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1977-03-15 第80回国会 衆議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十五日(火曜日)     午後三時二分開議  出席委員    委員長 芳賀  貢君    理事 天野 光晴君 理事 丹羽 久章君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 北山 愛郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君       宇野  亨君    櫻内 義雄君       津島 雄二君    西田  司君       野田 卯一君    早川  崇君       村上  勇君    高田 富之君       馬場猪太郎君    春田 重昭君       安藤  巖君    工藤  晃君       麻生 良方君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       高橋  元君         農林政務次官  羽田  孜君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林大臣官房予         算課長     石川  弘君         農林大臣官房経         理課長     石川 博厚君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         農林水産技術会         議事務局長   下浦 静平君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   岡安  誠君         労働省労働基準         局安全衛生部長 山本 秀夫君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設取得第一         課長      大内 雄二君         会計検査院事務         総局第二局参事         官       岡峯佐一郎君         会計検査院事務         総局第四局長  松田 賢一君         農林漁業金融公         庫総裁     武田 誠三君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 三月十四日  辞任         補欠選任   馬場猪太郎君     石野 久男君 同日  辞任         補欠選任   石野 久男君     馬場猪太郎君 同月十五日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     春田 重昭君   山口 敏夫君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     浅井 美幸君   工藤  晃君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十九年度政府関係機関決算書  昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (農林省所管農林漁業金融公庫)      ————◇—————
  2. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、農林省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。  まず、農林大臣から概要説明を求めます。鈴木農林大臣
  3. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 農林省所管昭和四十九年度歳入歳出決算について大要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入につきましては、収納済歳入額は一千二百二十三億八千八百七十六万円余でありまして、その主なものは日本中央競馬会法に基づく納付金であります。  次に、一般会計歳出につきましては、支出済歳出額は二兆二千五百四十五億五千八百四十二万円余でありまして、この経費の主なものは、国民食糧安定的供給確保といたしまして五千九百十九億四百六十八万円余、農業構造改善といたしまして一千二百四十九億七千一百七十九万円余、農業地域計画的な整備開発といたしまして三千七百九十五億九千二百万円余、農産物価格の安定と農業所得確保といたしまして九千七十三億二百五十五万円余、食品流通加工近代化消費者対策充実といたしまして一千一百四十四億六千一百三十二万円余、農業技術開発と普及といたしまして五百五十七億三百九十七万円余、農林金融の拡充といたしまして四百四十億九千四百八十万円余、農業団体整備強化といたしまして一百十四億四千四十四万円余、森林林業施策充実といたしまして一千二百八十八億二千七百三十四万円余、水産業の振興といたしまして八百六十億三千一百三十二万円余、災害対策といたしまして一千六百八十五億四十四万円余等の諸施策実施支出したものであります。  次に、農林省所管の各特別会計決算につきまして申し上げます。  まず、歳入につきましては、収納済歳入額は、食糧管理特別会計勘定合計において五兆七千三百四十三億三千四百二十四万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において三千二百四億三千九百三十九万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において五百三億五千五百二万円余、漁船保険及び漁業共済保険特別会計勘定合計ほか森林保険自作農創設特別措置中小漁業融資保証保険特定土地改良工事の各特別会計の総合計において九百六十五億七千五百四十七万円余であります。  また、歳出につきましては、支出済歳出額は、食糧管理特別会計勘定合計において五兆七千一百九十五億五千九百七十六万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において三千一百三十七億一千八百七十七万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において三百三十七億二千九百二十三万円余、漁船保険及び漁業共済保険特別会計勘定合計ほか森林保険自作農創設特別措置中小漁業融資保証保険特定土地改良工事の各特別会計の総合計において七百一億八百五十一万円余であります。  これらの事業概要につきましては、お手元にお配りいたしました「昭和四十九年度農林省関係決算概要説明」によって御承知を願いたいと存じます。  これらの事業の執行に当たりましては、いやしくも不当な支出や非難されるべきことのないよう、常に経理の適正な運用について、鋭意努力をしてまいりましたが、昭和四十九年度決算検査報告におきまして、なお、不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。  今後とも指導監督を一層徹底いたしまして、事業実施適正化に努める所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  4. 芳賀貢

  5. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 昭和四十九年度農林省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四十一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の注意によりまして当局において処置を講じたもの一件でございます。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号一二号は、東海農政局が施行しました青蓮寺開拓建設事業調整池法面保護工事におきまして、片持版鉄筋コンクリート擁壁設計及び施工が適切でなかったため、擁壁強度が著しく不足しておりまして、工事目的を達していないと認められるものでございます。  検査報告番号一三号から三一号までの十九件は、いずれも公共事業関係補助事業に関するものでございまして、工事設計が適切でなかったため、施工した構造物耐久性が低くなっていたり、積算が適切でなかったため、工事費が過大となっていたり、監督及び検査が適切でなかったために、コンクリート強度等設計に比べて不足していたのに、設計どおり施工されたとして処理したり、あるいは補助対象とは認められないものを含めて工事を施行していたり、実際の費用より多額な事業費を要したことにして精算したりなどしていたものでございます。  検査報告番号三二号から五一号までの二十件は、公共事業関係以外の一般補助関係のものでございまして、事業実施するに当たりまして、補助事業に対する認識が十分でなかったため、補助事業で導入した施設等補助目的達成のために役立っていなかったり、工事設計が適切でなかったため、施工した構造物が不安定な状態になっておりましたり、工事設計どおり施工されていないのに設計どおり施工されたとして処理したり、実際の費用より多額な事業費を要したことにして精算したりなどしていたものでございます。  検査報告番号五二号は、都道府県が、国からの補助金自己資金等によって造成した資金農業者等に無利子で貸し付けている農業改良資金関係のものでございまして、貸し付け対象にならないものに貸し付けていたり、借り受け者が事業実施していなかったり、借り受け者が計画事業費より少額で事業実施していたりしていまして、道県の貸付金運営が適切を欠き、補助目的に沿わない結果となっていると認められるものでございます。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  これは水路トンネル工事設計積算に関するものでございます。  農林省が直轄で施行しております土地改良事業等におきます水路トンネル工事四十一工事につきまして検査いたしましたところ、トンネル掘削及び覆工コンクリート設計積算に当たりまして掘削の余掘り厚、覆工コンクリートの余巻き厚については、農林省が四十六年度に施行した水路トンネル工事三十七工事についての調査結果をもとにいたしまして作成した標準歩掛かりによって作成いたしまして、これにより掘削量コンクリート量を算定しておりますが、この標準歩掛かりは、その基礎となった実績データに誤算あるいは転記誤りがあったり、掘削断面について測定位置個所数が区々であったりしているなど、その数値は標準的な施工実績として適当でないものとなっておりまして、これを標準的な施工実績に基づく適正な歩掛かりによったとしますと、積算額を相当程度低減できたと認められたものであります。  また、ただいま申し上げました四十一工事のうち、十五工事トンネル掘削費積算についてみますと、掘削作業と、そのズリ運搬作業を別々の時間帯で行うこととして掘削費を算定しておりますが、本件各工事はいずれも土砂トンネルでありまして、このようなトンネルは人力で少量ずつ掘削いたしますので、掘削作業と並行してズリ運搬作業を行うことができるのでございますから、この点を考慮いたしまして算定いたしますと、積算額を相当程度低減できたと認められるものでございます。  最後に、本院の注意によりまして当局において処置を講じたものについて説明いたします。  これは、飼料用小麦から生産するふすまの歩どまりに関するものでございます。  食糧庁では、輸入した飼料用小麦製粉工場売り渡して、ふすまを生産させておりますが、この飼料用小麦売り渡し価格については、売り渡しの際の条件となっておりますふすまの歩どまり、生産されるふすまや小麦粉販売価格等に基づいて決定することになっており、このうち、ふすまの歩どまりを四十七年四月以降六〇%としております。ところで、近年は低品質の飼料用小麦の輸入が困難となってまいりまして、飼料用にも食糧用と同じものを使用していることもありまして、飼料用小麦買い入れ価格売り渡し価格を大幅に上回り、多額の財政負担を生じている状況でございます。このような現状を踏まえて考えますと、飼料用小麦について、ふすまの歩どまりを多少引き下げますれば、ふすまより高価な小麦粉生産量が多くなりますので、この小麦粉生産増による利益増加分だけ飼料用小麦売り渡し価格を引き上げることによりまして、財政負担の軽減を図ることができると認められました。  これにつきまして当局の見解をただしましたところ、食糧庁では、五十一年度から飼料用小麦を売り渡す際のふすまの生産条件を改めまして、歩どまりを従来の六〇%から五五%に引き下げることにいたしまして、これに伴う代替飼料及び小麦粉需給調整等対策具体化に着手するなどの措置を講じたというものでございます。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  6. 芳賀貢

  7. 武田誠三

    武田説明員 昭和四十九年度における農林漁業金融公庫業務概要について御説明申し上げます。  四十九年度わが国農業は、前年度後半に発生した資源・エネルギー問題を契機とする経済激変のもとで、農業生産資材価格高騰消費減退等によって大きな影響を受けました。  すなわち、農業所得は、飼料等生産資材価格高騰影響を強く受けて、年度前半は伸び悩みましたものの、年度後半から価格政策対象農産物価格引き上げ等により回復基調に転じ、全体としては前年度を大幅に上回りましたが、経営部門別には不均衡も生じました。また、農家の固定資産投資は、農機具投資こそ大幅に増加したものの、土地投資等の減により、全体では前年度をやや上回るにとどまりました。  このような厳しい情勢下で、国においては、食糧安定的供給確保農業生産中核的担い手育成確保等のための諸施策が積極的に講じられたところでありますが、当公庫業務運営に当たりましては、こうした国の諸施策の展開に即応して、関係機関との密接な連携のもとに、農林漁業生産基盤拡大整備及び経営構造改善するための融資を一層推進するとともに、多様化する資金需要に対処して、融資条件改善も含めて融資円滑化に特に配慮してまいりました。  この結果、四十九年度における貸付決定額は三千五百六十四億五千五百三十九万円余でありまして、前年度実績と比較して五百五十四億九千二十九万円余、一八・四%の増加となりました。  この貸付決定実績農業林業漁業等に大別して申し上げますと、一、農業部門二千五百三十億五千六百三十七万円余、二、林業部門三百九十一億三千七百三十四万円余、三、漁業部門五百三億四千二百四十三万円、四、その他部門百三十九億一千九百二十五万円でありまして、農業部門が全体の七一・〇%を占めております。  また、この貸付決定実績委託貸し付け公庫の直接貸し付けとに分けて申し上げますと、委託貸し付けによるものが全体の六五・七%に相当する二千三百四十億八千六百四十四万円余であり、直接貸し付けが残りの三四・三%、千二百二十三億六千八百九十五万円余ということになっております。  次に、四十九年度貸付資金交付額は、三千三百二十一億二千百五十六万円余でありまして、これに要した資金は、資金運用部からの借入金二千五百三十億円、簡易生命保険及び郵便年金積立金からの借入金二百五十億円並びに貸付回収金等五百四十一億二千百五十六万円余をもって充当いたしました。  また、四十五年度から四十七年度までの三ヵ年で開拓者資金に係る国の債権・債務を引き継ぎましたが、四十九年度において十九億七千六百五十五万円余の回収及び二億千二百二十八万円余の滞貸償却があったため、四十九年度末の貸付金残高は三百十八億六千七百二十九万円余となりました。  これらの結果、四十九年度末における総貸付金残高は一兆七千五百六十二億六千八百十四万円余となりまして、前年度残高に比べて二千二百六十七億四千二十三万円余、一四・八%の増加となっております。  次に、四十九年度収入支出決算状況について御説明申し上げます。  四十九年度における収入済額は千九十四億八千四百九十一万円余、支出済額は千九十億六千七百十五万円余でありまして、収入支出を超過すること四億千七百七十六万円余となっております。  最後に、四十九年度における当公庫の損益について申し上げますと、本年度におきましては、三十一億五千五百七十万円余の償却利益を上げましたが、この全額を滞貸償却引当金及び固定資産減価償却引当金に繰り入れましたため、利益金はなく、国庫納付はありませんでした。  以上が、昭和四十九年度農林漁業金融公庫業務の概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  8. 芳賀貢

    芳賀委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  9. 芳賀貢

    芳賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がございますので、順次これを許します。原茂君。
  10. 原茂

    ○原(茂)委員 前回、防衛庁の所管のときにペンディングになっております例の北富士演習場軍人林の件を先にお伺いをいたします。  前回資料の提出をお願いいたしておりましたが、まず施設庁から、この資料説明を先にしていただきたいと思います。
  11. 大内雄二

    大内説明員 御説明申し上げます。  本日提出いたしました資料の件でございますが、北富士演習場といたしまして、防衛施設庁山梨県から賃借いたしております県有地面積金額を御提出いたしました。  内容といたしましては、普通財産行政財産と二口ございまして、普通財産につきましては、通常の民法上の契約によって防衛施設庁が賃借いたしておるものでございます。その面積は四百四万三千平米、年間借料額が一億八千七百九十二万四千円でございます。  次に、行政財産でございますが、これは県の条例等に基づきまして、県有行政財産の一時使用許可を得ております。これの面積は二千八十万六千平米で、それに対する年間使用料は三億四百三十七万四千円でございます。  合わせまして、面積で二千四百八十四万九千平米、金額にいたしまして四億九千二百二十九万八千円でございます。  なお、備考欄に記載してございますように、先般お尋ねのいわゆる軍人林関係でございますが、端穂日露戦役記念会が植栽しております土地でございますが、これは普通財産の一部でございまして、その面積は四十四万平米でございます。  以上でございます。
  12. 原茂

    ○原(茂)委員 会計検査院にもお願いしておきましたが、調査内容を……。
  13. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 お答え申し上げます。  先般の委員会におきまして先生から御質問がございましたが、その意向を受けまして、山梨県と賃借関係にあります防衛施設庁防衛施設庁は私どもの直接の検査対象でございますが、まず施設庁を介しまして調査を始めました。しかし、山梨県内部のむずかしい事情もございまして、現在のところ、防衛施設庁からの報告に接しておりません。しかし、先生の御意向もございますので、むずかしい点もございますけれども、できるだけ努力して解明をいたしたい、このように考えている次第でございます。
  14. 原茂

    ○原(茂)委員 施設庁にお伺いしますが、山梨県の方で具体的に数字を示さないところにこの問題があるのです。山梨県が、たとえば恩賜林組合に対して幾ら払っている、恩賜林組合から記念会に幾ら払っているというのをはっきり言えば、事は明快なんですが、施設庁賃借料を払う立場にあるのですが、これを山梨県に問い合わせをして、その結果はどうだったのでしょうか。
  15. 大内雄二

    大内説明員 お答えいたします。  私どもの方で、山梨県の方に、国の方で支払っております額を、どのような基準で、どんなふうに配分しているかという問い合わせをいたしましたところ、一般的な配分根拠等については教えてもらったわけでございますが、それ以上の具体的な配分方法につきましては、教えることができないということで、現在のところ、それ以上のことを詳しく聞き出すには至っていない現状でございます。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 会計検査院施設庁問い合わせをしている、施設庁の方は、どうもそれは都合が悪いから、知らせるわけにいかないと山梨県から突っぱねられると、それ以上どうしようもないという状態で、一体この種の問題を、国民の税金が払われているものを具体的に調査しようというときに、その調査が、県の段階へ行きました、県でそれは言いたくないと言われたら、それで引き下がる、調査のしようがないということでいいのでしょうか。  何も県がどうしても言いたくないと言ったからといって、何かの工夫がないと、いやしくもわれわれ決算を監査していきたいと考えていても、重大な問題に突き当たったときに、民間企業でいうと、企業秘密なるものを勝手に政府の方で決めてそんたくをして、何も企業の方で、企業秘密はこれとこれだから言わないと言っているのじゃないのに、政府の方が勝手に、民間企業に対するこれは企業秘密だと何かかばうような言い方をする。  同じような何かを私は感ずるのですが、山梨県が、それは都合が悪いから言いたくない、それ以上聞かないでくれ、言わないと言ったら、それでお手上げになっているという状態は、会計検査院も、施設庁も、これでもうしょうがないと思いますか。どうでしょう。
  17. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 先生がおっしゃいますように、確かにそういった、うらみがあるわけでございます。先ほども私、待つと申しましたが、まず施設庁検査をいたしまして、どうも、先ほどの施設庁側の御答弁にもございましたように、県側答弁がないために困却をいたしている次第でございます。しかし、先般来の委員会の御意向もございますので、私どもといたしましては、新しい計画を立てまして、できれば県側の御協力を仰ぐという姿勢をとりながら調査を進めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  18. 大内雄二

    大内説明員 お答えいたします。  私ども防衛施設庁といたしましては、あの北富士演習場が安定して事なく使用できるということが最大関心事でございます。したがいまして、万が一にも配分等の問題を原因としましてごたごたが起きて、その結果、自衛隊なり米軍が安定してこの演習場を使えないというふうな事態になりますことは、私どもといたしまして全く不本位なことでございます。したがいまして、そういったことのないように、配分等の問題につきましては、よく、所有者である山梨県と権利者である恩賜林組合、その他の方々が十分に話し合いをなされまして、納得のいくような線で私ども土地の提供をしていただきたい、これが最大の願望でございます。  しかしながら、私ども立場といたしますと、これはあくまで国対県ということではなくて、地主対借り主という関係でございますので、私ども今後とも調査を続けたいとは思いますけれども、おのずから借りている立場としまして、これ以上突っ込めないという点があろうかと思いますので、その点はごしんしゃくいただきたいと思う次第でございます。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 会計検査院山梨県の御協力を仰いでと言う。山梨県の方は言いたくない、施設庁から要求しても、それは困ると言って拒否をした。施設庁の方は、演習場として安定して使えるようにということを念願している。万が一、その借地権問題を中心にして地元問題として大変な騒ぎが起こって、演習場が安定して使えない状態になったとき、県から恩賜林組合恩賜林組合から記念会へのこういった分け前が問題でトラブルが起きたとき、そのときに初めて施設庁としては立ち入って、配分の仕方がいいの悪いのということに入っていくことになるのでしょうか。  何もないときには、山梨県がだめだ、都合が悪いから、それは言いません、こう言ったらそのままで、もしそこにトラブルが起きて、演習場として安定して使えない事態が起きたときに初めて、その配分問題が中心でこんなにがたがたして、演習場が使えなくなった、したがって、恩賜林組合おまえ幾らもらっている、おまえから記念会に幾ら払っている、これは不当じゃないか、多過ぎやしないかということに入っていけるのですか。それがない限りは現在のまま、もう山梨県が拒否したらメーファーズだ、こういうことになりますか。問題が起きたら入りますか。
  20. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 先ほど、私、県の協力を仰いでということを申し上げたわけでございますが、先生御承知のように、本件の問題点は、県の内部の配分の問題でございまして、直接には私ども検査ができない、つらい立場にあるわけでございます。先ほど防衛施設庁から答弁がございましたように、演習場の平和的な使用という意味から言いますれば、国家的に見ましても必要なことと思いますけれども、何分にも県の協力がなければ、実際問題として調査が進まないわけでございますけれども賃借料の公平な配分ということも一つの問題であろうかと思いますので、その辺の事情を訴えまして報告を求めてまいりたい、このように考えております。
  21. 原茂

    ○原(茂)委員 この種の問題が相当古くから新聞に雑誌にいろいろ騒がれる。騒がれたものをそのままにして、何か事が起きなければ解決をしようとしない政府の態度に対して、ある意味では遺憾に思っているわけです。この種の、いかにも政府不信という感覚を大衆に持たせるような宣伝がされっ放しでいるようなことは、何としても問題の解明を行って、真相を明らかにして、政治に対する国民の信頼をつないでいくことが、われわれの義務でもあるし、いわゆる行政官庁としても常に心がけていなければいけない問題だろうと思う。  そういう観点から言いますと、どうも山梨県が拒否したら、もう手がない、演習場が安定して使えない状態になったときに初めて何か考える、手が入るというようなことで終わってしまうような、いまの答弁の行き着くところというのは、会計検査院にも非常に権威がないし、防衛施設庁国民の税金を使って賃貸料交付金を払いながら、そのお金が正当に使われているか、不当に使われて、不当にピンはねをされて、その結果、相当大きなもやもやとした住民感情が、いまいろいろな形であらわれようとしているという事実を知っていながら、どうも手をこまねいているよりしようがない、こういうことになったのではいけないと私は思うのです。  具体的に問題があるときに、解決の手段は一つの訴訟なんですが、地元の記念会なら記念会がやがて訴訟を起こすでしょうが、訴訟を起こされるという状態が起きますと、どうなんでしょう、そのときには山梨県の事態は、山梨県自体があばかれる、自然に訴訟を通じて山梨県が数字をはっきりさしていったそのときでないと、これはどうもつかみようがない、山梨県が協力しないときには、もうやむを得ないのだということにならざるを得ないとお考えなんでしょうか。  突っ込んで、いま言った国から県へ、県から恩賜林組合へ、恩賜林組合から記念会へ、こういった数字が、理由をつけて何%ずつはねているのだということがわかるようなことを、いまここで一生懸命論議をしておるわけなんですから、それがわかるときというのは、演習場を使うことに反対をする記念会中心の住民の大騒ぎがあって、むしろ旗が立って、がんがん騒いだとき、もう一つは、記念会恩賜林組合を、同時にまた県を相手取って訴訟を起こして、その訴訟を通じて明らかになってくるとき、この二つのケース以外には、いまのところ、はっきりと三段階に分かれた賃貸料交付金の使われている内容というものはわかりそうもない、こう考えてよろしいのですか。防衛施設庁どうですか。
  22. 大内雄二

    大内説明員 お答えいたします。  先ほど先生からの御指摘もございましたが、問題が起きてから対処するのかという点でございますが、私ども、この土地につきましては、実は毎年四月一日から一年間を限って賃貸借契約を結ぶ、自後一年間ずつ更新していくという手続をとっております。したがいまして、五十二年度につきましても、そろそろ昭和五十二年度の四月一日以降、従来の契約期間を更新する、こういう問題を控えておるわけでございます。したがいまして、そういう時期に現在のような問題が起きますれば、契約条項に従いまして、県は関係権利人の同意を得た上で防衛施設庁と契約するという一項目がございます。したがいまして、早速にも、そういった賃借料配分等の問題が原因といたしまして、更新手続がとれないという事態が目前に迫ってくるわけでございます。  したがいまして、そういう事態が起きないように、そういうトラブルが起きないように、未然に私どもとしても手を打たなければならない状況に追い込まれておる次第でございますので、先ほど来御質問のございました点につきましては、できるだけそういったトラブルが現実の問題にならないように、事前に何らかの手を打っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 五十二年四月になりますと、契約の更新、これは毎年やっておりますね。その契約の更新のあるときに、恩賜林組合に対する支払い額、なぜその支払い額になったかの理由、それから恩賜林組合を通じて記念会に払っているものを恩賜林組合から調査させて、幾ら払っているか、その理由というようなものを添付してもらう、しなければいけないということはない、借りなければいけないのだから強いことは言えないのかもしれませんが、そういうものを明示させるような条件をつけて、契約の更新を防衛施設庁はすべきではないかと思いますが、これはどうでしょう。できますかどうか、施設庁に聞きます。  同時に会計検査院に。いやしくも国が県へ払って、県へ払ったものが恩賜林組合なり記念会に払われている、そのピンはねがあるないのトラブルが、結果的には安定して演習場が使えないような、しかも表面は安定しなくても、訴訟ざたになるようなことが、いま目の前にあるときには、会計検査院もいま私が言ったような、施設庁から条件をつけて恩賜林組合あるいは記念会に払われているその額を、数値を明示させるように施設庁がしたときには、会計検査院条件をつけたその条件に従って、今度は検査をするということになりますかどうか。
  24. 大内雄二

    大内説明員 先ほども申し上げましたとおり、現在の契約書では、貸し主である山梨県が賃借人その他の権利者の同意あるいは承認を得た上で国に賃貸する、こういう一項目がございます。したがいまして、その文面では、必ずしも、たとえば賃借料配分等について賃借人である恩賜林組合その他の方々に、そういったものを披瀝した上で同意をとりつけるという文面にはなっておりません。  しかしながら、この席ではっきり確約は申しかねるわけでございますが、今後この種の問題がどんどん再発するといったことを未然に防止する意味合いからも、できるだけその辺の関係につきましては、契約書上もはっきりさせる必要があろうかと思いますので、今後、五十二年度の更新期に備えまして、現在の条項を修正して、もっと配分等についてもきめ細かい条項を県との間にお約束するかどうか、そういった話し合いを今後してまいりたいと思っております。
  25. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいまの先生の御提案と申しては大変失礼でございますが、そういうものを防衛施設庁が受け入れられまして、契約の内容に盛られました場合には、それに従って検査をいたしてまいりたいと考えております。そして、先ほども先生が申されておりました意図も十分含んで進めてまいりたい、このように考えております。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 もう二十七年ぐらい契約して、ずっと今日に至っているんですよね、実際は。その間、同意書なんていうのは一度も出したことはないのです、記念会は。記念会恩賜林組合に対して同意書を出したり、あるいは国と県との間の契約内容がこういうものだからといって、その提示を受けたり、内容を聞いたりしたことがない。一度もない。これは雑じゃいけないから、ぼくはじかに聞きました。そういうことは一度もない。  だから、いま答弁があったように、私は少なくとも、この種の問題がないのならいい、問題があって、五十二年度に新しく契約の更改をするときには、恩賜林組合記念会との間の契約はどうなっているんだというのを、びしっと明示するように、いまその答弁があったんですが、そのように努力するというんですが、ぜひそれをやってもらうということをやって、それから進んでいかないと、会計検査院も手が出せないんですから、そういう条件らしいものを、おたくがびしっと契約のときにつけてもらえば、その線に沿って下まで見ることが会計検査院もできるんだそうですから、その答弁がありましたから、したがって、五十二年四月の今度の更新の時期が終わった一番近い時期に、もう一度この委員会——どの委員会のときでも、冒頭にもう少し詳しくいろいろとお話を聞きたいと思いますが、それまでやっても、なかなからちがあかないようですから、したがって、きょうはいま言った御答弁を信頼して、ぜひそれをやってもらって、その契約更新ができたときの契約条項等をやがてお見せいただいて、そのときに私の意図が貫かれているかどうかを中心にして、二度でも三度でもこの問題——要するに、この種の問題が、余りばかげたピンはねなどが行われているように宣伝されている問題が一日も早く解決をして、そうであるなら改めさせるし、そうでないなら、そうでないことを知ってもらうという義務をわれわれは果たすべきだと思いますから、次の機会に、要するに四月の更改された後の一番早い機会の委員会で、冒頭にまたもう少し詳しくお伺いいたします。  きょうは、この問題に関しては、その程度で結構ですから、お帰りいただきたい。  それから次に、お伺いしたいのは、農業共済の問題について少しくお伺いしたいのです。  農業共済というのは、加入の義務を負わして全員が加入するたてまえでいるのですが、しかし、都道府県によっては十アール以上とか二十アール以上とか三十アール以上、そういう条件があるようですから、資料をちょうだいしたいと言ってお願いしましたら、ちょうだいしました。四十九年の資料中心にと思いましたが、これは少し調査の時期がまずいようですから、五十年度のを改めてお出しいただきましたので、これを中心にちょっとお伺いいたします。  水稲の関係で九五%が加入をしている。五%は加入をしていない。陸稲などは三八、麦が五五、少ないのから言うと種豚は一〇、役肉用牛が六七、乳用牛が八二、馬が八二、こういうように水稲以下加入を拒んでいる農家があるわけですが、一体なぜ加入しないとお考えでしょうか、それが一つ。  それから、こういった強制加入じゃなくて任意加入の農家がどのくらいあるか、戸数、これもおわかりでしたら、お答えをいただきたい。
  27. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 お話しのように、水稲その他当然加入のものがありますと同時に、家畜共済、果樹共済のように任意加入のものがあるわけでございますが、当然加入におきましても、それぞれたとえば三十アール以上の農家は当然に加入をする。それ以下の農家は任意に加入するという形に相なっております。  私たちが五十一年度におきます面積別の引き受けを見てみますと、水稲八九ということでございます。戸数比率で見ますと、先生いまおっしゃったような数字に相なるわけでございますが、そういう三十アール未満のものは任意加入というふうな形でございますから、大体九〇%近い数字を示しておりますれば、これは資格者は大体全部、ほとんどカバーをされておるのではないかというふうに思うわけでございます。  御指摘のとおり、陸稲とか麦とかいうのは、引受率が非常に低いのでございますが、これは、一つはやはり耕作面積が作物ごとに、たとえば十アールから三十アールの範囲内で、都道府県知事が定める基準に達しないものの加入は任意とされておるということが、麦のように作付面積が一戸当たりに少ないというふうな場合におきましては、全体的に任意加入の部分が非常に多くなりますものですから、加入率は下がってくる。  それからもう一つの要素は、組合ごとに耕作規模が少ない場合には、事業の一部の廃止が法律上認められておりますものですから、そういう点でも、たとえば麦の共済は、県別にとってみましても三十四県やっておる。それから陸稲は、もちろん地域別に作付が限られますから、大体十五県ぐらいやっておるということで、県を見ましても、そういう数字を示しておりますが、共済組合自身においても事業の廃止というふうなことも行われておるわけでございます。  ただ、御存じのとおり、四十九年から麦作振興対策を講じてまいっておりますので、四十八年に大体作付面積の引受率が五〇%ぐらいであったものが、五十一年度におきましては六五%ぐらいまで上がってきております。これは農家自身の認識、それから麦作振興対策による麦の見直しというようなことから加入率が上がっておると理解をいたします。  それからもう一つ、非常に低い種豚でございますが、種豚の引き受けが低いのは、掛金の国庫負担措置が講じられてから、まだ日が浅いわけでございまして、また飼養頭数に地域差がございまして、組合ごとに見ると、飼養頭数がきわめて少ないものがあるということによるものでございます。  もう一つ、第二点の任意加入の戸数がどのくらいあるかというお話でございますが、この点は、実は私たち調査をいたしておりませんので、残念ながら、その数字はわからないのでございます。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 第二点の、任意加入に相当する農家戸数を調査しておりませんというのは、調査する必要なし、農林省では、そんなものは考えないでよろしい、こういうたてまえですか。
  29. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 共済の種類ごとに農家がそれぞれ加入いたしておりますが、水稲をとりましても、四百万の農家がおるわけでございますので、これを調べますと、相当な時間と労力を要するわけでございます。私たちは任意加入、当然加入の線にふるい分けるということよりも、むしろその種類の農作物の加入率をできるだけ上げていきたいというふうに考えているものでございますから、そこの任意加入農家が幾らあるかということは、現在調査いたしておらないのでございます。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 だから、農林省としては任意加入に相当するものは調査する必要はない、こういう意味ですか。
  31. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 調査をするにこしたことはないかもしれませんけれども、行政目的といいますか、そういう観点からいたしますと、特に任意加入戸数の農家が幾らあるかということは、そう必要なことではないのではないかと考えておるわけでございます。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 引受率の発展の問題なんですが、都道府県によって十アールとか二十アールとか三十アールとかの違いはありますけれども、十アール以下の農家、ある土地では二十アール以下、三十アール以下の水稲なら水稲をつくっている農家に対しても、できる限り、こういった共済による——これは農業災害補償法がもとになっているのだろうと思うのですが、その補償法のたてまえから言うなら、この共済が農家に対する安全保障といいますか、そういうもののはずなんです。日本だって日本の安全というものを論じたときに、十歳以下だから構わない、七十歳以上の年寄りだから構わないというわけにはいかない。できる限り安全を保障してやることが政府の責任なんですから、三十アール以上と県知事の認定というか何かで決まってしまう、三十アール以上に決まる、以下のものは、もう国としても仕方がないと言うのではなくて、やはり農業災害補償法という精神から言うならば、この種の問題の考え方としては、たとえ二十アール以下であろうとも、全農家に対して安全保障をしてやるという意味では、できるだけこれに加入をするように、引き受けるようにという方針が貫かれなければいけないと思う。  その立場から言うと、三十以下だろうが、二十以下であろうが、十以下であろうとも、農林省は、やはりそれをつかんでいないといけない。調査費用がかかる、大変だといっても、いま言った水稲だけを例にとってみても、どの程度になるか知りませんが、とにかくそういった思想性がないと、何か必要最小限度にやってやった、あるいはやっているのだ、これで逃げているような姿勢で、積極的に安全保障という立場から言うと、小さい農家なら農家ほど災害を受けると困るのですから、これに対して拡大をしていくという精神で、任意加入に相当する農家の戸数ぐらいは調査をしておくことが必要だと私は考えますが、もう一度お答えを願います。
  33. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 お話しのように、私たちといたしましては、当然加入の共済であれ、任意加入の共済である、できるだけの農家をカバーするという考え方で取り進めておるところでございます。そういう意味合いにおきまして、当然加入のラインを各県でそれぞれ引きまして、それ以上の農家は当然に加入をしていただくのはもとよりでございますが、任意加入の農家につきましても、できるだけ共済でカバーするように、私たちとしては、そういう考え方で取り進めておるわけでございます。  そういう意味合いにおきまして、調査をしないのはおかしいじゃないかという御指摘でございますが、私たちは決して手間を省いて最小限度の労力で仕事を進めるというつもりはございません。したがいまして、御指摘の調査につきまして、どのような方法をとるか、私の方で十分検討させていただきたいと思います。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 結構です。それは当然検討もしなければいけない、調査もしなければいけないと思いますが、ぜひ進めてもらいたいと思います。  それから、当然加入の農家でいて、入りたい、引き受けたいと思うのだけれども、たとえば台風の常襲地帯とか冷害の常襲地帯みたいな地域においては、組合が拒んでいるというところがあるのです。これにはどういう指導をなさっているのですか。これが所々にあることは間違いないのですが、こういうものに対しては、もうちょっと懇切丁寧に、いま言った安全保障の立場から言って、農家を少しでも救ってやれという政府立場政府の考え方が組合によく浸透して、組合が絶対拒否などをしないように、農林省としては何ら条件をつけているわけではないのに、組合が勝手に自分の方のそろばんずくでいって、こんなのが入られたのでは、欠損が多くてしょうがないというので拒否をする姿勢になっているわけですから、これに対して、やはり法的な処置をするか、あるいは何かもっと厳しい指導が必要である。拒否に相当するようなそぶりや、あるいは逆に入ってくることを一生懸命に勧誘する、そういった空気なり姿勢の絶対起きないように、何らかの形で政府が政治的に考慮をしながら指導するということが、現実には必要だと思いますが、一体その対応策をどうお考えになっているのか、お伺いしたい。
  35. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 農業共済は御存じのとおり、保険設計の上に成り立っておるわけでございます。したがいまして、必ず災害が起きる、しかも相当大きな災害が必ず起きるという地域については、引き受けをしないことができることに相なっておるわけでございます。そこは第一次的に組合の判断にかかっておるわけでございますが、他面、そういう常襲災害地、しかも激甚なる常襲災害地であってもカバーすべきものではないか、そういう温かい思いやりをもって制度を運用すべきではないかという御指摘は、私もそのとおりであろうと思います。  ただ、しかし、そういう保険設計とそういう温かい気持ちでのカバーをどういうふうにやっていくかということは、一つは行政の運用にかかわる問題でございますから、私たちはそういうふうな場合には、できる限り組合を指導をいたしまして引き受けをいたすようにいたしたい、かように考えております。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 それは、やはりそうしなければいけませんね。農業災害補償のたてまえから言って、安全保障という考え方から言うなら、これは当然そうあるべきだと思いますから、いま御答弁のあったような方向で指導をしていただくようにお願いをしたいと思います。  それからもう一つ、この共済について、私は百姓の孫なんですが、全然百姓をやったことはないんですが、現在の共済は三割の被害がないと保険対象にならない。三割の被害があったときには農家としては、たとえば一般の企業でもあるいは商店でも、三割の被害を受けるということは、利益ゼロという状態になっているわけですね。利益ゼロという状態になっている。具体的にもそういう状態になればなるほど利益はゼロでありながら、食う米の確保をしてみたり、種もみの確保をやったり、なお、さらに前に予約でもらったお金があるとすれば、それの返済をやったりという二重、三重の、利益はなくなった状態になっているのに、なおかつ、それだけのものを考えていかなければいけないということになりますと、この三割で足切りというのか何か知りませんが、この災害というものを保険給付の対象をそこで切っていくという考え方は、これは実際に本当に助けてあげる、安全保障だというたてまえから言うと、もうそろそろこの数字三割というのをいじらなければいけないのじゃないか、そこまでもうちょっと踏み込んで考慮できないものだろうか、こういうふうにわれわれは考えるんですが、この点はいかがですか。
  37. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 いわゆる三割足切りを改めるべきではないかというお話でございますが、三割が適当であるかどうかは問題といたしまして、やはり軽微な被害につきましては、農家が農業経営上これを自家保険するということは必要なことであろうと思います。  それからもう一つ、通常モラルリスクと言われておりますけれども、そういうふうなモラルリスクを保険上防止するという意味合いにおきましても、一定のいわゆる足切り制度というものは、私は必要であろうと思います。ただ、それが三割がいいのか、二割がいいのか、一割がいいのかということになりますと、農家のお立場とすれば、それは足切りがないにこしたことはないわけでございます。しかしながら、それは一つはやはり農家の掛金がどうなるか、農家の負担がどうなるかという問題とも密接に関連をいたしておるわけでございます。  私たちの試算によりますと、たとえば現在の制度のもとで足切りをゼロ、こういうことにいたしますと、農家の掛金が大体四・七倍にふえていくわけでございます。国の負担ももちろんふえてまいります。したがいまして、そういうふうな両方の調和をどこでとるかという問題になるかと思います。  先般の制度の改正におきまして、半相殺あるいは全相殺の農家単位の引き受けにつきましては、半相殺の場合は足切り二割、全相殺の場合には足切り一割、こういうふうな改正をいたしたわけでございまして、私たちとしましては、先般の国会で改正をいたしましたその制度の改善内容を、できるだけ早く実施し、浸透するというたてまえで現在努力いたしておるわけでございます。しかしながら、先ほど御指摘のございました点は、補償内容充実という観点から考えまして、きわめて重要な問題でございますので、私たちは今後とも長期的な観点に立って十分に検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 これは私はいいことを聞いたんで、足切りをなくすということになると負担が四・七倍になる。その資料をひとつ後でいただけませんか、計算のもとを。それをもとにして、また考えてみたいと思います。  たとえば、去年の東北冷害というようなものを考えたときに、弱い品種、水稲の場合ですが、その土地に合っている合っていないというより、土地そのものもまた非常に不適当な土地だった。しかも、できるだけうまい米をつくらなければいけないという要請にこたえて、量は少なくても採算をよくしようという農家が、相当その意味における無理ないわゆる水稲づくりをやった。そういうことが、ある意味では ああいった冷害で非常に大きな打撃を受けた理由の一つにもなっている。いわゆる構造冷害というような、構造的な問題として、この冷害をとらえて検討をするという必要が起きて、検討もしていると思うのですが、こういつたことが、やはり共済なら共済を考えたときに、政府の指導、この稲作なら稲作に対する政府の構造的な指導、研究、こういったものがどんどん加わっていくようになりますと、共済というもののあり方も変わってこなければいけないと思いますが、この関連はどのように考えているでしょうか。
  39. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 今回の冷害におきます。いろいろな教訓を踏まえまして、今後の稲作の指導をどのように持っていくかという点につきましては、農林省としましても十分検討をいたしておるところでございます。それに伴って構造的に共済制度を改めるべきではないかというお話でございますが、私たちとしましては、共済制度というものは、農家の農業の変化に伴ってこれは改善をしていくべき問題であるというふうに考えております。したがいまして、そういう観点から、時代の変化あるいは農業の変化に伴って私たちは共済制度というものにつきましても、それにおくれないように十分検討をしてまいるつもりでおるわけでございます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 ことしは異常気象だと言われていますが、どうですかね、ことし、これからまた順調にずっと推移すると見ているんでしょうか。どうもいままでの気象状況からいって何かこう冷害だ、何だというものが起きそうな危険な年だと考えているのか、その点の検討をされていますか。例年と変わらない状態なのか、ことしの、どうもいままで推移してきたこの気象状態からいくと、今後いわゆる農産物等を中心に考えたときの気象状況は一体どんなふうになるというようなことも研究していると思うのですが、どんなふうに考えているんでしょうか。
  41. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 気象庁の長期予報によれば、どうもことしも相当寒いんではないかというふうなことが言われております。それからまた昨年の冷害に引き続いて、また冷害というのはよく連続して起こりがちなものであるということも言われておりますが、今後の気象につきましては、私たちといたしまして、これはどうなるかということは、ちょっと予測をしがたいわけでございますが、そういう冷害対策としての農林省のいろいろな検討はもとよりやっておるわけでございまして、ことし、さらに引き続いて冷害がないように、あるいはまた冷害がありましたときにも、できる限りこれに対応をしていけるようにということで種々検討、努力をいたしておるところでございます。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 検討なんて言うけれども、ずいぶん頼りない。気象というものは、農家にとって非常に重大な影響があるのですから、気象に対しては、もうちょっと突っ込んだ研究をして、ある程度の、こうなったときのこういうふうな手当てをといった、先取りした対策というものを考えておく必要があるだろうと思う。またそういった研究あるいは調査ができたときに農家に対して、最悪の場合、こんなことが早ければ、いつごろにありそうだというようなことも指導のできるようにまで気象に関する調査、研究というものが進んでいないと、私は、大変後手後手になるのではないかと思うのです。もうちょっと突っ込んだ研究をして、そして必要があるならば、前もって指導的な役割りも農家に対して国の立場で果たしていくようにしなければならないと思いますが、そういう  ことは考えていないのですか。やはりいま気象庁が発表している長期予報というようなものだけ  で、まあまあできるだけ平穏無事に過ぎるように  と祈るような気持ちで過ごすだけなんですか。どうですか。
  43. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨年の冷害にかんがみまして、試験研究機関では、耐冷性品種の育成とか、あるいは中苗田植えの効率的な利用の研究とかいうようなことも長期的な観点からやりますと同時に、それら完成されております技術の普及について一層強力な末端指導をやるということで、昨年末でございますが、担当の局長から、昨年の冷害にかんがみまして、災害に抵抗性のある基本的な技術に忠実な栽培を行うようにという通達をすでに出しております。  これは、耐冷性の品種等を高冷地等におきましては作付をするとか、あるいは田植え機の利用につきましても、中山間地帯におきましては無理な稚苗田植えをやらないように、中帯田植えに切りかえていくようにというようなこと、あるいは地力の維持向上を図ることが冷害に対しまして抵抗力を強めますので、そのような栽培技術をとるべきであるというようなことにつきまして一般的な通達を、五十二年産の作付に備える意味で出しております。  さらに、先般気象庁におきまして、今年度の暖候期の長期予報を出されましたので、それに基づきまして各作物につきまして、近く具体的な栽培の技術につきまして指導通達を出しまして、県市町村を通じまして、また普及組織を通じまして、農家に徹底するように指導してまいりたいということで準備をしておる段階でございます。
  44. 芳賀貢

    芳賀委員長 原委員に申しますが、この際、農林省の下浦農林水産技術会議事務局長が出席しておりますから、技術面等については担当事務局長に聞かれたらいいと思います。
  45. 下浦静平

    ○下浦政府委員 技術指導につきましては、ただいま官房長の方からお答えがございましたとおりでございます。  農業気象の関係でございますけれども、天候の予報につきましては、やはり専門家でございますところの気象庁の方の担当ということになっております。私どもの試験研究機関といたしましては、それぞれの気象条件が、それぞれの農作物にどのような影響を与えるか、それから、それぞれのそういう気象条件に対しまして、どのような抵抗性を持つような品種を育てていくかというようなことは、私どもの方で担当をいたしておるわけでございます。  実は、この冷害の関係でございますけれども、四十九年の暮れごろから研究の検討を始めまして、五十年中にその研究の課題の設定等を終えまして、五十一年度からこの冷害対応技術の一層の研究を、これは別枠研究と称しておりまして、毎年二億円ぐらいかけます大型研究でございますけれども、そういった形のもので、現在五年計画でこれを進めておるということでございまして、中間的に得られます成果は、随時指導の面で取り入れてまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 その問題は、気象の問題に関連して、もうちょっと私は言いたいことがあるのですが、それはまた後に譲ります。  ・次に、白ろう病の関係を林野庁を中心にお伺いいたします。  最近四、五年の間に、直営直用でやっている林野庁の仕事を請負立木処分、だんだん外に仕事を出していった割合というのはどのくらい出ていますか。五年ぐらいのことを言ってみてください。
  47. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいまちょっと手元にそういう細かい資料を持っておりませんので、至急に調べましてお答えいたします。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 概略の資料でいいですから、カーブだけわかるように……。
  49. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 数字で申し上げますと、素材生産で、四十九年に、直営では三百五十四万立方、請負では七十四万立方、五十年度には直営では三百四十二万立方、請負では百二万立方でございます。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 要するに、だんだん請負がふえているということですね。
  51. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 国有林につきましては、近年公益機能の発揮という関係から、収穫量を減少させております。そういう問題から言いまして、たまたまいま申し上げました四十九年、五十年につきましては請負がふえ、直営が減っている状況になっておりますけれども、必ずしもどんどん請負をふやしておるという形ではございませんで、その地域地域の実態に即して直営、請負というものを採択しながらやっておる次第でございます。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 五十一年度は見込みとしてどうですか、請負が減りますか。
  53. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 五十一年度は直営が四百三万立方でございまして、請負が百万立方でございます。
  54. 原茂

    ○原(茂)委員 いずれにしても、減るという傾向ではないでしょうね。  白ろう病の民間における発生の状態、それから国有林における発生の状態というようなものを見てまいりましても、そういう点がだんだんにはっきりしていまして、これはおたくから出された資料もありますから、あえて時間の都合で読み上げませんが、どうなんでしょう。  いま白ろう病を中心に考えてお答えをいただくわけですから、直営がだんだん減って、民営というか下請がふえいくということになると、白ろう病というものも下請の方へだんだん拡大をしていく。そうして直営の方は業務量が減ってくる、それに応じて白ろう病の数がそうふえるということはない。原則としてはふえない。しかし下請に出した分だけ、請負に出した分だけは間違いなく白ろう病がふえていくというような数字はどうです、お認めになりますか。
  55. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 現在私どもが把握しております振動障害の人数でございますけれども、いま先生がおっしゃいましたように、直営の方は大体そんなにふえないだろうけれども、請負の方でふえていくんではなかろうかというお話でございましたけれども、ただいま把握しておりますのは、国有林におきましては大体三千名ぐらいが振動障害病として認定されておりますが、民有林におきましては大体九百名ぐらいという形になっております。この原因につきましては、いろいろ言われておりますけれども、私ども必ずしもいま先生がおっしゃいましたように、製品生産の中で直営の方で振動障害病が減少し、請負の方でふえるというようなことは、実態上あり得ないというふうに考えております。
  56. 原茂

    ○原(茂)委員 労働省から山本部長来られていますね。  民間林業関係に働いている労働者、林業労働者というものの白ろう病の実態というのは、つかんでいますか。
  57. 山本秀夫

    ○山本(秀)政府委員 お答えします。  いま実態のお話がございましたが、われわれの調査では、昨年の三月末現在でございますが、療養中の者は九百一名でございます。
  58. 原茂

    ○原(茂)委員 九百一名というのが、いま正式に上がっている数字なんです。それで労働者の数は一体どのくらいあるのでしょう。
  59. 山本秀夫

    ○山本(秀)政府委員 最近当たってみておりますが、労働者の数が、一応チェーンソーをときどきでも使うという方が約十八万というふうに踏んでおりますが、業としてこれを行うという方は、その三分の一程度、約六万というぐあいに考えております。
  60. 原茂

    ○原(茂)委員 国有林で働く林野庁の職員は、いまどうですかね、白ろう病に認定をされた者、あるいは現在検査中で、まず白ろう病と言われそうだという者、これは働いている者の数に比較してチェーンソーを使っている者はどのくらいの率になっていますか。
  61. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 国有林でただいまチェーンソー並びに刈り払い機を使います作業員が約一万名おります。そのうち、先ほども申し上げましたけれども、約三千名が認定患者になっております。
  62. 原茂

    ○原(茂)委員 まだ認定されていないが、その危険のある者もあります。しかし認定された者が三分の一ある。  労働省に聞くのですが、民間の場合は六万で九百一名、どういうわけでこんなに数が少ないのでしょう。民間の方がチェーンソーの使用二時間以内というのを厳守している、そしてできるだけ事前、事前に手当てをして白ろう病を防いでいる、こういう数字ですか。
  63. 山本秀夫

    ○山本(秀)政府委員 民間は、われわれの方でも努力をして指導をしておりますが、必ずしも労使関係が明確でないというようなこともございます。それから、健康診断が十分行き届いていないという点もございます。これに対しては、それぞれの措置を努力しておるわけでございますが、以上のようなことが重なりまして、患者として認定される数が、まだ比較的少ない状態にあるというふうに考えております。
  64. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおりだと思います。少なくとも林野庁では、働いておる諸君が三分の一かかっているのに、民間林業労働者が六万のうち九百一名、そんなばかな数字であるわけがないので、実態はいろいろ調査した資料がございますが、民間の場合はチェーンソー二時間以内ということを幾ら指導し、あるいは守るように言っても、かせぎ高の関係その他があって、平均すると三時間、多いのは六時間ぐらい一日に使っているというのが実態としてあるのですね。それはずいぶん克明によく調べているのですが、そういう民間にどんどん請負だ、立木処分だといって林野の方から仕事が移っていきますと、いまのようなチェーンソーを使う時間の長い状態、皆さんの指導が余り徹底しない、精密検査が行き届かないというので、どんどん請負に出すほど白ろう病が拡大をしていくという、私が冒頭申し上げたことに通じていくのじゃないですか。  実態は、国有林における労働者、林野庁の労働者というのは、いま二時間をきちっと守っていて、なおかつ、白ろう病がまだまだ発生をしている。民間の実態を調べてみると、三時間から六時間働いている。ということは、いままでの林野庁の調査から言ったって、六万人の中の相当の数が白ろう病にかかっているだろうし、かかりつつあるだろう。その数が、精密検査をしないとか、あるいは実際に規定を守っていないから発見されないとかいうようなことで出てこないだけであって、これから請負だの立木処分を拡大すればするほど、民間の方がチェーンソーを使う時間が三時間なり六時間と多いということは、白ろう病にかかる率はずっと多くなっていくという、冒頭私が申し上げたそういうことに通ずると思うのですが、どうでしょうか。
  65. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま労働省の方からお答えございましたけれども、確かにお伺いにございましたような実態もあろうかと思います。しかしながら反面、国有林の方に非常に認定者が多い、罹病者が多い、疾病者が多いということにつきましては、仕事のあり方、たとえば国有林の方でございますと、非常に古くからチェーンソーを使いまして、なおかつ、伐木造材というような専門の仕事をして、一年間チェーンソーを握るという、そういう仕事の態様と申しますか、勤務の態様と申しますか、そういうものが、民有林に比べまして非常にチェーンソー、振動機械を使う期間が従来長かったということ。民有林の場合でございますと、一年間に伐木もやるし、あるいは造林関係もやるし、あるいは林業以外のこともやる、いろいろそういう仕事の割り振りと申しますか、そういう関係で、通年いたしますと、非常にチェーンソーを使う期間が短いという、そういうような問題もあろうかというふうにわれわれも考えております。   そういう意味から、先生がおっしゃいましたように、チェーンソーを使う振動病の問題につきましては、先ほど労働省からそういうお話ございましたけれども、必ずしもそういうかっこうばかりで、今後伸びていくのではないのではなかろうかというふうに私ども考えております。
  66. 原茂

    ○原(茂)委員 長官は、いま大分自信を持って答弁されたのですが、民間林業労働者は、ほかの仕事を途中でやるだろうとか、何だかんだという実態をびしっとつかんでおいでになって答弁をしているのですか。想像だけですか。どっちですか。実態を完全につかんだ答弁ですか。
  67. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 全国的にくまなく請負関係、立木関係調査したわけではございませんが、国有林の実態の一部を把握した結果、そういう判断をわれわれ持っておるわけでございます。
  68. 原茂

    ○原(茂)委員 国有林の請負に立木処分をさしたその一部の実態というのをどこで見て、そのデータはおありになるのですか。見た場所と、調べた場所と、データ。
  69. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいまここに持っておりませんので、後ほどまた提出いたします。
  70. 原茂

    ○原(茂)委員 それじゃ、調べた場所、相当何カ所かあるのでしょう。そうして実態をつかんだ、そのデータというものを資料として出していただくように、委員長にお願いします。よろしゅうございますね。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員長 ただいまの原委員の要求資料は、いいですか。
  72. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 失礼いたしました。私、国有林と申し上げましたが、ただいま申し上げましたのは、民間のサンプル調査でございました。
  73. 原茂

    ○原(茂)委員 さてな、民間のサンプル調査、何をサンプルにした調査か、専門的なのか、ちょっとわからないのですが、それは民間林業労働者がどこかで働いているのを、ここをサンプルとして抽出して、それを調べた、こういう意味ですか。
  74. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 かつて林野庁で高知県の実態を調査いたしまして、その資料を持っております。
  75. 原茂

    ○原(茂)委員 かつてというのは、いつですか。
  76. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 おととしでございます。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 その後はやっていない、そういうことですね。
  78. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 やっておりません。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほどの数字を聞いても、請負あるいは立木処分等がだんだん多くなっていると、数字の上から私は判断をしているのに、おととしのいつだか知りませんが、恐らく雪の降ってない真ん中だろうと思うのです。そんなときに調査したものが、現在どんどん白ろう病がふえつつあるという状態の中で信用できるかというと、私は信用できないし、信用すべきではない。そういうデータを、サンプル調査を高知県のあるところでやったと言っても、これは余り信憑性がないんじゃないかと思いますが、それで結構ですから、一度データとしてお出しいただくように。これはいいですね。出していただけますね。
  80. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 提出いたします。
  81. 原茂

    ○原(茂)委員 ずばりもう一つ違った角度からお伺いしますが、民間林業労働者の雇用されている実態というものは、労働省はちゃんとつかんでいるのでしょうか。実はチェーンソーならチェーンソーを例にとってみましても、林業労働者自身が自分で持っている、それを雇うのですよね。請負者はそれを雇う。請負者自身は何らそういった設備を持っていない。雇われる労働者が機械設備はみんな持っている。それが使われているのは、どうですか、これは法律上おかしなことになっているのではないですか。あえて申しませんが、そういうような全部自分持ちのやつを雇って、自分は何にも設備も持たないでいる、帳面をつけている、労務提供者供給事業で、働かした、請負した金額をもらって、そのかすりを取っているという仕事に通ずるのではないですか。いまの実態がそうであることを労働省は御存じでしょうか。
  82. 山本秀夫

    ○山本(秀)政府委員 雇用の形態はいろいろあるわけでございますが、御指摘の場合は、雇用という関係なのか、それとも、実質的にみずから事業者となりまして、大工さんと同じことでございますが、契約請負ということになるのか、それはそのケース、ケースで非常に判断がむずかしい例があるということでございます。詳細につきましてはまた溝辺課長の方から答弁させますが、以上のように考えています。
  83. 原茂

    ○原(茂)委員 あした当委員会で労働省所管で、これを実は専門にお伺いしますから、もう少し準備をしておいてもらって、部長がその程度のことで、私はあえて法律の条章を読み上げていないのだけれども、法律に抵触するかどうかと言ったら、個人の企業主なのか本当に雇われているのかによって違うのだぐらいの答弁で済まさないように、あしたはお願いしたいと思います。責任ある答弁をしていただきたい。たとえば個人の企業主だという場合と、それから個人が雇われているという場合と、その場合、何が一体雇用上違うのでしょうか。請負者は、ここにいる。原茂が請負者だ。これが個人で看板をかけているかどうか知らぬけれども、チェーンソーを持って、私はこういう労働を売りますという個人の企業者みたいなものだ。一方はそうではなくて、同じチェーンソーを持っているけれども、これは雇われた労働者である。そういう区別がどこでつくのですか。法律上つくのですかね。法律に、どこかの条章にそんな規定があるなら、あした、ぜひそれを教えていただきたいのだけれども、そんな区別がつきますか。概念的にどうですか。
  84. 山本秀夫

    ○山本(秀)政府委員 実情上大変むずかしいことだと思います。雇用という場合には、雇用者の指揮命令にすべて従うというのが雇用状態にある。賃金は当然それに従って支払われるということだというふうに理解をしておるわけでございます。また明日までにしっかりした御答弁を申し上げたいと思います。
  85. 原茂

    ○原(茂)委員 雇用というのは、実は法律上から言うと雇用契約なんですね。雇用契約なんですから、あした答弁していただくというのだから、それで結構なんですが、契約を結んだ以上は、契約を主体的に結んだ者と、契約をさせられた者との違いはあるでしょうが、その契約の目的があるのですから、その目的を果たすために相互に義務を負って、その仕事に入るわけですから、いまの前段にお答えになったような、個人で企業者みたいな形である場合の雇ったのと、本当に私は労働者でございますといって、企業という看板をかけてない個人を雇ったのと差をつけるというのは、どうも私の考えでは、むずかしいんじゃないかなと思います。しかし、それはまた明日改めてお伺いをいたします。  明日は、きょうおいでいただきました長官がどういう都合か知りませんが——林野庁の白ろう病に関係して御答弁をいただく責任者には、ぜひおいでいただくようにお願いしたいと思うのです。  きょう、せっかく大臣おいでになって、ずっと聞いていたのですが、大臣に別に質問をしなかったのですが、白ろう病というものが、林野庁の問題としては非常に大きな問題にいまなっていまして、国有林で働く労働者の実態は、まだまだ白ろう病を減らすんじゃなくて、結果的には、どんどんふやすような状態になっている面がいっぱいあるわけですが、そういう面に関して、やはり白ろう病というものを何とかしてこれからふやさない、出たものは治していくというような考え方で、大臣が林野庁と真剣に取り組んでいただくように、最後に大臣からそういうことだけ、感想も含めてお答えをいただいて終わりたいと思います。
  86. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 林業労働者の諸君の中で白ろう病、振動病にかかっております者が、国有林野の従事者のほかに民間にも多数おるようでございます。  この振動病対策としては、今後そういう痛ましい職業病が多数発生しないように、そういう面の予防対策というものに力を入れていかなければならない、このように考えております。  チェーンソー等の仕事に従事する時間的な規制の問題、あるいはそういう病気にかからないような新しい機械の開発、整備の問題、そういうことも今後さらに一層力を入れていかなければならない、このように考えておりますし、なおまた、不幸にして振動病にかかっております諸君についての治療の問題、補償の問題、またそういう医療機関の整備の問題、今後私どもも十分関係省庁と連絡をとりながら、その対策を進めてまいりたい、このように考えております。
  87. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員長 北山愛郎君。
  89. 北山愛郎

    ○北山委員 現在の厳しい情勢の中で、日ソ漁業交渉が始まるという重大な局面を迎えておるわけであります。  私は、冒頭に農林大臣の健闘に御期待を申し上げたいと思うのですが、こういう厳しい情勢の中で、単に漁業問題だけではなしに、わが国の農業食糧の問題あるいは林業、木材の問題、いずれも非常に窮迫した状態に置かれておる、こういうふうに考えるわけであります。  食糧につきましては、御承知のように、その基礎になる穀物の自給率というのは非常に低下をして四〇%ぐらい、アメリカその他ヨーロッパを見渡してみましても、このように穀物の自給率が低くなっておる先進国はないわけであります。また、木材においても、年々外材に依存する割合が高まってまいりまして、今日では、恐らく三分の二ぐらいは外材に頼っておる。水産物、漁業におきましても、二百海里の経済水域というものが一般的になりますと、四割近い漁獲量が減る、こう言われておるのであります。  こういう厳しい情勢の中で、農林大臣は、農林水産を担当する責任のある大臣として、一体どのように対処をしていこうとされるのか、単に資源、エネルギーだけではなしに、異常気象とかいろいろな食糧不安の中で日本の農業なり、あるいは林業なり水産なり、国民食糧確保についてどのような確信を持っておられるか、考えを持っておるか、これをまずお述べを願いたいと思います。
  90. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 北山先生御指摘のように、わが国の農林漁業を取り巻く内外の諸情勢はきわめて厳しいものがあるわけでございます。     〔委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕 食糧の自給率、さらに広い意味での農林水産物資の自給力を高めていく、こういうことが国民経済の上からいたしましても、また農林漁業者の所得の向上を図る上からいたしましても、きわめて重要な問題になるわけでございます。  そこで、農産食糧の自給率の問題でございますが、食用に供されております主な穀類の自給率は七四%程度に相なっておると思います。しかし、飼料作物等を含めますと、御指摘のように、全体の自給率というのは四〇%台にとどまっておる、こういう状況にございます。  畜産関係の肉類あるいは牛乳、乳製品等の酪農の関係の自給率は、近年家畜飼料の価格の安定等の影響もございまして、着実に回復をいたしてきておるところでございます。しかし、まだ二〇%ないし三〇%は海外からの輸入に依存せざるを得ないという状況にあるわけでございます。  さらに水産物についてでございますが、これはたん白食糧の五一%以上を魚肉たん白に仰いでおるわが国として、急速に二百海里時代というものが現実の問題として迫ってきておるということで、対米交渉におきましては国民的な御協力、御支援を得まして、その実績はおおむね八九%程度の実績確保し、総漁獲量といたしましても百十九万一千トン程度の漁獲実績確保することができたわけでございます。  ところが、きょうから東京及びモスクワで日ソ漁業交渉が行われておるわけでありますが、私は、先般イシコフ大臣との交渉を通じまして、はだでその厳しさというものを感じ取って帰ったわけでございます。と申しますことは、ソ連もまた日本と同じような遠洋漁業国でございますが、アメリカ、カナダあるいはノルウェー、EC等、各方面で漁獲実績を大幅に削減をされておる。それを北西太平洋の海域で補わなければならぬというような状況下に置かれておるわけであります。したがいまして、今後の日ソ漁業交渉で、私どもは三十数年にわたる伝統的な実績というものを持っておるわけでございますけれども、この実績確保につきましては、そう楽観を許さない。私どもも全力を尽くすつもりでございますが、なかなか厳しい状況にあるわけでございます。  いま先生から御指摘のありましたように、木材の関係にいたしましても、戦中戦後におけるところの乱伐、過伐というような影響もございまして、木材資源はいま一番底をついておるというような状況下にございまして、外材に多く依存せざるを得ない、こういう状況下にございます。  今後食糧を含め、農林水産物の自給力を高めるための施策を私ども最善を尽くしてまいりたい、こう考えております。
  91. 北山愛郎

    ○北山委員 そこで、いろいろ分野は広いのですが、当面するわれわれの課題というのは、農業についても、あるいは林業、水産、やはり思い切った増産と自給率を向上させるというところが共同の目標だろうと思うのであります。  そこで、実は政府の、これは一九七五年、五十年の五月に三木内閣当時に出されました、いわゆる農業の長期見通し、これによりますというと、穀物の自給率が七二年度の四二%から三七%へむしろ下がっていくという目標になっております。一九八五年には三七%に穀物自給率が下がってしまう。この目標では、どうにもこれはしようがないんじゃないか、こう思うのであります。いわゆる総合自給率と申しましても、肉にしても、あるいは乳にしても、卵にしても、みんなその飼料、えさの大半というのは、これは輸入ですから、その輸入する飼料が減ってなくなってしまえば、畜産というものは壊滅をするわけです。したがって、どうしても基本的な穀物自給率というものが基本にならざるを得ない。それが三七に、むしろ目標が落ちていくんだ、これではどうにもならぬじゃないかと思うのです。  ですから、私が大臣にお伺いしたいのは、昭和五十年五月の三木内閣当時の長期見通しというものを、目標を改める、こういうものにはよらないのだという御見解なのかどうか。この点を確かめておきたいのであります。
  92. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 確かに今後自給率を現状以上に伸ばしていくということにつきましては、その一作目等によりましては、非常に困難なものもございます。しかし私どもは、この目標をいまの段階で変えることなしに、この目標に向かって総合的な対策を進めて、できるだけこれに近づけるという努力をいたしたいものだ、このように考えております。
  93. 北山愛郎

    ○北山委員 これじゃどうにもならぬですね。むしろ穀物自給率を下げるような目標に向かって努力をするのじゃ。どうなんですか、やはり国内の食糧問題、農業問題というのは、もっともっと深刻じゃないでしょうかね。  そこで、次に私はお伺いしたいのですが、鈴木農林大臣の言葉としては、これはまことに私は期待に反すると思いますが、一体、十五年前、昭和三十六年に農業基本法ができたわけなんです。それ以後いろいろな農政が進められてまいりました。農基法農政あるいは総合農政とかいろいろな施策が行われてまいりました。毎年毎年相当な金額の予算もつぎ込まれました。  この前予算委員会で、私はこの十五年間の農基法以来の農林省の予算は、一体どれだけ出したのだというと、いまの時価にすれば二十四兆円以上だ。私はそれだけじゃないと思うのです。地方の府県等におきましても、これに足し前をしている、あるいはまた財投も毎年毎年相当額が出ておりますから、はるかにこれを上回る予算あるいは資金というものが農業等に注がれてきた。それにもかかわらず、この十数年来、農業にとってはいいところは一つもないのですね。農基法が目指しておる目標というのは、ほとんど達成ができない。大体農業生産が減っている、絶対的に減っている。また耕作面積もがた減りに減っている。あるいは輸入農産物食糧の輸入がうんとふえておる。自給率は当然下がってきておる。しかも、じゃ農家の経営がよくなったかと言えば、これまたよくならない。自立経営農家というものを百万戸ふやすというのが目標でございましたが、その目標なんかは達成ができない。だけじゃなくて、農村が非常な荒廃をして、いわゆる三ちゃん農業であるとか、後継者不足であるとか、あるいは過疎、出かせぎ、嫁不足、あらゆる農村社会を破壊してしまった。これが農基法以来の十数年間の結果なんですよ。  莫大な資金をつぎ込み、いろいろな施策を講じながら、一体この農業はどこもいいところがない。どこかいいところがあるでしょうか。十数年間施策の中で、これはよかったのだ、これは成果を上げたんだというところがあるでしょうか。米はだめだけれども、ほかのものはよかったとか、それならまだ話はわかるのですが、米と言わず、あらゆるものが行き詰まってきておる。これじゃどうにもならぬじゃないでしょうか。一体、大臣はどう思っていますか。
  94. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 北山さんもよく御存じのとおり、日本の国土、資源の関係等の制約もございまして、なかなか大規模の経営規模の効率的な、いわゆる農業をつくっていくということが非常にむずかしい環境の中に置かれておるわけでございます。したがいまして、農業予算あるいは融資等相当の投資をやっているのだけれども、その投資効果が十分上らぬではないかという御指摘だろうと思うのでありますけれども、確かによその大きな農耕地等を持っておりますような国のようなぐあいに、投資効果というものは上がらない非常にむずかしい状況にあるわけでございます。  しかし私は、それだけに農業に相当の投資をしたことによって、とにかく今日の日本の農業というものが維持できているということは否定できない事実であろうか、こう思うわけでございます。そしてこの農業は、工業生産と違って、すぐ二年、三年の間に回復するという問題ではない。長期にわたって着実に息の長い努力の上に成果が上がるということでございますから、私は決して日本農業というものを、そんなに悲観的に見ておりません。今後とも努力を積み重ねていきたい。  なお、それぞれの分野における状況等につきましては、官房長から説明をいたさせます。
  95. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農業基本法制定以来の農業生産の推移につきまして、ただいま御質問がございましたが、若干数字について申し上げたいと思います。  基本法制定時の三十五年と比べまして、五十年の数字を見ますと、農業生産全体では一・三倍、年率二%で伸びておりまして、畜産物で言いますと三倍とか、あるいは果実が二・二倍とか、野菜が一・四倍ということで、消費のふえておるものについては、かなりふえてきているということでございます。また、農業の生産性を見ますと、これは年率平均七%ということでございまして、先進西欧諸国に比べましても、遜色のない相当速いテンポで伸びてまいっておりますし、農業所得も実質で年率一五%ということで、これも相当のスピードで伸びてきておるわけでございます。農家の生活水準は、家計費で見ますと、これも先生御承知のように年率一六%という伸びで、四十七年以降、勤労者世帯のそれを若干上回っているということで、暗い面ばかりではなくて、そういう進んできた面も評価していただきたいというように思うわけでございます。  ただ問題は、先生御指摘になりましたように、総合的な自給率におきまして、当時九〇%であったものが七四%という程度に下がってきておる。もちろん消費水準の内容が高まっておりますので、その辺もあわせて考える必要があると思いますけれども、総合自給率においては、ただいま申し上げたようなこと、それからまた、経営規模の拡大ということが、土地利用型の農業につきましては進んでおらないという点が、当時考えた点からいたしますと、現在非常に問題として残されておるというように思いますが、私どもといたしましては、暗い面ばかりではなくして、明るい面も数字的に把握できるのではないかというように考えております。
  96. 北山愛郎

    ○北山委員 農林省の考え方はお金で計算するんですよ。しかし、農家所得にしても、主として農外所得がふえてきている。そこでほかの勤労者とのバランスがとれている。むしろ農業所得は、比率からしても相対的に減っておるでしょう。農家といったって、むしろ農外所得でもって立っているんだ、農業だけでは食っていけないんだ、だから出かせぎをせざるを得ない、こういうことなんでしょう。これはいい現象じゃないですよ。むしろ兼業農家の方が、所得が安定しているというようなことが言われているくらいなんで、これは農業の発展ではないんじゃないですか。  あるいはまた、労働生産性は機械をどんどん買って上がるでしょう。だから単位時間は省力化される。省力化されるけれども、そうなれば手間賃部分が相対的に計算上減るのですよ。だから余った時間を、ほかの方へ出てかせいで所得を得なきゃならぬ。これをお金が取れるから、これは進歩だ、こういうふうに農林省は見ているでしょうが、農業プロパーとすれば、そうではないんじゃないですか。  しかも、生産もそうなんです。安いえさとか、そういうものをどんどん入れてきてこれに加工して、結局いまの畜産は加工産業みたいなものですよ。本当の根っこの生えた畜産じゃない。だから一たんその柱、土台が崩れてしまえば、もうがらがらと崩れるような農業であり、畜産なんです。金の面だけはふえたから、それでいい面があるんだ、こうは言えないのですね。大蔵省じゃないんだから、通産省でもないんだから、農林省として、もう少し率直にそういう面の反省をしていただきたいと私は思うのです。  それで、先ほど大臣が言われましたけれども、日本はなるほどアメリカとかそういう国とは違って国は小さいです。小さいけれども、たとえば同じイギリスが最近、食糧の増産というものに努力をして自給率を高めて、穀物自給率では約十年の間に六五まで上げた。日本の場合は下がったんじゃないですか。どんどん下がるばかりですよ。しかも、いまのように世界的な食糧不安とか異常気象の中で、金はもうかったって、どうにもならないのです。いざというときに国民の食べる食糧が国内になかったら、これは大変なことですよ。そういう面から一体農林省は考えないのですか。金の面でつじつまが合い、金の面で所得がふえれば、それで発展だ、こういうような考え方なんですか。どうなんですか、大臣お答え願いたい。
  97. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 北山さん御指摘のとおりでございまして、そういう目標に向かって私も努力をしてまいる所存でございます。
  98. 北山愛郎

    ○北山委員 私は十五年前の三十六年のときに、社会党の農業基本法を自分が中心になって起草して、そして池田内閣の基本法、現在の基本法と対決をした。そういうことから、この十何年間の日本の農業というものを見た場合に、これは大変なことだと思っているのです。根本的に変えなきゃならぬと思っている。どこに問題があるか。いろいろな問題があろうかと思うのですが、やはり農林省の農政そのものに、どこかぐあいの悪い点がある。いろいろな面がありますけれども、一つは、予算の中に無数の補助金がありますね。農林省関係補助金は一体何種類あるのですか。
  99. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 目で数えまして二百二十でございます。
  100. 北山愛郎

    ○北山委員 その補助金には、いわゆる法律に基づいた補助、どういう目的のために、どのように使う補助なんだということが法律で規定されて、それによって計上された補助と、それからいわゆる予算補助、法律も何にも根拠がなくて、そして予算に計上された補助とある。この予算補助というのは非常に多いのですね。一体どのくらいの数字になりますか、予算補助と法律補助とは。
  101. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いま正確な資料を手持ちしておりませんが、五十二年度は、総額におきまして一兆四千五百十一億の補助金額になっております。これは、委託費だとか負担金とか交付金というような名前のものも、広い意味での補助金ということで入れております。  それで、法律に基づく補助がどの程度かというお尋ねでございますが、その点につきましては、いま手持ちの数字を持っておりませんので、概略で申し上げて恐縮でございますが、基盤整備を含めまして約三分の一程度というように考えております。
  102. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、やはり補助金というのは、どういう目的のためにどういうものを対象にして、どのような方法でやるかということを明らかにして、そして、そういうものを法律なり命令なりで決めて、それに基づいて予算を組むというのが民主的なやり方だと思うのです。そうでなくて、何補助といって予算だけのもので、そして数字が計上されてある。どういうふうに使われるか、だれにやるのかさっぱりわからない。  これは農林省だけじゃありませんけれども、こういうやり方は補助のあり方として間違っていると思うのですが、特に、長年やっております農業構造改善補助金なんかは、一体なぜ法律をつくらないのですか。これは第一次十年、今度第二次ということでやっていますね。しかも、県や市町村なんかを通じてやっている、こういう長期の基本的な政策ですよ。何百億という相当な金を毎年出してある。こういうものについて一体なぜ法律をつくらないのですか。
  103. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 法律補助によるものと予算補助によるものとが、これは農林省に限らず、政府全体の補助金の中にはあるわけでございますが、土地改良事業とか、あるいは普及事業とかといったようなものは、農林関係では典型的な法律補助になっておるわけでございますが、これは国が都道府県あるいは農家等に対しまして負担するといったような性格の比較的強いもの、逆に言いますれば、それだけ公共性が強いといいますか、そういったものを法律補助にする、構造改善事業その他予算補助のものにつきましては、そのような性格からいいまして、必ずしも国が負担をするというよりは、農家なりあるいは団体、都道府県等に対しまして援助をするというような性格がより強いというような観点から、これは厳密ではございませんけれども、法律補助にする場合と予算補助にする場合とを分けている場合が多いわけでございます。
  104. 北山愛郎

    ○北山委員 いただけませんな。農業構造改善事業というのは、基本法にも原則がある重要な国の施策じゃないのですか。単に一部の者に利益を与えるのだというのじゃなくて、やはり農業政策の中心だったんじゃないですか。公共性のあるものですよ。ですから、これをどのようにやっていくかということは当然法律で明らかにして——しかも国と地方団体の事務分掌の関係もありますよ。そういうものを明確にしてやるべきなんです。それをそうじゃなくて、農林省だけの予算の中でやり方を決めていくということになりますというと、やれ一地区が三億円であるとか、やれ何千ヵ所であるとか、一町村、一地区が何千万円の単位だとか、そんな実態に合わないものを机の上でつくって押しつけているんじゃないですか。だから構造改善事業を何ぼやっても効果が上がらないんじゃないですか。  構造改善事業の効果いかん、これをはっきり言えますか。しかも、それはやはり国の農政の根幹だったんじゃないですか。何も利益を個々の農家に分配してやるというようなものじゃないのじゃないのですか。しかも、それは市町村という地方自治体の仕事を通じて、その予算化をしてやらせる仕事でしょう。それがどうして法律をつくる必要がないのですか。こういうことで農林省の天下りの農政をやってきているから、実態に合わない。一つの物差しでもって、一つのひな形でもって、それを合わせようとする。地元の農民が要求して、こうしてもらいたいと言ってきたものを吸い上げたような計画ではないのです。そういうものを幾らやったって、これは効果が上がるわけがない。そういうもののために構造改善事業に何千億も使っているでしょう。いままでの農政というのは、そういうもののかたまりなんですよ。  だから、効果から言えば、一向農民のためにもならないし、国のためにもならないし、そして食糧の自給率は落ちてくる。外国から農産物を百六十億ドルも買わなければならぬようなかっこうになってきている。国益にもならないんじゃないですか。そうじゃないのですか。やはりはっきりと、構造改善ならこのようにして、このような対象で、こういうようにするんだ。ことに地元の方からの要望を聞いて、それに合ったような計画をつくっていく、これが本当に生きた農政じゃないでしょうか。私は、単に形式的に法律によったから、よらないからというのじゃなくて、法律によりたくないというところは、結局官僚的な天下りの農政だったんだ。この構造改善事業に具体的に一つあらわれている。  構造改善じゃなくても、たとえば干拓事業だってそうですよ。あの茨城県の高浜入ですか、あれなんかどうなんです。二百何十億かの計画で、もう十何年もたっている。漁業補償だけは払ったけれども、ちっとも進んでいないじゃないですか。一体どうするんです。みんな天下りだから、実態に合わないから事業は進まない。そして投資した金だけがむだに、ただ二十何億の補償金を出しただけです。そういうものが至るところにありますよ。  一体大臣は、こういういまの農林省の農政を改める気持ちがありますか、どうですか。反省がありますか。
  105. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いろいろ御指摘のような、過去における反省すべき問題もあったと思いますが、農林省から押しつけてやっているのではなしに、北山先生も市長をおやりになり、いろいろ地方の問題につきましては詳しく掌握をされておるわけでありますが、やはり各市町村、県等の要望を積み上げてきて、そしてそれを県段階において、あるいは中央の段階において採択をして実施をしておる、こういう形になっておるわけでありまして、地元の意思に反して押しつけていくというような、そういう事業をやっているということではない、私はそう認識をしております。
  106. 北山愛郎

    ○北山委員 それは形式的なことなんですね。地元といっても、いろいろ中間のところでプランは立てて、地元の本当の農民が知らないうちに計画が進んで、判こを押せということになるのです。まあ腹の中では反対だけれども、義理だから、しようがないというようなことで判を押してしまうというような例が多いのじゃないですか。  そこで、先ほど申し上げた高浜入の干拓なんか一体どうなんです。将来はどうなるのです。もう、十両年間も、調査して始めてから十五、六年たつでしょう。しかも、あの計画は二百何十億で、仮に千ヘクタールの干拓をするとすれば、一ヘクタール当たり二千万円以上かかるでしょう。恐らく初めての計画からすれば、もっともっと実際やるとすれば、かかるでしょう。そういう高い農地を造成してどうするのですか。一方では、すでにある優良農地をどんどん壊廃して、それを農林省はたやすく認めておいて、そして多額の金をかけて干拓をしたり農地の造成をする、これは金のむだ遣いじゃないですか。どうなんです。一体、高浜入の干拓はどうするのですか。
  107. 森整治

    ○森(整)政府委員 確かに、先生御指摘の問題につきましては、高浜入干拓につきましては、非常に申しわけないことをしておるというふうに思っております。ただ、実際に工事の着手——補償は別でございますが、四十八年度工事に入ったわけでございますけれども、一部地元漁民の理解が得られず、本格的な着工を見合わせたという経過がございます。  こういう事態に立ち至りました以上、国として強行をするということは毛頭考えておりません。逆に、こういう事態に至った以上、地元の茨城県とよく協議をいたしまして、県の要請もございます円滑な事業実施を図るための、いろいろな条件の整備をとりあえずするということでございますので、農林省としましても、こういう状況を判断いたしまして、当面地元の関係者の理解と協力を得るということに努力をしてまいるということで、事業はただいま休止をしておるという実態でございます。今後ともわれわれも努力を重ねたいというふうに考えておる次第でございます。
  108. 北山愛郎

    ○北山委員 とかくお役所仕事というのは、自説をどこまでも主張するのです。謝ったなら方針を変更したらいいのですよ。無理を押していくから、ますますマイナス面が重なるということなんです。人なんですから、役所だって政府だって過ちを犯すのです。誤ったなら、どんどん方針を変えるということですよ。それこそが民主的な政治なんで、そして、がんばっておきながら、最後にはだれも責任をとらないのです。やったことが失敗に終わったとしても、むだ遣いをしても、だれも責任をとらない。こういう政治ではいけないと思うのです。単に高浜入干拓だけでなしに、農政全体として、十数年間の農基法農政というものを振り返ってみて、やはり謙虚に反省をして、改めるべきものはどんどん改める、こういうことでやってもらいたいと私は思うのです。  そこで、補助金内容を見ますと、どれもこれも効果がわからないようなものばかりなんですが、私の目についた補助金についてちょっとお尋ねをしたいのです。  一つは、政府は四十九年度あたりから大豆と木材とえさ、これの備蓄というものを始めた。私どもも先ほど言ったように、食糧その他の増産と、自給率を高める、備蓄をするということは、方向としては賛成なんですが、内容を見ますと、これでやって本当に備蓄になるのかどうかと疑わざるを得ないのです。第一に、大豆の備蓄対策補助金なんですが、この補助金が四十九年度決算にもありますけれども、一億二千四百六十五万円、五十年度は四億百十万円、五十一年度が五億九千三百九十五万円、五十二年度が、今度の予算には十三億五千二百六十七万円と計上しておりますが、いままでの予算は、どのように使ってきたんですか、たとえば四十九年度の今度の決算にある一億二千四百六十五万円は。
  109. 杉山克巳

    ○杉山政府委員 四十九年度から大豆備蓄を開始したわけでございますが、この年度は、備蓄を所管する法人の発足が十二月になったこと、また、実際大豆の備蓄を買い入れて開始したのが三月になったということ、なお当時は直接買い入れは一遍やりましたものの、これを民間に保管させる、そして民間に対して、金利保管料の一部を助成するという形での備蓄を実施しておったわけでございます。  そういう時期的な問題もございまして、予算の一億二千四百万円のうち、実際に使いました経費は、管理運営費の百十五万六千円と在庫の確認料の十万七千円、そこで残が出ましたので、これを基金として一億一千九百万円積み立ていたしております。五十年度も同様にして、四億百万円のうち、一部を基金として積み立てて、基金の残高が三億九千七百万円、それから五十一年度は、これはまだ見込みでございますが、基金の残高が七億六千八百万円になるというふうに予定いたしております。この基金の運営をいたしまして、運用益をもって一般的な管理運営費を賄うという形で今後の運営を図っていくことにいたしております。
  110. 北山愛郎

    ○北山委員 大豆備蓄なんですから、大豆という豆そのものを用意して備蓄しているのだ、こう思ったら、金を積んでいるんですね。これじゃ何にもならないじゃないですか。その金を積むために、基金をつくるために補助金を出しているのですか。そんなことはおかしいじゃないですか。
  111. 杉山克巳

    ○杉山政府委員 いま申し上げましたように、四十九年度当初においては、民間に放出のときに、政府から指示をして、それに従わせるという条件のもとに、金利保管料の一部を助成したわけでございます。その数量は二万トン、それを五十年、五十一年と続けてまいったわけでございますが、五十一年度年度の途中におきまして、実際に緊急の放出のときにいろいろ支障があるのではなかろうか、あるいはふだんの管理監督上、もう少しいい方式は考えられないかというようなことから、協会の直接保管、所有権を持ちまして、これを保管するという形に改めたわけでございます。  五十一年度計画数量は五万トンを予定いたしておりますが、現在までのところ、買い入れて直接保管しておる分は二万トンでございます。これを、五十二年度はさらに二万トンふやして七万トンにするという計画でおるわけでございます。
  112. 北山愛郎

    ○北山委員 大豆の輸入だって三百万トンを超えておる。その中で二万トンや三万トン備蓄と称して——いまお話を聞くと備蓄じゃないんですね。どこかで備蓄しておるというか持っておるということを確認して、それに対して金利の補給をするとか、それでは業者を保護するという程度にしかすぎないじゃないですか。備蓄というからには、三百万トン輸入したら、そういうもののある一部を持っておいて、そして更新していくとか、どこか政府が自分の息のかかったところに、ちゃんと持っているということでなければ、備蓄じゃないじゃないですか。業者が持っているものを備蓄と称して、それに金利とかそういうものを補給し、補助したのじゃ、これは備蓄じゃないじゃないですか。どうなんです。
  113. 杉山克巳

    ○杉山政府委員 備蓄の方式には、政府が放出の要請をしたら、それに従わせるという形でのやり方も一つのやり方かと思います。しかし、先生御指摘のようなこともございますし、備蓄の最善の方式ということで、五十一年度から政府が直接ではございませんが、大豆の保管協会、これを直接所有権の持ち主としての、いつでも動員できる形での備蓄の形に改めたわけでございます。  そういう意味では、備蓄ということができるかと思いますが、ただ数量の点につきまして、どう考えるかということになりますと、いろいろむずかしい問題がございます。全体の数量としては四十九年が三百七十万トン、五十年が三百六十一万トン、五十一年が三百八十万トンというふうに、三百万トン以上の大きな需給が、これは供給量を申し上げたわけでございますが、あるわけでござます。その中で、どれだけ備蓄するかということを考えます場合、大豆の主たる用途は製油、油に使うのと、食品用と、それから飼料用でございます。いま私、在庫を含めて供給を申し上げましたから若干数量が多くなっておりますが、年間の需要は大体三百四、五十トンでございます。  実際、そのうち大豆の供給が逼迫した場合に一番問題になりますのは、食品用でございます。食品用を取り上げて考えますと、大体七十万トン強でございます。いま私どもが考えております五万トン、それから五十二年度の七万トンというのは、年間消費量の一ヵ月分あるいは一割程度ということに相当するわけでございます。油用の大豆も含めまして全体の備蓄ということを考えました場合、この数量は確かに少ないのでございますが、さしあたって一番問題になるであろう食品用というものを考えました場合、一ヵ月分ないし一割程度を持てば、かなりその時期の動揺、混乱に対処し得るものと考えております。
  114. 北山愛郎

    ○北山委員 そういう膨大な大豆の量の中で、単に五万トンや七万トン備蓄をするというのもおかしいと思うのです。社団法人大豆供給安定協会なるものをつくったりして、それに基金などを積み立てておいてどうするのです。補助を出して基金にするんですよ。国からすれば、金を出しっ放しにして、その団体に補助するんでしょう。そんなことせぬでも、ほかに備蓄する方法はあるのじゃないですか。政府だって、それだけのいろいろな食管の会計もあるし、いろいろな会計もあるんですから、現物を扱えるんじゃないですか。どうなんです。  なぜ一体、この団体をつくって団体に補助して、そして基金までつくって、しかもあなたが言っているのは、五十一年度、やっとことしになってから、これはだめだった、いままでのやり方じゃだめだと言うんですが、この団体の五十年度決算書を見ると、補助金をもらって、これを積み立てておく。それから備蓄の方は在庫確認、いわゆるほかの業者が持っているものを在庫として、これは備蓄用だと確認する。それに何か補給金みたいなものを出す。これじゃ本当の備蓄にならないんじゃないですか。大体それだけの数量を扱う業者ですから、相当なランニングストックを持っているわけですからね。それに対して補助金を出しているようなかっこうだ。こんな団体、なぜ要るんです。
  115. 杉山克巳

    ○杉山政府委員 政府が一番十分にコントロールできる形での備蓄といえば、直接持つということが望ましいのでございましょうが、大豆については別段特別会計を持っているというわけでもない、そういうことになれば、やはり適当な監督のきく機関に保有させるということになろうかと思います。  当初、発足の当時はその法人、大豆供給安定協会を通じまして民間監督指導する、そして在庫の確認をするという形での備蓄を行ったわけでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、それでも在庫についての確認、それから、いざというときの放出の指示はできますけれども、確かに直接業者が持っております在庫との区分なり、そのほか品質問題等いろいろ管理上問題が出てきかねないということを考えますと、やはりこの協会、協会としても育ってまいって、事業についても、ある程度の見通しが立ってまいったわけでございますから、協会に直接所有権を持たせて、そして、むしろ先生の御趣旨に沿ったような形での保管、管理を行うのが適当でないかということで五十一年から直接所有権を持った備蓄方式ということに改めたわけでございます。
  116. 北山愛郎

    ○北山委員 そうすると、五十一年度までは、いままではやり方が間違っておったというわけですね。やり方が間違っておったが、金は出しておった、こういうことなんですね。
  117. 杉山克巳

    ○杉山政府委員 間違っていたとは申しません。およそその管理の仕方にはいろいろな方式はあると思います。その中で、だんだんそれよりもさらにいい方式というようなことを考えてまいります場合、時期がたちますにつれまして、やり方にも改善、変化が出てくるということでございます。  それから、なお申し上げますが、従来、五十一年以前に保管しておりました形の備蓄は、これは協会が直接業者を監督する形ではございますが、契約が特殊な形になっておりまして、いわゆる流出混合保管方式ということで、特定のものをそのまま保管させるということではなくて、業者に新しいものに逐次更新させながら、その在庫について責任を持たせるという形でやっておったわけでございます。そういう必要もありまして、業者に保管をさせるという形をとっておったわけでございます。
  118. 北山愛郎

    ○北山委員 これは制度上、何も業者は備蓄のいろいろな条件を守らなければならぬというわけはないでしょう、行政上。要するに、これはそういう団体なんですから、社団法人の何とかという。それが、業者との関係は、契約かなんかの関係だろうと思うんだな。何も守る必要もなければ、どうして一体——こういうふうな間接的な監督で、金だけは農林省が、政府、国が出して、そして勝手なまねをさせる。しかも、やり方がうまくないから今度は変える。こんな勝手なことをされるために予算が計上されている。これじゃわれわれは承知できないのですね。どうなんです、大臣。
  119. 杉山克巳

    ○杉山政府委員 業者に対してコントロール、規制がきかないということではございません。これは保管させるための契約条件といたしまして金利、倉敷料を一部補助するわけでございますから、政府からの指示があった場合は、その指示に基づいて放出を行うという義務づけがなされております。
  120. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 当初、需給調整上の措置として発足をした時点におきましては、御指摘のとおり直接的な備蓄をしてやるという方式に至らなかったということでございますが、逐次それを、現物を把握をして調整機能を的確に持つという方向に行政を進めた、こういう経過でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  121. 北山愛郎

    ○北山委員 だから私は、こういう制度は、やはり単なる予算補助じゃいかぬと言うのです。予算案の中では、大豆備蓄対策事業費補助幾ら、これだけしか書いてないでしょう。あとはその金の枠の中で農林省が勝手にやって、そしてこれは、まずければこっちのやり方だ、こんな勝手なことが一体許されるのですか。その上に、こういう団体、社団法人をつくらして、それに補助金を出して積立金をやらせておる。そんな積立金なんかやらせるような余裕はあるはずないですね。そんなことをせぬでも備蓄はできるんじゃないですか。直接やったらいいんですよ。法律をつくって、なぜやらない。だから、予算補助というものは、一々こういうふうにみんな問題があるのですよ、農林省が勝手にやっておるから。  もう一つ、同じように、やはりえさの備蓄ですね。これも飼料用穀物備蓄対策事業費、四十九年度四億八千八百二万八千円、これは全額不用額になっちゃった。それから五十年度は、それでもかまわないで五億四千六百七十九万八千円を計上したのだけれども、その大部分が不用額になって、使ったのは七千二百八十万五千円だけなんです。三億九千三百五十万五千円というのは不用額になっちゃった。まるで計画がずさんで、そうしてしかも、四十九年度は全額不用になりながら、五十年度また計上して、また大部分不用額にして、こんなことが、一体このずさんなことが許されるのですか。そしてまた五十一年には、八億一千六十八万円計上している。これはどうなんです。  だから私は、この飼料の備蓄にしても、あるいは大豆の備蓄にしても、ちゃんとした方針を立てて、そして法律なら法律、必要なものをつくって、出した金が生きてくるように、それが制度上、保障されるようなことをやって使うべきだというのは、そこなんです。同じようなことが木材の備蓄対策事業費にもある。みんな団体をつくっている。たとえば、木材については財団法人日本木材備蓄機構というものをつくって、これに補助をする。それから配合飼料の方は社団法人配合飼料供給安定機構、こういうものをいわゆる農林省の下部機構としてつくっている。そして、その団体に補助している。  一体、木材にしたって備蓄をする必要があるのかどうか。大豆にしても、三万トンや五万トンのものを備蓄して何の効果があるのか。配合飼料だって、そうですよ。たった十万トン。トウモロコシだけでも七百数十万トンという飼料を輸入している。その中で十万トンの配合飼料の備蓄機構をつくって何になります。そして、こういうすべて下部機構をつくって、そこに金をためておく。こんなずさんなことが許されるのですか。大臣、こういう問題について今後一体どうするんですか。五十二年度の予算もちゃんと計上しているんですよ。
  122. 大場敏彦

    ○大場政府委員 えさのことについての御指摘がありましたので、御説明申し上げます。  五十一年度と五十二年度のわれわれの計画は、数量でございますが、トウモロコシ、コウリャンにつきましては、五十一年度当面十万トンを備蓄する。それと合わせて食糧管理特別会計で、これは国が直接取り扱う物資であります大麦につきまして二十五万トンの備蓄を推進する、合計三十五万トンの備蓄を五十一年度予算で手当てしたわけであります。さらに五十二年度におきましては、これに積み増しをいたします数量は、トウモロコシ、コウリャン等につきましては、十万トンの積み増しをいたしまして、五十一年度末に二十万トン、それから食管で扱っております飼料用麦につきましては、さらに五万トン積み増ししまして、五十二年度末には三十万トンの備蓄をする、トウモロコシ、コウリャンが二十万トン、それから大麦が三十万トンでございますから、ただいま私ども計画では、五十二年度末では合わせて五十万トンの備蓄ということを予定しておるわけでございます。  どの程度備蓄数量を計画したらいいかということは、いろいろ議論のあるところで、私ども率直に言って、どれが決定的だというような数量は、なかなか見出しがたいわけであります。しかし、ミシシッピーの凍結だとか、過去二、三年の経験というものを判断いたしまして、当面年需要の一ヵ月分程度を積んでおけば、ある程度の変動には対応できるのじゃないか、かように考えておるわけであります。この一ヵ月分というのは、約九十五万トンでございます。九十五万トンと、そのほかに民間業者が、いわゆる営業上の配慮から一ヵ月分のランニングストックを持っておりますから、その一ヵ月分のランニングストックに乗せることの一ヵ月分ということを、当面の目標にしたらどうだろうかということで、逐次年度を追うて、増勢計画を立てておる、こういう状況でございます。
  123. 北山愛郎

    ○北山委員 三つの備蓄機構があるのですが、いまのお話のようだと、民間の団体でこういう機構をつくってやるよりか、直接やれるのではないですか、ちょっと法律なり制度を変えれば。食管だって直接現物をやっているのだから、政府が現物に触れてはいかぬというわけではないでしょう。だから制度を、飼料については改めたらどうですか。  それから、木材については非常に疑わしいのは、備蓄と言ってもおかしいのですね。一時は木材は暴騰したけれども、その後ダブついて、そして合板なんかいま不況じゃないですか。何でそういう際に備蓄をする必要があるのですか。備蓄するということは、要するに市場にたまっているものを助けてやる、こういう機構じゃないですか。もうすでに目的が違うんじゃないですか。われわれは、備蓄と称するから、いざ不足のときに備えて用意しているのだと思ったら、そうじゃない。むしろダブついて下がるものを、値下がりを抑えるために一部のものを備蓄と称して保留しておく、あるいはそれに対して利子補給をしたり、いろんな援助をやっていく、こういうことになっているのじゃないですか。木材なんかそうだ。  大豆についても、こんな少童なものでは、どうにもなりませんよ。しかも、いままでのやり方が間違っているから変えてきた。政府だけで、農林省だけで変えているのでしょう。国会では、ただ予算の金額だけが出ている。この金がどのように使われているか、さっぱりわからない。国民はわからないのです。これは民主的じゃないじゃないですか。  こういう備蓄をやるなら、私は備蓄というのは非常に大事だと思うのです。もっと積極的にやるべきだし、こんなちゃちなことではなくて、堂々と法律、制度をつくって、そして政府が責任を持ってやる。こんな何かわけのわからないような下部機構をつくらないで、直接やるとか、直接目の届くような形でやるとか、あるいはその品物がちゃんと確保されるような形でやるとか、もっと責任のある農林行政をやってもらわなければ困りますよ。大臣、どうですか。
  124. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、備蓄制度というのを始めましてから、きわめて短期間のものでございますが、その過程についてのいろいろ御批判は、まことに痛いほどよくわかるわけでございます。しかし備蓄制度というものは、えさの場合におきましても、その他の場合におきましても、必要な施策である、私はこう考えておりますので、北山先生の御指摘になりましたような点も十分有力な御意見として、また反省材料として改善を図ってまいりたい、こう考えております。
  125. 北山愛郎

    ○北山委員 私も備蓄というものは重要だと考えています。考えているからこそ、やはり政府農林省は責任のある、しっかりとしたやり方をとってもらいたいし、こんなちゃちな、いいかげんなことをやられては困ると思うのです。これでは、悪く考えると、業者となれ合いみたいなことをやっているのじゃないか、こう疑われてもしようがないじゃないですか。表にちゃんと出して、そうして必要な法律なら法律をつくって、堂々とやったらどうですか。  私は、実はけさ資料を拝見して、短い時間で見たものですから、細かい点でまだいろいろ問題は残ると思うのです。さらに今後これを究明したいと思うのですが、会計検査院は一体四十九年度決算、五十年度決算をやって、こんなことがわからないのですか。おかしいと思わないですか。
  126. 松田賢一

    松田会計検査院説明員 ただいまお話にありますような団体の補助金検査、これはもちろんやっております。ただ、いまお話に上がっておりました機構とか、そういうものを、たくさんほかの補助金がありますので、四十九年度なりの検査でやっておるかどうか、これは帰りまして担当課で調べないとわからないわけでございますが、もちろんそういった機構の補助金の使途については検査しておるわけでございます。  そういった内容につきまして、補助金の使途につきましては非常にこちらも関心を持って見ておるわけでございますが、いまもお話しのありましたような事柄について、そこまで、われわれの方は、よういたしてみたかどうか、この辺のところはちょっとわかりかねます。確かにいろいろな問題があるようでございます。今後ともそういった点を踏まえてわれわれの補助金——ただ補助金の経理だけということでなしに、その補助金の効果ということにも及ぼして検査していきたい、そのように考えております。
  127. 北山愛郎

    ○北山委員 もう時間が終わりましたから、これで終わりますけれども、ちょっと見ただけでも、このような問題があるわけですね。もう少しやはり民主的なやり方をとってもらいたいということと、その他のいろいろな補助金についても、私は一番先に指摘したとおり、本当に効果のあるやり方になっているかどうか、もっとフェアなやり方で、もっと真剣に、備蓄なら備蓄のことを考えて、そうして行政をやってもらいたいということを希望して、きょうのところは、これで終わります。
  128. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 芳賀貢君。
  129. 芳賀貢

    芳賀委員 農林省所管決算審査に当たりまして、この際、農林大臣にお尋ねいたします。  昨日、農林大臣におかれては、畜産振興審議会を開催して、昭和五十二年度実施する、まず加工原料乳補給金法に基づく加工原料乳の保証価格基準取引価格並びに限度数量についての諮問を行われ、また畜産物価格安定法に基づく指定畜肉の安定基準価格並びに安定上位価格、さらに飼料需給安定法に基づく五十二年度の飼料の需給計画の策定についての、それぞれ諮問を発せられたわけでございますが、この際、五十二年度の加工原料乳の新たな価格を四月一日から実施するに先立ちまして、昭和五十一年度に生産された全国の生乳のうち、加工原料乳として各都道府県知事が認定した加工原料乳の認定数量というものが、おおよそ判明しておるわけでございますからして、昨年の四月一日に告示された昭和五十一年度の加工原料乳の限度数量とこれを対比した場合において、どういうことになるかという点について、まずお尋ねしたいと思います。
  130. 大場敏彦

    ○大場政府委員 数量を私から申し上げます。  五十一年度の限度数量は、先生御指摘のように百三十八万トンであるわけですが、去年の四月からことしの一月まで発生した限度数量でございますが、百二十六万四千トンであります。これは百三十八万トンという対限度数量に比較いたしまして九一・六%ということであります。  なお、前年の同期間に比べまして、どの程度発生数量が今年度は伸びているかということを御参考までに申し上げますが、一一二・七%という伸びであります。
  131. 芳賀貢

    芳賀委員 私の尋ねておるのは、まず昨年四月一日に農林大臣が告示した加工原料乳の限度数量ですね。これはもう明らかになっておるわけです。それから四半期ごとに都道府県知事が、地域の指定生産者団体が集乳をした生乳のうち、加工原料向けとして認定したいわゆる認定数量というのはあるわけでしょう。それを全国的に集計して年間集計すれば、いわゆる認定数量の総数量というものがこれは出てくるわけです。これは三月の下旬に入るわけですからして、年度末の三月の時点において、この年間の知事が認定した加工原料乳の認定数量の総計数字というものが幾らになるか、これを聞いておるわけです。それと、昨年四月に告示した限度数量というものを比較した場合にどうなっておるか。
  132. 大場敏彦

    ○大場政府委員 どうも失礼いたしました。私、発生数量と申し上げましたが、これは各都道府県知事が認定した数量の一月までの数字であります。  今年度どうなるかということでございますが、それに二月、三月が加わるわけでありますが、まだ私ども集計はいたしておりません。しかし推測で申し上げますれば、従来の実績の勢いからいたしまして、百三十八万トンを十数万トンぐらいオーバーするのではないだろうかという推測をいたしております。まだ確定数字はもう少したたないと出てこないわけであります。
  133. 芳賀貢

    芳賀委員 十数万トンなんていうことを聞いているのじゃないよ。十数万トン程度では大臣が答弁できるわけだ。担当の局長の場合は、たとえば十四万トン超過しておるとか、十五万トンは超過すると判断されるとか、そのくらいのことを言えないと、大臣の先に答弁に立ったってしようがないじゃないですか。
  134. 大場敏彦

    ○大場政府委員 確定的な数字は申し上げられませんが、われわれのいまの推測では十四万トンないしは十五万トン、その程度の幅は許容していただきたいと思うわけでありますが、そう見ております。
  135. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、この点について大臣にお尋ねしますが、とにかく告示された限度数量に対して十四万トン以上、これは数量が超過するということになるわけですね。  それでは限度数量を超過した十四万トンの生乳に対して、当然これは生産者に対して、保証価格によって生乳の販売代金を確保させるためには、どうしても超過分に対しても、生産者補給金というものが確実に交付されなければならぬということになるわけであります。これはやはり農林大臣としても大事な点でございますからして、この超過分に対してはどうする、的確にこれを行政的に処理されるお考えであるかどうか、その点はどうですか。
  136. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、限度数量を十四万トンないし十五万トン超過する、これは当初飲料乳が相当伸びる、こういうぐあいに期待をいたしておったところでございますが、夏分に気温が低かったというようなことで飲料乳の伸びが一〇一%程度にとどまった、しかし生産は順調に伸びました結果、限度数量をただいま申し上げるようにオーバーをする、こういうことでございます。  そこで、政府としては、この限度数量につきましては、不足払いによって政府の責任でこれを補給をするということになるわけでございますが、この限度数量をオーバーした分につきましては、限度数量を変更するということでなしに、しかし現実には、それだけオーバーをしておるわけでございますから、生産農民の諸君の立場も考えまして、これに対する措置を私やる考えで、ただいま大蔵当局並びに畜産振興事業団等とも話し合いを進めておるところでございまして、芳賀先生の御要望に沿うように、できるだけの善処をいたしたい、こう思っております。
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 私は、何も大臣に要望しておるわけじゃないですよ。昨年四月に大臣が告示された限度数量、これは五十一年の生乳の需給計画政府が策定して、それから生まれた加工原料乳の限度数量は幾らということになっておるわけですからして、自分のつくった計画、それに基づいた限度数量を年度末に十五万トンオーバーしておるという場合には、やはり政府の責任において、これは法律に基づいて完全に処置しなければならぬと思うわけです。  だから、忠実に法律の命ずるところに従ってこれを処理されるのであれば、それでもう明快になるわけでありますが、その法律に忠実に従わないで、別途の方法でやるというようなことをいま述べられたわけでございますが、その方法とはいかなるものであるか、この機会に明確にしておいてもらいたいと思います。
  138. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 限度数量は、審議会等各方面の御意見を聞いた上で決めた数量でございます。先ほど私は申し上げたように、やはり生鮮な飲料乳として国民各層に消費をしていただく、消費の拡大を農業団体とともに努力をしておるところでございますが、たまたま気候等の異常低温といいますか、そういうことで伸びなかったという事情でございます。私は、農林大臣としては限度数量をひとつ守っていただきたい、こういうことを考えておるわけでございます。しかし、現実の問題として、そういう限度数量をオーバーする分が出ておりますから、この点につきましては、生産農民のことを考えまして、私は善処いたしたい、そういう方向で努力をいたしたいということを申し上げておるわけであります。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣、生産者に限度数量を守れと言っても、去年からちょうど一年牛乳年度が経過したわけだ。結果的には限度数量に対して加工原料乳向けの生乳の販売高というものが十五万トン超過しておる。これは実績として超過しておるわけですね。超過の根拠というのは、これは不足払い法の十一条、十二条に明定されておるわけですから、大臣の言われた限度数量というのは、これは年当初の需給計画を基礎にして、そのうち加工原料乳の限度数量は、たとえば百三十八万トンなら百三十八万トンということを初めに告示するわけです。ところが一方生産地域においては、その地域の都道府県の知事——現在においては、北海道と大臣出身の岩手県だけが、生乳の生産量のうち二分の一以上が加工原料乳ということで、この一道一県だけが加工原料乳地帯ということになっておるわけです。  ところが、大臣が言われたとおり、年当初の計画に対して生乳の消費、飲用乳の消費が伸びない。その達成しない分が結局加工原料乳の方へ回ってきておるわけですね。行き場がないから、有利な飲用乳には販売ができないから、不利であっても加工原料乳に販売するのもやむを得ぬということで、結局加工原料乳が限度をはるかにオーバーしたというような結果になっておるわけなんです。だから、加工原料乳の生産地帯の農家はまじめに守っておっても、飲用乳地帯の農家の飲用乳に売れなかった分が回ってくるわけだから、総体的には限度数量のオーバーということになっておるわけです。  ところが都道府県の知事は、自分の地域内の生乳に対しては、三ヵ月ごとに加工原料乳の数量を認定しておるわけです。その認定数量というものが一年間に総計されると、その総計の数量と告示された限度数量を比較した場合に、畜産局長が言ったように十五万トンなら十五万トン、認定数量と限度数量が合わないということになるわけですね。限度数量をオーバーしておるということになれば、当然この超過した分については法律の第十一条、第十二条に従って正しく処置しなければならぬということになるわけです。これはやり方もちゃんと示してあるわけですからね。どうせ同じ補給金を出すというんであれば、忠実に法律の示すところに従って実行するというのが、最も賢明な鈴木農林大臣の行政姿勢であるというふうにわれわれは考えておるわけです。  そのとおりやるというんであれば、何もこれ以上質問を進める必要はないのですよ。だから、この際、大臣から明快にしておいてもらいたい。
  140. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 芳賀先生のおっしゃっておる事態の処理につきましては、もう現実にそういうことが起こったわけでございますから、その問題は、私も責任を持って処理するつもりでございます。  ただ、限度数量の策定に当たって、どうも見通しを誤ったのではないかということになりますと、私は必ずしもそうではない。先ほど来申し上げるような状況もございました。しかし北海道を初め、私の県にいたしましても、知事は認定をしているというような、いろいろな事情もございます。そういう現実を踏まえて私は現実的な処理をしたい。また、今後の限度数量の設定等につきましては、十分慎重に、実態に合うような限度数量の設定に努力をしたい、こう考えております。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 いま大臣が言われた限度数量は間違っていないということは、これはその部分だけじゃないですよ。政府が策定した昭和五十一年度の生乳の需給計画が間違っていなかったということになるわけですね。たとえば年間に五百万トン生乳の生産が期待されるとすれば、それから自家用に消費する数量をまず控除して、それから、この不足払いの法律というのは市乳化促進、飲用乳促進の目的を持った法律ですから、五十一年度年間に飲用向けに生乳がどれだけ消費されるかという、その計画の数字が先になるわけであります。そうして残った分が結局加工原料乳向けの計画数字ということになるわけですよ。  だから、昨年の年当初に、時の大臣が策定された計画に対して、年度末のそれぞれの実績を対比した場合、間違っておるか間違っていないかなんという論議は当てはまらぬわけですよね。計画に対して、年度末の実績というものが完全に適合しておったかどうかということの比較は当然出てくるわけですから。  まあ、そういう議論を繰り返す必要はありませんが、いま大臣の言われたように農林大臣の責任をもって、いわゆる超過したと言われる十五万トンなら十五万トンについては、すでにその限度数量の枠内で消化された販売生乳と同じように、農林大臣が告示した五十一年度の生乳の保証価格というものが完全に生産者の手に渡るようにする。そういうような理解で、ぜひこれから畜産局長を鞭撻してもらいたい。  そしてこの財源というのは、大臣が所管しておる畜産振興事業団の業務上の差益金が積み立てられておる場合においては、それをまず充当し、そういう財源措置が講ぜられない場合においては、政府から適当な時期に一般会計から、それに見合う金額を畜産振興事業団に交付金として交付をして、それから事業団を通じて生産者に対して補給金というものが交付される、こういう手順になっておるわけでありますからして、そういう点は大臣から大場局長のしりをたたいて、そういうふうにやれというふうに十分な指導性を発揮してもらいたいと思うわけでございます。
  142. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 大場畜産局長のしりをたたくよりも、財政当局、大蔵省との折衝があるわけでございますが、私としては、この問題をぜひ処理をいたして、そして生産農民の諸君に御安心を願うようにいたしたい、こう考えております。
  143. 芳賀貢

    芳賀委員 あと若干畜産局長に尋ねます。  すでに昨日、それぞれ農林大臣から諮問が出たわけですから、今後飼料部会とか食肉部会とか酪農部会において、五十二年度に生産される加工原料乳とか畜肉あるいはまた、えさの需給計画の検討をして答申が出るわけでございますが、まず、この加工原料乳の価格の算定方式の中で、まだ改善されぬ部分が残っておるわけです。  これは局長も十分御承知でありますが、一つは、生乳生産に従事した生産者の自家労働に対する賃金評価というものが適正に行われておらないという点です。その一つは、今年の四月一日から来年の三月いっぱいまでに生産される生乳ですからして、それに投下される自家労働というものは、四月一日から向こう二年間に生産活動が展開されるわけですから、その期間中における適正な他産業の労働賃金というものを自家労賃に評価するということでなければいけないわけです。それがいままでは、価格決定の時期が三月末というのは必ずしも妥当な時期ではない関係もあって、五十二年度に採用しなければならぬ賃金水準というものは、結局時期の関係で前年の、五十一年の賃金実績というものを採用するようなことにどうしてもなるわけです。この点の、一年間の賃金の変化に対する差額というものを、どのように適正に新しい乳価の中に反映させるかということについては、今度の乳価決定については十分留意をぜひ要するというふうに考えるわけです。  第二点は、自家労働の賃金計算の場合、酪農家が採草地とか畑地を耕作して、いわゆる自給飼料の生産を行うわけですが、生産者が自給した飼料に対しては、統計調査部の飼料の生産費調査に基づいた価格ということに、いままでは計算されておるわけです。これはもう十数年来、購入飼料と自給飼料というものの計算を区分するのではなくて、むしろ自給飼料の評価がえの場合は、いわゆる可消化養分総量という飼料の評価がえ方式というものがあるわけでしょう。ですから、その可消化養分総量方式によって、これを飼料単位に換算して飼料代というものを計算すれば、購入飼料についても自給飼料についても同一評価で正しく算出されるではないか、この実現が一番好ましいということをわれわれは主張してきたのですが、これがまだ実現に至っていない。この点についても新しい方式を実行するようにした方がいいと思うのです。  もう一つは、いま言いました自給飼料の評価の場合、この分についての自家労働費というものは、臨時農業日雇い労賃によっていままで計算されておるわけです。同じ酪農家が毎日毎日の作業をする場合において、自給飼料の生産に取り組んだ場合の労働の価値というものが日雇い労賃並みというような、そういう差をつけるということは、まことに不適当なやり方でありまして、政府の考え方というものは、どうしたならば保証乳価を安く決めることができるかということだけにきゅうきゅうとして、そしてこういう不当な計算というものを一部実行しておるわけですからして、これは率先して是正する、こういうことでいくべきであると思いますけれども、担当の畜産局長としてはどう考えておるか。
  144. 大場敏彦

    ○大場政府委員 結論から申しますと、私どもいま現在作業中でありますが、来年の加工乳価の算定には法律の規定に即しまして、主要加工乳原料地帯の「生乳の再生産を確保することを旨として」という規定がございますが、それに即して価格算定をいたそうとして現在作業中であります。  飼育労働の労働費の評価でございますが、従来は飼育労働につきましては、主要加工乳の原料生産地帯の五人以上の製造業労賃をとっておりますが、それを来年度価格のときには、どう算定するか、これはちょっとまだ結論を出しておりません。検討中であります。先生が御指摘になりましたように、従来の農村日雇い賃金にかわりまして、本年度から新たに新農村労賃というものが統計情報部の方で採用になっておるわけでありますから、それとの関連をよくにらみ合わせて検討いたしたいと思っておるわけであります。  それから自家労賃の評価のときに、向こう一ヵ年の適正な労賃のアップといいますか、そういったものを見通すべきではないか、そういうような趣旨の御指摘だったと思いますが、私ども、コスト計算をする場合のルールといたしまして、これも御指摘がありましたように、前年の、つまり、ことしの例で言いますれば、五十年の七月から五十一年の六月までの生産費、原生産費を採用いたしまして、それを最近直前三ヵ月の物価で修正する、十一月から一月までの物価で修正する。それから同時に現在時点、この二月ないしは三月の時点においてはっきり確定しておりますものは、それを加味するというような形で生産費を修正いたしまして、それを採用しているわけであります。  さらに、四月以降の向こう一ヵ年の不確定要素がいろいろあるわけでありますが、それを織り込むことは、率直に申し上げまして、どの程度上がるか、また上がるか上がらないかという問題も、費目によりまして、計量的に見通すことはきわめて困難であります。それは、たとえば国鉄労賃等が四月から上がるというようなことがはっきり確定して、客観的にだれもが議論の余地がないというものでありますれば、それは採用するということであります。  それから次に、自給飼料の評価の問題でありますが、TDN、可消化養分総量で評価したらどうかという御指摘でございます。  これは、われわれ研究はいたしておりますけれども、濃厚飼料の中には、労賃の問題だとか、あるいは加工流通の経費の問題だとかそういったものがいろいろ入っておりまして、そういった要素を除去してすること自身なかなか技術的にむずかしい問題もございます。それから価格関係のスタンダードといいますか、基準をTDNということだけで律していいかどうかということにもいろいろ問題がありまして、議論が分かれるところでありますので、私どもはやはり統計情報部の一般ルールに従って評価をしているわけであります。  それからえさといいますか、牧草等の栽培労働でありますが、これも従来は農畜産物一般の生産費調査のルールに従いまして、農村日雇い賃金というもので評価していたわけでありますが、これには、先生御承知のとおり、いろいろ問題が出てきている。労働の質も補助労働になっておりますし、労働の主体も婦人とか、あるいは年寄りというぐあいに変わってきております。そういう意味で、新農村労賃というものを今年度から採用するということになっておりますので、その新農村労賃というものを採用したらどうであろうかというようなこともあわせて検討中であります。まだ結論は出しておりませんが……。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 いま局長の述べられたことは、ほとんどが従来どおりの方式でやるつもりだということに尽きるんじゃないですか。
  146. 大場敏彦

    ○大場政府委員 えさの栽培労働、これは従来は農村日雇い賃金という形で評価していたわけでありますが、これはいろいろ問題が出てきているということで、新しい農村労賃という形で評価するということが統計情報部でできているわけでありますから、そこは、かなり従来とは変わってきているということは御理解願えると思うわけでございます。
  147. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、私の言うのは、ことしの四月一日から来年三月三十一日までに生産される生乳でしょう。だから毎日、毎日生産者が労働を投下して生産活動を続けていくわけでしょう。そうなれば、ことしの四月一日から来年の三月三十一日までの間における——法律の運用からいうと、加工原料乳の主要なる生産地域における他産業労賃を基礎にするということになっておるわけだから、それについても、それと同じようなことをやる必要がある。ただ、時期の問題については、四月一日からというのは必ずしも適当な時期ではないのですよ。だから切りかえるとすれば、たとえば半年後の十月一日なら十月一日の時点で、ことしだけ半年ずらして、その時点で再計算をして、そうなると、春闘の結果というのは、はっきり賃金で反映できると思う。皆さんの公務員の場合は七月に人事院勧告が出るわけだから、政府もそれを全面的に尊重する。国会のわれわれも、それを実施するために毎年四月一日にさかのぼって実施するということになるわけです。  皆さんの場合には、そういうようにやっておるわけだから、やはり期間内における他産業の労働賃金というものを正しく反映させるということを、これはやればできるでしょう。そうして半年ずらして、ことしの十月に新価格を決める。そうすれば、それ以降は毎年十月一日から始まって、翌年の五月三十一日で牛乳年度の一年が終わることになるので、頭を使って、知恵を出して考えれば何でもできないということはないのですよ。大場局長としての輝かしい実績を残すためにも、ぜひそういうことをやったらいいのじゃないかというのが私の意見のわけです。できないとか、する意欲がないというなら、これは何をか言わんやですけれども、いま指摘した重要な問題等については、まだ数日間の期間があるわけだからして、ぜひ十分に検討して、鈴木大臣も比較的前向きにやるようなことを言っていますから、努力する必要があると思うのですが、どうですか。
  148. 大場敏彦

    ○大場政府委員 現在時点におきましては、やはり現在の時点で確定しているものを採用して、価格を算定するというよりほかに方法はないだろうと私は思います。四月に入りまして、いろいろまた——たとえば秋になりまして、その後の各原価要素の推移、どれだけ上がったか、これだけ下がったかというようなことも含めまして、それは常時点検もしたらいいと思います。そういうつもりでおります。  ただ、そのときに直ちに価格改定をするかどうかという議論になりますと、これは再生産を著しく阻害しているかどうかということに実はかかわってくる問題でありますから、その問題は、そういうこととあわせて考えていきたい。生産条件がどのように推移していくかということにつきましては、私どもよく心をしていくつもりであります。
  149. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣に締めくくりの質問をしておきますが、いま大場局長と五十二年度価格決定の算定方針の改善の問題について重要な点だけを論議したわけです。それは後で局長に聞いてもらえばわかるわけですけれども、一つは、自家労賃の評価の問題ですね。一つは、自給飼料の評価の問題と、それから告示価格を発表するいわゆる時期の問題が、どうも自家労働の賃金を正しく反映させるためには、四月一日というのは適正でないのですよ。それで公務員並みにする場合には、ことしは当然四月には決めますけれども、半年後の十月一日を一つのめどにして、そこで新しく再計算をする。その場合には、ことしの春闘等の経過を経て、公務員といわず、民間労働者といわず、賃金というものの水準が明確になるわけですから、それを原料乳初め畜産物価格にしても、米あるいは農産物にしても、最近は米価は七月の末に決めておるわけです。それから畑作農産物は、ここ三年間毎年十月に決定して告示するわけですから、むしろその時期にもう一度鈴木農林大臣の在任中、新方向というものを打ち出すというような意欲的な農政を進めるべきじゃないかというような点を、懇々と大場局長に示してあるわけでありますから、やるかやらぬかは後になってみれば、わかるわけでありますからね。  先ほど五十一年度の限度数量の問題については、誠意を持って実現するということをわれわれも安心して期待をしておるわけでありますが、新しい乳価あるいは畜肉の価格決定についても、ぜひ新機軸を開いて前向きに取り組むということで進んでもらいたいと思いますが、いかがですか。
  150. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 五十二年度価格決定の問題は、もう諮問もいたしておりますし、三月中に決定をさせていただきまして、今後の問題としては、御承知のように私は肉の価格とかあるいは乳価の問題とかだけでなしに、すべての主要農産物価格の問題、これは今後の自給率等を高めるためにも重要な要素になるわけです。それから総体的な価格のアンバランスがないように、農家の所得が均衡するようにということで、いま省内に農産物価格検討委員会というものを設けて、私就任しましてからも、できるだけ早く結論を出すようにということで督励をいたしておりますが、その際に、すべての農産物、畜産物等の価格のあり方というものを再検討したい、こう考えておりますので、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  151. 原茂

    ○原(茂)委員長代理 林孝矩君。
  152. 林孝矩

    ○林(孝)委員 私は、二百海里時代へのわが国の対応、こういう観点から漁業問題に関して質問を申し上げます。  昭和四十九年三月二十日の農林水産委員会において、私は前内村水産庁長官にこの問題を質問いたしました。そのときの答弁は、「二百海里というようなことが出てくれば、私どもはそういうものはとても同意できません」こういう発言があったわけです。以来三年を経過しまして、五十二年三月三日、モスクワにおいて鈴木農林大臣は、日本が近く二百海里を設定する方針を明らかにされました。  この日本の二百海里専管水域に対する態度の変遷というものを見てみますと、四十九年のカラカス会議では、絶対反対の態度を示され、五十年のジュネーブ会議では、遠洋漁業国の実績維持のための条件闘争に入ったわけですが、会議をまとめ上げようという切迫したものではなかったわけです。五十一年の春、実質二百海里の日ソ漁業交渉、アメリカにおける二百海里法の成立、五十一年ニューヨーク会議では、これは成果なく終わったわけですが、この三年間において、わが国が一貫して貫いてきた、いわゆる海洋の自由という立場が崩壊していることは、私は事実だと思うのです。  五十二年、ことしの二月十日、日米漁業協定によって、日本は初めて外国の二百海里水域を認めたわけですが、日ソ漁業交渉も日米協定方式で、きょうより交渉に入ると言われております。今回、ソ連の二百海里を認めるという立場に立っていると私は理解しているわけです。  最初にお伺いいたしますことは、このわが国の二百海里水域の対応というものが、現在ポスト海洋法会議時代に突入していると言われるときにあって、何か後手後手に回っているような感がしてならないわけです。そこで大臣は、この三年間政府がとってきた施策、こういうものが適切であったかどうかという点については、どのようにお考えになっているか。
  153. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 確かに林先生御指摘のように、わが国の二百海里時代への対応ぶりというのが逐次変わってきておるわけでございます。  申すまでもなく、三年前、当時の内村水産庁長官政府の方針としてお答えをいたした当時におきましては、海洋法会議におきまして、新しい二百海里専管水域なり経済水域という問題が、まだ論議の過程にございまして、日本としては、こういう遠洋漁業国家でございますから、できるだけ海洋自由の原則に立った立場を主張し、海を分割し合いをするというようなことは、好ましいことではないという立場に立っておったわけでございます。  しかるところ、アメリカ、カナダ、そしてソ連までも二百海里を設定する、こういう事態に当面をいたしまして、わが国としても、こういう関係国、しかも世界のリーダーシップをとっておるような国々が、海洋法会議の結論が出ないのに先んじて、そういう二百海里時代を宣言する、こういうことになってまいりました。  そこで、わが国としても、この世界的な大きな潮流、厳しい状況、これに対応いたしますために、相手は二百海里である、日本は日本沖合いを全く開放する、野放しにするというわけにはまいらない。日本の漁業を守るという立場からも、また、交渉は何といっても、同じ土俵で交渉するということが、わが国の国益を守るゆえんである、私は、こういうぐあいに判断をいたしまして、モスクワにおけるイシコフ漁業大臣との交渉の際に、かねて考えておりましたところをはっきり打ち出しまして、そしてそれを往復書簡の中に明記することにいたしたわけでございます。  領海幅員の十二海里の問題、そして二百海里の漁業専管水域の問題、私は、同じ条件、同じ土俵で、今後漁業交渉等が行われることが日本の立場を強化するゆえんである、このように考えておる次第でございます。
  154. 林孝矩

    ○林(孝)委員 この二百海里の宣言の時期についてでございますが、大臣は、いつの時期にこの二百海里の宣言をする予定ですか。
  155. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 海洋法会議の会期が五月になっております。統一草案に基づきまして、相当煮詰まった議論がここでなされるのではないかと思うわけであります。したがいまして、わが国としては、この五月会期の海洋法会議の動きというものを見て、その上で判断をいたしたいと思うわけでございます。  しかし、私の考えといたしましては、そこで結論が出ないという場合におきましては、さらに海洋法会議の結論待ちというような情勢ではございませんので、この海洋法会議の推移を見た上で、できるだけ早い機会に、日本も二百海里設定の方針を固め、国会の御審議、御承認を得て二百海里の設定をいたしたいものだ、このように考えておる次第であります。
  156. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣の御答弁にありますように、平等な権利を、あるいは利益を積極的に話し合う、こういう立場、同じ土俵の上に上るということ、私はその意見に賛成いたします。  とにもかくにも海洋の自由の時代は過ぎ去ったということです。特に日本の場合は、動物性たん白質に頼るところが大であることは、十分議論されておるところでありまして、大臣の今後の活躍というものに期待する声も大だと思います。  そこで、次に、私は遠洋漁業の縮小に備えて、沿岸、沖合い漁業の整備、充実、こういうものを図らなければならない。いわゆる近海漁業の重要性ということについて重大な認識を持つべきだと思うわけです。この場合、資源的に見て、現在以上にとれるけれども、流通や食生活の変化で、それほど食用に回っていない魚種、こういう魚種の利用についてお伺いしますが、たとえばアジとかサバとかイワシ、こういう多獲性の魚種、こういうものの収穫トン数、それからこういう魚種の多角的な活用をどのように考えておられるか、お伺いします。
  157. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これから海外における日本の漁業実績確保ということに私どもは全力を尽くしたい、こう思っておりますが、しかし、いずれにしても実績を一〇〇%確保することは、これは言うべくして不可能なことでございます。ある程度の漁獲量の削減ということは必至である。そこで、これをカバーいたしますためには、何といっても日本列島周辺の沿岸、沖合いの漁場を開発整備をして資源をふやす、さらに進んでは、育ててとる漁業、栽培漁業等を盛んにして漁獲を高める必要がある、このように考えております。また、二百海里の外にありますところの公海上の未開発の漁場、未利用資源、そういうものを開発利用するという面も、これも力を入れていかなければならないと考えております。さらに、林先生御指摘のようなイワシとかサバとかいうような多獲性の魚類、これの高度利用、できるだけ可食部分を多く、加工等によりまして利用の方法を考えて、多く食ぜんに上せるというようなことを、ぜひともこれはやらなければならない、このように考えておるわけでございます。  ちなみに、北海道等におきましては、スケトウダラの漁獲減に伴って多数の零細な中小加工業者等が原料難にも陥っておるというようなことでもございますので、イワシとかサバとか、そういう多獲性の大衆魚、こういうものの加工、保蔵、流通の問題、こういう問題に力を入れなければならない、このように考えております。  イワシやサバが現在どれだけとれておるかということは、水産庁長官から御報告をいたします。
  158. 岡安誠

    ○岡安政府委員 数量について申し上げますと、昭和五十年度について申し上げますと、イワシは約八十六万二千トンでございます。それから、サバは百三十一万八千トンでございますし、それから、サンマは二十二万トン程度ということでございます。そのうち、食用として利用されておりますのは、イワシ、サバとも大体二割から三割程度、あとは漁業用または畜産用のえさとして飼料に回っておるわけでございます。
  159. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一つの問題を指摘しますが、こうした多獲性の魚種において、たとえば海洋で投棄されておるというような事実が過去にあったわけです。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕 それは魚価の点で、いわゆる商売にならないということですね。こういうようなことが今後どういう形で解決されるかという点については、どのようにお考えですか。
  160. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ときどき指摘をされることでございますけれども、すべての船がというふうには考えておりませんが、たとえば海上で加工等をする場合に、サイズが非常に合わないような場合には、小さいサイズの魚を捨てるというようなことが間々あるということ、これはおっしゃるとおり資源の点におきまして、やはり問題がある。私どもといたしましては、加工の点その他の点において、なお改善をすれば、そういうような資源を荒らすような漁獲というものが防止し得るのではないかというふうに考えております。今後非常に規制された中で漁労を行う場合には、そういうようなことのないように当然指導していきたいというように思っております。
  161. 林孝矩

    ○林(孝)委員 過去の漁業政策を見ますと、重点が遠洋漁業に置かれておって、沿岸、沖合い、こういう漁業には余り力が置かれてなかったという印象を受けるわけです。ところが、今回のこうした事情というものを背景にして、いわゆる近海漁業というものが非常に重要視されるようになってきたわけです。  そこで、お伺いいたしますけれども、現実の問題として、中途半端なこういう施策というものは、今後においては用いてはならないというような状態になっていることは事実なんです。水産行政の中で、特にこうした近海漁業に対する特別の施策というものを考えられておるかどうか、具体的にお伺いをしたいと思います。
  162. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほども触れた点でございますが、私どもは二百海里時代というものを予見をいたしまして、昭和五十一年度から二千億、七ヵ年計画というもので沿岸漁場の開発整備事業を公共事業として実施をするということにいたしておるわけでございます。これによって、平たく言えば海洋牧場というような考え方で、海を耕し、資源をふやす、さらに進んで増養殖、栽培漁業を盛んにする、こういう方向に力を入れていく必要がある。  ちなみに、専門家の検討の結果によりますと、日本列島周辺の二百メートルよりも浅い部分、俗に大陸だなと申しますか、その海域が三千万ヘクタールあるということでございます。そのうち、現在増養殖等に利用されておる海域は、わずかに百五万ヘクタールないし百十万ヘクタールという程度にとどまっておるわけでありますが、これをせめて三分の一の一千万ヘクタールを開発利用する、資源をふやすということになれば、優に一千万トンの漁獲が可能である、こう言われておるわけでございます。したがいまして、第一次七ヵ年計画を達成いたしますれば、第二次、第三次、第四次、第五次とこれを積み上げてまいりまして、沿岸漁業を積極的に活用することを考えたい、こう思っております。
  163. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは次に、日ソ漁業交渉についてお伺いいたします。  きょう三月十五日から交渉が始まっておるわけでございますが、海外の特派員であるとか各紙の報道を見ますと、この交渉が、ソ連側の態度が非常に厳しい姿勢をとる、こういう方針を打ち出しているという報道がなされております。  たとえば、ポリャンスキー大使は、日ソ間に未解決の領土問題は存在しない、こういう発言であるとか、日本側が領土問題を蒸し返せば、暫定取り決めができなくなる、こういういわゆる北方領土を含めたソ連の線引きへの、日本政府の抗議に対するソ連の考え方を示唆したものだと思うのですが、そういう反論であるとか、あるいは東京交渉へ向かうソ連の代表が、サケ・マス、ニシンへの規制は、すでに実施した二百海里が前提である、こういうことであるとか、あるいは、いままでのような公海上の資源分配交渉はもう終わった、こういう考え方等々、ソ連の今回の漁業交渉に臨む姿勢というものは、二百海里の原則を徹底して日本に押しつけようとしていることがうかがわれます。同時に、北方領土問題まで決着をつけようとしているんではないか、こういうことも憂慮されるわけですね。  また、これは農林大臣とイシコフ漁業相との交換書簡でありますけれども、日本にとってきわめて厳しい内容となっていると思うわけです。  そのような背景というものを踏んまえて、いま日本とソ連との漁業交渉がモスクワと東京で行われる。東京とモスクワで行われる二つの交渉の兼ね合い、それから、ソ連のモスクワで行われる交渉において、何が日本の主張であり、東京においては、どういうところが日本の一番中心の主張であるのか、この点について当委員会において明確にしておいていただきたいと思うのです。
  164. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まず、北方領土の問題でございます。  これは明確にしておく必要があると思いますが、御承知のように、一九七三年にモスクワにおきまして、田中当時の首相とブレジネフ書記長、この最高首脳間で会談をいたしまして、共同コミュニケが発表されました。その中には、戦後未解決の問題を解決をして、そして日ソ平和条約を締結する交渉を今後継続をする、こういうことをはっきりうたっておるわけでございます。  これに基づきまして、その後日ソ両国の外務大臣間で話し合いが行われ、戦後未解決の問題という中には、北方四島の問題を含むものであるということが確認をされておるわけでございます。したがいまして、在日のポリャンスキー大使が、いかようなことを申そうとも、この両国首脳によって確認された戦後未解決の問題、これは今後継続して日ソ間で交渉していくんだ、こういうことでございます。  したがいまして、私は、イシコフ大臣との漁業交渉におきましても、領土の問題は公式、非公式にも、イシコフさんからも私の方からも一切出ておりません。これは、領土問題に触れますと、もう初めから暗礁に乗り上げて、漁業交渉などというものは成立するはずがない。そういうようなことで、私どもは、この問題は今後継続して日ソ間で交渉し、処理されるべき問題であるということで、たな上げをいたしまして、そして日ソの新しい今後の漁業関係の長期に向かっての安定的な枠組みと体制というものをつくることについて隔意ない意見の交換をした、こういうことでございます。  私が交渉に臨みまして一番頭を悩ましたことは、モスクワに着きましたのが二十七日で、二十八日にイシコフさんとテーブルに着いたわけでございますが、翌三月一日から二百海里を実施するということを宣言いたしております。その時点におきまして、日本の中小漁船を初めといたしまして千数百隻の日本漁船が、あの海域で操業しておるということでございまして、この操業の安全を確保する、漁業の安全を保障してもらう、このことが最大の問題でございました。  そこで、ソ連の二百海里設定というものを前提として、そして長期の漁業協定、その漁業協定は国会の御審議、御承認も得なければ発効できないわけでございますから、その間を暫定取り決めでつなぐ、こういうことで向こう側も了承いたしまして、それならば暫定取り決めができるまでの間は、従前どおりの操業を認めよう、こういうことになったわけでございます。ただ、その際、暫定取り決めは三月十五日からモスクワで交渉し、三月中に暫定取り決めを取り結ぶ、その間、三月中はサケ・マスとニシンは、日本は操業を中止する、こういうことでございます。  この問題は、かねて、日ソ漁業合同委員会で両三年前からソ連側から強く打ち出されておった問題でございます。当該年度のサケ・マスなりニシンの漁獲量を、資源の評価をして、そしてその条件、方法を取り決めようという交渉が始まる前に、日本がお先に失敬をして、どんどん失礼をするというようなことは、条約の精神から言っておかしいではないか、こういうことで、執拗にその点を日本に改めるようにということを迫られておった問題でございます。  今回、ソ連の二百海里設定に伴いまして、日本が強行出漁をする、一方的に出漁するということになりますと、拿捕その他の不祥事態も起こる可能性があるわけでございまして、私は、この条件はのむことにいたしたわけでございます。  サケ・マスは、日本海のサケ・マス漁業から始まるわけでございますが、三月中は北海道沖まででございまして、実質的にソ連の二百海里水域には船は入ってまいりません。でありますから、サケ・マスにつきまして、三月の出漁を取りやめということは、こちらは実質的に何の損害もないわけでございます。しかし、ニシンにつきましては、オホーツク海域でニシンをとるわけでございますから、ニシン漁業者に対しましては、非常に気の毒な結果になったわけでございまして、これらの救済措置等につきましては、今後十分考えていきたい、私はこう考えております。  そこで、東京とモスクワの交渉が並行して行われるのだが、モスクワの交渉、東京の交渉では、どういう点に重点を置いて交渉するのか、こういうお尋ねでございます。  東京における日ソ漁業条約に基づく合同委員会、ここは条約に基づきまして、五十二年度のサケ・マス並びにニシンの漁獲量、それから操業の条件、方法、これを正しい資源の評価の上に立って両国で取り決めをする。こういうことで、ことしは何と言っても、サケ・マスは豊漁年の年に当たるわけでございます。そこで、豊漁年には八万五千トンから七千トンという漁獲割り当てを確保しておったわけでございますから、ことしは豊漁年であることを踏まえまして、できるだけの漁獲量を確保することに全力を挙げたい。また、ニシンにつきましても、学問的、科学的な資源の評価の上に立って、これも四月からの操業ができるように最善の努力をいたしたい、こう考えております。  モスクワにおける交渉は、暫定取り決めの交渉になるわけでございますが、サケ・ニシンを除いた魚種が対象になるわけでございます。商業的に価値のある主要な魚種はすべて対象になろうか、こう思うわけでございますが、これはなかなか厳しいものがあると私は考えております。  御承知のように、ソ連は、アメリカ、カナダ、ノルウェー、EC、これらの国と交渉しており、すが、いずれの国からも相当の漁獲量実績の削減を受けておる。こういうようなことで、その失った分を自分の北西太平洋の極東の二百海里の中でできるだけ補おうという意図が十分うかがわれるわけでございまして、今後の日ソ交渉は、私は非常に険しいものがある、こういうぐあいに受けとめておるところでございます。
  165. 林孝矩

    ○林(孝)委員 東京でのサケ・マス、ニシン交渉の問題点について、いま大臣から答弁があったわけですけれども、漁獲量の削限が焦点になるわけです。これが問題の焦点になるわけですが、五十年度実績で見ますと、北洋漁場におけるサケ・マスの漁獲量は一万三千トン、ニシンは五万四千トン、こういうふうになっているわけですね。この数字は間違いないでしょうか。
  166. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまの先生の数字でございますけれども昭和五十年度は、先ほど大臣が申し上げましたとおり、サケ・マスの漁獲量の枠は八万七千トンということで合意ができまして、B区域は若干アローアンスが認められておりますので、実績は九万一千トンというのが五十年度実績でございます。ニシンは、五十年度は索餌のニシンにつきましては、大体四万四千トンか、その程度でございまして、五十一年度が半減というような数字になっております。
  167. 林孝矩

    ○林(孝)委員 サケ・マスの九万一千トン、ニシンの四万四千トン、こういう実績が、もし伝えられるように、ニシンが全面禁漁とか、あるいはサケ・マスが規制されるというふうになると大変なことなんで、大臣としては、今度の交渉でどの程度までの漁獲枠を要求されようというお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  168. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 もとより、いま長官が過去の実績をお示ししたわけでありますが、この実績に近づけるように最大限の努力を払うつもりでございます。  ただ、ニシンの問題につきましては、北海におきましても、また北大、四洋におきましても、ニシンの資源は全く危機的な状況にあるわけでございます。そういうことで、ソ連側もニシンの資源の問題については、非常にシビアに考えておるようでございます。私は、サケ・マスの豊漁年を踏まえての実績確保と同時に、こういうニシン資源の状況を考えます場合に、ニシン交渉というのが非常にむずかしい局面に立っておる、こう認識をしております。
  169. 林孝矩

    ○林(孝)委員 一方のモスクワでの協定締結交渉では、スケトウダラ、カニ、ツブの規制、及び拿捕漁船の裁判権の問題とか入漁料問題、北方領土周辺水域線引き、こうしたことが焦点になると考えられるわけですが、特に北方領土、この領土問題が出れば、交渉は暗礁に乗り上げるということで、この周辺水域の線引き問題は切り離して考えるわけですけれども、非常にまた重要な問題でもあると思うわけです。  これも伝えられるところの話でございますが、政府は北方領土周辺には国際海峡を設けないという結論に達したということでございますが、これは日ソ漁業協定交渉に領土問題を持ち込まないための措置である、このように考えていいものかどうか。国際海峡を、農林大臣は国際的な通航に利用されている海峡、このようにおっしゃったということですが、とするならば、北方四島周辺の海峡は、当然国際海峡ということになるのではないかとも考えられるわけです。その辺についてお伺いしておきたいと思います。
  170. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まず最初に、漁船の許可証の問題、入漁料の問題、裁判管轄権の問題等々あるわけでございますが、入漁料の問題は、私とイシコフさんの会談の間におきましては全然出てこないのでございます。私もどうも不思議でならないわけでございますけれども、こちらは払う方でございますから、こちらから持ち出すわけにもまいりませんで、とうとう入漁料の問題は、最後まで話題に出なかったのでございます。  それから、漁船に対する許可証なり、あるいは裁判管轄権というようなもの、これは全海域についての問題でございますが、わが国の国民の権利義務にかかわる問題でございます。私どもは、長期の基本漁業条約なり協定ができて、そして国会の御承認を得て、批准手続がなされた場合において初めてこれらの問題に真っ正面から対処できるわけでございますが、暫定取り決めの場合におきましては、行政協定になるわけでございますから、行政府としてなし得ることと、なし得ないこととあるわけでございます。国会の御承認を得ない間は、政府としてなし得ることと、なし得ないこととあるわけでございます。  したがいまして、私どもは、大体日米の問の暫定取り決め、ああいうことをひとつ林先生も頭に置いていただいて、民間の許可証の申請は、日米の場合は大日本水産会がそれをやっておりましたが、そういうような形で申請もし、許可証も受け取って、そして各漁船にそれを与える、そういうことにならなければ、国民の権利義務にかかわる問題でございますから——政府としては、政府みずからがそういうことをするわけにはまいらない、このように考えております。
  171. 林孝矩

    ○林(孝)委員 日米の暫定協定と、今度の日ソの場合との違う点、これは先ほど大臣も申されましたように、ソ連が日本と同じいわゆる遠洋漁業に依存しているところが非常に大きいということで、そういう当事国、日本から言えば、相手国の事情というものがアメリカとソ連では違います。そういうところから非常に危惧される点があるということなんです。  もう一つ、領土問題たな上げということ、これも危惧されることですが、今回の漁業交渉においては、そういう問題に触れることは非常にタブーである。ただ、領土問題という純粋な領土権という問題から考えますと、この北方領土というものは、今回のそうした漁業交渉において、ソ連から見れば、この漁業交渉を一つの実績として、ソ連みずからの管理というもの、この北方領土に対してソ連は、わが国の領土であるという既成事実をつくってしまうのではないかという心配をするのですが、その点は、いかがでしょうか。
  172. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それは、二百海里の漁業専管水域の場合のみならず、領海十二海里の問題も絡んでおったわけでございます。しかし、領土問題については、両国の首脳間で、はっきり未解決の問題として今後交渉するんだということが確認されておりますから、この問題は漁業問題として、あくまで日ソ間で話し合いをしていく。  それから、もう一つ御参考までに申し上げておくわけでございますが、イシコフさんとの会談の中で、北海道沿岸に接続する海域、これは日本の北海道を初め中小の零細漁船が一千隻以上あの海域で操業しておる、出たり入ったりするわけでございます。こういう海域の特殊事情、そういう実態というものは、よくソ側も承知いたしておりまして、他の海域と同じようには扱えないということも、私に率直に意見として述べておったところでございます。私はさらに、日本がみずから日本の二百海里を設定するということ等いろいろなことを総合的にお考えいただきまして、この漁業の問題に絡めて既成事実云々、決してそういうようなことにならないように、われわれはあらゆる点から配慮してまいりたい、こう考えております。
  173. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もう一点お伺いしますが、アメリカ水域と違って、北洋漁業の場合は、ほとんどが中小零細漁民であるということです。協定により、漁獲量の大幅削減、入漁料支払い、こういうことは、アメリカ方式と比較しても、規模が小さいもので、受けるダメージも大きいのではないかという気がするわけです。  そこで、入漁料補助だとか、あるいは離職者対策、それからもう一つは、これは非常に消費者との関連のある問題ですが、魚価上昇の便乗値上げ、たとえば、これは全然別な話になりますけれども、スケトウダラにおいては三割方値上がりになったとかいうような報道もございまして、非常に便乗値上げというものが問題になる。こうした点に関しての対策をどのように考えられておるか、お伺いしておきたいと思います。
  174. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先ほど大臣からお答えしたとおりでございまして、たとえば入漁料につきましては、日米などでは入漁料支払いということが義務づけられまして、大体百十九万一千トンの今年の漁獲割り当てにつきましては約二十億円、三月以降にすると約十七億円でございますけれども、この入漁料を払わなければならない。それによって業界が受ける一時的なショックを緩和するために、低利資金の融通、そのための利子補給ということを現在検討いたしているわけでございます。日ソはまだそういう話がございませんので、これはまた別にいたしたいと思っております。  それから、雇用問題でございますけれども、確かに漁獲量の大幅削減ということになれば、減船という問題も当然考えなければならないわけでございます。その場合でございますけれども、私どもは、そういう減船に関係される船員の方々に対しましては、なるべく他の海の仕事に転職ができるように、これは先般国会で御承認いただきました漁業再建整備特別措置法によりまして、海から海への転職につきましては、特別の対策を講ずるということにいたしておりますし、また陸の方へ新しい職場を求められる方々に対しましては、雇用対策法によりまして十分手厚い措置を講じたいというふうに思っております。しかし、まず私どもは、伝統的な漁獲実績確保するということに全力を挙げたいということが本筋だというふうに考えております。  それから、漁獲量の削減に伴いまして、若干投機的な値上がりをしているのではないかという御指摘でございますけれども、特にスケトウにつきましては、一部の地域で二倍というような値が出たことも聞いております。スケトウにつきましては、前年に比べまして三割程度は入荷がふえているはずでございます。にもかかわらず、平均いたしますと、最近七割程度値段が上がっているということは、多少私ども不思議に思っております。  これは多少は原因がございまして、スケトウの体長、大きさが昨年よりも若干大きなものが入ってきているというようなこととか、タラコは最近非常に値上がりいたしまして、それに引っ張られていることとか、それからミール、魚粉、魚かす等が、やはり大豆かすの値上がりに引っ張られまして上がっていることによって、スケトウ自身も上がっているとかいうようなことが影響いたしまして、スケトウの値上がりがあると思っております。ただ、二倍以上の値をつけられるということは異常でございますので、私ども、近くそういう思惑的な投機がないように厳重に指示をいたしたいというふうに考えております。  今後とも漁獲削減に伴いましての対策といたしましては、先ほど御指摘のような多獲性魚を有効利用するというような方法とか、加工に当たりましては、歩どまりを上げる方法とか、あらゆる方法を講じまして、わが国のたん白質摂取量の半分を占めている魚の地位を少なくとも低下させないように努力をいたしたいというように考えております。
  175. 林孝矩

    ○林(孝)委員 終わります。
  176. 芳賀貢

  177. 春田重昭

    春田委員 本日も会計検査院から農林省不当事項というものが挙げられましたけれども、他の省庁と比較した場合、農林省不当事項が非常に多いわけですね。たとえば、昭和四十八年は六十一件指摘されております。また四十九年では四十一件、さらに五十年では三十四件という形で出ております。この件数を全体の不当件数と比較した場合、昭和四十八年におきましては、全体では百五十二件出ております。農林省は六十一件ですから、比率からいくと四〇・一%でございます。四十九年の四十一件を全体の件数と比較した場合、全体が八十六件でございますので四七・七%と上がっております。五十年におきましては、件数は三十四件と減りましたけれども、全体の件数も八十二件と減少し、率からいくと四一・五%ということになっております。  このように、全体の不当件数の中で、約四割ないし五割を農林省が占めている。このような不名誉な事実を大臣としては、どのように受けとめているのか、またこういう事実に対して、関係機関にどのように指導をしてきたのか、最初にお聞きしたいと思います。
  178. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 確かに農林省関係不当事項としての問題が他省に比べて多いわけでございますが、私どももこの点を深く反省をし、その反省の上に立って改善措置を講じておるところでございまして、不当事項も年々その件数が少なくなってはおります。しかし、なお相当数の不当事項が指摘されておるわけでございまして、この点は、先ほど北山さんからも御指摘がありましたように、農林省事業はいろいろの補助事業が非常に多い。また間接補助事業もたくさんあるわけでございます。また、その補助を受けて仕事をやります事業主体と申しますか、それも零細規模のものが多いというようなこと等もございまして、監督、指導等が十分徹底しないといううらみが確かにあるわけでございます。  こういう点は、私ども今後十分指導と監督を強めまして、不当事項を絶滅するような方向で努力を傾けてまいりたい、こう考えております。
  179. 春田重昭

    春田委員 そういう答弁が大臣から返ってくるんじゃなかろうかと私も予想しておったわけでございますけれども、実は農林省と建設省というのは、大体同じような事業量があるわけですね。たとえば、昭和四十九年度農林省公共事業関係工事は十万四百四十八ヵ所となっております。そして、そのうちの五%に当たる五千百十六ヵ所を会計検査院検査しておるわけですね。ところが、農林省と同じく補助事業が多いのに建設省関係事業がございますが、この建設省も、四十九一年におきましては、補助事業関係で約十三万二千九百九十三ヵ所行っているのです。むしろ農林省関係よりも、約三万ヵ所多いわけですよ。  しかも、検査に当たったのは、その五・三%に当たる七千八十一ヵ所ということで、検査対象個所も農林省と比べた場合約二千ヵ所多いわけです。ところが検査結果によりますと、四十八年は建設省では四十一件、農林省が六十一件ですから、二十件少ないわけです。それが四十九年になりますと、十六件に下がっております。農林省が四十一件ですから、三倍弱になっているわけですね。三分の一の不当事項件数になっております。さらに五十年度におきましては、十件と下がっております。  そこで、まあ大臣としても行政指導等を厳しくなさっていると思いますけれども、このように似通った省庁の建設省、農林省事業でありながら、片方では建設省の約三倍ぐらいも出ているということは、指導の仕方が甘いのではなかろうか、このように私は思っているわけでございます。このように比較対照した場合、はっきりと数字の上に出ておりますので、やはりもっと厳しくやる必要があるのではなかろうか、もっと体制を整える必要があるのではなかろうかと思いますけれども、再度大臣にその決意をお伺いしたいと思うのです。
  180. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のことは身にしみるほど痛いわけでございまして、今後、深い反省の上に立って、その改善策につきましては、あらゆる角度から検討を加え、善処してまいりたい、こう考えております。
  181. 春田重昭

    春田委員 さらに具体的に申しますと、先ほど大臣もおっしゃったように、政府補助金対象事業の中に、この不当事項の主な原因があるわけでございまして、特に、農林省関係の中で農業改良資金という貸付制度がございますけれども、この制度は四十九年でも二十一件、全体の約半分も出ておりますし、五十年でも二十三件というふうに出ておりまして、全体の約半分を占めているわけでございます。そして、会計検査院報告の中にも書いてありますけれども、一つは「貸付けの対象にならないものに貸し付けているもの」さらに「借受け者が事業実施していないもの」また「借受け者が計画事業費より少額で事業実施しているもの」ということで具体的に示されております。  この農業改良資金貸付制度につきましては、非常に長期で、しかも無利子ということで多くの申込者があると聞いておりますけれども、この問題に関しましては、農林省としては、不当事項に挙がりました各府県に対しまして、具体的にどのような指導をしてきたのか、そういう指導をやってきたと思いますので、御答弁を囲いたいと思うのです。
  182. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 お答えを申し上げます。  農業改良資金は、貸付期間は最長五年でございますが、無利子の資金でございまして、農業改良のために非常に重要な貸付金でございます。これが、いま先生の御指摘になられましたような不当な貸し付けになっておるということは、まことに申しわけないことと存じております。  そこで、私どもといたしましては、これの貸し付けの適正を図るために通達を出しておるわけでございますが、五十年にはその通達を改正いたしまして、毎年貸し付けの跡をトレースしてみまして、不当貸し付け状況がないかどうかということを洗って、農林省の方に報告をさせるというシステムをとったわけでございます。  そのほか、その通達は、不適正な貸し付けが行われないように、現地確認の制度でございますとか、それから改良普及員が後に調べてみまして、確かに計画どおりの貸し付けが行われ、効果をおさめたかどうかについての所見も報告するというシステムをとっております。一層その適正な実施確保する意味で、先ほど申しましたような新たな報告徴収の制度をとり、そして適正を確保するということにいたしておるわけでございます。  なお、このような事態が起こりますのは、やはり貸付機関でございますとか、それから借り受けをする農家の側にも、本制度に対します無理解と申しますか、理解が十分でないという点が見られますので、この点は、十分その趣旨の徹底を図るように、私どもとしては、あらゆる機会を通じまして指導に努めておるところでございます。しかしながら、それにもかかわらず、かような事態が起きましたこと、まことに申しわけなく存じております。
  183. 春田重昭

    春田委員 この制度の運営のやり方というのは、借り受け者が農協に行きまして、農協、市町村、もう一方普及員の調査といいますか参考意見を求めるようになっておりますね。その市町村の意見と普及員の意見を府県が上げて、そして最終的に貸し付けするかどうかを決めるわけでございますけれども、そういう点で、いま局長からも答弁があったように、さらに指導を徹底していくということがありましたけれども、私は、問題の一つに、普及員の方々の人的な面の無理があるのではなかろうかという危惧を抱いているわけでございます。  さきに調査した段階では、昭和五十一年度全国で約九千八百六十七名ですか、普及所も六百三十五ヵ所ある、このように聞いておりますけれども、人的な面の、いわゆる非常に少ないので、適正な判断と処理ができていかないのではないか。時間的な面もあると思いますし、そういう点で、普及員が全国でこれだけしかいないということで、こういう問題が発生してきているのではないかと私は思っているわけでございますけれども、この点、どうお考えになっておりますか。
  184. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 確かに、貸し付けに当たりまして、改良普及員が事前に指導し、それから計画につきましては、それについて技術上あるいは経営の立場から見ての所見を加えまして、その意見を重要な参考にいたしまして貸付機関が決定をするということになっておるわけでございます。したがいまして、普及員のこの制度の運用に占める地位は非常に高いわけでございますが、いま人的体制と貸し付けとの関係がどうかという御指摘でございました。これは、一概にこういうことが言えるかどうか存じませんが、資金の種類に、技術導入資金と、後継者の関係資金と、生活改善資金と三種類ございます。  技術導入資金につきましては、農業改良普及員一人当たりで割ってみますと、これは五十年度の件数を割ってみたわけですが、一人当たり二件強ということに相なっております。それから後継者育成の資金でございますが、これにつきましては、一件弱ということになっております。一人当たり一件に満ちません。それから生活改善関係では、生活改良普及員の数の問題もございまして、四件弱というようなことになっております。  総体的な形はさような形でございますが、技術の関係などで、かなり高度な技術を要するというようなことになりますと、私どもといたしましては、地域担当の普及員のほか、専門の普及員の方々を計画の指導の段階から、それから計画についての所見をつける段階、あるいは貸し付けを行った後の指導の段階という段階に至るまで、チームワークで事に当たるように言っております。  さようなことで、担当が一人と決まりまして、その人だけが処理するということで必ずしもやっておるわけじゃございませんから、先ほどのように、機械的に一人当たりで割るのもいかがかというようにも思いますが、そういうチームワークをうまく活用してやる、それからなお改良普及員で足らないところは、専門技術員の方あるいは試験場の職員の方の応援を仰ぐというような体制にいたしておりますので、全体として体制が弱いということから、こういうことが起こるというよりも、むしろ普及員などでも異動がございまして、そしてふなれな者がやってしまうとか、改良普及所の活動の仕方、配置されておる人のやり方というものにも、かなり関係をしてくるというふうにも思います。  そういう意味で質の面を重視いたしまして、御指摘のありましたようなことが起こらないようにしてまいりたいというふうに思っております。
  185. 春田重昭

    春田委員 いずれにしましても、そちらが専門なんですから、五十一年度はいま調査の段階だと思いますが、このような不当不正事項がさらに五十二年度以降上がってこないように、ひとつそれなりの努力を払っていただきたい、このように思う次第でございます。  続きまして、せっかくいま農業改良資金貸付事業の問題が出ましたので、私は、この事業の正常な運営を図るという意味で、さらに若干御質問をしたいと思うのでございます。  局長がおっしゃったように、この制度には資金貸し付けに、技術導入資金と、農家生活改善資金と、農業後継者育成資金、このように三つがあるわけでございますけれども、最近三ヵ年間の貸付枠と貸し付け実績が項目にわかれば、御説明願いたいと思うのです。
  186. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 貸付枠につきましては、ちょっと後ほど申し上げたいと思います。  貸し付け実績でございますが、四十八年は技術導入資金が百十億、生活改善資金が二十五億、それから農業後継者育成資金が五十八億でございます。それから四十九年は、技術導入資金が百十七億、生活改善資金が三十五億、それから農業後継者育成資金が六十五億、五十年度は技術導入資金が百二十一億、生活改善資金が三十九億、後継者育成資金が七十一億、いずれも端数を切り捨てての数字でございます。貸し付け実績は、さようになっております。
  187. 春田重昭

    春田委員 私、この資料をいただきまして、予算の枠と対照してみたわけでございますけれども昭和四十九年度の貸付枠と実績を見た場合、技術導入資金で約十億円、それから農家生活改良資金では約十二億円、実績の方が貸付枠より上回っているわけです。それから五十年度は、農家生活改良資金で十二億、枠より実績がオーバーしているわけですけれども、この資金は、一体どういう形でやりくりされているのか、お尋ねしたいと思うのです。
  188. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 この点は、できるだけ県の改良普及所単位の貸し付け計画年度に最初につくりまして、やることになっておりますが、県別に見まして、やや思うとおりに貸付金が出ていかないという場合があるわけでございます。その場合に資金の間の枠の融通みたいなことをやりますので、そういう関係が、いまおっしゃったようなことになってあらわれたわけでございます。
  189. 春田重昭

    春田委員 ところが、そういう局長答弁からすれば、昭和四十九年度では、実績が約二百二十億円上がっているわけです。ところが、予算としては二百十億なんですね。いま局長がおっしゃったことは、お互いに流用するという点ではうなずけるのですけれども、私の計算した段階では約十億円、昭和四十九年度では実績が予算の枠よりオーバーしているわけです。この実態はどう御説明願えますか。
  190. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 枠と申しますのは、国の予算の上で単年度、単年度にどういう予算を組むかということで枠を組むわけでございます。そういたしまして、その枠ごとに資金の返ってくるものもございますから、循環を計算いたしまして、どういう資金量が要るか、そうなりますと、資金造成額として元金をその単年度にどれだけ造成しなければならないかということを計算をいたしまして、資金の元金造成のためには三分の二の助成をするわけでございます。県はそれを特別会計におきまして三分の一をつけまして、管理をして貸し付けをするということになっておりますので、国の予算の資金造成の関係をやるために枠というものが一応あるわけでございます。その枠に拘束をされて県が、各県に配分をしたその枠を超えて貸し付けをしてはならないということではございませんで、県としては資金が思いがけず償還がたくさん参りまして、その年度としては、それを財源にして貸し付けるものがたくさん出るということになりますと、その枠を超過する、そういう現象が起こるわけでございます。これが四十七県各県にいろいろと起こってまいるわけでございまして、それを集計する関係から、いま先生のおっしゃったような現象というのが起こる、こういうふうに御理解をいただきたいと思うのです。
  191. 春田重昭

    春田委員 いま金額の面の実績がございましたけれども、需要者の申込件数、それから実績の借り受け者の件数でございますね、これは資料があったら出してほしいのです。私がお聞きしたいのは、需要者に対してオール一〇〇%実際貸し付けられているかどうか、その辺のことを、わかれば御答弁願いたいと思うのです。
  192. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 先生も御承知のように、これは普及所が事前に指導を加える貸付制度でございますので、手続といたしましては、先生のお話がありましたように、まず農協へ貸し付けの申請書が出まして、事業計画もともに出ていくわけですが、そのうち副本が改良普及所に回ってくるというシステムになっておりますけれども、事前に改良普及所でもって指導を加えるということがございますので、実は改良普及所にどの程度の希望があって御相談にお見えになって、そのうち実行に至ったのが幾らという統計がないのでございます。したがいまして、改良普及所まで書類が上がってきたものでも、中には計画をこう変えた方がいいのではないかということで、もう一遍お考えになりまして、戻っていって再度出すということもありますし、それから、ことしはやめようかという方もいらっしゃるし、というふうなことで、その辺が普及所単位で非常に区々でございますから、いまおっしゃったような統計が実はないわけでございます。
  193. 春田重昭

    春田委員 そうすると、いまの答弁では何か普及所任せの、いわゆる国としての本当に自主性のある姿勢というものが余り見られないわけですね。普及所に何件申込者があったかわからないという国の態度では、これが果たして有効に使われているかどうか、目的に沿った使い方をされているかどうか、これはちょっと改良資金目的に沿わないのじゃないですか。実態をつかめないというのは、おかしいのじゃないですか。
  194. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 私どもは常にこの改良資金資金別の、どのくらい年度ごとに伸ばしていけばいいかということの見当をつけるために、各県の改良普及担当部局としょっちゅう意見交換をやっておるわけでございます。この改良普及担当部局は、先ほども申し上げましたような毎年毎年つくります改良資金計画がございますね。その計画をつくって、実行条件はどうかということも改良普及所単位で、みなそれぞれ反省したり検討したりして、毎年次の年のものをつくっておるということでございますので、そういう次年度の見込みみたいなものを各改良普及所から積み上げてくるというふうな形で、それを各県が本庁で総括をいたしまして、私のところはこのくらい欲しいというようなことを言ってまいるわけでございます。  私どもとしては、予算要求をいたします折に、そういう各県の要望の強さというようなものと、それから政策的に、これからの改良資金の中で何を重点に置いて伸ばしたらいいか、たとえば五十二年度は後継者育成資金、その部門経営開始の関係に重点を置いて、そこに政策的な焦点を置いた形で、ひとつ予算要求をしようじゃないか、こういうふうなことを考えまして予算要求いたし、それから大蔵省と折衝をいたす折にも、アクセントをつけた説明をして、そうして毎年度の予算要求枠が決定されるということになるわけでございます。
  195. 春田重昭

    春田委員 私は大阪でございますので、大阪の実態を調査してきたわけでございますけれども、技術導入資金では需要量の約七割しか貸付対象になっていないわけです。それから生活改善では申し込みの約半分、五〇%です。ちょうどその年の終わりに計画を立てるそうでございますけれども、したがって、残りはどうするのかと言ったら、次年度へ回すということなんですね。後継者育成資金につきましては、申込者の全員に対して貸し付けております。一〇〇%行っております。こういう形で返ってきたわけでございますけれども、ほかの府県の実態は、私もちょっとわかりませんけれども、大阪ではこういう実態になっているわけですよ。  そういう点で、決して需要者の申し込みの満足のいく数にはなっていないわけですね。そういう点で、毎年毎年予算面においては若干ずつ上積みされておりますけれども、このように技術関係では七〇%、生活改善では五〇%という乙とで申込者が多い、そういう中においても、さらに借りられない人がたくさんおるわけでございますので、いずれにしても、改良資金は、中小企業でいう近代化資金と同じ性格といいますか、を持ったようなもので、農業を近代的な面でやっていくためにも非常に必要でございますし、貴重なものでございますので、私、質量とも、もっともっと枠を拡大すべきである、このように思うわけでございます。  五十二年度においては、聞くところによると三百億円ですか、一応予算決定したそうでございます。これでも、私は、全需要者に対して一〇〇%の貸し付けができるとは思いませんし、もっと枠を拡大していく必要がある、このような点から、最後局長の決意をお聞かせ願いたいと思います。
  196. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 五十二年度は、先生のおっしゃられましたように、二百六十億の前年枠から三百億に増加をしたわけでございまして、その増加をしました四十億の枠のうち、三十億を後継者育成資金関係に充てておるということで、私どもこの改良資金改善を図っておるつもりでございます。  私どもの努力もまだまだ足りませんが、ひとつ今後とも一層努力を傾注いたしまして、所要の資金枠の確保ということを初めといたしまして、いろいろと条件の整備なり努力をしてまいりたいという決意でございます。
  197. 春田重昭

    春田委員 続きまして、後継者問題につきましてお尋ねしたいと思うのですが、この問題は、これまでにもさまざまな角度から論じられてきたことでございますけれども、しかし今日まで解決策を見出し得ないままに至っているというのが現状ではなかろうかと思います。  そういう点で、まず今日までの後継者対策政府がいかになしてきたか、その点を最初にお尋ねしたいと思います。
  198. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 後継者の育成確保は、農政の上で大変重要な柱であると思うわけでございますが、このためには、やはり農業の従事者が希望を持って農業に取り組めるような農業と、それから住みよい農村をつくるということが基本的に重要だという考え方で、これは農林省を挙げまして、土地基盤の整備を初めといたしまして各般の施策をやってまいっておるわけでございます。特にこれからの世の中になってまいりますと、地域に密着をした農政の展開を図るということがきわめて重要でございますので、さような色彩を強めながらやっていくという考え方になっておるわけでございます。  従来から、そういった一般的な農業施策の展開にあわせまして、後継者の資質の向上を図るという趣旨から、農村青少年に対します研修教育をいろいろの形でやっております。また、青年農業士の育成といったような、直接青少年の士気を鼓舞すると申しますか、そういうような施策もやってきておるわけでございます。  さようなことのほか、国におきまして、直接農業者大学校を開設いたしまして、後継者に対します研修教育をやるということのほか、今回新たに各県の農民教育研修施設で一定の要件にはまるものを、通称県立の農業者大学と申しますか、そういう形で呼びまして、この制度を、改良助長法を改正いたしまして、改良助長法に基づきます協同農業普及事業の中に取り入れて、新たな施策を展開したいというふうに考えておりますほか、来年度におきましては、市町村、それから農協その他農業委員会等総ぐるみになりまして、地域の農業後継者の若い方々を結集いたしまして、その地域の村の農業をどういうふうに持っていったらいいかということを考えていただいて、その中から後継者が新たな活動を開始するきっかけを提供しようというようなことも、地域農業後継者対策特別事業ということで展開しようと思っておるわけでございます。  そのほか、農村青少年の研修教育関係民間機関がございますが、こういうものにつきましても重要でございますので、引き続き助成を行ってまいるというようなことのほか、先ほど来御論議にございましたような農業後継者育成資金の貸付枠の増大を初めといたしまして、償還期間を、最長五年でございますものを七年まで延長するとか、貸付限度額を引き上げるとか、さようなことをやっていきたいと思っておるわけでございまして、直接後継者にかかります施策もいろいろな種類のものがございますが、そういったものを今後とも一層充実強化、拡充してまいりたいという考えでございます。
  199. 春田重昭

    春田委員 時間が参ったようでございますが、最後に二点だけ御質問をするわけでございます。  経済成長も低成長から安定成長、そして今日に移りつつあるわけでございまして、いままで見られた高度成長時代の農地転用や、また農業以外の他産業への就職というものは非常に困難になってくると思うのです。そういう面においては、生産力を高める絶好のチャンスが、いまあるみたいに感ずるわけです。そういう点で、私は、生産力を高める一つとして、この後継者の問題がある、このように思っておるわけでございます。  そこで、専門家の人によると、後継者難の理由として二つがある、こう言っているんです。  一つは、農業で自活できるような農業の構造改善策が必要である、いわゆる農業専業で生活ができるような、いままで稲作中心だったものから、野菜や畜産などを組み合わせた複合経営の必要というものを強く提言しております。  またもう一点、農村の生活環境の整備を行う必要があるのではなかろうか、こういう点で、道路の舗装や上下水道の完備や、また子供の保育所や幼稚園等の設置、また医療施設の整備等、こういう問題は都市と比べて相当おくれているので充実していく必要がある、このように、二つの提言をしておるわけでございますけれども、この二つの提言に対して、局長としてはいかなる対処をしてきたのかをお尋ねして、私の質問を終わりたいと思っております。
  200. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 農業を取り巻く条件は非常に厳しいわけでございますが、先生もおっしゃったような、新しい角度から、もう一遍農業の将来のあり方というものを見直しまして、そうして先生のいま御指摘になりましたような二つの点、大変重要な点でございますので、農林省といたしましては、たとえば複合経営の着目、そういった角度からの施策の展開とか、あるいはまた生活環境面を重視をして各種の施策を展開するというようなことをやっておるわけでございまして、おっしゃるとおりに進めてまいりたいというふうに考えております。
  201. 春田重昭

    春田委員 終わります。
  202. 芳賀貢

    芳賀委員長 安藤厳君。
  203. 安藤巖

    ○安藤委員 私は大臣に、先ほどもちょっと話がございましたけれども、きょうから東京とモスクワで始まりました二百海里漁業水域問題に関連しての日ソの漁業交渉、この問題についてお尋ねしたいと思います。  まず、東京での漁業委員会の問題ですけれども、御承知のように、ソ連のニコノロフ首席代表、この人が言っていることと大臣が言っておられることと、東京での交渉の内容が大きく食い違っているわけですね。ニコノロフ代表は、二百海里以内の問題については、東京では話し合うつもりはない、ニシンについては話し合わない、二百海里以外のサケ・マスについて検討をするだけだ、そしてこれはこの前の鈴木・イシコフ会談で、もう合意しているのだと言っているわけです。ところが大臣は、二百海里内外含めてサケ・マス、ニシンについて交渉するのだと言っておられるわけです。この問題について大臣が、日ソ漁業条約というのは生きておる、これは国際条約だから、ソ連最高会議幹部会令という国内の法律よりも優先するのだという反論を加えられておることも知っております。  ところが問題は、この交渉の枠組みの前提がはっきりしていないから、こういう問題が起こったのじゃないかと思うのですね。だから、どういうわけで、こういうような食い違いが起こったのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  204. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も、今回ソ連の代表団が来られて、ニコノロフ団長が羽田飛行場で、そのような発言をされたということを新聞紙上でも見ましたし、また記者諸君がすぐ私のところにも見えまして、いまお話しのような点を聞かれたわけでございます。  私は、イシコフ大臣と責任ある話し合いをしてまいったわけでございまして、私がサケ・マス、ニシンについてイシコフ大臣と話し合いをいたしました点は、三月中は、わが国の漁船によるサケ・マスの操業、ニシンの操業はこれを行わないことにするという約束をいたしました。それを、東京の日ソ漁業合同委員会では、二百海里の中の部分は対象にしないのだ、こういうことにすりかえておるのではないか、このように受けとめておるわけでございます。この三月中、サケ・マス並びにニシンの操業を手控えるということは、東京で日ソ漁業合同委員会が開かれ——日ソ漁業条約の付属書には、はっきりとサケ・マス並びにニシンというものが対象魚種になっております。そして、いまお話がございましたように、ソ連も国際条約はこれを尊重する、こういうことをはっきり認めておりまして、東京におけるシャルクの開催ということに応じたわけでございます。  またもう一つ、ソ連が二百海里を設定したことは、アメリカ、カナダ、EC等々が二百海里を設定したので、やむを得ずソ連も二百海里を設定せざるを得なかった。海洋法会議で世界的な海洋法というものができた場合においては、それが尊重さるべきものである、それまでの暫定措置として二百海里の単独の設定をやっているのだ、こういうことも明確にいたしております。  基本的には、国内法の二百海里よりも国際条約を尊重する、これは当然のことでございますけれども、私は、そのことを確認をしてきておるわけでございまして、そういう意味合いから、東京交渉におきましてはサケ・マス並びにニシンというものが行われる、こういうぐあいに確信を持っておるところでございます。
  205. 安藤巖

    ○安藤委員 いま私がお尋ねしたのは、こういうような食い違いがどうして起こったのだろうか、とにかく日本の国民は一体どうなっているのだというふうに思っていると思うのです。だから、その辺のところをお伺いしたのですけれども、それは、いまの御答弁から推しはかりますと、そういう国際条約があるのだから、付属協定もちゃんと結ばれているのだからということで、東京交渉は押していくのだ、そしてそれで押していけるのだというふうに確信を持っておみえになるというふうに伺ってよろしいわけですね。
  206. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そういう主張に立って、サケ・マス、ニシンを対象として東京交渉を開催するということを、イシコフさんとはっきり確約をしたところでございます。
  207. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう確信を持っておみえであるということであれば、しっかりがんばってやっていただきたいと思うわけです。とにかく漁獲高が減る、あるいは急激に減ってしまうということについては大変な問題だというふうに、漁業に従事している人たちばかりでなく、すべての国民がこれに大きな関心を持っているところでございますので、しっかりがんばっていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  それで、次の問題は線引きの問題なのですけれども、御承知のようにソ連邦の最高幹部会令というのが昨年の十二月十日に、二百海里宣言をしたわけですね。そしてことしの二月二十四日に、ソ連邦の閣僚会議が具体的に二百海里の線引きの決定をしているわけです。それ以後、外務省レベルで、この閣僚会議の決定を認めるわけにいかないというふうに抗議をして、現実に交渉中だというふうに聞いていますけれども、先日の大臣とイシコフ漁業相との間のいわゆるモスクワ会談、これは閣僚会議が行われた二月二十四日以後の二月二十八日から行われたわけですね。  そうしますと、閣僚会議が決めた線引きが具体的に問題にならなかったのはおかしいのじゃないかと思うのですけれども、全くそれは問題にならなかったのでしょうか。
  208. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 イシコフさんと私の間に書簡の交換がなされております。これは会談の際に話し合われたこと、そして合意に達したこと、すべてをあの書簡の中に明記いたしておるところでございます。あれをお読みいただくと、わかるのでありますが、一九七六年の十二月十日のソ連最高会議幹部会令の適用を受ける海域、こういう表現になっておるわけでございまして、その後、閣僚会議が開かれたというようなことは聞いておりますけれども、私どもがイシコフさんと合意いたしましたのは、この幹部会令の線で、ソ連の二百海里という前提でやったわけでございます。  いま安藤さんが御質問なさっておる御趣旨は、領土問題に絡んでおるのではないか、絡まってくるのではないかということを頭に置いての御質問であろうかと思うのでありますが、領土問題は、先ほど申し上げましたように、モスクワにおける一九七三年の田中総理とブレジネフ書記長との間の最高責任者の間で、戦後未解決の問題を解決をして、そして日ソの平和条約を結ぶための交渉を継続する。そして、その後における両国外相の確認事項として、未解決の問題の中には北方領土の問題を当然に含んでおる。こういうことで、両国はこれから時間をかけても、この問題を話し合いによって解決しよう、こういう最高首脳の合意がなされておる。ソ連のものでもございません。そういうことになっておるわけでございますから、私どもは領土問題に絡まったのでは、この漁業交渉は一切一歩も進まない、こういう立場でございますが、イシコフさんも、その点はよく御存じのことであったと思うのであります。  日ソの漁業関係というのは日ソ友好の象徴であり、そしてこれが今後の友好関係の大きなきずなである、これは大事にしなければならないという気持ちが私はあったと思うわけでございまして、私は、そういう観点に立って今後の漁業交渉も進めていく、またそういう立場でイシコフさんと話し合った、こういうことに御理解を願いたいと思います。
  209. 安藤巖

    ○安藤委員 大臣は、私の質問の趣旨をいろいろ勘ぐって御答弁なさったのですが、私は、何もストレートに領土問題と絡めて、いまお尋ねしたわけではございません。ただ、時期の関係からすると、閣僚会議の後に鈴木・イシコフ会談が行われておりますので、当然議題になったはずではないかというふうにお尋ねしているわけなんです。  それで、そのこととの関連で、モスクワで、きょうから行われます交渉では、これも私がお尋ねするまでもないと思うのでありますが、暫定協定そのものの取り決めの問題、それから漁獲量など操業実態についての取り決め、この二つに分けて行われるというふうに承知しておりますけれども、暫定協定そのものについてももちろんそうですけれども、漁獲量など操業実態というのが入ってきますと、これは当然線引きが中身となってくるのではないか、二百海里の線を引いて、その中で漁獲量はどうだとか、あるいは暫定協定になると、当然二百海里の線引きの問題が具体的に議題となってくるのではないかというふうに思うわけなんです。  そして、先日のモスクワ会談のすぐ後での大臣の記者会見で、大臣はモスクワでの暫定取り決め交渉では、結局線引きの問題が出てくるかもしれないということも言っておられるわけなんですね。そしてモスクワで開かれております——東京の合同委員会でもそうなんですけれども、これは全く事務レベルで交渉が行われるわけですね。  そうしますと、線引きの問題が出てくるかもしれないというようなことを大臣がおっしゃっておられるとすれば、やはりさきの鈴木・イシコフ会談で、この線引きの問題について話し合おうという合意ができておって、その中身について具体的に詰めをやるのだ、こういうふうじゃないのかというふうに思えてしようがないわけなんです。その辺は一体どうなんですか。
  210. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それは新聞記者会見の場合で、私から積極的な発言をしたくだりではございません。  新聞記者諸君が、いま御質問のようなぐあいに、当然そういう問題に絡まってくるのではないでしょうかということを執拗に聞いておりました。そういうことは向こうの頭の中にあるかもしらぬが、しかし、われわれは、イシコフさんと話し合ったのは、そういうことでなしに、大局的な立場で話し合いをした。そして、イシコフさんとの会談の中では、北海道沿岸に接続する海域については、日本の北海道初め多数の中小漁船が操業しておる、出たり入ったりしておる、そういう実態というものを十分承知をしておる、それにふさわしい対応の仕方をしなければならないということについても意見が一致をいたしておるところでございます。
  211. 安藤巖

    ○安藤委員 私がこの問題についていろいろお尋ねするのは、線引きというものが具体的に問題になりますと、大臣御承知のように北海道の北方四島、いわゆる歯舞、色丹、国後、択捉、この四島がかかってくるわけですね。そして日本も二百海里水域を設定するということになると、ちょうどその辺のところがダブってくる水域になるわけなんです。  いま大臣がおっしゃったように、中小漁業者の人たちが、たくさん船を出しているところで、あそこはサンマとか貝、カニなんかの豊庫というふうに言われているところらしいのですね。だから、その辺のところが、本当にきょうからモスクワで開かれる漁業交渉で、この線引きが具体的に問題になるのかどうか、非常に大きな関心を持って見詰めておられるわけなんです。だから、そうでないならそうでない、絶対ないということをはっきりしていただきたいというふうに思うわけなんです。  というのは、これはもちろん新聞の記事でございますけれども、きょうの読売の夕刊を見ますと、二百海里水域の線引きを暫定取り決めで、どのように表現するかどうかということが問題だというような解説めいた記事もあるわけなんですね。だから、そういうことからすると、その辺のところは一遍国民の前にどうしてもはっきりしていただかなければならぬと思って、くどくお尋ねしておるわけなんです。
  212. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 安藤さんもお考えいただいておると思うのでありますが、二百海里線引きの問題以前に領海問題が存在するわけでございます。この四島について、ソ連が現実に占有をしておる、そして十二海里というものも設定をしているということを聞くわけでございますが、これを日本では認めておりません。わが国固有の領土だ、こう思っております。向こうは、占有しているから自分のものだ。しかし、これは両国の首脳で今後話し合いによって処理さるべき問題だ、こうなっておるわけでございます。  でありますから、私は、この問題は領土の問題とは離れて現実的に処理さるべきものだ、このように考えておりますし、日本もまた近く二百海里を設定する、こういうことでございまして、これらの海域は、私は領土問題を離れて現実的に処理さるべきものだ、こう考えております。
  213. 安藤巖

    ○安藤委員 すぐ領土問題の話をおっしゃるのですが、私が心配しているのは、その線引きの問題が、具体的にきょうからモスクワで行われている暫定協定の取り決めの問題の中で話し合われるのではないかという点なんです。そういうことは全くないと考えてよろしいのかどうか、お答えいただきたいと思うのです。
  214. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、現実的に処理されるであろう、このように考えております。
  215. 安藤巖

    ○安藤委員 現実的にということはよくわかりませんが、線引きの問題は、暫定協定の取り決めの中では行われないというふうに理解してよろしいのかどうか、それを一つお尋ねしたいんです。  時間の関係がありますから、それを一つお尋ねして、先ほど大臣がおっしゃった北方四島周辺の海域の問題ですね。この問題については先ほどから、イシコフさんもよく了解をしてもらったというような御答弁をしておられるわけですが、やはり記者会見で、そのような趣旨のことを大臣も言っておられるのですが、その中で、以心伝心で実際に即した新しい操業体制ができると思うというふうに言っておられるわけですけれども、この新しい操業体制というのは、一体どういうようなものができるというふうにお考えなのか、そしてそれは本当にできるのかできないのか、どういうふうに考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  216. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いままで日ソの漁業関係は公海上、ソ連の領海また日本の領海の外の公海上の漁業の操業秩序につきまして、資源の保存と有効利用、こういうことで日ソ漁業条約というものができ、その体制のもとで二十一年間にわたって漁業関係が確立をされてきたわけでございます。  今度は、ソ連が二百海里の漁業専管水域を設定をした。しかし、この海域には、日本が長年にわたる伝統的な漁業実績というものを持っておる。でありますから、公海の漁業秩序というものから、今度はソ連の二百海里の水域の中での新しい二百海里時代の長期にわたる安定的な、そして両国の相互の利益に合うような新しい漁業秩序が確立されるであろう、こういうことを私は申し上げておるわけでございます。
  217. 安藤巖

    ○安藤委員 いま、公海の問題をおっしゃったんですけれども、私が先ほど紹介しました大臣の記者会見の内容は、北方四島周辺の水域、その問題について、その水域について新しい操業体制ができると思うというふうに言っておられるわけです、新聞記事を見ますと。だから、新しい操業体制というと、具体的にどういうものを考えておられるのかということですね。たとえば日ソ共同規制水域にするかとか、あるいは現状を凍結するのかとか、あるいは取り締まりをほかの水域とは別にするんだとか、いろいろな議論が出ておることも御承知だと思うのですが、一体大臣は、新しい操業体制というのは何を考えておられるのだろうかと思ってお尋ねしたんです。
  218. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私が記者会見で申し上げたのは、いま申し上げた北洋海域についてのソ連の二百海里時代を迎えての新しい操業秩序、新しい操業体制、こういう広い意味で申し上げておるわけでございまして、北方の四島を対象にして、その海域に限っての新しい体制ということを言っておるのではございません。  それから、暫定取り決めにおいて現実的な処理がなされるであろうということを私は申し上げたのでありますが、日本はまだ国会の御承認も得ておりませんし、長期の取り決めもまだできておりません。国会の御承認を得、批准をして初めて発効する、こういうことでございます。国民の権利義務にかかわる問題でございますから、どうしてもこれは国会の御承認を得なければならぬわけでございます。  その間、行政府としてなし得るものは、できることとできないこととございますから、政府政府で、はっきり許可証の申請をしたり、許可証の交付を受けたり、あるいは裁判管轄権の問題をどうするとか、そういう問題は、これは国会の御承認を得なければならない問題であるわけでございます。その間は、私はちょうど日米の暫定取り決めのような形で現実的に処理されるであろう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  219. 安藤巖

    ○安藤委員 なかなか私がお尋ねしているところを、ずばりとお答えいただけないので困るのですが、先ほどイシコフさんはいろいろ了解をしてくれたとか、それから新聞記事によりますと、以心伝心ということも言っておられるのですけれども、了解してくれたと思う、恐らく大丈夫だろう、以心伝心で、こちらの心も伝わっておるんだというようなことで、もう大丈夫だというふうに考えていいのかどうかという点ですね、非常にその点が心配なんです。  だから、新しい操業体制という言葉を大臣がおっしゃってみえておるので、具体的には一体どういうようなところまで考えておられて、その実現が本当に可能なのかどうか、どこまで考えておられるのだろうかということを、いまお尋ねしているのですけれども、なかなかはっきりした御答弁をいただけませんが、いまおっしゃったような程度のことだということでございますか。
  220. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 あの北海道の沿岸に接続する海域というものは、他の海域とは違いまして、中小零細な多数の漁船が出たり入ったり操業している海域でございまして、これは現実的な処理がなされなければならないし、そういうことについては、イシコフさんも十分理解を持っておるということを私申し上げておるわけでございます。  さらに、わが国が国会の御承認を得て二百海里というものを設定いたしました場合におきまして、この海域につきましても、私どもは、この特殊な環境の海域として十分両国の利益に合致するような関係がここにできるであろう、またでかさなければならない、このように考えております。
  221. 安藤巖

    ○安藤委員 最後に一つお尋ねしたいのですが、いろいろ国会の承認ということを言っておられるので、そのことと関連してお尋ねしたいのです。  暫定協定ができましても、それは、ことしの十二月三十一日までのことですね。そうしますと、それまでの間に基本協定というのを結んでおかないと、いろいろな問題が起こってくることになるわけです。そうしますと、暫定協定が締結された直後あたりから、あるいはさらには、それと並行してでも基本協定の問題について話し合いが続けられなければならぬのじゃないかと思うわけです。先ほど、海洋法会議の結果がどうあろうと、そんなにのんびりしておるわけにはいかないので、いろいろ考える、国会の承認を得るというような方向でいろいろ考えるというふうにおっしゃったのですが、大臣のお考えになっておられるところをニュースその他で聞いておりますと、日本の二百海里の設定は、法律でもってやるのだというふうにおっしゃってみえておると思うのですね。  これはきわめて当然なことだと思うのですが、法案をつくって、それを国会へ提出して決議を得る、そういう段取りになることはもちろんのことですが、そうしますと、ことしじゅうにつくって基本協定を結ばなくちゃいかぬわけですね。先ほど対等の土俵に乗って交渉をしたいのだとおっしゃったが、やはり日本でも、きちっと二百海里法案をつくって、その上で交渉に臨まれるのが筋じゃないかと思うのですね。そうすると、次の通常国会では間に合わないのじゃないかと思うのです。臨時国会が七月、八月に予定されると思いますが、その臨時国会に、その法案を提出されるというお考えなのかどうか、お伺いしたいのです。
  222. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 暫定取り決めは、御指摘になりましたように、一九七七年の十二月三十一日まででございます。したがいまして、長期協定は一月一日から効力を持つようにしなければならぬと考えておりますし、また、長期協定の最終的な詰めをやりますまでには、日本としては、日本の二百海里というものをやはり国会の御承認を得ておく必要がある、私はそういうぐあいに判断をいたしております。  そういうことで、帰ってまいりまして福田総理に御報告をし、いつ二百海里法案を国会の御承認を得るような手続をするか、これはひとつ総理の最高判断にゆだねる、お願いをする、こういうことも申し上げておるわけでございます。政府と国会とで御相談をいただきまして、うまく日本の利益にも合致する基本協定ができますような条件整備をぜひやりたいものだ、このように考えております。
  223. 安藤巖

    ○安藤委員 いまの関連で、もう一点だけ。  そうしますと、基本協定の交渉に入るまで、あるいは基本協定が今年じゅうに成立しなくちゃいかぬわけですが、それまでの間に法案を成立させたいと考えておられるというふうに伺ってよろしいわけですね。
  224. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そのとおりでございます。
  225. 安藤巖

    ○安藤委員 以上で終わります。
  226. 芳賀貢

    芳賀委員長 次回は、明十六日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十三分散会