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1977-04-27 第80回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月二十七日(水曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 山田 太郎君    理事 木野 晴夫君 理事 佐々木義武君    理事 中村 弘海君 理事 宮崎 茂一君    理事 石野 久男君 理事 日野 市朗君    理事 貝沼 次郎君 理事 小宮 武喜君       伊藤宗一郎君    竹中 修一君       玉生 孝久君    塚原 俊平君       原田昇左右君    与謝野 馨君       渡辺 栄一君    安島 友義君       上坂  昇君    近江巳記夫君       瀬崎 博義君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      宇野 宗佑君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     小山  実君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         科学技術庁原子         力安全局次長  佐藤 兼二君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君  委員外出席者         参  考  人         (日本原子力研         究所原子炉化学         部研究員)   市川富士夫君         参  考  人         (東京大学教         授)      内田 秀雄君         参  考  人         (電気事業連合         会事務局長)  岸田 幸一君         参  考  人         (大阪大学理学         部講師)    久米三四郎君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団副         理事長)    瀬川 正男君         参  考  人         (芝浦工業大学         教授)     水戸  巖君     ————————————— 四月二十一日  原子力基本法等の一部を改正する法律案内閣  提出第二五号) 同月二十二日  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出第一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(核燃料サイクル  の確立及び原子力安全確保に関する問題)      ————◇—————
  2. 山田太郎

    山田委員長 これより会議を開きます。  科学枝術振興対策に関する件について調査を進めます。  核燃料サイクル確立及び原子力安全確保に関する問題調査のため、本日は、日本原子力研究所原子炉化学部燃焼率測定開発室研究員市川富士夫君、東京大学教授内田秀雄君、電気事業連合会事務局長岸田幸一君、大阪大学講師久米三四郎君、動力炉・核燃料開発事業団理事長瀬川正男君及び芝浦工業大学教授水戸厳君、以上六名の方方に参考人として御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、参考人の御意見の開陳は、お一人十分ないし十五分程度にお願いすることとし、後刻、各委員から質疑の際、十分お答えくださるようお願いいたします。  それでは、最初に、内田参考人よりお願いをいたします。内田参考人
  3. 内田秀雄

    内田参考人 東京大学内田秀雄でございます。簡単に陳述申し上げます。  四月二十四日にわが国高速増殖実験炉「常陽」が臨界に達し、高速炉実験時代に入ることになりましたことは、御同慶の至りでございます。  さて、わが国が自主的に開発しましたこのFBRは、ようやく出力上昇に入りましたが、これがわが国エネルギー問題解決の原動力を発揮するには原型炉実用炉への開発を強力に推進する必要があり、それにはまだ相当の年月を要すると思われます。  わが国エネルギー危機については、いまさら申し上げるまでもございませんが、原子力開発が準国産エネルギーとして一次エネルギーの重要な部分を占めには、わが国はもちろん、世界的にもその実証性が高いものと認められております軽水炉開発を精力的に進める必要がありますのはもちろんであります。しかし、軽水炉から高速炉への移行に支障を来さないような核燃料サイクル確立核燃料確保が大切であります。  わが国では、一次エネルギーのうち石油への依存度を低下させていく必要がありますが、これに代替する大部分原子力によって確保されなければなりません。しかし、原子力開発軽水炉から高速炉への容易に移行できるという考えを持つことはまことに危険であります。軽水炉から高速炉への移り変わりの段階におきます燃料処理推進はもちろんですが、軽水炉以外の他の型式の原子炉の選択が必要であるか否かについて改めて綿密な検討が行われ、必要な方策確立されることが緊要のように思われます。  いずれにいたしましても、軽水型原子力発電所開発を強力に進めることをいまにして行うことなくしては、ここ十年のエネルギー危機を乗り越え二十一世紀を迎えることは、わが国にとってきわめてむずかしいと思うのであります。そのためには、軽水型原子力発電施設の安全の確保信頼性向上がまず大切であることは申すまでもありませんので、これについて私見を述べたいと思います。  御存じのように、運転が認められておりますわが国原子力発電所は、東海発電所ガス炉を含めて十三基、計約七百四十二万キロワット、建設中のもの十一基、計約九百二十万キロワット、総計約手六百六十三万キロワットであります。敦賀炉運転開始以来、すでに七年の経験を経ておりますが、世界において運転中のものは八千四百万キロワット以上と見られ、その大部分軽水炉であります。  私は、原子炉の安全は国際的な視野に立って考えるべきであり、それの上にわが国特殊性を加味し、わが国原子炉安全確保方策確立させ、広く国民皆さん理解を得ることが大切と思っております。  国際連合専門機関であります国際原子力機関においては、一九七四年以来米国、ソ連を含む十一カ国と関連する国際的機関の代表が相寄り、原子力発電所国際安全基準策定作業をしております。わが国もこれに積極的に参加しておりますが、安全基準基本となります五つのコード・オブ・プラクティスが本年中には決まる段階になっております。  こういう動向を踏まえ、また、十年にわたるわが国経験をもとにして、わが国でも原子力発電所安全確保に関する指針基準等整備が昨今急速に進められてきております。  通称ALAPあるいはALARAの適用と申しておりますように、通常運転時の敷地外放射線影響を実行可能な限り低くするという趣旨で、全身五ミリレム毎年、甲状腺十五ミリレム毎年の設計及び管理目標適用軽水型動力炉に対してわが国で行われております。この目標値サイトごとにとられておりますので、これは外国には例を見ない厳しい規制であります。しかし、この目標わが国では現実に達成されておりますことを考えましても、わが国原子力発電所安全性の高いことはおわかりいただけることと思います。  しかし、昨今世界の一部において原子力安全の問題が再び注目を浴びておりますのは、本来の原子力平和利用に関する安全の問題ではなく、大部分核拡散防止の見地から見た安全問題であると思われますので、この両者は混同することなく考えるべきであります。  一方、発電所の数もふえ、運転実績が積み重ねられるにつれ、幾つか問題のある故障トラブルが起きてまいりました。これらは本質的には有意な放射能放出を伴う原子炉事故に結びつくことではありませんが、原子力発電所稼働率を低下させることにもなり、また、信頼性支障を来すことにもなることであり、残念でございます。  加圧水型炉蒸気発生器蒸発管腐食の問題と、沸騰水型炉応力腐食の問題が主なトラブルであります。いずれも同型炉の初期に建設されたものに多く発生しており、後続炉ではその経験を踏まえて適切な対策がとられておりますので、後続炉での故障は少くなっております。  蒸気発生器蒸発管腐食の問題は、二次冷却水水処理燐酸ソーダ処理からボラタイル処理に変えたことと、定期点検時における渦電流探傷試験検査を綿密に行うことによって早期欠陥のある管の発見に努めることを行うことにいたしておりますので、この問題はかなり解決を見たと思っております。沸騰水型炉応力腐食の問題も、非破壊検査によって早期発見に努め、もし欠陥発見された場合には適切な修理を施すとともに、割れ感受性の低い材料の採用などによって応力腐食割れの低減に努めております。  原子炉安全の対策の特色として、起こるとは思えないような大きな事故発生を仮定しても安全が確保できるように工学的安全施設を備えることが行われております。いわゆるECCS、非常用炉心冷却設備がその代表的なものでありますが、これに関するわが国研究原子力研究所ROSA計画を初め、きわめて実のある成果を上げております。  また、アメリカ、スウェーデン、西ドイツなどとの国際研究協力も強力に進められております。最近はアメリカ西ドイツフランス等各国からわが国安全研究成果の提供が求められたり、さらにはわが国において研究分担実施をするように要望されるようになってきており、わが国安全研究レベルの高いことが世界的に認められております。  原子力発電所建設を急速に推進するに当たり、安全を確保信頼性向上しながらこの目的を達成するためには、先ほど申し上げました基準指針等整備行政組織強力化を進めるとともに、いままでの経験の上に原子炉施設標準化を行うことが望まれていると思うのであります。標準化を行うことは、単に建設期間の削減が期待できるばかりでなく、安全性信頼性向上のために望ましいことと思います。  原子炉安全の確保には、原子炉安全についての正しい理解国民の広い層から得られることが特に大切でありますが、電力事業者側においては、一貫した品質保証QA確立が必要であり、一方、国の安全規制行政の中に安全政策とその適用一貫性確立されるごとが必要と思います。  以上で私の陳述を終ります。ありがとうございました。
  4. 山田太郎

    山田委員長 ありがとうございました。  次に、久米参考人にお願いいたします。
  5. 久米三四郎

    久米参考人 大阪大学久米でございます。  私は、これまで大学で放射能に関します基礎的な研究と教育に従事してまいりました。いまから七、八年前から原子力発電所や再処理施設の設置に反対しております各地住民方々と一緒に原子力発電危険性についていろいろ勉強をしてまいりました。そういう立場から以下のことを申し述べたいと思います。  まず、現在の軽水炉を主にいたしました原子力発電危険性の問題でございます。現在、わが国営業運転に入っております原子力発電所は惨たんたる設備利用率であるということはすでに御存じのとおりであります。その原因は、結局は各地原子力発電所で続発しております事故原因であること、これもまた周知の事実でございます。そういう事故について私が考えていることを申し述べたいと思います。  まず第一点は、そうした事故特徴でございますが、これまで発生しました幾つかの例を調べました結果、次のような特徴があると思います。  まず第一は、これらの事故原子力発電所安全性確保する点につきまして非常に重要な部分発生しておるということであります。推進側方々は、事故という言葉を避けて、故障であるとかトラブルであるとか、そういった表現をなさっておりますが、この事故性格は非常に重要なものであると私は考えております。  第二は、そうした事故本当原因がわかっていないということであります。したがって、その対策も全く場当たり的なものである。したがって、当然でございますが事故の再発は必至であるということ、これも皆さん方これまでの経過をお調べになると非常に歴然とすると思います。  三番目の特徴は、これは原子力産業に特有の問題でございますが、非常に強い放射線にさらされます。したがいまして、これはもちろん原子炉をとめたときでも残っております放射能による放射線でございますが、そういう強い放射線のために事故点検、補修といった作業を正確に行うことが非常に困難であります。それだけではなく、その作業に従事いたします作業者放射線被曝が激増しておるという事実、これもまたすでに国会その他で明らかになったとおりであります。  以上が事故特徴でございますが、その次はそうした事故をもたらした原因はどこにあるかということでございます。  これは時間がございませんので余り詳しいことは申しませんが、私が考えておりますのは、結論といたしましては、一九六〇年の中ごろから軽水炉技術的にも経済的にもすでに実用段階に達した、こういう米国のメーカーあるいは政府宣伝、それを信じて現在までの原子力開発を進めてきたこと、それが根本的な原因であると感じております。  その次は、そういう事故危険性を増幅しておる要因を指摘しなければなりませんそれは一口に申しまして秘密主義でございます。原子力発電では、ほかの産業に比べまして特に安全宣伝が先行しております。それは、先ほど申しましたように、原子力発電はすでに実用段階に達したと非常に大がかりな宣伝が行われて、それから開発が始まっておりますために、そういった傾向を強めているわけであります。したがいまして、そうした安全宣伝、これは実証実験を抜きにした安全宣伝が多うございますが、そういったことと矛盾した結果が現場あるいは研究段階で出てきた場合に、そういったデータをひた隠しにするといった傾向が出てきておるわけであります。しかも、これはほかの企業にも見られますが、それ以上に行政が陰に陽にその事故隠しに加担をしておるという事実、これはわが国だけではなくてアメリカその他諸外国でも次々と内部告発をされておる例を見れば明らかであります。そういった原子力産業にとって非常に特徴的な秘密主義が横行しております。これが事故原因究明を妨げ、そして本当原因発見することを妨げ、したがって対策をとることを妨げておるというふうに感じます。  具体的には、現場では事故があったことを隠す。これは国会でも明らかになりましたが、いまから四年ほど前に起こりました美浜一号でのあのすさまじい燃料折損事故の隠匿でございます。もう一つは、そうした事故があったときにいろいろな貴重なデータ現場では得られますが、そうしたデータが、一般人はもちろんのこと、その道の専門家に対してすらごく一部の限られた政府に近い方々を除いては全く出てこないということであります。これは何人もの専門家の方がいろいろ専門雑誌にも書いておられますからお読みになっていただきたいと思いますが、そうした状況、ごく簡単な新聞記事でしか私たちがそういうデータを知ることができないという非常に困った状態ができておるわけであります。  こうしたことでは、これは技術の鉄則でございますが、本当にその事故を乗り越えて新しくより健全な技術確立することはむずかしいと思いますので、特にその点を強調したいと思います。  以上が最近多発しております各地原子力発電所特徴、背景、そしてその危険性を増幅する要因でございますが、この際、特に国会皆さん方にお願いしたいことがございます。それはいわゆる放射線被曝線量の問題でございます。  平常運転時にも原子力発電所煙突放水口から放射能が環境にまき散らされておること、これもすでに周知の事実でございますが、そうした際によく推進派方々は、煙突や水から出ておる分は許容量の百分の一程度である、ですから問題にならない、こういう見解を述べておられるわけでございますが、その許容量というのは現在のところは法律で、これは科学技術庁の告示という形で出ておりますが、一年間に五百ミリレムという値でございます。これは国際勧告にもあるということで依然としてこれを採用しておられるわけでございますが、もしも本当にその許容量の百分の一に落とせるのだったら、どうしてそういう高いレベル許容線量をとどめておるのかというのが私たちのこれまでの主張でございまして、それに対しましてこの一月、アメリカ環境庁が実に二十分の一に引き下げて、一年間に二十五ミリレムという値を法制上設定いたしたわけであります。日ごろアメリカに比べてずっと厳しい態度をとり続けるとか言っておられますけれども、そういう決定が一月に出たにもかかわらず、原子力委員会あるいは政府関係の方でこういう問題が審議されたという報道を私たちは聞いておりません。もしもそういうことをやっておられたら私の誤りでございますが、ぜひこうした委員会でそういう許容線量の問題もあわせて議論をしていただきたいと思う。これはアメリカ環境庁ですから、一般住民に対する許容線量だけでございますが、当然職業人、いわゆる原子力発電所内で働く労働者についても同じような考え方適用されるべきだろうと思います。この問題は原子力発電の将来を左右する非常に重要な問題でございますので、御審議いただければ幸いと思います。  以上、現在の原子力発電所軽水炉中心にいたします原子力発電の若干の問題点を述べましたが、きょうのテーマには核燃料サイクルということもございますので、そのことに関しまして少し結論だけ申し述べたいと思います。  原子力発電所軽水炉であれ何であれ、それを危険なものにしておる重要な問題の一つは、言うまでもありませんが、原子力発電所は見かけは非常にりっぱでございます。これは見学に行かれた方はおわかりだと思います。しかし、その内実はトイレットなしのマンションであるということはいろいろな方々から指摘されているとおりであります。つまり、原子力発電所で日々大量につくり出されます死の灰あるいはプルトニウム、そういった放射性毒物の始末のめどが全く立っていないのであります。にもかかわらず、マンションだけが次から次へと建設されるという野蛮な開発が進められているわけであります。そのトイレをつくるむずかしさということは、実はこのトイレの必要が数十年にわたって世界各国で強調されておるにもかかわらず、現在まで全くその進展を見ていないということの中にその困難性があらわれているわけであります。  その理由を挙げますと、まず第一は大量の放射性毒物処理をいたします、そういうことに伴う作業者あるいは周辺への悪い影響を完全に防ぐということが非常に困難である。それから第二は、再処理によって出てきますいわゆる放射性廃棄物と呼ばれているものでございますが、これは廃棄物と名づけられてはおりますが、実は廃棄する当ても方法も全くわからないという、そういった廃棄物でございます。その対策は全く五里霧中であるということ。それから第三番目は、これは、人間が工場的な規模でつくり出した物質の中では最高の毒物と称せられておりますプルトニウム、それを大量につくるだけではなくて、そのプルトニウムが、皆さん御存じのとおり、核爆発性を備えておるということから、その完全な安全管理ということはほとんど絶望的である、これが現在の世界結論でございます。今回のカーター政策もそこから出てきたというふうに私たちは感じておるわけであります。  そういった困難でトイレットなしのマンションというのが続いておるわけでございますけれども、現在、核燃料サイクルの問題というのは、カーター政策という外部的な要因中心になって議論されているような感じをいたします。これは新聞その他で見る限りでございますので、実情はわかりませんが、そのカーター政策によって何か核燃料サイクルが阻止されておるといった言動が目立っておると思いますが、私はそういう考え方には立っておりません。その核燃料サイクルを不可能にしておるのは、むしろその核燃料サイクル自身の困難さ、そこにあるということを強調したいと思います。  現在の時点というのは、原子の火、これは私は悪魔の火と呼んでいますが、それに非常に危険なかけをして、その悪魔の火に頼るというこれまでの方針の是非をもう一度再検討する絶好の機会であるというふうに思います。  以上です。
  6. 山田太郎

    山田委員長 ありがとうございました。  次に、岸田参考人にお願いいたします。
  7. 岸田幸一

    岸田参考人 電気事業連合会岸田でございます。  陳述申し上げます前に、先生方には平素から私ども電気事業の運営につきまして温かい御理解と御指導を賜っておりますことにつきまして、まずもって厚く御礼申し上げたいと存じます。  本日は、先生方に、電気事業者といたしまして、核燃料サイクル確立の問題並びに原子力発電安全性確保ということについて御説明を申し上げ、また、意見を述べさしていただく機会を与えられましたことを、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  内容の説明に入ります前に、私ども電気事業連合会性格について若干触れさしていただきたいと存じます。  私ども連合会は、電気事業重要政策に関する方針確立、並びに電気事業者に共通するまたは相互に関係する事項の協議及びその処理に当たることを主たる業務にしておるところでございます。したがいまして、本日、この原子力問題につきましても、その重要政策並びに共通問題に関する協議及び処理といったことを中心に、関係があることを申し上げたいと存ずる次第であります。  最初に、核燃料サイクル確立について申し上げたいと存じます。  わが国は、天然資源にきわめて乏しく、所要のエネルギーの九割を海外に輸入依存していることは、十分御承知のとおりでございます。しかも、その輸入エネルギーのほとんどを石油に依存して、今日の日本経済なり私ども国民生活を維持しておるわけでございますが、今後のエネルギーの需要の増加を考えますると、その石油輸入量をふやしていくことは、その調達の問題、輸送の問題、貯油基地等の問題から考えまして、きわめて困難な見通しでございます。  そこで、改めて申し上げるまでもなく、このエネルギー安定確保を図ることは、社会経済の発展なり国民生活向上に必要欠くべからざる要件でございまして、この石油輸入増大が、世界の資源的に見てもまた国際情勢から見ましても、ますます困難化する状況にあろうかと存じます。そういったことから、この石油にかわる新しいエネルギー供給源をどこに求めるか、その供給源開発がまた必要になってくるということが、われわれ日本国民に課せられたテーマだろうと思います。  そこで、私どもは、この原子力はその代替エネルギートップバッターとして、過去手がけて日本でも二十数年になりますが、この燃料の備蓄、また輸送の容易さからいきましても、ほかの代替エネルギーよりも多くの利点を持っておるわけでございます。したがいまして、原子力平和利用に徹しつつ、この原子力発電開発によって、長期的に安定したエネルギー源確保することが、わが国エネルギー政策基本的課題ではなかろうかと信ずる次第でございます。  そこで、私どもといたしましては、このようなエネルギー政策のバックグラウンドに沿いまして、供給責任を全うしていくという電気事業基本的任務を達成するために、現在鋭意原子力発電開発推進しているところでございます。  すなわち、昭和四十一年に日本原子力発電株式会社東海発電所の第一号機、これは十六万六千キロワットでございますが、これが運転に入って以来、国民の皆様方の御理解と御協力をいただきながら、現在では十三ユニット、約七百四十万キロワットが稼働運転をしております。また、現在すでに電源開発調整審議会におきまして御決定をいただき、工事中並びに着工準備中のものが十六ユニット、約千四百五十万キロワットございまして、現在極力原子力開発推進に努力をいたしておるところでございます。  このような原子力発電開発推進するためには、必然的に核燃料安定確保の問題、それから使用済み燃料の再処理を含めた、本日の御テーマでございます核燃料サイクル確立が絶対に必要でございまして、これが、この原子力発電開発に対する国民の皆様方の御理解と御信頼を得なければならない前提条件と考えておる次第でございます。  そこで、まず第一に、その核燃料安定確保の件でございますが、わが国の場合は、天然ウランはすべて海外から輸入せざるを得ない状態でございます。したがいまして、私どもは、目下、長期契約等によりまして、このウランの安定確保に努めております。さらに、この海外からの輸入ウランを極力節減し、また経済性を高めるために、使用済み燃料を再処理して回収したウランをリサイクルするとともに、プルトニウムを将来は高速増殖炉の燃料として使用することも考えておりますけれども、まずは軽水炉でリサイクルする必要があるわけであります。すなわち、リサイクルしない場合には二割から三割余分のウランが必要になりますので、現在、自由世界のウラン市場におけるウランの需要増大傾向とか価格の高騰傾向等を考えますると、将来の需給の逼迫あるいは価格高騰に拍車をかけるものと若干危惧いたしておる次第でございます。  さらに、核燃料の再処理の問題でございますが、今後、原子力開発の進展に伴いまして、先ほど来先生方からも御指摘がございましたように、使用済み燃料の量も逐次増加してまいりますことは事実でございます。この処理がきわめて重要問題であるわけでございまして、このために、私どもは、昭和四十六年六月に着工いたしました動力炉核燃料開発事業団の東海再処理工場の操業を間近に控えておりますが、私どもはこの操業を鶴首していま待っておる状況でございます。さらには、それだけではもちろん足りませんので、国内の第二再処理工場を建設し、自前の核燃料サイクル確立するという基本方針のもとにその検討を鋭意進めておりまするが、その再処理工場の建設には相当長年月の日数がかかりますので、その間のつなぎといたしまして、現在、イギリス及びフランスヘの再処理委託をすでに契約しておりますし、さらに追加の委託交渉もいま大詰めの段階に来ておるような状況でございます。  そういった背景の中に、去る四月七日、アメリカカーター大統領は、アメリカ国内の原子力政策として、商業用再処理プルトニウムリサイクルを無期限に延期すること、高速増殖炉の商業べース利用の目標を延期することなど、七項目の政策を発表され、アメリカ以外の諸国にも核不拡散の見地から協力を求めております。  しかしながら、御案内のとおり、アメリカは、石油はもとより石炭、天然ガス等、種々の代替エネルギーを持っておられ、この中での選択の議論でございます。わが国のようにエネルギー資源に乏しく、選択の余地のない国とは本質的に大きな差異があるわけでございまして、アメリカエネルギー政策がそのまま適用されますると、エネルギーの安定供給に大きな破綻、支障を来すおそれがあるのでございます。  わが国は、エネルギー安定確保のために、従来より原子力基本法の精神にのっとり、原子力平和利用に徹しながら積極的に推進しよう、またその一環として核不拡散条約へも加盟いたし、いま国内法の整備等、あらゆる努力が払われておることは御高承のとおりでございまして、こういった中におきまして、核燃料サイクルをいまや日本の最高の政策として官民一体となって確立する基本路線をここでしっかり敷かなければならない必要を感じている者の一人でございます。  したがいまして、このアメリカ原子力政策によってわが国原子力開発及び電力需給安定に重大な支障を来すことのないように、政府御当局並びに国会の諸先生方の御努力によりまして、あらゆる機会をとらえてわが国立場といりたものをアメリカを初め世界の諸国に理解していただけるよう積極的に交渉していただきたいことを、われわれ、電力の供給責任を有する者として切にお願いを申し上げる次第でございます。  次に、二番目の命題でございまする原子力発電安全性について申し上げたいと存じます。  私ども電力会社は、原子力に限らず、電力供給上、人身の安全を確保することが企業経営の根幹であると考えまして、その達成に平素から最大の努力を払っておるわけでございます。当然のことながら、こういったことは今後も一層継続していく所存でございます。  いま、日本国内での最初原子力発電所である東海一号の建設に着手して以来、すでに二十年の期間に合計十三ユニットの発電所営業運転に入っておりますことは先ほど申し上げましたが、この間に、放射能によりまして環境に対して影響を及ぼしたことは一度もございません。これは、私どもが安全を第一として進めてきた結果であると考えております。  また、諸外国の例を申し上げてみますると、現在運転中の原子力発電所は、アメリカが六十四ユニット、四千七百万キロワット、ソ連が二十ユニット、八百万キロワット弱、英国も三十一ユニット、八百万キロワット弱等、日本を含めまして百八十六ユニット、約九千四百万キロワット、これは重水炉、軽水炉全部入れてでございますが、その発電所があるわけでございます。このように日本の十倍以上もの原子力発電所各国の認可を受けて運転をいたしておりまするが、これまた放射能によって環境に対して影響を及ぼした事例は聞いておりません。  もっとも、私どもといたしましては、この二十年余りの経験を通しまして、先生方も御高承のとおり、幾つかの事故故障等のトラブル経験していることは事実でございます。しかしながら、この種のトラブルはいずれの国においても見られるものであり、新技術の定着の過程では多かれ少なかれ避け得ないものであると考えております。しかし、私どもは、国民原子力発電安全性に対する不安感に率直にこたえるために、今後とも安全性をより一層向上すべく、いままでの努力に倍旧の努力を重ねまして、安全性の高い原子力開発を進めることを責務として念願しておる次第でございます。  昭和五十一年度のわが国原子力発電所設備利用率につきまして若干触れさせていただきますと、総合で五三%になっております。これは法律で定められました年一回の数カ月に及ぶ厳重な定期検査中の停止期間を含むものでございまして、同じ年における最高の利用率を記録したユニットは七四%の発電所がございますが、今後こういった機器の信頼性向上、定期検査中の作業の効率化等を図りまして、私どもは利用率の一層の向上を図りたいと念願しておる次第でございます。  具体的には、電力独自の検討のほかに、関係御当局の御指導によります軽水炉の改良、標準化計画を推進いたすこととしておりまするし、一方、機器の実証につきましては、政府の御協力のもとに、原子力工学試験センターによりまして各種の実証試験を実施すべく、すでに一部着手しておるような状況でございます。  最後に、重ねて申し上げたいことは、原子力発電推進なくして日本エネルギー安定確保はあり得ず、また同時に、原子力発電安全確保なくして原子力発電推進は不可能であろうということでございます。  私どもは、この基本認識のもとに、原子力発電安全確保を経営の基本的課題といたしまして、その実現に最大限の努力を傾注し、また傾注してまいりたいと存じます。ただ、時には先生方の御叱正をいただいておりますとおり、いろいろと事故故障等があることは事実でございます。しかし、私どもはその都度、その問題の解決に全力を挙げ、関係官庁の御指導をいただきながら発電所信頼性の一層の向上に努めるとともに、今後は、たとえささいな軽微な故障であってもあるいは事故であっても御報告し、皆様方の御信頼を得る努力をする決意でございます。どうかよろしく御理解を賜りますようお願い申し上げたいと存じます。  重ねて、さきに申し述べさせていただきました核燃料サイクル確立につきましても、どうか国家的見地からぜひとも早期にこれを推進していただきますよう、諸先生方初め政府御当局の御尽力をお願いいたしまして、陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  8. 山田太郎

    山田委員長 ありがとうございました。  次に、水戸参考人にお願いいたします。
  9. 水戸巖

    水戸参考人 私は、原子核物理学を専攻しております。原子力発電所中心とします核燃料サイクルのそれぞれのポイントにおいて非常に重大な問題がなお残されておるという点について、お話ししたいと思います。  現在、普通に使われております百万キロワット程度軽水炉、この中には御存じのようにウラン235という物質が約三トン含まれております。原子力発電所が一年稼働いたしますと、そのうちの約一トン分のウラン235が核分裂を起こしてこれが非常に強い放射能を持った物質に変わります。つまり、死の灰一トンが一年間の稼働で生じてくるということであります。他方、広島で落ちました原子爆弾、これはウラン235約十キログラムと推定されておりますが、そのうちの約一キログラムが実際に核分裂を起こし、死の灰となったというふうに考えられております。これを見ましてもわかりますように、一年間稼働いたしました原子力発電所の中には、広島の原爆によってつくられた死の灰の一千倍の量が内蔵されているということであります。したがって、この一%でも外に出るならば非常に重大な事態を招くということは、非常に明らかであります。  それでは、一体そういうようなことが起こり得るのかということでさまざまな想定計算ということが行われておりますが、実際に最近発表されましたラスムッセン報告、あるいはそのずっと以前からすでにそういうことが可能であり得るということが想定されております。最近発表されましたラスムッセン報告の中の一つの例をとりまして、東海村の原子力発電所が最大限の事故を起こした場合にどのようなことが起こるかという計算を私どもでいたしました。  その結果を概算で申しますと、急死者三万名、がんその他による晩発性死者四万ないし十三万名、患者二百二十万名、このうち約半分の百十万人は十歳以下の子供たちに起こる甲状腺腫瘍と言われる病気になります。遺伝障害については、この計算の方法がいろいろありますけれども、一千名近い遺伝障害者を生むであろうということが考えられます。土地汚染については、セシウム137という物質だけに注目した場合でも五万平方キロメートル、本州の約五分の一にわたる汚染を受けるというようなことが計算されます。この結果は、一九六五年にアメリカ原子力委員会自身が計算し、公表した結果、四万五千名の死者、そして北海道の一・五倍に当たる。ペンシルバニア州の全体の汚染といった計算に比べまして、むしろ過小になっているというふうに私は思っています。といいますのは、日本の人口密度はアメリカに比べまして十倍以上、約十三倍程度になっておると思いますから、そのことを考えるならば先ほど申し上げました計算結果は決して過大な数字になっていないというふうに思っております。  このように、原子力発電所は従来のいかなる工業施設とも隔絶した巨大な危険性、潜在的危険性を持っている、このことを私どもは十分に考えなければならない。こういうような施設をわれわれは現在までの工業文明の中で持ったことがないわけです。そのようなものに対して危険をどう考えるか、そういったものを社会に許容するか否かということは、全く新しい立場に立って考えなければならないというふうに思っているわけです。  これに対して、たとえば内田先生は、確かに内田先生たちが安全審査などで取り上げている設計基本事故、こういったものを上回る事故が起こらないとは言えない、しかし、そういった事故は設計基本事故としては取り上げることが不適切な事故であって、自然力災害による天災のたぐいであって、当事者にとっては計画設計上は免責とされる事故であると考えられる、このようにはっきりと述べておられます。  このような、従来はとても考えられなかったような自然に起こる事故を二つに裁断し、一方は設計基本上とるべき事故である、それ以上の事故は天災のたぐいと同じであって免責されるべきである、このような異様な考えが生まれてくるということは、すなわち原子力発電所という施設がいかに異様な、従来のわれわれがとても知り得なかったような施設であるということを非常に明らかに物語っているものであると思うのであります。  二番目に、そのような問題に対してわれわれがとるべき態度は、最悪の事態ということを考え、その最悪の事態の結果に対してわれわれが許容できるか、社会が許容できるかどうかという態度をとるということが唯一の回答であると思います。その確率がどれだけであるというような計算をして、その確率が非常に小さいから許されるというような考え方をわれわれ人間はとるべきではないというふうに私は考えております。  二番目に、この核燃料サイクルの中で再処理施設、これが非常に問題になっておるわけです。これがまたカーター声明というようなことで問題になっているようですけれども、問題はとてもそんな問題ではない。全く工学的に見て、技術の問題として見て重大な問題であるということです。これは原子力発電所に比べまして日常的な汚染が十倍ないし数百倍に及ぶ。これは安全審査の中で認められている数字としてこのような非常に重大な汚染が許容されているということです。海洋に対してはプルトニウム一グラムが一年間に流される、これも許容されている数字であります。  このような再処理施設が周辺に対して非常な汚染をもたらすということは、アメリカのNFSにおいても非常に事実として明らかになり、これは停止されているわけでありますが、その後つくられましたフランスのラアーグの再処理施設、ここでもフランス原子力庁の測定によってその三十キロ周辺でストロンチウム、セシウム、ヨードといった放射性物質が、現在はこれが操業を開始いたします一九六七年、つまり十年前のすべて四倍になっているという事実が明らかであります。そして、この周辺では新生児の白血病が発見されており、そしてこの発生率は全国の平均の約十倍であるということが明らかにされております。   したがって、現在のカーター声明によって云々という事態は、私はほかのことはともかく、東海村のあの周辺の住民にとっては非常に幸せな事態ではないかというふうに私は考えております。  それから、この再処理施設から生まれます廃棄物の問題、これは先ほど久米先生もお話しになりましたが、再処理施設から出てきます廃棄物プルトニウムを含むアルファ放射体を含んだ廃棄一物、これは普通の半減期、だんだん減っていくという話ではなくて、一万年後にはプルトニウム239は約二倍にふくれ上がります。これはほかの廃棄物からプルトニウムに変換されていくという事態がありまして、二倍にふえていく。その後になってようやく減っていくということであります。したがって、これが本当に人間に安全になるためには二十万年とも百万年とも二百万年とも言われております。その間、人間界から完全に隔離しなければならない、自然界から完全に隔離しなければならない。一体そのような工学的な方法というのはあるだろうか、現在のところ全くめどがついておりません。さらにまた、そういったものを保持する社会的機構といったもの、数万年にわたる社会的機構、存続し続ける社会的機構というようなことは、当然われわれは歴史の中で経験していないわけです。わずか三千年の歴史を持っている私たちが、数百万年に及んで安全に管理をしなければならないものを、この世代わずか四十年か五十年——原子力発電所の期間というのはその程度だと言われております。わずか四、五十年の期間のために、ほとんど永遠と言える期間の災害物をつくり出すということが私たちに許されているのか。こういった観点から核燃料サイクルの問題を考えていただきたいというふうに私は考えます。  また、核燃料サイクルということが言われておりますが、これは高速増殖炉が実現されなければほとんど何の意味も持たないということは明らかであります。核燃料サイクルと言われておりますものの切り札は高速増殖炉であります。私は、先ほど軽水炉の災害について申し述べましたが、この中にはコントロールできない連鎖反応の事故というようなことは一切私自身も考えておりません。しかし、高速増殖炉においては純粋のプルトニウム、一〇〇%のプルトニウム239というものがその中に使われるわけであります。したがって、この中で炉心溶融事故が起きれば、これは必ずコントロールできない連鎮反応事故、すなわち核暴走という恐るべき事態を惹起するということは、これはもうすでに十分知られていることであります。したがって、このような企てに対しては世界の世論はこぞって反対しております。  アメリカでは、この高速増殖炉の開発計画は環境庁の抗議によって中止になっております。フランスでは、マルビルという場所にその立地が計画されたわけでありますが、これに対して非常に強硬な反対があり、とりわけヨーロッパ共同原子研究所、CERNの原子核の研究者一千名を中心として多数の科学者の反対声明が去年の十一月十九日に公表されております。このような事態をよくお考えいただきたいというふうに思います。  最後に、労働者の被曝の問題についてちょっと申し上げたいと思います。  これは確かに周辺の人々には安全だというふうにおっしゃっておりますが、その原発の工場の中で働く労働者の被曝は年々著しく上昇しております。福島一号炉の場合、昭和五十年度に四千二百七十九名が従事しておりますが、そのうちわずか七分の一が正社員であります。七分の六は下請の労働者がこれを行っております。そしてまた、その被曝線量は、昭和五十年度で千七百四十五ミリレムという量であらわされておりますが、そのうち正社員は八分の一、そして下請労働者が八分の七被曝しているという状態であります。これはまた、年度的にどう推移したかということを見てみますと、四年前の昭和四十六年度に比べますと、正社員で従事者の数は二倍に増大しておる、下請の労働者は三倍に増大しております。そして、被曝線量は正社員において二倍、下請労働者において十一倍に増大しております。これは原子力電発所の相次ぐ事故、それからまた、操業につれて放射能汚染がどんどん蓄積されていっている、この二つの要因から、いま言ったようなことが行われている。とりわけ、下請労働者の被曝が全く管理できない状況で増大しているということは、恐るべき事実である。これは国民の総被曝線量という観点から考えても全く看過できない状態にすでに来ておりますし、また、個人のそこで働く労働者の人権、生命という問題からも恐るべき事態が進行しているということを申し上げて、私の陳述を終わります。
  10. 山田太郎

    山田委員長 ありがとうございました。  次に、市川参考人にお願いいたします。
  11. 市川富士夫

    ○市川参考人 私は、日本原子力研究開発がスタートして二十年を過ぎましたけれども、その間、当初から原子力研究開発機関の中におりまして、核燃料処理と関連のある基礎研究に従事してまいりました。そのような現場研究者という立場から、きょうの問題について私の考えを申し述べたいと思います。  まず、核燃料サイクル確立という問題でありますけれども、私は最初に、現在問題になっておりますアメリカカーター政策との関連について述べたいと思うのです。  まず、今回発表されましたカーターの新原子力政策、あるいはその基礎となっていると考えられますフォード財団が支持しておりますマイターレポートと言われる「原子力問題点とその選択」というパンフレットがありますけれども、この報告書を見ますときに、これには三つのねらいがあるのではないかというふうに思われます。  第一は、核拡散防止という点を非常に強調しているわけでありますけれども、結局は自分の国の核独占体制を維持するという、非常に国家安全保障の立場に立ったねらいというものが強く出ているというふうに思われます。  二番目には、先ほど来問題になっておりますプルトニウムのリサイクルの問題ですけれどもプルトニウムのリサイクルは、これは国内的に当面やっておるわけですけれども、国際的にこれが波及するということが当然考えられるわけで、リサイクルを禁止する場合に、結局アメリカの濃縮ウランというものへの供給の依存性が非常に高まっていくということがあると思うのです。その濃縮ウランヘの依存性を高めるということによって、世界エネルギー市場を支配するということが可能になるわけであります。  三番目には、いわゆるダウンストリームと言っておりますけれども、再処理あるいは廃棄物処理廃棄物処分、そういうような問題について非常に現在技術的な困難があるということは先ほどの参考人のお話にもありましたけれども、そういう問題をこの時点で回避するというねらいがあるのではないか、そういうふうに思います。  部分的に見ますと、カーター政策とその背景にあるいろいろな報告書には一面の真理が含まれているわけでありますが、それらの点につきましては、すでにいままでアメリカでもあるいは日本でもいろいろな方によって指摘されているものが多いわけであります。しかしながら、アメリカにおいてはそういうような批判的見解が素直に取り入れられておりまして、金と時間をかけて思い切った政策の転換というところまでこれを発展させることができているわけでありますけれども日本の場合にはそのような批判的な意見はつぶす、指摘された欠陥は隠して軽水炉を強行する、そういうようなことが行われているので、技術的にもあるいは政策的にも、日本独自の自主的な積み上げというものが非常に立ちおくれていると言わねばなるまいというふうに思います。  次に、カーター氏の新原子力政策日本に与える影響について若干申し述べたいと思います。  まず第一に、原子力発電というものは準国産エネルギーであるというように、たとえば原子力開発長期計画でもうたっております。しかしながら、石油ショック以来、エネルギーの自立の必要ということが叫ばれておりまして、原子力が準国産であるという説がありますが、アメリカから濃縮ウランを大量に買うということが準国産であるとはまさか言えないわけでありまして、軽水炉内で燃料を燃焼させたときに生ずる。プルトニウム、このプルトニウムが準国産である、そういうような論理になるのではないかと思われます。そういうことだといたしますと、今回のアメリカ政策によってプルトニウムのリサイクルが禁止されるということが日本に波及してくるということになりますと、原子力発電は準国産であるという根拠は非常に薄弱になってしまうわけであります。  私がいま言っているのは、決してその言葉の問題を言っているのではなくて、日本エネルギーの自立性という点で非常に重大な問題に直面するのではないかということを指摘したいと思います。  二番目に、政府が現在アメリカに交渉団を派遣してカーター新政権との交渉を行っておりますが、新聞紙上でわれわれ拝見しているところによりますと、主として東海村の再処理工場の稼働をやるということに重点が置かれているように思われます。しかしながら、カーター政策影響というものは、ただその東海村の再処理工場だけに影響があるのではなくて、もっと非常に広くかつ深いものがあるというふうに思われます。  たとえば、去る四月二十四日、高速増殖炉の実験炉「常陽」が臨界に達しました。これは非常に結構なことなんでありますけれども、これが手放しで喜べないというのは、やはりプルトニウムリサイクルの禁止ということで、将来の増殖炉計画への見通しということが非常にむずかしくなってくるということだと思います。これと同じようなことが新型転換炉の問題についても言えるのではないかというふうに思われます。  さらに、そればかりではなく、最近、原研の材料試験炉というのがございますが、この材料試験炉の交換用の燃料がどういうわけか届かない、これは非常に高濃縮ウランでありますけれどもプルトニウムではありませんけれども、この問題が直接今回のカーター氏の政策関係があるのかどうかはわかりませんけれども、今後も思いがけない影響が出現する可能性があります。現に原研で高濃縮ウランを使っている研究炉などもありますし、そのようなものへの波及ということも考えられるわけであります。  それから三番目に、電力業界の対応について一言申し述べますが、原子力発電というものは、本来原子炉だけではなくて、ウランの採鉱、精錬あるいはウランの濃縮あるいは使用済み燃料の再処理あるいは廃棄物処理プルトニウムの貯蔵、転換、そういうような一つのサイクルをなしているわけでありますが、そのようなサイクルのすべての過程がバランスのとれた発展の上に実用化されるということが望ましいわけであります。しかるに、日本の場合を見ますと、まず原子力発電所が先行して入ってくる。それでその後の、いわゆるダウンストリームと言っております再処理廃棄物というのはそれに押されてくる、使用済み燃料が出てくるので、再処理工場を考える、あるいは再処理工場をつくれば廃棄物の問題が出てくるというふうに、非常に対策がおくれているというのが現状であります。  それに対して政府あるいは産業界では、電力会社を中心にした再処理会社を設立して年間処理能力千五百トンの第二再処理工場を建設するというように計画していると聞いております。核物質の厳重な管理あるいは再処理工場等から環境へいろいろ放射性物質が放出される可能性があるわけでありますが、そういうような環境の安全の確保、あるいは先ほども御指摘がありましたような廃棄物を長期的に管理しなければならない、そういうような点から考えますときに、このようなダウンストリーム問題を民間資本の手に任せるということには非常に疑問があります。  その後、カーター政策に伴いましてダウンストリームが回避される方向が打ち出されたわけでありますけれども、それに対して電力業界では、濃縮ウランさえ供給されれば電気はつくれるのだから恐れることはないというような態度をとっていると新聞にも報道されております。これがもし事実であるとすれば、非常に露骨な利益優先の思想であると言わなければならないと思います。  それから四番目に、使用済み燃料の長期貯蔵ということが新たに問題になるわけであります。  仮に再処理プルトニウムリサイクル等が禁止された場合に、使用済み燃料は無期限に貯蔵されなければならないわけであります。軽水炉一基当たり年間約三十トンの使用済み燃料が排出されるわけでありますが、その中には一トン当たり三十キログラムの核分裂生成物、いわゆる死の灰と称せられているものでありますが、それとプルトニウムその他約十キログラムの超ウラン元素が入っております。この放射能は取り出し直後で一トン当たり三億キュリー、十年たった後でも三十万キュリーあるわけであります。もし四千九百万キロワットを軽水炉で発電するとすれば、年間約千五百トンの使用済み燃料が蓄積されることになるわけでありますが、これは熱除去のために水中に貯蔵されることになります。このようなものが長期的に管理される場合の安全性、あるいは原発サイトから集積所へ輸送する問題というような新たな問題が発生することは必至であります。  最後に、自主的な核燃料サイクル日本でも確立するという声が聞かれますけれども、それについて申し述べます。  今日の事態というのは、やはり日本原子力開発が進められてきたこの二十年間の非常に外国に依存した体制、その体制の矛盾がここにきわまったというふうに考えられるのではないかと思います。そういう点、現場の科学者あるいは技術者は非常に身近にその問題を感じているわけでありまして、たとえば動燃事業団のプルトニウム燃料開発の草分けであられますある理事の方は、「プルトニウム燃料開発十年の記録」という本が最近出されましたが、その中で次のように述べておられます。「世界的に再処理が難航し、軽水炉へのプルトニウムリサイクルも実現せず、現実的には核燃料サイクルのない今日であるが、アメリカではERDAが核燃料サイクルの実現のため国の側が強力な梃入れを始めている。アメリカで何とかなったらそのあとでGEやWHの援助をまってという今の他力本願的態度で進むなら、やがてわが国核燃料工業界はすべて外国支配の下に陥るおそれがある。」そういうふうに述べておられます。この方は、非常に技術的な責任者としてやってこられた中で、そういうことを実感として感づいておられるのだろうと私は思います。  また、先ほど引用しましたマイター報告によりますと、一九八〇年には日本は年間約三百十発の原爆を製造する能力のある潜在核保有国と見られております。これはアメリカ西ドイツそれからフランスに次いで第四位でありまして、アメリカではすでに八千発の戦略核兵器、それから二万二千発の戦術核兵器を保有していると言われますが、軍事利用を背景として、軍事への転用の可能性を常に持っている原子力技術というものを平和利用に徹して生かすというためには、非常にいろいろな方策を考えなければならないと思われます。たとえば、核兵器の全面的な禁止の国際的措置をとるということはその一つであると思います。  今日のような原子力についての深刻な事態は、小手先の対策では解決できません。従来のように、住民が反対するときには見返りの利益でこれを抑える、あるいは科学者が批判する場合には厳重注意の処分をしたりあるいは賃金カットでこれに対応するというようなパターンでは解決できないのであります。トータルシステムとしての原子力安全性をいかに確保するか、あるいはまた、平和利用を担保するための方策をどうするかというようなことについて、やはり広く国民の知恵を集めて方針を再検討することが望ましいというふうに私は思います。  以上であります。
  12. 山田太郎

    山田委員長 ありがとうございました。  次に、瀬川参考人にお願いいたします。
  13. 瀬川正男

    瀬川参考人 動燃の瀬川でございますが、核燃料サイクルを主としてお話し申し上げたいと思います。  御承知のように、日本の国は天然資源がきわめて少ない、またエネルギーの九〇%は輸入に依存しているという状態であり、また石油につきましても、さきの石油危機で経験いたしましたように、供給が不安定であります。したがって、一九八〇年代の半ばには世界的に石油の増産限界が現実化してきて、それによる供給不足と価格の高騰があるだろうということが最近かなり想定されておる次第であります。  こういう見通しのもとに、石油代替エネルギーとしての原子力利用というものはますます重要なものとなって、いわば国の安全保障対策一つの柱と言うべきものと考える次第であります。こういう意味から、原子力利用の規模、また、その核燃料サイクルシステムというものを自主的に選択できる状態を維持するということは、国の重要政策として設定さるべきであるというふうに考えます。  日本原子力発電は、現在軽水炉に依存しておりますが、この軽水炉では濃縮ウランを燃料として使用して、その使用済み燃料から再処理によって回収された減損ウラン及びプルトニウムというものは、軽水炉の中で濃縮ウランと同様に燃料として再利用することも可能であります。こういう軽水炉システムだけでも、核燃料サイクルは成立することは成立するわけでございます。しかし、日本原子力開発というものを真に意義あらしめるためには、後に述べます新型転換炉あるいは高速増殖炉を含む、より大きな核燃料サイクルを完成しなければならないというふうに思います。これはエネルギー政策の名に値する大事業であるというふうに見られます。  私どもは、こういうサイクルの自主的な確立を目指して努力している次第であります。ウラン濃縮につきましても、ことしから動燃事業団において遠心機による自主技術開発によってパイロットプラントの建設に着手する予定でありますし、また再処理につきましては、御承知のパイロットプラント的な役割りを持つ東海の再処理工場が完成しまして、その試運転を進めつつあるところであります。実際の使用済み燃料を使ってホットテストをやるということはこの七月に予定しておるところでございまして、この再処理工場の運転につきましては、御存じのように、日米間において交渉が行われておる次第でございます。  また、プルトニウム燃料の加工につきましては、動燃事業団といたしましてはすでに十年の経験を有しておりまして、動燃の二つの炉の燃料を加工した実績を上げております。  こういうふうに、かなり進展はあるわけでございますが、従来、現実の軽水炉燃料のための濃縮ウランはアメリカに依存しておる、またその再処理はイギリス、フランスに依存しておるということでございまして、私どもといたしましては、濃縮のパイロットプラントあるいは東海の再処理工場の建設運転というものを足場にして、実用化に向かって多くの困難を乗り越えて前進していくつもりでございます。  この軽水炉システムでプルトニウム燃料として使っても、天然ウランの利用率は、リサイクルしない場合に比較して二〇%ぐらいしか向上しないのであります。しかし、自由世界の天然ウランの埋蔵量を考えますと、例のOECDの一九七五年の発表によりますと、ポンド当たり三十ドル以下のものが世界で約三百五十万トン程度あるというふうに見ております。これでいつまで軽水炉を動かせるかといいますと、これからの世界じゅうの発電規模にもよりますが、大体一九九〇年代においてウランの需給もきわめて逼迫するということは明らかであります。また、それまでの間に世界的なウラン資源の偏在と資源ナショナリズムの高進というものが相まって、その入手に関して国際的競争が激しくなって、値段も相当高くなるということが懸念されております。つまり、日本という国は一九九〇年代におきまして石油資源とウラン資源のいずれもその供給がきわめて不安定になる。つまり、一九九〇年代でわれわれはダブルパンチを食うだろうというふうに考えられるわけであります。  そういうわけでございまして、天然ウランの中のウラン235を使うこれまでの軽水炉システムのみでは、原子力というものは石油にかわるエネルギー源であるというのは、若干そう言いがたい問題でありまして、特にそのことは日本に強く考えられる次第であります。  動燃事業団が開発しております新型動力炉、すなわち新型転換炉のATR及び高速増殖炉のFBR、これはいずれもプルトニウムリサイクルによるウラン資源の有効利用を図りエネルギーの準国産化を目指すものであります。ATRは、軽水炉等の使用済み燃料から回収された。プルトニウム及びウランを効率的に燃焼する、またFBRは、プルトニウム燃料として使用して、エネルギー発生しながら同じ炉の中に挿入された天然ウランあるいは劣化ウランの中から燃やした量以上の。プルトニウムを生成させることができるということでございまして、結果的には天燃ウランの七〇%ないし八〇%をエネルギーに変換し得るものでありまして、軽水炉で濃縮ウランを燃焼させた場合の天然ウランの利用率一%に比べて格段の差があるというふうに言えるのであります。  こういうわけで、わが国としては天然ウランを効率的に利用するということが必須の要件である。FBRを一刻も早く実用化することが望ましいわけでございますが、軽水炉等に比較して、FBRというものは技術的にもきわめて斬新かつ高度なものでございまして、その開発はかなり時間がかかりまして、商業化は一九九〇年代になると見られます。現在の軽水炉時代と将来のFBRの商業化時代の中間段階において軽水炉を補うものがATRでございまして、プルトニウムというものは軽水炉でも燃焼させることができるけれども、ATRはプルトニウムを利用して、軽水炉に比較して天然ウランをより効率的に利用できるメリットを持っておる。さらにATRは微濃縮のウラン燃料でも運転し得るという、燃料に対する多角的な特徴を持っております。  これらの新型動力炉の自主開発には非常にたくさんの資本と時間を要するわけであります。FBRの方は実験炉の「常陽」が去る二十四日におかげさまで臨界になったわけでございます。これに続きまして現在三十万キロワットの電力を発生する原型炉の「もんじゅ」の建設を予定して、目下その予定地の環境調査を行っております。また、ATRの方も十六万キロワットの原型炉「ふげん」の建設が進みまして、来春に臨界に達する予定でおります。  なお、アメリカは、先ほどのお話にもありましたように、昨年秋のフォード大統領の原子力政策に関する声明以来、核拡散防止を標榜して原子力政策に大きな転換を見せておりまして、わが国の再処理問題につきましても非常に難色を示しておるわけでございますし、また、四月七日にはカーター大統領が新しい原子力政策を発表したわけでございます。この新政策は、核拡散防止を軸としている。しかし、その背景におきまして、ウラン資源というものは従来予想していたよりもはるかに豊富であるとか、あるいはプルトニウムリサイクル及びFBRというものは経済的メリットは余りないというような、そういう認識をベースにしておるわけであります。この政策は、一応アメリカは国内的な政策であると言っておりますが、実質的にはアメリカの新しい原子力外交政策とも言うべきものでありましてへその具体的措置と国際交渉の決着いかんは、各国にとってもきわめて大きな影響を及ぼすものであります。  核拡散防止というものは、もちろん世界平和の維持のために重要な問題であるということは、私どもも十分わきまえておりまして、私どもといたしましても、従来原子力を平和目的にのみ利用するという国の方針政策に従って極力開発を進めてきましたし、IAEAの査察体制も尊重いたしまして、従来十分な協力を果たしてきておりまして、IAEAからもかなり評価されておるということをこの際申し上げておきたいと思います。  また、私どもの再処理工場は、イギリスの再処理工場よりははるかに小さい、また西独の再処理プラントよりはちょっと大きいというような、中間にあるというような形でございまして、アメリカによって英独等と不当な差別待遇はしないでもらいたいというふうに考えております。  そんな次第で、アメリカは商業的な再処理プルトニウムリサイクルとFBRの商業化を延期して、当分の間はウランを燃料とする軽水炉だけで進もうという政策を掲げておりますが、これは世界のウラン資源の半分を国内に持っているアメリカの経済的選択というふうにみなせるとも言い得るわけであります。しかし、一方でエネルギー資源をほとんど持たない日本にとりましては、プルトニウムを利用し、ウランの究極的活用を図ることが不可欠の問題であるというふうに考えます。  こういうふうに、再処理は。アルトニウム利用とウランの有効利用のために不可欠のプロセスであるということはいま申し上げたとおりでございますが、現在問題になっております東海の再処理工場というものは、先ほどありましたトイレなきマンションという非難にもある程度おこたえするとか、あるいは将来の商業用再処理。プラントのための技術経験を築き上げるとか、あるいは新型炉の開発に必要な燃料を近い将来補給しなければならないとか、そういうことに欠くことができないのみならず、将来のFBRプルトニウムサイクルの一環でありますFBR燃料処理技術のRアンドDのためにも、基盤をつくり上げるためにその運転開始が遅延するというのは将来に大きな悔いを残すおそれがあるというふうに考えます。  それで、エネルギー政策は本来開発要素が非常に大きい、またリスクも多いということのために、十年、二十年の長期的な展望に立って立てられるべきものでありまして、私ども経験の中の一つに、海外ウランの開発というようなものもリードタイムを十年ぐらい必要としておりますし、またアメリカは、現在プルトニウムにかわる代替燃料サイクルというものをカーター政権は持ち出しておるわけでございます。いま申し上げましたような見地からいいますと、そういう代替燃料サイクルの場合に、原子炉から再処理、再加工に至る全サイクルの技術を完成するのには、十五年ないし二十年の歳月と巨額の投資を必要とすることは明らかでありまして、昭和六十年代のわが国エネルギーギャップにはとうていそういうものは役に立つとは考えられないのであります。したがって、資源に恵まれているアメリカに比べまして、原子力開発性格と緊急度が全く異なる日本にとりまして、開発路線の軌道修正というものは軽々しくは考えられないと思う次第でございます。  要するに、アメリカの新政策決定のいかんにかかわらず、日本といたしましては、原子力平和利用に徹して、そういうことに基づいて進めてきた再処理プルトニウムリサイクル及びFBRの開発という一連の核燃料サイクル基本戦略というものはあくまでも堅持すべきでございまして、かつ、その実用化を一刻も早く達成する努力を続けたいということを強調いたしまして、私の意見を締めくくりたいと思います。
  14. 山田太郎

    山田委員長 ありがとうございました。  以上で各参考人の御意見の開陳は終わりました。  午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  15. 山田太郎

    山田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、本日は、多数の参考人をお招きしておりますので、質疑をされる委員は、その都度、意見を求める参考人の氏名を指定して質疑されるようお願いいたします。  それでは宮崎茂一君。
  16. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 参考人方々には、非常にお忙しい中を私どものために本日は時間を割いていただきまして、私は自由民主党でございますが、厚く御礼を申し上げます。  原子力開発という問題は非常に重要な問題でございまして、原子力開発事業団法と原子力基本法の一部改正案が国会に出ておりまして、明日から審議される予定でございます。したがいまして、きょうは実はこういった法律案の内容についてお伺いするというわけではございませんで、与野党の中で私がかねがね感じておりますのは安全性の問題、そういった非常に専門的な問題じゃなくて、素人的と申しますか、そういうようなことでなかなか意見も違っているようでございます。そしてまた、私が考えるのでございますけれども、学者の先生方の御発言というのが、政治の中でもあるいはまた一般の人にも非常に影響力があるということが考えられるわけでございます。そういった意味から非常に基礎的なこと、先生方から見ますとイロハのイの字だということになるかもしれませんけれども、その辺について参考人の方にお尋ねを申し上げたいと思うのでございます。  先ほどの御意見の開陳の中に、私もちょっとびっくりしたのですが、水戸参考人でしたか、あの原子炉の最大の事故が起こったら死者三万人というような話がありました。私聞き漏らしましたが、最大の事故というのはどんな確率で起こるのか。学問的研究の基礎から先生が学者的立場で言っていらっしゃるのかどういうことなのか、その確率ですね。それから果たしてそういったのがいまの学会の中でどういうような位置と言うと非常におかしいのですけれども世界のそういった原子力の学会の中でどういうようなことが議論されているのか。私どもから見ますと非常に意外といいますかショッキングといいますか、そんな感じがするのですが、死者が三万人と言われたようですが、最悪の場合どのくらいの被害になるだろうかというお話、そしてまたどんな確率なのか、百万分の一くらいであるかもしらぬというようなことなのか、その辺のことについてもう一遍御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  17. 水戸巖

    水戸参考人 先ほど申しました数字をもう一回申し上げますと、一カ月以内に死ぬといったような急死者が三万人、その後二十年ぐらいまでの間にがんその他の晩発性で死ぬ人の数が四万ないし十三万人、患者の数は約二百二十万、そのうち約半数は十歳以下の子供に対する甲状腺腫瘍ということを申し上げました。これは七三年に発表されたと思いますが、ラスムッセン報告のアメリカ原子力委員会WASH一四〇〇という報告の中のBWR2、沸騰水型原子炉の2というタイプの中で起こり得る事故、これをもとにして計算したわけです。このときには原子力発電所の中に存在している希ガスといったガス性のものは一〇〇%外へ出る、ヨード131、こういったものは九〇%外に出る、セシウムが五〇%、ストロンチウムが六%、こういう数字を基礎にして私は計算をいたしました。  この確率については、私は確認をしておりません。つまり、私自身は計算をしておりませんし、ラスムッセン自身が出した値が信用できるというふうに私は思っておりません。と申しますのは、事故のプロセス、どう発展してどうなるかというようなことについては、これは一つの物理学的な、自然科学的な仮定でありますから、そのところに出てくる数値についてはプラスマイナス五〇%と申しますか、数値を二倍にするとかあるいは二分の一にする、そういった程度の信用度を私は持っております。たとえば希ガスは一〇〇%出ると言っているけれども本当は五〇%かもしれない、場合によっては一〇〇%まるまるかもしれない。それからストロンチウム六%と言っているけれども、ひょっとすると一〇%かもしれないし、三%かもしれない。そういう誤差の範囲というものは持っておる、そういう程度に信頼できる量であるというふうに私は思います。  しかし、この確率の計算については、ラスムッセンが確率を計算しておりますが、その後で、このような確率計算の手法には非常に問題がある、この絶対的な数値はほとんど信用するに足りないということを、この計算方法を開発いたしましたNASAのブライアン博士がおっしゃっている。数値の絶対値を信用することはできないのだ、そうではなくて二つの方法がある、その場合、どちらが安全かというような比較の研究の場合にこの確率論的な計算は意味があるということをおっしゃっております。私も、事故が起こる確率ということについては全く信用しておりません。しかし、その値は幾らかと言えば、恐らくラスムッセン博士は一つの炉については一千万年に一回という非常に低い確率だということを言っていらっしゃる。そのように了解しております。その数値については、私は一千万年に一回なのか、一千年に一回なのか、現在の私の判断では全く信用することができない数値であるというふうに私は思っております。  以上です。
  18. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 どうも偉い学者の先生方がこうおっしゃいますと、私ども本当にそうかなというふうに思うわけでございます。一千万年に一回だったら、それはおっしゃらない方がいいのじゃなかろうかというような感じもいたします。ですから、その辺は私どものとりようが悪いのかもしれませんが、あるいはきょうこういったことも新聞報道に載るかもしれませんが、その点につきましては、先生の方もひとつそれが一般的なものなのかどうかということについて十分御吟味願いたい。一千万年に一回起こるのであれば、私どもも余り議論する価値もないだろうと思います。  内田先生、突然の指名をいたしまして非常に失礼でございますけれども、いまのような非常に人が死ぬ可能性があるというような問題について、もし御見解があればお知らせいただきたい。私ども原子力開発の法案を現実に抱えて、どうしようかというような立場にあるわけでございますから、その点からひとつ一般的にもし御意見があればお聞かせ願いたいと思います。
  19. 内田秀雄

    内田参考人 原子炉に考えられます起こりそうもない大きな事故というものの考え方でありますけれども、これは事故の持っております災害の大きさだけで評価するものではないのでありまして、その事故が実際にどのくらい起こりやすいのであるか、あるいは起こりにくいのであるかということとの総合から評価するものであります。すなわち、こういう大きな事故は、リスク評価と言っておりますけれども、リスクというのは、起こるかもしれない発生の確率と起こったときの災害の積で評価するものであるということが、国際原子力機関でも公に定義されておりますし、また原子力安全を考える者の一つのコンセンサスを得たものでございます。  それでは、起こる確率といいますのは、たとえばいまお話が出ましたが、ラスムッセン報告で、その確率と災害の評価をしておりますけれども、三千三百人が死ぬかもしれないという事故発生する確率は、十のマイナス九乗、すなわち十億年に一遍ということで評価しております。  それでは、この発生の確率というのはどういうものか、実際にそれで起こるのかといいますと、そういうものではないのでありまして、十のマイナス七乗とか十のマイナス八乗といいますのは、そういう事故が起こらないことの不信頼性でございます。これは確率の評価の手法をよく見ますと、確率の常識を持っておれば十分わかることでありまして、起こらないことの不信頼性であります。ただ、ラスムッセンがそのリスクの研究をしようということで、振り返ってその起こる確率等をもとにしなければならないものでありますので、起こらないことの不信頼性を起こる確率として計算をしたわけであります。すなわち、原子炉の安全といいますのは、特に大きな仮想の事故に対しましてはどのぐらい安全であるかという安全性の問題であります。たとえば、セブンナインの安全性ということはこれはわかりやすいと思いますが、仮にそのセブンナインの安全性というものを逆にしますと、十のマイナス七乗の起こるかもしれない確率ということでありまして、それにさらに災害の大きさ等を掛けた積というものがリスクということで、世界的なコンセンサスを得ておると私は思っております。
  20. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 ひとつ議論を先に進めたいと思いますが、私どもこの原子力というのは、発電所を外部から見ますと、あそこで発電されているのだろうということで、中で何が行われているかさっぱり素人にはわからぬわけです。そしていま国会の中でも、先ほどもどなたかからございましたが、事故とか故障とかいうような話がございます。私どももその点について、いささかいろいろ見方が違っているようでございます。  私ども非常に簡単なことを申し上げますと、私は実は交通関係、運輸関係の常任委員をいたしております。ですから、バス事故といいますと、これは衝突したりして死者が出るとか、あるいはがけ崩れで死人が出る、負傷者が出る、あるいは人身傷害がなくても、バス自体が壊れるとか、そういうことが事故だと思うのです。故障というのは、そのままで動かなくなる、機械の一部を手直しをすればまた動き出す、こういうことだと思うのですが、原子力の発電、あるいはまたいま先生方が携わっておられますところの原研のああいった施設、そういったものは、通常観念の事故とか故障とかいう区分け、これはどうなっているのか、非常に不思議でならないのです。私どもから見ますと、科学技術の問題でございますから、燃料棒がどうだとか腐食したとか何とか、中の細部のことでよくわからないのです。しかし、それは外形的に見ますと、何も負傷者も出ないし、大気汚染とかそういった問題もなさそうですし、そういった点について、これは初めから御指名しておけばよかったのですけれども内田先生ひとつ申しわけないですが、故障とか事故とかいうものは、先生方事故とおっしゃったときは故障と解釈していいのか、その辺のことをひとつお伺いをいたしたいと思ったのです。非常に素人的なことでございますけれども、私ども故障だと思っておっても事故だというような議論が出てまいるものですから、ひとつ内田先生にお教え願いたいと思っております。
  21. 内田秀雄

    内田参考人 大変むずかしい定義でございますけれども、私の理解が間違いなければ、多分原子炉規制法の中に、何か異常なところがありましたならば、あるいはすべての事故については報告しろという義務づけがあるように聞いております。すなわち、原子炉規制法では、報告されるものは事故というのではないかと思います。  その内容にはいろいろの範疇に属するものがあると思いますけれども国際原子力機関やあるいはOECDが原子炉事故というものの定義をしております。これは両者で多少ニュアンスが違いますし、いまその原文そのものを覚えておるわけではございませんが、事故ではなくて要するに原子炉事故という定義でありますが、これは外部に対して有意な放射線影響を及ぼすとか、あるいは非常に大きな財産の損害を与えるような事象に結びつく多量の放射能の放出を伴う事故、これを原子炉事故と言っております。  それでは、原子炉事故というものはどういうふうに具体的に言ったらよいかということは、まだもちろん決まっておるわけではございませんけれども、私の個人的感じで申し上げるといたしますと、放射線の審議会を通っておりますし、また日本の法の基準であります五百ミリレム毎年という制限値があります。これはICRPでも確認されておりますので、仮にそういうものに相当するような影響が出るようなものは原子炉事故と言ってよいのかと思います。でありますけれども、現在PWRとかBWRで日本原子力発電所で起こっております故障といいますかトラブルというものは、もちろん場合によりますが、放射能全くゼロというわけではありません。でありますけれども、その影響といいますものは、平常時に事業体が設計と管理目標としております五ミリレム・パー年の中に十分に入っての事象でございますので、これは原子炉事故というものではもちろんございませんし、普通考えられる事故として取り上げるようなものではないと思っております。
  22. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 大体わかったような感じもいたします。  内田参考人岸田参考人、どなたでも結構でございますから御答弁願いたいと思いますが、この前カーターさんが、いわゆるエネルギーの節約の教書をお出しになった。私どもびっくりいたしました。日本エネルギーの大部分を輸入している。アメリカはまだ石油もあるし、石炭もあるしオイルシェールもあるし、あれで何で節約するのだろうかと思ったわけでございますが、そのように十年もしたら石油がなくなる、だから節約はやはりしなければならぬだろうと考えるわけです。そして原子力といわず石炭もあるいはまたその他の地熱も、あらゆるエネルギーを伸ばさなければならぬ。これは私どもの現実の問題として、エネルギーの供給というものを確保しなければならないと考えているわけです。そういったことから、どうしても日本としては石油の問題あるいは原子力の問題、先ほどお話がありましたようにエネルギーの非常に重要な部分を占める原子力というのは将来伸ばさぬといかぬと思うのですが、原子力発電所につきまして、余りやったらいかぬぞ、事故があるぞ、危険がある、こういう話が出てくるわけです。現在は原子力発電所が大体主だと思います。  それで「原子力年報」というのがございますが、これは内田先生のところでお出しになっているのかどうかわかりませんけれども、あれを見、何人死んだのだろうかと思って一生懸命探してみたのですが、どうも死んでいるそういうなにがございません。原子力委員会か何かが出しているやつですね。記事がないのかどうかわかりませんが、交通関係はよくわかっているのです。昭和五十年度で年間一万七百九十二名。これは四十五年が最高で一万六千七百六十五名。負傷者が五十年が六十二万二千四百六十七名、最高の四十五年が九十八万一千九十六人、こういうふうに事故の統計が出ているのですが、原子力関係事故はどうなっているのか。先ほどは遠い話で未来一千万年か先には危険があるという話ですけれども、私どもは過去の実積を尊重したいと思うのです。過去のそういう実績で原子力関係の死者、負傷者、この統計はどこかないのですか。電力会社だけでもいいのですが、おわかりだったら御答弁願いたい。
  23. 岸田幸一

    岸田参考人 原子力発電所の中での事故で相当死者が出ているようなことを聞いたけれどもどうだという御質問だと思いますが、実は先般もこういった問題が新聞等で出まして、私どもも電力九社に早速調査をしていただきました。われわれの方へ入っているところでは、そういった七十五人の方が亡くなったというような意見につきましては、会社側の調査では単に病死された人の合計じゃなかろうかということで、被曝との関連はないという回答を得ております。
  24. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 過去、発電所ができてから、そういった被曝による負傷者とか死者はないわけですか。もう一遍伺います。
  25. 岸田幸一

    岸田参考人 過去十年間にというお話でございましたので、私ども調査では過去十年間にそういった死者が出たということはございません。障害の発生という点につきましては、被曝障害ではなくてそれ以外の障害はあるかもしれませんが、いま私どもの手元にその資料は持ち合わせておりませんので、明確にお答えできないのは残念でございます。
  26. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 先ほどは交通の問題と比較いたしましたけれども、同じエネルギーを得るために石炭の炭鉱でも被害事故死は三十何名かあったようでございますし、また水力発電所をつくる段階で相当——私はつくる方はよく知っておりますが、黒四でも佐久間でも、いまちょっと手元に資料は持っておりませんが、百数十人あったと思います。この前予算委員会で、つい最近ですが、原子力発電所で被曝した七十五人の死因について追跡調査をした。これは新聞でございます。私もその議事録は読みました。そういうことで原子力発電安全性に非常に問題があるような新聞の記事が出ました。  これに対して、これはサンケイ新聞の四月二十日ですか、専門家の方だと思いますが、電労連の方が意見を載っけておられまして、一部を読みますと、「この発言内容が事実無根なるが故に、まことに迷惑な話であった」こういうふうに書いてある。「われわれの調査によると、」これは電労連と思いますが、「強いて疑わしいといえるケースは、ガン関係五人、白血病二人の計七人であったが、それも、被ばく線量をみると、最高のものでも、五年七カ月間の集積四・〇五レム(その他の六人はいずれも一レム以下)で、とても被ばくとの因果関係があるとは思えないものであった。」こういうふうに書いてございます。私どもこのとおりであれば非常に安心だなと思うわけでございます。そして最後に「ともかくどの政党といわず、原子力開発についての正しい認識を深めてもらいたいと、願っている。」というおしかりを専門家からいただいて非常に恐縮をいたしておりますが、この問題は岸田さん、いまのサンケイ新聞の電労連の方の意見が正しいと見て間違いございませんか。
  27. 岸田幸一

    岸田参考人 電労連の内容をよく存じ上げておりませんが、私ども業界といたしましては、七十五人の死者はないということではっきり申し上げられますし、被曝との関連はない死者であると思っております。
  28. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 最近の総理府広報室の「世論調査」によりますと、これは去年の十月、二十歳以上の者五千人についての調査結果だそうでございます。そしてまたもう一つは、最近、多分読売新聞だったと思いますが、科学技術振興財団が調査した資料が載っております。「世論調査」によりますと、原子力平和利用推進に対しては賛成七四%、反対八%、こういうふうに載っております。そして反対する人がどういうことを懸念しているんだということですと、原子力利用はもう皆どうも危ない、原子力と聞いただけで危ないという人が反対の八%の中で二〇%、わからないけれども何となく危ないんじゃないか、原爆とか何か言われるからというような、そういった何となくという人が一九%、あるいはそのほかに放射線の利用による病気の治療が懸念があるという人が一四%、原子力発電に対して一三%、原子力船に対しては五%、こういったような数字が出ているわけでございます。それからまた、先ほど申し上げました読売の日本科学技術振興財団で行った調査、これは五千五百七十八人、こう載っています。原子力ということを言うとどういうことを思い浮かべるかというと、まず原爆、放射能、危険、エネルギー原子力発電とか原子力船、こういう調査が載っておるわけでございます。安全性確保されればもっと開発しろといったような積極的な意見もある。開発に対して賛成五〇%、反対一五%、こういうことで世論はいろいろな意味でまだまだ、私どももそうでございますけれども原子力安全性ということは大体大丈夫ではないか、現実に実用化されているんだから原子力発電はいいんじゃないかと思うのですが、やはりまだ反対と申しますか、危ないよという人もあるというようなことでございます。  それから、いまの軽水炉原子力発電所ですか、これについても既存のものについていろいろ故障事故かわかりません。私どもは見たことないですけれども、また行ってもわからないと思うのですが、故障だろうと思いますが、こういったものにつきまして電力会社としてもそういう安全性のよくわかるようなPRと申しますか、もっと必要ではないかというふうに思うのですけれども、いかがですか、岸田さん。
  29. 岸田幸一

    岸田参考人 お答えいたします。  私ども電気事業者といたしまして、原子力に対する反対あるいは不安という言葉の中に二つあろうかと思います、たくさんあろうかと思いますが。  その一つは、やはり心理的といいますか、心理的に何か原子力はこわいんだという問題が一つ。やはりまだ技術的に不安があるということから、現在私ども電源立地をすでに地元の御賛同をいただきまして、原子力発電所ができておる地点の地域住民の方に対する不安を解除していくという問題と、あるいはそれを皆さんに納得していただくという問題と、また、国民全体の中にも決して私ども原子力が完全に認知されて——冒頭申し上げましたように、これからの日本エネルギー原子力だということで私どもは一生懸命考えておりまするけれども、まだ国民の合意を完全に得たというふうには私ども決して思っておりません。しかし、まず地域の住民方々、この方々にはそういう不安があるということを前提といたしまして、常日ごろからやはり何と申しましても厳重な管理運転をしながら安全に対して万全の措置をとっていき、安全が確保されながら運転していくという事実をつくらなければいけない。そのためには、まず技術的に見ても起こり得るあらゆる事故を想定して、その周囲に危険や不安のないような裏づけを得ながら運転をしていく、これは一般の作業と全く違った安全に対する厳しい態度で接しているつもりでございます。  したがいまして、昨今故障が起きたことは事実でございますので、今後はどんなささいな、どんな軽微な事故でも故障でも、その原因の究明、対策を徹底的に調べまして、また御報告も申し上げまして慎重を期していきたい。  また、こういった機械的な安全確保の問題のみならず、運転中の放射能監視、これはどこの発電所もモニタリングシステムをつくりまして、その地域住民皆さんに御満足、御納得いただけるように二、三カ所から数カ所にわたりましてそういう施設もつくりまして、常時地方自治体の皆様にも、あるいは地域の住民にも御納得いただくような措置をとりながら万全を期していきたい。  また、私ども、地域住民方々にはもっともつと周知といいますか、原子力発電に対する御認識、知識を持っていただくという意味で、在来のいわゆるPRという言葉は余り好ましくございませんけれども、そういう周知への方途につきまして不十分な点は今後もっともっと積極的にやらなければいけない。もちろん、マスメディアを通ずることも方法でございましょうし、いろいろと見学会、懇談会等もやることも必要ではございましょうが、こういったことはもっともっと進めなければいけないというふうに考えております。  私どもが申し上げることは、原子力発電所には私どもの仲間といいますか従業員がたくさん働いておるわけでございまして、そういった働いておる発電所の中も見ていただきまして、百聞は一見にしかずということでもございませんけれども、従業員が安心して働いておられるところを見ていただければ、地域の住民方々もより御納得いただけるんじゃなかろうか。これじゃということで決めつけないで、あらゆる角度からやらなければいけないと思っておりますし、所在市町村あるいは所在府県等々とも十分に御連絡しながら、地域の皆様の合意を得るように努力することによって原子力信頼性と申しますか、いま先生が御指摘のような不安の解消に努力をもっともっとしなければいけないというふうに自覚しております。
  30. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 きょうは原子力船の話じゃないのですけれども、やはり「むつ」の問題でございます。いわゆる原子力安全性ということから、これはどなたに質問したらいいだろうかと考えたのですが、内田先生と久米先生、非常に失礼でございますが、もしそれは専門でないとおっしゃられればそれは結構でございますから、お二方に教えていただきたいのでございます。  最近の読売新聞に「むつ」の核を抜かなくても安全だというようなことが載っております。これは賛成をされている専門の方と多少反対と申しますか、これは反対じゃないんでしょうけれども、慎重かもしれません、私もよく存じませんが、そのお二方の対談が載っております。私はそれを見て非常に感じたのですが、どうもお二方の慎重論と賛成と申しますか、大体似たような、学問的な立場から言えば意見は一致しているんじゃないかと思うのです。ですが、一方の慎重派の方は何とおっしゃったかというと、いまの漁民の考え方、周囲の人たちの不安がっていることを考えると、やっぱり抜いた方がいいだろうと。私も抜いたとか抜かぬと言われても全然知りません。学問的なことじゃなくて、そういうようなことからそっちの方がベターじゃないかというのが慎重を期される人の御意見のようでございます。またもう一方の方は、それは抜いても抜かなくてもどっちでも同じだ、こういうような御意見のようでございます。  私が非常に憂えますのは、慎重派の有名な専門の先生方が抜いた方がいいとおっしゃると、それは抜いた方がいいんだと世論はそう言うに決まっていますし、ただ、その前提条件の方は、周囲の人が反対するからという、学問以外のことで抜いた方がいい、こう言われると、その前提まではっきりくっつけないというと世論が非常に間違うのではないか。だから、先生方の御意見というのは非常に専門的であればあるほど一般の人にはわからないわけですから、そういった学問的立場からだけひとつこれはどうだというふうに言っていただけると非常にわれわれはありがたいと思うのです。これはやはり学会の中でもそういうようないろいろな意見があると思いますけれども、あれを抜かない場合と抜く場合でどうだというようなことになるのかどうか、私としては学問的立場からだけひとつこれはこうだと言っておいていただけると非常にいい。また、抜いた方がいいというときには、それは周囲のことを考えて、いわゆる世論を考えてみれば抜いた方がいい、その辺同じような言い方でも私どもとしては受け取り方に非常に差があるわけでございます。先生方の発言もそういう点をひとつお考え願いたいと思いますが、この二つの問題はいかがでございますか。先ほど聞きますと、内田先生と久米先生は多少意見が違うようでございますから、何か御意見があればコメントしていただければ非常に幸いだと思っております。
  31. 内田秀雄

    内田参考人 私は「むつ」に関して、「むつ」が臨界に達した数年前から最近の事情は全く存じませんで、新聞情報しかわかりません。でありまして、特に核燃料を抜いた方がより安全であるというその考え方の御説明を十分受けたこともございませんので、それについて批判めいたことは差し控えたいと思います。  しかし、全く私の個人的な感じでありますけれども、「むつ」が臨界になってからの核燃料として核分裂に寄与した時間といいますか燃え方というのはきわめてわずかと思っております。したがいまして、その後の時間を経過しましたことを想像しますと、新燃料と事実上そんなには違わない。恐らく「むつ」の中に入りましても陸上にいるのとそんなに違った放射線を受けているような状態ではないだろう、これは私の単なる想像であります。でありますから、もし修繕というようなものが遮蔽を中心にしたような修繕になって、原子炉圧力容器の中の問題でなければ、別に燃料を抜かなくても十分修理ができるのだろうと思いますけれども、これは十分の枝術的な情報を得たわけではございませんので、全くの個人的な意見としてお聞きいただきたいと思います。
  32. 久米三四郎

    久米参考人 「むつ」の問題に関しましては、私はちょっと見解が違いますので、私は「むつ」の今度の計画自身が余り意味がないという立場を前からとっておりますので、それを初めにちょっと触れさせていただきますと、いまやろうとしているような実験はむしろ陸上でおやりになるのだったらきちっとおやりになるのが一番いい。遮蔽をやたらと積んで放射線をとめることはできると思いますが、私のあれでは恐らく船としては使い物にならない。すでに現在「むつ」の真ん中に二千トンもの重さがかかっています。これは発表してございますから見ていただいて、それにさらに千トンも積む、これは船の安定度としては多分だめだろうと思いますから、そういうむだなことにお金を費やされるのはもったいない、そういう立場をとっております。  しかし、いま宮崎先生がおっしゃいました抜くとか抜かぬとかいうことに関しましては、県議会に対して科学技術庁からその問題についての回答がございました。その資料だけ拝見をした感想でございますが、その資料を見ましても、抜かなくても大丈夫ということがございます。しかし、これはだれが考えても大きな重量物を周りに積みかえるというようなことをいたしますから、本来でありましたら燃料棒を抜いてゆっくりとその遮蔽を積み直す、学問的と先生おっしゃいましたが、そういう意味ではそれが一番だということはもう問違いがないと思うのですね。ただ、いろいろな政治的な条件で何とか抜かぬでもやれるかどうか、これからは私は余り学問的ではない、常にそこにひとつの社会的な環境を入れた回答ですから、出てくるのは、いや大丈夫というのと、いやそれよりは抜いてやった方がいいというふうに分かれるのはもう当然ではないか。先生は学問的な立場とおっしゃいましたが、実は学問とか技術とか社会というのはそういうふうに非常に入り組んでおりまして、同じイエスかノーを出すにしても、そういうほかの要素については評価できないというふうに私は思います。普通の考えでは抜いてやるのが当然である、私はそういうふうに思っております。
  33. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 それではその辺とどめておきまして、動燃の瀬川さんにお願いいたしたいと思いますが、テレビでも高速増殖炉の「常陽」が新たに臨界に達して新しい原子の灯がともされた、こういうふうに放送しておりました。私どももわからぬながら非常に結構なことだ、これからウランを非常に効率的に利用するような道が開けてくる、こういうふうに思って期待をいたしているわけでございます。いろいろと小さい故障ですかトラブルですか出たとかいうような話を聞いておりますけれども、今後どういうふうになるのか。まだ大分実用化までは時間がかかるのだという話でございますが、これから後の「もんじゅ」とか「ふげん」とか二つぐらいございますね、まだフランスその他の諸外国におくれているそうでありますが、そういう技術開発にどのくらいかかって、安全性を追求する中でやっていけるかどうか。今後の見通しと申しますか、特に安全性を考慮しての見通し、そういったものについて御説明を願いたいと思います。
  34. 瀬川正男

    瀬川参考人 ただいま高速炉の件で御質問ございまして、私も高速炉の方は実は余り詳しくないのでございますが、今度臨界になりました大洗の「常陽」というものはいわゆる実験炉でございまして、核設計、炉物理、そういう関係を吟味した。したがいまして、あれは熱だけ発生して、ナトリウムで熱交換をする、そういう一連の試験をするわけでございます。したがいまして、あれは電気は出さない。この次に私ども原型炉「もんじゅ」、三十万キロのものを準備しておるわけでございまして、この原型炉は現在のところ明年度ぜひ着工したいというふうに考えておりまして、恐らく昭和六十年ごろに完成するという段階になるかと思います。  その間、いま申し上げました実験炉は、そういう原型炉技術をさらに掘り下げてみるためにいろんな高速炉関係の材料をいまの実験炉の中でいろいろ材料試験をやってみるという意味の照射試験といいますか、そういうものが日本にやっとできたということでございまして、この実験炉を持ったということは今後の高速炉開発に非常に大きな力になるし、またスピードを上げることができる。いままで私ども高速炉関係の材料の照射試験等は主に英仏の高速炉に依頼してきたわけでございまして、ようやくそういう高速炉関係の材料の試験も国内でできる、つまり文字どおり自主開発の基盤ができたということが実験炉を持ったという大きな強みになると思います。  したがいまして、私どもは引き続いて原型炉に着手し、また原型炉が完成に至るまでの間に原型炉の次の実用化第一号炉の設計を進めたいというふうに考えておりますが、いずれにしましても高速炉というのは非常に膨大な技術開発を伴う仕事でございまして、私どもも商業炉として展開するのはまだ十数年かかるのではないかと思いますが、ただ午前に申し上げましたように、いずれにしても一九九〇年代の日本エネルギーの惨たんたる状況のときに高速炉が商業化するということだけを大きな目標にして心がけております。
  35. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 余り時間もございませんから、最後に一つ内田先生にお伺いいたしたいと思います。  これから核燃料サイクルの問題で、いわゆるダウンストリームというのですか、廃棄物処理の問題、プルトニウムの問題が非常に問題になってくるわけでございます。いまそのために、先ほども話がございましたように、アメリカ政府の非常な、これは核拡散防止といった軍事上のたてまえかもしれませんが、いろいろ問題があるようでございますけれども、純粋に技術的に言って、いまの「常陽」からスタートし、あるいはまた日本でそういったような燃料サイクルのシステムができるのかどうか。今後わが日本研究陣として、大体そういう安全性確保しながらそういったようなことができるというふうにお考えになるかどうか。また、相当時間がかかると思いますが、相当な時間と金をかけさえすれば大丈夫だ、こういうことになるのかどうか。その辺について御見解を承りたいと思います。
  36. 内田秀雄

    内田参考人 私は、核燃料サイクルについて専門的でもありませんし、また、その意見を申し上げる公の立場にもないわけでありますので、十分なお答えはできないと思いますが、ただ、高速炉におきましても、現在臨界に達しました日本のFBRは、これはまだ蒸気を発生して発電に結びついているわけではございません。でありますが、フランスとかソ連等ではかなり成功裏に発電に結びついた高速炉が実験中でございますので、技術というものは、よそで成功すればそれは日本でも当然できる基盤を持っております。でありますが、高速炉核燃料サイクルを含めて安全にできるかどうかという危惧よりも、核燃料サイクル確立が必要であり、またそのためには安全を確立しなければならないのだと言って歩を進めることの方が先決ではないかと思っております。
  37. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 それでは私の質問はこれで終わります。
  38. 山田太郎

    山田委員長 関連質疑を許します。原田昇左右君。
  39. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 けさ、参考人先生方から大変有益なお話を承ってありがたいと思うのでございますが、私はお聞きしておりまして一番お伺いしたいと思いましたのは、日本が、また日本だけでなくて世界全体が、これから相当深刻な資源エネルギー危機というものを迎えるわけでございますが、その中で、世界各国はすでにエネルギー戦略の根本的見直しに着手しているわけでございます。  先般、アメリカカーター大統領のエネルギー教書というものが発表されまして、私も拝読したわけでありますが、大変感銘を受けました。その中で、大統領が国民に呼びかけて、政府が責任をとって、国民が問題の深刻さを理解し、犠牲を払う気になったときのみ包括的なエネルギー政策を持ち得るのだということを強く率直に国民に呼びかけておるわけでございます。  こういう背景におきまして、日本アメリカと比べますと比べものにならないくらいに石油依存度が高いというところでありまして、石油は一九八〇年代から相当な需給の逼迫が見られ、供給の不足になる事態も起こるというときにおきまして、代替エネルギーとして日本が何を考えていったらいいかということについて、参考人皆さんに御意見をお伺いしたいのですが、まず市川さんどう思われますか、ひとつ簡単に。
  40. 市川富士夫

    ○市川参考人 代替エネルギーということでございますが、いま問題になっております原子力も、いわゆる核分裂の問題だけでなく、核融合というものもあります。そのほかに太陽エネルギーとかいろいろなことを言われておりますけれども、現実的な問題としてはやはり原子力、特に核融合というようなことは非常に近い将来の問題であるとは思います。  ただ、そういういろいろな問題を、やはりあらゆるエネルギー源というものについて総合的な立場からの研究開発を進めるような、そういう体制をつくるということが非常に大事なことでありまして、いますぐ(原田(昇)委員「体制づくりとかそんなことではなくて、何を代替エネルギーとしてお考えになるのかということを、ずばり一言でいいから聞かしてもらえばいいのです」と呼ぶ)一言と言いましてもなかなかあれですけれども、いま申し上げましたようないろいろなエネルギー源についてやはり進めていく必要があるし、その中で原子力というものは非常に現実的なものではあろうと思います。
  41. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 ありがとうございました。  それでは水戸先生。
  42. 水戸巖

    水戸参考人 こういうことを議論するときには、歴史ということを思い出さなければいけないと思います。  石油一本に切りかえたのはだれのせいであったか、政治の責任であったと私は思います。石炭のまだ生産できる状況の中で石油の方へ切りかえた、その責任を忘れて、石油がなくなったから原子力だというような論法は成り立たないと私は思います。  非常に多様に求めていくということしか現在はない。終局的に言えば、太陽エネルギーしかわれわれの環境にとって無害なエネルギー源はないというふうに私は確信しております。
  43. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 太陽エネルギーについてお話がありましたが、太陽エネルギーはいつごろそれではわれわれの利用可能だと思っておられるわけですか。先ほど何か石油エネルギーに転換したのは政治のためだと言っておられますが、私はまことに経済ということを御存じない御発言で、御専門外だからしようがないので、それについては申し上げませんが、これからの太陽エネルギーについて、いつごろまでに開発可能だと思っておられますか。
  44. 水戸巖

    水戸参考人 それは努力次第であろうというふうに思います。
  45. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 余り御専門でないらしくて御存じないようですから、それでは久米先生、どうですか。
  46. 久米三四郎

    久米参考人 二つあると思います。  一つは、さっき先生のおっしゃいましたように、これまでの、エネルギーをたくさん使うのが私たちの生活向上に役立つ、そういった考え方の再検討、これが第一であります。それから第二は、私も太陽エネルギーだと思います。  それで、いまおっしゃいましたいつまでということですが、私の推定では二〇〇〇年までに、これはアメリカその他の推定もございますが、大体原子力と同程度にはできるのではないかというふうに考えております。
  47. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 問題はその二〇〇〇年までが問題でございまして、一九八〇年代ぐらいから大いにこのエネルギー危機というのが深刻化するというところで、私どもは何をいまその代替として考えていなければならないかということを申し上げておるわけでございます。そこで、原子力について、その代替エネルギーとして世界の大勢が原子力開発を進めておるということは、まさに石油代替エネルギーとして、これを目指してみんながエネルギー戦略を練っておるその最大の焦点だろうと思うのです。  その原子力開発について、相当安全性に問題があるということで、水戸参考人のお話を伝え聞きますと、きわめてドラスチックなことを言っておられるのですが、水戸参考人は、フランスのラアーグにある再処理工場の周辺の新生児の白血病の発生率が、平均の十倍になっておるというようなことをけさ述べられましたが、この発言は何を根拠に言っておられるか、しかと承りたいと思います。
  48. 水戸巖

    水戸参考人 これはフランス原子力庁の発表によります。(原田(昇)委員「いつの発表ですか」ど呼ぶ)最近の発表だと思います。詳しいことはただいま資料としては持っておりませんので……(原田(昇)委員「その資料をぜひ見せてください」と呼ぶ)はい、わかりました。
  49. 山田太郎

    山田委員長 原田君に申し上げます。  発言の際は、委員長に発言を求めてから質疑をお願いしたいと思います。  もう一つ、なお老婆心ながら、参考人方々でございますので、ひとつその点言辞のほど御慎重によろしくお願いします。
  50. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 もう一つ水戸参考人にお伺いしたいのですが、廃棄物の中で他の物質が次第にプルトニウムに転化していって、そのプルトニウムが一万年後には最高になるというようなことでございましたけれども、それはどうしてそうなるのですか。
  51. 水戸巖

    水戸参考人 プルトニウムと一緒にアルファ線を放射する、たとえばアメリシウムというような物質が中に入っております。そういったものがプルトニウム239に変換していくという過程がございまして、そのために増大するということであります。
  52. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 時間も経過したようでございますので、もう少し伺いたいこともございますけれども、私はこの際特にお願いしたいのは、これからの日本のわれわれの生存の上にとってエネルギーの問題をどうやって解決していくかということは、本当に重大な問題だと思うのでございます。あれだけの資源を持っているアメリカでもあれだけの措置を考えてくるということでございますので、この際、ぜひ国民のコンセンサスをもってエネルギー危機に対する戦略というものを打ち立てなければならないときでございます。  そういうときに、科学技術を学問としておやりになっている方々が余りにも誇大な危険宣伝とか、まあ実際のデータに基づかない偏見から御発言いただきますと、大変一般の理解を惑わすということになりはしないかということを感じましたので、この点をひとつはっきり申し上げまして、ぜひとも皆さんの科学的良心に基づいた御検討をこれからもやっていただきまして、御協力願いたいと思います。
  53. 山田太郎

    山田委員長 以上にて原田君の質疑は終了いたしました。  次に、石野久男君。
  54. 石野久男

    ○石野委員 参考人の各位には大変御苦労さまでございます。  私は、きょういろいろ皆さんにお尋ねいたします前に、非常に重大なことだと思いますることは、エネルギー問題の重要性と原子力安全性の問題といずれが必要であるかということが非常に大事なような気がいたします。エネルギー確保するために次から次へ被曝するという事情がもしあったとしたら、それでもまだエネルギーを追求するのであるかどうかということについて、各委員の所見をまず承りたい。
  55. 山田太郎

    山田委員長 質問者にお伺いいたしますが、参考人方々全員でございますか。
  56. 石野久男

    ○石野委員 はい、そうです。簡単でよろしゅうございますから……。
  57. 山田太郎

    山田委員長 それでは内田参考人からお願いします。
  58. 内田秀雄

    内田参考人 御質問の要点がよく理解できないのですけれども……
  59. 石野久男

    ○石野委員 ちょっと待ってください。失礼いたしました。質問の要領がわからないで御答弁いただいてもまずいですから……。  私は、私たちエネルギーを求めるのは人間が生きるためだと思っているのです。生きることに危険だということが問題になっているときに、それをしもあえてエネルギーの問題を先行するのかということなんです、結論的に言えば。もう時間がございませんから多くを申しませんけれどもエネルギーが不足だという内容の中には、人間の生活に直接役に立たないところのむだなエネルギーの使い方がたくさんあるということが一つあるわけなんです。しかし、そこはもう触れません。しかし、日本におけるところのエネルギー問題については、先ほどたとえば水戸参考人からもお話がありましたように、石炭がまだ十分あるのに石油に転換したという事実がございます。今日では日本の石炭は使うことがなかなかできない事情に追い込まれております。ところが、イギリスではそうじぁないという事実もある。そのときに政治の問題が非常に大事になってくる。だから、ここでエネルギー問題を論ずるときには、原子力については安全性の問題が非常に大事だということをわれわれは心配しております。しかし、安全性の問題を強調するということがエネルギー問題を無視するということに置きかえられたのでは困っちゃうので、その点についての参考人の御意見を承りたい。
  60. 内田秀雄

    内田参考人 原子力開発というものは、ほかの問題の開発もそうだと思いますけれども、それによって得られます社会へのプラスの面、マイナスの面それぞれを検討しまして、プラスの面がこれだけ大きいから原子力開発に踏み切るのであるというコンセンサスが世界的な考え方であると思います。私も大学で熱力学とかエネルギーを講義しておりますので、技術的な面から多少の知識を持っておるつもりでありますけれども日本エネルギーがある、なしという問題を、私は最近次のように考えて学生等に説明しかけておるのであります。  日本の現在の一次エネルギーの消費といいますのは、一人当たりわずか四キロワットと少しでありまして、五キロワットにまだなっておりません。各国と比較するつもりもありませんが、それはヨーロッパ先進国のかなり下でありますし、アメリカの約半分であります。四キロないし五キロワットのエネルギーのうちに、実際に家庭で炊事したり照明を受けたり、あるいは冷蔵庫を動かしたりするという、家庭で使っているエネルギーはどれくらいかといいますと、余りよいデータはありませんけれども、大体四百ワットであります。一人の生活に対して一次エネルギーとして四百ワットぐらいしか使っていないというのが日本であります。あとは経済なり社会生活を支えるために、日本が食べていくためのエネルギーであります。その四百ワットくらいのエネルギーといいますのは、世界各国でいうと、とても先進国とは言えない。でありますから、国民皆さんが、将来日本がこれだけの生活をするという期待がもしあるならば、家庭生活にどれだけの一次エネルギーを割り当ててほしいのかということをまずどこかで決めていただきたいと思います。そうすれば、それを支える産業なり輸出入なりあるいは運輸に対してのエネルギーのもとが出るのであろうと思いますので、お答えにならないと思いますけれども、これが私のエネルギー考え方であります。  そういたしますと、自然どうしても一次エネルギーの不足といいますのは、これはやはり原子力、、当分は軽水炉を急速に開発しなければならないと思います。高速増殖炉でかなりの成績を得ておりますフランスですら軽水炉を多量に建設することに踏み切っておりますし、ソ連、ドイツ、スウェーデン、各国とも当分の間はこの軽水炉建設に入っておるわけであります。これはそれだけの大きなプラスが社会にあると同時に、その必要性があるからだろうと私は思っております。
  61. 石野久男

    ○石野委員 安全性の問題を答えてください。どちらが大事なのか……。
  62. 内田秀雄

    内田参考人 安全の問題は、一番最初に申し上げましたように、原子力開発に伴いますプラスの面とマイナスの面、すなわち原子力は他の技術と同じように潜在的な危険性がなしとは思っておりません。でありますから、この潜在的な危険性、あるいは逆に言いますと安全性というものはこれだけあるのだから、だから使ってはどうだろうかということが言えます。私は、原子力の、特に軽水炉発電所の安全は現在十分であると思っております。また、将来も標準化等を入れますと、いま以上に安全を確保することもできるし、信頼性も高められると思っております。
  63. 瀬川正男

    瀬川参考人 私は、原子力の分野における過去二十年の人体に対する被曝のいろいろな実態とか、あるいは環境等に対する影響という実績から考えまして、現在の原子力開発路線は変更を加える必要はないと信じております。特に、過去のエネルギー関係技術あるいは他の工業技術におきましても、やはり全体の展開を図りながら技術開発が進歩し、向上していくというようなことが実態でございますので、私は、やはり安全性等には十分今後も大きな資金を使って掘り下げねばいかぬと思いますが、現在の路線は大いに勇気を持って進めるべきであるというふうに考えております。
  64. 久米三四郎

    久米参考人 私は、持論でございますけれども、自分たちがっくり出した毒物を自分たちが始末するという手段を持たないでやる開発というものは絶対やってはならない、そういう考え方であります。
  65. 水戸巖

    水戸参考人 先ほど申し上げましたように、原子力の利用ということについては、原子力発電所、それから再処理施設廃棄物処理、至るところできわめて危険な問題を明らかに含んでおります。その必要性ということの議論ですけれども、私たちは、これは大分古くなりますが、ローマ・クラブで発表いたしました「成長の限界」ということで非常に警鐘を、これはアメリカのマサチューセッツ大学のグループがしております。つまり、工業文明、百年というか二百年の歴史の中で、私たちは明らかに転換期に来ている、いわば現在までの工業文明の功罪をはっきりここで清算しなければならない転換期に来ているということをあの本は警告していると思いますが、私も、その点について全く同感です。その点を踏まえないで、エネルギーが必要になる、原子力しかないといったことを議論するのは、まことに国家百年、国家千年の将来を考えない軽薄な議論であるというふうに私は信じております。  もう一点つけ加えます。  先ほど内田先生が大変いいことをおっしゃいました。わずかに一〇%だけを家庭の中で一次的には使っているというお話です。そこのところが、電力会社は、あなたの家のクーラーを入れるためには原子力発電が必要だという宣伝をしている。これはまことに虚偽な宣伝であるというふうに私は考えます。内田先生は、この一〇%の分をどうしろということを聞いてからしろとおっしゃいましたけれども、わずか一〇%の分が二倍に動こうと、それが五〇%上がろうと、大勢に影響がない、全体を支配しているのはそれ以外の部分だということを、私は改めて非常に痛感した次第であります。  以上です。
  66. 市川富士夫

    ○市川参考人 いまのお話の続きになりますけれども、家庭用に電力を非常に使っておるのはアメリカでありまして、日本の場合にはその比率が非常に低くて、大企業が使っているというのが現状だと思います。したがいまして、エネルギーが実際にすぐあしたにでもなくなりそうな議論というのは間違っているという点が一つ。  もう一つは、日本の場合、たとえば原研では、軽水炉安全性研究というものがかなりの人を動員して行われております。しかし、一方では軽水炉はどんどんとあちらこちらにつくられていくという、まことに私から言わせればこれは逆さまなことであって、安全性を十分に検討もしないうちに実用に入るというようないまのやり方では非常に迷惑である。これは住民の方にも迷惑でありましょうし、研究者としても迷惑であるというふうに思います。
  67. 岸田幸一

    岸田参考人 私ども電気を安全供給することを使命にいたしております者にとりまして、現在から将来にかけての日本国民に電気を、エネルギーを安定して供給するためには、この原子力発電原子力というものの必要性と同時に安全性は、どちらが最優先、どちらが後だという問題ではございませんで、全く同時にこれは解決してい  かなければいけない問題であろうかと、そういう意味で私は、日本国民の英知と良識を信頼いたしまして、何とか結論を出していただきたい、かように考えておる者の一人でございます。  なお、電気事業者立場で申し上げますと、午前中の陳述でも申し上げましたように、安全は経営の根幹であるという信念のもとに、在来のいろいろな事象を反省しながら今後安全の基本理念にもう一度立ち返ってやっていかなければ、この五年先、十年先の電力の供給が全うできない。一言だけ申し上げますと、最近の火力発電所にしましても、在来は二年二カ月ぐらいかかっておりましたのが、五年かかっております。また、原子力発電所の一地点につきましても、在来五年から六年のものが、十年かかっておるのが現状でございますので、私どもは、五年、十年の先の問題は決して長期の問題ではございません。きょう、あすの問題ということで、目下一生懸命やっておる次第でございますので、何分よろしくお願いいたします。
  68. 石野久男

    ○石野委員 私は、原子力の発電の問題について、それがエネルギー日本の長期計画の中でどういう位置づけをするかということについては、ここではちょっと論議をするのには時間がございませんから多くを申しませんが、やはり原子力は、いまカーター声明でいわゆる再処理問題が非常に大きく取り上げられておりますけれどもカーターは、軽水炉は進めますということは言っているわけです。したがって、カーターの言う所説の中には、私どもも、安全性の上からいうといろいろ問題があると思っております。  そこで、私は、いまきょうここでどうしても聞きたいことは、国民にとってエネルギーが必要なんだけれども、それは本当に安全なのかどうなのかということについての疑問、これが解けなかったら恐らく信頼は得られないだろうと思うのです。したがって、安全性確保するということが一つと、それから、皆さんの、政府なり何なりのやっている、一般の人の許容量の問題やそこに働いている労働者許容量の問題等について、やっぱり私たちは問題が非常に多いんだと思うのです。久米先生が先ほど、アメリカ環境庁がことし発表した許容量の問題についての所見の発表がございましたが、この問題を日本適用した場合に、どういう問題がいま現にやられねばならない問題があるんだろうかということについて、久米先生からひとつ、所見がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  69. 久米三四郎

    久米参考人 詳しいことは、報告が出ておりますから、委員会でぜひ調べていただきたいと思いますが、その環境庁規制の一番大事なのは、現在のところ日本もそうですか、アメリカもそうでしたが、原子力発電所だけは一年間五ミリレム以下に抑える、こういうことでいわゆる行政指導としてやってまいりましたが、環境庁の案では、再処理工場もすべて一切の原子力施設を含むと、それからもう一つ特徴は、総量規制という概念を初めて打ち出しています。これは画期的なことだと思いますので、こういうのをそのまま適用いたしますと、恐らくあの小規模な東海村の再処理施設さえ、私は、もう運転を停止しなければならないのではないかと、そういうふうに思いますので、非常にこれは重要な問題です。ぜひ御検討をお願いします。
  70. 石野久男

    ○石野委員 内田先生、そういう問題についてはどういうふうなお考えですか。
  71. 内田秀雄

    内田参考人 午前中に申し上げました、いわゆる軽水型発電所通常運転時におきます放射線影響の設計並びに管理目標というのは、通称ALAP考え方と言っておりますが、日本では全身五ミリレム・パー年であります。あるいは甲状腺十五ミリレム・パー年、これは一つのサイトに幾つかの炉がありましても、そのサイト全体について考えますし、それから、サイトがもし近いところにありました場合には両方のサイトの影響を考慮して考える、すなわち、結局のところ、日本のどこに人が住んでいましてもその目標を達成する、また達成できるというわけであります。この五ミリレム、十五ミリレムというものに対しましては、アメリカ一つの炉当たりに取り上げております。この点が大変違うことであります。  それから、二十五ミリの問題は、私、現在ここに詳しい資料を持っているわけではございませんが、これは、その発電所燃料の再処理を含めました燃料サイクル全体として二十五ミリに抑えるということでありまして、これが五百ミリの法としての制限値と二十五の意味するところがどの程度を言うものかよく存じませんが、確かにアメリカ環境庁は二十五ミリレム核燃料サイクル全体に当てはめておると聞いております。
  72. 石野久男

    ○石野委員 科学技術庁おいでになっておりますが、このアメリカ環境庁許容量に関するそういう方針が明示されたことは承知しておるのですか。
  73. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 承知いたしております。
  74. 石野久男

    ○石野委員 それに対して科学技術庁は何か検討を加えておられますか、あるいはまた、原子力委員会ではどういうふうな検討を加えておりますか。
  75. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 私どもが得ております情報に基づきまして検討を加えておりますが、現在のところ、わが国考え方は、国際放射線防護委員会の勧告に沿って、放射線審議会の議を経てこういうふうな基準を決めるということになっておりまして、現状で直ちにこの基準を改定することは考えておりません。引き続き検討中でございます。  なお、EPAの基準は、いずれも三年ないし六年先に実施する、こういうことになっております。
  76. 石野久男

    ○石野委員 許容線量の問題はいろいろ問題があるようですが、これはまた後でお尋ねいたします。  原子力安全性の問題について各参考人からいろいろな所見がありましたが、特に内田参考人からは、わが国の安全の問題については世界的にも高い評価を受けているということが言われていて、核拡散防止条約上の立場と混同しないようにしてほしいというお話がございました。そこで炉の安全性の問題について、実は私は内田先生が言われるようにはなかなか感じられない問題がたくさんあるのでございます。  そこで、ひとつお尋ねしたいのですが、きょう実は私のところへ島根の発電所からノズルの問題についての予定表が送られてきまして、ここでノズルの修理に対する作業日程等を見てみますると、四月の終わりに燃料装荷をしまして、五月の中旬までに圧力容器の復旧が行われ、炉の起動が五月中旬、こういうふうな予定が来ておるのです。私は現場を見まして、戻りノズルのひび割れの問題がある、そのひび割れの問題について手当てをしました。そのことについて現場でお伺いしますると、通産の指示を受けてステンレススチールの表面張りを削った上で内面のカーボンスチールまで約十三ミリぐらい掘り下げてそこでとめた、あとはもうそのままで作業を進めてよろしい、こういう話だったのだそうです。私も非常に素人なものですからわからなかった。しかし、いずれにしてもステンレススチールで炉の本体の内張りがしてあるのに、それを削ってそこに穴があいてしまった、その穴のあいたところを、カーボンスチールまで露出しているような形で仕事をさせるということになると、表面をいわゆるステンレススチールで内張りした理由は何なのだろうかということがまず疑問なんです。  安全審査のときは、この部分については詳細設計に任したそうでございますが、しかし、炉全体の内張りの問題は安全審査の課題だろうと思うのです。ステンレススチールの内張りをしたという理由は何なのでございましょうか、どういう理由ですか。
  77. 内田秀雄

    内田参考人 ステンレススチールの内張りを圧力容器にしたということは、当然腐食を少なくするということでございます。
  78. 石野久男

    ○石野委員 そうしますると、今度はグラインダーをかけてずっと掘り下げてしまったところにカーボンスチールが出てまいりますが、こことステンレススチールとが、同時に炉内の水もこの影響を受けるのですけれども、この問題は安全審査上は何も問題ございませんか。
  79. 内田秀雄

    内田参考人 少し具体的な問題として取り上げてお話を申し上げたいと思いますが、島根の制御棒の駆動機構のCRDの駆動水の戻りノズル、径がたしか七十ミリぐらいだと思いますが、そこのクラッドに細かい応力腐食の割れが出たということがわかっておりまして、そこで通産省の原子力発電技術顧問会ではそれの対策の検討会を設けまして、またそれを修復する場合に母材に、要するに圧力容器のカーボンスチールにどの程度の修復をしても差し支えないか、あるいは修復をしてはならないかという検討までしたわけでございます。  アメリカ基準ではもういろいろありますけれども日本の検討会で検討しました結果、最大、母材に対して二十五ミリぐらいまでならばこれを削りましても削った後の滑らかさを十分保てば、母材の厚さが百六十ミリございますから、これは安全上別に問題はない。それからカーボンスチールとステンレススチールのクラッドが両方あらわれるわけでありますから、理論的に言いますと電蝕が起こるわけでありますが、これは母材の厚さが百六十ミリありまして、仮に二十五ミリまで切り取りましても十分腐食しろとして残っておるからこれは差し支えない。また、カーボンスチールとステンレスとが共存しておるところもほかにもございます。ただ、圧力容器の内面は、確かに審査会の過程で先生がおっしゃいましたようにステンレスクラッドをすることが一応原則になっておりますけれども技術顧問会の細かい検討会では、いま申し上げましたような結論を踏まえまして島根に対して修復をよいだろうと言っておる次第でございます。
  80. 石野久男

    ○石野委員 その技術顧問会の結論というのは、原子力委員会安全審査部会との関係におきまして一定の責任を持ち得るものになるのでございますか。
  81. 内田秀雄

    内田参考人 原子力発電技術顧問会のその検討会は、通産省の行政に対しての諮問を受けた検討でありますが、これが原子炉の安全として非常に重要であるというふうに判断されれば、これは原子炉安全専門審査会にあります発電用事業炉部会の検討なりその指示を受けるわけでありますが、まだ技術顧問会の中では十分最後までの検討を詰めているわけではございませんし、もちろん島根が実際に再起動可能といたしましても、再起動する前に結論をしなければなりませんので、今月に入りまして原子炉安全専門審査会の検討を受けておりまして、いずれは最終的には原子炉安全専門審査会の場で十分検討した後に技術顧問会なりあるいは直接なり通産省に答申といいますか意見の具申があるだろうと思います。まだ現在検討中の段階でございます。
  82. 石野久男

    ○石野委員 そうすると、この問題は原子力委員会の安全審査部会に問題が上がってくる、それを受けて先へ進めていく、こういうことなんですね。
  83. 内田秀雄

    内田参考人 現在そういう段階であると理解しております。
  84. 石野久男

    ○石野委員 きょうは参考人はそういう資格ということではなく来ておりますけれども参考人内田さんは一応安全審査部会の部会長さんをやっていらっしゃいますが、内田さんはそういう資格において、こういうようなことが上がってこない前に通産がそういう問題の進行指示とか何かというようなことをやるということになると、原子力委員会としてはちょっとまずいのじゃないのですか、どうなんですか。発言できなければいいですよ。
  85. 内田秀雄

    内田参考人 言葉じりをとらえるようでありますけれども、最後の原子力委員会としてということは、私は何も御意見を申し上げるわけではありませんが、CRDのノズルのそのクラックだけの問題を考えますと、それが原子炉の安全に本質的に関係するとは思いませんので、恐らくそういう判断で当初から安全専門審査会に意見を求めているというのではないだろうと思います。また、その指示はなかったんだと思います。
  86. 石野久男

    ○石野委員 これは論議は余りいたしませんから、問題の所在がわかればそれでよろしゅうございます。  先ほど来岸田参考人からもいろいろお話がありまして、労働者の災害の問題で先般参議院でわが党からいろいろ問題の提起をしましたが、調べた結果そういう事実はないというようなお話もございました。これはどちらがどうであるかということは別といたしまして、原子力作業においての労働者の災害問題というのは非常に私は重大だと思っておりますが、この災害の防止のためのいろいろな現場実情というようなものについて、大体十分だという見方と、それから久米先生あるいは水戸先生から、特に水戸先生からは労働者の災害の問題は非常に問題があるというようなお話もございました。現場における労働者の災害、被曝防除ということについて考えなければならぬ問題はいまどういうような問題があるのだろうか、そういう点について、ひとつ久米先生と水戸先生からちょっと御意見を承りたいと思います。
  87. 久米三四郎

    久米参考人 私はいま、敦賀の発電所で足に被曝を受けたある一人の労働者の裁判をその原告の立場に立って一緒にやっておりますので、そういう立場で調べましたのは、やはり被曝の実態を明らかにするということです。被ばく手帳というのがございますが、そういったものも個々の作業者には渡されておりません。どこか途中の段階で下請会社がそれを管理しておるということです。ですから、Aの発電所で働いて、次にBの発電所に行けば一切御破算という形で、二重、三重の被曝が生ずる可能性があります。これはかつて私は参議院のある議員の方にも非常に重要な問題でお話ししたことがございますが、現在の法的な体制ではその点は防ぎとめられないということを昨年聞きました。その点をまず何よりもはっきりしていただきたい。  先ほど、調べたけれども影響はないとか言っておられますけれども、晩発性の障害に果たして被曝が関係なかったかあったかというようなことは医学的にはいま証明できないのです。ですから、被曝の現状をきちっとつかまえることしか方式がない、これが放射線被曝の最大の眼目です。これは完全犯罪が可能なわけです。その場でばったり倒れるというようなことではありませんから、五年、六年後にそれががんなりあるいは遺伝的な障害で出てくるということですから、現状をできるだけガラス張りで把握できるように、個々の一人一人の作業者に対してそれができるような体制を早急につくっていただきたい、そういうふうに思います。
  88. 水戸巖

    水戸参考人 先ほどもちょっとかいつまんで申し上げましたが、福島一号炉のこの例を見ただけでも、四十六年度から五十年度の四年間に全体の被曝量として十倍以上に増加をしております。これは被曝を受けた一人一人の線量を全部合計したものです。それが十倍以上に増大しているという事実がございます。しかもその問で、正社員の方は人数が二倍、そして下請の労働者が三倍、これも増大はしておるわけですが、この程度の増大である。にもかかわらず、総被曝線量で言いますと、正社員の方は二倍、そして下請の方は十一倍というふうに激増しております。それで、この事態はもう一つほかのデータを見ますと非常にはっきりいたします。四十八年度で年間に二・五レム以上の被曝を浴びている正社員の数が六名に対して下請が四十七人、こういう状態でありますが、そして五十年度になりますと、二・五レム以上の被曝を受けている正社員が一人、それに対して下請の人々は百三人というふうに、正社員の方は減っている、そして下請の方は激増しているという状態になっております。  このような公式に発表されたデータだけから見ても、つまり比較的状態が正確にとらえられている正社員の方にではなくて、問題はむしろ下請の方にある。しかも、これは単に一回限りの下請ということではなくて、下請の下請のまた下請、そういったところで一番危険な除染作業あるいは修理作業というようなことが行われているのが現実であって、その実態がなかなか実際につかめていないということであると思います。  それからまた、いま述べました線量の値というのは、これは身体の外からの線量であって、その人が吸い込んだ放射性物質による線量というようなものが全く考慮されていないという点も重大であると思います。したがって、先ほど述べましたような数値は非常に表面的なものでしかない、事態はもっと深刻なのではないかというふうに私は推察しております。したがって、こういう状態を調べるためには、その下請の下請の下請、これは日本産業構造の非常にゆがみをあらわしているのだと思いますが、そういうところまで一人一人の労働者の被曝の実態が明らかにされるように把握するというのが国として緊急で最も重要な問題ではないかというふうに私は考えております。  もうちょっと言いたいと思うのですが、単に被曝ということだけでなくて、この作業場で、こういう汚染の非常に高い区域で労働災害が起きたという場合に、緊急にどのような措置がとられるべきなのかという問題について、もちろん人命の尊重ということから言えば直ちに外部に運び出し手当てをするということが行われなくてはいけないわけですが、それが被曝を一般の市中に持ち込むということになる。そういう場合にどうなるのかというようなことも必ずしも基準が明確にされていないのではないか。そういうことから来る下請労働者の、最も危険な状態で働いている労働者の生命というものが脅かされているのが現状ではないかというふうに私は思っております。
  89. 石野久男

    ○石野委員 岸田参考人にお尋ねしますが、岸田参考人は、原子炉については一般の間に心理的な不安が非常に大きいのだ、これからは原子力ということについてできるだけコンセンサスを得るように努力しなくてはいけない、こういうお話をいただきました。  そういうようなたてまえからいたしました場合に、電気事業会に所属しておりまする各原子力発電所皆さんが、事実は一日も早く保安規程とか何かによりまして知らすということが非常に大事なんだろうと思うのです。にもかかわらず、先般美浜の問題のようにひた隠しに隠すというような事実もあったりいたしまして、なかなか大衆は皆さんのそういうお言葉をまともに受ける態勢にはないと思うのです。そういうことを踏まえて、やはり業界としましては、こういう問題について一定の、何といいますか業界内部の内部規制と申しますか、いわゆる原子力安全性に対するモラルの問題をもっと重要視しないとだめなんじゃないだろうか。それなくして、エネルギーが足りないのだからとか、それから安全性に対する一部の人たちのいきり立った形だというようなことを言ってもだめなんじゃないかという感じが私はするのですよ。あなたはどういうようなお考えでございましょうか、ひとつお聞かせ願いたい。
  90. 岸田幸一

    岸田参考人 モラルの問題でございますが、先ほども申し上げたつもりでございますけれども、やはりこれからは稼働率を犠牲にしてでも、たとえささいな故障等が起きてもすぐ事故原因の究明と対策の検討を慎重に行って、報告すべきものは直ちに報告するように、いま九社そろって、その線上でこれからやらなければ先ほど申し上げたような日本エネルギー確保できないというふうに非常に厳しく受けとめておるつもりでございます。
  91. 石野久男

    ○石野委員 時間がもう二、三分しかありませんが、そこで厳しく受けとめておるのだが、事実ああして美浜の問題が出たり何かしましたときには、事業会としてはこういうところで何か関西電力さんにあなた方がそういう立場を明確に示すような処置、方法というものをすることができるのですか、またはされたのですか。そういうようなことをちょっとこの際聞かしていただきたい。
  92. 岸田幸一

    岸田参考人 午前中の陳述でも申し上げましたように、私ども電気事業連合会は会社の個々の報告義務とかそういうことに直接タッチしておりませんので、具体的なことを申し上げることができないのは残念でございますけれども、先生から御指摘の点につきましては、九社そろっての会合の場も何回かございますので、今後に対処していきたいと存ずる次第でございます。
  93. 石野久男

    ○石野委員 どうもありがとうございました。
  94. 山田太郎

    山田委員長 次に、日野市朗君。
  95. 日野市朗

    ○日野委員 次に、私から若干伺わしていただきたいと思います。  まず、内田先生に伺いたいと思います。どうも私は技術の面はまるっきりの素人でございましてさっぱりわかりませんので、若干とんちんかんになるかもわかりませんが、そういうところはお許しいただきたいと思います。  まず、私なんかも原子炉でいろいろな故障と言おうと事故と言おうとトラブルと言おうと、そういうものが起きますと、やはり不安感はぬぐえないでいるわけなんですね。それで、ノズルにひび割れが入ったというような事故、いま石野委員からも聞かれましたけれども、これが島根で起きた、また福島でも起きたというようなことを聞いているのですが、これはこわくない事故なんでしょうかね。
  96. 内田秀雄

    内田参考人 最近出ています、いま先生御指摘のいわゆるノズルについてのひび割れということでございますが、これは先ほど石野先生から申されました島根についてまず申し上げますと、制御棒駆動のために、圧力水でもって駆動しているわけですが、それの余分なものを戻すために圧力容器に一つノズルをつけているわけです。これは原子炉によって違いますが七十ミリとか九十ミリで、島根ではそこだけにステンレスのクラッドを、PT試験と言うのですけれども液体浸透試験で見ますと応力腐食の跡が見えた、こういうわけでありまして、普通考えるひび割れというか、ぱくっと割れているのかというと、そういうものではもちろんございません。その深さはどのくらいかといいますと、一番深いところで約十四ミリであります。ただし、ステンレスのクラッドが約五ミリありますので、母材に対しては約十ミリ近く入っておりますが、これは先ほども申し上げましたように、二十五ミリくらいまでは修復しても別に危険はないだろうという専門家の検討を得ております。島根につきましては、給水ノズルには異常ございません。  それから、福島第一の第一号炉では給水ノズルは直径が約二百六十ミリございますが、そこと制御棒駆動の戻り水のノズルの両方にやはり深さ十五、六ミリくらいの応力腐食の割れが出ております。これはやはり検討会の結論を得ましてクラッドのところを取り、それから母材に入っていましたならば母材のところを削りまして、全体が滑らかになるように修復しております。これはそれだけ削りましても、圧力を受けた強さのものでは別に問題ありませんし、また、先ほど申し上げましたようなステンレスとカーボンスチールとの間の電食の問題も十分な腐食しろがあるということで、これは運転に差し支えないだろうという結論を検討会では得ておるわけでございます。
  97. 日野市朗

    ○日野委員 私、ずっとこの論議なんかを聞いておりまして、最初上の方のステンレスにひびが入った、そしてその下のカーボンスチールにまでひびが入っておる、このひびの原因がよくわからないのです。私、むずかしいことを言われたってどうせわかりませんので、非常に簡単に、何が原因でひびが入ったのだということをお聞かせいただけませんか。
  98. 内田秀雄

    内田参考人 これらは一口に応力腐食と言っておりまして、ある材料が、たとえば曲げをするとかいうことでここに応力が入っておるわけですけれども、ある応力と、そこにあります水の雰囲気であります。その雰囲気、それから材料との関連で起こります。その材料の粒界に割れが入っていくという粒界腐食になるわけであります。ですから、応力と、その材料といいますか材質、それから水の三つが混合した影響を持ってそこに出てくるわけでございます。
  99. 日野市朗

    ○日野委員 技術関係に明るい方、久米先生もおいでになりますので、久米先生のこの点についての御見解いかがでしょう。
  100. 久米三四郎

    久米参考人 私は、内田先生とは見解を全く異にいたします。私たちは、この福島なり島根で起こった事故を非常に重視しています。  これはもう御存じだと思いますが、圧力容器とかそれにつながっているハイプ、これは軽水炉特徴でございますが、百気圧前後の圧力をその中に保持するという役割りを持っています。もしもハイプや圧力容器にひびが入って本当にぱっくり口をあくようになると大変なことだ、これがいま原子力発電所にとって最大の事故の引き金になるわけでございまして、これを防ぐということは一番大事な問題です。これまでしばしばパイプのひび割れが出てきておったことはすでに御存じのとおりですが、今回初めて——ノズルといっても皆さんおわかりにならないかもしれませんが、パイプと圧力容器を直接くっつけるわけにまいりませんので、そのパイプをくっつけるくっつけ口を圧力容器の側に溶接してございます。圧力容器とは一体になっているものでございますが、その圧力容器の部分に今度初めてひび割れが発見された。しかもそれは、いま内田先生、十何ミリと大したことないように言われましたが、私たちにとっては非常に重大な深さの傷があったということで驚いているわけです。  この問題も、先ほど申しましたように新聞に二、三行出るだけで、私たちは全く情報を知らされません。きょう初めて内田先生からそのアウトラインを聞かされて、私もいま非常に驚いております。特に問題なのは、削り取って後そのまま使っていいということ、こんなことを一体どこでお決めになったのか。詳細に検討したとおっしゃいましたが、ぜひ公開していただきたい。そういうことを密室でおやりになってその場限りの対策を施す、これが皆さんが好んで言われる国民的なコンセンサスをぶち壊していることになっているのです。  内田先生は、原子力というと何か感情的に反発していると言うが、そんなことはないのです。私は各地住民と接触しておりますが、猛烈に勉強しているわけです。かつてパイプにひびが入ったときに、どういうふうに推進側の人たち説明したか。もうこれは原因解決した、今後は起こらないと言ったものが一年先にまたひび割れをする、そういうことの連続が実は各地住民の中に蓄積されているわけです。原子と聞いたらびっくりする、そんな態度で皆さん方がおやりになろうとすると大変なことになります。私たちも驚くほど、各地住民は非常に知識を蓄積しています。そういう人たちに何にも知らさずに、ただ安全であるというふうにおやりになっていること、これはもう詳しいことは省略しますが、もしも内田先生でも安全審査のときに、パイプの部分をグラインダーで削って覆ってあるステンレスがはげておるようなものを設置しようとしたら、これは必ず不許可になります。しかし、もうすでに使いだしたものだからやむを得ないということでそれをお許しになる、これはもう科学や技術の問題を離れています。  ですから、先ほども申しましたように、危険性とか安全性の問題というのは、そういったやり方そのことが実は危険性の土壌になっておるというふうに私は感じております。ただ、内田先生たちがどういうふうに詳細に検討されたかということが報告されていませんので、それをまたとっくりと拝見させていただいてから、それに対する技術的な反論は加えたいと思います。ぜひそういう資料がわれわれにも公開されるように取り計らっていただきたいと思います。
  101. 日野市朗

    ○日野委員 私もやはり、ひび割れしたところを削って中の炭素鋼がそのまま露出しているような形だと、これは何か危ないんじゃないかなという感じがするのですが、どうですか。いまお聞きになった範囲で、若干の推測が入るのもやむを得ないのでしょうけれども久米先生、このひび割れの原因というのは何であったか。  私、ちょっと心配するのは、そういうひびがそこに起きてくるということは、炉の材質そのものに何らかの変化でも起きていてもろくなっているんじゃないだろうかなという素人なりの感じを持つのですけれども、そんなことになっていたら大変だ。炉そのものが高い圧力に耐えられなくなって破裂状態になってしまうということが果たして起きないのだろうかという心配を持つのですが、久米先生と内田先生に、そういう心配があるかないかという程度で結構ですからひとつ伺いたいのです。
  102. 内田秀雄

    内田参考人 いま先生のおっしゃった心配はございません。  それから、ちょっと先ほどの補足をいたしますが、応力腐食の応力ということでありますが、この給水ノズルは圧力容器から出ておりますが、その中にサーマルスリーブというパイプが入っておりまして、そこに給水スパージャーがついているわけであります。そのサーマルスリーブと給水ノズルとの間の狭いすき間から給水のための温度の低い水が出入りすることによる熱応力の繰り返し、これが主たる応力であります。でありますから、ただ削り取って修復するということでなしに、サーマルスリーブとノズルとの間のすき間をなくすような処置をとっております。でありますから、将来はそういった応力腐食割れが給水ノズルに起こることはまず心配ないと思っております。
  103. 久米三四郎

    久米参考人 私は、データを全く見せていただいておりませんから何とも言えませんが、いま内田先生のお話を聞く限りは、応力腐食割れということの証拠もはっきりしないと思います。なぜかといいますと、ステンレスとその下地と両方にひびが入っておりますから、どちらからこのひびが進行したか、ここがかなり重要なところでございますが、それは私たちには判断するすべはございません。しかも、それをグラインダーで削り取ってしまうというようなことをしますと、ますますその原因調査は困難になる。いまの内田先生の説は、表面のステンレスが応力腐食を受けやすい性質があるということは明らかでございますが、それがどうして内部にまで進んだか、これは非常に大事な問題です。それによっては、内田先生は大丈夫と思うとおっしゃいましたけれども、その結論は変わってくる、こういうふうに私は思います。  ただ、技術とか科学というのは、やはり実際のデータをとことんまで検討するということを前提にしてやりたいと思うのですが、もうグラインダーで削ってしまわれますと、私たちから言うと証拠隠滅というふうに思いますから、これは原因の追及が非常にむずかしい。ですから、結局場当たりでやってみて、また進めば、これは違う、そういうことを繰り返しておる間に行き着くところに行ってしまうのではないかというのが私たちの考えです。
  104. 日野市朗

    ○日野委員 私も技術的なことは本当に暗くてどうもよくわからないのですが、たとえば美浜のあれは一号炉でしたか、蒸気発生器の故障なんかでしばらくとまっていた、それなどはどんなふうな解決になったのでしょうか。簡単でよろしゅうございます。ちょっと内田先生お願いいたします。
  105. 内田秀雄

    内田参考人 加圧水型の蒸気発生器の蒸発かんのいわゆる薄くなる腐食の問題でありますけれども、これは午前中に申し上げましたように、二次側の水の処理を燐酸ソーダの処理からボラタイル処理に切りかえたということと、定期的な点検のときに、全数、ECTと言っておりますが、渦電流探傷試験でもってそれを検査しまして、検査に発見できるような影響があったものはすべてそれをプラグしております。といいますのは、そのECTの検査で発見ができますのは、一〇%あるいは二〇%ぐらいチューブが薄くなりますとすぐレコードが出るわけでありますが、それを全部プラグしております。アメリカでは、五〇%ぐらいまで薄くなりましても実際使っております。でありますけれども日本では、安全を確保する意味で検査器に指示が出たものは全部プラグするということでありまして、最近日本で新しくできましたPWRはそういうプラグが非常に少なくなっております。
  106. 日野市朗

    ○日野委員 たしか内田先生は蒸気発生器などはかなり専門的なお立場ではないかと思うのですが、専門家内田先生がそうおっしゃるからには非常に信頼していいようにも思うのですけれども、残念ながら高浜の原子炉で、私、確かな筋から聞いたわけではないのですけれども、今度はさらに蒸気発生器に何センチかにわたるひび割れ状のものが発見されたというようなことを伺うわけです。こういう事実についての考え方といいますか、それをひとつ内田先生と、これも久米先生にお伺いしたいと思います。
  107. 内田秀雄

    内田参考人 高浜の二号の蒸気発生器の蒸発かんに今度の定検に入るときからひび割れといいますかチューブが出ております。これは美浜一号等の薄くなるのとは違った原因だと思いますが、蒸気発生器の蒸発かんのいわば応力腐食の問題だろうと思います。こういう応力腐食が蒸発かんに出ることは外国ではすでに例がございます。これの原因調査とそれから材質の検査等をいま検討中でございますので、明確な結論まではまだ出ておりません。
  108. 久米三四郎

    久米参考人 私自身も高浜でたしかことしの一月だったと思いますが起こった事故は非常に重視しております。いま先生御指摘のように、たしか長さが九センチ。これはよく日本は起こるとすぐピンホールというような言葉で新聞もお書きになりますけれども、この場合はどうにもできませんでして、九センチというとすさまじい長さのひび割れです。これがやっぱり起こっていまして、同じことがおととしの二月にこの前身でありますポイントビーチというアメリカ発電所でも起こっておりまして、私たちはそういうものとの関連でこの問題を考えていきたい。いま内田先生がおっしゃったように、日本ではこの対策でもう大丈夫といった方式、私たちはそれに非常に疑問を持っておりましたが、この問題はそれに対する回答を与えてくれたと思います。ただ、これも新聞に二行ほどで全く事実、が知らされておりません。  ですから、私たち本当に手足を縛られて何か物を言うというような状態に置かれておる。これをぜひ国会皆さんのお力で公開をしていただいて、明るいところでちゃんとした議論ができるようにしていただきたいと思います。アメリカでは少なくとも事故の態様に関しては報告書という形で公表されておりますので、せめてそのくらいのレベルまではやっていただきたい。そういうこともできぬようでは、とてもじゃないけれども原子力に頼るというような方向は国民から支持を得られないと私は思っています。
  109. 日野市朗

    ○日野委員 本当はもっともっと、私自身も不安を感じるものですから、たとえば蒸気発生器の中が水だったからいいようなものの、これがナトリウムだったらどうなんだろうななんというふうに考えてしまうわけですね。増殖炉だって、実験炉から今度は実用に踏み出せばナトリウムも蒸気発生器の中を通っていくわけですから、そんな心配を持つと、本当に「常陽」さん大丈夫なのかなという感じが実は非常に私には強いわけです。  今度は質問の観点を変えさせていただきます。さっき内田先生は、原子力エネルギー開発という方向に進むときに、プラス面とマイナス面を比較考量するというふうにおっしゃったのです。ただ、私なんか考えますと、単純に、交通事故だって何人死ぬではないか、炭鉱の切り羽で何人の死傷者が出るじゃないかというような問題と、原子力エネルギーをこれから開発していくのだ、そしてそれを実用化していくのだという場合、そこから出てくる熱や何かのいろんな公害ということももちろん考えられるわけですが、そのほかにも放射能の問題というような、原子力とそれ以外のものとの間では非常に危険度の次元が違うような感じが実は私するのです。というのは、原子力の問題についてはまだまだ究明されない分野が余りにも多いということから、何か。プラス面とマイナス面の比較考量というお考え方に、実は私それを伺っていまして、素人なりの、素人なればこその非常に深い、気持ちの中にざくっと突き刺さるような感想があったわけなんですが、先生のこのプラス面とマイナス面の比較考量とおっしゃった、これをもう少し詳しくお聞かせいただけませんでしょうか。
  110. 内田秀雄

    内田参考人 いわゆるコスト・アンド・ベネフィットのアナリシスということでありますけれども、いま先生がおっしゃったように、違った問題をどう比較するかということは非常にむずかしいだろうと思います。ですから、これを定量的に、たとえばすべてドルで換算して比較しようというのがアメリカにはございますけれども、これは各国とも定性的にプラスの面とマイナス面とを十分比較しようという体制にはございますが、定量的にどう比較したらよいかという定説は恐らくないのだろうと思います。でありますから、これは社会なり国民皆さんがどういうふうに理解するかということによって検討することでありまして、たとえばS02の問題とこちらの問題とをどう直接比較できるのかとか、交通事故原子力のリスクとの間をどう比較するかということを一対一で明確に定量化できるものとは私は思っておりません。
  111. 日野市朗

    ○日野委員 その原子力開発していく場合のプラス面、これはどうなんでしょう、端的に伺わせていただきますが、コストとベネフィット、それの分析から計算されるものというふうに先生はお考えになっておられるかどうか。
  112. 内田秀雄

    内田参考人 原子力開発のプラス面というのは、先ほど来申し上げましたように、簡単に言えば一次エネルギーの代替でございます。それからそれの持っておるマイナス面といいますのは、定量的にどうしても一つの例を出すとすれば、通常運転時に行います五ミリレム・パー年で目標として十分運転できる、これは自然の放射線の百分の一であるからこれならば別にもう放射能影響は事実上ないと考えてよいのではないかというコンセンサス、これは世界的なコンセンサスだと思いますが、それと比較するということであります。プラスの面は一次エネルギーの代替でありまして、これなくしては一次エネルギーをどうするのかという心配を私は常々持っておるわけでございます。
  113. 日野市朗

    ○日野委員 まだよくわからないのでもう一度質問させていただくのですが、端的に伺いたいのです。  原子力と言う場合、あくまでも先生がおっしゃるのは経済的に、経済学上の概念を使われた分析が先生の基本になっている。つまり、コストがどのくらいだ、そこから得られるベネフィットはどのくらいだ、利益はどのくらいだ、そしてそれがプラスの面に出たらこれは進めて構わないんだというふうに聞こるのですが、よろしゅうございますか。
  114. 内田秀雄

    内田参考人 コスト・アンド・ベネフィットのアナリシスというのは英語でございまして、コストというのは決して生産のコストというものではございません。私は経済の専門家ではございません。でありますから、原子力開発によっていろいろな意味で社会的にプラスになるし、また必要であるからわれわれは持っているわけであります。ですから、一次エネルギーというものが必要であるというのはわれわれの生活のためにやはり必要なんだろうと私は思っております。そういった面でプラスの面が十分あるということでございます。いわゆる生産コストとか経済上幾らということではございません。
  115. 日野市朗

    ○日野委員 よく私が使う言葉なんですけれども、私はやはりこわいという感じがどうしても抜け切れないのです。日本人の一人として核アレルギーを持っているのかもしれません。しかし、私が漠然と素人なりに感ずることは、これは普通のエネルギー開発とは違う、もっとわれわれは恐れを持って進まなければならないんだ、そのために安全性ということに対する考え方ももっと形而上学的なところにわれわれの恐れというものはあるんだ。そのように私は自分で考えているのですが、先生のお考えはどうでしょうか。
  116. 内田秀雄

    内田参考人 これは申すまでもなく原子力発電の持っております安全の問題、あるいは逆に言いますとリスクの問題は、ほかの技術開発とは違った面を持っております。でありますからこそ、原子力発電の安全は十分確保しなければならないと思っております。
  117. 日野市朗

    ○日野委員 今度は岸田さんに伺います。私なんか見ておりまして、きょう岸田さんのおっしゃられたことは、本当に電力業界はそのような姿勢で、もういささかのトラブルでもあったらそれをとめて徹底的にこれをきちんとするまでは動かさないというぐらいの覚悟で進んでおられる、そのままここで伺えば、私はぜひともそうやってもらいたいと考えているわけですけれども、現実に起きている事態は美浜の燃料棒の折損事故、さっきも挙げられました。それから公開というのは、わが国原子力開発の非常に大きな柱であるにもかかわらず、公開の面で非常に貧困だということをさっきから久米先生が悲憤慷慨しておられる。私も全く同感です。そういった点、これからそういうトラブルについてもどんどん資料を公開してこれを公に問うという態度を貫いていかれるおつもりが電力業界におありなんでしょうか。そういう雰囲気がおありなんでしょうか。覚悟のほどといいますか、それを伺いたいと思うのです。
  118. 岸田幸一

    岸田参考人 たびたび申し上げて恐縮でございますが、私どもはとにかく電力を日本国民に安定して供給するためには、在来も一生懸命にやっておりましたけれども、在来の姿勢以上に、これからはわれわれのエネルギーじゃない、電気事業者原子力じゃない、エネルギー国民のものである、そういった社会的責任を十分自覚いたしましてやらないといまの苦しい電源立地ができないということを、いまさらというと怒られますけれども、自覚しておる次第でございまして、本当に心配しておるのでございます。
  119. 日野市朗

    ○日野委員 時間も参りましたから……。どうもありがとうございました。
  120. 山田太郎

    山田委員長 以上にて日野市朗君の質疑は終了いたしました。  次に、貝沼次郎君。
  121. 貝沼次郎

    貝沼委員 御苦労さまでございます。きょうずっといろいろな御意見を伺っておりましたが、こういうごりっぱな先生方が賛成やら注意しなければならないという御意見やら、実際問題として一体どっちの方向に進んだらいいのかという非常に際どいところにいま政治家は立たされていると思うわけでございます。そこで、進めた方がいいとか悪いとかということよりも、私はきょうは両方の御意見をいろいろなテーマについて伺っておきたいと思うわけでございます。  初めに、先ほどエネルギーの問題がございましたので、このエネルギー問題につきましてもうちょっとだけ実は伺っておきたいのであります。  要するに、いままでのいきさつはございますが、私どもはこれからこの科学技術振興対策特別委員会としてエネルギーの方向をどう決めなければならないのか、これが実は問題なわけであります。たとえば市川参考人からは、現実的には近い将来の問題云々というお話がございましたし、水戸参考人からは、太陽に求めなければならない、言うならば太陽エネルギーというお話があったように思います。それから久米参考人からは、省エネルギー的な意味もあったかと思いますし、太陽エネルギーも二〇〇〇年までに人間の英知をもってすれば何とかいかないとは言い切れないというようなお話もあったかに聞こえたわけであります。こういうような御意見、私もわからぬわけではありませんが、一方内田参考人からは、とにかく現実の問題としてもう原子力エネルギーにいかなければだめなんだというような御意見であったようにも思いますし、そのような考え方に立って、たとえば、それならばこの原子力エネルギーにこれから踏み切って入るとするならば、やはり安全性の問題、特に内田参考人が言われますように国民的なコンセンサスを得なければならないという問題、具体的にどういうふうにすることがこれを得られることになるのだろうかといった具体的な問題についてのお考えをお述べいただきたい、こういうことでございます。  それから市川参考人水戸参考人久米参考人には、いまの場合、それならば従来の石油によるエネルギーで省資源化しながらやっていくというお考えなのか、原子力発電はやめてしまえというお考えがあるのか、市川参考人にはちょっと違うと思いますけれども、その辺のところを御説明願いたいと思います。
  122. 内田秀雄

    内田参考人 原子力の安全というのは、確かに考え方は非常にむずかしいわけであります。結局どこまで安全性を高めたならば安全と言えるかということでございますが、私が国民のコンセンサスを得たいと申しますのは、結論を申し上げますと、国会先生方の間に原子力安全性についてコンセンサスを得ていただきたいということでございます。
  123. 久米三四郎

    久米参考人 ちょっと先生の御質問がよくわからないのですけれども、私なりに理解をして言いたいと思いますが、私はすぐにばっさりやめるというのと続けるというのの差は余りない、実はこう思っております。というのは、先ほどからも進めたらいいという方のお話もございます。やるべきであるということはありますが、それが本当にどれだけの実現性があるかという点については依然としてもやに包まれているわけです。だから、私が一番言いたいのは、そのはっきりしないことにすべてを託して、これは私は危険なかけと言っているわけです。さもそれでエネルギーが無尽蔵に出るというようなことを、私たち専門家の端くれとしてこれまでにちょっと言ったりしてきたことをいま私自身反省していまして、やはり非常に確実にやれるという、そういう範囲の議論で一歩一歩進めていく、そういう態度が必要であろうと思います。  私は、いままだ引っ返すことは十分できる、このまま行っても先ほどからのあれで明らかなように、とにかくトイレットなしのマンションという形をのむという形でないと進められないのですね。だけれども、これは私は各地住民と接触して、そういうことで恐らく国民的コンセンサスは得られないと確信しています。ですから、そういう条件を解決するというのにはずいぶん時間と手間がかかると思いますから、その進めるということと、そしていま先生が省エネルギーとおっしゃいました、省エネルギーと言うとちょっと誤解があって、けちけちというようなことになりますが、今度のカーターも言っていたし、生活様式を、ともかくエネルギーを使う量で生活レベルをはかる、そういった考え方をここで改めようという一つの大きな、言葉はあれですけれども世界史的な運動がいま始まり出していると思うのです。そういう中で考え直していくということをやっても十分時間的には間に合う。いずれにいたしましても、ここ十年ほどでいままでの歴史で使ったような石油を使うというような、こんなめちゃな石油の使い方をすればなくなるのは当然です。ですから、そういったやり方にブレーキをかけるということが何をとるにしても先決だというふうに思います。
  124. 水戸巖

    水戸参考人 先ほど太陽エネルギーのときに、いつ実現するかという質問に私は余りはっきり答えませんでした。非常にはっきりしていることは、現在のような百万キロワット級の軽水炉危険性をゼロにする、あるいは非常に高放射能廃棄物処理の仕方を確立するというよりは、はるか以前に太陽エネルギーは現実化することができるというふうに思います。そして私は、さっき言ったような問題、原子力発電所安全性廃棄物処理ということが解決されない限りは、原子力発電を現実のものとして考えてはいけないという考えを持っております。しかし、それが永久にいつまでも一切使うなという話として私はしているわけではありません。たとえば非常に小規模の原子力発電所は、先ほど言ったような燃料溶融、炉心溶融、そして格納器の破壊といった事態に進まない、そういった適正な規模というのがこれは非常に工学的にもはっきりしていると思います。その程度のものを将来補助的に使うというようなことは、私はやはり考えなければならないだろう。そういうことが本当に実現するためにも、現在のようなめちゃくちゃなやり方、将来は何にもわからない、とにかくいま電気をつくるんだというやり方は厳に戒めなければならない、それが基本的な考え方です。  しかし、根本的には、いま久米先生からお話がありましたように、そしてこれはカーター初めもうずいぶん前から言われてきたと思うのですけれども、従来の工業文明のただ成長、成長という考え方を根本的に考え直さなければならないということがようやく現実化してきた、その現実化してきた一つのあらわれがカーターの新政策という形であらわれていると思います。少なくとも日本の政治家の方々もあの程度の英知、哲学というものを持っていただきたいというふうに考えております。
  125. 市川富士夫

    ○市川参考人 先ほど私は、現実的な問題として原子力というものがある、ただそのほかに、いろいろな形のエネルギー源についてやはり多様的なものを考えなければならないというふうに申し上げたわけでありますけれども、その現実的な原子力という点についてエネルギー問題ということで考えて、現在の原子力の進め方が果たして妥当であるかどうかという点に関して申しますと、やはり冒頭に私申し上げましたように、非常に問題があると思うのです。  それは、日本原子力が始まったこの二十年を振り返ってみますと、アメリカからの濃縮ウランの供給ということ、これはアメリカ原子力政策が二十数年前に軍事一本から変更されたわけでありますけれども、それと密接に結びついた形で今日まで来ている、それが軽水炉一本の路線を進んできたということだと思うのです。そういうことでは自主的な技術の発展ということは望めませんし、高速炉が今度臨界になりましたが、これとても軽水炉の二の舞を踏まないように、やはり自主的な立場技術の発展ということを踏まえて進めなければならない、そういうふうに思っております。
  126. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一点は、内田参考人と市川参考人にお尋ねをしたいと思いますが、いま問題になっております再処理の問題でございます。  先ほどの御開陳の中に、たとえばこれはカーター政策のみによるものではないというような御意見もありましたし、本質的に持っておるというような御意見だったと思いますが、そういうのもありますし、それから内田参考人のお立場としては、たとえばどうしても原子力エネルギーというものを確保していくには、この再処理というものを実現させなければ現実の問題としてこれはあり得ないと私は思いますので、これは今後どういうスケジュールで進めるべきなのか、それはうんと急がなければならないのか、あるいはこういった点はもう少し検討していかなければならないというお考えでもお持ちなのか、この点を伺っておきたいと思います。  それから市川参考人にも、直接再処理専門家であると承っておりますので、現場での判断といたしまして、この再処理問題に対してどういう御見解をお持ちなのか、それを伺っておきたいと思います。
  127. 内田秀雄

    内田参考人 燃料の再処理施設の問題につきましては、私、公の立場意見を申し上げる立場にございませんが、全く個人的な見解としてお聞きおきいただきたいと思います。  軽水炉から出ます燃料を再処理してプルトニウムを取り出す、いま一口に言えば再処理はそうかと思いますが、そのプルトニウムを取り出すなりあるいは減損ウランを取り出すなりして、その後どういうサイクルとしてどういう炉に使うかという全体のスケジュールの上に、燃料処理施設の方法と時間的な問題が検討されるべきだと思いますが、ともかく現状といたしまして急がなければならない。現在日本で考えられていることは決して早過ぎてはいないと思っております。  それから、なぜプルトニウムを使わなければならないかというのは、また一次エネルギーに戻るわけでありますけれどもアメリカのように自分のところに石炭があるとすれば石炭を使うということがあります。あるいは石油があればその石油を使いたいだけくみ上げて使う、ウランも自分のところにたくさんあれば使いたいだけ使って、あとそのまま残しておいて将来それを再処理すればよい。日本はどれもそうはいかないわけであります。ですから、ウランを輸入いたしましても、あとまだ使える燃料としての内容を持っておればそれを使うことを考え、それがまた安全上十分検討されるんならば当然使わなければならないだろうと思います。それが再処理の本来の目的だろうと思います。
  128. 市川富士夫

    ○市川参考人 ただいまの御質問は、東海村の再処理工場についての御質問でしょうか。それとも再処理一般についてでしょうか。
  129. 貝沼次郎

    貝沼委員 全般についてでございます。
  130. 市川富士夫

    ○市川参考人 再処理技術というものは、そもそもは軍事用のプルトニウムを分離するために発展してきた技術でありまして、したがって、それが平和利用に転換するに当たっては安全上の問題あるいは経済上の問題、そういう点でいろいろな困難が生じてきているというのが現実だと思うのです。実際にアメリカその他で現在再処理工場が、フランスでは少しあれしておりますけれども、ほとんど動いていないという原因も、詰めてみればそういうところにあるわけで、東海村の再処理工場もその点では例に漏れないというふうに思うのであります。  具体的な点については、余り時間がありませんから触れませんけれども、先ほどちょっと出ました環境規制の問題とかあるいは廃棄物処理の問題、そういうものについての技術的な詰めとか、あるいはそれを実際に行う場合の経済的な問題がはね返ってくるコストの問題、そういうのが現在障害になっているというふうに思います。
  131. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで瀬川参考人にお尋ねをいたしますが、先日、私はちょうど臨界の翌日にお邪魔をさせていただいたわけでありますが、あのときちょっとお尋ねしようと思って実は尋ねることを忘れてまいりました。それは、あの東海村の再処理工場はいままでどれぐらいのお金がかかっておるのか、この点は実は伺いたかったわけでありますが、お伺いいたします。
  132. 瀬川正男

    瀬川参考人 お尋ねの建設費のことでございますが、簡単に申しまして現在までに四百億円ぐらいというふうに考えられます。ただし、日本核燃料サイクル技術全般がおくれていたというと、また再処理工場建設の途中からいろいろと廃棄物処理技術の新しい展開を再処理工場を利用して進めるという意味の設備を追加するとかいうふうな付帯設備もかなり別途に金がかかっております。また、いま工場本体が四百億円かかったと申し上げましたが、その辺も三百億円であるべきかあるいは五百億円であるべきか、いろいろ見方の相違もございますが、当初われわれは三百億円ぐらいでできるのではないかというふうに考えておりましたが、その後いろいろ工事中に設計変更等を織り込んで改善をしながらやってきた関係上、現在は四百億円というふうに見ております。
  133. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、同じく瀬川参考人にお尋ねいたしますが、これから先の再処理のプログラムでありますが、実際にこれが実用段階に入るのは私はずっと先のことではないかと思うのですけれども、大体どれぐらいを見越してこの計画はなされておるのでしょうか。
  134. 瀬川正男

    瀬川参考人 御質問の実用段階の意味をどういうふうに考えたらいいかちょっと迷いますが、私どもの再処理工場は、今度のホットテストを乗り切りまして来春から一応本格操業に入る、しか  し、最初の二年ぐらいは用心深くやる関係上二百トンの工場能力には二、三年かかるのではないかと思っておりますが、その間におきまして、国内でいわゆる第二再処理工場の計画がだんだん形を整えてくるかと思うのです。これは一応民営というふうに現状では考えられておったわけでございますが、その民営再処理工場も完成までには恐らく十年ぐらいかかるのではないかというふうに私は考えております。その間、さっき岸田参考人のおっしゃいましたように、昭和六十三、四年ごろではイギリス、フランスの再処理工場に使用済み燃料を一部依存するというかっこうでいくわけでございます。  ただ、その実用化という観点につきましては、私の個人的見解といたしまして、私どもの再処理工場は早く動いてもらわないと事実上困る問題がございます。これは一つは、「常陽」の運転が軌道に乗りますと、一年たつとやはり取りかえ燃料棒を新しく入れなければいかぬわけでございますので、そのためのプルトニウムをぜひつくっておかなければならぬ。それから、敦賀で工事をしております新型転換炉の「ふげん」の発電所にもすぐそういった取りかえ燃料のためのプルトニウムを調達しなければいかぬというふうな現実の問題が私どもにはあるわけでございまして、そのためにはとにかく早く動いてもらわぬと困るという問題を持っておるわけでございます。
  135. 貝沼次郎

    貝沼委員 内田参考人にお尋ねをいたします。  いまアメリカカーター大統領の原子力政策によりまして、この東海村の再処理工場が果たして動くのか動かないのか、この点が実は問題になっておるわけでありますが、そこでこのカーター政策、それからカーターの言ってきておることと、それから核拡散防止条約との問題で、実は私ども政治家としては非常にかかわり合いがあるわけでありますが、この点について何かお考えのことがありましたら教えていただきたいと思います。感触で結構でございます。
  136. 内田秀雄

    内田参考人 私は、そういうことに対しての意見を申し上げる知識を持っていないし、また御質問のポイントがよくわかりませんが、カーター政権の言われる核拡散防止世界的に十分確立しなければならないということは当然のことだと思いますし、日本こそ最初からその方針で踏み切っておることだろうと思って私も自信を持っておるわけでございます。  それから、核拡散防止のためと、普通言う原子炉安全のものとは違うわけでありますので、カーター政権も核拡散防止確立すると同時に軽水炉の発電はどんどんつくっていくんだということを言っていることは、現在の原子力発電の安全は十分であるということの認識に立っておるんだろうと私は思っております。
  137. 貝沼次郎

    貝沼委員 実は私は、生産された。プルトニウム管理体制といいますかセーフガードといいますか、こういった問題について実はどういう考え方をした方がいいのかということでいま考え中なんでございますけれども、その点について現在考えられておるものはどういうものがあるか、瀬川参考人からひとつ。
  138. 瀬川正男

    瀬川参考人 管理体制といいましても、最近はやりますいわゆるフィジカルプロテクションでございますか、それに対しましては、私どももいわゆる防護体制といたしましていろいろ電子的な装置で昨年も約一億五千万円ぐらいかけましたが、そういう電子機器による警戒体制というようなものを改めて追加したわけでございますが、そういうことのほかに、プルトニウムの粉を余り長く保管するよりはやはり早く混合燃料にしてどんどん燃やしていくということの方がかえってそのためにはいいことではないか。粉として貯蔵していくというのは私は個人的には余り好きじゃないわけでございまして、ただ現状ではそういうフィジカルプロテクションという意味においていろんな体制は今後もいろいろ追加していくことになると思います。簡単に申し上げますとそんなことでございます。
  139. 貝沼次郎

    貝沼委員 再処理問題は非常にむずかしい政治的な意味があると思うのですね。そこで、これがこれからの恐らく安全性の問題、セーフガードを含めてそういった問題がこれから出てくると思いますので、いまそういったことをお尋ねしたわけでございます。  先ほど問題になっておりました軽水炉発電所作業員の健康の問題で実は私お尋ねをしていきたいと思うのですが、先ほど話に出ておりました島根の発電所、これは私、先日行って見てまいりました。それで実際に人が入って削っておるわけでありますが、そこのところの放射線量がかなり高い。ですから、一日どれくらい入っておれるかというと、大体一時間半ぐらいというのが限度でありまして、実際は一時間ぐらいしか入ってないようでありますが、そういう状態のところでいわゆる人海戦術という考え方処理されておる。一人一人の線量は確かに少ないかもしれません。しかしながら、非常に人体に及ぼす影響があるから、限度があると思いますね。したがって、人数がふえるということは、実はその可能性のある人がどんどんふえていくということになると思いますので、これは非常に重大な問題である。しかも、これは何もそういう削り取るときだけでなく、実は定期検査のときにかなりそういう線量の高いところまで入っていってやらなければならないという問題がありますので、こういうような問題について人海戦術という考え方を変えていかなければならないのではないか、こういうふうに実は思うわけでございます。  そこで、実際発電所関係のことでございますから、私は岸田参考人にこのことをお尋ねしたいわけでありますが、こういう実情にかんがみて、将来どういうような方法をとろうとお考えになっておられるのか、この辺を伺いたいと思います。
  140. 岸田幸一

    岸田参考人 お答え申し上げます。  私ども、現在原子力発電所におけるそういった管理体制と低減対策の現状について若干申し上げたいと存じますが、従事者の被曝管理につきましては、わが国では外国以上に非常に厳しい厳重な取り扱いを行っているのが事実でございますけれども、この従事者と申しますのは、単に電力会社の社員のみならず外部の、先ほど来話が出ておりました請負関係方々すべてを対象にしておるのでございます。そこで、私ども運転経験によりますれば、従事者の被曝の大部分が定期検査時に受けておるのが多い現象が見られるわけでございます。したがいまして、この定期検査時における従事者の数がいまふえていくじゃないかということでございまするが、私どもは従事者個人個人の被曝が過剰とならぬような計画を進めるべく、当面といたしましては定期検査中の機器の点検等の作業はできるだけ自動化あるいは遠隔化の操作を採用することを考え、従事者の被曝を低減していきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、長期的には、目下役所の御指導を得まして軽水炉原子力発電設備改良標準化調査委員会がございますが、そこで検討されておりまする斬新な考え方による新設計、これは具体的に申し上げますと、格納容器の形状の改善だとか容器内の機器の配置の改善だとか、そういうことに基づきまして一分でも早く出られて作業が終わるように、きめ細かい一層の被曝低減対策を実現するよう、官民の委員会で検討しておるのが現状でございます。
  141. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、遠隔操作とかそういったことは進めなければならぬと思いますが、ただ、それだけでできない部分が現実はあるというわけですね。そのところが実は問題になってくるのではないか。それは数にして非常に少ないとか、あるいは専門家だから時間が短くても判断はできるというようなことが幾らかはあるかもしれませんが、少なくとも幾らかの物理的な時間は入っていなければならない、こういった問題がありますので、ただ遠隔化とかそういったことだけでなく、実際に入っていく人間そのものに対してどうするか、その辺も実は業界の方としてもお考えいただいた方がいいのではなかろうか、こう私は思うわけであります。  それから先ほどの岸田参考人の午前中のお話でありますが、稼働率のお話がございました。稼働率が現在五十一年度のものでかなり下がっておるのは、定期検査のときに時間がかかる、したがって定期検査のスピードアップをして、なるべく稼働率が上がる方向にというようなお話のように承ったわけでありますが、私はこの定期検査のスピードアップというのは、そのためにもし稼働率の数字が下がるのであるならば、これは別に問題はないのじゃないかと思うのです。ただ、定期検査をがっちりとやっていかないと、それこそ国民的コンセンサスは得られないのじゃないか。定期検査をこのようにきちっとやって、しかも問題ありませんというのであれば、そのために数字として稼働率が少々下がっても、これは私はいいのではなかろうかというふうに考えるわけであります。この定期検査の時間をスピードアップして稼働率を上げて、それで軽水炉はしたがって安全なのだというような論法でいかれるのであれば、これは私ちょっと違うのじゃないかと思いましたのでお尋ねするわけでありますが、この点いかがでしょうか。
  142. 岸田幸一

    岸田参考人 先生おっしゃるとおりでございまして、私どもは決して定期検査を効率化いたしますことによって、先生御指摘のように簡単にしてルーズにやっていくのだということは、先ほど来今後の姿勢、モラルという点で諸先生方から御注意なり御指摘を受けておりますとおり、今後はどんなことでも安全第一にやっていくのだということでございますので、もちろん稼働率を犠牲にしてでも安全第一という根本精神は変わっておりません。  ただし、これは私見でございますけれども、五十一年度の十三ユニットの平均が五三%。これは低いと言えば低いわけでございますけれども、いま私ども九電力の全稼働率と申しますか負荷率は、火力も全部入れまして五五、六%台になっておるわけです。そういう意味からいきまして、この五三%というのは非常に低いじゃないかということでもないし、また本来からいけば七〇%ぐらいが妥当かもしれませんし、いろいろな見方がございましょう。しかし、私どもは、いま申しましたように、そういう定期検査を省略することによって稼働率を少しでも上げるのだという考えは毛頭ございませんので、御承知おき願いたいと存じます。
  143. 貝沼次郎

    貝沼委員 最後に、内田先生と久米先生にお尋ねをしておきたいと思います。  現在の放射線許容量の問題でありますけれども日本で決められておるものが本当に妥当とお考えなのかどうか、もっと厳しくしなければならないとお考えなのかどうか、この辺一言ずつお願いいたします。
  144. 内田秀雄

    内田参考人 現在の考え方、十分妥当だと思います。
  145. 久米三四郎

    久米参考人 いまおっしゃっているのは多分法的な値だと思いますので、一年間に五百ミリレムというのは非常に高いです。これを一般公衆の許容線量とするのには私たちは反対です。  と申しますのは、私自身大学でいろいろ放射能をさわっておりますけれども、一年間に五百ミリレムというような値を受けたことは、これまで十七、八年になりますがございません。そういうことだと非常に大変なことになります。ですから、皆さんは恐らく一年間五百ミリレムというのはどのくらいか見当もつかないと思いますが、私は今度アメリカ環境庁が出しました二十分の一、それにはせめて引き下げるべきであるというふうに思います。あわせて、先ほども申しました職業人の被曝、これも五千ミリレムという非常に高い値でございますが、これも同じように十分の一ないし二十分の一に下げるべきである、そういうふうに考えております。
  146. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  147. 山田太郎

    山田委員長 これにて貝沼君の質疑は終了いたしました。  次に、小宮武喜君。
  148. 小宮武喜

    ○小宮委員 最初久米参考人に質問します。  久米参考人は、原子力は安全に開発されれば将来有力なエネルギー源となり得ると考えておられるのか、それとも、やはりいかなる時代が来ようともこの原子力は重要なエネルギーとはなり得ないと考えておられるのか、その点いかがでしょうか。
  149. 久米三四郎

    久米参考人 私の持論は、先ほど申しましたように、原子力といってもいろいろございますが、後に放射性毒物を残す、そしてそれを人間が処理をする手段を持っていない、そういう限りはやってはならないということでございます。ですけれども、これはもう永遠にだめかというようなことはございません。まだ人間が科学を始めてから本当に短うございますから、今後いろいろなことがわかっていくと思いますから、その放射能を無毒のものに変えるという手段だって恐らくそのうちに人間は考えていくのではないかと思いますから、そういうときのことまでいま縛る考えはございません。その放射性毒物を無毒化する手段がない限りはやってはならない、それ以外の道を必死に探すべきである、こういうふうに私自身は考えております。
  150. 小宮武喜

    ○小宮委員 久米参考人は、私たちの前途は洋々としており、石油がなくなったらどうしようという日は来ないというようなことを言われておりますけれども、それでは石油については、いま盛んに石油の有限時代ということを言われて、いろいろアラブ諸国でもあと十五年とか二十年とか三十年とか言われておりますけれども石油は無限であるとお考えですか。
  151. 久米三四郎

    久米参考人 それは非常におもしろい問題でございますが、いま地下にある石油というのはこれは有限であること、確実でございます。ただ、この石油がどうしてできたかというのは実は学問的にまだよくわかっていないのです。これを地上でつくる、すなわち炭酸ガスと水と、植物がやっていますことです。そういうこと、これは太陽のエネルギーを利用してやる。この手段を人類はまだ手にしていないのです。私は必ずそれは——いま太陽の利用というのは、単に熱を利用するという非常に程度の悪い利用です。もう屋根の上に置いて熱い水を沸かすという、そんな幼稚なことですが、そうではなくて、いま植物が微妙な作用でやっています、これを人類は必ず手にできると私は思うのです。そうすることによって——炭酸ガスと水、これがいま地球上にだんだんふえてきて困っておるわけです。特に炭酸ガス。それをもう一度有用な有機物の形に返す手段は必ず人類は見出すと私は思います。ですからそういう意味では、石油といいますか有機資源というのも、そのうちに私は無限再生可能な資源になり得る、そういうふうに科学者としては信じております。
  152. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほどの御答弁の中にも太陽熱ということを言われました。もちろん石油の問題にしてもそういう開発を進めなければならないことは私も賛成なんです。しかしながら、果たしてそれだけで全世界の人類のエネルギーを賄い得るに足るのかどうかという問題も心配になってきます。  そこで、時間がございませんから、これは大臣に質問しますが、水戸参考人からも原子力を利用しなくても太陽熱を利用すればいいじゃないかというような意見が出ておりましたけれども、この太陽熱が実際に実用化されて本当に国内の、あるいは全世界エネルギー源となる時期は大体いつごろになるのか、ひとつその見通しについて御答弁願いたい。
  153. 山田太郎

    山田委員長 質問者に申し上げます。きょうは参考人への質問が主体でございますが、都合によってはという理事会での申し合わせもありますので、この際、答弁者よければ答弁願いたいと思います。
  154. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ちょっと声をからしておりますから失礼します。  過般来何度もお答えいたしておりますが、現在私たちの資源賦存の状況というそうした資料によりますと、日本全土に石油換算約四百五十億キロリットルに相当する太陽エネルギーが放射されておりますが、このうちの一%を利用して電力にこれを振り向けるといたしまして、五千万キロワットであります。したがいまして、今日われわれが、電力は一億キロワットでございますし、十年先には二億キロワット、そうしたものを必要とする。さらに石油換算では一九八五年には七億キロリットルぐらいを予定しなくちゃならぬというのでありますから、夢の夢だろうと思います。
  155. 小宮武喜

    ○小宮委員 それではひとつ水戸参考人に質問しますけれども水戸参考人も太陽熱の問題を言われたわけですね。われわれも、先ほども申し上げますように、やはり原子力エネルギー以外にあらゆるエネルギー開発を進めなければならないということは同感なんです。しかしながら、いま原子力開発をやめてすぐ石油がなくなったら太陽熱に切りかえるというような御意見のようにも受け取られましたので、そういうことであれば、水戸参考人は太陽熱というものがいつごろまでに開発されて実用化されるのかという問題をやはりお聞きしておかないと、ただ太陽熱があるから太陽熱で賄えるじゃないかとか、たとえば石炭政策についても、まあ政治の貧困ということが言われました。それは私もある程度肯定をします。しかしながら、石炭にしてもいま二千万トン体制で掘っておりますが、実際二千万トンは出ておりません。それで、日本全国で埋蔵量が二百億トンとか——私も石炭対策特別委員会におりましたので、いろいろ質問してわかっておりますけれども、その中で、安全ベースで掘った場合にあるいは十億トンと言われております。学者の間でも。そうすると石炭にしても二千万トン体制でいってすら五十年しかないのです。それはもう二千万トンの炭で一体、いまの電力需要の中で何分の一でしょうか、そういうこともあるし、原子力をやめて太陽熱でやろうとすれば、それは実際、太陽熱が原子力にかわって日本の国内の全エネルギーを賄い得るかどうかというようなことまで見通しをつけられて言ってもらわぬと、ただこれもあるじやないか、これもあるじゃないかと言ってみても、まあわれわれも科技特におって少しかじっておれば、疑問は出てくるわけですよ。  そういうような意味で、水戸参考人は、原子力エネルギー源としてすべて絶対否定するのかどうか、その点いかがでしょうか。
  156. 水戸巖

    水戸参考人 お答えの前にちょっと申し上げたいのですが、「成長の限界」という本の中に、物事を枝術の問題で解決できるという考え方は最も安易で、かつ危険な考え方であるというふうに書いてあります。私は、これは非常に貴重な言葉だと思います。  それで、質問された方は、原子力エネルギーをわれわれが利用できるということを前提にされてお話しになっている。私は、現在のような危険性を持った状態では、原子力エネルギーというものはまだ実用化されていない、実用化された段階ではないということを主張しておるわけです。それは再処理、かつ廃棄物処理ということで解決がないわけですから、これはまだ利用できる段階ではない。確かに、太陽エネルギーも利用できる段階ではありません。したがって、われわれは非常に困った状態にいる。それを科学枝術の問題に全部すりかえるというのは、それこそ政治の貧困ではないでしょうか。エネルギーがもしないというならば、その問題をまさに政治の問題として解決する、それが政治家の任務であると思います。  われわれがもし原子力というものを全然——これはたまたま原子爆弾が発明され、そして発明されたからわれわれはそれらしいものを手にしている。しかし、私は、それはまだ全然実用化されていないのだと思うのです。たまたまそういうものがあった、あるからそれに飛びつけというふうに、もしなかったら、それでは政治家の皆さんはどうなさるのか。戦争中、まきでもってバスを走らせました。なければそれなりに事を解決なさるのがやはり政治ではないでしょうか。私はそう思います。
  157. 小宮武喜

    ○小宮委員 危険性がある以上は絶対に利用すべきじゃない、したがって、いまは実用化の時代ではないという御意見のようですけれども、それでは、先ほど小規模の補助的に使う分については云云という言葉が出ましたけれども、この発言といまの発言との間に矛盾はございませんか。
  158. 水戸巖

    水戸参考人 たとえば五〇%とか六〇%、あるいは四〇%でも結構ですが、主要な部分として使うということは、現在の段階では全く間違いであるというふうに私は確信しております。しかし、ほかに方法がない、たとえば南極であるとかそういう場所で非常に小規模に使うということまで、私は否定するつもりはないということを申し上げたわけです。きわめて補助的な手段として使うということは、多少の問題を残すけれども、あり得る。そこまで絶対にやめろということを私は言っているのではない。その意味でも研究ということは続けなければならないけれども、あたかもそれが国の基本的な電力政策であるというふうに打ち出されることは全く間違っているというふうに確信しております。
  159. 小宮武喜

    ○小宮委員 危険性がある限りということなんですけれども水戸参考人原子核の研究をやっておるわけでしょう。それは原子力危険性をなくする方向で研究されておるわけですか。
  160. 水戸巖

    水戸参考人 現在私の専門はそういうことではありませんし、そういった予算措置を受けているということは全くございません。
  161. 小宮武喜

    ○小宮委員 科学者ですから、政治には無関係だ、政治の問題は政治家にすべて任せるという考え方のようで、そういうことは政治が、やる人が全部悪いんだ。しかし、エネルギーというものは大きな政治問題になっておるわけですね。そういう中で、科学者自身の立場から、科学者としての領域の中にとどまって、ただ意見を言うあるいは批判をするだけで済まされるかどうかという問題ですが、どうでしょうか。
  162. 水戸巖

    水戸参考人 御意見として伺っておきます。
  163. 小宮武喜

    ○小宮委員 市川参考人は、エネルギー源としての原子力の利用についてはいかがお考えですか。
  164. 市川富士夫

    ○市川参考人 先ほど申しましたが、エネルギー源としていろいろなものを多様に考えるということは必要であるという前提を置きますけれども、その中で、現実の問題として原子力というものは必要なものと考えて開発を進めていくという立場に立つべきだと思うのです。ただ、その場合に、現在進めているような軽水炉一本で進めるという行き方、あるいは濃縮ウランをアメリカから供与されることによってエネルギーそのものを外国に依存してしまうというような進め方については、私は批判的な意見を述べておるわけであります。
  165. 小宮武喜

    ○小宮委員 けさ、この会場で市川参考人からいただいたわけですけれども、市川参考人原子力平和利用の問題については一応認めるという立場、それでわが国核燃料サイクルについて、先ほど諸外国から燃料を供給されてやるようなことについては反対だということを言うわけですが、わが国核燃料は、天然ウランにしても大体どれだけあるのか。言葉をかえれば、わが国にある天然ウランの量の範囲内でやりなさいということにも聞こえてくるわけですよ。アメリカカーター核燃料サイクル確立について、市川参考人はどのように考えておられますか。
  166. 市川富士夫

    ○市川参考人 核燃料サイクルの問題について私が言っておりますのは、何も日本の天然ウランだけを使ってやれということを言っているわけではございません。問題は、国民的に合意できるようなエネルギー政策というものを持つべきなのであって、そういう点で、現在進めておられる政策というものは、はっきり言いまして、先ほどからいろいろ御批判が出ておりますように、必ずしも国民全体の一致した方向に基づいて進めているというふうには思われないわけであります。  軽水炉というのは一つの炉型でありますけれども、先ほどから何回も私言いますけれども軽水炉というのも、もとは軍事的な利用ということから発展、改良してきた炉型でありまして、それだけが原子炉ではないわけであります。同じ原子力を進めるにつきましても、いろいろな炉型について総合的に検討して、その上で日本の自主的な技術というものを積み上げた形で進めていくというふうにいたしませんと、一たん何か事が起こったときに、外交的な問題だけでそれが非常に影響されるということになってしまうわけであります。その点を非常に恐れるわけであります。
  167. 小宮武喜

    ○小宮委員 その点はわれわれも賛成です。  ところで、これは原子力にせよ何にせよ、絶対安全ということがあり得るだろうかということ。しかしながら、安全性は確かに追求して、より安全に、一〇〇%安全なものに近づけるための技術開発研究をやってもらわなければいかぬと思うのです。たとえば私も、実を言えば、飛行機に乗るのが恐ろしくて、いままで汽車でばかり来たのです。ところが、急な用事があって飛行機で来たら、やはり一、二回は、落ちたらこれでおしまいだなというような何か恐ろしいような、不安な気持ちがしておりましたけれども、最近は飛行機に乗っても、もう落ちたときはこれが最後だというようなあきらめ切った感じにもなっておるわけですが、飛行機だって絶対安全じゃないでしょう。国鉄の汽車だってそうでしょう。自動車だってそうでしょう。だから、そういうような意味で、皆さん方科学者が安全性を追求して、国民が安心するような方向に科学者は科学者としての努力をやはりしてもらわなければいかぬと思うのです。だから、そのために前向きの立場から、それは政治が悪いからどうだこうじゃなくて、ひとつ予算が足りぬから予算をどしどし出してくださいと言うくらい、われわれも一緒にここでどしどし大臣に向かってもやろうじゃないですか。ただ、そういった科学者としての立場だけに閉じこもって、すべて悪いのは政治だ、おれは関係ないんだというようなあり方はいかがかと思います。  しかし、先ほど水戸参考人意見の中で、こういうような問題がありましたね。高レベル廃棄物を自然界から隔離する工学的方法は全くないというような意見がありましたけれども、これはひとつ瀬川参考人に、そのとおりかどうか、いかがでしょうか。
  168. 瀬川正男

    瀬川参考人 高レベル廃棄物処理技術というものは、いまのお話のように、たとえば原子炉工学に関する技術等に比べると、かなり従来の経過はテンポがおくれていることは否定できないと思います。しかし私どもも、いずれにしても再処理工場を運転する限り、高レベル廃棄物処理と貯蔵の問題にはぶつからざるを得ないわけでございます。  そういう意味におきまして、私どもも高レベル廃棄物処理技術に目下取り込んでおるわけでございまして、目下は、高レベル廃棄物をとにかく粉にして、容積をうんと縮めるという研究を毎日やっておるわけでございます。さらに、それのガラス固化につきましても、模擬原料をつくってガラス固化を実行しておる現状でございます。そういたしまして、私どもの東海の再処理工場でこれを現実に固化する必要の出るのは、恐らく昭和五十七、八年ごろだと思うわけです。それまでは粉にして容積を縮めておいて十分貯蔵できる。したがって、昭和五十七、八年ごろまでに私どもは固化技術を物にしようというつもりでおるわけでございますが、しかし一方におきまして、フランスはもう十数年間、廃棄物のガラス固化は研究を完了してすでに実用化段階になっておるわけです。現にそういうプラントをいま建設中でございまして、日本でもそんな金をかけて研究開発をやらぬでもさっさと技術導入したらどうだという話もございまして、私どもいま申し上げた昭和五十七、八年までに自分で研究して国産技術でやるかどうか、あるいは昭和五十七、八年にフランスあたりのガラス固化技術をそのとき導入した方がいいかどうかは、一応それまでの研究開発をうんと積み重ねておいてそのときに判断すればいいというスケジュールで現在進めておるわけでございまして、高レベル廃棄物処理技術そのものは私は不可能だということは現在全然考えておりません。  もう一つ、この高レベル廃棄物は確かに放射能は非常に強いわけですが、一面から言いますと、私どもの再処理工場フルに稼動しましても粉にして年間五、六トンしか出てこないわけでございます。きわめて量は少ない。固化したもので勘定しましてドラムかんにして六、七十本ぐらいしか年に出てこない。要するに高レベル廃棄物というものはきわめて量が少ないという点において、私はこの高レベル廃棄物対策というものは人間の技術で対処することは十分可能であると考えております。
  169. 小宮武喜

    ○小宮委員 これも先ほど水戸参考人から、福島発電所における被曝線量について具体的な数字を挙げて、最大許容線量をはるかに超えておるという意見が出されております。違いますか。
  170. 水戸巖

    水戸参考人 違います。
  171. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは大事なことですから、だから先ほど水戸参考人意見供述の中にあったこの問題についての事実を、これは岸田参考人にお尋ねしますが、認めますかどうか。
  172. 岸田幸一

    岸田参考人 ちょっと御質問の意味がわかりませんが……。
  173. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほど水戸参考人から、発電所における集積線量がこれだけ超しておったとか、具体的な数字を挙げて被曝の現状についていろいろ意見が出ておりましたから、それに対して岸田参考人としては、電事連としてはこれを認めるのかどうか。これは非常に大事なことですから、その点を明らかにしてもらいたい。聞いておりましたか。
  174. 岸田幸一

    岸田参考人 いま手元にそのデータを持ち合わせておりませんので、それが事実でないとも事実であるともちょっと断定いたしかねるのでございますけれども、ただ私どもといたしましては、被曝の実態はそれほどないような気がいたします。
  175. 小宮武喜

    ○小宮委員 それほどないような気がいたしますということではなくて、参考人としてここに来る以上は、大体どういう問題が質問されるであろうぐらいはすでに想定して勉強して来てもらわぬと、自分の言うことだけ十五分間言ったらしまいだと考えておったらとんでもない間違いですよ。知らぬものを知れと言ったってしようがない、ですからこれはしようがない。  そこで、いわゆる原子力発電所で働く従業員の被曝線量を低減させるために——決め手はあります、ぼくも知っておりますが、かなり努力はしておるようですけれども、さらに低減させるために、電気事業者としていかなる具体的な対策を持っておられるのか、先ほどいろいろリモコンのお話がありましたけれども
  176. 岸田幸一

    岸田参考人 先ほどもお答えしたとおりでございまして、現段階では自動化、遠隔化を中心に役所との合同で委員会をつくってやっておるということで、一層の被曝低減を実現したいという考えを持っているわけでございます。
  177. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間がもう押し迫ってきましたので、最後に、内田参考人にもお聞きしないとちょっと不公平になりますので。  現在の原子炉安全専門審査会での審査体制は十分であるとお考えですか、いかがでしょうか。
  178. 内田秀雄

    内田参考人 原子炉安全専門審査会の審査の内容というのは、いまさら先生に申し上げるまでもなく、原子力発電所の設置許可までの段階におけるところの安全審査でありまして、設計、計画の基本事項についての審査であります。いわば設計の前提条件であります。ただそのほかに、たとえば非常用炉心冷却装置のようにでき上がってからはチェックできるようなものでない重要なものにつきましては、究極のところまで安全専門審査会で審査いたします。そういう内容についての現存の審査体制でございますけれども、おかげさまで最近は原子力安全局の中に安全審査管理官もかなりふえましたし、安全専門審査会のスタッフとしても調査員が三十名あるいはそれよりも多少オーバーするかと思いますが、専門家が協力してくれておりますので、一、二年前から見ますとかなり体制は改善されたと思います。ただ、何分にも調査員にしましても私たちにしましても非常勤でございますので、本務もほかに持っております。それから将来もし発電所の数がふえますと、少なくともマンパワーとしてはそう十分とは思えませんので、将来の方向とすればその辺など先生方の方で十分お考えおきいただければありがたいと思います。
  179. 小宮武喜

    ○小宮委員 もう一つ内田参考人にお聞きします。  わが国は、米国またはヨーロッパ諸国に比較して安全基準確立の仕方がおくれておるようにも思います。その意味でこのことについて昭和五十一年度から国際原子力機関基準制定事業に参加する予算も計上されておりますし、内田先生などを中心にウィーンでこの事業が進められているようでありますけれども、これは現在どのような状況にあるのか、参考のためちょっとお聞きしておきます。
  180. 内田秀雄

    内田参考人 いま先生のお話のように、一九七四年の四月にIAEAの原子力発電国際安全基準の策定の予備会議最初にできまして、秋を初めとしまして現在までに八回、一番上の委員会を開催しております。一番上の委員会といいますのはシニア・アドバイザリー・グループ、SAGと言っておりますが、それが午前中に申し上げましたように米国、ソ連等を含めまして十一カ国からの代表と、OECDとかあるいはISOとか国際関連機関からの代表も入りまして年に三回ないし四回ウィーンで会議をしております。そこでは安全基準の中に五つの柱がございまして、政府組織、設計、運転、立地、それからQA品質保証でございますが、この五つが主な柱になりますコード・オブ・プラクティスの一部は完成しておりまして、年内にはこれが全部できるかと思います。その下にありますセーフティーガイドというのがまだ最後の幾つまでできるかはっきりわかりませんが、二、三十、数字はいまはっきりしませんが、数十ございますが、それの策定もいま着々と進んでおります。  それに対しまして日本では、SAGは私が代表で行っておりますし、そのほかその五つの柱に対してTRCという委員会もございますが、その代表も決まっておりまして、またその作業グループ等、非常に積極的にグループを使って作業に従事しております。  また、日本基準指針の策定が遅いではないかという御意見がございましたが、一部確かにそういう面もございますが、たとえば耐震設計の指針基準などは、IAEAのワーキンググループに積極的に参加しておりまして、また向こうからの要請もありましたが、日本の耐震設計の経験を生かしてIAEAの基準の策定に直接参加しております。  そのようなことで、十分国際的な協力が得られていると思っております。
  181. 小宮武喜

    ○小宮委員 時間が来ましたので、これくらいでやめます。
  182. 山田太郎

    山田委員長 以上にて小宮君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬崎博義君。
  183. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 参考人皆さん、御苦労さまでございました。  私どもの共産党も日本エネルギー事情を真剣に憂えておりますし、また、その解決の方向を真剣に考えているものでありますが、やはりこのエネルギー確保の目的が国民の生命、健康、生活を守るということに役立つということでありますから、それと相反するような結果になるエネルギー確保の仕方は、これはやはり目的に反すると思います。そういう点で、決して同僚議員の意見を批判しようとか、そんな気はありませんけれども、重大な放射能公害等を伴う原子力の利用の危険性を飛行機の墜落等と同列に論じていいかどうかなと思いつつ質問させていただくのでありますが、時間の関係もありますので、簡潔な答弁を恐縮ながらお願いしたいと思います。  参考人の御意見で、たとえば原子力エネルギーが国産に準ずるエネルギーなのか、あるいはそうではないのかという点でも意見が分かれました。政治家とかあるいは政府職員の方がこの原子力エネルギーをいろいろな意図から準国産だと言われるのはそれなりに理解できないことはありませんが、ただいま内田参考人も準国産エネルギーだとおっしゃったわけなんですね。現在濃縮ウランを一〇〇%アメリカに依存しておること、またそうであるがゆえにカーター・ショックと言われるような事態を引き起こしているわけでありますから、この点、将来日本が濃縮技術開発したとしても、日本にそれほどウラン資源があるわけではありません。その点は石油の事情とちっとも変わらないと思うんですが、そういう状況で、石油が海外依存資源であり、このウランが国産に準ずる資源だ、どうしてそういうことが言えるのかなというちょっと奇異な感じを持っているんですが、いかがでしょう。内田参考人に伺います。
  184. 内田秀雄

    内田参考人 私が原子力が準国産エネルギーだと言いますのは、一般にそういうふうに言われたことを自分で勉強して、自分なりに理解しているんですけれども、濃縮ウランをアメリカなりよその国から入れまして軽水炉で使っている限りにおいては、恐らく決してそれは準国産エネルギーではないんだろうと思います。やはり、それから使用した後のプルトニウムなり減損ウランなりを利用する技術日本が持ち、それを利用することが実際にできて初めて準国産エネルギーと言うのだろうと思っております。
  185. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういたしますと、日米原子力協定等の関係から、その使用済みの燃料から生まれてくるプルトニウムなどの利用ができないというふうな事態になった場合には、この準国産エネルギーだという概念は放棄せざるを得ない、内田さん、こういうふうなことになるんじゃないでしょうか。
  186. 内田秀雄

    内田参考人 恐らく私の準国産エネルギー理解ではそうなると思います。
  187. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次に、市川参考人にお伺いしたいと思うのであります。  今回のアメリカ政府の再処理規制の根拠として、一つプルトニウムの軍事利用、それによる核拡散を防ぐ、この大義名分があります。これは本委員会でも論議されて、宇野長官も認められたところなんであります。ただ、その大義名分から見れば、この軍事施設の方の手を縛らないで、平和利用である商業関係だけというのは非常におかしいと、こういう点でも意見は一致している問題なんです。  しかし、もう一つカーター政策の根拠として、技術的な理由もあるということが言われているのでありますが、この点では私どもの質問と政府側の見解とが大きく異なっているわけであります。市川参考人は、このカーター政策の中にあるであろうと言われている技術的な問題についてどういうふうな御理解をしていらっしゃるか、御意見を聞きたいと思うのであります。
  188. 市川富士夫

    ○市川参考人 再処理規制しております技術的な理由という点については、先ほど一部分についても触れましたけれども、現在アメリカ核燃料処理工場、ほとんど動いておらないわけでありますけれども、その事情をちょっと振り返ってみたいと思うのであります。  まず、ニュークリア・フュエル・サービスという会社がウェストバレーというところにありますけれども、いままでは一年に三百トンの処理能方を持っていたわけであります。それを七百五十トン・パー・イヤーに拡張するという計画を立てたわけでありますけれども、環境問題あるいはその。プルトニウム問題等の規制が強化されたために経費がかかるということで、その計画を放棄したということが報ぜられております。  それからゼネラル・エレクトリックでございますけれども、これはミッドウェストというところに三百トン・パー・イヤーの新しい工場を計画したわけでございます。これはいままでの工場の再処理プロセスというのが、ほとんどがピュレックス法と申しまして、いわば湿式法であります。ところが、このGEの計画しました方式といいますのはアクアフロール法と言いますが、半乾式と言いまして、前半の部分を湿式で行い、後の部分を乾式で行うという新しい方法を開発しようとしたわけであります。ところがそれが、一九七四年になりまして、コールドテストの段階で、半乾式でありますから粉末状の物が出るわけでありますけれども、それの輸送——輸送というのはパイプの中での輸送でありますけれども、そういうトラブルが起きまして、結局それの改造ということで非常な困難に遭遇して、計画を廃止したというような事情があります。  それからさらに、アライドケミカルという会社がありますが、これはバーンウエルというところに年間千五百トンという非常に大きな工場を計画したわけであります。これが、ほとんど建設が終わりまして七百五十億円を投入したということでありますけれども、ところが、その後廃棄物の固化施設とかあるいはプルトニウムの転換施設等にまだ未着手であった段階でありますけれども、その段階でいろいろな規制の問題が入りまして、さらに七百五十億円の追加が必要であるということでありました。  これについてカーター政権は、この間の政策の中でこれに対する援助というものをやはり行わないということを決定いたしておりますので、アメリカの大きな三つの計画が全部だめになった。  それからイギリスでありますけれども、これはウィンズケールというところで、これも大きな再処理工場を計画したわけでありますけれども、この工場でも、試運転段階でやはりパイプの詰まりがありまして、そこに熔媒がいきまして、その熔媒が熱のために揮発して、そのために施設内の圧力が上がって、プルトニウムが思わぬところに飛び出してくる、そういうようなトラブルがあったわけでございます。これもその後その改造に非常に困難を来しているということであります。  一面そういうことがあるわけでありますが、もう一つ、先ほどもちょっとお話に出ましたけれどもアメリカの環境規制が非常に厳しくなりまして、これは二十分の一に規制されるようになるということが報道されておりますけれども、その中身は、たとえば一つの事例を挙げてみますと、クリプトン85というガス状の廃棄物が出るわけであります。このクリプトン85というのは、現在動燃の再処理工場におきましても、一日に八千キュリーが放出されるという予定になっております。ところが、今度の環境基準によりますと、これは核燃料サイクル全体として見て、百万キロワットの発電量に対して年間五万キュリーの放出しか認められないということになるわけであります。もちろん、これは若干猶予期間がありますけれども、それをちょっと計算いたしでみますと、動燃では年間で二百十トンの核燃料処理をすることになると思いますが、これは大体百万キロワットの原発にして七基分ぐらいに相当するのではないかと思うのです。そうしますと、先ほどの計算では三十五万キュリーが年間許容量ということになるわけでありますが、実際には一日八千キュリーでありますから、三百日やったとしても二百四十万キュリーということで、一けた上がってしまうわけですね。そういう点で、やはりクリプトンの除去、あるいはクリプトンだけではなくてトリチウゥムですとかその他いろいろあるわけですけれども、そういうものの除去ということの装置あるいは方法の開発ということがあると思うのです。これは、方法としてはいろいろそういう問題は出ておるわけでありまして、それをやはり技術的に進めていくということがまだやり切っていない。それから高レベル廃棄物についても同じようなことが言えると思います。
  189. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、今度のカーター政策一つの根拠に立った技術的な困難性というものは、今後わが国においても、いまいろいろ反省すれば別として、このままやっていくと起こり得る問題である、このように考えておいてよいわけでしょうか。市川参考人、できるだけ簡単に。
  190. 市川富士夫

    ○市川参考人 そうだと思います。
  191. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 引き続いて市川参考人にお伺いしたいのですが、再処理工場からの廃棄物の環境に対する影響の深刻さの問題なんですが、先発の諸外国においても、相当やはりこの危険性は問題になって、いろいろの調査研究もしているというように聞くのでありますけれども、参考になる例がありましたら、お伺いをしておきたいと思います。
  192. 市川富士夫

    ○市川参考人 そういう問題につきましては、特に再処理工場から海洋に放出する廃液の影響について多少勉強しておりましたので、ちょっと資料でお示ししたいのですが、これをお配りしてよろしいでしょうか。図なので、これをお見せした方が説明しやすいですが……。
  193. 山田太郎

    山田委員長 皆さんにですね。
  194. 市川富士夫

    ○市川参考人 はい。二種類あります。
  195. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まことに恐縮ですが、できるだけ簡潔にひとつお願いしたい。
  196. 市川富士夫

    ○市川参考人 いまお配りしておりますけれども、私が申し上げたいのは、これはイギリスの例でありますけれども一つは、ウィンズケールという再処理工場がございますが、ここから放出された廃液、その中にセシウム137というものが入っておるわけでありますけれども、これがイギリスの調査によりますと、非常に思いがけないところまで進んでいる。お配りした図にありますけれども、その魚の絵のついてない方でありますが、ウィンズケールから出たものがスコットランドを越えて北海の方まで行っている。このことは、セシウムというものは比較的沈降しにくいものでありますから流れていくのでありますけれども、海へ放出したものはずっと希釈されてしまうのだということではなく、やはり一つの流れに沿ってずっと流れていく。特にこういう海洋国では沿岸の漁民に対する影響が非常に問題だということを一つ言いたいわけであります。  それからもう一つ、魚の絵のついているものを示してあると思うのですが、これもやはりイギリスのウィンズケールの例でありますけれども、海底の汚染を調査するために、イギリスの水産生物研究所で非常におもしろい実験をやっているということが報告されております。これはカレイでありますけれども、カレイという魚は海底にぺたっと座っているわけでありまして、カレイの目玉の横のところにカフスボタン状の放射線検出器を取りつけてあるわけです。これは熱螢光線量計というのでありますけれども、それをつけたカレイをたくさん放してやるわけです。そしてしばらくたってからまたそのカレイをつかまえてくるわけですね。そうしますと海底の汚染状態というものがわかる。その結果が下に書いてありますけれども、驚くことに、非常にばらつきがありますけれども、一時間に二ミリレムというような被曝をしているカレイまで出てきているわけでありまして、最も頻度の多いのは〇・二ミリレムぐらいであります。これは海底の汚染というものがばかにならないということをあらわす例でありまして、いわばカレイにとっては管理区域をつくらなければならないというような時代だと思うのであります。  それから、いま一つつけ加えますと、海洋投棄ということが最近言われております。放射性廃棄物の海洋投棄ということでありますが、これについても、深海に投棄すれば安全だというようなお話もありますけれども、深海での状態というのはまだ非常に未知の状態が多いわけでありまして、科学的に十分な調査をしなければならない。これは国際的な問題にもつながるわけでありますので、非常に慎重な配慮が必要だというふうに思います。
  197. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次に、岸田参考人にお伺いをしたいと思います。  午前の意見陳述で、市川参考人が電力業界に対する批判をされておる部分があります。再処理問題について、最初のうちは、原子力発電は本来一つ技術体系として燃料サイクル全体の過程のバランスのとれた発展の上に実用化を図らなければいかぬのだけれども日本では電力会社が原子力発電所部分だけ先行させて、ダウンストリームの厄介なものは全部残してきた。第二に、その後対策が迫られてくると、電力会社では、東海の再処理工場だけではだめだというので、電力会社が中心になって民間で年間千五百トンの第二再処理工場の建設を計画してきた。今度カーター政策が出てきた、第一二番目になるわけですね。そうなると、今度はダウンストリームを回避される方向が電力業界では打ち出されている。むしろそんな厄介なものはカーター政策に便乗してたな上げして、とにかく使用済み核燃料をそのままプールに貯蔵しておこうという方向が出ているのではないか、こういう指摘で、電力業界の態度は利益優先で無責任だという趣旨のお話があったわけであります。  この批判に対して一体岸田さんはどうお答えになるのかという点、それからいま一つ、電力業界の今日の本音は一体何なのか、それをお聞きしたいと思います。
  198. 岸田幸一

    岸田参考人 私ども立場で申し上げますと、そういった事態に迫られたからあわてて対策をつくったとか、カーターの声明が出たから本音が出たとかいうようなお言葉のように承ったのでございますが、われわれの電力業界は一貫して従来から基本路線を敷いておるわけでございまして、決して第一再処理工場を動燃さんに、後はあわてて第二再処理工場というようなことではございませんで、従来から当面の第一再処理工場に、いますでにたまっておるわけでございますので、それをホットランを済ませ、来年の営業運転から逐次各電力会社が再処理をお願いする。それから、けさの陳述でも申し上げましたとおり、第二再処理工場につきましては、鋭意準備はいたしておりますが、何分にも年月がかかるわけでございまして、その間のつなぎとして英国及びフランスに、既契約分も含めて、いま第二の契約交渉をやっておるということで、これはすべて既定路線どおりやっておるわけでございまして、そういったことを含めて、私ども官民一体となった核燃料サイクル確立をぜひ推進していきたい、こういう所存でおるわけでございます。  それから三番目に、カーター声明が出てから揺れ始めた電力業界という新聞記事を御指摘になっておられると思うのでございますが、私どもはこんな事実はございません。決して原子力政策の見直しをやるとか、プールをつくるとかいうようなことは全然考えておりませんで、在来の官民で既定路線を敷かれた線をぜひ推進していきたいということの念願でけさの陳述でも申し上げたつもりでございます。
  199. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 しかし、現に使用済み核燃料をそのままプールに貯蔵しておかなければならない事態になるかもしれないということで、そのプールのたとえば貯蔵密度を上げるというふうなことによって対策を講じていらっしゃるということは事実じゃないですか。
  200. 岸田幸一

    岸田参考人 私ども企業側といたしましては、いつも安全サイドを考えるわけでございますから、プールの拡張といっても限度がございまして、いまの再処理する使用済み燃料はとてもそんな拡張したものだけでは賄い切れない状況でございまして、先ほど来申し上げておりますとおり、既定路線の核燃料サイクルをぜひ確立していただかなければ電気の供給にも重大な影響を及ぼすということで非常に危慎しておるのが現状でございます。
  201. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 賄い切れるか切れないかは別問題といたしまして、とにかくプールの貯蔵能力を高めよう、こういうふうな対策を講じていらっしゃることは事実ではないんですか、こうお尋ねしているのです。
  202. 岸田幸一

    岸田参考人 おっしゃるとおり、貯蔵計画を少しでも拡大できるかどうかを検討しているところでございまして、まだ現実に工事を開始したり発注したり、そういうことはやっておりません。
  203. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その場合の安全確保ということについて検討はされているわけですか。
  204. 岸田幸一

    岸田参考人 それは、先ほど来申し上げておりますとおり、再処理も含めまして安全第一ということを事業経営の根幹としてやらなければいけない、単に軽水炉の安全対策だけではなくて、再処理まで含めて目下検討をしておるというのが現状でございます。
  205. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは四月六日の本委員会での山野原子力局長の発言であります。「この使用済み燃料を回収可能な状態で貯蔵する方が再処理するよりも潜在的な危険が小さいという点でございますが、」これはフォード財団の指摘の点ですね。「これは使用済み燃料の長期貯蔵につきましては、まだまだ今後管理面等で検討すべき技術的問題が多多ある。たとえば被覆管の腐食の問題、これに伴いますフィッションプロダクトの漏れの問題といったふうな面につきまして、まだまだ検討すべき問題があると考えております」こういう形で政府の方がかえってこういうことをやっては危険だと指摘をしているのですが、こういう点について電力業界はどういう対応を考えているのですか。
  206. 岸田幸一

    岸田参考人 私は、そういった具体的な技術的な問題についてお答えする専門家じゃございませんが、いずれにいたしましても、再処理問題に対する安全対策の御指摘であろうと思いますが、午前中来申し上げていること以外に申すすべを存じません。先ほど来のわれわれの対策としてプールをつくるんだというような御指摘がございましたけれども、われわれの方としては、長期貯蔵するつもりもございませんし、また、そういったことができないというふうに判断しております。
  207. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは市川参考人にお願いしたいと思うのでありますが、いまの山野原子力局長の発言の後段部分はこうなっているのです。「再処理することによって取り出されます。プルトニウムあるいは廃棄物につきましては、この管理というものにつきまして将来これが危険性が顕在化しないように防止することは、十分従来の研究開発並びに今後の研究開発によりまして対応できるというふうに私どもは考えておる」つまり、再処理工場で再処理する方がプールに使用済みの燃料をそのままためておくよりも安全なんだ、こういう趣旨の発言があるのですね。私はちょっと常識では考えられないような感じがするのですね。再処理の方が安全で、再処理しないままプールに置いておく方が危険だ、こういう論旨なんです。現在の技術を比較すれば事実このとおりなんですか。
  208. 市川富士夫

    ○市川参考人 再処理をした後の高レベル廃棄物の貯蔵という問題につきましては、これは現在、研究がこれから進められる計画が立てられたという状態にあるわけであります。  それから、使用済み燃料を貯蔵するということにつきましては、これは経験が余りありません。先ほど岸田参考人が言われましたように、そういう点での経験が余りありません。どちらが安全かということは、比較するのも非常にむずかしいわけでありますけれども、再処理するということは結局廃棄物を溶液状にして一たん出すということでありますので、それを固化して云々ということにしても非常に散らばりやすい状態にしてしまうという点では、そのまま貯蔵することよりは再処理をした方が廃棄物対策としては困難が多いではないかというふうに私は思います。
  209. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 内田参考人にお伺いしたいのでありますが、午前中の御説明の中でも、軽水炉から高速炉への移行のための核燃料サイクル確保は必要だけれども、安易に移行できると考えるのはかえって危険であるという御指摘がありまして、私はメモですから抜けておる点があるかと思いますが、したがって軽水型の原子炉建設を強力に進める以外に道はないのだ、こういうふうな御趣旨であったと思うのであります。  といたしますと、カーター政策が出て以来相当広まってまいりました、原子力発電開発について一度この機会にいままでの軽水炉一本やりのやり方も反省しなくてはいけないのじゃないかな、このままいけるだろうかというふうな機運もわれわれはひしひし感ずるわけなんですけれども、先生の方は、そういういまずっと出てまいりました再処理問題等に関する困難ということをお認めになった上でなおやはり軽水炉をやるべきだというお考えなのか、あるいはそういう再処理問題の困難も誇張されたものでそう心配ないのだという前提を含んで、あくまで軽水炉でやるべきだ、こういうお考えなのか、御意見を承りたいと思うのであります。
  210. 内田秀雄

    内田参考人 私の午前中の陳述を多少誤解されたように思いますのは残念でありますが、私は午前中、再処理施設技術的な問題については一言も触れてないつもりでございます。といいますのは、専門家でもありませんし、公の立場でそういう立場もとっておりませんので……。  私が申し上げたのは、普通原子力開発といいますのは、軽水炉ではこのくらいで、全体のエネルギーがこれだけ必要である、差は高速炉に将来行くのだ、こういう考えで普通説明されるわけであります。しかし高速炉は、今回FBRも臨界に達しましたけれども、これは日本ばかりでなくて世界でもそうだと思いますが、それがかなりのパワーを持ったものが数多く出てくるのは二十一世紀であろうと私は思います。もちろん二十世紀の間に原型炉等を積極的に開発すればできると思いますけれども、有効なエネルギー源となるにはやはり二十一世紀でなければならないだろう。でありますので、その間軽水炉だけでいけるかどうかということを、核燃料確保の問題と燃料処理のパワーの問題といいますか容量の問題から、広く言えば燃料サイクルの問題から検討しなければならないのだろう。軽水炉をつくっていれば黙っていても高速炉が来てくれますという時代ではないのだから、やはりここは五年、十年を考えまして、二十一世紀に行くまでは軽水炉以外の、たとえば具体的に言えば重水炉あるいはほかの炉とか、その使い方というものを具体的に検討して、さらに方策確立しませんとやはりまた支障を来すのではないかということでありまして、そういった意味で軽水炉開発しなければならない、どんどんやらなければなりませんけれども高速炉に結びつく段階についてもういまからもう少し綿密な検討がやはり要るのではないかということを申し上げたわけでありまして、燃料処理技術の問題ではございません。
  211. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 瀬川参考人にお伺いしたいのであります。  先ほどのお話の中に、今度のカーター政策で再処理工場がストップされると、使用済み核燃料処理が困るというだけにとどまらず、せっかくの高速増殖炉などの今後の実験等にまで影響がしてくる、大変なことなんだというお話であったわけであります。  そこで、そういう一連の関連を持った日本の、言うならば新しい炉の開発などの計画がカーターのツルの一声でぐしゃっといきかねないようなきわめて危ない綱渡りをしておったというようなことをある意味では裏づけられたと思うのですが、そういうもとで事業団が一定の計画を進めていらっしゃる。ということになりますと大変心もとない気がしていらっしゃると思うのですが、事業団の立場から見て、現在の政府の日米原子力外交についてどういうふうな御見解を持っていらっしゃるか。あそこまでおっしゃったのなら、ひとっこれもはっきりおっしゃっていただけると思うのですがね。
  212. 瀬川正男

    瀬川参考人 私たちは何も去年やおととしに現在の核燃料サイクルの関連に基づく技術開発を進めてきたわけじゃございませんで、もうすでに十五年くらい前にこの路線というものは十分吟味された上で、動燃事業団も十年前に発足したわけでございまして、私どもは私どもの考えております核燃料サイクル路線というものは絶対日本にとって必要であるし、また、そのことがカーター構想によってねじ曲げられるようなことがあってはならないし、また現在の日米交渉あるいはアメリカ日本並びにヨーロッパ等との話し合いの結果、十分私ども日本原子力の路線がアメリカ理解されるというふうに私は信じております。
  213. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、これが最後であります。宇野長官にお伺いしたいのであります。  私、先週金曜日に、津川議員がソ連へ行っていたものですから、かわって例の二百海里問題で参考人に質問する羽目になったわけです。あの二百海里問題もずいぶん国民の世論といいましょうか、漁業関係者の間でも意見が分かれておった大きな問題でありました。当日の参考人の御意見は、確かにニュアンスの違いはありましたけれども基本的な点では大体一致しておったように私は感じておりました。ところが、きょうの参考人の御意見は、もうお聞きのとおりでありまして、決して三対三とは言いませんけれども、おおむねそういう形で意見が分かれたと思うのですね。ちょうど四年前にも内田先生お見えになっておりましたが、十人の参考人の御意見がきょうと似たような形でやはり分かれましたし、むしろこの亀裂はこの四年間より深刻になっているように思うわけなんです。ところが、政府側がおつくりになるいろいろな審議会とか懇談会等々になれば、大体都合のいい方を集められるので結論は早く出るのだけれども、実行はなかなか進まないという現実になっていると思うのです。国会だからこそ生にいろいろな意見が出ているのじゃないかと私は思う。  だから、こういうふうなことをやはりぜひ御参考になさって今後の原子力行政に反映される努力をされませんと、せっかく国民的コンセンサスを得たいとおっしゃってもコンセンサスにならないのじゃないか。そういう点できょう貴重な意見参考人からいただいたわけでありますが、これを今後の行政の運営にどのように反映されようとお考えなのか、お伺いして終わりたいと思うのです。
  214. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私もきょうは静かに参考人の御意見を承りまして、いろいろな意味で参考になりました。したがいまして、せっかくこの委員会がお呼びになって御意見をいろいろ聞かれたわけでございますから、われわれといたしましては、原子力平和利用、それが代替エネルギーとしてどうしてもわが国の今後の国民生活を支える上に必要であるという線におきまして、今後も努力をしながら、もちろん安全の確保をしながら、与野党間の意見をもっともっと同じ土俵の上に乗せていきたい、そういう努力を今後もいたしたいと存じております。
  215. 山田太郎

    山田委員長 これにて瀬崎博義君の質疑は終了いたしました。  次に、中馬弘毅君。
  216. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 長時間にわたりまして大変貴重な御意見を聞かしていただいております。お疲れでしょうが、私が最後でございますので、もうしばらくお願いいたしたいと思います。先生方のお話、細かいところまで聞かせていただいたわけでございますが、最後でもございますので少し基本的な点を皆さん方にお伺いしたい、かように思う次第でございます。  原子力というのは、非常に科学が進歩いたしまして人間がさわり始めたわけでございますけれども、この科学の進歩と人間が立ち入ったらいけない部分が場合によってはあるかと思うのです。これは私の知人の遺伝学者からちょっと聞いた話でございますが、何か四万人に一人ぐらい生まれた子供が必ず死ぬというのがあるんですね。これはどうも遺伝でございまして、二百人に一人ぐらいそういう遺伝子を持った方が男女ともおられる。たまたまそれを持った方々同士が結婚されまして生まれた子供は必ず死ぬ。しかし、最近の研究で、要するに特殊なたん白を注射するならばこの子供は助かるということ、しかし、いままで人類の歴史の間に必ず死ぬということで二百分の一にとどまっておったその遺伝子が、その人を助けることによって、それが百五十分の一になりあるいは百分の一になりということで、何百年後には計算上全人類がその注射を打たなければ生きていけない、そういうことになるので、その注射をすることがいいのかどうか、むしろこれはすべきではないのじゃないかというような話をしておりましたのですが、そういう意味でこのウラン、プルトニウム核燃料サイクルというものは、私は人類の英知で安全という問題が必ずや確立されるものだと思っております。まずそれを希望しておりますが、その点に関しまして皆さん方原子力にいろいろな形でタッチしておられる方の御認識をひとつ述べていただきたい、かように思うわけでございます。それぞれ一人ずつお願いしたいと思います。
  217. 山田太郎

    山田委員長 質問者にお伺いしますが、全参考人一人ずつですか。
  218. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 全参考人です。
  219. 山田太郎

  220. 内田秀雄

    内田参考人 どうもまことに残念でございますけれども、御質問のポインとがよく理解できないので、注射のお話をおもしろく伺っていましたら最後に原子力に来まして、原子力について何を御質問になっていらっしゃるのか、ちょっと……。
  221. 山田太郎

    山田委員長 それではもう一度中馬君。
  222. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 ウラン、プルトニウムという現在の核燃料サイクルというのが、あるいは人間がさわってはならないサイクルなのか、いや、これは人間がさわって、一つの英知でもってちゃんと安全も確保されるサイクルであるのか、その点の御認識、今後の安全技術的な意味でも結構でございますし、いろいろな意味で安全は必ずや達成されるのだということなのか、その点の御認識でございます。
  223. 内田秀雄

    内田参考人 わかりました。どうも申しわけありませんでした。  プルトニウムまで含めた燃料サイクルであれば、核拡散防止ということを除きましたならば、現在の原子力安全は十分確保できると私は思っております。
  224. 瀬川正男

    瀬川参考人 私もプルトニウムに関しましては、すでに動燃事業団が、午前も申し上げましたが、私どもは十年間ウラン、プルトニウムの混合燃料体製造の経験を持っておりまして、現在でも毎日製造しております。したがって、ウラン、プルトニウム核燃料サイクルで再利用するということに関しては十分可能である。ただ一つ申し上げておきたいのは、そういうものが人間の必要なエネルギーの一般的な商業化の段階に行くまでには、私はまだまだ改善すべき点は改善せねばならない、当然努力すべきことであるというふうに考えております。
  225. 久米三四郎

    久米参考人 私の考えは、もう朝から申していますように、人間がつくり出した毒物を自分で滅ぼす手段というものにやってはいけない、こういうふうに思っております。何か意見が違うようですが、結局はこれはよく言われておりますが、危険なかけでございます。ですから、それはうまくいくかもしれませんし、大変な災害になるかもしれない、そういうことはなるべく避けた方がいいと私は思うのです。科学というのはそういうところはとても責任が持てないわけですし、社会全体が本当にそういうものの安全を保てるかどうかという問題になっているわけでございますから、余り専門家が自分はこう思うと言ってみても、それは実はかけの一つの裏側を主張しているにすぎない。その部分をどういうふうに政治的にも国民全体の意見をまとめていっていいのか、私もよくわからないのですけれども、やはり現状はかけだと思います。ですから、さいころみたいなもので、振れば反対も出れば賛成も出る、こういう議論になっていかざるを得ないのではないかと思います。
  226. 水戸巖

    水戸参考人 いま遺伝子の話が出たわけですが、この遺伝子のDNAの二重らせん構造というものを発見されたワトソン博士、ノーベル賞も受けているアメリカの遺伝生物学者がいらっしゃいます。この方は以前から原子力発電が広範に広まることに対して反対の立場をとって、裁判などでも証言をされているわけですが、この方が証言の中で、現在の遺伝生物学に対してわれわれが持っている知識の量ということから考えるならば、原子力発電をやっていくということはふさわしくない、つまり、放射線が遺伝子に対して与える影響ということはまだまだ未知だ、ですから、いま五百ミリレムだ二十五ミリレムだということを言っているけれども、その知識は全く明らかになっていないということを言っているわけです。まさにそのとおりであるし、先ほどおっしゃったときに御指摘のことは私は非常によく理解できたわけですけれども、いつまでたってもそうなのかということについては私は留保しますけれども、しかし、放射線が遺伝子に与える影響ということについて、遺伝生物学者たちがそう発言しているということは非常に深く考えなくちゃいけないと私は思います。そして、いわゆる原子核物理学者の中でも非常に反対の意見の人は、先ほどちょっと申しましたが、高速増殖炉についてCERNの一千人の科学者が反対の署名を昨年の十一月にしているということを申し上げましたけれども、それ以上に遺伝生物学関係の人々が原子力政策ということに対して非常に強い反対の態度を示しているということを申し上げて、私も同感だということです。
  227. 市川富士夫

    ○市川参考人 エネルギーに関する科学というのは、人間の将来に属する部分を含んでいるわけであります。したがって、将来に属する部分についての科学的研究なりなんなり、そういうものについて現在の利害関係でそれを規制するということは間違っているということをまず言いたいと思うのです。  それから、核燃料サイクルというものはさわっていいかどうかという点につきましては、実用化ということをさわるという意味にとらえれば、これは現在さわるべきではありません。それから科学技術研究という点でとらえましたならば、これはタブーをつくってはならないのでありまして、やはりあらゆる角度からの研究というものは必要だというふうに思います。
  228. 岸田幸一

    岸田参考人 われわれ電力業界にとりまして、核燃料サイクル路線、そしてプルトニウムを通じて日本エネルギーが自立化への太い柱でたどっていくということは絶対必要でございます。そういう観点から申し上げまして、やはりその安全を確保しながら進めざるを得ない路線であるという認識のもとに、私どもも、プルトニウムにつきましても一部に言われているような極度の危険はないということで、先ほど来申しておりますように、日本技術陣も相当育っておりますし、こういった方々技術開発を期待いたしまして、この路線が確立されることをこいねがっている次第であります。
  229. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 いま皆さん方のお話で、大体、別に人類はさわっていけない問題ではないということだと思います。しかし、そこで問題なのは、やはり基礎的な研究のようなのがまだ不十分なままに実用化あるいは利用の方が若干先行しているところに問題があるような気がするわけでございます。  たとえば、これはもう少し現実的な問題になりますが、岸田さんにお伺いしたいと思います。原子力発電でも、最近いろいろな意味で、着工しましても住民の反対もございましょうし、そういったことでなかなか進まない、あるいは安全性のいろいろな問題点が出てくるといったようなことが現実に起こっております。そういうことで、資金的な意味でも当初の予定よりもはるかに大きなものになってしまったりしております。むしろ急がば回れということで、ここで研究の方にもう少し、あるいは安全確保のための研究所でもつくって、そちらに資金を回し、時間も回してその後において一挙にやる方が場合によってはいいのじゃないかという気もするわけですが、その点について御見解いかがでしょう。
  230. 内田秀雄

    内田参考人 安全確保に対する研究でございますけれども、おかげさまで科学技術庁中心にして五カ年計画といいますか、まず基本的な五カ年計画の安全研究を進めておる段階でございますが、午前中にも申し上げましたように、原子力研究所中心にした国がバックアップしております安全研究は非常に進んでおりまして、世界的にもその成果は十分認められております。  いま、先生のおっしゃいました基本的な研究をしなければならないのではないかと言われますけれども、その研究のうちまだほかに民間でもやっておりますし、それから役所のバックアップしておりますほかの研究のプロジェクトもあるわけでありますけれども、それでもなお、現在直ちにこういう研究をしなければ安全上不安ではないかという具体的な問題の提起がもしございましたならば、ぜひ伺いたいわけでございます。私個人が何をやっているわけでも、力があるわけでもございませんけれども研究計画の推進のプロジェクト等に入ったり意見を申し上げている段階では、当分これだけをやらなければならないという研究はかなり進んでいるように思っておりますし、その研究とそれから実際の運転経験と両方踏まえてさらに安全を確保していくことであります。  特に、原子炉安全研究というのは特殊な問題でありますけれども、これは現在の解析なり評価の方法についての余裕度を確認し、余裕度をさらに具体的にすることが一つ目標でございまして、そういった意味での安全研究ももちろん進んでいるわけでございます。あるいは信頼性確保研究でありますとか。もし、御不審なり非常に御不安でありましたならば、具体的にこういう問題をやらなければいかぬという御提起をぜひ私たち伺いたいと思っております。
  231. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 先ほどの質問を岸田事務局長の方にひとつよろしく……。
  232. 岸田幸一

    岸田参考人 見方を変えて申し上げれば、まず軽水炉の問題でございますが、けさほども申し上げましたように、すでに運転中のものがもう九千四、五百万キロワットある。しかも、世界で工事中のものを入れますと二億一千万キロワットと記憶しておりますが、それが世界各国でいま原子力発電所建設中です。それらを入れますと、もう三億キロワット近い原子力発電所世界じゅうにできるわけでございます。  私どもは、その数字を申し上げているわけではございませんで、そういうふうにもう実用化しておる、実用化への段階に入っておるという意味で私ども軽水炉のポジションを考えるわけでございますが、それと同時に、われわれ電力会社の立場で申しますと、単に原子力だけじゃなくて、水力にいたしましても火力にいたしましても、やはり設備の改良といいますか、技術は日進月歩でございます。そういう中で常に改良、改善に心がけていくのが肝要であるということで、何もそこで定着するのではなくて、既往の技術に対しましてもやはり新しいものを目指して努力しておるということと、先ほどちょっと技術者のことを申しましたけれども、われわれの電気事業者原子力関係に携わっておる技術者が、昭和三十年代から続続と原子力技術皆さん携わりまして、現在、九電力で四千人近い原子力技術者がおられるわけですが、もちろんこれには政府関係御当局その他政府機関あるいはメーカー等の技術者の方々を入れますと、二万人とははっきり申し上げませんが、一万数千人に近い方々がいまの日本原子力技術を支えておる。私は、この方々が将来のエネルギーと申しますか、原子力安全確保への基盤といいますか、それを支える大きな力だろうと確信しておりまして、そういう意味で、先ほど来申しておりますように、やはり人間の英知と良識でこの原子力開発というものを進めていかなければいけない、こういうふうに考える次第でございます。
  233. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 久米参考人にお伺いいたします。  「むつ」の問題でございますが、技術的なことで、これも先ほど申しましたように、利用の方といいますか実用化の方が何か先行した結果、若干そういう問題が起こってきたのではないかという気がするわけでございますが、その点に関しまして、「むつ」のあの炉というもの、舶用炉といいますか、これを陸上に揚げてやるというようなことにつきましては、そうしてしまったら全然意味がないのだというようなことなのか、あるいはそれは陸上でも研究所としてできるのか、その辺についての御見解はいかがでございましょうか。
  234. 山田太郎

    山田委員長 質問者に伺います。久米参考人ですか。
  235. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 久米参考人が御専門じゃないかと思いますので……。
  236. 山田太郎

  237. 久米三四郎

    久米参考人 私は「むつ」の原子炉専門家ではございませんが、先ほど申しましたように、原子力船の将来は、これは事実が示しておりますけれども、かつて「むつ」が出発したときと比べると全然事情が違っていまして、もういまごろでしたらずいぶん走り回っていなければいかぬのですが、全然そういう気配が見られませんから、ずいぶん開発のスピードがおくれていると思いますが、いますぐそれに着手するのかどうかということについてはよくわかりません。ですけれども、もしおやりになるのでしたら、いまの「むつ」の実験計画、これは数百項目ございますが、私が調べた限りではほとんどは陸上でできる、そして原子炉、それの放射線のシールド、そういう試験はもっと陸上でぎっしりやることが大事ではないか、そういうふうに思います。それを無理して、一回つくったからどうしてもあれをやろうというのは、先ほど申しましたように、私もそういう意見を長崎県の方に出しておりますが、いま回答は来ておりませんが、あそこにやたらと千トンもの遮蔽材を——それが何トンになるかも公表されておりませんが、注ぎ込んでも恐らく船としては使い物にならないものしかできないのではないか、放射線はとまったけれども、実際の原子力船の開発にはそれほど役立たないことになるのではないか、そういうふうに考えております。
  238. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 それぞれのお立場で聞かしていただいたわけでございますが、今後の問題につきましても、先ほど申しましたように、何か研究に対する政府なり、政府に限らずいろんなところの対策がおくれておる、あるいは実用化の方を先行し過ぎているといったようなこともございましょうし、また、住民に対するいろんなPRといったようなことにつきましても、まだまだ不十分かという気もするわけでございます。  そういった点に関しまして、最後に皆様方から、政府なりわれわれ国会というものに対しましての御要望をそれぞれお聞きいたしまして、終わらせていただきたいと思います。
  239. 内田秀雄

    内田参考人 安全研究に関しましては先ほど申し上げたとおりでありますけれども、現在計画されています。プロジェクトが順調にこれからも進むには、やはり予算をつけていただくということと研究者の確保をぜひお願いしたいということです。主たる研究が特に軽水炉に関しましては原子力研究所中心にして行われておりますので、その方面の研究者が原子力研究所にふえることはぜひともお願いしたいと思います。  それから、国際協力につきましても、これはだんだんと日本成果が認められたために各国から手を差し伸べられておりますし、また、原子力研究といいますのはもともと大きなものでありますから、一国がやるものではございませんで国際協力もぜひ必要でございますが、そのためにも、国際協力というのはただ協定して円を払えばよいというのではなくて、向こうに人も派遣しなければなりませんし、こちらにもそれの成果を解析する等の窓口も必要でございますので、その辺も踏まえてぜひ御配慮いただければありがたいと思います。  また、この際もう一つ希望を申させていただきますならば、先ほど小宮先生からの御質問もございましたように、将来の原子力開発が急速に進むためにはいやはりそれの規制行政確立と、それからそれに対する技術的なバックアップをします諮問グループのマンパワーの問題等も十分御配慮いただければありがたいと思います。
  240. 瀬川正男

    瀬川参考人 私は主として核燃料サイクル分野の体制について、常々いろんな悩みがあるわけでございますが、まず第一に、この核燃料サイクルの路線を一九八五年から二〇〇〇年までの間に花を開かせようということは非常に大きな仕事でございまして、日本におけるビッグプロジェクトとしては例を見ないと思います。そういう点について各方面の本当に眼光紙背に徹するような目で御理解をいただきたいと思うことが一つと、もう一つは、予算の点は科学技術庁の大臣等に毎年おすがりして極力御配慮願っているわけですけれども、さらに痛感しておりますのは、技術者が何分にも足りないということが非常に重大なポイントじゃないかと思います。特に、さっきも申し上げましたように、炉工学の方よりも燃料サイクル分野の方はどうしても新しいタイプの技術者が必要であるという点で、関連産業からの協力というものをもっと強力に展開する必要があるというようなことを痛感しておるわけです。  余り長くなりますとなんですから、これで終わります。
  241. 久米三四郎

    久米参考人 非常に一般的でございますが、やはり原子力しか道はないというそういった考え方をもう一度原点に立ち返って、これは国会しかないと私は思いますので、国民から選ばれた皆さん方がいろんな問題を出し合って議論をぜひ進めていただきたい。  そのためには二つあって、一つは、エネルギーというのは、先ほども申しましたように、ともかく生活が上がるということはエネルギーが要ることだという、私はこれを迷信と呼んでおるのですが、そういう単純な外挿法ではなくて、その内容に立ち至って、世界でも大きな議論になっているこの問題を踏み込んで議論をしていただきたいことと、それから、原子力しかないというときには、さもそれが完成した技術であるかのように受け取られがちです。ほかの太陽とかなんとかそれはやれるかもしれぬけれどもそれは後だ、こういうことがよく聞かれますが、原子力だって決して完成の技術ではありません。原子力発電所もそうですし、燃料サイクル全体にとっても非常にアンバランスな発展であるということは本日の証言でも明らかになったと思いますので、そういう原子力の実態の把握と、それからエネルギーというのは一体どれだけ私たちに要るのかということ、それを国会中心に長期に討議をしていただきたい、そしてその討議の中にいろいろ国民の声を織り込むような有効な手だてをとっていただきたいと思います。
  242. 水戸巖

    水戸参考人 一つは、先ほど安全研究というようなことがいろいろ言われましたけれども、工学的な安全研究ということだけでは全く片手落ちだというふうに思います。それは、先ほど申し上げましたように、放射線が生物に与える影響といった遺伝生物学の基礎的な知識の集積が絶対に大規模な原子力開発の前に必要だということです。これもまた、原子力をやっているのだからおまえ早く研究をやれという形で決して学問が進むものではない、やはり非常に長い知識の集積が必要だということを申し上げておきたいと思います。  二番目に、きょう余り話にならなかったと思うのですが、企業と通産省、つまり通産省に代表される国ということだと思いますが、その間の関係がはっきり言って乱れているというふうに私は申し上げたいと思います。  これは、美浜の事故に非常に典型的にあらわれました。美浜はあれだけの大きな事故、これは未曾有の大きな事故です。これを三年半も隠し続けた、そして三年間隠したから、もう刑事訴追に対しては公訴できないというような形でこれが見逃されるというのは大変な問題だと思います。こんなことで国民のコンセンサスとかなんとか言ってもだれも信用できない、あんなことは氷山の一角であって、まだ幾らでもああいうことが隠されているかもしれない、そう思って当然です。これに対する厳重な処罰ということが——何も個人の処罰ということではありません、企業に対する厳重な処罰ということがなければならない。それに対する通産省の態度はきわめてあいまいなものだ。これでは、国が企業に対して監督をしているというようなことはとても言えないと思うのです。そして、私たちがまた企業が通産省に報告した報告を見ますと、これはその当時通産省の人々が真剣にこれを見るならば発見できたということも認められます。つまり、通産省には全く監督能力がございません。このような状態で続けるということはまことに危険だ、私が先ほど危惧したような事故が現実のものとして起こり得るということを申し上げておきたいと思うのです。ですから、ここでこの事故隠しという事実について、刑事罰といったような問題ではなくて、もっと厳正な処分ということがはっきりと示されなければならないと思っております。  三番目に申し上げたいのですが、先ほどちょっと申し上げましたが、あたかも私たち原子力を手に入れたという発想のもとで、おまえは原子力なのか、太陽エネルギーなのかというような発想はやめていただきたい。われわれはまだ原子力を手にしておりません。その意味では原子力を手にしていないのです。そういう段階で、それではエネルギー危機をどうするのかという形で考え方を出発していただきたい。そうであるならば、これはまさに本当に政治の問題だというふうに私は思います。  その中には、エネルギーの問題あるいは工業文明という問題についての本当に価値転換という、久米先生がおっしゃったそういう問題があると思います。それからまた、エネルギー源としても、原子力開発とかあるいは核融合、つまりこういう重技術ですね、重技術だけに頼って大電力を発電するというような発想、これはわれわれが当面している工業技術あるいは工業文明というものに対する転換の時期に来ているということから、すでに矛盾しているわけです。  私が先ほど多様なエネルギー源を求めなければならないと言ったのは、至るところに小規模な発電所をつくっていく、これは企業の利益に結びつかないと思うのですね。ですから、企業も熱心にやらないし、国家もまた熱心にやらない、それでは太陽エネルギー開発といったことはぼくは成功しないと思います。もっと多様な、そして小さな発電所を各所につくっていく、そういう現在の産業形態を根本から考え直していくというような発想に立ったときに、本当に太陽エネルギーの利用、それから多様なエネルギー開発といったことが可能になっていく、そのように思っております。これに対しては、国の政策というのが非常に大きな影響を持っているというふうに思うのですね。原子力の安全ということだと、安全、安全とそちらの方にどんどんお金をかける、そして私がいま言ったようなもっと小規模なじみな研究の方には全く金が行かないという事態が現実に存在していると思うのです。  以上です。
  243. 市川富士夫

    ○市川参考人 簡単に申し上げます。  まず、これは京都大学の熊取にあります原子炉実験所の所長の柴田俊一という先生が、ある雑誌に「「歴史」を繰返さないために」という短かい文章を書いておられます。その中で、柴田先生は次のようなことを言っておられます。「どこの国でも新型炉に対しては、まず、組織的な基礎実験によって、炉心の諸特性を調べ、工学的条件を加えて、設計を行なう。これに基づいて研究炉を作り、何年か運転をしてみる。そしてその間におこる種々の技術的問題を一つ一つ解決して、次第に技術水準を高め、これを動力炉に生かす。ところが、わが国では、研究炉の技術動力炉に生かされるような道はついていない。」ということで、先生は、「肝心の第一歩を飛ばして、軽水炉導入ということとなり、まず足元からかためて行くという技術本来の形がどこかへ吹飛んでしまったのである」そいうことに十年たってようやく気がついたんだということを感想として述べておられるわけであります。  現在、原研で安全研究が進められておって成功しておると内田先生はおほめくださいましたけれども、確かにそれは研究者自身の非常な努力でやっております。ただ、一方で軽水炉がどんどんつくられておる中でそういう安全研究をやっているということは一体何なんだということを、研究者自身は非常に悩んでおるわけであります。一体われわれがやってきたこの成果というものは反映されるのか、もし、ここで都合の悪いようなデータが出たら一体どうなるのだということは、研究所として非常に深刻な問題になっているわけであります。そういう点では、お金をつけたり人をふやしたりということ、これはもちろん大前提であります。と同時に、やはり研究者自身がいろいろな見解を自由に述べる、自分たちの得たデータに基づいて自由に見解を述べるということ、あるいは研究者のいろいろな点での権利を保障するということが、現在非常に重要になってきていると思うのであります。  一例を挙げれば、長崎の「むつ」の問題で、出席した中島さんという原研の職員に対して賃金カットをするとか、そういうような体質があるうちは本当原子力平和利用というものが成り立つかどうかという点にすら私は疑問を感ぜざるを得ないというふうに思います。
  244. 岸田幸一

    岸田参考人 政府御当局に要望する前に、私ども電気事業者としてやるべきことが余りにも多過ぎて、その方で戸惑っておるわけでございますが、当面、何といたしましても電源立地というものを進めなければいけない情勢に置かれている事実、このエネルギー危機の認識をどうやったら皆さんにわかっていただけるか、もちろん政府関係御当局初め、われわれ電力会社もやっておりますけれども、どうかぜひ国会の場で、事エネルギーの問題につきましては超党派でコンセンサスを得られまして、日本が生きていくためのエネルギー戦略というものを確立していただかないと、この問題は、率直に申しましてなかなかむずかしい、お手上げとは申しませんが、現状はなかなか厳しい。そういう意味で、せっかく国民の選良であられる先生方が超党派で一つの合意——どこの国も、事エネルギー問題は全部超党派でコンセンサスが得られております。ドイツしかり、英国しかりでございます。そういうことをぜひお願いすると同時に、やはり私どもももう少し——あのリッチなアメリカがプァな政策を打ち出した。四月七日に原子力政策、そうして四月二十日にはエネルギー教書といって矢継ぎ早に出てきた内容が、きわめて節約といいますかセービングポリシーでございます。それは、裏を返せば税金を取るということがあるかもしれませんが、あの金持ちな国がああいうことをやっておる。日本は、輸入エネルギーのことはもう申しませんが、全く暗たんたる状況の中で、いまの状態でいいかという意味で私どもさらに自戒いたしまして、国民の皆様に、御家庭の皆様を初め産業界の方々、いろいろな方々にもっともっと省エネルギーといった問題節電といった問題を考えなければいけないという、甘い危機の認識ではいけないということをまず自戒的に申し上げ、そうして、政府に最後にお願いしたいのは、やはり政府の役割りは大きいと思います。  私どもももちろん一生懸命やりますけれども政府エネルギー政策確立への御努力が非常に役割りは大きいという意味でこの核燃料サイクル確立、これだけは余りにも国際的に絡んでおります。資源的にもいろいろな条約上の問題もございます。いろいろな問題が国際絡みになっておりまするので、ぜひ政府にお願いいたしまして、この核燃料サイクルにつきましては、私どもも驥尾に付してまいりますけれども、官民一体となって、この核燃料サイクル確立と申しますか、それを推進しまして、子孫のために安定したエネルギーの供給のできることをお願いしたいと思います。宇野長官には、ぜひその辺のことをお含み願いまして、当面の問題につきまして御配慮をお願いして、私のお願いにかえたいと思います。
  245. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 どうもありがとうございました。
  246. 山田太郎

    山田委員長 以上で中馬君の質疑は終了いたしました。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のため大変参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、明二十八日木曜日午前十時理事会、十時十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会