運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1976-10-14 第78回国会 参議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十四日(木曜日)    午後零時四十九分開会     —————————————    委員の異動  十月十四日     辞任         補欠選任      鈴木 一弘君     矢原 秀男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岩動 道行君     理 事                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 野々山一三君                 矢追 秀彦君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 高橋 誉冨君                 鳩山威一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤川 一秋君                 藤田 正明君                 宮田  輝君                 大塚  喬君                 福間 知之君                 藤田  進君                 村田 秀三君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 矢原 秀男君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   三木 武夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       福田 赳夫君        外 務 大 臣  小坂善太郎君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    政府委員        内閣法制局第三        部長       前田 正道君        経済企画庁調整        局長       青木 慎三君        外務省アジア局        次長       大森 誠一君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省経済局長  本野 盛幸君        大蔵政務次官   斎藤 十朗君        大蔵大臣官房審        議官       佐上 武弘君        大蔵大臣官房審        議官       山内  宏君        大蔵省主計局次        長        加藤 隆司君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省証券局長  安井  誠君        大蔵省銀行局長  後藤 達太君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和五十一年度の公債発行特例に関する法  律案(第七十七回国会内閣提出衆議院送付)  (継続案件)     —————————————
  2. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 藤田進

    藤田進君 小坂外務大臣にはきょう他の委員会もあるようでございますが、何か場違いのところへ引っ張り出されるというお気持ちがあるかもわかりませんが、どうも現在議題に供せられております財特法、ひいては財源の、特にまあ税収落ち込みですね。そういったようなことをずっと突き詰めて検討いたしますと、特にEC地域、近くはアメリカ、さらに開発途上国等経済外交にかなり問題があることが、私の調査でははっきりしてまいりました。御承知のようにわが国は、あらゆる資源について七割以上の輸入をしなければならないという特別な事情があるだけに、見返る輸出についても相当なウエートを期待せざるを得ない現状であります。小坂外務大臣就任されて以来まだ経済外交等中心にどういう外交原則を持って事に当たられようとしているのか。また就任以来当たってこられたのか不明確な点が多々ございますので、この際そういった経済中心にお伺いをいたしたいと、かように思います。  御出席の時間が乏しいようでございますからいろいろ詳しくは申し上げませんが、輸出関係について自動車あるいは家電産業、かなり輸出は出ておりますが、これは自動車にいたしましても、先般大蔵委員会は、委員長を先頭に中部地域、あるいは関西地域調査もいたしましたりしましたが、いずれも自動車産業関係かなりかげりが来ているのであります。昨今は鉄鋼輸出、これまた大きなウェートを持っておりますが、アメリカでも不公正取引として指摘されてきております。またEC諸国においては、特に排貨排日といいますか、そういった傾向が非常に強くなってきておる。東南アジアその他のいわゆる開発途上国におきましても、古い話では田中角榮当時総理が、それぞれ開発途上国に参りましたが、これまた帰れ帰れというような状態で、この状態は依然として今日続いていて好転していない、むしろ悪化しているような状態が諸所に見られます。これは国内体制の反映として、過当競争というか、あえて不公正取引というか、業者間のそういったようなものが大きく悪影響を持っていることは事実でございますが、しかし現地を含む外交路線における一体打開というものの苦心、具体的施策というものがほとんどなされていない。それは通産省所管といったようなふうに、投げやりになっているのが現状であります。  そこで、輸出なり輸入、この貿易関係外貨はかなり蓄積はあるといたしましても、為替レートの問題、これがはみ出たりしていますが、いずれにしても小坂外相のこれら経済外交中心外交原則というものをどう考えられているのだろうか、どう対策を講じようとされているんだろうか。かつては国連中心主義とか善隣友好とか、三本の柱と言われておりましたが、今日の国連実態も御承知のとおりで、かつてのような権威も見られない状態。こうなってまいりますと、いわば今日依然として隷属外交というか、アメリカ追随外交というか、そういうまだまだ名残があるわけで、この際わが国自主的な外交路線原則を立てて善隣友好を深めていかない限り、短期的長期的に見て、わが国産業経済に大きな悪影響をさらに累加していくように思われます。これらについて外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わが国の存立の基盤が御承知のように、また藤田さん御指摘のように、非常に領土も狭くて、しかも資源に乏しいというものでございまするので、どうしても資源輸入し、これを加工し輸出して、さらに次の原材料を輸入するという営みを続けざるを得ないわけでございます。しかしこの営みを通じまして、外交的にはその国との間に、お互いに非常に知るところ多くなってまいりまするので、さような経済外交と申しますか、この通商関係を通しての知り合いというものが非常に大切であるわけでございます。しかし、単に物を売ったり買ったりするだけでなくて、やはり一方から言うと、その国に今度は投資をして、そして開発輸入のようなものを考えたい。あるいはその国の中のジョイントベンチャーのようなものをつくりまして、その国の企業なり国民なりと一緒になって仕事をしていく、そういう面から日本及び日本人に対する理解を深めていくというようなことも必要であるわけでございます。  わが国の場合そういう営みを続けておりまするので、まあ最近の景気で見ましても、景気が上向いていくというと、結局対米輸出が非常に順調である、あるいはヨーロッパヘの輸出がいい。いまお話のように、自動車であるとか、家電であるとか、あるいはオーディオ関係のものがいいというようなことが、景気を引き上げていくという一面があるわけでございます。ところが、これがやはりフラッドするような形になりますと、日本外貨ポジションが安いんじゃないか、ダーティーフロートしているんじゃないかというような意見も出てくるわけでございまして、非常にわれわれは、この国の立っている基盤からして、慎重に、そして精力的に、そしてそれぞれの国別に、その国に適した経済的な関係を持っていくということが必要であると存ずる次第でございます。ことに、私どもアメリカとの関係におきまして、輸出入ともに三分の一を占めておる関係でございまするので、この関係を非常に大切にしていかなければならぬと存じます。しかし、それだけでなくて、EC諸国ともそうでありましょうし、また共産圏諸国とも大切な貿易を持っているわけでございます。昨年のところ中国におきましては往復で三十八億ドル、ソ連におきましては二十八億ドルという貿易がなされておることは御承知のとおりでございます。しかもなお、最近の問題として、南と北の問題——日本はちょうどこの南北の中間のような形にあるわけでございますので、この南北問題等についても、日本立場から十分に配慮をしていかなきゃならぬ。さらにまた、日本アジアの国でございます。アジア諸国との友好親善、これは非常に大切でございます。しかもその間において、日本が非常に工業的に高い地位を占めておりますだけに、このアジアの国々との関係については誤りなきを期していく、先方の感情も十分考えながらやっていかなきゃならぬ、かようなことを考えているわけでございます。一応これをもってお答えといたします。
  5. 藤田進

    藤田進君 総論的な点はお聞きいたしましたが、しからば具体的に、ケース・バイ・ケース諸国間の友好親善というふうに聞こえるわけですが、外交にはやはり基本原則というものが必要ですけれども、その点と、さらにいま言われた総論に対する具体的措置についてお答えいただきたい。
  6. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもはやはり日本蓄積、これを有効に使っていかなきゃならぬと思います。この蓄積は普通の貿易から出る蓄積でございますが、これを開発途上国に有効に使ってもらう、そういう気持ちでわれわれの持っている特性を先方の役に立つように、そういう気持ちでもって交わっていく必要があろうかと、さように考えております。
  7. 藤田進

    藤田進君 まだ御就任間のないことではあるけれども小坂外務大臣すでに何回か国務大臣をお務めになり、あるいは政策等についても政調会長等の経歴を持つ方でございますので、どうもいまのお答えでは、これは小坂外交に期待していいわいなという感じがどうも出てこないんですね。仲よくすればいいんだ。資本輸出にいたしましても、それ自体がこれはもう各国とも反撃を食っているわけでありますから、これは、特に国際関係では援助についてもいま問題になっていることは御承知のとおりであります。そうしてがむしゃらに、今日いまだエコノミックアニマルだと言われているような状態。これをどう打開していくかという、やはり外交路線というのはよほどしっかりしていきませんと、単に通産省が、これはアタッシェその他、大使館にいるとしても間尺に合わないことがもうはっきりしております、私もずいぶん各国とも調べてみて。だんだん他の先進諸地域に押されてしまって、ことに繊維なんか、御承知のとおりプラント輸出はいたしましたが、いま日本に逆襲上陸してくる。繊維はもうどうにもならない、転業もできない、これが実態ですね。これはやはりそれぞれの国に対する外交の面において、後で触れたいと思いますが、今度の対ソ関係についても言えることですけれども外務省としてどうも見るべきものが私は見当たらないからお尋ねしておるわけでありますが、もっと詳細、具体的なものを承って、期待すべきは期待してみたいと思うのでありますから、そのつもりでお答えいただきたい。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今日の世界が、貿易面におきましても通貨の面におきましても、あるいは資源エネルギーの問題につきましても非常に相互依存、インターディペンデントな関係にあることはもう申すまでもないことでございまして、私ども先ほど来申し上げましたように資源を持っておらない。そこで、どうしても資源輸入しなければならない。そういう関係がございまして、輸出をする場合にも輸入というものは必ずついて回ってくるわけでございます。この点は非常に不利なように思いまするけれども、逆に申しますと、それだけ接触の機会が多いということにもなるわけでございまするので、やはりわが国国際協力なくしてはこれはやっていけないという点を非常に深く考えていかなきゃならぬと思います。それと同時に平和の問題がございます。やはりこういう国でございますから、世界が平和な状態において初めて輸入もできるし輸出もできる。そういう、エネルギー一つとってみましても、あの長い航路を通って石油が日本に入ってくるということ一つ考えてみても、平和というものがいかに日本にとって大切なものであるか、そういう点も考えあわせながらやっていかなければならぬ。まあ外交基本とおっしゃっていただきますれば、平和に徹しつつ、国際的な協力相互依存関係を十分に認識しながらやっていかにゃならぬ、かように考えておると申し上げたいと思います。
  9. 藤田進

    藤田進君 そのような認識、態度で、これからじゃどうするわけですか。もう少し経済担当所管通産省なり、あるいは財政関係担当省に対しても、外務省言うべきは言ったらいいんじゃないかと思うが、どうも何もない。国連には出席されましたが、これもどうもぱっとしなかったように思う。まあこれ、先行き長い外務大臣でもないんだからまあとりあえずと、そんなことは国民許しませんので、どうも何も実はまだないんだというふうに承ってよろしゅうございますか、具体的なもの、小坂外交はこれをやるんだと。
  10. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうも御質問の趣旨がよく、私も魯鈍にして了解しにくいところがあるんでございますが、具体的な問題といいますと、具体的にこういう問題はどうだというふうにお聞きいただけばまたそれぞれお答えを申し上げさせていただきたいと存じまするが、まあとにかく今日日本に対して非常にたくさんの人が見えているわけです。私就任いたしましてからも、ブラジルの大統領も参りました。それからアルゼンチンの経済大臣——この経済大臣というのは十一の省、大蔵省経済企画庁貿易省、いろいろな十一省を自分の傘下に持っているんだそうでございます。それからユーゴスラビアの大蔵大臣も参りました。その他いろいろと、ほかにまだ六つぐらい大臣来ておりまして、それぞれ非常に日本に期待し、日本との間に話をしていっているわけでございます。外務省対外関係窓口でございますから、私がお目にかかりますわけでございますが、それぞれ皆お話大蔵省なり通産省なりに関係のあるお話でございまして、われわれは政府一つでございまして、連帯していろんな責任を持っているわけでございますので、よく御相談をしながらやっておると、こういう実情でございます。
  11. 藤田進

    藤田進君 時間がないので具体的に言うことを避けましたが、そういたしますと、単に産業資本、あるいは通産省に任すだけでなしに、いまアメリカでは鉄鋼輸出が不公正取引で問題になっておる、これをどうするんですか。繊維関係の逆輸入になってきて国内繊維産業というものは破滅の状態ですね。外交路線を通じてこれに対してはどういう手を打ちますか。EC地域も御承知のように、日本からの輸入に対してかなりシャットアウトの方向でいま出てきております。これは外交路線としてはどうなさるおつもりですか。こういった点まずとりあえず三点について伺います。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 鉄鋼輸出でございますが、これはアメリカに非常に出て、EC諸国にも出ているわけでございますが、これが先ほども申し上げましたように洪水のごとく出たというところに問題があるわけですね。やはり先方はよい物が安ければ買うわけでございます。しかしながら、それもそうだからといって余り一気に洪水のごとく出てしまうということになれば、向こうの産業が打撃を受けるわけでございますから、そこにオーダリーマーケティングと申しますか、秩序のある輸出をやっていかなきゃならぬ。そういう点につきましてはこちらの事情、たとえば先ほども触れましたが、日本のそういう輸出が可能なのは円の居どころが低いせいじゃないだろうか、何か細工をしているんじゃないか、こういうような点に対しましては、先方へ参りましてよくこの実情を説明するというようなことをやっておるわけでございまして、まあ全部が全部うまくいくというわけにもいきません点もございますけれども、かなりうまく改善をされておるというふうに存じておるわけでございます。しかし、これは今後もまだ続く問題でございます。今後も支障なきようにいたしたいと考えております。  それから第二の点は繊維だったと思いますが、これはやはり日本繊維技術経済技術協力によって、先方技術を与えますれば、先方はそれだけの物はつくるわけですね。東南アジアの国でやはり農業とか繊維工業というようなものは非常にいま急速に伸びておる。繊維のようなものはその国が着るだけでなくて、やはり輸出に向かってまいります。そこに労銀問題等もございまして、やはり安い労銀を使えばコストの安いものができる。そこで私どもは、そういうものに対してはこれはもう経済自由の原則で、それを輸入を防遏するというようなことはできませんので、できるだけ頭脳集約的な産業繊維一つつくるにいたしましても、非常に高級なものをつくるという方に向かわざるを得ないんじゃないかと思うわけでございます。これは天然繊維のみならず、人造繊維とのファブリックというようなものをいろいろ考えていくということで対抗していく以外にないんではないでしょうか。まあかつてのできなかったところに新しい品物ができますれば、それに対してわれわれはそれをいかぬと言うわけにいきませんので、いま申し上げているような高級品をもって対抗していくと、あるいはこちらの過当競争を排除していくというようなこと以外にないかと思うのでございます。  それから第三点何でございました。
  13. 藤田進

    藤田進君 EC地域に対する具体策
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) EC諸国は、これも非常に最近かたまりが強くなってきておるわけでございます。ただ、あの中でかなり経済のでこぼこが国によってあるわけです。EC一つブロックではございますが、これは超国家ではございません。経済の国の間のブロックの差でございます。ブロックの中における国のあり方の差ですね、そういうものからいろいろむずかしい問題があるわけでございます。で、私どもはいろいろ現地の機関その他を督励いたしまして、日本輸出問題等についても誤解のないように、しかし誤解がなくて、こちらのやっておることが無理な点は、これは謙虚に反省して考えていくということをまたお願いしなければならぬ場合もあると思いますが、要するにそういう誤解は徹底的に解く、これは窓口たる外務省の責務である、こう心得ておるわけでございます。
  15. 藤田進

    藤田進君 まあ問題によっては、田中総理時代にはPXLとかロッキードとか、ハワイ会談をしてまでそういう取引をやっていくというようなことをやってのけるんだが、その他一般の国内経済の危機をこれ打開するというような大きな問題についての見るべきものがないということはまことに遺憾だと思います。またいま所見が述べられましたが、ティピカルな自由主義でこれに対応していくというそこの逃げ場ではこれは私はしのげないと思います、これから。やはりそこには、社会主義とかなんとかというまでに立ち入るようにとは、自民党外務大臣に申し上げませんが、もう少し近代的な、資本主義資本主義なりの計画性なり指導性なり、そして閣内のチームワークなり、こういうものがないと、ますますこれは日本通商関係というものは、隘路が、だんだんとこの壁が厚くなっていくように思うんです。この点ひとつ十分、まあ先がどうなるかわかりませんが、十分ひとつ関心を持っていただきたいと思います。  それから、対ソ外交について見ますと、防衛庁関係にやや押された形で、今後のミグ25、まあこれも諸般のことが言われていて、アメリカCIAの工作からこうなったとか伝えられておりますが、今後ソ連外相とも会われたようでありますけれども、今後わが日本国民が特に漁業関係あるいは現地開発通商、まあもろもろの問題に支障を来たしてきているように思うんです。もう少し当時、緊急に関係省庁との十分なやはり相談をされて、外交基本路線から見てどうあるべきであったか、私はあれを見てどうもその後アメリカ人はこれは雇ったんだとは言われますが、機体の調査その他を含めて、かなり問題を残しているように思いますが、そのようなことはございませんか。で、その影響なり、その後の外交ルートを通じての模様をお聞かせいただきたい。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ミグの問題に関しましては、私どもはいまおっしゃったようには思っておらぬのでございます。  ちょっと時間をいただきまして、できるだけ簡単に背景を申し上げたいと思いますが、あの問題は、ソ連戦闘機がある日突然にわが領空を侵したということから始まるわけです。それで民間空港に強行着陸したと。そこでわれわれとしては当然調査をしなきゃいかぬと。ところが、調査するにはあれは大きくて、民間空港でございますから邪魔になってしようがない。これを防衛庁の自衛隊の基地へ持っていかなきゃいかぬ。ところが持っていく手段がない。C1というような輸送機はございますけれども、大き過ぎてだめだと。そこでC5というのでなきゃだめだと。ところがC5というのは、アメリカが持っておって、ひとつ御用に立ちましょうという話でございます。そこで、これを日本の方でハイヤーいたします、この金は払ってですね。そして百里の基地へ持っていってこれが調査をするわけでございますが、調査をするについては、これをばらばらにしちゃっては後困りますわけでございますから、これをやはりレントゲンというようなもので内部の機構を調べなきゃならぬ。  そこで、アメリカの方がそういう機械等持っておりますから、これまたハイヤーいたします。ハイヤーするについては、こちらの空幕長アメリカ司令官との間に誓約を交わしまして、主体は日本であって、そこによって得られた知見は日本のものである、そしてそれに対する給与、輸送費等日本側が支払う、こういう契約を交わしまして調査をいたしまして、そしてこの調査が完了いたしましたので、近くソ連側に返還する、こういうことになっておる。その返還については去る二十九日に私からグロムイコ外務大臣に伝えたようなわけでございます。そして順調に進んでおりまして、まあ私は、二十年続いているこの日ソの間の友好関係に、こういうことでもって悪い影響があったんじゃ困るからということを考えながら、しかも日本は自主的な立場において国際法国際慣例上許される当然の措置をとっている、こういう立場であの問題を処理いたしておりますわけでございます。  で、その結果何か非常に悪影響というようなお話でございますけれども、目下のところは、魚船拿捕はございますけれども、これ昨年に比べて多くなっておりません。拿捕などということはまことに残念なことでやめてもらいたいわけでございますが、これは昨年より多くなっておりません。私は、やはりソ連の最新の戦闘機乗りが亡命をしたというようなことは、ソ連にとって非常に不快なことであろうと思います。ですからこれは、その傷口をなるだけさわらぬようにして、静かにお返しするという方針でこれ近く返還できると思います。そういう状況でございまして、私は、決してこのために日ソ外交が非常にまずくなるというようなことは考えておりません。むしろ日本は大きい声出しておどかされりゃ何でもへいこら言うということじゃないことをはっきり示すことの方が外交であると、私はさように思います。
  17. 藤田進

    藤田進君 まあ、それはわが方はそういう認識であっても、相手方の方はそうとっていないと私は思います。そこに大きな食い違いがある。両者の意見が、何らミグ25というものがなかったときといまも変わりはないんだというふうに言い切ることはできないように思われます。  それからかつて、戦前のように自主的な航空機産業で製造するというようないま事態にないわけでありますから、分解してこれをチェックしていくということは、要するに、これに対抗すべきものをアメリカでつくる場合の大いなる参考にする、だれが見てもそうなってくる。アメリカ人を雇って云々と言っておられますが、それはだれしも疑問を持つし、不幸にして相手国もそういうふうに思っているんじゃないかと思われます。  それから御承知のように、中国の国内情勢は、特に小坂外務大臣は中国詳しいはずですが、あのように伝えられておりますが、その後外交ルート等から、あの真偽を含めて、これがひいては日中の平和友好条約を促進しようとされる外相にとっては、かなりあのような事情悪影響をもたらして日程的にくるのではないだろうか、そうではないのかあるのかですね、お伺いしたいと思います。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもも十日の日にいま伝えられているようなことを情報として知りましたわけでございまして、これは確認する手だてがございません。そのままに推移いたしております。今後のことについても、どうも私も余り詳しくございませんものですからわかりません。
  19. 藤田進

    藤田進君 新聞では御承知でしょうか。
  20. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 新聞はよく読んでおりますから、承知しております。
  21. 藤田進

    藤田進君 で、そういう新聞が是なりと思わざるを得ない、これは日本だけじゃございませんね。特にイギリスあたりがすっぱ抜いたようですが、それが事実かどうかはわからないというんだが、いずれにしても、伝えられるような状態の中で、日中外交についての何らの影響はないんですか。
  22. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私のいまの立場で将来のことをいろいろ申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  23. 藤田進

    藤田進君 大蔵大臣にお伺いをいたしますが、財政特例法をめぐって種々質疑応答が交わされておりますが、時間的に見て、特に五十二年度予算案の骨子ですね。その中でも歳入歳出の今日の段階における一つの腰だめ、見込みですね。金額にしてどういうものになりそうなのか、まずお伺いいたしたい。
  24. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 来年度の歳入の見積もりにつきましては、先生御承知のとおり、現在のところまだ来年度の経済のあり方その他不確定な要素が非常に多くございますので、いまの段階で私どもとしてはまだ何らの作業を行うに至っておりません。したがいまして、いまこの段階で来年度の歳入としてどの程度になるかということを申し上げることは、非常に困難と申し上げるより、不可能に近いわけでございますが、これは先般、私どもの主税局長からも申し上げましたけれども、きわめて大胆な仮定を置いてもし数字を申し上げるといたしますならば、その前提といたしましては、一応経済成長の伸び、GNPの伸びが、たとえば財政収支試算に考えておりますような形で、それが一五%伸びたというふうに前提いたしまして、かつまた、それらの弾性値をこれまた非常に大胆な仮定になりますが、たとえば過去五年間の平均の一・四というふうに置いてみますと、これは単純な計算の問題でありますけれども、大ざっぱに言って約十九兆円ということに相なります。重ねて申し上げますけれども、GNPとかあるいはそれに対する弾性値とかで歳入を推計いたしますのは、これはやり方として全く現実的ではございませんで、私どもの歳入見積もりの作業はもっと別な方法で細かい積み上げ方式でやるわけでございまして、これは、今後経済の伸びその他の諸要素がある程度判明をいたします段階で行いますわけで、いま申し上げました数字は、再三申し上げますが、全くそういう意味で仮定の数字ということでお含みをいただきたいというふうに思います。
  25. 藤田進

    藤田進君 十九兆円というのは、時節柄かなり低目に見たものなのか、これは前にもそういう話をちょっと聞いておりますが、その後日もたっているわけですから、九月決算等を見返ってみなければとか、いろいろそれは確定的なものはわからないでもありませんが、しかし、いま各省庁に対して五十二年度予算の要求を出さしていますね。これが五十一年度対比で幾らですか。平均して一四%余りじゃありませんか、を限度に出させておいでになるように思うのです。そうなりますと、歳出面の予想等から見て、赤字国債については極力これを減額したいということなのですが、あらましのやはり見通しというものは、この財特法審議の過程——過程としても、先余りは長くないようですから、きょういまひとつ全貌を明らかにしてもらいたいです。それは見込みですから、次の国会でそれは違うというような、そういう性格のものは無理だと思いますからね。しかし、一つの見込みとして歳出について、したがって、赤字公債、建設公債等をどういうふうに考えられているのか、各省庁予算要求ももうまとまっている段階ですから、お聞かせいただきたい。
  26. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 例年のように各省は八月三十一日までに概算要求を大蔵大臣に提出いたしておりますが、この計数は先般九月十日閣議で報告になりましたんですが、前年の二十四兆二千九百六十億に対しまして、一八・七%の二十八兆八千三百四十七億となっております。で、ただいま主税局の方からも説明がありましたとおり、われわれの方は九月、各省からヒアリングをしまして、現在、内部で検討の作業に入ったばかりの段階でございますので、来年度の歳出規模がどうなるのか、同時に公債発行額がどうなるのか、その辺のところは確たることを具体的に申し上げることができない段階にございます。
  27. 藤田進

    藤田進君 だけど、一応十九兆円の歳入見込み、そして要求が二十八兆円、ことしは二十四兆円余りということになれば、公債発行の依存高はどれくらいというのは出てくるんじゃないですか。
  28. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 先ほど十九兆のことを申し上げましたのは、歳入見込みの金額ではございません。先ほどから再三申し上げておりますように、非常に大胆な仮定を前提に置いた場合の単純な計算からきた数字でございます。したがって、いまここで来年度の歳入見込みが幾らかと、こう申されましても、これは先ほどから申しておりますように、来年度の経済情勢その他一切まだ確たる見通しがつかない現在に、税収だけそういう問題を計算をするということは不可能でございます。
  29. 藤田進

    藤田進君 そうすると、二十八兆円余の要求に対してどうするかということですね。これは十一月にならなきゃわからないとか言われているようですけれども、従来の実績等から見て、自然これ、こういう不況の時代ではあるけれども、硬直化している財政事情ですから積算できるはずで、したがって、この中で建設あるいは赤字、どの程度というのは、これはこっちがやっても出ますけれども、そっちの方でひとつやってみてくださいよ、いま。
  30. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いろいろ仮定を置いて計算はできるわけでございますが、個々の経費は基本的には積み上げをやるわけでございまして、まだ作業に入ったばかりの段階で、大変御無理な御質問ではなかろうかと思うのでございますが、仮に財政収支試算でケースIというのがございます。本年の場合、公債は依存度二九・九%、七兆二千余でございますが、あのケースIによりますと七兆四千、特例法がことしの三兆七千に対して三兆四、五千になっておりますが、財政収支試算を手がかりにしながら、基本的には各省の政策を十分吟味しながら、今後の経済情勢、税収見積もり、そういうようなものを総合判断して、予算の規模なり内容というのは固まっていくわけでございます。で、現段階では確たることは申し上げられないということでございます。
  31. 藤田進

    藤田進君 いずれにしても要求が二十八兆三千億余りということであれば、そのまま認めるとすれば九兆円、ことしよりもさらに二兆円足りないわけですね。そういう計算になります。とすれば、概略十九兆円前後あるとしても、そうだとすれば、ことしよりも赤字公債発行高はふえていくんじゃないですか。
  32. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 歳入面にはまだそのほかに税外収入という項目がございます。それから、税収は、主税局が再三さっきから申し上げているとおり、単なる仮定計算の数字でございます。ですから、私どもの歳出の数字と主税局の言っている数字と両方あわせて計算されるというのも、まあそういう計算もあろうかとは思いますが、かなり前提の多い計算になるんじゃないかと思います。
  33. 藤田進

    藤田進君 そこで、これは最近、特に与党の中でもということで、いわゆる所得減税、大平大蔵大臣もやや軟化したというような見出しの記事もあるようですが、だから、これを加えますと、結局、これも伝えられているように酒、たばこの税をかなり大幅にふやしていくとか、その他の財源を求めていかざるを得ないという面で必ずしも九兆円の差し引き、それに税外収入等もありますから、そうはならないとしても、現行税率等を手直しをして、さらに収支を近寄せるという方針のように見受けますが、いま五十二年度で実施しようとするものが何と何か御説明いただきたい。
  34. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 五十二年度の税制改正の中身につきましては、まさにこれから議論をしてまいることでございますので、現在のところまだ私どもは確たる見込みを立てておるわけではございません。目下税制調査会におきまして各種の御議論をいただいておりますけれども、これは主として、と申しますよりも、もっぱら中期税制に関係するものでございまして、五十二年度の問題としてストレートに議論をしておりますテーマではございません。
  35. 藤田進

    藤田進君 これは審議にならぬじゃないですか。それもこれもあれもこれも、ただ漠然と赤字国債をできるだけ幅を縮めていきたいというのは何遍も過去聞きました。じゃ、どういうふうにして縮めていくのかという具体論に入ってくると、何もまだ不確定だということじゃ、これは少し用意が足りないんじゃないんですか。用意はあっても言わないとすれば、これはもってのほかです。  それから、大蔵大臣、直接お答えいただきたいんですが、財政審議会の建議がすでに大蔵大臣に出されておりますが、これはことし七月ですね、これはかなり歳出面をしぼること等、シビアなものが出ております。時間がないので、内容をもう申し上げなくても御承知でしょうが、これはどういうふうにいま検討されておりますか、あるいは結果はどうなりますか。   〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕
  36. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) それより前に、五十二年度の予算のフレームについての御質疑に対しまして、大変的確でない答えを申し上げて御不満を買っておるようでございますけれども、これは私どもが不まじめなわけでは決してないのであります。国会に対しまして私どもが自信の持てない数字を申し上げるというようなことは、まず第一に大変不まじめなことになるわけでございます。さればこそ主計、主税、両局においても、非常に大胆な前提を置いて計算すればというようなことで、必ずしも来年の歳入の見積もりがこうであるというようなことではなくて、計算してみるとこういう数字は一応算出できるというようなことを申し上げたわけでございます。現実の歳出、歳入の見積もりということになりますと、前提が余り多過ぎまして、前提が全部未知数でございますので、藤田さんが何とおっしゃいましても、的確な見通しができる段階でないことはあなたがよく御承知のとおりでございます。だから、事態がそのような状況であることに対して御理解をちょうだいいたしたいと思うのでございますが、といって、それでは全然見当つけずにやっておるのかと申しますと、この前の国会でも御審議をお願いいたしましたように、中期の一応の展望というようなものを手がかりといたしまして、これとてもなお吟味すべきものがたくさんあるわけでございますけれども、一応そういうものを手がかりとしながら、五十年代全般にわたりまして何とか特例債から脱却する財政を取り戻したいという願いが、私どもの運営の基本でございます。そして、五十二年度はできればその第一年度にしたいということでいませっかく努力をいたしておるわけでございまして、漸次自信の持てる数字が固まるに従いまして、また各種の手順を踏むに従いまして、国会に御報告申し上げていい自信ができてまいりますれば、御審議に対して最大の御協力を申し上げるのは私どもの責任でございますから、御報告を申し上げたいと思うのでございますが、きょうの段階におきましては全くそういうことが熟していないことはあらかじめ御了承いただいておきたいと思います。  それから、七月二十八日に私に対しまして財政制度審議会長からの御答申をいただきました建議でございますけれども、これは当面の財政処理につきまして私どもが指針とすべきものと心得ておるわけでございまして、ここにうたわれているようなことを基本の方針といたしまして財政の処理に当たるということは当然のわれわれの責任であろうかと考えております。
  37. 藤田進

    藤田進君 持ち時間がなくなりましたから、次にバトンタッチします。
  38. 野々山一三

    野々山一三君 先ほど藤田委員から来年度以降の歳入見込みなどの問題についての御指摘がございました。やや重複するきらいがございますけれども特例債の問題に端的に限って言うならば、どうも伝えられるところ、ことしと来年度はほぼ同額程度の特例債を出す。そして同時に予算の圧縮ということを考えておるやに伝えられているわけなんですけれども、そこで伺いたいのは、いま歳入の確たる見通しがまだ確定しないので言えない、こういうおっしゃり方なんですけれども、さて特例債が、伝えられるところによると、先ほど申し上げたように、来年度も今年度と同様程度のものと言われているんですけれども、一体どんなお考えなのかこれが一つ。  第二番目に、来年度の予算編成の作業過程にあることは承知しておりますけれども基本的に一体どんな方針で来年度の予算を組もうとしていらっしゃるのか。先ほどお話によれば、まあ二十八兆何がしというもの、そして比率で言うなら一八%何がしというものが概算要求でふえている、こういうお話なんですけれども、ごく基本的に来年度の予算編成に当たって大臣はどんなふうにお考えになっていらっしゃるのか。そこで、特に藤田先生もおっしゃったのですけれども、財政制度審議会の建議書をながめてみますと、わりあいにシビアなものだと思われるんですけれども、それとの兼ね合いにおいてどういう方針を持っていらっしゃるのか、基本的な問題ですから大臣にひとつ伺いたいと思います。
  39. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御質問に対するお答えが、必ずしも順序は御質疑のとおりの順序にならないかと思いますが、来年度の予算に対する基本的な対処の態度、方針でございますけれども先ほど藤田委員に事務当局から御報告申し上げましたように、ことしの概算要求二十八兆円余がすでに出されておりますが、これはまだ全部じゃございませんで、今国会で人事院勧告の実施が認められるということに関連した措置が認められるということになりますと、これは来年度平年度化されるわけで、この概算要求は、その金額が盛られておりませんので。それから地方財政で来年どのぐらい交付税交付金がふえるかという点も、これも特にその概算要求に盛られておりませんので、あれより小さくなるはずはないので、それが上乗せになると思いますから、だから、相当歳出はふえる、社会保障なんかの平年度化が進行するわけでございますから、いやおうなしに、もうだまっておっても進行するわけでございますので。  ところが、歳入面でございますけれども、歳入面は、この前にも本委員会で御報告申し上げましたように、大体いままでの税収、今年度に入っての税収を見ておりますと、大体見積もりどおりぐらいがどうやらとれそうだという感じがいたしておるわけでございまして、自然増収を大きく期待はできないということは各委員の御質疑に対してお答え申し上げたとおりでございます。だといたしまするならば、歳出の方はうんと大きくふくれ上がるが、歳入の方に大きな自然増収が期待できないということでございますならば、野々山さんおっしゃるように、これはとても君、国債の方は減らすどころか、相当依然として大量の発行は覚悟せにゃならぬのではないか、仰せのとおりでございます。けれども、ことし三兆七千五百億円という、いままさに御審議をいただいておるこの特例債そのものは、来年度はこれを減らす第一年度にしたいと考えておるわけです。それでもなおこういう困難な客観情勢でございますけれども。そうしないと、五十年代前半に不正常な財政からの正常化への道は開かれないのではないかと思いますので、五十二年度を第一年度にする以上は、やはり三兆七千五百億円を幾らかでも割るように私どもは最善の努力をしなければならぬと考えております。  幾ら切れるつもりかなんというまだその検討は全くつきません。つきませんけれども、これ、減らすという方針で、いま不退転の決意で当たってみたいと考えております。したがって、予算は仏の心と鬼の手でやらにゃいかぬと思っておりますので、十分、よほど決心してかからぬといかぬのではないかと考えております。したがって、この櫻田会長から財政審議会の名において御答申がございました基本方針、これは先ほど藤田さんにもお答え申し上げましたように、非常に厳しいものでございまするし、いま私が申しましたように、五十二年度はやはりそういう財政正常化の一歩にすべきであるという精神で貫かれており、歳出につきまして厳しい合理化に徹底するような勧告でございました。これはこのラインを遵守してまいりたいと考えております。大まかな話でございますが、細かな数字はなかなかまだ出ないのでございますが、大体の方針とその決意はそういうことでいま臨んでおるわけです。
  40. 野々山一三

    野々山一三君 仏の心と鬼の根性という、大変なわかったようなわからぬような話……
  41. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 鬼の手。
  42. 野々山一三

    野々山一三君 その手ですか、鬼の手ですか。
  43. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 鬼手仏心というやつ。
  44. 野々山一三

    野々山一三君 なるほど。そこで、その鬼の手が大変乱暴なことをするのではないかと思われる点に、伝えられるところ、来年度予算編成に当たって緊縮予算を組もうという問題点の中に、伝えられているところ、たとえば福祉関係予算の見直し、これは鬼の手の方ですか。それから補助金をできるだけカットする、これも鬼の手ですか、仏さんですかどっちですか。そこをずばり一遍教えてもらいたい、そこを一つ教えてもらいたいわけです。つまりあなたのおっしゃる方針から言うと、二十八兆何がしというものよりももっとふえるであろう、支出の方が。しかし歳入は必ずしも自然増、そう大して見込めない、そこでバランスを考えざるを得ない、これがあなたの形、数字の上での話です。  そこで、鬼というやつが出てくるわけですけれども、それをもう一遍伺いますけれども、たとえば福祉関係というものの支出をいろいろな意味でカットすることを考える以外に道がないというようなことを大蔵省筋は言っているやにうかがわれる。それから地方補助金なんかもどんどんカットするというどうも筋があって、その筋を土台にしてバランスを考えようというふうに、私ども外から見ておりますと考えられるわけですけれども、そういうことはやらぬというふうに言われりゃそれでいいわけですよ。いまあなた一生懸命大きな手を振って言われたように、福祉関係の金は自然にどんどんどんどんふえてくるのだ、ふえてくるのだと言われると、ふやすのを減らすということをしないとおっしゃれば、鬼も少しは涙があるのだなと、こう思うのですけれども、いかがですか。そこのところを基本的な問題ですけれども、抽象論として伺っておきたいと思います。
  45. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仏心鬼手というのは、やはりお医者さんには名医のしわざだと思うのです。つまりやっぱり相当病が重いという場合に、この足は非常にすねから下を切らないと、体がもたぬという場合は、思い切って仏の心をもって鬼の手で手術をしないと体がもたぬという場合があるだろうと思うんです。それが名医というものだろうと私は思うんですよ。それで予算の場合も、たとえばそれと私どもの予算は、本当に自由になる予算というのは野々山さん御承知のとおり余りないんですよ。大抵法律で決まり、制度で決まっておりまして、大体義務的経費というのがもう大半でございます。それから義務的でなくても、もう慣行的につけるに決まっておる。私も若いときに主計局で主計官をやりまして、改減改増という経費が、これは改減改増だというんです。一遍減らしてしまうんです、改減ね。そうして今度改増だと、一遍減らしてしまってそのまま、その次の年度にまたそのままつけることを、改減改増というテクニカルタームがあるんですよ。これはつまり一遍減らすけれども、つけることに決まっている経費をいうということで、慣行的にもうマンネリズムですね。つまりもう大体もうこれは主計局ももう認めてくれるのに違いないと。大体もうなめられているんですよ、財政当局というのはね。大体ですから一遍そういうようなものを何とか時勢が変わって、もう一度こんな制度がもうあぐらをかいておって、万人が見てもおかしいじゃないかと思うものは、やっぱり切り落とした方がいいんじゃないかと思うものは、私はなくはないだろうと思うんです。  ことしの予算でも、七百三十何件でございましたか、七百何件補助金の整理をやりまして、やっぱり八百億円ばかりの節約をいたしたんですが、そう大して大きな金額ではございませんけれども、血の出る思いでやったんでございますが、これとてももう非常にちいちゃい昔からある補助金でございまして、もうそういう役割りを終えているんじゃないかと、いわゆる機能が退化したようなもので、もうここらあたりで勘弁してくれぬかというようなことで大体整理したのもございますけれども、そういうようなことを言うのは、非常に一生懸命にがんばって財政の体質を回復しないといけないんじゃないかと、そういう趣旨でございまして、社会福祉の気の毒な方々の、鬼の手でもってからに押え、切るとか、そんなむごいようなことを考えているわけじゃないんで、そういうことを生かすためには、やはり鬼の手でマンネリ化した経費はやっぱり切っていかなければいかぬのじゃないかというのが私が申し上げた意味でございます。
  46. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、本当にむだなものだと思われるものは切りますということが一つ、それからたとえば福祉関係については、これはやっぱり切るんじゃないんだというふうにあなたのいまの御答弁を承っていいんですか。念のために申し上げるんですけれども、たとえば五十一年までには大体二九%ぐらいの比率で福祉関係の経費がふえているわけでありますね。その中に老人医療の無料化だとか年金の五万円とか、あるいは福祉年金の改善とかいうようなものも含まって増加している、そういうものはマンネリ化したなんていう言葉の範疇には入らぬものでしょう。つまりカットしないと、見直すとはいうものの、そういう福祉関係のものはカットしない方針で来年度の予算は編成したいんです、こういうものだと、あなたの御趣旨は解してよろしゅうございますか。
  47. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) できるできないは別といたしまして、私の気持ちは、本当の福祉に役に立つ経費を切ろうなんて毛頭考えておりませんが、本当の福祉に役立つように、有効に金を使わなければいかぬじゃないかと思っておるんです。福祉関係でも、これだけの金はどう使うかという場合に、こういう使い方をするのがいいか、こういう使い方をするのがいいかという選択の問題私はあるのじゃないかと思うのですね。せっかくこう使っているのだから、これはこれ使っておいて、また別な金を持ってきてやればいいじゃないかと、これはこれ、これはこれで、予算は多々ますます弁ずだということは、福祉予算といえども、私はこういう財政の苦しいときはいけないのじゃないかと、福祉予算といえども聖域じゃないと思います。そのあたりは本当の福祉が実現されるように、皆さん考えていただきたい。老人福祉の有料化の問題、一部去年大蔵省が提案したばっかりで野党からも与党からも文句が出て、それでもう一年勉強しようやというようなことにしたわけでございますけれども、あれだって、金が惜しいとか何とかいうことよりも、老人福祉のほかの政策も進んでおるし、まあ四十八年の一月に実行してから、三年余りたっているんだから、もう一遍見直してみて、それだけの経費をもっとほかに、もっと有効に使って本当の老人の福祉に役立つ工夫がありはしないかというような、検討してみることは決してやぶさかではないのじゃないかというような感じで大蔵省で持ち出したのだけれども、もう所々方々から、これはもう手をつけたら承知しないぞというようなわけでえらい目に合ったわけですよ。いままだ検討しておるようでございますけれども、なかなかこういうことは言うはやすくして、なかなか実行はむずかしいと思います。むずかしいと思うけれども、相当ことしは財政の整理とか、予算をきちんとつくろうとかいうようなことは、よほどむずかしいことなんですけれども、これはまあ国会の皆さん、よほど御協力いただかなければならぬのじゃないかと思っております。
  48. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、これまた藤田委員の指摘されたものと共通する問題で、今度は歳入面との関係なんですけれども、どうもこの委員会でも、いままでは物価調整減税というものも、ことしは、あるいは来年度も行わないみたいなふうに聞こえるお答え政府側からあるわけですね。そこで大蔵省は、税調の第一部会に対して、所得税を増税するかどうかということを審議を求めた、こういうことだそうですけれども、この物価調整減税をやらないということは、ごく一般論として実質増税になるということになりはしませんかということをまず端的に伺いたい。
  49. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりです。
  50. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、まあ私の思うに、財政展望のうちの、財政収支試算というものを眺めてみまして、五十一年度の国税総額というものは、十六兆一千四百二十八億で、五十五年度には、三十五兆五千八百億にならなければならないと試算をされているわけなんで、これをその所得税や、法人税など三法とのバランスで考えてみますと、所得税は、六兆四千億強から十四兆三千二百二十五億、こうなるわけです。ところが法人税の方は四兆六千億強から八兆七千百二十億、その他の国税は五兆一千三百三十八億から七兆五千二百八十五億に上る、こういう計算になっておるわけですね。これを大ざっぱに見ますと三十兆円になるんですけれども政府が中期財政展望で期待している五十五年度の税収は三十五兆五千八百億、つまりそれには五兆円足りないことになるわけで、問題はその不足の五兆円というものを増税する税目に求めることは、一体四十年度の前半と比べてみて一対一だったものが非常なバランスが崩れるわけでございますね。そして大ざっぱに見まして、所得税が全体の比率の中では非常に高い比率になるんでありますが、そうすると物価調整はやらない、そして増税はそのまま、結局勤労所得を含めた所得税の方にどんどんどんどん比率が高くなってくる、法人税関係、その他国税関係は比率が減っていくということは、私流に申し上げると、びっこの人の短い足をちぎって長い方の足へ持っていく、背は高くなりましたが歩くかっこうがおかしくなる、こういうことになって、またぞろ鬼が出てくるわい、こういうことになりはしませんか。そこのところをひとつ率直に、こういうことでは困りますということが私の結論ですけれども。  そこで当然、せめて、物価は上がっちゃ困るんですけれども、上がっていく過程における物価調整減税なんていうものは、これは減税政策の一つなんでございますから、減税という言葉を使っていいはずのものでもないほどの性質のものです、実質所得というものを考えてみましてね。だから、こういうものは当然バランスを考えて税収というものを考えるということが、財政全体を考える上で当然必要な、基本的な考え方じゃありませんか。時間がありませんから、その問題についてずばり伺って次の問題に入ります。
  51. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 先ほどお聞きになりました財政収支試算の税収の項目でございますけれども、この項目はすでに再三御説明を申し上げておりますように、税収がこれだけふくらむという前提の数字ではございませんで、中期経済計画に従ってしかるべき歳出の伸びを見込み、かつ今後五十五年度までに赤字公債依存をなくするためには、差額として税収にこの程度を依存しなければならぬというゾルレンの数字であるというふうに理解しております。で、このゾルレンの数字の中で今後、現在の税制をもとにいたしまして、いかなる形で、いかなる時期に、どういう税目で負担をお願いできるものかどうかという点を目下税制調査会において精力的に検討していただいているわけでございまして、先ほど委員の御指摘のような形での、財政試算の中から税収の中に何税が幾ら、何税が幾らという割り振りをあらかじめ考えておるものではございません。これはもっぱら今後の問題でございます。したがいまして、私どもといたしましては、税調においてしかるべき御審議を願うとともに、その結果をも踏まえまして、当然国会においてその点についての御論議を今後いただくということに相なろうかと思う次第でございます。
  52. 野々山一三

    野々山一三君 私は、むずかしい議論はしなくともきわめて簡単に、せめて物価上昇に見合う調整減税ぐらいはやります、いまやるか来年度やるかは、一応これは基本的に政策論としていろいろあるでしょうから、方針的にそれはせめてそれぐらいのことやりましてバランスを考えます、調整しますというぐらいなことは当然答えられてしかるべきものであり、国民の皆さんもだれだってこれは期待されていることじゃないかと、こういうことを思うんで、大臣いかがですか。
  53. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 平常なときでございますれば、野々山委員のおっしゃるとおりだと思うんであります。そして、私どももそれをやりたいのはやまやまでございますけれども、いま財政はかような非常時でございますので、やはり二兆円減税を平年度化いたしましたのは去年まででございまして、ここ当面しばらくの間財政危機突破のために——据え置くのがいいという意味ではなくて、国民に対して中央、地方を通じての財政危機の突破のためには、ここしばらく寒い冬をごしんぼういただけますまいかということをお願いする気持ちなんでございまして、物価調整減税をやらないのがいいなんという考えは毛頭ないんです。そういうのは当然の御要求だし、よく理解できるわけでございますが、そういうのはひとつ、単年度でなくて長い年度でずいぶん減税もやらしていただいたわけでございますので、この財政危機突破の期間の間しばらく御遠慮いただくわけにはまいりますまいかということを申し上げておるわけでございます。
  54. 野々山一三

    野々山一三君 これを繰り返しておってもしょうがありませんから、いまおっしゃられた答えは、最低限度物価調整減税というものはやりたいんだというのが政府の考え方なんだが、いまここで直ちにそうしますとは言いにくいので、前向きに検討いたしますと、こういうふうにお答えがあったと解して、私はお答え結構でございます。そういうふうに理解して次の質問に移らしていただきます。  第二番目の問題は、財政法の問題について、この特例債との兼ね合いで承りたいわけでございます。現行財政法は、各会計年度の歳入をもってこれを支弁しなければならないということは十二条に定められておるところ。そしてまた、毎年度歳出予算の経費はこれを翌年度において使用することができない、これも決められているとおり。つまり単年度主義をとっているわけでございますね。  で、これは率直な政策論であるかもしれませんので、率直に私も承りたいので率直な気持ちを答えていただきたいと思いますけれども、いままで大臣は、単年度主義、それを貫くことは財政民主主義の根幹である、したがって、財政法を変えるつもりはない、検討するつもりはないみたいなお答えが続いているわけなんでございますけども、予算の単年度主義は財政に対する民主的な監督、財政に関する計画の樹立、その実績を把握するために財政運営について必要な要件ではある。しかし一方、欧米諸国現状を見てみますと、日本でもそうですけれども、それがわかったようなわからぬようになっているのが長期経済計画、中期財政計画なんですけれども、諸外国で言うならば、長期財政計画が策定されて財政硬直化打開に、さらには資源の適正配分ということを重要な役割りとしてそれを貫く、またフィスカルポリシーを積極的に推進する立場からも計画設定というものが大きな意味を持っているとして注目されているわけなんでございますね。そういう意味を持っているのであるから、この際、中期、長期経済計画の形をとっているわけなんですから、諸国の例に見られるような役割りを果たしているということを重視しながら——もちろんこれには欠点もあるわけでございますね。しかし、今日の日本経済の動静などをながめてみまして、長期的に、きのうかおとついもあなたも言われたように、長期的に安定的に経済が進行することをもって国民経済的視野における政治信頼というものを定着、固定しなければいけない、そういうものがなければ国債というものを考えてみても、なかなかこれが個人消化につながらないというようなお答えもあるわけでございますね。これも、私もそういうことよくわかるわけなんです。  そこで、四十八年に政府もたしか財政制度審議会などでも検討を求めたし政府みずからも経済安定法案というものをつくられたわけでございますね。そういうような議論からながめてみますと、安定的に景気の調整を考える、特別の目的を持った公債というものを考える、そしてそれを基金化して、まあ端的に言えば、金のないときはその基金から金を出すようにする。国民の信頼を得て特別な公債というものの金をそこへ基金として生かしていくというような意味を持って、諸国の場合も意味を持ってやられていると思うので、日本の場合くどいことを言いますようですけれども、単年度主義、それは財政民主主義の根幹であるという議論だけをもってして、今日の経済状態に対応できるような財政計画、そういうものが貫かれていくことだけでいいのかという点について、あなたの所見を承りたいと思います。
  55. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 憲法や財政法のたてまえが、単年度主義をとっておりますことは御指摘のとおりでございます。それは厳守してまいらなけりゃならぬことでございますが、同時にいまの制度は、継続費を設けたり、あるいは予算外の国庫負担の制度も設けたりいたしまして、必ずしも厳格な意味において予算が年度独立の原則を貫き切っているとは思いません。しかしながら、単年度主義を原則とするにいたしましても、物事、長期の展望あるいは中期の展望を頭に置いてやらなけりゃならぬことは当然のことでございまして、これを計画化しようがしまいが、そういう工夫を財政運営の上におきましても、経済運営の上におきましても考えておかなきゃならぬことは御指摘のとおり必要だと考えます。   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕 しかし、それを制度化して、安定基金というようなものをつくるかどうかということでございますが、これまた平時におきましてそういう御提案でございますならば、私は一つのりっぱな御提案だと考えますし、賛意を表したいところでございますけれども、いまのように持例債をたくさん出さなけりゃならぬときでございますから、安定基金に積み立てる金があれば、まず特例債の発行を減らさなけりゃならぬというのがいまの実情でございますので、現在は、少なくともまずこういう状態から早く脱却することが当面の任務でございまして、この峠を越えて財政が正常になった場合に、御提言がありましたようなことにつきましては、これを制度化するかどうかにつきましては実のある検討がなされてしかるべきものと私は思います。
  56. 野々山一三

    野々山一三君 要するにいまのお答えを一言に言うならば、この特例債に依存するような事態から早く脱却した後そういう基金制度というものを検討する用意ありと、こういうようなお答えに承りかつドイツを初めとして欧米諸国の実績は、もうこれは言葉にしていませんけれども、念頭に置かれてのお答えだろう、こう私は受けとめるわけでございますけれども、念のためにいかがでしょうか、御感想を。
  57. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう制度を設けた国もございますし、そういう制度を設けることについてメリットもありますれば、同時にデメリットもあることもいろいろ指摘されておるところでございまして、わが国わが国としてそういう制度を設けることにつきましての、いろんな論議が具体的にあるだろうと思いますけれども、それはいまの問題ではなくて、少なくともいまの財政が正常化された後において検討されるべき問題であると申し上げておるのが私の御答弁でございます。
  58. 野々山一三

    野々山一三君 そこで、いまの問題とつなげて率直に承りたいわけでございます。財特法による十年債のほかに、今度中期債というものを約三千億というもので出そう、こういうお考えでございますね。これはもう何も確認する必要はないので、それは五年債であるわけですが、一体率直に承りたいのは、公債の多様化というものはあっていいことで、国民の選択によるべきで、そしてまた個人消化というものを事前に考える、一つの手段として中期債、わけても割引債というものを考えると、こういう趣旨だと一言に言えば解するわけでございます。この中期債というものを、あるいは法律的には端的に言って十年債でございましょう、それを五年債にするわけでございますね、これは法律とはどういう関係になるのでしょうか。
  59. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の発行条件その他に関する問題は、すべて「国債二関スル法律」というのがございまして、そこで大蔵大臣が決められるという権限が与えられております。したがいまして、現在出ておりますのは十年の利付国債でございますが、これもその法律に基づいて出されたわけでございますが、新しく新形式の国債を出すとすれば、特に法律を必要とするわけではなくて、その「国債ニ関スル法律」に基づきまして新しい種類の国債を出せるわけでございます。
  60. 野々山一三

    野々山一三君 つまり特例——財特法によるのじゃなくて、国債法に基づいてその発行条件を決めてやるのは大臣の権限であると、こういうことですか。それだったらずばり伺いますが、たとえばいまは十年債ですけれども、五年債にします、これは国債法による権限でございますとおっしゃるなら、十二年債というものになったら、一体どういうことになるのですか。それも国債法の範疇に属する大臣の権限なんでございますか、いかがですか。
  61. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) いまのお尋ねに一番的確なあれは、四十七年でございますか、までは、国債はいまの十年ものの利付債は七年の期間でございました。それを十年に改めたわけでございます。そのときもその「国債ニ関スル法律」に基づきました大蔵大臣の権限で十年に延ばしております。したがいまして、もし仮に十何年というような期限のものが必要であれば、それはその法律に基づいて新しい新種を決めることは可能でございます。
  62. 野々山一三

    野々山一三君 限度は……。
  63. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) ただし、その発行限度、これは予算にいただいておりますから、発行限度の範囲内においてということはもちろん制約がございます。
  64. 野々山一三

    野々山一三君 つまり七年のものを十年にしたのは、国債法に基づく四十七年以降からの条件としてそうしたんだ、これは国債法に基づく権限に基づいて大臣がおやりになったんだ、こういうわけですね。そこで今度の財特法に基づく十年債というものは、借りかえもしません。十年で償還いたします、こういうたてまえになっているわけでございますね、それを今度国債法で十二年にしちゃいましたというのは、大臣の権限でしょうか、権限でないでしょうか、それはいかがでしょう。
  65. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) いまのお尋ねは、十年の国債を出しておるのが、途中からそれを十二年にするということに変えるということでございますか——、これはこの法律に基づきまして政令を出すわけでございますが、その政令でそういうことを決めれば可能でございます。しかしながら、先ほど大臣が御指摘ございましたように、発行限度額がございますから金額をそれにオーバーして出すというようなことはできません。発行条件、これは期間も入りますけれども、これは実は明治三十九年以来の法律でございますけれども、これに基づいてずっとやっておるものでございます。
  66. 野々山一三

    野々山一三君 だったら、法律が通って政令で、限度額は三兆七千五百億ということはわかり切っていますが、これからまだ発行するわけでございますね。で、法律が通りまして発行いたします。その段階で政令で十二年にすることができるんですかということを聞きたい。それも国債法でできるんですかということを聞きたいわけです。  改めて申し上げますけれども、十年でということで三兆七千五百億を出そうというのが財特法の基本でございましょう。それを五年債、中期債というものにするわけでございますね。そっちは政令で発行要件を明示して、そして発行するわけでございますか。つまり、私が表現が下手なんでおわかりにくいかもしれぬが、十年というものを五年にすることは国債法でできますとおっしゃった、十二年にすることも政令でできますとおっしゃる。そしたら、十二年にしたやつは、借りかえじゃないけれども延期しましたと、これから発行するんでございますがね、それができるんですかという素人の法律論でございます。
  67. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 先ほど政令と申しましたのは誤りでございます。大蔵大臣の告示でございます。  いまのお話は、新しい種類の国債がそのときに十二年のものが出されるということでございまして、いま出ている十年のものがそのまま十二年にかわってしまうと、同じいま出ておる国債が、ではございません。新発の国債の条件が変わったときに、それは「国債ニ関スル法律」に基づきます告示でもって告示をいたしまして、そして新しい品種を出し得ることになっております。
  68. 野々山一三

    野々山一三君 どうもわからぬのですがね。いま出ているものを、十年ものを十二年にすることはできませんと、こういうことですね、そうですね。
  69. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) いま出ているもの、十年ものは十年ものでございます、あくまでも。それから、十二年ものというのは、また新しいものが十二年ものとして告示が出されたときから、その条件に従って新しい十二年ものという品種が出るわけでございます。
  70. 野々山一三

    野々山一三君 私が向っているのは、財特法で言うところの三兆七千五百億というのは法律が通りまして発行いたします。発行は国債法に基づいて告示によってやりますと。つまり大臣の裁量権に基づいて発行しますと。これは未来のものでございましょう。いまのは法律では十年で借りかえはしないという、そういう論理ですけれども、これから発行するんじゃありませんか。いま出ているものですかと伺っているんじゃありません。出ているものはこれを延ばすことはできませんと。——これから出すんじゃありませんか。出ているのですか。それなら、伺いますけれども。それが一つ。短縮すること、つまり五年債、中期債というものを出すことは国債法及び告示でできます。これは短くする方です。これもこれから先の話、出てないものですけれども、出るものです。出ているものの話じゃないんです。出てない、これから法律が通って出るものの償還計画十年というのを五年にすることが大臣権限でできると、こう言われているから、ああいう中期債の議論が出ているわけです。だから、これから出る三兆七千五百億のうちの三兆円なら三兆円というものを十二年にしても、それは国債法及び告示でできるんですかと、こう聞いている。これは非常に簡単な質問ですよ。
  71. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 大変先生の御質問、私が十分理解しないで御答弁したのではないかと思いますが、特例債も現在出しております四条国債も、これはいま現在私どもは十年債を前提にいたしております。したがいまして、この特例債が通りましたときに、その現在あるものは確かに十年債でございます。しかしその十年債というのは、特例債であろうと四条債であろうと、これは国民に渡るときは同じものでございますから、これは同じ種類の国債でございます。ただ、そのための償還財源あるいは償還計画というもの、これは一応予算に参考資料として出されておるわけでございますが、それを、この委員会でもたびたび御質問がございましたんですが、たとえば年度の途中で新しいものを出したときに、それは十年で計画していたのに五年ものが出るではないか、あるいは十二年が出るじゃないかと、しかし、そのときに計画が変わってくるのではないかということにつきましては、それはまず第一に大事なことは、発行限度額、これを国会で御承認いただいておるという前提に立っております。しかしながら、その償還計画はおのずから種類が変われば変わってくるはずでございますから、それは国会のしかるべきときに、まだ実は中期、五年ものを出すと決まったわけじゃございませんから、その一番近い時点において国会に御参考の資料を提出いたしますと、こういう形でございまして、五年ものが——特例法を出すに当たっては、いまから決まっておらないと出せないというようなものではないのでございます。
  72. 野々山一三

    野々山一三君 あなた、まことに申しわけないがね、委員長、これはぼくの質問していることと全然違う話をしている。いま出ている国債、これを十年のものを十二年にしたり——そんなことを言っているんじゃないんですよ。この法律が通りましてから発行をされるものに、いまのところ中期債という五年ものと十年ものがありますが、十年ということで法律で出しておるのにかかわらず、中期債の五年ものを出そうと。まだ出していませんからなんというのは、何言っているんだ、そんならいままで質問が幾らでもあったのに何と答えたか。何で中期債の要綱というものをここへ出したんですか。それじゃあなたの論理はね、大きい声をするのはいやだけれども、国会が終わって法律が通ったらそれからやるんですから、いまはそんなことは言えません、後で、やることになったら適当な時期に報告いたします——。これじゃ国会軽視もはなはだしいじゃありませんか。  私は時間が来たんでね、委員長、こういう答弁をやっておる限りは、この問題の解決にはならぬじゃありませんか。まだ私は本来聞きたいことはいっぱいあるんですけれども、話が食い違っているんでね、この問題ちょっと留保してもらいたいんだな。こんな答弁をしておる限りじゃこれは審議になりませんよ。全然違うことを答えている。これほど簡単に言っている——ぼくの言っているのは無理でしょうか。  十年債であること、借りかえはしないこと、そういうことを前提条件として特例法というものを出しているが、中期債というのは五年もので、それは国債法に基づいて告示でやりますと。そんなら十二年というものは、これいまは計画上は限度額は予算のあれで決まってますが、十二年というものをもし仮に、大平さんがそんなうそをやらぬとは思うけれども、十二年というものをやったって、片っ方も国債法に基づく権限でございます、告示でやれば結構です、こういうことになりはしませんかと、このことを聞いている。それにずばり答えてください。
  73. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) これは、五十一年度の公債発行特例に関する法律をごらんいただきますと、ここには——現在は出されている国債は確かに十年ものでございます。しかしいつ出すかわからないが、将来中期債を出すという計画はいま大蔵省が持っておるということも申し上げました。しかし、この現在出しておる国債は十年ものでございますが、特例債は別に十年国債であるということを書いてあるわけではございませんで、財政法の特例法として国債を出しますということを言っておるわけでございます。したがいまして、ここで十年——しかし、それは現在の時点においては十年債でございます。それでそれに対するところの償還計画は一応いまのところは出されておるわけでございます。
  74. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 一つ公債発行権限の問題、それから二番目には発行限度の問題三番目は発行条件の問題、この発行条件は金利であれ、いまの五年ものとか十五年ものとか、そういうような意味を含めておるわけでございますが、この三つの要素があるわけでございます。  いま整理して申し上げておるので失礼な点があるかもしれませんが、第一点の点は、建設公債は財政法四条で権限をいただいておるわけです。それから特例法は、ただいま御審議をいただいておる法律で、これからいただきたいということを申し上げておるわけです。発行限度は、五十一年度の予算でちょうだいしておるわけです、両方ともすでに。発行条件がいま議論になっているわけです。それで五年もの、十二年ものという議論は、法律的にはしたがって大蔵大臣に委任されておりますので、十年ものを五年ものにしようと、十年ものを十二年ものにしようと、これはできるわけです、法律的には。ただ、こういうような問題は、国会との関係においてそう簡単な問題ではございません。したがって、五年ものについてはこの席上も今度こういうことを大蔵大臣の権限の範囲でやりたいという御説明をしているということになるわけです。整理して申し上げますとそういうことでございます。
  75. 野々山一三

    野々山一三君 問題の整理という意味ではわかりました。ただ、償還計画はどうなるんでしょうか。あれはどこかでしゃべったというものですか、どこかの紙切れに書いてあったというものですか、十年で償還します。それを裏づけをする意味で十年で返しますと言っているものを、五年というのが出てくるのは一体どういうことですか。それは権限でございますというのか。どこかでしゃべったのか、どこかの紙切れに書いてあったというものか、どっちですか。それをずばりそこのところを聞かしてもらわないとわからない。
  76. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 償還計画の法的な性格は、建設公債の場合は四条の二項に書いてございます。それから今回の場合には四条に書いております。この条文の性格は参考資料であって、議決の対象事項ではないというふうに考えておるわけでございます。したがって、限度額——従来の例で申しますと限度額が動くような場合、これは補正予算をお願いしなければなりません。そういうような場合には、従来は償還計画を補正いたしまして提出しておりますが、限度額を動かさない場合には、大蔵大臣限りでやらさしていただきまして、事後に財政法の二十八条で国会にお示しをすることになっておるわけです。決算書以外に二十八条でお出しをしております。
  77. 野々山一三

    野々山一三君 改めて申し上げますが、私の会派の時間が過ぎてまいりましたので、いまのお答えではなおわかりません。極端に言いましょう。それなら十年ものを百年にしても結構ですか、こういう議論になるんです。それは一体国会でこれほど長いこと議論してきたにもかかわらず、そういうこともあり得るんだという腹が見えたんだというふうに私は聞こえます。そういうことで一体この国債というものが国家的信用、国民的信用度を維持することができますかという議論がなおございます。したがって、これは私個人が納得しないというだけならこれはやむを得ませんが、私は留保させてもらって、一遍これは理事会で正式にこの問題を問題にして、問題の正体を明らかにさしていただきたいという意味で留保さしていただきます。いかがですか。
  78. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいま野々山委員の発言に対しましては、鈴木委員の前の質疑も関連もいたしております。きわめて重要な国会と行政府との関連の事項でございまするので、後刻理事会においてさらにこの問題を検討をすることにいたしたいと思います。
  79. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに、先ほども減税の問題が出ておりましたので、ちょっと大臣に重ねて確認の意味で質問いたしますが、来年度減税——物価調整減税も含めていままでなかなかしないと言われておったのが、大分発言がやわらかくなったという新聞報道がずっと出ておるわけです。また、きょうの朝刊あるいはきのうですね、「所得減税を実施」とか、あるいは「所得減税論まき返す」「首相周辺もぜひ総選挙の目玉に」とか、かなり出てきておるわけですね。それからきのうの衆議院の大蔵委員会の答弁、また先ほどの答弁、そういった点でここではなかなかできない、できないと言っておられますけれども、国会が終わった時点とか、あるいはそういったときにはすぐ発表されたりする場合がいままで往々にしてありますけれども、実際大蔵大臣の本当の気持ちはどうなんです。もう一回確認の意味で。
  80. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) たびたび御答弁申し上げておるように、ただいま政府では政府税調に対しまして中期的な税制の御審議をお願いいたしておるわけです。それは所得課税、資産課税、消費課税、流通課税そういった税制全体にわたっての御検討をいただいておるわけでございます。中期的に見ましてどういうところを考えていくべきかという点についての考え方を承りたいと思っているわけでございますけれども、まだ御審議始めていただいたばかりでございますから、いずれにいたしましても明年度の予算の編成にかかるまでの間に一応のアウトライン、見当、少なくとも五十二年度に何が期待できるかというところの糸口だけはつかまなけりゃならぬと考えておるわけでございます。一体五十二年度にどういうことが税制改革として私どもは考えるべきかという点についての見当は、予算編成までにはつけなけりゃならぬという腹づもりでいま審議を願っておるわけでございます。でございますから、いまの段階で五十二年度の税制改革の全貌についてとやかくまだ申し上げることはできないわけでございまするし、いわんや、また中期的な税制改革の外貌を語るなんというところはとてもできないわけでございます。  ただ、御質疑がございまして、所得減税、物価調整減税でございますとか所得税の減税というようなものを景気政策の観点から、あるいは実質所得確保の見地から考えなければならぬのではないかという提言を込めての御質問はございました。これは五十二年度からどうこうというお話でもございませんし、政策の選択の問題として政府はどう考えているかというような御質疑がございましたので、いまの段階、財政的な見地からだけ申し上げれば、とてもそういう余裕はないのでございますと、仮にそういうことをどうしても考えなければならないとすれば、一般的に歳入歳出でかわり財源が見つかるというようなことでもあれば、また考える余裕も考え方としては出てくるのではなかろうかというようなことを申し上げたわけで、五十二年度からとか、五十三年度はどうだとかいうような年度を限って申し上げたわけでは決してないわけでございます。考え方を御答弁申し上げたのがいままでの経緯であったわけでございます。  大変歯切れの悪い答弁でございますけれども、いまの段階は、そういったことを考えておるというのがいまの段階でございます。
  81. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう一つ確認ですけれども、来年度税制はいろいろ見直しはあることは間違いないと思います。不公平税制の是正ということも、これはやらなければならぬ課題でありますし、それも私はなされる。そうした場合、出てきたいわゆる税収の増加、あるいはその他の歳入の増は、一切国債の方の発行の限度を抑える、あるいはそちらの償還に回して、全然庶民の方のいわゆる減税といいますか、あるいはまた個人消費も伸ばす意味において、私たちは減税をすべきであると言っておりますけれども、要するにそっちの方には全然回さないと、こういうふうになるわけですね。大体、いままでのいろんな政府のお考えを聞いておりますと。それではまずいんではないか。やはり、不公平税制を是正するということは、すなわちやはり多くの庶民がプラスになる課税最低限の引き上げになるか、あるいは物価調整減税という形になるか、それを別としましても、やはりそういう形にならなければならぬと思うんですが、その点もう一回重ねてお願いします。
  82. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 第一の問題でございますが、つまり不公平税制の是正の問題、これは年々歳々やってまいりますと、これはマンネリ化しないように、既得権化しないように、精力的に見直していきますということをお約束をいたしておりますし、そのとおり実行いたしておるわけでございまして、明年度もやってまいるということに変わりはございません。どれだけの財源がそれで期待できますかわかりませんけれども、何がしかの期待が持てることは御指摘のとおりだと思うんであります。  それから、第二といたしまして、まあ国民の幸せのための福祉予算その他歳出関係の予算でございますけれども、これはひとり財政当局がひとり決めをするわけではなくて、それぞれ政府には各省庁がそれぞれの政策分野において責任をもって予算を要求され、その執行に当たっておるわけでございまして、当面の計画から申しますと、中期的な経済計画概案におきましても、公共投資でござい、振替支出計画でござい、それぞれほぼこのぐらいの見当のサービスは提供しないといけないのではないかという、政府部内の大方のコンセンサスがあるわけでございまして、そういうものは何としても充足するだけの財源をこちらが確保せにゃならぬのじゃないかと。しかも、なお五十年代の前半で特例債からの脱却を図って、財政の正常化を図らなければならないのではないかというようなことで、この間財政の収支試算というようなものも御検討いただいたことは御案内のとおりでございまして、それは財政全体のフレームでやっておるわけでございまして、ここで浮いた金はどこへ使うというような個々の財源の充当計画を一つ一つ示したものではないことは矢追さんも御承知のとおりでございまして、そういったことにつきましてはまた別々に、各歳出の個々のアイテムの御検討で評価をしていただかなければならぬと思うわけでございます。できるだけ財源をしぼって、財源の捻出をやりまして、できるだけふくやかな福祉その他の公共関係の経費に回さなけりゃならぬということは基本的に財政当局として常に念頭に置いてやらなきゃならぬことであると私どもも考えております。
  83. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは次に、国債の問題に移りますが、これからの国債の発行予定ですが、現在までに三兆三千億ばかり出ております。十月以降の残、予定からいきますと、まだ残っているのは三兆九千九百十七億あるわけですが、特に十月、十一月、十二月、一、二、三、まあ四、五もありますけれども、まあ三月までと一応しまして、大体どんな計画でおられるのか、特にまあ十月はどうされるのか、この点をお伺いしたい。
  84. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 十月以降に残っております金額は先生の御指摘のとおりでございますが、私ども当初九月から特例債を考えておりましたが、その段階では九月が八千億、十月が七千億というようなベースで考えておったわけでございますが、九月が発行できなくなりましたので、いまのところその八千億分を何とかできるだけ早く消化する方に検討しなければならないと考えておりますが、十月につきましては大体おおむね一兆円というのを目標にいたしております。
  85. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 十月で一兆円が果たして可能かどうか。  それからもう一つは、一番問題となります十二月ですね。資金需要も多く出るわけです。その場合シ団関係がどうなるか、その点いかがですか。
  86. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 十月一兆円と申し上げましたのは、かなりやっぱり準備をいたしまして初めて可能なわけでございますが、ただそれ以後につきましては、大体十一月も同程度ぐらいということではございますけれども、これは十月の法案が通りました後でシ団と十分話し合って決めていくことでございまして、いまから目標額幾ら幾らというふうに決めて、まだ現在段階においては決めておりません。ただ金融環境その他からいきますと、私どもが懸念いたしましたようないわゆる民間資金の需要がまだ強うございませんので、金融環境からいきますと、発行の状況としてはまあ今年度、本年の十一月あたりは比較的何とかいけるのではないかというふうに考えておりますが、これもやはり十月のこの法案の御審議がだんだん差し迫っておりますので、その辺はその決着がつきましたところで、全体の見通しを確と立てていきたいと考えております。ただ、十二月は御指摘のように非常に資金の繁忙期でございますから、毎年それほど多く出しておりません。いまから十二月幾らということを読むわけにはなかなかできない状況でございます。
  87. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 昨日参考人でお見えになった伊部さんは、何か十二月三千億ぐらいならまあできるようなお話だったわけですけれども、まあそういうことでいきますと、きのうのお話ときょうの大蔵省の大体いま言われた一兆円、一兆円。まあ十二月はどうなるかは別として相当ギャップがあるように思うんですけれども、その点のシ団の引き受けは別に銀行だけでは、まあこれは銀行だけのことを言われたのかもわかりませんけれども、その点はこれから打ち合わせされるんでしょうけれども、シ団関係の感触というのはいかがですか。一兆円はこなせると、連続十、十一月だったら二兆円になるわけですよね。まあ過去の例で一番多いのは一兆二千億五月に出ておりますけれども、その辺と比べてどうなのか。その点もう一回お伺いしておきます。
  88. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 大変抽象的な答弁になって恐縮なんでございますけれども、実はまだ具体的にシ団と正式な話をいたしておりませんので、これは私どもの予測程度からいま私が大体まあ九月分を若干取り戻して十月、十一月の数字が大体どの辺かなということを申し上げたわけでございますけれども、これはもう一回詰めてみませんと、いまから数字を月割りにして申し上げるというような状況にはまだございません。
  89. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 国債が大量発行された場合クラウディングアウトの問題が出てくるわけですが、これは絶対に避けるというもちろんお気持ちでしょうけれども、これはもう絶対クラウディングアウトはないと、そういう見通しがあるのかどうか、その点はいかがですか。
  90. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 国債の発行されました場合の一応吸収されます資金は、また後で財政支出となって金融機関に還流してまいるはずでございます。そういう、しかしながら、時間的なずれが起こるわけでございますけれども、ただ、現在の民間の資金需要というのは、御案内のように大変落ちついた動きをいたしておりまして、当面私どもこの国債が発行されることによりまして、貸出面により過重な圧迫が起こってくるという心配はいたしておりません。ただ、今後の金融情勢の推移等は、金融当局において十分慎重に見てまいりまして、そういうことが起こらないように注意をしていくということはもちろんでございますけれども、当面そういう危険は感じられていない状況でございます。
  91. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、財政法の第五条についてお伺いをいたしますが、中期的に見まして、五十二年度以降は資金供給はタイトに推移すると考えられますけれども、国債の発行額というものは、五十四年まで七兆円台の発行が続くと考えられます。そういうことでクラウディングアウト発生の可能性というものは、常に内在をしながら推移するというふうに考えられるわけです。  そこで、財政法第四条の一項は、その本文で公債発行をうたい、ただし書きで建設公債発行を例外として認めている。しかし、まあ赤字国債というのは一応禁止されているわけですよね。ところが、特例法というものによって赤字国債というものが、これからずっと続いてくるとすれば、まあ早く脱却をすると政府はおっしゃっておりますが、まあ五十四年、五十五年までには果たしてできるかどうか、今後の景気回復との関係もありますけれども、非常に私はむずかしいんじゃないかと思うわけです。  そうなりますと、特例法による赤字国債が恒常化してくる、そうなってくるわけですね。そういうことで今度第五条の本文には国債の日銀引き受けを禁止して、そしてそのただし書きで、特別な事由がある場合これを例外として認めると、こういうことになっておりまして、この五条のただし書きの特別な事由、これが赤字国債が恒常化することによってクラウディングアウトということが常態化すると、こうなった場合、この例外——要するに特別な事由というものがどうなるのか。この日銀引き受けが行われない保証がなくなってくると。そういうことで、五十一年度の今回の法案でもきちんと借りかえをやらないという条文が入ったように、五十二年度の特例公債のこの法律の中に、日銀引き受けを行わないというふうな項目を入れて、そういうふうな歯どめというものをすることはどうなのか、その点に対するお考えをお聞きしたいんですが。
  92. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 従来から国債の発行につきましては、財政法五条の精神にのっとりまして、市中消化の原則を貫いておるところでございますので、特例法につきましてもこの方針に変わりはございません。  したがいまして、いま御指摘になりましたただし書きによって、将来のクラウディングアウトの場合に、そこに行こうというか、逃げようというか、そういうような考え方は毛頭持っておりませんで、日本銀行が保有しておりますところの国債というのは、これは日本銀行の金融調整機能というか、そういうものに基づきまして、市中の金融の繁閑に基づいて行うところの買いオペレーションによって保有するわけでございますから、その点では特例債であろうと、四条債であろうと、全くおんなじ考え方で、市中消化の原則と、それから日本銀行はあくまでも金融調整の機能の中で、市中から、一回市中消化された国債を必要に応じて買い取るということでございまして、日本銀行が直接に民間資金が非常に窮屈になったから、直接に日本銀行が国債を引き受けるというようなことを前提にしておるものではございません。
  93. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの問題で、第五条の「特別の事由」の場合に、国会で議決された範囲内においてということになっていますね。その特別の事由というのが、もうどうしても市中消化というか、それを押しつけたためにやむを得ず中小企業、そのほか各企業に対してのクラウディングアウトが起きてきた、こういうようなことになったときにも入らないのかどうか。その特別の事由ということは何を指しているのですか。よほど大きな問題を言っているのか、特別会計の借りかえ債どころじゃないだろうと思うので、その辺はどういうふうなことなのか、その辺の解釈はどうなんでしょう。
  94. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 抽象論よりも具体的に申し上げた方がいいかと思いますので、過去における国会の答弁で例示がされました例がございます。四十年の八月五日の衆議院の予算委員会におきまして御議論がございまして、そのときの具体的な例を申し上げますと、これは仮定の問題でございますが、国債発行時における金融情勢から見て一回日銀に引き受けさせて、後から金融情勢が緩んだから、これを市中に売却するというようなことをやらざるを得ないような事態というような例が答弁の中で言われております。
  95. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういうおそれがあるという、何だかいまのお話ですと、一遍緊急に、緊急避難的に日銀が引き受けて、そしてその後で回収するという、そういうこと。だからこれもあり得るということになってくると、やはり将来は予算総則に入ってくるおそれが出るんじゃないかという危惧を持つんですけれども、どうですかその辺は。
  96. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 最初に、制度の仕組みは申すまでもないんでございますが、ちょっと御説明さしていただきますと、財政法の二十二条に三号というのがございまして、「第五条但書の規定による日本銀行の公債の引受及び借入金の借入の限度額」という規定がございます。いま鈴木委員お話のように、もしもこういうことをやらざるを得ないという情勢が予算編成時に見込まれておる場合には、当然に一般会計の総則で、この日銀からの、日銀の公債引き受けの限度額を国会にお示しして、それをお認めいただくという手続になるわけでございます。  第二の問題は、将来どうなるかということでございますが、この点は、理財局長の問題になりますか、現在は、われわれは五十一年度の特例法をお願いし、すでに予算は成立しておるわけでございますから、五十一年度に関する限りないと、あり得ないと。それからいままでの、過去にもなかったわけでございます、ということを申し上げたいと思います。
  97. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、先ほどからも、またしばしばこの委員会で議論された割引債のことですが、この中期割引債が発行されるということになっておりますが、それ以外の新種の国債、これについてはどういうふうに研究をされておりますか、イギリスでは老齢年金受給者に対して物価スライド制を加味したもの、そういうものが出されまして、経済的に弱い立場の人に対しても、そういう国として手を差し伸べておるわけですが、いま中期割引債のことだけで頭がいっぱいだとおっしゃるかもわかりませんが、そういう多種の、多様な国債の発行というものに対して、特にいまのような、そういう非常に国民の大衆に喜ばれるような、そういうものはお考えになっておるかどうか、その点いかがですか。
  98. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) とりあえずといいますか、中期国債、中期割引国債を考えますまでの間にいろいろ各国の例とか、あるいはその国内におけるいろんな金融商品との関係等をいろいろ検討いたしてまいりましたし、現在の段階におきまして中期割引国債というものを一つの骨格にして試案を示しておるわけでございますが、先般の委員会で申し上げましたように、貯蓄国債的なものが一つ考えられると。それからもう一つは、期間の短い利付債という形のものが考えられるんじゃないか。こういう大ざっぱに申しますと三つを一応検討してまいりまして、そしてその長所、短所等をいろいろ検討した結果、現在最も個人の消化に役立つもの、そして将来にわたってそれが国民によく受け入れられるものということで取り上げたものでございますけれども、もともと、これは国債をもっと国民になじんでもらい、そして個人消化に役立つということと、将来はやはり国債が公社債市場といいますか、そういうものの中にちゃんと定着し得るような、現在の十年債の国債につきましても、いろいろ検討しなければならない問題が将来出てくるということを前提にいたしまして、中期割引国債を選んだわけでございます。しかしながら、勉強いたしておりますこの勉強は、個人消化のためにこれだけしかないんだということではなくて、さらに続けて検討してまいるということでございまして、これから先また私どもの検討の結果いいものが考えられるならば、それはさらにつけ加えていくことにつきましては、これは個人消化促進のたてまえからいっても当然でございまして、一生懸命これからもその検討を続けていくつもりでございます。
  99. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間ですから、最後に公社債市場の整備について伺います。  この整備をやると言われながら、まあ、なかなか十分でないという指摘もあるわけですが、この整備がいままでできてこなかった理由はどういうのが挙げられますか。それが第一番。今後発行条件についてはどのようにされていくか。これはいま伺いましたので——。  二番目としては、公社債の多様化。それから三番目に、証券会社の公社債に関する営業姿勢。そういった三点につきまして御答弁いただきたいと思います。
  100. 安井誠

    政府委員(安井誠君) いま先生御指摘のございました公社債市場の整備の問題と申しますのは、私どもとしても非常に大事な問題と考えているわけでございます。少なくとも、公社債市場を通じて資金を調達される発行者、それからその資金を投入される投資者の双方にとって信頼をされる市場にしなければいかぬというふうに考えているわけでございます。  具体的に、いままでも努力はしてまいったわけでございますけれども、今後とも発行条件を弾力化いたしましてといいますか、発行条件を適正化いたしまして、流通市場としての公社債市場と調整をしていく。また流通機構整備ということをやっていくというようなことを、現在までもやってまいったわけでございますが、今後ともそれに力を入れてまいらなければならないかと考えております。具体的な例で恐縮でありますが、たとえば電力債を一つ取り上げてみましても、四十一年から四十五年の五年間では、発行条件は五年間に三回しか変えておりませんけれども、四十六年から五十年の五年間には十四回変えるというような形で、発行条件の弾力化と申しますか、適正化をやってきたわけでございまして、今後ともそちらの方向に進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、流通機構の整備の問題といたしましては、いろいろ、たとえば国債につきましても、売買手法につきまして、売買の仕方につきまして集中決済の範囲を広げるとか、あるいは仕切り値の限度問題を考えるというような、この流通市場で売買のしやすい方向、適正な値段がつく方向で検討してまいりたいと思っているわけでございます。  それから、先生お尋ねの証券会社の営業姿勢の問題でございますが、何と申しましても公社債市場といいますか、公社債を証券会社が販売いたしますときは、株式と異なりまして一応元本が保証されているわけでございます。この間接金融というものと異なりまして、直接金融という形をとるわけでございますので、まだまだ今後とも個人金融資産の中に占めるこの公社債のウエートというものは高まるであろう。そのためにも、非常に慎重なといいますか、積極的な努力をこの公社債の販売に向けてもらいたい、かように考えているわけでございます。
  101. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大蔵大臣、最後に一言だけ伺いますが、わが国の個人の金融資産というのは、どちらかというと定期性預金が半分、有価証券が一一%ぐらいでありますので、こういった現状を大臣はどういうふうに認識をされておるか、また、これはもっと改善をされる、有価証券のこのパーセンテージを上げていく、そういう方向をお考えになっておるのか、その点をお伺いして、終わりたいと思います。
  102. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) わが国の金融資産が預貯金に偏っておるということは御指摘のとおりでございまして、これをもっとバランスのとれた形、もっと多様化する必要があるということは私も痛感します。けれども、そのためにはそれだけの公社債の市場が育成されねばなりませんし、円滑な流通が確保されねばならぬわけでございまして、それは、言うはやすくして、なかなか実行はむずかしいことでございますので、そのためには相当時間をかけて、腰を落ちつけて、じっくり取り組んでいかなければいかない課題であろうと考えております。  今度の中期割引国債の問題でございますけれども、これとてもその一つの糸口でございまして、これによって非常に大きな期待が持てるかというと、これも一つの手段でございまして、そしてこれ自体が国民の中に定着するにつきましても相当粘り強く努力が必要であると考えておりまして、要するに、一朝一夕でできないことでございますので、相当時間をかけて、粘り強く対策を考えていかなければならないものと思っております。
  103. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今日までの質疑の中で、今回の三兆七千五百億円という大変な赤字公債発行は、異常かつ危機的な財政状況を切り抜ける方向としての増税の手段ということがはっきりしてきたと思います。  問題は、その負担が、大蔵省や税調の審議や討議の状況を見ておりますと、給与所得者や低所得者層への増税、その一方では、企業に対する増税には大変消極的である。こんな方向も出てきていると思うわけです。むしろ私は、ここのところを逆にしていくことが大変大事だと思うのです。そういう抜本的な対策が必要だろうと思うのですが、その一つの例として、前回の質疑の中で、私は、公害防止準備金のように、大蔵省の歴代担当局長がそろってまずいというような、そういったものまであることもこれは具体的に明らかにしました。きょうは、それはそれとしまして、今度は別の角度から、やはりまずいものがあるわけでして、そういったものを具体的に指摘をして、そして大蔵省の見解、決意を聞きたいと思うんです。  私がこれからお聞きしようと思いますのは、利子・配当所得に対する源泉分離選択制度の問題ですね、この問題については税負担の不公平を生んでおるということが、ちまたにそういう声があふれているんじゃないかと思うんです。いろんな人もそう言っております。大臣として同様の認識をお持ちかどうか、この制度が不公平税制の一つの重大な要素をなしているという認識をお持ちかどうかまず御答弁いただきたいと思います。——大臣に見解を聞いているんです。大臣に。
  104. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 利子・配当課税の現行制度が完全に各種所得を総合して課税するという所得税の基本的な考え方からして不公平を生んでいるという御指摘はかねてからございますし、税制調査会でも考え方としてはそれをいかにして是正すべきかということで御論議が続いているわけでございます。
  105. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その点ではすでに昭和三十九年十二月の税調の長期答申でも、一部の高額資産所得者を著しく優遇するものであって、廃止すべきものである。さらに、四十三年七月の長期答申でも同様の答申が出ておるわけです。その後十年以上たってもできない。一体その理由がどこにあるのか、この点について答弁いただきたいと思います。
  106. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) これは方向として近藤委員が御指摘のような方向で是正を考えるべきであるという点については、税制調査会内部に御異論はないと、ただなぜ一挙に完全総合課税にいけないかということは、結局、完全総合課税を税法上規定したときに、実質的に把握ができると、かなりの程度可能であるという体制を同時に整備しておかないと、税法上だけは総合課税のたてまえになっておっても実際上把握されない、実質は漏れてしまうということではかえって別の不公平を生む危険はないかと。したがって、完全に把握できる体制というのは何であるかということを詰めながら、着実に一歩ずつ改善の方向に向かうべきであるというのが、最近での税調内部でのお考えのように承知しております。
  107. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 結局、把握困難の問題に帰着するわけでありまして、私、その議論をこれからしたいと思うんですが、その議論に入る前に一、二お聞きしたい点がございます。  一つは、所得税がかからない限度として配当所得者と給与所得者では最低限度が違いますね、この点は配当所得者の場合には幾らであり、給与所得者の場合は幾らであるか、この点は数字は大蔵省にあると思いますが、いかがですか。
  108. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) すみません、ちょっとお待ちください。——従来お出ししております数字の五十一年分で申し上げますと、夫婦子二人の場合に、配当だけであれば四百四万九千七百円、それ以下の場合には所得税を納めていただく必要はないと、給与所得者の場合はこれが御承知の百八十三万円という数字になります。
  109. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 一見して大変大きな差でありますけれども、もう一つお聞きしたいのは、この優遇制によってどの程度課税が軽減されているのか、これがいろいろ計算によって違うわけです。たとえば、どうも東京都の計算と大蔵省の計算と違うようなんですが、大蔵省のこれは五十一年二月の衆議院予算委員会に出された資料によりますと一千五百億程度ですね、しかし、実際もっと多いんじゃないかという、こういう指摘がされておるわけであります。  そこで、これは事前に資料要求をしておいたんでありますが、二つの資料をお示しいただきたいと思います。一つは、昭和五十一年の利子所得と配当所得の課税軽減分税額及びその計算根拠が第  一点、それから第二点は、個人配当所得の過去十カ年の年別所得階層別分布、推移、これを一千万円以下と一千万円超に区分してお示しいただきたいと思いますが、資料はありますか。
  110. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 減収額見積もりは、ある程度項目別にいたしましたものを予算委員会にお出ししてございます。  それから、個人配当所得の所得階層別分布というものは、実は申告所得税の方に出てまいる分、これは統計上把握できまして、それにつきましては御存じの申告所得税の実態という国税庁のつくっておりますものを衆参の大蔵委員の先生方にお配りいたしてございますので、その中でごらんいただければ幸いだと思います。  なお、東京都の計算と私どもの計算とにかなりの差がございますが、その中で、ただいま近藤委員の御指摘になった課税最低限に関連するものは、実はこれは配当控除という制度によるものでございまして、東京都の場合に、配当控除による減税額というものを入れておられるのかどうかは、ちょっともう少し私としても調べてみたいと思いますが、私どもの減収計算の場合には、配当控除というのは、いわゆる政策的税制ではないというふうに税調でも仕分けていただいてございますので、特別措置減収額には計算に入れておりません。
  111. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それでは把握困難の問題について、これは十年来議論されているわけでありますから、大蔵省の方でも相当これは進んでおるという、そういう前提に立ってこれからお伺いしたいと思うんです。  まず利子所得については、これが昭和二十五年ですね、それまでは総合課税であった、二十五年まで総合課税だったと思います。配当所得については昭和三十九年までだったと思いますね。それは間違いないですか。
  112. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) その二十一年までは、御承知の分離所得税と総合所得税ということでございまして、分離所得税では当然いまの言葉で申せば分離課税の税率になるわけでございます。で、総合所得税を課税するときに、いまのと非常に似たような源泉選択というものがございました。したがって、分離所得税をやめました昭和二十二年の改正では、これは総合課税に移ったわけですが、そのときにも源泉選択制度は採用しております。したがって、完全に源泉選択制度がなくて、完全総合一本であったという歴史は、昭和年代に入りましてからでも、昭和二十五年の一年だけでございます。二十六年にはもう源泉選択が復活しております。  それから、配当はずうっと総合課税でございましたが、配当所得に源泉選択制度が入りましたのは昭和四十年度改正でございます。四十年分の所得税からでございます。
  113. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それで、まあそういう経過はそれでいいと思うんですが、それが分離選択課税になった場合、その理由としては貯蓄の奨励あるいは資本蓄積と言われておりますが、このときに、これを総合課税をやめたときに、このときにいわゆる把握困難ということが議論されて、それも一つの理由になったのかどうか、この点いかがですか。
  114. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 二十五年にいわゆるシャウプ税制で完全総合になったと、一年だけで。二十六年には早くも源泉選択制度が復活した。このときに、その把握の問題が源泉選択制度復活の根拠とされていたかどうか、申しわけございませんが、ちょっと私勉強不足で、これは当時の記録を調べました上でお答えいたしたいと思います。
  115. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その点私の方が調べてまいりましたので申し上げますと、当時は、要するにたんす預金を引き出せというのですね。そのための一つの優遇措置としてまさに貯金奨励だったんですよ。ですから、把握困難ということは一言も出てないんです。逆に、把握困難どころか、こういうような制度に、現在の制度にしたことがかえって脱税を生んでいるんじゃないか、そういう指摘が逆にあるんですよ。脱税ないしは預金を、自分の資産を隠す、そういうことが、たとえば、これは昭和三十八年度の税調の臨時答申とその説明でありますが、それによりますとこういう指摘がありますね。「所得が総合されないことから、銀行等の利子支払機関が支払調書等を提出しなくてもよい制度であるため、預金の元本を秘匿する結果をも生んでいる。」というのですね。逆に取得困難は後から出てきた問題だと思いますね。そんなことはほかの指摘にもあるわけであります。たとえば、これは昭和三十九年度のやっぱり税調の臨時答申でありますが、「配当分離課税の要望は、投資元本を税務調査の対象外とし、元本に対する課税をまぬがれることにも狙いがあると思われるが、このようなことは、特に高額所得者の脱税を誘発し易く、社会的に悪影響が大きいと考えられる。」、要するに逆なんですね。いま盛んに把握困難と言っているのは、こういう事態がむしろつくり上げたものなんです。つくり上げた上でそして把握困難、把握困難と言って、そして総合課税にすべきことが正しいにもかかわらず、十年来やっていない。大臣、それが歴史的な経過なんです。そういう事態を踏まえて大臣いかがお考えでしょうか。
  116. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 完全に分離課税になってしまって支払い調書が出ないという状況では、おっしゃるように資料が税務官庁の手元に入りませんから、そういう意味での行政上の大変不備が生じたということも御指摘のとおりだと思います。ただ、その支払い調書というものは、これは利子所得を把握するためのものであると観念いたしますと、制度そのものが分離課税になっておれば、利子に対する課税はそれで完結しているものですから、それ以上支払い調書をとるべき理由がなくなるということではあろうと思います。したがいまして、その点を長年議論を続けまして、昭和四十五年度の税制改正でやっと総合課税に持ち込んだ、たてまえは。で、しかし、一気に総合課税にいけないいろいろな理由があって、源泉選択制度を併用したという流れでございますから、今後の流れとしましては、完全総合の方向にできるだけ近づくという努力を続けなくてはならないということであろうと思います。その場合に、現在は源泉選択をしておられる方は、源泉選択のための届出書というものが出ております。それが一つの資料になります。それからもう一つは、源泉選択をなさらない方の場合は支払い調書が出てきます。これも課税資料になるということで、資料的な意味の整備としては、四十五年以後は、四十四年以前に比べれば、制度としてはかなりの改善をみたと申し上げていいと思うんです。そこで残ります問題は、支払い調書に書いてある名前が本当の名前でしょうかという、いわゆる架空名義の問題、もう一つは、事務的に支払い調書の完全名寄せというものがどの程度できましょうかという、税務の実務と金融機関なり支払い機関の協力の問題が残っているわけでございまして、その問題を一つずつ根気よくときほぐしていかなくてはならぬというのが現状でございます。
  117. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまの答弁聞きますと、これは大蔵省の決断いかんですぐにでも私はできる、そう思わざるを得ないんですね。その前の問題として私が指摘したように、先ほど指摘されているようなことが、要するにいまのような制度が把握困難をつくり上げているんだという、それを放置しておることがやはりよけい把握困難を広げているんじゃなかろうか、こういう指摘についてはどうお考えですか。
  118. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) そこで、いまのシステムの上に乗って把握の充実を期するためには、架空名義というものをどうやったら排除できるのかということに焦点があるわけですね。架空名義というものは金融機関が、たとえば私が預金をしに参りましたときに、私が大倉眞隆ではなくて、違う住所に住んでいるたとえば私のところの田谷何がしであると言ったときに、金融機関は本当にあなたは大倉さんですか、じゃないですかと、どこまで言えるかという問題があるわけでございまして、それはあなたは田谷さんではなくて、大倉さんでしょうというふうにどうやって確認ができるか、そういういろんな考え方がいまございます、それは。住民票の写しを持ってきていただくとか、あるいは税務署にまず行って何か持って来ていただくとか、もっと徹底すれば背番号にして、番号を同時に届けなきゃ預金ができない、法律的に可能かどうかというむずかしい問題ございますけれども。預金という私的な行為をするときに番号がなければ銀行が受け入れてはいけない、そういうところまでいけるのかいけないのか、そういう議論をずっと続けているわけでございますが、結局問題は、所得の完全な把握に資するために、本来所得は自分でちゃんと申告しているよという圧倒的多数の方々にどの程度の御迷惑をかけることができるだろうか、いま非常に、もっと端的に申せば、預金をするときにまず税務署へ行かなきゃ預金ができないというふうなことを皆さんが納得してくださるだろうかという問題として、税務部内の勉強が続いているわけでございます。
  119. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 郵便貯金の匿名の問題については、やはりこの国会の当委員会でも先日出ましたね。銀行についてもこれはどうですか、やっぱり積極的にこの点をお考えなんですか。
  120. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) そこで、まあこういう場所で申し上げることが適当かどうか、ややヒジテイトいたしますけれども、銀行側にもう少し確認の手続なり名寄せの事務なりをお願いしたいわけです、私どもも。事務的に勉強を続けておりますし、金融機関の実務家とのお話し合いも続けているわけです。そのときに必ず郵便貯金の問題がもう一つ出てくる。銀行側だけそれをやって、郵便貯金では名義の確認もない、名寄せもないということだと、資金がみんな郵便貯金にいってしまうんじゃないでしょうか、そういう点どう考えるのかという御指摘でございまして、やはり公平に考えるという税務の立場で申せば、それは郵便貯金にも金融機関と同等、あるいは政府機関なんですから、それ以上のことをやっていただきたいと思いますけれども、それまた郵政省とは事務的にはずっと話を続けているわけでございますが、これまたなかなか当方が希望するような答えが簡単には出てこないというのが現状でございます。
  121. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 要するに、把握困難の問題は私は大蔵省の決断いかんだろうということですね。こういう状況をいつまでも放置するのじゃなくて、そうしてまた放置することがやはりそういう状況をさらに野放しにし、拡大し、把握困難を広げているわけでありますから、そのことから大きく一歩を進めて、そうして私どもも常に主張してきたとおり、そうしてまた税調等でも十年も前からはっきり言われているとおり、これは廃止の方向に一刻も早く進める。そうでないと、こういったものをこのまま、だれが見てもこれは不公平だというものが放置されておって、そうして一方では給与所得者の増税、さらにこの赤字公債発行というふうなことに納得がいかぬですよね。その点についてさらにお考えを聞きたいし、ひとつ最後に大臣の決意も聞きたいです。
  122. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) この問題大変むずかしい問題でございまして、ひとり大蔵省の決断だけで満足な結果が得られるものとは思いませんで、国民各層の理解と協力がなければできる仕事ではないと思います。けれども、近藤委員が御指摘のように、大蔵省の決断もまた大きな要素であることに間違いはございませんので、鋭意その点につきましては検討を重ねておるところでございます。
  123. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、今度は国債の発行とインフレの関係についてお伺いしたいと思うんですが、これはまあ先日もお伺いしましたが、前国会での大蔵省の説明といたしますと、国債の発行によってマネーサプライがふえて、インフレの可能性は理論的にはあると、ただ設備稼働性が低いとか、あるいはその当時の生産水準の現状では心配はないと、こういう説明を受けておったわけであります。ところが、現実には操業率は低いですね。これは統計上でも明らかであります。昭和四十五年を一〇〇として、本年七月、八月で八九・一という、こういう状況がありますし、まあ卸売物価がむしろ上がっておる。さらに消費者物価も、本年九月をとってみますと前月比二・八%、さらに対前年同月比で九・三%上昇しているわけであります。こうして見てみますといままでの大蔵省の説明では説明がつかぬのじゃないか、その当時言っておったこととはどうも違うように動いてるんじゃないかと、こう思わざるを得ないわけでありますが、この点についてどう説明なさいますか。
  124. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の発行とインフレとの関係というか、あるいはいまのおっしゃるように、経済の見通しというのと現状は違うのではないかという二つの御質問がこう一緒に絡まっているような感じでございましたけれども、私どもは、現時点は、まあ順調な経済成長は遂げつつある、しかしながら、当初の予算、財政が考えましたように、赤字国債を発行までして財政の規模をある程度そのままにして、経済に対して刺激を与えていくというたてまえをとってきたわけでございますから、反面それは需要の喚起と申しますか、そういうようなものを期待しておる経済であったと思います。でございますから、そういうために、それを前提にして考えます限りにおいては、需要がいままだそれほど強くないということでございますので、資金的には国債を発行いたしました場合に、そのマネーサプライがふえるんじゃないかという御懸念が出てくる。これは節度ある、まあ財政運営等も適切な金融調節というものとを絡み合わせていく限りにおいては、インフレを防げるというたてまえからいきますと、これは日本銀行がその辺の金融の繁閑を見ながら、マネーサプライ等の動きも見ながら市中からしかるべく余剰資金は吸い上げていくという形をとっていくわけでございますので、国債が大量に発行されているからインフレになるんだということではなくて、むしろ必要なることは、その財政運営を現在のように進めていきながら、果たしてうまくそういう調整ができるかどうかということだと思います。  それで私どもは、まあ国債の増発によってマネーサプライがふえるではないかというのは、いろんな仮説に基づいた、前提に基づいたことで学説がいろいろ分かれているわけでございますけれども、たとえば発行時に金融機関の場合には、国債の増発は、まあマネーサプライは発行時には不変だということを前提に立って議論して、それによって国が調達した資金が支出されますと、そこに市中の預金増加になって、そこでマネーサプライが発生するという議論が一応前提になっておるわけでございますけれども発行時に不変であるかどうかということは、その金融機関が国債を引き受けますときの資金の状態というものがいろいろございますので、場合によってはそれは他の債券を売り払いまして、そして国債を買うというようなことであれば、それはそこでマネーサプライの減少につながるわけでございます。したがいまして、前提を置きましてもいろんな状況は千差万別でございます。したがって、それを背景にしながら、結果としては日本銀行が非常に広い視野でもって金融調整をやっていくという形がうまく行われるならば、御懸念のようなインフレにはならないという見解を一応持っておるわけでございます。
  125. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その点は昨日見えた銀行関係者も政府の施策よろしきを得ればインフレにはならないだろうと、しかし、その要素は十分あるという客観的事実は認めておるわけですね。  そこで私がお聞きしたのは、前に、先国会で議論になったときに説明しておった大蔵省の説明がどうもその後の経過を見ると違っておるんですね。だからその辺どうなのか、今日の事態とずいぶん違うじゃないか、そこをどう考えておるのかというのが私の質問なんです。その経過はよくわかりました。
  126. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) まあ見通しが違ったということ、まあ若干それはその計数の上においての変化はあるにいたしましても、基調として私どもはそれほど大きな狂いはないと見ておりますが、そういうことを踏まえた上での金融調整というものが行われるわけでございますから、通貨量の調整なんというものは、たとえば九月に国債が発行されるという予定であったところが、九月に国債が発行されなかったと、そういう状況はまさにそこだけでも違うわけでございます。しかし、それでは国債が発行されなかった分だけちまたに余剰資金が流れてしまっておれば、これは大変大きな変化だと思います。しかしそれは、日本銀行はその辺を踏まえてやはり資金調整をやって、国債が発行されなかったときと、発行されたときとの影響というものをつぶさに検討しながら調整をやっていくと、そういうことで初めて日本銀行の機能というものが発揮されるわけでございますから、まあいろんな計数が違ったからすべてこう違っているんだということじゃなくて、その違ったことに応じながら、金融調整もまた変わっていかざるを得ないということでございまして、その変わっていかざるを得ないけれども、その変化をどううまくつけていくかということは、これはもうだれしもうまくいくことを望む、また責任ある者はその責めにあるわけでございますから、十分に検討して、一番ベストな方法を尽くす以外には方法ないということでございまして、九月のような状況は、私どもとしては国債を発行する予定でございましたが、発行できなかったという変化に対しては常に対応は日本銀行がいたしております。
  127. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう時間ありませんので、まとめて後申し上げますけれども、インフレの要素として、先ほど来問題になっております市中銀行が引き受けてのその後のタイムラグの問題ですね、それがもちろんあることは第一点だと思います。  それから第二点には、この追加資金がそれだけ購買力をふやして需要をふやすけれども、特に財政支出の接点である建設資材関係からその需要の増加、価格の上昇が始まって、鉄鋼などの基礎資材の価格が上がると、次第に卸売物価全体に波及していく。特に独占企業の場合には、実質上生産制限などやって価格を大幅に上げていく、そういったことがインフレを進めやしないかと、こういった問題があるわけです。  三番目には、インフレマインドの問題ですけれども、こういう状況の中で私はやはりここで大量国債を発行することは、どうしても物価上昇にこれは大変影響があると思うんですが、これらの事実を前提にしてどうお考えか御答弁いただきたいと思います。
  128. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) タイムラグの問題も含めまして、やはりいろいろ経済に変化が生じてくる。それはまた当然でございますけれども、大量な国債が発行されたということ、これはまた先ほども申し上げましたように、財政の必要というか、日本経済がそれを必要としたということであろうかと思います。たとえば、需要の喚起というようなものを、あえて赤字国債を発行してまでその財政の規模を維持せにゃいかぬというようなことも、そういう要請に基づいておるわけでございますから、それ自身がまた不必要だという議論はこれは論外として、それはやはり日本経済によかれかしとしているところの施策だと思います。それを大量発行されたからすぐインフレになるということではなくて、それはまた国債が発行されなくてもインフレを生ずるというような、まあ大変失礼でございますけれども、そういう議論もあるぐらいでございますので、私どもはやはりそれは節度ある経済の運営ということをやっていく過程においてその都度そういう、まあ反対の方向に向かおうとする動きを封じていく以外にはないんではなかろうかと思います。それは卸売物価にいたしましても、これは日本の国内の経済だけの影響だけではなくて、海外の影響も出てまいりますし、それはなかなかいまの物価というのは非常に複雑なものでございますから、それに対して対応していく施策というのは、やはりそれにその都度一番適切な方法をとっていくというか、そういうことをさらに国債の発行下においてはきめ細かくやっていくという以外にはないんではないか。大変生意気な答弁でございますけれども
  129. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間が限られておりますので、一つだけお尋ねをしたいと思いますけれども、税収の見積りの問題と、円レートの問題を関連させながらお尋ねをしたいと思います。  現在、税収不足をもたらしている大きな原因は、法人税の大幅減収ということでありますけれども、その背景にあるものは収益率の著しい低下だと思います。来年度の税収見通しについて、仮にたとえば法人税を取り上げた場合に、どういう見通しでありますかとお伺いしますと、なかなか確たるものはいま申し上げるわけにはいきませんというお答えが返ってくるわけですけれども、背景にある収益率を考えてみたときに、この特例債というのは一面景気対策であるわけですから、結果として収益率がどのように変化をしていくのかということについてまで、それもにわかにお答えできませんとは言えないはずだろうと思うんです。そのこととあわして時間がないから全部言ってしまいます。  仮に、収益率の見通しもなかなか困難である、場合によっては現在の低い収益率の状態が来年度も続くかもしれない、よくならないかもしれないという想定が仮に立つとしたら、立たないとしたら収益率についてはさらにまたその件で伺ってまいりますけれども、そういう見通しが立たないとしたら、そこで円レートの問題を伺うわけですけれども、国際的にみてどれぐらいの収益率が一番望ましいかということは、具体的な数字で挙げることはなかなか困難だと思います。そうは言いながら、常識的に見ておおむねこの程度の収益率でお互いに商売をしようという水準はあると考えて間違いないと思います。  私が伺いたいのは、これだけの歳入欠陥をもたらしたような非常に低い収益率が続いている。来年度も急速な改善の見通しが立たない。これは言い直しますと、交易条件が悪くなったまま続行しているという意味だと思います。で、交易条件が悪くなったと、それは国際的に見て、望ましい交易条件から見ても相当下に入っているという状態の中で日本輸出が伸びている。これは国内でも交易条件が悪いから、輸出でも悪いんですから、ダンピングではないんですよ、ダンピングではないんだけれども、こういう姿というものは外から見て、ダンピングとは言わないけれども、不当な商売をしているという非難を受けはすまいか。円レートの問題についていろいろ御議論があるようですけれども、それについて当局としてこの円レートの水準というのは適正でありますということを御説明されるためには、収益率、裏返して言えば、交易条件の問題も健全な状態に復帰しておりますということが一緒に言えないと、なかなか海外の非難は解消しないんではないか。  以上、縮めていきますと、来年度の収益率の見通しというのは政府としてお持ちになっているんだろうかということが一つ。それとてもかいもくなかなかなんだということになったら、結局、来年の展望に関して、それは日本としての実質的なダンピングじゃないか、非常に国際的に見て、異常に低い交易条件の中で商売をしながら輸出を伸ばしているのかという非難に対して、有効に反論することはなかなかむずかしいんじゃないか。  以上二点を伺います。
  130. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 前半の部分は、大変むずかしい御質問でございますけれども、私どもなりに、方向としましては、五十一年度対五十二年度では、私どもいつか御説明しました、設けておりますその所得率という概念では、五十一対五十二では所得率は一〇〇よりも上にいくと、方向としては。そういう年ではないかなと思ってはおります。ただそれがどの程度であるかということは、もう少しいろんなサイドチェックのための指標がそろってこないと、程度としてはまだわからないということであります。  それから、これは国際金融局長お答えに当然出てくるんでございましょうが、ただ品目別に非常に輸出がいま強いものでは、たとえば自動車なんかは収益率は現にすでに非常に高いというものもあるような気はいたしますが。
  131. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 交易条件と円レートの問題でございますが、初めに、日本の交易条件は、御指摘のとおり最近かなり悪くなっておりますが、その一番大きな原因は、何といいましても、日本輸入品目の中で大きなウエートを占めております石油の価格が上がったということでございます。輸出の方の値段が不当に抑えられてその結果交易条件が悪化したというよりも、いま申し上げましたような輸入サイドに大きな原因があると考えておるわけでございます。  そこで、その円レートがそれにどういうふうに関連してくるかということでございますが、私どもは、為替市場におきまして円レートを運営いたしますときに、特に実勢に逆らわないように乱高下を防ぐとか、あるいは急激な変化をモデレートにするとかということで介入はいたしておりますが、大体資金の需給に合ったようなレートが出ておるわけでございます。そのレートのもとで特に日本輸出品目がダンピングをしてきたというふうな批判は、実は一部誤解に基づいて円レートは不当に安いという話はあったんでございますが、その誤解もいま大体消えておりまして、特にその円レートが不当に安いから日本輸出商品がダンピング的に進出しておるということはないと考えておるわけでございます。
  132. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 円レートがそのときの相場の立て方の問題として介入しておるかいないか、どうであろうかということをいま伺っているんではないのです。経済の動きを背景にしながら、いわば非難の口実として円レート問題が出てきている側面が私はあるはずだと、それはさっき小坂外相がおいでになって、シャワーみたいな売り方をするからということもあった。そういったことを何もかにも含めていわば相場の立て方の技術論になっているということですから、異常介入がどうこうということをいま伺っているわけではありません。  ただ問題は、価格水準の問題なんです。そこで、わが国輸出価格と世界輸出価格の対比をしますと、白書によりますと、現在の状況というのは、スミソニアン協定をしなければいけなかったときよりも、輸出の相対価格というのは有利になっている、いまおっしゃった原油の高騰にもかかわらずですよ。ということは、安い値段で売っているという意味です。だから、収益率も高まらないし、交易条件が結果として悪化している。そこまでは白書も認めているところですから、事実関係で誤りはないと思うんです。ただ問題は、そういう状態が長く続くと、実際の取引、為替相場の立て方とか、介入動向の話は置いておいて、やっぱりいろんな非難が出てくる。  そこで交易条件、これは具体的につかむことはなかなか困難でありますけれども、交易条件、輸出の相対価格の問題も含めて各国がそれはオーダリービジネスである、理解できる範囲内に早く戻さないといけないのではないか、それが実は円レート問題の持っている一つの側面ではないかと思いますが、いかかですか。
  133. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) いま日本輸出品目で非常に急増しておりますのは自動車とか、家電関係でございますが、先生御案内のように、こういう業界ではわりあいに収益もようございまして、決して安売りをしているのではないと思うわけでございます。なるほど、スミソニアン当時のレートでございますと、価格面でもあるいは日本の製品が優位にあろうかと思いますが、価格以外の非価格的な面におきましても、日本輸出が伸びるというような背景があるようでございまして、そういうことで日本輸出が伸びておりまして、円レートの現在の水準が国際的に見て不当にダンピング的な非難を受けるように低過ぎるということは私はないんではないかと思っておるわけであります。
  134. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 低いとか高いというのは、どの程度の利益を上げているか上げてないかということの見合いで本当は問題になるんだろうと思います。  時間がなくなって、長い議論になっても仕方がないのでいいかげんにしますけれども、何で輸出の相対価格が有利になったかといいますと、白書の指摘をかりますと、国内の卸売物価が政府経済政策も含めて低位な水準になった。片方では実効為替レートの変化が少なかった、これが輸出の相対価格が有利になり、輸出がふえてきた要因なんです。これは白書の指摘なんです。そうだと思うんです。ところが、国内の卸売物価の水準がどうかというと、利益が従前の実績ほど出る状態ではないから、法人税はがたっと落っこっちゃった。そこで、価格水準をどうするかというと、長い時間をかけて物価を全体に高めないようにしながら回復しましょうというのが、五十年代前期経済計画の構想ですけれども、そうは言っても、いまの輸出が伸びてどうこうという海外要因を考えると、収益率にしても、ことしより来年の方がよくなるでしょうということだけではなくて、この辺まで回復をしたいという目標を持つ必要があるんではないかと聞いているんです。
  135. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 私がお答えできる問題ではないような気もいたしますが、資本収益率を特定の目標値をつくって誘導するということが、果たして全産業であれ、産業別であれ、非常に好ましいことであるのかどうか、またそれが政府の政策目標として取り上げらるべきことであるのかどうか、栗林委員のおっしゃるような面の御指摘は私なりにわかるような気はいたしますけれども、数値として決めることまで行けるのかどうか、なお検討すべき点があるんではないかという気はいたします。
  136. 野末陳平

    ○野末陳平君 国債に関する質問に入る前に、ちょっと先に大急ぎでお聞きしたいことがありまして、それは住宅ローンに関することですけれども、質問主意書をこちらで出してあるんですが、お答えが長引くようなんで、この委員会の席をかりてちょっとだけお聞きして、それから国債の方に入りますが、いま金融機関の住宅ローンの返済方式は毎月一定額を最後まで返済していく元利均等返済方式ですね、元利均等が使われておりますが、ほかにも元本均等という返済方式もあるわけで、昔はこれも使われたというか、これが主でしたね。ただ、最近の金融機関が、住宅ローンに関して元利均等方式でもってほとんど一本になっているというのはなぜか、まずそれをお聞きして、その後具体的に、ぼくは、利用者にとってはどちらが有利かという条件を並べると、必ずしもいまの方式がいいとも言えない、そのことをお聞きしたいので、まずいまの元利均等が採用されている理由からお伺いします。
  137. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 住宅ローンが、先生の御指摘のように、ただいま大体金融機関がやっております方式が元利均等になっております。ただ、一部の銀行におきましては、やはり元金均等方式の商品を売り出しておりますが、こういうふうになりましたのはなぜかということでございますが、これは住宅ローンを利用する人がサラリーマンというような階層が非常に多い。そうしますと、元利均等でございます方が毎年あるいは毎月の返済額が一定額でございますから、返済計画が立てやすい。それから元金均等でございますと、当初は返済額が元利含めまして非常に大きな額になる。後半へ行くほど小さくなってくるわけでございまして、したがいまして、年齢の若いとき、サラリーの安いときに多額に返さなくちゃいかぬ、こういうことになってまいりますので、借り入れ当初の負担が非常に大き過ぎるので、やはり元利均等の方を選好するようなことになってきておる。  それからもう一つは、初年度の返済額を大体基準にしまして、その人の年収額と見合ってローンを貸しておるわけでございます。したがって、初年度の返済額が大変多額になりますと、年収との関係で、借り入れできる額の方が制限されてまいります。ですから、多額に借り入れたいというときには、やはり元利均等の方が借り入れやすいというのが現実でございまして、したがいまして、いままで両方式をやっておりましたところが、やはり借入者の、需要の方が元利均等を選好することが非常に多いものでございますから、逐次そちらの方が多くなってまいります。ただいまのところ両方をやっております金融機関でも、九五%ぐらいは元利均等の方が利用されておる、こういう実情でございます。
  138. 野末陳平

    ○野末陳平君 利用者のニーズが選好しているから、結果的に元利均等になった。それで元利均等返済方式の方が現実に有利であるという説明ですが、具体的に、じゃたとえば、毎月の負担額が相当違うのだということですが、条件をわかりやすく一千万円を年九%で二十年間返済する。これで計算してみますと、最初の月の負担は、いま行われている元利均等方式でいくと八万九千円ぐらい、一年にすると——そうですね、八万九千円くらい。それから元金均等、元本均等方式でいくと、どれだけ負担が大きいかというと、八万九千円に対してこちらは十一万六千円で、二万七千円です。ですから、これが確かに負担は大きいと思います。しかし、この負担を果たして利用者がどう考えるかということと、それからこれを年にしてみますと、初年度の両者の返済の差は約三十万円ですね。そうですね。そうすると、負担が大きいとは言うものの、月々二万七千円の差、それから年にして約三十万円だったらば、共かせぎの人あるいは若いときに少し苦労してもいいと仮に考えれば、果たしてそんなに大きいかどうかという疑問一つ持ちまして、人によっては大分感覚の受け取り方が違うようにぼくは感じたのです。  それからもう一つ重大なことは、二十年間の返済総額、一千万円を年九%で二十年返済する総額が、いま行われている元利均等方式でいきますと、二千百五十九万ですね。二千百六十万ですか、二千百六十万円。元金均等方式でいきますと千九百三万、大ざっぱで。ですから、こういう比較はちょっと一概に言えませんが、少なくも、返済総額二百五十五万五千円の差が二十年後に出て、これが全部利息ですからね、利息の差。これが両者の比較条件のすべてじゃありません。もちろん、いま局長のおっしゃったように、収入と融資限度額の関係もありますけれども、大臣、ここまでのデータで、ぼくは何をお聞きしたいかと言いますと、いま金融機関は住宅ローンを元利均等方式でやっている。ほとんどこれ一本、局長によると、両方の商品を並べているところもあるという話ですが、現実にはありませんで、要するに昔、これ一本にならない以前から、いや実はあるけれども、その両者を比較して、あなたが返しやすい、条件に合ったものを選べというやり方じゃありませんからね、だから、利用者は当然元利均等方式の方が自分たちに有利だという前提でみんな何の疑問もなく使っているわけですよ。だけども、いろいろな角度からこれを比較してみると、人によっては元利均等ももちろんいいと、あるいはこの人が多いかもしれない。しかし、人によっては元金均等返済方式の方がいいと、一番最初に返すのが二万七千円負担が大きくても、だんだんこれ減っていくのは間違いないわけですから、それから最後になると、二十年後には二百五十五万円も差がつくと、利息で。こういうようなことを考えれば、私は、いまの方式よりも、元金均等方式を選んでもいいという人は当然いるとぼくは思ったんです。それでいろいろ聞いてみますと現実にそういう人もいる。  そこで大臣、ぼくの大臣にお聞きしたいことは、こういう返済方式二つあるんだと、利用者によってどっちがいいか、局長は利用者のニーズはいまの元利均等だというけど、これは銀行のニーズもかなりあるんじゃないかと、つまり銀行にとって有利じゃないかという面も実はある。ですから、商品を二つ並べて、利用者がどちらがいいかと、それを選ばせるのが当然じゃないか、金融機関の立場として。その比較の条件を全部出した上で、ほとんどの利用者が元利均等がいいんだと、毎月一定額の方が計画が立ちやすいから、仮に相当高くなってもいいんだというならこれは問題ないんですが、その辺がぼくはちょっとフェアではないというか、利用者にちょっと不親切ではないかというふうに考えまして、でき得るならば、両方の返済方式あります、こちらはこういう点で有利です、あるいはこちらは収入がこれまでの人はここまでしか融資できませんからとか、そういう条件すべて出して、自由に選択できるような返済方式を、事住宅ローンに関しては金融機関してくれた方がいいんじゃないかと、こう考えているのですよ。ですからちょっと答えを急ぐようですが、大臣いかがでしょうか。もう細かいデータ並べても仕方ありませんので。
  139. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 先生のおっしゃいますように、元金均等という方を選ぶ方がもちろん全然ないわけではございません。現在二つの商品を並べております銀行の例に徴しましても、若干さっき申し上げたようにあることは事実でございます。そういう方は大体事業をしていらっしゃる方というような方が多うございます。つまり事業家の場合がそうでございます。  もう一つ、少し説明さしていただきますと、先ほどおっしゃいました初年度の返済額によって借り入れ額が違ってくるというところがかなりの違いでございまして、たとえば千万円を借りますのに、収入額を基準として申し上げますれば、いまの元利均等でございますと、年収が三百六十万ぐらいの人で千万借りられる。ところが元金均等にいたしますと四百六十万ぐらい、百万ぐらい年収の多い人でないと千万借りられない、これはまあ一例でございますけれども、かなりそこには借り入れ額に差が出てまいります。それから利息額がトータルで違いますのは、これはまあいわば当然のことでございまして、つまり元金均等で返します場合と、それから元利均等で返します場合というのは、要するに最初元金の返し方が非常に少ないわけでございますから、元金の利用期間をならして見ますれば実質的には二、三割長くなっているわけです。したがって、利息額が大きくなるのは金利の計算上当然出てくる話でございます。したがいまして、そういうことから、現実のような利用状態になっているんだと思いますが、理想的には先生のおっしゃいますように、すべての人に両方の選択の余地を与えるということがいいのかと存じますけれども、もしその両方の商品、幾つかの標準化された商品を用意いたします場合には、   〔委員長退席、理事戸塚進也君着席〕 たとえばコンピューターのインプットしますソフトウエアーの方の経費などというのもばかになりません。現在、住宅ローンの金利は極力安くさせようということで合理化をさせてまいっております。現実にかなりコスト割れというようなところもありますけれども、それは低目に抑えておるというようなところで、コスト高を招くということは全体としていかがかなという感じが私はいたしております。もちろん消費者のニーズの方は時代とともに変わってまいりますでしょうから、余り固定的に考えるべきではないかもしれませんが、当分の間はいまのような方式になっておることもやむを得ないんじゃないかと、こういう感じがいたしておるのでございます。
  140. 野末陳平

    ○野末陳平君 いまの、局長はあくまでも利用者のニーズということは、実際には、実態はよくわかっていませんのでね、つまり自由に選択さした結果の数字じゃなくて、片一方の商品が、これがあたりまえだという前提で出た数字だから。そんな自信を持って言うならば、じゃあデータ本当出してくれますか。正直言ってぼくの方がいまこの席で聞くのは、おたくの方がデータがないんで困ると、データがないと言うから、ここでもって聞いているんであって、あなた全然データがないとおっしゃるから、こちらはデータがないならばやむを得ないから、私は大臣に、利用者のニーズというものがはっきりわかるようなデータすぐにつくれないならば、感触をお聞きするということ言っているのに、そういうこと言われるとこっちは困るんですな、本当のこと言ってね。じゃあとでデータ出して、きちっとお答えをいただくことにしましょう。こんなことで時間つぶしていてちょっとまずいですからね。じゃ申しわけありませんが、利用者がこれを、いまの住宅口トンの返済方式に満足していると、ほとんどが。   〔理事戸塚進也君退席、理事中西一郎君着席〕 二方式あるが、こちらのいまの元利均等の方のニーズが圧倒的に強いから、銀行はそれをやっているんだというデータ出してください。もしそれがないなら、コンピューターへ新商品をインプットするのにこれだけの金がかかって銀行は商売にならぬのだと、そして金利を九%で抑えられないんだというデータ出してください。そうしないと、ちょっとぼくは一方的にそちらが、おまえは利用者のニーズを言うけれども、そうじゃないんだと、利用者はいまの方式を求めているんだという答えになるとぼくは困っちゃうんだ。そんないいかげんなことで、根拠で言っているんじゃないんだから、ぼく。お願いします。  そこで理財局長に、じゃ、国債のことで残り時間お聞きしますが、中期国債がシンジケート団のいろいろな受け入れ条件合わないというようなことで、年内発行がどうかというような新聞記事もあったり、あるいは現実にまだシンジケート団まとまっていないとか聞きます。お互いに利害がいろいろ複雑だと思うのですが、どうなんでしょうかね。中期国債年内に、これは絶対に出せる条件はそろっているのか、それともいまだにまだ不確定な要素があるんでしょうか。
  141. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 十月の二日に大蔵省の骨子と称するものをシ団に示しておりまして、いま鋭意向こうで検討いたしておりますので、その結果はまだ検討中ということでございまして、   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕 私どもはいつ幾日までに発行しなければならないという期限をいま特別に持っておるわけじゃございませんので、いまの検討を待って判断したいと考えております。
  142. 野末陳平

    ○野末陳平君 ことしは三千億だと、三千億ぐらいだったらば、十年ものの国債の方の消化を圧迫するところまではいかぬという判断だと思うのですが、今後、来年度からこの中期国債、まあ具体的にどう決まるか知りませんが、これは年々増額していくような、これを商品としてかなりのものに持っていくおつもりなのかどうか。  それともう一つは、今後とも、いままでも質問出たと思いますが、今後ともこの種の国債の新商品をどんどん出して多様化していくという構想はもうすでにあるのか、具体的中身はともかく、その方向でずっと検討をされているのかどうか、この二点をお願いします。
  143. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) いまの三千億とおっしゃいましたのは、いま骨子の中で平年度ということでございますから、初年度はまだ、大体まあ千億か、千億を若干オーバーする程度のことになるんではないかと考えておりますが、「当分の間」というふうに骨子にも書いてございますように、やはりこれは新しい商品を出すわけでございますから、その定着性なり、流通の状況とか、市場の状況というものをよくにらんで慎重に処理いたしませんと、これはやはり大事な商品でございますから、そういう点で当分の間というのは、特に何年と決めておるわけじゃなくて、市場の状況を十分検討しながら進んでいくという構えで書いたわけでございます。  それから、多様化につきましては、これはもう先ほども御答弁いたしましたように、個人消化を前提としておりますから、さらに適当な商品があれば、それはそれを開発していくことにやぶさかではございませんので、引き続き研究を続けていくという態度で現在も進んでおるわけでございます。
  144. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  145. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 速記を起こして。
  146. 藤田進

    藤田進君 三木総理並びに福田副総理、大平大蔵大臣等に、いわゆる財政特例法に関連いたしまして質疑をいたしたいと思っております。  さて、まず三木総理にお伺いいたしたいのでございますが、この財政特例法の底辺をなすものはかなり大きな影響を持っておりますし、本七十八臨時国会でも各党それぞれ問題点を提起しながら質疑を交わしてまいりました。要するにわが国現状、特に不景気あるいは物価高、インフレ、国民の負担等広範に影響を持つものでございますが、これらの政策論争、論議のもう一つ前に、すでに御承知かと思いますが、国民の政治に対する不信感というものが予想外にどうも深刻でございます。私も、七十七国会閉会後、できるだけ有権者その他の前に出まして、この国会中も日曜、祭日その他国会に支障ない限りできるだけ一般の方々と対話を進めてきておりますが、まず不信の根差しているものは、御承知のようにロッキード問題が出てきた。加えて、地方自治体についても諸所に汚職問題が出てまいりました。両院議長のあっせん、さらに両院本会議の議決、これにこたえる三木総理の徹底究明という姿勢の段階で三木さんもかなりやるだろうという期待があって、相当三木株は上がり始めたわけですが、その後急激にやはり不信感は三木さんを含めて、これは単にロッキードに直接関係のある自民党ということはもとよりですが、国会というワンセットで、国会議員何をしているんだという、国会議員は一体何をやっているかという、ロッキードに関係のない者まで疑惑を持たれるような状態になっております。ですから、われわれ外に出ますとマークをはずした方かむしろ——ロッキードが歩いているというような物の見方をされてね、これは実際なんですよ。これは与党の中でもよく会いますが、ぼくらもできるだけマークをはずして歩くんだと、ここまで来ているんですね。それが要するに各種の世論調査でも若いものを中心に政治への無関心になり逃避し棄権率がかなり高くなって、政党離れもしてくる、これはやはり重大なことだと私は思うわけです。ことに総選挙を前にいたしまして。  そこでお伺いをいたしたいのですが、そのような政治不信に対する認識というものが三木総理どのように考えておられるかという点が第一点であります。  私もまだ記憶に新しいところですが、かつて吉田茂総理は、会う人会う人が激励をし、あなたでなけりゃ日本総理はだれもいないですよというようなことで、ついに野たれ死にをするということになってしまった経験を持っておりますが、認識問題と同時に、考えてみるのに、三木さん自身も今度の——表現は悪いですが、これは私が言うのじゃなしに、一般のもう定説の言葉になっておりますが、いわゆる三木おろしがあって、そのあと内閣改造があり、それから後は三木さんの姿勢というものはへっぴり腰になって、いわゆるロッキード隠しというようなことがかなり浸透し始めているし、現実には、御承知のように三木さんと仲のよかった宇都宮徳馬氏も金大中氏問題も加わっておりますが、ロッキードその他腐敗堕落に対する抜本的な姿勢がない、私は出ていくということになったのですね。与党の内部でさえそういう現実であります。  そこで、本会議その他通じて言われておりますのは、中間報告をなさるようですが、これは内容は漠たるもののように予定されます。なお灰色等含めては、国会でひとつ決められれば秘密会でこれを明らかにしよう、あるいは国会議員を含む証人については議会で、たとえばロッキード特別委員会でお決めになれば、これは一般も国会議員もそんな差別はないんだと、こういうことを本会議でもあなたから聞いたわけです。ところが実際問題としては、御承知のように上田君も本会議で指摘しましたように、まず第一に証人の問題ですが、総理はそう言われましても、今日だれも否定できないことは、わが国は政党政治であり、しかも、議院内閣制であることはもう所信を伺うまでもないと思います。その総裁が即総理にも終戦、新憲法下なってきたわけでありますが、最近の実態を見ますと、総理と自民党という形においてはどうも別人格のような印象を受けております。たとえば証人についてはロッキード特別委員会で決めれば差別はないのだとおっしゃるが、そのロッキード特別委員会では、国会議員を呼ぶことに対して賛成が与党においてない。この事例からしますと、仮に秘密会、秘密会なら発表するということ自体については私ども異論はございます。なぜならば、マークでもはずしたいような昨今の国民の不信感でございますが、この際やはり灰色その他はっきりしていただいて、関係のあるもの、ないものはせめてきちんとした上で国民の審判を受けるということでないと、十把一からげ全部国会議員というものは不信を大なり小なりこうむっておるわけであります。国民の審判も非常にしにくいというようなことで秘密会をと言われましても、これまた三分の二の御承知のように賛成がなけりゃ秘密会は持てない。与党絶対多数、衆議院におきましても、参議院はわずかではございますが、多数という、その多数党与党が賛成をしないという仕掛けになっていて、総理はそっちへゆだねたように見えるけれども実態としてはどうにもならない、こういうふうになっていると思うのであります。これらについて議院内閣制、政党政治の見地からも、どうその辺が自民党の中において処理されているのか、されようとするのか、時局認識とともにまずお答えをいただきたいと思います。
  147. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) もう藤田君が最初にロッキード事件の真相究明に対する私の態度の変化があったということは、これは私は事実に相違すると思います。真相究明に対してはやるだけのことはやっているということを私は強く感じておるわけです。いささかも究明に対する私の態度に変化はないということです。それから一つには、灰色高官の問題にしても国政調査権に基づいて、そしてロッキード特別委員会で、その範囲というものがこういうものを国会の意思としてこういうことを言うんだというならば、それに対しての資料は提供をいたします。  政府自身は、道義的あるいは政治的道義的責任というものを、行政府が検察の捜査の材料で、そしてこれに対して仕分けをするということは、私は非常にそれを悪用するならば、非常に政治的配慮が加わるわけですから、道義的、政治的道義的調査というものは国会がすべきものだと、行政府はやっぱり司法的な面からの責任を追及すべきものだと私は考えている。  また、証人の問題については、ちょうど丸紅、ロッキードの、丸紅あるいは全日空の捜査が非常な一番なやっぱり大詰めにきておったときでございますから、……
  148. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 総理大臣にお願いいたします。もう少し大きな声で御発言を願います。
  149. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) しばらく証人の喚問は見合わしてもらいたいということを申したことは事実でございます。そのときはちょうど大詰めになって、しばらくの猶予をしてもらいたいということは申したことはございますが、今日では丸紅、ロッキードについては捜査がほとんど完了しておるからそのときの事情とは違っていると。また私は自民党に対しても、どうしてもそれは証人として国会で喚問する必要があるという、だれでもかれでもというわけにいかぬでしょう。どうしてもやはり証人としての呼ばなきゃならぬ必要があるという者に対しては、自民党もこれに協力をするよう自民党にも私は注意を喚起したわけでございます。そういうことで、これを総理と総裁というものを使い分けして、ロッキードをうやむやにこれを葬り去ろうという考え方は、私にはないということを申し上げておきたい。
  150. 藤田進

    藤田進君 ところが政府、特に法務大臣におかれては、法廷維持等の支障を来たすので証人喚問は適当でないという意見が、当該ロッキード特別委員会においてもなされております。総理はフリーで国会の意思に任すと言いながら、政府としてはこれにコントロールを加えておる。これが一つです。これは一体どういうことなんだろう。  それから第二には、これは秘密会の場合もそうでしょうか、特に証人喚問についてしからば捜査の最中であったから暫時猶予するという御表現ですが、現段階では、自民党・与党として当該委員会における委員を含めて、あれほど強い野党の両院のそれぞれの委員会における証人喚問の要請、特に国会議員の。これについては、総理、総裁としては賛成するように手だてはなっているんでございますか。それともそこでは賛成をしないような仕掛けになっていて、事実上証人喚問ができないという落とし穴があるように思うんです。そこのところはちゃんと与党の中で総理、総裁、特に総裁としても議院内閣制の見地から見て、総理の発言の線に沿って徹底究明をし、かつその手だてとして証人喚問には自民党は反対をしないと、賛成をする、こういうことでないと、今日特に衆議院は、また参議院においてもしかりで、勢力分野から見て不可能になってくることは御承知だと思います。その辺はいかがなっておりましょうか、この二つ。
  151. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 証人の喚問は、何びともやっぱり証人に国会は喚問することは可能です。これを証人喚問ができぬということはないわけです。原則的に言えばそのとおりです。ただその問題は、個々のケースで証人喚問として真に必要性があると、こういう見地から個々のケースに対して委員会において十分御審議を願いたい。自民党は何でも証人の喚問に反対するという態度はとらないということでございます。
  152. 藤田進

    藤田進君 三木総理、前総理田中角榮あるいはその他の御承知のようにもうすでに野党からはそれぞれ要求が出て今日に至っております。不特定多数というんじゃなくて、きちんともうやたらにだれを呼ぶというんじゃなくて、要求案は多少の党によって幅はありますが、例を挙げれば、田中角榮前の総理、これは出ておりますね。その他御記憶にあろうかと思います。したがって、一般論じゃなくて、そういう人々に対する証人喚問が不可能になっているのは、自民党の反対ということになっているわけですね。これは自民党としてもよろしゅうございますか。
  153. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 個々というのはどういう人を言っておるのか私もつまびらかには承知をいたしませんが、田中前総理の場合は刑事被告人であるという、刑事被告人であるということでございますから、これはいろんなひとつのやっぱり今後の公判の問題もございましょう。いろいろ問題はあり得ると思いますよ、田中氏の場合は。しかし、他の人々に対してどういう人々が参議院でこの喚問のすでに提起がなされておるのかはよく存じませんが、それは十分に自民党として個々のケースについて検討をすることは申すまでもございません。
  154. 藤田進

    藤田進君 まだ与党で検討されていないような印象を受けるわけですが、いろいろ検討した結果、ある時期には憲法論が出たり、反対論理にはなっていないけれども、そういうものが出てきたわけですね。それは要求直後でしたらその答弁でいいでしょうけれども、ところが、数多くの灰色を含む要求が出てきているわけです。ですから、一般論で逃げるのじゃなくて、ひとついま田中前総理のことを挙げましたが、その他法務大臣はあなたの言葉の裏返しなのかもしれませんが、捜査上適当でないということで、反対意見を公式な委員会でも述べられているわけです。これは当然総理との脈絡の中で出てきたものだと思います。そのような点が国民の不信感も買っているわけですね。ですから、もっとはっきりしてもらいたいと思う、個々とかいったことでなしに。
  155. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 恐らくそれは法務大臣が言ったというのは、私もちょうどやっぱり捜査の一つ——丸紅、全日空の捜査については、捜査が非常なやっぱり最終段階に入ったので当分の間延期してもらいたいということを私も発言し、法務大臣も発言をしたわけでございます。その後、以上の捜査はほとんど終結をいたしておるわけでございますから、したがって、丸紅、全日空については、そのときに私どもが申したこととは事情の変化がある、十分個々について御審議願いたいという意見でございます。
  156. 藤田進

    藤田進君 これは事実認識が多少違うように、総理、思いますよ。この国会になって、全日空、丸紅が一段落し、児玉ルートについてはなお捜査を継続するということになった後の稻葉発言ですからね。しかし、総理がそうではなくて、いまの時点は事情に変化があって捜査はすでにほぼ完了している、だから呼んでもよろしいというふうに聞こえるわけです。確認しておきたいと思います。
  157. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 具体的に問題を提起して、そして個々のケースについて、委員会において十分検討してもらいたい。自民党は何人も証人に呼ぶことには反対という態度はとらない。
  158. 藤田進

    藤田進君 時間かないので——田中角榮総理の場合はよろしゅうございますか。
  159. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) その点は先ほども申したように、いまやっぱり刑事被告人の立場にあるわけでございますから、この田中氏の喚問というものに対しては十分慎重な検討を要すると私は思っております。
  160. 藤田進

    藤田進君 要するに反対ということになりますね。
  161. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは慎重に検討をして、やはりいままだ公判廷も開かれていないわけですからね、刑事被告人の立場にある人をやはり証人として喚問するということは、今後のやっぱり捜査に、今後の公判廷にも影響が続く問題もございましょうから、この問題は、私はここで即答は——よろしいとか、よろしくないとかいうことは申し上げるのには十分検討を要すべき問題だと思います。
  162. 藤田進

    藤田進君 そこが不信感の根源なんですよ。後退したというやはり裏づけになるわけです。徹底的に究明する——議会においても、無論捜査、検察陣においても、これが崩れてしまっていると解す以外にないと思うんです。公判維持上ということになれば、単に田中角榮だけでなくて、他の起訴された者についても同様だと思いますが、ここに同様でない、多少違いがあるんでしょうか。
  163. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) どうでしょうかね、国会の場というものは政治的、道義的責任を追及する場ですから、いろいろ追及しなければならぬと国会は考える範囲もあるんでしょうから、いま検察がやはり起訴して、そうして司法権の上における捜査が及んで起訴までをした人を、ここで国会でもう一遍証人としていろいろ呼ぶということについては、私は慎重に検討を要さなければならぬと、こう申しておるわけでございます。徹底的に追及の結果起訴されたわけですからね。徹底的追及の手を緩めたわけではないんですから。現に起訴されている。その人を、やはりここで証人として呼び出していろいろと追及をするということについては慎重な検討が必要であると、こう私は申しておるのであります。
  164. 藤田進

    藤田進君 どうも言われるのが、検察陣が徹底的追及をしたのだから、国会の方はその必要はないと言ってみたり、政治的、道義的責任は国会で大いにやるべきだと、こういう本会議を通じてもそうだったわけです。いまのお話聞くと、すでに起訴され、徹底的追及したものを、いまさらそういうことは、まあ表現は慎重に慎重にということですが、国会用語——政府の答弁で慎重にというのは、やらないということなんです。その場で、それは反対だと、だめだと言うのが言いにくいもんだから慎重にと、こういうことできたのは、これはやらないという、そういう言葉なんですよ。矛盾を感じませんか、あなた良心があるならば。
  165. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 矛盾はありませんね。やっぱりいろいろ司法上の責任を追及されたことをまた蒸し返して国会でやるということについては、これはいろいろ問題があると思いますね。したがって、私は、この問題についてはすでに刑事被告人となった人をもう一遍国会に証人で呼んで、いろいろこれに対して証言を求めるということには、国会側としてもいろいろ慎重に検討してもらいたいということでございまして、国会法の規定から言えば、それを呼べないという理由はないでしょうけれども、慎重にこれは検討すべき問題であると、こう申しておるわけでございます。
  166. 藤田進

    藤田進君 だから、その慎重というのが、この場になって悠長な問題じゃないでしょう。後、総選挙のことも聞きますがね。あなたは総選挙前に事態を明らかにして、国民の審判が的確に受けられるようにすべきだとの発言もありました。ですから、慎重論という意味がよくわかりませんが、もっとわかりやすく、慎重にということは、そういう方法をとるべきでない、つまり証人に呼ぶとかですね。というふうに受け取れます。  別の言葉でお伺いしますが、両院国会で、あるいは特別委員会その他もございましょうが、政治的、道義的責任を中心にこのロッキードの事態を明らかにしていくということには御賛成じゃないんですか。
  167. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 賛成ですよ。賛成だから協力をするわけですが、やはり刑事被告の立場に置かれておる人たちは、国民の前に刑事上の責任というものを明らかにされたわけですからね、総選挙の前に。国民の審判を今度受けるわけでございますから、そういう意味において、私は、全然それを総選挙の前にそういう責任をうやむやにしたということにはならぬと思いますよ。それはいろいろ政治的、道義的な側面もありましょうけれども、少なくとも一つの刑事的な側面における真相というものは、やっぱり究明をされたわけですから、その結果として起訴されたわけですから、これを何もかも総選挙前にうやむやにしていくということには、それはならぬと思います。
  168. 藤田進

    藤田進君 いや、起訴されてもまだ内容は、これは中間報告でどういうことが出るか、今日の段階では未知数ですが、しかし、そういう刑事責任のほかに、いわゆる政治的、道義的な、両院の無垢な白い者までが、冒頭申し上げたように迷惑こうむっているわけです。ひいては、国民の議会政治に対する不信が非常に強いことは御承知のとおりだと思います。それだけに重大なこれはポイントになってくると思う。ですから、起訴された後は、議会でそこまでいかなくてもいいじゃないかという御趣旨のようですが、どうもそのようですが、そうでなしに、では証人は呼ばなくてもいい、呼ばないでと言われたのでは審議になってまいりませんから、野党各党中心に要求しているわけです。これにやはり総裁として総理でもあるし、協力するというのが、これが本当の姿じゃないでしょうか。あなたの最初の信念というのはそうじゃなかったんですか、重ねて。
  169. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは今度のロッキード事件の真相の究明は田中氏ばかりではないんですから。
  170. 藤田進

    藤田進君 全部呼ぶんです。
  171. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) だから、いろいろな点で、今後は国会と国会の国政調査権に基づいて、やはりそういう問題というものは調査を願わなければならぬ。そうでなければ藤田君の言われるように、皆が疑われるということの解明にならないわけですから、ロッキード事件のやはり真相というものが、司法的な側面は検察によってやられる、あるいは政治的道義的な側面というものは国会の国政調査権によってそれは進んでいくということが、いわゆる一つ国民が知らんとすることに対してこたえる道じゃないでしょうか。私は、それは田中氏ばかりでないと思います。田中氏一人だけの問題ではなくして、藤田君の言われるように、いろんな疑いをかけられておる。これをやっぱり解明をしていくためには、国政の調査権というものはいろいろこれも精力的に調査権というものによる調査が進められなければならぬものではないか、こう考えております。
  172. 藤田進

    藤田進君 ようやくわかってきたように思うのです。そのために与党を含めて総理、総裁は協力するということでございますね。
  173. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) もちろんのことでございます、もちろん。
  174. 藤田進

    藤田進君 それではまあ、証人その他についてもだんだん発展して納得のいくようになりましたから、どうぞ信念崩さないように実際的措置をお願いしたいと思います。  それから、財特、その他来年度予算等に関連して多くの問題がございますが、時間の都合で、今後の政局の動向ということは、これまた重大な今後の三木総理としての姿勢を伺う前に問題がございます。  まあ私、これまた言っているんじゃなしに、世間ではどうせ今度改造された一々の大臣が公約をされていた、NHKテレビで出た。これには新聞にもかなりの投書が出ておりましたね。あと一月かそこらの大臣があれほどの約束ができる心臓は、普通の者なら持たないだろうという趣旨の、そういうやはり気持ちを持っている者が多いわけですが、なかんずく十二月九日任期満了の衆議院でありますが、これに先だって今月十月の三十一日が自由民主党の臨時大会のように伺っております。さらに、それに関連する動きとしては、もう御承知でしょうが、必ずしも新聞の真偽ということについてお伺いいたしませんけれども、一説には大平幹事長、福田総理。ほぼこの受け皿が決まったように報じる者があり、昨晩あたり見ると、どうもいわゆる旧田中派ですか、これはやっぱり総裁だけ決めて総理はそのままにしたらどうかというような趣旨のことがあり、いずれにしても自由民主党現職総裁、総理としては余り愉快な話じゃないと思うのですよ、実際の話が。したがって、政局の動向、これ福田さんが次の総理ならもういまから次の方針も聞いておきたいようになるわけですが、そう簡単でもないように思うし、いずれにしましても、福田さんはこの間、大体常識として十一月十五日衆議院は告示、十二月の五日が投票。それから松野総務会長ですね、いま。これも同様な発言があり、大体今度の解散総選挙が三木さんの花道ですよという談話がこれまた出たり、櫻内政調会長も島根で十一月十五日告示、十二月五日投票、こういうふうにれっきとした現役の党や政府の副総理等から出ているわけであります。総理も大体そんな日程を描いておいでになりますのかお伺いしたいと思います。
  175. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 現在の議員の任期は、衆議院の任期は十二月の八日までです。それまでに総選挙を行いたい。それまでの日程をどう組むかということは、国会の審議の状態ともにらみ合わさなければ、いまからスケジュールを組んで、そのスケジュールに国会の審議を合わしていくことはできません。国会の審議の進展状態を見ながら今後のやっぱり総選挙というものについての日程を考えていくよりほかにはないわけでございます。話はやっぱり先へ審議というものの状態というものをにらみ合わさないと、先へいろんなことが決まるわけはないわけであります。
  176. 藤田進

    藤田進君 そうしますと、総理としては十一月四日この七十八国会の会期。これは、それは法案審議の都合では会期は延びる可能性を予想されているように承りますが、いまの御発言の裏面を見ますと。果たしてそうでしょうか。
  177. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 十一月四日までに政府が提出した重要法案の御審議は、衆議院、参議院においてこれは終了願えるという予定でございますから、現在会期延長という考え方は持っておりません。
  178. 藤田進

    藤田進君 その方は、もう四日で諸法案は議了し成立さしてもらいたいし、延長のお気持ちはない、これはわかりました。だとすれば、法案に関連してその後の日程というものとの、これつじつま合わなくなるじゃないでしょうか。そうだとすれば十一月四日、これ以後延ばす腹はない。与党は多数をお持ちですから、両院とも。その総裁ですから。これが動かせないということであれば、まさか国会開いてないときに解散になったそうなとそういう方法はとらないでしょう。そうすると、通常選挙になるのか——意味わかりますか。そうすれば、おのずから十一月四日、これをもう絶対とするならば、その後の日程は、地方選管その他も用意があるでしょう、実際にはやっているそうですが、十一月十五日告示でやっているそうですが、それは気をきかしているのではなしに、自治省あたりが指示しているのでしょう、どうもそのようですが。ほかの副総理その他常識的に見てもという多少前置語はありますがね。あなたの腹はやっぱりその辺じゃないんですか、十一月十五日、十二月五日。
  179. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 藤田君初めほかの諸君が、十一月四日までに全部政府の提出した重要法案を審議終了してやろうというようなことならば、これはやっぱり日程はおのずから決まってくるでしょう。国会というものは、私たちが希望いたしておるわけですが、政府としてはやはり実際にこの法案が成立してみなければ、なかなか成立することを、やはりそれともにらみ合わさなければなりませんので、私の希望的な、政府の希望だけでスケジュールを組むことはできない。国会の審議の推移を見てということに相なるわけでございます。
  180. 藤田進

    藤田進君 その中に、おととい決めた沖繩軍用地、おととい決めた沖繩軍用地も成立させなければならない、十一月四日までに。そういう意味が含まれておりますか。沖繩軍用地、おとといの閣議決定、今議会に提案するという、これも会期内議了が条件になっておりますか。
  181. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 政府が提出した法案はみんな会期内で成立をさせてもらいたいという希望のもとにその法案を提出いたしたわけでございます。
  182. 藤田進

    藤田進君 じゃ、それが十一月四日までに成立しなければ会期延長になり、さらに次の衆議院の総選挙日程もおのずから延びていくということになりますね。
  183. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私が言っておるのは、国会がいま、国会がこういう御審議の最中でございますから、とにかくこれからの政治日程はいま決めてないんだ、いつからいつ何して何をするというスケジュールは決めてないんだということが正直な私の——それはもう任期は、衆議院議員の任期はもうきちっと決められておるんですから。それまで一体どういう日程でやっていくかということは、それは国会の御審議を願っておるわけでございますから、そういう状態ともにらみ合わせなければ、政府が一方的にこうこうこういう日程でいくんだということは、現在の場合は申し上げるということも適当ではない、こう考えております。
  184. 藤田進

    藤田進君 それも国政の最高執行部の責任者として秒刻みの状態に入っているのに、その日その日のでき心で日程も何も決まらず出たとこ勝負だわいと、本当だとすればこれは重大な問題ですよ、これは。無責任もはなはだしいじゃありませんか。これは反省していただきたいと思う。野々山理事の方の発言もあろうかと思いますので、全部とるわけにはいきませんが。  所得減税、これは一兆円とか五十二年度とか、総理もかなり熱意があるというような報道もなされておりますが、社会党を初め野党としては、つとに五十一年、近来にない調整減税のない年でもありますから、大いに主張してまいったところでありますが、どうも選挙の目玉がないので、選挙目当てとは言いながら、とりあえず五十二年度減税——所得減税、調整減税とも言いますね。これは真剣に取り組んで、この五十一年度ならなお結構ですが、まだ三月三十一日までありますから、いずれにしても五十二年度までにそのことは総理としては実行される予定でありますか。
  185. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 国民の税負担をできるだけ軽減をしたいということは、これは政府として考えるのは当然でございますが、いまの財政の環境というものは、なかなか減税を行うことが困難な環境であるということは、藤田君がお考えになっても十分おわかりのことでございます。そういうことで、やはりこの際に所得税の減税を行うことはなかなか厳しい環境であって、現在のところはそういうふうに政府は考えてはいない。
  186. 藤田進

    藤田進君 現在のところとかいまはとかいうのが、もうこれ、油断して見過しますと、後で速記録読んでよく見てくれ、いまは言っておるんだと、いまという字に問題があるんだ、こういうことで、ずいぶんわれわれ苦しんでおりますよ。池田総理のときもそうだった。現在のところというのは、いまここではそうかもしれませんが、すでに来月になれば五十二年度の予算の基本的な問題は政策的にも決められなければならぬでしょう。いわんや目玉とするならば、総選挙前にこれが確定しなきゃならぬ。しかし、総理としてはかなり熱意があるように報じられておりますね。私はきょうあなたと会うのは久しぶりでわかりませんが、それで聞いておるわけです。しかし、総理としてはできることなら調整減税はやりたいと。どうも五十二年度のように思われますがね。総理が見えるまで大平大蔵大臣には各党ともこの点をいろいろ尋ねましたが、確かに大平大蔵大臣総理の影響を受けてかどうかは別として、例によってうやむやな点はありますが、しかし、ほぼやらないと言っていたのが変わりましてね、できることならやりたいというところまでいきましたね、さっき。野々山委員の質問に対しても。そういうことになっているんです。総理の方が、今度は逆に、それはもう財源難でだめだと言うことでは、これはまたどうもあなたの従来の主張と違うんじゃないでしょうか。弱者救済とか、社会的不公正の是正とか。税の問題では大変な不公正、弱者が過重されているわけでしょう。それはその他にもございます。ですから、ひとつもうちょっと進歩的な発言を、現在はとか、いまはとかでなしに、こういうふうに努力してみようとか、いかがですか。
  187. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは常にやっぱり減税には努力すべき責任がありますね、政府は。だから、恐らく大蔵大臣も、私は、中期的な展望として言われたんでしょうが、これはやはり来年度ということになりますと、慎重なお答えをせざるを得ない。しかし、やっぱり中期的な展望においては、減税というものは当然に考えなければならぬ問題であると思いますが、来年ということになりますと、財政の環境は非常に厳しい、こういうことを前提にして考えなければならぬと申しておるわけでございます。
  188. 藤田進

    藤田進君 来年とか期限を切らなければ、大幅調整減税だとかいうことを打ち出したいように聞こえますが、そうなんですか。
  189. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中期的な展望においては減税というものは、確かに所得税の減税というのは、これはもう検討すべき課題であることは事実です。しかし、来年ということになりますと、これはなかなかやっぱり藤田君に幻想を与えることはよくないと思いますので、厳しく申しておくわけでございます。
  190. 藤田進

    藤田進君 だから、期限を切らない、何をやる、かにをやると言っても、いつやるんだというのは絶対不可欠のこれは条件です。あなたは健康のようですが、それは五年も先まで総理になるかどうか、それはやっぱりとりあえず来年がどうかという、それは言う人もありますよ、三木さんは後二カ月だとか。私はそうまで思い詰めないで、現職の総理が現職中にやはりきちっと打ち出して、そうして総選挙もあることだし、幻想を与えるのではなくて、私も幻想には反対です。しかし、それがどうもいま聞いてみると、幻想であったように思うですね、あなたがいままで言ってこられて。私は新聞がそんなにでたらめ書くとも思いません。見られたでしょう。それでたらめなら、あれがでたらめだとおっしゃれば結構な、自由ですから。けれども、もうあれで三木さんこれは調整減税をやってくれるわい、そこはやっぱりマスコミの皆さんがシェパードのように飛び歩いて大平さんにも会ってその記事まで出ておりますわな。それをこの場で、いまのようなことではこれこそ幻想です。幻想をすでに与えているように思うが、まだ与えておるとは断定いたしません。これからもきちっといま御答弁いただけば、もっと誠意のある真実を語ってくださいよ。調整減税、所得減税については、大きなやはり懸案になって今日まできているんです、与野党間にも。やりなさいよ。それは一兆円は少ないですよ、まだ。来年の話ならば。やりますな。
  191. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私はまあ減税について新聞に私が語ったことはないのであります。しかし、政府としては常に国民の税負担を軽減をするということは考えなけりゃならぬことであることは間違いない。しかし、そういうふうなことで、この減税をするということに対しては、これは常に考えるべき課題であるけれども、来年を一体やるかということに対しては、環境は厳しいのでなかなかむずかしいと、こうお答えをしておるのであります。
  192. 藤田進

    藤田進君 来年ということはむずかしいということで、たとえ選挙の目玉でも五十二年の所得減税、これはできないというあなたの御決断というか、余りいい決断ではありませんが、そういうふうにとっていいんですか、それじゃ。
  193. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いろいろ検討はいたしますけれども、結論としてはなかなか環境は厳しいというふうに御承知おきを願いたい。
  194. 藤田進

    藤田進君 重ねてですが、厳しいし財源難でもあるし、だから、五十二年度はできないというんですか、できるできないの真ん中ですか。
  195. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 検討はいたしますけれども、なかなか環境は厳しいと、こう額面どおり受け取っていただきます。
  196. 藤田進

    藤田進君 答弁になっていないですよ、それじゃ。だからやるのかやらないのか、やるかやらないかも含めて検討というのかね。
  197. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いや、常にやはり所得税というものに対しては負担を軽減したいという気はあるけれども、しかし、来年度ということになってくるとなかなか容易なことではない、そういうふうなこと、何かやっぱりしたいという意図は持っておっても、来年度の財政的な環境というものは、なかなかやっぱり容易なものではない、厳しいものがあるということでお答えといたします。
  198. 藤田進

    藤田進君 それじゃまあ五十二年度で所得減税はしたいという気持ちは現在持っているというお答えですが、その線に沿って検討するということになりますね。そうでございますか。
  199. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) もう少し、五十二年度という、中期的展望においては減税というものは確かに一つの検討すべき大きな課題であることは間違いないが、来年度ということになってくると、なかなかやはりいまここでそれを踏み切ることは容易な財政環境ではないということであります。
  200. 藤田進

    藤田進君 やりたいという気持ちはあるがなかなかむずかしいと、取り消しですか、いまのくんだりは。五十二年度で所得税減税をやりたいという気持ちはあるがむずかしいという御発言でしたね。間違いなら速記録を出してもらいます。この気持ちは口先だけではなしに腹からあるんでしょう。
  201. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いや、やはり税の負担の軽減を図りたいということは常にあるわけだけれども、来年度においてこれを所得税の減税を行うことは環境は非常に厳しいので容易ではないと、こう言っているわけです。
  202. 藤田進

    藤田進君 これじゃ、時間食ってもらっちゃ困るな、同じことで、しかも、結論は出ない……。
  203. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  204. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 速記を起こして。
  205. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 藤田君ね、この問題は検討はしておるんですよ。検討はしておるが、なかなかやはり来年度ということでは容易でない。まだ結論は出てないんです、出てないけれども、容易でないということを申し上げておるわけでございます。
  206. 藤田進

    藤田進君 これ、どこで検討されておりますか。
  207. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 政府と党とでやっておるわけでございます。
  208. 藤田進

    藤田進君 政府もあれですが、報道等によると三木総理の周辺ということですか、所管大蔵大臣のところですか。
  209. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 党の政調会とやはり大蔵省との間においてもいろいろとこの問題について話し合われておるというけれども、まだ最終的な結論は出てない、しかし、事態は容易ではないと……。
  210. 藤田進

    藤田進君 どうも所得減税をやる方向で検討されているように言われておりますが、その点は間違いないですか。
  211. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 党も政府も、そういうことがやれればやりたいということで、余地はないかということを検討しておることは事実です。
  212. 藤田進

    藤田進君 それから税に関連して、いま所信を答弁の形で言われておりますが、できるだけ減税をしたいという基本的態度であることは承りました。しかるに、大蔵当局のずっと審議を進める過程では、来年度は赤字国債をできるだけ減らしたいということで、既定の税制、税率を上げたり、事によれば新税を出すとかといったようなことがあるものははっきり言われ、あるものはほのめかしということですが、総理としてはいかがなんですか、それ。
  213. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ一つの厳しい財政状態の中で、いろんな歳出面についても重点的に選択を迫られるわけですが、一方において国民の福祉というものに対しては、われわれとしてもこれに対して増進していかなければならぬし、いろいろな点があって、財政的にはやはり歳出のできるだけの重点的削減、歳入面についてはいろいろな工夫が必要ですから、税の問題についても全般的に税制調査会などで検討を願っておる次第でございます。
  214. 藤田進

    藤田進君 これはすでに財政審の方でも特に歳出を中心に厳しい中間報告が出ております。一方、いま言われる税調関係においても、むしろこの減税方向ではなくて、増税方向ですね。ですから、あなたがいま所信としては減税を常に考えていると言われますが、国民は税外負担も非常にかさんできておりますし、とするならば、財政事情も一方ありますことはわかりますが、いわゆる増税について、あなたの内閣総理大臣である限りこれはこの道をとらないということになりますが、増税もあり得るんですか。
  215. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今後やはり税というものについても、長い展望をすれば、税の負担というものも願わなければならねわけでございますが、税というものは国民生活に非常な影響をいたしますから、これに対して一体そういう場合にはどういうふうな税制というものが考えられるか、それが国民生活に与える影響はどうかということについていま検討を加えておるところで、こういう点で税というものの増収を図るんだというようなことを現在まだ申し上げるような段階には至っていないということでございます。
  216. 藤田進

    藤田進君 時間がございません。他党に迷惑かけますから最後になりますが、たとえば、福祉関係においてもかなり問題が出ている中で、老人医療費については、大蔵省大蔵大臣等は一部負担という考えのようです。昨年もこれが出て三木総理がどうもその道をとらなかったようにも思うのです。今回そういうまた引き続いて問題が出ておるようです。老人医療費を含む福祉の……。
  217. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  218. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 速記を起こして。
  219. 藤田進

    藤田進君 これは一例ですが、いわゆる税収の落ち込みその他が前提になっているようですが、財政当局は。老人医療はその一つの例です。一部負担がまたことしも出てきたように思う。それを含めて福祉の後退というものはあなたはしないと言い切れますか。後退すべきではないです、わが国世界の水準等から比べてみても。この点はいかがですか。  それから、福田副総理、企画庁長官ですが、先ほど触れましたあなたの御発言の総選挙日程の十一月十五日、十二月五日というものは現在も崩れておりませんか。
  220. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公式にお答えするということになると、ただいま総理大臣からお答えしたようなことだろうと思うんです。しかし、いまこの段階でわれわれが一議員として総選挙の日取りを展望いたしてみますと、十一月十五日告示、十二月五日投票というのが常識であると、こういうふうにいまでも考えております。
  221. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 福祉の問題の個々についてはいろいろ検討しなければならぬ問題もあるでしょうけれども、全体としての福祉は後退させてはならない。
  222. 藤田進

    藤田進君 もう一つだけ。いま福田さんが言われた選挙日程、それは総理と食い違いがありますか、ありませんか。
  223. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 個人的な一つの常識としての福田君の発言はそれなりに承っておく。
  224. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 三木総理大臣にお尋ねをいたします。  昨日の参考人の三人の方の御意見でも、財特法と予算、これは不可分であるというそれぞれ一致した御意見がございました。こういう中で、現実の問題としては、この財特法の成立が今日以降にあるわけですけれども、こうした状況を踏まえて非常に財政の執行といいますか、こういう面で非常に心配される面がございます。当然のことでありますけれども国民生活に支障を来さないように、もしこの法案が成立したら、この場合は予算執行に絶対支障のないように万全を期すべきだ、この点についての総理の決意をまず伺います。  二つ目に、補正予算の問題につきましても、この委員会を通じて議論がございました。大蔵大臣からは、国鉄運賃法の成立の状況を見ながら補正を考えるという答弁がございましたが、一方において、災害の問題だけでなく、景気は必ずしもよくなっていない、中小企業等の倒産も先月が最高だ、こういう状況から見て、一般の公共事業等についても、今後の財政状況を見ながら補正予算も当然考えるべきだ、こういう強い意見もあることは事実でありますし、大平大蔵大臣からも閣議で、ある大臣からもそういう強い意見もあったというふうに承っております。したがいまして、ただいまの御決意という点と、もう一点は、補正予算について、将来考え得るのかどうか、以上二点についてまずお伺いいたします。
  225. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 一点は、この財政特例法、これが国会において成立をしまするならば、すでにいろんな手配はいたしつつありますけれども、万全を期して予算の執行に遺憾なきを期する覚悟でございます。  それから補正予算の点は、今後のいろいろな経済情勢もにらみ合わせて、補正が必要な場合には組む場合もあるでしょうが、これは今後の財政、経済の推移を見守って後にしたいと思っております。
  226. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では、ただいまの総理の答弁は、今後の財政状況とか景気の動向ということをいろいろ考えながら、場合によってはそうした補正予算もあり得ると、こういうふうに承ってよろしゅうございますか。
  227. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そのとおりです。
  228. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では二番目に、藤田委員からもお話がありましたが、税制について近時総理が非常に深い関心を持っていらっしゃるということを新聞等で承っております。伺うところによれば、本日、自民党役員と、党のいわゆる政策立案ということに関連をして、来年度以降の税制問題について、減税の問題も含め、また新規税制の問題も含めて、総理お話し合いになったやに伺っておりますが、そういったお話し合いが党の首脳とあったのかどうか。また、あったとすれば、総理はその場合にどういう御意見を述べられたのか、これについて承っておきたいと思います。  なお、つけ加えますと、新聞等にうかがいますならば、これから社会保障も大いに拡充していかなければいけない。しかし、総理からもお話があったように、非常に財政は困難である。しかし、反面において、赤字特例法をこれ以上また、毎年毎年赤字国債をふやすということは、インフレそのほか非常にこれは執行上よろしくない、行政上もよろしくない。そういう意味から、社会保障を拡充するという反面において、間接税等を中心にして、これはやっぱり何らかの税制の改革——改革といいますか、あるいは新規の税制を検討するということ以外にあるまいというような、そういう党首脳の意見もあるやに伺っております。こういう点について、三木総理はどのようにお考えであるか、御所見を承りたいと思います。
  229. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今後はやはり政治が国民の福祉の増進ということに大きな目標を置かなければならぬことは申すまでもないことであります。また、人口の高齢化であるとか、あるいは年金制度もいろんな年金制度の成熟化と申しますか、あるいはまた、社会保障費の増加などによって、どうしても租税とか、社会保険料の負担というものを増加を願わなければならぬことになってくると思いますよ。しかし、それは国民の合意が得られるということが前提ですよ。一方的にそういうことをやはり御負担を願うということは、一方的にやることはよくない。国民のこういうことだということで、国民の合意を得られるということであるならば、こういう問題は当然に考えなければならぬと思いますが、いま税制調査会などにおいてもいろいろ意見を聞いて、この問題に対しては慎重に対処してまいりたいと思っております。
  230. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 よく総理気持ちはわかりましたが、冒頭に伺った党首脳と政策立案等に伴ってこの問題についてお話し合いになった経過があるかどうか。あったとしたら、総理はどのような御見解を示されたかという点について御答弁をいただきたい。  さらにいま総理から非常にいい御意見が出たが、これは国民の合意が必要だ、そのとおりでございます。国民の合意を得るためには、果たして税制調査会だけで国民の声が反映するとは私は思わない。もっとやはり広い方法で工夫をして、たとえば付加価値税という問題を一つ考えてみても、もっとやはり国民に、あるいは誤解があるかもしれない、あるいは付加価値税でもこういう点を考えなければならぬという点もあるかもしれない。もっとやはり工夫をして、全国民的にこの税の問題について本当に考える、また声を聞くと、こういったような何か仕組みといいますか、工夫といいますか、こういうことをやはりする必要があると思いますが、総理その点、二点いかがですか。
  231. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 言われるとおり、税制調査会だけでは——この税制調査会は、国民の合意というんではなくて、やはり専門家等の意見も徴して、税それ自体として検討することは必要である、その結果、政府自身としての意見が、政府の意見が大体固まってくれば、何らかの方法で国民的な合意を得るための方法というものは考えてみる必要があると思います。
  232. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 総理、まことに恐縮ですが、先ほどの党首脳とのお話し合いについては……。
  233. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 党首脳との話し合いは、いろいろ政策全般について話し合ったわけでして、税もその一つであったことは事実ですけれども、結論はまだ出ておりませんから、ここで御議論する段階には達していないということでございます。
  234. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 それでは総理先ほど国民の税に対する関心、いろいろ意見を聞くと、こういうことについては必要だと、これはお認めになった、そういう何か工夫をされるというようなことを具体的にまた検討してみていただく、こういうお気持ちがございますか。
  235. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはどのようにして国民の合意を得るために、政府自身の考え方というものに対して、国民に対してよく理解してもらって、そうして国民の意見なども政府が耳を傾けるような。どういうやり方が一番そういうことに適するかは検討いたしますけれども、ただ税制調査会というだけで国民の合意と言えないことは当然でございますから、そういう点で国民の意見も聞き、また国会という場もございますから、これがまあ一番のやはり国民の声の代表でございますから、そういうことで、やはり最後は国会でございましょうけれども、その前に、何か国民の理解を深めるための一つの努力のプロセスというものはあってしかるべきだと思います。
  236. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 では最後に、二点まとめてお尋ねをして終わります。  一点目は、きょうの委員会で、大蔵大臣から鬼手仏心だと、来年度予算をつくるときには仏の心で鬼の手で、もう命を救うためには、片足も切断しなきゃならぬのだというくらいの悲愴なお話があった。したがって、所得減税も、これはもちろん国民の待望することでしょう。しかしやはり他面において、健全財政やら、あるいは福祉のもっと増進やら、やらなきゃならないことがある。もちろん総選挙において減税ということを言うのは、それはわが党にとっていいのかもしれないけれども、やっぱり国民に本当の現在の財政の状況を知ってもらい、毅然とした態度で健全財政を貫く、赤字国債をこれ以上安易にふやしたりすることはしない、税制の問題も含めて、そういうことをもっとやはり総理としてきちんとした所信があってしかるべきだ、私はそう思っているので、これについて一言だけ。  それから最後にもう一つは、今度の委員会を通じてデノミ問題が議論されました。これについて総まとめの意味で、デノミという問題は、国民生活にも非常に大きな影響があるから、やはり安易にこれを考えるべきでない、こういう慎重な意見も出ました。この際まとめの意味で、総理のいまのデノミについての御関心といいますか、お考えを伺って質問を終わります。
  237. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 言われるとおり、やはりこの財政の健全化ということは、これは一つの大きな大前提になるわけでございますから、安易にいわゆる特例公債に依存していく財政から、一日も早く脱却することが必要である、そのために、それは必要な経費はどうしても要るわけですから、歳出面において重点的にしぼって、削減すべきものは削減して、要るものはこれは出さなけりゃならぬわけでございますから、そういう選択が厳しくなる、これを大蔵大臣は仏心と言っているんです。そういう選択の厳しさというものが要ることでございます。健全財政は大きな前提である。  デノミについては、まあフランスなんかでやっておるのを見ると、デノミの物価なんかに対しての影響というものは、余りひどく悪い影響はなかったように、後で私も現地で聞いたわけですけれども、そういう点で、デノミというのは、それに便乗した値上げなどもあって、これはやはりデノミ問題はただ貨幣の呼称を変えるだけであれば影響ないはずですけれども、これが相当なやっぱり物価に対する影響を与えることも考えられるわけですから、やはり物価というものが非常に安定したという状態でなけりゃ、デノミというものはやっぱり簡単に取り上げるわけにはいかない。しかし為替が三けた台というのはイタリーと日本だけで、計算の上からいっても非常な不便であることも事実であるし、できるだけやっぱりデノミというようなことも、いろんな点から見て利便もありますけれども、しかし、われわれが一番いま考えなけりゃならぬのは物価の安定ということですから、これに対していまのような状態でデノミをやる適当な時期だとは思わない、もう少しやっぱり物価が安定をした暁においては、デノミというものは考えるべき問題であることは事実であります。しかし、それは簡単にやるべきではないと、慎重にこれはやらなければならぬと思っている次第です。
  238. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 終わります。
  239. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに、先ほど出ておりました政治日程についてお伺いをいたしますが、会期末までに重要法案のかなり成立に意欲的なお話がありました。かなり楽観的な感じを私は受けたんですが、そう簡単に私はいかないと、そう思います。で、仮に会期内に成立をしない場合、延長の話が先ほども出ておりましたが、その場合の選挙、要するに会期幅にもよりますけれども、会期延長があった場合は、解散総選挙になるのか、任期満了に伴う選挙になるのか、さらにもう一つは、十一月十日の問題がはさまってきますので、この辺がどうなのか。  それから十月三十一日に予定されておる党大会というものは、この法案の成立のいかんによっては延期ということはあり得るのか、その点についての見通しをお伺いしたいと思います。
  240. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ矢追君は恐ろしいことを言われるわけですが、どうか会期内に成立をするようにひとつ御協力を願いたいと思うわけです。しかし、なかなか容易でないぞというようなことを言われますと、なかなか政治日程ということも、私が藤田君に言いましたら、無責任だと言うけれども、いまの状態が、日程を私が組むということはなかなか容易でないんですが、どうか会期中に、会期延長なしにこの重要法案はひとつ成立をしますように、まあ賛否はともかく、御協力を願っておきたいということを切にお願いをいたします。まあそういうことで、いまいろいろ矢追君が政治日程を挙げられましたけれども、こういうのは何としても私は国事優先でございますから、国会の審議というものが中心になって今後の日程を考えるわけでございますから、いまのところ具体的に、何月何日になにして何月何日になにしてということはまだ考えてはいないわけでございます。  また、自民党の党大会、これが国会の審議に影響を与えることもございませんし、いまのところこの大会を変更せんならぬという必要は感じていないわけでございます。
  241. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連して。  これは先ほど藤田委員に対する会期中に法案を終了したいという最初の——二度目の答弁のときには、審議の状況云々ということがあったのはわかるんですけれども、最初のを聞いていますと、自民党だけで全部審議しているような感じを受ける。見てください、総理。五〇%も一方で値上げ法案出しているわけです。五〇%も値上げする法案を出したり、あるいは度数料だって七円を十円という約五割近いものを上げようというんでしょう。国民生活に与える影響ものすごい。まだ来たばかりです、こちらへは。どんなことしたって、ちょっとやそっとなことで、これ終わるわけないでしょう。質疑者が十人いたとすれば、一人十時間やったとしてももう百時間消えるのですから、そういうことを考えただけでも、そんな勝手な物の考え方をされるというのは非常におかしいと思うのですね。だからもう少しそういう点について、私は一体これでは先はどうなるのか。先ほど審議の状況を見なくては選挙の日程は決められないという話があった。そうすると、審議の状況いかんによっては選挙の日程は狂うということがあり得るのか、それを確認しておきたい。
  242. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまの選挙の日程というよりか、まあ衆議院の任期は決まっておるわけですから、そういうものでなしに、これから具体的ないろいろなお話がございましてから政治日程は——具体的な政治日程というものはいまのところ、まだこういう国会が審議の最中に、これをみんなこちらが一方的な希望的観測で政治の日程を組むことは適当でないので、私はまだそれは具体的には申し上げることは適当でないと申しておるので、何もいまはそういう何日に、何日にというふうにスケジュールを立てては考えていないわけです。ただ願うのは、国会の審議の促進をお願いをしたいということでございます。
  243. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、三木内閣の財政運営について伺いますが、総理は現在の経済状態というものをどう把握をされておるのか。当初の予定どおり、スムーズに予算の執行等も行われ、日本経済は順調よくいっておると、こういう把握をされておりますか。その点はいかがですか。
  244. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ一つは物価の問題ですが、卸売物価が八月、九月、やや騰勢になった。六月に非常に卸売物価というものが高くなったのですが、九月にはやや鈍化しておりますから、そうやっぱり卸売物価が非常な決定的な影響を消費者物価に与えるとは思っていないわけです。そういうことで、卸売物価の将来というものに対しても落ちついていく傾向を見せると見ております。消費者物価は、あれは三月でしたでしょうか、ちょっと季節的な野菜の高騰などもあって値上がりはございましたけれども、昨年の十月以降は一けた台に推移しておるので、この分からいけば、今年度の年度末に八%という程度の消費者物価に落ちつけるものと考えておるわけでございます。  また景気は、まあまだやっぱり個々の企業についてはばらつきもあるわけですが、全体としての景気は回復基調にあることは間違いがないと、こう考えております。したがって、景気、物価の動向等をにらみ合わし、景気の動向というものについては、多少の一つの中だるみみたいな傾向もありますが、全体としての景気の回復は、回復の基調にあるということに対しては、政府はこれに対して疑いを持っていないわけでございます。いろいろ民間の調査などを見ましても、皆一様にそのように見ておるようでございます。
  245. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 総理は非常に楽観的過ぎると思います。特に景気の問題については、日銀総裁も中だるみが予想以上であると、こういうふうに言われておりますし、輸出部門が少しは伸びましたけれども、これも最近はもう一歩という感じもありますし、また諸外国から先日来のIMF世銀総会においても黒字国の問題で批判等が出ておる状況でありますから、決してこれもそう期待はこれからはできない。またそうでない部門の回復は非常に弱いですし、特に設備投資は非常に依然として厳しい。さらに個人消費もそう伸びていない。特に個人消費が伸びていないということは、やはり国民がまだまだこの景気に対してこれは大変だと、締まらなくちゃいけないという、またそれに加えて公共料金の値上げを中心としたやはり物価値上げ、インフレが続くと、こういう感じがこれに出ておると思いますので、やはりその点を特に私は、いままでは設備投資を中心とした景気回復、それに財政というものを主導型にしてやっていこうという方針でございましたけれども、やはり個人消費というものにもっと目を向けなきゃならぬと思います。その意味で、先ほど来議論になりました減税ということも、やはり早急に考えなければならぬ問題と思いますが、この点についてこれからの特に景気の回復については、総理はどこにどう重点的にどうやっていかれるのか、ちょっとまあ見方は、私は先ほど申し上げたまず甘いということを指摘したいと思いますが、その点いかがですか。
  246. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはやはり景気輸出がいま引っ張っておるわけですが、これはやはり鈍化の傾向にあることは事実ですけれども、まだやはり全体としての傾向は、輸出というものは多少は鈍化しても、輸出が好調であるというこの基調は変わらない。設備投資もまあ五十一年の一月から三月には増加に転じておるのですね。最近のいろんな経済指標から見て、緩やかではあるけれども、設備投資も着実に回復していくことになるというふうに見ておるわけです、日経新聞とか日本興業銀行の調査などを見ても、設備投資は回復期にあるという報告をしておるわけです。個人消費は四月から六月までに一五・六%、前年同月比ですね、一五・六%、これは物価が安定をしてくると、やはり個人消費も着実に伸びていくのではないかと見ておりますが、とにかくこの景気の回復は単に輸出というだけでなしに、個人消費、設備投資、あるいは輸出というものがバランスをとれて経済を成長させていくことが健全な姿であると思っておりますので、まあ今後、個人消費や輸出部門、設備投資の動向には注意をいたしますけれども、大体個人消費も設備投資も悲観的な見通しは持っていない。やはり着実にこれは伸びてくるという見通しでございます。
  247. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ非常に総理は楽観的ですけれども総理総理就任されて、二回これで予算編成をやられたわけですね、二年にわたって。で、非常に狂乱物価、その来す不況、その回復はまあ徐々ではあるけれども来ておるという認識ですけれども、しかし、現実にはまだ総理自身、まだまだ大変な状況は御存じないと思うんです。特に倒産件数などは全然減っておりませんし、まだ千件以上突破しておるのが実情ですよね。そういった点で、私、先ほど聞いたのはこれから、ただ見通しの話だけであって、今後どういう財政運営をこの後、後半、下半期ですね、おやりになるのか、これをまずお伺いしたいんですけれども、その点いかがですか。
  248. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、四十八年の石油ショック、一躍四倍ぐらいになったわけです。四十九年というものはやはりマイナス一・二ですからね、GNP。これは実質一一%ぐらいの経済成長をしてきた日本経済がマイナスになったのですから、これはやっぱり石油ショック、世界景気の動向等もにらみ合わせて、五十年にはプラスになっても二・一というわけですからね。そういうので、まあ今年度は大体六%程度の経済成長は達成できるという見通しですが、まあああいう一つの石油ショックというような大きな、日本経済にとっては大きなやっぱり衝撃を受けたにかかわらず、日本経済というものはやっぱりその後の回復というものは、まずいろいろ個々には矢追君の言われるような問題抱えておりますよ、中小企業の問題などね。これはやはりわれわれとしても倒産件数などに対しては注目をしておるわけですが、全体としての日本のこの経済というものは、まあこの経済危機を一応乗り切っていっておるという姿だと思います。とにかく高度経済成長の一一%も伸びておったのが、まあ今後六%程度の経済成長というんだから速度半減ですからね、大変な経済の基調の変化があるわけです。このやはり変化に対して対応するということには、いますぐに一変ということはないわけです。その切りかえのときというものは、非常なやっぱり企業にとっても、あるいは国民生活の上においても影響を受けるわけですが、それをいろんな犠牲もありますけれども日本経済はそういう試練を越えて、経済を破局的な点に持っていかないで、ここまでやってきたものだと、私はやっぱり評価をしておるわけでございます。しかし、矢追君の言われるような個々の企業、ことに中小企業などに対しては、原因はいろいろありましょうけれども、いろいろこのごろはやっぱり倒産件数なんかもふえているという現状に対しては、もう少しきめの細かいやはり個々の企業に対する対策というものはやらなきゃならぬが、全体としての経済一つのいままでこういう石油ショック以来歩んできた日本経済というものは、一応やはりこう何とか、これは日本としてはできるだけのことをやってこれを切り抜けてきたという、そういうことを私は率直に感じておるものでございます。
  249. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大体そういうふうに言われると思っていましたけどね、総理は、いつも大体そういう答弁ばかりで、具体的なことは一つお答えいただけないわけです。  時間がありませんので、次の問題簡単に、今度は簡単にお答えいただきたいんですが、まあ来年度予算編成、先ほども少し出ましたが、まあ今度の予算編成は、総理総理でいらっしゃるかどうか非常にまあわかりませんから、非常にお答えにくいかもわかりませんけれども、現在の御意思としてお伺いをしたいんですが、いま申し上げたように、三木さんが総理になられてから、特にまあ今年度の予算、そう新しいものは私はなかったように思うんです、新規政策的なものはですね。まあ不況からの脱却ということとインフレ抑制という大変な課題ですから、先ほど言われたようなところだったと思いますが、来年度予算編成は、これは財政制度審議会あたりでも言われておりますように、五十二年の予算編成は非常に大変な予算編成になると。また、そういう意思を持ってやらなきゃならぬと、こうなっております。  だから、来年度予算編成に臨む、非常にこれは相当の決心でやらぬと、先ほど大蔵大臣が言われた鬼の手仏の心というのも私はよくわかるわけです。その点について総理のまず展望と認識ですね。特に、へたをすると、国民に全部つけの回る非常に厳しい、先ほどの鬼の手ばかりが目立つような予算になる可能性も十分あるわけです。その点について特に増税、赤字国債、それからインフレあるいは景気の問題、この点を含めてどういうお考えか。特に総理がずっと言われてきたライフサイクル計画というものは一向にまだ具体化していないし、また来年度予算には恐らく入る余地はさらさらないと。総理やめられたらもう絶対これはだめだと、こう思いますので、この点についてどうなのか。特に最近わが党で発表いたしました福祉五ヵ年計画、これについては資料渡してございますので、ある程度お読みいただいたかと思いますが、それに対する御意見も含めてお伺いして終わります。
  250. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 来年度の予算編成というものは、まだ税制の見積もり、税制の見通し、税収の見通し、あるいはまた経済の推移などももう少し見きわめなきゃなりませんから、また予算規模というものもまだ決まっておるわけでないわけですから、いま予算編成について具体的にどうこうということは申し上げられませんが、まあこういう特例公債のようなものはできるだけやっぱり縮小していかなければならぬし、歳出面というものは重点をしぼって、これはやはり選択というものを厳しくせにゃならぬ、歳入のやっぱり改善を図る、こういうことがやっぱり来年度予算の編成には必要となってくる。ただしかし、国民生活の安定、福祉の向上というものは、これからの政治が目指さなければならぬ方向であることは間違いないわけです。そういう意味で生涯の福祉計画、まあライフサイクルと言われておる、ライフサイクル計画と言われておることも、これはもう具体化せるものは、来年度においても具体化していきたいという考えでございます。まあ選挙公約の中にも、これは大きな柱として取り上げたいと思っております。何分にもこれは広範なやっぱり福祉に対する長期的な計画でございますから、一遍にこれが実現できるという性質のものではないけれども政府の目指す方向として一つの福祉というものをどう考えるかという考え方、そういうことで、この問題は総選挙の場合にも公約の一つの柱にしたいと思っております。  また矢追君の言われた公明党の福祉計画、非常に膨大なもので、全部はまだ拝見をしていないわけでございますけれども、そのねらわれるところは非常にやっぱり傾聴すべき点が多いというふうに私は評価をいたすものでございます。
  251. 渡辺武

    ○渡辺武君 財政問題に入る前に、自民党総裁でもあられる総理大臣に一言だけ伺いたいと思います。  十月八日の日に、自民党が三百十九名の第一次公認候補を発表されました。この中には灰色議員との疑いを持たれている者も含まれているわけです。で、政府はあした中間報告をやると、灰色高官についてはロ特の秘密会で発表するという趣旨のことを言っておられるわけですが、それに先立ってこうして公認候補を発表されたということは、もう灰色高官、灰色政治家の発表はないというふうに見ておられるからじゃないかと思いますが、どうですか。
  252. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いわゆる灰色というもの、灰色高官と言われておる者に対しては、まあ国会の方でいろいろ国政調査の場において一つの範囲を示されれば、それに対して資料を提供しようということを言っておるのですから、現在のところこの問題というものは、国会の調査の軌道にも乗っておりませんからね。そういうことで現在の時点においてそうして公認というものは決めたわけでございます。この問題は、自民党の選挙対策委員会で十分検討をいたして、現在の時点において公認をいたしたのが先般の公認の発表でございます。
  253. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあその、国会で灰色高官の範囲を決めてくれ、その上でという方式は、私どもよくないことだと、これは総理大臣の自主的な判断で十分できることだというふうには思っておりますが、しかし、いずれにしましても、今後この公認候補者の中に全日空なり丸紅から金を受け取ったと、灰色だというような議員がもしいることが明らかになった場合はどうなさいますか。
  254. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは自民党の責任においてやるんですから自民党にお任せを願いたい。
  255. 渡辺武

    ○渡辺武君 私も、他党の内部問題に干渉するというようなつもりはいささかもないんです。いささかもないんですけれども、しかしこれは、自民党総裁でもあり、総理でもあられる三木さんの、やはりロッキード問題に対する政治姿勢が問われる問題じゃないかというふうに思うのですね。  それで、まあ重ねて伺いますけれども、宇都宮徳馬さんも、ある新聞の記事によりますと、十月九日のこの新聞ですが、灰色高官は当然非公認にすべきだということを述べておられるわけですよ。これは、私は国民の声だろうというふうに思いますから、それで、そういう点について、灰色高官は非公認にすべきだという点についてはどう思われますか。
  256. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いろいろそういう声というものは、声に対しては、われわれとしても声のあることは頭の中には入れますけれども、この問題は、自民党が責任を持ってやることでございますから、自民党の責任に任してもらいたい。
  257. 渡辺武

    ○渡辺武君 灰色高官、灰色政治家だということがわかっても公認をされるのかということを伺っているんです。
  258. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 自民党として、これはやはり責任を負わなきゃならぬわけでございますから、自民党に任してもらいたいと言っておるわけでございます。
  259. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど、ちょっと押し問答で申しわけないんですがね、やっぱり自民党総裁でもあるけれども、同時に総理大臣でもあるわけでしてね、やっぱりロッキード問題の究明には政治生命かけるんだということを言っておられた三木さんの御答弁としては、私はちょっといただきかねると思いますですね。重ねてその点を伺いたい。  それからもう一点ですよ。自民党が公認候補として発表したということは、これらの三百十九名の人たちが全部白だということを意味するんですか、そうでないんですか。その点も伺いたい。
  260. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 自民党が公認候補を決めました時点において、自民党が公認をしようということで公認をいたしたわけでございまして、今後いろんな問題が出てくりゃ別です、あの時点において自民党が公認を、自民党の責任においていたしたわけでございます。
  261. 渡辺武

    ○渡辺武君 今後いろんな問題が出てくれば別だとおっしゃったけれども、その段階で検討し直すということですか。
  262. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いろんな問題が出れば、無論検討をするわけでございますが、しかし、それは自民党自身が、これは国民に対して、批判を受けるんですからね。やはりそういう責任において決める問題でありますから、われわれがやっぱり良識のある決定をいたすつもりでございます。
  263. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは財政問題に移りたいと思いますが、三木さん、重ねて私申し上げますけれども、いま私が伺った問題は、これは自民党としても、あるいはまたいまの三木内閣としても、ロッキード問題についてどういう態度をとっているのかと、清潔な政治と言われるけれども、実際それはやる意思があるのかどうかということを問われている問題です。したがって、そういう見地に立ってこの問題も処理する必要があるんじゃないか。これはまあ他党の問題ですが、その点ははっきり申し上げておきたいと思うのです。  財政問題ですけれども、財政制度審議会が大蔵省の要求にこたえて中・長期財政計画の導入、それから景気調整基金の設置や、赤字決算の制度化などの手段による財政の多年度間調整の方法なども検討を始めているそうであります。赤字決算の制度化といいますと、いま財政法四条に縛られて、そして特例法を出して、赤字公債をその都度国会の審議を経て出すということになっておりますけれども、それをいわば必要でないように、制度的にも赤字公債が出せるというような仕組みにしようということだと思うんですね。このこと一つとってみましても、私は、やっぱり今後いままでの自民党政府の財政の運営のやり方から考えてみますと、財政破綻が今後とめどなく拡大していく可能性を持っておるというふうに思われるわけです。それだけじゃなくて、財政の多年度間調整だとか、あるいは中・長期財政計画の導入だとかということになりますと、これは財政単年度主義という問題にも触れてくることじゃないかと、非常に重大な問題だというふうに思っておりますが、この点について総理大臣、どんな御見解か伺いたいと思います。
  264. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それはやはり憲法から言っても、毎年会計年度の予算を作成して国会に提出して、国会の議決を受けるということになっておりますし、憲法の八十六条から言って。あるいはまた、財政の国会の審議という点から言っても、それはやっぱり単年度でということで、国会のいわゆる監督権というものに対してもあるわけです。そういうことで、これはやはりなかなかこの原則というものはいろんなやっぱり制約を受けると思いますね。ただしかし、財政運営というものをもう少し機動的に運営をするために、そういう多年度主義というものは考えてみる必要があるんではないかというような声もあることは事実ですがね。政府の方としては、それを声があるからといって、そういうふうないまの単年度主義の予算をこれは簡単に変える考えはありません。これは慎重な検討をしなきゃならぬということでございます。
  265. 渡辺武

    ○渡辺武君 重ねて、これは大事な問題なものですからちょっと念を押しておきたいというふうに思うんです。  私、七十六国会の予算委員会総理大臣に対して、政府は、財政法四条ですね、これを改めるつもりがあるんじゃないかと、そして特例法で出している赤字公債をいわば制度的に出すという方向を考えているんじゃないかということを伺いましたら、財政法の改正も一部に意見があったんですけれど、私もそれは賛成できないと、それはやはり毎回国会の判断を仰ぐべきものであると云々ということで、財政法四条を改正するというお気持ちがないということをはっきり答弁しておられるわけですね。  で、この赤字決算を制度化するということになりますと、当然この財政法第四条が問題になってくるわけですね。それから同時に、決算の問題を規定した第六条、それから大蔵省証券ですね、これは年度内に償還せよということが第七条で決まっておりますが、それも当然問題になってくるだろうというふうに思うんですが、こういう財政法のいま申し上げたような点、これは今後も厳格に守っていくというおつもりがあるかどうか、これを伺いたい。
  266. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 財政法の第四条を改正する考えは持っておりません。
  267. 渡辺武

    ○渡辺武君 六条、七条はどうですか。
  268. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 六条も七条もございません。
  269. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると赤字決算の制度化ということは、これはできないということになりますね。
  270. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それはできないですよ。
  271. 渡辺武

    ○渡辺武君 なお押して伺います。憲法八十六条、これはいま総理大臣おっしゃった財政の単年度主義と国会の議決ということを明確に決めた条項ですね。これに基づいて財政法の十一条、十二条、これも同趣旨のことを決めているわけですけれども、この単年度主義とそれからこのいわゆる多年度主義、真っ向うからこれはぶつかってくるものだと思うんですね。これは重大な問題だと思いますけれども、それも、この多年度主義というようなものはこれは採用しないというふうに理解していいですか。
  272. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまのところそういう考えは持っていません。しかし、いろいろな機動的に弾力的に運営するために、一遍長期的に見れば検討したらどうかという声があることは事実ですよね。その声があることは事実であって、検討はするにしても、政府はいまこれを変える考えは持っておりません。
  273. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、ちょっと大蔵大臣に伺いたいのですが、財政制度審議会に大蔵省が要請してそういう検討をさしているということですけれども総理大臣は、そういう考えはないと言っておられる。何でそういうことを検討させるのですか。
  274. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま財政審におきましては、長期的計画的な問題、それから機動的弾力的な運営の問題、それから効率的合理的な運営の問題、そういう三つの角度から財政運営の問題についての検討をいただいておるわけでございまして、これをいま直ちに制度化する用意があるかというと、いま総理大臣がおっしゃったように、われわれといたしましては直ちに制度化する用意はないけれども、こういう問題について財政運営の角度から御検討いただいて、その中にくむべきアイデアがございますならば、くみ上げるにやぶさかでございませんけれども、これをいまの段階で制度化しようなどという考えはいま政府は持っていないということは総理お答えしたとおりに心得ております。
  275. 渡辺武

    ○渡辺武君 財政制度審議会は二、三年かけてこの問題を論議するというんですね。二、三年先どうですか。
  276. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 財政が正常化し、経済も安定してまいりまして、こういったものを制度化する方が望ましいというようなことになってまいりました段階におきましては、あるいはそういう問題について御審議をわずらわす機会がないとは言えないと思いますけれども、しかし、これはまた、まだ財政はいまこういう危機にございまするし、正常化の道、まだはるけきものがあるわけでございまして、当面、いま仰せになりましたとおり、制度化というような問題は考えていないわけです。
  277. 渡辺武

    ○渡辺武君 これ、おかしいですね。どなたが総理大臣をやられ、大蔵大臣をやられるのか、二、三年先のことはわかりませんよ。わからぬのだけれども、内閣というのは連続性が——恐らくこの自民党政府であれば連続性が必要だと思いますね。そうすると総理大臣は、これはそういうことをやる意思はないと言っておられるのだが、大蔵大臣は、必要があれば国会にそういうことを御審議いただくかもわからぬという趣旨のことを言っている。答弁が食い違っているじゃないですか。総理大臣、どうですか。
  278. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 非常に単年度主義の不便の点ありますよ、予算のね。そういうので、そういう声があることは事実ですよね。だから、これやっぱり長期的な課題としては検討をすべき問題であろうが、現在の段階でこういう財政、一つ特例公債を毎年発行せなければならぬときに、国会の審議を経ずしてその処理ができるからとか、そういう現在の便宜主義でそれをやる考えはない。長期的な課題としては検討すべき課題であることであっても、いまこの段階でそういうことは考えていないと、こう言っております。私いま聞いておって、大蔵大臣との格別食い違いはないと思います。
  279. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間も余りないので、この問題はまた改めて論議したいと思います。しかし、これは非常に重大問題ですね。御答弁聞いてますますこれは財特法には反対しなきゃならぬというふうに思いましたがね。  それから、最後に伺いたいんですが、この間マニラでIMFの暫定委員会がありまして、そこでIMFの専務理事のウィッチフェーン氏が、日本輸出に依存し過ぎていると、内需の盛り上がりが必要だという趣旨のことを言っておられるわけですね。これは日本が対米輸出等々あんまり伸ばし過ぎて、黒字が最近ふえてきたということから、黒字国責任論という立場から言っているんだろうということはわかりますけれども、しかし、日本がマニラでかなり国際的に、言ってみれば批判の焦点に立ったわけですから、そういう点で、内需の盛り上がりという点について、総理大臣に、どういう方策を考えておられるのか、これを伺いたい。
  280. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) やっぱり日本景気経済のああいう不況時期であって、そして日本の企業が海外競争力を持っていますからね、海外の景気も非常に回復してきたわけですから、輸出が伸びるという自然の勢いはあったと思いますよ。特に輸出にドライブをかけたというわけではないわけですね。  ところが、最近見ますと輸出が鈍化してきて、輸入がふえてきて、輸出超過なども大幅に減ってきておりますから、そういう点で日本の国際収支というものは、一つのバランスのとれた形になりつつあると。一方、個人消費もだんだん物価が安定してきたということ、私はこれは順調に伸びていくと見ておるわけですね。設備投資もやはりいろいろ研究所なんかの調査などを見ましても、これはやっぱり回復基調にあるということで、設備投資もこれはふえていくわけですから、私は、やはり輸出だけでなしに、輸出とか個人消費とか、設備投資とかいうバランスのとれた、一つのバランスを保ちながら、経済成長をする方が好ましいという考えですから、個人消費とか、あるいは設備投資というものの動向に対しては、非常に注目をするわけですが、いまのところ輸出は鈍化し、一方においては個人消費設備投資というものも、だんだん回復してきておるということで、渡辺君のような御心配でなくして、御心配の状態がずっと続くのでなくして、成長のバランスというものはやっぱり維持するようなことになっていくと見ておるわけでございます。
  281. 渡辺武

    ○渡辺武君 さっき総理大臣、楽観に過ぎるのじゃないかというあれもありましたがね。とにかく総理府の調べた勤労者の家計調査ですね。あれによっても四月から七月まで実質家計収入は減っているんです、前の年よりも。非常にやっぱり国民の暮らしは苦しいということがわかるし、同時にしたがって、内需が余り起こらない。景気もなかなか鈍化して急速には回復できないということだと思うんですね。私は、やっぱり所得税減税必要だと思うんです。しかし、さっきはやる意思もないような御答弁でしたが、補正予算を組むことを検討しておられるという御趣旨の御答弁がありました。この補正予算の中に、たとえば、今度の災害で災害救助法の適用条件が非常に厳しいために、災害を受けた市町村の七分の一ぐらいしか、救助法の適用を受けていないというような実情がある。これをもっと緩めて、災害救助法をもっと全面的に適用するとか、あるいはまた生活環境整備が非常に立ちおくれているので、これに対して新たにやっぱりそれを充実させるとか、あるいは物価の安定を図るとか、こういうことで国民の暮らしをよくする方向での内需拡大ということを、この補正予算の中に盛り込むべきだというように思いますが、そのお気持ちはありますか。
  282. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 補正予算はいまいろいろな何ですね、財政経済の推移などを見まして、いままあそういうことも全然考えないわけではないが、それを見て考えるということで、いまのところ補正予算を組もうという考え方でいっておるわけではないので、そういう場合に何を盛り込むかというようなことは、まだ具体的に検討する段階には至ってないわけでございます。
  283. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 去年も申し上げたことなんですけれども、いわゆる財政特例法という、財政法から見ると超財政法規的処理になるわけですが、これを去年、ことしと出していくためには、やはり一つのきちんとしたけじめの問題として政治責任を明らかにするということが必要なんではないか。同様事態に追い込まれたかつてのエアハルト内閣もそうしたはずなんだが、ということを去年も申し上げましたし、同様趣旨で総理に折り入ってお尋ねをしたいと思うんですが、総理大臣としての責任をとるというのはどういうことなのかお尋ねしたいと思うんです。  よく責任をとれといいますと、昔であれば腹を切れということだし、いま流に言い直せばやめろということになると思います。ただ、何かにつけて責任をとれと、お前やめろと、こういう議論に私はくみしていま伺っているわけではありません。非難を甘受しながら、任にとどまり知己を百年の後に求める、こういう私は責任の果たし方もあると思います。  ただ、一つ総理にお尋ねしたいのは、いま申し上げたやり方というのは、必ずしも日本的ではありません。どちらかというと、日本人の感情というのは、潔さの方をもっぱら大切にしながらとってくるということではないんだろうか。  そこでお尋ねしたいのは、総理大臣というのは最高の指導者ということになるわけですが、その指導者の出処進退と国民との心の関係、いわば共感の関係という意味で、総理大臣としての責任のとり方というのはどうあったらいいんだろうか。日本人の感情に奥深く沈んでおりますものはやはり潔さというものに対する価値判断、美意識と言ってもいいかもしれません。  そこで、実は、この間も町の人たちと話をしていたらこんな話題が出ました。ミグ25が函館に強行着陸をしました。昔だったら内閣総辞職ものだけれども、いまはやめないですねと私は言われたんです。この、昔だったらというのは、軍国日本時代という意味ではなくて、政治責任に対する政治家の倫理観の問題として指摘をされたんじゃないか。ミグ25が強行着陸をした結果、軍事的にもシビリアンコントロールという面でも、まことにだらしがない実態がさらけ出された。にもかかわらず、その責任はあいまいになっていくんだろうかという国民の率直な疑問だと思うんです。こういった面で三木内閣振り返ってみますと、私は普通なら、内閣総理大臣として責任を明らかにするということが求められることが何遍もあったんじゃないか。一つは、去年は財政に大穴をあけました。普通の民間経営の場合には大きな欠損をあげてしまって不渡り手形を出しそうになる、去年の年末は本当にそうでした。それを緊急融資でやっと切り抜けた会社の経営者がそのまんま居座るというのは、これは民間の常識ではありません。  あるいはまた前総理、総裁が逮捕をされた。さらにまた今回でいきますと、八月末もしくは九月上旬にはこの法律は通らなければ大変だと、口をあげておっしゃっていたのに、臨時国会召集は九月の十六日。そのことが国民に与えた心理的な動揺、国と地方を通じての行政の停滞というのは、これはもう総理よく御承知だと思います。そのどれを取ってみても、総理大臣としての通俗的な意味でいう責任が問われていると思うんですけれども国民気持ちとすると、知己を百年に求めながらその任を全うするというよりも、むしろ潔さ、そういうものに対する政治の敏感な反応というものを私は求めているような気がするのです。そこで総理国民の共感の関係の問題として、総理大臣の責任のとり方というのはどうあるべきだとお考えになっているのかお尋ねしたいと思います。
  284. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 総理大臣の責任のとり方、栗林君、日本人らしく何か起こったらもうすぐやめっちまえというお話のようでございますけれども、私は、責任をとるということはやめる、ミグ25が来た、総理大臣やめる。あるいは特例公債を出すような状態になったら総理大臣をやめる。そういうふうに何でも事が起こったり予期しないことが起こったら総理大臣やめるという責任のとり方もあるでしょう。私はしかし、そういう責任のとり方というものもあるんでしょうが、それを問題を処理していく、この問題を処理していくということで、そのこともまた責任のとり方である。そうでしょう。たとえば特例公債にしても、ああいう石油の急激な値上がり、ことにやっぱりエネルギー源を石油に頼っておる国として非常な衝撃を受けることは事実です。そうして、ああいうふうな石油ショック以来、各国も、どこもかしこもやっぱり財政というものは予定どおりの税収も上がらない、世界的不況が来て。そして、まあどこでも景気回復の手段として財政的な面から購買力を喚起するわけですから。皆やっぱりそうですよ、どこの国でも。公債発行ということに対して依存しておる面、そればかりでもないでしょうが、あるわけですから、そういうことに対して一々責任をとってやめるという、それが責任のとり方だとは思わない。しかし、進退はみずからが、総理大臣自身が判断をしなきゃならぬ。その判断というものの材料というものは幾つもあるでしょうけれども、まあ真に責任を、自分がいろいろの過失に基づいてとらなきゃならぬ場合もある。世論の動向もあるでしょう。それはやはり総理大臣の進退は、国会の不信任決議案、あれは別ですよ。そういう以外はやっぱり総理大臣自身の自分の判断によって進退は決めるべきであるということだと思います。
  285. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 まあ恐らくそういうお答えになるんだろうと思うんです。そこで、とにかくすぐやめろということを私は言っているわけではなくて、国民気持ちとして、潔さということを大切にしてきた日本人の気持ちはおわかりいただけると思うんです。そこで、そうは言いながらすぐやめて責任が全うできるかといういまの総理のお立場があることは否定はいたしません。ただそこで、共感の関係としてそれをどう処理するかということをあわせて伺ったわけです。進退はそう言いながら、総理個人の考えに基づいてきちんといたしますと言いながら、いまの時期においては逃げ出すわけにいかぬということを仮にお考えだとすると、それはそれでやはり国民の理解を求める一つのけじめのつけ方というのは私は必要なんじゃないか。  そこで二つお尋ねをしたいんですけれども一つは、引き続き三木総理が責任を果たすとおっしゃたとして、大変立ち入って失礼なことを伺うことになるかもしれませんけれども、新聞で拝見すると総裁の任期はあと一年ある、その任期半ばにしてということをおっしゃったと言われるんですが、これは自民党総裁としての任期であって、内閣総理大臣としての任期ということではありません。ただ総裁任期三年のうち二年を経過して一年が残っているということの御指摘であれば、事実関係ですからそれはなるほどそういうことかとは思いますけれども、ただ、その自由民主党の中で、国会議員の三分の二が、三木総裁、総理に対して異なった意見を持っていることはこれは事実だと思います。それに対して新聞でうかがい知る限りでは、総理は閣僚の任免権をかざしながら、その危機を回避されたかのように伝わっているわけですけれども、これは自民党総裁としての地位を、公の機関である内閣総理大臣の権限を駆使して、いわば私したというそしりを免かれないんだろうと、この点お答えいただきたいことが一つ。  それからもう一つは、そうは言いながら内閣総理大臣というのは国会の任命である、その責任はと仮におっしゃったとした場合に、なおかつこの国会、衆参両院構成している自由民主党議員の三分の二が異なった意見を持っている事実にこれまた変わりはない。それを国民は新聞を通じて知りながら、さてその総理が責任を果たすということはいかなる根拠を基盤に置いてであろうかと、やはり首をかしげざるを得ない。ですから、そこで総理として責任を続けて果たしますとおっしゃるんなら、不信任案があれば別ですがとおっしゃいましたが、むしろ信任決議を求めるべきではないか。それがあるのなら私は理解します。  以上二点について伺いたいと思います。
  286. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ栗林君もいろいろ自民党の中に立ち入って御心配を願うわけでございますが、自民党はすべて良識をもって物事を今日まで進めてきたわけでございます。過程においてはいろいろありますよ。過程においてはどの党でも私はそうだと。いろいろあるけれども、しかし、出た結論に対してはみんな挙党一致これに従ってきたわけです。それを貫いたものは良識である。良識である。だから、いろいろ御心配をかけるようなことには、これは政権担当政党ですからね。それだけにやっぱり国民に対しても直接の政治の責任を持っているわけです。野党が持っていないわけではありません。しかし、政権を担当している責任の重さはあるわけですから、そのことを頭に置きつつ、自民党は良識を持つ政党としていままでも、過程においてはいろいろあっても、出た結論に対してはみんな一致してきたわけでございますから、いろいろ栗林君に御心配をおかけするようなことのないように、政局を運営しなければならぬと思っておるわけでございます。  また、何も信任投票を求めるというわけではございません。これはそういう必要も感じてはいないわけでございまして、いずれにしても責任を果たすということは、いろいろなことがあっても、それに対してやはりちゃんとしたけじめをつけておくということでなければ、何か問題が起こるたびに総理大臣がやめれば責任が今度は果たせるんだというふうには私は責任は考えてないと。その起こった問題をやっぱりちゃんと処置するというところに責任があるんだと私は考えておるわけでございます。     —————————————
  287. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 委員の異動について報告いたします。  本日、鈴木一弘君が委員を辞任され、その補欠として矢原秀男君が選任されました。     —————————————
  288. 野末陳平

    ○野末陳平君 三木内閣はまあ何にもやってないと、やったのは値上げだけだというような悪口もあると思いますけれども、私の見る限り、三木総理大臣はまだまだ政権担当の意欲があるのではないかと思いますから、まあしかし、また事情がどう変わるかわかりません。そんなことで、いつ総理大臣をやめられても構わないように、いまのうちに方針だけははっきり打ち出しておいていただくと、今後それがまあ置きみやげのようなもので、私どもの方も意欲に非常に便乗するようですが、はっきりした方針はほしいと思うんです。  そんなことを前提にお聞きしますが、先ほど戸塚委員からちょっとデノミの問題ありまして、私もこれに関心持っているんですが、賛成反対いろいろな意見を聞いても、どちらもまあ決定的なもんじゃありませんし、それからどうしてもいますぐやれというほど実施に決定的な根拠があるわけでもないし、そんなことで、何か話題だけで終わっているような気がするんですが、いま三木総理お答えになった点では、要するに物価安定の状態が非常に大事なんで、いまは適当な時期じゃないと、デノミをやるにはね。もう少し安定したらこれは考えなきゃいかぬというようなことをさっきお答えになりましたが、この安定というのは非常にあいまいな言葉で、どの程度を総理デノミをやるにふさわしい物価安定の時期とお考えになっているのか。具体的に何かめどになるような数字をちょっと示してほしいんです。そうしないと、福田副総理の本会議の答弁なんか、もう物価は結構安定しているじゃないかというようなこともあったり、三木総理自身も大局的にインフレは回避してもう物価はかなり安定していると言われたり、これは安定という言葉の使い方によってえらい受け取り方が違います。少なくともデノミやるにふさわしい物価安定の時期、具体的にめどはどういうのか、数字でもってちょっと示してほしいです。
  289. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) こういうことじゃないですか。デノミはやるべきだと思いますよ。やるべきだと思うけれども、それは時期というものを慎重に考えなきゃならない。その物価の安定ということは、要するにただ物価が落ちついておるということでなくして、物価問題に対して非常に注意深くこれに警戒をしながら物価の安定を図らなければならぬというような必要のないような、  一応物価の安定ということは軌道に乗ってきた。これからもわれわれとしては物価の安定ということを絶えず総需要の管理とか、いろいろな点で物価の安定というのは、必ずしもいま政府が物価安定への政策努力というものを抜きにして物価の安定というものが達成できるとは思わない。よほど努力もしなきゃならぬわけですから、そういう努力も必要なくして物価というものは一応安定してきたということで、デノミによってそれがいろいろ経済界、ことに物価その他の経済に対して非常な急激な影響を与えるというような懸念のないときですから、そのためにはやっぱり物価が余り警戒しないで安定したということで、いまここで何年先ということを言えということには、少し流動的な要素もあるので無理だと思います。
  290. 野末陳平

    ○野末陳平君 何年先とお聞きしたんじゃなくて、現在は確かに物価安定に努力をしなければならないし、また不安な要素もありますから、いまが時期だとは思っていません。しかし、今後物価安定に気を使わないような、そういう意味の安定状態が来るかどうかということになると、これもまたわかりませんから、そんなことしていると、デノミはやるべきだと、やるべきだがいつも時期じゃない、時期じゃないと言って、いつまでいくのかこれもわからないんで、何か最後は決断になるのかなと思ったりするんですが、大体総理はとにかくデノミをやるべきだというところまではわかりましたので、これ以上はお聞きしません。  次に、この委員会でもやはり一番問題になった国債を発行するに当たって、あるいは増税問題を考えるにしても、現行の不公平税制と言われる、俗に。これを厳しく見直さなきゃいかぬと、これは常識にもなっている。ところが、具体的になかなかむずかしいのですが、今回感じたのは、いままで不公平税制の象徴とも言われるような例のお医者さんの特別措置ですか、あるいは優遇、あれがいつも先に延ばされていた、今回はあれを絶対にやらなきゃいかぬというような声が余り聞かれないような、非常にムードがなくなったような気さえするんですよ。これはやっぱり絶対に改善しなきゃいけないんですが、税制だけでは解決できないという面もわかります。前回の委員会でも私はこれもお聞きしたんですが、これもいつまでいっても何か決断がないと、ずるずる先延ばしと、これじゃいけないと思うんです。不公平税制厳しく見直すんだといったらば、租税特別措置の中の企業関係のもの幾つか手直しするという程度にとどまらず、少なくもこの典型的なお医者さんのこの特例措置は何とかしてもらわなければならぬ。来年度はどうしても若干の手直しというか、これを具体的にどこかを改善をしてほしいと、こう思うんですが、総理大臣いかがですか。またこれも先へ延ばして、いまはいろいろ事情があってと言われると、またかというんで、がっかりしちゃうんですが、ひとつお願いします。
  291. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま野末君の御指摘のように、これは複雑な問題でもあることは御承知のとおりです。厚生大臣のもとで医療問題に関する専門的な学識経験者の意見というものをいま体系的に聞こうとするために、医療問題専門家会議というものを設けたところでありますけれども、そのやはり検討の状況等も参酌しつつ適当な措置を講じたい。できるだけ早くこの問題を解決をしたいという考え方には変わりはないんですけれども、そういうふうな手続をとって意見も聞きながら決めたいと考えておるわけでございます。
  292. 野末陳平

    ○野末陳平君 どうも一年たっても余り前進がないんでがっかりしちゃうんですね。何となく人任せでね、結論が。複雑な事情はわかるんですけれども、そればかりをこだわっていると、いつになっても何か言葉だけで、不公平税制の厳しい見直しなんというのが実がないような気がしてしようがないんですが。  それから、増税の問題ですが、これは私もある程度はやむを得ないんだと、ただしそれはある程度、程度の問題と、それから内容の問題と二つありますけどね、しかし、いずれにせよ、福祉は後退するわけにいかない、やはりこの増税を考えた場合に、企業増税も限界もあるでしょう、間接税を強化する方向をどうしても考えざるを得ないんじゃないかと。その場合に総理、目先中期展望ここ数年というふうに限らしていただきますが、総理御自身のお考えは消費税に似たようなものですね。まあ付加価値税なんという言葉も出てますけども、この方向はもうやむを得ないと総理もお考えか、あとは時期だけだということなのか、やっぱりこれは好ましくないから、ほかの点で増税を図って、これだけはちょっと手をつけたくないんだということなのか、その辺微妙な違いですけども総理のこの間接税を強化、特に消費税関係、この辺のお考えをはっきりお聞かせ願いたい。
  293. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ、相当にいまアメリカと同じように日本も、直接税の負担が税収の中でほとんど大きな部分を占めておる、西欧諸国に比べれば。間接税というものの負担は軽いのですね。もう少し何か間接税というものにウエートをかけるべきではないかという声が相当に強いわけです。だから、いまどうしたって今後われわれが福祉社会を目指すとすれば、これは政府だってこれ手品ではないわけですから、これに見合うだけのやっぱり財源が必要なんで、ある程度の負担というものは、国民に願わなけりゃならぬわけでありますから、しかし、税というものは、国民生活に影響するところが多いので、いまやっぱりそういう問題も含めて、税制調査会などでも検討願っておるし、また先ほどお話のあったように、税の問題は国民の納得も得なきゃならぬわけですから、そういう点で慎重を要しますが、まあいま申したようなことも、税制調査会でも、所得税課税にしても、資産課税にしても、消費税、全般の一つの見直しをお願いしておるわけであって、その中にはもう少し間接税にウエートを置くべきだという声もあることは事実でございまして、しばらくこの税制調査会などの検討もひとつわれわれが今後の租税というものを考えていく場合に、重要な参考にしたいと思っておる次第でございます。
  294. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 暫時休憩いたします。    午後六時三十二分休憩      —————・—————    午後七時五十七分開会
  295. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案議題といたします。  野々山君から発言を求められておりますので、これを許します。野々山君。
  296. 野々山一三

    野々山一三君 大臣、先ほど中期債の問題をめぐりまして、本来財特法案及び本年度予算の資料では、十年債というものを前提にした償還計画表を議会に出していただく、これは法案四条ですか、に基づいて、償還計画表は国会に提出しなければならない。と書いてあるから当然お出しになった。ところが、この法案審議過程において中期債三千億というものを新しく発行したいと、こういうことになってまいりましたために、償還計画表そのものが変更にならなければ、むずかしく言えば、国政調査権を否定するのか、あるいは軽視するのかという議論になるわけなんで、私が問題にしたわけでございます。  そこで、当然のことのように、本来償還計画を議会に提出しておったものを変更しなければいけない。この法案が通って発行するならば当然そういうことにならなければいけないということになるはずでございます。  そこで、さらに先ほど五年債もあれば、十二年債もあればということになったんでは、裁量権の乱用ではないかということを申し上げたわけであります。その点についてもこの際大臣の見解を明らかにしていただきたい。  そして、本来と申し上げたことは、中期債に基づく償還計画が出てないのだけれども、新たにそれを発行されるとするならば、されると考えるのが常道になってきているわけですけれども、そうした場合には、当然償還計画表を改めて国会に提出しなければ国政調査権を否定することになり、本法案の四条ですか、これを無視することになるわけでございます。その点についての見解を承りたい。この三点ですね。  で、私は本来長期債が賛成なんだと、そういう立場ではなく、むしろ別な意味で貯蓄債というようなものも、しかも、政府側でお考えになっていらっしゃる中期債三千億の構想というものも、内容的にもっと改めて、一つは、国民の市中消化というものを助成強化する、一つは、インフレを抑えるために金利との兼ね合いで金利を調整する。つまり、いまのやつは八・三%の金利で中期債を考えているわけなんです。で、これをそのまま、私ども議論の中でうちの会派の委員の皆さんから指摘しておりますように、十年債で八・三とか、あるいは八コンマ何々という安い金利では、目減りというものが起こるではないかというのも反対論の一つなんでございます。そうすると、市中消化は困難になる、目減り論はどうするかという議論が起こるわけでございまして、そういう意味では、貯蓄債という限定債をつくってやるならば、そして金利を高める、そして金利に対する税金は一二と三〇という議論が委員会でもございましたけれども、そこの調整を図らないと、金持ちだけが得をする貯蓄債、中期債になっては困るんではないかというのが終始貫いてきた議論でございまして、そういうものをも含めて限定された貯蓄債というものを構想すべきではないか。しかも、それは条件つきで、経済安定法というようなものとは別に経済安定基金というものを考える、そして財政法も見直していく、そして単年度主義を改めるという論から出発したことはあなたも御承知のとおりでございます。そういうような構想をもって考えるということには、ここではもういまさらとやかく言いませんけれども、中期債も反対だ何も反対だというような、やぼなと言っては語弊があるかもしれません、そういう議論ではなしに、前向きに今日の日本経済を安定化するということを通して、公債を柱にして日本経済の安定政策というものを通して政治信頼というものを回復していくということが、今日の国民的な願望ではないか、そういう視点から公債というものを論ずべきではないかというものなんでございまして、そういうことの議論が十分になされないうちに、ひょいと出てきたのが中期債である。これは第二の、大臣の裁量権の乱用ではないかという議論になるわけでございまして、国政調査権をもっとそんたくしなければいけないと、こういう立場で伺っておるわけで、この点についても今後万遺漏のないようにしてもらいたいということを改めて伺いまして、さらにお答えによっては私も意見を述べたいと思います。
  297. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 休憩前の本委員会におきまして野々山委員から、今回政府で計画いたしましてシンジケート団と協議をいたしておりまする中期債の問題に関連いたしまして、若干の問題点についての御指摘がございました。これは、「国債ニ関スル法律」によって大蔵大臣に与えられた権限は無制限なものであってはならない。おのずからそこに守るべき節度というものがあるはずだという根本的なお考え方が一つ。それから国会に予算書で提出いたしておりまする償還計画表との関連をどうするのかという盲点をどのように修理していくかという問題が第二点でございます。第三点といたしまして、大蔵大臣の権限に基づいて新しい種類の国債を発行した場合の国政調査権との関連において、国会に対する措置をどうとるのかというような問題についての適切な御指摘がございました。その後、その問題提起を受けまして、政府部内で検討熟議いたしました結果、以下のように考えがまとまりましたので、本委員会に御報告申し上げて御了承を得たいと存じます。   一、国債の発行条件は、「国債に関する法律」により、大蔵大臣が決めることとされている。従って、一般的な法律論としては、国債の償還期限は大蔵大臣が定めうる事柄である。   二、しかしながら、財政法及び審議中の特例公債法は、公債発行限度の議決を受けるに当って、「償還の計画」を国会に提出すべき旨を定めている。この規定に基づき、五十一年度の公債発行については、既に償還計画表を国会に提出しているところである。   三、そこで、当初予定した期限と異った新しい公債発行を行う場合は、予算審議の基礎となった当初予定の特例公債法第四条に基づく償還計画表と実態が異ってくることとなるので、変更後の償還計画表をあらためて国会に提出することとする。   四、なお、今後においては、国会の審議に問題が起らないよう、償還計画表の作成についてなお一層慎重に取扱いたいので御了承願いたい。  以上が、中期債の発行に伴いましての大蔵大臣の権限、償還計画との関連、国政調査権との関連について野々山委員の御指摘になった問題点に対する政府お答えでございます。  それから第二点でございますが、中期債の構想は、国債の多様化、金融資産の多様化の一つであるけれども、これは何もこれに限ったことではないので、たとえば貯蓄債券の構想その他広く構想して研究すべき問題ではないかと、政府は今度金融資産の多様化、国債の多様化の問題、個人消化の促進対策としても、なおこのほかに新たにいろいろな方法をあらゆる角度から検討すべきものと思うがどうかという趣旨の第二の御質問でございました。  仰せのとおり、私どもがいま構想いたしてシンジケート団と御相談申し上げておりまする中期債は、一つの構想にすぎないわけでございまして、これからの国債政策は、仰せのようにいろいろな角度から考えてまいらなけりゃならない非常に広範な政策領域の問題だと心得ております。したがって、御指摘の貯蓄債券ばかりでなく、いろんな構想につきまして虚心に検討してまいらなけりゃならぬことは仰せのとおりでございます。ただ、今日の状態におきまして、さしあたっていま御論議をいただきました中期国債が、当面一番適しておるのではないかという判断で、限られた金額をこの際発行することについて、シ団との話し合いに入っておるということでございまして、その他の方法につきましても、今後いろんな角度から検討していくことに決してやぶさかでないことを御報告申し上げます。
  298. 野々山一三

    野々山一三君 先ほど政府側として、その国債を発行するに当たって償還計画変更の問題についてお述べいただいた四項目の大要の趣旨はわかりました。  そこで、三点だけちょっとお伺いしておきたいんですけれども一つは、先ほども御指摘のように、シンジケート団とすでに中期債についての話し合い、六項目の要綱を提示してお話しをなさっていらっしゃるわけで、間近にこれは告示されるものという時期が来るものと考えるわけでございます。そこで、「あらためて国会に提出することとする。)というふうにお答えになったわけですけれども、これは当然国会に提出されることであり、現実的には予算の資料としてすでに出されておるものが変更されるわけでございますが、一つは、これはわからぬと言われればそれまでかもしれませんが、国会開会中であれば、当然国会開会中にかような変更をいたしますということをなさるのが「あらためて」ということに解するわけでございますけれども、これは間違いないことでありますか。で、当然これは予算委員会でも審議の対象になったものでございますから、議会の審議権という角度から言えば、当然正規のルートに乗っかってこの変更の手続がなされるべきであると理解するが、いかがでしょうか。  それから三番目は、第四項に「今後においては、国会の審議に問題が起らないよう、償還計画表の作成についてなお一層慎重に取扱いたいので御了承願いたい。」、こういう文言の「国会の審議に問題が起らないよう」にということの「問題」という意味は、国政調査権というか、国会の審議権というものの尊厳を、十分法案のその四条の趣旨及び今回のお出しになった見解の趣旨に基づいて、国政調査権、審議権の尊厳は守りますというものでございますという趣旨でございますねと確認をしたいわけでございます。  以上、三点。
  299. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま御指摘の点、仰せのとおり、心得ております。
  300. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 以上をもちまして、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  301. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 質疑を終局することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕   〔「委員長、異議あり、意見、意見」と呼ぶ者あり〕
  302. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 多数と認めます。よって、質疑は終局することに決定いたしました。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。
  303. 大塚喬

    ○大塚喬君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております財政特例法案につきまして反対の意を表明するものであります。  以下その理由について申し述べます。  本案は、昭和五十年度の補正予算に続いて昭和五十一年度も大量の赤字国債を発行しようとするものであります。  まず、反対理由の第一は、政府は、政府経済政策の失敗により招いた今回の不況の深刻化についての政治責任を明らかにしないまま、わが国の財政運営の基本法である財政法を形骸化しようとすることであります。政府は、財政の本来あるべき姿を求めることなく、安易に赤字公債発行に頼るという政治姿勢は、断じて国民の容認せざるところであります。すなわち今年度の一般会計における公債発行依存度は、他の先進諸国に例を見ない二九・九%というきわめて高いものとなっており、戦前の軍費調達を中心とした安易な財政膨張を助長した高橋財政の二の舞いの危険性を想起せざるにはいられないのであります。国債に対する国民の信頼保全のためにも、安易な公債依存は厳に慎まなければならないところであります。財政審の答申にもうたっているとおり、適正依存度とされる五%以内という精神を尊重すべきものと思うのであります。  反対の第二の理由は、われわれがかねてから現行税制に内包する不公正の払拭を強調しているにもかかわらず、今年度の租税特別措置の整理合理化による増収額はわずかに百五十億にすぎないのであります。政府は、企業優遇税制の全面的見直しをうたっているものの配当軽課、法人の受取配当益金不算入など、本来の企業優遇税制の是正に着手することなく、他方国民的要請となっております所得税減税を見送り、不労所得である利子・配当所得等、資産所得の優遇を温存したまま、財政危機のしわ寄せを経済的弱者に強いて、何ら反省の片鱗さえも持ち合わせていない政府に対し、限りない憤りを感ずるものであります。  反対の理由の第三は、財政危機的状態のもとでの五十一年度予算編成の性格についてであります。現行の財政支出は過去の高度成長期に構築された産業優先、輸出振興型であり、今後安定成長期を目指すとすれば、その抜本的な洗い直しが不可欠なものであり、絶対に必要なものであります。しかるに今年度の予算は、たとえば公共投資について見ましても、依然として道路、港湾等、産業設備の充実を優先し、国民生活の安定向上に資する社会資本の整備を怠る政府の態度は、福祉充実を求めてやまぬ国民の要請とは大きく離反していることの証左にほかならないものではありませんか。  さらに、補助金についても同様、その全面的な洗い直しを行うことなく、今年度は、前年度当初比一九・三%増の多額を計上し、財源の効率的配分を何ら配慮してない政府の怠慢さは許すことができません。過去における税の自然増収が期待し得ない今日、なお安易な予算編成作業を改めずにいる政府の姿勢に対し、重大なその政治責任を追及さるべきものと考えるわけであります。  最後に、放漫な予算編成の結果、大蔵省の財政収支試算に見るとおり、昭和五十五年度の国債残額は実に五十一兆四千億円の巨額にも達することになり、これは実に国民一人当たり四十六万円余の借金を負わすことになるのであります。われわれ現在立法府にある者は、いかに過酷な負担を後世代の人々に押しつけることになる、全く顔向けのできないところであります。特に政府の示す赤字国債の償還計画は全く具体性を欠き、国民を愚弄しているものとしか判断できないのであります。  われわれは、すべて現行税制に見られる、たとえば租税特別措置等の不公正を払拭し、税の所得再配分機能を確保する、そして一方、産業優先的補助金を整理し、既定経費の全面的見直しを断行すれば、健全財政に立ち直ることは可能であり、したがって、赤字国債発行は全くその必要がないものと考えるわけであります。  以上、反対の立場を明確にし、私の討論を終わりといたします。
  304. 中西一郎

    ○中西一郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案に対して賛成の意を表明するものであります。  昭和五十一年度の予算は、戦後最大の不況の中にあって、景気の回復と雇用の安定を図るとともに、財政体質の改善合理化を進めることを主眼として編成されたものでありますが、その歳入を賄うべき税収は、五十年度に引き続き、なお不足が見込まれる状態にあったのでありまして、現在におきましても、景気の見通しにやや明るさを取り戻したとはいえ、税収見込みにつきましては必ずしも好転したとは言えない状況にあります。  歳入不足が見込まれる場合、歳出の削減または税の増徴によって対処する方法もないわけではありません。しかしながら、今回政府が、経済実情を踏まえ、大幅な歳出の圧縮や、一般的な増税を行うことは避けるべきであるとの判断に立って、五十一年度の特例措置として、建設公債のほか、特例公債発行によって適正な行財政水準の維持を図り、国民生活と経済の安定及び国民福祉の充実に配意しようとした政治的判断に対し、私はこれに基本的に賛成するものであります。  本案は、第七十七回国会において本院で継続審査となったものでありますが、予算額の一五%を占める重要な歳入法案である以上、本来なら予算と同時に成立していなければならない性質のものであります。これが半年を経た今日に至りましたことは、きわめて不自然であり、かつまた、財政運営上あるいは景気回復にも多大の影響を与えたのでありまして、まことに遺憾とするところであります。今後このようなことがないよう、立法府も行政府も一体となって努力を重ねるべきだと痛感する次第であります。  また、本案は、あくまでも特例的な措置であり、速やかに特例公債に依存しない財政に復帰することが財政運営の要締であります。財政の正常化が、国民の適切な負担のもとにおいて、一日も早く実現するよう、政府の一層の努力を要請いたしまして、本案に対する賛成討論といたします。
  305. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案について反対の討論を行います。  反対理由の第一は、本法律案は、財政法の精神を無視し、これを形骸化しようとしていることであります。  政府は、みずからの経済政策の失敗が招いた巨額な歳入不足を補うため、財政法で認めていない赤字国債を安易に発行しようとしています。財政法では、原則として国債の発行を禁止しようとしており、あくまで例外としてただし書きで建設国債の発行を認めているのであります。ところが、この建設国債の安易な増発により、償還分を差し引いた残り累計額で十兆八千億円にも達しているのであります。昨年度まででも他の先進諸国に比して国債依存率はずば抜けて高く、本年度予算においては何と国債依存率が約三〇%という戦時並みの異常な事態になっております。しかも、来年度も赤字国債の発行は必至とされております。このように安易に国債を発行し、国債に抱かれた財政運営は、財政法の精神である健全財政を踏みにじるものであり、容認することはできません。  反対理由の第二は、不公平税制の温存を初め、歳入歳出の抜本的な洗い直しを放置していることであります。  現在の財政危機を乗り切るには、不要不急経費の削減や、補助金行政の洗い直しなど、まず歳入歳出の洗い直しを徹底して行うことが先決であることは当然のことであります。特に国民の強い願望である不公平税制の是正は早急に行わなくてはなりません。この改革も行わずして、政府が財政危機に真剣に取り組んでいるとは認めることはできません。  反対理由の第三は、償還計画がずさんであるということであります。さきに大蔵省が発表した中期財政展望によりますと、五十五年度末の国債残高は五十兆円にも及び、そのうち赤字国債の累積額は十一兆から十三兆円になると試算されております。政府は、この巨額な赤字国債を借りかえなしの十年償還としていますが、その財源については、全く具体性を欠いております。すなわち政府の予定する百分の一・六の積み立てとか剰余金では、償還財源とならないことは明らかであるし、仮に一般会計から国債整理基金に繰り入れるとすれば、それは巨額なものとなり、これが将来のわが国の財政に硬直化をもたらすことは必至であります。  こうした政府具体策なき財政展望は、インフレ再燃、福祉切り捨て、増税など、国民生活を窮地に陥れ、将来に多大な禍根を残すことになり、認めることはできません。  以上、申し述べた三つの理由により、昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案に反対し、私の討論を終わります。
  306. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、日本共産党を代表し、昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案に反対の討論を行います。  政府は、この法案が早く成立しなければ財政が破綻するとか、経済悪影響があるとか宣伝してきました。わが党はすでに一月二十五日発表した「五十一年度予算に関する日本共産党の主張」の中で、今年度予算は、財政破綻の根源である大企業本位の浪費財政ではなく、国民生活擁護と地方財政危機打開を重点としたものとすること、その財源は、軍事費その他の不急不要の経費を削り、大企業、大資産家への特権的減免税制度を徹底的に改廃すれば、赤字公債発行を行わずとも賄えることなどを明らかにしました。政府が、これらの主張に耳をもかさず、しかも、すでに半年間も予算を執行したあげくに、財特法の成立を強引に迫ることは、無責任もはなはだしいものであり、ロッキード疑獄にもあらわれている政府・自民党の金権体質を示すものと言わなければなりません。  問題は、ただ、赤字公債発行をすればいいというのではなく、今日の財政破綻の根源を明らかにし、税、財政、金融の仕組みを抜本的、民主的に改革することです。ところが政府は、この点についてのわが党の質疑に一片の誠意も示さず、要求した資料も十分には提出せず、また自民党は、まだ審議が尽くされていないにもかかわらず、強引に採決に持ち込み、これに対するわが党の反対討論さえ封殺するというありさまであります。わが党は、財政の民主的再建に何の保証もなしに、引き続く赤字公債の大量発行を認めることはできません。以上が、反対の第一の理由であります。  反対の第二の理由は、この赤字公債の大量発行国民に対しインフレと重税、福祉切り下げの苦しみをさらに加重させることにあります。このことは、ここ数年深刻な不況下にもかかわらず、公債の大量発行に伴って、日本銀行の国債保有高が、昭和四十八年度の一兆四千六百三十億円に対し、四十九年度二兆八千九百三十一億円、五十年度の五兆四千百五十三億円と急増し、これが重要な原因となって通貨の増発と今日の物価高が進行していることを見れば明らかです。また重税について言えば、大蔵大臣が赤字公債を口実に今年度に引き続き来年度も所得税減税をやらないこと、すなわち実質的な増税を行うことを言明し、またいま、付加価値税制の導入を含めた将来の大増税の方策が公然と検討されていることを見れば明らかです。  反対の第三の理由は、政府が今後とも、とめどない財政破綻の道を進もうとしているところであります。本日、総理大蔵大臣は、財政法を改悪して財政の単年度主義の見直し、赤字決算の制度化などを将来実施する意図を持っていることを表明しました。このことは、現在、特例法の形で行われている赤字公債発行を恒常的なものとして、国の財政制度に組み込もうとするものであり、将来のとめどない財政破綻の道を公然と切り開くものと言わざるを得ません。  わが党は、このような国民生活と健全財政を踏みにじる道ではなく、租税特別措置その他の改廃による大企業、大資産家への正当な課税、軍事費など不急不要経費の削減などを根幹とした税、財政、金融の根本的民主的転換こそ、今日の急務であることを重ねて強調します。  なお、本法案に対する附帯決議は、そのほとんどの項目が政府・自民党側の意図をあらわすものとも、また別の意図をあらわすものとも解釈できるものであるため、にわかに賛成できません。よって、棄権の態度をとることを表明して、私の討論を終わります。
  307. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案に対し、反対の討論を行います。  本法律案は、予算案の成立前と成立後では審議の内容を異にします。予算案の成立以前には、予算編成の問題点とあわせて財源調達手段の適否が徹底的に審議されなければなりません。しかし、予算案が成立し執行段階に入って以降は、公債特例法処理の時期が重要な意味を持っていることを認識しなければなりません。これは法案に対する賛否を越えた実務上の問題であります。したがって、われわれは前国会末において、会期の延長もしくは早期臨時国会の召集を当然のこととして予想しておりました。しかるに政府は、八月末ないし九月上旬を法案成立のタイムリミットと主張しながら、九月十六日に臨時国会を召集するありさまであり、その結果、法案の委員会処理は一ヵ月以上のおくれをもたらしました。このことが国民各層に与えた心理的不安感、あるいは国と地方を通じての行政の停滞は著しいものがあります。本委員会における審議に協力を惜しまなかった野党の一人として、この責任は挙げて政府及び自民党にあることを強調しておきます。また一カ月を超える遅延にもかかわらず、もし支障なしに特例債の発行が消化し得たとしたら、今後再び財政当局の警告に耳を傾ける者がないであろうことをも、この際申し上げておきたいと思います。  次に、法案の内容について反対理由を申し上げます。  第一には、この特例債の発行景気対策としての役割りを持つものか、あるいは財政欠陥の穴埋めとしてのものなのか、その性格と発行の目的が不明確なことであります。もし景気対策の特例としての性格のものであるとしたら、本法案の適否は、景気対策の効果の見通しとの関連で検討されなければなりません。しかし、政府は口では景気対策との結びつきを主張しながら、その効果について審議の材料を何も提供しておりません。そしてむしろ、財政欠陥の穴埋めの対策としての意識の方が強いようであります。しかし、歳入の不足は、経済の不況がもたらした結果であって原因ではありません。財政の欠陥にのみ着目し、特例債の発行を考えることは原因と結果を取り違え、減税が要求されている時期に、増税を語る誤りを重ねるものと言わざるを得ません。また財政の欠陥に着目するとしても、行政費の削減について、すでに昨年の特例発行以来一年を経過している以上、義務的経費の見直しとあわせて、政府の計画と具体的展望を示すのが筋道であります。しかし、その努力を認めることはできません。  一方、この間にあって、政府は借りかえはしない、剰余金については全額償還財源に充てるなど、過度に歯切れのよい見解が示されてまいりました。このことが今後の健全な財政運営にとってよかったかどうかは疑問であります。来年度は減速経済への移行を期すべき第二年目であります。経済実態を踏まえた冷静かつ長期的な政策の見直しを強く求めて、反対の討論を終わります。
  308. 岩動道行

    委員長岩動道行君) これにて討論は終局したものと認めます。   これより採決に入ります。  昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  309. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 可否同数と認めます。よって、国会法第五十条後段の規定に基づき、委員長において本案に対する可否を決します。  本案については委員長はこれを可決すべきものと決定いたします。  野々山君から発言を求められておりますので、これを許します。野々山君。
  310. 野々山一三

    野々山一三君 私は、ただいま可決されました昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。     昭和五十一年度の公債発行特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当り次の事項について十分配慮すべきである。  一、大量の国債依存財政、なかんずく特例公債依存の赤字財政から脱却し、健全財政を確立するため、財政収支の改善に全力をつくすとともに、極力国債発行額を圧縮すること。  二、国債は将来の国民の負担となるので、償還財源の確保につとめ、償還に支障のないようにすること。また財政支出にあたつては不要不急経費を削減するとともに、補助金行政を洗い直すなど抜本的行財政改革に着手すること。  三、財源対策としては、直接税、間接税等のあり方など税制の中長期にわたる基本的見直しを行い、又負担の公平を一層期すること。  四、国債発行が地方債の発行ならびに民間の資金需要を圧迫することのないよう十分留意すること。  五、国債の市中消化、とくに個人消化を強化するよう公社債市場の整備につとめること。   右決議する。  以上であります。
  311. 岩動道行

    委員長岩動道行君) ただいま野々山君から提出されました附帯決議案を議題といたします。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  312. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 全会一致と認めます。よって、野々山君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対して、大平大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。大平大蔵大臣
  313. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って十分配慮をいたしたいと存じます。
  314. 岩動道行

    委員長岩動道行君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  315. 岩動道行

    委員長岩動道行君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時四十分散会