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1977-05-26 第80回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月二十六日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 島本 虎三君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 向山 一人君 理事 水田  稔君    理事 古寺  宏君 理事 中井  洽君       相沢 英之君    池田 行彦君       永田 亮一君    福島 譲二君       阿部未喜男君    上田 卓三君       馬場  昇君    岡本 富夫君       東中 光雄君    刀祢館正也君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石原慎太郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         厚生省薬務局長 上村  一君         通商産業省立地         公害局長    斎藤  顕君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君  委員外出席者         文化庁文化財保         護部記念物課長 横瀬 庄次君         厚生省環境衛生         局水道環境部参         事官      三井 速雄君         林野庁指導部森         林保全課長   小田島輝夫君         水産庁漁政部沿         岸漁業課長   吉国  隆君         建設省計画局参         事官      関口  洋君         建設省都市局下         水道部長    井前 勝人君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     馬場  昇君 同日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     山本 政弘君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件(公害対策  並びに環境保全の諸施策)  請 願   一 早池峰国定公園指定促進に関する請願     (椎名悦三郎紹介)(第三三九号)   ニ ニホンシカによる被害防止対策に関する     請願椎名悦三郎紹介)(第二八六〇     号)      ————◇—————
  2. 島本虎三

    島本委員長 これより会議を開きます。  まず、請願審査に入ります。  本委員会に付託されました請願は二件であります。本日の請願日程全部を議題とし、審査を進めます。  まず、審査の方法についてお諮りいたします。  各請願の内容につきましては、文書表等によりすでに御承知のことでありますし、また、先刻の理事会においても協議いたしましたので、紹介議員よりの説明等は省略し、直ちに採否の決定に入りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島本虎三

    島本委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。  採決いたします。  本日の請願日程中、第一の請願は、採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 島本虎三

    島本委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 島本虎三

    島本委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  6. 島本虎三

    島本委員長 なお、本委員会に参考のため送付されました陳情書は、瀬戸内海の環境保全対策推進等に関する陳情書外五件であります。念のため御報告申し上げます。      ————◇—————
  7. 島本虎三

    島本委員長 次に、閉会審査申し出の件についてお諮りいたします。  土井たか子君外四名提出の  環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案  古寺宏君外二名提出の  環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案 並びに  公害対策並びに環境保全に関する件以上各件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 島本虎三

    島本委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。  次に、閉会委員派遣承認申請の件についてお諮りいたします。  閉会審査案件が付託され、委員派遣の必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、その所要の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 島本虎三

    島本委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。      ————◇—————
  10. 島本虎三

    島本委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 一昨日、私も質問申し上げましたが、もう一つNOxの問題について落としたところがありましたので、この点をもう一遍確認をしておきたいと思います。  それは、四月十二日にも質問いたしましたが、環境濃度測定器の精度の問題であります。そのときの答弁では、フルスケール〇・一ppmのものができているというお話がありました。しかし、調べてみますと、どうもこれはまだ実用化段階になっていない、もちろん量産化をしているわけではないのでありまして、相当誤差の大きい測定器では、〇・〇二などというようなきわめて微細なものをはかるのにはなかなかむずかしい問題があると私は思うのです。したがって、その誤差の大きい測定器ではかっていたときに、その数値をベースにして環境基準に合格しているということを言ったりなんかするということは、私は非常に危険なことだと思うのです。地方自治体でも、測定器による指示値でどういうふうにするかというようなことが私は相当にあると思います。しかし、測定する器械自体が余りうまく動いてないというときに、それをどうするかというのは、大変な問題ではないかと思うのです。しかも、余り誤差の大きいような器械でもってやるという形で、その器械を信頼してまた協定をしなければならないというよらな事態もあるだろうと私は思いますから、この辺はやはり考えていかなければならない問題だと思いますが、環境庁、どうでしょう。
  12. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生御指摘ございました誤差の問題は確かに大事な問題でございます。私どももその点のアセスをいろいろやっておりますし、また通産省のJISのグループでおやりになっているのも非常に関心を持っておるわけでございます。そういうことで、通産省グループでやっておられる機電検を中心としたいろいろな調査研究の結果出てくることについては、非常に関心を持っております。  それから御指摘の〇・〇二というのは、これは計算上出てくるものでございまして、そういう意味で一時間値の低い数字を測るのは非常に問題があるということで大体一日平均値に決めてあるという理由もございます。この点はよく御理解をお願いいたしたいのですが、実際測定した、あらわれた数値そのものを使うものと、それから一日のものを全部足して平均するものといろいろそういうものがございます。そういうことで、これはシミュレーションをするようになってから計算産業界通産省も〇・〇二幾らとか〇・〇〇幾らとかいう数字はどんどん使っておるわけです。これは計算上は出てきます。そういうことでザルツマンの場合には確かにある程度不安定な要素がございますが、世界的にザルツマンは否定された方式ではございません。どれくらいなラフなものかということだけは一応頭に置いてやっておりますので、今度一時間値の議論をするときにどういう形になるかというところが一つの問題だと思います。  また、誤差の中で、先日ちょっと申し上げましたが、ザルツマン係数につきましても、汚染物質でいろいろな様相が変わっておりますから、それをわれわれはずっと継続してフォローアップして調査をしておりまして、そういうことでザルツマン係数も少し変わってきているのではないかというようなこともございますので、これは専門委員会のマターとして議論をしていただく、通産の方もしておられるということで、次の段階の本格的な規制のときにはいま以上にもう少し正確な議論ができるだろうというように思っております。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 NOxの問題にしましても、一昨日も申し上げましたように、まだまだ学問的にもずいぶん詰めていかなければならない点がある。カドミの問題にしましても、病理学的な見地からすればいろいろと詰めていかなければならない、まだ仮説であるというふうなところの問題がたくさんありますが、私はこれは単にこういった環境行政の問題だけにとどまらないと思うのです。スモン病という問題がありまして、これも現在裁判になっておりますから、私はその裁判の問題をどうだこうだと言うつもりは毫もありません。ありませんが、このスモン病キノホルム原因説というのも、私はいままでの経緯を見ますと、ビールスが原因であるという話が初めありましたり、それからそのほかのいろんな物質によるところの影響があったとか、いろいろな学説が出て、最後にはどうもキノホルム説だ、こういうふうな話になってきたというのが言われでおるところなんです。そういったものを学問的に究明しないで裁判でもってこれの黒白をつけるということが果たしていいかどうかという問題があると私は思うのであります。予防医学立場においていろいろとお話をするというのならばまた別でありますが、被害の問題、それをどうするかという問題も私はやはり考えていかなければならない問題だと思うのであります。長官は先般水俣を御視察されたと思うのです。確かに水俣では胎児性の問題であるとか大変にいまむずかしい状況になってきていると思うのです。しかしその問題につきましても、非常に広い意味で言われているところの水俣病がすべて原因であるというところまで言い切るところの学問的な見解というのも私はまたないのだろうと思うのであります。したがって、スモン病という非常にむずかしい病気が出ている、あるいは水俣病で確かにあのセンターに入ったり病院に入っておられて非常に苦しんでおられる方々に対する対策というものは十分にやっていかなければならない。またイタイイタイ病で神通川で五十何人もおられますところの病人に対していろいろな施策を、これはそれとして私はやっていかなければならないということは当然だと思いますし、むしろ、長官も恐らく同じお考えじゃないかと思いますけれども、そうした病人対策であるとかというようなもの、病気治療対策というものが実は余り進んできていない、いろいろな形で問題がまだ残っているということが私はあるだろうと思うのです。  そういった問題と、それを何らかの原因であるからどうだこうだということで結びつけてやるということになると、またそこで理屈の上において非常にぎくしゃくした問題が出てくるんじゃないかという気がしてしようがないのです。スモンの話にいたしましてもカドミウムの話にしましても、何か無理にこじつけをやっていく。どうしてもこの論理をやっていかなければならないということをやっていく。しかもそういった問題を決めるのは裁判官である。裁判官は、実は医学専門家裁判官になっておられるわけじゃないわけでありまして、裁判官というのは法律専門家である。そこに非常にむずかしい問題があるので、治療をするような問題と、それから、それが一体どういう原因であるかという問題と、さらに原因法律を適用して裁判をやっていくという問題と、三つの側面からそれぞれとらえてアプローチをしていかなければならない点があるのだろうと私は思うのです。それは恐らく損害賠償ということになりましたならば、民法原則に立ち返っていろいろ原則をとらえるという形になると思います。民法七百九条の原則に立ち返るわけでありますが、故意過失を問う場合、それから因果関係論を問う場合、それから有責性を問う場合、私は三つのこういう民法上の考え方があると思う。  無過失の問題は公害の場合には問わないという話になっている。恐らく薬害の場合におきましてもそういった問題が出てくるだろうと思いますが、問題はやはり因果関係論の問題だろうと思うのであります。因果関係論がこの前からずっとありましたように、きわめて蓋然的な話であるとか蓋然的可能性の話であるというようなところまで持っていってやるかどうかということだろうと思うのです。民法の七百九条の損害賠償考え方の解釈といたしましては、やはり被害があったならば何らかの加害グループというものを見つけていかなければならない。やはり被害救済という点に重点を置いて考えるところのいまの法律論考え方からすれば、何らかの形で因果関係論というものをやっていかなければならない。そうしますと、そこでどうしても、医学的に厳密なまた証明されたところの理論というものがなかなか出てこないということになるのだろうと思うのであります。  そういったことで、非常にむずかしい議論を展開するよりは、病人病人としてまず治療をしていくということを徹底的にやろうとすれば、そういった因果関係論から離れた全然別のところでやっていくということを考えなければならない。この前からも長官言っておられますように、健康の問題が第一だ、こういうことである。その健康の問題が第一だということになれば、やはり治療の問題、健康な状態に復元するということが一番大切なことでありますから、これをやっていくということをまず考えるべきでありましょうし、因果関係があるとかないとかということでほうっておくということは、人道的に許されない問題だろうと私は思うのです。したがって、そこはそこでひとつやっていく。これはイタイイタイ病水俣病、あるいはスモンのような話におきましても同じようなことではないかと思うのです。そこはしっかりやっていかなければならない。それを今度どういうふうな形で結びつけていくかというのは、日本の医学界その他の権威も通じて十分に深めていくことが必要であるし、そこはいろいろな議論があるはずでございますから、医学立場においていろいろとやっていかなければならない、こう思うのです。  私はそういった考え方をしておりますけれども一体厚生省当局の方でスモン病の問題につきましてどういうふうに考えられるのか。いま私も非常に簡単に申し上げましたけれども、一体どういうふうに厚生省としては考えられるのか。薬害の問題と申しますか、そういった問題もありますし一最近では救急患者の問題がまた一ついろいろと裁判で出てきておるわけであります。救急患者病院にとにかく担ぎ込まなければならない、そうすると、すぐ担ぎ込まれた場合に、事前のいろいろな診断状況等もわからないうちに治療しておったけれども亡くなったという形がある。あるいは患者体質に合わないような薬を出したとかいうことが後でわかった、ところが運び込まれたときにはちょっとわからなかったというようなことについて、いろいろと裁判ざたが起こってきておりますから、そういったような医者立場あるいは加害をしたであろうと一応法律上は言われるところの立場、そういった立場というものを全然無視してやるような形で物事をだんだん進めていきますと、たとえば救急患者のようなもの、そんなものはわれわれの方はとても引き受けられませんよというような話にもなってくる問題が出てくるだろうと思う。私は、これは明らかに先ほど申しました民法上の問題と関連をしてくるような問題ではないかと思いますから、何か別のそうした救済制度というものを考えていくことが必要ではないかと考えておるのです。そういったことを含めまして、厚生省当局の方でこの辺をどういうふうに考えておられるのか、また、これからどう進めていこうと考えておられるのか、もし御意見がありましたならば御答弁いただきたい。
  14. 上村一

    上村政府委員 薬をめぐります幾つかの訴訟があるわけでございますが、当然のこととして、その薬によって健康被害が起こされたということ、それからそういった原因となる行為について過失があったということが訴えられる場合の理由になっておるわけでございます。  スモン訴訟和解の勧告がございまして、いま、国としても東京地裁において和解の席についておるわけでございますので、余り立ち入ったことはちょっとお答えいたしかねますけれども、その因果関係につきましては、メーカー側は争うと言い、それから国としては、厚生大臣にお願いいたしましたスモン病調査研究協議会結論に従うという態度で臨んでおるわけでございます。そして、この研究協議会見解というのは、スモンと診断された患者の大多数はキノホルム剤の服用によって神経障害を起こしたものと考えられるというような見解を表明されておるわけでございます。  いまも御指摘になりましたように、薬の副作用健康被害を受けた場合に、裁判でぎすぎすした形で争うのじゃなくて、何らかの救済制度考えたらどうかというお話でございますが、私どもも、薬の場合には安全対策というのを行政重点に置いて進めておりますけれども、どうしても予期せざる副作用というのが発生する。その場合、現行の民事制度のもとでは、責任がない限りその患者は救われないということになるわけでございますので、四十八年以来、専門家にお願いして、救済制度をどうしてつくるか、そして昨年の夏の初めに結論が出ましたので、目下、関係方面と折衝しながら制度化すべく鋭意準備中であるわけでございます。  ただその場合にも、因果関係はある程度推定せざるを得ない、救済対象になるのは責任がない場合というように限定せざるを得ないのじゃないかと思うのです。因果関係もはっきりしないものまで新しくつくった制度救済対象にするかどうかについては、相当問題があるのじゃないかと思うわけでございます。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで因果関係論ということになるのだろうと思うのです。きょう持ってきていませんけれどもコッホの原則というのがありますね。因果関係論も、AはBである、非AはBでない、こういうようなこと、非AからBは起こらないという証明というのが起こったときには、厳密な意味での因果関係だと私は思うのですね。  ところが、そこまでの因果関係論というのはなかなか追求できない。スモンのような場合でも、キノホルムを飲んでない人でもなおかつスモン病という状態が認定されるという場合があるとしたならば、いまの非AでBであるという場合を一体どうするかということになりますと、私は、因果関係論としてはなかなかむずかしい問題があるのだろうと思うのです。だから、その因果関係論というのを非常に厳密な因果関係論でやるのか、相当因果関係論と言うのか、ある程度疫学的なものでやるのか。私は、その辺は医学かこれから詰めていかなければならない問題ではないだろうかと思うのです。そこは局長、いま因果関係論ということでおっしゃいましたけれども、この辺は医学論理というのは一体どういうことになっているのか、ちょっと御答弁いただきたいと思います。
  16. 上村一

    上村政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、薬の場合、薬を飲む人間というのは病人でございますから、いろいろな身体的な条件があるわけでございます。あるいは人によっては特異体質があるかもわからない。したがって、医学論理でこれを因果関係ありと明快に論断することができないケースというのは多々あるのじゃないかと思うわけでございます。  一つ使われるのは、疫学的な手法もあると思うのです。薬の場合には、同時に、動物実験等人間に起きた反応を再現できるということもあるわけでございますから、そういったものを総合的に判断をしながら、そういう因果関係が推定されるということで、そこに責任がない場合に救済対象にするというふうに持っていかざるを得ないのじゃないかなと思うわけでございます。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 因果関係の推定は、どこまでをどう推定するかというのは、薬の問題だけでなくていろいろな問題がこれから出てくるだろうと思うのです。そういった問題も含めまして、ひとつぜひ御研究をいただきたい。そういった形での実りのあるものができることを心から期待してやみません。  長官最後に申し上げますけれども、私が先ほど来、この前も申し上げましたけれども、要するに予防医学ということで、単に手を洗っていればできることではなくて、それに対して行政的ないろいろな予防的措置を講じていくという問題とその原因をどう追求していくかという問題は、別の問題だと考えていかなければならない。いままでの体系で言いますと、何もかもずっと一緒にしてきてしまった、こういうことでありますから、ひとつ思い切って発想の転換をしまして、切り離していろいろやってみるということもお考えになってみたらどうかと思うのです。  先ほど私は、水俣のことでも申し上げましたしいろいろなことで申し上げましたけれども、本当に健康ということで考えていきますならば、いままでのような非常にぎくしゃくした考え方で、何でもかんでもゼロコンマのゼロに落ちつけていかなければならないとか、何でもかんでもカドミだということで悪に仕立てていくということではなくて、もう少しおおらかな気持ちでいろいろなことをやっていく方が、環境行政が本当にたくさんの方々に理解されて進んでいくのではないだろうか、私はこう思っているのでありますが、この辺につきましての長官の御見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  18. 石原慎太郎

    石原国務大臣 たびたび申しておりますけれども環境行政、特にこういう人間の健康がむしばまれた公害事件の場合には、健康の保障、医療救済保護というものがとにかく第一線の仕事だと思います。ですけれども、御指摘になりました水俣病イタイイタイ病スモン病、微妙に現在の時点での因果関係究明状況が違っておりまして、水俣の場合にはもう有機水銀による中毒という因果関係ははっきりしておるわけでありますが、他の成人病と紛らわしい患者もおられる。汚染が余りにも多量で広域なだけに、ますますそういう病像が複雑になってきて、そういうところで認定検診の作業がおくれ、保留の患者が非常にたくさん出ているわけです。  カドミウムの場合にはお医者さんと言いましょうか、専門家の資料による答申そのものが、政治家の悪い癖をまねして玉虫色になりまして、どうも問題の究明がされたようでされないという節があり、しかもこの場合には、カドミウム汚染というのは世界に類例があったわけでございますから、そこら辺のところは、やはりある因果関係の決着というものが疫学的にもつけられ得る状況にあるのではないかという気が私はいたします。スモン病のことは私詳しく存じませんし、所管外でございますのでここで云々いたしませんが、いずれにしても因果関係究明というものを急ぐ、同時にそこから補償の問題が出てくるでしょうが、現に患者が存在する限り医療救済というものがまず第一義である。それがすなわち補償につながれた形で、医療救済というものがむしろその補償の前提になるような形で考えられることは、私は本来の行政から言って好ましくないと思います。しかし当然、つまり何らかの汚染により、あるいは薬害等により健康の被害が起きておるならば補償ということが考えられるでしょうけれども、これは第二の問題でありまして、第一義はやはり医療による救済保護というものが肝要だと思います。
  19. 林義郎

    ○林(義)委員 水俣の問題で私は最後に申し上げますけれども、第三の水俣病というのがあったわけであります。四十七年でしたかな、有明海沿岸それから徳山、それから全国的に津々浦々に、魚は食うなという事態が一時狂気のごとくあったことを思い出すわけであります。当時私も党を代表して本会議で質問したわけでありますが、この辺はやはり医学的な究明をしっかりやらなければならないのだ。しかし究明されないうちに、いま長官お話しされましたように、病人に対するところの対策を十分やっていくことが大切である。しかし、医学的な究明究明として別にやはり十分にやっていくことが必要だと私は思う。その後四年ほどたちまして徳山湾では水俣病というものはいまだ出ておりませんし、恐らく今後もないということになっておりますし、また有明海その他のところの問題もなかったというような話になっておるわけであります。ですから、ああいった大騒ぎが再び起こらないように私たちは考えていかなければならない。これはやはり政治家として、いたずらなる社会不安を巻き起こすとかなんとかということは厳に慎むべきことだろうと思いますし、それにはやはりそれに備えるようないろいろな体制づくりをやっていくことが、じみちであるけれども、大変必要なことではないか。何かどこかにあったならば声を大にしてわあわあ言わなければ救済できないというような形ではいけませんし、医療救済というものをまず真っ先に考えてやっていくということこそ、これからやらなければならない大きな問題であるし、と同時に、その因果関係をも厳密な形でもって追及をしていく、それに基づくところの予防体制というものを、いろいろな環境の行政規制立場においてやっていく。行政規制でなくて、もう一つ言うならば、課徴金であるとかいろいろな形でもってインセンティブを与えたり——インセンティブでない、ディスインセンティブということですか、不利益のことを与え、課徴金を取るというような形のものでも与えていって、そしていい環境づくりをし、本当にみんなが信頼のできるようなそういった環境体制というものをつくることが一番必要なことだろう、こう思うのです。  そういったことで、ぼくは少し時間が長くなりまして何回にもわたりましたけれども、私もくどいようにいろいろな御質問を申し上げました。私の考え方に対して長官見解をもう一度お伺いしたいと思います。
  20. 石原慎太郎

    石原国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。人間の社会の問題でございますから、理性だけでは済まない問題がたくさんございまして、いまおっしゃった第三次水俣病がきっかけになって一種のパニック状態が起こり、たとえば苛性ソーダの製法の規制ども行ったわけですが、私も就任後、つまりその転換が間に合わないという問題が起こってきて、ずっと通産省の答弁を聞いてみますと、他省の悪口を言うわけではございませんが、あの問題が起こった時点で、アスベスト法というものは不良製品しかできないんだということを通産省はよく存じていた、つまり、いたずらに産業廃棄物をつくるのだということを承知していながらあの指導を行い、これだけ技術の進んだ社会ですから、イオン交換膜というものの技術開発の予測はあのときにも立っていたと私は思うのです、これは推測でございますけれども。それをああいう形の指導をする。そしていまの段階ではクローズド化が一応とにかく徹底して、その後の問題は起こっていない。大きな災害でもない限りまず危険はなかろう。しかしそれでもなお、日本も災害の多い、天災の多い国ですから、イオン交換膜に転換するのだということでございますが、やはりあの場合に行政というものにもう少し冷静さがあれば、結局現在の時点で結果としてむだな投資になった企業に対する迷惑というものもかけずに済み、国民の経済にも、間接的ですけれども悪い影響も与えずに済んだのではないか。ですから、おっしゃるとおり、問題が起これば起こるほど、大きくなればなるほど、突発的であればあるほど、やはり行政の主体者というものが冷静にならなくてはならぬと思います。しかし、それが決して非人情的なことではないと私は思うわけでございます。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 終わります。
  22. 島本虎三

    島本委員長 林君の質問は終わりました。  次は、馬場昇君。
  23. 馬場昇

    馬場(昇)委員 長官は先般水俣に行っていただきまして、大変御苦労でございました。水俣を初めて見られました後の水俣病対策について質問を申し上げたいと思います。  私はまず第一点として、水俣訪問後の石原長官水俣病行政に対する姿勢についてお尋ねしておきたいと思うのです。  その第一は、水俣病に対する行政責任でございます。長官水俣で次のように、患者、住民に対して責任を明らかにされたわけでございます。水俣病は、行政が積極的に動かず、ひょっとすれば百人で済んだかもしれない患者を千人以上も出してしまった、国を代表して皆さん方におわびをしたい、さらに、水俣病は何もしなかった行政責任があります、おわびをいたします、こういうりっぱなことを心から皆さんに言われました。私も聞いておったわけでございます。  長官は、さらにある雑誌に寄稿しておられますが、私もそれを読ませていただきました。その中で、行政官庁の人間、国や県、市の役人が一番水俣病を知らないのじゃないか、役人の想像力の追いつくことのできない事態であった、こういうことを書いておられます。  私もこれには同感でございますけれども、この二つの長官の言明あるいは記述を読んでみて、私はさらに思うのですけれども、何もしなかった、知らなかった、こういうことではないのじゃないか。私は現地で二十何年患者さんたちと一緒に苦しみをやっておるわけでございますけれども、私が経験したところによりますと、行政というのは何もしなかったのじゃなしに、知らなかったのじゃなしに、この二十年間チッソと組んで、資本と組んで、その原因を隠そうとした。そして患者を見捨ててきました。差別、偏見を持ち込みながら抑えに抑えてきた、これを経験で知っておるのです。二十年後の今日のいまのような状態、二十年たってなおいまのような状態にあるということを長官はごらんになりましたから、このことも理解できるのじゃないかと思うのです。こういう意味から、何も知らなかった、何もしなかったというのじゃなしに、むしろ行政というのは加害者という立場に立っておったのじゃないか、そういうような真剣な反省というものが非常に必要ではないか、こういうことを私は思うのですけれども長官水俣を見られた後の御感想を聞きたいのです。
  24. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私が行政がほとんど何もしなかったと申しましたのは一つの表現でありますが、県も国もそれなりのベースでやることはやってきたつもりだったのでしょう。しかし、結果としてそれが今日の事態を生んだということは、実質的にしなかったと言われても仕方がない姿勢でしがなかったと思います。  それから、関係した官僚が水俣病が何であるかを知らなかったというだけではなしに、私はそこで申し添えましたが、政治家も知らなかった。これは先生のように自分の大事な教え子をそういう形で亡くされた方は独得のケースでしょうけれども、ほとんどの政治家も知らなかった。それから新聞記者も実は知らない、運動家も知らない。水俣病が何であり、水俣病に冒された患者が何であるかということを知っているのは結局患者だけだということを、私は唯一水俣で知って帰ってきたわけであります。私がわずか数日間の駆け足の視察をして、何人かの人に会って、ほかの政治家よりも水俣病を認識したなどという口幅ったいことは申しません。ただ、想像力の問題かもしれませんけれども、あの実態に潜在している事の大きさ、物事の恐ろしさというものは、私は私なりに感じて帰ってまいりました。  それから、役所が資本と結託してこれを隠蔽してきたということは、これはないと私は思います。ただ、患者の方、あるいは私自身あるいは役所が持っている資料を見ましても、ある時点で専門家はごく専門的に百間港なら百間港の実態を調査し、報告しています。ところが、そこで報告をされている数値が余りにもけた違いなもののために、受け取った上司がそれをどう判断していいかわからずに、君、これは本当かというふうな下問が恐らくあったでしょう。いや、実はそうなんです、これはどういうことなんだ、どういうことだかよくわかりませんということで、その報告というものの余りの異形さ、異常さというものに、とにかくその書類が、さらに上司の判断がつかないままにそこに置かれて、そのうちに違う書類がそれに重なり、時間が重なって、結局大事な報告が行政に有機的につながることなしに埋もれてしまった。未必の故意と申しましょうか、結果としては行政が知るべきことをある時点では知っていながら、それが行政のすべき処置、たとえばあの水域における漁獲の禁止であるとかそういったものにつながらずに、不作意に終わったということの責任は、私は十分感じておる次第でございます。
  25. 馬場昇

    馬場(昇)委員 長官はよく患者の心ということをおっしゃるのですが、私もそこが一番大切な問題じゃないかと思うのです。そういうものから、患者の心から言いますと、長官加害者という立場を認めて反省をしなさいといま私は言ったのですけれども、たとえばあの原因物質、水銀だ、会社が流したんだ、こういうことが、もう地元は知っているし言われている中で、いや、そうじゃないんだというようなことを、通産省なんかから頼まれた学者とかなんとかが来て言っているのですよ。そして原因さえも隠そうとしたのです、これは県じゃありませんけれども。それから、当時の熊本県知事は、たとえば四十万で見舞い金契約を結ばせて、原因が会社にあるとはっきりしても、これ以上文句は言いませんよ、こういうような契約書までも書かせているのです。そういう点から言いますと、明らかに加害者の立場があるわけなんです。私は、患者の心として、やはり行政加害者の立場だったんだ、いまからはそういうことがないんだという、その辺の反省を聞きたいのですよ。そういう意味長官は、あなたがやられたわけじゃないのですけれども、ずっと続いた行政、こういうものはやはり加害者の立場をとったことがあるんだ、もうそういうことはありませんよ、しませんよ、こういう反省が、知らなかった、やらなかったじゃなしに必要じゃないかということを聞いているのですけれども、どうですか。
  26. 石原慎太郎

    石原国務大臣 おっしゃるような意味では間接的な加害と申しましょうか、すべての行政措置の足らなかった点についてつまり加害という言葉は当てはまらないと思いますが、あるケースに関しては加害、あるいは要するに加害を全くしていないかということになれば、間接的なつまり加害と言われても仕方のないケースもあったと私は思わざるを得ません。
  27. 馬場昇

    馬場(昇)委員 患者の、水俣病の歴史を見ますと、本当に行政は何もしてくれなかったし、抑えたのですよ。それを患者の闘いによってずっと切り開いてきたのがこの二十年の歴史なんです。ぜひそういう加害者という立場でもって、そういうことをしないという立場で取り組んでいただきたい、これが水俣病を見られた教訓であろうと私は思うのです。  次に、水俣病に対する認識というものが、見られて大分変わられたんじゃないか。その認識が変われば、また行政姿勢も変わってくる、私はこう思うのですけれども、実は水俣病というのは、長官も言われたし、知っておられるとおりに、本当に世界最大の水汚染公害であることには間違いないのです。長官もよく使われましたけれども、その被害というものは原爆被害に匹敵する人類の経験した最も残虐で悲惨な被害であるのです。このことについて長官はこう言われました。水俣病という問題に直面させられたことの私自身にとっての人生の意味というものを考え直して、一歩でも二歩でも先に進めたい、こういうことを長官は言われました。そしてまた長官はさらに、この問題の正当な解決をいたずらにおくらそうとか阻もうとかする要因が政治にあるならば、それが何であろうと、私自分自身が行ってきた文明批判というものを政治の立場で実現するためにそうした者たちと正面から立ち向かうんだ、こういうことを長官はおっしゃっていただいたわけでございまして、私は、まさに水俣病に対する認識、そしてその後の行政姿勢ということから、この長官の言明は正しいと思います。この事実はもう長官の言われたとおりでございますので、このとおりでお認めになると思います。  そこで私が質問したいのは、長官が帰られました後、私、ずっとまた住民の人たちや患者の人たちと話をしてみました。確かに期待はしております。しかし、患者、住民はこう言っておるのです。うまい言葉よりも何をするかだ、ここが大切なんですよということを患者は異口同音に私に言っております。  先ほども申し上げましたけれども、二十年の水俣病の歴史というものは、患者が切り開いた歴史でございまして、これまた長官もさっき言われましたけれども水俣病のことを一番よく知っている者は患者です。この患者の心の上に立って対策を立てていただきたい。患者の気持ちはこの二十年、行政への不信というのを一番よく知っているのです。その行政の実態を知って不信を持っている患者が、やはり行政に頼らなければならないというのが現在の実態なんですから、そういう意味において、さっき言われました水俣病の認識、そしてそれに立ち向かう姿勢、その上に立って、うまい言葉よりも何をするか、こういう立場で取り組んでいただきたいと思うのですけれども、これについての長官水俣訪問を控えての御決意を聞いておきたいと思うのです。
  28. 石原慎太郎

    石原国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。私は、水俣に出かけて自分の目と耳で見聞する前に水俣についてどう思うかということを聞かれて答えることのむなしさみたいなものを感じておりましたが、帰ってきて物を聞かれれば聞かれるほど、これまた私の印象を語るだけで何の足しにもならぬということを感じました。  この間も、私、次官にも申しましたが、私は、水俣を視察し、これからも必要に応じて出かけることもあると思いますが、しかし、一回の視察で本質的なことは私なりにとらえたつもりですし、外に向かって言うべきことはすべて言いましたから、あとはとにかくやるだけです。私が役所にお願いしたいことは、むしろ陳情いたしますことは、やはりいままでのペースの三倍ぐらいの早さで物をしていきましょう。とにかく、県の予算措置も、六月いっぱいというのが一種の執行猶予でありますので、その間にどれだけのことができるかもわかりません。  それから、私、現地でも皆さんに申しましたが、私が私なりにある強い印象を受けたということを皆さんに申しましても、皆さんに一〇〇%満足いただく解決はとてもできませんよ、私が十年も二十年もやっているわけではありませんし、ですから、石を新しく積み直すという作業は私の責任でやりますが、とまっているものを一歩でも二歩でも動かす、それがどういう加速度で動いていくかわかりませんけれども、とにかくその動かすという仕事だけはさせていただきますと申しました。  要するに私はそれが眼目でありまして、政治というのはそれしかないと思います。ですから、患者の言われるとおり、どんな言葉でだれが水俣病を表現しようと、それは何の解決にもならぬと思います。
  29. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで私は、長官水俣で約束をなさいました、その実行について、いまからお尋ねするわけでございますが、その中で私の提言も含めながら質問をしたいと思うのです。  まず、記者会見でも御表明になりましたが、水俣病総合実態把握調査についてお尋ねをいたしたいと思います。長官もおっしゃいましたが、私も言い続けてきたのですけれども、二十年の水俣病の歴史の中で、一度もいわゆる総合的な調査はございませんでした。幾度か行政の側から調査が行われました。よくなるのだろうと思って協力したこともありますけれども、結果はそれが水俣病の幕引きの調査に終わってしまった、こういう事実がたくさんあるのです。だから、長官が言われます今度のこの水俣病の総合実態把握調査というものは、今度こそ水俣病の幕あけの調査にしていただきたい。そうしなければならないと私は強く感ずるのですけれども、この調査の具体的なことは後で質問いたしますので、いま言いましたような基本姿勢を聞いておきたいと思うのです。
  30. 石原慎太郎

    石原国務大臣 過去にそれぞれの時点である種の調査が行われたことは確かでございます。それが幕引きに使われたかどうかということは主観の相違かもしれませんが、幕引きに使われた調査も確かにあったと思います。しかし、幕を引き切れずに舞台のほとんどがいまだにちゃんとそこにある、開かれたままある。  とにかく時間が膨大に経過しておりますので、過去のある時点に行われた調査というものは、それなりに事件の態様というものが表面の上でも濃かったという意味を今日よりも持っていると思いますから、いま事務局に依頼しまして、いままで行われた調査の資料というものを全部整理し直し、有機的につながるものはつなぐ、しかし、そこには恐らく欠陥がたくさんあると思います。足りないところを総合的な調査という形で行うべく、いま事務的には過去の資料、調査というものを全部洗い直しております。この間もある業界の人に申しましたが、これは明らかに幕を引くために学者が研究を依頼され、すればするほどシロのはずがクロになってきて、故意に隠された報告書があるようでございますけれども、ことさらそういうことをしたということをとがめたりしませんから、とにかくそれは時効としてしんしゃくするから、その報告書があるならば出してほしいということを私から申しました。それでもなお、そういうものを並べても大きな穴があちこちにあいていると思います。そういうものを補うための総合調査というものを行いたいと思いますけれども、それをどういう形で行っていくかということを、方法論をつくるためにもいままでの資料というものを至急整理し直すつもりでおります。
  31. 馬場昇

    馬場(昇)委員 今度はぜひ幕あけの総合調査にしていただきたいと思うのですが、長官は次のように言われました。関係各省庁の事務レベルはもちろん、関係自治体、大学、医師、患者などでチームを組んで、仮称ですけれども水俣病総合対策推進会議、こういうものをつくる、芦北郡田浦町の最後の記者会見でそうおっしゃいました。これを現在どうつくっておられるのか、この予算をどうなさるのか。これは来年度予算というのじゃなしに予備費からでも出すべきだと私は思うのです。この仮称水俣病総合対策推進会議がいつから始まるのか、現在どういう準備をなさっておるのか、こういうことについてお聞きしたいと思います。
  32. 石原慎太郎

    石原国務大臣 でございますから、それはつまり実態把握の総合調査というものが行われるための会議だと思います。それと切り離してはその会議もあり得ませんし、ですから、総合調査をどういう形で行っていくかという方法論を環境庁なりに立てまして、またそれは恐らく認定、検診の作業に関するものにとどまる——これが急務でございますから、熊本県側の試案のようなものをあわせて、一応多面的、多極的な水俣対策というものの試案のようなものを環境庁側で整備して次の関係閣僚会議に諮り、そこで予算措置等についても要請をしたいと思っております。
  33. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ほかにたくさんそういう機関をつくるということをおっしゃっているのです。私も隣におって聞いておったのですけれども、この部分は、長官は、総合調査が何よりも先だ、だから水俣病総合対策推進会議というのをさっき言ったようなメンバーでつくって、これで総合調査を始めるのだということをおっしゃったわけでございます。いま聞いてみますと、はっきり私はわからないのですが、これはつくられるのか、いつつくるのか。このことを約束なさったのですから、これははっきりつくります、いつごろまでにそれをつくります——帰られてから大分たつわけでございますから、総合調査のためのこの機関、つくられるのか、いつつくられるのかということをはっきりお答えいただきたいと思います。
  34. 石原慎太郎

    石原国務大臣 できるだけ早期に、できれば夏前にでも……。しかし、これはやはり他省庁の協力がなければできないことでございますから、関係閣僚会議で協力を要請しまして了承を得て、その段階で何と呼びますか、ぜひそういうものをつくりたいと思っております。
  35. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ぜひがんばってやっていただきたいと思うのです。  そこで私は、仮称水俣病総合対策推進会議、こういうものをつくって総合的な調査をやられるということですが、その調査に当たって、先ほどから基本的に幕明けの調査でやるべきだと言ったのですけれども、この調査の態度としては何としても二十年間の国や県の作為、これを反省しながら——熊本県の知事はこう言っているのです。従来の政治感覚や仕組み、法体系では処理し切れない、これを熊本県知事は常に口癖のように言っております。     〔委員長退席、水田委員長代理着席〕 そしてまた長官も申しておられますけれども、この水俣病行政というのは、日本の官僚行政からはみ出してやらなければ真の調査はできない、こういう種類のものであるべきだと私は思うのです。これについての長官のお考えも聞いておきたいのですが、調査の内容について、さらに具体的にお尋ねをしておきたいと思うのです。  いままでの水俣病というものの取り扱いあるいは調査、こういうものは結局小さい針の穴、いわゆる水俣病審査会という小さい針の穴を通ってきたその上の部分だけ、分子の部分だけが水俣病として取り扱われて問題にされてまいりました。今回は、長官も言われましたように、水俣病の深さ広さ、底も知れない広さも知れない、こういう広い分母の実態を明らかにするのだ。当然私も、その分母の実態をぜひ明らかにしなければなりません。そこで調査の内容というのは分母をやるのだ、広さ、深さを全部明らかにするのだというような立場から、私は、ぜひ次のようなことをやっていただきたいと思うのです。  まずその第一点は、チッソが流出いたしました水銀の全貌というものが、これまた本当に明らかになっていないのですよ。そうしてその水銀が、無機水銀があるいは有機水銀になるという科学的な解明もまた十分ではないのです。チッソが流出いたしました水銀の量というものは、一回に原子爆弾が一発落ちてぼっと被害が出たのと違うのです。十年、二十年どんどん毒を流し続けたという長期的なものでもあるわけでございます。私がいろいろ調べたところによりますと、有機水銀を使って生産いたしますところのアセトアルデヒド、このチッソの月産量を調べてみますと、昭和二十五年には月に七十トンつくっておりました。二十六年にはそれが五百二十トンになっているのです。そうして二十八年、ここに認定患者第一号が発生しているのです。この二十八年は七百トンでした。二十九年は七百五十トンになり、三十年は九百トンになり三十一年は千三百トン、三十二年は千五百トン、三十四年二千五百トン、こういうふうにどんどん多くなっていっております。このアセトアルデヒドを一トンつくるのに千グラムの水銀が流出すると言われておるのですけれども、そういうものから計算いたしますと、昭和二十八年までの生産量から見ましても二百トンぐらいの水銀が流出されておる、こういうことが推定できるのです。途中昭和三十三年に八幡プールというものをつくりましてそこのプールで排水を一応浄化するようなかっこうをとりました。そして三十四年にサイクレーターをつくったのですけれども、二十八年以降もどんどん水銀は流出したと考えなければならないと思うのです。そういう意味で、どれだけの水銀をあの不知火海に流したかというこの全貌なんかも、きちっと明らかにする必要があろう。  それから第二は健康被害。この健康被害というのについては、十年後の水俣病研究というのもありますけれども、過去、現在、将来に向かって健康被害の実態というのは明らかにし、明らかな展望をつかまなければならぬと思うのです。ある九州の新聞社が調べたところによりますと、申請をしていないけれども水俣病の症状が私にもあります、こう答えたような人が一割近くアンケートでおります。そして先般有志医学者が延べ百三人でもって自主検診をいたしました。二つの部落二百四十一人を検診したのですけれども、この中で水俣病の疑いがあると言われた者が六八・八%、もういまでも認定していいのだと診断された者が二四・八%おる、こういう状況もあるのです。そういうことを踏まえながら、この健康被害については過去、現在、将来に向かっての明らかな調査をする必要があろうと思うのです。  環境がどう破壊されたか、ヘドロの状態がどうあるか、汚染状況はどうか、こういうものの実態を明らかにしながら、いわゆる水俣病汚染の地図というものはまだ十分にできていない、こういう汚染地図も明らかにすべきだと思うし、後で具体的な質問をいたしますけれども長官もよく言われました社会的水俣病と言われますところの差別の状況、地域共同体の亀裂、破壊された状況、こういうものも明らかにしなければなりませんし、さらにいままで余り言われませんでしたけれども、教育上にあらゆる影響を与えております。この教育上の問題というものも決して調査で忘れてならない問題であろう、こういうことを私は思うのですけれども、この分母を明らかにする、全貌を明らかにするという調査はまだあると思うのです。しかし、こういうことについては、いま言いましたようなことについてはぜひやっていただきたいというぐあいに思うのですけれども、いかがでございますか。
  36. 石原慎太郎

    石原国務大臣 大変有益な御提案で、そう申すのはなにですけれども、私が考えていたようなことでございます。そのほか、先生すでに御存知でしょうから蛇足になりますが、海中での水銀サイクルの実態もわかりませんし、離島で、ある地点で、魚だけではなしに貝と海草が全部死んだ、それを食べたカラス、鳥も狂って死んだ、そういう実態が実際あったならば、比重の多い無機水銀がつまりどういう形で有機化して潮あるいは海流によって拡散されたのか、そういうメカニズムもわかりませんし、それから水銀の総量についても、実はこの間チッソの社長に会ったときに聞きましたが、チッソ側の言う数字は総量で六十トンぐらいだと言うから、幾ら何でもそんなばかなことはないだろうと私が申しましたら、実は私たちもわかりませんと申しましたけれども、わからぬで済むことではございませんで、工場ですから何らかの記録があるはずでしょうから、そのときもチッソ側は、胎児性患者を見れば私たち何も釈明いたしませんということでしたので、それならば潔くと申しますか当然の責務として、過去の操業のそういう記録も出し、専門家にもう一回検討させてもらいたいということも申した次第でございます。
  37. 馬場昇

    馬場(昇)委員 長官五分ぐらい中座されるそうでございますので、野津さんにお伺いいたしますが、例の認定基準、すなわちあなた方の言葉で言いますと判断条件だそうですけれども、これはどういうものをいつ出されますか。
  38. 野津聖

    ○野津政府委員 先般熊本県知事及び熊本県議会に対して私ども考え方を御説明したとおりでございまして、判断条件のより明確化ということを前提といたしまして、これが六月末を目途にということで御返事してあるところでございます。ただ、現在までの状況でございますけれども、過去におきまして、研究所の研究成果あるいは四十六年に出しました次官通達の中身等におきまして、水俣病の認定の要件という言葉が使われておるわけでありますけれども、その後の医学の進歩、それからまたさらに、いわゆる現在申請しておられる方々あるいは現在の認定されました患者さん方の病状というふうなものを踏まえた形での一つの条件を出したいということでございます。現在個々の先生方との間で、いろいろと意見の交換を行わしていただいているという状況でございます。
  39. 馬場昇

    馬場(昇)委員 熊本県は、この前示されましたのには不満だということで委任事務の返上を県議会で決議し、知事がいま困っておるという、こういう状況でございますが、六月末までということでは予算を削減されておるわけですから、五月末までと熊本県は言っておったのじゃないかと思うのですよ。そういう意味について、こういう点については六月末では遅過ぎるのではないか、こういうことを考えるわけでございますが、この判断条件を出されますと、いま不作為違法状態にあって約四千人近い申請者が何ヵ月で不作為状態が解消されるか、何ヵ月でそれがさばき切れるのか、これを出したら大体このくらいでいきますよ、そういうような見通しがあってやっておられるのですか。
  40. 野津聖

    ○野津政府委員 現在、いわゆる不作為状態が出ておりますし、いま御指摘ございました三千七百数十名の方々が申請をされまして、検診及び認定審査会での審査を待っておられるという状況があるわけでございますが、この解消のためには、まず第一番目には、現在の検診体制を強化していくということがありませんと審査会にかけられないわけでございますので、検診体制を強化していくということが第一番目の問題であろうと思っております。  それから第二番目が、ただいま御指摘ございましたように、現在審査会におきましていわゆる処分の答申がされます方々が非常に少ない、保留の方が多いという実態があるわけでございます。もうこれは先生よく御存じのところでございます。この保留の実態がありますことをできるだけ解消して処分の数がふえていくということに対しまして、この判断条件が非常に大きな影響を及ぼすのではないかというふうに考えておるところでございます。したがいまして、現在個々の審査会の先生方と、いかなる中身にすればより明確化でき、さらには認定業務が推進されるかということにつきまして、個々にいろいろ御意見をいただいておるというところでございますので、流れといたしましては、やはりまず検診の数の増加あるいは検診の窓口の増加、さらにはいま先生御指摘ございましたような形での審査会での保留者を減らすというふうな形になってくるかと思っております。
  41. 馬場昇

    馬場(昇)委員 後で質問しますから、わかっているのですけれども、検診体制を強化するとが審査会を頻繁に開くとかあるいは審査会の運営を変えるとか、そして判断基準をつくるとか、こういうことでやるわけでございますけれども、大体いま三千七百か、鹿児島まで入れますと四千百人くらい申請者がおります。これを何年で解消しようと思ってそういう体制をつくっておられるのですか。見通しもなしにやったって患者から反発されるだけですよ。こうやったら、いま不作為状態、違法状態がありますけれども、これをたとえば一年で解消しますよ、六ヵ月で解消しますよ、そういう案を出さなければ受け入れられませんよ。だから、何年あるいは何ヵ月で解消しようと思ってそういう準備をしておられるのかということを聞きたいのです。  それから、判断条件の中で疫学は重視しますね。そういうのが出るのですか。たとえば夫婦が全く同じ生活歴を持っておりながら、御主人は認定されて奥さんが認定されないのですよ。あるいは一家六人おりまして、五人が認定されて一人だけが棄却されるということもあるのですよ。自分の村落の中で全部認定されて、その中の一軒か二軒認定されていない。これはどうしても住民にとってみますと納得できないのですよ。そういうことで、やはり疫学を重視するというような判断条件が出るのですか、どうですか。  それから、判断の中で高年齢者だとかあるいは重症者だとか、こういう審査を早くする、そういうことも出されるのですか、どうですか。
  42. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま数の問題についての御質問と、それから判断条件の中身についての御質問があったわけでございますが、具体的に……(馬場(昇)委員「数じゃなしに、何年で解消するのか何ヵ月で解消するかということです」と呼ぶ)したがいまして、いま申し上げましたのは、いわゆる検診を月間に何件行えるのかということがまず第一の条件になってくるかと思います、それから、いまお話しございましたように、審査会にかける件数を何件行うかという形になってくるかと思います。したがいまして、現在、何件検診を行えるかということによりまして、現在の三千七百名の方々を割り、さらにはこれに加わって新しく申請される方がおられるわけですから、そういう計算をしなければいけないわけなんでございます。ただ、私どもも実際に不可能な数字を表に出して議論したくない点があるわけでございまして、具体的に検診をしていただける——現在、先生御存じのように、熊本大学の中では満杯で御協力いただいているという実態が一つあるわけでございます。したがいまして、検診を進めるためには、さらにほかの地域からの応援ということも前提としなければいけないわけでございます。したがいまして、この数につきましては、何人の医師が参加していただければ何名検診ができるというふうな形になってくるわけでございまして、むしろ私ども、具体的に検診を引き受けていただける先生の数をできるだけふやすことによりまして、見通しを立てていきたいというふうに考えております。したがいまして、計算すれば非常に簡単な計算になるわけでございますけれども、それはまさにいままで先生が何回も御指摘いただいているような、いわゆる行政が画餅のような物の考え方をしているというふうな問題もあるかと思います。したがいまして、私どもは具体的に可能な数値というものを、実際に検診をやっていただける医師の数の、本当に何先生がやっていただけるかというふうな点を中心としながら、現在いろいろと折衝しているところでございます。  それから、この判断条件の中身の問題でございますけれども、疫学の問題が入っているかということでございますが、現在でも、次官通達等によりまして、この疫学の問題についての考え方が明らかになっているところでございまして、これを受けての流れになってきますので、ただいまこれが入っている、入ってないということを申し上げるような状況にないわけでございますけれども、すでに基礎といたしましては、過去におきます次官通達における疫学の問題もございますし、私どもも実際に現在の審査にかけますに当たりましては疫学の問題も考慮されているところであるわけでございますので、あとは御推測をお願いいたしたいと思います。  それから高齢者の方、さらには重症の方につきましては、現在すでに患者さん方とのお話し合いがございまして、これらの方々につきまして、繰り上げて検診し、繰り上げて認定診査会にかけるというふうな体制になっておるわけでございまして、この制度は当然続けていくべきであると私ども考えております。
  43. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この問題は後でまた申し上げますが、長官が帰ってこられましたので、先ほどの水俣病総合実態把握調査について結論でお尋ねしたいのですが、結局、長官、不知火海沿岸の住民ですね、大体三十万人ぐらいおりますが、不知火海沿岸住民は、これはすべてが被汚染者でございます。多かれ少なかれ魚を食い、被汚染者であるわけでございます。そしてまた、流通によりまして人吉とかああいう奥地にもそういう症状の者がおるのです。そういう者を含めまして、やはり分母というのは不知火の沿岸住民三十万、これが被汚染者であり被害者である、こういう視点に立つべきだと思うのです。そして今度の調査はそれを明らかにすべきだ、こういうぐあいに思うのですけれども、いかがでございますか。
  44. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私は、先日の視察で離島にまで行きまして、あの実態を見て、おっしゃるとおりの実感を持ちました。水銀の拡散による汚染、つまり病気ということで言えば、感染した方の分母は非常に大きいと思います。その感染者の中で発病する人しない人、これは、そのまま正確な比喩になるかどうかわかりませんけれども、結核菌の感染による陽転、結核の症状とはまた違うわけでございますが、しかし、やはりその陽転して一年間注意して何でもなければ後は抗体ができて大丈夫だということと、また水銀とはちょっと違うと私は思いますので、そこら辺の、つまり水銀による汚染感染と発病との因果関係というものも、遅発性の水俣病も見られるようですし、これはまた総合調査と申しましょうか、これからの水俣病研究課題の一つだと思いますが、おっしゃるように、そういう非常に大きな分母があるという認識で行いたいと思っております。
  45. 馬場昇

    馬場(昇)委員 最後に私も提案したいのですけれども、これは三十万が被汚染者であり被害者である、そして水俣病のまた幕あけの調査にする、予てしてさっき物すごい広い部門を私が言いまして、長官もさらにそれにつけ加えられたような内容がある、こういうことですから、私は、これに対して特別立法ぐらい要るのではないか、仮称ですけれども水俣病総合調査法という特別の措置法ですか、そういうものまでつくって、やはり本当にここからやるんだというような体制が必要ではないかと思うのですよ。だから、私が提案したいのは、仮称ですけれども、これをやるために水俣病総合調査法、こういうような特別立法をして、きちんと患者から信頼されるような調査をやっていただきたいと思うのですが、これについての長官のお考えはどうですか。
  46. 石原慎太郎

    石原国務大臣 それも関係閣僚会議で、大事な話題として鋭意検討したいと思います。     〔水田委員長代理退席、委員長着席〕
  47. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、いまの調査に基づきますと、結局三十万、分母がそのくらいあるのだ、こういうことでございます。そこで、ここでいう三十万と仮定しますと、被汚染者全員の健康管理とその生活保障法、こういう特別立法が必要ではないかと私は思います。私は、水俣病の本当の対策というのは、この被汚染者三十万対策、ここに水俣病対策の原点があると思うのです。先ほどから長官も言いましたし、私も言っておりますように、水俣病は原爆被害と同様な、本当に人類が初めて経験した災害ですので、そして医学的にまだ水俣病像が解明されていないわけですから、三十万の人が皆心配しておるわけですよ。医学的にも社会学的にも、現在の補償法だけでは私はなじまない、こういうぐあいに思います。そこで前から議論をしておるのですけれども、改めて聞きますけれども、原爆について二つの法律がございます。原子爆弾被爆者の医療等に関する法律、三十二年の制定ですが、とともに原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律、これは四十三年制定でございますが、これと同じように、仮称ですけれども水俣病汚染に暴露された住民の救済に関する特別措置法、こういうものをつくって、いわゆる分母対策、三十万対策、こういう意味を含めて、あの不知火海沿岸の一定地域に一定期間住んでおった者に水俣病手帳を交付して、そして医療救済、生活救済を行う、こういうような特別立法というのが原点の対策として必要ではないか。このことについては長官もこの委員会でもしばしばそういうものを検討してみたいと約束なさっておるわけですし、熊本県もぜひそういうものをやってくれと要望しておるわけでございます。いま事務当局から聞くところによりますと、全然これは手をつけていないというぐあいに聞くのですけれども長官は最高の責任者でございます。そして私は、法制局にこの法律をつくりなさいといって私の原案を示しました。ところがやはり環境庁なんかといろいろ連絡をとりながら、きのう来ましたけれども、どうしてもきのうまで間に合わないと言うのですよ。しかし、考えてみたら、その背後にやはり重大な政治的判断をしなければ立法化し得ない条件があるんじゃないかというような気がするのです。  だから私は、もういままでの答弁を繰り返し聞こうとは思いませんけれども、こういうものについてやはり分母対策というものが必要だということを関係閣僚会議に持ち出していただきまして、そういうものをやろうと決めて、政治的に判断をして、そして事務当局に法律をつくりなさい、こう言わなければ、事務当局からは出てこないというぐあいに私は思うのです。そういう意味で、仮称ですが、水俣病汚染に暴露された住民の救済に関する特別措置法、こういうものをぜひ関係閣僚会議議論していただきまして、そこで政治的決断をしていただいて事務当局に作業を命ずる、こういうようにしていただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  48. 石原慎太郎

    石原国務大臣 仮にそういう法律が成立し得るとしましたならば、先生のいまおっしゃったような手順でなければとうてい無理だと思います。健康管理、生活保護、社会保障ということについてはほかの制度もありますので、その兼ね合いとのむずかしさがございますが、関係閣僚会議において、いまおっしゃいました分母の大きさというものを関係閣僚がまず認識することがなければ、特別の立法措置ということも出てこないと思います。それに対する賛意もかち得られないと思いますので、まずそういう手順で事を運び、そこでその分母の大きさに対する了解が得られたならば、そういう提案をし、そうしてその関係閣僚会議で合意が得られたならば、これは事務方にそういうものを具体的におろすということになると思いますし、私も何らかの特別措置というものが講じられるべき問題だと思います。それをしなければ一つの時代から次の時代への移行の最後のしりぬぐいをできない。ロッキードを含めて、福田内閣というのは、どうもいろいろしりぬぐいをしなければならない宿命にある内閣のようでございますので、この一つの転換期に、環境問題について徹底したそういう問題の解決というものを図る努力をするべく、関係閣僚会議で私も努めるつもりでございます。
  49. 馬場昇

    馬場(昇)委員 やはり当初申し上げましたように、長官自身の文明批判というものを政治の立場で実現するために、ぜひこれはもう閣僚会議で政治的判断を下してつくっていただきたいと思うのです。  次に、患者は、もう長官も聞かれました、年とった患者は、おれはどうでもいいんだ、あの胎児性患者をどうにかしてよくしてくれないか、私の骨身を削ってやってもいいから、あの胎児性患者は先が長いんだからやってくれということを言われました。患者は、申請をすると補償金目当てだとかなんとか言われて、白い目で見られておりますけれども患者の本当の願いというのは、金は要らないのです、体をもとどおりしてくださいというのが患者の願いでございます。そうしてまた分母の三十万の被汚染者も、いつ不治の病を宣告されはしないかという不安があるわけでございます。そういうことについて、治療研究に国がどれだけ努力したかといいますと、たとえば熊大に、治療研究のために態大の予算に匹敵するあるいは何倍というような金をやって、治療研究してよくなるようなことをやってくれというようなことは余りやってこなかったのです。スタッフも送り込みませんでした。水俣病センターというものをつくりますけれども治療部門というものは不十分でございます。何としてもこの治療ということについて、これが患者の最高の願いだということで充実していただきたいということが一つ。  もう一つは、長官胎児性患者をごらんになって、その気持ちはおわかりになったと思うのですけれども胎児性患者の中にもあるいはその他の患者の中にも、働きたいという人がおるのです。それに向いた仕事さえ見つけてくれれば働きたいという人がおるのですよ。これについて長官は、本当にいいことを約束してくださいました。園田官房長官を長とした国会議員レベルその他も含めて、さらに患者も含めながら、社会復帰のために何とか組織づくりをしたいんだ、そしてその願いにこたえたいんだ、こういうことをおっしゃいました。この園田官房長官を長とした与野党を含めた国会議員レベルその他の者を含めた社会復帰のための組織づくりというのは、現在どこまで進んでおりますか。
  50. 石原慎太郎

    石原国務大臣 個人的には園田官房長官に、厚生大臣として初めて水俣病公害病として認定された方でございますし、またあの地域出身の政治家でもございますので、その話をいたしました。環境庁長官は次々かわりますけれども、とにかくそういう組織はある恒久性を持たなくちゃならぬと思いますので、具体的にはこれは関係閣僚会議の席上で問題にすべき問題かどうかわかりませんけれども、しかし、やはり一つの問題提起として、次の関係閣僚会議でどう扱うかということを相談し、これは政府の行政から少し外れたことでございますけれども、やはり与野党の先生方にも呼びかけて御協力を仰ぎたい。また、その先生方を通じてチッソを含めた関係企業にも、何といいましょうか、特にチッソはチッソなりに一種の授産場のようなものを試みてうまくいかなかったようでありますけれども、全社会的な協力を要請する方法があるのではないかと思っております。  きのうも参議院で申しましたが、あの患者さんたちが働きたいということを言われますと一番胸が詰まりまして、今度できます研究センターでも御研究の——そういう言い方は非常に失礼かもしれませんけれども、いわば患者さんが素材そのものでございますから、働いてもらいながら、つまり健康回復の研究対象になっていただくということで、あの研究所の運営の中にも患者さんたちにしてもらう仕事があるんじゃないか。それも組み込んで積極的に考えていきたいと思っております。
  51. 馬場昇

    馬場(昇)委員 組織づくりをするということを言われましてあの悲惨な患者も期待をしておるわけですから、長官はあのときも冗談めかしに、おれにタカ派、タカ派と言うけれども、そういうことを実行するのはタカ派だぞということも言われて笑わせてもおられたのですが、ここではぜひ実行するためのタカ派ぶりを発揮していただきたいと思うのです。  次に、認定制度の改善についてお伺いしておきたいと思うのです。今日の認定制度というのは、私さっきもちょっと言いましたけれども、針の穴のようなものですよ。そしてこれは被害者の救済になっていないのです。言うならば被害者の切り捨てになっているんじゃないか、私はこういうぐあいに思います。考えてみてもわかります。患者にとって全然わけのわからないところで決まるのですから、患者側にとってみますとこれはもう暗黒裁判ですよ、あの認定審査会というものは。暗黒裁判によって振り分けられ切り捨てられておる、患者救済になっていない、今日の審査会は。私はこう思います。そして認定審査会を見てみますと、補償法によりましても、医者だけではなしに法律家など学織経験者が入っていなければいけないんだ、補償法には審査会のメンバーはそうなっているのです。ところが熊本の審査会は医者だけですよ。法律家とか学識経験者は入っていないのです。大体補償法で決めております精神というのは、医者というのは認定の手助けであって、審査会というものは、行政がこの法律によって救済するかしないかを判断すべきものですよ。それが、あの審査会というのは純粋な医学上の判断になってしまっている。いわんや純粋な医学上といいましても、水俣病像がまだわからないという中ではお医者さんの主観になってしまっているのです。このことは、現行法でさえも審査会は運用を誤っておる、行き過ぎておる、患者救済になっていない、私はこういうぐあいに思います。いわんやこういううわささえあるのですよ。これはうわさでしょうけれども患者を見て、これは補償金千六百万、千八百万、いろいろすると二千万円平均になるのですけれども、この患者は二千万円に値するだろうか値しないだろうか、そういうことがやはり医者の頭のすみにある、審査委員の頭のすみにある。こういうことさえ批判もされておるわけでございます。そういうことでございまして、この認定審査会というものの運営、あり方ということについてやはり検討を加えなければならない、こういうぐあいに思っておるわけでございます。  そして認定基準、これを判断条件と言いますけれども、野津さんはさっき言いましたけれども、いまだもって、この場所で患者を代表し住民を代表し国民を代表して私が質問しているのに、中身を言わないのですよ。あやふやなんですよ。これはなぜそういうことになっているのか、全く秘密主義でございます。だからこそ、秘密主義でやるからこそ、そういう案を出してごらんなさいよ、秘密にやって。患者は反発しますよ、絶対に進みませんよ。そういうことがあるわけでございますし、私はもう認定基準はさっき質問いたしましたので多くを申し上げませんけれども、少なくともあの次官通達で、水銀の影響を否定し得ないものを認定するんだとなっておるのですから、それを発展させなければならないということは当然でございます。  そして補償法でも、第一種と第二種がありますけれども、これは第二種で因果関係を見なければならぬとなっておりますけれども、結局、たとえば公害、大気汚染のあの四日市だとか川崎とかそこでぜんそくが起これば因果関係はないのです。みんな認定するわけですよ。第一種的な認定というような考え方、このことが次官通達を発展させることになるんだ、そういうような判断条件というのをぜひ出していただきたいと思うのです。  そこで私が提案したいのですけれども、これはこの前も提案いたしましたけれども、私は地域集中検診、集中審査方式を採用せよと提案するのです。これは先ほど野津さんも言いましたけれども、やはり検診医をずっとふやさなければだめなんですよ。だから、たとえば極端に、この夏休み期間中に検診医をふやす。この間、自主検診しましたら、お医者さん方が延べ百三人来たんですよ。それで十日間ぐらい検査をしたのですけれども、それ以上のお医者さんを集められると思うのです。厚生大臣にそれを協力させてください。それで審査会というものを回数を、少なくとも新潟大学、熊本大学の協力を受けて、夏休み中は毎日審査をやっていくんだ、こういうふうな体制をとったらどうですか。そういう人たちには予算をよけい組んで報酬もたくさん出してください。そして地域に出向いていって、たくさんの検診医がそこで検査をする。いまの認定審査会というものは、検診医が検査をしたら、書類だけですよ、審査会にいくのは。人が診たのを審査会では書類で見ているのですよ。これじゃだめなんです。だから審査会も現地に行って、多くの検診医が検診して検診したのを審査会に持ってきて、検診した人がそこで説明して、そしてそれをそこで認めていく、こういうようなことをやるべきだ、こういうぐあいに思うのです。そうしたら、極端に言うと、夏休み中で全部は終わらないでしょうけれども、ほとんど終わってしまう、こういう条件さえも出てくるのです。  しかし、ここで患者の協力が必要なんですよ。しかし、患者が協力はすると言っているのです。というのは、判断条件だとか行政の姿勢が前向きであれば協力すると言っております。ただし、ここでは粗すくいというようなかっこうになるかもしれません。だから、残った部分については棄却をしてはいけない。これは追跡調査をしていくんだという条件をつけてやれば、患者は協力すると思うのです。そういうぐあいにして、一日も早く違法状態なりいまの状態を解消していただきたい、こういうふうに思うのですけれども、どうですか。
  52. 野津聖

    ○野津政府委員 初めに、現在の認定審査会の問題の御質問があったわけでございますけれども、現在の認定審査会の先生方が非常な御努力をされながら現在の認定業務を遂行していただいている、いろんな面におきまして、ほかに研究あるいは教育あるいは臨床といういろいろなお仕事を持ちながらでも、非常な努力をもちまして時間を割いていただいて、医学的な面を中心としまして御判断をいただいておるというふうに私どもは理解いたしております。特に現在の医師によります判断でございますけれども、これは御案内のとおりの救済法の時代には、いわゆるその疾病であるかどうか、水俣水銀汚染による影響があるかどうかということを判断していただくという形でございますので、現在、医師によります審査が行われているというのが実態であるわけでございまして、大変な御努力によりまして現在の業務が進められているというふうに私どもは理解をいたしているところでございます。  それから、集中検診のお話でございますが、私どもも、先生から御指摘ございましたように、できるだけ検診の回数あるいは検診の件数をふやしていきたい、これが非常に大事なことであるというふうに思っているところでございまして、その方法論といたしまして、先ほど先生の御質問に対しまして、現在、検診を実施していただきます医師を確保していきたいということを申し上げたわけでございますが、集中的な問題といたしまして現在、若干問題が残っております。もちろん患者さん方の御協力を得るということも大事でございましょうし、さらには過去におきます例を申し上げると、そういうことはないようにすべきであるという前提をもって私ども対処しているわけでございますけれども、四十九年にございました例の一斉検診の問題がございまして、その点を排除するような形でのものを考えなければいけないというふうに思っているわけでございます。  それからまた、過去の経緯が残っておるわけではございますけれども、これにつきましても、応援いただきます各大学なりあるいは国立病院なりに対しまして、過去におきますいろんな事例の問題についての解決策というものを準備しなければいけないというふうな考え方を持っているわけでございまして、これは先生もよく御存じだと思いますけれども、四十九年の結果というものが非常に大きな影響を周辺に及ぼしているところがあるわけでございます。四十九年のまずかった集中検診というものに対してのいろいろな問題点を全部排除していかなければ、集中検診というふうな形にはなかなか行きにくい面もあるのではないかというふうに思っているわけでございます。少なくとも問題点につきまして排除しながら、先生御指摘ございましたように、検診の件数をふやしていくというふうな方法を前提としまして、いろんな方法が考えられると思いますが、この集中検診も一つの御提案の方式だろうと思っておりますけれども、いま申し上げたような各種の事情があるわけでございまして、各方面の十分な理解と協力を得ながらその方法を導入していかざるを得ないんではないかというふうに考えております。
  53. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いまの野津さんの答弁を聞いておりますと、長官水俣に行っておっしゃったことが、全然事務当局は行動としてそれを身につけていない。全くおかしな話だと思うんです。言葉じりをとらえるわけじゃございませんけれども、この世界的な文明が変わろうとしていると長官がおっしゃっている、そういう世界的な原爆に匹敵する、人類が初めて経験したものを、大学の先生か時間を割いて審査をいただいております——時間を割いてとは何事です。これは専従に専従して、全精力を挙げてやるべき筋合いのものじゃございませんか。それを時間を割いて御協力をいただいておりますから——さらに私は知っています。何かというと審査委員の引受手がないから、はれものにさわるようにしてお医者さんを扱っている。その状態も私はよく知っているんです。これは、行政が本当にまともに取り組もうとしないから、そういう状態が起こっているんです。時間を割いて審査願っていただきまして、こういうような審査会では絶対に進まない、はっきり私は申し上げておきたいと思うんです。  そこで、長官にお尋ねしたいんですが、長官はこの前、これは私が直接聞いていないんですけれども、新聞で見たんですけれども、上級公害患者審査会を設置する、こういうことを新聞で見ました。現在、保留者が七百人ぐらいおるわけですけれども、そこで水俣病患者としてその保留者について上級審査会というものをつくって、その答申で環境庁長官がそれを認定する、こういうことを言っておられたようでございますが、これは本当にそう言われたのかどうかわかりませんけれども、こういうことについて、私は、絶対そういうことはしちゃいかぬと思うんです。これはもう責任の分散ですよ。そして審査会の責任逃れと思うんです。いまの法体系からも問題か——まあ法体系はどうでもいいんですけれども、そうしたら書面審査になってしまう。現在、医者がいない、医者がいないと言っておられて、果たしてそういうのをつくられるのかどうかという問題です。現在、環境庁は、もう長官御存じのとおりに、行政不服で立ち住生しておるじゃありませんか。そういう状況の中で、とにかくこういうことは結局責任の分散であり責任逃れと私は思いますし、こういうことは思者の了解はできません。だから、こういうことはする必要はない、私はこういうぐあいに思います。  それから、白黒のほかに灰色というものを一種別枠で認定したらどうか、こういうことを長官はおっしゃっておられます。このことは、私は、灰色ということじゃなしに、さっき言いました分母の対策という形でこういうことは考えていくべきだ、特別立法で考えていくべきだ、こういうぐあいに思いますが、長官の言われた灰色という問題についての考え方です。  それから、現在、申請者に対して治療研究費が出ておりますね。これは五年汚染地域に居住して申請したら、一年たって治療研究費が出ているんですが、これはなぜ申請したらすぐ出さないのですか、一年なぜ見なきゃならないのですか。この三点について。
  54. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま上級審査会の問題あるいは灰色認定の問題、さらには治療研究費の問題と、御質問あったわけでございますが、上級審査会の問題につきましては、私どもも、先生御指摘になった点が問題があるであろうというふうな形で詰めておるところでもございます。したがいまして、これを実際に行うということではございません。いま御指摘ございましたような、一つの問題点もあるというふうな点を考えているわけでございます。  熊本県のお立場としまして、このような形で解決してもらえないかというふうなことをおっしゃっておられるわけでございますけれども、私どもはどちらかと言いますと、やはり先ほど来申し上げているような判断条件の明確化ということによりまして、審査がスムーズに進んでいくということを前提として考えてまいりたいと思っているところでございます。  それから治療研究費でございますけれども、この問題につきましては、やはり一つの条件というものをつけた形で現在、医療費の自己負担分を見ているところでございます。これがいま御指摘ございましたように、一年という一つの申請されてからの期間を見ているわけでございますけれども、この場合に、いま御指摘ございましたように、申請した当時から見るべきでないかというふうな御意見でございますけれども、現在行っておりますのが、いわゆる保険の自己負担分につきましてこの治療研究費で見ているわけでございます。したがいまして、こういう形で参りました場合には、申請すれば自己負担分がなくなるという形になるというふうな点も、若干、私ども議論をしている段階の問題でございます。  ただ、逆に、御指摘ございましたように、一年というものの妥当性というふうな問題は、これは大きな問題として私ども考えているところではございますけれども、ただ申請した、直ちに医療費の自己負担分が云々という形につきましては、私も若干疑問を持っているわけでございます。ただ御指摘のように、一年がどうだというふうなお話でございますと、一年というものの妥当性というものにつきましては、私どもいろいろ議論をしているところでございます。
  55. 石原慎太郎

    石原国務大臣 黒と白の外に灰色ということは私が言い出したんですけれども、これは結局、いま私もそれを心待ちにしておるんですが、認定基準がどういう形で決まるのかということによって、たとえば保留の方々がどういう扱いになるか、あるいはいまの申請者の中でどれだけの数の方が認定され、どれだけの方々がつまり棄却されるのか。しかし、水俣病事件そのものの実態からいって病像が非常に複雑で、つまり複雑なだけにお医者さんも解明しにくい。しかし、疫学的に見てもいろいろな問題があるでしょうし、そこをどう扱うかということで、一つの思いつきとして私申しましたものですけれども、これはやはり認定基準をできるだけ早くとにかくお決めいただいて、それをベースにその線で棄却され非認定になられた方々の扱いというようなものを積極的に考えていきたいということでございます。そういう意味で認定基準というものができるだけ早くできてくることを待っておりますし、事務局にも本来なら五月の中旬までということを申しましたけれども、先生方の御都合でちょっと延びておるわけでございますが、五月いっぱいにはとにかく何とかそのめどをつけていただきたいと思っております。
  56. 馬場昇

    馬場(昇)委員 灰色というのは、やはり被汚染者いわゆる三十万というのが灰色だと私は思うのですから、そういう立場考えてもらいたいと思うし、これは野津さんに言っておきたいのですけれども、やはり四千人おるのを、これだけこういうことをやりまして、何ヵ月、何年で解消いたします、そういうぐあいにはっきりしてやっていただきたいと思うのです。  次の問題に移りたいと思うのですが、長官関心を持たれました、いわゆる社会的水俣病の解決、すなわち差別、偏見、共同体の分裂の是正、こういう問題についてお尋ねしたいと思うのです。  二十年の水俣病対策というのは、どちらかといいますと差別、偏見というのを定着させて、行政医学とチッソが汚染の広さ、深さに目をつぶってきた。現在もうこの水俣病は終わりにしようという動きさえあるのです。長官が言われる水俣病を現代文明への警告と受けとめ、汚染されている不知火海を日本の公害克服のモデルにしなければならない、こういうことは、ある新聞社が水俣でアンケートをとりましたら四一%の人がそういう答えをしております。そして水俣病を避けて地域の再生というのはないのだ、これは水俣のアンケートで七〇%ぐらいの人がそう言っております。とにかくそういう立場から、行政が企業寄りでありました。水俣の市役所はチッソ株式会社の総務部だと言われておったのですよ。そして市長はチッソの総務部長だ、こう言われておった時代もございました。そういうことであってはならないわけですし、患者グループが分かれておりますけれども、このグループが東京へ陳情に行くときには市が補助金を出す、このグループが行くときには出さない、そういうことなんかも何回もございました。まだ数え上げれば切りがないわけですけれども、そういうことを含めながらやはり行政が企業寄りで地域共同体を分裂させてきた、患者組織さえも分裂させてきた、この行政の姿勢というのは正さなければならないと思います。患者にとって言いますと、患者、家族に対しては現在でもやはり奇病だ、伝染病だという目で見るのがまだ払拭されていないのです。本当に患者、家族というのは、約三十年間、冷たい、人を刺すような目で見られてまいりました。また結婚、就職の差別があるのです。水俣病とおやじが認定されると結婚に支障があるから申請してくれるなとか、就職に水俣と言ったばかりに差別をされたということさえあるのです。そして同じ被汚染者であります市民が同じ被汚染者の患者と対立をしておる、こういうことがいっぱいあります。そしてまだ、申請すると金欲しさだと白い目で見られるのがあります。事実ある新聞社の調査では同情しておる者は三〇%もないのです。やはり白い目で見ておるという者が五〇%を超しておるのです。これは何としてもなくしていかなければならないと思うのです。長官もお聞きになりましたけれども、申請に当たって医者が診断書を書いてくれない、あるいは診断書を書いてやった医者がほかからボイコットされる、こういう事態だってあるのです。申請したところが村八分になった、申請したところが漁協の組合員から除外された、こういうことがあるし、自治体が申請の世話をしてくれたという事実がないのです。もう数え上げればきりがないし、長官も御存じだと思いますけれども、時間がございません。私はこういうのがいわゆる社会的水俣病だと言うのです。  そこで、環境庁は、長官は、県と市町村を指導しながら、そしてまたほかの団体等にもいろいろな方法で正しいことを知らせながら対策をとるべきだ。そこで私は非常に大きい問題として、水俣病の社会科学的な研究対策の協議会というようなものを患者を含めながらつくって、この社会的水俣病と言われます差別、偏見の是正というものに積極的に取り組んでいただきたい。そういう意味水俣病社会科学研究対策協議会というようなものをぜひつくって、差別、偏見、共同体の亀裂対策に真剣に取り組んでいただきたいと思うのですが、もう時間がございませんので、最後結論の、そういう組織づくりをしてさっき言ったようなことをやっていただきたい、これに対する長官考え方を聞きたいと思うのです。
  57. 石原慎太郎

    石原国務大臣 現地を視察しまして、水俣市そのもの、あるいはそれに付随した近くの市町村、あるいはその中のさらに小さな部落、そういうコミュニティというようなものが水俣病によって非常に亀裂が入り、崩壊しようとしていることを感じました。でございますから、いま先生の御提案の問題もやはり非常に重要な要因の一つでございますので、関係閣僚協議会でどのように研究し、対策するかということを討議したいと思います。
  58. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間がございませんので、次に、いわゆる水俣病教育、いままで余り使われなかった言葉ですけれども、私は、原爆の教育というものも進められておるのですけれども水俣病教育というものを確立すべきであろう、こういうぐあいに思います。その前に、たとえば長官も言われましたが、被害者に対して、胎児性水俣病患者が望むような教育というものがまだ十分行われておりません。だから、そういう水俣病被害者に対して、各自が望むような教育を施してやるべきだ。  それから、学校へ行きますと患者の子弟に偏見、差別がまだ行われております。こういうのは是正しなければならないと思います。  それから、おかしなことには、学校で児童、生徒が全くおじいちゃん、おばあちゃんのように、腰が痛いんだ、肩がこるんだ、頭痛がするんだ、こういうことを言う子供が非常に多いのです。そういう実態の把握が行われていない。これは慎重にやらなければならぬと思いますけれども、やはり実態を明らかにする必要があろう。  それから、水俣の子供は、あの海岸におって泳げない子供が非常に多いのです。これもやはり水俣病のしわ寄せだろうと私は思います。  先ほども言いましたように、熊本などに研究のスタッフとか財政とかを、これはもうよその大学の何倍とやらなければならない、こういう予算の問題等もあります。  だから私はここでさらに申し上げたいのは、水俣病をさっき長官が言います現代文明の警告と受けとめるならば、今度は水俣だけではなしに、不知火海沿岸だけではなしに、水俣病学習と水俣病教育というものを全国の学校で文明の警告として、時代が変わろうとしておるときに、二十一世紀に移ろうとしておるときに、これは大いにやるべきであろう、こういうぐあいに思うのです。これはまさに文部省の所管かもしれませんが、やはり関係閣僚会議でそういうことを文部大臣と話し合われながら皆で議論して、いわゆる水俣病教育というものの確立をやっていただきたい、こういうぐあいに思います。いかがです。
  59. 石原慎太郎

    石原国務大臣 幾つかのお話がありましたが、私がやはり現地で先生のお話を聞いて気になりましたのは、普通の児童で腰が痛い、肩がこるというのが非常に多い。これはやはり何か非常に暗示的な一つの現象ですし、それから明水園で聞きましたところ、人口が四万幾つかの小さな町でいわゆる脳性小児麻痺、つまり胎児性患者と認定されてない小児麻痺の患者か十八歳未満で四十数人いる、二十歳過ぎれば六十人近い。これは自然の有症率からいっても驚くべき数字で、一種の社会病として、そういう本来なら胎児性患者として認定されるべき——それはいわゆる一般脳性小児麻痺の患者さんもいらっしゃるかもしれませんけれども、しかしそういう有症率からするとはるかに大きな数字で、そういう問題があるなと思いました。  教育の問題ですけれども、実はきのう生活の快適性に関する最後の懇談会がございまして、そのときにも、環境問題というものを文部省のカリキュラムに組むべきである。これはたばこを捨てるなとか、町を汚すなとか、いわゆる道徳の一般論の教育ということになると、どうもあしき風潮で、道徳そのものを教育の中で論ずることが変にタブーになっているばかげた社会現象がございますが、しかし、そういうものがあればそれも考慮しまして、とにかく環境という物質的な、視聴覚的にもはっきり知覚感得される問題から、つまり教育をし、民主社会というものに必要な道徳教育もする必要があるのではないかということで、そういう発言を受けたばかりでございますので、私は、環境問題の中で最もあしき、悲惨な典型としての水俣病も、企業という組織の責任、それによる市民の被害という因果関係で、子供たち自身が成長したときに漠然と数十年前にあった事件を何かで思い起こすというだけではなしに、教育の過程で環境問題として、それを通じて民主主義社会に必要な道徳というものを体得する、そういう意味で私はお説に全く賛成でございます。
  60. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ぜひお願いしたいと思うのです。  もう時間があと二、三分しかございませんので、最後に申し上げたいのですが、水俣病の財政措置でございます。  私は今国会で水俣病に関していままでに数回質問をいたしました。ヘドロ処理を中心にした環境の復元の問題、第二次汚染は決して起こさないようにやってくれという問題、水俣病センターを中心にした治療体制の確立の問題、そしてまた熊本県初め各市町村に対する財政援助などについてたびたび質問もし、提言も行ってきたわけでございます。ぜひ本年度の予算、予備費の中からでもあるいは補正予算の中からでも、あるいは来年度の予算の中でも、長官水俣を見られたわけですから、抜本的な財政対策というものをぜひ確立させていただきたいと思うのです。  最後に、水俣病対策の本当の推進というのは、先ほどから言っておりますように、患者の心を知らなければならない。患者との理解なしではできないのですよ。そういう意味患者が東京に来る、東京からときどき水俣に行くのではなしに、患者との了解を得る、理解を得るあるいは対話をするという意味で、水俣市に環境庁とか県とかが水俣病行政の窓口というものをつくる必要があろう、こういうぐあいに思うのですよ。この辺についての御見解をお伺いしたいと思うのです。  いままで長官たくさんお答えになりましたけれども、ほとんど意見は一致しておる面が多い、そしてやりたい気持ちがあるのです。言いましたように、当然、言葉よりもどう実行するか。しかし、残念ながらほとんど閣僚会議、閣僚会議という形になってしまったのですけれども、ひとつ長官、これはぜひ実行をしていただきたいということを申し上げながら、最後の質問をして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  61. 石原慎太郎

    石原国務大臣 言いわけするわけではございませんけれども、視察をしてから一ヵ月ほどの時間が過ぎました。一ヵ月というと長いようで短いし、短いようで長うございますけれども、とにかく夏前にレールの基本計画をつくりまして、汽車を一歩でも二歩でも動かすという努力を鋭意いたします。しかし、御存じのように非常に関係省庁の協力を仰ぎませんとできないことが多うございますので、まず熊本県側の意見とこちら側の意見を突き合わせて、ごく近々第二回目の関係閣僚会議に具体的な案を出しまして、それを省庁に持ち帰っていただき、具体的な御協力をいただく。そして水俣市の窓口でございますけれども、これは確かに必要だと思いますが、研究センターが近々でき上がりますので、それまでが問題だと言われれば別途に方法も考えますが、研究センターができましたならば、これは国立の、しかも環境庁の所管になると思いますので、ここが単に研究の題目だけではなしに、政治的な問題、社会的な問題を環境庁に取り次ぐ一つの窓口になるべきだと思います。
  62. 馬場昇

    馬場(昇)委員 がんばってください。  終わります。
  63. 島本虎三

    島本委員長 ちょっと長官に、いま馬場委員の方からほとんど意見の一致している点が多いということでありますが、ただ委員長として、認定制度の改善の問題で馬場委員の方からいろいろ提案があったわけでありますが、これはもう事務的にこの点をただ答弁されただけで、長官の意向としてのものが出されておらないのです。馬場委員の申されたように、医療のみではなく法律家や学識経験者を入れた、そういうような審査会を考えないかというような点では答弁がなかったようであります。  それから夏休み中に学者を利用して集中的な検診をやるべきじゃないかという提案に対して、これはやらなくてもいいという意向ですか、何かあいまいだったように思いますので、この点、委員長から質問をさせてもらいます。
  64. 石原慎太郎

    石原国務大臣 夏休みの検診ですけれども、これは一つの基本姿勢ができましたならばやはり行うべきですし、行いたいと思います。そのためにも熊本県が要請している常駐のお医者さん、しかしこれはあそこにどんなりっぱな官舎を建てても、自分の大学の仕事もあるでしょうし、一年間、二年間そこに張りつけておくということはなかなかむずかしいと思いますので、ある技術的な資格を持たれた先生方を一ヵ月なり二ヵ月なりローテーションで、延べ結局あそこにある数のお医者さんが常駐している、そういうお医者さんの派遣をそれぞれの大学に依頼し、ローテーションを組む作業をいま事務的にさせているわけでございます。それができなければ、またそれプラスアルファのお医者さんの獲得ができなければ、夏の集中検診というものもむずかしゅうございますし、いま厚生省なり文部省と協力して、まずお医者さんを獲得するための努力をしている最中でございます。  それから審査会の中に法律家も入れろ云々の問題でございますが、これはちょっと検討させていただきますけれども、どうも水俣病の性格からいってもう病像そのものが非常に複雑なために、結局審査というものの比重が非常に純医学的なものになりやすいというか、ならざるを得ないということで、委員の構成がお医者さんだけということになっているわけです。それもそれぞれの権威の先生方になっていただいているわけです。しかし、それだけでは、どういう問題が出てくるかということを自分自身で研究しておりませんので、これも一応研究させていただきますが、認定の基準が設けられ、物が動き出せば、私は、現在の自分の知識、所見では権威のあるお医者さんだけで構成されてもいいのではないかと思いますけれども、この点は私なりに研究させていただきます。
  65. 馬場昇

    馬場(昇)委員 補償法には、法律家など学識経験者を入れるとなっているのですよ。法律にそう書いてあるわけですから。そうしてお医者さんというのはその手助けですよ。そうして問題は法律救済をどうするかということを審査会でやるわけですからね。医学水俣病像を決めるということをやるところが審査会じゃないのですよ。法律に入れるようになっているのですから。
  66. 野津聖

    ○野津政府委員 もう先生御存じのとおり、現在の公害健康被害補償法におきましては、十五人以内の審査委員でございまして、そしてその中に医学、それから法律学その他と入っているわけでございます。ただ、現在、不幸にして三千五百名以上にわたって残っておられる患者さん方は、いわゆる旧法によります審査会の審査を受けているわけでございます。したがいまして、この場合にはなぜいわゆる法律家が入っておりますかと申しますと、いろいろその障害の程度あるいは遺族給付等につきましての判断ということが一つあるわけでございますが、現在の旧法によります審査会の場合には、いわゆる医学的な判断という形になっているわけでございます。ただ、先生御指摘ございましたし、また大臣も検討したいとおっしゃっているところでもございますし、私どもも十分検討さしていただきたいと思います。
  67. 島本虎三

    島本委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  68. 島本虎三

    島本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  69. 上田卓三

    ○上田委員 石原環境庁長官にお尋ねいたします。  私は、石原環境庁長官の誕生に大きな期待を持ったわけであります。しかしながら、日がたつに従ってそれは失望となり、同時に大きな怒りとなってまいっておるわけであります。以下、諸点につきまして御質問を申し上げたいと思います。  まず、長官が、水俣病の克服といいますか、そういう意味で現地へ行かれた努力に対しては多とするものであります。そこで、四月二十五日の東京新聞の朝刊にこのような記事が出ておるわけであります。胎児性患者の「若い患者の会」の抗議文に対して四月二十二日午後の記者会見で次のように語る。「ボクは決して物事を疑ったり、傷つけたりするつもりはないが、ごく素朴に、いま会った人たち(若い患者の会)もIQ(知能指数)が低いでしょう。この文章(抗議文)はかなりしっかりしているし、ある種のタイプの文章だ。本当にあの子たちが書いたのだろうかねえ……」こういう記事が出ておるわけであります。また四月二十六日の南日本新聞によりますと、これはすべて私の方で録音してあるわけでありますが、「石原長官は四月二十五日朝、熊本ホテル・ロビーで、この問題に触れ、「若い患者たちについてIQ、知能指数というような言葉をつかったのは明水園の三島園長の説明で、胎児性患者は、普通の脳性マヒの患者などに比べて、やはり思考力が落ちる、などの発言があったからだ。そういう観点からすると坂本しのぶさんたちが書いたという文章は“一人前”で、彼らにこういう文章がはたして書けるのか、と疑問に思い、“あるタイプ”の文章といったまでだ」と自分の発言をあくまでも押し通す強い姿勢を示した。」こういうことであります。また、「「若い患者の会」は、「あの手紙は、石原長官から会いたいと連絡があってから、みんなで三日間相談して内容を決め、渡辺君が徹夜して書いたものだ。他人が書いたものでないことは認めてほしい」と訴え、」また「長官は誤解のあったことを謝り、記者会見で発言を取り消し、私たちに手紙を欲しい」と、一言一言たとたどしく訴えた。」こういう記事が出ておるわけであります。石原長官はこの事実についてはお認めなさるのではないかと思うわけでありますが、なぜそのような「若い患者の会」の患者方々の熱意といいますか気持ちを傷つけるような軽率な発言をしたのか、本当に何のために水俣へ行ったのかとわれわれは言わざるを得ないわけでありますが、その点について一言弁明してもらいたいと思います。
  70. 石原慎太郎

    石原国務大臣 休憩前の馬場先生の御質問にもお答えいたしましたが、現地に行かなければわからないことはたくさんございました。また行く前から私、自分なりの知識、集めました資料等を通じて胎児性患者さんが一番悲惨であると思って、数も限りのある方々ですし、一般社会にはいわゆる脳性小児麻痺の患者方はたくさんおられますけれどもこれは厚生省の所管で、たまたま水俣の問題を環境庁が所管しておりますかかわり合いから、この方々の社会復帰と申しましょうか、社会参加を何とか取りつける方法を講じられないものか、水俣病を最初に公害病として認定した園田さんも当地の出身でございますし、たまたま官房長官をいましておられますし、ひとつお諮りして、与野党を超えた議員が力をあわせて対策を講じたいと思ってまいりましたが、明水園でお目にかかった患者さんに関する限り非常に症状がひどく、私たち素人が見ましたら、社会復帰と申しましょうか、参加は非常に限られた方々だけ、しかも限られた仕事だけが可能なような感じがいたしまして、非常に暗たんとした気持ちになりました。そこで園長に、私はそういう障害を抱えた方々の知能といいましょうか能力をはかるほかの言葉を知りませんので、IQはどうでしょうかと言いましたら、カルテに実際に三十六とか十幾つという数字が書き込まれておりまして、これが非常な特徴であるということを言われました。だとするとこれは社会復帰、参加というものも非常にむずかしいなと思ったわけでございます。  そういう認識をしましたために、患者にはいろいろ障害の格差があるようですけれども、明水園におられる方々に比べれば軽症とは言えないでしょうが、そういう力のある方々が三日かかって書かれたということを後で知りましたが、あの手紙を読んだ限りでは非常にしっかりした文章だったものですから、そういう潜在感があったのでそういう発言をしたわけでございます。
  71. 上田卓三

    ○上田委員 長官、やはり長官考え方は間違っておったということで、いま反省されていますか。
  72. 石原慎太郎

    石原国務大臣 反省しております。その後堀田さんという看護婦さんからお手紙をいただきまして、ちょっと見ただけではわからないだろうけれども、自分たち長く看護している人間から見ると、たとえば中村千鶴さんという一番重症の女の子は、実は一番人の言うことをわかる能力がある、受信能力は常人以上にむしろ繊細だけれども発信能力はゼロなので、つまりIQというような問題は発信能力が兼ね備えられて初めてできることですから、中村さんの場合にはゼロに等しい、しかし片一方ではそういう能力を持っているんだということで、患者さんたちの実体はIQだけでははかれない。IQという限りに関してはそういう低い数値でも、実は一見目に見えない違う可能性があるのだということを教えられまして、そういう点では認識を新たにした次第でございます。
  73. 上田卓三

    ○上田委員 私も身体障害者の方々と再々会う機会があるわけでありますが、予断と偏見といいますか、目が悪いとか、耳が聞えないとか、言葉がたどたどしいとか、あるいは手が悪いとか、足が悪いとか、外見だけで人をばかにするような差別的な風潮があるわけでありまして、長官ともあろう方がそういう意味で、IQが一般的に低いということだけで、文章と比較してこんなのが書けるはずがないじゃないかというような形で予断をした、差別的に見たということに対して、私は激しい怒りを感じるわけであります。  まあこの問題だけじゃなしに、長官は、たとえばアメニティー懇談会の委員の選考などでもこういうことを言っていますね。一月の七日でありますが、八日の各新聞でこのように報道されているわけです。総理、閣僚の対話シリーズでアメニティー懇談会設置を報告し、ある種の感覚のレベルの持ち主と称して文化人を集め、みずからもぼくは芸術家だからと、こういう感覚でありますね。いわゆるある種の感覚のレベルを持った人間でなければ、そういう公害といいますか、その種の人たちだけが理解できるような公害がわからないんだというような思い上がりというのですか、うぬぼれというのですか、私は文化人だからなというような、芸術家だからなというような形で、国民の中で自分たちだけが一段上の上層階級なんだというような、そして国民をべっ視するような、そういう考え方というものを私は許すことができない、こういうふうに思うわけであります。  あるいは、ここにテープにも入っておりますが、あなたはこういうことも言っておりますね。これは二月の十九日のNETテレビの政府広報番組でありますが、「あまから問答」で團伊玖磨氏との対談でありますが、「審議会とかなんとかがあるんですよ。前頭葉とか頂頭葉とかがだめになってね、ドレミファ歌われても音痴みたいな人ばっかりそろっていて、快適性懇談会なんてけしからぬし、おれたちにやらせないのかなんていう、そういうステレオタイプの……」と、こういう発言をなさっておるわけであります。あるいは、「労働組合でも何でも結構だけれども、何でも反対というような人がいてね、何でおれたちにやらせないんだ、こう言うけれども、その前に鏡見るというか、その前に團さんのピアノで情操試験でもした方がいい人が考えてもだめな問題がたくさんあるんだ。」こういうことをおっしゃっておるのですが、これは一体どういうことなんですか。ちょっとここで説明してください。わからないのです。
  74. 石原慎太郎

    石原国務大臣 私は、自分が芸術家であることを否定いたしませんし、政治家であると同時に芸術家でございます。物事には感覚を中心にした世界もありますし、感覚を中心にした問題もありますし、いろんな種類の問題がございますが、アメニティー懇談会というものは、生活の快適性という、ある意味でまず感覚的な物事の基尺から始めなくてはならない種類の問題を論ずる会でございますので、そういった感覚を持ち合わせた、実際にその感覚をもとにして仕事を社会的にし、認められたる方々にお集まりを願ったわけです。私は、実際に中公審のかなり老齢の方々が、中公審があるのに何でその問題をここで扱わないのかと言われたということを聞きましたが、中公審は中公審でそれぞれ学識経験者、いろんな社会的体験を積まれた権威がお集まりのようですけれども、それはそれで論じていただく問題がございますが、大脳生理学的に申しまして、やはり感覚というものは頂頭葉、前頭葉の働きが中心でございまして、そういう意味では年齢的にもう少し若い、しかも感覚のみずみずしいと申しましょうか、それをもとにした仕事をしている方々にお集まりいただく方が妥当だと思いましたので、そういうことを申したわけでございます。中公審があるから、おれたちがいるから何でもかんでも仕事をさせろと、していただくのは結構でございますけれども、やはり何と申しましょうか、物事の範疇の違いというようなものもありますし、そういう意味で決して差別ではございません。ただ、物を識別と申しましょうか、区分けと申しましょうか、そういう意味でそういうことを申したわけであります。
  75. 上田卓三

    ○上田委員 アメニティー懇談会とか環境アセスメントとか、あなた、横文字好きですね。あなたは学のあるところをみんなに知ってもらいたいという気持ちなのか知らぬけれども、国民はわからないですよ、本当に。もっと国民の感覚で、大衆の感覚でやはり政治をしてもらいたいと思うのです。自分は国民よりも超越した芸術家だ、文化人だ、小説家だあるいは政治家だというのにあぐらをかいてはいかぬと私は思うのです。本当に国民がわかるような言葉を使ってもらいたいと思うのです。そういうわかった者だけの会議ならいざ知らず、やはりあなたの言葉というのは新聞とかテレビ、ラジオ、マスコミに乗るわけでありますから一々注釈しなければわからぬような言葉というのは余り使わない方がいいと私は思うのです。これは忠告のために申し上げておきたい、こういうふうに思うのです。
  76. 石原慎太郎

    石原国務大臣 お言葉を返すようでございますけれども、私はアメニティー懇談会とは申しておりません。たまたまいま先生の方の御発言にそれがあったから繰り返しただけでございます。これは生活の環境の快適性に関する懇談会という名前でございます。それからアセスメントは、私は、今日の環境庁考えあるいは野党が考えていらっしゃる種類の法律にアセスメントという言葉を使うことはこれは間違いだと思います。これは御存じでしょうけれども、物事を勘定するという意味でございますから、環境影響評価ということならば違った英語で呼ぶべきでしょうけれども、アメリカであるいは他の外国で使われた言葉を私が就任以前から与野党の方々がお使いになりまして、またいまも御質問の中にそういう言葉が出てきたわけで、私たちは、原則的には環境影響評価に関する法律案ということを申しております。
  77. 上田卓三

    ○上田委員 そのとおりであれば一番ありがたいわけでありまして、本当に、ある種の感覚をお持ちの大臣でありますから、言葉の端々でわれわれがやはりひっかかるわけでありますから、そういう点について十分留意してもらいたい、こういうように思うわけであります。  いずれにいたしましても、あなたは非常に予断と偏見というのですか、そういう差別的に物事を見る、まあそういう意味ではある類型の人ではないかというように逆に私は思うわけであります。たとえば、労働組合といえば何でも反対するというように考えられておるのではないか。労働組合でも何でも結構だけれども、何でも反対というような形で、世間に、労働組合というのは何でも反対するのだというように印象づけるような、そういう軽率な発言というのは慎んでもらいたい、こういうように思いますし、また、本当に前向きに正面から具体的な要求を出すものに対してはステレオタイプというような形で、類型的であるというような形で表現することに対して、私は非常に怒りを感じるわけであります。聞くところによれば、長官は、だれだれから会見を申し入れられると、必ずその人がどういう人であるかということを調査される。調査すること自身どうということはないのであるけれども、その調査の結果で、いま来た人は大体共産党であるとか、いやいや宇井純の仲間であるとか、いやだれだれであるとかというように単純にある型にはめてしまって、そして自分の予断と偏見でその相手を見てしまう、私はそれは非常にいけないのではないか、こういうように思うわけであります。そういう点で、やはり多くの方々から聞いていろいろ吸収していくということがなければ、私は取り返しのつかないことになるのではないか、こういうように思うわけであります。  たとえば次に、週刊文春の五月二十六日号、百四十三ページでありますけれども、あなたは「行政改革のためのわが取材旅行」というところで、「三日間数十ケースを視察して感じたのは、この水俣病に自分の政治的信条をふまえてコミットしていると信じているある種の運動家たち、また心情的に彼らに傾斜して報道するジャーナリスト、あるいは誠心誠意、検診にあたっている医者、そういう人たちもふくめて、実は誰も水俣病患者についておどろくほど知っていない、ということでした。知っているのは、結局のところ患者だけでしかない、と深く感じました。」こういうことで、まああなたの感想だからいいということでありますが、あなたはやはり政治家である、長官でもあるわけでありますから、何かそういう、運動家は水俣病について語っているけれども何も知らないんだというきめつけというのは行き過ぎているのではないか。自分は知っているけれども患者も知っているけれども、そのほかの人間は何も知らないんだというような形に、これはどうしてもとられると私は思うのですね。  そういう軽率な発言というものは、長官にとっては枚挙にいとまがないと思うのです。私たちは、小説家であれ政治家であれ、自己の発言には責任を持たなければならない、こういうように思うわけであります。そういう責任を持たない人はいわゆる無責任という言葉で呼ばれておるわけであります。そういう点で、たとえば長官は、このような約束というのは結局ほごにされているわけでありますが、大阪空港しかり、それから国道四十三号線、これは二度目もう一度行きたいという発言をされておるわけであります。あるいは成田空港、伊豆、小笠原、瀬戸内、南アルプス・スーパー林道、志布志湾、新潟、こういうところを実際あなたはいつ行くのか。行くと言っているのだからいつ行くのか、私たちはやはり聞きたいわけですね。言うことは何でも言えますよ。しかし、それを実行しなければ無責任と言わざるを得ないと思うのですね。あなたは忙しいと思いますけれども、忙しければ忙しいだけ慎重に発言をすべきであって、自分の責任を持てる範囲について申し上げることが政治家としては正しいのではないか。そういう点、積極的に発言をされることは私は賛成でありますから、言うた以上は、いま言ったようなところにいつごろ行く予定になっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  78. 石原慎太郎

    石原国務大臣 幾つかのお話が出ましたが、まず陳情者の身上について私が一々調査するというのは、これはちょっと誤解だと思います。ただ、会っても名前がわからない人、つまり名のらない人、その人たちにまで私は会う必要がないとは申しませんが、会う限りは自分が何者であるということを、何も名刺を出してくれということではありませんが、名のっていただきたいということを申しただけでございます。  それから、文春の、お医者さんも運動家もジャーナリストも知っているようで知らない、私はそのとおりだと思います。しかし、よく読んでいただけばわかることでございますけれども、私は物事を知るということがいかに恐ろしいか、自分が物事を知っていると思うことがいかに恐しい過ちを犯しているかということを水俣で知らされたということを申したわけで、患者さんたちと私だけが患者の実態について知っているなどという口幅ったいことをそこで言ったつもりは毛頭ございません。私も含めて政治家も、すべて患者以外の人たちは、水俣病患者が何であるかということを実は知り得ないということを言っただけでございます。  それから、行くと申しました視察は必ず参ります。ただ国会もこういう形で忙しく、公環特も他の特別委員会に比べていろいろ問題がございまして毎回開会される、そういう意味でいろいろな問題が次々に国会開会中出てまいりますので、私も張りつけになって動けませんが、この間も、実は岐阜県に党務で参りましたときにも、それを利用してカモシカの視察もしてまいりました。成田も参ります。四十三号線は、実は衆議院の予算委員会が終わりました後に関係大臣とスケジュールを調整いたしましたけれども、どうしても建設大臣の御都合がつかなかったものですから、ごく近々、警察庁の方の責任者と建設大臣と私が参るつもりでございますし、そのときはまたそれを御報告いたしますが、その他参ると言ったところは必ず視察に参ります。
  79. 上田卓三

    ○上田委員 長官水俣病のそういう患者さんが、われわれの悲惨な現状についてはみんなわからないんだ、われわれの痛み、苦しみがわかるかと言うなら、私は皆、聞く耳があると思うのです。いや、私はわかっているよという人もあるとは言うものの、そういう当事者から言われるならわかりますが、長官が、ある種の感覚の持ち主の長官が、芸術家だ政治家だと常に気取っているあなたの口から言われるならば、多くの方々は反発しますよ。そのことを申し上げたいと思うのです。  それから、先ほどいろいろ言うたことは実行するということでありますから、必ず実行していただきたい。そのために具体的にスケジュールというか日程等を詰めた形で、ここでまた軽率にしゃべるのじゃなしに、きちっと詰めてひとつわれわれに報告をしてもらいたい。こういうことを要請をしておきたいと思います。  それから、あなたは水俣に行かれて現地視察で、ぜひとも対策会議をつくるというようなことも言われておりますし、それから、これも新聞で見たわけでありますけれども患者たちの後援会みたいなものを園田官房長官を会長に、具体的な名前を言うているんですね、園田官房長官を会長に議員でつくりたい、こう言っているんですけれども、その後どのように進んでいるんですか。この問題について、ひとつ具体的にお答え願いたいと思います。
  80. 石原慎太郎

    石原国務大臣 全く同じ質問を午前中、馬場先生からお受けいたしましたが、そのときもお答えいたしましたけれども、いま熊本県側の試案というものを待っておりまして、きょう二十五日までにはお持ちになるということですが、まだ届いておりません。それと環境庁側の案をすり合わせまして、幾つかの方策について関係閣僚会議を開き、そこで具体的に検討をしていただきたいと思っております。ですから、何と呼ぶか未定でございますけれども水俣問題の解決の推進会議と申しましょうか、そういうものもどういう形で設置するかということは、関係閣僚会議で他省の大臣たちと話をして決めたいと思います。  それから、園田官房長官は、たまたま厚生大臣のときに初めて水俣病公害病として認定された方でございますので、要するに熊本県の出身でもございますし、政界の重鎮でもございますから、こういう方に過去のいきさつからいって中心になってもらって、与野党の国会議員が努力をすれは——世の中には脳性小児麻痺の患者はたくさんおられますけれども、これはもともと厚生省所管でございますが、たまたま水俣病環境庁が預かりました上で、いわゆる胎児性水俣病患者であるところの脳性小児麻痺の患者は数がごく限られております。この人たちの社会復帰なり参加というものについて、とにかくチッソも授産場のようなものをつくってうまくいかなかったようでありますが、その障害の度合いに応じた仕事を便宜お図りする、また水俣病研究センターができましたならば、研究対象患者さんそのものでございますから、患者さんにそこで働いていただきながら、同時に研究の素材と申しましょうか、対象になっていただくというふうに図りたいと思いますし、それから、実は軽度の胎児性小児麻痺の患者でありながら、それを隠して大都会に出て、やはり仕事がうまくいかずに帰ってきているような人もずいぶんいるようです。そういった者も、そういう後援の組織をつくることで、国会議員が与野党を超えてそれぞれお仕事のお世話をするとか、そういうことができるのではないかということを官房長官とは個人的に話をしました。それも関係閣僚会議の話題としてはやや不適かもしれませんが、しかしそこでもお出しして、検討願いたいと思っております。
  81. 上田卓三

    ○上田委員 その対策会議は大体いつごろできるのですか、それが聞きたいのです。
  82. 石原慎太郎

    石原国務大臣 先ほども記者の方々にも御質問を受けましたが、やはり水俣病対策の中心の仕事は検診、認定でございます。これがとまっているために訴訟が起き、熊本県も要するに責任ありと判決されたわけで、そのための認定の基準について、新潟、熊本、鹿児島それぞれの地域で認定作業に参加されました権威のお医者さんによって討論されておるわけで、大方の討論が終わったということでございますので、認定基準というものをとにかく出していただいたところでそれにのっとって——それかとのような基準になるかということでまた方策の対処も微妙に違ってくると思いますから、それをできればこの月の下旬にかかるまでにということでしたけれども、お医者さん方の御都合がいろいろ悪いようで、月末になると思いますけれども、それが出次第、早急に関係閣僚会議を開いていただきまして、そこで、その推進会議と申しましょうか、そういう体制についても討論するつもりでございます。それにしても、とにかく何とか夏前には大まかな体制をつくりたい。従来の役所のペースではとても追いつきませんから、せいぜいハッパを環境庁の中でかけ合い、関係各省ともかけ合いまして、とにかく患者さんたちの期待にこたえたいと思っております。
  83. 上田卓三

    ○上田委員 夏前に大まかなということでありますから、ぜひとも夏までにつくっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  次に、宇井純さんといろいろ論争されておるようでございますけれども、再反論という形でサンデー毎日の四月二十四日号百二十四ページに出ておるわけでありますけれども、ちょっと読み上げます。「しかしまあ、所信表明政策方針なぞ、基本線ではあってもお経に近いものです。私がしたいことは、渋滞し堆積した現実を、どうやって一歩解決に向って動かすかということです。」これは何を意味しておるのか、お聞かせ願いたいわけであります。  「だから私は答弁もないのに一日中黙って座らされている予算委員会のような非能率審議よりも、自分の足で現場を存分に見て歩きたいのです。」こういうふうに言っているのですけれども、いま読み上げたのはあなたの文章ですね。これはどういうことですか。予算委員会のような非能率的なそういう審議よりもということは、予算委員会ではあなたは何をしているのですか。黙っているときは何をしているのですか。
  84. 石原慎太郎

    石原国務大臣 もとより国務大臣でございますから、他省庁とのかかわりの質疑応答も私たち十分傾聴すべきものもございますが、それにしましても、予算委員会の審議というのは、質問が重複し、各野党の先生方、与党も含めて、同じことを重ねてお聞きになる。  それから、新自由クラブが提案されました指名をしない大臣——やはり指名をされるわけでございますから、そういう制度といいましょうか習慣がある限り、他の公務もございますし、二日なり三日なり私、予算委員会で指名がないならば、その間、役所なりあるいは視察なり、仕事をさせていただいた方が国全体の行政の能率が上がるのではないかという気がいたしまして、個人的な所見を述べたわけでございます。  そういう意味でございますから、決して予算委員会の権威を冒涜したわけでもございませんし、予算委員会そのものを否定したわけではございませんが、世間の人間がたとえばあの予算委員会を何日か続けて傍聴した場合に、普通の企業なり普通の民間の組織体の中であのように時間と労力を空費する物事の運び方が世間では通るのだろうか、私はそういう意味で新自由クラブが提案されました指名をしていない大臣は退席してよろしいということが、この間動議が出されたわけでございますけれども、あれが入れられなかったことはどうも残念な気がいたしました。
  85. 上田卓三

    ○上田委員 あなたの考え方が、あるいは新自由クラブの意見が取り入れられなかったということは、そういう考え方は間違いであるということになったわけですよ。あなたは少なくとも閣僚の一人なんですから、一議員じゃないのですから、軽率もはなはだしいと私は思うのです。それから、重複が多いといったって、同じことを言うにしても、角度を変えて掘り下げるという意味でやっているのであって、そんなことを言うならば、それこそ野党第一党の社会党が代表してしゃべれば後はしゃべらなくてもいいというような、あるいは同じことは後の人間は絶対しゃべってはならぬというようなことにも、そういうファッショ的な傾向にもつながってくると私は思うのですね。だから、こういう発言というのは議会制民主主義というものを抹殺するものだと言わざるを得ない、こういうように思うわけであります。あなたは退屈だと言うけれども、やはり自分は直接関係ないところでもどういう問題が問題になっているのかということを十分に耳を傾けるという態度がなければならぬと思うのです。私も委員会などであなたの態度を見ておりますけれども、あなただけじゃないですよ、できるだけ後ろの方へ下がって居眠りでもしようかというような閣僚もありますよ。そういう態度こそが、国民がテレビを通じてあるいは直接傍聴した方が、何だ、そんな議会かというような形で、閣僚に対する、怠慢というものに対する国民の怒りがあるということを十分に考えてもらいたい、こういうように思うのです。  さて、石原さんが長官になってから本当に環境庁が閉ざされた環境庁になってきたのではないかというように考えるわけであります。いままで、環境庁が発足して以来あなたがなるまでは、大体大臣陳情は拒否しない、あるいは陳情はすべて公開する、つまり新聞記者を同席させるといったようないわゆる慣行があったというように私、思うわけであります。ところが、あなたになりますと、今度はたとえば公開するかしないかは陳情者の意思によるというような形で、いままでになかったような言い方があるわけであります。あるいは陳情は正規の手続を踏んだ者に限るし、一方的な団交型陳情は御免こうむるといったぐあいに変更しているわけであります。私は、ときには怒りをぶちつけるそういう団交型の陳情があってしかるべきだと思うのです。そういう場に出て耳を傾けるということがなければ、ある種の感情を持っているあなたにはわからないと思うのです。紳士的なというのですか、型にはまったようなことじゃなしに、本当に生の意見を聞くというようなことがあってしかるべきだと思うわけでありますが、そういう点であなたはそういう住民運動というのですか、大衆運動というものを一体どのように考えておるのか。これは害悪だと思っておるのか、いわゆる公害反対の住民運動というものは長官にとっては好ましいことだ、あなた方のそういう運動があるからわれわれの仕事がやりやすいのだというふうに思っておるのか、私はその点をひとつ聞きたいし、それと同時に、新聞記者の同席についても、陳情者が故意にこれは入れてほしくないのだということがあれば別だけれども、何かあえてこういう言葉を発するということは、新聞記者に対する不信というのですか、大体新聞記者がきらいになってきたらその人間はだめですよ。歴史が証明していると思うのです。そういう点で、あなたは、そういうことを言ってないと言うかもわかりませんけれども、たとえば就任直後の記者会見で、環境庁の記者クラブはトリッキー、いわゆるこうかつだから気をつけろと忠告された、そうでもなさそうだというような形で皮肉っているというようなことが、新聞記者からけしからぬというようなこともあったということも聞いているのですけれども、その点についてどう考えますか。
  86. 石原慎太郎

    石原国務大臣 就任後の私の基本姿勢についていろいろ御忠告を含めて御質問がありましたが、私は住民運動というものを決して否定はいたしません。それなりの存在理由があって住民の方々が、こういう開かれた社会であるからこそ、住民の意見を、地方自治体というものもございますけれども、しかしそれを飛び越して中央官庁にぶつけてこられる。これはできる限り私たちはお受けしなくちゃならぬと思っております。でありますから、私がいままで忌避した陳情、面会は、ごく世間で通る常識的なルートというものを無視し、一度は私たちそれを受け入れましたけれども、どうもそれは困ると言って、こちらからも御忠告申し上げ、ひとつ常識的な線で行きましょうと言ったにもかかわらず押しかけて来られた方々に、私は結果として忌避をいたしたわけでございますけれども、そういう意味で、やはり民主主義社会というものが自由に開かれて保っていくためには、ある種の黙約があると思います。これは市民生活の中でも十分通用する黙約だと思いますし、それが陳情団対中央官庁ということで特殊なものに変わるべきものではないと思います。そういう意味で私は、相手と了解し合った互いに都合のいい時間にお目にかかりましょう、それから、やはり決めた時間を守っていただきたい、それから、だれかわからぬ人じゃなしに、名刺を出せというわけじゃなしに、名前も名のれないような方にお目にかかることはないので、やはり名前をはっきり言ってもらいたい、それから、ときにはそれは激高して相手が大きな声を出すということもあるかもしれませんし、私が大きな声を出すことがあるかもしれませんが、それはそれで開かれた議論として結構ですが、秩序のない、私が答弁しようとするのに答えさせずに一方的に物を言うごとき、これを何と呼ぶか存じませんけれども、秩序のない、そういう陳情といいましょうか、話し合いでは困るということを申しただけでございます。  それから、陳情の公開は、これは従来の一つ環境庁の特性であったかもしれませんけれども、過去にはこれが妥当であったかもしれませんが、現況では私は決して妥当ではない一つの習慣だと思います。なぜならば、実際に記者への公開では会いたくないが、環境庁に陳情ということで行けば、私たちの意思にかかわらず記者の皆さんが立ち会われて、そこでは言いたいこともろくに言えないということで、ひそかに違うところで会ってきた例が非常に数多うございます。そういう意味で、私はやはりあそこの役所で仕事をしているのですから、そのために一々外へ出向くよりもあすこにおいでいただいて、陳情を非公開でやってほしいという方には非公開、立ち会いで結構だという方には立ち会いということでお願いしてきたわけで、これも世間で考えれば、この永田町かいわいで独特の仕事をしている私たちの種族には不可解なことに映るかもしれませんけれども、世間の人たちにとればごくごくあたりまえのことではないかということで、私は御了解いただけるものだと思っております。
  87. 上田卓三

    ○上田委員 いずれにしても、この間の公害連の方々長官との話し合いの場に、私もちょっとおくれましたけれども同席させていただいて、私は何も発言しませんでしたが、非常にあなたの態度は傲慢で、別れ際などでも本当に時間が来ましたからということで、そのまま一方的に、やはり初めがあるのですから最後だってきれいな形で、時間の制限もいろいろあったと思うのですけれども、私はああいう立ち去り方というものも問題があるし、特に金子官房長のタクシーの乗り入れの問題についての、立ちながら発言した、後から謝りに来られたわけですけれども、あるいは長官自身が本当に、ここでは言いませんが、あなたは本当に人と応対するというのですか、そういう意味では自分で高貴な方だと思っておるからだと思うのですけれども、本当に強い人というのですか、あるいは有名な人に対してはへいへいと頭を下げているようですけれども、そうでない人には相当傲慢なそういう態度をとっているということは、今後のあなたの政治家としてやはり注意しなければならない問題ではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。環境庁がちょっと石原長官になってから後退していったということを言ったわけですが、ちょっと日付を追って若干述べてみたい、こういうように思うわけであります。  五十一年の十二月二十四日に福田内閣が成立して、石原環境庁長官が誕生したわけであります。  五十二年一月五日、経済団体あるいは鉄鋼連盟などの賀詞交換会に出席をされておるわけでありまして、自由経済の存立なくして国家の繁栄なしということで、どういう立場で物を言われておるのか、本当に経済界のための環境庁かと思わせるような発言をなされておるわけであります。  一月十八日には、宮内庁のカモ猟に私は行かない、無益な殺生はしたくない、こういう形で非常に皆の関心を呼ぶような発言をしておるわけですけれども、しかし、東京湾道路問題では、鳥より飛行機優先と発言して、その後、発言を撤回するというようなことが起こっております。日光バイパス建設の承認がその日になされておるわけであります。  一月二十一日になりますと、自動車排ガス規制について、輸入車への適用猶予決定をいたしておるわけであります。  一月二十五日になりますと、公害対策全国連絡会議の交渉団に、自動車総量規制では、皆さん推薦の知事にやってもらったらいいというような形で挑戦的に言っておるわけであります。原子力開発では、「むつ」問題など一万円札でふたをするようなことをするから国民は安全性について正当な認識を持てない、こういうような本当に環境庁長官とも思えない発言をされておるわけであります。  二月四日には、公害原因でない人もいわゆる水俣病患者の中にはいる、これは週刊文春で報道されたものでありますけれども、これに対して水俣病被害者の会が公開質問状を出しておるわけであります。  二月十二日には、公開質問状に、そんな発言はしてないとの回答。週刊文春は、一月二十七日午後記者二人が面会取材、ともにメモした発言と回答。ということで、週刊文春の方では、そうでない、ちゃんと一月二十七日午後記者二人が面会取材して、石原長官が言うたではないかということを言っておるわけでありますが、それに対する回答がないわけであります。  二月十五日、日韓議員連盟総会レセプションに出席されて、長官が韓国といまいろいろと取りざたされておるわけですけれども、非常にお親しいという点がここで明らかになっておるわけであります。二月二十一日には、参議院予算委員会で四十三号線も、逗子、葉山も整然たる破壊、こういうような発言をして審議が中断をしておるわけであります。  三月五日には、大阪空港へのエアバス導入に真っ先に同意するというようなことであります。  三月十一日には、衆議院予算分科会で、都の施策で環状七号線公害を緩和できるのにしないという形で一方的に美濃部知事を批判して、何か知事選でのしこりがここにありありと見られるようであります。  三月二十八日、窒素酸化物環境基準改悪作業を開始しておるわけであります。  五月十三日、不十分な環境アセスメント法案を見送りたいということで、本当にその意味では電力業界とかあるいは通産省に押しまくられたような形で、結局石原構想というものがここで沈没することになるわけであります。  それから五月二十二日、いわゆる苛性ソーダの製法の水銀法の追放を延期というような形になっておるわけです。  また、五月二十四日には、経済性重視の環境白書を発表するということで、公害行政の大幅な後退ということになっておるわけであります。  そういう点で、本当にあなたは文学的な言葉といいますか、あるいは美辞麗句というのですか、多くのことをしゃべられるわけでありますが、しかし、それは環境行政の後退に対する国民の理解をカムフラージュする言葉でしかないのではないか、私はこういうように考えるわけであります。  まあ一方的に言うて、反論したそうでございますけれども、時間の関係もありますから次に移りたい、こういうふうに思います。  特に、苛性ソーダの製法の問題で、昨日の新聞は「水俣病に代表される非惨な水銀公害追放のため国はカセイソーダの製法を五十三年三月までに水銀を使わない方法に全面転換する政策を進めてきたが「水銀等汚染対策推進会議」(議長・石原環境庁長、十二省庁で構成)は、二十五日午前十時から環境庁会議を開き、先に通産省が技術上の困難を理由提出していた転換期限延長要請を正式に認め、「出来るだけ速やかに転換する」との条件付きで期限の延長を決めた。」こういうふうに伝えておるわけでありますが、水銀法の追放のいわゆる延期というものの真の理由は何であったのか、ひとつここでお聞かせいただきたいと思います。
  88. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 通産省の方から三月二十二日にこの水銀等汚染対策推進会議の課長クラスの連絡会を開きました段階で、イオン交換膜法に五十三年の三月末までに転換するということはいろいろ技術上の問題で非常に無理があるという旨の説明がございまして、そこで環境庁といたしましては、そういう約束になっていたことに対してそれができないということはまことに遺憾な問題であるということと、それから業界が非常に無理だということを言っていることをそのままうのみにするわけにはいかない、内容についてよく検討しなければならぬということ、それからやはりこれにどういうふうに対処していくかということについては国民の納得を得られるような方法なり考え方でこれを処理していかなければならぬ、こういう考え方を持ちまして、関係各省庁、厚生省、労働省、水産庁、その他の省庁とさらに具体的に内容を検討したわけでございます。それで、確かにこれは五十三年三月までに転換は無理だ。無理なことがいいというわけではないのでありまして、これはまことに遺憾なことであるということで、これを是認するわけではないわけでございますが、やむなし。しかしこれはもう非常に遺憾なことだ。だからその後の対応というものが、業界の言いなりになるとかうのみにするということではなしに、具体的にこのイオン交換膜法への転換についての技術的評価を客観的に科学的に迅速にやる必要がある。それには、それの専門の方々による評価のための委員会を開くなりなんなりして具体的な評価をし、それに基づいて漫然と何年延ばすということではなくて、個々具体的な、どの工場にはどういうふうにやっていくということでできるだけ速やかにこの転換を図っていく。そういう計画を立ててもらうというような対応策をつけて決定をしたわけでございます。
  89. 上田卓三

    ○上田委員 ソーダ業界の雑誌というのですか、五十二年四月十三日に「ソーダ工業の現況」というものが出ておるのですけれども、ここでいわゆる技術的なものが原因じゃなしに、そういうものがもうすでに解明されている。私も本委員会の千葉県の視察に参加させていただいて、いろいろ勉強させていただきました。そういう意味で、私はもう問題はないのではないかというように思うのであります。問題があるとするならば、ここに述べているように、三つに要約しておりますね、これは業界の本音だと思うのです。一つは、「イオン交換膜法技術は工業規模として開発途上にあり、特許面でも問題を残している。」こういうことを言っておるわけであります。二番目に、「各企業とも隔膜転換と長期の不況により著しくその体質を弱くしている。」三番目に、「諸外国(特に台湾、韓国)では、水銀法ソーダが主勢となっており、ソーダ、塩化物の輸入等国際競争力の低下に伴う問題が生ずる恐れがある。また世界最大のか性ソーダシェアを有するダウ・ケミカル社が、巨大な資本力を背景として超大型プラントの建設計画を発表し、日本市場の制覇を目ざしている。業界各企業とも、これらの背景からソーダ工業維持に汲々たる状況にある。」こういう形で述べておるわけであります。そういう点で、やはり安上がりの公害というのですか、あるいはこの水銀法というものを追放する、これも公害のもとであるということがわかりながら、企業防衛という立場でやはり環境庁が押し切られたと言わざるを得ないのではないか。そういう点で、技術的にはイオン交換膜法というものはもう明らかに解明されておるわけでありますから、直ちに転換していくということがあってしかるべきではないか、私はこういうように思うのですけれども、その点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  90. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 確かにイオン交換膜法によるソーダ製造というものが開発されているということは事実でございまして、これは旭化成、それから旭硝子の二社が日本の国内でもやっておるわけでございますが、まだ技術的にそれを実用化して大々的にやっていくというところまでの技術的評価がなされておらないという問題と、それからそういうものをつくりまして、それが一遍にたくさんのプラントを製造して適用させていくというわけにいかないので、それができましても、それをどの工場から具体的にどの規模でどういうふうにやっていくかというのは、やはりその段階での適用策というものが必要なわけでありまして、したがって、それをやはり順序立ててやっていくような具体個別的な対策というものが必要であるというふうな結論に達しておるわけでございます。
  91. 上田卓三

    ○上田委員 ちょっと御報告願いたいわけですけれども、「ソーダ工業の現況」によれば、依然として水銀法による生産を続けているいわゆる未転換会社が二十二社二十九工場あると報告されておるわけですけれども、会社の名前と工場の所在地をぜひとも報告していただきたい。  それから、これらの会社は隔膜法からイオン交換膜法への転換の負担を回避しようといった、そういう意味では悪質な会社である、私はこういうように思うわけでありますが、クローズドシステムだから水銀は絶対に外に出ないという保証もないわけであります。そういう点で、クローズドジステムの場合定期的な調査を行っているはずでありますが、その調査結果をぜひとも提出してもらいたい。  それから二番目には、四十八年十一月から今日まで外に漏らした工場は一つもないのか、公害をたれ流したところはないのかどうかということについて御報告いただきたいと思います。後で文書でも結構ですけれども、いただけますか。
  92. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 提出いたします。
  93. 上田卓三

    ○上田委員 もう少しですので……
  94. 島本虎三

    島本委員長 定時になりました。
  95. 上田卓三

    ○上田委員 済みません。  最近ディーゼルが燃費上有利であるということで、規制もガソリン車に比較して緩いので、日産などの大手のメーカーがディーゼルの乗用車の製造を増加させようという報道がなされておるわけでありますが、これに対してどのように考えておるのか。  また、スズキのようないわゆるツーサイクルのメーカーでも、非常な努力をして五十三年規制を乗用車について達成しているのに、国内の大手メーカーがディーゼルの乗用車を増加させよう、増産させようとする、そういうことは非常に問題ではないか、このように思うわけであります。国内のメーカーは、乗用車については五十三年規制を達成し、しかも燃費もむしろよくなった。にもかかわらず、規制がむずかしいというので、緩くなっている、そういう点でディーゼル車のいわゆる乗用車増産をやはりわれわれは問題にしなければならない、そういう意味では規制をしなければならぬのではないか、こういうように思うわけであります。そういう点でお答えをいただきたいし、特にトラックとか、あるいはバス、ディーゼルの規制強化を、どのような見通しがあるのかという点について、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  96. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生から御指摘ございました乗用車の中のディーゼルがふえてきているという問題でございますが、新聞にも報道されましたが、統計を見てみますと、昨年の十月ごろまでは七、八千台、それがことしの一月になりますと一万四千台というぐあいにふえているということでございます。これは、ディーゼルにつきましては確かに技術的に非常に難点がありまして、現在も規制をかけておりまして、NOxにつきましては四十九年度規制で大体二〇%カット、それから五十二年八月の規制で三二%カットになっておりますが、ほかの乗用車が九二%カットしておるというものに比べて、これはまだ非常にカット率が悪いわけでございます。その点につきまして、現在中央公害対策審議会でディーゼル、トラック等につきましての専門委員会での議論をしていただきまして、大体ことしの秋には答申がいただける。われわれは、これは非常に厳しくカットしなければならないと思っているところでございますが、それがふえてくるというのは、ほかの乗用車がちゃんとしているのにふえるというのは、法的に抑えることはできませんが、私たちはこれは非常にまずいのじゃないかということでございます。しかもスズキのような小さなものに至るまで非常な努力をして、ツーサイクルでHCもコントロールしまして、五十三年をクリアしている。それからほかの中メーカーでも、燃費も中には非常によくなっているというものすらあるのに、大きいものにそういう形のものがふえてくるということは、権限的には抑えられませんが、私はこれは非常にまずいことであって、やはり自制をして、五十三年規制車が新しく出てくれば、それをどんどん出してくる。それからもう一つは、ディーゼルやトラックにつきましては規制強化という方向で、五十二年八月に第三段階規制を行いますが、これではまだとうてい足りません。それを一生懸命やってもらって、それで乗用車並みに日本のメーカーができるようになったら、またそれはふやしたらいいことと思いますが、私どもはきわめて問題視をして、この様子を見ておるわけでございます。
  97. 上田卓三

    ○上田委員 最後に一点だけ、長官考え方をお聞かせいただきたいわけでありますけれども、ディーゼル、トラック、バスの特殊性があって技術的な難点があるのはわかるわけでありますけれども、乗用車だけ九二%の削減という厳しさとのバランスや、あるいはバス、トラックの排出量の大きさから見てきわめて問題があるのでないか、こういうふうに思いますので、今後の規制強化についてひとつ所見を承りたいと思います。
  98. 石原慎太郎

    石原国務大臣 詳しい数値については局長からお話しいたしましたが、いずれにしても乗用車にこれだけの強い規制をし、ディーゼル関係の車にこれをしないということは、NOx対策としても非常に片手落ちでございまして、たびたび申していることでございますけれども、底のないバケツで水をすくう作業に等しいので、これはぜひともディーゼル関係に関しましても同じような規制を早期に施すべきだと思います。
  99. 上田卓三

    ○上田委員 終わります。
  100. 島本虎三

    島本委員長 上田卓三君の質問は終わりました。  次に、古寺宏君。
  101. 古寺宏

    古寺委員 最初に文化庁にお尋ねをいたしますが、特別天然記念物のカモシカのわが国における生息の分布の状態あるいはその保護についてどのような対策をとっておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  102. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 カモシカにつきましては、北海道それから四国を除きましてほぼ全国的に生息しているものでございますが、特に食害対策というようなことでいろいろ問題になっておりますのは、青森県、岩手県、それから中部地方の長野県、群馬県、岐阜県といったようなところでございます。  このカモシカの食害対策につきましては、保護の問題とうらはらの関係に立つわけでございますが、昭和四十九年ごろからいろいろと被害に対する報告が出てまいりまして、文化庁といたしましては環境庁あるいは林野庁とも連携を密にしながら、応急対策とそれから抜本対策とに分けて対策をしてきております。  まず、その応急対策といたしましては、被害の著しい各県に対しましてそれぞれ補助金を交付いたしまして、食害の原因となってくるもの、それから被害対策についての調査を行いまして、それと同時に環境庁とも協力いたしまして、そういう食害の激しい県に対しまして防護さくの設置等につきまして応急の被害防止の補助を行ってまいりました。また、特に被害の著しい岐阜県及び長野県につきましては各五頭の捕獲を許可いたしまして、小坂町では現在までに三頭捕獲して生態調査等の資料として研究対象にしているところでございます。  これらの応急対策はあくまでも応急対策でございますので、これはもちろん今後とも地元の要望に基づいて一層推進をしていく必要はございますけれども、それと同時に、カモシカの保護と農林業の振興との調和という問題を根本的に解決するためには、さらに抜本的な対策を講ずる必要があるわけでございます。現在文化庁としてとり得る抜本的対策といたしましてその基本方針は、一つはカモシカの生息しております地域のうちでカモシカの種としての保護に必要にして十分な地域、これを生息地として指定いたしまして、そしてその地域内の個体数は十分に管理しながら種の保存を図っていくということ。それと指定生息地以外の地域についてのカモシカについては、食害の状況と絡み合わせながら、たとえば指定の生息地にそのカモシカを移すとか、そういうような適正なコントロールを行っていく必要があるということ。それと補充的に先ほどの応急対策にも挙げました防護さくというような策を講じて、食害を防止するというような、そういった主に三つの策を併用していくということが必要であろうと思います。  ただ、その生息地指定を行います場合には、こういったコントロールを行うとか、あるいは全国でどのくらいの指定地が必要になるかというようなことについては、十分にカモシカの生態について調査をする必要がございますので、現在文化庁、環境庁、林野庁と三庁におきまして五十一年度から年次計画によりましてカモシカの根本的な実態調査を行っているところでございます。これによりまして全体の把握ができましたときには、ぜひこの抜本対策を促進してまいりたい、そのような方針で対策を進めておるところでございます。
  103. 古寺宏

    古寺委員 青森県下北郡の脇野沢村では、昭和五十年度は一千百十八万円、五十一年度が一千三百万円、これはササゲとか桑、ミョウガ、こういう畑作物に被害があったわけでございます。私はここでお尋ねしたいのは、カモシカを特別天然記念物に指定したのはいつで、そしてこういう被害が現在出ておりますけれども、その被害補償は一体どこにお願いすれば補償してもらえるのか、これを文化庁にお尋ねしたいのです。
  104. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 お答えいたします。  カモシカの天然記念物指定は、昭和九年の五月一日でございます。そして絶滅といいますか勢いが衰えてきたということで、さらに特別天然記念物にいたしまして保護を強化いたしましたのが昭和三十年の二月十五日でございます。  それから被害補償の問題でございますけれども、現在文化財保護法の第八十条第五項に損失補償についての規定がございます。これは指定された天然記念物に関する現状変更についての文化庁長官の許可を得ることができなかった場合、または許可に条件を付せられた場合に、その不許可によって損失を受けた者に対して、不許可によって通常生ずべき損失を補償するという規定がございます。これは不許可によって通常生ずべき損失というのをカモシカの場合について当てはめますと、カモシカの捕獲が許可されなかった場合に、その許可しなかったということと被害の発生との間に相当因果関係があるという場合に、その範囲内の損失を補償するというふうにされているわけでございます。このように通常生ずべき損失の範囲とか、あるいはカモシカの不許可とその被害との因果関係というむずかしい問題がございまして、実際にこの規定によって損失を補償するということは運用上非常にむずかしい点がございまして、この規定がまだできて間もないということもございまして、これまで具体的にこの規定の発動、運用をしたことはまだないわけでございます。  文化庁といたしましては、このカモシカの食害対策につきまして損失を補償するという問題は、結局は対策はいわば後ろ向きになるわけでございますので、できればまず被害を防止するということを最大の施策考えまして、先ほど申しましたように、原因等の調査あるいは応急的あるいは恒久的な対策の検討を急いでいるところでございます。
  105. 古寺宏

    古寺委員 いま全国で、カモシカというのは一体何頭いるのでございますか。
  106. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 私どもとしては、まだ全国的に何頭いるかという頭数の調査は正確にしておりません。一般に言われておりますのは、三千頭とか、あるいは環境庁等の調査によると、一万頭から三万頭とかいうふうに言われておりまして、大変数値に幅があるものでございますので、私も確定的に申すわけにはまいらない次第でございます。
  107. 古寺宏

    古寺委員 非常にけた違いですね。三千頭と一万頭から三万頭といいますと大変な数の相違があるわけですが、これは一体何のために特別天然記念物に指定するわけですか。
  108. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 天然記念物の一つとして指定しているわけでございます。特別天然記念物でもあるわけでございますが、天然記念物と申しますのは、動物、植物あるいは地質鉱物といったものの中で、わが国の国土の自然を特色づけたりあるいは学術的に重要なものであるというものについて、文化財保護法により文部大臣が指定しているものでございます。したがいまして、カモシカの場合、これは日本特産のものであるということ、それから、特別天然記念物に昭和三十年に指定いたしましたのは、全体の種の保存として衰勢にあるということがその当時明らかであった、そのために特別天然記念物に指定したわけでございます。
  109. 古寺宏

    古寺委員 私は考えますのに、指定するのは簡単だと思うのです。その指定したときにすでに、将来繁殖した場合にどうなるか、あるいは生態学的な研究を行って、これがどういうような習性があるのか、そういうものをきちっと把握をしておかなければいけないと思うのですよ。昭和三十年でございますのでもう二十二年近く年数がたっているのですけれども、文化庁は指定しっ放しで今日まで放置をしておいた。ところが、青森県を初め岐阜県あるいは長野県等で被害が出始めたので、補償の問題をどうしようかとか、いかにして防護するとか、そういうことを最近考えて、いろいろ大学等に委託をして生態学の研究等もやっているようでございますけれども、はっきり申し上げますと、指定をしたまま二十年以上にわたって放置してきた結果が、今日こういうようないろいろな被害が発生をしているわけです。ですから当然これは補償の問題を考えなければいけませんし、捕獲をしようとしたってなかなか許可にもなりませんし、脇野沢村の場合は農協で射殺をしようというような動きもあったわけですね。ところがそれは困るということで最近防護さくをつくっているわけですけれども、いままで指定をしてそのまま放置してきた結果こういうことになっているし、また捕獲をする問題についてもこれは許可になっていないわけですから、非常にむずかしい問題があるとおっしゃいましたけれども、何も責任のない住民がせっかく、ミョウガですとか桑を植えて一生懸命楽しみにしておったのがカモシカのためにみんな食い荒らされたり、あるいは踏みつぶされているわけですので、当然これは補償すべき問題だと思うのですが、どうでございますか。     〔委員長退席、水田委員長代理着席〕
  110. 横瀬庄次

    ○横瀬説明員 実は青森県の脇野沢村につきましては、私自身昨年の九月中旬に参りまして、現地の実情について視察をいたしますと同時に、村長さん初め住民の方々とも十分懇談をし、また協議をする時間を持ったわけでございます。そのときに脇野沢村の御当局から要望が出されました。これは農協の方とも十分に御相談の上で出されたものであると聞いておりますけれども、要望書が出されました。それによりますと、これは先ほど申しましたように、私どもと同じでございまして、緊急対策と恒久対策に分かれております。  緊急対策につきましては、二万六千七百メートルの防護さくをつくってほしいということでございます。これにつきましては私どもも昭和五十年から年次計画で手をつけておりまして、現在までのところ、五十二年度の分も入れましての話ですが、一万七千メートルについて設置をしてまいりまして、年次計画でいいますと昭和五十四年に全部でき上がるというようなことになっております。この点につきましては地元の方々も十分に納得をしていただきました上で決めたわけでございます。  さらに恒久対策というのがございまして、これが三つの点出されております。  一つは国有林と民有地の境界に恒久的な金網をつくって、人の住むところとカモシカが生息するところを分けてほしい。これは幸か不幸かと申しますか、あそこは国有林と民有地がかなりはっきりしておりますので、そういったことをしていけば恒久対策になるのではないかということで、そういう要望が出されております。この境界に金網を設けるということは、緊急対策としての防護さくというものと一部重複するような面もございまして、この緊急対策を進めていきながら考えていこうということでございます。  それから二番目に、いま先生の御指摘のありました生態研究の問題でございますけれども、これから食害問題が起こりまして、どうしてもこれをコントロールするためには、常時状態を脇野沢村において観察をしていく必要があるということから、研究施設を建ててほしいということがございました。これは研究施設をすぐに建てるということはなかなかむずかしいわけでございますけれども、現在、弘前大学の平田教授を中心といたしました調査団で調査をしておりますし、それから東北地方のカモシカの研究者の学者グループにいろいろと検討をお願いいたしまして、現在、脇野沢地区におけるカモシカの常時の研究体制についていかにあるべきかということについて研究をしていただいております。  それから三番目の恒久対策の御要望として、カモシカ自然公園をつくってほしい。そこにカモシカを集中的に入れまして、そして国民に開放するというような施設をつくってほしいということがございます。     〔水田委員長代理退席、委員長着席〕 これは国有地と民有地の境に金網というようなものをつくっていく段階で生息地指定というようなものを考えながらカモシカ自然公園というものを考えていくという点では地元と大体一致しているわけでございますが、まだ具体的な構想ができてきておりませんので、これはそういうものが具体的に出てきた段階で十分検討させていただく、そんなような考え方をとっておるところでございます。
  111. 古寺宏

    古寺委員 じゃ、林野庁にお尋ねしますけれども、林野庁の方では国有林にカモシカによる被害というのは起きてないのでしょうか。
  112. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答えいたします。  昭和五十年度の被害面積でございますが、国有林は四百五十七ヘクタール発生しております。県別に大きなところを申し上げますと、長野県百九十二ヘクタール、それから岐阜県が二百十四ヘクタール、あとは十ヘクタール程度でございます。
  113. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、この青森県の下北郡の脇野沢は全然被害がないわけですか。
  114. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答えいたします。  青森営林局からの調査報告では、脇野沢村につきましては被害が出ておりません。
  115. 古寺宏

    古寺委員 どうも私はそれは解せないのですよ。被害が出ている、こう言えば、余り山を切り過ぎるからだ、伐採したからカモシカが自分の住居を追われて民家の方にあらわれてきて畑作物を荒らすんだと言われるものだから、私は、被害があってもあなたは被害がないとおっしゃるんじゃないかと思うんです。ここに弘前大学の平田先生が一年間調査したこういう文献がございますが、これを見ただけでも大分被害がありそうな報告書になっておりますよ。そういう面からいきまして、まだ生態学的にはよく事情がわかっておりませんが、相当に繁殖して、そして自分たちのいままで住んでおった快適な環境、長官がいつもアメニティー、アメニティーとおっしゃいますけれども、快適な自分のすみかを追われて民家の方へあらわれてきた、こういうふうに解釈できるのじゃないかと思います。  これは調査をし研究をしなければならぬ問題でございますが、そういう面からいきまして私は、今後このカモシカによる被害を大きくしない意味からも、これからはこの地域の伐採計画というものは厳しくして、木を切らぬようにしてほしいのです。そうでありませんと、先ほど文化庁の方で自然公園をつくるとか防護さくをつくる、民有林国有林の間にせっかくさくをつくっても、全部木を切られてしまいますと、今度は脇野沢村から佐井村ですとかお隣の川内町の方の国有林に集団移動する可能性が出てきます。そうしますと、またいろんな被害が出て防護さくをつくらぬといかぬ。せっかく自然公園もできた、防護さくもつくったけれどもどこかへまたカモシカが移動してしまったという結果になっては、これはどうにもならぬと思うのです。ですからこういう地域は、これは国定公園でもございますし、そういうカモシカが十分に保護されるような伐採計画、環境管理、こういうものをやはり十二分に考えなければいけないと思うのです。そういう責任は、長官がいつも快適な環境、快適な生活とおっしゃるように、天然記念物として指定しているのでございますから、カモシカについても快適な状態をつくりませんと、われわれ人間被害を受けているわけです。ですから、そういう面において、やはり環境管理を環境庁としては十二分にやっていく必要があると思うのです。  いまのカモシカの問題と関連しまして、この脇野沢村には北限のサルというのがいるのです。これが天然記念物に指定された当初は、昭和三十六年でございますが、十二頭だったのです。現在百八頭になっているのですよ。これは国定公園の中でございますので、いろんな補助金や助成をしていただいてふやしているわけでございますけれども、これもおいおいは、相当の数にふえますと、やはりいろいろ人家に被害を及ぼすような結果になるのではないかと思うのです。  ですから、こういうカモシカあるいはサル、きょうの岩手県のシカの話もございましたが、こういうような天然記念物とか特別天然記念物に対してやはり環境庁としても、これがふえていった場合にはどうするのか、あるいは実際に被害が出た場合にはどうするのかというようなそういう対策が必要でないかと思うのです。先日、何かお聞きしましたらば、石原長官が自治省とか大蔵省等と一緒になって連絡協議会のようなものを持ちたい、こういう御意向であるということを承りました。そこで長官から、こういうようなカモシカを初めとする天然記念物や特別天然記念物に対して、どういうお考えのもとにそういう協議会をつくるお考えなのか、その点を承りたいと思います。
  116. 石原慎太郎

    石原国務大臣 鳥獣の保護で典型的なものは、典型的というのは、みんなそれぞれ大事でしょうけれども、トキのように数羽になって、これも保護してもなお保護し切れない、消滅するかもしらない。そうなっては遅いので、一種の消滅未然防止ということで三十年に三千頭程度に減ったものを保護したら、いま一万五千頭、八千頭、ある人に言わせれば三万頭ということで被害が出ているわけでございますけれども、これは直接は天然記念物そのものを生態研究したり、たとえばどの程度の数までふえれば後は条件つきでこれを規制するといいますか、しても恒久的にその種属が絶えないで残るかということは、文化庁が研究されるべきことと思います。しかし、やはりいろいろな意味で環境問題と切っても切れない問題でございまして、これを保護するのは私たちの省庁の仕事になっているわけで、非常に物事の板ばさみになるというか、どこへものを持っていっていいかわからなくて困るもので、この間も閣議でその話をしましたら、実に意外なほどこれに関心をお持ちの、また選挙区で被害を抱えていらっしゃる閣僚がおいでになって、話が予想外にはずみまして、何とかしょうということでしたけれども、これはやはり森林の被害というものを正確に報告されませんと対策に拍車がかかってこない。長谷川農林大臣代理にそう申しましたらば、おれは二、三日で済むと思ったのに一ヵ月もやらされていて、もうじき鈴木農林大臣が帰ってこられるから、そのときに正式に報告を受けてくれということで、とにかく最初は農林大臣と文部大臣と三人で会って、これは大蔵省が補償の問題でどういうふうに動きますか。そこら辺の兼ね合いでさらに枠を広げて——とにかく私か視察しました現地ではことしが限度だと、四十七、八年から小さな五千程度の町で八億を超える被害が出ていて、どっちが大切なんですか、われわれが干上がってもカモシカがわがもの顔に、私も実際に通った小さな山道を、さっきここを通ったと。天敵はとにかく人間しかいないので、その人間が指定のおかげですべてノータッチということになれば、インドのヒンズー教ですか何教の牛のごときものになって、あれが公害になっているかどうかわかりませんけれども、とにかくちょっと矛盾した話なので、ここら辺で何らかの手を打つべきだと思います。
  117. 古寺宏

    古寺委員 何らかの手ではなくて、現実にこの被害を受けている方がいるわけですよ。文化庁も毎年防護さくを予算の関係でつくりますけれども、やはり動物の方も賢いですから、さくのないところから出てきますよ。それからまた雪が降りますので、豪雪地帯でございますから破損する個所がある。そういうところからまた飛び出してくるのですね。こういう問題はそのうちに何とかしますというような問題じゃないと思うのですね。非常に零細な農家が多いわけでございますので、せっかく農林省の奨励で、いままでやったことのない桑ですとか、ミョウガをやって、しかも非常に高い山の上につくっているわけですよ。そういう御苦労を考えた場合には、きちっと補償してあげると同時に、防護さくをやはり考えてあげなければいけないと思います。そういう面で文化庁、林野庁、環境庁だけでなしに、自治省や大蔵省ともよく連絡をおとりになられまして、この問題を早急に解決するように、ひとつ要望を申し上げておきたいと思います。  次は水の問題でございます。今度の環境白書と申しますか「昭和五十一年度公害状況に関する年次報告」を私ちょっと読んだのでございますが、非常に改善されている面も確かにあるようでございますが、水の問題で非常に大きな問題は大腸菌の問題なんでございますね。この年次報告を読みますと、五十年度末までに環境基準の類型当てはめが行われた二千三百九十四水域でございますか、これが載っているようでございますが、青森県の馬淵川というのがございます。この馬淵川の櫛引橋というところで大腸菌が百ミリリットル当たり昭和五十年の七月二十三日には二百四十万、こういう結果が出ているのです。他の環境基準の項目はほとんど目標を達成しているわけでございますが、大腸菌だけは一向に減らないわけですね。これはよその河川あるいは湖沼等を見ましても、大腸菌は依然としてこの目標を達成できないというような状態でございますので、現在この環境基準の設定されている地域でもって大腸菌の目標を達成した水域がどのくらいあるのかということをまずお尋ねしたいと思います。
  118. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水質環境基準の中の生活環境項目の一つに、ただいま先生お話しございます大腸菌群数というのがございます。これの最近の達成状況でございますが、全国の河川のA類型当てはめをやっています地域、これについて不適合率、測定をいたしましてその基準にはまらなかった率でございますが、七〇・一%が不適合率。したがって合格した方が大体三〇%しかないということで、先生おっしゃるとおり、全国的な大腸菌群数の達成率は非常に低いという姿になっております。  なお、先生がただいまお話しされました馬淵川の櫛引橋につきましては、五十年度の調査では、県からの報告でございますが、九三・三%の不適合率でございます。逆に言えば約七%くらいしか合格してない、そういう姿でございます。
  119. 古寺宏

    古寺委員 そこで、この大腸菌が直接人間に対して被害があるとかなんとかいう問題じゃございませんが、大腸菌が何十万、何百万もしょっちゅう流れているというような状態は、これは長官がしょっちゅうおっしゃる快適な環境ではない。最も不快な環境ですね。感覚的に言いましても、あそこの川には大腸菌がこれくらいあるのだ、こういうことになりますと、そういうところから上水道の水を取っておる、あるいはそういう川でサケ・マスの養殖をやっていると非常に何か気がかりになりますですね。そういう問題を解決するためにも、やはりこの大腸菌の目標を一応達成する方向で政府は取り組んでいかなければいけないと思うのです。この大腸菌群がこういうふうに多数しょっちゅう検出されるということは、原因はいろいろあると思いますが、馬淵川の例で申しますと主として畜産公害、もう一つは都市排水でございます。  そこで、この畜産公害につきましては現在いろいろな規制があるようでございますが、たまたまこの馬淵川というのは青森県と岩手県と両県にまたがっているのです。畜産公害と申しますか、これに対する対応の仕方も、青森県と岩手県では違うのですね。青森県の方が非常に厳しくて、岩手県の方が甘い、こういうような現状になっておるわけです。こういう産業廃棄物に関する規制と申しますか、これは厚生省の担当のようでございますので、いま一つの具体的な例でございますが、今後、馬淵川のような河川は、下流では水道に使っているわけですから、そういう上流における畜産公害のようなものについては、きちんとした指導なりあるいは規制を行って、こういう大腸菌がいつも何十万も何百万も出てくるようなことのないように、ひとつ処置をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  120. 三井速雄

    ○三井説明員 先生御指摘のように、家畜のふん尿と申しますのは、畜産農業における家畜のふん尿という形で産業廃棄物のカテゴリーに入っておりますので、それ相応の規制があるわけでございます。  具体的に申しますと、家畜のふん尿につきましては、それ相応の処理施設を設けまして、そこで処理をして、水と分けて、乾燥させるなりあるいは汚泥という形で埋め立てるなりあるいは焼却をするなり、あるいはもっと有効利用というような観点から申しますと、いわゆるコンポストといいますか、肥料みたいなものの形にして使うというような、いろいろなやり方があるわけでございます。  具体的な本件の場合につきましては、青森県と岩手県の主として水道関係の事業者等でつくっております馬淵川水系水質汚濁対策連絡協議会というものがございまして、それを中心にいたしましていろいろな対策をとっておるようでございます。  この畜産のふん尿に関しましても、青森県それから岩手県両県におきまして、畜産業者に対して処理施設をつけるような指導というようなものも行っておるようでございますけれども、御指摘のとおり、必ずしも零細な畜産業者まで含めまして完全にできておると言えないような状況であるようでございます。したがいまして、私どもといたしまして、さらに一層状況を調べまして、その実情に応じまして適切な措置をとるように、両県に指導いたしたいと思います。  蛇足でございますけれども、具体的な規制の権限が各都道府県知事におろされておりますもの一で、県ごとに規制のニュアンスといいますか重点の置き方といいますか、違ってくる点が実情でございますけれども、その結果、先生が御指摘のように、こういう幾つかの県にまたがる問題の場合、要するに迷惑をかけるというような問題も出てまいりますので、私ども今後、全国的な視野に立ちまして、統一のある産業廃棄物処理行政というようなものを考えさせていただきたい、かように考えております。
  121. 古寺宏

    古寺委員 そこで、私は長官にお尋ねしたいのですが、この年次報告の中にはこういう大事な問題は書かれていないのです。よくなった、改善されたいい面だけは報告されていますけれども、こういう面は悪い、あるいは新しい年度にはこういうことを積極的にやるのだというようなことは全然出てこないのですよ。これがやはりあなたがおっしゃっている快適な環境をつくるための一番大事な根本問題じゃないかと思うのです。ですから、この大腸菌問題、環境基準の各項目はある程度みんな達成されているのが多いのですが、一番達成されにくい、達成されていない問題がこの大腸菌の問題なのです。しかも、これが最も不快な環境をつくっているわけです。あるいは公衆衛生上からも、伝染病の危険もございますし、ぜひともこれは解決しなければならない達成の目標でございます。  そういう面からいきますと、この八戸市なんかというのは新産都市なんです。この新産都市に対する環境影響評価、アセスメントと言うとあなたに怒られますが、アセスメントをきちっとやらない。ですから、昭和三十九年に新産都市が発足してもう十年以上たっているのに、この八戸市では水洗化ゼロなんです。いま公共下水道の処理場をやっとつくっている段階なんです。公害はたくさん発生して、煙はどんどん出て、小中野ぜんそくというようなものがたくさん健康をむしばんでおります。ところが公共下水道は現在水洗化ゼロですよ。こういうような状態では快適な環境とは言えません。こういうものをきちっと総合的にやはり管理していくのが、私は環境庁行政の一番大事な面ではないかと思うのです。  ですから、この新産都市に対するアセスメントにつきましても、非常に簡単に延長してしまったようでございますが、こういうものが将来どういう影響をもたらすかということを考えれば、非常に残念なことなんです。  そこで、下水道の問題について建設省にお尋ねしますけれども、新産都市でありながら、なぜ今日まで八戸市の公共下水道の整備がこのようにおくれているのか、その点からまず承りたいと思います。
  122. 井前勝人

    ○井前説明員 八戸市の下水道事業につきましては、公共下水道に着手いたしましたのが昭和三十一年度からでございます。今日までまだ水洗化できておりませんのは御指摘のとおりでございます。  昭和三十一年から下水道事業に着手いたしまして、その後、終末処理場の用地を獲得するのに若干の時間がかかりまして、数年前からほぼ終末処理場の用地のめどがつきまして、現在は鋭意終末処理場の建設をいたしております。昭和五十三年ぐらいをめどに処理場の運転を開始したいと思っております。したがいまして、五十二年度現在ではまだ水洗化はゼロということでございます。  私どもとしましても、八戸地区は第四次の公害防止計画にもなっておりますし、それから、御指摘の新産の地域にもなっておりますので、下水道事業としてはやはり優先してやっていきたいというふうに思っておりますけれども、やはり処理場の獲得に若干時間がかかったということで、御指摘のような普及率がまだゼロというような状況ではないかど思うわけでございます。
  123. 古寺宏

    古寺委員 いま第四次の五カ年計画を実施しておりますけれども、この第四次五カ年計画が終わった段階では、日本の公共下水道の平均がどのくらいになって、八戸市はどこまで行けるのか、それから、先進国、フランスとかあるいはイギリスのような先進国と比較して、わが国の下水道の整備というのはどういうふうになっているのか、御説明願います。
  124. 井前勝人

    ○井前説明員 まず五か年計画の関係から申し上げますと、第四次五カ年計画のスタートいたします前年度の昭和五十年度の普及率は二二・八%でございます。これが五カ年計画が達成いたしますと、昭和五十五年度になりますが、普及率が四〇%になる見込みでございます。この場合に八戸市の普及率の状況は、現在ゼロでございますが、終末処理場が五十三年時点で稼働できますれば、人口に対しましておおむね一〇%前後には普及率が上がるのではないかと思っております。ですから、日本のレベルの中でも八戸市は御指摘のように低いところでございます。  なお、国際的な下水道のレベルでございますけれども、御承知のように、西欧諸国はほぼ町づくりの段階で下水道を整備しておりますので、ロンドンとかあるいはパリ等は、もう言うまでもなく一〇〇%になっております。国としての平均でもイギリスは九〇%を超しておるようでございます。それに対しましてわが国は、国のレベルで二二・八%、五カ年計画を達成して四〇%ということでございますので、なお精力的な整備が必要であろうと考えております。
  125. 古寺宏

    古寺委員 長官、福田内閣の大臣として、こういう不快な環境を改善するためには、何としたって下水道をどんどんやらなければだめなのですよ。ですから、あなたは、環境行政立場からどんどん積極的にこういうことを進言して、おくれている日本の下水道事業がどんどん進行するように、今後促進してもらいたいと思いますが、どうですか。
  126. 石原慎太郎

    石原国務大臣 それは全く仰せのとおりでございまして、昨年末の予算折衝のときにも、環境庁の予算は知れたものでございますし、そのときに一番強く申し上げましたことは、公共事業を起こされるのは結構ですけれども、生活環境の整備のために公共事業の比重をぜひ多くしていただきたい、つまり下水道の比重を多く組んでいただきたいということでございます。
  127. 古寺宏

    古寺委員 いまの御答弁は、何か野党が言っていることをそのまままねしたような御答弁でございますけれども、まさかそれはうそじゃないでしょうね。
  128. 石原慎太郎

    石原国務大臣 いや、本当に言いましたよ。
  129. 古寺宏

    古寺委員 それをひとつ忠実に守っていただきたいと思います。  それから、環境庁が八戸の水域に環境基準を設定いたしましてから、いままでいなかったサケが再び川へ帰ってきたわけです。この基準を設定する場合には、ずいぶん反対者が多くて大変だったのでございますが、環境庁が基準を設定して水質がだんだん改善されるに従ってサケが帰ってまいりました。日本ではいま日ソ漁業交渉で、約一万八千トンですか、漁獲量の削減がなされるわけでございますが、そういうものを埋め合わせするためにも、日本の河川をきれいにして、そしてサケ・マスの養殖事業をどんどん推進していく必要があると思うのですね。そういう意味におきましても、現在の河川の目標の中で一番おくれているのは大腸菌でございますので、これを一日も早く解消するように、重ねてお願いしたいと思うのです。  水産庁にお尋ねをいたしますけれども、馬淵川には非常に大腸菌が多いわけでございますが、サケ・マスの養殖には影響がないのでしょうか。
  130. 吉国隆

    ○吉国説明員 サケ・マスの増殖に関しましては、先生ただいま御指摘のとおり、こういった二百海里時代を迎えて、力を入れていかなければいかぬということでいろいろと努力をしておるわけでございます。  ただいまお尋ねの具体的な問題については、サケ・マスの増殖との関係での具体的な報告は受けておりません。食品衛生上の問題があるいはあるかと存じますが、私どもの増殖という面からは特に問題があったという報告に接しておらない、こういう状況でございます。
  131. 古寺宏

    古寺委員 水産庁には、水産一級から三級までの自然環境の一つの目安がございますね。これはどういうふうになっているのですか。
  132. 吉国隆

    ○吉国説明員 ただいまのお話は、水系ごとにどういう水産資源がおり、またどういう魚種について資源増殖が行われておるか、こういうものに応じて、環境上の問題を含めてどういうふうに分類をしておるかというお尋ねであろうと思いますが、その点はそのとおりでございます。
  133. 古寺宏

    古寺委員 生活環境の保全に関する環境基準からいきますと、Aランクの場合は水産の一級、Bランクの場合は水産の二級ですね。Aランクの場合は、先ほども局長さんから御答弁があったように、一千MPNパー百ミリリットル、Bランクの場合は百ミリリットルの中で大腸菌五千以下というふうになっておるのですね。サケ・マスについても好ましい環境ではないということは、水産庁は当然おわかりになるでしょう。水産庁、どうですか。
  134. 吉国隆

    ○吉国説明員 私どもといたしましては、水産資源の増殖という観点から、御指摘のように、生息しておる資源に応じた環境の改善というものにつきまして、関係の官庁にもお願いを申し上げて、できる限り水産資源の増殖を進めてまいりたい、こういうことでやっておるわけでございます。
  135. 古寺宏

    古寺委員 どうも水産庁は、内水面漁業については非常に消極的なのです。よその国へ行ってとることは一生懸命考えているけれども、自分の国の中で自分の国の限られた資源をいかに有効に活用して内水面漁業をやろうかというような気構えがないのですよ。先日も私がおたくの方に、馬淵川と新井田川ではどうですかと聞いたら、いや、馬淵川の方は、大腸菌がたくさんあってもサケが多くとれておりますなんて、うそばかり言っておるのです。馬淵川の方は水量が倍以上もあるのですよ。当然、新井田川よりもよけいにサケ・マスがとれなければいけない。それがとれない原因は、環境庁長官がおっしゃっているように、快適な環境じゃないからですよ。ですから、こういう環境をきちんと直していけば、仮に一万八千トン削減されたとしても、国内でそれを補充できるじゃありませんか。現在国内でわずか七千トンしかとれないでしょう。しかも、北海道を除いた内地の、本州、九州みんな含めての予算が二億四千万円です。こういうことで内水面漁業の振興を図ろうと言ったってできない。ですから、鈴木農林大臣がソ連からお帰りになったら、これに力を入れるように、一番最初にこの問題を報告していただきたいのですよ。  そこで、具体的な例を申し上げますと、内水面漁業の施設、たとえばふ化場とかサケどめとかこういう施設をつくる場合に、予算が非常に足りないためにちょっとしかやらないのですね。これではいつまでたっても養殖が思うように進まないわけです。それから、稚魚にいたしましても、買い上げをすることになっていますね。ところが、半分しか買い上げないのです。あとの半分については全部自前なんです。内水面の漁業協同組合というのにおいでになってみればわかりますが、本当に何とか日本の内水面漁業を振興さしてサケ・マスをふやそうと、みんなテレビ屋さんだとかあるいは銀行に勤めている人だとか、いろいろな方々が、自分の仕事の時間を割いて、そうして夜もそういうところに泊まりがけで一生懸命やっておられるのです。みんな、もう収入どころか、自分の持ち金を出して一生懸命やっておられるわけでしょう。そういう面からいきますと、内水面漁業というものにもっと力を入れるためには、まず何としても稚魚を全部買い上げなければいけないということなんです。現在は二分の一でございましょう。どうですか。
  136. 島本虎三

    島本委員長 答弁ばすれ違わないように的確に答えてください。
  137. 吉国隆

    ○吉国説明員 ただいまお話のございました稚魚の買い上げでございますが、五十一年度につきましては全量買い上げを実施した次第でございます。
  138. 古寺宏

    古寺委員 これはおかしいですね。では、新井田川の場合はあなたの方で何尾買ったことに報告は来ておりますか。
  139. 吉国隆

    ○吉国説明員 ただいま河川別の数値は持ち合わせておりませんので、申しわけございませんが、後刻調べて御報告させていただきたいと思います。
  140. 古寺宏

    古寺委員 どうもかみ合いませんね。これは大臣、鈴木農林大臣がお帰りになったら、鈴木大臣もこの内水面漁業の専門家でございますから、ひとつお話ししていただきたいのです。ふ化場なんかをつくりますと、五百万尾のふ化場をつくるのに三百万尾とかあるいは二百万尾とか、こういう小さなふ化場しか認めてもらえぬのですよ。そういうことでは養殖をやろうにも思うようにいきません。  それからいまの稚魚の問題につきましても、国と県が助成して買い上げをしているのですが、私がいままで聞いてきた範囲では半分しか買ってくれないわけですね。あとはみんな自前でやっているわけですよ。こういう問題もやはり早急に解決していただきたい。それからサケ・マスだけじゃなしに、アユですとかあるいはコイですとか、いろいろなものも放流できるのです。こういうものも稚魚が非常に少ないために思うようにはかどっていないというような現状でございますので、二百海里時代を迎えた日本の水産の一端を担っていくためにも、内水面漁業には今後予算を大幅にふやして積極的に取り組んでいくように進言をしていただきたいと思うのです。  それと同時に、現在、汚染されていない非常にきれいな河川がまだたくさん残っております。そういう非常に養殖に適している河川がありながら、予算がないために養殖をやっていないというような河川がたくさんございますので、水質調査環境庁がしょっちゅうやっておりますから、そういう全国の河川の実態を水産庁とよく打ち合わせをして、そうして適当な川にはどんどん内水面漁業をやっていくように、環境庁の方から提言をしていただきたいと思う。  それからもう一つは、サケが遡河性の魚ですから、川へ上ってまいります。その場合に、河口から近い距離のところで定置網とかいろいろなものでサケをとりますと、せっかく川へ上っていけばふ化できるものが全部市場に送られてしまうというようなことになるわけです。ですから、これからの問題としては、河口からある一定の距離ですね、現在五百メートルのところもあれば千メートルのところもあれば、いろいろありまして、規制が非常に緩いわけです。指導程度でやっておるようでございます。これをやはり規制を厳しくして、一たん放流したサケが四年後には全部帰ってくるような、そういう制度と申しますか規制と申しますか、そういうものもひとつ考えていただきたいと思います。やはりカモシカもそうでございますしサケもそうでございますし、快適な環境、そういうものを維持していかないと、復元していかないと、これもいろいろな問題が発生してくるわけでございますので、どうかひとつ今後、そういう地域の環境保全立場から総合的な環境管理というものを環境庁としても確立していただきたい、こう思うわけでございます。  そこで最後に、ずいぶん長くいろいろ質問いたしましたが、大臣から答弁を承って終わりとしたいと思います。
  141. 石原慎太郎

    石原国務大臣 日ソ間にああいう問題が生じまして、漁業の問題はこれからも日本の食生活にとって非常に重要な問題になるわけでございますが、これは農林省の所管でございますけれども、いま先生言われました内水面におきます漁業の環境づくりということは非常に重要な問題だと思います。実は先般カモシカの視察のついでに飛騨の高山を通りましたら、あそこの川には、普通池にしか見られないコイなどがたくさんおりまして、私、初めてああいう体験をしましたが、いま先生の御指摘のとおり、そういう試みをすれば川においてもああいう魚種というものが漁獲の対象としてあり得るのだということを認識しましたので、今後の課題として積極的に取り組んでいきたいと思います。
  142. 古寺宏

    古寺委員 以上で終わります。
  143. 島本虎三

    島本委員長 古寺君の質問は終わりました。  次は、中井洽君。
  144. 中井洽

    ○中井委員 石原長官に、環境影響評価制度あるいは地盤沈下、こういったものを中心に、基本的なことで幾つかお尋ねをしていきたいと思いますが、何せ新人のことでございます。諸先輩の議員の皆さんと重複をした質問をするかもしれません。ひとつ御勘弁をいただいて御答弁をお願い申し上げたいと思います。  五月十三日に、環境影響評価制度というものを今国会へ提出するものを見送る、こういうことをお決めになり、そして閣議で環境庁のコメントというものを了解してもらう、今後も努力を続けるということでございますが、環境庁としては、この次の国会に何とか調整をつけてこの法案をお出しになる、あるいは内閣としてもどうしてもこの次にこの法案をお出しになるんだという了解のもとにそういう決定をなされたのか、お尋ねをしたいと思います。
  145. 石原慎太郎

    石原国務大臣 あのときの環境庁から閣議予解を得ました環境庁のコメントの中にも、事の重大性にかんがみてこれから関係省庁にそういう視点で積極的な協力を願いたいということで、全閣僚の了承を得ました。その後、官房長官も次の国会に出すために自分も自分の立場で努力すると言ってくださいましたので、あそこでぷつんと糸が切れたのではなしに、とにかくあの時点からも不断の努力を続けてまいってきておりますし、成案を得て提出するように努力をするつもりでございます。
  146. 中井洽

    ○中井委員 その時点から調整あるいは努力を続けているというお話でございましたけれども、調整がつかなくてあきらめられ、それから具体的にたとえば各省間との話し合いが始まっておるのか、そのことについてもう一度お尋ねをいたします。
  147. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 環境庁案を各省庁に御提示をいたしまして、いろいろと調整を続けてきたわけでございますが、重要な問題で調整のつかない点があったわけでございまして、そういう点について、いまの段階では未調整でございますが、それが事務的に調整をつける余地がどういう点にあるのかという点について、ただいま私どもの方で十分検討中でございます。
  148. 中井洽

    ○中井委員 そうすると、これからのいろいろな調整の中で、たとえば各党からもこの法案に対して独自な案が出されているわけでございます。私どもも独自の考えを持っております。そういった考えを繰り入れて新しく調整というものを始めていくのか、それともいままでどおり環境庁のお考えになっておったような影響評価制度をもとに調整をお進めになるのか、お尋ねをしたいと思います。
  149. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 昭和五十年の十二月に中公審の環境影響評価の専門委員会から出されました環境影響評価制度についてのまとめの中間報告があるわけでございますが、大体そういうものを基本的な考え方にいたしまして、その後できました中公審の環境影響評価部会でもそういう基本的な考え方の上に立って検討が進められているわけでございまして、私どももそういう線に沿って、今後ひとつ検討なり調整を続けていきたいというふうに思っております。
  150. 中井洽

    ○中井委員 今回環境影響評価制度が出されなかったということについて、私どもは非常に不満があります。また、環境庁のお考えになっておられるような案そのものにも、先ほど申し上げましたように各党にも不満があるし、私どもにも不満がある。あるいはまた、三月の初めの当委員会で、阿部委員の御質問だったと思いますが、長官が、環境庁考えておるこの制度を自分自身は最低限のものであるというふうに考えておるというお答えをなすっておるように私は記憶をいたしておるわけであります。そういったいろいろな不満があるし、また後ほどお尋ねをしたいと思うわけでありますが、各省間の調整がつかないという点に関しても、観点を変え、角度を変えて、新しく環境影響評価制度というものを見直して、そして始めるということもお考えになってはいかがかと思いますが、長官どうでございますか。
  151. 石原慎太郎

    石原国務大臣 これは私、就任早々、この法案に対する作業がどれほど進んでいるのか確かめずに非常に概念的に物を申して、ちょっと混乱を招いたことがございますが、これは環境庁所管の法律案というよりも、とにかく関係省庁が十幾つ、十八ですか、あるぐらい、つまり政府の行政全体を覆う一つの哲学とまで申しませんけれども、新しい物の考え方、新しい行政の姿勢を確認する法律なわけです。ですから、本当を言うと、内閣官房でありますとか総理府が音頭を取って関係省庁とする方が、政府の一つの機構の上からは能率よく進むのじゃないかと思うぐらいでございます。しかしいずれにしても、やはり環境行政の当面の当事者、責任者というものは環境庁でございますから、余り大きくもない、できたての、いろいろな意味にとられますけれどもできたての環境庁が、ベテランの建設省、通産省を相手にして新しい物の考え方を説得し、僣越な言い方かもしれませんけれども啓蒙し、協力を要諦、努力しているわけでございまして、そういう意味では、ここまで来たことですから、やはりこの時期の環境行政一つの大きな柱として、何とか環境庁の手で、環境庁が中心になってまとめて提出し、成立させたいものだと思っているわけでございます。
  152. 中井洽

    ○中井委員 いろいろな点で調整がつかなかったというお話、あるいはまたいまの大臣のお話、私がいつも思っている石原長官のイメージとちょっと違って、おとなしい、元気がないなと思うわけでありますが、この調整が、たとえば各省間の調整が官僚の皆さんでの調整段階でストップをしてしまったのか、あるいは閣僚段階のところまで、大臣、長官との話し合いのところまで来たのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  153. 石原慎太郎

    石原国務大臣 閣僚の交渉レベルまで来たものがございますし、それから事務レベルの折衝、交渉でどうも提出の締め切りに間に合わなくなってしまったものもございます。電気事業を対象にするかしないかの問題はやはりある意味で論じ尽くされた問題でございますが、同じ通産省マターでも手法が確立されていない、いるという問題については、技術的な問題について事務局での話し合いがし尽くされておりません。  それから、建設省の例の都市計画に関する姿勢というものは、これは建設省から出てきた二十項目近いものの中の、ほかの部門がもっと重要かと思うような話し合いがあったようですけれども、実はこれは突然締め切り間際に非常にクローズアップされまして、どうも話し合いがつかないままにタイムリミットまで来たということで、すべてが事務方でし尽くされたものならば、与党も乗り出して、閣僚が交渉し合って最後は政治判断ということになるでしょうけれども、何分ことしの正月から具体的な案文をつくり出したということでございまして、どうもこれだけの大きな歴史的な法律案をつくるにはいささか時間が短過ぎたということで、決して落胆はせずに努力を継続するつもりでございます。
  154. 中井洽

    ○中井委員 石原長官の政治力をふるう間なしにぽしゃったというか、出せなかったというふうに理解をして、今後に期待をしたいと思います。  余談でありますけれども、私どもこの間ずっとあっちこっちで演説会をいたしまして、中井さん、何をやっているんだと言うから、公害をやらしてもらっているんだ、長官石原慎太郎で、次官一竜斎貞鳳さんだ、こう言うと、皆さんどっと笑うわけであります。その笑うというのは変な意味じゃなしに、非常に温かみのある笑いだと私は思うのです。こういうお二人で何か新しいことをやってくれるんじゃないかというふうに国民の期待があるわけであります。残念ながら私は、きょうは最後の日だと思って質問するわけでありますが、長官就任以来にぎにぎしく騒がれるのは新聞だけで、結局そういった政治力をふるうところまでいかないというようなことに関して、私どもは非常に期待をしておっただけに残念なような気がいたします。  これまた余談ついでに言えば、長官のいろいろと発言をなすっていること、ずいぶんいじめられているようでありますが、私は、若い世代の一人としてよくわかるものもありますから、大いに発言をしていただきたいし、大いに政党内部、自民党内部で力をつけて環境庁のために、環境行政のためにがんばっていただきたいと考えるわけであります。  それでは、その事務レベルで調整がつかなかったということでございます。いま長官お話にもございましたし、あるいはまた、承っておりますと、建設、特に通産関係でつかなかったということでございます。来ていただいていると思いますので、建設省からまずお尋ねをいたしたいと思います。  建設省、この環境影響評価制度そのものに反対という立場で調整がつかなかったのかどうか、そういった点も含めてお話をいただきたいと思います。
  155. 関口洋

    ○関口説明員 私ども、公共事業を所管する一つの役所としましては、やはり環境との調和という、非常にスローガン的で申しわけございませんが、それには十分配慮すべきものということで、そういう信念に立っております。したがいまして、環境影響評価制度そのものの必要性を否定し、これに反対するというものではございません。  ただ、一つ法律制度としてまとめていく場合に、ただいま長官から詳しく御説明がありましたので私からは簡単にさせていただきますが、一つは、やはりあの法案の中で長官のお示しになる指針の内容というものが、この環境影響評価制度を実効あらしめるために一番重要なものと考えております。その指針の具体的内容につきまして、いろいろ環境庁との間に、御説明もお伺いし、意見交換もしていったのでございますが、私ども立場から申しますと、はなはだ失礼でございますが、具体的な御説明をいただけなかったという点で残念だったと思っております。  第二は、法律相互間の調整という問題で、ただいま御紹介のございました都市計画法との関連でございます。この点は、実は建設省の所管法律の中には、ある一定の計画のもとに事業を執行するという法律が多々ございますが、そのうちの一番代表的なものとして都市計画法との関係を私どもは問題にしたわけでございます。これについては、アセスメントをいつの時点でやるのがいいかという問題に究極は帰着するわけでございますが、私どもとしては、都市計画の策定段階でアセスメントをやるのが一番いいという判断に立ってお願いをしていったわけでございます。  また、若干都市計画について補足させていただきますと、都市計画法自体の中に、公聴会であるとか、あるいは俗に住民参加と呼んでおりますが縦覧手続であるとか、また、そういう段階でいただきました各住民の方々の御意見、都市計画地方審議会というものでもって御検討をいただいて、都市計画の適否を決めるという法制度になっております。そういう意味から、このアセスメント法案の中におきましても、同じように公聴会であるとかあるいは住民参加というような手続が規定されておりますので、私どもとしては、都市計画法との調整をどうしてもつけていただきたい、こういうことでお願いをしたわけでございます。
  156. 中井洽

    ○中井委員 環境庁にお尋ねをいたします。指針の内容について具体的な提示がなかったといういま建設省のお答えでございます。どうしてなかったわけでありますか。私は、こういった指針の内容というものは、まあその時代時代のいわゆる国民全体の環境に対する考えあるいは科学技術の発達、こういったものによって決まってくると思うわけでございます。この時点、この時点の求め得る最大の環境保全についての指針を出していけばいいというふうに考えているわけでありますが、いまの建設省の方のお答えが本当であるのかどうか、その点確かめておきたいと思います。
  157. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 指針といいますのは、アセスメントをどういうような項目を予測評価するかとか、どういう手法で評価をするか、そういうものをやはり法律でそういう指針に基づいてやるのだということを明らかにしておきたいというので、法律案の中にそういうことがあるわけですが、そういう問題につきましては、私どもも過去相当の期間にわたって、アセスメントといいますか環境影響評価の審査をやってきておりまして、最近でも毎年五、六百件いろいろな開発行為についての予測評価の審査をやっておりますので、そういう実績の積み重ねとか、あるいは経験とか、あるいは科学的に開発された手法とかいうものが蓄積されておるわけでございます。だから、いまここで何もないところから急に指針を忽然としてつくるというわけではないのでありまして、私どももそういうものをつくってもおりますし、また、今後内容を充実させて、たとえばこの法律を公布いたしましても施行までには相当の準備期間がありますから、そういう期間の中で、関係各省庁とも十分その内容を改善すべきところは改善をするということもでき得るものと信じておるわけでございます。ただ、法律では、大筋の指針は環境庁でつくりますが、その実施の細目については、むしろそれぞれの事業に特に熟練をしておられる各省庁の方がそれぞれの事業ごとにつくる場合には適切であろうと思いますので、いろいろな事業ごとの実施の細目については各省庁で環境庁と相談をしながらつくっていただきたい、そういう内容になっておりますので、そういう内容を準備期間中によく詰めていくようにしたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  158. 中井洽

    ○中井委員 建設省にもう一度お尋ねをいたしますが、何かわけのわかったようなわからぬようなことでとまっているのだなというような、皆さん方にとっては非常に大事な問題でありましょうが、私どもから考えればそういう感じがいたします。結局、ざっくばらんに言うと、建設省側で、建設省のなさるあるいは関与される諸事業に環境庁が入ってくる、あるいはそういった環境庁影響評価制度なんかで縛られる、こういったことがいやだということなのか、あるいはこういった環境影響評価制度というものをきちっとしていけば、お考えになっている諸事業が進まない、このようにお考えになっておられるのか、そういった点の反対というのがあるように私どもは漏れ聞いているわけでございます。この点については、いかがでございますか。
  159. 関口洋

    ○関口説明員 御質問の冒頭に、環境庁から受ける制約をきらっておるのではないか、それが根底にあるのではないかという御趣旨の御意見であったかと思います。先ほど来申しておりますように、私どもも環境影響評価制度の重要性は十分認識しておりますし、その点について、ただいまの企画調整局長の御答弁にもありましたように、建設省の所管行政のみならず、横断的に各省の所管行政をながめておられる環境庁において確かに一番お詳しいということは、私どもも認めております。したがいまして、環境庁の御指導を受けるということについて何ら反対をするものではございません。そこはよろしく御了承のほどをお願いしたいと思うわけでございます。  ただ、長官みずからもおっしゃられましたのですが、どちらかと申しますと事務的なことで先生方に御心配をおかけして申しわけないのでございますけれども、私どもとしまして、なぜ指針についてそれほどまでに環境庁との間の詰めを行ったかということは、これは先生御案内のとおり、この法律は環境影響評価準備書をつくり、さらに縦覧し御意見をいただいて環境影響評価書にまとめ上げて、そこで一つの事業の着手に進んでいくという、俗に申しますとある意味では手続法という性格が非常に強うございます。その手続の出発点になり、またそれぞれの手続の節目、節目で次の手続に進んでいくべきかあるいはもっとよく調査すべきか、こういう点の根幹になるものが指針であると私どもは思っておるものですから、その内容にこだわったということであります。
  160. 中井洽

    ○中井委員 それでは、もう一度建設省にお尋ねをいたします。  建設省のいろいろな事業に関しても、いま日本全国で住民の反対運動あるいは環境を壊すということからストップしている諸事業がたくさんおありになる。建設省は建設省なりに、いろいろな事業の前にこういった環境面に対して十分配慮をする、あるいは調査をなすっておられると思いますが、いまのような制度ではなかなか住民が納得をされない。したがって、環境影響評価制度というものができ、あるいはいまの環境庁のお考えになっていることではなしに、私どもあるいは他党の皆さん方がお考えになっておられるように、はっきりとどこかで機関をつくり、この事業に関しては環境面を破壊するのが余りにもひどいからだめである、あるいはこの点に関しては環境面がほぼ保全されるからやってもよろしい、こういうようにはっきりと返事ができるような制度、機関というものも含まれていくというような制度、こういったものであれば、建設省はこの法案そのものには賛成ということでありますが、積極的に御協力をなさっていくおつもりはございますか。
  161. 関口洋

    ○関口説明員 私ども環境庁との間で意見を今後とも詰めてまいりたい、かように思っております。  先ほど来申しておりますように、指針の内容をよく整備すれば、いわゆる環境問題についての判断の基準というものまできちっと織り込んでいただけるならば、いま先生がおっしゃいましたような他の機関の判断にゆだねるというところまでいかなくて済むのではないか、いまのところはこういうふうに考えておりますが、先生のお話しのいろいろな制度が具体化した場合にまた改めて意見を申し述べさせていただきたい、かように思っております。
  162. 中井洽

    ○中井委員 次に、通産省にお尋ねをいたします。  建設省と同じく、どの点においていまの環境庁のお考えになっておられるアセスメント法に反対であるのか、この点について具体的に御説明をお願いしたいと思います。
  163. 斎藤顕

    ○斎藤(顕)政府委員 通産省としましては、環境に対する影響を評価するという必要性については私どもも十分認識しております。事実また、昭和四十年から、私ども自身で産業公害総合事前調査というものを十年余にわたって実施しておりまして、手法の開発とかいうことにつきましても、技術的な問題につきまして傘下の工業技術院の試験所を動員いたしまして、ずいぶん努力をしてきたつもりでございます。また、昭和四十八年からでございますけれども、発電所につきましては、資源エネルギー長官の通達によりまして事業者に環境に対する影響の評価を実施させてきておりまして、その報告は専門家で構成されております環境審査顧問会の意見を聴取いたしまして、電源開発調整審議会においてこの意見を反映させるという方法をとってまいりました。通産省といたしましては、これまでの実際の経験から、今回環境庁の出されました環境影響評価法案というものにつきまして協議をしてきたわけでございます。先ほど建設省からの御答弁にもありましたけれども、技術的な問題あるいは法律的な問題等基本的な問題、具体的に申し上げますと、先ほどの指針の問題あるいは評価すべき項目の問題、それをいかに評価するかという技術的な問題、また住民意見を取り入れていくということは大事なことだと思いますが、住民意見をいかに取り入れてどのように評価させていくかということは非常に大事な問題でございますが、その辺にはっきりしない点があるというふうな非常に基本的な問題について、十分な意見の調整ができなかったわけでございます。私どももこれまでの経験にかんがみまして、このような状態にありますときに、いきなりこれを法律という形で施行する場合には、またふなれなところから、いろいろな新たなトラブルを起こす要因にもなり得るかというふうな判断もございまして、ここ当分行政の運用という形で実績を積み重ねていきましょう、そして環境影響評価の手法とか内容の一層の充実を図って、合理的な環境影響評価手法のあり方を見きわめた上で、その時点で法律という形にした方がいいのじゃございませんでしょうかということを、基本的な考え方として申し上げておった、こういうことでございます。
  164. 中井洽

    ○中井委員 わざわざアセスメントをやらぬでもすでにやっておる、こういったような御答弁であったように私は理解をするわけでありますが、通産省で御指導なすって、いろいろ電気事業に関してやっておられることが、住民サイドからも、あるいは地方議会からも全然信用されてないわけであります。そして残念なことに、電力事業の火力発電所あるいは原子力発電所、こういったものの開設に関して、科学性を無視した不毛の対決が行われて、そして諸事業がやめるのか進むのかわからない状態で宙ぶらりんになっているわけでございます。そういった点を考えると、思い切って環境庁のおっしゃるような影響評価制度にもう少しはっきりとイエス、ノーを言えるような制度、あるいは皆さん方のおっしゃるようないわゆる指針というものをきちっとさえしていけば、ある意味で前進をしていくのではないかと私は考えているわけであります。そういった点を含めて御答弁をいただきたいし、あるいはまた通産省が、この対象事業の中から電気事業だけ抜け、このように主張されて、そしてそれが抜かれたとしても、電気事業だけ対象から外して環境影響評価制度が実施された場合に、世論の動きから見て、法律で抜いたところで、地域であるいは住民の側から、当然何か電気事業をやろうと思えばこれをやりなさいという声が必ず起こってやらざるを得ないと私は思うわけであります。そういった意味で、とにかく法案を国会へ——整備されてない面もあるでしょう。しかし、それをだらだらと延ばしていくということは前進でも何でもないと私は思うわけであります。思い切って、試行錯誤もあるけれども、広い立場から、大きな観点から御賛成なすって進めていただきたいと思うわけでございます。そういった点について、もう一度御答弁をお願い申し上げます。
  165. 斎藤顕

    ○斎藤(顕)政府委員 私、先ほど御答弁申し上げた中で、十分な御理解をいただき得なかった点があるかと思うのでございますが、私ども、すでに実施しておるから不要であるというふうに環境庁に対して申し上げたわけではございません。いきなり法律ということになりますと法律的な義務ということになりますので、手法の展開あるいは評価の方法、結果等をめぐって新たなる法的争いが起こるおそれがある。したがいまして、そういうふうないきなり法律ではなくて、別途制度考え行政の運用という方法があるのじゃございませんでしょうかということを環境庁に申し上げておったということをひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから電気事業の問題でございますが、電気事業につきましてはこういうふうに申し上げておったわけでございます。私どもは、基本的にはまだ未熟といいますか、いろいろ問題点のある環境影響法案がもしどうしても法律でなくてはいけないんだというふうに環境庁の方でおっしゃるんであるとすれば、電気の問題は非常に現在デリケートな状況にあるものでございますから、どういうふうなトラブルが起こるか起こらないかはなかなか予測のつかないところでございますけれども、電気事業については慎重に考えてください、非常にデリケートな状況にございますよ、したがって、電気事業の扱いはくれぐれも慎重に考えていただきたい、こういうふうに申し上げておったわけでございます。
  166. 中井洽

    ○中井委員 若い私どもはごまかされてしまいそうな上手な御答弁でございますが、私自身は、本当に起こった公害に対してどうしていくんだというところから、これから環境を破壊していくようなものに対して事前調査をし規制をしていくんだ、こういったところでまで諸先輩の御努力で進んできた、こういうわけであります。そして、そこへ持ってきて、いま日本では各地で個人の福祉あるいは環境と公共の福祉、こういったものをどうバランスをとって物事を進めていくかということで、非常な混乱が見られているわけであります。  残念なことに、いまの行政の皆さん、あるいは政府の皆さん、あるいは地方公共団体の長の皆さんが、非常に勇気を失われたと言っては言い過ぎかもしれませんが、そういった中でほうっておかれる、あまつさえ五年か六年たってむちゃくちゃなお金でもって解決しようといった非常にいやな面が見られるわけであります。そういったものをもっと科学的に、あるいはルールをつくって、共通の地盤の中で話し合って、できない、やっていくんだということをさっさと私は決めるべきだと思うのであります。また、そういう時期にきていると思うのであります。そういった意味から、いまの環境庁のお考えになっている影響評価制度が、そういったことをさっさと進めていく上で私は必ずしも万全であるとは思っておりませんけれども、そういった点を含めて環境庁長官の、いまの建設省、通産省等の御答弁を聞かれて、率直なお考えをもう一度承りたいと思います。
  167. 石原慎太郎

    石原国務大臣 答弁しました局長も参事官もともに同じ政府の中の人間でございまして、こういう委員会委員の先生の前で政府間の議論を開陳する形になるのはどうかと思いますが、先ほど申しましたように、これは環境庁が出した法律ではありますけれども、これからの時代の新しい理念といいましょうか、価値観といいましょうか、そういうものを表示する法律でありまして、時代の趨勢というものを無視して、どんなにそれなりに古い価値観で合理的な能率的な行政をやっても仕方ないと思うのです。でも、世の中には礼を尽くせば要するに人の心も通う、やはり世の中にも物を解決していく手順というのがあると思いますが、ましてやはりいままではお上というものが決めたこと、つまり百年前に決めた高度成長、産業優先の立国というものが一応かなえられたいま、やはり国家の目的なり民族の目的というものが違った形になってきているときに、その指針といったって、私は局長レベルの詳しい報告を聞いておりませんけれども、指針といっても大義名分ではなしに、ガイドラインと申しましょうか、何をどういうふうにして調べるかという細目のようなもので、都市計画に関したってそういうものはあるわけです。しかし、いま都市計画法の中にアセスメントをするという条項はどうもないようでありまして、これは一つの物の考え方だと私は思いますけれども、都市計画法は計画法であっても、その中に行うべきアセスメントはアセスメント法に従ってこれを行うということで都市計画法も新しく生きてくるのではないかと思うのです。  そういうことですから、何かできたばかりの小僧みたいな環境庁に鼻面を引きずり回されてということでは決してないので、つまり、政府全体の、国民全体の物の考え方をたまたま環境庁が代表し一つの提案をしているわけでございますので、賢明な政府委員の諸氏でございますから、なお話せばそういう問題について理解をいただけると思いますし、電調審でもすでにアセスメントを行っておりますが、この間も参議院の予算委員会で、電力出身の中村利次先生が電力危機の問題について質問されました、そのときに、私が、あるところで、いろいろな種類の住民運動もございますけれども、有意義なものもあるし、どうもやや感情的なものもある、しかし、とにかくそれがいまのままで立地条件が最悪のときになっていって、これはやはりトレードオフの問題ですから、やがて電力が足りなくなって送電が制限されるときになれば、国民もその問題をその問題として受け取るのじゃないか、ちょうどコロラド州が冬季オリンピックを、自然破壊を防止するために返上し、二年後には失敗したということで、第二のカリフォルニアにするのだということで、知事以下全部ほうり出して、新しい政治家でやっている、やはり試行錯誤もあるでしょうが、ということを申しましたら、しかし、それでは、ともに電力関係の労使はいたたまれなくて、やはり足りないものは足りないと言えといっても、やはりそうは言うことは忍びないし、その事態は忍びないから、それを食いとめるために政府も努力をしろとおしかりいただきましたが、そのためにもやはりこれはアセスメント法を行うことで、いま非常に微妙な段階と言いましたけれども、最低の、つまり最悪の状況にある電発の立地問題も、私は一歩、二歩前進するのではないかと思う次第でございます。
  168. 中井洽

    ○中井委員 私も長官のお考えと同じく、これができることによって、前進面ばかりじゃありません、もう停滞して環境を破壊するようなものはやめてしまえばいいわけでありますから、あっさりとそういう形を判断できるような形でぜひお進めをいただきたいし、事務レベルでどうしても折衝できないということでございましたら、内閣閣僚の中にこの関係の閣僚会議というものをおつくりいただいて、建設大臣は総理大臣に言う、あなたはあなたで総理大臣に言うというような形じゃなしに、もっとオープンな中で煮詰めていただきたい、思い切った政治的判断もしていただきたいと考えるわけであります。  最後に、あと一つ、二つお尋ねをいたします。  各地方の公共団体でこういった政府の動き、あるいはいつまでたっても出てこないというのを見て、地方公共団体独自で条例をつくってやろうという動きがあるわけであります。こういったものがつくられていく場合に、地方公共団体は現実にやはりそこの住民と接触をしているわけであります。環境庁のものよりもっと厳しい形でのアセスメントが出てくる、こういうふうに思うわけであります。その後、来年あたりにひょっこりと、私どもはまだまだ足りないと考えているようなアセスメントが出てくるといったような混乱が見られる可能性もあるわけであります。こういった各地の条例化の動きについて、環境庁自体はどのように御判断をなすっておるのか、あるいは御相談があった場合にどのように御指導なされるのか、その点についてお尋ねをいたします。
  169. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 現在、都道府県あるいは政令市等で環境影響評価の関係の条例を制定しているところは川崎市でございますが、条例をつくろうという動きのあるところがやはり相当府県あるわけでございまして、それぞれいろいろと検討されておるわけでございます。そのほか、条例という形じゃなくても、宮城県等で、指導要綱というような形で実質的にその県内の開発行為に対する環境影響評価をやっているというところもあるわけでございます。そういうところも、現在、国における法制化という問題がありますので、それを見守っていたといいますか、その動向を待って対応していこう、こういうようなことできているのが現状だと思います。  今後、そういうところの各府県がどういうふうに対応していくか、まだ私どもの方では十分存じておりませんが、いろいろ御相談があれば御相談には応じたいと思っております。
  170. 中井洽

    ○中井委員 それでは、アセスメントに関して最後に。  これから煮詰められる段階において、先ほど建設省、通産省の方からお話のございました指針づくりあるいは基準づくりあるいは評価手法の充実、諸データの整備あるいは人員の充実といったものが必要だと思いますが、そういった準備について環境庁は具体的にお進めになっておられるのか、あるいはこれから進められる場合に具体的にどのようにお考えになっておられるのか、それらの点についてお尋ねをしたいと思います。
  171. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 環境影響評価の実施のためには、先生おっしゃいますように、人員とか予算とかの問題ももちろん必要になってくるわけでございます。環境庁だけについて申しますと、五十二年度の予算の中で、いままで環境影響の評価の審査をしていた環境審査室を課にいたしまして、人員も増強するということにいたしておるわけでございます。なお、法律ができますればこの準備期間があるわけでございますが、そうしますと、その期間の次の年度にそれに対応した組織、人員あるいは予算等についてやはり配慮しなければいかぬと考えておるわけでございます。  それから、地方公共団体の方もだんだんといわゆる環境関係の部局が充実強化してまいっておりまして、これは環境白書にも書いてございますが、数年前に比べますと人員、組織等、たとえば組織にいたしましても環境関係の部あるいは課がほとんど各都道府県にできておりますし、人員も相当充実強化されてきておるという状況になっておるわけでございます。
  172. 中井洽

    ○中井委員 そういった実施に備えての充実というものを目指して、大いにがんばっていただきたいと思います。  それと同時にお願いは、先ほどからお話にございました基準あるいはデータ、指針、そういったものを、環境庁あるいは建設省、通産省の中での話し合いだけにとどめずに、環境庁はこれを考えているんだということを、素案のままで結構だから、世論にぶつけるべきだと思います。先ほど長官のおっしゃったように、皆さん方お考えになっておるより世論は進んでいるわけであります。私のように昭和十七年生まれの者にとりましては、環境問題を考えて諸事業をやるのはあたりまえのことであります。国民の大半はもう昭和二十年以降に生まれた人で、あたりまえだと思っているわけであります。したがって、こそこそとと言えば失礼だけれども、政府間だけでまとめる、そして出して国会を通すということであれば、その後いずれ住民運動の中で、あの決め方ではおかしい、基準がおかしいという声が出てくると私は思うのであります。いまのうちから大いに世論に訴える、世論もそれに対していろいろと注文をつけていく、こういった中でお進めいただきたい。最後に要望をいたしておきます。  次に、地盤沈下法についてお尋ねを申し上げたいと思います。  私、国会へ出てまいりまして環境庁の方から予算説明をお受けいたしましたときに、影響評価制度、地盤沈下法、この二つはどうしてもやりたいのですという御説明を受けて、それは大変結構なことだなと思っておったら、二つとも出なかったわけでございます。非常に残念で、どういう点でこれをまた出せなかったのか、諸先輩にはおわかりかもしれませんが、ひとつお教えをいただきたいと思います。
  173. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、環境庁といたしまして、今通常国会に環境影響評価法案のほかに地盤沈下防止法案を提案いたしたいと考えておったわけでございます。その段階におきまして、よその官庁の方におきましても、たとえば建設省の方は地下水法案、地下水を公水というような観念のもとに考えておる法案でありますが、地下水法案を出したい、通商産業省の方におきましては現在あります工業用水法の一部改正法案を出したいということで、三省庁におきましてそれぞれ政府提案を今国会に向けてやりたいということがあったわけでございます。そこで三省庁で話し合いもしたわけでございますが、それぞれの考え方等がございまして、国会に提出いたします政府提案のものは原則的には一応三月二十二日までが提出期限ということで、それを目途に話もしましたけれども、三省庁でなかなか話がつきませんので、検討中の法案、C法案と普通言われますが、検討中の法案ということで政府としての今国会提出予定法案のリストからは一応外されたわけでございます。  外されましたが、地盤沈下の防止は非常に大事なことでございますので、与党内におきましても今国会提案を目途に、議員提案でもいいからぜひ関係省庁話をつけて提案するように努力せよというお話がございました。そういうことで、最初は三省庁、国土庁と通商産業省とうちと三省庁で話をしてまいりましたが、さらに三月の下旬から建設省、農林省、厚生省等も入りまして六省庁で話し合いをいたしたわけでございます。何回か局長レベルの会議等も持ったわけでございますけれども、それぞれの役所の立場なり考え方が基本的にございます。そういうことでこの法案の仕組み方等につきましていろいろ意見がございまして、まだ一つの案に収斂されない姿で現在まで立ち至っているということで、はなはだ残念ではございますけれども、そういう議論をやっている間でも地下水の過剰くみ取り等によって地盤は沈下しているという現実があるわけでございますので、われわれとしては、今後ともその辺は根気強く調整をしていきたいということでございます。
  174. 中井洽

    ○中井委員 いま二瓶さんお答えになったように、法案は出されなくても結構でございますよ。しかし、地盤沈下が待ってくれるわけではないのであります。また、これからも新しく起こるかもわからないわけであります。承りますと全国で四十数カ所あるわけであります。また、さっきと一緒で通産省と建設省、反対か何かわかりませんが、各省間のなわ張りとか調整とかいろいろおありでしょう。役所が権限を移譲するということは大変なことだと思いますけれども、国民の環境あるいは安全を守る意味で大いに話し合いを進めていただきたいと思います。  建設省、通産省の方、地盤沈下の関係の方がおられましたら承りたいのでありますが、もしそういう形で環境庁が総合的な地盤沈下の防止法を出すことにどうも抵抗がある、調整がつかないというのならば、現在の地盤沈下法に対して、それぞれの省で十分これで対処できるというような代案、法案をお出しになる、あるいは法改正をお考えになっている、こういったことについてお考えをお述べいただきたいと思います。
  175. 斎藤顕

    ○斎藤(顕)政府委員 地盤沈下は、主として工業用水のくみ上げによって起こっておるケースが多うございます。事実、私ども二十年にわたりまして工業用水法を活用して、工業用水を積極的に引いてまいりまして、東京湾、伊勢湾、大阪湾等、主要な臨海地域における沈下は、すべて防止いたしました。また、現在隆起しておるというふうな事実すらございます。これによりまして、ほとんど大きな地盤沈下地域は、濃尾平野地区を除きまして終了したというふうに認識しております。濃尾平野につきましても、本年、国庫補助金とあわせて、中小企業振興事業団の融資も決定いたしまして、比較的リーズナブルな価格で、この地域に工業用水を引けるという第一歩を踏み出したというふうに考えております。こういうふうな状態ではございますけれども、水のくみ上げによる地盤沈下の防止を総合法案として取り上げたい、取り上げていくべきだというふうな考え方もございまして、私どももその考え方には賛成でございまして、国土庁がまとめ役になりまして、先ほど環境庁の方からも御説明がございましたように、ほぼその成案を得ております。ただ、一部細かな点につきましてまだ未調整な面がございまして、今国会に議員提案としてでも提出できるかどうか、もういまに至りましてはちょっと無理かと思いますが、少なくとも今国会に提案したいという姿勢で三省庁で基本的な問題を煮詰め、先ほど御説明のございましたように、関係省庁を入れまして、成案を得るように努めてきたところでございます。
  176. 中井洽

    ○中井委員 私は、いまの御答弁納得できないのであります。賛成ならもっと早く出てきたらいいわけであります、調整はともかく。それから、あなたのおっしゃった伊勢湾や大阪湾や東京湾、とまったと言いますが、大阪湾や東京湾、私は残念ながらデータなしで知りませんが、伊勢湾は私の地元でございます。とまっちゃおりません。現実に地盤沈下やっています。毎年、雨降ったら水つきますし、それから防潮堤なんか全部やり直しをしなければ大変なことになるわけであります。ちょっと御認識が違うんじゃないかというふうに考えるわけであります。しかし、通産省の方が総合規制に関して、総合法の立法に関してまとまっている、こういうことであるならば、その言葉を信用して、次の国会には必ずお出しをいただけるように、環境庁の方でも最大限の御努力をいただく、またお約束をいただきたいと思います。——まとまっていると言うから次の国会に出してくださいと言っているんです。
  177. 斎藤顕

    ○斎藤(顕)政府委員 基本的な問題点等につきまして、ほぼ成案を得まして、細かい詰めをしておった段階に来ておる、こういうふうに申し上げたわけでございます。  それから、伊勢湾の問題につきましては、私、少し説明が不足いたしましたけれども、伊勢湾の中のいわゆる四日市、名古屋等の工業地帯の面での地盤沈下はほぼ停止したというふうに認識しておると申し上げたわけでございます。
  178. 中井洽

    ○中井委員 時間がないものですから、余りつべこべ言いたくないわけでありますが、通産省のお考えは、工業用水法の一部改正あるいは運用によって地盤沈下はとまる、こういうふうにぼくらに言うておるように聞こえるわけであります。しかし、それ以外にたくさん、伊勢湾でも長島町なんて言いまして、長島温泉あるいは養鰻、この二つのどっちかわからないような形での大変な地盤沈下も続いているわけであります。とにかく、通産省のお考えのような形だけで私は地盤沈下というものは防止できないと思いますし、またこれから起こり得る地盤沈下に対処できないと思うわけであります。環境庁長官として、ぜひこれまた各省間の話し合いを進められて、次の国会に地盤沈下法をお出しをいただく、こういったことをお約束をいただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  179. 石原慎太郎

    石原国務大臣 地盤沈下は環境庁が所管しております行政の中の典型七公害一つでございまして、伊勢湾の状態をこの間あるときに見てまいりましたが、伊勢湾台風が再び襲えば、あのときの惨状以上のものになると思います。これをいまの段階で防止し、堤防をかさ上げする以外防ぐ方法はないわけですし、東京湾、大阪湾の沈下もとまったわけではなしに、速度が鈍ったということで、詳しい度合いはわかりませんけれども、しかし、沈下が完全にとまったとは言い切れないものがございます。そういう意味で、それを防止する総合法案を何とか次の国会までに成案を得て出したいと思っております。
  180. 中井洽

    ○中井委員 最後に閉鎖性水域のことについてお尋ねをしたかったのでありますが、時間がなくなってしまいましたので、また、この次の機会にさしていただきます。  二つのことを中心とした質問の中で、石原長官あるいは環境庁と建設、通産との間の理解の仕方、あるいは現状認識の仕方について微妙な食い違いがある。こういった食い違いがある限り、私は、これらの法案がまだまだ国会へ提出されるのが大変なことだなという実感をいま感じたわけであります。ひとつ環境庁の方におかれましても、くじけずにと言うたら悪いのでありますが、がんばっていただいて、ぜひこれらの二つの法案が国会に提出をされ、審議をされますようにお願いをいたしまして、質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  181. 島本虎三

    島本委員長 これで中井君の質問は終わったわけでありますが、中井君の質問に関連いたしまして、地盤沈下がほとんど一カ所以外はとまった、こういうような御答弁が通産省からあったわけでありますが、千葉県の市川市、あれは墓が半分くらい埋まっておるほどの地盤沈下のひどいところであり、地下水のくみ上げもそれによって制限されたと聞いておりますが、そこも全部とまったのであるかどうか、斎藤立地公害局長、関連して委員長からお伺いいたします。
  182. 斎藤顕

    ○斎藤(顕)政府委員 お答え申し上げます。  地盤沈下は、主として、従来、工業が地下水をくみ上げるということによって起こってきたという事実はございます。それにつきましては、工業用水法の施行によりまして工業用水を積極的に導入し、これに強制転換させていくという方法によりまして工業の地下水のくみ上げを停止してきたわけでございます。  これはやはりプライオリティーがございまして、大工業地帯から始めたわけでございます。したがいまして、東京湾沿岸、それから先ほど申し上げました大阪湾、伊勢湾等は非常に効果が上がりまして、この区域の地盤沈下は停止しておるというふうに私ども認識しております。  なお、工業用水がまだそこまで届かないというふうな地域とか、あるいは全国まだ四十カ所、ローカルな問題として残っておりますけれども、これらは工業用水を積極的に今後どういうふうに引いていくかということによりまして、逐次工業の問題につきましてはそういうふうに改善していきたい、このように考えております。
  183. 島本虎三

    島本委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十九分散会