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1977-04-22 第80回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十二日(金曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 毛利 松平君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 中村 正雄君       石橋 一弥君    稲垣 実男君      小此木彦三郎君    大坪健一郎君       川崎 秀二君    川田 正則君       佐野 嘉吉君    島村 宜伸君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       中山 正暉君    葉梨 信行君       村上 茂利君    安宅 常彦君       岡田 春夫君    川本 敏美君       馬場  昇君    松本 七郎君       米田 東吾君    飯田 忠雄君       中川 嘉美君    渡辺  朗君       寺前  巖君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         外務政務次官  奥田 敬和君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省情報文化         局長      柳谷 謙介君         水産庁次長   佐々木輝夫君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君  委員外出席者         海上保安庁警備         救難部長    久世 勝巳君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     村上 茂利君   中村  直君     葉梨 信行君   中山 正暉君     島村 宜伸君   井上 一成君     川本 敏美君   高沢 寅男君     米田 東吾君   塚田 庄平君     馬場  昇君   正木 良明君     飯田 忠雄君   伊藤 公介君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   島村 宜伸君     中山 正暉君   葉梨 信行君     中村  直君   村上 茂利君     川崎 秀二君   川本 敏美君     安宅 常彦君   馬場  昇君     塚田 庄平君   米田 東吾君     高沢 寅男君   飯田 忠雄君     正木 良明君   菊池福治郎君     伊藤 公介君 同日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     井上 一成君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部共同開発に関する協定の締  結について承認を求めるの件(条約第一号)      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米田東吾君。
  3. 米田東吾

    米田委員 外務省情報文化局長、来ていますか、私は要求してあるのですけれども
  4. 竹内黎一

    竹内委員長 速記をとめて。     〔速記中止
  5. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こして。  米田君。
  6. 米田東吾

    米田委員 それでは情文局長が来るまで大臣にお聞きをいたします。  ここに「日韓大陸棚協定」という外務省情報文化局発行パンフがございますが、これは「早期締結の必要な理由」についてのPR文書だと思うのです。これは大臣、お読みになりましたか。
  7. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 読んでおります。
  8. 米田東吾

    米田委員 私はこれを外務省からいただきまして読みましたが、日本外交を預かる外務省PR文書といたしましてはまことに不穏当な文書だ、別な言葉で言いますならば、まことに独善的な、独断的な文書である、韓国外交部宣伝をやっているようなPR文書ではないか、こういうふうに私は読んだわけでありますけれども大臣はどのような感想をお持ちでございますか。
  9. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この文書外務省考え方を述べたものでございます。韓国との関係は当然出てまいりますけれども、これはわが外務省としての見解を述べたものでございます。
  10. 米田東吾

    米田委員 だから重要なんです。私もそう受け取っております。ですから、きょう責任者である情報文化局長から篤とそのことをお聞きしたいと思って要求したわけであります。大臣、これは一体だれを相手にして外務省見解を出された文書なんですか。だれに読ませようというねらいで出された文書でありますか。
  11. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 特定のどういう方というわけではございませんが、やはりこのような問題につきまして御関心のある方に読んでいただきたいと思っておるわけでございます。
  12. 米田東吾

    米田委員 情報文化局長の序文のところにこういうふうに書いてあります。「この協定は四十九年一月三十日に日韓両国間で署名され、韓国ではすでに国会承認手続きも終えました。他方、我が国では国会承認は未だ行われないままになっており、承認手続き早期完了が望まれているところです。そこで、この協定が果たして、我が国国益を考えた場合、どんな意味があるものなのか、いろいろな視点から考えるうえでの判断資料を提供する意味でこの冊子をまとめてみました。」こうなっています。早期完了が望まれるということを前提にして、わが国国益を考えて判断資料を提供する、こういうふうになっております。  だとするならば、国民の各層に読んでもらうということはたてまえでありまして、この協定批准役割りを果たす、まああなたの方から言えば、承認がおくれておる日本国国会議員、これに読ませようということで、そして承認を促進しようということで出したんじゃないですか。これは僣越じゃないですか。
  13. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この大陸棚協定内容につきまして御理解がいただけてない部面が非常にあることを痛感いたしましたので、私どもとしては少しでも御理解を賜りたいと思いましてこのような文書を作成いたしました。この国会の御審議をいただくわけでございますから、特に国会先生方にはよく読んでいただければ大変幸せである、このように考えております。
  14. 米田東吾

    米田委員 あなたの本音が出ましたけれども、だから重要なんです。御理解をいただいておらないようであるというのは、あなたの判断である。これはもう一貫してこの文書の中に流れておる。私どもからすれば、あなたの方の見当違い、よけいなお世話だと思う。むしろ理解しておればこそ、この協定というものは慎重に検討しなければならぬ、時間をかけなければならぬ、こういうことで四年間、何回か国会に出されましたけれども継続審議もあるいは審議未了も、これは一つ国会意思です。議了するだけが国会意思じゃないのです。継続審議という扱い意思であり、審議未了という扱い意思であり、中身にはそれぞれ国会意思が入っておるのであります。そういうふうにして扱ってきたのであります。理解しておらないようであるというのは何でありますか。大臣、そんなことは取り消しなさい。
  15. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 米田先生のようにうんちくのある先生方は大変御研究をいただいているわけでございますけれども、私ども現に自民党で参議院におりましたときにおきましても、この実態の理解というものは、私ども自体は余り十分だったとは申せないわけでございまして、外交関係に携わっておられない一般方々にも読んでいただきたい、こういう意味で作成したものでございまして、本件につきまして大変お詳しい先生方には本当に無用の印刷物である、こう思っております。
  16. 米田東吾

    米田委員 私はまじめに国会権威にかけて——しかもこの中身については、見方によってはあなたの方の行政府の思い上がり、立法府への侮辱にかかわるような内容がずいぶんあるのです。ですから、私はまじめに質問をしているのです。いまあなたの御答弁のようなことで与党自由民主党の方にまだ理解が足りないというものがあるならば、自由新報という新聞があるのでありますから、しかもいままで数回大陸だなについては自由新報が取り上げておるじゃありませんか。そこへ向けて出されたらどうでありますか。少なくとも不特定多数という、しかも外務省の公費でもってこのようなPR文書を出して、税金を使って、そして国民に向けたようなこういう宣伝をされるということは、私はこれは間違いだと思う。大臣、この「早期締結の必要な理由」というこのパンフ、直ちに回収してください。回収すべきであります。
  17. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 外務省といたしまして、あるいはまた政府といたしましてもそうでありますが、この大陸棚協定は、すでに協定をいたしまして国会の御承認をいただくべく努力をいたしておるところでございます。そういう私ども立場から、私ども考え方を多くの方々に御理解を賜るということは、私どもの重要なる仕事であるというふうに考えておるところでございます。
  18. 米田東吾

    米田委員 重要な仕事はわかりますけれども、あなたの方の一方的判断あるいは恣意的なあなたの方の独断によって宣伝されてはたまらぬということであります。しかもここで書いておるこのこと自体が、実は大陸だなの最も検討を要する、この協定内容にかかわっている部分でありますから、これから国会で十分な審議を尽くそうということなんであります。そういう段階で一方的にあなたの方が、まあ外務省が持っている資料に基づいたのでありましょうけれども、独善的、独断的に、実にこの文章は明快であります、そういうふうに割り切った論陣を張って国民を惑わす、しかも日本国会議員は無能であるかのような論陣を張って国民を惑わす、これは大変なことだと私は思う。ですから、私はこの内容というものはどうしても許せない。したがって、これは撤回してはどうですか、回収したらどうですか。
  19. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この大陸棚協定につきましていろいろな御議論があることは当然でございますし、特に賛成論反対論があるわけでございますが、私どもはこの大陸棚協定国益に沿うものであるという判断をいたしておりますので、その私ども考え方をわかっていただきたいというだけの趣旨でございます。また、本件につきましていろんな反対文書もずいぶん出ておるわけでございます。そういう意味で、賛成論立場からこの文書をつくったわけでございますから、いまここで私どもはなるべく多くの方にやはり読んでいただきたい、こういう気持ちに変わりないわけでございます。どうかそういうふうに御理解を賜りたいのでございます。
  20. 米田東吾

    米田委員 あなたの方は回収、撤回はされませんか。それなら、私はきょうはこの内容について全部あなたの方から答弁を求めます。あなたは責任を持ってこれに対して答えられますか、大臣でありますからもちろんだろうけれども。答えられますか、どうですか。
  21. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私の及ぶ限り御答弁申し上げます。
  22. 米田東吾

    米田委員 これはあなたの方の情報文化局の公式なパンフですからね、ここに書かれているものについてはあなたは責任を持ってもらわなければならぬと思うのです。しかも、私がこれは越権であるし、独断じゃないかと申し上げても、私の方の見解だとあなたはおっしゃる。それならば内容について私はただす。あなたは当然答えてもらわなければならぬ、できる限りということではごまかせないと私は思うのです。そんなあいまいなものなら、これは直ちに回収、撤回してもらわなければならぬと私は思うのです。  たとえば五ページに「国際信義遵守重要性」というようなことがあります。私はざっと読んでこの中で約六十カ所くらいの問題点があります。だけれども、まずこの「国際信義遵守重要性」、ここに韓国との関係が書かれております。私はこれは韓国外交部スポークスマンが言っていることじゃないかと思ったくらいであります。「我が国が二国間で既に署名を終えた協定を、いつまでも放置しておくことは国際信義上大きな問題であるといわなければなりません。」一般論としてはわかりますよ、一般論としては。しかし、この大陸棚協定に関する限り、このあなたの言い分は私は聞くことができない。韓国外交部はこういうことを言うでありましょう。日本外務省は、四十九年国会に出されて以来の国会の経過があるんでありますから、ただ一般論として国際信義遵守という立場から、今日まで放置しておったという国会の状況を、あなたの方がこのように一般論として非難することは当たらないと私は思うのです。  次にこういうことがある。「我が国としても、これまて署名した二国間条約を、我が国の事情によって数年間も放置してきた例は全くありません」、そうでしょう。大体こんな大陸棚協定というようなものはいままでなかったことであります。後で私は具体的に問題提起をいたしますけれども、これほど私ども国会で十分たださなければならない問題の多い大陸棚協定、四年間もわれわれが審議を尽くさなければならないといって十分勉強しなければならないような問題の多い協定はいままでなかったのです。これは当然であります。私をして言わしめれば、そういう大陸棚協定だから、われわれとしてはなおさらこの協定について警戒をしなければならない。逆の立場ではそういう主張が成り立つのであります。  次に読みます。「また、世界でもこのような例は稀です。したがって、我が国がこれ以上、日韓大陸棚協定を放置することは、ひとり韓国との関係にとどまらず、国際的にも我が国国際信義を守る基本姿勢自体に大きな疑問符がつけられることになりかねないというべきでしょう。」こういうことも言っておるわけであります。  大陸棚協定の問題に関する限り、たとえば韓国で行われましたように、韓国はすでに四十九年十二月、国会批准しておる。しかも、この国会勢力というものは、あのような与党の一方的な多数の勢力を持った朴政権独裁状態にある韓国国会であります。国会の末期に突如としてこの提案理由の説明が強行されて、そして多数で押し切って、まるで乱闘また乱闘日本のかつての国会を思わせるようなああいうまことに乱闘状態韓国国会というものは強引に朴政権が押し切った。韓国はある意味ではファシズムの国家でありますからそれができるかもしらぬ。それと同じように日本を同列に並べて、そうして今日までこの協定審議をおくらせておることについては、国際的にもわが国信義を守る基本姿勢に欠けることになる、疑問符がつけられることになる、このような外務省認識は私には全くわからないのです。日本国会の良識、権威、これをあなた方はどう見ていらっしゃるのか。木を見て森を見ざるがごとくといいますか、そういうような外務省見方じゃないかと私は思うのでありまして、韓国外交部がこのような文書を出すというならまだまだ私は黙認します。日本外務省が公式のPR文書にこういうようなことを書かれる。しかも、後のページに行きますと韓国をそそのかしているような、したがってこれ以上おくれれば、韓国単独ででも共同開発地域開発しても日本は手も足も出ないというようなことまでつけ加えられておる、もう言語道断だと私は思うのであります。  こういうようなことを一体外務省公式文書としてなぜ——いま私ども大陸だなの問題について国民の期待にこたえようとして十分な国会審議にかかろうとするときに、御丁寧にわれわれ国会議員みんなにこれを配らなければならぬのでありますか。大臣答弁してください。
  23. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘になりました国際信義の問題あるいはまた韓国単独開発を回避したい、この点は私ども全くそのように考えているもので、率直に書いた次第でございます。  先ほど御指摘がありましたように、やはり国の権限の問題になりますと、これはそれぞれの国におきまして自己の権益を主張したい、これは国民的なバックがあるわけでございます。韓国で問題になりましたのも、韓国日本に譲り過ぎたのではないかということで大変問題になったわけでございます。当委員会におきましては、逆に日本が譲り過ぎたのではないかという御指摘をいただいておるわけでございますけれども、そのようなやはり国の権限の問題は国民的な関心を持つわけでございますから、したがいまして、本当にこのエネルギーがこれだけ問題になっております昨今におきまして、これを開発をしたい、そのためにやはり両国が協力をして開発をする、こういったことに両国間で決めたわけでございますので、ここに述べておりますこと、これは私どもといたしまして本当に率直に考えておるところを書いた次第でございます。  この点につきまして御批判は、それはいただくことは当然でございますし、大いに御議論はいただきたいと思いますが、ただ私どもは何も韓国政府立場に立って言っておるわけではございません。日本国政府といたしまして、外務省といたしましては率直にこのように考えておるということを、ここに文字どおり御理解いただければありがたいと思います。
  24. 米田東吾

    米田委員 とてもじゃないがそんな理解はできません。これは国会権威もあります。私はむしろ外務省はなぜこの大陸棚協定批准日本においておくれておるのか、そのことをもっと謙虚にお考えにならないのですか。異常な状態でしょう、確かにこれは。そんなことは私どもだってわかりますよ。それは十分わかりますよ。たとえば、国益に沿うというものであるならば、今度の領海法にいたしましてもあるいは二百海里法の暫定措置法にいたしましても、国会はわずか一週間か十日で上がるじゃないですか。何でこの大陸棚協定は……(「相手の出方かわかったから、初めてその問題が前に進むのだよ」と呼ぶ者あり)なに、ふざけるな。
  25. 竹内黎一

    竹内委員長 静粛に願います。
  26. 米田東吾

    米田委員 大陸棚協定については問題があるのですよ、大臣。問題があるからなんです。  しかも、私が指摘するまでもないことでございますが、大臣外務大臣ですから、この問題は主として韓国側に問題があると私は言いたいのです。もっとはっきり言えば、一つは、相手当事国である韓国は、何といいましても朝鮮半島分裂国家の一方であります。厳然と二つの国家が存在しているのです。外務大臣だって総理大臣だって、そのことは認めていらっしゃるのだ。そういう一方の当事国相手にして、今後五十年あるいは永久に及ぶところの国の権益についての協定をしようというわけなんだ。当然これは慎重に対処しなければならぬでありましょう。朝鮮半島の動向がどうなっていくのか。民族は統一を願っておる。思想や信条を超えて、民族はその点では共通であります。しかも、朝鮮半島はいま激動しているじゃありませんか。そういう情勢を私ども政治家として見逃がすことはできないじゃありませんか。これは政党の次元の問題じゃないと思うのです。隣の国の日本政治家として、私は最低の問題だと思う。そしてその中における韓国政治情勢朴政権基盤指導性財政力、この開発については一体どれだけの金がかかると思っていらっしゃるのだ。朴政権は何か使用料を取って賄うような構想があるようでありますけれども、最終的にはこの協定でいきますれば、日本がかぶるようなことにもなりかねない情勢がある、これはいずれ国内法審議段階議論が尽くされるでありましょうけれどもノーズロースでは、この問題の共同開発にかかわる部分については乗れないという条件があるじゃありませんか。韓国政治情勢朴政権基盤をわれわれが見逃がしたり、あるいは安易に考えてこの相手国韓国についての認識を誤るようなことがあったら、われわれの子孫に対してわれわれは責任を一体どうして負うのですか、これが第二の問題です。  第三の問題は、この協定はどうしても出発において臭いにおいがするんです、臭いにおいが。政・財・官一体的な汚職のにおいがするんです。この大陸棚協定ソウルにおいて調印された四十九年当時、すでに日韓癒着のの関係というものは世間に明らかにされておった。以来今日まで、この問題の解明についてわれわれは努力してまいりましたけれども、あなた方の政府自由民主党の諸君の抵抗によって一向にこの癒着状態が解明されておらぬじゃありませんか。しかし逆に国民の疑惑は一層深まるばかりなんです。こういう状態で、さらにこの癒着においのする新しい大陸棚協定という温床をまたつくり出すようなこういう協定にそう簡単に、私は断定しておりませんけれども、そういうものに、国民を代表するわれわれ責任ある政治家として一体くみすることができますか。慎重に考えるのが当然じゃありませんか。慎重審議を尽くすのが当然じゃありませんか。単なる国際的な信義がどうだとか韓国に対してどうだとかいうような次元の問題じゃないですよ、これは。日本国益日本民族に対して、われわれは責任を負ってこの協定の問題について実は検討しているわけなんです。日本外務省はそれがわからぬのでありますか。国会議員軽視国会軽視もはなはだしいと私は言わざるを得ないと思う。大臣どうでありますか。
  27. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま御指摘の問題につきまして、御議論はずいぶんいただいておるわけでございますけれども朝鮮半島の将来がどうなるか、これは五十年間の有効でございますから、その間にはいろいろな推移はあろうかと思うわけでございますけれども経済関係開発というものは、これは経済的な効果ということをお考えいただいて、政治の問題はいかになりましょうとも、それはやはりいろいろ承継という原則があるわけでございますから、そういう政治的ないろいろな問題があるから経済面開発は一切ストップと、こういうことは私どもとしては承服できないのでございまして、両国共同開発をすることによりまして、日本といたしましてもここに有力なるエネルギー資源が確保できれば、これは国民生活上も大変な有利な問題であり、また今日叫ばれております石油の備蓄というような問題、これも緊急な問題でございます。こういった観点からも経済問題は経済問題として御判断をいただいて、政治的ないろいろな問題は、政治姿勢の問題、いろいろ御指摘の問題は私は事実がどうであるか存じておるわけでありませんけれども、それらの問題はそれらの問題として改善を図るということでいくべきではあるまいか。このように考えておるところでございます。
  28. 米田東吾

    米田委員 私の申し上げている言葉意味は、もっと日本外務省は対韓国との関係については毅然たる外交を展開すべきだ、それが前提だということを言外に申し上げているつもりなんです。あなた方が大陸棚協定について韓国との義理、国際信義というものを言うならば、もっと外務省は積極的に国民が納得するように韓国との外交関係において毅然たる外交を展開すべきだと思う。  金大中事件のようなああいうぶざま外交処理、あるいは国会で、この国会でも非常に集中審議をされましたけれどもソウルにおける地下鉄のあの汚職問題、新韓碍子処理浦項製鉄所疑獄、枚挙にいとまがないところの疑獄事件が存在する。そしていま韓国には日本の国籍を持った学生とかあるいは文化人朴政権によって監獄にぶち込まれておる。外務省は一言もこれに対して抗議もできなければ、手を尽くすことができないじゃないですか。やってないじゃないですか。  私に言わしめれば、韓国に対しては追従外交、独立国家としての日本の毅然たる外交は何一つ存在しないと私は言いたいのであります。大体日韓大陸棚協定それ自体も、もともとそういう日本の追従外交の産物じゃないですか。私はそう言いたいのです。そういう姿勢を直し、そういう外交の転換がない限り、大陸棚協定について少なくとも日本社会党は前向きに検討することはできない。私は、実はそういうことを大臣に言っているわけなんです。  たとえば、金大中事件なんかについて、あなたはこの問題の解決について熱意を持っていらっしゃいますか。もうそれは政治的には処理済みだ、刑事事件としては捜査当局はいま、さらに捜査を進めていますという程度の繰り返しじゃないですか。  いまここで大陸棚協定批准すれば、膨大な国民の税金がこの開発に投入され、新しい日韓関係ができてくる。外交的にも韓国に対しては外務大臣責任は当然加重されると私は思うのです。それに対応するような毅然たる外交の展開をあなたは約束されますか。社会党は反対ばかりしているのじゃないのですよ。そのことをひとつ十分承知をして、あなたの決意を聞かせてください。
  29. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 韓国との外交わが国にとりまして大変大事な問題でございます。わが国といたしまして、わが国国益を守るために、また、アジア全体の平和という観点からも大変大事な問題でございますから、この日韓関係外交というものには大変な責任を私どもも感じておる次第でございます。  その上から申しましても、この大陸棚協定というものが決してマイナスになるべきものではなくて、この大陸棚協定を本当にここで解決していただくことによりまして、これからの日本韓国に対します外交姿勢の点につきましても、私どもは正々堂々たる外交を展開できる、このように私は思っておるところでございます。  いま、いろいろな事件にお触れになりましたけれども、私どもはその事件の実態について認識を持っておらないものでございますから、いまここで御答弁できないわけでございますけれども、これからの日韓関係というものを、そのようないわば疑いの目で見られないような日韓関係にぜひともしなければならない。そのために私、微力でございますが、最善の努力をいたしたい、こう思うところでございます。
  30. 米田東吾

    米田委員 あなたとまともに議論もできないように私は思うのです。一言で言ってまことに頼りない。しかし、大陸棚協定批准促進については、このパンフにありますように、猛烈に取り組んでいらっしゃる。国会何物ぞ、おまえら四年間も何をやってきた。しかも、中国の声明、朝鮮民主主義人民共和国の声明、何ら問題にすることはない。  いま備蓄の話をおっしゃいましたけれども、あなた方の文書によれば、約七億キロリットルの石油がとれそうだ、こんないいことないじゃないか。この面については非常に大胆な姿勢を持っていらっしゃいますけれども外交を通して日韓関係をどうしてよくしていくかということになりますと頼りないと私は思うのです。まことに不満ですよ。そういう状態であればあるほど私どもは警戒をせざるを得ないという気分に実はならざるを得ないのであります。  もう一つ聞いておきますが、いまあなたは備蓄の話をされましたから、そこからひとつ聞いていきますけれども、あなた方のこの文書によりますと、二ページにこういうふうに書いてあります。「極めて有望な海底油田開発」エカフェが調査をして、ここには「背斜構造の発達した極めて有望な地域」がある、「石油埋蔵量は七億キロリットルを超えるとも推定されています。」こういうふうにおっしゃっておられます。一体この七億キロリットル、この協定の中に含まれております共同開発区域、仮にこの協定承認されたといたしますれば、七億キロリットルは出るのですか。これは外務省自信があるのですか。備蓄できるのですか。——外務省文書だから聞いているのだ。
  31. 古田徳昌

    ○古田政府委員 外務省文書でございますけれども、私ども考え方と申しますか、説明に基づきまして作成したものでございますので、お答えさしていただきます。  この共同開発区域につきましては、エカフェの調査によりまして、石油の賦存が非常に有望であるというふうな見方が出されているわけでございます。石油の賦存の最も可能性の高い地層としまして、新第三紀層が言われているわけでございますけれども、この東シナ海大陸だな区域の堆積物は、この地層に属しておりまして、しかもその厚さも非常に厚いというふうなことがこのエカフェの調査で明らかになっておるわけでございます。それで、こういうふうな調査をもとにしまして技術研究機関等で一つの試算を行いますと、先ほど先生御指摘の七億キロリットル程度の埋蔵量の可能性もあるというふうな試算があるわけでございます。
  32. 米田東吾

    米田委員 通産省は技術屋ですからきわめて発言も正確だと思う。可能性がある。この文書では「超えるとも推定されています。」「推定」という言葉ですから推定でしょうけれども、読めばもう国民は、われわれ国会議員だって七億キロリットル大体あるんだなあ、そうして後の方に備蓄の問題が出ているわけです。国際的な石油不足、どんどん税金を使ってどっかに備蓄をしなければならないというのに、あの東シナ海の開発区域でこれだけの備蓄ができるじゃないか、こういう論理であります。こういうすりかえの、あいまいなPR文書が一体あるかと私は言いたいのですよ。商社じゃないんですよ。外務省なんですよ。これはどうですか。  通産省の方にお聞きしますけれども、要するに、これはエカフェの調査の結果に基づくところの一つの想定ですね。ある意味ではそれは科学的には確度があるかもしれませんけれども、今度の協定に出されておりますところの共同開発区域の中で七億キロリットルなんですか。そうじゃないでしょう。どうですか。それだったら大したものですよ。
  33. 古田徳昌

    ○古田政府委員 石油の埋蔵量につきましては、最終的には井戸を掘りまして、油田を発見してでないと正確な計算はできないわけでございますから、あくまで事前に考えますと、一つの推計ということになるかと思います。ここに説明しております推計につきましては、あの一帯の地域についてその可能性があるということでございますから、うまくいけばその全量が共同開発区域の中にあるという可能性もありますし、あるいはその周辺部分を含めた上での数字というふうなことになるかとも思います。
  34. 米田東吾

    米田委員 私もエカフェの報告書を見ましたけれども、大体日本のいまの協定の対象になっている共同開発区域から外れています、もっと南、そちらの方が有望だと言われております。しかし、その共同開発区域の中に全然ないかと言えば、それはやはり、一つのつながった層があるわけでありますから、取れるものはあるだろう、こういうことなんであります。これも非常に国民に対して期待感を持たせる悪質な宣伝じゃないかと私は思います。  それからもう一つ、七億キロリットル、これは今日の日本石油の消費量、何年分に当たりますか。これは通産省どうですか。
  35. 古田徳昌

    ○古田政府委員 現在の消費水準で考えますと、その全量を計算しますと、二年半程度の量に相当するかと思います。
  36. 米田東吾

    米田委員 いまの日本の消費総量の大体二年ちょっとの分ですね。仮に七億キロリットル出たとして、二年ちょっとですね。これは後で十分委員会等で審議が尽くされると思いますけれども、誇大に宣伝する価値のないような埋蔵量ですよ。二年分、しかもこれはまるまる日本に入ってくるんじゃないんです。協定とあの取り交わした文書によりますれば、韓国との折半、しかもそのまたメジャーとの半分半分の折半もある。大体推定しますと、日本に入ってくるのは、七億キロリットルの四分の一じゃないですか。そういうことになりませんか。だから、この七億キロリットルというのは、これはうその宣伝ですよ。「七億キロリットルを超えるとも推定されています。」と言いますけれども、正確に宣伝するならば、そのうちの四分の一が日本の備蓄量の増大のために役立つだろうということに書きかえるべきだと私は思う。そういうことはないですか。これは外務省責任があると思うんです、この文書を出しているんですから。両方から答えてください。
  37. 中江要介

    ○中江政府委員 御指摘のように、この共同開発区域から出てまいります石油日韓で折半する、これが共同開発の構想でございますので、その部分は先生のおっしゃるとおりだと私ども認識しております。そこから先、日本側で掘り出した石油が、日本の国内消費にどの程度有効に利用できるかという点は、これから開発に当たります会社その他との契約の中でどういうふうにあんばいされるか、これはちょっと私ども立場では予見ができない、こういうふうに考えております。
  38. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先生御指摘の点は、一部企業が行っております外国会社との共同事業契約のことではないかと思いますが、この共同事業契約につきましては、会社同士の事業を遂行する上での共同事業に関する契約でございまして、日本側の取り分の問題ではございません。  それから私どもとしましては、日本周辺大陸だなでの共同事業の場合、共同事業の相手側がたとえば外国企業の場合というふうなときでも、そのシェア分につきましても対日供給させるということで、その旨は厳重に行政指導もしておりますし、かつその共同事業契約の中でも通常明示されているわけでございます。
  39. 米田東吾

    米田委員 私の言いたいのは、ここでは外務省のこの文書はでたらめだということを言いたかったんですよ。どうせこれは、これから審議が尽くされますれば、国内法の商工委員会とかいろいろな委員会のところでこれは当然審議されるでありましょうから、明らかになってくると思うんです。そこまでは私はきょうは触れませんけれども、総体的に外務省のこの文書というのは、私をして言わしめればでたらめだ、こういうことを申し上げたかったんです。  まだ納得できなければ、たとえばこの後に「日中関係に障害はないか」という設問がありまして、外務省は障害がないと言っている。これだって問題。それから、しかもこの七ページには「日韓大陸棚協定に対する批判は根拠がない」と言い切っていますね。「日韓大陸棚協定に対する批判は根拠がない」、これは実に堂々たる断定ですよ。もうこれほど官僚の独善といいますか、こういうものはないと私は思う。これくらい、日韓大陸棚協定について、国論も統一されておりません。むしろ批判は広範にあるのであります。それが根拠がないと一体言い切れますか。  それから日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係、これももう簡単に、韓国とは当事国間の関係があるけれども、朝鮮民主主義人民共和国とは全く関係がない、もう一刀両断に切り拾てていらっしゃる。私はさっき申し上げましたけれども朝鮮半島の地理的、歴史的条件を考えれば、朝鮮民主主義人民共和国との関係について、このように断定的に一刀両断に関係がないとは言い切れないはずだ。少なくとも国益をかけた五十年、しかも永久にわたる協定を結ぼうという問題でありますから、一借款の取引の問題じゃないのであります。実にそういう意味で、この協定に関する冊子は非常に独善的な外務省文書だ。  情文局長おいでになりましたか。——情文局長、きょう私、あなたを出席要求しておったんですけれども、手違いであなたのところに届いておらなかったようでありますが、あなたが出されました日韓大陸棚協定のこの小冊子、これについていま大臣と若干の内容について質疑をやりましたけれども、これを繰り返しませんが、これはあなたが局長ですから直接の責任があると私は思う。もう一遍ひとつ局長にお聞きいたしますけれども、この内容についてあなたは責任を負いますか。私は内容の疑問点を指摘をいたしました。責任を負いますか。私はこの協定審議に当たって、少なくともあなたの方のこの内容を取り消しまたは修正しなければならないという部分が出てくるだろうと思う。そのときにあなたが責任を負うなら、私はあなたの責任を追及いたします。どうですか。
  40. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 何かの手違いで先ほど御質問の席に参れませんでしたことをおわび申し上げます。  先ほどの大臣との議論内容は、いま参りまして大体伺ったつもりでございます。早速いま御質問の点についてでございますけれども、これは日韓大陸棚協定承認批准が望まれるということを総理以下政府の首脳がいろいろな機会に過去において発言されまして、これについて各方面から、政府考え方はどうなんであるか、いろいろ議論があるようだが、政府がこの早期批准が望ましいということを述べている内容が必ずしもよく理解できないから、これを資料としていろいろ説明してほしいという要望が非常に多量に寄せられましたので、従来も講演会その他の席ではその都度説明してまいりましたけれども、最近特にその需要が強いことにかんがみまして、アジア局と相談いたしまして内容をつくって配付した次第でございます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  責任を負うかという点でございますけれども、先ほど大臣も御答弁あったかと思いますけれども、これは外務省として内容については責任を負う次第でございます。
  41. 米田東吾

    米田委員 いずれまた、それじゃ審議の進展に合わせまして、必ずあなたにもう一回私はお聞きをしなければならぬことがあると思いますから、議論だけ繰り返してもだめでありますから、いまの御答弁を聞いて、この問題については終わっておきたいと思います。  なお、大臣の先ほどの答弁に関連いたしまして、私の本論に入る前に、もう一回一つだけお聞きをしておきたいのでありますが、朝鮮半島の問題であります。  私、けさ出るときに新聞をちょっと見てきたのでありますけれども、きのう大臣は、参議院の外務委員会でありますか、朝鮮半島の問題に触れられまして、南北の要するに対話といいますか、話し合いについて、日本政府としても何らかの役割りを果たしてもいい、大分積極的な姿勢を示されたように新聞は報道しております。福田総理がカーター大統領に会われましてからの日本外務省の姿勢は、事朝鮮問題について変わったのかどうか、私もできるだけ関心を持って見ておるつもりでございますけれども、この点きわめて重要だと思いますし、大臣の真意を、これはこの協定とやはり関係がありますので、私はこの際朝鮮半島の問題についてお聞きをいたしておきたいと思うのです。わかりますか、私の質問。
  42. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昨日、参議院の外務委員会におきまして、日本朝鮮半島に対します姿勢について御質問があったわけでございます。率直にどのように考えているか、こういうことでございますので、私の考えを申し述べさせていただいたわけでございます。  現実の情勢認識につきましていろいろ質問があったわけでありますが、福田総理の発言等の御質問があったわけであります。それに対しまして、私といたしまして、福田総理の発言は、これはアメリカの新政権、カーター政権がどのような方向に出るであろうかというようなことに関したわけでございますが、日本は現実におきまして北鮮との間に交流が民間のベースにおいてある、それから貿易等も行われている。それに対しまして、アメリカとしては現在までほとんど交流がない、貿易も行われておらない。こういうような情勢にありますから、日本の方がやはり進んでおるということを総理は申し述べられたと私は理解をしておるということを申し述べたわけであります。  さらに、将来日本はどのような考え方で臨むかということでありましたので、現状におきまして朝鮮半島の平和的な統一ということが望ましい、しかし、この平和的な統一というものはなかなか早急に実現する情勢にはいまあるとは考えておらないということ、そしてこの実現のためには相当な年月がかかるのではないかというふうに認識をしておるということでありまして、わが国といたしましては朝鮮半島の平和的な統一というものは心から望むわけでありますが、そこに立ち至る道程の問題といたしましては、やはり南北間の対話の再開ということがまず望まれるところである。  さらに突っ込んだ質問がございまして、宮澤大臣でしたか、クロス承認というような問題はどうかということに対して、そういうことも一つの手段として望ましいという答弁があったが、外務大臣はどう考えるかということでございますので、対話の促進ということから考えますと、そのようなクロス承認というようなことも現状よりは一つの進歩ではなかろうか、また、あるいは国連に対しまして南北が同時に加盟をするというようなことも、対話の再開、南北間の交流の増大という面から言えば現状よりは好ましいことではないかということを申し述べた次第でございます。  以上が、昨日私が申し述べた大意でございます。
  43. 米田東吾

    米田委員 そうしますと、あなたのお考えを示されただけで、日本外務省として、あるいは外務大臣として何らかのアクションを起こそうかということで見解を表明されたものではない、こういうことですか。
  44. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私の考え方を申し述べただけでございます。
  45. 米田東吾

    米田委員 そうですか。わかりましたが、先ほどの私の大陸棚協定に関する質問の中でも、大臣は南北の対話の問題について触れられましたが、私は、これは後の質問にも申し上げたいと思っておりますけれども、これから、情勢としては、二百海里問題がとにかく日本外交におきましてももう現実の問題になって一つ外交上の大きな課題になってくる。きのう私は農林水産委員会で、日本海のこの二百海里時代に対して、外務省は朝鮮やあるいはソ連や韓国や中国に対してどのような対処をされるのかということを質問いたしました。そこにおいでのアジア局長からも御答弁いただきましたけれども、とにかく二百海里時代を迎えまして日本外交というものは新しい展開をしなければならぬだろう、そういうことを私も申し上げたわけであります。  そういうことも含めまして大陸だな問題を考えますときに、私はやはり日本政府も、そして外務大臣も、朝鮮半島における、持に朝鮮民主主義人民共和国との関係の好転といいますか、この関係というものを重視されなければならない時代に入ってきているのではないか、単に南北対話という、カーター大統領が言っているようなことの、どちらにも通用するような、どちらにもとれるような対話の助長とか対話の促進とかということだけではなしに、日本外交上からいって、韓国には国交がある、朝鮮民主主義人民共和国には国交がないというハンディがあるわけであります。そのハンディキャップを埋めるという方向で、日本外務省はやはりこの際、姿勢というものをもっと前向きに展開していかなければならぬのではないか、こういうことを私は感ずるわけでありますし、そういう姿勢を持たないと、大陸棚協定についても、外務省はこの協定の実施あるいは開発について新たな国際紛争を起こすことになるだろう、私はそのように思うのでありますけれども、この点もう一回大臣見解をお聞きしておきたい。
  46. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本と北朝鮮、人民共和国との関係につきまして、現状におきましては国交がないということでありますが、これはこれからの世界情勢あるいはアジア情勢全般の推移とともに逐次好転をしていくことが望ましいことは申すまでもないところでございます。現在のところまだ情勢が南北間の対話が進まないという点にやはり最大の問題があるものですから、私どもとしては南北間の対話がまず何より先に実現してほしいという期待を持っているわけでございます。そういうことができますと逐次情勢も進展を見るのではないか、そのように認識をいたしておるのでございます。  いずれにいたしましても、わが国といたしまして必ずしもこの現状が一番いいと思っているわけでは決してないのでございまして、先々朝鮮半島におきます平和的な統一というものが望ましい、これはもう恐らく皆様方も異存のないところであろう、政府としてもそのように考えておるわけでございます。現状からいきなりそこまでいくということはなかなかむずかしいという認識を持っているということを先ほど来申し上げているわけでございます。
  47. 米田東吾

    米田委員 大臣、あなたは外務大臣でいらっしゃるので、大変失礼ですけれども、あなたの答弁は議事録に残りますのでちょっと申し上げておきますが、北朝鮮民主主義人民共和国と御答弁されましたけれども、正式な国名は、きのう鈴木農林大臣もやはりそうなんですよ、朝鮮民主主義人民共和国という厳然たる独立国家としての国名がありますので、議事録に残る以上はひとつはっきり……。
  48. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 北朝鮮と申し上げて、それにまた追加して申しましたので……。失礼いたしました。(発言する者あり)
  49. 米田東吾

    米田委員 それで、これは幾ら大臣議論をやっても時間があれですが、大臣答弁を要約しますと、とにかく対話からだ、日本外交としての展開は南北の対話からだ、こういうことになるようであります。  私の質問の趣旨は、対話の前に、日本としては韓国とは外交関係がある、共和国とは、これは非承認国で、言うなれば戦後処理かできておらない、そういう関係なんですから、したがってそれを外交上埋められないにしても、何らかの形で埋めていくような積極的な配慮が必要だ。対話任せではなくて、日本もできるだけの、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国に対する外交上の配慮が必要だ。あなたの方ではそのために人事の交流もスポーツの交流も文化の交流も、経済、貿易もやっていますとおっしゃるのでしょうけれども、それは認めます。認めますが、世界情勢は急激に進んでおりますし、アメリカのカーター大統領も朝鮮民主主義人民共和国の首脳部と直接話をしてもいいというところまでいっていると私は聞いておるわけでありますから、やはり情勢は急激にテンポを速めて進んでおりますので、日本外交もまず対話からということじゃなしに、そういう点について可能な前向きの努力をされるべきじゃないか、実はこういうふうに申し上げたわけなんです。意味はおわかりだと思いますが、どうですか、もう一回大臣答弁をお願いします。
  50. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国政府といたしましても、対話の再開が実現するような方向でいろいろ果たすべき役割りというものもあろうかと思うわけでございまして、そのような方向に実現ができるような情勢ができますように、人事の交流なりあるいはスポーツ等の交流その他の交流を通じまして、そのような情勢が醸成されるように努めるというのがいまの私ども立場でございます。
  51. 米田東吾

    米田委員 協定部分についてこれから質問をいたします。  まず第一は、この大陸棚協定は二つの協定部分から成っておるわけでありますけれども、私どもこの協定をやはり一つのものとして受けとめておるのであります。北部の境界線、南部開発区域、韓国との関係においては一つのものとして私どもは受けとめております。そういう立場に立ってこれを見ますと、どうも矛盾がある。国際法的にも大変不合理な部分があるんじゃないか、こういうふうに思うのです。それはどこか。たとえば北部の境界線の設定については、要するに両国の中間線をとっているわけであります。それから南部共同開発区域の関係につきましては、韓国大陸だなの自然延長を肯定して、その上に線引きをしておるわけであります。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 一方においては中間線、一方においては大陸だなの自然延長、この論理の矛盾、これを内蔵しながらこの二つの協定が妥協的にでき上がっておる、おかしいじゃないか、こういうふうに思うのでありますけれども、これはどういうことなんですか。
  52. 中江要介

    ○中江政府委員 でき上がった二つの協定を比べますと、先生が御指摘のようなおかしさをお感じになるのは私は当然だと思うのです。私どももこの問題は、日本韓国との間に横たわっております大陸だなについて、はっきりした境界をつけたいということで交渉に臨んだわけでございますけれども、いかんせん、大陸だなの北部部分につきましては、これは日本韓国との間が全く大陸だなでつながっておりますので、これは考え方としては問題なく中間線で分けようということに直ちに意見は一至したわけでございますが、南部の方になりますと、これが一つ大陸だなを日本韓国がはさんでいるんだ、だから中間線だという日本立場と、韓国側からしますと、これは一つ大陸だなを日本韓国がはさんでいるのではなくて、韓国の方から、朝鮮半島から出ている大陸だなが自然延長して海溝に落ち込んでいるところまでが沿岸国、この場合は韓国大陸だな主権の対象になるので、日本側からは大陸だなはないんだ、つまり、一つ大陸だなを日本韓国がはさんでいるんだという前提そのものに国際法上の疑問が提出されたわけであります。  日本立場は、いま申し上げましたように、これは一つ大陸だなを日本韓国がはさんでいるのであるから、これは中間線で北の部分と同じようにやるべきだ、こういうことで鋭意論陣を張ったわけでございますが、韓国の方は韓国の方で、これは国際法上自然延長論といいますものが厳として存在しておりますし、国際司法裁判所の判決だとかいろいろの材料を向こうは向こうで整備いたしまして、自然延長論が正しいんだということで反論する。この両者の足かけ三年に及びましたか法律論争をやりまして、これはどうも幾ら話し合っても平行線、水かけ論で決着がつかない。他方、やはりこの地域の堤蔵しております地下資源というものの有望性も指摘されておりますので、この際はひとつ資源の有効利用というところに着目して、法律的な決着をつけることにのみ専念するという外交交渉の継続は得策ではないじゃないかということで、実際的解決を図ろう、こういうことになったわけでございます。  実際的解決を図るとなりますと、韓国側は自然延長の外縁まで自分のものだと言いますし、日本側は中間線までが自分のものだ、こういうわけですので、結局そこのところは、完全に両者の大陸だなに対する権利主張が重なるわけなんです。  重なったものを実際的に解決するという方法にはいろいろございます。重なったところを半分にさらに分けるという方法だとか、いろいろな考え方はあるわけですけれども、この際、日韓両国で到達しました実際的解決の方法というのは、それでは法律的な立場はたな上げにいたしまして、そして資源開発という共通の利益のために共同開発しようという発想で、一年数カ月間交渉いたしまして、共同開発というものを協定の形にまとめた。  したがいまして、一つ大陸だなについての話であるという日本の発想からいたしますと、これは一つ協定で片づいたはずのものが、韓国日本との間での権利主張の食い違いのために、北は北、南は法律的立場をたな上げにした実際的解決ということで、結論が二つに分かれてまいったわけでございます。したがって、北は一本の中間線の境界画定協定、南は法律的立場をたな上げにして、資源開発に着目した実際的解決の共同開発協定、こういう姿になったわけでございます。
  53. 米田東吾

    米田委員 北部関係協定についてちょっとお聞きいたしますが、約二年間いろいろ交渉した結果、結局中間線で妥協せざるを得なかった。外交権はあなたの方しかありませんから、一応それはわかるといたしまして、竹島の問題の処理をしなかったというのは一体どういうことなんですか。少なくとも私は、この協定によって確認される中間線というものは、いわば国境だと思うのですね、海の国境。この中間線というものは、将来にわたって国益あるいは国の権益の範囲として厳然と残るきわめて重要な線引きだと私は思うのですね。その場合に、解決しなければならない竹島の固有の領土の問題をたな上げにしておいてこのような国境の線引きをするということは、何としても私は理解できないのでありますけれども、これがたな上げされたということはどういうことでありますか。
  54. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問に対しては、恐らく二つの面から御説明するのが適当かと思います。  一つは、いま先生は海の国境だとおっしゃいました。ある意味では国境のような様相を呈しておるのでございますけれども、これは大陸だなの境界画定ということでございまして、領海なり、あるいは将来経済水域がどういうようになりますか、これも一つの問題ですけれども、現在のところ、国境と言いますと、やはり領海の画定、領海を設定しますときの基点にどういうものを基点として利用し得るかという問題と、大陸だなの境界画定のときにどういうものをその境界の、つまり等距離をはかる基点として利用するかという点では、実は国際法的には違いがあるわけでございまして、大陸だなの境界を画定いたしますときの基線をはかる基点といたしまして竹島のような絶海の孤島というものを使うかどうかについてはむしろ消極的な考え方の方が優勢であるというのが一つ問題点でございます。  もう一つ問題点は、これは大陸だなの境界でございまして、大陸だな開発という目的を持った一つの作業ということになりますと、竹島のところまで一体大陸だなの開発という実益があるかどうかという点になりますと、日本海側は大陸だなは非常に早く終わって深くなっておるわけでございまして、日本立場からいたしましても韓国立場からいたしましても、竹島を含んでまで境界を画定しなければ大陸だなの開発ができないというような実際上の必要がなかったということが第二の側面として言えるか、こういうふうに認識しておるわけでございます。
  55. 米田東吾

    米田委員 大陸だなの境界に関する部分についての線引きだ、したがって領海とか二百海里とかというものとは別だというふうに第一義的にはおっしゃっておるのですけれども、それは私もそういう理解をいたしますが、きょう国会に出されました二百海里の暫定法案、まだ法案を見てないのですけれども、図面も見ておりませんが、この部分については重なっておりませんか、日本韓国の二百海里の境界は。どうですか。
  56. 中江要介

    ○中江政府委員 直接の主管ではございませんけれども、私が聞いておりますところでは、これはきのうも先生、農水委員会で御指摘があったかと思いますけれども、日中、日韓のように、現在二国間の漁業協定によって操業の秩序が維持されている、つまり平和裏に漁業活動が行われている国との関係では、日本の方からは二百海里の漁業水域を設定することはしない方針ですという農林大臣からの御答弁があったように私も記憶いたしますが、そういう考え方からいたしますと、いまのところ、この部分について日本の方から二百海里漁業水域を設定するということは考えられておりませんし、したがいまして、韓国との間の中間線をどうするかということは、勢い問題になって上がってきてはいない、こういうことでございます。
  57. 米田東吾

    米田委員 きのう私が農水で質問したときの鈴木農林大臣は、この部分についてはこういうふうに答弁しました。政府としては相互主義をとっていきたい。したがって、韓国中国あるいは朝鮮民主主義人民共和国等から先に二百海里が出てこない限り、わが方から二百海里の設定はしたくないのだ。しかし、暫定措置法では明確に、漁業専管水域は二百海里という法律措置だけはきちっとしてあります。その原則の上に相互主義を兼ね合わせて、外すところは政令で外していくのだ。その部分はいまあなたが御答弁されたように、確かに大臣はそういうようにおっしゃっておる。しかし、法律では原則的、基本的には線は引いて二百海里はちゃんと持っている、きのうの私に対する答弁はこういうことなのです。ですからいま線は引く、あるいは政令で外すにいたしましても、日本韓国との関係の二百海里の境界というものはあるはずなのです。それを示してくれませんか。
  58. 中江要介

    ○中江政府委員 これは二百海里漁業専管水域法案の過程で恐らく本当の主管の当局の方から御説明があるべきことであって、私、いまここで間違ったことを言うと悪いと思うのですけれども、私の理解しておりますところでは、鈴木農林大臣もおっしゃいましたように、日本としては当然領土のあらゆるところに二百海里の漁業専管水域を設けるというこの原則といいますかプリンシプルは曲げられない問題だ。そういう意味では竹島が日本の固有の領土であるという立場には何の疑念もないということでありますので、もし二百海里の漁業水域を線引きするとなると、当然そこに引かれるべきものだ、こういう点については私自身は疑問を持っておりません。他方、政令でどこを外してその結果どういう線引きになるかということは、私、詳細つまびらかにしておらないのでお答えいたしかねる、こういうことでございます。
  59. 米田東吾

    米田委員 竹島の問題それから二百海里の問題は、わが党の同僚議員がこれからまたさらに質疑をいたしますから、そちらの方に譲ります。  ただ、いまのあなたの御答弁の中で、もう一つだけ聞いておきたいと思いますが、北部について大陸棚協定としての中間線をとったといたしましても、しかし、私は今後、この中間線をとったということは、やはり国際的に日ソ関係の二百海里あるいは日中の関係日韓関係の二百海里の設定においては重要な一つの先例になる、それが日本外交上の弱点になるかプラスになるかは私はわかりませんけれども、そういうものになることだけは間違いないと思うのでありますけれども、その点はどうですか。
  60. 中江要介

    ○中江政府委員 その点は、この協定を交渉いたしておりますときから、いま先生がおっしゃいましたと同じ認識を持って私どもはこの中間線を綿密に測定して線引きをした、こういうふうに御認識をいただきたいと思います。
  61. 米田東吾

    米田委員 それから南部共同開発区域にかかわる協定関係でありますけれども韓国については自然延長論を一応認めて、そしてあなたの答弁を借りれば、資源の有効利用、実際的解決に踏み切った、ざっくばらんに言えば妥協したということだと思うのであります。私はこれは問題があると思いますよ。それにしても、一応きょうはおくといたしまして、中国との境界についてはこれはどういうことなんですか、これはひとつ説明してください。
  62. 中江要介

    ○中江政府委員 日本政府の法律的な見解は、韓国に対して、韓国との交渉に臨みましたときと同じ立場で、具体的に申し上げますと、日本と中国が一つ大陸だなをはさんで相対しているのであるから、その境界線は中間線であるべきであるという立場を貫くつもりでございます。他方、中国の方は韓国と同じように自然延長論というものを、そういう立場をとっているということも一方明らかでございますけれども日本政府としては、中間線で境界を画定するのが日本考え方からすれば国際法上妥当である、こういう考え方には変わりはない、こういうことでございます。
  63. 米田東吾

    米田委員 国際法上妥当であるという一方的解釈、私はこれはやはり、ああそうですかというわけにはちょっといかないですね。それであなたの御答弁で、再度聞きますが、中国とはこの部分について交渉されたんですか。交渉された上で、韓国のように、あるいは国際法上大陸棚条約が言っておりますように、一つの妥協点として中間線をとらざるを得なかったという経過があって中間線の設定ということになったんですか。そうでなければ国際法上中間線が妥当だということにはならぬと私は思うのです。
  64. 中江要介

    ○中江政府委員 私が中間線が国際法上妥当だと言いましたのは、日本一般的な、原則的な考え方として、このような場合には中間線によるべきだという国際法上の立場日本がとっているということでございまして、具体的な、どの線についてどうかということではなかったわけで、それでは中国との間では交渉したのかという御質問に対しましては、交渉はしておりません。なぜ交渉しないのかと言われますと、われわれは、交渉いたしましょう、あるいは交渉いたしたいということを再三再四中国側に伝えておるのですけれども、中国の方で、それでは交渉しましょうというふうに応じてきていただいておらないわけでございますので、私どもは説明をいたしまして、この線引きは、まず基本的には韓国と中国の中間線というものが北から南におりてきておるわけでございまして、これは韓国と中国の間で御相談いただかなければならない問題ですが、この話は中国と韓国の間に外交関係がございませんので、なかなかそれができかねている。最初に韓国がこの地域の大陸だな開発関心を示しましたときに、中国は韓国に対して、この大陸だなは中国との間にある大陸だなだから相談の上でなければだめだということを言いました。そのすぐ翌日に、大韓民国政府は中華人民共和国政府に対しまして、それならいつでも話し合う用意があるということを公にいたしましたけれども、現在までのところ韓国と中国の間にはその話し合いが行われていない。  そういうことでございますので、それができるまですべてこれを待っているということがいいのか、それとも中間線という原則さえはっきりしておれば、これは一応地図に基づいて精密にはかって、ここが中間線であろうというところで線引きをいたして、そして開発を始めてみる、それでやがて話し合いができまして、両方で突き合わせてみましたら、一方が考えていた中間線が相手国によってある部分修正なり妥当でない面があるということなら、これは当然修正すべきことになろうかと思います。その辺のところは、この南部共同開発協定の第二十八条に、日韓双方とも大陸だなの境界画定に関する国際法上の立場を留保してこの協定の実際的な解決を図ったということを念のためにはっきりしておるわけでございますので、日本政府立場といたしましては、将来中国政府の方で幸い交渉に応じていただけるときに話し合った結果、この今度の線引きで不適当なところが明らかになりますれば、当然のこととしてその部分は修正をしなければならないという心構えでおるわけでございます。
  65. 米田東吾

    米田委員 外交の問題というのは、今度の日ソ交渉にもあらわれておりますように、何といいましても国益第一であります。これはもうあなたに申し上げるのは釈迦に説法かもしれませんけれども、中国がこの大陸棚協定の問題について、あなたの御答弁にありますように、何回話を持っていってもなかなか交渉に応じてくれなかったということが本当であったとすれば、中国は中国なりの国益の上に立っての判断があったろうと私は思うのです。しかし、仮にそういうふうに呼びかけをしたけれども出てこなかったとしても、だからといって一方的に中間線の設定をすることが合法だということにはならないと私は思う、外交上から言っても。大陸だなについては、特に条約があります。あなたの方がよくおっしゃる条約の第六条に規定されておる。しかもこの地域はむしろ韓国大陸だなではなしに、これはエカフェの報告書にもあるわけでありますけれども大陸だなはむしろ中国の大陸だなだというふうに言われておるわけでありますね。ですから私は、大陸だなの自然延長論というものを肯定されるとすれば、韓国と中国の問題だということにはならないと私は思う。受けて立つ側の日本だって、私はこの問題については、韓国に対しても中国に対しても明確にそうしなければならないし、もし韓国の主張が間違っておれば、そこに私は、あなたの方はこれを拒否するという外交上の措置が当然あってしかるべきだと私は思うのです。それが独立国家日本外交じゃないですか。そして現実的資源の有効利用ということを考える必要があれば、どんなことがあっても中国と交渉されて、そして共同開発というような方向に中国をリードされる、そういうことなら、それで私はやはり日本外交だと思う。そういうこともなさらないで、ただ一方的に中間線の内側に区域を設定いたしましたということだけでは、私はこの問題について理解はできないと思います。  そういう意味からいきましても、私どもはこの協定は、特に境界の設定についてはまことにこれは欠陥がある。あなたは将来中国からの出方によっては修正しなければならぬだろうとおっしゃいますけれども、目に見えているじゃありませんか。しかも中国は、過去三回にわたって公式の外交部スポークスマンのこの問題についての声明が出ております。一番最初は一九七〇年の十二月二十九日、人民日報を通して、中国の海底資源の共同開発協定は違法であり、無効である。それから第二回目は、一九七三年三月十五日、北京放送外交部スポークスマンを通して、黄海、東海の管轄権の分割は未確定であり、中国はあらゆる権利を保留する。第三回目が一九七四年二月五日、北京放送を通しまして外交部スポークスマンの見解が示されておる。日韓共同開発区域の設定は中国の主権的権利を侵害するものである。こういうふうに、外交上中国は三回にわたってみずからの主権を鮮明にされておるわけであります。にもかかわらず、呼びかけたけれど来てくれなかったということで、一番関係のある中国を除外して、しかも、日韓の二国間の協定で、中国の主権にかかわると言っておる中国の大陸だなに線引きをして開発するということは、国際的にもどうしたって肯定できないのじゃないでしょうか。この点は欠陥協定じゃないかと私は思うのでありますが、どうですか。
  66. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま米田先生御引用の一番最後の政府外交部スポークスマン声明の中にも明確に書かれておったと思いますけれども、中国の立場は、まず自然延長論であるということと、もう一つ、この大陸だなの境界画定関係諸国の間の合意によって決められるべきものである、にもかかわらず中国がその合意に参加することなく一方的に境界が画定されているのは主権の侵害である、こういう論法になっておったように思いますが、その点は、でき得べくんば周辺関係諸国が全部一堂に会して、円満に境界が画定されることが最も理想的であるということは、私どもも同じでございますが、先ほど申しましたように、韓国と中国の間でも、あるいは日本と中国の間でも、韓国側あるいは日本側から話をしましょうというわれわれの立場の表明にかかわらず、それでは中国の方から話をしようという話がいままで返ってこないという事態が一つあるわけでございまして、そういうときに、それでは一国が全然話に応じないときにはほかの国はみんな黙って何もできないのかという点につきましては、大陸だなの制度というのは、長く一九四五年以来発達してきた一つの国際法上の制度といたしまして、ある程度確立した部分があるわけでございまして、それによりまして、先ほど申し上げましたように、朝鮮半島と中国大陸との間は一つ大陸だなをはさんでいる、相対する関係であるという点については、私ども疑問を持たないわけでありますので、その部分については中間線で境界画定されるのがまず原則であるということがございまして、その中間線から東側の部分、つまり韓国日本との間ではさまれている部分に限定いたしまして今度の協定はできておるわけでありまして、日本と中国の間にはさまれている部分は、日本立場として、日本と中国で話し合わなければならない部分は注意深く除外してつくられておるわけでございます。したがいまして、日本韓国の間で話し合えば、現行国際法上の大陸だな制度のもとで十分説明し得るというところに限定したのが共同開発協定である。こういう趣旨は、現実の細かい地図を中国側に示しまして、協定締結の前後、機会あるごとに日本はこういう考え方であるということを説明しております。しかしながら中国は、いずれにしろまだ日中間で話をしていない問題でありますので、それをそのまま了承することができないというお立場は、相手の国の立場としては当然そういうことになろう、こう思いますけれども、私どもといたしましては、この地域の資源開発にとり得る策としては、いまの国際法上の制度、国際社会で行われております大陸だなの制度のもとでは、これが望み得る唯一の方法であるというふうに考えて決断した次第でございます。
  67. 米田東吾

    米田委員 いまあなたが引用されました大陸棚条約、これは確かに一九五八年四月二十九日、ジュネーブで作成されておりますね。以来大陸だなの関係については、国際的に中間線というものが確立されているという御答弁でございます。しかし、私も決してあなたよりは専門ではないのですけれども、いろいろな人の意見を聞きますと、国際法的に確立されているとすれば、しかもこの大陸棚条約の精神からすれば、自然延長こそが確立された国際法的な基本だ。あなたの答弁にありましたように、中間線というものが確立されたということにはならない。もしなったとしても、その前に自然延長がむしろこの条約の精神、どうしても話がつかないときに中間線をとりなさい。北海道油田がそうでありますね。国際司法裁判所なんかの判断、指導も大体そういう方法をとっております。ですから、そういうことからいきますと、いきなりあなたが引用されましたように、中間線というものが国際法上確立されておる、これはちょっと素人ごまかしの早合点の説法じゃないですか。私はそういうふうにはとりません。どんなことがありましても、中国との関係については話を何としても進めるべきだ。そのためにこの大陸棚協定がおくれてもいいじゃないですか。しょうがないじゃないですか。何で韓国と二国間だけで欠陥を残したまま急がなければならないのでありますか。しかもこの協定によってもし石油が掘れたとしても七億キロリットル。日本の全石油消費量の二年分です。まるまる日本に来て二年分。折半して、それは一年分であります。メジャーとどういう協定をするかわかりませんけれども、うまくいって、そのまた半分じゃありませんか。半年分です。ここに投入する金は、日本国民の税金を一体どのくらい投入すると思っていらっしゃるのですか。私は、国益論からいきましても、あなたの方が、資源有効利用の見地からあるいは資源の備蓄という見地から急がなければならなかったということについては、どうしたって理解できないです。やはり中国をテーブルの場に引き出すなり、外交交渉ができるのでありますから、もう少し見切り発車をしないで、この点については詰めるべきじゃなかったか、こう私は思うのです。こういう点はわれわれ社会党としては納得できません。
  68. 中江要介

    ○中江政府委員 御指摘の中に二つの問題点があったと思います。  一つは、中間線論よりもむしろ自然延長の方が大陸だなの基本的な考え方ではなかろうかという御指摘でございますが、その点がまさしく、私冒頭で二つの協定になりました理由を御説明したときにちょっと触れたつもりであったのですが、一つ大陸だなを二つの国がはさんでおれば、これは中間線ということはほぼ確立していると言っていいと思うのでございますけれども、この南部部分につきまして、日本一つ大陸だな、その一つ大陸だなの中に、しわといいますか、みぞといいますか、ひだが寄っているという考え方でございますので、中間線でいくべきだ。それに対しまして韓国の主張は、そうではなくて、大陸だなは朝鮮半島から延びている大陸だながあるだけだ。そうであるならば、いま先生がおっしゃいましたように、自然延長で、自然延長の外縁まで自分のものだ、こういう主張になるわけです。したがって、日本立場は、自然延長を論ずるまでもなく、一つ大陸だなにたまたまひだが寄っているだけだ。こういうことですので、中間線で分けるべきだ、こういう論法を用いたわけであります。したがって、韓国韓国認識する大陸だなというものを大陸棚条約その他の国際法上の制度に適合して主張いたしますし、日本日本で、一つ大陸だなという前提に立って、同じ大陸棚条約、国際司法裁判所の判決その他を援用する。したがいまして、どちらも準拠する国際法制度については相違がないんですけれども前提になる一つ大陸だなであるのか、それとも大陸だなは朝鮮半島から来て、海溝のところで終わって、日本側には大陸だなの主張の根拠がないのかというところに実は問題がある。そのどこ、何をどういう大陸だなと認識するかという点については、これは国際法ではなかなかびしっとした基準が出てこない。具体的に申しますと、一つ大陸だなの中にあるひだといいますか海溝というものが、大陸だなの終わりを示すものなのか、それともより大陸だなの一部分のひだにすぎないものかという認識の違いでありまして、これは幾ら議論いたしましても、結論になかなか到達しがたいものであった。これが足かけ三年間、法律論争しましたときの実は争点でありまして、そういう意味で、自然延長というのは、大陸だなというのは大陸から自然を延長してその外縁に及ぶところまでが大陸だなだという点は、先先も御引用になりました大陸棚条約でもそういう考え方に立っていることはそのとおりでございます。  もう一点の中国との関係でございますが、これも先ほど申し上げましたけれども日本は中国との間では、日中の中間線の交渉をする用意がございますし、そのことは申し入れておりますし、またそれができるまでは、日中間で話し合わなければならない部分については手をつけない、こういう方針を貫いております。今度の共同開発区域に当たっております部分は、韓国と中国との間で縦に割った形で出てきます境界線から韓国側部分、その韓国側部分の南の方に、日本は、これは自分の大陸だなでもあると言って、さかのぼって中間線まで主張している、こういうことでございますので、そこのところは法律的には整理されておるつもりであります。  冒頭に外務大臣が、国会審議でいろいろ困難があった中の一つに、韓国は譲り過ぎているという考え方というのは、まさしく私がいま申し上げましたように、韓国から見ますと、朝鮮半島からあの海溝のところまでは全部自然の延長として自分の大陸だなである。しかもそれは中国との間では、韓中の中間線を一応想定いたしまして、その韓国側部分について主張しているので、これは何物にも妨げられる筋合いでない。そういう韓国のよって立つ自然延長論からいたしますと、日本の方から、これは日本大陸だなでもあると言って中間線まで押し返した、その部分共同開発にして折半したのはけしからぬ、こういうふうに韓国立場から見ますとなるわけで、まさしく日本韓国も五分五分の法律論でお互いに譲り過ぎだということである。そういう対等の論戦でありましたので、結局重なったところを折半しようというところに落ちついたというのが経緯でございます。
  69. 米田東吾

    米田委員 韓国国会で、韓国は譲り過ぎた、あるいは韓国の当局者が、韓国は譲り過ぎたということを言うと思うんです。それは何も日本外務省が引用する必要はないと私は思うんですね。私は逆に、日本外務省は腰抜けで、韓国にいいかげんにされたんじゃないか、こう思っております。譲り過ぎたなんというものじゃなしに、丸め込まれたんじゃないか、こう思っているくらいです。  それで、これは局長に聞いておきますが、この韓国の側からの大陸だなの自然延長ですね、これは皆さん交渉に当たられて、科学的根拠があると一体お認めになったんですか。私どもは、少なくとも東シナ海の開発がエカフェの調査によって提起をされて、そうしていろいろな地質とかあるいはこの地域における背斜構造とか、そういうようなものが調査されて、そしてここに油田があるというふうに国際的にまずメジャーが目をつけて、そうしてまたいろいろな調査をやって、それを受けて韓国では独自の鉱区の設定をやったり、あるいは立法をやったりしてやりましたけれども韓国自体韓国大陸だなの自然延長だという根拠を独自に持っているものはないのではないか。あるとすれば、しかも最も権威ある根拠になるものとすれば、エカフェが言わている、ここの部分大陸だなというものは中国の大陸だなの自然延長に属するという、これこそが権威あるものだというふうに私は理解をしておるわけなんであります。大体国際的にも私は、そういうふうに理解をされておるだろうと思うのであります。韓国の主張は、韓国の自国の利益でありますから、主張はあるとしても、交渉に当たられた日本外務省がそれを一体お認めになったんですか、妥当性があったんですか、この点もう一遍はっきりお聞きをしておきたい。
  70. 中江要介

    ○中江政府委員 私ども韓国と交渉しなければならなかったのは、国際法上の制度としての大陸だなの境界画定、こういう問題であったわけです。その国際法上の制度としての大陸だなを論じますときには、地質学上といいますか、大陸だなという一つの地質、海底の部分の形成過程、あるいはそれを構成しております分子がどこから流れてきたかというようなことは実は問題にされておらないのが、この境界画定一つの制度になっております。  それはどういうことかと言いますと、一般論として申しますと、大きな大陸大陸だながくっついておるのが普通でありますが、その大陸が幾つかの国によって分割されている。そうしますと、その大陸から延びている大陸だなについて、それぞれ沿岸の国が複数であるときに、その境界をどうするかというところが、そもそも大陸だな制度の最初の関心事であっただろう。  その次に参りますのが、一つ大陸だなを今度は相対してはさんでいるときに、これをどう分けるかということで、一つの線引きの基準を定めておる、それが国際法上の大陸だな制度でございまして、そういう制度から見ますと、大陸だながどこの河川から流出したものによって構成されているか、その地質がどこにつながっているかということとは関係なしに、その現にある大陸だなをはさんで存在している主権国の間でどういうふうに線引きをするかということになってまいるわけでございまして、そういう観点からいたしますと、朝鮮半島と中国との間には一つ大陸だなが延びている限り、そしてそれを別々の国によって分割されている限り、その主権国同士で境界を定める、これはもう間違いがないところだと思いますし、したがってその部分には中間線が適用されているというわけで、日本韓国の間は先ほど申し上げましたように、これがそもそも一つ大陸だなであるか、みぞのところで終わった大陸だなにすぎないかという点についてすでに論争があった、こういうことを申し上げたわけでございます。
  71. 米田東吾

    米田委員 次にもう一つ、私は、外務省の方では問題にされておりませんけれども、朝鮮民主主義人民共和国との関係につきまして、この協定関係して皆さんの方でどういう受けとめと理解をされておるのか、お聞きをしておきたいと思います。  あなたの方のこの文書にもありますが、「北朝鮮は、この協定が「チョソン人民の利益に全面的にそぐわず、我が国の自主権と利権を侵害するものである。」と非難していますが、この協定は、日韓間に隣接する大陸棚境界画定及び共同開発を規定し、日韓両国の管轄権が国際法上及び得る範囲の問題について処理したものであり」、北朝鮮はこの協定の対象外だ、こういうふうに一刀両断におっしゃっておるわけであります。  そこで私は、もう一回お聞きしたいのでありますけれども、確かにここにおっしゃっておりますように、朝鮮民主主義人民共和国は、この協定ソウルで調印されました翌日、一九七四年一月三十一日、外交部スポークスマンが直ちに声明を出されました。この協定調印は朝鮮人民の利益に反し、わが国の自主権と利権を侵害するものである、わが国政府と全朝鮮人民はこれを無効と宣言するという趣旨の抗議の声明を出されて、以来繰り返しておるわけであります。  冒頭に私の質問でも申しましたように、国際法上からいきまして、韓国との国交の樹立という関係、それから日韓条約を問題にするのはとにかく別といたしましても、外交関係を樹立しておるということは肯定せざるを得ません。そういう関係を一応是認するといたしましても、現実的に私どもがやはり無視できないのは、朝鮮半島は分断されておるということであります。一つ民族が人為的に二つに分断されておる、一つの国土が人為的に二つに分断されておる、この現実だけは私は否定することはできない。したがって、法的には、国際法上の観点で韓国との関係が優先するし、そことの条約協定は私は何の違法はないと思うのですけれども政治的には、この朝鮮半島の分断された状態、そうしていま一つの北の方の朝鮮民主主義人民共和国は、今日すでに独立してやがて三十年になろうとする、そしてそれは、日本は非承認でありますけれども、世界的に独立国家として存在が認められてきておる、世界で約六十数カ国の国々が朝鮮の独立国家としての存在を認め、国連の加入を期待されておる、そして現に国連においてはオブザーバーとして加入が認められておる、こういう国際的な地位か高まっている状態というものも私は否定できないと思うのであります。日本外務省といえどもこれは認めざるを得ないと私は思う。  そういう政治的なアジア情勢が変化しているこの事態というものを、日本外務省は全く無視して、法的には誤りがありませんよ、法的には関係がありませんよと言って、外交部スポークスマンの声明を一蹴して、一体朝鮮人民の未来にかかわるこの協定を結んでよろしいのかどうか、私は政治家としてこの問題についてやはり考えざるを得ないのであります。  そういう意味では、日本外務省は、ここに書いてありますように一刀両断で切り捨てるべきではない、この朝鮮民主主義人民共和国のスポークスマンの言っていることについても耳を傾けざるを得ないのじゃないか。現に朝鮮半島については統一の機運が高まっておる。  早い話が、一方の当事者である韓国朴政権、一体外務大臣、これはいつまでもつと思っていらっしゃいますか、仮にこれが三年なりもつといたしましても、さっき答弁がありましたが、このような国際的な債権債務の関係は継承される、そうでしょう。しかし、全く政権がかわって一方的宣言をされれば一体どうなるのですか。これはどうにもならぬじゃないですか。無効だと言われればどうにもならぬじゃないですか。国際信義に反すると言ったってどうにもならぬじゃないですか。しかもこの協定は、発効すれば直ちにもうこの開発地域に日本国民の税金が投資されていくのであります。少なくとも九カ月後には投資されていくのであります。取り返しがつかないような事態になるのであります。そういうときに、朝鮮半島のこの状態というものを、日本外務省も私は一蹴するということは許されないと思うのであります。  したがって、朝鮮半島のこの関係を考えますときに、繰り返し繰り返し朝鮮民主主義人民共和国が主張していることについてもう少し耳を傾ける、そして情勢についてできるだけの情勢判断をされた上で、これに対する対処の仕方を外務省は考えられたらどうか、こういうふうに思うのでありますけれども、これは大臣からはさっき答弁いただきましたが、直接の局長であるアジア局長からひとつ答弁をいただきたいと思います。
  72. 中江要介

    ○中江政府委員 先生がおっしゃいましたように、サンフランシスコ条約日本が主権を放棄いたしました朝鮮が、そのまま独立することなく二つに分かれたということ、それが非常な不幸な結果になっているという点は、私どももそういう認識でございます。  その二つに分かれました中で、一九六五年に南の大韓民国との間に国交正常化がなされた、これは一つ政治的な決断だったと思いますけれども、その上に立って十何年朝鮮半島政策というものを事務当局としても検討してまいっておるわけでございまして、その間、朝鮮半島情勢がいろいろに流動してまいりましたことを私どもは否定しているわけでもございませんし、十分認識しております。  御指摘のように、たしか六つの国連の専門機関では、南北朝鮮が加盟国としてともに参加しているということも行われておりますし、過般の列国議会同盟会議のときには双方からの代表が日本においでになるということもありましたし、先ほど外務大臣が申されましたように、究極の姿は、やはり朝鮮半島朝鮮半島の人たちの希望する姿で統一されるべきであるということを念頭に置いて対処しなければならないという点も、私どもも考えを同じくするつもりでおります。  ただ問題は、そういう展望のもとにただいま今日何ができるかということになりますと、やはりそこにいろいろの制約がございまして、一つは、日本韓国との間で正常化して国家承認関係にあるということが一つ。それから北との関係では、先ほど来お話しになっておりますように、いろいろの交流を積み重ねることによって相互理解を深めて、誤解のない信頼のできる関係になりたいということでございます。  そういう状況のもとで、今度はこの大陸棚協定の問題ということになりますと、これは現実のいまある問題でございまして、いまあるこの大陸だなの部分に現実に管轄権を及ぼしているのはどこであるかということになりますと、これは日本承認している大韓民国が管轄している海域である。したがいまして、この協定ができましたときに、北の当局が明らかにしました立場、いまお読みになりましたような声明がもし妥当するとするならば、これは朝鮮民主主義人民共和国政府朝鮮半島全域を代表する政府であるという立場に立てばそういう論法になるかと思いますけれども、そこのところは、われわれとしては現実の管轄権は南と北とで分かれている、また、それが国際社会で事実上の問題として認められてきているという、そういう認識のもとでは、もし北と南の間でこの大陸だなについて問題がありとすれば、むしろ朝鮮半島と中国との間にはさまっている大陸だなの境界を画定するときには、これは南北両朝鮮と中国とが話し合うということは十分考えられることだと思いますけれども、いま問題になっております共同開発区域の部分につきましては、これは日本韓国で話し合えば十分であるというのが、国際法上の制度と国際法上の立場からしますれば妥当な考えであるというのが、ここに書いてありますような日本政府立場になっておるわけでございます。
  73. 米田東吾

    米田委員 外務省答弁、それなりに私も聞きましたけれども、肝心の朝鮮民主主義人民共和国は、あなたも御承知のように、韓国朴政権を認めておりません。それは朝鮮の問題だと言えばそれだけの話でありますけれども朴政権が結んだ日韓大陸棚協定というものは、もし批准されて発効すれば将来の日本の朝鮮政策の中で必ず問題が再燃することになる、私はもう断言します。そういう内容を持っていると私は思うのであります。そういうことで私どもは非常に懸念をいたしておるところなんであります。ですから、冒頭私が質問いたしましたように、日本政府はこの協定批准を急ぐのじゃなしに、むしろいまやるべきことは、さっき大臣からも答えてもらいましたけれども、この協定批准できるような日本朝鮮半島との地盤づくり、基盤づくりといいますか、政治的な地盤づくりを日本外交はむしろ優先してやるべきじゃないか。  その一環として南北の対話がもしあるとすれば結構でありましょう。それが少なくとも二つの朝鮮政策を意図したものでない限り、私は個人的には賛成いたします。二つの朝鮮政策の片棒担ぐ意味で対話をやれと言うのだったら、これはもう全く本末転倒、間違いであります。そうでなくて、日本と四千万の朝鮮人民との友好関係一つの単一国家としての朝鮮との友好関係を本当に願う、それなければアジアの平和はない、その信念のしに立って友好の基盤づくりをやろうということで、南北の話し合いを日本外交を通して手伝われるなら、私は個人的には大賛成である。それも一つの手でありましょう。またいろいろな交流を通しまして、そして日本政治家なり日本外交を通してもっともっと朝鮮民主主義人民共和国に対するいろいろな関係というものを強化する、そして南北の対話の条件というものをつくっていく、日本との友好関係というものを高めていく、そういうようなことも私は必要だと思うのであります。経済、文化いろいろな面での日本との交流を高めるということも私は結構だと思うのです。  要するに、このような両国の未来にかかわる、しかも国益をかけた大陸棚協定というようなものを、長期にわたった協定を結ぶのでありますから、それにふさわしい条件づくりというものを、特に分裂国家を抱えておる朝鮮半島の一方の韓国については、いまそういうものを優先して進めなければならぬときじゃないか、これが私の実は結論なんであります、この問題については。そういうことをひとつ配慮していただいて、アジア局長から答弁がありましたけれども、鳩山大臣は、今度は政治家なんでありますから、政治家としてそういう面について十分配慮をし信念を持って対処していただきたい。  なお、あなたの方のこの文書の中に、日韓癒着なんというものは考えられないと言い切っております。きょうはもう時間がありませんのでこれでやめますが、この日韓癒着の問題について、この委員会で、しかもこの日韓大陸棚協定は新しい癒着を必ず生み出しますから、それをもう一遍私は時間をかりてここに明らかにして、少なくともこの部分については大臣からも、あなたの方の情文局長からも、なるほどわかりましたという答えをもらうように、もう一遍やらせていただきますから、それを保留いたしまして、いま申し上げたことについて、私の最後の質問について大臣から答えをいただいた上で終わりたいと思います。
  74. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま米田先生申されたことに、私の考えていることを率直に申し上げたいと思いますが、朝鮮半島の問題、南北に分断されました一つ国民が、本当に平和的に統一された国ができるということ、そのためにわが国として努めるべきことがあれば努力をすべきこと、これは私どもそのように考えているわけでございますが、その問題とこの大陸だなの開発という問題と、これは決して相予盾することではないのではないか、そのように考えておるわけで、私ども努力すべき点は大いに努力をしなければならないというように考えますし、また、癒着の問題につきまして当委員会でもいろいろ御指摘のあったこと、十分承っておるわけでございます。しかし、今日の置かれておりますこの共同開発区域の開発という問題は、これはわが国といたしましてわが国としての国益上非常に必要なことであるというのが私ども認識でございまして、これがなかなか実現をいたさないという場合に、先ほど来申し述べましたように、国際的には自然延長論というものが強いんだ、そういうために、もしも自然延長論に立ちました単独開発というようなことに踏み切られた場合には、わが国としてはせっかくの国益を害される、こういうことになりますので、わが国立場といたしましてこの共同開発区域を進めさせていただきたい、こういうことをお願いをいたしておる次第でございまして、このことが、日韓癒着が決してないということを申し上げているわけではなくて、そのために共同開発をやるのではないかというような御指摘は私どもは承服しがたいということを申し述べておる次第でございますので、何とぞ御理解を賜りたいのでございます。
  75. 米田東吾

    米田委員 やめようと思ったけれども、もう一つだけ。  大臣は、このこと、要するに大陸棚協定朝鮮半島に対する友好親善の関係とは予盾しない、別だとおっしゃいましたが、私は予盾する、もっとはっきり言えば逆行する、こういうふうに受けとめておりますので、あなたの答弁答弁として、後でまた私の意見を申し上げたい。  それから癒着関係も、これは必ず新しい癒着を生み出す。現にこの日韓大陸棚協定はその出発点においてもう癒着があるんですよ。私ども目が明いております。みんないろいろな資料を見ております。ソウルにおいて何が話されたのか、自民党の日韓ロビーと言われる諸君が一体どういうふうに朴政権と話されたか、自民党の大物と言われる政治家がどういう役割りを果たしたか、財界がどういう役割りを果たしておるか、それから国際石油資本がどのような利権あさりをしているのか、そうしてこれが共同開発で五十年間にわたって開発されるとすれば、日本の税金はどれだけむだ遣いされるという状態が出てくるのか、そのことによって朴政権は一体どれだけの莫大な利益を得るのか、いろいろな構造的な汚職が、癒着が出てくることも私どもわかっておるのです。あなた、そんないいかげんなものじゃないと私は思うのですよ。したがって、それはこの後私はこの委員会で申し上げたい、こう言っているわけなんです。  そういうことでございますから、あなたの答弁はいいですけれども、そう安易に考えてもらっては困りますので、はっきり申し上げておきたいと思います。
  76. 竹内黎一

    竹内委員長 午後一時四十分委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時二十分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  77. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場昇君。
  78. 馬場昇

    馬場(昇)委員 先ほどの同僚の米田委員の質問に関係するわけでございますけれども協定の質問に入ります前に、何としてもこの外務省情報文化局が出しました「日韓大陸棚協定 早期締結の必要な理由」このパンフレットについてどうしてもはっきりさせなければならないという点がございますので、その点から質問に入りたいと思います。  外務省は、このパンフレットの中で、昭和四十九年一月三十日調印のこの協定批准の放置は、韓国だけでなく国際信義にもとる、こういうぐあいに言い切っておるわけでございます。この協定は御存じのように、石油危機の真っ最中に、そしてまた今日問題になっておりますところの二百海里漁業水域等の設定については予想もされなかった時期に、先ほども議論になりましたけれども日韓癒着の黒いうわさをまきながら、さらには右翼大物の仲介があったとか米国の石油資本の介入があったとか、さらには朴政権に対するてこ入れの協定だ、こう言われながら、まさに日本国民の主権や権益を放棄したものだ、私はこういうぐあいに思います。こういう問題のあるものを批准することこそ国際正義にもとる、私はこういうぐあいに思うのですけれども外務省は放置しておくことが国際信義に反する、こう言い切っておるわけでございますけれども情勢も変わっておるわけです。こういう情勢の中でこういうパンフレットを出すということこそ非常におかしいことだ、早期批准こそ国際正義にもとると私は思うのですけれども外務大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  79. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 パンフレットの表現につきまして御指摘をいただいたわけでございますが、私ども外務省といたしまして、二国間条約を取り結んでこれがなかなか国会の方の御承認がいただけないということは、私ども外務省にとりましては大変力の——どもといたしましては大変ふがいないということでございまして、そのようなことを大変残念に思うわけでございまして、私どもの気持ちを率直に申し述べたところでございます。  そういう意味で、この及ぼします結果は外務当局の信用にもかかわる、こういうようなことになりますので、この点は私どもも大変深刻に痛感をいたしておるところでありますので、率直にその気持ちをあらわしたものでございます。
  80. 馬場昇

    馬場(昇)委員 外務省の態度を言われるのならばわかるのですけれども、今日のこの協定を取り巻く国会審議状況、こういうものを見ますと、国会批准をしないからおくれている、こういう分折も成り立つわけです。そういたしますと、国会の態度こそ国際信義にもとっておる、こういうような受け取り方がこの文章ではできるんです。大臣国会のこの審議を延ばしておるという、批准しないという態度、これが国際信義にもとる、こういうぐあいに私はこれを読んだ人は思うのではないかと思う。国会をそういうぐあいに批判したのではないですか。どうですか。
  81. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 国会が国権の最高機関であることは理の当然でございます。私ども外交に当たる者が二国間で外国と協定を結んで、それが国会の御承認がいただけない、こういうことが外交当局といたしましては、大変取り結んだ相手国に対しまして申しわけない、こういうことを申し述べたのでございまして、国会につきましてとやかく申し上げるというような意図ではないのでございます。
  82. 馬場昇

    馬場(昇)委員 しからば、やはりこれを読んだ人は素直に読みますと、いまの状況で外務省批准してくれ、批准してくれと言っているわけですから、この態度は、あなた方が言う国際信義にはもとっていない、これが延びておるのは国会審議の都合上でございます。そうしますと、常識的に読みますと国会を批判した、こういうかっこうに受け取られるわけですけれども、そういうぐあいに受け取られるという疑わしき表現は改めるべきではなかろうかと思うのですが、どうですか。
  83. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもは、国会に対して批准をお願いをいたしているのでございまして、決して批判を申し上げるというようなことではございませんので、表現上なお再検討をいたすべき個所があればこれを直すことにつきまして私はやぶさかではございませんです。
  84. 馬場昇

    馬場(昇)委員 石油が一滴も出ないと仮定いたしましても——これからも出るという考え方でしょうけれども、もし石油が一滴も出なくても九カ月後には、この協定によりますと膨大な金が動くというような協定になっているわけでございます。さらに石油開発公団法の一部改正が行われますならば、結局は日本政府資金がその膨大な金になるんだ、こうなることは予想できるわけでございまして、このことが先ほど米田委員も言いましたように、日韓の腐敗の癒着、この再生産にこの協定は寄与する以外の何ものでもない、これこそ私は心ある者の国際評価ではないか、こういうぐあいに思うのです。先ほど大臣は、決して日韓癒着がこれで起こるものではないというようなことを答弁されましたけれども、国際的に、また心ある人は、これで日韓癒着の再生産が行われるんだ、こういう評価をし、そういうことを言っている人もたくさんおるわけであります。これについての大臣の御見解を聞いておきたいのです。
  85. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 石油開発自身には、探鉱の段階から進むわけでございますが、資金がかかることは当然でございます。しかし、投資が必要であるから必ずそこに不正が行われるだろう、だから開発はすべきでないということは、私はそういう御議論は承知するわけにいかないのでございまして、これからの御批判をいただくような事実があるかどうか私は存じませんけれども、そのような御批判がないように、これは私ども両国政府の努力によりましてそのような御心配のないようなやり方というものは必ず可能であるし、またそうしなければならない、このように考えておるところでございます。
  86. 馬場昇

    馬場(昇)委員 鳩山大臣答弁は表面をきれいになでて答弁されるわけでございますけれども、いまから国会でそういうことを議論するわけでございます。  そこで、先ほどお答えになりましたけれども議論する前に確認しておきたい点は、協定批准というのはもう御承知のとおりでございまして、この協定自身の中にも国会承認批准を発効の条件としておるわけですから、これは日本国会批准しなければ発効しない、そういう種類の協定ですよということは韓国も当然知っておるわけでございます。だから、この国会があらゆる角度から国民立場に立ってこの協定の可否を決めるということは当然でございますから、この国会が慎重に審議して国民立場でやるということ、これはこの文書に問題があれば改正してもらうとともに、この場所ではっきり確認を求めておきたいと思います。どうですか。
  87. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この協定自身当然御承認をいただかなければ批准できないわけでございます。私どもここで申し述べておりますことは、私どもとしてはこれはやはり日本国益に沿うゆえんである、こう考えてお願いをしている次第でございまして、協定というものは、一方の当事者の批准が相当年月にわたって実現することができないというときには、先方がこの協定を破棄するなり何なりというような口実も出てくるというようなこともありますので、早期の御承認を賜りたい、こういう気持ちでございます。
  88. 馬場昇

    馬場(昇)委員 言わずもがなですけれども国会国民立場に立って慎重審議をするということは当然だし、そしてその協定承認こそこの協定の発効の基礎になっておるわけでございますから、国会の態度というのは何ら国際信義にもとるものでもない、これははっきりしておることでございます。  いま外務大臣は、余り長引くと韓国側が一方的に開発に踏み切るのではないか、こういうことをおっしゃいましたが、この文書の中にもそういうことが書いてございます。「韓国側は一方的開発に踏み切るおそれがないわけではありません。」こういうぐあいに書いてあるわけでございますが、外務省韓国側が一方的に開発を強行する、本当にそういうぐあいに分析をなさっておるのですか、どうですか。どういう状況で、どういう分析でそのような発言をなさるのですか。
  89. 中江要介

    ○中江政府委員 韓国政府の方で、もしこの協定が早期に批准され、批准書交換をして発効されないのであれば単独開発することもあり得べしということを公式に申しておることはないわけでございますが、他方、韓国の国内では、せっかく協定締結しておきながら日本側でそれの批准がいつまでも遅延していくようなことであるならば、そもそもこれは韓国の法律的な立場に立てば一方的に開発し得たということで、韓国がこの試掘に着手しようとしたのが数年前の事態であったわけでございますので、もとに戻って韓国の自然延長論というのは十分根拠があるのだから一方的にやろうじゃないかという声が韓国の国内で高くなるということは予想しておかなければならない、こういう認識でございます。
  90. 馬場昇

    馬場(昇)委員 公式に言っておるわけではございませんし、また公式な外務省の分析というのもお聞かせ願えなかったわけですけれども韓国国民の世論がそういうように出るのではないか、それは出るかもしれません。しかし、日本には絶対に反対だという世論もあるわけでございます。そういうときに韓国側の世論というのを憶測して、そしてこのような公式に分析もされていない、発言もしていないことを言うということは、言うならば日本国民、さらに国会に対してある意味の圧迫といいますか、さらに言うならば脅迫といいますか、そういうようなことがこの文書にははっきり出ておる、私はそういうぐあいに思わざるを得ないわけでございます。私は、韓国が本当に日本と友好を願っておるならばそういうことはしないであろう、こういうぐあいに思いますし、もしそういうことをしますならば、韓国日本と真の友好を考えていないのではないか、こう思わざるを得ないわけでございます。  そしてまた、この開発を見てみますと、技術とともに膨大な資金とか資材とかが要るわけでございまして、私は韓国の経済状況その他が果たしてそれにたえ得るかどうか、よそのことを言ってなんですけれども、そういうことも私は私なりに分析するわけでございます。  そしてさらに言うならば、この協定を結ぶということが、よその国のことですけれども、無意味な負債を韓国政府が背負って、その重圧で韓国国民はやはり苦しむんじゃないか。いまの状態は、むしろ韓国国民にとっては無謀な負債を背負うことはない、これが批准されないことがそういうことだ。そういうことから言いますならば、むしろ幸福な状況をいまつくっておるんじゃないか、こうさえ私は思うわけでございます。  韓国との真の友好関係というのは、皆さん方が言う友好状況にあるというのは、一方的に開発を向こうがやるんじゃないか、そんなに貧弱なものであるのでしょうか、この辺について大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  91. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほどアジア局長からお答え申し上げましたとおり、公式に単独開発をするというようなことは申しておらないのでございます。しかし、韓国国会等では相当議論のあるところでございまして、韓国政府として苦しい立場に立つことは事実でございます。そういう意味で、単独開発というものが必ず行われるかどうかということはなかなか想定はできないところでございますけれども、この問題が早期に解決されることを望んでおるということは、韓国政府といたしましてもわが国政府といたしましても同様の立場でございます。
  92. 馬場昇

    馬場(昇)委員 やはり一方的に向こうが強行するんじゃなかろうかということの根拠も非常に不十分、そしてそのような友好関係であってはいけないわけでございますので、だからやはり国会審議権に対する批判、非難、あるいはそういう根拠もないような、一方的にやられるかもしれぬぞ、オオカミが来るかもしれないぞというような、ある意味における国会及び国民に対する脅迫、こういうような問題がこの文書の中にあるわけですから、大臣、これはやはり一回撤回してもらって、やはりそういう誤解のないようにやるとすればつくりかえる、あるいは撤回してもらって、もうこういうようなものはつくる必要はないと思うのですけれども、これを撤回される意思はないかどうか聞いておきたいと思います。
  93. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ここに述べておりますことにつきまして誤りがあれば、私ども訂正をいたすのにやぶさかではございません。しかし、現実におきましてそのような議論も現にあるわけでございまして、わが国としても国益上共同して開発した方が国益に沿うんだ、こういう考え方は変わりないわけでございますし、これが余り長引きましてなかなか御承認がいただけないということになりますと、これはそのような議論がますます力を得てくるだろうということは当然予想されるところでございますので、なお検討いたしまして誤りがあれば訂正はいたしますけれども、どこをどう訂正すべきかということにつきましても、これは検討しなければならないことでございます。
  94. 馬場昇

    馬場(昇)委員 誤りがあるという点よりも、国会審議に対する、あるいは国会を非難しておる、批判しておる、こういうふうに受け取られるところがある、あるいは一方的に開発するかもしれない、こういうような、言うならば、どちらかというと圧力というか脅迫というか、そういうぐあいにとられるところがある、こういうことを言っておるわけでございますので、いま検討するとおっしゃいましたから、誤りの検討だけじゃなしに、そういう外務省の姿勢、外務省いわゆる政府国会のかかわり、そういう三権分立という立場からも十分検討をしてしかるべき措置をとっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  次に私は、この協定と重大なかかわりを持っておりますところの漁業問題から質問に入っていきたいと思います。いまから水産庁に質問をいたしますけれども、後でその点について外務大臣にも御見解を聞きますのでよく聞いておっていただきたいと思います。  まず、二百海里時代に日本が入ってきたわけでございます。世界の状況もそういう方向でございます。そこで、二百海里時代の日本の水産政策というものについてしぼって質問を申し上げたいと思うのです。  二十日の本院の農林水産委員会で、わが党の角屋委員の質問に答えまして、鈴木農林大臣は次のようなことを約束をいたしました。これをぜひ確認をしていただきたいと思うのです。  まず、鈴木農林大臣が言明をし、約束をいたしましたのは、日本の漁業、これは従来は沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという、そういう指向型の漁業であった、それをこの二百海里時代、遠洋から近海へと、いわゆる方向を転換すべきである、こういうようなことを農林大臣言っておられるのです。これは間違いございませんか。
  95. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 遠洋から近海へというそれだけにしぼるという意味ではなくて、従来からの沿岸から遠洋、そういう転換政策といいますか、外洋への展開を中心にした政策というのは二百海里時代を迎えて当然大きく見直しをしなければならない、そういう御趣旨であろうというふうに私ども理解しております。  さらに、その内容について若干補足をさせていただきますと、第一点は、当面の対策としてやはり海外におけるわが国の漁業の実績にできるだけの力を払う、強力な漁業外交を展開することによってそういう実績の確保に努めるということとあわせまして、長期的な課題としてわが国の周辺の二百海里あるいは沿岸の海域についての開発に格段の力を今後入れていく必要があるということを重点に考えております。それから第三点目といたしましては、やはりこういった資源がかなり限られてきておる状況の中で、とりました水産物の有効利用、こういう観点も非常に重要な柱になる、こういった施策をもあわせまして今後の水産施策を展開していきたいという御趣旨であろうというふうに考えております。
  96. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私がいま質問しておりますのは、鈴木農林大臣がそのようなことを約束をしたかしないかということで、大臣が言ったことを聞いているのですから、その部分について簡単に、時間の関係もございますから答えていただきたいと思うのです。  次に、農林大臣は遠洋の漁場を失った漁民の雇用問題について、かつてエネルギー政策の転換の中で炭鉱離職者について職業等のあっせんをやった、今回はその炭鉱離職者の職業のあっせん、これと違って、やはり日本の漁民というものは漁業で雇用を安定させたい、日本の沿岸や沖合いで漁業ができるような政策をとって、漁業を営むという方向で雇用問題を解決いたしたい、漁民は漁業で雇用する、そういうようにするというようなことを言われたのですが、どうですか。
  97. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 今後、転換等を余儀なくされます場合にも、できるだけ漁業者の従来の経験を生かして、漁業の中でそういう職場が求められるように、私どもとしても当然最大限の努力をしなければならないと思っておりますし、大臣のお気持ちもそのとおりであろうというふうに考えております。
  98. 馬場昇

    馬場(昇)委員 さらに、日本の近海には三千万ヘクタールの二百メートルより浅い開発可能な海域があります。現在、その三千万ヘクタールの中で百十万ヘクタールしか開発されておりません。これを、三千万ヘクタール開発可能な海域の三分の一、一千万ヘクタールを開発すれば、日本近海で全漁獲量に匹敵する一千万トンの漁獲が可能である、だからこの開発可能な海域の開発を推進いたします、こういうことを言われたのですが、どうですか。
  99. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 大臣の御発言の大体の骨子は、いま先生から御指摘のとおりだと思います。未開発の漁場がわが国の周辺にまだ相当その意味であることは事実でございますし、すでに開発に相当力を入れておるつもりでございますが、まだまだそれはごく一部分でございまして、今後大いに力を入れるつもりでいろいろな施策を進めております。
  100. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この近海指向型に日本の漁業の大転換を図るという大規模な計画は、五十一年度から開始される沿岸漁場整備七カ年計画、約二千億ぐらいの計画でございますけれども、これをただ繰り上げて実施するということではなしに、新しい立法措置を必要とする、こういうぐあいに言われました。これについてはいかがですか。
  101. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 すでに現在、沿峰漁場整備開発法が制定されておりまして、それに基づいて現在七カ年計画で事業を実施しておりますので、今後事業の実施の過程でまたそういった具体的な法律の改正なり制度の見直しということが必要になる場合もあるかもしれませんが、現状ではいまの路線の上で事業を大いに促進していきたいという御趣旨であろうと思います。
  102. 馬場昇

    馬場(昇)委員 それは違うのじゃないですか。いまの日本の漁業法を初め水産関係の諸法律、こういうものは大体領海三海里というものを基盤にしてできておる、こういうぐあいに私は思うのです。そういう意味から言いまして、領海が十二海里になり、漁業水域が二百海里になる、それに合わせた漁業法を中心としてあらゆる関係法律というものを遠洋から沖合い、近海へ大転換をするわけですから、そしてこういう十二海里、二百海里時代になったわけですから、抜本的にこれを見直していくというのが農林大臣答弁の趣旨じゃなかったかと思うのですが、いまあなたは沿岸漁場整備法、そういうものを推進する中で考えていくのだ、大臣の水産行政の大転換と物すごい決意をもって言っておられたのとあなたの答弁は大分違うようでございますけれども、どうですか。
  103. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 先ほどお答えいたしましたのは沿岸漁場整備という一部面だけについての考え方を申し上げたわけで、漁業制度全般につきましては、御指摘のとおり二百海里時代を迎えて、これまでの公海資源といったことを前提にした制度の内容につきまして、かなり現実と制度面とで運用等を通じて無理であると申しますか、相当いろいろな問題点が出てまいっておりますので、こういったことを、二百海里時代における各国の規制内容等もある程度定着をしてまいりました段階で、全般的に見直しをしなければいけない問題があるということは、私どももそう理解しておりますし、大臣もそういうふうに御理解になっておると思っております。
  104. 馬場昇

    馬場(昇)委員 外務大臣にお尋ねいたしますけれども、農林大臣が二十日の農林水産委員会で言われたこと、これはいまお聞きになったとおりでございます。まさに新しい十二海里、二百海軍時代を迎えて日本の水産政策を大転換しなければならない、そしてその基本は、遠洋から近海域へと、そういう立場でいくのだ、そしてすべての法律等も再検討しなければならない、このような立場を示されておるわけでございますけれども、これが農林大臣国会を通じて国民にお約束になった水産政策でございます。これについて、同じ国務大臣としての外務大臣、いろいろ関係もあるわけでございますけれども、この鈴木大臣が言われました点について外務大臣はいかがお考えでございますか、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  105. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 水産関係につきましては、鈴木大臣御自身が大変な御見識のある方でございますし、また権限といたしましても農林省の所管でございます。外務省といたしましても、二百海里時代を迎えまして、諸外国との調整がいままでになかったようなことになってまいるわけでございますので、鈴木農林大臣と密接に連携をとりながら、わが国の主として諸外国との関係は遠洋漁業の面で生じてまいるわけでございますけれども外務省といたしましても極力国益を確保する意味で努力をいたしたい、こう思っておる次第でございます。
  106. 馬場昇

    馬場(昇)委員 農林大臣のこの政策に、外務大臣は支持し、積極的に協力するという姿勢をお持ちでございますか。
  107. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 当然でございます。
  108. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで私は、いまここで議論の対象になっておりますところの日韓大陸棚協定、そして共同開発区域をつくって開発をするわけでございますけれども、この協定は三海里時代に結ばれたわけですね。それでいま十二海里、二百海里に変わってきたわけでございます。そういう状況の変化があるわけでございますし、そしてまたその変わったことに対して農林大臣がものすごい政策を出されるわけでございますから、開発区域の設定というこの協定は、農林大臣が進めようとしておりますところの抜本的な水産政策というものと矛盾をしておる、それの妨げになるのじゃないか、私はこういうぐあいに思うのですけれども大臣いかがですか。
  109. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 一般的に海洋におきます石油開発というものが漁業に若干の影響があるのではないかというようなことは、従来からも言われていることでございますが、この点につきましては、被害を最小限度にするような技術の開発が進んでおると聞いておるわけでございます。そういうことでなしに、この二百海里ということから考えまして、共同開発区域が何らか漁業関係に悪い影響があるのではないか、こういうことでありますと、これは漁業と大陸だなの開発ということは別個の観点で進められて一向差し支えないものというふうに考えますので、何ら影響はないもの、このように考えております。
  110. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ものすごく大変な認識の不足があるのではないですか。後でまた具体的に質問いたしますけれども、あそこは漁場ですよ。これを共同開発区域にして韓国と一緒に開発をするという、これが日本の漁業に影響を及ぼさないということはあり得ないはずです。漁場として、漁業として影響を及ぼすし、さらに、もし油の流出事故でもあったならば大変な問題になるわけでございます。この共同開発構想というのは日本の漁業にものすごい影響があるということはあたりまえでございます。それをいま影響かないように言われましたのは話にならないわけでございますけれども、いずれにしても大臣は参議院に行かなければならぬという話ですけれども大臣、影響がないなんというのはとんでもない話です。それについての見解と、それからこの問題について、新しい水産政策を進めようとしておりますところの鈴木農林大臣と、ものすごく漁業に影響があるわけですから、その農林大臣が進めようとする政策に対しても影響があるわけですから、この問題について農林大臣とじっくり話し合われるという気持ちはございませんか。
  111. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほどお答え申し上げましたのは、要するに石油開発というものが漁業に対して何らかの影響があるという、そういう心配はあるわけでございます。それは公害的な意味で、石油開発というものが物理的に漁業等に対してある程度被害を与えるということは当然考えられるわけでございまして、これは場所がどこでありましょうと、石油開発という問題と漁業との関係でございまして、それはどこでも若干の影響はあるだろう、そうしてその影響は、石油開発側といたしますと最小限度にその被害をとどめなければならない、そのような努力をすべきであるというふうに考えるわけでございます。  ただ、それが二百海里問題とかいうことと絡むと、そういうものとしては大陸だなの開発と上の漁業水面ということは関係のないことである、法律的な意味を申し上げたのでございまして、実態的に漁場であった場合に、その漁場につきまして石油開発が行われるということは、何らかの影響はあるであろう、そうしてその悪い影響は最小限度に食いとどめなければならない、こういうことを申し述べたのでございます。
  112. 馬場昇

    馬場(昇)委員 全然わかっておられない、外務大臣は。ところが何か参議院に行かれるというのですが、いまからこういう影響があるのだということを私は質問するのです。それをお聞きにならないのは残念ですけれども、そのことについてまた大臣に質問をいたしますから、もし私の質問中にお帰りにならなければ次回に譲ります。後、この委員会の運営は理事さんがお話になると思いますけれども、私は少なくともいまからその重大な影響があることを言うのですし、それに対して大臣に質問を予定しているのですから、おられなければこれは後に譲ります。委員長それでいいですね。  それでは、後この委員会の運営は理事さんにお任せするとして、この共同開発区域と漁業との関係についてさらに御質問を申し上げたいと思います。  共同開発区域に近接する東シナ海区、日本海の西区、それから太平洋の海区の南区、いわゆる西日本海区の漁獲量は年間どのくらいですか。
  113. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 九州の西方海域と対馬周辺の海域全体の漁獲量は年間で大体五、六十万トンでございます。いま予定されております共同開発区域内での漁獲量は、五十年の実績で大体三万九千トンというふうに私どもは推定をしております。
  114. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私の質問に答えてください。私は、東シナ海区、日本海区の西区、太平洋区の南区、いわゆる私たちが西日本海区と言っておるところ、これはこの共同開発区域にものすごく影響があるところなのですが、ここで漁獲量を年間幾ら揚げておるかという質問をしているのです。
  115. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 手元の資料ではちょっと太平洋の南区がはっきりいたしませんが、いまの東シナ海区と日本海の西区の関係のある区域を入れまして、合計で六十四万五千トンというのが五十年の数字でございます。
  116. 馬場昇

    馬場(昇)委員 違います。東シナ海区で百一万トン、日本海区西区で五十八万トン、太平洋南区で二十四万トン、合計百八十三万トンです。これはきちんと農林省の統計に載っている。五十年度の海面漁獲量は七百九十八万トンですが、その中の百八十三万トンがこの西日本海区で漁獲されておるわけでございます。これは後で確認していただきたいと思います。  この海区では、サバが三十八万トン、イワシ類が二十二万トン、アジ類が十九万トン、スルメイカが九万トン、ブリが四万トン、こういう魚種がこの量とれておるのです。特にマアジなどは全水揚げ高の六七%が東シナ海で漁獲されておるわけでございます。この私の言った数字は間違いですか。
  117. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 いま手元に統計表を持ってきておりませんが、オーダーが大体東シナ海区全体でございましたら、いまのような数字になるかと思います。私が先ほど申し上げましたのは、共同開発区域を中心にした周辺の海域、関連のあります海域についての漁獲量の水準でございます。
  118. 馬場昇

    馬場(昇)委員 だから、水産庁次長、私の質問に答えてくださいと言うのです。質問をしないものに答えたってしょうがない。だから、この点についてはきちんとした資料を持ってきて再度答弁をやっていただきたいと思うのです。  もう一点は、いま私が言いました海域で、中国、朝鮮民主主義人民共和国及び韓国の漁獲量はどのくらいになっておりますか。
  119. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 現在資料を持っておりませんので、調べまして、また後刻報告させていただきます。
  120. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これはもう委員長も御承知のような状況でございますから、この問題については保留しておきたいと思うのです。私は大臣にも大分質問を保留するわけでございますし、私の予定した時間は、本会議関係できょうは終わらないのです。だから、少なくとも本議案を審議しておる中で必ず提示してもらうということについて、委員長、よろしゅうございますか。
  121. 竹内黎一

    竹内委員長 御希望を承っておきます。
  122. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いや、承っておくだけじゃだめですよ。承ったって、やらなかったらだめじゃないですか。
  123. 竹内黎一

    竹内委員長 委員長から水産庁にお尋ねしますが、ただいまの質問の資料はすぐそろいますか。
  124. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 前段の海区別の漁獲量はすぐに電話で照会いたします。後段の国別の漁獲量につきましては、若干検討させていただきたいと思います。(「検討」と呼ぶ者あり)はい。北朝鮮、韓国あるいは中国の方の漁獲量につきましては、必ずしも中国の漁獲量等は公表もされておりませんので、何年まであるかがはっきりいたしませんから、検討させていただきたいと思います。
  125. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、いま少なくとも、中国はどれだけだ、朝鮮民主主義人民共和国はどれだけだ、あるいは韓国はどれだけだという公表された資料はあると思う。だが、いずれにしてもそれをお持ちでないということですから、この協定審議しておる途中で必ず再質問させていただきまして、資料を出させるということを、委員長約束してください。
  126. 竹内黎一

    竹内委員長 再質問の機会は考慮します。
  127. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで水産庁にお尋ねいたしますけれども、この共同開発区域は冬生まれのスルメイカの産卵場になっておるはずです。このスルメイカは、共同開発区域付近で産卵をして、黒潮の支流の対馬海流に沿って日本海に入り込んで、秋田県沖から宗谷海峡、さらに千島列島から三陸沿岸において、ほとんど全国で漁場が形成されておるわけでございます。またブリもこの共同開発区域が産卵場になっておるはずでございますが、その産卵場になっておるかどうかということと、共同開発という行為がこの産卵に影響があるかないか。どうですか。
  128. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 対馬海峡から西の方の海域がスルメイカの産卵場になっているということ、それからブリの産卵場としても重要な場所であるということは、先生の御指摘のとおりでございます。この共同開発区域におけるいろいろな開発行為がそういった資源の再生産にどういう影響を及ぼすかということでございますが、これにつきましては、開発の程度等にもよると思いますけれども、その時期が、たとえば産卵時期を外れるというようなことが可能であれば、試掘の段階その他では大きな影響がある場合もあればない場合もあるのではないかと考えております。場所がはっきり確定をいたしまして、そこで井戸が掘られて石油をくみ上げる場合になりますと、かなり局地的な問題になってまいるのではないだろうかと考えております。
  129. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この区域を九区域に分けて共同開発をするわけですから、この産卵場に影響がないはずはないわけです。これは当然影響があるわけでございます。  さらに、たとえばこの共同開発区域は、ちょうど南から北上してくるところの黒潮が日本列島の太平洋側に沿って流れるいわゆる黒潮本流、黄海に流れ込む黄海暖流、これは支流ですけれども、そうして日本海に流れ込む対馬暖流、この分岐点にこの共同開発区域がある。これはどうですか。
  130. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 いま御指摘のとおり、黒潮の分岐点の近くに当たっているというふうに考えております。
  131. 馬場昇

    馬場(昇)委員 黒潮の分岐点に当たっておるという最も重要な地域でございます。もしここで油による海洋汚染が発生したとすると、西日本を中心にして全国の大部分の漁場というのは全滅する可能性があると私は思うのですけれども、もしここで油による海洋汚染が発生した場合には、日本の漁業に与える影響というのはどういうぐあいにお考えでございますか。
  132. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 ちょっと流出する油の量なり時期なりということを想定しないと、一概にどういうような影響があるかということを申し上げるのは非常にむずかしいわけでございますけれども、多かれ少なかれ、もしそういった大量の油の流出があれば、それによるたとえば魚類の油による汚染であるとか、あるいは場合によっては再生産の方へも影響があるというようなことは定性的には当然考えられるというふうに思います。
  133. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いまの答弁では、日本の漁業を守るという官庁である水産庁が人ごとのように言っておられる。さらに鈴木農林大臣は、さっきあなたに聞きましたように、抜本的に日本の近海で一千万トンぐらい、いまの日本の全漁獲量に匹敵するようなものをとれるような水産政策をやりたい、こういうものすごい意欲を持っておられる、そういう発言と、あなたのいまの発言というのは、日本の漁業を守るというような姿勢を全然示していない、人ごとのような話。さらに言うならば、この協定批准に影響がある、これはマイナスになるのじゃないか、そういう考えなくてもいいようなことを考えておるような答弁にしか私には聞き取れないわけでございます。  そこで申し上げたいのですけれども、この共同開発というものは日本の漁業、漁民を犠牲に追い込むものだ、そうして北洋でもこういう問題があるときに、動物性たん白質の半分を魚でとっている日本国民の食糧事情、こういうものを不安に追い込むものすごい重要な問題であろう、私はこういうぐあいに思います。これは外務大臣にも後で聞きたいわけでございますけれども、漁業、漁民を守り、食糧を確保するというのがいま至上命令であるこの日本において、それにマイナスを与える共同開発というものは、この至上命令に逆行しているものであると私は思います。そして福田総理大臣も、もうかつての高度経済成長政策、こういう時代じゃなくなったのだと言っておられますけれども、少なくともこの日韓大陸棚協定を推進しようとしておる姿勢は、やはり工業優先、農漁民、特にここで言えば漁業軽視のいままでの政策、いわゆる高度経済成長政策の思想で貫かれておる、こういうことではないかと思います。そういう意味で、これは水産庁にはっきり答えていただきたいのです。外務大臣に対してもお聞きしたいのですけれども、これは留保しておきますが、いま私が言ったようなことについての水産庁の考え方はどうですか。
  134. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 漁業資源の保存なりあるいは漁業に悪影響が出ないように留意するということは、水産の立場からはもちろんのこと、国民食糧の確保という見地からもきわめて重要なことだということは私ども肝に銘じておるわけでございます。したがいまして、この協定の中でも、漁業に影響が出ないようにいろいろ漁業者の意見を聞きながら必要な調整を行いつつ事業を進めるということを協定上はっきりさせていただいているわけで、私どもとしては、そういうできるだけ漁業に悪影響の出ない、しかも漁業者の方の同意を前提にして、こういう事業を進める場合には細心の注意を払ってやっていただく必要があるというふうに考えているわけでございます。
  135. 馬場昇

    馬場(昇)委員 外務省政治的なお答えができる人はおられますか。——いまから質問しますから、  そこで、いまのにもお答えいただければぜひお答えいただきたいと思うのですが、さらにつけ加えて申し上げておきたいのは、いま農林水産委員会では領海法、漁業水域の二百海里法を、農林水産委員会だけでなしに、党首会談も開きあるいは国対委員長とか政審レベルの会議も開きながら、全党一致で成立させようとしておりますね。こういうときにいま私が言ったような各党及び国民反対のあるこの協定を強行しようとする政府の姿勢、自民党の姿勢、これは私は尋常な姿ではない、こういうぐあいに思うのです。これについて、先ほどのを含めて政務次官、お答えいただきたいと思います。
  136. 奥田敬和

    ○奥田政府委員 先生御指摘のように漁業資源の確保という必須の状態、それがいかに厳しい状態に迫っておるかということの認識においては先生と全く同感でございます。しかし、水産資源の確保も国民生活に欠くことのできない問題であると同時に、他方、エネルギー資源の確保という面もまた国益の上から国民生活の上から緊要な、両方同じ価値判断で論ずべきではないかもしれませんけれども、そういった認識で私たちはこの協定承認をお願いしておるわけでございます。なお、領海法案、全党一致で与野党含めて早期成立を図られておる状態はよく認識いたしております。ただ、この大陸棚協定は、かねて数回にわたって御審議を願っている問題でございますし、四年越しという外務省立場といたしましては、非常に相手国に対しては信義の面においてももとるというような結果を招いていることもまた事実でございます。そういった関係において、この案件審議を強行あるいは無理やりにごり押しするというような形で進むのはおかしいじゃないかという御指摘でございますけれども、これはあくまでも立法府の審議の過程において論ぜられるべきことでありまして、私たちはただ先生方にこの案件審議を慎重にやっていただく過程の中で、どうか御承認を賜りたいというのが政府の態度でございます。
  137. 馬場昇

    馬場(昇)委員 政務次官、午前中のここでの質疑でも明らかになったのですけれどもエネルギー資源の必要性というのは私たちもそれを認めるのです。ところが、この共同開発区域では七億キロリットルしか出ない。その半分、またその半分ぐらい、何か半年分ぐらいだ、だから漁業にものすごい被害を起こして開発するようなエネルギーの問題ではない、こういうことも午前中の質疑の中で明らかになったのですよ、油の量なんかも。だから、この辺についてはぜひ御理解を願っておきたいと思うのですけれども、これは水産庁と次官にも両方聞きたいのです。  水産庁、あなたはこう言われました。こういう共同開発区域、共同開発するというものはあくまでも漁業者の意見を聞いて、そして漁業者の理解を得てやるべき問題だ、こういうぐあいに言われました。ところが、この大陸棚協定によって共同開発区域をつくって共同開発をするということには、西日本の漁民、特に関係のある西日本の漁民の意見を聞いておられないじゃないですか。そしていま西日本の漁民は何と言っておりますか、御存じでしょうか。西日本の漁民はこう言っておるのですよ。いま国を挙げて、とにかく北洋のソ連の二百海里内の魚をとりたいということで領海法も緊急につくる、漁業水域二百海里法も緊急につくる、全政党一致してやっている、ソ連に特使も行った、あるいは超党派の議員団も行った。それはそれとしていいかもしれないけれども、このソ連の二百海里内での漁獲量は何と百七〇万トンですよ。この百七〇万トンの漁獲量を確保するために、政府は、いま全政党、全国民を挙げてやっておる。その反面、先ほど言いましたように、西日本関係する海区の漁獲量は、ソ連の領海二百海里でとっております百七十万トンを越しまして、百八十三万トン五十年にもとっておるわけでございます。そういうときに、なぜ北の方にはそれだけ力を入れておきながら、南の方のこの百八十三万トンを守らないのか。そして西日本の漁民は、結局この大陸棚協定エネルギー問題から言っても解決にはならない、日韓癒着という協定によって百八十三万トンの漁業が殺されようとしておる、西日本漁民にとってはこの共同開発はやめていただきたい、これが西日本漁民の心からの叫びなんです。そして北には力を入れて、なぜ西日本には力を入れないのか、これが漁民の声でございます。こういうことについて、水産庁は漁民の声を聞き、漁民の了解を得てあると言われましたが、私がいま言ったこの漁民の声にどうこたえられるのか。これは政務次官もこのことについてはぜひお答えをいただきたいと思うのです。  そしてまた、石油エネルギー問題は大切ではないと私は言わない。ところが、この開発区域、言うならば長い間研究をして、調査もし、研究もし、漁業政策、水産政策と兼ね合いながら、研究しながら、逃げるわけじゃないのですから、これは自然に備蓄しておるという考え方をとってもいいじゃないですか。そういうことについて水産庁と外務省のお考えをお聞きしたい。
  138. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 漁業者がやはり漁業への影響あるいは資源の保存という観点から、非常に重大な関心を持っているのはおっしゃるとおりでございますし、私どもの方もかねて大日本水産会等を通じまして、こういった問題があるということを漁業者にもよく知らせ、その場でまたいろいろ意見も聞きまして、エネルギー資源開発の上でこういった開発行為が必要やむを得ないという場合にも、やはり探査の段階あるいは試掘の段階、坑井の段階で、それぞれ漁業に影響が出ないように十分な配慮を払うとともに、その段階ごとに漁業者の意見を十分聞いて、やり方あるいはやります時期、そういった点で漁業に影響が出ないように、そういうことを十分配慮してやる必要があるというのが、大体これまで取りまとめました水産側の方の最小限度の意見、要望であるわけでございます。そういったことは一応協定の上でも、あるいはまた実施段階におきます覚書等で確保されておるというふうに思います。  それからまた、万が一、部分的に被害が出ました場合にも、その救済について、漁業者だけが泣き寝いりすることがないように、これもまたあらかじめ十分補償するということを明確にするということで対応しているわけでございます。
  139. 奥田敬和

    ○奥田政府委員 お答えいたします。  西日本漁民の利益、そして漁業確保をめぐっての先生の御真摯な御意見に関しましては、私も感銘を受けております。と同時に、私も先ほど申しましたけれどもエネルギー、そういった対策の面から、こういった共同開発行為というものもまた国民の皆さんの大方の御理解を得られるであろうということで御審議をお願いしておるわけでございます。しかし、こういった厳しい問題点がいろいろある問題であればこそ、先生方の貴重な御論議の過程において、本協定の御承認を賜りたいというのが願いでございます。
  140. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで水産庁にも聞きたいのですが、あなたの答弁を整理しますと、このような問題は漁民の了解を受けてやるべきだ、そう答弁されて、いまの答弁では、大日本水産会というものと話し合いはした、こうおっしゃって、大方の了解を受けておるようなことを言われました。しかし西日本の漁民、これは漁業をし、動物性たん白質を国民に供給しながら生活を立てておるのです。この人たちが、これはやめてくれと言っているんですよ。こういう人たちが了解をしたということを、大日本水産会が了解をしたかどうか知りませんけれども、いま、したと言われましたが、西日本の漁民は了解をしていないと私は思うのですが、この辺に対しての御見解を聞いておきたいのです。政務次官は、私の言うたことに感銘を受けられたならば、これはやめるべきですよ。私は、エネルギー問題を大切でないとは言わないんですよ。いま備蓄備蓄と言っているじゃないですか。あなた、とにかくあそこの海の底は動くわけじゃないんだから、備蓄をしておるんだという考え方でもって、そこをあらゆる角度から、漁業なんかに被害がないようにとか、国民のコンセンサスを得るようにとか、日韓癒着がないようにとかいろいろなことを考えながら、あそこをきちんとして調査をするなり研究をするなり、そうしてその間は自然備蓄をしておるのだという気持ちでやれば、エネルギー政策としては少しも間違っていないと私は思うのですよ。そういう問題について再びお答えをいただきたいのです。
  141. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 共同開発を予定されております区域に一番直接関係がございますのが以西底びき網漁業とそれから遠洋のまき網漁業でございます。主として関連の業界の意見を、大水を窓口にして聞きまして、それはもちろんもろ手を挙げて賛成というようなことでは毛頭ございませんけれども、最小限度、どうしてもやらなければいけない場合にもこれだけの条件は確保したいということで、さっき申し上げたように、それぞれの段階で漁業者の意見を十分聞くということを、私どもとしては必要な最小限度の条件としていろいろ話を進めてまいったわけでございます。  それから、先ほどちょっとお尋ねのございました統計数字でございますが、農林統計によりますと、東シナ海区と日本海西区とこの両方を合わせまして、五十年で百九十三万トンということになっております。これは海区全体でございます。それから韓国及び中国等の漁獲量でございますが、これは一九七五年のFAOの年報がございますけれども、国別のトータルしかわかりませんので、漁場別には私どもの手元の資料ではわかりません。全体では韓国が大体二百十三万三千トンでございますけれども、これはグローバルな数字でございます。それから中国は六百八十八万トンとなっておりますが、これは内水面を含んだ全部の漁獲量でございます。
  142. 奥田敬和

    ○奥田政府委員 先生の御意見のように、エネルギー資源確保もわかる、しかし、有望な地域であるということの理解の上に立ってもいろいろ問題点の多い案件であるだけに、このまま置いておっても石油の備蓄という点においては別に問題はないではないかというような御意見のように承っておりました。先生のような御意見も存することは私もよく承知いたしております。しかしまた、石油開発自体には七年、八年どころか十年以上の長期の形での開発する時間がかかるということも聞いております。したがって、そういったものが手近に有望なエネルギー資源としてあるならば、ある程度早期に開発して、それを少しでも国益エネルギー上プラスにせよという御意見もあることも事実でございます。私たちは後者の方に立ってこの協定の御承認をお願いしておるわけでございます。
  143. 馬場昇

    馬場(昇)委員 まだ議論がかみ合わないのですけれども、水産庁、この共同開発区域の漁業権はどうなるのですか。
  144. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 現在のところ、この区域の中にかかっている漁業権の設定というのはございません。
  145. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これは水産庁長官並びに農林大臣じゃないと議論にはなりません。そこで当然ここに来てもらってでも議論をやらなければならぬと私は思うのですけれども、先ほどおっしゃいましたように、まさに一部特定して、スルメイカだとかブリだとか、それから海流の関係だとかものすごく日本の漁業の基本にかかわる問題です。それをそう簡単に考えておられては話にならないし、いわんや漁民との了解なんかほとんどとられていない、こういう問題でございます。これら個々の問題についてはさらにハイレベルの水産行政の担当者を呼んで聞きたい、こういうぐあいに思います。  そこで、同じような問題で海洋汚染の問題について、海上保安庁、来ておられますね。——最近の海洋汚染の発生状況等がどうなっているか、こういう問題について過去との比較において簡単に説明していただきたい。
  146. 久世勝巳

    ○久世説明員 お答えいたします。  最近の油によります海洋汚染の状況でございますが、私どもが昭和五十一年に確認しましたわが国周辺海域におきます海洋汚染の総件数は千八百六十八件でございまして、前年の昭和五十年に比べて百六十件、八%減少しております。その内訳で種類別でございますが、油による汚染が千五百一件、前年比八十三件の五%減になっております。油以外によるものがそのほかに三百六十七件ということでございまして、油以外によるものと申しましては、いろいろなごみとかあるいは赤潮によるものが含まれているわけでございます。  以上でございます。
  147. 馬場昇

    馬場(昇)委員 油汚染で最近ものすごく海洋の汚染が多くなっておるのはいまも言われましたけれども、いわゆる油汚染というものが海洋の生態系に重要な影響を与えると私は思うのです。水産生物の環境を破壊する、こういうぐあいにも思います。  そこで、油の汚染が海洋の生態系にどういうような影響を与えておるのか、この油汚染が水産生物の環境破壊にどういうような影響を与えておるのか、こういう点について研究をなさっておられるかどうか、お尋ねしたいのです。
  148. 佐々木輝夫

    ○佐々木政府委員 油の流出等によります漁業資源あるいは漁業への影響の問題でございますが、直接的な、魚が油で汚染されまして商品価値が全くなくなるというような損害は非常にはっきりするわけでございますけれども、それが非常に長期間に海洋の中に一定の濃度以上あった場合に、それがプランクトンその他海洋の微生物の存在状態にどういうふうに影響して、それがひいては漁業資源全体にどういうふうに影響するのかというのは非常に複雑な問題でございまして、私どもとしては、例の水島の流出事故がございましたときに、現場の方の観測をすぐその直後から始めまして、約二年間くらい環境庁と一緒になって瀬戸内海につきまして相当詳しい調査をやりました。しかし、その流出後大体三カ月ないし六カ月くらいまでは油の影響によりますいろいろな、たとえばごく局部でございましたけれども、プランクトンの組成の地域的な変化であるとか、あるいは油に汚染された魚が依然として獲れるというような状態が続いたわけでございますけれども、一年間くらいたちますと、自然条件の変化といまの油の汚染との区分がなかなか客観的にできないという状態になりまして、現在も調査は続行しておりますけれども、どの程度の油の汚染が資源に量的に影響するかということをまだ明確に申し上げる段階ではございません。研究は続けております。
  149. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣も来られましたが、先ほど開発と水産行政についてものすごく大きい問題を次官にも聞いたのですが、全然了解できませんでした。だから大臣に聞かなければなりませんが、十分に本会議の予鈴だということでございますので、それは保留して、一つだけいまは汚染問題をやっているわけでございますので、前の部分は次回に譲りまして、汚染関係の問題について申し上げておきたいと思うのですが、その前に水産庁に聞きたいのですが、たとえばいま環境庁が自然環境の破壊についてものすごく調査をしております。自然生態系についても陸上についてはよくやっている。陸上の健康被害というものについてもよく環境庁なんかやっている。海の中のたとえば自然生態系の問題、あるいは海の中の環境の問題、そして水産生物の、人間で言えば健康被害というような問題こういう問題についてはどこが主管をしてどのようにやっているのか、これは陸上に比べてものすごく立ちおくれておると私は思うのです。これはものすごく重要な問題ですから政府も全力を挙げてやらなければならない問題だと私は思うのですが、こういう点についてはどこが所管してどういうことをいまやっているかということも聞いておきたいのです。  そこで、いま海洋汚染の話をしているのですけれども大臣、漁業被害が起きた場合に、この協定によりますと、その原因が韓国の採掘権者ならば韓国の法廷で日本の漁民が救済を求めなければならない、こういうぐあいになっているのですけれども、私は金大中事件を見た場合に、あるいは竹島問題を見た場合に、あるいは最近の朴政権の人権事件などを見た場合に、日本の被害を受けた漁民が韓国の裁判所に救済を求めて、はっきりその漁民が満足するような救済がいまの韓国の状況で行われるかどうか、信用しておられるのかどうかについて聞いておきたいのです。
  150. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いま御説でございますけれどもわが国の法廷で処理が可能なようになっているというので、その点をちょっと御説明させていただきます。(「要らない」と呼ぶ者あり)
  151. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は質問をこの私の原稿用紙で十枚書いてきたのですが、まだ四枚ぐらいしかいっていないのです。あと大分残っていますから、次回にひとつやらしていただきたいということで、もう予鈴が鳴りましたから、私の質問を終わりたいと思います。
  152. 竹内黎一

    竹内委員長 午後四時四十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後三時十一分休憩      ————◇—————     午後六時五十一分開議
  153. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。飯田忠雄君。
  154. 飯田忠雄

    飯田委員 本日、大変のどを痛めておりまして御迷惑かけますが、御了承ください。きょうはもっぱら法律問題についてお伺いいたしたいと思います。  まず、先般同僚議員の御質問に対しまして、一般国際法上の大陸だな、こういうことで大陸だなの定義が述べられたのを聞いております。そこで、一般国際法上の大陸だな、一般国際法上のというのは一九五八年四月二十九日ジュネーブで成立いたしました大陸棚条約の第一条に規定されておりますものを指すのか、あるいはそれ以外のものを指しておっしゃっているのでしょうか、お伺いいたします。
  155. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先生御存じのとおり、大陸だなの制度というのは一九四五年のトルーマン宣言以来始まったものでございます。そこで、この一九五八年の大陸棚条約の交渉のときにおきましては、それまでの国際慣行をいかに定義するかということに関して議論が行われまして、その結果、大陸棚条約の第一条以下の規定ができたわけでございます。その後、国際司法裁判所の判決等によりますと、この第一条から第三条までは留保を認めておらないというふうな理由もございまして、この第一条以下に規定しておりますところがそれまでの国際慣習法を法典化したのであるというような見解も一部にございますけれども、この大陸棚条約と申しますのは、必ずしも完全にそれまでの国際慣習を法典化したと言い切れない立法的な内容も含まれておりますし、また各国の意見が必ずしも一致しておらないという点もあるわけでございます。しかしながら、この条約第一条に定めております「領海の外にある海底区域」であるということ、あるいは第二条でございますけれども、沿岸国が「これを探査し及びその天然資源を開発するための主権的な権利を行使する。」とか、あるいは第二条の二項、三項等の規定は、これはそれまでの慣習を法典化したと言えると思うわけでございます。したがいまして、先日一般国際法の大陸だなと申しましたのは、いま申し上げたような意味での大陸だなでございます。
  156. 飯田忠雄

    飯田委員 ただいまの御説明によりますと、大体一九五五、六年ごろからの問題だと、こういうように承りましたが、国際法の一般的な通念として確立されておるかどうかという点につきまして、私、大変疑問に思う点が多いわけでございます。それは昭和五十年二月十七日の外務省でお出しになりました「日韓大陸棚協定について」という本がございます。その七ページの(三)というところを見ますと、「大陸棚に関する国際法が十分明確でない現在」云々と、こうございます。大陸だなの定義そのものが、必ずしも外務省においてもはっきりいたしていないということをお認めになっておるのではないか、こういうように受け取れるわけでございます。それからまた、七十五国会における外務委員会においての説明書がございまするが、これによりますというと、韓国大陸だなに対し自然延長論をとっている云々と、こういうことが記載されております。また、本日いろいろ本委員会でお話を承っておりますというと、中国も自然延長論をとっておる、こういうふうな御説明が同僚議員からもなされましたし、また政府委員からもなされたように思います。  そこで、こうした状態からいきまして、一般国際法として大陸だなの定義が定着した、確立されたということが果たして言い得るかどうか、こういう点に大変疑問を持つものでございますが、いかがでしょうか。
  157. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先ほど申し上げましたように、領海の外側の海底で、そこにおいて沿岸国がそこに付与されております天然資源を開発する主権的な権利を行使し得る地域という意味においては、すでに確立しておると言っていいかと思います。ただ、その範囲をどこまで認めるかということになりますと、五八年条約の場合には、たとえば水深二百メートルあるいはその開発可能の限度までというふうな規定になっておりますが、その後の国際慣習の変化から見まして、さらに技術的にも二百メートルよりもっと深い資源も開発できるというふうになりました。したがいまして、現在行われております国連海洋法会議におきましては、大陸だなという概念は、冒頭私が申し上げました概念自体は変わっておりませんけれども、その外縁をどこまで認めるかというふうな点については新しい議論が展開されておるわけでございます。
  158. 飯田忠雄

    飯田委員 ただいまの御説明で、現在各国がとっておるもののうちの多くの国のものについては理解できると思いますが、問題はわが国の近くにある国、たとえば朝鮮民主主義人民共和国それから中華人民共和国、こういう国々において、果たしていま述べられたような意味での大陸だなの定義をとっておるかどうか、この問題は明確にしておきませんと後ほど将来問題になると思います。これが内縁において領海は含まないという、そういう理解をいたしておるという何らか書いたもの、文書か何かございましょうか。
  159. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 特定文書が存在しておるかどうかは存じませんけれども、当然その領海の外にある海底区域であって沿岸国が主権的な権利を天然資源の開発に関して行使する地域であるという点については、すべての国が同意するところであろうと思います。
  160. 飯田忠雄

    飯田委員 国際法学者の見解はそうでございましょうね。しかし、こういう問題は国際法学者の、あるいは国際法を専攻した者の見解が通るとは限らないと思うのです。それで政府の方におきまして、こうした問題についてはっきりと確かめることもおやりになったかどうか、また確かめられるお考えはないかどうか、お伺いいたします。
  161. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 大陸だなの定義につきましては、先ほど申し上げましたように、第三次国連海洋法会議においても議論のあるところでございますが、その議論のとりあえずの結論をまとめたのが単一草案でございますけれども、その書きぶりによりましても、領海の外側にある地域ということ、そしてその地域における資源を沿岸国が主権的に開発できるということは、そのとおり規定されておるわけでございます。ただし、その範囲を二百海里までとするか、あるいはそれ以上の延長を認めるか等々の問題については、今後さらに海洋法会議において大いに議論のあるところだと思います。
  162. 飯田忠雄

    飯田委員 それでは質問を変えますが、今般の大陸棚協定のほかに一九五八年四月二十九日のジュネーブ条約がございますが、このジュネーブ条約わが国は加盟していないのですが、どういう理由で、どの部分が不満だから加盟していないのか、その点について御説明願います。
  163. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先生御指摘条約は公海における漁業の条約……(飯田委員「いや大陸だなの」と呼ぶ)大陸棚条約ですか。この大陸棚条約は先ほど申し上げましたように、ジュネーブ会議におきまして四つの条約が採択されたわけでございますが、その中の領海及び接続水域に関する条約と公海に関する条約というのは、それまでの一般国際法、慣習国際法を法典化した内容のものでございました。それに比べまして、大陸棚条約及び同時に採択されました公海における漁業に関する条約は相当たくさんの部分が立法的な内容を含んでおったものでございます。かつ、特にこの大陸棚条約に関しましては、海底のいわゆる定着性生物資源というものに関しまして沿岸国が主権的な権利を及ぼし得るという規定があるわけでございますが、この点についてはわが国は同意できませんでしたので、今日まで同条約に加入しておらないということでございます。
  164. 飯田忠雄

    飯田委員 それではこの問題は後にもう少し御質問します。  次に、日韓大陸棚共同開発協定というのがございますが、その第二条の第一項に共同開発区域の定義が掲げてあります。そして大陸だなが国際法上自明の理とされるのかどうか知りませんが、大陸だなの定義は示されておりません。定義が非常に不明確な形になっております。共同開発区域の定義はございますが、大陸だなの定義はないわけですね。そこで、従来いろいろ論議がなされ、また実際には大陸だなというのはきわめて近年において認められたものでございますが、そういう大陸だなの問題につきまして、国際法上自明の理だとしてこのまま認めて、この協定を認めていって、将来問題が残らないかどうか、この点についての御見解をお伺いいたします。
  165. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 この日韓大陸棚協定わが国及び韓国がともに対象といたしましたのは、先ほど私が申し上げましたような一般国際法上の大陸だなということでございます。したがいまして、特に問題が起こることはないというふうに考えます。
  166. 飯田忠雄

    飯田委員 最近わが国は領海十二海里法をつくろうといたしております。したがいまして、日韓大陸棚協定領海法との競合によります部分が生じておることは御存じのとおりだと思います。そこで、領海内はただいまの定義に従いまして大陸だなの範囲から除かれる、こういたしましょう。議論を進めるためにそれは認めることにいたしましょう。ところで、従来公海でありました部分、それは韓国大陸だなとしておる部分ですね。わが国もそこを大陸だなとした。こういう場合に、従来韓国大陸だなとしておった部分わが国の一方的な領海宣言で大陸だなでなくしてしまうということ、そういうことは一体有効かどうかということをお聞きしたいのです。これは韓国国内法の規定の問題もございますので、お伺いしておきたいわけです。
  167. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 そもそも大陸だなと申しますものは、ある国が明示的な行為とかあるいは他国との合意によって創設するものではございませんで、いわば自然的に備わったものというふうに考えられている地域でございますが、いずれにいたしましても、先生の御指摘の問題は、領海を三海里から十二海里に拡張するということが国際法的に正当化されるかどうかということによって決まる問題であろうと思うわけでございます。  現在、領海十二海里という点に関しましては、国際海峡との関連等におきまして国連海洋法会議でなお議論があるところでございますけれども、すでに六十カ国近くの国が領海を十二海里にいたしております。また、領海の幅員を十二海里にすること自体につきましては、すでに海洋法会議におきましてこれに何ら異議を唱える国はないという状態になっておりますので、わが国が今回行います領海十二海里の拡張というのは国際法的に見ましても正当化される行為であろうと思うわけでございます。  したがいまして、これは、たまたまわが国領海法という法律を今度制定するわけでございますけれども、その法律によって日韓大陸棚協定を変えるとかそういったものではございませんで、国際法の許される範囲におきましてわが国の領海を拡張するという一方的な主権的な行為であろうと思うわけでございます。それが国際法上許容されるといたしますと、領海の外にある海底というふうに一般国際法上のルールから定められております大陸だなというものの範囲は、自動的に修正されるということでございます。
  168. 飯田忠雄

    飯田委員 それでは一つ例を挙げますが、架空の例を挙げまして申しわけありませんが、わが国が領海を三十海里にいたしました場合に、これは国の自由ですからね、その問題となっておる地域は中に含まれてしまいますが、その場合でも韓国の権利はそこで消えてしまうのでしょうか、どうでしょう。
  169. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 現在の国際法から考えまして、領海の幅員を十二海里以上に拡張するということは認められないことであるというふうにわれわれは考えております。しかしながら、もし将来一般国際法がその点について変わりまして、世界各国が領海の幅員を十二海里以上に拡張して差し支えないということになった場合には、当然主権的行為としてそのように領海の幅員を拡張する。その場合にもしも大陸だなと重なる部分につきましては自動的に領海となるということは、今回の場合と同じことであろうと思います。
  170. 飯田忠雄

    飯田委員 一国が主権的な立場から大陸だなというものを認めて、それに権益を行使しておりますときに、他国が領海の幅を広げるということによってその権益を消滅させるということが一体国際法上本当に認められるのでしょうか、どうでしょう。
  171. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先生御存じのとおり、領海と申しますものは、歴史も非常に古く、これはまさにその国の主権が全面的に及ぶ領土と同じ区域でございます。したがいまして、この領海の幅員というものが国際法上で許容される限りにおきまして、それと重複いたします大陸だなというものが縮小するということは当然のことであろうというふうに考えます。
  172. 飯田忠雄

    飯田委員 どうもただいまの御答弁では納得がいかぬわけですが、韓国が主権行使をしておる、その韓国の主権行使を当方の一方的な措置でもって消すことができるかどうかということをお伺いしているわけです。どうでしょう。
  173. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 わが方の一方的行為でございましても、それが一般国際法に基づく行為である限りにおいて許容されることであろうと思います。
  174. 飯田忠雄

    飯田委員 ただいま国際法的な行為とおっしゃいましたが、そうした主権的行使をしておる地域に対して一方的に別の国がその権利を消してしまうということが認められるそういう国際法というものは、一体本当に確立されておりますか。確立されておるということであれば、先例をもってお示し願いたいのです。
  175. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 どのような先例があるか、私、具体的には知っておりませんけれども、国際法上の原理から見て当然そういうことであろうと思うわけでございます。
  176. 飯田忠雄

    飯田委員 この問題は国際法上の原理という言葉の問題では片づかない。もしそういうことで片づくなら、ソビエトと日本との間の問題も簡単に片づくと思うのですよ。片づかないのは、力の問題がございましょう。韓国の方において現在大陸だなとしておるところを、領海を広げることによって大陸だなでなくする部分がきわめて僅少であるから、あるいは国際交渉によっておさまるかもしれませんね。少なくともわが国韓国との国際交渉が必要ではありませんか。どうでしょう。
  177. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先ほど私申し上げましたように、わが国の領海幅員の拡張が国際法上妥当であるかどうかということによるものであろうと思いますが、もちろんわが国といたしましては、これが国際法上少なくともいずれの国からも異議が出ない行為であるという考えを持って今回領海の幅員を拡張するわけでございますが、当の相手国である韓国も全く同じような見解をとっておりまして、わが国が領海の幅員を十二海里にすること自体に何ら異議を唱えておりませんし、またその領海の拡大に伴いまして韓国が従来主権的権利を主張しておりました大陸だな地域がその部分だけへっ込むと申しますか、大陸だなではなくなるということに何ら異議を唱えていないということから見ましても、先ほど私の申し上げました国際法上の原理ということは明らかであろうと思うわけでございます。
  178. 飯田忠雄

    飯田委員 それでは質問の方向を変えますが、韓国国内法としまして海底鉱物資源開発法というのがあるということを資料で見ました。その中で大陸だなについての規定がございます。「大韓民国が行使することのできる凡ゆる権利が及ぶ大陸棚」こういう文言が使われております。「第一条の規定により大統領令で定める海底区域」これが「海底鉱物開発区域」、こうなっておりまして、その海底鉱物開発区域というものは大陸だなの中で決める。その大陸だなというのは「大韓民国が行使することのできる凡ゆる権利が及ぶ大陸棚」こうなっております。  そこで、「凡ゆる権利」というものには条約上の権利は含まれますか含まれませんか、どうですか。
  179. 中江要介

    ○中江政府委員 韓国国内法の解釈でございますので、われわれがこうであろうというふうに断定するわけにはまいらぬ、こう思います。
  180. 飯田忠雄

    飯田委員 そうしますと、韓国大陸だなの定義におきましてわが国と同じ考えを持っておるというふうに言うのは即断じゃないでしょうか。
  181. 大森誠一

    ○大森政府委員 韓国国会におきまして本件協定審議されました際に、韓国外務省韓国国会の外務委員会における説明におきまして、「大陸棚境界決定に関する国際法」という項目におきまして、大陸棚の概念として一九五八年の大陸棚条約第一条というものを援用いたしております。このことから考えましても、韓国側においてもこの大陸だなというものについては一般国際法に基づく概念によっている、かように考える次第でございます。
  182. 飯田忠雄

    飯田委員 ただいまのお話ですと、韓国がジュネーブ条約の第一条を引用しておる、こうおっしゃいましたね。その大陸だなの定義を引用しておるから、したがって韓国もジュネーブ条約である大陸棚条約の第一条の規定に従った概念に従っておる、こういうふうな御説明のように伺いましたが、それは国会における討論の問題じゃありませんか。そういう決議をいたしましたか。
  183. 大森誠一

    ○大森政府委員 決議とかそのような形ではございませんが、韓国外務省韓国委員会において説明している資料における引用でございます。
  184. 飯田忠雄

    飯田委員 韓国が実際に韓国の全体的な意思として大陸だなをどう考えておるかという問題は明らかになったとは言えないと思います。  その問題もその次にまだ問題が出ますので次に送りまして、次の質問に移りますが、現在共同開発区域としておる大陸だなは韓国大陸だなとされておるでしょうね。
  185. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 この共同開発区域は、韓国が自然の延長論に立ちまして自国の主権の及ぶ大陸だなであると主張しております区域と、わが国わが国に属する大陸だなと考えておる区域との重複した部分でございます。
  186. 飯田忠雄

    飯田委員 そうしますと、この共同開発区域は、韓国日本国との両国が自分の大陸だなだということを主張しておる地域だ、こういうことになると思いますが、国際法上のこういう問題、国際間の問題は根拠を明確にしておきませんと後でごたごたが起こると思います。そこで、どういうわけでこの地域が日本大陸だなであり、また韓国大陸だなであるか、自然延長論とおっしゃいましたが、自然延長論のどういう理論に基づいてそうなったのか、御説明願います。
  187. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 日韓間の見解の相違というのは、これを最も簡単に申し上げますと、わが国韓国との間にございます大陸だなが両国に同一の大陸だなであるかそうでないかということでございます。わが国といたしましては、この大陸だな地域は同一の大陸だなである、したがって中間線をもって境界画定をすることが妥当である、その中間線のわが方側はわが国に属する大陸だなであるという立場をとりましたのに対しまして、韓国側は、自然の延長が沖繩海溝まで延びておる、したがってその区域は韓国に帰属すべきであるという主張をしたということでございます。
  188. 飯田忠雄

    飯田委員 ただいま中間線という御説明がございましたが、この中間線という言葉が出てまいりますのは、ジュネーブの大陸棚条約の中に出てまいりますね。あの問題のほかに、ほかの条約で出ておる例がございますか。
  189. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 中間線をもって画定すべきであるという原則自体を定めた条約というのは、私ほかに知りませんが、中間線をもって境界を画定した条約というのはたくさんございます。
  190. 飯田忠雄

    飯田委員 そこで、今度の日韓共同開発区域ですが、これは元来中間線をもって決めるべきものをそうしないで共同開発区域にした、こういう意味でございますか。
  191. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 わが国としては中間線をもって画定してわが方に付属するべきであると考えておる区域があったわけでございますが、これと韓国の主張が重複いたしましたために、その両国の権利主張が重複いたします区域を、法律的な立場はそれぞれ留保しつつ、実際的な解決として共同開発区域としたということでございます。
  192. 飯田忠雄

    飯田委員 ある人の調査によりますと、これは韓国の自然延長の地域ではない、むしろ中国の自然延長の地域だ、こういうふうに研究発表しておられるものを私、見たことがございます。ここにも資料を持っていますが、そんなものは紹介せぬでもいいのですが、客観的に、地質学的に言いますと、この共同開発区域は韓国の自然延長の大陸だなじゃないのだ、むしろ中国の方なんだ、こう言われておりますが、そこへわが国韓国のものだというふうに認めることはいかがなものでございますか。
  193. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 大陸だなという概念には、地理学と申しますか、地質学と申しますか、そういう意味での大陸だなという概念と、国際法上の制度としての大陸だなという概念と二つがあると思うわけでございます。国際法上の大陸だなの特に自然の延長との関連におきましては、一九六九年の二月に北海の大陸だな案件につきまして国際司法裁判所が判決を下しておりますが、それによりますと次のように言っております。一国がその大陸だなに対し権利を認められるのは、その国の陸地領土、または領土主権が海中へ向かって自然に延長または拡張しているとみなされる事実に基づくことによるものであり、大陸だなの境界はかかる沿岸国の領土の自然の延長部分を侵害しないように画定されるべきであるとされている。すなわち、中国もあるいは韓国も同じ大陸だなに面しておるわけでございまして、この大陸だなが地質学的にいかなる発生原因でできたかということとは無関係に、このような沿岸国の陸地領土がその大陸だな区域に自然に延長しておるという事実に着目いたしまして、これを国際法上の大陸だなとみなすということでございます。したがいまして、中国と韓国との間に中間線を引きまして、それよりも韓国寄り及びわが国寄りの地域にこの共同開発区域は限定されているということでございます。
  194. 飯田忠雄

    飯田委員 中間線理論というのは、中国あるいは韓国あるいは北鮮の方は認めておるのでしょうか。
  195. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 中国の立場は、中間線よりはむしろ公平の原則というものによって大陸だなの境界を画定すべきであるということであると承知いたしております。  北朝鮮がこの点についてどういう見解を持っているかということは、私、つまびらかにいたしませんが、韓国立場は、もしも韓国と他の国が同一の大陸だなに相対しているときは中間線をとるべきである、しかしながら日本韓国に関しましては同一の大陸だなに相対しているわけではないから、したがって韓国の自然の延長が中間線を超えてより先まで及ぶべきである、こういう考え方であると了解しております。
  196. 飯田忠雄

    飯田委員 これはある場合には中間線理論をとり、ある場合には自然延長論をとるというやり方で、結局わが国が不利になる協定になっておるのではありませんか。
  197. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先ほど申し上げましたような立場から、韓国はある大陸だながわが国との間の同一の大陸だなであるという場合には中間線をとるべきであるという考えに立っておるわけでございまして、これに従いまして、今回御審議をいただいております北部境界画定に関する協定では中間線をもって境界を画定いたしておるわけでございます。南部の地域におきましては、先ほど申し上げましたように、日韓双方の主張が重複いたしまして、三年にわたる法律論争の結果解決を見なかった、したがってこの点については実際的な解決を図ったということでございます。
  198. 飯田忠雄

    飯田委員 大陸だなにつきましては定義があると思いますが、水深二百メートルということだけではなくて、実際にいろいろ権力を行使し得る、いろいろな仕事をやり得る範囲の海底というものも入れていいのだということはジュネーブ条約にも書いてありますね。そうしますと、多くの国がジュネーブ条約を認めておる以上は、そういうことは多数国の見解だと思うのですよ。そうしますと、現在共同開発区域になっております地域というものは、日本を含めて大陸だなじゃないか、つまり海は全部大陸だなじゃないか、そういう考えに立って初めて日本大陸だなと言えるでしょう。もしそうでないなら、韓国大陸だなということになってしまいますね。中国の大陸だなということになります。日本大陸だな主張ができぬじゃありませんか。そうなると大変困るのですが、日本大陸だな主張をする以上は、いま共同開発区域になっておるあの大陸だなは共同の大陸だなでしょう。どうですか。
  199. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 韓国とその法律論争と申しますか交渉をいたしておりました際に、わが国はいわゆる沖繩海溝というひだは大陸だなの論争の場合には無視できるひだであって、それを超えてわが国韓国が共通の大陸だなを持っておるという立場から議論をしたわけでございます。また、このわが国立場は、今度の南部協定の第二十八条にも明らかに書かれておりますように、依然としてわが国は堅持しておるわけでございます。ただ、韓国の主張がこれと異なりまして、両方の間に円満な解決が見出されませんでしたので、法的な立場立場として、別途実際的な解決を図るということにしたわけでございますから、わが国の基本的な立場というのは決していまでも変わっておりません。
  200. 飯田忠雄

    飯田委員 韓国の場合は、結局韓国の方の力に押されてやむなく妥協した、こういうことのように私はいまお聞きしましたが、近く中国の場合も出てくると思います。中国も出てきた場合に、中国はもっと先まで要求するでしょう。こういうような場合に、いまの共同開発区域というものは中国の大陸だなという主張も出てくると思います。そういう場合に対処する処置はどのような処置がなされておるんでございましょうか。
  201. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 先生先ほど韓国の力に押されてというふうにおっしゃいましたけれども、われわれは決してそのように考えておりません。両国の主張が重複いたしまして、三年間にわたる交渉の結果なお解決を見ませんでしたので、その法的立場をそれぞれたな上げにして実際的な解決を図るということでございまして、決して韓国の要求にわが方が屈したということではないわけでございます。その法律的な立場に関しましては、韓国の方では韓国が譲り過ぎたというふうな議論もあるわけでございます。  次に、中国の問題でございますけれども、中国としては、恐らく従来の中国の主張から考えまして、中間線ではなくて公平の原則による、それから自然の延長論というものによっておりますので、恐らく自然の延長の基礎に立つ論拠を展開してくるのではないかと思われます。これに対しましてわが国といたしましては、韓国と交渉いたしましたのと全く同様の立場から、わが国と中国は同一の大陸だなを有しているのである、したがって中間線が日中画国の大陸だなの境界画定線であるべきであるという立場から交渉をするわけでございます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕
  202. 飯田忠雄

    飯田委員 中国が将来大陸だな問題を提起いたしましたときには中間線理論でいく、それはわかりました。しかし、韓国との間ですでに先例をもって中間線という線をとらないで、日本は別の線をとったわけです。そうしますと、その先例が物を言うことに私はなると思いますが、いかがですか。
  203. 中江要介

    ○中江政府委員 日本と中国が一つ大陸だなをともにしているからその境界画定を話し合いでいたしましょうというその立場からいたしますと、日韓のときと同じように日本は中間線ということで主張していく、またその立場は留保されている、こういうことでございますが、受けて立つ方の中国は、先ほど来村田参事官が言っておりますように、韓国と同じように、あの大陸だなは日本と中国が相対して共有している大陸だなではなくて、その中に深いみぞがあって、中国の大陸だなはそのみぞのところまで及んでそこで終わっている、したがって日本の方からはこの大陸だなに対する権利主張はないんだ、こういう立場になるわけでございましょう。そういたしますと、全くいまの日韓の場合と同じような法律論争になる可能性は十分ございます。そういうふうに双方の権利主張がどちらとも決まらないで重複したときにそれをどう解決するかというのは全く話し合いでございまして、国によっては別な境界線を引く国もございます。日韓の場合には、いままで類例を見ませんけれども、その重なったところを共同開発しようという一つの実際的な解決方法をしたわけでございまして、これは一つの参考になる先例ではありますけれども、全く相手の国との話し合い次第であるということでありますので予見できない、こういうふうに私どもは考えております。
  204. 飯田忠雄

    飯田委員 大体交渉の経過はわかりましたが、お話を承っておりますと、どうもわが国の法律的主張というものに根拠がないのか、あるいはわが国の法律的主張に根拠があるんだけれども相手に負けてしまわざるを得ないのか、何か理由があるように思いますが、その根本的理由はどこにございましょうか。
  205. 中江要介

    ○中江政府委員 これは私自身が、当初の足かけ三年間の法律論争といいますか、法律専門家会議というものに直接参加いたしましたので、はっきり記憶していることでございますけれども日本が考えておる、つまりこの大陸だなは一つ大陸だなである、日本韓国が相対して共有している大陸だなであるという議論の国際法上の論拠と、韓国が言いますように、琉球列島の西北のところにあります海溝で大陸だなは終わっているんであって、日本からは大陸だなは主張できないという韓国の方の主張の国際法上の論拠と、これはまさしく、俗な言葉でいえば、大変いい勝負であったわけでございます。それがために、双方があらゆる資料あらゆる学説、あらゆる先例というものを駆使しまして、何回も何回も議論したわけですけれども、結局これは水かけ論になって決め手がない。そこで、私どもが考えましたのは、純粋に法律的な争いであるから、これに最もふさわしい解決の仕方の一つとしては、国際司法裁判所というものがあるから、そこで法律的に決着をつけてもらおう、こういうことを提案しておったわけでございます。ところが、これは先生も御承知のとおり、韓国は国際司法裁判所の義務的管轄権を受けておりませんので、日本が提訴したら当然韓国がこれに応訴するという義務がないわけでありますので、改めて日本韓国の間で特別合意書というものをつくって国際司法裁判所に持っていかなければいけない。その作業から始めますと、通例の期間で考えますと、数年はかかるような問題でございます。つまり、特別合意書の書き方によって、裁判の有利、不利が決まるようなむずかしい作業から始まるわけです。それを裁判所で取り上げてもらったといたしましても、さらに二、三年はかかるであろう。そうすると、十年ぐらいの期間を見なければいけない。また、この裁判にかけますに当たりましては大変な費用がかかるわけです、鑑定講をつくったりあるいはそのための資料集めをしたり。それだけの金をかけ期間をかけて、そして法律的な決着を待って、その上で資源を開発するという考え方と、それだけの時間と経費は、むしろこの際そういうものに頼らずに、双方の主張が全く五分五分ぐらいにいい勝負に重なっているのであれば、それを共同で開発するというのも一つのアイデアではないかということで、法律論争の結果、両方で合意いたしまして、今度のような共同開発ということに落ちついたわけでございまして、どちらの法律論が勝ったということもなければ負けたということもない。どちらかの立場に立ちますと、譲歩し過ぎということになりますし、もう一方の立場に立ちましても、譲歩し過ぎということになる。で、その法律論争はとめどもございませんので、それはひとつたな上げにしようというのが協定第二十八条ということでございます。
  206. 飯田忠雄

    飯田委員 結局、法律論争ではうまくいかなかったので、力に属したということではありませんか。私はこの点について、外交方針として憲法の前文に書かれておる文言を御存じでしょうか、その文言に従って外交交渉をしておいででしょうか、ちょっとお伺いします。
  207. 中江要介

    ○中江政府委員 私は、憲法の前文の特にどの条項ということをすぐには思い当たりませんけれども、私ども交渉いたしました者といたしまして、特に憲法の精神に反したということは考えておりませんし、むしろ諸外国との信頼関係に基づいて、一つの法律紛争を話し合いによって実際的に解決したという意味で、その精神に合致しているとすら思っておる次第でございます。
  208. 飯田忠雄

    飯田委員 私は、日本外交が大変孤立外交である点に欠点があるのではないかと思います。憲法を読んでみましょう。憲法の前文には、「日本國民は、恒久の平和を念願し、人間相互の關係を支配する崇高な理想を深く自覺するのであつて、平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷從、壓迫と偏狹を地上から永遠に除去しようと努めてみる國際社會において、名譽ある地位を占めたいと思ふ。」つまり国際社会において共同、連帯ですね、そういう努力がいままで払われてきたかどうか、私はここに疑問があると思うんです。この国際社会の共同の力でもって正義を貫く、そういう外交方針が本当になされてきたかどうか、この点はどうでしょう。
  209. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま飯田先生のお読みになりました憲法の前文の精神から見ましてこの具体的な日韓大陸棚協定、特に南部共同開発協定という解決の仕方をそれに照らしてみますと、私はそういう考え方に沿ったものである、こういうふうに思います。  で、この南部共同開発協定にその憲法の前文の精神と違うところがもしありということならば、これは問題でございましょうが、私どもはそうは思っておらない。なぜかなれば、この法律的な紛争を解決するために日韓双方が、それぞれ独立の主権国としてお互いに相手の国際法上の論拠というものに深く耳を傾けて、三年間にわたって真摯な議論をしたわけでございまして、その後それがけんか別れになったかというとそうではございませんで、     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 お互いに日韓両国にまたがっている大陸だなの地下資源である石油及び天然ガス資源というものを有効利用するという実際的な目的のもとに、法律的な立場をたな上げにして共同開発する、日韓が協力して開発する。またそれに当たりましては、中国との関係には深い配慮をいたしまして、中国の権利を害しないように細心の注意を払い、またそのことにつきましては機会あるごとに中国側に説明し理解を求めている。しかし残念ながら中国の考え方は、われわれの考え方とは違った立場である。その考えが違うときには話し合いによって解決するということで、私どもは毎回中国との話し合いを働きかけておるけれども、いままで中国は日本本件について話し合おうと言ってきていない。もし中国にいつの日か話し合う用意があれば、これは日韓で話し合いましたと同じように、日中でも話し合いによってこの立場の違いというものを狭めるなり解決の道を見い出す、こういう精神で望んでおるわけでございまして、憲法の前文のいま御指摘の条項には沿った解決である、こういうふうに思っております。
  210. 飯田忠雄

    飯田委員 ジュネーブ条約大陸棚条約わが国は加盟しない、それはどうも明確な理由なくして加盟なさっておらぬようですが、いろいろ外交をやる上において、韓国と対等でやるという場合に、こちらが武力は放棄しているんですから、武力のほかの諸外国の精神的な援助が必要ではないか。あらゆる各国の援助を得て交渉に臨むということであれば、これは相手がどんなに強欲でも、そんなに無理なことはできないと私は思います。ところが、これまでの外交を見てみますと、常に個対個の外交でやる、集団対個の外交ではなかった。今日のソ連との外交でも同じです、日本という個とソ連という個との争いですから。そうであるならば力が強い方が勝ちます。その力の弱いのを何でカバーするかという問題、このことについて政府は本当にお考えになって努力されてきたかどうか、この点どうです。
  211. 中江要介

    ○中江政府委員 大変基本的な広い次元の問題でございますので、私が御答弁申し上げるのは適当かどうか知りませんが、この大陸棚協定に関連して再び御説明できるといたしますと、これは韓国との間で話をしますときに、別に韓国の軍事力が背景にあったとか、あるいは日本はまる腰であるからどうであるとか、そういうことは全く双方の念頭にはなかったことでございまして、冷静に法律論争をいたしました。この法律論争の背景といたしまして、国際社会のいろいろの例もお互いに引用しながらやりましたし、またそのときにどこか第三国を引っ張ってきて応援をするというようなこともなかったわけでございます。日韓間の紛争の解決の仕方としては、日韓正常化のときに交わされました紛争の解決に関する交換公文によりますと、日韓両国で紛争がありましたときには、特別の合意があればそれによるけれども、それがなければ外交交渉により解決する、それによっても解決できなければ調停による、こういう筋書きがあるわけでございまして、まさしくこの日韓両国で合意いたしました紛争解決の交換公文の精神にも沿って外交交渉によってこういう解決をしたわけでございまして、この解決の過程においていま先生が御心配になりましたようなそういうことは一切なかったということを、私は当事者として確信を持って申し上げることができるわけでございます。
  212. 飯田忠雄

    飯田委員 法律論争で解決するということでありまするならば、法律論争は対等な形であり、対等な結果が出てこなければならぬと私は考えるわけです。この日韓条約を見ますと、決して対等な結果が出ておりません。ジュネーブ条約ならば中間線でいけるものが、そうでない結果が生じております。そういう点で私は御説明では納得いかないわけですが、この問題は繰り返しておりましても時間がたちますので、このくらいにして次に進みます。  このたびわが国が領海を十二海里にいたしましたために、従来の共同開発区域で領海内に入った部分がございますことは御承知のとおりです。この部分につきましては大陸だなから自然に外れる、こういう御議論でございまするが、私は自然に外れるといったようなことはないと思うのです。たとえば、いまここで韓国が権力を行使してそこで仕事をやっておる、日本が十二海里に広げた、その分が急に自然に韓国の効力がなくなる、そういうことはとうてい考えられない。これは国際間の問題ですから、相手のある問題です。そこで、外れるとするならば外れたということを明確にしておく必要があります。明確にしておきませんと後で必ず問題が起こります。それでどういう方法で明確になさったのでしょうか、お尋ねします。
  213. 中江要介

    ○中江政府委員 これはただいまの御質疑の冒頭のところで先生から御質問がございました大陸だなの定義というところにも関連するわけでございまして、政府側から御説明申し上げましたように、一般国際法上確立した大陸だなの始まる点というのは領海の外縁からであるということになっておるわけでございます。他方領海の幅は、それが国際法上許容される範囲内である限り、これは主権国の一方的行為であって、いかなる国との合意にもかかわらせるべきような性質の問題ではない。つまり、領海というものの範囲の主張は、これは現行一般国際法によりますれば、十二海里までの範囲に領海を拡張することについてはいかなる国も異議を唱えるような国際社会ではなくなっている。一応一般国際法上十二海里までは一方的に拡張してもその領海主張は国際法上是認される。こういう状態のもとで日本が仮に領海を十二海里に拡張いたしますと、その十二海里の拡張そのものに対してはいかなる国も異議が唱えられない、そういう国際社会になっている。  そういたしますと、他方大陸だなが、国際制度上の定義といたしまして領海の外縁から大陸だなになる、こういうことになっておりますと、当然の結果として、その十二海里の領海の外縁から始まって初めて大陸だなというものが主張できる。それは日本が主張する場合であれ相手国日本の領海の外縁まで主張する場合であれ同じことであるわけでございます。したがって、日本が十二海里に領海を拡張いたしますことが決まりましたその瞬間から国際法上の大陸だなという性格を失う部分が今回の場合出てくる、その部分について、これは自明の理であるから、つまり私が申し上げましたように領海の拡張というのは一国の一方的な行為であらねばならぬ、そういう強い権利主張でありますので、それはそれで国際法上認められる。しかし、技術的にどこからどこまでかということについて相手の国がわからないというようなことでは困るではないか、それはやはりはっきりしておいた方がいいだろうということで、先般来問題になっております口上書を往復するに当たりまして、その結果として大陸だなでなくなる部分、つまり日本の領海になる部分はここからここまでであるということを明示いたしまして、その日本見解について韓国政府見解いかんと言いましたら、全く同じである。こういう口上書を往復したわけでございますので、いまや客観的に日本の領海が十二海里に拡張されました時点においては、どの部分大陸だなであってどの部分大陸だなでなくなるかということは明らかになっている、こういうふうに了解しているわけでございます。
  214. 飯田忠雄

    飯田委員 国際間におきまして主観的解釈は私は通らないと思うのです。客観的事実だけが問題になると思います。  それで、韓国日本の間において、この条約文を見ますと、幾つかの座標を設けまして、座標を結んだ線が共同開発区域だ、こういうようになっております。そうした共同開発区域は客観的に実現するわけです。客観的に実現をしておるものを主観的解釈で覆すということになりますと、これは後々大変問題を残すと思います。そこで口上書でおやりになったと思います。口上書でその間の関係を明らかにしようとなさったと思いますが、この口上書というのは一体国際法上どういう法的効果を持つでしょうか。
  215. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 口上書と名づけられる文書がそれ自体としてどういう法律的な性格あるいは効力を持つかということは、一概には言えないわけでございまして、その口上書の中に記載されておる内容いかんによることであろうかと思います。今回の場合には、わが国韓国の間で往復いたしました口上書は、それによって創設的な合意を行うというものではございませんで、双方の見解を確認するという文書でございます。したがいまして、わが国あるいは韓国見解を明確に記録した文書であるということでございますが、両国間の合意文書といったようなものではございません。
  216. 飯田忠雄

    飯田委員 このほかに交換公文もございますね。掘削に関する交換公文、これは交換公文となっておりまして、発送する方から受ける方、はっきり名前が示してありますな。今度の口上書では相手の名は韓国の外務部、当方は日本政府でしたか、外務省でしたか、大使館でしたか、そういうものの間の話し合いでしょう。大使館の見解韓国の外務部の見解が、たまたま法律解釈というよりも大陸だなの定義で一致したというだけなんです。そういうものが一致したから条約といったようなものが、つまり国会批准を経た条約が左右されるかどうか。どうですか、この問題。
  217. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 口上書と申しますのは、外交機関の間で取り交わされる文書でございますので、通常、大使館と相手国外務省といった間で取り交わされるわけでございますが、今回の口上書をお読みいただきますと明確に書いてありますように、これは大使館と韓国外務部との間の文書ではございますけれども、そこに述べられております見解は、大使館の見解あるいは先方の外務省見解ではございませんで、日本政府見解を先方に伝達し、また韓国政府見解をわれわれとしては受領したわけでございます。
  218. 飯田忠雄

    飯田委員 この口上書は韓国国会によって批准されておるでしょうか。
  219. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 これは先ほど申し上げましたように、両国間の合意文書ではございませんので、承認の対象となる性格の文書ではございません。
  220. 飯田忠雄

    飯田委員 韓国国会承認の対象としないもので韓国国会承認した内容協定、これを左右することができるかどうか大変私は疑問だと思います。また条約と一体をなすかどうかという問題も疑問だと思います。そうなりますと、こういう口上書をもらったからというて安心しておれるかどうか。どうです。この問題は非常に不安だと思いますが。
  221. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど私が申し上げましたように、この口上書は、日本の領海が拡張された結果どの部分大陸だなでなくなるかということを明確に確認するために、念のために双方の政府見解を示し合ったということで、そのもとになるところは何かと言いますと、これは再々申し上げておりますように、大陸だなというものをどう認識していただくかということでございまして、いまの先生の御質問の趣旨から申し上げますと、韓国国会がこの協定承認いたしましたときに、この協定で言う大陸だなというのは、この協定そのものに定義はないけれども、これは一般国際法上の大陸だなというものに関する協定であるということについて承認をしておるわけでございます。また、私どもがいま御審議をお願いしておりますのも、この協定の中の大陸だなとは何かと先ほど御質問がございまして、私どもはこれは一般国際法上の大陸だな、それはどういうものかと言いますと、領海の外縁から公海の方向に向かって延びていく特定の海底の土地の部分であるということで、それは当然の前提としてこの協定締結されておるわけでございますので、その国際法上の概念としての大陸だなそのものに変更がある、つまり領海部分がはみ出してきた、そしてまたその領海主張というのが国際法上合法的であるということになりますと、当然の帰結としてその大陸だなの部分が変更を受けるということは、この協定の中に一般国際法上の制度としての大陸だなというものを導入しているというこの協定そのものの性格からくるわけでございまして、改めて口上書で何かする、あるいは別途の文書で何かしなければ動かせない、そういう定義として大陸だなの、この場合ですと共同開発区域の区分をしているわけではないわけで、そのことは直線によって囲まれた区域が共同開発区域というふうには書いてはなくて、直線で囲まれた大陸だなの部分、区域が共同開発区域である、あくまでも国際法上の制度で、大陸だなである部分についての共同開発であるということが協定自身の中から明らかになっている。したがって、今度の口上書の往復というのは、念のための確認のものであるということを再々申し上げて、換言いたしますと、新たな合意でもなければ、したがって、国会承認の対象にしなければ効力を生じないというようなものではない、こういうことを御説明しているわけでございます。
  222. 飯田忠雄

    飯田委員 いろいろお話を承りましたが、これは結局は主観的な御見解ではないか。韓国国内法は、大統領の決め方によってどうでもなる問題でございます。この大陸だなの決め方あるいはまた共同開発区域の決め方にしましても、韓国国内法では決してただいま御説明を受けるような形でつくられてはいないように思うのですよ。その辺のところが大変私は問題だと思います。当方でどんなに主観的解釈を並べましても、客観的な問題がどうなるかということが重要だと私は思います。この条約をこのままわが国批准したといたしましょう。これには座標が決められておりまして線が引かれております。それは客観的にわが国が認めた地域なんです。たとえ領海内であろうと領海外であろうと、そんなことは無関係なんです。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 現在大陸だなであることは間違いないのですから。現在大陸だなに座標を設けて線を引っ張った。その地域、これは客観的に整理した地域ではありません。そこへわが国が領海十二海里にしたというだけの当方の一方的な行為でそうした客観的な問題が変更を加えられる、韓国という相手のある問題について変更が加えられる、そういう解釈はやはり不安が残るのではないか、主観的な解釈であって不安が残るのではないかと思われます。どうしてもこの問題は明確にしておく必要があると思いますが、この問題については後でまた十分御検討を願ってお聞きしたいと思いますので、留保いたしておきたいと思います。委員長、留保していきます。  私、もう時間がないので、ぼつぼつやめようと思います。きょう質問の半分しかまだ終わっておりませんので残念ですけれども、八時でやめよというお話なので、あと五分しかありませんから、これ以上進めることができません。  それで私はもう一つお聞きしたいのは、交換公文と口上書と一体どう違うのか、なぜこの場合に交換公文になさらないで口上書になさったのか、この点についての御見解を最後にお伺いしまして、あとはこの次にいたしたい、こう思います。
  223. 村田良平

    ○村田(良)政府委員 交換公文は通常二つの国の間で創設的な合意を行います場合に用いられる文書でございますが、先ほど来御説明申し上げておりますような理由によりまして、今回の行為は日韓両国政府見解を確認するということで、合意をするという趣旨ではございませんので、それに最も適当な外交文書の形は何かということを考えまして、口上書が最も妥当であろうということで口上書の形式を用いた次第でございます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  224. 飯田忠雄

    飯田委員 この問題はまた後ほどゆっくり議論して、お話を承りたいと思います。きょうは時間がありませんので留保したいのですが、委員長、よろしくお願いします。  これをもって私のきょうの質問は終わります。
  225. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、明二十三日土曜日午前九時三十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十九分散会