまで来れば、やや積極的な新規採用の態度に切りかえ得るというふうにお見通しになりますか、その辺のことを伺いましょう。
  15. 下川常雄

    下川参考人 お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、多くの企業過剰雇用者を抱えておりますが、全般としましては好況事業もございまして、たとえば自動車とかあるいは家電関係、そういうところはフル操業をやっておりますが、そういうところが、先ほど先生からお話がありましたように、残業時間がふえておるということでございます。それともう一つは、臨時の雇用者もふえております。ところが常用雇用者がふえていない。これの原因は、経済成長が政府では六・七%を予測しておられるようですが、われわれはこれに対して非常な不安を持っております。したがって、果たして人をふやしていいかどうかというようなそういう不安が、いろいろな設備を加えるとかあるいは人を採ることに対して非常な圧迫になっておりますので、われわれとしましては、政府がはっきり、たとえば六%の成長は保証する、そういうふうなことを言っていただきますと、それによっていろいろなわれわれとしての積極的な対策ができるのじゃないか、そういうふうに思っております。
  16. 湯川宏

    ○湯川委員 いま六・七の保証をするならというなかなか微妙な御意見でございますが、一般的に新規採用につきましてかなり明るくない感じがいたしますので、経営者側としましても、できるだけこういうものを幅広く、あらゆる好不況、いろいろ状況の違う分野が入り組んでおりますが、それに対応した積極的な姿勢をとっていただければと思うのであります。  第二点としましては、下請関係のことについて御質問申し上げたいと思いますが、たとえば造船業等非常に関連事業の多い業種がございますが、造船業等におきましても、外注が非常に多いのに対しまして、外注をできるだけ削減して自社内でさばいていくとか、あるいは自社内での配置転換等をやるというふうな防衛的な対策を講じられることもよくわかるのでありますが、一方、下請関連の企業から見ますと、いまのような状況からそれの影響をもろに受けておるわけでございます。したがって、下請に働く方たち雇用の不安というものは、大企業の方の感覚とは非常に違った厳しいものであろうというふうに思われるのであります。  ですからわれわれとしては、大企業におかれても、実際問題としまして学校を卒業する者の新規採用の場合でも、これは現在の問題でございませんが、従来から比較的大企業はいいとこ採りをできるわけですね、いいものを、いろいろ条件の好ましい者を採っておる、これに対して松下さんのように、雇用税というものを取ってはどうかということを意見として言われることもあるぐらいで、条件の好ましい者をうまく採用しておられる側の大企業から見て、それら中小企業を含めての雇用の安定策ということがとられないものか。もちろん大企業から見て、長年つき合いのある下請企業のみが苦しい状況にあることを冷酷に見ておるはずはないと思いますけれども、しかし、下請企業側から見れば、やはり大変な不安にさらされておるという点から見まして、大企業だけではなくて、その抱えている中小関連企業を含めた意味での雇用安定対策というものについて積極的に努力を願いたいと思いますが、それらについて、どういうふうな御感触をお持ちになりますか。
  17. 下川常雄

    下川参考人 先日大阪で、関西経営者協会と、それから関西春闘共闘会議方々と懇談をしたのですが、そのときにも、下請あるいは協力工場と親会社との関係についていろいろ御質問をいただきました。  それで、いまの企業実態を申し上げますと、それぞれの大企業が、その大企業だけで製品ができ上がるという組織にはなっておりません。それぞれ協力工場とか下請工場の援助といいますか、その上で製品ができ上がっておる、そういうふうな仕組みになっておりますので、したがって、大企業だけが自分のところの従業員だけで、下請とかあるいは協力工場の仕事がなくなったから、そちらの方を減らすということをもしやりますと、これは一時的にはいいかもしれませんが、将来には非常に大きな禍根を残すのじゃないか、そういうふうに私は考えております。したがって、やはり全般的な一つのグループとして、下請も協力もその大企業の一つのグループとして考えるという考え方をとらなければいけないというふうに考えております。  それから現実には、やはりいろいろ下請工場に対しての雇用不安、そういうのが出ておりますが、こういう問題については、やはりいま先生が御指摘になりましたように、雇用安定を図るということがぜひ必要じゃないか、そういうふうに考えております。
  18. 湯川宏

    ○湯川委員 ただいまの下請に対する問題につきましては、グループとして考えていくのだというお考え、それは当然でございますが、一般的な方針として、お考えとしてそうあってほしいと思いますが、それはケース・バイ・ケース、特に個々のケースによりまして、そういう一般的な態度が貫かれるように特別に御配慮を賜っていただきたいと思います。  次に、引き続き下川さんにお伺いしたいと思います。保険料の引き上げの問題でございますが、今日の経済不況の時点からいいまして、企業にとりまして負担増になるわけですから、できるだけ避けたいというお気持ちであるというふうに思いますが、雇用保険の保険料のみを諸外国のこういう失業保険関係のものと比べてみますと、わが国は必ずしも高くない、あるいは欧米の方がかなり高い保険料を徴収しているというふうに伺っておりますが、企業の立場から見て、もちろん労働慣行、いろいろ事情が違いますから、退職金の問題とかあるいは福利施設の問題いろいろ違っておることはよくわかりますが、この雇用保険料に関しまして、ただいまの千分の〇・五という増徴分に対しまして、先ほど来、千分の一が高いということを認識されて半分にされたのだと思うとおっしゃいましたが、この千分の〇・五についてなお高いというふうな感触をお持ちかどうか、その辺のことをお答え願いたいと思います。
  19. 下川常雄

    下川参考人 外国と比較しまして統計上で見ますと、確かに、日本企業の受けております公租あるいは公課とかそういうものは、そう高いとは言えないと思います。しかし、われわれがいまの実態で考えますと、たとえば外国にない退職金制度日本にはあるとか、あるいは福利厚生施設が外国にはないが日本にはある、そういうふうなのを総合して考えますと、外国と比較しましたときに、決して低くはない、そういうふうにわれわれ考えております。
  20. 湯川宏

    ○湯川委員 もう一つ、下川さんにお伺いしたいのでございますが、例の五十五歳の定年の問題でございます。労働省におかれても、この定年制の延長についていろいろ努力をしておられるところでありますが、やはり言うまでもなく平均年齢の最近の状況等から見て、五十五歳定年というのは相当不合理であるということは、だれでもうべなえるところかと思うのであります。ただ現実には、定年制の延長は、一言で言えば全般的に見ましてなかなか進んでいないというふうに思われるのであります。もちろん大きい企業につきましては、関連の子会社があるとかいろいろのことで、数字の上では出にくいかもしれないということも了解されるのでありますが、一般的に申しまして、五十五歳定年に対する対策が比較的進捗度が緩いというような感じがいたすのであります。  そこで、企業の側から見まして、五十五歳定年制をさらに進めていく上においてどういう隘路があるというふうにお考えなのか、また、それをさらに進めていくにつきまして、経営者側としても国に対していろいろ御要望があろうかと思いますが、その辺の問題につきまして御意見を伺いたいと思います。
  21. 下川常雄

    下川参考人 定年延長についてでございますが、定年延長は、各企業で逐次延ばしておるのが現状でございます。労働省の方の御調査によりましても、逐次延びておることが示されております。ところが、定年延長につきまして企業で考えますと、企業ではこの定年が大前提になりましていろいろな人事上の施策をやっております。たとえば給与の問題とかあるいは配置転換とか、それから要員計画、そういう全体の人事の施策というのは、定年が一つの前提となってやっておりますので、したがって、ただ単に定年をたとえば五十五を五十六にするとか五十七にするということだけでなしに、そういう全体のことを考えなければいけない、それが定年を一挙に延ばすことができない一つの原因でございます。  それから、ことに給与の問題では、御承知のように日本では年功序列賃金をやっております。したがって年々賃金が上がる、この問題と、それからもう一つは、退職金が累積加算になっておりまして、年数が長くなると退職金がふえる、こういうふうな賃金体系なり退職金の問題もあわせて検討して定年延長に進んでおりますので、定年延長自体が徐々にしか進んでおらないというのは、そういう原因でございます。  それから、国に対しての要望でございますが、私は、一律に定年制を何歳にするというのは実態に沿わないのじゃないかというふうに思います。各企業においていろいろ特殊な事情がございますので、したがって、昨年の十月一日から実施されておられますような、五十五歳以上の高年者に対しては、全体の従業員の六%を目標雇用をやれという包括的な指示で行政指導をやられた方が、むしろ実態に沿うのじゃないかというふうな考えを持っております。  それから、今度の雇用安定資金制度で定年延長の奨励金とかあるいは高年者の雇用奨励金、そういうふうなことが実施されるようになっておりますが、これは確かに、高年者の雇用に対しては、あるいは定年延長に対しましても、助成としては一つのいい制度である、そういうふうに考えております。
  22. 湯川宏

    ○湯川委員 ただいまの、企業としての退職金の内規といいますか、規程等で年齢がふえればべらぼうに上がるとかいうふうな点はもちろんよくわかりますが、当然、そういうものを含めまして基本的な再検討を精力的に進めていかれることをぜひ期待したいと思います。五十五歳以上を一律に法定してどうこうというふうなことは、必ずしも適当でないというふうに思いますが、基本的な筋に沿うような、従来の労働慣行の調整といいますか手直しをして、この成果が上がるような方向に御努力を願いたいと思います。  もう一つは、産業構造の再編成その他、いわゆる安定成長に切りかえることに伴う転換の問題が、今後非常に強い形で出てくると思いますが、日経連その他におかれても、雇用失業指標というふうなものを十分に精査されながら、経営者側としてのこれに対する取り組み方を精力的に御努力賜りたいということをつけ加えて申し上げたいと思います。  最後に、岡本参考人さんにちょっとお伺いいたしたいのであります。  北海道の皆さん方から、北海道の窮状につきまして非常に熱心な御意見を伺ったのでありますが、私ども、雇用保険について、保険制度本来の筋から北海道以外の方といろいろ話しておりますと、特例一時金の取り扱いにつきましては、考え方自体としてはこの方がよかったのではないかということもしばしば聞かされるのであります。北海道の御事情につきましては、われわれもよく納得、了解できるのでありますが、その保険のたてまえといいますか、保険財政の問題あるいは保険制度の限界等々を考えまして、この種の保険料と給付との食い違った、何といいますか特異な数字がございますね、これに対しまして、いま申されることと並行しまして、やはり幅広い御検討をしていただかなきやならぬのじゃないか。道なり市町村でいろいろ御努力を願っていることもよくわかるのでありますが、特に建設関係の事業年間の工事の平準化とか、あるいは発注についての調整をするというふうな問題、もちろん、わが国の予算執行の単年度主義から、これは北海道だけではなくて本州側におきましても、必ずしも四月、五月、六月は工事が余りうまくいかないという点があるわけでございますが、特に北海道については、そういう問題が重要であろうと思われます。先ほど参考人の方でお述べになりました債務負担行為をもっと有効に使っていくとかということで、労働政策というだけではなくて、産業政策といいますか地域政策を総合して、これに対する対策に積極的に取り組んでいかれる必要があるのではないか。  ですから、本日の皆さん方の御意見、このような働きかけをされることは当然でございますが、同時に、国に対しまして、そういう幅広い形での、主として建設業を中心にした方への努力を、並行して力強くプッシュしていかれる必要があるのではないかというふうに思いますが、保険制度の限界ということもやはり頭に入れながら、北海道の特殊な事情に対してどのような具体的な対策を講じられるかという方にも大いに力を入れていかれる必要があるというふうに思いますが、いかがでしょう。
  23. 岡本正巳

    岡本参考人 お答えをいたします。  北海道の場合、先生がいまおっしゃいましたように、債務負担行為などで早期仕事を出して、そして一年間働けるようにしてもらいたい、これは北海道民のだれしもが考えておることでございます。私どもは、失業給付だけに頼って生活をしたいというふうには毛頭考えておりませんで、冬季間も何とかひとつ内地のように通して働きたい、そして安定した生活をしたい、これが私どもの心からの願いでございます。  しかし、先ほど来、田村参考人あるいはまた國井参考人などの方からも申し上げましたように、北海道の場合、積雪寒冷という特殊な事情にございます。雪がありませんと仕事は年じゅう可能でございます。私も、労働省に参りまして、これだけ科学が発達したのだから、雪を消す方法を何とかひとつ考えてくれないかというふうに言ったことがございますけれども、二メートルから三メートルの雪のもとで工事をやることになりますと、天文学的な数字になるのじゃないかということで、道庁の方でも、言うはやすく行うはむずかしいというふうに言っております。  そういう点で、私どもは、しかしこれだけ科学が発達している時代ですから、国の方へも何とか働かしてもらいたいということを要望しているわけです。しかし、それができない場合、五十日の一時金では生活ができないということは明らかでございますので、それができるまでの間だけでも、どうしても九十日を継続していただきたい、そういうめどがついた段階で、あるいはまた五十日になることはやむを得ない、こういうふうに考えております。
  24. 湯川宏

    ○湯川委員 ありがとうございました。  終わります。
  25. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 次に、池端清一君。
  26. 池端清一

    池端委員 参考人の皆さん方には、大変御多用中のところきょうおいでをいただきまして、しかも貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。  私は、この際、いまその実情がるる訴えられました北海道季節労働者の皆さん方の雇用と暮らしの問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、士別市長であられます國井参考人にお尋ねをしたいと思うのであります。  実は私、去る四月十一日、北海道市長会の会長であります札幌市長の板垣武四さんから次のような電報をいただきました。「道内季節労働者生活確保のため雇用保険制度改善について特段の御配慮を請う」こういう電報をちょうだいしたわけであります。これは板垣さんだけではなしに、道内各地区からたくさんのこういうような電報なり文書をちょうだいしておるわけでありますが、北海道市長会としては、この季節労働者雇用保険の問題についてどのような態度をお決めになって、具体的に今日までどのような行動を展開されてこられたのか、その辺の事情についてまず最初にお尋ねをしたいと思います。
  27. 國井英吉

    國井参考人 北海道市長会として今日までどのような運動をしておるのかということを中心にお話でございますが、先ほども申し上げましたように、この問題が出まして以来、今日まで五回にわたっていろいろと陳情を進めてきておるわけでございます。その陳情の、またお願いの骨子としておりますことは、一つは、北海道のいわゆる通年施工を十分に配慮してもらいたいということ、公共事業の量の拡大、それから繰り上げ、繰り下げ施行についての御配慮、さらに、これらの施策が総合的に、また長期的に実施されるようにしてほしいということであります。もう一つは、これらの長期的、総合的な施策が講ぜられるまでの間、四十日分の回復をしてもらいたい、いわゆる九十日の経過措置を延長してほしい、こういうことで従来お願いしてきておるところでございます。
  28. 池端清一

    池端委員 重ねて國井参考人にお尋ねをいたしますが、先ほどもお話がございましたけれども、道内の各自治体におきましては、今日深刻な状況にあります季節労働者の暮らしを守るために、当面の緊急措置として生活資金貸し付け制度なり独自の土木事業等を実施しておる、こういうふうに承ったわけであります。さなきだに地方財政がきわめて厳しいという状況の中でこういう措置を講ぜられることは、地方財政に与える影響が大変なものではないかというふうに考えられるわけでありますが、この辺の事情についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  29. 國井英吉

    國井参考人 お話のございましたように、今日の地方自治体の財政は非常に窮乏いたしておるわけでございまして、私どもその仕事を預かるものといたしまして非常に苦慮いたしております。しかし、この雇用保険法改正に伴うところの救済措置につきましては、もとよりこれは国あるいは北海道が積極的にやらなければならない仕事だと思いますけれども、だからといって、市町村仕事ではないということは言えないわけでございまして、市民の福祉を守るという立場から、何らかの措置を講じなければならないということで、それぞれの市町村実態に応じた救済措置を講じてきておるわけでございます。  一つは、生活資金貸付事業を行っておりますし、一つは、除雪、排雪等を中心にした冬場でもできる事業、これは細々とした対策事業にならざるを得ないのでございますけれども、それはそれなりの対策を講じてきております。その額も決してばかにならない額でございまして、この生活資金の貸付の総額は、今日では一億四千八百万円という額になっておりますし、さらにまた、救済事業につきましても、十億を超える事業実施いたしております。個々の町村にばらまきますと、これは少ない額だと思いますけれども、少なくともこのことによって、新たな財政負担を生じておるという実態でございますので、私どもといたしましては、この財政措置を何とかしてくれという前に、こういったことのないように措置をしていただきたいということを特にお願いいたしたいと思います。
  30. 池端清一

    池端委員 どうもありがとうございました。  次に、全北海道労働組合協議会議長の田村参考人にお尋ねをしたいと思うのであります。  先ほど参考人のお話をお聞きいたしておりまして、雇用保険法改正によって従来の九十日給付が五十日で打ち切られてしまった結果、季節労働者、とりわけ全国の季節労働者の約半数を占めていると言われております北海道季節労働者の皆さん方が、いま深刻な生活危機の状況に直面しておる、こういう現状について、私も認識を新たにした次第でありますが、政府は、この問題の対策について、これまで、雇用の通年化、公共事業早期発注事業量の平準化、こういう方法によってこの問題に対処するのだということを、再三国会答弁等でも明らかにしておるところであります。  そこで、参考人にお尋ねをしたいのでありますが、このような雇用の通年化あるいは公共事業早期発注ということで、今日深刻になっております雇用労働者の暮らしを真に守り抜くことができるとお考えになっておられるのかどうか、先ほど積雪寒冷の事情等についてもいろいろお話がありましたが、その辺についてひとつお尋ねをしたいと思うのであります。
  31. 田村武

    田村参考人 私は、言われておりますそういう施策を講ずるということは、実際問題としては不可能なことだと思うのです。二十八万九千人、約三十万になんなんとする季節労働者のいまの平均の稼働月数は、北海道労働部の調べによれば七・八四カ月、約八カ月です。そうすると、あと四カ月残るわけですが、二十八万九千人を四カ月雇用するということが、現実の問題としてできるのだろうかと考えれば、いままでの産業界のお考えであるとかあるいは行政の発想展開であるとか、こういうものを本当に根本的に改めて、雇用の保障、失業者生活を保障するということを第一義の政策目標と掲げての発想転換が行われない限り、絶対に不可能なことだというふうに思います。
  32. 池端清一

    池端委員 行政の姿勢を根本的に転換しなければ、この問題の真の解決はあり得ないというお話であったと思うのでありますが、もっと具体的に、行政の姿勢の根本的転換とは一体具体的にどういうようなことをお考えになっておられるのか、ひとつ参考人の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  33. 田村武

    田村参考人 まず、総量の面からとらえてみたいと思うのですが、そうしますと、いまの北海道季節労働者が九十日分の休業補償を受けた、五十年はほとんど九十日分受けているわけです。これが約八百億円弱になっておるんですね、九十日分の補償だけで。そうしますと、この補償というのは受けておった賃金の大体六割なんですね。六割ですから、これを賃金総額に直しますと、千三百三十九億というような形になるわけです。そうすると、千三百三十九億円という賃金を払うだけの事業量ということになりますと、正確かどうかはわからぬのですけれども、道の公共事業のいろいろな計画等の中で言われますのでは、総じて総事業費の中に占める労賃率というのは二割程度のものだということです。だから、千三百四十億ぐらいの賃金総額が総工事費の二割だとすると、これを生み出す事業というのは約六千七百億ぐらい要るわけです。ところで、六千七百億というこの公共投資を北海道に行うという状態ができるのだろうかと考えますと、その面から見て、いままでの考え方では不可能でしょうというふうに考えるのです。  それからもう一つは、公共事業の繰り上げとか繰り下げとか平準化というものによって雇用期間を延ばすということが言われるのですけれども、そういうことによって延ばすというのは、結局公共事業といいますか、そういう対象事業が総枠としてうんとふくれなければ、雇用確保し、雇用期間を延ばすということは不可能になります。だから、そういう点についても非常に不十分ではないかというふうに考えるのです。  それからもう一つは、こういう工事が発注されますときに、結局季節労働者生活保障雇用確保というものが大きな政策目標であるというならば、その事業の計画段階において、この事業によって季節労働者、季節失業者を何人救済できるのかということが、その計画の基本になければならぬと思うのですが、そういうことがいまないわけです。結局そういうことがない、これは本当にどこへ行って聞いても何もないわけです。  ですから、計画段階でまずそういうことが行われ、そしてこれが発注される段階におきまして、この大きな政策目標というものを直営でやるなら別だけれども、これがみな請負業者によって行われるのですから、請負契約の中でその政策目標が達成されるように、その契約約款の中にこれを明記して義務づける必要があるのじゃないかと思うのです、本当にこの政策目標を達成するのならば。しかし、それは全然ないのです。幾ら道と交渉しても、そういうことはできないの一点張りで、一歩の前進もないというのが実情です。  ですから、仮に道の気持ちとしては、そういうことをやるために起こした事業であっても、強制力も義務もないということになりますと、請け負った業者は必ず一番能率の上がるときにやるというのは当然だと思うのです。能率の悪いときにやって雇用確保をせんければならぬからというように、いまの厳しい経済情勢ではやれるはずがないと思うのです。  ですから、そういう点を考えますと、幾ら期待としてはいろいろなものを持っても、強制力がない限りにおいては、やはり短い期間の一番能率の上がるときに集中してやるということになるのじゃないかというふうに思います。  それから、北海道季節労働者実態を見ますと、建設事業というのが非常に多いのです。建設事業ということになりますと、これは北海道冬季寒冷の状況では、いままで各参考人の方から言われたとおり、いまの技術水準でできないということはない、やれるけれども、やれば莫大に経費がかかりますということになる、こういうことだと思うのです。  としますと、それらのことを総合的に考えまして、いろいろ言われても、それによってこの約三十万人に及ぶ季節労働者生活の最低を支えてやるというようなことは、言うべくして不可能なことだと言わざるを得ない。そこの考え方を根本的に変えてかかるということがない限り、これは不可能だと私は思います。
  34. 池端清一

    池端委員 先ほどのお話によりますと、先般、景気浮揚災害復旧のために約二百十億円に及ぶ公共事業を道が実施をした。ところが、実際の御調査によりますと、留萌管内、十勝管内季節労働者の方がこれの恩恵といいますか、これによって救済されたのはゼロである、こういう数字が発表されたわけであります。ほかにもそういうような状況をもし資料としてお持ち合わせでございましたならば、ほかの実態もお聞かせ願いたいと思うのでありますが、こういうように政府や道が鳴り物入りで実施をしているこの公共事業に、季節労働者の皆さん方が何らこの救済の措置を受けていないという原因といいますか、要因というものは一体那辺にあると参考人はお考えになっておられましょうか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  35. 田村武

    田村参考人 その原因はいろいろあるのでしょうけれども、北海道にとってはこれほど重大な政策課題はないと思っているのです。これは道当局とも何回も交渉をやりましたが、そういうことについての見解は完全に一致するのです。北海道における最大の政策課題はこれだということはわかるのですけれども、なかなか道独自でもってその施策を展開することは不可能、勢い国におぶさざるを得ない。これは財源的にもそういうことになるのです。ところが、それはなかなか国の政策として生まれ出てこないということがある。  そういうようなことを踏まえまして、やはり地方の、道にしても市町村段階にしても、担当する方々にしては非常に重大なものとして受けとめて、何とかせんければならぬということで気は焦るけれども、実際になすすべがない、そこには国の厚い壁があるということが一つだと思います。  それからもう一つは、それらのいろいろな施策を立てるに当たって一番必要なことは、実態把握だと思うのです。正確なバックデータというものを持たなければ、それに対応した適切な政策というものはとれないのだと思うのです。ところが、いま北海道の中で、私たちも数を挙げて言っているのですけれども、たとえば二十八万九千人の人がいるのですというのも、どこの町村のだれだれがおって、これがそうで、これを集めたらこうなるという数字ではないのです。職業安定所へ行って離職票を出して求職の手続をした、そうして審査を受けて一時金のいわゆる失業給付を受けた人の数がこれだけですということなのです。  ですから、今度五十日の短期特例給付ということになりましたのですから、そうすると、その五十日の一時金をもらった、その後の生活はどうなっているのか、その後どういう仕事についているのかということは全く盲なわけですね。盲ですから、それに対する適切な施策を立てようといったって無理だと思うのです。  ですから、これの調査をすることは、もうとにかく北海道は広いし、数も多いですから大変だと思いますので、そこで私たちとしては、まずバックデータをきちっとつかんで、そしてどう処理するかということをやって、市町村ではこれをやる、道ではこれをやる、ここはできないから国に頼むというようなことをやらなければだめじゃないか。  だから、私たちも積極的に協力をするので、市町村段階において、労働者団体あるいは事業主団体あるいは市町村当局、それから職業安定行政、こういうものが一体になった機関をつくりまして、そこでもって現状把握というものをぴったりしよう、その上で物を言わなければ、国に言ったって相手にしてくれないのはあたりまえじゃないかということで強く要請しまして、道も最終的にそういうような指導をするということまで言ったのですけれども、まだ本気ではないんですね。  ですから、できるできないは別にして、そういうものをきっちりして全体の理解を得るようなことをやらなければ、きっちりしたものもつくらないで、いろいろなことを、抽象的な議論をしてみたってしようがないと私たちは思っているのです。  ですから、そこのところを、国の指導としてもそういう状況把握の上に緻密な対策を立てるように指導していただきたいというようなことを私たちは切望しております。
  36. 池端清一

    池端委員 先ほど雇用保険の四十日分打ち切りによって生活保護に転落する者も数多く出てきているということをお述べになられましたが、前年度比でどういう状況になっておるのか、もし具体的なデータ等がございましたならば、ひとつお示しを願いたいと思うのであります。
  37. 田村武

    田村参考人 五十年、これは九十日分を受給したときですね。それから五十一年、昨年の暮れから申しますと、対前年同月比でありますが、十一月が四百六十六の増、十二月が六百八十八の増、一月が七百七十五の増、二月に至りまして、これが急増しまして千三百四の増となっております。こういうような傾向から見まして、五十日分が切れてしまうというのは、二月から三月に入りますね。ですから、三月というのは、もっと非常に大きな数字が出ているのではないかと思うのですけれども、それはまだ集まっておりませんものですから……。そういう傾向であります。
  38. 池端清一

    池端委員 先ほど北海道季節労働者が、本州の他の府県とは異なった特殊性を持っているというふうに言われましたけれども、その特殊性というものは一体具体的に何なのかということでひとつお尋ねをしたいと思うのであります。  たとえば北海道季節労働者の性別の状況はどうなっておるか、あるいは年齢別、就労産業別あるいは就労地域別といいますか居住地別、そういうような数字がございましたならば、お示し願いたいと思いますし、さらに専業季節労働者と他の農林漁業等との兼業の季節労働者、こういう分布の状況はどのようになっておるのか、具体的な数字があれば、ひとつお示しをいただきたいと思います。
  39. 田村武

    田村参考人 先ほど北海道季節労働者というのが、内地府県に比べまして全く特殊な条件にあるのだということを申し上げました。これの一番大きなものは、やっぱり北海道季節労働者というのは専業が圧倒的に多いということであります。二十八万九千人のうち専業が二十五万一千人であります。農林漁業との兼業が三万八千人。率で言えば専業が八七、兼業が一三。これは内地府県に比べると全然違う状況であります。  なぜこうなっておるかといいますと、こういう専業者ですから、結局、夏場仕事のできる間は働いて、冬の間は仕事ができない、だから、失業という状況になっているという違いがあるわけです。そしていまのような経済情勢でありますので、冬場働きたいと言ったって仕事はないわけであります。こういう状況が全く違うということが最大のものだというように思うのです。  性別で申し上げますと、男が七〇%、女が三〇%ぐらいです。年齢別で言いますと、四十歳以上が五五%ぐらいです。四十歳未満は四五ぐらい。産業別の就労人口で言いますと、農林水産が四・八、建設が七四・八、製造業が一〇・三、その他が一〇・一、こういうことであります。それから就労地域別で見ますと、道内が九七・一。これも内地府県に比べたら全然違う特殊事情であります。道外が二・九であります。それから居住地別に見ますと、道央が三一・三、道南が二八・九、道北が一六・八、道東が二三・〇というようなことになっているわけであります。
  40. 池端清一

    池端委員 季節労働者方々平均就労期間は、先ほどのお話によりますと七・八四カ月、こういうことのようでありますが、それでは平均年収はどのようになっておられるか。先ほど岡本参考人だったかと思いますが、お触れになっておりましたが、その辺の実態をもう少し明らかにしていただきたいと思います。
  41. 田村武

    田村参考人 平均就労期間は七・二六であります。平均の保険の受給日数は、これは五十年でありますけれども、八十七日になっております。これは御承知のとおり、五十日分を選択することも自由でありましたから、そういうものが一部あったということで八十七日平均で、九十日を選択をした人は九十日の受給をした、こういう状況であります。  それから、保険の給付日額ですけれども、これは男子でもって三千五百八円、女子で三千八十九円。ですから、男子の賃金が大体六千五百円ぐらいだったというように推定されます。それから平均年収なんですが、これも就労期間賃金と、それから後の保険金というもので見ますと、男子が百五十八万八千円。これは賃金が八〇・九、保険が一九・一%の割合であります。女子が八十一万一千円。これは賃金がやっぱり八〇%、保険が二〇%、こういうことになります。  ですから、この賃金の水準、それから雇用期間というのは、五十一年度になりますと、若干ダウンしているというように言えると思います。まだ集計が出ていないわけですから、推定にすぎませんけれども、厳しい情勢を反映して期間も、それから賃金もダウンしているのではないかというように思われます。それに四十日分のカットということになってまいりますので、単純にそれだけ見ましても、五十一年の実収というのは、五十年に比べて一〇%以上この分だけダウンしているということが言えるように思います。
  42. 池端清一

    池端委員 北海道ではいまこの問題が大変な社会問題、政治課題になっているというふうに思うわけでありますが、実は昨年暮れの衆議院選挙におきまして、北海道における雇用保険改正の問題というのが大きな争点になった。自民党の皆さん方も含めてどの政党の方々も多くの方々が、この雇用保険制度の抜本改善をやって、そして季節労働者雇用と暮らしを守らなければならない、こういうふうに述べておられたというふうに私は承知をいたしておるわけでありますが、参考人はその辺の事情について御承知でございましょうか。
  43. 田村武

    田村参考人 昨年の総選挙の際、私が聞く限り、与党であります自民党を含めまして各政党の候補者が全部この問題を非常に大きな問題としてとらえまして、必ずこれは回復をする、そして雇用の不安をなくするということを訴えられておりました。私たちは、そういう状況でありましたので、もう今度の国会では、問題なくこの問題は解決されるものと非常に大きな期待を持っておったことは事実です。そしていま、こういうような状況で停滞をしておりますものですから、そういう面からも非常に政治に対する不信というものは高まっておりますし、また不安に駆られている、こういう実情であります。
  44. 池端清一

    池端委員 御案内のように、新海洋法時代を迎えました。日ソ漁業交渉も、非常に残念なことでありますが行き詰まり、中断という状況で、これが北海道のみならず、日本の漁業に大きな影響を与えておるわけでありますが、とりわけ北海道の漁業は甚大な影響を受けております。この漁業関連労働者に与える影響というものも、これは大変だというふうに考えるわけでありますが、そういう意味で、漁業関連労働者は今日深刻な雇用不安の状況に陥っているのではないかというふうに思われますが、その辺の実情についてお伺いをいたしたいと思ます。
  45. 田村武

    田村参考人 先ほども申し上げましたけれども、またこういう非常に大きな問題が出てまいりまして、私たちだけではなくて、北海道の道民ことごとく非常に深刻な不安に襲われているわけであります。特にニシン漁業が全然だめということで、ニシンをとっているのは本当に零細な漁業家です。ですからこれは深刻ですね。それからスケトウその他のすり身の原料がないということで、これは水産加工場はもう今月の初めからべったり操業中止です。原料がないのですからやろうたってできません。それからまたまた深刻なのが、魚を港から加工地まで運搬をしておりました、それ専業にしておったトラック業者というものがあるわけですね。これが大変深刻なんですね、全く仕事がないですから。それから、もちろん網をつくるとかその他の関連する業種人たちの不安というものは大変なものですし、これは言うまでもないのですけれども、そういうものがずっと衰微をいたしますと北海道経済全体がぐっと沈滞するのですし、みんなが深刻な不安に駆られているわけなんです。  それで、二百海里から引き揚げようというようなことが新聞に報道されましたときに、すぐ解雇の問題、解雇が始まるというような記事が出まして、私たちもこれは大変なことだと思いまして直ちに道と交渉をやりました。いまこういうことでもって漁業交渉が行われているときに、原料がなくなった。原料がなくなったら休むのはあたりまえだ。だからすぐ解雇、これでは余りにひどいのだから、国の交渉の推移も見守る。国の補償の推移も見守る。現行の法体系の中でもいろいろやれる措置はある。道自体の責任においてもそういう結論が出るまで解雇というものは抑えてくれということで交渉をやりました。道もこれは真剣に受けとめておるわけでありますので、直ちにそういう点の調査もし、そういうことのないようにということでやっておるのですけれども、何せ強制してどうというわけにもいきません。ですから、とにかくトラック業者などの中にはもう非常に解雇が出てきておる。それから加工業等の中にも、臨時、パートという人たちが非常に比率が大きいですから、これは日雇いという状況でありますので、休業になって、働かなければ賃金は払わぬという問題がすぐ起きてきているわけですね。道としてもいろいろな措置を考えておる。職業安定所を通じ、その他出先を通じて直ちに対応はする。特にパートとか臨時の人についても、日雇いなんだからすぐ解雇をとか——初めから雇わぬのですからね。そういうことで生活の道がすぐ断たれるということのないように、母子家庭等については特段の配慮をするようにというようなことも言っておるのですけれども、これは何日かで決着つくであろうというときの話ですから、けさのニュースのようなことになりますと、これは非常に大きな問題になっておるわけであります。この点も先生方の特段の御配慮というものを特にお願いしたいというように思います。
  46. 池端清一

    池端委員 先ほどもお話ございましたが、短期雇用特例保険者として五十日の給付を受けられた方が、その後どういうような就職をされているのか、どういう就労状況なのか、属人的に具体的な資料はない、これは道もそういう資料は持っていないというお話でございましたが、どうもその点、私どもとしては行政の怠慢と言わざるを得ない、こう思うのでありますが、事実そういう状況なのでしょうか。その辺についてちょっとお尋ねをしたいと思うのであります。
  47. 田村武

    田村参考人 事実そのとおりであります。ですから、私たちが道と交渉しまして、もちろん見せられない資料もあるし、見せたくないのもあると思うのです。あると思うのですけれども、いまのこの季節労働者の五十日受給もどうなっているのかということについてはかいもくわからないというのが真実だと思うのです。ですから、それをわかるようにまずやろうということを私たちは強く主張しております。
  48. 池端清一

    池端委員 私から最後にお尋ねをいたします。  実態はより鮮明になったわけでありますが、この際、参考人としては、今日のこの窮状を打開するためには、ずばり何を政治に求めておられるのか、政治は何をすべきだというふうにお考えになっておられるのか、率直な所信をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  49. 田村武

    田村参考人 まず、いろいろな施策を講じられるのは私たちは大歓迎です。協力したいと思うのです。通年雇用促進する、公共事業をふやして、そうして早く発注して遅くまで仕事のできるようにして平準化する、通年雇用に向けて助成もする、育成もする、これはもう本当に本気になってやっていただきたいのです。しかし、それが、先ほども言いましたように、短期間に達成されるとはとうてい思われないのです。ですから、いま一番やってもらいたいのは、そういうことで生きることに苦しんでいる人たちに安心を与えてもらいたい。そのために何かと言いますと、五十年までやっておりましたその人たちに対する九十日の給付、これはやっておったことなのですから、できないはずはない。そして、選挙において各党の候補者がこれをやると公約された。このことをいまやってもらう。抜本的なものができるまでの間、これを当面の問題として暫定的にやってもらう。そうして、その方法というのは私たちは問いません。いずれの方法、保険がいいのか、何がいいのか、いろいろ方法はありましょう。方法は問いませんが、あの結果、そのために生きることができなくて苦しんでいる人の生活を立て直してやること、その人たちに安心を与えてやること、このことを政治の信用にかけてやってもらいたい。このことを強く要請いたします。
  50. 池端清一

    池端委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
  51. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 村山富市君。
  52. 村山富市

    ○村山(富)委員 いま北海道の特に出かせぎ労働者を中心とした深刻なお話があったわけでありますが、けさのニュース等を聞きましても、二百海里の日ソ交渉が中断をした。したがって、その関係労働者はほとんど休業状態解雇に追い込まれていくのではないかということが懸念をされるわけでありますが、そうしますと一問題は道や各市町村に対して大変な要求が突き上げられてくるということも考えられるわけです。     〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで市長さんに、北海道の市長会を代表したという立場でお尋ねをしたいと思うのですが、国に対してこの解決策についてはどういう要望を持っておられるのか、もしお考えがあれば承りたいと思うのです。特に船員の場合は、これは雇用保険の関係もございませんし、雇用調整給付金等の活用についてもいろいろ問題があると存じますし、仮に雇用調整給付金が出たにしてもそれだけでは問題が解決しないわけですから、いろいろな問題がこれから出てくると思うのです。そういう問題の解決のために、具体的に国に対してどういう御要望をお持ちであるか、お考えがあればお尋ねしたいと思うのです。
  53. 國井英吉

    國井参考人 二百海里の漁業交渉が一時中断ということで、関係の市町村長はもちろんでありますけれども、ここに働く方々も非常な驚愕をしておるのではないか、このように考えるわけでございます。士別市は内陸の町でありますけれども、北海道市長会の大きな問題としてやはりこれは考えなければならないことであると思います。先ほど田村参考人からもお話がございましたように、特に影響を受けておりますのが加工業者の従業員の方々でございまして、市長会が調べた数字によりますと、影響を受ける加工業者の数が八百四十六カ所、従業員数が二万人からおりますけれども、この中でいわゆる被保険者の該当を受ける者が一万八千人くらいあるということでございます。  これらの対策については、当然に先ほど来いろいろと質疑があったとおりでございまして、この雇用問題、特にまたパートの方々に対する対応策というものはぜひとも実施していただかなければならない、このように考えるわけでございます。さらにまた、市町村がこれらに対応する施策としては、短期の労務者に対するような生活資金貸付事業、あるいはまたこれに対応するいわゆる救済対策事業、たとえば清掃事業等にこれを吸収するという市も出てきておるわけでございまして、市町村の財政負担もこれに伴って出てくるものと思われるわけでございます。  さしあたってこの問題として市長会が考えて、またお願いをしておりますことは、いわゆる雇用調整給付金制度、さらにはまた中小企業転換対策臨時措置法の両制度を水産加工業界にも適用してもらいたいということで、道とも十分な打ち合わせをしながらこれの実現に努力をいたしておるわけでございます。私、大変内陸の地でございまして、具体的な御説明はできませんけれども、大まかに言いましてそういった方向でただいま努力をいたしておるわけでございます。
  54. 村山富市

    ○村山(富)委員 下川参考人にちょっとお尋ねしたいのですが、先ほど意見の中で、過剰雇用の問題が相当深刻な問題としてお話がございました。特に最近の傾向を見ましても、繊維や造船あるいは木材、砂糖、そういうところに集中的にあらわれているようにも思うのですが、この過剰雇用が生み出された原因は一体何なのか。大体過剰雇用と考えられる人員というのはどの程度あるとお考えになっておられるのか。もしおわかりになればお答えいただきたいと思うのです。
  55. 下川常雄

    下川参考人 お答え申し上げます。  昭和五十年の二月が鉱工業生産が一番下になったときでございまして、そのとき日経連で推定しましたが、過剰雇用者が約二百万ということを推定いたしております。ところが、その後いろいろ人員整理等もありまして、先般三和銀行の調査部でこういう資料をお出しになりました。それは、一番生産が正常だった四十八年の十月から十二月までの単位当たりの労働生産性を一つ出されまして、昨五十一年の十月から十二月までの労働生産性との差を見られて過剰雇用率というのをつくって、これを各業種にずっと割り当てました。そして五十八万、約六十万という数字が出されました。そして三和銀行の方から日経連の方にコメントがございまして、いまわれわれで推定いたしておりますのは七十万から八十万ぐらいの過剰雇用者がある。したがって、三和銀行さんの推定されたのよりも実際は約十万から二十万多いのじゃないか、そういうふうにわれわれは推定をいたしております。
  56. 村山富市

    ○村山(富)委員 過剰雇用がいまお話がございましたように七十万から八十万ある。そういう過剰雇用が生み出された原因は一体どういうところにあるとお考えになりますか。
  57. 下川常雄

    下川参考人 これはやはり、不景気になって仕事がなくなって、操業率が減ったということだと思います。しかし、それを欧米のようにレイオフをしないで、できたら従業員の解雇を防ぎたい。例を申し上げますと、直接工はそのまま減りますから、直接工から間接工へ回す、そういうことで、したがって、間接工がいままでは、たとえば機械の点検とか油差しとかいうのは一人でやれたところを二人でやるというようなことで出てきた数字過剰雇用者として残っておるわけであります。
  58. 村山富市

    ○村山(富)委員 きょうはここで議論するわけじゃありませんけれども、ちょっと申し上げたいと思うのです。  経済成長の中で必要以上の設備投資がなされた面もあると思いますし、同時にまた、こういう景気変動によって産業全体の合理化をやる必要がある。そういう要請に基づいて企業が縮小される、そのために過剰人員が出てくる。いろいろな要因があると思うのです。こうした要因を考えてまいりましても、過剰になった労働者は、労働者自体に責任はないと私は思うのですね。やはり国の産業政策なりあるいは経営者の方針なり、そういうものによって過剰人員がもたらされてきているわけですから、したがって、いま国会で審議いたしております雇用保険法にしても、たとえば景気の変動とか産業構造変化によって生み出される過剰労働をどういうふうに救済していくかというところに重点があって、職業訓練をやって職種転換をさせるとかいったような方途が講ぜられるわけですけれども、しかし、たとえば中高年になりまして、仮に三十年間一つの仕事をやってきた、これから全然違った新しい職場にかわっていくという労働者の立場なり気持ちを考えた場合には、私は大変な問題だと思うのですよ。そうしたことを考えた場合に、いまお話がありましたように、たとえば直接工から間接工にかえていくというようなことをいたしましても雇用関係は不安定になるということが言えると思うのです。したがって、いま考えられている方法によりますと、不安定職場に回されるとかあるいは中高年になっていやいや職業転換するとか、そういう気の毒な場面に追い込まれていくわけですね。  ですから、私は、いまお話がございましたようにできるだけ解雇者を出さないように、そして安定した職種につけるようにするためには、一つの大きな柱として時間短縮が考えられると思うのです。労働省も時間短縮等については行政指導を通じてやっておるというふうに説明を受けていますけれども、経営者としてはこの時間短縮の問題についてはどういうふうにお考えになっておるか、ちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  59. 下川常雄

    下川参考人 いま企業では、製品自体は世界的になりまして、仮に日本で時間を短縮いたしまして、時間を短縮するということはコストが上がるということです。コストが上がるということは結局国際的な競争力が減ってくるということになりますので、外国と比較して特別に長時間をやっておるということはもちろん避けなければいかぬと思いますが、働く人をふやすために時間を短縮してコストを上げるというのは、先ほど言いました国際競争力から見れば好ましいことじゃないと考えております。
  60. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうすると、国際競争力によるコスト計算からして時間短縮はちょっと無理があるとお考えになっておるわけですね。
  61. 下川常雄

    下川参考人 そうでございます。
  62. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう一つお尋ねしますが、五十一年度に改正されました雇用保険法で身障者の雇用率を若干上げて、しかもその雇用率に達しない業者については納付金を納めてもらうという制度ができたわけですね。身障者の就職問題、雇用問題というのも相当深刻な問題としてあるわけですよ。この制度ができたとき、納付金さえ納めればもうそれで済むじゃないか、こういう考え方に立たれますと、本来における身障者の雇用促進するという趣旨からしますと相当問題が出てくるのではないか。ですから、やはり決められた雇用率はできるだけ果たしていただいて、そして身障者も雇用していただくということの方が大事ですが、身障者の雇用問題等についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  63. 下川常雄

    下川参考人 お答えします。  実は私、兵庫県の心身障害者雇用促進協会の会長をやっておりますので、身障者の雇用ということについては非常に関心を持ってやっております。去年つくられました率が一・三から一・五に伸ばされましたが、それについて、もし達しないところは納付金を取るということになっておる。私、雇用促進協会の兵庫県の会長としては、そういうふうな納付金を出して済むのではなしに、できるだけ身障者を雇うというのが主だから、そういうふうな指導と言うとおかしいですが、助成の方法をとっております。少しずつは伸びてきております。
  64. 村山富市

    ○村山(富)委員 終わります。
  65. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、古寺宏君。
  66. 古寺宏

    ○古寺委員 時間が限られておりますので、要約していろいろとお尋ねを申し上げたいと思います。  まず最初に、北海道季節労務者でございますが、先ほどから約二十九万人とか三十万人というようなお話がございましたが、これは最近の動向といたしまして、過去十年ぐらいの間にこれがふえているのかどうか。さらにまた、先ほどからいろいろお話がございましたように水産加工業、水産業の問題、あるいは農業の生産性の向上等に伴いまして、当然この産業構造影響でこういうような季節労働者が今後、ふえるというようなことも予想されますので、そういう北海道季節労務者実態につきまして、國井参考人からひとつお聞き申し上げたいと思います。
  67. 國井英吉

    國井参考人 北海道季節労働者の推移についてのお尋ねでございます。先ほど来お話が出ておりますように、北海道季節労働者は一口に三十万、正確に言いますと二十八万と言われておるわけでございますが、この数はここ数年の推移でございまして、大体過去五年ぐらいの間におよそ五万人近いものがふえておる、私はそのように考えております。
  68. 古寺宏

    ○古寺委員 また同じようなことを繰り返しますが、今後の産業構造変化に伴って、これがさらに増加していく傾向があるとお考えになっておられるかどうか。田村参考人にお伺いしたいと思います。
  69. 田村武

    田村参考人 いまの状況で判断をいたしますと、先ほどから論議になっております漁業関連産業というものが非常に大きなウエートを占めてくると思うのです。これはやはり職業転換の訓練をするとか、いろいろな方法によって解決をせなければならぬことだとは思うのですが、それもいまのような実情から見ますとそう簡単なものではない、こう考えられます。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕 そうしますと、それは大量失業者となっていく、そしてそれは季節的労働に入っていくというような状況になっていくのではないだろかというように思います。
  70. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省側では、補正予算あるいは災害復旧工事等の公共事業、総額にして約二百十億と言われておりますが、この年度内の実施によりまして、現在のこの非常にお困りになっておられる二十九万人の季節労務者を相当に吸収ができる、実効が上がっている、こういうふうに申されておりますが、こういう点につきましては実態はどのようになっているのか。國井参考人の方からお答えをお願いしたいと思います。
  71. 國井英吉

    國井参考人 公共事業の、特に債務負担行為による実態等についてはどうなっておるかということでございます。実は本年に入りまして初めて災害復旧費の債務負担行為事業が三月末に、士別市の例でございますけれども、発注をいたしたわけでございまして、その数字がおよそ六十万、吸収人員が四百人、さらにその賃金がおよそ二千万ということでございます。このような非常に季節労務者が困っておる時期でございますから、この債務負担行為による災害復旧事業については、私ども、国の措置に対しまして心から敬意を表しておるわけでございますけれども、士別季節労務者は二千八百人、その数からいたしますとまことに微々たる対策事業ということになるわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、この二十九万人と言われる季節労務者公共事業等で救済するということは、田村参考人も申し上げておりますように、とても困難な問題であります。いまこのうちの三〇%、およそ七万人を対象に何かしたいということを、国の方におかれましてもいろいろ考究されておられるようでございますけれども、仮にこの七万人を対象に考えただけでも、数百億の事業がなければ救済できないということになるわけでございますから、これはとうてい不可能に近い問題だろう、私はそのように思うわけでございます。先ほど申し上げましたように、現在就労したいと思ってもできない者がほとんどでございまして、士別の二千八百人のうち内地府県に出かせぎに行っておる労務者はわずかに百八名でございますから、物の数ではないわけでございます。そういう実態にありますので、これはどうしても総合的な、長期的な観点に立って対策を講ずると同時に、これに並行してセットになって、生活保障的な施策をぜひとも講じてもらわなければ困る、このように考えておる次第であります。
  72. 古寺宏

    ○古寺委員 また労働省は、通年雇用促進するために職業訓練に相当力を入れまして、この職業訓練の推進によって、これもまた季節労務者を相当に吸収できる、こういうことを申されておりますが、実際にこの職業訓練によってそういうことが可能かどうか。その点につきまして國井参考人から承りたいと思います。
  73. 國井英吉

    國井参考人 先ほど来申し上げておりますように、季節労務者のおよそ八〇%近い者が建設労務者でございます。しかも、これらの方々夏季就労型でございますから、夏働いて冬休むというサイクルを繰り返しておるわけでございます。その建設に従事しておられる方々のいわゆる職種でございますけれども、これは土工も非常に多いわけでございますが、左官、大工、配筋あるいはとび職、こういった方々もかなり多いわけでございます。地元建設産業の皆さん方は、これらの方々の冬場の確保ということに非常に頭を痛めております。雪が解けますと直ちに仕事に入らなければならない、そういう時点におけるこれらの技能労務者確保ということが建設業界では非常に重要な問題であるわけでございます。そういう意味からいたしますと、私は、これらの技能労務者に対します職業訓練ということは非常に重要な施策であると思います。  私どもの市でもすでに十年来、特別にお願いをいたしまして、毎年二十名の技能労務者の短期の養成訓練を行っておるわけでございまして、これの地元産業に寄与しておる点は非常に多大でございます。しかし、士別市の場合でございますけれども、わずか二十名、これだけの職業訓練を行って果たしてこの問題の解決になるかどうか。しかも、訓練中はいろいろな手当が出ますからいいといたしましても、再びこれは同じ繰り返しになるわけでございますから、私はこのことは根本的な解決にはならない、このように考えるわけでございます。
  74. 古寺宏

    ○古寺委員 先日も私は委員会労働大臣に強く指摘申し上げたのでございますが、いま第三次雇用対策基本計画というものが各都道府県でつくられております。その中で、この季節労務者実態調査、これが十分に行われないままにこの基本計画がつくられているということは、非常にこれは残念なことなんですが、現在労働省実態調査をいたしておりまして、六月には北海道季節労務者方々実態が判明する、それによって総合対策を立てていくというようなお話がございました。さらにまた、現在北海道庁ではプロジェクトチームをつくって季節労務者に対する対策を進めている。こういうお話があったのでございますが、田村参考人の方から、どのようにこういう問題について掌握をなさっておられるか、承りたいと思います。
  75. 田村武

    田村参考人 先ほどから申し上げておりますように、その数自体も職業安定所給付を受けた者の数という把握しかないわけなんです。そして、これが各市町村にどのように分布をし、そして短期給付を受けた後の就業失業状況がどうなっているのか、こういうような調査というものも全くないというのが現状です。  そういう中で、いまのお話でございますが、この六月までに北海道実態を把握すると言われておるそうですが、私たちはそういうことについては承知をしておりません。ですから、いまの北海道の職安行政その他の状態を見ておりますと、それだけのことを六月までにやって雇用基本計画の中に盛り込む、きめの細かい施策をその中で考えるというような実態把握には全然ならぬだろうというように思います。それだけ職安行政そのものに余力がないという状態だと私は思います。
  76. 古寺宏

    ○古寺委員 また労働省は、道内、道外の就労あっせんのために、ただいまお話がございましたように職員が足りないので本省の方から職員を派遣して、相当道内、道外の就労あっせんに力を入れている、相当効果が上がっているというようなお話があったのでございますが、この点につきまして岡本参考人の方から、もし内容について御存じでございますならばお答えをお願いしたいと思います。
  77. 岡本正巳

    岡本参考人 全道的な数字はつかんでおりませんけれども、この一月十二日に岩内の公共職業安定所で道外への出かせぎのあっせんを行いました。岩内の町では現在失業給付の受給者が二千六百人ほどおります。大体士別市と同じぐらいの出かせぎの労務者がおるわけでございますけれども、このうち道外へ行きましたのが百名に満たない九十数名ということで新聞の報道がございました。ですから、実際上はかけ声だけで、なかなか道外の出かせぎがはかどらないという実情にございます。  それは、先ほど申し上げましたように労働条件が違います。安定所で話を聞いて、北海道より幾らかいいのではないかということで内地へ参ります。しかし、言ったことと、それから実際に働いてみると労働条件が違うということで、家族にも満足に仕送りができない。先ほど申しました千葉の例でございますけれども、七人の人々が一月に家族に仕送りできた金額は一人四万円ということで、残された家族もこれではとても生活ができないということで、お父さん、これではどうにもならないから早く内地から帰ってきてくれ、かえって北海道にいて生活していた方が金がかからなくてよいというふうな状態でもございます。そういう点では、労働省の方のお話とは実態がかけ離れているという感じを私ども現地で深くしております。
  78. 古寺宏

    ○古寺委員 この北海道、東北のような積雪寒冷地帯で冬場の公共事業をふやして季節労務者を救済するということはなかなか困難なことでございまして、現在も建設省で研究会をつくりまして、そういう冬季間の施工を促進するような研究をいま進めているわけでございますが、この結論が出るのが昭和五十五年と、こういうふうに言われております。したがいまして、それまでの間、現在の二十九万にも上る季節労務者の方を何とかして救済しなければなりませんし、また抜本的な対策というものもこれは政府として当然考えていただかなければならぬわけでございます。北海道の市長会の方でもいろいろと抜本対策についてはお考えになっておられると思いますが、そういう点につきましての御意見をひとつ國井参考人から承りたいと思います。
  79. 國井英吉

    國井参考人 先ほどからもいろいろお話がございますように、二十九万人、三十万人という季節労務者を抜本的に救済するということは非常に大変なことであるわけでございます。特に北海道あるいは東北のように、夏就労型であって冬失業型という、これは内地府県の季節労務者とは全く逆のサイクルになっておるわけでございますから、冬季他府県に出かせぎに行くということは、すでに先客がおられるわけで、これは雇用がなかなかうまくいかないということは当然のことだと私は思うわけであります。まして、このような不況のもとでありますからさらにそれが深刻になる問題であります。したがって、どうしても地元、道内なら道内で行うこれらの救済措置が講ぜられなければ抜本的な対策にはならない、このように考えるわけでございます。  しかも、この問題は単に季節労務者の問題だけでなしに、北海道全体の開発の面からも重要な問題でございますから、ただいま国におきましてプロジェクトをつくられて、いわゆる冬の公共事業の施行にかかわるもろもろの技術的な面から始まって研究なされるということは非常にありがたいことでありますけれども、しかし、お話にもございましたように、これは相当の期間を要するもの、このように考えるわけでございます。  私ども市長会といたしまして、これらの問題について特に強調してまいっておりますことは、一つは公共事業の量の拡大の問題また事業の施行に当たっての繰り上げ、繰り下げの問題、さらにまた私が特に考えていただきたいと思いますことは、夏場賃金体系を冬場のいわゆる失業期間も含めた体系がとれないかどうかという問題が一つあると思います。そのようなことで、雇用の場の確保をぜひとも考えていただきたいと同時に、これはそれだけでは二十九万人の季節労務者をとうてい救済できるものではございません。どうしてもこれと並行しての社会保障、生活保障がセットにならなければ私は解決が困難だと思うわけでございます。そういう意味で、道市長会といたしましては、四十日分のカット分については何らかの措置で回復をしていただきたい、こういうことを従来からお願いをいたしておるわけでございます。ぜひとも長期的な、総合的な対策が少なくとも講ぜられるまでの間は、そういったセットでひとつ何とかこれらの方々の救済措置を講じていただきたい、このように考える次第でございます。
  80. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほどもお話がございましたが、地方自治体が生活資金の援助ですとかあるいは単独の事業をおやりになっているということでございましたが、自治省の方では特交の枠でもって四億数千万円の措置をしている、こういうようなお話も漏れ承っているのですが、果たしてそのような枠でもって十二分に単独の事業ができるのかどうか。また、季節労務者方々を果たして救済できるのかどうか。こういう点につきまして國井参考人から承りたいと思います。
  81. 國井英吉

    國井参考人 北海道市町村がもろもろの対策を講じておりますことは先ほど来申し上げておるところでございまして、生活資金貸付事業、最低十万から三十万ぐらいの、また利率を一〇%から最低のものでは七・六%程度のもの、さまざまなものがございますけれども、いずれも貸付金制度、さらにまた利子補給等の措置を講じておるわけでございまして、貸付総額は現在一億四千八百万円、こう言われておるわけでございます。さらにまた、就労対策といたしまして、道路の除雪あるいはじんかい処理、排水口の床ざらい、あるいは市町村有林の間伐、こういうような作業に従事するための事業費としておよそ十億余り使っておるわけでございます。  これに対しまして、北海道自体といたしましても地方振興資金の貸し出し等の措置も講じていただいておるわけでございますが、ただいまお話がございました特別交付税の問題でございます。四億何がしという金額については、具体的に私もその金額は承っておらないわけでございますけれども、御承知のように、特別交付税につきましてはルール計算の面と特別財政需要の面と両建てになっておるわけでございまして、特別財政需要の面にどのくらいの季節労務者に対する財源措置として行われておるかということについてはちょっとわかりかねるわけでございます。ただ、実際にこういった対策事業に対して国が特別交付税等で措置いたしますとするならば、いわゆる特別財政需要というような形でなしに、ルール計算でこれがきちっとした形で交付されることが私どもとしてはありがたい、またそうすべきではないだろうか、こういう感じがいたします。いずれにいたしましても、北海道の場合は五十一年度を対象とすることになるわけでございますから、今後におきましては、ぜひともこういった財政措置につきましてはルール計算で交付できるような考え方をとっていただきたい、このように考える次第でございます。
  82. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほどから何回もお話がございましたのですが、北海道季節労務者方々が、まず第一には地元で働きたい、そしてまた九十日給付をぜひ実現していただきたい、そういう強い御要望があるようでございますが、こういう点の事情につきまして、岡本参考人の方からもう一度承りたいと思いますが。
  83. 岡本正巳

    岡本参考人 地元といたしましては、先ほど申し上げましたように私どもの町は漁業を主体としている日本海の町でございます。マス漁、それから冬季間のスケトウ漁、それからイカ漁等で町の経済が成り立っておる。それにさらに建設季節労働経済を潤しておる、こういう形になっております。ところが、この日本海のマス漁が二百海里問題で全然見通しがつかないということで、いま漁業協同組合自体が、どうして生活したらいいのか、漁業に従事する人々をどうしたらいいのかということで頭を悩めております。漁業協同組合の生産高は昨年で四〇億を超えるまでになりました。これは漁業者の努力によるものでございますけれども、そのうち半分が大体マス漁ということでございます。こういうことになりますと、もう町の経済はどうにもならないということでございますので、どうしても九十日を復活してもらいたいというのが地元の町長の意見でございます。私、こちらに参ります前に、役場に電話をかけまして、経済部長などとも話をしましたが、ことしは何とか一億円町費を持ち出して仕事をやったけれども、来年度からの見通しが全くない。来年もこういうことをやれというのであれば町の財政はパンクしてしまうということを痛切に訴えておりまして、そういうことにならないためにも、何とか九十日を復活してもらいたいということでございました。  先ほど先生から道外の就職の問題でちょっとお尋ねございましたが、資料がございましたのでいまお答え申し上げたいと思います。  北海道といたしましては、道の労働部の二月二十八日現在の調査でございますけれども、道自体も道外の就職について手を打たなかったわけではございませんで、道幹部による主要都府県への求人要請というものを昨年の九月二十日から十月一日にかけて行っておりまして、また二回目は十月二十四日から十一月十三日にかけて行っております。どこに行ったかと言いますと、東京、愛知、神奈川、埼玉、千葉、岐阜、大阪、兵庫、静岡、こういうところにお願いをしております。  東京では千七百名を何とかひとつお願いしたいということで行ったのでありますけれども、実際はどうなったかと申しますと、昨年の十二月十三日から十八日にかけまして、東京都ほか六県が参加をいたしまして、十一安定所を対象として就職希望者の現地選考を行ったわけでございます。それに相談に参りました者が二千百五十名ということで、そのうち就職できたのが千二百七十名という状況でございます。東京には何とか千七百五十名お願いしたいということだったのですけれども、出かせぎで来れましたのが八百名ということで、半分以下の者しか東京にとにかく働きに来れなかったという実情でございます。     〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕  大阪の場合は、大阪には何とか二百五十名お願いできないかということでございましたが、八十名しか大阪に働きに行けなかったというようなことで、実際上、道の幹部が先頭になりまして各都府県に求人開拓に参りましても、不況とインフレの中でなかなか受け入れ先が見つからないというのが実情でございます。資料がございましたので先ほどの答弁を補足させていただきました。ありがとうございました。
  84. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど小寺参考人の方から、職業訓練に各種学校を活用してはどうかという非常に参考になる御意見を賜ったわけでございますが、具体的な進め方といたしまして、季節労務者なんかでもそういうような各種学校の利用による職業訓練というようなことは可能でございましょうか。
  85. 小寺勇

    小寺参考人 各種学校全体の分布状況を私把握しておりませんので、そういう意味からいくと少し抽象的になると思いますが、たとえば、季節労働者という対象よりは、地域的に失業状況が反復されておる地域に対して職業訓練と紹介を一元化するような雇用行政の確立、そういったことを考えていただくことがいいのではなかろうか。季節労働者の場合でも、単に建設労働だけではなしに、その人の能力開発という観点からいきますと、ほかの職業に転換できる素質を持っておられる人も多いのではなかろうか、こういうふうに思いますので、北海道の話をいろいろ聞いておりまして、そうした施策こそ北海道とかあるいは、きょうは出てないのですが沖繩、そういうところに必要ではなかろうか、こういうふうに思います。
  86. 古寺宏

    ○古寺委員 それから、北海道では就労平均期間が大体七・二カ月、こう言われておりまして、四月、五月、六月ごろまでが非常に仕事がないと申しますか、足りないようでございますが、これを平準化することによって相当に緩和できるのじゃないか、こういうことを労働省の方ではお話をしているわけでございます。この平準化の問題につきましては、北海道の市長会の方ではどういうふうにお考えになっておるか。國井参考人にお尋ねしたいと思います。
  87. 國井英吉

    國井参考人 北海道市長会としては、ぜひともこの公共事業等の平準化ということを御要請いたしております。しかし、先ほど来申し上げておりますように、冬季間、特に一月、二月、三月の厳寒期に公共事業実施するということになりますと、これは技術的なものは別といたしますと、どうしても通年施工という体系ができなければ不可能でございます。一つはそういうことがあると思います。債務負担行為で行うといたしましても、実際に事業実施されるのは四月に入ってからでございますから、厳寒期の仕事がどうしてもないということになるわけであります。したがって、通年できる体制をつくるということがまず一つ、これが私はいわゆる平準化のことであろうと思うわけでございます。これは、労働省の皆さん方もかねてから関係省庁と、この通年雇用、通年施工ということでいろいろと御苦心をなさっておるということは聞いてはおるわけでございますけれども、非常にむずかしい問題があると思います。しかし、これはぜひとも考えていただかなければならない問題でございますから、ぜひともこれの実現をお願いいたしたい。ただし技術的な問題がたくさんございます。  それからもう一つは、冬季間の事業でございますから、単価の問題、いわゆる事業費が非常にかさんでくることが考えられます。また、事業を施工する業者の面におきましても、それ相応の施設設備の充実ということが当然付加されてくるわけでございますので、それらを含めた総合的な施策を考えていただきたい、こういう主張をいたしておるわけでございます。
  88. 古寺宏

    ○古寺委員 三省協定によります労務賃金を見ましても、北海道は低い方に位置しておりまして、当然賃金もアップしなければなりませんが、それと同時に工事の予定も相当にアップしていきませんというと、こういうような平準化というものはなかなか無理があろうかと思いますが、現在、内地と北海道と比較いたしまして、工事単価等でどのくらいの上昇を見込んでいくならばこういうような平準化ができるというふうにお考えになっておられるのか、その点につきまして國井参考人からぜひお答えをしていただきたいと思います。
  89. 國井英吉

    國井参考人 非常に具体的なお尋ねでございまして、私もそこまでは十分調べておらないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、北海道の工事単価は内地府県に対して、たとえば義務教育費等につきましてもやはり積雪寒冷ということで補正されておりますから、従来も北海道単価というものはあるわけでございます。しかし、実際に平準化した場合にどうなるかということについては私も詳細に知っておらないわけでありますけれども、先ほど来申し上げておりますように、平準化をして、厳寒の時期にこの事業を施行するとしますならば、工事施工に伴うもろもろの設備、さらにまたその他の工事単価も当然に高くならざるを得ない。したがって、冬季間における賃金、工事単価のアップということは当然考えていただかなければできない問題ではないか、このように考えます。
  90. 古寺宏

    ○古寺委員 どうも大変にありがとうございました。時間になりましたので終わらしていただきます。
  91. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、西田八郎君。
  92. 西田八郎

    ○西田(八)委員 小寺参考人並びに下川参考人田村参考人にお伺いをいたしますが、その前に、本日は大変御苦労さんでございました。いろいろと事情を聞かしていただいておりまして、日本のこれからの雇用対策はきわめて重要な問題であるということを切実に感じております。  そこで、最初に小寺参考人にお伺いいたしますが、先ほど古寺委員からも質問がありました各種学校の問題ですが、これはいわゆる通常の、労働省が行います職業訓練校並みの資格を与えて、そこを卒業した人といまの職業紹介事業とを連動させよう、こういうお考えなのかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  93. 小寺勇

    小寺参考人 そのとおりです。
  94. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そういたしますと、その卒業した人が職業紹介を受ける場合には、わが国には少ないのですけれども、やはり技能検定制度というものをもっと拡大する必要があるのではないか。そして、その一定の技能を習得し保持している人に対しては、それ相当の賃金なりあるいは処遇をするような制度というものがこれから広がっていかなければならぬのではないかと思うのですが、そういう点についてどのようなお考えを持っておられるか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  95. 小寺勇

    小寺参考人 現行の技能検定の結果ですが、そうした資格を与えておるということは当然のことです似最初に申し上げましたように、訓練課程の現代に応ずる多様性ということから、公共職業訓練そのもののあり方もそうした要請を受けるだけの内容をいろいろ工夫する必要があるのではないか。そしてできれば、一般の専修課程から大学課程がありますが、その場合の専修課程からでもそうした一種の資格を付与させていくというふうなことで、そしてそれを職業紹介に極力つなぐ工夫をしてもらう、そういうことを要望しておるわけです。
  96. 西田八郎

    ○西田(八)委員 重ねて小寺参考人にお伺いしますが、先ほどの御意見の中で、職安審の中に雇用対策を特別に扱う部会をつくってはどうかという御意見がございました。私は非常に貴重な御意見だと思うのです。私も中央職業安定審議会の委員あるいは地方の職業安定審議会の委員等を経験いたしましたが、当時は経済成長の華やかなりしころでありましたので、こうした問題を審議するというのではなしに、ただ失業保険給付をどうするかとかあるいは日数をどうするかというような問題が多かったわけであります。しかし、これからの雇用政策は非常にむずかしくなると思うのです。そういう中で、当然部会をつくって専門的に、学識経験者等を入れて検討することはきわめて重要な問題だと思うのです。特にわが国の場合は、まあ言いますならば生涯雇用といいますか、一生めんどうを見てもらうというようないままでの慣行がございます。そういう慣行から考えると、これは非常に重要な問題になってくると思うのですが、部会を設けるのかあるいは別個の委員会にするのか。その辺について小寺参考人の御意見を承りたいと思います。
  97. 小寺勇

    小寺参考人 いま御指摘がありましたように、当面二つの方法がありまして、一つは専門部会設置という考え方。これは従来でも雇用保険部会というのがありまして、ここでいろいろ従来の失業保険的な内容のものの意見交換がされてきておる。ところが、新しくこのように雇用安定事業というような構えで問題をそこで議論をする場合には、最初から申し上げましたように、訓練教育の問題というのは非常に重要な課題になっているのですから、そうしますと、労働省でありましても職業安定局からむしろ職業訓練局の問題が構えられなくてはいかぬ。そうすると、この訓練局と職安局をまたいで職業安定審議会が雇用保険という名のもに審議が十分尽くせるかどうか、そういったところに問題があるのではなかろうかということを懸念しているわけです。ですが、そうしたことも含めて専門部会の内容の強化をやっていきますという方向ならそれも一つの案であろう、こう思います。  私はそれよりは、できれば部会でなしに、職安審議会の新たな機構として、訓練局なり職安局を含みながら、しかも片一方職業転換給付金というのがありまして、これは総理府の関係で雇用審議会、これは主として失業後の対策になっておるわけでありますが、これもやはり雇用安定事業とは密接な関係があろうと思いますので、それも含めた形で議論ができるということ。それでその議論は、絶えず財政収支という観点からだけではなしに、むしろ行政が生きていくための総合的な企画の検討がされる。それからもう一つは、問題が発生したときに機敏に対応できるような対策がその審議会でも講じられる、こういった性質のものを考えていただくことがいいのではなかろうか、こういうふうに思うわけです。
  98. 西田八郎

    ○西田(八)委員 次は下川参考人にお伺いいたしますが、今度、いま審議しております雇用保険法の一部改正雇用安定資金を創設しようということになっておるわけであります。その雇用安定資金について、せっかくこうした制度を設けても、中小企業の場合はこれは本当に利用価値が少ない、むしろ保険料を高く払うだけで何のメリットもないという御意見が非常に多いように承っておるわけでありますが、そうした御意見の、主にメリットがないと言われる理由はどこにあるのか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  99. 下川常雄

    下川参考人 先ほど申し上げましたのは日経連雇用特別委員会で出てきた委員方々の御意見でございまして、それで一つは、先ほど中小企業も言いましたが、これが全く利用できない業界もある、そういうところからも相当強い反対がございました。私、中小企業については運営の仕方では利用ができるのじゃないか、そういうふうな考えを持っておりますので、中小企業方々から非常に強い反対がございましたけれども、これは運営の仕方では利用できるはずだ、そういうふうに皆さんには申し上げておきました。
  100. 西田八郎

    ○西田(八)委員 いま日本経済は非常に不況で、これは三年続きの不況、いつどこでどう浮上するか、時期の設定等も非常にむずかしいし、また見通しも非常に暗いわけであります。そういう中で、いま特に繊維産業、造船業、さらには鉄鋼などが一番風当りの強いところに来ているわけでありますが、しかし、先日のアメリカのカラーテレビの輸入制限等から考えまして、必ずこれらの業界にも波及してくるのではないかというふうに私は予測をいたします。特に、今日までの日本企業が外国にどんどんと進出してきたのが、いまやそれぞれのナショナリズムによって締め出しを食らおうとしておるわけですね。そうしますと、いま繊維の問題や造船の問題を対岸の火災としてながめているわけにはいかない、やがては自分の身にも降りかかってくる問題ではなかろうかと思うのであります。したがって、いまのような状況の中で、いまを何とか切り抜けるためにはこの雇用安定資金、いわゆる千分の〇・五程度の保険料でそれはできると思うのですけれども、しかし、今後そういうことを予測した場合には私はとうてい困難ではなかろうかというふうに思うわけでありますが、経営側が今後一層深刻化してくる雇用問題に対してどう対応されようとしておられるのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  101. 下川常雄

    下川参考人 非常にむずかしい問題でございますが、結局、先ほども一番冒頭にちょっと申し上げましたが、一時帰休に対して雇用調整給付金を支給するというのは、これはいわば消極的な対策だと思います。そこで、やはりそれだけでなしに、人を求める企業といいますか、たとえば好況の自動車とかあるいは家電関係、そういうところに必要な人たちを、仮に紡績とか羊毛とかあるいは造船部門の人たちを訓練をしてやる。これは、今度の雇用安定資金制度ではそういうことも織り込まれておるようですから、われわれも業界内で、大きな業種の配置転換でございますが、そういうふうなことをして、少しでも雇用の維持ができるように図りたいというようなことをお互いに話し合いをいたしております。
  102. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そこで考えられることは、企業罪悪説を唱える人もあるのですが、私はそうではないと思うのです。国民生活全体を安定させるためには、企業の公正な競争の中で、公平な分担をそれぞれしながら発展していくということが大事ではなかろうかと思うのです。そういうところに企業に課せられておる社会的使命といいますか、公共性というものがあると私は思うのです。いまおっしゃるように、いろいろな業界が非常に過剰投資の中で設備拡大をしてきて、その設備がいま動かないという状態にあって失業者がたくさん出ているという問題が出ているわけです。後でお伺いいたしますけれども、北海道季節労働者の問題にしても、あるいは沖繩、九州の季節労働者の問題にしても同じような問題があると思うのですね。そうしますと、企業の公共性といいますか、社会的使命というところで、当然雇用労働者一定の量を維持していかなければならぬ、そういう使命も当然負荷されてくると私は思うのですね。  その場合に、より多くの労働者を抱えていくためにはいろいろ苦労があろうとは思いますが、そういう中で、従来の労働力不足時代と違って、過剰時代に入ってくると当然現在の定年をどうするかという問題が出てくると思うのです。もちろんこれには年金との兼ね合いが出てまいります。厚生年金保険が年々改正をされまして、ある程度水準が向上してきておるわけでありますが、その支給される年金を受給する資格というのが六十歳ということになってくると、当然、企業を離れるときと年金を受給して生活する時期との接点は六十歳に置くべきではなかろうかというふうに私は思うわけでありますが、この定年延長について、経営側の立場でどうお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  103. 下川常雄

    下川参考人 いま先生のおっしゃいましたとおりでございまして、われわれがいま高年者に対して考えておりますのは、一つは、企業の中でいわば定年が六十歳とか何歳とかありますが、そこの中高年者に対して働きがいを持たしてやるということ。  それからもう一つは、労働省の方針では、六十四歳までは退職金をもらっても年金をもらっても再就職をやって、六十五歳からは社会保障で過ごしてもらうというようなやり方をとっておるようでございます。そこでわれわれがいま問題点として挙げておりますのは、定年後六十四歳までをどういうふうにして働かせるか、これが非常に大きな問題で、いま高齢者対策で検討しておりますが、いままでは大企業から定年になりますと下請企業とか協力の企業に行っておった。ところがだんだんそれがふえてきまして、これは言葉が非常に悪いかもしれませんが、もう受けざらがなくなったというのが、これが実態でございます。その受けざらがなくなったから、これは何とかしてそれを受ける職場開発をしなければいかぬ。そこでいろいろいま各企業でもやっておりますが、たとえば清掃事業、ガラスみがきとかあるいは工場内外の清掃とか、そういうのを、定年退職者の一つの会社をつくってそしてそこでやるというような職場開発をやる。それからいろいろな技能、植木屋とかそういうことにも高齢者の技能を開発してつくる、そういう職場開発もあわせて検討いたしております。
  104. 西田八郎

    ○西田(八)委員 非常に結構な御意見を承ったわけでありますが、しかし実態としては、経営者側は定年延長することに物すごい抵抗を示されますね。私も何回かいろいろな経営者と団体交渉をいたしましたが、定年延長になると断固として抵抗をされるわけですね。そういうような傾向の中で、いまのような指導方針をとられておるということはまことに結構なことでありますが、それが単なる日経連の指導だけではなしに、本当に定年延長するために、いま労働省が主体になってやっております六十五歳を一つの接点にするという、そうした意識といいますか、制度化まではいかなくても、ひとつ普及のために一層の努力をしていただきたいというふうに思うわけであります。特にお願いをしておきたいことは、そうした定年になった人を、受けざらといまおっしゃいましたけれども、関連企業へ出すというのではなしに、むしろ本体でそれを抱えるという、そういう方向でひとつ物事をお考えいただきたいと思うのですが、いかがでごさいましょうか。——それではひとつ御要請をしておきます。  次に北海道からお見えになりました全北海道労協の田村さんにお伺いをしたいわけでありますが、事情を承っておって、私はいま、特に本年は雪害等で深刻な状況にあることをよく察知することができました。しかし、北海道という地域性といいますか、日本の最北端にあるという事情等から考えまして、寒冷地であることは早くからわかっておることであります。したがって、いま御要請特例保険者に対する給付を九十日に仮に復活いたしましたとしても、それはことしだけの対策になるというような形になります。また、これが保険という形で支払われるということになりますと、当然保険加入者の中からも、また保険に加入している被保険者の中からも反対が出てくるわけであります。  したがって、北海道がこういう地域性を持っている、またいろいろな事情が今日まであったということを考えるならば、当然政府は別の政策で北海道問題に取り組むべきである。北海道開発庁というような庁まででき、別に長官がおられるわけであります。そういう方面でもっともっと国の施策をすべきではないか。たとえば一年の就労が七・二カ月だとするならば、残る四・八カ月というものを一体どういうような形において補完するのか、それを私は政府がやってしかるべきだというふうに思うわけであります。そうでなければこの問題は解決しないと思うのです。ことし冷害だったから来年はひょっとしたら暖冬かもわからぬというようなことはだれしも予測できない。したがって、恒常的に北海道がそういう土地柄であるということを考えますならば、それに対する特別の処置をしていくことが大切だと思うのです。  そういう意味で、多くの労働者の先頭に立って闘いを進めておられる議長として、そういった問題を解決するための抜本的な方策というのは何かないのかどうか。ひとつ妙案があったら、先ほどいろいろお教えいただいておるわけですが、お聞かせいただきたいと思います。
  105. 田村武

    田村参考人 基本的な物の考え方は、先生の御指摘のとおりに私も思います。いま、私たちが強く御要請申し上げております失業給付の切り捨てをもう一回復活してほしいという願いは、全く現在段階における緊急避難的な要求なんですね。しからば恒久的対策いかんということになるのですけれども、先ほどから申し上げておりますように、やはり北海道という気象条件、立地条件、これに適した産業開発というようなことが基本になって将来の組み立てが行われなければならぬのだろうというふうに思うのです。いま北海道も長期発展計画というものを策定しまして、これからその地域別格差等をなくするということに取り組んでいくというような計画が出されておるのですけれども、その中を見ましても、私たちはどうもそういう基本的立場に立っての恒久策というようなものではないように思います。結局、高度成長はもう一回は来ないのだと言いながら、高度成長がまた復活するがごとき延長線上の構想が組み立てられておるように思うのです。  そういうことですから、私たちも恒久策を立てるために積極的な提言をしていきたいというように思っております。いまもやっておるのですけれども、やはり有限の資源の中で再生のできる資源というと森林資源、それから農業資源というようなことになると思うのですね。そういう点、この北海道というのは立地的に見てそういうことが可能なところなわけでありますから、そういうものを基礎にしたはっきりした開発計画を進めるべきだろう。そして、いろいろな産業の立地として発展をさせるといたしましても、開発というのは、これは私は人間がよりよく生きていける条件をつくり出していくことだと思いますから、そういう点に立って、同じ日本人なのですから、違うところをぎらぎらさせるのではなくて、北海道がどうやったら日本の中で重要な位置を占めて発展させていけるのかという点に立ってその話し合いをしていく。そういう中から道民の声というものを吸い上げて、具体的な北海道づくりと、いうものを考えるというような形にしていけば、将来を展望すればはっきりしたものができるだろうと私は確信を持つのです。  しかし、先ほどからのお話にもありましたように、第三次雇用対策基本計画もいま策定される、北海道建設業というものについての技術的な検討も五十五年、その結論ということになる。そういうことになり、かつ日本経済、財政の中で北海道に対して行い得る財政的な限度というものもあるんでしょう。そういう中での話でございますから、当面をしのぐ措置としましては、方法のいかんは問いませんけれども、起こっておる季節労働者が生きていけないというような現状を何とか救済してくれるよう措置をお願いしたいということを申し上げておるわけであります。
  106. 西田八郎

    ○西田(八)委員 事情はよくわかりましたし、大変御苦労であると思います。私たちもさらに努力をさせていただくことをお約束いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  107. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、浦井洋君。
  108. 浦井洋

    ○浦井委員 参考人の皆さん、どうも御苦労さんです。共産党の浦井でございます。  まず、岡本参考人にお伺いをしたいわけでありますが、先ほど北海道専業的な季節労働者に対する失業給付特例一時金になって五十日になった、そのために、たとえば家出をされた例であるとかあるいは自殺をされた例であるとか、悲惨な事態が発生しておるという御意見があったわけでありますが、ひとつ皆さん方の仲間の中で起きているような問題少しリアルに、もう少し補完的にお話をしていただけば幸いだと思います。
  109. 岡本正巳

    岡本参考人 お答えをいたします。  これは後志管内余市町の季節の仲間のことでございますけれども、北海道の場合ですと学校でスキーの授業がございます。スキーを一そろいそろえますとどうしてもいま何万円もします。ところが五十日になりまして、それでスキーを買うことができないで、スキーの授業に参加できない。教室で一人ぽつんと取り残されておるという季節労働者の子供の家庭の状況。  あるいはまた、岩見沢の例でありますけれども、食事代、電気代、燃料代にも事欠きまして、父親が朝仕事を探しに出る。どこか仕事がないかということで出ていく。子供たちは、朝食代、ストーブの石油代がないので、非常に寒くてもストーブをたくことができない。そこで朝の十一時までふとんの中にいて、お昼には食パン一枚で過ごす。夜も早くから電灯を消しまして、ストーブもそんなに長くつけないということで、とにかく寝る時間の方を長くしなければ生活ができないという状況。そこで子供たちはいつまでも寝ているわけにいきませんので、あちこち遊びに歩いて、ちょうどよその家でお昼ごはんなどを食べているころを見計らって遊びに行って、そこでごちそうになるというふうな例もございます。  また、滝川ではある季節労働者が、五十日の一時金が底をつきまして、あちらこちら、道内五カ所を仕事を探しに歩きましたが、どこにも適当な仕事がなくて、行き倒れ同然の姿で滝川の駅に戻ってきたところを友人に拾われたというふうな悲惨な例もございます。また、生活ができませんので、子供二人を抱えた奥さんが夜の商売に出かけるというふうな状態もございますし、また、余市の例でありますけれども、十九万も一時金をもらいましたが、家族五人では食べていけないということで、やむなく生活保護を申請して四月に生活保護をもらったというふうな例もございます。
  110. 浦井洋

    ○浦井委員 先ほどの話の中に、国の機関である北海道開発庁でも季節労働者解雇をやっておるというお話が出たと思うわけでありますが、ひとつその実情を詳しくお話しを願いたいと思うのです。
  111. 岡本正巳

    岡本参考人 これは開発建設部の岩内の出張所の例でありますけれども、ここでは二十五名ほどの非常勤の職員がございます。そのうち事務担当、それから賄い担当で五名ほどの女性の非常勤職員がございますが、この方たちは、六カ月で失業保険とよく言いますが、失業給付をもらえる資格ができますと即座に首を切られるということでございます。そして、全開建といいまして、非常勤職員の労働組合がございますが、その労働組合が何度も何度も交渉いたしまして、昭和四十九年に、いままで九カ月しか稼働することを認められなかったのを、それは冬で仕事ができないという理由でございますけれども、運転手だとか工手というふうに言っておりますが、九カ月しか稼働をすることをその人たちは認められなかった、それを交渉して交渉して、やっと十カ月にした。ところが今度は、十カ月になった途端に五十日の一時金になってしまうというようなことで、九カ月働いて九十日もらっていた段階と何ら変わらないような状態になってしまったという状況でございます。  また、黒松内の方では、これも開発建設部の出張所がございますけれども、ここでは約三十名ほどというふうに記憶いたしておりますが、黒松内は略農地帯でございましたが非常に農業が不振になりまして、農家をやっていられなくて開発仕事に出るという人が多うございます。この人たちはうちで奥さんが幾らか牛の乳でもしぼっているからということで、現在でも八カ月しか就労を認められておらない。十カ月を認められているのはわずかにすぎないというふうな状況がございまして、国の出先機関である開発建設部自体がその地域地域によってばらばらに雇用期間を設定しておるというふうな実情でございまして、黒松内は雪が多うございます、岩内の方よりも雪が多うございますので、一カ月も二カ月も早く首を切ってしまうというふうな状況でございます。
  112. 浦井洋

    ○浦井委員 非常に悲惨な状況と、それから国の機関でもそういうことが平気でやられておるということで憤慨にたえないわけであります。  岡本参考人と、できれば田村さん、國井さんにもお話し願いたいと思うわけでありますが、政府がそれに対応する対策として職業訓練、通年雇用というようなことを言っておるわけでありますが、それがすでに出ておりますけれどもいかに実行しがたいか。職業訓練の問題についてはひとつ問題点を順次お話し願いたいと思いますし、通年雇用の問題としては、先ほどから出ておりますけれども、奨励金が出ておるけれどもそれが五十一年度は三カ月間で五万四千円、五十二年度は今度上がって八万円だということで、これはもちろん事業主に仕事があっての上の話になるわけでありますが、北海道季節労働者の立場あるいは自治体の立場から見て一体どうなのかという辺を順次お話し願えればはなはだ幸いだと思います。岡本参考人からお願いいたします。
  113. 岡本正巳

    岡本参考人 お答え申し上げます。  北海道季節労働者先ほども申し上げましたように二十九万人ございます。この中で短期職訓で救われる者が千二百人、職場適応訓練で七百六十名しか現在救われておらないわけでございます。政府は盛んにそういう職訓などで北海道労働者を救うのだということを言いますけれども、実際に行われている数字はこういうもので、これはスズメの涙と言った方が早いかと思います。  それから雇用奨励金の問題でございますけれども、日高支庁管内の穂別町の地元建設業者の話を聞いたわけでございますが、冬場も増築工事をしたい者があった。以前にも事故があったりしてむずかしかったので、測量、左官、型枠、大工の職場適応訓練をしたいという話が昨年ありまして、季節労働者もぜひそれを受けたいということで、町の建設業界、町議会も、そういうことができるのであれば援助をしたいという話になりました。苫小牧の職業訓練校の校長先生も講師などの配置については考慮するということで、町ぐるみそういう援助の体制ができ上がったのでございます。ところが最後に障害になりましたのが、これは通年雇用が前提である、それが義務づけられているということで、季節労働者が一たん仕事を離れて、休みの期間にそういう訓練を受けて、そして新しい職場に就職するということは再就職の形になるのでまずいということになりまして、結局、このことはいいことだから町ぐるみで何とかやろうとしたのでありますけれども、とうとう実施できなかったということもございます。  したがって、現実の状況の中では、この職訓による救済ということは不可能と言っても過言ではないと思います。道の調査でも、冬季の短期職業訓練ということで、五十二年一月現在の数字では道立職業訓練校で七百五十七名、総合職業訓練校で二百四十五名、計一千二名、職場適応訓練では延べで三百名、実際人員が百名、それから実施数はこれをちょっと上回りまして百十一名の二百九十六名ということになりました。延べではちょっと下がっておりますけれども、こういうことで、両方合わせましても千三百名程度しか救済をされておらないというのが実情でございます。
  114. 浦井洋

    ○浦井委員 奨励金の問題をついでに……。
  115. 岡本正巳

    岡本参考人 それから奨励金でございますけれども、奨励金では、現在五万数千円、今度は八万円になるということでありますけれども、いま挙げました業者の場合ですと、十名程度抱えておる労働者がございます。毎月八万円くらいもらえるのであれば何とか通年雇用はできるけれども、一年間に八万円で、たとえば十名ということになりますと、これは五カ月にいたしまして一人が五十万、八人で四百万に相なりますか、そういうものをとても払えるだけの資力がない。北海道建設業者自体が冬に仕事を休んで、夏の間働いている労働者の首を切ることによって北海道建設業が成り立っているわけですから、そういう状況のもとでは、政府から出される微々たる奨励金ではとても労働者年間雇用することはできない、こういうふうに言っています。
  116. 浦井洋

    ○浦井委員 田村参考人國井参考人の方から、何かございましたらひとつ申し述べていただきたいと思います。
  117. 田村武

    田村参考人 まず、職業訓練によって何とかしたいという、これは非常にいいことだと思うのですけれども、いま話もありましたように余り数が多過ぎるわけですね。ですから、現在の考え方の職業訓練というものによってということであれば、私はそれは不可能だと思います。受けざらがないということですね。ですから、何か発想が変わって、そこにおける事業主自体が自分のところに置いて訓練をするというようなことであればこれは別ですけれども、そうでない限り受けざらがない、こういうように言わなければならないのだと思うのです。  それから、通年雇用促進手当の問題ですけれども、これを考えますときに、いま私たちが強く御要請申し上げておりますことは、これは労働者のサイドだけの願いではないのですよ。これは建設業者の方も切なる願いを持っているわけです。いまそういうことになってしまったら、もう夏になって人を集めようとしてもいない状況になってくるというので、自分の企業を維持するためには何とかこれをしてもらわなければ労働者をつなぎとめることもできないという心配も持っているわけなんですね。ですから、先ほどから言われておりますように、この公共事業を多くして、そして発注を繰り上げる、そして終わりも繰り下げる、そして平準化してやっていくということで、そういう上に乗っての通年雇用促進というふうなものでやって、業者自体がそれでペイするならやると思うのですよ。しかし、北海道冬季間の一月、二月、三月なんというこの厳寒期に土木建設業なんというものをやろうとすれば、とても五万何ぼや八万何ぼのものでつないでいけるような状態ではない。だからできないんだと思うのですね。やりたくなくてやらないのではないのだと私は思うのです。そういうことから言いまして、やはり通年雇用促進手当というのも、そのくらいのもので通年雇用をやれる大きな企業の中の人はそれで救われるけれども、一番困っている中小零細の企業で働いている者には救いの道がない、こういうことを特に感じます。
  118. 國井英吉

    國井参考人 まず、職業訓練のことでございますけれども、これは先ほども申し上げたところでございますけれども、やはり基本的にはまだまだ技能労務者は足りないわけでございますから、そういう意味におきましてどうしても短期の職業訓練は必要な政策である、このように考えます。そういう意味で、士別市では、隣の町の名寄市に職業訓練校がございますけれども、特にお願いして士別市に分校という形で、農業から他に転職する方々の職業訓練と、それから技能習得のための訓練を行ってきておるわけでございます。もう十年になるわけでありますが、その中身としましては、配管工であるとか大工であるとか配筋工、こういった技能労務者の養成をいたしております。これによって労務者方々雇用の安定、これはいまの北海道雇用状態の中における雇用の安定でございますが、そういう面と、あるいはまた技能労務者になることによる待遇の改善というようなことで、私はそういう意味からは非常に職業訓練の重要さということを認識し、またそうあるべきであると思うわけであります。しかし、このことをいまの季節労務者のいわゆる四十日カットと結びつけて考えるところに多少無理があるのじゃないか。仮にそういったことができ、雇用の安定が図られたといたしましても、現在の北海道雇用状況が繰り返されるということであって、何らそれは解決に結びつかないのではないか、こういう感じがするわけです。そういう意味で、私はこの対策としての職業訓練ということについては若干問題があるような気がいたします。
  119. 浦井洋

    ○浦井委員 どうもありがとうございます。  岡本さんにひとつお尋ねをしたいのですが、一昨日の当委員会でも石田労働大臣は、北海道を見た場合にやはり保険料の拠出と給付とが非常にアンバランスで、これをいま五十日から九十日に延長するということはとてもやれないのだ、現に私の郷里の秋田県では六三%もの人がこの雇用保険創設に賛成をしたのだというようなことを言われておるわけでありますが、ひとつ簡単に、この大臣の御意見について岡本さんの立場から見てどう考えておられるか、お伺いしておきたいと思うのです。
  120. 岡本正巳

    岡本参考人 お答えをいたします。  これは北海道の場合、たとえば農業をやっている人が出かせぎに行くという場合でも夏しか行けないわけで、ちょうど内地のように夏は農業をやっていて冬の間出かせぎに行くというのとは事情が全く違うわけでございます。したがって、北海道の場合、これは私どもよく言うのでありますけれども、何も失業給付を欲しいのではないわけなんです。一年間働いていた方が失業給付をもらうよりも本当に楽なよい生活ができるわけなんです。労働者の本当の願いは、何とかして一年間働かしてほしい。しかし、どうしてもいまの国の政治の状況ではそれができないので、やむなく失業保険をもらって生活をするのだというのが労働者の偽らない気持ちでございます。したがって、北海道の場合は秋田県とも違いまして、そういうことでそういう希望を持ちながらも、どうしても仕事がありませんし、先ほども申し上げましたように、内地への就労ということも実際中高年齢層では不可能だということで、ほとんど内地への出かせぎはできないという状況にございます。したがって、北海道の場合はどうしてもやはり九十日をもらわなければ生きていかれないという実情にある。雪が多うございますし、先ほど申し上げましたようにもう零下三十度、地下一メートルまで凍って、水道管も本管が凍結するというような状況にございますので、もう仕事が事実上できないことから、やむなく九十日をもらっております。したがって、これはもう生活ぎりぎりの要求だと私は思います。
  121. 浦井洋

    ○浦井委員 最後に下川参考人にお尋ねをしたいのですけれども、あなたの本社も神戸にありまして、私も神戸でありますから、互いに北海道の事情については再確認をしたというふうに思うわけであります。ところが政府の方は、先ほども私が岡本参考人に申し上げたのでありますが、給付と負担のアンバランスの拡大は好ましくないというようなことを言っておるようであります。日経連は経営者団体でありまして、雇用保険の保険料もかなり負担をされておるわけでありますが、私お尋ねしたいのは、政府に対して日経連として給付の削減などのバランスの是正について何か申し入れられたことがあるのかないのか、この点、イエスかノーかという形で結構でございますので、ひとつこれだけをお答え願いたい。  それから、ついでにと言っては悪いのですが、小寺参考人にお伺いしたいのですが、労働四団体の一つであられるわけで、この北海道の問題について一体どういうふうに考えておられるのか、最後に簡単にお伺いしたいと思います。それで終ります。
  122. 下川常雄

    下川参考人 ちょっといまの御質問でお聞き取りしにくかったのですが、保険料を負担するのがふえることについて日経連から何か、という意味でございますか。
  123. 浦井洋

    ○浦井委員 給付削減等アンバランスの是正をすべきではないのかというようなことについて、申し入れをされたことがあるのかということです。
  124. 下川常雄

    下川参考人 ちょっと私はよく存じませんので、失礼でございますが……。
  125. 小寺勇

    小寺参考人 私は、雇用保険法失業保険から生まれかわった当時の事情をよく知っておりますので、そうした延長から考えますと、いま直ちに九十日に延長するということは少々無理があるんじゃないか、こういうふうに思います。ただし、北海道そのものの現状における緊急的な状況ということから考えての必要性ということになりますと、それについての検討を私どもはしておりませんけれども、先ほど来出ておりますように、訓練問題、それから企業誘置問題とか、そうした一連の政策を政府がすることを迫りながら、緊急措置のあり方をどう考えるか、その場合に雇用保険の枠内ということよりは、できるだけ特別な措置として考えた方が妥当ではなかろうか、こういうふうに思います。
  126. 浦井洋

    ○浦井委員 終わります。
  127. 橋本龍太郎

    橋本委員長 次に、工藤晃君。
  128. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) ただいまいろいろの参考人方々から北海道季節労働者方々の窮状をお聞きいたしまして、胸の迫る思いがいたします。何とかこれを、たとえどのような方法であろうとも解決をしてほしいという切なる願いは私ども痛く受けとめたわけでございますが、その点につきまして國井参考人あるいは岡本参考人に一、二質問をしたいと思います。  もし北海道方々だけに九十日を付与するということは法のたてまえから平等性を欠くということ、その他いろいろな問題で可能性は薄いという立場になった場合には、それにかわるべき何らかの特例の救済方法というものを、もしそれがどうしてもだめであればこういう方法はどんなものだろうかというふうな提案がございましたら、この機会にまず國井参考人からお聞きしたいと思います。
  129. 國井英吉

    國井参考人 九十日の回復が、いわゆる保険という形で実施する場合にむずかしいということであればどうしたらいいのかというお尋ねでございます。私どももこの点についてはいろいろ議論をしておるところでございますが、やはりどうしても生活保障をするために、方法は別としましてもこれは回復してもらいたいということでございまして、そのための方法として考えられることは、一つは保険法の中でできないだろうかということ。それは、たとえば全国的な公平性という面から見ますと多少問題はあるかもしれませんけれども、やはり地域の特殊性というものを保険の中で考えてもらえないか。その場合の保険料率をどう考えたらいいのかということは当然出てくるだろうと思いますけれども、そういった面も配慮しながら特殊性を保険の中で考えていただきたいものだということが一つございます。  それからもう一つは、先ほども申し上げておったわけでございますけれども、全道市長会の考え方といたしましても、夏季の就労期間中における賃金の問題を冬期間に向けて何らかの措置がとれないかどうか。賃金の平準化と申しますか、夏季の賃金を高くして、いまのいわゆる四十日分に相応する分についてはその分でカバーできる方法がないだろうか。こういう二点が考えられるわけでございます。  それからさらにもう一つは、保険会計の立場から考えますと私は多少議論があると思いますけれども、確かに北海道の保険料の収入給付のアンバランスは非常に大きいものがございます。大変な開きであることは私どもも十分承知しておりますけれども、それをすべて保険料の収入で賄うというところに無理があるのではないか。これと国の一般会計との関連において何らかの是正ができないのかどうか、このように考えておるわけであります。
  130. 岡本正巳

    岡本参考人 この保険に対する考え方でございますけれども、たとえば政府管掌の健康保険にいたしましても、保険料を払っていても全然病気にかからない人、あるいはまた私などのようにしょっちゅう病気をして、保険料よりも病院に行ってお医者さんに払う方が多いというふうな者もございまして、この受給のアンバランスということは保険の考え方から外れるのではないかというふうにも私どもは思っております。  それから、いま國井市長がおっしゃいましたが、三省協定賃金北海道の場合厳格に守られておらないわけです。大体七時から五時ぐらいまで働いて四千八百円だとか、あるいはまた安い人ですと四千三百円、女の人はもう三千円台というようなことで、三省協定賃金そのものが守られておらないというふうな実情もございます。こういう点での御指導をお願いしたいというふうにいつも思っておる次第でございます。  それから、これにかわる何かがないかというお話でございますが、結局それにかわる仕事を保障してもらいたい。北海道の場合は単に四十日分ということだけじゃなくて、内地の人と同じような生活ができるようにしてもらいたいということが働く人の希望でございます。
  131. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 私どももこの問題についてはもっと真剣に取り組まなければいけないし、労働の問題だけで解決できない点も多々ございますので、ぜひとも皆様方も協力いただくと同時に、私どももそういう問題について積極的に何らかの打開策を考えてまいりたいと思います。時間がございませんのでこの問題はこれで打ち切ります。  それから下川参考人にお聞きしたいと思いますが、先ほど伺っておりましたら、身障者雇用促進について実は私はその衝に当たっている一人だというふうなお話も伺いました。深刻な失業の問題を抱えております現在、これは単に北海道だけの問題じゃなくて、日本の貿易、やや伸びつつあると言われながらも経済そのものは大変冷え込んでいる。企業収益は一つも伸びない。こういうふうな現状でございまして、不況の長いトンネルをいつ抜けられるのか、なかなかめどがつかないというふうな状態であろうかと思います。ただ、希望的観測として少しはよくなってきたんじゃないかというけれども、あくまでもそれは希望的観測のようでございます。しかし、その中でいよいよ雇用促進という前向き姿勢と同時に失業という大きな深刻な問題、これは社会的不安を大きく巻き起こす要因になると思いますが、その中で特に私が心配いたしますことは、そういう身障者とか寡婦とか高年齢者の再就職の問題、こういう問題が特にその中でも真剣に第一番に取り上げて対策を考えていかなければいけない問題であろうと考えております。そこで経営者側からお聞きいたしたいと思いますが、そういう社会的弱者の雇用についていま現状はこういうことになっておる、将来それをどういうふうにしていこうかというふうなもし展望がございましたら、簡単で結構でございますからその展望についてお聞きいたしたいと思います。
  132. 下川常雄

    下川参考人 いま御指摘がございましたように、ここ一、二年、去年ぐらいまでは、解雇というか、人減らしをするというときに、なるべく身障者の人は残しておってもらいたいというのを、私、先ほど言いましたように兵庫県の心身障害者雇用促進協会の会長をしておりますので、それぞれ回ってお願いをしまして、これはどうにか確保できました。  それから身障者の人の雇用促進といいますか、いまは神戸の大丸で大分身障者を雇っていただいておりますが、そういうふうで、新たに何か職場の方で身障者の人を使ってもらうような努力をしておりますので、先ほど非常に大ざっぱに言いましたが、少しずつ伸びておると私は考えておるのでございます。
  133. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 続けて下川参考人にお聞きいたしますけれども、この前の質疑労働大臣が、大変この点についても企業側も理解を示してきている、特にある企業では新聞に身障者を指定して募集している、こういう傾向もあるので、将来ともに見通しはそう暗くないのではないかという要旨の御発言がございました。特にそういうことは喜ばしいことでございますが、あくまでもそれは部分的現象であろうかとも思いますし、また、企業の中でも、そういうふうな社会的弱者を雇用できる業種とそれからできない業種も多々ございましょうから、そういう意味において企業別に、これは各論的に物を考えて、特にそういうできる可能性のある企業はどういう企業であるか、あるいはまたそういうところへ十分そういう趣旨が徹底していただけるような企業団体のそういう御指導、あるいはまたそういう部門を設けていただいて、特にそういうところへはそういうものに対する促進要請を組織として十分していただくような、そういうお考えがございましたらお伺いいたしたいと思います。
  134. 下川常雄

    下川参考人 去年の十月一日から一・三%が一・五%に上がりまして、そのときに企業についてそれぞれ業種によって除外率というのがあるのでございます。このときに相当われわれ検討しまして、そうしてなるべく除外の率を少なくして雇われるようにということ、それからそれぞれの職場について、やはりこういう職種については身障者でいいじゃないかというようなことまで細かく検討いたしておりますので、先ほど石田労働大臣がおっしゃったそうですが、この雇用を拡大する方向には進んでおると申し上げていいと思います。まだ非常に大きくは伸びてないのが実態でございます。
  135. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 身障者の雇用促進法も最近できた法律でございます。そういうわけで趣旨徹底がまだまだ末端まで行き渡ってないであろうということも想像できますので、ぜひひとつこういう問題について、身障者だけを対象という意味ではございません、社会的弱者の救済のために、また、できましたら北海道のそういう方々のためにも、企業サイドから何か手を差し伸べてあげることができましたらひとつこの際お考えいただいて、できる範囲でそういうことに対して、政治の場あるいは経済の中からそういう者に対して手を差し伸べていくような方法、手段をまたお考えいただければありがたいと思います。  時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。
  136. 橋本龍太郎

    橋本委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人方々には、長時間にわたり御出席をいただき、また貴重な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。(拍手)  次回は、来る十九日火曜日午前九時五十分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十五分散会