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1976-10-26 第78回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十六日(火曜日)    午前十時十六分開会     —————————————    委員異動  十月十五日     辞任         補欠選任      矢原 秀男君     鈴木 一弘君  十月二十日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     藤井 恒男君  十月二十一日     辞任         補欠選任      戸塚 進也君     棚辺 四郎君  十月二十二日     辞任         補欠選任      棚辺 四郎君     戸塚 進也君  十月二十五日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     栗林 卓司君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岩動 道行君     理 事                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 野々山一三君                 矢追 秀彦君                 栗林 卓司君     委 員                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 高橋 誉冨君                 鳩山威一郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 大塚  喬君                 村田 秀三君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    政府委員        内閣法制局第三        部長       前田 正道君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        国土庁長官官房        審議官      紀埜 孝典君        大蔵政務次官   斎藤 十朗君        大蔵大臣官房審        議官       佐上 武弘君        大蔵大臣官房審        議官       額田 毅也君        大蔵省主計局次        長        加藤 隆司君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省理財局次        長        吉岡 孝行君        大蔵省銀行局長  後藤 達太君        大蔵省国際金融        局次長      北田 栄作君        国税庁直税部長  谷口  昇君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        警察庁刑事局保        安課長      柳館  栄君        科学技術庁研究        調整局生活科学        技術課長     久武 啓祐君        大蔵省銀行局保        険部長      副島 有年君        文部省学術国際        局学術課長    七田 基弘君        農林省畜産局食        肉鶏卵課長    甕   滋君        農林省畜産局流        通飼料課長    金田 辰夫君        通商産業省貿易        局輸出保険企画        課長       新井 市彦君        気象庁観測部地        震課長      末広 重二君        郵政省貯金局第        一業務課長    森本 哲夫君    参考人        日本輸出入銀行        理事       林  大造君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  去る十五日、矢原秀男君が委員辞任され、その補欠として鈴木一弘君が、去る二十日、栗林卓司君が委員辞任され、その補欠として藤井恒男君が、去る二十一日、戸塚進也君が委員辞任され、その補欠として棚辺四郎君が、去る二十二日、棚辺四郎君が委員辞任され、その補欠として戸塚進也君が、去る二十五日、藤井恒男君が委員辞任され、その補欠として栗林卓司君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事戸塚進也君及び栗林卓司君を指名いたします。     —————————————
  5. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日参考人として日本輸出入銀行理事林大造君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 野々山一三

    野々山一三君 最初に、北朝鮮という言葉を使いますけれども北朝鮮日本との貿易関係の問題でございますが、ここ数年来私どもの知る限りで申し上げますと、北朝鮮外貨事情が余りよくないということも手伝いましてでありましょう、約二年半くらい前から、日本からの輸出のものに対しまして、一つは、契約が完全に成立をして出荷準備をいたします、LC向こうが何月に開きます、何月に開きます、何月に開きますという状態が逐次相手方から情報があり、確認があるにもかかわらず、実際はLCが開かれない。そのために品物はできて倉庫にいっぱい準備されている、LCは開かれない、そういうような状態のために、メーカー及び商社は非常ないわば支払いが延びておるために、困った状態になっているわけで、ないしは向こうに送ったものに対しましても、それが相当金額支払いがおくれているという状況があると思います。  そこで、私どもの方で調べた限りの実情を申し上げますと、輸出債権の残というものが、延べ払い案件で、金額でいうと六百二十五億の金額になっているものが、これはもちろん輸出保険がついているわけですけれども、それからそのうち一部は輸銀のローンの対象である案件でも約五十億と言われておる。短期案件でも今年度時限で六十億、七十億というものがそのまま支払われていない。こう見まして、これは私細かい数字を持っていますからあれですけれども、私が持っている数字じゃだめですから、一遍詳細に、この輸出債権がどんなぐあいに残っているのか、どんな状態にいまなっているのか、そして国内の商社メーカーというものが非常に困っているわけですけれども、その概算金額はどのぐらいで、いまどんなことが行われているのか——どんなことがというと非常に総称的な言い方ですけれども日朝貿易関係における両国間の、まあ民間ベースでありましょうが、交渉などがどんな状態になっておるのか、その対応策は一体どういうふうに政府としては考えていらっしゃるのか、総論的に一遍その現状をお知らせをいただきたい、こう思うわけです。
  9. 北田栄作

    政府委員北田栄作君) ただいま御指摘のございました北朝鮮に対します延べ払い等債権残高について申し上げますと、これは日朝貿易会での調べた数字でございますが、今年五十一年の一番最近時点で、十月十四日現在で、延べ払いにつきましての債権残高が約六百二十億円、それから短期案件につきましての残高が約百六十五億円、それから近海貿易に関する債権が約七十三億円、合計で八百五十八億円程度と、こういうふうに聞いております。で、御指摘のように、四十九年の秋ごろから一部につきまして債権の返済に遅延が生じてまいりまして、その後北朝鮮側日本側関係者等の間でいろいろとそれについての話し合いが行われたようでございます。で、支払い遅延分が幾らかにつきましては、十月十四日付につきましてはちょっとはっきりいたしませんのでございますが、やはり日朝貿易会の調べましたところで、ちょうど九月末現在での数字を申し上げますと、船積みが済みました分の債権残が七百八十一億円に対しまして、支払い遅延分が約二百六十四億円と、こういうふうな数字を承知いたしております。この点につきましては、現在民間関係者北朝鮮側当事者との間で、そういった債権輸出代金支払い操り延べ等につきましていろいろと折衝が行われているというふうに聞いておる次第でございます。まあ輸出代金関係は、第一義的には通産省の御所管でございますので、通産省の方とも十分連絡をとりながらそういった交渉の進展を慎重に見守ってまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  10. 野々山一三

    野々山一三君 いま御指摘のように、延べ払い案件短期案件を含めまして約七百八十一億と、こういうわけでございますね。まあ見る角度から見れば大きな金額ではないわいという言い方もされるのかもしれませんが、実情から見ますと、中小商社メーカーにとってみますと、これだけのものが本来正常に入金できておれば、去年、おととし、四十九年秋ごろまでにそのうちの大半は入金できておるはずのものでございますね、大ざっぱに言えば。で、一九七七年払いが百十一億、一九七八年払いが八十億、一九七九年払いが六十五億などなど、ずっと一九八三年までの延べもございます。それを加えて、さらに伺うところ、北朝鮮側は二年間支払いを延期してくれ、その間金利は七・五%で日本側言うこと聞いてくれ、というのが、つまり向こうへすでに物を送ってしまったものでございますね。ところが、メーカーの側からすればつくって送った、頭金だけを一部もらった、その残のお金はちょっともこない、それを請け負った窓口商社の側から見ますと、商社窓口に取引をしたんだが、金が支払われないために、問題は二つ一つはまあ後で申し上げますけれども、一部では損害賠償請求メーカー商社間でやり合うというようなことをしなければ資金繰りができない、そのために企業的には非常に危機的な状態に陥ってる、こういう状態がございますが、それ一遍少し御存じ——もちろん御存じだろうと思いますけれども、そういう状態について一遍詳しくお聞かせ願いたいと思います。  で、たとえば一例ですよ、資本金五、六千万円ぐらいの企業が、プラントで五億、六億、七億というようなものを契約して送り込んだと、ところが実際に払われてるものはいままでは二割ないし三割ぐらいが払われて、あとは全部延べになってるわけで、これが二年延ばしてくれいという話なんですね。ところが、その二年延ばしてくれい、金利はどうかというと、七・五という金利でその間延ばしたものを金利保証しましょう、こういう提案のようですけれども、そうしますと金はもらえない、そして同時に金利は、市中金融機関で一体七・五%でいままで融資しておったやつをさらに七.五でそれでめんどう見てもらったら、企業は逆ざやでさらに赤をかぶるわけですね。そういう詳細な事情政府としてはどういうふうにお考えになってるのか、お考えというよりも、具体的な事実をどう知ってらっしゃるのか、どういうふうにお考えになってらっしゃるかというところを実は聞かない限り、というか、そこのところがわからない限り、中小企業商社メーカーとしては非常な経営のピンチに突き当たってるというふうに見ざるを得ないわけなんで、そこのところをひとつ聞きたいわけです。  で、あなたのお話は、日朝貿促からのお話を聞けばこれこれでござんすなんて、人の詰みたいに考えてらっしゃるんですね、と私は受けたんです、いまのお答えは。それじゃ、これは一体政府側としては、中小企業対策だとかなんとかってことを一般的に非常に強くおっしゃるわけですけれども、商売はおまえたち自主貿易で勝手にやったんじゃないか、だから知らねえわ、というふうに言われるならそう言ってもらったらいいと思いますけれども、そうでないならば、一体どういうふうにお考えになってるのか、具体的にひとつ数字状況を示してお答え願えませんでしょうか、お知らせ願えませんでしょうか。
  11. 北田栄作

    政府委員北田栄作君) 御指摘のその支払い遅延は四十九年の秋ごろから発生したようでございますが、その後五十年になりまして、日本の方からも関係者の方が北朝鮮訪問されていろいろと折衝行われたようでございます。それに対して北朝鮮の方としては債務繰り延べをしてくれというような要求があったようでございます。で、これに対しましてまあことしの六月に日朝貿易会の専務の方が訪朝されていろいろ交渉されたことによりますと、北朝鮮側は、いま御指摘のような、たとえば金利は七・五%、それから対象としては一九七四年から期限の到来いたしますものから、一九七八年まで期限の到来いたしますものもありますが、それをすべて二年間繰り延べをしていく、こういうような話であったようでございます。まあこれに対して日本側として、日朝貿易会の方が御提示になったのは、金利としては長期プライムレートに一・二五%をプラスした金利でどうかと、で、対象としては、一九七五年から一九七八年の長期債権のみを対象とし、期間としては二年間でどうであろうかと、こういうような御提案がされて、いろいろ折衝が行われたようでございます。ただそういった話はまだ現在までついておりませんで、まあできるだけ速やかにこういった問題について話をつけようということで、現在日本側の方といたしまして、近く代表団北朝鮮に送って折衝をしようということで、その送られるメンバーとか、そのときにどういう最終案交渉するかというようなことを現在鋭意詰めておられる、こういうふうに聞いておりまして、恐らくまあ近いうちには、そういった折衝が具体的に始まるであろうと、こういうふうに期待して、われわれの方といたしましてはその結果を十分見てみたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  12. 野々山一三

    野々山一三君 つまりあれですか、日朝貿促及びそれが中心になって編成されるであろう代表団が訪朝して、諸般のむずかしい問題は一応別として、相手国との間に折衝をするのを見守るということですと、こういうのがお答えですか。まあそのことについてのお答えはまた後で伺うとして、ついでに申し上げたいんですけれども輸銀側の方ではその約八百億弱の、おっしゃるように二年間の繰り延べ支払い繰り延べをしてほしいという向こう側提案がある、それで交渉する、成り行きを見守る、もし仮に全部——全部というか、そういうふうに話がついたといたしましょう。ついたといたしました場合、仮定の話でございますけれども、そのとき、じゃ輸銀側で、輸銀融資輸出しているものも当然支払い繰り延べというもので代表団が話をつけたとしたら、輸銀が当初契約している融資条件と変わる場合がある。そういう場合には、輸銀としてはどういうふうにお考えになるんでございましょう。
  13. 林大造

    参考人林大造君) 輸銀融資対象となっております輸出案件につきましては、現在までのところほかの輸出案件に比べまして比較的順調に輸出代金の入金はあるようでございますが、もし仮にいまおっしゃったようなことになったといたしましてどういうような状況になるのか、そのときのおさまりぐあいを見ませんと、はっきりしたことはまあなかなか申しにくいわけでございますが、現在の輸銀法のたてまえから申しますと、民間輸出をなさいまして、その輸出債権相手国外貨事情によって支払いが困難になった場合にどういうことができるかという規定がございます。これは輸銀法の十八条の二の三項というところにいろいろと規定がございまして、その輸出先国国際収支上の理由によってその債権履行が非常に困難になったと。そしてその場合に、その債務国に対する債権国日本だけではなくて相当ある。で、その場合に、債務国政府が、日本国政府及びそのほかの数々ある多くの国の政府に対しまして債務履行円滑化を図るために必要な資金の借り入れのあっせんその他の措置をとることを求めた場合におきまして、その相手方から、その債務肩がわり要求してきた場合には、輸銀から相手の国の政府なりその他のものに対してその肩がわりをすることができるという規定がございまして、過去にもそのようなことを行ったことはございます。ただこのような規定は、相手方政府から事情を詳しく話して、日本国政府に対して正式にその話が出てきた場合のことでございまして、したがって、北鮮につきましては、どうもそのような条件には現在当たらないというふうに考えますので、そのような肩がわりはまずできないだろう。  そうすると、輸銀肩がわりをするということができないとすると、輸銀の、日本側輸出社に対する債権繰り延べなりなんなりができるかということが出てくるわけでございますが、そのようなことは現在までのところやったことがないわけでございます。で、ただいま申し上げましたような肩がわりができるような条件があればまた別でございますが、単純に相手方政府国際収支上のぐあいが悪くなって、その金が払いが悪くなったというような場合に、輸銀が従来ありました債権条件を変えまして、そして支払いを猶予するというようなことをいたした前例はございません。
  14. 野々山一三

    野々山一三君 ということは、輸銀法上のたてまえからいって、債権国が数多くあるんで、その数多くあるものが集まってかくかくしかじかということで合意ができなければ、輸銀肩がわりすることはできないと、こういうことでございますか。
  15. 林大造

    参考人林大造君) おっしゃるとおりでございますが、それにさらにつけ加わりまして、相手方債務国政府から日本国政府に対してそのような措置を求めてきたという前提が法律には書かれてございます。
  16. 野々山一三

    野々山一三君 きた場合に……。
  17. 林大造

    参考人林大造君) はい、政府から政府にということが書かれてございます。
  18. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、前者は別といたしまして、後者のお話で、債務国債権国である日本に対して輸銀支払い繰り延べしてほしい、ついてはその間の肩がわりをしてほしいという要望があったときには、これに対応できるというふうにお考えなんですかということが一つ。  それから、話が混乱しては困るんであえて申し上げるんですが、輸銀融資対象輸出をされたものについては、今日までの事情では順調に支払われていると思われるのでというお話でございますけれども、それがいま国際金融局の次長からお話がございましたように、代表団が数次にわたって交渉しているわけです、近く行くであろう代表団話し合いの結果を、成り行きを見ますというその範疇に、いわゆる輸銀融資対象のものも、他の金融機関から融資を受けているもので支払い遅延しているというものを含めて、二年なら二年、三年なら三年ということの繰り延べをしてほしいというようなことになった場合には、それは含まっているわけでございますね。おわかりですか、私の指摘することが。そのものが順調であるからいいやというふうにおっしゃるけれども、必ずしもそれは総括して交渉されていると思われるし、今後も交渉されると思われるだけに、あなたのお話は、繰り返すようですけれども輸銀融資対象のものは順調に支払われていると思うから、それは関係ありませんわい、その他のものが困っているんですわいというように聞こえるわけなんで、そこのところは、そうじゃないぞということを私はちょっと申し上げたいし、そういうものを含めまして、だから二つです、問題は。  債務を受けた北朝鮮側から日本繰り延べをしてほしい、肩がわりをしてほしいと輸銀側申し入れがあったときに、これに応ずる用意があるんですかということが一つ。それから第二は、現に輸銀融資対象輸出しておるものについても繰り延べをしてほしいということで話し合いがついたと仮にいたしますならば、それに対応できる処置ができると考えているのですかと、この二つを伺いたい。
  19. 林大造

    参考人林大造君) 第一の点でございますが、第一の点につきましては、相手方政府から日本国政府に対して申し入れがあったことのほかに、法律規定がございまして、そのことのほかに日本ばかりでなくほかの国も、多数の国もそのような繰り延べ措置をとることが確実であると認められた場合に限りというふうに書いてございます。実際問題といたしまして、過去にこのような条文が適用になりましたのは、たとえば世界銀行なり、その他のところが音頭をとりまして、そこに債務国政府が出て、そうしてその自分のところの国際収支はこういう状況であり、今後こういうふうにするつもりである、自分らとしてはこういうふうに努力するんだけれども、いかんせん力が足りないので、これこれの繰り延べをしてもらえないとどうにもなりませんと、で、こういう繰り延べをしてもらえば、こういうふうに約束したとおりの支払いはできますというようなことが、多数国の間で相談がまとまりまして、そうしてその実行として行われるというのが従来の例でございます。したがいまして、単純に相手方政府から日本国政府に話が来たというだけでは、この輸銀法十八条の二、三項の要件を満たすことにはならないと存じます。  それから第二の点でございますが、輸銀融資対象になっている輸出が、比較的代金回収が円滑であると申し上げましたが、これはほかの債権に比べて比較的というわけでございまして、決して約定どおりにぴちっぴちっと入金しているわけではございません。私どもとしては、やはりそこで輸出業者の方はいろいろと困っておられるであろうと存じております。で、そのような困っておられる輸銀対象となった輸出契約延べ払いの際の履行について、どういうお話し合いが今回の交渉で行われているか、これは私存じませんが、そこで、もしも先生がおっしゃいますように、それも含めまして何らかの当事者間の合意ができた場合に、輸銀としてどう対応するかという問題につきましては、輸銀法のたてまえに照らしまして、ただいま申し上げましたような条件にはまってきますれば、またそのときは考えようがあるかと存じまするが、何分にも北鮮との関係、ほかの国とはいろいろと違う面もございますし、果たしてうまくそこまでいくかどうか、現在のところ確信は持てないということでございます。
  20. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、いまのあなたのお答えですと、国際機関、IMFなどの機関に、まあ例でしょうけれども、そういう機関に、債務国が、外貨事情が悪いので債権国に対して支払いを担保するために何らかの処置をとってほしいということが言われない限り解決はむずかしいんだ、こういうふうに言われたように思うんでございますけれども、その結果として、一つは、その八百億からの金でございますが、それは大手輸出業者である場合は、総体的な輸出資金需要計画の中で、これを持ちこたえていけることが可能かもしれないですね。ところが、北朝鮮などを中心にしているような中小輸出業者商社メーカーにとってみれば、八百億からのものを一社で三十億、五十億というものがある場合などはなかなかこれは持ちこたえができないという状況で、倒産の危機に直面している業者もあるわけです。  そこで、さてこれ大臣ね、こういう事態で会社つぶれてしまえばいいじゃないか、おまえら勝手に自主貿易でやったんだから、その結果、相手国外貨事情が悪いので金が払えないけれども、そんなことは損と考えるよりしようがないじゃないかというようなことを言ってしまっていらっしゃるように、これ読めるわけなんですけれども、そうなりました場合に、つなぎ資金などについてやはり何らかの援助、協力とでもいいましょうか、あるいはつなぎ融資によってその企業倒産という危機を回避していくような処置をとるべきではないかというふうに私は思うんですけれども、総論的に大臣、一体そういうつなぎ融資などに対して、大蔵省当局が中心になって、市中金融機関などに対して、その対応策を考慮してやりなさいというような指導をするお考えはございませんかということが一つ。  それから、先ほどの話に戻りますけれども、国際的金融機関でもあるIMFなどの機関、などということですから例でしょうけれども債権国をも含めてこれは相手国、つまり債務国が主導的に外貨事情が悪いので何とか繰り延べをしてほしいということを言わない限り、この支払い遅延をしている状況に対して適当な対応策をとることができないような状態に聞こえるわけなんですけれども債権国たる日本が、北朝鮮に対しては約八百億でございますけれども、それに対して債権国日本が主導的にこれにアタックするというような方策をもとらなければ、この種の問題解決にはならぬのではないかという気がするわけで、その点をお答えを願いたい。  それから第三に、仮に、いいことではないんですけれども外貨事情が悪いんでその支払いがおくれています、それに対して北朝鮮側に、七・五%の金利でその間繰り延べをした分を勘弁してほしい、こう言う。日本側日朝貿促を初め金融機関あるいは輸出業者を含めての希望は、金利は一〇・四五%にしてもらわなければ困ると言う、それでなかったら、もう利子だけでもそれこそ目減りしていくわけだから、負担が二重に大きくなっているのが現状ですけれども、そういう問題についても含めて解決をしていくように政府側として考えて指導をしてやらねば、今日の輸出入業者、商社などは非常なピンチに直面するんで困るじゃありませんか。  その点についての三点、大臣から御説明を願いたい。
  21. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 大臣の御答弁の前に、最初の先生御指摘の点について御説明をさせていただきたいと思います。  本件、御指摘の点に限らず、優良な中小企業が、金融の拘束だけで行き詰まるというようなことは極力避けなければいけないというのが、私どもの基本的な考えでございます。したがいまして、本件につきましても、そういうような事情から、優良な中小企業が金繰りに困っているというような事態に対しましては、国内金融等の面でそういうことが起こらないように私どもとしてできるだけの配慮をするようにいたしたいと、こう考えております。
  22. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先ほどからのお話を伺っておりまして感じますことは、一つは、いわゆる北朝鮮との関係でございますけれども、外交関係を持つに至りませんけれども、事実上の経済交流につきましては、維持してまいるということをやってまいったわけでございます。したがって、交友関係は、近隣の国でもございまするので、でき得べくんば今後も続けてまいることが望ましいと思うのでございます。したがって、ただいま御指摘のような延べ払い債権債務関係で、当面難渋をいたしておるわけでございまするけれども、この問題の解決も、その問題だけの解決で、あとはどうなってもいいというようなことではいけないのでありまして、日朝貿易関係が、今後安定した基盤の上で実行できるようなことを政府といたしましても考えてまいるべきであろうと思います。したがって、そういうことで、この問題の解決も関係当局とよく相談しながら、また輸銀等ともよく相談をしながら事に当たっていかなけりゃならぬと思います。  それから、国際機関の問題がございますが、IMF等に債権国としても当たらなければならぬというような問題でございますが、これは私とっさによく国際機関の規約がどうなっておるのか、いまつまびらかにいたしませんけれども、これとても、先ほど申しましたように、日朝貿易が長期の展望に立って推進ができるようなぐあいに関係国際機関の協力も得なければならぬことは、得べきものは得ていくように努力してまいらなければならぬことは当然でございますし、債務国は当然これに努力しなければならぬことでございますが、それに債権国としてお力添えをいたして有効な場合、有益な場合、それは当然考えていかなければならぬと思いますが、その点よく検討さしていただきたいと思います。  それから、現に北朝鮮側からの御提案があって、いろいろの条件を提示されておるようでございまして、それにつきましては、私ども直接当事者でございませんが、当事者間のお話し合いをよく伺った上で、大蔵省といたしましても御相談に乗らなければならぬ点につきましては、今後御相談に乗ってまいるつもりでございます。
  23. 野々山一三

    野々山一三君 時間がありませんから、いまの二つの点で、私の知っている実情を申し述べながら、さらに前向きに対処していただきたいということで、二点お伺いをいたします。  その一つは、代表団が近く何度か目の交渉に訪朝をされるに当たって、日本金融機関は必ずしもそれは前向きにこの事態を、融資の面で、あるいは支払いが延びておることのために、これを繰り延べするというようなことについて、あるいは金利面で、業者との話し合いでは、全く機械的にと言っちゃ言葉が悪いかもしれませんが、あんまり積極的じゃないですね。したがって、いま銀行局長おっしゃられたように、金融面でできるだけ前向きに、業者のピンチを耐え抜けるためにめんどうを見るようなことについて指導をしたいと思っていますとおっしゃるけれども実情が積極的じゃない。おまえたちが勝手にこういうことで話をつけて、こういうことで契約して、こういうことをやったのだから、それはもう業者自体の問題じゃないかと言わぬばかりの姿勢であるのが現状で、したがって、もっと現実的に申し上げると、十月の中旬ごろには代表団を編成し、その編成に当たっては金融機関、業者、商社メーカー、それから日朝貿易促進会と一緒のチームをつくろうではないかというのに対しても、必ずしもあんまり積極的にそれに加わろうと、加わると自分たちが泣き寝入りをしなければならぬというか、ある程度金融面でも金利面でも朝鮮側の言い分に乗っからなければならぬことになってしまうから、金融機関としては損、だから、そんなものには必ずしも乗りたくない、こういう姿勢が非常に強いのであります。この点をぜひ——ここでお答えは、前向きに対処いたすように指導いたしたいと思っていますと、こうおっしゃるけれども、現実の問題は、もう代表団の編成に当たっても、なかなかむずかしいという実情を大臣よく心得て、ひとつ行政機関としても、金融機関に対して、このピンチを乗り切るために協力をしてやってほしいという指導をしてもらわなければ、問題解決にならないじゃないか、これが一つ。  それから、つなぎ融資の面についてもう十分考えましょうというニュアンスに聞こえるのですけれども、実際はなかなかそんな調子じゃございません。この点をひとつつけ加えて、積極的な救済策というものについて取り組んでやってほしいということです。これはひとつ後でお答えをいただきたい。  それから、輸銀の林参考人に申し上げますが、あなた先ほど、輸銀融資対象輸出をしているものについては、比較的順調に支払われていると思う、こうおっしゃるわけでございますけれども、そんな特別の事情があるわけは私はないと思います、私の知る限り。この場だからきれいにおっしゃっていらっしゃる。けれども、それはそれと仮にして、輸銀融資対象のものとして輸出したものと、輸銀以外の機関資金融資をして輸出しているものと含めまして、二年繰り延べ金利は幾ら幾らとなった場合に、これに輸銀が応じる姿勢があるのですかというような趣旨の質問をしたのですけれども、ここのところはお答えがないわけです。これは流動的にというか、実情に合わして処置をしますとでもおっしゃるのでしょうか、いかがでしょうか、その二点。
  24. 林大造

    参考人林大造君) この輸銀の業務で、先生御指摘輸銀融資対象になりましたものにつきまして、何らかの措置がとれるかという問題でございますが、これは先ほどからるる申し上げておりますとおり、相手方の、債務者の属する国が、国際収支上の困難に陥ったという理由だけで処置することはできないたてまえでございまして、そのほかにいろいろな加重した要件がつけ加わりませんと、この法律規定を無視していろいろなことをするというわけにも、これはまた輸銀の立場上できないわけでございます。その交渉の具体的な落ちつきがどうなるかよくわかりませんけれども、普通の考えでいきますと、まず非常にむずかしいと、全く不可能といま断定し切ってしまうことはあるいは行き過ぎと存じますが、実際問題として非常にむずかしいのではないかという、現在まだ仮定の問題でございますから、感じを申し上げている次第でございます。
  25. 野々山一三

    野々山一三君 結局そうすると、とりあえずはどうも可能性として私は、支払い繰り延べ状態で落ちつくのではないか、そういう状態に落ちついた場合に、輸銀融資対象案件も、他の機関からの融資を受けた輸出案件も、いずれも業者にとりましては支払いがないわけですから、当然資金繰りに非常に困る——つなぎ融資という問題は共通して起こる問題でございます。これはひとつ大臣、金融機関、銀行局もそういう事態であるだけに、つぶれちゃって、会社が倒産しちゃって、それでいいわいというわけにはいきません。その事情を正しく受けとめていただいて、これに十分対処できるようにひとつぜひ指導をし、協力をしてやってほしいという私の希望でございます。これはひとつぜひそういうふうに考えて…−。  そこで、いま機械的にと言われる輸銀法十八条の条件をぴしゃり機械的に、前向きに——前向きというか前面に押し出して強調されますと、どうしたって輸銀融資対象案件支払いがおくれてくる、したがって、どっかの機関からつなぎ融資を受けて輸銀との間の処理をしなければならなくなるのじゃございませんか。そういうことになってしまうとすれば、一層両びんたを食らったようなことになる。これは債務国である朝鮮側の外貨事情が悪いからということを言えば、それまでの事情かもしれませんけれども輸出した業者にとっては大変なピンチにぶつかる。それでは困るわけだし、大臣のお答えになった趣旨から言っても、それに合わないわけでございますから、そういう輸銀との間における支払いがおくれているものについても、それから他のものについても、つなぎ融資というものについて積極的な対策を考えてやってほしい、簡単に申し上げて、そういうふうにお答えがあったものなりと、こう考えていいかどうか、念のために最後にお伺いします。
  26. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 交渉代表団の編成でございますとか、つなぎ融資でございますとか、いろいろな当面の問題で金融機関の協力を要請されたわけでございますが、申すまでもなく、われわれの経済の体制、自主的な責任がまず第一にあるわけでございますから、そういうことを前提といたしまして、国の方でも、また金融機関においても、それだからといって不親切であっていいということにはならぬわけでございますので、出てきた問題につきましては、親切に御相談に乗って差し上げなけりゃならぬものと思います。御指摘の点につきましては、われわれの役所といたしましても注意して対処していきます。
  27. 野々山一三

    野々山一三君 あと、この問題に関連して通産省の方に承りたいんですけれども、先ほど来申し上げておるように、この状態でいきますと、企業的には非常なピンチに突き当たっており、これらのものは全部輸出入保険に入っていることは当然のことでございます。で、一般論でございますけれども、最悪、ひとつ前提として言えば、代表団が行って協議をいたします、話がまとまらぬかもしれない。そのために起こる損害というものは当然輸出——まあ損害という言葉はいいかどうかわかりませんが、損失は輸出入保険の適用対象なわけでございます。いまのところはまだその保険求償の申請をしていないわけでございます。保険の給付を受けたとすることは、イコールその輸出業者と北挑戦との間は事実上もう貿易は中断してしまうというような事態になるかもしれない。かもしれないけれども、なおかつやっぱり企業が倒産しないでいくということが当然だし、それをまた別な意味でそういう損失をできるだけ最小限に食いとめるためにというのが、輸出入保険制度の原則だろうと思う。そういう意味では、最悪の場合に輸出入保険の適用申請をされた場合、これに対して通産当局としては保険求償をするという考え方がおありかどうか、その点について承りたい。
  28. 新井市彦

    説明員(新井市彦君) 一般論といたしまして、事故が発生いたしまして保険金請求が行われた場合には、これは輸出保険法の法律、それからまあこれに付属しております約款等ございますが、これに照らしまして十分に審査いたしまして、で、保険事故として認定した場合には、保険金を支払うということになるわけでございます。北鮮の場合には、これまでいろいろ御質問ございましたように、まだ保険金請求がされておりませんので、民間ベース債権繰り延べ交渉が行われるわけでございますので、その行方を慎重に見守ってまいりたいというふうに考えております。
  29. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、最悪の場合支払いがなされない。もう二年も三年もという——三年も過ぎているものもございますけれども、そういう状態であるだけに交渉の成果を見守りたいが、最悪の場合は申請があれば適用せざるを得ない、求償をしなければならない、こういうのが通産当局の考え方だと、こういうわけでございますね。それだったらそれをひとつお答えをいただきたいし、こういう事情にあるだけに、一般論としてこのごろニュースでちょっと伝えられているように、社会主義圏諸国が外貨事情が悪いので、諸般の貿易関係について障害になるのではないかというようなことが伝えられているわけで、さてその段階であるのにかかわらず、通産大臣は常に輸出イコール日本経済の浮揚、安定なんだということを終始言ってらっしゃるわけでございまして、それだけに現状そういう諸国との間、わけても申し上げた北朝鮮との間というのは非常に厳しい、苦しい状態であるだけに、業界ないしはややセンター的な役割りを持っている日朝貿促などとも十分に今後の貿易関係について、経済交流関係について話し合って、この種のような事故が起こらぬような協力、指導というものをやってほしい。そうしなければ、貿易はしちゃいました、事故は起こりました、保険は払いましたということだけでやっていれば、もうこれは何にも行政というものも政治指導というものも必要なくなってしまうというふうに考えられるので、その二点について改めて簡単に承りたいと思います。
  30. 新井市彦

    説明員(新井市彦君) 御指摘のとおり輸出の促進というのは大事な施策になっておりますけれども、一方、私ども輸出保険の立場から見ますと、なるたけ事故が起こらないようにする、非常に事故が起こりそうな場合には、極力それを避けるというふうな、これは輸出保険としてやむを得ない立場でございまして、そこら辺相反する要請でございますけれども、慎重にケースバイケースに検討して対処してまいりたいというふうに考えております。
  31. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、それはそのあなた方の誠意、努力というものを見守りたいと思いますので、関係機関のひとつの積極的な御協力をいただきたい。  次に、関税定率法に基づく問題で、関税当局及び農林省に伺いたいわけですが、時間が十分ありませんので簡単に申し上げます。日本全体としては、総論的に言いますと、家畜飼料、これはいわば自給するほどの生産能力がないわけだと私は思います。そこで、どうしても輸入ということにある程度期待しなければならない。その中で、たとえば、たとえばと言っても具体的に申し上げた方がいいかもしれませんが、トウモロコシ、コウリャン、大豆なんというものにつきましては、飼料として輸入する場合には、これは一定条件があって無税になっている、関税が。ところが、カンショ——サツマイモですけれども、このサツマイモは固形物であると、粉末であるとを問わず、固形物の場合は一五%の関税がかかる、粉末である場合は二五%の関税がかかる。これはでん粉質であるからという論拠だと思います。ところが、コウリャンの場合は、飼料であったらこれは無税、それから食品になった場合には有税ということになっているわけですが、どういう違いがあるんでしょうか。片一方同じようにえさ——えさという言葉は悪いですけれども、飼料であることに変わりはない、片一方は飼料であっても税金がかかる、片一方は飼料であったら税金がかからない、こういうふうになっているわけですが、その根拠は一体何でしょうか。これは農林省及び関税当局、両方に一緒に聞きたい。
  32. 額田毅也

    政府委員(額田毅也君) お答えいたします。  飼料——輸入商品といたしまして、先生御指摘のようにコウリャン、大豆かすあるいはイモ等があるわけでございますが、仮に御指摘のトウモロコシについてみますと、トウモロコシは年間七百五十万トンぐらい輸入しておりまして、実は日本におきます生産量というのは、五十年で見ますと一万四千トンにすぎないわけでございます。したがいまして、国内で全需要の〇・二%ぐらい、これは恐らく日本の風土に余り合わないと申しますか、あるいはつくっても非常に値段が高い、こういう性格からほぼ全量を輸入している。一方御指摘のサツマイモでございますが、これは五十年度の生産量が日本におきまして約百四十万トンぐらいある、主として日本の中部、南部を中心として生産が行われている。そういうことから、やはりサツマイモの耕作者という方々は、このサツマイモに依存して農業経営をやっていかなければならぬというふうな立場の方が非常に多いわけでございます。そういうことで、トウモロコシにつきましては、飼料として輸入する場合は畜産経営というふうな問題も考えまして無税である。サツマイモの方は現在御指摘のようにイモとして、あるいはイモに近い形で輸入されます場合は一五%、加工品になりますと価値が上がりますので、でん粉の場合は二五%、こういうふうなことで、国内のイモ作産業といいますか、イモ作を保護していく、こういう状況でございます。
  33. 金田辰夫

    説明員(金田辰夫君) 飼料につきまして無税になっておりますのは、一定の条件を備えまして末端まで飼料として供給されることが確実である、したがいまして、横流れの心配がないという状態を承認工場制を活用しましてやっております。したがいまして、食糧と違いまして国内産の原料とは競合しないということを確認するということを前提にしております。
  34. 野々山一三

    野々山一三君 先ほど審議官おっしゃったカンショは国内生産百四十万トン、これ輸入はどのぐらいですか。
  35. 額田毅也

    政府委員(額田毅也君) お答えいたします。  カンショの輸入というのは特恵した実は項目がございませんで、イモ類として実は統計上に出てくるわけでございますが、最近の状況を調べてみますと、カンショあるいはキクイモというふうな統計によりますと、五十年で全体といたしましてカンショ等で約二千トン強くらいの輸入かと存じております。
  36. 野々山一三

    野々山一三君 大臣、いまトウモロコシは七百五十万トンに対して一万四千トンですか、それからカンショは百四十万トンに対して二、三千トン、きわめてカンショの輸入が少ないわけで、その輸入の少ない状態のカンショが、飼料としては最近顕著に、特に乳牛に対する飼料としては非常に有効である。そこでこれを輸入をするというと、歴然として飼料として輸入をいたしますと、一五%の関税がかかるというわけですが、耕作者保護というお話がございましたけれども、耕作者保護といっても、百四十万トンに対する二千トン内外のものが輸入をされるというものに関税をかけなければならないほど、耕作者保護という次元で必要な理屈があるんでしょうか、私は非常にわからぬ。これが飼料として乳牛なんかに与えられるということは、関税分だけまるっきりこれはどうしたってコストにかかってくる、こういうわけです。しかも、この実情を申し上げますと、カンショを最近テスト用に輸入したわけでございますけれども、これは加工も一切しないままカンショの乾燥物をスライスしたもの、そのまま配合飼料としてまぜ合わせてミックスさせて与えなくたって、牛はほかのものは食わぬでも非常にそれを食う。しかも、乳を出すことについては非常に数割よくなる。けれども税金がそれに上乗せされる、こういう現状でございますね。これはまさにいまのお話を聞いている限りで簡単に比較して見まして、トウモロコシとカンショを並べて見まして、片方税金かけぬで、片方税金かけなければならぬ理由がちっともわからぬ、これが一つ。この理由があったら、ひとつわしみたいなやつにもわかるように教えてほしい。  それから第二番目、もう時間がないから、どんどん言いますけれども、関税定率法の十三条には「左の各号の一に掲げる原料品で輸入され、その輸入の許可の日から一年以内に、税関長の承認を受けた製造工場で当該各号に掲げる製造が終了するものについては、政令で定めるところにより、その関税を軽減し、又は免除する。」先ほど申し上げましたように輸入いたします。袋でまいります。これをそのまま飼料屋さんに渡します。ないしは飼料屋さんが直接輸入する。需要家である畜産家にそのまま渡される。そこで袋を破ってそのまま食わせれば、そのまま牛は飛びつくわけです。加工工場も何も必要ない。一年間で加工されて製品として出される場合には減免をされると、こう書いてあるんですが、そういうプロセスを経なくてもそのまま飼料としてなるというとなんです。問題は、でん粉質ですから、他に転用されるということが行われないということが手続上、法制上担保されれば、私は、こういう資源は、なるほど日本の農家はイモをつくらぬでもいいわいなんて、そんなやぼなことを言うつもりは毛頭ないんですけれども実情から言いますならば、こう  いうものについて一五ないし二五%の税をかけなければならぬという理屈は一つもわからない。で、これもわかるところがあったら、わしにわからせる理由があったらお知らせ願いたい。いや、そんなことはもうどうでもいいわい、お前の言うとおりだわい、税金はこれは減免するような措置を講ずることがいいわいと言われるならば、農林省がどうも——大蔵省側の説明を聞きますと、農林省が非常に強いガードになってきまして、そのあれに税金かけなければいけないと、こう言っているから、これは税金かけるんですと、こうおっしゃるんですけれども、農林省はいかがでございましょうか。大蔵省は一体本当ですか。こういうことを聞きたい。
  37. 額田毅也

    政府委員(額田毅也君) 大変にむずかしい御質問でございますが、もうすでに先生御承知のことかと思いますが、繰り返さしていただきますと、やはり関税の機能といたしまして、国内に産業というものがあって、それによって生計を維持し、あるいは事業を営んでおる方がおられるということになりますると、輸入品との競合というものによって急速にそういう産業が、たとえば衰退するということになればいろいろの影響が、社会的にも影響が出てくるということで、実は保護関税の考え方によって関税がしかれておるわけであります。で、御承知のように、イモ作の生産といいますものは、漸次減少はしてきておりますものの、やはりその農作によって生計を維持し、あるいは農業経営をやっておられる方も多いということで、特に農産品関係につきましては、日本の農業のいろいろな事情から関税がしかれておるものが多いわけでございます。で、そういうことで、カンショについて現在一五%ないし二五%の関税が求められておるということは、ひとつ御了解賜りたいと、こう思うわけでございます。  それからもう一つの問題といたしまして、しからば、そういう一般的な関税率の問題以外に、たとえばこれを配合飼料というものだけに着目いたしまして、関税上どう扱うかということでございますが、基本的にはいま申し上げましたように、国内のイモ作農家の生産する商品にきわめて近い商品、いわば切り干しカンショのようなきわめて近い商品でございますから、同じ商品が輸入されるということにつきましては、やはり国内生産の保護という点も十分に考えつつ行わにゃならぬことであろうかと思うわけです。そういう意味で、やはり農政上にはこの問題はいろいろ問題がある事柄であろうと思います、現実的には。で、そういう点でございますから、農林省とよく相談をいたしまして、この問題を検討さしていただきたいと思うわけでございます。で、その際に、御指摘のように、いかにして転用を防止するか、たとえば配合飼料なら配合飼料として物を取り扱います場合にも、いかにして転用を防止するかということは、やはりこれは流通面で競合いたしますだけに重要な問題であろうと思います。そういう点もあわせ、農林省にも協議いたしましてよく検討したいと考えております。
  38. 金田辰夫

    説明員(金田辰夫君) カンショの切り干しば、国内においても生産がございまして、国内生産保護の立場から輸入原料につきましては、関税のほか、関税割り当て、あるいは輸入削り当て等を行っているわけでございます。これは同種のカンショ切り干し等が国内飼料に流通する場合には、国内生産農家に重大な被害を及ぼす場合もあり得るんじゃないかという懸念からそういう措置を行っているわけでございまして、輸入については慎重な検討が必要だろうと思います。しかし、一方えさの立場から申しますと、輸入飼料原料の量的な、価格的な安定ということもきわめて重要なことでございますので、いま御指摘になりましたような各種の横流れ防止措置が可能かどうかというものを検討しまして、関係当局と調整を図ってまいりたいというふうに考えております。
  39. 野々山一三

    野々山一三君 審議官、一生懸命おっしゃるけれども、先ほども言われた百四十万トンに対する二千トンは一体どんな理由で——あなたもイモをつくったことがあるかどうか知らぬけれども、どんな理由で日本の耕作者に障害を与えるんですか。  それから、それほど理屈を言うならぼくはもっと聞くけれども、戦争当時ないしは終戦当時のイモ作農家というものと、いまのイモ作農家の比率はどうなっていますか。  それから、もっと聞きますけれども、転作奨励金というものは、一体どういうふうにそれでは変わっているんですか。法律の名前は一緒だけれども、中身は全然変わっているじゃありませんか。そういうことをお考えにならないで、かったと言っちゃ申しわけないが、これからどんどんふえるかもしれません、それは。しかし、いまは百四十万トンに対する二千トンじゃありませんか。それをどうして耕作農家保護なんという理屈で、機械的にこれが関税をかけなければならぬという理屈にはぼくはどうしても納得できませんよ。そこで、あなたの方で言い分があるならあとで聞きましょう。別な機会に聞きましょうよ。一遍ぼくと議論しましょう。  農林省の方に聞きますけれども、そういう事情であるのに、いま関税が、おっしゃるところによれば、他に転用、流用されないということが担保されるならば、飼料としてこれを無税にすることについて、あなたの言い方は前向きに考えたいというお答えなんですか。飼料が足りない時期であるのでという前提でですね。そこのところをはっきり、もう一言で結構です。
  40. 金田辰夫

    説明員(金田辰夫君) 飼料の量的な、価格的な安定供給という立場からは、飼料の供給源が多角化するということは非常に望ましいことじゃないかというふうに思っております。
  41. 野々山一三

    野々山一三君 もう一遍。
  42. 金田辰夫

    説明員(金田辰夫君) 私が申し上げましたのは、飼料の供給に量的にも価格的にもできるだけ安定性を持たせるということが、われわれの目標でございまして、その場合、いろんな飼料資源がかつ安価に入るということは、それ自身としては望ましいことであるというふうに考えております。
  43. 野々山一三

    野々山一三君 安定的に安価に入るということならば考えてもいいということですね、恒久的に。  そこで大臣、きわめて簡単と言っては申しわけないんですけれども、政令の定めるところにより、これを減免することができるという、その政令をぼくはよく知らぬものだからよく読んでみたら、関税定率法施行令の六条の二の「配合飼料」という欄に、「輸入原料品」のところにカンショというものを加えれば、これで全額無税になるということなんです。政令でこれは直せばいいわけです。ここにカンショという二文字を入れればそれでいいわけです、それが粉末であると固形品であるとを問わず。ただし、転用論というものがあるだけに、極端な言い方で相済まぬのですけれども、粉末にしておるものは、たとえばハルサメをつくったり何々をつくったりということになる可能性があるので、固形物として、私流に考えれば、相手側との契約条件の中に、飼料としてこれを使うんですということが契約条件の中に明示される、そして通関するに出たってそれがちゃんと確認をされ、最終需要者にそれが飼料として完全に与えられたんだということが義務として報告をされ、それが確認され、それが転用をされたということになるならば、法律によって追徴するわけですね。一年を越えて、なおかつそれが転用されたということになれば税を追徴するわけでございますから、そういうように悪いことをしたら税金を取りますよということがきちんと制度上担保されれば、これはもう政令でそこに二文字加えれば当然無税になるということなんでございます。  しかも、これはもう細かいことはお話しする時間がございませんからやめますけれども、飼料源というものがいま大体あれでしょう、大ざっぱに見て六割ぐらいが輸入されなければならない。粗飼料の問題がそういうような現状の中の一つなんです。それが一つ。だからこれはいかがですか、大臣どういうふうにお考えになりますか。  それからトウモロコシ、丸い棒にこう幾つかついていますね。あそこのもとのくっついておったら飼料で、そこちぎって取ったらコーンになるからあれは人間の食い物だ、こういうように法律に書いてあるんですか。書いてないでしょう。コーンは、トウモロコシはこれは無税だ、飼料であれば無税だ、こうなっているわけだ。それでしかも、関税率審議会でも、カンショや何かについての生産保護ということもあっていろいろ議論があるけれども、それらはもっと合理化をしなければならぬという答申が出ているんじゃございませんか。附帯決議が出ているんではありませんか。そういうようなことから言っても、関税率審議会でも前向きに飼料は飼料として無税にするということをお考えになっている意見がたくさんある、多分にあるというふうに私は思うんですけれども、そういうことを踏まえてこれは政令を変えるというお気持ちはないでしょうか、端的にずばりこれは大臣に。これはもう政治的判断だと思いますよ。お役人さんに幾ら聞いておっても、いまわからぬような話ばかりしていらっしゃるんで、ずばり大臣に伺います。
  44. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まああなたのお話も、飼料用のサツマイモも問題であるということ、それから転用というものは防止せにやならぬと、そういう趣旨のように拝聴しましたので、まあこれは農政の問題も配慮されてのこと、関税法の厳正な運用の問題もお考えになられてのことと思いますが、農林省とよく相談させます。
  45. 野々山一三

    野々山一三君 最後に。これは私ずばり申し上げて二つです、大臣、関税率審議会の委員の皆さん意見を聞きました。しかし実際は、カンショというものは余りほとんど輸入されていないので、いままではでん粉という次元でものをながめて税をかけるというような傾向にありましたが、これはもう税をかけないという、量から言っても実情から言っても、しかも、利用関係から言っても、これが農家の保護という次元から言っても、税をかけなきやならぬというふうには私は余り考えていませんという方がたくさんいました。一遍調べてください。そのことをひとつぜひ頭に置いていただきたい。  それから、繰り返すようですけれども、百四十万トンに対する二千トン、三千トン、せいぜい一万トンといったところで、これは知れたものですよ。これのひとつ、もし何なら大臣と一緒に見に行ってもいいですよ、牛に食わせて乳が出る度合いがどのくらい違うかというものを、加工しなくても何もしなくても、これはそのまま喜んで食われているという事情を十分お考えの上で、ひとつぜひ関税率審議会に速やかに諮っていただいて、その審議会での経過の議論を踏まえてこれを無税化するということが、私は客観的に見ても、飼料資源という次元から見ても、関税をかけなければならぬという理屈はどうも納得できないということを率直に申し上げながら、前向きに検討するかどうか考えてみますとか、相談してみますという話はよう聞く話でもうわかりましたからね、もうちょっと前向きにお考えになるかどうか、そこのところをひとつずばりお答えいただきたいと思います。
  46. 中西一郎

    ○中西一郎君 私、関連で資料要求したいんですけれども、いまえさの問題に限られた御議論のように思いますが、糖化用あるいはコーンスターチですね、化工でん粉、そういう分も含めて、でん粉原料になる各地からの輸入がありますね、割り当て関税制度を今日とっておられる、そういうものを含めてでん粉関係の関税体系と、それからそれぞれの用途ですね、用途別に違うらしい。数量的にも無税の分とか、一〇%関税とかいうのがコーンにある。その全体を一覧表にして提出していただきたいと思いますが、そのことも含めて御答弁いただければありがたいと思います。
  47. 額田毅也

    政府委員(額田毅也君) 先ほどの資料については後ほど調製いたしまして、お届けいたしたいと思います。
  48. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 野々山委員の御質疑に対しましては、農林省を初め関係当局と御相談の上、前向きに検討いたします。
  49. 野々山一三

    野々山一三君 ほかに質問したいことがありますけれども、ほかの人が質問の要求がございますから、私はほかの問題はきょうはやめさせていただきます。経済企画庁の方もおいでいただいたんですけれども、私から伺うことがあるんですけれども、きょうは留保いたします、あしからず。終わります。
  50. 大塚喬

    ○大塚喬君 幾つか質問いたしたいと考えておりましたが、時間の関係で、あるいは予告された東海地震、これに関連して地震保険、この問題に質問が限られるかと思いますが、できるだけひとつ簡潔に要を得た答弁をいただきたいと存じます。  毎年九月一日、震災記念日近くになりますと、報道機関も大きく取り上げますし、これに伴う大災害あるいは対策の問題が話題になるところでございますが、時期が過ぎればどうもそのことがしり切れトンボになってしまう。こういう心配や杞憂というものが、杞憂だけで済むならば問題がないわけでありますが、去る八日の日本地震学会では駿河湾に関東大震災以上のマグネチュード八前後の巨大地震があすにでも起こる可能性がある、こういう衝撃的な警告が出されたわけであります。これは地元静岡関係の住民だけでなくて、過密化の首都圏あるいは東海。近畿の大都市、ここの住民は大変な不安を感じておるわけでございます。この研究発表を立証するように、衆議院の科学技術振興対策特別委員会で十三日に、萩原地震予知連絡会会長も、駿河湾沖が最大危険地域でマグネチュード八クラスの直下型になり、影響は非常に大きい、こういうことを指摘され、この観測の強化を訴えておられるわけでございます。仮に予言どおりの地震が発生した場合には、木造建築の三〇%が大破するか、あるいは倒壊をする。それだけでなくて、日本の動脈である東海道メガロポリスは直撃を受けて壊滅的な打撃を受けるだろうと、これは東工大の力武教授の話でございますが、地震の被害は一時的な震動による被害だけではなくて、津波あるいは火災、こういうものの被害の大きいことは関東大震災の経験もありますが、それの何十倍、何百倍と、こういう話でございますので、まことに私どもとしてもショッキングな大きな不安でございます。  で、所管事項であります地震保険の質問に入るわけでありますが、その前段として本日は関係省庁の皆さん方にも御出席をいただいておるものですから、科学技術庁あるいは国土庁、気象庁、文部省、これらの関係の方々に、これらの問題をどう受けとめて、これの予知の対策あるいは防災対策、こういうことについて現在どのように対策を進めておるか、初めに科学技術庁からひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  51. 久武啓祐

    説明員久武啓祐君) お答えいたします。  東海地方におきましては、昭和四十九年に同地域が地震予知連絡会によりまして観測強化地域に指定された時点におきまして、科学技術庁は特別研究促進調整費を支出いたしまして、東海地方における地殻活動に関する特別研究を実施しております。この実施機関としては気象庁及び国土地理院が含まれております。その後五十一年七月になりまして、科学技術庁の事務次官が主宰いたします地震予知研究推進連絡会議を開催いたしまして、東海地域等の観測強化地域に対して関係各省庁が観測の強化を図ることを申し合わせております。また同じくその推進連絡会議は九月二十日に幹事会を開催いたしまして、東海地域への対応を協議いたしましたが、その時点では学者あるいは専門家の集まりであります測地学審議会や地震予知連絡会が同地域に対する専門的な見解を出すのを待つという結論になった次第であります。しかしながら、その後の地震学会における発表、国会における論議等にかんがみまして、推進連絡会議としても緊急の対応策の検討を開始いたしまして、同推進会議の技術専門委員会を十月二十二日に招集いたしまして、同地域に対する当面の研究観測体制について検討しておるところでございます。
  52. 大塚喬

    ○大塚喬君 できるだけ具体的にひとつ答弁をいただきたいと思いますが、次に、気象台関係の方からこの問題について説明をお願いいたします。
  53. 末広重二

    説明員(末広重二君) 御説明申し上げます。  ただいまお聞き及びのとおり、予知連絡会の見解発表を受けまして、測地学審議会でも建議が出されましたし、また行政レベルの相談をするいまの促進連絡会でも具体的な効果が示されましたので、私どもは四十九年以来この東海地域に——詳しいことは省かしていただきますが、各種の新しい地震計を設置し、また昨今話題になっておりますひずみ計も先年度、また今年度もこれを増強しております。また、さらにこれは将来計画でございますが、問題となっております海域、地震は恐らく海の下で起こると思いますので、その直上において観測をすべく、海底地震計の開発を目下鋭意進めておる次第でございます。  なお、地震予知ということは現時点ではまだ可能の域に達しておりませんけれども、先生おっしゃいました津波ということに対しましては、地震の直後に警報を発することができれば相当の防災につながるわけでございまして、この津波警報、注意報の発表体制はすでに気象庁で整っております。  以上でございます。
  54. 大塚喬

    ○大塚喬君 もう一度気象台の方にお尋ねをいたしますが、幾つかの報道では御前崎沖に海底地震観測施設、これをつくることが最も有効だと、こういう報道が幾つかなされて、私ども耳にしたわけでございますが、この問題は現在どうなっておりますか。
  55. 末広重二

    説明員(末広重二君) これは皆さまの御指摘によりまして昭和四十九年よりすでに開発に着手しております。ただ何分世界最初の企てでございまして、一遍海中に敷設いたしますと、これは上へ上げて故障を直すというような簡単なものではございません。したがいまして、もちろん重要であり、かつ一日も早く敷設すべきでありますが、慎重に開発を進め、失敗のないようにしなければなりませんので、目下その線で各種のテスト等を進め、できるだけ早い時期に実現すべく努力中でございます。
  56. 大塚喬

    ○大塚喬君 もう一つ。それは実際にはいつをめどにしてそれらの活動、観測体制が整備されるのですか。
  57. 末広重二

    説明員(末広重二君) これは現時点で進行しております各種のテストを踏まえませんと、いつ埋設できるということをしかとお約束いたしかねる次第ではございますが、私ども現場といたしましては、たとえば五十三年度とか五十四年度といったような時期を、そんなに遠くない将来という意味でございます、これを努力目標にいたしまして、目下開発を進めておる次第でございます。
  58. 大塚喬

    ○大塚喬君 次に、文部省関係で、これは国立大学や緯度観測所等でもこの地震の予知を進められておるという話を聞いておりますが、文部省関係ではこれに対してどう現状、対策が進められておりますかお伺いをいたします。
  59. 七田基弘

    説明員(七田基弘君) 文部省といたしましては二面、二つの性格がございます。  一つは、先ほどからもお話しになっております測地学審議会をお預りしておるという立場がございます。御承知のとおり、地震予知計画につきまして、測地学審議会で第一次計画以来、関係の国立大学及び関係の行政機関とのいろいろな御相談の上でお立ていただきましたものは、政府あてに勧告しておるわけでございます。今回この東海地域におきます地震の危険性という問題も起こってきておりますので、それに対しましても一体全体どういうような体制でさらにその研究を進めるかということを測地学審議会といたしましては現在検討をいたしております。  それから、国立大学及び緯度観測所をお預りいたしております立場といたしましては、現在、これ二年ほど前でございますが駿河湾を中心にいたしまして、非常に簡易な海底の地震計でございますが、これを入れまして、その付近の実情を探ったわけでございますが、東海地区におきますこの地震の問題がございますので、昨年来実は名古屋大学、東京大学、北海道大学、京都大学、この四つの大学が中心になりまして微小地震の観測、これは現在名古屋大学で八点、東京大学で四点。それからこれは地震研でございます。それから東京大学の理学部で六点、それから東京大学北海道大学が共同いたしまして四点。  それから、ラドンの観測でございますが、東京大学の理学部が中心になりまして九点。  それから、地下水の湧水量、温度等につきまして、京都大学の理学部が一点というような研究をいたしております。  なおまた名古屋大学が通産省地質調査所の伊豆大島におきます人工爆破によります地震波速度の変化の観測というものも行っております。ただ緯度観につきましては現在この観測には参加いたしておりません。
  60. 大塚喬

    ○大塚喬君 私もこの質問をしようとして関係の省庁いろいろ当たってみたわけでございますが、大変複雑多岐で、一体どこに質問したらいいのか大変戸惑ったわけでございます。こういう重要な国家的な大災害を受ける問題について、関係省庁が全く関連というか、ばらばらで、一つにまとまったそういう機関がないということが大変不満でございますが、その問題で防災対策、これは関係省庁が大変幅広い間口がたくさんある、こういうことでございますが、国土庁の方に、現在防災対策がどういうことで進められておるかひとつお伺いをさせていただきます。
  61. 紀埜孝典

    政府委員紀埜孝典君) お答え申し上げます。  地震に関しまして、地方団体がその地震に対応いたしますのに、災対法に基づきまして地域防災計画などつくっておるわけでございますが、この指導はもっぱら自治省の消防庁の方から詳細な指導をしていただいております。  なお、昨今のこのような状況でございますので、先日、関東を中心にいたしまして、一部四県二市、そこには静岡県も入っていただいておるわけでございますが、南関東地震対策検討会というのを設けまして、地方団体が国とのいろいろの意見交換をやりたいというので、このような場を設けさせてもらいまして、地方団体の意向を承るような場を設置いたしました。  次に、政府、各省庁の関係でございますが、中央防災会議に十八省庁からなります関係省庁連絡会議を設けまして、いろいろ地方からあるいはこちらで大都市地震対策要綱に決めておられます事項を具体化するためのいろいろの検討会を設けまして、逐一検討を進めておるというふうなのが防災の体制でございます。
  62. 大塚喬

    ○大塚喬君 関係の方においでいただいたが、時間の関係で突っ込んだ質問ができないことを残念に思いますが、それぞれあと予定がおありになるようですので、お引き取りいただいて結構でございます。  次に、所管の事項であります地震保険の問題でひとつ大臣以下関係者の皆さん方に質問を続行いたしたいと思います。  この地震保険の問題について、お尋ねをいたしますが、現行の地震保険の制度のうち、まず保険金額について見ますと、一般の火災保険契約に付帯して締結されるものであり、火災保険金額の百分の三十、限度額が建物で二百四十万円、家財が百五十万円に限定されております。で、そこで初めに、これは幼稚な質問ですが、地震によって火災が起きたと、こういう場合には、これはどんな場合でも火災保険は出ないのですか。何か条件があって、そういう場合でも出るということになるわけですか。そこのところを初めにお聞かせいただきたいと思います。
  63. 副島有年

    説明員(副島有年君) 一般の火災保険につきましては、地震の場合にはこれを支給しないということが契約にうたってございます。したがいまして、地震のための特約をつけてない限り、地震に基づく火災については保険金は支払わないということになっております。
  64. 大塚喬

    ○大塚喬君 地震の場合にはどんなに火災があっても火災保険は一切出ない、こういう前提でひとつ質問をさせていただきます。  この建物二百四十万、家財百五十万、この限定ですが、これが先ほど出しましたいわゆる東海地震、この場合を考えてみますと、この被害が想像のつかないような巨額になるだろうと予測されます。この地震保険の料率が一般の火災保険と他の損害保険に比べると大変高いわけであります。そういうことからこの限定が定められたということでありますが、災害復旧、建築、これは災害になれば当然その資材の暴騰ということが予想されるわけですから、火災保険加入の際の三〇%あるいは二百四十万程度ではこれはとうてい人の住めるような住宅の建設というのは不可能であります。現行では、民間保険会社及び政府の地震再保険特別会計から支払われる額は、一回の地震による保険金支払額が八千億円、もしもこの保険金の総額がこれを上回る事態、先ほど申し上げたように東海地震ということになれば、関東大震災の何十倍、何百倍という巨大な損害を受けることになるわけでありますから、個々の契約ごとの保険金額が削減される、これは当然の話だろうと心配するわけであります。仮に保険金の総額がこれの二倍、一兆六千億円に達した、こういうときには、個々の契約ごとの保険金額は半額になるのではないか、これではとても住宅の再建どころか、当座の生活費にも足らないと、こういうことになると思うわけでありますが、こういういま私が指摘いたしましたようなことが、そういうことに果たしてなるのかどうか、そこのところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  65. 副島有年

    説明員(副島有年君) 現在の地震保険制度は、地震災害が発生した場合に、生活の立ち直り資金を供給するという趣旨のもとに発足をしたことは先生御承知のとおりでございます。それで百分の三十という率を決めましたのは、二つの理由に基づくわけでございます。  まず第一は、地震災害というのは先生いま御指摘のように、ときによると非常に異常、巨大な、そういう場合に支払い保険金の定め方といたしましては、まず第一に予想される損害額、それから保険会社の担保力、国の財政額、それから個々の契約者の負担力というものを勘案していかなければならないということが第一点でございます。それから第二点といたしましては、御高承のように、住宅総合保険は自動付帯をいたしました関係で、その契約者の保険料負担というものはできるだけ少なくしなければならないという趣旨から決めたわけでございます。ただ、いま先生御指摘もございますし、また社会的要請といたしましても、こういう異常地震発生した場合に、滅失した物件については地震保険でいわゆる再調達に必要な額、これを全額カバーをしてもらいたいという要望も非常に強いわけでございますので、いま申し上げました二点を勘案をいたしまして、今後とも検討していきたいというふうに考えております。
  66. 大塚喬

    ○大塚喬君 いま答弁いただいて改正の要がありと、こういうようなお考えが受け取られたわけでございますが、それらについて幾つかひとつ具体的に論議を進めて、いま地震保険制度の改正、この問題を大蔵省でも努力をされておるような問題について、ひとつこの機会を通じて前進を図りたいと、こう考えておるわけでございます。  で、第一番に地震保険の普及率でありますが、これは全世帯に対する地震保険の加入世帯、わずかに現状一四・五%と聞いております。これは昭和五十一年六月現在の数字でありますが、火災保険が一つも出ない、その火災保険に入っている人の一四・五%、これが地震保険に入っておるだけと、これは一体どういうところに原因、理由がおありになると考えておりますか。この問題について答弁をいただきたい。
  67. 副島有年

    説明員(副島有年君) 地震保険につきましては、法律によりまして特定の損害保険契約に付帯して締結されるということになっておりまして、現在住宅総合それから店舗総合につきましては自動付帯、それから長期総合につきましては原則として自動付帯ということになっているわけでございます。さらに昨年の四月からは一般の火災保険につきましても任意加入ができるということで、地震保険のベースの拡大を図ってきているわけでございます。しかしながら、ただいま先生御指摘のように、現在地震保険の普及率はわずか一四・七、一番最近の数字では一四・七%でございます。先ほど申し上げましたように、去年の四月から火災保険についても任意保険、任意加入をさせるという道を開いたわけでございますけれども、その普及率もいまのところ二・四%にしかなってないということは現状でございます。したがいまして、今後ともこの地震保険の普及の徹底を図っていかなければならないということで、PRの強化ということを考えているわけでございます。実情を申し上げますと、どうも地震保険があるということは必ずしも一般に周知徹底していない、そういう保険があれば自分も入ろうという、何と申しますか、潜在的な消費者というものはまだかなりあると私ども考えておりますので、今後ともそういうPR活動をじみちに続けていく必要があるんではないかというふうに考えております。たまたまこの十一月が保険の月ということになっておりまして、過般来損害保険協会とも相談をしておりまして、できればこの月を一つのキャンペーンの月にして、地震保険の普及の徹底を図りたいというふうに考えております。
  68. 大塚喬

    ○大塚喬君 ここで地震保険のPRをして保険会社のお先棒を担ぐと、こういう論議でなしにひとつお願いをしたいわけですが、この地震保険の普及率が大変低いと、そのことについて、担当者としてのお答えとしては、私はどうも十分なお答えというふうに受け取ることができません。この地震保険の保険料率、これがまず割り高だということ——これは大蔵委員会の所属の問題ですから私突っ込んで聞くわけですが、それからもう一つは、先ほど申し上げたように、保険金額が限定されておる、総額で八千億円、それから住宅の場合、建物の場合、家財の場合、こういうことの限定をされておるという問題が、やっぱりこれをブレーキかけておる最大の原因ではないかと思うわけですが、これについて当事者としての責任あるひとつお答えをいただきたいと思います。
  69. 副島有年

    説明員(副島有年君) 現在の限度額の八千億は、昨年の四月にそれまでの四千億から八千億に引き上げたわけでございます。このうち民間保険会社の負担部分が千二百二十五億、国が再保険によって負担する部分が六千七百七十五億円となっているわけでございます。じゃ、なぜ八千億円に引き上げたかという理由につきましては、まあわが国でいままで過去に最大の被害をもたらした地震が関東大震災でございます。で、五十年度末にこの関東大震災と同じ規模、これはマグニチュード七・九でございます、それから地震の震源地が相模湾であるということを想定をいたしまして、それと同一の地震が起きたと、ただ発生の月と時間につきましてはこれを平均的に計算するということにいたしますと、その損害額が六千四百六億円という数字が出てまいります。これに若干の余裕を見まして八千億円という数字になったわけでございます。ただ、今後保険金の総額につきましては、地震保険が普及していく過程にありまして、予想される損害の程度、あるいは保険会社の担保力、契約者の保険金負担能力というようなものが関係をしてまいりますので、まあ国の財政力をも勘案しつつ、総合的に検討して、適時適切に対処していきたいというふうに考えております。
  70. 大塚喬

    ○大塚喬君 適切に対処するということですが、一つ問題の方はやっぱりお答えをいただけなかったわけであります、保険料率の問題。で、この保険料率はもちろん保険数理ということに基づいて算出をされておると思うわけでありますが、実際からいえば、昭和四十八年度においては損害保険会社の保険料は六十九億円、そして四十九年度は七十九億円、一四・五%前後の普及率であって、まあこういう金額になっておると思うわけですが、しかし、それぞれまとめた数字は大きな数字でございます。ところが、昭和四十八年度の支払い保険金額は一銭もございませんね、損害率はゼロ。それから昭和四十九年度は四百二十八万円——昭和四十九年度は七十九億円に対して四百二十八万円、この損害率はわずかに〇・〇五%にしかすぎません。で、一般世帯がこの地震保険に加入しやすい、こういうところまでこの保険料率を下げると、こうすることが、ひとつ保険会社だけをもうけさせる、そういうことでなしに、東海大地震が起こると、こういう段階で大蔵省が、この方は保険会社何ら手を打たないで見逃しておる——まあ言葉がちょっと語弊がありますけれども、放置しておくと、こういうことは私は適切な行政ということにはならないと思うわけでありますが、この保険料率の引き下げの問題についてどう指導されるお考えか、そこのところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  71. 副島有年

    説明員(副島有年君) 地震保険の料率につきましては、先生、単年度の数字を御指摘いただきましたけれども、これは長期的に見ていかなければならないというふうに考えております。それからまあどうも保険会社の肩を持ってるという御指摘でございますが、現在の地震保険制度は国が再保険をしておりまして、この料率の算定の中には保険会社の利益というものは入っておりません。現在の料率は実はできる限り古い資料を収集して、これに最近のまあ地震学原理の応用をいたしまして、合理的な算定を行っているわけでございます。で、四十一年に制度が発足いたしましたときに、理科年表に記録のあります一四九八年から一九六四年に至るまでの四百六十七年間に災害を伴った三百二十の地震のおのおのにつきまして、それがその四十一年に再来をするという場合にこうむるであろう損害額を推計して、今後の予想契約高を考えまして算出した数字でございます。現在の料率はただ、その四十一年に決めましたから、十年たったわけでございます。で、算定当時に比べまして、都市の構造が不燃化が一層進みましたという問題、それから消防能力が拡大をしたという、まあプラスの要因がございます。と同時に、都市が過密化をいたしまして、また石油製品の使用の増加というようなマイナスの要因もございまして、実は昨年の五月にこの保険の限度額を引き上げますときに検討いたしましたわけでございますが、一応この現在の保険料の水準は妥当であるという結論になったわけでございます。ただ、先生御指摘のように、この保険料率につきましては今後も常にその水準の妥当性というものを見守りつつ、引き下げの余地を私どもといたしましても検討していく考え方でございます。
  72. 大塚喬

    ○大塚喬君 いまのお答えですが、まあ現行法によれば、保険金三百億円までこれは全額保険会社が負担をする、で、三百億円を超えて千二百億円、ここまでは、その幅千二百億円で半額、五〇%、五〇%。で、千五百億円を超えて八千億円まで、ここのところは政府が九五%負担して、保険会社が五%、まあこういうことになっておるわけでありますが、さて翻ってその保険会社、あなたがいまおっしゃるように、この地震保険というのは長期的に見なくちゃならないと、こういうことで、これは当然の話でございますが、そこでまあ保険会社の、私が先ほど申し上げたように、実際に損害率というものから考え、それから保険会社の資産の現況が現在三兆三千四百億円、このような大変な資産を持っておるわけでございます。で、率直に私がここで申し上げたいことは、保険会社の負担額を拡大して、この八千億円と、先ほど前段で東海大地震の問題についてお尋ねをした、そういうことも実はこの八千億円の支払い保険金限度額を引き上げる必要があるじゃないかと、こういうことを言いたいために質問をいたしたわけでございますが、この点についてはどうお考えになっておりますか。
  73. 副島有年

    説明員(副島有年君) 現在の地震の予知をどの程度私どもとして、何と申しますか、考えていくかというのは一つの大きな問題だと思います。おっしゃいますように、東海大地震というものの蓋然性が非常に高いということになりますれば、当然のことながら、この八千億の限度額というのは見直していかなければならないことは申すまでもございません。先ほど申しましたように、現在の八千億というのは関東大震災、これは日本におきまして史上最大の被害をもたらした関東大震災の被害ならばカバーできるという数字でございまして、それを上回る地震が起こり得るという蓋然性が非常に高いということであれば、またその段階で当然検討していかなければならないというふうに考えております。  それから、保険会社の方の負担の問題でございますけれども、これも先生御高承のように、保険会社の資産の充実とともに、その負担額を四十一年度からしばしば引き上げております。当初御承知のように保険会社の負担限度額が三百億でございましたけれども、現在は千二百二十五億まで引き上げております。これも今後とも保険会社の担保力の増強を勘案しつつ引き上げを行っていくということだと思います。
  74. 大塚喬

    ○大塚喬君 まあ大変のんびりしたお答えをいただいて、それでいいのかなということで私は実は大変不満ですし、そういうことであってはならないと、そう感じます。いまの答弁をお聞きしますと、わかったことは巨大地震、大被害を受けたと、で、普通私ども個人個人はそういう場合には火災保険を掛けておるから大丈夫だと、こういう考えを持っておるわけですが、火災保険は一切適用にならないと、地震保険があるからと、まあこういうことですが、その被害額が余りにも大きくなった場合には、先ほど申し上げたような三〇%ということで考えて、その三〇%すらもらえる見込みがないと、こういうことになると結局家は建たない、瓦れきの上にこれから先野宿をしろと、まあそういう事態が先ほど申し上げたように、仮に不幸にも現実のものになった場合にはそういうことになるわけであります。で、生命保険の方を調べてみますと、生命保険の方はそういう場合でももらえると、ですからお金をもらえるという場合は亡くなったとき、死亡したとき、これ以外にはもう再建、立ち上がりのためのそういう資金というのはゼロに近い。ゼロに近いというか、ごく僅少なものにしかならないと、こういう予測がされるわけでございます。  で、この法律制定の際の当参議院大蔵委員会の会議録等を読んでみますと、ずいぶん長い時間をかけてこの論議がされておるようでございます。特にここで申し上げたいことは、そのときに参考人として出席された保険審議会委員の河野通一氏ですか、大蔵省の関係者でございますね。で、この方の発言は、「この地震保険制度について末長くこれで満足すべきではないと思う。今後この制度の内容を一そういいものにし、また充実をしていって、社会、国民の要請に一そう沿えるようにつとむべきである。」と、こう発言をされておるわけでございます。で、ただいままでの発言を聞きますと、ごくわずかに制度の内容も前進的なそういう変更があったようでございますが、ちょうどこの法制定以来十年を経過をいたしておるものでございます。で、いまのような事態で、これらのいまお答えいただいたようなことでは全く国民は野放しにされて、そして一切立ち上がりの方策がないと、まあこういうことになって、もしお金をもらってよかったということになるのには、自分が死亡する以外にない、それ以外にもう道はないということになるわけでございます。で、この河野さんの発言、この大蔵委員会でそのことをやはり前提にしていろいろ論議があったと思うわけですが、この地震保険の問題が可決をされたものと考えるわけでございます。そういう経過を踏まえて、これらの問題についてはひとつ早急にこの内容をよいものにして、国民の期待に十分にこたえられるような、そういうものにしてほしいと強く要望申し上げるわけでございます。  それからもう一つ、どうしてもここで論議をし、はっきりさしておきたい問題は、全損の問題、この全損と査定される場合の基準、これは経済的全損を含むものとしております。経済的全損とは、修理費の方が建築全体の費用よりも高い場合や、修理不可能なような損害ができて、経済的にはその使用価値がなくなったと認められる、こういうものだと。このことは大変あいまいであります。で、この全損と認められる、これはだれが定めるかというと、保険会社から認められる場合であって、当該居住者、これが全損として考える場合とは実際の場合にはかなりの見解の隔たりが出てくるものと考えるわけであります。当然ここでそれぞれ大きなトラブルが生ずる危険性が強いわけであります。で、審議会ではこの分損について保険金支払いを認めるべし、こういう意見があったと聞いておりますが、法施行後すでにもう大分期間がたっております現在、この制度の変更、つまり分損を対象とすることができないものかどうか、この問題についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  75. 副島有年

    説明員(副島有年君) 二つ御質問があったと思いますが、最初の全損の基準の問題でございますが、先生御指摘のように、全損と判断されるかどうかによりまして、地震保険金額が支払われるか、いまのところ全く支払われないかという結果が大きく分かれるわけでございます。特にその経済的な全損になるかどうかの判断の基準というのは大変大きな問題だと私ども考えております。したがいまして、私どもといたしましても、損害保険会社と協議を続けてきたわけでございますが、損害保険協会といたしましても、過般地震保険損害査定要綱というものを作成をいたしまして、  その中で、経済的な全損についても客観的な基準を設定するということで一応要綱をつくったわけでございます。  その要綱を簡単に申し上げますと、これは全社同一基準でございまして、まず第一番目には、いわゆる建物の損害がひどくて解体しなければならないかどうか。これが一つの基準でございます。それから第二番目に、建物の原状回復をする場合のコストが全体の費用の八〇%を超えるかどうかということに基準を置いているわけでございます。家財道具についても同様でございまして、八〇%の価値を超える損害についてはこれを経済的な全損とみなすという基準をつくっているわけでございます。  それから、第二番目の御指摘の分損の問題でございますけれども、御承知のように地震発生下で非常な混乱の中で査定をいたしますわけで、ここで損害査定の分損を査定をするということは非常に技術的にむずかしいという問題と、分損をいたしますと保険料がかなり高くなるという問題もございますので、その後ずっと検討を続けておりますけれども、いまのところまだ結論が出ておりません。ただ、先生御指摘の点もございますので、私どももさらに検討を続けていきたいというふうに考えます。
  76. 大塚喬

    ○大塚喬君 全損の基準というか、そういうものの大まかなところの発表をいただいたわけですが、一体だれが査定するかという問題が一つあるわけですね。それから大地震という場合には、その被災の範囲が大変広大になってくることは当然の話でございます。で、その査定の結果が出てくると、こういうことで保険金が支払われる。これはもう実際にそういう大混乱が起きたときには、もう考えられないような相当の期間を必要とする。そうでなければ現実にはできないと、こういうことになるわけであろうと思うわけですが、予想される事態の中では、これでは被害者の救済ということが現実には、いま口でおっしゃるような形にはとてもとてもいかない、こういうことが考えられるわけでございます。これらの予測される事態の中で、いまの問題をどういうふうに対処して、てきぱきとこの期待にこたえるような、そういう結論を出すことができるのか、そこのところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  77. 副島有年

    説明員(副島有年君) 震災が起こりましたときの査定体制と申しますか、これを各社ばらばらにいたしますと、先ほど申し上げました共同要綱がございましても、いろいろな問題が生ずるおそれがございますので、現在共同査定体制というものを協会としてつくりまして、そこに各社から人員を派遣してもらって遺憾なきを期すると同時に、御承知のように査定には常に苦情が伴うわけでございますから、同時に苦情処理の機構をつくりまして、査定の遺憾なきを期するという体制づくりを現在進めているわけでございます。
  78. 大塚喬

    ○大塚喬君 あと質問したいこともたくさんございますが、時間が切れましたのでこれで終わるといたしますが、大蔵大臣に一つ要望。  大変なやっぱりショッキングな東海大地震ということは、全国民がやっぱり頭を抱えておる。特に東海メガロポリスのこれらの関係者、住民はそういうことだと思います。で、私も実はこのよううな質問をいたしましたのは、いまから数年前に小松左京氏の「日本沈没」という本を読んで、大変頭の中にすごく残っておった際に、この地震予知連絡会等の発言があったもんですから、この地震保険に関連をしてお尋ねをいたしたところでございます。起きてから、そういうことになればもうまさに壊滅的な大被害を受けることが間違いないと思われますので、予知対策についての予算措置、財布を握っておる大蔵大臣としてひとつ特段の配慮を願いたいということと、先ほど申し上げたように、災害になって、保険制度があるから大丈夫だと、こういう考え方ですが、実際にもらえるのは自分が死んだとき以外にはほとんどもらえない。こういう現在の保険制度の現状において、ひとつこれらの改革のために大蔵大臣としても関係者を督励して、国民の期待にこたえられるような、そういう制度の確立をぜひお願いを申し上げたい、こういう願望を強くした質問でございますので、いま私が申し上げたことにつきまして大蔵大臣から一言ひとつ所見をお伺いをいたしたいと思います。
  79. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 地震予知の問題でございますが、これは年々歳々予算を増額いたしまして対応いたしておりますけれども、今後、御指摘もございますので一層力を入れてまいりたいと思います。  それから地震保険の改革の問題でございますけれども、この問題につきましては、大変大きな問題でございまして、大蔵省といたしましては、われわれの力量の及ぶ限り傾けて御要望に沿いたいと思います。
  80. 大塚喬

    ○大塚喬君 現実から言えば、各省庁の地震予知対策費というものは総額二十三億幾らしかなっておりませんね。ですから、いまのお答えいただいたことで、重ねての答弁は結構ですが、現実は大臣がお答えいただいたようなものでなくて、まことにお寒い、そういう対策しか出ておらない。こういう現状の中で、ひとつ早急に国民が安心できるような予知対策について、国家的な事業として取り組んでいただきたい。重ねて要望を申し上げます。
  81. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時十五分開会
  82. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  83. 戸塚進也

    戸塚進也君 それでは、まず理財局長、去る十五日に財特法が各先生方の御協力をいただいて成立をいたしたわけでございます。そこで、成立後、当初大蔵省が非常に懸念をしておった国の予算の執行の障害、さらにはそのほか各シ団との打ち合わせ等でいろいろ支障が起こる心配もあるというようなお話があったのでございますけれども、十五日成立以後本日まで約十日間経過いたしております。その間に当然十月中の発行の問題、さらには将来——今年度中の発行の問題等綿密な計画や打ち合わせ等がなされたと思いますが、その状況並びに支障のあるなしの問題、さらにまた十月中の発行額予定、さらに将来の年度中の計画等が立てられたかどうか、その辺を一括してお伺いいたします。
  84. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 十月十五日に法律が通りましてから——これは金曜日でございましたので、実は十五日に通ることにつきましてあらかじめの確信は私どもとしては必ずしもあったとは申せませんので、翌日が十六日、土曜日でございましたので、やむを得ず十八日にシ団の世話人会を開きまして、それから作業に入りましたので、払い込み予定が私ども当初二十日と予定いたしておりましたが、二十二日まで延ばさざるを得なくなりました。そこで、シ団との交渉、それから募集、それから払い込みというようなことを急遽やっていただきました結果、十月は一兆円の市中消化を行うことにいたしました。すでにそれは発行いたしたわけでございます。  それから、資金運用部の引き受けを三千億いたしました。十月中において一兆三千億の消化をいたしたということになります。  それから十一月以降でございますが、これは御承知のように十二月が非常に資金の繁忙期でございますので、いま目下シ団との間では十一月、十二月の金融情勢をにらみながら、目下話し合いをいたしておる最中でございますが、私どもの見当では十一月、十二月を合わせまして大体一兆円程度を消化していきたいというふうに考えております。まだ一月以降につきましては、月別の検討はいたしておりません。それから十一月、十二月につきましても、これは大まかなところで申し上げた数字でございますので、それを十一月にどのくらいにするかということにつきましては現在まだ決まっておりません。
  85. 戸塚進也

    戸塚進也君 わかりました。  で、大分予算成立等はおくれたわけでございますが、そのおくれのハンディを十分取り戻して、ひとつスムーズに予算執行に支障のないように十分留意の上やっていただきたい。そのことをもう一遍確認をしておきます。
  86. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の発行そのものはいま先生御指摘のように、そういういろいろな困難を克服してやっていかなくてはなりませんが、やはり現在までのいろいろなおくれと申しますか、年度当初から始まった発行計画に従っておりませんので、御承知のように九月の発行をいたしておりませんでした関係もございまして、国債の発行だけでなしに、これは経済の全体に対していろいろ出てきますところの影響はそれを勘案しながら、いろいろな金融政策も含めたきめの細かい政策がこれからも慎重に進められなければいけないと考えておりますが、先生の御指摘のとおり一生懸命に鋭意やるつもりでございます。
  87. 野々山一三

    野々山一三君 関連。  いまのお話を承っておりますと、当初計画の長期債の問題に限ってお答えをなさっておるように承ったんですけれども、過般の審議の過程で御案内の中期債、これはどうも私どもシ団との話し合いがすでに進められておったことは間違いないし、法案成立後も話し合われたはずであると思われるし、当然協議されておる中にはこれも問題になったんだろうと思いますが、一体どういうふうになっていますか。  それで、大分聞きにくいことですから、関連ですから簡単に申し上げますけれども、あの法案審議の最終に、中期債の問題が問題になって、中期債を発行するということになるならば、告示と同時にでしょう、速やかに国会に今後審議の問題にならぬようにそれを、償還計画を提出しますという趣旨のお答えがあったわけですけれども、そういう意味でどういうことになったのか。  それから、皮肉に聞こえるかもしれませんけれども、国会会期が先もう見えていますから、会期が済んだ後で中期債発行ということに踏み切られるのかなあという感じがするわけです。そうじゃなしに、それまでにおやりになるのが、あれだけの議論をしてきた経過もこれありで、当然先ほどおっしゃられた一兆円及び財投の方からの三千億、その他十一月、十二月以降ということについても具体的な話があったはずではないか、そういう意味でそこのところを具体的にどうなっているかをお聞かせ願いたいと思います。
  88. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 中期債の問題につきましては、この間お話申し上げましたように、シンジケート団と目下いろいろなレベルで御相談をいたしておりまして、まだ結論を得ておりません。結論を得次第、国会開会中でございますならば、仰せのように早速国会にその旨償還計画表なるものの御提出をしなければならぬことは仰せのとおりでございます。もしそれが、お話がつく時期が国会閉会中でございますならば、私どもといたしましては、次の国会の開会後なるべく早く提出しなければならぬと考えておりますので、ただこの中期債の発行自体は、「国債ニ関スル法律」によりまして大蔵大臣の権限として御委任をいただいておりますので、発行自体はやらしていただきまして、国会との関係におきましてはさような心組みで御注意のラインに沿いまして措置いたすつもりでございます。
  89. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ簡単に申し上げますけれども、中期債は発行したいという方針であるというふうに承ってよろしいか、これが一つでございます。  それから、大臣のおっしゃられたのによれば、国会開会中であれば当然開会中に提出する。閉会中であれば開会された国会にというお話でございました。これは一般的な調査案件として常識的に閉会中も審議をすることがございますね。そういう場合には当然その過程にも行われるということでございましょうね。
  90. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) はい。
  91. 野々山一三

    野々山一三君 それから、見通しですけれども、どんなふうに考えていらっしゃるんでしょう。いつごろにはシ団との間の話がつくとお考えになっているでしょうか。ここのところが一つ。なぜそれを伺うかというと、長期銀行の幹部の皆さんや、それから都市銀の幹部の皆さんともちょこちょこお会いして実情を、率直な気持ちを承っている限りでいうと、なおかつ両論あるように思われるのですね。これは金融機関のそれぞれの持ち味というものがあるから、それぞれ両論あるというふうに私は正直に考えるわけですが、それはもう第一問で申し上げたように、出すという方針には変わりはない、そういう意味では説得をする、こういうお考えだ、両論あるけれども、それを説得するという立場で協議をするというふうに受けとめていいかどうか、この四点をちょっと。
  92. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 前半の御答弁をいたしますが、この問題は、先生御指摘のように大変関係するところも多く、まだ意見もかなりございましたので、大臣の御方針といたしましても、十月の二日に実は大蔵省の原案骨子を先方に渡しましてから日がたっておりますけれども、特にいついつまでに結論を出すようにというような指示をいたしませず、できるだけ慎重に議論をしてもらうというたてまえでございましたので、先生先ほど御指摘がございましたが、わざわざおくらせているというようなことではなくて、むしろ時間をかけていただいておるというふうなことでございます。したがいまして、ただ、こちらの方にとりましても、やはりある程度のめどがついてまいりませんと議論になりませんので、だんだんこのピッチを上げてもらうという方向で進んでおります。したがいまして、それがまだ向こうからいつ幾日というような返事をもらっておりませんけれども、各シ団の中のそれぞれの団体あるいはシ団全体の集まりというようなことで、かなり頻繁に会合を開いてくれておるようでございますから、答えはわりに早く期待できるんではないかというところにきておると考えております。大臣の御説得という点は、大蔵省の原案骨子を示しましたときから、大蔵省としてはこれやりたいという意思表示をしておるわけでございますので、その辺はシ団も十分承知いたしておりまして、いまの空気はその方向で進んでいるものと私どもは了解いたしております。
  93. 野々山一三

    野々山一三君 閉会中は当然ですね。
  94. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 当然、閉会中に関係委員会が開かれました場合には、早速御指摘のような措置をとります。
  95. 戸塚進也

    戸塚進也君 理財局長、もう一問だけ非常に急いで申し上げます。民間資金あるいは地方自治体資金等へいろいろ影響が出てきそうだというような、そういういろいろ新聞等非常に心配されている面が最近にわかに出ております。この点についてはいかがでございますか。
  96. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 当初予定されておりました国債が発行されるにつきましては、もちろん長期的に見ますれば、国債の発行によりまして逆にその後で財政支出が行われまして、市中の預金に戻ってくるわけでございますから、ロングランではこれは中立的に働く。ただ、時期的なずれがございますので、その間に民間資金とそれから公共部門へ流れる資金との競合ということが起こってはいけないということで、まずその国債の発行面につきまして、やはり毎月シ団との御相談をいたしますようなときには、そのときの金融情勢なり、あるいは金融機関のそれぞれの資金事情あるいは資金の需要の動き等に配慮をしていただきまして、大筋として申し上げますれば、資金の余剰期には大量に発行していただく、資金の不足期には額を小さくしていただくというような調整をしていただいております。したがいまして、当面見通されますような企業資金需要は今後落ちついておる、こういう状態でございますれば、この発行の方をすぐうまく配慮していただきますれば、両者競合してどこかひずみが起こるというようなことはないんではないか、十分避けてまいれる、こういうふうに考えております。
  97. 戸塚進也

    戸塚進也君 大蔵大臣、お聞きのとおりでございますが、年末を控えましてやはり中小企業そのほか資金需要もあるわけでございます。そういうところが金融が逼迫されて資金ショートが起こったとかというようなことがないよう、そういったバランスの調整と申しますか、その点についてだけ十分配慮していただけると思いますが、その気持ちだけ一点伺っておきます。
  98. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) その点十分気をつけて御心配のないようにいたします。
  99. 戸塚進也

    戸塚進也君 よくわかりました。  それでは大臣、私は質問に立って三回目でまことにくどくなりますが、補正予算の問題についてもう一度大臣の最近の心境を承っておきたいと思います。  十五日財特法成立後十日間、新聞等によりましても景気は非常に厳しい。いわゆる中だるみと申しますか、政府答えておられたような景気の情勢ではない、大変倒産もますますふえてきたし、非常に中小企業でも大変な業種も出てきた、当然景気対策ということについての補正予算という問題が政府としても重要な課題であろうと、こういったような新聞論調も大分出されておるところでございます。  そこで、大変くどいようで、また大蔵大臣のお立場は十分わかります、歳入面も考えなければならない、また赤字国債もふやしてはならない、こういう立場からの非常に慎重なお気持ちは、私は十分に理解できるわけでございますが、やはり自民党内にもそうした補正予算を望む声も非常に強いわけでございます。そういうことを一応念頭に置いていただきまして、まず、経済企画庁から最近のこの景気の情勢等どのように分析をされておるか、また年末に向かって、年度末に向かってどのような情勢になると考えておられるか、その点をごく簡単に、数字等がありましたらそのことも入れていただいてお答えをいただき、そのことも踏まえながら大蔵大臣に、現在のこの補正予算についての御所信、この前の財特の三木総理の最終の御答弁は、まあ検討してみたいというお話がございましたが、現在大蔵大臣もそういう御心境であるかどうか、含めてお尋ねをいたします。
  100. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) お尋ねの景気動向について私どもの方から御説明申し上げます。  御指摘のとおり最近一部に景気の中だるみ論というのがございまして、これは年初来非常に順調に伸びてまいりました鉱工業生産が八月にマイナスになりまして、数字で申し上げますとマイナスの一・七という数字になっております。それから九月、十月の製造工業生産予測指数というのがございますが、これもマイナスを示しているということで、生産の増勢にやや引き締めが見られるということでございます。それから最終需要につきましても輸出や個人消費関連支出の増勢が鈍化しているということがございまして、景気の回復のテンポがやや緩慢化しているということは事実でございます。しかしながら、年度を通じて最終需要の動向を見てみますと、個人消費も景気の回復に伴いまして消費者物価が落ちついておりますので、今後着実に伸びていくだろうということが予想されますし、輸出状況も伸び率は鈍化いたしますが、相当高い水準で推移しておりますので、これも景気を持ち直してくる理由の一つになると思います。  それから、一番問題でございます民間設備投資でございますが、これは国民所得統計で出ております四−六月期までやや回復傾向が出ておりますが、今後在庫もわりに低い水準にございますので、だんだん出てくるように考えられるわけでございます。年度を通じて見ますと、景気最終需要は全体として増加傾向を示していくというふうに考えられますので、若干伸びがとどまっておりますが、現在のところの判断では、年度としては政府が予想しました五ないし六%の成長は十分達成できるものと考えております。ただ、そういうような弱い数字もございますので、今後一、二カ月間の間景気の指標を注意深く見守ってまいりたいというのが私ども考えでございます。
  101. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 景気の見方といいますか、景気の診断はいま企画庁からお話がありましたとおり大蔵省も考えております。したがいまして、いま十分注意深く経済の状況はウォッチしなければならないけれども、財政、金融、そういう政策の基調を変えなきゃならぬというようなことは考えておりません。問題は、補正予算でございますが、したがって、財政政策で景気政策というものをいま本格的にそれと取り組むということは、いまの景気に対する見方から申しまして、政府がそういう姿勢でいま取り組んでいないということは御了解いただけると思うのでございます。   〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕  ただ、若干問題がありますのは、いま本院で御審議をいただいておりまする電電、国鉄関係の歳入法案がおくれました関係で相当巨額の収入の欠陥が生じまして、この二大公社の需要が、工事費でございますとか物件でございますとか、そういったものの需要がそれだけ減りまして、景気にマイナスに働いておるというばかりじゃなく、この二大公社の事業の運営に支障を来すか、来さないかというような問題がございます。これにつきましては本院におきましてお答え申し上げますとおり、この両法案の議了を遂げていただきました段階におきまして、どれだけの歳入不足になるかということを確かめた上で、政府部内におきまして補正の問題は検討さしていただきたいということを申し上げておるわけでございます。一般会計につきましては、ことしの追加財政需要というものは、ことしの冷害、災害、それからいま衆議院で本日内閣委員会で上がります給与関係の法案、人事院勧告の実施に伴う財政需要、そういったものみんな一応私ども考えられる財政需要は全部見積もっておるわけでございますが、ただいまのところすでに御承認いただきました本年度予算で対処できるということでございまして、補正の必要はないのではないかと考えております。  それから、それでは新規に相当歳入が多く見積もられるかというと、この間からも本委員会で御報告申し上げておるとおり、ただいまの税収の状況はやっとこさ私どもが見積もりました税収がほぼ確保できるのが精いっぱいじゃないかというのが、いま私どもが見ておるところでございまして、自然増収を期待できるような状況ではないようでございます。したがって、財政の面から、補正予算を組むにいたしましても補正財源なんかをいま考えられないというのがいまの状況でございます。すなわち景気に対する見方から申しましても、また財源から申しましても、いまの段階で補正予算を考えることは適当ではないし、またそれはそういう手だてはないというのが私どものただいまの考え方でございます。
  102. 戸塚進也

    戸塚進也君 もう慎重な大蔵大臣の御答弁でございますから、これ以上は追及いたしません。ただ、私どもの気持ちとしてはそういうことがある、強い気持ちがあるということだけ大臣の頭の中にでも少し置いていただきたい、そのことをお願いいたします。  次は、減税問題等諸般いろいろ議論されたところでございます。大蔵大臣も、中期的な展望に立った場合は所得税の減税等もそれはいろいろ考えなければならないというようなかつての答弁があったわけでございますが、仮に中期的展望に立って考えなければならないとしたならば、主としてそのどういう点に特に着目をすべきであろうか、これだけで結構でございます、具体的なことはそのほか特別結構でございますが、その点についてひとつ伺いたいことと、私はやっぱり所得税減税、これはやっぱり国民の多くの者が願うものであり、またできることであるならば、やることが大変結構だと思います。しかし、国の赤字財政という今日の立場に立った場合、大蔵省でも最近新規税制について、いろんな角度から税制調査会等にもいろいろ検討してほしいというような御案も出されたやに伺っております。きょうは時間もありませんし、新規税制の問題は触れませんけれども、私はやはりそうした当然まだ是正をして収入を図るべきいわゆる税収、そういうもの、あるいはまた国民的に考えて、当然もう支払わなきゃならない義務のあるような税金で、まだ十分見直されていない部分があるのではないかとか、あるいはまた年がら年じゅう赤字だということで均等割りだけ納めている法人会社というものを考えてみましても、現在のあの均等割りということでいいのかどうかとか、いろいろな角度からやはり税収というものも考えながら、片面において所得減税というような国民的な要望というものにもこたえていくというような、いわばワンセット的な考え方が必要なのではないか、ただ税金だけ安くすればいいというような、こういう考え方でない、総合的な見方というものが必要じゃないかと私は思っておりますが、大蔵大臣の、総合的で結構でございます、細かいことは結構でございますから、感じだけお尋ねをしておきたいと思います。
  103. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 減税はいたしたい、これはだれしも望むところでございますし、私も、戸塚先生に劣らず減税やりたい気持ちでございます。ただ、このように公債、とりわけ赤字公債をお願いしなけりゃならぬような時期に減税をやるということは、だれが考えてみてもそれは無理な相談であるということもまたこれは御理解いただけると思うのでありまして、したがって、この赤字公債からの脱却の暁におきまして、減税ができるような環境条件をできるだけ早くつくっていくということは、財政政策の根幹に留意しなくてはならない道標でなけりゃならぬと考えておるわけでございます。  そしてしからばそういう場合に、どういうところをねらっていくべきか、税制の問題として、どういうところをねらっていくかという問題でございますけれども、ことしは、この間もこの委員会で御報告申し上げましたように、政府の税調に対しましては、所得課税にせよ、資産課税にせよ、あるいは流通課税あるいは消費課税、つまり税制全体にわたりまして御審議を願っておるわけでございまして、とりわけこの分野に力点を置いてお願いしますというようなことはお願いしてないわけでございます。また、私どもも、いましたがって、予断を持ってこの分野を特にというようなことで臨むべきではないと思うのでございます。あなたがおっしゃるように、税制全体にわたって見直すべきものがありましたならば、ある税目においては若干重く負担願っても、ある税目においては、相当軽減を考えていいじゃないかという御意見は、私はもうそのとおり考えます。そういった点は十分検討の暁において、そういうことが、そういう結論が出ても、それは私は結構じゃないかと考えておりまして、いま予断を持って臨んでいないということだけは御理解を願っておきたいと思います。  それから第三の問題として、わが国では税負担が他の先進諸国に比べましてまだ相当低目の状態にあることは非常に幸せだと考えております。だから、相当大きな負担をお願いするということでは直ちにならないわけでございまして、なるべくわれわれの財政の年齢的若さもやっぱり将来のために保持していかにゃいかぬわけでございますので、いままでのわれわれの先輩がここまで、他の先進国に比べては低目の税負担で財政の切り盛りをしていただいたことはありがたいことと思っておるんでございます。そういうことを考えてみますと、そしてこの高度成長期に幸いに毎年毎年若干の減税ができたということを考えてみますと、ここ一、二年あるいは二、三年減税が大変苦しい、困難であるというようなことだけをつかまえて、御批判をいただくのも少し政府与党に酷じゃないかというように思うのでございまして、このあたりは長期的な時間帯の中でわれわれの政策を正当に評価していただきたいと思うのでございます。
  104. 戸塚進也

    戸塚進也君 では、時間がありませんので、とんでもない違う件を二件一括して伺って、答弁をいただいて質問を終わります。  最初に、農林省いらっしゃいますね。——豚肉とそれから液卵の関税の問題、この問題についてお伺いいたします。  豚肉、牛肉、液卵とも生産農家としてはいま最も心配しているピンチの状態にきておりますが、豚肉につきましては、先週末は三市場平均五百九十九円、とうとう政府が、要するに保証をするという下限をもうすでに割ってしまった、こういう状態になり、かつ、九月末では百三十万頭分のストックを抱えている、こういう状態になっております。そういう本当の瀕死の重症になって、今日十月末で関税を一応減免措置をやめる、こういうふうな措置をとられるやに聞いておりますが、そういう措置がとられるのかどうか。  さらに、これは大蔵省に伺わなきゃならぬかもしれませんが、どうも非常にこの減免措置の期間が長過ぎたんじゃないだろうか。この長過ぎている間にぼんぼん入ってきて、結果的にこういうことになってしまって、生産農家はまたそれこそもう豚やめなきやならない、こういうことになっているわけでございまして、こんなことが繰り返されていたのでは、何のための一体農政かというようなことを言われ、また食糧自給が叫ばれており、非常に私は不信感を持っているわけでございます。この点についてどのように考えていらっしゃるか、もうちょっとやっぱり、二カ月ぐらいとか何かでそういう減免措置をやめるとか——弾力的なこのやり方をやって、そうして消費者にも喜ばれるけれども、安定的価格で喜ばれるけれども、生産農家を守る、こういうようなやはり大蔵省、農林省のもうちょっと連携した弾力的な動作が必要じゃないかと思いますが、その点についてのお考えを承りたい。  さらに、豚肉については十月末で切りますと、駆け込みが出てくるおそれがあります。この駆け込みについてはやはり農林省十分気をつけていただかなきゃいかぬが、この点についての対策。  それから液卵につきましては、この上期五〇%、昨年度に加えて五〇%輸入が多くなっています。このままでは非常に将来、下期が憂慮されます。大蔵省もそれなりに考えていらっしゃるやに伺っておりますが、もう一点大事なことは、この際関税率の引き上げ、こういうことが現在話題になっております。関係生産者からも非常に強い要望も出ているわけでございますが、その辺についてどのように考えていらっしゃるか。  最後に私、ネズミ講のことについて先般委員会で伺いましたが、衆議院の方の物特でも実はネズミ講、サラ金の問題が話題になっているようでございます。警察庁、おいででございますか。——警察庁から承りたいことは、私は、必ずしもこれを全部刑罰をかけろとか、むちゃくちゃなことを言うわけじゃない。特にサラ金等については、それなりにまた都道府県知事の許可を得て、それなりにサラリーマンに喜ばれている点は結構でございましょう。しかし、余りにもこう野放し的にどんどんふえて、いまのような形になってまいりますと、金利の問題やらその他いろいろな社会不安、社会的な犯罪に近くなるような問題ということがあるのではないか。実態がどうなっておるか、そしてこれを予防するためには、現在のような行政措置だけでは不十分であって、やはり法改正等を含めて、こうしたネズミ講やサラ金問題というものを政府が真剣に考える必要があると思いますが、警察庁はどういう御所見か。  さらに、これを一応所管されると予想される大蔵省の責任ある方の御答弁、大蔵大臣に最後に一括して伺って私の質問を終わります。
  105. 額田毅也

    政府委員(額田毅也君) 豚肉の関税のお尋ねでございますが、御承知のように豚肉の価格がここ一年来非常に高値でございまして、農林省で定めておられます安定上位価格七百三十円強でございますね。それを大幅に上回りまして、六月七月のころは八百円というふうな値が出ておったわけでございます。そういうことから、定率法で認められております生活物資の減免税の措置によりまして減免税の措置をとったわけでございます。ちょうど一年半ぶりぐらいに安定上位価格といわれる価格を割り込みまして、九月から十月にかけてその安定価格帯に入ってきたわけでございます。安定価格帯に入りましてからいまの安定帯の下の価格、下の価格は上回ってはおりますが、やや下の価格に近づいてきた、こういう状況でございます。  減免措置が長過ぎたのではないかというお話でございましたが、やはり一年余にわたりまして安定上位価格を上回ったままで豚肉が推移するということでは国民生活に対する関連も非常に影響も悪いということで、ことしの五月来三カ月、三カ月と六カ月の減免措置を講じまして、ようやく安定帯の中に入ってきた、こういう状況でございますので、この措置はもともと御承知のように国民生活の安定と生産者の保護を兼ね合わせて行う制度でございます。さような意味で減免税措置の有効であったこともまた御理解賜りたいと思うのです。  同時に、それでは十一月以降どのようにするのかというお尋ねでございますが、この法律の要件に、豚肉の価格が安定上位価格を上回わるということが発動の条件になっております。したがいまして、現在のように安定上位価格を下回った姿で推移いたしますとするならば、十一月以降の発動の要件は満たされない、減免の発動の要件は満たされない、かように考えておる次第でございます。  それからもう一つの点は、液卵の輸入増加ということでございますが、輸入数量の点につきましては、また農林省からお答えもあろうかと思いますが、液卵につきましても、御承知のように、日本では非常にたくさんの鶏卵生産が行われております。現在暫定税率といたしまして二五%、またはキログラム六十円のいずれか高い方という税率があるわけでございまして、この税率があるにかかわらず、やはり相当の輸入量があるということでございますので、一つは、国内の価格と海外の価格との比較からそういう輸入が出てくるものと思います。  なお、税率の引き上げをしたらどうかという御質問でございますが、やはり現在の日本の立場を考えますと、御承知のように新国際ラウンドと称しまして、現在関税についての国際的な交渉が行われておる段階でございますので、現段階で直ちに関税の引き上げという点は、現状から見ていかがかというふうに考えております。私どもとしても、この点は、御質問ではございますが、現在余り関税というものを変える、時期的には変える時期ではない、こういうふうに考えておる次第です。
  106. 甕滋

    説明員(甕滋君) まず豚肉でございますが、卸売価格は七月をピークにいたしまして急速に鎮静化をいたしました。ただいま大蔵省の方からお話がございましたように中心価格を割り、下限価格に近い水準ということでございますから、減免発動の要件は満たされないという状況でございます。  加えまして、今後の見通しになりますが、国内生産も回復過程をたどりつつあるという状況にございますので、十一月以降どうかということになりますと、これは十月で打ち切ることになろうというふうに考えております。  なお、十月中におきましても、新規のいわゆる駆け込み輸入のようなものにつきましては、これは厳に抑制をするように、各輸入商社あるいは利用先でございますハム・ソーセージメーカー等に対しまして強力に指導を加えておるところでございます。  次に鶏卵でございますが、これは先生御承知のように、近年生産過剰傾向でございまして、計画生産、いわゆる生産調整を指導しておるさなかでございます。そういった中で液卵の輸入が自由に行われているということで生産者の心配があるわけでございますが、これも輸入商社等に対しまして、極力輸入を抑制するように行政指導を加えておるところでございます。しかし半面、これにとってかわるべき国内産の液卵の生産体制というものが、実は現状では必ずしも十分整備されていないという問題もあるわけでございまして、したがって、こういった国内の生産体制を整備しながら国内産の液卵の需要の定着を図っていくということも、今後の課題として現在検討を行っておる折でもございまして、関税の問題につきましては、これらの一環としまして、農林省の中でも慎重に現在検討を進めておりますけれども、なるべく早くその辺の考え方をまとめまして、大蔵省と必要があれば御相談をしなければならないというふうに思っております。  以上でございます。
  107. 柳館栄

    説明員柳館栄君) 最初にサラ金の問題について申し上げます。  本年六月現在の大蔵省の調査によりますと、サラ金の貸付業者の数は十四万三千五百四十ということになっております。いわゆるサラリーマン金融をめぐる法違反の状況でございますけれども、昭和五十年中においては高金利事犯を六百九十七件、六百九十人を検挙いたしております。これは昭和四十六年を一〇〇とした指数で見ますと、件数では二八一、人員では二九二ということで、増加いたしております。本年も昨年の同期に比較いたしますと、件数で五・一%、人員で二七・五%増加しておると、こういうぐあいになっております。  それから次に、ネズミ講でございますけれども、これにつきましての代表的な組織は天下一家の会・第一相互経済研究所でございますけれども、これは十三府県に十三の支部、十一都道府県に二十六の連絡事務所を設けて全国的な広がりを見せております。加盟者につきましてはどのくらいあるかはっきりいたしておりませんけれども、一説によると百五十万だというようなことも言われております。なおこのほかに、現在こういった第一相互経済研究所方式のものが十四の都道府県に二十組織あるということを私ども把握いたしておりますけれども、これの加盟者がどのくらいであるかという詳細な数については把握いたしておりません。  以上のような状況でございます。  それからお尋ねの対策の問題点並びに対策についての警察庁の考え方でございますけれども、最初のサラ金につきましては、やはり届出制だけではなしに、もう少し別な、たとえば欠格条項をつくるなどといった法規制があった方がもっと行政効果があがるのではないだろうか、こう考えております。  またネズミ講につきましては、このシステム自体が、やはり何と申しましても不健全なシステムであるというぐあいに考えております。したがって、これに対しましても何らかの法的な規制が必要でないだろうか、こう考えます。
  108. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) ネズミ講とサラ金のことについて、私ども考えを説明させていただきたいと思います。  まず、ネズミ講の方でございますが、これはいま警察庁から御説明がありましたように、私どもも実は詳細よく把握できておりません。で、この問題は、ネズミ講の中に御承知のように二種類ございまして、元本の返還を約束をしておると、こういうものと、約束をしてないものとございます。約束をしております方は、先般制定されました出資預り金の禁止の法律にもろにひっかかるわけでございまして、その面から法務省、警察庁と御連絡をしながら取り締まりが行われておると、こういうことでございます。  ところが、その元本の返還を約束していない方というのは、またこれもいろいろ多種多様のようでございまして実態が必ずしもはっきりいたしませんが、また、現行法上どういうふうな規制の仕方をするかというと、大変むずかしいところでございます。したがいまして、この点につきましては、現在企画庁を中心といたしまして関係各省集まりまして、いろいろその対策あるいは実態把握というような勉強をいたしておるところでございます。私どもも御一緒にその勉強に参加をいたしまして、なるべく早くその対策についての結論を出すように努力をいたしたい、こう考えておる次第でございます。  それからサラ金と申しますか、貸金業者の方の関係でございますが、そのいろいろ問題になっておる点をどう考えていったらいいかということだと思います。ただ、現在問題として指摘されます点が、やはりそういう業者の、これはごく一部のあれでございますけれども、暴力的な行為でございますとか、あるいは暴利をむさぼるとか、こういうような、先ほど検挙件数等の御説明がございましたけれども、そういうところを規制をするということでございますと、どうも金融行政的立場からはなかなかなじみにくい感じがいたします。それで、それではそういうことの取り締まりを強化する一つの前提といたしまして、許可企業と申しますか、免許企業と申しますか、そういうことが考えられるかどうかということがございます。で、ただ、その点は現実問題として大変むずかしい点があるように私ども目下考えております。  一生懸命勉強しておりますが、現在問題にしております主要な点を申し上げてみますと、一つは、この貸金業の大変多くのものが利息制限法等の関係ではどういうことになるかとなりますと、利息制限法では、御承知のように二割以上の金利は取ってはいかぬと、こういうことになっておりまして、それをそれ以上の利息の契約をすると無効だということに相なっておりますが、しかし現実には、そういう企業が営業していきます場合には、それより高いものを取っている場合が大変多いように聞いております。そういたしますと、私法上無効となるような契約を前提としないと営業がむずかしいというようなことでございますれば、その点はどう考えていくかということが一つございます。  それから、いま、貸金業の数、これは態様がいろいろございますけれども、全体としましては、警察庁のお話のように十四万何軒かございまして、現在私どもが所管しております金融機関——一般金融機関大体千二、三百でございますので、そのまあ百倍以上の数があるわけでございます。許可制あるいは免許制というようなことを考えました場合に、果たしてうまく実効ある行政的な指導その他のことが可能であるかどうか、これは現実問題としては大変大きな問題であろうかと存じます。  その他いろいろな問題がございますので、ただいま一生懸命勉強いたしておりますが、当面の方向といたしましては、去る四十七年に貸金業の貸金業協会をつくり得るその自主規制の関係法律を制定していただいておりまして、まだ組織率はそう高くはございませんけれども、貸金業の中の方が集まって協会をつくって、自主的にその業界内の向上発展を期していこうと、浄化をしていこうと、こういうふうな組織でいま活動を始めておられるところでございます。やはりそういう活動が中心になって考えていただくのが現実的ではなかろうかと、こういう考えでございます。いろいろ御議論が出ておりますので、私どもの方も目下いろいろ勉強中と、こういう段階でございます。
  109. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ネズミ講の課税問題について私の方からお答え申し上げます。  いわゆるネズミ講の課税につきましては、御承知のとおり、講の主宰者に対する課税と、講への加入者に対する、いわば会員でございますね、会員に対する課税の問題がございますけれども、講の主宰者は、会社あるいは個人さらには人格のない社団、こういった三つの態様が現在区分されておりますが、個人の場合には所得税——私の場合は大体事業所得と考えておりますが所得税の課税を、会社または人格のない社団等の場合には法人税の課税を行う、こういうふうになります。それから講の加入者に対しましては、法人と個人とがあるわけでございますが、加入者が他の加入者から現金を取得しました場合、その加入者が個人であるときは所得税、この場合は雑所得になろうかと思いますが所得税の課税を、法人であるときは法人税の課税を行う、こういうことになろうかと思います。いずれにいたしましても、経営の実態を見きわめながら適正に課税をしていきたいと、このように考えております。
  110. 中西一郎

    理事(中西一郎君) 速記とめてください。   〔速記中止〕   〔理事中西一郎君退席、理事戸塚進也君着席〕
  111. 戸塚進也

    理事戸塚進也君) 速記を起こして。
  112. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに、大蔵大臣にお伺いしますが、再々この委員会でも議論になっておりました来年度予算の編成方針でございますが、この間も非常に厳しい状況ということを言っておられまして、その状況はよくわかりますが、まず来年の基本的な方針として緊縮型と言われてみたり、あるいは中立型とか、いろんな言い方がございますけれども、基本的にはどの方向をまずお考えになるのか、その点をお伺いしたい。
  113. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) ただいまの状況は中央、地方を通じましてざっぷり赤字につかっておる財政でございます。この状態はできるだけ早く足を洗わなければならない、そして財政を正常化しなければならないことは、ひとり財政の健全化のためばかりでなく、経済の健全を保障するためにも、国民生活の安定を図るためにも、また国際信用の上からも一番大事なことでございますことは申すまでもございません。したがって、来年度の予算の第一の眼目は財政正常化への第一歩を踏み出す年にしたいということでございます。幸いに去年からことしにかけまして——去年は最悪の年でございまして、ことしはどうやらひとつ歳入欠陥が生ずるような財政状況にはしたくないと、またそれができそうな状況になってきたわけでございます。来年は少なくとも一歩進めまして、公債の発行額、とりわけ特例債の発行絶対額を少なくとも相当額減らしていく年にしたい、非常にむずかしい、あなたのおっしゃるとおり非常にむずかしいことでございますけれども、どうしてもやらなければならぬということを眼目に置いております。したがって、そういたします限りにおきましては、歳入歳出両面にわたりまして、相当念の入った措置を講じてまいらないとそれが期待できないことは当然でございますので、歳出歳入にわたりまして思い切った見直しをやらなきゃならぬと、ひとりおざなりの見直しでなくて、制度の改正も含めての見直しというようなところまでやってまいらないと、とてもそういうことはできないのじゃないかというような感じがいたしておるわけでございます。
  114. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま言われました中で国債の問題ですが、大体来年度予算で国債依存率はどの程度を目安とされるおつもりですか。
  115. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まだとてもどのぐらいの予算の規模になりますか、それからどのぐらいの国債をお願いしなければならぬかはまだ見当がついておりませんで、ただ私どもが願っておりますことは、特例債を少なくとも減らさなければならぬということだけをいま道標にいたしておるわけでございます。それだけがいま言えること精いっぱいでございまして、どれだけの依存率になりますか、建設公債、特例債、それぞれまだ数字を申し上げられるような段階ではございません。
  116. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまのお話だと、数字とかパーセンテージは結構ですけれども、少なくとも建設公債よりも赤字公債の方が下回ると、金額的に。そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  117. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいま大臣の御答弁にございましたように、全体の規模もわかりませんので何とも申しかねます。
  118. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 なかなかむずかしいと思いますけれども、いまの大臣のお話だと、ニュアンスとしてはそういうことになるんじゃないですか、赤字国債はとにかくうんと減らしたいと、こういうわけですから。そういうふうに自然に答えが出てくるように思うんですけれども、その点はいかがですか。
  119. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 例の財政収支展望がございますが、あの中でございますと、ただいま矢追先生のおっしゃったような関係になっております。全体で七兆五千、特例で三兆四千というような関係になっておりますが、目下のところ確たることは申し上げられないということが正直のところでございます。ただ、極力特例公債は本年の三兆七千億よりも減額すべくやらなければならない、先般の当委員会の附帯決議もございます、鋭意いま努力をしておるところでございます。
  120. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それで、次に、いま大臣言われた歳出の見直しですが、制度も含めて思い切った見直しをしたいと、その場合いま制度ということをおっしゃいますと、これは法律にかかると思いますが、法律改正を必要とするいわゆる歳出をカットするものはどういう項目がありますか。あるいはまた、制度を変えるものとしては何をお考えになっておりますか、その点をお伺いしたい。
  121. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 八月三十一日に各省から概算要求が出されまして、それを私どもの方でヒヤリングをやって査定にかかっておるところでございます。したがいまして、予算の大蔵原案ができるまでの間には、どういう項目についてどういう切り込み方をしなきゃならぬか、これはひとり大蔵省だけが独断的にやるんでなくて、政府部門でよくこなして予算をつくらにゃなりませんので、政府部内で相談せにゃならぬと思いますけれども、どういうことが立法にかかってくるのか、いまのところ全く見当はつきかねますが、いずれにいたしましても、意気込みといたしましては、いままで私どもが安住してまいりました制度そのものにも、場合によっては切り込まなけりゃならぬぐらいの気持ちでやらないと、とても来年の予算はわれわれが所期の目的を達成するような予算にはなかなかならぬのじゃないかという感じがしてならないということを申し上げておるわけでございます。具体的なことはさておいて、見ないと申し上げられません。
  122. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 具体的なことはなかなかむずかしいかもわかりませんが、大体の方向といいますか、目安としては、大きいものから二、三挙げられると、たとえばこういうものということは言えませんか。
  123. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 目下検討中でございますので何とも申し上げられないんですが、たとえば本年、前回の国会で輸銀法改正していただいたわけでございます。あれは従来一対三であったんですが、一対十一と。こういうのはわれわれとしては五十二年度編成問題として考えておるわけでございます。こういうような例はございます。
  124. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 一つは、経費削減ですけれども、これも大きな問題になるかと思いますが、その中で補助金ですね、これについては今年度と比べて、徹底的な見直しをして、大体どの辺までいけそうなのか、理論的に可能な限界はどの辺なのか、あるいはそのほか政治判断とかいろんなことがございますから、これは全面的に政府の言うとおりにならぬ場合もあるかもわかりませんけれども。実際ことしは七百八十億、十五件と、こういうことになっておりますね。それから比べて来年度は大体どの辺までいけそうですか。   〔理事戸塚進也君退席、理事中西一郎君着席〕
  125. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 五十一年度の場合は、ただいまお話がございましたように、全部で千百件、八兆二千億の中から十五件、七百八十億という数字を先回の国会でも申し上げたわけでございます。これは昨年三、四月ごろから私どもの方と行政管理庁の方で手分けをいたしまして、行管の方で約百四十本ぐらいの実態調査をやってもらいまして、その結果を予算編成過程でわれわれの検討とドッキングをしまして、考え方としては、零細なもの、それから使命を終わったものとか、効果の落ちているようなもの、こういうようなものについてそれぞれある程度の一律的な考え方というようなものをやりまして、われわれとしてはいままでやらなかったような合理化をやったというふうに考えておりますが、五十二年度の問題でございますが、五十二年度の場合、これを一体どうやってやるかということになりますが、今年の場合は基本的な考え方は、先ほど大臣の御発言の中にもございましたが、すでに七月三十日、五十二年度概算要求についてという閣議了解をいただく際に、基本的な考え方をそこで決めていただいておりますが、一つはスクラップ・アンド・ビルドという考え方、それからただいまの使命を終えたもの、あるいは効果の少ないもの、こういうようなものについて個別に検討を加えるというような考え方でいま作業をやっております。  で、御承知のように、昨年も補助金全部で八兆二千億あるといいますけれども、公共事業と文教と社会保障、こういう主要経費の補助金が約八五%を占めておるわけです。したがいまして、法律制度を直さない限り、そういうような補助金、負担金のたぐいというものはなかなか合理化ができないわけです。昨年の社会保障なんかはかなり法改正などもしていただいて改善を図った面もございますが、そういう制度改正の問題を含めてそういう主要経費の方はやらなきゃならぬ。それからその他の中でも、たとえば国鉄の援助金なんかがあるわけです。こういうようなものはやはり再建計画というような観点からある程度制度的に決まってきちゃう。で、その他のその他というようなことについて一体どうやるかと、三つぐらいに分かれるわけでございます、整理のやり方が。で、ただいま申し上げました七百八十億というのは、言うならばその他のその他というような点についての合理化のケースになってるわけです。  まあそんなようなことは単なる事実の御説明にすぎませんが、ともあれ五十二年度の場合、繰り返しますが当委員会の附帯決議もあるわけでございます。われわれとしても前々から何とかしたいという考え方を持っておりますので、編成過程でただいま鋭意検討をいたしております。
  126. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの次長の答弁を踏まえて大臣にお伺いしますけれども、いまの中で、法改正の問題が出ましたけれども、この補助金の見直しについても法改正を含めて徹底的な見直しをやると、そこまでの勇気をふるえると、こう解してよろしいですか、先ほどの大臣のお話しですが。
  127. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 一段とわれわれとしてはそういう意気込みで取り組まないと、とてもじゃないが来年の予算はできないじゃないかとただいま考えております。
  128. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その場合非常にむずかしいのは、やはりどの程度必要なのか、効果がどれだけあるのか、そういったことも踏まえた上でやはり国民の理解を得なきやならぬわけですけれども、まあ私は何も補助金全部削れということばかり言ってるわけではなくて、必要なものはやはり残さなきゃならぬ面も出てくるかと思いますけれども、そういった点は、先ほど少しまあ話も出ておりましたが行政改革、行管庁の方が絡んでまいりますね、そういった場合、行政改革ということまで手をつけないと本当に合理的なものができない面もあるのじゃないか。で、この行政改革というのはなかなかむずかしくて、いままで言うべくして行われていない。まあ一省一局削減というようなことが言われてきた程度でございまして、あと本格的な行政改革というのはほとんど戦後手がつけられてないんじゃないかと思うんですね。やはりここまで見直すというか、発想の転換といいますか、政治自身の転換もしていかなければ、ただ単に先ほどおっしゃったようなその他のその他だけの見直しで終わってしまう。まあ大臣、そこまでやらなきゃだめだとおっしゃると思いますけどね、実際問題そこまでできるのかどうか、非常に私は疑いを持つわけですけれども、行政改革等も含めた上で大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  129. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まあ過去十年間大変行政需要、行政事務はふえてまいったわけでございます、仕事はふえたわけでございますけれども、行政機構は幸いに抑え込むことに成功いたしまして、各省の機構は膨張しておりませんし、若干縮減になっております。また公務員の定員も計画的に減らしてまいりまして、必要とする部面において若干の新規の増も認めましたけれども、差し引き中央におきましては微減の姿になったことは、歴代の保守党政府のやっぱり私は功績であったと思います。これはなかなかできないことなんです。世界の行政機構を見ておりましても、膨張はやたらにいたしますけれども、これを抑えるとか縮減するなんていうことはとてもできる仕事ではなかったと思うんですけれども、わが国におきましては、幸いにいたしまして非常に厳しい定員管理と機構の抑制をやったわけでございまして、そのことはそれなりに私は評価していただけるんじゃないかと思っております。  ただ、地方が若干ふえております。それでこれは地方ばかりの責任じゃございませんで、学童がふえたに伴い先生がふえていく、あるいは警察官を増員するというふうな関係もあったりいたしまして、やはり中央の責任もあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、地方の方はある程度ふえておりますけれども中央の方は少なくともふえなかったし、機構も抑え込むことに成功いたしたと思うんでございます。ことしもまたさらに定員の削減をこれから年次計画でやっていこうといたしておりまするし、機構の方の膨張あるいは特殊法人新設、そういったものは原則として認めぬという強い態度で臨むことに閣議では一致いたしておるわけでございます。  ただ、矢追さんおっしゃるように、思い切ってそこにメスを入れて縮減を図るというところまでは実際上まいっておりません。何となれば、年々歳々非常に行政の仕事はふえてきておるわけでございまして、これをさらにもっとコンパクトな機構でやれという仰せ、お考えもごもっともだと思いますけれども、なかなかそれは私は不可能に近い御要請じゃないかと思うんでございまして、政府のやっておりますことは、ともかく機構の膨張は認めないと、定員は計画的に減らしていくという既定の方針は厳格に明年度におきましても貫いてまいることで、御期待にこたえたいと思っております。
  130. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大臣、私質問しているのは何も人間減らせということだけ言っているんではなくて、やはり社会も発展し、それだけ必要な部門というのはこれはふやさなきゃならぬところもあるのは当然でして、いわゆる現在のこの機構が本当に合理的にできて非常にうまく動いているのかどうか。まだまだアンバランスとかそういった点もあるように思います。そういった点での、先ほど出ましたスクラップ・アンド・ビルドといいますか、そういった意味も含めての上の行政改革を言っているわけでして、その辺についてただいま大臣の答弁だと減らすことばかりこう言っておられますけれども、これ毎年毎年減らして果たしていいのか。人口がまたふえてきた場合それでいいのかどうか。これはやっぱりまじめに考えなきゃいかぬ問題だと思います。要らないところにたくさん人がいる場合は、これは減らさないかぬでしょう。必要なところもあるし、これから発展する部門もあるわけですし、この前戸塚委員の質問の中にドブネズミ論ですか、出てきたようなこともあるわけでしてね、そうなると国会のあり方もこれは考えなくちゃいけない。そういうようなことで、そういうことも含めて実際やっていけるのかどうか、その点重ねてお伺いします。
  131. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) それはもとより機構につきましても、スクラップ・アンド・ビルドでやってまいることが必要だと思いまして、やっぱりそういう理解を得られて、また内部の職場の転換も、こう抵抗なくできるということが望ましいと思うんでございますが、これは人事管理の面から申しますしいろいろな制約が現にあるわけでございまして、円満な話し合いを通じまして、仰せのような行政需要のあるところに効果的な人員配置ができるようなことを通じまして、経費の効率を上げてまいるということには、不断の努力を払わなければならぬことは当然でございますし、来年のような厳しい財政状況でございますときでございますから、ことさらそのことについては十分配慮してまいるつもりでございます。
  132. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、これも先ほどから出ておりました議論で、非常に国民の関心を呼んでおる減税の問題ですが、政府としてはもうやらないということを決められたようですけれども、そうなると二年連続減税ゼロと、こういうことになりまして、実質的には国民は、特にサラリーマンの場合は収入が減り続ける、二年連続実質的に所得は減ったと、こういうことになるわけですね。そういうふうな政治姿勢で政府として国民にこたえられるのかどうか、これが第一点。  仮にですよ。仮にその所得は実際には減るけれども、減税をしないことによって。そのかわりこういった面ではプラスになるから、こういう厳しい折から国民に御理解をいただきたいと、こう言える何かかわりのものがあるのかどうか、この点はいかがですか。
  133. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) これもたびたび矢追さんに申し上げているとおり、本来ならば大変な歳入欠陥でございますので、増税をお願いせにゃならぬという局面であったわけでございますけれども、それをお願いすることもいかがなものであろうと、また経済が大変冷え込んでおるときでございますから、財政による財貨サービスの購入を通じまして経済を維持してまいる、景気の回復を図り、雇用の安定を図ってまいる必要もあるわけでございますので、私どもといだしましては、そういうことのためにも中央、地方を通じましての財政需要というものを保障していこうという考え方に立って財政政策をやってまいる場合に、精いっぱい増税をしない以上は、どうしても公債の発行をお許しをいただかなければならぬということになったわけでございまして、こんなにたくさんの公債をお願いし、とりわけ赤字公債をお願いしておりながら、減税をいたすというようなことは私は全然自己矛盾であろうと思うんでございまして、国民もそのあたりはよく御理解をいただけると思うんでございまして、いち早くこういう状態から脱却いたしまして、そして初めてあなたの言われる減税が大手を振って行われるような状況をつくり出すということが、われわれの任務じゃなかろうかと思うんでございまして、ここ当面御不自由を忍んでいただくわけでございます。それは御理解をいただけるんではないかと思うんでございます。  とりわけ日本のように、過去ずいぶん長い問、幸いにいたしまして減税が例年のように行うことができました国柄でございまして、それだけにここしばらくの間減税を遠慮さしていただきましても、これまたそういう面からも御理解がいただけるのではないかと考えたわけでございます。しかしながら、いつまでもこういうことをやろうとしているわけじゃございませんで、財政正常化の暁におきましては、なるべく早く減税が行われるような環境、条件をつくり得るように、そういう基盤をつくってまいらなければなりませんので、私どもといたしましては、なるべく早くそういう赤を迎えたいために、いましばらく冬の厳しさは耐えていただこう、こういうことをお願いしておるわけでございます。
  134. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その冬の厳しさが一年ならいいんですけど、二年続くわけです。しかも、諸外国の場合には、アメリカにしても西独にしても、やはり厳しい中で減税やっております。それからイギリスの場合は、賃上げの方を四・六に抑えたかわりに、見返りとして減税と、こういうことをやっておるわけでして、何か見返りがやはり、イギリスのような大変なところでも、インフレを抑えるために賃上げの方はちょっと抑えてもらう、そのかわり減税を少ししましょうと。さっき大蔵大臣の話を聞いていますと、本来なら増税するところを、それをしないで減税しないんだから、それでもう十分じゃないかと、これが一つですね。それから、ずっと毎年いままでやってきたと、だからこの二年間は辛抱しろと、こういう、しかもそれだけじゃなくて、私は後で言いたいんですけど、福祉見直し論というのが出てきまして、老人医療の有料化であるとか、その他いろいろこれまた負担増の問題が、増税とは違ったものが出てきておりますね。さらに公共料金の値上げと、こうなると、国民は辛抱——いまと同じ状況でもう一年というならまだある程度辛抱できるでしょうけど、やっぱりいまより負担になるつらさというのは、私は来年もういっぱいやれと言われると、ちょっとつらいんじゃないかと、こう思うんですけど、その点重ねていかがですか。
  135. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 外国の政策につきましての言及がございましたけれども、やはり国ごとに非常に環境も背景も違うということであろうかと思っておりまして、たとえばアメリカの場合には、景気対策として減税を使う。減税額の約二倍経済がふくらんだんじゃなかろうかというふうに言われておるようでありますが、確かに効果があったとされているようでございますが、アメリカの学者なり役人なりと機会を持ちましてときどき議論しておりますが、アメリカの場合は、公共投資という手段が現行にはほとんどないんだと、日本の場合には公共投資でやるというのは、それは賢明な選択ではないかということを、むしろ彼らの方は言っておるわけでございまして、それは財政構造の違いというものが非常に大きな要素ではなかろうかと思います。それからドイツの場合には、減税をいたしました時期というのは、たまたま景気対策の時期とぶつかりましたけれども、説明としましては、御承知のいわゆる大税制改正というものの一環であるということで、たまたま時期がぶつかった。結果としては、どうも西ドイツの財務省、大蔵省の連中は、景気対策としての減税はほとんど効果がなかったんではないかという評価をしているようでもございます。イギリスの場合は、これは御承知のような物すごいインフレの率でございますから、その下で四%とか五%という、つまり物価上昇と極度に違う賃金抑制をする場合というのは、やはり日本の場合とまた大分事情が違うんではないかと、やはり国ごとにどういう政策手段を用いるのか、何が最も適当かということで、おのずから違いが生じてくるんではなかろうかという気はいたします。
  136. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これ以上議論しても、やらないという方針を固めておられるようで、やめておきますけれども、先ほど大蔵大臣言われた春を迎えるまでの冬を辛抱しろということですが、その春を迎えるためにどうするかということで、いま主税局長からありました、わが国は財政でどんどんやっていくと、景気回復というものを。それで、そういうことで財政を非常にフルに動かして景気刺激をやっていくんだということでこの二年間きたわけですね。一年以上。で、今年度もまだ、先ほども少し出ておりましたが、景気の面ではまだまだ厳しい答えが出てきております。鉱工業生産も八月は減っておりますし。そういう面で、これから特に来年の三月、いわゆる今年度の末までに、大臣はどの辺までこれいけると見られておるのか。ただこうながめておってどうなるかじゃなくて、それはいろんな不確定要素があるからむずかしいでしょうけれども政府としてその財政の面で手を打って、どこら辺まで景気の回復を可能と見ておられるのか。そして、来年度に入って、この財政による景気刺激というのはどの程度力を入れようとされておるのか。その結果、来年の当初においてはたとえ減税ができなくても、いわゆる年度末に補正を組むような場合の減税ということも、景気の回復次第によっては考えられるのか。しかし、たとえその景気がよくなって税がふえてきても、それはもう赤字国債を減らすことに専念をするのか。その辺はいかがですか。
  137. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先ほど戸塚さんの御質問に対して企画庁の方からもお答えがございましたように、ただいま景気が若干回復が足踏みしておるような状況でございますけれども、まあ春先からの回復が非常な大幅でありました後を受けてのことでございまして、年間を通じましては、政府考えておりまする五・六の経済の成長というものは可能であるということでございまして、そういうことは、現在の財政、経済、金融政策というようなものを手固くやってまいりますならば、可能であるということでございまして、新しい景気政策をやらなくてもそのことは可能であるということを意味しておると思うのでございます。  ただ、しかし、経済のことでございますから、よく注意深く見ておかなければならぬわけでございますので、政府としても注意深く景気の、経済の状況は注視いたしておるわけでございまして、ただ、いまのところ、金融政策を特に変えてみるとか、まあフランスにせよ、イギリスにせよ、イタリーにせよ、ずいぶん公定歩合も上げて相当インフレ対策をやっておるようでございますけれども、まあ幸いに日本とアメリカ、西独は公定歩合を据え置くことで、しかも、日本の場合は逆に実質金利が少しずつ下がっておるような状況でございまするから、ある意味においてほめていただかなければならぬような状況かとも思うのであります。  でございまするので、金融的にいま金を出すといっても、特にそれほど資金需要が旺盛なわけじゃございません。財政の方も、手固くことしの予算を執行してまいりますならば、実質的な経済の成長というものも政府のもくろみどおり一応達成できる見通しであるということは、先ほど申しましたとおりでございます。将来必要であるかどうかは、これはわかりません。わからぬが、いまの段階でお尋ねになりますならば、先ほど戸塚さんにもお答え申しましたように、私の方としては、特に財政政策上新たな手を考える立場にいまはないという、考えはないということを申し上げるよりほかないと思うのでございます。しかし、今後の経済の推移をよく見ながらいかなければなりませんし、どうしても必要であるという場合は格別でございますけれども、いまのところはそういうことは考えなくて、所定の政府の見通しは達成できるのではないかという考えを捨てるに至っておりません。
  138. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあいまこのままいけば政府の見通しが達成できるからそのままでいいと、何か起これば別だということですが、現実に、先ほど申し上げたように、設備投資の落ち込みや、あるいは八月の鉱工業生産のダウンですね、こういったことは予定に入って大体そういうつもりでおられたのかどうか、やっぱりいま本来であれば、もういまごろは順調な景気の回復がずっと続いてきてよかったんじゃないですか。今度は中だるみということは余りお考えになかったんじゃないんですか。その点いかがですか。
  139. 佐上武弘

    政府委員(佐上武弘君) お答え申し上げます。  鉱工業生産指数が、御案内のように四−六の期は五・四増という非常に好調を続けて、七月にさらに二・二というプラスでございましたが、八月が先生御指摘のように一・七のマイナスということでございますし、九月、十月は予測でございますけれども、マイナスになるのではないかという通産省からのお話がございますから、鉱工業生産指数がマイナス傾向をとっているということは注目すべきことだろうと思うのであります。ただ御案内のように、八月というのは、正確に申しますと七月から九月の間と申しますのは、どうも真ん中に夏休みがございまして、その関係で季節調整をたくさんやりましても、どうしても大きく出る傾向がございます。現に八月の数字を分析いたしますと、自動車の生産がかなり従来一四、五%上がっておりましたのが七・五%ダウンになる、その原因は、やっぱり夏休みを大手のところは八日から十日とって休んで、それで整備をするというようなことがございます結果、かなりマイナスが増幅されているという面もこれは考慮に入れなければならないかと思います。先行きの九月、十月のマイナスと申しましても、サンプル数は全部カバーしているわけでございませんから、これはただマイナスになっているという状況は注目すべきことではございますけれども、じゃその後の十一、十二、あるいはその後に続くものが果たしてそういうふうなマイナスで続いていくかどうかというものについては、私は必ずしもそうは言えないのではないかと思います。  それからもう一つ、設備投資は御案内のように一−三及び四−六に実質でプラスに転じておりますし、設備投資もそろそろ動意が見られておるということは、日銀の短期観測あるいは各民間機関の観測からうかがわれるわけでございまして、私は出おくれが多少あろうとも、徐々に出てくるのではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、大臣がお答えになりましたように、私どもはいまのやはり指標はずっと何といっても材料不足を免れないわけでございます。下半期も十月から始まるという状況でございますので、やはり従来のこれからの経済指標を非常に注意深くながめていく。しかし、いまの基調ではどうも特に、新聞等ではいろいろ中だるみ等々言われておりますけれども、最終需要も緩やかでございますけれども、推移をいたしておるという状況から、特に政策云々という問題はないのではないかというふうに事務的には考えております。
  140. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう時間ですから最後にちょっとかためてお伺いしますけれども、いまのお話聞いても、かなり見通しを楽観されておるわけでして、経済審の方でも政府の認識は甘い、こういう指摘が出ておるわけです。実際いま申し上げたように、やっぱり季節等があるかと思いますけれども、やっぱり私自身が直接いろんな方と接触をしても、明るい話というものは出ていないわけです、現実には。それは一部の方はありますよ。一部はありますけれども、全体的にはまだまだですから、やはりここでこれからやっていかなければ、先ほど大臣が、来年度の予算編成を考えただけでも、順調なインフレを抑えながらの景気の回復をやらなければ、これはもう私は来年度もやはりことしと同じような冬がまだ続いてくるんじゃないかと思うんです。その場合、この間からの議論で補正予算は組まないという方針ですね。補正予算は組まないとするならば、こういった今後の景気を刺激する場合、一番最重要に考えておられるのは、財投なのか、先ほど少し大臣お触れになりましたが、金融政策、公定歩合なのか、また、両方なのか。特に十月、十一月、十二月、この三カ月間を見まして、仮に景気が中だるみが続くようであれば、どういう順序から手を打たれますか。すでに通産省からはいろいろな要請が来ておりますね、公定歩合の引き下げであるとか、財投の追加であるとか、あるいは補正予算まで組めという意見が通産省の中にあるやにマスコミにも出ておるわけです。そういった点で、大臣はどういうふうな順序でこれから手を打たれるか。  もう一つ、来年度のお話で、先ほどもとにかく削る話と、税金ふやす話ばかり——税金ふやしても申しわけないのですけれども、増税プラス負担増ばかり言われておりますが、税収を伸ばすためのある程度の成長をしなければならぬと、こう思うわけです。そのための予算的な処置は大体目玉はどこに置かれておるのか、その両方をお伺いして終わりたいと思うんです。
  141. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 基本的には、いまの政策を手がたく運営してまいることによって経済の回復が可能であると見ておるわけでございますので、財投にいたしましても、補正にいたしましてもただいまそれを考えていないということは申し上げたとおりでございます。しかし、矢追さんおっしゃるように、生き物でございますから、将来どういうことが、政府で何らかの手を考えなきゃならないような事態が起きた場合にどうするのだというお話でございます。そういう場合が万々起こらないようにわれわれはこいねがいますけれども、しかし、そういうことが全然起こらないという保証があるわけじゃございませんが、そういう場合は、当然政府でコントロールできる政策手段を使わなきゃならないわけでございまして、国会にお願いしなければできないようなことは、その場合はできないわけでございまするので、補正予算となりますと、当然国会の管轄になりますから、私どもといたしましては、政府の手でどういうことが可能であるかをまず手順として考えて、それでどうしてもいけない場合は国会のお力をかりるということに、手順として考えるのは当然じゃないかと考えます。  それから第二の点でございますが、来年の景気、何を軸に考えるかということのような趣旨の御質問でございましたけれども、これは今年度の経済がまだ半分経過いたしたばかりでございまして、今年度自体の展望がまだはっきりいたしておりません状況でございますので、来年度のことをまだ申し上げる材料を持っていないわけでございます。ただ、われわれといたしましては、インフレのない経済の回復をまず図らなきゃならないということでございますので、ただ、景気が当面よくなればいいという意味でなくて、世界、先進各国それぞれがいま厳粛な責任として、インフレのない拡大のために協力していこうじゃないかという申し合わせもいたしておるわけでございますし、また国民の願望もそういうわけでございまするので、何よりも手がたい経済運営を考えなければいかぬし、財政運営を考えにゃいかぬわけでございまして、ばら色の展望で憂き身をやつすわけにはいかぬと考えております。したがって、今年度の予算の適正な運営というものをまず手がたくやるということ、そうして経済の回復というものを手がたく実現してまいるということをベースにいたしまして、その延長線上でインフレのない来年の経済の順調な回復ということをベースに考えてみたいと思っております。具体的に、歳入歳出両面を通じて何を力点に置くべきか、あるいは経済運営自体にどこに軸心を求むるべきかというようなことにつきましては、もう少しことしの経過を見てからの御相談にさしていただきたいと思います。
  142. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、前回のこの大蔵委員会で拘束預金の問題について伺いましたけれども、新聞などによりますと、十一月から大蔵省として拘束預金解消のための新しい基準をつくって実施に乗り出すということが出ているんですが、いつごろから始めなさるおつもりか。
  143. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 拘束性孤金の取り締まりのための検討の方向につきましては、前回方向について御報告を申し上げたところでございますが、現在その方向に沿いまして非常に技術論、具体的なやり方等を詰めておるところでございます。大変技術論がございますので何月何日とはちょっとまだ申し上げられないのでございますけれども、近い時期に実施できるようにいたしたいと思っております。
  144. 渡辺武

    ○渡辺武君 技術論で詰めておられるという御答弁ですが、もうほぼ大きな内容は決まってるんじゃないかと思いますが、どんなふうな内容になるか。また実施するに当たっては銀行局長通達という形になるのかどうか、その辺もお聞かせいただきたい。
  145. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) いま検討しております点は大きく分けますと三点ございます。  一つは、俗に申しますにらみ預金と申しますか、銀行が正式な拘束の手続をとらないでいて、しかし、現実に預金者の自由に払い戻しができないというようなものが一番問題になっておるわけでございますが、こういうようなものをなくしてしまいたいというのが基本的考えでございます。したがいまして、拘束するもの、する仕方の手続等をはっきりさせてしまおうということでございまして、そういうにらみ預金をなくしてしまうというやり方でございます。  それから、もう一つは、債務者の方から、預金と貸し出しと両方ございます場合に、都合がその方がいいと思った場合に、これを相殺をする——方落ちるわけでございます。相殺をしてしまう、そういうやり方の手順等を約定書その他ではっきりさせておいた方がいいんではないかという点が二点でございます。  それから、第三点といたしましては、具体的にいろいろ相互に苦情がある、その苦情があるところが一番問題であろうかと思いますが、これを処理するのに、現在苦情相談所、あるいは財務局の相談窓口等々ございますけれども、そこら辺の利用度が余り高くなってまいりません。したがいまして、この利用度を高めるために、苦情相談の窓口等を改善充実した方がいいんではないかという角度から、どういうふうにやることがいいかということを、その三点を中心として検討しておるところでございます。
  146. 渡辺武

    ○渡辺武君 そのにらみ預金をなくすやり方ですね。新聞などによりますと、預金者側の相殺権ですね、これによって事実上これを解消するということを考えておられるというふうにうかがいましたが、そういうふうなことなのか。私は、もしそういうことであれば、結局、いわばいわゆるにらみ預金というものはあるということを前提にして、そして、預金者に相殺権を与えるということになるんじゃないか。それでは、いまおっしゃったように、にらみ預金をなくすとおっしゃる趣旨にはちょっと外れるような感じがするんですね。やはり預金者の方から言えば、にらみ預金なんというようなものはもうない方がいい。そして、借りた金はほとんど大部分が完全に自分の自由意思で使えるというふうにしたいと思っているんじゃないかと思うんですね。その辺はどうお考えでしょう。
  147. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) その点は、実は、その両方あわせまして御指摘のように、実質的には拘束をなくしたいと思っているわけでございます。にらみ預金をなくす方法としてただいま考えておりますのは、従来、拘束預金というので現実にちゃんと手続をとって担保を設定したもの、それから担保設定の手続を途中の段階でとめておるもの、それからそうでなくて現実に、何と申しますか、にらんでおるものというような態様に分けられるかと思うんです。  で、手続がはっきりしておりますもの、これは債権保全等の担保措置をとる、あるいは準備段階の手続をしておるというように比較的はっきりいたしております。ところが、そうでなくて、この貸し出しに対してはこの程度の預金を留保しておきたい、これを銀行の方がはっきり意思表示をしておるものもございますし、そうでないものもある。そこら辺が一番問題なわけでございます。したがいまして、その手続をそういう中途半端にしておくものは全部ないようにしようということが、基準としての一つの改めたいと思っている点でございます。  それにしましてもなお、先生御指摘のように、現実問題として、なかなかそこに相互意思の疎通が不十分とか、そういういろいろな問題が起こりかねないわけでございます。そういうときにむしろ債務者の側の権利を十分担保し得るように、債務者の方から相殺をする、相殺をして自分の方から積極的にそういう両建てになっている部分をなくしていくという手順をはっきりさせたい、両方相まってにらみ預金というようなものを解消いたしたい、こう考えておる次第でございます。  それから、先ほど私御答弁申し上げるのを忘れまして恐縮でございますが、通達を出すか出さないかという点でございますが、この内容が固まりましたところで、私いま申し上げました手続的なはっきりさせるという点につきましては、これは、いずれにしましても通達を出した方がいいかと思っております。その他の点あわせまして、どういう形にいたしますか、なお内部で検討いたしておりますが、いまの段階では、私の名前で各関係者のところへ通達を出しまして、今後の取り扱い、あるいは検討の方向等をはっきりさせてまいろうと思っております。
  148. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまおっしゃったいわゆる狭義の拘束預金ですね。ちゃんと通帳も担保もとっているというのに準ずるものとして、いわゆる見合い預金という名称で呼ばれている範囲のものがありますね。これについても、担保をとって、いわば本物の拘束預金にしようというのが一方で考えられているわけですか。
  149. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) そういうものもケースによってはあり得るかと思います。実は、いままで実質的に払い出せないようなことに相なっておって、しかし、手続が完全でないというようなものが統計数字、報告等にはそのまま完全に上がってきておりません。そういうものが一部表に出ることによりまして、ある程度拘束比率が上がるケースもあり得るかと思います。ただ、しかしながら、その場合は金利措置は必ずとらなくちゃいかぬ。つまり貸し出しの方の金利をそれに見合うものは必ず下げなければいかぬということでございますのと、それから基本的にはいまの実質的な名実ともに拘束預金であるものを、これがふえるようなことは絶対してはいかぬという指示はかねがねいたしておるところでございまして、そういう一般的な指導方針の中で、今回一番グレーゾーンに当たる部分を解消する方向で、一時的にあるいは拘束比率が上がるようなところがあり得るかとは思っておりますけれども、全体としては極力これを少なくする方向でなお引き続き指導はいたしてまいりたい、こう考えております。
  150. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう少し具体化した段階でさらに伺いたいと思いますが、最後に、いまおっしゃった苦情処理機関ですね。まだ検討中とおっしゃっておられましたが、第三者的なもので苦情処理機関ということであれば、具体的にはどういうものをお考えになっているのか。それから、いま、たとえば公正取引委員会も、これは一種の苦情処理機関みたいな役割りをこの問題については果たしていると思うんですね。ところが、これ、なかなか中小企業自分の名前を出して、私の場合こうなんだというふうに言い切れないところがあるんですね。だから、これがなかなか機能を発揮できないでいるわけです。その辺、もし新たな苦情処理機関ということをお考えならば、その辺はどういうふうに解決なさるおつもりか。
  151. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) いま先生の御指摘の点が、まさにいま私ども一番頭を悩ましておるところでございます。で、現在御指摘のように、公正取引委員会あるいは私ども関係のところでも、銀行協会あるいは財務局等々でいろいろ苦情を承る窓口は開いておりますけれども、やはり債務者の方の気持ちといたしましては、具体的にそこで名前を出し、具体的なケースを挙げて相談をするということはなかなかしにくいというようなことは確かにございます。で、それが、あるいは人がかわればということもなかなかそれでうまくいくとは限りませんものでございますから、それを実はどういう方向で、どうしたら一番実効が上がるかということをいま一番勉強している、検討しておるところでございまして、具体的にこうすればというところまでまだ御報告できる段階に至っておりません。なお今後研究をいたしたいと思っております。
  152. 渡辺武

    ○渡辺武君 苦情処理機関としては、具体的にはどんなものをお考えなのか。
  153. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) いま申し上げましたように、銀行協会の中に置かれているもの、あるいは財務局にございますもの、あるいは商工会議所に関係者が出ていきまして、そこで定期的に苦情を承るもの等々が現実にございます。それをいまの形で充実すると申しますか、機能を果たすようにしていくのがいいか、あるいは相互重複しているところもございますので一緒にした方がいいのか、あるいはそこら辺をどういうふうに考えたらいいのかというのを勉強しておるところでございます。
  154. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは次に移りたいと思いますが、いま大蔵省が郵政省に頼んで、この郵便貯金の架空名義口座を洗い出すための名寄せをお願いしているというようなことが新聞などに出ておりますが、それ事実かどうかお伺いいたします。
  155. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 現在、私ども国税庁といたしましては、郵政省に対しまして、法人税あるいは所得税の課税調査の半面調査として郵便貯金の調査をいたしておりますが、このことに関して郵便局からいろいろと協力を願うべく現在話し中でございます。
  156. 渡辺武

    ○渡辺武君 郵政省の方ではこの問題についてはどういうお立場でしょうか。
  157. 森本哲夫

    説明員(森本哲夫君) 現在、郵便貯金につきましても、ただいまお話のありましたとおり、所得税法その他の法律によりまして、納税義務者と取引のあるもの、つまり郵便貯金に関しましても質問、調査する権限があると、こういうことで、従前もこの調査対象者を決定しまして、依頼がありましたときには回答を申し上げておる、今後もそのことには変わりはないという実態になっておるわけでございます。
  158. 渡辺武

    ○渡辺武君 もうすでに地方の貯金局などで個人ごとの帳簿をつくって名寄せを始めているというような話もありますが、その辺どうですか。
  159. 森本哲夫

    説明員(森本哲夫君) いま御質問の名寄せと申しますのは、郵便貯金の預入限度額が三百万でございますので、これに達するかどうかという調査。これにつきましては、郵便貯金は全国どこでも預入ができる長い歴史を持っておるわけでありますが、この二万余の郵便局ではそういった受付をいたしますのですが、その原簿は地方貯金局という甲府の計算センターで一轄保管をしておりまして、その地方貯金局で預金者の生活の本拠地ごとに預金者の名寄せを行う。これは従前からもやっておりまして、その調査の結果、最高限度額を超える場合には、預金者に現額通知をいたすと、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  160. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう一点、大蔵省の方に伺いたいと思うんですが、大蔵省、日銀、郵政省が金融情勢について三者間の意見交換会を発足させるという報道が行われておりますけれども、これはすでに発足さしたのか、あるいはそういうおつもりがあるのか、目的は何なのか、その辺伺いたいと思います。
  161. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) これは、私ども考えておりますのは余り公式のものではございませんで、やはり、私ども日本銀行、郵政省相互に、特に預貯金金利等のことにつきましては関係しておるものでございまして、常時接触はいたしておるのでございますけれども、なお、お互いに意思疎通をよくした方がいいと、こういう判断でしかるべき時期に、定期的でもございません、ときどき集まりまして情報交換その他をいたそうではないかと、こういう御提案を郵政当局にいたしまして、で、郵政省の方も、そういう性質のものならば結構であろうというふうに承りまして始めようと思っておるところでございます。実はまだ具体的に集まっておるというわけではございません。そういう御相談をしておるところでございます。
  162. 渡辺武

    ○渡辺武君 この意見交換会なるものですね、主な目的は、郵便貯金と、そしてほかの金融機関との金利の一元化を大体目標としているんだというふうに言われているんですけれども、そういうことですか。
  163. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 私どもとしましては、御指摘のように基本的に金利の一緒に弾力的に動くということは大変大事なことだと思っております。ただしかし、今回御一緒にときどき集まろうということは、特にそのことを詰めて議論しようというような、そういうことではございませんで、一般的な預貯金あるいは金融情勢その他に関しまして情報を交換し意見を交換しようと。それで特にテーマを決めて詰めるというような、そういう性質のものとして考えておるわけではございません。
  164. 渡辺武

    ○渡辺武君 なんだかしかし危なっかしいですな。だって、ちゃんと役所の機関にいる人たちが、別に何の目標もなしに集まるというのもちょっと解せないところがあるですな。やはり、どうなんですか、郵便貯金とほかの金融機関との金利、これを何とかやっぱり一元化というか、関連づけていこうというようなところが大きなねらいになっているんじゃないですか。どうですか、その点、率直に言ってください。
  165. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 御指摘のように、私どもは、やはり何と申しますか、預貯金金利金利政策の一環として整合性を持って動くということは大事なことだと思っております。これは率直に申し上げて私どもはそう思っております。ただしかし、先生がいまお挙げになりましたいまの三者でときどき集まろうではないかということは、別にそういう他意を持っているわけではございませんで、お互いに関係のある仕事をしておる者同士で常時、できれば随時その情報交換や意見交換をしておこうではないかという程度の気持ちでございます。
  166. 渡辺武

    ○渡辺武君 郵政省の方は、郵便貯金の金利というのは、これは郵政省の権限に属することだと思うんですがね。この点、いま言った金利の一元化といいますか、ほかの金融機関金利と調整的にものを考えるというような点についてはどういう見解ですか。
  167. 森本哲夫

    説明員(森本哲夫君) 現在、郵便貯金の金利の決め方につきましては、御指摘のとおり、郵政大臣が郵政審議会に諮問をし、そして政令で定めるという仕組みになっておるわけでございます。私どもといたしましては、郵便貯金制度の運用そのことについては関係当局と、ただいまお話に出ましたような形でも随時いろいろな形で密接な連携をとっていかなきゃならないとは存じますけれども、制度の基本を変えるという考え方は持っておらないところでございます。
  168. 渡辺武

    ○渡辺武君 余り詳しく聞く時間もありませんので、最後にこの問題について一言。これは大蔵大臣に伺いたいと思うんですが、どうも、大蔵省の動きが私は感心しない。とにかく、郵政省の方には、架空名義の口座などについてのやっぱり検討もやってほしいと。   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕 これは税収という点からそういう意図を持っていると。金利についても一元化という方向で一応その意欲は持っているということのようですけれども、どうも経過を新聞記事などでずっと追ってみますと、中期債を発行しようということで引き受けシンジケート団との折衝の中で金融機関側から強い要望があって、そしていま言ったような方向に大蔵省が動いているのじゃないかというふうな感じが非常に強いんですね。  それで、郵便貯金というのは、これは大衆の零細な預貯金の集まるところですから、だから、そういうところをまず第一に、架空名義の問題などが、そういうところで問題になるというようなことでは、私は国民の立場からいっておもしろくないというふうに思わざるを得ないんですよ。ほかの機関に、郵政省にそんなことを頼むならば、大蔵省としてやるべきことは私はあると思う。児玉のあの脱税問題でも非常に明確に出ましたように、民間金融機関にある架空名義ですね、預金口座、これが脱税の重要な原因になっておったわけでしょう。だから、大蔵省として銀行などに協力を求めてやれば、こういう架空名義の預金の問題などは、私は名寄せくらいはできるのじゃないかと、そう思うんです。私は、脱税防止と、大口脱税防止ということだけじゃなくて、利子・配当の源泉分離課税の問題ですね、これは廃止しろという意見非常に強いんですよ。この問題を解決する上でも、非常に有効な措置だと思うんですよ。そういう銀行に対して架空名義の預金の名寄せなどを要請するおつもりがあるかどうか。これ大蔵大臣に御意見を伺いたいと思うんですよ。銀行局長さんからも伺いたいと思う。
  169. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 大臣の御答弁の前に御説明さしていただきたいと思いますが、架空名義問題につきましては、前々からいろいろ御指摘をちょうだいしておりまして、このところ私どもは具体的に大変厳しく銀行に対しては指導に当たっておるつもりでございます。ただこの問題は、銀行側も問題があるかと思いますけれども、また預金者側の方にも問題があるわけでございまして、両方の協力を得ないとなかなか思うように運ばないのでございますが、私ども検査の際にも、架空名義の有無というのは、検査の重要な検討課題ということにいたしておりまして、個別的に検査に臨む金融機関の店舗ごとにその実態を掌握することに努めております。そうしましてこの架空名義預金等が発見されました場合には、これはそれぞれの責任者から書面による事情の報告を徴しまして、その是正を厳しく指導いたしておるのでございます。したがいまして、最近私どもの認識では、これはまだ百点とは私思っておりませんけれども、しかし、銀行の方からしかけて架空名義をさせるということは、ほぼなくなってきたんではないかと思っておりますが、なおこれについては今後も手を緩めないで厳しい指導をしてまいりたいと思っております。  それから名寄せの問題は、やや別の角度の問題かと存じますが、これはむしろ私が申し上げるのは適当でないのかもしれませんけれども、しかし、これは銀行の各店舗ごとには、現在ほぼ名寄せを実行されておるというふうに私どもは掌握をいたしております。この点につきましてもなお今後も十分指導してまいりたい、銀行行政上も指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  170. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 利子・配当に対する課税問題、これは御案内のように経過的には源泉分離、そして選択できるというような制度になっておりますけれども、行く行くは、これを総合課税にもっていかなければならないという方向で準備を進めておるわけでございます。課税の適正を期するためには、十分の材料を掌握した上で公正を期していかなければならぬわけでございまして、そのことは、郵便貯金であろうと、銀行預金であろうと、これは差別があっては原則的にならないことであるわけでございまして、各方面の理解と協力を得てやってまいらなければいかぬと考えております。  金利政策につきましても、金利政策が、権限の問題は別といたしまして、実際の金利政策の運用が二度に分かれるというようなことになって、金融市場が混雑するというようなことは望ましくないことは渡辺先生御理解いただけると思うのでございます。そういう点につきましては、郵政省にも御異存がないと思うのでございまして、私どもそういう意味で、その整合性をどのようにして円滑に保証してまいるかにつきましては、今後も十分気をつけてやってまいらなければならないと思っております。ただ大蔵省というものが、とかく力をもって押しまくるというようなことがあってはならないわけでございまして、どこに対しましても、十分理解と協力が得られるように気をつけて事に当たっていかなければならぬことは申すまでもないことでございまして、そういう点は十分戒めていくつもりでございます。
  171. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に私は、沖繩県の石垣島の旧軍用飛行場の問題について若干の時間伺いたいと思います。  この問題につきましては、昨年の六月十三日沖繩北方問題等対策委員会で大蔵省に伺ったわけですが、その石垣島の旧平得飛行場それから旧白保飛行場、これの戦争中の接収について、これは旧海軍会計規則百十四条に基づく随意契約に基づくものだという答弁がそのときありました。そこで、きょう法制局からおいでいただいておりますが、この旧海軍会計規則、これは後ほど海軍だけじゃなくて陸軍等々にも共通のものだという御訂正がありましたので、それに沿って伺いますけれども、この会計規則の百十四条と、民法の五百五十五条とはどういう関係になるのか、これをまず伺いたい。
  172. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 民法五百五十五条の方は、申し上げるまでもなく、有償契約の典型的なものでございます売買——財貨と金銭の交換と申しますか、それにつきまして規定しました一般的な規定であると存じます。これに対しまして先ほどお挙げになりました会計規則、これは廃止されておりますけれども、国の会計法規でございます。国の会計法規の方は、国の会計機関を規律するいわば公法的な手続法であるかと存じます。その意味におきまして、民法の規定につきましては、私の人間はもちろんでございますけれども、国に対しても適用があるというのが一般であろうかと思いますが、これに対しまして会計法規につきましては、その適用対象となりますのは、国の会計機関についてでございまして、一般的な意味では、一般国民の権利義務に直接の関係はないかと存じます。ただ国の会計機関が、会計法規に拘束されますことの結果といたしまして、国の取引の相手先となります国民もまた事実上その手続に従わざるを得ない場合が多いと、そういうような相互関係になろうかと存じます。
  173. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、売買についての契約ということでは、民法五百五十五条と、何というか、法律用語は余りよく知りませんけどね、民法五百五十五条を基礎にしてこうした会計上の規則が出てきてるというふうに見て差し支えないですか。
  174. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 会計法規につきまして、直接その売買の基礎法規といいますか、売買そのものについて直接規定はしておらないといたしましても、当然民法は基本的な事項につきましての一般法でございますので、そういうものを背景と申しますか、基礎と申しますか、した上で公法的な手続関係が規制されている、こういうふうに考えております。
  175. 渡辺武

    ○渡辺武君 同じ民法の九十六条に、「詐欺又ハ強迫二因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得」、こういうことになっておりますね。そこで、もし仮に売買が、形の上では確かに売買のようになっているとしても、それが仮に強迫によって行われたものだということになればその契約は無効だと、取り消すことができるということになろうかと思いますが、その点どうですか。
  176. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 事実関係の問題絡みますので非常にむずかしいと思いますが、事実関係は別といたしまして、一般的な法律関係として申し上げるといたしますと、強迫をいたします手段というのは、特別に問われていないと思うのでございます。そういたしまして、どういう場合にその強迫が違法と認められるかどうかにつきましては、もちろん個別のケース、ケースによって、社会通念によって判断せざるを得ないと思います。しかし、それが強迫ということで認められるといたしますれば、その法律効果といたしましては取り消しという問題が生ずる、あるいは場合によっては損害賠償という問題を生ずるということになろうかと思います。
  177. 渡辺武

    ○渡辺武君 仮に、ちょっと仮定をしてみますと、暴力団がある土地を持っている人を、これをいろいろおどかした。そして売買契約書も取り交わした。それからまた価格についても価格協定書も取り交わした。それからまた土地の登記もやった。形式の上では確かに土地の売買が成立しているように見えるんだが、しかし、とにかく力でおどかして、そして本人の自由な意思、売った方の自由な意思に基づく売買契約でない、登記ではないということであれば、これは当然取り消しになるということになりますか。
  178. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 強迫の中心的な眼目は、ある人の、その人の、相手になる人の自由な意思決定を妨げる違法な行為があったかどうかということであろうかと存じます。いま先生がお挙げになりました具体的な事案でどうなるかというのは、はなはだむずかしいと思いますが、要は、そういう自由な意思決定を妨げた行為があったかどうか、そういうところに着目いたしまして事実関係調査するほかはないと存じます。
  179. 渡辺武

    ○渡辺武君 法制局の方ありがとうございました。  それじゃ大蔵省の方に伺いますが、会計規則の、さっきも申しましたが、百十四条に基づく随意契約だというあなた方の態度なんですけれども、その根拠ですね、何を理由にしてそうおっしゃるのか。昨年伺ってからもう一年以上たっているわけですけれども、その後のいろいろ実情調査されたと思いますので、新たな論拠があればそれをおっしゃっていただきたいと思います。
  180. 吉岡孝行

    政府委員(吉岡孝行君) ただいまの、戦時中における石垣島における旧海軍平得飛行場、それから旧陸軍白保飛行場の取得の手続についてでありますが、その会計規制則の百十四条と申しますのは、これは昔の戦前の会計規則でありますが、いわゆる随意契約による契約ができることを定めているわけであります。それで、われわれが申しましておるのは、戦時中における沖繩における旧軍の用地の買収につきまして、いろいろその後、何といいますか、戦火を免れました宮古とか八重山、そういった先島諸島について比較的資料が残っておりますが、そういうものを収集、調べてみたわけです。土地の売り渡し証書なり代金の領収書等、そういうものが十分残されている。そういうものから見まして、通常の売買契約に基づいてこれが取得されていると、こういうふうに考えているわけであります。
  181. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、客観的な根拠はそれだけですか。売買契約書と、いまおっしゃったのは何でしたかな。私、あなた方の方から、これは石垣島の旧軍用地に関するものですけれども、まず地上物件の移転補償費等の価格についての協定書、それから土地売買証書、それからその代金の領収書、それから土地の代金支払い調書ですか、そういうものをいただいているんですが、大体そういうところが根拠ですか。登記などはどうですか。
  182. 吉岡孝行

    政府委員(吉岡孝行君) もちろん、それらの客観的な資料以外に、当時の軍関係者なり沖繩県における官庁関係者のいろいろ証言等ももとにして、そう判断しているわけであります。  それから、御承知のように、沖繩における登記につきましては、アメリカ民政府時代にいわゆる土地の所有権の確認の行為が行われまして、それに基づいて登記簿が作製された、それを沖繩復帰の際に日本としては引き継いでおるわけでありますから、そういう国有地なるものについては、当然国有地としての登記がなされておるわけであります。
  183. 渡辺武

    ○渡辺武君 この前、私が質問いたしましたら、たしか梶木政務次官が当時出席しておられて、そして、その当時のことであるから軍がごり押しをしたということもあるかもわからぬということを認めておられるわけですね。私、現地の農民の方々から当時の実情どもいろいろ詳しく伺いました。とうていその話からすれば、自由な意思に基づいて随意契約を軍と結んだというような状態は全然考えられないですね。ですから、私は、いまあなた方が随意契約だとおっしゃって挙げられた幾つかの論拠ですね、非常に疑問持つんです。  それで、時間もないので、初めに、ちょっと資料のお願いをしたいんですが、いただいたこの協定書ですね、これは原本の写しでなくて、あなた方がその原本をわかりやすい形で書かれたものですけれども、そういうもの、それから領収書もそうですね。それから登記の台帳ですね、これについても全部はとても無理でしょうから一部でいいです。サンプルでいいですけれども、原本のやっぱり写しを、ぜひお出しいただきたいと思うんです。  それから、いま当時の関係者からいろいろ話を聞かれたということでありますけれども、当時の地主側の人たちですね、この意見。むしろ、あなた方にとって有利な材料だけではなくして、私などが行って聞けば、あなた方のやった行為について非常な不満持って、いろいろ反論をしておられるわけですね。そういう人たちから事情を聞いている、だろうと思うんです。その資料も出していただきたい。  それから、郡や町、それから村、部落ですね、こういう当局者の証言。これもあなた方に有利なものだけでなくて反対なもの、これも両方資料として提出していただきたいというふうに思います。その点どうでしょう。
  184. 吉岡孝行

    政府委員(吉岡孝行君) 先生にお渡ししてあります資料は、それは原本をコピーしたものでありまして、それは原本の写しであります。
  185. 渡辺武

    ○渡辺武君 違う、違う。
  186. 吉岡孝行

    政府委員(吉岡孝行君) 失礼しました。  その原本——内容的には原本そのものでありまして、いわゆるゼロックスといいますか、そういうものではありませんが、内容そのものであります。
  187. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、そのゼロックスの方が欲しい。
  188. 吉岡孝行

    政府委員(吉岡孝行君) はい。  それから、地主の意見なり証言なりを聞いたかというお話でありますが、もちろん旧地主等についてもいろいろと意見を聞いておるわけですが、何分三十数年以上経過していろいろ記憶が輝くなっていることもあり、すでに世代が変わっているというようなところも多いわけであります。そういう意味で関係者の証言の中には、いろいろ先生がおっしゃいましたように強制的に取り上げられたのだというような意見のものもあると同時に、通常の売買によって売り渡したのだというような意見もある。それから同じ人の証言でも、聞いた時期によって意見が変わってくるというようなことで、何分ああいう異常な戦府下の状態で、三十数年前ということで、記憶も非常に薄らいでいる状況でありますので、その資料の収集、証書の収得というのもなかなかむずかしい問題でありますが、当局としていろいろ収集しておる物的資料、そういった人的証言等からすると、通常の売買に一よったものと判断しているものであります。
  189. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がきたようですから、本題へ入るつもりでしたけれども、どうも本題へ入れないで非常に残念ですが、せっかく大臣がいらっしゃるので、大臣一言だけ聞いていただきたいと思うんです。  私、きょうここに幾つかの現地の人たちの声を持ってきました。その中の一つ二つを紹介してお一きたいと思うんです。  まず最初は、これは、この土地が軍に接収された当時の平得部落の会長をしておって、兼大浜村の第二区長をしていた西本貞治さんという人が、回顧録というのを以前につけているんですが、その人の回顧録によりますと、昭和十八年の六月、日本海軍飛行場建設のことが発表と宣言されて、そうして八重山警察署の武道場にこの人呼び出されているんですよ。そこに参会している人は、八重山支庁長並びに上級職員、それから八重山警察署長ほか上級職員、八重山在郷賢人会長ほか幹部、八重山郡下各市町村長ほか上級職員、八重山、郡下各小中学校長、それから新聞社の記者、それから八重山郡島内各区長及び部落会長、こういう人たちのずらっと並んでいる中で申し渡されているんですね。それによりますと、用地買収、用地代、地上農作物の撤去とその補償の有無等については追って通知すると。  それで、こういうことを言われているんですね。特に、わが国日本は、いま某国を相手に臨戦準備に備えるために、石垣島にも海軍飛行喝を建設する、よって大命たることをよく知れということ、で、土地の売り渡しを大命として申し渡されているんです。私、この方に会いましたところが、こういうことん言っていましたよ。まるで御前会議とはこのようなものかと思った、身の毛もよだつような思いで、せき一つできなかったと。そういう条件のもとで、いわゆる土地の売り渡しなるものを申し渡されているんです。  その後この方は、これは軍から通達を受けまして、そしてこれは七月の一日ですね、昭和十八年七月一日、佐世保海軍施設部からこの人に通達がきた。その内容は、目的は、飛行場建設予定地内に散財する拝所、これは沖繩の人たちが社のようにして拝むところですけれども、の三カ所、また墓所五十カ所を昭和十八年七月三十日限り予定地区外の適当な場所に移転を完全完了せよ、もし背く場合は国法に基づき処罰する、こういうことが申し渡された。それから、部落のある人の家にみんな集められた、そうしてここには八重山警察署、大浜駐在所から八重山支所、それから大浜町役場からそれぞれ部落会長ほか部落役員全員、各拝所の司、氏子代表各三名ずつ、部落の古老十人、計五十人余りが集められて、そうして施設部から説明された、こういうことなんですね、いわゆる土地の買収について。そうして、その下命のとおり実行する旨皆そろって誓い出たのであります。その折、坂口憲兵の一人が、早朝より私服で部落内を歩き回るとともに、開会と同時に会場周辺ににらみをきかしていたというような状況のもとで土地売り渡しを承諾させられた、こういうことなんです。  まだそのほかにいろいろありますが、時間がないですが、こういう環境のもとで、すでにもうアメリカ軍との決戦が迫っているという状況のもとで、有無を言わせない形でもって、いわゆる土地の売り渡しなるものを承諾させられた、こういう関係のもとでの売買というのが、これが果たして民法五百五十五条に言う、自由な意思に基づく売買契約ということができるのかどうか、この点大蔵大臣どう思いますか。そうしてこういう実情をこそよく調べて、ただ形式的に売買契約書があるとか、あるいはまたこの土地売り渡し証書があるとかというようなことではなくして、その内容そのものを本気になって調べるべきだと思いますが、その点どう思われるか。
  190. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) まあ法律論は法律論といたしまして、われわれ行政に責任を持っておる者といたしましては、その経緯も十分踏まえた上で関係者の理解と協力がなければ、基地行政なんていうのはとうていできることではございませんので、そういうことへの配慮は、理解と協力が得られるように最善を尽くしていかなければならぬと思います。具体的にこのいま取り上げられたケースにつきましては、いろいろな問題があるようでございますので、それぞれの担当者に命じまして注意深く対処させたいと思います。
  191. 栗林卓司

    栗林卓司君 再度減税のことで恐縮ですけれども、大臣にお尋ねをしたいと思いますが、先ほど、赤字公債を発行している財政の現状の中で減税というのはとうていそれは考えられないという趣旨の御答弁がございました。で、もう少しお尋ねをしたいと思うんですけれども、なるほど赤字公債発行しておりますから、減税どころではないということは、よくわかる気もするんですけれども、そう言いながら、どうしてももう一つわからない気がいたしますのは、赤字公債の原因を考えてみますと、一つは税収不足、もう一つは裏返して言いますと歳出がなかなか削減できないというむずかしさ、これがあろうかと思います。そこで、税収の減少の原因を考えてみると、これは不況でございますから、どちらかというと、短期的な現象である。それから歳出削減、なかなかむずかしいことではありながら対策が全然ないかというと、これはまだないわけではない。ところが、減税あるいは増税というのは、むしろ長期的な税制上の問題になるのではないか。  そこで、赤字公債を発行している現状からして減税はと言われますと、何か短期的な理由に事をかりて税制までいじれないんだというように聞こえてならないんです。そうは言いながら、お金の出入りの話でありますから、現実問題としては同じようなことではないかとおっしゃるかもしれません。で、ただ、そこで、毎度私は物価調整減税のことで伺っているわけですけれども、今日の財政状況から考えて、増減税の組み合わせをどうしながら財源を確保していこうかという、その御苦労はそれはそれでわかるわけでありますけれども、その物価調整減税というのは、それとは違って、いわば増減税の組み合わせどうこうという議論をする前の、平たくいきますと、取り過ぎたものを修正するという修正項目ではないんだろうか。しかもそれは、長年にわたって、いわば制度的なものとして税制の中に組み込まれてきた、今日に至ればですね。それを考えると、なるほど赤字公債発行下では、とうてい減税は考えられないという現実の問題はわからないではありませんけれども、その赤字公債をもたらした税収の減少にしても、不況といういわば一時的な現象の結果でありますから、物価調整減税という、どちらかというと制度的な、しかも調整項目であるというものについては、それはそれとして実施をしていく、取り組んでいくということがどうも正しいように思えてならないんですけれども、この点についてはいかがお考えでありましょう。
  192. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 物価調整減税というものを考えなけりゃならぬというのは、第一やっぱりしょっぱなからインフレに対する一つの譲歩というものが前提になっておるようにどうも思われてならないのであります。われわれといたしましては、程度の問題はございましょうけれども、いずれにせよ、インフレなき経済というものを目指して、非常にもう事柄困難でございますけれども、努力してまいるのが第一義的な経済に対する態度でなければならぬのじゃないかと思うんでございます。しかしながら物価調整減税というようなものが是認されるような環境はなぜできたというと、インフレの度合いが非常に激しくて、われわれの生活を破壊することが激しかったために、せめてそれに対してそういう手段を持って抵抗していかなければならなかったために、物価調整減税というようなものが沿革的に是認されてくる素地ができたんでないかと思うのであります。したがって、それは理解できないわけじゃございません。しからば、現実の問題として一けた台になった今日、インフレ率というような段階においてもう一息、経済の正常化も近しというような段階で、やはりこれを主張するのがいいのか悪いのかと、がまんできるのかできないのかというような問題が当面の問題になるんでなかろうかと考えるわけでございます。  そこで政府は、いま一部年金でスライド制をとったりいたしましておるものもございますけれども、しかし物価調整減税を当然の政策としてわれわれとしては採択すべきであるという態度までまだ踏み切っていないわけでございます。その点につきましては、私はでき得ることならば正常化が先でないかと、物価調整減税を是認する方向に後退しない方がやっぱり態度としてはよろしいのじゃないかというように依然として思います。  第二の問題として、しかしながらそれは、一年とかあるいは二年とか、非常な異常なときはともかくとして、このように当分まだ赤字財政が続くと、したがって、減税も非常にむずかしいというようなときはどうだという反論が成り立とうかと思います。  そこで第二の問題といたしまして、そういう期間はできるだけ短く、短期間で正常化の作業を終えなけりゃならぬので、できるだけ早く作業を終える方に力点を置くべきか、それとも現実と妥協しながら、多少それが延びてでも生活防衛の方にアクセントをかけていくか、そういうあたりはやはり選択の問題であろうと思うんでございますが、依然として私どもとしてはできるならば前者をとりたいものだと考えておるわけでございます。栗林さんのせっかくの御質問の答えになっているかなっていないか知りませんけれども、一応物価調整減税について考えを述べろということでございまするから、まあそういうような点は、私の考えとしてはいま申し上げましたようなところにむしろ傾斜した考えを持っておるということを申し上げて御批判を仰ぎたいと思います。
  193. 栗林卓司

    栗林卓司君 せっかくの御答弁でありますので、二点だけ御答弁の中身についてお尋ねしたいんですけれども、物価上昇率が異常であった場合、なるほどそうであったと思うんですが、これ私かねがね考えますのは、三%前後の物価上昇率である場合には、いわばこれは摩擦的な物価上昇でありますから、物価水準相当以上に安定したと言えると思うんですが、これが八%、九%というのは、今日三%を議論することは、これは非常識のそしりを免れないかもしれませんけれども、だからといって一けたになったから八%、九%が、いわばそれは正常な姿だということはいささか問題がありゃすまいか、今日もなおやはり物価上昇は相当の水準であるということは認めざるを得ないんではないかということが一点。  それから、なるほどこういういわば物価スライド的なものはインフレに対する譲歩であるというお気持ちよくわかる気がします。ただ、物価調整減税という制度をとったから、じゃ、正常化が阻害されるかというと、そうではありませんで、こういう制度があったとしても物価が安定していれば、制度があって中身が結果として高まってくるわけですから、いわば正常化されればこの問題は消えてしまう。その意味で物価スライドということに、したがって、インフレに対するそれは妥協であり敗北なんだということを強いておっしゃる必要はないんではあるまいか、この制度は制度として是認しながら正常化を急ぐということで何ら差し支えがないんじゃないかと思いますけど、二点についてだけお尋ねします。
  194. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 第一点で三%程度以下ぐらいであれば摩擦的なものであって許せるけれども、八、九%というようなものは正常な状態でないと、仰せのとおりだと思います。で、問題はそれを、そういう状態を三%程度以下に早いところ持っていくことにアクセントを置いた政策をとるべきか、現実と若干妥協しながら物価調整減税のようなバッファーを政策のメカニズムの中に許すか、そういう選択であろうと思うんでございまして、私の考え方はむしろ前者の、少し厳しいかもしれませんけれども、前者の方をとりたいものだということを先ほど申し上げたわけでございます。  それから第二の点は、スライド制を仮にとり、物価調整減税を制度として定着さしていきましても、現実に物価が落ちついてまいりますならば、それは適用されないわけでございますし、適用されましても大変軽微な状態でございますから、これあるがゆえに、インフレに譲歩したことにならぬじゃないかというお説はお説として、私はその主張は正しいと思います。ただ、そういうことをもうちゃんと冒頭用意してあるんだということになりますと、われわれ弱い人間でございますから、やややはりイージーなことに流れやすいことになりはしないかということをおそれるわけでございます。
  195. 栗林卓司

    栗林卓司君 大臣御都合のようですから結構でございます。  では事務当局の方へ一つだけお尋ねをいたしますけれども、経企庁おいでになっていると思いますが、前段抜きで伺います。  三月末の稼働率指数というのは、いまの見通しでは予想どおり達成できると御判断でありますか、一点です。  で、関連して、そのときの収益率というのはどの程度の想定をされておいでか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
  196. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 稼働率指数の予測というのは非常にむずかしいわけでございますが、現在のまま推移いたしますと三月末で大体九〇見当の稼働率になるのではないかというふうに想定しております。そのときの収益率ということでございますが、これはいま手元に計算は持っておりませんけれども、いろいろな調査に基づきまして徐々に景気が回復しておりますし、売上高利益率も徐々に回復してくるということでございますので、非常に景気のいいところの水準にまではいかないと思いますが、現在よりはやや改善されていこうというふうに考えております。
  197. 栗林卓司

    栗林卓司君 その程度のお答えだといささか困るんでありまして、たしか三月末には九四前後にしたいというのが去年の経企庁の御判断でありました。おおむねその線に沿って今度の五十一年度予算の基礎になる見通しも立てられたはずであります。いまのお話ですと九〇ぐらい。ということは、所期の見通しより下回るという判断がその後に入ってきたのか。その次に、収益率は徐々に回復していくであろうと漠然と言われたんでは税収の計算ができません。収益率の回復が非常に遅いということが、白書が指摘しているように今日の不況の一番深刻な側面なんです。したがって、九〇と言われた理由と、収益率の見通しについて確たる数字をお持ちになってないのか、改めて伺います。
  198. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 稼働率指数の回復につきましては、御指摘のとおり当初予想したよりもやや低い線で走っておると思います。  それから、収益率につきましては、いまちょっと手元に数字はございませんけれども、当初から収益率そのものの推計は公式に経済見通しの中では出しておりませんけれども、いろいろな観測から計算できないことはないと思います。ただ、いま突然のお尋ねでございまして手元に数字を持っておらないわけでございます。
  199. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまの稼働率ですけれども、去年の暮れから経企庁長官が口を酸っぱくして言われていたのは、何といっても稼働率なんですと、これを回復することが不況対策の眼目でありますと、こうおっしゃってまいりました。今日でもそれは変わっていないと思います。それが下回っておりますということは、実は先ほど同僚議員の質問に対してあなたは、今年度の景気見通しはおおむね予想の線に沿っておりますと言われましたけれども、実はの話は沿ってないということでしょう。
  200. 青木慎三

    政府委員(青木慎三君) 稼働率指数というのは非常に重要な数字でございますけれども、かつその稼働率が回復していくということが、景気の回復にきわめて重要な要素であることも先生のおっしゃるとおりでございますが、推測としましては、やや現在のテンポは遅いということでございまして、九四まではなかなかいかないんじゃないかというのが現在の観測でございます。
  201. 栗林卓司

    栗林卓司君 時間がありませんから予備的な質問にとどめておきますけれども、大蔵省、主税局、いなくなっちゃった。——じゃ、政務次官にお尋ねいたします。  ここで一つだけはっきりと伺っておきたいんですけれども、収益率がどのぐらい回復するかということと、来年の税収見通し、それと関連して来年の赤字公債の発行規模、全部絡まるわけです。いまの経企庁の話ですと、そこまではなかなか仕事をしていないようです。そうしますと、大蔵省として、恐らく作業されているから税収見積もりになろうかと思いますけれども、当初想定した収益率見通しに対してことしはどんな推移をたどっているのか、来年はまたどうなのかという内容と、そういう問題については、これは大蔵省の方の持ち分として作業をされて今後国会審議に臨んでいかれるのか。その分担のことも含めて、前段の資料の方はいまなければ後ほどまた質問の機会にお尋ねするということにして、わりと肝心な部分なもんですから、どちらの方で収益率の管理をしているのかお尋ねをして、とりあえずきょうの私の質問を終わっておきます。
  202. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 私、担当でございますが、主計局は主計局なりに税収なども計算いたしますので、いまちょっと主税局の方に聞いてみますと、私がかねて承知しておりましたようでございますのでお答えいたしますが、主税局の方は、いま先生のおっしゃったような意味の収益益率とうようなものは計算していないようでございます。従来この委員会でも主税が御答弁申し上げておったと思いますが、大体積み上げてやっておるというのが原則だというふうに聞いております。
  203. 栗林卓司

    栗林卓司君 収益率という言葉を使うか使わないかということを伺っているんではなくて、問題は、ミクロの徴税能力の問題ですね、いまここで問題になっているのは。そこで、それが回復するかしないかということが、例の大蔵省がつくられた中期財政見通しの問題も含めて実は最大の問題でしょう。今年度の税収がどうなるか、それを見るには、そのための材料としていま非常にみんな注目しているわけです。私がなぜ経企庁に伺ったかといいますと、当初は九四の稼働率を回復すると、そういう前提に立って五十一年度の基礎になる経企庁発表の資料がつくられているんです。それがいま伺うと九〇なんです。  この問題一歩置きます。仮にそれが九四にいつなるか別にして、なったとして、なったとしてかつての経験のような収益率——それを何と大蔵省の中で言っているか知りませんよ。そういったものが回復しないとすると、通常のことでは従来の徴税額というのは確保できないということになるわけです。もう増税するしか仕方がないということに相なるわけ、だけれども、本当にそうなんだろうかということで伺っているんで、前段のそのミクロの問題をどういったぐあいにしているのか、改めて。
  204. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ミクロの前に、いまの御質問二つあると思うのですが、前段の方は、前回も大臣がお答えになっておりましたが、目下のところ、ことしの分の数字から見るのに、予算の数字がかつかつであるというような御答弁がございましたが、来年度の税収とか本年度の今後については、ただいま主税局に聞きますと、経済見通しその他をまだ詰め切ってないので、当然のことながら十月のこの段階では見通しを持っていないようでございます。  それから、二番目の御質問のミクロの問題でございますが、これはこの委員会でもかつて出たことがあると思いますが、生産と物価、この指数を基本としてマクロ的なチェックをして、別途ミクロ的には大法人の調査、これを使って積み上げているというのが従来からのやり方だと承知しております。
  205. 野末陳平

    ○野末陳平君 先ほど架空名義版金と、それから脱税の関連などちょっと出ましたけども、私もそれをもう少し具体的な実態についてお伺いして、疑問をお尋ねしたいと思うのです。  国税庁にお聞きをしますけれども、ここ一、二年の査察で結構なんですが、摘発された架空名義預金の実態がどうなっているかということなんです。以前と違って悪質になっているのか、以前よりはぐっとよくなっているのか、その辺の感触も含めて簡単に実態の説明をお願いします。
  206. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいま御質問の件についてお答えいたしますが、査察調査の結果は、告発処理した事件につきまして架空名義預金の状況を見ますと、昭和五十年度につきましては、口座数六千六百二十一口、預金額七十三億七千六百万円となっております。また昭和四十九年度につきましては、口座数四千七百十九口、預金額六十一億四千二百万円。昭和四十八年度につきましては口座数六千二百八十四口、預金額七十五億四千六百万円となっております。  なお、以上のような状況は、査察調査に基づき告発処理した、いわば最も悪質な脱税事件についての状況でございますので、これをもって直ちに全般の預金の状況とか、あるいは趨勢を推測することは困難であると考えております。
  207. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、いまの数字の中に、たとえば昭和五十年七十三億、四十九年が六十一億とかありましたけれども、郵便貯金の方はこの中に幾らかでも入っているんでしょうか。それとも入っていないとすれば、郵便貯金についてはいままでの査察処理したもので架空名義で発見されたものがあるのかどうか、その辺もお聞きしたいんです。
  208. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいまお話をいたしましたものは、特に郵便貯金ということを意識をしておりませんので、郵便貯金だけについての御質問についてはちょっとただいま資料を持ち合わせておりませんので、お答えいたしかねます。
  209. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしたら資料なくてもいいんですが、この金額の中に多分郵便貯金も入っているのか、これは全部金融機関のものなのか、そこだけはっきりしておいてください。
  210. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 入っております。
  211. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、国税庁としては、そういういまの資料を当然大蔵省あるいは郵政省に知らせて、しかるべき何か対策をということも含めて参考にしてもらっているんだろうと思うんですが、これはどういう基準で——じゃまず、金融機関のものについて言いますと、これは大蔵省に、これを全部具体的に内容を通報するんですか。それともこの中から何か選んで、ある基準をつくって大蔵省の方に知らせるか、その辺のことを説明してください。
  212. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 査察調査の結果、把握しました架空名義麺金の状況につきましては、大蔵省の銀行局に連絡をしてございます。具体的な事例につきましても必要に応じては連絡をいたしております。
  213. 野末陳平

    ○野末陳平君 というのは、いまのは全部を言ってるんですか。発見されたもの全部を大蔵省に知らせるということですか。
  214. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 先ほど申しました数字に、ついて、当然のことでございますけれども、銀行局に連絡をいたしております。
  215. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、大蔵省の方では、こういう国税庁からの架空名義預金に関する資料を毎年、いまここで説明のあったそれと同じだけ受け取っていると、こう見ていいわけですね。
  216. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) おっしゃるとおり、国税庁から連絡を受けております。
  217. 野末陳平

    ○野末陳平君 さて、郵政省に対しても似たようなことをやっているわけですか。
  218. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 郵政省に対しましては、実は私どもの方は銀行局の間ではこういうことをいたしておりますが、郵政省の間では、先ほど渡辺委員からも御質問ありましたが、現在は所得税、法人税の調査について、その半面調査として郵便貯金の調査をしておる実情などを申し上げましたが、この協力について郵政省にはお話をいたしておる、こういうことでございます。
  219. 野末陳平

    ○野末陳平君 資料を受け取った大蔵省の方が、さて、それに基づいて各金融機関に対して、いわゆる全般的にでなくて、個別にどういうような措置をとっておられるか、それを銀行局長にお願いします。
  220. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 銀行名、支店名等を明らかにして私ども通報いただいておりますので、直轄銀行につきましては、銀行局自身におきまして、それから地方の銀行につきましては財務局等におきまして、それぞれの銀行から、その資料の示されたところの銀行から責任者を呼び出しまして事情をまず聴取をいたします。そしてさらに、これは書面で提出をさせまして、そうしてその実情を聞きました上で、それぞれ具体的に今後の是正等につきまして指示を与えて指導いたしておるということでございます。
  221. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、責任者から書面で事情聴取の形でとる、そうですね。  で、その事情聴取の内容なんですけれども、摘発されているのでいわゆる脱税——納税者の方から見ればかなり悪質なわけですが、これに対して銀行、金融機関に対しては事情聴取の結果、いままでに始末書をとるなり、口頭による厳重注意なりいろんな処分ですね、いわば処分に似たようなこと、局長はいま指導ということでお答えになりましたけれども、処分のようなことは現実にあるのかどうか、いままであったのか、あったとすれば、たとえば去年はどのくらいだったか、その辺のこともお聞きしたいんですが。
  222. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) そういう銀行の責任において悪い、責任を感ずべき事案がございました場合に、私どもの方から直接どういう処罰をすると申しますか、責任をただせると申しますか、そういうことを具体的に指示してはおりませんのですけれども、しかし、それぞれ情状に応じまして各銀行の中におきまして身分上の処置等はとられております。ただ、それがいつどこでどういうふうにあったかということを、私どもちょっと統計的には把握をいたしておりません。したがいまして、数字等申し上げかねますが、それぞれの銀行におきましてその情状に応じまして処置をしておるものがございます。
  223. 野末陳平

    ○野末陳平君 ということは、預金者の側だけに問題があるんじゃなくて、銀行の方も架空名義預金をつくらせたことに対する責めを負うべきような、そういうケースもいままであったということですね。そうですね。
  224. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 一口に申し上げれば、おっしゃるとおりでございます。その軽重その他、情状等いろいろニュアンスが違っておりますけれども、それからまた、銀行の方で非常に厳格に考えます場合と、あるいはその情状をむしろ酌量するというような場合といろいろケースはあろうかと思いますが、確かに銀行の方が百点満点であったということではないと存じます。
  225. 野末陳平

    ○野末陳平君 ロッキード事件の場合に、児玉がかなり、無記名、架空、どちらか具体的なことは知りませんけれども、相当な額を相当数の金融機関に散らばして持っていて、それが発見されたようなことを聞きましたけれども、あの場合もやはりいま局長お答えになったような形で事情聴取等書面で取って、金融機関から、しかるべき措置があったんでしょうか。軽重、情状いろいろあるでしょうが、大蔵省は何もしない、特別の処分は。だけれども、銀行内における何かしかるべきことが、責任のあるような始末があったようにお答えですが、児玉の場合の具体的な、大口というか、悪質なやつ、これについてはどうだったんでしょう。
  226. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 児玉の問題につきましては、すでに御承知のとおり、四十七年分、八年分それぞれ処理をいたしておりますが、個々の事案の中身について、課税上の中身につきましては、この席上では答弁を差し控えさしていただきます。
  227. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、余りその中身はいいのですけれども、児玉が相当持っていたらしい。それはやはり銀行の方が全然無関係だとも思えなくて、児玉は悪いのだからというのじゃないような気がするのです。いわば共犯というか、両方が、銀行も承知の上でやっていたと思う。そういう金融機関に対して大蔵省は何かしましたかということをお聞きしたい。
  228. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 具体的なケースを挙げての御指摘でございますけれども、具体的なケースごとに当該銀行でどういうことをしたかということは、御答弁を差し控えさしていただきたいと存じます。  なお、私どもの方では、直接銀行からの説明は聞いておりますけれども、国税庁のように現場に臨んで一件ごとに詳しく詳細を承知しているわけでもございませんので、したがいまして、むしろ基本的には銀行の自覚にまっておるということでございます。したがいまして、それぞれしかるべき措置は、もし要すればとられるものと思っておりますけれども、しかしながら本件についでどうであったかということは答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
  229. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ、たてまえとしては金融機関の自覚にまつというのでいいんでしょう。それから銀行局が何度も各金融機関にいろんな形で文句言ってるのもわかりますけれども、この架空名義をなくそうという場合に、窓口ではかなりもうなくなりつつあるといいますか、私などもいろいろ興味を持って当たったんですけれども、むしろ窓口でいくらポスター張ったり、まあ手紙を出してそれが返ってきたのは改めてチェックするとか、そういうことよりも、もう初めから相当な大口がいまして、いわゆる外を回る銀行員と、それから大口預金者との間でやはり合意の上でこういう架空名義をつくるのが一番脱税にまで結びついているんですね。だから、その窓口の問題より、大口をどうするかということは、まさしく銀行の自覚にまたなきやならないわけでしょう。ところが、いまのように預金獲得の競争が厳しいときには、ちょっとこれは自覚にまってたんじゃ無理なんで、ここのところをどうするかを考えないと、いわゆる脱税に結びつくような架空名義預金というのはちょっとなくならないんじゃないか、同時にまた、無記名を片方で認めているわけですから、この辺のけじめもまたむずかしいし、ですから、ぼくが局長にお聞きしたいのは、先ほどは預金者の方にも問題があるというお答えでした。それから検査のときに発見したらば、銀行に対していろいろな指導をしているということも聞きましたけれども、両方がいわゆるなれ合いでやるこの大口というのをどうするか、そこまで具体的に絶滅する方法を考えないとだめだと思うのですが、この点はいかがでしょうか。やはり自覚にまつ以外にないですか。
  230. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 先ほど申し上げましたのは、こういう問題は、銀行側ももちろんでございますけれども、預金者側から要求されるというようなケースも、実例を見ておりますと大変多いようでございまして、自覚にまたなければならないのは、預金者側にも大分あるわけでございます。したがいまして、なかなか金融行政的な指導の範囲を御指摘のように超えているような点がございまして、大変むずかしいことを痛感をしておるのでございますが、なかなかその決め手と申しますか、こうすればというものがなかなかむずかしゅうございまして、したがいまして、先ほど申し上げましたように、ポスターを張るとか、通知を出すとかいうこと、あるいは検査のときに重点事項といたしまして非常に、これは具体的に各店舗を回りまして悉皆調査できませんけれども、幾つかの例を調べまして、そういうものに該当するものがある場合には、非常に厳重に注意を与えておるのでございますが、やはりこういうのは、他方で預金者の自覚を仰ぐと同時に、私どものじみちに具体的な指導を進めていくということしか、なかなか妙案のむずかしいところではないかというふうに思っております。
  231. 野末陳平

    ○野末陳平君 局長答えは、むしろ預金者の方に問題があって、そっちの自覚の方がいまや必要だという面を強調しているようで、それは銀行局としては各金融機関にいままで長い間にわたってこの問題をいろいろ指導している立場でしょうから、そうお答えなんでしょう。ぼくはやっぱり両方だと思いますね。預金者にも問題ありますし、だけど、それ問題があったって、受け付ける銀行があるから、預金者側の自覚がいつまでたっても実らないわけですから、だからこれは半々の責任だと思うのが当然なんですよ。銀行についての指導は大蔵省も決め手がないながらかなり厳しくやっておられるようですが、さっきの、たとえば国税庁からの資料に対しても、内部の、要するに内部で全部処理を任しちゃうというのがちょっと甘いような気がするのですがね。やっぱり銀行に少し、つまり銀行に対して大蔵省が始末書なり口頭厳重注意なりという形をとるのは、ぼくはいいんじゃないかと、だから内部で適当にやっているでしょうと言うけれども、じゃ具体的に、架空名義を持ってきた、何千万持ってきた人が、じゃどういう処分受けるかって、ちょっと考えられませんものね、減俸とか、あるいはその他の処分、それはないですよ。だから銀行内部では処分というのはないんで、大蔵省がきちっとすべきだと、銀行に対しては。まずそう思うんですが。
  232. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 銀行に任せると申しましたのは、その責任者に対する処分その他のことでございまして、もちろん私ども国税庁から通報いただいたようなものにつきまして、先ほど申し上げましたようにケースごとに指導いたしまして、厳重注意というお話でございますが、そういうような注意はもちろんいたしております。したがいまして、その結果どれぐらい効果がそれであったかということかと存じますけれども、私どもここ何年か国税庁から通報いただいている中で指摘されております個々の店舗等ずっと見てまいりますと、前に指摘があって私ども注意をいたしまして、自後再び同じ類似のことをやったというケースは、今日までのところはちょっと記憶にございません。したがいまして、私どもの厳重注意も、まあ手前みそのようで恐縮でございますけれども、かなり効果を上げているんではないかというふうに、上げつつあるんではないかというふうに考えております。
  233. 野末陳平

    ○野末陳平君 いずれにしても、国税庁からのは氷山の一角でしょうし、それからなかなかなくならないけれども、ここ数年大蔵省の指導が、それほど局長が言うほど効果上げているかどうか、ちょっとわかりませんけれども、まあかなり厳しくはなっていることは認めます。  で、同時に預金者の方の問題にも触れますけれども、これ仮定の話ですが、この絶滅といっても、これやはり無理だと、決め手がないと言ってたんじゃ、いつまでたっても、先ほどの郵便貯金の問題と同じことで、これ両方とも、金融機関も郵便局も両方とも、ずっと恐らく続くと思うんですね、なくならないと思うのです。で、たとえば——たとえばの話、もしここに納税者番号みたいなものがあってね、それで、これを預金するときに使うというのですか、具体的なことは、まあ全部仮定ですから省きますけれども、仮に納税者番号のようなものがあった場合に、この架空名義預金というのはかなりなくなるんではないかなと思うんですが、それを銀行局長の立場で、あくまでほかの要素は考えませんで、架空名義絶滅というこの目的のために、納税者番号の制度のようなものは果たしてどんな効果を上げるか、ちょっとそれを、意見を聞かしてください。
  234. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) いま先生御指摘のような方法、つまり背番号みたいなことで、ここにそのソーシャル・セキュリティ・ナンバーというようなものがつけられるということで、銀行の方も、そういういま仮定のお話のような制度ができまして、そしてその番号を確認をして預金を受け入れるというようなことになりますれば、おっしゃるように、その架空名義とか、そういうような問題はなくなってくるんではないかというふうに、私は個人的に思っております。
  235. 野末陳平

    ○野末陳平君 じゃ、まあなくなってくると、これ仮定ですから。同時に、そういうことになったらば、銀行ないし金融機関と、それから銀行局として困ることも起きてきますか。デメリットのような、そんなことも考えられますか。
  236. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 銀行局として困ることとおっしゃられますと、ちょっとただいまのところ思い当たりません。
  237. 野末陳平

    ○野末陳平君 銀行はいやがるとか、そういう意味で。
  238. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) それもただいまのところちょっと思い当たりません。
  239. 野末陳平

    ○野末陳平君 じゃついでに、いままで査察で架空名義預金を摘発した国税庁にお聞きしますが、国税庁としては、徴税上こういう制度になりゃ当然便利だと恐らく思っておられるでしょう。しかし、徴税上の広い問題でなくて、いまここでお話ししていますこの架空名義と脱税の関係、これについてはやはりいまの銀行局長考えどおり、架空名義も多分なくなるであろう、さらに公平な課税ができて非常にいいということなのか、それとも同時にデメリットもあるというのか、その辺まとめて、これ最後にしますからお伺いします。
  240. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 先生御承知のとおり、現在申告納税制度がとられておりまして、基本的には国民の誠実な申告に期待をするというのが当然でございますが、同時に、また御承知のとおりに、所得税は総合課税という形になっておりまして、したがって、納税者番号が仮にありますれば、同一人に属します各所得がいわば総合されるという意味では、国税庁としてもこれは非常に結構であるとは一面は思いますが、他方、御承知のとおり納税者番号には、本来課税だけの立場から考えるべきかどうかということにつきましては、むずかしい問題があるのではないかなと、このようにも考えております。
  241. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十一分散会      —————・—————