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1977-04-08 第80回国会 衆議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年四月八日(金曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 大野  明君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 増岡 博之君 理事 宮崎 茂一君    理事 坂本 恭一君 理事 渡辺 芳男君    理事 石田幸四郎君 理事 河村  勝君       愛知 和男君    北川 石松君       関谷 勝嗣君    永田 亮一君       原田昇左右君    福島 譲二君       堀内 光雄君    三塚  博君       森下 元晴君    久保 三郎君       兒玉 末男君    斉藤 正男君       田畑政一郎君    草野  威君       宮井 泰良君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    小林 政子君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 田村  元君  出席政府委員         大蔵大臣官房審         議官      額田 毅也君         運輸政務次官  石井  一君         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省船員局長 横田不二夫君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君  委員外出席者         外務省経済局国         際経済第二課長 山崎 高司君         外務省国際連合         局経済課長   八木 真幸君         通商産業省貿易         局輸出課長   名取 慶二君         運輸省海運局外         航課長     富田 長治君         運輸省港湾局参         事官      石月 昭二君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     愛知 和男君   佐藤 文生君     福島 譲二君   古屋  亨君     関谷 勝嗣君   箕輪  登君     原田昇左右君 同日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     小沢 辰男君   関谷 勝嗣君     古屋  亨君   原田昇左右君     箕輪  登君   福島 譲二君     佐藤 文生君     ————————————— 四月七日  地方陸上交通事業維持整備法案久保三郎君外  三十八名提出衆法第二四号)  中小民営交通事業者経営基盤の強化に関する  臨時措置法案久保三郎君外三十八名提出、衆  法第二五号)  交通事業における公共割引国庫負担に関する  法律案久保三郎君外三十八名提出衆法第二  六号)  中小民営交通事業金融公庫法案久保三郎君外  三十八名提出衆法第二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外国等による本邦外航船舶運航事業者に対する  不利益取扱いに対する特別措置に関する法律  案(内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  外国等による本邦外航船舶運航事業者に対する不利益取扱いに対する特別措置に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  3. 宮崎茂一

    宮崎委員 法案質疑に入ります前に、一言大臣感想を伺っておきたいと思います。  御承知のように、きょうから国鉄はまたストライキをいたしております。毎度のことでございますが、違法ストライキでございます。しかし、これで国民も大分困っているわけです。     〔委員長退席加藤(六)委員長代理着席〕 それとともに、国鉄離れという傾向がこのストによってさらに増加するのじゃないかと懸念いたしております。ですから私は、一時間でも早くストライキを中止していただいて、国民が十分に利用できるようにしていただきたいと思うわけでございます。この点、大臣はその方のベテランでございますが、感想と申しますか、所感と申しますか、法律案に入る前に一言お伺いいたして、それから入りたいと思っておりますが、大臣所感をお伺いいたします。
  4. 田村元

    田村国務大臣 この席をおかりして、国鉄労使双方に対して、このようなストライキを行っておることにかんがみまして、厳しく注意を喚起いたしたいと思います。  国鉄がいまだれの目から見てもきわめて苦しい経営状態にある、これはもう申すまでもないところでございます。私はかねてから、日本国有鉄道の再建というのは、もちろん値上げも必要でありましようし、あるいは政府助成も必要でありましょうけれども、それ以上に一番大切なことは、労使関係を正常化して経営努力をフルに行うことである、これが基本だと心得ておるのであります。このようなストライキが、しかも法律によって禁止されておるストライキが起こりますことを残念に思います。これから労使十分正常化の実を上げられて国民の信頼を回復されんことを心から祈ってやみません。
  5. 宮崎茂一

    宮崎委員 それでは法案質疑に入りたいと思います。  大臣はそういったことで国鉄ストに関して非常にお忙しいでしょうから、もしなにであれば事務当局の方にいろいろな質問をしておりますから、十一時ごろになったらひとつまた来ていただいて、後で締めくくりの御答弁をお願いいたしたい、かように考えております。  海運対抗立法でございますが、御承知のように、私どもはいままで海洋自由あるいは海運自由の原則世界各国に対して要請をしてまいった。また日本の国益の立場からいたしましても、海運自由ということが一番いいのじゃないかと思っているわけです。したがいまして、この対抗立法は本当に必要でなければつくらなくてもいいのじゃないか、発動するようなことはどうもいいことではない、残念なことだ、こういうふうに思うのですが、しかしいろいろな開発途上国ナショナリズムの問題あるいはまた東欧諸国国際海運に対する進出など、いろいろ考えると、この法律をつくって日本政府が持っていることもやむを得ない、私は基本的にそういう立場から質問をいたしたいと思うのであります。  その前に事務当局に確かめておきたいのですが、国旗差別政策と一概に言っておりますが、これはいわゆる船籍じゃなくて、最近チャーターバックの船とか、あるいは仕組み船とかございますから、国旗差別ということは実質的に船を用船してオペレートしていく国の国籍、こういうふうに理解していいのですか、どうですか。
  6. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 国旗差別と申しまして、元来英語のフラッグディスクリミネーションの翻訳でこういう言葉を使って、それから法案の御説明についてもそういうことをよく言っておりますけれども、実際に諸外国が私ども日本海運に向かって非常に不利益取り扱いをするような具体的な措置の例をいろいろと見てみますと、それは大部分船会社としての日本船会社対象とした措置でございまして、つまり日本船会社日本の船のみならずリベリア、パナマその他の国籍の船をみずから用船して、日本の船と同じようなファンネルマークをつけて同じように船を動かしておりますけれども、その被害はもちろん日本国籍の船のみならず、その日本船会社用船をしておる外国国籍の船にも及ぶものが大部分でございます。したがいまして国旗差別という言葉で御説明しておりますけれども、あるいは考えようによりましては、事と次第によりましては、自国貨物優先政策とでも言いかえた方が、実態により即する言葉ではなかろうかというふうに考えます。
  7. 宮崎茂一

    宮崎委員 もう一遍確かめますけれども船籍のいかんにかかわず、実質的にその国の船会社外航船業者の手によって運行されているというのは、やはりたとえば日本船主によって運航されているところは日本船だ、こういうふうな考え方ですね。つまり用船をするところは日本船なんだということでいいですね。
  8. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 外国船でございますから日本船とは申せませんけれども日本船会社が使っておるがゆえに外国不利益取り扱いを受ける場合には、日本船と同じように不利益取り扱いを受けるということでございます。
  9. 宮崎茂一

    宮崎委員 それじゃ伺いますが、そういった最近の国旗差別政策、それによって南米の国がひどい取り扱いをしているということですが、具体的にひとつ簡単明瞭に、日本がどんな被害を受けているのか、こういった国旗差別、いわゆるナショナリズムというのはもう十数年来あるいは二十年間ぐらい、程度の差はあれ少しずつは行われてきているわけですが、最近の顕著な例、この法律をどうしてもつくらなければならぬというように決意された動機みたいなそういった日本側被害例と申しますか、私も南米にあると承知しているのですが、二、三挙げてみてください。
  10. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 先ほど先生がお触れになりましたように、ただいま御審議をお願いしております法案は、これが成立の暁に、私どもといたしまして直ちにこれを発動しててきぱきやるというようなことをひそかに考えているわけではございませんので、これからいろいろと具体的な国における日本船会社状況を御説明申し上げますけれども、それは直ちに前に申し上げましたようなことにつながるものではないということをあらかじめお断わり申し上げまして御説明を申し上げたいと思います。  この法案が考えておりますような本邦船舶運航事業者外国によって不利益取り扱いを受けておるという例は、御指摘のように最近はラテンアメリカ諸国にその例が多うございます。ラテンアメリカ諸国は、いわゆる伝統的な海運国には数えられませんでしたけれども、戦後非常に活発に自国海運整備をしてまいりました。それらの国は現在はすでに相当の規模になり、それらの国を中心として北米ヨーロッパ極東にすでに配船をしております。その配船極東方面に及ぶに従いまして、その極東ラテンアメリカ諸国との間に就航しておる日本船会社というものに対する被害がだんだん大きくなってきたという実情でございます。  たとえば、具体的に国の名前を挙げるのははばかりますけれどもアルゼンチンといったような国の場合には、その国の命令でもって、政府地方官庁国営企業あるいは国立銀行というものが関係をする輸入貨物は全部アルゼンチンの船で運ぶということ、そういうようなことを義務づける制度をとっております。また、そういった制度につきましては、若干特免と申しますか、ウェーバーと申しますが、特別にそういった原則を免除してやるという制度をとりますけれども、そういう特別に免除してもらうためには、今度はアルゼンチン船会社とたとえば日本船会社との間でプール協定のようなものを結ぶことでなければならないし、そのプール協定においてアルゼンチン船会社日本船会社のいわば積み取り比率プールポイントというものはアルゼンチン政府の好みにかなった数字でなければならない、こういうふうなかっこうにされる例がございます。そういった場合には、日本船会社は完全にその荷物を運べないという状態にはなりませんけれどもアルゼンチン政府の気に入った割合をアルゼンチン船会社に与えるのでなければ荷物が積み取れないというふうなかっこうになっております。同じような例はブラジルあるいはメキシコ、コロンビア、その他の国にそのような例がございます。  大体いま申し上げましたようなその国の法令でもって全部または特殊なる荷物特定いたしまして、こういう貨物自国の船で積まなければならぬぞ、あるいは五〇%までは自国の船で積まなければならぬぞというふうな制度をとるやり方、これが一つ典型でございまして、二つ目には、いま御説明申し上げましたような、その国の船会社が参加している運賃同盟に向かってその国の船会社に十分なる積み取り比率を認めるような積み取り協定、私的な積み取り協定を結ぶことを強制するというのが二つ目典型でございます。
  11. 宮崎茂一

    宮崎委員 そういったような後発国というんですか、後進国ですか、開発途上国海運政策、それはある程度うなずけないこともないんですが、そういった政策をとる国が結局は経済的に損をするのじゃないかというふうに民間のベースでも説得し、そしてまた外交ルートを通じてでも説得して、なるべく海運自由化という方向に持っていくということが望ましいんではないかと思いますが、どうですか。
  12. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘のとおりでございまして、また現にそのように行われておりますけれども、そういった貨物留保政策というものは、長い目で見てその国の貿易を円滑に進める上で必ずしも適当な政策ではないし、場合によりましては、その運送コストを高めたりあるいは荷主に向かって不便を強いたり、そういうような一面がございます。また日本船会社から見まして、船会社にとりましてはいろいろなそういった条件も含めて交渉によって事柄を解決して自分たちの商売を進めていくというのは、考えようによっては当然のことでございまして、船会社同士交渉、その船会社外国政府との交渉ということでそのような不合理な措置というものがとられないように努力をするということは、現にいろいろと行われております。また現在、いまお願い申し上げておるような法律のない状態でありましても、政府レベルでの交渉というものもたびたび行われております。  ただ、この場合に自国船優遇政策貨物留保政策というものをとるに至りますその国の事情でございますけれども、必ずしも直ちにそれがその国にとって非常に不利益なことを無理にやっているというふうに受け取れない場合もあると存じます。こういう国の場合に、国の工業化を進めてまいりますについて、国際海運業といったような業種は他の機械製造業あるいはもっと高度に込み入った複雑な工業というものをその国に興こす場合に比べまして、やはり手っ取り早いということが一つは言えることもございましょうし、それから貿易というものが行われる限り、その貨物輸送需要というものは目の前にあるわけでございまして、市場の開拓、買い手を探すという問題も、ほかの物を生産して輸出するとかそういったことと比べて、そういう問題の条件は違っておりますし、何よりもそういったことでその国のたとえば外貨事情というものを悪くさせない、よくするというような対策としては一つの合理的な対策とも考えられます。それから、多少そういう経験が不足であるということから、利用者にとって不便な船会社であるということもあるいはあるかもしれませんけれども、一般にそういった国の場合の賃金水準先進海運国賃金水準に比べて高くはございませんし、事実上の競争力も国によってはあながちそんなに劣ったものではない。したがいまして、そういった交渉というものは船会社努力による交渉あるいはこういった法律のない上での政府間の交渉というものは成功する場合もあり、また成功しなかった場合も多々あるわけでございます。
  13. 宮崎茂一

    宮崎委員 実はこれは、この前大臣提案理由説明書を読んでみたのですが、後進国のそういったナショナリズムの問題がこの法律をつくる理由である。これはわかりますが、例の東欧圏諸国の件ですね。これは国自体貿易とか海運国家管理しているのでしょうから、そういうことは書いてないのですが、たとえばソ連日本の間でナホトカと新潟の間でコンテナ船を運航させる。これは国家間の取り決めによるのかどうかわかりませんけれども、また最近は米ソ間ですか、ソ連の低運賃に対する協定ができたとかこういう話も聞いておりますが、そういう東欧圏に対する対抗措置というのはこの立法で本当にできるのですか、どういうことになりますか。
  14. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘のように、ただいまいわゆる先進海運国が当面している問題は、南北問題と東西問題と二つあるというふうに言われております。端的にお答え申し上げますならば、南北問題に対する対策としてこの法案は用意したものでございますけれども、東西問題、いわゆるソ連を含む東欧圏海運というものから日本を含めて先進海運国が受けている脅威というものに対しては、直接それに対応するような条項なり考え方というものを盛り込んでいないのが実態でございます。以下その背景なり理由なりを御説明さしていただきます。  御説明申し上げましたように、この法律案外国政府なり、公共団体が、その権力でもって、その国における日本船会社営業活動というものをすぱっと禁止、制限するといったような事態に対抗する手段としていろいろとこの法案を考えておりますけれども、ただいま問題になっておりますいわゆる海運の東西問題というものはそうではございません。御指摘のように、日ソ間のトレードについては、日ソ海運がそれぞれに動いておりまして、またそれについては、他のいま例に挙げましたラテンアメリカその他の国と同じような意味で、ソ連の公的な権力でもって、日本の船がナホトカに行く、あるいは黒海の何がしかのところに行って仕事をするについて禁止制限することがもしあれば、それはこの法案対象になりますが、いわゆる東西問題というものの本質は、御指摘にございましたように、ソ連国家経営の特殊なる商船隊を使ってソ連とは無関係の、たとえば日本アメリカ日本−オーストラリアといったような航路を、彼らの国から見れば第三国航路において比較的安い運賃で、またその航路に組織されておる運賃同盟に加盟しないで、そして荷物を取るという営業をやっておる。これに対して、どのように対処するかというのがいわゆる東西問題でございます。この問題につきましては、これはヨーロッパアメリカ日本を含めた——この場合アメリカも含めて申しますけれども先進海運国はそれに対する対策に非常に頭を悩ましております。それら全体の国の東欧圏海運に対する対策のいわば方向としては、おおよそ言って二つ方策が考えられると思いますし、また事実行われております。  その一つは、昨年米国のFMCバッキー長官レニングラードに参りまして、ソ連海洋船舶省のアベリンという人といわゆるレニングラード協定というものを結びまして、ソ連海運世界における活動について、アメリカ出入トレードにおけるソ連海運活動について、不当に安い運賃を出さないといったような趣旨の約束をしたというふうに伝えられております。また事実このバッキーアメリカFMC長官ソ連との話し合いを契機として、ソ連国家管理船会社は、ヨーロッパアメリカとの間の大西洋運賃同盟に加盟する、しないというような話し合いを進めておりますし、また日本アメリカとの間の太平洋運賃同盟についても、それに続いて若干似たような話し合いを進めております。つまり対策の第一は、ソ連海運というものを既成の運賃同盟を主とする海運秩序に包み込んでいこうという努力でございます。  第二の方策は、たびたびヨーロッパ及び日本政府あるいは船主が集まって、それが共同してソ連に働きかけるという動きでございまして、これまた昨年レニングラードに西欧、日本主要海運会社代表者が参りまして、ソ連船舶公社代表話し合いをいたしましたけれども、そのような対策海運国全体の動きとしてとられております。今回御審議をお願い申し上げておりますような法律の形で、日本国国家権力の形でこの問題に対処するということについては、もちろんわれわれも検討をしてみましたけれども、この検討にはさらに法律技術的に、また日本国内貿易関係人たちとの理解協力を求める上でも、なお若干時をかしていただきたいと思います。  ただいま御説明申し上げましたように、こういう南北問題について国内法整備するというのは、ヨーロッパ日本海運国の一致したいわば合意がございますけれどもソ連問題については若干事情を異にする。これが御指摘のように東欧圏海運問題についてはこの法案にそれに関する条項を入れていないで御審議をいただいているという理由でございます。
  15. 宮崎茂一

    宮崎委員 いろいろな問題がいままでも昭和三十年代からあったわけでございますが、いままでこういう立法をしようという試みはあったのだろうと思いますが、どうしても今回やらなければならぬ、そういうようになった理由といいますか、それはどういうふうに理解したらいいのですか。特にいままで各国ナショナリズムを発揮しながら、あるいはまた一部国家管理貿易をしながらも、日本商船隊というものは、大体順調にと言ってはおかしいかもしれませんけれども、何とかなってきたわけですね。そういうような観点から考えまして、いまの時期にどうしてもやらなければならぬ、こういう点はどういうことか、こういうことをお伺いしたいと思います。
  16. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 お答え申し上げます。  確かにこの種の法案は、ヨーロッパのベルギー以外のほとんどすべての国が、一九六一年から六七年にかけまして、それぞれ国内立法化を終わりまして、一つおくれておりました英国が一九七四年に立法化を終わったことによりまして、残されたのが日本だけということになって、ことしただいまこの法案の御審議をお願いしているという時間的な関係になります。  このような結果になりましたについての理由背景は、一つは、世界における新興海運国活動状況というものと関連づけて御説明ができるのではないかと思います。先ほども申し上げましたように、戦前海運を持たないのがあたりまえであった国が、戦後どんどんと自国海運というものを整備して、これが大西洋太平洋を越えて運航し得るようになりましたのは、最初ラテンアメリカ諸国でございますけれども、そのラテンアメリカ諸国海運最初に参りましたのは北米、合衆国でございました。次いで大西洋を斜めに走ってヨーロッパ諸国にあらわれ、第三番目に、パナマ運河を通って極東の方にあらわれた。そこに時間的なラグがございます。もちろんラテンアメリカ諸国以外にも、東南アジア諸国アフリカ諸国自国海運を育成するという動きはございますけれども、その他の地域の海運というものが、日本の船が盛んに営業をやっております分野にあらわれ始めたというところにまではまだ言えないのではないかと申せましょう。したがいまして、ヨーロッパ諸国が早くこういう措置をとったというのは、ヨーロッパ諸国がこういった新興海運国の船を受け入れた時期が早かったということに一つ関連があろうかと思います。また、六三年、六六年の、海運担当ヨーロッパの閣僚が集まった会議におきましても、きわめて熱烈なる語調で、こういった法案を、それぞれの国内において、究極の手段としてそういう立法を行う必要があるということを決議をしております時期も六三年、六六年という時期でございまして、それに比べますと、日本国状態というものはあるいは十年ぐらい実際におくれておったということが一つ言えるのではないかと思います。  二つ目に、日本国は何と申しましても巨大なる荷物をどんと飲んだり吐いたりする国でございまして、したがいまして、貨物を非常にたくさん持っておるということから見て、このような対抗手段というものを必要とするような具体的な事件が起こるのがやはりおくれたということもございましょう。  第三に、やはり日本の特有の風土がございまして、この対抗法案はごらんのとおりでございまして、もしこれを本当に発動するとなれば、元来他国の政府がまず何か特定な行為をすることによって、船に荷物を積む人はすでに一体迷惑を受けておる。その上に向かっていって、今度日本側からまた特別な措置をとって特定の船というものの荷物の積み取りを制限するわけでございますから、二重の制限を受けることになるわけでございます。それが貿易に実際に発動された場合に与える影響というものは、これは無視できないと思いますし、そういったようなことについてはそれを好まない空気がある。どこの国でもあるのでございますけれども日本の国にも非常にそれが強くあった。そういう関係人たちとの間の意見の調整をし、そして日本海運を守るためにはこういうものが必要なんでありますというようなことの事柄の了解を求めるためにも相当の時間がかかった。それで、そういうふうにしておりますうちに、大体日本の場合には実害が出始めましたのは三、四年前からでございますけれどもヨーロッパで起こっておるような具体的な被害が目の前に現実な形として起こってきた。そこで今回、ヨーロッパなどに比べますと相当におくれましたけれども日本においても立法化をお願いする時期が来たのであるというふうに、またそれもできるようになったというふうに判断をいたしまして、この法案をお願いした、ただいまそれをしたという次第でございます。
  17. 宮崎茂一

    宮崎委員 この前の先進海運国閣僚会議、そこでそういったような最後の手段として各国はこういった対抗立法を用意するという決議をされたそうでございますが、私の手元に資料がございますから御質問いたしませんが、ほとんど十カ国ぐらいが制定をしているようですね。まだベルギーとかギリシャというのは制定していない。それから、先進海運国閣僚会議アメリカが実は入っていないのですね。しかし、アメリカは自身としては対抗立法を持っている、こういうことでございますが、領海問題でも日本は三海里とさんざん主張しておったのですが、米ソ大国が十二海里、二百海里経済水域ということを決定して、世界の趨勢が急転回したような感じがしますが、この海運関係でも米ソが入っていない。これは先進国閣僚会議の効用というのですか、迫力、力というのですか、その会議の線に沿ってこれからやろうとしているわけですが、その点はいかがですか、懸念はないですか。
  18. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御説明申し上げます。  いま御指摘になりました海運関係閣僚会議、コンサルタティブ・シッピング・グループ、CSGとよく言いますけれども、この組織は元来は系譜的には、アメリカ海運政策というものに対して伝統的海運国が一致して対抗するためにつくられたという歴史的な経緯がございまして、いま申し上げましたヨーロッパ及び日本の十二、三カ国とアメリカ、カナダが入って同じく海運の問題を議論する座敷としては、別にOECDの海運委員会というものがございます。  御指摘のように、米国もまたこの対抗立法に似たような性格の法律をすでに一九二〇年に成立させて、しかもアメリカの場合にはときどきてきぱきとそれを発動しておりますけれども、米国がこういった法律国内で制定し、それを外国に向かって発動しておったその事情と、今回のこの十年くらいを経ましてヨーロッパ及び日本国が形は似ておりますけれどもそういった法律を制定して対処しようとしている動きとは、似たところもございますけれども大体違ったところもある。人によって意見の違うところであるかもしれませんけれども世界貿易というものを自分たちが担当しておるのだといういわば意識を持った海運国というものを数え上げた場合に、やはり米国はそれには入らない。米国はもちろん相当の数の商船隊を持っておりますけれども、元来は戦後の米国の商船隊というものは、大部分が戦争中の輸送船の払い下げであって、船会社の人が手に汗をして蓄積をしてそうして苦労して築き上げた船会社ではないというふうにヨーロッパの玄人は見ておる。またその活動の分野でも、アメリカの輸出入物資についてはある程度の活躍をしておりますけれども世界の海をまたにかけてとやかくがたがたという動き、最近また別でございますけれども、一般にはそうは思われていない。したがって、世界国際海運を論ずるに当たりましてアメリカが入っていないということは必ずしも不思議でもないし、むしろそこいらが当然のようなふうに考える、常識と申しますか物の考え方があるということを一つ説明申し上げておきます。  ソ連について申し上げますならば、ソ連は最近に至って急速に、先ほども申し上げましたけれども商船隊を増強いたしまして、そして自分の国とは関係のないところについても活発なる営業活動を行って、またさらに伝えられるところによれば、ただいま以降にも膨大な商船隊を建造、拡充する計画であるというふうに伝えられております。これもまた別な意味で、長い間の世界貿易をおれたちが担っているのだという意識を持った西欧あるいは日本のいわゆる先進海運国グループから見れば、別の歴史をたどった海運であるという考え方でございまして、ソ連がここに入ってきてないということについてもごくあたりまえのことというふうに理解するのがこの世界では自然ではなかろうかと思っております。したがいまして、米及びソというものがこのような動きにそれぞれ別々の形で同調していないということは、それがグローバルな動きだと認められないというふうな感じの理解、解決というものは、まあ船の世界の人には恐らく当たらない理解であろうか、これは若干私見にわたりますけれども、そういうふうな御説明ができるのではなかろうかと思います。
  19. 宮崎茂一

    宮崎委員 それでは、先に進めますが、いままで先進海運国閣僚会議の結果に基づいて対抗立法各国とも持っているわけですが、これは私は伝家の宝刀みたいなもので、なるべく抜かないように、その間に外交交渉なりあるいはまた民間交渉で円満に妥結するというのが筋だろうと思いますが、外国の方でこういった対抗立法を抜いた例というのは、実施したと申しますか発動させたというような例があれば、ひとつ御説明をお願いしたい。
  20. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 ヨーロッパ諸国のすでにできております対抗立法か発動された例というものにつきましては、実は余り的確なる事実関係がわれわれにとって明らかになっておりません。これはそういった措置をとった国あるいはその措置対象になった国の他国に対する配慮から、余り詳しいことをべたべたニュースに流さないというふうな風土があるようでございまして、私どもが調べました限りでも、やっているらしいけれども詳しいことはわからないというのが実情でございますが、しかしまた、たびたびやっているということではないということは大体わかっております。  その中で、私どもがある程度その関係者から好意的に教えてもらった話につきまして御説明を申し上げたいと思いますけれども、これは一九六九年から七〇年にかけましてブラジルが西ヨーロッパ貿易について相当に強引な自国船留保政策を打ち出したことがございます。そのときに幾つかのヨーロッパの国がその法律を発動したようでございます。ドイツには、こういったいわゆる海運対抗立法とは若干法律の成り立ちが違いますけれども、有名な対外経済法というのが六一年から制定されておりまして、その条項の中に海運についての条項があるわけでございますけれども、ドイツはその場合に、ドイツの経済協力物資のブラジル船の船積みについて許可制度をしいた。一船積みごとの許可制度をしいたようでございます。この許可制度をしいた結果、これは一九七〇年の四月にしかれまして七一年の十月まで一年半続いて、そしてドイツはその許可制度を撤廃しておりますが、その期間にブラジルの猛烈なる自国船留保政策は修正をされまして、ドイツ船は適当なるシェアをそのブラジルとのトレードによって認められたということのようであります。また同じころにイタリアも何か似たようなことをしたようでありますけれども、それについては余り詳しいことはわれわれは承知しておりません。その程度でございまして、やはりこういう国内法というものをヨーロッパ各国とも持っておりますけれども、これを本当に発動した例というものは、わからない点もございますけれども、非常に少ないということは申せるかと思います。
  21. 宮崎茂一

    宮崎委員 それではこの対抗措置の内容でございますが、この案の第四条に、運輸大臣が、相手国の外航船舶運行事業に使用する船舶について、期限を定めて入港を禁止したり、制限したりあるいは貨物の積みおろしを禁止、制限することができる、こういうことになっているわけですが、具体的にはこれはたとえば神戸の港に入ってくるときにもう入国禁止だよ、あるいはそのバース指定をするときに、おまえのところはバース指定をしない、あるいは岸壁に着いても、税関か何か政府の各省協議してあそこの荷役はやらない、こういうふうになるのか。具体的には入港禁止とか貨物の積みおろしの制限、禁止、これはどういうふうにやるのか。そういうことはまた果たしてできるのかどうかちょっと疑問を抱いているわけですが、その点どういうことになりますか。
  22. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 具体的にどのようにやるかにつきましては、御審議をお願いしております法律案では、できるぎりぎりの一番幅の広いところが字になっておるわけでありまして、その枠の中でいろいろなことが選択ができるというふうに考えております。またこの第四条の第二項に、「前項の規定による命令は、前条第一項に規定する事態に対処するため必要な限度を超えないものとし、かつ、その国民経済に対する影響ができるだけ少ないものとするような配慮の下に行わなければならない。」という規定を置きまして、その具体的に選択をするやり方というものは、その前に、現に日本の船舶運行事業者が被害を受けている相手方の措置があるわけでありまして、その措置というものをやめさせるために必要な限度という一つ考え方があるわけであります。第二に、まあどっちにせよ、ある船に荷物をたとえば積むのを制限するということは貿易にとってはやはり障害でございまして、あるいはその国と日本国との間の基本的な外交関係というものに対する配慮もしなければなりませんでしょうし、そういったようなことは当然に配慮をした上で具体的なやり方というものが選択されるわけでございまして、それは先ほどもドイツの例で申し上げましたけれども、ドイツは個々の船積みというものを許可制度にかけたようでございます。具体的な、許可制度にかけられた船積みというものが許可されたのか不許可になったかはつまびらかではございません。ただ、その許可制度にかけられることによりまして、ブラジルの船に積む荷主さんは一々ドイツのお役所に行って判こをもらわなければならないという、少なくともそういう手続はあったでありましょうし、事と次第によってはその荷物は積めなくなるというおそれがあったかと思います。それだって結構一つの発動の例でございます。したがいまして、この大きな枠の中でどのような方法がとられるかということは、一つには、その措置をとろうとする原因となった相手国の政府の行為が具体的にどのようなものであるかということ、それからそのとろうとする行為が貿易なり外交関係にあるいは一般経済にどの程度の被害があるかということを比較考量しながらそのときそのときに決めていくしかないと思っておりますけれども、ここで申しておりますような入港の禁止、これはいわば観念的には最も厳しい措置でございますけれども、入港の禁止といったようなことは、恐らくは外国のその原因となった措置がそういったようなことになっておるような場合でございましょうし、それからあるいは観念上の論議になるかもしれませんけれども、いまも御指摘になりました、運輸大臣が入港を禁止した船がその命令を侵しててかてかやってきた場合に、桟橋でなわをとるのか、積んできた荷物は荷主さんは指をくわえて待っていなければならないのか、そういったようなことにつきましては、いわばこういった行政法規の刑罰の適用の問題としましてさらに詳細に詰めていただかなければならぬかと思いますけれども、実際にはその相手国の船会社が痛撃を食らって、それが契機になって、原因になっておる相手国の日本船に対する措置というものが改まればいいのでありますから、改めるためにわざわざその影響の及ぶいろんな人にまで累を及ぼす必要はないというふうに思っております。入ってきたら、あんたは命令に違反して入ってきたんでありますな、五百万円の罰金を払いなさい、いやならもうこれから入ってきなさんな、こういうことでありまして、目の前に荷物を積んでいる、その荷物に手を触れたら全部五百万円の罰金だということにはすぐにはならない、綱もとったらだめであるというようなことにはならないと思っております。
  23. 宮崎茂一

    宮崎委員 外務省にお伺いしますが、この法律が発動することはないと思うのですけれども、発動するときにはその相手国との間の非常に重大な外交問題になるわけでございます。したがいまして、多分運輸省の方から第何条かで協議があるのだと思いますが、外務省としては、先ほどから申し上げております日本としていわゆる海運自由を主張するたてまえからどの段階でどういうふうな介入をされるのか、お伺いいたしたいと思います。
  24. 山崎高司

    ○山崎説明員 先ほど海運局長から御説明ございましたように、この立法が実際に適用されるケースというのは非常に限定されてくると思います。その前段階といたしまして、現在もやっておりますけれども海運業者同士の話し合いがございますし、必要に応じまして政府間の話、外交交渉での話し合いもあると思います。究極的な手段としてこの対抗立法を適用すべきかどうかということが問題になりますときには、先生御指摘のとおり運輸省から外務省に協議があることになっております。その段階で外務省がどういう判断をするかということでございますが、そのときの国際情勢でありますとか、相手との海運問題のみならず、貿易経済各般、全体的な立場を考えまして、諸般の情勢を踏まえケース・バイ・ケースで慎重に検討していくということになると思います。
  25. 宮崎茂一

    宮崎委員 外務省としてはそういうお答えだろうと思いますが、もう時間もございませんので大臣にお伺いをいたしたいと思います。  冒頭に私は、日本としては日本の国益から考えまして海運自由化ということを主張しなければならない立場だろうと思っております。したがいまして、この立法というものは発動するということのないようにするのが当然じゃないかというふうに考えておりますが、世界の情勢は、今日の日ソ漁業問題にも見られますように、共産圏の国が貿易国家管理をやっておりますし、海運自由に反するような行為が行われておるわけです。共産東欧圏にいたしましても、南北問題ということにいたしますと、つまり発展途上国、後進国自国船をつくって自分の貿易振興を図りたい、こういうことになっているわけですが、こういう海運自由というものを大臣としては貫きたいという気持ちなのかどうか、そしてまた、それに反するような世界のいろいろな動きがございます。これに対してこの立法を発動するということでなしに、やはり日本は平和国家ですから、民間交渉なりあるいは政府交渉なりそういったもので海運の自由を守らなければならないのじゃないか、私自身はそう考えているのですが、そういった意味から私は、この立法はほかの先進国も持っているんだから一応やむを得ないと思うわけです。そういう立場からいままでずっと議論をしてきたわけですが、そういう海運自由の政策と、そしてまた現在のいろいろな相反するような動きに対して基本的にどういうお考えを持っておられるか、どう対処していかれるのか、一番重要な問題だと思います。  なおまた、これを発動するということは、先ほど外務省からも話がありましたように二国間の国交の非常に重要な問題にも発展しかねない問題でございますから、私どもは慎重にやってもらいたいと思いますが、この二点につきまして大臣の所信を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 田村元

    田村国務大臣 この法律は、言うなれば伝家の宝刀でございます。先ほど来海運局長なり外務省が御答弁申し上げましたようにまず民間交渉、それから外交交渉ということで事態をさばいていかなければなりません。でありますから私は、この法律の発動という対抗措置の発動ということは、それこそ本当に極力避けていかなければいかぬことだ、このように考えております。したがいまして、海運自由の原則というものはこの法律によって損なわれることはないし、また今後もこの海運自由の原則は守っていかなければならぬ、このように考えておりますが、御承知のような今日の国際的な海運事情でございますから、やはり日本の国益を守るためには伝家の宝刀だけは持っておかなければなるまい、伝家の宝刀は決してみだりに抜くものではない、こういうことで御審議をお願いいたしておる、こういうわけでございますので、どうぞ私の意のあるところをおくみ取りいただきたいと思います。
  27. 宮崎茂一

    宮崎委員 それでは、私の質問はこれで終わります。
  28. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 久保三郎君。
  29. 久保三郎

    久保(三)委員 この法律案の中身、内容に入る前に、海運政策の基本的な問題で幾つかお尋ねしたいと思うのです。  いまも運輸大臣は、海洋の自由はいささかも変わるものではないというお話をされましたが、従来の海洋の自由というのは、言うならば海運に強い国の自由、そういうことが言えると思うのですね。幸いというか、日本は戦後いろいろな問題はありましたが、海運強国になってきたわけです。一方、お話がありましたように発展途上国あるいは社会主義体制の国々というようなものが、自分の権利というか、これも海洋の自由と言えば海洋の自由だと思うのですね、そういうものがここ数年来急速に高まってきた結果、御承知のとおりuNCTADにおけるところの同盟憲章の採択というか、そういう問題も出てきているわけですね。それで、本来ならば定期船については日本もこれに賛成しておりますから、たとえばこういう積み取り比率一つとってみても、対等の立場でしましよう、これは従来の海洋の自由ということからすればずいぶん後退しているわけなんですね。取れるだけ取ろうというのが海洋の自由でありまして、言うならば強い者はどこまでも船を動かせる、それが海運の自由であり、海洋の自由という問題だと思うのですよ。ところがいまの自由は、そういう強い者の自由じゃなくて、対等平等というか、そういう立場に変わりつつある。変わりつつある中で、言うならば急速に発展した発展途上国のナショナリズム、そういうものの台頭と彼らの主張、権利、こういうものを土台にして、従来のわが邦船の当該国における積み取り比率が狭められてきている。狭められ過ぎたので、今度は対抗立法をしようというふうになってきたように私は思うわけです。そうなりますと、いままでわれわれが言った海洋の自由というのは、対抗立法をすることによってそれを守ろうということなのか、それともUNCTADで採択された同盟憲章の精神にのっとって新しい海洋の秩序を維持する方向政策を展開していくのか、大変わかりにくいと思うのですよ。それについてはどう思いますか。  それからもう一つはいわゆるUNCTADの同盟憲章に盛られたところの対等平等の海洋における自由というか、そういうものを守り担保するためには、これはまだ批准もされていませんし、発効もしていませんから、そういうことから言いますれば、特に発展途上国は従来の主張と事違って、自分の船で自分の荷物は全部積み取りをするというようなことになってきた。どうもUNCTADで主張した主張とは現実に違ってきた。だからこれを抑えてUNCTAD憲章に盛られた対等平等の立場を担保するためにこの特別立法が必要なのか、これは二つの相反する見方があるわけなんです。どっちをおとりになるのかという問題が一つあると思う。いかがでしょう。
  30. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御説明申し上げます。  ただいま先生御指摘になりました問題は、世界の体制が逐次動きつつある状態のもとでの御説明でございますので、私どもの御説明も若干御説明しにくい点があろうかと思いますが、第一点、大臣宮崎先生に御答弁になりましたように、日本国は伝統的に海運の自由の原則をいままで守ってきております。また、OECDの中の貿易外取引自由化規約といったようなものに加盟をするについて、OECDに加盟するについてそういったいわば条約上の一つの縛りも日本国政府にはかかっています。  海運の自由ということをどういうふうに理解するかでございますけれども、荷主と船会社とがどういう荷物をどこに何ぼで運ぶというような商取引については、国家権力は何も言わぬということを端的に意味するものであるとするならば、日本国は従来そういう方針を原則としてまいったというのが事実でございます。また、いま申し上げましたように、条約上の縛りもかけられておる。ただ、お話しがございましたし、私が御説明申し上げましたように、後進国、いままで海運国でなかった国が海運を発展させて、そして御指摘のように運賃同盟はリッチマンズクラブであって、勝手なことをやるものであって、おれたちはそういうものの勝手なやり方は許さぬのだ、また貿易当事国は自分の国の海運が適当なシェアをとるべきであるというふうな主張をし、そういった国々と先進国側との間で七四年にUNCTAD同盟憲章がいわば相異なる物の考え方の間の非常に貴重な妥協として条約案文として採択をされ、日本国政府もそれに賛成の一票を投じたということから申しまして、日本国はそういったいままでのいわゆる低開発国の新興海運というものの主張なり立場なり、そういうものに対しては十分なる理解をし、そして理解した上でそういった国の動きに対応していかなければならぬかと思っております。今回の対抗立法というものは、先ほども説明申し上げましたように、伝家の宝刀でございますけれども日本国とそれらの国との間の海運活動についての外交交渉は、好むと好まざるとにかかわらずこれからも盛んに行わなければならないかと思います。  そういった交渉に臨むに当たってのわが方の考え方でございますけれども、御指摘のように、定期船同盟憲章というものは発効はしておりませんけれども、いわゆる四、四、二という考え方を述べておる。私どもが今後そういった新興海運国日本船会社活動分野をめぐって交渉をいたしますについての物の考え方は、七四年に国連で貴重なる妥協としてでき上がった、いまだ発効していないけれども、大多数の国がそこいらが穏当なところだと考えておる四、四、二の原則あるいは貿易当事国は自国貿易自国海運を参加させる権利ありという物の考え方というものにベースを置いてしかるべきものではなかろうかと思います。逆に申しまして、ただいま先生が御指摘になりましたように、新進海運国の一部には逆に、おれたちの方が一〇〇%もらうのだ、いままで横暴であった先進国は下がれ、ゼロになれ、こういう立場をとる国もあるようでございます。そういう国に対しては私どもはやはり、日本国のために、日本海運というものがぜひとも維持していかなければならない考え方を、貨物積み取りの分野においての最低線というものはやはり同盟憲章に言うところの四、四、二である、日本国という貿易国は日本海運をこの貿易に参加させる権利ありという考え方で対処しなければならぬかと思っております。  日本国だけではございませんで、先ほどからるる申し上げます先進海運国閣僚会議のこういう対抗立法が必要だという決議の中でも、法律が必要だという部門は一番最後にあるのでございまして、そういう部門に至りますまでに、最近の新興海運国の発展というものに十分なる理解を示し、それに対して技術協力、経済協力をするのはわれらの責任であるというふうなことを述べ、そしてその荷物の不当なる要求というものについては何とか対応しなければならぬというふうに述べて、最後に、国内立法が必要だろう、こういうふうに結んである大臣間の決議もございました。いま申し上げましたような物の考え方というものは、日本国のみならずいわゆる西欧の海運国においても大体同じような考え方をしておるものと思います。
  31. 久保三郎

    久保(三)委員 いろいろお話を伺いましたが、結論は、UNCTADの同盟憲章に盛られたような精神が日本の海洋の自由、海運の自由の原則である、その線の方向政策を進めるということにとっていいのでしょうか。
  32. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 政府が出張って相手国の政府日本海運の商売について話し合うときの原則は、いま御指摘のようなそういう原則ではなかろうかというふうに考えております。
  33. 久保三郎

    久保(三)委員 使い分けをされておるようですが、日本のいわゆるオペレーターがやることと政府がやることとは違うようなお話なんですが、日本海運と言った場合には、日本国民を含めて、政府全体、国全体の方針だと思うのですよ。だから、政府が出張っていくときには、UNCTADの精神でやりますといまおっしゃったのですね。すると、いや、船会社がやる分はいいんですよ、構わないのですよということにとれそうなんですが、しつこいようですが、ちょっと聞いておきましょう。
  34. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 日本海運から言えば、ある特定の地域を言えば、たとえば戦前あるいは戦後のしばらくの間、日本船会社が一〇〇%荷物をとっておったという地域がございます。また、そこに、日本船会社だけが運賃同盟を組織してそこでやっておった。そこに、ある相手国の海運会社がだんだん成長発達してきて、十対ゼロが二対八になり、三対七になり、四対六になるというふうに動いております。この場合に、政府が出張って云々と私が申し上げましたのは、政府が、たとえば今度御審議をお願い申し上げておりますような国内法というものを、伝家の宝刀を後ろにして、相手の国と、日本の船とその国の船との積み取りを云々というふうにやるときに、国家権力背景にして交渉するというときにはその四、四、二でありますけれども、いま七対三で商売上やっているというものを、日本政府はどうこうであるからあなたは四割に下げなさいというようなことを言うような考え方ではないという意味で、政府が云々というふうに申し上げたわけでございます。
  35. 久保三郎

    久保(三)委員 私は具体的にそういうことを聞いているわけじゃないです。言うなら物の考え方、海洋の自由というものの哲学はどうなのかと聞いているのですよ。そういうものが、哲学と言ったら大変むずかしいことになるかもしれませんけれども、そういう物の考え方が基本になければこれからの政策の展開は非常にあいまいになってくると思うのですよ。なるほどあなたがおっしゃるように、いままで一〇〇%日本の船が積み取っていた。ところが、その当該の国がだんだん船を持ってきた。いまや問題になっている一〇〇%逆に取られたというような問題に対してどうするかという問題、その基準が今度は問題になってくるのですね。いや、もとどおり権利があるんだから権利は主張するというのがいままでの古い、イギリスを頂点とする先進海運国、そして後からついていく日本の海洋の自由というのはそういうことなんですよ。いままで、おれの権利だ、そういうものはどこへ行っても出てきた。出てこようが何しようがこれはだめだ、だからそのためには海運同盟というか運賃同盟を結んで、同盟で結束してやろうというのがずっと前から一つの方式として成り立っていたわけですね。またこれは、そういうものに加盟できる船会社というか、勢力のあるものがやはり自分の権益を守ろうというのだから、これはあえて非難する必要はございません。しかし政府の方針として、いまやさま変わりになっているんだから、どういうふうな考え方をするのかということなんです。それで、簡単にもう少し聞いた方がいいと思うのですね。物の考え方としてどうなのかと聞いている。UNCTADで少なくとも同盟憲章に賛成したということは、それは世界の潮流として発展途上国もやはり対等平等というか、そういうものの権利はあるという原則の上に立ってやったと私は思うのですよ。そうでなければ、あなたがいま一つの例に引かれたこの対抗立法を出す現象をとらえていて採択したとは私は思わないんだな。だから、その辺のところをきちっと——もっともこれはきちっと答弁できないのかもしれませんね。しかし、これはやはりもう一遍聞きたい。  それからもう一つ、時間が制限されていますからもう一つあわせて聞きますが、日本海運政策というのは何なのですかと聞きたい。海運政策というのは何ですか。いままでの海運政策というのは、不勉強にして読まなかったのでいま悪いけれどもここで読んだのだが、運輸白書、これを見ても多少言葉のニュアンスはあるようだが、日本のための安定輸送はちっともぐらついていないですね。しかし、この積み取り比率を向上して、いわゆる海運収支を改善するということについては、これはいままでの方針から見ると後退している。国際収支は黒字だから、これに余り比重をかける必要はないというふうに言っているのですね。そういうものが特徴。いままでは両方、早く言えば日本の船をふやして安定輸送と国際収支改善をするというのが海運の目的であった。そのためには国内競争もやめて中核体に集約をして、計画造船もそれにつけて利子補給もやって、あるいは税制で優遇をしよう、こういう方法をとってきたわけです。これを言うと、日本の船を中心にして物を考えてきた。外国用船を中心にして考えてきたんじゃないんだが、もう一つ特徴的なのは、御承知のとおり外国用船がどんどんふえてきて、いまや日本のオペレーターが動かすところの船の半分以上は外国用船なんですね。外国用船にはいろいろあるようですね。完全なコントロールがきくものもあるし、きかないものもあるというようなことで、必ずしも物資の安定輸送には歯どめがかからぬという問題がある。  それからもう一つは、船員の雇用の問題が大きな問題になってきていますね。日本の船を使わないのでありますから、日本で船をつくっても、外国に持っていって外国の船員を乗せてまた持ってくる。でありますから、船員の予備率はそういう関係もあって最近では七〇%にもなっている。そういうことを考えると、こういう現実に対して世界の潮流はこうだ、その上に立って海運方向はこうですというふうに御説明をいただかなければちょっとわからない。わからないままに、とにかくけしからぬやつが出てきたから対抗立法をつくって、抜きはしないけれどもひとつ腰に帯刀させてくれと言うのだな。これは芝居ならばいいのですよ。しかしこれは少なくとも国家政策として国会で法律に仕立て上げるのですから、あいまいでまあ何となく持っていればいいのであって、そのうち方針を決めますから一応床の間の飾りにしておいてくださいよというようなことかもしれませんけれども、それでは困るので、いわゆる原則的なことをお伺いしたい。いま申し上げたように、さま変わりになっているのは内外ともにさまが変わっているわけですね。条件が変わってきているのですよ。だから、いままでの海運政策というものはそれでいいのかどうか、いいとするならば、これに合っているかどうかというのがまず先に論じられなければいかぬですね。そうじゃないですか、いかがでしょう。
  36. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘のとおり、内外ともにさま変わりの時期である。ただいまの時点で、政策の基本的なポイントをぴちっと決めるのがなかなかむずかしい時期であると私は思います。  第一点についてさらに私の説明を補足させていただければ、同盟憲章というのは御承知のように四、四、二の原則というものを立てております。これはまだ発効はしていないけれども世界の大部分の国々でこれは一つの穏当な考え方であるということが、言わず語らずのうちに考えられている一つ考え方であろう。これは先ほどから申しますように、今後日本国と他の国、これは恐らくは自分の国の海運をどんどんふやしていって日本国貿易に参加をしようという意欲を持ったその国の政府というものとの話をするについての基準は、やはりそこに求めるべきでありましょう。ただ、そういう国がある場合とない場合がございますし、いまだってゼロの国はございますから、今後日本貿易は四割を日本船をもってやるべしといったような政策を立てるという意味ではございません。そういう意味では、四、四、二の同盟憲章に盛られた考え方というものは、今後の日本海運というものを他国の海運との関係で論ずる場合には唯一の貴重なる基準でありましょう、そういうことでございます。  第二に、海運政策とは何ぞやという御質問でございます。確かに従来の日本海運についての政府のやり方というものは、物資の安定輸送といいあるいは貿易収支の改善といい、日本海運の健全なしかも適当な規模の発展、維持、整備というものを一つ政策の目標にとらえてやってまいりました。御指摘のように、日本に籍を置き日本人の乗った日本の船というものだけで、日本貿易というものをいままでどおりにカバーしていくには、日本の船の国際競争力というものがなかなかむずかしい事態に立ち至ったというのがただいまの状態でございます。これから先の日本海運というものがどこに焦点を置いて、そしてこういう事態にどういうふうに対処するかということにつきましては、御承知のとおりに昨年の十一月に海運造船合理化審議会に御諮問申し上げまして、昨年以来たしか五回にもうなったかと思いますけれども、今後のそういった新しい事態についての海運政策というもののあり方についての御審議をいただいている途中でございます。  御審議の結論については、とやかく私が申し上げることではございませんけれども、やはりただいままでの御審議の経過では、いまのような事態になった場合の日本海運の意義というものを改めて問い直す。私は、やはりいかに船員コストが高かろうとも、そこにはいろいろと今後努力をいたす余地がございましょうけれども、何とかして日本に籍を置き、日本の人が乗った日本海運というものがある程度必要であるという日本海運の意義の見直しというものがただいまの審議会の御議論から出てくるであろうと予想しております。また同時に、それだけでは結局コストがうまくいかないので、いろいろな形の外国籍の船というものの意味をあわせて認識をいたさなければならぬかと思います。しかし、いまいろいろと御審議の途中でございまして、ただいまの段階で私からとやかくのことを申し上げるだけの自信がございませんけれども、今後の日本海運というもののあり方については、従来と違って、将来このまま進んでいけば運航費の高いことによって商売上少しずつ成り立たなくなっていくこの日本船というものに対して、どういう形でそれを存続させるような手が打てるのか、あるいは外国用船というものを一部チャーターして全体として採算をとっている日本海運の経営というものをどういう形で落ちつけるように持っていけるのかということに対する対策というものが、今後日本経済にとって必須であるところの日本海運というものを事実上整備、維持する方策ではなかろうかと思っております。
  37. 久保三郎

    久保(三)委員 海運政策というのは、政府ではわからないのですか。どうやったらいいかわからぬで、これからの海運政策はどうあるべきかお尋ねしますということで、白紙で諮問しているようですね。そういう政府を雇っておくつもりはわれわれはないのです。ただ、こういう政策をこういうふうにしたいと思うが、これで足りるでしょうか、いかがでしょうかというならば、これは諮問というのですよ。全然白紙の立場で、最近そういうのがはやっていますね。そういう政府は雇っておくつもりは、われわれ国会議員としても国民としてもないのですよ。しかも、専門的に四六時中それをお扱いになっているブレーンがいるわけでありますから、当然何らかの方針があってしかるべきなんで、しかし間違っては困る大事な方針ですから、こういうふうにしたいと思うがどうだろうかという諮問の仕方ならいいけれども、全然しらふで、どうでしょう、どうやったらいいんでしょう、お聞かせください、これは不見識じゃないかと思うのですよ。しかも、お聞きすればそれほどでもないんだな。やはり幾らか考えは持っておられる。たとえば、UNCTADの精神は、これを踏まえていくことが正しいと思います、そういう御答弁です。そうなると、どれが本当なのかよくわからぬ。対抗立法はそれじゃ何でいままで出さないで来ているのか。この立法を何年か考えてきているわけです。考えてきてもどうにもならぬから、海運政策が確立するまでの間にさしあたりこの立法が必要なのかどうか。しかし、これを見るとさしあたりとは書いてない。へ理屈を申し上げるようですが、われわれとするとどうも少し不見識ではないか。海運政策の片りんでもきちんとして、大ざっぱでもいいから、そうしてやっていいなら別だ。いろいろな手がありますよ。ことしの予算のつけ方でも、仕組み船に対する日本船員の配乗については、船員局の予算の中には、これは奨励金十二万円か何か出すという予算がありますね。私はこれにてっぺんから反対ということではありませんが、政策は何だ、方針は何だ。だんだん現状を追って政策が展開していくという後追いで、これは政策じゃないです。後から追っかけて歩いているのですね。こういうやり方では、われわれとしては安心してお任せできないような気持ちもあるのです。断定はしませんよ、失礼ですから。断定はしませんが、少なくともそれでは少し不見識ではないだろうか。  いずれにしても、おわかりにならぬことは聞いてもしようがないですな。これは改めて集中審議でもしてやるほかないんじゃないですか。海運政策というのは、内外ともに、私も申し上げたとおり、あなたもお認めになったとおり、大きく変わってきているのですよ。いま提案しているのは、その大きく変わったものに対する一つの手当てにすぎない。あるいは、仕組み船に対するところの日本船員の乗船に対する助成金も、これは一つ対策にしかすぎない。基本的な対策ではちっともないのですよ。だから、その辺のところがどうもわれわれとしては納得がいかない点であります。ただ、向こうにぶん殴られてこっちはぶん殴る権利がないなんというのも、これも対等平等じゃありませんから、その面ではこの法律案には理解を示します。しかし、基本となった海運政策が白紙のままで諮問しているという態度は、私は何としても納得しない。また、それもいまの御答弁ではちっともよくわからぬ。  それで、さしあたりこの十二日からジュネーブの海運委員会ですか、開かれますね、どなたがいらっしゃるのですか。局長がいらっしゃるのですか。
  38. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 外航課長を派遣いたします。
  39. 久保三郎

    久保(三)委員 外航課長に局長なり大臣はいかなる指示を与えていくのですか。この委員会では何を議論して、どういう方針をお持ちでいらっしゃるか。時間もありませんから、簡単にお述べください。
  40. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 ただいま話題になりました同盟憲章でございます。同盟憲章はいまのところ非常に批准国が少ない。この同盟憲章をいかなる形で、せっかくでき上がった条約案文を世界の今後の秩序としてどういうふうに持っていくかということが一番大きな問題でございます。ただ、これはいまここで各国集まってがたがたやりましても、ヨーロッパ各国の中で特殊な問題が起こっておりまして、ヨーロッパ海運国がてきぱきと同盟憲章を批准するということができないような状態になっております。そういうことで、しからば同盟憲章をいつまでも実現することができないのであれば、ここで多少手直しをしたらどうか、先進国の一部あるいは低開発国の一部にそういう意見がございます。そういったようなことが、今後の同盟憲章の取り扱いをめぐっていろいろと議論になることが予想されます。  私どもは、この同盟憲章というものは、先ほども申し上げましたけれども、七四年に非常に微妙ながたがたした結果採択をされたものでありますけれども、これ以上これから条文を手直しをするということは、世界海運の新しい秩序を早くつくる上では適当でないという考え方でこれらの国の動きに対処するつもりでございますし、またヨーロッパ諸国がローマ条約だの何だの言っていつまでも条約の批准に踏み切れないでいるということについては、それらの国を説得して、できるだけ早くこの条約に踏み切れるような、そういうふうな措置をとってくれるように働きかけるべきではないかと思っております。そのようなことが、出席者に対する私どもの感じでございます。
  41. 久保三郎

    久保(三)委員 おいでになるのは、UNCTADの憲章についていろいろ議論もあるようだから会議に出席するわが方はどういう議論を持っていくのか。簡単に。
  42. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 同盟憲章をいまの条文のままできるだけ早く多数の国が批准できるような情勢をつくるべきである、これがわが国の立場でございます。
  43. 久保三郎

    久保(三)委員 それにはそれに基づく確たる海運政策が必要ですね。そうじゃないかと思うのです。だから、この条約を批准した暁には、いまのままの国内海運の体制ではいろんな問題が出てくるのですね。  たとえば、そんなことは直ちにはないと思うのですが、四、四、二で、どこかの国と決めた。不定期船もこれに準じてやりましょうと発展途上国のある国は言うかもしれない。そうなった場合、いまわが国のオペレーターが運用しているものは半分以上は外国用船なんです。そういう歯どめがないところにいって、いまその国とは、わが方が大体七〇をとっている。今度は四〇まで後退する。四〇まで後退すると四、七の二十八ですから、邦船、いわゆる日本船籍の船は二八%になる。だから、二八%というのは——結局いまは五〇%だ。五、七で三五%が日本の船員が乗っている。一〇%日本の船員の配乗が減るというかっこうになるのですね。いまの外国用船に対する方針をきちっとしてあげなければこれはなかなか問題が解決しないと思うのですよ。船員局長もいらっしゃるけれども外国用船に対して船員局長はどういうふうに思っていらっしゃるのか。  五一%ぐらいになっているのですよ。五一%になって、しかも片方では予備率七〇%になっている。これはあたりまえの話なんですよ。何も不当でも何でもない。それをどういうふうに考えておられるのか、船員行政の中からひとつ考えを知らせてください。
  44. 横田不二夫

    ○横田政府委員 いま先生御指摘のように、外国用船がふえてまいりました事情については長い間のあれがありましてやむを得ない面があるかと思いますが、私ども船員の雇用の面を預かる立場からいたしますれば、日本船員の乗る船が絶対数において減ってくるということは決して好ましいことであるとは思っておりません。でき得べくんば日本人船員が乗り組んだ日本船舶、そういうものがもう少し多い方がいいのではないか。もっとも一切の外国用船なしで済ますというわけにもまいりませんけれども、私ども考え方はそういう立場でございます。
  45. 久保三郎

    久保(三)委員 よくわかりませんけれども、時間がないから次に行きましょう。  ただ、いまの日本海運を見ておる限り、国際競争力をつけるということで、そのためには従来は計画造船や集約あるいは利子補給、そういうものをやってきたわけですね、税制についてもそうなんですが。今度はそれでも間に合わぬ。結局船員費だ。だからこれは、世界に安いものがなければ別な工夫をして日本の船員は従来どおり乗せると思うのですよ。ところが見渡したところ、発展途上国といわれるような国々には安い賃金がたくさんちあるということで、低賃金を土台にした国際競争力をつけようという方向に曲がっていったのですね。これは決して経営の努力ではないのです。早く言えば人権を無視した努力なんですね。日本人も人間なら低開発国の人間も人間なんです。日本の労働者が労働者ならば向こうの労働者も労働者なんであって、どこかに安い賃金があればそこへ持っていこうというのは、言葉をかえれば覇権主義にもなります。そういうものは、言うならば、いまや新しい国際間の秩序というか、そういうものにはだんだん通用しなくなってきた。その一つのあらわれが、いまいわゆる対抗立法を出そうというようなまでになってきていることを考えておかないといけないのではないでしょうか。いつまでもよその低賃金に頼ってわが国の海運を維持していくというのは、長い目で見て私は誤りだと思うのです。採算がとれないから安くしようというのは、経済原則だから、これは結構です。よその国いわゆる先進国が全部そういうかっこうになってくる。そのうちに発展途上国が全部船を持ってくる、つくる。そうなった場合には、発展途上国の船には発展途上国の船員が乗ることになりましょう。     〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕 そうした場合に、日本海運はどういうふうに、どういうところに労働力を求めていくのかという問題になってくるのです。ことしは商船大学や高等商船というか専門学校卒業生で就職した者はまさに九牛の一毛というか、何人もいない。せっかく技術を持ちながら就職ができない。海員学校だけはやっと何とかなったという話を聞いておりますが、そういうものを総合的に考えないでやることには問題があると私は思うのだし、外国用船に対して明確な見解と方針を示していくことがこれからの海運政策の展開だと私は思うのです。少なくともいままでの傾向に歯どめをかけなければ、まごまごすると安定輸送にはならぬと私は思うのです。そういうことについてどう思いますか、簡単に。
  46. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 現在の船員制度を、現在の賃金水準のもとで日本人を乗せた船、日本籍の船でございますが、それが経済原則でうまくいかなくなった、それで外国用船がふえておるというふうに認識しております。ヨーロッパ人だって賃金水準はそんなに低いわけじゃないので、ヨーロッパ人の船員を乗せた海運というものは世界に堂々と動いておるにもかかわらず、日本人を乗せた日本海運が動けなくなるというのはどういうことだ、これが私どもがいま当面している問題でございます。日本人を乗せたまま日本の船として商売できるような条件をつくる、まずそれから手始めにいろいろと進めていかなければならぬと思っております。ただ、それについては先ほどおしかりを受けましたけれども審議会の諸先生のいろいろな御意見を承って、これからいろいろと手をつけていきたいと思っております。
  47. 久保三郎

    久保(三)委員 諸先生の話を聞いてからではきょうの話にはもう間に合わないからいいでしょう。  ただ、船員局長もおられるが、外国用船は単なる雇用の問題だけじゃなくて、海運政策の失敗なんですよ。あなたたちが責任を負うべき立場にあるのですよ。たとえば照国海運とか、そういうものは計画造船で銭も貸した、最近では何海運か、開銀融資を返してもらうのは一応たな上げして待ってみましょう。結局外国用船に失敗したわけだ。思惑でタンカーをいっぱい借りた。そのうちに油がだめになってタンカーが余ってきた、につちもさっちもいかなくなって照国海運は、倒産はしなかったかどうか知りませんが、これは海運局というか政府に責任なしとしませんよ。そういう集約をして、いわゆる政府資金を使わせて、船をつくらせてやってきたものが、いままでのそのとおりやっていれば、あるいは間違いなかったかもしれない。ところが、外国用船を自分の持ち船以上にどんどん借りて、油がなくなってしまった、それでどうにもならぬといって、これは店じまいというかっこうでしょう。そのあげくの果てには、いままでの海運融資を払うものは、しようがないからちょっと待ってやろう。やむを得ぬ場合は待ってやるのもいいでしょう。しかし、これは政策の失敗です。外国用船を大幅に認め、奨励はしなかったようだけれども、大幅に認めてきたところの海運政策の失敗だと思うのです。もっともいまの後藤局長の時代ではないかもしれませんけれども、前の人の責任ということになるかもしれませんが、いずれにしてもそういう責任を負うのはあなたじゃないかと思います。その責任を感じないでは、どうも話が違うのではないかと思います。これは一応訓示であります。どうせ答弁はもらえないでしょうから。  そこで、時間がありませんから、先に進みます。せっかくおいでの方々がおりますが、これはいままで対抗立法というか、この法律を出さざるを得ないような国々との関係交渉はしたのですか。交渉してもどういうふうにまずいのか、この対抗立法が出ればみんな片づくのか、そういう問題が、その点についてお伺いします。外務省では外務省のルートでこういう交渉は何回もやっておりますか。
  48. 山崎高司

    ○山崎説明員 先ほども申し上げましたように、一部の開発途上諸国におきまして差別政策がとられましたときに、まず第一の順序といたしまして、海運業者同士の話し合いが行われ、また必要な場合には外交ルートでの交渉が行われております。日本海運業者が実際上の被害を受けていると政府が認めた場合に、あるいは単独にあるいは先ほどからお話の出ております先進海運諸国と共同の形で、文書によるとかあるいは口頭によって外交交渉がこれまでも行われてまいりましたし、当然対抗立法を御審議いただいた後にも忍耐強い外交交渉が必要であろうと思います。そのような外交交渉の結果、相手方から処分が撤回されたとか改善を見た例もございますが、必ずしも十分な成果が上がっていないという例もございます。
  49. 久保三郎

    久保(三)委員 大蔵省おいででしょうか。この法律では一つの報復手段だと思うのですね。関税定率法の第七条には報復手段があるわけですね。こういうものは、たとえばいま審議中の法律のような事態が起きたときにも、私どもは適用できるのではないかというふうに思うのですが、それはどういうふうでしょう。
  50. 額田毅也

    ○額田政府委員 お答え申し上げます。  御審議賜っております法律は、外国の船舶の入港あるいは荷物の積みおろしといった問題に関する、先生のお言葉をかりますれば、一つ対抗手段としての法律でございます。それで関税定率法の七条の規定は、すでに先生御承知のように、わが国の船舶ないし航空機、あるいはわが国から輸出いたします貨物といったようなものが、特定の国におきまして、その国とわが国だけの関係ではございませんで、わが国と同様な第三国の船舶、航空機に関して比較いたしまして、不平等な扱いがあった場合の措置を定めておるわけでございます。したがいまして、当該国の船舶とわが国の船舶あるいは当該国の貨物とわが国の貨物関係ではございませんで、その国とわが国及びわが国以外の他の第三国の貨物の受けるべき利益の平等を保障する規定でございます。その場合に、関税定率法の定めは、御審議いただいております法律のような、船舶の積み取りとか入港とかということではございませんで、その国及びその国の貿易商品を指定いたしまして、その国及びその貿易商品に対して非常に高い関税障壁を設ける、こういう手段であります。したがいまして、ここで御審議を賜っております法律のベースとはやや異なる、いわゆる第三国と日本との間の不平等というものに着目した規定であるというふうに御理解賜ればありがたいと思います。  なお、お言葉にございましたが、これは報復関税という言葉で呼ばれておりますように、相手国のまた報復をきわめて呼びやすい関税でございますので、この取り扱いは非常に慎重に行わなければならないと考えております。
  51. 久保三郎

    久保(三)委員 次に、通産省にお聞きしますが、この法律が成立した暁においては、もしこの対抗立法が発動したら、貿易上の支障というのはほとんどありませんか。いかがです。
  52. 名取慶二

    ○名取説明員 この対抗立法が成立いたしました場合の貿易面の影響につきましては、私どももいろいろな角度から検討してまいったわけでございますが、要約いたしますと、二つの面が考えられると思います。一方におきましては、こうした法律ができまして、もしそれが直ちに発動ということではなく、いわばこれをバックにしました外交交渉が展開されて、その結果外交交渉が容易に進み、相手国の差別政策が是正されるということになりますと、これは荷主にとりましても制約がそれだけ少なくなるのでございまして、荷主としましてはサービスの面あるいは船腹量の確保の面、いろいろな面の制約がなくなるという点では、これはメリットであり、かつひいてはこれがわが国の貿易にとりましても、貿易の発展に資するというプラスの面が考えられるわけでございます。  しかし他方、本法のような対抗措置の発動を誤りますと、誤って発動されました場合には、これは荷主が困るというだけでなく、当該相手国との通商貿易関係にも非常に有害な結果をもたらし、友好関係を損なうということも懸念されますので、貿易立国を旨とするわが国としましては、これは非常に影響が大きいと言わざるを得ないと思います。したがいまして、こういった二つの面を持っておりますこの法律に対しましては、この運用は特にきわめて慎重にやっていく必要があるというのが基本的な姿勢でございます。  具体的には先ほど来もお話のありましたように、あくまでもこれの発動ということではなくて、外交交渉背景にして有利に展開していく、これをあくまでも主眼にしていくべきであるということでありますし、仮にこの法律の適用ということを考えます場合にも、これは運輸大臣関係各機関に協議することになっておりますので、慎重に協議をして、そうした弊害を最小限にとどめるようにしていきたいという考え方でございます。
  53. 久保三郎

    久保(三)委員 時間がなくなりましたから、港湾局の参事官にも、それから海上保安庁長官にもちょっとお聞きしたいのですが、この法律では入港を禁止したり、それから、荷物の積みおろしとか積み取り、こういうものを禁止するわけですね。入港の場合は港長の許可がなければ入港できないのでありますが、この法律を発動する場合は港長が入港を阻止するというか、禁止するわけですね。どういう方法をとりますか。それが一つ。  それからもう一つは、これは海運局に聞いた方がいいのかな。港湾荷役を禁止するというのでありますが、禁止するのは、その船に対して禁止をするのか、荷主に対して禁止するのか、それとも港湾運送事業者に禁止するのか。そして、禁止を犯してやったらば、ここに罰則があるが、これらが罰則の適用の対象になるのかどうか。海運局長、長い答弁はいいから、簡単に。
  54. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 禁止は船会社に対してやりますので、荷主に対してやりません。  入港を禁止した場合に禁止を犯して仮に船が入ってきた場合、これは非常に例が少ないと思いますけれども、そのお話でございますけれども、これは、目的があって船の入港を禁止したのでありまして、そのことによりましていろいろな関係のない関係者に商売上の影響を及ぼしたり、あるいは罰金なり懲役なりというものにかけたりするのはこの法律の趣旨ではございません。したがいまして、この法律の運用上の、法務省刑事局的な、共犯関係だとか、故意だとか、悪意だとかという議論がございますが、実際上の運用というものは、入ってきた船というものに対して、所定の手続を経て裁判にかけて罰金なり懲役を科する。綱を取ったとか荷物をおろしたとか云々というようなことは、この法律で言うところとは無関係というふうに運用するのがしかるべきかと思っております。
  55. 久保三郎

    久保(三)委員 こちらに弁護士の人、法律学者がいるのですが、後で聞いてもらいますけれども、あなたおかしなことを答弁しますね。法律の運用というのはあるのですか。罰則の適用で運用というのは余り聞いたことないのですけれども、やっちゃいかぬということで、やったら罰金にする、懲役にするというのは、やったら直ちにそういうことになるのが常識でしょうね。ただ情状酌量というのがありますね。知らないでやったとか、強制されてやったのでしょうがないということでありますが、それはどうなっているのですか。政府部内での詰めは。簡単に聞いておきます。
  56. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 私が申し上げましたのは、命令に違反したのは船会社であり、また船会社の使用人である船長であるという理解でございまして、いま先生が御指摘になりましたいろいろな方々のこの法律との関係は、故意でこの同じ違法行為にかかわったのかどうかという判断の問題かと思います。
  57. 久保三郎

    久保(三)委員 いろいろな事業というのは法令に従うことを前提にして許可されているのですよ。法令に従わないやつはだめだと思うんだな、理屈かもしれませんが。そういうことはないと思いますよ。抜かない抜かないと言うから、何のためにつくるのかよくわからないけれども、その点についてはいかがですか。
  58. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 海上保安庁の部内で打ち合わせをさせてもらいます。大事なことだと思います。
  59. 久保三郎

    久保(三)委員 この法律ができたら、いまあるそういう不当なものをどこまで回復するつもりなのか。たとえばブラジルとかあるいはベネズエラ、アルゼンチン、そういうところは一〇〇%自国船だということになっているとすれば、交渉をするのに、どの辺まで回復すれば法律が発動しないのか。国々で違うとは思いますけれども法律をつくるからにはおおよそのめどというものがあるわけでしょう。そのめどはどうなんですか。
  60. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 先ほどお答え申し上げましたようにいろいろと事情が違うと思いますけれども、めどいかんと言えば、同盟憲章という形で、世界的に大部分の人がここいらがもっともであるなあ、こう考えておる基準、まだ発効をした条約では、ありませんが、これが一つのめどであると思っております。
  61. 久保三郎

    久保(三)委員 そうすると、できなくてもやむを得ぬという場合だな。現状のまま進まぬ場合もあり得るということだな。そうですね。
  62. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 やはり具体的なケースはたくさん起こり得るわけでございましょうから、ただいまの御質問に、そうじゃありませんというふうにお答えする元気はございません。
  63. 久保三郎

    久保(三)委員 それはあり得るのですよ、伝家の宝刀だから抜かないのだから。これははっきり言うと、現状がさらに前進しない場合もあり得るという法律なんだ。そうでなければ抜かなければならぬ。抜かぬと言うのだから、外交交渉なりあるいはオペレーターの交渉で、わが国でもこういう法律がありますから、いざという場合には差別しますよと言うだけだと、言うなら、なめられないために必要だということでしょう。そうじゃないですか。どこまでもやると言うなら抜かなければいけませんよ。その辺のところが大事ですよ。だから、ここで現状が、これが出ても改善できない場合もあり得るかもしらぬということはあると思うのだな。別にそれが不当だとかなんとか言っておるわけじゃないですよ。現実にそういうことがあり得るのではないかということを私は言っている。そんなことがわからぬというのでは、ちょっと伝家の宝刀との話が平仄が合わぬよ。
  64. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 この法律がない現状とこの法律が施行されたときの状態との違い、これは第一に、この法律がありますよということがわかった上でのいろいろな交渉事が外国とやれる。いままでそういうものなしでやっておった外交交渉というものより迫力を持ってやれる。またそれはやります。その結果どうなるか、抜くか抜かないか、抜けるように法律をお願いしているわけでございます。抜くについては慎重に考えさせていただくということは、るる御説明申し上げたとおりでございます。
  65. 久保三郎

    久保(三)委員 そうしますと、いままでの議論では伝家の宝刀だから抜かないのですよということを強調し過ぎているようだ。法律をつくるからには、それは伝家の宝刀を抜く場合があり得るということを言うのが本当なんで、その辺のところがちっともわからぬでは、法律をつくる効果はないと思うのだ。  いずれにしても冒頭お尋ねした運輸大臣、きょうはかぜを引いているんでしょう、おかげんが悪くて熱っぽいようだから余りお聞きしなかったんだが、海運政策というものを御諮問なさっているそうですか、諮問は諮問としてやはり内部的にある程度まとめておく必要があると私は思う。それで、それがコンクリートされたものでなくていいのですよ、たとえば当該の委員会に、こういうことを考えていますとか、そういうものを明らかにする義務があると私は思うのですよ。  そこで最後にもう一つ言いたいのは、外国用船をどんどん使っていくということに対して歯どめをかける必要があると私は思うのです。歯どめなしでやられたのじゃ、これは何のための、しかもいま二百海里の問題が出て漁船船員はいやでもおうでもおかへ上がらざるを得ないような立場も出てくるわけですね。その上に今度は外国用船がだんだんふえてくるといったらば、これはまたおかへ上げる。おかへ上げてもどこへ持っていくかという問題がある。これは雇用の問題としては大きな問題でありますので考えてもらわなければいけませんよ、歯どめについて。  それからもう一つ、これは海運局長の方だと思うのだが、近海海運問題調査会、これは関係人たちも入れてやっているわけだが、閉店休業だそうだな、開店休業じゃなくて。これは困ったものだと思うのだな。外国用船がこれまでふえて、しかもそれは近海船、小さい船ばかりだ。外国用船は重量トン三万トン以下が大半なんだな。大きな船はほとんどないです。そういうものを前提に置いて、いま雇用の不安があるさなかにそういうものをそのまま何にもやらぬでいること自体私は怠慢だと思うのですよ。対抗立法をつくるのも必要かもしらぬが、まずそんな問題を片づけることも考えてもらわなければいかぬ。これは即刻開いて、いかなるものをやるか、これはきっと船員局長が中心だな、これは運輸大臣、ぜひ開かせて対策を立ててもらいたいというふうに思います。いかがでしょう。
  66. 田村元

    田村国務大臣 先ほど来の御質疑、私大変勉強になりまして拝聴、謹聴いたしておりました。おっしゃることまことにごもっともな面が多いと思うので、きょうの御発言の御趣旨を体しまして早速いろいろな、会議を開くとか、そういう問題について処置をいたすべく指示をいたしたい、こう考えております。
  67. 横田不二夫

    ○横田政府委員 お答えいたします。  船員の雇用の立場から見た外国用船の今後のあり方等につきましては、これはただいま船員中央労働委員会で船員の雇用の今後のあり方につきまして長期的な考え方を諮問しております。その中で、雇用の面から見たいろいろなお考え方が示されれば、またその中には産業政策としての海運政策に対する要望も出てくるかと思います。そういうものを踏まえて今後海運局とよく相談してやってまいりたい、かように考えております。
  68. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 外国用船に歯どめをかけろという御趣旨のお話でございます。外国用船がふえる、日本人の乗った日本船を持たぬからふえる、それを持たせるようにすることが、先ほど申し上げました私ども考え方でございます。荷物があって持つ船が少なければ外国用船がふえる。これをとめ得る手段というのは、ただぱっととめればそれだけ外国船会社がその商売がふえるということにつながるかと思います。  近海海運問題調査会につきましては、関係者のお話を精力的に聞いて、そしてしかるべき措置をとります。
  69. 久保三郎

    久保(三)委員 一言だけ海運局長、いまあなたが言った用船をとめれば外国船がそれだけかせぐなんという、そんなことをやらせるようなら政策は要らないのです。これは後でゆっくりやりましょう。  以上で終わります。
  70. 大野明

    大野委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  71. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田畑政一郎君。
  72. 田畑政一郎

    ○田畑委員 今度出されましたこの国旗差別主義に対する対抗措置法律案というのは、これだけを見ますと、ヨーロッパ各国におきましてかなりこういう法律があるというようなことが理由になっておるわけでございます。しかし私はいろいろな情報を総合してみまして、この法律が出てきたということは、日本の通産省あるいは海運業界がいろいろな意味で、これだけでなくて、いろいろな諸政策をつなぎ合わせて、ある種の転換を図ろうとしておるところの前ぶれではないかというような感じをもって受けとめておるわけでございます。そういう意味におきまして、従来はいわゆる公海自由の原則というような一本やりの考え方でございましたが、その考え方をここに大きく修正してきている。また後でいろいろ問題にしたいと思うのでありますが、マルシップ問題等につきましても、どうも最近新たな、これを認知しようといいますか、そういった方向というものが運輸省の中に見えておるようにも思います。そういう意味では今回のこの問題は、言うならば海運行政の大きな転換というふうに私は受けとめておるわけでございますが、果たしてそういうふうに受けとめていいのであるかどうかということをお伺いしたいと思うのでございます。
  73. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 お答えいたします。  今回の対抗立法の御審議を願いましたこれが一つの契機となって、あるいはこれを契機として外航海運についての政府考え方をいわば大きく転換させるきっかけとするというふうな考え方ありやなしやというような御質問であるというふうに理解をいたしまして、御答弁を申し上げます。  客観的に見まして、このような法案を改めて国会で御審議をお願いすると否とにかかわりませず、今日の日本海運というものは、いろいろな外国との関係におきまして、あるいは午前中御議論がございました対内的な関係においても大きな状況の変化というものに際会いたしておりまして、好むと好まざるとにかかわらず、新しい事態に対する対応を迫られていると申し上げても間違いではないと思います。  ただ、今回御提案申し上げましたこのいわゆる対抗法案は、たびたびこの席で御説明申し上げておりますように、ヨーロッパ海運国が十年前に漸次それぞれの国の国内法として制定をしましたものとほぼ同じような内容のものを、大体十年ぐらい前にヨーロッパ海運国が経験をいたしましたと同じような経験に基づいて今回御提案申し上げたということでございまして、客観的には、こういった法案の御提案とは無関係にわが国の外航海運は新しい事態に対する対応を迫られているということは言えましょうけれども、この法案の御提案を一つの契機にしてどうこうというふうなことを政府なり何なりとして方針を決めているわけではございません。  ただ、一言お断り申し上げておきますけれども、このような法案を国会に御提案申し上げるということは、過去における外航海運の運営面について日本国で新しく法律を制定するということは戦後三十年の歴史においても非常に珍しいことでありまして、こういった法案の御提案を申し上げるということがあるいは一つのきっかけになって、いま対応を迫られておりますいろいろな問題をさらに今後日本国内法案として国会に御提案申し上げる二回目、三回目の問題がこれに引き続くことがきわめてあり得べしという状況でございまして、結果、後から振り返ってみれば、今年のこの御提案が一つのきっかけになったというふうなかっこうになることは、あるいはあり得ることかと思っております。
  74. 田畑政一郎

    ○田畑委員 私がなぜそういうことをお聞きするかと申しますと、実は海運局長はことしの二月四日に日本海事新聞に記者会見をされております。その中に、私がいま申しましたように、この対抗措置法案というのは第一段階の皮切りである、そしてここでひとつ通りやすいムードをつくりまして——そこまておっしゃったかどうか知りませんが、新聞に書いてあるとおり申し上げると、その次には「そのあとムードを盛り上げながら第二、第三の措置取り組んでいきたい。」また前文には「盟外船規制をはじめ」ということもついておるわけでございます。そうであるとしますれば、この法案をまず審議するに当たって、大体日本海運行政はどういう方向を志向しているのか、その中においてこの立法がどのような位置を持っているのかということはやはり国会議員として確かめておかないと、ただこれ一つだけ切り離して問題を論ずるということではどうもわれわれの責任が果たせないというふうに私は思うわけでございまして、あなたが胸のうちに思い浮かべていらっしゃる第二、第三のいわゆる政策というものをここであらかたお話しいただきたい、こう思うわけであります。
  75. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘になりました新聞記事のもとになるようなことを新聞屋さんにしゃべった記憶が明確にございます。  それは、いまの御答弁の後段においてちょっと御説明をさせていただいたことに関連がございますが、やはりだれがどのように考えましょうとも、今回御提案申し上げましたこの法案が触れておる問題と触れてない問題があって、触れてない方の問題は、いわば積み残されて、この後で処理をし検討さるべきものとして残っております。それは、この法案が南北問題の処理として一つの回答を出したのに比べまして、午前中にも御説明申し上げました東西問題の回答はまだできていないわけでございます。海運における東西問題の国内法としての処理はなかなかむずかしいと私は判断をいたしておりますけれども、むずかしいからといってそれの対策を練ることを怠るわけにはいくまいかと思いまして、一つの今後の課題としてわれわれに残された問題でございます。  残されたもののもう一つの問題というのは、やはり午前中にいろいろ御議論のございました運賃同盟憲章の批准でございます。運賃同盟憲章は、七四年に国連の会議において多数をもって採択をされまして、今日各国の受諾を待っておる状態でありますけれども、ただいままでのところこれに対する批准をした国はきわめて少ない、海運国のほとんどがまだ全然批准の動きを見せておらない。しかし、これも、いずれは、このような条約を日本国として批准する、しない——するべきであると思いますが、また、するについての日本国内法制の整備いかん、こういったような問題がやはり近々にわれわれの将来に課題として残っております。そういう問題を当然に、どのようにいつ解決するかは別といたしまして、担当の役所としては検討を進めていかなければならぬということを考えておりますが、御指摘になりました新聞記事のもとになった、しゃべりましたときの私の念頭にございましたことは、いま御説明申し上げたとおりでございます。
  76. 田畑政一郎

    ○田畑委員 いまお話しがあったことで多少輪郭がつかめたわけでございますけれども、もしそうであるならば、この運賃同盟憲章につきまして、これを批准してから本法律を国会に提出されるということをとられましても、そう長時間かかるものではないんじゃないかと思うわけでございます。  なぜ私がそういうことを申し上げるかと申しますと、この法律の制定にはいま政府が言われておるほどの緊急性があるのかどうかということに実は疑問を持つわけでございます。なぜそう申すかといいますれば、わが国は御案内のように貿易立国であります。しかも船舶の量は御案内のとおり実質的に世界第一、こういうことに相なっておるわけでございます。そして、運輸省から出てまいりました資料によりましても、マクロ的に見ますると、輸出におきましては積み取り比率は、日本船輸送量と外国用船輸送量と二つ足しまして五四・八%でございます。それからまた、輸入におきましては、これはぐっと高くなっておりまして七四・九%の積み取り率を持っておるわけでございますね。そうしますると、先ほどお話しのございました運賃同盟憲章等によりましても、四、四、二という比率から申しますると、わが国は全体として積み取り比率が高いわけでございます。われわれがいまここでこの法律対象としているのは、恐らく後進国の、いわばわが国に比べまして工業力も、いろんな面で非常におくれている国を対象としていると思うのでございまするが、そういう小さいところにこだわって、わが国の基本的な立国の方針であるところのいわゆる貿易あるいは平和とか公海自由の原則というのをここにゆがめるということが、果たして得なのかどうかということを私は考えざるを得ないわけでございます。そういう意味で、いまここにどうしてもこれを国会を通さなければならぬという緊急性は乏しいのではないかというふうに考えるわけでございますが、この点について、いかがでございましょう。
  77. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御説明申し上げます。  コードが先ではないか、対抗立法は急ぐ必要はないという御趣旨の質問だと承知いたします。ただ、先ほどから御説明申し上げましたように、今回お願い申し上げております法律案が、新しい海運の南北問題に対応するいろいろと対策がございます中の一つ対策として、古くからたくさんの海運を持って世界で大きな活躍をしております海運国が、すべて十年ぐらい前から逐次国内法として整備をしてきたものでございまして、そういった関係から言えば、日本国がことし国会の審議をお願い申し上げるというのはむしろ遅きに失したという感じが強いわけでございます。もちろん、午前中に御説明申し上げましたように、極東日本というものとヨーロッパ各国との間の、そういった新興海運国被害を受ける時期なり程度なりに若干の差があったという事実もございます。また、国内の意見の調整に時間をかける必要があったということもございますけれども、現実にただいままで私どもが経験しております新しい国際海運の秩序づくりという動きの中で、日本国立場というものを、日本国のいわばそれこそ経済貿易、外交全体を通じまして適当な場所にみずからの地位を守るための諸外国との交渉というものは、このような法律なしでやっておる、単なる陳情外交に終わっておる状態では、なかなかうまくいかぬのであります。  しからば同盟憲章はいかがかと申しますと、同盟憲章は、ただいまも申し上げましたとおり、船を持っておるいわゆる先進国はもちろん、船をいま盛んにつくりつつある国も含めまして、直ちに多数の国がこれを批准して、年々批准国がふえていって、近々発効するというふうな状態にはなっておりません。  特にEC加盟国の間では、ECの基本条約であるローマ条約と、このコードに加盟することとの条約上の抵触がある、ないという争いがございまして、EC加盟国、すなわち海運国の大部分がそれに入っでおるわけでございますが、EC加盟国は、いま直ちにこのコードをそれぞれの単独の国として批准する行動に出られないような事情になっておる模様でございます。したがって、コード条約というものはそれなりにいろいろと意味のある条約である、また世界関係国が早く批准をして有効な条約とすることが望ましいとは申せ、現実にそれが世界の大多数の海運国及び新興海運国がこれを批准して、有効な条約として使えるような日が来るのは、われわれの願望とは別にやっぱり相当に時間がかかるものと見なければならぬかと思います。  先生は、海運白書の日本の積み取り比率の数字を御引用になりましたけれども、午前中も御説明申し上げましたとおり、コード条約が発効する、しないにかかわりませず、七四年の条約の採択に至りますまでの四、五年間の国際間の熱烈なる討論の過程におきましてやはり四、四、二と、つまり貿易当事国は均等に海上貿易に参加する権利あり、もし第三国がその航路に存在しているならばその第三国にも適当なる割合、たとえば二〇%が与えられるべし、この原則というものは穏当なもっともな考え方であるということは、条約が発効する、しないにかかわりませず、国際間で議論をされた一つと申しますよりも唯一の基準なんでありまして、こういったようなものについて今後この日本関係の同盟をめぐって先進国、後進国海運がいろいろと交渉をしますについて、それは一つのめどになりましょうし、また今後日本政府といたしましていろいろな関係国と政府間の交渉をいたしますについても、この四、四、二というものはめどになりましょう。その御引用になりました海運白書の数字は、これはトン数でございますから大部分がたとえば原油であり、鉄鉱石であり、そういう不定期貨物の数字が相当の部分でありまして、その中に含まれておる定期船の貨物のトン数というのはきわめて少ないわけです。したがって四、四、二というのは、これは定期船運賃同盟の基準なんでありまして、これと四、四、二というものとを結びつけて私どもは考えておりません。
  78. 田畑政一郎

    ○田畑委員 先ほど御説明があった際に南米各国の二、三の国の名前をたしか挙げられたと思うのでございますが、たとえばブラジルでございますね。ブラジルにこの対抗法を適用するということになれば、どういうことになるでしょうか。わが国はブラジルに経済進出をいろいろな意味で図っているわけですね。それからまた、ブラジルからはわが国の鉄鉱石の二二%を輸入しているわけなんです。そうすると、ブラジル海運のいわゆる育成のために、いま不公平が行われたということからして直ちにこの対抗手段を講ずることができるかどうかということになると、これは国民経済との関係から見ましてそう簡単にはいかないと私は思うのですね。そうなると、せっかくこれをつくっても、そう余りいま急にこの法律をもっておどすというわけにはいかないということが考えられるわけですね。そういう国は後進国に多いわけです。わが国はそういう国からいろいろな原料を買っております。インドネシアがそうです。フィリピンもそうです。南米に対する経済進出はだんだん激しくなっているんですね。そういうことを考えると、これは船だけの問題で論じられるかどうかということを考えるわけでございまして、別にこの法律をつくらなくても、いわゆる外交折衝その他によっていろいろなマクロ的な意味でバランスのとれた折衝ができるんじゃないかというふうに思うわけでございますが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  79. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 比較の問題であろうかと思いますけれども、これまで海運の問題について外務省も煩わせまして政府間の交渉をたびたびいろいろな形でやってまいりましたけれども、その経験に徴しますならば、それはこういったような国内体制というものを、つまり言いかえればこれは先ほどから伝家の宝刀だの何だのという刃物にたとえて御説明をいたしましたし、またそのような御議論がございましたけれども、まあトランプのカードでございまして、こちら側に持ち札がなければ勝負にならないというような意味でのこちらのカードでございまして、もちろん刀でもカードでも同じでございますけれども、そういうものがない交渉というものはこれはなかなかむずかしいというのが、これまでの私どもの経験でございます。  それから、交渉というものは国と国、政府政府の間でやるのであるからして、船の方の利害というものはそれ以外の分野の利害と調整することによって話がつくのではないかなという御意見でございます。ごもっともなお話でございますけれども、たとえば航空の問題につきまして日本国と他の国といろいろと交渉しております。そのような経験に徴しましても、他の分野というものを引き合いに出して、そして航空の分野でたとえばプラスをする、ほかの分野でマイナスをするというふうな交渉の押しつけ方というものにつきましては、これは言うは簡単であるけれどもなかなかむずかしいものである。また、そこいらのことから申しまして、航空のプラスとほかのマイナス、航空のマイナスとほかのプラスというものをかち合わせるという妥協の形というものは、どちらかと言えばやりやすいものであり現実的なものであるというのは、私どもの経験からしてもそういうことでございます。もちろん午前中もいろいろ御議論がございました。これでもって経済上の関係、外交上の関係あるいは日本貿易に及ぼす影響といったようなことを深く考えもせずに、関係官庁との十分な協議も調えずにたちまちこの法律を発動するといったようなことは断じて考えておりませんし、やはりこの法律というものは、このようなカードをポケットに入れてたとえばある国との間の海運についての交渉、おまえのところは少しひど過ぎるぞとか、ここいらが穏当なところじゃないかというような、そういったような交渉に使うというところに実際上の大きな意味があるものと考えておりますし、またそれはそれだけに大きな効果、成果があるものと考えております。
  80. 田畑政一郎

    ○田畑委員 先ほどからいろんな方が聞いておられるわけですが、やはり法律をつくる以上はこの法律を適用するということは当然予想しなければならぬと思う。適用も予想されない法律を、いま海運局長がおっしゃったようにただ単にカードとして、自分の手持ちのものとして持っているというだけではいけないのであります。いつかはやはり振り込まなければならない。そうすると、振り込む場合があるということはわが国としてもやはり予想しての立法措置だと思うのですね。その場合に、一体何を基準にして振り込むのか、どの程度になったら振り込むのかということについては、実はこの法律を読んでいる限りにおいてはまことに不明確でありまして、振り込むようにも見えるし振り込まないようにも見える。玉虫色と言うのですか、どっちにもとれる。それでは私どもこの問題を審議しておりましても、これを通すか通さないかということの腹はやはり固まらぬのじゃないかと思うのです。だから、くどいようでございますが、どの程度のときにわが国は不利益立場に立っておるというふうに認めるのか、あるいはこの法律をもって制裁を加えるべき著しい不利益なときというのは一体どういうような状態のときであるのかということについて、お伺いをいたしたいというふうに思うわけでございます。  実はその前に、これも運輸省からいただいた資料によりますと、国の名前は明確になっておりませんが、A国におきましては、六年前にはその国の輸送量が二%でありましたけれども今度は六五%になった。その結果邦船が圧迫されている。それからB国におきましてはゼロであったものが、これは恐らく船がなかったのじゃないかと思うのですが、六年間に五三%になりました。そしてわが国は、九七%あったものが一二%に減っている。それからC国におきましては、これまたゼロであったのが五一%になっておる。その結果、わが国の船が圧迫されている。こういう数字を三ついただいておるわけでございます。これはまことに顕著な例でございまして、一体こういう場合は、恐らく不利益の場合として出されてきたのだと思うのでございますが、もし、これを通告なさって六カ月なりたってこれが改まらない場合にはどうするのか、どの辺を限度とされるのかということは一応お伺いしておきたい。
  81. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 この法律が施行された後、この法律をカードとして交渉をどのように進めるかという具体的なことについて御説明はできないかと思いますが、午前中も御議論がございましたが、基準として考えれば、これは日本国とある国、それがたとえば新興海運国だといたしまして、その国との間の貿易というものについて、日本という相手国海運との間に均等の割合を持つべきだという相手国の海運の主張というものは、これは尊重しなければならぬであろう。そして、もし歴史的に日本でもない相手国でもない船会社というものが古くからその航路に就航しているという事実があるならば、それに出ていけと言うわけにはいかぬであろう、それにも相当な割合とシェアというものが与えらるべきであろう、これが基準でございます。これが午前中にもお話しいたしました四、四、二の基準でございます。考え方でございますから、それはどこまでやって、どういう交渉をやって、いつどうやるかということを抽象的に私は申せないと思います。そういう状態にほど遠い状態であるにもかかわらず、日本国の大きな歴史的なシェアというものを守るために日本政府がこの法律に基づく権利を振り回すということは、これは適当でない。また、その相手国の海運がイコールのシェアという考え方を大幅に踏み出したような考え方を持ち出してくる場合には、それはやはりわが国としては認めることはいかぬだろうと思います。
  82. 田畑政一郎

    ○田畑委員 いろいろ申し上げたいことはあるわけでございますが、先ほど冒頭述べましたように、どうしても後進国を相手にこの問題は出てくると思うわけです。わが国は貿易立国といたしまして、鉄鉱石にいたしましても、また石油にいたしましても、ニッケルや木材等にいたしましても、世界の中でそれぞれ半分くらい、石油は別としまして、半分くらい買っているわけですね。だから、そういうことを考えますと、ただこの法律を適用すればいいというものではないと思いますので、私はやはりそういう点を十分考慮してやらなければならぬのじゃないかと思います。  それから、実は一昨日六日の夜、松山市沖合いにおきまして、原油を積んでまいりましたパナマ船籍の九万トンの大型タンカーが日本籍の貨物船と衝突をいたしまして、火災を起こしました。非常に大きな事故が発生をいたしたわけでございますが、この事故はどういう形で起きたのか、簡単にひとつお話しいただきますと同時に、これはパナマ船籍の大型タンカーでございますので、これに対しては、わが国は当然何か問題があればそういう損害補償を要求することができるのじゃないかというふうに思いますのと、また、このパナマ船籍の大型タンカーに日本の船長が乗り組んでおったということも、これもちょっと異な話でございまして、ひとつ乗組員の状況というものについて御説明いただきたいと思います。
  83. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 事故の詳細な御報告は、またしかるべき者から改めてさせていただきたいと思います。  御指摘のように、松山沖で衝突をいたしました一方のタンカーはパナマ籍の約九万重量トンのタンカーでございまして、もう一方の船は幾春丸と申しまして、これは純然たる日本船主が所有し、他の日本船主用船しておった貨物船でございます。パナマ籍船の方には、御指摘のように船長さんは日本人でありまして、このほかにこの船には日本人が、船長さんを含めて四人乗っております。  まず第一に、補償関係でございます。タンカーの事故でございまして、衝突による船体の損傷あるいは積み荷の損傷云々、これは商業上の保険でカバーをされます。油が流れ出したことによります漁民その他のお方に対する油濁損害の補償につきましては、昨年この運輸委員会において御審議をいただきまして成立をいたしました油濁損害賠償補償法、これによりまして、日本に入港する二千トン以上の油を輸送するタンカーはすべてそのような事故による油濁損害の賠償保険をつけていなければならず、つけておりますということを日本の役所に証明をしなければ入れないことになっておりまして、もちろんこのアストロレオ号はアンリミテッド、青天井の賠償保険を付保しております。  また、同じ御審議をいただきましたこの油濁損害賠償補償法によりまして、過失の有無にかかわりませずタンカー船主がこの賠償責任に任ずるわけでございますが、一方で、その責任金額はその船のトン数でそれを制限することができる旨の規定がございます。はっきりわかりませんけれども、この船の大きさから言えば、このタンカーの責任金額は約二十億円程度であろうかと思います。これを上回る損害が出ました場合には、このタンカーはたまたま太陽石油という会社の製油所に陸揚げをする予定であったようでございますが、この受け荷主である石油屋さんが加盟をしております石油屋さん相互の保険組織がございまして、約二十億円を上回る損害が生じた場合にそれをカバーするという自主的な保険組織がございます。したがいまして、この損害については十全、万全の補償が行われるものと考えております。
  84. 田畑政一郎

    ○田畑委員 これは、局長、結局いまいろいろと問題になっておりますところの便宜置籍船というふうに考えてよろしゅうございますか。
  85. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 このタンカーの船主であります会社はリベリアの会社のようでございますが、よく調べてみますと、このリベリアの会社の出資者は日本船会社のようでございます。全部ではございません。したがいまして、この船はパナマ船籍を置いており、これは持ち株関係から推定をいたしますと、七割、八割までがこの株を所有している日本の会社が事実上支配しておる船である、そういうふうに考えます。
  86. 田畑政一郎

    ○田畑委員 乗組員は四人だけが日本人でございましたが、あとはどこの国籍の方でございますか。
  87. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 国籍はよくわかりませんが、全部で三十一名、日本人四名を入れて三十五名乗っておりまして、その三十一名のうちの十六名はインドネシアの人、それから十五名が中国の人——中国と申しましてもとの中国でありますかの人であります。
  88. 田畑政一郎

    ○田畑委員 はい、わかりました。  これからこういう事故が発生することも非常に多いと思うのです。その場合に、外国人でございますね、日本人から言えば外国人、その外国人が、たとえば船員としてのしっかりした訓練を受けて船に乗っておればよろしゅうございますが、果たしてそういう訓練を受けておるのかどうかもわからぬわけでございますね。  私の調べましたところによりますと、これはいまのものとは違いますけれども、マルシップに乗り込んでおるところの船員などを調べてみますと、韓国等におきましては非常に短期間で船に乗れる免状を出している。あるいはフィリピンにおきましては練習船がないので、船に乗って訓練しないで、座学だけで卒業させている。そういうようないろんな例が挙がっているわけですね。こういう者がどんどんマルシップなり日本が実質的に支配しているところの用船に乗っているということになりますと、これは私は非常に大きい問題が起きるのじゃないかと思うのです。こういう問題について、先ほどから局長は何とかしなければいかぬじゃないかというような趣旨の御答弁でございましたが、何とかするというのでは困るのでありまして、一体こういう者はどれくらいいるのか、あるいは現状どうなっておって、それをどのような段階を経て対策をしようとしておるのかということについてもっとはっきりした御答弁をいただきたいと思うのです。
  89. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 便宜置籍船ということでございます。日本船主用船しております便宜置籍船、意味はあいまいでございますが、本当にパナマの船はあると思いますし、リベリアにもあるいは船があるかもしれませんけれども、そのパナマなりリベリアなりの国に登録はされておるけれども、事実上はその国のだれかと真正なる関係がない、そのような船。それは、あるいは便宜置籍船の、パナマ籍船、リベリア籍船あるいはシンガポール籍船、サイプラス籍船、そういったものがそうかと思います。そのうちあるものについては、先ほどの例にございますように、日本のだれかが事実上支配をしておる船というものは相当にあるようでございます。日本船主用船をいたしております外国用船のうち、一割あるいはそれ以上のものが事実上は日本のだれかが支配している船というふうに言われるかもしれません。  また、マルシップのことがお話が出ましたけれども、マルシップは、日本に登録をされた船であるけれども日本人でない人が船員として乗り組んでおる、そのような船を指すものだと理解いたします。私どものいま承知しておるところでは、去年の年末の状態で、隻数で約百九十二隻のそういった船が走っておるようであります。  いま私が百九十二隻と申し上げましたのは、日本の船であって外国人に裸貸し渡しをした、その裸貸し渡しをした上でどうなっているかということは、大部分が恐らくはマルシップとして日本近辺を周航していると思いますが、そういう状況でございます。  これらは午前中にもいろいろとお話が出ましたけれども日本海運というものが、経営の面から見るならば、ただいまの日本における船員雇用制度を前提としてただいまの日本経済の発展を反映したわれわれの賃金レベルで船員を雇った船を運航しておった場合に、先ほど来お話が出ておりましたような外国の船員を乗せた外国の船との間にコストの上で大変な差が出てきて立ち行かないようになりつつあることの一つの反映でございます。  これにつきましては、午前中にいろいろとお話が出ましたけれども、私どもとしては、これで黙っていたら、あるいはそういう資本費コストの比重の小さい船から順番に競争に負けて、日本の船が少しずつ減って、なくなっていくかもしれない。何とかしてわれわれが、日本のような経済の発展、繁栄、それを反映した日本における賃金レベルというものをそのまま維持しながら、どうやって総合的な船員コストを下げて外国海運に対抗し得るかという方策をいろいろと検討すべきではないかと思いまして、ただいま鋭意努めておるというのが実情でございます。
  90. 田畑政一郎

    ○田畑委員 日本の船員は約一万五千人失業中だと言われております。御案内のように、船員というのは特殊な仕事でございますから、おかへ上がってはなかなかいい仕事がないわけでございます。また、なれないわけですね。そしてこのままでいくならば船員の失業がまださらに続くのじゃないか、昭和五十五年までには二万人になるのじゃないかという情報すらあるわけです。海運業界、造船業界に対して終戦後から、世界第一の海運業をつくるためにわが国家が莫大な金を投じてきた、便宜を与えてきた。そうでしょう。工場誘致でもそうですよ。たとえば東京都に地面を用意させる、あるいは環境を全部用意させて工場を建てたけれども、東京都の者は一人も採らぬのだ、こういうことになったら、だれだって地元の者は怒ると私は思うのです。  だから、今日の日本のいわゆる海運業界というものを育成をして、二十二年間にわたって利子補給その他の応援をしてきたわけでございますから、少なくともその船を、日本人を乗せて、日本船員を乗せて運航するというのは当然じゃないかと私は思うのです。また、その運航するための方法を選ぶべきじゃないか。裸で用船して、結局は日本人は一人もいない。この中の百九十何隻のうちの四十隻だけ通信員だけは一人乗っております。これは日本の船ですから、通信員は日本人が乗らなければならない。しかし、残りの百五十隻には、どうやっているか知りませんが、通信員すら日本人は乗ってないのです。そういう状況なんです。これで果たして船の安全、荷主の安全が確保できるのかどうかということを私は大いに疑問に思うわけです。しかも労働条件は非常に悪いわけです。大体日本人の二分の一から三分の一と言われております。この件につきましてぜひ早急に対策を立てていくということをやっていただきたいと思うのです。ひとつ次官の方から御答弁いただきたいと思います。
  91. 石井一

    ○石井(一)政府委員 現在の経済成長の過程におきまして非常に大きな変動が起こっておるわけでございますから、国内日本船をどのように維持していくか、その調和をどのように図っていくか、これは非常に重要な問題であろうかと思います。御指摘の点を十分に踏まえて取り組んでいきたい、このように思います。
  92. 田畑政一郎

    ○田畑委員 モーターボート競走法の問題についてお伺いしたいと思います。  モーターボートの交付金でございますけれども、これは振興会に対して金額はどの程度であってそれはどこどこの銀行を通じて運用されているかということをお伺いしたい。
  93. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 モーターボート競走法によりまして、施行者であります地方公共団体から振興会に交付されております交付金は、昭和五十一年度で約四百億円強でございます。これが交付金として上がってくるわけでございますが、その間におきましてどういう金融機関を使うかということについては、安全で有利でありかつ確実であるということで特に指定はしておりません。ただ五十年度の決算で見ますと、たとえば一般預金といたしますと三菱銀行、三和銀行、富士銀行、住友銀行等、いわゆる都市銀行及び信託銀行が入っております。
  94. 田畑政一郎

    ○田畑委員 この十九条一号の資金貸し付けでございますが、資金貸し付けをやっておるその総額は幾らですか、いま年度内四百億ということですが。
  95. 石井一

    ○石井(一)政府委員 船舶振興会の一号交付金には補助事業と貸し付け事業がございます。いま先生御指摘の貸し付け事業と申しますのは、中小規模の造船業及び造船関連工業、下請業の振興を図るために出しておるものでございまして、五十一年度の貸し付け実績で御説明いたしますと、総額約百七十億でございまして、設備資金が三十五億、運転資金が百三十五億ということになっております。
  96. 田畑政一郎

    ○田畑委員 これはずっと昭和三十七年からの累積を聞いておるわけです。しかしそれは結構です。後から資料を下さい。  次官にお伺いしたいと思うのですが、実はこの船舶振興会の運営につきましては運輸大臣は適正にこれを運用するために会長の罷免権まで持っているわけでございますが、問題は、最近週刊文春ですかあるいはその他の雑誌を通じまして、会長の笹川良一さんという方が朝日新聞に融資をするなということを唱えられておるわけです。そのことはいいんですが、そのことに関連いたしましていわゆる船舶振興会の金を引き揚げるぞということを銀行に対して言われておるわけでございますが、こういうことについて一体次官としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。何かそれについて御注意なさったとか調べられたとかいう事実はございますか。
  97. 石井一

    ○石井(一)政府委員 先生御指摘のとおり、交付金の使途につきましてもあるいはその監査につきましても、運輸大臣といたしましては、承認をしたり指示に従わせたり、そういうふうな制度になっておるわけでございます。なお、いま御指摘になりました問題に関しましては詳しくは船舶局長の方から答弁いたしたいと思いますが、かなり古い話でありますけれども、その年に経理上の問題がどうなっておるか、また銀行の残高がどのようになっておるかというふうなことを当局で調べた限りにおいては、一切そのような事実はない、そういう報告を私ども受けております。
  98. 田畑政一郎

    ○田畑委員 事実がないというのは。
  99. 石井一

    ○石井(一)政府委員 特別に直ちに預金をとめたとかあるいは預金を引き揚げたとか、そういうふうな事実は全くないというふうに報告を受けております。
  100. 田畑政一郎

    ○田畑委員 ここにあるものは「五十一年十二月吉日」となっておりまして、「親愛なる皆様」ということになっておるわけです。しかし中を読んでみますとおわかりのとおり、七行目です、「私は、財団法人日本船舶振興会をはじめ数多くの関係団体の会長を勤めていますが、これら諸団体の隆昌の基は、大切なモーターボート競走の益金があったればこそという気持を寸時たりとも忘れたことはありません。」というふうに書いてございます。そして朝日新聞に対する攻撃がございまして、結局一番最後から五行目に書いてありますように、「なお、貴行が今後とも朝日新聞社に対し、微温的姿勢をもって融資をお続けになるなら、止むなく財産保全の上からも私が率いる諸団体の預金を総引き揚げし、また、そのような預金者の保護を考慮しない銀行には一切取引きをしないことになるかも知れませんので、ここに改めてお願いするものであります。」と書いてある。「貴行」というのは銀行のことを言うわけですね、普通には使わないわけですから。これを銀行に出しておられるわけです。この銀行に出しておられるという事実を証するところのいろいろな雑誌が出ております。私はここに一つ雑誌を持ってきております。週刊文春です。そのほかにもありますが、週刊文春の笹川氏のインタビューで笹川氏は語っている。そうじて文書を出しておるということを言っておるわけです。この文書は二回出しておる。朝日への融資額の最も多い住友銀行を筆頭に、住友信託、富士、三菱、三和、大和の六行にあてて笹川氏は質問状を発しているが、それに続く第二弾ということである。いわゆる二回目のなにを発しておるということであります。これは資料がありますからお見せしますよ。こらはいま次官のおっしゃったように船舶振興会の金を使い込んだとか、そういうことを言っておるわけじゃないのです。しかし、これは先般も予算委員会で私どもの党の小林進さんが質問されましたように、半ば公金的なものなのですね。その半ば公金的なものが、引き揚げるか引き揚げないかということを通じて民間企業に対して一つの圧力となるということはいかがかと思うのですね。そうなってきたら、これは問題でしょう。しかも相手は、笹川さんが公然としゃべっているように朝日新聞社である。日本における最大の新聞社だ。その新聞社に対して融資をするなということを言うておるわけです。中身がどうであるかは別ですよ。しかし少なくとも船舶振興会の名前をちらっとでも出されて、いや、これはちらっとじゃないのです。船舶振興会を基本にして言っておられるわけですね。もしそういうことになると、運輸大臣はこれに対する罷免権まで持っていらっしゃる。しかもこれだけ各大衆雑誌が書いているのに、まだ一遍も調べておらぬ、注意したこともない。君あったのかということを聞いたこともない。これでは運輸省はこの振興会を監督していることにならないのではないかと私は思うのです。その点次官あなたの見解をお伺いします。
  101. 石井一

    ○石井(一)政府委員 実はきょう先生からこういう質問が出るということを政府委員から説明を受けましたときに、私自身そういう事実があったのかないのか、またどの程度まで調べたのか、そういうことも聞いたわけでございますが、その詳細にわたりましては、ひとつ政府委員の方から御答弁をさせまして、その後先生の質問に対してお答えをしていきたい、かように考えております。
  102. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 私どもはただいままで昭和五十年度の監査を終わっておりますが、五十一年度については間もなく終わることになると思います。したがいまして、五十一年の三月の末現在で一号交付金それから二号交付金の一般預金を例にとりまして、預け入れの金額を見てみますと、いま御指摘のございました住友銀行が六億でございまして、一番大きなのが富士銀行八億、三菱銀行七億、住友銀行六億でございます。これは一号でございますが、二号の方を見てみますと三菱銀行十億、住友銀行七億ということでございまして、少なくとも決算で見る限り、振興会の資金の引き揚げということはなかったのではないかと思っております。
  103. 田畑政一郎

    ○田畑委員 私の聞いたことに答えてください。これだけこの問題が大衆雑誌に何回も繰り返して出ております。しかもそこで笹川さんのインタビューとして、私は振興会の金も持っておるし、そして朝日新聞は気に入らぬのだ、金を引き揚げるぞ、こう言っているわけなんですよ。それにもかかわらず、これを監督しなければならぬところの、また役員の罷免権を持っているところの運輸大臣が、その事実を調査したこともない。しかもこういうことについて、振興会長として適当かどうかということについても議論したことがないということは、おかしいのではないか。簡単に言うと職務怠慢ではないかということを聞いているわけなんですよ。そうしてあなたは一億とか五億とか言うけれども、この傘下のものを入れたらなるほど振興会は上の方です。しかし、モーターボートという全国組織というのは何らかにおいてつながっておるわけですから、莫大な金を扱っていることだけは事実なんです。その金をどこへ預けるのかということによる発言というのは大きいですよ。個人のポケットマネーを預ける発言じゃないのだから、これは大きいです。そう考えると、同じ、預けないぞ、引き揚げるぞと言っていても、普通の人が言ったのとは全然性格が違う。その辺を一体どういうふうに監督していたのか、その辺をどう調べていたのかということを私は聞きたいわけです。それは次官に答えてもらいたい。
  104. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 先ほどからお答え申し上げておりますとおり、振興会及び他の運輸省関係団体につきましては、内部監査のほかに私ども監査をしております。ただ、いま御指摘の朝日新聞とそれから住友銀行云々の点については調査をしておりませんが、少なくともいままでの監査の段階で、年度内の資金繰りについてやっております。したがいまして、五十一年度でどうやったかということについては調査をしてみたいと思います。
  105. 石井一

    ○石井(一)政府委員 こういうい方をいたしますとおしかりを受けるかもわかりませんが、週刊誌の記事あたりを取り上げまして、一々これを問い合わせるということも問題がある場合もあるし、あるいは今回、いま御指摘がありましたように、いろいろのところにも出ておるようでございますから、われわれは忠実に法律に従って監査をし、その正当性を公表しておる、こういう監督をしておるわけでございますが、この際田畑委員からも御指摘がございましたので、大臣とも相談をいたしまして、事情を調査し、問題があればそれに対して適切に対処したい、そのように考えます。
  106. 田畑政一郎

    ○田畑委員 この問題につきましては、相手が週刊誌であるかどうかは別としまして、いろんな週刊誌に出ています。インタビューもとっています。相当多数の国民が見ていることは間違いないですね。だから運輸省当局としましても、それに対して何らかのことを行い、そうしてそれについて厳正な規律、いわゆる半ば公金としての扱いをしている、あるいは責任者に対してはある程度の監督を行っているということは、やはり最低限の問題として明確にしなければなりません。だからその点を、おそいのでございますけれどもやっていただきまして、ひとつ御報告をいただきたいというふうに思います。  終わります。
  107. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 薮仲義彦君。
  108. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、本委員会に付託されました法案並びに関連します海運問題についてお伺いしたいと思います。  初めに、大臣にお伺いしょうと思いましたが、きょう体のぐあいが悪いそうで、お見舞いを申し上げるとともに、その責任ある答弁を政務次官の方からお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  最初に、午前中からいろいろ論議されておりましたけれども、ここでもう一度海運局長に、すっきりとした形でお伺いしておきたいことがございます。それは、海運自由という原則日本海運の大原則として今日まで来ていることを理解しておりますが、運輸省から、海運自由の原則について、すっきりとした形で、要点だけ簡潔で結構でございますから、ここで伺っておきたいと思います。
  109. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 先ほどから御説明申し上げておりますとおり、わが国は海運自由の原則、これが世界海運の一番円滑な運営のために最善の考え方であるという考え方を踏襲してまいりました。また一方で、新興海運国がそうでない考え方というものを持って、日本国海運に向かって具体的な損害が及ぶような行為に出ております。私どもとしては、やはり海運自由、商売が自由濶達に、政府の干渉なしに行われることが最善であるとはいまでも考えておりますけれども新興海運国のそういった動きというものに対しては理解もし、同情もし、対応もしなければならぬ、そのように考えております。
  110. 薮仲義彦

    薮仲委員 この自由という問題は無責任ということではないと思うのです。やはり海運全体に対する自由に裏打ちされた行政当局、運輸省の責任ある行政というものがそこに当然あってしかるべきだと思いますが、簡単にお答えください。
  111. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 海運自由の原則ということをわれわれなりに理解して申し上げれば、船の商売に国が口を出さぬということであります。それは悪く言えば、運賃同盟政府の干渉なしに勝手なことをやって、強い運賃同盟が弱い荷主をいじめるというふうに批判をされる可能性のある分野でございます。したがって、私どもはそういった批判を受けることのないように、日本海運業を担当する事業者がその仕事を進めるに当たりまして公正な仕事をやるように監視、監督をすることは当然でございます。
  112. 薮仲義彦

    薮仲委員 運賃については自由にやりなさい、しかし行政については公正な運輸行政が行われるように責任は持ちます、このように理解いたしました。  それでは次に伺っておきますが、先ほど来問題になっておりますけれども、国連の場で示されたいわゆる定期船同盟行動憲章に対する運輸省の基本的な考え、そしてそれに伴いまして現状と将来の見通しを御答弁いただきたい。
  113. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 日本政府は、運賃同盟憲章が国連会議で採択をされた七四年の会議におきまして賛成票を投じましたむしろ数少ない先進海運国の一国でございます。日本国がこのような同盟憲章に対して賛成票を投じました立場は、その会議における日本代表の発言、ステートメントできわめて明らかにされておりますけれども、この憲章は条約としてはきわめて問題が多いと申しますか、技術的に問題が多い、そのままそれを実施に移すについてはいろいろ解決すべき問題がたくさんあります、しかしこのような条約は先進海運国新興海運国との間の多年の懸案をいわば取りまとめた妥協の産物として貴重なるたった一つのテキストである、ここまで話し合いを進めてきたこのテキストはこれを大事にして、そのまま不完全だとかなんとか言わずに条約にすることが望ましい、これが日本国考え方でございます。  見通しといたしましては、午前中にも御説明申し上げましたけれども、この条約についての批准国は今日非常に少ない。先進海運国のみならず、いわゆる新興海運国の中でも批准する国は非常に少ない。一つ考え方は、動かしにくい条約であるからこの際条文の手直しをやったらどうかという考え方がございます。他方には、やはりこれは望ましからざる条約であるがゆえにいつまでも眠らせたいという気持ちも一部の中にはあるようでございます。しかし、日本立場といたしましては、これをいじることは問題のこのような条約を結局採択させる時期をおくらせることになりかねない、したがってぐだぐだ言っておるいろいろな立場を調整してできるだけ早く先進国、新興国いずれもがこの条約をそのまま批准できるような情勢に持っていくことが望ましい、これが日本国の態度であります。  実際は、EC諸国が全部七九年まで批准しない、できないということにもなっておる事情もございまして、なかなかそのような日本国の希望、願望が実現するには紆余曲折が予想されるということだと思います。
  114. 薮仲義彦

    薮仲委員 次に、今回の法案が提案されるバックグラウンドになっております世界海運業界の現状をごく簡単に伺いたいと思うのでございます。  一番問題になるのは、発展途上国の問題があろうかと思います。もう一つは、東欧圏諸国の動向があろうと思います。この点につきまして、なぜこういう対抗立法をしなければならなくなったのかということを含んで海運の現状について伺います。
  115. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 二回目の世界戦争の終わりますまでは、世界海運はきわめて一握りの海運国によって世界中が牛耳られてきた、あるいはそれらの国の海運会社が世界じゅうでサービスを行ってきたというのが実情ではなかろうかと思います。戦後、新興海運国がみずからの資金において、あるいはみずからの努力によって、自分の海運というものの育成を始めるようになりました。もちろん政治的な宗主国からの独立ということもありますし、外貨事情ということもありますし、あるいは海運というものが比較的工業化の初期の段階において自分の産業にしやすい性格を持っているということもございましょうが、そういったことから海運の南北問題というものが起きてまいりました。  このいわゆる新興海運国というものが実際に目に見えて活動するようになりましたのは、いまから十年ないし十五年前からでありまして、これらの国と旧来の海運国との間の利害の調整ということは現在世界海運一つの大きな課題となっております。  二つ目には、いわゆる東西問題でございまして、ソ連を含む東欧圏海運、昔はそういった海運はほとんど見るべきものはございませんでしたけれども、最近五年ほどの間に急速にソ連及び東欧諸国海運が発展をしてまいりました。これらは西ヨーロッパから世界の各地へ、極東から世界の各地へ、米国を含む世界貿易というところにソ連と無関係トレードに進出をしてまいりました。これは既成の海運同盟に入りませんで、したがって海運同盟が決めている運賃よりは安い運賃荷物をとるというやり方をいたしますので、非常な海運界の混乱の原因となっております。これらのソ連東欧圏海運に対する古い海運の対応策というのが二つ目の大きな問題でございます。
  116. 薮仲義彦

    薮仲委員 いまのお話のあった東欧諸国の問題ですが、現在アメリカにおいていわゆる三国船社による低運賃を規制するための法案検討する動きがあるようですが、その内容がわかっていればどういうことなのか、またわが国としても、午前中の討論で了解しておりますけれども、今度の法案にはこの東欧圏の問題は含まないということであるならば、この東欧諸国海運に対する立法化あるいは具体的な対策というものがもうすでに考えられているのかどうか、なければないで結構でございますし、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  117. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 いわゆるサードフラッグビルにつきまして外航課長から御説明させていただきます。
  118. 富田長治

    ○富田説明員 サードフラッグビルと申しますのは、アメリカ関係で定期船を配船いたしております船はともかく一応全部、FMCという官庁がございますが、そこに運賃を届けなければいかぬ、そのときに、特に国家管理あるいは国家所有という言葉を使っておりますが、いわゆる東欧圏の船でございますが、そういう船については他の自由社会の独立の船の運賃よりも安くてはいかぬ、少なくともそれ以上でなければいかぬ、したがって自由圏諸国の船よりも安い運賃で運んではいかぬ、そういう届け出は受け付けないというのがその法案の骨子でございますが、ただいまこの法律は一応提案は見合わされていると了解いたしております。
  119. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 アメリカにはいま御説明申し上げましたようにソ連海運に対する国内法立法化動きがございました。ただ、それはいま御説明申し上げたようなかっこうでございまして、やはりソ連東欧圏海運に対するいわば古い海運国対策としては、午前中にも御説明申し上げましたけれども二つの対応策が進んでおります。  一つは、ソ連海運を既成の運賃同盟の秩序の中に組み込もうという努力でございます。これはいまも話に出ましたアメリカFMCバッキー長官レニングラードソ連と会談をいたしまして、それをきっかけにしてそのような方向話し合いソ連船主大西洋太平洋ヨーロッパ日本アメリカの同盟メンバーの船主の間に進んでおります。  ソ連海運に対する対応の第二は、これは関係国が一致団結して民間及び政府レベルソ連話し合いを持つという方向でございます。
  120. 薮仲義彦

    薮仲委員 次の問題に移ります。  日本海運の現状ですが、船腹量ではリベリアに次いで第二位となっておりますが、実質は第一位、こう言われております。先ほど来問題になっております国際競争力ということは、日本商船隊にとって非常に大事な問題だと思うのでございますが、日本商船隊の国際競争力という面でどう考えられるか、簡単に御答弁いただきます。
  121. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 戦後日本海運の国際競争力というものを他国並みにするために、利子補給あるいは長期低利の融資ということで、主として資本コスト外国の競争社と同じようにするという方策をとってまいりましたけれども、そしてまたその成果があらわれて、資本コストで比較する限り日本海運は競争国の海運とそのような径庭は現在は見られないと思います。  しかしながら、最近のように日本の平均賃金が上がってまいりましたのと日本の固有の船員雇用制度というものを前提にいたしますと、先ほど来お話が出ておりますように、仮に東南アジア出身の船員を外国流の制度で同じような船に配乗をした場合に比べまして、日本の船の日本人を乗せた場合の船員コストに比べて大きな差が出てくるに至った。これが日本海運の国際競争力について新たなる問題を提起したわけでございまして、先ほど来いろいろと日本船主外国人の乗った船を用船しておるとか、あるいは日本の船にマルシップと称して外国の人を乗せることによってそれで運航するというふうな例があらわれたということで、新たなる問題を提起しております。  私どもといたしましては、これは一つ日本経済ここまで発達してきたのであって、これは当然くぐり抜けなければならない一つの難関をこれから越えるべきところに差しかかっているのだと思いますけれども、その方策といたしましては午前中に御説明をいたしましたとおり、海運造船合理化審議会に御諮問申し上げまして、今後の海運対策というものについての御審議をいただいております。  また、その御審議をいただいております途中で、われわれががたがた物を申し上げるのは差し控えるべきかと思いますけれども、やはりその方向は、日本の船に日本人を乗せても競争力がつくような、そういうコスト対策というものについてのいろんな検討を進めるのが、たくさんあるうちの一つ方向ではなかろうかと思っております。
  122. 薮仲義彦

    薮仲委員 ここでちょっと、いままでの御説明の中で確認をしておきたいと思うのでございますが、海運自由ということは先ほど来お話しいただきましたように、わが国の海運業にとっては根幹となる大原則であるというこの方向性でございますが、先ほど来御説明いただいた定期船同盟行動憲章、これは賛成であるという方向というものは、少なくともいままでの海運自由の中に国家間における行政が介入してくる、いわゆる海運自由という原則の旗をおろすのか、あるいはこれが修正の方向になるのか、また本委員会で今度いま審議されております対抗立法、これも明らかにこの措置というものは海運自由の中にいわゆる行政が介入してくるという方向づけでございますが、こういう方向というものは将来世界間の中に当然一つの秩序として求められる方向なんだ、海運自由という大原則の中であるけれども、やはり秩序というものをつくるためにという、海運自由というものは修正されるのか、あるいはそのもの自体が旗をおろさなければならないのか。またその選択の中で日本はどういう方向を今後海運の行政の中で選択なさるのか、伺っておきたいと思います。
  123. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 なかなかお答えするのはむずかしい問題かと思います。現実の世界は新興後進海運国によって、そして自国貨物自国の船を当てがうためには国家権力の発動もちゅうちょしないという、つまり海運自由の原則とはいわば無縁の物の考え方人たちが世の中に実力を持って存在し始めたということが一つの新たなる事実でございまして、また私どもは、だからといってこのような国の発展に対して悪意を持ったりけんかをふっかけたりする気は毛頭ございませんし、これは一つ世界の流れでもございましょうし、理解と協力を持ってそのような事態に対応しながら日本海運というものを守っていかなければならぬというのが私ども立場でございます。  その守っていく手段といたしましては、これは古い海運自由の原則を希望することは希望しましても、ただ単に振り回しておったのでは対応にはならぬだろうと思います。やはり、ただ運賃同盟憲章というものは、運賃同盟の中のあり姿についてのガイドラインを定めたものでございまして、そのガイドラインをもちろん運賃同盟のメンバーがいろいろと実現をすればそれで済むわけでございますけれども、何かのかっこう運賃同盟憲章の精神が実現しなかった場合に、どのような形でそれが実現を図れるかという点については先ほども触れましたけれども、その一つでございますが、同盟条約は法律基準としてはきわめて不完全である。商事仲裁調停行為といったような規定がございますけれども、そこのところの実施の面の規定はきわめて不完全である。やはり運賃同盟憲章が四、四、二その他の考え方というものを高らかに掲げておりますけれども、究極のところはこれは、運賃同盟はそのようにするのがいいのだぞということを決めてあるのでございます。
  124. 薮仲義彦

    薮仲委員 次に移ります。  法案の中身の方でちょっとお伺いしたいのですが、先日御説明いただいた提案理由説明の中で、「国旗差別政策により大きな影響を受けております。」ということがうたわれておるわけでございますが、それで今回このような立法措置を講じなければならない。またこの中に「著しく害されている場合」というような説明がございますけれども、運輸省の方から国旗差別を受けているという実例の資料をいただきました。国名は明確でございませんが、三カ国ほど載っておりますが、この事実はいわゆるこの法案を発動しなければならない大きな影響であり、著しく害されるいわゆる「不利益な」ということに当たるかどうか、お伺いします。
  125. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 この法律が施行されたら直ちにそのA、B、Cに対して実力行使をするかという御質問であれば、ノーでございます。(薮仲委員「いや当たるかどうか」と呼ぶ)当たりません。著しいか著しくないかは判断の問題でございますけれども、この法律が施行されました場合には、ただいままでA国、B国、C国とやっておりました交渉努力をもうひときわ迫力を込めて、さらに新たなるカードをポケットに入れてまた始めるということが直ちに考えられることでございます。
  126. 薮仲義彦

    薮仲委員 この説明の中にこう書いております。いままで外交努力を続けてまいりました。「しかしながら、このような措置だけでは十分な効果が期待できないのがその実情であります。」とされてございますが、いま起きている事態は、この立法をしなければならない要因に当たらないのか、いまの御答弁ですと、当たらなくてもこの立法をすればいま起きているこの三件については、少なくとも法案審議の結果成案となるならば解決する見通しがあるから通してくれ、そういうことなんですか。
  127. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 先ほどからも申し上げておりますけれども、このような法律なしにこれまでやってきました交渉でもちろん話がついたケースもございますが、話のつかなかったケースもある。  ただいま御指摘の、A国、B国の例はまだ話が満足についておりません。そうであるならばこのような法律を施行させていただきまして、そこで、いわば新たなるカードをポケットに入れて新たなる角度から交渉を始めるということが、とりあえずわれわれとしては考えことでございます。いま御説明申し上げておりますような具体的な事実が直ちにこの国に対してこの法律を発動する要件に当たるか否かということは、誠心誠意いろいろな努力をして、そのような交渉をやってみて、やってみなければわかりませんけれども、こういう国内法というものを背中にしょって新たなる交渉を始めて努力をしてみれば、こういう問題は解決する可能性が非常に大きいと思います。
  128. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは了解しました。いまのような成案を得てもう一度交渉する。先ほど来質問にも出ておったようでございますが、十分に外交交渉あるいは業者間の交渉をやったけれども、この三国については、消滅したということは、向こうの国の政令が改まるとか国自体の法制が変わらなければ認めないという御説明をいただいておりますが、もしもそれが変わらなければ、運輸省としては、この中に、関係大臣とも協議の上ということになっておりますが、発動するお考えがあるのかどうか。
  129. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 特定の国を前提にしての御議論でございますならば、ただいまのところはっきりした御説明は避けさせていただきたいと思いますけれども、私どもが、先ほどから申し上げておりますような、一つのあるべき基準というものを念頭に置いておりまして、あらゆる手段を尽くして、誠意を尽くし、時間をかけ、民間あるいは同盟、あるいは政府レベルという交渉をやって、それでもきわめて不合理な状態というものがいつまでも続くのであるならば、ここで初めて、この法律に書いておりますような関係官庁と協議した上で発動するということになる、このように御理解いただきたいと思います。
  130. 薮仲義彦

    薮仲委員 少なくともないよりはこの法案を持って交渉することが好ましい方向が望めるというふうに理解しておきます。  次に移ります。先ほど御説明いただきましたけれども、国際競争力の低下の理由の中で、いわゆる搭乗する船員の船員費の問題、特にその中では予備員率の上昇ということが出てまいりますが、私は、これは一面では運輸行政そのものに責任があるのじゃないか、そういうような考えも持たざるを得ない。なぜかならば、運輸行政というのはトータルなものであって、単に国際競争力という面から経済性の論理だけで行政が突っ走るものじゃないと思うのです。当然その陰には大事な船員の雇用問題が裏打ちされていなければならない。  ところが、現在外国用船日本船舶の五〇%近い状態になっているわけです。日本船員が職場を追われている、こういう問題。いわゆる仕組み船チャーターバック、あるいは裸用船、通称マルシップでございますが、こういうものが現在の法制の中では何ら規制されないで、どんどんその枠が広げられていく。いわゆる日本の伝統的な海運を支えてきた船員の皆さんの職場が狭められる。少なくとも働く人の労働権というものが守られていくのが当然なのに、行政のあり方によってその労働権というものが侵されるというか、働く場が狭められるという点は、私は運輸省全体の行政の中で片手落ちじゃないか、こう理解します。  経済面だけの国際競争力を追うのではなくて、先ほど来指摘されておりますように、今度漁業専管水域二百海里という問題も出てまいりますが、そうなりますと、船員の雇用というものはますます不安定です。現在の求人倍率が〇・二六とかその程度のことで言われておりますけれども、この行政の中で船員の安定雇用という面は重大な海運行政であり、先ほど、私は海運自由は認めるけれども、行政の責任ある態度というものを御答弁いただいておきました。運輸省の海運行政の責任という立場で、雇用問題を中心にして外国用船の枠の拡大ということをどう考えられるか、海運局長と船員局長の見解を伺っておきます。
  131. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 海運行政の執行に当たりまして、海運をめぐるもろもろの現象を考慮に入れなければならないということは当然であると存じておりますし、また私どもは、現在そのような配慮のもとに海運行政を行っておると思っております。逆に海運行政を、たとえば雇用なら雇用という面にのみ焦点を当てて執行するということは適当でないし、また政策がどのようにいたしましても算術に合わないものは算術に合わないのでありまして、算術を合わせるような努力をわれわれがするにあらずんば、日本海運のコスト外国海運のコストに比べて高いということがそのままである限りは、やはり高いものは使ってもらえないという冷厳なる事実があるわけでございまして、海運行政はそのような枠の中で、そのような条件のもとで進んでおるということでございます。  私どもから考えまして、日本の会社が所有し、日本の船員が配乗されておるというような日本海運が、世界で現在事実上第一位の規模を誇っておる。こういったものが、日本経済の今後の発展、繁栄のためにきわめて大事なものであるというふうに思いますけれども、このままいけば、これが商売上維持できなくなるとすれば、このコストを何とか他国の競争船と拮抗できるように持っていかなければならぬものだと思っております。それがまだ実現できない状態のもとで、荷物を持ってきたけれども運ぶ船がないという状況にある、いわば船会社がその荷物を運ぶために外国の船を用船してくるという行為をやるのは当然な商売の一つの行為でございまして、つまり先ほどから申し上げております。日本海運がコストが拮抗できるような状態になるということがまだ実現する前に、そのことを国家が抑えるということは、ただ商売に対する非常にやりにくい干渉をやる結果に終わるのではないかと私どもは考えております。
  132. 横田不二夫

    ○横田政府委員 ただいま海運局長から説明がございましたように、また先生から御指摘がございましたように、最近の船員雇用をめぐる環境は非常に厳しいことは確かでございます。私どもとしましてはこの現実を踏まえまして、これは現実として受けとめて、その上で船員の長期あるいは短期の雇用対策を考えていかなければならない、かように考えております。長期的には、これからの変貌してまいります海運の構造に見合うように船員の雇用の場を考えていかなければなりませんし、それまでに至る過程におけるいろいろな摩擦につきましても当然に配慮していかなければならないと考えております。また当面の緊急の問題といたしましては、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、ただいま失業船員は一万人弱でございます。求人倍率は〇・三倍でございますが、最近前年同期に比べてやや持ち直しつつありますけれども、先ほど御指摘のように漁業専管水域二百海里というのが外国の沿岸でだんだん広がってまいりまして、そういう関係で漁船員の雇用事情もまた厳しくなっておるということでございます。こういうことを踏まえまして、短期的には失業船員と申しますか、離職船員に対するそれの救済、再就職の促進という面で最大限の努力をいたしたいと私どもは考えており、ただいま努力をしておるところでございます。そういう態度でこれからも臨んでまいりたい、かように私は考えておる次第でございます。
  133. 薮仲義彦

    薮仲委員 時間がありませんので、これはもっと突っ込みたいのですが、答弁を求めませんけれども海運局長にちょっと一言言っておきます。  いま船員の問題を挙げられましたけれども、物を対照するときのレベルというかメジャーというものを、同じ基準でやらないと事を誤る。その例として、たとえば陸上の中に外人雇用はいまできない。仮に日本の陸上の一つの会社が安い賃金の労働者を大量に投入して会社を経営した。そうしますと、陸上の同業他社は当然運賃では競争相手にはならぬわけです。いま海運の問題で船員の方が言われているのは、そういう形で言われているわけです。少なくとも先進海運国の船員の方が日本と同等程度の船員費にあることは海運局長がもうすでに御承知だと思うのです。いろいろ日本の雇用制度に問題があることはわかっております。それにしても決して日本が先進国の中で秀でて高いのだということは当たらない。基準として持ってこられるのがいわゆる東南アジア、この給料の安い職員を船なるがゆえに乗せられる。陸上なら乗せられないのですよ。入れられないのですよ。もしも日本の陸上の中にそういう安い低賃金の労働者を入れれば、船と同じ事態が全部日本の国に起きるじゃないですか。そういう考えは理論として当たらないわけでございますから、そういうことじゃなくして、安ければ使うのが当然だという御発想は、やはり日本海運の将来、日本商船隊をどうするか、国家安全保障という、ナショナルセキュリティーの問題は後で聞きますけれども、その立場からも、行政の中でこの優秀な船員の雇用問題は安ければいいという経済原則だけではお考えいただきたくないということを言っておきます。また答弁いただくと長くなりますからね。  次の問題に進みます。なるべく簡潔にやってください。これは大臣に聞こうと思ったのですが、大臣がいませんから政務次官に、大臣の責任で伺います。  これは労働大臣の発言として、雇用対策基本計画、第一次、第二次及び第三次の閣議決定の際の労働大臣の発言があります。問題になりますのは特に、「西欧諸国とは雇用事情が異なるので、現段階におきましては、外国人労働者をとくに受け入れる必要はない」というところから三回発言がありまして、五十一年六月十八日の発言要旨は、「今後、労働力の需給が緩和し、高年齢者や婦人の就職も従来に比べ難しくなる事態にかんがみ、外国人労働力の受け入れば行わないという建前について、ご了承をお願いする。」これが閣議了解事項でございます。この件について、現在、先ほど来指摘がありましたように、マルシップにはいわゆる電波法の関係で通信員が一人日本人だ、あとは外国船員です。チャーターバック仕組み船、全部同じです。外人船員がおります。閣議了解事項で、いわゆる日本の雇用問題、労働問題の観点から外人の雇用については行わないでいただきたいという閣議了解事項がありながら運輸行政の中には安ければいいということではないかもしれませんけれども、それに近い先ほど海運局長の話がございました。私は、この点はどうお考えなのか、大臣の責任ということでお伺いしたいと思います。
  134. 石井一

    ○石井(一)政府委員 御指摘のように五十一年六月十八日の雇用対策基本計画の閣議了解と申しますか、労働大臣からの外国人労働者の受け入れに関する点については現在も変わりはございません。船員につきましては、日本船主が配乗をする場合の船舶については日本人以外の者は雇い入れない、こういうことでございますが、なお船員の配乗を外国船主が行う場合には直接規制することができない、こういうふうな抜け道と申しますか、そういうふうな点がコストの問題、国際競争力の問題、それから日本船隊全体を考えましてもいわゆる日本海運の総トン数を維持する、そういうふうないろいろの関係から問題点が出ておると思うのでございますが、基本的には薮仲委員指摘のこの了解というものは微動だにも動いておらないということは現在の姿でございます。  なお蛇足になりますが、私は昨年パリの雇用促進閣僚会議というのに当時労働次官として出席をしたわけでございますけれども、非常に外国人を使用しておる国が、不況が来たときに非常に大きな雇用問題が問題になっておるということを目の語に見まして、わが国の基本的な方針というものは間違っておらないということを痛感したことでございまして、船員の場合にはやむを得ないいろいろの理由があることもわかりますけれども、特に今後この船員の雇用政策ということに関しまして配慮をしていくべきだというふうに考えております。
  135. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣じゃないんで責任をおっかぶすような質問はしたくないのでございますが、配慮をするということでございますが、現実はこういう事情でございますので、外国船員を雇用するということについてどうあるべきが正しいのか。やはりこれは日本全体の労働問題という観点から、船であるがゆえに外国船員を雇用し、そこに乗せるということは、決して経済原則だけではなくして、もっと日本全体の海運の問題の中でとらえて、この歯どめなり対策なりは早急にお考えいただきたいと思うのでございます。時間がないので、やむを得ませんので移ります。  次にやはり労働問題に関係するわけでございますが、売船の問題でございます。船を売るという問題、やはりこれも非常に労働環境を悪化しておるわけでございます。本年も相当また売船の方向があるようでございますが、不経済な船を売るということについて私はとやかくは申しません。ただここで確認をしておきたいことは、この売船についての通達がございますが、昭和三十三年六月五日の通達並びに四十五年六月四日のこの通達が生きていると理解してよろしゅうございますか。一言だけ。
  136. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘の通達、海運局長の通達でございますが、現在もなおそれを基準として行政を行っております。
  137. 薮仲義彦

    薮仲委員 了解いたしました。  それでは、この中にこううたわれております。その前に、先ほど来お話がありましたように、日本の船舶の国際競争力を強化するために資本面で相当力を入れました。おっしゃるとおり計画造船が今日まで進んでいるわけでございますが、この中で四十九年二月十三日、運輸委員会で当時の薗村海運局長の答弁の中で、計画造船でつくった船は五年間は売らせないということになっている。これはこの通達にも出ておりますが、売られている船は二、三万トン以下の小さい船で、一方計画造船では大型船をつくっている、こういう海運局長の答弁がございます。しかし、この四十九年、答弁のあった年に二、三万トンはおろか四万八千九百五十二トンのタンカーも売られております。両方とも。五十年に参りますと十三万三千トンの高崎丸、五十一年は同じく十万トンのタンカーというように、二、三万トンはおろかタンカーがどんどん、石油ショック以来でしょうけれども、売られております。特にこの中で、いま私の挙げたのは全部計画造船の船でありますが、「財政資金によって建造された船舶であっても、当該譲渡が海運政策上又は国際協力上有意義な場合には」、こうなっておるわけでございます。こういうことで、いわゆる国民の税金ともいうような形で開銀の融資を受け、ある面では利子補給を受けた船が売られていく。特に売り先を見ますと、これが一体海運政策上必要なのかと思うほど、ほとんどがリベリア、パナマ。先ほど海運局長の説明にありましたように便宜置籍国と言われる国へほとんど売られております。私の手元にある資料のほとんどは、リベリア、パナマでございます。日本海運政策上こういう便宜置籍国に売ることが国際協力上有意義だったのかどうか。特に問題にしたいのは「計画造船により建造された船舶については、竣工後五年未満の船舶は、許可しない。」こうなっております。ところがさっき指摘しました昭和五十年の高崎丸は、建造年四十八年、売却が五十年です。二年間で売っております。通達を出しながらこのような法を守らないという姿勢が運輸省当局にあったのでは私は非常に遺憾である。午前中の法案審議質問にも出ておりましたけれども、法の運用というものは勝手になされるべきものではない。法というものは成立すれば厳格に一人で動き出すんだ、これが法であり、あるいはまた行政の責任というものは、通達されたものが守られてこそ万人が納得すると思うのでございますが、運輸省みずから売ってはいかぬと言いながら売却しているこの実態、先ほど挙げたこういう船一つ一つがリベリア、パナマに売られているわけでございますが、特に昨年売られた船はほとんどリベリアです。こういうのを見ておって、全部私の言っているのは計画造船についてのみですから、私は非常に遺憾に思うのでございますが、この点いかがでしょう。
  138. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 御指摘のように、オイルショック以降、わが国の船主がタンカー不況に対処するために、できるだけ契約のないタンカーをいわば整理するという営業上の判断をいたしまして、一時期大量のタンカーを海外に売却をしたという事実がございます。その中には御指摘のように私どもが計画造船として財政資金を融資をし、利子補給をつけたそのようなタンカーが相当に含まれておりました。それで、これらのタンカーにつきましては、後で御説明申し上げますように、高崎丸の例を別にいたしましては、従来から計画造船の船を、古くなった船を売って新しい船と取りかえるということは、これは海運経営の一つのよくあることでございまして、そういうことを事細かに制限するという考えはございません。それでほどほどに、計画造船で建造した船を古くなってから売るということの基準としては、五年という年数を決めて、そして五年たったものについてはその事情によって売ることを許可しますという考え方で対処をしてまいりました。このタンカー不況直後の、タンカーをたくさん売却整理いたしましたときのタンカーは、高崎丸の例を除いて、あとはこの五年以上たったタンカーということで枠の中に入っているものでございます。そのようなタンカーの整理というものは、あの急速に訪れましたオイルショック後のタンカー不況ということで、タンカーをたくさん抱えて持っていればいるほど非常に困るような事態がそれぞれの会社に予想をされた時点におきましては、営業上の判断としてはやむを得なかったものと私は思っております。また、そのようにして売却を許可いたしました船につきましては、当然のことながら開発銀行からの融資残高は全部償還をいたさせております。  ただ一つ、竣工後二年で売却を許可いたしました高崎丸のケースについて御説明申し上げますと、このタンカーを売り渡しました相手、これを買いたいといって非常に所望してまいりました相手は、アラブの産油国八カ国が合同をしてつくりました新しいタンカー会社でございました。アラブ産油国が、いまでもそうかもしれませんが、その当時、新進気鋭の意欲に燃えまして、油の産出のみならずその製品の輸送にみずから参加をしたいという意欲に燃えまして、関係八カ国が合同してそのような新しい会社をつくりました。そして世界じゅうの優秀、有能なるタンカーを買い集めたものでございます。その中の一つとしてこの高崎丸が懇望をされたということでございます。それで、これまでいろいろと御説明申し上げました計画造船の売却につきましては、いままで五年という基準を守ってきておりましたけれども、そのような特殊な事態のもとにおきまして、この船以外の船を売り渡すことではいかぬのかということで大分検討をいたさせましたけれども、この船が非常に先方の希望にかなった船であるということで、きわめて特殊なケースとして、このアラブ八カ国が新たに設立をいたしました特殊なるタンカー会社の持ち船として譲ることを私どもとして許可をいたしたものでございます。
  139. 薮仲義彦

    薮仲委員 この問題はもう少し細かく取り上げていきたいと思うのでございますが、きょうは時間がございませんので非常に残念なのですが、このように「五年未満の船舶は、許可しない。」という原則に基づいて海運行政がなされているわけでございますから、やはりこういうものが守られていくということは非常に大事な点だと思います。今後こういうことが簡単に行われないように行政の中で十分な御配慮をいただきたい、この点だけを指摘して次に移らせていただきます。  次に私が問題としたいのは、先ほど来話になっております裸用船、いわゆるマルシップでございますが、これはいろいろな点で問題が多い。特に、マルシップの現況について船員局長としてどう考えるのか。  また、これは完全に外人の船員が乗っている船でございますから、先ほどの労働大臣による閣議了解事項との関係で、政務次官はこの問題についてどうお考えになられるのか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  140. 横田不二夫

    ○横田政府委員 先ほど海運局長から御説明申し上げましたいわゆるマルシップ、これが何隻ぐらい現実にあるかということについてはもう少しつまびらかにいたしておりませんけれども、わが国の海運、ことに近海海運競争力が著しく低下してきた。これは相対的な問題でございますけれども、そういう構造的な問題に対しまする海運企業の現実的な対応といたしまして発生してきているものであって、現実問題としてやむを得ない事情があろうかと思いますけれども、こういうような日本船舶の運用のあり方につきましては、そういうような運用がされるという現状、環境につきましては、私は好ましいとは思っておりません。  そういうことでございまして、先ほどの、労働大臣の閣議の際における御発言とあわせて考えた場合にどうかという第二点の御質問についてでございますけれども、先ほど政務次官から答弁がございましたように、外国船主において配乗する船舶についてはこれは適用ができません。したがいまして、マルシップの場合は、御案内のとおり日本船舶ではございますけれども、適法に外国に貸し渡され、当該外国船主その他の運航事業者が配乗するという形になっておりますために、この乗組員の国籍について規制をするというわけにはまいらないのでございます。
  141. 石井一

    ○石井(一)政府委員 内容につきましては、ただいま船員局長が答弁したとおりでございます。国際競争に勝つためにある程度マルシップであるとか仕組み船というものはやむを得ないと思うのでございますが、特に御指摘のように船員の雇用対策ということ、これを改めて見直していく必要があると思います。特に最近の領海法等の問題で漁業の問題にもこういう問題が出てきておりますので、ここで改めていま審議会等でも御審議をいただいておるところでございますけれども、この点を今後特に留意していきたい、そう思っております。
  142. 薮仲義彦

    薮仲委員 きょうはそれくらいにしておきますけれども、これは続けていろいろな角度から私は伺いたい問題が数多くございます。特に雇用問題からは非常に重大な問題と理解しておりますので、ただいま政務次官の御発言は責任ある御答弁と理解しておりますので、どうぞこれからの行政の中でその実を上げていただきたい、このことを要望いたします。  それで、特にマルシップという問題でございますが、これは日本船籍を有するということで日本の船員法の適用を受ける、こういうことになるわけでございます。中身は全然日本人ではないのに、日本船籍を有するということだけで日本のいわゆる海運上の法制をすべて適用される。海上運送法、船員法、船員保険法、船舶安全法等々の法が適用されることになってはいるのですけれども、それではその外国船員に果たして日本の船員法が厳格に適用されるのか。先ほど私は、海運行政の中の自由という陰には責任があってしかるべきだ、運輸省海運局あるいは船員局の統轄下の中にそういう船が当然行政指導、監督を受ける、特に船員局にあっては船員法にうたわれているように船員の質の向上というのは重大な問題だと思うのです。じゃいままで船員局が船員法にのっとって、船舶安全運航にのっとってあのマルシップに搭乗している船員の質の向上を何回図ったかといっても、まだやってないでしょうからそうは聞きませんけれども、そういう点からいくと、船員法を適用しますと言うけれども厳格に適用できないじゃないですか。それを見逃しにする、こういう姿勢がさっきの高崎丸みたいに、必要なときには法を決めておきながらこういうことをやりました。こういうことは自由ということではなくして無責任である。やはり私は、法と秩序が海運行政の中にあって初めて日本商船隊の健全なあすの繁栄があると思うのです。じゃマルシップは何法で抑えられるのですか。船員法で抑えられますか。せいぜい担保できるのは電波法だけじゃないですか。だから、さっきの御質問にあったように通信員が一人日本人です、これが現状じゃないですか。では、外航船舶が同じように日本の港へ入ってくる。開港内へ入るときには取り扱いは全部同じです。では不開港の港へ入ってごらんなさい。アメリカの旗を立てた船は入れませんよ、いわゆる特別許可がなければ。ところがマルシップは、中身は外人ですよ、でも、国籍日本籍なるがゆえに、日本の旗を立てているからすんなり不開港の港へ入れるじゃないですか。どうやって見分けるのですか。見分けがつかないじゃないですか、旗を立てているから。しかも日本は法治国でありますよ。現在の海運行政の中のどの法でマルシップを規制するのですか。船員をどうやって教育するのですか。それが海運自由という考えなのか。経済原則にのっとって当然だと言うなら、私は大きな誤りだと思う。とんでもないと思う。やはり陸上のどんなものだって全部法の規制を厳格に受けて、そこに日本の国は成り立っているのです。海の上だからといって、何らいまのマルシップを規制できない、こういう状態が正しい海運行政、責任ある海運行政などとは、私は全然認められませんね。やはりここにきちんとしたマルシップに対しての規制、そしてまた日本船舶としての船員教育をきちんとできるのかどうか、こういう点はきちんとして責任を明確にしなければ非常に大きな禍根を残す。特に御承知のように、船であるがゆえに船上は日本の領土の延長と考えるのです。このマルシップは日本の領土のはずです。この中で起きるいろいろな事件について、ならば、普通日本の船員法によって日本船舶の船長というのは、少なくとも準司法的な責任、権限を持っております。マルシップの船長は船員法の適用を厳格に運用できますか。あれが日本の領土なりという法の適用を受ければそうなるのです。こういうあいまいな形でマルシップを残すことは、単に雇用問題だけではなくして、日本の将来の海運に大きな禍根を残すと私は思うのです。ですから、このマルシップを何らかの形で将来規制するという方向が当然であろうと私は思うのでございます。  時間がありませんので、次の問題も含めて御答弁いただきます。  このように外国用船がどんどん進んでおります。そうなったときに、やはり将来貿易立国というものを目指した日本国民にとって大事なものはナショナルセキュリティー、国家安全保障、いわゆる行政責任で監督指導、運用できる海運行政というものが確立していなければ、経済原則で安い船員費の者を乗せればいいのだという先ほどのような御発言であっては問題だと私は思うのでございます。やはり日本一億一千万の生命、財産を守るというこの日本海運の将来のために、ナショナルセキュリティーの立場からこの外国用船の問題については、先ほど来問題になっておりますが運輸省としての海運行政の確かな姿勢、先生方の御審議をいただいては間に合わないという御指摘もあったように、私も同感です、やはり運輸省として責任ある行政があって初めて日本の安全が守られると思うのでございますが、やはりこの外国用船の責任という問題と含めて御答弁いただきます。  以上です。
  143. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 日本国のナショナルセキュリティーという観点から日本海運というものの将来、確固たる方針のもとにそれを守れ、こういう御趣旨だと私は承ります。それは御趣旨は当然だと私は思います。ただ、実際にやってみます場合に、これまで私どもあるいは現在の船員、船主が当面しており苦しんでおる問題は、いろいろといままで御説明したとおりでございます。具体的な方策としては、ただ単に日本人が乗った日本の船というものが大きくなるように、大きくなるようにという政策は、実際上はなかなかむずかしい。船員の雇用の問題も一方で十分に考慮いたしながら、日本国経済の基本的な安定のためにどういったふうにして日本経済に信頼できる日本海運というものを存在させられ得るかということについて、私ども努力をしてまいりたいと存じております。
  144. 石井一

    ○石井(一)政府委員 御指摘の点は十分理解できるわけでございますが、わが国の海運政策、船員政策のみでこの問題が解決するわけでございません。国際社会の中のバランス等を考えつつ、そこに具体的にいま御指摘の点がどう解決するか、こういうむずかしい矛盾をはらんだ厳しい情勢にあることは、現下の国際情勢、経済情勢でも御認識もいただけるところであろうかと思います。それかと言って、いまの問題を見逃すわけにはいかぬということも確かでございますので、ここでこのようにすればすべてが解決するという御答弁ができかねるのはまことに申しわけないと思いますが、十分御指摘の点なども勘案いたしまして、英知をしぼって努力をしていきたい、このように考えます。
  145. 薮仲義彦

    薮仲委員 以上で終わります。
  146. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 次回は、来る十二日午前十時委員会委員会散会後理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十一分散会