運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-06-04 第80回国会 衆議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年六月四日(土曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 毛利 松平君 理事 山田 久就君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 中村 正雄君       石川 要三君   小此木彦三郎君       大坪健一郎君    川田 正則君       佐野 嘉吉君    中村 弘海君       中村  靖君    葉梨 信行君       福島 譲二君    安宅 常彦君       井上 一成君    松本 七郎君       瀬野栄次郎君    中川 嘉美君       渡辺  朗君    寺前  巖君       伊藤 公介君    菊池福治郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         外務政務次官  奧田 敬和君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         水産庁長官   岡安  誠君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     城内 康光君         法務大臣官房審         議官      根岸 重治君         外務省欧亜局東         欧第一課長   都甲 岳洋君         参  考  人         (全国底曳網漁         業連合会会長) 遠藤 信二君         参  考  人         (北海道大学法         学部附属スラブ         研究施設施設長         兼教授)    木村  汎君         参  考  人         (法政大学教         授)      杉山 茂雄君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会専務         理事)     池尻 文二君         参  考  人         (全国鮭鱒流網         漁業連合組合会         専務理事)   金沢 幸雄君         参  考  人         (北海道漁業協         同組合連合会会         長)      兼平 純吉君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 六月四日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     石川 要三君   川崎 秀二君     中村  靖君   中山 正暉君     葉梨 信行君   福永 一臣君     中村 弘海君   三池  信君    小此木彦三郎君   宮澤 喜一君     福島 譲二君   高沢 寅男君     安宅 常彦君   伊藤 公介君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     稲垣 実男君  小此木彦三郎君     三池  信君   中村 弘海君     福永 一臣君   中村  靖君     川崎 秀二君   葉梨 信行君     中山 正暉君   福島 譲二君     宮澤 喜一君   安宅 常彦君     高沢 寅男君   菊池福治郎君     伊藤 公介君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一八号)      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  本件について、昨三日、農林水産委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、本連合審査会農林水産委員長と協議の上決定いたしますが、明五日日曜日、午後三時から開会の予定でありますので、御了承ください。     —————————————
  4. 竹内黎一

    竹内委員長 本日は、委員各位のお手元に配付しておりますとおり、午前、午後に分けて参考人の御出席を願うことになっております。  午前中の参考人として、全国底曳網漁業連合会会長遠藤信二君、北海道大学法学部附属スラブ研究施設施設長教授木村汎君、法政大学教授杉山茂雄君、以上三名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本日は、本件につきまして、参考人方々の忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。  なお、御意見の御開陳はお一人十五分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  御意見開陳は、遠藤参考人木村参考人杉山参考人の順序でお願いいたします。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、遠藤参考人にお願いいたします。
  5. 遠藤信二

    遠藤参考人 全底連会長遠藤信二でございます。  諸先生方に御意見を申し上げたいと思いますが、今回暫定協定政府間交渉が行われまして、政府当局皆さん方には大変苦労をされまして協定が調印されたということにつきましては、深甚なる敬意を表するものでございます。  ただ、内容につきまして非常な不満があるということを申し上げたいと思います。  北海道周辺の海というのは、いずれにいたしましてもソ連の海域と連接をしております。長年、北海道周辺漁民皆さん方は、北海道を中心にして北の方ソ連領域の中でいろいろな魚をとっておったことは御案内のとおりでございます。先人が、またわれわれ同僚がいろいろな苦難を踏み越えましていろいろ魚をとり、漁業の生産に携わりまして国民皆さん方に魚を食べていただいたという国際的な実績を何とか確保してもらいたい、すべきであるというようなわれわれ漁民の意向を十分体しまして政府間交渉をやっていただいたと思いますけれども、出た結果につきましては、先ほど申しますように、いろいろな問題点を包蔵いたしていることであろうと思います。いままで、いろいろな国との関係の中で交渉を行われますと、漁民の零細なものに何となくしわが寄ってくるということも否定できないような気がいたしております。これは政治の場に私どもが言うべきことではないにいたしましても、ミグが飛んできた、その後始末というものがどうであったかは別にいたしまして、現実の問題としては、あそこの周辺で拿捕という、報復手段とは申しませんけれども、悲惨な事故が続発したというのも、漁民感情としてはどうも納得できないというようなのも一例ではないかと思います。  特に今回の交渉につきましては、幹部会令というものの把握が、残念ながら政府当局把握が遅かったということも事実だろうと思います。ああいう国柄でございますから、とやかくは申し上げませんけれども、やはり国々との関係というものも十分考えた場合には、及ぼす影響十分洞察をいたしまして、われら漁民が働けるような協定をつくってもらいたいというような念願に基づきまして、政府当局に強く要望しながら交渉に入っていただいた。また、交渉というものにつきましては、非常にむずかしい交渉であったということも十分わかりますけれども内容につきましてはいささか問題があろうかと思います。  一例を申し上げますが、私の所属いたしております漁船のうち約三百五十トンの船が北の方へ参りましてスケトウダラを年間おおむね百万トン、それからまた百二十四トン以下のものでおおむね六十万トン、これはスケトウダラだけを限定して申し上げますと約百六十万トンのスケトウダラをとって、国民にいろいろな、かまぼこの原料でございますとか、ちくわの原料でございますとかいうようなものを供給して、国民に食べていただいたわけでございますが、協定の結果、約十万トンに減らされてしまったということでございます。ちなみに考えてみますと、これがこのまま永久に持続するということになりますと、北海道周辺の特に北の産業というものは崩壊するであろう。漁民自身が泣くだけではございませんで、都市構造自身がおかしくなるという感じを持っております。やはり、現実の問題といたしましては、加工業者も倒産するであろう、仲買も倒産をするであろうということになりますと、北海道自身部落がおかしくなるというような内容まで持っておるような気がいたしてならないわけでございます。  私どもも、こういうような事態に直面をいたしまして、これを打破するような方策、また、決められた内容でございますから、やはりわれわれも歯を食いしばってやるつもりではございますけれども、及ぼす影響が余りにも大き過ぎますので、長期ビジョンを立てるいとまがない。船は出られない、商売ができない、乗組員の家族あるいは他産業に及ぼす影響考えますと、いまどういうようにやっていいかわからないというような内容を含んでいることを御認識賜れば大変幸せだと思います。  こういうことを申し上げましてどうかと思いますが、これは暫定協定でございますから、十二月三十一日までの間のソ連二百海里の領域の中におけるいわゆるクォータでありますとかいう内容ではありましても、やはりこれが永久に続くとは思いませんが、これを将来考える場合には、やはり十一月ごろに多分開催をされるであろう長期協定に及ぼす交渉政府間交渉が行われるでありましょう。その場合に、暫定協定内容そのままを移行することなく、やはりいままでの北洋の権益を、国民に及ぼす影響十分洞察をしていただきまして、暫定協定よりもいい内容協定長期協定をつくっていただくということでございませんと、北海道部落はなくなっちゃうというように考えております。  なお、卑近な例を申し上げますと、多分ソ日協定交渉というものは六月に行われるでございましょう。また、アメリカとの交渉というものも十月には行われるでございましょう。また、先ほど申し上げました長期協定の日ソの協定交渉も十一月には行われるでありましょうから、その交渉の中におきまして、十分なる内容を盛り込んだものにしていただきたいというように思っております。  そうかと申し上げまして、この調印を行われました、いまの御提案になっております条約そのものを否定することではございませんけれども内容につきましては非常に不満であるということを申し添えまして、私の意見にいたす次第でございます。(拍手
  6. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  次に、木村参考人にお願いいたします。
  7. 木村汎

    木村参考人 北海道大学ソ連、東欧の研究をしている木村でございます。  このような時局の問題に関して、政治家先生方とか、役所の方とか、ジャーナリズムの方に、格別議論を申し上げたりお教えするようなおこがましいことは職業上できません。つまり、そういうことで互角に勝負をしてはわれわれが負けるわけで、つまりわれわれは、皆様と違った、きょうあすの問題でなくて、もう少し長い歴史的な流れ、巨視的な見方をしていますので、それがもし皆様に御参考になれば幸いと思って、一、二今回の交渉過程を見ての感想を申し上げます。  いきなりあれでございますけれども、今回の漁業交渉をそういった立場から見ておりまして、さして新味はないといいますか、どういうことで新味がないかといいますと、国民の一部の方や新聞報道でお騒ぎになっていて、ロシア人の体質とか交渉のしたたかさとか、ソ連外交のある意味での力の外交に初めてお気づきになったように書かれておりますけれども、私ども感想では、これは私どもが前から気がついており、個人的にも留学して体験し、またその後も外国の物を読んで大体共通した認識として持っている点であって、そういう意味では、ある意味でいままでの歴史の繰り返しである、そういうやや冷ややかな見方も必要ではないか。つまり交渉のパターンも、初めは力ずくでやってきて、最後はかなり政治的な判断でまあやや解決するといいますか、そういう型も同じである。  それに対して、議員の先生方はそういうことないでしょうけれども、一部の報道あるいは国民の方には次のような非常にナイーブな考え方があったのではないか。つまり、たとえばソ連は大きな国だから少しくらいの領土はどうでもいい、譲ってもいいではないかとか、あるいは北方領土に関しては日本側法理論上正しいのだからソ連が折れるべきであるとか、あるいはソ連では食べない魚、捨てているような魚もあるのだから、日本にとらせるべきだとか、あるいはソ連日ソ友好という見地から譲歩すべきだとか、そのほか切りがありません。たとえば、さらに、社会主義を奉じている国は膨張主義とはならないのだとか、そういった種類の、ある種の幼稚と申しますか、ナイーブな考えが突き崩された点、それが専門家、一部のソ連と接触している方を超えて国民の間に広がった、そういう意味で非常に教訓的な意味があって、いままでのところは、ある意味では漁民の方に非常にお気の毒でありますけれども、ひょっとすると不幸中の幸いという面もあるのではないかと思います。  第一に、そういう人々といいますか、その考えをとっていた人は、国際政治について余りにも無知である。つまり政治というのが、正邪、正しい悪い、その道徳的なものだけで動いているという御判断に立っている。そういうことなれば何も苦労しないわけで、政治は、ラフな言い方をしますなれば道徳権力との二つの要素から成り立っており、さらに第三にそれを結ぶ技術、この三つから構成されているわけでありまして、これは政治学国際政治学のイロハ、ABCであります。そしてこれは単にソ連に対してのみ当てはまるのではなくて、いかなる国家に関しても当てはまるわけで、それがソ連の場合強く出ているだけにすぎない。したがって、そういう感情的道徳論立場から、今後ソ連憎しという反ソ感情がいきなり非常に高まっていって、交渉者あるいは当局者の教導できぬ化け物のような形になっていくことも一つの危険として考えられないわけではないぐらいであります。  それから第二に、ロシア人特質とかソ連外交特質についてもナイーブな誤解があったわけで、たとえば一例を挙げますと、ロシアソ連がこれまで膨張をしてきた歴史について御存じない。ロシアは十六世紀の中ごろから百五十年間に毎年オランダ一つぐらいのスピードで膨張して、かつ、一たん手に入れた自分の領土は決して手放さないというようなことを御存じない。  それではなぜ膨張するのかといいますと、これは今度は歴史学者でなくて地勢学者意見をかりますと、これは一つの説でございますけれどもロシアは大きな国であると言われておりまして、確かに日本の六十倍か何かあるようですが、その国土の大半は緯度が非常に高くて農業に適しておりません。またさらにその上に悪いことに、気象学的にも農業に適してなくて、たとえば雨が欲しいところでは雨が降らず、雨が降ってほしくないところでは雨が降る。そういった農業に適した地域アメリカなどと比べると非常に少ない。そのほかさらに冬は御存じのように長く、積雪、凍土地帯も多いし、交通はますます不便である。こういう国で人口を養っていくというのはとうてい困難なこととなっているわけです。  そこで、また今度われわれの仲間心理学者意見を聞きますと、たとえばロシア人というものの特徴から勉強し直す必要がある。ロシア人というのは内面において非常に自由な、拘束されることをきらう国民であって、精神的、内面的世界においてはある意味で非常に無秩序、アナーキーと言っていいぐらい自由を好んでおります。ですから、権力か及んできますと、それを避けようとして別の地域に植民していく。たとえば、かつてはウクライナとかカフカーズとか中央アジアとかシベリアに行きました。するとまたそれを追って国家権力がそこに及んでくる。するとまたさらに権力の及ばない辺境を求めて植民していく。これで膨張してきたわけです。ですから国民のそういったメンタルな特殊性と、それを陰で結果的には利用する国家権力とが癒着してというか、結託して領土膨張してきたわけであります。  そこで、今度はまた仲間国際政治学の友人の意見を聞きますと、安全保障観ソ連は独特であります。普通安全保障というのは、国際連盟とか国際連合とか、ああいう国際機構、それから安保条約とか集団安保とかそういう条約、それから同盟関係、そういったものによって行うというのが現代のわれわれの考え方でありますけれどもソ連安全保障根底にはやはり領土ということがある。これはリトビノフ外相が更迭されてアメリカを去るときにオフレコにしてくれと言って漏らした言葉で、なぜソ連領土に固執するかというと、われわれは領土こそ自国の安全保障の基礎と考えているからだという言葉が現在明らかとなっておりますけれども、そういう伝統的な考えがあるわけです。  時間の関係で述べませんけれども、そのほか自己中心的な、相手の国民感情を理解せず、デリカシーに欠けて、押して押しまくる、こういった力の外交については、もう毎日のように最近日本では新聞に書かれておりますから省略いたしますけれども、これもロシア人の中にある、根底にある力とか大きいものに対する憧憬、それは自然、地理的な条件歴史的な条件から生まれてきたものです。そしてそれが大きなホテルとかビルとかダムとか高層建築、あるいはさらにスターリンを崇拝するような気持ちにつながっている。そういう点の理解が、日本人の大半はいま初めて驚いたわけですけれども、ふだんからそういう隣国に対する御勉強をもう少しなさっていたら、そういうことはいまさら驚くことでもないのじゃないか。  そこで最後一言結論として感想を述べますと、それでは矛盾するのじゃないか、今度は私の説によれば、ソ連最後譲歩というと言葉が適当でありませんけれども日本に対する当初の余りにも不当な要求を少し引っ込めたような形になったのは、それじゃやはりソ連というのも、西洋流の妥協とか譲歩とか調整というのをとうとぶ国民じゃないか、私の言っていることと矛盾するのじゃないかという御疑問がわくかと思いますけれども、それに対しては最後に述べたいのですけれども、私はそうはとっていなくて、それはソ連が力で押してくるのに対して、日本は見えない力というもので相撲をとってああいう形になったのだと思います。その見えない力というのは、言うまでもなく、中国に対するバーゲニングパワーのポジションとか、あるいはまた、シベリア開発に対するお金を渋った場合とかそういう経済的圧力もございますけれども、何といっても、国民の今度の世論の盛り上がりという意外なと申しますか、ソ連にとっては意外な力、これに対して向こうは初めて当初の強引なものを押しつけることを思いとどまったのではないか。そういう意味では見える力、つまりソ連軍事力にあらわれるような目に見える力に対して、目に見えない陰の力とが、外交交渉の場という土俵の上で相撲をとっていたのじゃないか。つまり、日本方々はよく決め手がないとか日本はとらせてもらうだけだとか、結局名案がないということを言われますけれども、それもある意味では本当でございますけれども、そういうポテンシャルな目に見えない力、それから使い方がむずかしいけれども使い方次第によっては手段になる、そういうことがもう少し——国民全部にガラス張りにすることは戦術上まずいのですけれども、そういう力があるので、自信を持って外交を進めていいのじゃないか。  ところが、先ほど少し申し上げましたけれども、いままでは交渉者を大いにバックアップしたところのリング外のと申しますか、リングの背後にあるところの国民感情というものが非常に外交をやりやすくというか、バックアップ、サポート、支持したのですけれども、これがこのまま息切れせず順調に育っていくことが望ましい。しかし日本自由圏であるので、たとえばソ連に対する一番の決め手であるシベリア開発に出すお金は、中央で管理して窓口を一本化するということが私は一番最高の圧力になると思いますけれども、それは自由主義をとっている国ではよし悪しで、民間の企業がやや過当競争的に行かれるのをとめる手だては、統制経済になってできないわけですけれども国民感情というものも今後気をつけなければいけないのは、付加財産、つまりかつての日本軍国主義の道を歩んだときに、出先と国内における世論との間にちぐはぐといいますかギャップがあって、それがあの不幸に導いていった歴史をわれわれがもう少し巨視的な観点から反省するならば、今後はそういったことの方、つまりソ連憎しという反ソ的なナショナリズムがそういう方面にいかないで、正しく教導されるといいますか、育っていって、交渉者と一体となって進めていったら、日本の前途の問題といいますか、消極的な意味ですけれども最小限度に食いとめることができるのじゃないか。皆さん方は何かあした、あさってのことで頭がごいっぱいでしょうけれども、私ども場外に、まさにリングのさらに後ろにいる者はそういう感想も持っております。(拍手
  8. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  次に、杉山参考人にお願いいたします。
  9. 杉山茂雄

    杉山参考人 私、法政大学杉山でございます。  本日、外務委員会のお求めによりまして、議題となっております北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日ソ間協定、これにつきまして若干の私見を述べさせていただきたいと存じます。  前もってお断りいたしたいと存じますが、私自身いま一介の学徒でございまして、今次の協定締結交渉に一切直接関与いたしておりませんので、したがいまして事実関係で知らない点が多かろうと思っております。事実の不知から誤った判断をしていたといたしますと、私の意見はいつでも訂正しなければならないと私自身思っております。  次に、この協定そのもの漁業に関するものでございます。あえて言えば、漁業のみに関するものだというふうに思われるわけでありますけれども、しかしながらこれに関連いたしまして、そもそもこの協定を結ぶ必要を生じた理由は何であったのかということ、あるいは約九十日にわたって交渉が難航した過程で生じたさまざまな政治的な問題、あるいはこの協定が実際に日本漁業、わけても北洋漁業に与えた大きな経済的な影響の問題、そして最後に全体として日ソ両国に与えた外交上の利害得喪といったような問題、こういったことを考えますと、この条約について論及しなければならない問題点は非常にたくさんあろうかと思うのであります。しかし、私に与えられた時間も限られておりますし、私の能力も当然限度がございますので、多くの点は他の専門方々にお述べ願うことといたしまして、私は主として法的な問題のうち幾つかの点に触れて、最初の意見陳述をいたしたいと存ずるわけでございます。  まず第一に、この協定を必要とするに至った直接の理由についてでございます。これは申すまでもなく、昨年の十二月十日に、ソ連邦の最高会議幹部会令で、ソ連の距岸二百海里にわたりまして生物資源の保存及び漁業規制に関する暫定措置というものを決めまして、その海域内においてソビエトは魚類その他の生物資源に対しまして、その探索、開発及び保存のための主権的な権利を行使するというふうに定めたことによるわけでございます。これは通称二百海里漁業専管水域設定問題と言われておりますけれども、この問題は御存じのように、すでに国連の第三次海洋法会議で問題とされてきたところでございまして、議長のまとめた単一草案の中でも相当詳細な一案が示されていることは事実でございます。ただ、しかしながら国連の第三次海洋法会議は、まだ正式の条約をこの件について採択するに至っているわけでありません。したがって、一般国際法上、こうした二百海里にわたる漁業専管水域を一方的に沿岸国が設定することの当否については、法的に問題のあるところだというふうに思われるわけでございます。  ここで、この問題について少しばかり私の考えを述べさせていただきますと、もともとこの二百海里専管水域設定ということにつきましては、私は賛成しかねます。  理由は幾つもございますが、その最大の理由は、こうした二百海里漁業専管水域を沿岸国が一方的に設定するということをやった結果といたしまして、国際的な富の不均衡をますます助長し固定化する、このことは国際社会にとって有益なことだとは思っていないからであります。  仮に、いずれの国家も距岸二百海里に漁業専管水域あるいは排他的経済水域というものを設定し得るのだ、したがって、それは諸国に対して平等の機会を与えているんだというふうなことを申しましても、実際にこういう二百海里専管水域というものが設定できるのは沿岸国に限られるわけでございまして、陸封国と申しますか内陸国は、そういうことは物理的にできないことは明らかなんです。  それから、沿岸国ができると申しましても、結局そういう専管水域を設定しかつ活用し得る国、つまりこういった制度によって最も多くの実際上の利益を得る国はどういう国かと言えば、長大な海岸線を持っており、そしてそこに利用可能な資源が豊富であり、かつそれを開発するだけの能力を持ち、しかも他から侵害をこうむる場合にはそれを排除するだけの実力の背景を持った国、こういう国が実際の利益を得るでありましょう。海岸線が狭く、そして沖合いに資源が乏しくて開発能力がない、あるいは侵害排除能力かないという国にとっては、実は形式的には二百海里専管水域設定ということか平等に認められたとしましても、その実態は、先ほど申しました国との間に非常に大きな懸隔があるわけでございます。そうして、そういう実際上の利益を得るであろうという国は、これは地図を見れば明らかなとおりこれまでの大国であります。そしてその大国が一たんそういう権利を海洋上に設定をしたといたしますと、将来にわたってよほどのことがない限り、一たんかち得た利益、既得の利益というものは放棄しないでありましょう。それは、今日は領土について既得の領土権というものをめったなことでは放棄しない、一たん自分が手にした領土はよほどのことがないと譲らない。特に平和裏に調整するということは、言うべくしてきわめて困難になっておりますが、このことが海洋上にまで波及をしていくのではないか。そうして、大国がそうした資源の独占ということをその沿岸専管水域について行うとすれば、南北問題として言われております諸国家間の富の格差というものが、縮まるどころか逆に大きくなるだけではないか。  しかもこの二百海里という数字は、考えてみますと合理的な根拠はないのであります。なぜ百九十九海里でいけなくて二百海里なのか、二百一海里でいけなくて二百海里なのか、何人もこれを合理的に説明することは不可能でありましょう。無論、大体において二百海里をとれば、その間に目下有用と考えられる資源が含まれる、大体これだけとっておけばよろしいということはあるかもしれません。しかし開発技術が進み、さらに三百海里、五百海里というところに資源が発見され、利用できる、そういう意思と能力を持つ国が出てくれば、今度は三百海里と言うでありましょう。五百海里というでありましょう。かくて、これまで公海制度と言われていたものは崩壊の一途をたどるのではないかとさえ懸念されるわけであります。  それに対して、いや、これは当面は漁業上の問題だからよろしい、こういうふうに反論があるかもしれませんけれども漁業資源に対する主権的な権利の要求というものは、これは次第に領域に準ずる権利を要求するようになり、領域の拡大になる傾向を否定できないと思うのです。まあ、私こう申しましても、現実にはすでにアメリカを初めとする多くの国がこうした措置をとりまして、これにソ連がならったのであります。そうして、ついに日本も対抗上やむを得なく、これはやむを得なかったと思います、同様の国内措置を最近とられたわけであります。私は、こうしたことは決して好ましいこととは思われません。かの悪名高きトーデシアル条約の再来であるという批評は多少誇張があるといたしましても、これは二十世紀後半の世界の愚挙の一つであると私は思っております。ただ、現実はいかんともしがたいということについて残念に思っているわけであります。  次に、協定そのものについて若干気づく点を述べたいと存じます。たくさんございますけれども、時間も差し迫りましたので、若干の点だけにしぼって申します。  その一つは、協定上の用語の問題でありますが、この条約の表題あるいは前文、第二条に「地先沖合」という言葉がございます。ところが、第一条には「沿岸に接続する海域」という表現がとられております。恐らくこの二つの言葉意味することは大体同じであろうと思われるのであります。もしそうだとするならば、一つ条約協定の中でありますから、同じ表現を用いるのが通常望ましいことではないのかというふうにも思うわけであります。で、この「地先沖合」とかあるいは「沿岸に接続する海域」という表現で言われていることは、その中に沿岸領海を含んでいるのかどうかということ、これは協定文言だけでは不明であります。協定の中に特別の定義が下されていない限り、条約上の用語というものは一般の社会通念に従って理解するほかないと思われますが、だとしますと、沿岸領海を含むというふうに解さざるを得ないでありましょう。ただ、第一条の、ソ連に「接続する海域」という表現は、これは恐らくはソ連の最高会議幹部会令第一条にございます表現をそのまま用いたものと思われるわけであります。だといたしますと、この同じ幹部会令第一条邸、この暫定措置の設定は、ソ連邦の領海制度に抵触するものではないと言われております。他方、ソビエトの領海は、ソ連の国境警備令で、他国の船舶による漁労活動は原則として禁止をされております。簡単に申しますと、第一条で言う海域で操業可能だということか予想されますのは、ソ連の距岸十二海里から二百海里までの間に限られているのではないか。このことが地先水域というふうに言って、それで第二条で日本の「地先沖合」という言葉が出てまいりますけれども、これとの関連で同一に理解できるかどうかという点は、このテキストを拝見した限りではわからないのであります。  第二は、この協定か日ソの相互の利益を公平に保障しているかどうかという点であります。  経済的な実益の点は専門外でございますので深入りいたしませんが、恐らく過去の日本の実績は大幅に落ち込むでありましょう。そうして、この協定だけからソ連が失う実益と申しますか、これはほとんどないのではないかと思われます。  一方、形式論的に言いまして、この協定だけでは片面的である。実は次に予定されているソ日暫定協定、これがどういうふうにでき上がるのかということを見なければ、両者をセットにして相互の利益か公平均等に守られているかどうかということは言いにくいわけでございまして、その意味では、これだけで議論できにくいというふうに思います。  特に、この第二条から申しますと、日本の領海内のソ連操業ということが全くあり得ないという明文の根拠がない。ソ連側が日本領海内操業を希望したということが報道されておりましたけれども、それが全く否定されているという明文の根拠がないわけであります。これは恐らく交渉過程で  いろいろなことがあったんではないかと思われますので、これは恐らく国会審議等で明らかにされることだと思います。  最も大きい問題は領土の問題でございます。  もう時間がございませんので簡単にいたしますが、結局、この領土の問題につきまして、この日ソ間の協定、つまりソ連の二百海里設定ということをのんだ上で、一体日本の北方の領域についての主張というものが曲げられずに協定かできたかどうか、ここか一番大きな問題になっているところの一つであろうと思うわけであります。  領土につきましていろいろございますが、時間がなくなりましたので詳しくは申しませんが、私の意見といたしまして、これまでソビエトは解決済みであるとかいろいろ言ってまいりましたけれども、国際法上、厳密に申しまして、千島列島全域にわたってソビエト領になったとする国際法上の明確な根拠がないというふうに思われます。無論、歯舞群島、色丹島、択捉島、国後は言わずもがなでございます。いま申しましたいわゆる北方四島と言われるもの、本当の島の数はもっと多いわけであります。通称四島と言っておりますので四島と申しますが、これはそれではどうか、これについてはサンフランシスコ条約二条(c)項の解釈として、日本政府が多年とってまいりました態度が、これは放棄地域に入っていないという解釈、態度であるわけでありまして、条約の解釈は、第一次的には条約当事国がなし得るわけでありますから、サンフランシスコ平和条約の当事国の一国である日本政府が第一次的な解釈権を持つ国でありますから、そういう解釈をとることは可能であろうし、それにはそれなりの理由か私はあろうと思っているわけでありまして、ソビエトとの関係で、これらの日本か放棄していない地域考えられるところ、つまり日本が奪われべからざる地域である、世間では固有の地域というふうに呼ぶ人もあるようでありますが、これについてはソビエト側に譲らない、こういう主張をしてきた。これには私は理由があるというふうに思っております。  問題は、そういうことでソビエトと日本側との間に外交意見の食い違いが長年続いて対立してきた。ところが協定第一条を見ますと、ソビエト側の二百海里水域設定についての国内措置、これは最高会議幹部会令と大臣会議決定でありましたか、これをそのまま認めている。そうすると、特に二月二十四日付の大臣会議決定の中では、国後海峡をソ連国境というふうな表現もしておる。だから、これを全面的に一条が認めたということによって千島列島全域、それから歯舞群島、色丹島、択捉島、国後島までソ連領域として認めるということになったかどうかという点であります。  この点につきまして当然問題になるのは第八条であります。第八条で、相互の関係における諸問題については、「いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」この規定があることによって、二百海里の漁業水域設定という問題について合意したにもかかわらず、領域についての日本側の主張は曲げられずに残り、将来ともそれを主張し続ける根拠があることとなるのだ、こういう理解が一つあると思います。と同時に、そのことは裏返して言えば、ソ連側も同じようなことが言い得るわけで、つまり領土問題については、本件この条約をもっては何ら解決していない、別途の問題である、こういうふうになり得るという解釈、これが一応の解釈ではないかと思われます。この第八条の重みと申しますか、これをどうとらえるかということか一番大きな問題になってくると思われます。  ただ、このことがこれまでの日本の主張を下げたと申しますか、少し下がったかどうかという議論があることも承知いたしておりますけれども、私は、結論的には日本政府としては下がりも出もしなかっただろう。ただソ連の方としては、一条ということがあるので、八条があるにもかかわらず一条をかち得たということで、多少とも在来の意見ですね、領土問題解決済み、それぞれの地域ソ連に帰属済みであるという意見を強める可能性があるかもしれません。そこで、この「相互の関係における諸問題」と言われている条文の言葉、その中に領土問題が必ず入っており、かつ日本立場、見解が害されないということ、このことを相当はっきりしておく必要がある。それをはっきりしておきませんと一条が強くなってくるということを恐れるわけであります。そのことは、先ほど申しました次に予定されておりますソ日協定で、日本が最近制定されました二百海里法を適用するということをどういうふうに書き入れることができるかどうか。それから、実際上の国権行使は別として、国内法上日本が主張する領域のところに領海及び漁業水域でございますか、これを設定するというこういう操作、これをやるかどうか。これはやっておかないと日本の主張というものは著しく弱くなるというふうに思いますけれども、そういうことが今後残されておると思うわけであります。  少し時間を超過して失礼でありますが、私、参考人でございますので賛否を明らかにして述べる必要もないと思いますけれども、まあさまざまな問題はございますけれども北洋漁業の実態から見て、当面この協定は成立せしめざるを得ないではないのか。残念ではございますけれども、目下のところでは、これ以上のことを求めるということはないものねだりになるのではないか、それは非現実的ではないかという気は一方でいたしております。  特に今後非常にむずかしい問題が出てくるであろう。特に、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、国内に北方領土問題に対する関心か異常に高まったということは、今後対ソ外交においてそれなりのやりやすさを生ずるとともに、それなりの苦労か外交当局に多くなろうかというふうに思っているわけでございます。  多少超過して失礼いたしましたが、私の冒頭陳述はこれで終わります。失礼しました。(拍手
  10. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見開陳は終わりました。     —————————————
  11. 竹内黎一

    竹内委員長 これより質疑に入ります。  なお、質疑の際は、参考人を御指名の上お願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野嘉吉君。
  12. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 参考人先生方に大変いい話をお伺いしまして勉強になりましたわけでございますが、これから一、二お伺いをいたしたいと思うわけでございますが、素人でございまして、質問も幼稚あるいは雑駁になろうかと思いますが、よろしくお願いをいたしたいと思います。  最初に杉山参考人にお伺いをいたしたいと思いますが、今度のこの漁業協定締結に至るまでには大変長い時間を要し、そして関係者いろいろ苦労をした末に、いま先生のお話では、不満足、不十分というお話がございましたが、まあまあ一応調印のところまでこぎつけた。この間におきまして、従前日本のこれまでの外交問題が問題になったときの国内の様子とは違って、本当に国民全体挙げてこの問題に大きな関心を持って注視をしておったというふうに思うわけでございます。  このことは、北方漁業日本の水産業の中で大変大きなウエートを持っておる、それとまた、とられたものがわれわれの食生活に非常に深い関係がある。仮におかしくなった場合には、大ぜいの北洋漁民の生活かどうなるのだろうかというようなことから非常に大きな関心が集まったとも思うのでありますが、それよりも何よりも、先ほど先生のお話にもありました北方四島、あるいは一群島三島というのでしょうか、この帰属といいますか領有権といいましょうか、これが今度の漁業交渉の場でどういうふうに扱われるか、そのことに非常に大きな関心があった。それで本当に国民挙げてこの成り行きを注視しておったというのではなかろうかというふうに私は思うわけでございます。これも言い過ぎになろうかと思いますが、そういった国民考え方の中には、最悪の場合には魚はあきらめても領土を守れ、これは遠藤さんがおいでになられて大変言い過ぎになろうかと思いますが、そういうような気持ちも国民の中にはあったんではなかろうかと私は思っているわけでございます。  それほど大きな問題であります四島の領有権の問題、先ほど先生のお話の中で、この協定漁業に関する協定だと端的におっしゃられました。お伺いしておって、領土の問題の方は問題はないのだなというふうにも初めは聞いておったわけでございますが、後へ行って、八条もどうも十分でないのじゃないかなというふうなお話もございました。昨日からこの協定が国会で審議されておるわけでございますが、本会議の席上、あるいは昨日開きました当委員会におきましても、質問の焦点が四島の領有権とこの協定との関係、第一条を認めたこと、そのことによって領有権に対するわが国の主張が弱まるとか薄められるとかということではないか、そういうことはないのかというようなことがそれぞれの方々から繰り返し繰り返しあったわけでございます。それに対して政府側の答弁は、八条でがっちり歯どめができているからその心配は無用だ、こういう答弁がなされているわけでございますが、御専門立場から、八条が政府の言っているようにがっちりと、これまで日本が四島に対してずっと主張をしてきた考え方、言うならば将来日ソ平和条約を結ぶ際に最終的にその相談をして帰属を決めよう、ただいまは日本側日本領土と言っているし、ソビエト側ではいろいろな発言があるし、領土問題は片づいたということを言っているようでありますが、その日本側の四島はあくまでも日本固有の領土である、だから平和条約を結ぶときに返してもらわなければならぬと言っているその立場か、この協定締結することによっていささかも損なわれていないかどうか、その点をひとつお伺いをいたします。
  13. 杉山茂雄

    杉山参考人 ただいまのお尋ねは、第八条があることによって、在来のわが国の北方領土に関する主張、要求、立場、これがいささかも損なわれないかどうかという点でございますか、先ほど私申し上げましたように、これは第八条の重みをどう読むかというこの解釈上の問題といたしましては、八条をどう考えるかということになるわけでございましょうが、それにつけましても、「相互の関係における諸問題」、ここにはこう書いてございます。「この協定のいかなる規定も、第三次国際連合海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題についても、相互の関係における諸問題についても、いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」こういう規定でございます。海洋法の問題は一応別としまして、この「相互の関係における諸問題」という中に領土問題が必ず含まれているかどうか、それから領土問題についての日本側の主張というものがこの条約のいかなる規定があってもそれを妨げないということに確実に解されるかどうか、こういうことだと存じます。  この「相互の関係における諸問題」という点につきましては、新聞報道で私承知しております限りでも、「その他の諸問題」という、「その他の」という字句か入ったり消えたりしたようでございますし、「漁業上の」という言葉かあったかどうかというふうなことも伝えられることはありますけれども、でき上がったこの条文の文理解釈、字面の解釈から申しまして、日ソ「相互の関係における諸問題」ということになってまいりますと、無論シベリア開発の問題であるとか、あるいはその他の外交案件もあろうかと思いますけれども、多年の外交交渉の中心的な案件となってまいりましたことは確かに領土問題であったことは否定できないわけであります。この点についてソ連側は、解決済みだからもう問題にならないという態度をある時期とっていたし、今後あるいはとるかもしれないわけでありましょうが、日本側から言えば、これまでの日本外交態度が崩れない限り、特にまたこの節こういった漁業交渉をきっかけに、先ほど御質問の中でもございました国内的な、何と申しますか世論形成といいますか、こういうものができ上がってしまっているということになりますと、日本側としては北方の領土の返還と申しますか、固有の領土は奪わるべきでないんだと、こういう主張というものがまだ満たされない、解決をしていない問題だとする態度をとり続けるであろう。とすれば、相手がどうであってもわが方としては、これは日ソ間にある問題である、こういうことは、あるいはちょっと誇張して言えば日ソ間の最大の問題はそれであるということも言えるかもしれない。そのことが実は協定の字面に出てこない。ただ「諸問題」としかなっておりませんで、領土問題はこれは落とされているのかどうかという懸念が将来生ずるかもしれない。だから、その懸念がもしあるとすれば、それを何らかの形で補っておいた方がよいのではないか。たとえば国会の審議等を通じて、あるいは政府の声明というようなこともあり得るのかどうか存じませんけれども、何らかの方法で、ここに出てくる「諸問題」という中には少なくとも領土に関する問題が含まれるんだ、これをはっきりした痕跡を残しておく必要が日本側についてはあるように思われます。  無論、それじゃそういうものがなくて、全くこれから領土問題というものはドロップされているんだという解釈が成り立つかというと、私はそうも言えないと思うのです。一部には、これはソ連側から見れば領土問題はドロップしたということによって、七三年の日本の首相が訪ソしたときの共同声明の線よりも下がったというコメントをされる方があったように記憶いたしますが、私は必ずしもその点ではそうは思われません。むしろソビエト側として若干でも力を得るだろうと思うことは、やはり第一条の方だと思うのです。第一条で、最高会議幹部会の決定もしくは大臣会議の決定をそのまま引き合いに出して、しかもその中には国後海峡国境線というような言葉も使っている、これを援用して在来の主張を強めようとするかもしれない。そのときにこの八条でこれを完全にふっ切ることができるかどうかということが問題になると存じますので、その点をはっきりさせておくことが大事ではないか、こういうように思ったわけでございます。
  14. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 いまの先生のお話で、端的に領土というふうにうたってないので先々問題があるいは残るかもしらぬ、しかしこの問題については政府の声明なりあるいは国会の答弁なりでその点は明確にしておけばまあまあいいのではなかろうかということでございました。大体これまでの審議の中で政府側ははっきり、これは領土を指しているんだ、まあそのほかの問題もありましょうけれども、はっきり領土の問題を考えてこういう文句になったんだ、この文句の中には領土ということがまず第一番目に考えられることなんだという説明は、もう何度もなされているわけなんです。とすれば、そういうことから先々問題になったときでも、そういうコメントがあるので大丈夫だというふうに考えてよろしいわけでございますか。  それから、なおもう一つお伺いしたいと思いますが、この四島そろって日本固有の領土だというふうにわれわれ国民政府も言っておるわけでございますが、一部に歯舞、色丹と国後、択捉とは何かこう、国際法上というのでしょうか何でしょうか、あるいはいままでの経過の中でというのでしょうか、分けて考え考え方を時々言われる向きもあるわけなんですけれども、これは国際法上は国後、択捉と歯舞、色丹、この二つは別個のものなのか、それをただわれわれが北方四島と一区切りに言っておるのか、いやもう全然差別はなくて四島でいいんだというふうに考えられるのか、先生の御専門立場でお教えいただきたい。
  15. 杉山茂雄

    杉山参考人 ただいまの御質問の点は、歯舞群島、色丹島と言われる島々とそれから択捉島、国後島という島が国際法上異なったステータスを持っているのかどうかということだろうと存じます。ここで、地理学やあるいは植物学やあるいは歴史といったような、そういうことは別といたしまして、私がお答えし得ることは国際法上どうかという点であろうと思います。国際法上、現在それぞれの島が大変に問題になっておりますのは、一口に申しまして一九五一年の対日平和条約の二条(c)項で日本が放棄いたしましたクリール・アイランズという島々の中に、これらの島のいずれかもしくはすべてが含まれているか含まれていないか、こういうことと直接にかかわり合っているわけだと思います。日本政府の解釈態度としては、日本が放棄したクリール・アイランズという島々の中には、歴史上一度も日本領域以外の領域になったことがない固有の領域であるはずのこれらの四つの島は放棄地域に入っていない、入れるべきでない、こういう解釈だと私は承知いたしております。その点を非常にはっきり打ち出しましたのが、私の記憶に間違いがなければ一九五六年七月三十一日の重光外務大臣とシェピーロフ・ソ連外相との間の日ソ会談の席上でのステートメントではなかったかと思われますが、五六年以降今日まで日本政府が公式に言っていることを聞いておりますと、それを一歩も出ないと申しますか、全く同じことを、ずっと一貫して解釈態度を維持し続けている。先ほど申し上げましたように、条約の条文もしくは字句の解釈というものは、その条約の当事国がまず第一義的な解釈権をもつわけでございまして、その解釈について紛議を生じた場合については、他の条約当事国との間に一定の手続で解釈をめぐる紛争として解決していくのが定石だろうと思うわけで、対日平和条約の当事国として、日本もその一国でありますから、そういうクリール・アイランズという言葉の地理的範囲について一定の解釈をする権原を持っている。その権原ある政府がそういう解釈をとったという事実、これは一つの法的な事実として黙許できない、こういうふうに思われるわけであります。ところで、歯舞群島、色丹島とそれから択捉島、国後島というものが別の扱いを受けやすいということについては、それなりの歴史的な理由があるように私は記憶いたしております。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  まず第一は、対日平和条約締結されましたときに、日本がリナウンス、放棄するクリール・アイランズの地理的範囲はどこかということについて国会でも御議論があった中で、択捉島、国後島は放棄しない、残される地域に入っているんだということを政府側は必ずしも説明してなかったんじゃないか。逆に、一九五一年の九月のサンフランシスコ会議の席上で、クリールは放棄するけれども北海道の一部であるからというので歯舞群島、色丹島は依然として日本領域なんだということ、これをアメリカの代表も言い、日本の代表も言い、他の国は何人もそれに異議を唱えない、無論署名をしなかった国は別でありますけれども、署名をした諸国からは異議は出なかったというふうなことがあって、歯舞群島、色丹島というものは、国後島、択捉島を云々する以前から放棄地域に入っていないということが非常にはっきりしていた。それか五一年で、ところが、五五年の日ソ交渉が始まって、そのころ日本政府が、国後島、択捉島を放棄地域に含めないという解釈態度を公式見解として出して、対外的にもそれを示した、国内的にも国会等で態度表明をした、こういうことになっておるために、その間に取り扱いか違っているではないかという、こういうことがあったと思うわけであります。  このことは、いまの時点で申しますと、一九五一年から五五年までの間、日本政府が公式にどういうことを考え、どういうことを言っていたかということ、これが問題になるわけでありますけれども、私なんかは、条約の解決について、当事国が最終的な統一解釈を決めて、そしてそれをずっと一貫し続けるということであれば、最後の解釈というものが、最後と申しますか、そのときの解釈というのが非常に問題になるので、その間国内的にいろいろなことを言ったということかあるからといって、それほど他に対して影響を持つものではないんじゃないかというふうにも思うわけであります。  しかし、国内的にそのことがやはり後まで尾を引いたということはあろうかと思いますし、なお念のため私もいつか調べたことがございますけれども、対日講和条約審議の当時に、歯舞群島、色丹島だけは放棄しない、あとは放棄地域に含めるんだという説明をされた政府側の説明は、実は同時に対日平和条約の二十五条を引き合いに出して、だからといってそれがソ連のためにどのような権利をも与えていないんだということとセットにして説明していたように思われますけれども、このセットにした部分は後になって説明する人はドロップしている、こういうことがあるように思われます。  いろいろ申し上げましたけれども、現在の時点では、日本政府の公式解釈としていま言ったようなことが言われている、対外的にもそういう外交態度を一貫しているというわけでございますから、国際法上のステータスとして、日本政府から見てその四つの島のうちの差異というものはないと一応は言える。  それから、少し長くなりましたけれども、もう一つの点は、その差異が出てくる可能性があると思われるのは、一九五六年の日ソ共同宣言で、歯舞群島、色丹島については、日ソ共同宣言の第九項に言う、平和条約締結された後に日本に引き渡される、こういうふうに書かれていて、そしてそこには国後島、択捉島というものは出てこない。あの協定では、国後島、択捉島の問題は別として、平和条約というものができれば歯舞群島、色丹島だけについては返す、と申しますか、引き渡す、こういうことが書いてあるので、その意味で、日ソ共同宣言の中でその関係の島の間に差異が見られるという点はございます。
  16. 佐野嘉吉

    ○佐野(嘉)委員 まだお伺いをしたい点がありますが、時間が参りましたので、残念ながら終わらしていただきます。ありがとうございました。
  17. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 次に、松本七郎君。
  18. 松本七郎

    ○松本(七)委員 大変貴重な御意見開陳、ありがとうございました。  補足的に最初木村先生にお伺いしたいのですが、先生はさっきソ連外交の基本的態度とかいうものに触れられて、いわゆる力による外交というものが基本になっているという、そして、力で押しまくりながら最後には譲歩したと、今度の場合も多少の譲歩があったと、こう言われ、そして、その譲歩した原因といいますか、要素として、シベリア開発の問題とか中国の問題等を指摘されながら、一番大事な点は、世論と申しますか、そういうものが非常に大きな要素になっておったという御指摘だったと思うのです。私も、自身長い間日ソの運動に取り組んでまいりましたので、国民世論なり国民運動というものが非常に大きな要素であるということは全く同意見なんです。ただ、実際に運動する者から考えますと、それから今度の漁業交渉でも同じことが言えるのですが、そういうものが大切な要素ということになるとすれば、特に領土問題でやれ解決済みだ、未解決だという対立かある以上は、今後もこの国民運動なり国民世論をどう盛り上げるかということが、私は、すべての日ソの関係では非常に大事な点になってくるだろうと思うのです。その場合に、これは大国主義との関連が出てくると思うのですが、純粋な国民世論ソ連が素直にとってくれればいいのですが、ところが一部には意図的な反ソ運動というのもあります。いわゆる右翼によるところの意図的な反ソ行動というものがいろいろな形でこれから強まってくるんじゃないか。そうしますと、政府がそういう意図的な反ソ感情をあふろうとして世論を指導するなりあるいは背景にして交渉に当たるのではなくても、相手側のソ連から言えば、これは政府が意図的に反ソ感情をあふっているんだというような言い方をした場合も過去においてはあります。今度の漁業交渉でもそうです。その前のミグの事件とか、そういういろいろなものの関連においてこの国民世論なり国民運動というものをソ連側は評価すると思うんですね。ですから、そういう権力外交をやってくる相手に対して国民世論を盛り上げる場合には、やはりその兼ね合いというものが私どもは一番苦労する点なんですけれども、その点を、まあ先生みずからアウトサイダーと言われましたが、外部から見ておられ、また国民世論ということになりますと当然先生方もやはりアウトサイダーではあり得ない立場だろうと思うのですが、そういう立場からこのむずかしい点をどう考えておられるか、参考までに伺いたいと思うんです。
  19. 木村汎

    木村参考人 国民の一人としてアウトサイダーということは許されないという厳しい御指摘でございましたけれども、本当におっしゃるとおりにその兼ね合いが、兼ね合いという言葉はちょっとどうかわかりませんが、非常にむずかしい。世論を余り盛り上げ過ぎても逆効果ということでは全く同感でございます。  ただ、先ほどと重複しますけれどもソ連が、そういう国民世論の盛り上がりを意図的に日本政府がつくり上げているというふうにとって攻撃してくるのに対してどうしたらいいかということですけれども、それは余り気にしなくていいんじゃないかと思います。というのは、たとえばこの間あたりからでもソ連新聞に、一部の者がそういう運動をやっているのだとか、そういう記事が載っておりますけれども、一々こちらもそれを気にして一喜一憂して、それじゃちょっと盛り上がりを抑えようかというのはもう愚の骨頂で、むしろ向こうの作戦にみごとに引っかかっているんだ。つまり、ソ連報道というのは、そのほかのものと比べてもわかりますけれども、もう報道している彼ら自身わかっているのですけれども日本のプロレタリアート、労働階級がもう貧困のどん底にいるんだとか、そういう暗いイメージを、ソ連日本に来たことのない一般の善良な民衆に伝えようとして、彼ら新聞記者の方も、日本で見ればわかるようなことも、しかし自分の個人的な将来とか地位を考えて書いておられるわけで、ソ連当局もその辺は十分わかっているわけですね。そういった記事によって政策を決めるほど彼らはお人よしではない。つまり、日本世論か本当にどのくらい盛り上がっているのかというのは、もうわれわれよりもよく向こうの方があらゆる新聞記事、そのほかを精密に研究、分析してわかっているわけです。  もっと言うならば、向こうは二重外交といいますか、一部においてはそう言いながらも、権力のトップにいて決定をやっている人は、それがどういう意味での盛り上がりであるかということは百も承知であります。そしてまた、ソ連は自分の国のかがみに合わせて判断しているのでしょうけれども日本においておよそ世論というのは、どうでしょうか、御質問いたしますけれども、私からは御質問はできないんですけれども、これはそういう意味の質問でなくて、世論というのは上からそれほどマニピュレートできるものでしょうか。日本国政府というのはそれほど力があるものでしょうか。また世論というのは下から盛り上がるもの、その下から盛り上がるべきものを上からつくり出すということ自体が形容矛盾じゃないでしょうか。それは御自分の国ではできるのでついそう思いがちなのかもしれないけれども、そしてまたそれをそういうことで言っているのでしょうけれども、彼ら自身も信じていない、一つのテクニックとして用いてきている彼らの苦しい弁明ですから、それを余り正直に真に受けてあれするのは、愚の骨頂といいますか、向こうの作戦に陥るのではないか、そういうふうに思います。
  20. 松本七郎

    ○松本(七)委員 次に杉山先生に。  もう先生は日ソ交渉時代から私ども社会党の主張は御存じだと思いますが、戦争で奪った領土でない北千島まで含めて私どもは領有権を主張する権利があるのだ、これは一貫して言っているわけですからいいのですけれども、先生にもう一度伺っておきたいのは、先ほどの佐野さんに対する御答弁でも大体わかってきたような気がするのですが、國後、択捉の法的な立場とそれから北千島の法的立場というものは、恐らく先生の意見では違うのじゃないかと思うのです。私どもはまあ政治的に、戦争で奪ったものでないということで一括して同じに要求しているわけなのですが、先生は法的にはそこのところの区別はされておるのか、あるいは同様に権利を主張できるという立場に立っておられるのか、その点をもう少し明確にしていただきたいと思います。
  21. 杉山茂雄

    杉山参考人 松本先生お話のように、歴史的な過程を踏まえますと、確かに全千島について日本が、連合国の言葉を使いますと、暴力及びどん欲によって略取もしくは盗取したという地域でないということは明らかだと思います。その点は私も全くそうだと思っておりますが、ただ一点法律的に問題になりますのは、対日平和条約二条(c)項でクリール・アイランズ、日本語では千島列島と訳されておりますが、千島列島を放棄したということがあるわけでございまして、そうしますと、その地理的範囲がどこであるか、これが大変問題になりますが、とにかくクリール・アイランズは放棄した。それで、本来これは放棄すべからざるものであったといたしますと、実定法上は対日平和条約二条(c)項をどうするかという問題か出てくると思う。それは実はソビエトを相手にしてこの条約の改定であるとか、その分についての効力を失わせるとかいうことをネゴシェートする問題ではなくて、本来は、日本と連合国との間の条約が対日平和条約でございますから、連合国との間で二条(c)項の取り扱いについて決める必要があるのではないか。ソビエトとの外交交渉関係で二条(c)項を改定するとかいうふうなことは出てこない。ソビエトとの関係で出てくるのはどういう問題かというと、日本側の理解するところとして放棄していないと考え地域について、したがってこれは日本領域である、そういう領域について連合国以外の国とこれをやるとかやらないとか、軍事占拠を解けとか、占領を解けとか解かないとか、こういうことは交渉の主題として法的に可能だというふうに思われますけれども、一たん放棄して日本領域でなくなったところについて、その条約の当事国でない国との間に交渉をするというのは若干筋違いではないかというふうに思われるわけです。その意味で、日本政府が放棄していない地域、つまりクリール・アイランズに含まれない地域として認定している地域と、それからクリール・アイランズに含まれると考えている地域との間に、現在の条約上ステータスの相違があるというふうに考えられます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  22. 松本七郎

    ○松本(七)委員 杉山先生にもう一点お伺いしたいのですが、冒頭に言われた、二百海里には自分は反対だとこう言われるが、現実には二百海里水域がだんだん世界的に広かろうとしているわけですが、先生の指摘されたように、将来にわたってこれが常識的に広がっていけば、やはり人類の幸福の点から言えば非常に危険性が増してくると私は思うのですね。ですから、そういう大きな問題がもう常識的に、これか国際的な常識として広がっていくのを、それでは何をきっかけに先生のような意見というものを伸ばしていけるかという、そういう点についてのお考えがありましたらお聞かせ願いたいのです。
  23. 杉山茂雄

    杉山参考人 非常に重要な点でございますが、これは、当面の問題といたしましては、第三次国連海洋法会議の中での日本のポジションが問題になると思うのでございます。これはいささか時間的には遅くなりましたので、死児のよわいを数えるに類することになるとは思いますが、かつて日本政府は、二百海里専管水域問題については反対の意思表示をたしか国連海洋法会議でやっており、そのために、これは有名な話で御承知と思いますが、エクセプトワンというニックネームをとったということが伝えられておるわけでございますが、エクセプトワンと言われても私はもっとがんばっているべきではなかったのか。そうして、ああいったEZ二百海里というものが御承知のとおり発展途上国七十七カ国会議等で出てきた。ところが、そういうことを言って盛り上げてきた発展途上国も、それをそのまま推し進めて多数で押し切ろうとすれば、行き着く先はそれらの国々にとって必ずしも有益、有用でないんだ、そういうものができ上がった結果は、先ほど私申し上げましたように、既存の大国、超大国をこそ利益しても、その他の国に対しては十分な利益を与えない、むしろ先ほど申しました南北格差是正という問題から逆の方向に行くんだということをもっと説得すべきではなかったかというふうに思われます。  今日の段階ですでに、ソビエトとの対抗上、あるいはアメリカとの対抗上ということに結果的になるかもしれませんけれども、米ソとの対抗上、二百海里の漁業水域というものを設定いたしましたが、私は日本として賢明だったと思いますのは、相手が二百海里をとっているという部分について対抗上二百海里をとり、まだそういうことをはっきりと打ち出していない国、実際の措置をとっていない国の側についてはそういう措置がとられていないという、こういう国内措置が法律でとられたというふうに承知いたしておりまして、これはぎりぎりのところ賢かったというふうに思いますし、将来にわたってそういう国内措置をとるにしましても、二百海里主義というようなものか、むしろ国際会議の席上で、これは非常にむずかしい問題だと思いますけれども、これによって利益を得ない国あるいはそういうことが不合理であるということを納得した諸国が、統一的な国際法典としてそういうものをつくるべきでない、こういう意見が出て多数を占めるようになったときには、日本も、そうして同時にソ連アメリカもそうでありますが、二百海里をやめる。ソ連の今度の二百海里の国内措置も、将来どういうふうな法典ができるかということがあるが、それまでの暫定措置というふうな構えで幸いいるようでありますので、その暫定期間というものをなるべく短くするように努力した方がよろしいのではないか。これは私、海洋法会議というふうに申しましたが、海洋法会議だけでなしに、さまざまな機会にそういう努力が払われてもよいのではないかと思うわけです。  ただ、こういうふうに申し上げましたけれども、御承知のように、残念なから目下のところでは大勢は逆の方向に進んでいるということも承知しておりますので、私は残念に思っておるところでございます。
  24. 松本七郎

    ○松本(七)委員 どうもありがとうございました。
  25. 竹内黎一

  26. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私はまず、冒頭に御意見を述べられました遠藤参考人に御意見を伺いたいと思います。  ソ連の重圧に耐えかねて、二島返還で手を打ってという声もちらほら聞かれるわけですけれども北海道漁業関係者におかれては、こういう声に対してどう対応しようとしておられるか。われわれとしては四島一括返還の立場を変えるべきではない、このように思いますが、漁業関係者として断固四島返還の主張は崩すべきではないと考えておられるかどうか、この辺の感触を伺いたいと思います。
  27. 遠藤信二

    遠藤参考人 直接関係のある参考人が多分午後出席をいたしますので、その方々からお話をした方が適切ではないかと思いますけれども、私の感じを申し上げますと、私ども漁民でございます。領土というものは国である、国か決めるべき問題であって、私どもは魚が欲しいのだ、魚をとって商売をするのだということで尽きると思います。これは二つの島がどうでありますとか、依存度がどうだとか、あるいは択捉、国後のところの依存度がどうだとか、依存度の多少の差異というものはありましても、あそこにおられた方々がいずれにしてもこっちへ来ておるという事実もあるわけでありましょうけれども領土というものは国が決めてもらって、われわれの祖先伝来おったところでありますからその主張は変わらないにいたしましても、やはりあそこの周辺漁業を従来からやっておったし、今後もやるであろう、魚あるいはコンブを、ワカメを欲しいのだというようなことに意見か集約されているのではないかというように感じております。
  28. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 北洋漁業からの締め出しのために、多くの船主とか漁船員あるいは加工業者がいやおうなく転業を余儀なくされるものと私は思いますが、そこで、漁業関係自身はどのように対応策を講じようとしておられるか、また、政府はどのような救済措置をとるべきだとお考えか。  もう一点は、わが国の漁業が大きく影響されたところの二百海里水域時代を迎えたわけですが、わが国の漁業構造、これを再検討して再編成する必要があるのではないかと思われるわけですが、漁業関係者の立場としての御意見を伺いたいと思います。
  29. 遠藤信二

    遠藤参考人 大変むずかしい御質問でございますが、いずれにしても、いままで非常に苦労してかち得ておりました権益と申しましょうか、営業権と申しましょうか、そういうようなものが今度の協定交渉によりまして、極端に言いますと見通しがなくなってしまった漁民のいまの心境は、どうしたらいいのかわからないというのが偽らざるところであろうと思います。いずれにいたしましても、漁民自身も、大中小いろいろありますけれども、特に沿岸の方々の今後の救済策は政府自身がやっていただかなければいけませんし、また中小の漁業の者もやはりそれに耐え得るだけの道というものは他に求めなければいけないというようには思っております。  ただ、残念ながら、いまもいろいろ論議がございましたけれども、二百海里時代に各国は突入しちゃっておるという現実を認めますと、未利用の漁場でありますとか、諸外国の海域の中でありますとかあるいは各国の二百海里の外の有望な漁場があるかということになりますと、いままで失われた権益の起死回生の漁場というものは非常にむずかしい。ということになりますと、これは営業権を放棄するとか、倒産するとか、あるいは他に職場を求めて陸上の方に行くとかいうような措置をあるいはとらなければいけないというような感じはいたしております。でございますが、いま非常なショックを受けて、どうすればいいのかわからないというのが各方面におきます漁民の感じであろうと思います。
  30. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いま一点だけお聞きしますが、北海道と本土における河川でサケるいはマスの稚魚ですね。こういったことは午後からの参考人方々にもまたいろいろと御質問か出ると思いますが、サケ・マスの稚魚の放流と回帰の可能性が有望と思われるかどうか、いわゆる日本系のサケ・マス事業に対する漁業関係者の関心というものはどういったものがあるか、この点について御意見があればこの際承りたいと思います。
  31. 遠藤信二

    遠藤参考人 直接の関係者は午後参りますので、御質問していただければ非常に幸いだと思いますが、私も若干関係をしておった分野の範囲内でお答え申し上げますと、サケ・マス関係の人工増殖関係漁民の意欲といいましょうか、熱意といいましょうか、それに取り組むべき姿勢というものはやはり変わりませんので、特にサケ・マス関係の習性といたしまして、沿岸河川に洲河をして産卵をしませんと種族をふやすことかできない物理的な宿命を持っている魚族でございますから、人工的な増養殖関係をやるべきであるという意欲、またやらなければいけないという問題につきましては漁民は一致して持っているというように感じております。
  32. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 次に、木村参考人に伺いたいと思います。  北方領土返還について、日ソ双方の法律論議ではもはや前進かなかなか期待されないのじゃないか、こういうふうに思われます。そうなると、やはり残された方法というのは政治論または政策論以外にないのではないか、このように考えますけれども、ほかに何かわが方にとって有利な交渉方法、こういったものがないものかどうか、御意見があれば伺いたいと思います。
  33. 木村汎

    木村参考人 私も前段といいますかの御指摘に大賛成いたします。  ちょっとよけいなことに脱線するようでございますけれども、つまり、先ほど、今度の暫定協定の一条と八条をどう読むかということで国際法的に教えていただきました。確かに国際法的な解釈や用語も大事でございますけれども、そういった法律を結局とちらが——一条をソ連が今後強く運用を主張してくるか、八条を日本が運用していくかということは、結局はただの文理的な問題ではなくて、申し上げるまでもなくその運用の政治的力関係といいますか、それが決めていくわけでございます。その点で先生がおっしゃった点は全く正しいわけです。  それならば第二段階として、それはわかっているのだ、もう聞いたんだ、それでは具体的にはどうかとおっしゃるわけですけれども、それに対してそれほど妙案かすぐあるわけでございませんけれども、まあもう従来出尽くしているもので、松本先生も御指摘になったこと、つまり三つでございますね。  ソ連日本をどう見ているか。太平洋地域における日本を国際戦略上、国際政治上からどう見ているかということを、過大にも過小にも評価せずに正しく認識することがまず第一で、その上に立って初めて日本が置かれている立場の微妙さ及びひょっとするとバーゲニングパワーさえ、巧みに用いれば生まれてくるかもしれない。  第二は、先ほど申しましたので繰り返しませんが、一番強力なパンチは、仮に合意が生まれるならば、今後ソ連に対する経済的な資金はすべて一つの窓口にコントロールして、そこから出ていかなければ出ていかないようにするということでありますけれども、これは先ほど申しましたように、日本自由主義経済をとって、ある程度競争をする、過当とも言える、その点では非常にマイナスなんで弱いのですが、そのことによってまた活力といいますか、戦後の繁栄があったと考えますならば、そういうふうな統制経済的なことに対する反発、それから必ずそれに対して先駆けるような人々が出てまいりますから、なかなか実行は困難ですけれども、真剣に今回見られたような与野党及び政府国民との間の一致が見られれば、ないわけではない。  それに関連して最後に、やはり繰り返しておりますこちらの国民世論の統一をバックにする。  それから最後に、もしつけ加えさしていただけるならば、漁業交渉はこれから毎年行われていくので、今回だけしのげばいいというものでないことは釈迦に説法でございます。毎年毎年この問題は起こってくるわけですから、短期的な見地も大切ですけれども、ここで腰をじっくりと据えて、ロシヤ人とは何だというところまでさかのぼって、文化人類学的な意味から、われわれの隣人であるロシヤ人とかソ連の行動様式、外交、通商におけるパターンのようなものが条約交渉などに出てきてないか、その情報をじみちに蓄積していって、何か共通する教訓のようなものが出てこないか、そういった距離を置いたといいますか、覚めたそういう認識の目を片一方の側で長期的な視野から育成して、ロシア語のできる専門家とか、そういう人を養成するのはもちろんですけれども、いままで比較的アメリカ、西欧に向いていた日本地域研究というのをそういった方面にも向けて、これはやや我田引水になりましたけれども、私どもの施設でも日本で唯一の国立大学の施設ですけれども、年間五百万円の予算しかいただいていないというわけでございますから、これを機会にもっと隣人を研究してみようじゃないか、そういうことが近視眼的なマイナスを補って余りあるのじゃないか、そういうふうに考えます。
  34. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 残り時間は三、四分しかありませんが、杉山参考人に伺いたいと思います。  北方領土に関するわが方の領有権主張、この法律的根拠はすでに出尽くしてしまっているんじゃないか、杉山参考人としては、さらに新しい領有主張の法律的な根拠となることが存在すると考えられるかどうか、これが第一点。  もう一つは、北方領土問題、これは今日の状況から見る限り、将来長期にわたって解決されないかもしれないというような見方もあるわけですが、こういった場合に、わが国の意思に反して、いわゆる時効による領土の移転ということが考えられるかどうか。  この二点について、時間が限られておりますが御意見を賜りたいと思います。
  35. 杉山茂雄

    杉山参考人 第二問の時効の問題でございますけれども、確かに国際法で時効という考え方はございますが、取得時効の成立の期間がどのくらいになるのかというようなことは一般国際法で別に明示されておりません。そこで私なんかは、時効とは言うけれども、結局は利害関係国がある一定の事実を長期間黙認した場合に、黙示の合意としてある一定の法的効果が出てくるというふうに考えておりますので、その時効によってソビエトか領土権を主張しないようにするためには、あらゆる機会に時効の中断をかける以外にないというふうに思われます。ただ目下のところでは、私の聞いている限りでは、ソビエトは時効理論を用いておりません。何となれば、いま時効理論を用いると論理矛盾を生ずるのです。つまり解決済みと言っているからなんでございます。ですから時効ということは言ってまいりませんが、しかし、日本側としては時効中断をかけておくということは必要だと思います。  それから、この協定でソビエト側が領土権を主張するということが、何か新しい一つを加えたか、日本側はどうかということでございますけれども、それは先ほど私すでに申し上げましたのですが、ソビエト側としては恐らく第一条をフルに使ってくるであろう、それに対して日本側が、第八条で本協定のいかなる規定も当事国の立場影響を与えない、こう言っている。これを強く言うことによって打ち消す以外にない、こういうように思っておりますが、今度は日本側でいままでの領土主張について強いといいますか、新たなものが加わったかということでございますけれども、八条というものを入れることで食いとめたということはございましょうけれども、新たなものがつけ加わったということは日本側についてはないのではないかというふうに感じております。  以上でございます。
  36. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 では、時間が参りましたので、どうも大変ありがとうございました。
  37. 竹内黎一

    竹内委員長 渡辺朗君。
  38. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 きょうはお三方に、私、御質問さしていただきたいと思います。  まず第一番目に、遠藤参考人にお尋ねをいたします。  大変業界においてもショックを受けられたし、大変に苦悩しておられるお話をいまも拝聴いたしました。これを今後どういうふうにしたらよろしいのか。すでにいろいろな補償その他が行われていると思いますが、まず第一番目に、待機補償あるいは減船補償、こういった問題出漁の遅延のための損失補償、こういった点、現在行われておりますでしょうか、どうでしょうか。
  39. 遠藤信二

    遠藤参考人 政府当局から多分お話かあったかと思いますが、いわゆる休業というものの取り扱いについて、物理的に四月一日以降まだソ連の海域に出られないということが行われましたし、また、交渉をやっている最中でございますから、ソ連の二百海里の域外に脱出をして、日本の三百海里の中で漁業をやる以外に方法はないという政府の指導に基づきまして、あるいは一部の船は四月以後係船あるいはまた日本の二百海里の中で漁業をやっているという事態はありましても、それまでの間におけるつなぎ融資といいましょうか、そういうものの措置につきましては各業態に違いはありましても、いわゆる乗組員に対する補償でございますとかいうようなものについての取り扱いは現在やっております。ただ、各業界によりましていろいろ違いがございますが、これからの減船という問題についての取り組み方、これは私だけのところで申し上げますと、いまのところ十二月三十一日までの間におきましては、八月以降十二月三十一日までの間におきましての休業係船というものは行わざるを得ないという悲劇を受けておりますが、これをすぐ減船というものにつなげて、営業権を放棄するというようなところの取り扱いはまだ業界としては考えていない。それをやるためには、いわゆる一月一日以降漁業が再開できるような、十一月に交渉が行われるであろう長期協定の中で取り組んでいただきたいということを政府当局に申し上げておりますので、いま直ちに減船という措置を政府の方と相談をしているということではないというように考えております。
  40. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一点、遠藤参考人にお尋ねいたします。  特にいろいろな点で御注文かあろうと思いますけれども遠藤参考人立場からすると、いま特に緊急に補償の問題あるいは今後の対策として国会の方に要望していただく、政府の方に要望したい、こういったような点は何かございますでしょうか。
  41. 遠藤信二

    遠藤参考人 大変くどくなって恐縮でございますが、私ども、かち得たといいましょうか、非常に苦労して漁業の開発をやった者といたしましては、いわゆる暫定協定で操業かできなくなったということを甘んじて受けるわけにはまいらぬ。やはり一月一日以降漁業ができるように政府は特段の配慮をすべきであるというように、いま政府当局にお願いをしているということでございます。  例を申し上げますと、十二月までの間における他海域といいましょうか、アメリカの二百海里の中における漁業の再調整といいましょうか、そういうものをやっていただきたい、また、一月一日以降のアメリカとの交渉の中におきまして、漁業が拡大されますように、いままでと同じようにできるように交渉をしてもらいたい、それからまた、ソ連との交渉の中で、一月一日以降漁業ができるように交渉をしていただきたいというような三点をとらまえまして、漁業の再開、漁業ができるようにということを目途にして、目下政府にお願いをしているということでございます。
  42. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一つ遠藤参考人に。実はこれちょっと言いにくい、聞きにくいことでもあるのです。しかしあえてお尋ねしたいと思いますが、それは、ソ連側や何かがえてして言っておりました今日までの報道なんかにございます。それは日本の底びき網漁業が技術的にも非常に発達している。同時に、それだけに魚族資源の保護の観点から大変被害をこうむる。こういうようなことをしばしば言明をしておりますし、報道もしております。実際に魚族資源保護という観点において、今日まで底びき網業界においての何らかの指導をしておられた、配慮をしておられた、そういう点はいかがでございましょう。
  43. 遠藤信二

    遠藤参考人 こういう問題が出る以前、戦前、戦後を問わず、底びき漁業というのはどうしても網が底につきましていろいろな魚族を捕獲するというような漁業でございますので、各種沿岸漁業との、これは国内でございますけれども、相克摩擦といいましょうか、そういうものがあるということは事実でございます。でございますけれども、やはり同じ魚を違った漁法でとる場合におきますいろいろな問題があるということは、私どもも十分認識をいたしておりますので、何が何でもゴーイング・マイ・ウエーだというような立場をとらなくて、また政府とも十分相談をしなから、禁止期間を設ける、あるいは禁止漁区を設ける、あるいは船の制限を設ける、あるいは漁獲の量を規制をする、また魚体の体長制限を実施する、あるいは網目の規制をして、余り小さい目合いで漁業をやらないように等々の法的措置、あるいは自主的措置をやって、ほかに迷惑をかけないようにやっているということか、いままで国内でとられた措置でございます。  特に近接している海域に出ますときに、他の国の領域の中に入ってやるような場合につきましては、相手国との漁業の摩擦というようなものを避けるようにしながら資源保護を十分に考える必要があるということで、魚をとるトン数を自主的に決める、何トン以上とったならばやめて帰ってくる、あるいは四カ月間は漁業をやめるというような措置を自主的にとっておって、諸外国に余り迷惑をかけないようにやっておるというのが実態でございます。
  44. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。  次に、木村参考人にお尋ねをいたします。  一つお聞きしたいのですけれどもソ連というのは最近海洋パワーとして大変に大きく伸びつつある。特に私、関心を持っておりますのは、太平洋地域に非常な関心を持って出かけてきている。先般も外務委員会で私その点突っ込んでお尋ねしたのですが、それは漁業のために、たん白資源を必要とするので、たとえばトンガあるいはフィジー諸島、そういうところにも積極的に漁業援助であるとか、あるいはさまざまな経済援助の提供をしながら進出しようとしている、こういうような説明が外務省当局でありました。私は、それにしてはちょっと少しソ連の出方というのは強引なところ、もっと違ったものがあるのではあるまいかという懸念を持っております。たとえば、トンガなんかに対して飛行場建設の応援をしたい、こういうような申し出がある。私は、漁業資源あるいはまた単にたん白資源の問題だけではなくて、非常に戦略的な海洋国家としての、あるいはシーパワーとしての太平洋というものがソ連の戦略の中に組み込まれているのではあるまいか、こういう印象を持っておりますが、何かそういう太平洋戦略といいますか、そういう問題につきましてお気づきの点、ソ連外交政策の中、軍事政策の中でお気づきの点がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  45. 木村汎

    木村参考人 私も渡辺先生の御指摘のとおりだと思います。ソ連がシーパワーとして太平洋地域に増強を重ねておりますのは、単にたん白資源という純経済的、農業的、栄養的な観点からだとする見方ではとらえきれないと思います。それはおっしゃるとおり、外交、国際戦略上の一環として理解すべきだと思います。  つまり、御存じのようにソ連はアジア安保構想というのを進めてきておりますが、これか意外に評判が必ずしもよくない。しかし、中国が覇権条項によって逆に、事実上のでございますけれどもソ連を意識したような、ソ連が大国になるのを意識した動きをしておるのを極度に意識して、逆の意味でセットというと言葉が変ですけれども、それに対抗する意味でアジア安保構想を出してきているが、これが欧州安保のようにはうまくはいかない。しかし、欧州安保と同じく長期的に粘り強く引っ込めたり出したり、名前を変えたりして出してきているわけですが、それを最近は一挙につくることはむずかしいので、地域別の二国間あるいは三国間のそういったものの積み上げとして地域別に分けてやろうとして、それの東北アジア地域における新しい戦術戦略が太平洋構想として生まれつつあるのではないか。これにわれわれはもっと注目する必要がある。  それは、もう一つの方面から言いますと、フォード大統領の太平洋ドクトリンというアメリカと中国との結びつき、いまは少し退潮というか、停滞しておりますけれども、それに対抗して——そのときにフォードのあの文章を読みますと、ソ連というのが一カ所しか触れてなくて、それも前文で、後ではソ連というのは抜けていて、一に日本とか、二に中国ということで、ソ連というのは抜けているわけですね。これはソ連としては非常に頭にかちんときているわけで、それならば逆に自分の方から大きな網をかけていこう、これは線引きの網ではなくてもちろん戦略上の網。ただ、この太平洋戦略というのはどのくらい固定的に出ているのかというのは、今度の政変と言ってはおかしいですが、そういったものと絡めて論争、政争があるのではないかとも思いますけれども、まだ定かではない。形成の過程にあるけれども、それがそういった方向へ向けて萌芽の形であれ向いていることは、やはりシベリア鉄道、第二鉄道などから東へソ連が進出してくることともまた無関係ではない、そういったこと。  それから、最後に長くなりますが、言うまでもなくシーパワーは本当に用いなくても、プレゼンスとか、そこにいるフリート・イン・ビーイングだけでもデモンストレーション効果がある。ソ連は三分の二の領土がアジアであると言って関心を持ってきて、仲間に入れろ、発言権を与えろと言ってきていますけれども、まだ歴史も浅く、非常にタクテックもまずい。一番まずいのは、日本国民に対するデリカシーの欠けた態度でありますけれども、そういった逆に外交上の拙劣さを補うものとしても海軍力を使っているので、これを果たしてどのくらいに評価したらいいのか。また過大評価しても、おびえ切ってもいけないし、また過小評価してもいけない。多角的な見地から注意深く見守る必要があるというふうに思っております。
  46. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 最後に、それでは杉山参考人にお尋ねをいたします。  杉山先生の方から先ほどは日ソ協定の中の第一条と第八条に言及されまして、八条が持つ、いわば一条を押さえる力、相殺する力というのが弱いという点をおっしゃいましたのですか、その点、このままいったら、どうも第一条の方が強く出てまいりまして、ソ連が北方四島を占拠している現実を公式的に日本が認めた、またそれを基盤にして今後のいろいろな折衝が始まるということになると、大変不利なことになるという印象を持っておりますが、先生もそのような私の理解と同じようなものであると理解してよろしゅうございますか。
  47. 杉山茂雄

    杉山参考人 お答え申します。  私、第八条の持つ力が弱いとまでは申し上げなかったつもりでございますが、ただ、八条で相互間の諸問題という言い回しをしておって、考えてみると、日本から見れば、これは領土問題ぐらいしかないという日本側の理解はあるにしても、明示的にこれが領土問題を必ず含んでいるんだ、そして日本側の主張がこの条約によって曲げられないのだということが明文の上で出てこない。だから、今度は日本側がそういう理解をソビエトとの間に共通した場合には、ソビエト側の主張もやはり曲げられていないということになり得るということがあるというふうに申し上げて、一方、一条の方については、ソビエトの国内措置を日本側が認めるという規定になっておりますので、そうしますと、国内措置の中で先ほど申し上げましたように、大臣会議の決定なんかでは国境線という言葉まで持ち出しておるということがございますので、将来そういうことを、ソビエト側としては領土問題が議せられたときに、自己に有利に使ってくる可能性がある。だから、その可能性を弱めるために、八条について日本側の態度を何らかの方法で補強して、はっきりさせておいた方がよくはないか、こういうふうに申し上げたつもりでございます。ほぼ同じようなことだと思いますけれども、そういうことでございます。
  48. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 最後一つだけ杉山参考人にお尋ねをいたします。  南樺太、それから千島、北方領土の返還問題。いまは歯舞、色丹、国後、択捉四島に限定されておるわけですが、私は、千島と南樺太の所属の問題につきまして、一体日本としてはどういう見地を持つべきなのか、ここら辺を杉山先生にお尋ねしたいのです。  それは、講和条約二条(c)項で放棄した。したがって、これは無主になった。無主になったから、それをソ連が先占し、占有している。いわば無主物先占の法理という立場ソ連領土権を取得したというふうに一つ考える。それから、これを放棄したけれども、最終処理は連合国にゆだねられるんだ。だから単純に考えても、これは帰属未決定のところである。したがって、ソ連がそれを勝手に占領している、あるいは領土に編入したというふうな無謀な行為である、こういうふうに言える。あるいはまた放棄をしたけれども、これは米英等講和条約の相手国に放棄したのであって、これはソ連ではない。調印をしていないわけですから、ソ連ではない、こういう立場日本は言うべきなのか。いま三つ挙げましたけれども、そのいずれを先生は日本としてとるべきだとお考えでございましょう。
  49. 杉山茂雄

    杉山参考人 御案内のように、平和条約二条の(c)項は日本の放棄のみを決めて——クリール・アイランズそれから南樺太でございますか、日本の放棄のみを決めてその最終帰属先が明示されていないわけで、したがいまして、あとは法律的な解釈の問題になっていたのではないかと思うわけでございますか、ただいま渡辺先生がお挙げになりました三つの説のうち無主物先占論というのは、これは一般の国際法の理論からは出てこない。つまり無主物先占というのは、従来いずれの国も領土権を持ってなかった、いずれの国の領域でもなかったところを、先占によって自国領域にするという場合に言われてきたことでございまして、関係しておりますその地域については、それ以前にいずれの国の領域でもないということで最初に取得をする、こういうことは事情が全く違っておりますので、無主物先占論はとれないし、それから、先方ソビエトもそういう理論をとってないので、この際余り考える必要はないのではないかと思っております。  それから、帰属未定地域であるか。これは私は厳密に言って帰属未定地域と言わざるを得ないのではないかと思われます、こういう事態というものが国際法上他に類例があるかということでございますけれども、余り例はないのでございます。台湾について問題はございますけれども、第二次大戦後の戦後処理で日本についてこういう特殊な状態が発生をしているということでして、帰属未定地域という特殊な地域、しかもその解決方法が指示されてない、規定されてない。ただはっきりしていることは、日本が放棄した以上は日本領土でなくなっている、これははっきりしていると思われます。それで、先ほども松本先生からお話がございましたけれども、しからば日本が将来これに対して返還請求権を持っているかということでございますが、これは二条(c)項がある以上は実定法上の権利として持っているとは言えない。ですから、二条(c)項の効力を打ち消す何らかの別途の法的措置が連合国との間にとられた暁にそういう問題が出てくる、そういうことを連合国と話し合う自由はあるか、これは私はあると言ってもいいと思うのであります。ただ、一たん放棄した地域だから、自国の領土だから返せ、こういうふうな言い方、言い回しは目下のところの条約関係ではできないのじゃないか。  それから第三番目の、ソビエトはサンフランシスコ条約に加わらなかった、連合国との間に条約を結んで連合国に放棄したけれども、ソビエトには放棄してない。それはまさにそのとおりでございますけれども、そのことから、ソビエトとの関係においては依然として日本領土であり、連合国との関係においては日本か放棄した、こういう議論も聞くことがあるんでございますけれども、これは私はいかがかと思います。何となれば、領土の処理というのは物権的な効果を伴うものであって、ある地域をある国に割譲して、ある国との関係では他国に譲り渡したけれども、割譲をしなかった他国との関係においては依然として自国にまだ留保されているという論理、これは成り立たないのではないかと思うからでございます。  それでは、ソビエトが実際上ここを占拠しているということはどうかということでございますけれども条約上明示の根拠がなくて事実上占拠を続けている、特に戦時占領の継続によって直ちに領土権取得をするということは、一般国際法上あり得ないことであると思われますし、かつ、ソビエトがこれまで言っておりました、私の承知する限りでは類似の国際協定により云々と言っておりますけれども、しからばいつの国際協定の何条によって取得したかということは今日まで一回も明示されてないと私は承知いたしておりますので、ソビエト側の千島領有論の国際条約上の根拠はないと考えているわけでございまして、こういう考え日本政府がおとりになってもいいのではないかと私は私見として考えているわけでございます。
  50. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。時間も参りましたので以上をもって終わります。御三人の方、どうもありがとうございました。
  51. 竹内黎一

    竹内委員長 寺前君。
  52. 寺前巖

    ○寺前委員 もう大分お疲れのようですから、私は要点だけを聞きたいと思います。  まず遠藤参考人、三十一日に、北転船漁業危機突破緊急船主総会ですか、おやりになっておりました。四つの緊急対策、五つの基本対策についてそこには出しておられますが、先ほども渡辺朗先生からお話かありましたが、この緊急対策について、私はちょっと新聞で読んでおりましただけですから、詳しく問題点を御説明いただきたいと思うのです。特に米国クォータを増大するという課題とか、五十度以北の東西カムチャツカ漁場を確保するとか、スローガンで出ておりますので、どういう実態になって、こういうふうにやってもらいたいという点を御説明いただいたらありがたい、こういうふうに思います。
  53. 遠藤信二

    遠藤参考人 お答えいたします。  去る数日前に私のところで臨時に船主総会を開きまして、約百二十名の船主諸君が一堂に会しましてお話をした中で、御指摘のように、これからわれわれのとるべき心組みというものを、緊急と基本というように区分をいたしまして、政府に御要望いたしたということでございます。  一つ申し上げますと、米国クォータという問題は、先ほどもちょっとお話を申し上げましたように、パターンといたしましては、北転船百五十四隻は十月から四月までの間はいわゆるカムチャツカ東西、後でもお話し申し上げます五十度以北の東西カムチャツカでスケトウをとっておるということでございます。なお五月以降十月までの間は、アメリカの二百海里の中で凍結魚、いわゆるギンダラでございますとか、カレイだとか、ヒラメだとかいうようなものをとっておるパターンを従来から繰り返しておったわけでございます。ところが、今回の日ソの漁業交渉によりましていわゆる五十度以北のカムチャツカ東西における漁場が認められなかったということでございますから、現在から十二月三十一日までの間は、いわゆる五十度以北の従来行っておりましたカムチャツカ東西に物理的に行くことが不可能になりましたということでございます。これを、今後行われるであろう本協定交渉の際に何とか突破をしていただきたいというのが五十度以北という問題点でございます。  それと、アメリカのクォータというのは、現在アメリカの海域の中に行って漁業をやっております。帰ってまいりますのが、アメリカクォータの消化を大体二月と想定いたしておりますので、七月三十一日には基地に全部帰ってくるということに相なります。八月一日以降はアメリカの方に参れないということになります。それでは漁業が成り立たないということでございますので、日米の漁業交渉が近く行われるであろうと思われますので、交渉を十分にがんばっていただきまして、アメリカのクォータを拡大をしていただきたいというのがアメリカクォータの拡大ということでございます。  なお、付随して申し上げますと、現在漁業アメリカの海域の中でやっておりますが、こういうような日ソの関係になりましたので、国内で、与えられるだけの再調整をして、八月一日以後アメリカの方にも出れるようにしていただきたいということもあわせて要望をいたしておるという状態でございます。
  54. 寺前巖

    ○寺前委員 国内の再調整でアメリカに出れるようにしてもらいたいという話は、大体見通しはどういうことになっておるのでしょうか。
  55. 遠藤信二

    遠藤参考人 お答えをいたしますが、現在、各種漁船が国内配分を受けて、アメリカの海域の中に相当の数の船が、大小の船が漁業をやっているという状態であろうかと思います。でございますので、与えられた枠の中で経営をやっているという状態でございますので、再調整ということを私どもが要求をいたしましても、なかなかむずかしいのではないかという感じはいたします。いたしますが、及ぼされた影響というものが余りにも大きいので、何とかやりくりをつけてわれわれの生きるべき道を与えていただきたいという再調整をいま政府の方に要望しているということでございます。
  56. 寺前巖

    ○寺前委員 時間もありますから、杉山先生にちょっとお聞きしたいのですが、先ほど先生は、新しい海洋分割というのがいまは二百海里になってきたけれども、今度は三百海里、こうどんどんいくのではないか、大変なことになる、私もそう思います。海の資源を沿岸国だけが持っていく、そうすると沿岸を持っていない国は海に対する発言権がなくなっていくのではないか、こういうことだと私は思うのです。ですから、この海洋分割については発展途上国の発言権の問題という要素もあれば、資源の保存という要素もあれば、いろいろな要素が絡んでいると私は思いますが、しかし何といっても一番急速に問題が発展してきたのは、アメリカが一番大きく海岸線を持っておって、それが軍事的にも大きな発言権を持っていくところから、海洋法会議の話をまとめる前に一方的に引いた、これが次々に波及していろいろな影響を与えていく。特に世界の二大漁業国であるソビエトと日本というのは、いま行われている交渉というのは二国間の問題であるけれども、この結果の一番大きな打撃を受けた国がお互いを守り合うと同時に、世界に対してどういう積極的な役割りを果たしていくか、そういうもう少し大きな角度も同時に持たなければならない性格だろうということで先生のお話を先ほど聞いておったわけです。  私は、そういう立場からこの問題を見ていくならば、お互いに漁業実績というものを、海洋法会議内容を見ても、お互いに経済混乱をもたらさないように分かち合うことが大切だということを、あの条項の五十何条でしたかに言っていると思うのです。そういう実績を認めるという立場のやり方から見て、今度の協定というものは一体積極的な配分の仕方になっているのかどうか、ひとつお伺いをしたいと思うのです。  それからもう一つは、二百海里、三百海里というふうになっていくという傾向の問題と同時に、溯河性の魚種とか回遊性の魚などについては河川国が発言権を持っているということも同時にここにずっと出てきていますね。そうすると、発言権をそういうところが持っていくというやり方は、一面でいい面と一面では大変な面と両面持っていると思うのですね。ということから見ると、こういうお魚の問題でも共同して管理していく方向というものをもっと強く打ち出していく必要があるんじゃないか。ですから、先ほどのお話を聞きながら私はむしろこういうふうに感じたのです。  たとえば二百海里という線引きをお互いにして、そこで中間線をとって切ってしまうということじゃなくして、たとえば重なり合う地域は共同管理をしていくんだというようなことを考えていくということが、そういう新しい時代にとって重要な発想の一つにならないのだろうか。あるいはこれまたちょっと次元の違う問題ですが、先ほどから論議をなしているところの領土問題についていろいろ意見を持っている。こういうところについても、本当にそういう積極性を持って領土問題も正しく解決していくんだという方向を含んでいるならば、そういう管理方式をむしろ日本の側が積極的に提起していくということが、新しい海洋時代における臨み方としてはどうなんであろうかということを私は考えるのですが、そこの先生の御意見をお伺いしたいと思うのです。
  57. 杉山茂雄

    杉山参考人 第一点の、今度の協定漁業実績が尊重され、経済的な混乱か起きないようにするという配慮が十分なされたかどうかということでございますけれども、私は経済実態の方は素人でございますけれども、私どもですら承知しているところでは、先ほど私冒頭に申し上げましたように、日本側については漁業の利益が大幅に落ち込み、ソビエト側については失うものがなかったんじゃないのか、そして過去の実績というものがむしろ沿岸国に有利に、実績主義というよりも沿岸国主義が非常に強く出てきてしまっている、私はこの点はそのとおりだと思いますが、ただその点も、先ほど申し上げましたように、近く予定されております次のソ日漁業暫定協定でございますか、と言われているものによって、相互の均等な、公平な利益の確保ということがどの程度できるかという判断をしなければならないと思いますので、この次に控えている交渉が非常に重要である。それと同時に、その二つが恐らく将来の長期協定への基礎になっていくであろうというふうに思われますので、その辺のところを踏まえて交渉に臨まなければならない。しかし、当面今度の協定は、日ソ暫定協定については日本側が大きく落ち込みをせざるを得なかったんではないか、この点はそのとおりだと私は思っております。  それから第二番目の、資源で問題になっているようなところは共同管理方式をとったらどうかということでございますけれども、御承知のとおり、今度の第三次海洋法会議のきっかけになりましたのは、国連総会で地中海のある国の代表が、これは海底の天然資源についてでございますけれども、これは人類共通の財産である、コモン・ヘリテージ・オブ・マンカインドだ、こういうふうに言い立てて、そしてこれを特定国の独占に供すべきではないんだ、こう言い出したのが今度の海洋法会議のきっかけだと聞いておりますけれども、残念ながらこの海洋法会議の一連の流れを見ておりますと、これは海底の資源、マンガンノジュールなんでありますけれども、これはコモン・ヘリテージ・オブ・マンカインドだというふうなことを言い立てて会議を開いておきながら、しからば深海、つまり正確に申しますと国家の管轄を越える公海海底、では国家の管轄を越える海底とはどこか、逆に国家の管轄はどこまで及ぶのかというところから、今度は逆に国家の管轄権を公海に向かって広げるという動きになって出てきている。これは私は原理的には二律背反のことをやっているというふうに思うわけで、資源の囲い込みを沿岸国か地理的近接性のゆえに独占するということ。しかもその実態は何かと言えば、先ほども申し上げましたし、御質問にもございましたけれども、沿岸国が強大に持っている、強大な国であるということになってしまうわけで、一向にこれは問題の解決と申しますか、国際的な資源の公平な配分、利用ということにならないのですね、そういうことになりつつある。これは将来にわたって長期的に見れば何とかしなければならない問題むろん共同管理の場合の管理主体をどうするかということが当然問題になると存じます。たとえば関係国だけで二国間の共同管理をするか、あるいはもう少し高次元の国際機関でやるか、こういったようなことについても実は国連の中で例の深海海底利用、平場利用のときに非常に問題になっているところで、共同管理ということは方向としては確かに合理的だというふうに思われますけれども、それとてもいざ実際やる場合にどのような管理形態をとっていくか、これが次の問題として出てくる。そういう見定めが立ち、かつ、こういう二国間条約なんかの場合でございますと、何といっても相手国がそれに応じなければどうにもならぬということがございますので十分な説得をする、理解を求めるということか必要になってくるというふうに思われます。
  58. 寺前巖

    ○寺前委員 残念ですが時間になりましたので、先ほどのお話でちょっと二、三点だけ杉山先生にお聞きをしたいのですが、連合国側が表明した領土不拡大の原則というのがあります。その立場からいったら、千島列島は放棄するという性格のものではないのではないか、私はそう思うのですが、それが一点。  二番目、千島列島はどこじゃという国会質疑が当時批准をめぐってやられています。西村条約局長は、南千島を含めることをそこで答弁している。国会で批准をするときに論議になって、その解釈で審議をしたものを、後日違う、統一解釈はこうだということを五年後に言って、一方では千島列島の放棄を宣告しておいて、そしてあれは千島に入らぬのだという論というのは、国際的に通用する論なのかどうか、これか第二番目。  第三番目に、歯舞、色丹は国際的に放棄をしている島ではない、とするならば、国際的に無条件に——手続はいろいろあるでしょうけれども、問題なしに返還を求めることができる性格のものではないのか、この三点について端的に御説明をいただきたいと思うのです。  木村先生には失礼なことをしましたけれども、時間が来ましたので終わりたいと思います。
  59. 杉山茂雄

    杉山参考人 最後の方から申し上げますと、歯舞、色丹は連合国との間の平和条約のときには放棄範囲に入っていないということが確認をされて  いるということでございますけれども、全くそのとおりだと思います。ただ問題は、一九五六年の日ソ共同宣言で歯舞、色丹を日本側に引き渡す時期がソ連との間に合意されておりまして、平和条約締結後、こういうことになっていると記憶いたしておりますが、そういう合意がソビエトとの関係にございます。しかも、そこをソビエトが実際上オキュペーションしているということでございますから、平和条約締結後返還されるという日ソ共同宣言第九項を改定すればこれは事情が変わってくると思います。その改定にソビエトが応ずるか応じないかという問題がその次に出てくるように思います。  それから、国会で千島の地理的な範囲についての答弁が行われた、そのことが国際的にどれだけの効力を持つかという問題だったと第二番目の問題を伺いましたけれども、確かに政府のそのときの解釈態度を国内的に明示するということでは、これは国会答弁というのが重要な役割りを持ち、その解釈というものがなされて、それの御理解のもとに国会としては議案の審議をされ、承認もしくは不承認という態度決定をなすったのだろうと思われるわけでございます。しかし、ともかくその条約は国会を通っている。ところで、そのことが直ちに国際的に、もう少し厳密に申しますと、国際法上どのような効果を持つかということだと思いますけれども、これは幾らか違う問題になってくる。つまり国際的な問題だといたしますと、他国に対してその国がどういうふうな条約の解釈態度を示すか、こういう問題になってくると思いますので、先ほど私申しました、日本政府が他国に対して公式に平和条約二条(c)項の解釈と思われる千島列島、クリール・アイランズの地理的な範囲について解釈態度を示しましたのは、先ほども私申し上げました一九五六年七月三十一日ではなかったかというふうに——あるいは不正確かもしれませんが、そのときには国内的に議会でどういうふうな説明をされたかということは余り問題にしてなかったわけなんで、国内的な問題でなしに、国際的にどうかというのは、国際的にどういうふうな振る舞いをしたか、どういう態度表明をしたか、今度はあと全く国内の問題になってくるというふうに考えているわけでございます。  それから、逆になりまして失礼いたしましたが、第一番目の千島列島は、連合国が戦争中たびたび表明した領土不拡大原則というところからいえば、放棄すべき地域として指定さるべきではなかったのではないかという御意見でございますけれども、私は、一面ではそういうふうに考えて、その考えには相当の根拠があると思っております。確かに千島列島は、千島・樺太交換条約によって、全千島を日本領域内に樺太の放棄という代償を払って平和裏に取得した領域であるわけでございますので、そういう地域を戦争の結果日本から奪うということは、カイロ宣言、連合国共同宣言等々から見ますと、必ずしもなじまないという点があるように思われます。ただ問題は、現在の時点で国際法上、条約上の権利義務関係としてどうかということになりますと、日本は講和条約締結をしてしまったわけで、放棄をしてしまった、むろん先ほど渡辺先生の御質問にもございました、帰属未定ということはございましょうけれども、そういう解釈の問題はございましょうけれども、ともかく放棄してしまったという事実が一つございます。ですから、本当は放棄さるべき地域ではなかったのだがということがあれば、対日講和条約第二条(c)項の効力をどうするかということについて、関係国との間の協議に入るということになっていくのではないかというふうに存じます。
  60. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  61. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、委員各位に申し上げます。  木村参考人には、所用のため、ここで退席されるとのことであります。  木村参考人には、御多用中のところ御出席いただき、かつ、貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがたく、委員会を代表して御礼を申し上げます。  御退席されて結構でございます。  伊藤公介君。
  62. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 三人の参考人皆様方からそれぞれ非常に専門的なお話も伺いまして、まず杉山先生にお尋ねをしたいのでありますけれども、実は私は学生時代に講義を受けた方でございまして、よもやこういう形で先生にまた改めて御意見をいただけると思っていなかったわけでございますか、ひとつ忌憚のない先生のお考えをぜひ御披露いただきたいと思うのであります。  今度のこの本協定は、先ほどもお話がございましたとおり魚の問題であるけれども、やはりネックになってきた問題は北方四島をめぐる領土の問題、線引きの問題ということが終始大変大事な問題として、またこの交渉過程でもネックになってきたわけでありますけれども、私どもも北方四島についてはできるだけ早い時期に固有の領土でありますから返還をしてほしい、これからもそういう立場でわれわれは運動も続け、主張をしていきたいと思っているわけでありますけれども、しかしこのままでいたずらに、北方四島は固有の領土だ、あるいはソ連の方はソ連の主張をする、こういう双方の立場だけを主張をしているということだけで一体この問題は片づくのか、これから五十年か百年かわからない、終わりなき議論を展開をしていくということは、特に隣接国の日本ソ連にとっては必ずしも有益ではない、こう考えるわけであります。これは、歯舞、色丹でどうするとか、四島でどうするかという具体的な提案もあろうかと思いますけれども、先生の専門的なお立場から、法律的にもまた政治的にも新しい先生なりの北方領土に関する御提案がありましたら、忌憚のない御意見をまずお伺いしたいと思います。
  63. 杉山茂雄

    杉山参考人 伊藤先生から非常に重要なお尋ねで、私は答えられるかどうかわからないわけなんでございますけれども、確かに大体戦後今日まで三十年を超える間、そして対日講和条約ができてから二十数年の間、あるいは日ソ交渉をやってから二十年、双方の、この問題となった島々に対する領有権の主張が平行線をたどって、決着を見ないままでやってきているということは残念なことでありますし、こういうことが続くということが、双方の国あるいは国民にとって有益でないということも、そのとおりだと存じます。  しかしながら、いま伊藤委員のお話の中で、終わりなき議論とおっしゃられましたけれども、私が調べております限りでも、領土にかかわる争いというものはなかなかそう簡単に片づかないというのが通例でございます。私も多少気の短い方で、いらいらする方でございますから、したがいまして三十年もたった、二十年もたったと言いますと、本音に気が遠くなるくらい長いなというふうにも思いますけれども、外国の領土の争いの歴史、これをケーススタディーをやりまして、シラミつぶしに調べているんですけれども、相当長いんですね。たとえば一つだけ例を挙げますと、地中海の西側の入り口にございますジブラルタルの岩をスペインとイギリスか争っているわけでございますけれども、二百八十年ぐらい争い続けて、今日なお争っている。しかもこれは、一たん条約でスペインがイギリスに取り上げられたところ、そして軍事基地になっている。これをスペインが返せと言って機会あるごとに迫る、あらゆる方法を講ずる。国連にも持ち出したり、いろいろなことをやっているんですね。この二百七十年、八十年というのから比べれば、二十年、三十年は短いんだとは申しませんけれども、しかしそのほかにも五十年、百年というのは、実は領土紛争には幾らでも例がございまして、私なんかも、自分自身でも先ほど気が短いと申しましたけれども、余り気短に性急に事をあせって、そうしてかえって後日に禍根を残すということはいかがかというふうにも思っておりますし、それからこういう紛争を強引な手だてによって処理いたしますと、その処理はできても強引さというのか後日に残る。いまは逆にソビエトの方がかなり強引にやった、そのことが不幸にして日本国民の中でこの問題についてソビエトに対して批判をする声が非常に強くなってしまっている。考えてみますと、ソビエトの領域の面積が二千二百四十万平方キロあるわけで、二千二百四十万平方キロのソビエトが、三十八万平方キロに満たない日本領土の中から五千平方キロの島を、まあ言ってみれば取り上げて押さえている、そして日本側不満がある、こういうことになるわけですね。  こういうことは、仮にも戦後国際政治の重要な一翼を担っている大国のソビエトとして政治的に好ましくない、これはわれわれそう思いますけれども、ソビエト自身がそれを理解をするといいますか、こういうところまで持っていきませんと、合意の上で平和裏に返還が行われるということができない。どうやってそれをわからすかということが、大変大事だと思います。先ほどほかの参考人の方が、少し回り道のようだけれどもいろいろな方法を講じて、彼らも理解し、彼らにも理解させることか大事だという御趣旨の御発言かあったと聞いておりましたが、そういうことも回り道のようではございますけれども、私は重要だと思うんです。私、一番大事なことはそこだと思います。関係国が納得の上で処理できるということでないと、領土問題は必ず後日、他日に尾を引くということは、ほかの例で幾らでもございます。いま終わりなき議論と言いますけれども、余りせっかちにならないで日本としてやるべきことは全部やる、そうして相手国の翻意を促す、こういうことしかないというふうに思われる。  いま伊藤委員から、新提案はないか、妙案はないかということでありましたけれども、速効性のある妙手というものはそうなかなかないのがこの領土問題処理の特徴だというふうに申し上げる以外にないので、余り知恵のないことだと言って伊藤委員からおしかりを受けるかもしれませんけれども、当面はそういうふうに申し上げざるを得ないというふうに思います。  私かこう申しますのは、相手が力ずくで取っているんだから、いま泣く子と地頭には勝てないから言うなりになって認めてしまえ。一見これはいいんですけれども、その言葉を裏返せば、他日、力関係が変わったら力で取り戻そうではないか、こういう考えにつながるのであります。そうすると今度は、その力が逆転したときはまた力を使う。アルサス・ローレンみたいに取ったり取られたりするという不幸が極東で起きることは、これはまずいというふうに思っております。
  64. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 むずかしい問題は承知の上で、御意見をお伺いしたわけでございます。  本協定の中で一番いま議論をされて、私どもも一番心配をしております具体的な徴候について、もう一問御意見を伺いたいと思うのでありますけれども、本協定の第八条で、政府領土と魚というものは明らかに切り離した、領土という意味から言えば百点満点であった、こういうお話を繰り返してきたわけでありますけれども、日ソ双方が第八条では相打ちになる。しかし相打ちになるだけであって、第一条で線引きを認めたということは、これはもう事実として残るわけでございます。一体、この第一条で線引きを認めたこの事実を、第八条では法的に打ち消すという効力があるのかどうなのか、法律的な意味から言っても効力があるものなのかどうなのか、お尋ねを申し上げます。
  65. 杉山茂雄

    杉山参考人 第八条のテキストを拝見いたしますと、「この協定のいかなる規定も、」というふうになっておりまして、「この協定のいかなる規定も、」の除外例として第一条を除くということにはなっておりませんので、当然この第一条も「いかなる規定」という中に含まれるというふうに思われます。ところで第一条はそこに含まれて、ここで問題の「相互の関係における諸問題についても、いずれの政府立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」ということがあることによって、先ほどのお話の線引きとおっしゃいましたけれどもソ連側の国内措置で一定の海域に漁業の専管水域をつくった、このことから、ソビエト側が海域について専管水域が設けられる以上、その沿岸である陸地はソビエトの領土であるというその主張が打ち消せたかと言えば、これは打ち消されていないと思うのです。つまり、ソビエト側もそういう主張を別途領土についてする余地が残っているように思う。ただ今度は、日本側についてどうかと言えば、在来北方領土について日本側が持っていたような主張というものをこの条約があることによって害されるということはない、こういう主張が出てくると思うのであります。これは私はそのとおりだと思うのですね。ただそういうふうに言えるのは、「相互の関係における諸問題」という表現で書かれていることの実態が、これが領土問題を必ず含んでおるということ、それから「いずれの政府」という中に、これは日本政府当然入りますが、いずれの政府立場、見解、これが北方の島々の一定の島々が日本領土であるという見解または立場、これが排除されていない、こういうことがはっきりしていればいいということなんですね。そこに明文で、そういった領土問題が含まれ、かつ、日本の領有権主張がなされるという、そういうふうな言い方がされていない。ですから、その点は日本の側でそういう解釈をしておられるであろうと思うので、その解釈を何らかの方法ではっきりさせて補強をしておくことによって、先ほど申しました、この条約ができることによって幾らかでもソビエト側がその主張を強めるかもしれない、強めないかもしれない、これはわからないのですが、その強めるかもしれない場合に十分備えておいた方がよろしいのではないか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  66. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので、遠藤参考人、大変貴重な時間を最後までおつき合いをいただきましたので、最後にお尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、今度の日ソ交渉を通して、ソ連はもう信用できない、あるいは大国の横暴だ、こういう御心境はもちろん私どもも理解できないわけではありませんし、また、ちまたにもそういう議論があることも私たちはよく承知をしているわけでありますけれども、しかしいずれにしても、私どもは、今後長い時間をかけていろいろな意味ソ連との間には信頼関係一つ一つ積み重ねていかなければならない、しかも地理的にも隣接をしている国でもございます。特に北海道を初めとする漁業に従事をしている方々にとっては、具体的に、しかも今日的に、非常に現実の問題として一つ一つ問題を解決をしていかなければならない、こういう事態が生まれてきているわけでございます。スケトウダラがこのままでは壊滅をしてしまうのだ、これも大変なことでございます。しかしそれでは壊滅をするから大変だという議論だけではなしに、具体的に私ども政治のレベルでどういうことを、いま、即しなければならないのか、遠藤参考人なりの要望あるいは御提案かありましたら、ぜひしていただきたい。  また、私ども日常、毎日食べさせていただいておりますかまぼこだとかあるいはちくわだとか、生活から切り離せない食卓にのっているこうしたものが現実に値上がりをしているのかどうなのか、この値上がり等の現実はどうかということも一言御説明をいただき、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  67. 遠藤信二

    遠藤参考人 当たるかどうかわかりませんけれども、及ぼされた影響というものが非常に大きいというのは先ほど来申し上げているわけでございますが、これをこのままに放置するということは、われわれとしてはなかなか容認ができないという現実でございます。ただ、いわゆる日本ソ連との隣接した国という間柄、これは世相はいずれにしても違いますし、歴史も生い立ちも非常に違うという国ではありましても、やはり海の中でお互いに漁業をやるという漁業者間の信念というものは変わらないであろうというような気がいたしております。でありますから、世相が違ってはおりますけれども、やはり日ソの友好というものを基盤にしながら、十分私どもの意向というものをソ連漁業皆さん方に話せば、何らかの道は通ずるであろうという確信は持っております。ただ、非常に厚い壁というものがありますので、私どももいろいろ漁民相互間ではお話をするという機会は現に持っておりますし、また拡大をして、友好親善というものを基盤にして、失われようとするものについての理解というものを十分求めて、私ども漁民が生きるような道は相手の漁民の方に十分お話し合いをするという用意があるということでございます。ただ、いわゆる政府間交渉というものにぶち当たりますと、私ども政府に要望し、政府間で交渉していただくというルールがございます。でございますから、相願わくんば、いわゆる政府間の皆さん方で十分私どもの意向というものを相手の国を通じましてお話をしていただく、また政治のレベルにおきましても友好親善というものを基盤にしながら、ソ連の方も生きるし日本の方も立ち行くというような相互理解、互譲の精神というものを基盤にして、政治のレベルで十分双方でお話をしていただきなから、私どもの主張が通るようにしていくようになれば、必ず道は開けるというように確信いたしております。  なお、魚の値上がり、新聞その他でいろいろあって国民には大変迷惑をかけておりますが、漁民自身の所得を非常に上げるために魚の値段を上げているということではございませんし、私個人も消費者の一人でございますから、魚の値上がりというものを喜ぶわけではございません。ただ、流通その他の過程の中でいろいろな問題点はあるということは事実でございますけれども、やはり少ないというものを補って国民皆さん方にはがまんをしていただくようにして、魚の値上がり、その他の加工品の値上がりというものも関係者が十分相談をして抑制をしていくということについては、努力しなければいけないのではないかというように感じております。
  68. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 どうもありがとうございました。
  69. 竹内黎一

    竹内委員長 以上で、三名の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本件審査のため大変参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  午後二時十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時三十分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  70. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後からの参考人として、全国漁業協同組合連合会専務理事池尻文二君、全国鮭鱒流網漁業組合連合会専務理事金沢幸雄君、北海道漁業協組合連合会会長兼平純吉君、以上三名の方々に御出席を願っております。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  本日は、本件につきまして、参考人方々の忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。  なお、御意見の御開陳はお一人十五分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  御意見開陳は、池尻参考人、金沢参考人、兼平参考人の順序でお願いいたします。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、池尻参考人にお願いいたします。
  71. 池尻文二

    ○池尻参考人 私は、全漁連の専務理事の池尻でございます。  今次日ソ漁業交渉の結果、日ソ暫定協定の審議が行われておるわけでございますが、この協定は、先生方御案内のとおり、長期の忍耐と緊張の極限において決裂をどうやら避け得られた結果でございまして、これについての評価はいろいろあるわけでございますけれども、逆にまた相手のあることでございますし、果たしてこれ以上の成果が得られるかどうかということにつきましても、何の保証もないわけでございます。私どもはこの厳しい結果を踏まえまして、将来に向かいまして新しい前進をしなければならないという立場から、どうか全会一致で御承認を賜りたい、かように存じておる次第でございます。  それから、引き続きソ日、基本協定という交渉政府も入るわけでございますから、今次の日ソ漁業交渉の成果を踏まえまして、さらに格段の最善の努力を期待をいたす次第でございます。  御案内のとおり、今次の交渉は、基本的な幾つかの問題の討議のために非常に長期間を要して妥結を見たわけでございますが、最後の漁獲量の割り当てというものは、わずか二日間の時間的な制約の中で決められたわけでございまして、このことが私ども漁業者にとりまして非常な厳しい結果となった次第でございます。  鈴木農林大臣も申しておられますとおり、どうやら海洋法の精神にのっとりまして、旧来の漁獲実績というものをあくまでも要求をしてみても、特に今度の日ソ交渉の結果はいわゆる余剰原則、自分でとったもののその残りを割り当てるという巌しい現実に逢着をしたということと、私ども普通の常識から考えまして、ソ連の二百海里内の規制は、いわゆる二百海里の中にまず出漁を許して、その前提で、ここは資源保護のためにあるいは将来自国の漁業のために禁止区域を設けるとか、漁業の制限をするとかいうようないわゆる常識に立って規制が行われるものと判断をいたしておりましたけれども、御案内のとおり、いわゆる釣り堀方式と申しますか、海の中に七つのエリアを指定いたしまして、そこの中でしかも漁船の隻数を決める、あるいは操業期間を決めるというような規制の方式をとられたために、漁業者にとりましては、実際の漁獲の成績を上げる上からもいわゆるはさみ打ちの形と申しますか、二重に困難が強いられたという結果になりましたことは御案内のとおりでございます。  そこで、私はこの交渉を冷静に見まして、果たして北洋漁業というものは今後どういうふうになるものであろうかというような観点に立って考えますときに、残念ながら私は、時間はあるいは年限は五カ年あるいは十カ年かかるかもしれませんけれども、マクロに見れば、北洋漁業はいわゆるゼロに向かって前進を開始していくのではないだろうかという強い危惧を持つわけでございます。もちろん基本協定あるいは来年の漁獲量の交渉に当たりまして、政府といたしまして、先ほど申し上げました今年度の厳しい漁獲割り当てに対しまして、なおこれの拡大を図る御努力というものはやっていただかなければならないという前提でございますけれども、私は、今次の交渉の経過から察し、またいろいろなソ連の態度から察しまして、ゼロに向かって厳しい時代が始まったというふうに受けとめて、そうであれば、わが国も早くこの北洋漁業の将来の厳しさを見詰めまして、北洋漁業だけではなくて、日本全体の漁業の再編成という構想を一刻も早く打ち出しまして、時をかせぎながら本当の将来の日本漁業を築いていかなければならない厳しい時代に入ったと覚悟をいたしております。  また、われわれ業界も、この事態はいずれは必ず直面しなければならない事態であったわけでございまして、これが今次二百海里の日ソの交渉で、端的にその業界の内部の構造の改革に外圧的にメス入れのきっかけとなったというふうに理解をいたしまして、私どもの業界の体質の改善等も急がなければならないと存じておる次第でございます。したがいまして、この間、日ソ漁業交渉の結果によって受けます漁業者の、あるいは乗組員あるいは関連産業を含めまして、こういうことに対する手厚い救済の対策が大前提としてなされなければならないと思っておる次第でございます。  不幸なことに、こういう事態に対しまして政府日本漁業の再建を図る手段といたしましては、御案内のとおり、石油ショックのときにできました漁業再建整備特別措置法があるわけでございますが、この法律の姿勢はあくまでも、漁業者が自主的にあるいはある業種が自主的に再建を図る場合に、国が後押しと申しますか援助をしてやるという姿勢の法律になっておりまするが、仮に減船等が行われる場合に、後に残って漁業する者が共補償するというようなアイデアではこの事態が解決される事態では決してない、そういうなまやさしい事態ではないというところに焦点を合わせまして、早急にこういう事態に対する漁業者の救済対策というものの特別立法ということもまた諸先生方にお願いをしなければならないのではないか、かように考えておるわけでございます。  日ソ交渉につきましては以上のとおりでございますが、私は全漁連の立場でございます。いよいよソ日という交渉が控えておるわけでございますが、この点について一音申し上げておきたいと思います。  先ほど申しました、ソ連もはっきりと余剰原則というものを打ち出してまいっておるわけでございます。したがいまして、日本もこれと同じく余剰原則というものを踏まえた上での体制というものを今後固めていくということを前提にいたしまして、今後のソ日交渉に当たってもらいたいと思う次第でございます。  そのときに、先ほど申し上げました、それではソ日の場合に、裏返し的に日本も釣り堀方式の規制ができるかという論理的な問題がありますわけでございますけれども、私はこの点は日本政府も非常につらいのではないかと思います。それは、私は北洋が将来に向かってゼロに向かっての行進を始めたというふうに理解をいたしますけれども、それにはやはり北洋漁業というものを横にらみにしながらソ連との交渉を行わなければならない立場にございますので、その苦しい状況はよくわかるわけでございます。しかしながら、非常に懸念をいたしますのは、現在までのところ、やはりソ日の場合に、ソ連日本の十二海里領海内の操業というものの要求か潜在的にまだあると聞いております。もちろん、これは日本政府としても断固としてはねつけ、認めることはできないと信じておりますか、この十二海里というところだけに目か行きまして、その外は野放しの操業か許されるかというと、日本漁業内容はしかく簡単ではございません。日本の国内の漁業調整のラインが網の目のごとく、十二海里の外にもいろいろなラインがあるわけでございまして、万一こういったところが野放しの状況になるということになりますれば、勢いそれは国内漁業者の問題としてはね返ってまいる非常に深刻な問題を持っておりますので、この点につきましては非常につらい立場にあるとは言いながら、このわが国の二百海里の海はいわばわが国漁業者にとっての将来にわたる地先の庭でありますので、最初の出発がきわめて大事であろうかと思うわけでございますので、念のためにこの点につきましての格段の政府の御配慮と御努力をお願い申し上げる次第でございます。  それからもう一つは、これは北海道の会長さんが後でお話しになりますので、簡単に申し上げますが、今次の交渉過程と申しますか、従来、昭和三十八年から日ソ・コンブ採取協定という民間協定によりまして、根室半島の漁民が貝殻島の一定水域でコンブの漁をしてきたわけでございます。これが今日の事態で実現が見られておらないというのは、この事柄の性格から見まして非常に悲しい気がいたすわけでございます。もちろん、ソ日の場合に先ほどの十二海里内の操業という大きな問題を内蔵しておりますので、この点につきましては、政府間交渉でこれをやれと私ども申し上げてもそれはなかなか、問題が蒸し返されてくる可能性がございますが、いずれこういう問題の決着をつけた上で、政府並びに諸先生方の努力によりまして、いずれはこれが再復活する条件の整備と申しますか、そういうことにつきまして特段のお力添えを賜りたい、かように考える次第でございます。  最後に、時間がございませんので、私は、当委員会外務委員会でございますので、この機会に、私の漁業者の立場を若干離れた立場でお訴えしたいと思いますのは、いわゆるわが国の、こういう二百海里時代という新しい国際社会に対する対応の姿勢と申しますか、そういう点について簡単に触れたいと思う次第でございます。  たしか東大の坂本教授であったかと思いますが、現在までに人類が悩みとして抱えておる三つの問題がある。一つは核兵器の問題である。つまり、核兵器を人類はこれを持ち、そしてそれを廃棄し、それを使用することもできない、しかしその中で競争をやらなければならないという矛盾を、将来人類はどうして解き得るかどうか、この問題と、それから第二は、東西両体制のそれぞれ持ついろいろな矛盾の調整、つまり資本主義社会におきましては絶えずインフレと不況の共存、貿易不均衡による通貨の不安定、あるいは資源を保有する国と保有せざる国との矛盾、社会主義体制におきましてはややともすれば非能率的な官僚主義の横行、場合によりましては人権無視といわれるような事態の発生、そして外貨の不足、そういうようなことをそれぞれに欠点として持っておるわけでございますが、いつの日にかこの両体制の矛盾というものを人類が解決し得るかどうか。そして第三に、新たに加わった課題として海洋分割があるであろう。この海洋分割はいわゆる海の囲い込みの制度でございまして、まだまだ国際社会に十分定着をしておりません。かつて人類はアフリカ大陸の分割に失敗をいたしました。この第三番目のいわゆる海の囲い込みの制度というものが、長期的に見て人類に果たして幸せをもたらすか不幸をもたらすかということにつきましては、特に超大国がこの実施に当たって十分留意をしなければならないという指摘がありました。  御案内のとおり、二百海里経済水域の主張は第三勢力から出てきた主張でございますが、これを漁業水域として実施したのは不幸にして米ソであったわけでございます。しかもその実施に、力をもってその中にいろんな問題を包含して、たとえば今次の領土の問題もそうでございますが、そういうような海の線引きの中に、二国間の長年解決する努力をしながら解決のできないような問題を持ち込んで、力をもってそれを押し切っていくという姿勢があるならば、緊張はさらに緊張を生んでなかなかある問題の解決にはならないという指摘がありました。  私は、二百海里の水域問題で、日ソ漁業交渉、日米交渉に対する取り組みの中に、やはりわが国政府もまたわが国国民も、そういう二百海里時代というものが新しい緊張を生まないように緩やかに時をかせぎなから定着をしていく、もちろん日本漁業構造が持っておる矛盾もありますか、これはやはり解決するのに五年かかる十年かかるわけでございますから、人類の幸せのために、そういう力をもって一気にある体制をしいていくということにつきまして、漁業交渉を離れた見地から国民世論としてあるいは政府の主張として取り組んでいかなければ、今後いかに漁業外交の推進というようなことを言いましても、私は、そういう人類的なあるいは世界史的な立場というものに立った外交でなければ成功しないのではないかということを漁民の一人としてかねがね痛感をいたしておりましたので、もし参考のためになればと思って蛇足をつけ加えた次第でございます。  以上申し上げまして、あとは御質問に答えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手
  72. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  次に、金沢参考人にお願いいたします。
  73. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 私、ただいま御指名を受けました全国鮭鱒流網漁業組合連合会の専務理事の金沢でございます。  私から申し上げたい点は、サケ・マス漁業界を主体にした意見を申し述べたいと思います。  その前に、まず今回の暫定協定取り決めに当たりまして、政府はもとより、国会挙げてこの促進に当たられましたことについて衷心から感謝を申し上げたいと思います。  サケ・マス漁業界という立場で申し上げます内容として、二点要点を取り上げまして意見開陳させていただきたいと存じますが、まずその一点は、今回調印されましたこの暫定協定さらに将来締結されるであろう長期協定が、願わくは日ソの漁業問題の大きなかけ橋になるようになっていただきたい、こういう点をまず申し上げたいと思います。  少しく過去の問題にさかのぼらせていただきたいと存じますが、戦後、御案内のように昭和二十年にいわゆるマッカーサー・ラインが設定されまして、われわれ北洋サケ・マス業界が北洋で活動いたしておりました漁業活動が一切停止せざるを得なかった時代があったわけでございます。その後七年を経過いたしまして、昭和二十七年にマッカッサー・ラインが幸いにして撤廃されまして、晴れて日本漁業活動が実施されることが可能となった年に、当時、水産庁は北洋サケ・マス漁業の再開の方針を発表した次第でございます。  その基本となります理由は、戦後荒廃した日本の経済の復興を何とか図っていかなければならない。そのために母船で製造されるかん詰めを輸出して外貨の獲得に資していくという点が一つ含まれていたものと存じ上げております。  また一つは、日本国民の食糧確保のために、従前の北洋漁業を何とか再開したいという点もその願望として方針にあらわれていたものと記憶いたしております。昭和二十七年に、さような次第から母船式三母船を中心といたしました北洋サケ・マス船団が北洋の荒波に乗り出ていったのでございますが、その後三年を経た昭和三十一年に、突如として公海漁業制限に関するソ連の閣僚会議決定としてサケ・マス漁業の規制問題が公布されたのでございます。  時あたかも日本とソビエトの間におきましては、戦後閉ざされておりました日ソの間の国交回復交渉がロンドンで開かれていたさなかの出来事でございます。当時そういった大きな政治背景の中で、せっかく北洋に出漁いたしましたサケ・マス船団か、三年を経ずして瓦解する寸前に立ち至ったのでございます。当時、農林大臣の河野先生がモスクワに飛びまして、いろいろな苦労の末でき上がったのが今日まで営々として築かれてきました日ソ漁業条約でございます。  私ども、この日ソ漁業条約の運用の姿の中で、あの冷たい戦争後日本とソビエトか国交回復され、そして人的な交流が行われ、さらに経済的な発展がもたらされ、もちろん漁業界においても相提携しながら北洋漁業の確保ができたのも、この日ソ漁業条約が果たしてきた役割りは非常に大きいものと感じております。日ソの国交回復後のかけ橋となったのがこの日ソ漁業条約であるというふうにわれわれ業界は自負いたしております。  それが今回、二百海里の宣言によりましてこの条約が廃棄通告され、明年の四月三十日をもって全く無条約の状態になるということは、われわれとしては非常に残念きわまりないものと考えております。  幸いそういう意味で、冒頭申し上げましたように、二百海里宣言に基づく暫定協定、さらに今後締結されるであろう長期協定が、願わくは日ソ漁業問題の大きなかけ橋として、これまで築いてきました北洋サケ・マス漁業の安定化か図られるように、ぜひ諸先生の御尽力と御審議を賜りたい、こういうのが私申し上げたい第一点でございます。  次に第二点は、今回公海枠として別途に決定されました六万二千トンの漁獲枠に応じまして、われわれサケ・マス業界がこれまで稼働してまいりました十母船、ほか漁船数にいたしまして沿岸も含めまして約二千二百隻に上る漁船のうち五百五十一隻と四母船を今年漁期において休漁し、さらに同じ隻数をこの十二月末までに減船するという命題をわれわれ業界はいま抱えております。  御案内のように、先ほどお話もございましたように、石油ショック以来、漁業界の持つ経済性は非常に脆弱化されております。また、乗組員方々も非常に職場を失うことに対する不安がございます。そういった中で、われわれがこの五百五十一隻の隻数を減らす際に、従来とらえておりましたいわば減船に際しての共補償、残るものがそれぞれ補償し合うという体制は経済的にとてもとれないという実態になっております。  さらに、われわれの業界の立場で申し上げますならば、この減船措置のよって来る本来の理由は、われわれ業界の手の届かない国際的な論議の中でつくられてきておるものである、いわば国家的責任の中でこの減船処理というものがなされなければならないであろうという立場をわれわれはとっております。  そういう二面を抱えております点を何とぞおくみ取りいただきまして、この協定が国会で承認され、日ソの間に一つの路線ができた後に起こってまいります休漁もしくは減船処理について、温かい政府の措置を望みたいと思いますし、また、これらに対する国会の御支援もいただきたいというのが私の二番目の論点でございます。  さらに、二番目の論点に加えて申し上げますと、二百海里の中の問題については、今回サケ・マス漁獲枠はゼロになっておりますが、今後の長期協定等に伴いまして、政府の努力によって二百海里の内においても操業ができるようにぜひ御尽力をいただきたいという点か一つございます。  さらに、サケ・マスは、御案内のように、国連におけるいわばアナドロマス理論をそのまま議論いたしますと、たとえばソ連の河川で生まれたサケは二百海里の外においてもソ連の管轄か及ぶというたてまえになっております。先ほど申し上げましたように、日ソ漁業条約、いわば公海条約か廃棄されておりますので、二百海里の外については全く無条約の状態に陥っております。暫定協定の枠組みの外で、これからのいわば公海におけるサケ・マス漁業のあり方が国際的に論議されなければならぬ問題としてわれわれの前面にあるわけでございます。そういった国際的に非常に不安定なさなかに、現実の問題としては減船の措置を要求されております。そういう国際的にまた国内的にいろいろな問題を包蔵した中で、この協定の運用が将来なされていかなければならない点をわれわれサケ・マス業界として非常に心配いたしておるわけでございます。  以上の二点が本日この貴重な委員会に私が参考人として申し上げたい要点でございますので、何とぞ御審議の過程でこの意見を御参酌くださいまして、今後の日ソ漁業問題の安定と発展に御尽力賜りますことをお願い申し上げまして、私の発言を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  74. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  次に、兼平参考人にお願いいたします。
  75. 兼平純吉

    ○兼平参考人 私は、北海道漁連会長の兼平でありますが、北海道内の各漁業団体で構成しております北海道海洋法対策委員会の会長をも務めておりますので、本日は北海道漁業者を代表して御意見を申し上げたいと存じます。  まず最初に、私は、御意見を申し上げる前に、諸先生方に御審議をいただいております今回の日ソ漁業暫定協定の一日も早い批准を特にお願い申し上げたいと存じます。  先生方も御案内のとおり、北海道はわが国水産食糧の供給基地として、全国総漁獲量の四分の一、すなわち二百五十万トンの水揚げを上げておるのでありますが、その約四割の百三万トンをソ連水域に依存しているのであります。北洋海域は日本漁民が開拓した漁場でありますことは先生方も御承知のとおりでありますが、これに先駆的役割りを果たしてきたのが北海道漁業者でもあります。この北海道漁業者が、ことしはすでに二カ月の余にわたって北洋海域から締め出され、不安と焦燥に駆られながら、一日も早い交渉の妥結を願って、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んできたのであります。  幸いにして、このたび、鈴木農林大臣の再三にわたる訪ソと強力な国内世論を背景とする身を挺しての御努力によって、曲がりなりにも暫定協定が妥結を見、ソ連水域外を漁場とするサケ・マス漁業だけはどうやら出漁するまでこぎつけたのでありますが、ソ連の水域を漁場とするその他の漁業は依然として出漁できない状態にあることを御賢察いただきまして、一日も早く出漁させていただくよう、諸先生方の特段の御高配をお願い申し上げる次第でございます。  すでに新聞紙上で報道されておりますとおり、道内の水産関連企業の中には、倒産に追い込まれ、一家離散の悲劇すら伝えられていることも、この際申し上げておきたいと存じます。  さて、本日の主要議題である日ソ漁業暫定協定について申し述べたいと存じます。  すでに諸先生方も御高承のとおり、協定内容はきわめて厳しいものであり、ニシン漁業のごとく、すでにその死命をも制せられてしまったものさえあります。私ども漁業者にとって最も重要な漁獲割り当ての魚種、漁獲量、操業区域、操業期間及び操業隻数などの条件は、協定書の本文に明記されておりませんが、両国の交換書簡で明らかにされておりますとおり、操業区域としてはきわめて限られた七つの水域、漁獲量は六月から十二月までの分として四十五万五千トン、操業隻数は六千三百三十五隻という過酷なものであります。  この内容では、ニシン及び貝殻島コンブは全滅、東西カムチャツカ沖を漁場としてきた北転船も、百八十二隻のうち十五隻が操業できるだけで、他の百六十七隻は行き場がなく、さらにエビかご漁業も、漁獲量と隻数は認められても、指定された操業水域では事実上操業不能であることは目に見えております。この結果、従来ソ連水域で操業していた漁船七千三百隻のうち一千隻余が漁場を失うことになり、道内では、水産業界はもちろん、経済界全体が偶然として色を失っているというのが実態であります。  私ども漁業者は、認識が甘いと御指摘を受けるかもわかりませんが、今回の暫定協定内容のごとき、釣り堀で魚釣りをするような水域指定までが行われるとは夢想だにもしていなかったのであります。すでに締結されている日米、日加の協定においてすら、このような例は見られないのであります。したがって私どもは、お義理にもこの協定内容に満足しているとは言えません。しかし、八十余日にわたり、二転、三転しながら難航に難航を重ねた今次交渉の経過を見、さらには、すでに世界の大勢となった二百海里の根底にある余剰資源の分与原則が動かしがたいものであることを考えるとき、きわめて不満ではありますが、われわれ漁業者もこれを現実のものとして受けとめ、その上に立って日本漁業の将来を考え、基盤を確立していかなければならないと決意を新たにしている次第でございます。  蛇足になりますが、私は、国土条件が必ずしも恵まれていないわが国において、民族繁栄の基盤ともいうべき食糧問題における水産業の役割りは、今後ますます重要であり、エネルギーの問題とともに、いまや国民的課題として取り組むべき重要課題であると考えております。  昨年十二月十日にソ連が二百海里を布告した際、私どもがいち早くソ連に対する漁業特使の派遣と、二百海里の実施を国会並びに政府関係筋にお願いしたのも、実は、漠然としたものではありましたが、ある程度今回直面しているこのような事態を予測したからにほかなりません。  私は、過ぎ去った過去のことを申し上げるつもりは毛頭ありませんが、今回の交渉の経過を振り返ってみますと、ソ連に対する認識が甘く、そのゆえにまた対応がおくれたことは否めないのではないかと思っております。交渉領土問題で暗礁に乗り上げ、急遽わが国でも二百海里法を制定して対応措置をとって、初めて交渉打開の道が開けたなどはそのよい例であります。  この後、またすぐソ日協定交渉が始まります。この交渉では、再び前車の轍を踏まぬよう十分な事前準備をしてかかっていただきたいと思うのでございます。  特にこの際、諸先生方にお願い申し上げたいことは、今回の日ソ協定から外された貝殻島コンブの採取の問題であります。例年ですと、六月一日から一斉に三百三十そうの漁船が貝殻島でコンブをとるのですが、ことしは一そうも出漁できず、零細な漁家が当て込んでいた約七億円の収入がふいになってしまうのであります。特定の地域に集中した問題であるだけに、その影響は大きいので、特にソ日協定交渉の際に御配慮をお願い申し上げたいと存じます。  なお、わが方からコンブ問題を持ち出した場合に、当然これと引きかえに、ソ連側からイワシを対象としてわが国領海内での操業を主張してくることは必至と考えられますが、先生方も十分御承知のごとく、わが国の領海十二海里は、外国船による漁具被害から沿岸漁業を守るために制定していただいたものであり、また国家主権にもかかわるものでありますので、絶対認めないよう、これも特にこの機会にお願いをしておきたいと存じます。  また、このことを申し上げることが適当でないかもしれませんが、近く行われるソ日協定及びその後にくる長期協定でも再び問題となることが懸念される領土問題につきましては、今回の日ソ協定では、一応魚と領土の切り離しに成功したというものの、しょせん密接不可分の関係にあることは否めず、事あるごとに漁業問題にその影を落としてくることが懸念されるので、漁業交渉とは別個に、領土問題に関する高度な政治折衝を開始すべきではないかと考える次第であります。  さらに、ソ日協定に関して付言するならば、先ほども申し上げましたとおり、各国との漁業協定はいずれも余剰原則が根底をなしており、わが国二百海里内水域にあっても当然このことが基本になるべきものと考えます。したがって、この交渉に当たっては、当然外国船の操業を認め得る水域、あるいは許容すべき漁獲量など、前提となる諸資料が準備されなければならないし、漁場の利用実態等も十分踏まえて、少なくとも国内漁業に悪影響をもたらさないよう配慮されることをお願い申し上げるのでございます。  最後に私は、今回の日ソ漁業協定の妥結により、休漁並びに減船を余儀なくされました一千隻余の漁船と、職を失うことになる多くの漁船乗組員のことを考えると、まことに胸が痛くなるのでございますが、少なくともこのことは、漁業者がみずから招いた結果ではないだけに、これに対する補償、救済は、国の責任において完全に措置していただきたいと特にお願いを申し上げる次第でございます。  また、新海洋秩序時代を迎えて、これからの日本漁業のあり方を考えますと、従来のような体質を改め、抜本的に漁業を再編成することが肝要であると思っておるのであります。すなわち、今後ますます厳しさを増す国際情勢の中で、漁業国民食糧供給の重責を果たしていくためには、漁業生産の主体をわが国水域内で確立する考え方に立つべきであり、沿岸漁業と残された公海を対象とした漁業により、必要な生産量を確保する体制とすべきであると思うのであります。  そのためには、まず現行の漁業諸制度を抜本的に見直し、思い切った制度改革を行う必要があります。この際、新たに漁業基本法を制定し、既存漁業関係諸法を改廃整備されるとともに、重厚な国の財政投資により漁業の再構築を断行されることをお願いして、私の陳述を終わりたいと存じます。  よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。(拍手
  76. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見開陳は終わりました。     —————————————
  77. 竹内黎一

    竹内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大坪健一郎君。
  78. 大坪健一郎

    ○大坪委員 参考人皆様方には、大変お忙しいところをお出向きいただきましてありがとうございました。  時間が非常に限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと存じます。  いまお三方がお述べになりましたように、新しい海洋法の秩序が生まれつつある。私は、海洋法の秩序が生まれつつあるときに、むしろ超大国が積極的に海洋法を先取りして自己の権益を拡大したということに対しては、はなはだ不満な思いを持っておる者の一人でございますけれども、しかし国際政治秩序というものはそういうものであるとするならば、これはまたやむを得ない、われわれも何とか対応策を考えてこれに対抗していかなければならないのではないかと考えております。  特に、二百海里時代と言われ、今度の場合は、特にソ連が強く主張したせいでしょうか、余剰分配の原則ということが盛んに言われてきたようでございますけれども、漁場を開拓して、そこの海の性質を一番よく知っておるのは、開拓に当たった漁民方々であるし、歴史的に蓄積されたそこの知識と技術か、その漁場を漁場たらしめておると思うわけでございます。そうなれば、当然既得権との調整というものが非常に重要なことになる。ところが、今回ソ連は、いわゆる釣り堀方式と申しますか、ベーリング海などは小さな漁区だけを指定をしてくる、あるいはそこで操業できる船の数も制限してくる、こういうようなことでございます。  最初に池尻さんにお伺いをいたしたいのでございますが、いままでは、ソ連ないしアメリカの沿岸から二百海里の水域で日本漁業者か魚をとっておられましたのが、日本の総漁獲量の約四割ぐらい、四割以上だと言われております。これがこの際ある意味では一方的に奪われようとしておるということでございますけれども、わが国の、世界をいわば開拓して回った漁業者のお立場として、今後こういうむずかしい時代にどういう姿勢で、お考えでお臨みになろうとするのか、特に日本列島周辺の漁場の開発等についてどういう可能性をお考えになり、どういう開発手段をお考えになっておられるのか、また政府にこれに対してどういう御希望をお持ちなのか。  それから多少技術的な問題にかかわりますけれどもソ連が今度余剰分配の原則を盛んに言ってまいりまして、かつその背景の説明として、ヨーロッパの黒海でありますとかバルチック海でありますとかあるいは北海等で、ECを中心にして非常にきつい二百海里の制限を受けて漁獲量が減っておるから、日本よりも失うものは多いんだというようなことを言っておりますけれども、一体そこの海でのソ連とヨーロッパ諸国との交渉の中で、今度ソ連がやりましたような釣り堀方式とかあるいは船数の制限とかいうものが具体的にもうすでに出ておるのでございましょうか。この辺は私どもよく事情がわかりませんので、おわかりならばお教えいただきたいと存ずるわけでございます。  それからもう一つ問題点は、東シナ海で中国や韓国が二百海里をどう考えてくるのかという問題がございますし、南方ではオーストラリアとかニュージーランドなども二百海里を考えておるとかおらないとかいう問題がございます。こういう問題は将来の日本漁業に非常に大きな影響を与える問題でございまして、そういう場合の対応策をどういうふうにお考えになっておられるのか。  それから、約一千万トンほど日本は魚をとっておると申しますけれども、そのうち二百万トンぐらいが飼料や肥料の原料になっておって、国民の消費の構造が変わればこの辺の節約が可能ではないかというふうに言われております。これは直接の問題ではないとは思いますけれども全国漁業協同組合の責任者でおられますから、その辺のことも池尻さんにひとつお尋ねを申し上げたいと思います。  時間がございませんので、大変恐縮ですけれどもまとめて御質問いたしましたから、よろしく……。
  79. 池尻文二

    ○池尻参考人 お答え申し上げたいと思います。  まず第一のわが国の二百海里の開発体制と申しますか、開発の対策というものをどういうふうに考えているかということでございます。先ほど北洋の危機、遠洋の危機を申し上げましたけれども、残念ながら、わが国のいわゆる沿岸、沖合いの開発の具体的な施策が始まりましたのか昨年からでございます。沿岸漁場整備開発法に基づく七カ年二千億の構想でございます。あっという間に二百海里時代に突入をいたしまして、先ほど申し上げましたような結果になってしまったわけでございます。したがいまして、私どもは当初、外国の二百海里水域で漁獲される量を三百七十万トンから四百万トン、つまり四割ぐらいのものが外国の二百海里水域である、これが急激になくなるということは考えられないという想定に立っておりましたし、また現在もそうあってはならないと思っておるわけでございます。  したがいまして、今次日ソ交渉におきましても、非常に厳しい結果ではございますけれども、ゼロになっておるわけではございません。したがいまして、私どもはこの五年ないし十年の間に、私どもが食糧とする量が仮に一千万トンであるとするならばやはりわが国の国土周辺の漁場の開発によりまして、少なくとも四百万トンの半分あるいは三分の二、そういったものをやはり魚族資源として回復させる、確保するという青写真を基本的に持たなければならないと思います。したがいまして、その点から、先ほど申し上げました沿岸漁場の再開発計画が、これは七カ年二千億でございまして、何と申しますか、本当の地先の開発を中心にした計画でございます。ので、少なくともわが国国土面積の八割に相当する大陸だなの漁場を、今後沿岸漁場開発整備によって開発をしていくという、新しい時点に立っての見直し計画を持つ必要がある、かように考えておる次第でございます。  それから第二番目の、ソ連とEC間における具体的な漁獲規制の内容が、今度のソ連の規制方式に比べてこういうことがあったのかどうかという御指摘でございますが、ECとソ連との漁業交渉はまだ決着をしたと聞いておりませんし、その具体的な規制がどういうふうになるか、この問題につきましては私もまだ存じない次第でございます。しかしながら、少なくとも釣り堀方式はいままでの漁業規制には余り例がなかったというふうに私は承知をいたしております。  それから、中国、韓国あるいはニュージーランドを含めての二百海里というものの展望の問題でございますが、私は、中国は別といたしまして、特に韓国の二百海里問題、これは私ども漁業者にとっては非常に神経を払っておるところでございます。そこで、先ほど冒頭陳述のときにも申し上げましたとおりに、仮にある国が、この漁業水域の二百海里というものの背景にいろいろなのめない問題、あるいはこちら側にとって非常につらい問題を切り札に使ってくるようなことを防止するために、単に漁業だけの問題ではなくて、次元の広い、高い見地からの外交交渉というものが今後連続的に必要になってくるのではないか、かように承知をいたしておるわけでございます。特にニュージーランド等のごときは、最近御案内のとおりソ連の漁船が、底びきですか、あの近海に行った、韓国船の一部も行ったということに触発されまして、ニュージーランドも近く二百海里水域に踏み切るというふうな情報がございます。そこで、ニュージーランド一つとってみましても、日本漁業にとりまして、いわゆる牛肉の問題というようなもの等を絡めてまいるわけでございまして、そういう背景がこの二百海里問題というものにございますので、その点を強調したつもりでございます。  それから魚の完全利用の問題につきましては、御案内のとおりでございまして、私は、一千万トンの漁獲量を上げました日本国民がこれを完全に利用しているか、食生活の上で本当に正しい利用をしておるかということにつきましては、非常な反省をしなければなりませんし、また、日本国民の今後の魚の需要、そういったものの質を変えていくというようなことともにらみ合わせ、また加工処理、新製品の開発というようなもの等も総合的に並行いたしまして需給の問題というものを解決していく必要がある、かように考えておる次第でございます。
  80. 大坪健一郎

    ○大坪委員 それでは次にサケ・マスの問題でございますが、金沢さんにお伺いをいたしたいと存じます。  サケ・マスは、ことのほか厳しいソ連の態度でございまして、ソ連漁業専管水域内のサケ・マスはソ連だけがとるというような考えのようでございますが、一体、それ以外の公海で、今度はまあ六万二千トンほどの漁獲量をソ連漁業協定上認めたということでございますけれども北洋漁場以外にサケ・マスの有効な漁場を見出すことができるのかどうかという点をひとつお伺いをいたしたいわけでございます。  それから、私どもが非常に疑問に思いますのは、ソ連の河川で生まれたサケ・マスは、二百海里の中では当然のこと、かつ公海の上でもソ連が優先的にこれをとる権利があるというような話をしているようでございますけれども北海道の河川に源を持つサケ・マスと、ソ連の河川で生まれたサケ・マスとのそのけじめというのは一体どこでつけるのか。日本の場合は、日本の河川で生まれたサケ・マスがソ連の二百海里の中を通って溯河してくるのではないかと思うのですけれども、この辺については理屈の問題ではどうもならない問題ですが、将来の議論の根拠としてどう考えたらいいのかをお聞かせをいただきたいと存じます。  それから三番目には、非常に多くの減船が余儀なくされるというような非常に苦しいお立場で、私ども大変申しわけないようなきつい感情でございますけれども、減船に対する政府の補償でございますとか離職者対策等について、御注文なりお考えがあればこの際ぜひお聞かせをいただきたい。
  81. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 ただいまの先生の御質問にお答えいたしたいと思います。  まず第一点の、北洋漁場以外のある水域においてサケ・マス漁業の操業が成り立つ海域がないであろうかどうかという御指摘であったと思いますが、残念ながら、北洋水域、これまでの漁場以外にわれわれが操業を期待し得る漁場はまずないというふうに判断いたしております。ただ一点、かつて業界がこのサケ・マスについて南米のチリに調査団を派遣いたしまして、南米のチリに北海道のサケ・マスの卵を移殖してはどうかという調査を業界がみずから行ったことがございます。その可能性につきましては調査の結果かなり有望視されまして、その後政府の力でチリ政府協定を結びまして、かなりな量をチリ国に持参いたしまして、サケ・マスの増殖をこれまで実験いたしております。ただし、そのことが即商業的漁獲に結びつくとはわれわれ考えておりません。ただ、日本のサケ・マス業界としてそういう姿勢で各国との取り組みをしておるということをこの際申し添えまして、御理解いただいておきたい、こう思います。  次に二番目の問題として、北海道あるいは本州から産卵するサケ・マスか、ソ連の二百海里内においても回遊しているであろうということについての考えはどう持っておるかという御質問のように受け取りましたが、私どももまさにその点が主張いたしたい論点の一つでございます。御案内のように、サケ・マスについては先ほども申し上げましたように、産卵する河川を所有している国が、二百海里内であれ公海であれ、その管理権はその母川所有国に属するという一つの論理が今日成立しておりまして、またそれがソ連においてもアメリカにおいても今回の二百海里の漁業専管水域法の中で取り入れられております。したがいまして、たとえば北海道のサケ・マスにつきましても、ソ連の二百海里であるあの千島列島沿いに南下いたしてきております。したがいまして、本来でありますれば、われわれとしても二百海里のソ連水域内においても発言権があるというふうにわれわれは理解しておりますし、また二百海里の外におきましても、当然、ソ連から生まれて出てくるサケ・マスと、それから日本の河川から生まれ出るサケ・マスと、それからアラスカから生まれてくるアメリカ系のサケ・マスと、混淆する水域が、まさに今日これまで日ソ漁業条約で運用されてきた水域の中で混淆されている内容でございます。したがいまして、将来は日本の主権も及ぶ水域でございますので、この点については六万二千トンという非常に少ない漁獲枠を決定されておりますが、日本政府としてぜひ国際の場で、そういうみずからの持つ主権の発言をしていただきまして、今後ともサケ・マス漁業の漁獲枠の決定に御尽力をいただきたいというのがわれわれの考え一つでございます。  さらに、三番目に御指摘ございました減船処理に伴う国の補償措置につきましては、われわれのサケ・マス業界を構成しております中小業界六団体の名において先般政府に要請いたしておりますので、せっかくの御質問でございましたので、その内容を若干説明させていただきたいと存じます。  まずその一点は、今回われわれが五百五十一隻の船を出漁以前に差しとめまして休漁させたわけでございます。その休漁に伴う補償金といたしまして二百五十八億二千万ほど政府に要請いたしております。その個々の内容は違いますか、各漁船か通常一漁期間に水揚げされるであろうという金額の平均値をはじきまして、五百五十一隻に対する二百五十八億二千万のお願いをいたしております。  それから二番目は、今回のこの暫定協定の調印が遅延いたしまして、各業種によってそれぞれ日数は違いますが、最高二十五日間の漁期のおくれを来しております。さらに二百海里内におきましては、御案内のように漁獲枠がゼロでございましたので、その二百海里内における水揚げ期待値を含めまして、千七百七十七隻が現在出漁いたしておりますが、これらの漁期の遅延並びに二百海里内水揚げ期待値の喪失というものを合わせまして約五百五十億の政府の補償を要請いたしております。  それから三番目には、この十二月末までに五百五十一隻を減船に切りかえなければならない使命をわれわれがいま担っております。先ほど申し上げました休漁船か、即その個人が減船になるというたてまえではございませんが、別な人がまた減船にかわっていくということも、そういう内容を含んだものでございますが、いずれにしましても、五百五十一隻を減船しなければならない、その減船に要する補償額としまして四百八十九億五千万を要請いたしております。これの積算の根拠は、実はこの船、漁船の漁業権の五十一年度、昨年度の売買の実勢価格を基準にいたしております。したがいまして、母船式に出漁しております独航船とか、日本の沿津を基地にしております独航船とか、あるいは沿岸の小型漁船すべてそれぞれ評価額は異なりますが、それらの昨年の実績を踏まえて、ただいま申し上げました金額を積算し、政府に補償をぜひお願いしたいという要請をいたしております。  さらに最後に、この減船に伴いまして漁船並びに漁網、漁具等が遊休資産として発生いたしてまいりますので、これは今日裏作、他に転換する漁業は全く皆無の状態でございます。そういった点を踏まえまして、ぜひ国は、特殊法人による事業団等を設置していただきまして、その事業団の事業内容の中で、ぜひこの遊休資産に対する買い上げ補償をしていただきたい、こういうことについて要請いたしておりますが、この分については、特別に金額をはじいておりません。また、今後の立法措置にもかかわる問題でありましょうと思いますので、その要望の内容だけを政府に提出いたしております。  以上がただいま御質問の三点でございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。
  82. 大坪健一郎

    ○大坪委員 時間がなくなりましたので、兼平さんには御質問する余裕かなくなりました。ほかの同僚から御質問があろうと思いますが、ただ一つだけ。北海道漁民方々は大変苦しいお立場におられるわけでございますが、漁連として、新しい漁場開拓のために、たとえばブラジルですとかチリのような国に、日本の大変すぐれた漁獲の技術援助をしながら、新漁場に入らしてもらうという発想でのお考えというものはないのでしょうか、最後の恐縮な御質問ですけれども
  83. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいま大坪先生からの北海道漁連に対する、これからの他国間との入り会い協定についての基本的な考え方に対するお尋ねでございますが、この将来の二国間協定というものは、当然政府間交渉でやっていただくものは政府間交渉でやっていただかなければならないと思いますけれども、われわれ業界としても、でき得るだけ民間サイドで、二国間協定を急がなければならないものは急ぐように相努めてまいりたい。その間、当然技術提携、それから場合によっては別な意味での漁業援助というふうなかっこうでの連携というものを実はいまそれぞれ考え中でございます。二、三海外からそういう要請が参っておる場所もございます。しかしながら、われわれ考えなければならないことは、開発途上国との提携は、ともすると一方的にどうもわが国に犠牲を強いられて、最終的にさっぱり実りのない提携に終わるような可能性なしとしないわけでありますので、この辺のところを十二分に踏まえながら、双方が相両立するような提携形態を見出して、その中で画国間の相互提携を進めてまいりたい、かように実は慎重を期して判断をしておりますことをこの機会に申し添えて意見といたしたいと思います。よろしくお願い申し上げます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕
  84. 大坪健一郎

    ○大坪委員 どうもありがとうございました。
  85. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 次に、井上一成君。
  86. 井上一成

    ○井上(一)委員 お三人の参考人の方には御出席をいただいて感謝申し上げます。  まず池尻さんにお伺いをいたしたいと思うのです。  先ほどのお言葉の中で、今回の日ソ交渉は常識的な方式ではないという、いわば非常に変則的だけれども、あえてその苦い酒を飲まざるを得ない実情というものを若干吐露されたわけであります。とりわけ北洋漁業の将来については、まさにゼロに向かって前進を開始したというお言葉があったわけであります。それに対しての日本全体の漁業の再編成ということは当然必要になってくるわけであります。そこで、業界としてとりわけ体質改善を指摘されておったわけでありますが、どのように体質改善をされようとなさっていらっしゃるのか、そのお考えを聞かしていただきたいというふうに思うのです。  二点目には、かつて漁業再建整備特別措置法、いわゆる自主的再建に対する国の協力という形での法律がつくられた。しかし、今回のこのような状態の中で生活に不安を抱く漁民の救済補償措置というものは非常に先を急かなければいけないし、大変重要な取り組みの一つであるという御判断だと承るわけです。まさしくそのとおりで、私も昨日、社会党を代表した本会議の質問の中で、補償救済措置を特別に立法措置を講ずべきだということを強く政府に迫ったわけであります。先ほど特別立法の必要性に言及されたわけでありますけれども、もし若干基本的な御見解を承ることができれば非常に幸いだと思うのであります。  三点目には、日本の二百海里水域内でのソ連操業水域の設定について若干疑問があるのだと述べられたように承ったのでございますが、もう少し詳しくお聞きをいたしたい、かように思います。
  87. 池尻文二

    ○池尻参考人 お答えを申し上げます。  再編成の具体的な青写真があるかということでございますが、まさに急角度にこういうような状況になりましたので、明確なものがあるわけはございません。ただ方向といたしまして、私こう考えます。特に限られた沿岸漁場開発整備とか、今後の日本の二百海里の開発を進めていくという前提でございますが、これもあしたから魚がふえるわけじゃございません。そこで、一時は限られた資源というものをお互いが有効に利用し合うという組み合わせというものは、やはり業界全体か考えなければならないのではないか、こういうふうに考えます。そうしますと、その過程におきまして、たとえば非常に巨大なる操業力を持つようなものは、これはもう遠慮してもらうとかいうようなこと等も含めて、私は再編成の方向が急がれなければならないのではないかと思います。  たとえば午前中北転の例があったと思いますけれども、北転船というのは、かつては沿岸の過剰を解決するために御苦労にも沖に出した船でございます。したがいまして、それが直ちにUターンをして日本の沿岸近海で操業するということは、沿岸の漁業者あるいは沖合いの漁業者がなかなかこれを容認するものではありません。  そうすれば、そういう漁業に対してどういう対策を講じていくかということになりますれば、たとえば現在政府漁業開発センターというセンターを持っているわけでございますが、要するにそこの予算をふやしまして、あの北転の優秀船を、たとえば南半球の調査、新漁場の開拓に使っていく、そしてそこで新しい漁場が再発見されるならばそこに転換をしていくとか、あるいはまた、先ほど沿岸の日本の二百海里の中の開発の問題がありましたけれども、先立つものは調査でございます。そうすれば、そういう漁船を使って日本の二百海里の中の資源の調査を受け合ってもらうとか、いろいろな考え方があるのではないだろうかということで、時間をかしながら将来の再編の方向というものを決めていかなければならないのではないか、かように考えておるわけでございます。  それから再建整備の問題でございますが、いま申し上げましたこととも関連をいたしまして、やはり海で働いております乗組員というのは、できれば私は海で働いてもらいたい、かように考えておるわけでございます。したがいまして、たとえば海洋の開発の調査船だとか、あるいは海上保安庁の現有勢力が手が足りないとなりますれば、それに海上保安庁の取締官も乗った監視船になるとか、あるいは日本の二百海里内の調査船に使うとか、そういうことで海における働きの場というものをひとつ与えてやるべきではないかということを考えておるわけでございまして、それにいろいろな財政措置が伴うということになりますれば、私は、特別立法の措置等も非常に時宜に適しておるものではないかということでございます。  それから、ソ連漁船の操業の問題でございますが、私が強調したいのは、ソ日の交渉によって、日本ソ連方式の釣り堀方式はこれはとれないと思います。政府もあすからの北洋漁業のことを考えますれば、しっぺ返し的に魚のおらないところに線を引いて、ここでやれというようなことはすべきではないというふうに私も考えますが、一番気をつけてもらわなければなりませんのは、場合によりましては、漁獲量割り当て次第では、従来のソ連漁船の操業パターンが変わってくるのではないかというふうに考えております。従来までは北海道沖あるいは三陸、千葉、房州沖というところまででございましたけれども、場合によりましては、東シナ海へもあるいは日本海へもということにならぬとも限りません。そのときに、十二海里、十二海里というところだけに着目しておりますと、日本の現在の漁業の調整というものにはいろいろな複雑なラインがあるわけでございまして、そういったことを資源保護上、十分に配慮していただきたいということの趣旨を申し上げた次第でございます。
  88. 井上一成

    ○井上(一)委員 次に、兼平さんに少しお尋ねをしたいと思うのです。私の方で、御説明で御発言になかった点も参考のために若干聞かしていただきたい、こういうふうに考えておりますので、あらかじめお許しをいただきたいと思うのです。  兼平さんも池尻さんと同じように、この暫定協定は、予想もしていなかった本当に不満足なものであるということは、明確におっしゃっていらっしゃるわけです。そして、漁場をなくしていく漁民立場に立っての御苦労も大変おありだろうとは察するわけでありますけれども、ひとつここで、北漁連ですか、北海道漁業協同組合連合会独自で、いわゆる漁民に対する救済の措置、零細漁民ですよ、零細漁民に対して独自の直接の救済措置を講じられていらっしゃると思いますけれども、具体的にどのようなことで救済措置をとっていらっしゃるだろうか、こういうことがお聞きをしたいわけであります。  そしてさらに、さっき金沢参考人さんから六団体の政府に対する要求の額が御提示になられたわけですけれども政府・自民党はわれわれの強い要求にもかかわらず、非常に少額で、関連産業に対する金融措置も含めて非常に微々たる額の金融措置しか講じておらないというのが現状であります。これらのことについても政府に強い要求を今後ともなさっていかれるとは思いますけれども、具体的にどのような要求を政府に求めていかれるおつもりでございましょうか。  それから、昭和三十八年に大日本水産会とソ連との間で締結をされたいわゆる日ソ・コンブ協定でございますね。さっきから参考人さんの御意見等をいろいろ承る中で、貝殻島周辺でのコンブ漁の今回の交渉ではこれが含まれ得なかった。これは政府の方では民間協定で進めていきたいというような、農林大臣の意向もそういうような方向なのです。実際、民間協定で進めることの方が、政府間同士でもより困難な漁業交渉が、果たして民間協定でうまく協定が成立するのかどうか、私どもは非常に不安でならないわけでありますけれども、兼平さんのお考えはいかがでございましょうか。  それから、これは少し込み入った具体的な事例なのですけれども、いまいわゆるスケトウダラの漁獲の問題がいろいろ論議の対象になっているわけですけれども、その子供であるタラコ、これについて、北海道漁業協同組合連合会が一定の販売の窓口的な役割りを果たして、キロ千五、六百円ぐらいのものを、いわゆる大手水産業者との話し合いの中でキロ二千四百円前後の指し値販売をしているということを私は聞き及んでいるわけです。全く管理販売というのでしょうか、指し値販売を北海道漁業協同組合連合会がしているんだということであるとするならば、私は、会長さんの先ほどのお話に、何らか首尾一貫した信念が疑われるわけでございますけれども、大変ぶしつけな御質問で恐縮に存じますが、しかし、私も大変不勉強で不十分ですけれども、そのようなことが事実なのかどうか。あるいはキロ二千四百円というものが常識でないのかどうか、ひとつその辺もあわせてお伺いをしたいと思います。
  89. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいまの御質問にお答えを申し上げたいと思います。  まず、北海道のこのようなみじめな協定の現象にかんがみまして、零細な漁業者にどのような救済措置をとっておるかということのお尋ねであろうと思います。  そこで、連合会としては、みんなの結集団体でありますからして、財政的に、物質的に援助するということは、それほどの余力はございません。よって、これらの休漁船、さらには転業船に対しましては、それぞれ連合会が手をかしまして、それぞれの各種団体がいまいろいろと政府に対する補償要求の作業の手続中でございます。この作業手続に当たりまして、実はできるだけの努力を私どもも傾注して、それぞれの魚種別団体ごとに政府へのお願い、御要請の書類をいま作成中でございます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 そのようなことで、どうしても休漁期間内における困窮した生活、管理経費の問題、さらには今後転廃業しなければならないであろうこれら漁業者についての国に対する補償要求につきましては、十分ひとつ理論、根拠の充実したものを政府に要請すべく、いま私ども連合会が中心になりましてその手助けをしておるということでございますので、この点よろしくお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  それから、さらに第二点目のコンブの協定の問題であります。コンブの問題につきましては、御説のとおり長い間のわれわれの民間協定で今日まで経過してまいったわけでございまして、これが今回の協定から外されまして、貝殻島コンブかふいになってしまったわけでございますが、これをこれからのソ日漁業交渉で何とか復活をしてもらいたいという御要請を先ほど私の意見陳述の中で申し上げておるわけでございますが、これはやはり政府間交渉でやってもらわなければなかなか復活はめんどうであるというふうに、先生の御意見と私も全く同感であります。しかし、かつて高碕先生の日ソ漁業再開の御功績をたたえて、あの現地には高碕先生の顕彰碑まで立っておる、いわゆる日ソ友好親善のかけ橋的なものがあるわけでありますからして、両国間の国境を越えての民族の一つの愛情、民族のそういう信義の上に立って、われわれ民間としても、できるだけコンブの協定というものは持続させてまいりたいものだ、そのような方法をひとつ政府を通しまして機会をつくっていただけるならば、民間の間の交渉にひとつ積極的に努力をしてみたい、言うなら、民、官挙げてこれの交渉のために努力をして、コンブ交渉を持続して、何とか従来の貝殻島コンブの実績を確保していただきたい、これをお願いを申し上げる次第でございます。  それから最後に、実は大変手厳しい御指摘をちょうだいしたわけでありますが、私自身、この問題につきましては全く事実無根であるということを申し上げざるを得ないと思います。私ども連合会としては、買い取り販売は実はいたしておらないわけであります。ここに全漁連の池尻専務もおいでになっておりますが、われわれ系統団体としましては、どこまでも委託を原則として、会員から委託を受けた物を委託販売をしていく、いわゆるそのときそのときの思惑でもって物を買い取って販売をするということは、生協法上私どもとしては好ましくないし、また許されるべきではないということで、正しい流通の原則に従いまして、浜からの委託を受け、その委託によって販売をしていくというふうな方式をとっております。でありますからして、ただいまの御指摘のように、大手商社並みに物を買い取って、そして、それを売り惜しみをして価格をつり上げる、そういう態度というものは、連合会、こういう系統組織の中におきましては許されるべき行為ではないし、むしろ社会的使命感からしても、こういうときにこそ自分の持っている物をできるだけ放出して、そして最善の消費者に対する対策をしてあげることがわれわれの努めであろう、このように実は思っておるくらいでございまして、私どもとしても、そういう面で——私は今回七十日間モスクワにおったわけでありますから、現地の事情等も電話で逐一実は聞かされておりましたので、モスクワからむしろ指令を出しまして、本会が持っておる物があるとするならば、できるだけ機会を早めて放出をして、やはり国民の期待、負託に沿うような努力をすべきであるというふうなことで、私自身も実は現地から電話でそういう連絡を申し上げた経過はございます。それだけに、実は私どもとしては、タラコに限らず、あらゆる商品につきましてもでき得る限りの放出に積極的に御協力を申し上げてまいったつもりでございますので、どうかその点はひとつ十二分に御理解をこの機会にいただきたい、このように思うわけでございます。御指摘のことにつきましては、大変実はありがたい御指摘でありまして、私どもも、今後そのようなことかあってはいけないし、今後ともただいま申し上げましたような心構えと決意で社会的使命を果たしてまいりたい、かように思っておりますことをこの機会に御陳述を申し上げ、御了解をいただきたい、かように思う次第でございます。よろしくお願い申し上げます。
  90. 井上一成

    ○井上(一)委員 時間がありませんので、兼平さん、もう一つだけ。  政府間交渉でやるべきであるということを明確におっしゃっていらっしゃるわけなんです。その後で、高碕先生のお話も出まして、でき得ることならば、可能であればという御発言なんですが、その甘い幻想でこの厳しい日ソの漁業問題をとらえること自身がもう大きな間違いを起こすのではなかろうか、判断の誤りが結果として漁民に対してどのように波及していくか、そういうことを考えれば、政府間交渉でこういう問題も明確にすべきであるという、やっぱり会長さんとしての信念をぜひ通していただきたい、こういうふうに私は思うわけです。  それから、きょうは時間の関係もなんでございますから、いずれ私はまた改めてこれは水産庁とも農林当局とも話し合い、質疑を続けますけれども、決してタラコだけの問題じゃないわけなんです。なぜそういうことが起こり得るのだろうかということは、やはり出漁ができないから、休漁している間の生活補償が十分零細漁民になされておらないという実態が、むしろ魚に若干の値幅、利潤を上積みをする、さらに悪徳な商法がその上に乗っかかってくるということでありまして、私は大阪の中央市場の荷受け会社からじかに聞いておるわけなんです。またズワイガニについても申し上げたかったわけでありますけれども、こういう問題については参考人の兼平さんにお聞きをすれば一番お詳しいだろうと思って実はお尋ねをいたしたわけでありまして、決してそれを兼平さん自身に追及をするという私の考えじゃなかったわけです。念のために申し添えておきたい。ただ、北海道のすべての漁民の生活を守るためにも、そんな独占資本的な役割りを連合会が果たさないように、これは本当に老婆心ですけれども、私から最後にお願いとして申し添えておきたいと思います。  以上で終わります。
  91. 竹内黎一

  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 参考人の皆さんには大変貴重な御意見を陳述していただきまして、ありがとうございました。  明六月五日、日曜日でございますけれども外務委員会農林水産委員会の連合審査をいたすことになっておりまして、日ソ漁業暫定交渉のいわゆる協定の審議がいよいよ大詰めになってきております関係で、以下若干の質問を三参考人に申し上げたいと思いますから、ひとつ簡潔にお答えをいただきたい、かように思うわけでございます。  まず全国漁業協同組合連合会専務理事の池尻文二参考人にお伺いします。  同僚委員からもいろいろ質問がございましたが、先ほど池尻参考人は、余剰原則ということで、釣り堀方式がとられ、漁船の隻数、操業期間または魚種等についてもはさみ打ちの形となった、北洋漁業はどうなるかということで、ゼロに向かって進んでいくという危惧の念を抱いている、またゼロに向かって厳しい時代を迎えている、日本全体の漁業の再編成をせねばならぬ、こういうことをおっしゃいました。  そこで、現在急角度にこういったことが来たので明確なものがないとこうおっしゃいますけれども、私もかねがねいろいろ御意見を申し上げておりますように、こういったことはもうすでに予測はされておったわけですが、少し手ぬるい感じがするわけです。私は、早急にこれは検討しなければならぬと思う。たとえば、かつて行われました農地改革のいわゆる海洋版といいますか、海の農地改革をせねばならぬ、かように思ってわれわれもいま検討に入っておりますが、全漁連としても早急に検討して改革をしていかなければならぬ、かように思うのですけれども、その点について少しゆっくりしているような感じがしています。まだ青写真はできていないにしても、早急に手をつけていかねばならぬ、かように思っているのですが、その点の取り組み方はどうですか、御参考にお聞かせ願いたい。
  93. 池尻文二

    ○池尻参考人 先生御指摘のとおりでございます。しかし、御案内のとおり、一つ産業の構造を改革するという本質を持っておるわけでございまして、従来、質、量ともに世界第一の漁業国というものを築き上げてきたわけでございます。政策的には、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へというこういう構造のもとで今日まで来て、二百海里時代の急角度の実現によってブレーキがかかってきたわけでございまして、いわばモーターボートのかじを急に切るというようなことではなくて、やはりタンカーの方向を変えていくというような気構えで臨みませんと、ただ焦るだけでは解決にはならないということでございます。したかいまして、この面につきましては、単に政府てなくて、官民挙げて私は早急に——これは鈴木農林大臣も一つの構想を示していらっしゃるようでございますが、本当に早急に将来の方向を打ち出さなければならないということで、決してこれをゆっくり考えているというふうにお受け取りにならないでいただきたい。一生懸命やってみたい、かように考えておる次第でございます。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの点はよくわかりました。ぜひそういう方向で進めてもらいたいと思います。  そこで、池尻参考人にもう一点お伺いしておきます。  こういう二百海里時代を迎えて、今日のような状況になってまいりましたが、日本近海での沿岸漁業者間で混乱、競合が予測されます。現に先々月から一部起きておりましたね。そこで、漁業許可制度について早急に抜本的な再編成、整備というものがなされねばならぬ、これはどうしても急かねばならぬと私は思うのです。いわゆる抜本的な改革はタンカーの旋回みたいに若干時間もかかるというのもよくわかりますが、この漁業許可制度については急ぐ必要がある、こう思うのですが、その点はどういうふうに分析しておられますか。
  95. 池尻文二

    ○池尻参考人 こういうような時代になりましたので、いわゆるわが国の漁業の規制の元締めである漁業法の早急な見直しをやらなければならぬと思います。そこで私は、一私案でございますが、先ほどのような日本漁業構造を持っておりましたものですから、農林大臣、あるいは知事許可漁業もあるわけでございますか、すべて、漁業法あるいは地方行政も含めまして、漁業の規制で、たとえば隻数、トン数、あるいは漁具、漁法あるいは禁止の期間、そういったものを決めておるわけでございますが、実のところ、いままでは外延的な発展を遂げておったものですから、その点についての具体的なあれはしりが抜けているということは事実でございます。  たとえば日本の漁船は、公称百トンはすでに百五十トンか二百トンあると言っても差し支えないぐらいに、そういう規制の方向というのは全く実質的には役立たなくなっているという気がいたします。したがいまして、これは再編成と絡むわけでございますか、それでは、お役所任せで、そういう許可を受けてしり抜けのままでいけるかということではもう許されませんので、こういう漁業の規制を行うのに、単に官製の一つの規則だけで動く時代は去ったと私は思っております。  したがって、私ども漁民組織が自分の首を締めないように、資源というものはある時期は細々とみんなが分かち合っていけるようにというような角度から、漁業者がそういう海の規制にどのくらいの組織的な機能と能力を持ち得るかというような、そういうことを前提にして、法律がそれをバックアップするような体制に持っていかなければならないのではないか、ほかにもございますけれども、そういった視点から取り組んでいきたい、かように考えておるわけでございます。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、全国鮭鱒流網漁業組合連合会専務理事の金沢幸雄参考人にお伺いします。  端的に申し上げますか、ことしはソ連二百海里外のサケ・マスの漁獲量は六万二千トンと決定したわけです。残念なことに本当にわずかで、二百海里内はゼロになりましたが、例年ですと四カ月ないし五月前から、出漁するためのいわば先発船が行っておったわけですが、ことしはぎりぎりまで待たされて、五時間ぐらいの先発で行ったわけですね。何か聞くところによると、温度が十二度ぐらいあったとかいうことで、サケ・マスがいないというようなことで手探りの操業をやっているというようなことも聞き、一カ月以上期間がおくれていますから漁獲がかなり心配されておりますけれども、実情はどんな状況で無線連絡が入っておりますか、操業している漁獲量の結果はかなり希望が持てる状態ですか、その点率直に、簡潔にお答えください。
  97. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 いまのところ正式に漁場の各船から正確な情報を得ておりませんので、的確なお答えになるかどうかここは御了承いただきたいと思いますが、御案内のように、ことしは調査船の調査事業も、許可が遅延して行ったということで、例年ですと調査船が早く出まして漁場の水温分布等も調査いたしまして、それが的確に各漁船に流されていく実態でございましたが、政府調査船も出港できなかったという事態がございました。各船はやみくもに漁場に走っていったのが実態でございます。  ただ、幸いことしはマスの豊漁年でございまして、マスはかなりの漁獲が期待されるであろうというふうに私ども考えております。ただ、漁業者の経営からいいますと、マスは低い価格でございますのでこの結果はどうなりますか、いまのところ的確にお答えできる内容を承知しておりませんので、その点よろしく御判断いただきたいと思います。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、先ほどの陳述の中で、二千二百隻の中で五百五十一隻と母船四隻を減船する、また同じ隻数を十二月末減船するということがございました。ほかの北転船もそうですけれども、サケ・マスの場合、減船した場合どういうふうにされるのか、減船してさびついたまま係留しておくわけはないと思いますが、どういうふうに考えておられるか、その点簡潔でいいですから、お考えの方向だけでもいいからお聞かせください。
  99. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 大変端的な御質問で戸惑いますが、現実にはこの船の利用はできない状態でございます。  ただ、裏作としてマグロ漁業とかイカ釣り漁業がございますので、裏作の方で年間の経営をペイできるように努力しなければいかぬと思いますが、もし完全に裏作を含めて休むといたしますれば、この漁船の利用はまずできないというふうにわれわれは判断いたしております。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点よくわかりました。  もう一点金沢参考人にお伺いしておきます。  ことしの五月、衆議院の農林水産委員会から、北海道の実情並びに海上保安庁の飛行機をチャーターして現地、津軽海峡等見てまいりましたが、その際、時間をつくって千歳の国立のサケ・マス養殖の試験場を私たちつぶさに見てまいりました。ところが、回帰率が大変低いわけです。これは何でだろうということで私もその後検討をいたしておりますが、本土における河川のサケ・マスの稚魚の放流というものをもう少し大きくして出すと回帰率も多いというようなことも言われておりますが、これは何とか回帰率を上げて、溯河性の効果を上げなければならぬ、こういうふうに思うのですが、皆さん方はこういったことについてかねがねどうすれば回帰率が上がるんだということで、実際に生活の知恵といいますか、地でこういったことを検討し、真剣に悩んでおられると思うが、率直に、回帰率を上げるためにどうすればいいかという御意見があればお聞かせください。
  101. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 サケ・マスの回帰率を上げるには、いま先生おっしゃるように、河川内での死亡率がかなり多いわけでございます。私は詳しく数字は存じ上げませんが、河川内の死亡率は九〇何%となっておるようでございますので、この河川内の死亡率を少なくすることが回帰率を高めていく唯一の方法だと私は考えております。したがいまして、いま先生おっしゃいますように、河川内におきます際のえさづけの問題できるだけ大きくして海洋に流していくという努力が一番大切であろう。私も先生と同じような考えでこの対策に臨んでおりますので、御了承いただきたいと思います。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、北海道漁業共同組合連合会会長の兼平純吉参考人にお伺いします。  先ほどからもいろいろ陳述いただき、また質問もありましたが、私も兼平参考人がおっしゃいましたニシン漁の問題だとか、または今回の協定に対する不満の問題だとかいろいろございましたが、そういったことはさておくとして、この貝殻島の問題ですけれども、七億円がふいになっておる。いわゆるコンブ漁が大変困っておられるわけです。それでいろいろ承っておりますと、実際六月一日から一斉に三百三十隻の漁船が出漁するということでございます。私もこれは絶対にイワシと交換してはいけないということで、こういった点については五月の調査、また皆さん方北海道庁でお会いし、いろいろ意見を聞いたときにも申し上げたように、十分自覚しておりますか、この貝殻島のコンブ漁、私もその後いろいろ各方面に当たってきましたが、兼平参考人政府間交渉で何とかやってくれとおっしゃいますが、私も、政府間交渉も、今度の日ソ漁業暫定協定が批准されますと、その後強力にやらなければいかぬと思いますけれども、今後の見通しとしては、やはりこれは従来の実績によって民間交渉で強くやっていかなければならぬ、そして何としても日ソ親善という立場からもこれをかち取らねばならぬ、かように実は思っております。そういった意味でぜひとも政府に頼るばかりでなく、民間としてもすでにこういったことに対しては大変困っているわけですから、早速そういった交渉ののろしを上げるといいますか、交渉をするための動きをしていただきたい、かように思うわけです。またわれわれも国会の場で強力にこの点については最大の努力をしていきたいと思っておりますし、明日もまた連合審査会でもいろいろ政府に叱咤激励をしておきたいと思いますが、そういった意味で兼平会長の決意を伺っておきたい。また、そういうふうに努力してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  103. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいま瀬野先生の御意見、御質問でありますが、私ども北海道漁民にとりまして、貝殻島のコンブの破棄ということは、金額的にもそうでありますけれども、精神的にダメージを受けておる一つでございます。あれほど日ソ友好親善を柱にして協定をして、間違いもなく、しかも協定違反もせずに今日まで来たものか、この交渉によって一挙にふいになりましたということにつきましては、われわれこれからの日ソ友好親善というものの方向か、どうすれば本当に日ソの友好親善のきずなが深まるものなのか、その辺のところに実は一抹のさびしさと悩みを感じとっておるものでございます。それだけに、私、先ほど井上先生からの御質問に対し、できることなら政府間交渉で、ソ日交渉でこの問題を取り上げて復活してもらいたいということの主張とあわせ、実は民間交渉で果たされる面があるならば、われわれもこれを捨てることなく、民間としてもできるだけの努力を払ってまいりたいという両面の意見を出した理由も実はここにあるわけであります。  ただいま瀬野先生の御意見のように、私ども民間団体が、いろいろな方法でもって日ソ友好親善を柱にして、この交渉がうまくいく方法ができることであれば、私どもは惜しみなくこの交渉のために最善の努力をする決意でありますことを御披露申し上げたいと思います。ただ、そのためにはやはり一つのきっかけが必要でありますので、前面からも裏面からも、政府並びに国会の各先生方の絶大なる御声援とアドバイスを心からお願いを申し上げておきたいと思うわけでございます。  以上をもって、ただいまの先生の御質問にお答えを申し上げた次第でございます。
  104. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは最後に、簡単に二点兼平参考人にお伺いしておきます。  ただいまの貝殻島のコンブ漁については十分わかりました。明日もまた政府を叱咤しておきますし、今後私たちも実情はよくわかっておりますので、努力させていただきます。  最後にお伺いしたいことは、先ほど陳述の中で、休漁、減船が千隻、乗組員等のいろいろな救済、補償等について最善の努力をしてくれという要請がございました。もちろんのことであります。五月に北海道庁で皆さん方の陳情、要請を受けたときにもいろいろ申し上げてまいりましたが、これまたさきのサケ・マスと同じように、具体的にこうしていただきたいという案があれば、後ほど資料でもいいし、御発表いただきたい。また手元になければ後でお知らせいただくということで結構ですが、具体的に皆さん方はこうしていただきたいという資料をぜひほしいわけです。  と同時に、五月に参りましたときにも、道庁で兼平会長からもいろいろと要請があったし、私もそのときに突っ込んだ話もしましたが、先ほどの陳述の中で、抜本的に漁業再編成をしろ、沿岸漁業等、残された公海を対象にいろいろ考えるべきではないか、制度改正もすべきである、漁業の再編成、再構築をやれ、こういうことをおっしゃいました。先ほどの池尻参考人と同じことになりますが、十分われわれも承知しておりますけれども、先般北海道庁で申し上げましたように、いずれにしても減船をしなければならない。そうなりますと中小漁船を守らなければならぬ、私はこう思う。そうしますと、どうしてもいままでの母船式の母船、こういったものは、大企業で大きくやっている大型の方は南方へ回す、こういったことで中小漁船を守ることが、船員の仕事もあぶれないことになりますし、十分確保することができますから、そういったこともこの際考えて、北海道としても思い切った再編成をしなければならぬじゃないか。現実にきていますので、手をこまねいておるときではない、こう思うわけです。われわれも真剣に今度はどのくらいの融資、また補償をどういうふうにするのかということで詰めてまいりたいということでいろいろ検討をいま進めておりますし、きのうも農水委員会でも決議をいたしましたが、そういうことで努力させてもらいますので、そういったことでどういうふうに今後の減船、休漁、また乗組員の問題、そして船をどうするか、母船と独航船の問題についてもどういうふうに考えておられるか、ひとつこの公開の席であなたの考え最後に簡潔で結構ですから、方向づけだけでも陳述していただけば大変参考になり、ありがたいと思っています。よろしくお願いします。
  105. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいまの御意見、お尋ねにつきまして簡潔にお答えを申し上げたいと思います。  実は休漁船並びに減船に対しましては、私どもとしては政府に対して、十分手厚いこれに対する補償措置をしていただくために、いろいろと筋の通った内容をいま作成中であります。ただいたずらに政府に補償要求をしても、筋の通らないもの、漁民のただ単なる希望的観測のものを出しては政府としてもお困りでしょうし、各党としてもそれに対する賛意は表しがたいと思いますので、皆さん方が全部御納得いかれる、コンセンサスを得られるものを実は急速に作成をしていこうということでいま作業中でございます。これができ次第、北海道としては、各業態別に数たくさんございますけれども北海道知事を頂点として実は政府にこれを要請し、そして各党にもそれをそれぞれ持ち歩きまして御説明を申し上げる機会を早くつくりたい、かように思っておりますので、いま直ちに具体的に申し上げる資料を持ち合わせておりませんので、作業中でありますので、でき次第そのことを持ち回って御説明申し上げるということで、どうか御了解いただきたいと思うわけであります。  なおさらに、今後の漁業対策、漁業ビジョンというものにつきましてどう考えているかということでありますが、これは私は、やはり何といってもこれからの二国間協定、いわゆる余剰分による配分というものを考えますと、これから大きな前進を期待することはとても望み得ない、むしろ後退の一途をたどるのではないであろうかというふうに、実は悲観論者の一人であります。そうなってまいりますと、日本の海域における、いわゆる日本の二百海里内における漁業維持というものが将来の日本漁業の展望を決定する重大な要因になるのではないかと思われるわけであります。でありますからして、私どもとしては、その中でどうしても日本の一億国民の魚肉たん白を供給していくための安定した供給源を確保するためには、何としても沿岸漁業の維持培養を図って、これの再見直しをするということが、これは言わずもがな当然のことだと思います。そのためには、政府としては思い切ってこの沿岸漁業振興のために財政的な援助を確立して、そうして漁業の再見直しをしていただくということか第一点であり、さらに二百海里の中におけるいわゆる未開発利用魚田、こういうものもかなりまだあるであろうというふうに推測されます。そういう中で、実は国としてもこれからの不足するたん白供給の担い手産業である漁業の確立を図るために、できるだけ二百海里の中における海洋の探査、開発をして、それの開発ができ次第、やはり中小企業の漁船をそこに導入して魚をとらせるという方式、そして言うならば、日本の二百海里の海域の中で日本民族のたん白の自給自足のできる体制を早く確立しなければならない時代に入ったのではないであろうか、かように申し上げておきたいと思うわけでございますので、参考までに意見を、ひとつ御理解をちょうだいして、今後国政に反映していただければ幸いである、かように思うわけでございます。  なおさらに、母船と独航船の関係の問題でありますが、これは私よりもむしろサケ・マスの専門団体であります金沢専務がおいでになっておりますので、むしろ金沢専務の御意見の方か正しかろうと思います。ただ、私にということでございますので、この機会でありますから私の私見を申し上げておきますと、やはり私はこの場合、どうしても母船でとるクォータというものよりは、そのクォータを利用して、そして零細中小企業者が将来に生き延びる、そういう方法をやはり考える必要があるのではないか、かように思っております。でありますから、母船を廃業させてでもいわゆる中小企業の将来の育成強化のために、厳しくなる割り当て量を、これを活用しながら、これらの漁業の育成強化を図ることか将来当然必要となってくる時期が到来するのではないであろうか、かように考えておりますことを申し添えておきたいと思います。  以上でございます。
  106. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 どうも貴重なる御意見、大変ありがとうございました。  以上で終わります。
  107. 竹内黎一

    竹内委員長 渡辺朗君。
  108. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 参考人皆様方、どうも御苦労さまでございます。お三人の方に一、二問ずつ聞かしていただきたいと思っておりますので、お願いをいたします。  最初に池尻参考人にお尋ねをいたします。先ほど、お話の中で大変貴重な御提案をいただきました。特に日本漁業の再編の時期だ、そうしてまたそういう構想を進めるべきだというお話でございましたが、私ちょっと心配なのは、実を言うと今度のショックが余りにも大きかった。したがって、いま目の前にある補償政策というようなところへどうしても重点を置かざるを得ない。また政府の方の市場として、そういう観点からはまだまだ中国あるいは韓国水域の二百海里問題は設定されておらないし、漁業専管水域などができてくればまたそういう事態で考えなければならないだろうというような配慮もあるのでしょうか、日本の水産業漁業の再編整備というような考え方は、まだ時期尚早というふうにでも考えているのではあるまいか。補償の問題が緊急に目の前にある、他方、二百海里水域の問題が全域にわたって日本周辺諸国で全部行われていない、こういう状態の中で、水産業漁業の再編という問題が後手後手に回る、時期がおくれていくという懸念がございます。ここら辺何とか急がぬといけないのではあるまいか。その点でぜひ中心になってむしろ啓蒙していただき、積極的な役割りを果たしていただきたいと思いますので、ここら辺の具体的な青写真なり構想というものを早急に進めていただきたい。これをまず先に要望をいたしますので、その点について何かお考えがありましたら、一言聞かしていただきたいと思います。
  109. 池尻文二

    ○池尻参考人 私もいまの先生の御指摘に全く同感でございます。と申しますのは、日ソの厳しい交渉の結果、いわゆる救済対策としての補償、これはもう全く手厚い補償というものが行われなければならないわけでございます。ただ私は、そのときに、はみ出せば減船をしてそれに補償さえすればということは、やはり将来の展望に連ならない面を持ってくるということでございますから、もし補償をするときには、それが北洋漁業の構造の改善に一石を投ずるという大前提がなければいけませんし、それから残余の漁船をほかに回す、先ほども大と小の問題が出ました。母船の問題が出ました。それからもう一つは、きわめて乱獲型の漁業というものをどういうふうに先にしむけていくか等の問題もございます。したがいまして、補償とそれから次にくるものとの結節点というか、連携というものを十分考えてこの問題をやらなければならないのではないか、かように考えております。
  110. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 関連いたしましてもう一つお聞かせいただきたいのですが、先ほども大変興味のあるお話をされました。やはり船というもの、あるいは漁業従事者というものは、海における働き場を確保しておく心要がある。そういう意味で、何か監視隊といいますか、民間パトロール的な、それに水産庁の人なりあるいは保安庁の人でも乗って監視するという、これは具体的な非常にいい提案だと思いますけれども、私非常に心配しますのは、実はこれから大量に出てくるであろう乗組員たち、業者のみならず、そこに働いている人たちの職場をどう確保していくのかという点でございます。特に海員というのは、海員手帳を持っておりますか、保険がございません。失業保険がありません。特殊な業態の中での労働者でございますので、そういった点を配慮してどのように生活補償、さらには職場の保障を考えておられるのか、これについてお聞かせいただきたいと思います。
  111. 池尻文二

    ○池尻参考人 今度減船だとかいうことで職場を失う。それを海でいままで働いてこられました乗組員方々はやはり海で働きたいと思っていらっしゃるでしょうし、またそうすべきであるという前提で私は申し上げたわけでございます。そこで、構想といたしましてはさきに申し上げましたとおりでございますが、私はそのためにいまの船員保険法の足らざる面、これが要するに生活の救済のためにならないという現行法上の欠陥、そういうものがあろうと思いますし、それから、私が示しました構想にいたしましても、たとえば海上保安庁あるいは水産庁の調査船あるいは南半球に新しい漁場を探しに行く開発センターに雇用されるというような者を含めても、かなり買い上げの費用だとかいうようなことで、非常な財政のあれを伴うと思います。そういうことを含めて、先ほどどなたかの先生が御指摘になりましたように、雇用対策の特別立法というようなものも私は必要になってくるのではないかと思います。  それから、最後にもう一つ申し上げておきたいと思いますのは、こういう遠洋漁業の方も、しょせんもとをただせば沿岸の漁村から成長されて乗って行かれた方々でございます。したがいまして、一般的にはいまの沿岸漁場は過剰でございますので、資源的にも制約がございますので、そういう方々のUターン現象というのは困る、こう言っておりますけれども、私はやはり共同の運動として沿岸が温かく迎えるということも必要だろうと思います。そのためにこそ国か投資をして、沿岸漁場の開発整備というようなものをやって新しい魚田をつくるという前提に、たとえばいままで労働力の不足している面というのも漁村にあるわけでございますから、そういったことも兼ね合わせて漁船の乗組員の対策というものを進めていかなければならないのではないか、かように考えております。
  112. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。  次に、金沢参考人にお尋ねさしていただきます。  サケ・マスの場合、漁獲量がだんだんとこれから減っていく。そうした場合に、たとえばアメリカ地先沖合い、あるいはカナダの沿岸及び二百海里の漁業専管水域の中において日本の漁獲量なんかが決められておりますけれども、そこに割り込んでいくといいますか、あるいは国内での配分の方法でございますね、これらを何とかしなければというようなお考えはお持ちでございましょうか、どうでしょうか。
  113. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 いまの指摘の問題につきましては、私どもとしては望みたい点でございますけれども、いかんせん、条約体系の中でサケ・マス漁業が営まれておりますので、現状では全く不可能な事態になっているというふうにお答えする以外にないのじゃないかというふうに思っております。
  114. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一度そこら辺をお聞かせいただきたいのですが、現状の条約の中での操業ということの中では不可能とおっしゃいましたけれども、国内において調整は不可能なんでございますか。そこら辺ちょっともう少し聞かせていただきたいと思います。
  115. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 御案内のように、アメリカの水域におきましては、これまで日米加漁業条約というものがございまして、今回それが廃棄されまして、新たにアメリカの二百海里法か設定されている。そうしてそこに働いている理念は、先ほども議論が出ましたが、余剰原則というものが働いております。したがいまして、アメリカのこれまでの言い分を私たち聞き及んでおる限りにおきましては、日本の漁船にサケ・マスをとらせるだけの余剰力はない、自国の生産だけで手いっぱいであるというふうに現実問題として聞いておるわけでございます。  したがいまして、今後仮にわれわれの漁船が減船された場合に、それがアメリカの水域に行って漁獲を行うということは、現状においては不可能であるというふうにわれわれ認識しておる次第でございます。
  116. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それから、重ねて金沢参考人にお尋ねいたしますが、サケ・マスのような潮河性の魚類、これについて非常に厳しい規制をアメリカもいたしました。ソ連もしてきております。これについてはどうなんでしょうか。これはもう認めていかなければならないものでございましょうか、それとも、たとえばそのような厳しい規制に対して抗議をしなければならぬというふうにお考えのものでございましょうか。そこら辺の考え方見方、これを教えていただきたいと思います。
  117. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 残念ながら厳しい情勢にあるということで、われわれも認めざるを得ないと思うのです。ただ問題は、これから行われます国連海洋法会議におきます海洋法の設定問題がどのようになってまいりますか、私ども知り得る範囲では、アメリカの二百海里法に基づくサケ・マスの取り扱い、あるいはソ連の二百海里に基づくサケ・マスの取り扱いについては、これまで国連におきまして論議されておりましたいわば海洋法の単一草案よりもさらに厳しい状態で設定されております。したがいまして、われわれ期待いたしたいことは、早く国連における二百海里の海洋法が設定されまして——その思想の中には、従来の漁業実績を確保してやらなければならぬという思想もございますし、また、サケ・マス増殖事業に投資した国の漁業について何らか考慮しなければならないという規定もあるわけでございます。そういった点を踏まえてまいりますと、今日のソ連あるいはアメリカの二百海里そのものの国内法は、これまで論議されてきました単一草案よりもさらに厳しい状態にある、これは現実の問題としてわれわれは受けとめざるを得ない。願わくは、今後の国連の場におきます溯河性魚種の扱いについてひとつ早く決めていただいて、今日の厳しい情勢から一刻も早く脱却するような方式を望みたいというのがわれわれの考えでございます。
  118. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 金沢参考人がおっしゃるように、実を言うと、海洋法会議の単一交渉草案、これよりもうんと厳しい規制が盛り込まれているのがアメリカの国内法でございますね。それに基づいて日米漁業協定が結ばれている。今回の日ソ漁業協定においてもしかりであります。そういう点で、魚族資源の保護という観点であるならば、やはり少なくとも海洋法会議の中で決められた枠ぐらいでおさめるべきなので、それを先走っての大変厳しいものだということは、日本政府側としては当然もっと言うべきだということを、当外務委員会においても、日米漁業協定を審議しました際に私、申し上げたのですが、対抗手段としまして、ぜひ私はお願いしたいと思いますのは、漁業関係者も、あるいは魚族を研究しておられる学者も、特に民間レベルで国際的な一つの機関みたいなものでも、グループでもつくっていただいて、科学的調査に基づいて、だからこれだけ規制しよう、来年度はこれだけとってもいいではないか、こういうことでもって各国政府圧力を加えるようにしないと、恣意的に各国がどんどん厳しいものを出してくる、これがどうもサケ・マスの溯河性の問題でこういう結果になってきた原因でもあるまいかというふうにも思いますので、ぜひその点を要望したいと思いますが、いかがでございましょうか。
  119. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 いま先生がおっしゃられました点、われわれも全く同感に考えております。政府間交渉がこれまで努力してやられてきておりますので、業界としても、でき得れば関係国にミッションを送って、日本漁業の実態というものを訴える、そういう中から交渉を側面的に促進していくという努力を今後ともしていきたい、こう考えております。  ただ、いま先生がおっしゃいますように、調査の問題、すべてこれは国家間の問題でございますので、われわれが立ち入る分野は非常に少ない面はございますが、しかし、日本漁業の実態、さらに、われわれがたとえばサケ・マス増殖事業に相当量の資金を提供して、いま申し上げますような国連の単一草案のある思想を、関係国の理解を深めていくという中から今後のサケ・マス漁業の生きる道を探索していくという努力を、ぜひ業界としてもしたいというのが今日の考えでございます。
  120. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 最後に兼平参考人にぜひお尋ねをいたします。  今回の日ソ漁業協定を見ますと、特に附属書がございますが、その中を見ますと、大変に出漁するのに厳しいいろんなことが書いてございます。たとえば船長、乗組員の数が変更があった場合には、十日以内にソ連当局に通報しなければいけない、あるいはまた漁獲情報をソビエトの極東漁業総局に対して送らなければならない、これは旬ごとの情報を送らなければいけない、こういうことになっておりますね。それから月ごとの資料もまた送らなければならない。これはいままであったことでございましょうか、それとも今回新たに出てきた厳しい制限あるいは制限の条件といいますか、そういうものでございましょうか。
  121. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいまの御質問でありますが、私どももこの附属書に盛られております諸規定、諸制約というものにつきましては、大変実は面食らっておるわけであります。大変厳しいものであるというふうに思わざるを得ません。しかしながら、このようなものがなければ今回の協定が成立し得なかったということの面を考えますと、これもやむを得ないというふうに考えまして、忠実にこの義務は履行してまいらなければならないであろう、このように思っております。  それからなお、このような漁獲情報といいますか、一週間に一遍、十日以内に報告するというふうな問題、さらには、それを毎週報告したものを一カ月さらに総まとめをして再度報告をするというふうなこと、こういうことはいままで例かあったのかということでありますが、これはかつてなかったわけであります。今回初めてこのような厳しいクォータ管理の、いわゆるソ連側からしますと、クォータの割り当て量の管理体系をしいたということでありまして、日本がこれに対する義務を履行せざるを得ない、こういうことでございますので、われわれとしては国際信義上、このことは少々無理であっても、忠実にこのことを果たしてまいらなければならない、このように決意を新たにいたしておりますことを御報告申し上げたいと思います。
  122. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一つお聞かせいただきたいと思います。  そうなりますと、これは大変また余分にお金かかかったりなんかしますね、こういうような繁雑な手続をやるということになりますとね。人の手も要りますし、そういうことでお金がまたよけいにかかる。こういうところに今度はさらに入漁料とでもいいますか、あるいは許可証の料金といいますか、どのように受けとめておられますか。今回新たに料金を取られるということでございますが、これは入漁料とみなしておられますか、それとも何か手数料というふうにみなしておられますか。
  123. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいまの諸手続上の問題につきましては、私どもは入漁料ともみなしておりませんし、手数料ともみなしておりません。これは一方的に余剰資源の原則に従いまして余剰分をちょうだいする立場でありますから、これをちょうだいして、いわゆる漁獲をする側の日本としては当然義務的行為として、これはとる漁業者がこの程度のことは繁雑であろうともやらなければなりますまい、このように実は純粋に物事を考えておるということでございます。  それからなお入漁料の問題につきましては、いまだこのことはソ連が取るとは言っておりませんし、それからソ日交渉でどうなりますか、恐らくこのことは双方相互主義からまいりますと、ソ連が取ると言わなければ日本も取ると言いますまいと、このように実は置きかえて考えておるわけでありますから、恐らく入漁料問題はこれから先の問題であろうというふうに思っておりますので、恐らく当分の間、相互関係におきましてはこの問題は日ソの間では出てこないのではないであろうか、このように私どもは思っておりますことをつけ加えておきたいと思います。
  124. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 どうもお三方ありがとうございました。ひとつ大変厳しい情勢でございますけれども、がんばっていただきますようにお願いいたします。ありがとうございました。
  125. 竹内黎一

    竹内委員長 寺前巖君。
  126. 寺前巖

    ○寺前委員 ずいぶん長時間にわたって参考人の皆さんありがとうございます。もうお疲れのことでございましょうから、私はどなたからお答えをいただいても結構でございますので、一括して問題を提起したいと思います。よろしくお願いをいたします。  まず第一に、アメリカという国は沿岸線が一番多い国ですから、このアメリカが二百海里という問題を打ち出しますと、関係諸国はいろいろ影響して、守るためにそこからいろいろ二百海里問題が生まれてきたと思います。世界の二大漁業国であるソビエトと日本か、こういう二百海里時代の中においてどのようにお互いの国の関係の問題を整理するかということと、国際関係においての積極的な役割りを果たすということが重要な国際的な責務になるだろうという意味から、日ソの暫定から長期にわたって結ばれていく協定というのは、国際的にも重要な役割りを私は果たすと思う。  そういう角度から聞いてみたいわけですが、日本としては今度の暫定協定、それに基づくところの漁獲量あるいは区域の問題において、どうしたって沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へといった従来の道筋をもう一度見直さなければならない段階に来たということは、先ほどから御指摘のとおりです。したがって、見直す期間、あり方の問題というのがそこから当然起こってくる問題です。  私は、まず遠洋面において二百海里時代の見直しというのはどういう見直しができるのかということを一つ聞きたいと思うのです。先ほどからもいろいろ出ておりましたか、遠洋の新しい開発のめどをどこに求めていくかというプランがあり得るのか、どの程度あり得るのか。  それから第二番目に、私どもの党で今度の問題をめぐって共同管理という問題を提起してみたわけです。それは二百海里の線引きをやったら、重なるところが出てくるでしょう。中間線をとるということじゃなくして、これを共同管理として打ち出していくという考え方というのは、さらに全体の海洋のあり方の上においても積極的な意味を持つのじゃないかということから、重なり合う部面の共同管理という問題を提起しました。あるいはまた領土問題において問題を残している千島列島、歯舞、色丹の問題、こういう問題についても、歴史的な経過もあることなんだから、したがってそういうところを共同管理という形で話を漁業問題として進めていくわけにはいかないのか、歴史的な経過が漁業上もあったのだから。政府言葉で特殊水域という言葉もありましたが、この考え方についてどうなんだろうか、これが第二番目。  第三番目に、最近漁業白書が出ましたけれども、きょうは全漁連の池尻さんからお話がありましたけれども、いまの二千億、七カ年のあの計画では百年河清を待つということになるのではないか。あそこの具体策としてこうやれという御意見はないのか、これが一点。  三つの点にわたって、部分であっても結構ですからお答えをいただきたい。  それから第二点です。私はこういう時代になってくると、次には、資源が日本の方は限られてくる。日本のたん白資源の半分はここの漁業に求めている、こういう事態の中において輸入に頼らざるを得ないという面が直面して起こってくるという問題も想定できるのではないか。この輸入がもたらすところの魚価あるいは漁民の生活に与える影響というのは、今後の問題としてやはり考えなければならない問題か出てくるのじゃないか。今度の漁業白書を見ても、農業以上に漁民の生活が低いということが指摘されております。それだけに、この分野の輸入対策問題というのは重要な位置を占める。ですから、私はこの面において事前チェック制なり、あるいは場合によってはしかるべきところで輸入事業団という形で調整をしていくということも考えなければならない問題としてはあるのじゃないだろうか、こういう問題についてどうお考えになるのか。  さらに、今度は、ソビエトはイワシを日本の十二海里内でとっています。領海で、今度は非常に明確になる。われわれはスケトウダラを向こうのところでとっている。これがアウトになると、バーターの問題がそこで話題になってくる。バーターが話題になるだけでなくして、プラント輸出も話題になってくる。このあり方の問題はどうあってほしいと思っておられるのか、お聞かせをいただきたい。これか第二点目の問題です。  それから第三点目に、今度は先ほどから出ておりましたように、日本の内部においての漁業権というのですか、漁業権の配分というのか、あり方そのものも検討しなければならない問題に直面せざるを得ない。さっきもちょっと出ていましたが、母船式でやっていく大手の漁業のやり方を、もう母船をやめてしまって港から出ていって付属する船が直接やっていくというやり方に変えていくべきではないかという問題などもその一つだと思いますが、この八月に更新されるこの機会に、どういうふうに漁業権問題を新しい時代に向かって対処すべきだというふうにお考えになるのか。そして、減船とこう言っても、長期協定の段階には、やはりこの協定では不満足だ、何かの処置をしてもらいたいという要求はあると思います。たとえば、スケトウは一月から五月の時期がとる時期だ、今度の協定では直接ゼロとされたところで、ことしの年度はもう交渉期間中の話だったから、実際には来年の一月からの話だ、とするならば、長期の段階には何らかの話をもう一回復活させてもらいたいという要求は、この北転船の分野には生まれてきているだろうと思うのです。そういうふうになってきたときに、それじゃその交渉をするに当たって、その漁民皆さん方が首じゃ、もう仕事は終わりじゃと散ってしまうようなことを——もうだめだよというようなことで散らしておった日には、ソビエトの方との交渉というのはもうすでに話の段階にはならなくなってしまうのだ。それは私は、いまさら散れと言われたって散るわけにはいかない、首にされてはたまったものじゃないという事態があり、船があって、そしてこれを一つ歴史的な基礎にしてやはり話をされるということになるだろう。とすると、この首にもなっていない人たちに対する給料はどうするのか、生活をどうするのか、これは一体どこが責任を持つのだろうか。こういう大転換の段階だということになったならば、国が持たなければ仕方がないんだろうな、仕方がないというよりもむしろ積極的にすべきじゃないだろうか、そうして、そういうことかあって初めて交渉にもなるんじゃないだろうか、長期の協定が結ばれた段階において、見直しの減船のあり方というのは決められることになるんじゃないだろうかというふうに私は思うのだけれども、実際皆さん方が直接直面しておられる問題として、この処理はどういうふうにされているのか。失業しない限り雇用保険というのは対象にはなりませんから。とすると、そこは現実にはどう処理されるのか。  えらいいっぱい言いましたけれども、適当にお答えをいただいたら結構でございます。失礼いたしました。
  127. 竹内黎一

    竹内委員長 それでは参考人の皆さんに順次発言願うことにして、まず池尻参考人
  128. 池尻文二

    ○池尻参考人 いろいろお二方の分野もあると思いますが、私からお答えを申し上げたいのは、遠洋漁業面からの見直しという課題でございますが、これは恐らく金沢さんの方からも具体的にお話があるかと思いますが、私はやはり二百海里時代というものは、言葉をかえて申し上げますと、魚というものが国際的資源になったということだろうと思います。したがいまして、遠洋漁業の面で、たとえばカツオ、マグロ等もそうでございますが、これは回遊魚でございますので、ソ連あるいは今度の日米のような問題が起こってないわけでございますが、しかし、そうかと言って、やはり世界全体のマグロ資源というような見地から、将来のマグロ資源の管理というものが、現在も問題になっておりまするし、当然浮かび上がってくる問題であろうかと思います。  なお、要するに日本の今後の再編成に絡みまして、まず遠洋面の開発をどういう分野でやるか、一つはオキアミの例があるわけでございますが、と同時に深海海底の調査の問題というのもありまして、日本の過剰な操業余力をそういった新しい分野に積極的に活用するということは、今後、政府も民間もともに努力しなければならないのではないかと思います。  それから共同管理の問題でございますが、これは私、いま具体的に問題の所在がわかりませんので、どなたかからお答えを申し上げたいと思うわけでございますが、白書に述べられております。カ年、二千億の計画では百年河清を待つ思いではないかということは、御指摘のとおりだと思います。そこで、先般も寺前先生だったかからの御質問がございましたときに申し上げましたが、これはもう意欲的に国家百年の大計として、日本の二百海里を培う意味で勇敢にやらなければならないと思います。その大前提といたしまして、国民の税金から海への投資を割愛してもらうわけでございますから、前提は日本列島周辺、大陸だなを含めて日本の二百海里の中の青写真というものを早急に研究、調査を開始すべきである、かように考えます。俗説によりますれば、わが国の周辺の海は日本よりもソ連の方かよく知っておるということを言われておるわけでございますか、そういうようなことでただ金をばらまくわけにはまいりませんので、ぜひとも大々的な研究、調査を開始いたしまして、早急にこの七カ年、二千億の手直しができるような体制というものについて、私どもも積極的に取り組まなければならないのではないか、かように考えておるわけでございます。   一応ここで終わっておきます。
  129. 金沢幸雄

    ○金沢参考人 最初にお話のございました二百海里の新しい時代を迎えた遠洋漁業のあり方論、いかに認識されるかという御質問のように承って、その点について私から私なりの考えを申し述べさせていただきたいと思います。  現実の問題として、この二百海里の時代を迎えた今日の日本漁業のあり方としては、厳正にこれを受けとめざるを得ないと思っております。ただ、この二百海里を迎えた日本遠洋漁業のあり方に二つあろうかと思います。一つは、いわば南方水域を漁場にしております遠洋漁業の体制と、それから北の海を対象にしております遠洋漁業の体質と、それぞれ異なる観点に立たざるを得ないと思うのです。  南方の方につきましては、幸い政府の資金が裏打ちになっております海洋漁業の開発センターというのもございますし、それからもう一つは海外漁業協力財団、二つの仕組みがございまして、でき得れば、こういった政府資金をバックにしております機能をできるだけ発揮していただきまして、南方漁業の開発、それからあるいは必要である場合には合弁事業の開発、それに伴う資金は、いまの財団の資金を裏打ちにして南方漁業の遠洋漁業体制を整備していくということが可能であり、また、望みたい点であるわけでございます。  北方につきましては、先生御案内のようにすべて先進国でございますので、これらに対する資金援助とかそういうものを裏打ちとしたあるいは合弁事業というものはなかなか至難であろうと思います。したがいまして、今日課せられております。この現実にあります減船処理の問題、これはわれわれとしても冷静に受けとめて、そして、新しい二百海里を迎えた海域における漁業の体質をどうするか、これは一面漁業界の中にも、経営の合理化の問題、いろいろ体質改善としてやらなければならぬ問題もございます。そういった面もあわせ考え、また、われわれサケ・マス業界としては、幸いソ連との間で共同の増殖事業の開発というものをお互いに認め合っている路線もございますので、二百海里時代を迎えたといえども、今後こういった面を、政府の努力で増殖事業を発展さしていく、そういう増殖事業をパイプにしてソ連の理解を求め、お互いの協調体制の中で新しい二百海里時代に向かっての漁業体制というものをつくり上げていくということが、私どもにいま課せられておる現実の問題であろう、こう考えております。  そういう認識に立って、この二百海里の新しい時代を迎えた遠洋漁業の体制整備というものをわれわれは考えていきたい、こう考えておりますので、よろしく御理解をいただきたいと思います。
  130. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいまの御質問の中で私からお答えを申し上げたいことは、輸入対策の問題であります。  輸入水産物の問題につきましては、このような厳しい二百海里時代になりますと、魚の不足に便乗して商社の激しい輸入合戦に発展する可能性はなしとしないであろうというふうに私どもは見詰めておるわけであります。そうなった場合に、IQ物資は別でありますけれども、いまの自由化品目になったものが無秩序に日本の商社資本によってどんどん国内に輸入されてまいった場合に、結局、その輸入されたものによって、日本のいま残されておる沿岸漁業、わずかな沖合い漁業漁業者が、それによって価格の暴落と同時に、企業がまた採算が合わなくなってしまう大変危険な状態に置かれておる、また、置かれつつあると害わなければならないと思うわけでありまして、このことは先ほど先生かおっしゃったように、私どもとしてもやはり生産者の立場で、生産者の価格維持対策をきちっと施しながら、それとあわせて消費者の価格も一定の安定供給のできる道を踏まえながら、消費者と生産者が相両立する体制の中での輸入秩序というものをつくらなければ、これからの二百海里時代に対する魚の輸入問題は大混乱を呈するであろうというふうに思っております。でありますから、できることであるならば、これはやはり輸入事業団のようなものをつくって、消費者の立場、そして生産者の立場が両立できる方法をとってもらいたい、かように実は思っておるわけであります。しかし、それができないとするならば、せめて生産者サイドが相当な発言力と、これに対する牽制力を持った、そういう輸入の秩序ある対策をつくってもらうことに先生方の御尽力をいただきたいものだと、かように思っておるわけであります。  それからもう一つ、先ほど先生が御指摘になりました、今回の日ソ暫定協定に基づくいわゆるイワシとスケトウのバーター、この問題も既成事実として将来当然出てくると思います。この場合は、私は北海道立場であえて主張さしていただくならば、イワシをとる海域は、それは三陸地方もあるとはいいながら、ソ連が一番欲しがっておるのは北海道の道東沖合いのマイワシであります。マイワシを欲しいということが現実に主張されております。そうなった場合に、北海道のイワシ漁業というものは、零細な漁業者を一定期間他に転業させて、そしてその期間イワシの旋網という特別な漁法をもってとっておるイワシであります。その漁業者の犠牲の中でとっておりますイワシを一方的に、三から十三に入ってくるソ連の権益を阻止するためにこれをソ連に供給をする、その反面バーターとして日本の必要とするスケトウを輸入するということでありますからして、当然これは北海道の権益として、北海道のオール水産ないしはオール漁民か一丸となってこの問題に対する輸入の窓口たるべき資格者でなければならない、かように私は思っておるわけであります。  そこで、ただ問題は、これは先生方に特に御理解をいただきたいわけでありますか、イワシは夏場にとれるわけでありまして、しかも一挙に大量にとるということであります。一挙に大量にとるイワシを、ソビエトが喜んで食糧に供せるような鮮度保持のままソビエトに渡すためにはどうすべきかという、技術的な問題が一つあります。それと、スケトウという魚は、これも生のままではサケ・マスやニシンのように長く貯蔵にたえるものではありません。それを北洋の遠隔の地から積み取り船で持ってきて北海道もしくは東北に揚げるとしても、これも技術的に大変な問題だと私は思っておるわけであります。あえてこれは不可能な状態ではないであろうかというくらい実は厳しいものであろうというふうに思っております。  そこで、私ともの考え方としては、これを——それかといって北洋に母船を出して、そこで日本が買い取りをしてミールやすり身などを工船の中でつくった場合にこれはどうなるかということになりますと、なるほど日本の国のたん白供給源にはなるとは思いますけれども原料不足によって事業が大変窮迫してきております零細な中小加工業者が、これによって外圧で抑えられて、むしろますます生活が厳しくなり、経営が窮迫してまいるということにつながってまいります。そういうことを考えますと、やはりこの原料はどうしても一定量を鮮度を保持して北海道の港に入れて、そしてその原料を一定の、従来のパターンである流通経路をたどりながら、そして加工業者の庭先に行って、それを原料にして零細な加工業者が加工を施す、そしてできた製品が日本のたん白食糧として市場に放出される、こういう形態があってこそ初めてバーターの意義があるというふうに私用身は思っておるわけであります。  でありますから、そういう方式をとるためには、どうしてもここで率直に申し上げておきたいと思いますが、このスケトウを輸入する場合には、北海道の基地にソ連の漁労船を入れなければこれのバーターの技術的な操作はできないと私は思っております。一定の期間、一定の隻数、一定の量を決めて、そして日本の基地にソ連の漁労船を入れて、そして一定の鮮度を保持しながらスケトウとイワシのバーターを実務的にやっていく、こういう方式が一番望ましいのではないであろうかと思うわけであります。  しかしながら、現状からして、北海道にしても東北にしても、このような日ソ暫定取り決め協定の厳しい現状の中では、漁民感情が許し得ないほど実は厳しさを加えております。しかしこれは、いま一時的に漁民が大変厳しい表情を持ってはおりますけれども、将来の日ソ友好親善という立場からすれば、やはり同じ海で働く者同士が互いにやはり自分の母港に来ていただいて、そして、その物の交流の中から人間としての交流が始まり、そこから日ソ友好親善の本当のきずなが生まれることによって将来の親善友好が生まれ出るものと、そして将来持続されるものであろうと、このようにも考えておるわけでありまして、そういう方法こそがこれからの日ソ友好の大きなきずなになるのではないであろうかと思っております。実は、このバーターの問題につきましては、そのような方法と考え方を持ちなから、どのような道をたどるか十分ひとつ検討をし、先生方の御賢察もいただきたい、かように実は思っておりますことをつけ加え、私ども考え方の説明にかえさせていただきたいと思います。
  131. 寺前巖

    ○寺前委員 どうもありがとうございました。
  132. 竹内黎一

  133. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 大変に長時間おつき合いをいただいてまいりましたので、私で最後でございますから、端的に二、三点だけ御質問をさせていただきたいと思います。  まず池尻参考人にお尋ねを申し上げます。  二百海里時代になって沿岸漁業が大変重要になってきたということはもう周知の事実でございますけれども日本の十二海里内の漁場の開拓あるいは二百海里内における漁場の開拓というものを一体具体的にどう進めていくのか。そして、この二百海里の中における漁業の漁獲量というものを確保するということを考えたときに、二百海里の中だけでかなり開拓をすれば開拓できる余地があるのではないか、こういう気がするわけでありますけれども、今後の開拓についてどんなふうなお考えを持っていらっしゃるか、お尋ねをしたいと思います。
  134. 池尻文二

    ○池尻参考人 お答えいたしたいと思います。  日本の十二海里の中の漁獲量は、一千万トンの中に三百万トンを占めておるわけでございます。それに二百海里の内を含めますと、大体現在でも五百七十万トン近くになるのではないか、かように考えられます。そこで、仮に外国の二百海里水域内での漁獲が将来ゼロになるという仮定から、もし必要最少の量を一千万トンとすれば、どうしてもあと四百万トンかを確保しなければならないということになります。  そこで今後の開発計画が問題になってくるわけでございますが、日本は、御案内のとおり、水産庁の研究所等を含めまして、そういう技術は世界的にも非常にすぐれている一面も持っておるわけでございまして、現段階におきましても、ある品種だけならば相当の量伸ばせるというところまで来ているわけでございます。問題は需給の関係でございますから、極端に申し上げますと、アワビならアワビ一種の品目に限定しますと、これはもう直ちに百万トンもつくり得るわけでございますが、そうしたらアワビを一体国民が食べてくれるかどうかという問題になります。タイの増養殖にしてもそうだろうと思います。したがって、今後やはり、現在の日本国民がいろいろ需要を持っております。そういう需要にこたえながら魚族資源をふやしていくという努力をしなければならないわけでございますから、そこにやはり一つの問題があるということでございます。  そこで、いわゆる大陸だな、水深二百メーター以浅の水域、これが平方メートルにいたしますと、日本国土面積の八割ですから、ちょうど三十万平方キロあると思います。現在何らかの形で増殖、養殖、そういうものか行われ、天然魚礁を利用して沿岸漁業が行われているところはわずか一万平方キロメーターでございまして、埋め立て地あるいは海中公園あるいは海上交通で、ここはまあ漁業としてはあきらめざるを得ないというところが三万平方キロメーターありますから、残りの約二十五万平方キロですか、この中の半分でも開発計画を立てて、こういう角種を、あるいは水深に応じてこういう技術で、水産土木等を利用いたしましてという開発のプランというものは、ある分野ではもうできかかっておるということでございますので、先ほど寺前先生からも御指摘がございましたが、ある時期に七カ年二千億の——これは二百海里時代は予想していなかったときの考え方でございますから、これを見直していただきまして、日本の技術陣をフルに動員してやりますれば、日本の技術で決して不可能な数字ではないと確信をしておるわけでございます。
  135. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 重ねてお尋ねをしたいのでありますけれども、もちろん当面の働けなくなった方々の補償という問題は当然必要なことであろうと思いますが、しかし、現地の皆さんのいろいろなお話を伺いますと、われわれは補償してもらいたいのではない、基本的には、補償をしてもらうということよりは、やはり魚をとって生活をしてきたわけでありますから、いままでどおり魚をとって生活ができるということがわれわれの本当の要求であり、当面一番切実な問題なのだというお話を私ども聞いているわけでありますけれども、すでにいろいろ皆さんからも御意見もいただいてまいりましたけれども、そう順位がつけられるものではないかもしれませんが、これから新しい優良な漁場というものをほかに求めていかなければならないだろうと思うのです。具体的に南米であるとかあるいはニュージーランド、オーストラリアというお話がございましたけれども、今後わが国が水産外交というものを積極的に進めていく上で、皆様方の希望として、まず一体どういう優先順位で進めていくべきなのか、より具体的にお話をお伺いしたいと思います。
  136. 池尻文二

    ○池尻参考人 海外の漁場をできるだけ開発をし、あるいはすでに南米その他メキシコ、そういったところで、両国の話し合いによってはたとえば合弁形式、あるいはその他の方法によって漁場か形成され得るというところは、私はやはりかなりあるのではないかと思っております。  ただ、従来、合弁と申しましてもなかなか政情か不安定である、あるいは投資をしてもこちらか当初目標にしておりましたような魚というものが十分に得られないとか、過去にいろいろな失敗の経験もございまして、合弁必ずしもそう簡単な道ではないということも事実でございます。したがいまして、でき得るならばやはり、特にいま北洋関係でこういうショックを受けておるわけでございますから、そういう過剰勢力の操業のはけ場として、具体的にここに何隻というようなこと等もそう満足には出てきませんけれども、わが国の二百海里の開発だけではなくて、やはりそういう外国漁場の新分野を開拓するということにつきましては、政府も特段の努力をしなければならないのではないか、かように考えておるわけでございます。  ただ、先ほどの寺前先生の質問とも関連をするわけでございますか、要するに、今後の日本漁業を組み合わせするときに、八月に許可の一斉更新の時期が来ておるわけでございますが、いままでの漁業法上の一斉更新制度では、大体五年を一期として、資源状態を見て、許可制度のあり方を決めていくというたてまえになっております。もちろんサケ・マス等の国際漁業は相手のソ連等があることですからこれは一年になっておりますが、そういうことで来ましたが、今度からは漁業の許可の切りかえのときに、いわゆる従来のような単純方程式で解けないファクターというものが、外国の二百海里というようなことの波及的な効果で出てきたということでございますから、今度の一斉更新にはもう間に合わぬにいたしましても、今後はいわゆる資源とにらみ合わせて、既存の許可とそれから裏作に当たる漁業とを漁業上どう組み合わせるか、あるいは既存の許可というものに受け入れる余地があればそこにどのくらいを受け入れて、この危局というものを突破するために、みんなが分かち合って生き延びる必要があるという時期もあるかと私は思っております。したがいまして、許可制度の運用は運用、それから新しい漁場の開発は開発ということで、やはり両面を詰めていきながら、現状の危機を突破しなから時間をかせいでいきたいというのが本音じゃないかと思います。
  137. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 兼平参考人にお尋ねをしたいのでありますけれども、特に北海道におきましては、季節労働者だけでも約二十九万人の方々が新しい職場を求めている、こういう現状の中で、今度の漁業の問題で、予想されるところですと一万人に近い方々があぶれてしまう。新しい職を見つけるなり、あるいは新しい漁場にその職場を転換をしていかなければならない。大変切実な問題、北海道あるいは東北に関しては大変な事態を迎えているわけでありますけれども、実際に私どもが、漁獲量か減って仕事場がなくなってしまうというものの調査をしてまいりますと、実際には大きな企業はそれほど大きな減少がなくて、むしろ魚をとる量が減るということに関しては、そのしわ寄せというものが中小、零細漁民方々に非常に大きくのしかかってきている、こういう現地の声を私どもは連日聞かされているわけであります。現状でこういう声があるわけでありますけれども、実際にその配分等についてはどういう形でしていくのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  138. 兼平純吉

    ○兼平参考人 ただいまの先生の御質問でありますが、私はこれは問題点は二つに整理せざるを得ないだろうと思っておるわけであります。  一つは海上労務者の場合、これは減船、いわゆる自分の乗り組んだ船がもう出られなくなった、出られなくなったために自分が失業する、そのために転廃業せざるを得ない、いわゆる海員労務者ですね。こういう一グループがあり、それと、その原料北海道三百六十万トンとっておった数量によって、中小の加工業者さらには運搬業者、それぞれの流通過程における加工関係業等に従事しておった者か、その企業の縮小もしくは倒産そういうことによって廃業せざるを得ない、またそれによって離職しなければならない、こういう労務者。区分か二つに分かれるのではないであろうかというふうに私自身思われます。  そこで、海員労務者につきましては、先ほど池尻さんからもお話がありましたように、私どもとしては、この人を陸上に上げて陸上の業務をさせようという考えは持ちたくない、できるだけ海上で働かしたい。そのためにはこれから海上でどのようにして働かせるか。それだからといって、沿岸漁業にUターン現象が大きく出てまいりますと、富の配分論の上に立ってまた沿岸漁業の荒廃が生まれてまいります。そういう悪循環が参ります。そこで、このことにつきましては将来大変な政治問題として大きく取り上げなければならない重要な問題であろうというふうに思いますので、いま直ちにこれに対する決め手を御披露申し上げるという段階ではございませんけれども、いずれにしても、北海道にそのようなUターンといいますか、離職をする海員の労務者が約一万人近くおるということだけは否めない事実でございます。これの対応策は、十分政府ともども相協議しながら対応策を進めてまいりたい、かように思っております。  それからさらに、それ以外の加工労務者、流通業界に従事しておる労務者、こういうものも当然失業労務者としてあらわれてまいるわけでありますからして、これらの場合の労務者の対策につきましては、一朝にしてそう簡単にすぐ転廃業のできるものでもまたないわけでありまして、これは何としてもやはり政府の行政の中でどのようにして再就職を促進するか、実は労働対策として大変めんどうな問題が生まれてくるだろうとは思いますが、私は、こういった非常事態でありますから、できることならこのような厳しい事態を救済するために、一応政府の方としてはこのような事態を救済する基本的な法案をつくって、その法案の上に立って充実した諸対策のできますような抜本的な方策を考えていただきたいものだ、かように実は常日ごろ考えておりますので、それは具体的にどうするのだというこれも決め手をまだ持っておりません。余り急な事態でありますからして、私どもは当面の問題に追われましてこれらの問題までまだ手が届いておりませんけれども、しかし、いずれにしてもほうっておくわけにはいかない大きな諸問題が発生しておりますだけに、これは抜本的に法案措置をしながら救済措置を施してもらいたい。むしろ、私の方から先生にお願いを申し上げる次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  139. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 参考人皆様方の御協力に心から感謝を申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
  140. 竹内黎一

    竹内委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本件審査のため大変参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  午後六時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後五時十八分休憩      ————◇—————     午後六時七分開議
  141. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  政府に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺朗君。
  142. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 農林大臣にお尋ねをさしていただきます。  今回の日ソ交渉に当たりまして、大臣大変御苦労をされました。本当に御苦労さまでございました。大変苦しい交渉だったと思いますが、ただし、率直に私言わしていただきますと、領土問題とそれから魚の問題の切り離しができたのかどうか、わが国の領土問題に対する主張が貫かれたのかどうか、大臣は、その点先般来それは貫かれた、こういうふうに言っておられますけれども、実を言いますとやはりどうしても不安が残ります。これはやはり国民の中にかなり広範にある不安感あるいは疑心暗鬼であろうと思います。これは決して交渉の当事者である大臣に対する不信感ではございませんので、相手が大変むずかしい相手であっただけに、そういった疑心暗鬼が出てきたと思いますので、私はその点あらかじめお願いをしておきたいと思いますが、大臣の率直なお考えをむしろ聞かしていただきたい。特に交渉の合間で恐らく食事も一緒に向こうの担当者とされたでしょうし、雑談もされたでしょうし、条文の上であるいは協定の第何項のどこどこでこういう文言があるからこれで大丈夫というようなことではなくて、恐らくは大臣はそういうさまざまな片言隻句の中からもいろいろな感触を受けとめられているに違いないと私は思います。むしろそういった面を私は聞かしていただきたい、こういうふうに思います。それをあらかじめお願いをいたしておきます。  その問題に入ります前に、実は昨日の外務委員会、ここで大臣が御答弁されました。そして、またけさの新聞に載っておりました。それはソ日交渉の問題に当たりまして、仮定の問題としてというふうに質問があった場合に、大臣の答弁として出ている点でございます。大臣はこういうふうにお答えになりました。「ソ連が現に(北方四島を)占有し、施政を行っていることを理由に、(北方四島周辺水域に対するわが国の)管轄権の行使を拒否するといってきた場合、あるいはわが国二百カイリ法の第三条や第一四条によって、適用をはずすべきだと主張してきた場合には、それは高度の政治判断をする問題である」こういうふうにお答えになりました。     〔委員長退席、鯨岡委員長代理着席〕 そのことがけさの幾つかの新聞に、私の見た限り載っておりました。  つきましてはこの点で、ソ日協定をつくる、その交渉をこれからしようとする、その場合に、ソ連側からそうした主張をしてきた場合にというような予想をつくって、そして答弁をされたということは、これからの交渉を始めようとするやさきに、私は、大変これまずかったんではあるまいかと思いますけれども、この点はいかがお考えでございますか。率直にお聞かせいただきたいと思います。
  143. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 ソ日協定は六月の二十日ごろから行われることになろうか、こう思っておりますが、その際に最大の問題は、適用海域の問題になるわけでございます。ソ連側が、わが国の漁業水域に関するところの暫定措置法、これがすでに五月二日に国権の最高機関である国会で御決定になっておるわけでございますから、この漁業水域に関する暫定措置法を認めるということか前提になるわけでございます。この暫定措置法は、政令を待つまでもなく、わが国の沖合い、領海の外百八十八海里に水域が明確に設定をされる、こういうことに相なっておるわけでございます。この百八十八海里の漁業水域にソ連漁船が操業するところの手続、条件等を定めるのが、今度のソ日協定に相なるわけでございます。したがって、この暫定措置法の適用される海域、これを認めるということが大前提でございまして、これを認めないという立場におきましては、ソ日漁業協定交渉は行われない、こういうことに相なるわけでございます。  これに関連いたしまして、ただいま御質問がございましたが、渡部一郎委員から、この北方四島は、現にソ連がこれを占有をし、施政を行っておる、わが国の施政は及んでいない、こういうことで、北方四島の領海に対するわが方の対処方、またその沖合いに連なる水域についての問題、この問題が理論的な問題として、いろいろ議論が政府委員との間に展開をされたわけでございます。  そういうようなことに関連をいたしまして、私、施政が及んでいないというその沖合い海域の問題について、ソ側がどういう要求をしてくるか、どう条約上、法律論上なるか、そういう問題につきましては、これは高度の政治判断を要する問題である、こういうことを申し上げたわけでございまして、わが方としてああする、こうするということを、まだ政府として決めておるわけではございません。
  144. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、いまの高度の政治判断というところにちょっとこだわるわけでございます。実は、暫定措置法には水域の適用除外がございます。あるいは外国漁船に対する規制除外がございます。そうすると、それを盾にとってソ側の方で言ってきた場合には、高度な政治判断をするんだということになりますと、あたかもそういうことを想定して、受け入れる用意があるかのごとく感じられるわけでございます。もっと勘ぐると、いまそのような答弁があるとするならば、もうすでにソ日間にソ日協定締結のために話し合いが行われているので、そしてまたそのような提案がソ連側からもあるので、それを含んだ上でいまお答えがあったのではないかというふうな実は憶測もしたくなるわけでございます。そういう点もう一度、それはないのか、単なる理論上のやりとりであって、そういう態度で私どもはいきませんよということをはっきりやはり明言しておかれる必要があるんではございませんでしょうか、その点いかがでございましょう。
  145. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 その問題につきましては、まだ何らの話し合い等はいたしておりません。と申しますことは、ソ側は五月中検討をした上でということで態度を保留しておるわけでございますが、ソ日協定を結ぶという交渉に踏み切るかどうか、ソ連政府部内で十分時間をかけて検討したい、こういうことをすらあの交渉の段階で申しておったような状況でございまして、ソ日協定について話し合いか両政府間でなされておるというような事実は全くないわけでございます。
  146. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、今度は、昨日あるいはけさの新聞に載りました御答弁の問題はその程度にいたしまして、やはり協定の本文の方に返りましてお尋ねをさせていただきたいのです。  協定の第一条、これを読む限り、ソ連最高会議幹部会令第六条とソ連政府の諸決定によって定められた水域、これをわが国が認めたということになっておりますので、ソ連が北方四島を占拠している現実を公式的にも日本側としては認めた。第八条で、それを相殺するような文言があると言いながらも、これはやはり第八条の方は非常に不明確でございます。あいまいな表現でございますので、どうしても協定第一条の方が生きてくる、強く出てまいります。その点が、実は大臣が大丈夫だ、あるいはまたわれわれの主張は通したんだ、こう言われましても大変に不安が残るところでございます。ですから、私は文言の上でこういう八条があるから大丈夫だとかなんとかということではなしに、恐らくイシコフさんとの話し合いの中で、あるいはまたソ連関係者との話し合いの中で、感触として得られたものがいろいろあろうと思います。そこら辺をひとつ話していただかないと、第一条あるいは第八条の関連だけでは、大臣が大丈夫と言われるのがどうしても出てこないんです。納得できないんですが、そこら辺はいかがでございましょうか。
  147. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 まず最初に渡辺さんに御理解を願いたいと思います点は、ソ連邦が幹部会令の適用をいたします海域、これが第一条でうたわれたわけでございますが、この幹部会令の適用される海域をわが方が認めない、どうもこれは領土絡みの海域であるということでこの海域を認めない、こういうことになりますと、漁業交渉はもう玄関口で門前払い、こういうことになるわけでございます。これはアメリカの水産資源に対するところの保存管理法、このアメリカの法律に定められた二百海里漁業専管水域、これを認めない場合におきまして、日本漁船はいかに伝統的な実績を持っておってもこの水域に一隻たりとも入漁することができない、と同様に、ソ連幹部会令でもって適用され設定されたところの海域を認めない、変更せよ、こう言いましても、これは日本の国会に相当する最高会議幹部会で決定したものであり、政府がそれを受けていろいろの政令に相当する諸決定をしております。これを改正、修正を求めても、これは応じるわけがない。日本漁業水域に関する暫定措置法をよその国から、これは気に食わぬから改正をせい、これは国権の最高機関として絶対に容認できない。同様のことでございます。  そこで、この漁業交渉をし、日本の伝統的な実績を確保し、ここで日本漁船を操業させようとするならば、この適用海域というものは認めざるを得ない、これがまず前提になろうかと思うわけでございます。  しからば、あとはこれが純然たる漁業に関するところの線引きであって、領土の問題とは切り離すという問題、そういう方策をわが方としてはとらざるを得ないわけでございます。それには二つ対応の仕方があると思います。  一つは、わが方におきましても、固有の領土であるという立場に立ちまして、国会は漁業水域に関する暫定措置法というものを五月二日に御決定になっております。この暫定措置法は政令を待つまでもなしに、この暫定措置法そのものが日本の国土の沿岸沖合い二百海里に対して、領海の外百八十八海里に漁業水域法の適用を受ける水域を設定しておる、こういうことでございます。でありますから、それがわが方においてもソ日協定においてこれが適用されるわけでございます。でありますから、私、先ほどの御答弁で申し上げたように、ソ日協定はわが方の漁業水域に関する暫定措置法を認めることが大前提であり、これなくしてはソ日漁業交渉はもう中にも入ることができない、これが前提である、こういうことを申し上げたわけでございます。そういう意味で、私は今回のソ日協定におきまして、わが方の漁業水域法によってはっきりと北方四島を含むところの漁業に関する線引きというものがなされておる、すでにこれはなされておるわけでございます。これをソ連その他の国が認めることによって、初めて漁業協定という交渉に入り得るということになるわけでございます。  もう一つは、第八条等の——今回は第八条になったわけでございますが、この協定のいかなる規定も、国連海洋法会議で検討されておる諸問題、また相互の関係における諸問題についても、両国政府立場及び見解を害するものとみなしてはならない、こういう規定によって、明確に領土問題と切り離して、純然たる漁業に関するところの海域の範囲を決めたものである、適用海域を示したものである、他の問題には、領土問題等には関係ないものであるということを明確にする。  このいずれかの、二つの方法以外にないわけでございまして、こういう点につきましてはイシコフ大臣とあらゆる角度から話し合いをいたしまして、長い長い苦渋に満ちた交渉ではありましたが、最後にやはり日ソの将来に向かっての友好関係を維持、発展をさせるという大局に立って、第八条の修正によって、この問題を純然たる漁業問題として処理するということで意見が一致をいたしまして、このような修正になった、こういう経緯でございます。
  148. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまお答えいただきました中で、私関連して二つの点、お伺いしたいと思うのです。  一つは、たしか日本案を提示しましたときに「相互におけるその他の諸問題」という言葉があったと思います。それをソ連側の方は非常に固執して、これを削れということを主張したということが伝えられております。そして最終的には削られて、「その他の」という言葉がなく、「相互の関係における諸問題」、こういう形になっております。ここら辺が、なぜソ連が固執したのか、またその削った言葉の中に大変な意味があったのかどうなのか、ここら辺をぜひひとつ、交渉の話し合いの中でどのようなやりとりが行われたのか、教えていただきたい。  第二番目にもう一つお聞きしたいと思いますのは、なかなかむずかしいと思うのですが、八条の、せっかく入れられる場合だったら、この言葉をそのような形で領土と魚を切り離すという意味で入れられたのであるならば、もう少しはっきりと領土ということがうかがわれるような文言ができなかったものであろうか。ソ連側の方もメンツもあるでしょうから、なかなか固執するでしょう。しかしここら辺のやりとりはいかがなものであったかということ、この二つ、お聞かせいただきたいと思います。     〔鯨岡委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 第一点の日本案、A案、B案とあったわけでございますが、A案から「その他」という字句を削除する——最初はソ側はB案がいいということを言っておったのであります。しかしいろいろのいきさつがございまして、ソ側もとうとうA案に乗ってきたわけでございますが、その際「その他」という字句を削除をするという、ソ側から提案があったわけでございます。このA案を法律専門家の諸君でいろいろ検討いたしました段階におきまして、A案ができるまでの間におきましても、「その他」の字句を入れた方がいいか入れない方がいいかということで、入れなくとも十分意味は明確であるという議論等もあった経緯があるわけでございますが、私もせっかく専門家の間で決定を見た、検討の上できた案でございますので、イシコフ大臣からそういう四文字の削除の提案がありました場合に即答を避けまして、これは純然たる法律、条約の問題で、しかもこの第八条の問題によって、背景にあるところの戦後未解決の問題というものと切り離して今回の協定は純然たる漁業問題としてやるんだという、重要なこれは第八条であるからということで即答を避けまして、時間をかけて検討もするし、また本国政府の確認も得たいということで、一日待ってもらいまして、そしてモスクワにおきましても大使以下外務省から行かれた欧亜局長、それから条約課長、その他の方々もお集まりを願って、この削除によって一体どういう意味合いになるんだ、せっかくわが方としては領土問題に何らのかかわりを持たせずにわが方の立場を害さないでやるというこの条項、これについてあらゆる角度から御検討願い、同時に東京に請訓をいたしまして、東京におきましても条約局長あるいは法制局長官等が中心になってあらゆる角度から御検討願って、この「その他の」という文字を削除しても本質的には何らの支障がない、こういう確信ある訓令をもらいまして、そこで最終的にこの条項をセットした、こういう経緯になっておるわけでございます。  そういうことで、大事の上にも大事劇吟味の上にも吟味をした上でこの点は法律専門家の間で十分検討の上いたした結論である、こういうぐあいに御理解を賜りたいと思うわけでございます。  それから第二の点につきましては、そもそもこの領土問題と漁業問題を切り離して純然たる漁業問題としての協定である、こういうことにはっきり割り切ってその点も八条でうたい上げる、ここまで参ります経過というものは、御承知のように戦後未解決の問題というのが背景にあったからでございます。戦後未解決の問題でございますから、この領土の問題をそこにはっきり持ち出してきて、そしてここで第八条に領土問題にかかわりなくという表現を使うということにつきましては、両国でこれは合意をするというわけにはいかない。大体御承知のように一九七三年の田中・ブレジネフ会談におきましても、戦後未解決の問題を解決して日ソ平和条約締結交渉を今後も継続をする、こういうぐあいに戦後未解決の問題を解決してと、こう両首脳の間でうたったわけでございます。その場合でも、戦後未解決ということでなしに、はっきりと領土問題について、この問題を解決して平和条約を結ぼうではないか、こううたい上げればきわめて明快なわけでございますけれども、あの時点におきましても戦後未解決の問題、最高首脳の間で大きな政治問題をあらゆる角度から論議をした結果でもそういう表現になっておる、こういう事情等を、よく経緯を御検討いただけば、この漁業交渉の中で、漁業協定の中で領土の問題にかかわりなく云々という表現をここで使うというようなことは、これはちょっと漁業の責任者同士だけの間ではそういう表現というものはできないということは御理解がいただけるだろうと思うわけでございます。
  150. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 重ねて大臣にお尋ねしてまことに恐縮ですけれども、第一番目に御説明をいただきました「その他の」という言葉を四文字落とされたということの御説明を伺いましたか、実を言うとその重要性が私お聞きしていてもよくわからないわけでございます。恐らく国民の方でも、なぜA案になってその際の「その他の」という文言が落とされたのか、そしてまたそれが大変重要なこととしていまの関係者がお集まりになり協議をされたのか。その経緯というのは当事者だけが御存じであり、そしてまた向こうとのいろいろな言葉のやりとりの中で重要性がおわかりであったから、それを本国の訓令待ちというような形にもされたのではあるまいかと私は解釈をいたします。しかし、いまの御説明だけでは残念なからよくわからぬものですから、そこにどういう重要性が含まれていたのか、重ねてひとつ聞かせていただきたい。  それからもう一つ、二番目の点で私は、ここで八条の中に「海洋法の諸問題についても、」それから「相互の関係における諸問題についても、」と、海洋法の問題の方か先に来ていて相互の大事な未解決の諸問題というのが次に来ているという意味で、比重の点でも大変何だか後ろの方に回されている。私は、せめてここで田中・ブレジネフ共同声明の際のように「未解決の諸問題」という言葉が入っていたらもっとはっきりしたのではあるまいかというふうに思いますけれども、そこまでは持っていけませんでしたでしょうか。
  151. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 この第八条はもともと、本協定のいかなる規定も、国連海洋法会議で検討されておる諸問題についても、両国の立場及び見解を害するものと認めてはならない、これが第八条のそもそもの原案であったわけでございます。それをいろいろの紆余曲折かあって、この北方四島絡みの両国の立場、主張というようなものでこの漁業協定というものが難航に難航を続けてきたということで、最後にわが方から、この八条を修正をし、そこに両国の「相互の関係における諸問題」ということを入れて、そうして純然たる漁業問題としてやっていくのだ、その他の問題については一切この協定は両国の立場及び見解を害するものでないと、こういう、そこに迷路を脱するためにイシコフ大臣との間で合意をして、そしてこれを法律専門家にひとつ成文化を願おう、こういうことになった経緯がございます。そういうようなことで、いまの海洋法会議で検討されておる諸問題、その後にいまのような文言を入れて、そしてこの問題を処理した、こういういきさつからそういうことに相なっておるわけでありまして、海洋法会議の方の諸問題が先に立っておるからこの問題か軽く扱われたという問題ではないわけでございます。これが第二点に対するお答えでございます。  第一点の問題は、いま申し上げたように、私とイシコフ大臣があらゆる問題と切り離してこれは純然たる漁業問題としての協定にしようということで合意を見まして、これを法律専門家等に成文化を願ったということで、これは、私どもの趣旨を体した法律専門家の間で御検討願って成文化されたものであるといういきさつからいたしまして、非常に大事な条文でございます。東京にも訓令を仰いで、外務省の条約局長や法制局長官にも御検討願ったということでございますので、ここに外務省から条約局長も出席をされておりますので、専門家から専門的な立場でその間の「その他の」という四文字を削ってどういう意味合いになるのだ、それで心配がないかどうかということを御説明を願うことにしたいと思います。
  152. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  私ども現地から、いま鈴木農林大臣からお話がありましたようなことで、現地での交渉の状況につきまして御報告を受けまして、この案文につきまして検討いたしましたときに、私ども法律的な観点から見まして、「その他の」という表現があろうとなかろうと、わが国の領土主権を有効に留保するという観点から全く問題は相違はないという判断をいたしまして、「その他の」があるかないかという点は、いずれにしろ私ども専門的な用語で申しますリダクションの問題、表現上の問題ということであるというふうに判断をいたしたわけでございます。
  153. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 条約局長にもう一度お伺いいたします。  いま大臣の方は非常に重要な問題であるというふうにお考えになって慎重に考えようとされたが、それはイシコフさんの方がそれを選んできたからだ。そうした場合に、その向こう側の判断の基準があったはずだと思うのです。それをおっしゃらずに、単に文言上で、あってもなくてもというようなことで御説明になっては、私は大変不十分だし、また不親切であると思いますので、そこら辺もうちょっと突っ込んで御説明いただきたいと思います。
  154. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私がただいま重要でないと申しましたのは、表現の差異の問題について申し上げたわけでございまして、この第八条の重要性について申し上げたわけではないので、その点まずお断りをさせていただきます。  私どもといたしましては、この第八条によってわが国の領土領有権主張が有効に留保されているかどうかという点がこの協定の核心の一つをなすものであるという見地から、ここでいま申し上げましたような、わが国の領有権主張がいささかも害されないような規定になっておるということを確実にするためにこの協定の文言を検討したわけでございます。  そこでソ連側の意図が那辺にありやという点につきましては、私どもから云々する立場にはないわけでございますが、ここで私どもが実現しなければならない問題は、北方四島の周辺の水域において漁業現実の規制をソ連側が行っておるという事態を前提として、その水域の限界をこの協定の第一条におきまして認めておる、そのことによってその四島自体に対するわが国の領有権主張を崩したというふうに解されてはならないということでありまして、いま農林大臣からもお話がありましたように、領土問題というのは戦後日ソ間において未解決の最大の問題でございますから、「相互の関係における諸問題」ということの中にまず第一に入ってくるのは領土問題であることは明白でありますので、その「相互の関係における諸問題」という表現をもって、領土問題に対するわが国の立場が有効に留保されておるというふうに確信いたした次第でございます。
  155. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実を言うとまだよくわからないので、といっても押し問答みたいな形で言ってもこれはいたし方ありませんから、また後で別の機会にでもぜひ質問をさしていただきたいと思います。ただし私は、先ほど農林大臣が言われました、重要性を考えて法律の専門家とも十分協議しなければならぬ、こう言われたのと、それからいまのような御説明で条約局長の方からお話があったのでは、どうも平仄が合いません。その点私は何かそこら辺で隠しておられるのではないかという疑心暗鬼すら覚えるわけであります。ですから、この点はもう一度改めて御質問さしていただきたいと思っております。  さて、いまの農林大臣からのお話がございました、両国間の未解決の諸問題とは言えなかったということでございます。まして領土問題という言葉も挿入はできなかった。「相互の関係における諸問題」こういうふうにしか表現かできなかったと言われるわけでありますが、そうしますと、これからソ日交渉がある、あるいはまた日ソ間の領土交渉も本格的にやっていこうとしているやさき、これは一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明の文言から比べますと、そのときには「未解決の諸問題」とはっきりとした言葉を使っておりますが、今回の場合は明らかに後退したと考えざるを得ないのですが、いかがお考えでございましょうか。
  156. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 先ほど来申し上げますように、今回の協定は純然たる漁業問題に関する協定でございまして、領土問題等のような高度の政治問題をここで論議をし、またそれを処理するという場面ではないことは御承知のところでございます。したがって私どもは、「相互の関係における諸問題」こういうことで漁業問題としては処理いたしましても、田中・ブレジネフ会談というのが、戦後未解決の問題を処理して平和条約交渉を行う、これは田中・ブレジネフ会談を受けての平和条約交渉というものがいままでも何遍か行われておる、今後においても鳩山外務大臣の訪ソ等によりまして継続してそれがなされるということでございまして、今回の八条の表現によって戦後未解決の問題という表現から後退をしたということでは絶対にない、こういうことを御理解願いたいと思います。
  157. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは領土問題に関連いたしましては以上で一応質問を終わらしていただいて、次に協定の中身について二、三お伺いをさしていただきたいと思います。  先日新聞を見ておりましたら、ソ連側は本年二百海里内の日本漁船の入漁料を徴収しない、こういうことが新聞では報道されておりました。この情報は、政府として確認をしておられることでしょうか、どうでしょうか。そしてまた本当にそうであるなら、徴収しないとする理由は一体何でございましょうか。
  158. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 今回の日ソ漁業交渉の場面におきまして、この入漁料の問題は、協定文の中に許可証を交付する際に料金を徴収するという規定が盛られております。この問題は、日ソ協定ソ日協定というものが両方でき上がりまして、そして両方が同じ立場でこの入漁料、料金等を決定する方がよかろう、こういうことでペンディングになっておった問題でございます。しかし、国会で本協定の御審議を願う、御承認をいただく際には、この問題も当然国会で御審議をされる問題でございますので、大使館の方に、それまでの間にソ連側がこの入漁料の問題、許可証発行の際の料金として徴収するかどうか、徴収するとすればどの程度のものを向こうが要求しようとしておるか、それを確かめてほしい、こういうことを実は依頼をしてきたわけでございます。そこで大使館の方で接触をいたしました結果、当面ソ側としては、許可証発給の際における料金を徴収する考えは持っていないという非公式な話があったということの報告を受けておるわけでございますが、来るべきソ日協定の際におきまして、これは両国の間で最終的に決定をする。両方で取らないようにするのか、また取るとすればどの程度にするのか、ソ日協定の際に相互間ではっきりと決められるべき問題である、こう思っております。
  159. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その点に関連いたしましてちょっとお確かめしますけれども、これは入漁料でございますか。日本側の暫定措置法の方には入漁料という言葉、まだ成案になっているのかどうか知りませんけれども、入漁料という言葉を使われているし、今回の日ソ協定の場合には、これは手数料なんでしょうか。どのような性格になるものですか。そこら辺をちょっとお教えをいただきたいと思います。
  160. 岡安誠

    ○岡安政府委員 ただいま大臣からお答えを申し上げましたとおり、協定におきましては、許可証発給に要する料金と書いてございます。  そこで問題は、料金の金額または算定の基礎等につきまして入漁料的性格を帯びるか、また先生の御指摘のように、全くの発行手数料になるのか、そういう問題が出てくるだろうと思いますが、一応私どもはこれが入漁料に相当するものというふうには理解をいたしております。
  161. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ついでですからぜひ聞かしていただきたいのですが、今回の場合、ことしは取らないかもわかりませんけれども、いよいよ本協定ができる、こういうようなことになってくると、日ソの間でソ連側の方はどのぐらいの入漁料的なものを請求してくるのでしょうか。日米漁業協定の場合には、わが国は十七億円だったと思いますが、支払い負担総額が算定されておりますけれども、どのような算定基準で、どのくらいな金額を予想しておられますか。
  162. 岡安誠

    ○岡安政府委員 モスクワでの交渉過程では、これも大臣からお答えいたしましたとおり、先方はまだ検討中ということだけでございまして、具体的な金額、考え方等を示しておりません。したがって、私どもも予想もできないというのが現状でございます。
  163. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 今度は漁業水域に関する暫定措置法の問題についてお尋ねをしたいと思います。  北方四島周辺水域にこの暫定措置法を適用する。これに関連いたしまして、政令で刑法、刑事訴訟法等が考慮されているようでありますけれども、その適用は一体可能なんでしょうか、ここら辺お尋ねをいたします。
  164. 岡安誠

    ○岡安政府委員 法律の四条で、政令で適用法令を指定をするということになっておりまして、すでにお示しいたしました「政令規定見込事項」におきましては、海上保安庁法、刑法、刑事訴訟法等を考えておるわけでございまして、これは法務部当局とも相談済みでございまして、適用は可能でございます。
  165. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 わが国の取り締まりの方式というのはどのように考えておられるのか、そこら辺をお尋ねしたいという気持ちで質問をしているわけでありますが、刑法が適用されるとするならば、当然また体刑も含むことになるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  166. 岡安誠

    ○岡安政府委員 お答えいたします。  これは漁業水域に関する暫定措置法によりまして、罰則はすでに書いてございます。したがって、それぞれの条項の違反はここにございますような罰金刑、主にここにございますとおり一千万円以下の罰金というようなことが書いてございますので、主要事項の違反は漁業水域法に規定がございます罰則によって処理をされるというふうに私ども考えております。
  167. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうしますと、拿捕して抑留なんということは日本側からはないということでございますね。そのように解釈してもいいわけですね。
  168. 岡安誠

    ○岡安政府委員 失礼いたしました、ちょっと質問が……。
  169. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ソ連漁船を拿捕し、乗組員を抑留するというようなことはあり得ないと……。
  170. 岡安誠

    ○岡安政府委員 お答えをいたします。  これは、この漁業水域法の十九条によりまして、「犯人が所有し、又は所持する漁獲物及びその製品、船舶又は漁具その他漁業若しくは水産動植物の採捕の用に供される物は、没収することができる。ただし、犯人が」云々というふうに書いてございまして、そのような拿捕といいますか、そういう事態も当然起こり得るわけでございます。
  171. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次いで私は、今回の日ソ漁業協定で、ソ連側かわが国の入漁水域、これを具体的に七カ所に指定してきておりますけれどもソ日協定ではわが国の二百海里水域内でソ連が操業し得る水域、こういったものを具体的に指定するお考えでございますか。農林大臣、どのようなお考えでございます。
  172. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私は、十二海里の領海の中では一切外国漁船を操業させない、これは領海法の立法の趣旨からいたしましてあくまで堅持されるわけでございます。そこで、十二海里の外のいわゆる漁業水域に関する暫定措置法の適用を受ける海域で、外国船の操業を協定によって、また日本政府が決める規制措置に従って操業をさせるわけでございますが、その際におきましても、資源保護上の観点から操業の区域を禁止または制限をするということがございます。  それから第二の問題は、日本漁船の操業と競合、摩擦を生じないように秩序ある操業をさせるように考える、これが第二点でございます。  また、十二海里の領海の外にまで延びて漁業権が設定されておるのでございますか、そういう漁業権等を侵害をするというようなことも、外国船の操業は国内船と同様にこれは禁止されるわけでございます。そういう点を十分考慮しながら、わが方としてはソ連漁船その他の外国漁船の操業を規制をしてまいる、こういう考えでございます。
  173. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次いで、大変今回の日ソ漁業協定によって打撃を受け、大きな被害もこうむっている、そういう事態にある漁業者及びそこに働く人たち、この人たちの補償及び将来の職業の転換、あるいは広く日本漁業そのものの構造的な転換も図らなければならない、この問題についてお尋ねをしたいと思います。  昨日も農林大臣、非常に積極的、意欲的なお話がございました。万全の措置をとって補償をする、さらにはまた日本漁業の方向についても見直しをやらなければならない、私はぜひともそういう意欲を持って取り組んでいただきたいと思います。そうでないとだんだん手おくれになってしまう。  そこでお尋ねをいたしますか、私は率直に言いまして、政府の方で万全の措置と言っておられるけれども、そういう方向づけというものを本当にしておられるのであろうかどうか。たとえば、まだまだお隣の韓国あるいは中国、そういうところでは漁業専管水域の設定はしておりません。そうなりますと、アメリカ、カナダ、あるいは近隣におきましてソ連というところでは二百海里が設定され、そこからまた厳しい条件も出されまして、日本漁船が締め出される、こういうことはあるけれども、まだ日本周辺全域にわたってそのような状態ではない、だからまだまだ時間がある、こういうふうな余裕のある考え方ではあるまいかと思うのです。  実を言うと、私はもう余裕もなくなってきた、大変せっぱ詰まった状態であるというふうに現状認識しておりますけれども、まずその点、現状認識について農林大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  174. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 政府といたしましては、四月一日から北洋海域における操業を停止をいたしまして、今日までサケ・マスの一部漁船の出漁以外には休船のやむなきに至っておるわけでございます。これによるところの経済上あるいはまた働く人たちの雇用の問題、いろいろ深刻な問題が出ております。また、関連企業等におきましても、業種によって影響の度合いは違いますけれども、これまた広範な打撃をこうむっておるわけでございます。  そこで、政府としては、とりあえず四月、五月の関係漁業者、漁民に対する給与等の手当ても必要であり、また、仕込みその他で借り入れをしておりましたところの決済もしなければいけないということで、緊急のつなぎ融資を数次にわたってやってまいりましたことは御承知のとおりでございます。  しかし、今回日ソ協定によりまして漁獲量も決まり、各魚種別、業種別に大体クォータも配分か決まってきておりますので、これに見合ったところの適正な経営規模、操業規模、操業体制、こういうものをいま業界と連日協議をいたしまして詰めておる段階でございます。  また一方におきまして、これらの減船なり給料なりというものの実態の把握に努めますと同時に、政府内におきましては、大蔵省、労働省、運輸省等とも協議をいたしまして、その救済措置等をいろいろ検討をいたしておるわけでございます。大体今月中には、政府でこれらの具体的な救済措置を閣議で決定をするように諸準備をいま急いでおる段階でございます。  周辺の韓国でありますとかいろいろの国が今後二百海里をやってくるという問題につきましては、その影響の度合い等々を勘案しなければ、いまからその救済措置というものは予測できないことでございますから、当面はとにかく今回の日ソ協定に伴う減船その他の問題について救済措置を具体的に進める、また雇用対策等もできるだけ手厚くこれを進めるという方向で対処してまいる考えでございます。  さらに、今回のことを一つ踏まえまして、将来二百海里時代に各沿岸国との間に協定等も結ばれる、それに伴っていろいろ問題が出てくると思うのでありますが、そういうものに対する救済その他の措置等について、あらかじめ立法措置が必要であるかどうか、そういうものを用意しておいて、いつでもそれの適用によってやる、そういう制度なり立法措置を必要とするかどうか、これもあわせて今後検討してまいりたい、こう思っております。
  175. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま補償の問題一つ取り上げてみましても、大変積極的なお話がございました。また、総理大臣初め皆さん閣僚の方からも万全の措置を講じたという言葉が出てくるのですが、たとえば農林大臣は、六月三日の本会議で雇用調整給付金制度の活用というような問題も言っておられます。あるいは石田労相の方は、漁業離職者の臨時措置法、こういった問題を関係各省において協議したいと言っておられる。それから、労働省の関係者にいろいろ聞いてみましても、現行法でいいではないか、こういうようなことも言っておられる。何か方針がまだちっとも固まってない。万全の措置というのが何か口先だけ、かけ声だけになって、具体的な煮詰めた方向というものが打ち出されていないという点、非常に不安を覚えますので、これはぜひともまず農林大臣が中心になって、最もいい方法を推進していただきたいと思うのです。  私は、特にいま補償の問題が一面においてあります。だけれども、それだけでは解決できないで、やはり日本漁業の構造的な転換を指導していかなければいけない、その方向を何とか早くつくり出さないと、本当に後手後手になってしまうのではあるまいか、こういうことを感じますので、その点ぜひお願いをいたします。
  176. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたように、漁業経営に対するところの救済措置並びに働く方々の離職者対策あるいは保険の給付の問題——この離職者の就業対策につきましても、海から陸へという場合もございます。海から海へという場合もございます。そういう点、あらゆる角度からいま検討を進めておりまして、先ほど申し上げたように、今月中には関係漁業に対するところの救済措置とあわせて、雇用問題、職業転換等の問題についての具体策を閣議で政府として決定をする、こういうことで準備を急いでおるということでございます。そう時間をかけないで、早急に閣議決定をして関係者に御安心を願うようにしたい、こう思っております。  それから、こういう厳しい二百海里時代に対応しての新しいわが国の構造問題を含めて、わが国の漁業はどう対応すべきかという問題につきましては、いま、役所だけでなしに、民間、学界あるいは専門家、技術者等のお知恵も拝借するように、懇談会あるいは調査会等を設けまして、早急にはっきりした今後の日本漁業の新しい対応策というものを確立をしたい、こういうことで取り組んでおる段階でございます。
  177. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その点で農林大臣に特に一つ要望をさしていただきたいと思うのです。  漁業者の補償あるいは漁業の方向転換の問題、こういったことはよく論じられておりますけれども、実は、そういう業種の中で働いている人たち、特に海の関係で働いている人たちは、陸上の労働者と違いまして大変特殊な条件のもとに置かれております。たとえば船に乗って仕事をしている人は、保険の問題なんかでも状態が違っておりますので、こういった点も含んでの配慮をしていただきたい。  特にこの間、私ちょっと気になりました。それは、大臣が答弁をしておられて、それが新聞にも大きく出ておりました。見出しは大手資本の漁業に対する補償はしない、一見大変りっぱな言葉ではありますけれども、実を言うと、働いている人たちの立場になって考えますと、その企業が大きかろうと小さかろうとやはり失業は失業である。この問題の補償を、大手企業だからこれに対しての考慮はしないというふうに解釈されたり——少なくともあの記事からはそのように受け取れたわけでありまして、私は、企業の大中小にかかわらず、今度の海上労働者が失業していくあるいはその失業の不安の前におののいているというのは、これは明らかに政治責任の問題だと思うのです。企業責任の問題ではない。つまり、日ソ漁業交渉の行方というものの目測を誤った、これはやはり政府の責任において、そこで失業をする、失業のおそれがある、この人たちに対しては補償をするという態度を打ち出していただきたい。大手の企業であるからしないのだ、こういうことになりますと、失業の問題は企業の責任という形に全部転嫁されていってしまう、そういう論理にもなってしまいますので、特に働いている人たちの立場、これをひとつ考慮をしていただきたい、この点を要望させていただきます。
  178. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私が先般申し上げたのは、たとえば具体的にはサケ・マスの母船、今回、十母船のうち四母船削減をするようにしたわけでございますが、そういう問題について政府から救済金、補助金等を出すようなことは考えていない、こういうことを申し上げました。  ただ、この企業の中でも、黒字決算をしておるところもございますし、赤字決算をしているところもあるということでございますから、そういう赤字決算をしておるようなもの等について融資等のめんどうを見てあげるということは考えるべきことだ、私もこのように考えております。  ただ働く人たち、これはいまの雇用保険法なりその他の船員保険法なりいろいろの制度がございます。そういう面の適用を受けますことは当然であり、また職業転換等に当たって給付金やその他の手当等が制度によって手当てをされる、こういうことは当然のことでございまして、今回のクォータ、漁獲への大幅な削減に伴って、船からおりざるを得ない、職業の転換をせざるを得ないという働く方々に対しましては、できるだけのことを、大企業で働いておろうと中小漁業者であろうと同様に考えていくということにはいささかも差別をする考えは持っておりません。
  179. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その点、農林大臣に重ねて御配慮をと思いますのは、先ほども申し上げましたように漁業従業者、これは非常に特殊な条件の状態に置かれております。したがいまして、普通の保険法やら何かではカバーできないのです。それから失業保険なんかもないのです。ですから、そういう点で漁業従業者に対しては臨時措置法的なものをひとつ考慮していただきたい、これを要望をさせていただきます。  次いで外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。余りだくさんの質問ではございませんので、ぜひお願いをいたします。  私は大変原則的な問題に返ってお尋ねをいたしたいと思います。いままで議論をしておりまして北方領土、特に北方の四島の返還は自明の理と私ども思っておりますし、そういうふうな主張をしてきているわけでありますけれども政府として正確にこの四島の返還を求める法的な根拠、こういったものはどういうものを掲げておられますでしょうか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  180. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 政府は北方四島、これは一度も外国人の居住を見たこともない地域であるということから、北方四島はわが国固有の領土である、こういう主張をいたしているわけでございます。それに対しましてソビエト政府は、領土問題につきましてはもう解決済みであるという主張をいたしておるわけでありますが、ソビエト政府の解決済みであるという趣旨は、一九五六年の日ソ共同宣言によって歯舞、色丹、これは平和条約締結後に日本に返還する、こういうことを指して言っておるように考えられるところでございますが、千島列島につきましては、ヤルタ協定というものによりまして、ソ連は当然ソ連領土となっておるという主張を持っているものと思います。わが政府といたしましては、ヤルタ協定自体は何ら領土の最終的帰属を決めるものではない、領土は平和条約によりまして初めて領土の帰属が決まるべきものである、このように考えてわが国の領土権を主張いたしておる、このように考えております。
  181. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、実を言いますと、ソ連側がどのような法的な理論をもって現在の歯舞、色丹、国後、択捉、この占有を正当化しているのであろうか、それをやはりいつでも論破する論理がこちらの方にもないといけないと思いますので実はお尋ねしているわけであります。たとえば、いま歯舞、色丹は日本の固有の領土である。国後、択捉の方は、これはそうしますと、日本が放棄した千島の一部であり、いわば無主である、主人公がいない、それをソ連が占領して、先占し占有したというふうに解釈してよろしいのでしょうか。無主物先占の法理によるソ連領土権の取得である、こういうふうに解釈してよろしいのか、あるいはまた最終処理は、これは日本は放棄したけれども、連合国にゆだねられているから、私どもの主張点は、帰属未決定のところである、こういうふうにして争うべきものなのか、あるいは放棄しているけれども、しかしこれはアメリカ、イギリス等連合国に、講和条約の締約国、相手国に対して放棄したのであって、ソ連に対しては放棄しておらぬ、こういう論拠で、私どもはそういう論拠に立っているのであろうか、そこら辺のことをちょっと条約局の方、外務省の方ではっきりとした立場をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  182. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 千島及び南樺太につきましては、平和条約第二条(c)によりまして、わが国はすべての権利、権原、請求権を放棄した。その放棄いたしましたのは連合国に対して放棄をいたしまして、その帰属は連合国が決定すべきものということに相なっているというのがわが国の考え方でございます。  ただいま私が申し上げましたのは千島列島及び南樺太につきまして申し上げたわけでございますが、国後、択捉、歯舞、色丹の諸島は、わが国が放棄いたしましたところの千島列島に含まれていないというのが政府の見解でございます。
  183. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは条約局長、ソ連が現在これを占有しているという状態は、これはどのように御理解をされておられますか。
  184. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 法的根拠なくして占拠しているという意味において、不法な占拠であるということでございます。
  185. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうすると、不法な占拠ということは、これは常にこちらの方で主張し、キャンペーンもしないといけませんね。そうすると、どのような今度はソ連側の方が解釈をしているのか、もう一度聞かしていただきたいと思います。ソ連側は、日本側の不法であるというものに対して、反論はどのようにしておりますか。
  186. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ソ連は、これらの島を占領いたしますことについて、すでに解決済みであるとか言っておりまして、日本が返還を請求しておりますことは人為的につくられた要求であるというようなことを言っておりますが、ソ連自身が申しておりますことは、これらの領土問題は戦争を終結する、あるいは戦後に結ばれた国際間の合意によって行われているものであるということを申しまして、その根拠としてヤルタ協定を引いております。
  187. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これはカイロ宣言とかポツダム宣言ではなくて、ヤルタ協定でございますね。
  188. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ヤルタ協定、それからポツダム宣言にソ連は後ほど加入いたしましたけれども、このポツダム宣言には千島列島云々ということはございませんので、ヤルタ協定の第三項、千島列島は、ソビエト連邦に引き渡されること、これを根拠としておるものと解しております。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  189. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その問題について、外務省側の見ておられるソ連の論拠、これはわかりました。  次いで私、外務大臣にお尋ねをしたいと思いますのは、いま日ソ交渉協定内容を審議している、そしてまたソ日協定交渉がこれから始まろうとしている、その中で日中平和条約締結の機運がにわかに高まったかに私は感じます。しかも、伝えられるところによりますと、政府は覇権条項を本文の中に入れて平和条約締結の用意ありというふうにも腹を固めたと報じられておりますけれども、本当でしょうか。外務大臣、そこら辺をお聞かせいただきたいと思います。
  190. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 日ソ漁業協定と日中の平和友好条約締結問題とは本来何ら関係のないことでございまして、日本は、ソ連との間にも、また中国との間にも友好関係を増進をしてまいる所存であります。最近の新聞等に出ておりますことにつきましては、私自身といたしましても福田総理から何らお話も承っておりませんし、総理自身もそのようなことは否定をされております。したがいまして、いまお尋ねのような覇権条項を本文に明記するということを決めたかということになりますと、そのような事実はございません。
  191. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は大臣、本来なら、本当に日ソ漁業交渉とそれから日中交渉というのは全然別のものでございましょう。しかし、今日のアジアの情勢、極東情勢の中では、米中の接近の問題であるとか、あるいは米ソのデタントの進行の状態であるとか、これは大変に重要な要素でございますし、私は、経済問題である漁業の問題とも大変にまた関連が出てくる問題であろうと思います。それだけにこれがいいとか悪いとか言っているのではございません。日中の平和条約締結というものが本当にいま政府の方で方針があるならば、それで急ごうとしておられるならば、それはやはりそういった環境の政治情勢、こういうものに影響がもたらされるであろうという観点からお尋ねしているわけでございまして、いまおっしゃったお言葉だけでは何か新聞に出ているのはみんなうそになってしまって、全然そんな話がないのに煙ばかり立ったというようなお話にもなってしまいますが、本当にそうなんでしょうか。何かいろいろ有力なる議会人の方が中国にも近々行かれるというようなことも聞いておりますし、そういった中で本当に日中の平和条約問題、これはいままでと全然変わっていないのか、幾らかでも新しい進捗の問題が出始めたのかというような点につきまして、外相、もう一度ひとつ本当のところをちょっとお話しをいただきたいと思います。
  192. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私も新聞は拝見をいたしておりますけれども、ただいまおっしゃいましたようなことは正式に決まったことではないというふうに考えております。
  193. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は日中の問題といいますのは、日ソと同様にやはり大事な日本のこれからの将来を決定する大きな問題でもございます。しかも国会の方はこの数日をもって終わろうとしている。そういう中で二つの国、ソ連、中国との問題が出てきているし、また出そうになっている。これは私どもとして無関心ではおられないわけでございまして、ひとつこれからのまだ残された国会の期日もありますので、その間に政府の方としてもはっきりしたことを出していただきたい。そうでないと何か煙だけに私どもは巻かれているような感じにもなってしまいますので、そしてまたそれか日本の将来を誤るようなものになっては困りますので、ぜひ事実を早目に教えていただき、そしてそれをみんなで率直に協議する、そして日本の国益の立場からどうしたらいいのか、こういう観点をひとつつくっていっていただきたいと思います。これを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。両大臣、ありがとうございました。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  194. 竹内黎一

    竹内委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  195. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こして。  次に、井上一成君。
  196. 井上一成

    ○井上(一)委員 まず最初に、本会議でも鈴木農林大臣に対してその御労苦を多としたわけでありますけれども、本委員会での質問に際して、長期にわたる御努力、改めて重ねて労をねぎらいたいと思います。  さて、私はせんだって外務大臣には、いわゆる北方四島がわが国の領土であるとの前提に立っての政令で周辺海域に線引きをすべきであるという、その第三条の問題で御質問をさせていただいたときに、適用除外水域に四島周辺海域は含まないのだという外務大臣の御答弁があったわけです。昨日、鈴木農林大臣はこの問題に対して、高度な政治判断をする問題であるというふうにお答えがあったわけですけれども、この点について再度鈴木農林大臣の御見解を承りたいと思います。
  197. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私は、ソ日協定を今後交渉いたします場合におきましては、ソ連側がわが国の漁業水域に関する暫定措置法、また暫定措置法によって設定をされる、適用を受ける海域、これを承認をする、これを認めるという前提に立つのでなければソ日漁業協定交渉には入れない、こういうことをはっきり大前提として申し上げたわけでございます。これはソ連だけでございません。その他の隣接諸国の漁船がわが国と操業の協定をいたします場合におきましては、いずれの国もわが国の漁業水域に関する暫定措置法というものの適用を受ける海域であるということを確認し、それを前提として交渉が初めて進められる、こういうことでございます。  そこで、きのう渡部一郎さんの、この四島周辺の現状におきまして現にソ連が四島を占有し施政を行っておる、わが方の施政はここに及んでいないという前提から、今度現在の領海また五月二日に御決定をいただいた新しい十二海里の領海が発効した場合、いろいろの場面についてわが国の施政が及んでいないということを前提としての御論議が政府委員との間にあったわけでございます。そういうことに関連いたしまして御質問がございましたので、これに対して理論上十四条等の適用除外の問題、こういう問題を認めるか認めないかというようなことは、これは高度の政治判断によって決めなければならない問題である、こういうことを申し上げた次第でありまして、今回のソ日協定に当たってわが方はこういう方針でやっていくのだということは、政府全体としてまだ方針を決めておらない段階でございますので、理論的な問題としてきのうの御論議に関連して申し上げた、こういうことに御理解をいただきたいと思います。
  198. 井上一成

    ○井上(一)委員 政府がまだ固まって意見を持ち合わせていないということですが、私は外務大臣の答弁を信頼をして、その線でぜひ取りまとめていただけるように期待をいたします。  さて、わが国の二百海里法第三条によっての適用除外区域というものは、中国、韓国との関係でいわゆる日本海西部、東シナ海ということですね、もし仮にいわゆる囲い込み時代に突入した今日、ソ連の漁船団がいわゆる適用除外区域で操業したら、そういう場合に政府としてはどういうふうに対応されるお考えですか。
  199. 岡安誠

    ○岡安政府委員 漁業水域に関する暫定措置法におきまして、漁業水域はわが国の領土の基線から二百海里にしかれるわけでございますか、三条によりまして適用除外水域を私ども考えております。これは、韓国中国との関係で、相互主義の考え方から、韓国、中国が漁業水域を設定しない限り私どもも設定しないというたてまえで除外水域を考慮するわけでございますが、その水域にたとえばソ連船等が出現をする、特にそのことによりましてわが国の沿岸漁業が重大な被害を受けるという場合には、当然除外水域につきましては検討をし直さなければならないというふうに考えております。
  200. 井上一成

    ○井上(一)委員 その場合、当然線引きをするというふうに理解するのですが、わが国の領土である竹島を含んでの線引きと理解してよろしいでしょうか。
  201. 岡安誠

    ○岡安政府委員 線引きを見直す場合には、当然私ども漁業水域法の対象にするべき船、たとえばソ連船がどこで操業をしているかということが問題になるわけでございまして、それを勘案をして検討することになろうかと思っております。
  202. 井上一成

    ○井上(一)委員 さて、いわゆる外交の重要性というものがあらゆる面で波及をしていく。日韓両国の外交はお互いに信頼関係が保たれているのだというふうには私は必ずしも理解をしてないわけなのです。けさの新聞でも、金大中氏拉致事件が大きく報道されておるのです。その中に、Pというイニシアルで韓国の元高官であった人の報道がなされておるわけなのです。  警察庁にお尋ねをしたいのですが、このPとは一体どなたであるのか。
  203. 城内康光

    ○城内説明員 お答えいたします。  新聞に出ましたPという人物はだれのことであるのか存じておりません。
  204. 井上一成

    ○井上(一)委員 出入国関係で、八月三日に入国し、八月十日に出国しておるいわゆる韓国人で、Pとおぼしき人物は把握していらっしゃいますか。
  205. 城内康光

    ○城内説明員 犯行に使われましたホテルの宿泊名簿から筆跡がとれておりまして、その筆跡と、日本に当時出入国した出入国のカードの筆跡の照合を綿密にしておりますけれども、その結果、ここで言うようなPという該当人物を発見するに至っておりません。
  206. 根岸重治

    ○根岸説明員 入国管理局では、Pなる者がどういう人間か把握しておりません。
  207. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、私の方からさらにお尋ねをいたしたいと思います。  済州島生まれのべンシミン氏については、警察の方では、そのリストの中に挙げて参考人として、あるいはまたこのベンさんという人にかかわって取り調べをなさった事実がおありでしょうか。
  208. 城内康光

    ○城内説明員 ベンシミンという突然の御質問で、はっきりとお答えすることができないわけでございますけれども、先ほど申しましたように、筆跡の同一性に関する捜査を綿密にやったわけでございます。そして、この報道にありますように、当時、犯行の前後に出入国しているということでございますけれども、先ほどお答えしましたように、かなりの幅をとりまして数千名にわたる該当者について綿密な筆跡の照合をしたわけでございますが、該当者の発見に至っていないということでございます。
  209. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、犯罪者であるという決定とか、そういうことについての最終的な答弁を求めているのではなく、ベンという人に対していわゆる事情聴取をしたことがあるのか、あるいはベンという人の出入国のカードには、三日に来て十日に出た、そのようにちゃんと記載をされておるのかどうか、そういうことを尋ねておるわけですが、さらに、ベン氏にかかわって関係者に事情を聴取した事実がおありでしょうか。
  210. 城内康光

    ○城内説明員 先ほどお答えいたしましたように、ベン氏ということが突然出ましたので、私の方で詳細お答えできないわけでございますが、ただ、これまでの捜査の中で畑中金次郎に関しまして非常に多くのいろいろな人物が浮かんでおりまして、容疑が生じたり、またそれが消えたり、あるいはさらに容疑が出てきたり、そういうことを繰り返しておるわけでございまして、ベン何がしについては、私かただいまここで詳しく申し上げるわけにはまいらないわけでございます。
  211. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は畑中金次郎という名前を出さなかったのですが、あなたの方から畑中金次郎という名前が出たわけです。私はベンという名前を出したのです。だから、事実何回か参考人として取り調べたのだというふうに、私はいまの回答で理解するのです。いかがですか。それじゃ、畑中金次郎という人の国籍は。
  212. 城内康光

    ○城内説明員 畑中金次郎と名のる人物が登場しておりまして、これまでの捜査で、犯人グループの一人であるということについては、私どもそのように考えておるわけでございます。
  213. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は外務大臣にお尋ねをしたいのですが、この問題については何回となくお尋ねを繰り返してきたわけです。そして、刑事事件としては決着を見ておらないけれども外交的な問題としてはすでに決着がついているのだ、外務省はそういう解釈に立っていらっしゃったわけですが、いまおわかりのように、この問題は決して外交的決着を見ておらない、こういうふうに私は思うのです。そういう意味で、日韓外交問題を正常な形で、そしていわゆる永遠の友好関係を保っていこうとするならば、さらに振り出しに戻してこの問題に外務省として取り組むべきではなかろうか、こういうふうに私は思うのですか、外務大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  214. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 金大中事件につきまして外交的に決着がつけられたということの意味は、この事件があるからといって他の外交案件を一切ストップをするというようなことではなしに、その他の外交面におきましては外交を続ける、このように思います。刑事事件として未決着であるということは確かであります。したがいまして、刑事事件によりまして新たなる証拠が出た場合におきまして、これにつきまして韓国との間に交渉を持つことは当然考えられるべきことである、こういうふうに考えております。
  215. 井上一成

    ○井上(一)委員 福田総理も、新事実が判明したら、その時点でこの問題については再度検討を加えるというふうにかねがねその意を表しているわけなので、この問題については、畑中金次郎がベン氏と同一人物であるのかどうかもあわせて、ひとつ鋭意捜査当局で捜査に努めていただくように特に私からもお願いをしておきたい、こういうふうに思います。  さて、鈴木農林大臣に重ねてお伺いをしたいのでありますけれども、せんだってのイシコフ漁業相との会談の中で、いわゆる本協定にはそのような約束がまだなされていないのですけれども、イワシとスケトウダラとのバーター協定の提示があったわけなのです。一応日本領海内でのソ連漁船の操業要求は撤回したのだというふうに理解はしているのですけれども、しかし、ソ日協定で新たに鈴木農林大臣が提案されたことが議題となることも考えられ得るわけなのです。そういう意味で、そんな場合のことも踏まえた中で、この鈴木大臣とイシコフ漁業相とのバーター協定の具体的な中身というものを少し御説明をいただきたい、こういうふうに思うのです。
  216. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 イシコフ大臣と私の間でいろいろな問題が討議をされたわけでございますが、その中で重要な問題は、ソ側が当初から強く求めておりましたのは、現在わが国の領海は三海里である、それが十二海里に幅員が拡張される新領海法が五月二日に国会で決定をされ、直ちに公布された、そういう事態でもありますので、十二海里の中で操業することはソ側も明確にこれを断念をいたしました。したがって、そういう三−十二海里の中で、協議によって将来操業することをとびらだけはあけておきたいという第二条の第二文、これも削除をいたしたわけでございます。したがって、わが新領海内でのソ連漁船の操業は、ソ日協定においても再び蒸し返されるようなことは絶対にございません。また、ソ日協定にそういうことが織り込まれるということも絶対にないわけでございます。  そこで問題は、そうなる場合におきまして、ソ連は三−十二海里の中でイワシとサバを多くとっておったわけでございます。これが今度は、サバは十二海里の外でも大体とれるわけでございますが、イワシにつきましては、いままでの操業の実態から見て、領海内で七五%ないし八〇%とっておったわけでございますから、領海が十二海里になったその外におきまして、いままでのようにイワシも十分とることができないであろうということ等をいろいろ議論をいたしました結果、もしイワシを欲しい場合におきましては、純然たる貿易問題として、日本漁業者がとったイワシをソ連側に売ってあげてもよろしい、また外貨事情その他の関係で、わが方が関心を持っておる魚種と一定の値段を評価した上で物々交換をしてもよろしい、バーターをしてもよろしい、こういう話し合いもいたしておるわけでございます。この問題は、モスクワにおきましても、わが方の専門家と向こうの専門家との間にいろいろ協議もいたしました。しかし結論は、なお検討した上で、東京に向こうの代表団が来た場合にさらに重ねて協議をしよう、こういうことになっております。  私の方針といたしましては、イワシは沿岸漁業者がとっておる魚種でございます。したがって、イワシをとっておる漁業団体、そういうものを中心に窓口を一本化したい。向こうも窓口が一本でございますから、窓口を一本化しまして、そうしてその間において商業ベースで取引の条件、価格を具体的に取り決めてもらって円滑にいくようにしてもらいたい、このように考えておるわけでございます。したがって、商社であるとかそういうようなものを介在をさせずに、沿岸漁業団体を中心とした窓口を一本化してやってまいりたい、こう考えております。
  217. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに私はお聞きをしたいのですけれども、いわゆる北洋漁場から締め出された漁船がもう一千隻を超えて、従前の漁場が縮小されたことによる生活不安というものが大変あるわけなんです。もちろん補償あるいは救済というような形の中でお考えになられるだろうとは思いますけれども、ここでいわゆる船団の再配置を考えるべきである、私はそういうふうな意見を持っているわけなんですけれども、大臣としていかがでございましょうか。
  218. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 私も、せっかく建造され整備された漁船団のことでございますから、これをできるだけ活用することを考えていきたい。たとえば新しい未開発の漁場の調査あるいは開発の事業、また領海の幅員が広がり、漁業水域も設定をされるということになりますれば、これが監視、取り締まりというような仕事もございます。海上保安庁でもこれからこれに対応した整備を急ぐわけでございますけれども、それにしても、一両年これらが完成してくるまでには時間がかかるというようなこともございまして、そういう補助的な任務につくように、できるだけこれも活用願うというようなことで、いろいろなことを考えましてこれらの漁船を再配置をし、活用するということにつきましてはできるだけの努力をしてまいりたい、こう考えております。
  219. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは最後にもう一点お尋ねをいたしたいのですが、具体的なことで、ズワイガニの収穫量、そして四月末、日本水産の第一船団がこれはすでに荷揚げをしているわけなんですけれども、五月の初旬に第二船かこれもすでに荷揚げをしたわけですけれども、市場に出回っておらない。そして、まさか売り惜しみではないとは思いますけれども、それに近いような状態に置かれておるというふうに聞いているわけなんです。あるいは先ほども少し参考人北海道漁連の会長さんにお聞きをしたのですけれども、いわゆる都市、とりわけ大阪でタラコ等については指し値販売をしておるという実情があるわけなんです。こういうことについて農林省として適切な措置を講じられていらっしゃるのかどうか、そしてどのような実情を把握されていらっしゃるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  220. 岡安誠

    ○岡安政府委員 第一点は、ズワイガニ等につきましてその出荷状況、値段等はどうかという御指摘でございますが、出荷状況につきましてはまだ正確には私ども把握いたしておりませんが、最近の値段等につきましては、諸物価の値上かり等もございまして、大型のものにつきましては昨年より大体、一〇%まではまいりませんけれども、その程度は値上がりしておるようでございますし、また五月当時の出荷の際少なかったすそ物につきましては、三割程度の値上がりというようなことを聞いております。  それからタラコにつきまして、参考人に対する御質問の中で、特定の団体が委託販売の際に指し値等をしているのではあるまいかという御指摘があったようでございます。それに対しまして参考人は、そういうことはないという返答であったというふうに伺っておりますが、私どももそういうことは万々あるまいと思いますけれども、御指摘でございますので、さらによく調査はしてみたい、かように考えております。
  221. 井上一成

    ○井上(一)委員 調査をするということですので、売り惜しみ、買いだめの内容、ひとつ十分魚価の高騰をセーブできるような形で行政指導をなさるように特に要望して、質問を終えます。
  222. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。鳩山外務大臣。
  223. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 昨日の当委員会におきます「地先沖合」につきまして、統一的な御答弁を申し述べたいと思います。  日ソ漁業暫定協定の標題、前文及び第二条に言う「地先沖合」なる表現については昨日(六月三日)の当委員会における本件条約案の質疑の際、渡部一郎委員の御質問に対し政府考え方を一応御説明した次第であります。本日は、同委員より御指摘のあった点を勘案し、日ソ漁業操業協定第一条一項の「地先沖合の公海水域」に関する昭和五十年六月二十五日の当委員会における渡部委員と伊達政府委員との質疑及び海底軍事利用禁止条約第四条の「地先沖合水域」をも念頭に置きつつ、改めて政府の統一見解を取りまとめ御説明いたします。  「地先沖合」という概念は、沖合の水面をその沿岸地域との関連において一般的にとらえた概念であって、それ自体としては距岸何海里から何海里までというような明確な距離的限定を伴うものではありません。したがって、領海が常に排除されている概念ではありません。  なお、日ソ漁業操業協定第一条一項で「地先沖合の公海水域」なる表現が用いられていることは、「地先沖合」か領海以遠の公海をも意味し得る概念であることを裏づけるものであります。また、海底軍事利用禁止条約第四条で「地先沖合水域(特に領海及び接続水域をいう。)」なる表現が用いられていることは、「地先沖合」が領海及び接続水域を含む水域を意味し得る概念であることを裏づけるものであります。  以上でございます。
  224. 竹内黎一

    竹内委員長 質疑を続行いたします。渡部一郎君。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕
  225. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの「地先沖合」に対する政府統一見解につきましてまずお尋ねをいたしたいと存じます。  きのうの御質疑の途中、大分将来にわたって禍根の残りそうな御答弁が出始めましたので、きょうは統一見解を出していただいたわけでありまして、御努力を多とするものでございますが、この「地先沖合」というものは、特に指定されておりませんけれども、一般的な概念であり、領海及び領海に接続する接続水域を意味し得る概念だ、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。その辺を確認しておきたいと思います。
  226. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 ただいま述べましたように、「地先沖合」という表現は非常に漠然とした表現をしておりますので、法律的な厳密な、距岸からどれくらいが地先沖合いと言うかという、そのような限定は全くない用語であるというふうに考えます。したがいまして、通常の場合は沿岸から領海があり、その先がいままでであれば公海になる、こういうように法律的にはなるわけでありますけれども、そのうち特定の距岸を指した観念ではないというふうに考えております。
  227. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この「地先沖合」という言葉は、ロシア文を見ますと、第一条において、「ソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸」という言葉、「沿岸」という言葉と同文字の言葉と伺っておりますが、何がゆえに第一条においては「沿岸」という言葉を用い、前文及び二条においては「地先沖合」なる用語を使われたのか、これを御説明いただきたいと存じます。
  228. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 御説明申し上げます。  「地先沖合」というふうに訳してある方のロシア語につきましては、これは「ウ ポベレージヤ」という言葉を使っておりまして、これは英語で言えばコースタルエリア、岸に沿った水域ということで言えると思います。これから、ソ連邦沿岸に接続した海域というのは、ロシア語でもソ連邦沿岸に接続している海域というふうになっているわけでございます。それを正確に翻訳したものでございます。ロシア語では、「ヴ プリラガユシフ クポベレージヤCCCP モルスキフ ライオナフ」となっておりまして、これは英語で訳しますと、イン ザ シー エリア アジャセント ツーコースタルエリア オブ USSR、こういうふうに翻訳できると思います。
  229. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 何か怪しげな言語で申されましたので……。私が言っているのは、その一連の句を指摘しているのではなくて、その「ポベレージヤ」とかいう言葉を、一方は「地先沖合」と訳して一方は「沿岸」と訳しましたでしょう、それはなぜですかと聞いているのです。
  230. 宮澤泰

    宮澤政府委員 最初にございます方は、幹部会令にございます言葉そのものを使ったわけでございまして、ただいま申し上げましたようにロシア語としては二つの表現があるわけでございます。後の方は、日本が従来その他の条約ですでに使っております言葉をそのまま使った、日本のすでに使いました条約上の言葉をここに使ってあるということでございます。
  231. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そんな怪しい答弁じゃだめだから、ちょっと直した方がいいです。
  232. 都甲岳洋

    ○都甲説明員 もう一度御説明申し上げますけれども、先ほど申し上げましたように、前文におきましては、「ウ スボイポ ポベレージヤ」あるいは「ウ ポベレージヤ」というふうになっておりまして、これは沿岸の近くの水域と呼びますか、沿岸の近くの水域を総称して「ウ ポベレージヤ」というロシア語になっておるわけでございますので、それを一般的概念ととらえまして「地先沖合」というふうに訳しているわけでございます。他方、第一条におきましては、明確に「接続する」というロシア語が入っておりますので、「アジャセント ツー」という言葉が入っておりますので、そういう言葉を正確に訳するとすると、「沿岸」という言葉をまず入れて、それに接続するという表現にする方が正確であろうというふうに考えられますので、このような表現をここでは正確を期すために使っているわけでございます。
  233. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは答弁にならぬようですね。どっちも「沿岸」という言葉が入っているのですから、それなら正確に両方とも「沿岸」という言葉を使って翻訳されたらいいじゃありませんか。なぜ「地先沖合」などという意訳を一方ではなさるのですか。
  234. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私もロシア語を解さないものでありますので、ロシア語を引いて御説明するわけにはいかないのでございますが、私の理解している限りは、第二条で言っておりますところの「地先沖合」という言葉に該当するロシア語というものは、たとえば日ソ操業協定において、「地先沖合の公海水域」でございましたか、という表現が使ってございますが、そのときの「地先沖合」という表現と全くロシア語は同じであるというふうに理解いたしております。  他方、第一条におきますところの「沿岸に接続する海域」云々というときの「沿岸に接続する」云々に該当いたしますところのロシア語は、このソ連邦の漁業水域の設定の根拠となっておりますところの昨年十二月十日の幹部会令におきまして引用されている言葉と全く同じであるというふうに理解いたしております。  補足のため御説明さしていただきます。
  235. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 問題は、第一条における「共和国連邦沿岸に接続する海域」というこの表現は、ソヴィエト側の最高会議幹部会令等において表現されている表現と同じものであって、それを明らかに意識して、それを引用することによって次の交渉に役立たしめようという考え方かあってわざわざこういう表現をとられておると思いますが、そうじゃないのですか。
  236. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま先生から次の交渉とおっしゃられた意味は、必ずしも私、正確に受けとめておりませんでしたか、いずれにしろ私が先ほど申し上げましたことは、今度の日ソ協定締結のきっかけとなりましたところのソ連側の漁業水域の設定を定めた十二月十日の幹部会令の表現をそのまま持ってきたということでございます。
  237. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ですから、その表現を特に重大なものとしてそのまま使用しなければならなかったのだろうと私も察しておるわけですね。ですから、そこのところをちゃんと御理解いただいているならば、一九七六年十二月十日の最高幹部会令六条に従う二月二十四日の大臣会議決定においては、太平洋、クリール諸島南グループ水域では右諸島及び日本領土からの等距離の線、ソビエト海峡及び国後海峡ではソ連邦国境、これらの境界を定めた決定が行われているわけでありますが、このような決定を日本政府としてはどういうふうに評価されるのか、ソ日協定交渉の際にこれらの部分に対する評価が問題になると思いますが、お示しをいただきたい。
  238. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたいわゆる線引きにつきましては、ソ連が二百海里法、すなわち最高会議幹部会令に基づいて水産資源に対して権利を行使する領域の限界と解しております。
  239. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ソ連側は日本の場合と別に、ソビエト側の法律によりますと、自国内の領域における漁業の実行というもの、自国側の領海内における漁業に対しては、どういう法令をもってどういう制限を課しておりますか。
  240. 宮澤泰

    宮澤政府委員 ソ連邦の国境警備令の十九条でございますが、「ソ連邦の領海及び内海において海洋漁業一魚、かに漁、海獣猟及びその他一切の漁業)を行うことは、このような漁業ソ連邦と当該諸国家との協定によつて許可されている場合を除き、外国船舶に禁止される。」このように規定されております。
  241. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、最高幹部会令とそれに伴う大臣会議決定と、ただいまの国境警備令によって先方は日本側漁船の領海内操業を断ることが十分可能だ、こういうことになりますね。
  242. 宮澤泰

    宮澤政府委員 そのように解しております。
  243. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、第一条は、先方の法令あるいは決定を引用することによって、日本側の領海に対しても同じ立場であるということを交渉の際に申し述べようという意図から、わざわざ条約の体裁の統一を欠いてもこうした形にしたというわけですか。
  244. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 法文解釈とは別に、私、交渉の当事者としてちょっと申し上げますが、いま渡部さんからいろいろ御質疑があったことに関連をして、向こう側はこの第二条に第二文というものを用意してきたわけでございます。「この原則に基づき両締約国は、この協定の発効前に行われていたソ連邦及び日本国の領海の若干の水域における伝統的操業の実施問題を検討する。」こういう第二文を用意してきたわけでございますか、これは向こうの領海法で、関係国と協議をして一定の取り決めがあれば操業もさせ得る、またそういう協定がなければさせない、こういう解釈がある、そういうことをわが方の十二海里の中におきましても両国間で協議をすればいいではないか、その若干の水域で操業することを検討するという窓口だけは閉ざさないでおきたい、こういうことを言ってきたわけでございます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕  私は、わが方の領海幅員を十二海里にいたしました立法の趣旨、今回やりました事情、経緯等からいたしまして、両国間で協議をして領海内で操業をある程度認め合うというようなこと等は日本側としては毛頭考えていないし、そういうことはいたしません、したがって、日本側がいささかでも今後日本の領海においても両国で協議すればそういうことができるような、そういう第二文というものもわが方ではここに置くわけにはいかない、こういうことでこの二文は削除をさした、こういうことでございます。  これは先ほど来のやりとりを聞いておりまして非常に関連があるということで、私特に申し上げたわけでございます。
  245. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 農林大臣はもう先の方まで言ってくださいましたから、じゃ、じめじめいくのを飛ばしまして、さっと結論を言いますと、私が「地先沖合」に何でこだわっておったかといえば、簡単なことで、「地先沖合」という言葉には領海を含んでいるということであるなら、第二条の規定で「日本国の地先沖合」領海も含んでいる、必ずしも領海を含んでいないとは言えないこういう表現を使ったことによって、ソビエト側の漁船が日本の領海内に入ってきて、こちら側に入ってきて操業する可能性が、法文上はまだ道があいているではないかということを、じんわりいま詰めにかかろうとしておったわけです。それでしまいに跳び上がって驚くようにいま組み立て始めておったところなんですか、先に言われてしまいましたので、その手は余りきかなくなってきたかな。  ですから、念のために申し上げますが、その第二条の第二文というものについて削除された事情は、わざわざ御説明いただきまして大変よくわかりましたのですか、第一文の、現在この条約文に載っておるこの分についても、なおかつそのような窓口が多少あいているのではないかと私たちは心配しているわけであります。先日からのやりとりを聞いておりますと、農林大臣は絶対そういうことはさせません、いたしませんという強い決意を表明されておるが、法律の上に書き、この条文の上に書き込んでおけば、ただしわが方はおたく様は領海内に入れるつもりはございませんというようなことかこの中に入っておれば、何も問題はない、日本国の領海を除く地先沖合いにおけるというようなことを一音入れておけば、こういう長い議論をする必要はなかったと思っているわけですが、どうしてその辺を、武士の情けというか何というか、逃げ口を残しておくというか、こういう形になさったのか、その辺の御事情を承りたいと存じます。
  246. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど来、御論議が出ておりますように、また先生からもお話がありましたように、第二条の表現自体から領海が法文上除かれているということを申し上げることはむずかしいだろうと思っております。ただ、いま農林大臣からお話がありましたように、交渉の実態として、この領海内の操業は一切認めないということを明確にした上でこの条文を固めたということで、領海内操業を認めることはないというふうに理解いたしている次第でございます。
  247. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、周恩来首相に「法匪」と、言われた輝ける伝統を持つわが条約局が後ろについておられて、かなり穴のあいた条約をおつくりになった。それは穴のあいたのをわざわざつくってみせることによって、ソビエト側の矛先をかわしたのかもしれませんし、また、わざわざ穴をあけておくことに何かのプラスがあったのかもしれませんけれどもソ日協定を論議され、あるいは基本協定を論議される前にこうしたものをつくられるということは、この協定についてきずを残すことになるのではないかという憂慮を私は感じているわけであります。御自分もいまお述べになりましたように、領海内操業を法文の上ではこれは禁止しておりませんから、問題が後に持ち越されているということはお認めになりましたから、これ以上この問題を追及するのはやめますが、今後の交渉において遺憾なきを期していただきたいと、特に御注意を申し上げておきたいと思いますし、こうしたことが不幸な結果を、大きな取引の材料として持ち出されるのではないかという不安を、従来の経緯からすると感ぜざるを得ないのか対ソ交渉でありますから、今後とも十分お計らいをいただきたい、こう思っておるわけであります。  では、その次に参りましょうか。今度は法律上の非常におもしろい問題がきのう少し出ておりましたから、それをさらに……。  きのう、条約局長は、領海にたてまえの領海と本音の領海があると述べられました。これはもう外務省始まって以来の診問答でございますので、これはあっさり取り消されるのかどうかまず伺わなければいけませんが、本音とはおっしゃいませんで、北方四島の海域というものは、わが方においては三海里領海が存在する、また、十二海里領海法が成立した時点から十二海里領海を設定する、それは言うなれば、他の本州側の領海とは違ってたてまえのものである、それは施政権が及んでいない領海だからである、こういうふうに申されました。言うてみれば、施政権の及んでいる領海というものは本音の領海ということになると私は勝手に定義しているわけであります。そうしますと、領海に二種類あるとお認めになるのかならぬのか、その辺から始めましょうか。
  248. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 まず最初にお断りさしていただきたいと存じますが、先生自身もお触れいただきましたが、私はたてまえと本音があるということは決して申しませんで、本音という言葉も全く使った覚えがございません。私は、ただ、たてまえということは確かに言葉として使いました。私が申し上げたかったのは、四島はわが国の固有の領土であるから、わが国の立場から見れば、現在でもその四島の周りには領海がある、そして、その領海法が成立する以前においては、その領海は三海里である、領海法によってわが国の領海が一般的に十二海里に拡張せられるのであれば、四島周辺のわが領海も三海里から十二海里に拡張されるというのかわが国の立場である。たてまえという言葉が誤解を招き得るとすれば、それかわが国の考え方——考え方というのもまた誤解を招きますので、わが国の立場であるという言葉をもって御説明させていただきたいと存じます。そこに、四島自身に対して遺憾ながらわが国か現実に施政を及ぼしていないというのが現在の事態でございます。この事態を解消させるには、この四島の返還を待つ以外にないということで、四島の返還を期しているわけでありますが、四島自身についてわが国の施政が現実に及んでいない、それを法律的に認めているわけではないけれども、及んでいないということと同じように、その四島周辺のわが領海においてもわが国の施政が及んでいないというのが実態であるということを申し上げたわけでございます。
  249. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたは言わないとおっしゃったけれども、残念ながら、たてまえの領海とちゃんとおっしゃったのです。私のような単純な男は、言った言葉は忘れないのです。あなた、いろいろなことをいまたくさんごちゃごちゃおっしゃいましたけれども、結局、施政が及んでいない領海と施政の及んでいる領海があると、いままたおっしゃいましたね。だから、施政権の及んでいる領海と施政権の及んでいない領海があると、あなたは真っ二つに分けられたのですから、あなたの用語によれば、一方がたてまえの領海、一方が本音の領海、こういうことになるわけですね。そうでしょう。二つあるとあなたはお認めになりた。二つあるとお認めになるんですねと私は聞いているのです。領海は一色じゃないんですねと聞いておるのです。いいですか。  局長、私は、次にひっかけて言いますよ。次にあなたをひっかけようとしているのは、竹島のことを私は言おうとしているのです。実をいうと、この議論を聞いていておもしろいのは韓国外務省なのです。日本政府が本音の領海とたてまえの領海と二種類持っている、北方四島水域においてはたてまえの領海である、それなら竹島は何だ、竹島にも施政が現実に及んでいない。きのう、二十四時間たちましたから、海上保安庁がどんな態度をとってあそこを見ておられるかは、もう十分御調査をなさったでしょう。施政はまさに及んでいない。何の権限も及ぼしていない。これはまさにたてまえの領海なんですよ。そうすると、この北方四島水域を片づけるに当たって、ぼやぼやしているとこの竹島も一緒に放棄することになる、論理的に言うと。だから、あなたは気に入らないでしょうけれども日本にたてまえの領海が二つある、一つは北方四島型のがあるわけ。一つは竹島型のがあるわけ。だから、私の質問はこうです。本音の領海とたてまえの領海がある。あなたは二つに分けられた。その次、たてまえの領海の中で、北方四島型とこちらの竹島型とがあるという議論になりかねない。ところが、この二つは事情が違うんだとあなたが御説明にならない限りは、竹島は、北方四島をわが国が漁業権を認める形になると同時に、同じような処理を韓国側から迫られるでありましょう。私はそれを心配しているのです。あなたの論理によりますと、この北方四島と竹島のあたりはどう違うのか。それは両方とも施政が及んでいない。では施政を及ぼすためにはどうしなければいけないのか。及んでいないとするなら、どういう国際法上の立場でこの二つを見るのか。それをかなり整理しておかれなければいけないじゃありませんかと言っているのです。  もう一つは、領海に二種類あるなんて議論してしまえば、ほほう、日本の領海というのはどうなんだ、A型か、B型かなんということになるわけです。たてまえ型か、本音型かというふうになるでしょう。そうすれば、たてまえの領海を持っている日本政府というのは、交渉においては非常にまずい。交渉において大事なことは、たてまえも本音もおれの領海だということが主張されなければ、せっかく二百海里領海線を引いた意味がないじゃないですか。そうでしょう。だから、きのうからの御答弁は、この辺、一方は施政が及んでおります。一方は施政が及んでおりません、一方は、言うならばたてまえですと言ってしまったあの部分はすごくまずい、ごちゃごちゃした事態を含んでいるのではないかと、私は、いま分解して申し上げたのです。私、心配して申し上げているのです。条約局長をここでへこまして何とかしょうと私は思っているわけではないので、いま一番めんどうな交渉日本の周りでやろうとしているのですから、わが国の微妙な立場を私は心配して申し上げているのです。ちょっとここはややこし過ぎますから、うまくいきましたら御答弁いただきたいし、うまくいかないようでしたら、ちょっと御議論を詰めていただいて、また大好きな統一見解でも何でも結構ですからまとめていただいたらどうかなと、私はきのうの議論を振り返りなから思っているわけです。いかかでしょうか。
  250. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生が問題として提起しておられる点は私も十分わかっているつもりでございます。ただ先生が私の発言として御要約された表現が、私の意図したことを必ずしも正確に表現しているというふうに感じられませんので、まことにお言葉を返すようで恐縮でございますが、一言述べさせていただければ、私は、わが領海に二つの種類がある、二つの範疇があるということを決して申した覚えはないわけでございます。そもそも領海の性質に相違があろうはずがない。わが国の領域でございますから、違う性質の領海などというものがあろうはずがない。問題は、わが国の現実の施政がそこで行われているかどうかというその事実をあわせて述べたという点だけでございます。  わが国の領海は、北方四島の周辺であろうと竹島の周辺であろうと、それはわが国の本土の沿岸の領海と全く法律的には変わらない領海を持っているわけでございます。ただそこで、北方四島につきましてはわが国の現実の施政が及んでおらず、その周辺の領海に対しても現実の施政が及んでいないという事実関係をあわせて申し述べさせていただいたということで、たてまえも本音もわが国の領海であると言えと先生のおっしゃられるそのポイントは、要するに、わが国としては、それらの島がわが国の領土であるということで完全な返還を要求すべきであるという意味をおっしゃられたものだろうと思われるわけでありますが、その点については私は全く異論がないということを申し上げ、わが国としては、これらの島の、四島の返還を強力に要求し、また、竹島については、これが紛争地域であるということで、紛争の解決に努力するという点については全く問題がないということを申し上げさせていただきたいと思います。
  251. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 恐縮ですが、速記をちょっととめていただけませんか。
  252. 竹内黎一

    竹内委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  253. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こして。  渡部一郎君。
  254. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それではテーマを別に移しまして申し上げるわけでありますが、今度は、昨日より当委員会の主題にしばしば供せられていることでありますか、現職の大臣であります石田博英氏がILOの会合に出席のためきのうの晩飛行機によりまして出発されたそうでありますか、その途中モスクワへ立ち寄られ、報道あるいはうわさその他の情報の供するところによれば、歯舞、色丹、国後、択捉等北方四島問題のうち、歯舞、色丹二島の返還と国後、択捉島の共同管理区域というものを主張し、善隣友好条約の設立において二島返還を要求する旨親しい人に述べたとのことであります。情報の確度はかなりのものでありますのであえて伺うのでありますが、このようなことは政府の方針でありましょうかどうでしょうか、明快な御答弁を承りたい。
  255. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 石田労働大臣は、ILOの会議に行かれまして、帰路モスクワに立ち寄られるわけであります。総理からの手紙を持っていかれたことは事実でありますが、その内容には、そのようなことに触れることは一切ございません。したがいまして、ただいまお示しのようなことは、政府とは何ら関係のないことでございます。
  256. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 改めて申し上げるまでもございませんが、昭和四十八年九月十八日、第七十一国会の衆議院本会議の席上、北方領土の返還に関する決議案が提出され、可決されました。その決議によれば、     北方領土の返還に関する決議   戦後四半世紀余にわたり今なおわが国固有の領土である歯舞、色丹および国後、択捉等の北方領土が返還されていないことは、日本国民にとってまことに遺憾なことである。   よって政府は、すみやかに北方領土問題の解決を図り、日ソ間の永続的平和の基礎を確立するよう努力すべきである。    右決議する。 となっております。この決議については、政府はこれを遵守なさるおつもりがあるかどうか、改めて伺います。
  257. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 国会の御決議でございまして、政府がそれを遵守いたすべきことは当然だと思います。
  258. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 少なくとも、歯舞、色丹二島において交渉するなどということが世上のうわさに上り、まずそういう言葉が近しい人々の口から漏れ、そしてそうした言葉が喧伝されている段階というものは、日ソ漁業交渉を一方でやっているわが国としては、非常に不穏当のそしりを免れないと存じます。石田大臣に対して政府はどういう指示を与えられてこういう手を打たれたのか、いまの時期に親書を持ってソビエトに行かされる意味というものは一体何なのか、われわれは重大な疑惑を感ぜざるを得ないのであります。  対ソ交渉であるならば、鈴木農林大臣をして漁業交渉をせしめ、領土交渉においては外務大臣がこれを所管されることは当然であります。その担当大臣をよそにして労働大臣がなぜ親書を携行しなければならなかったか、伺いたい。
  259. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 これは親書と言えるかどうか、この中身は、用件というものは何もないものでございます。これはそういう意味でありませんで、石田労働大臣が行かれますからということでありまして、一般に親書と言われるときは、中にいろいろな用件が書いてあるのが普通だと思いますが、そのような用件はない手紙であるというふうに御理解いただければよろしいと思います。
  260. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 親書はいろいろな用件が普通は書いてあるのだけれども、今回は内容は何もないという——何もないという親書は何物なのかということが私はきわめてわかりにくいのでありますが、何もない、言うならば封筒だけみたいな親書をどうして持たせなければならなかったのか、それは何なのですか。
  261. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 石田労働大臣は日ソ議員連盟の会長をしておられるわけであります。そういう意味で、福田内閣の有力なる閣僚である、その両者の立場から、ソ連政府並びに党の首脳に対しまして御紹介状のような意味をかねましてお書きになったもの、このように理解をいたしております。
  262. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 言いにくい話を大分言っていただいたのですからこの辺でやめるのが礼儀だろうとは思いますが、福田さんが紹介状を書くよりも、石田労働大臣の方がソビエト政府に対しては顔は売れていると私は思います。紹介する人の方が売れてなく、紹介される人の方がよく知られているなんという紹介状は見たことも聞いたこともないのですね。全然理解ができない。だけれども、それについて何かお話しいただくのはもう無理だろうと思いますから、大臣、これは本当に領土交渉についても漁業交渉についても書いてないのですか。いま領土については言われた。漁業交渉についても何も書いてないのですか。
  263. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 漁業交渉につきましても触れておりません。
  264. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、政府としては、北方四島の返還については、たとえ二島の返還の申し出があったとしても、それは譲ることがない。もし、石田大臣が向こうへ行って二島返還で交渉してきて、善隣友好条約で二島返還でおさまりますということを交渉したとしても、そういうことは政府の方針として認めることはない、こういうふうに担当大臣はお示しになりますか。
  265. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 私の一存でそのような重大なことをここでお答えするのはいかがかと思いますが、私の率直なところを申しますと、そのようなことが話し合われることはありませんし、また仮にそのような提案がありましても、そこで石田労働大臣が何らか引き受けて帰られるというようなことは、毛頭私には想像できないところであります。  それ以上のことは政府全体としてのことでございますから、私がここで申し上げるのは適当でないと思いますけれども、私は、そのようなことは万々ないものと確信をいたしているところでございます。
  266. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 鈴木大臣に伺いますが、いま日ソ交渉をやっている真っ最中に二島返還で交渉が行われるなどということがあったとしたら、それは交渉にどういう影響を与えると思われますか。
  267. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 せっかくの渡部さんのお尋ねでございますけれども、前提の石田労働大臣がそういうことをお触れになるかどうかということも、私想像もつかない問題でございますので、私は、国会の御決定をいただきましたわが方の漁業水域に関する暫定措置法を踏まえまして、今後のソ日協定あるいは基本協定に立ち向かっていきたい、このように考えております。
  268. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 わが国は明らかに法治国家であり、国権の最高機関としての国会における論議を中心として、よくても悪くてもこれを運営していこうというのが民主主義の基礎だと存じます。その国会の強い意思決定、北方四島に関する決定に背いて二島返還論などというものがささやかれること自体が、現下の対ソ交渉立場から言っておもしろいことではないと私は思うわけであります。したがって、ソビエトにお寄りになるというような閣僚があるならば、そうした問題についても、担当閣僚である外務大臣や対ソ問題について十分御関連のある鈴木大臣等に対して、先方との接触について御報告なり御相談があってしかるべきものだと私は思いますが、御出発の前にそういうスケジュール等の相談、報告、検討等があったのかどうか、お伺いします。
  269. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 石田労働大臣がお立ちになる前に福田総理のところで、鈴木大臣もおられたと思いますが、私と鈴木大臣と官房長官おられまして、モスクワに立ち寄られる話を石田労働大臣がなさった、そういう機会はございました。その中でどういうような話をということをここで全部お話しすればすっきり御了解がいただけるのだと思いますけれども領土問題に関するような話はそのときにも全く出ておらないところでございます。
  270. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、こういう大がかりな交渉の行われる最中にこうしたうわさの出ることは、わが国の伝統的な主張を堅持していくためには交渉においてもマイナスが多いと存じます。うわさだけでもマイナスが多いと思いますし、政府の自重を求めたいと存じます。そして、これらについては、大臣が帰られた後、明快な御報告をいただいた上、当委員会に対しても御報告がいただけますよう要求いたしまして、私の質問といたしたいと存じます。
  271. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 石田労働大臣がILOの帰路モスクワに行かれますその趣旨といたしまして、申し上げられることは、やはり日ソ間の友好関係を改善したい、こういう趣旨でございます。したがいまして、特定の議題をそこで話し合うという趣旨ではない。領土問題でありますとか、あるいは漁業の今後の処理の問題であるとか、そのようなことではなくして、従来とかく日ソ間の交流がとだえがちである。一般的な表現で言えばいささか冷えぎみだというようなこともありますので、日ソ議員連盟の会長とされて石田労働大臣が帰路モスクワに立ち寄られる、そういう趣旨と私は理解をいたしておりますし、そのとおりと御理解を賜れば幸せでございます。
  272. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣は国会決議を尊重なさるとともに、こうした領土問題に関する不明朗なうわさが飛ぶだけでもわが国交渉に対して余りプラスでない現状にかんがみ、昨日も申しましたけれども、外務省は率先して領土交渉に当たりまして、この基本的なわが国の主張をソビエト側にも明示をし、困難な交渉の糸口をつけられることを希望したいと存じます。
  273. 鳩山威一郎

    ○鳩山国務大臣 御趣旨はまことにそのとおりと思います。そのとおり行動いたす所存でございます。
  274. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 終わります。
  275. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、明五日日曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時二分散会