○田中(美)
委員 大臣は新聞労働者のことに詳しいわけですから、ぜひいまおっしゃったように
調査をしていただきたいと思うのです。いまここにいろいろ手記なども出ておりますけれども、
大臣は詳しいようですので、時間がありませんからそこをちょっと飛ばして……(
石田国務大臣「
現状には余り詳しくないです、三十年前ですからね」と呼ぶ)その
現状はこういうことになっていますね。新聞という公益上やむを得ない仕事というので、ある
程度夜勤があることはこれはやむを得ないわけです。しかし、実際には印刷や新聞労働者の中から、ポルノ雑誌だとか裸のポスターだとか、こんなものを、何も私はそれのいい悪いを言っているわけじゃなく、それを何で夜中に刷らなければならないのかという労働者の訴えが私のところに来ているわけです。新聞や何かで、ある
程度どうしてもというふうな問題は最小限度あると思うのです。しかし、こんな裸の写真やら裸のものや何かを夜中にやっているわけです。そういうことをなぜやらなければならないのか、こういうふうに言っているわけです。やむを得ない場合でない場合も
日本は野放しになっているわけですよ。最近はその裸だとかおかしなものまでも、まあおかしくないにしても、緊急に急がなくてもいいものまでが夜中にやられているということです。
それで、さっきあれしたんですけれども、ある労働者の言葉として、「家庭と共に日曜日を過すとか行楽に出かけるとかがまるっきり出来ない。
自分の複雑な勤務を知っているはずの女房も夫婦げんかしようものなら、「どこへも連れてってくれない」と涙を流す。涙を流したいのはこっちの方だ。」こういうことを夫が言っているわけです。それから妻の方は、「近所や友達づき合いで、夫が昼間寝ているときは、なるべく外から出入をさけるようにドア・カーテンなど締め留守に見せかけ、また天気が悪いとき
子供が家の中で遊ぶのですが、騒いだり、泣いたりしないよう
子供のほしがる物を与え、その場を押えています。暑い夏は、汗びっしょりになって寝ている夫、三時間位しか眠れないのを思うと身体の方を心配します。」というようなことを家族はまた言っているわけです。こういう
状態にいま労働者があるということを、ちょっと
大臣の頭に入れておいていただきたいと思うのです。
一九七六年、去年の七月、アメリカで国際人間工学会という学会がありました。ここでは、交代制労働の原則というので、適正化の基準という問題を西ドイツの労働生理学者のルーテンフランツという方が報告をしていらっしゃるのですが、この中ではこういうことを言っています。夜勤をしょっちゅうやれば人間の体がなれるのだ、こういうふうに言うけれども、そんなことは絶対あり得ないということを言っているのです。ということは、数週問ずっと夜勤をやっても生体リズムの完全の逆転は起こらない。夜勤なれはしない。それは、一週間に一遍休みもありますから、休みのときはまた狂ってきますし、それから社会生活というのがあるわけですから、夜だけ働いて昼間は完全に寝るということはあり得ないわけですから、どうしても生体リズムの完全逆転はあり得ない、こう言っているわけです。ですから、結局睡眠不足というのが蓄積すればさまざまなリスク、危険が増大していく。病気だとか労災だとか、こういうものが起きてくるのだ。だから、やむを得ずやらなければならない夜勤に対しては週末には休日をふやすとか、それから夜勤の後には二十四時間の自由時間が必要であるというようなことを去年の学会で発表しているわけです。
それから、
日本でも中央労働基準審議会の労働時間部会というところで意見が出されています。これは、夜の十時から朝五時までの労働は原則として禁止してほしい。これは禁止されておりませんので、禁止してほしい。十時から朝五時までですよ。そこで働くというのは間違っていると思うのです。それで禁止してほしい。公衆の不便を避けるために必要欠くべからざる業務と、それから生産技術上やむを得ないもの、その他深夜労働を不可避とする業務、こういうものは行政官庁の許可なくしてはやってはならないようにしてほしい、こういう意見が出ているわけです。ですから、裸の写真を刷るのまで夜中にするというような、こういう野放しはやめてほしいということが言われているわけです。深夜労働というのは一日七時間以上はやめてほしい。これを一週間に二回以上はしないでほしいとか、それから一日一労働にして、連続労働というのはやめてほしい。それから深夜勤の後は休養時間を十六時間以上必ずとらせるようにしてほしいというようなことが、この審議会の労働時間部会でも出ているわけです。
日本の場合には昼間と夜間の労働者が法的に全く何の区別もないわけです。これでは労働者の健康を守っていくということはできないと思うのです。
ですから
調査をして、こういうことを
調査はしていただけるわけですけれども、
調査するにはある時間がかかりますので、いまどうするかということになるわけですけれども、たとえばいまこういうことが起きています。深夜勤の人ですが、会社に三時に出てくるわけですよ。三時から働きまして、ずっと十二時間働くわけです。そして夜中の三時まで働く。一日二十四時間の中で、午後三時に出てきて夜中の三時まで働くわけです。そうして三時から朝の十時まで会社で仮眠するわけです。それで退社していいわけです。そういうことならばまだやむを得ない仕事の場合は仕方がないわけですけれども、今度は欠勤者があった場合。十時に次のかわりの人が出てきますね。その十時に出てくる人の中に欠勤者がおりますと、その仮眠から覚めた人に、君そこから働いてくれと、また三時まで働かして、そしてその三時までに今度は夕刊を刷るわけです。というのは一日一労働ではないわけです。一日に二労働するということになるわけです。こういうことが行われているわけです。
ですから、深夜労働の数だとか
状態とかというものを
調査していただくと同時に、こういうことが行われているということはぜひやめさせてほしいわけです。それで、私がいま考えますのは、無理なことを言ってもすぐにはできませんので、せめていま言った、昼の三時に出てきて夜中の三時まで働いて、十時まで仮眠して、それ以後働かせない。そこで働かしてはいけない。これは会社も臨時の措置でやっているのだと思うのです。欠勤の場合にそれをやらせているわけですから、これを大至急やめさせてほしいわけですよ。これだけを至急やめさせるという通達を出していただけませんか。