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国務大臣(三木武夫君) 多田君からきわめて多岐にわたっての御
質問がございました。できるだけ私がお答えをして、ほかの大臣の
答弁の要求もございますので、私が
答弁を他の大臣にゆだねる項目もあることは御承知を願いたい。
最初に、ロッキード
解明に対する私の熱意が後退に次ぐ後退であるという御批判がございましたが、私はこの御批判をそのまま受け取るわけにはいかない。多田君がお
考えになっても、やるべきことはやっておるという私は
考えでございます。たとえば、今回の
事件についても、私や
稻葉法務大臣は、一切政治的な介入はせぬと、捜査当局がひとつ法律に基づいて厳正にやってもらいたいという態度を終始とって、
起訴すべきものは
起訴し、また、
児玉ルートに対しては、多少の時間がかかっても、どんな困難であってもこの真相を
究明しなければロッキード
事件の全容は明らかでないと、やってもらいたいという
立場をとり、また、
国会の国政
調査権に対しては、まだ
事件が進行中ですよ、それにもかかわらず、
国会がお決めになった
灰色高官の
範囲に従っていままでの捜査に基づく資料を全部出しますと、こういうことを言って、国政の
調査権に対しても
議長裁定に従って協力をしようとしておるわけでございまして、この態度というものが、ロッキード
事件の真相を
解明したいという私の最初の熱意から後退したという批判は、私はこれは受け取るわけにはいかぬということを最初に申し上げておきたいのでございます。
また、第二の問題は、
灰色高官の定義について野党と
自民党との
見解が違うと、
総理自身はこれに対してどう思うかと。私は、
自民党の
見解は相当覚悟を決めて
自民党が
考え方を出したものだと思いますが、それでも野党との間に隔たりがあることは事実であります。したがって、これは当該の委員会において、なるべく真相を
究明したいという
国会の要望にこたえて一致の線を見出してもらいたいと思うわけでございます。そういう
考え方でございます。
また、証人の喚問について私自身の
見解を聞かれましたが、
原則的には、これはもう
議員であろうが、だれであろうが、例外はないわけでございまして、しかし、だれを呼ぶかということは委員会の決定に——委員会において十分検討してもらいたい。ただし、その委員会の
自民党の委員に対しては、
国民の疑惑を受けないように証人の喚問については十分に検討してもらいたいという注意は私は与えるつもりでございます。しかし、委員会の決定そのものを私自身が支配することはできないことは御承知を願いたいと思うわけでございます。
また、
企業献金をどう思うかということでございますが、まあ私も将来——
企業献金が悪いのだという
考えはない。やはり
企業が、いわゆる自由、
民主主義を信奉する
自民党というものの党の一つの立党の精神といいますか、これに賛成をして
自民党に対して応分の寄付をしたいということが悪だとは思いませんが、やはり将来は政党の運営は党費とか
個人の献金、これを中心として
考えるべきだという
意見に私は賛成の
意見なんです。ただ、それを多田君は一遍にせよということですが、これにはやっぱり段階的に
考える必要がある、これだけの違いであります。その段階的に
考える——たとえば、今度のいままでにないような
政治資金規正法の改正を行って、献金を受けた政治団体の
収支公開をきわめてこれは明朗化したことは事実である。また、寄付の量的な制限や質的制限を加えた。
政治資金規正法はいままで改正されたことはないんです。いろいろな評価はございましょうけれども、これは画期的な改正であると私は
考えておる。だから、その改正の中においても、今後五年たった後には、
個人献金というものを一層強化する方途とか、あるいは会社、労働組合等が拠出する
政治資金のあり方についてもう一遍見直そうということになっておりますから、こういうことも、先般の改正法についてはそういうことも決められておるわけでございますから、この問題は多田君の
考えられるように、できるだけそういう方向に早く持っていくことが理想であるという
考え方は、方向においては多田君の
意見と私は一致するものであります。
次に
個人の、一つの政治家の
個人の
政治献金について
収支の
公開というものがされてないというお話でございましたが、そういう弊害も認めまして、今度の
政治資金の規正法の中には、いままで野放しになっておった
政治家個人への
政治献金については、新たに量的な面と質的な面との受領の制限が相当厳しく制約をされたということで、こういう改正を行ったということで御承知を願いたいわけでございます。この経過をしばらく見てまいりたいと思うわけでございます。
次に、
選挙区制度というものについていろいろお話がございました。この
自民党の小
選挙区
比例代表制、こういうものに対して
総理はどう
考えるかという御
質問がございました。
選挙法というものに対して私は絶対にこれが正しいという
選挙法はないと思っています。いろいろその国の事情によって——
選挙法はまた各党間ルールでございますから、
選挙法というものは一つのルールである。政治のルールですから、その国の事情によっていろいろその国に適した
選挙法が行われることは当然でございますが、大体において、下院
選挙というものは——
衆議院選挙ですね。これはやはり小
選挙区で行われておることが大抵の国の例になっておりますね。しかし、ドイツなどでは
比例代表制を加味しておるわけです。
日本の
選挙制度の審
議会においても、小
選挙区による比例代表ということがしばしば大多数の
意見として
意見が述べられておるわけで、これは確かに一つの方法だと私は思っておるんですよ。いわゆる小
選挙区制に
比例代表制を加味する方法は
日本が検討すべき
選挙制度の一つであるという
考え方を持っておりますが、いま申したように、
選挙法はやはり一つの
選挙のルールであるという見地に立ちまして、この点については各党間においても十分に話し合わなければならぬ問題であると
考えておる次第でございます。
また、参議院の
定数是正の問題、これは一つの大きな問題であるとは思いますけれども、やはり
基本的には、参議院
選挙のあり方をどうするかという全体の問題の一環でも私は実際はあると思うのです。
全国区のあり方というものは私は問題だと思うのです、この
全国区のあり方。この問題は、やはり
選挙に金がかからないという見地から見ましても、
全国区のあり方は再検討すべき時期に来ておると。まあこういう
選挙区制の問題は、やはり単に地方区の定員
是正というものばかりでなしに、皆さんのこの参議院をより一層権威づけるためにも
選挙法というのは重要な関係があるのですから、
全国区のあり方についてもあわせて検討されるべきではないかと私は思うわけでございます。
それからまた、いわゆる公務員の
立候補制限についてもお話がございました。これはまあ
選挙制度の審
議会においてもしばしばこの問題というものは出た問題でありますが、
憲法上のいろいろな規定もございまして、結局は、
昭和三十七年の法改正では、公務員の地位利用による
選挙運動の禁止、地位の利用による地盤培養
行為などの禁止、連座制の強化ということを取り入れて、この公務員の立候補というものに対する弊害の面を除去しようと図ったものであります。この問題はきわめて
憲法上の関係とも関連しますから、慎重に検討すべき問題だと
考えております。
次に、第十七号の
災害についていろいろお話がございました。台風第十七号の
災害救助に関しては、
災害救助法に基づいて、罹災者の救助に万全を期しております。
災害弔慰金の限度額をもう少し上げたらどうかというお話でございましたが、現行の限度額百万円というのは、昨年の法律改正によって改められたばかりでありまして、現在のところ妥当でないかと
考えておるわけでございます。
災害援護
貸付金、この問題については、できるだけ、この需要の増大にかんがみまして、この原資をふやさなければならぬということで、その原資を確保し、それをふやしていくということを重点的に
考えてまいりたいと
考えておるわけで、それは予備費で充当したいという
考えでございます。
また、
個人災害の共済制度については、現行の
災害弔慰金の支給及び
災害援護資金の貸付けに関する法律の立法の過程でいろいろ検討されたのですが、現在のところ、この制度を新設するということはなかなか困難であるという結論に達したわけでございます。
治山治水の五カ年
計画については、これは多田君の言われるように、いろいろ
災害のあるたびに
考えられることは、いわゆるこの根本から、
災害の
基本からこれを防止するという態度、防止するということが
災害防止の中で一番大事なことで、目につかぬことであります。道路とかいろいろその他に比べると華やかではないけれども、
治山治水という問題がこの際もっと政策の中で重点的に
考えなければならぬということを
考えられますので、来年度から始まる
治山治水の五カ年
計画は一段と強化してまいりたいという
考えでございます。
また、長野県のビーナスライン、
スーパー林道などについていろいろお話がございました。また、環境問題についていろいろお話がございましたが、私は、
日本のような狭い領土の中で一億を超える人
たちが
生活をしていくためには、
開発ということは当然になされなければならぬが、その場合にはやっぱり環境を破壊してまで
開発するということに私は賛成はできない。環境を保全しながら
開発をするということでないと、これはやはり
国民の環境を守りたいという要望にもこたえるゆえんでありませんから、あるいはいろんな
スーパー林道の
建設についても、
開発の必要と
環境保全という見地から、どうしても環境の事前
調査といいますか、アセスメントということが、多田君の御指摘のように、必要である。これについては何らかの環境のアセスメントというものに対する制度、体制を
確立しなければならぬということ、多田君と全く同感でございます。
環境庁及び各関係
省庁において、この点は多田君の言われるようなことも含めて検討を進めている次第でございます。
次に、
国鉄運賃などについていろいろお話がございましたが、今回の
国鉄運賃は運賃の
値上げという点ばかりがとらえられますけれども、実は、この
国鉄運賃の引き上げということは
国鉄再建の一環であって、引き上げだけをやろうというのではない。やはり過去の累積赤字に対しては、二兆五千億円にわたるこの赤字は、これをたな上げする、国がめんどうを見るということですね。そして、一方においては
国鉄も思い切った合理化をやる、それでなおかつ、
国鉄の再建は可能であるということで、
国鉄を利用される
方々にも応分の運賃の負担をお願いをしたいというわけでございまして、これはただいたずらに運賃を
値上げしようというのでなくして、
国民の
国鉄、これをやっぱり再建するためにはどうしても運賃の引き上げというものがないと再建は成り立たないということでございますから、この点を御理解願って、この
国鉄の再建案に対しては
国会の御協力を得たいと切に願うわけでございます。
次に、電話あるいは電信の料金についても同じような、これがもし引き上げが行われなければ
日本の電信電話の
経営基盤というものが非常に弱体化する、
国民に対するサービスも低下する、そういう点からも
考えて、この際引き上げをお願いをしておるわけでございます。
次に、
消費者物価の来年度末八%の
見通しはあるのかというお話でございました。物価の動向というものは手放しでわれわれも楽観しておるのではないわけです。絶えずきめ細かい物価安定の
対策をとらなければならぬということを前提にして、
卸売物価の、これがどのように
消費者物価に波及していくかということ、これに対しては十分注意をしてまいらなければなりませんし、いろいろな季節的な
動きなども考慮しなければなりませんが、本年度の末に
消費者物価上昇率八%の政策
目標はぜひ達成したいと
考えるし、政策の
努力によってはこれは達成可能であると
政府は
考えておるわけでございます。
次に、
中小企業について、官公需というものに対する
中小企業への発注というものを確保せよということは、これは
政府も特に気を配っておるわけでございまして、できるだけ五〇%ぐらいまで持っていきたいということが目的でございますが、五十年度の実績は三二・六%を上回る——実績はそうでございましたが、五十一年度にはもう少しこれを、
目標を少し上げていきたいと
努力をいたしておる次第でございます。
それから、
住宅問題については、
老人とか
婦人とか
単身世帯など公営
住宅の開放等、いろいろ
建設的な御提案がございました。まあ第三期の
住宅建設五カ年
計画の中には、公的資金による
住宅三百五十万戸を供給することになっておりますが、これは
住宅需要の実績を十分に考慮した上策定したもので、これは現時点では必要かつ十分なものと
考えております。その公的資金は、いま多田君の御指摘になったような一つの居住の水準を確保するために必要な
老人とか母子
世帯などに対してこれを
考えた一つの案でございます。それから
公的住宅への単身者の入居などについては、これは公社、公団においても実施しておりますが、今後ともこれはさらに進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
さらに、
教育の問題については、いろいろ塾の問題などをお取り上げになりましたが、どうしてもやはり
日本は学歴偏重ということが、塾などが
全国的にいろいろ普及することになりますわけですから、入学制度のあり方とか、小中高等学校の
教育内容の精選などについて
文部省で
改革に手がけておることは御承知のとおりでございます。
それから、
高校の増設などについても、
政府としては、特に人口の急増地帯などによっては
高校の新増設のために非常に苦しんでおるわけでございますから、国の
助成というものを、いままでも強化してまいっておりますが、今後とも強化してまいりたいという
考えでございます。
それから……(発言する者あり)いや、いろいろお答えしないと、
答弁漏れということでお叱りを受けますから。また、
海洋法会議の結論が出ない場合に、十二海里というものを、なかなか決まらぬときにはこれを何とか処置せなけりゃならぬという私の
答弁をとらえられて、どうするのかということでございました。私は、全般として海洋に関する一つの
世界的な秩序ですから、これは全体としての
海洋法会議の結果が決まることが一番好ましいと思っているんですよ、これはね。ところが、私はまあ今年中には
海洋法会議の結論は出るという
見通しであったわけです。私の
見通しが甘かったことは認めますよ。そういうことで、しかし
海洋法会議が決裂ではないんですね。今後一層、来年の五月までに、再開するまでの間各国でもっと内部調節をしようということでございますので、この
海洋法会議の推移等も一体どう予測するかということもにらみ合わして、この十二海里という問題は
考えてみたい。まあできれば、
世界の海洋の秩序ですから、全体の国際条約の中で決めることが好ましいという
考え方をいま持っておるわけですから、もう少し
海洋法会議の推移を見守らせていただきたいという
考え方でございます。
また、二百海里の
経済水域を各国が
設定をするので、
わが国の漁業に対する
影響は多田君も御心配になっていることだと思うんですが、われわれもやはり
日本の漁業——まあたん白質の供給源はやっぱり陸と魚と半々になっておるわけです。その魚の中の四〇%というものはこういう
遠洋漁業によるものでございまして、
わが国というものは、
食糧の見地から見ても、あるいはそういう漁業に従事しておる人々の
生活の安定の面から言っても、非常にこれは重要な問題であるので、いままではこれはまだ
世界的に決められていないのを一方的に決めることは認めないという方針でございますが、結局は、各国との間に
経済協力などをやりながら、この問題は各国との間に多角的に解決していくよりほかないと思っておるわけですね。アメリカとの間にもこれはいま話をいたしておりますが、アメリカばかりでなしに、ほかの国にも認めないと言っても、一方的にこう決められたような場合においても、その国との関係というものを
考えてみると、何らかの話し合いをしなければならぬわけでございますから、この点は今後の
外交的な、非常に多角的な
外交的
努力が必要と
考えております。
また、核防条約については、この条約が批准をいたしましたことによって、軍縮に対する
日本の発言権がふえたわけでございますから、今後
米ソ両国、ことに核を保有しておる中心である
米ソ両国に対しても、その他の核保有国に対しても、
核軍縮という点では一段と
日本は
努力をいたしてまいりたいと思うわけでございます。
また、日中の平和条約あるいは日ソの平和条約については、日ソ間のは、御承知のように、あくまでも四島の返還を求めて、そうしてその上に立って、そして日ソとの平和条約を
締結する。また日中は、もう
わが国は、覇権を求めず、第三国の覇権にも反対するというのは
日本の
基本的な態度でございまして、これは日中の共同声明の中にもうたわれておる文句でありますから、
日本と中国との間に大きな
基本的な開きは私はないと思う。これをどのようにして条約の中に作成するかという点について、いろいろな条約技術上の議論はありましょうが、根本の認識において日中の間に大きな開きはないと思いますから、できるだけ早く日中の平和条約
締結のために今後
努力をしてまいりたいということでございます。
また、
ミグ25の
機体の返還問題というものについてお話がございましたが、二十八日の現地時間午後五時、
小坂外務大臣とグロムイコ外相との
会談の際に、これを返還する用意があるということを申し出ました。私も電話できょういろいろとその詳細の報告を受けたわけでございますが、その具体的な返還時期及びその処置、方法等については、技術的な点もあるので、これは
外交ルートを通じて、そしてソ連側に申し伝えることになっております。これは返還をしたいということでソ連との
交渉に入るということでございます。
それから、南北問題についてもいろいろ御
質問ございましたが、
基本的な
考え方は、これからの
世界の大きな課題は、いわゆる南北の関係をどう調整するかという問題でありますから、
日本はそういう間に立って果たす役割は非常に多い。そのためには、
日本みずからがいわゆる
発展途上国に対する
経済協力、技術協力、
政府援助、これを強化していかなければならぬという方針のもとに、
日本の
財政事情等もにらみ合わして、今後は強化していく方向でこの問題と取り組みたいということでございます。
まあ、大体お答えをしたつもりでございますが、残った問題がございますれば、
各省大臣から補足いたすことにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣稻葉修君登壇、
拍手〕