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1977-03-22 第80回国会 衆議院 決算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月二十二日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 芳賀  貢君    理事 天野 光晴君 理事 丹羽 久章君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 北山 愛郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       宇野  亨君    櫻内 義雄君       染谷  誠君    津島 雄二君       野田 卯一君    村上  勇君       中村 重光君    馬場猪太郎君       春田 重昭君    安藤  巖君       甘利  正君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君  出席政府委員         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁振興         局長      福永  博君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         農林大臣官房審         議官      犬伏 孝治君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君  委員外出席者         国土庁長官官房         災害対策室長  山本 重三君         文部省学術国際         局学術課長   植木  浩君         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   山田 勝久君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       吉田 方明君         運輸省航空局飛         行場部長    梶原  清君         気象庁予報部長         期予報課長   青田 孝義君         気象庁観測部地         震課長     末広 重二君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     末広 恭雄君         参  考  人         (地震予知連絡         会会長)    萩原 尊礼君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   大原 一三君     山口 敏夫君 同月二十二日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     中村 重光君   山口 敏夫君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     多賀谷真稔君   甘利  正君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十九年度政府関係機関決算書  昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管科学技術庁)〕      ————◇—————
  2. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管科学技術庁について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として東京大学名誉教授末広恭雄君、地震予知連絡会会長萩原尊礼君の御出席を願い、その意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 芳賀貢

    芳賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取は、委員質疑により行いたいと存じますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 芳賀貢

    芳賀委員長 それでは、まず科学技術庁長官から概要説明を求めます。宇野科学技術庁長官
  5. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 科学技術庁昭和四十九年度決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十九年度の当初歳出予算額は、一千三百三十三億四千十三万円余でありましたが、これに予算補正追加額六十五億六千三百三十三万円余、予算補正修正減少額四億二千百七十一万円余、予算移しかえ増加額四千六百六十六万円、予算移しかえ減少額三十億五千三百四十五万円余、前年度からの繰越額十一億三千三百九十四万円余、予備費使用額三億七千七百四十一万円を増減いたしますと、昭和四十九年度歳出予算現額は、一千三百七十九億八千六百三十一万円余となります。この予算現額に対し、支出済歳出額一千三百五十五億二千百八十九万円余、翌年度への繰越額十四億三千六十五万円余、不用額十億三千三百七十六万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、原子力関係経費といたしまして六百九十億一千八百三十六万円余を支出いたしました。これは、動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉及び新型転換炉開発核燃料開発ウラン資源の探鉱並びに使用済み核燃料処理施設整備日本原子力研究所における各種原子力関連試験研究及び各種原子炉の運転、日本原子力船開発事業団における原子力船「むつ」の出力試験放射線漏れ原因調査及び新定係港選定のための検討放射線医学総合研究所における放射線による障害防止及び放射線医学的利用に関する調査研究財団法人日本分析センター設立による分析体制の強化、民間企業等に対する原子力に関する試験研究委託等原子力平和利用促進を図るために支出したものであります。  第二に、宇宙開発関係経費といたしまして四百八十億七千五百十八万円余を支出いたしました。これは、宇宙開発事業団におけるロケット及び人工衛星開発並びにロケット打ち上げ施設等整備航空宇宙技術研究所におけるロケット等に関する基礎的、先行的試験研究のほか、種子島周辺漁業対策事業助成等のために支出したものであります。  第三に、海洋開発関係経費といたしまして九億五千八百六十七万円余を支出いたしました。これは、海洋科学技術センターにおける海洋工学潜水技術等に関する試験研究実施潜水技術に関する研修の実施及び海洋開発機器高圧実験に必要な共用施設の建設並びに国が同センターに委託して行った海中作業基地による海中実験等のために支出したものであります。  第四に、試験研究機関関係経費といたしまして、当庁の附属試験研究機関のうち航空宇宙技術研究所金属材料技術研究所国立防災科学技術センター及び無機材質研究所における各種試験研究実施及びこれに関連する研究施設整備並びに運営に必要な経費として六十六億三千四百一万円余を支出いたしました。  最後、重要総合研究推進を図るための特別研究促進調整費研究公務員等資質向上のための海外及び国内留学経費、理化学研究所日本科学技術情報センター及び新技術開発事業団事業を行うための政府出資金及び補助金科学技術庁一般行政費等経費として百八億三千五百六十五万円余を支出いたしました。  以上、簡単でありますが、昭和四十九年度の決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほど、お願いいたします。
  6. 芳賀貢

  7. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 昭和四十九年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、本院の注意により当局において処置を講じたもの一件でございます。  これは、放射線医学総合研究所における受託研究費の取扱いに関するものでございます。  科学技術庁付属機関であります放射線医学総合研究所では、昭和四十六年度から四十九年度までの間に、研究室長等職員民間研究機関等からの依頼によりまして、二十一件の研究を行っており、この研究に要する費用として職員が受け入れ使用した金額は二千七百六十九万余円となっておりました。  しかしながら、これらの研究の実態を見ますと、国の職員がこれらの研究のために国の施設設備等を使用しておりましたので、国の受託研究として取り扱い、費用の支弁、徴収等については正規の会計経理をすべきものであると認められました。  このような事態を生じましたのは、同研究所研究を受託する場合の取り扱い方法が全く示されていなかったこと及び職員の認識が十分でなかったことなどによっていると認められましたので、当局の見解をただしましたところ、科学技術庁では、五十年十月、受託研究に必要な実施要領整備し、同研究所長に対しまして受託研究費算定基準等について通達を発するとともに、職員にこれを周知徹底させ、今後研究を受託する場合には国の受託研究として取り扱い、研究費を国の歳入に受け入れ、また、必要な経費については歳出予算から支出することとするなどの処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、昭和四十八年度決算検査報告に掲記いたしましたように、委託事業により取得した物品の管理につきまして処置を要求いたしましたが、これに対する科学技術庁処置状況についても掲記いたしております。  以上、簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。
  8. 芳賀貢

    芳賀委員長 これにて説明聴取を終わります。     —————————————
  9. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは、末広恭先生にもおいでいただきましたり、萩原先生にもおいでいただきまして、地震予知に関連して、少しその後の経過をお伺いしたいのですが、その前に、科学技術庁一つお伺いいたします。  科学技術庁設置法の十一条の二項、三項に、科学技術庁長官は、必要ある場合には各省庁勧告をすることになっているのですが、従来、この二項、三項に従いまして何か勧告されたものがあるでしょうか。昭和三十六年に一回だけあるように聞いていますが、そのほかに何かありますか。一回だけでしょうか。
  11. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在までのところ一回だけでございます。いま仰せになりましたとおり、昭和三十六年、ちょうど所得倍増計画政府推進しようといたしましたときに、それに伴いまして、果たして高級技術者が足りるだろうか、中級技術者が足りるだろうか、そうしたことに対して文部省はいかなる措置をとらなければならないか、そうした面に関しましての勧告が一回あったと承っております。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 ということは、科学技術庁がその後二項、三項にありますような観点からの勧告すべき事項というのはほかになかった、こう解釈していいのですか。
  13. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在まではさようでございます。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 科学技術庁が設置されて以来の大きな目的の一つなんですが、この主要な問題に関する勧告等を行うような事態は今後も想像できませんか。現在いろいろ研究したり検討していても、まだ勧告をするという事態になりそうもない、これからもそういう必要はなさそうだ、こういう意味ですか。
  15. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私自身といたしましては、非常に重要な勧告権でございますから、現在科学技術を預かっている者として、今後の日本における科学技術はどういうふうにあるべきかということを考えました場合に、いま、一つ大きく話題になっておりますのに、省資源という問題がございます。だから、こういう省資源という問題と、科学技術振興とをうまくかみ合わせていかないことには、いろいろ問題があるのじゃないだろうかという面もなきにしもあらずだと思います。したがいまして、そうしたことに関しましては、事務当局にひとつ検討してみたまえと言っている件がございますが、果たしてこれが勧告に値するかしないかは、まだ今後の検討事項でございます。  しかし、私自身といたしましては、幾つかの懸案に関しまして、一応当たってみなくてはならない問題が今後もあるであろうと考えております。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 科学技術庁設置法その他を中心に、専門的に一度またお伺いしたいなと思っていますが、従来、科学技術庁勧告が一件だけだなんということも、何か科学技術庁が忘れ物をしているのではないかという感じがするので、科学技術庁の存在する限り、科学技術庁から、やはりいろいろな建議なり勧告なりというものは出てこなければいけないと思うのです。これが一件だけで終わっているということは、何か科学技術庁の本来あるべき仕事に対してどれをとらえても少し横道へそれているのではないか。  原子力その他いろいろ重要な問題にぶつかっているに違いないのですが、原子力一つ考えたって、科学技術庁勧告権が行使されていい問題がたくさんあるのじゃないかと思う。いまのように省資源の問題も大事ですが、ひとつ思い切った勧告が出されるようにして、日本科学行政に対する刺激が与えられていかないと、どうも一カ所だけずっと偏っていくようなことがないようにしないといけないのではないかという観点でお伺いしたいのですが、自今、その観点から少し気をつけて、もうちょっと広く、科学技術全般に対して、わが国行政全体に刺激を与えるという意味勧告を、ぜひお願いしたいと思うのです。  その中の一つに、地震に対するいろいろな問題もあると思います。そういう点はいままでにない見直しを一度やっていただくというようにお願いしたいのですが、いかがですか。
  17. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 非常によきアドバイスをちょうだいいたしまして、ありがとう存じます。  特に地震に関しましては、今日一番大きな話題になっております。科学技術の面におきましても、国民が本当に大丈夫かいというような気持ちを強く抱いておられる問題でございます。こうした問題に関しましても、われわれといたしましては、なおざりにしてはならないと思いまして、昨年の十月、御承知だろうと思いますが、政府地震予知推進本部を設けて、科学技術庁長官がその本部長でございます。鋭意そこでそうした問題にも取り組んでまいりたいと思っております。  なおかつ、勧告権に関しましては、今後エネルギー問題等、本当にわれわれの興廃に関する問題がございますから、そうした面でも十二分に検討いたしまして、科学技術というものが今後の民族の死命を制すると申し上げても過言でない、私は、それくらいの気持ちでこの職をお預かりいたしておりますし、そしてその職の本分を発揮したく努力をいたしておりますので、ただいまの先生のいろいろな御意見に対しましては、本当に心からうれしく存じながら、今後もそういうような線に沿うべく、科学技術庁のあり方を、よりりっぱなものに育てていきたい、かように存じております。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 ぜひお願いします。科学技術庁からどんどん勧告が出るということは、わが国科学行政にとって非常に大事だと思いますから、重ねて私からお願いを申し上げておきます。  次に、きょうおいでいただいておりますから、お答えいただきたいのですが、異常気象という問題について、素人でよくわかりませんが、ことしあたり豪雪寒波日本へ襲来してまいりまして、アメリカのあの状態なども見たりして、これが異常気象と言えるのかどうか知りませんけれども、現在のような状態が、たとえば北極を中心にした寒冷化現象一つなんで、俗に言う三十年だか三十五年だか六十年だか二百何十年だか知りませんが、その一つ周期に当たっている異常気象現象が、ことしあたりわが国あるいは世界を覆っている気象状況なのかどうか、この点をちょっと教えていただきたい。  これは青田さんがお答えになるのですか、どなたかちょっと教えていただきたい。
  19. 青田孝義

    青田説明員 お答えします。  異常気象というのは、国際的な取り決めによりますと、いろいろ気象要素変動しておりますが、この変動のうちの標準偏差というのがありまして、その二倍以上を異常気象、ですから、統計的には二十五年以上に一回起こる現象異常気象と言っております。  ところが、世界は広いですから、そういう現象は、場所とか形は変えておりましても何回か世界のあちこちで起こっているわけでございます。ただ、近年になりまして、そういう異常気象が目立ってきたということが言えると思います。特に昨年の西ヨーロッパ高温干ばつ、それと時を同じくして北日本では、特に東北では六十数年ぶりの冷夏、ことしはことしで、またアメリカ東部では一月の大寒波日本では戦後初めてといいますか、三十二年ぶり寒冬ということで、近年特にそういう現象が目立っております。  それは、先ほど先生がおっしゃいましたように、高緯度を中心として寒冷化が進みまして、そのために日本日本といいますか、中緯度の上空を西風が流れているのですが、その西風が大きく南北にうねってきまして、その山のところでは高温干ばつ、谷のところでは異常低温、その中間のところでは大雨が降るといったコントラストが大きい天候があらわれやすくなっております。こういう現象はまだ十数年ぐらいは続くだろうと思います。  以上でございます。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 ことしが、やはりその異常のうちの一部なんですね。
  21. 青田孝義

    青田説明員 そうでございます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでお伺いするのですが、わが国のことしあたりの、いまの二十五年あるいは三十年といった周期の中の異常気象状態があらわれてきたんだという、その状況日本の場合と、去年、ことしを見て、アメリカその他の地域に起こっている異常の状況と同じようなものですか。程度が日本はいいんですか、悪いんですか。
  23. 青田孝義

    青田説明員 たとえば、ことしの一月の寒波ですけれども、月平均アメリカ東部では六ないし十度です。日本はどうかといいますと、月平均で二ないし三度ですから、約三倍の開きがあります。そういうことで、日本はことしは、天気図を見てまいりますと、太平洋北部に主な寒気が入って、日本はその余波を受けたという形になっておりますので、太平洋北部寒気がもろに日本に来たらアメリカと同じような形になったと思いますが、幸いそういうことで、日本はそれほどでもなかったということになろうかと思います。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 多少寒暖の幅が縮まったり広がったりするんでしょうが、まだ当分、ことしだけで終わらないで、来年も再来年もこのような現象が続くというふうに見ていいのかどうかということが一つ。  それから、たとえば、これからことしの農作物播種期に来たり、いろいろまた作物の作柄等心配にもなるわけですが、種まきをした、つくりました、遅霜が来た、非常な冷雨がいっぱい降ったというようなことで、農作物なんか考えたときにも、ことしはやはり何か少し心配、憂うべき気候状況なんだというふうに考えられますか、どうですか。
  25. 青田孝義

    青田説明員 まず第一点の来年、再来年、あるいはずっとどうなのかというお話ですけれども、これは先ほど十数年続くだろうと言いましたけれども、これは何も年々寒くなったり、年々大雨が降ったり、干ばつが起こったりということではなくて、そういう年回りにありますよということに御理解いただければいいと思います。  第二点の、ことしはどうかということなんですが、ことしは、この三月十日に気象庁は六カ月予報を出しましたが、その大まかなことを申し上げますと、北日本ではやや不順な天候、といいますと、低温とか日照不足があらわれる期間がある。それに引きかえて一方、西日本では雨の少ないといったような地域差の目立った変動の大きい天候があらわれるんじゃないかというふうに予想しております。  以上です。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。それもまた参考にお聞きしたわけですが、あと順次、地震予知の問題についてお伺いしたいのです。  萩原先生にお伺いしたいのですが、五十年、五十一年、それからこの五十二年の予算で、予知に関係する予算は、大体先生がこれだけはどうしても欲しいと思ったものは、そのまま予算の中に盛り込まれておるのか、あるいはどうもこれだけは落っこって残念だというようなものがあるのか、その点をひとつ前年に比較して五十二年度の予算のことをちょっとお話し願いたい。
  27. 萩原尊礼

    萩原参考人 五十二年度の予算の内示は、大体において地震予知関係は全部認めていただいております。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 十年前ぐらいに先生にお伺いしたときは、どうもあれもこれもまだ困るのだというお話があったのですが、聞くたびにその方は、先生が大体これをやってみたいと思うものは大分盛り込まれている、こういうふうに考えてよろしいわけですね。
  29. 萩原尊礼

    萩原参考人 大体盛り込まれておるとお考えくだすってよろしいと思いますが、ただ一つ問題は、私たびたび申し上げておりますように、地震予知のうち、長期的な予知に関連いたします測量による日本全国のひずみの調査国土地理院計画いたしております精密測地網、これは一、二等三角点を五年ごとに繰り返すというこの計画が大幅におくれておるわけでございます。これは予算が切られたというのではなくて、予算がいろいろ技術的な問題で提出されていないわけでございまして、これは何とか工夫をして、計画どおりの線にのせたいと考えておるわけでございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 それで長官にちょっとお伺いしますが、前の前田長官が五十一年の十月八日でしたか、ほかでやるやつがなければ、こっちで請け負う以外ないから、したがって、地震予知に関しては思い切った施策をしなければいけないから、それはやります、やりたいというので、大分思い切った決意地震予知総合計画といいますか、そういうものを体制を強化するんだということを言われたんですが、これはそのままいまの大臣も、長官も受け継がれていると思うのですが、その前田長官決意が、いまどんな形であらわれているのでしょう。地震予知総合体制の確立という点で……。
  31. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細なことは局長から説明申し上げさせますが、前長官がこの問題に関しましては非常に熱意を持っておられた。そして私も長官就任以来、同僚議員方々にお目にかかりますと、地震という問題に非常に関心が深いということでございましたので、いまも参考人お答えになられましたとおり、ことしの予算におきましては、最善の努力をしたつもりでございます。もちろん金額といたしましては三十六億強で、決して予算総額からは高くはございませんが、前年対比から申し上げますと、五九%の伸びであるということにおいて、この点、大蔵省も非常に理解を深めていてくれる、かように存じておる次第でございます。  したがいまして、あくまで今日といたしましては、予知技術がまだむずかしい段階でございますから、われわれといたしましても、推進本部中心として各省庁の体系をつくっておる、それによって国民方々の不安を未然に除去し、なおかつ万一のときにも万全の体制を整えたい、こういうことで進めております。もう少し詳細な点でございましたら、局長からお答えさせます。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 では、局長からその後やったことを説明してください。
  33. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、昨年東海地震の問題に端を発しまして、地震に関する国会での御議論も非常に活発に行われました。政府といたしましても十月二十九日に、ただいま大臣お話のございましたように、内閣に地震予知推進本部を設置したわけでございます。この地震予知推進本部におきまして、十一月八日に第一回の会合を開きまして、そこで直ちに当面の東海地方に対します観測を強化するために、科学技術庁に計上されております特別研究促進調整費の中から約二億二千万を支出いたしまして、東海地方における各省庁の観測強化をいたしました。また五十二年度予算につきましても、とりあえず特別研究促進調整費の中に、新たに七億五千万の追加要求をいたしまして、これは来年度政府予算原案に計上されておるところでございます。  また一方、文部省にございます測地学審議会が、わが国におきます地震予知計画を立てておりまして、現在は四十九年度から五十三年度にわたる第三次五カ年計画の進行中でございますけれども、この測地学審議会が昨年十二月十七日に、この第三次計画の見直し建議を出されました。この中で東海地方に対しましては、特に観測を強化いたしますとともに、たとえば気象庁におかれて、地殻変動を連続観測いたしますためのひずみ計といったものを入れまして、二十四時間の連続観測をいたしております。こういった連続観測の計測器の中から異常な現象が出てまいりました場合には、直ちにこれが大地震と結びつく可能性のあるものであるかどうかということの判定が必要でございます。  ただ、こういった地震予知の問題は、御承知のとおり、まだ非常に研究が学問的な段階にございますので、こういったデータの判断というのは、いわゆる平常業務的に行うことができませんので、こういったデータを判定するために、いわゆる一流の地震学者の先生方から成る判定組織が必要であるということが、この見直し建議の中で出されたわけでございます。  したがいまして、いま地震予知推進本部といたしましては、こういった東海地方に対します観測の強化、それから観測されましたデータの収集、さらには、そのデータの判定という、三本柱につきまして鋭意準備をいたしておるところでございまして、この判定組織を含めまして、来年度早々に発足すべく、いま準備が進められておるところでございます。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 それで局長にもう一度重ねて聞きますが、大地震につながるおそれありと判定ができたそのときに、それを伝達する方法だとか、それがすぐに中央防災会議へ行ったとして、中央防災会議が、すぐその地震に対する対応を行政的な面で全部ぴしっといくように、そういうことまでもでき上がりつつありますか。
  35. 園山重道

    園山政府委員 この内閣の地震予知推進本部には、中央防災会議の事務局を担当しておられます国土庁も参加しておられます。現在この判定組織を発足させるためには、当然先生御指摘のように、その判定の結果というものを防災関係各機関、あるいは関係住民に対して、どのように通知するかということが非常に大きな問題でございます。また関係の住民の方々が、こういった判定組織の判定結果を受け取られた場合に、どのようにこれを理解し、どのような対応をすべきかということにつきましても、十分な準備をしなければならないと思っております。したがいまして、現在この推進本部で関係各省の幹事の方々の間におきまして、そういった準備が鋭意進められておるところでございまして、防災関係につきましても、国土庁を中心に鋭意検討が進められておると伺っております。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 もう何年もこのことを言っているのですが、ようやくいま検討している最中なんですね。どのように一体国民に知らせるか、各行政機関は一体どう対応するか、それに対する命令はどうするのかというようなことが一貫して、ぴしっとまだでき上がってないのが現状なんです。いま大きな地震があったら、大きな災害、被害等があったら、残念ながら、いまのところお手上げだということになりますね。
  37. 園山重道

    園山政府委員 私どもも、東海地方におきまして、昨年来の学界等での御論議によりまして、いつ起こるかということを非常に心配いたしておるわけでございますけれども、幸いにしてと申しますか、現在この地震予知関係のデータを集めまして、お互いに情報を交換しながら判断をいたしておられます国土地理院に置かれている地震予知連絡会というのがございまして、学者の方、専門家の方々がお集まりになって検討しておられるわけでございますけれども、この二月に、この地震予知連絡会の総会におかれても、現在切迫したと申しますか、いつ起こるだろうということを明確に示すような証拠が出ていないという御判断を伺っております。  私どもはしたがって、のんびりしておるわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、また先生御指摘のように、こういった情報を国民にどう知らせるか、あるいは防災関係機関がこれに対してどう対応するかといった準備は、許される限り整えて臨むべきだと思っておりますので、一日を争うというよりも、私ども予知推進本部といたしましては、四月にはこういった体制を発足させたいということで準備を進めておるところでございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 萩原先生にお伺いしますが、いまのところは大きな地震につながるような徴候はない、東海ばかりじゃない、地震というのはいつどういうふうに起きるかわかりません。後でまた聞きますが、どっちにしても、どんな種類の地震にしても、そんなでかい地震、被害を及ぼす地震は、いまのところないと断言できる状態ですか。
  39. 萩原尊礼

    萩原参考人 東海地震につきましては、ただいまのところ、私ども長期的前兆と申しておりますが、二、三年前にあらわれるであろう前兆現象は、何もまだつかんでおりません。  ただ、全国的に申しまして、それではどこも大丈夫かと言いますと、そうではございませんで、これは長期的な予知には、全国の地殻のひずみの進行状態をはかるということにかけておるわけでございますが、このひずみをつかむためには、測量を頻繁にやらなければならないわけでございますが、この目的には国土地理院計画しております全国の精密測地網一、二等三角点の測量を五年ごとに繰り返すという計画、これが実は第三次計画で軌道に乗るべきはずのところでございますが、精密測地網に加えて御承知の一等水準測量の五年ごとの繰り返し、これが物価の値上がり、人件費の値上がり等もございまして、予算面ではかなりの量が行われるはずのところが非常におくれておりまして、全国のひずみの状況を把握するという段階には、残念ながらいっておらないのであります。  要するに、網が方々穴だらけという状態で、この点に関しては、まさに薄氷を踏む思いでおるわけでございます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 園山局長に。いま局長が、大きな地震につながるという心配はないという前提だから、いま一生懸命準備している、こう結論的な答弁があったのです。ところが、いま日本地震予知なんというものは、これは予算が三十何億取れました、前の何倍になりました。地震予知さえ確立できれば、地震に対する防災というものはできていくのかというと、どっこい予知すらまだ満足でないし、防災に至っては、地震が起きたときに一体どうするかに至っては、もうその指揮命令系統すら、全責任を負って、どこが一体どういう処置をするかすら決まっていない状況ではだめだというのを何年も前から——私は同じことを繰り返すのはいやだと思うから、そんなこと言わないだけなんで、いま局長が言うように、大きな地震につながるなんということはないということを聞いてから、まあまあ鋭意努力中でございます、一生懸命やっていますというようなことで、中央防災会議だ、推進本部だ、あるいは建議をする一番先に測地審議会があるとか、これが有機的にぴちっと作用しない。それが作用しても、中央防災会議は、一体どの程度各行政機関を動かすような中心的な指揮命令系統を持っているのかすらが決まっていない。そこまでこれから決めるのに、どのくらい時間がかかるかわからないと何年も前から指摘したが、いまだにそれができていないで、いまのように一生懸命にやります、会議をやっています……。  いま萩原先生にお伺いしても、これは確かに三角点の測量、大事でしょう。ひずみ測量は日本全体でやらなければいけないのです。それですら十分に実はやっていない、できないのだ。ですから、いまは東海地震に対しては、二年なり三年前に起きる大きないわゆる事前現象というものはつかんでいないから、まず東海の大地震、遠州灘、駿河湾、こういう地震はまあまあ当分大きく心配はないじゃないかというようなことは考えられても、日本全体からいったら、大きな被害を及ぼす地震がないというようなことを断言するなんということはできないというのは、萩原先生のおっしゃった、ぼくは回答だろうと思うのですよ。そんなときに、いまだにぼくが何年も前から言っているやつが一つも進歩していない。これからあしたも、それから国土庁のときも時間のある限り、今度は地震の起きたときの対策について、いろいろまた久しぶりですから、聞いてみたいと思うのですが、ほとんど手がついていないのが現状だろうと思う。  ところが長官は、地震は大事なことだというので一生懸命にやる、前田長官以上の熱意を示して答弁があったので、非常に徳とするのですが、何と言っても、皆さん自身が現状を何というのですかね、ちょうど日本人のいま実態を見て、経済的な問題でも高度成長時代のあの惰性が何となく残っていて、非常に国際環境が変わっている、日本自体が低成長時代に入って、本当にゼロから出発するような覚悟で、いまわれわれの経済問題に対処しなければいけないという時代になっても、国民全体が、やはりいままでの高成長時代の何かなれが、惰性があって、なかなかそれに即応するような、心機一転して対応できていかないと同じように、いま何となく皆さん自信がないもんだから、大きな被害をいま目の前に見てないもんだから、新潟地震がこの間あった、いや大変だった、伊豆にもあった、しかし、みんな住んじゃいない遠くの方であった。どうやら日がたってくると、これもだんだん忘れてしまって、もし関東大震災に匹敵するあれ以上の地震のあったときの東京なり大都会の被害というものは、想像したくも想像できない。つい何となく、その日その日をのんびりと暮らしていると同じ結果に  私などももうしようがないやと思うほど全然進まない状態にいるわけです。  これをこのまま過ごしていて、いよいよでかいのがやってきました。唐山市じゃないけれども、どうして中国が本当に細かいことを全部われわれに知らせないのか知りませんが、七十万も一遍に死者を出すほどの大きな被害があって、これと同じようなものが来たら大変ですが、関東大震災でそのような被害がなくても、あれだけ大騒ぎしたのに、とにかく唐山市で七十万以上の死者が出て、なおかつ、これも大変なことなんですが、中国の問題なもんですから、余りぴんと来ていない。やがて、いつの日かもし日本に、東京に、あるいは東海地方に大きなものが来たときの被害がないという断言はだれもできない。いつあるかということも言えないが、ないという断言はできないというようなことを考えますと、いまの政治問題の焦眉の急の政治問題は、私は地震対策だというふうに考えてもいいのじゃないかというふうに思う。  そうでなくても環太平洋の一番真ん中の地震の頻発地帯のど真ん中に日本という国はあるのですから、日本というのは地震があるのは常識なんだから、この日本にいて、日本行政の中で地震に対する予知なり、あるいは対策の面の立ちおくれというものは、これは行政の怠慢と言って、いまの政府が一番先に取り上げなければいけない大問題なのに、依然として、これに対しては私がほとんど一年置きくらいに、こうやっていろいろなことをお聞きするのだけれども、一つもこれならよかったというようなものがない。  あるとすれば、萩原先生にお伺いすると、先生多少御遠慮があるのじゃないかと思って、最初には大体これだけやってみたいと思う予算も全部つきましたというようなことをおっしゃったのが本当かなと思いますが、三十億か四十億が一体、本当に洗ってみたら、地震予知の関係でもこんな予算で、いま日本の何カ所にもある危険あるいは強化区域等の調査が満足にできるか、私はもちろんできないと思っているから非常な不安を感じているのですが、どうも関係当局の皆さんの方が少しのんびりし過ぎちゃって、いまだに遅々として進んでいないという状況は、何と言っても、これはがまんができない状態になっているんだが、いま言った、少なくとも予知がはっきりと判定ができます、あるいはまだ判定はできないけれども、予備徴候として、二、三年前に起こるであろう大きな徴候として、こんなものが起きました、いよいよ危ないよと言ったときに、その伝達方法と、それがすぐ行政機関に伝わって住民にそれが伝わり、しっかりした防災体制というものをつくり得るような系統的なぴしっとした責任ある命令系統というものは、いつできそうですか ひとつこれは長官がもちろん入った問題なんでしょうが、中央防災会議、どなたか責任者来ているのですかね。
  41. 山本重三

    ○山本説明員 大都市地域におきまして大地震が発生した場合に、相当の被害が発生することが予想されます。そういう意味で中央防災会議におきましても、防災基本計画に基づきまして、かつて大都市震災対策推進要綱なるものを定めまして、この要綱に基づきました具体的な施策を進めておるところでございます。この要綱では、恒久的には都市の防災化対策事業推進することが基本でありますが、ただいま先生御指摘がありましたように、災害が起きた場合の緊急な対応ができる体制、これを当面早急に整備する必要があるということで、現在、この要綱に基づきました内容を大都市震災対策連絡会議の中で六つの分科会を設けまして検討を進めているところでございます。  特に、いま御指摘ございましたような即応できる体制整備する必要があるということで、過去二年にわたりまして関係省庁が集まりまして、緊急災害対策本部の設置要領あるいは情報、通信の伝達計画、広報計画、さらには緊急物資の調達あるいはこの輸送計画なるものを煮詰めてまいりまして、事務当局ではほぼ成案を得ております。これを近い将来に中央防災会議にかけまして、きちっとした計画をつくりたいということで、いま準備を進めておるところでございます。  また私どもも、国土庁が発足しまして二年有余を経たわけですが、従来、過去の風水害等の大災害に追われまして、震災対策が事務的にどうしてもおくれがちであるということを憂慮いたしまして、昭和五十二年度の予算におきまして、震災対策課を独立に設置していただくことを認めていただいております。こういう形でわれわれの検討体制も順次整えまして、大震災害が起こりますのに対応する体制というものを順次詰めてまいりたい、かように考えております。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 いまおっしゃったようなことは、ほとんど私は知っているのです、やっていることも。私の言うのは、いつごろかということです。こんなにせっぱ詰まっているのに、やってます、これもやっている、会議やります、こういう審議会でこれもやります、同じことをいつまでもやっている。まあ、やらなきゃいけないから、やってもらいたいんだが、だから拙速でいいから、命令系統の判定ができた、受けた、それがすぐ中央防災会議にかかる、行政機関へぱっといって、それが全国民に伝わり、国民的な規模において防災対策ができるというような指揮命令系統がぴしっとできるのは、いつごろかと聞いているんです。それだけ答えてください。いつまでたっても、何年も同じことを言っているんだから。
  43. 山本重三

    ○山本説明員 いままで検討した内容につきまして具体的に決定しますのに、法律上の問題その他いろいろ問題がございましたので、私どもも、まだ現段階で決定に至っておらない状況でございますが、この問題については早急に決定を見なきゃいけないということを考えておりますので、できれば、これらの計画につきましては、来年度に入りまして早い機会にできたものから決定してまいりたい、かように考えております。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 早い機会にできたものから実施するというんじゃなくて、部分的なことを言っているんじゃなくて、命令系統というものが、私が言ったようなものがぴちっとでき上がって実施できるというのは、完全なものはできなくてもいいから、拙速主義でもいいから、一応のめどもなきゃだめじゃないかという意味でお伺いしているのですが、いつごろになったら命令系統ができますか、もう一遍答えてください。それが一つ。  それから、たとえば東海地震等が一応予想されているのですが、しかし、ないにこしたことはないのですが、あった場合に、東京が相当の打撃を受けるだろうことも予想されているんですね。その場合に、中央防災会議中心につくっていく、いわゆる指揮命令系統というものは、東京に置いたままやろうとなさっているのか、東京からどこかへ移動をする何かを設定して、そこでやろうとしているのか。そんなことも論議していますかどうか、二つ答えてください。  それから大臣にも。いまお聞きになったような状態で、私、これは何年もやっているんですよ。だから、もう言うのがいやになっちゃっているんです。いつも同じことを聞いているんです。一つも進歩しない。進歩しないと言うと語弊があるけれども、まあナメクジがはったぐらいにはいっているんですね。しかし、とてもじゃないが、地震があっても国民が安心して政府を頼って、政府の指示どおりに動けばよろしいといったような信頼感を持てるなどというような状況になっていない。こういう状況をこのまま放置していいわけは一つもない。いまお答えをいただきますが、何年ごろにはこうなります、指揮命令系統がぴちっと生きて動くというそのめどを聞きますから、その後で長官、感想を述べてください。
  45. 山本重三

    ○山本説明員 私ども事務当局でございますので、いつという形で確定的にお答えできませんが、私としては、新年度早々にでも震災対策課ができて体制が整えば、早い時期にそういった体制についての整備は進めていきたいと思います。  なお、緊急災害対策本部を設置する場合におきましては、当然現地においても、地方公共団体に対応して直接臨機応変な体制をとる必要がございます。そういう意味で、その緊急災害対策本部の設置要領の中においては、当然現地対策本部の設置もあわせて考えております。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 先に大臣の前にちょっと。現地対策本部じゃないんだ、ぼくの言うのは。中央における総合的な指揮命令系統の機関というものが東京にあっちゃ危ないよと、ぼくは言っているんです。したがって、東京のを移して現地即応の対策を立てるんじゃないんです。日本全体に対する指揮命令をやる、その場所が東京でいいかどうかを考えている。予知連絡会その他、萩原先生と相談して、東京じゃなくて違った場所で最も安全だというところ、ここは大丈夫だというところへ、そういうものを設置することを論議しておかなければ、東海地震などがあったときに、東京が有機的に機能すると考えることが間違いだ。だから、そういうことを検討しているかどうかを答えてもらいたい。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員長 この際、山本説明員に明快な答弁を求めます。
  48. 山本重三

    ○山本説明員 ただいま御指摘の点については、私どもは緊急災害対策本部は霞が関ないしは国土庁に設置することを予定しておりまして、他に設置する考えは持っておりません。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 これは大臣にお伺いするのだけれども、まあ地震は起きてみなければわからないのですが、いまのように霞が関だ、国土庁だというところに、中央における全国的な指揮命令系統の機関を置くという考えは、私は間違いだと思いますよ。萩原先生にお聞きしたって、まあ、ずばりお答えになるかどうか知りませんが、もし最悪の場合、東海地方にいま予想をされているマグニチュード八・二だとか、あるいは七・六だとかいうものが起きたときに、東京は少なくとも震度五ないし六、烈震程度に揺れるであろう。そういうものが起きたときに東京がどの程度の被害を受けるか。しかも、いまの状態だったら、パニック状態が起きて大変なことになることは間違いないし、そんなことは、もうとっくに言われているんです。にもかかわらず、まだ霞が関に置きます、国土庁に置きます、こんなことでいいかどうかも含めて長官、答えてください。
  50. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一々ごもっともな御指摘だろうと思います。特に、先ほど参考人から述べられました意見、私も直接聞いたわけでございますが、東海地震に関しましては、先ほど局長も御報告をしたとおりに切迫した予兆がないということで、あるいはそれに対処する時間的余裕がまだあるかもしれませんが、全国的には、とてもとてもそんな余裕がないんだ、薄氷を踏むがごとしと言われた参考人の御意見、長年のオーソリティーであるだけに、私も本当に耳を傾けまして、政府といたしましても、いま原委員が御指摘の、そうした体制を速やかに整えなくてはならないという思いを一層強くいたしたわけでございます。  特に中央防災会議は、外務大臣と行管庁長官を除く大臣全員がそのメンバーでございますから、そうした意味合いにおきましても——確かに御指摘のとおり万一東京で大災害が起こった場合に、もう自動車だけから考えましても、ガソリンタンクが並んでおるような状態である、あるいは東京港がやられたらどうなるか、それを一体全体だれが排除するんだというふうな問題、自衛隊はせっかく装備を持っておっても、だれがどこへ運搬するんだというふうな問題、私たちも折々寄りますると、そういう話もいたしておるわけでございますが、今後御指摘の面に関しましては政府といたしましても、私といたしましても、国民方々に十二分に安心をしていただけるような体制を速やかに整えていきたい、かように存じております。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで長官、いまの第二の問題の、やはり、ですから、東京に置くということも大事です。これで十分にやれるような体制も必要です。だが、東京だけに頼っては危険だというので、少なくとも中央防災会議は、東京以外のより安全と思われるところに、こういった指揮命令系統機関を設置するんだということも検討するようにしていただかなければいけないと思いますが、その点、中央防災会議検討していただけるか、はっきり言ってもらいたい。
  52. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 重要な御指摘でございますから、私から、そうした旨も発言いたしまして、検討するべく努力したいと思います。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 結構です。  それから末広気象庁震課長にちょっとお伺いしたいのですが、去年の十月に、静岡県の御前崎を中心調査をした結果、ひずみ計が非常に異常な数値を示したというので、その後これがどういう原因で、どういう影響があるかをお調べになったはずですが、その経過をちょっと……。
  54. 末広重二

    末広説明員 御説明申し上げます。  ただいま御指摘の、御前崎におきます埋め込み式ひずみ計は、その後も圧縮のひずみをずっと記録し続けております。私どもは、万一測器が壊れているとか、あるいは目盛りの読み方を間違えていたとかいうことでは、まことに相済まぬことでありますので、そのチェックは十二分にいたしましたが、やはり測器そのものの機能は正しいと判断せざるを得ないわけでございます。  ただ問題は、御前崎の一点だけでございまして、この測器がどの程度の広がりのひずみを代表しているかということに大変問題がございますので、科学技術庁の方にお願いいたしまして、先ほど御指摘の特別研究調整費を支出していただきまして、御前崎のごく近傍の浜岡と榛原に、すでに二本、同様の測器を埋め込みました。これが約一週間後に東京へ伝送が開始されるわけでございまして、この三本の器械を並列して検討することによりまして、この付近のひずみが広がりがあるものか、はたまた非常に局所的なものであるかが判明すると存じます。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでにお伺いするのですが、いままでの一点だけの御前崎の測量を通じて、東海地方の地震一つの不安材料だというような感じ、あるいはそういう前提はお持ちになっていますか。全然関係ない、こういうふうに考えておりますか。
  56. 末広重二

    末広説明員 関係ないとは思っておりません。やはり広い意味での一つの不安材料であると思っております。ただ、それがどの程度の不安を示しているかということをさらに明らかにするために急遽二本の追加をしたわけでございます。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 三カ所になって、一週間後にそれが働いてくれるわけですが、その三カ所で今度は測量をきちっとやったときに、それによって東海地震等の不安材料だと考えておられることが、やはりそうだとか、その関係がないとかというような判定ができそうなのは、いつごろになるのですか。一週間後からこの測量個所二カ所全部が動きますね。動いた後で、それがある程度の答えを出すような、そういう観測のできるのは、いつごろになりますか。
  58. 末広重二

    末広説明員 御前崎を含めまして東海五カ所は、すでに二十四時間の常時監視を現在もいたしておりますし、さらに一週間後にこの二本が加わりますと、全部で七カ所からのテレメーターされた記録によりまして、私ども二十四時間監視ができることになります。先ほど判定組織のお話が科技庁の方からございましたが、この組織さえできれば、すぐにでも異変のあった場合には、しかるべき権威者の方に、果たしてどの程度これが地震と結びつくものであるかを判定していただけるようになると思います。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 それから文部省にちょっとお伺いしますが、いつだったか日にちは忘れましたが、去年遅い時期に、清水沖、御前崎沖の線を結ぶところから相当大きなダイナマイト何百キロかを海中に敷設して、その爆破を通じてある程度東海地震に対する知識を得ようとしてやろうという計画があったのですが、地元の反対等もあって、なかなかできなかったらしいのですけれども、これは中断ですか、おやりになるのですか。
  60. 植木浩

    ○植木説明員 残念ながら今年度は、地元の御了解を完全に得るに至りませんでしたので中止をいたしましたけれども、今後ともぜひとも地元の御了解を得てやりたい、このように大学の関係者の方は申しておりますので、私どもとしても、ぜひそのように進みたい、このように考えております。
  61. 原茂

    ○原(茂)委員 見通しはどうです。
  62. 植木浩

    ○植木説明員 五十二年度のことになりますけれども、私ども静岡県の方ともいろいろと話し合いをいたしておりますが、まだ完全な見通しを得るというところに残念ながら至っておりませんけれども、学術上も重要でございますし、また静岡県を含めて、地震予知の基礎研究推進、さらには地震予知推進ということにも非常にこれは役に立つことではないかと学問的には考えておりますので、ぜひとも私どもはこれを進めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  63. 原茂

    ○原(茂)委員 なるほど、地元の反対ではまだ見通しが立たないようですが、やはり学術上考え得る最大のものは何とかして早急にやる必要があると思うので、努力をして、やってみていただきたいと思うのです。これは漁民の反対でしょうが、補償問題等も含めて、ひとつ鋭意努力をしていただきたいと思うのです。  それから、これは萩原先生にお伺いするのですが、東海地震に対して口火を切られたのは石橋先生だったのですが、これに対して、多くの学者と言うよりは、代表的には二人ぐらいの学者からこの説に対して、いや根拠がない、そうは思わないといった発表がございましたね。御存じだと思いますが、坪川先生あるいは東海大学の杉山先生あたりですね。これは恐らく予知連絡会でも検討なさったと思うのですが、いまだに石橋説を中心検討をしていくという態度でおいでになるのか、坪川、杉山両先生の言うような、全然立場が違っていますから、比較しても無理じゃないかと私は素人で思うのですが、こういう先生方の御意見というものは相当参考になるので、それもまた新たに検討を加えて、東海地震に対して今後違った研究の仕方に踏み出すのだとか、その点ひとつ、どうせ勉強なさっておいでになると思いますから、ざっくばらんにひとつお答えをいただきたい。
  64. 萩原尊礼

    萩原参考人 東海地震につきましては、まず安政年間に起こりました非常に大きな被害をもたらした東海地震、あのような地震が再び起こる可能性があるかという可能性の問題と、もし可能性があるとしたら、それが、それではいつ起こるのかという起こる時期の問題に分けられると思いますが、東海地震の可能性につきましては、地震予知連絡会ができましたときに、あるのではないかということから、あの地域を特定地域にいたしまして、さらに測量等からひずみの蓄積がかなりあるということ、それから東海の沖合いに非常にはっきりした地震活動の空白部があるということなどで、あの地域を観測の強化地域にいたして着々と観測は強化されつつあったのでございますが、昨年になりまして、全く偶然に非常に貴重な古文書が発見されまして、安政年間の地震は、破壊が駿河湾の奥にまで及んだということがはっきりいたしたのでございます。  それに基づきまして、石橋さんはこういうような機構で起こったのであろうというようなスペキュレーションをなさったわけですが、東海地震につきましては、非常にたくさんの研究者がいろいろと調査研究をしておるわけでございまして、たまたま石橋さんの研究が社会的には非常に大きく報道され、取り上げられたのでございますが、石橋さんだけでなしに、非常にたくさんの方が研究をせられておるわけでございます。こういった多くの方の研究を踏まえまして、地震予知連絡会としては一つの統一見解として、起こる可能性はある、そして起こる時期については、いま現在のところ、切迫した前兆は発見されていないというような見解を発表いたしたわけでございます。  ただいま原先生のおっしゃった坪川先生の説、それから杉山先生の説、こういうお考えは、このお二人のほかに、そういう考えなり、あるいは触感を持っていらっしゃる方はまだ何人もおられると思います。  これは突き詰めて要約して申しますと、いずれも東南海地震の可能性はお認めになるわけですが、これは過去において何回も繰り返して起こっているわけですから、いずれの日にかは起こるであろう、これはどなたが考えても常識的にそうなるわけでございますが、それにしても、その間隔は過去において百年ないし百五十年であった、それで昭和十九年に起こりました東南海地震によって一応厄済みであって、したがって、昭和十九年から大体百年ぐらい次の東海地震までもつという考えでございます。これに対して、駿河湾一帯には、ひずみが相当蓄積されておるし、昭和十九年の東南海地震のときには、御前崎より西の方だけに地殻変動が起こった、つまり御前崎より西の方だけが、ひずみが解放されて、駿河湾を含む遠州灘東方の部分では、ひずみが相当残っている、したがって、次の百年を待たずにそれが解放される、つまりおそれがある、そういう考えがございます。そういうわけで、あと百年ぐらいもつであろうというのが坪川先生たちのお考えでありまして、いや、それよりももっと早く駿河湾一帯で破壊が起こるのではないかという考えと二つあるわけでございます。  ただ、いずれが正しいかということは、現在決定的に申し上げることはできないわけでございますが、これは今後、現在計画されております観測を続けることによって、できるだけ早い時期にはっきりさせたいと思っておるわけでございます。
  65. 原茂

    ○原(茂)委員 先生方の研究したいろいろな説について、学者先生研究グループである予知連絡会が検討されていることに間違いがないと思いますが、私は、いまの話を聞いて少し安心したのですが、地震が起きそうだというときに、百年は大丈夫だというのと、間違っていても、いや近く起きそうだというのがあったときには、近く起きそうな学説を中心に、ひとつ十分な検討をしていただいて、震災対策等中央防災会議等における対策もその近く起きそうなものを設定して、考えていただくように、これは個人的に私はぜひお願いしておきたいと思う。ないと思っていてあったら、えらいことになってしまうのですから、いまのお話をお聞きしまして、まだどちらという判定がついていないようですし、またつけ得る性質のものではないと思いますが、どうぞ近くありそうな方の学説、研究に重点を置いた対応をしていただくように、ぜひお願いをしたいと思うのです。  それからもう一つ萩原先生にお伺いするのですが、去年の八月に日本に来ましたコロンビア大学のショルツ博士が一月にお帰りになったはずですが、帰る間際に、第二次関東大震災が、もしあるとすれば第一次から二百年後だ、河角先生の六十九年説を全然無視した二百年後だ、約半年にわたる研究の結果、そういうことを言い残したのですが、これに対してはどうお思いになりましょうか。  第一次関東大震災から二百年後と言うと、まだ百何十年後になってしまうのです。第二次関東大震災が起きるとすれば、二百年後だと言ったショルツさんの岩石膨張説を中心にしたその考え方も、日本の学者の多くの人の支持を得ているという現状を見ますと、どうもショルツ博士がいいかげんに勘で言ったのではない。ショルツ博士がとにかく半年という短い期間ではあるけれども、研究なさったその結果、第二次関東大震災は二百年後だと言われたことは、これも重大な問題として予知連絡会等では論議をされたと思うのですが、その結果はどうなったのか、それをお聞かせいただきたい。
  66. 萩原尊礼

    萩原参考人 関東地震の問題につきましては、日本の優秀な学者がたくさん研究しておりまして、あえてショルツさんの力をかりるまでもないわけなんでございまして、ショルツさんは日本でいろいろな方の意見をお聞きになって、彼なりの意見をそう言ったというわけでございます。ただ現在、特に地質学的あるいは地形学的な研究から、つまり過去に起こった関東大地震がまた起こりますと、土地が隆起するわけでございますが、そういうものを根拠にして、いろいろと過去における関東地震の繰り返しの間隔といいますか、そういうものを研究されておる学者の方々がおるわけでございます。つまり、活断層と申しますか、活構造の研究家でございます。  こういう方々の御意見は、そう頻繁に起こるものではない。たとえば元禄に起こりまして、大正に起こりましたが、元禄の方はむしろ南の方がよけい破壊して、そのときの破壊は相模湾の奥の方までは及ばなかった。つまり、元緑地震と関東地震一つのペアである。そして、そういうものが再び起こるには、まだ非常に間隔がある。千年ですか二千年ですか、そういった程度の間隔がある。そういう考えを持っておられる学者がかなりおります。  そういうわけで、昔考えられておりましたように、関東地震は百年ごとに来るんだという考えだけではなくなってきております。しかし、私どもといたしましては、そういう地質学的その他からのスペキュレーションだけに頼らずに、観測を今後続けていて、実際に相模湾の周辺のひずみがこのくらいになった、あるいはひずみの進行速度がこうなったから、もうやがて危険な日が来るのではないか、そういうように、観測に重点を置いて判断をするように進めていきたいと思っているわけでございます。
  67. 原茂

    ○原(茂)委員 そうは言っても、ショルツ博士は、真下型地震の場合だったら、もう全然わかりませんよ、こう言っていたのですから、なお真下型地震の問題は、その可能性云々という研究もなさっておいでになると思いますが、二百年後だなんてどうかなと、素人考えで感じておりましたが、いまのお話を聞くと、先生もまともに研究なさっていただいているようですから、いつの日か結論を出していただきたい。  先生に、最後にちょっとお伺いしたいのは、例のアメリカ資源探査衛星アーツが撮りました写真の中に、千葉県の佐原−松戸−昭島市へ通ずる百二十キロの活断層が明瞭に示してある。これはかつて明治二十八年に利根川の大地震がありました。それから、そのずっと前に江戸川の大地震がありました。これと同じ震源の層、百二十キロというのがあるわけですから、東京に大地震が起こるのはショルツ博士の言っている二百年後だ、河角先生の六十九年説だ、あるいは東海地方の場合、大きな影響とは一体どの程度だというほかに、いまの科学衛星のアーツが見た百二十キロにわたる佐原−松戸−昭島のあの線の活断層というものが、過去の利根川地震や江戸川地震のあの例から見まして、東京においては相当警戒をして検査をしておかなければいけない一つにしなければいけないと思いますが、これは素人でわかりませんが、ただあの活断層を見たときに、その前にどのくらいの地震が起きているかというと、いま言ったような相当大きなものだった、被害もあったということになると、それと同じ年代からいっても、そろそろ危険があるのじゃないかという感じがしますが、こんなことは予知連絡会では取り上げておいでになるのか、あるいはこの点は大丈夫だという結論になっているのか、それをひとつお伺いしたい。
  68. 萩原尊礼

    萩原参考人 荒川沿いに活断層があるのではないかという点につきましては、現在いろいろな観点から調査をいたしております。恐らく関東地方は、厚い堆積物に覆われておるためにわかりませんけれども、非常にたくさんの活断層があるのではないかと思っております。特に荒川沿いだけではございませんで、そのほか幾つかの活断層があるものと思っております。これは直下地震といいますか、ローカルな災害を起こす地震が関東地方には大いに考えられるわけでございまして、そういうことを目標にした調査研究を大いに進めていこうと思っているわけでございます。
  69. 原茂

    ○原(茂)委員 これ以上時間がありませんので残念ですが、ショルツさんの真下型地震は別だよと言った真下型地震、活断層等を中心に相当真剣に調べておいていただかないと、特に東京というのは、大きな災害を受けますと全国的な行政麻痺を起こす大変な危険があるわけです。したがって、いま言った活断層等をもうちょっと精細にお調べをいただいて、ただ東海だ東海だと言って、余りそっちに目を向けないように——そんなことはないだろうと思いますが、この真下型地震というものを真剣に、あっちからもこっちからも東京中心にとらえていただくような研究を、予知連絡会の先生方にもぜひお願いしたいと思います。  その面の予算について本当はお伺いしたかったのですが、時間がありませんから、あと末広恭先生わざわざおいでいただきましたので、お伺いしたいのです。  先生はナマズというようなものを中心地震予知に対する相当の研さんをお積みになったわけでありますが、ナマズを地震予知とかかわり合わせて研究をなさる動機というものは一体何か。  それから二つ目に、ナマズによる地震予知というものは、地震には大中小ありますが、そういうことも含めて、先生研究された結果、こういうものは可能だ、可能でないというのをお伺いしたい。  それから三つ目に、これは文部省から、たしか昨年度か一昨年緊急の予算がついて、二百万かそこらで研究の足しにされたのだろうと思いますが、魚を通じて地震予知というものをやっていくためには、予算の面で、まだこういったものにこういった程度の予算があれば、こういう研究をやってみたいのだがというようなことがおありかどうか。この三つに分けて、大変恐縮ですが、時間がありませんので、先生からも急いでお答えをいただきたい。
  70. 末広恭雄

    末広参考人 末広でございます。いまの御質問に対しまして、ごく手短にお答えしたいと思います。  私の研究は別に地震予知なんという大げさなものではないと自分で思っております。というのは、地震の方では、ちゃんと地震のエキスパートがおいでなんですから、私が出しゃばる必要はちっともないのですけれども、実は私は、昭和八年、三陸のあの大津波を起こした地震以降、地震ごとに魚が異常生態をとるということに興味を感じまして、ただその事実を突っ込んで集めてきたというにすぎないような次第でございます。  それで、特にナマズがここに登場する必要はないのですけれども、昔からナマズと地震と言われておりますから、わかりやすくするために、ナマズというものを旗頭に出してやっているような次第でございまして、現在では、さっきお話しした三陸地震のときの深海魚の異常生態、それは地震研究所のブレティンの特別号に報告してございますけれども、とにかくそれ以後新潟の地震、いろいろな地震ごとに魚が異常生態を示すということは、どうしてもはっきり申し上げたいと思います。  それでは、どのくらいのパーセンテージで起こるのかという御質問が当然起こると思いますけれども、これはごく大ざっぱな計算でございますけれども、九〇%は地震の前に、もう少し正確に言えば、一週間くらい前から魚が異常生態を示すという例が余りにも多いという現状でございます。ところが、今度は非常に悲しいかな、その異常生態があったからといって地震が来るかどうか、それはそう簡単にいかないのです。  というのは、魚が地震の前の何の現象かわかりません、いま少しわかりかかってきておるのですけれども、何の現象かわからない、いわゆる素人から言わせれば、前駆現象とも言うべきいろいろな変化に対しての興奮の仕方が違うというところが目標ではないかと思います。しかし、魚が興奮するというのは何も地震の前ばかり興奮するのではなくて、敵が来ても興奮します。あるいはそのほか、台風が迫っても興奮するというようなことは、しばしば見られるものでありますので、これはいけない、データを集めるのは結構だし、そのデータが非常にたくさん集まったのも結構でございますけれども、それを、なおもう少し科学的に突っ込んで見てはどうかと考えたわけでございます。  実は、私、東大に在職中、魚の感覚生理学を担当しておりました関係で、魚の感覚というものが非常に鋭くて、たとえば人間に見えない紫外線のある波長のものが簡単にわかる。それから、人間にわからない絶対音感があるとか、その感覚においては人間に比べまして大変すぐれた存在であるというところから、今度は魚の神経の興奮のぐあいを調べて、こういうような興奮をした場合はこうだというところに持っていきたいと考え、それをさらに地震とも結びつけたいと考えたわけです。  どうして地震と結びつけたいと考えたかと申しますと、かつて東北大学名誉教授の畑井新喜司先生が、ナマズを使って地震の前の地電流の関係を調べられて、大変おもしろい結果を出しておられるので、それをもう少し詳しくやってみようというので、詳しくやるには魚の脳波、それから側線——魚の横に神経がございますが、それが非常に敏感ですから、その側線波、それから参考として心電図をとって、それによって魚の興奮度をはかり、こういった興奮の仕方、たとえば、ちょっとむずかしくなるのですけれども、その放電を増幅いたしまして、それをオシロスコープにかけますと、オシログラフに出るいろいろな波の形があるのですが、その波の形が、いろいろな外部の災害に対して反応の仕方が違うということは、前から気がついておったことですが、それを突き詰めて、これが地震と結びつく波形であるというところまで、これは一つの夢でございますけれども、持っていきたいというふうに考えておったわけです。  そこに、たまたま災害対策委員会で、七十五国会だと思いますけれども、そのときにある代議士さんから御発言がありまして、それがさらに文部省の方に伝わりまして、文部省から総合科学研究費をおくればせながら、いただくというような結果になりまして、それによりまして、直ちに、いただいた翌日から実験を始めました。  これは、ちょっと遠くから見えないかもしれませんが、これがナマズの脳を切り開いたところであります。ナマズの脳のいろいろな部分がございますけれども、どの部分が一番感じやすいかは、いま検討中でございますけれども、この脳を開きまして、いわゆる脳波を見るわけです。  その見方といたしましては、ここにさっきも申しましたように増幅器と、それからオシロスコープがございまして、それによっていま言った神経の興奮の波形、それを見ようというわけです。これはすでに、サケがふるさとの川をよく覚えておりまして、ふるさとの川の水をかけると神経が非常に興奮することは、よく波形としてとらえられておりますけれども、それと同じように、ナマズの場合でも、ある日変な変化を起こすようなことが、そのオシロスコープによって簡単にとらえられるということが現在わかっておりまして、現在もう毎日のように、私のマリンパークという水族館ですが、そこの研究室で研究を続けておりますし、なお、班員といたしましては、いま日本のそちらの感覚生理学のエキスパートを集めて、文部省のその研究費を使わしていただいて研究を進めつつあるというわけです。  さっき、今後こうしたら望ましいというようなことの御質問がありましたので、最後にそれをお答えいたしますと、いまのところでは、いまの研究は大なり小なりやれますから、とにかくやってみようというところが一つと、それからその研究だけでは足りませんから、さらにいろいろの、たとえば日本動物園水族館協会という協会がございますので、そこで私も総会で発言したことがあるのですけれども、みんなで力を合わせて、動物なり魚なりの異常を見つけたら、それをちゃんとチェックしておいて、それをどこかに送ってまとめていただいて、そして総合的に扱っていただこう。でも、あくまでこれは地震学に対しては、一つ参考資料として提出するという程度で十分結構だと思うのです。それで、こういう変なことが魚や動物にございましたよということを報告いたしまして、正規の地震学者のやられる研究一つの資料にしていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  71. 原茂

    ○原(茂)委員 中国では御存じのように動物、魚を含めて非常に住民が協力して——唐山市なんかでは予知できなかったから、予知と直接関係あるかどうか知りませんが、地震対策としては相当成果を上げたと伝えられていた。その手段の一つに、動物等、いま言った非常な異常があったときに、住民がそれを記録しておいては一カ所に集めるということをやったわけですが、おっしゃるとおり貴重な研究だと思いますが、いまの脳波、側線等をオシログラフにとってというようなことも、もうすでにおやりになっていると思うのですが、私が三つ目に言いましたように、今後予算の面で、五十一年度は緊急に二百万だかもらったそうですが、あとまだ予算的にこういうものがあれば、ナマズの養殖の問題もあり、あるいはそういった機械的な研究もやれるという意味で、予算なんかに対して何か御希望はありませんか。それが一つ。  もう一つは、いまちょっとおっしゃったのですが、民間に対して、いま言った記録を集めるというその対象、民間の対象をどういうところへ求めたらいいのでしょうか。たとえば学校の生徒あるいはどこというようなことがあれば、そういったことも教育の一助として、学校でやるなら学校に協力を求めるということもできると思うのですが、民間からいろいろ異常があったら知らせてもらいたいという、その民間の対象をどんなところにお考えになったらいいと思いますか。  その二点、最後にちょっと。
  72. 末広恭雄

    末広参考人 最初は予算の面ですが、私は、いまこういうような身分でございますし、別に政治家でもございませんので、なかなかいい予算の案はもちろん出ないような現状でございます。さっきもちょっと一言申しましたけれども、研究をとにかく続けるだけのお金があるということは非常に必要なんですが、今後はわれわれごく少数のそういったグループじゃなくて、たとえば科学技術庁とか環境庁あるいは文部省、そういうところでセンターをつくっていただいて、そういうところで、いままで開拓し得たその結果というものを大きく政治的にまとめていただいて、そして判定していただく。もちろん気象庁中心になるわけですけれども、そういうような気持ちで考えております。  それから、いま現在いろいろな資料を集めるのはどうしたらいいかという半ば助言もいただいたわけですけれども、現在は私の知っている漁業組合あるいは小中学校のいわゆる理科班といったようなものに呼びかけまして、好意を持ってくれているところだけに頼んで資料はかなり集まってはおります。おりますけれども、きちんとしたものでなくて、もちろん小学生の記録では、ちょっと怪しいという点も多々ございますから、そういう制度もひとつつくっていただいて、気象庁中心になるところを外部から援護射撃をするというような体系をつくっていただきたいというふうにお願いするわけです。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。  最後に、長官はいままでのやりとりをお聞きになったのですが、地震予知に対して、同時にまた防災問題も含めて、いまの現状では困ると思いますので、もう一度長官から、これに対して、いままでのやりとりを聞いた範囲で決意のほどをお聞きして終わりたいと思います。
  74. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私の使命といたしましては、今日ただいま地震予知推進本部本部長としての使命がございます。先ほど来いろいろと質疑応答の間に重大な御指摘もございました。そうしたことを十二分に踏まえまして、やはり効果あらしめるべく最大の努力をいたしたいと存じます。  なお防災会議に関しましても、先ほど御指摘の面に関しましては、率直な私の感想を申し上げましたので、その面におきましても、われわれといたしましてもメンバーの一員といたしまして十二分に本日の御発言の内容を検討して、そして国民のためになる防災会議推進を、なお一層図ってまいりたい、かように存じます。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員長 参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会の審査に御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞ御退席ください。  次に、馬場猪太郎君。
  77. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 使用済み核燃料の再処理問題について、きょうは、ちょうど福田総理がアメリカで交渉なさっておりますし、そしてまた、せんだってから美浜の発電所をめぐってのいろいろトラブルもございました。こういった資源の乏しい、エネルギーの乏しいわが国にとって原子力の平和利用というのは非常に重要な問題だということは、早くから認識されておりますけれども、この原子力の平和利用に関して、「むつ」問題は非常に大きな影響を持っておると思います。  「むつ」が四十九年九月一日から、その実験中に放射線の漏洩があるということで定係港に係留されてから、もうすでに二年半たちますし、来月十四日に、この「むつ」問題で起こりました、むつ市の大湊港における四者協定の約束のときが来ているわけなんです。ですから、この約束を果たすか果たさないかということは、原子力行政に関する信頼をかち取るかどうかということにもなると思いますし、せんだっての予算委員会では、長崎県の三月二十三日の研究委員会の結果を待って、この方向は決めるのだという長官の御答弁があったわけですが、その後の経過をお教えいただきたいと思います。
  78. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおり四者協定は二年半前に結ばれまして、本年四月十四日をもって「むつ」の定係港を撤去する、これが一つの大きな条件になっております。はなはだ残念でございますが、撤去をいたすに際しましては、御承知のとおり原子力船は六十日以前に入港届を出さなければならないということになっておりますから、事実四月十六日に出発しようとすれば、佐世保に六十日前に入るという通知をするわけでございます。しかしながら六十日を逆算いたしますと、二月十四日でございますから、この時点におきましては、まだ肝心かなめの長崎県において受け入れていただくかどうか回答がなされておらない状況であります。そして知事の諮問機関である研究委員会がこの問題をいろいろと議論をされておる最中でございました。したがいまして、受け入れ先がまだ結論を出しておられないときに、事業団といたしましても六十日前の入港届を出すということは、いわば不謹慎な話であるというふうなことで、出すのをはばかっておるというのが今日の状況でございます。  そういう観点からまいりますと、実は、四月十四日そのもの自体は若干おくれるかもわかりませんということを、先般青森県の知事並びに市長さん、そして漁連の三者に、政府といたしましても正式に申し上げたわけでございます。いよいよその三月二十三日が明日やってまいります。政府の関係機関はいろいろございますが、私がその窓口になっておりますから、肝心かなめの受け入れをしていただく長崎並びに佐世保市に対しましては、しょっちゅう緊密な連絡をとらさせていただいておりますが、おおむね明日その結論が出るであろう、これは公開でやられておりまするから、その結論が出るであろうというふうに承っておるところであります。
  79. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 「むつ」における四者協定のうちで、まず六カ月以内に新走係港を決めるということは、もうすでに約束を破られておりますね。そしてまた、いま言われた六十日前の佐世保入港の予告ももうすでに過ぎて、これもまた約束を破っておるということになる。したがって、若干のおくれはあるにしても、はっきりした見通しがついてこそ、初めて原子力行政に対する、科学技術庁に対する信頼というものが戻ってくるわけなのですが、いまの見通しでは、どういうことなのでしょうか。研究委員会であした結論が出るけれども、すでに事務当局の方においては、ある程度今日までの研究委員会の内容についても御承知だと思うのです。どのような見通しをつけておられるのか。
  80. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 おおむね一月前に研究委員会におきましては、公開の席上でそれぞれの委員の見解が述べられた。そうした内容に関しましては、私は詳細に承っております。しかし、あすその最終的な結論を出される委員会があるわけでして、それを踏まえて長崎の知事みずからも、どういうふうに決断されるか、はかりかねる面がまだあるかもしれません。あるいは同時に、知事がそういう決断をした場合に、佐世保の市長がどういうふうな決断をなさるか、また双方ともにそれぞれ議会がございますから、その議会がそれに対してどういうふうな判断をするであろうか、いろいろな問題に関しまして知事も市長もいろいろと苦労なさっていただいておるのじゃないか、かように考えております。  したがいまして、その方々の意思がまだ表明されておりませんときに、私が、情報によればこうなるだろう、ああなるだろうというふうなことは、いささか横着に過ぎる話ではないであろうか、こう思いますので、本日ただいまといたしましては、どういう結論になりますか、そのことに関しましては、私は推測もいたしかねる状態でございます。  ただ、せっかく受け入れていただくためには、やはり整々粛々と入りたいものでございまするから、恐らく市長さんもまた知事さんも、県民の心を心として行政をなさっておるお方でございましょうから、そういうふうなお考え方の結論を出されるのではなかろうか。さすれば、そういう結論に対しましては、私みずから、もちろん政府みずからがその結論を尊重しなくちゃならない、こういう立場で臨んでおるところであります。
  81. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 研究会があした結論を出されるのだから、こちらとしては、まだ考え方を明らかにすることはできないということなんですが、あした結論出てから、その後の態度を決めるということになると、相当また長期のおくれを見るということは必至だと思います。したがって、当然事務当局ともいろいろと、いい返事が来た場合、悪い返事が来た場合等々も考えていらっしゃると思うのです。  その研究会の中で、いま先ほど長官言われた公開ですから、その中に修理港としてということをうたっておるのですが、その後、この十五日でしたか、長官の記者会見で複数港の選定が妥当なんだという発言をなさっておるわけです。ですから、この長崎の佐世保港が、ただ単なる修理だけなのか。そしてまた、その研究会で議論になっておりました核を抜いてやる修理であるのか、核を抜かないそのままでやるのかということによっても見解が分かれてくると思いまするし、現に核を抜いた場合の対策について、核燃料体を抜くか抜かないかということを、ひとつ国にその可能性を打診してみる等、長崎県知事はこの研究会で発言しております。したがって、そういうお話があったのかないのか、お伺いしたいと思います。
  82. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 核抜きという話がよく使われますが、私は、非核三原則の場合の核抜きは、あくまでも軍事用目的の核でございますから、この場合科学技術庁のクラブの方々にも核抜き、核抜きと書かないでくれ、これはあくまでも原子力船で平和利用のための核燃料であるから、核燃料を抜くか抜かないかというふうに正確にひとつ伝えていただかないと、中には原子爆弾の船が来るんだというふうなお考え方をまだ持っていらっしゃる方がなきにしもあらずだったということを、ついこの間耳にもいたしましたので、その点はひとつよろしくお願い申し上げたいと思いますが、非常に重要な問題でございますけれども、これに関しましても、まだ私は正式に何ら知事の意思表明を受けておらない段階でございます。したがいまして、コメントすることを避けたいと思います。  ただ、いま御指摘のとおりに、では知事が結論を出した、あるいは市長が結論を出してから、おまえたちは考えるのかということになりますと、これは青森に対しましても私は余りにも無責任だと存じます。青森に対しましては、若干おくれるかもしれないが、政府としては極力努力をして、そして四月十四日に近い線でいろいろと船も回航させたい、こういうふうに答えておるわけでございますので、率直に申し上げまして政府といたしましては、いろいろ結論が出てくるかもしれません。たとえばABCあるかもしれません、あるいはイロハであるかもしれない。しかし、そうした場合にどういうふうにお答えをするかということに関しましても、常に私は機敏に対応し得るような措置をとるべきである、そういうふうな心構えで今日臨んでおりますので、その点も、ひとつ青森の方々にも決してじんぜんと日を送ろうとは考えておらないということを御説明いたしておるような次第でございます。  長崎に対しましては、ひとつ早いこと結論を出してくれということを今日までひたすらお願いを申し上げてまいった次第でございます。  第二番目の、定係港を複数にするということをこの間表明したが、どうかという御意見でございますが、あのときの、たしか与党の方の質問だと思いますが、将来原子力船時代が来る、そのときに、いまたった一つの定係港でいいのか、そういうことをしておるから、かえって問題を複雑化しておるんじゃないだろうか、こういうふうなごもっともな質問だと私は存じておりましたし、確かにわが国は海運国でございますし、将来のこの原子力船を商船にどんどんと切りかえていって、やはり石油の消費量を節約するとか、あるいはスピードアップいたしまして、そのためには核燃料の方が非常に役立つとか、そういう理念のもとに、今日この「むつ」第一号によって原子力船時代の第一ページを開きたい、こう考えておるわけでございますので、さようなことを考えますと、確かに御指摘のとおり、定係港というものを一カ所だけで、これが定係港で、そこだけしか原子力船はいろいろと母港としての活動ができないのだというふうなことでは、やはりこれは将来を見通すことにならない。  そういうふうな意味で、私は幾つかは存じませんが、やはり定係港というものは複数あった方が、将来に備えるべきでございましょう、こうお答え申し上げました。  なおかつ、この定係港は、「むつ」の修理に三年かかりますから、したがいまして、その三年の間には決めなくちゃならない、かように存じておる次第でございます。  並びに、原子力船時代が参りました場合には、何と申し上げましても、やはり六十日以前に入港届を出せば、日本津々浦々どこの港にも安全に船が入り得るというふうなことも政府は考えなくちゃなりません。そのためには、やはり安全でございます。この間予算委員会でも、御党からしばしばその点に関しましては御指摘を受けまして、私も美浜の事故があったりいろいろなことが相続いて、そうした反省の上に立って今後はやはり国民方々に、原子力開発というものは、安全とはうらはらである、双璧をなして、お互いがどちらが重要だということでなくして進まなくちゃならぬが、今日ただいまとしては、私は、やはり安全を第一義に置きたいと思う、こういうふうにお答えいたしておりますから、したがいまして、この「むつ」のそうした修繕期間中を通じましても、やはり政府はいろいろな過去の体験を十二分に踏まえまして、安全に関しましては国民方々になお一層の御理解を得るように努力をしていかなくちゃならない、かように存じておるところであります。
  83. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 核燃料というものの安全性、これを証明することが、また信頼を獲得することになると思いますし、そういうことがはっきりすれば、長崎としても受け入れというものがはっきりすると思うのです。ただしかし、先ほどのお話しのように、なお核燃料に対して御注意がありましたので、言っておきます。核燃料に対していろいろ不安な材料を持っておる。したがって、受け入れについて判断をまだしておらないというのが現状だと思います。  そこで、この研究会の中に提言として予定されておる核燃料を抜いて、ただ単なる修理ということについては、技術庁なり事業団においてはどういうふうなお考えをお持ちなんでしょうか。
  84. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 研究委員会には、科学技術庁原子力局からのやはりいろいろ資料も出してございますし、また直接係官が出張いたしまして、いま御指摘の面に関しましても回答いたしております。それはあくまでも事務的な回答でございます。さようなことでございますから、それが研究委員会として、どういうふうに今後その資料をごらんになり、そうして結論を出されるかということに関しましては、これは私はまだコメントできない、こういうふうに申し上げておるわけでございます。  もう一つ安全に関しまして重大なことは、佐世保の市長も、この修理を引き受けようと非常な御意気込みで今日もいていただいておりますが、やはり私に対しましては、安全が第一ですよということだけは口やかましく申してこられました。  現在いろいろと議論になっておりまする燃料体そのものは、本当にわずかしか使用いたしておりませんので、ただいまは冷態停止状態、こういうふうなむずかしい言葉で表現されておりまして、私、専門家に聞いたのですが、手でさわってもよろしゅうございますよというくらいのことで、私はそれだけの安全性は現在あるのじゃないかと思いますが、しかし、それだけの物理的な安全ではなくして、やはり行政自体の安全が必要だということを長崎の知事もまた佐世保の市長さんもおっしゃったので、御承知のとおりにこの国会には、従来原子力委員会だけが開発、安全両面を担当いたしておりましたが、ちょうど「むつ」問題に端を発しまして、前内閣ではございますが、総理大臣の諮問機関に行政懇談会というのができました。  この行政懇談会が昨年の夏に、やはり原子力委員会一本ではなくして、二つに分けて安全委員会をつくって、その安全委員会で、もっと厳しくチェックすべきであるという点を第一義に挙げられました。第二点は、運輸省、科学技術庁あるいは通産省あるだろうけれども、安全規制に関しては、それぞれはっきりと責任体制の一貫化を図るべし。言うならば、こういうふうな御意見もちょうだいいたしましたので、私は、それらを全部包含いたしまして、今国会に原子力に関する基本法の改正法というものを提出させていただいております。  こうしたことは、長崎の当事者に対しましても、今後の積極的な原子力行政のあり方、その安全に対する政府決意、そうしたものを表明したものではないか、こう思っておりまするし、当然知事、市長の方からも、非常に勇断をもってそういう点を推し進めていただいた、そういう政府努力はわれわれといたしましても、一応われわれなりの評価をいたしておりますというふうなお声もちょうだいいたしておるような次第でございます。
  85. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 核燃料を抜いて修理をひとつお願いしたいというふうに考えていらっしゃるのか。その前に、これは複数選定の中の定係港という交渉も一つの中に入っておるのか。ただ単なる修理だけを考えて、佐世保港にお話をなさっているのか。
  86. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 佐世保に対しましては、「むつ」の遮蔽改修並びに総点検のための修理をいたしたいからお願いをしたい、こういうふうにお願いしてございまして、定係港にするから、ひとつよろしくということは、政府は申し上げておりません。また、核燃料が抜かれたならば、どうかという問題に関しましては、まだ先ほどから申し上げているようなことでございますので、ひとつその答弁は御勘弁賜りたいと存じます。
  87. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうしますと、修理港としての交渉はなさっておるけれども、定係港については、もう全然ほかにも、いまのところは交渉なさってないわけですか。
  88. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 定係港に関しましては、市長の方からは、こういう原子力船を修繕をした貴重な技術も、やはり今後尊重していかなければならないであろうし、また佐世保としては、戦前は軍港で栄えた町であった、戦後はそれがなくなった、しかしながら進駐軍当時はそれなりのまたメリットもあった、しかし、それもなくなったというふうなことを考えた場合に、将来はやはり原子力船一つの母港として十二分に機能を発揮できるように、われわれとしては考えたいんだというふうな率直な意見の開陳がございますが、それに対しまして、政府といたしましては、今日ただいまイエスともノーとも、まだ申し上げておらないというのが実情でございます。
  89. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、いまのところ科学技術庁としては、定係港としての交渉はどこにもなさっておらないわけですか。
  90. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 どこにもまだいたしておりません。
  91. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、四者協定の中では、六カ月以内にということをお約束なさっておるわけですね。にもかかわらず、その間六カ月を経過しても一切交渉もなさっておらないし、二年半たった今日も、約束した撤去完了直前に至っても、定係港についての交渉はどこにも当たっておられないということになりますね。
  92. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般、青森の関係各位にもその点を申し述べました。率直に申し上げまして、四者協定に調印がなされた六カ月後に定係港を決めるべし。これは明らかに政府として、その努力を怠ってきておるので、これは明らかに違反でございますね、まことに申しわけないことであると私は思う。しかし、この純科学的な問題が、現在はやはり政治的にもなり、あるいは安全安全と言うが、社会的な安全問題にもなっておるので、そうしたときに、まだ十二分に国民方々一般が、青森、長崎に限らず原子力船に対するところの御認識がまだまだ得られておらないとわれわれが考えるときに、片一方の方で定係港の誘致があったというところもございますが、それ自体も一部の方々の御熱意であって、果たしてそれが完全に実施できるかどうかというふうな点になりますると、非常にむずかしい問題がございます。いま率直に申し上げまして、原子力船「むつ」は入り口と出口の問題で、いろいろと関係者に御苦労願っておる最中でございますから、にもかかわらず、それ以上の問題をさらにわれわれが持ち出すということになりますと、その騒ぎというものを、あるいは全国的なものに拡大しないとも限らない、こういうふうなおそれもございますので、半年後には実施しなければならない定係港の選定ではあったか、そうしたことでこの点はひとつおわびを申し上げるからということを、先日も私は青森の四者協定に調印をしていただきました方々におわびをいたした次第でございます。  率直に今日も、出口と入り口はどういうふうにかバランスをとって両方の御了解を得ないことには、この問題は解決できませんので、さような背景もございましたから、いま定係港をたとえ複数だと申し上げましても、これをあちらこちらでお話しするわけにもまいりませんし、また、いままでのように単数であっても、その話をするということ自体がまた非常に問題を複雑化するというふうなおそれなしとせず、こういう観点でやってまいりましたので、どうかその点をひとつ格別の御了解を賜りたいと思うのでございます。
  93. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 協定がいろいろ住民の御理解も得られないということから、他に定係港を探す努力も、いま現在ではしておらないということでございますね。ということになると、結局どんな協定を結んでも、いまの内閣の姿勢のもとでは、これは信頼できないということになるのじゃないでしょうか。確かに原子力問題については科学的な問題、技術的な問題、いろいろあることはわかりますけれども、起こったことはしょうがないのじゃないか、だから、これまでのことについてはひとつ御勘弁願いたい、これだけでは本当に信頼というものは、かち取れないのじゃないかと思うのです。  まして、先ほども申し上げましたように、核燃料の再処理問題をめぐって、今後ますます原子力発電などでも各地に問題が起こってくると思います。そういう意味では「むつ」問題の解決こそ、初めて原子力に対する信頼感ということの回復になると思うのですが、ただ平謝りに謝るだけで、この問題を済まそうとなさる態度については、国民の間により不安感を持たせる結果になるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  94. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 定係港問題に関しましては、もう仰せのとおりでございまして、これに対して、ちょうちょうとわれわれが弁護しがたき問題があろうと存じますが、しかし、いま「むつ」問題が大きくなってまいりました段階においては、私といたしましては、最大の努力を各歴代科学技術庁長官してまいりましたが、やむを得ざるものがあるのではなかろうか。しかし、それに甘えておるわけじゃございません。御指摘のとおり、決して、甘えまして、それだけでしんぼうしてくれということで、今後原子力行政がうまくいこうというふうな甘い考えは一切持っておりません。  しかし、率直に、実情だけは私としては精いっぱい青森県の方々に申し述べて、もちろん青森の関係者はイエスともノーともおっしゃっておらないわけでありますが、とりあえず、それはそれとして十四日、この線だけはひとつ守ってくれというのが現在の青森の方々の御意向であろうと存じます。しかし、それに対しても若干おくれるという、私もはっきりとできる、できないことを申し上げまして、これまたイエス、ノーのお答えはちょうだいいたしておりません。しかし、長崎の態度が決まるまではやむを得ないことであろうかなというぐらいのお気持ちは、私には表明はございませんが、抱いていただいておるのではないだろうか。しかし、それにまた政府が甘え込んでいくということは、一切なすべきことではございませんので、先ほど来申し上げておりますとおり、われわれといたしましても、本当に両県に対しまして、また両市に対しましては、できるだけの連絡をして、できるだけ隠し事も何もないというふうな段階で、お互いに腹をぶち割ってお話ししようではございませんかというふうなところまで、いろいろと話しておるということもまた事実でございます。  しかしながら、またお互いにデリケートな立場でございますので、片一方のことを片一方に先走って申し上げたがために、せっかくできる話ができなくなるかもしれない、そういうふうな話も中にはあるわけで、その辺が非常にデリケートなところでございますので、私も非力ながら、重大な問題でございますから、懸命の努力をいたしておるということでございますので、何度もくどいようでございまするが、ひとつその点は格別の御理解を賜りたいと存ずる次第であります。
  95. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 四月十四日、若干と言われているのですが、若干という解釈はいろいろございます。一週間とか十日ぐらいならいいのですが、いままでの政府の四者協定の約束事項でいきますと、若干が二年半も延びておるような結果になっておる。どれぐらいの見通しをつけておられるのか。
  96. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日数あるいは時間で申し上げるのは非常にむずかしいと思いますが、何の目的もなくそれが遅延するという意味ではない。やはりきちっとした一つの回答が出て、それによって、これだけの準備をいたしますからお願いを申し上げたい、われわれとしては、そうあらねばならぬということで現在作業を進めておるわけでございます。また青森の知事さんもその点は、船のことだから天候もあるかもしれないし、いろいろな気象条件があるかもしれないから、そういう意味で若干だ、われわれの考えはそういう意味の若干だ、こういうふうに言っておられましたから、あるいはまちまちであるかもしれませんが、決して目的もあるいは方策もなく拱手傍観したままの若干だという意味ではないということだけは、私は申し上げたいと思うのでございます。
  97. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 長官が非常に熱意を持って交渉に当たっていらっしゃるという、それはうかがえるのです。がしかし、いままでの過去二年半を振り返りますと、科学技術庁全体としては、いわゆる流されるままに処理してきたような感じ事実はどうかわかりません、一生懸命やっておられたのかもわかりませんけれども、国民の一人一人の立場から見ると、役所は何をやっているのだというふうな感じしか持っていないと思います。そういう意味では、その若干もきわめて短い期間の若干であるならばいいわけですが、非常におくれるとなると、やはりまたかという感じを与えます。そうすると、先ほども何遍も申し上げておりますように、原子力行政というのは、まだまだ危ないのだという印象をますます強めるわけなんです。  ですから、あした研究会としての結論を出されるわけですから、恐らく事務当局においては、もうすでにある程度の判断もなさっておると思うのです。そしてまた、公開の研究会で議論なさっているのは、結局核燃料を抜いて、ただ単なる普通の船と同じような修理だけだったら、すぐにでも受け入れるのだという態度を持っているのですから、結局は、そこで政府の態度がどう決まるかによって、それが短いか、あるいはまたいままでのように二年半も三年半もかかる結果になるかという分かれ目になるだろうと思うのです。だからそういう意味では、政府の決断ということが若干を縮める一番大きな要素になるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  98. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もちろん政府の決断によるところだろうと思います。したがいまして、その決断は、受け入れていただく方々、その御決意に対しまして、私はそれを尊重するということを従前申してまいっておるわけでございますから、そうしたもとで決断をいたしたいと存じます。  なお、もう一つ念のため申し上げますと、今回は政府・与党としての問題でございますから、自由民主党の方にもこれに関する特別委員会というのをつくりまして、そしていろいろと党みずからも地域のいろいろな要望を吸収するようにしようといたしております。したがいまして党みずからも、まず第一線としてそういうふうなことに対する態度を表明していただけるのじゃないかと思います。そして政府に対しまして党から要望があって、そして政府が動く、こういうふうなかっこうをとっておりますが、もちろん政府・与党でございますから、一枚岩でこの問題には対処しなければならぬ。順序といたしましては、党がまずそうした要望を吸収いたしまして、党で結論を出して、それを政府に要望されるということになりますので、その辺もひとつお含み賜りたいと存じます。
  99. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 政府・与党で御協議なさるのも、これからの大事なことだと思いますよ。しかし要は、核燃料さえ抜いてやれば、すぐに佐世保港としては引き受けますよということは、研究会のいろいろな記録とか公開されておる情報から見て明らかなわけなんですよ。そうすると、核燃料は抜いておくのだという態度が示せるような状態にあるのかどうか、これがこの時期を早く決められるか決められないの分かれ目なんです。ですから、もちろん地域の了解を得る、そのための与党との話し合いも大事だと思いますが、最後は、やはり政府自身の腹で早くお決めになることが一番大事な問題じゃないかと思うのです。
  100. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおりでございます。政府みずからの決断というものが最終的な解決策になる、これはもういまさら申し上げるまでもございません。だからその結論の時期も、私といたしましては先ほど来お答えいたしておりますとおり、機敏に対処してまいりたい、こう申しておるわけでございます。
  101. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 科学技術庁の機敏にというのは、なかなか信頼できないところに問題があるのじゃないでしょうか。従来の経過から考えて、信頼ができるような状態だったら、もっとスムーズにいっていると思うのです。ですから、宇野長官が就任なさったのですから、この機会に早期に決断をしていただいて、いずれにしろ原子力問題の平和利用というのは今後の大きな課題ですから、まず入り口と出口の問題と言われましたけれども、これを解決することによって平和利用をさらに有効に国民の理解の中で進められるようにひとつお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思いますが、最後にもう一度長官決意を伺いたい。
  102. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろと貴重な御意見を拝聴いたしましてありがとうございます。特に原子力開発は、今後のわが国のエネルギー問題を中心といたしましても必要欠くべからざる大切な問題でございますが、そのためには常に安全ということを第一と考えたいと存じます。それによって行政体系も整え、そして国民方々原子力に対する御認識をなお一層深めたいと存じます。そのためには、「むつ」がどういうふうな姿で整々粛々と青森を出て、そして整々粛々と長崎に受け入れられるかということは、私ははっきり申し上げまして、将来の原子力行政そのものに対する国民の考え方の基本になるのじゃないか、かように存じますから、いろいろな面におきまして、私はまだまだ非力なものでございますが、最大の努力をしていきたいと存ずる次第でございます。もちろんこれは政府・与党だけでできる仕事ではございませんので、野党の皆様方の御理解、そうして御協力をあわせて得られますように私も努力をしてまいりたいと存じます。  本日の御質疑非常にありがとうございました。私といたしましても、本当にこうした問題に関しましては慎重に、そしてまたやるべきときには、きちっとした決断をいたしたい、かように存じておりますから、その点も御了解賜りたいと存じます。
  103. 芳賀貢

    芳賀委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時四十分開議
  104. 芳賀貢

    芳賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  105. 北山愛郎

    ○北山委員 予算並びに決算等を通じて見ました科学技術行政、それには改善をすべき点がたくさんある、またわれわれもその改善を推進しなければならぬ、このように考えております。そういう立場から二、三の問題をお伺いしたいのですが、まず第一に、決算なり予算を通じて見ましたときに、わが国科学技術研究というものが民間主導型といいますか、民間に重点が置かれておる。研究費から見ましても、昭和四十九年度で全体で二兆四千二百十四億でございますから、外国に比べて決して少ない額ではないと思うのです。ただその特徴点は、アメリカとかあるいは西ドイツやフランス、イタリアなどと違った点は、国、地方自治体の分が六千四百十一億、二六・四%にすぎない。あとの七三・四%は民間の研究投資である。これは外国、アメリカを初めその他の先進国では大体半分以上が政府関係の機関の科学技術研究費なんですね。  そういうところから見ると、わが国の場合には民間に頼っているというか、民間の研究を主として進めてきておる、こういう特徴がある。これじゃいかぬじゃないかと思うのです。ことに最近のような経済の変動から見ますと、どうしても政府なり自治体というもの、いわゆる公共機関というものが科学技術研究というものを積極的に推進するんだ、民間の振興にただついていくといったようなそういう姿勢ではいかぬじゃないかと思うのですが、長官はどのようにお考えでしょうか。
  106. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおりでございまして、その点やはり額そのものから申し上げますと、日本予算もGNPも大きいということから、米ソにはかないませんが、他の諸国にはあるいは比肩し得る面もあろうかと存じます。しかし、政府の占める割合が従来から少なくて、やっと二六%になったが、いままでは二五%であったというふうな点等々を考えますと、今後大いに改善をしなければならないと存じます。  試みに、科学技術会議といたしましても、この点におきまして内閣から諮問がなされておりまして、もう少しくやはり政府の持ち前を大きくすべきである、こういうことでございましたし、科学技術会議の議長は総理大臣でございますから、いま北山先生御指摘の同じようなことを、私も過般、総理大臣に直接御進言申し上げたという経緯もございます。今後さらに一段と努力をしていきたいと存じます。
  107. 北山愛郎

    ○北山委員 この点は政府あるいは国全体あるいは地方自治体が、もっともっと積極的にこの科学技術研究というものを推進しなければならぬ、相当思い切った発想の転換もしなければならぬ、このように考えます。  さらに、もう一つの特徴は、政府科学技術関係の予算というものの中心が大型の科学技術というか、いわゆる原子力とか、あるいは宇宙開発とか、あるいは海洋開発、こういうものに大部分とられているんじゃないか、その他の大規模な大型の工業技術開発などを加えますと、国の科学技術政策の中心が非常に偏っているんじゃないか、こういう感じがするわけです。  試みに予算決算等を参考にしてみますと、いわゆる科学技術振興費というものの中に、昭和四十九年では二千六百十八億計上されておりますが、その中で、いま申し上げた原子力と宇宙開発と海洋開発だけで千二百十五億でありますから四六%、それから五十年では総体三千二百二億のうちで、この三つの関係が千五百六十四億、四八・八%、五十一年では三千六百六十九億のうちで原子力、宇宙開発、海洋開発の三つの部門の分が千八百二十四億、四九・七%、だんだんにこの三つのビッグサイエンスといいますか、そういうものの割合がふえてきておるわけですね。  ですから、科学技術というと、すぐに原子力を頭に浮かべるというふうなぐあいで、非常にそういう点で偏っているんじゃないか。そしてまた、こういう開発というのは、一般の企業あるいは一般の個人なんかは余り直接には関係ない。言うならば、一部の専門家あるいは大企業とかそういう関係のいろいろな研究なわけですね。  ですから、一体国の科学技術投資というもの、あるいは研究投資というものが、このようなふうに偏っていいものだろうか。試みに、原子力だけ申し上げますと、四十九年には以上の中で六百七十四億、五十年には八百五十一億、五十一年には九百九十四億と、この三カ年だけでも二千五百億も研究投資をしているのですね。これは以前からの分、あるいはその後の分を加えますと、原子力だけで莫大な研究投資をしておる。その中には、先ほど御質問があったような原子船「むつ」のようなものがあって、これはせっかく船はつくったけれども、どこへも行きようがない、漂流を続けなければならぬというところに約二百億ぐらいも投資をされておる。どう考えてもむだというか、そういう投資もあるわけですね。ですから、われわれとしてはびっくりする。  最近の新聞を見ますというと、例の気象静止衛星の打ち上げ、これも三百億ぐらいかかるでしょう。それも、日本の金でやったのだけれども、実はアメリカでつくってアメリカで打ち上げる、こういうことに三百億も出すということでありますから、このような原子力とか、宇宙開発とか、海洋開発とかということには全く莫大な研究投資をいたしておりますけれども、その他の部門が非常におろそかではないのか、そういう印象をぬぐうことはできないのです。こういう点については大臣、どのようにお考えですか。
  108. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 明年度の予算の編成期に当たりまして、私は大蔵省の担当官に次のようなことを申しました。  一般的には総理大臣が明らかにされておられまするとおり、昭和五十二年度は経済の年だ、したがって、それを中心とした予算が編成されるであろう、しかし、それは政策だ、しかし予算の中にはきちっとした一つの思想なり哲学というものが私はやはり欲しいと思うが、私をして言わしめるならば、この予算の中には、教育そしてエネルギー、そうしたものをわが国の哲学として持っていかないことには、とうてい今後の事態に備うことはできないということを申し上げた次第でございます。  そういうふうな気持ちが私にも濃厚でございまするから、確かに御指摘のとおり、本年度の予算におきましても、あるいは大型プロジェクトに予算が偏ったというふうに御指摘になっても、また当然であろうかと存ぜられます。  率直に申し上げまして、科学技術庁としていかなる政策を持つかというふうにお問いになっていただきましたので、私は、次のような五つの観点から、わが国科学技術振興したいんだということを申し述べたいと思うのでございます。  その第一点は、何といたしましても資源小国でございますから、そうした資源が少ないというこの環境を克服するような科学技術振興していかなければならない。これが私は第一番目だろうと思うのでございます。  もちろん第二番目には、やはりそこには健全な環境というものが保全されなければなりませんから、そうした環境保全のための科学技術でなければならぬ。そして当然そこには、われわれ国民がおるわけでございますから、いろいろな産業に従事している方々をも含めまして、健康を増進するような科学技術でなければならない、こういうふうに思うのでございます。  その次には、資源小国でございますから、どういたしましても、わが国資源を外国から購入して、それにわが国独得の科学技術振興によって資源の総合的利用を図るということが科学技術庁の使命でございますから、やはり国際競争力を持つような科学技術振興でなければならない。同時にそれは、国際協調性を持った科学技術振興でなければならない。これを私は第四番目に挙げておるわけでございます。  そして第五番目には、先導的な役割りを果たすところの科学技術でなければならない。  確かに静止衛星そのものにつきましても、莫大なお金が要っておるわけでございますが、災害国日本ということから考えました場合に、もしも地上のいろいろな通信施設が破壊されたということを考えました場合に、静止衛星が幸いにも赤道の真上にいてくれる、そこから私たちはいろいろと通信を受けて、そして事なきを得ることができるであろうとか、あるいは一般国民の中にテレビの難視聴のところがあるが、静止衛星によってその難視聴が解消されるとか、あるいは気象関係におきましても、台風が毎年日本を襲うが、静止衛星があの赤道の真上にじっといてくれるから、いつどこで台風がどういうコースをとるかということも、われわれに与えてくれるから、産業、経済、生活にとっても大きなプラスであるとか、そうした意味合いもいろいろございますので、実はいま私が申し上げました五つの分類で、われわれは懸命に科学技術行政推進していきたいと存じておるところでございます。  ただエネルギーという、先ほど私が冒頭に申し上げました観点に立ちますと、先生も御承知のとおり、一九八五年、これは二年前でございますが、その当時のエネルギーの需給計画を閣僚会議で立てました。そのとき、経済成長率は昭和六十年においても、われわれは六%の経済成長率をどうしても確保したいんだという気持ちでございます。それが今日の安定経済の成長率であろうと私は考えております。昭和六十年にどういたしましても六%の成長率を得たい。それを逆算いたしました場合に、果たして石油はどれだけ要るか、あるいは原子力発電はどれだけ要るか等々の数字をはじき出しますと、どういたしましても石油だけに頼っておっては、貴重な六%の成長率は得られないかもしれない。だからいまの間に、資源小国であるから、ひとつその条件を克服する意味においても原子力開発をやって、せめて原子力は四千九百万キロワットは発電したいものだというふうな指数がございます。これすらも今日は非常に危ういような状態になって、ついこの間の閣僚会議では見直しをしようということも先生御承知のところでございます。  そうしたわれわれの生活にあしたのしかかってくるというような重要な問題もございますので、さすればその原子力開発はどうするか。先ほど馬場さんの御質問にお答えいたしましたとおりに、安全と開発を車の両輪としてやっていこう、こういうことになりますと、勢い大型プロジェクトに予算が集中して、そして編成されたという経緯も、また私から申し上げますと、むべなるかな、やむを得ない。と言うよりも、むしろそうであらねば、わが国のエネルギー問題は解決できないんだ、こういうふうな気持ちで、この内閣といたしましては編成させていただいた面もあったわけでございます。  しかし確かに、御指摘のとおり、そのほかにも、もっともっと重要なことがあるじゃないか、それだけに重点を置かずに、さらに努力せよというお言葉でございます。これには私も耳を傾けまして、今後とも、大型プロジェクトのみかは、他の研究開発費も相当科学技術振興のためには獲得をいたしまして、そして冒頭のお話どおりに、政府の技術革新というものが予算においても研究費の中においても、民間と少しも遜色がないというところまでの熱意を示していくような方向をたどらなくちゃならない、かように存じておりますので、今後もいろいろと御叱正を仰ぎながら、われわれといたしましては努力をしていきたい、かように存じております。
  109. 北山愛郎

    ○北山委員 いまの御答弁の中の趣旨を基礎にして考えた場合に、やはり科学技術というものの果たす役割りというものを、もう少し考えてみる必要があるのじゃないか。資源が少ないのだと総理も施政演説で強調されました。これからはもう高度成長というのはできないのだということを宣言されました。また、エネルギーについても、もちろん制約を受けているわけですから、エネルギーを節約して、しかも成長を上げる方法は何かということを考えなければならぬのじゃないでしょうか。やはり従来と同じように一定の成長が必要であるから、それに見合うだけのエネルギーはどうしても必要なんだ、石油がだめなら原子力だ、こういうのではいかぬのではないだろうか。それから、いま置かれている科学技術の役割りというのは、やはり余り資源を使用しないで価値を生み出すという一つの投資だと思うのです。科学技術そのものが頭の中で価値を生産するわけですから。  そういう意味で、日本の場合、従来は単に外国の技術を導入したり模倣したりして高度成長をした、こう言われておりますし、またそういう意味での技術革新というのは世界的に言っても一巡をして、従来開発されたものは一応普及化したというか、新しい技術革新が望まれている、こういう時期に来ているわけです。そういう意味で、科学技術の果たす役割りというものを、科学技術という観点から考えた場合に、やはりそういう意味にとって、しかもオリジナルな研究開発日本としてはやらなければならぬじゃないのか。いままでのように外国の研究をこっちへ持ってきて向こうに追随をする、あるいは追っかけていくというようなやり方じゃいかぬじゃないだろうか。これから国内、われわれの日本の中で自主開発をするんだ、それこそがいわゆる先駆的な役割りではないでしょうか。そういう意味科学技術というものを考えなければならぬじゃないでしょうか。  大臣の御答弁は、何かもっともなように聞こえるけれども、しかし従来のパターンと余り変わりないんじゃないだろうか。石油がそれほどない、資源も多くないという中で成長を維持していく方法は、果たしていまのような産業構造でいいのか、こういうことを考えなければならぬじゃないでしょうか。そういうような質的な発想の転換をしなければならぬじゃないでしょうか。私は、大臣の言葉は従来の発想と余り変わりないんじゃないか、このように聞こえるのですが、どうでしょうか。
  110. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私自身といたしましては、もういま先生がおっしゃったことと全く同感でございます。やはり科学技術というものは国産でなくちゃならないし、将来それが大きな国民の財産になるべきものであるというふうなことで、先ほど五つのカテゴリーを申し上げた次第でございます。  現に、原子力一つにいたしましても、恐らく明日福田総理がカーターさんにお出会いになって話題となるであろう再処理という問題に関しましても、これはわが国独自の技術を開発したいという念願に燃えて今日までやってまいって、やっと日の目をいままさに見ようかという寸前まで来ているということでございまするし、先ほど先生みずからも例に挙げられました静止衛星一つに関しましても、ことし揚がりました静止衛星はもう国産でございます。ただ残念ながら、まだ百三十キロ程度のものしか揚げられませんから、今後は三百五十キロあるいは五百キロのものを揚げて、国民生活に直結をしたいということになりますと、その過程においては、まだ外国の技術を導入しなくちゃならないというやむを得ざる面があるかもしれませんが、われわれ科学技術庁といたしましては、もちろん外国の技術を導入することも怠ってはならないと存じまするが、それをひとつわれわれみずからの血となし肉となすというふうな、国産の科学技術振興に今後も重点的に全力を挙げるべきである、かように存じておりますので、ただいま仰せの点は、今後もわれわれといたしまして十分その旨を体しての行政推進を怠ってはならないと考えておるところであります。
  111. 北山愛郎

    ○北山委員 ただいまの原子力の問題なんですが、これもまさに、総理がアメリカへ行って、そして再処理問題についてアメリカの方針を変えさせるというのか、そうでなければ、わが国原子力開発にとっては、これはもう致命的な問題だ、こういうような事態が出てきているわけですね。使用済み燃料の処理、再処理をするために工場をつくって運転間際だというようなところへもってきて、そういうものは許さないということですから、そういうアメリカの方針に従わなければ濃縮ウランも出せない、こういうことになったら、日本原子力開発はもう行き詰まってしまうわけですね。しかし、そういうふうな要因があるんじゃないでしょうか、単に安全性だけの問題じゃなしに。  原子力船「むつ」は、安全性の問題で、原子力というものが決して安全でないということを天下に周知させた。そのために、原子力が安全でない、やはり危険だ、不安があるということを国民に知らせた、その授業料というか、それに百七十億も使ったわけですが、日本だけじゃなしに、その他にも各地の原子力発電所は故障を起こしていますね。決してこの安全性はまだ保証されていない。だけではなしに、経済的に見ても成り立たなくなってきつつあるのではないだろうか。もうウランの価格がどんどん上がっている。現在すでに建設をされている発電所の発電コストにしたって、もはや石油に比べて、火力発電に比べて、決して安くないんじゃないか、こういうふうな数字も出ているのですが、やはり原子力の発電をしなければならぬでしょうか、また経済的にいろいろな問題が出てきているというのを科学技術庁としては一体どのようにお考えなのか。  ある人は、原子力発電所が故障を起こしても、その修理のためには、もうおいそれと間に合わない。長いこと休まなければならぬわけです。そうすると運転の効率が下がってくる。人によると四〇%ぐらいだと言っている。初めに百万キロの原子力発電所をつくって、三千億円も投資をして、そうして四〇%ぐらいの運転効率で、しかも二十年もたつというと、まるっきり効率が下がってしまうんだ、このようにも言われておるわけです。一方では安かったはずのウランも高くなってくる。この十年、二十年たつうちに原子力発電そのものが、あるいは石油よりも、そういうふうな経済的な障害がむしろふえるのではないかと私は思えるのです。そういう点も考えなければならぬじゃないでしょうか。  また、今度のカーター大統領の発言は、やはりそういうこともあり得るわけです。そしてアメリカの大統領の政策が日本原子力行政の死命を制するんですね。カーター大統領の言うことは一応筋があるのですよ。プルトニウムを世界じゅうにばらまいたら非常に危険だ、そうさせないために再処理は認めない、こう言うのも一応理屈があるわけですね。そういう危険性のあるものとしての原子力なんです。当然予想されることなんです。ですから、今後原子力をエネルギーの重要な部分として開発をしていくというような政府の、あるいは財界等の長期計画なるものが破綻をするんだろう、そういう危険性がある、私はこのように考えています。安全性は別としても、経済的にも成り立たなくなるのではないか、そういう点は御心配はないのですか。
  112. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まさに原子力におきましては、いまこそ日本独得の開発技術、あるいはまた一般的に言われまするとおり核燃料サイクルの確立、これを図らなければならない、こういうふうに存じておる次第でございます。  第一、ウランそのものが日本にはございません。たかだか一万トン程度でございます。したがいまして皆無に等しいわけで、これもやはり諸外国から輸入をいたしておる。そのウランをより効率的に使わんがためには濃縮をする。その濃縮技術が今日日本におきましてはございませんから、したがいましてアメリカにお願いをしておる。また、その濃縮ウランを燃料として使った使用済み燃料の今度は再処理に関しましては、また、わが国といたしましては現在外国にお願いをしておる。こういうことでございまするから、石油までがあなた任せであって海外依存度が高く、今後原子力までも、すべてあなた任せであっては、これはもう民族の興廃はおのずから明らかでございます。  したがいまして、われわれといたしましても、懸命の努力をして、濃縮技術に関しましても今日相当な地位を築くところまでやってまいっております。今年度の予算におきましても、パイロットプラントが計上されておりまするが、これも一つ大きな核燃料サイクルの重要部面でございます。同時にまた、再処理に関しましても、日本独自の再処理工場を持ちまして、ようやくこの夏に臨界に達しようというところまで来ておるわけでございまして、今後その面におきましては、極力わが国独自の技術開発をいたしまして、そして海外依存度を低めていく。同時に、石油におきましても海外依存度を低める。われわれの燃料というものは、将来の国民生活の基でございまするから、そうした意味合いの技術を開発いたしたいと思っておるのでございます。  ただ、そこで、先生がおっしゃりまするのは、では今後、経済性はどうかという問題でございましょうが、今日ただいまといたしましては、一応、一般的な発電のコストと、そして原子力のコストは、たとえば、一キロワットアワーでございまするけれども、原子力が大体九円、そして一般の火力の方が十二円ということで、確かにこの点におきましては、われわれといたしましても経済性は今日ただいまは問題がございません。しかし、将来はどうなるであろうかということになってくるであろうと思います。特に、現在十二基動いておりまするが、美浜に見られるような故障もございまして、その成績は決して芳しいとは申し上げるわけにはまいりませんが、昨年の四月から十二月までの例をとりますと、一応いままでの施設の利用度が四一%程度でございましたものが、どうにかこうにか大体五九%、六〇%に近いというところまで参っております。もちろん原子力の安全性を常に確認をしなくてはなりませんから、定検等々が行われますので、一般的には七〇%ぐらいならば最上だと言われておるというのが操業率でございまするから、われわれといたしましても、今後はそうした面におきまして、極力操業率を上げまして経済性も保っていきたい、かように存じておるわけでございます。  しかしながら、何と申し上げましても、やはり日本の経済は、総理もよくその例を申されますが、今日ただいま六%で進捗いたすとするのならば、十二年たてば、われわれの経済の基盤は倍になる。そのときには、やはりエネルギーも倍になるじゃないか。そのときに果たして今日のようにスムーズに石油が入手できるかどうかという問題等々を考えますと、私は非常にむずかしい問題があるのではなかろうかと存ずる次第でございます。特に、もう石油は三十年しかないというふうな説も、これはどんどんと有力になってまいりましたし、ウラン自体にいたしましても、いままでのような軽水炉の形式で今後原子炉を運転するのならば、あと二十年しかないよというふうな説もあるぐらいでございますから、われわれといたしましては、それの六十倍の効率を発揮するというのが高速増殖炉であり、その高速増殖炉の燃料が、いわゆる再処理をしたプルトニウムであるということから考えますと、これは民族といたしまして、どうしてもこの道を歩んでいかなければならないのではないか、こういうふうに感ずる次第でございます。  ただ、プルトニウムはきわめて危険度の高い物質でございまするから、カーター大統領がそれの拡散を非常に恐れておられるということは、われわれも同感でございまするから、その面におきましては、カーターさんにも、あなたの政策自体が非常に核の拡散を恐れられておるという点については、われわれも同感である。しかしながら、平和利用とそれとは、またおのずから別問題であるから、ひとつ日本の立場を十二分に尊重してほしいということを、恐らく福田総理も申し述べられるであろうと思いまするが、われわれ日本人といたしましては、核に関しましては、もうすでに唯一の被爆国でございますし、非核三原則もございますし、昨年は国会もNPTを批准したのでございます。  その第四条に平和利用を妨げてはいけません、こう書いてあるのであります。アメリカやソ連やあるいはフランスのように核兵器を持っているところと区別しませんよということが書いてあるわけでございますから、われわれは、その点をアメリカに大きく主張をしながら平和利用に最善を期すべきである、全力を挙げるべきである。その平和利用の根本的な第一義は安全である、こういうふうな姿でしか、今後私たちはエネルギーの円満なる供給を仰ぐことができないのではないかとすら、われわれは考えておる次第でございますので、そうした点におきましては、一段と深き御理解のほどをお願い申し上げたいと存ずる次第であります。
  113. 北山愛郎

    ○北山委員 大臣の願望はわかりましたけれども、しかし、現実にはそのとおり進んでおらないのです。いま日本がウランを自分で開発するというわけでもないし、アメリカの濃縮ウランに依存しているということでしょう。いつのことかわからないですね。それから、それを処理して、今度は使用済みの燃料の処理にも困っている。これから処理工場をつくるとか、そういうことですから、核燃料サイクルがまだできておらないのにもってきて、それを断ち切るようなアメリカの大統領の方針が出てきますと、それに邪魔されるでしょう。それが現実なんです。ですから、そういうふうに持っていきたいという願望はわかりますけれども、しかし、現実には至るところにネックがあって、そのとおりにはいかぬだろうし、またウランの値段だってどんどん上がってくるだろう。そういうふうなことを考えましたときに、急いで日本か今後二十年間に——昭和六十年までですか、四千九百万キロの原子力発電をするなんてことは無謀だというふうに私は思います。  しかし、ここで原子力の問題を議論するのが中心ではございません。実は、そのように原子力あるいは原子力発電については非常な熱意を持っているのだが、新エネルギーに対しては、サンシャイン計画とかいうものを持っていますけれども、非常に貧弱ではないか、このように私は考えるので、その点をむしろ指摘したいところなんです。  あれはイギリスですか、王立委員会ですかが勧告を出していますね。もはや原子力ではなくて、それを飛び越えて太陽熱だとか風力とか、そういうものを開発することに進むべきであるというような勧告を出していますね。カーターもそういうようなことを言っていますね。そのように、原子力よりも、その次の太陽熱とか地熱とかいうエネルギーの開発にこそ、日本としては進むべきではないだろうか、私はそういう角度からお伺いをしたいのであります。  そこで、新エネルギー対策について、サンシャイン計画というものが四十九年七月からスタートしたわけですけれども、この予算が、四十九年では二十二億七千万、五十年で三十四億八千万、五十一年で四十六億、五十二年では四十八億二千万円と、まことに遅々として、余りにもテンポが遅いというか、力こぶの入れ方が非常に少ないのじゃないか、このように思うのです。この点はどうでしょうか。
  114. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 サンシャイン計画そのものは通産省でございますから、通産省の係官の方からお話があろうと存じますが、われわれといたしましても、決してこれを無視しておるわけではございません。その中におきましても特に地熱等は、すでにそれによって発電所ができておるわけでございます。五万キロワットの発電をしております。私も、こういうことをもう少しくお互いに普及、啓蒙しようじゃないかということになりますが、それをしようとなりますと、今度はその場所が温泉地である、温泉地に参りますと、やはり環境問題、さらにはまた肝心かなめのそうした地熱が枯渇してしまったらどうなるだろうかというふうな、次々と問題が出ておりますので、これに対しましても国会内でいろいろ御議論のあるところでございます。  しかしながら、われわれはそうした面を決して無視しておるのじゃございませんので、科学技術庁といたしましては、総合的な科学技術推進のためには、各省に対しましても、いろいろと御相談もし、また御協力もいたしておるような次第でございます。  サンシャイン計画は通産省の方からお話があると思います。
  115. 北山愛郎

    ○北山委員 時間が大変経過しましたので、問題がたくさんありますから、力点だけ申し上げますが、太陽熱についても、もっともっと私は積極的にやってもらいたいということなんです。原子力の方の開発が容易に進み得るし、地熱とか太陽熱の方が困難が多いというわけではないでしょう。熱の入れ方が違うのじゃないでしょうか。むしろ原子力の方がネックがたくさんある。しかも、それは国際的にあるということなんですから、太陽熱あるいは地熱、そういうものの開発を進めていっていただきたい、このように思います。ことに、その中で風力というものが案外軽視されておるのじゃないか、私は、こういうふうに考えるのです。実は、私個人のことで恐れ入るのですが、おととし郷里の知事選挙に出ましたときに、私が知事になったら、あの海岸の風の強いところにみんな風車をつくって、海水から水素をとるのだと言ったら、みんな笑ったのです。ところが、これはやはり笑い事ではないので、その後いろいろ調べてみますと、国際エネルギー機関、IEAが風力と取り組んでおる。あるいはアメリカのERDA、エネルギー研究開発庁、これも風力の開発に取り組んでおりますね。あるいはNASAもやっておる。このように風力開発を各国ともどんどんやっておるわけです。西ドイツでは全国の風力調査というものをやったそうであります。あるいはまたデンマークでは、原子力とかあるいは火力発電とか、そういうふうな公害を起こす危険性のあるものをやめて、太陽熱と風力でエネルギーを十分賄えるのだというふうな二十年の計画を持っておると言われます。そのように、外国では風力の開発という問題がどんどん進んでおるんですね。政府科学技術振興の中には、どうも風力というものの項目もない。まことにこれは熱意が足りないのじゃないか、このように思うのです。  参考に申し上げますと、アメリカで、五十一年度の予算で、風力開発のために連邦政府が九百万ドル要求したところが、これを議会で修正しまして千五百万ドルに増額した。大体四十五億円くらいですか、そういうふうなことを聞いております。このようにどんどん進んでおるわけですが、日本では、まだ全国の風力の調査なんかやっておらぬでしょう。こういう点大変おくれておるのじゃないかと思うのですが、この点は科学技術庁長官あるいはまたこの関係の工業技術院、そういうところにお伺いしたいと思うのです。
  116. 大澤弘之

    ○大澤政府委員 お答えいたします。  風力につきましては、先生おっしゃるとおり私どもとしては、まだ確実な全国の調査等はしておらないのでございますが、五十年の七月に、科学技術会議のエネルギー部会というところがございまして、そこで風力の将来といいますか評価を一応いたしておりますところでは、平均風速が毎秒五メートル以上の高地あるいは離島といったところで風力の利用は可能ではないかというようなことが報告をいたされております。しかし、これが日本の全体の発電力と申しますか、エネルギーに影響を及ぼす量といたしましては、余り期待はできないのではないかというようなことでございます。  なお、サンシャイン計画におきまして基礎的な調査を工技院の方で進めておるようでございますので、工技院の方からその様子をお答えしていただきます。
  117. 吉田方明

    ○吉田説明員 風力エネルギーにつきましては、サンシャイン計画におきましては特に重要な四本柱という中には入れておりませんで、太陽、地熱、石炭の液化・ガス化、水素エネルギーと四つございまして、その他という形で、総合研究の中に風力エネルギー、あるいは海洋エネルギーといったものについて基礎的な研究を行っているわけでございます。  現在では、気象庁と連絡をとりまして、その可能性について、風速、風向、こういったものについて全国的な基礎的な数字をいま調査しておりまして、現在ではフィージビリティースタディーの段階だというところでございます。
  118. 北山愛郎

    ○北山委員 少なくとも全国の風力調査なんかをエネルギーとして調査するためには、やはり年間の調査が必要だとか、そういうことがあると思うのです。そういう調査でも、少なくとも取りかかるべきではないでしょうか。台風なんかは物すごいエネルギーのかたまりだと私は思うのですよ。しかも幸いなことには、日本の国土は狭い、ところが、太平洋上で発生したエネルギーのかたまりなんですから、これは疫病神ではないんですよ。それによって被害を受ける面もあるけれども、非常なプラスの面がある。物すごいエネルギーを持ってくるのですから、これをただ吹かせる手はないと思うのです。ですから、台風のエネルギーを蓄積してためておくことができるなら、これは大変なエネルギーの開発だと思うのです。そういう点もあわせて考えて、もっともっと科学技術開発、特にエネルギーというものについていろいろな角度からの検討が必要ではないだろうか。  石油や原子力だけがエネルギーじゃないのです。それは企業ベースには乗らないかもしれないけれども、しかし、いろいろな形で小さなエネルギーも、これから開発をして利用していかなければ立っていかないような日本の国なんですから、そういうときに、外国ではじゃんじゃんやっておるのだが、日本では調査もやっておらない、これでは大変おくれておるんじゃないでしょうか。これじゃ本当に先駆的な役割りが果たせますか。  私は、政府をただ責めるのじゃないのです。われわれもともに反省をして、これから日本の国がどうやっていくのか、この資源のない国がやっていくのには、国がやはり科学技術というもの、頭の中で価値を生産する科学技術そのものを研究開発するということが、一つの大きな事業であると同時に、日本の国土、与えられた国土資源の中からそれをあらゆる可能性を開発をしていく。場合によれば、そろばんに乗らないものもあるかもしれない。しかし、そういうものも開発していくのが、やはり政府の仕事じゃないでしょうか。こういう点で、科学技術庁並びに関係のところでは非常に消極的だと私は思うのです。どうでしょう、大臣、この点については。
  119. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおり、エネルギー問題は、あらゆる可能性を見出すべく努力すべきだと思います。したがいまして、風力という、そうした一つの御提言に関しましても、貴重な御提言として今後対処していきたいと存じます。
  120. 北山愛郎

    ○北山委員 体裁のいい答弁では困るのです。風力の調査のことを始める、そういうことを検討するとか、何か具体的な答弁をしてもらいたいのですよ。委員会の中で、国会の中で、ただ答弁だけは体裁よくやって、それじゃ困る問題なんです。この問題は非常に重大な問題なんです。ですから、もっともっと真剣な態度で、この問題と取り組んでもらいたいと思うのです。たとえば風力の問題にしても、具体的に取り上げるとか。ことしの予算は一応衆議院で成立したけれども、予備費だってあるじゃないですか。こういうことにこそ予備費を使う。もっと腰を据えてエネルギーの問題、ことに深刻なら深刻なように真剣になって取っ組まなければならないじゃないでしょうか。これは政府といわず、われわれも含めてですよ。私は、そういう意味で言っているのであって、大臣のさわやかな答弁を求めません。ですが、よく考えてもらいたい、こういうことであります。  それから、もう一つ問題があるのですが、私ども決算委員会というのは、言うならば、行政のいわゆるアセスメントといいますか、効果を測定する一翼を担う機関だ、このように考えています。政府科学技術研究をやったり、いろいろやっていますが、やはり行政と技術開発というものが結びつかなければならぬと思うのです。あるいは政府全体としての整合性がなければならない、連絡がなければならぬ。てんでんばらばらに別々なことを研究して、それを実際には生かせない、これじゃ困ると思うのです。  そこで、問題は別でございますけれども、一つの問題は飛行機、航空機の問題なわけです。ちょうど一昨年の十二月、科学技術庁の所管でありますが、航空技術審議会というところから建議案が出ております。日本の国は国土が狭いし、地方空港などは広い滑走路はなかなかとりにくい。だから、いわゆる騒音公害を少なくするという点からしましても、滑走路が具体的にこの建議案では九百メートル以内となっていますけれども、九百メートルぐらいの滑走路で百五十人乗りぐらいの旅容機を開発すべきではないだろうか、こういう建議案が正式の審議会の建議案として技術庁に出ているわけです。一体どのように科学技術庁としては、この建議案をお取り扱いになったか、あるいはそれに基づいてどういう研究をしているのか、これをかいつまんでお答えを願いたいのであります。
  121. 芳賀貢

    芳賀委員長 先に長官が答弁して、不明な点とか補足すべき点は政府委員がやってください。
  122. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間も予算委員会で、北山先生から重大な問題として御提案がございましたので、私もこの目で確認しておこうと思いまして、一週間ばかり前に三鷹の宇宙航空研へ参りまして、現在STOLがどのように研究開発をされておるかということをこの目で確かめてまいりました。技術者関係は非常に熱意を持って、この新しい飛行機の開発にただいま鋭意努力中でございます。  現在といたしましては、われわれとしては五十二年度の予算に実験機の基礎設計費が一部認められましたので、これに基づきましていろいろな研究を進めてまいりたいと存じますが、実験機そのものの製作は大体五十六年度までに終わりたいと思っております。そして、五十七年度から五十九年度にかけまして実験飛行したい。もちろんこの実験機は、現在防衛庁の持っております輸送機のC1を使っておるわけでございます。あくまでも国産の飛行機、そのエンジンもあくまでも国産、こういう形でこのSTOL機の開発に取り組んでおります。  大体そのころに実験が終了いたしますと、さらに実用化にまでは、やはり三、四年かかると言われておりますから、昭和六十三年ごろになるのではないかと存じております。しかし、それでは余りにもおそ過ぎるじゃないか、余り悠長だ。私たちもそう考えますので、こういうような重要な問題は何とかもう少しくスピードアップができないものであろうかと考えております。  特に、科学技術庁におきまして実験機が一応一段落いたしますと、今度は実用機の方は通産省でやってもらわなければなりませんから、実用機の開発に関します初期の段階、こうしたところで、科学技術庁の実験機、そして通産省の実用機の開発、こうしたものが並行的に行われますると、若干私は、その実用化の年限が短縮できるのではないか、こういうふうなことも考えておりますので、今後、国土の狭隘なわが国といたしましては、一番大切な飛行機だと存じますから、この点に関しましても、ひとつ最大の努力をしていきたい、かように存じております。
  123. 北山愛郎

    ○北山委員 それからもう一つ問題があるのですが、これは通産省そのものじゃないようですが、通産省系統の団体から委託を受けて研究をされました航空政策研究会が、去年研究報告を出している。「民間航空機工業をとりまく諸情勢とその方向」ということで、研究報告を提出しておるわけです。  その中には、やはり同じような趣旨で、特に騒音公害を減らすということを主にして、これからの飛行機というのは滑走路の短い飛行機、千二百なり千五百とか、そういう程度でも開発ができるのだ、十分そういうものを採用することができるということで、現在、運輸省が三次空整——空港整備計画で二千メートルとか、あるいは二千五百とか、そういうふうに拡張している。そういう空港の拡張の費用よりも、そういう飛行機を採用した方が経済的にも有利である、あるいは公害も少なくて済む、騒音公害の範囲も非常に少なくなる、こういうデータをその研究報告が出しておるわけであります。  これは通産省の直接の委託研究ではないようでございますけれども、この問題について、通産省としてはどのようにお考えであるか、お伺いしたい。
  124. 山田勝久

    ○山田説明員 昭和五十年度の、財団法人機械振興協会の事業一つといたしまして、先生御指摘の「民間航空機工業をとりまく諸情勢とその方向」というレポートができております。これは一つの試論でございまして、航空政策研究会が学識経験者等を集めまして、作成いたしたものでございます。  私ども、航空機産業の行政をやっている者にとりましては、今後の航空機というのは世界的に、あるいはわが国国内におきまして、どのようなニーズでこれを持っていかなければならないかということを常に勉強いたしておりますので、その一環として、これを使用していくことになろうかと思います。  ただ、この研究は、あくまで試論でございますので、この中にも研究者が触れておりますように、かなり大胆な前提、あるいはかなり乱暴な計算過程をいたしておりますので、一つの方向としては参考になるわけでございますが、これをもちまして一つの具体的な政策の方向だということにつきましては、いささか、これをそのままとるわけにはまいらぬかと思います。国内のニーズということと、それから航空機の新しい開発というものは事業的に成立いたしませんといけませんので、世界的な需要というものと研究に関する費用等々を総合的に勘案いたしまして、今後一つの政策の方向づけを行う場合の一つの勉強の試論ということで使っていきたいと思っております。
  125. 北山愛郎

    ○北山委員 いまの通産省のお答えですけれども、航空機産業を受け持つ通産省としては、やはり一定の方針を持っていなければならぬと思うのですよ。今後における日本国内で使用する民間の旅客機はどういうものであるべきなのか、幹線に使う飛行機はどういうものを使うのが適当であるか、あるいは地方の空港で使うのはどうであるか、そういう方針を持たなければならぬと思うのです。  いまの研究報告についての批判は、それはそれで結構ですけれども、一体通産省はどのような方針を持っているのか、方針がないじゃないですか。
  126. 山田勝久

    ○山田説明員 航空需要に対しましては、運輸省の御所管でございますので、運輸省の方での政策ということになります。それに対して、航空機を供給するのは、わが国の国産ということと、それからアメリカあるいは欧州の飛行機を採用する、こういう二つの方向がございます。現在の航空機の新規開発ということになりますと、単に国内の需要、これはもちろん重要なニーズの一つで、私ども当然考えていかなければならない点でございますけれども、もう一つ事業としてこれを行うためには、世界的な需要というものを踏まえまして、航空機を開発し、生産していくということがどうしても必要になります。  昭和四十二年でございますか、国産初のYS11のプロジェクトの後のプロジェクトといたしまして、いわゆるYX開発というものを始めたわけでございます。当時百人ないし百五十人ぐらいの航空機の大きさというものを考えたわけでございますが、なかなか採算ベースあるいは経済ベースに合う市場というものがございません。そのうち大量輸送時代あるいは大型化いたしまして、現在では二百人から二百四十席の、経済性のすぐれた、そうして先生御指摘の低騒音の機体が、国内はもとより、世界的にも需要されるということで、現在YX開発を進めているわけでございます。  なお、いわゆるポストYS11というものにつきましては、現在各エアラインの方で検討を進めておりまして、幾つかの外国機の提案がなされておりますので、エアラインの方の判断ということになろうかと思います。先生先ほど御指摘の、五十年十二月の航技審の建議におきましても、当面のYS11の代替といたしましては、現在用いられている通常の輸送機、これはCTOLと申しておるわけでございますが、「CTOL輸送機を改造し必要滑走路長を短縮した機種を導入していくことになろうが」というふうに書いてございますので、当面はそういう方向に進んでいくものと思っております。
  127. 北山愛郎

    ○北山委員 時間がないのが残念ですけれども、とにかく通産省は通産省で、航空会社のベースで採算が合うとか、どの飛行機を買うとか、そういうことだけじゃなしに、YS11を開発したその後継機をどうするかという問題として、やはり方針をはっきり持つべきだというふうに思います。  また一方では、科学技術庁としては予算をつけて、そうして先ほどお話があったように、STOLの開発に向かってどんどん進んでいるわけです。実際に航空宇宙研究所では、そういう開発を進めている。通産省は、いまお話のような見解だ。運輸省の方では、STOLなんかはまだまだ先のことだということで、空港は地方空港でも二千メートルにしなければならぬ、こう言っている。ところが場所によると、山形空港のような千五百メートルで、現在あるボーイングの737ですか、そういうものを使って運航しているわけですね。そうかと思うと、東亜国内航空は千百メートルで済むような候補機を三つ挙げて、それを買うための調査委員会をつくって、それに乗り出している。  まるでばらばらなんですね。一方で国が開発する研究開発の仕事と、それから、そのような日本の国でどういうふうな飛行機を採用するかという問題、あるいは国産というか、国産技術の開発という問題も含んで、あるいはまたいわゆる運航上の問題からの角度、そういうものが皆ばらばらだという点が、まことに私は残念なんです。  そこで最後に、運輸省の飛行場部長がいらっしゃっているようですから、私は率直にお伺いするのですけれども、こういう事態の中で、しかも実際にエアラインというか、航空会社自身が千五百メートルなり千二百メートルで使えるようなジェット旅客機を採用しよう、急いで採用しようという方向でいるときに、どの空港も二千メートルにしなければならぬと言って第三次空整で、そういうふうに決まっているんだからというふうに押し通すのはおかしいんじゃないか。やはり場所によって、空港整備計画の中にもあるように、小型ジェット機の採用というものを含んで、場合によっては計画、既定のものでも変更するというような機動的な措置をとるべきじゃないでしょうか。どうですか、運輸省。
  128. 梶原清

    ○梶原説明員 御指摘のとおり、山形空港におきましては昨年十二月一日から暫定的に千五百メートルの滑走路を使いまして、暫定的な機種でございます小型ジェット機ボーイング737を就航させることにいたしまして今日に至っておるわけでございます。しかしながら、山形空港は本来二千メートルに延長する計画を持っておりまして、本年度を初年度とする第三次空港整備五カ年計画では、二千メートルの滑走路延長を計画をいたしておるわけでございます。  この千五百メートルで、暫定的な機種でございますボーイング737を飛ばすことにいたしました理由といたしましては、現在滑走路が千五百メートルございまして、付近の地形の条件とか気象条件が、この暫定的に小型ジェット機を飛ばすことに適しておる、また滑走路をかさ上げをしましてグルービング等の工事を行い、この機種につきましても強力なエンジンに換装してやっていく、また運航上種々の条件を付する、こういうことによりまして、先ほど申しましたように、昨年の十二月から、この小型機のジェット化を図っておるわけでございますが、あくまでもこれは暫定的な措置でございます。  また一方、先生御指摘のございました花巻空港に就航いたしております東亜国内航空が、短い滑走路で離着陸できるような機種の選定ということにつきまして調査を始めるような委員会を持ったことが新聞に報道されたわけでございます。私ども会社につきまして調べましたところ、YS11型後継機調査委員会というものを発足させまして、YS11型後継機の具備すべき条件の作成と、この基本的な調査を行うということでございましたわけでございます。ただ、しかし、機材の導入までには、まだ多くの調査検討課題が残っておりまして、そのTDKが具体的にその機種の選定に入っておる、あるいはそういう計画があるというわけでは全くないわけでございまして、今後YS11型後継機としまして、どのような機種があるのかというような調査に入っておるというだけでございます。  私どもといたしましては、花巻空港における将来の需要等を考えまして、あの飛行場を二千メートルに延長しなければいけない、こういうふうに考えまして、目下その空港整備計画推進しておるところでございます。
  129. 北山愛郎

    ○北山委員 科学技術の問題ですから、やはり行政の方も合理的に物を考えてもらいたいと思うのですよ。  私は、何も花巻空港だけ言っているんじゃない、第三次空整が済んでも、まだ四十ぐらいの空港をどうするかという問題があるでしょう。これに対して、先ほど申し上げた航空政策研究会などは、そういうものを全部拡張するということは非常な金もかかるし、障害もあるんだ。それよりは滑走路の短い飛行機ができるんだから、それを採用した方がいいんじゃないだろうか。その方が、また騒音公害もずっと少なく済むのだと言うて、金の計算までして、どちらが得かということまで資料として出しているのです。あるいはまた、先ほど通産省からお話がありましたけれども、その市場の問題ですね。一つの飛行機を開発しても、売れなければどうにもならぬ。東南アジアから何から市場の調査もしているのですよ。こういう機種をつくっても、相当数需要があるんだという調査までしているのですよ。  そういうふうないろいろ航空技術審議会とか、あるいはそういう権威のある航空政策研究会とか、そういうものの技術的な根拠に基づいた答申なり意見を採用して、それに基づいて行政をやっていくというのが、本来の、これはいまの行政の最も必要な点ではないでしょうか。ただ、既定方針が決まったから、しゃにむにそういう方針でやります。何ら合理性を感じない。私は時間がないから、これでやめますけれども、もっともっとこれは真剣に考えてもらいたいと思うのです。科学技術の方が進んでも、行政が非合理で非科学的であれば、何にもならないということを最後に私は申し上げて、時間がありませんから、質問を終わります。
  130. 芳賀貢

    芳賀委員長 次に、春田重昭君。
  131. 春田重昭

    ○春田委員 私は、最初に「むつ」問題についてお尋ねしたいと思います。この問題につきましては、先ほどの委員と若干重複する点があると思いますが、その点はどうか御了解願いたいと思います。  昭和四十九年の十月十四日に、政府と、それから青森県知事と、むつ市長と、それから青森県の魚連の間に交わした四者協定というものがありますけれども、まず、この四者協定につきまして、簡単に要点だけひとつ御説明願いたい、このように思います。
  132. 山野正登

    ○山野政府委員 昭和四十九年の十月十四日に締結いたしました四者協定の内容は大きく分けまして三つに分かれておりまして、一つは定係港撤去に関する部分、二つ目は地元の漁業振興策等に関する部分、三つ目は、同じく地元の放射能監視体制に関する部分でございます。  第一の定係港撤去部分につきましては、「むつ」が入港しました後六カ月以内に新しい定係港を決めると同時に、二年六カ月をめどにいたしまして現在の定係港を撤去するという内容になっております。  第二の地元に対する漁業振興策等につきましては、予算約十三億七千八百万円によりまして、漁業振興策その他地元の振興に必要な助成を行うといった内容になっております。  それから、第三の放射能の監視体制につきましては、地元と協議の上、しかるべき委員会をつくって、地元における環境放射能の監視に当たるといったふうなことが、その内容となっております。
  133. 春田重昭

    ○春田委員 いまのご説明ありましたように、特に第一項目の二年半以内に、むつ港を撤去して新定係港に移転するということでございますが、長官は最近の発言で、この新定係港は若干おくれるかもしれないが、極力努力して四月十四日という身近な線で検討していきたい、このように答弁なされておりますけれども、現時点の見通しというものは、どの時期を大体お見通しなさっているのか、その点御答弁願いたいと思います。
  134. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いま原子力局長が申しましたとおり、四月十四日が撤去期限でございまして、原子力船ですから、六十日以前に新しい入港先に入港届を出さなくてはならないということが規則で決まっております。ということになりますと、大ざっぱな計算でございますが、二月の十四日、そのときに出さないじゃないか、だから、そのときに入港届が出ないということは、四月十四日が守られないということじゃないか、こういうふうなことになるわけでございます。  確かにさようなことでございまして、その理由といたしましては、肝心かなめの長崎県におきまして、まだ受け入れの応諾がございません。だから、そうしたイエスと言われておらないにもかかわりませず、原子力船事業団が入港届を六十日以前に出すということは、これは穏やかではございません。したがいまして、二月十四日に出せなかったということは、言うならば、四月十四日の出港はなかなかむずかしくなったんだということを裏書きするようなことでございます。  したがいまして、先般青森県の知事、またむつの市長さん、さらには青森県の漁連の方々に直接私から、はなはだ残念であるけれども、四月十四日の撤去ということに関しましては若干これはおくれることあり得べし、その点だけはやはり長崎の事情もあるので、特に御寛容賜りたいということを申し上げた。そして現在そのまま推移いたしておりまして、長崎に対しましては、そうした事情もあるので、速やかに結論を出していただきたいものである、こういうふうにお願いしているところであります。
  135. 春田重昭

    ○春田委員 いまの長官の答弁からすれば、長崎県がオーケーと言わないので、むつを離れることができない、こういうことで、あたかも長崎県の佐世保の方が責任があるみたいな答弁に私聞こえたわけでございますけれども、決してそうではない。二年半の期間があったわけでありますので、その間政府がどれだけ努力していたかという問題が、やはり大きな課題になるわけであります。私は、そういう点、もっともっとこの期間中に精力的に努力すべきであった、このように思っているわけでございますが、現在ではいかんともしがたいわけでございます。  いずれにしても、四月十四日撤去はできないわけでございますが、そのために、保留のために青森県にとどまっていくわけでございますけれども、長官としては、いま青森県の方に説得したということでございますが、その場合に違約金などを払う、そういう条件を相手から、青森県の方から言われたのか、それともこちらの方から払う意思があるのかどうか、その辺のところをちょっとお伺いしたいと思うのですが。
  136. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほどちょっと言葉が足りなかったと存じますが、決して青森あるいは長崎のみに責任を転嫁しようというような心は毛頭ございませんので、御指摘のとおりに、この二年半の間、いろいろ事情あったにいたしましても遅滞をいたしておることは、やはりすべてわれわれの責任である、こういうふうに痛感をいたしまして、そしてそのことを率直に申し上げつつ、なおかつ御協力を両県にお願いをいたしておるという段階でございます。  したがいまして、長崎の方の受け入れに対するイエスの答えをちょうだいしておらないということに関しましては、青森の知事さんにもずっと申し上げたわけで、必ずしも私の申し上げたことをよくわかったとは、だれも青森の方々は言っていらっしゃいません。しかしながら、心の底では、十分努力はしておるけれども、なかなかむずかしい問題だということぐらいは御理解を賜っておるんじゃないかと思っております。しかし、決してそれに甘えまして、長崎がまだこうやっておくれておるから、青森済みませんと言おうとどうつもりではなくして、出口、入り口の問題でございますから、私は双方に同様の重さの責任を痛感をいたしながら、今日微力ですが、最善の努力を払っておるというところでございます。  だから、いまおっしゃいましたような何か金銭ずくめのお話は、当方からいたしたこともございませんし、また青森の方からも、そうしたお話をなされたということは一切ございません。
  137. 春田重昭

    ○春田委員 受け入れ側の長崎県の方では、知事の諮問機関である原子力安全研究委員会ですか、これがちょうどあすですか、二十三日、大体答申をまとめて知事へ出すわけでございますけれども、あしたでないとわからないわけでございますが、大体の予想としては、安全性を保つためには核燃料を抜いて入港させるべきである、こういう意見委員の間でも、また地元長崎県議会でも、また住民の間でも相当高まりつつあるということを聞いておるわけでございますが、この核燃料体を外すということですね、これは物理的に言って可能かどうか、その点のところをちょっとお伺いしたいと思うのですが。
  138. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この点に関しましては、研究委員会に出席をいたしました科学技術庁原子力局の参事官が説明をいたしておりまするが、それは決してむずかしいことではない、可能です、こういうふうに申し上げておるわけであります。ただ、われわれ科学技術庁としては、科学に対しましては、もう一〇〇%すべて確信を持って臨んでおります。しかしながら、いまこの原子力船「むつ」の問題は、そうした純粋科学論をいささか離れたところにおいて議論されておることも事実でございましょうし、また受け入れていただく長崎県が、わが国における二つしかない被爆県であるということも私たちは忘れてはならないと思うのでございます。  そうした意味合いから申しますと、純粋な科学技術論だけでこれに処していいのかどうかということになりますと、やはりそこには知事さんなり、市長さんなり、そうした方々が直接の責任者として、いろいろと御判断なさるのではないであろうか、こう思います。そうした方々の御判断に対しましては、私はその御判断を尊重いたします、こういう立場で臨んでおりますから、今日ただいま、せっかくあす安全研究委員会の結論が出るという日を迎えまして、ここで私みずからが、その方がいいとか、いや、それはだめだとかいうふうなコメントは、ちょっと差し控えさせていただきたいと思っておる次第でございます。
  139. 春田重昭

    ○春田委員 そうすると、もう一回確認しておきたいのですが、もしあすの答申で核燃料体を取り除くべきであるという答申が出た場合は、長官としては、その方法で入港させたいということで考えてよろしいですか。
  140. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これは本当にデリケートな問題でありまして、たとえば長崎では、そうしたことで世論というものが大体統一できるとおっしゃっても、では青森の方がそれに対してどういうふうな御感想をお抱きであろうか、あるいはまた県民の方々が、それをどういうふうに判断なさるであろうかという問題がございますので、先ほど私が、出口、入り口と申し上げては失礼でございますが、わかりやすく申し上げれば出口、入り口の問題は同じ比重で、同じ責任で私がいろいろとお願いをしなくてはならないということでございますから、したがいまして、あすのことであるとは申しながらも、私の口から、たとえば、そういう場合には云々と言うことは、この際、本当にいろいろデリケートなときでございますから、はなはだ残念でございますが、いませっかくの御質問でございますけれども、それでよろしゅうございますとか、いや、だめでございますと、ここで言うことすらも私はちょっとはばかりたい、こういうふうに思っておる次第であります。
  141. 春田重昭

    ○春田委員 確かに長官がおっしゃったように、もし長崎県の方で抜くべきであるという答申が出された場合、そうすると、それをどこで抜くべきかということが当然問題になるわけでございまして、青森県としては当然拒むでありましょうし、そうしたら海の真ん中でやるかという問題の新たな条件も出されると思いますが、いずれにしましても、それはあしたの答申を見て、私たち当該の委員が新たな場所で御質問を展開してまいりたいと思っております。  続きまして、長官もいまおっしゃっておるように、長崎県というのは、広島県とともに唯一の被爆県として、県民感情は非常に核については理屈抜きで非常に高いわけでありまして、安全であってあたりまえ、もし万が一事故があった場合は取り返しがつかない、こういうことを強く持っておるわけでありまして、漁連関係でも、核搭載の船が来るということだけで魚の売れ行きが落ちて死活問題になる。長官は絶対安全で間違いない、このようにおっしゃっておりますけれども、そういう心理的な波及効果は非常に高いと言われております。  たとえば、かつて水俣病が発生した場合、当地の水俣はもちろんのこと、水俣から遠く離れた五島列島、また対馬等の魚屋さんの店頭で、うちの扱っている魚は決して水俣の魚ではありませんという張り紙をして、お客さんに売っていったということがあるそうでございまして、そういう点を考えてみた場合、先ほど言ったように、そういう心理的な波及効果は非常に高いんじゃないかと私思うんですね。そういう点で、安全の上にも安全を期していかなければならないと私は思うわけでございます。  次に、長崎県の佐世保港では、長官としては、三年間の修理期間のみであって、永久母港としていく考えはないということで私は聞いておりますけれども、この点については間違いないかどうか確認していきたいと思っております。
  142. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 修理港として昨年の二月にお願いをしたわけでございまして、それをそのまま母港にする、定係港にする、よろしくということは、政府は一切申し上げておらないわけでございます。ただ、これを契機といたしまして、でき得べくんば佐世保としては将来母港にしたいという意図は、市長さんがお持ちであり、また市会にもそういう御意見を持っていらっしゃる方もたくさんいらっしゃるということだけでございまして、それに対しまして、現在われわれといたしましては、さように考えておりますから、どうぞそういう意味で修繕をお願いしたいとは言っておりません。したがいまして、これは後々の問題になるであろうと考えております。  いずれにいたしましても、修理に三年ばかりかかりますから、その三年間に定係港を考えよう、母港を考えよう、これはもう単数でなくして複数を考えた方が、将来の原子力船時代を迎えるために、たちまち必要なことであろう、こういうことを先般申し上げまして、きょうも午前の御質問に、そのようにお答えしたところであります。
  143. 春田重昭

    ○春田委員 長官のいまの答弁でもわかりますけれども、さきの十五日の閣議後、記者会見の中でも長官は、いまのような発言をなさったわけでございますが、あわせて、新母港というのは「むつ」だけを対象として考えない、十万トンクラスの相当大型な原子力船等が活躍するそういう原子力時代を考えて、いまから備えなければならないということを発言なさっておりますけれども、この発言から推察すれば、私は相当規模の大きい港ということが考えられますけれども、長官は、現時点で頭の中にどの地域かある程度予想されているんじゃないかと思うのですけれども、その点どうですか。
  144. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 はなはだ無責任なようでございますが、現在といたしましては、どの港を予想しているということはないわけでございます。それを午前中も実は非常に手厳しく御叱正をこうむったわけでございます。四者協定においては、半年内に定係港を決めるんだと言っておきながら、余り無責任じゃないか、こういうふうな御叱正を馬場さんからもちょうだいしたのですが、いろいろと原子力船「むつ」に関しましては社会問題、政治問題が絡んでおりますので、そんなことでできなかったということでございまして、したがいまして、この「むつ」が無事佐世保に入りまして、そしていよいよ修繕にかかった、入ったという瞬間から私たちは考えたい、こう思っておりますので、現在のところは予備折衝も、あるいは予備調査も何もいたしておらない。ここだけ申し上げますと本当に御叱正をこうむっても仕方ないと思いますが、現在の政治判断からそういうふうなことでございますので、この三年の間には複数の定係港を考えたい、かように存じております。  また、規模におきましても、ではすぐに何万トン、何十万トンを考えるのかというふうなところまでは、果たしていかがであろうかと存じます。確かに世界におきまして相当大規模な原子力船が活躍いたしておりまするし、現にこの間も英国が、アメリカに対しまして、大型タンカーを発注したと——これは仮契約らしゅうございます、仮発注らしゅうございますが、まあそういうふうな事態もあるということでございますが、その点、はなはだ、将来にわたりまして、まだこの見通しが暗いじゃないかと、これまたおしかりを受けるかしれませんが、一応「むつ」が完全に実用船として立証されるというまでには今後十年かかるわけでございます。  大体三年間修繕に必要とし、あとの一年間は出力検査でやる、そしてその次には三年、二年というふうな段階で実験航海をする、合わせて十年はかかるであろうというふうなことで昨年から勘定しますと、もう十一年の寿命を原子力船開発事業団にお与えくださいと言っておるのも、そういうことでございまするが、そうしたことを踏まえまして、この「むつ」が将来のわが国における原子力船の第一ページ、これをひとつ必ずあけてくれるようにという期待を込めて臨んでおるわけでございますので、さような意味で、四海海に囲まれておりまするわが国といたしましては、そのときに規模がわかるでございましょうけれども、一応、さような意味で、三年間に定係港は複数で決めたいものである、こういうふうに申しておるということを御理解賜りたいと存じます。
  145. 春田重昭

    ○春田委員 先ほども若干触れましたけれども、地元長崎県の「むつ」の安全性に関する研究委員会に、科学技術庁の石渡参事官ですか、研究委員会の答申原案について数項目のコメントしたメモを渡したということで、地元県議会では相当紛糾しております。地元側に言わせれば、この研究委員会というのは自主的な審議機関であって、自主的な審議によって答申をなすのが本来の目的である、そこへ本庁から来まして、政治的な介入をするのはもってのほかだ、こういう声が上がっているわけです。そういう点で、地元においては、技術家もおるわけでありまして、そういう専門家もいるわけですから、よけいなおせっかいである、こういうことで、ずいぶん文句も出ているわけでございます。批判も出ているわけでございますが、これは最終答申を誘導するねらいがあるのではないかということも言われておりますけれども、その真意はいかなることでメモを渡されたのか、その辺のところをちょっとお伺いしたいと思います。
  146. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細は直接上司の原子力局長からお話をいたしますが、私も、そういうふうな報道を目にいたしまして、びっくりして、こんな事実があったのかと直接本人にただしましたが、いやしくも政府が、県の知事さんの諮問機関である研究委員会に対しまして、いわゆる内政干渉したとか、あるいはまたその結論を暗示したとか、そういうことは一切ございませんので、私もほっといたしまして、また地元もそのことを了解してくれた、こういうふうに私は今日聞いております。詳細は局長から申し上げます。
  147. 山野正登

    ○山野政府委員 従来この原子力船の修理港問題につきましては、ただいま御質問のありました件に限りませず、私ども科学技術庁事務当局としましては、お願いいたしました先の県並びに市の事務当局と、できるだけ意思の疎通を図るべく、各種の情報連絡等をしておるわけでございますが、去る三月十日に、高田副知事が、わが方の石渡参事官を来訪いたしまして、その際、この「むつ」の研究委員会の報告書の案につきまして、いろいろ、私どもは新聞報道等で承知しておったわけでございますが、その技術的内容につきまして、先方安全委員会の事務局たる高田副知事と、わが方事務局石渡参事官とが、いろいろ懇談した。この懇談の中で、かなり技術的に細かい問題もございましたので、その点について参事官の方でメモにしてお渡ししたということでございまして、これはあくまでも県の事務当局との理解を深める、理解を一致させるためのメモでございまして、新聞に伝えられておりますように、この研究委員会の委員長への私信といったふうな性格ではないということでございまして、この点につきましては、新聞報道以後、県当局にも確認をいたしておりまして、県の方も全く同じ認識を持っておるというふうに承知しております。
  148. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにしても、この「むつ」問題は石油依存のエネルギーから原子力エネルギーへ転換していく今日、真剣に考えていかなければならない問題でございますけれども、しかし原子力開発と、この「むつ」を同一時点で考えるのはまだ早計である。まだまだ技術的な研究段階であり、事故、トラブル等が続出して、きわめて安全性に欠けていた面においては、国民のコンセンサスもまだ得ていない。そういう中で着手したこの原子力船「むつ」というものは、欠陥船と言っても決して過言ではない、私はこのように思っておるわけでございます。したがって政府としては、その責任を十分に反省して今後の技術面、行政面の対処をしていくべきであると苦言を呈して、この質問を終わりたいと思います。  続きましてエネルギー政策について、まず通産省の方からお伺いしたいと思いますが、現在わが国の原子エネルギーの占める割合というものはどれくらいなのか、最初に御説明願いたいと思います。
  149. 武田康

    ○武田政府委員 お答えいたします。  現在のわが国では、油に直しまして年間約四億キロリットル相当、ちょっと下回っているかと思いますが、その程度のエネルギーを全体として使っております。そのうちの約三分の一が電力の形でございます。  原子力につきましては、現在運転中の発電所が十三基ございまして、総出力が約七百四十万キロワットでございます。電気の設備出力ということで申し上げますと、大体七%から八%程度のものでございます。それから、総エネルギー供給に占めます供給エネルギー量というのが二%前後、二%をちょっと上回っているかと思いますが、それが現在の原子力のエネルギー利用の現状でございます。
  150. 春田重昭

    ○春田委員 総合エネルギー調査会が出しました長期エネルギー需給計画というものが一昨年の八月十五日、中間答申を出しておりますけれども、これは現在も生きておりますか。
  151. 武田康

    ○武田政府委員 総合エネルギー調査会では御指摘の昭和五十年に、昭和六十年を目標年次といたしますエネルギー見通し、エネルギー計画をつくっております。これは、その後昭和五十年の十二月に閣僚懇談会、閣僚会議でもそういうようなことで、長期の計画ということになっておりますが、その計画の性格は、そのとおりが計画であるということではございませんで、たとえば、その中に入っております原子力につきましては、そういう努力目標で官民一致して、官民の総力を挙げてその目標を達成するんだ、こういうような趣旨の計画でございます。それで、現在もそれが閣僚ベースで議論になり、あるいは総合エネルギー調査会の答申というかっこうで出ております最新のものでございますが、先生御承知のとおり、やはりごく最近新たな意味の閣僚レベルの会合が設けられておりますし、また総合エネルギー調査会におきましても、基本問題懇談会等を設けまして、現在の情勢に応じましたレビューの検討を開始しているのが現状でございます。
  152. 春田重昭

    ○春田委員 いま審議官もおっしゃったように、一つはやはり見直す段階に来ているんじゃなかろうかと思います。  計画では、昭和五十五年度におきましては原子力は一千五百五十万キロ、昭和五十九年度で二千百八十九万キロということになっております。この中には建設中のものもありますし、安全委員会の審査を決定した段階のものも含んでいることの計算でございます。そういう点で、長期エネルギーの需給計画では、昭和六十年には四千九百万キロとなっているわけですね。したがって、昭和五十九年に二千百八十九万キロが昭和六十年の一年間で四千九百万キロまでいけるかどうかということは、これはもう間違いなく不可能でございます。そういう点では五十五年、六十年のこの計画というものは目標達成は不可能でございますし、見直す必要があると思います。ぼつぼつ作業にかかっているということは聞いておりますけれども、大体いつごろに再度見直した計画が出されるのか、この辺をちょっとはっきりしていただきたいと思うのです。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕
  153. 武田康

    ○武田政府委員 原子力の六十年、四千九百万キロワットという数字につきましては、先生御指摘のとおり、なかなかその達成はむずかしいという数字でございまして、現在のところ運転中のもの、建設中のもの、あるいは安全審査中のものと準備中のものを含めまして、先生御指摘のとおり二千二百万キロワット弱というのが、ある意味では完全に見通しのついている数字でございます。  ただ、現在昭和五十二年ですから、あと八年間ございまして、原子力発電開発のリードタイムは非常に長いわけではございますが、その努力次第では、いま申し上げました二千二百万キロワットに何がしかの数字、努力目標といたしましては四千九百万と二千二百万の差が二千七百万ではございますが、その間の何がしかの数字はつけ加え得るかとは思っております。しかし、なかなかその努力の程度が大変と申しますか、四千九百という数字は、なかなかむずかしい数字ではございます。  そこで、先生がいまお話しになりました、それじゃどんなふうに、どんなタイミングで新たな数字が出るのかということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、総合エネルギー調査会のいろんな部会でいま議論を始めていただいた段階でございまして、現在のところ、来年の夏ぐらいまでを目標に相当な詰めをやっていただくというかっこうになっております。ただ、それは一年数カ月先でございますので、中間的には、ことしの夏前ぐらいまでに、ある意味検討中間結果的なものを出してもらいたいと思って、いま努力をしてもらっているところでございます。  なお、もちろん同時に先ほど閣僚レベルの高度な判断の会合も再開していただいているということを申し上げましたが、これらのもろもろの会合といいますか委員会といいますか、そういったものが、これから連動して検討してくださるというようなかっこうになろうかと思うのでございます。
  154. 春田重昭

    ○春田委員 電調審の決定を得てからも、建設にかかり、それから運転開始にかかる年数というものは、やはり大体五、六年かかってしまうわけですね。そういう点から言ったら、まだ八年ありますけれども、やはり相当厳しいのじゃないかと私は思います。そういう点で、この計画というものが政府側の努力目標ということはわかりますけれども、いずれにしても現状認識が非常に甘い。こういう点が今日のこのような、二年足らずして見直す作業にかからなければならないという現状ではなかろうかと思うのですね。そういう点で、作業を進めていく中で、いままでの経験からして、どういう点がネックになっていたのか。いろんな条件が想定されると思いますけれども、まず原子力発電の建設に対する最大のネック、これはどういう点があるのか御説明願いたいと思います。
  155. 武田康

    ○武田政府委員 先生御指摘のとおり、努力目標とは言いながら四千九百万はなかなかむずかしいわけでございます。ただ、二年前、三年前にそういう数字を掲げて、そのときにはあながち不可能でないということだったはずであろう、それはどんなところで、ひっかかっているのか、こういう御趣旨であろうかと思いますけれども、二、三点挙げられるかと思います。  先ほど申し上げました総合エネルギー調査会で検討してもらっている事項の中に、一つは資金的な問題が入っております。もう一つはパブリック・アクセプタンス、ちょっと横文字でなんですが、適切な日本語がございませんので、この言葉をそのまま使わせていただきますが、そういった問題が入ってございます。  第一の資金の問題は、目標数字を定め、それに向かって努力するわけでございますが、その努力が現実のものとなるためには、もちろんほかの要素がたくさんございますけれども、必要な時期に必要な資金の手当てができて、それが供給される、こういうことが必要でございまして、これは何も原子力だけのことではございませんけれども、エネルギー計画すべてにつきまして、そういうことが言えまして、もちろんその計画上頭の中で考え、こういうことをしなければいけないということが出ながら、それがまさに実行されなかった面であるいは実行の足りなかった面があるというようなことがございまして、これが一つの大きな話題、テーマになっておるわけでございます。  第二に申し上げましたパブリック・アクセプタンスというのは、たとえば原子力発電の立地にいたしますと、原子力発電が必要であり、かたがたその立地地点に原子力発電を設置いたしまして、周辺の地域方々に対して御迷惑をかけない、あるいは当該地域方々とともに発展していけるというあたりにつきまして十分御理解をいただく、その当該地域のみでなくて、あるいはもっと広い地域であるかもしれませんけれども、そういう地元の方々、地元をもう少し広げまして、その地域方々の御理解と御協力のもとでなければなかなかできないことでございまして、その辺について必ずしも十分でない点があった。なお、かたがたバックグラウンドの一つといたしましては、将来に向かいましてエネルギーをいまよりももっと多く、形は原子力発電の形であれ、ほかの形であれでございますけれども、もっとたくさんのエネルギーがなければ、これからの日本全体の暮らし向きといいますか、あるいは国際社会で役立っていくことのために困るのだ、そういう必要性のことも裏にあろうかと思いますが、そのあたりにつきましても、国民全体の御理解をいただくという点につきまして不十分な点があったかもしれない。そういったあたりが二番目の大きな話題、テーマのパブリック・アクセプタンスの問題でありまして、そのあたりにつきまして再度十分な検討をして、もっと実現性があり実行性のあるプランにしていきたいというのが現在の問題意識でございまして、過去にさかのぼってみますと、いま申し上げましたようなことについて必ずしも十分でない点があったということが言えようかと思います。
  156. 春田重昭

    ○春田委員 いまの二番目の中で立地条件ということを言われましたけれども、原子力発電はやはり海岸部に建てなければならないという面があるわけでございますが、特に海岸部の建設の場合は沿岸漁業の面で大きな問題が起こるわけでございます。とりわけ昨今の二百海里問題で遠洋ができないということで沿岸漁業が非常に重視されている段階で、沿岸漁業の問題と、このエネルギー政策、現実面と将来性の面、この二面両方とも大事なんですけれども、政府としては、漁民の方たちになかなか立地面で了解が得られないのは、この沿岸漁業の補償等の問題があるのじゃなかろうかと私は思うわけでございます。  エネルギー政策と漁業政策をどういう形で住民の方たち、特に漁民の方たちに説得なさっているのか、納得させようとされているのか、その辺のところを御説明願いたいと思います。
  157. 武田康

    ○武田政府委員 お答え申し上げます。  原子力発電所は、その技術的性格から相当大量の復水器冷却水が必要でございます。火力でも同様でございますけれども、そういう点で海岸以外に立地するのが事実上不可能、理論的に不可能ということではございませんが、事実上不可能でございまして、現在日本にある原子力発電所につきましては全部海岸立地でございます。理論的と申し上げましたのは、非常に大きな川のございますアメリカ、ヨーロッパ等におきましては内陸立地もある、こういう意味でございます。  日本の海岸は、先生御指摘のとおり日本の漁業生産のたしか二割くらいを占めているわけでございまして、どの地域をとりましても、何らかの意味の水産業、これは養殖なり海洋漁業なり両方ございますけれども、漁業の対象になっておるわけでございます。原子力発電所から排出されます復水器冷却水は、取り入れ口に比べまして六、七度くらい温度が高くなって出てまいります。もっとも数十メートルの範囲内で薄まりまして、ほかに比べまして二、三度の温度上昇、それからもう少し広がりますと、一度とか二度という範囲にはおさまってまいります。しかし発電所の放水口から数百メートル、大きなところでは一キロ、あるいはもうちょっとくらいの距離まで一度、二度の表面の温度変化がございます。  実は、これは専門屋さんに聞かないといけないのでございますが、魚類の適温といいますか、そういうのは上下の幅がせいぜい四、五度くらいのようでございまして、中にはもっとその温度に対して鈍感な魚もあるようでございますし、敏感な魚もあるようでございますが、そういう意味では温度変化が魚の成長なり回遊なり何なりに影響を与えることは否定できないわけでございます。同時にワカメとかノリとか等につきましても、これは定着しているわけでございますけれども、何らかの意味の影響を与えるわけでございます。  そういったような意味で、発電所から出ます温排水が一体どのような温度変化を当該地域の周辺に及ぼすか、これは予測と実測と両方ございますが、そういう勉強をいろいろしておりますし、また一度、二度の温度変化が魚類なりあるいは養殖の対象となっておりますワカメ、ノリ等にどんな影響を及ぼすか、こういうような勉強もいろいろしておりますし、それから同時にもう少し機械的な、復水器の中を海水が通りましたら、どんな影響をプランクトンに与えるのだろうかというようなのをいろいろやっております。  したがいまして、そういう結果として、この程度の範囲にこの程度の影響が及びそうであるというようなあたりは、だんだん勉強の成果が出まして、かなり正確、と言いながら、毎日毎日気象、海象条件が違うものでございますので完全ではございませんが、かなりのレベルにいっております。  ところで一方、魚類なり海草なりに、どれだけ具体的な影響を及ぼすかという点につきましては、何分生物体でございますし、それから通常の状況におきましても気象、海象の変化というのは、かなり幅があるものでございますので、物理学の実験とはちょっと違いまして、かなりの時間をかけませんと、完全な結果は出ない性質のものでございます。それにいたしましても、過去数年来いろいろなことをやりまして、少しずつわかってきておりますので、そういったことをベースにいたしまして、こういう発電所をつくれば、こんなことになりそうである、影響の程度等も一部入りましていろいろ御説明し、それで御理解を得るという努力をしておるわけでございます。  一方制度的には、先ほど先生から電源開発調整審議会というお話がございましたが、電源開発調整審議会にかけますときには関係各省ということで、水産庁からもいろいろ御意見をいただいておりまして、それが一つの中央ベースでの調整の場になっているわけでございますし、また関係都道府県知事の御意見も伺って同意をいただいているわけでございまして、その前提としましては、当該地域の漁業組合なり漁業者の方々からの御意向というものも県知事の御意向の中に入っているわけでございます。  いま申し上げました多面的な努力のほか、温排水によります養殖とでもいいますか、そういう勉強もするというようなことで、いろいろ関係者の御理解と御協力を得て立地を進めていく、また、いままでも立地を進めてきたというのが現状でございます。
  158. 春田重昭

    ○春田委員 続きまして、日米会談の問題につきましてお尋ねしていきたいと思います。  日本時間で、きょうとあすだと思いますけれども、福田総理とカーター大統領の会談があるわけでございますが、その最大の訪米の目的は、使用済み核燃料の再処理の問題ではなかろうかと思うのです。この問題につきましては、カーター大統領は、昨年の十月、フォード大統領が教書を出しましたその路線を継ぐものとして想定されるわけでございます。その一つの目安としても、昨年の九月二十五日ですか、サンジエゴ市の演説会における核問題の発言がございます。七項目だったと思いますけれども、この中でカーター大統領は幾つかの問題を提起しております。この点をわが政府としてはどのように認識なさっているのか、まず最初にお伺いしたいと思うのです。
  159. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 アメリカの新核政策が決まるのは、福田・カーター会談が終わってほど遠からぬ時点であろう。それは直接私がアメリカ原子力規制委員会のギリンスキー氏と国務省のシャインマン氏が表敬に来てくれましたときにただしまして、そして両氏からその答えを得たところでございます。だから、あす予定されておりますカーター・福田会談では、お互いの話をされる、したがってネゴシエーションではないだろう、こういうふうに思っております。  しかし、いま御指摘のとおりに、確かにフォードさんも具体的な話をし、カーターさんもそれを踏襲するだろうということで、われわれが想定いたします根にあるものは、どういたしましても、プルトニウムがやはり軍事利用されては大変なことになるというのが、これはカーターさんの念頭から去らない問題だろうと思います。もちろんインドがそうした先鞭をつけたものでございますから、したがって何としても核兵器保有国たると非保有国たるとを問わず、お互いにこの問題には、もっと真剣に取り組みたいということでございますので、この点に関しては、われわれといたしましても双手を挙げて賛成でございます。  しかしながら、いやしくも私たちも、すでに昨年NPTを批准をし、またそれに参加をしている国家でございますが、その第四条には、明らかに核兵器保有国と非保有国との間に差別があってはいけない、特に非保有国の平和利用そのものを妨害する、支障を来すというふうなことがあってはいけません、これが四条に明記されておるわけでございますから、今回、あの批准を非常に慫慂されましたアメリカが、もしそれを無視して、ひとり日本のみ再処理は許さないというふうなことがありせば、これは明らかにNPTの第四条に反するではないか、私ははっきり申し上げて国際的にもアメリカの信を問わなければならない、それくらいの強い態度で臨むべき問題である、こういうふうに申し上げておるわけでございます。  言うまでもなく、再処理問題が将来のエネルギーの上におきまして、まさにわが国にとりましては死活問題であるから、恐らくそうした主張を総理大臣もなさると存じております。それに対して果たしてアメリカがどういうふうに出てまいりますか、いまのところは、そう甘い考え方は私たちはいたしておりませんが、やはり共通して、これは日本だけの問題ではなく全世界の問題として扱いたい、こういうふうに先日出会いました二人のアメリカ人も語っておりましたので、したがいまして、われわれといたしましても、あすの首脳会談を非常に注目をいたしておるという段階でございます。  ただ平和利用に関しましては、われわれといたしましても、シャインマン並びにギリンスキー氏に申し上げましたが、日本が軍事的目的を持って核を利用しようなんというような下心がないことは、毫もそういう疑いを差しはさんでおらないということは、二人のアメリカ人も申しておりました。したがいまして、わが国にとりまして世界の平和を願うと同時に、民族自立のためにも再処理が必要だというところが一番のポイントではなかろうかと存じておるところであります。
  160. 春田重昭

    ○春田委員 あすの会談では結論は出ないと思います。四月中ごろですか、アメリカ政府としては核問題についての政策を発表するそうでございますので、あしたの段階では、結論は出ないと思いますけれども、きわめて重視する問題ではなかろうかと私は思っておるわけでございます。  日米会談とともに、もう一つ問題なのがカナダの問題ではなかろうかと思います。現在わが国では原石の天然ウランをカナダから購入して、アメリカで濃縮して国内で使用して、イギリスやフランス等に使用済みの核燃料の再処理を依頼している、こういうことではないかと思うのです。そこで、過日の日本・カナダの原子力協定は、非常にむずかしい段階になって暗礁に乗り上げたということを聞いておりますけれども、本年の六月までは未解決のまま経過しそうだ、このようにも言われておりますけれども、この日本とカナダとの天然ウランの買い付けの問題、これは現在ではどういうかっこうで進んでいるのか、御説明願いたいと思うのです。
  161. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 天然ウランに関しましては、カナダそのほかの国々もございますが、おおむね昭和六十二年度ぐらいのところまできちっと契約が結んでございます。しかし、本年度カナダから入ってきます天然ウランは、いま御指摘のとおり、アメリカでこれを濃縮をしてもらうわけですが、昭和五十四、五年度にこれを燃料として用いなければならないというふうな計画のものでございますから、日加間の原子力協定に基づきまして、この交渉を速やかに円満に解決をしなければならないことは、いまさら申し上げるまでもございません。この件に関しましても、先般カナダ大使がわざわざ私のところに来てくれましたから、私からも、日加間の友好親善のためにも、ひとつお互いが速やかに解決しようではないかということを申し添えまして、向こうも決してこれをひん曲げたり、あるいはまた何か意図的に用いようなんというような心は毛頭ないということを申しておりました。  御承知だろうと思いますが、多くの面におきましては、もうほとんど話し合いが済んでございます。たとえば、カナダもインドに非常に原料を送っておった国でございますから、したがいまして、インドがプルトニウムをつくったということで、そうした責任を痛感いたしておりまするから、特に平和利用といえども核爆発の実験はやめましょう、たとえばこういうふうな取り決めも両国間においてなしたわけでございますが、二点ばかり、まだいろいろ議論が合わないところがございます。  一点は、天然ウランの濃縮度の問題でございます。もう一点は、技術の移転の問題でございます。そうした点におきましても、先般はどうにかこうにか、わが方の主張もカナダ側に大体了解をしてもらっておるところでございますが、まだ最終的な話が煮詰まっておりませんので、十二分にその二点に関しましては、ただいま鋭意外交面におきまして煮詰めるべく努力をいたしておるという段階であります。
  162. 春田重昭

    ○春田委員 この問題も、あすの会談、それ以後に待たなければならないと思いますけれども、一応アメリカは提案の中で、使用済み核燃料を全面的にアメリカへ集めて、そしてアメリカ国内で貯蔵する体制を主張しているわけでございますけれども、現在わが国の対応策は、これに対してどのようにとろうとなさっているのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  163. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 わが国といたしましては、あくまでも濃縮ウラン技術をわが国で確立をして、そして天然ウランを輸入したら、わが国でそれを濃縮したい、これが念願でございます。同時に、その濃縮ウランを使いまして、使用済み燃料となりましたものを今度は再処理工場において再処理に付しまして、そこからプルトニウムを抽出をして、将来それはわが国における一番高能率の高速増殖炉の燃料として使いたい、これがわれわれの願いであります。したがいまして、アメリカに対しましても、次のように私たちは考えております。  まず、世界世界というふうにグローバルな話になっておりますが、しかし、現在の世界を分析いたしますと、四つの段階になるのではなかろうかと私は思います。  第一点は、フランス、英国のごときは天然ウランを持っております。英国はカナダで持ち、またフランスは植民地に持っておるわけであります。そして両国ともに、これは核兵器保有国でございます。したがいまして、現在も再処理技術、能力を持っております。だから、これらはあえてアメリカの今回の新政策に直撃弾は浴びないのではなかろうかと思っております。ただ、コマーシャルベースとして他国の再処理、これを引き受けているわけでございますから、その面においては若干の影響があるかな、こういうふうにながめておりますが、先般の原産会議におきましても、両国の主張は、アメリカは得手勝手過ぎるということをはっきり申しております。  第二番目のグループは、イタリアあるいはまたスウェーデンのごとく、いわゆるユーラトムに所属している国々でありまして、この国々は、現在のところ、みずからの国で再処理をしよう、そういうふうな意図を持っておりません。あくまでも、どこかの国に任せばいいじゃないかという国でございますから、したがいまして直撃弾は受けないであろうと、われわれは考えております。  第三番目は、ちょうどいま発展途上国が、われわれもやはり再処理をしたいというふうに言っておられる国々があるわけでございます。たとえばパキスタン、イランあるいは韓国、ブラジルでありますが、率直に申し上げますと、その中で韓国のごときは非常にむずかしい問題だから、もうギブアップしたと言っている国もあれば、ブラジルのごとく西ドイツから再処理のプラントを輸入したいと言っている国もございまして、これらはまだ再処理の技術を持っておりません。そして、中にはパキスタンのごとく、ブラジルのごとく、NPTにも参加いたしておらない国もあるわけでございます。したがいまして、これが三番目に考えられるグループであろう。  四番目のグループが日本と西ドイツでございまして、ともどもに非核保有国でございます。しかし、ともどもにNPTには、すでに参加いたしております。そして、ともどもに天然ウランを持っておりません。いわゆる資源がございません。だから、非常に苦労いたしまして、みずからなる再処理工場を持とうというわけで、今日、わが国の再処理工場は、いよいよこの夏に臨界に達する、来年からはいよいよ本格操作である、ここまでやってまいったわけであります。ドイツもちっぽけなやつでございますが、再処理工場を持ちまして、なおかつ、それを国産技術として輸出しよう、輸出産業の将来の花形だと言わんばかりにブラジルと交渉している最中である、こういう国でございますから、もしも伝えられるような方向で再処理禁止ということになれば、一番直撃弾を受けるのは日本とドイツでございます。  特にわが国は、カーターさんも福田総理に電話をなさって、またきのうも出会われて話をしておられますとおりに、これからはグローバルな、世界の問題として日本と西ドイツがロコモティブとなって牽引力を発揮してもらわないことには世界の経済はうまくいかない、こういうふうにおっしゃっておるわけでございますから、さような役割りを果たそうとすれば、いかにわが国の再処理ということが、わが国の今後の経済に大きな問題であるかということをひとつ考え直してほしい。私たちは、いままでアメリカの人たちと接触するたびに、その点を主張してまいったわけでございます。  したがいまして、そういう点からもアメリカに対しまして、今後いろいろ安全というものに対するところの体制はございましょうけれども、しかし私たちといたしましては、現在私たちが持っているプランがこれこそ日本にとって一番大切なことであり、同時にまた、アメリカがよく主張なさる世界のロコモティブとしての役目を果たす、これが最短距離だ、こういう気持ちで、現在一歩もよそ道をせず、また条件もつけず既定方針どおりに今後進んでいきたい、こういうふうに思っておるところであります。
  164. 春田重昭

    ○春田委員 いま長官から西ドイツの話が出ましたので、あわせてお尋ねしたいと思うのですが、このようにアメリカは非常に厳しい態度をとってきているわけでございまして、今後の成り行きが注目されるわけでございます。こうした態度は一挙にやわらぐようには、やはり考えられないという点で、一部ではアメリカ依存から、ソ連から天然ウランを購入したらどうかという話も出ておるということを聞いております。  ソ連は現在備蓄量が二十万トンですか、需要供給の面でも非常にそういう面では余裕がある。供給では年間一万七千五百トンですか、消費量においては九千トンということで、かなりの余裕があると聞いておりますし、そういう点においてはソ連の方に交渉してみたらどうかという学界からの話も出ているそうでございます。とりわけ西ドイツがソ連に対して異質の政策を展開して非常にアプローチしておるということを聞いておりますけれども、日本としては、このカナダ、アメリカ依存からソ連へも働きかけていく意思があるかどうか、その辺のところをちょっとお聞きしたいと思います。
  165. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御指摘のとおりに、石油で首の根っ子を押さえられて、にっちもさっちも進むことができない、いわゆる自主性がないというのが石油に関するわが国の立場でございます。それと同じようなことを代替エネルギーの原子力においても繰り返すならば、これほど愚かなことはない。だから、何としても原子力の面においては自発的な、自主的な核燃料サイクルの確立だということが今日のわが国の使命でなくちゃならないと考えております。だから今度のアメリカの外交におきましても、せっかくあすカーター・福田会談があるわけですから、いまそれを予測いたしまして、私がどうのこうのと言うことも、一面におきましては差し控えていかなければならないと存じますが、総理大臣といたしましては、最終的に私と打ち合わせいたしましたときに、今後これは外交面で大いに交渉を進めなくちゃならないだろうが、言うならば、それの基盤づくりだという気持ちで、おれは行ってくるからということを言っていらっしゃいました。  確かに、わが国の産業界の中、あるいは学者の方々の中からも、今度は拝みます、頼みますという態度の外交であってはいけない、やはり日本の独自の外交を展開しなくちゃいけないということでございますから、将来におきましては、わが国もまず天然ウランをどこから入手し得るか、またそれまでのつなぎはどうするかという問題は、確かに大きな問題だろうと思っております。  しかし、だからといって、いませっかく日米親善の両首脳会談があるときに、国会において科学技術庁長官がソ連とすぐに話し合いをつけるんだというようなことも、これまたいささか私は勇み足ではなかろうかというふうな考え方を持っておりまするし、同時に、先ほどカテゴリーとしては四つに分けましたが、では、われわれはドイツとだけ組んで、すべて事成れるかと申し上げますと、決してさようなことでもない。やはりアメリカ、カナダ、さらにはヨーロッパ、フランス、イギリスすべての国々との連携において、わが国原子力行政も成立する、こういうふうに考えておりますので、そうした点におきましては、厳しい面がございましょうけれども、われわれといたしましては弾力性を持ちながら、しかし、決して拝みます、頼みますではなくして、やはりわれわれの主張は主張として貫いていくような外交が必要であろうと考えております。
  166. 春田重昭

    ○春田委員 現在の原子力発電の電気出力は七百四十二万キロと言われておりますけれども、この出力に要した使用済み核燃料というのは年間どれくらいの量が出るのか、この点ちょっとお聞きしたいと思うのです。  また、この使用済み核燃料はいま海外へ再処理を委託しているわけでございますけれども、この量もどれくらいの量なのか、あわせて御答弁願いたいと思います。
  167. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一昨年決めました長期需給計画に基づく一九八五年の原子力発電、これが一応四千九百万キロワットとなっておりますから、その四千九百万キロワットを一つの土台として考えました場合には、昭和六十年までにおおむね四千百トンの処理をしなければならないということになるわけでございます。そのうちの三千三百五十トンに関しましては、大体話ができ上がっておるわけでございますが、たとえこの夏から臨界に入りまするところのわが国の一号再処理工場が完全に動きましても、年間に二百十トンしか再処理をする能力がございません。  したがいまして、こうした面におきましては、将来はどういたしましても再処理に関しまして、もう一度フランス並びに英国にお願いをしなくちゃなりませんし、同時にまた、わが国内におきましても第二再処理工場をつくらなければならないというふうな状態でございます。
  168. 春田重昭

    ○春田委員 一九八五年四千九百万キロワットというのは、先ほども問題になりまして、これはちょっと不可能じゃないかと思うのですね。その時点で約四千百トンの使用済み核燃料が出るということで長官も、いまおっしゃいましたけれども、私、七百四十二万キロワットがいま出力されているわけでございますが、現時点の使用済みの核燃料はどれくらいかということをお聞きしているのです。
  169. 山野正登

    ○山野政府委員 昭和五十年の数字でございます。五十年度と申しますと、年度末の規模で六百六十万キロワットに当たる年でございますが、その年度で年間の再処理需要が約九十トンということになっております。
  170. 春田重昭

    ○春田委員 海外委託量はどうです。
  171. 山野正登

    ○山野政府委員 海外委託につきましては、先ほど大臣の方から御説明ございました、この六十年までの四千百トンという需要に対しまして約二千十トンの海外委託を現在いたしております。
  172. 春田重昭

    ○春田委員 それは契約であって、現在委託しているのは、これだけの量はないでしょう。もっと少ないのじゃないですか。
  173. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま英仏、海外に委託契約済みのものは二千十トンでございまして、現在商議中のものは、これとまた別の数字でございます。
  174. 春田重昭

    ○春田委員 いま局長がおっしゃいましたように、海外委託というのは、イギリスとフランスだけですか、確認したいと思うのです。
  175. 山野正登

    ○山野政府委員 そのとおりでございます。
  176. 春田重昭

    ○春田委員 この海外委託というのは、日米の原子力協定第八条C項にあります、米国から輸入した核燃料を再処理するには、すべてアメリカ政府の同意が必要であるということでありますけれども、これに抵触いたしますか。
  177. 山野正登

    ○山野政府委員 米国から輸入いたしました濃縮ウランにつきまして、これを再処理等のために海外に移転いたしますときには、日米原子力協定の第十条によって必要な米国の了解をとりつける必要がございます。
  178. 春田重昭

    ○春田委員 抵触するとすれば、いま話題になっている、あすの会談が非常に重要視されるわけでございますけれども、万が一アメリカ政府が再処理はだめだ、海外委託もだめだ、こう言った場合、これはもう全面ストップか一時ストップになるわけでございまして、こうした場合、現在のイギリスまたフランスに、今後年間どれくらい海外委託に出していきますという契約があると思うのですね。そういう点で、今後ストップになりますので、契約違反とか新たな問題が出ませんか。
  179. 山野正登

    ○山野政府委員 昨年の暮れに、使用済み燃料を英国に出荷いたします際に、英米においても必要な話し合いをしておるようでございまして、具体的には英国に出します場合には、日米間の話し合いと別途英米間の話し合いがあるわけでございまして、現在米国と折衝中の問題につきまして、米国の理解が得られますならば、英国等への輸送についても同じく了解が取りつけ得るというふうに考えております。
  180. 春田重昭

    ○春田委員 現在、海外委託で再処理されているものには、抽出されるものに濃縮ウランとプルトニウムと廃棄物があると思うのですが、これらのすべては全部日本へ持ち帰っているのですか。
  181. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいままでの段階は、英国に置くか持ち帰るか、これは日本のオプションでございまして、もちろん潜在所有権は日本にあるわけでございますが、大部分は英国に置いております。
  182. 春田重昭

    ○春田委員 イギリスでは、将来ですけれども、放射能灰は日本で処理してほしい、そのように望むというようなことも、何か最近発言しているみたいでございますけれども、日本で処理してほしいとなった場合、その処理方法は考えておりますか。
  183. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま先生御指摘の問題点と申しますのは、放射性廃棄物の処理、処分問題かと存じますが、この件につきましては、わが方の監督いたしております動力炉・核燃料開発事業団というところにおきまして、この再処理後の廃棄物につきましての処理、処分の技術開発を進めておりますし、また一方、諸外国におきましても、ほぼ実証し得る段階にまで、この研究開発は進展いたしておりますので、英国等から将来要求がありました場合には、わが方で処理、処分したものを引き取りまして、これを永久処分するといったふうなことは可能かと存じます。
  184. 春田重昭

    ○春田委員 時間がありませんので、次に進みます。  いま話題になりました、日本で国有第一号として再処理施設のものが、東海村に動燃事業団として建設されているものがあるわけでございますけれども、これは現在完成されたのですか。完成されたとすれば、運転可能はいつごろの予定なのか、あわせてお答え願いたいと思います。
  185. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま動燃事業団で建設をいたしております再処理の第一工場、これは建設工事はもちろん終了いたしておるわけでございます。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕 現在天然ウラン等を用いましたウラン試験というものをやっておる段階でございまして、このウラン試験の結果、出てまいりましたふぐあい等について所要の調整を現在行っておる段階でございます。  今後、本年の夏ぐらいから使用済み燃料を使用いたしましたホット試験というものをやりまして、本年度いっぱい所要の試験をしました後、できれば来年度から本格的な営業運転に入りたいというふうに考えております。
  186. 春田重昭

    ○春田委員 夏ごろからホット試験を開始する場合、当然全国の原子力発電所から使用済みの核燃料を受け入れなければなりませんね。その受け入れる場合の輸送体制は船なのか、陸送なのか、そういう安全面においては、どういう点を考えているのかお答え願いたいと思います。
  187. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 使用済み燃料の輸送につきましては、わが国では原則として海上輸送を考えております。原子力発電所の埠頭から東海村の、現在考えておりますのは日本原子力発電株式会社の港へ持ってまいりまして、そこから動燃事業団の再処理工場に運ぶわけでございますが、その輸送の安全性、特に輸送容器の使用等につきましては、原子力委員会におきましてその基準、これは国際基準に合致したものでもあるわけでございますが、その基準等について鋭意検討いたしておりますので、輸送上の安全性は確保されるということでございます。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 船舶から動燃事業団へ行くまでの、これは当然トラックで輸送になると思いますけれども、その通過道路が、一部住民の反対で問題になっているということをちょっとお聞きしたのですが、そういう問題は起こっておりませんか。
  189. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 そのようなことは聞いておりません。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 先ほど長官もおっしゃいましたけれども、将来国有第一号に続いて民間主導で二号基が建設される予定だ、こういうことで発言なさいましたが、どのような計画なのか、内容を詳細に御説明願いたいと思います。
  191. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 二号基が必要なことは先ほど申し上げました。これは民間がやるというふうに決めておりますが、ただ、場所とかあるいはまた、そうしたことに関しましては、まだ未定でございます。しかしながら、この問題も、先ほど私が数字を申し述べましたとおり、再処理という問題から考えますと、本当に早くしなくてはならない問題でございますので、いずれこの国会に、規制法の改正によりまして民間にも再処理工場をつくることができる、そしてそれは内閣総理大臣が許可をする、そういうふうな内容をもちまして提出をいたす予定でございますので、その節に、またもう少しく具体的なことがわかれば、お話できるのではないかと考えております。
  192. 春田重昭

    ○春田委員 聞くところによると、千五百トンですか、それくらいの大きな規模の二号基を計画していると聞いておりますけれども、さきの一号基が二百十トンですから、合わせて千七百十トンになるわけですね。この場合、海外委託というものも並行して考えていくつもりなんですか。
  193. 山野正登

    ○山野政府委員 将来の再処理の需要に対応する対応の仕方でございますが、これはただいま御指摘の、第二再処理工場に引き続きまして、第三、第四という、引き続き自立した国内の再処理体制というものをとっていくつもりにいたしておりまして、それまでのつなぎといたしまして、現在すでにイギリス、フランスと契約済みのものに加えまして、若干量のものにつきまして、現在商議をいたしておりますが、これの後は、できるだけわが国の国内における自立工場におきまして、すべての需要を満たしてまいりたいというふうに考えております。
  194. 春田重昭

    ○春田委員 動燃事業団が三月発表しております使用済み核燃料の再処理の工程において、従来ウランとプルトニウムというものが分離されておったわけでございますけれども、この分離されていたものを混合状態で抽出する。そのほか、廃棄物だけを除去して、このウランとプルトニウムだけの混合状態で抽出すれば、いまアメリカ等が懸念しているプルトニウムの軍事利用というものは考えられないということで、非常に画期的な発表をしておるわけでございますが、その後の経過は、日がたっておりませんけれども、明らかになれば、ここで御説明願いたいと思うのです。
  195. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま動燃事業団におきましては、燃料確保の研究の一環といたしまして、御指摘のように酸化プルトニウムと酸化ウランの混合粉末から燃料をつくるといったふうな研究を従来いたしておったのでございますが、これに加えまして、粉末状ではなくて、両者の液状の混合溶液から混合酸化物燃料をつくるといったふうな研究を現在進めておるわけでございます。  そこで、御指摘のように再処理の過程におきまして、ウラン、プルトニウムの混合溶液状の段階があるわけでございますので、その段階から、先ほど申し上げました燃料確保の研究の方につなげていけるといったふうなことが将来可能になりますれば、再処理の最終段階であるプルトニウムの単体の分離といったふうなことを経ないままに、使用済み燃料から再び燃料体を確保するといったふうなことも可能になり、それは結果的に核の不拡散に非常に有効であろうという趣旨のことが、この前新聞にも報道されたわけでございまして、長期的な課題として、私ども本件に真剣に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  196. 春田重昭

    ○春田委員 こうした日本での再処理が活発になれば、それと廃棄物の量もたくさん出てくると思うのですね。先ほど局長からは、その処理が十分可能であるということを言われましたけれども、いかなる方法で処理されていくのか、具体的な、たとえば灰をコンクリで固めて、どこかへ捨てるとか、そういう具体的な方法を示していただきたいと思うのです。
  197. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 放射性廃棄物の処理、処分につきましては、非常に放射線のレベルの低い、しかし非常に大量に発生するもの、それから非常にレベルは高いけれども、きわめて少量である、大きく分けて、この二つになるわけでございます。  そのうち、レベルの低いもので特に固体状のもの、現在原子力発電所で所内で安全に保管をいたしておりますが、それにつきましては、将来海洋処分の可能性を考えておりまして、そのためのいろいろの基礎的な調査等を行っておる段階でございます。  それから一方、非常にレベルの高い、しかし少量のもの、これは再処理工場から発生するわけでございます。最初液体状で出てくるわけでございますが、これを固化するためのいろいろな技術がございます。それの研究は、先ほど原子力局長からも御答弁申し上げましたように、わが国におきましても、あるいは諸外国におきましても、いろいろ研究が進められ、かつ実証試験なども行われつつあるわけでございますが、考え方といたしましては、いわゆる地層処分、非常に安定な地層の中にこれを処分いたしまして、人類の生活圏から隔絶する、こういう基本的な考え方で進める、こういうことになっております。
  198. 春田重昭

    ○春田委員 最後に、事故の問題でございますけれども、これはさきの予算委員会でも、関電の美浜発電所の第一号炉の問題が指摘されました。その舌の根も乾かないうちに、また東海原子力発電所の事故が起こっているわけですね。いずれも報告が非常に遅かった、こういう形になっておりますけれども、今後のこの報告体制というものは非常に重要視していかなければいけないのではないかと思います。私は、こういう事故がこうした中で起こっているのは氷山の一角じゃないかと思っておりますけれども、そうならないためにも、この報告義務というものを明確にしていかなければいけないのではないかと思います。  時間が参ったようでございますので、この報告体制を非常に厳しくやっていただきたいことを提案しておきます。  なお、このこの原子力発電の是非論につきましては、その姿勢というのは、あくまでも国民的コンセンサスがなければならないと私は思います。したがって、いたずらにエネルギー危機を第一義として、政府、財界主導の原子力発電の必要性を説いたとしても、いまいろんな相次ぐ故障や事故が起こっておりますし、放射性の廃棄物の処理方法等も、まだ非常に不備な点がありますので、これらの事実の前に不安と不信を集めているのは、やはり国民であります。そういう点で、国民的合意が形成されないまでは、原子力発電というものは実施炉ではなくして、実験炉として扱うべきである、このように私は思うわけでございます。この点を最後に付言して、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  199. 芳賀貢

    芳賀委員長 安藤厳君。
  200. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、国立の研究機関の研究職員研究に伴う待遇の問題について、お尋ねしたいと思います。  まず最初に、大臣お答えいただきたいのですが、国立の研究機関の研究職員、この人たちが、  いろいろな学会があるわけでございますけれども、その学会に加入したり、あるいは学会の行事に参加したり、あるいは研究発表したり、報告したりする、こういうような行動については前向きに、非常に奨励すべきこととお考えになっておられるのか、そこまでしなくてもいいというふうにお考えになっておられるのか、その点を、まず最初にお伺いしたいと思います。
  201. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一人で一つの学会に入っておられる方も、あるいは一人で多数の学会に入っておられる方もございまして、まちまちではございますが、やはり研究ということは大切でございます。そして、その発表の場面、また意見交換の場が必要でございますから、こうした問題に関しましては、科学技術庁といたしましては、常に当然前向きで対処をしていかなくてはならない、かように考えております。
  202. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、私が調査したところによりますと、先ほど申し上げました研究職の職員、現在約一万人程度おられるようですが、そのうち九七%の人が学会に加入しておられる。七五%以上の人が二つ以上の学会に加入しておられる、こういう状態になっておるのです。それで、これにいま少し異動がございまして、昭和四十四年当時は一人当たり平均加入学会の数が三・五学会、ところが四十七年になりますとこれが二・九学会に減っている。昨年の五十一年には二・六学会というふうに減ってきているわけです。先ほどの大臣の御答弁からしますと、これは相当重要な問題を含んでいるのではないかと思うわけです。  いろいろ聞きますと、学会の加入費は全くの自腹、それから学会に参加するときの参加費、これが相当部分自腹を切るという状態になっているというようなことがあって、残念ながら脱退をせざるを得ないという状態になっているようですが、この学会の会費を国の方から国費で負担してやろうということは、全くお考えになっておらないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  203. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まずその前に、きわめて事務的でございますから、局長の方から答弁をさせます。
  204. 園山重道

    園山政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣の御答弁にございましたように、学会の問題は重要な問題だと考えております。現在、学会に関しましては、学会出席旅費につきまして、いわゆる研究者の約二分の一について年一回程度の出席旅費が計上されております。しかし、先生御指摘の学会のいわゆる会費につきましては、現在予算は計上いたしてございません。今後の研究問題と考えております。
  205. 安藤巖

    ○安藤委員 今後の研究問題とおっしゃるのですが、前向きに予算を組むという方向でお考えいただけるのかどうかという点はどうですか。
  206. 園山重道

    園山政府委員 学会につきましては、御承知のとおり当初いわゆる研究者の個人的な資格での参加、そこで自由な発表という形でつくられたもの、こう理解しております。しかし、先生御指摘のように、だんだん科学技術の進展あるいは研究の組織化といった問題が進んでまいりまして、この学会に出席することが研究者の意欲の増進なり、あるいは資質の向上なりといったことにつきまして、非常に重要になってきておることは事実でございます。したがいまして、私どもとしては、今後とも前向きにその学会の出席旅費の増加、あるいは参加費等につきましても努力をしていかなければならないものと考えております。
  207. 安藤巖

    ○安藤委員 それで、いま学会出席の旅費について二分の一というお話もございましたが、これは昭和五十年度、五十一年度、それから来年度五十二年度、全く同額なんですね。二分の一ということになりますと、一人当たり年間の学会参加費、これは交通費、宿泊費、それから日当なども入るわけですが、一万七百四十五円という計算になると思うのです。御承知のように、国鉄の運賃にしても私鉄の運賃にしても、全く純然たる交通費だけでも物すごく上がっているわけです。ところが、五十年度から五十二年度まで全く同額というのはどういうことなのか、いまおっしゃったように、努力して前向きに考えていきたいと言っておられるのですけれども、現実にはそういう数字になっているわけですね。この点について、これからどういうふうにしていかれるのか、お伺いしたいと思います。
  208. 園山重道

    園山政府委員 御指摘のように、学会の出席旅費につきましての増額が行われていないことは事実でございまして、私どもも努力不足かと思っております。  御質問のどういうふうにしていくかということでございますけれども、私ども科学技術庁におきまして、見積もり方針の調整という仕事を持っております。関係省庁が統一的に要求すべき事項につきましては、この科学技術振興研究に関しまして概算要求を各省庁が作成いたします時期に、共通の指針、これはそれぞれ相談をいたしましてでございますけれども、この中でいろいろ、いま申し上げましたような統一して要求すべきものにつきましては決めております。この中で、私どもとしては今後ともこの学会出席旅費の増額、枠の増大といったことについて努力していきたいと考えます。
  209. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろ御努力をぜひともお願いしたいと思うのです。その最初に大臣の方から御答弁いただいたような御趣旨、非常に結構だと思うのですが、ところが実際問題として、こういうことを聞いているのです。  学会に加入をして、そしてその行事に参加をするということは、いろいろな研究業務と関係がある、だから歓迎すべきことではあるけれども、その参加したことによって得る成果は、参加した研究職員個人の成果になってしまうのであって、直ちに研究の成果として反映されるものではないじゃないかとか、あるいは半分ぐらいは趣味もあって参加しているのじゃないかとかいうようなことで、学会参加費というのが、しっかり前向きに増額されるとか、めんどうを見てもらうというようなかっこうになっていかないという意見があるように聞いているのですが、そういうようなことは全く考えておられないのでしょうか。
  210. 園山重道

    園山政府委員 各試験研究機関の予算の要求等につきまして関係省庁内で協議相談をいたしますときに、いろいろな問題が出てくることは確かかと思われます。そういった中で、あるいは先生御指摘のような考えを出す人もいるかと思いますけれども、私どもといたしましては、御指摘のように学会というものは研究者の研究意欲を増大するとか、あるいは資質の向上、さらには最近よく言われております学際的、インターディシプリナリーな研究といったようなものを推進いたしますためには、重要なことであるという認識を持っておりまして、今日におきましては、決して個人的な趣味であるとか、その蓄積が個人に限られるものだという認識は持っておりません。
  211. 安藤巖

    ○安藤委員 結構な御答弁をいただきましたので、そういう方向でお進みいただきたいということを要望いたしまして、次のことをお尋ねしたいと思うのです。  普通よく経常研究経費というふうに言われているのですが、これは正確に言いますと、研究員当積算庁費あるいは人当研究費と言われるらしいですね。いろいろ大型プロジェクトとか、あるいはその他のプロジェクト、サンシャイン計画とか特別研究とかいうのがありますけれども、いま申し上げております人当研究費というのは、図書費とか光熱費とか、いわゆる庁費を賄う部分も相当ある。基礎研究をする費用ということになっているが、実際問題として図書費とか光熱費あるいは水道料などに相当程度食われてしまって、実際の基礎研究費に充当されるのは三〇%から四〇%ぐらいになってしまっているということを聞いているのですけれども、そういうような実態について御存じでしょうか。
  212. 園山重道

    園山政府委員 御指摘のように人当研究費あるいは研究員当積算庁費これが正式な名前で私ども使っておりますけれども、これはいわゆる経常研究を遂行するための基盤的経費という考え方でございますが、先生いま御指摘のような図書費とか光熱水料とかこういったものも、いわゆる経常研究実施いたします場合には、これは特別研究というように、プロジェクトをまとめて新たに起こして要求するということではなくて、現にその研究機関に存在する研究者の頭脳を使っての研究でございますので、これにはいろいろな機械、あるいは図書、あるいは光熱水料等も必要でございますので、こういったものを賄うのが、いわゆる人当研究費でございます。  しかしながら、そういった経常研究的なものでございましても高額な機械、たとえば百万円以上の機械の購入でございますとか、あるいは光熱水料等につきまして多額のものを必要とする場合には、これを人当研究費とは別に特殊経費と言っておりますけれども、そういう形で要求をするようにいたしております。
  213. 安藤巖

    ○安藤委員 ですから、先ほど私がお尋ねしましたように、人当研究費にはいろいろな使用目的があるということは知っておりますけれども、実際の基礎研究費に使われる割合が三〇%から四〇%ぐらいになってしまっているという点は御存じかどうか。基礎研究といいますのは、いろいろなサンシャインとか、プロジェクトとか、あるいは特別研究とかの基礎になる、これは一番大事な研究じゃないかと思うのですね。だから、その研究の方に充当される割合が相当少なくなってしまっているということになりますと、たとえば、これは五十二年度の大蔵省の方の査定なんですけれども、百二十三万円くらい。四〇%とすると四十九万二千円なんです。だから、こういうようなことで、これは実験系の一のAランク、物理化学の関係ですね。これだけでは、とうてい賄い切れないんじゃないかというふうに思うのです。  ですから、これについて四〇%ぐらいになっているかどうかという点と、それについて、どういうふうにこの問題を解決しておいきになるお考えかということをお尋ねしたいわけです。
  214. 園山重道

    園山政府委員 先ほども申し上げましたように、私ども基礎研究というものが具体的に何であるか、経常研究が何であるかということを考えます場合に、先生御指摘のような、あるいは図書を買うとか、あるいは光熱水料を出すとか、あるいはいわゆる器材の細かいものを買うとかいうことを、つまり、その研究機関のいわゆる特別研究として項目をつけて要求している以外の活動というのは、やはり全面的に、これはその研究機関のいわゆる研究活動、基礎研究、経常研究を形成しているものと思っておりますので、特にその中で基礎研究が何%というとらえ方はいたしておりません。したがいまして、四〇%というような数字は私どもは持っておりません。
  215. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、純然たる研究のために使われる費用と、いわゆる図書、光熱水道料金に使われる費用と割合が、どの程度ぐらいになっているかということもお調べになったことはないのですか。
  216. 園山重道

    園山政府委員 各研究機関におきまして、実際にどういう使い方をしているかということは、もともと研究所長に任されていることでございますので、その中身を詳細に分けまして、光熱に幾らといったような調査はいたしておりません。
  217. 安藤巖

    ○安藤委員 いま私が持っておりますのは、そういう研究職の人たちでつくっている組合のアンケートなんですけれども、こういう問いがありまして、研究機関の現状改善のための対策、どうしたらいいかというのがありまして、研究費の増額というのが四一・七%あるんです。だから、これが実際研究に携わっておられる職員方々の切実な声じゃないかと思うのですね。ですから、特にその点については調査をしておられないとおっしゃいましたけれども、やはり基礎研究の重大性ということにかんがみまして、一度お調べになっていただいて、それじゃ割合がどうも少ないじゃないかということでしたら、もっとしっかりその辺のところを御配慮いただきたいということを強く要望したいと思うのです。  その点と関連しましてお尋ねしたいのは、いま筑波への移転の問題が、問題というよりも現実にぼつぼつ移転をしておられるということを聞いております。全部移転を完了するという目標を立てておられるのは昭和五十四年までですか、そういうふうに聞いておりますけれども、いま研究者の間で大きな問題の一つは、筑波へ移転をするのはいいけれども、あちらの方はなかなかいい設備がたくさん整っておって、ほとんど空調システムになっておるし、水道料金は高いそうですし、というようなことで、ランニングコストが相当かかるのではないか。九つの研究機関で一年間に十六億五千万円近くかかるのじゃないかという話も聞いているわけです。だから、いま研究職の間では、いま言いました人当研究費というのが全部そこへつぎ込んでしまっても当然賄い切れない、基礎研究なんか全然回ってこないということで非常に大きな心配の種になっているのですけれども、これについては、いまどういうようなお考えで計画を立てておられるのか、お伺いしたいと思います。
  218. 園山重道

    園山政府委員 御指摘のように、筑波に研究機関が移転いたしました場合に、いろいろな設備あるいは光熱水料等による、いわゆる管理費というものが相当に増加するということは聞いております。ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、たとえば光熱水料といったものにつきましても、これは全部人当研究費で賄うというたてまえではございませんで、いわゆる各研究機関の実態に即しまして光熱水料等で特に多額のものを必要とする場合、たとえば従来の実績に比べて筑波に移転したために、その光熱水料が非常に上がるといった場合には、これは人当研究費で充てるということではなくて、特殊経費という別の枠の中で別途要求をするようにということで、私どもは各省庁に話をしているところでございますし、また現にそうされているところでございます。  したがいまして、現に学園都市に移りました研究機関あるいは来年度移ります機関というものについて、相当の手当てがなされておると私どもは理解しておるわけでございますけれども、しかし、これから移転するところが多いわけでございますので、実際に移転しました研究機関の実態をよく把握いたしまして、今後につきまして適切な措置をしなければならないと考えておるところでございます。
  219. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう人当研究費だけで賄うものではないという御答弁をいただきましたので、恐らく研究職の職員方々も、それなら何とかいけるのじゃないかと思っているんだろうと思いますけれども、その点も御配慮いただきたいというふうに思います。  最後にお尋ねしたいのは、研究職の人たちに対する社会的地位の向上の問題で、御承知のように、これは一九七四年にユネスコで第十八回総会において採択された勧告があるわけですね。この勧告にはたくさんございますけれども、一口で言うと、いわゆる研究者ですね、研究職の人たちの社会的地位を向上させる必要があるんだという趣旨の勧告なんですが、いろいろ私が調べましたところによりますと、たとえば現在三十九歳で、ある研究機関にいる人なんですが、東大出の科学者です。四人家族。外国の専門書を買うのにも、分割払いで月賦で買っているというようなことを言っておられる人もおるわけですね。だから、そういうことからすると、それは研究機関に、先ほどの話で図書費という項目もあるので、それで買えばいいじゃないかという議論もあるかもしれませんけれども、やはり研究者としますと、いつもそれを見たい、あるいはアンダーラインも引きたいというようなことがあると思うのですね。ところが研究書といいますと、あるいは科学書といいますと、特に外国のものですと、相当な金額になるということもございます。  これは私は申し上げなくてもいいと思うのですが、たとえば三月十六日の読売新聞に出ているのですけれども、専門書、学術書の展覧会というのがありまして即売もしたのですが、相当高いのですね。特に文科系よりも理科系の方が高いというのが一般的な常識なんですが、最高八万円、最低三千円、平均して一万円だというのですね。最近のこれは一つの展覧会の結果なんですけれども、そういうことからしますと、相当これは研究者の人たちの研究に伴ういろいろな経費ということで、しっかり国の方から助成措置を講じていただく必要があるのじゃないかというふうに思うわけです。先ほど申し上げたユネスコの勧告の中に、江崎博士のことじゃないですけれども、いわゆる頭脳流出という問題もあるのです。あちこちで現実の問題になっているんだということですね。  それからもう一つ、お考えいただく材料として申し上げたいのは、先ほど申し上げましたアンケートで、研究組織がよい成果を上げるために必要な要因は何かという質問に対して、六六%が指導者というふうに答えているんです。だから、一つ研究機関の中で、そういうすばらしい指導者がおったら、研究成果も相当上がるんだというようなことを研究職の人たちが考えておるということが、これにあらわれておると思うのですね。先ほどの頭脳流出の問題もありますので、待遇改善ということは相当真剣に考えていただかなくちゃならぬのじゃないかというふうに思うわけです。  だから、先ほどは経常経費のところで申し上げたのですけれども、五十年度から五十二年度まで全く上がっていないというようなことですと——五十二年は七%上がったんですね。学会への出席旅費、これが全く上がっていないということですと、相当な御努力もしておられるということも聞いておりますけれども、やはりいま申し上げましたような研究職の人たちの声、ユネスコの勧告というものを踏まえていただいて、これからもちろん大蔵省と交渉してというようなことになろうかと思いますけれども、いろいろな研究機関の声をしっかりと集めていただいてがんばっていただきたいと思うのですが、その辺について、これは大臣からもお答えいただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  220. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおりに、研究員の処遇改善、これは科学技術庁といたしましても常に努力を払っていかなければならないと存じております。今日ただいまでは、一般行政職の人たちとはさして格差はございませんが、教員、いわゆる教育者の方からは、例の人確法がございますから、したがいまして、国立大学の教師と比較いたしますと、ある程度段差があるということは認めざるを得ませんが、こうしたことも、将来はやはり格差を解消するようにその処遇の改善を図っていきたい、かように存じております。  なお、仰せでございましたユネスコの勧告に関しましては、いろいろ個々の問題がございましょうが、一般的にわれわれがこれを受けとめた場合には、大体開発途上国向けの勧告であって、すでに、相当部面においては、わが国においてはある程度その目的が達成されておるのではなかろうか。もちろんまだまだ不十分な面もございましょうが、そうしたことも含めまして、今後その処遇の改善には鋭意努力をしていきたい、かように存じております。
  221. 安藤巖

    ○安藤委員 最後に一つだけお尋ねしたいのは、先ほどもお尋ねしましたけれども、プロジェクトとか、あるいはサンシャインとか、あるいは特別研究とかというもののほかのいわゆる基礎研究というものの位置づけですね。  これは先ほど私が、いろいろな研究の基礎になるんだということを申し上げて、大体それに沿う御答弁をいただいたと思うのですが、この基礎研究というのが、何か目的もなしに適当に研究職の職員がやっているんだというようなお考えですと、大きな間違いじゃないかと思うのです。幾ら基礎研究にしましても、やはり何らかの目的を持ってやっておらなければ、これは研究じゃないと思うのです。ですから、何らかの目的を持ってやって、それがある程度のところへ行けば、プロジェクトとしていけるとか、あるいは特別研究としていけるとか、その一番の基礎になるところですね。ですが、その辺について行政サイドで、これは行政上すぐに役に立つような方向、何かそういうものとマッチしないようなものは全く役に立たない研究だというようなお考えがあるんじゃないかというような声もしばしば聞くのですが、その点についてはどのようにお考えになっているのか、これを最後にお答えいただきたいと思います。
  222. 園山重道

    園山政府委員 御指摘のように、基礎研究は大変重要でございます。もちろん国の付属研究機関である研究所といたしますと、それぞれ行政目的という中での問題だろうかと思いますけれども、基礎研究は非常に重要でございます。基礎研究というものは、いわゆる特別研究に対しまして経常研究という言葉で私ども呼んでおりますけれども、その重要視いたしております一つの私どもの努力といたしましては、先ほど申し上げましたように、各省庁試験研究機関の概算要求を作成いたしますときに基本方針、共通指針というものをつくっておりますけれども、五十一年、昨年夏につくりました五十二年度予算に対します基本方針の中では、第一に、この経常研究の重視ということをうたいまして、これによって経常研究というものが充実され、それが御指摘のようにプロジェクトにつながっていくという形をつくらなければいけないということで努力をいたしておるところでございます。
  223. 安藤巖

    ○安藤委員 終わります。
  224. 芳賀貢

    芳賀委員長 次に、中村重光君。
  225. 中村重光

    中村(重)委員 長官と、それから会計検査院の第一局長に見解をただしますが、「むつ」の問題も、青森が四月十四日撤退の日にちが迫る。それから原子力船「むつ」の安全性に関する研究委員会の答申が明日二十三日、これを受けて長崎県知事、佐世保市長の態度決定という日が迫ってきたというので、長崎県は、まさに騒然たるものが実はあるわけであります。  それと関連をして、まず第一にお尋ねをしたいことは、事業団が現地でPR活動を活発にやっているわけですね。その活動の内容ということになってまいりますと、原子力船「むつ」は安全なんだ、心配要らない、さらに、「むつ」が入ってくることは佐世保市の繁栄にもつながるのだといったような、これは時間の関係もありますから多く申し上げませんが、きわめて積極的な活動を展開しておるということについて私は疑問を持っている。  五十一年三月三十一日をもって、この原子力船事業団法は廃止するものとするということになっている。したがって、科学技術庁は十年間の延長法案をお出しになった。しかし、これは成立をしなかった。しかも選挙前の国会においては、選挙のために自動的に廃案になったというのではなくて、院の意思によって、この成立をさせなかったということ等をお考えになりますと、百歩譲って原子力船の維持管理のための消極的な費用を支出するということについては、まず認めるとしても、それを越える、そういうPR活動といったようなことはやるべきじゃないんじゃないか。科学技術特別委員会に官房長を呼びまして、この延長法案が成立をしなかった場合、どのような支出ができるのかという理事会においての問いに対して、維持管理という消極的な程度の支出はできるのではないかと考えますという答えが実はあったのであります。  ところが、いま申し上げるように、恐らく大臣は御承知になっていらっしゃいましょうが、これは裁判闘争にもなっておるわけですから、そうした積極的な事業費の支出ということはやるべきではないと私は考えるのでありますけれども、差し控える意思を持っているかどうかということが、まず長官から伺いたいことです。  ただいま私が申し上げましたようなこの支出をしてまいりますと恒久立法と全く変わらないんだ、すでに三月三十一日をもって廃止するものとするということになっている。この延長法案は成立をしてない。いま提案をしていると思うのでありますけれども、その間は相当な期間、提案すら行われていなかったのであります。しかし、費用はどんどん支出してきたのであります。そのようなことが許されるならば、時限立法と恒久立法というものの違いはどこにあるのかということを指摘しなければなりません。その点についての見解はどうなのか、まず伺ってみたいと思います。  時間の関係がございますから、まとめてお尋ねをしますから、事務当局はメモをしていただいて、大臣にお渡しをいただきます。  原研から長崎県の「むつ」安全性に関する研究委員会に、知事の委嘱を受けて出席をしました中島研究員、この研究員が数回にわたって研究委員会に出席をいたしておりますが、この中島研究員は特別休暇の申請を出して出席をしておるのにもかかわらず、賃金カットの処分をしたという点であります。中島委員原子力船「むつ」の安全性について疑問を持っておる一人であると私は伺っているのであります。そのような反発と申しましょうか報復と申しましょうか、そうした点から賃金カット処分ということをやったのではないか。長崎県からは、原子力委員長に対して円満に解決をするための配慮を要請をしておると伺っているのでありますが、これに対してどのように対応されたのかお答えをいただきます。  次に、各新聞が報道するところによりますと、長崎県は、知事はと申し上げた方がよろしいと思うのでありますけれども、燃料棒を抜いて入港を求めるという、修理のために入港する場合、燃料棒を抜くべきであるという見解を、見解ということよりも態度を明らかにした委員が十四名中七名あることは、これは予算委員会においても長官に私は申し上げたところでありますし、長官も県当局の報告によって御承知であろうと思うのであります。あと七名が、それでは賛成であるのかということに対しましては、そうでないことも私は予算委員会で申し上げておきました。明日の答申は提言もございましょうし、またそうした経過についての報告もあろうと思うのであります。  したがって、そうした長崎県の情勢等から、科学技術庁長官は核抜き回答が長崎県からなされた場合、これの受け入れをせざるを得ないという方向に傾いているということが報道されているのでありますが、真意はどうであろうか。恐らく、申し上げたように知事は核抜きが望ましいというのか、核抜きでなければならないというようなことで態度を決めるのではなかろうかと考えられますが、これに対して長官としては、ただいま私が申し上げましたとおりに、新聞報道はそういう方向に科学技術庁は傾いておるということではありますが、この点も考え方として明らかにしていただきたいと思います。どう対応するのかということについての考え方であります。  それから、私の予算委員会の質問に対して、仮に知事が受け入れを認めたとしても、漁民であるとか、あるいは被爆者であるとか、あるいは婦人団体であるとか、その他多くの県民は反対をするであろう、その場合に強行入港もあり得るのかということに対しては、総理大臣の意図もそうであるから整々粛々と、大変古びた言葉ではあるのでありますけれども、これは総理大臣が言ったので、長官もそれを受けて、そのとおりのお言葉をお使いになったんだろうと思うのでありますけれども、整々粛々と入りたいということでありましたが、長官の言う整々粛々とはどういう意味なのか。強行入港はいたしませんということをはっきりおっしゃるのか、それを聞いてみたいと思います。  次に、お尋ねしたいことは、そうした研究委員会の情勢を報告をするために、科学技術庁を訪れて長官もお会いになったはずでありますが、その際に、石渡参事官は副知事に対して四項目にわたるメモを渡したのであります。まず、制御棒駆動試験は修理港で行うべきでないとの意見は、答申の整理上、提言へ含めた方がよいのではないかといったような、これら四項目であります。申し上げたように二十三日、明日答申がなされるということで研究委員会といたしましては、委員会を連続的に開いてまいりました。そして各委員会の考え方も明らかにされてまいりました。そのことが取りまとめの段階において新聞に報道されたことも事実であります。答申の内容は、こういうものだということはわかったのであります。  したがって、副知事もそれらの内容を持って科学技術庁を訪れたのであります。そうしたことに対して石渡参事官が、ただいま申し上げましたような四つの項目にわたってのメモを渡したということは、少なくとも何物にもとらわれないで、本当に安全性ということに重点を置いて取り組んでまいりました研究委員会、この研究委員会の答申に対して注文をつけるということは、私は委員会に対する政府の介入であると考えます。これは行き過ぎであると思うのでありますが、この点に対して、長官はどのようにお考えになるのか。四つの項目については、新聞に報道されておるところでもありますけれども、時間の関係もありますが、新聞に報道されておるとおりであるのかどうか。四項目にわたって、この際、その内容もあわせて明らかにしていただきたいと存じます。  最後にお尋ねしたいことは、十五日、長官は閣議後記者会見をされました。複数の定係港を考えるということでありますが、それは佐世保だけではなくて、定係港を他にも求めるといういわゆる複数化を考えてのことであるかどうか。その複数化は単に長官の願望だけであって、具体的な、どこにどういう方法をもって求めようというようなことは、お考えとしてはお持ちになっていらっしゃらないのではないか。また、そのように、どこの港にも原子力船を受け入れるということについての抵抗というものがある、なかなか困難であると私は思うのでありますけれども、ある種の見通しをお持ちなのかどうか、それらの点もあわせてお答えをいただきます。
  226. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 事業団のPRの件に関しましては、過去の経緯もございますから、局長から説明をさせたいと思います。  その次に、中島委員の賃金カットの問題でございますが、いろいろ経緯はございました。しかしながら、私といたしましては、これはあくまで原研の労使間の問題ですから、両者の間で円満に解決をしてくれないか、そのことを望む。現に中島氏が知事の諮問機関である研究委員会のメンバーである。たとえ、その人の思想が今日のこの原子力船「むつ」に対して反対であろうが賛成であろうが、それをもって賃金カットしたとかしないと言われるようなことは、科学技術庁長官としても、はなはだ好ましいことではないと思う。さりとて私が直接介入するということは、これまたいささか問題もあろうから、十二分に労使間で話し合ってくれないかというのが、ずっとこの問題に関する私の希望でございました。  先般も、衆参両院の科技特で中村委員と同じ御質問を受けました際にも、もう一度その辺を君としても十二分に考慮してはどうかというふうなアドバイスもございました。私といたしましても、いま申し上げましたようなことで、よきにつけ悪しきにつけ、内政干渉したと言われるのは困りますが、しかし、科学技術庁長官としては、慎重にこの問題を考えなければならないと思っておりましたときに、たまたま長崎県知事から原子力委員長あてといたしまして、この問題はひとつ冷静に考えていただいたらどうであろうかというふうな申し入れがございましたので、率直に申しまして、これは本当に渡りに船である、さように存じましたので、実は私といたしましては、原子力委員長がまた乗り出すということになりますと、またまたよきにつけ悪しきにつけての話題にもなりましょうから、幸いにも井上五郎さんという私の委員長代理がおられますから、ひとつこの委員長代理に原研との間でいろいろ話をしてもらってはどうであろうか、こういうふうに思った次第でございます。そしてやはりこれは円満に解決をするようにいたしたいと思います。肝心の中島さんがずっとおられなかったものでございます。実は土曜日に私はその決意をして、そして委員長代理にお願いしたのですが、きょう幸いにも中島さんがおられましたから、したがいまして中島さんとの間におきましても、この問題は円満裏に解決するように話し合いをしていただける、私はかように存じております。この点に関しましてはいろいろ御迷惑をおかけいたしたかもしれませんが、ひとつそういうような立場で善処いたしていきたい、かように存じております。  三番目の、核燃料体を抜くというお話でございます。これはもう私もこの間の研究委員会の状態を十二分に知悉いたしております。しかしながら、あした、いよいよその結論が正式に出まして、その結論に基づいて知事さんが御決断をなさるということでございます。そして、その知事さんの御決断を私は尊重するということを、先般予算委員会におきましても中村委員お答えをいたしておりますので、その心境は今日少しも変わりはございません。私が、あした出るであろうそういう結論をあらかじめ予測して、そしてこの公の場でそれについてのコメントをすることは、やはりいかがであろうかと思いますので、ひとつ御勘弁を賜りたいと存じます。私は科学技術庁長官といたしまして、今日ただいまの原子力船「むつ」、事故がございましたけれども、放射線漏れということがございましたが、しかし二年半たちまして、かなりの水準に達しておる原子力船であって、そして遮蔽改修をし、総点検をし、修繕をするならば、これはりっぱな船になるという大山委員会の結論も伺っておりますから、その線に沿いまして、ぜひとも修理はしてほしいものである、かように今日も思っております。  したがいまして、科学技術庁長官といたしましては、純粋の科学技術面では今日ただいま、あの燃料体を積んだまま佐世保にお邪魔いたしましても、決して不安な状態ではないというふうに私は言いたいわけでございます。しかし今日、そういうふうな純粋な科学技術論プラス社会問題も加わりましたでございましょうし、あるいは被爆県としての長崎の県民の方々の感情問題もございましょうし、いろいろな問題もございますから、そうしたことを判断して、知事並びに市長が最終的な決断をなさる、こういうふうに私も期待をいたしておりまするから、やはり御両方のそうした決断に対しましては、私ははっきりとこれを尊重していきたい。この心には今日も全く変わりはございません。  その次に、石渡参事官の件でございますが、先ほども同じような質問を受けたところでございます。われわれが、いやしくも知事さんの諮問機関である研究委員会の方向づけを何か示唆したとか、あるいは何かむしろこうした方がいいというふうな、いわば内政干渉をしたとか、そういうようなことがあっては大変でございます。私も九州の新聞を即日見まして、これは大変なことだなと思いましたので、本人を呼びまして、局長も呼びましてその辺はただしましたが、決してさようなことはいたしておらない、そのことに関しては地元においても、もうすでに了解を賜っておるということでございました。  なお、詳細にわたりましては、直接上司の原子力局長が十二分にその辺の事情を知っておりますから、局長からも説明をさせたいと思っております。  その次に、今回の原子力船「むつ」の問題は、出口、入り口と申しますと、いささか語弊があるかもしれませんが、率直にそういうふうな表現を用いさせていただくのが一番わかりやすいと存じます。だから私といたしましては、出るときも入るときも「せいせい粛々」である。「せいせい」の「せい」はどういう字だというふうにお尋ねの向きもございましたが、これはいろいろございましょう。私といたしましては、静粛の「静」の静かであるという意味もあろうし、あるいは整えるという字の「整々」もあろうし、あるいは正しいという字の「正々」もあろうが、いずれにいたしましても、政府が強権を発動して無理強いをしてまで出ていく、入っていくというふうなことであっては、これは決して政治ではない。そういう意味で、いま申し上げました幾つかの字義がございましょうけれども、どれをとっていただきましても、この場合にふさわしい言葉ではないかと私は存じまして、「せいせい粛々」という言葉を使わせていただいておるような次第でございます。  なおかつ、十五日の記者会見におきまして母港複数化の問題を私がお答え申し上げましたが、これも実はやがて原子力船時代が来る、また来なければわが国の将来が案ぜられる、私はそういうふうに確信いたしております。したがいまして、いままでに定係港を決めなければならなかったわけであります。四者協定によりますと、半年後に決めろ、こういうふうに決まっておったのであります。これがまず第一点の違反事項であります。私は率直に青森の方々に、違反でございますので、申しわけありませんということをおわびをいたしておる次第でございます。これにはいろいろと背景があることは中村委員も十二分に御承知であろうと私は存じております。  しかしながら、やはり原子力船時代ということを考えますと、この三年間ほど修繕に日時が必要でございますから、その三年の間に、ぜひとも母港は決めたいものである。しかしながら、それは単数ではなくして複数で決めたい。同時に決める場合もございましょうし、あるいはこれが一番目の着手だ、二番目の着手だというふうな場面もございましょうが、いずれにいたしましても、やはり原子力船時代というものを考えました場合には、私は母港を複数で決めたい、かように存じておる次第でございまして、今日ただいまその一つが佐世保であるということは全く考えておりません。同時にまた、ではそのほかにどこか考えておるかということに対しましても、はなはだ無責任なようでございますが、いまこの問題が出ますと、出口、入り口の問題にさらにいろいろとかえってめんどうな問題を引き起こす、連鎖反応を起こすおそれもございますので、われわれといたしましては「むつ」が静かに佐世保に入りまして、いよいよ修繕を受けるという時点から三カ年の間に新しい母港を決定したいものである、かように考えておる次第でございまして、具体的な場所と折衝もいたしておりませんし、無責任なようでありますが、じゃ調査をしたか、調査もまだいたしておらないという次第でございます。  ただ、全国からは、今回いろいろ「むつ」の問題に関しまして、うちの方に来てくれ、ぜひとも私の方を使ってほしいと言うところは幾つかございますが、これもまた新聞が報道したり、あるいは同僚議員がそういうふうな発言をなさったりといった程度で、正式に私の手元に、ぜひともこの三年の間にひとつ母港にお願いしたいという書類は出ておりませんし、またそうしたことで、じゃ、さようにお願いできますかと申し上げましても、果たしてそれがうまくいくかいかないか、大変問題でございます。したがいまして、今後三年間とは言いながらも、またまた母港問題で大変な問題を惹起いたしましては、ますます原子力行政そのものに対する国民方々の信頼というものを失墜するばかりでございますから、私といたしましては、原子力船は、全国津々浦々、六十日前に入港届を出せば、どこでも受け入れていただけるような安全性を行政面においても確保しながら、国民方々にもなお一層その安全を御認識賜りたい。やはりこれを同時にやっていかなければならない。そうした中において複数の母港を決めたい、こういう気持ちでございますので、その辺もひとつ御了解をお願いいたしたいと存じます。
  227. 山野正登

    ○山野政府委員 過去の経緯等細かい問題について私、補足申し上げますが、普及啓発活動についての考え方でございますが、昨年、事業団法の延長法案が国会におきまして廃案になりましたのは、御指摘のとおりでございますけれども、しかし、これはあくまでも廃案となったわけでございまして、国会において否決されたわけではないのでございますので、私どもは事業団法は引き続き有効であると考えております。ただ、御指摘のように、まだ国会におかれまして今後存続させるかさせないか意思決定をされない段階にございますので、その間におきましては、この事業団の業務範囲は維持管理業務を中心に考えてまいりたいと思うのでございますけれども、修理港におきましても船底の点検とか、あるいは安全性の点検等必要な維持管理業務を行うことを考えておるわけでございます。  そういう趣旨でも昨年、長崎県並びに佐世保市に修理港受け入れをお願いしておるわけでございますが、この受け入れを円滑に進めてまいりますために、原子力船開発の必要性でございますとか、あるいは修理作業の安全性といったふうなものにつきまして、地元の御理解をいただくために必要な普及啓発活動をしたということでございまして、私どもは、これは適法にできると考えております。  それから、第二点の、長崎県の安全性の研究委員会の報告書の案につきまして、私どもの方の石渡参事官が安全研究委員会の方に意見を申し述べたとか、あるいは岡島会長に私信を託したという件についてでございますが、これは先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、若干具体的に内容に立ち入って御報告申し上げますと、これはあくまでも安全研究委員会の事務局をしておられます県の事務当局と、私どもの事務当局事務当局同士でいろいろ、この安全研究委員会の報告書について、技術的な問題について話し合いをした、また、いろいろ不明の点についてお互いに意見の交換をしまして二人が理解し合った、その理解し合った内容をメモにして渡したというものでございまして、あくまでも県の事務当局への参考までに用意したものでございまして、これを伝えられますように岡島会長に対する伝達を依頼したといったふうな事実はないわけでございます。  先生御質問の、どういうふうな点について話をしたのかという内容でございますが、たとえば、この案の中に「本工事の実施に関して、細目がはっきりした段階で、安全審査は」云々といったふうな文言がございますが、この安全審査という言葉が原子炉安全専門審査会の審査という意味であれば、工事方法については、その対象にならないのではないかと思う、というふうなことでございますとか、あるいは制御棒の駆動機構の試験につきまして「修理港で行うべきではない」という記述につきましては、これは安全性の議論というよりも、定義の問題として整理されるのではないかと思うといったふうな意見、さらに、主要系統及び関連機器の機能試験につきまして、実信号の意味の理解に相違があるのではないか、原子炉を運転しないという意味であれば、すべて模擬信号による実施と言えると思うという点。最後、第四点といたしまして、原子炉が冷態停止中は、安全審査検討されているとおり、仮想事故等の重大な事故はないこととなっており、安全基準がないというのは当たらないのではないかと思う、といったふうな意見の交換を事務当局同士でし、これを、技術的に細かい問題でございますので、県の事務当局への参考までにメモにしたということであると承知いたしております。
  228. 中村重光

    中村(重)委員 いまの答弁は正しくないですよ。これは県議会で問題になったわけだ。高田副知事は科学技術庁を訪ねたときに手渡されたが、石渡参事官は、一次答申には事実誤認と思われる点があり、御注意申し上げるつもりだったと、いまのあなたの答弁に似たようなことを言っているのだけれども、答申作成に当たるところに伝えてほしいということで渡したと言っているし、高田副知事は、その内容を明らかにしろという要求に対して、私としては岡島委員長あてとして受け取ったので公表できない、こう言っている。あなたが言うように、事務当局同士で云々ということではない。石渡参事官も研究委員会に何回も行って委員の質問に答えてきたわけだ。そういう委員会の検討の結果として、各委員意見を取りまとめて、そして一つの案ができ上って明日答申ということになるわけであります。そういったようなことが新聞に報道された。  それから、高田副知事が、その内容について、十日、科学技術庁を訪れて、そして話をしている。それによって石渡参事官は岡島委員長あてに出すということ、そういうような高田副知事の話し合いのもとに渡したわけだ。あなたの言うとおりなことであったとするならば、高田副知事はうそを県議会で発言をしたということになる。そういうごまかしはおやめなさいよ。どの新聞だって変わらないのだ、同じような、私が申し上げたようなことを報道しているわけだ。これは明らかに、二十三日の答申が、各委員意見を取りまとめて原案ができた、それは好ましくない、これじゃ困る、あなた方としては、あわててそうした挙に出たということは、間違いないじゃありませんか。こういう重大な問題のときに、そういうけしからぬことをやることは、これは明らかに政府の介入です。こういうことは、やるべきじゃない。  それから、長官は、知事の結論を尊重する、こういうことですが、七名の委員が燃料棒を抜くべきであるということだから、知事がこれを無視して、燃料棒は抜かなくてもよろしいなんというようなことは結論として出せないでしょう。まあ燃料棒を抜けということをはっきり言うのか、望ましいと言うのか、その程度の違いであろうと私は思うのです。望ましいということであれば、これを尊重するということは、やはりあなたは燃料棒を抜かせるという方向で尊重していかなければならぬということになるのです。  そのとおり理解をしてよろしいかどうかという点と、燃料棒を抜くということになってまいりますと、これは仮定のことではないと思うのですが、港でなければなりません。ふたをあけるのには、クレーンが要るわけですから、洋上ではできない。したがって、青森に「むつ」はいるわけですから、青森で抜く以外にはないんであろうと思うのでありますが、そのことについての見通しはどうかということも、ひとつ、あわせてお答えをいただきましょう。
  229. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いまお話しのとおりでありまして、私といたしましては、やはり長崎の知事の御決断、また市長の御決断、それを尊重いたしたい、こう思っております。ただ、もし仮に燃料棒を抜けというふうな話になると、どこかということになれば、これはもう青森であるということになりましょうし、その青森がこれをどういうふうに評価されるかという問題がまだ残っております。したがいまして、そういう話を、あす、まだ貴重な時間で、たとえ推測し得る問題で仮にあったといたしましても、それを予定して私がここで、そういう場合にはああだこうだというふうなことを申し上げること自体が、また青森にも非常にデリケートな影響を与えるのではなかろうかというふうな点もございますので、先ほども春田さんがいろいろと心配をして御質疑を賜りましたが、私といたしましても、その辺の事情は非常にデリケートなところでございますから、ただいま私の口から申し上げるということが非常に言いにくいということを御了解願っておるところでございます。  第一番目には、中村委員御承知のとおりに、この際でございますから、何といたしましても、やはり政府・与党という立場でこれに臨んでおりまして、自由民主党には特別委員会まで設置してもらって、その特別委員会が青森並びに長崎の地元のいろいろなお声を吸収していこうというふうな体制をとっております。吸収されて、その後に政府はこうすべし、ああすべしというふうに出てまいろうか、こういうふうに存じますので、いまの重要な問題に関しましても、まず党がそれをどういうふうに判断していただくかという問題もございますが、あらかじめそういう問題に関しましては、私と特別委員会との中におきまして、どのようなお答えが出ましても、政府としては機敏に対応するような体制をとっておりますから、ひとつさような趣旨で特別委員会におきましても、いろいろと御検討賜りたい、こういうふうに私自身も特別委員会にお願いをしておるということもあるわけでございます。だから私が、ここでお答えするということは、また特別委員会の御結論を抜きにしてしゃべってしまうということにもなりますので、ここら辺もいろいろ苦心をしながら、非力の者でございますが、懸命の努力をして、いま何とかこの問題、入り口、出口ともどもに本当にきれいに解決をしたいものだと思って努力いたしておりますので、その辺もひとつ格段の御理解を賜りますようにお願いを申し上げます。
  230. 中村重光

    中村(重)委員 私は予算委員会におきましても、またただいまも知事の態度がどうあろうとも、漁民であるとか、あるいは被爆者であるとか、その他多くの県民は恐らく反対するであろう、それに対して整々粛々と入港する、強権を発動するというようなことは政治じゃない、やらない、こういうことでございますから、そのとおりに理解をいたします。もし違っておるのでしたら、改めてお答えいただきますが、その点の理解でよろしいということであれば、答弁は必要ありません。  会計検査院のお答えをお願いいたします。
  231. 前田泰男

    前田会計検査院説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のPR支出と申しますのは、五十一事業年度のことであろうと存じますが、残念ながら五十一事業年度につきましては、まだ検査を了しておりません。(中村(重)委員「考え方だ」と呼ぶ)考え方といたしましては、結局どういう支出がどの程度の金額で行われたか、これが一番問題だと私は存じます。  それで検査に当たりましては、先生が、いまの事業団法の存在というものは非常に微妙な点にある。こういうときに支出につきましては、ある程度の限度が必要ではなかろうかという御意見は、われわれとしても傾聴すべきものと考えます。したがいまして、検査に当たりましては先生の御意見も十分考慮に入れまして、検査をいたしまして、適切な結論を出したい、このように考えております。
  232. 芳賀貢

    芳賀委員長 次回は、明二十三日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十四分散会