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1977-05-13 第80回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月十三日(金曜日)     午後零時十九分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 毛利 松平君    理事 山田 久就君 理事 河上 民雄君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 中村 正雄君       稲垣 実男君    大坪健一郎君       川田 正則君    中山 正暉君       丹羽 久章君    福田 篤泰君       福永 一臣君    三池  信君       井上 一成君    高沢 寅男君       中川 嘉美君    渡辺  朗君       寺前  巖君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  出席政府委員         外務政務次官  奥田 敬和君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済局次         長       賀陽 治憲君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         外務大臣官房電         信課長     秋保 光孝君         外務省国際連合         局外務参事官  小林 智彦君         外務省国際連合         局専門機関課長 中村 昭一君         水産庁海洋漁業         部審議官    米澤 邦男君         郵政大臣官房国         際協力課長   中山  一君         郵政大臣官房電         気通信参事官  日高 英実君         郵政省電波監理         局無線通信部航         空海上課長   吉川 久三君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     福永 一臣君  小此木彦三郎君     宮澤 喜一君   玉沢徳一郎君     三池  信君   中島  衛君     木村 俊夫君   中村  直君     福田 篤泰君  同月十三日  辞任         補欠選任   中山 正暉君     丹羽 久章君  同日  辞任         補欠選任   丹羽 久章君     中山 正暉君     —————————————  四月三十日  原水爆禁止に関する請願瀬崎博義紹介)(  第四〇五〇号)  同(津川武一紹介)(第四〇五一号)  核兵器全面禁止国際協定締結促進等に関する  請願外一件(工藤晃君(共)紹介)(第四〇五  二号)  同(柴田睦夫紹介)(第四〇五三号)  同外一件(小林政子紹介)(第四〇五四号)  同(不破哲三紹介)(第四〇五五号)  同(松本善明紹介)(第四〇五六号)  同(安田純治紹介)(第四〇五七号)  五月二日  日中平和友好条約早期締結に関する請願(天  野光晴紹介)(第四一八五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関す  る日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協  定の締結について承認を求めるの件(条約第一  六号)  経済協力に関する日本国モンゴル人民共和国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一七号)  投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジ  プト・アラブ共和国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第一三号)  国際海事衛星機構インマルサット)に関する  条約締結について承認を求めるの件(条約第  一四号)  アジア太平洋電気通信共同体憲章締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一五号)      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  この際、一言申し上げます。  去る四月二十七日の委員会において、与野党の話し合いがまとまらないままに委員会を再開し、採決をいたしましたことは、まことに遺憾に存じます。  委員長といたしましては、四月十三日本委員会冒頭における委員長発言をもとにして、今後とも話し合いによるよき慣行を十分守っていく所存でございますので、委員各位の御協力をお願いする次第であります。     —————————————
  3. 竹内黎一

    竹内委員長 アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、経済協力に関する日本国モンゴル人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、国際海事衛星機構インマルサット)に関する条約締結について承認を求めるの件、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  まず、政府より、順次提案理由説明を聴取いたします。外務大臣鳩山威一郎君。     —————————————  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件  経済協力に関する日本国モンゴル人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件  投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件  国際海事衛星機構インマルサット)に関する条約締結について承認を求めるの件  アジア太平洋電気通信共同体憲章締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕
  4. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま議題となりましたアメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関するアメリカ合衆国との間の協定締結するため、昭和五十一年八月以来東京及びワシントン交渉を行いました結果、本年三月十八日にワシントンにおいて、わが方東郷駐米大使先方リッジウェイ大使との間でこの協定署名を行った次第であります。  この協定は、本文十六カ条並びに附属書I及びIIから成っております。協定内容としては、アメリカ合衆国地先沖合い生物資源に関し、両政府がとるべき措置、両政府の間の協議及び協力アメリカ合衆国が行使する取り締まり権及び裁判権等の事項について定めております。  アメリカ合衆国は、本年三月一日から、同国の一九七六年漁業保存管理法に基づき、地先沖合い生物資源に対して漁業管理権を行使しておりますところ、この協定締結により、わが国漁船アメリカ合衆国沖合い水域で引き続き操業することが確保されることとなります。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、経済協力に関する日本国モンゴル人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  モンゴル政府は、かつて、ノモンハン事件等においてこうむった損害に関連して対日賠償請求を提起するとの態度を示しておりましたが、両国間の外交関係開設交渉に際しましては、モンゴル側から「賠償問題は提起しない」旨の言明があり、一九七二年二月の外交関係開設のための共同声明におきまして、両国間の「経済的及び文化的協力発展」がうたわれました。  外交関係開設後、モンゴル政府は、わが国政府に対し無償経済協力要請を行いましたが、その背景には両国関係の過去の経緯に由来する特殊な対日国民感情が残存していることが認められ、政府といたしましても、かかる事態を放置したままで両国間の安定的な友好関係発展は期待しがたいとの認識から、モンゴル政府の前記の無償経済協力要請を踏まえて交渉に応ずることとし、右経済協力に関する協定締結について昭和五十一年七月以来交渉を行いました結果、その成案を得るに至りましたので、本年三月十七日にウランバートルにおいて、わが方柘植在モンゴル大使先方サルダン対外経済関係国家委員会議長国務大臣との間でこの協定署名を行った次第であります。  この協定は、本文六カ条から成っており、その内容は、わが国政府よりモンゴル政府に対し、四年間にわたって五十億円を限度とする額の贈与を行い、この贈与モンゴル政府により、カシミヤ及びラクダの毛の加工工場の建設に必要な日本国の生産物及び日本国民の役務を購入するために使用されることを定めているほか、本件贈与実施具体的手続モンゴル側のとるべき措置等について定めております。この協定締結は、わが国モンゴルとの二国間に残存しておりました一種のわだかまりを払拭することとなり、今後の両国間の友好関係促進に多大の貢献をなすものと考える次第であります。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  エジプト政府は、第四次中東紛争後の国内経済再建のため、昭和四十九年半ばごろより、わが国に対し、民間ベース経済協力要請するとともに、投資保護協定締結を希望する旨提案してまいりました。わが方は、この提案に応じて交渉を行うことを決定し、同年十一月に、当時の木村外務大臣エジプトを訪問した際、両国間において協定締結交渉を行う旨の合意が得られました。その後、わが方より協定案文を提示の上、昭和五十年十一月及び翌五十一年七月カイロにおいて交渉が行われ、この結果、協定案文について最終的合意を見るに至り、本年一月二十八日に東京において、わが方佐藤外務事務次官と先方ナーゼルわれた次第であります。  この協定は、本文十四カ条及び議定書から成っております。この協定は、投資の許可について、最恵国待遇相互に保障しているほか、事業活動、出訴権、送金等に関する内国民待遇及び最恵国待遇、収用、国有化された場合及び戦争等により被害を受けた場合の補償措置投資保証に基づく政府代位投資紛争解決条約への付託、仲裁委員会等について定めております。この協定締結により、わが国エジプトとの間の投資経済関係は、一層安定した基礎の上に促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、国際海事衛星機構インマルサット)に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府間海事協議機関IMCO)は、一九六六年以来、船舶と陸地との間及び船舶船舶との間の海事通信混雑緩和及びこれらの通信の質の改善のため、海事通信衛星通信技術を導入することについて検討を行ってきましたところ、一九七三年にIMCO第八回総会は、国際海事衛星機構を設立するための条約を作成する政府間会議の開催を決議しました。この条約は、この決議に基づき、数次にわたる政府間会議及び作業部会での起草作業を経て、一九七六年九月の政府間会議で採択されたものであります。  なお、この条約は、国家間の条約ですが、このほかに、政府または政府の指定する事業体署名し、機構運用に関する細目を定める運用協定が作成されております。  この条約によって設立される国際海事衛星機構は、海事通信改善のために必要な衛星及びその関連施設提供することにより、海上における遭難及び安全に係る通信海事公衆通信業務並びに無線測位能力改善に貢献することを目的としております。現在の海事通信は、主として短波によって行われているところ、衛星利用することにより、増大する海事通信の需要に対応し、その質の改善業務提供区域拡大を図ることができるとともに、通信自動化高速度データ伝送等提供が可能となります。また、緊急時の通信改善され船舶及び人命の安全に役立つほか、無線測位技術改善も将来期待されます。  わが国としてかかる海事通信改善に著しく貢献することとなる国際機関に参加することは、わが国海事通信利用者利益に資するのみならず、主要海運国たるわが国立場国際海事衛星機構運営において反映せしめるとの見地からも有意義なことと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際連合アジア太平洋経済社会委員会(エスキャップ)を中心として従来より推進されてきたアジア電気通信網計画に関連して、その完成を促進しその後の有効な運営を図るための協議機関を設立しようとの気運がアジア太平洋地域各国に高まり、一九七六年三月二十七日、本共同体を設立するための憲章が採択されました。  この憲章は、本共同体の設立、その目的及び任務、加盟国の資格、主たる機関である総会等の権限、本共同体の経費を加盟国等分担金で支払うこと等を内容としております。  わが国は、わが国アジア太平洋地域の諸国との関係重要性にかんがみ、従来より同地域における電気通信業務整備拡充に積極的な協力を行ってきましたが、わが国が本共同体に参加し、技術的協力を推進していくことは、域内各国の強い要望にこたえるものであるとともに、域内各国に対する国際協力の増進の見地からもきわめて望ましいものであります。  他方、わが国域内各国との間の電気通信業務については、国際電話を例とすれば、域内各国との間の取扱量は、国際電話全体の取扱量の六〇%を超える状況にあり、同地域における電気通信業務技術的向上拡充は、わが国と同地域との通信経済性及び効率性向上にも資するものと考えられます。  なお、この憲章は、すでに四カ国が締約国となっており、発効に必要な七カ国という要件を早期に満たすべく、わが国としても早急に締結したいと考えております。  よって、ここに、この憲章締結について御承認を求める次第であります。  以上、五件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて提案理由説明は終わりました。
  6. 竹内黎一

    竹内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  7. 河上民雄

    河上委員 いま外務大臣から提案理由説明をちょうだいしたわけですが、その中で特にいま日本が当面しております漁業の問題に一番深い関係のあります日米漁業協定から質問をさせていただきたいと思います。  いま日本は、領海十二海里法、それから漁業水域二百海里法を成立させましてこの新しい事態に備えるということになっているわけでありますが、こういう二百海里時代先鞭をつけたものが日米漁業協定である、こういう意味から見まして、この協定内容検討というのは非常に重要ではないかというふうに私は思うのであります。アメリカが二百海里法に踏み切ったことが隣国のカナダをしてそうせしめ、そしてカナダがそれに踏み切ったことがECに波及し、またそのことがヨーロッパ海域から排除されたソ連をしてまた二百海里設定ということになって、そのことがいま日本に波及をしているわけでございますことは御承知のとおりであります。そういう情勢の中で、われわれが二百海里時代を迎えるに当たって非常に大きな試練に直面するとともに、一つの道の選択を迫られている、こんなふうに思うのでありますけれども、そういう中で、いままではいわゆる公海というものをフルに生かして日本遠洋漁業にばく進をしてきたわけですけれども、今度はわが国としては新しい意味で安定的な漁業をどうやって維持していくか、こういう課題に直面しているのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、政府はそういう新しい意味での安定的な漁業をどのように維持していこうとしているのか、政府の基本的な施策、方針というものを示していただきたいと思います。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま河上先生がおっしゃいましたように、この二百海里時代が、アメリカ合衆国国内法として採用することに踏み切ったことが今日のあるいは日ソ漁業問題がこのようになっておる先鞭ではないかという点につきましても、私どももそのような考え方認識を別にするところではございません。このようになりまして、日本漁業自体が従来遠洋漁業に相当なウエートを持っておったということは事実でございまして、この遠洋漁業が大きな試練に遭遇し出したということも全くそのとおり認識しております。これからは遠洋漁業——従来から沿岸漁業につきましても政府としても力をいたしてきたところでありますけれども、一層この沿岸漁業には力をいたさなければならない、このように考えておりますが、水産庁の当局からお答えをさせていただきたいと思います。
  9. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  世界が急速に二百海里時代に突入をいたしまして、わが国漁業もいろいろな対策に追われているわけでございます。もちろん一つには、日本漁業がいままで約四〇%ぐらいを外国の二百海里水域というところに依存してまいったわけでございます。今後も、急速に二百海里時代になりまして、一番一つ焦点になるのは、これらの実績をどういうぐあいにして確保をしていくかということがまず一つ焦点になるかと考えるわけでございますけれども、二国間交渉あるいは場所によりましては多国間交渉ということで、漁業外交強化ということを通じましてまずわが国実績確保していく、また同時に漁業協力という面で、これからの新しい時代わが国利益だけを一方的に追求するという形でも結果的にわが国漁業発展ということは期することがむずかしいと考えられますので、海外協力漁業協力拡充ということを尽くしてまいりたいと考えております。  それから、もちろんわが国にとって一番今後根幹をなしていかなければならないのは、わが国沿岸漁業というものの強化であるということでございまして、今国会で成立いたしました領海法あるいは漁業水域法というようなものを通じまして、わが国周辺水域における漁業面体制整備をしていく、外国漁業に対して適正な規制をするということももちろん重要でありますけれども、同時にわが国漁業生産基盤拡大、それには沿岸漁場の計画的な整備、それから栽培漁業の積極的な展開、もちろん同時に資源状態の的確な把握、漁獲、漁業法組織化というようなことを図ることによりまして、沿岸沖合い漁業の一層の拡充に努めていきたいと考えております。  それから、もちろんそれに伴うことでございますけれども、消費あるいは流通面でも、今後サバ、イワシ等の多獲性の魚種消費拡大あるいは利用加工技術開発、ただ単に消費拡大ということを申しましても、加工技術開発が伴わなければうまくまいりませんので、そういうことでわが国周辺の水産物の有効利用を図りたいというぐあいに考えております。
  10. 河上民雄

    河上委員 いまいろいろお話がございましたが、そういうことも必要なことかもしれませんけれども、一昨年、昨年、そしてことしにかけての約一年半、二年足らずの間の海洋法秩序の大きな変化というものを考えてみますときに、二百海里経済水域というような新しい概念に対して、日本はどういうふうにこれを受け入れるのか、あるいは排除するのか、そういう基本的な態度が決まっていないことが、かえって実際、具体的な漁業者に対して非常に大きな迷惑をかけ、国益をも損じているという、そういうことが言えるんじゃないかと思うんですね。この一年半か二年の間の経験から見まして、私は、そういう理念というものの確立が、いわゆる過去の実績確保ということとあわせて非常に大事な問題じゃないかというふうに思うんです。どうもいままで日本外務省なり農林省は、理念確立はたな上げにして、ただ実績確保ということばかりに精力を費やしてきて、結果的にはずるずる押しやられたというような印象を私は持っておるんでありますが、そういう点で、二百海里時代というものにははっきり対応する、そういう決意は持っておられるわけですね、一言でよろしいんですが。
  11. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国は、御承知のように遠洋漁業国であったという関係から、二百海里体制というものに対しまして従来は反対してきたわけでございます。しかし、現在の国連海洋法会議の趨勢というものを見きわめまして、昨年からこの二百海里という問題も、これを将来とられるという前提で物事を考えなければならない、このようなことでございまして、海洋法会議におきましても、二百海里体制というものを、もうこれは反対はしないという方向を決めておるところでございます。
  12. 河上民雄

    河上委員 それでは今度は、海洋法会議は五月の二十三日ですか、ニューヨークで開幕されるように聞いておりますが、あるいは日にちは若干違うかもしれませんけれども、ことしの海洋法会議がいよいよ開幕せられるわけであります。そういうところでは当然いまのような新しい態度で臨まれる、こういうふうに私は理解いたします。  そこで、漁業専管水域あるいは経済水域、一般に二百海里と言われておりましても、ややバリエーションがあるわけでありますが、しかしだんだん、二百海里というものを前提としながら、単に漁業専管水域だけではなく、経済水域というもっと幅の広い考え方が強くなってきているように思うんです。むしろ端的に言うならば、漁業専管水域というのは経済水域という概念の中の一部であるという形になりつつあると思うんですが、今度の海洋法会議では、大陸だなと経済水域との関係について、日本政府としてはどういう態度をとられるのか。いままでは、二百海里経済水域という考え方そのもの反対であったから、われわれとしては積極的な主張はできなかったわけですけれども、今度は二百海里時代に踏み切ったわけですね。そうなりますると、大陸だなと経済水域二百海里というものの関係につきまして、私は、日本政府としてはもっと二百海里という立場に立って積極的に主張するのが日本国益を守るゆえんだと思うんです。その点、今度の海洋法会議にどういう態度で臨まれるのか、政府決意を伺いたいと思います。
  13. 村田良平

    村田(良)政府委員 今回の第六回の会期に対するわが国対処方針というのは、目下最終段階でこれを検討しておるところでございますが、いま御指摘の大陸だな及び経済水域に関しましては、やはり従来の過去五回にわたって行われました議論というものを踏まえた対処ぶりが必要かと思います。先生御存じのとおり、経済水域及び大陸だなの両制度は、それぞれ別個の問題ということで従来議論されておりまして、したがいまして、今度の第六回会期においてこの両方の優劣関係を決めるとか融合するというふうな話にはならないというのが現実的な判断であろうと思います。したがいまして、経済水域及び大陸だなそれぞれにつきまして、わが国国益を一番守るのはどうすればいいかという発想から、対処方針を考えるべきものであろうというふうに心得ております。
  14. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、確かに優劣関係というのは非常にむずかしい問題だということはわかるのでありますけれども、従来たとえば両国が対面しておりまして、五百海里の幅がある、その中でお互いに二百海里、二百海里を主張し、片一方の方が大陸だながあって、二百海里からさらに先に出ておる大陸だなの権利を認める、こういうような形になっていると思うんですけれども、わが国の場合のように、アジア大陸に非常に近く接近して日本列島というものはあるわけでして、そういう場合に、お互い二百海里を引いたらお互いに接触するというような場合に、大陸だなの自然延長というものの主張と、二百海里の経済水域という主張と、どうかみ合わせるかということは、よその国はいざ知らず、それは並行したもので結構だ、こういうことかもしれませんが、日本にとってはこれはもう大問題だと思うんですね。国益を守る立場から論戦を展開すると、こう言われましたけれども、そのことはそういうことを十分踏まえた上での御意見だと私は思うんですが、その主張が通るか通らぬかは別として、やはりそういうような状況の中で経済水域二百海里というこの理念を、あくまで日本はこれを国益立場から強く主張するというお考えと伺ってよろしいわけでございましょうか。
  15. 村田良平

    村田(良)政府委員 ただいま先生が問題提起されました問題の中で、最も端的に今度海洋法会議で再び議論されるかと思われますのは、大陸だな及び経済水域の境界画定の原則の問題であろうと思います。この点に対しましては、わが国は従来中間線原則というものを海洋法会議において主張してきたわけでございますが、会議の大勢は中間線という基準をどちらかというと二義的なものに押しやって、公平の原則とかあるいはあらゆる事情を考慮してというふうな考え方が主流を占めております。特定の国を述べるのは差し控えますけれども、一部の国は中間線という考えを一切やめてしまえというふうな考えすらとっておるわけでございます。したがいまして、わが国が従来主張しておりました中間線というふうな考え方が維持されるように努力する、これは一つの例でございますけれども、そういった点を十分踏まえまして、この両制度に対処したいという考えでございます。
  16. 河上民雄

    河上委員 そういうことでやっていただくことは、私は、今後国益を守る上からいって非常に重要なことだと思うんです。そういう点から見まして、過去の、たとえば日韓大陸協定を含めて日本政府がとった措置というものが、そういう主張をする上において多少ぐあい悪い、非常にマイナスになるという見方も当然あり得るわけですけれども、そういう点につきましては、海洋法会議で、あなたの方はこんなことやっているじゃないかと言われる懸念というものは、十分あるわけですけれども、そういう点につきましては外務省としてはどういうふうに対処されるつもりですか。
  17. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 大陸協定の御審議の際にたびたび御説明申し上げたところでございますが、この共同開発区域というものは、大陸だなの境界線を定めるというようなことは一切しておらないところでございます。わが国といたしまして、総合的な国益という観点から境界線を定める場合には中間線理論というものを主張すべきであるということは当然のことでありますし、その態度でまいる所存でございます。
  18. 竹内黎一

    竹内委員長 午後二時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時七分開議
  19. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河上民雄君。
  20. 河上民雄

    河上委員 先ほどの休憩前の質問に続きまして、日米漁業協定に関して質問を続けさせていただきます。  先ほどお話がございましたところによりますと、日本政府も、かつての二百海里宣言に反対するという態度から、二百海里時代を積極的に受け入れていくんだ、その中で国益を守っていきたいというお考えのように承ったわけでありますけれども、その場合に、いまのところ二百海里宣言については対ソ、ソ連に対してのみというような御意向もあるようでありますが、一般的に二百海里宣言を行う場合には、いかなる国にというよりも、日本の領土を一つの基点として、すべての海域にわたって宣言をするのが普通だと思うのでありますが、韓国や中国に対してもあるいはアメリカに対しても二百海里宣言をするおつもりがあるかどうか、もちろん韓国や中国につきましては、先方の二百海里以内でわが国が相当の操業をしているという実績があるわけでありますけれども、それを失うおそれがあるということで、二百海里宣言の適用を避けるというお考えもあるように聞いておりますけれども、いま対ソ交渉の過程で出ておりますように、お互いに相互の操業を認め合うということになれば、そういうような危険は少ないんではないかと思うのでありますが、その点いかがでございますか。つまり、わが国が二百海里宣言をした場合に、その範囲内において外国の入漁を認める考えがあるかどうか。その二つについて伺いたいと思います。
  21. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  中国や韓国について二百海里の漁業水域を直ちに設定するつもりがあるかどうかということでございますが、いまのところ韓国が二百海里漁業水域を設定しておりませんので、相互主義という立場わが国としても必要な水域についてのみ漁業水域を設定するというたてまえを通しております。  なお、ほかの国も同様なたてまえを貫いているところがございまして、たとえばニュージーランドは、引いているわけではありませんけれども、二百海里をすでに設定したという国の漁船についてはニュージーランドも早期に二百海里水域を設定することがあり得る、ニュージーランド自身は、正式に設定するのは国連海洋法会議が、今回の会期が終了して後であるというぐあいに承知をいたしております。それからECあるいはソ連なども、すべての水域漁業水域を設定しているわけではございません。
  22. 河上民雄

    河上委員 その問題については詳しく承りたい点があるのですが、いまのお話では日本列島の周り全部を二百海里宣言を行って、その中で相手が二百海里宣言を行っている国と行っていない国とにおいて取り扱いを区別するという考えなのか、いま伝えられるように、たとえば韓国や中国に面した海については二百海里宣言をしないというような、領域によって分けるというお考えなのですか、その辺のところを承りたい。今後ともですね。
  23. 米澤邦男

    米澤説明員 さしあたりまして西日本水域については設定をいたさないということにいたしております。
  24. 河上民雄

    河上委員 今後とも同じ方針ですか。
  25. 米澤邦男

    米澤説明員 わが国は在来から、二百海里という問題は国連海洋法会議で結論が出てから世界じゅうが統一した基準に基づいて合理的な二百海里を設定することが望ましいというぐあいに考えております。現在の二百海里法というのは、そういう意味におきまして、これはアメリカの二百海里もそうでありますし、ソ連の二百海里法もそうでありますけれども、それまでの一種の暫定的な制度という意味合いが非常に強うございまして、またわが国立場から申しますと、わが国漁業を実際上にどうやって防衛するか、実績をどういうぐあいに、わが国利益を最大限に確保するためにはどうすればいいかというような観点から設定をいたしておりますので、当分の間は設定をしない、いまのところは設定をしないということにいたしております。
  26. 河上民雄

    河上委員 ちょっとその問題もう少し伺いたいのですけれども、きょうの許された約束の時間が限られておりますもので、日米漁業協定、その内容それ自体について少し伺いたいのであります。  アメリカの対日漁獲割り当て量、それからその中における入漁料についての基準は何か、また七七年における対日漁獲割り当て量、これは大きな問題でありますけれども、その前に基準は何であるかということをちょっと承りたいのです。
  27. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 お答え申し上げます。  アメリカは、この協定の規定に従いまして、毎年、各漁業資源につきまして、総漁獲可能量及びわが国に対する割り当て量等を決定することになっております。しかしながらアメリカといたしましては、その総漁獲可能量あるいは対日割り当て量を全く恣意的に決めようとしているわけではございません。その基準として申しておりますのは、資源の再適生産を達成するための関連要素等を考慮に入れて、また日米両政府間で定期的に協議する内容を考慮に入れて決定するということが、この協定の中で規定されておるわけでございます。したがいまして、その協議その他を通じまして、わが国としましては、わが国実績をできるだけ確保するために働きかけを行っていくことになるわけでございます。  それから入漁料に関しましても、アメリカ側としては、この協定にも書いておりますように、管理、保存に必要な経費の一部に充てるためということで設定しているわけでございますが、この点についてもわが方としてはそれが妥当な水準に決定されますよう、従来からも話を行ってまいりましたし、今後も話し合っていくつもりでございます。
  28. 河上民雄

    河上委員 いま恣意的なものでないようにというお話でありましたが、これは今後、二百海里漁業専管水域内における入漁料の国際的な一つの相場になるような性格を持っているものなのかどうか。また、いま日ソ漁業交渉の中で、こういう問題がやはり出てくると思うのでありますけれども、そういう場合に、この日米漁業協定内容というものが一つわが国の主張の根拠になるのかどうか。
  29. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  入漁料の問題についてはアメリカが一番最初に先例を開きまして、水揚げ価格の三・五%ということで設定をいたしたわけであります。いまのところそのほかの、南側の後進国は別といたしまして、北の先進国では入漁料を徴収している国はございません。ECもあるいはカナダも今年度にわたってはまだ入漁料を徴収するということを申しておりません。いずれ入漁料を徴収するということは明らかにしておりますので、遅かれ早かれ入漁料を設定するということになると思います。ソ連も適当な入漁料を徴収するという意向を明らかにしておりますけれども、日ソ交渉では、御承知のようにまだそのように細かい点で話し合いが行われておらない現況でございます。
  30. 河上民雄

    河上委員 そうすると、どこの国も初めてのことなので、ちょっと模様を見ているというような感じでございますだけに、この日米の交渉というのは、一つの基準というか相場をつくらぬまでも、一つの参考材料になるという可能性が非常に大きいと思いますので、日本政府としても安易に決められないという面があるのじゃないかと思うのです。  今度の日米漁業協定の中で恐らく漁民の方が一番心配しておられますのは、何らかの意味で取り締まりの対象になった場合どうなるのかということだと思うのです。海洋法非公式単一交渉草案の第六十一条の取り締まりの規定によりますと、「沿岸国による刑罰は、拘禁及び体罰を含まない。」ということになっておるのでありますけれども、日米漁業交渉ではこの点どのように話し合ったか。特にアメリカの二百海里法案の中では体罰を含むことになっておりますね。恐らく日本の漁民の方は一番この点を心配しておられると思いますので、その点、経緯なり確認事項というものを明らかにしていただきたい。
  31. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 仰せのとおり、この日米漁業協定に基づきます取り締まりに関連いたしまして体罰が科され得るということにはなっておるわけでございます。十二条で、アメリカはその法律に従って「妥当な刑を科する。」ということになっております。これはその二百海里法がその種の規定を置いておるからでございます。しかしながら、御指摘もありましたように、国連海洋法会議におきます改訂単一草案では、そういう体罰の規定はないわけでございまして、わが方といたしましてもそういう観点からアメリカ側と鋭意交渉をしたわけでございます。その結果アメリカ側は、この合意議事録に記されておりますように、アメリカ政府の代表者は、この十二条に書いてございます刑に禁錮その他いかなる形の体刑も含まれないよう裁判所に対し勧告するということを約束したわけでございます。これは行政府として最大限の努力をして体刑が科されないように努力をするということでございます。最終的決定権は裁判所が持っておりますので、その点を変えさせることはできなかったわけでございますが、われわれとしてもそういう体刑が科されることがないように最大限の話し合いをして、そういう合意議事録にアメリカ政府としての約束を取りつけた次第でございます。
  32. 河上民雄

    河上委員 そういう点に非常に努力されたことはわかるのですけれども、やはり何%かの不安というのは残っているようにいまの御説明でも読み取れるわけです。それはやはり、非常にアメリカの場合、司法、立法、行政三権分立というのがかなりばか正直にといってもいいぐらいはっきりしておるだけに、行政府の約束は確かにおっしゃるとおりでありますけれども、それにむしろ拘束されないという司法部の一つの見解も十分にあり得ると思うのですね。これは大変むずかしい問題が生ずると私は思います。特に今度の協定の第十二条でございますか、「合衆国の法律に従い、妥当な刑を科する。」ということになっておりますけれども、これがわが国立場から見て妥当ならざる刑であるといって不満が生じた場合、救済措置はどういうふうにしてとれるのか、考えられないのか、また、考えられるとすればどういうふうにしたらいいのか。
  33. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この点は仰せのとおり、アメリカの中におきましても立法府と行政府と司法府の関係の問題でございまして、非常にむずかしい問題でございますが、実際の問題として、われわれといたしましてこの刑を科することについて問題があると思う場合には、この協定の第三条にも協議事項があるわけでございますので、その協議事項に基づいて先方と協議していくということは可能であると思います。そして、その点について、状況によって本当に必要と考えられます場合は、外交経路を通じて先方と話し合うということはできると考えております。
  34. 河上民雄

    河上委員 私、この協定を読みまして感じますのは、そこら辺が一番重要だと思うのです。漁獲量というのは毎年少しずつ変わっていくことですし、妥協ということもありましょうと思いますけれども、ちょっと漁民の方がいわば拿捕される、取り締まりの対象になった場合、すでにもうソ連の漁船がアメリカによって取り締まりの対象になって拿捕されているケースが生じているだけに、私はその点非常に心配するわけで、いまお伺いした限りにおいては、日本政府としては精いっぱいがんばったけれども、アメリカ国内法の壁を十分破ることができなかったというふうな印象を受けるわけです。その点、今後の検討課題というか、努力の領域になると思いますけれども、この点は十分考えていただきたいと私は思うのです。  いま合意議事録というお話が出まして、かなり重要なことがここへ出てきているわけですが、この合意議事録の第四項に、わが国の沖合いでアメリカ側の漁船による操業に関するいろいろなことを決めておる部分があるのでありますけれども、これはアメリカ側の要求によって入れたのか、また将来そういうことが予測され得るのか、いかがでございますか。
  35. 村田良平

    村田(良)政府委員 この合意議事録第四項の規定は、米国が将来日本の近海において操業したいという希望から提言したというものではございませんで、むしろアメリカの一九七六年の漁業保存管理法自体の立て方といたしまして、その中にも条文があるわけでございますが、米国が相手国に対して米国の二百海里内で漁業を認める場合には、その相手国も米国に同様の権利をいわば原則、たてまえとして与えるべきであるという規定が入っておるわけでございます。したがいまして、米側の代表からこういったような措置を少なくともとるということに関する将来の意図表明、これは合意議事録で扱われておりますように、両国間の権利義務を縛る拘束的な約束ではないわけでございますけれども、少なくとも日本政府が、仮定の話として将来そうなった場合には、日本政府の「権限に属するものについては、」と書いてございますのは当然国内法に従ってという意味になりますけれども、日本国内法が許す限りにおいて米国の漁業者にもそういった機会を与えるたてまえをとる考えがあるということを明らかにしてくれという要望がございまして、これに応じたというものでございます。
  36. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、アメリカの方の要望でこの項は挿入されたというふうに理解してよろしいわけですね。
  37. 村田良平

    村田(良)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  38. 河上民雄

    河上委員 二百海里宣言をいたしました場合に、今後は二国間同士のこういう協定が次々に出てくると思うのですけれども、そういう中でやはり相互主義というのがどうしても出てくると思うのです。そういう場合に、わが国の二百海里内においても一定の秩序に従って外国の入漁を認めるということは当然出てくるんじゃないかと思うのでありますが、そういうことを前提としながら、向こうの二百海里内の操業をわが国として要求していく、こういうことになる一つの先駆けとしてこれを認めてよろしいものでしょうか、いかがでございますか。
  39. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この協定におきましては、そういう先ほどからも御説明いたしましたような観点から、一種の相互主義的な規定が置かれておるわけでございます。今後わが国が諸外国におきまして二百海里水域内において漁獲をし、また漁獲の実績確保していくこととの関連で、わが国自体の二百海里水域内において先方が漁獲をしたいということの申し出がありましたときは、やはりこの点はケース・バイ・ケースと申しますか、その先方の要求、またその先方の実力といいますか、そういうものも十分考えた上で話し合っていくことになるかと思います。
  40. 河上民雄

    河上委員 これからは、一つの国と結んだ協定というものが、他の国との漁業に関する協定わが国の主張なりあるいはわが国が認め得る許容限度とかそういうようなものを一般法則でないまでも規定していくということはやはり事実でございますので、この協定を結ばれることによりまして、わが国漁業を守るということに努力されましたことには敬意を表しますけれども、同時にこれでやはり新しい秩序にわが国も一歩も二歩も入ったんだ、踏み込んだんだということを十分に認識してやっていただきたい、特に理念というものが変わったんだということを十分に認めた上で、今後ただ実績確保ということだけでなしに、そういう努力をしていただきたいということを希望いたしまして、日米漁業協定についての質問をここで終わりたいと思います。  もう非常に時間がなくなってまいりましたのですが、モンゴル人民共和国との経済協力に関する協定について一問だけ伺って私の時間を終わりたいと思います。  今回、わが国は五十億円ですか、カシミヤ及びラクダの毛の加工工場を建設されるというようなことであります。そういうような内容経済協力協定が結ばれましたことは、モンゴルに対してわが国の友好をあらわす意味で非常に結構なことだと思いますけれども、いま外務大臣は、提案理由の中で、二国間には一種のわだかまりがあった、それを払拭するというようなところに今回の協定の意義を認められておるのでありますけれども、その点について少しく御説明いただいて、この協定の意義を明らかにしていただきたいと思います。
  41. 大森誠一

    ○大森政府委員 お答え申し上げます。  外務大臣提案理由説明の中におきまして「両国関係の過去の経緯に由来する特殊な対日国民感情」ということが触れられているわけでございますけれども、この点は、主として一九三九年のノモソハン事件と第二次大戦末期における日本軍との戦闘における人的物的損害に対しましてモンゴル国民が有しております感情というものがあるということを指したわけでございます。わが方からしますと、法律的な見地からいたしますれば、モンゴルとの間に戦争状態が存在したことはなく、したがって賠償問題もあり得ないという立場をとっているわけでございますけれども、現実の問題としては、ただいま申し上げましたように、モンゴル側に、過去の日本軍との戦闘における損害から来る対日感情の上から一種のわだかまりが残されてきていたということは事実として認めざるを得ないところでございます。このような状態というものをこのまま放置しておきますことは、わが国モンゴルとの今後の友好関係発展というものについて障害になるというふうに判断されましたので、今後のわが国モンゴルとの友好関係、親善の増進を一層確実にするという立場から、今回この本経済協力を行うこととしたものでございます。したがいまして、わが方といたしましては、この協定に基づく協力によりまして、モンゴル側に残っていると見られるわが国に対するわだかまりというものが払拭されて、今後日本モンゴル友好関係が一層増進される一つの礎になるということを期待しているわけでございます。  なお、この協定につきましては、モンゴル側も非常に高く評価しているところであることを申し添えておく次第でございます。
  42. 河上民雄

    河上委員 終わります。
  43. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、伊藤公介君。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕
  44. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 日米漁業協定について御質問を申し上げます。  アメリカの二百海里法の成立に伴いまして、従来の日米カニ取り決め及び日米漁業取り決めは失効をしたということでございますけれども、従来の漁業取り決めと今回の日米の長期漁業協定とは基本的にどう違うのか、まずお尋ねを申し上げます。
  45. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 従来の日米漁業関係の取り決めといたしましては、日米のカニ取り決めと日米の漁業取り決めというものがございます。この日米のカニ取り決めといいますのは、アメリカ大陸だなの生物資源について管轄権を主張したところから結ばれるに至りましたものでございます。その後またアメリカが一九六六年に至りまして十二海里の漁業水域を設定したということに伴いまして、日米漁業取り決めが結ばれるに至ったわけでございます。これはいずれも行政取り決めとして結ばれたわけでございますが、この問題に関しましては、日米双方ともその法律的な立場をたな上げにいたしまして、それぞれ東部ベーリング海のわが国のカニ漁業、またアメリカの沖合い十二海里の水域内の漁業について双方で合意しました結果を両政府間の約束として取り決めたものでございます。  これに反しまして今回の取り決めは、「一九七六年漁業保存管理法」というアメリカの法律というものをわが方が認めた上で、それに基づいて結んだ長期的な取り決めでございます。また、ここに御審議を願っておりますように、その内容からいたしまして国会の御承認をいただいた上で実施する協定となっております。  その内容は、簡単に申し上げますと、アメリカ漁業管理権を行使しますアメリカ地先沖合い生物資源わが国の漁船による漁獲に関する原則及び手続について定めたものでございます。その際アメリカは、その米国の地先沖合い生物資源に関しまして、アメリカ政府が毎年総漁獲可能量、対日割り当て量等を決定することになっておりまして、わが国政府は、わが国の漁船がこの協定に基づいて定められる条件に従うことを確保することを約束いたしております。さらにアメリカ側は、この協定またはこれに基づく行政上の措置の違反に対して取り締まり権及び裁判権を行使するというふうなことを定められております。その意味で、従来の行政取り決めでやってまいりました漁業取り決めとは大分趣を異にしておる次第でございます。
  46. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 わが国アメリカ二百海里内での漁獲量について、アメリカの一方的な決定を押しつけられるおそれがないか心配な点でありますけれども、その協定上では日本国政府との協議を考慮に入れる、こうあるわけでございますけれども、アメリカ側が決定をする、こういう仕組みになっているわけでございますので、日本側の意見が一体どの程度取り入れられていくのか、お尋ねを申し上げます。
  47. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカ国内法及びこの協定の仕組みといたしまして、アメリカが総漁獲可能量及び対日割り当て量を決定することになっております。しかしながら、その決定は恣意的に行われるわけではございません。この協定の中にも書いてございますように、その決定に当たりましてはアメリカは入手可能な最良の科学的証拠を基礎として行うということになっておりますし、さらに資源の最適生産を継続的に達成するためにいろんな魚の相互依存関係とか、あるいは国際的に受け入れられている基準等の関連要素を考慮するということになっております。したがいまして、アメリカの総漁獲可能量の決定は恣意的に行ってはならないことは明らかでございます。  その次に、対日割り当て量の決定でございますが、これは伊藤委員からも御指摘ございましたように、第五条において書いてございますが、わが国の伝統的実績とかあるいはわが国の経済的混乱を最小限度にする必要性等を、こう述べておりまして、これらの点を考慮に入れて行われることになっております。さらにこの協定の第三条には協議条項がございまして、その協議の仕組みを通じまして日本政府アメリカ政府と十分協議いたすことになっております。  そういうことでございますので、最終的な決定権が先方にあるということはこのアメリカの二百海里法を認める立場からしてやむを得ない点でございますけれども、その範囲内においてわが方の意見は十分反映できるようになっております。また事実、本年度の漁獲対日割り当て量の決定に当たりましても、先方と鋭意交渉をいたしまして、われわれとしては最大限のものを獲得し得たと確信しておる次第でございます。
  48. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 わが国の同水域内での漁獲実績と今回アメリカ側が認めた漁獲量はどのくらいになっているのか、また協定上今後毎年協議をすることになっているわけですけれども、来年度の見通しあるいは長期的な見通しについてお尋ねを申し上げます。
  49. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  今年度初年度に当たりますわけでございまするけれども、今年度の日本に対する割り当て量は百十九万トンでございまして、昨年度実績に比べますと約一一%の減少ということになっております。  それから、じゃ将来この漁獲量がどういうぐあいになるかということでございますけれども、これはもっぱら日本側あるいはアメリカ側、日米協議の場で持ち出されるわけでございますけれども、双方で研究をいたしております資源の状態に関する科学的な研究の結果というものが非常に大きく影響するのではなかろうかと思います。  それからもう一つ、幸いにいたしまして日米の間では漁業それ自身では必ずしも大きな競合関係がございませんで、比較的資源の状態に関する双方の客観的な、科学的な判断が反映されやすいのではなかろうかというぐあいに考えております。もちろん競合する分野についてはいろいろほかの考慮というものが入ってまいると思います。
  50. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 日米の漁業について暫定取り決めと長期協定の二本立てになっているわけでありますけれども、暫定取り決めの内容あるいは法的な性格が一体どうなっているのか、お尋ねを申し上げます。
  51. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 長期協定は現在御審議を願っているものでございますが、この協定両国の憲法上の手続を経て発効するのに若干の時間を要するということで、それまでのつなぎの措置として暫定取り決めが結ばれるに至ったわけでございます。したがいまして、これは本年じゅう限りのものでございまして、長期協定が発効すれば長期協定が暫定取り決めにとってかわるということになっております。この暫定取り決めを締結いたしますことによって、本年三月一日から発効いたしましたアメリカの二百海里法体制下におきましてもわが国の米国の地先沖合いにおける漁業が継続できることになっておるわけでございます。  この暫定取り決めの内容でございますけれども、これは先ほど申し上げたようなそういうつなぎの措置でございますのでごく簡潔に書いてございまして、わが国漁業は国際法に従って、かつ両国の法令に従って資源の状況及び過去の漁獲慣行を考慮に入れて行われるということが書いてございます。  あとは、これに伴って必要な行政的な措置について簡潔に触れておるわけでございます。
  52. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 政府が日米の漁業協定を大変急いで提出をした理由は一体何なのか、また、アメリカにおける議会での手続はどうなっているのでしょうか。
  53. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 先ほども申し上げましたように、この暫定取り決めはいずれにいたしましても本年末をもって効力を失うことになっておりますので、私たちとしては、この長期協定をぜひとも早く御承認を願いたいと考えておるわけでございます。  他方、米国におきます手続といたしましては、米国はその二百海里法の規定に従いましてこの長期協定を六十日間議会に提示する。これをオーバーサイトと英語では言っておりますが、オーバーサイトのもとにおきまして、その間異議がなければそのまま議会の承認を得るということになっておりまして、アメリカは近くこの協定を米国議会に提出するものと承知しております。
  54. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 この協定の効力は一九八二年で終わる、こういうことでありますけれども、その後の延長条項というのはないわけでありますけれども、その理由は何でしょうか。
  55. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この長期協定は、アメリカ地先沖合いにおきますわが国漁業に長期的かつ安定した基礎を与えるという考慮から、諸般の事情を考慮いたしまして一九八二年十二月三十一日まで効力を存続せしめることにいたしております。  しからば、一九八三年以降はどうなるのかというお尋ねでございますが、この五年間には海洋法に関する国際的な動きがいろいろあると思います。われわれとしては、それまでに海洋法会議が結論を得て実施され、新しい海洋法秩序確立していることを望む次第でございますが、いずれにいたしましても、この五年間は海洋法秩序についていろいろな変化があると思います。したがいまして、それを十分考慮に入れた上で、その後の状況については日米間で話し合っていきたいというふうにわれわれとしては考えておる次第でございます。
  56. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 新聞等の報道によりますと、ニュージーランドでもことしの八月ごろには二百海里の宣言をするという見通しが出てきているわけでありますけれども、ニュージーランドの首相が農産物と漁業を絡ませて、ニュージーランド二百海里内での日本漁船の操業に関していかなる取り決めも結ばない、こう表明をして日本政府に伝えたと報道されているわけでありますけれども、これはそのとおりなのか、また、この水域ではわが国は年間八万トンの水揚げを行っているわけでありますけれども、今後政府としてはどう対処していくのか、お尋ねを申し上げます。
  57. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  先般、ニュージーランドのマルドーン首相がトータル・エコノミック・リレーションシップという構想のもとに、日本との経済関係を総合的な見地から把握して対処していきたいということで、その関連で漁業問題と酪農問題、牛肉、酪農製品等の対日の輸出の問題を絡ませて考えていきたいということを表明したということは事実のようでございます。  二百海里時代になりますと、二百海里というのは相手方の漁業管轄権の及ぶところでございますので、今後ニュージーランドに限らず、ほかの国との交渉でもいろいろな問題に絡めて漁業の問題が出てまいると思うのでありますけれども、ほかの問題と漁業の問題とはやはりおのずから性格を異にするものでありますし、漁業の中で合理的な解決が図られる、図られ得るはずのものでございますので、農産物あるいは漁業はそれぞれのコンテクストにおいて最も合理的な解決を図るという立場で臨んでまいりたいというぐあいに思っております。
  58. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員 いまのニュージーランドとの関係でございますけれども、これは必ずしも外務省の管轄の問題ではないと思いますけれども、二百海里の漁業専管水域等の問題の中で、ニュージーランドの首相が、牛肉やあるいは酪農の製品をもっと買ってくれ、そうしないと二百海里交渉に応じないんだ、こういう声明をしているわけでありますけれども、今後わが国とニュージーランドとの関係をどんなふうに考えていられるのか。  つい先日、私ども超党派でニュージーランドとの議員懇談会、日本とニュージーランドの議員連盟ができたばかりでありますけれども、わが国外務大臣としてニュージーランドとの関係をどんなふうにお考えになっているのか、最後にお尋ねをして質問を終わります。
  59. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ニュージーランドとのただいま御指摘のような漁業問題と農産物を絡ませるというような問題は、これはわが国といたしましては大変むずかしい調整問題になるおそれがございます。御承知のようなオーストラリアと牛肉問題が起こりましたときに漁船の入港ができなくなった次第もありまして、そのような先例を考えますと、わが国として対処していくには大変な努力が要ることであろう、こう思います。  しかし、要はやはり両国の間が本当にお互いの立場を理解し合うということが一番大切であると思います。牛肉交渉の際にも感じたことでありますけれども、先方の業界の方々も日本の業界の実情を本当に理解していただくということが何よりも必要であるということを痛感いたした次第で、そういう意味におきまして、ニュージーランドとわが国との友好関係を本当に緊密にするということが何より必要であろうと思いまして、私どもといたしましても、いま御指摘のような点につきましてできる限りの努力をいたすべきであると思います。
  60. 有馬元治

    ○有馬委員長代理 次に、渡部一郎君。
  61. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まず、日米漁業協定の方からちょっとお伺いしたいのでありますが、この協定をつくられる基礎的なことをまず伺いたい。  それは、この漁業保存水域を決める場合にも「領海の幅が測定される基線から二百海里となるように引かれた線からなる水域をいう。」というふうに規定がされておるわけでありますが、その二百海里というのはどういうふうにはかるのか、地勢学的にお答えをいただきたい。——きょうは外務大臣なるべく答弁してください。
  62. 村田良平

    村田(良)政府委員 先生の地勢学的とおっしゃった意味をあるいは正しく理解しておらないかもしれませんが、米国の場合は特に直線基線等を用いておりませんので、低潮線が領海の基線と了解しております。したがいまして、通常の低潮線からはかりまして二百海里ということだと思います。
  63. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 地球は丸くなっているわけですよ。あなたのいま直線と言われているのは複雑な意味を持つのです。それは、地球のこの平らなところを接線上にいくのか、突き抜けて地球の中をもぐり込んで直線上にいくのか、それとも大圏円の弧線でいくのか、わからないじゃないですか。
  64. 村田良平

    村田(良)政府委員 その点につきましては、従来国際会議等で議論されたということは記憶いたしませんが、物事の道理から考えまして非常に緩慢な弧線と考えるべきであろうと思います。
  65. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 緩慢な弧線とは何ぞやと私は言いたい。それは何ですか、その緩慢な弧線とは。そんなのは私は見たことも聞いたことも味わったこともさわったこともないのだ。幾何学的な用語を用いるのか地勢学的な用語を用いるのか、それはちゃんとお答えにならなければいけませんね。そんなんじゃ二百海里がどこだか大体わからないじゃないですか。これは変な条約を決めたもんだな。答弁できなかったら、後ほど統一見解をもっておわびいたしますと言いなさいよ。
  66. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 御指摘のことは、私ども当然表面の距離をはかるべきものであろうと思います。要するに、地球が丸いとおっしゃいましたから、丸い表面の距離が二百海里であるというふうに考えておるわけであります。もし違っておりましたならば、これは調査の上正確な御答弁を申し上げます。
  67. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは大臣、みっともない答弁ですね。球があるでしょう。中心をぽんと切った、この弧線のところではかるのを大圏円というのです。大圏円に基づいて二百海里をはかるというのなら、それはそれでわかるのです。いまあなたは大体真っすぐと言うが、大圏円でない、こういう横っちょのはかり方も何通りもあるのですよ。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 それから、接線でなくて、この弧の中側を直線ではかる二百海里というのも論理的にはあるのです。だから、その辺を丁寧に聞いているのです。地勢学的にとかあるいは幾可学的にと私が申し上げているのはそれなのです。  お答えがないし、よくわかっておられないから、ぼくは、毎回ここで質問するたびに後から意見を修正されるようでは、大臣の権威にもかかわりますし、やめておきます。だからちゃんと一回答えてください。二百海里とは何か、どういうものか、図でも書いて御説明いただきたい。よろしゅうございますね。  それではその次は、今度は二百海里、まだ二百海里が続くのですよ。二百海里と言うのだけれども、日本側の思っている二百海里と向こう側の思っている二百海里とが違うという可能性がきわめてある。たとえば、ソビエト漁船が日本の三海里線の中に出没して問題を起こした事例が幾つもある。二百海里などと言ったら海の真ん中でしょう。だから周りを見て島が見えない。どこも陸地が見えない。日本から北朝鮮のところに行った日本の漁船は、それが向こう側の領海主張線のそばに入らなかったと言っているのにもかかわらず、銃撃され、拿捕され、痛ましい事件がすでに起こっているのですね。二百海里などと言ったら海の真ん中でしょう。どうやってはかるのですか。問題が起こったらどういうふうに主張するのだということが当然問題になりますね。だから、こうやって二百海里線などと書いてあるけれども、これは海の上の国境線を決めるのに等しい大問題が起こる。海の上に点を並べておくわけにいかない、ひもを引っ張っておいて、ここが二百海里線というわけにいかないでしょう。もめたらどうするのですか。それを伺いましょう。どこでも答えられるところが言ってください。
  68. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  事実、当該地点が二百海里の中であるか外であるか非常にむずかしい、事実上の争いが起こる可能性は十分あるわけであります。そこで、日米協定協議の際には、米側の考えを直ちに認めるという意味では必ずしもございませんが、米側の考える二百海里の外側の線を、経度、緯度をもってきちんと示してくれということを申し入れてございますが、いまのところまだそれは準備中であるということで入手をいたしておりません。  先ほどの先生の御質問にも関連するのでありますけれども、では実際的にはどういうことになるか、こういうことになるわけですね。二百海里でありますから、目で見るとか、はかるというわけにはまいりませんけれども、船はロラン等の位置測定機器を持っておりまして、当該漁船上から二百海里という距離にあるかどうかということを常にウォッチをいたしておりまして、多少用心もしなければならないと思いますけれども、違反が起こらないというように努力をいたしておるわけであります。  それからもう一つ、これは先ほど出たのでございますけれども、地球の大きさに比べまして二百海里というのは非常に狭いものでございますから、ほぼ二百海里ぐらいのところでは、球面と必ずしも考える必要はございませんで、平面と考えまして、二百海里ということで位置の測定ということは必ずしもむずかしくない。それは何メートルまでびしっとという話ではございませんので、実際に自分が違反をして漁業水域内に入っておるのか、あるいは違反をしていなくて漁業水域に入っていないのかということを判断するに足る位置の測定というものは、少なくとも大中型の漁船については可能ではなかろうかというぐあいに考えております。
  69. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま御答弁なすった方はどなたかわからぬけれども、それはあなたの意見にすぎない。地球上の表面の位置を精密に出さなければ、たとえば原子力潜水艦等は相手に射撃することはほとんど不能である。だから電波干渉のしまを使って、ごく精密に、五十メートル以下の近似値において自分の位置を測定するのでなければだめだということはわかっているでしょう。あなたの言われているのは、球面を大体平面とみなす、あなた、こんな丸いものを二百海里にわたって真っ平らであると主張するのは、あなたの主張であるにすぎないじゃないですか。それが国際的に合意されていなかったら、こんなのは主張になり得ないよ。しかも、その辺のことを十分確かめもしないで、いきなりサインして持ってきて、いま承認させようとしているじゃないですか。だから問題なんです。その点は明快でなければいけない。どの近似値をとるということが両方で合意されていなければいけない。問題は、そんなあいまいなものであってはいけない。近似誤差はどの程度のもので二百海里と言っているのですというところまで提出されなければだめじゃないですか。そうでしょう。しかも外務省の幹部は全部知らないじゃないか。あなただけ知っているじゃないか。外務省は知らないで判こを押してきている。それで外務委員会に出してきた。大臣以下答弁できないで、さっきからきゅうきゅう言っているじゃないか。外務省に恥をかかせてあなた喜んでいるのか。こんなものは話にも何もならない。  あなたは、ロラン等で常にウォッチしているはずだと言っているけれども、ロランを設備していない船はたくさんあるでしょう。何隻のうち何隻がロランを設備しているのですか。ロランでウォッチしているはずだ、それは向こうの警備艇は持っているかもしれないけれども、こっち側は持っていないじゃないですか。しかも、ロランというのは、おのおのの機械の製作者によってロランの精度が違うことは当然ですよ。こっちが使ったときに、こっちのロランでは入っていなかったはずだと叫んだって意味がないじゃないですか。どうするのですか。その辺が何も決めていないじゃないですか。二百海里線というのは夢の線なんですか。そうすれば、二百海里のはるか二十キロも三十キロも手前で入らない、それから先は危険地帯として入らないというしかしようがないじゃないですか。何も決まっていない。この条約はいいかげんですよ。日本にも科学的な議員がいるのだということをアメリカにちゃんと言ったらどうですか。こんなお粗末な条約を結んできた。——これは交換公文だな。これは得意の口上書でもいいから決着をつけたらどうですか。
  70. 竹内黎一

    竹内委員長 答弁ありますか。
  71. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。事実問題といたしましては、漁場が必ずしも百九十九海里から二百十海里というようなところにあって、その境界線が常に問題になるということではございませんで、実際の漁場は……(渡部(一)委員「そんなことはわからないよ。これから問題になるかもしれない」と呼ぶ)私は、いまの日米の協定のカバーをしている水域について申し上げているわけですけれども……(渡部(一)委員「紛争が起こったらどうする。そんなあいまいなことじゃしようがないじゃないですか」と呼ぶ)その点についてはいま……
  72. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなた悪いけれども、私はあなたの意見を聞こうと思っているわけじゃないのだよ。ここに書かれた条約で二百海里と出ているのだよ。二百海里について国際常識はないのだよ。いいですか。二百海里を決めるについて合意はない。日本は初めて二百海里というものを認めたのだから、日本国の二百海里という言い方はこういう考え方なのですと政府で意見がまとまっていなければだめでしょうと言っているんだよ。あなたがいま言われているのは普通常識だよ。恐らくあなたの個人的見解にすぎない。だから、私は文句を言っているんじゃないか。そんなものをあなたから幾ら聞いたって何にもならないよ、意味ないよ。いわんやアメリカ合意していなければ何にも意味がないじゃないか。だから、それではだめでしょうと私は言っているんじゃないですか。どうするのですか、こんないいかげんな条約をつくって。私はこんないいかげんなの見たことないよ。距離が問題になっているのに距離が何だかわからないんだ、ゴムひもみたいだ、伸びたり縮んだり。問題になったらどうしようかなんていまから考えている。およその近似値でなんて、冗談じゃない、ふざけちゃいけない。近似値はどのくらいの誤差を要するかというのはあれじゃないですか。ここを直線とみなすなら、何%の誤差で、このくらいは認められるべきだというのがあたりまえじゃないですか。そんなことも交渉しないのか。それでなおかつごまかす気だったら、この委員会は容赦せぬぞ。
  73. 竹内黎一

    竹内委員長 答弁ありますか。米澤審議官。
  74. 米澤邦男

    米澤説明員 二つの問題があると思います。  二番目の……(渡部(一)委員「統一見解だけを言いなさいよ、あなたの個人的意見じゃなくて。」と呼ぶ)事実を申し上げます。  先ほど申し上げましたように、海図上に境界線を正確に示すようにという要求を米側にいたしておりますけれども、それはまだ入手いたしておりません。
  75. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それなら、海図上に正式な線が出るまでこの法案は出すべきじゃないよ。向こうから返事が来ないんじゃないですか。返事の来ないものをここへ出して、何を審議しようというのですか。資料不足だ。  委員長、私は、この日米漁業協定は審査を停止することを求めます。
  76. 竹内黎一

    竹内委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  77. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こしてください。山崎アメリカ局長
  78. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 米国の領海の基線は、基本的には一九五八年の領海条約に従って定められておりまして、基線としては原則として低潮線をとっているわけでございます。  この二百海里漁業水域に関連いたしましては、アメリカは三月七日付の米国官報で漁業保存水域の外縁線を示しておるわけでございます。これは図面では示されておりませんが、点をつなげることによってわれわれとしては概略を知り得るわけでございます。ただ、それは具体的に地図で正確に知る必要もあるかと思いますので、この点につきましては、先ほど水産庁米澤審議官からもお話がありましたように、先方にそういう具体的な地図を求めておる次第でございます。
  79. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、質問不能であります。なぜかといえば、アメリカ側からの正式の資料のない間、この二百海里線というのはどういうものを意味しているかわからないじゃありませんか。しかも、二百海里線というんのは地図上で弧線になるはずだ。それを経度、緯度であらわせというのは、点をぼつぼつして直線でそれを切ろうとする試みですよ。そういうものについては約束をはっきり、きちんとしておかなければ、そういうところで問題が将来起こるんだ。そんないいかげんなものであわてて審議すると言ったって、こんなもの何日かけて審議しているのですか。一体いままで交渉した人が気がつかなかったのですか。これはだめだよ。もう一回アメリカ政府に問い合わせるなりして、これこれこういうやり方で二百海里といたしますと、ちゃんと合意していらっしゃいよ、交渉し直して。私は質問しないよ、これ以上。
  80. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 説明が十分でなかった点はおわび申し上げますけれども、先ほど申し上げましたように、漁業保存水域の外縁線は三月七日付の米国官報に記載されております。それは緯度、経度で示されておりまして、その緯度、経度を直線で結ぶ線というふうになっておるわけでございます。したがいまして、これは概念的にははっきりいたしておるわけでございます。ただ、それを具体的に地図で示すということはかなり困難な作業でございまして、その点については現在、先方に作成方を要請し、われわれとしては入手に努力いたしておる次第でございます。
  81. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 申しわけないけれども、この協定第二条の「同国の領海の幅が測定される基線から二百海里となるように引かれた線からなる水域をいう。」というのと、いまあなたがお述べになりました三月七日の米国官報に述べるところの線とは、それじゃ線が違うじゃありませんか。米国官報によるものだというなら、こっちの協定もそう書いておけばいいじゃないですか。そんな次から次へと続々違うことを言うのじゃ、質疑になりませんよ。時間ばかりたっているじゃないか。わが国国益を何だと思っておるのか。
  82. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 ここの第二条に書いております定義は、アメリカの二百海里法に基づく定義でございます。そして、そのアメリカの二百海里法に基づいて米国官報が公布されておるわけでありまして、その官報は先ほど申し上げましたように、緯度、経度で主な地点が示されておる、それを直線で結んでおるわけでございます。したがいまして、ここに書いてあります定義と米国法に基づく線とは一致するわけでございます。
  83. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 一致するとは思われない。したがって、私は質問は全部留保します。したがって、きょうは質疑終了の中に入れないよ、そんないいかげんな答弁ばかりするなら。  だけれども、こんな調子では全然しようがないから、私があとこの協定に関して聞きたいと思っているポイントを少々申し上げておきたい。それで、きょう終わるまでの間にその点ちゃんとはっきりしてください。二百海里がどっちがどうなっているのか、それで交渉を要するなら、何月何日までに返事が来るのか、はっきりしていただきたい。よろしゅうございますね。これでは余りしようがなさ過ぎる。  私のこの協定に関する問題点は、次のとおりであります。  二百海里の境界画定に関しては、将来ともにわたって日本国の水産漁業界あるいは運送業界の重要な関心事項となるものでありますから、境界画定のための国際的な合意ができ得るようしかるべき措置をとられたいということであります。すなわち、後で出てくる協定審議にも関係いたしますが、インマルサット等を利用いたしまして、二百海里境界線というものを、同じ機種、同じルール、同じ方法で関係諸国が合意することなければ、海上の境界線を画定することは不可能だからであります。たとえ緯度、経度等によって線を引いたといたしましても問題の多い現況を考えるならば、もうどうしようもないという立場があるからです。この点は十分深くお考えの上、今後どういう努力をされるかも含めて御回答をいただきたい。前回、農林水産委員会との連合審査の際、公明党瀬野栄次郎君がこの問題を取り上げましたけれども、政府からはかばかしい御答弁がなかったので伺うわけであります。     〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕  第二番目は、特にスケトウに関するカナダ、アラスカ方面における投げ捨てについてであります。日本漁船の通過した後、七十センチ以下のスケトウが大量に投棄され、それらが死んでしまって海面上を彷徨し、そのために現地漁民の深い怒りの対象となっているようであります。七十センチ以下のものは採算が合わないからとらないといって、海へ戻すというのは聞こえはいいが、実質的には死んだ魚を海へ投げ捨てて帰ってくる、そして現地に深い不満を与えていくなんという事態を放置していること自体が問題である。したがって、これら七十センチ以下のものを、生きて海へ戻すか、あるいは、死んでしまったのならば、輸送船を運び入れてそれを回収してきて別個の利用法を考えるとか、こうした具体的な施策を考える必要があると私は提言したいと存じます。これが第二のポイントであります。これもすでに各方面で述べましたけれども、はかばかしい御答弁がない。したがって、十分こうした点を配慮していただきたい。  第三番目は、アメリカにおいて来年からの総漁獲量は、現地における議会あるいは漁民の声によって決定されるようになっているけれども、その際、非常に問題になるのは現地側住民の感情であります。問題の一つの重要なポイントになっているのは、日本漁船の中で病人が発生して地元へ上がって医者を探す、あるいは漁船のあるものが油が足りなくなって油を買いに行く、あるいは現地住民との間でさまざまな接触が行われる、それらの後始末をする部局がないということです。現地邦人においては、それらの後始末にくたびれて、お金は踏み倒される、医者にかけても代金を払わない、あるいはけんかした後始末はそのまんま、男女問題についての後始末もそのまんま、現地領事館はその点について知らないと言うだけであって、日本側は何しているんだという声が高いと報道されております。こうした点を考えると、小型領事館の機能を持つ、現地に対する友好的なジャパン・ポイントとも言うべきものが必要であろうと思います。少なくとも各漁港に対しそうした手を打っておかなければ、友好的な二百海里線内の漁獲というものは保障されないのではないかと思うわけであります。こうした点をどう配慮されるか。少なくともこれに対して何らかのめどをつけられるべきではないか、これが第三のポイントであります。  第四のポイントは、来年からの総漁獲量でありますが、わが国側の総漁獲量の見通しというものが立たないために、減船また減船で各船団あるいは漁民の生活不安、見通しのなさというものは異常なものであります。何らかの意味で漁獲量の最低限度あるいは保障というもの、安全な将来の見通しというものが行われなければならない。この協定はその部分を大幅に欠いております。最低限も明らかでないし。もちろん日米間の協定であるからして、日本漁船の安定した操業というものについてどうこう言うべきものでないのはわかりますけれども、そうした点が問題になっておる。これらについて国内措置としていかなる措置をおとりになるか、明示していただきたいと思います。  第五番は、二百海里線に日本側も広げました。アメリカ側も広げました。この広げたに当たって、先方はコーストガードをもってここを警備しあるいは管理をしようという体制のようであります。日本側の方は海上保安庁が主としてこの任に当たるようでありますが、規模、それから能力、設備、その一切に関し日本側の海上保安庁の体制は悲惨なほど弱小であります。これは、もう救難事務一つをとっても、二百海里線の管理、維持を考えてみても、とてつもないほど貧弱であります。来年度の予算の中でよほどこれは考慮すべき事態であります。少なくとも数十倍、水上機母艦さえも用意するほどの質的なレベルも上げなければ、日本の二百海里線の中の漁船をコントロールすることは不可能でありましょう。したがって、設備もふやし、質も高め、海上保安庁の充実については特段の施策が必要であろうと思います。伺ったところによると、海上保安庁の来年度予算に対する考え方というものは非常に虚弱であって、今年予算のまた一割増しとか二割増しという程度にしか考えられていない。これはもってのほかであります。  また、先方のアメリカの二百海里線内を主として担当しておるコーストガードとの連絡方法が不明確であります。取り締まりを受けた日本の漁船あるいは問題を起こした日本の漁船等に対し直接先方がアプローチするけれども、それが回り回って日本政府に到達するのに時間がかかり過ぎる、というよりもそういう一貫した流れがない。先日御説明を伺ったところでは、先方にそのシステムがないという御返事でありましたが、こちら側にもない。だからだれとだれが担当するのかわかっていない。これらの事態を急速に変えるべきではないか。それらの保障措置をみごとにやってのけていただきたい。そして御説明をいただきたい。やっていなかったら、いつまでに努力をすると言っていただきたい。こういうようにお願いをしたいと思っているわけであります。  以上六点にわたって私の質問をいたそうといたしておったわけでありますが、第一問目でそんなにひっかかられたのでは後のことが何も聞けませんので、固めて申し上げました。できれば本日中に御返事をいただきたい。私の質疑時間はまだございますから。もしどうしてもだめならば法案の通過はあきらめていただきたい。それだけ申し上げておきまして、日米漁業に関する私の質問はあと全部留保いたします。
  84. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま六点の御質問をいただきましたのでございますが、鋭意準備をいたしまして、なるべく早い機会にお答えができるように最善の勉強をいたします。しばらくお時間を……。
  85. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それではアジア太平洋電気通信共同体憲章についてお伺いをさせていただきます。  エスキャップ地域電気通信業務の均衡のとれた発達を願いまして本条約は結ばれたという御説明でございましたが、電気通信の現在の急速な発展及びアジア電気通信網の実現を考えますときに、この条約は不十分ではないかと思われる面がございます。それは、後に取り上げます別条約インマルサットに関する条約等をにらみ合わせてみますと、人工衛星による電気通信等を考慮いたしませんと、これらは昔の古い海中電線による通信程度のもの、あるいは一般無線通信のようなものを最大限とするような条約のつくり方になっているのではないか、むしろ非常におくれたものになっているのではないか、言うなれば、実際の電気通信がこれから行こうとする部分のほんの一部しかカバーしないものになるのではないかという疑いを感じるのでございますが、その点はどういう含みでございましょうか。これを援用できるような考え方でおられるのか、その部分はまだこれから補強するような立場で行われるのか、その辺からお伺いしたいと思います。
  86. 中山一

    中山説明員 お答え申し上げます。  アジア=太平洋電気通信共同体におきましては、当面の目的といたしまして、イランからインドネシアを結びまする国内幹線網、それをつなぎます地域幹線網を最新技術を使いましたマイクロウエーブでつなごうという計画でございます。その後さらに必要とあれば、衛星通信も含めて今後の問題として取り上げることはあるというぐあいに関係国間で了解してございます。当面の目標はマイクロウエーブでございます。
  87. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、その件は、衛星通信のことも扱うということばこの条約のどこにもないように見えますけれども、どこにそれは——別段の合意が何らかの形であったわけでございますか。
  88. 中山一

    中山説明員 私ども通信関係者の理解では、エスキャップ地域におきましては非常に通信がおくれておりますので、それを一番安いコストで、かつ手っ取り早い方法でともかくもネットワークをつくることが急務であろうかというぐあいに理解いたしまして、そのための方便として、くどいようでございますけれどもマイクロウエーブでやるということにしてございます。  憲章前文におきまして、「地域における電気通信の現在の急速な発達及びアジア電気通信網の実現に照らし」という条項の文案のところで、とりあえずはアジア電気通信網をマイクロウエーブによってつくっていきたい、しかし、その後いろいろ予定されてくるものがございましょうから、その予定されてくるものは、いま先生から御指摘のありました衛星通信といったものも含めてネットワークを検討していくということになろうかと思います。
  89. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはどこに書いてあるのですか。
  90. 中山一

    中山説明員 申し上げます。  最初の前文でございます。前文数行ございまして、「アジア電気通信網の実現に照らして、地域における現行の及び予定されている電気通信業務の詳細な計画及び運営についての協力の必要性を考慮」するというぐあいに私ども通信関係者の間で理解いたしておりまして、それで「地域的に取り扱うことができる電気通信の問題を解決するための協議機関」つまりこの共同体を設立することの必要性を認めまして「地域における国内電気通信」の「計画及び運用上の措置」をそれぞれコーリレーションさせるという必要性がございますということを述べたててございます。  そこで、次の第二条の「目的」に移りまして目的1の「(a) 当面の及び将来の需要を満たすため、地域的及び国際的電気通信網の計画及び発達を地域においてそれぞれ相互に関連させること。」「(b)すべての合意された通信網の実現を促進すること。」云々ということになってございまして、当面考えておりますのがアジア電気通信網と申しまするイランからインドネシアにつなぎます陸線網、マイクロウエーブ網を予定しているわけでございます。それが完成され、さらには十分拡充された段階において、それとの関連で衛星通信といったものも検討の対象になる、協議の対象になる、このように考えております。
  91. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃあ、その点はよくわかりましたから、私はこの電気通信共同体が低いレベルの電気通信共同体の樹立にとどまらず、世界的なハイランクの電気通信共同体の前進、世界的な進歩、発展と調子を合わせたものになるように十分の御配慮をいただきたいと希望いたします。
  92. 中山一

    中山説明員 お答えいたします。  ただいまの先生の御発言の点につきましては、十分体して行動したいと存じております。よろしくお願いします。
  93. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 第六条「公用語」のことでございますが、これらのイランからインドネシアに至るマイクロウエーブをつくったり、ここの共同体に加盟する国々を考えておれば、人口的に申しまして最も使用言語の多いのは日本語であろうかと思うわけであります。公用語として英語とするというのはわからぬではありませんけれども、なぜこういう際に一々英語のみを公用語とする、こういうふうにしなければならないのか、はなはだもって不快感を持って見ているわけでありますが、この点はどうお考えになっておられるのか、お伺いしたいと存じます。  ついでに申し上げますが、したがって、公用語が英語であるというなら、これは一体何物なのかと、本憲章というものの正文は一体何なのかと言いたくなるわけですね。こうやって拝見いたしますと、とりたてての決めがないところを見ますと、特に正文としてこの日本文が指摘されないところを見ると、ここに書いてあるのは正文でなくて、英文の方が正文なんでしょう。そうすると、この英語のコンスティチューション・オブ・ジ・エイジアパシフィック・テレコミュニティーと書いてあるこれが正文である。そうすると、ここに出されている文章は、細かいことを言うようですけれども、これは単なる参考文献ですわね。最近に至りましては、外務省は非常に丁寧に、こういうときには参考文献と大きな字で打ってあるわけですが、これはまた正文のごとく装ってここに日本語が出ている。これは一体どうなっているのですか。
  94. 小林智彦

    小林説明員 先生の最初の方の御質問にお答えさせていただきます。  「公用語は、英語とする。」となっておりますが、すでに御指摘のように、多数国間の条約の場合には、それに参加する国々の共通の国際語というものを条約の公用語というふうにするのが大体従来の慣例でございます。それで、この地域の共通の国際的な言葉として英語というものが最も通用しておるわけでございますので、公用語として英語というのが選ばれたと了解しております。たとえば国際連合の憲章のようなものでございますと、公用語として五つの国際語が採用されておるわけでございますけれども、このアジア=太平洋電気通信共同体につきましては英語となった次第でございます。
  95. 村田良平

    村田(良)政府委員 先生御質問の第二の点について申し上げます。  いまお手元にございます日本語のテキストは、今回国会に御承認をお願いしております条約そのものでございます。御指摘のとおり、正文は英語でございますけれども、国会の御承認をいただく対象といたしましては日本語の正式の訳文をもって充てておりまして、表紙に参考というふうに印刷しますものは、合意議事録等、条約の付属文書で、承認の対象ではないけれども御審議の参考にしていただく文書というものに参考というのを打っておるということでございます。
  96. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国連のいろいろなお話し合いをするときに、五カ国の公用語というのがあるわけですよ。ですから、何もここのところ、英語一本にする必要ないじゃないですか、大体。ですから、あなたの言っていることは非常に矛盾がありますよね。     〔山田(久)委員長代理退席、委員長着席〕 英語が最も通用しているというのは、それはトップレベルには英語が通用しているのかもしれない。だけれども、インドネシアで英語が通用するでしょうか。インドで英語が通用するか、あるいはマレーで英語が通用するか、あるいは日本で英語が通用するかというと、しないじゃないですか。それであるにもかかわらず、英語を公用語にすることになっておりますなんて言うんじゃなくて、なっておりますではなくて、あなたは日本語を公用語にするように努力すべきであったと私は思うのですね。努力がない。へっちゃらで、英語を公用語にすることになっておりますと。それは一つ外国に対する遠慮のし過ぎですよ。日本語で堂々物がしゃべれなければいけない。日本語のことを俗語か何かだと思っているのでしょう。日本を未開、野蛮の国だと思って、外国崇拝のコンプレックスにとらわれていて、公用語を英語で言うなんていう文書にサインしてきて、かっこういいと思っているんではないかという可能性さえある。もしこれに対して、次の言語だったら日本語でしょうが、どうしたって。中国語でしょうが。ほかの国の言葉をみんな無視して、こういうのを公用語に決めること自体に問題がある。それぞれの国の言葉は全部公用語とするべきだと私は思いますよ。何で英語だけを公用語にするのですか。この精神こそおかしい。だからここのところに「「アジア=太平洋電気通信共同体総裁」の称号を有する。」なんていうのが麗々しく書かれておる。たかがプレジデントの翻訳に「総裁」とは何ごとですか、本当に大げさな。こういう翻訳の一つ一つの仕方、日本語にかえる場合にずいぶん違ったニュアンスになってしまう。わが国としては条約はなるべく日本語で結んだ方がいいに決まっているじゃないですか。その御努力が足らなかったんじゃないですか。今後はこういうのではなくて、その辺もっと考えてもらいたいと思って申し上げているのです。なぜこんな英語だけにしたのですか。
  97. 小林智彦

    小林説明員 この種の国際条約でございますと、たとえば昨年御承認いただきましたアジア=オセアニア郵便条約、これでも公用語は英語というふうに条約上規定されておりますけれども、それは各国の……(渡部(一)委員「オセアニアとは地域が違うでしょう。ごまかしちゃいけないよ、あなた」と呼ぶ)いや、地域は違いますけれども、各国の言葉を条約上全部公用語といたしますと、これはもちろんそれが最もスムーズに行われれば理想的だとは思われますが、経費の問題その他、公用語となりますと、たとえば会議を開きます場合には、同時通訳の設備だとか同時通訳をつけるとか、文書も全部公用語と指定された言葉でもって配付しなければいけないということになりますし、そうしますと、たとえば公用語が五つまたは十となりますと、一つの文書について十倍の経費がかかるとか、そういうようなことになりますので、従来の国際的に一般に行われているやり方としましては、この種の条約ですと、最も共通に使われている国際語というものを公用語とするというのが通例になっている次第でございます。
  98. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは答弁にならない。そんなのは、あなたの答弁インチキですよ。一つは、オセアニアの例を挙げて言ったけれども、オセアニアというのは英語国ばかりを相手にするものじゃないですか。それをどうしてそんな例に使うのですか。あるいはすべての国のあれをしたら金ばかりかかるとあなたは言ったけれども、国連だって五つの公用語があるじゃないですか。努力をしてなかったんでしょうと言っているんじゃないか、いま。今後努力をしなさいよと言うのです。今後ともこういうやり方でやるのかやらぬのか聞いているのです。あなたは弁解ばかりしているじゃないか。だからあなたにやらしておけば、日本の外交文書は全部英語になるでしょう。当外務委員会も英語でやった方がいいかもしらぬ。そんな遠慮をどうしてしなければならぬのだ。わが国わが国立場があるのだから、わが国立場を主張したらいいじゃないですか。少なくとも英語と日本文ぐらい正文にするくらいがんばったっていいじゃないですか。何が悪い。しかも、これらの太平洋電気通信共同体の中心は日本国じゃないですか。何でそんな遠慮をするのですか。
  99. 大川美雄

    ○大川政府委員 同じ日本人といたしまして、私ども渡部先生のおっしゃることはまことにごもっともだと感じます。でございますので、外務省といたしましても、おっしゃいましたことを、ぜひとも今後の問題として検討いたしたいと思います。ただし、現在の国際社会における日本語の地位からいたしまして、これはなかなかむずかしいことであることは私どもとしても感ぜざるを得ない。しかし検討いたしたいと思います。
  100. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この共同体分担金についてここのところにいろいろ出ておりますが、これはどのような基準によって決定されるのか。たとえばGNPによって決定されるのか、人口比例で決定されるのか、使用度数によって決定されるのか。わが国分担金はどの程度になるのか、他国の分担金はどの程度を目途としているのか。この条約及び説明文からは何も出てこない。こういう条約案を提出する場合には、そういうところをもっと明快に書いて出さなければいけない。資料が足らなさ過ぎるじゃないですか。どうなっているのですか、これは。何だかわけがわからないよ。
  101. 中山一

    中山説明員 お答えいたします。  この分担金の方式は、実はITU条約に定めてございます方式を電気通信一つの国際会議国際機関の目安として行うという慣行みたいなものがございますものですから、この会議の席上、みんながITU方式にしようではないか、たまたまこの共同体がITU条約三十二条の地域間とするということでございましたものですから、私ども通信関係者といたしましては、そのような方式が一番理解が得られやすい、みんながそうだそうだということになりまして決まったわけでございますが、先生御指摘の点につきましては、私どもの方から改めて十分御説明申し上げるようにさせていただければいかがであろうかと存じております。  それで、まず決め方でございますが、共同体にかかりまする総経費全体を共同体発足の時点で積算いたしまして、そのうち各国がその通信の総力みたいなものを反映いたしまして、任意に選択するというやり方をこれまたITUでいたしておるものでございますから、任意に選択するということになろうかと思います。  そこで、日本がどのぐらい持てば至当であろうかということが、これから八月一日以降に、御審議の上、御批准いただきましてこの共同体に参加する暁には、その場で日本の占めるべき比重というものを御説明申し上げることになろうかと思いますが、予定といたしましては、総経費の三〇%以内程度を準備すればよろしいかというぐあいに私どもとしては考えております。
  102. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この共同体には韓国及び朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国、インドシナ三国等、アジア紛争地帯の諸国の態度はどういうことになっているか、またそれらの加盟についてはどういう態度を当共同体加盟諸国はとろうとしておるのか、その辺を御説明いただきたい。
  103. 中村昭一

    中村説明員 お答えいたします。  これは協定にございますとおり、アジアのエスキャップ地域のすべての国を対象といたしておりますが、これまでのところアジアの共産主義諸国は本件についてそれほど大きな関心を示しておりません。したがって、将来それらの国が全部関心を持って参加してくれることを私どもとしては希望いたしておりますが、現在までのところはそのような状況でございます。なお、韓国は、この機構には関心を示しており、恐らくこれに加入するのではないかと考えております。
  104. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、太平洋電気通信共同体憲章質疑の方はこれで終わりにいたします。  次に、インマルサット条約の方に移りたいと思います。  アメリカの海事衛星マリサットシステムが昨年の七月よりサービスを開始しておりますが、日本はこの衛星をどの程度利用しているか、また通信料金は短波通信の三倍もかかると言われておるようでありますが、その現況をお伺いしたいと思います。
  105. 日高英実

    ○日高説明員 お答えいたします。  マリサット衛星につきましては、昨年KDDが二隻の日本船舶を使いまして実用試験を行いまして、その結果が大変良好だったものですから、その実用をいよいよ今年四月十八日から始めております。  なお現在のところ、このマリサット衛星にアクセスします船上端末設備を所有しておりますのは、KDDの海底ケーブルの敷設に当たっております。これはKCSという海底ケーブルの会社でございますけれども、この会社に所属しますKDD丸、それと日本郵船に所属いたします鞍馬丸、この二隻でございます。したがいまして、まだ実用の量というのはまことに微々たるものでございまして、申し上げるほどのことではございません。
  106. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この条約は、船と陸、船と船との間の海事通信の緩和と通信の質の改善を図るために作成されたとのことでございますが、このインマルサット条約に加盟することによりまして、その点は大幅に改善される見込みがあるかどうか。特に海事通信の不備、混雑によって遭難船を救助することができなかったなどという話まで伺うものですから、その点どの程度の見通しを持っておるか、また一般的な短波で行っている海事通信というものを、本条約の発効によりまして、すべて衛星に切りかえるというものではないとは思うのですけれども、どれくらいの比率で利用なさろうとしておるのか、つまりこれはどの程度のプラスアルファがあるのかという点にしぼってお答えいただきたいと思います。
  107. 吉川久三

    ○吉川説明員 お答え申し上げます。  現在、海上におきます遠距離通信は主として短波を使っておるわけでございますが、短波周波数は周波数の数の面におきまして非常に制限があるということ、並びにこの短波通信は電離層というものを利用して通信をやっておる関係で、通信の品質あるいは信頼性、速度等の面におきまして若干の難点がございますので、この海事衛星通信を使用することによりましてこれらの難点を改善しようというわけでございます。  ただ、現在使っております短波通信、これには陸上あるいは他の船舶と直接的に通信できるという簡便性あるいは経済性等の面におきまして非常にすぐれた面もまた持っておりますので、この海上移動業務の短波通信が将来的に完全に海上移動衛星通信に取ってかわるというようには考えておりません。したがいまして、海事衛星通信が海上通信に導入された後におきましても、短波通信と海事衛星通信は併用というような形をもって推移するのではないか、このように考えております。  併用の割合でございますが、これにつきましては、現時点におきましてどのような比率になるかということは予測できないというような状況でございます。  それから、海上におきます遭難通信関係、特に遠距離通信におきます遭難関係でございますが、現在の海上におきます遭難安全関係の国際的な制度につきましては、無線電信におきましては五百キロヘルツ、これは国際遭難周波数でございます。無線電話につきましては二千百八十二キロヘルツ、それから百五十六・八メガヘルツ、これは無線電話の国際遭難周波数でございます。これによりまして制度化されているわけでございますが、これらはいずれも近距離並びに中距離におきます遭難通信体制でございまして、遠距離におきます短波を使用いたしました遭難通信体制は、この五百キロヘルツ、あるいは二千百八十二あるいは百五十六・八のような確実な制度としてはまだ十分確立されてないという状況が実情でございます。ただし、短波通信を使います遭難関係通信におきまして具体的な不都合と申しますか、これが出ておるようには聞いておりません。将来的には、この海事衛星通信利用することによりまして遠距離におきます遭難安全通信体制の一層の整備を図ろうと、こういうことでございます。  以上でございます。
  108. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 インテルサットを利用いたしますると、その通信の秘密というものが侵されるおそれがあるのではないかという点が心配されるわけでありますが、その点はいかがでありましょうか。たとえば、この通信衛星の打ち上げというものはインマルサット自体の手で行うのではなくて、恐らくアメリカ側に頼んで行うというような形にならざるを得ないのだろうと思うわけでありますが、そういたしますとインマルサットを経由して行う通信というものは、アメリカ自身あるいは高度に電波技術のすぐれている国にとっては、その通信の相当部分というのを聴取する可能性というものは十分出てくるわけであると私は思うわけであります。そうすると、わが国通信の機密の相当部分というものがこれによって相当リークするおそれがあるのではないか、その点をどう考えられるか。特に外務省におかれては、外務省の暗号コードが解読されて秘密電信が筒抜けになった戦前の実例がある。そして戦後においてもしばしば外務省の暗号が抜かれているというよからぬ風潮、うわさがある。どうも否定されているようでありますけれども、よほどすっぱ抜かれているとしか思えないようなことがしばしばある。そこへ持ってきてインテルサットである。外務省通信の秘密はどういうように保持されるおつもりであるか。インマルサットは使わないとかインテルサットも使わないとか、いろいろな言い方をなさるのかもしれませんが、それもどうなさるおつもりであるのか、その辺非常に心配もいたしているわけであります。  さて話は、いろいろなことを言うとお答えにも困ると思いますから、インマルサットによる通信の秘密の確保についてどう考えておられるか。二つ目は外務省通信の秘密の保持は何をもって行い、何をもってガードを固めておられるのか。簡略でけっこうですからお答えをいただきたい。
  109. 日高英実

    ○日高説明員 お尋ねの第一の点につきましてお答えいたします。  インマルサット衛星と言いますのは、まだ実際に設計も、もちろん打ち上げも行われておらない段階でございまして、ちょっとどういう形になるかわからないので、それへの言及は差し控えますが、先生お尋ねのインテルサットの例でございますが、インテルサット衛星通信の場合には、これにアクセスする必要なアンテナ、地球局設備、これは現在の邦価で大体二十億ないし三十億円を要するわけでございますが、これを投資して受信すれば理論的には受信が可能でございます。ただし、実際上何らかの通信を抜き取ろうという目的で傍受をするということはまず不可能、人間の考えられる限りの機械的あるいは人間的な能力の現在の段階での範囲を超えておると私どもは考えております。と申しますのは、現在の場合、電気通信業務といたしましては、御承知のとおり電話とテレックスその他の記録通信とがあるわけでございます。このペーパーになります記録通信の場合には、重要な通信は大体暗号その他のコードを用いて送られるわけでございまして、抜き取るだけでなく、それがどういう意味を持っておるか、たとえば「ニイタカヤマノボレ」が十二月八日に真珠湾攻撃をやれというような特別な意味を持たして送られれば、これは第三者には絶対解けないということでございますし、電話通話の場合には、これは上り下りの通信を抜かなければ総合的に意味が判断できないわけでございますが、現在のインテルサット衛星でございますと、話がちょっと技術的になりますが、衛星の中に送受信機が十二台配置されております。その十二台を使いまして、電話回線ですと大体四千ないし六千回線が疎通するわけでございます。その場合、たとえば日本からアメリカに向けて電話通話を行います場合には、日本の地球局から衛星へアクセスする電波が一つ出ます。それから衛星からアメリカの地球局に降りていく電波が一つあるわけでございます。ところがこれは全然別の送受信機を使って、全然別の周波数を使って上り下りが疎通するわけでございまして、この場合、そのインテルサットの六千回線の上り下りの中からある回線を選び出して、その他の五千九百九十九回線のうちのどれがそれと対応する下りなり上りの回線であるかを見きわめた上でモニターをしなければわからないわけでございます。国際通話の場合の大体の平均の利用時間と申しますのは約九分から十分でございまして、この間に人間がいまの機械的能力の範囲で上り下りの電波をあわせて傍受するということは全く不可能かと私どもは考えております。  第一の点に関しますお答えは以上でございます。
  110. 秋保光孝

    ○秋保説明員 第二点についてお答え申し上げます。  外務省が在外公館と通信いたします場合には、現在まで百の公館との間に直通の回線を敷いておりますが、これを使用しての通信が主なものでございます。なお、数公館との間に一昨年からファクシミリを使用しておりまして、これも通信の手段として使われております。  なお、国益から見て重要な案件につきましては、当然ながら外務省が使っております暗号を打つわけでございますが、先般一部のプレス等に報道されました外務省の暗号電報が読まれているのではないかという御指摘が先生からもございましたが、この点につきましては、外務省といたしましては、クラーク氏自身の記述その他から見て、どうも誤解または憶測に基づいた記述ではないかと思っております。  なお、外務省といたしましては、現在使っております暗号が無限乱数をもとにして作成しておりますので、そのアンブレイカビリティーについては十分確信を持っておりますし、また、その保管、管理といったことについても十分に気を配っておりますので、その点は大丈夫だというふうに申し上げたいと思います。
  111. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私の質問は終わります。
  112. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、有馬元治君。
  113. 有馬元治

    ○有馬委員 私は、常識的なことを時間の許す限りお尋ねしてみたいと思います。  二百海里時代が到来したということをよく言われますけれども国連の海洋法会議におきまして、特に一九七四年のカラカス会期以降の会期についてで結構でございますが、外務省はこの二百海里問題についてどういうふうな対応をしてきたのか、その経過をお尋ねしたいと思います。
  114. 村田良平

    村田(良)政府委員 海洋法会議が始まりましてからすでに三年の日時がたっておるわけでございますが、当初は先生も御存じのとおり、私どもといたしましてはできる限り公海の自由な使用という原則が保持されるように努力をいたしたわけでございます。しかしながら、特に開発途上国等の強い主張もございまして、二百海里にまで沿岸国がある種の管轄権を及ぼすということが世界の大勢となるということを察知いたしましたので、私どもといたしましては、この基本的な二百海里という考え方は認めつつ、その内容沿岸国の管轄権とそれから海をできる限り自由に利用するという観点が最も合理的に調和的に解決されるようにということを念として努力をしてまいったわけでございます。特に、一昨年、昨年に至りまして、二百海里にわたる水域におきまして、単に漁業のみならずその他の海洋汚染であるとかあるいは科学調査等々の点も含みます経済水域という考え方が徐々に定着してまいりましたので、その内容については今後なお議論するところでございますけれども、そういった世界の大勢であるということを踏まえまして今後とも努力する考えでございます。
  115. 有馬元治

    ○有馬委員 二百海里には反対をしてきておった経緯があるわけですが、条件つきであっても、海洋法会議の公式の場面で二百海里の水域設定は世界の大勢上やむを得ないというふうに判断し、発言したのは、いつのどういう場面でございますか。
  116. 村田良平

    村田(良)政府委員 積極的にわが国の代表が二百海里というものを認めるというふうな趣旨の発言をしたことはございませんが、事実上の対応としてそのように考え方を修正して対処したということでございます。
  117. 有馬元治

    ○有馬委員 昨年の四月にアメリカのいわゆる二百海里法が国内法として制定されたわけですが、このとき日本政府としてとった態度はどういう態度アメリカに対してとったわけですか。
  118. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 当時、日本政府といたしましては、このアメリカの二百海里法制定の動きに対しまして、かねてから、いずれの国も海洋法会議の結果を待たずして一方的にこのような二百海里の漁業水域を設定することは適当ではないという立場から、アメリカ側に対して申し入れを行ってきたわけであります。その後、去年の四月、二百海里法が制定に至りましたときも、かかる立場からアメリカのこの二百海里法の制定を遺憾とするという意味の申し入れを行ったわけであります。しかしながら、現実の問題として、この法律が本年の三月一日から施行されるということでございまして、わが国としては、その米国の距岸二百海里内において大きな漁業実績を持っておりますので、その間の対応についてアメリカ側と話し合いを重ねてまいった次第でございます。
  119. 有馬元治

    ○有馬委員 昨年の四月のアメリカの二百海里法成立時点においては、まだ海洋法会議の結論が出るまでは時期尚早であるというふうな主張を続けておったように聞くわけですが、国際法として二百海里の水域設定はやむを得ないというふうにはっきりと日本政府が踏み切ったのはどういうきっかけでいつやったのか。何となしにそういう時代が到来したという感じはするのですが、どうもその辺がはっきりいたしかねるわけでございまして、その点をはっきりと御説明願いたいと思います。
  120. 村田良平

    村田(良)政府委員 わが国の基本的な立場は、海洋法会議の結論が出るまでは米国による二百海里の漁業専管水域の設定には賛成しかねるということでございましたが、ただ漁業に関しましては、先ほど申し上げました経済水域とは異なりまして、距岸十二海里における漁業専管水域という国際的な慣習はあったわけでございます。その範囲が十二海里から二百海里まで広がるという世界の傾向が、特にアメリカの立法を契機といたしまして、アメリカ周辺カナダであるとか、あるいはその米加の動きを見ましてさらにヨーロッパ諸国も、特にECが同じく二百海里漁業専管水域の設定という方針を打ち出したのが昨年の後半のことでございます。また、特にわれわれとして注目しておりましたのはソ連の動向でございますが、昨年十一月に米ソ漁業協定が結ばれまして、ソ連としてはアメリカの二百海里を認めたわけでございますので、その結果として恐らくソ連も二百海里に踏み切るのではないかというふうに想像したわけでございますが、その時期が昨年の十二月に到来したということでございます。したがいまして、昨年の後半、秋ごろに至りまして、少なくとも二百海里の漁業に関する専管水域はおおむね国際的な慣習になりつつあるという認識政府として持つに至ったということでございます。
  121. 有馬元治

    ○有馬委員 昨年の十一月に米ソの間の漁業協定ができ、さらに十二月にソ連の二百海里水域設定がなされた。そうしますと、このころの時期が国際法として漁業の専管水域設定については二百海里が定着した、こういうふうに判断してもいいわけでございますか。
  122. 村田良平

    村田(良)政府委員 沿岸国が距岸二百海里の水域におきまして漁業に対するある種の保存、管理の措置を講じ得るという国際慣習ができ上がりつつあるという認識が昨年の後半の時点において得られたということでございます。ただし、その管理あるいは保存の方式につきましては、各国それぞれの国内法によって定めておりまして、国によっては若干のばらつきもございます。したがいまして、国際法として完全に定着したということはまだ言えない部分が残っておるというふうに考えております。
  123. 有馬元治

    ○有馬委員 そうしますと、今回のこの日米の漁業協定は二国間の協定ですから、まだ沿岸国の漁業に関する二百海里の管轄権は国際法としては定着していないのだけれども、二百海里漁業協定を日米間に結んだ。さらにこれから結ばんとする日ソの漁業協定も、まだ二百海里水域設定については定着はしてないけれども、世界の大勢であるからやむを得ない。こういう考え方でいいわけでしょうか。
  124. 村田良平

    村田(良)政府委員 おおむね先生のいま御指摘になられたとおりだと思うわけでございますが、先ほどの繰り返しになりますけれども、その漁業水域に関しまして保存、管理を行う権限を沿岸国が持つという考え方自体は、ほぼ国際法としても定着した、あるいは定着しつつあると言えると思います。ただ、その具体的な内容に関しましてはなお若干のばらつきもございますし、また、その内容自体のある部分は国連海洋法会議でも審議の対象となっておりますので、今後の海洋法会議話し合い等によって国際的に統一されてくるであろうというふうに思われますので、沿岸国が行使し得る権能がどこまで及ぶべきかという点については、一般国際法としてのルールができ上がったとまでは言い切れないというのが正直なところ昨年の後半から現在に至る状態ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  125. 有馬元治

    ○有馬委員 そうしますと、魚族の保存、管理についてはおおむね沿岸国の管理権が定着しつつある、しかし取り締まりだとかあるいは違反に対する管轄権は国際法としてまだ定着するところまでは至っていない、こういうふうに理解していいわけなんでしょうか。
  126. 村田良平

    村田(良)政府委員 御指摘のとおりでございまして、特に取り締まり管轄権等に関しましては完全に国際的に統一されたルールというものはでき上がっておりません。御審議をいただいております協定を例にとりますと、体刑も科し得るというアメリカ国内法を認めておるわけでございますけれども、国連海洋法会議におきます議論では、体刑、つまり自由刑は科さないという考え方で議論が行われておるという点で、なお国際法はこの点に関しましては生成過程にある、固まっておらないということが言えるかと思います。
  127. 有馬元治

    ○有馬委員 いま問題になっております日米の漁業協定というのは、昨年アメリカが制定したいわゆるアメリカの二百海里法、これが成立したためにこういう協定の問題が起き、さらにそれが世界に連鎖的に波及していっておる、こういうのが実情でございますが、本協定が成立するまでの間に暫定取り決めという交換公文が交換されておるわけですが、この暫定取り決めというのは一体どういう性格のものですか。
  128. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカの二百海里法が昨年の四月に制定されまして、この法律を認めた長期的な協定を結ばなければアメリカの二百海里水域内で魚はとることができないという現実が生まれてきたわけでございます。しかしながら、われわれといたしましてもこの長期協定交渉はかなりむずかしい事態でございました。当時、まだ二百海里漁業水域については日本自身の方針としても十分固まっておりませんでしたし、これに対していかに対処するかということについてはいろいろと議論があったのが実情でございます。また、この長期協定を結びましても、両国の憲法上の手続を経て発効するまでの間にはかなりの時間がかかるということでございました。そして、一方二百海里漁業水域は本年三月一日から実施されるということになっておったわけでございます。  そこで、われわれといたしましては、長期協定はいずれ結ばなければならないけれども、そのつなぎの措置として長期協定が発効するまでの期間として、わが国が本年漁業を行い得るように、アメリカの二百海里水域内においてわが国漁業を継続し得るようにしたいということを考えまして、この暫定取り決めを結んだわけでございます。これは行政権の許される範囲において簡潔な取り決めをつくったわけでございます。  この点につきましては、アメリカはほかの国、日本を含めて、もうすでに十カ国と長期協定を結んでおりますけれども、ほかの国とは皆長期協定一本でやっておるわけでございますが、わが国の場合には、長期協定に時間を要すること、ことに国会の御承認を得る必要があるということ等の日本側の特殊な事情も理解いたしまして、特に日本に限ってはこういう暫定取り決めを結ぶことによって本年の漁業を継続できるように措置した次第でございます。
  129. 有馬元治

    ○有馬委員 日本だけにアメリカが好意的に暫定取り決めを結んで暫定措置を講じた、これは大変ありがたい一面がありますけれども、いまの御説明だと、もうすでにアメリカが踏み切っておるアメリカの二百海里法を前提として、本協定ができるまでのつなぎ的な措置であるという性格を持っておることはよくわかるのですけれども、内容的には非常に重大な、重要な内容を持っておる行政取り決めのように私は感ずるわけでございます。それはなぜかといえば、アメリカが踏み切った二百海里水域の設定、しかも取り締まり、裁判管轄権を含んだ国内立法を、わが国にも協定を結んで、わが国の漁船、国民にそれを適用していこう、こういうことになるわけでございますから、大変重要な内容を持った取り決めではないかと思うわけでございます。  そこで、これは私どももよくわかりかねますが、この暫定取り決め自身が協定もしくは条約的な性格を持っているのじゃないか、行政権の範囲だけでこの内容は律し切れるのだろうか、こういう疑問が一つあるわけですけれども、それはそうじゃないのだ、行政府の権限の中でこの暫定取り決めができるのだ、こういう御意見になるのではないかと思いますけれども、その辺はどういうふうに説明したらいいのでしょうか。
  130. 村田良平

    村田(良)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、二百海里の漁業水域を設定し得るという考え方は、昨年の後半ごろに至りまして国際法上の新しい規範として確立しつつあるという認識に立ったわけでございますが、そのころに米国、カナダ、ヨーロッパ、ソ連等々が一斉に二百海里体制に動き出したという時期でございまして、非常に各国の行使する権限の内容というものも流動的であったわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、日本立場から見て国際法上妥当と思われる限りにおきまして、わが国の法令及びアメリカ国内法に従って処理するということが妥当であると考えてこの暫定取り決めを締結したわけでございます。米国の法令の中でどの部分が国際法に合致するかしないかというふうなことの議論を闘わすことになりますと、時間的にも非常に長期にわたりますし、三月一日からのわが国の操業を確保するという目的もございましたので、あくまでわが国としての国際法に従うという原則に立って本件を処理いたしたいということを米国側と話し合いまして、先方もこの点に理解を示したというわけでございます。  なお、若干具体的に申し上げますと、これも先生御存じのことと思いますが、現在わが国と米国との間にはカナダも加えましていわゆる日米加条約というものがございますが、これが明年の二月まで有効でございます。したがいまして、この暫定取り決めに言う国際法に従ってということの一つ意味は、その日米加条約の規定が依然として今後もその有効期間中は適用されるという意味でございます。またその他の日米加漁業条約か対象としない分野に関しましては、アメリカ国内法の中で国際法として妥当な範囲においてわが国がこれを認める、また現実の問題といたしましては、米国の国内法に対する違反事故等が起こりましてトラブルが起こらないように、わが国漁業法あるいは行政指導その他いろいろな措置によって実態といたしましては日米間にトラブルが起こらないように措置するという考え方を米側によく説明いたしまして、その結果、わが国だけを特例としてこのような行政取り決めを締結するということに米国が同意したという経緯でございます。
  131. 有馬元治

    ○有馬委員 現存しておる日米加の漁業条約の延長線であれば、それは行政取り決めも差し支えないと思いますが、アメリカの二百海里法を背景として今度の漁業協定ができておるわけですから、それがすでに国際法として定着しておるのだという前提であれば、その国際法に従って行政取り決めという形で交換公文を交換したのだ、これも一つの筋かと思いますけれども、そっちはまだ定着していない、これから新しく二国間協定によってそれが定着し、確認されるのだという今日の段階で、この行政取り決めは多少政府間取り決めとしては荷が重いのではないかという感じがするのですが、その辺は過渡的な時期でございますから、議論するとなかなかむずかしいのかもしれませんけれども、どういうふうにこれは考えてこういうふうな形にされたのかなという感じがいたしますので、いま一度ひとつ御説明願いたいと思います。
  132. 村田良平

    村田(良)政府委員 先ほども申し上げましたように、まさに国際的な慣習自体が非常に急速度に大幅に変わった時期にこの交渉を行いましたので、私どもとしましても法律的にもいろいろな問題を抱えたわけでございますが、結論的に申し上げますと、内容的には、米国が距岸二百海里において漁業に対する保存、管理の権限を行使するという大原則は、これを受け入れたわけでございますが、米国の国内法というものをフルに前提とするということなく、これはむしろ今回御承認をお願いしております長期協定に譲りまして、当面わが国として認識する国際法の枠内でわが国国内法及び行政指導によって実態的には米国の国内法が意図しておるような状況を実現する、かつ、これはいずれにいたしましても数カ月の経過期間のことでございますので、そのように処理することが三月一日からの操業開始という非常に重要な国内の要請にこたえるゆえんであろうと考えて、このような暫定取り決めを締結したということでございます。
  133. 有馬元治

    ○有馬委員 時間がございませんので、一応暫定措置としてはこの時期にやむを得なかった、したがってアメリカとの正式の漁業協定を一日も早く成立さしてこれにつなぐということで了解はできますので、私の質問は終わります。
  134. 竹内黎一

    竹内委員長 午後五時十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後四時三十一分休憩      ————◇—————     午後五時十三分開議
  135. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  136. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 条約質疑に入る前に、私は、現在懸案となっております日ソ漁業問題について二、三質問を大臣に対してさせていただきたいと思います。  現在交渉中の日ソ漁業協定の妥結見通しですけれども、これはどのようなものか、今国会会期中に間に合うかどうかということでありますが、この点はいかがでしょうか。
  137. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日ソ漁業交渉につきましては、大変御心配いただいておりますが、鈴木農林大臣とイシコフ漁業相の間には大変突っ込んだ話し合いが行われておると伺っております。日本漁業者立場も先方もよく理解をしておると申しておりまして、出漁の時期等も絡めまして、なるべく早く妥結をしたいということで鋭意話し合いが行われているというふうに承っておりますので、この国会中にぜひともこの暫定協定の御審議を煩わしたいというように考えておるその立場は、依然としてそのように強く私どもとしては期待をいたしております。
  138. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、この日ソ漁業協定は、国会の承認を求めるという当然の考え方でいきますと、会期の都合によって事前の承認を得ることができない場合、事後承認を求めるのかどうか、この点はどうでしょうか。
  139. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 憲法上から申しますと、事前の御承認ということで考えておるわけでございまして、このような二国間の条約でございますし、事後承認という例は非常に少ないわけでございます。そういう意味で、あくまでも事前の御承認をいただく所存でございます。
  140. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 冒頭に大臣から御答弁をいただいたわけでありますが、国会会期中にできるだけ妥結することを望むという希望的観測としての御答弁と私には受け取れますが、この問題と、ただいま申し上げたこの会期の都合ということもありますので、こういった事後承認といいますか、この場合を考慮して、政府は十分に事前の了解というものを求めるべきではないか、このようにも私はいまから思うわけでありますが、この点はいかがでしょうか。
  141. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 イシコフ漁業相と鈴木農林大臣の交渉が事実上妥結するというような事態になりましたならば、国会に提出するにはいろいろ手続があろうと思いますが、なるべく早く、特に外務委員会の皆様方には御理解を賜ることに最善を尽くしたいと思います。
  142. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ただいまの御答弁の線に沿って鋭意努力なさることをここで要望しておきます。  きょうは条約質疑でございますので、日米漁業協定については、先ほどわが党の渡部委員が質問を留保しておりますが、私からも若干の御質問をしておきたいと思います。  まず伺いたいことは、アメリカ産業における漁業の位置というものはどの程度のところにあるのか、アメリカ漁業というものの比重をどの程度に考え、力を入れようとしているのか。第二点としては、最近におけるアメリカ漁業政策について御説明をいただければと思います。
  143. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  米国は大西洋岸と太平洋岸に世界でも最も有数な非常にいい漁場を抱えているわけでございますけれども、漁業それ自身としては、合衆国全体から見ますとウエートは必ずしも高くないわけでございます。ただ、特定の水域、たとえばアラスカ州であるとか、マサチューセッツ州であるとか、ワシントン州であるとか、カリフォルニア州というようなところの沿海水域では、漁業が政治的にも経済的にもかなりウエートを占めているわけでございます。しかし、全体として見ると、漁業の先進国である日本であるとかそういうほかの国に比べますと、大規模漁業であるというよりは、むしろ中小の沿岸漁業的な色彩が非常に強いわけでございます。最近の漁獲量は停滞をいたしておりまして、年間で約二百八十万トンぐらいの線を最近数年間は上下をいたしているようなわけでございます。また、二百八十万トンでは国内の需要を充足するのに十分ではございませんので、約百万トンくらいを海外から輸入しておりまして、輸入国といたしましては世界第一の水産物の輸入国ということになっているわけでございます。  したがって、米国の将来の水産政策はどういうところに向いていくかということになるわけでございますけれども、米国の商務省の発表した資料等によりますと、アメリカとしては現在のところ、自分が二百八十万トンとっておる、自分の水域外国がこれにほぼ匹敵するだけの量の漁獲物を上げておるということになっているわけでありますけれども、二百海里水域法の制定を契機といたしまして、沿岸漁業を振興をしていきまして、できるだけ早く水産物でも自給の体制をとりたい、また、日本等にかなり良好な市場がございますので、輸出産業としての水産業の役割りというものも見直して、アラスカであるとかマサチューセッツであるとかメーンであるとかという沿岸の漁民に対して、あるいは周辺に住んでおる人たちに対して漁業で生活ができるようにしたいということで考えているようでございます。
  144. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ただいま漁獲量についてはお答えいただきましたが、主な魚種あるいは操業海域、先ほどの御答弁の中にも述べられた範囲というものが大部分だとは思いますが、この海域が果たして先ほどの御答弁ですべて尽くされたかどうか、また漁業人口がどのくらいであるか、もし資料があればひとつ御説明をいただきたいと思います。
  145. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  私の手元に昭和四十六年から五十年までの資料がございますが、昭和五十年の資料、つまり一九七五年の資料を使いますと次のとおりになります。  まず、どういう魚種をとっておるかということでありますけれども、一番多いのはイワシとニシンのたぐいでありまして、これが約百三万トン、それからカツオ・マグロ類が次に、これは金額的には一番大きいのでありますけれども、二十万トン、それからエビが十七万トン、そのほかカニが十四万トン、サケ・マス九万トンあるいはヒラメ、タラ、カキ、ハマグリとかいろいろ雑多なものを合わせまして約二百八十万トンということになります。  主要操業区域でございますけれども、およそ四ヵ所に分けていいんじゃないかと思います。一つは、メキシコ湾と南部太平洋、つまりフロリダ半島からずっと西の方にメキシコ湾でございますが、ここは漁獲量でも一番多うございまして百五万トン、それからマサチューセッツ、メーンという、ニューイングランド沖と一般的に言っておりますけれども、アメリカの北東部に当たりますが、ここで九十六万トン、約百万トン弱でございます。その次に大きいのはアラスカでございまして、アラスカが約三十五万トン。それから今度はずっと下りましてカリフォルニア、ハワイも合わせてでございますが、三十七万トンというようなところでございます。  従業員がどれぐらいであるかということでございますが、私の手元にいま漁業人口の正確な資料を持っておりませんので、後ほどお届けいたしたいと思います。
  146. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 国連海洋法会議におけるアメリカの排他的経済水域に関する主張はどのような内容のものであったかということですが、まず漁業資源の保存に関してはどうであったか、また漁業資源の利用の配分に関してはどのような見解であったのか、この辺について伺いたいと思います。
  147. 村田良平

    村田(良)政府委員 海洋法会議におきます各国の主張に関しましては、これは非公式、非公開の会議であるということで、米国がどういう立場をとったかということを詳細に申し上げることは差し控えたいと思うのでございますが、先ほど先生御指摘の点について申し上げますと、まず漁業資源の保存に関しましては、米国自身、国内法として二百海里を設定したわけでございますけれども、依然として海洋法会議の場で一般的な国際的なルールをつくろうということで、米国代表団としても努力しているわけでございます。  若干具体的に申し上げますと、サケ・マス等の溯河性魚種の取り扱いに関しましては、沿岸国がその全回遊水域にわたって管轄権を行使するという立場に米国は立っておりますけれども、二百海里以遠の水域の取り締まりは関係国間の合意によるという考え方でございまして、この辺は改訂単一草案に盛られておりますような考え方を米国としても支持するということでございます。  また、エビ・カニ等につきましては、いわゆる大陸だなの定着性生物資源であるという立場をとっていると見受けられますけれども、米国の国内法を見てみますと、他の魚種と同じような考え方でございまして、余剰原則というふうな考え方を適用しておるということでございます。
  148. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 定着性の生物ですが、これについてはどういう見解であったか。
  149. 村田良平

    村田(良)政府委員 海洋法会議の場におきましては米国は特にいろいろな意見を開陳しておるわけではございませんが、今回の国内法等を見てみましても、これが大陸だなの定着性の資源であるという立場をとっているというふうに考えられます。
  150. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 沿岸国の取り締まりについてですけれども、これはどういうふうになっているか。さらに隣接国または相対国、こういった国々との境界画定についてはどういう意見を持っていたか。この点はいかがでしょうか。
  151. 村田良平

    村田(良)政府委員 取り締まりに関しましては、米国の代表団は基本的に現在の改訂単一草案に盛られておるような考え方を支持しておるわけでございます。  それから、経済水域の隣接国あるいは相対する国との境界画定に関しましては、必ずしも米側の考え方は明らかではございませんけれども、アメリカ国内法によりますと、国務長官が関係国と交渉するというふうな規定もございますので、恐らく関係国間の合意によってこれを決定するという考え方と思われます。改訂単一草案ではこの境界画定に関していま規定があるわけでございますが、これに特に反対の意見も述べておりませんので、おおむねこのラインを了承しておるものであろうというふうに考えております。
  152. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、現在日米加三国間に北太平洋の公海漁業に関する国際条約締結されておりますけれども、この条約運用はどうなっているか、この点を伺いたいと思います。
  153. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 日米加漁業条約は、アメリカが本年の二月十日に終了通告を行いましたために、同条約の規定によりまして、この条約は来年の二月九日をもって終了することになっております。しかしながら、それまでの間はこの条約は依然として有効でございます。  さて、この条約の今後の取り扱いでございますけれども、関係国の間でこれから話し合いをすることになるわけでございます。わが国といたしましては、この条約に基づいて設けられております北太平洋漁業委員会が、北太平洋の漁業資源の科学的解明に大きな役割りを果たしてきたことを高く評価しておるものでございまして、今後ともこの委員会の活動を何らかの形で確保いたしますとともに、北太平洋の漁業資源の最適利用に関する関係国の協力を推進していきたいと考えております。したがいまして、そういうふうな科学的な調査とか協力を中心に北太平洋漁業委員会の活動を確保したいものと考えておる次第でございます。
  154. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 来年の二月には効力を失うということですが、これは外務大臣にも御意見として伺っておきたいと思いますが、そうすると、わが国カナダとの間にこの種の漁業条約というものを締結する必要が当然出てくるんじゃないかと思いますが、この点に対するお考えについて伺いたいと思います。
  155. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 カナダも二百海里の漁業水域を制定したわけでございますが、この点に関しましては、現在のところ、特に協定を制定することなく一応運用はされております。ただ、今後の問題として、来年以降はこの日米漁業協定に類似した何らかの協定を結ぶ必要があると考えております。
  156. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 米国は一九七六年漁業保存管理法を制定をして二百海里の漁業専管水域を決め、そのためにわが国との間に、いま審議されておりますこの漁業協定締結することになったわけですが、いわゆる協定締結交渉を通じて最大の対立点、これは一体どういうところにあったのか、また、わが国としては、そのわが国自体の主張というものは大体貫徹することができたのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  157. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 一般的に申し上げまして、漁業交渉というものは関係国においては大きな政治問題になりやすい問題でございますし、また、両国の切実な漁業利益の調整を目的といたしておりますので、どの国との間における交渉も非常に長期化し、また困難なものとなる傾向があるわけでございます。  特に、この日米漁業協定締結交渉は、世界の海洋法秩序、ことに漁業水域に対する考え方が非常に動いておる時期でございました。その上にアメリカが、いま仰せられましたように、昨年の四月に二百海里水域法を制定いたしましたので、非常に困難な交渉でございました。この二百海里の漁業水域法に関しましては、わが国としては従来、国連海洋法会議の結論を待たずして一方的にそういう水域を制定することには賛成しがたいという態度をとっておったわけでございます。しかしながら、この二百海里水域法が制定されたという現実を踏まえ、そして本年の漁業を継続する必要もございましたので、何らかの妥協点を探らなければならなかった、そういう意味で法律的にもまた実際的にも非常にむずかしい交渉であったのは事実でございます。  他方、アメリカ側もその法律の制定に従って多数の国と同時に交渉しておったわけでございまして、それをも見ながらわれわれとしては交渉を進めてまいったわけでございます。その間、十一月に至りまして米ソの間でも漁業協定が結ばれて、ソ連はいわばアメリカの二百海里漁業水域を認めたわけでございます。  そこで、われわれといたしましては、こういう大きな情勢の変化に対処をするために何らかの協定を早急に結ぶ必要がある。しかしながら、他方三月一日からこの法律が施行されますので、それに間に合うようにする必要があるということで、アメリカ側といろいろ交渉いたしました結果、長期協定と暫定取り決めという二本立てのやり方で話を進めることになったわけでございます。この点は、アメリカはほかの国との間ではすべて長期協定一本やりでやっておったわけでございますが、わが方の特殊事情を理解いたしまして、暫定取り決めで本年の操業をとりあえず継続するということに同意してくれたわけでございます。しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、この暫定取り決めはあくまでつなぎのものでございまして、われわれとしてはできる限り早急に長期協定について国会の御承認をいただいて、これに切りかえて安定した形において今後のアメリカの沖合いにおきます漁業が継続するようにいたしたいと思います。  また、交渉に当たりまして最大の問題は、そういう法律的な問題とともに、やはり過去の漁業実績をできるだけ確保するということでございました。この点も長い間の粘り強い交渉を通じまして、昨年の実績の八九%、約一割減の割り当て量を獲得し得たわけでございます。他方、若干の入漁料というものは払うことになったわけでございまして、この点につきましても、できるだけ入漁料を軽減させるように話し合いを行いまして、米側もかなりこれに応じた次第でございます。
  158. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ただいまの御答弁の中で、漁獲量の問題について過去の漁業実績というものを確保するために努力をされた、その結果八九%、一割減ということですけれども、こういったことがわが国の漁獲量にどのように影響をするかということを考えますと、これは当然あらゆる角度で対処していかなければならないと思いますが、ちょうど日ソ漁業交渉が難航している折から、わが国の漁獲量は決して無視できない重大な問題になってきているわけでありますが、これからどのようにこういった漁獲量に対しての対処をしていかれるか、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  159. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 外務省といたしましては、これはあらゆる努力を払いまして、これから遠洋漁業の面で伝統的な実績確保するように努力をいたさなければならない、こう考えておるところでございまして、この二百海里時代になりまして、先ほどお話が出ましたが、豪州、ニュージーランド方面におきましても今年の国連海洋法会議の成り行きを見守っておる姿勢にありますし、ほかの国もおおむねそういうような態勢にあると承っておりますので、これらの諸国との間に日本の伝統的な漁業実績確保されるように鋭意努力をいたしたいと思います。  また、沿岸漁業等につきましては、水産庁の方で本年の予算編成に際しましても大変努力を払っておられますが、その辺は農林省の方から御答弁いただきたいと思うところでございます。
  160. 米澤邦男

    米澤説明員 一つは、どうしても遠洋漁業が縮小する、現にわずかとは言いましても日米交渉でも約一〇%、一一%減少したわけでありますけれども、それに伴いまして、それをどこかでやはりカバーしなければいけない。カバーする方途といたしましては、一つは出た漁船がみんな日本の国内に帰ってくるというわけにもなかなかまいりませんので、どうしても新漁場の開発ということで、新漁場と申しましても深いところ、従来の漁場として使われていなかったところということになりますけれども、そういうところで新漁場の開発をして、できるだけ余剰になった漁船あるいは漁船員を吸収をしていきたいということで、新漁場の開発につきましても予算を計上いたしております。  それからそのほか、今度は国内の方では国内の方で、沿岸漁場整備、それからまた既存の漁場の整備をして生産性を向上させるということだけではございませんで、新たに栽培漁業というようなこと、あるいは漁港そのほかの整備というようなことにも努力をいたして、遠洋漁業の縮小による漁業に与えるインパクトというものをできるだけ少なくするということにいたしております。
  161. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いずれにしましても、大臣の御答弁とあわせて、このいわゆる漁獲量の確保という問題についてひとつ全力で取り組んでいただきたい。時期的に言ってもいまここでしっかりと国民的な課題として取り組んでいただくことを強く要望いたしまして、きょうはほかの条約もありますので、次の経済協力に関するモンゴル人民共和国との協定について伺っていきたいと思います。  まずモンゴルとの貿易は、一九五八年ウランバートルで往復二百万ドルの取引を決めた民間貿易議定書が調印されてから開始されております。その後一九六八年、モンゴル商業会議所とわが国のソ連東欧貿易会との間に日本モンゴル貿易議定書が調印をされて、これに基づいて貿易が行われてきておる。ところで最近の貿易の品目ですけれども、どのようなものがあるか、また金額は幾らぐらいに上っているのか。もしお手元に資料がありましたならばお知らせをいただきたいと思います。
  162. 大森誠一

    ○大森政府委員 お答え申し上げます。  現在の日本モンゴルとの間の貿易は、ただいま先生御指摘のように、モンゴルの商業会議所とわが国のソ連東欧貿易会との間に結ばれました民間の日本モンゴル貿易議定書に基づいて行われておるわけでございます。貿易総額につきましては、大蔵省の通関統計によりますと、昨年、一九七六年の輸出入総額は八十九万四千米ドルでございまして、このうちわが国から対モンゴル向け輸出は四十七万一千米ドル、わが国の輸入は四十二万三千米ドルでございました。主要貿易品目といたしましては、わが国からモンゴルに向けて機械器具、弱電製品、繊維製品、化学製品などを輸出いたしておりまして、モンゴルからは馬毛、馬の毛でございます。羊毛、毛皮、動物性原材料などを輸入しております。
  163. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 このモンゴルとの貿易は、ただいま御答弁がありましたように、品目もどちらかと言えば限られているように思います。またその額もどちらかと言えば少ない方だと私は思いますが、モンゴルは長期計画を一九八〇年を目標に、工業総生産が農牧業総生産を上回ることを目標として掲げているということでありますが、今後わが国との貿易拡大の見通しというものをどのように考えておられるか、この点を御意見として伺いたいと思います。
  164. 大森誠一

    ○大森政府委員 ただいま先生御指摘のように、モンゴルは一九七六年から八〇年にかけて現在第六次五カ年計画を実施中でございます。モンゴルといたしましては、従来牧畜業を中心としたいわゆる農工国、農業主体の国から工業を主体とした工農国へと発展させるべく努力目標を立てているところでございます。今回御審議願っておりますこの経済協力協定によるカシミヤ、ラクダ毛の生産ということにつきましても、モンゴルといたしましては、この第六次五カ年計画に組み入れて工業を伸ばしていくということについて貢献させたい、このように考えていると承知いたしているわけでございます。  今後の貿易拡大の見通しでございますけれども、御指摘のように金額は現在のところそれほど多いわけではありませんし、将来もこれから非常に飛躍的に増大するという見通しは必ずしもございませんけれども、たとえば現在御審議いただいております経済協力協定というものが実施に移されるというようなこと、あるいはその他の面における両国間の交流の拡大ということに伴って、両国間の貿易量も着実に伸展するというふうに期待しているわけでございます。
  165. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 やはりわが国が必要とするいわば地下資源の発見とかあるいは開発、こういった何らかの新しい輸出商品をモンゴルの側が開発しない限りは、先ほど申し上げたこの貿易拡大という見通しは余りないのじゃないだろうか。いまの御答弁の中にも、今回のこの協定が契機となってというまた希望的な見方もあるようですけれども、やはり将来というものを見通したときに、どうしてもこういった永続性のある地下資源の発見とか開発等がない限りは、モンゴルとの間の貿易拡大ということに対する期待というものはかなり限度があるのじゃないだろうか、このように思いますが、この点に対してもいま一度御意見を伺いたいと思います。
  166. 大森誠一

    ○大森政府委員 モンゴルといたしましては、自国の工業化発展の目標に沿いまして地下資源の開発ということも重点を置いて考えているようでございます。ただ何分モンゴルはこれまでこのような地下資源の開発等につきましては、たとえばソ連との間の協力によりまして銅山の開発ということを行っている実例はございますけれども、従来、西欧資本主義国との間の技術経済協力といったようなものは今回のわが国との技術協力協定が初めての例、モンゴルにとって初めての経験でございまして、わが国モンゴルとの間の今回のこの協定が実施に移されることによって、モンゴル側日本側の技術あるいは経済技術協力についての理解を深めるということに伴って、将来の可能性としてはモンゴルの地下資源の開発ということもあり得るわけでございます。
  167. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この協定締結によってわが国モンゴルに対してカシミヤ及びラクダの毛の加工工場を建設する五十億円の贈与というものを行うわけですが、これに先立ってモンゴル側から技術者が訓練のためにわが国に派遣されるというふうにも聞いておるわけですけれども、この点が事実かどうか。すなわち政府の技術協力の一環として行われているものかどうか、この辺を伺いたいと思います。
  168. 大森誠一

    ○大森政府委員 ただいま御審議いただいております協定が発効いたしますと、モンゴル政府が指定するモンゴル側の当局はわが国関係業者との間に工場建設のための契約を結ぶことになるわけでございますが、モンゴル人技術者養成のための研修員受け入れなどにつきましてもこの契約に含まれる場合が想定され得るわけでございます。このような場合には、モンゴル人技術者のわが国における滞在費用、研修費用等はこの契約が認証を受けた後にこの協定に基づく贈与によって支払われることになるわけでございます。  他方政府ベースで、この協定に基づきます贈与とは別個に、本件工場の建設に関連いたします研修員受け入れなどの技術協力を行うか否かという点につきましては、すでにモンゴルの方からわが国のカシミヤ関係業界の視察を目的といたしまして若干名の専門家を政府ベースの技術協力により受け入れてほしいという旨の要請が来ておりまして、私どもとしてはこの点を現在検討中でございます。
  169. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは次にエジプト・アラブ共和国との間の投資保護協定について伺っていきたいと思います。  わが国としてはこのような投資活動、資産の保護を目的とする二国間協定は初めてである。それで、提案理由説明によりますと、エジプト側からの要請のもとに協定締結したようでありますが、まずその経緯について御説明をいただきたいと思います。
  170. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 わが国の対外直接投資は近年増加しておりますことは御承知のとおりでございまして、今後国内経済の情勢、構造の変化に伴い、ますます増加するものと予想しております。国家間の協定による投資財産の保護の重要性に対する認識が高まっていることは御高承のとおりでございますが、かかる背景のもとに、わが国といたしましては特にエジプトが先進諸国との間で一般国際法上の原則を取り入れた協定締結しておりますことに着目いたしまして、投資保護協定の最初の相手国として適当な国と考えておった次第でございます。その際におきまして同国から本協定締結についての用意がある旨の表明をされました。現在の段階ではエジプトヘの対外投資の実際の額は必ずしも高水準ということは申し上げられないのでございますけれども、同国がアラブ諸国においてきわめて重要な地位を占めておりますので、同国とまずかかる協定締結することはわが国の政策としても意義深いものと判断いたしましたために、この協定締結交渉に入ったという経緯でございます。
  171. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いままで外国からわが国に対して投資保護協定そのものを締結しようという提案がなされたことがあるかどうか。同様の提案が多少外国からあったようにも聞いておりますけれども、それが結実しなかった理由というのは一体何であろうか。この辺について御存じであればお答えいただきたいと思います。
  172. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 従来からブラジル等若干の非公式の打診があったようでございますが、いわゆる投資協定を結ぶ実益という意味におきまして、過去のその当該国の方針、原則その他に徴しまして、投資協定を結ぶ実益がある、こういうふうに考えられましたケースはエジプトの例が顕著であるというふうに考えられます。今後はもちろんその相手国の政策、方針、その他に徴しましてケース・バイ・ケースで積極的に考えていく事態もあろうかと考えております。
  173. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 従来政府は、海外投資保険制度とかあるいは国際的な仲裁制度で十分であるとの方針であったかと思いますが、今回エジプトと初めて投資保護協定を結んだ理由は先ほど御答弁いただいた中にも若干述べられておりますが、こういう角度から見た場合はどうでしょうか。
  174. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 ただいまの点につきましては先ほど御説明申し上げましたところでございますが、開発途上国との間におきまして、国際法の収用原則その他におきまして現在の国際法上認められておりますような原則を表明いたしておる国、そういった国に対しましては投資協定締結の実益がより高いというふうに判断をするわけでございまして、主としてそういった観点から今後対処していくということが基調になるものと存じます。
  175. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、わが国としてはこの種の協定をそういった線に沿って積極的に締結をしていく方向と解していいかどうか、これがわが国の海外民間投資、特に開発途上国に対する投資奨励保護に関する政府の新しい方針と理解していいのかどうか、この点を御確認をいただきたいと思います。
  176. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、今後は本協定締結を契機といたしまして、諸外国の間で同種の協定締結する機運が高まってくるものというふうに客観的には予想してよいと思います。わが国といたしましては、相手国の外資政策、投資環境あるいはわが国との関係を十分検討いたしまして、締結の意義を認められる場合には可能な範囲で対処してまいりたいというのがわが方の現在の政策であると考えられます。
  177. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 エジプトはこの種の協定日本以外の第三国と結んでいるかどうか、特にわが国内容において変わった協定を結んでいる国はないかどうか、この点はいかがでしょうか。
  178. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 現在エジプトアメリカ、スイス、西ドイツ、フランス、ギリシャ、イタリア、イギリス、オランダと投資協定締結しておる状況でございます。わが国との協定と他の協定との比較という意味におきましては、西独とエジプト投資協定、これは一昨々年七月に締結をされておるのでございますけれども、投資の許可に関しましては、わが国との協定では最恵国待遇を与えることになっておりますが、西ドイツとの協定では公正かつ公平な待遇を与えるという規定になっておる点、それから収用及び保障措置という重要な部門につきましては、わが国との協定最恵国待遇及び内国民待遇を与えることになっておりますけれども、西ドイツとの協定では最恵国待遇のみを与える旨を規定しております。大体主要な相違点は基本的にはかようなことであろうかと存じております。
  179. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうしますと、わが国エジプトに対する投資額あるいは件数としてはどのくらいあるか、また、それは開発途上国に対するわが国投資額中でどのくらいの割合を占めているか、数字がありましたならば御答弁をいただきたいと思います。
  180. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 現在の手持ちの資料によりますと、エジプトに対する投資は、実は七六年末現在の統計でございますが、高水準にあるものとは言いがたいと存じます。累計六件で十九万ドル程度でございます。この内訳は、主として証券取得が九万八千ドル、債券取得が、これは金額が必ずしも判明いたしませんが、四件程度でございます。全体の割合ということを正確に計算はしておりませんけれども、これは高水準にあるものとは必ずしも言いがたいというふうに存じます。
  181. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 この協定締結後の対エジプト投資の増大については、政府の期待するような財界等の動きとか、あるいは関心度というものが、むしろ薄いとも聞いているわけですけれども、今後の見通しとしてはどうでしょうか。もし大臣の御意見がいただければと思います。
  182. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 先生御指摘のとおり、現在の段階におきまする投資意欲が非常に高いということは言えないわけでございますが、同時に、エジプトは一九七一年制定の恒久憲法に明示されておりますように、社会主義を国家経済の基礎に置く管理経済体制をとっておるわけでございます。そういう意味では鉱工業等のほとんどの産業が国有化されております。生産面の国家管理のほかに、価格、販売統制を初め各種の国家統制を受けておるわけでございまして、さらに所得分配、外国貿易、国際収支管理面でも徹底した政府管理が行われております。このような体制のもとで、四次にわたる中東戦争を体験しておりますし、戦時経済体制というものを維持せざるを得ないという状況であったわけでございまして、国内経済開発阻害の大きな要因としてこういうものが存在をしていたことは否定をできないと存じますが、今後の方策としては、サダト大統領が表明しております方針から読み取れますように、欧米諸国、アラブ産油諸国からのエジプト援助、投資の増大以外にエジプトの経済状態の改善の方法はないのではないかという意図が表明されておるわけでございまして、民間企業活動の促進を中心といたします自由化政策というものが漸次表面化してまいる、恐らくわが国を初めとする投資活動の活発化も、こういった先方のペースにも関係をいたすというふうに思うのでございますが、今後とも漸進的に投資意欲が増大されることが期待されるわけでございます。
  183. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは最後に、現在、エジプト向けの日本輸出入銀行融資とかあるいは輸出保険、海外投資保険は停止されておりますけれども、締結後はこういったものが再開するのかどうか、この点を最後に伺っておきたいと思います。
  184. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 この点につきましては、関係方面と打ち合わせを進めるべき段階に来ておると考えております。方向としては、この投資協定締結によりまして保険の方はより容易になるという環境がございますので、その環境のもとで話し合いを進めてまいりたいというように考えております。
  185. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、きょうのところはこの程度にいたしますが、冒頭に申し上げたとおり、日米漁業協定の質問を渡部委員が留保しておりますので、一応そういうことで私の本日の質問は終わりたいと思います。
  186. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡辺朗君。
  187. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 先に日本国モンゴル人民共和国との間の協定についてお尋ねをいたします。  わが国モンゴルが外交関係を樹立したのは一九七二年でございました。それから五年たっておりますけれども、今回このような協定内容が提示されたわけでありますが、戦後の両国関係で最大の問題であったと言われる賠償、これは、モンゴル側の方は日本に賠償要求はしないという言明をしたと聞いております。したがって、それにかわる無償の経済協力日本側として約束した。まず、五年間かかってそういう交渉を行われて、どこに問題点があったのかという点、その交渉の経緯というのをまずちょっと知らしていただきたいと思います。
  188. 大森誠一

    ○大森政府委員 ただいま先生御指摘のように、わが国モンゴルとの間の外交関係は一九七二年に行われたわけでございますが、モンゴル側から当初はこの無償経済協力についての要請を非公式な形で言ってまいりまして、その後わが方としては、政府部内で種々検討いたしましてモンゴル側との意見交換というものを始めたわけでございますが、具体的に申し上げれば、たとえば一九七四年に当時の高島アジア局長モンゴルに赴きまして、先方の当局者と意見の交換を行い、その後外交チャンネルを通じまして双方でさらに話を煮詰めました結果、モンゴル側要請に応じまして、一九七五年六月にモンゴルに対しての経済協力の調査に関する調査団というものを派遣いたしました。そしてこの調査団が、モンゴル側が特に重点を置いておりましたカシミヤ、ラクダ毛の加工工場とまたガラス工場のプロジェクトについてフィージビリティーの調査を行ったわけでございます。この調査団の報告に基づきまして、政府部内でさらに検討を進めましてモンゴル側と意見の交換を続けました結果、昨年の八月に至りまして、総額五十億円を限度としてカシミヤ、ラクダ毛加工工場の建設を対象とする協定を結ぶという大筋につきまして双方で合意が成立いたしました。その後、具体的な協定案文につきましてウランバートルにおいて交渉を進めてきた結果、本年の三月十七日にウランバートルでわが方の柘植大使と先方のサルダン対外経済関係国家委員会議長兼国務大臣との間でこの協定署名を見るに至ったわけでございます。
  189. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま経済協力というふうなお話がございましたけれども、どうなんでしょう、終戦処理の一環としての準賠償的な性格を持っているというふうに理解してよろしいでしょうか。この辺、再度私、お尋ねをしたいと思います。
  190. 大森誠一

    ○大森政府委員 本件につきましては、モンゴル側によりますカシミヤ及びラクダの毛の加工工場の建設に協力するという趣旨で、五十億円を限度とする額を無償経済協力として贈与するものでありまして、あわせて日本モンゴル間の過去の経緯、特に一九三九年のいわゆるノモンハン事件に由来するモンゴルになお残っております日本に対する特殊なわだかまりの感情を払拭するということによりまして、両国間の友好関係発展を図ろうという趣旨のものでございます。  わが国の法律的な立場といたしましては、日本モンゴルの間には戦争状態が存在したことはなく、したがいまして、日本モンゴルの間に国家間の戦争状態に起因する賠償問題はあり得ないというのがわが国立場でございまして、したがいまして、本件経済協力は賠償にかわるものあるいは準賠償というような性格のものではございません。しかしながら、ただいま申し上げましたように、従来の経緯にかんがみまして、事実上、戦後処理の一環としての性格を有するというのは、その点は御指摘のとおりでございます。
  191. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまお話のありましたノモンハン事件、その際の残されたわだかまりの感情というお言葉がありましたけれども、どうなんでしょう、これは一体どういうふうな損害が与えられ、どういうわだかまりの感情があるのでしょうか。そこら辺を御説明いただきたいと思います。
  192. 大森誠一

    ○大森政府委員 ノモンハン事件につきましては、わが方の資料によりますと、日本軍の人的損害というものは、戦死、戦傷、生死不明者合わせて一万七千七百人、戦病者二千四百人、また、ソ連、モンゴル軍の人的損害は千七百七十四人ない、しは千八百七十四人、物的損害は、航空機九百二十四機、戦車、装甲車百五十三両、火砲二十六門という数字がございます。他方、モンゴル側は、第二次大戦の終わりました翌年、一九四六年にワシントンにあります極東委員会あてに送付いたしました書簡におきまして、モンゴル側のこうむった人的損害は千百三十一名、物的損害は六千万トウグリク、これは米ドルで約二千万ドルでございますが、六千万トウグリク以上というように述べております。  なお、モンゴル側は、ただいま申し上げました極東委員会あてに送付した書簡におきまして、ノモンハン事件のみならず、一九三五年から一九四五年の終戦時に至るまで、モンゴル側の受けた被害の合計といたしまして、人的損害二千三十九名、物的損害三億二千百九十八万三千トウグリク、この額は、現行レートで換算いたしまして、約一億米ドルに相当するものでございますが、このように数字を挙げているわけでございます。  このように、モンゴル側におきましては、第二次大戦中を通じまして、日本軍により侵略を受け、人的、物的被害を受けたということで、その関係者を含めまして、なお日本に対して先ほど申し上げましたような戦争中に受けた痛手ということに対するわだかまりの感情ということが残っておりまして、それが従来公式、非公式の場で表明されるということもあった次第でございまして、この協定によりましてこのような戦争中のわだかまりというものを一掃したいというふうに考えているわけでございます。  なお、モンゴル側におきましても、この協定というものを非常に高く評価いたしておりまして、モンゴル側の第六次五カ年計画に組み入れるということで非常に大きな期待を持っておりますし、また、モンゴルがいわゆる西欧資本主義国から受ける経済協力としては初めての例でございまして、この点からもモンゴル側としてはこの協定を非常に高く評価しているということがございますので、先ほど申し上げましたようなこの協定を結ぶ趣旨というものは、十分達成されるものと考えている次第でございます。
  193. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまのお話を聞いておりまして、今回の五十億円の算定の根拠というのは、先ほどのモンゴル側で申し入れをした金額、そういったものを根拠にしてやっておられるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  194. 大森誠一

    ○大森政府委員 モンゴル側は第二次大戦中に日本軍から受けた被害につきましては、損害賠償の請求権を有するという立場を当初とっていたわけでございますが、五年前にわが国との間で外交関係を樹立いたしました際に、モンゴル側としてはもはや日本に対しまして賠償の請求は行わないということをはっきりと明言いたしたわけでございます。したがいまして、今回の協定は、そういう先ほど申し上げましたような戦争中にモンゴル側が受けた痛手というものに由来している点はあるのでございますけれども、さらに将来に向けての新たな日本モンゴル間の友好関係発展という見地からこの日本からの経済協力を受けるということになったわけでございます。したがいまして、モンゴル側がこの外交関係樹立後にわが国に対しましてそういう立場からの幾つかのプロジェクトというものについての日本側の協力要請してまいった経緯がございますが、その中でも特にモンゴル側が一番高いプライオリティーを置いておりましたカシミヤ及びラクダの毛の加工工場というものにつきまして、今回の五十億円の無償供与というものによりましてほぼモンゴル側の希望する規模で建設が可能であるという見通しに立ちまして、この額を先方に提示した結果、先方もこれに同意するということで、この額に落ちついたわけでございます。
  195. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その点わかりましたが、第一条に「五十億円を限度とする額の」と、こうなっておりますが、「限度とする額の」というと、これはそれ以内でもよろしいし、何か非常に不明確な感じが私はいたしますけれども、なぜそういう文言が使われているのでございましょうか。
  196. 大森誠一

    ○大森政府委員 五十億円を限度とする贈与ということといたしまして、五十億円の贈与ということといたさなかった理由でございますが、仮に五十億円の贈与といたしました場合には、わが国政府は五十億円全額をきっちりとモンゴル側に供与しなければならないこととなるわけでございます。しかしながら、この協定の実施といたしましては、モンゴル側わが国の企業とこれから契約を結ぶわけでございますけれども、その契約の額が必ずしも五十億円に満たないということも可能性としてあり得るわけでございまして、その場合は結果として五十億円全額を日本側としては供与できないこととなりまして、わが国政府として取り決めの義務を履行することが不可能となる事態もあり得るわけでございます。このような可能性を排除するため、この協定におきましては限度額を明示するという方式を採用したわけでございます。  なお、モンゴル側が限度額いっぱいに使用する場合、結果的には五十億円の贈与内容的には異ならないこととなるわけでございます。
  197. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それから、先ほど御説明をいただきましたときに、第六次五カ年計画とおっしゃいましたが、これは四年となっておりますが、この贈与は四年間の期間にわたってということでございますが、これは第六次五カ年計画の中の四年分という意味でございますか。
  198. 大森誠一

    ○大森政府委員 先ほど申し上げました一昨年にわが方がモンゴルに派遣いたしました経済協力調査団の報告に基づきまして、工場の建設に必要な期間を算定いたしました結果、ほぼ四年が妥当であるものと認めて、それに合わせて贈与の支出期間を四年とし、モンゴル側協議いたしました結果、モンゴル側もこれに同意した次第でございます。この四年の期間というものは、先ほど申し上げましたように、昨年一九七六年から一九八〇年に至ります五カ年計画のちょうどその期間内に入る期間でございます。  なお、四年という期間を妥当といたしました理由としましては、モンゴルは御承知のように内陸国でございますために、日本が供与いたします機材等の陸上輸送に相当時間がかかるという事情、またモンゴル側の気候というものは全般的にきわめて寒冷でございまして、冬にはしばしば零下四十度前後にもなる、このような気象条件にございますため工事が冬にははかどりにくいというような事情もございます。これらのことを考慮いたしまして、通常よりは余裕を見まして長い工期が必要であるということで、この四年という期間としたものでございます。
  199. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それからもう一つお尋ねをしたいのですけれども、この協定が実施される場合に、カシミヤ及びラクダの毛の加工工場建設になります。それからこちらの方からも工場建設のため必要な役務を提供するということになりますが、この実施の細目みたいなものはもうできておりますですか。たとえばどこの会社にそういうものを持っていくとか、そうではなくて、たとえば何かそういうものを実施するような機関があって、それが行うとか。なぜそういう点をお聞きするかといいますと、御存じのように、いままで日本では最近までプラント輸出なんかをずいぶん東南アジアにいたしましたけれども、今度は逆にそういった繊維関係では日本が追い上げられていく、新興国、途上国の産品によって大変苦境に立つという状態も来ております。毛織の関係、こういった問題も同じような事態が、カシミや工場、しかもこれはどの程度のものか知りませんが、聞くところによりますと東洋一ぐらいの規模のものをつくろうという、そうしますと当然モンゴルの内部におけるマーケットではなくて、日本のマーケットというものが対象になるであろうし、当然そういったこれからの日本の毛織関係の繊維業界というものに対する問題が出てくるのではあるまいかということも私は考えますので、その実施の状態、実施をこれからどういうふうな形で行われようとしているのか、そこら辺をちょっと教えていただきたいと思います。
  200. 大森誠一

    ○大森政府委員 この協定の第二条に基づきまして、モンゴルが指定するモンゴルの当局と、具体的にはモンゴルのコンプレックス輸入公団というものが当たることになろうと思いますが、この公団がモンゴル側の契約当事者となりまして日本側の企業と契約を結び、その契約の実施ということによりましてこの協定が実施されるということとなるわけでございます。したがいまして、特に実施期間といったようなものを定めているわけではございませんで、どういう機材、どういう役務を受けるかということについては、もっぱらモンゴル政府検討して、そのモンゴル側の希望に沿うような形での契約をモンゴル側の選ぶ企業との間で結ぶという形で実施されていくこととなっております。  また、この協定によりますカシミヤ、ラクダ毛工場というものが完成いたしました場合には、二つの工程がございまして、一つは、いわゆる原毛を整毛にするという過程が一つ。この整毛という形での外国への輸出ということが一つ考えられます。さらに第二段階といたしましては、この原毛が整毛されたものをさらに材料といたしまして紡毛あるいは梳毛というものをつくりまして、それをさらにもとにしてのセーターなどの最終完成品というものもつくりまして、それも外国へ輸出し、それによってモンゴル側の非常に必要としております外貨の手持ちをふやすということに貢献する、こういうことになっているわけでございます。モンゴル側は現在そのカシミヤ、ラクダ毛は原毛としてその多くを外国へ輸出しているわけでございますが、大部分はいわゆるコメコン諸国、東欧に出しております。そういう事情からいたしまして、整毛あるいは完成品といったものも恐らく東欧圏特にチェコスロバキアあたりに輸出されるというのが大部分であろうと思います。またわが国としても、ある程度整毛などは必要としているという事情もございますので、これはこの政府間の協定を離れまして、全くのコマーシャルベースの話になるわけでございますけれども、わが国モンゴル側でつくった製品の若干の部分を輸入する、こういう可能性もございます。いずれにしてもそれは先ほど申し上げましたように商業ベースで行われることとなりますので、わが国の産業を直接圧迫するという懸念はないものと考えている次第でございます。
  201. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。  それでは次に、エジプトの方に入らしていただきます。  私、今回の投資奨励及び相互保護に関するこの協定、中身よりもむしろその背景といいますか、中近東でいま起こっておりますいろいろな問題、そういった点について聞かしていただきたいと思うのです。  まず第一番目に、今月の十一日それから十二日にパリで開いておりますが、エジプト債権国会議、これは日本は出席しておりますでしょうか、どうですか。
  202. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 お答え申し上げます。  日本もこの会議に出席いたしております。
  203. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは債権国会議においてどんな方針が出ましたでしょうか。概要で結構ですから教えていただきたい。
  204. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 この会議に関しまして、日本といたしましてはエジプト政府からの、現在のエジプト経済の状況、それから今後の計画、それからエジプトに援助をいたしております諸国、それから国際機関等の説明を聴取いたしまして、日本といたしましても、このエジプトの世界政治、特に中東の問題、中東情勢におきます重要性にかんがみまして、この会議の結果を踏まえて、今後エジプトに対する援助の問題について十分に前向きに検討していくという方針で臨んでおります。
  205. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 新聞その他によりますと、大変に現在のエジプトの経済情勢は悪化しておりますし、特に数十億ドルの累積債務がある、しかも返済の見込みも立っていない、身動きができないような状態だというようなことが言われており、かつまた、債権国会議が開かれた際にも参加の国々が大変渋い態度であるというようなことを聞いておりますけれども、そこら辺は日本政府としては、それではポジティブに積極的にエジプトのいわば経済再建といいますか、そういうことに協力するという姿勢が打ち出されたというふうに理解してよろしゅうございますか。
  206. 加賀美秀夫

    ○加賀美政府委員 ただいま御指摘のように、エジプト経済は非常に困難がございます。対外債務の累積は百二十億ドルの域に達しております。そして七七年中に支払い期限の到来いたします債務が五・九億ドルというような状況、それから財政赤字は四・四八億ドル、経常収支がそうなっております。そのようなことで、エジプトといたしましてもきわめて困難な状況にあるわけでございますけれども、パリで行われましたエジプト協議グループの会議の第一報によりますと、諸国とも、国際機関も含めまして、何とかしてエジプトの経済を立ち直らせていこう、そういう前向きの状況の討議が行われたようでございます。それで、諸国の中には、ある程度数字を明示いたしまして発言した国もございますけれども、わが国の場合は数字を言う段階ではございませんので、今後とも会議の結果を踏まえて検討していくという態度をとっております。  ただ、エジプト重要性につきましては、日本といたしましてもこれを非常に重要視いたしております。事実、日本はこれまでかなりの実質的なエジプトに対する円借款の供与その他の援助をいたしております。したがいまして、エジプトに対するポジティブな態度というのは基本的には変わらないものと私どもは考えております。
  207. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そうすると、この協定そのものも、そういうエジプトを何とかしようという線に沿って出されたものと理解してよろしゅうございますね。
  208. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 この協定に限って申し上げますと、この協定締結の背景は、先方が日本投資を受け入れたいという意向を表明いたしまして、国際法上の原則等を遵守した協定を結ぶということを申し入れてきたことによるものでございます。したがって、この協定が直ちにそういう形の対エジプト援助に対して意義を持つかどうかという点でございますけれども、恐らくこの協定の将来の運用において投資が増進されるというような状況になります場合には、その限りにおいてもちろんエジプトの経済に貢献をするというふうに考えるべきであろうかと思います。
  209. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、その点ではもう一遍お聞きしたいのですけれども、実際に先ほど聞きましても、そんなにたくさんの投資が行われたりはしていないいままでの両国関係だったと思うのですが、今後非常に伸びるのでしょうか。そこら辺の見通しは一体どうなんでしょう。
  210. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 先生の御指摘にございますと思いますが、現在の対エジプト投資は十九万ドル程度でございまして、中近東全体から見ましても決して高水準にあるとは言えないわけでございます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 やはりこれは投資環境の整備ということと、実際の投資の進展ということが、もちろんある程度の時間的なおくれがあるわけでございますけれども、先生も御指摘のような工ジプトの現在の戦時経済体制から生じます状態の改善のために、やはり欧米諸国あるいは日本、アラブ産油諸国からの投資あるいは援助、そういったものの増大をも通じまして、エジプトの戦時経済体制改善を図らざるを得ないという状況にあるわけでございまして、今後は漸進的であるとは存じますけれども、投資の意欲の増大も期待されるものと私どもは考えております。
  211. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、御説明を聞いておりますと、大変に私自身どうも納得がいかないのです。納得がいかないというのは、何というか方向性が何も決まっていなくて、ただエジプトから頼まれたからそういうふうなことをするんだという程度の協定なのか、私はもっと基本的に、外務大臣にお聞きしたいのですけれども、中東問題というのは大変日本にとっても重要だ、特に中東平和というのはどうあるべきかという構想があり、その外交の  一環として、たまたま頼まれたからではあるけれども、もっと積極的な意味を持っているであろうし、また持たせるべきだと私は思うのです。たとえば中東の平和という場合に、アラブ諸国の内部においてはエジプトを主導とするような和平解決の方向へむしろ日本は積極的に助力するんだ、応援をするんだ、そういうような方向があるからこの問題を協議するんですと、そういうことがなければ、ただ頼まれたから、あるいは途上国だから援助をいたします。あるいは貧乏だから何とかせぬといかぬ、ピンチだから何とかせぬといかぬ、そんな場当たり的なものであってはならぬと思いますので、中東平和というものとの関連においてこれからエジプトというものをどう位置づけておられるのか、私はそこら辺を外務大臣にお尋ねしたいと思うのです。お願いいたします。
  212. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 中東諸国に対します日本としての経済協力、これは大変積極的な姿勢で臨んでおるわけでございます。エジプトに対しましても、スエズ運河の改修工事等につきまして日本は相当多額の協力をしてまいっておるところでございまして、今後の趨勢は、このような経済協力によりますところの公共的な投資あるいは日本経済協力という面と純粋な民間の投資と、やはり両方の面が相まっていく面も多かろうと思います。ただ現実に、ただいま経済局の方から申し上げましたのは、民間投資というものがこれによって飛躍的にふえるだろうか、こういうことになりますと、これは日本投資家がエジプトに民間の立場で急激に投資が伸びるかというと、そこまでなかなか見込みは立たないかもしれませんが、エジプトといたしましては、戦後の復興と申しますか、外貨事情に乏しい中で、やはり諸外国の民間の資本の投資も望んでおるわけでございますから、両々相まって開発されていくことが必要であろうと思います。ただ、政府としての積極的な姿勢はいま申し上げたとおりでございますが、この協定ができることによりまして民間の投資家が進んで急激にふえるかと申しますと、それはなかなか見込みが、現在のところそう急にふえるということもむずかしいのではないかというような見込みもあるわけでございます。しかし、この協定が民間の投資に対しまして何らかの作用はいたすはずでありますし、これからこの中東方面が平和な中東地域になってまいる、そういったことに相応じまして、民間の投資というものは続いていくであろう、こういうふうに思うところでございます。率直なところを申し上げますとそういうところではなかろうかと思っておるものでございます。
  213. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、投資という問題、民間の投資促進とかそういうことだけではなしに、申し上げているのは、中東平和の問題でやはり日本がちゃんとした発言をしたり、あるいはまたはっきりした方向というものを示していく、国際的な外交を展開する、こういうことがこれからは大変重要になってくる、特に中近東問題あるいは対アフリカ、こういうようなことを考えても、対米交渉の場合でも重要になってくると思うのです。御存じのようにサダト・カーター会談もついせんだって行われておりますし、ですから、恐らくアメリカだって、そういう意味での援助は、単に軍事的なものだけではなく、そういった中東平和を踏まえてのエジプトに対するいわば期待感、主導権をとらせよう、そういうような背景もあるのではあるまいか。だから、日本だってそういう点を踏まえて、中東問題あるいは平和の問題、こういったところにどんどん発言もし、踏み込んでいくべきだと私は思うのですね。いつでもハンドオフしていたらまずいと思うのです。そういう意味で、きょうは時間がありませんから、また別の機会に中東問題についてぜひ論議をやらしていただきたいし、政府としての御意見を聞かしていただきたいと思っております。その点、要望だけをまずしておきます。  次に、今度は日米の漁業交渉について質問をさしていただきます。  日米漁業協定に関連いたしまして、米国の沖合い水域で操業している国というのは、日本だとかソ連だとか、いろいろございますけれども、聞くところによると二十数カ国に達しているというふうに聞いておりますけれども、アメリカはそれらの操業している国々と漁業協定締結しておりますか。
  214. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカは、現在二百海里漁業水域法に基づきまして、すでに十カ国との間に漁業協定締結いたしております。
  215. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それはどことどこの国でしょう、済みませんが国の名前だけを挙げていただきたい。
  216. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカが昨年夏以来漁業協定締結いたしました国は、ブルガリア、ルーマニア、台湾、東独、ソ連、ポーランド、韓国、スペイン、EC及びわが国でございます。
  217. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは、その漁業協定内容は、ここにいま提示されております日米漁業協定と同一の内容のものでございますか。
  218. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 いずれの漁業協定アメリカの二百海里漁業水域法を認めてこの協定締結いたしておりますので、その内容はほぼ同様でございます。
  219. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま、ほぼとおっしゃいましたけれども、何か目立ったような違いというのはそれぞれの協定の間にございますでしょうか。あったら教えていただきたいと思います。
  220. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカは、これらの国との間で漁業協定を結ぶに当たりまして、一つのモデル協定を作成いたしておりまして、これを各国に提示して交渉を行っておりますので、その内容においてはほとんど変わらないわけでございます。また、そのモデル協定と余り変わるような内容のものであれば議会の承認が受けられないというのが米側の立場でございましたので、各国ともそのモデル協定から余りかけ離れた協定を結んではおらないわけでございます。
  221. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、いまの点を聞きましたのは、万が一にでも公平の原則がそれらの協定の間に貫かれていないとなると大変だなという心配からでございます。いまお聞きして一応安心をいたしましたが。  この協定は、米国の漁業保存管理法に基づくものだというふうに聞いております。そうすると、この管理法の性格について私お尋ねをしたいと思うのです。  この管理法というのは、海洋法会議の単一交渉草案、この経済水域関係部分、これを先取りして取り入れている、こういうふうに受け取れると思いますが、この管理法は単一交渉草案と同趣旨の規定と理解してよろしいのでしょうか。
  222. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 このアメリカの二百海里漁業水域法は、仰せのとおり海洋法会議におきます単一草案の規定をいわば先取りする形で作成された点が多いわけでございます。したがいまして、基本的にはその草案の経済水域関係部分の規定にほぼ似通っておるわけでございます。ただ、二、三の点について相違がございます。主な点は、溯河性魚種の問題、それから高度回遊性魚種の問題、それから大陸だな定着性生物資源の問題、また、取り締まりの問題について若干の相違点がございます。
  223. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、若干の相違ということではないのではあるまいかと、むしろ大変大きな問題があるのではあるまいかと思いますので質問をさせていただきますけれども、いまの溯河性魚種の問題、これは海洋法会議の単一交渉草案と管理法の間にどういうふうな違いがございますか。
  224. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 溯河性魚種、サケ・マスの類でございますが、これに関しましては、改訂単一草案では、二百海里以遠における取り締まりは関係国との間の合意によると規定されているのに対しまして、アメリカ国内法におきましては、米国が二百海里を超えるすべての回遊水域において漁業管理権を行使するというふうになっております。
  225. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまの点はちょっとした相違じゃございませんね。これは、合意がされてない、日本と全然合意しない、アメリカが一方的に溯河性の魚種の問題も管轄権を全部持っている、こういうことになりますと、たとえば間違って網の中に溯河性の魚種が入ってしまった場合に、これは罰を受けることになります。こういうことになりますね。ですから、これは大変に大きな問題であろうと思うんですけれども、これはどのようにお考えでございましょう。
  226. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 御指摘の点ございますが、その溯河性の魚種に関しまして、二百海里の外における問題に関しましては、合意議事録の第二項におきまして、合衆国当局が取り締まり行為を行う場合には「日本国政府協議を行った後にのみとられる」ということになっております。したがいまして、その二百海里外のアメリカの取り締まりは、一方的にかつ恣意的に行われることはないわけでございます。そういう意味において、合意とは若干異なってはおりますけれども、協議が行われるという点があるわけでございます。
  227. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それから、いまの取り締まりの点、これはやはり相当違いがあるんじゃないでしょうか。この辺の違いを御説明いただきたいと思います。
  228. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 取り締まりに関しましては、単一草案には、逮捕された船舶及び乗組員は、適当な供託金の支払いがあれば速やかに釈放さるべきこと、及び、刑には禁錮またはその他の体刑は含まないという規定がございます。  この日米の協定におきましては、その前者の点につきましては同様の規定が本文に書かれておるわけでございます。ただ、後者の点、すなわち禁錮またはその他の体刑は含まないという点に関しましては、この協定にはそういう例外規定はないわけでございまして、米国法に従って体刑も科し得るということになっておるわけでございます。ただし、この点に関しましては、合意議事録において、米国の政府は裁判所に対して体刑を科さないように勧告するというふうに記されている次第でございます。
  229. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 勧告するということですね。だから、体刑もあり得るという大変厳しいのが今回の日米漁業協定アメリカ側の提案だと私は思います。海洋法会議に出ているものよりうんと厳しい。私は、これはもうちょっと日本側として腹を立ててもいいと思うんですね。そしてこれに対して、ずいぶん一方的ではないか、それから魚の独占、こういったものも意図してるんじゃないかと言って、私は徹底的にやはり論争もやるべきだったと思うんですが、そこら辺の交渉の経緯、そのような態度でお臨みになり、そしてまた論争もされたでしょうか。
  230. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 体刑が科される点につきましては、これは各国とも問題にしておるわけでございまして、日本側も非常に強く問題にいたしまして、この点は直させるように努力はいたしたわけでございます。  ただ、しかしながら、先ほどから申し上げましたように、米国行政府としては国内法に従ってこの協定締結しなければならないという立場にあるということでございまして、それから大きく離れることはできないということを申しました。そこでわれわれといたしましては、種々交渉を重ねました結果、先ほど申し上げましたように、合意議事録におきまして、その「刑に禁錮その他いかなる形の体刑も含まれないよう」に裁判所に対して「勧告する」ということを、米行政府から取りつけたわけでございます。最終的にはこれは裁判所が決定する問題であることは事実でございますが、行政府に関する限りは、一切のそういう体刑を科さないように努力するということを約束したわけでございます。
  231. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 残念ながら交渉で負けたわけでございまして、これはまことに残念なことだったと思うのですよ。だけれども、やはり溯河性の魚種の問題とか取り締まりの問題こういった点についてアメリカ側の意向というのは、これはやはり横暴だと私は思うのです。ですから、こちらの方でも本来なら何か対抗手段でも考えないといかぬのじゃないかと思うのですけれども、せめて十六条のところに、海洋法会議の結果ではこの協定を再検討するということがありますので、私はそれを積極的に生かして何とかやはり再検討させる、この必要があろうと思いますので、これは要望しておきます。  それから、さらに私、具体的なこと、実態の問題としてお聞きいたしますけれども、ことしと来年というふうに漁獲量を何十%確保したとおっしゃっておられますけれども、将来これは実績ということを踏まえてと言われますけれども、どうなんでしょう、大変自信を持って将来ともほぼ九〇%、八〇%を確保していけるというように見通しを持っておられますか、漁獲量について。
  232. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  米国の国内法の規定によりまして、総漁獲量、許容漁獲量でございますけれども、全体でとれる漁獲量の決定というものは科学的な証拠によりなさい。つまり資源の状態によって、その資源が毎年余剰として生産し得る量を科学的に決める、そしてその際にはほかに考慮しなければならないこと、つまりその魚種でなくて、ほかの魚種との依存関係だとかいろいろなことがありますし、また社会、経済的な要因も考慮に入れるというただし書きがついておりますけれども、根っことして科学的な証拠主義に基づけということでございますので、わが方としては一応の歯どめはここにあるというぐあいに考えておりまして、わが方としては、科学的な証拠というものを提出することによりまして実績確保に当たりたいということを考えておるわけでございます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕  それからまた、協定の中でも第五条に、わが国の伝統的実績を考慮しなければならない、それからまた、わが国の経済的な混乱を最小にしなければならないということを米側にも義務として返しているわけでございますので、第三条のいろいろ毎年の協議においては、この点を主張してできるだけがんばっていきたいというぐあいに考えておる次第でございます。
  233. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、その点の漁獲量のこれからの見通しの問題にしましても、それからこの協定に織り込まれている法的な枠組みの問題ですね、溯河性の魚種の問題にしろ、高度回遊魚種の問題にしろ、取り締まりの問題にしろ、こういった問題を含めた、この協定というのは二百海里時代のいわば漁業協定の第一号ではあるまいかと思いますね。そうしたときに、今後アメリカ以外と日本漁業交渉を進める際に一つのサンプルになってしまうのではあるまいか。そうすると、日本がよそのいろいろな国々と漁業交渉を行い、協定を結んでいく場合に、これが同時にまたメリットもあるかもわからぬけれども、逆に、先ほどのお話聞いておりますと、障害になる、マイナスになるということのサンプルになるのではあるまいかと憂慮します。その点、どのようにお考えでございましょう。
  234. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この協定は二百海里漁業水域時代において最初に結ばれた協定であるという意味において一つの先例となることは事実でございます。しかしながら、アメリカ側としましても、余剰原則というものを打ち立てまして、アメリカの国民がとらない部分については伝統的な漁業実績のある国にもとらせるという方針を打ち出しておるわけでございまして、現にわれわれも鋭意交渉いたしました結果、昨年の実績の約九割は確保し得たわけでございまして、法的な規制の面においては確かに厳しい面もございますけれども、実績は十分確保されておる。また、そういう考え方が貫かれておるという意味におきましては、かなり妥当な内容になっておるものと思うわけでございます。  ただ、何と申しましても、国連の海洋法会議の結論を若干先取りしてやっている面もございますので、国連海洋法会議の結論が出て、国際的な合意ができ上がりました時点におきましては、こういう協定はもちろん見直さるべきものであろうと思っております。
  235. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ひとつ余り消極的にならぬで、積極的に見直しをやらせるということはやはり強く言ってほしいと思いますね。また、そういう態度で臨んでいかないと、押されぎみ——押されて押されてしまうということになるだろうと思います。たとえば今度の日ソ漁業協定への影響というのは、外務大臣、これは日米漁業協定は何か起こってまいりますか。どのように見ておられますか。全然別個のものとして、日ソ漁業交渉の上に何らかの影響はございませんか、ありますか。
  236. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 鈴木・イシコフ会談の際におきましても、先方は、アメリカが二百海里に踏み切った結果こういうことになったんだというようなことを申しておりますし、そういう意味で、日ソ漁業交渉自体が、アメリカが二百海里の漁業資源の保存を国内法でやったということがスタートになっているという認識は皆持っておるわけでございます。しかし、現在交渉中のこの日ソ漁業問題におきましては、アメリカとの間にちょっと例のないような点におきまして問題になっておるわけでございまして、したがいまして、現在の日ソ漁業交渉アメリカの例が悪い影響を与えているかどうかという点につきましては、ちょっと簡単には申し上げることがむずかしいと思います。
  237. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 心配するのは、たとえばこういう例があるじゃないかと言って、先ほどもお話が出ましたように、先例としてぐいぐい攻め込まれる材料に使われるという点を配慮したものですから、お聞きしたような次第です。これは私は、日本のこれからの漁業問題、海洋問題に対する姿勢の問題、方針の問題と関連がありますので、ここで深入りはいたしませんけれども、こちらの方でも海洋問題あるいは大陸だなの開発の問題、海洋資源の問題いろいろ相当に早く総合的な方針みたいなものをきちっとつくっておかないといけないのではないかということを痛感しております。  もう一遍本題に返りますが、米国沖合いの水域で操業する際にわが国は入漁料を払うことになっているわけですけれども、この入漁料という言葉はこの協定を見ますと出てきませんですね。日本側で新聞だとかそれから外務省でお書きになったものを見ていますと入漁料という言葉を使われているのですけれども、入漁料というのは法的に性格は一体何でございましょう。権利金みたいなものですか。
  238. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この協定には入漁料という言葉は確かにないわけでございますが、正確には「料金」という言葉が使われておるわけでございます。わが国の漁船がアメリカの二百海里水域内におきまして操業するためには、協定の第八条の第二項に言います同水域内の「生物資源の保存及び管理を確保するための妥当な料金の支払」を行わなければならないということになっているわけでございます。したがいまして、この協定の文言で言いますれば料金、一般にわかりやすく申しますと入漁料というものは、この水域内の生物資源の保存及び管理の費用の一端に充てるためにという趣旨のもとに徴収する料金であるというふうに考えるべきであろうと思います。
  239. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これは結局、入場料あるいは経費みたいなものと解釈していいわけですね、いまの料金というのは。
  240. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 こういう入漁料という考え方は実は海洋法会議の改訂単一草案にもあるわけでございまして、必ずしもアメリカだけが徴収しようとしているわけではございません。また実際問題として、漁業資源を有効に管理するためには科学調査も必要でございますし、また統計の処理の問題もあります。さらに取り締まりは広範囲にわたりますので、かなり費用のかかることも事実でございます。そういう意味で、そういうふうな経費の全部をカバーするというのでははなはだ困りますけれども、その一部の経費に充てるためにこういう入漁料を取るということでございますならば、それが妥当なものとわれわれが判断する限りにおいては支払うことは差し支えないのではないかと思います。  ただ、われわれといたしましては、最初アメリカ提案いたしました入漁料は実はわれわれ考えまして少し高いものでありましたので、この点については大分交渉を重ねまして、半分ぐらいに値切ったつもりでございます。
  241. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 英文の方では「リーズナブルフィーズ」こうなっておりますけれども、結局値切ったりいろいろできるわけですね。そうすると、基準というのは大変恣意的なものというふうに理解してよろしいし、したがってこれからも大変変化をするだろうというふうに解釈してよろしいですね。  ことしの場合、幾らですか、ついでに答えてください、一緒に。
  242. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  いかなる範囲が合理的であるか、妥当な範囲であるかということについては、客観的な基準があるわけでございませんで、わが方としても、アメリカの最初の提案は五%ということであったわけでございますし、それから魚の価格も非常に新しい価格を使うということでやっておったわけであります。その際のアメリカ側の説明というのは、在来、漁業の管理を行ってきた、その管理の中には取り締まりであるとかあるいは資源を管理するあるいは資源を調査をするということで何がしかの金がかかる。入漁料を発表しました官報の中に、私いま手元に官報を持っておりませんのですが、その費用と計算根拠が書いてございます。二百海里を施行いたしますと、当然昔とは違っただけの費用がかかるわけでございます。もちろん、その費用のうち全然外国漁業がなくてもかかる費用が相当あるわけでございまして、それにつきまして米国の内務省はやはり見積もりをいたしまして、私の記憶が正しければ、結局究極的に二百海里法施行の結果として外国漁業の存在によって増大する経費の部分として二千二百万ドル、そのうち約半分を外国に入漁料として支払わせるのだということが計算根拠として書いてあったと思います。数字が間違いましたら後ほどまた訂正いたさせていただきます。わが方としては、そういう物の考え方漁業者の負担を考えておらないということで、昨年末から漁業者の負担ということでいわば値切りの交渉をやったわけでございまして、先ほどアメリカ局長が申し上げましたとおり、結果としては約半分に値切った、こういうことになったわけでございます。  それから、なお入漁料でございますけれども、入漁料につきましては、アメリカに支払うべきいわゆる入漁料は二本立てになっておりまして、一つは漁船についてトン当たり幾らという形で払うものでございまして、漁船は一グロストン、総トンですね、一総トン当たり年間一ドル、それから加工船は一総トン数当たり年間〇・五ドル、ただし二千五百ドルを超えて取ることはない。したがいまして、五千トン以上の船につきましては二千五百ドルで頭打ちであるということでございます。それから補助船、これはタンカーなどが入りますが、これは一隻について年間二百ドル。そのほか漁獲料につきましては、漁獲物の船側渡し価格の三・五%ということでございます。各魚種の値段は指定をされておりまして、わが国だけが漁獲しているものにつきましてはわが国の水揚げ価格、農林省統計の水揚げ価格をそのまま使用をいたしております。そういうことで、結局わが国が今年度負担しなければならない額は約十七億円ということになるかというぐあいに考えております。
  243. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 十七億円、これはやはり大変な金額だし、それを払えばいま重油の代金も高くなってきておりまして、そうするとそういうものがみんな魚の上に上乗せされますと、台所の方にみんな響いてきますね。その意味で、これはどうなんでしょうね、政府の方は資金援助するような用意はございますでしょうか。——ではその点はちょっと後でいいです。ちょっと検討していただいておいて……。  それからもう一、二だけ申しわけありませんが聞かしていただきたいと思っております。  アメリカカナダ、二国間のいわゆる漁業専管水域あるいは保存水域、この境界は決まっていないと聞いています。何かもめているように聞いていますが、そういうことはもう全部おさまりましたでしょうか。
  244. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 アメリカカナダとの間は国を接しておりますので、境界線の問題が非常に複雑になっております。両方とも二百海里水域を設定いたしましたので、両者の主張の間に食い違いがあって、まだ決着がついていないということでございます。ただそこで、さしあたり両国の主張が重なり合っている水域につきましては、両国の漁船は自国の許可証だけで操業できることにして、両国の取り締まりもそれぞれ自国船のみについて行うということになっております。また両国とも、第三国船に対しては当該水域の操業許可を与えないということをとりあえずの措置として合意いたしておるわけでございます。
  245. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そういう場合に、日本の漁船はやはり入っていくわけでございますので、これははっきりさしておかないと、実をいうと大変困ってしまう。トラブルの地域、決まっていない地域に入っていったがために拿捕されたり何かという事態が起こってもいけませんので、ここら辺はやはり国民の方に、漁業者の方にきちっと問題を示しておかないと、私この協定だけでは大変不親切だと思うのです。その点お願いをしておきます。余りたくさんけちをつけるつもりはございませんから。  それからさっきの政府の側の入漁料の援助、お考えを聞かしてください。
  246. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  先ほど十七億円ということを申し上げたわけですけれども、ついでに水揚げ額は一体幾らぐらいになるのであるかということを申し上げることを……。
  247. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間の問題がございまして、政府の援助の方を言ってください。
  248. 米澤邦男

    米澤説明員 すぐ援助の方を申し上げます。  一千億以上の水揚げがありまして、そのうちの十七億という感じになるわけであります。政府といたしましては、これによって影響を受ける漁業者が金融機関から融資を受ける、あるいは大日本水産会がこれらの業者にかわって金融機関から融資を受け入れるという場合には、その二分の一の利子補給ということで、大日本水産会に対して入漁料対策特別資金融通助成金補助金という名前で費用を計上してございます。これは十七億円全額を漁業者が借り入れるという前提にいたしております。総額は一億三千四百万円強ということになっております。
  249. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務省側で、それからまた水産庁側でそれでよろしいですか。
  250. 米澤邦男

    米澤説明員 よろしゅうございます。  いま十七億円では三・五%にならないではないかということでちょっと疑問が出ましたわけでございますけれども、これは単価を適用する基準年度、それから水揚げ額はそのときの年度でございますから、その間の差で結果的に下がったというわけでございます。先ほどアメリカ局長も申し上げましたように、五%から三・五%で約半分以上に下がったと申し上げましたのは、五が三・五ではパーセントとしては七〇%になりませんわけですけれども、基準年度を少し昔に戻してもらうという手続をとってもらうことによってさらに軽減をしてもらったということでございます。
  251. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 わかりました。  最後に、私は、これは外務大臣に要望と、それから時間が来ちゃったものですから、御意見だけを最終的に聞かしていただきたいと思うのです。私、心配なのは、アメリカの場合なんかは地区の漁業管理委員会が、管理理事会というのですか、大変に強い権限を持っておるし、今後はどんどん強い意見が出てくるのじゃなかろうか。連邦政府の方だって、これはコントロールするのに大変であろう、それがみんな日米漁業協定の実施の上に反映をいたしまして、日本側の方がどんどん攻めつけられる、押されるという結果が出てくるんじゃあるまいか。まして海洋法会議の単一交渉草案、こういうものを上回って大変厳しい条件をアメリカ側は出してきている。ですから、私、今後の問題として、日本側もやはり攻勢に出るべきだと思うのです。守りばかりやっていたらこれはやはりいけないだろうと思うのです。じゃ、攻勢とは何か。攻めていく部分は、私はやはり非政府間のレベル、政府の方が大いに応援していただくことは非常に重要だと思いますけれども、たとえば水産学者であるとか海洋学者であるとか国際法学者、こういう人たちと日、米、カナダ、ソ連、こういうところの人たちとどんどん交流をさせ、それから一種の協議会みたいなものをつくり、漁業資源の評価の問題とかあるいは許容の漁獲量の決定であるとか規制措置の問題、あるいは紛争の解決の方法、情報交換、こういったものを科学者あるいは学者たちの間で進めさせていく、それを今度はアメリカ側の方に反映させていく、こういうことを促進する必要があろうと思うのです。外務大臣、そういうような御用意はおありでございましょうか。攻める姿勢に転換をしていただきたいと思います。
  252. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いまお述べになりました御趣旨、全く私どもも考えなければならない点であろうと思います。特に来年以降になりまして、地域理事会と申しますか、地域機関が漁獲量等を決めるというようなことになった場合に、どのようなことになろうかということが大変心配でございます。私ども外交努力によりまして、やはり政府のベースでも、先方に日本として確保しなければならないことは積極的に申し入れなければならないだろうというふうに思います。  その他の点につきましてお触れになりました点につきましても、今後とも大いにできる限りの努力をいたしたいと思いますが、特に水産庁とよく協力いたしまして、わが国の伝統的な漁業確保できるように最善の努力をいたしたいと思います。
  253. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 どうもありがとうございました。
  254. 竹内黎一

    竹内委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  255. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こしてください。  次に、寺前巖君。
  256. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、きょうは日米漁業協定投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定の二つについて、質疑をいたしたいと思います。  質疑をするに当たって、私は最初に、外務大臣というのは、自分が外務大臣になっていないときにこの協定が結ばれて、そしてきょう提案をしにここにお見えになる。ずいぶんたくさんの協定をこの国会に出してこられるのだけれども、ここへ出てこられるときには何が問題点かという主要な点は全部理解をしておみえになっているのかどうかということを、私は、私自身がきょう提案を聞いてこれだけ質疑をするのは大変だと思っているだけに、外務大臣はどういうふうにしておみえになるのか、ちょっと最初にどういうふうにしてやってきておられるのか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  257. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この御提案申し上げました案件につきましては、時間の許す限り勉強したいと思っておるわけでございます。しかし、政府委員協力を得まして可能な限り御答弁申し上げたいと思っておりますが、技術的な問題につきましては、全部が全部理解が完全にできておるという自信はなかなか持つことはむずかしい状況でございます。
  258. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、けちをつけようということは毛頭ございません。それで、私はきょう聞こうという二つの協定について、まず日米漁業協定について、大臣が一番これは考えてみなければならぬなあと疑問に思われた点はどの点なのかを教えてほしいと思う。大臣は何を疑問に思われたか。
  259. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 なかなかむずかしい御質問でございますが、この協定につきまして——私とも、ただいまソ連との漁業協定をやっているところでございます。その点につきまして、ソ連との漁業協定は暫定協定をいまやっておるところでございまして、アメリカとの間は暫定協定は行政取り決めで処理をしたわけでございますが、その点がソ連の協定アメリカ協定がふぞろいであるという点は、私はかねがね大変気になっておった点でございます。  内容の点につきましては、それぞれございますけれども、大変時間のかかった協定でございまして、経緯が大変複雑でございます。そういう意味で、こうあったらよかったなあというような点は多々あるわけでございますが、これもアメリカ国内法の枠内でどうしても処理をしなければならぬ、こういうことでありますので、その点はなかなか思うようにいかないわけでございますが、先ほども申し上げましたが、これからの長期的な見地に立ちますと、だんだんアメリカ沿岸漁業者の権益というものが逐次発言権が大きくなっていって、日本の漁獲量が次第に減らされるのではないかというような点が、将来の問題として一番切実な問題ではないかというふうに考えておるところでございます。  なお、問題点は幾つかあろうかと思いますけれども、さしあたりいま気になっておることを申し上げれば、以上の二点でございます。
  260. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、先ほど趣旨説明いただきまして、最初におおよその疑問点を幾つか感じましたので、その点についてお聞きをしたいと思います。  第一に、この協定の最初のページのところにこういうことが書いてあります。「同国起源の溯河性魚種に対してその全回遊域を通じて漁業管理権を行使していることを認め、」という文章が出てきます。一方で、いま第三次海洋法会議で草案が出ております。その草案の五十五条の第三項のdを読むと、こういうことが書かれております。「溯河性魚種に関する排他的経済水域を超える規制の実施は、産卵河川国とその他の関係国との協定によって行われる。」ところが、この日米間の漁業協定によると、第一条に入る前の序文というんですか、前文というんですか、ここの中に「溯河性魚種に対してその全回遊域を通じて漁業管理権を行使していることを認め、」というふうに、二百海里の経済水域ではなくして、全回遊域にわたってその溯河性魚種に対する管理権を持つんだという位置づけをしているんではないか。これでは、いま進めているところの海洋法会議の進行方向とちょっと違うんではないか。アメリカはちょっと世界の趨勢よりは厚かまし過ぎるんじゃないか。私は、そういうふうに読めて仕方がないんですけれども、その読み方は間違っているんでしょうかね、御説明をいただきたいと思うんです。
  261. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 仰せのとおり、この協定におきましては、アメリカ起源の溯河性の魚種に対して、アメリカはその全回遊域を通じて漁業管理権を行使するということを言っております。これは、アメリカの二百海里漁業水域法の規定に従った表現でございます。他方、第三次国連海洋法会議の改訂単一草案の第五十五条は、溯河性の魚種については、その母川国が第一義的な利益及び責任を有しということを言っております。これは表現は大分違いますが、われわれの了解いたしますところでは、内容的には変わらないわけでございまして、この改訂単一草案の考え方も、母川国がその溯河性魚種の全回遊域について管理権を持つことを認めておるというふうに解釈されるわけでございます。  ただ、他方におきまして、この第五十五条は、保存の確保に当たっては、漁獲を行っている国と協議を行い、これらの国の経済的混乱を最小にするために協力し、また経済水域の外における取り締まりは、母川国と他の関係国との間の合意によるというふうな趣旨を設けております。この点に関しましても、経済的混乱を最小限にするという点につきましては、アメリカとの間で結びました協定第五条においても、経済的混乱を最小限度にすることを考えてアメリカが総漁獲量を決定するということが書いてあるわけでございます。  また取り締まりの点につきましては、改訂単一草案では、関係国との間の合意ということになっております。この点はアメリカとの協定におきましては、アメリカが全部取り締まりをすることにはなっておりますが、二百海里の外に関しましては合意議事録の第二項におきまして、その取り締まり行為については「日本国政府協議を行つた後にのみとられる」ということが書かれております。合意協議という意味で、ニュアンスの差は確かにございますけれども、大体その改訂草案の趣旨は踏まえて書かれておる次第でございます。
  262. 寺前巖

    ○寺前委員 時間がないから、私はこの問題は保留しますよ。率直に言って、海洋法会議の提起しておられるのは、経済水域の問題と経済水域外の問題と分けて取り扱っていることは明らかです。ところが、この協定のこの文章について言うならば、分けていません。だから、あえて合意された議事録の第二項にこのことを書かざるを得なかったんだろう、私はそう思うんです。  そういうふうに見たときに、先ほど大臣の御答弁にもありましたが、日米の本漁業協定がこれから他の漁業協定に影響を与えていくということを考えたときには、私はこれはこのままでいいんだろうか。再度これは質問させてもらわぬことには、このままで素直に受け取れるというわけにはいかぬようになってきた。答弁をどうされるんだろうかと思ってさっき聞いてみたわけです。次に移ります。これは保留だ。  第二条の第三項で、協定の対象魚種がここに書かれております。この対象魚種からマグロ類が外されております。ところがこの間、四月の終わりの新聞を見ておりましたならば、海洋二法の政令案が決まるということで、法第六条第一項第一号の政令で決める高度回遊性魚種はカツオ類、マグロ類及びカジキ類を定めると新聞に報道されました。そうすると、この日米漁業協定の第三項でマグロ類だけを外しているのに、ここで他の分野の問題についてはなぜ外さなかったんだろう、一体どうして扱い方を日米間では変えたんだろうかということが不思議でかなわないんです。私はよく知りません。日米間と政令で出されているこの高度回遊性漁種の取り扱いの違いは一体どういうわけか、御説明をいただきたいと思うんです。これはむしろ水産庁ですか、どっちになります。どっちからでも説明してください。
  263. 米澤邦男

    米澤説明員 お答え申し上げます。  マグロ類については、米国側が管轄権を行使しないということでございまして、従来どおり日本のカツオ、マグロ漁船は、アメリカ政府の許可なしに自由に広く漁業を続けることができるわけでございます。  それから協定の中でマグロ類と申しておりますのには、このマグロ類の中にはカツオが入ります。カツオは英語ではスキップジャックと言いますけれども、これはツナということで総称されておりまして、その点で日本側と定義に特に差があるわけではございません。  カジキにつきましては、マグロ船がカジキをそのまま引き続きとるということにつきましては、現在のところ米国の許可を受けないで、マグロ漁業による混獲ということで引き続き漁業を続けているわけでございます。その点に関しましては、合意議事録第一項をお読みになれば明らかかとも思います。わが国のマグロ漁船がマグロを漁獲する際にはカジキが混獲されるということを合意議事録で当然に想定をいたしておりまして、その際にわが方は若干の科学的資料を向こうに提供するということだけを義務づけられておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、現在でもわが国のマグロ漁船は、カジキを混獲するということについて米国の規制を受けたりあるいは許可証を取得したりするということはございません。その意味でカツオ及びマグロ及びカジキは、高度回遊魚の定義ではカジキマグロは定義には入りませんが、一応同様な扱いをされておるというぐあいに考えております。
  264. 寺前巖

    ○寺前委員 なぜ同じように定義の中に入れないのかというのが私の質問だ。わが国の政令ですか、政令を見ると入っている。入っているんだったら、アメリカと話をするときにちゃんと入れておけばいいじゃないか。何で入れないのだろう。不思議でかなわない。
  265. 米澤邦男

    米澤説明員 アメリカの二百海里管理法の中では、高度回遊魚をカツオ・マグロ、正確に言いますと、マグロだけに限定をして指定をしているわけであります。交渉の途中で、交渉は昨年の六月から開始をいたしまして六カ月以上もやったわけでありますけれども、そこでカジキも当然高度回遊魚として扱われるべきであるということでわが方が主張をいたしてまいったわけでありますけれども、法律のたてまえがカジキ類を一応認めていないという立場を米国はとっております。行政府として立法府を動かせないという立場もございますし、それからもう一つ、先ほど海洋法の単一草案のお話が出ましたけれども、単一草案についても、大方の条項についてはかなりの事実上の意見の一致に近いものがあるわけでございますけれども、実は高度回遊魚につきましては、まだ各国間、特に日本であるとかアメリカであるとかいうような主としてマグロをとっておる国と、それからラ米諸国であるとか後進国の間には、非常に意見の不一致がございまして、ことにカジキマグロの扱いにつきましては、高度回遊魚の一応リストには載っておりますけれども、このリストは変なものもいっぱい入っておりまして、リストについてはまだ合意がないということでございまして、結局わが方として、カジキマグロについて事実上の取り扱いにおいてほぼマグロと同様な取り扱いをせられるということで、合意するということに踏み切ったというわけでございます。
  266. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、高度回遊性魚種は、排他的経済水域の外にわたって国際的な管理を提起しておられるこの草案の第五十三条に基づいて、広く国際機関を通じて共同管理できる方がいいことだと思うのですよ。ところが、アメリカとの関係においてマグロ類としほられてきているところに実は私は不純さを感じて仕方がないからあえて聞いたのです。というのは、アメリカ自身がマグロ類については南米で仕事をやっているということを聞いている。自分の都合のいい立場に立って広く自由にとれるようにするのだということで、世界の国際的な管理に責任ある態度と言えるのだろうか。私はそういうふうに見てきたときに、日米漁業の本協定が世界に対する先進的な役割りを果たすという重要な位置を占めると言うならば、ここには不純性を感じて仕方がないということで、ここに出てくる名前の問題について私はあえて頭をひねらざるを得ない。大臣のところの耳にまでまだ入っていないようですから、もう一度御検討いただいておいて、私、これまた保留にしておきます。次に行きます。  その次に、先ほどの前文的なところの問題です。「同国に属する大陸棚の生物資源に対して」云々とこう書いて「漁業管理権を行使していることを認め、」と一ページ目に載っております。これは従来日本政府がとっていた態度と違うのではないだろうか。たとえば一九七五年の五月十五日に署名をされておられる日ソカニ協定あるいは日ソツブ協定、この協定を見ると、日本政府態度とソビエト政府態度との違いがある。この違いのときには両論併記をしている。この両論併記を見ると、ソビエトの側が主権的権利を行使する大陸だなの天然資源であるとの見解を有しているというふうに、カニでもツブでも言っている。これに対して日本政府の方は、公海漁業資源であるという態度でもって異論を唱えている。こういう立場を従来とっていたのに、このアメリカとの協定になったら、何でいつの間にやら公海の漁業と言って大みえを切ってそして両論併記をしておった態度が変わってしまったのか、御説明をいただきたいと思うのです。
  267. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 このアメリカ漁業保存管理法、いわゆる二百海里水域法の規定に従いますと、仰せのとおり、二百海里水域内の魚類とともに大陸だなの漁業資源に対しても漁業管轄権が及ぶことになっております。わが方はこの法律を認めた上でこの協定締結いたしておりますので、この協定締結することによってアメリカ地先沖合いにあります大陸だなの定着性の生物資源に対するアメリカの管轄権を認めたわけでございます。大陸だなのレジームに基づく生物資源として認めたわけではないわけでございます。この辺はちょっとわかりにくいかと思いますが、そういう立場をとっておるわけでございます。他方、わが国大陸条約にいまだ加入いたしておりませんので、この大陸だなの天然資源の範囲が何であるかということについてはわが方の立場はいまだ明らかにいたしておりませんし、また国連の海洋法会議においても、いまだ大陸だな資源の問題に関してはいろいろな議論が行われておるわけでございます。したがいまして、従来からわが国大陸だなレジームの問題としてはわが国態度を留保しておるわけでございまして、そういう立場から、御指摘のありました日ソのカニ協定あたりでも、わが方の法律的な立場はたな上げにした形で結ばれておるわけでございます。
  268. 寺前巖

    ○寺前委員 本文に「大陸棚の生物資源」云々と書かれていながら、これは保留だとどうして読むことができるのでしょうか、私には理解できません。わかりやすく整理して説明してください。きょうは時間がありませんので、この点についても保留しておきます。  その次、先ほどお話がありました罰則の厳しさの問題、海洋法会議の草案の第六十一条の三項では罰則は拘禁またはその他のいかなる体罰も含めてはならないというのが明記されているというふうに私は読むのであります。ところが本協定では、十一条に漁船の拿捕とか乗組員の逮捕の規定を設け、十二条では「合衆国の法律に従い、妥当な刑を科する。」というふうに書かれてきています。これを見ると、明らかに海洋法会議の動向とは変わってきているように思うのです。日本の漁民の間にもかなり厳しい協定だという意見が出されてきています。しかも皆さん方が結ばれたときに、合意議事録ですか、そこを見ると第三項には「裁判所に対して、漁業規則の違反に対する刑に禁錮その他いかなる形の体刑も含まれないよう勧告するものと了解される。」というふうに、わざわざもう少し緩くしてくださいよという勧告というものがここの話の中に入っている。こういうふうに見てきたときに、国際的にいま進んでいる内容とはあなたたち自身もこれではちょっとぐあい悪いなというふうにお感じになっておられたのではないだろうか、私はこの文章を読んでそう感ずるんですが、いかがなものでしょう。
  269. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 海洋法会議の改訂単一草案には、逮捕された船舶及び乗組員は、適当な供託金等の支払いがあれば速やかに釈放されるべきことということが書いてあります。また刑には禁錮またはその他の体刑は含まないということも書かれております。  これと対比いたしまして、本協定におきましては、その前者の点、つまり逮捕された船舶及び乗組員は適当な供託金の支払いがあれば速やかに釈放されるということにつきましては、本文の第十一条の三項に規定がございまして、この点は単一草案と大体というか、同じ規定になっておるわけでございます。  ただ、その第二の点、つまり体罰は含まない、体刑は含まないという点でございますが、この点は確かに若干違っております。この点はアメリカ国内法がこの第十二条に書かれておるとおりになっておるわけでございまして、アメリカとしては漁船の違反に対して、その漁船または所有者あるいは運航者に対して、合衆国の法律に従い妥当な刑を科するということになっておりまして、われわれがアメリカの法律を認めた上でこの協定を結びました以上、この点については変えられないというのがアメリカ政府立場であったわけでございます。われわれとしてもこの点は非常に不満足でありまして、アメリカ側と交渉を重ねたわけでございます。その結果といたしまして、寺前委員からも御指摘のございましたように、合意議事録の第三項に書かれておりますように、合衆国の適当な代表者、これは具体的に言えば検察官でございますが、その訴訟の際に、裁判所に対して違反に対する刑に禁錮その他のいかなる形の体刑も含まれないように勧告するという約束は取りつけたわけでございます。残念ながらアメリカの法律のたてまえといたしまして、立法、司法、行政の三権はそれぞれに独立をいたしておりますので、最終的な決定権は裁判所にあるということがございまして、この点はわれわれとしても変えられなかったことは正直申しまして遺憾には思いますが、政府アメリカの行政府に関する限りは、体刑を科さないように最大限の努力をするということになったわけでございます。この点はわれわれの力が足りなかったと言われるかもしれませんが、これはどの国も、つまりアメリカ協定締結いたしました十カ国のどの国も同じような立場にあるわけでございます。ソ連も同じでございます。そういう意味において、残念ながら一つの画一的な制度としてわが方に提示されまして、この点については若干単一草案とは違う結果になったわけでございます。  しかしながらこの点に関しましては、海洋法会議の結果として単一草案の線に沿って規定ができ、アメリカもそれに加入することになれば、その暁には米国もその政策を変えることもあり得るかと思います。そういう場合には、われわれとしてもアメリカ側と改めて交渉することも考えたいと思っております。
  270. 寺前巖

    ○寺前委員 次の協定の質問に入りたいと思いますので——いま率直に不満だということを局長さんおっしゃいました。私は、これが国際的に与える本協定であるだけに影響が大きい。明らかに海洋法会議の進んでいる内容とは不満足な内容というのが私がいま指摘しただけでも幾つかある。こういう状況下で、今度は二百海里のこの問題が設定されて、漁業問題でその漁獲量が減ってきたときには大変だと大臣御心配になっていました。ところが結んだ協定が不満足な内容で、そして海洋法会議の水準とも違うということになったら、私はその心配はただごとではないと思うのです。ですから私は、大臣がきょうの趣旨説明を最初におやりになったときに率直にそのことを提起されない、何が一番心配でしたかということを聞いたときには、漁獲量の話はされました、だけれども、協定における国際水準からも後退しているという問題についての御指摘がなかった。私は、そのことを大臣がみんなの前に率直に提起して、海洋法会議と合わせて改善をさせるつもりだとおっしゃるならば、また期待できるところもあると思いますが、いまの姿勢では、まあ大臣、恐らく意識的にその点を御理解なさっていなかったのだろうから、もう時間がありませんので私は保留しておきます。大臣がその点を整理されてお答えを次回いただいたら私は理解をするかもしれません。保留にしたいと思います。このことをきょうは提起しておきます。次に行きます。  次は、エジプト・アラブ共和国との間の投資の問題です。これは投資についての許可から完全補償までずっと提起してある協定としては、日本では初めての協定だと思うのです。そういう意味では、この協定が今後の方向として位置づけられるものになるのかどうかということは世界的にも注目される内容だと思うのです。これをモデルとして、いわゆる開発途上国に対するところの協定をこの方向をモデルとして考えようとしておられるのかどうか、お聞きをしたいと思うのです。
  271. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 先生のまさに御指摘のとおりでございまして、投資について、包括的かつ詳細に規定いたしました投資保護協定としては最初のものでございまして、今後この種協定締結する場合のよい先例となると考えておるわけでございます。開発途上国が今後この分野におきまして国際法の考え方を遵守して投資を受け入れるという考え方に立ちます限りにおきましては、もちろん投資環境とかいろいろその時点における条件は考慮しなければならないと存じますけれども、今後の協定締結のよき先例となることは疑いのないところであると存じます。
  272. 寺前巖

    ○寺前委員 いま日本政府はどれらの国とこういう協定を進めようとしておられるのか、進んでいる話について御説明をいただきたいと思うのです。
  273. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 現在の段階ではブラジル等から若干非公式な打診があるようでございます。しかしながら現在の段階で、直ちに協定交渉に入るという段階に立ち至ったものはございません。
  274. 寺前巖

    ○寺前委員 日本エジプトの間に結ばれたこのような投資奨励相互保護に関する協定を世界のいわゆる先進国と言われる国でやっているところはどこでしょうか。
  275. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 エジプトと同種の協定締結いたしておりますという意味合いにおきましては、アメリカ、スイス、西ドイツ、フランス、ギリシャ、イタリア、イギリス、オランダという例が挙げられます。
  276. 寺前巖

    ○寺前委員 こういう協定に対して開発途上国の側ではどういう意見を持っているでしょうか。
  277. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 一九四九年の一二月にUNCTADで採択されました権利義務憲章がございますが、この中では、やはり端的に申しまして、国有化等の問題につきまして現在の国際法上認められた原則に対する協調が若干足りないということは否定すべくもない事実かと存じます。したがいまして、開発途上国のすべてがこの日本エジプト協定に盛られましたような原則に対して非常に賛同をしておるということはなかなか言えないかと思いますけれども、エジプトはよい例であるというふうに申さざるを得ないと思いますし、今後とも権利義務憲章の存在にもかかわりませずそういった開発途上国が出てくるということがわれわれの期待であると言えるかと思います。
  278. 寺前巖

    ○寺前委員 それではいまの話の引き続きはちょっと後にして、本文の第五条の第一項には「いずれの一方の締約国の国民及び会社の投資財産及び収益も、他方の締約国の領域内において、不断の保護及び保障を受ける。」という指摘をして、第二項には「収用、国有化若しくは制限又はこれらと同等の効果を有するその他の措置の対象としてはならない。」として(a)(b)(c)と指摘がしてあります。  そこでお伺いをいたします。まず、ここで言うところの「制限」というのはどういうことを指すのでしょうか。その次の「同等の効果を有するその他の措置」というのは何を指すのでしょうか。
  279. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 大変専門的な御指摘であるわけでございますけれども、私どもの理解いたしまする限りにおきましては、当事国が国有化率を高めるとか、いわゆる自由な投資活動原則というものに対して必ずしもそれと方向を同じゅうしないような行動、そういったものを「制限」というふうに私どもは解釈しておるわけでございます。
  280. 寺前巖

    ○寺前委員 もう一つよくわからないのですけれども、要するに「会社の投資財産及び収益も、他方の締約国の領域内において、次の条件が満たされない限り、収用、国有化若しくは制限又はこれらと同等の効果を有するその他の措置の対象としてはならない。」ということになってくると、「収用」は巻き上げる、「国有化」というのは全面的に国家的になる、「制限」ということになったら、企業活動の制限ということになると、これはもう多方面に広がってしまう。そういうものまでが保障の対象になるような性格になってくると、きわめて広範囲にこれはなってしまうのじゃないか。企業活動を全面的に保障せなならぬことになっていくのじゃないか。私はこれは大変なことを決めるなということで、斜め見した程度ですけれども、頭をひねるわけですが、いかがなものでしょうか。
  281. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 先生の御指摘は大変的を射ていると思うのでございますけれども、私どもの解釈は、「制限」とは、国、公共団体が一定の目的のために、利用者の所有する物資または権利を一時使用したりする、あるいはその権利の行使を一部制限したりすることにより、正常な事業活動を営むことを阻害せしめる行為ということでございますから、先生御指摘のような点はございますけれども、実際の運用におきましては、その点はかなり実際的に運用されるというふうに考えてよろしいかと思います。ただ、先生の御指摘のような点は確かにございますと思います。
  282. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、これは事業活動を広範にいろんな理屈をつけて保障せよという要求ができる項目だ、解釈によってはやり得ると思うのです。それだけにこれは私はもう一度よく研究してここで御説明をいただきたいと思うのです。後から質問しますが、先ほど御説明があった問題で開発途上国から批判があるだけではなくして、これだけ広範囲にわたるところの保障措置協定で結ぶということになったら、もっと大きな批判を受けるであろう。これが初めての協定だけに事は私は重大だろうと思うので、きょうのところはもう時間がありませんのでこれは保留しておきたいと思うのです。もう一度わかりやすく整理をして、事業活動を広範に保障することにならないのか、この問題については御説明をいただきたいと思うのです。  それからその次に、先ほど御提起なさった問題、第二十九回の国連総会で採択された諸国家の経済権利義務憲章というのがございます。これはどなたがお答えいただくのか知りませんけれども、この諸国家の経済権利義務憲章についてわが国はどういう態度をおとりになったのか。世界のこの協定に対して反対した国はどこで、棄権した国はどこで、賛成した国は何カ国あるのか、まずこれについて御説明をいただきたいと思うのです。
  283. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 ただいま御指摘のございました権利義務憲章の投票結果でございますが、これに反対いたしました国は、ベルギー、デンマーク、西ドイツ、ルクセンブルグ、イギリス、アメリカということでございます。棄権した国は、オーストリア、カナダ、フランス、アイルランド、イスラエル、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、日本、その十カ国でございます。わが国はこの決議案に対して棄権をしておりますが、投票態度につきましては、分割投票というのがございますので条項ごとに投票態度が異なっておりますが、全体として棄権をしておるわけでございます。
  284. 寺前巖

    ○寺前委員 圧倒的な世界の国々が賛成をする中で、先進的と言われた国々の若干部分が反対する。棄権も若干部分だ。日本もそこに入っている。そしてこれが投資に関するところの国連の採択された内容だ。  大臣、よく聞いておいてください。初めて日本が結んだこの協定には、先ほど言った第五条に基づくところの内容において疑問がある。しかも、国連総会で採択された中においても日本は棄権をしている。それはほんの少数の国だ。しかもその国連総会採択の第二条の第二項、ここに何が書いてあるかというと、こういうことが書いてあります。「自国の法例に基づき、また自国の国家目的と政策の優先順位に従い、自国の国家管轄権及び範囲内で、外国投資を規制し、それに対し権限を行使すること。いかなる国家外国投資に対し特権的待遇を与えることを強制されない。」ですから、もう一度大臣、これとの関連においてよく御研究をいただいて御答弁をいただきたい。すなわち、こういうふうにして投資の自由を、エジプトに関して言うならば、こういうような保障措置が伴わないときにはしませんよという、そういう強制をやるようなことをしてもよろしいのか。だめだというのが世界的な訴えである。この立場からするならば、今度の協定というのは国際的な孤立をする方向の内容になる。ですから私は、もうこれ以上時間をとりませんから、この件に関してはもう一度明快なる御答弁をいただきたいので、次回、はっきりしていただきたい。私は、特に大臣にこの点をよく研究して御出席されることを要望して、きょうの質問は終わっておきます。
  285. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘の点は早速研究いたしまして、お答えできるように準備いたします。
  286. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十三分散会