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参考人(
梅根悟君)
梅根でございます。いま
委員長さんからお話のとおり、時間約十分間で最初に一般的なことを少し申し上げてみたいと思っております。
今回のは「
まとめ」という表現になっておりますが、その前に「中間
まとめ」というのを御発表になっておりまして、各方面の
意見を
審議会はお聞きになっておりまして、私な
ども参りまして
意見を述べさせていただいておりますけれ
ども、そんなわけで中間報告的なことを二回おやりになって、各方面の
意見を聞いて、かなり慎重に
審議を進めていらっしゃるということは今回が初めてかもしれません。その点で私は大変慎重に、そして民主的に
議事を進めていらっしゃることに実は敬意を表しておるわけでございまして、そのことをまず第一に申し上げたいと思います。
この案が近いうちに恐らく最終の
答申になるだろうと思いますし、その
答申に基づいて
学習指導要領の作成が行われるという手順になるだろうと思っておりますけれ
ども、
学習指導要領は、具体的になりますけれ
ども、今回の案は、その
学習指導要領を
文部省でおつくりになりまする場合にこういう点を基本として
考えてほしいというお
考えでございますので、これから実際どんな
学習指導要領ができていくかということが私
どもの今後注目すべき課題であろうと思っております。
で、今回の「
まとめ」につきましては、いま申しましたように、まず第一に中間報告的なことを二度もおやりになったということが第一。それから、一般的に私
どもといたしまして評価に値すると思っておりますことが若干ございまして、過去の二回、それ以前の、三十三年の改革から見ますと今回は三回目でございまして、それ以前のものを別にいたしますと三回でございますが、三回目の
学習指導要領は、過去二回のものに比べますと、もしこの線で忠実な
学習指導要領ができてまいりますとしますと、恐らく三十三年、四十何年かの
学習指導要領とはかなり違ったものになってくるだろう。私
どもが多年要望しておりましたようなこともある程度は実現されるのではなかろうかというふうに見ておりまして、その点は評価に値すると思っております。たとえば、ゆとりのある
教育課程をつくって、しかも充実した
学校生活ができるようにしていきたいという基本方針をお立てになっておりますが、その方針はかなり具体的に守られておると申し上げてよろしいんじゃないかと思うのでございまして、そういう点で、これが具体的にでき上がりますならば、過去のものから比べますとよほど違ったものになってくるだろうと、その点は評価申し上げてよろしいんではないかと思っておるわけでございます。
それから、しかしそうは申しましても、もっと根本問題が入りますと、やはりもう少し根本的に
考えてみてほしかったなあと思う点があれこれございますので、私は、半分あるいは三分の二賛成だが、あとはもう少ししっかりしてくれないか、といったようなことを申しておるようなわけでございまして、
問題点をたくさん残しておられるということを感じておるわけでございまして、きょうはこの両方にわたって申し上げてみたいと思うのでございます。いままでの
学習指導要領によりまして
小中高校ともに非常に窮屈な統制を受けておりまして、
教師も
子供もまあ、あくせくして詰め込み
教育に狂奔してきたといったような実情でございましたが、今度いま申しましたような形で、もし忠実にこれが
学習指導要領を重ねますと、その傾向はかなり緩和されてくるのではなかろうか。まあ、具体的に申しますと、
授業時間数等も在来よりもある程度縮少されておりますし、特にいわゆる詰め込み主義と申しておりますような状況を排除して、個々の具体的なこまごまとした
知識の
内容よりも、むしろ
考え方そのもの、あるいは
考える人間といったようなことを育てていくことに重点を置いていこうじゃないかといったような
考え方が各所にずっと見えておりまして、これは当然のことであるといえばそれまででございますけれ
ども、そのことが実際に行われていないというのが実情でございますから、それが貫かれてきますならば、教材の
内容の中でかなりのものがいわゆる
精選されていって、重要なものだけが、しかも個々の
知識技能よりもむしろ根本的な
考え方の問題を中心にしてやっていこうといったようなことが徹底されてくるだろうという点は、これは評価してよろしいんじゃないかと思っておるわけでございます。と言いながら、先ほ
ども申しましたように、なおもう少し
考えてみてほしいと思っておりますことは若干ございまして、たとえば
教科の種類等につきましては、ほぼ在来どおりという
考え方になっておりまして、三十三年、それから四十三年の二度の
学習指導要領の
改定の場合にいろいろ議論されまして問題になってまいりましたようなこと、たとえば道徳時間を置くか置かないかといったような問題についてはずいぶん議論されました。それは道徳
教育は非常に重要なんだけれ
ども、
教科でない、したがって免許状も要らないような道徳の時間を置いても、それはむだではないかという議論がございましたし、現実にそれがまあ、むだとは言えないにしましても、やりにくくて大変困っているという実情が
現場にございますが、その問題にはほとんど触れておられないといったようなこと。
それから
学校五日制の問題は、これは
文部大臣の諮問の中にもございまして、一般に週休二日制が広がりつつある状況の中で、
学校五日制の問題をどう
考えるかということについても御考慮を願いたいというふうに
文部大臣がおっしゃっておりますけれ
ども、その問題は今回の「
まとめ」には一言も触れていない。したがって、御承知のように時間数は減らされてはおりますけれ
ども、大体現在どおり六日制を原則として、毎日の
授業時間をほぼ五時間と見て、五、六の三十時間程度のことを
考えていらっしゃるようでございまして、その点は五日制の問題をどう
考えるかということについて何もおっしゃられていないのは、やはり
一つの大きな
問題点ではなかろうかというふうに私
どもは
考えております。
それからそのほかにつきましても、あれこれの問題がございますが、それらの問題につきましても大体基本線は在来どおりということになって、その問題には触れないといったようなお
考えでございます。その点はやはりいますぐそれが実現されるかされないかは別として、将来構想として
自分たちはこういうふうに
考えるというふうなお
考え方をお出しになった方がよかったのではないか、むしろお出しになるべきではなかったかというふうなことを感ずる、その点が
一つございます。
で、
教育課程審議会の
あり方の問題、あるいは
審議会の答えをもとにして
学習指導要領ができますけれ
ども、一般的には
教育課程行政と申しておりますけれ
ども、
教育課程行政の
あり方の問題についても一切お触れになっていないということでございまして、やはりいままでどおり
教育課程審議会は、
文部大臣がまあ、天下り的に任命する
委員でもって構成をされるということで、都道府県
教育委員会等には
教育課程行政に関しては何らの権限が与えられていないといったような実情でございまして、これは三十三年の
改定前後から起こってきた問題でございます。戦後改革では都道府県
教育委員会にも若干の権限が与えられておったわけでございますけれ
ども、その辺の問題については一切お触れになっていないということもございまして、等々誉げますと幾つかございますけれ
ども、そういう根本問題と思われますような問題については、一向に御
意見がなくて、大体在来どおりの線を守っていらっしゃるということだけでは、将来の改革構想といったようなものが出てこないのではなかろうかという感じでございます。
それから、
教育課程の中身に関しまして都道府県
教育委員会と
文部省との
関係ということはいま申しましたようなことでございまして、その点については一切触れられていないということはございますけれ
ども、それ以外に各種の
教育研究団体がございますが、そのような研究団体の
意見は一体どういうふうにして反映されたかということについてもお
考えおきを願っておいた方がよかったのではなかろうかと私は思っております。
大体総体的に申しますと、いま申しましたような一定の限度内で、いままでの
学校教育の行き詰まっておりました状況を打開する
ために、ゆとりのある、充実した
学校生活をやっていけるようにしていきたいというお
考えが各方面で、あれこれの段階で取り上げられているという点は評価に値すると思いますけれ
ども、しかし一方から言うと、いま申しましたような根本問題について、やはり依然として在来どおりの線を守っていらっしゃるのではないかという感じでございます。これが総体的な感覚でございます。