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1976-10-04 第78回国会 参議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月四日(月曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員氏名     委員長         八木 一郎君     理 事         梶木 又三君     理 事         高田 浩運君     理 事         山内 一郎君     理 事         吉田  実君     理 事         小野  明君     理 事         森中 守義君     理 事         桑名 義治君     理 事         内藤  功君     理 事         向井 長年君                 安孫子藤吉君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 井上 吉夫君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 熊谷太三郎君                 源田  実君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 林田悠紀夫君                 最上  進君                 森下  泰君                 矢野  登君                 加瀬  完君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 野々山一三君                目黒朝次郎君                 矢田部 理君                 山崎  昇君                 太田 淳夫君                 中尾 辰義君                 矢追 秀彦君                 岩間 正男君                 上田耕一郎君                 渡辺  武君                 木島 則夫君                 青島 幸男君     —————————————    委員異動  九月二十一日     辞任         補欠選任      井上 吉夫君     斎藤 十朗君  九月二十九日     辞任         補欠選任      梶木 又三君     桧垣徳太郎君      斎藤 十朗君     宮田  輝君  十月一日     辞任         補欠選任      安孫子藤吉君     佐藤  隆君      山崎  昇君     野田  哲君      加瀬  完君     辻  一彦君      野々山一三君     前川  亘君      青島 幸男君     喜屋武眞榮君  十月四日     辞任         補欠選任      中尾 辰義君     小平 芳平君     —————————————    出席者は左のとおり。     委員長         八木 一郎君     理 事                 高田 浩運君                 桧垣徳太郎君                 山内 一郎君                 吉田  実君                 小野  明君                 森中 守義君                 桑名 義治君                 内藤  功君                 向井 長年君   委 員                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 長田 裕二君                 亀井 久興君                 熊谷太三郎君                 源田  実君                 佐藤  隆君                 坂野 重信君                 玉置 和郎君                 中村 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 鳩山威一郎君                 林田悠紀夫君                 宮田  輝君                 最上  進君                 森下  泰君                 矢野  登君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 竹田 四郎君                 辻  一彦君                 田  英夫君                 野田  哲君                 前川  旦君                目黒朝次郎君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 小平 芳平君                 矢追 秀彦君                 岩間 正男君                 上田耕一郎君                 渡辺  武君                 木島 則夫君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣        外務大臣臨時代        理        三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        法 務 大 臣  稻葉  修君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  永井 道雄君        厚 生 大 臣  早川  崇君        農 林 大 臣  大石 武一君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  石田 博英君        郵 政 大 臣  福田 篤泰君        労 働 大 臣  浦野 幸男君        建 設 大 臣  中馬 辰猪君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      天野 公義君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       井出一太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       西村 尚治君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       荒舩清十郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  坂田 道太君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田 正男君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  丸茂 重貞君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  天野 光晴君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        総理府人事局長  秋富 公正君        行政管理庁行政        管理局長     辻  敬一君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁装備局長  江口 裕通君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  勇君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        科学技術庁原子        力安全局長    伊原 義徳君        国土庁長官官房        長        河野 正三君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        公安調査庁長官  冨田 康次君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省条約局長  中島敏次郎君        大蔵省主計局長  吉瀬 維哉君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省証券局長  安井  誠君        大蔵省銀行局長  後藤 達太君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省援護局長  出原 孝夫君        農林大臣官房長  森  整治君        農林省農林経済        局長       吉岡  裕君        農林省構造改善        局長       岡安  誠君        農林省畜産局長  大場 敏彦君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁石油部長    古田 徳昌君        中小企業庁長官  岸田 文武君        中小企業庁計画        部長       児玉 清隆君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        気象庁長官    有住 直介君        郵政大臣官房電        気通信監理官   松井 清武君        郵政大臣官房電        気通信監理官   佐野 芳男君        労働省労政局長  青木勇之助君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省河川局長  栂野 康行君        自治省財政局長  首藤  堯君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      吉田 淳一君    参考人        東京大学教授   浅田  敏君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○調査承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査     —————————————
  2. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この際、委員異動に伴う理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事桧垣徳太郎君を指名いたします。     —————————————
  4. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 次に、調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても予算執行状況に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 次に、予算執行状況に関する調査を議題といたします。  本調査につきましては、理事会におきまして、本日及び明日の二日間にわたり委員会を開会することとし、質疑総時間は三百三十分、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党それぞれ百十分、公明党及び日本共産党それぞれ四十分、民社党二十分、第二院クラブ十分とし、質疑順位は、お手元に配布いたしました質疑通告表のとおりとすることに協議決定いたしました。  そのように取り計らうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  9. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本調査のため、本日、東京大学教授浅田敏君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。−     —————————————
  11. 八木一郎

    委員長八木一郎君) それでは、これより質疑を行います。森中守義君。
  12. 森中守義

    森中守義君 総理政治姿勢について最初からお尋ねいたします。  総理に就任されてから現在に至るまで、まあよく報道関係等で言われますが、三木手法というようなもので、ずいぶん私どもいろいろ勉強させられました。ところが最近、総理姿勢が、政権維持のための過剰防衛意識とでも言いましょうか、そういうさまざまな動きというのが非常にわかりにくい。したがって、大方の国民は、たとえばロッキードに見るように、非常に前進的な姿勢が逐次後退した、この辺に、何が本当なのか、こういう大変な疑問を持っているわけです。したがって、そういうことにこの際は答えてもらう必要があると思う。  つきましては、毎日新聞の細島泉という論説委員の最近の三木武夫論というのを私は非常に興味深く読んだんですが、こう言っているのですね。政治改革のための一里塚総理がなるのか、あるいは政権にしがみついて老醜をさらすのか、その選択に直面している、主観的には前者であり、客観的には後者である。こういう見方をされているのですが、この人の一つ見解ですけれども、大体総理自身は、こういう一つ見方に対して御自身としてはどういうお考えをお持ちですか。
  13. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 森中君にお答えをいたしますが、一つ後退ということですね、たとえばロッキード事件など。ロッキード事件についても、私がこれを徹底的に究明するという態度はいささかも変わってない。これに対して政治生命をかけると言った私のこの決意にもいささかの変化はない。もし後退という印象があるならば、森中君の質問を通じてそういう印象をぬぐい去るように努力をしなければならぬことだと思います。  また、政権に何かこう、しがみつくというようなお話でございましたけれども、私はそんなことを考えたことは一度もない。そんなさもしい考え方は私は持ってない。やることはやるということです。それは政権延命のためにいろいろな国の問題を、それを材料に使うというような、そんな心情の持ち主ではない。これはどうかそういう誤解のないようにお願いをいたしたい。
  14. 森中守義

    森中守義君 これは誤解じゃない。要するにあなたのおやりになることが非常に起伏があるんですね、それがわからないと、こう言うのです。だから細島泉さんの言うように、政治改革のための一里塚になるのか、あるいは政権にしがみついて老醜をさらすかという、こういう見方が出てくるのも決してゆえないことじゃないと思う。そういうことをもう少しはっきりしてください、こう言っているんですよ。
  15. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ総理大臣というのはいろんな批判を受けるものですね。いろんな批判がある。当たるものもあれば当たらないものもある。それを一々私がいろんな批判を、森中君がこれを前提にしてこうだと断定してこれに答えろということは無理であります。これは総理大臣ぐらい批判の前にさらされておるものはないんですから、私も批判を読んでみて、これはどうも無理だなと思うこともずいぶんありますよ。しかし、それは当然、公人としてその批判は受けるべきだと私は思っているわけです。腹立てたことはない。しかし、その中にはずいぶん自分の真意を解さないなと思うことだってございますよ。それをとらえて私に説明しろと、いま言ったような、たとえば延命でも、そんなさもしい考えは持ってないんだと、こう言うんですから、本人が言うんですから、それを前提にしてひとつ質問を展開していただくならばお答えをいたします。
  16. 森中守義

    森中守義君 それでは、そういうことが具体的にこれからお尋ねする中に出てきますが、まずその中でお尋ねしたいのは、総裁の進退はみずからの意思によって決めるものである、こういう御発言がいつかありましたね。それから、任期いっぱいやるんだという、こういうことも言われたように何回か聞いている。そうなりますと、これは他党のことだからおせっかいなことだよということでは済まない。やはり総理総裁の去就というものは、政党政治である限り、きわめて微妙に国会全体、政局全体に影響しますから、そういう意味でこの件についてはどうなのか。つまり、任期いっぱいおやりになる意思なのか、あるいは流動する政局の中で何かまた考えを変えていかれるのか、この点はどうですか。
  17. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いろいろ自民党党内にも問題を抱えておる。社会党でも同じことだと私は思いますね、これは。どの党も問題を抱えている。政党一つの大きな新しい時代へのある意味において苦悶時代だと私は思っている。やっぱり新しく脱皮していく、そういう一つの大きな苦悶時代を、自民党社会党も他のいわゆる野党でも私はそうだと思うんです。そういう時代だと思うわけですから、党内にいろいろ事情は持っておりますが、私がこうやって森中君の質問に答えておるのは、簡単に私が総理をじきやめるんだというようなことで臨時国会に私が臨むようなそんな無責任なことはできない、引き続き政権を担当するという決意のもとにこの臨時国会に臨んでおるんだと御承知を願いたいのでございます。
  18. 小野明

    小野明君 関連。  いまの森中君の質問関連をいたしまして総理に若干お尋ねをいたしたいと思います。  総理は、いまのように言明をなさったわけでございますが、この八月、九月の反三木攻勢といいますか、党内抗争といいますか、権力争奪の争いというのは、私は中におりませんからわかりませんけれども、相当激しいものがあったと思います。それをしのいで総理政権担当決意を新たにされておる、そのことについては、私は政権亡者ではないというようなお話もございましたが、やっぱり政権を担当する以上は、何かをやろうという仕事への意欲がなければ政権亡者と言われても仕方がないと思います。この政権担当の御決意をいま改めて承りまして、総理は一体これから何をおやりになろうとしておるのか、そのあたりをお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはやはりたくさん問題を抱えておりますね、問題を。外交の問題にしても、経済の問題にしても、今日は非常に大きなやはり世界的に転換期ですから、外交経済、すべての点において誤りなきかじを取っていくことは容易なことではないわけです。こういう日常の経済あるいは内政、外交にわたって、いろいろ自民党には問題はございましたけれども、この停滞は私はさしてないという考え方を持っております。いまはこういうロッキードというような不幸な事件が起こって、これはやはり真相は解明されなければならねですね。真相を解明して、その解明するということだけが目的ではなくして、日本政治あるいはまた日本政党、大きく言えば日本民主政治をより健全な、よりやはり基礎の強固なものにする一つ転機にしたい。そのために改革しなければならぬこともたくさんあるのです。当面やはり日本民主政治というものが大きな試練といいますか、危機といいますか、この試練に耐えてわれわれは民主主義というものを守り抜こうという決意ですから、守り抜くためには民主政治というものは国民の非常な不信のもとに民主主義は守れるものではないのですから、その不信を払拭して、そうして民主政治というものをより健全な、より強固なものにするための一つの大きな転機にしたい。そのための改革も行わなければならぬということが当面の大きな私に与えられた課題である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  20. 小野明

    小野明君 はなはだいまの御答弁は一般論でありまして、不満であります。  当面いま問題になっておりますのは、御存じのように、ロッキード事件であることは明らかであります。先ほど総理は言われましたけれども、ロッキード事件が表になって以来、当時の総理の御決意政治生命をかけるとまで言われました総理の御決意と、この衆議院の予算委員会あるいは両院本会議を通じて総理の御見解は、多くの報道機関が論じておりますように、非常に後退をいたしておる感を否めません。というのは、いわゆる灰色高官の基準の問題あるいは公表の問題にいたしましても、これを国会に任せる。それはそれなりの政治的な根拠があるかもしれません。しかし、それは当初の総理言明とはかなり大幅に後退をしておることは否めないと思います。  さらに、この問題について田中角榮個人のパーソナリティーに帰するものであるか、あるいは政治制度あるいは政治構造関連があるものであるかどうか、これは非常に議論の分かれるところもあろうかと思いますが、再びこういった事件を起こさない。いままで日本疑獄事件で、それを契機に日本政治制度を変えてきた、再び起こさないという動き国会が示したことはない。また、三木総理においてもまたしかりである。これを重要な反省として制度を変えていく、あるいは権力中枢の汚職であったわけですから、その構造を変えていく、こういった点については何ら総理は触れるところがございません。いまアメリカ大統領選挙が行われておりますが、ウォーターゲートという苦い経験をアメリカ国民がなめて、再びこれを起こさないというためにかなりの政治的な改革が行われているやに聞いております。
  21. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 小野君、時間を……。
  22. 小野明

    小野明君 はい。  灰色問題についても後退をいたしておる中で、さらに一歩を進めるという総理の御決意が聞けないのはまことに残念であります。だからといって、いつまでも総理総理の座におられるということは、これはまた問題があるかと思いますが、御決意だけでもひとつ伺いたいものだと思います。以上です。
  23. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はこういうふうなロッキード事件のような事件を、こんなものを繰り返して日本民主政治が守っていけるとは思っていないのですよ、こういうことで。これはやはりこの不幸な事件転機にして、日本民主政治というものはもっと健全なものにしなければ日本民主政治というものは守っていけないと、こういう危機感を持っておるものでございますから、今後ロッキード事件の究明ばかりでなしに、これを教訓として改革するためのその具体的な問題についてはいま検討も進めておりますが、アメリカにおいてもウォーターゲートが出ていて、最近にああいう結論が出たわけですから、ウォーターゲート法案のようなものは、あの事件の、最近に国会に提出されたわけでございますから、そういうことで多少の時間はかかりますけれども、これをただ事件が終わればそれでいいというような考えは持ってないのですよ。事件を、何か真相を暴露するということが目的というよりかは、それを転機にして、日本のこういう事件が再び起こることを防ぐための諸改革というものが行われなければならぬと、そこにロッキード事件の教訓はあるんだと、このように私は受けとめておるわけでございます。小野君の言われたようないろんな問題について、一つのこの問題点というものを掘り下げて、改革すべき改革案というものも、これは提出をいたしたいという決意でございます。
  24. 森中守義

    森中守義君 それでは先ほどに続きまして、こういうことを一遍聞いてみたい。  今日の政局というのは言うまでもなく大変な激動期であります。どういう事態の発生がこれから予測されるのか、非常になかなか予測もむずかしい。けれども一つの予測としまして、少なくとも今日の保守党の多数支配の時代はもう要するに終わった。そうなれば、これから先、自民党の大会があるという、こういう経過の中でかなり激しい抗争が展開をされるという予測も一つの予測だと思う。で、そういう状態の中で、要するに収拾できないようなぎりぎりの段階に来た場合には——あくまでも仮定ですよ、そういう場合にどういう選択をなさるのか、これが第一点。  さらにまた、衆議院選挙等があって保守党の単独政権が維持できないというような場合、ここでどういう選択をなさるのか。この辺は、この段階では仮定であるにしても、やはり政権を担当される一党の総裁として一つの見識をお持ちいただくのも当然だと思う。そういう意味で、この二つのことに対する選択は今日どういうようなお考えなのか、まず聞かせてもらいたい。
  25. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はこういうふうにいま森中君見ているのですよ。自民党も大変に結党以来の大きな試練を受けておりますが、これはやっぱりこの試練を乗り切っていけるという私は自信を持つものです。だから、森中君の言われるような、自民党がぎりぎりとおっしゃるのは、もう収拾つかぬようになるという前提でしょうが、私はそうは思ってない。自民党は自由民主ですから、何でも自由に、言論は至って自由でございまして、何でも皆自由に、ずいぶん外から見たらいろいろ奇異の感を持たれるぐらい自由に言うわけですが、それでいってこんなもう収拾つかないようなところになるかというと、やっぱりそうはいかないのですね、自民党は。やっぱり政権を担当しておる政党の重さというものをみんなが感じているわけです。そういうところで、まあ御心配くださっておることは感謝いたしますけれども、そこまでもう収拾つかぬような状態には自民党はならないと。  また総選挙の結果でございますが、これから遅かれ早かれ十二月九日までには総選挙をやらなければならぬ。私は国民自民党というのを見放していないと思っているのですよ、国民の皆さんは。むしろ自民党が、このロッキード事件というものを契機にして自民党の再生を国民は望んでいると、国民は。それはいろいろ、総選挙でございますから、やってみなければわかりませんけれども、やはり自民党がこのロッキード事件というものを教訓にして、自民党は新しい自民党として再生されて、国民の信頼にこたえるような政党になることを国民の多数は望んでおると私は信じておるわけです、まだ見捨てていないんですから。  そういうことで、森中さんの御指摘になるように、自民党が過半数を取れないような選挙の結果になって、余儀なく保革連立の内閣でもつくらなければ政権が維持できないというような状態には考えておらないわけでございますから、私と考えの違う前提に立っての御質問でございますから、そのようには相ならぬと、そのようにはならないというふうに考えておるということを申し上げてお答えといたします。
  26. 森中守義

    森中守義君 それではいま一つの問題として、クリーン三木ということが三木内閣発足以来よく言われてきました。この三木総理のクリーンとは一体何なのかという素朴な疑問が私にはあるんです。そこで、一口に言えば、三木総理三木総裁といえどもやはり自民党一つの派閥の形成責任者にすぎない。こういうふうに見てくると、やはり金ということが問題であります。五十一年八月十一日の発表で六億七千九百万の献金、三億六千万円の組織活動費という名のもとでの金のばらまき、こういうことが公式に発表されておる。もちろん、私は裏金がどのくらい入っているのかそれは知りませんが、これも全然否定できないような状況だと思うんですね。そうなれば、結局より高額の金を集めた者、それとそれよりも多少とも低い者、そういう清潔度というものは三木総理の場合には幾らか金が少ない、いわば清潔度が高いという、こういう程度のものじゃないかと、こう思うんですが、御自身はどう思っていらっしゃるのか。
  27. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) クリーン三木というのは私がつくり出した言葉ではないんです。人が言っているわけですね。ただ私はこのように受けとめているんですよね。やはり政界に腐敗行為などをなくするようにして、そしてクリ−ンな政治、クリーンな政界、こういうことを目指す政治を行うということにクリーン三木というものの一つの言葉の内容があるものだと私は受けとめて、私がつくった言葉でないんですが、みずから言っておるわけでないんですが、その言葉にこたえなければならぬなあというふうな受けとめ方をいたしておるわけでございます。また、政治資金の裏金というものは私はございません。
  28. 森中守義

    森中守義君 それから、企業からの献金というものを是認されますか、否定されますか。
  29. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、企業というものも一つの社会の健全な発展を望んでおるわけですから、しかも、自由経済体制の維持というものは非常に企業全体の大きなやっぱり社会秩序への願いでもありますから、その企業が、政界ばかりでなしに社会全般のことに寄付していますね。慈善事業などにもいろいろ寄付しておる。そういう寄付というものが、政治であろうが、あるいはまた社会事業であろうが、寄付することが、企業だからしてはいけぬとは思ってないわけです。ところが、政界に対する企業の献金というものは、国民からえてして疑惑を持たれやすいものでありますから、だんだんと政治献金というものは個人献金に比重を移していくということが必要だと私は思っているんです。だから、政治資金規正法でも、五年後に個人献金に重点を置いたり、組合の政治資金の拠出方法などに対してもう一遍検討しようという意味の再検討の条項はついています。だけど、日本の社会的な慣習もございますから、一遍に個人献金に切りかえるということは現実に即さない点もございますから、ある一つの準備期間というものは要ると思いますね。そういう準備期間を置いてだんだんと政治活動というものが党費と個人献金に依存するような方向に持っていくことが私は必要だという考えでございます。しかし、それは私は悪だとは思ってないが、国民の疑惑を受けやすい、これがいろんな癒着ということも国民に疑惑を与えますから、政治資金の明朗化のためには党費と個人献金、こういうものに党の経常費は重点を置くべきだ、私はそのようにすべきだという考えでございます。
  30. 森中守義

    森中守義君 総理、そう言われますけれども、企業の中の代表が企業でなくて個人というように切りかえてみても、やっぱり出し方によりますよ。非常に問題がある。だから、私はやはり企業、それは総理の言われるように企業代表を個人に切りかえてみても、そこに存在するのは相当強い賄賂性がある、こういう認識が一般的だと思う。ですから、本当に総理のクリーンということを名実ともに実現させようとするには、企業及び企業の中の個人、これを脱却する以外にないんじゃないですか。そのときに初めてクリーンだ、こういうふうに私は言えると思うんですけれども、その辺の見解はどうなんですか。
  31. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 企業の献金の賄賂性というものは実際問題として私はないと思いますよ。ただしかし、そういう誤解を、いま森中君のような有力な国会議員の方でもそういう疑惑を持たれるということは、これは軽視できぬことだと私は思います、軽視できないことだと。そういう意味で、だんだんとやっぱり個人献金、これは企業の人であっても、個人の自分の収入の中から出されるのはこれは個人献金と言えるでしょうね。企業という一つの法人格の人たちが寄付するのと——会社の重役が自分の収入の中から政党に寄付するのは、これはまさしく個人献金のカテゴリーの中に入れて恥ずかしくない、こういうことです。私はだから、重役が個人でなすったら同じことだと言うけれども、個人が自分の収入から出すというのは、これはやっぱり個人献金することはよろしいことなんで、おまえは何の会社の重役だから、おまえは何だから、おまえの金は個人献金でないと言えないでしょう、自分の所得の中から出すのだから。それは当然のことだと思います。
  32. 森中守義

    森中守義君 五月の二十四日通常国会が終わる段階で、財特法及び運賃法、公衆電気通信法、これらが非常に重要なものだから会期延長したいというお話がありませんでしたね。ところが、臨時国会の召集に至っては、この三案は経済法案、予算法案だから何が何でもと言われる。ここに私は合点がいかぬのです。なぜあの段階で、そう重要だと言われるならば、会期延長に応ずるか応じないかは別として、立場からするならば会期延長を言われてもよかったと思う。それでなおかつ試合ができなかった場合に、今日言われる三案が重要だというのは生きてきます。何もやらないでいていまごろになってそれを言われる。かえってこれは責任放棄しておったんじゃないですか。だから結果的には自民党の抗争を、臨時国会開こう、中身はこういうものにしようということで、むしろ党内の収拾のためにこの臨時国会が開かれたという感じが強い。この辺の政治責任はどうなんですか。
  33. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは森中君の言われたような、通常国会を会期延長して処理するということも、やはりそういう方がよかったかもしれませんね、考え方として。しかし、一応この通常国会というものは会期が決められておったわけですし、またロッキード事件の究明という問題も、これはやはり非常に急ピッチで捜査が進んでおった事情もあって、そういうさなかで国会というと、非常にやっぱり審議というものにどうであろうかと。ある程度ロッキード問題のめどをつけて、それで国会に対しても御報告のできるような段階であったら一番好ましいということで、いろいろな事情でおくれたわけですが、これはどうしたって、森中君がお考えになっても予算の執行が不可能になるわけです。三兆七千五百億という特例公債の発行をお認め願わなければ、予算は成立しておっても執行が不可能になるわけですよ。また、国鉄、電電にしても、森中君が事情よく御承知のように、これはやっぱり国鉄の再建の一環です、値上げだけでないのですから。これがなければ国鉄の再建もできない、こういう状態ですから、その必要度というものに対しては御理解を願える、賛否はともかくとして必要性は御理解願えると。  ただ、その取り扱いというものに対してもう少し何か早く処理する方法はなかったのかということに対してはわれわれも反省しなければならぬ点が相当あると思いますよ。ただしかし、ロッキード事件というものもその間捜査が進行しておったという事情、私もやっぱりこれを優先した方がいいと、野党の諸君もそういうことでございました。いろいろな事情が重なりましたけれども、この処理がおくれたということに対しては責任は感じなければならぬ問題だと考えております。
  34. 森中守義

    森中守義君 これはなぜこんな聞き方をするかといいますと、三案の扱い等で、まず、いまみずから反省をしなければいかぬと、こうおっしゃるから言うのですが、やっぱり悪いですよ。何にもそういうような責任ある措置をとらないでにわかにそういう言い方をされる、この辺は私は非常に遺憾だと思う。さらに、ロッキードで逮捕された田中、橋本、佐藤、この三名の人はだしか離党届を出したように聞いておりますが、どういう党内の手続になっておりますか。
  35. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまはやっぱり離党をされて自民党籍から離れたということでございます。そういうことで、この問題の責任を感じて起訴と同時に党籍を離れられたということになっております。
  36. 森中守義

    森中守義君 新聞等では、この三名の人が次の衆議院選挙に立候補すると、そういうことがしきりに伝えられておりますが、お聞きになっておりますか。
  37. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まだ本人から、本人の真意を私は聞いておりません。
  38. 森中守義

    森中守義君 恐らく決定的な事実のように新聞は言っている。その場合に、党籍がない。けれども潜在的な党員ということで、この人たちの立候補に当たって自民党としてどういう措置をおとりになるんですか。
  39. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 立候補ということは、憲法のたてまえ上自由ではございますが、いろいろ皆政治家としての長い経験を有されるわけですから、いろんな点から最終的な御判断はされるものと、こう考えております。
  40. 森中守義

    森中守義君 これは時間が一つの証明になるでしょうが、もし出るという場合には推薦されるんですか。
  41. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 最初に言ったように、自民党の党籍を離れていますから、推薦などということはあり得るはずはないわけでございます。
  42. 森中守義

    森中守義君 それでは、公党として、三人が党籍はもちろん持たない、推薦もしない。当然三人の選挙区にはしかるべき候補者をお出しになるんですか。
  43. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはやはり党の選挙対策委員会というものがございますから、自民党の措置にお任せを願いたいと思います。
  44. 森中守義

    森中守義君 結果においては、やはり三人の当選を期待すると、こういうような言い方にもとれる。  それからいま一つは、当選をしてきた場合、復党の申し込みがあった場合どうされるんですか。
  45. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 復党の申し出はないものだと私は思っています。あの事件が決着するまではないものだと考えております。
  46. 森中守義

    森中守義君 いやいや、仮定ですが、あった場合にどうする。
  47. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ないと考えているんですから、仮定でお答えすることは適当ではない。
  48. 森中守義

    森中守義君 この点は非常に社会が注目しておりますので特にお尋ねしたわけです。  それから、いまの田中角榮に関して、最近の報道機関が、地元新潟でまことに過度に失するような行為が伝えられておりますが、内容お聞きになっているでしょうか。
  49. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 内容私よく存じません。実際にどういう行動を行っておるかということはよく存じておりません。
  50. 森中守義

    森中守義君 これは一々新聞の内容を明らかにするには時間がかかりますからいたしませんが、こういうことなんですね。たとえば、いろんな行いというものが、地元の秘書あるいは東京の秘書であるとか、あるいは建設省とか、いろんな人たちが一緒になって仕事をしている。だから、私は特別交付金であるとか、あるいは助成金、補助金、こういつたようなものが果たして適正にその関係の地域に流されているのかどうか。少なくとも新聞の伝える限りかなりこれはおかしいと、こういうように見ている。これについてもその事実があるかどうか、お調べになりますか。
  51. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 特別交付金のようなものの配付はそういう公正を欠くようなことは絶対にいたさない方針でございます。これは厳重に注意をいたします。
  52. 森中守義

    森中守義君 そう言い切れないところに問題がある。数々の疑惑がありますよ。建設大臣、何か建設省から新潟県に出向している土木部長が一緒に協議に参加をしている、こういう事実もあるようです。建設大臣、ちょっとお答えいただきたい。
  53. 中馬辰猪

    国務大臣(中馬辰猪君) 総理の話はまだ聞いておりません。
  54. 森中守義

    森中守義君 総理の話を聞いたんじゃなくて、新聞があれほど言っているんだから、直ちにその事実があったかどうか、総理の指示を受けるまでもなく建設省みずからが調査に乗り出してもいいんじゃないですか。
  55. 中馬辰猪

    国務大臣(中馬辰猪君) 県の土木部長がそういうことをしたとは思っておりません。またその事実はないと思います。
  56. 森中守義

    森中守義君 調査もやらないで、やっていないと断言されるとはどういうことですか。調査やったらどうですか。そういう答弁じゃ納得できませんよ。
  57. 中馬辰猪

    国務大臣(中馬辰猪君) きょうまでの建設省の調査ではその事実は確認いたしておりません。さらにまた調査いたしてみます。(「あったらどうする」と呼ぶ者あり)ないと思います。
  58. 森中守義

    森中守義君 これは総理、こういうようにしていただきたい。ここにひっかかるわけにいきませんからね。まず自治大臣、それから法務大臣ですね。法務大臣の場合には、やや選挙の射程距離に入っているわけですから事前運動の疑いが濃厚です。そういう立場から御調査いただく。それから建設大臣及び大蔵大臣等は、事実関係を正確に調べてもらって、果たして公正であったか、不公正か、その辺の結論を出してください。出せますか。
  59. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 答弁要求ですか。
  60. 森中守義

    森中守義君 要求してますよ。出すか出さないか、はっきりしてください。
  61. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 森中君からこういう問題点を指摘されましたわけでございますから、そういうことで疑惑を持たすことはよくございませんから、よく建設省が中心になって調べてみることにいたします。そういうことは私はあり得ないことだと思いますけれども、いろいろ御質問もございますわけでございますから、建設省からよく調査をいたすことにいたします。
  62. 森中守義

    森中守義君 これは一般的に後援会活動の領域を超えるものですよ。特に最初指摘したように、特別交付金、助成金、補助金、こういうものの扱いは明らかに適正な措置を欠いている。それから法務大臣、選挙の事前運動の対象期間に入っているわけですから、こういうことが果たして放置されていいとは思わない。そういう意味でどういう措置をおとりになるか。それから国家公安委員長も同様にその辺の見解をお尋ねしたい。
  63. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 十二月九日までには選挙をやるわけですから、もう選挙法による事前運動期間に入るわけですから、お尋ねのようなことがあれば公正な選挙ではなくなるわけです。公正な選挙が行われるための法秩序の維持ということは法務省の役割りですから、きっちりいたします。
  64. 天野公義

    国務大臣天野公義君) もし違法なことがあるとするならば、法規に照らしまして厳重に処置することにやぶさかではございません。
  65. 森中守義

    森中守義君 行管長官、こういう行政の綱紀のゆがみに対してどういう措置をおとりになりますか。
  66. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) まだそういうこと聞いておりませんから、よく調査してみます。
  67. 森中守義

    森中守義君 勧告をお出しになりますか、調査の結果。行管長官調査の結果不当であるということであれば、行政管理庁として勧告をお出しになりますか。
  68. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) まだそういうことを聞いておりませんが、よく調査をしてみます。
  69. 森中守義

    森中守義君 その結果の措置は。
  70. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) 調査をしなければわかりませんから、調査をしてから、結果が出ましたらよく考えます。
  71. 森中守義

    森中守義君 日中問題に移りますが、先日の国連総会での小坂演説、その内容、特に対中条項のくだりは総理も同意を与えられたものと理解していいんですか。
  72. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 特にまあ対中関係というものにというよりかは、日本外交日本の平和外交というものの一つ考え方というものが演説の主たる内容をなしておったものでございます。
  73. 森中守義

    森中守義君 どうもそういったように抽象的にぼかさないでください。明らかに覇権という言い方はされていないけれども、それを間接に表現しているじゃないですか。それを私は指しているんですよ。
  74. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本の平和外交一つの原則は、力によって他国の意思を抑えつけるということは平和外交に反する一つ考え方ですから、覇権に反対するというのは普遍的な国際的な一つの原則であるべきである、平和のためには。そういう考えでございますから、それは覇権反対という立場は平和外交一つのプリンシプルだと考えておりますから、そういう精神を踏まえて発言になったものだと考えます。
  75. 森中守義

    森中守義君 きょうニューヨークで小坂さんと喬代表との会談があるようですね。その会談に何か期待されておりますか。
  76. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) きょうは会うことになっておるわけですから、日本の時間で言えば午後十一時に会うことになっておりますが、私は小坂外務大臣にも申したのは、国連総会というのはもう世界各国の外務大臣が出席するわけですから、ちょうどいい機会ですから、まあできるだけ多数の国々の外務大臣と会談の機会を持って、相互の理解を図るためにいい機会だから、事情の許す限り滞在して、そして各国の外相との間に意見の交換をしてもらいたいという指示をしたわけです。その一環として小坂・喬冠華外務長官との会談も行われるわけでございますから、日中両国の共通して関心を持っておる国際問題あるいは日中関係などについても、まあ限られる時間だと思いますが、問題に触れることだと考えております。
  77. 森中守義

    森中守義君 そういう総論的なものでなくて、いま日中間の最大の問題は条約ですよ。その条約のために環境づくりをするのか、あるいは覇権条項をきちんと条約に表明するために一つの手だてをつくろうというのか、そういう期待をお持ちかどうかと、こう聞いているんです。
  78. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 時間も限られているようでございますから、まあ初めての出合いですね、小坂・喬冠華両外務の最高責任者として初めて会うわけですから、いろいろ具体的な日中の平和友好条約について話し合いというような問題にまで私は触れないんではないかと。全般的なお互いの、まあ何といいますか、人間的な触れ合いを通じて相互の理解を深めて、そうして日中間の平和友好条約などを促進していきたいというのがわれわれ三木内閣の考えでございますから、そういうものに対しての一つ前提というものを、まあ前提というか、そういう環境をつくる、きょうの会談の日中関係の平和友好条約に関する限りはそういう性質のものになるものだと考えておるわけでございます。
  79. 森中守義

    森中守義君 おかしいですね、総理。すでにもうその日中平和友好条約が最終の詰めの段階に来たのは一年十カ月前ですよ。それで案文の交換が終わって覇権条項でとだえているのです。小坂さんの外相起用というのは、明らかにそういう日中間の最大の課題を解決しようという意図ではなかったのですか。それにいまお聞きしていると、何か総論的な一般論であって、一つも日中平和条約を総理みずからが解決しようという意思の表明がない。もう一回正確に考えてくださいよ。
  80. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはまだ会談の前でございますから。それはわれわれとしても、日中友好関係の基礎になるわけですから、平和友好条約というものを一日も早く締結したいというこの私の熱意というものは小坂外相にもよく伝えてあるわけでございますから、まあしかし、まだ会ってみないのですから、どういうことになるか、話がそういう問題に触れるようなことになればより会談の意義は深くなると思いますが、まだ会談前でございますから、いまここでいろいろなことを私が申し上げて非常な御期待を森中君にお与えしても悪いと思って、私は非常に慎重にお答えをしたわけですが、会談の結果にまつよりほかにはございません。
  81. 森中守義

    森中守義君 ますますおかしい。共同声明の七項、これを基礎にしてすでにもういままでずっと条約交渉へ進んでいるのですよ。それがもう覇権条項一つでひっかかっている。それを三木内閣は突き破ってでも条約の締結をするのかしないのか、この一点でいいですから明らかにしてください。わからない。
  82. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 突き破る必要も何もないんです。これは一九七二年の九月でしたか、この日中共同声明で、みずから覇権を求めずと。第三国の覇権にも反対である。これは日中の共同声明にうたい、これによって日中の国交正常化ができたわけですから、これは一歩も後退を許されるような条項ではないのですよ。これを基礎として日中関係は発展させなきゃなりませんから、突き破るも何もないわけでございまして、条約でございますから、いろいろな体裁を整えなければならぬので、そういう具体的な話の段階に入っておるわけでございますから、何も覇権条項というものは根本的に、基本的な考え方というものは食い違いはないのです、これは。これをどういうふうに条約の中で処理するかということでございますから、基本的な考え方の違いがあって、それを打ち破らなけりゃいかぬというわけではないので、基本的な考え方は両国一致しておるのですから、私はそんなにこれを、この問題というものが非常に解決しにくい問題だとは思ってないわけです。両国とも早期に平和友好条約を締結したいという考え方に変わりはないわけでございますから、この問題はわれわれとして真剣に取り組んで、相当に御指摘のように期間が長引いたわけでございますから、できるだけ早くこの問題は妥結を図りたいということが三木内閣としての方針でございます。
  83. 森中守義

    森中守義君 いま、そういうお話になるとわからぬでもないんですけれども、要するに総理三木内閣としては他の実務協定みんな終わったわけです。これ一つが残った。しかしそれだけ、もうすでに共同声明で決まっているんだから何も急ぐ必要はないということでもない。やはりやるべきでしょうね。だから、あなたの在任中にぜひ友好平和条約は締結に至らしめるという意思をお持ちならば、ただ諸般の情勢を見ながら進めていこうということなのか、それをもう一回ひとつ、くどいですけれどもお答え願いたい。
  84. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この条約の締結をいつまでもおくれさすことは私はよくないと思う。やはり日中の友好関係の基礎というものは共同声明によってある程度固まってはおりますが、これを条約の形において、両国民の納得のもとに条約を締結するということの方がより日中の関係を一つの安定化す方法であると思いますから、ぜひこの問題は解決したいと考えておる問題でございます。
  85. 森中守義

    森中守義君 解決をしたいという意思は、小坂・喬会談、少なくともこれからの外交日程を詰めるというように理解していいですね。
  86. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 当然に小坂外相から日本のそういう決意は伝えるものと考えております。
  87. 森中守義

    森中守義君 もう一つ、日中関係で農林大臣にお尋ねします。  例の食肉の輸入問題が非常に長い間未解決のままになっておりますが、いまどういう御見解でしょうか。
  88. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 御承知のように、わが国におきましては牛肉の生産が需要に追いつきません。したがって長いこと外国から輸入しておりました。その輸入先はオーストラリアとニュージーランドが大部分でございます。で、中国からもぜひ買ってほしいという要請がしばらく前からございました。しかし御承知のように、中国、アジア大陸は、口蹄疫問題でこれは輸入禁止になっておりますので、輸入の道がありませんでした。そこで何とかわれわれは食肉関係に関心を持っておりましたので、この問題について少し何とか打開策はないかと考えまして、中国の食肉状態を見に参りましたりいろいろと交渉いたしておりますが、いまだにまだ問題は解決しておらない状態でございます。
  89. 森中守義

    森中守義君 大臣は一九六五年、中国食肉輸入考察団の団長として訪中され、その報告書をお出しになりましたね、報告書。その中に口蹄疫はどういうように答えが出ていますか。
  90. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 確かに一九六五年と記憶しておりますが、そのころ、九月に三十日ほど中国を、各地を見て回りまして、私が団長となって畜産の学者、それから専門家十二、三名ほどの団体で調査してまいりました。その結果報告書を出しております。詳しい内容は忘れましたけれども、非常に、この中国の家畜保健衛生状態が非常によろしくて、口蹄疫についてはそう心配することはないではなかろうかという報告であったと記憶いたしております。
  91. 森中守義

    森中守義君 これは報告書、農林省おりましょうから、どういう結論になっているか、ちょっと調べて答えてください。
  92. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 昭和四十年の調査報告書でございますが、結論を簡単に申し上げますと、中国の家畜の衛生状況はかなり改善されていると。それから家畜伝染病につきましては、強力な政治力と大衆動員によって積極的な防疫措置が行われて年々減少している。それから結論でございますが、いろいろ調査で見聞した諸事実からして、中国の家畜伝染病発生月報というのがありますが、それは信頼できるものと考えられるということを述べております。
  93. 森中守義

    森中守義君 いやいや、結論を、口蹄疫があるかないかということを、ちゃんと答え出ているんだよ。
  94. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 中国の家畜伝染病発生月報は信頼できるということを申し上げましたが、中国のこの月報には口蹄疫の発生はないというように記述してありますので、それは信頼できるというような報告になっております。
  95. 森中守義

    森中守義君 私の調査では、中国の家畜衛生状態はりっぱであり、口蹄疫はない、こういったように当時の団長として報告されているんですが、この事実関係はどうですか。
  96. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 報告書では——いま畜産局長から御報告申し上げましたが、このころわれわれは、中国家畜伝染病発生月報というのを数年にわたって向こうから入手しておりました、中国政府から送っていただきまして。これにいろいろな家畜伝染病の発生の状態が書いてあるわけでございますが、それには確かに一九六二年からですか、一切口蹄疫がないという報告でありましたし、われわれは現地の調査をいたしまして、各地も歩きました。またいろいろな行政のあり方、そういうのをよく見てまいりまして、この月報は十分に信頼できるものであるという確信を持って帰ったのでございます。  そういうような報告だと思います。
  97. 森中守義

    森中守義君 確かにそういったような経過であれば、いまでもやっぱりそのお考えに変わりありませんか。
  98. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) その後十年余り経過いたしまして、私はその後中国にも行っておりませんし、詳しい話を聞いておりませんので、確信を持ってお答えすることはできませんけれども、中国のあの家畜保健衛生のやり方、あの忠実な法規を厳重に守っているやり方を考えますと、いまでも間違いなかろうという考えでございます。
  99. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、中国の食肉輸入にかなり強い抵抗を示されている国内の一部には、国内における家畜生産に、食肉の生産に非常に需給上問題がある、制約を受けるんだ、こういうことが一般的に言われておりますが、もう一回正確に、国内の消費総量、生産量、輸入量、それとその輸入の各国を具体的にお示しいただきたい。
  100. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 畜産局長からお答えさしていただきます。
  101. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 昨年度で申しますと、大体生肉にいたしまして三十万トン、三十万トンが国内の需要量であります。それに対しまして輸入量が七万五千トンというようなことでございまして、大体十数%か二〇%ぐらいのものを輸入しております。  それから輸入先は、先ほど大臣からお答えいたしましたように、オーストラリア、ニュージーランドあるいはアメリカ、そういったものが牛肉の主な輸入先であります。
  102. 森中守義

    森中守義君 中国からの食肉の輸入が国内の生産を極度に圧迫を加えるということになりますか、なりませんか。
  103. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 私どもは国内の需給状況を勘案して、それで輸入量を決めてまいりますので、もし中国から輸入が入るとなりますと、全体的に輸入量を規制しますから、その間においての配分の関係になると思います。
  104. 森中守義

    森中守義君 影響を与えるかどうかですよ、中国から入れた場合に。
  105. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 中国から入れた場合には、仮定のことですが、他からの輸入量が減るかもしれません。
  106. 森中守義

    森中守義君 アルゼンチンは口蹄疫の汚染国ですか、どうですか。
  107. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) これは、アルゼンチンには口蹄疫がときどき発生しておるようでございます。
  108. 森中守義

    森中守義君 ここからも輸入しているようですが、事実はどうでしょうか。
  109. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 牛肉の、豚肉でもそうでありますが、輸入の仕方に二つございます。一つは生肉として輸入する場合と、それから、これをクックドビーフと申しまして、煮沸して完全に滅菌したものを輸入する二方法ございます。アルゼンチンからはクックドビーフだけは輸入しておりますが、生肉は輸入いたしておりません。
  110. 森中守義

    森中守義君 結論的に申し上げますと、中国からの輸入が、口蹄疫は別としまして、入れることによって国内の食肉生産に甚大な影響を与えない。他の国から入れている、つまりいま言われた七万トン輸入、これの配分が多少変わってくる、こういうように理解していいんですか。
  111. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) おっしゃるとおりでございます。われわれはやはり国内の生産者を守らなければなりませんし、同時に、消費者にも安いよい牛肉を与えなければなりませんから、そういう点を考えまして、輸入量というものはいつでも国内の需要なり生産を勘案いたしまして決めてまいりますから、この中国の輸入が仮にできましても、それによって国内の生産を圧迫したりすることはしないようにいたす方針でございます。
  112. 森中守義

    森中守義君 しないようにするんでなくて、事実上輸入の量を、今日の輸入各国を多少あんばいしていけば中国から持ってきても国内生産に影響を与えないということかどうかと聞いているんです。
  113. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) ですから、輸入量は決まっているのではありませんで、国内の需給状況を見て輸入量を決めるのでありますから、別に中国から輸入をいたしましても、ほかの部分が減るということになりましょうから、国内の生産には影響ございません。
  114. 森中守義

    森中守義君 そこで、四十年の調査結果の報告及びその後中国から送られている月報。しかもWHOに加盟しましたね、ここでも、そういう問題は余り大きく問題にならないということであれば、口蹄疫はもう存在しない。したがって、交易会で当初民間ベースで二万トンか何か輸入の約束があったようですが、相当量の輸入については踏み切ってもいいんじゃないですか。
  115. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 結論から申しますと、私は中国から牛肉の輸入があってしかるべきだと思います。そうなりますと、日本としてはやはり買い手市場になりますので、いろいろな面において、価格の面においても有利に展開することができると考えております。ただし、中国の場合には、やはり国内におきまして、一部の学者、いろんな方にまだ異論がございます。こういうものを無視して、急にこの解禁問題、結ぶわけにまいりますまいから、やはりできるだけ努力をして、そういう人たちに合意を得て、できるだけ早い機会に輸入する方が適当ではなかろうかといま考えておる次第でございます。
  116. 森中守義

    森中守義君 その時期がいつであるかは別として、いままでのように口蹄疫でだめだ、こういう姿勢から輸入の方向に向かって努力をする、こういったように確認しておきたいんですが、よろしゅうございますか。
  117. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 幸いに、日中間の友好関係ができておりますので、こちらから役人を向こうへ視察にやることも、向こうから来てもらうことも可能でございますから、そういう手を通じまして、お互いの理解を深め、それからもう一つ向こうの実態を確かめまして、できるなら私は輸入の方向に持っていきたいと考えております。
  118. 森中守義

    森中守義君 ミグ25についてお尋ねいたしますが、まず、個々的なものをお答えいただきます。  防衛庁がミグ25に対してとった処理の経過及びどういう法的な根拠に基づいたのか、そのことを最初にお尋ねいたします。
  119. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 経過につきまして御報告いたします。  九月の六日に函館空港に、ミグ25が着陸いたしまして、最初の五日間、これは司法調査、いわゆるベレンコ中尉、それから機体関係の司法調査が終わりました後、防衛庁が保管の責任を負いまして、防衛庁独自の調査、すなわち領空侵犯措置という事実がございましたので、その背景となる調査を百里に移しまして実施をいたしております。
  120. 森中守義

    森中守義君 保管はどこから依頼されたですか。管理はどこから委任をされたですか。
  121. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 保管の責任は、法務省から防衛庁が十日の夜、移管を受けました。  法的根拠につきましては、これは関係省庁の中で、国内法に即してこの機体を保管し、調査をするということでございまして、これは関係省庁の間で話し合いましたので、正確にお答え申し上げたいと思います。  国際法上、本件のような領空侵犯機につきましては、一般的に言いまして、被侵犯国がその管轄権のもとに当該機体の取り扱いに係る最終措置をとるまでの間、その保管を行い、領空進入及び強行着陸の背景状況、なかんずく、当該飛行に当該国の安全を侵害する意図とその事実があったか否かの解明のための機体の調査を行うことは許容されると考える。このような領空侵犯機の保管の国内法上の権限と責任は、その保管を必要とする事情が、いわばわが国の安全に触れる軍用機による領空侵犯に伴って生じたものでございますので、領空侵犯に対する措置と密接な関連を有する事項として防衛庁に属するものと解しております。また、領空侵犯に係る背景状況解明のための機体の調査についても、その機体の保管と同様の根拠により、領空侵犯に対する措置にかかわりを有する調査として、前述の国際法上許容される範囲において、防衛庁設置法第五条第二十号——「所掌事務の遂行に必要な調査」でございますが——に基づいて行うものでございます。
  122. 森中守義

    森中守義君 最初に各省からお尋ねしていくんですが、いまのところで、機体の解体の結果どういうことが明らかになったのか、その内容もお知らせ願いたい。
  123. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 解体いたしましたというのは、函館から百里に運ぶために解体をしたわけでございます。そして現在調査をやっておるわけでございますが、その結果についてはまだ詳しいことはわかっておりません。
  124. 森中守義

    森中守義君 防衛庁の場合、アメリカからの技術者及びギャラクシーで運んだという事実等から見て、わが国独自でこの解体、解明ということは能力的にできなかったというふうに理解していいのですか。
  125. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ただいま申し上げましたように、この解体調査をするために、函館という民間空港に着陸しましたために、早く百里に運んで調査をしたいと考えました。したがいまして、この解体輸送のためには時間的な制約、それから解体する程度の問題がございました。したがいまして、その点からすると、米軍の力をかりなければ不可能だと判断いたしました。また、調査に当たりましても外交折衝の問題がございます。土曜日の日に、十月十五日以降返還するという制約がございます。そういう制約のもとで調査をするには防衛庁の能力が足りないと判断いたしました。したがいまして、長い時間をがけ、機体を十分調べるというようなことでありましたならば、できたかという判断も一方にございます。
  126. 森中守義

    森中守義君 いま言われたその領空侵犯は異論がありますが、後にいたします。  外務省はどういう法的根拠のもとにこの問題の処理に当たられたのか。
  127. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 法的根拠については事務当局からお答えいたさせます。
  128. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ただいま防衛局長の方から申し上げましたような関係各省庁の統一された見解、したがいまして、法的根拠もその際に統一的に確認されました見解に基づいて行いまして、そういうものがすべて国際法に認められた、あるいは国際事例によっても認められた範囲内のことであるということを外務省としても確認しております。
  129. 森中守義

    森中守義君 検察庁はどういう見解のもとでおやりになったんですか。
  130. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 検察庁は、ベレンコ中尉が自己の独断で戦闘機訓練中に不法にわが国に入国したということでございますので、当然にわが司法権に服するという考えのもとに、入国管理法その他関係法規の違反の捜査をした次第でございます。
  131. 森中守義

    森中守義君 これは恐らく法務大臣が全部あれされるものと思いますが、国内法がいろいろ適用されておりますね。その適用法は何を適用されたのか、ちょっと挙げていただきたい。
  132. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 私の聞いたところでは、入国管理法によると。つまり飛行機で不法入国しようと漁船で不法入国しようと同じですから、そういう見地でやったというふうに報告を受けております。
  133. 森中守義

    森中守義君 たくさんあるんですよ。
  134. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 詳しいことは刑事局長に答弁させます。
  135. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) まず、密入国に関連いたします出入国管理令違反、それから指定空港外の着陸という意味で航空法違反、それから過失ではございますが、着陸に当たりまして航空保安設備を損壊いたしておりますので、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律違反、それから当時拳銃を所持しておりましたので、銃砲刀剣類所持等取締法違反というような犯罪で捜査をした次第であります。それは拳銃の密輸入の問題、それから拳銃に関しましての拳銃用の実弾を持っておりましたので火薬類取締法違反というようなことでございます。
  136. 森中守義

    森中守義君 脅迫罪もあるじゃないか。
  137. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 着陸に当たりまして拳銃の威嚇発射をしたことば脅迫罪に当たるという見地でございます。
  138. 森中守義

    森中守義君 先ほど外務省、防衛庁で言われた領空侵入、これはもちろん国際法上の問題でしょうが、正確に領空侵犯と言い得ますか、こういう状態を指して。その辺をもう少し明確にしてもらいたい。
  139. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 国内法上も領空の侵犯をした、あるいは領空に関する法規を守らずして入ってきた、そういうことがございます。国際法的に見ても事実関係としてそういうものがあると考えます。
  140. 森中守義

    森中守義君 この領空侵犯というのは非常に重要な問題ですので、法制局長官、領空侵犯の国際法上の定義とはどういうことですか。
  141. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 突然のお尋ねでございますが、国際法上領空侵犯と申しますのは、ある国がその国の恐らく国家意思として他国の領空に侵入するということじゃなかろうかと思います。
  142. 森中守義

    森中守義君 そこが総理、問題なんですね。  さて、今回のベレンコの行動というものは国家の意思によって入ってきたと見るべきかどうか。ない。だから領空侵犯というのは成り立たないと私はこう思うんですが、どうですか。問題でしょう、これは。
  143. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 多分に事実関係にかかわりますので、確定的なことはその事実の調査に当たった各省からもお聞き取りを願いたいと思いますが、本件の場合は、もしベレンコ中尉がはるか日本の、ソ連の編隊ですか、軍の統制から完全に離脱しちゃいまして、もう脱走兵みたいになって、全く個人の資格で日本の領空へ入ってきたのか、あるいはいつごろ離脱をしてつまり正規の構成員たる資格でなくなってきたのか、その辺の事実にかかわってくるのだろうと思います。
  144. 森中守義

    森中守義君 定義は先ほど言われたのがこれは定着した理論ですよ、おっしゃるとおり。  そこで、事実そうであったかどうか取り調べに当たった経過を聞きたい、こう私は思うんですが、どうでしょう。取り調べに当たった人はだれです。法務省なり検察庁なり調べに当たっているわけだから答えなさいよ。
  145. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 捜査の結果による報告によりますと、ベレンコ中尉はアメリカへ亡命の目的を持って不法に入国したという考えでございます。したがいまして、この亡命の目的ということから言えば、一般的には国家意思に基づくものではないと推定するのが当然であろうと思います。
  146. 森中守義

    森中守義君 そこで非常にはっきりしましたね。領空侵犯ということを防衛庁は言われる。しかし、いまの事実関係からいけば亡命が目的である、国家意思ではないということであれば、領空侵犯という国際法上の定義、その見解というのはこの際訂正すべきじゃないですか、どうでしょう。総理なり防衛庁長官なり、どちらからでもおっしゃってください。領空侵犯、これは防衛庁がよく言われるわけだから。
  147. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 先生も御承知のように、防衛庁設置法の第五条第十八号には「防衛庁の権限」として「領空侵犯に対する措置を講ずること。」となっております。で、それはまた自衛隊法の八十四条によりまして「外国の航空機が国際法規又は航空法その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入」するというものを領空侵犯措置の対象機といたしております。したがいまして、私どもの方は、防衛庁設置法、自衛隊法によりまして、不法にわが国の領空に入ってまいりました飛行機に対しまして領空侵犯に対する措置を講じているものでございます。
  148. 森中守義

    森中守義君 これはもう非常に重要な問題で、設置法及び自衛隊法に基づいたという防衛庁の見解、しかし法制局長官は国際法上の定義を述べられている。少なくとも領空侵犯というのは二国間あるいは多数国間にわたる問題でしょうね。非常に重要ですよ。単なる国内法の解釈で領空侵犯と定義づけていいものかどうか、どうしてもやっぱりわからない、私は。もう少し正確にしてもらいたいと思う。(「法務省と防衛庁見解違う」と呼ぶ者あり。その他発言する者多し)  これは総理、そもそもやっぱりこの事件が降ってわいたようなものであるということ、そこで政府が一体として対応していない、これがやっぱり問題だと思う。しかも領空侵犯というのは、これはこの事件をどう見るのか、対ソ関係はどうなるのかという非常に重要な問題を持っていますよ。それだけに、私は、法制局長官、各省の見解というものはこれはもうだめだ、これじゃ。これはやっぱり統一見解をはっきり出してくださいよ。ここで私は待っています。
  149. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この問題は、要するに領空侵犯という事実というものは、あったことは事実ですが、国際法上による国際間の問題ということになってくると、いろいろ当人の意思などというものもやはり非常に関係はしてくるわけですね。そういうことで、この問題は、統一見解というか、政府の見解を午後一時に、この問題に対して申し述べることにいたします。
  150. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 午後一時まで休憩いたします。午前十一時四十一分休憩      —————・—————       午後一時五分開会
  151. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  まず、政府から発言を求められておりますので、これを許します。真田法制局長官。
  152. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 領空侵犯についての政府の意見を申し上げます。  休憩前の当委員会におきまして、私が、国際法上の領空侵犯は侵犯側の国家意思に基づくものだと申し上げましたのは、国家間の関係において国家責任の問題を生ずるという意味での国際法違反としては侵犯側における国家の行為として行われることを必要とするという意味で申し上げたわけでございます。  もっとも、一般的に、事前に被侵犯国の承諾を得ていない航空機の領空への侵入に対しスクランブル等の措置をとることも当然に認められているところであり、また、着陸後に被侵犯国が所要の機体の保管、調査を行うことも国際法上許容されているところであります。  防衛庁設置法第五条第十八号及び自衛隊法第八十四条において領空侵犯と言っているのは、右のような国際法規の違反または国内法令の違反に当たるすべての領空への侵犯を言っているのでありまして、防衛局長が申し上げましたのは、その意味での領空侵犯のことを申し上げたのであります。  以上でございます。     —————————————
  153. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 次に、午前中に引き続き、森中君の質疑を行います。森中守義君。
  154. 森中守義

    森中守義君 ちょっと、いまのは、何か、少し検討しないと、非常に重要な問題ですよ。早いとこだっだっだっと読み上げて、これが統一見解というのでは少し不親切だな。——見せなさい。それは文書で出しなさい。それば不親切だ、それは。
  155. 八木一郎

    委員長八木一郎君) コピーを回させますから。
  156. 森中守義

    森中守義君 いまの見解見解として聞きましたが、早口で、内容が重要過ぎるので、わかりません。多少検討もせにゃいかぬ。プリントで出してもらいたい。
  157. 八木一郎

    委員長八木一郎君) プリントを回します。
  158. 森中守義

    森中守義君 すぐできるでしょう。用意しておきなさいよ、そんなこと。口頭で統一見解を述べて、さあ質問に入れというわけにいかぬよ。どのくらいかかりますか。——いま手元に事務局の方から一つ持ってきましたがね。これは領空侵犯に対する一つの主権国家としての確定解釈ということになりますが、余りにも重要なので、この件についてはちょっと質問を保留します。できればこれを法制局長官から具体的にこういう状態を指すのだというちょっと説明だけしておいてください。文書の朗読だけじゃだめだ。こういうものを指すのであるという、そういう説明をしてください。
  159. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 特に御説明申し上げるほどのこともないとは思いますけれども、森中先生のお手元にプリントが行っておりますれば、そのプリントの順序に従って御説明いたします。  冒頭に書いてございますのは、つまり、国際法上、国際法違反を国家がやったということで被侵犯国が侵犯側の国に対して国際法上国家責任を追及するという形態が考えられるわけでございまして、そういう国家責任を追及するという国際関係のもとになる領空侵犯というのは、その侵犯側の国家行為として行われたものであるという意味でございます。そのことと、一般的に被侵犯国の承諾を得ていない航空機が無断でわが国なりある国の領空に侵入してきました場合に、これに対してスクランブル等の措置をとることも、これはもう排他的な主権行為の発動として当然に国際的にも許されることである。また、着陸後に被侵犯国が機体に対して所要の保管、調査を行うこともこれも国際法上認められているところである。そこで、最後に書いてあります部分は、これは国内法である防衛庁設置法の第五条第十八号及び自衛隊法第八十四条において「(領空侵犯に対する措置)」という見出しがついておりますが、ここに言っている領空侵犯というのは右のような国際法規違反、または国内法令の違反に当たるすべての領空への侵入を言っているのでありまして、そのことを防衛局長が午前の委員会で申し述べたのであるという意味でございます。
  160. 森中守義

    森中守義君 いや、この内容にはかなり吟味を加える必要がありますが、ただ、こういうような実際問題としてこの解釈とは別にして、要するにベレンコというのは侵入のそういう意思は全くなかった、亡命であったというそういう現実と照らしてこれはどうなんですか。その辺が問題です。本人の事情聴取が済んでいるんでしょう。調査の内容をはっきりしなさいよ。
  161. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 私から一言御説明させていただきます。  本件ベレンコ中尉の軍用機が函館の空港に強行着陸したという問題につきましては、国際法から見まして二つの問題があるわけでございます。  一つは、ベレンコ中尉なるソ連の軍人が米国に亡命したいという希望を持ってソ連の軍用機に乗って日本に入ってきた、不法入国してきたという事実でございます。  もう一つは、ベレンコというソ連の軍人が指揮をしたソ連の軍用機が、しかも最新鋭の軍用機がわが国の領空を侵犯して強行着陸したという領空侵犯に係る事案でございます。  前者の問題、すなわち、ベレンコ中尉が米国に亡命したいという希望を持ってわが国に不法に入国したという問題につきましては、先ほど来関係当局から御説明がありますように、出入国管理令違反その他国内法の違反の問題としてまずこれの取り調べ、検分を行いまして、そして、何分にも人間のことでございますから、人道的な配慮というものも当然に加えなければならないわけで、その事案の検分その他国内手続きを了しましたときに、これを国外へ出したということでございまして、もう一つの方の領空侵犯という事実がわが国に対してあったこともこれまた事実でございまして、したがいまして、その領空侵犯に対して国際法上許される範囲内で国内的な措置、調査をただいま防衛庁が行っておると、こういう関係に立とうというのが私の理解でございます。
  162. 森中守義

    森中守義君 国際法上の確定解釈がどれなのか、これはなお私は疑問がある、このことにつきましては。ただ、この際どうしても申し上げておかねばならぬのは、こういう不測の降ってわいたような事件を、要するに関係の各省庁がそれぞれ検討を加えたと、こう言われるけれども、本来的にはこれはやっぱり内閣のレベルである程度の実態の把握、それをして関係の各省庁に指示をするというのが筋道じゃないですか。それがないからこういう混乱が起きる。ことに領空侵犯云々等の問題につきましては、これはもう非常に穏やかでないんですね。だから、本来的には、一体国防会議法というのは何なのか、国防会議とは何か、こういうような重要な問題ですから、いわゆる総理が議長を務める国防会議あたりが緊急に開かれて、その辺で領空侵犯かどうかという対応策を決めるのがあたりまえじゃないですか。やっておられますか。
  163. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま法制局長官が申し上げたのは、国際法上の解釈としてはこういうことだと。しかし日本の場合は、入ってきたときは、どういう意図かわからぬですから、本人を調べてみて、亡命の意思というものの表明を本人がし、またソ連の大使館員とも会って、その意思等も述べたわけでございますから明白になったわけです。  そうなってくると、いわゆる国際法上における領空侵犯として国家的な責任の追及というものは、これは非常にそういうことは、国際法上による領空侵犯というものの嫌疑は薄くなったことは事実ですね、本人については。しかし、実際は不法に日本の許可を得ないで民間飛行場に入ってきたわけですから、これはやはり本人を調べてみなければわからぬわけですから、したがって、これは領空侵犯という取り扱い、そういうことを客観的にとらえるほかはないわけですから、国内法がこれに対してそういう前提のもとに適用になると、こういうものであるわけですから、そう国防会議を開いて、その解釈を確認しなければならぬ性質のものではないわけだと思いましたから、これは国防会議などは開く必要がないという解釈でございます。
  164. 森中守義

    森中守義君 これは先例のない大事件ですね。しかも今日の日ソ関係というのは非常に微妙な状況にある。それを単なる、いま言われたような解釈のもとに——ないしは国内法、これはいいですよ、国内法に違反しているからやったんだ。いいけれども、しかし、その前にやっぱり最高の政府機関においてその対応をとるべきじゃなかったですか。それを私は問題にしておる。その辺どうなんですか。全く、報告を受けた時間が早かったとか遅かったというその程度にとどまっていて、内閣の意思が全然動いていないじゃないですか。これはどうなんですか。
  165. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはこちらの意図でないわけですからね。理由はともかくとして、日本の国の意思とか国民意思でソ連の軍用機が来たわけではないわけですから、日本とすれば迷惑な話ですよ。これは迷惑な話。したがって、そのことでこういう事件によって日ソ間の友好関係の基本が傷つけられないようにこれは両国ともしなければならぬ。何かこうひとつの日本国民日本政府の意思によってこういうことが起こったんなら、その間日ソ関係の根幹に触れるような問題が起こるでしょうが、何にも関係なしにやってきたんですからはなはだ迷惑なことでございますから、これに対して国際法上の解釈は、いま言ったような解釈があるわけで、日本としては不法に許可を得ないで来たわけですから、これに対してこれはもうまだ本人を調べてみるまで亡命かどうかわからないですから、これに対して不法に領空を侵入してきたことは事実でございますから、それに基づいて国内法規に照らして処置するということは、そうやっぱり——この問題は国防会議を開いてやらなきゃならぬというふうな問題の性質であるとは考えなかったわけでございます。
  166. 森中守義

    森中守義君 ちょっとやっぱり違うんですね。言うまでもなく非常に微妙な関係にある。もちろん総理の言われるように、求めたとか欲したものではない。けれども、事件が降ってわいたわけですから、これはよほど周到な配慮のもとに政治上の扱いとしてどうするか、いわんや国内法、国際法の関係どうするか、そういう対応が必要じゃなかったのか。たとえばソビエト側からも申し込まれている抗議書がありますね、かなりこれは論調も厳しいですね。その後漁船は捕らえられる、ますます険悪な空気に発展する可能性がある、それを向こうが悪いのだから、おれの方はかかわりないよということではちょっとこれは政府としては外交問題の扱い、事件の処理として果たして適切であったかどうか、これをもう少しはっきりしておきたい。
  167. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この問題の処理は、日ソ間の国際的な関係にも関連をする問題でございますから、われわれとしてはきわめて慎重に取り扱いをいたしたことは事実でございます。外務省も絶えずこの相談には加わって、単にこれを一つの軍用機が入ってきたという取り扱い一それはやっぱり適法に処置しなければなりませんが、その背景にある日ソ関係等も十分な配慮を加えて、したがって調査というものは、日本の領空を侵入してきたわけでございますから、これの背景というものは一体どういう背景であったということの調査が済めばこれはソ連に対して軍用機を返したいということで、十五日以降はいつでも返すからということを外務大臣から申し出たわけでございまして、その取り扱いというものは非常に冷静に慎重に対処したつもりでございます。
  168. 森中守義

    森中守義君 それでは後またこれは質問を続けますが、政府の統一見解の中で、一番最初に言われている「侵犯側の国家意思に基づくものだと申し上げたのは、」云々とありますが、ベレンコの行為、意思というものは、少なくとも相手国の国家意思ではなかったのか、これだけは確認しておいていいですか。
  169. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 法制局長官が申し上げたのは、国際法上の一般解釈として申し上げたわけでございまして、個々の事例というものについて、これは国際法上の一般の解釈論を最初に申し上げた。なぜ申し上げたかというと、法制局長官の先ほどの答弁と関連をいたしますから申し上げたわけですが、こういう点から個々のケースに対してはケースごとに判断をしなければならぬと、今度の場合は本人が亡命の意思というものを明白に述べましたから、国家意思が働いたとは今度の場合は言えない事件であると、現在までの調査ではそう考えておるわけですが、これが機体などについても、その背景を調査しておりますから結論はその後に出るでありましょうが、現在までの調査では、ソ連の国家意思が働いたと見る根拠はないということでございます。
  170. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、この統一見解というものはあくまでも一般的な見解であって、ベレンコの場合にはこの一般的な統一見解に相当するものではない、少なくともベレンコ自体は亡命を目的としたものであって、領空侵犯という意思によったものではない、これを確認しておきたいですが、よろしいですか。
  171. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはりこの場合、領空侵犯に対する国際法上の一般解釈、政府はこのように解釈しておるという見解を述べることは必要だと思って一般的な解釈を述べたわけですが、個々のケースごとに、案件ごとに、その事実に却して判断をしなければならぬことは御指摘のとおりであって、現在までの調査をいたしました結果では、国家意思が働いたと見られる節はない。いま機体についても調査しておりますが、恐らくそういうことになると思いますが、最終的には、その機体調査なども終わってからのことでございますが、現在までの調査では、国家意思が働いた結果の侵入であるとは見出せる根拠はないということでございます。
  172. 森中守義

    森中守義君 ベレンコの亡命を目的としたものであるという調査の実態、内容というものを御説明いただきたい。
  173. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 本人の供述によるものでございますし、またそれがソ連の大使館とも——日本政府ばかりではないわけで、ソ連の大使館員とも会ったわけでございまして、そういう本人の陳述というもの、しかもその背景というものも、背景といいますか、ソ連の本人陳述と、なおかつその意思の要旨が、ソ連の館員にも流れておるというような事実に基づいて、そうわれわれは判断をするわけですが、なお補足があるかないか、これに対して私は少し補足をすることがあれば補足をいたさせます。
  174. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 本件不法入国等、先ほど申し上げた数個の罪名につきまして、捜査の過程におきまして、本人の供述としてさようなことが、御亡命の意思があることが検事の心証として確認できましたほかに、亡命意思の確認に当たりました外務省係官等にもその旨を陳述しておりますので、亡命の意思があったものと、検察当局としては今日までのところ確信をしておる次第でございます。
  175. 森中守義

    森中守義君 ソビエト大使館側との亡命の確認がアメリカに出発の直前に行われたようですが、この実情、内容を御説明いただきたい。
  176. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 本人が日本を出ますその前に、本人がアメリカへ亡命したいということを申しておりましたので、アメリカ側にもその旨を伝えましたところ、アメリカ側においても、本人の意思というものを確認したいということでございました。したがって本人とアメリカ側との面接ということも認めました。その結果、アメリカ側において、本人の意思を尊重して自国への亡命を受け入れるということをわが方に通告してまいりました。それに従いまして、わが方としての措置をとり、アメリカ側に出国を認めたという経緯になっております。
  177. 森中守義

    森中守義君 それを聞いているのじゃない、ソビエト。
  178. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 失礼いたしました。  ソ連側との間におきましては、本人は亡命の意思を表明するとともに、ソ連側とは会いたくないということを明確に申し述べ、その書き物も書いております。しかしながら、わが方としては、日ソ関係をも考え総理の御指示もありまして、出国に先立って本人とソ連側の大使館員との面接をアレンジいたしました。その際、本人は、自分の意思というものは自分が書いた書き物でもはっきりしておるということを申し述べております。
  179. 森中守義

    森中守義君 そこで領空侵犯という、そういうものを離れてベレンコの身柄は扱われたということになるんでしょうか。出入国管理令違反という、それで扱われたのですか、どうですか。
  180. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 不時着後、本人の身柄は任意捜査の対象として函館警察及び検察庁において取り調べをした、そういう意味におきましては刑事訴訟法上の被疑者としての扱いをしたということで、出国前まではそういう扱いでございます。
  181. 森中守義

    森中守義君 領空侵犯と離れているわけね、領空侵犯と。
  182. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 領空侵犯といえば、要するに、先ほどの防衛庁設置法の解釈上は、広い意味での領空侵犯に当たるとすれば領空侵犯でもございますが、刑事訴訟法上は入国管理令の違反等の犯罪の被疑者として扱ったと、かようでございます。
  183. 森中守義

    森中守義君 こういう亡命というものは幾つも先例がありますが、こういう際の本人が所持していた物品の処理というのは慣例としてどういう扱いになるんですか。国際的な慣例。
  184. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 国際的なかような場合の刑事訴訟法上の扱いというものを熟知しておるわけではございません。恐らくわが国同様と思いますので申し上げますと、要するに、事件として留置の必要のないものは差出人に返すというのが原則でございます。
  185. 森中守義

    森中守義君 所持していた物品の中に盗品が含まれていた場合はどういう扱いになりますか。
  186. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 盗品である場合につきましては、刑事訴訟法に特別の規定がございますが、差出人に還付すると、原状に戻すというのが原則でございますので、刑事訴訟法上も差出人還付というのが原則と考えておりまするが、一面、刑事訴訟法には、臓物であることが明らかなときは被害者に返すという規定もございます。この趣旨は、要するに、被害者である所有者が取り戻しが不可能にならないように配慮せよという刑事訴訟法のたてまえからそういう規定があるわけであります。
  187. 森中守義

    森中守義君 盗品、盗品。その中に盗品がある場合。
  188. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 臓物というのは、盗品を含めて財産犯によって利得したものを臓品というわけでございますが、したがって、盗品はできる限りその被害者、所有者に返すという規定になっております。
  189. 森中守義

    森中守義君 そういう場合には、要するにミグというのはこれは盗品だから、盗品を盗んだ者に返すという、そういう事実があるでしょう、今度。これは一体どういう解釈になるのか。
  190. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 本件の具体的な場合について申し上げるのが一番妥当だと思いますので申し上げますと、要するに被害者であると認められる——被害者と申しますか、所有者であると認められるソ連政府に直接返還するという手続をとる前に、検察庁の処分といたしましては、差出人であるベレンコ中尉に返還し、ベレンコ中尉の委託を受けて防衛庁が保管をするというような関係に相なっておるわけであります。  その理由につきましては、御疑問もございましょうから前もって申し上げますると、要するに、先ほど申しましたように、原所有者に返すというのは、被害者の、所有者の返還を得る権利を害しないということに立法の趣旨があるわけでございますので、検察当局といたしましては、いずれソ連政府に当該飛行機が返されるということに留意しつつも、他面、先ほど来御説明のございましたように、広い意味での領空侵犯として防衛庁設置法に基づき、防衛庁において保管、調査の権限があるということに留意いたしました場合、その保管、調査の必要ということから、刑事訴訟法上の押収物の返還の原則である差出人還付という措置をとった次第でございます。
  191. 森中守義

    森中守義君 なかなかそのこじつけの解釈もいいところだと思うのですよ。あれでしょう、そのベレンコは函館に着いて以来、ソビエト軍人としての扱いですか、それとも民間人としての扱いですか。
  192. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほど申しましたように、刑事訴訟法の被疑者、つまり裁判権に服する者としての扱いでございますから、軍人としての扱いということが裁判権を免除される軍人としての扱いということになれば、そういう扱いではございません。そういう意味においては一般の被疑者と同様でございます。
  193. 森中守義

    森中守義君 そこで、その一般人、すなわち民間人としての扱いをする場合に、ミグ25なんというものを返すというのだけれども、保有できるような立場にありますか。それはどうでしょう。
  194. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 返還を受けた本人がどうするかということは別の問題でございまして、刑事訴訟法の原則がらは差出人に還付したということでございます。
  195. 森中守義

    森中守義君 これは他の変な引例ですが、たとえばピカソの絵をルーブル博物館から盗んできた者がある。それが日本で発覚した場合に、やはりそれはその盗品を差出人に戻しますか。——ちょっとこれはおかしな例でもあるけれども、そういう見解、どうでしょう。
  196. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 先ほども申しましたように、これは恐らくは——恐らくというか、検察庁の判断では、ソ連政府の所有であろうということはわかっておるわけでございますが、一面におきまして、防衛庁設置法に基づく保管、調査の権限があり、防衛庁はそれを行使する立場にあるということを考えますと、法律を総合的に判断いたした場合に、差出人還付という措置がさしあたり適切であり、しょせんその調査、保管の後にはソ連政府に返されることによって刑事訴訟法上の被害者の権利も守られると、かように考えた次第でございます。
  197. 森中守義

    森中守義君 そういう解釈はどうもすっきりしませんがね。  もう一つ伺っておきたいのは、午前中、防衛庁は、背景調査ということをしきりに言われた。すでにもうベレンコは一通り調査も終わって、外国、アメリカに亡命した。一体背景調査という意味は何を指すんでしょうか。これ以上背景調査というのがあるのかな。
  198. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 午前中も申し上げましたように、領空侵犯をしたという事実がございます。ベレンコはいまおりませんけれども、機体そのものにつきまして、あのような形で侵入した事情、それからまた軍用機でございますので、日本の領空を飛んでおります。したがいまして、いろいろな意味での記録、たとえば日本側の交信の記録その他も現実に記録されているかもしれません。そういった面で、機体の性能それから機器の状況、そういうものを調査しているわけでございます。
  199. 森中守義

    森中守義君 私どもが一般的に考える背景というのは人間の意思だと思うんですね。それで、そういう認識を持つ限り、すでにもうベレンコの調査を終わった。あと機体によってどういう背景を探ろうというのか全くわからない。もう一回重ねて御答弁いただきたい。
  200. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 御承知のように、まあ世界最優秀の戦闘機でございます。したがいまして、ベレンコの意思とかかわりなく、この機体自体が日本の実情というものを記録し、それがそのままの形で軍事的な意味を持ってくる場合もございますので、その辺を調査している次第でございます。
  201. 森中守義

    森中守義君 私はそういうようなお考えだろうと、こう思っていたのですが、やっぱり言葉を飾らないで、背景調査なんか言わないで、世界にも誇られるミグ25だと、そうなればこれはやっぱり機密が知りたい、そういうように考えると言った方がかえってすっきりしますが、どうですか。
  202. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 機密を知るために調査をやっているのではございません。領空侵犯という事実そのものについての調査をやっているのでございます。先ほど御説明したとおりでございます。
  203. 森中守義

    森中守義君 おかしいよ。それはミグ25が勝手にひとりで飛んで来たわけじゃないんだ。ベレンコの意思によって来た。その背景が何かを探るというのはこれはわかる。しかし、さっき言うように、ベレンコがすでに終わってアメリカに亡命している。その後の背景調査はあり得ないと思うんですね。しかも、さっき総理が、その御答弁があったようにベレンコは国家意思に基づいたものではないという見解を下された。それならば、もうはっきりと飛行機の機密を、そういうものを実は探るんだということになるんじゃないですか。これは坂田さん、事務当局の見解でなくて、あなたがはっきり答えなさいよ。だめだ、ああいう答弁じゃ。
  204. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) このミグ25戦闘機がとにかく主権の存する日本の領空を侵犯し、そして強行着陸したわけですね。そうしますと、私から申し上げますならば、この機体というものは軍用機であることは間違いない。とにかくよその国から、どこの国であれ、あるいはどういう天体からであってもいいと思うんです。いずれにいたしましても、日本の安全保障にとって脅威となると思われる、あるいは潜在的な脅威を構成する物体が、それが戦闘機であれ、天体から来たものであれ、もし日本国民の安全にかかわる問題であるならば、このものをやはり調査する必要がある。もちろんそれは領空侵犯という今度の事件に関してそういうことを言えるわけであります。でございますから、やはりわれわれとしてこれを調査するということは、日本国民の安全ということを考えた場合はやらなきやならない。やらなかったならおかしいというふうに私は思っておるわけであります。  どういうふうにして領空を侵犯してきたのか、特に御承知のように、これは世界にまだ幻の戦闘機と言われておるわけでございますが、その幻という意味は、三・二マッハ——これは「ミリタリー・バランス」に出ているわけです。それくらいのスピードがある。しかも低空で侵入してくるという場合、これはなかなか防ぎようがない。しかし、日本防衛庁長官といたしましては防ぎようがないとしてはおられないわけであります。というのは、アメリカにおいても低空で侵入したことは、キューバから参りましたときは平和時ではございましたけれども、なかなかこれを捕促できなかった。  また、ソ連におきましても、この機が低空で恐らく脱出したと思われるわけでございますから、とらえなかった。それほどむつかしい問題、世界各国の軍事専門家が低空侵入に対してどうするかということを考えておるわけで、やはりその機能というものを調べるというのもこれは当然なことじゃないか。あるいはどういうコースで入ってきたかというようなことも、やはり本人からも聞かなきゃなりませんし、また同時に機体そのものにそういうような記録装置があるのか、あるいはどういうふうにしてそういう低空で入ってきたのか、それからまたこの危険な、潜在的脅威を構成する物体、つまりこの戦闘機がもしこれに人が近寄ったら爆発するかもしれない。非常に危険です、これは。あるいは今日の核時代でございますから、核装備しているかもしれないですよ。それならこれをそのままでほったらかしたら、国民に対して私は一体責任を果たすことになるでしょうか。そういうことをいろいろ調べてみるということは私は当然なことだと思うのです。やはりこれは背景状況ということ、領空侵犯を犯した機体に対してやるというのは当然なことだというふうに思います。
  205. 森中守義

    森中守義君 この問題は、これから関係の委員会等でもしばしば議論になりましょうから、最後に総理に承っておきますが、やはり降ってわいたような衝撃と、いいものが来た、早くひとつ広げてみろという、そういう、いま坂田長官の言われるような半ば期待というものは非常に大きい、それでやや扱いに内閣としての適正さを私は失っていると、こういうように思います。  それで、これから先、日ソ間が非常に険悪になる。ことに具体的には、北方の領海等においてだんだんこういうものが高まっていくということになると大変だと思うのですね。だから、そういう意味から考えていけば、速やかにソビエトとの間に何かの話し合いをつけなきゃだめじゃないですか。何か衆議院の予算委員会で、総理は一言ぐらい釈明があるのはあたりまえじゃないかと、こういうような答弁があったようですが、そういうようなことで、現実に被害をこうむる北方の漁業に従事する人たちの不安などは除去されるかどうか。それが生きた政治じゃないでしょうか。どうなさる。
  206. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは日本が機体を返還をしたいということを申し出てございまして、この外交的なチャンネルを通じて話し合いができるわけですから、私は基本的な日ソ間の関係をこわしてはいかぬと思うのは、これは実際迷惑な話ですからね、日本が。こういうことが起こって、そのことが日ソ間の基本的な友好関係に障害が起こるということは両国として慎まなきゃならぬのじゃないか。何らかの意思が働いて、国家間の、それでこの事件が起こったのならば、それは日ソ間に影響するでしょう。国の意思というのではないわけで、向こうだって国家の意思として動いたとは思われないですね。そういう不幸な事件で、せっかく積み上げてきた日ソ間の友好関係というものをこわさないようにするというのは、両国政府として考えるべき点でないでしょうか。これはよくソ連にも、またわれわれとして、そういうことは小坂外務大臣のときも申しましたけれども、今後あらゆる場合に解かなければならぬことであるということでございます。
  207. 森中守義

    森中守義君 いや、そういう総論的な意味はもう百も承知していますよ。しかし、現実的に北方ではどんどん船が引っ張られる。何かきのうかおとといの新聞では日本航空の乗組員を入国させなかった、こういったような、何か目に見えていろんな事件が発生するのですね。  で、それをわかってくれるであろう、日本はこういう考えだということは、ここでは通じますよ。さて、相手にそういうものが何らかの形で了解してもらえるような、了解させるような、そういう措置がとられてしかるべきじゃないのかと、その方法は何なのか、こう聞いているのです。もういまの答弁は要りません。いや、要らないというのは、さっき言われたようなことならもう答えは要りませんが、具体的に示しなさいよ。
  208. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 具体的と言えば、日ソ間で話し合いをするということでしょうね。話し合いをしていくということでしょう。
  209. 森中守義

    森中守義君 しかし、それはこの前小坂・グロムイコ会談でも全然まとまっていないじゃないですか。しかし、だんだんだんだんエスカレートしたらどうします。だから早目に具体的な措置をとるにはどうすることですかと、こう聞いているのですよ。
  210. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは具体的に、日本とすればいろいろ日ソ間には漁業問題なんかの関連がありますから、そこにはいろんな協定もあるわけですから、どうかそういうことでこういう不幸な事件がエスカレートして、そうして、そのことでやっぱり一片の北洋なんかの協定もあって、そういうことですから、われわれとしては、今後の外交交渉を通じて、こういう不幸な事件が日ソ間に悪影響を及ぼさないようにしようということを言う、そして両国の理解を深めていくという以外に、日本からやるといっても、こっちは一切——もう迷惑な事件が起こったんですからね。こっちからやるということは、まあどういうことを森中さんはお考えになっておるのか、われわれとしては、こういうことを、日ソ関係の長い間これ積み上げたわけですからね、友好関係を。これをやはり根本から阻害するようなことのないようにしようではないか、お互いに隣国ですし、そういうことを言う以外に、何か日本から打つ手といっても、なかなか、いま私としてはこうしたらいいという考えはございません。  森中さんはどういう考えをお持ちになっているのか知りませんが、とにかくこの事態というものはこういうことで起こったんですから、これを日ソ間に悪影響を及ぼさないようにするということを話し合うという以外に——話し合うということでこの問題を根本に、日ソ関係の根本を悪化させないように努めたいと思っております。
  211. 森中守義

    森中守義君 そういうお考えでうまくいけばいいですがね。  次に、ロッキード問題をお尋ねしますが、二日、法務大臣と総理と会見をされて、中間報告についてずいぶん突っ込んだ意見の交換があったように伝えられておりますが、その内容を少し具体的に御説明いただきたい。
  212. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 森中君も御承知のように、児玉ルートの解明はおくれておる。丸紅、全日空の真相究明が一応最終段階に達しましたので、その経過を含めて、ロッキード事件が起こってから政府はどういう処置をとってきたかということ、現段階における一つの政府の見解などをできるだけ詳細に述べよということで、いままだでき上がってはいないわけでございます。この問題は法務当局においてそれを現在作成をしておる段階だと聞いております。
  213. 森中守義

    森中守義君 法務大臣が構想を示されたというような新聞の報道ですが、その構想とはどういう内容でしょうか。
  214. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 私が申し上げました構想は、中間報告は第一に、従来の国内捜査の経過及びその結果、それについての一般概要を内容にしたいと。第二には、真相究明のための日米政府間の協力活動、なかんずく日本の政府がとってきた活動、とりわけ米国資料の入手及び嘱託尋問の経過など。第三に、いわゆる児玉ルートを中心とした今後の捜査の見通し等について行いたい。  そこで、いわゆる灰色高官の定義、基準などの国会における審議決定の参考にも資するため、全日空、丸紅ルート関係の捜査結果についての報告をどのように行うかにつきましては、現在検討中であります。
  215. 森中守義

    森中守義君 この中間報告を提出される意味合いというものは、国会法百四条に基づくものですか。
  216. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) ロッキード問題の解明は、検察・法務当局としては刑事責任の追及がロッキード問題の解明であります。ところが、ずっと今回の事件につきましては、特に政治的、道義的責任の追及をもあわせて解明する。そうして道義的、政治的責任の追及については国会の国政調査権、それに基づいて行うんだと、政府はこれに対して最善の協力をするんだと、こういう関係でありますから、国会のいわゆる灰色高官の何といいますか、究明といいますか、所在、その発表等はいずれも国会の国政調査権百四条に基づくものであるというふうに私どもは理解しております。
  217. 森中守義

    森中守義君 そこで、事務的なことですが、大体いつごろを予定されますか、中間報告の時期は。
  218. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は遅くも十五日と言ったのですが、もう少し早めたいと、まあ十日前後というふうに考えております。
  219. 森中守義

    森中守義君 新聞のことですけれども、ロッキード特別委員会の報告要求を待って提出と、こういうように言われておりますが、これはどうでしょうか。
  220. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 国会ではロッキード問題調査特別委員会というそれ専門の委員会があるわけですから、それへの私どもの中間報告はやはりその場へ提出する、その場で報告するというのが筋合いでなかろうかと考えておる次第です。
  221. 森中守義

    森中守義君 法務大臣、それは提出の場所はそうでしょうがね。要するにロッキード委員会の報告をしなさいという要求を待って提出するんだと、こう新聞が伝えているんですが、それはどうなんですか。進んで出されるのか、要求を待って……
  222. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) それは私はどちらでもいいと思っていますよ。それは呼吸がすっと合ってやることでございますからね。どちらから報告してもようござんすよという姿勢を示しているんですから、ですからなるべく早くやれとか遅くせいとか、そちら様の御意思に従って、こっちはわき役ですから、主役の御意思に従うのが順序じゃないでしょうか。
  223. 森中守義

    森中守義君 その主役の意思に従うということであれば、やはりロッキード委員会の報告要求を待つということになりますね。その場合に、先ほど法務大臣が言われる報告の内容と特別委員会が求める内容には相当の幅、内容の食い違いがある、こう見なければいかぬ。そうなった場合に、いまその稻葉構想に基づく報告の内容をかなり大幅に変えるという、あるいは変えてもいいという、そういう見解でしょうか、その辺はっきりしてもらいたいんです。
  224. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 百四条は国会が何々の報告を求める、それに対してこちらが受け身で報告する性質のものですな。今度の報告は百四条に基づく報告として提出したい、こういう気持ちでおりますので、したがって、まず報告をいたしまして、さっき言ったような構想で報告をいたしまして、その後いわゆる灰色高官の定義、それから基準等に僕しましては、それにも参考になるようなものにしたいものだなという気持ちでいま検討中でございます、こう申し上げたわけです。
  225. 森中守義

    森中守義君 そこが法務大臣非常に大事な問題なんですよ。百四条では、必要な報告または記録の提出を求めたときは求めに応じなければならぬ、こう言っているわけです。だからロッキード委員会でひとつ報告を求めよ、求めるについてはこれこれの内容が満たされねばならぬ、こういうようなことになるでしょう。その内容と稻葉構想に基づく報告をされようという内容が食い違った場合に、あるいはもっとたくさんのものの報告を求められた場合、国会意思に沿われるかどうか、こう聞いているんです。
  226. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 児玉ルートはまだ解明が済んでいないわけですね。全日空、丸紅ルートは解明が済んでいる。そういうことでまことに申しわけないことですが、いろんな事情はありとは言いながら、いまだに児玉ルートが解明できていないということは申しわけないんですが、けれども、本臨時国会でもロッキード問題調査特別委員会が引き続き設置されて、この事態を究明するという国会調査権に協力する義務をあの議長裁定で負うておりますから、全部終われば一番いいんだけれども、終わらないこの段階においても、その範囲において御報告申し上げる、こういう気持ちなんですね。それがやっぱり国政調査権に最善の協力をすると政府が約束している義務を担当する法務省として、国会を尊重する態度ではなかろうか、こう思ってそういう報告をする。  ところが全部終わっておりませんから、その報告の内容も、あるいは国会の要求される、これも出せあれも出せと言われても、まだ終わっていないそこに関連する山脈ですから、山はこう孤立して、一つの山、二つの山、三つ目の山と独立してあるんじゃありませんから、したがって、あるいは国会の要求される報告に私どもの報告は飽き足らない点があるかもしれませんけれども、そういう点はやっぱり刑事訴訟法の立法の趣旨をも踏まえてとありますから、国会の方と私どもの方となるべくその辺のところは歩み寄りをして、事態の全貌の解明に両々相まって事を運んでいきたいものである、こういうように誠心誠意考えておる次第であります。
  227. 森中守義

    森中守義君 これは法務大臣、釈迦に説法ですが、国会法百四条では刑事訴訟法四十七条は全然これはもうらち外に置いていますね。すべて出せと、こうなっている。私の言う意味わかりますか。用意されるのと国会が求めるものと違った場合には当然国会の求めに応じて、いま言われる児玉など未解明の部分は別なものとしても、全日空、丸紅とこれこれについては出しなさいと言われたら出すのですかと、こう聞いているのですよ。
  228. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえて出せ、協力せい、こうなっておりますから、その範囲において最善の協力をすると申し上げているんです。したがって、あの議長裁定は各党をも拘束しているわけですから、国会の各党の委員の各位も刑事訴訟法の立法の趣旨を踏み外した御要望は万あるまいものと私どもは思っております。
  229. 森中守義

    森中守義君 いや、それはその百四条を基礎にしたと、こう言われるし、しかもそれに加えるものは議長裁定の四項、つまり四十七条のただし書きですね、これらがやっぱり入っているんですね。だから私は、国会が求めるものは政府の方で選択されるべきものではない、すべて出すべきものだ、こういうような見解を持つんです。これ総理どうなんですか。それが一番大事なんですよ。
  230. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 森中君お読みになっても議長裁定というものは非常に慎重な文書になっていますね。事件の推移を見て、刑事訴訟法の立法の趣旨を体してということで、そういうことで非常に慎重な表現だと思いますよ。したがって、そういう趣旨を体して、しかも最善の協力をせよというのですから、これはもう最善ですからね。いろいろなことを言って、これ政府が提出するに対して選任なしに拒むことは私はできない、やはり最善の協力をすべきだ、こういうふうに考えております。
  231. 森中守義

    森中守義君 それじゃひとつ具体的にお尋ねしましょう。  内容に国会は、少なくともこういうようなことになろうかと私は思う。私自身はそうなんです。まず第一番に時効不起訴、微罪不起訴、嫌疑不十分、嫌疑なし、こういう氏名等は公にされますか。
  232. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) それだからその点については、いま言った刑事責任の面はすっと報告しますが、政治道義的責任の追及の主体は国会ですからね。政治的、道義的責任の追及に資する、役立ち得るような報告にして差し上げたいものだなあという気持ちで目下検討中なんですから、いまおっしゃったようなことは目下検討中であります。
  233. 森中守義

    森中守義君 いまの見解が大分違うんですよ。私は端的に申しまして、今回の事件政権犯罪ですよ。政治権力を中心にした政権中枢に端を発する事件ですからね。政治的、道義的な問題は国会でおやりなさい、これじゃ済みませんね。むしろ政権中枢部に発生した問題であれば、政府みずからが政治的、道義的な問題を明らかにすべきじゃないですか。したがって、たとえば田中、佐藤、橋本、こういう一連の政府高官などの言動がどういうものであったのか、政策決定はどういう経緯で行われたか、これは当然入れるべきでしょうね。具体的にそういうふうな私は考え方を持っている。何かしら政治的、道義的な問題は国会でやりなさい、こういう逃げ方が政府として果たしてとれるのかとれないのか、とるべきじゃないでしょうね。私が言う政権犯罪というのはそれを指している。出すべきじゃないですか。これは総理どうですか。
  234. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ政府は、刑事上の責任は、御承知のように稻葉法務大臣も私も、指揮権発動はもちろんのこと、政治的介入はいたさない、検察の活動に対しては全面的に信頼をしようと、厳正におやりなさいと、こう言っているのですからね、これはやっぱり森中君お伺いになっても厳正にやっていることは事実ですよ。ところが政治的、道義的責任ということになってきますと、どうも政治的、道義的責任というものを政府自身が区分けをしてやるということに何か、そうなってくると政府ですからね、政府自身がやるということになってくると、何かこれは政治的な意図がそこには入るんじゃないかという疑惑を生じますね。議員のやっぱり一つの規律と申しますか、そういうことに関係をしますから、道義的責任あるいは政治的責任の追及の場は議長裁定にも「国会」として、こう書いてありますね。政治的、道義的責任の調査国会としてと言って、政府に対しても政府みずからおやりなさいというのじゃなくして、国政調査権に協力をしてもらいたいというのがあの議長裁定の趣旨です。これは党首会談も伴っておるわけなんで、きわめて厳粛な約束なんです。  そういうことで、私はいわゆる灰色高官と言われておる者の範囲を国会自身でお決めになれば、これはもう本当に、何かあんまり政府が逃げないで、これに対して資料をできるだけ協力して、国政調査権に御協力を申し上げたいと思ってるんですよ、各院でね。どうでしょうかね、政府自身としては、たとえばここにおる運輸大臣の場合でも、運輸省を中心として起こりましたから、行政指導のあり方とか許可、認可、全面的にいま運輸省に対しての一つの検討する会を発足してやっているわけですね。行政自身としてはいろいろやらにゃならぬ問題がございますよ。また政党自身もあるでしょうね、政党自身も。行政府として何か政治的、道義的責任のみずからが区分けをするというやり方は——逃げるんじゃないですよ、私は究明をしたいと言っているのだから。政治生命をかけたいという私の決意は変わらぬですよ。  しかし、そのことは、何か時の政府がみずからがやっぱり政治的、道義的責任の区分けをしてそれを発表するということに対しては、何かしら政治的な意図が加わるのではないかという疑いを持たす場合もありますから適当でないんじゃないか。むしろ議長裁定の言うように道義的、政治的責任の調査の場は国会である、こういうことがこれから大事な問題ですから、国会のやっぱり国政調査権の発動というものは大事になってきますから、これはやっぱり将来のことも考えてこの問題の処理というものは日本民主政治の上においてこれが有効に機能するようにしなければ私はいかぬ。一時のものじゃないですね。そういうことを考えてみると、どうもそうすることの方が適当ではないのではないか、こういうことで、いまは国会に対して、ほとんど言われたことに対しては、国会意思として決められたことには全面的に協力しようという私は考えですよ。それぐらいの考え方でこの道義的、政治的責任というものの調査、これがあるとかないとかいう有無に関しての調査は、国会でおやりになることに対して政府は協力するという形をとりたいと、こう思っておるのです。  ことにいまの場合は捜査途中ですから、私は、この事件の捜査が全部もう終わってしまったときに、全部捜査が終わってしまえば政府としてこの真相というものを知りたいという国民の要望にこたえてロッキード事件というものの総括的報告をしたいと私は願っておったわけです。そのことが一番理想的なんですね。捜査が終わった段階なら非常にやりやすいわけです。そういうことを考えておったんですが、残念ながら病気等の理由があって、そうして児玉ルートの解明がおくれておる。捜査が終わっていないわけだ。  しかし、児玉ルートの解明なくしてロッキード真相解明は終わらぬわけですから、時間がかかっても、これはやっぱり真相究明というものは徹底していこうと考えていますよ。そうなってきたら、総括的御報告を申し上げるということはこの段階でできないので中間報告、しかも児玉ルートの究明というものは進んでおるのですから、丸紅、全日空のルートというものもこれは関係なしとは言えないですからね、そういう異常な制約の中にあっても国政調査権に対しては最大限度の協力をしなければならぬというのが私の決意でございます。(「ロッキード隠しだ、幕引き論だ」と呼ぶ者あり)
  235. 森中守義

    森中守義君 最大限の国政調査権への協力と言われますけども、さっき稻葉法務大臣がお述べになった構想は、これが最大限という理解をすべきなんですか。ずいぶん国会意思とは違いますよ。だから私は、百四条を踏まえるものである、こうおっしゃるならば、何も刑事訴訟法四十七条は百四条には言っていない、全部出せと、こう言っていますよ。しかも、なお総理と私の見解が大分違うのは、要するに政権犯罪あるいは政府犯罪とも言うべきでしょうね、だから道義的、政治的な追及というのは、もちろん国会もそうなんですが、政府みずからが進んでやるべきじゃないのか、だから必要なものは全部出してくださいと、こう言っているんですけども、大分やっぱり見解が違うんですね。  それと、いま小野君の方から幕引きじゃないかというお話もありましたが、やっぱりそういう懸念がありますよ。国会の会期は十一月四日、さて、その後は衆議院の解散に向けてひた走りに走っていく。もういまから数えて何日あります。そういうことを考えると、どうも中間報告というものは、ややもすると食い逃げ、幕引きという、そういうことになりはしないかというような気もするんです。  もう一回、そういう意味で重ねて総理政権犯罪、政府犯罪という、こういう私の認識をどうお考えになるのか、それならば当然進んで出すべきだというこれに対してはどうなのか、もう一度答えてください。
  236. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 刑事上の責任というのは、これは皆起訴するわけですから明らかになりますね。道義的、政治的責任というものは非常にこれは、その範囲というものはいまロッキード特別委員会でも各党ごとに違うわけですね。自民党自民党見解を出す。各党とも開きがあるわけだ。私はやはり総選挙前に、道義的責任、政治的責任の国会調査も進んで国民の判断の材料を提供することが非常に好ましいと思うんです。そうなってくると、ロッキード特別委員会の場において、そしていわゆる灰色高官というものの範囲を、各党間がこれはできるだけ歩み寄って一本化して、国会意思として政府に求められるならば、いま申したように、これはもう全部国会意思としてまとめられたら、この意思を尊重したいと思っているんです。  だから早くひとつ、これはロッキード特別委員会でいわゆる政府が言う灰色高官、これに対して個人名も含めた資料というものはひとつこの範囲において出してもらいたいという国会意思をお決め願えれば、これはもう、政府はこれは全面的に御協力申し上げたいと考えておるんですから、そのことが急がれるわけですね。政府自身はこの事件を教訓としていろんな立法上の検討もしたいと思いますよ、こういう事件が再び起こらないように。しかし、いまこの場合において道義的責任、政治的責任というものの追及の場は、やはり国会において精力的に御調査なさることが一番適当ではないかと。政府自身がこの問題を教訓として、いろいろな綱紀の粛正、あるいはまたこれに対してこういうことの再発を防止するための立法、このことについても政府自身も検討しなければ——無論国会でも御検討願いたいと思いますが、政府自身としても検討いたしておることは事実でございます。
  237. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、もう一回、実際問題どうなるかということに返りますが、総理は十五日を予定したが、もうちょっと早めたいと言われる、しかもロッキード特別委員会の要求に応じたいと、こう言われるわけですね。
  238. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 決まればね。
  239. 森中守義

    森中守義君 決まればね。ところがロッキード特別委員会がまとめたもの、政府が予定されたもの、ずいぶん開きがある場合、この場合はどうされるのか、国会の要求を満たすために追加されますか、どうですか。
  240. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御承知のように、稻葉法務大臣のは個人名を含まないんですから、個人名は、今度の場合は。事件のやっぱり概要を御説明を申し上げるわけですから。個人名を含むような資料の提供については、ロッキード特別委員会でいわゆる灰色と言われる者の範囲を、国会一つ意思としてお決め願えれば、個人名も含めて出しましょうと。その場合に私は、国会の要求と政府の出すものとが違ったらどうかというようなお話でございますが、国会で決められた意思に対して全面的に協力したいというのが私の考えでございます。
  241. 森中守義

    森中守義君 そこがやっぱり、少々いやな言い方だけれども、ずるいんですよ。ロッキード特別委員会で議論の中身、あるいはその各党の見解等はおわかりでしょう。たとえばさっき言われましたね、いまの場合は個人名は出さないと、こう言われるが、後で出すんですか、どうですか。ロッキード特別委員会が出せと言えば出すんですか。しかし、それは与党がどうしても承知しない。それが一つ前提になる、あなたの御意見では。だから、こういうような表現になるんじゃないかと、こう思うんですよ。それじゃまずいんじゃないですか。与党を説得できますか。野党が言うように、一切合財のものを出しなさいと指示して説得されますか。
  242. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私、するほかないと思いますね。これは捜査、要するに起訴されない部分ですからね、起訴されない部分に対して、いままでの捜査内容に基づいて個人名も出そうということは、これはやっぱりそんなことはずるいと言えるでしょうか。最善の協力だと思うわけですね、この問題は。道義的責任、政治的責任というものを政府自身がそうやって区分けをするということは、これはやっぱり政府というものは、政党内閣のもとにおける政府ですから、そういうことは私は非常に国民から見ても、刑事上のものはいいんですよ、しかし道義的、政治的責任の有無というものを政府が仕分けをするという行為は私は適当でない。だから議長裁定で政府とは言ってないんですからね。道義的、政治的責任の調査国会のとしておるのは、そういう点も配慮された私は結果だと思うんですね。  また、御承知のように、自民党が多数であることは事実ですけれども、私は自民党もこれはやはりロッキード事件真相を知りたいという国民の要望にこたえて、そして一本化することに対して大所高所からこの問題の一本化に努力をするように私も努力いたしましょうと、けれども野党も何もかも皆出してしまえと、こういうのにはおのずからそこには合理性が追求されなければならない。何も捜査したもの全部洗いざらい出してしまえということは、いかにも考えようによっては何かこう——その方が非常に明朗なように感じますけれども、議長の裁定にも、やはりいわゆる刑事訴訟法の立法の精神というのは公共の福祉の確保、一方においては個人の基本的人権の保障と、この二つでしょう。この二つにのっとっていわゆる刑罰に対して厳正に、迅速に適用するということを目的として刑事訴訟法ができているんですから、だから何もかも皆捜査したものは全部出せということは、これは野党自身も、合理性を持った、国民が見てもそれがやはり国会調査権としてのそこが一つの常識的な線だということでまとめることに努力をしていただきたい。  皆がまとまらぬ、まとまらぬとおくれたら、真相の解明というものは非常におくれるわけですから、そこがやっぱり与野党が国民意思を体して一本化して、早く、そうすれば政府は全面的に御協力申し上げる用意があるというのですから、どうかひとつ与野党の間でそれくらいの、国会がこの難局を背負って、日本国会が国権の最高機関としてやっていくのにはそれくらいのことで合意ができぬということでは、私は国会というものはこれから機能を発揮していくのにはどうかと思うんです。  どうか森中君、社会党における有力な方でございますから、そういう点でひとつ御協力を願って、そうしてこれを推進する、私も努力いたしますよ、推進のために御協力を願いたいと思うのでございます。
  243. 森中守義

    森中守義君 いま国民の期待というようなお話が出ましたが、これはすでにもう野党各党は全部一つの案を出しているんですよ、ごらんになったでしょう。そこで足して二で割れとか、歩み寄れというようなことは成り立ちませんよ。問題は与党がどこまでそういう野党のものに歩み寄ってくるのか、認めるか、ここにかかるのです。だから野党にどうしなさいというんではなくて、与党を、総裁ですからやられるべきじゃないんですか。これは単なる犯人捜し、そういうものじゃない。やはり将来の一つの教訓をこれで生かしていこう、こういうことですから、全部やっぱり出すのがあたりまえじゃないんですか。  それで、その内容にもちょっと気になるところがありますが、法務大臣の方からPXLは全然お触れになりませんね、これは一体どうなるのか。当然こういうものは入れるべきだと思いますがね。
  244. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 予定されている私の中間報告にそういうものを入れるべきだという御質問だと思うのです。それは児玉ルート解明の見通し等の中に触れる場合があるかと思います。
  245. 森中守義

    森中守義君 ちょっといま、最後わからなかった、PXLどうですか、入れる。
  246. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 児玉ルート解明の見通しを述べろとこう申されましたから、その見通しの中に入るであろうと思います。
  247. 森中守義

    森中守義君 そこで、さっき申し上げたように、私はこの際、時効不起訴、微罪不起訴、それから嫌疑不十分、嫌疑なし及び金の流れはどうなのか、及び田中、橋本、佐藤、こういう当時政権中枢部にいた人たちの言動までも入れるべきだとこう思うのですが、もう一回これは確認しておきましょう。
  248. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 私の中間報告のこういう必要性といいますか、政治的な意味は、国会が道義的、政治的責任を追及されるいよいよ重大な場面に来られましたから、その道義的、政治的責任、いわゆる灰色という定義、基準等をお決めになるにも、与野党でなかなか開きがあって国会意思が統一されないと困るんです、私どもも協力する上において。その国会意思をお決めになることに役立つような中間報告を申し上げるのが国会に対する最善の協力、国会尊重の法務省の立場ではないか、こういうふうに思ってそういう報告にしたいと、こういう意味でございますから、私の意のあるところもおくみ取りいただきますようお願いいたします。
  249. 森中守義

    森中守義君 せっかくの機会ですから、児玉ルートの捜査の現状と見通し、これをひとつ承っておきましょう。
  250. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) それはロッキード問題調査特別委員会において、私の中間報告の中で申し上げることにいたします。本日は遠慮させていただきます。
  251. 森中守義

    森中守義君 その児玉の裏づけのために、小佐野あるいは中曽根、田中、相澤、後藤田、こういう人たちの当然事情聴取、あるいはさらに進んだものが必要なものだと思うんですが、その見通しはどうでしょう。
  252. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) このいわゆる灰色高官の究明について、政治責任の追及をしていった過程の資料を全部出せということはどういうものですかね、それは。ちょっと困るんだよ、それは。ですから、国会の任務は道義的、政治的責任追及なんです。われわれの方は道義的責任の追及の権限はないんです。一々こういう汚職事件なんかについて刑事責任を追及した。さらに、そら道義的責任だ、政治的責任だと言って、こっちの資料でやった分にはこれは検察ファッショになりますから、そういうことは厳に慎まなきゃいかぬ。  しかし、皆さん方の方は道義的責任、政治的責任、これは別なものでしょうか、道義的責任と政治的責任というのは。別々に書いてありますけども。それも私聞きたいんです、後で。ロッキード問題調査特別委員会で聞きたいんです。それは政治道義上の責任で一つのものじゃないかと思うのです。それはともかくとして、私らの主役の問題でありませんから、それを追及するについて、いま申されましたような人の国政調査権に基づく証言の求め、これこそそちらの方の非常な重大な権限じゃないでしょうか、それをやらぬで、そして捜査——刑事責任を追及した資料をみんな出して、そして協力せいと言ったって、それは自分のやるべきことをやらぬで、人のやるべき資料でもって国政調査権の成績を上げようと言ったって、どういうもんですかな。
  253. 森中守義

    森中守義君 これは稻葉さんね、道義的、政治的というのは三木さんが最初に言われたことだから、あっちに聞きなさいよ。  それから児玉になぜこだわるかということは、七月段階では八月にずれ込むであろう、八月段階では九月にずれ込むであろう。こういったように、ずれてずれて、さてこれから先一体どうなるか、その見通しは全くないんですね。それで、中間報告だとこう言われるのだが、際限なく児玉にやっぱり疑惑がありますよ。だから、あえて申し上げるのは、大体いつごろどうしてどうなるかという見通しは言えるんじゃないですかということが第一点。  それから、さっき挙げたような名前を、事情調査からさらに進んだものに発展する可能性があるのかないのかということが第二点。  それから、いま一つ総理にお尋ねしておきますが、国会に証人として呼べというのは小佐野ですよ、田中ですよ、後藤田ですよ、相澤ですよ。その他六十人ぐらい、参議院の特別委員会は要求している。みんな与党の抵抗に遭って実現していないじゃないですか。こういうものが実現しないで、それで児玉を解明しようと言っても無理なんです。この三点はひとつ総理から、前の二点は法務大臣からお答えいただきましょう。
  254. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 道義的、政治的責任の追及に、私どもは本来の任務ではないけれども、議長裁定にもこれあり、義務を負うている者として最大に義務を尽くそうという姿勢であることはおくみ取り願いたいと思うんですね。ただ、児玉ルートの解明が八月から九月にずれ、九月も終わって十月にずれているんですね。そして十月いっぱいで果たして結着がつくのかどうかと。おまえの言うことはちっとも信用ならぬとこちらはおっしゃられても弁解の余地はないようなものですけれども、何しろああいう事情、それから逃げようとする方の日米合作協力態勢というものが非常に強がったものですから、だんだんずれてきたけれども、そんなことに負けていられるかと、こういう意気込みでいま真相の徹底的究明を、捜査本部なんかそのままきちっと持続してやろうとしているわけですから、この点も中間報告をして、まあ児玉ルートの解明はする意思のないようなふうにとられるのは私は心外千万なんです。これはこれでやる。  それから、証人の喚問等こそが国会の道義的、政治的責任の追及、あるいは刑事的責任追及に対する国会のわき役としてのその仕事、それは非常な大事な憲法上、それから法律上与えられた国会の権限かつ職責であろうかと思います。それをひとつおやりになることについて、こっちがとやかく言う筋合いのものではありません。そして党がどういうことになっているかというようなことは、私は総裁じゃないんですから、申しわけないんですが。
  255. 森中守義

    森中守義君 それは総裁に聞いているのです。
  256. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 当分の間証人の喚問はひとつ延ばしてもらいたいと言ったことは事実ですね、自民党が。そのときは、御承知のように、全日空あるいは丸紅のルートというものは、非常に精力的な捜査の段階に入っておりましたから、捜査上もいろいろな支障を来すということをおそれたわけでございますが、いまもう丸紅、全日空のルートはそういう状態ではございませんから、そのときの事情とは変わっておる。したがって、それを証人として喚問しなければならぬという必要性については、ロッキード特別委員会で十分御検討の上、必要な証人の喚問というのは当然のことだと思います。自民党としても、これは証人の喚問はいかぬというあれは当分の間ということでございますから、やはり国会の国政調査権というものに自民党も協力することは当然でございますから、われわれとしても、自民党に対してもできるだけそういう必要な証人の喚問には協力するよう努力を総裁としていたします。
  257. 森中守義

    森中守義君 まあいまの最後のことはひとつしかと承っておきましょう。ぜひそういうふうにしていただきたい。  それから法務大臣、あれですか、衆議院の予算委員会がこの会期中にもう一回やる、その中で小佐野偽証の告発をいま検討されているようですが、偽証告発があった後、強制捜査に踏み切りますか。
  258. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) いまの段階でこれを……、それば児玉ルートというのはいま非常にむずかしい、しかし、どうしてもやっつけなきゃいかぬなと、こういう意気込みでやっているわけですね。ですから、それは、そういう場合に小佐野氏を強制捜査に踏み切る意思である、意思でないなんということをいま明らかにするのは不適当だと思いますね。それはやっぱり捜査は極秘に進めて、そうして逃さぬと、どうしてもきちっとすると、解明すると、刑事責任を追及すると、こういう熱意があればあるほど、いまの段階でこれはああする、これはああするつもりでございます、そんなことは言えませんですね。  それから証人でも、私は刑事被告人になっている人の証人というのはどういうものだかなという法務省、それから検察当局では疑問を持っております。  それからもう一つ、証人喚問の場合に、いままでの経験に徴して皆さん方もお気づきでしょうけれども、おまえは何度警察に呼ばれた、検察に呼ばれた、そしてどういうことを聞かれ、どういうことを答えたか、そんなことをいまやられるのは、児玉ルートが残っている現在においては、ちょっと良識で御判断をいただきたいという強い希望を申し上げておきます。
  259. 森中守義

    森中守義君 こういうふうに理解していいですか。告発の結果、強制捜査に入ることもあり得ると、あくまでも仮定の問題ですがね。それくらい答えられるでしょう。
  260. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) それはあり得ますね。あり得ます。
  261. 森中守義

    森中守義君 それから運輸大臣、丸紅が社会的な責任をとりましたね。丸紅は社会的な責任をとった、社長以下責任をとりましたね。これに対して全日空の方はどういうように聞いておられますか。
  262. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御承知のように、全日空は完全な民間会社であります。その民間会社の人事はその会社の責任と判断によって決められるべきものと考えております。
  263. 森中守義

    森中守義君 そこで、伝えられる新聞の報道では、若狭以下居座るんじゃないかと、こういう報道などもありますが、確かにおっしゃるように民間の会社ですから、人事介入等は許されないでしょう。けれども航空行政を担当される所管大臣としての見解はどうなんでしょう。
  264. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私がここで所管大臣として見解を述べること自体が民間会社の人事の干渉になると思いますので、差し控えたいと存じます。
  265. 森中守義

    森中守義君 まあ所管大臣でぐあい悪ければ、総理どうですか。こういう大変な問題が発生した、しかし、なおかつ居座りという傾向がある、これに対して、直接人事権も何もないわけだから、総理としてはどういう見解をお持ちですか。
  266. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは石田運輸大臣の言うように、民間企業の人事に政府が介入するということは、私はそういうことは行き過ぎだと思います。会社自身は、企業自体はやっぱり社会的な存在でございますから、そういうことも体して良識のある決定を下されることは当然のことだと思います。
  267. 森中守義

    森中守義君 一般論としての論評はできるんじゃないですか。
  268. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはやはり民間企業ですからね、総理大臣が人事に対していろいろこう予算委員会で発言をするということは適当だと思いませんね。やはり企業自体がいろんな良識のある決定を下すべきだというふうに考えます。
  269. 森中守義

    森中守義君 この関係で刑事局長に最後に聞いておきますが、いましきりに伝えられる日韓金脈、あるいはパーマ石油、あるいはグラマン献金、航空管制装置、まあこういう幾つかのどうも構造的な疑獄、汚職という——事実かどうか知りません、何しろある。こういったようなことをこの機会に捜査に入ろう、あるいは調査に入ろうという、こういったようなお考えはございませんか。
  270. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 刑事局長がちょっと体のぐあいが悪くなりましたので、至急私からお答えさしていただきます。  御指摘の点につきましては、検察当局の従来の報告によりますと、犯罪の容疑が認められたということは聞いておりません。また、御指摘のような灰色のような問題があるかどうかということについても、そういうような事実があるということについては報告を聞いておりません。
  271. 森中守義

    森中守義君 まあこれは真相究明——事実が発覚しなければ手をつけないというおつもりのようですがね、やはり今日社会の中で非常にこういう問題に重大な関心が払われているんです。したがって、法務大臣以下首脳部の方もこういう問題については一層の関心を持ちながら処してもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  272. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 法務省としては関心を持って対処いたします。
  273. 森中守義

    森中守義君 そろそろ予算編成の時期が間近に迫っておりますが、たしか二十八兆八千億が概計の要求だと聞いておりますけども、この際ひとつ来年度予算の編成の方向、あるいは固められつつある内容等について御説明を願いたい。
  274. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、八月末に各省庁からいただきました概算要求額は二十八兆八千億見当に相なっております。しかしこれとても、本年度における人事院勧告がどうなりますか、明年度の地方交付税交付金がどのようになりますかは勘定に入っておりませんので、実質的にはこれよりも相当上回った要求額が想定されるわけでございます。  一方、歳入でございますが、御案内のように減速経済でございまして、大きく歳入の伸びを期待することは困難でございます。今年度に入りましてからの国税の収入を見ておりますと、ほぼ私どもが見積もりました予定額を満たしておる程度でございまして、大きく自然増収を期待できるような状況でないようでございます。  したがって、明年度は、歳入において大きな期待が持てない反面、いま申しました地方交付税交付金の増額、あるいは国債費の増額、あるいは社会保障関係費の平年度化等、多くの当然増の経費が予想されておりますので、このままでまいりますと大変困難な予算編成が予想されるわけでございます。したがって、歳出におきましては非常に厳しい選択を迫られてくることに相なろうかと思いまするし、歳入におきましていろいろな工夫をこらしていかなければならぬと思いますが、とりわけ特例債を巨額にお願いいたしておる財政でございますので、明年度はどういたしましてもこの特例債を減債していく最初の年にいたしたいということを念願いたしておりまするだけに、なお一層困難が予想される年になろうかと考えております。
  275. 森中守義

    森中守義君 大体歳入の見通しはどのくらい見ておられますか。
  276. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 歳入と申しましても、これまだいまの段階で明年度の歳入をエスティメートするには材料が余りにも不足いたしておるわけでございます。非常に大胆な前提を置きまして、五十一年度の予算をベースにして、そして経済の名目成長を一五%程度、そして租税弾性値を過去の経験値から考えて、一応の想定をしてみますと、まあ二十八兆前後がいま——税収入を考えますと、十七兆八千億程度にそういう計算でやるとなるのではなかろうかと。まあ税外収入等は大きな変動はないものと思われます。公債収入というようなものをどういう程度に置くかによりまして全体のフレームがどうなりますか出てくるわけでございますが、その見当はまだつきかねております。
  277. 森中守義

    森中守義君 目の子で幾らになるんです。
  278. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 大臣の先ほどお答え申し上げました計数は、大臣からも御答弁をいたしましたように、本年度の見積り自身がまだ確たる自信のない段階でございますので、非常に大胆な前提を置いてということでお聞き取りいただきたいと思いますが、税収は御承知のように十五兆強本年度で見込んでいるわけでございますが……
  279. 森中守義

    森中守義君 十五兆だね。
  280. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 十五兆円強でございます、税収といたしましては。それがどのくらい伸びるかという話でございますけれども、いまのところで計算いたす唯一のよすがは、経済成長率がどの程度になるだろうかと、いわゆる弾性値で計算したらどういう計算ができるだろうかという程度のものでございます。ごく御参考までにという非常に乱暴な仮定としてお聞きいただきますれば、仮に一五%GNPが伸びると、それで経験的に四十九年、五十年のような異常な年をある程度除きまして、過去の平均の弾性値の一・四程度のものを使ってみればどのくらいになるだろうかというような腰だめしかまだできません。仮にそういう腰だめをいたしますと、税収としては、これまた大ざっぱに申し上げまして、ことしの十五兆五千億に対しまして大体十九兆ぐらいかなという一つの推計はできます。
  281. 森中守義

    森中守義君 こういう推移からいきますと、かなり来年度の国債の発行は建設国債、赤字国債ともにやっぱり予定せざるを得ないんですね。そういう見通しですか。
  282. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 残念ながらまだ建設公債はもとよりでございますけれども、特例債もお願いしなければならぬ状況になるだろうと思います。せめて来年度は特例債につきましてはこれを漸減の方向にぜひ持っていきたい、そういう方針で予算編成に当たりたいという決意で当たりたいとは考えております。
  283. 森中守義

    森中守義君 結局、大蔵大臣、こういうことになりますね。さきに発表された中期財政展望ですね、これでは五十四年もしくは五十五年、この二つのコースで健全財政に返るんだと、赤字を脱却すると、こういうようなことを言われているんですが、これは五十二年度の状態からしてもかなり軌道修正せざるを得ないようになると思うのですが、この見解はどうなんです。
  284. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 財政試算で申し上げましたように、五十年代の前半に特例債から脱却するような状況に持っていきたいという展望はこれをまだ断念しないで、この道標はあくまでも追求したいといままだ考えております。
  285. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、その中期財政展望の中でも、これは税収をどう見るかというのもありましょうが、さしずめ来年度についてこういうような問題から考えれば、新税の設置なんてお考えになるんですか。
  286. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 例の御審議をお願いいたしました財政収支の中間試算でございますけれども、あれで申しますと、政府の経済計画に示されました財政需要というものを満たしながら、しかもいま申しました五十年代前半の特例債からの脱却を実現しようといたしますならば、租税負担におきまして四十八年度から五十一年度の三カ年平均をベ−スにいたしまして、中央において約二%、地方におきまして一%ぐらいの負担増を国民にお願いしなければならぬという一応の計算になるわけでございます。これは一つの目安でございます。もとより、国民の負担にかかわる問題でございまするし、これからの経済がどのような推移をたどりますかの問題でもございますので、慎重な検討を必要とするわけでございます。したがって、政府としては、税制調査会に租税制度全体の検討をお願いいたしておるわけでございます。先般本会議お答え申し上げましたように、所得課税ばかりでなく、資産課税につきましても、あるいは消費課税につきましても、税制全般にわたりましての御検討を願っておるわけでございまして、その中でどういう税目について考えるべきかということにつきましての見解をいま求めておるわけでございます。まだ御審議をお願いいたしまして日が浅いわけでございまして、まだ見当がつきかねておりますので、まだ税目を特定しての御審議はお願いしていないということだけをいま申し上げておるわけでございます。
  287. 森中守義

    森中守義君 特にことしの場合、所得税の減税が行われていない。ところが、実際問題として物価が八・八%にとまるかどうか、非常に問題ですね。ですから、大体試算をすれば物価調整には二千五百億ぐらい、八・八%を前提とした場合ですね、所得税の減税が必要であったろうと、こう言われているのですね。したがって、来年度は、ことしの分と来年度の分を含めて所得税の減税をおやりになるお考えありませんか。これはもう何としてでも、賃金はガイドラインで拘束してしまった、しかし物価は八・八%にとまるかどうかわからぬ、しかも所得税の減税は行われないということになると、どう考えてみても適当でないと、こう思うのですが、お考えはどうでしょうか。
  288. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) あなたの属する社会党さんばかりでなく、野党の皆さんから、所得税減税、とりわけせめて物価調整減税ぐらいはやるべきであるという意見が出されておりますことは、私もよく承知いたしております。また、われわれの与党の内部からもそういう意見が相当強く主張されておりますこと、これは私もよく承知いたしております。問題は、歳入というのは歳出の手段でございますので、それだけの歳入源を確保しなけりゃできないことは森中さんも御承知願えると思うのでございますが、そういうことをするということは、同時にそれに相当するだけの歳出を御遠慮いただくか、あるいは仮に公債の増発があってもそうすることの方が財政経済全体にとりましていいことであるという論証がない限りにおきましてにわかに賛成できないことでございます。とりわけ、わが国の場合におきましては、先進諸国に比べまして、税の面におきましても社会保険料の面におきましても相当低目の負担に現在ありますことは大変幸せなことだと思うのでございまするし、過去におきまして高度成長下におきまして相当精力的に減税政策が実行されてまいったわけでございますので、私ども財政当局といたしましては、こいねがわくばこの財政危機を突破する間は、この減税というようなことは、物価調整減税も含めまして、国民の理解を得て今度実行することなく財政の健全化を図らしていただければという念願を持ち続けておるわけでございます。もとより、各方面の強い御要請がありまして、財政当局といたしましても検討するにやぶさかでございませんけれども、それにはいろいろあわせて御検討いただかなけりゃならぬいろいろな問題があるということ、財政当局としては、あくまでも当面財政危機の間は御理解を賜わって減税はしばらく遠慮さしていただきたいと、こういう考え方に変わりはないことを御理解いただきたいと思います。
  289. 森中守義

    森中守義君 大蔵大臣、大変な問題ですわね。じゃ来年の賃金指数等はどういうような計算されるのです。よくそのガイドラインは来年も守るんだと、しかも物価は卸売物価は相当上がっている、しばらくしたら消費者物価が上がる、所得税の減税はしない、しかも物価調整税もつくらない、こういうことになる。もう大変な生活の態様変化という時代に入るのじゃないでしょうか。どうもそれだけでは切り抜けられないと思うのですがね。もう一回ひとつお考えを明らかにしてもらいましょう。
  290. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 国民、とりわけ勤労者の方々の生活という観点からお考えいただくならば、   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕 いま森中さんおっしゃるように、確かにせめて物価調整減税ぐらいは断行してしかるべしという論拠は十分成り立つと思うのでございます。しかし、一面、これは日本ばかりじゃございませんで、先進諸国、総じていま財政収支の均衡を図り、またインフレの再燃を回避しながら当面の危機をどう乗り切るかということに真剣な努力を払っておるときでございますので、そういう段階における経済財政政策のあり方といたしましていまの御提言はどのように評価すべきか。あなたの言う御提言は私間違っているということを申し上げるわけじゃございません。確かに私もよく理解できるわけでございまするけれども、また別なアングルからこの問題は見直されてしかるべき側面を持っておるということもあわせて御考慮を願いたいものと思います。
  291. 森中守義

    森中守義君 さっき大臣がちょっと言われました地方財政についてどういう運用をお考えなのか、これは自治大臣もお二人からお答えをいただきたい。
  292. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) おととし、去年と大変な歳入減、税収の不足でございまして、おととし八千億、去年は三兆八千億という空前の税収不足を来しまして、中央、地方を通じまして財政全体をやり直さなければいけないという局面に逢着いたしましたことは、御案内のとおりでございます。その場合、政府といたしましては、財政水準、行政水準はそれにもかかわらず維持してまいることがこの危機を突破する場合は望ましいという選択をいたしまして、中央、地方は、歳出はともかくいま約束いたしました歳出計画はそのまま遂行していたこと、歳入の方は、当面公債の増発を国会にお願いするということでまいったわけでございます。したがって、地方の方の歳入不足につきましては、交付税特会に対する借入金という形で交付税交付金の不足は置きかえるという措置を講ずる反面、地方債の消化につきましては資金運用部の資金の動員を初めといたしまして万全の措置を講じまして、ともかくこの危機を乗り越えてくることができたように思うわけでございます。今日中央が大体三〇%近い公債依存率でございますが、地方におきましてはそれが一五、六%ぐらいの公債依存率になっておると思うのでございます。これはいずれにいたしましてもこういうことは正常な状態でございませんので、中央、地方を通じまして五十年代前半にはこういう不正常な状態から脱却したいということで、自治省と力を合わせてその目標達成のためにそういう努力をいたしつつあるのがいまの現状でございます。
  293. 天野公義

    国務大臣天野公義君) お答え申し上げます。  地方行財政のなかなか苦しい情勢につきましては、ただいま大蔵大臣のお話しのとおりでございます。したがいまして、私どもの方といたしましても明年度の地方財政につきましてはいまのところ的確な見通しは立てられないわけでございますけれども、やはり巨額な財源不足を生ずるということは避けられないことであろうと推定をいたしております。したがいまして、地方団体が円滑に行財政の運営ができまするように、財源不足につきましては、必要と認める場合には地方交付税率の引き上げを含めて万全の措置を講じてまいりたいという考えでございます。なお、基本的な地方財政のあり方につきましては、現在地方制度調査会において御審議を願っているところでございまして、それらの意見等も伺いながら今後慎重に検討して対処してまいりたいと思っておる次第でございます。
  294. 森中守義

    森中守義君 自治省の来年度の地方交付税の概算の要求額は幾らですか。それからその根拠もひとつ教えてください。
  295. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) ただいま概算要求で要求をいたしております地方交付税交付金は、四兆四千億余りでございます。これはただいまのところ現行制度をもちまして仮に一応要求をしておくと、こういう体制をとってございまして、明年度の財政のあり方いかんによりましてはこれを修正してまたお願いを申し上げることもあると、このような態度でおります。
  296. 森中守義

    森中守義君 この地方交付税法六条の三項第二号、これはすでにもう有権解釈ができ上がっておる。ところが、実際としては、一割以上二年間以上にわたってずっと落ち込みっぱなしなんですね。この状況を踏まえた場合、一体、いま要求額が示されましたが、これに満たされない場合どうなるのか、非常に大きな問題だと思う。大蔵大臣、いまの要求額に対してはどういう見解をお持ちですか。
  297. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 六条三項でございますか、その精神は私もよく承知いたしておりまするし、したがって、ただいまの交付税率は、そのままの解釈から申しますならば、確かに再検討すべき時期にきておることは御指摘のとおりだと思うのであります。ただ、これは、その前提といたしまして、中央、地方の間の事務の配分でございますとか、税源の配分でございますとか、いろいろな問題を合わせて考えなければならぬということもその精神であろうと思うのでございます。したがって、そういうことをやる時期がいま適当かどうかという判断になりますと、私はやや意見を自治省と異にするわけでございまして、当面こういう流動的な時期はそういう中央、地方を通じての財政制度の根本的な改革には手を染めない、染めるには余り適当な時期でないのじゃないかという感じをいたしております。しかし、検討をしないというわがままは許されないわけでございますので、御要求がございますれば検討するにやぶさかではございませんが、考え方といたしましては慎重でありたいと考えております。
  298. 森中守義

    森中守義君 大臣、それが問題なんですよ。すでに確立された有権解釈を自治省と私は見解が違うんだということなので問題がこじれる。さっき地方財政は大変な危機だ、こう言われたけれども、これは有権解釈をきちっと実行することが大蔵省の仕事じゃないですか。ちなみに、自治大臣ですね、もう一回すでにもう確定している有権解釈をここで確認しておきたい。おっしゃってください。
  299. 天野公義

    国務大臣天野公義君) 二年間引き続き財源が不足するという場合には処置をとらなければならないということがございます。そういうことも頭に入れまして、また地方債等のいろいろな消化の問題も考えまして、十分な配慮のできるように検討してまいりたいと思っておる次第でございます。
  300. 森中守義

    森中守義君 自治大臣、この有権解釈を、つまり法律を守るのかどうなのか、ここに地方財政の危機を脱却し得るかどうかかかっているんですよ。頭に入れるではだめですよ。もう少し正確にしてください。
  301. 天野公義

    国務大臣天野公義君) 二年引き続き赤字であり、三年目も赤字であるという場合には検討するということになっておりますから、私どもといたしましては、その推移等いろいろ検討をし、地方債等も充実を図りながら地方財政の根本的な姿を見ながら、この問題において必要とあらば処理をしたい、こういうことでございます。
  302. 森中守義

    森中守義君 総理大臣、これはもう非常に大事な問題ですね。地方財政の危機、これはもう言われるのはいつも言われるけれども、法律を守るかどうかなんです。総理大臣、五月の十三日に地方行政委員会で何と答えていますか。こうおっしゃっているんですね。私の方の和田君の質問に対して、この法律を守りますかどうですか、こういう問いに対して、自治大臣の見解を尊重する、その方向で秋までに努力する、こうおっしゃっている。現行年度についてすらも固まっていないじゃないですか。どうされるんです。
  303. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) こういう国も地方も非常に財政のいろいろな困難な時期でございますが、やはり自治大臣の見解というものは尊重しなければならぬと思いますが、これはこういう時期でございますから、大蔵大臣と自治大臣とがよく相談をいたしまして地方財政の運用に支障なからしめるように私も努力をいたします。
  304. 森中守義

    森中守義君 いま申し上げたように、地方行政委員会でこう言われているんです。「自治大臣の立場を理解し、協力をいたす所存でございます。」と、こう言っている。つまり、法律を守ると言っているんですよ。だから、さっきから有権的解釈がすでに確立している。守るのはあたりまえじゃないですか。だから、概算の要求が幾らであろうと、すでにもうさっき申し上げたような経過ですから、守るかどうかはっきりしなさいよ。それでなければ食言ですよ、これは。
  305. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまも申したように、自治大臣の立場というものはわれわれは尊重をいたす考えでございます。ただ、まあしかしこういうときですから、自治大臣も大蔵大臣との間にそういう立場に立って、自治大臣がいま申したような責任を持っておるわけですから、そういう立場に立って大蔵大臣とよく協議をいたして、私もそういう見地から大いに自治大臣の立場を尊重してこの調整に私も努力をいたします。
  306. 森中守義

    森中守義君 これは、大蔵大臣、いま総理も協力すると、こうおっしゃっているんですが、そのとおりしますか、どうですか。決断だよ、これは。
  307. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 現に地方財政には大変御協力申し上げておるわけなんです。あなたも御承知のとおり、中央の方は三〇%もの国債依存で、まあ赤字にざっぷりつかっておるわけでございますが、まあ地方よりもこの依存率は高い、苦しい財政でございます中で、地方財政につきましては大蔵省としては精いっぱいの配慮をしてきておりますし、今後も配慮をしていかなければならぬと考えておるんです。ただ、中央とか地方とか申しますけれども、これはやはり一体としてこの危機を乗り切っていかなければならぬということを私は申し上げておるわけでございまして、地方を痛めて中央が楽をしようなんという気持ちは毛頭ないわけでございますが、同時に、自治大臣におかれましても、中央が苦しいときでございますから、そういう御配慮は当然あられることと私は拝察するわけでございますから、いま総理が言われたように、この問題はいずれにいたしましても両省の間で相互の理解と相互の信頼に根差した協力がなければできないことでございますから、森中さん御心配されておるようでございますけれども、われわれそんなけちくさい感じでやっているわけじゃございませんから、十分協力をいたしまして御期待に沿うように努力いたします。
  308. 森中守義

    森中守義君 これは、大蔵大臣ね、大蔵省のあなた以外の皆さんがやっぱり理解がないんですよ。いろんなことを言っております。それで、もうそういうことをここで述べる時間がありませんが、総理も両者の話を尊重するということじゃなくて、自治大臣に協力するという答弁もすでにあっているんだから、これはやっぱり最後はあなたが決断を下さなければだめですよ、固まりませんよ。それをちゃんともう五月に言っていらっしゃるんだから、もう一回重ねてここで答えてくださいよ。
  309. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 森中君ばかりでなしに地方自治体にも心配をかけないように私は調整を体して努力をいたして、そして御心配をかけないようにいたしたいと思います。
  310. 森中守義

    森中守義君 いやいや、言葉が足りない、それじゃ。法律を守るかどうかと聞いているでしょう。協力するということは守るということですよ。
  311. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは法律は当然守るという立場に立って調整をするわけです。
  312. 森中守義

    森中守義君 守るですね。守りますね。もう少し正確に。速記にいま載っておりません。
  313. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 法律は守らなければならぬわけですから、法律を守るという前提に立って調整をいたすことは事実でございます。
  314. 森中守義

    森中守義君 今回の災害がまことに気の毒な状況になったわけですが、在来、政府はこういう災害対策に対してどういう施策をとってこられたのか、最初にそれをお述べいただきたい。
  315. 天野光晴

    国務大臣天野光晴君) お答えいたします。  どういう対策と言われましても、これは災害の起きたその災害を反省してみて、二度と起きないようにという意味で相当努力はしておるわけでございますが、御承知のように、今度のような災害ですと、予想もしなかったわずかの日にちの間に千ミリから千八百ミリも降るというような、いままで予想していなかったような事態が起きたものですから、今度の場合は非常に予期せざる大きな災害になったというふうに考えております。これからの問題につきましては、御承知のように、五十年代前期経済計画というので公共事業費百兆というふうに一応縛られておりまして、治山治水の新五ヵ年計画を来年度改定いたしますが、これは問題になる数字ではありません。こういうことを私政府の一員で申し上げては恐縮なんですが、五兆五千億という枠内でございますが、とてもこれでは勝負になりませんので、この前期経済計画というものに抑えられない形で始末をしたいと考えております。
  316. 前川旦

    前川旦君 関連
  317. 山内一郎

    理事山内一郎君) 関連を許します。
  318. 前川旦

    前川旦君 関連をいただきましたが、関連は一回しかできませんので、どうか明確にお答えをいただきたいと思います。  総理国土庁長官、厚生大臣にお尋ねしますが、今回の台風十七号の災害でございますけれども、東日本の冷害と並びまして、西日本の台風十七号の災害、まことに惨たんたるものがありますが、これはテレビや写真等ではわかりません。現地を見てまさに暗たんたる思いがいたします。  そこで、総理にまずお尋ねしますが、河川、道路といったような公共土木施設の復旧、あるいは農地等の災害復旧、これについては現行の制度の中で不十分ではございますけれども国の補助の制度があります。国が補助することになっております。しかし、一般の個人の財産については、いまのところ損害を補償する制度が何一つとしてない。この個人災害の中でも、亡くなった方に対しましてはこれは百万円までの弔慰金の制度ができました。これにも長い期間がかかりましたけれども、議員立法で制定されました。しかし、家の全壊とか、家財を流された、全壊した、こういう方々に対しては貸し付け以外にはいまのところ何もないわけです。つまり、運が悪かったとあきらめるしかないんです。これは非常に気の毒な話なんですね。現地へ参りますと、そういう被災者から、あるいは関係自治体の関係の皆さん方から、その問題について非常に強い要望を受けました。何らかの個人財産の補償制度をつくってもらいたい、これは非常に強い要望です。私は今度の災害でこれが一番大きなテーマではないかと思いますが、私も現地を見て、何らかの補償制度を講じなきゃならぬという実に強い感じ、思いを抱きました。痛感をいたしました。  そこで、総理にお尋ねしますが、かつて政府も実は個人災害の補償の必要性を認めて、昭和四十五年から三年間総理府を中心にしまして検討したことがあるんです。しかし、いまは立ち消えになっていますが、総理は、こうした個人災害、家の全、半壊、財産の流失、個人災害に対しても補償してほしいという被災者の声に真剣に耳を傾けていただきたい。そして、そういう制度をつくるように努力をしていただきたい。その点についていかがでしょうか。これがまず総理です。  国土庁長官にお尋ねしますが、新しい制度をつくるとすれば、たとえば共済制度というやり方もあります。あるいはまた、現在地震については地震保険というのがすでに政府が再保険するということで地震災害についてはスタートしております。したがって、共済制度というやり方もありますし、地震に見られるように保険の再保険というやり方もあります。いろいろ考えられると思うんです、方法は、知恵を出せば。ですから、かつて検討したことがあるんですから、この際これを契機に真剣にこの制度をつくるというふうに努力をしていただけるかどうか、これが国土庁長官に対する質問です。  それから国土庁長官と厚生大臣、どちらでも結構ですけれども、制度をつくるにしても時間がかかります、残念ですけれども。今回の災害の被災者には間に合いません。そこで、いまとりあえずある災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付けに関する法律というのがありますね。亡くなった方に弔慰金を出しております。この法律を改正して、家屋等の全壊、流失に対しても見舞い金が出せるように今度の国会で法改正ができないものだろうかどうだろうか、その考えがないものだろうかどうか。たとえば、私は金額が適当であるかどうかわかりませんが、全壊家屋の被害が千六百三十八です。仮に百万円の見舞い金を出したとしても、十六億の財源で足りると思う。半壊を全部入れましても五十億ぐらいの財源で足りると思う。五十億は大きいですけれども、国全体の枠から言うとわずかです。そのことでどれくらい被災者が政治に対する信頼感を取り戻すか、私ははかり知れないと思います。そういう意味で、私は総理を初め関係閣僚の真剣な御答弁をお願いをいたします。  以上です。
  319. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前川君御指摘のように、政府も個人の災害の共済制度というものを研究をしたわけです。いろんな実施上の不都合があって、そして災害の救助法による応急な救援、あるいはまた災害弔慰金、いま御指摘になった弔慰金の支給、災害援護資金の貸し付けなどの各種の災害融資等の特別処置を講じたわけですね。私も個人災害に対して何とかしてもらいたいという非常に強い罹災者の声は聞くわけですが、どうもやっぱりこういう制度というものは、いろんな点で数年かかったわけですね。検討してこういう制度に変えたわけでございまして、研究はいたすにしてもやはりなかなか個人の災害に対して何らかの、いま言った制度以外に救済をするということの実施上のむずかしさもあることも御承知を願いたいわけでございます。まあ引き続き研究はいたしますけれども、そういう経緯のあることを踏まえて政府はいまのような措置をとっているんだということを御承知を願いたいわけでございます。
  320. 天野光晴

    国務大臣天野光晴君) お答えいたします。  いま百万円の弔慰金をお見舞い金を出すことにいたしましたのは、御承知のように、共済制度をやりたいという考え方といたしまして、私がちょうど衆議院の災害の小委員長をしておったときのこれは計画でございます。それで、昭和四十五年から三年間総理府に予算をとりましてこの調査をしたのですが、わずかばかりの金なんですが、地方自治団体がまとめが非常にむずかしくなりまして、結局賛成をするという県並びに市町村の数が非常に少なくなりまして、やむを得ず当時共済制度は一応打ち切りにしまして、異論はあったのですが、お見舞いとして五十万だけ出そうということで五十万を出して、それが去年百万にしたわけでございます。私は国民一人十円ずつ拠金をしてもらったらどうだろうという話をしました。私のこれは考え方でございました。ちょうど十億でございます。十億ですと、今度の災害ですと大体一人七百万ぐらいのお見舞い金が出せるわけでございます。そういう点でこれは議論した問題でございますが、これは、もう一回、総理がいま御答弁あったのですが、私の方で検討をするようにいたしたいと思います。  それと、もう一つの問題は、これはまあ人間の方は生命保険がありますから、戦争でない限り生命保険に入っていれば金はもらえるわけなんですが、これはなかなか全部が掛けるというわけにはいかない状態でございます。それと、物件の方は、総合保険はいま非常に高いのでございます。そういう関係でなかなか物件の保険に入るということは困難でございますので、地すべり等によって家ばかりではなくて屋敷も何も皆なくなってしまったというようなものに対する対策は、ある程度講じなければならないのではないかという考え方を、私これは個人でありますが、前から持っておる問題の一つでございます。これは災害の起きた現地を視察をされた方々はだれしもがそう思いつくはずでございますので、これは何らかの形で、できるものならば共済制度も私結構だと思うのですが、たとえば屋敷をつくるぐらいの金ぐらい、別にですね、屋敷がなくなってしまうのですから、そこにつくらなければどうにもなりませんから、別に屋敷をつくるぐらいの金ぐらいは出せるようなかっこうのものにでもできないか。これは災害のあるところは皆賛成なんですが、ちっともこのごろ災害の来ないところはどこも賛成しないわけでございまして、そういう観点から、国と県と市町村という段階でこれは義務的にひとつ何とかやれるような方法はないのかということでもう一度検討してみたいと思います。
  321. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 総理お答えしたとおりでございますが、災害弔慰金の支給、これは百万円と、災害援護資金の貸し付け、これは無利子で各地方団体に支給して災害者にお役に立たすわけでございます。この災害援護資金の原資をふやす、予備金等ですね、これはいま考えております。ただ、財産にまで補助金を出すということはいろいろ問題点がございますので、なお今後検討さしていただきたいと思います。
  322. 前川旦

    前川旦君 再質問
  323. 山内一郎

    理事山内一郎君) 関連ですから簡単に願います。
  324. 前川旦

    前川旦君 ごく簡単に。  天野国土庁長官、非常に前向きな答弁をいただきまして、私は大変結構だと思います。  それから厚生大臣も、厚生省という立場からではちょっと言いにくいかもわからないけれども、この法律そのものが議員立法でしたから、私どもはこれから議員立法というかっこうでいろいろ取り組んでまいりたいと思いますので、そのときには協力方をこれはお願いをしておきます。  それから総理、あなたの閣僚の国土庁長官があれほど前向きな姿勢を持っておられます。しかるに、あなたは、せんだってからこの災害の質問に対して、衆議院の本会議でも参議院の本会議でも同じような質問がされているのに、きわめてあなたの御答弁は冷めたいんです。私はやはり被災者の声に真剣に耳を傾けるというその姿勢をあなたに持っていただきたい。そうして、あなたが冷たければ、やはり関係閣僚の方もブレーキがかかるわけですよ。あなたががんばってやると言われれば、それは前に大きく進むのですから、それで私は再度総理のお考えとお気持ちを伺っておきます。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕
  325. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前川君に申しますが、冷たくはないんですよ。われわれいろいろたくさんな陳情を聞いたときに、この問題を非常に強く言い出される場合が多いわけです。ただ、いままでの経過を踏まえて言ったのですが、さらに研究をいたしますと、こう私は言っておるのですから。これはいますぐに私が何もまだ成案も得ていないのにやりますというようなことを言うことは、それは前川君は満足されても、そんな無責任なことは言えませんので、こういうことになったのだという経過を説明して、さらにこれは研究をいたしますということは、冷たいというふうにおとりにならぬ方がいいですね。できるだけのことをしたいという意思があればこそ研究をすると言うのですから、これはやはり私の真意を取り違えないようにお願いをしたい。
  326. 辻一彦

    ○辻一彦君 関連。  関連が続いて恐縮ですが、冷害対策について総理並びに農林大臣に二、三点伺いたいと思います。  東北、北海道の冷害は、昭和の初期以来の非常に大きなものである、五十年来とも言われております。社会党は、九月上旬から、東北に三班、北海道に最近一班、計四班の冷害調査団を派遣いたしまして、冷害の実態と現地農民の窮状についていろいろと調査をいたしまして伺いました。私も宮城県の栗駒町と福島県の喜多方市の山間部へ参って状況を見まして、まあ大臣も見られたように、穂の出ない水田、穂が出ても実が入らない、あるいはいもち病で穂首やもみが褐色に変わっている惨たんたる状況であると、こういうことが言えると思います。その中で、いま現地の農民は、昭和の初期ではもうどうにもしようがなくって子供を身売りにしたと、こういう体験もあるということを率直に言っておりました。ことしの冷害は、現地のデータを調べると、穂が出てから実が入るまでの気温は昭和八年の冷害よりも気温が低いというデータが出ておりますから、本当に大きな冷害であると思います。したがって、この中で一日も早く具体的な政府の方針と具体的な対策を出してほしい、これが現地農民の毎日持っている気持ちでないか。きょうの生活とそして来年の再生産に非常な不安を持っていると思います。  そこで、こういう状況の中で、まず第一に総理に、私は、いまもお話がありましたが、もっと温かい立場で冷害対策に積極的に早く取り組んでもらいたい、そういう意味の心構えといいますか、腹構えと決意を第一にお伺いいたしたい。  第二に、農林大臣に対しては、九月十五日の作況が十月一日にまとまっているはずでありますから、その作況指数は冷害対策を論議する上に非常に大事であるので、ここでひとつ御発表をお願いをいたしたい。  第二は、いま現地では非常に対策を早く待っておりますので、第一に激甚災の指定をいつやるのか、天災融資法の発動をいつやるのか、これはいろいろ言われておりますが、具体的な期日をひとつ明示していただきたい。  第三は、年内に共済金を支払うという答えは出ておりますが、もう唯一の所得源でありますから、これを一日も早く払うように、共済金の年内支払いをいつまで早く繰り上げることができるか。  第四には、現地では実が入りましても青米が多くて、規格外の米が非常に多いと、そういう意味で規格外の米を全部買い上げてくれと、政府に全量買い上げろと、こういう声が非常に強いのでありますが、全量買い上げることができるのかどうか。  最後に、これは宮城県の栗駒町では、農家の冷害に対する収入源は十七億、町だけで。この中で共済金が七億払われても十億は所得減になる。あすの生活を支えるためにどうしても仕事が必要である。こういう点から救農土木事業の必要が痛感をされますが、具体的にどの程度の予算措置をするのか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  327. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 辻君の御指摘のように、冷害対策というものは政府が非常に急がれておる問題でございますが、詳細は所管大臣が説明するとして、一つには天災融資法の発動を今月中にいたしたいと思っております。また、激甚災害法の発動はできれば来る八日の閣議にでもこれをかけたいと思っております。  自作農維持資金の融資枠の確保、農業共済金の年内支払い、規格外玄米の買い入れ措置等、また、被災地帯の雇用の確保、被災地帯の雇用の確保に係る補助事業の地方負担に対する地方債の充当、特別交付税による財源の措置、政府の考えておる冷害対策というものはこういうことを考えておるわけでございます。
  328. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 辻さんにお答えいたします。  作況の指数でございますが、これは明日閣議で報告いたしましてその後に公表いたします。でありますから、この順序がありますので、いまその内容については具体的に申し上げるわけにまいりませんが、大分ひどい落ち込みでございまして、昭和四十六年の冷害にも近いような指数であることを申し上げておきます。  それから次に、天災融資法の指定は発動はいつかということでございますが、これはどうしてもやはり被害の実態というものを把握しなければなりませんので、いま至急そのような努力をいたしておりますが、十一月には十分に指定できると考えております。  それから三番目の共済金の支払いでございますが、これは年内にできるなら精算まで支払いするように、いまあらゆる努力をしてこのようなことをいたしたいと考えております。——精算でなく本払いでございますが、本払いまで完了するようにいたしたいという方針でおります。  それから四番目の規格外の米の買い上げの問題でございます。これはいろいろな方法がございますが、そのいわゆる等外米ですね、こういうものの始末につきましては、農林省が全責任を持ってこれを始末いたしたいと考えております。たとえば、規格外品につきましては、できるならば有利な自主流通米でこれを処理したいと思いますし、それでもできないものは当然これは政府が買い上げます。また、食糧としてとうていこれが買い上げることのできないものにつきましても、あらゆる努力をして責任を持ってこれを十分に農家に有利に処理できるようにいたす方針でございます。  それから五番目の救農土木の問題でございますが、これは、おっしゃるとおり、各地からの希望が非常に多いのでございます。したがいまして、これはできるだけ早く実現をいたしたいと思いますが、やはりそれにはいろいろな実態を把握いたしませんと、その土木事業のやり方あるいは規模というものが決まりませんので、できるだけ早く実態を把握してこれに就労の機会を十分に与えたいと考えております。この場合には、大体前にも申し上げましたと思いますが、できるだけこれに支出される金額が大部分がそのような罹災農民のふところに入るような、できるだけ人手を多く使うような中規模あるいは小規模の土木事業、たとえば、農道をつくるとか、あるいは区画整理をするとか、あるいは林業関係の間伐とか枝おろしとか、そのような、できるだけ機械力を余り使わないで金そのものが農民のふところに入るような仕事を中心に進めてまいりたいと思います。この規模についてはまだはっきり具体的に申し上げられませんが、その費用は既定経費をもってこれに充てる方針でございますが、もちろん足りない部分は予備費を要求する方針でございます。
  329. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 辻君、持ち時間は過ぎておりますから、再質問は簡単に願います。
  330. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 先ほど、総理の御答弁中、十月中に天災融資法を発動するという御答弁があったようでございますが、十月というのは台風十七号についてでございます。この冷害の方は十一月になるようでございます。
  331. 辻一彦

    ○辻一彦君 簡単に申し上げます。  いま農林大臣の答弁で、青米が私はあると言うのに、それを自主流通米と、こう言っても、自主流通米はよい米だけが自主流通米に回りますから、青米等の規格外の米が自主流通米で処理をされる、こういうことは私はないと思うので、全量買い上げの方針でぜひ処理をしていただきたい。  それからどうも今度の冷害を見ると、銘柄米を奨励をすることによって寒さやあるいは病気に弱い品種が寒冷地につくられている恐れがありますが、寒冷地における品種の選択については再検討を要すると思われるが、この点はどうか。  第二は、冷害は地力と大変関係があると思います。東北の福島でも、案内をしてくれた農民の皆さんが、堆肥をよけい入れた田は冷害が少ないと、こう言っておりましたが、いま東北や北陸ではせっかくの稲わらを灰にして燃やしている、こういう状況がございますが、稲わらを水田に還元をするということは大変大事ですが、この具体的な方策はどうか。  第三点、最後ですが、冷害でかなりな地域が恐らく私は指数が九〇を割ると思います。そういう中で政府の買い上げ限度数量に達しないところがかなりできる。しかし、また一面ではこの限度数量を超えるところもあろうと思います。したがって、ことしは米の全量買い上げを政府はやるべきでないかと思いますが、この三点についてお伺いをいたしたいと思います。
  332. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) お答えいたします。  先ほどの規格外米ですね、あるいは等外米の買い上げについては自主流通米は不可能ではないかというお話でございましたが、これも努力すれば、そして一生懸命めんどうを見れば、これはできるものがございます。やはり自主流通米に移しました方が農家の手取りが多くなりますので、できるだけそのような方向で農協その他とも相談をいたしまして高く売れる方向に持っていきたいと思うのでございます。もちろんそれで売れないものは政府がこれを当然買い上げます。そういう処置をいたしたいと思います。  それから二番目の品種、高冷地に一体どのような品種がいいか、再検討の必要があるだろうということでございますが、おっしゃるとおりであります。これは以前からもそのような方向でいろいろな病虫害に強い品種とか寒さに強い品種をつくろうということで、御承知のように、東北にありますササシグレがササニシキにかわり、さらにそれがより寒冷に強いと言われるトヨニシキというふうにだんだん改良されてまいっているわけでございます。このように改良いたしておりますが、今度のような大きな寒冷が参りますと、やはりどうしても自然の力にはかないませんで、やはりこのような大きな災害になったのだと思います。しかし、それにしても今後はやっぱりどのような時代が来るにしてもこれに対処する心構えが必要でございます。そこで、おっしゃるとおり、いまでも努力いたしておりますが、今後とも、たとえば、病虫害に強いとか、寒さに強いとか、いろいろな新しい品種を考えまして、あるいはそれに対する何と申しますか、新しい営農の方法とか、そういうものを十分に検討いたしまして今後の災害に備えたいと思います。ただし、私は思うのですが、このような高冷地あるいは寒さの厳しいところにいままでのようにこれから米をつくっていくことはやはり不適当だと思います。やはりこれは長い間の高度経済成長の結果、だれでも現金収入が欲しいという農家の希望で、米を植えてはならない地域、あるいは米に不適当な地域にまで米が植えられるような状態になったのだと思います。このようなことをいつまでもほうっておきますと、いつまでも貧乏な農家が続くことになります。これが果たして正しいかどうか、いろいろと努力をいたしてそれに対処するような技術、そういうもの、品種は考えてまいりますが、これだけではだめでありますから、将来考えますと、このような地域にこそ政府は多額の補助金を出しても別な米にかわるそのような地域に適当するいわゆる農作物、あるいは農業経営をやらせる方がより親切ではなかろうかと考えるわけでございます。現在では米が余っているということで、いろいろとたとえば作付の転換を奨励しておりますが、これは一律によいたんぼにまでそれをやらせるようなものではなくて、できるならこのような作付転換はいまのような余り適当でない地域に対して行わせる、いわゆる適地適産という考えのもとにそのような方向でやらせることが今後妥当ではないかと考えておる次第でございます。  それから地力の低下がこのような一つの冷害の大きな原因になっているだろうとおっしゃること、私も同感でございます。いままでのあり方を見ますと、たんぼにいろいろと手当てをした、あるいは有機肥料を入れるとか深耕するとか、いろいろな手当をしたたんぼにつきましては、やはり冷害の程度が少ないようでございます。そういう意味で、おっしゃるとおり、地力を回復するためには、わらを中心とした、たとえば有機肥料ですね、を与えるようなそのような方向で進めることが大事だと考えております。  それから最後の、指数が非常に悪いだろうと。そのとおりでございます。まだ詳しいことはわかりませんが、恐らく私はことしは生産された米は全部農林省で買い上げたいと、こう考えております。そのためには県間のいろいろな制限を調整して、国全体としてこれを全部そのような方向に持っていきたいという方針でおるわけでございます。
  333. 森中守義

    森中守義君 いままでいろいろ問答がありましたが、大蔵大臣、こういう異例な災害に対して財源の措置は十分ですか。
  334. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 十分と、心得ております。
  335. 森中守義

    森中守義君 具体的に、どういう費目から出すんですか。
  336. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 予備費でもって、必要で十分な対応が可能であると考えております。
  337. 森中守義

    森中守義君 予備費の内容を言わなきゃだめですよ。予備費と言われても新しく創設されたものと在来のものと二つあります。その使用の方法、金額、いずれも示していただきたい。それだけでは答弁にならない。
  338. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま一般の予備費が三千億ございますし、公共事業等予備費が千五百億ございます。この四千五百億円の範囲内におきまして冷害対策、災害対策その他いま私どもが考えておりまする追加財政需要には十分対応できると考えております。
  339. 森中守義

    森中守義君 これはその冷害、災害の最終的な被害総額はまだ固まっていないでしょう。ずいぶん高額なものになりますよ。しかも、衆議院でも議論があったんですが、公共事業等と書いてありますね。この一千五百億はずばり使えますか。かなり財政法上これは問題がある。細かく詰めた計算ができているのですか。賄えるという計算はあるのですか。一千五百億、三千億全部使うのですか。これは問題ですよ、そんなお話は。
  340. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいままで政府に届きました災害被害の状況、それから今後予想されるものを経験律によって判断したものを加えまして今年度に必要とする国庫負担を考えてみますと、災害対策として約千八百億ぐらいが予想されるわけでございますが、既定の当年度災の経費が約二百億ございますので、予備費から充当しなければならぬものが約千六百億ぐらい予想いたしておるわけでございます。これで一応対応が可能であると私どもは考えております。
  341. 森中守義

    森中守義君 そういうお話ですが、たとえば自治体に法令外の起債などをどんどんやらして一層地方自治の財政を窮乏に追い込むようなことはなさらぬでしょうね。要求されたものはそういう起債などによらないで全部めんどうを見ますか。その約束があればいい。
  342. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 被害を受けた地方公共団体に対する財政対策でございますけれども、これは十二月の特別交付税の配分で自治省においてそれぞれ対策を考えられると思うのでございます。地方負担の地方債の消化につきましては大蔵省といたしましても十分協力してまいるつもりでございまして、これは当然のことでございますけれども、地方財政計画におきまして財政需要として計上し、今後の財政処理の対象になってまいりますことは申すまでもございません。
  343. 森中守義

    森中守義君 自治大臣、いま大蔵大臣は特交の中でかなりめんどうを見てくれると、こういうお話ですが、そういうやりくりはつくんですか。
  344. 天野公義

    国務大臣天野公義君) 災害関係の対策についてちょっと補足説明をさしていただきます。  被災団体に対しまして、当面の資金繰りを円滑にするため、去る十月二日に普通交付税の十一月定例交付額のうちから五百七十六億円を繰り上げ交付をいたしたところでございます。  被災地方公共団体が行う災害復旧事業につきましては、その地方負担額及び単独災害復旧事業につきまして地方債を充当することにより財源措置をする予定でございます。  なお、公共施設の被害状況、当該被災団体の財政事情等を勘案しながら、本年度の特別交付税のうち、十二月交付分の配分につきまして十分配慮することによって被災団体の財政運営に支障を来すことのないよう配慮いたします。  冷害対策にいたしましても、特別交付金等で財政援助をすることになっておりますので、目下のところは被災諸団体に対しまして御迷惑をかけることはないわけでございますし、この点につきましては大蔵省とも了解がついておると聞いております。
  345. 森中守義

    森中守義君 大蔵大臣、給与法をまだ提出していませんね。いずれ出されるでしょう。これには幾ら財源が必要です。そしていつ給与法を出されるのか。これは総務長官。——いやいや、財源から先に言ってください。給与財源、給与法の。
  346. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御案内のように、すでに御承認をいただきました予算の中に五%の人件費が見積もられてございます。それを除きまして、いま人事院勧告を勧告どおり実行いたしますと仮定いたしますならば、約四百億一般会計において必要であろうと考えております。
  347. 森中守義

    森中守義君 ではいつ給与法を出すんです、総務長官
  348. 西村尚治

    国務大臣(西村尚治君) 給与法の提出、できるだけ急がなきゃいかぬと思っていま関係方面と折衝しておるわけでありますけれども……
  349. 森中守義

    森中守義君 予定はいつ。
  350. 西村尚治

    国務大臣(西村尚治君) いま大蔵大臣がおっしゃいましたように、五%アップの財源を用意してありまするけれども、そのほか追加財源として相当の財源を必要といたしますが、そのめどがまだつきませんので、つき次第提出をすることにいたしたいと思います。鋭意努力をいたしたいと思います。
  351. 森中守義

    森中守義君 おおよそいつごろ。
  352. 西村尚治

    国務大臣(西村尚治君) おおよそいつごろと言われましても、ちょっとここで明答できませんけれども、鋭意給与関係閣僚会議を開いてもらいまして、そこで財源のめどがつき次第提出をいたすことにいたしたいと思います。
  353. 森中守義

    森中守義君 これはこの会期中でないと困るんですがね。大体いつごろかを言われないと。
  354. 西村尚治

    国務大臣(西村尚治君) もちろんこの会期中には提出をいたしまして、まあ仲裁裁定で三公社五現業の給与改定ができて一般職国家公務員だけが取り残されるなどということになっては大変でありますので、絶対そういうことのないように誠意をもって善処いたしたいと思います。御了承願いたいと思います。
  355. 森中守義

    森中守義君 通産大臣ちょっと伺いますが、年末の中小企業に対する融資のお考えはありますか。
  356. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この第三・四半期の政府系三機関の融資の枠は約九千四百億確保しております。しかし毎年若干の追加をしておりますので、もう少し様子を見まして、例年のごとく若干の追加があると思います。
  357. 森中守義

    森中守義君 これはもちろん在来の実績があるわけですがね。実際の窓口におけるその融資の状況というのは非常に問題があるようです。少なくとも克服すべき幾つかの問題があるようですが、その点は何かお考えになっていますか。
  358. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 特に今回は非常な大きな災害がございまして、中小企業関係もずいぶん被害を受けております。そこで激甚災の指定をしていただくことになっておりますが、これが実現いたしましたならばこの貸し出しの枠も広がりますし、それから期間もずっと長くなります。金利その他の条件も非常によくなりますので、この面で相当積極的に配慮ができると考えます。
  359. 森中守義

    森中守義君 簡単に実情言いますと、その申込者に貸し付けというのは大体数字的に合うんです。それ以外の申し込みに全然応じていない。つまり条件に満たないのはもう事前にチェックして貸していない、こういうことですよ。これでは広くあまねく中小零細企業の対象にならぬ。それをどうするかということを聞いている。
  360. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これは融資の相談に初めは乗るわけですね。そしていろいろ経営の指導などをしましてそれから融資の申し込みがあるというのが通例でございますから、申込件数とそれから貸出件数が大体合っておると、こういうことになっておるわけでございます。
  361. 森中守義

    森中守義君 だから、ふるい落とされるものはどうしてくれるかと聞いている。
  362. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 御案内のように、政府系の三機関におきましては、もうできるだけ広く融資対象を取り上げるようにしておりまして、もし貸し出しの対象として不適当であるというものがありましたならば、経営の指導等をしましてこういうふうにしなさいというふうないろいろ指導をしまして貸し出しをすると、そういうふうにしております。
  363. 森中守義

    森中守義君 貸し出しの条件を相当緩やかにする、拡大する、そういう指導をなさるということですね。条件を緩和するということですか。
  364. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 中小企業に対する基本的な融資の態度は、日本の産業の特色といたしまして中小企業のウエートが非常に大きいものがございまして、中小企業経営がうまくいきませんと日本の産業全体がうまくいかないと、こういうふうな観点に立ちまして、中小企業金融というものをできるだけ積極的に取り上げていくというのが基本的な方針でございますから、貸し出しの限度とか期限とかいろいろ決められましたこの条件はございますけれども、できるだけ積極的に中小企業金融に対処していくということでございます。  たとえば、最近のように中小企業関係の景気が思うように回復しないというふうな分野におきましては、たとえば返済猶予をするとか、あるいはまた貸し出しの担保等につきましても臨機応変の措置をとる等いろいろ積極的な対策を講じまして、中小企業全体に対しては積極的に金融対策を進めておるというのが実情でございます。
  365. 森中守義

    森中守義君 まあできるだけそういう要綱を早くまとめて実行してください。  いま一つは、大手スーパーあるいは百貨店が地方都市に大量に進出している。もう大変な混乱を起こしている。そこで百貨店法から新法に変わって、その後の、要するに第一条の目的の条項がかなり危ぶまれる状況にあるんですね。どういうようにお考えになっていますか。
  366. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いわゆる、いまのお話は大店法と称せられる法律のことでございますから、これが制定されましてから二年ばかりたっているわけでございますが、この法律は御案内のように日本の流通業の近代化、それから消費者の立場を保護していくということ、消費者の利益を図っていくということ、同時にあわせて地域地域の小売業との間に摩擦を起さないように調整をしていくということ、そういう目的を持ってこの法律ができておりますので、その法律の趣旨に沿いまして善処をしておるわけでございますが、御案内のように各地で若干のトラブルが発生をしております。一定限度以上は届け出制ということになっておりまして、これは商調協で相談の上でそれぞれ善処をしておりますし、また一定限度以下のものにつきましては、これは小売商業特別措置法というふうな法律等がございまして、また国会の決議等もございますので、それによって行政指導をしておると、こういうことでできるだけ地元とのトラブルの発生しませんように十分配慮して進めておりますけれども、なお各地におきまして若干の未解決の案件が残っておることは御承知のとおりでございます。
  367. 森中守義

    森中守義君 それが大臣なかなか問題でして、要するにいま言われるその商調協も裁量の限界がありますよ。それでその新法で言う、つまり変更命令あるいは変更勧告、こういったような措置がどのくらいいままでとられたのか。これからどのくらいそれを活用していかれるのか。かたがた予測される分野法の制定等でこういう問題の調整をより合理化するために補強されるかどうか、その辺の見解はどうでしょうか。
  368. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま仰せの勧告とか命令等の件数につきましては後で政府委員から答弁をいたしますが、この分野法の調整につきましてはこの大店法関係は……
  369. 森中守義

    森中守義君 いや、それを補強するかどうか。
  370. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 総合的に判断をいたしまして、中小企業全体の経営がうまくいきますように総合的にこれまでの既往の法律との調整を考えながら検討していきたいと考えております。
  371. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 大店法成立以来の改善勧告等の件数を御説明申し上げます。  本法の施行後現在までの間に行いました改善勧告は、店舗の新設にかかわりますものが三件、それから開店時刻それから休業日数にかかわりますものが二件、店舗面積に関係いたしますものが一件、合計六件でございます。それから命令を出しましたのは、営業届け出違反に対しまして営業停止を行いましたものが一件ございます。
  372. 森中守義

    森中守義君 それと、勧告の機能をこれからも発揮するかどうか。
  373. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども実はこれは法律に基づく件数でございますが、この法律の運用といたしましては、いずれにいたしましても地方の関係者の方々のいろんな意見の調整を、この法律に基づいて出てまいります届け出の前に実際に地元の問題として処理をするということで努めておりますので、どうしてもそこで調整がつかないようなもの、これにつきましていわば法律の手続に乗ってくるわけでございますが、もちろん必要な場合にはこの法律に基づきます改善勧告あるいは命令というような手続も必要に応じてやっていきたいと、こういうふうに考えております。
  374. 森中守義

    森中守義君 最後になりましたが、援護法の運用には過ちはありませんか。適正に行われておりますか、厚生大臣。
  375. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 戦傷病者戦没者等援護法の運用につきましては厚生省援護局において行っておるわけでございますが、何分戦後三十年を経過しておりますので、過去の事実が非常にあいまいになっておるということはございますが、適正を期して努力をいたしております。
  376. 森中守義

    森中守義君 ところがなかなか適正が期されていない。たとえば満蒙開拓団あるいは学徒動員、こういったようなものでたくさんの犠牲者がいて、ある者は認められる、ある者は却下される、こういう現状が非常に多いようですが、その実際がわかれば説明してください。
  377. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 最近の援護法によります申請の状況を申し上げますと、昭和五十年度で申請のございましたものは合計で三千七百八十三件でございます。で、繰り越し等の関係がございますので若干数字が動きますが、大ざっぱに申し上げまして、その中で可決をいたしておりますのは二千九百七十二件、おおむね八〇%弱でございます。  なお、最近の五カ年間の平均もほぼ同様になっております。
  378. 森中守義

    森中守義君 これは総理、運用が非常に適宜な解釈をされてだんだん狭まってきておるんですよ。参議院の社会労働委員会決議も行われておりますから、もう少し政府の統一解釈をきちんとして運用の拡大を図るようにしてほしいんですが、いかがでしょうか。
  379. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 援護法というものの趣旨にかんがみて、運用においてはできるだけ援護法の目的が達成できるように運用には気をつけてまいります。
  380. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 以上をもちまして森中守義君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  381. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 秦野章君。
  382. 秦野章

    秦野章君 最初に総理にお伺いしたいと思うんですが、去る七月七日のロッキード特別委員会で私は総理にお尋ねをいたしました。ロッキード事件の徹底解明は当然のことながら、それが一切の政治日程に優先するということはいかがなものであろうか。予算関連法案、国民に対する責任の上から言って、国会も、ロッキード委員会はともかく、大方遊んでいるんですから、そういう質問を申し上げて、総理はしかしながらロッキードが山場に差しかかるという段階ではなかなかむずかしいだろうというお答えでしたけれども、この点は私はいささか総理とその点見解が違っておったわけでございますが、ともかくそれから今日に至るまで、七月七日に私が質問して、とにかく今日まで時間がたって、ようやく関連三法が登場してきたわけでございます。この三つの法律がおくれたということで、かなり影響が出ているということも事実だと思うんですね。国政に停滞がなかったかといえば確かにあったと私は思う。  この点は、やっぱり国鉄や電電の予算なんかの問題を見れば、末端に相当の影響が出ているということは事実だと思うんです。そういう点で、もし今度たとえば国鉄関係の法案がうまくいかなかったということになったらどういうことになるのか。財政特例法はどうやらめどがついたような状況でございますけれども、国鉄が今度出ている法案がもし通らなかったら、あるいは電電関係の料金の法案が通らなかったら一体どういうことになるのか、その点について、ひとつその影響とどのような事態だという点について、担当大臣で結構ですから御説明願いたいと思います。
  383. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 国鉄の再建法がもし不成立に終わった場合の歳入の欠陥は運賃の改定分十カ月、これは六月一日実施の予定でございましたから十カ月分五千三百十二億円であります。そのほかに過去の債務のたな上げ分の助成金、これは利子の負担でありますが、これが二千四百四十一億円、合計七千七百五十三億円の歳入欠陥を生じます。で、現在もうすでにおくれてきておりまして、十一月一日に実施と考えましても、もうすでに二千六百億円くらいの運賃改定分の歳入欠陥が生じております。これは主として物件費、事業費等によって補ってまいってきておりますが、もうすでにこれも極限に達しております。今月の月を越すために、大変細かい話でございますが、新幹線の後ろのカバーの洗濯を毎日やっておったのを、二日に一回やるようなことまで工夫をしてやりくりをつけておる、こういう状態でございます。  当然の結果として、事業費、物件費を削減いたしました結果、関連業者、特に中小企業が多いわけでありますが、関連業者の間で倒産寸前、あるいは倒産に瀕するというような状態も生じ始めておりますし、そこに働いておる勤労者の方々に対しても深刻な影響を生じつつございます。したがって、一日も早く成立するように御協力をお願いを申し上げる次第でございます。
  384. 福田篤泰

    国務大臣福田篤泰君) お答えいたします。  もし、電報電話改定料金の法案が不成立の場合はどういう影響があるか、結論的に申しますと、電電公社の経営事業は決定的な打撃を受ける見通しでございます。  ただいま、五十一年度の増収分を一応六千億近く見込んだのでありますが、残念ながら前国会で成立を見ませんでしたので、現在のところ、一カ月約六百五十億の赤字が毎月累積されるという現状でございます。そのために、具体的には、まず増設加入電話の計画変更も余儀なくされておる。五十二年度末までに積滞の解消を計画いたしまして、これがこの赤字の累積のために、最初予定しました二百六十万個はすでに五十万個も削減をするという現状でございます。なおまた、自動化という、大衆のために非常に役立つ改良事業も大幅におくれつつあります。こうした事情を見ますると、私どもは、大衆サービスが公社としても最大の至上命令ですが、こうした電話の増設あるいは改良等々が大幅に事業削減をされる現状でございます。  さらにまた、関連企業につきましても、関係企業は約二千四百社、それに従業している者は七十五万でございますから、家族を入れますと二百万に近いというような膨大な数であります。これが大幅な削減、特に、今月に入りまして約一千億の契約解除というような深刻な事態がいま生じつつあります。こんな意味で、年末を控えましてこうした関連事業の倒産あるいは雇用不安定、こうした事情も起こりまして、きわめて甚大な打撃を与える、私ども大変心配しておるわけでございます。  こういうような実情から見まして、どうしてもこの国会で料金改定法案を諸般の事情を御理解いただきまして、どうしても成立せしめたいと念願をいたしておる次第でございますので、よろしく御協力をお願い申し上げたいと思います。
  385. 秦野章

    秦野章君 いまのお話にもありますけれども、すでに契約解除をしたとか、工事ストップだとかというようなことでいろいろな方面に影響が出ているわけですね。そういうことを踏まえて、本国会に臨んで、総理としてのこの法案の審議に対する決意をお伺いしたいと思います。
  386. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この二法案が国会で成立をいたしませんときには、国鉄というものは再建もできませんし、経営も正常な経営はできなくなる。電電も非常に大きな打撃を受けるわけですから、この事情は野党の立場にある方々もよく理解をされておるわけでございますし、また国対委員長会議においても、審議を尽くすというお約束も願っておるわけでございますから、私どもはぜひともこの国会で、賛否はともかくも成立をしていただくように国会の御協力を切に願うわけでございます。どうしてもこれは国会で成立を図らなければならぬ法案であるということでございます。
  387. 秦野章

    秦野章君 次に、衆参両院本会議にも、すでに共産党の宮本リンチ事件というものが論議をされてきたわけでございますが、私はまた多少角度を違えて、この問題の今日的な意味というものをどうしても理解をせにゃならぬと、政府もその点についてしっかりとした理解を持ってほしいと、こういう意味で二、三質問をしたいと思うのであります。  一九三三年——昭和八年の事件でごさいますが、当時、日本共産党にとっては、昭和八年といえば満洲事変が始まって二年たっておりますから、戦争反対、侵略戦争反対、そしていま一つは治安維持法ですね、この戦争反対と治安維持法、この二つの、共産党に言わせればこの二つの歯車の回転に毅然として立ち向かった輝ける反戦闘争ということになっておるわけです。そういう反戦闘争の中で宮本リンチ事件ができたと、こういうことになっているのですけれども、私どもはここでひとつ考えなくちゃならぬのは、確かに戦争反対、それからまた治安維持法反対という意味はわからぬではない。治安維持法も、私どもいま考えてみて、治安維持法が非常にいい法律であったかといえば、やっぱり悪法ではなかったのかという感じがする。戦争も、非常にいい戦争をやったのかといったら、そうでもなかったんじゃないかと、やはり反省の問題が歴史の中にあると思うのですね。しかし、戦争と治安維持法があって、これに反対するんだから、スパイがあったときにこれにリンチを加えて殺してしまうということが是認されるということは、全くこれは論理の必然がないだろうと思うのです。だから、この宮本リンチ事件の、リンチの結果人が死んだという事実は、私は、いままでの論議を聞いて、または裁判記録等を見て、これはまず間違いないと、雨が降る日は天気が悪いぐらいはっきりした話だと思うのですね。  問題は、そういう反戦闘争というものがどうして行われたのか、この点はやはりわれわれは考えなければならぬ。で、昭和八年の、この事件が起きる前の年の昭和七年にソ連から、つまり世界共産党——コミンテルンですね、これから指令が出ているわけですよ。これがいわゆる三二年テーゼと言って世界共産党から日本共産党の、これはコミンテルン日本支部でございます。日本共産党というのは向こうが本部でこっちが支部ですから、当時はそういう関係でもって指令が出ていた。その指令が問題なんです。その指令の中にはどういうことがあるかと言いますと、ソ連擁護のために闘うんだということですね、そして内乱を起こせと、これはもうはっきり書いてある。これは共産党のつくったこの規約に書いてあるのですから。内乱を起こせ、ソ連擁護のためだ——そういう激しい闘争ですね。  そういうことになると、これはまた政府の方としても、国家というものはときどき過ちを犯すことがありますけれども、国家というものは、そこまで、内乱を起こせ、ソ連のためにというようなことで激しい反戦運動が起きれば、これを取り締まるということもこれはしようがないだろう。国家というものは無法な挑戦を受ければ、これに対しては、やはりそういう者に対しては監獄へ入れるか、下手すれば死刑になってしまうみたいなこと、これはどこの国でも、どこの民族でも歴史なんですよ、これは。当然なことなんです。  私、そういう意味において治安維持法というものが、そこまで考えてくるとやはり必要な面もあったんじゃなかろうかというふうに考えが——少なくとも当時の状況はですよ。しかも天皇制の転覆をうたっているわけですから。当時の状況、いまの若い人はわかりませんけれども、当時の日本の状況の中で、天皇制を転覆し、ソ連擁護のために、そして後で内乱を起こせ、これがプロレタリア国際連帯主義の一つの基本的な当時の方針であったわけですね。私は、この三二年テーゼというものが、共産党にとってやはりこれは間違っていたんだと言っていればまた話は別なんです。共産党にとってはこの三二年テーゼというものは輝ける三二年テーゼなんです。これもいま売っている本に出ているわけです。輝ける三二年テーゼであり、この闘いというものは日本共産党の輝ける、光輝ある党の歴史なんだとこう言っているわけですね。  私は、この宮本リンチ事件の問題で、われわれが今日的問題としてどうしても考えておかなきゃなりませんのは、この宮本リンチ事件が起きて、共産党が言っている一つの解釈といいますか、弁明等見ても、これ全部治安維持法のせいにしているんです。治安維持法もそれはそんなにいい法律だったとも私も思わぬけれども、当時のことを考えればかなりの意味があったような感じもするし、それからまた、全部治安維持法のせいにするということは、それで宮本リンチ事件までも正当化するということは、いささか穏当を欠いた議論ではないかと思うんです。治安維持法がない、たとえばソ連では、スターリンは一千万処刑したと、こうソルジェニツィンも言っているし、サハロフなんかもっと相当の報告をしております。サハロフとかソルジェニツィンの報告を見てもはっきりしているんだけれども、治安維持法がなくて——ソ連の憲法だってやはり自由があって、いろいろ書いてあるんですよ、りっぱなことが、人権を尊重するとか。  だから、治安維持法があったからそういうことが起きたのか、治安維持法がなくたってスターリンはああいう、特に、たしか一九三七年か八年かそのころだったら、サハロフなんかの報告によれば、月に四万人を殺しているというような報告を書いています。これは治安維持法があるとかないとかということと関係ないんですよ。どういうことが問題かといえば、要するに唯物哲学というものを政治の体質に取り込んだときに、絶対主義的なやはり哲学になりますね。つまり政治が絶対主義になる。政治が絶対主義になれば、絶対主義的真理の体現者にとってはその前にあらわれた反対者はすべてこれ反逆者になるか、裏切り者になるか、スパイになるかというのは、これは論理ですよ。だから私は、共産党がスパイが憎いというのはよくわかる。これは非常に筋の通った話なんだ、なぜならば絶対的真理の体現者だから。  そういう絶対的真理の体現者であるということは、いま一つ問題なのは、これは全くみずからの過ちを認めないわけです。人間というものはだれでも過ちがあります。そしてわれわれは、後悔するとか、悔恨の気持ちなくしてはやはり話すこともできない過去というものを人間というものはだれも持っていると思う。人間の集まりの集団もまた同じでございます。日本は三千年の歴史を持っていますけれども、これすべて輝ける歴史じゃございません。やはり忌まわしい部分があることは事実であります。そのことを率直に認めることが人間的だと私は思う。  だから、そこへくると、絶対的に真理の体現者にとれば、要するに超人になるわけです。超人になる。一種の化け物と言っていいかもわからない。超人になる。神になる。生々しい人間なんてそんなものじゃない。もっと人間的でなくちゃ……。しくじったら、エラーをしたら、まいった、申しわけない、これが生身の人間であり生身の歴史でなくちゃならぬ、こう思うんですね。そこへいくと自民党なんかばかげて人間的で、生臭い人間的なところがあるんだけれども、私は人間的であるということはいいことだと思う。政党政治もそうでございます。政党も、政権を目的とする政党でございますからこれはやっぱり人間的でないと、これが絶対主義の体現者になるという段に至ると、私はこれはデモクラシー、議会制民主主義の中に果たしてこれが許容される本質的なものがあるであろうかという疑念が起きるわけでございます。議会制民主主義は大変寛容でありますけれども、しかし、みずからを否定する者にまで寛容であることはあり得ない。そういう点につきましてはやはり今日的問題として、この党の体質というか、考え方というか、こういうものに問題は今日的意味があるであろうと、こう一つは思うわけであります。  そこで、まあこれは伺っても当然なことなんだけれども、三二年テーゼというものが、いま申し上げましたような闘争目標を掲げて、ぱっきりと闘ってきた共産党の輝ける歴史というものは、政府としても当然確認をしておられると思いますね、確認を。とにかくそこのところ、ちょっと法務大臣に伺っておきたい。
  388. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 昭和七年、一九三二年のコミンテルンからの指令、これはその事実があったことを確認いたしておりますし、当時の共産党の綱領にもその点についての記録はあるわけですから、だれ一人疑う余地はありません。
  389. 秦野章

    秦野章君 政治路線の問題で、いわゆる共産主義の基本的な問題では、プロレタリア国際主義というものがあるわけですね。革命は社会主義の国際連帯なくしてはできないというのがマルクス・レーニン主義の基本であります。そういう問題が、コミンテルン時代は命令・服従の関係であった。いまはマルクス・レーニン主義の基本原則でやはり国際連帯なくして革命はできないということになっている。コミンテルンはなくなった。そうするとまるっきり変わったか。基本的なテーゼは同じなんですよね。ところが自主独立ということを言い出した。自主独立ということと矛盾するかというと、ここのところはやっぱり日本の安全保障を考える場合にも、どうしても考えておかなきゃならぬと思うのでございますけれども、国際連帯の中の、ということと矛盾しない自主独立だ。つまり国際連帯の一つのあり方として、自主独立で革命をやるということに対して連帯をしていこうと、物質的援助もしようと、こういうふうに書いてあるわけです。  だから、いま日本の共産党の目前の自主独立路線というものは、これは恐らく中ソ論争というものが一つあるということと、そしていま一つは、自民党の戦後の誘導でうまいことやって高度成長に持ってきた。いろいろひずみが出たとかなんとか言うけれども、やっぱり国民生活が上がって、高度成長というものの中で共産党の自主独立もあるんだろうと私は思うんですよ、これは私の解釈だけれども。だから、これはこういう環境の中であるだけであって、基本的な路線というものは、国際連帯というものがなくしてやっぱり共産主義というものは、共産党というものはあり得ないわけですね。だから、私はこれも、三二年テーゼというものは、コミンテルンがなくなったけれどもそれなら全部自主独立になったのか、いま共産党が言っているようになったのかと言ったら、そこはやつ。はり勘違いしちゃいけないんで、それはやっぱり国際共産主義の基本というものはちゃんと生きているんだと、自主独立はその中の一つの表現としてあるんだというふうに理解しなくちゃならぬと思うんですね。  私は総理、多少の懸念を持ちますのは——まあ共産党がそんなに簡単に政権をとるような日本じゃないと思いますけれども、しかし安全保障上懸念を持ちますのは、ヨーロッパの共産党というのは、ヨーロッパ軍事同盟、西欧軍事同盟ですね、NATO破棄なんということを言わないですよ、これは。日本の共産党は安保破棄を言っている。安保破棄も、ほかの党も言っているところがあるのだけれども、しかし強大な社会主義国家ソ連のようなものを隣にして、そして国際連帯があって、安保破棄というような姿というもので果たしてそう日本が安全というものにおれるであろうかということは、正直言ってやっぱり非常に問題ですね。自主独立路線といっても、ヨーロッパの共産党と日本の共産党はそこがちょっと違う。ここらもやっぱり頭に置いておかなければならぬ問題だと思うのですよ。現実の問題では中ソ論争というものもまだありますけれども、何といったって、科学的社会主義に言葉を変えようと、自主独立路線をとろうと、やっぱりその辺のところは、私は今日的な問題としてたまには三二年テーゼを思い出すのも悪くはないとこう思うのでございます。  これも一つの体質論といいますか、そういうことになろうと思いますが、一国の、日本という先進国、自由諸国の一員、日本の国家を経営する総理大臣のお立場として、私の見解に対してどういうふうにお考えになりますか、ちょっとひとつ所見を聞きたいと思います。
  390. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 秦野君の言われるように、マルクス・レーニン主義というのはプロレタリア独裁、歴史的に見ればこういうことであるわけですね。したがって、このことは議会制民主主義というものを認めていない、歴史的に見れば。最近日本共産党は議会制民主主義を認めるとこう言っておりますが、そのマルクス・レーニン主義の基本的なものは、やっぱりいま言われたように独裁的なものであるわけです。日本共産党は議会制民主主義を認めるとこう言っているのですが、それが本当かどうかということは、これからの日本共産党の言動を見て断定するよりほかにはないとこう私は思っておるところなんです。やはり一つの社会の秩序を維持していくためには、目的というもののために手段は正当化されない。やはりその目的を達成するために正当な手段によらなければいかぬ。そうでなければ社会の秩序は維持できない。そういう点で、ことに民主主義における一つの大きな原則は、やはり目的のために手段を選ばぬということは民主主義の敵であるということはしっかり頭に置かなければ、民主主義というものは維持できないですね。そういう意味において、従来歴史的なマルクス・レーニン主義というものが議会制民主主義と両立するとは思ってないのですが、日本共産党はこれを認めると言っておるのですから、それが本物かどうかは日本共産党の言動を見て断定するよりほかにはないとこう思うのです。これが私の基本的考えでございます。
  391. 秦野章

    秦野章君 共産党の言動——いまここに「日本共産党綱領問題文献集」という、これも出ている。こういうものに基づいて私は言っているので、そういう意味においては、これから様子を見て判断するというのじゃなくて、こういう文献に基づいて言っていることは、やっぱり議会制民主主義を利用して革命するという段階において、議会制民主主義のいろいろな手段というものを活用し利用するということは、これは私が共産党だってそうやりますから、これはもうあたりまえのことなんです。それはもうやっぱり議会主義は認めると一応言わなければしょうがない。しかし、本質的に共産党の議会主義、議会というものは何ぞやということになればまた別のものなんだということがここに書いてある。だから、そういう——私は治安問題なんかで言っているのじゃないですよ。治安問題もそれは——いま治安問題は多分ないでしょう。治安問題ということじゃなく、政党論というか、政治論としてこのことはやっぱりきちっと認識しておく必要があるのじゃないかとこう思うわけです。
  392. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) だから私は、秦野君の言うように、本来のものはそういうものである、歴史的に見ればね。最近そういうことを言っておるのですから、それが本物かどうかということは、これはやはり今後の言動を見て断定するよりほかにはない。いまそういう疑いがあるから、歴史的に見ればそういう疑いがあるから私は言っておるのです。その疑いがなければ、それは何も今後の言動を見てということは言う必要はないのですから。そういう歴史的に見れば御指摘のようなことがあるから、そういうことで、それが本当にそう考えておるかどうかということは、やはり今後の日本共産党の言動によるというふうに考えておるわけでございます。
  393. 玉置和郎

    玉置和郎君 関連。  総理にお聞きします。それから法務大臣にお聞きします。  いま総理が様子を見て判断をするという、秦野君がそれに対してやっぱりおかしいということでまた再質問をした。これはいみじくも九月二十九日の参議院本会議におけるいわゆる共産党のリンチ殺人事件についての答弁、これにやっぱり関連をしてくるのです。法務大臣が、(発言する者あり)黙って聞きなさい。私なんかいつもおとなしい。法務大臣が、「不法監禁致死罪、死体遺棄罪、銃砲火薬類所持取締法違反——あのリンチの現場に宮本氏はピストルを持っていましたからね。そういう一連の刑法犯は消えるものではないのです。これは政治犯でないからです。」、こういうふうに答弁されています。  私たちもいろいろな記録を読んでみまして、これが正しいと思います。それに対して、総理は、スパイ調査問題と呼んでいます、スパイ調査問題と。これは、戦前は、秦野君もいま言ったように、共産党は非合法です。それだけに共産党の実態というものを、仮にですよ、仮に当局に通報したとするならば、当時の法律のもとにおいてはほめられるべき国民の義務です、これは。だから、共産党の中におきましてはスパイ事件であっても、当時の国民としては当然のことなんです。あたりまえなことなんです。それを、不法監禁して、傷をつけて、殺して、そうして死体をその床の下に埋めて、さらに実弾を入れたピストルを持っておったということになれば、これは罪名は明明白々なんです。それに対してあなたがスパイ調査問題なんという赤旗の使っておる用語をテレビの前で言われるということについては、国民はどうも三木さんがおかしいというふうに疑問を抱くのはあたりまえなことなんです。党内の、党員の三分の二が反対するのはそこなんですよ。だから、これははっきり訂正してくださいよ。  それからもう一回聞きますけれども、これは、だから一体どちらが正しい呼称なのか。閣内で本件に対する基本的な見解の差異があるんじゃないかという、この問題についてあなたに聞きたい。  それから法務大臣、法務大臣はやはり本会議でこう言われた。戦後にも共産党によるこれに類する事件——いわゆるリンチ事件のことですね——が発生していることを承知しているとこう言われた。そうして資料を出すことも約束されました。それだけにこの際、ここで参議院の予算委員会におきまして、部内統制の問題についての事件、それから外部に対するスパイリンチ事件、共産党のですよ、戦後におけるそういう問題について、いつ、どこで、どういう事件が幾つあったのか、はっきりここで答えてもらいたい。  以上です。
  394. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ非常に意外な御発言で驚いたわけですが、私が議会制民主主義を守るためにわれわれが今日まで闘ってきた歴史は、全体主義に対して、全体主義的な物の考え方に反対するということである。私はそういういままでの歴史——私の歩んできた道はそういう歴史である。だから、全体主義というのは独裁的な思想というものに寛容であるはずはない、やはり目的のために手段を選ばないということは民主主義の敵である、こう言っておることは、あるいは玉置君よりも私がそういう思想に対して厳しいかもしれません、私の態度は。そういうことは全然ありません。ただその用語云々というものは、そういうことを質問する人が使っておったのでいわゆると言って申したんですが、これは法務省ではいわゆる宮本事件、まあ自民党では、総務会では共産党リンチ殺人事件と、こう呼んでおるようですが、その内容を稻葉法務大臣は違法監禁致死、死体遺棄、銃砲火薬所持法違反と、こう内容について言ったので、それが閣内において、こういうことに対する考え方というものに何ら閣内で不統一も何もございません。あるいは共産党リンチ殺人事件と呼ぶ方が——これ長いですからね、稻葉君のは。長いですから、そういうふうに呼ぶのが適当かもしれませんが、この呼び方についてはともかく、この問題に対する認識に閣内の不統一は何にもございません。
  395. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 私に対する御質問は、共産党のリンチ体質、暴力的部内統制事件というものが戦後にもあるとおまえは言うたが、そういう事例をここで示せと、こう言われますが、正確を期する意味において、記録に基づいて何月何日どこで、何々、こういう事件と、こういうことを刑事局長に答弁させます。
  396. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) ただいまお尋ねの部内統制、いわゆる共産党のスパイである、スパイをしたということによって暴行、不法監禁が行われた事件、あるいは党内の部内統制ということに関連してのいわゆる暴力事件というもので現在までわが法務省刑事局に報告のありましたものにつきましては調査中でございますが、現在までに調査して判明した事件ですでに有罪の判決が確定したものは四件ございます。  それは、一つは昭和二十七年の七月に神奈川県下で共産党に対してスパイだとして、スパイをしたということで発生した暴行、不法監禁、暴力行為等処罰に関する法律違反事件でございますし、その次も同じくスパイだとしてそれを査問追及して発生した同じく不法監禁、暴力行為等処罰に関する法律違反事件が兵庫県下で二十八年の七月に起こっております。それから同じくスパイの問題に関連いたしまして、昭和二十九年九月、神戸市内におきまして、同様不法監禁、暴力行為等処罰に関する法律違反事件があります。それから最後は、部内統制の問題で、反党分子ということで暴力事件の発生したのが昭和三十七年五月兵庫県下における監禁、致傷事件でございます。  以上四件でございます。
  397. 玉置和郎

    玉置和郎君 総理、お聞きになったように、戦後にこれだけの事件がある。それだけにあなたがいま、私は全体主義に対して非常に厳しいんだと、玉置君より厳しいんだと、こう言った。そうかもわからない。しかし、心にあるものは言葉にあらわれるんですよ、あなた。注意せにゃいかぬ、その点は。私は注意しておきます。国会議員として、あなたもこの際はっきり注意されたい。党員としても注意しておきたい。それだけに共産党の赤旗の使うようなスパイ調査問題なんという言葉を使ったらいきません。はっきりあなたは自由民主党の総裁なんだから、総務会で決定されたように、共産党のスパイ殺人事件ということをはっきり確認をなさること。それからもう一つ、いまのような問題があるからこそ、破防法の——スパイリンチ殺人事件、スパイじゃない、リンチ殺人事件。間違った。私も間違った。共産党のリンチ殺人事件。  それから破防法の適用がやっぱり適用団体になったんです、これは。破防法で適用する団体になったんですから、依然としてこの破防法の適用団体としてやっていくのかやっていかないのか、この辺の見解をはっきりさしてもらいたい。
  398. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまのように玉置君でも間違われることがあるぐらいですから。なかなかやっぱり長いですから。これから玉置君も間違いのないように御注意を願います。共産党のリンチ殺人事件、こういうふうに……。
  399. 冨田康次

    政府委員(冨田康次君) お答えいたします。  破防法の調査の対象団体になっております。
  400. 玉置和郎

    玉置和郎君 なっておるって、これからも使いますね。
  401. 冨田康次

    政府委員(冨田康次君) はい、さようでございます。
  402. 秦野章

    秦野章君 ちょっと念を入れるような形になりますけれども、何分にも共産党は輝ける歴史ということで、三二年テーゼも輝ける三二年テーゼという、大変な誇りに思っているわけですね。だから、私はそこで十分にこれは頭に置いておかなきゃいかぬと思うんだけれども、リンカーンのこの民主政治の言い方で、「人民の人民による人民のための政治」と。で、われわれが日本人として日本政治が悪くてもやっぱり日本人の手で直していこうと。人の手をかりて、よその国の力をかりりて政治を直そうというのはおかしいと思うんです。三二年テーゼなんかだったらやっぱり日本人のソ連のための政治になるんですね。日本人の日本人によるソ連のための政治ということになるんじゃなかろうか。そういう意味においてもっとわれわれは、日本の国がそんなに一〇〇%いいわけはないんだけれども、自分の手でやっぱり直していこうという、それが本当の自主独立だと。そういう意味においてはやはりこのマルクスの共産党宣言に始まる、万国の労働者が団結して、そして社会主義というものは国際連帯でやっていくんだという考え方に対しては、社会連帯という——自由諸国でも国際協調というのがありますけれども、ちょっとこのマルクス・レーニン主義のやっぱり連帯主義というものは際立って物すごく力強いものでございますので、この点は最後に念を入れて認識をしていただくことが必要ではなかろうか、こう思うわけであります。  まあ共産党の問題はその辺にして、その次に総理、地震の予知の問題ですね。昨年私も質問をしたわけなんですけれども、きょう東大の地球物理学の浅田教授にもお越しを願って、ちょっとこれ総理にもしっかり聞いていただきたいと思うんですがね。地震の予知という問題は、予報じゃなく——予知と予報とあるんですけれども、予知できればある場合には予報して警戒せにゃならぬ。これ、この役所のいま官庁組織の中では五つぐらいに分かれておりましてね。ばらばらにこれやっておるわけです。それぞれここ十年間努力をして、予知に関する研究というものも大変進んできました。進んできましたけれども、米国、中国、ソ連、日本、かなり進んではきたんだけれども、しかし問題は、一体予知というものが可能かどうかということについて官僚体制の方では非常に、まあそんなに言ってもだめだろうみたいな気分があるんです、私は各省を歩き回っていろいろ聞いてみると。ところが、いろいろ学者の意見を聞けば、予知できる地震が必ずあるんですよね。もう一番いい例がこの間の遼東半島の中国の地震なんです、これは。実に驚くべく、四、五年前から危険信号を出して、あと三時間で来るというのが——まあちょっと中国のこと、一〇〇%信用できるかどうかわからない点も多少ないではないが、しかし、浅田先生なんか向こうへ行って視察もしてこられましたから、私はかなり信憑力があると思う。三時間前にも予告をして、そこにいる外国人は逃げろと、そしてがんと来たんですよ。そういう予知というものが、総合的に予知の科学技術というものを集約し、あるいは、科学技術以外に、言うならば雑学みたいなものがあるかもしらぬ。学といかぬまでも、いろんなものもあるかもしらぬが、いろんな天変、いろんな現象というものをとらえてそして集約をして、予知というものを行政が集約する。予知というものを学者だけがやっているんじゃない。行政が集約する責任官庁が日本にないわけですよ。それから、予知がしっかりして、そして果たしてそれが確実の度が高ければ予報しなきゃいけませんね。地震の二次災害、三次災害を考えますと、これはちっとやそっとの金じゃ追っつかぬですね。関東大震災級のものが来たらもう大変なことになる。これは当時の日本の国情というものとは比較になりませんから、そういう意味において、まず私は浅田先生に、一体、当面地震の——駿河湾とか関東とかいろいろある。当面地震の危険な状況と言いますか、それをまず伺っておきたいと思う。
  403. 浅田敏

    参考人浅田敏君) 非常に荒っぽく言えば、日本はどこも地震の危険にさらされているわけでありますが、中でも重要と思われる所がございます。たとえばその一つは、東京の下町の真下で起こる地震でございまして、これは一八五五年に起こっております。このときは、一万人の人が死亡したと、こう言われております。この地震は小さい地震でありますけれども、真下で起こったためにこういうふうに被害が多いわけでございます。もう一つの地震は、やはり大事な地震は関東大地震でございます。これは非常に大きな地震で、したがって被害も非常に大きかったわけでありますが、関東大地震が起こりましてからずっと国土地理院で測量など繰り返しておりまして、その後、地面がどういうふうに変形を続けているかということがよくわかっておりますので、次の関東大地震まではいましばらく暇があるいうことが現在の学会の一致した考え方でございます。  しかしもう一つの、小さいけれども東京の真下で起こる地震の方は、これはもう全くわからないというのが正直な状態でございまして、何しろ東京の堆積層は四キロも厚さがございます。しかし、地震は下の岩の中で起こる現象でございますので、これを予知するとか、あるいはこれが近くに迫ったとかということを言うことは容易ではなかろうと考えております。簡単に言いますと、もっと大型の、たとえばこれから申し述べます東海地震などに比べても、余計な費用とか、エネルギーをつぎ込まなければ、この地震の予知はできない状況ではないかと考えております。  それに比べますと、いわゆる東海地震というのは非常にわかりやすい地震なんでございます。実は数年前からここが危ないのではないかと、日本の人にも、それから外国の人の論文にも書いてございますけれども、言われておりました。ただし、その数年前には何となくはっきりしないところが残っていたわけです。ところが、この二月、三月、四月、五月ごろ、いろいろ古文書が発見されまして、非常にはっきり納得がいったというとおかしいんですけれども、なるほど起こりそうだということが納得がいったのでございます。  たとえば地震が当分起こらないに決まっていると言っていい所がございます。たとえば関東地震はあと五十——百年かぐらいは起こらないであろう。それから昔起こりました南海地震も起こらないであろう。それから戦争中に起こりまして、日本の航空機工業を壊滅させたと言われる東南海地震も、まああと数十年は起こらないであろうと、一こういうふうに思ってよいのでありますけれども、問題の東海地震はこういうふうな理屈で考えられておるのでございます。それは、一八五四年に、その東南海地震の一代前の地震が起こりまして、その震源の広がり方は東南海地震より広かったわけです。その広かった部分は、駿河湾の中の方に入り込んで、沼津の方ぐらいまで、ずっと御前崎の西方からそういう地域が、差し引き一九四四年には地震になっていない所で残っている所でございますので、ここに東海地震が起こるのであろうと、ことしになってから非常にはっきり考えられるようになったわけです。  よく言われております、あした起こっても不思議はないという言われ方をしておりますけれども、これはある意味で正しい。つまり一九四四年に起こってしまってもよかったはずなのでありますけれども、起こらなかった。ですから、起こる能力は持っているわけでございます。しかし、そういうふうに言い切れるかと申しますと、現在の学問ではそういうことを言い切ることはできません。  もう一つ考え方は、次の東海地震ですね。九十年、まあ一九四四年から九十年ぐらいですから、あと六十年ぐらい残っておりますけれども、次の東海地震のときに一緒でなきゃ起こらないのではないか、そういう想像もございます。ですから、この関東地震とか南海地震とかは当分起こらないということを自信を持って言えるのですけれども、この地震についてはもうすぐ起こるかもしれないし、あるいはちょっと間があるかもしれないということが全くわからない状況であります。でありますから学会で気にされておるわけでございます。まあそのためにはあらゆる地球物理学的な観測を綿密にして様子を見ていくよりしようがありません。そうすれば、もしかしたらあと数年に迫っておるのか、あるいはまだ間があるのかということがわかるのではないかと考えております。  それから、たとえばそれとは別に、ある種の地殻変動連続観測とかあるいは地下水中のラドンを調べるとかいう方法で、もしかしたら大地震というものが起る数時間前に発生の予知ができるのではないか、それはそういうふうに考えております。で、現在地震の起こり得ると考えられるうちで、東海地方はもちろん、内陸にかなりの地震が起こる可能性はいっぱいあるのでございますけれども、東海地震は日本という国から見た場合に格段に重大性を持っている所だと思います。
  404. 秦野章

    秦野章君 先生、ちょっといま一遍恐れ入りますが……。  予知、まあ東海地震については、あす起こっても不思議はないと言われるほどの可能性ですからね、いつ、幾日というわけにはもちろんいかぬでしょうけれども、予知という学問、科学技術ですね。それから科学技術といってもこれは非常に広範なものなんですけれども、予知ということの可能性というものが、やれば相当できるということを遼東半島の地震なんかでは思うのですけれども、その点をいま一遍ちょっと技術的な問題を……。
  405. 浅田敏

    参考人浅田敏君) いま中国で、予知にある程度成功していることは間違いない事実なので、予知はできませんとはどうしても申し上げられないので、予知はできるというよりほかに答え方はないわけでございます。  じゃ日本で予知はどうかというふうに言われますと、たとえばテストフィールドというようなところを設定しまして、そこで起こる小さい地震を予知して見せるというようなことは、たとえばこれもいろいろな問題に関係しますけれども、数年あるいは五年ぐらいでできるのではないかと考えております。しかし、われわれにとっていま一番大事なことは、たとえば東海地震がすぐに迫っておるのか、それともいまちょっと暇があるのかということでございます。  で、結局予知というものは完成された術ではございませんので、絶えず研究というような立場で見ていかなければならない。それが非常な特徴です。  それからもう一つ、たとえば東海地震がこわいからといって巨大なお金をいきなりつぎ込んだからといって非常にその予知の術が早く進むかというと、これも非常にむずかしいという問題でございます。結局たとえばこれは何も東海地震だけではございません。一般に予知というものはたとえば測量の繰り返しですね。これはもう一番基本的なものなので、国土地理院にはぜひがんばってもらいたいといつも思っております。測量の繰り返し、理想的には五年に一度日本全部を繰り返すということでございます。このことは日本が一番世界で発達していることで、外国の人からも注目されておりますが、たとえばそのほか地震の起こり方を非常に詳しく調べるとか、これは気象庁や大学でよくやっておりますが、あるいは地震波の速度の変化を見る、非常に技術的にむずかしいことでございますが、それとか、地殻変動をいろいろな計器で連続的に観測する、これは地震の直前の兆候をつかまえるのに一番いい方法と考えられております。それから専用の深井戸を設け地球科学的な研究をするとか、あるいは地電流、そういうものをまじめに積み重ねていくことが一番大事だと思います。ただし、現状としてはあるものの設備は進んでおりますが、あるものはまだおくれている、多少でこぼこがあるのが現状でございます。  それからこういうものの長年の積み重ねが非常に大事で、たとえば非常に極端なことを言うのならば、いまから百年か百五十年か次に来る関東地震を、最初に数年の精度で、次に数時間の精度で的確に予知をするためには、いまからもう積み重ねていかないといけない。そういうものは一種の後世に対する財産のようなものだと思っております。
  406. 秦野章

    秦野章君 どうもありがとうございました。  総理、これは結局役所がとにかく五つも六つも分かれているんですよ。それで確かに余り巨額投資してもしようがないんですよ。それはあるんですけれども、ただ、前年比一五%程度でいってたんではいつまでたっても、たとえば私、答弁を待たなくて時間もなんですから言いますけれども、いま二十三億の五十一年度予知の予算がある、その前二十億で三億ふえたんですよ。考えてみると二十億、二十三億という金は、正直言って地震の二次災害、三次災害を考えれば問題じゃないわけです。大きなあれは要らぬけれども、前年度一五%増しみたいなことでなっていくと、各セクションが、そこがちょっとたとえば倍にしても三億、五億ということになっちまうと、隣がもらえなくなっちまうという、そういうことで、いまの仕組みでは予知に対する予算の問題というものもなかなかうまくいかない。  これは私は仕組みのせいだと思うんですよ。それでこの一番いい例は中国なんですけれども、一九六六年に周恩来が地震の問題を陣頭指揮でやった。これは地震局をつくったわけですね。そして、人員をそこに最初は二百五十人ぐらいでやって、後は何千と言われておるんですけれども、そういう要員を使って、これは中国のことですからある種の独裁的にやれたと思うんですけれども、やはりいま日本の体制では予知というものはできないということではなくて、できるといういまのお話なんです。これはあらゆる学者もそう言っているんですよ。予知はできるようになっていると。ところが行政としては、予知の行政というのはないんですよ、日本には。予知連絡会といって学者の連絡会みたいなのはあるんですけれども、行政の体制としては、予知というものをいろんな科学が集約してそこで責任を持ってやるという役所がない。気象庁に地震課というのはあるんです。地震課というのはあるけれども、これは気象庁が地震災害、それから気象庁の枠の中で知ったことについては気象庁は予報することも可能だと思いますけれども、しかし、予報という前に予知ということを責任体制、行政の責任体制としてきちっと組まないと、予知がないのに予報ができるわけないんですよね。  だから、私は二つの問題があって、予算の問題についてはやっぱり何かこう受け皿といいますかね、宇宙開発委員会みたいな、何といいますか、そういった一つのプロジェクトの受け皿みたいなものが要るんじゃなかろうか、ばらばらじゃなくて。そして計画も必要であろうと。  そういう予算の問題と、いま一つ政治の責任ですね、行政の責任。私はいまのような地震の、東海地震なんかがそこまである程度予測をされているような状況で、政治や行政のところに責任のところがないというのは、これは困ったものだと思うんですよ。それぞれの担当が、地理院は測量する、これは一生懸命やっている。科学技術庁の方は井戸を掘る。井戸もこれは正直言って早く掘った方がいいんです、これは。いま三つの計画で、一つできただけなんです。深井戸を掘って地震計を入れる。そういうことをもっとやった方がいいんだけれども、いずれにしても各役所がばらばらになって、それぞれの科学技術はやっておる。やっているけれど、その結果を集約して、全部を見ながら、これはやっぱり予知としてこの程度のものだなという判断をする役所がないわけですよ。で、予知としてある程度展望がいろいろ集約して決まったときに、それを地震で予報するということが出てくるわけですね。そういう意味において、どうしてもこれは役所の組織の問題、行政組織の問題をきちっとせにゃならぬ。私は、周恩来はその点、中国も地震国であったと思うんですけれども、やっぱり偉いと思ったんですけれども、どうも日本の政府の中にどなたかやっぱり周恩来になってもらわなにゃいかぬ。そうなればできるんですよ、これ。予知という行政責任を、いま予知連絡会といって学者の人たちか何か入って、役所も入っていますけれども、連絡会の会長が萩原先生という人がおられて、これは連絡会で適当にやっているわけですね。これは非常に問題なんで、体制を整備する。どうしてもこれはできたら総理に周恩来になってもらって行政の責任の部署をつくらにゃいかぬ。  これは東海地震のいまお話がありましたけれども、これは運輸省にはよくわかるけれども、ある一定の時間、たとえば十二時現在、新幹線が何本走っているか。たとえば小田原あたりから豊橋ぐらいまで、東京から名古屋まで、新幹線何本走っているかというんです。これは運輸省、国鉄にいえば二十本走っているんです。東京−名古屋なら三十五本走っているんですよ。一汽車に一千人乗っているんですよ。全速二百キロで走っているんですわな。だから、やっぱり予報で、地震というものはどうしても予知ということが可能だというのなら、予知という方向に金を使って、そして責任の役所をつくるというのは、私はもう時期が来ていると思うのですよ、これ。これをやらぬのは政治の怠慢だと私は思うんだけれども、ひとつ行政管理庁長官、いつも行政管理庁でもう役所をいじくるときはデッドロックへぶつかってどうにもならぬ。こういう問題については幸い男荒舩委員長もおられるので、ひとつ決断をしてもらいたい。で、総理のやっぱりこれは決断が要ると思うんですけれどもね。やっぱりこれをやらぬと日本は地震国だし、大変な災害を招きますので、本当は二次災害、三次災害に対する対策が大事なんです。大事だけれども、それはさしあたっては予知だとこう思いますので、総理と行管庁長官に明快なひとつ答弁をお願いしたいと思います。
  407. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは非常に都市生活の——都市、このころのように大都市化しておるときに、大震災というものはこれはもう戦慄すべき状態が考えられます。予知ということに対して私も関心を非常に持っておるわけですが、いまのときは秦野さん言われたように、常時地震の観測とかあるいは土地の隆起の観測とか、あるいは地下水の観測とかいうようなことが予知としてやられて、それは研究の対象になっております。最近、人工衛星によって一つの地形の変化というものを常時把握するということも研究されておるようですね。これなんかも、まだ一つのそれが地震の予知というものに対して非常な効果があるというところまではきていないけれども、一つ考え方だと思いますね、人工衛星で絶えず地形の変化を観測する。こういうことが予知できれば、この被害を食いとめることができるわけですから。非常にむつかしいものであることは間違いないですね。いまも、この問題は、いろいろな機関、いわゆる気象庁もあれば、国土地理院ですか、それがら防災の科学技術センター、あるいは国立大学とか、まあいろんな研究者というものの協力を得なきゃならぬわけですから、これを科学技術庁でまとめておるわけですが、しかし、確かに、この機構というものは、科学技術庁が中心になっておるわけで、いま御指摘のような連絡の推進会議もあるわけですけれども、しかし、もう少しこの問題は機構的にも何か取りまとめるということに対してもっとこう強力に一元的に取りまとめるような機関というものは研究する余地が私はあると思いますから、それは荒舩君の行政管理庁あるいは科学技術庁とも相談して、この問題は一つの検討の課題にいたします。
  408. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) 大変むつかしい問題でございまして、いま総理が御答弁になったとおりでございます。私ども素人ながらまあ秦野さんがきょう質問するということでいろいろ調べてまいりました。関係している役所が大変多い。まず気象庁、それから建設省のうちの国土地理院ですね、それから科学技術庁の国立防災科学研究所、それから通産省の地質調査所、それから海上保安庁の水路部、それから文部省の緯度観測所、それから各国立大学にみんな研究部門があります。科学技術庁がこれを総合調整をしている形になっております。が、しかし、これは、もし地震が何時間前でもあるいは何日か前にでも予知することができれば大変な人命が助かると思うのでございます。たとえば東京大震災のような問題が起こったとき、東京の道路というものはもう自動車でいっぱいになっておる。そして、みんなガソリンをしょっている。街の角々にはどこも全部ガソリンスタンドがある。そうして、港々には油のタンクがいっぱいあります。また、大都市の周辺には石油コンビナートがある。これはもう地震が起こったら大変な問題だと思っております。それこそ本当に空襲が連続して来たよりももっと大きい被害が起こるのじゃないかと、こういう心配をしておりまして、まあいろいろ調査をしてみましたところが、最近中国が非常に徹底した研究がしてあるようでございますが、中国も、昨年の二月に起こりました遼寧省の地域でマグニチュード七・三、これは予知がはっきりできまして、ほとんど被害が少なくて済んだようでございますが、しかし、ことし起こった中国北東部、まあ唐山市というんですか、ここでは死傷者が約八十万人に達したということ。それからことしになりましてもグアテマラのマグニチュード七・五、二万人死者が出ている。あるいは北イタリア、これは約千人の死者が出ている。また、フィリピンでは五千人以上の死者が出ている。こういうことでありまして、大変むつかしい問題ではありますが、科学技術庁、また関係省とよく連絡をとりまして、そうして一日も早くこういういわゆる司令部みたいなものをつくりまして、そこで完全に指令が流せるというようなことも必要じゃないかと思うし、また、考えようでは、余り研究が進んでおらないのに変な予知をいたしますと、いたずらに国民に不安を与えるということがあります。したがいまして、これは総理の決断というようなことになるし、われわれも総理の御意向に沿うて、ひとつ一日も早く御期待に沿うような、しかも、こういう各国に起こる被害のようなそういう問題を繰り返さないように、隣の中国でかなり進んだ研究が行き届いておりますから、そういうことを参考にいたしまして御期待に沿うように努力したいと考えております。
  409. 秦野章

    秦野章君 いまのお話じゃ、とてもできそうもなさそうなお話で、荒舩長官もいつの間にやら官僚的な発言になったのは、はなはだ残念であります。いま一遍考えてほしいんですよ。  中国は要するに社会主義の国で、それで、哲学、物の考え方が科学と政治というものを別にしません。科学も政治なんですよ。日本は違うんです。科学と政治は別なんです。だけれども、行政というものは科学の上にきちっと乗っからぬと、科学者がただやっていればいいというもんじゃなくて、それを行政という責任に集約しなければ物事はうまくいかないんですよ。また、国家の責任、政治の責任体制に入ってきていないわけですよ、連絡会議であったんではね。だから、私は、どうしても、この予知の問題は、それはグァテマラとかフィリピンのように地震の科学なんかほとんどないようなところを例に出して、当たらないじゃないか、当たらないじゃないかと言ったって、それはそういう答弁をつくった人がおかしいんだよ。そんなの地震科学はないんだから。日本とソ連と中国とアメリカなんですから。この四つは地震の科学がかなり進んで、特に中国は、周恩来——政治がリードしたというところにおもしろいところがあるんですよ。政治がリードしたと。そういう行政責任というものを政府が持ったと。科学院の中に地震局はあるけれども、これはまさに政治なんですよ。学者が東大で研究所でやっていればいいというだけじゃないんですよ。それを集約して政治責任、行政責任に持ってこない限り、この問題というものは政府は無責任過ぎると私は思うんだよ。だって、どでかい被害が起きるんじゃないの。それと、予知と予報と一緒にしてもらっちゃ困りますよ、いまの答弁では。予知をしたからといって、いきなり予報したら、それは予知の程度いかんによっては予報せにやならぬものもあるが、すべて予知したものをロッキードの公表じゃないけれども公表するわけじゃない。これはやつ。はり社会的反響その他を考えてぎりぎりのところの判断をする。これは科学の判断じゃない、行政の判断だ。この程度なら予報して逃げてもらおうと、こういう問題なんですよ。だから、行政の責任組織、これはどうしてもつくらにゃだめだというのが私の意見なんだ。これは私は間違いないと思うのだけれども。
  410. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) 秦野さん、あなたの考えとちっとも違いありません。本当に重要な問題であり、大変なことだと思う。各学者がたくさんおります。きょうの先生のような大家がたくさんおりますが、ばらばらではだめなんです。ぴたっとやれるようなことを考えなけりゃいけません。しかし、これは私のところの行政管理庁だけで考えたんではどうにもならないんです。そこで、いいひな形といいますか、見本といいますか、中国ではともかくあの地震が予知されておるんです。ああいうことを考えて、できないはずはないと思うのです。それは、これを予知する命令系統と言っては少しおかしいんですが、そのことをできるような機構をつくらなくちゃならないと、こう思っております。しかし、よく御意見はわかりますし、あなたと意見が違っているわけじゃございません。しかし、行政管理庁という一つの役所ですから、これ以上申し上げると越権で、また放言になりますから、そう申し上げない。しかし、よく意見はわかっておりますから、全力を挙げて努力することにいたします。
  411. 秦野章

    秦野章君 いや、一歩も前進していませんよ。技術庁長官は。
  412. 前田正男

    国務大臣(前田正男君) いまのお話は、学会の測地学審議会と、それが中心になりました地震予知連絡会という学者の方のグループが推進しておられまして、それを受けまして総理府に地震予知研究推進連絡会議という行政機関の会議があるわけです。しかし、いまお話しのように、その二つの機関が並行してやっておりますから、これをもっと強力なものにするというためには、一つ考え方としては、御承知のとおり、原子力とか宇宙開発とかそういうものの場合は、学者の意見と行政官庁の意見をまとめていくために、総理府に原子力委員会とか宇宙開発委員会というものをつくりまして、これは科学技術庁は実は文部省関係の仕事はできませんので、その事務は科学技術庁と文部省が両方受け持って原子力なんかもやっておるわけなんです。だから、もしいまのお話しのような強力に推進する必要があれば、原子力委員会、宇宙開発委員会のようなやり方でいけば、現在の日本の行政機構には合っていくのではないか。新しく役所をつくらなくともやっていけるのじゃないかと思いますけれども、しかし、そういう機関をつくらなきゃならぬ、それが非常に強力に推進するもとになるのじゃないかと、先ほどちょっと先生から触れておられましたそういう受け皿をつくる必要はあるじゃないかということは、具体的に申し上げるとそういうことでございます。  それから、先ほどのお話の中に、予算が確かに五十一年度はふえ方が少なかったのでございますけれども、幸い第三次地震予知計画というものを連絡会議の学者の先生方が非常に熱心に推進したものを出していただきましたおかげで、それをもとにいたしまして、実は五十一年度は二十三億でありましたのが、五十二年度は約三十五億円という、十二億円、予算の額にいたしまして約五一%増の概算要求を各省みんな取りまとめて出しておるわけです。これはぜひひとつ先生の御意見もありますとおり、われわれ努力してこの予算は五一%、少なくとも五割ぐらいはふえると、そういう思い切った予算を五十二年度にはひとつ実現できるようにさらに努力を続けたい、こう考えておるわけでございます。
  413. 秦野章

    秦野章君 いまの科学技術庁長官の二十三億が三十五億になるという、そのふえたうち十億というのは御前崎へ海底観測所をつくるのでみんな飛んでしまうんですよ。しかも、海底観測所は一つじゃ足りないと言っている、地震観測のためには。やっぱり、地理院の観測にしても測量にしても、五年に一遍というのを三年に一遍にするとか、深井戸をいま掘ると言っているのを三つを五つにするとか、それが全部できていないんですよ、この概算要求にも。私は予算の問題ではいま長官のおっしゃった受け皿みたいなものをぜひ考えていただきたいと思いますけれども、しつこいようで申しわけないけれども、行政の責任をとる、予知がしくじったら大臣もやめるという、そのくらいのやっぱり責任のある組織をつくらないで、連絡会とか審議会なんて、あれは隠れみのですよ。あんなの何ぼつくったってだめですよ。政治責任ないもの。そういう点について、これはぜひ総理ね、検討するというようなことじゃなくて、本当にやってもらう。大したことないですよ、これは。本当に決断してもらえば。ぜひひとついま一遍総理決意のほどを、これは荒舩さんも汽車をとめる元気でやってもらわにゃ。これは国家のためでっせ。一つ大きな被害が来たときには、これは日本の国力に対する重大な打撃ですよ、これは。GNPもがたっと落ちますよ。人間は物すごく死ぬし。そのことを考えれば、予知というものを行政の責任のベースにするというようなことは、あたりまえのことだと私は思う。もう一遍ひとつ。
  414. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 基礎であるものは研究だと思いますね、基礎は。それを、研究だけでばらばらにやっては、いまばらばらではない、科学技術庁で総合しておりますが、一層これを行政のベースに乗せてこないとこれは動いてこないですから、言われることはよくわかります。そういう仕組みをひとつ考えてみたいと思います。
  415. 八木一郎

    委員長八木一郎君) この際、ちょっと申し上げます。  浅田参考人に申し上げます。本日は大変お忙しい中を本委員会のために御出席いただきまして、まことにありがとうございました。御随意に御退席のほどをお願いいたします。
  416. 秦野章

    秦野章君 次に、地震のことを申し上げましたが、ついでに災害の問題で、今度未曽有の災害で、政府もいち早く対策本部をつくって、それぞれ各省とも大変力を入れてやっていただいておるわけでございますけれども、きょうもいろいろ質疑が出ましたが、災害問題のやはり基本は、出た災害に対処する、同時に、その災害はこういう行政とか政治が手を打っていたならば起きなかったであろうという問題が必ずあるわけですね。そういうような角度を踏まえて今度の災害から学ぶというものを、悪循環の問題じゃなくて、絶えずやっぱりそういう教訓を学ぶというような角度で対策本部の一つの重点がなければならぬと、こう思うのですけれども、そこらを含めて今度の災害に対処される総理決意を、これは万全を期してもらう意味においてひとつ最初に伺っておきます。
  417. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 秦野君の言われるように、私は、何か現象面、いろいろなことが起こるでしょう。この現象面に対する応急措置だけでは、やはり災害の防止というものに対してはできる限界がありますね。やはり問題の基本に立ち返って考えてみるということが、災害ばかりでなしに、日本政治全般に必要だと思うですね。それはやはり治山治水ということじゃないでしょうかね、見てみて。治山治水というものが、どうしてもこれはじみな仕事でもありますし、華やかな道路とかいろいろなことがやっぱり行政としては、まあその必要もございますし、力を入れることになるのですが、どうしても基本はと言えば、治山治水、河川の改修とか砂防とか、いろいろな根本にさかのぼって考えてみることが必要なんで、来年度の五カ年計画を治山治水に関して策定しておるわけですが、これに対しては、従来治山治水というものは必ずしも優先順位が上の方じゃなかったわけです。これはもっとやっぱり強化して考えなければいけない。  それからまた、開発というものに対して、いろいろな大きな開発というものには環境のアセスメントというものがやられますが、しかし、大きなプロジェクトばかりじゃない開発があるわけです。そういうのは案外やっぱり被害を受ける場合がありますから、開発に対しての環境との一つの影響に対しての配慮というのは、これは地方自治体の協力なども得て、こういう点でこういうものをこう未然に防ぐということに対しては、今後起こってきた現象もこれは応急的な措置をとらなきやならぬが、もう少しその根本にさかのぼって考えるという態度が非常に必要であるということが災害に対するわれわれのいま一つの反省として考えられておる点でございます。
  418. 坂野重信

    坂野重信君 関連。  総理大臣のどうも災害に対するお話を聞いておりますと、本会議でもそうでしたが、この委員会でもどうも声が小さいんです。ロッキードも大事ですが、災害対策という非常に重要な問題で、もう少し自信を持って積極的にお願いをいたしたい。  いずれまた、総理大臣には後で総括的に御答弁願いたいと思いますが、私は自由民主党の災害視察団の一員として広島、岡山、鳥取各県を視察してまいりました。本当に今次災害の激しさというものを身をもって私ははだに感じたわけでございます。私は広島県の尾道に行きましたときに、本当にこの崩土の中に一瞬にして人家もろとも七名の方が土中に没した。その跡に、雨のそぼ降る中で一輪の生花が雨に打たれておった。その姿を見て私は本当に暗たんたる気持ちがしたわけでございます。今回は地方財政が非常に厳しい中でこういう災害が起きましたから、各県とも各地方団体は非常に救済の手を待望しておるわけでございまして、もうすでに災害対策につきましてはそれぞれ話がありましたが、各省大臣にひとつ簡単に、従来とっておった行政措置、これは行政措置をとるのはあたりまえでございますから、どういう点を一歩前進して各省ともとっているかということをひとつ御答弁願いたいと思います。  まず、建設、農林両大臣から、災害の査定の方針と状況。  国土庁長官から、各県、各市町村に対する激甚災指定の見通し。  自治大臣から、一般交付税の繰り上げ交付、あるいは特別交付税の早期内示、地方債の問題。  農林大臣から、農林関係の被災者に対する措置。  通産大臣から、中小企業被災者に対するきめ細かい手当て。  厚生大臣から、個人災害に対する手当てをどうしているか。  さらに、国土庁長官から、公共災害、個人災害両面にわたって、従来の行政措置から一歩前進して、どういうような対策を、従来の制度上から言っていろいろな不十分な点があるということを指摘されておりますので、たとえ個人災害にいたしましても、昨年とおっしゃいましたが、これは一昨年でございます。一昨年百万円というような限度が決められましたけれども、きょう見えておる佐藤隆さんも一生懸命にやって議員立法ができたわけでございます。二年にしてなお不十分じゃないかという議論が非常に地元から多いわけでございます。これらを含めて、ひとつ国土庁が中心になって早急に改善すべき点というものをまとめて整理して、そうして改善措置というものをできるだけ早急にとって、国会に報告をしていただきたい。そういう決意があるかどうか。  建設大臣は、今回の災害の経験にかんがみまして、従来の治水事業だけでは不十分だと。土地利用であるとかあるいは建築制限というような問題も含めて総合的な対策をこの際やるべき必要があるのじゃないかと考えるわけでございますけれども、そのためには、ひとつ全国的に点検をして、住民にある程度不安があるかもしれませんけれども、各地域ごとにこの地域というものはこれだけの災害に対する安全度しかないのだということをこの際一つの行政的な判断に基づいて思い切ったそういう措置をとる考えがあるかどうかということをお聞きしたいわけでございます。  そこで、大蔵大臣と副総理予算問題について心配でございますからお聞きしたいわけでございます。先ほども話が出ましたけれども、五十一年度の歳出予算の中で、一般の予備費三千億、それ以外に公共事業等予備費千五百億というものがございますが、いろいろ議論がありますけれども、仮にこの両方を災害復旧費に充当いたしますというと、先ほど千六百億要るんだというようなことを大蔵大臣がおっしゃっていましたが、そうすると、恐らく残りが四千五百億全部使っても二百億ないし三百億しか残らぬじゃないかというぐあいに見込まれるわけでございます。総理大臣はまた本会議において本年度は補正予算考えていないということを答弁されました。しかし、災害に関連してやらなければならない緊急な仕事がたくさんあるわけです。河川の激特であるとか、がけ崩れ対策であるとか、あるいは、先般私ども見てまいりましたが、無数の危険に瀕した老朽ため池がございます。一日もほうっておけない。こういうものの手当てをやるだけでも、とても二百億や三百億じゃ足らぬというわけでございます。しかも、公共事業の千五百億についてはいろいろ解釈上問題があるわけでございまして、私はこの千五百億というのは、実は景気対策として一般公共投資にその使途というものがあるというぐあいに期待しておりました。これは私だけじゃないと思います。産業、経済界、もちろん地方公共団体からも強い要望があるわけでございまして、もうすでに配分を当て込んでいるわけです。これは大蔵大臣も御承知かと思います。そして、すでに公共事業は上半期でもって七〇%の発注を終わっております。残りは三〇%しかないわけです。ところが、どうでしょう、果たして、景気の上昇ムードとは言っておりますけれども、これは副総理、本当に各企業間のばらつきというものはいまないでしょうか。このまま七〇%の公共事業でもって、あとをやらないで、一般公共事業というものをあと残り三〇%ということになってまいりますと、私はいろいろ世間に先行きの不安、あるいは場合によっては国民不信感というものが出てくるおそれがあるということを心配しているわけでございます。そういう意味におきまして、ひとつ補正予算というものを編成しなくても本当にやっていけるんだと、しかも公共事業についても心配ないと、景気の先行きも心配ないのだと、そしてまたばらつきも心配ないのだということに本当に自信がおありかどうか、この辺をひとつ総理と大蔵大臣にお願いいたしたいに思います。  ひとまずこれで私の質問を終わりまして、また場合によっては再度質問を申し上げます。
  419. 天野光晴

    国務大臣天野光晴君) お答え申し上げます。  激甚災害の指定ですが、これは八日の閣議で決定する予定でございます。間違いなくできると思います。  それから公共災害、個人災害両面にわたってというので今後これに対して整理改善をする意思はないかということでございますが、佐藤隆先生に去年——あれはおととしか、やっていただいた議員立法でございます。それですから、こういうことを申し上げては余り失礼ですけれども、私の経験から言えば、やっぱり私のところの災害は手薄で、ほんのわずかきり人間がおりません。それですから、この全般にわたっての問題を締めくくる策が非常に困難だと思います。そこで、できることなら災害対策特別委員会の中に例年のように小委員会でもつくっていただいて、この大災害を契機として議会側と政府側と両方一体となってひとつ新しい行き方をつくり上げるというようなかっこうにしていただきたいと思うのでございます。私の方で協力はやぶさかでございませんから、全力を挙げてやりますから、どうぞよろしくひとつお願いをいたします。
  420. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 台風十七号による農林省関係の被害は、施設関係につきましては、九月二十七日現在の県の報告をまとめますと、約二千百十二億円となっておりまして、これを今後そう大きく変わることはないだろうと思います。  それから農産物の災害につきましては、いま農林省の統計情報部で懸命にその実態を調査しておりますが、一つの県においてもずいぶん大きな被害があるようでございまして、これまた近く公表する予定でございます。  さらに、冷害による農作物の被害状況につきましては、九月十五日現在の状況をいずれ明日公表することになっておりますが、やはり相当大きな被害が見込まれております。これも一日も早くその実態を把握して対策を講じたいと考えております。  なお、台風十七号による農林施設災害の復旧事業につきましては、いま早期復旧を図るというのは、これは何といっても来年からの再生産に間に合わせねばなりませんから、急いで査定を行いまして年内には査定を終える方針でおります。さらに、緊急を要する個所につきましては、応急工事、査定前工事等の実施を急ぎまして、十分に来年の生産に間に合わしたいと考えておる次第でございます。  なお、これらの農林災害者に対するいろいろな対策につきましては、前に総理からいろいろとお話がございましたとおり、でき得る限り筋の通った役に立つことは何でも実施いたす方向でいまがんばっておる次第でございます。
  421. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今回の災害によります中小企業関係の被害でありますが、十月一日現在で件数が約六万件、金額に直しまして約七百億円でございます。非常に被害が大きいものですから緊急の融資を考えておりますが、それに対しましては、融資金額を拡大するとか、あるいは融資期間を延ばすとか、あるいはまた金利の条件を低くいたしまして貸し付け条件全般を普通の場合と違った取り扱いをする、そういうことを考えておるわけでございます。  それは新規の分でございますが、それからあわせて既応の分につきまして返済期限の来たもの等につきましては融資返済期限の延長、こういうこと等についても各地ごとにまた各企業ごとに十分相談に乗るように指導しております。
  422. 天野公義

    国務大臣天野公義君) 普通交付税の十一月配付のものを十月二日に五百七十六億円繰り上げて支給いたしまして資金繰りの円滑化を図りましたし、また地方公共団体が行います災害復旧事業につきましては、その地方負担額及び単独災害復旧事業については地方債を充当することになっておりますし、また十二月予定の特別交付税の配分につきましては十分配慮をして処置することになっておりますし、冷害につきましても、特別交付金等財政援助をすることによりまして対処をしていくことになっている次第で、万全を期しておる次第でございます。
  423. 中馬辰猪

    国務大臣(中馬辰猪君) 査定の状況については目下鋭意準備いたしておりまして、年内には完了すると思っております。  その中で特に二つだけ申し上げておきたいことは、長良川の堤防復旧の問題であります。私は九月の十八日に現地に参りまして、被災者の方々にいろいろ話を聞いたりしたわけでございますが、査定が終わったとか終わらないとか、予算の準備があるとかないとかという時期ではありませんので、私は独断ではございましたけれども、十月の半ばに着工しなさい、そうして来年の遅くとも三月いっぱい、早ければ二月いっぱいに必ず完工してほしいということを中部地建の局長にも申し上げまして強く指示をいたし、同時に記者会見で知事その他の方々に対しまして右の旨を強く申し上げて、県民の方々に御安心を願ったと思っております。  もう一つは、兵庫県の一宮の現場にも参りました。大変な災害でございまして、地元の方々がぜひ早急に新しい部落の建設地を決めてほしい、こういうことでございましたけれども、私は、これに対しまして、二度と再びこういうことがあってはならないので、建設省の専門家の方々、地質の研究所の専門家もおりますから、この方々に十分付近の地質を調べてもらって、同時に河川局の専門家の方々を私の部屋に両方一緒に来てもらって、それに兵庫県の担当の方々にも御同席を願って、その席で新しい移転地であるとかあるいは現場がいいとかそういうことを決定をしたいからと言ったとかろが、地元の方々もぜひそのようにして早くひとつ安心できるところに移転するなり、あるいは現地なり、そういうことで方針を示してまいり、ただいま急いでおるわけでございます。  それから先ほど御指摘がありましたが、全国の河川を理想的に改修するということはすぐ簡単ではございませんので、さしあたり直ちに一級河川等につきましてはいわゆる健康診断をいたしまして、本格的な復旧ではなくても、あるいは改修ではなくても、この点をこれだけ直せば必ず数年間はもてるんだというところがあればそれを優先的に実施するように目下事務当局に指示をいたしておる最中でございます。
  424. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 災害対策費でございますけれども、仰せのようにことしは想像を絶した大災害でございまして、財政のもくろみが大変狂いましたことは、御想像のとおりでございます。それで、ただいまのところ、私どもこれから起こるであろう災害復旧も一応これまでの経験律で考えまして推算いたしましたところ、今年度の災害復旧に要する経費を今年度ベース千八百億ぐらい所要ではないかと考えております。既定予算が二百億ございますので、千六百億ぐらい災害復旧に予備費から充当せねばならぬ羽目に陥っておりますことは、坂野さんも御承知のとおりでございます。こういう状況でございますので、当面、災害対策、災害復旧費といたしましては予備費でもって充当せざるを得ない状況でございます。  一方、景気対策でございますが、春以来景気の足取りが比較的順調にまいりましたので、財政政策といたしまして特に景気対策を講じることなくとも景気の回復は順調ではないかとこれまで見てまいったわけでございます。なるほど、最近になりまして景気の足取りは必ずしも順調とは言えず、やや足踏み状態にありますことは御案内のとおりでございますけれども、これは政府全体としての判断といたしまして特に財政の側面から施策を施すべき必要があるとはまだ判断していないわけでございます。  それから第三の問題として公共事業でございますが、八月末までの契約状況でございますが、一般会計、特別会計、政府機関は去年よりは順調にいっておるわけでございますけれども、国鉄、電電関係が御承知のような事情で去年よりややおくれております。したがって、さしあたっては、いま御審議をいただいておりまする国鉄、電電関係の二法の早期成立を期することが当面政府としてお願いをしなけりゃならぬことだと考えておるのでございます。下半期の契約が去年と比べましてやや落ち込むことになることは御案内のとおりでございますけれども、去年の秋は御案内のように非常に景気が落ち込んだ段階でございまして、去年の秋われわれは大いに下期に契約を集中いたしましたような経緯がございますけれども、それに比較いたしましてややことしは契約がそれに比較いたしまして少ない状況にありますことは御指摘のとおりでございますが、こういった問題は今後の経済の推移を見まして、政府として考えなければならない場合は施策しなければならぬことでございまして、いま直ちに景気対策として財政上これこれの措置は講じなければならないという判断を、ただいまの段階では持っておりません。
  425. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 坂野さん御指摘のように、まだ景気は回復過程でございますが、ばらつきは相当あります。また、災害なんかの関係で、業種別以外に地域的にもばらつきが見られると、こういう状態ですが、総じまして申し上げますと、石油ショック後三年目の景気状態としてはまずまず私は順調に動いておると、こういうふうに見ております。個人消費にいたしましても、個人の住宅投資にいたしましても、まあ着実な動きでございます。  それから地方財政。これは単独事業、これがどうも不振だと、一般事業の方はまずまず順調かと、こういうふうに見ております。  それから、国の財政も御指摘ありましたが、これも進捗状態はまずまずこれも順調な動きである。  それから輸出は、年初におきまして非常にこれは伸びたんです。これはまあ特殊な事情がありまして伸びたんですが、その反動と言いますか、それに比べますると伸びは鈍化いたしておりまするけれども、年初に見通しておったような動きを示しておると。そういう状態で、総じて申し上げますと、まあ大体五%ないし六%の実質成長、これは実現し得る、こういう見方でございます。したがいまして、いま大蔵大臣の申し上げましたように、直ちに財政措置によりまして景気回復を刺激しなければならない、こういう状態ではないと、こういう御理解でお願い申し上げます。
  426. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 厚生省の災害対策、救助についてお答えを申し上げます。  厚生省といたしましては、災害対策本部を本省に事務次官を長として設置をいたしまして、災害救助法の発動されました一都十六県、百四十四市町村にわたる適用地域に対しまして、炊き出しその他食品、毛布あるいはこれは非常に要望が強かったんですが、応急仮設住宅の設置とかその他死体の処理等、あらゆる救助活動を行ってまいりました。また、弔慰金につきましては先ほど来お話しのとおり百万円、さらにこれの増額等につきましては今後の問題として検討さしていただきたい。  災害の貸し付け援護資金でございますが、これまた原資をひとつ五億円というのを五十億円ぐらいふやしまして、限度枠は百万円でございますが、数多く御要望にこたえる措置をとっておる次第でございまして、この問題の増額につきましても、枠の増額につきましても今後検討いたしたいと思っておる次第でございます。  さらに、われわれとしては、これから生活できない人がたくさん出てくると思うのです。こういった面につきましては、生活保護法の適用等民生委員等を通じまして救済しなければならない、いわゆる罹災者のアフターケアという問題につきましても十分ひとつ配慮して善処していきたいと、かように思っておる次第でございます。
  427. 坂野重信

    坂野重信君 最後に総理、ひとつ総括的にお願いいたします。
  428. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 災害の悲惨な状態というのはわれわれもよくわかっておるのですから、各省大臣を督励いたしまして、いま申したようなことを迅速に処置することにいたします。
  429. 佐藤隆

    佐藤隆君 関連。  簡単に二点お尋ねをいたします。  まず、重複を避けて冷害対策の点で、米の点でありますけれども、先ほど農林大臣は、規格外の米というものは全量買い上げをするように政府は責任を持ってやりますと、こういうことであります。しかし、主食用に向けられるものと、それからくず米、これとの二つの問題に分けてひとつお答えをいただきたい。特に早場米地帯等においては、十月中にこれらの措置についての結論を出すのでは遅いんです。十月半ばまでにこの結論をひとつ末端行政庁、農業団体に指示をしてほしい。これをひとつ明言していただきたいと思います。  第二点。これは総理国土庁長官、大蔵大臣にお願いをいたしますが、自然災害はやっぱり忘れたころにやってくるんです。総理も思い出すでしょうが、一年半前に、災害が起きてからでは遅いんだと、自然災害が起きない前に防災しなければならぬのだと、それについては財源措置が必要だと、こういうことであなたに進言をいたしました。党の政調の了解を得て、たたき台として当予算委員会の分科会に昨年三月二十九日提案をいたしました。それから実は一年半たっているんです。で、この内容は詳しくは時間ございませんから申し上げません。自然災害防止制度というものを提唱し、その財源は防災公債ということでと、こういうことだったんです。  いま経済発展のボトルネックを解消するための道路とか港湾とか工業用水とか産業基盤整備、いろいろございます。しかし、そういうものに優先して自然災害の防止対策というのはやられなきゃいかぬのです。それは国土の保全と人命尊重、財産の保全、こういうことからなんです。だから、政策以前の政策なんです。ところが、自然災害が起きないとなかなか真剣になってもらえない。こういう状態ではいけないと思うんです。  そこで、この十七号台風の直後でございますのでひとつお願いをしておきますが、一体、私のたたき台というものがそのまま通るとは思わぬけれども、しかし、これにも似た形で新しい考え方を政府はどうされるのか、これをひとつ確かめておきたいわけであります。特に国土庁におかれましても、窓口でありますから——前国土庁長官の金丸さんは、私の提案を評価する、真剣にひとつ取り組むと、こういうことだったんです。積極的なひとつお答えをいただきたいと思います。  大蔵大臣におかれては、中期国債も、金融機関のいろいろな異存があるにもかかわらず、一部マスコミには見切り発車とも言われながら大蔵案を示したところであります。公債万能主義がいいとば申し上げませんけれども、社会連帯という考え方を起こさせるために、みんなで持ち寄って、国もやるし地域社会でもという考え方で財源をつくる、そして未然に防止する、この考え方、どうでしょうか。
  430. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 佐藤さんにお答えいたします。  十月半ばまでに政府の米の買い上げの方針を示せというお言葉でございますが、これはちょっと少しまだ無理でございます。と申しますのは、現在東北の冷害地では、いまでもわらをもつかむ思いで少しでも日照時間が長ければと、幾らかでもよくなることを期待してまだ刈り入れにも着手しておらない段階でございます。したがいまして、このような段階におきましてはとうてい損害の評価がそう簡単に済みません。これが済みませんと、どのくらいの低品位米ができるか予想もつかないのでございます。そういう意味で、十月半ばまでにはそのようなはっきりした政府の方針を打ち出すことはちょっと不可能と思います。もっとおくれると思います。しかし、私は農林行政の最高責任者でございますから、私が責任を持って全量処理いたしますと明言いたしますから、その点でひとつ御納得をいただきたいと思う次第でございます。
  431. 天野光晴

    国務大臣天野光晴君) お答えいたします。  自然災害防止は御説明のとおりでございます。先生の出された自然災害防止制度の創設という論文も見せていただきました。その実行の状態も聞いてみました。一部取り入れておるのもあるようでありますが、なじまない点もあるとの報告でございます。そういう点で、先ほど申し上げましたが、もうあなたと私はずいぶん長く災害をやってきたのですから、私そう長くはないと思うのですけれども、この短い間でも結構ですから、いま災害は片づけなければいけませんから、そうですから、十二分にひとつお互いに勉強してこの問題をかっこうをつけたいと思いますから、よろしくひとつお願いいたします。
  432. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 防災政策についてのお話でございましたが、災害を事前に防止するために、公共事業といたしまして防災的な施策をあらかじめ講じておくという必要を説かれておるわけでございまして、その点につきましては私全く同感に存じます。これは、防災事業というのは、より高度の公共投資、公共事業でございまするので、ただいまの財政制度で申しますと、それに向けられる財源といたしましては、建設公債が財政法第四条によって発行できる仕組みに相なっておるわけでございますから、あなたの言われるところの防災公債というものは、いまの建設公債の発行で代替できるのではないかと考えております。ただ、御指摘の、防災政策が必要である、そのために十分な財源を確保せよという御趣旨と思いますが、その点につきましては十分な配慮をしなければならぬと考えております。
  433. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 佐藤君の自然災害防止法、いろいろな御提案をいただいて、いま天野君もお答えしたように、採用しておるものもあるけれども、まだ採用してないものもあって、今後一層研究の大きなたたき台になることは事実でございます。なお研究を続けさしてもらいます。
  434. 佐藤隆

    佐藤隆君 総理、まあ研究と、こうおつしゃいますけれども、実は一年半前よりも後退したお話になるわけですよ。私は記録してありますが、三月二十八日午後二時半、官邸であなたは、私のこの提言に対して、この発想は社会連帯を知らしめる具体案だな、政府に考えさせるいいたたき台だな、こう評価をしていただいたのです。ですから、国土庁長官がせっかくああいう前向きの答弁をしても、いま、まあ考えてみましょうでは、これはまた後ろ向きになっちゃうのです。失礼な言い方ですが、これはやっぱりもう言葉だけじゃだめなんです、災害対策は。これはたび重なる自然災害で、われわれは天災だと言っても、野党からは政治災害だと言って指摘されるじゃないですか。国民の信頼がそこからまた崩れていくのです。そのことをも私は心配をいたしておるわけです。もう一言お願いいたします。
  435. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 災害を未然に防止するということはきわめて重要なことですから、これは、この問題は貴重な提案でございますから、ただ研究するということで引き延ばすのではなくして、採用できるものは採用して実現をいたすことにいたしたいと思います。
  436. 八木一郎

    委員長八木一郎君) お待たせしました。秦野章君。
  437. 秦野章

    秦野章君 いわゆる灰色高官名の公表問題について、私はひとつ総理に原理的なことをちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。  ロッキード問題が起きて、これを徹底解明するということは当然のことだと思うのです。ただ、その徹底解明したものは徹底公表するということには、問題が違うから、徹底解明は徹底公表ではなかろうと、こう思うのですね。ところが、やや国民の中に、徹底解明したものは全部公表だというようなイメージが与えられたような感じがするんですね。これは大変な間違いで、少なくとも政府とかあるいは権力機関、検察官とか政府とかそういう機関は、徹底解明したものは徹底公表だということにはならぬというのは、これ初めっからわかり切った統治機構ですよね。そこらに国民が少し過大な期待を持っているということは、私は非常に残念なことだと思うんですけれども、ここで一つの問題はやっぱりマスコミですね。マスコミの力というものが、これはマスコミというのはまた別だと思うんです。マスコミは徹底解明して徹底公表したらいいだろうと、これは真実の公表でございますから。大体この日本のような自由諸国、この文明国では、マスコミが本当にやっていれば汚職なんか起きないですよ。私は政治の腐敗なんというものは起きないだろうと思う。そのくらいマスコミの健在な力量というものはやっぱり評価されるべきものだと思う。ただ、政府は、あるいは権力機関は、徹底解明するが、それを徹底公表する、発表されるということにはならぬということだけは間違いないんじゃなかろうかと。この原理というものがいささかそのとおりに評価されてないという点について、総理はどうお考えになりますか。
  438. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはそのとおりで、議長の裁定などでも、やはり刑事訴訟法の立法の趣旨を体してということはそういうことを意味してあるんだと思うわけですが、政府は、できるだけ真相というものを知りたいという国民のこの要望にこたえる責任は民主政治のもとにあると思いますけれども、これはもういろいろ政府が捜査したりあるいは調査したりするものをそのまま全部というわけにはいかぬことはお説のとおりだと思います。
  439. 秦野章

    秦野章君 そこで、公表の方法の問題、公表には内容と方法の問題があると思いますけれども、一部の人たちは、政府、総理の特に公表の問題が後退をしたという印象を受けているような発言があるわけですけれども、私はもともといま申し上げるように、公表というものは、徹底解明は大事だけれども、徹底公表なんということはまああるものではない。しかし、まあ何でもあばいて全部発表するということは必ずしも悪いことじゃなくて、そういう政治もあると思うんですね、何でも公表してしまうという。さっきマスコミのことを申し上げましたけれども、私はやや極言をしておりますけれども、マスコミが健在なら汚職は相当防げるし、ほとんど汚職はできないようなそういう社会だろうということを申し上げたのですけれども、この徹底的にあばくということが政治になるというのは、私は法治国家とか、あるいは日本のような国柄ではそういうことにはならぬ。中国の文化大革命なんかでは徹底的にあばいて、壁新聞でも何でも徹底的にやる。これはやっぱり一つ政治として、継続革命の国家でございますから、これはあたりまえだと思うんですね。ところが、日本はそうじゃないんだということでございますから、いま総理は刑事訴訟法の例を出されましたけれども、ひとり刑事訴訟法のみならず、一つの議長裁定があろうがなかろうが、統治機構としてはやっぱりその機構を守っていくという、いわゆるこれは憲法の当然責任だと、政府の責任だと思うわけです。  そこで、すんなりと公表問題をわれわれが考えた場合には、検察官は四十七条の限度でもって公表すべき限度もあろうと思いますから、それはやるでしょう。これは四十七条というのはむしろ検察官とかそういった訴訟関係者が管理する、守る法律でございますから。しかし、この検察官からいろいろ報告を法務大臣がお聞きになる、それから総理がまたそれをお聞きになる。そういうルートといいますか、そういう仕組みでございますね、そういうことになると、すんなり考えると、やっぱり検察官は一応その立場でもってそれぞれの公表の問題はあるでしょう。しかし、総理とか法務大臣は今度は政治の立場で、検察官とは違った立場で、ある程度の公表の問題というものはあるんじゃないか。で、その公表を私どもは法務大臣とか総理大臣国会で公表されるというふうに理解しておったわけですよ。また、政府の答弁をたどってみると、法務大臣とか総理大臣国会で公表するということがいわゆる灰色高官の公表というふうに理解しておった。ところが、このごろだんだん変わってきて、秘密会をつくって、秘密会ならば材料出しましょう、こういうふうになってきたわけですね。  灰色高官の基準というものは、いま野党も与党もいろいろ案を出して、これから与野党の折衝がありますけれども、これは私はまとまるんじゃないかという気もするんです。自民党だって何も原案でがんばらなくたっていいんで、私個人はそう思うんですよ。これはやっぱり灰色高官の灰色基準というものは、なるべく合意を得て、そして国会の国政調査権として政府に要望する、要求する。政府はそれにこたえて公表していくという筋道ですね。しかし、公表基準というものが決まって、範囲というものが決まって、それを政府に要求して、政府側が議長裁定に基づく協力の形で、国政調査権に協力するということで発表される、国会で発表する。そうじゃなくて、いまの段階では何か材料を、秘密会にして、秘密会なら出しましょう、こういうわけなんですね。だけど、これはやっぱりすんなりと政府が国会で公表なさるということの方が、初めからのこれは筋だったように私は思うんですけれども、その辺が急に途中から秘密会みたいな議論が出てきちゃったというので、ちょっと何かおかしいような感じがするんですよ。  なぜ私がそんなことを言いますかといいますと、秘密会ならいいということは、外に出なきゃいいという——ところが、公表問題を秘密会に持ってきて、それが外に出ないというのは無理な話だ。なぜならば、政治的、道義的責任の追及ということは、外に出ることが追及なんですから、公表が外に出ることが。出なきゃ道義的、政治的責任の追及と言うたって、これは結局選挙に備える審判の材料ということになるでしょう、これは政治的、道義的責任の追及というのは。国会で、別に裁判所みたいに原告、被告がこうやって論争して裁判官が判断する、そんな政治的、道義的責任の追及という形式はございませんから。そこで私は、秘密会ならいい、出しましょうと言ったって、秘密には終わらぬものを秘密会ならばいいとおっしゃる。しかし、秘密会に終わらぬで結局出ちゃう。表に出ちゃうということなら、なぜそういう問題を政府の姿勢として国会でもって公表するという当初の考え方を通されないのかどうか。その点に非常に私は疑義があるわけですけれども、いかがですか、総理のお考えを。
  440. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 地検の捜査が全部終わった段階では、報告を受けて、政府は責任と判断においてこれを明らかにする予定でございます。まあしかし、御承知のように児玉ルートというもが非常に捜査がおくれている、まだ捜査が終了したという段階ではないわけです。そこで中間報告ということになったわけですが、こういう捜査過程にあるという制約のもとで、しかもいわゆる灰色高官というものに対してそのいままでの捜査に基づいた資料を提供するわけでございまして、したがって、その公表の問題は国会の判断と責任にゆだねたいというふうに思います。したがって、公表問題の取り扱いというものは国会にゆだねる、こういう立場を政府はとろうとするものでございます。
  441. 秦野章

    秦野章君 参議院の予算委員会で、総理お答えにもあるんですけれども、公表というのは総理大臣の権限にあると、こうおっしゃっている。これは全く私もそう思うんですよ。だから、やっぱり政府が、総理の権限としてあるのだし、総理がそういう権限で国会の場でおっしゃるということが筋で、公表は国会の責任だというのはどこから出てくるのか、その辺が大分違うんですけれどもね。まあこれはひとつ法務大臣もいろいろ御苦労なさっておるんだけれども、私はそのもとは、察するに不起訴処分だ、問題は。不起訴処分を公表するという問題になったときに、恐らく検察庁はそんなものはむやみに出せるものじゃないとがんばるわけだ。秘密会ならいいと、こう言ってワンクッション入れたわけですね。ところが、ワンクッション入れてもこの公表問題は、秘密会と言ったって、たとえば弁明を求めるというようなことになりゃ、その求めるような、つまり一方的な判断はできませんから、金を受け取った、いや受け取らぬ、時効にかかった、かからない、意見が違うなら御本人を呼んで聞かなきゃなりません。そういうこともやらなきゃいかぬ。いずれにしても秘密会が秘密に終わっちゃったら——材料お出しになった、しかし、秘密会が秘密に終わっちゃったら国会ロッキード隠しになるんですよ、これ、ロッキード隠しに。政府のロッキード隠しと言われるようなことはいやだから国会におんぶしちまうみたいな話に私はなっているような感じがするんだな。これはフェアじゃないじゃないか。やっぱりこれは総理大臣の責任で、公表というものは権限としてあったんだと、こうロッキード委員会で、参議院の予算委員会でもおっしゃったんだから、それを貫かれた方がフェアだ。そして公表というものについていかにも総理はやっぱり責任をしょってきたということを、国民はすべてそう思っていますから、国民に対する責任、国民に対する大義名分というようなものが私はやっぱりあるんじゃないのかというふうな感じがするわけです。  そのことをひとついま一遍お答え願うということが一つと、それからこの不起訴処分という問題を外側に出すということは、これは大変検察の問題としては確かに私は問題であろうと思います。問題であろうと思うんだが、秘密会というような方式によって検察を守ろうと。だけれども、秘密会じゃ守れませんよと私は言いたい。とてもじゃないけど守れませんよと。秘密を保持しようというその秘密が、秘密会へ持ち出せばもう行政の組織から離れたんだから、それは何ぼ外へ出たってわしゃ知らぬというのはこれは困るんで、やっぱり秘密会にいったら、全部守れると言ったって、この公表問題は秘密会でやると言ったって、それなら国会が全部ロッキード隠しになっちゃう。そこらひとついかがですか、これ。    〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
  442. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) よく間違わないようにお聞き願いたいんですが、総理は、全体が終わったら総理の責任において全貌はこういうものであるというふうに公表なさると。いまは捜査の途中ですからね。ですから、捜査の途中にいわゆる灰色——こっちは灰色はないんです、検察庁は。クロとシロと決めたんです、児玉ルートを除いては。これはシロ、これはクロと、こういうことがわかったから、この段階において、こっちはシロと決めましたが国会はどうなさるかと、こういうことをやろうというわけですね。国会はどうなさるか。それは政治的、道義的責任の所在を灰色責任の所在とこういうふうに一応決めて、そういうふうにお互いに認識して、そしてその道義的、政治的責任の追及者は国会だと議長裁定になっている。それならば、その道義的、政治的責任の追及者が追及をして判断する。判断をする。判断権も国会にある。判断権と言えば公表権者である。こういうことがなぜいけないのでしょうか。そして児玉ルートは残っているんですから、公開の席でシロに判断したものの材料を皆提供したら、またこっちの捜査継続しているそっちへ響きますから、その材料の提供の範囲は秘密会ならば広がりますし、公開の席上ならば狭まります、こういうのは当然じゃないでしょうかね。常識じゃないでしょうか。そして最終的に全部が終わったら、それはロッキード問題の全貌というものはこういうことである、そう言って総理が行政の最高責任者として国民の知る権利にこたえる、こう言っているのですから、いま捜査の途中だから、そうして秘密会やったってみんなばれるさと、こういう言い方はどういうもんですかな、それは。秘密会に、最後まで、いつまでもやっておけというんじゃないのです。捜査が全部終了すればやるというのですから、それまでの間くらいは秘密を保ってもらわなけりゃ。それは新しい憲法のできたときにあそこの芦田小委員会、あれの議事録は全部秘密で、いまでも公開されておりませんよ。ですから、秘密会だって漏れることを前提としているなんて、そんな考えは私とあなたとは全然違う。保たるべきものだと思います。
  443. 秦野章

    秦野章君 ちょっと、じゃ非常に明確になった点は、不起訴処分を捜査が終わったら全部出すというんですね。終わったら不起訴処分を全部出すんですね。
  444. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 全部出すとは言ってないんです。
  445. 秦野章

    秦野章君 だって、そういうことになるんじゃないですか。
  446. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 不起訴処分にした者をこっちではシロと言うんです、不起訴処分というのは。そのうちからそちらが選んで灰色を決めると、こういうことになるわけですわな。ですから、捜査が終わったらシロのものを全部出すなんてことを言っているんじゃないですよ。それこそ議長裁定に従って、それは総理大臣といえども、議長裁定に従って刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえてやらなけりゃそれはどうにもならぬでしょう。
  447. 秦野章

    秦野章君 やっぱりちょっと食い違っているんですよ。それはどういう点が食い違いますかというと、たとえば秘密会、結構でしょう、まあ一応。秘密会でやるにしましても、いわゆる灰色高官というものが——不起訴処分というものは大体確定してないんですよね、裁判もやってないんだし。だから、不確定なものだから、そんならたとえばお金もらったというような人がおった場合に、それを呼んで聞かなきゃ、弁明を聞こうというような作業が当然伴ってくるんですよ。そんなのが秘密にできるわけないでしょう、これどうえたって。だから、秘密会でやれとおっしゃっても、それは秘密でできないし、また趣旨から言って、秘密会でやるからって、そこでその秘密会にじゃ不起訴処分の材料は全部持ってこられるわけじゃないでしょう。きわめて一部でしょう。一部ということになれば、それをやっさもっさこうやるわけですよね。これはやっぱり秘密が完全に、秘密会の人たちは秘密を守ろうとしても作業上秘密は守り切れないだろうと、こう私は言うわけですよ。
  448. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 一つは、事件が全部完了したら全部公開すると、こういうふうにお聞き取られると困るんですね、出せないものは出せないですから。出せないものは出せないですよ。法律に違反して何でも出すわけにはいかぬですから、それは出せないものは出せない。  それからもう一つは、議長裁定というものでああいうふうに決まったんですから、決まった以上は、それは灰色高官の追及者は国会であり、その国会が公表されるというなら公表なさればいいし、それからその決め方ができないなら、できないことを決めた議長裁定が悪いんじゃないですか、そんなら、できないできないとおっしゃるなら。できないことはないと思いますよ。
  449. 秦野章

    秦野章君 公表を議長裁定でやるということは書いてありませんよ、これは。これは刑事訴訟法の精神にのっとって国会に協力するというだけなんで、公表がどうして国会でやらなければいかぬという結論が出ますか。それは出ていませんよ。これは政府の解釈なんです。
  450. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 公表が必要だというふうに皆さんがおっしゃるから、その公表というものは決定権者が公表なさるのが当然の帰結ではないかと、議長裁定には決定権者は国会だと、こう言うんだから、決定をされる判断権者がもし公表が必要だというなら公表なさるのが理論的な帰結じゃありませんかと、こういうことを申し上げている。
  451. 秦野章

    秦野章君 それは全然私は解釈が違うんだ。それは、議長裁定の趣旨というものは別に新しい法的効果も何にもない、言うならば政治的なものですね。議長裁定があってもなくても、公表をしましょうと政府が国会でやればそれで終わりなんですよ。何もあの議長裁定から公表問題が議会の責任だなんということは出てきませんよ、それは。議長裁定から、公表が議会の責任だなんということが出るわけないでしょう。私は、むしろ材料を持っているのは政府なんだから、政府が国民に対して公表すると言ってきたんだから、だからむしろ政府が国会ですんなりこの程度のものだと言って公表する方が筋ではないかと、こう申しているわけです。だがら——まあいいやもうそれは。私はそれ以上聞いてもしようがないからいいですけれども。  そこで問題は、政府がそれなら公表するんならとことんできるかと言えば、さっき言ったように、これは議長裁定にもありますけれども、なくたってあったって刑事訴訟法の精神というものは尊重せにゃならぬ、これは当然のことだと思うんです。  そこで、ひとつ私のちょっといままでの議論の中で足らないと思います点は、人権の尊重と実体的真実の追求という問題をこれは当然考えてのことなんだけれども、われわれがやっぱり考えなくちゃいけないのは、不起訴処分というものは非常に不確定であって、これはいわゆる司法的抑制を経ていない、弁護権の保護も得ていない。公表はなるべくした方がロッキード解明にはいいんだという気持ちはわからぬでもないけれども、そういう権力機関、刑事責任追及の機関がそういうような立場で、起訴便宜主義で権力でもって集めた資料、しかも不確定だ、弁護権のあれも得ていない、そういうものが本来そう簡単にもともと出せるはずがないわけなんですね。  しかも、ここで人権の尊重というものを特に考えなくちゃいけないのは、実体的真実の追求と、それから人権の尊重ということは憲法、刑事訴訟法の基本的精神なんですけれども、現代の、特に新憲法以後の問題では、実体的真実の追求のために、基本的人権が後ろに追いやられてもいいということではなくて、基本的人権の方にむしろ重点を置いたのが現行憲法、刑事訴訟法の大精神なんですよ。これはなぜそういうことになったかというと、国家、民族がそれだけの歴史的経過を経ているわけです。いわゆる刑事裁判というものは、歴史的に見て、どこの国のどこの民族もやはり切り捨て御免をやってきた、一方的にやってきた。おまえ腹切れ、どこの国でもばっさりやってきた。そういう歴史をしょっているから、この刑事権力というものだけは防がにゃいかぬということで、歴史的に非常に重く見られているわけです。これがアメリカなんかと違うところなんですよ。アメリカは二百年の歴史で、刑事権力が横暴をふるったという歴史がないです、保安官なんか仲間内から選んでいるんですから。言うならばそういう国なんです。ところが、アメリカ以外のどこの国でも、これは社会主義の国は別ですよ、自由主義諸国でも歴史的にそういうことになっているから、刑事裁判における人権の尊重ということは格段にウエートを置いて見なければならぬ。そこに不起訴処分の材料というものがむやみに出せないという理由がある。  だから問題は、基本的人権を守ると総理もおっしゃいますけれども、基本的人権を守るんじゃないんです、基本的には、理論的には。基本的人権を守る仕組みを守るということなんです。これが日本の刑事制度なんです。これは憲法上、政府はやはりそういう制度というものを守る義務があるわけです。憲法、法律をぴしっと守る義務がある。その前提に立って、ロッキード隠しでも何でもない、制度を守ることに政府は懸命にならなければいかぬ。そういう意味において、私はそういう人権を守るということの意味の、本当の制度的な意味を理解するということがこの際非常に大事じゃなかろうかというふうに思うわけです。総理も同感願えると思いますけれども、そういうことが前提にあれば、私は幾ら秘密会だから出せますとこう言っても、大変限度があるなあと、国会じゃもっと出してもらいたいけれども、限度があるなあと。しかも、秘密会と言ったって秘密にやならぬ。私は政府とが権力機関は、あばくというのはやっぱり相当限度がある。マスコミはいいですよ。マスコミが健在で動けば汚職なんかかなりなくなるんですから。私は文明国というものはそういうものだと思うんですよ。  だから政府とか、権力機関というのはそういう制約があるのだという前提に立って、政府は今日までそのことを頭に置いてやってこられたかどうかというと、どうも公表というものが大変大きな大義名分のようになっているけれども、いまや、徹底的に解明はするが、徹底的に公表はできないという説明を、そういう説明というか、そういう大義名分だ、一種の。これを国民に対して示す必要があるような感じがするんですよ。これはやつぱり総理の責任になってくるのですね。だから私は公表の責任も総理がお持ちになる。そうしてこういうものはできないということも総理の責任であって、私は国会というよりも政府の責任だと、こう思うんですが、いかがでしょう。
  452. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 捜査が終了した最終段階で、国民に対してロッキード事件の全容というものを報告をしたいと私はかねがねから思っておった。その報告の場合は、これは全容がまだ明らかになっておりませんから、どういう報告にするかということは、やはり私の判断と責任というものでやらなければならぬですが、その場合に、当然に日本は法治国家であるし、やはり日本の憲法あるいはまた刑事訴訟法の仕組みを尊重しなければならぬことはもう言うまでもないことでございます。
  453. 秦野章

    秦野章君 政府は、総理ロッキード事件真相解明に政治生命をかけるということでやってこられた。所信表明の演説の中でも政治介入はしないと、こういうことを特に強調されておりましたが、政治介入はしないという意味は、指揮権発動をしないという意味なのか、それ以外に何か意味があるわけですか。
  454. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 指揮権発動もその一つですよね、指揮権発動。そういうふうな政治が介入して、捜査に対して制約を加えるというようなことはしないという意味でございます。
  455. 秦野章

    秦野章君 まあ指揮権発動は、早々と政府は、総理は言っておられるわけですけれども、この政治介入はしないという意味は、私は多少の誤解を伴う危険がある。といいますのは、検察というものはごんと動く。政治は介入しないんだ、介入しないんだということになると、検察というものは独力で機能していくだけだということかという危険があるのですね。で、権力というものはやっぱり政府が管理するという立場に基本的にはあると思うのですよ。基本的には政府が管理するという立場にありますから、そういう意味において私は権力というものは時に行き過ぎることもある。今度の田中逮捕の問題でも、私は外為法違反というのはいささか歴史的に批判に耐えぬだろうとロッキード委員会で申しました。今月の中央公論を見たら、東大の藤木教授が私の説を、そういう批判も出るであろうというようなやや肯定的なことを書いています。藤木教授なんというのは自民党議員なんかの言うことはもう全然評判悪くなるはずなんだけれども、そういうことを藤木教授も言っているくらいなんだ。私はやっぱり外為なんというものは——この間も、去年でしたか、何とかという弁護士が二億円の外為違反をやりましたけれども、これは任意捜査でやってますね。そういうことで、やっぱり前総理を外為で逮捕したということはいささか歴史的に批判に耐えぬだろうということは、私はいまでも思っているんだけれども、要するに権力機関というものは、やっぱり政府の管理下にあるということだけは間違いない。いかなる検察といえども、これは確かに独立の地位を持ってますよ。したがって、独立性というか、中立性というか、警察とか検察とかというものはそういう地位を持って、その地位を尊重せにゃなりません。尊重せにゃなりませんけれども、しかし、法務大臣が座り、総理がおって、行政確保の監督のもとにあるということだけは間違いないので、政治介入をしない、政治介入をしないというようなことはむしろ私は無責任な結果になるんじゃないかとさえ思うのであります。やっぱりやるべきことはぴしっとやるということでなければ。田中逮捕なんかは私に言わせれば荒っぽいですよ、少し。やり方が荒っぽい。そういう意味においては、いまどきこんなことを言うと何か世論にさおを差すようなことを言うようなことになるかもしれないが、そうじゃないと思うんですね。そこらの点から、私は内閣の責任、政治の責任というものは非常に重いんだと、特に権力というものがひとり歩きするようなことはいけないんだという点については、私はきちっとした姿勢でなきやならぬ、こう思うわけです。この点についての所見を伺って終わります。
  456. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 当然に政府が全責任を負うことは当然です。それから独立機関として、指揮権発動等政治的にこの事件の捜査に対して影響力を与えるようなことはしないと、最終的には政府が責任を負うことは当然でございます。
  457. 山内一郎

    理事山内一郎君) 以上をもちまして秦野章君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  458. 山内一郎

    理事山内一郎君) 田英夫君。
  459. 田英夫

    ○田英夫君 長時間の委員会で休憩もありませんから、総理初めお疲れと思いますが、重要な段階で主として外交問題を中心に御質問をいたしますので、特に三木総理には冒頭お願いをしておきますが、私の質問も白黒はっきり御質問をするつもりでありますから、いわゆる玉虫色の御答弁はなさらないように、総論的なお話もなさらないように、具体的にお答えをいただきたいと思います。  冒頭まず伺いたいのは、現在の国際情勢、世界情勢というものを、総理は同時にいま外務大臣を臨時に兼ねておられるわけでありますから、三木総理に伺いますが、現在の国際情勢をどういうふうに見ておられるかという意味で、いわゆるデタント、現在デタントの状況にあるとお考えになるのかどうか。これはアメリカでも大統領選挙の重要な一つの論争点になっているわけでありますから、三木総理のお考えを伺いたいと思います。
  460. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 国際情勢を判断する場合に、一言で表現ということは非常にむずかしい面がありますね。米ソ関係のようなものを見ても、デタントもあればまた緊張しておる場面もある。だから、国際情勢を見るのは、そういう一言で見るのでなくして、そして実態に即して見ることが必要である。全体とすれば、何とか平和に人類は共存する道を皆が模索していることは事実である。具体的な問題をとらえてみれば、緊張する場面もあれば、また緊張が緩和される場面もある。だから、実態に即して国際情勢は見ることがやはりいいんだというのが私の考え方、一言で言うことにはなかなか言い切れない問題があるというふうに考えております。
  461. 田英夫

    ○田英夫君 デタントという言葉は言うまでもなく米ソの問題を中心にしていわれているわけでありますから、私が伺ったのもその点に関してのことであります。  フォード大統領は、御存じのとおり、大統領選挙のさなかに、今後デタントという言葉は使わないということを言ったわけでありまして、アメリカの世論はいまやソ連に対して強硬姿勢をとることが世論を引きつけるという、選挙作戦上からもそう言ったのでありましょうけれども、われわれの場合は、そうしたことにかかわりなく、国際情勢を冷静に見詰めていると、その必要から私は御質問をしたのであって、現状をつぶさに見なければならないのは、さまざまの場面において当然でありますけれども、私の御質問は、米ソのデタントということを評価するのかしないのか。中国は、御存じのとおり、主なる潮流は世界大動乱であると、こういう言い方を全く逆にしているのでありまして、そういう基本的な見方についての見解を伺ったところであります。
  462. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 世界はやっぱりデタントに向かってその道を模索しておる段階にある。SALTの交渉などはデタントでしょうね。また、アンゴラですか、アフリカの問題などはやはりそこは米ソの間の緊張を呼ぶ事件でもある。そういうことで、大きな方向としては世界はやっぱりそれを模索していることは事実である。しかし、そうでない場面もあればそうである場面もある。大きく言えば、それに向かって人類は皆やはりそういう方向に向かって模索しておる時代であることは間違いがありません。
  463. 田英夫

    ○田英夫君 そこに問題があると思って実は伺ったのであります。外務省の全体の空気もまさにそうだろうと思います。いま政府の各閣僚の皆さんの頭の中にも、三木総理の御答弁を大体支持される空気が強いだろうと思います。そこに私は最近のミグ事件などに対する対応の仕方などにもあらわれるような、あるいは朝鮮半島の問題についての対応にあらわれるような、非常に混乱があるのではないか。私は、むしろ、アンゴラを初めとして、中近東あるいは朝鮮半島、そうしたところで起こっている米ソのいわゆる中国の言葉で言えば覇権を争っているという言い方がむしろ当てはまるのではないかと、こういう状況判断を基本にして世界を見ていくことの方が正しいのではないかと思うわけです。この問題については、非常に重要なことでありますけれども、それ以上論争をしても仕方がありませんので、先へ進みたいと思いますが、最近の小坂外務大臣の国連における演説、これは、いま三木総理が答弁されたにもかかわらず、実はニュアンスを異にしていると思います。私はその意味で評価をいたします。この点の相違は一体どういうふうにお考えになるのか、相違はないとお考えになるのか、いかがでしょうか。
  464. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本外交の基礎というものはやっぱり平和外交というものだと思います。日本がやっぱり指向する方向は世界の緊張緩和であるわけですね。しかし、米国のようないまの世界の事態を見るならば、世界情勢を見れば、いろんな具体的な実態に即して見る方が、私はやっぱり判断としてはそう見る方が正しいと思いますが、日本外交の目指す方向は世界の緊張緩和である。そうでなけりゃ平和というものは来ないわけですから、そういう意味において、日本の外務大臣が国際連合などにおいて発言をする場合に、日本というものの指向する外交の方向を述べることは当然でございます。
  465. 田英夫

    ○田英夫君 そこなんですね。日本は言うまでもなく平和憲法を持っていて、その憲法に基づく外交以外に外交姿勢というものはないはずでありますから、いま三木総理が言われたとおりのことになるはずであります。それが小坂演説に表現をされたと思います。にもかかわらず、世界の現状というのは、デタントではなくて、米ソを中心とした覇権争いと、それに絡まる第三世界の台頭というところに問題がある。つまり、現在の世界情勢というのは、われわれ日本国民の希望にもかかわらず、そして政府の方針にもかかわらず、違った方向に行こうとしているのではないかというところに問題がある。ミグの事件についていわば先ほど森中委員質問をされた政府の御答弁が混乱をするというようなそういうところにもあらわれているように、政府の対処の仕方は基本姿勢が定まらないからおかしくなってくるのじゃないだろうかという気がしてならないのです。  そこで、具体的な問題について伺いますが、これもまず基本から伺いますが、朝鮮の問題であります。朝鮮は一つの朝鮮であるべきなのか、二つの朝鮮であっていいのか、これは白か黒かの答弁でありますから、明快にお答えをいただきたいと思います。
  466. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は朝鮮民族の願望は平和的な統一にあると考えております。しかし、現実は一気にそこにいかないことは事実でございますけれども、大きな目標として平和的に統一するということが朝鮮民族の悲願だと私は受け取っています。
  467. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、具体的に伺いますが、アメリカに行きますといこれはキッシンジャーを初めとして、昨年社会党代表団が行ったときに接触をした政府の高官あるいは議会の人々、あるいは学者までも含めまして、実に率直に朝鮮は二つであっていいのだということを言います。一つの朝鮮ということを言った人はついにコロンビア大学の学者が一人いただけでありました。にもかかわらず、総理はただいま日本として正しい答弁をされた。これは原則でありますから、そのとおりでありますが。  それでは、最近キッシンジャー国務長官が提案をいたしました三段階の問題、つまり、南北の対話、それに米中を加えた四者会談、さらに関係国を加えた国際会談という、これをどういうふうに評価されますか。
  468. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 外交問題の処理というものは、現実に即して考えることが必要である。やはり、朝鮮の平和的統一というものが究極の理想であっても、現実はそれまでに至る過程というものはそんなに容易なものではない。その究極の目標がすぐ達成できる状態ではないから、キッシンジャー国務長官は恐らくこれを現実的に考えたときに、まずやっぱり平和的な共存、南北の。そういうことを達成して、朝鮮半島における平和的な環境をつくることが必要である。そのためには、いわゆる南北が直接に話し合いをするという段階がどうしてもやはり必要である。そうでしょう。朝鮮の問題をどうするかということを決めるものは、南北の朝鮮の人たちが決めるわけですから。そういうことになってくると、まず南北の朝鮮でお互いにいま中断しておるわけですから、対話が。これがやっぱり話し合うということが第一段階であるし、その上に立っていわゆる米中のような関係国がこれに加わり、また拡大会議という、現実に考えれば私は非常に建設的な案だと思います、これは。いまの朝鮮半島の現状を踏まえたならば、一気に究極の目標まで行かないのですから、ああいう段階があるということは現実的な処理としてはやはり私はそうだろうと思いますね。だから、一つのやっぱり建設的な提案と、こう評価するものでございます。
  469. 田英夫

    ○田英夫君 建設的という評価をされたのでありますが、そこに非常に問題があると思います。  もう一つ伺いますが、三木総理が所信表明の中でも述べられ、また小坂外務大臣の国連での演説の中にもありますが、日本政府として正式にそれは提案をされたというふうに受け取っていいですが、つまり国連への南北朝鮮の同時加盟ということを提案をされているわけであります。これは、冒頭言われました、朝鮮は一つでなければならない、平和的に統一されなければならないという問題と関連をして、その障害になるとはお考えになりませんか。
  470. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 一気にそう究極の目的まで達成はできない状態でありますわね、いまの南北の状態は。そうなってくると、これはしかし決めるものは南北の朝鮮の人たちですから、これは日本がどうこう言わぬが、そういう統一に至るまでの過程の間に、たとえば国連に対して同時に加盟して、その場を通じて南北というものの対話というものが行われるならば、とにかくあそこの朝鮮半島に平和的な環境をつくるということは非常に大事ですからね、第一前提。いまはもう対話がないんですから、そういうことで、一つの方法ではないかということでございまして、それが日本はそういう考えで希望を持っておるということだけであって、それを最終的に決めるものは南北朝鮮の自身であるということで、それ以上の意味はないわけでございます。
  471. 田英夫

    ○田英夫君 それは非常におかしいんで、日本は朝鮮にとって一番近い国で、しかも関係が非常に深いわけですから、日本が正式に国連の舞台で提案をしたということの意味は非常に重いと思います。それ以上のものでないと言われるのは、これは責任回避のような気がしてならないのですが、そこで、先ほどキッシンジャー提案を評価すると言われましたけれども、果たして現在の状況で南北の対話ができるのかどうか。そして、南北の対話ができないわけですが、できない原因は何かということですよ。そこが従来から私どもと政府の皆さんと外務省の人を含めて根本的に違うのであります。  対話ができなくなった原因というのは、歴史的な経過を見ても実に明快なので、一九七二年七月四日、南北が合意して共同声明を出したにもかかわらず、それからわずか四カ月後の十月十七日に韓国の朴政権が維新体制の名のもとにまさにファシズムの体制をとったというところから、   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕 そのような体制をとっている朴政権、韓国側と話はできないということで南北の対話がとぎれてきたのでありますから、原因はそこにあるというふうにこれは明快に客観的に見て言えることだ。ただし、朴政権の側は、そうではないと、北の方が対話をしたがらないんだというふうに宣伝をしておりますけれども、事実は明快だと思います。となれば、この朴政権の現状、韓国の現状というものを民主的なものに改めるということが、冒頭総理が言われた朝鮮の統一を成就するということについての第一歩だと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  472. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) われわれが朝鮮の政治体制というものに対してこれをどうこうせよと言うそういう権利はありませんが、とにかく、いろいろな原因はあるにしても、南北朝鮮の相互不信というもの、異常なやっぱり警戒心、相互不信というものが対話を阻んでいる原因だと、これはいろいろここに両方の言い分はあるでしょうけれども、しかし、とにかく相互のこの不信というものが対話を阻んでいる原因だろうと私は考えております。
  473. 田英夫

    ○田英夫君 具体的に、それではこの夏起きました、八月十八日ですが、いわゆる板門店事件というものが起こった経緯を日本政府はどういうふうに判断をしておられますか。
  474. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 板門店事件が起こった経緯という御質問の中に、もしその原因なり動機がいかようなものかと……
  475. 田英夫

    ○田英夫君 事実経過ですよ、事実経過。
  476. 中江要介

    政府委員(中江要介君) という意味ではなくて、経過という意味では、八月の十八日の午前十時四十五分ごろに、板門店の共同警備区域内で立木のポプラの小枝の伐採作業を国連軍側が行った、これに対して、北鮮軍側の警備員がやってきてその作業の中止を要求した、双方の間で論争から乱闘になって、その結果、国連軍側が米軍将校二名の死亡と兵士計九名の負傷という犠牲者を出した、北鮮側では五名が重軽傷を負ったと、こういうふうに私どもは承知しておるわけでございます。
  477. 田英夫

    ○田英夫君 この事件の経緯について私から詳しく申し上げる時間がありません。いまのは日本の新聞などにも報道されたとおりなので、結論だけ言いますと、私はもうあの事件の報道をまた外務省のいまの説明を聞くにつけて読むにつけて思うことは、ベトナム戦争のときの状況と全く同じだということであります。それはこの予算委員会でも外務委員会でもしばしば私が指摘したところでありますが、日本におけるベトナム戦争の報道というものは全くアメリカ側から見た報道であったということです。これは調査の結果まで出ております。数字まで出ております。全体の六〇%を超す報道がアメリカの報道によって日本国民はベトナム戦争を知らされていた。同じことが、今回の板門店事件は、アメリカ並びにソウルの側から見た板門店事件見方、報道、それに終始をしているのであります。  そこで、一つ伺いますが、いわゆる北朝鮮——朝鮮民主主義人民共和国の側が遺憾の意を表明したという報道があり、その見出しには、ニュアンスとしては、北側が謝罪したというふうに受け取れる報道が日本の新聞には支配的であったのですが、政府は、この金日成主席の声明、意思表示というものをどういうふうに受け取っておられますか。
  478. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の遺憾の意の表明とおっしゃいましたのは、八月二十一日に北朝鮮の金日成人民軍最高司令官が国連軍司令官あてに出しましたメッセージの中に、事件の発生は遺憾であると、こう書いてあるところを御指摘だと思います。私どもはそのとおりに理解しておりまして、アメリカの方でも、この遺憾の意の表明というのは、ここにあるとおりに、事件の発生は遺憾であるという意思の表明があったと、こういうふうに受けとめていると、こういうふうに承知しております。
  479. 田英夫

    ○田英夫君 こういう場で伺うとそういうふうな答弁が返ってくるわけですね。ところが、全体の印象として日本で伝えられるところ、これは謝罪の意を表したということに受け取られているのであります。これはもう説明の余地がないと思いますが、アメリカ自身が、いまアジア局長が言われたように、北は謝罪をしていないとはっきり言っているわけでありますし、じゃどこから出てきているかといえば、北が謝罪したという談話、ニュースは、すべてソウルから出ています。これはお調べになれば、外務省でもお調べになっているでしょうけれども、すべてソウルから出てきているニュースであります。こういうところに統一を阻害する非常に重要な問題があるというふうに考えなければならないと思うのです。  そこで、もう一つ韓国の現状についての問題ですけれども、金大中氏の病状が非常に悪いということが伝えられ、また、日本にいるいわゆる在日韓国人の人たちの代表から三木総理あてに、日本政府の責任において医師団を派遣すべきであるという申し入れが行われておりますが、これについての政府の態度を伺いたいと思います。
  480. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の金大中氏の病状でございますが、何分にも同氏は現在拘置所の中におられますものですから、健康状態の詳細を知るというすべがなかなかないわけであります。ただ、金大中氏が前から神経痛の持病があったということは、これは以前から承知しておりますし、また拘置所という生活環境の中ですので、病状が余りよくなっていないようだということも聞いております。で、一般に報道されておりますように、金大中氏の健康状態がよくないのじゃないかという点は、確かにそのように私どもも聞いておりますけれども、一方で、いますぐに生命にどうかというようなことでもなさそうだという情報もございます。その程度が私どもの知っておるところですが、私どもといたしましても、金大中氏事件外交的決着の際の了解事項というのがございますわけですから、この了解についての関心を持っている程度においては金大中氏の健康にも関心は持っていると、こういうことでございます。
  481. 田英夫

    ○田英夫君 関心を持っているということですが、直接ソウルの大使館が調べたという事実はないんですか。
  482. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは外交チャネルで緊急措置令違反で拘置所におられる韓国人の健康状態を調べるということは、これは私どもとしてはできないことだと、こういうふうに考えております。
  483. 田英夫

    ○田英夫君 そこがおかしいんですよ。金大中氏の現状というのは、ただの韓国の政治家の状態というのとは全然違うわけですよ。金大中氏事件というのは一体どういうふうに考えておられるんですか、外務省、政府は。これは解決したということに宮澤外務大臣時代になっていて、そのままですか。原状回復ということは一体どういうことになったのですか。重大な関心というのはそこのところにあるわけですよ。
  484. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは田委員も先刻御承知のとおり、金大中という元大統領候補が、日本である日突然いなくなってソウルにあらわれたということで、それに絡まって主権の侵害があったのかなかったのかということが大変問題になりまして、その国際刑事事件としての問題の処理とともに、外交的にいつまでもこの問題にかかわっていることが是か非かという判断から、外交的には、御承知のように、一九七三年の十一月二日でしたか、両国首脳の間で外交的には決着を見たと、その外交的決着を見ましたときに、金大中氏の身柄という問題が一つの関心事でありまして、この金大中氏の身柄につきましては出国を含めて一般韓国人と同様の自由があるということを韓国側が保障いたしまして、日本政府としては、一般韓国人として同様の自由ということは、韓国側の表現によれば一般韓国人よりも厚くもしない薄くもしないということで取り扱う、処遇すると、こういうことでございます。  いま拘置所に金大中氏がおりますのは、この事件の後で、御承知のように、本年の三月一日の民主救国宣言事件というもの、それが緊急措置令に違反するというもっぱら韓国の国内法制から見てその緊急措置令違反ということで拘置所におられるわけで、この事件そのものは金大中事件とは関係がない。したがって、政府としましては、どういうふうな韓国人としての取り扱いを受けておられようとも、金大中氏事件解決の際の了解事項については、日本政府としては関心を持ち続けているということは、折りに触れて韓国側にはっきりと言っているというのが現状でございます。
  485. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ、具体的に。七月三日付で五十人のいわゆる学者、文化人から、金在権、金東雲、劉永福という金大中事件に関係をした三人の韓国KCIA関係者を告発いたしました。東京地検はこれを受理したというふうに聞いておりますが、それは事実かどうか、受理したとすれば担当検事はだれなのか、現在その捜査はどこまで進んでいるか、伺いたいと思います。
  486. 稻葉修

    国務大臣(稻葉修君) 刑事局長に答弁させます。
  487. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 御指摘のとおりの告発状が出されまして、東京地検は七月六日に最高検察庁から受理いたしまして、主任検事は公安部の堀部副部長と聞いております。  なお、現在におきまして、今後の方針といたしましては、警察とも連絡をとって事案の解明に努めたいと考えておりまするが、さしあたりこの告発状に指摘されました米国の下院、上院における関係委員会におけるレイナード氏あるいはフレーザー氏らの証言等を取り寄せる必要があると考えまして、外務省を通じてその資料の取り寄せを依頼しておる現状でございます。
  488. 田英夫

    ○田英夫君 この関係者の一人金在権、これは金大中事件の現場の首謀者でありますが、この人物が現在アメリカにいるという事実を政府は御存じでしょうか。
  489. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 一つの情報としては聞き及んでおりますけれども、確たる証拠に基づく情報としては承知しておりません。
  490. 田英夫

    ○田英夫君 捜査当局はどうですか。検察庁は受理して調べるというんなら、対象の人物がどこにいるかぐらいのことは知らないというのはおかしいのじゃないですか。
  491. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 詳細の報告は受けておりませんが、告発状にいま御指摘の人がアメリカにおるということが記載されておりますので、当局としてはアメリカにその者がおるというふうに考えておるものと思います。
  492. 田英夫

    ○田英夫君 これは明治時代の条約ですけれども、アメリカとの間には犯罪人引き渡し条約があるわけですが、これを適用して引き渡しを求めるというようなこと、あるいは、すでにわかっているなら、これに対して接触を図るというようなことは当然あっていいと思いますが、告発状にあるからそうだろうと思うというような程度、要するに何もやっていないということじゃないですか。
  493. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 告発をされました場合におきまして、そこに有力な認定の証拠として、米国上院、下院における委員会の証言等が指摘されておりますので、まずそれを取り寄せることによって捜査の端緒をつかみたいという考えのように聞いております。
  494. 田英夫

    ○田英夫君 これは、三木総理お聞きのように、いまのこのやりとりを私はこれ以上続けても仕方がないと思うんですね。要するに、政府はもうこの金大中氏事件について調べる気は全くないとこれは断定いたします。そういうことでいいですか。さっき冒頭言われた朝鮮民族の願いである統一をなし遂げる、まさに三木流のきれいごとを言われましたけれども、三木さんの下の人たちは、その第一歩である韓国の民主化を求めるそういう動きについて何もしていない。しかも、日本にかかわる問題、告発まで出ている問題の捜査は何にも手をつけていないということじゃないですか。私はそれだけ申し上げます。時間がありませんから、もうこれ以上言っても仕方がないと思います。  次に、ミグの問題ですが、きょう午前の森中委員質問に対して統一見解なるものが出てきました。そこで、法制局長官の説明によると、これは国際法上の領空侵犯ではないということに判断を下されているというふうに受け取っていいんですか、これは要するに。
  495. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 午後の委員会の冒頭で申し上げましたように、国家間の関係において国家責任の問題を生ずるという意味での国際法違反としては、その侵犯側の国家行為として行われたものであることを要するという一般論を申し上げましたので、本件の具体的な事件の性格がどういうものであると理解していいかどうかということは、私の口からは申し上げる立場ではございません。
  496. 田英夫

    ○田英夫君 要するに、その原則から言えば、亡命を求めた、亡命を認めた時点ですでにいわゆる領空侵犯という問題についての犯罪容疑というものが消滅をして、あの六つの容疑のいわゆる書類送検になった国内法の問題、これだけが残っているということじゃないんですか。——法務省でもどっちでもいいです。
  497. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 午前中の審議においてもお答え申し上げましたところでございますが、本件事件につきましてはもともと二つの法律的な側面があるわけでございまして、一つは、そのベレンコ中尉なるものが米国に亡命したいということでわが国に不法入国をしてきた、その事案に対して国内法を適用してどうするかという問題でございます。もう一つは、ベレンコ中尉が操縦しましたミグ25機がわが国の領空を侵犯して函館の空港に強行着陸した、そのわが国の領空侵犯の事案に対して、わが国がいかなる措置をとるか、こういう問題でございました。  前者につきましては、何分にも人間の体が絡んでいる問題でございますから、人道的な問題という考慮も払わなければいかぬという問題もございますし、また警備上の問題もあるわけでございます。そういう意味で、国際法から申しますと先ほど申し上げました二つの問題があって、その亡命の方の問題についてまず国内法上の手続を了しまして、当人がアメリカに亡命したいという意向については、これは間違いなかろうという法務当局の御判断がありましてその出国を認めたと。しかしながら、もともとわが国の領空を侵犯して強行着陸してきたその事実に対してわが国がいかなる措置をとるかという問題につきましては依然として問題は残っているわけでございまして、その解明を防衛庁が行って、それがほぼ終わりに近づきつつあると、こういう事態でございます。国際法上、したがいまして、二つの事案がありまして、一つの事案が処理されているけれども、もう一つの事案は依然として解明の状態が続いておって、それが近く終局に近づきつつあると、こういうことでございます。
  498. 田英夫

    ○田英夫君 要するに、法制局長官が言われたのは、国際法上の侵犯じゃないということでしょう、この事件が。そうすれば、もう亡命を認めた時点でその方の問題は終わっちゃっているのじゃないですか。ミグの機体を調べるも何も関係ないじゃないですか。国内法の証拠物件として保管していたけれども、それも亡命さしてしまって起訴猶予になった時点でその調査をする資格というものは日本政府にもなくなったと、必要もなくなったということじゃないですか。
  499. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 国際法上の問題でございますので私からお答え申し上げさしていただきたいと思いますが、いずれにしろ、国際法上、国はその領空に対して完全かつ排他的な主権を有しておるということでございまして、したがいまして、外国の航空機がその領空に入ってくるには、別段の取り決めまたは特別の許可を必要とするということでございます。そのような承諾を得ないで入ってまいります場合には、これは領空侵犯になるわけでございまして、この午前中の法制局長からお述べになられました見解においても、第二段で「もっとも、一般的に事前に被侵犯国の承諾を得ていない航空機の領空への侵入に対し、スクランブル等の措置をとることも、当然に認められているところであり、また、着陸後に被侵犯国が所要の機体の保管・調査を行うことも国際法上許容されるところである。」とお述べになりましたのは、その間の事情を答えられたものと理解しております。
  500. 田英夫

    ○田英夫君 それでは、外務省でも法制局長官でもいいんですけれども、統一見解なるこの印刷物の前段の「国際法上の領空侵犯」と書いてあるこの部分、つまりそれは法制局長官が一番最初に言われた国家意思が働いているかどうかという問題、それではないということですね。しかし、この統一見解の中段の部分の、いま中島条約局長が言われた一私人ですな、亡命を求めた一私人であるベレンコという男が断りもなく入ってきたという意味の領空侵犯ですな、広い意味の。それではあると、ここのところをまず確認してください。
  501. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ベレンコ中尉がミグ25機を操縦してわが国の領空に入ってきて函館に着陸したと、その事案自身はここの後段で第二段で言うところの領空侵犯であるというふうに理解しております。
  502. 田英夫

    ○田英夫君 第一段には当たらないですね。
  503. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 第一段の問題は、先ほど長官からも御説明がありましたように、その場合に、そのような領空侵犯であって、相手国の国際責任を追及し得るようなものが何であるかといえば、当然にそれは相手国の国家の行為として行われているものであるということを御説明になったものだと理解しております。
  504. 田英夫

    ○田英夫君 そうなってきますと、つまり広い意味の領空侵犯と言われるのは、結局は国内法で出入国管理令違反というところとうらはらになってくるわけでしょう。したがって、本来だったら、函館空港で向こうはピストルか何か撃ったけれども、そこで現行犯逮捕をするのがあたりまえじゃないですか、なぜこれ現行犯逮捕をしなかったんですか。あの時点で。領空侵犯をして、断りもなく入ってきて、出入国管理令違反でしょう。ピストルを撃っている、ピストル持っているじゃないですか。どうしてあすこで逮捕をしないんですが。もし本当に軍人として入ってきてピストルを撃って攻め込んできたら、一体どうするんですか、防衛庁長官
  505. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 当面、当初の身柄の措置をしたのは警察でございますので、警察当局からお聞きを願いたいと思いまするが、不幸にしておられませんので、私の理解から申しますと、−(「おらぬとは何事だ」「国家公安委員長いるじゃないか」と呼ぶ者あり)
  506. 天野公義

    国務大臣天野公義君) 警察の方では、身柄を拘束していろいろと事情を聞いたということを聞いております。
  507. 田英夫

    ○田英夫君 しようがないですな。いままでと違うですよ、いままでの衆議院その他の答弁と。わかる人を出してくださいよ。非常に重要なことですよ。逮捕はしてないでしょう。
  508. 天野公義

    国務大臣天野公義君) ちょっと私の表現が正確を欠いたようでございます。  北海道警察函館方面本部では、本人が亡命を申し出たため、その身柄を保護すると同時に、同人について出入国管理令、銃砲刀剣類所持等取締法違反等により取り調べるとともに、さらに詳細な飛来の目的、動機等の究明に当たったわけでございます。
  509. 田英夫

    ○田英夫君 それじゃ、もう一回質問します。  おりてきたときに亡命の意思が確認をされてからはわかりますよ。おりてきた段階では亡命の意思も何もわかりゃしないんだから、そこでなぜ逮捕をしなかったのかということを聞いているわけです。
  510. 天野公義

    国務大臣天野公義君) 本人が函館空港に参りまして、そして、そこで警察が出て事情を聞いたら、すぐ亡命の意思を表明したのでそういう措置をとったものと了解しております。
  511. 田英夫

    ○田英夫君 これは担当の局長がおられないとわからない問題なのかもしれません。非常に専門的なことなのかもしれないんで、新しい国家公安委員長をここでさらにあれしょうとは思いませんけれども、非常に重要なことですよ。  もう一つ聞きます、それじゃ。一九六六年の九月十七日に、北朝鮮の平新艇事件というのが起きているんですよ。このときには現行犯逮捕をしている。つまり、船長その他を射殺して日本に逃げてきた。これは現行犯逮捕をしているはずです。この平新艇事件のいきさつをわかる方、言ってください。これはお願いしてあるはずですよ。
  512. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いわゆる平新艇事件というのは、昭和四十一年の九月十七日に、朝鮮民主主義人民共和国の国籍を有する十三名の者が漁船平新艇で山口県の下関に密入国をしたという案件でございまして、いまの身柄の関係につきましては、この事案は被疑者となりました四名の者が他の船員を銃で脅迫しながら入国してきたという関係でございましたので、四名の者につきましては、いわゆる脅迫しながらその船を支配していた者につきましては現行犯逮捕、それからその他九名の脅迫を受けていた者につきましては、密入国ということにはなりまするが、逮捕はしなかったということでございます。
  513. 田英夫

    ○田英夫君 その他に、たとえば、ベトナム戦争のさなかにベトナムに派遣をされることを拒否して日本に逃げてきた韓国の軍人、これについては強制送還をしていると思います。あるいは、いわゆる反戦米兵、ベトナム戦争に行くことをいやがって脱走したアメリカ兵、これについては日本政府がその希望に沿って亡命をさせるというような措置を今回と違ってとりませんでしたから、ベ平連の諸君などがひそかにこれを逃がしたということは、報道などで御存じのとおりだと思う。なぜ今回だけああいう措置をとるのか、なぜ例外なんですか。
  514. 天野公義

    国務大臣天野公義君) もう少し詳しくそれでは申し上げます。  事件の概要といたしましては、昭和五十一年九月六日午後一時五十二分ごろ、戦闘機一機が函館空港に着陸をいたしたわけであります。そこで、ミグ25戦闘機で、搭乗員は一人であるということが判明いたしたので、一一〇番の通報によりまして、事実を認知するために北海道警察函館方面本部では直ちに警察官を現地に派遣して、そして、先ほど申し上げましたように、事情を聴取したところ、本人は、ソ連には自由がないので米国へ逃亡したい旨申し出たわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げたような処置をとったわけでごさいますが、不法入国に関する刑事手続において身柄の逮捕勾留の行われる場合がありますが、これは事案によるわけでございます。ベレンコ中尉については、犯罪の態様等にかんがみまして逃亡のおそれ等も認められなかったので、同人を特に逮捕することなく、在宅事件として捜査、処理したものでございます。
  515. 田英夫

    ○田英夫君 警察庁の担当者が来られるまで先へ進みますが、いずれにしても、これは六つの容疑で結果的には起訴猶予になったという時点で、機体の方の調査をする権限というもの、必要というものは日本政府にはもうなくなったはずだと思いますが、この点は防衛庁の方は必要があるというふうに言われてまいりました。それならば、午前も森中委員質問がありましたけれども、もっと明快に、それはソ連の機密が知りたいからだという以外に理由は立たないはずであります。国際法的に国内法的にあの機体を調査する理由というものは成立しないと思いますが、いかがでしょうか。
  516. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この点につきましては、午前中も御説明申し上げましたが、防衛庁といたしましては、領空侵犯という事実があったことに基づきまして、それに対する措置をいたしました。その措置の一環といたしまして、この事実の背景というものを調査する必要があると考えまして、防衛庁設置法の第五条十八号及び自衛隊法では領空侵犯に対する措置をするということになっておりますし、それに伴いまして、やはり五条の第二十号で必要な調査をするということで実施しているわけでございます。
  517. 田英夫

    ○田英夫君 要するに、防衛庁の言われるのは、防衛庁の所管事項について調査研究をするというのが防衛庁設置法の五条の十八と二十にあるから、それを適用しているんだと、こう言いたいのでしょうけれども、果たしてこれが防衛庁の所管事項と言えるのかどうか。言えるとすれば、それは防衛庁長官が非公式には言っておられるそうですけれども、ソ連という、まあ仮想敵国という言葉は使わない方がいいでしょうけれども、そういうものに対して機密を知りたいから調査するんだという以外に成り立たないんじゃないですか。そういう設置法で調査研究の対象になる、これが防衛庁の所管事項と言えますか。さっきからの法律のずっと国際法と国内法の体系の中からそういうことは出てきますか。もう少し説明してください。
  518. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) その点につきましても、けさほど私どもが関係省庁と打ち合わせまして申し上げましたものをもう一度読ましていただきますと、国際法上、本件のような領空侵犯機については、一般的に言って被侵犯国がその管轄権のもとに当該機体の取り扱いに係る最終措置をとるまでの間、その保管を行い、領空侵入及び強行着陸の背景状況、なかんずく当該飛行に当該国の安全を侵害する意図とその事実があったか否かの解明のための機体の調査を行うことは許容されると考えるというようなことを前提といたしまして、これをもとに防衛庁設置法並びに自衛隊法によって調査を実施しているということでございます。
  519. 田英夫

    ○田英夫君 要するに、こういうことですよ。かつて千歳にアメリカ人の一般市民が軽飛行機を操縦して着陸しちゃったことがある。その限りではそれと同じことでしょう、ベレンコの問題も。乗っていた飛行機が軍用機だということですけれども、国際法的に言えば、いわゆる国家意思の働いた領空侵犯じゃないという意味では同じことでしょう。あのときにそれじゃ乗ってきた飛行機を調べましたか。アメリカの軽飛行機を調べやしないじゃないですか。領空侵犯について調べる必要があるなら、あのアメリカ人の飛行機だって調べにゃいかぬですよ。だれが入ってきても調べるんですか。領海侵犯でも同じじゃないですか。船を調べますか。飛んできたということだけわかりゃそれで調査はおしまいじゃないですか。要するに機密が知りたいんでしょう。機密が知りたいと言やいいじゃないですか。
  520. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私はその千歳に着陸したという事実はちょっと記憶いたしておりませんが、いわゆるフライトプランによりましてその飛行機が来るということがわかっておれば問題ないわけでございますが、民間機の領空侵犯に際しましても国内法違反の点につきまして司法当局の調査がなされるべきことは当然でございますが、防衛庁としても、必要があれば、領空侵犯への対処に伴う調査を行うことがあり得るというふうに考えております。
  521. 天野公義

    国務大臣天野公義君) 田先生の質問に警察庁の通告がございませんでしたので、大変準備が悪くて申しわけない次第でおわびを申し上げます。  先ほど申し上げましたように、不法入国に関する刑事手続におきまして身柄の逮捕、勾留の行われる場合がありますが、それは事案によります。ベレンコ中尉については、犯罪の態様等にかんがみ、逃亡のおそれ等も認められなかったので、同人を特に逮捕することなく在宅事件として捜査処理いたしたわけでございます。御了承願います。
  522. 田英夫

    ○田英夫君 この点は非常に疑問が残っておりますので、いずれ関係委員会で改めて伺うことにいたします。  次に、この問題についての軍事的といいますか、安保体制に関連をした側面を伺いたいと思いますが、日本の自衛隊の手ではこの超低空で入ってくるベレンコ中尉のミグ25を捕捉することはできなかった。これはラムズフェルド国防長官の言葉にも、アメリカでもできないということを言っているのであって、これ以上幾ら日本が自衛隊を強化し——これを契機に自衛隊強化論などが一部に出ておりますけれども、これは全く的を外れたものだということをまず申し上げておきたい。  そこで、安保体制ということは、在日米軍の駐留を認めているのが一つの柱でありますが、それは日本の安全を守るためということになっている。このベレンコ中尉の侵入の際に、在日米軍は一体どういうことになっていたのか。たとえばAEWとか、そういうアメリカ側の体制というものはこのためには全く役に立たなかったと言っていいのかどうか、この点はいかがですか。
  523. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) わが国の領空侵犯に対処する体制につきましては、昭和三十四年ごろまではアメリカと航空自衛隊と一緒にやっておりました。その後、航空自衛隊の能力が上がるにつれまして、最初にレーダーサイトを引き継ぎまして、その後スクランブルに上がる航空機につきましても全部責任を自衛隊が持っております。したがいまして、今回のミグ25の侵入に際しましては全く航空自衛隊の力だけでこれに対処しておりまして、米側の協力は得ておりません。
  524. 田英夫

    ○田英夫君 つまり、防空体制、スクランブル体制というのは自衛隊に移されたということになっておりますけれども、それならばアメリカ軍のアメリカ空軍の日本における役割りというのは一体何かということが浮かんでくるわけでありまして、かねてわれわれが言っているとおり、日米安保体制というものはその意味からもきわめて役に立たない体制であるということがこの事件でも明らかになっていると思います。  そこで、最後に時間がありませんから別の問題に移りまして、去る九月三十日の衆議院の予算委員会で、横路委員質問に対して、河本通産大臣が、インドネシアのLNGの問題に関連をして、日本との契約についても幾つかの不合理な点があった、この点については修正させるというふうに答えておられますが、具体的にその不合理な点というのはどういう点であり、修正されるというのはどういうふうに修正をされるというおつもりなのか、伺いたいと思います。
  525. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 不合理な点が数カ所ございまして、もうすでに大部分は修正させたわけでございますが、詳細につきましてはエネルギー庁の長官から答弁をさせます。
  526. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま大臣がお答えいたしましたように、LNGの販売契約につきまして幾つかの点につきまして両当事者間で修正することに合意を見ておるわけでございますが、そのうちの重立った点について申し上げますと、まず一つは、アメリカ向け価格との調整でございまして、将来プルタミナからアメリカ向けにLNGが輸出されることが正式に決定された際におきまして、LNGのアメリカ向けの船積み価格と日本向けの船積み価格と等しくするように調整すると、これが第一点でございます。  第二点は、いわゆるテーク・オア・ペイ条項の修正でございまして、LNGを契約どおりに引き取らない場合にも代金を支払うという条項でございます。通常LNGのように大量かつ長期的に継続して購入する場合にテーク・オア・ペイ条項というものが入っておるわけでございますが、問題は、その場合に、契約と実績との差、いわばアローアンスの幅をどう見るかと、こういう点でございますが、当初の契約におきましては四半期ごとの許容量はあったわけでございますが、年間を通じてのアローアンスがなかった。それを今回年間についても許容量を設定することにいたしております。  それから第三点は、立ち上がり期間の数量調整でございまして、日本側の需要の実態に即しまして立ち上がり期間中の引き取り数量を調整した。  大体こういった点が販売契約についての修正点の主な部分でございますが、これに関連いたしましてLNGの輸送について一言申し上げておきたいと思います。これは直接的にはプルタミナが責任を持っておるわけでございますが、去る九月一日にプルタミナと実際に輸送を担当いたしますパーマオイルとの間で話し合いが行われまして、その結果といたしまして、船価の上昇をそのまま輸送費に反映させることをしない。と申しますのは、いわゆるエスカレーション条項の中で、フレートは人件費、燃料費あるいは政府による仕様変更に伴う改造費と、こういったものに限定したということが一つでございまして、それから二つ目には、タンカーの安全性を確認するために、日本側ユーザーも随時造船所に立ち入り検査、報告徴収等ができるようにいたしたことでございます。  第三点は、LNGタンカーの建造がおくれておるわけでございますが、竣工までの間、他の船主からパーマ社側が短期に用船いたしまして、来年三月の輸送開始に間に合わせるようにする。  大体かような点でございますが、日本側ユーザーといたしましても、日本に対する供給の確保、あるいはフレート上昇の抑制という点からいたしましても好ましい方向であるということで、この両当事者の話し合いに対して同意いたしております。  以上でございます。
  527. 田英夫

    ○田英夫君 いま伺いますと、田中通産大臣時代に事が運ばれ始めて、そして最近マスコミを含めて疑惑が投げかけられていた点が大体修正をされてくる。これはロッキード事件などが起こり、世論が厳しくなったからできたのであって、そうでなければ非常に大きな疑惑を持たれても仕方がない。現在までにすでに疑惑があったと見られても仕方がないと思うのですが、しかし、同時にまだ残っているのはプルタミナのプラントの建設というのは順調に進んでいないというふうに言われているにもかかわらず、一方で政府はことしの春に三億七千二百万ドルという緊急融資を行っているわけでありますが、一方で日本のユーザー五社の方は二千億円というお金をかけて専焼の火力発電所をすでにつくり始めている。そっちの方はどんどん進んでいく。これは一体どういうことになりますか。このプルタミナの現状というのは、いままでのそうした非常に不合理な点を内包していたこと等を直せば済むということでないんじゃないだろうか。順調にこれが進むのかどうかという疑問を持たざるを得ないのですが、時間がありませんからその見通しだけを伺っておきます。
  528. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) インドネシアのLNGはボルネオ島とスマトラ島から搬出されるものでございますが、その開発設備のために昭和四十八年に日本側から合計十一億ドルの借款を提供すると、こういう契約でございまして、両島における開発計画を進めておったわけであります。ところが、その後オイルショック等が起こりました関係等もありまして、昨年の春ごろから追加融資の申し入れがございまして、約五億ドル近い追加融資の申し出があったわけでありますが、オイルショックがあったとはいえ何分にも着工した直後のことでございますので、日本側としても直ちにこれには同意することはできない。いろいろな角度から詳しく調査をいたしまして、最終的には、いまお話しのような追加融資を、約一年半の調査、交渉の結果、先般決めたわけでございます。ただし、今後はいかなる事情がありましてもこれ以上の追加融資はしないということが一つと、それからインドネシア側もプルタミナの経営につきましてはインドネシア政府が全責任を持つと、こういうことを明らかにしておりますしいたしますので、先ほど幾つかの修正条件を長官の方から説明をいたしましたが、追加融資と同時に先ほどの修正を決定いたしまして落着したわけでございますが、ただいまのところは予定どおり二十年間にわたりまして合計一億五千万トンのLNGが入ると考えております。同時に、日本側におきましても、受け入れの設備をそれに合わせまして進めておるところでございます。
  529. 田英夫

    ○田英夫君 委員長、最後に。  先ほど国家公安委員長から御答弁がありましたけれども、現行犯逮捕をなぜしなかったかという点について、より具体的な担当者の御答弁をいただきたいと思いますので、その点は、きょうおられませんでしたから、保留にしていただきたいと思います。留保をしておきたいと思います。  終わります。
  530. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 以上をもちまして田君の質疑は終了いたしましたが、(拍手)警察庁に対する質疑部分につきましての答弁は、明日これを聴取いたすことといたします。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。午後八時散会