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1977-05-20 第80回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月二十日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 稲富 稜人君    理事 西銘 順治君 理事 山田 久就君    理事 上原 康助君 理事 加藤 万吉君    理事 斎藤  実君       川田 正則君    熊谷 義雄君       篠田 弘作君    竹中 修一君       島田 琢郎君    美濃 政市君       瀬長亀次郎君    甘利  正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         沖繩開発庁振興         局長      井上 幸夫君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     若田 末人君         外務省欧亜局外         務参事官    加藤 吉弥君         水産庁漁政部長 森実 孝郎君         海上保安庁警備         救難監     山本 了三君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 五月十六日  沖繩県宜野座村における米軍戦車道路建設反対  に関する陳情書外一件  (第二六九号)  沖繩県畜産振興対策に関する陳情書  (第二七〇号)  北方領土復帰促進に関する陳情書外二件  (第二七一  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 稲富稜人

    稲富委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  3. 島田琢郎

    島田委員 沖繩北方特別委員会において北方話題議論するということは余りないことでありまして、しかも、いま委員長との笑い話で、私はれっきとした沖特のレギュラーでありますが、委員長から覚えもないということで大変残念なことであります。  きょうは北方問題をひとつ議論をしたい、こう思います。すでに質問を申し上げて御回答願う方方がおいででございますが、当初私の方からお話を申し上げました予定を若干変えさせていただきます。というのは、きょうは外務大臣と主として外交上の問題について議論をしようというのが私の主要なる考え方でございましたが、大臣がお見えになります時間が少しずれておりますので、最初水産庁お尋ねをしたいと思います。  一昨日の晩ですか、日ソ漁業暫定協定がいよいよ大詰めを迎えて妥結に向かうかと見られました土壇場で崩れまして、国民はこの成り行きを大変やきもきしながら見守ったわけでございます。幸い昨日になってまたどんでん返しで一転妥結に向かうという、今度の日ソ漁業交渉というのは大変長丁場にわたり、しかも苦難の連続でありまして、わが国にとって外交姿勢を問われるような重大な問題が幾つ提起をされ、事漁業の問題だけでは済まない、こういうこともいやというほど思い知らされた。つまり、外交上の教訓というのがずいぶんたくさん出てきたと思うのであります。それは外務大臣が参りましてから少し議論をいたしますが、私は、中間でも、大臣がお帰りになって農水でこの問題を議論いたしましたときにも、どうもその読みがそれで果たして正確かどうかという点については大変心配が残る、甘くありませんか、そんなにソビエト外交姿勢というものは甘いものじゃないということをいままでも思い知らされているんだが、それで大丈夫ですか。それは私どもは、領海法やあるいは漁業水域法について協力できるところは真剣に協力いたしましょう、こういうことで議論をいたしましたときにも、この問題を指摘をいたしましてこうした点を指摘をしたのでありますが、果たせるかな今度の最終盤におきます交渉の厳しさというものは、やはり日本側読みの甘さあるいは見通しの誤り等が露呈されたというふうに指摘をせざるを得ないと思うのであります。  新聞、テレビですでにいろいろ報道がされておりますが、この二日間にわたる経過を振り返ってみて、水産庁はどういうふうにこの点を認識されておられるのか、その点からまずお尋ねをいたしたいと思います。
  4. 森実孝郎

    森実説明員 お答え申し上げます。  一昨日ソ連側が新しい提案を行いまして、一部新聞等にも報道されましたように、交渉難航が予想されたわけでございます。しかし、昨日鈴木代表よりイシコフ氏に対して強く再考を求めましたところ、従来の提案、つまり一昨日の提案を撤回いたしまして新提案ソ連が行っております。この新提案につきまして鈴木代表より請訓がございまして、すでに政府としても訓令をしたところでございます。  確かに交渉過程で、ソ連側もいろいろの案を出し、いろいろの論議を提起してきたことは事実でございますが、私ども、全体としては交渉妥結の方向に向かって進みつつある、このように思っております。
  5. 島田琢郎

    島田委員 細かな点につきましては外務大臣が来てからやりますが、漁政部長のそういう御説明では私はちょっと理解ができないのでありますが、少しおかしてもらいます。  さて、こういう交渉のさなかに実は北方水域漁船拿捕がありました。安全操業に対する水産庁指導というのは、私どもはいままでも、万全を期すべきだ、こういう指摘を幾度かやってまいりましたが、どうも時期が時期だけに、末端においてはいろんな憶測と物議を醸しており、線引きやあるいは漁獲量の問題に集中して議論をしているうちにも安全操業という大事な点について見忘れてもらっては困るという現地の要請なども一緒になって、私の手元にも幾つかございました。しかし、残念ながら、この交渉がおおよそ妥結に向かうという途中で漁船拿捕事件が起こるなんというのは、これは大変悲しむべきことでございます。  事件の全貌について、私はきょうはお聞きをいたす考えはございませんが、水産庁責任においての末端のこうした安全操業指導というものが果たして万全を期しているかどうかについて、私は若干の疑いを持つものでありますが、漁政部長いかがです。
  6. 森実孝郎

    森実説明員 お答え申し上げます。  北方水域特に四島周辺等における拿捕問題は、まさに先生指摘のようにむずかしい問題であり、事故の発生を十分防止しなければならない問題と私ども思っております。従来からも都道府県あるいは漁業団体を通じて指導してきておりましたが、特に昨年の十二月には新しい二百海里時代の到来、それから今後における外交交渉の新しい条件のもとでの展開等を頭に置いて、拿捕発生のおそれのある海域については、関係者に対して特に操業注意するように通達等をもって指導した事実がございます。特に北方水域につきましては、御案内のように、二月二十四日の閣僚会議の決定で、三月一日からソ連が二百海里の漁業水域実施したわけでございます。一方、日ソ漁業交渉ばその後難航をきわめ、中断中断を重ねていることも御案内のとおりでございます。そこで、特に北海道の知事、関係漁業団体に通達いたしまして、出漁する船に厳重に注意するようにということを再三繰り返してきたわけでございます。  実は一昨日、四島周辺でウニのけた網漁船拿捕問題が発生いたしました。はなはだ不幸な事件だと思っておりまして、現在外交ルートなどを通じて照会をしております。まだその詳細はわかっておりません。最近では業界にもかなり自粛していただきまして、問題の発生は少なかったと喜んでいたわけでございますが、非常に不幸な事態発生したことを残念に思っております。  さらに十分な注意を払うと同時に、一日も早く日ソ交渉の円満な妥結を図って安全操業の道が前進しますことを念じているところでございます。
  7. 島田琢郎

    島田委員 日ソ漁業交渉のこういう長引いた現状の中では、それなりに漁師の人たちのいら立ちや焦りというものがある。それによって、ときには思わない越境などの事態も起こるということはあるわけでありまして、その辺、交渉交渉と言っているうちに、現場ではそういう抜き差しならぬ拿捕事件などが起こるということは、一面では水産庁、目をずっと見張ってそういう事態が起こらぬようにしておかなければいかぬわけです。私は、その辺の責任水産庁に厳しくあると思いますから、大いに自戒をして万全を期していただきたいと要請する次第であります。  さて、海上保安庁にお伺いいたしますが、私は先般、国政調査で、海上保安庁の皆さんの御案内をいただいて、実は初めて海上から日本漁業実態外国漁船近海における操業実態等をつぶさに見せてもらいました。大変お世話になりました。懇篤なる説明もいただき、大変たくさんの勉強をさせてもらったわけでありますが、それと同時に、保安庁出先の苦労というものがいやというほど私はよくわかったわけであります。ですから、水産庁はこういう出先における事件を未然に防止するという行政上の責任を負いながらも、現実には、出先で実際にこれらを安全に導いていくのは保安庁の仕事であります。そこら辺のところが有機的にきちっとなっておりませんと、出先は苦労するばかりであります。まあ、どちらが悪いと私は申し上げておるわけではありませんが、そういう有機性というのが今後一層厳しく要求されるでしょう。特に北方海域におきます事態というのは、三十年間という長い歴史がありまして、そういう中で、私どももはかり知れないような日ソ間における一つ不文律というものがあるようであります。そのことを私はとやかく言うのではございませんし、それはそれなり一つ現場における知恵とも言えるものでありますが、それだけに海上保安庁出先におけるこれらの事件の対処には難儀が多かろうと思うのであります。もっと時間をかけて、保安庁の言いたいところ、たくさんあるのだろうと私は思いますが、余り時間がございませんから、言っていただく機会は別につくりたいと思います。  今度の拿捕事件、実に悲しいことだと私は思うのであります。しばらくこういう問題がなかっただけに非常に残念に思います。実態についてはいま森実漁政部長からお話がございましたから、出先で一体こういう今度の事件などがどういう教訓になるか、そういう点を簡単で結構ですからお話しを願いたいのであります。  あわせて、これは水産庁にもお尋ねをしますが、最近私どもオホーツク海に韓国漁船が長いこと居座りまして、しかも、それが二千トン、三千トンという大変大型な漁船であります。これがオッタートロールで根こそぎニシン漁を初めとする魚のいわゆる近海における漁場を大きく踏み荒らすというようなことになっている。これはもう現場としては大変脅威になっているわけですし、大変困ったことでありますが、これらについてだんだん北の方にも移行していくという、こういう外国漁船の踏み荒らしというような事態をこのままに放置しておくわけにはまいらぬと思うのでありますが、具体的にこれをどのようにされていくお考えなのか、かなり積極的にこれはやっていただかなければいかぬと思いますので、その辺、水産庁もあわせて両方から考え方を聞きたいと思います。
  8. 山本了三

    山本説明員 先生指摘拿捕事件道東発生いたしました。昨年の十一月以降この海域拿捕はなかったわけでございますけれども、不幸、拿捕事件発生したことは、私ども非常に残念に思っております。  海上保安庁としましては、宗谷海峡すなわち北海道道北と樺太の間、それと道東根室付近と四島の中間、いわゆるソ連主張領海に接する海面でございますけれども、こういった海域拿捕防止につきましては、昭和二十年の後半から鋭意その努力を傾注しておる次第でございますけれども、私どもがこれらの海域におきまして拿捕防止にどういった手を打っているかと申しますと、まず操業いたします漁船に対しましては、道あるいは漁業組合なんかを通じまして、ソ連主張領海の中に誤って入らないようにという細かい注意を、海難防止講習会あるいはいろいろな機会を通じて関係漁業者に周知する、そういう措置をとっております。  また、現場におきましては、御承知のとおり巡視船道東海域には現在二隻ほど常時配置いたしまして、安全操業指導と申しますか、拿捕防止努力いたしておるところであります。にもかかわらず、やはり拿捕は、若干最近減ったとは申しましても、相変わらず起きております。  この拿捕の起こる原因でございますけれども道東海域は、御承知のとおり最近の四、五、六、七、八、こういった時期には霧が非常に濃いという海象特殊事情がございます。あるいは気象も非常に悪い場合がある。こういったことで、自分の漁船船位を確認することができず、あるいは誤ってソ連の主張しておる領海内に入ってしまうというようなことが一つあります。  また、漁業者は、この四島というのは、御承知のとおりにわが国潜在主権がある、固有の領土であるという観念がございます。ソ連が現在占拠はいたしておりますけれども、本来はわが国領土である、そういった観念がございますので、わが国領土水域の中に入るのが何で悪いという潜在意識も確かにあります。  それから、現実ソ連のいわゆる主張領海内ではわが国漁船操業するという形にないわけでございますので、やはり漁獲が多いといいますか、ソ連主張領海内に入りますと漁獲が多い、こういったこともあります。  そういったいろいろな領土問題に絡む漁業関係者意識といいますか、そういったもの、あるいは気象海象影響されるソ連主張領海内への圧流といいますか、あるいは航行の錯誤といいますか、こういったことによってどうしても拿捕の起こる要因が発生するということであります。  それで、私どもは先刻申し上げましたとおり、誤ってこういったソ連主張領海に入らないようにということでそういった指導もし、あるいはソ連主張領海線付近をパトロールして、巡視船を常時配置しておきまして、現場漁船にいろいろ指導するというようなことをやっておりますけれども、私ども努力にもかかわりませず、なかなかゼロには至らない。非常に残念に思いますけれども、こういった方法以外にはなかなか方法がありませんので、これから先も、私ども海上保安庁といたしましては、できるだけの努力をして拿捕を防ぎたい、そのように考えております。
  9. 森実孝郎

    森実説明員 まず、御指摘拿捕の問題でございます。  先ほど申し上げましたように、第十八祥宝丸の問題は、現在、真相を究明するとともに、早期釈放外交ルート等を通じてソ連側に呼びかけていきたいと思いますが、今回の事案につきましても、海上保安庁巡視船ソ連側と密接な交信をとっていただいてバックアップをしていただいた経過があることを御報告しておきます。  今後ともこういう問題の発生がないように、さらに、十分責任を痛感しておりまして、関係業界指導してまいりたいと思っております。  次に、韓国漁船の問題でございます。これはなかなか経過のある問題でございまして、御案内のように、ソ連の二百海里の実施、それからアメリカの二百海里の実施に伴いまして、韓国アメリカ水域内でも大幅に削減され、さらにソ連水域から結果として全く追い出されたと同じ形になった。そういうことで、過渡的に韓国漁船北海道周辺に停留いたしまして、釧路の沖あるいは日高の沖、さらに日本海の沖、さらに最近では、先生もまさに御指摘のように、オホーツク海に出漁していることは事実でございます。  われわれとしては沿岸漁業者の保護の視点から、相手国側にいかなる事情があるにせよ、このような形でオッタートロール操業が行われることははなはだ遺憾だと思っております。その意味で、この四月以降再三交渉を重ねてきたわけでございます。現在までのところ、韓国側わが国に約束しております点は、十二海里の、近く領海になる海域沖合い底びきの禁止ラインには入らないということ、それからもう一つは、二十七隻の出漁船を十一隻に縮減するということは約束しております。  いままでのところ、昨日も実はオホーツク事情を私伺ったわけでございますが、十二海里領海沖底禁止ラインの問題、これはおおむね守られていると言っていいだろうと思います。ただ、船については、十一隻以内になっておりますが、私どもが予定した船型より大きな船型が来ているので、その点は留保をしているところでございます。  問題はやはり先生指摘のように、オッタートロール禁止ラインをどうやって遵守させるかということが重要な課題だと思っております。これはすでに農水等の場所で私ども大臣も御答弁申し上げましたように、韓国については当面は二百海里法を適用する考えはございませんが、しかし北海道周辺水域におけるオッタートロール禁止ライン尊重という問題は重要な課題だと思っておりますので、すでに担当課長を派遣して韓国側と第一回の交渉実施させましたが、さらに近々にも第二回目の交渉を再開いたしまして、何とかこのオッタートロール禁止ライン尊重という問題を韓国側に呼びかけてまいりたい、このように思っております。
  10. 島田琢郎

    島田委員 要は、具体的になってもらわぬと困るのです。こんな議論国会でもう何回も、私だけじゃない、行われているわけですから、とにかく韓国に早くそこを引き揚げてもらうということを具体的に、早急にやってもらいたい、こう思います。  外務大臣、お待ちしていたわけで、私の時間がなくなるものだから、やきもきしていました。大臣、まだお座りにならぬうちに、早速あなたにお尋ねをいたします。  日ソ漁業協定、ようやく最終的な合意に達した。きわめて御同慶でありますし、同時にまた、鈴木大臣、大変御苦労に存じます。しかし、今回の日ソ漁業交渉を見ておりますと、いかにも日本外交チャンネルの弱さといいますか、とりわけソビエトに対する外交姿勢というのは、これは改めて問い直される新しい事態幾つ教訓として読み取ったのではないかと私は思うのです。  まず最初に、外務大臣外交とはまさにソビエトのようなこういうやり方をもって外交の模範とすべきだという言葉さえ聞かれるほど、その外交姿勢というのは厳しかったのであります。私は先ほど水産庁に対して、漁業交渉に臨むに当たって鈴木大臣にも申し上げましたが、日本側姿勢読みの甘さとか、あるいは姿勢にいま一つ毅然たるものが欠けているという感じがして、このままで第三次の交渉に臨まれて果たしてうまくいくでしょうかという疑問を投げかけました。しかし、時あたかも大変デリケートな局面を迎えておりましたから、私どもはしっかりやってもらいたいという激励の域にとどめて、それ以上のことを申し上げることは差し控えたのでありますが、今度の第八条、わが方からの提案に対して、昨日はジグザグいたしまして、国民は挙げてこの成り行きを注視をしていたと思うのです。  しかし、結果的には、これで魚と領土が完全に切り離されたことになったかどうかとなりますれば、新聞各紙が伝えるように玉虫色で、どちらからでも、解釈のしようによっては手前の方に有利に解釈できるような、そういういわゆる内容になっているという指摘があるのであります。  今度の漁業交渉の一連の経過を振り返って、大臣外務大臣という立場からどんな御感想をお持ちですか。まず、そこのところを、簡単で結構ですから、お聞かせ願いたいのです。
  11. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の日ソ漁業交渉におきましては、国民の各般の皆様から大変な御激励を賜りまして、また国会の諸先生方におかれましても超党派の議員団を派遣してくださる等の措置をとっていただきました。そのような全国民的なバックのもとにこの日ソ漁業交渉が行われたということでございます。  その成果といたしまして、わが国といたしまして最も大切な問題であると考えておりました北方領土の問題、この領土の問題は今回の漁業交渉とは全く次元の異なる問題である、この日本北方四島に対する立場、この問題については何らの影響を及ぼさない、日本政府立場を害しない、こういうことが明らかに第八条にうたわれたということは、これは国民皆様方バックをいただいたおかげであるというふうに考えております。  日ソ交渉は大変厳しい交渉になるであろうということは予想されました。また、外交姿勢等につきまして御批判もございましたが、鈴木農林大臣は本当に不眠不休でこの折衝に当たられた。本当に感謝にたえないところでございますし、また、この席をおかりしまして、御支援いただきました諸先生方にも厚く御礼を申し上げるところでございます。
  12. 島田琢郎

    島田委員 海上保安庁、どうも御苦労さまでございました。どうぞお引き取りください。  大臣、私のお聞き申し上げたことに的確にお答えになっていないのでありますが、魚と領土は完全にこれで切り離された交渉になったというふうに見てよろしゅうございますか、その点はいかがですかということをお尋ねしたのであります。
  13. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この点は条文上も明確にされた、このように考えております。
  14. 島田琢郎

    島田委員 ところが、一昨日のソ連修正案、さらに昨日、若干の文字でありますけれどもそれを削るという、こういう点に対して、政府も検討の結果、訓令を発したようでありますが、ソビエト側はこれにいわゆる妥結の意向を示したということは、向こう側向こう側なりに、これで領土表現が実際上のとげといいますか、きばといいますか、そういうものが抜かれたという彼らなりの判断があったからこの妥結に合意したのではありませんか。その点はいかがですか。
  15. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 交渉経過からも領土問題には全く触れないということ、これは先方もたびたび主張されております。そういう意味で、その点には疑いを入れないところでございます。  ただ、領土問題に影響を及ぼさないという場合におきまして、先方の気にいたしておりましたのは、領土問題について日本主権を持っておる、こういうことを認めるような表現になっては先方としては困るわけでございますので、そういう点の配慮が先方としてはあったということで、そういう意味で、お互いの立場を害さないという表現でございます。  そういうことで、この過程経過にはいろいろな議論が、あるいは条文上の提案がございましたけれども、今回の漁業協定領土には一切影響を及ぼさない、こういう点は折衝に当たられた両大臣間でも明らかであると考えております。
  16. 島田琢郎

    島田委員 果たしてそうでしょうか。私は、その点は内容がかなり玉虫色であるだけに、これから重大な外交上の話題になるというふうに見ているわけであります。  しかし、私はここでちょっと日本対ソ外交姿勢について、若干の問題の提起をしたいのであります。  農林水産委員会で、領海法や二百海里法あるいは日ソ漁業問題の討議をいたしましたときにも、私は鈴木大臣に、厳しいけれどもそういう指摘をしたのでありますが、どうも対米交渉と比べますと、対ソ外交というのは回数でもあるいは積極的な姿勢の上でも非常に格差があるという気がしてなりません。これは私一人のひがみであるとすれば幸いでありますが、私はあのときにも厳しく言いましたのは、アメリカに出かけるのと同じぐらいの精力と回数ソビエトとの外交を進めておかなければいけないのではないか。日ソ漁業交渉というのは連年厳しさを加えているというのは、もう衆目の一致するところであります。ことしに始まったことではないのであります。もう四年前、五年前からだんだん厳しさを増して、年を追うごとに日ソ漁業交渉のむずかしさということはみんなから指摘をされていた。ことしあたりは最大にして最高の厳しい条件がつけられるだろうということは予想にかたくなかったのであります。ですから、時期が来たら魚の問題だけ持ち出してソビエトとやり合ったって、ソビエト外交というのは、単なる魚とかそういう現象面だけをとらえた外交姿勢ではありませんから、非常に厳しい。今度だって恐らく出先漁業大臣ではどうにもならない中央の訓令が行われて、ああいう二転、三転の状態をたどったと思うのです。これは不法な態度だとしてソビエトを責める前に、私は、わが国外交姿勢にやはり大いに反省をしていかなければならぬ面が幾つかあったと思う。  いまさら私はミグ事件を引き合いに出すつもりはございません。しかし、あなたは二月二十五日の当委員会における外交施政方針の中でこうした点にも触れているのでありますが、ミグ事件そのものは国際的な慣例あるいは常識に従ったまでだとおっしゃるけれども、それは日本側の言う常識であって、ソビエトのような厳しい外交姿勢を持っているところには通じない。ここのところを頭に置かないで、国際慣例だ、慣行に従ってミグを解体するなんというようなことが漁業問題にどんな影響を及ぼすかぐらいのことは、外務大臣としてよくおわかりだったはずなのに、そういうことも平気でおやりになった。果たせるかな、そういうようなことは口に出さぬけれども、今度の厳しい姿勢の中にそれがあったと私は思う。  私は一つの例を申し上げているにすぎませんが、事ほどさように対ソ外交姿勢というのは、特に対ソ外交チャンネルの弱さというものは今回はっきりと露呈されたと思う。反省が必要だと私は思っているのであります。  そしてまた、最近あなたは本会議でもお答えになっていますが、日ソ外相定期会議で、もろもろの問題をこういう機会に洗いざらいひとつぶちまけて話し合いたいということを前向きにおっしゃった。私はこれを評価をいたします。秋ごろというようなことをおっしゃっていますが、先ほどの魚と領土は完全に切り離されたというあなたの認識は、ソビエトに出かけてごらんなさい、恐らく通じないと私は思いますよ。ですから、向こうから来るのを待っているんじゃなくて、こっちから——国民は今度の領土問題に大変ないわゆる注目をいたしました。国論としてこれぐらい盛り上がった時期もないと思います。  私どもは、千島の北方領土という問題は、全千島という主張を掲げて今日までその返還のプロセスも提起をしてまいりましたが、あなたはこの二月二十五日の所信表明の中ではこういうふうにおっしゃっている。四島の一括返還、これをやりながら北方領土問題の解決を図って後、日ソ平和条約を締結するという、こういう考え方を崩していないということでございます。しかし、現地ではこの政府考え方は大変非現実的だという批判が起こっているのであります。むしろわが党が主張いたしました、当面二島の返還とあわせて日ソ平和条約の締結を図っていく。そして、外交上の等距離姿勢を明確にしながら最終的には全千島の返還をかち取っていくんだという姿勢について賛成をする向きが現地には多いのであります。宮澤前外務大臣もそのことを現地でお聞きになって帰っているはずだ。  私は若干の指摘をしたのでありますが、こういうことを考えますれば、あなたはいま当面大変急がれることは、ソビエト領土問題について国論がこれだけ沸き起こり、そして国を挙げていまのいわゆる北方領土問題の解決を要求するというこの機運の高まりの中でこそ初めて、日本外交というものが前進する一つの下地といいますか、素地ができ上がっていくというふうに私は理解をしているのであります。秋までと言わず、直ちに対ソ外交のチャンネルを大きく開いて積極的に領土問題を解決し、来年、一九七八年以降の日ソ漁業交渉がまたぞろ難航するようなことのないように、外務省としては外交上のこういう下地、素地というものをきちっとつくっていくという、そういう努力はきょうから必要だと思うのですが、この点についてはいかがでございますか。
  17. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま日ソ間の外交努力が足りない、こういうような御指摘がございましたが、その点につきましては率直に承りまして、今後日ソ間の外交上におきます友好関係を深めるように、これは本当に日本として真剣に取り組んでいかなければならない、ただいまの御趣旨は私といたしまして全く同感でございます。  私、労をいとうわけでございませんが、日ソ間の定期外相会議におきましては、わが方といたしましても十分な準備を整えまして、その上に成果のある外相会談を行いたい、こう考えております。  御指摘のように、領土問題の解決というものは、これは容易なことではない。この問題につきましては、やはり日ソ間の友好関係を積み重ねていく努力の上にのみ解決が実現するものと、私はこのように思います。そういう意味で、今後とも本当に私どもの力の及ぶ限りこの努力を傾けなければならない、こういった問題である、このように考えております。  なお、二島の返還によって平和条約を締結する等の御意見もよく承っております。御見識だと思いますけれどもわが国といたしまして、北方四島ということは切り離せない一括返還ということで政府としては態度を固めておりますので、その方向に向かって努力を続けたい、こう思っております。
  18. 島田琢郎

    島田委員 いま国策、国の方針とも思えるような御答弁があったわけでありますが、私は正確にもう一度聞き直したいと思うのであります。  つまり、北方四島だけと考えているのは、それはサンフランシスコ条約以降国内的にも大変話題になり、問題になっている点でありまして、依然としてこの点については国論が二つに分かれているという事実がございます。しばしば歴代外務大臣としてもこの点について見解を述べているのでありますが、改めて鳩山外務大臣に、北方四島だけと考えているのは国策上のことなのか、それとも対ソ連向けとして考えているのか、この点が一つであります。  それから次は、外交姿勢というのは毅然たる姿勢がなければだめだ、特にソビエトなんか相手にしているときにはそれがいやというほど実は要求されるわけでございます。私はその点きわめて残念でありますが、日本の外務省、そして代表する外務大臣姿勢には、その毅然さが欠けていると思えてなりません、ものすごく厳しい指摘かもしれませんが。先ほど申し上げましたように、国論が大変大きく盛り上がっているときであります。先頭にお立ちになる外務大臣姿勢国民の皆さんは注視をしている。対ソ外交に臨まれるあなたの姿勢というものを二点目にお聞きをいたします。  もう時間がありませんから、全部一緒に聞いてしまいますが、三点目に、日ソ平和条約の締結を積極的に進めていく必要がある。この点についてはいまだ外交上の日程に上がっていない。言葉では、平和条約を急いで締結しなければならぬ、こう言っております。時あたかも日中平和条約の締結が云々されているときでもありますが、日ソ平和友好条約の締結というものについての具体的プロセスを国民の前にもうそろそろ明らかにする時期に来ていると私は思います。  それから四点目は、実は私の選挙区においての熱望でもありました北方墓参問題が、残念ながら昨年から中断をするという事態になりました。その後、ソビエトとの間にどういう交渉を持っておられるのか、それが再開される見通しというのはあるのかないのか、その辺の状況をひとつ御説明願いたいと思います。  以上の四点を一緒にお尋ねをいたしまして、私の持ち時間が参りましたから、質問を終わりにさせてもらいます。
  19. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日ソの平和条約の交渉についてでございますが、これは定期閣僚会議の際に、平和条約の問題を含めまして当然交渉をいたしたいと考えております。  日中関係の平和友好条約の交渉が進展をしてまいっております。この日中関係におきましても国民的なバックのもとに進められておるわけでございまして、したがいまして、現在におきましては日中の平和友好条約が、具体的な日程等はまだはっきり決めておらないわけでございますけれども、実現に非常に近づいてまいったということは申し上げられるだろうと思います。  それに比しまして、日ソの平和条約につきましては領土問題が未解決の問題として最大の問題が絡んでおりますので、これがなかなか実現のめどが立たないのが何といっても現実の姿であろう、この領土問題につきまして何らかソ連側日本側との話し合いができるような事態に立ち至ることが前提であろうと思います。それにはやはり私は日ソ外交関係、友好関係というものをもっと積極化していかなければ、そのような空気になってまいらない、このように思います。  そして、いままで日ソ間で一番問題になっておりましたのが漁業関係で、これは日ソ交渉であるとともに、相互の協力関係というものになってまいるわけでありまして、これは一つの問題として円満に解決をされることが望ましいのでございます。そのほかにシベリアの開発問題等、日本としてソ連側にいろいろ協力をする、こういった事業につきましても日本は積極的に協力態度をとってまいる。こういうような過程におきまして日ソ間の交流を積み重ねて、その上で平和条約の締結という段階に立ち至るもの、このように考えて対処してまいる所存でございます。  それから、墓参の問題につきましては担当者から御説明をさしていただきます。
  20. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答えいたします。  わが国固有の領土でございます北方領土に対する墓参につきましては、従来、身分証明書の携行をもってこれを行うという慣行が確立しておりました。ところが、昨年になりまして突然ソ連側は、旅券の所持という要求をしてきたわけでございます。これはわが国の固有の領土という観点から認められない問題であるため、残念ながら昨年北方領土における墓参は実現いたしかねた次第でございます。  今年は再び従来のとおり身分証明書の携行をもって墓参が実現するよう、私どもといたしましてはすでにソ連側当局とも接触を始めておりますし、今後とも強力に交渉を進めて、従来の慣行に戻るようにいたしたいと努めている次第でございます。
  21. 島田琢郎

    島田委員 時間が参りましたけれども、やっていたのですか、やろうというのかね。
  22. 加藤吉弥

    加藤説明員 お答えいたします。  本年につきましては、すでに先方に接触を開始いたしました。
  23. 島田琢郎

    島田委員 大臣、もう定期会議の秋までなんというような、そういう悠長なことではないんじゃないですか。そういう姿勢だから、さっき私がるる申し上げたように、対ソ外交姿勢が明確にならぬし、だから国民も、ソビエトに対しての日本政府外交姿勢というものは一体何なんだ、さっぱりなっておらぬじゃないかという指摘になるのです。こんないい国論が盛り上がり、いま対ソ外交に対して皆さんが挙げて支援するという態勢が整っているときは絶好のチャンスじゃないですか。あしたにでも出かけるぐらいの、これからの日程を御検討なさるお気持ちさえもないのですか。私はどうもそこは不満ですけれども、もう時間がないから、委員長からやめろと言われても困りますからもうやめますけれども、私はここはきょうの答弁ではどうも納得できない。そんな姿勢を繰り返すなら、またぞろ来年の日ソ漁業交渉は大変な難儀な会議になりますよ。私は予言に近い、予告をしておきます。姿勢を改めてもらいたいと思う。  以上で終わります。
  24. 稲富稜人

    稲富委員長 上原康助君。
  25. 上原康助

    ○上原委員 いま同僚議員の島田先生から、北方領土問題、また、いろいろな経過をたどりながらようやく妥結の方向に至った日ソ漁業交渉をめぐる問題についてお尋ねがあったわけです。私はおとといも内閣委員会で、この日ソ漁業交渉なりあるいは日中平和友好条約の締結問題について若干お尋ねをいたしました。ちょっと重複する面もあるかと思うのですが、今回の日ソ漁業交渉によって、北方領土問題と完全に切り離した形で妥結したと政府は見ておられるのかということですね。今後の北方領土返還交渉に今回の漁業交渉で合意を見たことが支障を来さない、そういう御判断をとっておられるのか、この点を明確にしておいていただきたいと思います。
  26. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の漁業問題は、純粋な漁業だけの問題である。この点につきましてはイシコフ大臣もたびたび言明をしておりますし、その点につきまして福田総理からブレジネフ書記長並びにコスイギン首相に対しまして、今回の問題は純粋に漁業上だけの問題として円満に妥結をいたしたいという確認の親電を発した次第でございまして、それによりまして、それを確保する第八条の修正ということを行いました。したがいまして、日本政府漁業以外の問題につきまして、領土問題を含めた問題につきまして何らの影響があるもの、こうみなしてはならないという規定を置いたわけでございますし、その点は確保できたもの、こう考えております。
  27. 上原康助

    ○上原委員 二転、三転して、本当にじれったさといいますか、やり切れないような気持ちを多くの国民の方々が今回の交渉を見て感じたと思うのですね。  そこで、やはり先ほども指摘がありましたし、おとといも私は少し申し上げたのですが、日本外交のとってきた姿勢というものが今日の事態を招いた、あるいは日ソ漁業交渉なり平和友好条約の締結が遅々として進まない、日中関係だってそうなんです。そのことを根本的に、その場外交というものを改めていかない限り、また同じことを繰り返さないとも限らないと思うのですね。そういう意味で、やはり対ソ交渉というもの、対ソ関係というものをもう一度政府全体で、今回の漁業交渉を踏まえて再検討をしていく必要があると思うのです。  その意味では、私たちが非常に奇異に感ずるのは、漁業交渉ではあっても、最初から最後まで農林省ペースですね。やはり対ソ連関係ということになりますと、外務省がそれ相応の、もちろん側面的な努力はやっていらっしゃると思うのですが、漁業問題だけが前面に出て、日ソ関係全体に対しての、領土問題を含めてのわが国ソ連との関係をどうしていくかという外務省の外交姿勢というものが埋没をしてしまっている。このことを私はやはり反省をすべきであり、また改善をすべきだと思うのです。その点についてどうお考えなのか。  そのことを改善をしていくには、むずかしい面はあるにしましても、外務大臣が訪ソなさるとか、あるいはここまで問題が非常にむずかしくなっていろいろ複雑化してきますと、ある意味では総理大臣がお出かけになるぐらいに値する問題だと私たちは見ているわけです、親書を託すとかそういうことではなくして。そのくらいの積極的な姿勢転換というものがない限り、領土問題にしましても平和条約にしても、なかなかしぶとい相手に対してわが国立場というものが通用しない、このことを教えていると思うのです。  こういういきさつについて、どのような改善策なり姿勢を持っておられるのか、外相の決意を伺っておきたいと思います。
  28. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の問題は、純粋に漁業の問題として解決を図るのでなければ解決が図れないというのが私ども考え方でございますし、福田総理もそのようにお考えでございます。私が訪ソをいたしまして何らかお役に立つのであれば、それはもう飛んでいきたい気持ちでいっぱいでございます。私どもの方からは欧亜局長鈴木農林大臣の補佐のために同行いたしておりますが、そういったことで、漁業問題以外に領土問題が漁業問題と一緒に議論をされるということになりますと、これは大変むずかしい問題になる。平和条約交渉と同じような問題が出てまいりますので、そのようなことになりました場合には、実際にいま出漁を待っております日本の漁民の皆様方、この皆様方に大変な迷惑をかける、そういったことを恐れておるわけでございます。  一年でも二年でも魚はとれなくても構わないというような悲壮な御意見も伺ってはおります。そのくらいの覚悟で事に臨むということも一つ方法であったかもしれません。しかし、私どもはやはり漁業問題を円満に妥結を図る、円滑に漁業関係日ソ協力していくという姿勢をとることによりまして、日ソの友好関係は増進をする方向に参ります。しかし、本当に両国関係が、ここでもう一年がかり、二年がかりで歯を食いしばってお互いにがんばって闘うというような姿勢は、私は日ソ関係の好転をもたらさないというように思います。したがいまして、政府といたしましても、漁業問題は漁業問題として円滑に妥結を図った方が日本の国益にも合する、それから日ソ外交関係、友好関係を深めるために役立つ、このような判断のもとに妥結を図った、このように御理解を賜りたいのでございます。
  29. 上原康助

    ○上原委員 私がお尋ねしていることを誤解していただいては困ると思うのです。私も何も漁民のお文場を考えていないというわけじゃないのです。それは最も優先さるべき課題なんです。ただ、申し上げたいことは、漁業領土は別だというようなことで交渉したのだ。これは今回に限れば、政府のとった姿勢そのものは私たちきわめて悪いと言っているのじゃないのです。しかし、じゃ、絶えず漁業領土は別だということだけを日本側が主張していると、北方領土返還というその本題というのは、未来永劫に解決されないまま残るじゃありませんか。それをやるには、やはり平素からの日ソ関係の親善友好ということと外交姿勢というものを正していかない限り行き詰まってしまう。そのことを打開するにはどうすべきかということのお考えがありますかということをお尋ねしているのであって、漁業の問題、漁民のお立場を無視してやれという主張は社会党も一貫してやっておりません。政府よりもむしろ真剣にそのことについては私たちは心を痛めてきたということも表明しておきたいのですが、その領土問題を含めて日ソ関係を改善をする、そうして返還を求める、平和条約を締結をしていくということに向かっての外交姿勢というものを確たるものを持っておらなかったがゆえに今日の事態を招いたと言っても過言でない。その打開策をどうするかということをお尋ねしているのです。
  30. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日ソ間におきまして昨年は本当に降ってわいたような不幸なできごとがあった、このことが日ソ間の関係につきまして影響がなかったとは私は申しません。影響があったということは確かでございます。こういうような残念な経過がありました。これを打開をして、これから友好関係を増進さすためには、私どもといたしましても大変な努力が要るものと考えております。この日ソ間の友好関係をお互いの利益のために協力し合っていく、こういった姿勢を強めなければならない。それにはやはりいろいろな漁業の面のみならず、経済協力の面その他におきましてやはり日本としてお互いに協力をする、こういう姿勢をとることが大事である、このように考えて、その方向に向かって努力をする。その過程におきまして、やはり平和条約というものがないということがやはり両国関係の友好親善関係を弱めておるということは事実でございまして、ソ連邦の首脳の方々の訪日がないということは、やはり平和条約がないからであろう、こう思います。そういう意味で、平和条約交渉も一段と努力をしなければならない、このような姿勢をとってまいりたいと思います。
  31. 上原康助

    ○上原委員 外務大臣の外務委員会での御日程があるようですからいいですが、これだけは申し上げておきます。  私は今回の交渉を見て、変にナショナリズム的に問題を見たり、あるいはわが国が防衛力がないからそういう結果になるんだというような、こういう感覚で日ソ関係考えるとかあるいは今日の漁業交渉を見るとすると、ますます災いを拡大をしていく結果になると思いますので、そういう外交姿勢ではなく、本当に国民の全体に支持されるような友好関係というものを確立するために御努力をいただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、大臣がちょっと中座なさいますので、おととい内閣委員会お尋ねをしてお答えをいただけなかった点がありましたので、その方に話題を移しておきたいと思うのです。  それは沖繩の土地の継続使用法との関連における問題ですが、要するに、四日間の空白期間ができた。そして、地主の方々が嘉手納空軍基地に立ち入りをしようとしても、それを拒否された。地位協定土地主の立ち入りを拒否することができるのかということが一つと、いま一つは、米側の指定に応じなかったということが言われているわけですが、自分の土地に入るのに、一々米側の指図を受ける必要はないと私たちは思うのですね。このことについてももう一度明確にしてもらいたいし、さらに、きょうは警察庁も来ていただいていると思うのですが、機動隊の要請というのは、米側がやったのか、どこがやったのか、このことについても外務省は調べてお答えをするということでしたが、おとといの私の質問に対して、どういう調査をし、どのような御答弁をきょうは用意しておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  32. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 わが国は、安保条約と地位協定に基づきまして、安保条約の目的遂行に必要と判断しました施設、区域の米軍による使用を認めておる次第でございます。したがいまして今回の地籍明確化法案の関連で、政府は国内法的に一時使用権原を失ったということがありましたとしましても、アメリカとしては、日米間の国際約束に基づきまして、施設、区域を引き続き使用する権利は持っておったとわれわれは考えております。したがいまして、関係の地主の方々の施設、区域への立ち入りに当たりましては、その立ち入りの許可また立ち入りの態様等の問題を含めまして、施設、区域の管理権を有する米軍との間で調整を行う必要があると考える次第でございます。  具体的に十六日、十七日において、関係の地主の方々が嘉手納の空軍基地等に立ち入られることに関しましては、私たちの聞いておりますところでは、那覇防衛施設局を通じて、米軍との間で調整を行われましたが、その立ち入りの態様について話がまとまりませんで、結果的に立ち入りが実現しなかったことは残念でございますが、われわれが承知している限りにおきましては、米軍は立ち入り自体を拒否したわけではないと承知しておる次第でございます。  警察の方の問題に関しましては、事実関係につきまして警察の方々からお話をいただきました上で、私どもの意見を申し述べたいと存じます。
  33. 若田末人

    ○若田説明員 お尋ねの空白期間におきます基地の警備について、どこから要請があって出動したかというお尋ねでございますが、五月十三日、在沖繩米軍基地司令官から各基地を管轄いたします警察署長あてに警備要請がなされておる状況でございます。
  34. 上原康助

    ○上原委員 これは米軍基地司令官が日本の警察に対して警備出動を要請することはできるわけですか。その根拠は何ですか。
  35. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 米軍の基地内に対して日本の警察権が全く及ばないということはないわけでございます。ただ、米軍は一般的に管理権を持っておりますから、普通の警察の取り締まりは、通常は米軍がやっておるわけでございます。  しかし、たとえば基地外で犯罪を犯した者、そういう現行犯を追跡して立ち入るということは従来からも認められておるわけでございます。  またさらに、米軍の方から要請があったり、あるいは米軍の方ではっきりした同意を与えた場合には、日本の警察が基地内に立ち入るということは認められることと存じます。
  36. 上原康助

    ○上原委員 あなたはそんなちぐはぐみたいなことをおっしゃってはいけませんよ。私がお尋ねしているのは、何もわが国の警察権力というか、警察の行為が基地内に及ばないということをぼくは言っているのじゃないのです。それは及ぶ場合もある。それはちゃんと地位協定に取り決めがある。アメリカの在沖米軍基地司令官が、いま警察のお答えでは、米軍基地司令官がそれぞれの基地を管轄する警察署に対して出動要請があったから、十三日以降出動したというわけでしょう。だから、米軍が出動を要請する根拠は何かということを聞いているのです。それだけ答えればいいのであって、何もごちゃごちゃたくさん言う必要はない。お答えください。
  37. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 米軍は基地内において一般的に管理権を持っておりまして、一般的な警察権も持っておるわけでございます。  しかしながら、今回のような事態の場合、これは日本法に関連する問題でございますので、米軍の判断で、この問題に関しては米軍が直接警察権というものを行使することを差し控えて日本側において処理してほしいということを要請するということは、これは地位協定上も認められることであると存じます。
  38. 上原康助

    ○上原委員 ですから、地位協定上、具体的に何条にそういうことがうたわれているのですか。
  39. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 地位協定の第三条においては、アメリカは、施設、区域内におきまして、その施設、区域の「設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」というふうになっておるわけでございます。これはアメリカは、そういう警護といいますか、警察権を行使することができるということでございまして、必ずアメリカが行使しなければならないというわけではございません。したがいまして、米側の判断において日本側の警察の援助を要請することは、この規定の運用の問題として当然認められるものと考えます。
  40. 上原康助

    ○上原委員 あなた、私がおととい、その事前にも事後にも、合同委員会を開きましたかと聞いたら、開きませんでしたと言ったよね。  確かに第三条にあなたがいまおっしゃったことが書いてある。その後に何と書いてありますか。ごまかしてはいけませんよ。  第三条第一項「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があったときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。」明確に「合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、」と書いてあるじゃありませんか。合同委員会の両政府間の協議の上でなければ、合衆国軍隊の出入りの便を妨げたからといって、日本政府の警察権力に対して、司令官が日本の警察機動隊を要請することができますか。だから私は、この間から、合同委員会は開きましたかと、開いてないんだ、皆さんは。地位協定のどこで、出入りの便が不自由になったから警察権力を出動させてくれという要請ができますか、はっきりさせてください。私がそこいらまで調べてないと思っている。これだけ重要な問題については、必ず日米合同委員会の協議というものがない限り恐らく事は運ばないであろうと、私も前々から調べておったんです、そこのところは。しかし、皆さんは、地位協定や安保条約というのは勝手に解釈すればいいと思っておいでになっていらっしゃるのかどうか知りませんが、どこを見たってそういうことはないんだ。そうじゃないですか。
  41. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 地位協定の第三条第一項の第二文において、ただいま上原委員のお読みになりましたような条文があることは、そのとおりでございます。ただそれは、ちょっと読み上げさしていただきたいと思いますが、「日本政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があったときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。」この第二文の趣旨は、その施設、区域への出入りの便を図る問題に関して合衆国政府から要請があったときには合同委員会で取り決めをするということが主眼の規定でございまして、現実にそういういわゆる路線権というような問題に関していろいろな取り決めが行われておるということでございます。そこで若干「警護」という言葉が出てまいりますが、それは単なる目的でありまして、実際にとる措置は出入りの便に関する措置でございます。
  42. 上原康助

    ○上原委員 あなた、そんなことをこじつけでおっしゃっても困りますよ。  では、角度を変えて申し上げますが、今度警察が出動されたのは、どういうことがあったから出動要請があったのですか。出入りの便が不自由になって障害になったからということであったのでしょう。米軍基地司令官からはどういう要請内容だったのですか。どういう目的で警察は出動なさったのですか。
  43. 若田末人

    ○若田説明員 基地司令官からの各警察署長あての要請によりますと、基地使用期限切れに伴いトラブルが予想されるため、基地外周の警備をお願いをしたいというのが趣旨でございまして、出動の根拠は警察法二条でございます。
  44. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、基地内への立ち入りが、基地の外の人々にいろいろ阻害される危険性がある、可能性があるということで出動を要請したというふうに解されるわけですね。もちろん、警察として出動したのは警察法の二条でしょうが、米側から言うと、出入りが不自由になるから、そういうことにならないように、デモとかいろいろあった場合には排除してもらいたいというのが一般的というか、その出動を要請した米側の目的だ、内容だと解釈できるわけですね。
  45. 若田末人

    ○若田説明員 お尋ねの件も含めまして、事前から情報でも、極左暴力集団等において、この期限切れをチャンスとして基地内に突入等の情報もございましたので、これに関連いたします一切の犯罪の未然防止の意味と理解いたしております。
  46. 上原康助

    ○上原委員 では、アメリカ局長お尋ねいたしますが、いま警察法の二条と言いましたが、それとこの第三条とはどういう関係になりますか。
  47. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 地位協定の第三条第一項の第一文におきましては、先ほども申し上げましたように、米車は、施設、区域内において、警護のために必要な措置をとることができる、その意味で米軍は警察権を持っておるわけでございますが、それは米軍だけが警察権を持っておるということではありませんで、必要な際、米軍から要請し、あるいは米軍の同意を得れば、日本側も警察権は行使し得る余地は十分あるわけでございます。  第二文以下の問題は、これは出入りの便のための措置でございまして、警察権の問題とは直接関係がないというふうに解しております。
  48. 上原康助

    ○上原委員 そうであればあるほど、やはり地位協定上は、日米間で協議をやって初めて出動ができるという手順を踏まなければいかぬのじゃないですか、解釈上、そうなりませんか。  問題は、地位協定上の確たる根拠もなくして、アメリカ側の司令官が警察力を出動させてくれという要請をやった場合に、では、どんどんやっていいわけですか。それが今回の場合もきわめて問題があったということ、同時にそれは異常警備なんだ、過剰警備なんだ。  そこでいま一つ、先ほど来、いろいろ立ち入りを要求したことに対して、施設、区域の管理権は米側が有しているので、そういう立場条件をつけたんだというようなお答えでしたが、では、地主の所有権より米側の管理権が優先するのですか、あなたの解釈は。地位協定上そういう規定がありますか。皆さんは事あるごとに、安保条約とか地位協定ということを今日まで言ってきたのです。しかも、この地位協定というのは、安保国会においても、私が何度か言うようにほとんど審議されていない。今日までいまのような矛盾点も出てきておる。どこに、地主の所有権よりも米側の管理権が優先する根拠がありますか。自分の土地に立ち入りをするのに、何でアメリカ側から条件をつけられなければいけないのですか。不法占拠をしているのはアメリカであり、そういう土地を提供しているのは日本政府でしょう。このことに対して明確な答えもできないで、しかも根拠もなくして警察権力を出動させて、地主を含めての民主団体を排除をする、あるいは立ち入りに対して条件をつける、こういうことができますか、一体。
  49. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 五月十五日以降の数日間、未契約地について日本政府がその使用権原を失ったということは事実でございます。しかし、これはやはり日本法上の問題でございまして、日米間の国際約束といたしましては、米軍は安保条約及び地位協定に基づいてその基地を使用する権利を有しておるわけでございます。したがいまして、米軍の管理権は有効に働いておるわけでございます。ただ、正当な地主の方がその土地を見に行きたいということをおっしゃった場合に、米軍としてもできるだけ便宜を図るべきは当然でございますので、この点に関しては、米軍の管理権との調整を図りながらその土地に立ち入っていただくということが望ましかった次第でございますが、その辺の調整が現地において必ずしもうまくいかなかったために、結果的に地主の方々が立ち入りができなかったことは、私たちとして非常に遺憾に思っております。ただ、あくまで米軍の管理権というものは有効に働いているという前提で措置すべきものとわれわれは考えておる次第でございます。
  50. 上原康助

    ○上原委員 どうもあなたのお答えを聞いていると、全く本末転倒なんですよ。土地を所有している地主、所有権者が、不法に土地を占拠しているアメリカ側に何で便宜を図らなければいけないのですか。私が言っているのは、地位協定上そういう解釈はできないのじゃないかということで言っているのですよ。あなた方は常に法治国家云々を言っているわけでしょう。そういう解釈ができるなら教えてくださいよ。私は地位協定上の問題を言っている。路線権とあなたごまかしたけれども、そうではあっても、やはりこれだけ重要な問題については日米合同委員会を開かなければいけないはずなんですよ、そういうことが予想されたということであるならば。  さらに、警察当局にもお伺いしますが、警察法二条といっても「警察の責務」というのは「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、」云々と書いてありますよね、いまおっしゃった二条は。そうであるなら、これはあくまで国民の生命、財産やそういうことに対する予防策としての出動でしょう。アメリカの基地を守るためにこういう任務までも与えられているのですか。ちょっとここもこじつけですね、御専門にしては。だから私は、地位協定とどういう関係がありますかと言ったら、関係ないと言う。これは関係あるはずがないですよ。だから皆さんは、法律的な問題を私たちが議論をしようとすれば勝手に解釈をしてごまかす。これじゃ納得できないのですね。いまの点、警察どう思うのですか。それと、なぜ地主が入ろうとするところまで排除なさったのですか。
  51. 若田末人

    ○若田説明員 お説のとおりに、空白の期間の問題は大変むずかしい問題だと思いますが、去る五月十五日の参議院の内閣委員会におきまして内閣法制局長官から政府の統一見解が出されたようでございますが、これによりますと、そういう私法上の契約期限が切れましても、遅滞なく返還すべきことがうたわれておるそうでございますが、そういう正式に返還する手続が終了いたしますまでは、米軍基地に対する施設管理権は、空白期間中といえども米軍にあるということを表明をなさっておられるわけでございます。  確かに先生のおっしゃるとおり、民事的な権利関係はそういうことではございますけれども、私どもの方の立場から申しますと、刑事の面で申しますと、やはりそういう本来の所有権の問題とは別に、現在の占有を確保するというのが、刑事で秩序を守るという立場からはそうでございまして、現在、具体的に返還の手続がとられますまでの間、施設管理権を有するものの要請があった場合で、これに対する犯罪が行われる場合には、警察が出動をし、捜査なり鎮圧をするということでございます。  二番目の、それでは地主が入ったのをどうして排除したのかというお尋ねでございますが、(上原委員「入ろうとしたのをだ、入ったのじゃない」と呼ぶ)これにつきましては、先ほどから外務省の方でお答えのように、現地の施設局とのいろいろな話し合いで、弁護士さんとかあるいは地主さんを含めまして、米軍の管理権との調節、調和を保ちまして、第二ゲートから入るということで話し合いがついておりましたところ、別のところから、別の条件を出して、ほかの多くの方々も含めて入れろという要求であったということでございますので、米軍は、話し合いとは違う、施設管理権に基づいてそういうことは許可をしてないというようなことでございまして、それに基づきまして、正確に申しますと、刑事特別法二条違反になるわけでございまして、そういう現行犯鎮圧、排除ということで警察が出動いたしまして排除したということでございます。
  52. 上原康助

    ○上原委員 これは警察当局に抗議と要求をしておきたいのですが、県道一〇四号線をはさんでの実弾射撃演習の場合も、警察の過剰警備の問題があったし、今度もあるわけですね。現に成田空港反対闘争に対しての東山さんに対するガス銃の問題等いろいろ警察の——もちろん私は、国民の生命、財産、安全を守るという立場での警察機構というものまで否定する立場でないが、余りにも過剰警備というものが多過ぎる。法の解釈というものも、平和憲法の精神に基づくとちゃんと二条にもうたってあるが、そういうことがなされていない。同時に、沖繩においては、暴力団事件においてとうとう死亡者まで出しているでしょう、その期間に。こういった本当に民生の安定問題、県民の生命、財産の保護に対しては手抜かりがあるにかかわらず、基地の管理維持というものに対しては、ウの目タカの目で民主団体に対する弾圧、過剰警備というものがあってはいけないと思うのですが、この点についてはどうお考えなのか。今後もっと配慮すべき問題があると思うのですが、御見解を賜っておきたいと思うのです。
  53. 若田末人

    ○若田説明員 お説のとおり、警察はまさに法を守りまして、国民の生命、身体、財産等を守る立場にあるわけでございますので、おっしゃるような過剰警備はいたしておりません。法に基づいて、法の範囲内で職務を執行いたしておるわけでございまして、今回の場合も決して過剰警備だとは考えておりません。
  54. 上原康助

    ○上原委員 そう言わざるを得ないかもしれませんが、しかし県民や民主団体はそう見ていないということもあえて申し上げておきたいと思います。もう少し暴力団対策とか、そういった本当に県民の生活の安寧秩序というものを優先をした民主的な警察行政というものを私は強く要望を申し上げておきたいと思うのです。  そこで、いろいろ後の方の御質問の都合もありますので、まとめたいのですが、私はこの地位協定の解釈というものはきわめてあいまいに今日運用されていると思うのです。  アメリカ局長、今回の場合だって、私が指摘をしたように、事前か事後に直ちに日米合同委員会ぐらい持って、警察に対してはこういう対策をやらなければいかぬ、あるいは政府としてはこういう措置をとらなければいかぬということを、ルールを踏んでなさるべきであったとあなたはまだ思わないのですか。
  55. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 今回の沖繩土地法案をめぐる問題に関しましては、われわれは合同委員会で何回も話し合っておったわけでございます。そして、今回の議員提出の法案が十五日までに成立しないということが予想される事態になりました時点におきましては、米側に対して無用なトラブルを避けるように思慮のある行動をしてほしいということを申し入れたわけでございます。米側もこの点については協力をいたしておったわけでございまして、合同委員会におきましてこの問題について全然話し合わなかったということはございません。
  56. 上原康助

    ○上原委員 あなた、話し合わなかったということを言っているのじゃないのだ。いつもそういう官僚答弁だけやるから次から次とぽかぽかミスを犯すのだ。県民の批判を受けるのですよ。こういう空白期間が生じたことに対してどう対処していくかということがなされていないじゃありませんか。それはやるべきじゃありませんでしたかとお尋ねしているのであって、何もあなた、そんな言いわけ的なことをおっしゃる必要はない。外務大臣、このことについては、この地位協定の解釈というのはきわめて勝手に運用されているのです。  では、時間がありませんから、あと一点具体的にお尋ねしておきますが、基地への立ち入り調査の問題にしましても、二週間前にやらなければいかないというこの規定は地位協定上はない。合同委員会でそう取り決められたからということでひた隠しにして、そういうことはまた明らかにしない。これも協定からするときわめておかしい問題です。  それともう一つは、では、防衛施設庁が基地内でつくっている施設を調査をしたいという場合の立ち入りはどうなりますか。日本政府の予算で、アメリカ側がやるのではないですよ、日本政府がやっているものに対しても、これはある面では自由に出入りしていますよね、防衛施設庁の職員やあるいは請負業者、そういった者は。たとえば国会議員なり県会議員が、防衛施設庁でやっている工事をいろいろ建築基準法上おかしい、問題があるということに対する立ち入り調査は自由にできますか。その点も、きょうほかの質問できませんでしたが、将来のことと関連しますので明らかにしてください。地位協定上それはどうなるのですか。
  57. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 合同委員会におきまして取り決めておりまして、二週間前に立ち入りの申請をするということになっておりますのは、国会議員の方々とが非常に重要な方々が基地に入られるときには、米側としてもしかるべき責任者が応対する必要があるということもございまして、先方の希望もありましてそういうふうなルールをつくっておるわけでございます。  施設庁が現地におきまして建設しております工事の関係で施設庁の職員がその基地に立ち入るという問題は別途の問題でございまして、この点は現地の施設局と米軍との間で話し合って適当に処理されておると承知しております。詳しくは、必要でございましたら施設庁の方々からお聞き取り願いたいと思います。
  58. 上原康助

    ○上原委員 いまの後段のお答えでいいのです。米側の施設、区域を直接視察というか、調査をするというほどの条件じゃない、これでいいわけですね。
  59. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 私が申しておりますのは、施設局が直接担当しております工事に関して、その施設局の職員その他関係者が立ち入ることは、現地において適宜取り決めて行い得ると考えておる次第でございます。
  60. 上原康助

    ○上原委員 施設局の職員じゃなくして、第三者はどうなんですかと聞いているのです。
  61. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 施設局が使っております工事関係者なんかは施設局の指示のもとに行動すればよいわけでございますが、先ほど申し上げましたように、国会議員の方々とが非常に重要な方々が基地に入りたいという場合には、アメリカ側としてはやはり責任ある者が応対する必要があるということで、二週間のルールを守っていただきたいということを申しておるわけでございまして、この点につきましてはわれわれとしても理解し得るところでありますので、その点はひとつ御協力いただくようにお願いを申し上げている次第でございます。
  62. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁というのは、私の質問には答えていないわけです。わかっておってそういうことを言っているのか、本当にわからないであなたがそういう答弁をするのかぼくは不思議でならないのだが、施設局が国の予算でやる施設、区域というのはまだ提供施設、区域でないところもあるわけなんです。そのことまでは地位協定上何も問題ないのじゃないのか。たとえばアメリカの嘉手納基地に、既設の施設に入るというのと、これからアメリカの予算でなくして日本政府の予算でつくろうとするというものの区別はあるんじゃないのかということを聞いたら、のんくらのんくらそういう答弁でごまかす。  そういう意味で、外務大臣、この地位協定の解釈というのは、ちょっと中座していらっしゃいませんでしたが、今回の警察の出動問題にしてもきわめてあいまいなところがあるわけですよね。そこで、この運用の仕方については、国内法の尊重とか遵守とかいうようなものについて、政府として地位協定の解釈について再検討いただきたい。いずれこれは逐条明らかにしなければいけないと私は思いますので、その点やっていただけますね。これは大臣からお答えください。
  63. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の十五日からの四日間の空白期間が生じたことにつきましていろいろな問題を生じたということの御指摘があったわけでございます。これらの点につきまして、現在の協定下におきまして、このいろんな方針等につきまして検討を要するものがあれば検討するにやぶさかでございませんし、ただ、およそ考えられないような事態が急に出現いたしたためにいろんな問題を生じましたことを大変残念に思うわけでございますけれども、その機会に生じました問題等につきまして、検討をいたすべきことがあれば至急検討いたしたいと思います。
  64. 稲富稜人

    稲富委員長 斎藤実君。
  65. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 外務大臣お尋ねをいたしますが、今回の日ソ漁業交渉で見せたソ連の強硬な態度は、将来のわが国領土問題の対ソ交渉はきわめて困難になったのではないかというふうに改めて浮き彫りされたのではないか。一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明の中の未解決の問題は領土問題だということを両者ともに了解をされたということでございますが、ソ連は近来再び領土問題は解決済みだということを強く打ち出しているわけでございます。  私は、ソ連のそういう態度の変化は一体どこに由来をしているのかということをまず大臣お尋ねをしたいと思います。
  66. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ連政府といたしましては、日ソ国交回復以来、この領土問題につきまして解決済みであるという主張をしておると聞いておるのでございます。  それに対しまして、わが方といたしましては、国交回復の際におきましても領土問題は未解決ということ、これは平和回復の共同宣言におきまして、日本は歯舞、色丹の返還、これを将来平和条約ができました際にはソ連日本に引き渡すという約束をしておる、そのような条項を盛った共同宣言をいたしたわけでありますが、それに先立ちまして、日本といたしましては、領土問題は未解決、平和条約の際に未解決の問題として領土問題を決定するという了解をいたしておるわけであります。  したがいまして、日本といたしましては、領土問題全体が未解決という主張をしておるのに対しまして、ソ連側といたしましては、領土問題は解決済み、そのような主張を従来しておるわけでございます。  七三年の田中・ブレジネフ会談の際に、田中総理が、未解決であるということ、この未解決の問題の中には領土問題が入るということを強く主張いたしたわけで、その点につきまして、議事録によりましても、ブレジネフ書記長は承知をいたしたというふうな経過があります。しかし、それは口頭のことでございまして、文書にしたものとしてはないわけでございます。  したがいまして、ソ連側といたしましては、従来から領土問題は解決済み、このような主張をいたしておるわけでございますが、日本政府は、従来から領土問題は未解決の問題として平和条約におきまして明確に定まるものである、このように主張いたしておるところでございます。
  67. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣から未解決の問題は領土問題だという御答弁がございましたが、こういう公式の場で大臣から、二島なのか、四島なのか、それをさらに明確にしていただきたい。
  68. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国といたしましては、北方は、国後、択捉島を含めましたいわゆる北方四島というものを日本の固有の領土である、このような主張をいたしておるわけでございます。
  69. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 グロムイコ論文、あるいはブレジネフ書記長の党大会の演説、あるいはポリャンスキー駐日大使の発言の中でも、領土問題は解決済みだという態度を一貫してソ連は持ち続けているわけでございますが、田中・ブレジネフ共同声明で明確になったと言われるものに反するのではないかと私は思うわけですね。政府はこのことについて、ソ連に対して何らかの意思表示をすべきではないかというふうに私は考えるわけでございます。領土問題は解決済みだというソ連の態度は、明らかに一つの不信行為ではないかというように私は思います。これに対して政府は、正式の外交ルートをもってソ連政府に明確に申し入れをするべきではないかというふうに私は考えるわけですが、いかがですか。
  70. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本政府といたしまして、領土問題が未解決の問題である、そして平和条約によりまして決すべき問題であるということは機会あるごとに申しております。機会あるごとにと申しますのは、たとえば漁業交渉の際におきましてもそのようなやりとりのあったことは事実でございますし、私ども、ポリャンスキー大使と会いました際に、先方領土問題は解決済みというような表現をいたしましたとき、直ちにそれは日本政府の見解ではない、領土問題は未解決の問題であるということをそのつど必ず申しておるところでございます。したがいまして、外務大臣間の定期閣僚会議等におきましても、この問題については当然のことながら政府の主張を貫いてまいりたい、このように考えております。
  71. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の漁業交渉でわかるように、漁業問題と北方領土はいつもペアとなっておりまして、日ソ関係にいろいろ影響を与えているわけでございます。こういう意味から、北方領土問題は、日ソ友好関係を維持する上からも早急の解決が必要だろうと私は思います。私は、政府がはっきりとした展望のもとに対ソ外交というものを展開すべきではないか、領土問題がすっきりと解決をしない限り、国民の心の底には常に釈然としないもの、あるいはわだかまりがつきまとっておりまして、真の友好信頼関係の発展はむずかしいだろうというふうに思いますが、大臣いかがですか、今後の対ソ外交の基本的な領土問題に対する姿勢について。
  72. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 北方領土問題は、まさに国民の悲願でございます。したがいまして、この問題はやはり国民バックのもとに対ソ交渉いたすべきもの、このように考えておるところでございます。  この北方領土の返還をいかにして実現するかという問題につきまして、各党間でいろいろな差がございますが、これらにつきましては、やはり国民のコンセンサスというようなものが形成されることが私は望ましいことと思います。これからそのような国民的な御理解、また国民の世論というものをバックとして交渉いたすべきもの、このように考えておるところでございますが、私自身といたしまして、この問題につきましては、外相会談の際に全力を挙げて何とかこの進展が見られるように努力をいたしたいと思います。  二百海里時代になりまして、今回、領土問題が大変注目を浴びることは当然のことでございます。領土というものが二百海里というこの漁業水域をしょうことになったわけでございますから、したがいまして、こういった二百海里時代を迎えたことによりまして領土問題の解決が焦眉の急になったということも事実でございますので、真剣に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  73. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣の気持ちは私もわからないわけではありませんし、また国内世論の盛り上がりということも必要でしょうが、私はこの北方領土に対する双方の主張、見解というものはもう出尽くしているだろうと思います。現在これ以上の何らかの新しい根拠はもう出ないのではないかと思います。したがって、政府は、これからもなお事態を有利に導くような新しい根拠を見出せるという期待感を持っておられるのかどうか、いかがですか。
  74. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 もう戦後三十年以上たったわけでございますから、この問題を何とか解決を図るべきである、もう三十年たちましたから、両者の主張なり根拠なり言い分なりというものは明らかにされているところでございます。したがいまして、この日ソの平和条約をいかに実現することができるかということは、やはり日ソ間がこれから友好関係を増していかなければならない、こういった関係になるかどうかというところにかかっておるもの、私はこのように思いまして、日ソ間の友好善隣関係というものを増すことによって、平和条約を結ぼう、こういう機運が醸成されるものと思うのでございます。
  75. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、これ以上、理論あるいは国論のバックなりあるいは一方的な日本側の主張だけではもはや交渉をする方途というものは見出せぬのではないか、したがって法理論争ではもう片がつかないだろう、残された方策は政治交渉以外にないのではないか、したがって大局的見地からソ連に対して政治交渉をするというこちらの態度といいますか、それを明確にしていただきたいと思います。
  76. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 二百海里の水域問題が関係してまいりましたので、この北方領土の問題、これを日ソの間で何らか政治的に解決をすべし、このような御説と思います。  この点につきましては、政府といたしましても真剣に検討いたさなければならないと思う次第でございます。
  77. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 日ソの暫定漁業交渉が、きょうの新聞報道では、合意に達したという報道がされておりますが、この暫定協定の国会承認は、会期の関係もありまして、いつごろ提出できるのか、あるいはもし会期に間に合わなかった場合には延長をするのかどうか、あるいは事後承認をするのかどうか、この辺についての見通しはいかがですか。
  78. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 交渉が最終段階におきましてほぼ合意に達しまして、これからの作業といたしましては、ロシア文、日本文の双方の突き合わせをいたすということが恐らくきょう行われているだろうと思います。これが完了いたしまして、当方といたしましては法制局の審議というものが必要でございまして、これも早急に行われるだろう。その上でイニシアルをするということになりまして、そして閣議等の手続を経て調印という運びになろうと思います。しかし、その調印の前に恐らく漁獲量交渉というものが入ってまいりますので、その漁獲量交渉が何日で済むのか、これはもうたてまえの問題でなくてもっぱら数量の問題でございますから、歩み寄りということが可能なことであろうと思いますが、この漁獲量交渉があるということでございます。  したがいまして、きょう鈴木農林大臣の出張期間はさらに一週間延長をされたところでございます。しかし、一週間内には鈴木農林大臣は帰国ができるようなことを私どもとしては期待をいたしておりますし、したがいまして明確な時期というものはまだはっきり申し上げられませんが、政府といたしましては、もうこれは一刻も急ぎまして国会への御提案をして、また御提案する前におきましても、内容の御理解を賜るように各党には必要な資料を事前にも差し上げまして内容の御理解をしていただきたい、このように準備万端、提案前にもいたしたい、こう考えておるところでございます。
  79. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の暫定交渉では、第一条では、日本側が、北方四島を囲い込んだソ連の具体的な二百海里線引きを受け入れた。それから第八条では、この線引きも漁業問題に限定するという表現がなくなってしまった。まあ新聞報道ですから……。これはもう第三者から見まして、ソ連側立場に近い表現になってしまったというふうに見るのが妥当だろうと私は思います。当初わが国は魚と領土の切り離しということで交渉された。この協定文を見ますと、日本立場も害さない、あるいはソ連立場も害さないという両方相打ちというかっこうなんで、残ったものは何が残ったかというと、第一条のソ連側の具体的な四島を含めた線引きを受け入れただけだ。したがって、あくまでもこれは漁業問題だというふうに先ほど答弁がありましたけれども、これは第三者から見て、あるいは国民感情として、事実上の領土放棄ではないかというふうに私どもは見ているわけでございまして、この暫定協定は、ソ連日本がくさびを打ち込まれたという評価をする向きもございまして、この暫定協定について、領土問題についても何ら一歩も前進するものではないし、この協定について、大臣、どういうふうに評価をされているのか、伺いたい。
  80. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ソ連政府漁業専管水域二百海里の実施に伴いまして、この際に日本といたしまして領土問題に何歩か前進を図る、そのようなことができれば、それはまた日本としては大変結構なことには違いないわけでございますけれども先方立場からすれば、それはまた承認しがたいことであったわけでございます。したがいまして、今回は領土問題を絡ませますと、これは解決が不可能に近い、こういうことが明らかであります。したがいまして、領土問題と切り離して純粋に漁業問題に限って解決を図ろう、こういうことで急速に詰めが行われたわけでございます。したがいまして、今回の交渉日本側立場は前進はできなかったとおっしゃられれば、そのとおりであろうと思います。そのかわり、絶対に後退はいたしておらない。現状をそのまま、両国政府立場を害さない、このような表現で最終的に決着を見た、こういうことでございます。  したがいまして、領土問題といたしましては、これはもう外務省といたしまして私も責任大臣といたしまして万全の準備をいたしまして、先方と定期閣僚会議を開くこの際に、日本としてあらゆる問題とともに領土問題を主張して何らかの前進をいたしたい、このように考えるところでございます。
  81. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、この暫定協定によりまして、ソビエトが四島を含めた線引きをされた、これはわれわれ日本が認めたわけでございますが、これから始まるソ日協定あるいは長期な協定交渉に、ソ連は暫定協定の合意というものをこれからあくまでも既定の事実として、四島はもう解決済みだということで押してくるのではないか、こういうふうに私どもは心配をするわけです。  それで大臣お尋ねをしますが、暫定協定の第八条ですね、新聞報道ですが、「相互関係の諸問題」と出ておりますね。「その他」の、「その他」を削除した。「相互関係の諸問題」ということは、日本としてはどういうふうに見ていらっしゃるのですか。
  82. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本といたしまして、両国関係におきます諸問題、この最大の問題は領土の問題、また平和条約を締結するというような問題、これらの問題はまさに一番大きな問題であるというふうに考えております。しかし、明確に、この字句によりまして日本領土問題の主張が何歩か前進したというわけにはまいらないと思います。これは現在の問題をそのままとして、問題を影響させないで残したというふうに読むべきであろうと思います。
  83. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣から、相互間の諸問題、日本側としては領土問題だ。しかしソ連は、わが国領海内十二海里のいままでの実績を踏まえて、日本領海内での操業も、この相互間の諸問題ということで操業の要求をしてくるのではないかというふうに私は考えるし、この相互間の諸問題ということはソ連のいままでの実績というものも含まれているのではないかというふうに考えるわけですが、御見解いかがですか。
  84. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 十二海里に拡大された場合の日本領海内におきます操業につきましては、ソ連政府は非常に関心を持っておったことは事実でございますし、特にイワシにつきましては非常に関心を持って、そして、イワシは十二海里の外ではほとんどとれないのではないかというふうな心配を先方がしていることは事実で、たびたび議論が重ねられたわけでございます。しかし、鈴木大臣といたしましては、領海法を御審議いただきました過程で、領海法をなぜこのように短期間に御審議をいただくことができたかということは、沿岸漁民の保護のためでございますから、それをまた認めるわけにはいかないという立場を貫き通しておられるわけでございまして、その点につきましては、先方は二条にもともと第二項というものを書いておったわけでございますが、その条文は落とすということで最終的に決着を見ましたので、日本側としてそのような心配はなくなったというふうに理解をいたしております。
  85. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 暫定協定が適用される水域はどこからどこまでなのか、明確にしていただきたいと思います。  なお、ソ連の二百海里以外にも漁業規制水域が設定されるのではないかというふうに考えるわけです。従来のA区域あるいはB区域はどうなるのか、お答えいただきたい。
  86. 森実孝郎

    森実説明員 まずA区域、B区域の問題についてお話し申し上げます。  サケ・マスの操業区域の問題につきましては、従来、日ソ漁業条約で取り決めが行われておった。いわばA区域、B区域というのは、正確に申し上げますと、たとえばA区域の一部は二百海里と照合してみるとその中に含まれる、B区域はごく一部が入るかどうかというふうに照合関係はございますが、全く別の制度と理解すべきものと思っております。  そこで、ソ連側はこの四月二十九日に日ソ漁業条約の廃棄を通告してきておりますが、一年間は有効でございます。その意味におきまして、少なくともソ連の二百海里外の操業の問題については、日ソ漁業条約によりことしは規制されるということになるわけでございます。ただ、二百海里内の問題については、ソ連はやはりソ連の二百海里として、二百海里の法制の中で規制していくという姿勢は崩しておりませんので、その意味で取り扱いはいま過渡期であり、また次の段階においては変わってくる、このように御理解賜る必要があると思います。
  87. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これも新聞報道ですが、十八日の外務委員会で、政府は、わが国の十二海里領海内でのソ連漁船操業について、ソ連は最終的に断念したのかどうか、先方のことだからわからないというふうに述べたと言われておりますが、私はこれはきわめて遺憾な発言だろうと思います。領海は沿岸国の主権下に置かれる水域でございまして、外国の領海内での漁業を要求するソ連は、沿岸国の主権を無視した暴論であり、論議の余地はないのではないか。外務省のそのような態度はきわめて歯切れの悪い、確信のない態度だというふうに言わざるを得ません。もし、ソ連日本領海内での操業を要求したならば、それに応ずるようなこともあり得るというようなあいまいな態度があってはならないと私は思うし、私はそういう要求に対して断固拒否すべきであり、論議の余地はないのではないかというふうに考えますが、いかがですか。
  88. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 一昨日だったと思いますが、土井たか子先生の質問が、いきなり、十二海里内の操業先方は断念したか、こういう御質問でありましたので、先方のことでございますから、断念ということは私も自信がないわけでございます。しかし、日本側といたしましては、これを認める意思は毛頭ないのでございまして、その点は先方もよく理解をしていると、その後はそのように申したのでございますけれども、まだ全体の条文が確定をいたしておらない段階での御質問でありましたので、そのような不明確なことを申し上げたのでございますが、日本側といたしまして、そのような十二海里内の操業を認める意思は全くないということ、また先方もその点はよく理解をしているということを申し述べたいと思います。
  89. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣、私が心配するのは、ソ連が相互主義という理由で、わが方の二百海里漁業水域で、日本側ソ連二百海里水域での水揚げ量と同じように、同等の漁獲量を要求してくるのではないかというふうに心配をするわけでございますが、この場合、政府の対応を十分考慮しておく必要があると思いますが、政府の見解を伺いたいと思います。
  90. 森実孝郎

    森実説明員 お答え申し上げます。  ソ連交渉過程で等量原則ということをほのめかしたという経過は事実としてございます。しかし、御案内のように、わが国の二百海里の中でのソ連漁獲実績は四十万トン前後、これに対してわが国ソ連の二百海里内と見られるものでの漁獲実績は百七十万トン前後ございまして、とうていこれは許容できる話ではないと思っております。事実、海洋法会議の単一草案の思想も相互利益ということは否定しておりませんが、均衡というふうには規定しておりませんし、ソ連もまたECに対しては等量原則を拒否して交渉した経過もございます。  私どもとしては、量の均衡ということは少なくとも現時点では認めるべきではないし、今回、本年度の交渉においてはこれは強く拒否して実績の確保に努めたいと思っております。
  91. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 暫定協定の第二条で日本の二百海里線引きをしているわけでございますが、日本が二百海里線引きをしたわけですね。この二百海里線引きをしたその基点は、一体どこを基点にして二百海里を線引きをしたのか、その基点はどこですか。
  92. 森実孝郎

    森実説明員 まず、暫定取り決めは、いわば日ソの暫定取り決めでございまして、わが国の暫定措置法の適用水域でのソ連漁獲活動の問題は、六月以降に開かるべきソ日の漁業交渉、その協定というふうに御理解を賜りたいと思っております。  なお、二百海里の基点でございますが、これは暫定措置法の三条で、政令で一定の水域は除外することになっておりますが、基本的にはすべて領海と同じ基線、低潮線を基線といたしまして設定いたしまして、ただ、わが国ソ連との法制の違いから、わが国の場合は領海を除いたいわゆる百八十八海里の部分ということで考えているわけでございます。
  93. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私の質問しているのは、北海道を基点にして二百海里をやったのか、あるいは歯舞、色丹、国後、択捉からやったのか、その辺を聞いているわけです。
  94. 森実孝郎

    森実説明員 先ほど申し上げましたように、暫定措置法につきましては七月一日の施行を目標にいたしまして、六月中に、できれば六月の比較的早い時期に政省令を出したいと思っております。したがって、適用水域はその際最終的に決めるということで政府部内で考えておるところでございますが、法案審議の際にすでに政令見込み事項として御提出申し上げましたように、除外する水域としては日本海の西半分、東シナ海、それから太平洋の南のごく一部を考えているわけでございまして、それ以外のわが国領土周辺にはわが国領海が存在するし、またわが国の二百海里水域が設定されるのが法のたてまえであると思っております。
  95. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 具体的にどこを基点にしたかということを私は聞いているわけですから、答弁してください。
  96. 森実孝郎

    森実説明員 北方四島の問題につきましては、私どもわが国の固有の領土考えているわけでございまして、その外側にはたてまえとして領海もあり、また二百海里の経済水域もあるという考え方に立っているわけでございまして、政令として特に除外することがない限り含まれるというふうに御理解を賜る必要があると思います。
  97. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 北方四島を基点にして日本の二百海里を設定したというふうに理解していいのですか。
  98. 森実孝郎

    森実説明員 先ほど申し上げましたように、政令によって適用水域が確定するわけでございますから、現下の時点において、私どもとしては北方四島を含めた水域について二百海里が設定されるというふうに考えて作業を進めている、このように御理解をいただきたいと思います。
  99. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、今回の漁業交渉で、外務省と農林省の間に対立があったのではないかというふうに考えるわけでございますが、なわ張り争いあるいは本質的な問題で両者の間に何らかの対立やわだかまりがあったのではないか。鈴木農相がイシコフ漁業相との間に今日まで行われてきた交渉内容は、もはや漁業問題ではなくて——もちろん漁業問題も主力でございましたが、むしろ外交交渉に属する問題ではなかったか。外務大臣がロンドン会議に出席をしたわけですが、帰りにソ連に立ち寄って共同で交渉に当たるべきではないかというふうに私は思っておりましたが、それも帰国してしまったわけですけれども、これは外務省と農林省との間にきちっとした連帯なり、あるいは共同で当たるという姿勢が欠けていたのではないかというふうに考えるわけでございますが、何となくぎくしゃくした感じを私ども受けるわけでございますが、この点について、大臣いかがでございますか。
  100. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私ども、外部の方からそのようなことを指摘されますと、全く心外に感じます。両省の間は本当に緊密に、お互いにもう全く一つになってこの処理に当たったわけでございますし、外務省の欧亜局長も、鈴木大臣の御希望によりまして同行してモスクワに行っております。  ただ、私がモスクワに参りますことによりましてお役に立てれば、それは飛んでいきたいということを先ほども申し上げたわけでございます。しかし、現在、領土問題を絡ませては問題の解決を複雑にする、こういうことでありますので、私は東京にとどまったわけでございますから、その点は、農林省と外務省との関係につきましては、全く御心配御無用でございます。
  101. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いままでの論議を通じまして、北方領土問題についてはきわめて厳しい状態がこれからも続くだろうと思うわけでございますが、この暫定協定を通してあくまでも北方領土を含めた対ソ交渉というものを積極的にひとつ展開をして、わが国主権というものをどこまでも守り抜くという強い態度で外交交渉をされるように改めて意見を申し上げまして、私の質問を終わります。
  102. 稲富稜人

  103. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣にお伺いしたいと思います。  私は、きょう実は沖繩から帰ったのですが、昨夜六時半から県民大会が開かれて、全国民に対する決議を宣言したのですが、この宣言の中身は、二重の暴挙を重ねて十八日に参議院を通過した公用地暫定使用法の五年延長、県民は土地強奪法と言っておりますが、これが無効であるということを高らかに宣言したわけなのですが、この問題を討議する中で、参議院で共産党の内藤議員の質問で、いわゆる期限の切れた、十五日零時から期限が切れておる。すなわち、その暫定使用そのものが無効であるか有効であるかは別として、いわゆる使用権を失ったということは認められた。使用権を失ったとすれば、第四条に基づく——第四条は原状回復のことを言っており、柱は三つです。一つは、期限が切れたら地主にいわゆる返還しなければならぬという問題、原状回復をして返還すること、原状回復のいとまがない場合には損害賠償をする。  そこで、きのう大会でも異口同音に言われたことは、政府は法を守れということ。国民も法を守ってやってきた。ところで、法を守るのであれば、いま期限が切れて、第二条の五カ年は切れた、第四条で返還しなければいかぬと書かれている。これに対して外務省は、法を守る立場から、何か返還に対する交渉アメリカにやったのかどうか、大臣にちょっとお伺いしたいんですよ。どうですか。
  104. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのような交渉はいたしておりません。
  105. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、法に打ち込まれた返還の問題については、この法は守らぬでもいいという見地で交渉しなかったのですか。
  106. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 おっしゃいますことは、十五日の午前零時から四日間の期間におきましての法律的な関係からおっしゃっていると思います。  私どもといたしましては、この暫定使用法の五カ年延長ということが衆議院を通過しておるという段階で、参議院でその成立がおくれまして、その空白期間を生じた、こういうことでございまして、少なくとも衆議院では延長は通過をしておる、こういう状態のもとに、私どもといたしましては参議院の通過というものを待ちに待っておったわけでございます。それがおくれまして四日間の空白を生じた、そういう背景のもとに考えますと、この四日間というものは、法律が成立をいたしますと、これは沖繩復帰の日から十年間というふうになるわけでございまして、その四日というものは法律の成立によって不法な法律的根拠のないという事態、また四条によりまして遅滞なく返還をしろという規定、これらのものが、四日間はなるほどそうでありましたが、法律の成立に伴いまして、別の法体制になった、このように当然理解をされるわけでございますので、私どもといたしましても、そのような状況のもとに情勢判断をいたしまして、アメリカ政府に対しましてそのような交渉はいたさなかった、こういう次第でございます。
  107. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの御答弁で非常に重要な点が出ているんですよ。衆議院で強行採決した、これは確実なのです。ところが、十五日以降は、参議院で討議しようがしまいが、これはもう法の、いわゆる使用権がなくなりましたと、はっきり法制局長官が言っているんですよ。これは内閣の統一見解で言っていたんだ。それで返還しなくちゃいかぬ。それは死んでしまっているのだ。死んだ子を生き返らすということはできない、法のたてまえから言って。この見解は、そうしたら、いやこれは寝ている子であるとかふざけたことを言って、大臣知っておりましょうが。衆議院が通過したから参議院で審議中ということでは、では参議院は一体何だ。参議院軽視にも関係することです。  そこで、時間が非常に制限されておるので、きわめて端的に申し上げますが、一つは、沖繩県民は団結と統一を、徹底的に統一戦線を結成していけば自分たちの権利は自分たちで守れるという自信を持ったのです。一つは、安保条約と、日本国民主権、さらに恒久平和、基本的人権、民主主義、自治、この五つの原則をうたっている憲法、これとの矛盾が実に具体的に、露骨に、鋭くあらわれてきたということを全県民は知りました。  そこで、質問ですが、自衛隊の場合には、少々陰の自衛隊と言われているだけに、拒まなかった。米軍基地は断固として入れなかった。理由は何か。なるほど日本の国内法は期限切れだとかなんとか言うかもしれないが、われわれアメリカがここにいるのは条約に基づいているのであって、関係ない、これが米軍の解釈です。そうなりますと、安保条約は、当然、国内法であろうが、国内法は憲法も含めて、問題にしない。だから、安保条約自体を向こうは居座る根拠にしている。だから、安保条約はそういった意味では超憲法的な存在であるのかという疑問が出てきます。現に私、第四ゲートに行きまして見ました。断固として入れない。理由は何か、理由はいま申し上げた安保条約、国内法は問題にならぬ。そして、地主を排除するために、機動隊がまたアメリカの先兵としてやる。これもまあ一応は抜きましょう。  いま問題は、安保条約、これが超憲法的な存在であるのかどうか。そういうふうに大臣考えているのか。すなわち、アメリカの言っていることを正当だと思うのか、正当でなければ、当然、地主は返還されておる時点であるから入るべきだというふうに考えておるのか、どっちか簡潔に答えてください。
  108. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 安保条約は、正当な手続を経て締結された日米間の国際約束でございます。そういう条約でございまして、これは憲法の九十八条の第二項に書いてありますように、「日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」ということでございます。そういうふうにして締結された安保条約は、憲法の定めるところに従って、日本国としては、国民としても遵守しなければならぬわけでございます。  したがいまして、国内法的に十五日からの四日間にいろいろな問題があったことは事実でございますが、アメリカとの関係におきましては、日本は引き続き基地を提供する義務があったわけでございます。また、その反映として米軍は基地を管理する権利を依然として持っておったわけでございまして、その意味で米側がその管理権を持ち続けたことについては、憲法上も何ら問題がなかったと考えております。
  109. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がないですから、局長、私が言いますから、局長は立たぬでください。  私の申し上げたのは、安保条約があって安保条約に基づいて米軍は駐留しているのであって、日本の憲法とか国内法とかそんなのは日本政府のものであってわれわれは構わぬ、だから、おまえたち入ることはいかぬというふうな米軍の態度、さらに安保条約の理解の仕方、これは正しいと思うのか、いや、やはり地主は入れて十分自分の土地を見たりさわったりするぐらいはさせてもいいじゃないかと思うのか、安保条約は超憲法的なものであるのか。いま憲法に基づいて安保条約をつくったと言うのだが、そうでないでしょう。まあそれは後にしましょう。いずれにしろ聞きたいのはそこなんです。いま県民は非常に矛盾にぶつかっているのです。われわれ国会で法律をつくる。ところが、法律をつくっても期限が切れる、返還しなくちゃいかぬということであるので、入れると思ったら入れぬ、そこにぶつかったわけです。地主さんですから小学校ぐらいしか出ていないのです。だから、私たちに法律を守れと言う、なぜ国は法律を守らぬのかなということを大会で訴えてもう本当の拍手なんです。とつとつとした農民の声でしょう。ですから、いまそういうことを聞いているのです。安保条約、これが国内法の上に立っているのか、やはり国内法もアメリカは守らぬといかぬのか、どっちかということを外務大臣に聞いているのです。どうですか。アメリカが言っているのだ。
  110. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今月の十五日午前零時から四日間のことにつきまして、いま御指摘のあったようなむずかしい問題が起こったわけでございます。これは通常ではそういったような事態を起こしてはならないような事態が起こってしまったわけでございます。したがいまして、これを法律的にぎりぎり申しますと、米軍は、安保条約並びに地位協定という国際約束、日本といたしましても憲法の手続を経た条約に基づいて権限がある、こういうことになるわけでありますけれども、しかし多年、沖繩県民が米軍の基地との長い間の関係があり、また基地が非常に多いために生活上いろいろな圧迫を受けておるというような事態があるわけでございますから、そのように法律的にどうのこうの、どっちが優先するとかいうことでなしに、やはりこのような事態が起こりましたときに、そこでいろいろな不測の事態が起こってはならない、なるべく穏便なうちに四日間が経過をすることをこいねがった次第でございまして、法律的にぎりぎり申し上げますと、それは米軍に管理権があるということは事実であります。また、土地を、国内法といたしましては遅滞なく返還をしなければならない、原状回復をして返還をしろ、こういうような規定があることも事実である。国内法は国内法としてそれは有効である。しかし、米軍がそのように、権限から申しますと、米軍の権限というものは、これは日本政府が調達の責任を負っている、提供の責任を負っているわけでありますから、米軍自体としては直接この土地所有者に対する関係はないのだ、これはまさしく法律上は確かだろうと思います。しかし、それだからと言って、土地所有者が土地を見たい、さわりたい、こういうようなお気持ちに対しまして、これを穏便な姿において、なるべく現地との間を円満に対処してもらいたいということがわれわれの気持ちだったわけで、その点はどっちが正しいんだというようなことは、御質問でありますれば、それは米軍としても権限を持っていると言わざるを得ないのであります。しかし、そのようなことでなしに、なるべく円満に処理をされたいということが私どもの偽らざる気持ちでございますので、せっかくの御質問でございますけれども、そのような気持ちを申し述べさしていただきたいのでございます。
  111. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 はからずもやはり米軍のとった行動が正しいといわざるを得ないところまで追い込まれたということですが、次に、これと関連しますが、五月十八日の参議院内閣委員会、これで真田内閣法制局長官、こう言っています。「アメリカ軍施設、区域を提供することで憲法で規定された人権がある程度制約されてもやむを得ない」、はっきりこう答弁しています。大臣もそうお考えですか。
  112. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この真田法制局長官が申された人権と申しますのは、やはり基本的な人権のことであろうと思います。基本的な人権というものは、それは公共の福祉のために制限を受けるというものでございますから、したがいまして、それじゃ公共の福祉とは何ぞや、こういうことになるわけでありまして、それは基本的人権というものが、これは何でもやってもいい人権ではないだろうということはもう一般に言われていることで、米軍がそれなるがゆえに人権を無視しているとか、そういうことではないのではないか。いわゆるいま問題にされております人権、大事な人権でございますが、これは思想的な人権とか信仰の自由とかいろんな基本的な人権がありますけれども、真田長官のおっしゃっている人権というのは、法律的な意味での人間としてのいろんな権利、それを人権と言われている、このように思っておりまして、その真田さんの答弁が人権無視だ、こういうことではないと思うのでございます。
  113. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げているのは、これは具体的なんですよ。たとえば、言論の自由とか財産権の問題とか、そういった具体的な問題というふうなこともありますが、特に具体的な「アメリカ軍施設、区域を提供することで憲法で規定された人権がある程度制約されてもやむを得ない」、これは十八日の内閣委員会での答弁で、みんなこれに驚いているんですよ。こういった答弁初めてなんですよ。施設、区域を提供するというのは、国民の財産権に関係するのですよ。そういった施設、区域の提供は公共の用だから、公共の用に提供する場合には、基本的人権、しかも憲法で規定された、これもある程度制限しなくちゃいかぬというのはやむを得ないという見地に立つと、これは安保条約がどんなに反民族的、反国民的なものであるかということ、もうはっきりあらわれてくるんです。これを沖繩県民、今度知ったんです。はからずも法制局長官言ったんだ。アメリカに軍事施設、区域を提供する、これは憲法で規定されている人権、いろんな人権があります、これがある程度制約されてもやむを得ない、はっきり言っている。それをやむを得ないと外務大臣、再びですが、考えられるのかどうか、どうですか。
  114. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 真田法制局長官のおっしゃられたことは、基本的人権、たとえば思想の自由であるとか信仰の自由であるとか、そういうものまで制限をされてやむを得ないんだ、こういうことでおっしゃっている意味じゃなくて、それは主として財産権のことをおっしゃっているのであって、その答弁をもとにして、あらゆる人権を制限していいんだ、やむを得ないんだ、こういう趣旨ではないわけで、法律家の答弁でございますから、したがいまして憲法で言います所有権、土地所有権というものは、それは土地の上に自分で何しようがいい権利でございます。しかし、公共用のためには土地の所有権は当然制限を受ける。道路をつくる、学校をつくるという場合に、当然、土地所有者というものに対して、その所有者がどうしても応じない場合には収用という手続があるわけでありますから、そういう意味で真田長官はおっしゃっているのであって、基本的人権を何でも制限をして構わないのだ、こういう趣旨ではないので、それはその言葉を引用されて、余りそれを不当に広げて思想の自由まで制限していいのだというような、そういうふうなことにおとりいただかないようにお願いを申し上げる次第でございます。
  115. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は別に思想の自由というふうなことを——ちょっと言葉は出ましたが、実際、財産権です。法のもとでの平等と言うからには——沖繩県民の財産権を奪っていいということになるのですよ。奪う、しかも賛成していない地主が多いのですからね。絶対にやらぬとがんばっている。だから、強奪法と言うのだ。あれは大臣は知らぬかもしれぬが、アメリカが銃剣を突きつけて取り上げたやつなんですよ、沖繩の基地の大半は。いま、どこどこと私言う時間はないですが、大半はそれなんです。それを突きつけて取り上げてから布令、布告を出すのですよ。布令、布告を出してから取り上げたのじゃないですよ、アメリカは基地構築のために忙しいものだから。それで日本に返ってきた。返還の時点、また公用地暫定使用法などもつくった。したがって、それにもういやだ、所有権われわれ守らぬといかぬ、財産権守らぬといかぬ。憲法はなかったが、返還の時点で憲法施行された。この憲法で保障された私有財産、いわゆる財産権、これはやっぱり保障してくれるだろうと思ったが、保障してくれないで、公共の用地などと言って奪う。強奪法だと言うのはそこから来るのですがね。この区域、施設を提供することで、憲法に規定された人権がある程度制約をされてもやむを得ない、まさにそういった財産権の問題です。  次に、これも言っているのですよ。これは三原防衛庁長官ですが、「防衛の任務は寸分もゆるがせにできない。法を守らねばならぬということだが……」中間読まぬでおきましょう。だが、「防衛の任務をいっさい放棄することはしない。」だから、この法律が通れば有効になるのだ。防衛が憲法に規定された財産権を初めとして法のもとでの平等、沖繩県民もやっぱり平等でなくてはいかぬ、なぜ県民がこのように差別されて苦しまなければならぬのかという問題もあります。ところが、防衛が一番優先するということを防衛庁長官も言っておる。これは防衛庁長官だから、また真田長官を弁護されるように弁護されるかもしらぬ、同じ閣僚ですから。  いずれにせよ、外務大臣としてはそういった考え方に立っておるのかどうか、ちょっと一言言ってください。
  116. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この米軍基地の問題にいたしましても、これは日本としての防衛上の責任もあります。また、アメリカといたしましても安保条約のもとに責任を果たしているわけでございます。先ほど米軍が土地所有者に対しまして立ち入りを拒んだというようなお話がありましたが、やはり基地に、それぞれによりまして、伊江島等におきましては立ち入りを認めておる。(瀬長委員「認められなかったのだよ、どうにもならなかったのですよ」と呼ぶ)しかし、現実において立ち入りが実現しておりますし、そのようにやはり基地によりまして、(瀬長委員「私、伊江島に行ったのですよ」と呼ぶ)そうですか。そのように——やはりああいう嘉手納基地のような場合には飛行機の発着が現に行われておりますので、先方といたしましても余りな自由行動というものも認め得なかったのではなかろうか。  これは私どもも想像で申し上げているのでございますが、そのようなことで、ただこれは法律的なことから申し上げまして、財産権の問題、これは基本的人権の大事なものでございますけれども、公共の用途のためにはやはり財産権は制限を受ける。そのために収用の手続というものがあるわけでございますから、そういう意味で土地所有者の権利が公共目的のためには制約を受ける。結局は、その公共目的というものが本当に合理的なものであるかどうか、こういう判断であろうと思います。その点につきましては、先ほど防衛庁長官のお話がございましたように、国防というものはやはり公共目的の最たるものであるというふうにこれはどなたもお考えではないかというふうに思うのでございます。
  117. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 基本的人権の問題については、昭和五十年六月十八日の衆議院内閣委員会で、三木総理が、少女の暴行事件があってそれを私が質問したんですが、「人権に優先する条約はありません。やはり人権というものを大事にし、尊重しなければならぬことは当然でございます。」と、これははっきり総理の口から言われているんです。  米軍、安保条約の問題になりますと、さらに米軍の駐留がどうもおかしいかっこうになると、もう次第次第にタカ派になって、何か財産権が——われわれはそれを公共と認めないんです。米軍の施設、区域として提供するためには財産権を制限してもいいというふうな解釈にいま大臣も立っている。いずれにしても、その問題が具体的に沖繩のこういった問題、いわゆる公用地暫定使用法の延長問題で吹き出してきておるので、これは時間がもうないとか言ってきておりますのでやめますが、もう一言、なぜそのようにまで沖繩基地を重要視しているか。  戦車道問題できのう私は行ったんですが、これはちょっと大臣に写真をお見せしますが、これは全部キャンプ・シュワブとキャンプ・ハンセンを結ぶ戦車道路で、戦車が通る道でなしに訓練場なんです。これがいま通っている有料道路、海洋博でつくったもの。この中には、こういった戦車道路をこうつくって、ここへ行く道ができ上がっている。これは現に、日本道路株式会社というのがありますね、それと米軍が一緒になってつくっている。ここが松田ダム、まだ土石がついている。これは現にもうどんどん進めておるんですよ。これが宜野座のダムを汚している砂利なんですよ。これが出たらもう飲めない。  そこで、いま大臣に示した写真、これはきのう行って写したものなんです。戦車道路の問題については山崎局長も、日米合同委員会にかけて、公共の福祉の問題あるいは水源地の問題、こういったものについては厳重に抗議する。ブレディー大佐、この参謀長の暴言、これについても私は取り消し要求をしたのだが、大臣は取り消し要求をするとは言わなかった。  いずれにしても、この戦車の道は単なる戦車道路ではないのですよ。いわゆる朝鮮の山岳地帯における一大巨大な戦車の演習場、これをつくることにある。旧道路もあります。新道路もあります。そういった方向で、もう水源地どころの騒ぎではありません。そういったことを調査の上、日米合同委員会にかけるとか、この前山崎局長は言いましたが、あなた方の答弁はいいかげんな答弁で、調査に行かぬでしょう。だれが行ったのですか。防衛施設庁と相談の上とか言っているが、防衛施設庁はそれを知らない。県民の飲料水ですよ。しかも、自然の大木をどんどん破壊して進めていく。これをいいかげんに答弁をして、日米合同委員会で何とかアメリカにそういうことをしないように言いますとか言っているが、現にどんどんブルドーザーを入れてやっているというふうなこの事態、これは大臣アメリカに本当にそういうことを言って、県民の飲み水、さらに復元補償の問題、もう汚しておりますよ。汚しておれば汚さぬように、県民が安心して水が飲める、自然が破壊されないように、また一大巨大な戦車訓練場になって、沖繩基地が危険なあの朝鮮への侵略の拠点にならぬようにするために努力できるのかどうか。あなた方が言うのは、あの戦車の道をシュワブからハンセンへの連絡の道だと言っている。何が連絡の道か、全山すべて戦車道路なんです。  そういった点で、私は、日米合同委員会にかけたのかかけぬのか、かけたとすればどのくらいの認識、理解に基づいてかけたのか。外務大臣あるいはアメリカ局長も、実情を知らなければ要求もできないでしょう、実感も持てないでしょう。この点、日米合同委員会で何かやるとおっしゃったのだが、外務大臣、外務省を通じて、こういった戦車道路についての住民の損害、まさに公共の安全のためにはどのような措置をとったのか、答弁してください。
  118. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 アメリカ局長から詳細お答えいたしますけれども、日米合同委員会の際に先方に厳重に注意を申して、特に飲料水を汚染するとかいうような問題は、これは公共の福祉に反することでございますから、そのようなことがないように、またそのようなおそれのある事態を復旧をするように、これは厳重に申しておるところでございますので、アメリカ局長からお聞きいただきたいと思います。
  119. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 この戦車道の問題に関しましては、四月二十一日の日米合同委員会におきまして、今回の米海兵隊による戦車道の建設によって、水源地の汚染のおそれや環境破壊のおそれが生じているということを指摘しまして、この種の公共の安全に影響のある問題に関して、事前に日本側関係当局と連絡することなく工事を行ったということについては、遺憾の意を表明した次第でございます。  さらに、防衛施設庁からすでに米側に対して申し入れてある土砂の除去や一部ルートの変更の措置につきましては、早急に完了するように申し入れました。これに対しましてアメリカ側は、防衛施設庁から申し入れのあった措置についてはすでに着手しており、その早期完了に努力するということを約束した次第でございます。  また、あわせてこの問題に関しては、日本政府としてはさらに実態調査を行う必要がある旨を指摘いたしまして、米側の協力を求めたのに対しまして、米側は十分な協力を約束をいたしました。  また、今後の問題として、この問題のように公共の安全に直接影響のある工事の実施に当たっては、事前に日本側関係当局と十分調整するよう申し入れまして、アメリカ側も了解した次第でございます。  以上のような申し入れをし、話し合っておるわけでございますが、他方、現地におきましては、米軍も種々の工事をやっておると称しておりますし、防衛施設庁の方も必要な工事を行って、水源地の汚染にならないように、また環境の破壊が進まないように十分な手を尽くしておるものと考えております。
  120. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大臣の時間がないようですので、ただ、あと一分。  いまの話では、相当熱意を込めてやったらしいのだが、願ったり、頼んだり、要請したり。ところが実際は、いま写真をお見せしたとおり、どんどんどんどんやっておるのですよ。だから、日米合同委員会であなた、どういう合意をされたかわからぬが、この合意が実行されておらぬということは事実なんです。大臣、少しなめられているのですよ。というのは、安保条約がたてまえ上どうも超憲法的なものだという考えがあるものだから、言えばアメリカ何かやるだろう、ちっともやってない。あなたもおわかりでしょう。あれは巨大な、戦車の一大訓練場なんですよ。だから、なめられないように、もう少し自主的に、独立日本外務大臣として強硬にやってもらって、点検するぐらいの熱意を持ってもらいたい。これをひとつ要望したいのですよ。どうですか。
  121. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 このような戦車道の工事というものは、事前に当方の了承のもとにやるということを厳重に申し入れておるところでございますので、その点につきましては、なお厳重に申し入れをして、その実施につきましても、当方といたしましても重大なる関心を持って監視をしてまいりたいと思います。
  122. 稲富稜人

    稲富委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十三分散会