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1976-10-26 第78回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十六日(火曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  十月二十二日     辞任         補欠選任      小野  明君     鈴木  力君  十月二十五日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     藤井 恒男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 竹田 現照君                 加藤  進君     委 員                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 剱木 亨弘君                 菅野 儀作君                 林田悠紀夫君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 鈴木  力君                 森下 昭司君                 桑名 義治君                 安武 洋子君                 藤井 恒男君    衆議院議員        修正案提出者   上坂  昇君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        通商産業大臣官        房審議官     織田 季明君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        中小企業庁長官  岸田 文武君        中小企業庁計画        部長       児玉 清隆君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        運輸省船舶局関        連工業課長    清水 正彦君        林野庁木材需給        対策室長     松延 洋平君        労働省職業訓練        局訓練政策課長  中谷  滋君    参考人        中小企業振興事        業団理事長   佐々木 学君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○中小企業事業転換対策臨時措置法案(第七十七  回国会内閣提出、第七十八回国会衆議院送付) ○揮発油販売業法案(第七十七回国会内閣提出、  第七十八回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  中小企業事業転換対策臨時措置法案の審査のため、本日、参考人として中小企業振興事業団理事長佐々木学君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 中小企業事業転換対策臨時措置法案揮発油販売業法案、以上、両案を一括して議題といたします。  中小企業事業転換対策臨時措置法案について趣旨説明を聴取いたします。河本通商産業大臣
  5. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 中小企業事業転換対策臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  最近の中小企業を取り巻く内外の経済環境変化は、発展途上国追い上げ等による輸出減少及び輸入の増大技術革新等による需要構造変化、原材料の入手難公害防止に係る企業社会的責任増大などきわめて厳しいものがありますが、加えて、わが国経済は従来の高度成長から安定成長へと大きく転換しようとしており、中小企業はこれらの新たな情勢への対応に迫られております。  御承知のとおり、わが国中小企業は、その旺盛な活力と創意工夫によって、戦後幾たびか遭遇した経済的変動によく対処して、その困難を乗り越え、時代の要請にこたえてきたのでありますが、今日の新たな情勢に対しましても、従来にも増して合理化近代化を進め、経営力の強化を図る一方、一部の中小企業におきましては、その事業転換を図ることによって、このような厳しい環境変化に柔軟に適応し、経営の安定と発展を図ろうとするものも見られるのであります。  しかしながら、安定成長期におきましては、これまでの高度成長期と異なり、事業転換も容易ではなく、それを成功に導くためには、中小企業者自身努力はもちろんとして、各般の支援措置が必要と考えられます。  これまで中小企業者事業転換を円滑にするための対策としては、特恵供与ドルショックに対応しての緊急避難的な転換対策がありますが、これでは今日の中小企業が直面している事態に対して十分とは言いがたい状況であります。  そこで、最近の経済環境の著しい変化に対応して中小企業者が自主的に行う事業転換を支援するため総合的に対策を講ずる必要があると考え、本法案提案申し上げた次第であります。  なお、以上の観点からして、本法案は、安定成長経済への適応のための期間として想定される十年間の限時法とすることといたしております。また中小企業特恵対策臨時措置法及び国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律は、本法案の施行時に廃止することにいたしております。  次に、この法案要旨を御説明申し上げます。  まず第一に、貿易構造その他の経済的事情により相当数中小企業者がその事業活動支障を生ずる業種を全国的にまたは産地を限って指定することとし、その業種に属し、かつ、事業活動支障を生ずる中小企業者であって事業転換を行おうとするものは、その転換計画について都道府県知事認定を受けることといたします。また、指定された業種に属さない中小企業者であっても、同様の事情にある場合には、同じく都道府県知事認定を受けることができることといたします。  第二に、これらの転換計画認定を受けた中小企業者に対し、資金確保中小企業信用保険特例措置及び税制上の特例措置を講ずることにより、その転換を円滑に進めることができるよう援助することといたしております。  第三に、事業転換に伴う中小企業従事者職業訓練実施、就職のあっせん等を講ずるよう努めるとともに、事業転換を円滑に行うことができるよう必要な指導及び助言を行うことといたしております。  以上が、この法案提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。岸田中小企業庁長官
  7. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。  中小企業事業転換対策につきましては、中小企業基本法において、国は「需給構造等変化に即応して行う事業転換を円滑にするため必要な施策を講ずる」と宣言しているところに従い、これまで特恵供与ドルショックに対応するための緊急避難的な転換対策及び業種別近代化を進める一環としての転換対策が進められてきました。しかしながら、これら既存の対策では、わが国経済安定成長への移行を初めとして今日の中小企業が直面している厳しい事態に対して十分対処することができない状況に至っております。  また、このうちドルショックに対処するため制定された国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律は、本年の十二月十五日で失効することになっております。  そこで、この際、中小企業者経済環境変化に対応して自主的に行う事業転換が円滑に行われるよう支援することにより、中小企業者がその経営資源を有効に活用できるようにし、これにより中小企業成長発展が図られるよう総合的な対策を講ずることといたしたく、本法案提案申し上げた次第であります。  本法案におきましては、まず、貿易構造変化による輸出減少その他の経済的事情の著しい変化によって生ずる事態を政令で定め、これにより影響を受け、事業活動支障画ずる中小企業者事業転換を行おうとする場合には、その転換計画都道府県知事に提出し、その計画が適当である旨の認定を受けることができることといたします。この場合に、相当数中小企業者がその事業活動支障を生ずるような業種当該業種所管大臣中小企業近代化審議会意見を聞いて、また、産地を限って指定する場合には、これに加えて関係都道府県知事意見を聞いて指定することができることとしております。また、指定された業種に属さない中小企業者であっても同様の事情にある場合には、個別に判断して同じく知事認定を受けることができることとしております。  次に、政府は、この認定を受けた中小企業者がその計画に従って事業転換を行う場合に、その転換を円滑に行うことができるよう金融税制雇用面等において所要助成措置を講ずることといたしております。  すなわち、金融面においては、中小企業金融公庫及び国民金融公庫から事業転換特別貸付実施するとともに、中小企業振興事業団高度化事業貸付対象とすることとしております。さらに、信用保険について、付保限度一般の場合と同額を別枠として認めるなどの特例措置を設けております。  また、税制上の措置といたしましては、転換に伴って不用となる旧事業用の資産について、転換を終了する日までに繰り上げ償却を認めるとともに、合併または現物出資を伴う事業転換を行った場合には、清算所得または現物出資評価益に対する課税特例措置を設けることとしております。  次に、従業員対策としては、職業訓練実施のため、特に雇用保険法に基づく能力開発事業における助成措置対象とすることとしております。  さらに、中小企業者事業転換を円滑に行うことができるように必要な情報の提供を中心として指導助言を行うこととしております。  以上、この法律につきまして補足説明をいたしました。何とぞ、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  8. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 揮発油販売業法案について趣旨説明を聴取いたします。河本通商産業大臣
  9. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 揮発油販売業法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  近時、一般ガソリンスタンド業者と呼ばれております揮発油販売業をめぐって幾つかの重要な問題が生じております。  その第一は、揮発油販売業者間の過当競争弊害の問題であります。揮発油販売業者現状を見ますと、給油所乱設、過当な価格競争が繰り広げられております。現状を放置しておく場合は、中小企業者が大宗を占める揮発油販売業者の健全な経営確保が著しく困難となるばかりでなく、ひいては我が国石油産業経営基盤を弱体化し、石油製品全体の安定供給確保支障を来すおそれもあります。また、揮発油販売業者経営の安定は約一兆円に及ぶ揮発油税の保全のためにもぜひ必要であります。  揮発油販売業をめぐるいま一つの問題は、揮発油品質確保の問題であります。現在、揮発油灯油等油種の間には、税金を含めますとキロリットル当たり五万円以上の大きな価格差があるため、揮発油灯油等を混入した粗悪な揮発油が一部で販売されており、消費者利益確保から見て大きな問題となっております。  この法案は、揮発油販売業をめぐる以上のような状況にかんがみ、以下に述べる措置を講じ、揮発油販売業の健全な発達揮発油品質確保を図ろうとするものであります。  以下、この法案要旨について、御説明いたします。  第一に、揮発油販売業につきまして登録制度実施することとしております。すなわち、揮発油販売業を行おうとする者は、通商産業大臣登録を受けなければならないものとし、その登録を受けるに当たっては、揮発油品質管理適確に行うに足りる技術的能力事業を継続的に行うに足りる経理的基礎等一定の条件を満たしていなければならないこととしております。  第二に、登録申請に係る給油所が、通商産業大臣があらかじめ指定する地区に所在し、かつその給油所において揮発油販売業開始されることにより、その地区の他の揮発油販売業者相当部分事業の継続が困難となると認められるときは、通商産業大臣は、当該申請者に対し、事業開始の日の繰り下げ等を指示することができることとし、給油所乱設による過当競争弊害を未然に防止することとしております。  第三に、揮発油販売業者は、粗悪な揮発油販売してはならないものとするとともに、給油所ごと品質管理者を選任して、揮発油分析記録をしなければならないこととし、揮発油品質確保が確実に行われるようにしております。  第四に、通商産業大臣は、市場における標準的な販売価格に比べ著しく異なる価格揮発油販売している揮発油販売業者に対し所要勧告を行うことができることとしており、これにより揮発油消費者利益を保護するとともに、揮発油販売業者間の過当競争弊害を除去することとしております。また、この勧告では効果が上がらない場合においては、当該揮発油販売業者揮発油販売しているいわゆる特約店元売等卸売業者に対しても所要勧告を行うことができることとしております。  なお、登録要件に関して当初の政府案におきましては、第六条第一項第五号に規定されていた「揮発油品質管理適確に行うに足りる技術的能力」と同項第六号に規定されていた「揮発油販売業を継続的に行うに足りる経理的基礎」をあわせて「揮発油販売業適確に遂行するに足りる能力」とし、これを新たに同項第五号とすること及び通商産業大臣揮発油販売業者等に対し、価格に係る所要勧告を行うに際して、石油審議会意見を聞くこととすることの二点についての修正衆議院で行われております。  以上が、この法案提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。
  10. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。橋本資源エネルギー庁長官
  11. 橋本利一

    政府委員橋本利一郎君) 揮発油販売業法案につきまして、ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して簡単に御説明申し上げます。  現在、一般ガソリンスタンドと呼ばれている給油所は、全国で約五万三千カ所存在し、また、この給油所揮発油を初めとする石油製品販売を行っている者は約三万六千を数えています。これら揮発油販売業者は、国民生活に欠かすことのできない揮発油最終供給者として重要な役割りを担っていますが、最近、揮発油販売業をめぐって次のような看過できない問題が生じております。  その第一は、揮発油販売業者間の過当競争による弊害の問題であります。この問題は、従来から指摘されているところでありますが、最近に至り給油所乱設、過当な価格競争が問題となっており、中小零細企業者が多く、経営体質の弱い揮発油販売業者の多くを苦境に陥れております。揮発油販売業者の健全な経営確保を図るとともに、わが国石油産業経営基盤を強化し、揮発油を初めとする石油製品全体の安定供給確保するためには、このような過当競争弊害を早急に除去することが必要であります。  揮発油販売業をめぐるいま一つの問題は、揮発油品質確保の問題であります。  すなわち、現在、揮発油の元売仕切り価格キロリットル当たり約五万三千円でありますが、これに本年七月に増税されたガソリン税を加えますと約九万六千円となり、灯油等油種との間には大きな価格差が存在しております。このため、揮発油販売業者等においては、揮発油灯油等を混入する経済的誘因が働き、現に一部においては灯油が混入された粗悪な揮発油販売されているという事実が発生しております。このような粗悪品販売は、それ自体消費者を欺くものとして問題となるばかりでなく、実際にこれら粗悪な揮発油が用いられる場合においては、オクタン価の低下、不完全燃焼等の現象が発生し、自動車の走行に支障を来すこととなるなど、消費者利益確保上問題がきわめて大きいといえます。  揮発油販売業をめぐる以上のような状況にかんがみ、揮発油販売業の健全な発達揮発油品質確保が焦眉の課題となっております。  次に、この法案要旨を補足して御説明申し上げます。  第一に、揮発油販売業につきまして登録制度実施することとしております。揮発油販売業については、これまで石油業法により給油所所在地等を届け出ることを義務づけるにとどまっていましたが、本法案では、揮発油安定供給品質確保の見地からこれを通商産業大臣登録にかからしめることとしました。  なお、登録要件に関して当初の政府案におきましては、第六条第一項第六号に「揮発油販売業を継続的に行うに足りる経理的基礎」と規定しておりましたが、この表現が石油元売業者等揮発油販売業者に対する系列化等を促すような印象を与えることを危惧する向きもあることにかんがみ、同項第五号に規定しております「揮発油品質管理適確に行うに足りる技術的能力」という登録要件とあわせて、「揮発油販売業適確に遂行するに足りる能力」を新たに同項第五号とする内容修正衆議院で行われております。  第二に、揮発油販売業者間の過当競争弊害を防止するため、通商産業大臣は、一定要件に該当する場合には、揮発油販売業を行おうとする者に対し、事業開始の日の繰り下げ等所要指示を行うこととしております。本規制は、揮発油販売業者の健全な発達を図るためには、給油所乱設による過当競争を防止することが必要不可欠であるとの認識に立ったものでありますが、同時に給油所の設置に係る調整は、必要最小限の範囲にとどめるべきであるとの観点から、通商産業大臣指示は、過当競争弊害の著しい地区として通商産業大臣石油審議会意見を聞いてあらかじめ指定した地区に限定して行うこととしております。  第三に揮発油品質確保が確実に行われるようにするため、次のような考え方により規制しようとしております。  まず、登録の段階で、申請者揮発油品質管理適確に行う技術的能力について審査するとともに、登録を受けた揮発油販売業者に対して一定の規格以外の揮発油販売を禁止します。さらに揮発油販売業者に対して給油所ごと品質管理者を選任して一定の方法で揮発油分析をさせるとともに、その結果の記録を行うことを義務づけております。  第四に、揮発油消費者利益を保護するとともに、揮発油販売業者間の過当競争弊害を除去して揮発油安定供給確保するため、特に必要があると認めるときは通商産業大臣は、揮発油販売業者等に対し、所要勧告を行うことができることとしております。具体的には、市場における標準的販売価格に比べ著しく高い価格揮発油販売している場合には、消費者利益の保護の観点から、また著しく低い価格販売している場合は、揮発油安定供給確保観点からそれぞれこれを是正するための勧告を行うこととしております。  なお、揮発油販売業者等に対する勧告につきましては、その重要性にかんがみ、勧告を行うに当たってあらかじめ石油審議会意見を聞くこととする旨の修正衆議院で行われております。  以上、この法律案につきまして提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げました。何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  12. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 次に、揮発油販売業法案衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員上坂昇君から説明を聴取いたします。上坂昇君。
  13. 上坂昇

    衆議院議員上坂昇君) 揮発油販売業法案衆議院における修正点につきまして御説明申し上げます。  修正点の第一は、登録制実施により、石油元売業者揮発油販売業者に対する系列化が促進され、あるいは新規参入が阻害されるようなことがあってはなりませんので、登録拒否要件に関する第六条第一項のうち第五号及び第六号を併合して「揮発油販売業適確に遂行するに足りる能力を有しない者」に改めることとしたことであります。  修正点の第二は、通商産業大臣揮発油販売業者等に対する事態改善勧告により、揮発油販売価格が高値に安定して、消費者利益を害する結果を生ずることがあってはなりませんので、第十九条に、勧告に当たっては、石油審議会意見を聞いて行うものとする旨の規定を加えることとしたことであります。  以上であります。
  14. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 以上で両案の説明聴取は終わりました。     —————————————
  15. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 中小企業事業転換対策臨時措置法案について、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  16. 森下昭司

    森下昭司君 まず、私は最初中小企業近代化促進法と、ただいま提案をされました中小企業事業転換対策臨時措置法との関係についてお尋ねをいたしておきたいと思うわけであります。  従来の中小企業政策といいますのは、近代化政策ということを一つ基本にしてまいりまして、主として設備中心近代化でありますとか、量産化のメリット、規模の拡大、そのために必要ならば集約化をし構造改善を行うというような筋道を通ってきたわけであります。そして、今日この臨時措置法提案をされました背景、それから中小企業を取り巻く厳しい環境というものは、近代化促進法をめぐる背景と、また生まれてきた経緯等から考えましても同じような状況ではないかと思うわけであります。特に、中小企業近代化資金等助成法におきましては、四十一年の改正構造改善準備金制度課税特例が設けられたり、それから四十四年の近代化促進法改正業種別構造改善計画開始をされまして、その一環として行う事業転換については金融上の措置を講ずる、そして、先般の五十年の改正で新たに新分野進出計画というような制度の変遷をいたしてきたわけであります。でありまするから、私どもといたしましてはこの提案をされました転換対策臨時措置法と、近代化促進法との関係はどう見ていくのが妥当なのか、その点について最初に御答弁をお願いをいたしたいと思います。
  17. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 中小企業が絶えず変わっていく経済情勢の中において近代化合理化を目指して努力をして今日の状況に至ったわけでございます。こういうような努力を支援するために、お話の中にもございましたように中小企業近代化促進法という法律が大きな役割りをしてまいったと私ども考えておるところでございます。この近代化促進法に基づく各種の事業の中で、たとえば構造改善計画を作成する、さらにはお話の中に出ておりました新分野進出計画を作成する、これらはいわば業界ぐるみで新しい事態に対応する作戦を展開する、その基本になる計画づくりをすることが予定をされておるわけでございます。したがって、その内容は場合によっては、転換ということをその中身に含む場合があろうかと考えておるところでございます。  ただ、近代化促進法体系に基づく事業転換といいますのは、やはり事の性質上特定の業種全体のあり方を考え、その業種としての構造改善、ないし新分野への進出ということが基本的な骨格になっておるわけでございまして、今回法律でお願いしておりますいわば個別の企業を頭に置いて、それぞれの新しい行き方を考えるという観点とは少し視点が違っておるということが第一の相違点かと考えております。  それから第二の問題といたしましては、近代化促進法体系に基づく転換は、やはり表題が近代化ということになっておりますために、従来の事業と比べまして一段進んだ商品を手がけていくというようなことが当然念頭にあろうかと考えます。これに対しまして今回御審議をお願いしております法案における転換としましては、一段高くというような特定の縛りをかけずに、いままでやっておった仕事がやはり先行きいろいろな問題が出てきた、したがって新しい分野転換しようという事態を頭に置きまして、行き先についてはそうむずかしい制限をかけずに応援をしていくという点が、第二の相違点ではないかと思っております。  ただし、いずれの場合におきましても、中小企業として絶えず近代化合理化を考えていくということは基本的な課題であると存じます。したがいまして、今回御審議をお願いしております法案におきましても、その第八条におきまして近代化に努める、またそれについての助成を行うという旨がうたわれておるわけでございまして、こう考えてみますと、近代化促進法とこの事業転換法は、場合によってお互いに相補って進んでいくというような性格の法律ではないかと考えておる次第でございます。
  18. 森下昭司

    森下昭司君 いま平たく一口にして言えば、近代化促進法近代化という名のとおりの要するに製品を高度なものに発展させる、はやりの言葉でいけば付加価値をふやしていくということにも通ずるのではないかという感じがいたしますが、このいわゆる近代化促進法臨時措置法との関係からまいりますれば、長官がお答えになったように相お互いに関連しつつ補っていくというようなことになるわけだとも思うのでありますが、従来一般的な転換助成制度というものが、全く設けられていなかったということは私は言えるのではないだろうかというふうに思うわけであります。いままでは中小企業者転換しようといたしますれば、自力で必要な転換資金を調達いたしましたり、また転換先の事業に対しましても、必要な情報は自力で集めざるを得ないという苦労をしながら転換を進めてきたのが実情ではないかと思うのであります。  転換の実態につきましては中小企業白書などにも述べられているのでありますが、昭和四十二年から昭和四十六年の五年間におきまして製造業全体で約一二%、昭和四十八年製造業総事業数が約六十八万八千と算出をされておりますると、約八万二千事業所が何らかの形で事業転換をしたと見込まれるわけであります。また、商業は昭和四十六年から昭和四十八年の三年間に卸売業で一五%、小売業で一七%がその商品分野を変更しておるというのが実態報告として述べられているわけでありまして、このようにいわば相当数のいわゆる中小企業事業転換というものが、自力によっていままで行われてきたというのが私は実態だと思うのでありますが、いわゆる中小企業を取り巻く厳しさというものは、あの石油ショック以後急激に増大をいたしておったわけでありまするから、従来転換対策について、政府がそういった措置を放置してきた、あるいはそういった事業転換対策を、これを見直さなかったという点があるのではないかと思うのでありまして、いわゆる近代化促進法だけでは事業転換が十分でない、個々の事業事業転換が十分でないということは、いまのお言葉にもあったわけでありまして、なぜこれはこういうような個々の事業者に対する事業転換の助成というものがおくれたのか、この点について政府の考え方をお尋ねいたしたいと思います。
  19. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いま御指摘ございましたように、従来の転換に対する法律的な後押しの手段としましては、一方では近代化促進法があり、他方では特恵対策法及び国際経済調整臨時措置法、この両法の体系によって応援をするという、いわば二本立てでやってまいりました。ただ、御指摘ございましたように、前者はいわば近代化という特定の目的に対応する法律でございますし、あとの二つの法律は、それぞれ特恵を供与するとかあるいはドルショックが起こったというような突然予期しなかった事態が出てまいりましたことに対しまして、いわば緊急避難的に対応策を取りまとめたという関係になっております。いずれもやはり一般法ではないということが言えるかと思います。  これに対しまして今回御審議をいただきます法案は、これらの従来の先例を頭に置きながら、今後いろいろ経済情勢変化が予想される、特に安定成長経済に移っていきます、その転換をすると言ってもなかなか容易ではないという事態を頭に置きまして、これらの事態の中で新しい分野中小企業進出を図っていく、これを一般的に応援するための法律として用意をした次第でございます。いままでは高度成長の中にありまして、何とかかんとか新しい道を切り開いていく余地が残されていた。今後は非常に環境が厳しくなるということを一つの契機といたしまして、一般法として応援をする道をこの法律によって開きたい、これがこの法律提案の趣旨でございます。
  20. 森下昭司

    森下昭司君 いま二つの臨時措置法的な、緊急避難的な転換対策があったとお述べになりましたが、この国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律、これはいわゆるドルショックに対する一つの緊急避難の転換対策でありますが、このいわゆる国調法でドルショックによる影響を受けたとして認定された中小企業者が約二万件に達する、ところが転換計画認定を受けた者はたったの六十五件であったという過去の実態からいたしますと、いま長官がお述べになりましたように、二つの緊急避難的な対策事業転換が行われて、それで助成をしてきたんだということはいささか私はオーバーな発言じゃないかと思うんでありますが、その点について重ねてお尋ねいたします。
  21. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) お話にもございましたように、国際経済調整法の適用実績としましては、確かに被害を受けたという企業は約二万ほど認定をいたしました。しかし、その中で現実に転換計画の提出まで至ったのは六十五件、御指摘のとおりでございます。この背景としましては、二万の企業認定を受けて、それによっていわば緊急対策的な金融措置等受けたわけでございますが、それによって一応一番苦しい局面をしのいだ、何とかなったというような背景があることを、それから一部にはこういう転換計画というような手続を避けまして、自分自身で新しい道を自主的に開いていった、二つのケースがあったのではないかという気がいたします。  六十五件のケースにつきましては、私どももどういう背景でそれが進められ、そこがどういう問題にぶつかったのかということは、この法律を考えるためにも非常に参考になると思いましたので、それらの追跡調査もし、その結果をこの新しい法律の運用の中に反映をさしていきたいと思っておるところでございます。
  22. 森下昭司

    森下昭司君 私はやはりこの政府中小企業対策というものは、ややもいたしますとおくれがちになるのではないかという一つの証左として御質問いたしたわけでありますが、さらに昨年改正をきれました近促法に基づく新分野進出計画、この新分野進出計画に対して、計画を提出をいたしまして積極的に転換を図っていくというような申請は、私の聞き及んでおるところによりますれば、ただいまゼロであるというふうに思うんでありますが、どうして国調法などの、いわゆるドルショックの影響を受けたのが二万件で、六十五件しか認定を受けないのか、あるいはまた五十年九月に改正施行されましたこの近促法に基づく新分野進出計画、もう一年たっておりますね。これがなぜ計画が一件もないのか。これはまことに私は不思議でならないのでありまして、何らかのいわゆる抽象的に言えば、きめ細かい指導というものが欠けていたのではないだろうかという感じがいたしますが、近促法の新分野進出計画がゼロになっている理由は何だとお考えになっているのか、お尋ねします。
  23. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 国調法の適用実績が少ないという点につきましては、まだあの当時は高度成長の名残が続いていた時代でございまして、業界にとってもまだそれほどの緊迫感がなかったような感じがいたします。ただ、それは現在はかなり前提条件が変わってきているように考えます。他方お話ございました新分野進出計画の実績がゼロである。これは実績としてはゼロでございますが、実はこれは法律ができましてからいまだこの制度の周知徹底の段階でございます。これらの制度の趣旨を理解し、そして組合が手を挙げるという体制をつくるために、いま関係のところと鋭意打ち合わせをしておる段階でございまして、その間の事情は御了承いただきたいと思います。  ただ両者を通じまして、もっと親切に助言なり指導してやったらもっとうまくいったのではないかというお話は、私どもとしても十分頭の中に入れ、また今後参考にしていかなければならない考え方ではないかという感じがいたします。この新しい法律ができまして、そしてそれが的確に運営をされるためには、単に金の問題あるいは労務面の問題等々の問題がありますが、その前提となるこれからの世の中の進み方、あるいはその企業の進み方について親切に相談に乗ってやり、助言をしてやる、こういったことが特に大切な要素であるということを私自身も痛感をしておるところでございます。
  24. 森下昭司

    森下昭司君 私、ちょっと理解に苦しむのでありますが、たとえば国調法につきましては、当時緊迫感がなかったとおっしゃいますが、これは一般法でなくて三年間の限時法で、昭和四十六年八月十六日のニクソンの新経済政策の表明に端を発した問題から、緊急避難的な措置として、三年間の限時法でできているんです。それが昭和四十八年いわゆる第二次ドルショック変動相場ですね、移行問題、それがいわゆる改正をされまして、昭和五十一年の十二月十五日までの施行法となったわけであります。限時法をつくったたてまえからいけば、緊迫感がなかったという答弁では、私実際は理解しがたいのであります。緊迫感という表現がどうかこうかはともかくとして、緊急避難的な措置としてどうしてもやらなければいけないという立場から私はおつくりになって、そしてこれを施行なさったと考えているわけでありまして、約二万件で六十五件、何回も申しますが、非常に残念な結果に終わっております。それから近促法は現在周知徹底の段階だというお話がありますが、これも私どもは理解できませんね。昨年の五十年七月の法律改正で施行も、そうたっていない時期に施行されたと思うんです。ことしはいま五十一年の十月でありますから、少なくとも一年間、失礼ですけれども、法律が施行されまして一年間たって、まだ法律の周知徹底の段階だというような私はスローモーな行政では、これはもう中小企業はこういう厳しい条件下で、いま提案なさっている事業転換法にいたしましても、なぜ進展しないということにも相通ずるんじゃないだろうかという心配が先に立つんでありまして、もう少し納得のいく合理的なひとつお考え、なぜこうなったのかという点について御答弁をいただきたいと思うんです。
  25. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 御指摘の点は、私どもとしてもやはりいろいろ反省しなければならない問題を含んでおるように思います。  新分野進出計画につきましては、あのような新しい制度をつくりまして、これをうまく生かして使われるようにと念願をしておったわけでございますが、やはり業界ぐるみ一つの新しい方向を導き出すということにつきまして、いわば業界の体制をつくるために、いろいろ時間がかかっておるというのが実情でございます。私どものところにも新分野進出計画について、いろいろ具体的な相談も内々では参っておりますが、それを業界の中でどういうふうに持っていったらいいのか、それをどういうふうにみんなで納得し、そしてお互いに力を合わせようというところまで持っていったらいいのか、いわばその事前の根回しの段階で、指導者の人が苦労しておられるような実情がいろいろあるように感じておるところでございまして、国際経済調整法の適用実績が数が少ないという点について、認識が甘いという御批判もございました。確かに私どもも先ほどのお話にございましたようにもっともっと制度をよく理解をさせ、そしてこれを一つドルショックという転機に新しい事業分野進出をして、自分の持っている能力をもっと発揮できるようにしたらということは当然の考えるべきことであったという感じがいたします。  したがいまして、私先ほども申し上げましたように従来いろいろの法律を適用しました幾つかの教訓なり反省というものを、何とかこの法律を適用するに際しては生かしていきたいと念願をしておるところでございます。
  26. 森下昭司

    森下昭司君 今度の転換措置法の中にも中小企業の定義、第二条の第四項に「企業組合」とか第五項は「協業組合」、第六項は「事業協同組合その他」というようにいろいろと規定が実はあるわけであります。そういうようなことを考えてまいりますと、非常に近促法の新しい制度実施が順調に進んでいないということとにらみ合わせてまいりますと、こういった企業組合、協業組合、「事業協同組合その他特別の法律により設立された組合であって、政令で定める要件に該当するもの」とありますが、今度の転換措置法の中にも、こういった一つの組合が行う協同事業転換も含まれているのではないだろうかと私は思うのでありまして、そういうような意味からも、この法の運用について若干の奇異を持つものであります。問題はいま私どもが質問をいたしましたように、結局中小企業者というものは零細企業も含めまして、自分の生きる道を求めてみずからの力で事業転換に踏み切らざるを得ないというような中小企業が続出をしておる、こう申し上げても私は過言ではないと思うのであります。  最近発表されました商工中金の、事業転換をいたしました中小企業の追跡調査による転換した者のうち、成功率が四八・七%、失敗率が三六・三%でありますが、これは四十七年十月に行われた調査結果に比べると失敗する率が三倍にも達しまして、年を追うごとに失敗する度合いというものは高くなってきているのであります。このようにこの事業転換の条件が厳しくなっているにもかかわらず、いま申し上げたように、たとえば国調法に基づく助成あるいは近促法に基づく助成等の諸制度があるにもかかわらず、こういうような結果になったということは、私は政府転換対策に対する先ほどから申し上げておりまする熱意、指導、助成というものが、まだまだ十分ではなかったというふうに思うのでありますが、こういったいわゆる結果からまいりまして、従来の転換対策というものの欠点はどこにあったのか、この点についてお考えがあれば承りたいと思います。
  27. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 従来の転換事例、私もいろいろ勉強いたしてみました。成功しておる例もかなりありますが、中にはやはり所期の目的あるいは成果に到達しにくく、それで苦労しておるという現実も確かにあるわけでございます。  そこで見てみますと、成功した事例というのは次に申し上げるような要件をうまく組み合わせていったケースなのではないかと思います。それは、一つ転換先の選択というものを慎重に勉強しましてうまく選択をしたというケース、これが大体成功に結びつく感じがいたします。転換先が新しい国民のニーズに適合して、そして業種としての将来性があるというような業種を選ぶことが一つの大事なポイントかと思います。それと同時に、やはりある程度の資金的なあるいは労務の面での事前の体制づくりということが大切でございまして、これらのためには計画を余り急がずに、じっくりと練り上げるというような配慮が特に必要なのではないかと思っておるところでございます。  で、失敗しました例は、いわばそれの逆でございまして、余り十分なる事前の勉強がないままに新しい分野へ飛びついていった、新しい分野が必ずしも将来性のある分野でなかったというような事例であるとか、そもそも計画自体が十分まだ練られていないために、最初の一年はよかったけれども二年目からうまくいかなかった、こういうケースが見受けられるわけでございます。  こういうことを過去の実例を見てまいりますと、やはり計画づくりの段階で本人が得心がいき、これならやれるぞという自信ができるところまでじっくり勉強をし、またその勉強することについて、政府及び関係の諸機関が力を合わせていく、こういう態勢にもっていくことが特に必要なのではないかと思っておるところでございます。それができますれば、次の問題である労務面の問題あるいは資金面等々の問題については、さらに新しい工夫の道が開けるわけでございまして、基本はそういう点にあるのではないかという感じがいたしておるところでございます。従来はとかくショックを受けた、さあどうするかということで、その辺の態勢がまだまだ不十分であったという感じがいたします。これらの点を何とか補っていきたいというのが私どもの気持ちでございます。
  28. 森下昭司

    森下昭司君 いまいろいろとお話があったわけでありますが、転換をいたします場合に、現在の事業が行き詰まってはいないが、企業の将来性を考えて、新しい発展性のある分野へ積極的に転換していこうという、これを私は前向きの転換というふうに表現いたしておりますが、そういう積極的な前向きの転換と、事業に行き詰まってやむを得ず他の業種転換せざるを得ないという、これを私は後ろ向きの転換と表現いたしますが、この後ろ向きの転換があると思うのであります。転換対策として、私は助成を必要とするものはむしろ後ろ向きの事業転換の場合であると思うのであります。本法案は私は内容から見まして、後ろ向きの転換よりは企業自体にも余裕のある前向きの転換に力点を置いておるのではないだろうかと思うのでありますが、この点について御答弁願いたい。
  29. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 従来のケースをいろいろ見てまいりますと、いまお話の中にありました、いわば追い詰められて転換するという形よりは、やはりある程度余力のあるうちに新しい分野で新天地を開くというケースの方が、やはり成功の確率も多いような感じがいたします。私どもは、本当に追い詰められてという状態になる前に、少しでもいい状況で新しい分野転換していけるように、これはやはり指導助言における一つの大きなポイントになるのではないかと思っておるところでございます。ただ、そうは申しましても、追い詰められたというような状況になりましても、しかしこのままさらに追い詰められるよりはむしろ新天地へいった方が、その企業としてはよりよい採算が期待できるし、将来性もいままでのを続けるよりはいいと、こういう状況も当然あり得るわけでございます。私どもはそういったケースで応援できる分野があるならば喜んで応援をするつもりでございまして、そこに差別をつけるつもりはございません。ただ、やはり少しでも早く計画づくりのお手伝いをするというような姿勢の方がより実効のある転換が期待できるのではないかと思っておるところでございます。
  30. 森下昭司

    森下昭司君 先ほど商工中金の追跡調査のことに触れましたが、これは商工中金から融資を受ける対象になっている企業の中の実例でありますから、商工中金が対象になるような企業というものは比較的規模の大きいと申しますか、中小企業の中では規模の大きい、あるいは別の表現でいけば比較的優良な企業ということにも適するのではないかと思うのであります。  こういう比較的優良な企業、あるいは比較的規模の大きい企業の中でも三六・三%というような失敗例があるということになりますと、いまのような、前向き後向きという表現を使いましたけれども、言うならばせっぱ詰まって事業転換を行わなければならない企業というものは比較的小規模零細企業に当たるのではないだろうかという感じがするんです。比較的大きな規模の企業でさえもこれだけの失敗例がありまする現状から判断をいたしますれば、比較的規模の小さい小規模零細企業は、まあいわば事業転換対策がとられましても切り捨てられる可能性というか、つまり事業転換対策は、比較的前向きの事業転換を行う企業にとっては大きなメリットがあるかもしれないが、せっぱ詰まった、言うならば零細小規模企業転換についてはかえって切り捨ての結果になりはしないかというような感じがいたすわけでありまして、長官は、そういう差別はつけないんだというお話がありますが、それは比較的規模の大きいものと零細小規模とを比較すれば、信用力あるいは調査力、あるいは販売力、これは比較にならないんでありまして、やはりそういうような規模の比較的大きいものと、それから零細小規模の中小企業事業転換とは、おのずから政策を具体的に配慮する必要があるのではないだろうかと思うのであります。たとえば金融上の問題にしろあるいは助成策の内容にしろ、変えていく考え方が必要ではないかと思うのでありますが、そういう点についてお考え方はございませんか。
  31. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 私ども中小企業政策を進めてまいりますときに、やはり弱い、中小企業の中でも小規模の層、ここはいつでも頭の中で重視していかなければならないと考えておるところでございます。  少し具体的事例を申し上げますと、中小企業庁にも二年半ほど前から小規模企業相談室という新しい組織がスタートいたしました。これは、特に小規模の方々がいろいろ悩んでおられることについて直接お話を伺い、お手助けをしようという趣旨から発足したものでございますが、毎日かなりの数の方が御相談に見えます。その御相談に見えるお話の中に、ときどき転換問題に関する御相談があるわけでございます。先般手がけましたケースはまさに従業員の一人もいない経営主の方でございましたが、いままでやっていました仕事がそれほど先将来性があるものではないし、ひとつ販売部門へ転換をしたいということで御相談に見えましたのに対しまして、いろいろの業種事情を御説明し、また具体的な販路についてもあっせんを申し上げて、その方が非常に喜んでいただいたというケースもございます。私はやはり中小企業の方々の中で、特に小さいからといってそれを切り捨てるというようなことは毛頭考えておるわけではございません。小さい方々は小さいなりに悩んでおられることをくみ上げて、いかにお手伝いをするかということを特に力を入れてまいりたいと考えておるところでございますし、またそれはやれることだと考えておるところでございます。
  32. 森下昭司

    森下昭司君 そういった面については大変いろんなむずかしい問題が私は多々あるのではないだろうかと思うのでありますが、問題は、事業転換中小企業者が決意をいたしますときには、どういう業種転換をするかというような立場で考えるのではなくって、どのような製品の生産や販売というものが可能かということが一つの私は基準になって、どういう業種転換していこうかという決め方になるわけであります。  この新しい業種への転換をした場合に、いま申し上げたように一つの問題点というのは、いわゆる販売がどの程度可能かという市場の開拓の問題が出てくると思うんです。従前の販路がそのまま利用できる場合はよいのでありますが、全く関係のない業種に変わった場合には初めから市場開拓をしなければならない。これが中小企業者にとっては非常な大きな負担になるわけであります。輸出市場開拓の場合には、JETROの現地事務所等がある程度援助するような形にはなっておりますが、国内の市場の場合にはそういったような制度がございません。そこで、こういう情報提供の面、あるいは新規業種市場開拓に援助するような具体的な方法をとる必要があるのではないかと思うんでありますが、その点についてはどうお考えですか。
  33. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換をいたします場合に、進出先の業種で需給がどうなっているのか、それから技術はどの程度のものが必要なのかというような要素と並びまして、販売組織がどうなっており、どうやったらそれが生かせるかということは非常に大事なファクターではないかと思っておるところでございます。これらについてじっくり勉強し、そして自分自身の設計図をつくった上で乗り込んでいくと、そういった体制が特に大切のように思うわけでございます。こういった各種の情報につきましては、もちろんその企業者自身もいろいろ勉強されることでございましょうが、しかし一つ中小企業の知識というものはおのずから限界がございます。やはりそれを応援をし、そして身につくようにお手伝いをするというための組織が別に必要であろうと思います。  これらの組織としましては、もちろん中小企業関係のある政府機関あるいは各種団体、それぞれが持ち分持ち分において応援ができるわけでございますが、特に中小企業に対する指導の直接の窓口になっております都道府県の総合指導所の活用ということが第一に重視しなければならないことではないかと思います。それと同時に、きょうお見えになっておりますが、中小企業振興事業団の各種の情報提供機能、これを十分に生かしていくということが、応援のために有効ではないかと思っておるところでございます。中小企業振興事業団の情報センターは各種の業種に関する生の資料を極力集めまして、それを先ほど申しました総合指導所、その他の中小企業指導関係のある各団体に提供し、中小企業に利用していただくということが本来の趣旨でございます。最近は、特に転換の事例に関する各種のデータを集中的に集めてもらっておるようでございまして、それらの各種の先例というものが、これから転換をしようという中小企業の方々に、特にお役に立つのではないかと期待をしておるところでございます。先ほど来のお話ございましたように、零細な企業の方々は、おのずからやはり情報の量も限られております。こういった方々には特に親切にということで私どもも指導してまいりたいと思います。
  34. 森下昭司

    森下昭司君 まあ、新しい組織が必要ではあるが、当面、政府関係機関あるいは各種の団体の機関、都道府県の総合指導所、そして中小企業振興事業団の情報機能というものを活用したいというお話がいまあったわけでありますが、先ほど私が例にとりました商工中金の追跡調査の総合的な判定の中で、失敗をいたしました原因といたしまして、やはり総括的に最後には、市場動向に関しての事前調査が不十分であったという点が大きな原因であるという実は結果が出ているわけであります。そういう点から私は、いわゆる市場開拓についての何と申しますか、積極的な努力、それからその指導というものが大切になってくるのではないだろうかというように思うわけであります。  そこで、いま中小企業振興事業団お話が出たわけでありますので、若干情報問題についてひとつお尋ねをいたしておきたいと思います。それは、中小企業データバンクという、これは正式な名前であるかどうかは存じませんが、いま長官からお話がありましたようなその情報の各種を集めまして、それを整理をいたしまして中小企業の相談に応じていく。で、とりあえず、五十三年度までにファイルなどを作成をするとか、あるいはことしはモニターを選任をいたしましてそういった準備をしておるとか、いろんなことが実は報道されているわけでありまして、振興事業団が行おうとする中小企業データバンクと称するものは、どういうような目的と機能を持つものか、御説明をいただきたいと思います。
  35. 佐々木学

    参考人佐々木学君) 中小企業振興事業団におきましては、従来から中小企業指導に役立つ各種情報の収集に努めてまいってきたんでありますけれども、また中小企業振興事業団自体におきましても、各種の業界動向、経営動向あるいは企業の成長条件はどういうものであるかとか、ただいまお話しになりましたような事業転換の事例調査等をいたしまして、これを中小企業指導機関である総合指導所あるいは商工会議所、商工会あるいは中央会、こういうところに配付してお役に立ててまいっておるつもりでございます。  しかし最近におきましては、中小企業が必要とする情報は、従来のような情報のほかに、さらに非常に細かい情報を必要とするようになってまいりました。また、そういう細かな情報でないと、ただいま問題になっております転換指導ということにも役立ちませんので、振興事業団といたしましては、五十一年度から三年計画でもちまして産業分類の四けた分類まで下げまして、四けた分類のうちで農林漁業関係を除きますすべての業種が、約千三百ぐらいの業種になろうかと思います。このうちで中小企業性の高い業種中心に、近促法の指定業種であるとかあるいは機電法の指定業種であるとか、そういうものを選びまして、とにかく三百業種ばかり選びましてデータファイルを作成するつもりでございます。  五十一年度におきましては、とりあえずこのうちから四十業種を選びます。そうしてデータファイルを作成するのでありますけれども、これ以外に、この三年計画の準備といたしまして、約千業種につきましては情報の所在調査と、それから集めました資料の分類、再編成、つまり業種別であるとか、あるいは生産、流通、あるいは生産工程別といったような項目別、あるいは流通関係業種につきましては都道府県、さらに地域別に分けまして細かに分類、整理をいたしまして、そういうシステムをつくってまいりたいと考えておるわけでございます。  このデータファイルは、非常に細かな調査をすることになっておりまして、たとえば一つ業種につきましても、その立地的な要因はどうなっておるとか、あるいは業界の構造はどうなっておる、生産工程はどうなっておって、主要な設備にはこういうものが必要であるとか、あるいは経営動向といたしましても原価指標はどうなっておる、取引の一般的な条件はどうなっておるとか、それから市場関係の需要動向、あるいは特許といったような技術動向、それから海外情報、つまり発展途上国はどういう情勢になっておるか、あるいは先進国の市場はどういう市場であるかといったような、それから関連業界、外注関係はどうなっており、下請関係はどうなっておるといったような、非常に細かな大体考え得るあらゆるデータを詳細に網羅したものでございまして、これを中小企業振興事業団にストックしておきまして、指導機関からの応答によりましてこれをサービス提供いたしたいと、こういうのがデータバンクの大まかな構想でございます。
  36. 森下昭司

    森下昭司君 もう一つお尋ねしておきますが、この何かモニターを定員二百人云々という、ことしは百六名程度ですか選定を終わっているといいますが、この点はどうなんですか。
  37. 佐々木学

    参考人佐々木学君) 大変失礼いたしました。  私どもの情報調査部——まあ情報センターと申しておりますが、これ以外にも各種の図書等を発行いたしております。ただいま申し上げましたのは雑誌とか不定期刊行物が主でありますけれども、これ以外にも図書類をたくさん作成いたしまして、各ただいま申しましたような指導機関に配付しておるのでございますけれども、その記載内容等あるいは取り上げる重点等につきまして、もう少しこういうふうにしてほしいんだと、あるいはこういう点は少しむつかしいからもう少しわかりやすくしてもらいたい技術情報等もございまして、まあそういう点につきまして直接の指導に当たられる方の意見を聞きたいと思いまして、そこでそのモニターをお願いいたしまして、この人たちの意見を取り入れながら、調査項目それから記載方法等について改善していきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  38. 森下昭司

    森下昭司君 それから、この中小企業データバンクで集めましたこの情報なり、いろんな三百業種に関するファイルが作成をされました段階で、これは中小企業者にどういう方法で周知徹底をさせていくのか。まあたとえば各県の総合指導所等から問い合わせがあるとか、あるいは各所の中小企業団体や中小企業者から問い合わせがあった場合に答えていくというようなことになるのか。積極的に、たとえば週一回とか、月に一回とか、あるいは月二回とかというように、集約したデータの状況等について主要なものを流していく方法をとっていくのか、集めましたものの活用の方法というものは具体的にどういうような形で行われていくのか、その点ちょっとお尋ねします。
  39. 佐々木学

    参考人佐々木学君) これは、収集いたします雑誌、報告書等を集めますと、大変な情報になってまいるわけでございます。これをすべて流すということも事実上むずかしいかと思います。したがいまして、そのうちで非常に緊急に問題になっておる業種といったような問題につきましては、現在でも「中小企業情報」というのを月三回ほど指導機関に二千五百部ずつ提供しておりまして、随時これには載せてまいるつもりでございますけれども、それ以外のデータにつきましては、リスト等はこれは関係指導機関に全部提供いたします。そのリストによりまして、特別なものについては質問をしていただくということになっております。
  40. 森下昭司

    森下昭司君 期間的には三年ということでありますので、事業転換法の施行からまいりまするとやや遅きに失するというような感じがいたしますが、そのことはともかくといたしまして、いわゆる三百業種というものは、長官にお尋ねいたしますが、大臣が指定する業種というものはほぼ含まれているというふうに理解しておみえになるのか。中小企業振興事業団の三百業種といま言われましたが、そういうものの中に大臣の指定する業種というものは全部というと語弊が残りますが、ほとんど含まれておるというふうに理解をされているのか、その点ひとつお尋ねします。
  41. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 具体的にどの業種がこの法律の適用対象になるかということは、これから事業の所管大臣が指定するということになっておりますので、各省間で最終的に打ち合わせをすることで、いまの段階で具体的に申し上げられるまで至っておりませんが、ただお話の中にもございましたように、中小企業振興事業団がデータファイルの中に取り込もうとしております三百業種というのは、いわば中小企業性が高い業種をほぼ網羅するという形になっておりますために、もし具体的に法律が施行になり、具体的に転換先についての情報を得たいというときには、この三百業種の中に、具体的な参考になる資料がほぼ含まれているのではないかと思うわけでございます。
  42. 森下昭司

    森下昭司君 私はいまここにお見えになります鈴木委員が前に、法案の中に政令で定めるという表現が非常にたくさんある、しかも、法案審議の際に政令で定める要件あるいは政令で云々というような具体的内容が明らかになっていないことは、法案審議一つの障害になる、したがって今後こういったことは改めるべきであるということを強く主張されたことを記憶をいたしておるわけであります。また第三条も「当該事業を所管する大臣が指定するものに属する事業」ということになりまして、いわゆる転換措置法の対象になりまする事業というものは、大臣のいわゆる行政裁量権に属するということに実はなるわけであります。こういう中で、私はやはり一つ一つ業種がこうであるとは断定できないにしても、ほぼ、たとえば国調法の際に入った数でまいりますと、百二十一ですか、全国的な規模の業種でまいりますと。そういうようなおおよそどの程度の業種ぐらいは、いわゆる大臣が指定することになるのではないだろうかというようなほぼ輪郭というものは、これは明らかにしていく必要があるのではないだろうか、そしてまた、「政令で定めるものに起因し」云々として四つの原因が挙げられておりますが、その四つの原因の中で、たとえば、輸出入の構造変化による減少が起きたものについてはこういったもの程度は入れるべきだと考えておるとか、公害環境によるものについてはこういった業種は当然入らなくちゃいかぬとか、そういうものはやっぱり私は答えていただきませんと、何でもかんでも政令だ、いや業種指定は大臣の行政裁量権だというようなことをやっておりますと、一体事業転換の本当の筋から離れたようなものまでも入る可能性もありまするし、あるいはまたどうしても入れなくちゃならぬというものが入らないような可能性も出てくるわけです。ですから、私はやはり政令の範囲内とか、いま申し上げた大臣が指定する事業の問題だとか、およそ輪郭程度は明らかにしていく必要があるのではないかと思うんでありますが、この点についてお尋ねいたします。   〔委員長退席、理事楠正俊君着席〕
  43. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) この法律で政令事項となっておりますことの内容については、もしお尋ねございますればそれぞれお答えをさしていただきますが、とりあえず業種指定の問題について御答弁申し上げますと、これから各事業所管官庁が指定をするということにたてまえはなっておりますが、やはり従来の先例として、国際経済調整措置法で全国業種百二十一、産地業種八十三を指定したということは先例として十分参考になるのではないかというふうに思っておるところでございます。ただ、指定の仕方はもう少しふんわりした指定の仕方をするというようなことも考えてみてはどうかと思っておるところでございます。  具体的にどういう業種を指定するかという点につきましては、現に私どものところにもいろいろな業種から相談に見えております。代表的な事例だけ申し上げますと、たとえば貿易構造変化輸出減少しておる、これに対応して何らかの転換対策を考える必要があるのではないか、こう思われる業種の事例としましては、造船の関連の業種であるとか、あるいは金属洋食器の製造業等が代表ではないかと思います。それから技術革新等による需要の減退というケースとしましては、私どものところにマッチの業界からいろいろ相談に見えております。ライターが普及をした、あるいは自動点火が普及したということに伴って、マッチ業界これからどうするか、むしろ紙の加工技術を別の分野で生かす工夫はないかというような相談がその内容でございます。さらにまた、公害その他の規制の強化に伴って新しいやり方を考えていこうということで、業界内でいろいろ検討が進められておりますものとしては、銑鉄鋳物の製造業などがその事例ではないかと思っております。
  44. 森下昭司

    森下昭司君 それから重ねてお尋ねいたしますが、技術開発と技術の導入と申しますか、これは中小企業は非常に研究開発能力が乏しい、あるいはまた研究機関を設けようといってもその能力がない、あるいは何と申しますか人もない。要するに資金的にも人的にも、また技術の導入に際しましてもそれをこなし得る能力と申しますか、そういった体制もないというような、いろいろな技術開発や技術導入の問題については問題点がたくさん出ているわけであります。そういう中におきまして、先般中小企業に対する技術情報の提供でありますとか、あるいは技術の移転の導入のあっせんでありますとか、そういう機関といたしまして、中小企業振興事業団の中に技術移転促進センターというものを設けるという計画を、通産省は来年度から実施したいという御意向のようでありますが、この内容についてはどういうお考え方があるのかお尋ねいたします。
  45. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) これからの日本経済が安定成長の時代に移ってまいりますと、いわばいままでのような量を重視するという時代から、質が大切になってくる時代にだんだん変わってくるように思うわけでございます。そういう中で、中小企業が生々発展をしていくということのためにはやはり技術を身につけ、その技術で新しい経済環境に立ち向かっていくという体制を整備することが、非常に大きな要素になってこようかと思うわけでございます。   〔理事楠正俊君退席、委員長着席〕 この技術の開発の面では、従来から技術改善費補助金であるとか、あるいは国産新技術企業化等融資制度というような形で、補助金をつけたりあるいは特別の融資制度を設けまして、中小企業みずからの技術開発を応援をしてまいりまして、また中小企業自身ではなかなか手の及ばないという分野につきましては、国または公設の試験研究機関、これが開発を行ってきておりますし、特に中小企業向けの開発ということにつきましては、その経費の一部を補助する制度も用意をされておるところでございます。さらにまた中小企業振興事業団におきましても特別のプロジェクトとして省力化、自動化のための機械開発というテーマを手がけて、いま進行中でございますし、さらに、振興事業団に座敷を設けまして、業界とそれから国、府県、これらが力を合わせて特別研究開発を行うという制度もあるわけでございます。これらの各種の開発推進に加えまして、いまお話ございましたように、来年度以降の新しい構想として、自分で開発をするというところまではいかなくても、よそからいい技術を買ってきて、それを自分なりに改良し身につけていく、こういうことを中小企業庁としてお手助けできれば非常に役に立つ面も多いような感じがいたしますので、従来の直接の開発に加えまして、いま申し上げましたいわば技術多転とも言うべき分野につきまして、政府としても応援する道を開きたいということで、部内で寄り寄り検討中でございます。  さらにまた、それに加えまして、これらの技術開発の成果をいかに普及するかということが問題でございます。普及面につきましては、府県の各種の試験研究機関が指導を行っておることに対しまして、その一部を現に補助をいたしておりますし、それから試験研究機関が中小企業の工場に直接出向いて指導をするという巡回技術指導、こういう制度がございます。実はその巡回技術指導の中身として、ひとつ転換問題について巡回技術指導する、こういうやり方を活用していきたいと思っておるところでございます。  以上一般的な制度について御報告を申し上げましたが、お尋ねの中にございます技術移転促進センターというような構想、どういうふうになっておるかという点を申し上げますと、これは実は中小企業振興事業団がいろいろこの技術の問題が大事であるということで、どういうやり方を進めていったらいいかということを研究しております。その一端がああいう形で新聞に報道されたのではないかと思います。  実は、中小企業振興事業団におきましては、こういう技術情報の調査に関するスタッフを増強をし、その増強した人間をもとにして、技術移転の分野においてどういう技術が利用できるのかというような情報を提供したり、あるいはそれを身につけるためにはどうしたらいいのかというような指導、あっせんをしたり、こういう分野を強化をしてまいりたいということを考えておるところでございます。場合によっては、スタッフの中に委嘱コンサルタントというものを置きまして、これがいわば中小企業と親身になって相談をする窓口になるというようなことを考えてみてはどうかと思っておるところでございます。したがって、センターという名前に余りこだわっていただきますよりは、こういったことを考えておるということで御理解をいただきたいと思います。
  46. 森下昭司

    森下昭司君 委嘱コンサルタント、まあ非常に私はいい制度ではないかと思うのでありますが、ややもいたしますと、こういったものは東京中心主義というような感じなきにしもあらずでありまして、コンサルタントの委嘱の問題等については、全国的に行い得るような点を考慮していただきたいと思うのでありますが、一応技術移転の促進補助制度そのまま拡張していこうじゃないかという考え方と、それから技術移転促進貸付制度というものを設けて、中小企業金融公庫を窓口にして融資をしていこうということが、何か考えられているようでありますが、このいわゆる技術移転の促進貸付制度、一件当たり一億二千万円を限度といたしまして、年利八・九%、貸付期間十年以内を予定しておるというふうに言われているのでありますが、このいわゆる貸付制度と本転換措置法の中における融資の問題とは、いわゆるダブってと申しますか、双方の貸し付けを受けることができるのかどうか。転換措置法の融資を受けるならば、この技術移転の問題の転換をする場合に、この技術移転促進貸付制度というものは適用できないとか、この適用の具体的な問題についてお尋ねします。
  47. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いまお話しいたしました技術移転促進に関する新しい補助金制度あるいは貸付制度の問題は、いわばいま予算要求中の段階でございまして、これがうまく予算化できました暁には実質的にお役に立つのではないかと、私どもはそういう期待を持っておる段階でございます。これが仮に創設をされました場合に、事業転換に関する助成と重複して受けられるかという点につきましては、私どもはやはりそれぞれの趣旨に合致しておれば、それぞれの制度を受けるようにして差し支えないのではないかと考えております。
  48. 森下昭司

    森下昭司君 それでは、さらに金融問題について二、三お尋ねをいたしておきますが、転換いたしますときにはやっぱり金融問題が大切であるということは、この措置法のいろんな説明の中にもあるわけでありますが、しかし、考えてまいりますと、この事業転換を行って、先ほど申し上げたように全部が全部成功するわけではないわけであります。失敗をする例等もあります。こういうようないわゆる転換前の実績に基づいて、金融機関が金を貸してくれるかというと、新しい分野への進出が不安感が伴いまするから、やはり金融機関もちゅうちょをするような結果になりはしないかというふうに私どもは思うわけであります。今回もいわゆる信用保証制度役割りに対する期待が、そういった意味では大きいわけでありますから、保証協会のこの保証がつけば、未知の分野であっても金融機関は融資することになるであろうと、私どもは実は期待をいたしているわけであります。そのために本法案でも信用保険特例が設けられているわけでありますが、しかし、問題は、いま申し上げたようにこの本来の趣旨のように運営されるかどうかということが今後の問題点になるわけであります。すなわち保証協会が、信用力が乏しい企業には保証したがらないと同じように、実績のない新しい事業に対しまして、積極的に保証する姿勢をとるかどうかということが、まず第一番目の問題ではないかと思うのであります。そこで信用保証協会にこの制度の趣旨を十分に生かして運用するように、政府が積極的に指導していく必要があると思うのでありますが、このいわゆる事業転換のための信用保証協会等に対する指導についての考えをお伺いいたします。
  49. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 事業転換に伴いましてやはり新しい設備を入れる、あるいは従来の施設を転換をするために、各種の資金需要が出てくるわけでございます。私どもはやはり転換という仕事は、その企業にとっても新しい分野への展開が図れるというだけでなくて、国民経済的に見ましても、新しい情勢に応じた産業構造を築き上げていくという積極的意味を持っておるというふうに理解をいたしております。したがいまして、政府関係金融機関におきましても、この転換法の趣旨を十分体して、具体的に相談がありましたときに、積極的にこれに応ずるように指導してまいりたいと思います。さらに政府関係金融機関の融資を補うものとして、民間金融がこれまた積極的な応援に入ってもらうことが重要なファクターでございまして、それを円滑にするために、お話の中にございましたように信用保険特例ということを、この制度の発足と同時にスタートさせたいと思っておるところでございます。  この信用保険特例が動き出しますと、従来の保険に対しまして、別枠でかなりの金額の保証が受けられるということになりまして、さらにまたてん補率も普通保険の場合一般は七〇%でございますが、八〇%に引き上げるということによりまして、市中金融が円滑につけられるように措置できるものと考えておるところでございます。これらを実際に動かします場合に、金融機関においてこの法律の趣旨をよく理解してもらうようにという御指摘、まさに私どもも同感でございまして、この法律ができますと同時に各保証協会あるいは政府関係金融機関に対しまして、よくこの趣旨のPRを図りたいと思います。
  50. 森下昭司

    森下昭司君 私は具体的な指導が円滑に行われることをひとつ期待をいたしておるわけでありますが、今度のいわゆる貸し付けの中におきまして、そのためには、政府関係系統にございまする中小企業金融公庫、それから国民金融公庫とは、やはりいま長官が言われたような積極的な判断と積極的に融資をするという姿勢をとりませんと、他の一般市中銀行は、政府系のいわゆる金融機関ですらこういう考え方ですからわれわれがと、しり込みをする傾向が出てくるのではないだろうかと思うのでありまして、特に中小企業金融公庫並びに国民金融公庫に対する協力と申しますか、要請というものが非常に重要になってくるのではないだろうかというふうに思うのでありますが、この点について両金融公庫に対しまして中小企業庁として何か特別な要請をなさるお考え方があるのかどうか、この点をひとつお尋ねいたします。
  51. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 御意見はまことにごもっともでございまして、この転換ということが個々の企業の持っておる役割りのほかに、国民経済的にも大きな役割りを持っているということを頭に置きまして、中小公庫、国民金融公庫が、適切な計画認定のあった暁には、それに対して積極的に相談に乗り適切な金融援助をするということにつきまして、私どもとしても指導いたしたいと思います。
  52. 森下昭司

    森下昭司君 そこで、一つの具体的な要請でありますが、事業転換計画というものは都道府県知事認定を受けるというわけでありまするから、認定を受けて転換のための貸し付けを申請した場合には、これは政府金融機関とあるいは市中銀行とか保証協会とか区別いたしまして、原則として融資をするということは、一つの私はたてまえにならなければならぬと思うのでありますが、その点についてはどうですか。
  53. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換の具体的な計画が固まりますと、それを都道府県知事に持ってまいりまして認定を受けるわけでございますが、この認定に当たりましては、その内容を審査して、これが十分新しい分野への転換に役立つということを都道府県知事として認定するわけでございますから、金融機関としてはそれを尊重するというのは、いわば当然のことかと思います。ただ、お話のように、認定があったら即金融ということになりますと、とかく認定自体が非常に慎重になるという面もあろうかと思います。その辺はよく呼吸を合わしてやるようにうまく指導していきたいと思います。
  54. 森下昭司

    森下昭司君 いや、私の言うのは、計画書を提出をいたしまして認定を受けます。事業転換に実際にかかる場合に、認定を受けた業者は事業転換のための貸し付けを申請した場合は、原則として拒否すべきでない、言うならば原則として融資すべきであるという考え方に立つのが妥当ではないかと思うんでありますが、その点をお尋ねしているのです。
  55. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 金融機関でございますから、計画内容を見て、それがどういうふうな資金計画になっているかというようなことを聞くのはいわば商売であろうかと思います。ただ、そうは申しましても、その前段階に都道府県の認定ということで、その計画内容について十分相談にも乗り、また審査をした上のことでございますので、これはやはり原則としては尊重してもらうということが、円滑にこれを進める道ではないかという感じがいたします。
  56. 森下昭司

    森下昭司君 そういうように、ひとつ先ほど述べましたように、各棟金融機関に対する協力要請、指導というものを強化していただきたいと思うんでありますが、この反面、借りましたお金は返さなくちゃならぬわけであります。それから、転換がうまくいけば相当な期間を経なくっても返済することが可能でありますが、過去の例からまいりますと、少なくとも五年とか十年とか長い年月をかかって徐々にではありまするが、転換をしていくというような傾向が実はさきの追跡調査でも出ているわけであります。そういう点からまいりますれば、今回十年という期間で融資をするわけでありますので、私は一つのこれは評価できる進歩ではないだろうかと思うのでありますが、やはり業者の中では、でき得るならばさらに若干の返済の期間というものを延ばすとか、あるいは据置期間を長くするとか——いま二年でありますが、これを三年とか四年にしていくとかいうような希望というものが出ているわけでありまして、今回のこの案の初年度といたしましてはこういろ考え方でありますが、来年度以降、この返済期間だとかあるいは据置期間だとか、そういったものについて考え方があるのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  57. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換をするというのは、その事業にとっては非常に一つの大きな踏み切りが必要でございます。そういう立場からいたしますと、少しでも金利が安く貸付限度が高く、そして償還期間も長くというふうな貸付条件をより有利なものにしてほしいという希望を抱くのは、いわば当然のことのような気がいたします。ただ、これは無限によくできるというようなものでもなく、やはり転換先の既存の企業とのバランスというものも頭に置かなければなりません。しかし、そういったことを配慮の範囲内で少しでもいい条件でということで、私どももこれから引き続き研究してまいりたいと思います。
  58. 森下昭司

    森下昭司君 それから限度額の問題でも、中小企業金融公庫で一億五千万円、国民金融公庫で千五百万円以内ということになっておるのでありますが、これも将来的にはどうお考えになりますか。
  59. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 従来の転換の実績もいろいろ調べてみました。大体いまお話ございましたような金額であれば、転換に対する資金的な応援としては現段階としては一応十分ではないかと思います。しかし、これはまた将来、経済情勢も変わってまいりましょうし、この新しい経済情勢に応ずるように、絶えず見直しが必要であるという点は御意見のとおりでございます。
  60. 森下昭司

    森下昭司君 それでは、この事業転換の具体的な内容についてちょっとこの機会にお尋ねいたしておきます。  まず、「事業転換」という言葉の問題でありますが、私の聞き及んでおる範囲内では法律上の定義はないというふうに理解をいたしているわけであります。その概念は、法律の適用の個々のケースを通じて確立してきているというふうに言われているわけでありますが、この事業転換という法律上の定義がないというのはどういうことなのか、それを最初にお尋ねいたします。
  61. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 法律の文面では転換の定義というものが特に表に出ておりませんが、私どもとしては次のように大体考えておるわけでございます。  事業転換といいますと、現在中小企業がやっております仕事を縮小しながら新しい分野で活動を行う、そして転換先の仕事が全事業活動の中の相当部分を占めるというような形になることを、いわば転換というふうに考えておるわけでございます。その相当部分ということにつきましては、おおむね二分の一程度あれば相当部分と当然言い得るんだろうというふうに考えます。このウエートの算定でございますが、原則としては生産額あるいは取引額によって算定することになろうかと思いますが、単にその生産額とか取引額というだけではなくて、転換に伴いまして主要設備の相当部分が新規の事業用になるというような場合も、これは実態的には転換と認めていいのではないかと考えておるところでございます。  なお、これは一挙に転換をするということは必ずしも要件にいたしませんで、一部分を変えていく、その間多角化をする、こういうようなことをだんだん進めてまいりながら、計画期間の中に、結果として先ほど申し上げたような状態になるということであれば、事業転換と考えて、それに対する所要の応援を図る、こういうふうに解釈をいたしておるところでございます。
  62. 森下昭司

    森下昭司君 事業転換相当部分ということは二分の一以上ではないかというようなお話がいまあったわけであります。そこでいわゆる通常同一の業種と見られる業種に属する事業転換する場合——今回の転換法の対象になっておりまするのは、ある業種に属する事業から他の業種に属する事業転換することだと、一般論としてはそうなるわけであります。そしていま言った事業を縮小し、転換後の新事業が全事業相当部分を占める、二分の一以上になるとか、あるいは生産額、取引額を算定してそれが相当部分、つまり二分の一以上になるとか、主要設備の相当部分転換期間内に新規の事業用のものになるとか、いろんな事実認定等がございますが、そういうのが一つ事業転換だと言われておりますが、同一の業種内と見られる転換ですね、近促法なんかこういった点を強く主張いたしておるわけでありますが、この事業転換措置法の中でも、同一業種と見られる事業転換をする、そのことが、事業転換という言葉が妥当かどうかは別にして、より高級の製品化を目指し、より付加価値の高いものを目指しというようなものであれば、こういったものについても事業転換として認定していくべきではないかと私は思うんでありますが、その点についてお考え方をお尋ねいたしたいと思います。
  63. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 一つ業種から他の業種に移るというときに、必ずしも標準産業分類による何けたの中の移動というようなことにこだわる必要は必ずしもないのではないかという感じがいたします。たとえばお話にございましたような、同じ産業分類のたとえば四けた分類の中で移動するというような場合につきましても、いままでつくっておりました商品に対しまして、新しくつくる商品が非常に付加価値が高い、非常に高級な商品である。そのものをつくるためには従来の原材料を変えていかなければならないし、設備も変えていかなければならない。こういうような実態にあります場合には、やはり一つ事業転換というふうに考え得る場合がかなりあるのではないかという感じがいたします。
  64. 森下昭司

    森下昭司君 いまお話がありましたように、同一の業態に似通った業態、この転換もあり得るというお話でありますので、これは相当事実認定とか、あるいは製品の価値判断の問題が出てくると思うんでありますが、何を申し上げましてもいわゆる中小企業者でありますから、こういう事実認定の場合には転換の助成を受けやすいようにケース・バイ・ケースで弾力的に判断していく。たとえば相当部分というのは、いまお話があったように二分の一でありまするけれども、同一業種の場合についての転換なんかは相当判断がむずかしいと思っております。そういった面につきまして私はやはり実態というものを見て、これを認定することによってやはり事業転換が容易になり、中小企業者が救われるという観点に立つならば、多少の私は弾力的な考え方があっていいのではないだろうかと、画一的に二分の一以上なけりゃいかぬとか、これはこういう認定をすれば二分の一以上になるが、こういう立場から見れば二分の一にならないとかと微妙な問題があると思うんであります。こういう点について私はやはり相当幅のある弾力的な考え方の上に立って認定作業に当たるべきではないかと思うんでありますが、そういう点についてはどうお考えですか。
  65. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) この認定という仕事は、お話のように個々のケースに当たって見ますと、なかなか解釈上むずかしい問題が出てくることが予想されるわけでございます。私どもとしてはなるべく、この法律ができまして実施通達を出します場合には、この辺の解釈をできるだけ詰めてみたいと思います。それからまた当初一つのルールをつくったことを、絶えずいろいろな実例が出るたびにそれを積み上げていくというようなやり方が、一番実際に適するのではないかと思います。余り解釈がばらばらでも困りますから。しかしそうはいいましてもやはり中小企業が本当に実質的な転換を図るというようなケースが拾えなくても困る。この辺のところはいわば運用の問題として、私どもとしても一生懸命工夫をいたしたいと思います。
  66. 森下昭司

    森下昭司君 そこで伝えられるところによりますと、単なる立地転換事業転換ではないというお考え方があるようでありますが、この中小企業近代化審議会が昨年の十二月に答申をいたしましたときに、「商業、サービス業についてもその特殊性をも考慮しつつこの種の構造的な要因によるものについては対策対象とすべきである。」というようなことが載せられ、かつ「商業、サービス業については環境の急激な構造的変化事業の継続に重大な影響を及ぼすことに鑑み、一定の立地転換についてもこれを取り上げる等弾力的に取扱うものとする。」という意見具申があるわけでありますが、この考え方が今回の転換措置法の中に入っていないように思うんでありますが、この点はどうですか。
  67. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) この法律事業転換として取り上げ、特別の応援をいたしますのは、いままで持っておりました各種の経営資源、すなわち設備の面あるいは労務の面、あるいは販路の面、こういったものを思い切って変えていかなければならない、そういう特別にむずかしい環境を迎える中小企業に対して特別の応援をしようということがその趣旨でございます。お話にございました立地の転換は確かに現実にはいろいろ新しい問題が起こるでございましょうが、他のケースと比べますと、やはり困難の程度が低いのではないかということで、この法律対象には取り上げないことにしたのが経過でございます。ただ立地の転換の中で、現に立地政策の面からいろいろの応援手段が用意をされております。それらを活用できる場合には当然活用することになりましょうし、またいま私どもが念頭にあります各種の要因に伴う転換に際しまして、立地の変更をも伴うと、こういう場合には転換問題として取り上げ得ることになろうかと思うわけでございます。
  68. 森下昭司

    森下昭司君 これは具体的にまいりますと、たとえば大都市なんかでは、ときたま生鮮食料品の卸売市場がいろいろな都市の機能等から他に移転をする場合があります。その周辺の要するに生鮮食料品の卸売市場で扱う物品以外を扱っているまあかん詰め業者だとか、あるいは乾物品屋さんだとか、あるいは果物屋さんの特殊なものとか、いろいろなものがみんな密集するんです。そういうものが、移転をいたしますとその付近は全部もろに影響を受けまして、中には店を閉じなくちゃならぬというようなケースがあるわけなんですよ。細かいことを言えば、たとえば大学がありまして、大学生相手に商売しておった者が、大学が郊外に移転したために店を閉めざるを得ないというような極端な例もあるわけなんです。したがって私は、やはりこの中小企業事業転換対策のあり方についての近代化審議会においてそういう意見具申があれば、やはり具体的に商業、サービス業についてこの意見具申のあったように、立地転換というものを含めて考えていくということが、これは妥当性があるんじゃないだろうか。むしろこれは私はいま申し上げたように、大都市の地域的には非常に顕在化している問題であろうと、実はかように思うわけであります。他の方法で救済できるからというようなことになりますれば、これは私はたとえば先ほど私が最初に申し上げたように、中小企業近代化促進を通じ、あるいは助成法を通じ、あるいは構造改善等が行われておりまして、その中から中小企業の事実上の発展が出てこなくちゃならぬわけなんです。それがならないからこういう臨時措置法で十年の限時法として出てきたわけなんです。ですから私はやはり商業、サービス業、まあ主に零細小売というのが当たるんじゃないかと思うんでありますが、そういったいわゆる構造的環境の急激な変化というものに対応して、立地転換は当然対象として考えていくべきだと思うんでありますが、重ねてお伺いいたします。
  69. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) この法律では、法律の表題にもございますように、いわゆる事業転換というものを念頭に置きまして、それをいかに円滑にするかということでとりあえず法律をまとめまして、立地の転換事業転換ということでくくるのには少し質が違う面がございます。ただ、そうは申しましても、いまお話ございましたように、現に立地の転換を余儀なくされる事例もございますし、それに伴っていろいろな問題もあることは、私どももある程度耳にしておるところでございまして、こういう面につきましては引き続き私どももいろいろ勉強をさしていただきまして、これに対してどういうふうな手を打っていったらいいか、少し検討いたしたいと思います。
  70. 森下昭司

    森下昭司君 これは通産大臣にお伺いします。これは長官と私の認識が違うんです。中小企業近代化審議会が昨年の十二月八日に出された「今後の中小企業事業転換対策のあり方について」の意見具申があるんです。この意見具申に基づいて、あなた方は中小企業事業転換対策臨時措置法をお出しになっているんですよ。そういう事例があることを耳にしておるという問題じゃないんだ。この近代化審議会が「立地転換についてもこれを取り上げる等弾力的に取扱うものとする。」という意見具申があるから、この意見具申を率直になぜ採用しないのかと、こう聞いているんですよ。これから検討しますなんて、そんなことを言っているんじゃない。まだ前提の認識が違う、長官とは。大臣にお尋ねいたします。
  71. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これはいま長官が答弁をいたしましたように、事業転換とそれから立地の移転ということはやや内容が違いますので、とは言いながらほうっておいていい問題ではございませんので、引き続いて何らかの形で処置できるように検討をいたします。
  72. 森下昭司

    森下昭司君 私は重ねて言っておきますが、事業転換と立地転換、質が違う、そんなことはわかっていますね。しかし、立地転換を余儀なくされるそこに働いておった従業員だとか、まあ経営者というか、夫婦でやっているところもあるでしょう。事業転換を行おうが立地転換を行おうが、生きるということは共通したことなんですよ。その事業を行う、立地転換をしなければ生きられぬ、事業転換をしなければ生きていくことができない、もっと平たい言葉では、暮らすため、生きるためにともに仕事をし、働かなければならぬという点で一致するはずなんです。それをただ単なる現象面で立地転換事業転換とはいささか趣旨が違う、だからこれから考えましょうということだけで片づけるべき問題ではない。前提として、何遍でも言いますが、近代化審議会の意見具申を無視したところに、私は最初にちょっと触れましたように小規模零細企業はどうでもいい、商工中金の追跡調査ではありませんが、ある程度余裕のある優良企業だけを対象に本転換が考えられている証左ではないだろうかというような感じがいたしますものですから、くどいようでありまするがこの点についてお尋ねをしておったわけであります。今後、大臣お答えになりましたように、私は立地転換、商業、サービス業、言葉をかえて言えば零細小規模事業のいわゆる生きる方向について、さらに検討を加えて、そしてまた検討の上に立って、新しい考え方の上に立って助成措置を考えていただきたいということを要望いたしておきます。  それから、私、事業転換を行うに当たって既存の設備を利用できれば一番いいと思うのでありますが、実際問題として既存の設備を利用するということができ得ないというような事業転換もあるわけであります。あるいは最初に申し上げた後ろ向きの事業転換を行うものとして、しかも生産、販路等という立場から業種転換を考えますと、やはり設備は使えないというようなことが出てくるわけであります。先ほどの商工中金の追跡調査の過去の実態等からながめてまいりますると、政府が何らかのかっこうで助成する政策の中に、既存の事業の不用設備というものを買い取ってもらいたいという希望者が全調査対象の二二%にも達しておるという統計上の問題が出ているわけであります。過去に繊維産業の構造改善対策で、紡織機等の廃棄問題に関連をいたしまして積極的な救済政策を政府がおとりになったの例がございます。そういうようなことを考えてまいりますると、この事業転換に当たっても、買い上げるならば積極的に買い上げるという方式をおとりになることが、私は妥当な措置ではないだろうかというような感じがするわけであります。いわゆる転廃業といいまするか、事業転換の中で失敗する例もあるわけでありまするから、転廃業とのいわゆる対策というものを考えましたときには、この事業転換を表裏一体のものとして考えていく必要があると思う。そういうようなことから考えますれば、私は廃棄対策一環といたしまして不用設備、つまり既存の設備で使わなくなったものについては、政府が何らかの形で買い上げるということが必要ではないかと思うのでありますが、そういう考え方が今回の臨時措置法の中に盛られていないということは非常に残念でありますが、なぜ盛られないのか、この点についてお尋ねいたします。
  73. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 設備の買い上げの問題については、私ども、こういうような問題があるように考えております。こういう設備の買い上げという制度を仮に発足いたしますと、いわば構造的要因によって影響を受ける業種というのは非常に広範でございますので、非常に無制限に広がってしまい、資金量としても想像もできないほどの金額になりかねないという点が第一点の問題かと思います。  それから第二番目には、個別企業がいつ、どういう形で転廃業を行うかということが事前に予測できない点が問題かと思います。  それから三番目には、もっと実質的な問題でございますが、設備の買い上げをやるということになりますと、その業界へ次に新しく参入をするということをやはり論理的には抑えないと、整合性がとれないような感じがいたします。こういった新しい設備を一切入ってはいけないというようなところまで体制ができるかどうかという点が問題のように思うわけでございます。  いずれにせよ、こういった設備の買い上げというような対応策を用意いたしますためには、その業界が全体としてどういうビジョンで将来に臨むかというようなことをやはり相当じっくり考えた上で、その答えを待って措置をするというのが本筋ではないかと思います。いま御提案申し上げておりますような一般法ではなかなか力が及ばない分野ではないかという感じがするわけでございます。  ただ、別途組合が中心になりまして設備の共同廃棄を行う場合、こういう場合は現にあり得るわけでございますが、こういった場合につきましては、中小企業振興事業団の設備共同廃棄事業という制度が現に用意をされておりますので、これを活用することによって、いわば転換に伴う設備問題の解決の一助にはなり得るかと思うわけでございます。
  74. 森下昭司

    森下昭司君 いま最後にお述べになりました点は、共同組合等、組合の関係でありますが、私のお尋ねをいたしておりまするのは、むしろ転換措置法というのは個々の中小企業者対象としたものでありまするから、業界という立場で問題を考えているわけではありません。たまたま、繊維産業の構造改善対策の問題と関連をして取り上げましたものですから、一応業界とか、あるいは組合とかというお話があったかとも存じますが、そもそもこの事業転換法は、言うならば主として個人の中小企業者転換をさせるための措置であります、というふうに私は理解をいたしているわけであります。で、先ほど申し上げましたように、既存の設備をそのまま利用できれば非常に転換はしやすいのではないかと思うのであります。しかし事実問題として、転換する場合に、先ほど申し上げたように既存の設備を利用しようとして転換をするわけではありません。製品の生産がどうすればうまくできるのか、できた製品がどうすればうまく販売できるのか、こういうような観点から事業転換の決意がなされるということを最初に申し上げたわけでありまするから、いわゆる既存の設備をまるまる利用できないというものもたくさんあるわけであります。そういう既存の設備を全然利用しないで、事業転換を泣く泣くせざるを得ない業態の場合に、その既存設備を買い上げる考え方というものを持つのが妥当性を持つのではないか、たとえば事業転換を、さっきも言ったように失敗をする例とても三分の一以上あるわけでありまするから、いわば転廃対策と申しますか、転業と廃業とを一緒にして、廃棄対策といわゆる事業転換とは裏表の関係にもなるわけなんです。そういう点からは廃棄対策一環として、そういうような事業転換に伴う設備の要らなくなったものについては、政府自体が、たとえば繊維の構造改善事業の際に行ったような措置を考えるべきことがいいのではないだろうかということを申し上げているわけなんでありまして、先ほどから業界全体のビジョンを見なきゃいかぬとか、意向をどう考えているかどうか見なきゃいかぬとか、あるいは中小企業振興事業団の設備共同廃棄事業制度を利用すればいいとかという問題ではなくて、個々の中小企業者対象にした場合にはどうしたらいいか。たとえば事業転換の融資をしてあげるんだから、不用設備で使わぬなら使わぬで仕方がないじゃありませんかといって放置するお考え方であるのか、はっきり答えていただきたい。
  75. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いままで使っておった設備が転換に伴って不用になる、こういう場合が確かに現実にあり得るわけでございます。この場合に対応いたしましてこの法律ができましたときの一つ措置として、既存の設備に関する償却の特例という制度が設けられております。これは耐用年数がまだかなり残っておる場合にも、転換に伴って新しい分野へ転向することになった場合には、計画期間中に全部の償却を済ましてしまうということによりまして、一種の援助になろうかと考えるわけでございます。新しい分野転換する新しい設備につきましては、先ほど来申し上げております金融上の援助でやるわけでございます。さらに、これを買い上げというところで補強すればもっと実質的応援になるのではないかという点は、趣旨としては理解できるわけでございますが、やはり制度としてそこまで用意するというところには、ちょっとまだ一般法としては踏み切りにくいのではないかと思っておるところでございます。
  76. 森下昭司

    森下昭司君 この問題はひとつ時間の関係がありますので、後日にまた譲りたいと思いますが、このいわゆる意見具申の中で、この転換対策の中で「当面講ずべき助成措置等」という項目がありますが、この中で、「転換先及び転換の方法に誤りなきを期するための意思決定の手助け及び転換に伴う資金経理面の負担の軽減に重点を置くべきである。」ということが実は書いてあるわけであります。ところが、この転換措置法によりますと、事業転換に当たって中小企業庁としてはこの業種がどういうような業種転換をすることが望ましいとか、あるいはこの設備ならばこういうような業種転換をすることがいいとかいうようなことは一切関与しないと、いわばどの業種転換するかはその当該中小企業者の意思に任せる、その意思が決まれば、その転換がスムーズにいくようにわれわれとしては協力するんだというような考え方だと私は理解をいたしておるわけでありますが、そうだといたしますと、先ほど申し上げた近代化審議会の意見具申とやや異なった感じを受ける。これは意思決定の手助けでありますから、この業界はあなたがこういう設備とこういう実績があるならば、こういう業種転換をすればこうこうなるでありましょうというところまで手助けをするということは、そういうところまで助成の一端として考えるべきだということを言っておるのではないかと思うんでありますが、やや意見具申と長官の考え方との違いがあると私は思うんでありますが、その点についてお尋ねをいたします。
  77. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 私どもは、この転換法の運用に際しまして、あなたはいままでの業種ではだめだからここへ行きなさいということで、いわば追い出しのような形で運用することは毛頭考えていないわけでございます。また個別に一つ一つそういった指示をするということは、物理的にも不可能なことでございます。私どもはやはり、中小企業の方々が自分の経営の行く先を考え、そのいままで持っておる知識、経験、能力を生かして、もっと別の分野で働いた方がもっといい経営ができるという、こういう判断を尊重をし、それを応援をするということをたてまえにしていきたいと思っておるところでございます。むしろ、日々の仕事をしておる方の企業家精神というか、企業家の知恵というか、こういった面を十分尊重できるものではないかと思っております。ただ、そうは申しましても、やはりおのずから情報の量に限界がございまして、こういう業種、ああいう業種と迷われるケースは非常に現実には多いだろうと思います。そういった場合には、総合指導所なりあるいは各種の相談機関におきましてやはり親切に相談に乗ってやり、いろいろの迷いの中から一つの答えが出るようになるまで、相談に乗ってあげるということは特に大切なことでございまして、そういった気持ちをまさにいまの答申の中でうたっているのではないか、迷っておられることについて、最後に踏み切りをつけるところまで相談に乗ってあげるという気持ちで、これから運用してまいりたいと思います。
  78. 森下昭司

    森下昭司君 この問題はやはり非常に大切な問題でありますが、今後の推移をひとつ見守っていきたいというふうに考えているわけであります。  そこで若干、時間の関係で、法案の第七条の第三号、この租税特別措置法で法人税を軽減をするという一項目が入っておるんであります。で、あるところで解説を見ましたら、課税の繰り延べだと書いたのもございますし、あるところでは、いや、税金の免除だというようなことも書いてございましたので、この法律で規定いたしまする法人税を軽減するというのは、どの程度の法人税を租税特別措置法によって軽減しようとするのか、具体的内容をお尋ねいたします。
  79. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 合併の場合を例にとって御説明を申し上げますと、被合併法人がある資産を持っていた、それを合併をするに際しまして、普通でございますと時価で評価をすることになるわけです。そういたしますと、従来の簿価との間に差ができてまいりまして、これを一種の益金として課税を受けるというのが普通のルールでございます。しかし、それでは事業転換に伴って新しい合併をして新天地へ発展をしようという趣旨からしますと、新しい税金を払うというのはいかにもつらいという気持ちになられるかと思いまして、こういう特例措置を設けました。これによりまして、いわば簿価で引き継ぎができるという形にしまして、その分だけ圧縮記帳が行われるわけでございます。したがいまして、新しい税金がかけられないで済むという制度が、この制度の趣旨でございます。それが繰り延べであるのかどうかという点でございますが、いずれにせよ、その時点ではまず税金がかからないことになった後に、その資産を、後になって売り払うというようなときになりますと、その時点でまた課税をされることになる、その間は一種の繰り延べになるというような関係がございますし、それから合併した法人がさらにまた解散をする、将来になって解散をするというようなときには、いま圧縮記帳をした金額だけ清算所得の金額がふえるという形になりまして、そこの時点で課税がかけられるという意味合いからしますと、やはり一種の繰り延べになろうかと思うわけでございます。それから圧縮記帳をした資産が、たとえば機械設備のように減価償却資産でございますと、合併後の減価償却費の計算では圧縮後の簿価によって行われるわけでございますから、いわば減価償却額が本来の姿よりも少なくなる。したがって、税金がよけいかかる、結果としてはかかることになるわけでございますが、これは長期にわたってそれが清算されるという形でございまして、この意味で全部をトータルいたしまして一種の課税の繰り延べになるということが申し上げられるかと思います。
  80. 森下昭司

    森下昭司君 それから、六条の減価償却の特例の場合には「特別の措置を講ずる。」、こういう法律の表現になっておりますが、これは具体的にはどういうことを指すのですか。
  81. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先ほどちょっと触れましたが、いままである設備をもって仕事をしておったのが、新しい分野転換することに伴って従来の設備が不用になってくる。こういう場合には、本来でありますとまだ相当な耐用年数が残っておるわけでございますが、これを転換計画に合わせてその期間内に償却できるようにするというのがこの条文の趣旨でございます。こうなりますと償却額がふえるわけでございまして、したがって課税額としては減ってくる、その意味で助成につながってくる、こういう関係にあろうかと思います。
  82. 森下昭司

    森下昭司君 時間がありませんので、せっかく御出席いただいておりますので、特に転換の実際の問題として話題になっておりまするこの造船下請業者の事業転換問題についてちょっとお尋ねいたしておきたいと思います。  非常に造船業界が不況であるということで、運輸大臣の諮問機関である海運造船合理化審議会で、いわゆる四十九年の工事量の六五%程度に昭和五十五年は造船業の建造事業量が減ってくるというような場合でありまするから、特に造船下請業等については新市場の開拓と事業転換等につき十分配慮すべきである、こういう答申がなされました結果、現実の問題といたしまして競合する事業を避け、あるいは将来その事業が永続するものというようないろんなことが業界で検討されました結果、船舶解体業に転業しようではないかというのが大体造船業界のいわゆる意向だというふうに聞いているわけでありまして、そこでこの解体事業を行うに当たりまして必要な資金というものが要りまして、その資金の利息を、半額を国から補助しようではないかというようなことでありますが、このいわゆる転換計画というものですね、この転換計画というものと今回提案をされました転換法との関係は一体どうなるのか、これをまず中小企業庁にお尋ねいたします。
  83. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 船舶の不況につきましては私どももかねがね注目をし、またできるだけの手を打ってこの問題に対処いたしたいと考えておるところでございます。ただ、いろいろ聞いてみますと、かなり長期にわたる構造的な要因も含んでおるということでございまして、現に造船に関連をする下請業界等を中心としまして、この事業転換の問題についていろいろ勉強をしたいという問い合わせが来ておるところでございます。私どもはこれらの勉強の成果によって新しい分野への転換計画がまとまるならば、この法律をもって応援をするということを考えてまいりたいと思います。それと同時に、別途運輸省の方でいろいろお考えになっておられるようでございまして、これらはこの措置と併行して適用されるということになろうかと思うわけでございます。なお運輸省ともよく連絡をとりながらやってまいりたいと思います。
  84. 森下昭司

    森下昭司君 そこで運輸省の方へお尋ねいたしますが、この協業組合をつくるというお考え方のようでありますが、この協業組合が創立いたしますと、大体全国で一つのものにするのか、各地域ごとに協業組合をつくって、全国的なものは連合会的なものにするのか、その辺の構想というのは固まっているんですか。
  85. 清水正彦

    説明員(清水正彦君) 御指摘の点でございますが、現在検討中でございますが、現在ある一つの考え方は全国大体十カ所程度、それぞれ必要な地域に組合をつくったらいかがかという考え方がございます。これは協業組合が適当であろうという考えも強く出ておるわけでございますが、しかし必ずしも協業組合だけというふうに限定してまだ考えるに至っておりません。なお検討中でございますので、これらを連合した連合会等についてはまだ議論がそこまでいっていないのが実情でございます。以上でございます。
  86. 森下昭司

    森下昭司君 当然これは社団法人日本社団協力事業者団体連合会、ここが中心となって構想を進められるとおみえになりまするので、今後の新しい協業組合によるか、あるいはまた他の方法によるかは別にいたしまして、この連合会がやはり今後の事業転換中心役割りを果たしていくというふうに理解していいですか。
  87. 清水正彦

    説明員(清水正彦君) 現在、業界の意向を私どもとお話をしておる相手は御指摘の団体でございます。したがいまして、今後の企画立案に関しましても、御指摘の社団法人が大いに業界の意向をわれわれに伝えてくれるものというふうに考えております。
  88. 森下昭司

    森下昭司君 いわゆるいま全国的に必要な地域、数カ所ということになると思うのでありますが、こういった何らかの組合ができまして、転換事業として、船舶の解体作業をおやりになる。必要資金は私は膨大なものがあろうと思うのでありますが、この場合にいわゆる事業転換中小企業金融公庫なりから貸し出します限度額一億五千万円というものはある地域について言えば、それだけでは足りないというようなことにもなるわけであります。で、いわゆる運輸省が半額利息を補給しようという考え方の中に、事業転換措置法に基づく特別枠の融資ということが念頭にあるんではないだろうかと思うのでありますが、安い金利、一%安いわけでありますが、安い金利の半額を運輸省がおやりになると思うのでありますが、一億五千万円という限界でまいりますると、やや私は資金不足が生ずるのではないだろうかと思うのでありまして、この点、中小企業庁の方からは限度額いっぱいしか貸し出せないなら貸し出せない、運輸省としては足りない分については他の市中銀行等から資金を借りるというお考え方であるのかどうか。あるいはそうではなくて、この転換法に基づくいわゆる貸し付けをぜひ資金としたいというお考え方があるのか、それぞれお答えいただきたいと思います。
  89. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いまお話に出ております構想については、いま運輸省が中心になりましていろいろ構想を詰めておられる段階でございますが、漏れ聞くところによりますと、資金のソースとしては商工中金を活用してはどうかというような構想がおありのようでございます。この場合でございますと、かなり資金枠としては天井が高うございますから、量の面ではかなりの応援ができるのではないかと思います。ただ、具体的なやり方等につきましては、少し運輸省のその構想が固まった段階で私どもも聞かしていただき、また知恵を出すようにいたしたいと思います。
  90. 清水正彦

    説明員(清水正彦君) 私どもの方といたしましても、こういった事業転換に関しまして何らかの助成措置を考えなければいけないということで、いろいろな角度から検討しておる一つの考え方でございますけれども、解体用の船舶の購入資金について何らかの助成が必要なのではないか、あるいは融資が必要なのではないかという考え方を持っておりますが、ただいま長官から御返事がございましたが、私どももこれにつきましては極力政府系の資金確保することができないであろうかということを含めまして、現在計画を検討中でございます。
  91. 森下昭司

    森下昭司君 そこで、この問題について最後に一つ大臣にお尋ねいたしますが、船舶解体というものは十年ほど前は比較的日本が世界的にもたくさんの作業を扱っておったのでありますが、人件費の高騰あるいは国内の鉄くずの価格が非常に安いというようなことから、最近は台湾が一番世界で船舶解体が進んでおるというような統計が出ているわけであります。  これを今度は日本で行うということになりますと、国内の鉄くずの価格、それから台湾から持ってくる鉄くずの価格などいろいろなことがありまして、再び発展途上国云々というような問題に発展をする可能性がありはしないかというような私気がするわけでありますが、いわゆる台湾産、あるいは韓国、あるいはその他フィリピン等で行われておりまする船舶解体の事業と、今後、いま造船下請業が行おうとする船舶解体事業とがお互いに国際的分野における競合、いままでの通産省の方針は国際分野における何と申しますか、分担を担って云々ということになるわけでありますが、これは競合をする可能性がありはしないかと心配をいたすのでありますが、大臣としてどういうお考えを持っているのか、お尋ねをいたします。
  92. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は、ここ数年は船舶解体事業というものは非常にふえると思います。でありますから、わが国におきましても、造船業の下請企業がそういう方面に転換をしていこうという場合には、政府の方でもできるだけ助成をして、そういう転換ができるように協力していくということをいたしましても、近隣の発展途上国とはさほど競合は起こらないと、こう思います。
  93. 森下昭司

    森下昭司君 そこで、時間がないので申しわけございませんが、ちょっと合板業界の転換の問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  私は、先ほどから何回も不用設備の買い上げの問題等を実は提案をいたしておったのは、やはり合板の実態からまいりますと、合板が事業転換を行う場合には、非常にむずかしいわけであります。特に、最近は住宅の建設とあるいは公共事業のおくれによりまして非常な不況になっているわけであります。たとえば、住宅関連産業への転換がもしも図られるとすれば、ハードボードでありますとか、あるいはパーチクルボードでありまするとかいうような、こういう新しい分野への転換というものが検討されるわけでありますが、どういたしましても従来の、このいわゆる合板の設備というものは機械設備そのものが合板しかつくれない。いま申し上げたような新しい分野への進出をしようとすれば、設備を一新をしなければならぬというようなことが一つの大きな課題になっているわけであります。特に名古屋地方におきましては、全国生産量の、それぞれ普通合板、特殊合板ともに、一二%から一五%という高い占有率を持っておるのでありますが、つい先日までの不況で数社が倒産をいたしましたし、そこで働く労働者が約千人近く、首切りなり指名解雇、あるいは退職希望者を募るというかっこうで、職場をやめざるを得ないというような状況に相なっているわけであります。そこで、こういうような合板業界の事業転換というものは、いわゆる今日の合板の現況から将来への展望へ向けて、どういうものに転換をすることが望ましいとお考えになっているのか、林野庁当局の考え方があれば尋ねいたしておきたいと思います。
  94. 松延洋平

    説明員(松延洋平君) 合板の問題につきましては先生御指摘のとおり、基本的には需要問題、需給安定問題、さらにはその経営安定問題、これが基本にあるかと思うわけでございます。  そこで、新たな構造改善事業といたしまして、昨年新たに制定されました中小企業近代化促進法に基づきまして、新規需要の開発、設備の近代化、それから原料となります原木の安定的確保、あるいは取引、流通体制の整備というような施策を実施するように指導しているところでございまして、これを受けまして、これに対応して当該業界におきましては、今後の構造改善計画の策定について現在鋭意検討中ということでございます。で、林野庁としまして、この業界の検討結果を待ちまして、合板業界の近代化とかあるいは安定的発展のための総合的施策を講じてまいりたいと考えておるわけでございます。特にいま先生御指摘の設備問題との問題でございますけれども、この設備問題との関連におきましては、特に需要見通しをどう考えるか、それから需要問題をどう考えるかということ、それからさらに現在の生産能力の問題をどう考えるか、これは非常にむずかしい問題でございます。この問題につきましては、あわせまして林野庁におきまして学識経験者を中心としまして業界代表の方々、あるいは労働界の代表の方々にも御参加いただきまして、木材産業の基本問題の一つといたしまして、調査会を設けて検討しているところでございます。
  95. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 森下君、時間が来ましたから。
  96. 森下昭司

    森下昭司君 それでは、大変恐縮でありますが、私はこの合板業界が原木等の関係から林野庁で所管しておるということ自体が、産業という立場で物をながめました場合に非常におかしな形態だというふうに思うわけでありますが、いまお話がありましたように、構造的不況であることは否定できない事実なんです。四十八年に新設住宅のいわゆる百九十万戸分に相当する設備投資を業界が行ったわけであります。ところが、実際には、いま四十九年で百三十一万、昨年で百三十五万というような建設しかできていないわけでありまするから、少なくとも、六十万戸程度、要するに全体の三分の一程度が過剰な設備になって遊休している、それをどうするかということが一つの課題になっているわけであります。あるいはいまお話がありましたように、原木を外材に依存しておるところにも問題があります。しかし、やはり設備の過剰投資に大きな原因があることは事実であります。でありまするから、ただ単に事業転換を行おうといたしましても、このような状況下ではにっちもさっちもいかないのであります。こういうようなことを考えてまいりましたときに、事業転換というものがいかに困難な業態があるかということを私は通産当局に御認識をいただきたいと思うのであります。したがって、合板業界の事業転換等については十分ひとつ林野庁とも御相談の上、積極的な助成策をとっていただきたいということを私は要望いたしておきたいと思います。  さらに、実はこの後、分野法の問題でいろいろお尋ねをしたいと思いまして、厚生省の担当課長さん等においでをいただきましたが、大変恐縮でありますが時間の関係で質問することができませんので、ここでお詫びを申し上げまして私の質問を終わります。
  97. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  98. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  中小企業事業転換対策臨時措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  99. 桑名義治

    ○桑名義治君 まず最初に、本法案の提出に当たりまして、その経過について伺っておきたいと思います。これまですでに昭和四十六年ドルショックの際に国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律が制定されて、現在まで五年を経過をしておるわけでございますが、この法律によってどのような業種がどのような形で具体的に救済をされてきたのか、あるいはまた、事業転換業種の具体的実例と、その成否についてまず伺っておきたいと思います。
  100. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) まずもって、この法律に至りますまでの経緯を御説明を申し上げます。  昭和三十八年に中小企業基本法が制定されました。その中で「需給構造等変化に即応して行う事業転換を円滑にするため必要な施策を講ずる」という旨が宣言されております。それを受けまして、自後いろいろの転換に関連する立法が用意をされました。  その一つは、昭和四十四年に近代化促進法改正いたしまして、業種別構造改善計画制度が発足をし、その一環として事業転換に関する必要な措置をとるべきことになったこと、さらにまた、四十六年には特恵供与、あるいはドルショックによって事業転換に追い込まれる中小企業者に対する対策として、特恵対策法及び国際経済調整措置法が制定された、これが第二の対応策でございます。さらに第三番目といたしましては、昨年の近促法の改正による新分野進出計画制度の創設、これらの諸制度は、特定の目的に対応いたしまして、事業転換を円滑にならしめるための措置がそれぞれその中に組み込まれておるわけでございますが、ただ、いずれも特定の目的ということに限定されておりまして、今回御提案申し上げておりますような一般的な制度とは多少趣を異にしておるわけでございます。  次に、従来の法律による実績でございますが、それらの中でまず先ほど申し上げました特恵対策法につきましては、認定実績はゼロになっております。と申しますのは、同じ四十六年に引き続きましてドルショックが起こりまして、これを対象として国際経済上の調整措置臨時措置法が制定をされ、いわばその中に結果として吸収されることになったからでございます。いま申し上げました国際経済上の調整措置臨時措置法、これの運用実績でございますが、法律によりまして、ドルショックによる影響を受けたということで認定を行いました企業がかれこれ約二万企業ございます。それから、その中で影響を受けたことを一つのきっかけとして転換計画認定をし、新たなる分野への転身を図るというところまで話が進みましたケースが六十五件でございます。それから、中小企業近代化促進法に関連をした実績でございますが、構造改善計画事業一環として行う事業転換のケースが八百七十五件でございます。それから、新分野進出計画に基づく事業転換は、まだ法制定されましてから時間がたっておりません関係で、認定実績としてはゼロという形でございます。
  101. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御答弁によりますと、いままで四十六年の国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置法、こういった法律がいろいろと施行されたわけでございますが、その実績からながめてみた場合には、必ずしも成功したというふうにはなかなか考えられないわけでございますが、どこにそういった問題点があったのか、どういうふうにそれをとらえているのか、まずそこらをお聞きしておきたいと思います。
  102. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 私どももこの法律の制定に際しまして、いま御質問のありましたような点はやはり先例として十分参考にする必要があると考えまして、従来の転換実績の追跡調査をいろいろいたしたわけでございます。先ほど国際経済調整臨時措置法に基づく転換計画申請した件数六十五件申し上げましたが、その中で二件は結局計画をつくりましたままで、実際に着手いたしませんでしたから、残り六十三件が現実に転換に取り組んだわけでございます。その中で、その後経過を聞いてみますと、約七五%が成功し、二五%は思った所期の成果までたどりつけなかったという答えが返ってきております。これは従来の転換実績の調査はいろいろございますが、一例として先ほどの六十五件を申し上げた次第でございますす。  成功した事例あるいは失敗した事例というのを整理をいたしてみますと、やはり一つは、転換先の企業が新しい国民のニーズに適合したような、そういった業種をうまく選んだということが成功の要因として大きく働いているように思います。それと同時に、既存の経営資源と申しますか、人的能力あるいは設備的な能力、販路等々をうまく部分的に活用できた場合にも成功の確率が高いように思われます。さらにまた、ある程度経営に余力があるうちに次の対応策を考え、しかもそれを計画的に進めていくということが成功させるための大きな要因になっているような感じがいたします。あれこれ考えまして、やはり事前の準備ないし計画という段階が非常に大きな成功要因に結びついておるファクターではないかという感じがするわけでございます。  逆に失敗したというか、思ったほどの成果を上げられなかったという事例は、いまの要件と反対のケースでございまして、どうもせっかく選んだ転進先が、業種として余り将来性が乏しかった、また計画が十分熟しないうちにとりあえず飛び込んでいったということのために、最初一年ぐらいよくても、二年目からどうもうまく思ったほどの成果が上げられないといったケースもあるわけでございます。私どもはやはりこういった失敗のケースは失敗のケースとして、やはりその中からいろいろの教訓をくみ取り、今後の転換指導のときの重要な参考にしていきたい、こう思っておるところでございます。
  103. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御答弁の中で成功した例、これは国民のニーズに合ったあるいは余力のあるうちに対応策を立てた、それからそれぞれの会社が、いわゆる計画的に実行を進めていったと、大体この三点を述べられたわけでございますが、四十六年のドルショック、それから以後ずっと不況が続いているわけでございます、一応、考えてみると。  そうすると、この不況のどん底の中で今回は事業転換をやらなければならない。いまの成功の例の中に、余力のあるうちに対応策を立てるという、これは今回の転換法の中では考えられないことだ。いよいよ余力がなくなった、どうすることもできない、他にいい業種はないのかと、こういった立場に立っていまから先事業転換をしていきなさい、こういう中小企業対策一環として、今回の法律が一応提出をされた、この分野が非常に多いのではないかというふうに考えられるわけです。そういった立場から考えた場合に、今回の事業転換法と四十六年の法律の第六条、七条、八条、九条、すなわちち「転換計画認定」、「資金確保」、それから「課税特例」、「就職のあっせん等」、こういうものをそれぞれ比較すると、どういう点がいわゆる前進をし、あるいは中小企業対策に力が入れられているのか、その比較対照の中で前進した部分を説明をしていただきたいと思います。
  104. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 制度自体を外形的に比較いたしますと、ドル対法あるいは特恵法で考えておりました各種の助成策は、ほぼ新しい転換対策法の中に取り入れられておりまして、必要にして十分な対策をとりあえず取りそろえたつもりでございます。  ただ、問題は客観情勢でございまして、今度の石油ショックを契機としまして日本経済自身が一つの安定経済成長路線へ向かっていく、その局面におきましては、従来の高度成長時代のように、どこか新しい仕事をすればそれぞれ何らかの報酬が期待できると、こういった時期と違いまして、やはり転換に関する局面は一層むずかしくなったということが確かに言えると思います。それなりに、やはり転換に対する需要というものが出てまいるわけでございますが、このような新しい事態に対応しまして、私どもは従来あります道具をいかにうまく使うかということが、特に大切なのではないかという感じがいたしておるところでございます。応援の手段もさることながら、その前提となるやはり企業自身のどういう分野へ転向していったらいいんだろうか、こういう現実の悩みにこたえて親切に指導をし、助言をし、そして決断をつけるというところまで育てていく、その過程を特に大切にしてこの法律を運用してまいりたいと思っておるところでございます。
  105. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御答弁は私の質問には答えてないと思いますよ。  先ほどから、最初の質問の中にいわゆる特恵法の問題や、それから国際経済上の臨時措置法の問題や、そういういままでいろいろと方法をとられたけれども、しかし、実効が余り上がっていなかったと。そうすると、過去そういう中小企業に対する対策を立てたその法律と今回のこの法律とは、資金面あるいは転換計画認定面、あるいは課税特例あるいは就職のあっせん、そういった面にどのように前進をしているんですかと質問をしたわけですよ。ところが、親切に最後までめんどう見たいと思いますじゃ、これは答弁にならないと思うのですが、どうですか。
  106. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 少し制度の中身に入りますが、過去の各種の転換に関する法律における助成の内容をそれぞれ比較いたしてみますと、事業転換貸し付けというのがほぼ共通して実施されておりますほか、中小企業振興事業団高度化事業融資、これは三法共通でございます。また、信用保険特例についてもほぼ同じような形で助成が期待をされております。違っておりますのは税制面でございまして、従来は旧設備の加速償却ということをその内容といたしておりますが、今回はそれに加えまして、合併または現物出資を伴う事業転換をした場合の評価益に関する課税特例という措置が新たに加えられております。  雇用対策につきましては、従来からとられておりました助成策をほぼ網羅をして今回も引き継ぐことにいたしたいと思っております。  先ほど趣旨説明の中にも申し上げましたように、ドル対法も一応十二月で期限が参ります。しかしながら、そうかといって、やはりこれから新しいいろいろの経済情勢変化というものが当然予想されるわけでございまして、それらに対する一般的な手当てというものをやはりこの際用意をしておくことが日本経済全体の効率を上げ、また個々の企業がよりよい経営に転進をするということのためにも有効なのでないかと思っておるところでございます。
  107. 桑名義治

    ○桑名義治君 まあ提案理由といたしまして、安定成長経済への適応のために十年間の時限立法というふうになっているわけでございますが、現状は決して安定した経済情勢ではないとわれわれは認識をしているわけですが、現在の経済の認識についてはどのように考えているのか。また、このようないわゆる時限立法にしたのはどういう理由なのか。そこのところを御説明願いたいと思います。
  108. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) これからの十年というのは日本経済にとって非常に重要な十年ではないかと思っておるところでございます。従来高度成長で日本経済がすくすく伸びてきた。そのあげくに石油ショックという非常に大きなまた激しい洗礼を受けまして、日本経済一種の混乱期を経験したわけでございます。それからようやく立ち直って今日に至りますものの、これからの十年というのはかつての高度成長の時代の前提条件がそのまま復活するわけではなくて、やはり新しいいろいろの与件の変化というものが予想されるわけでございます。  これは、要約すれば、ひとつの安定経済体制というものに日本経済が適応していくという過程であると申し上げることができるかと思うわけでございます。いわば、いままでのように量が大切な時代から、質が大切な時代に移っていく。その間にあって、対外的にも、あるいは国内的にも新しい構造変化を迫る要因が次から次へと出てくる、こういう十年であろうと思っているわけでございます。こういったことを頭に置きながら、現にいろいろな経済計画でも六十年を目標とした約十年間の日本経済の姿をいろいろ書いておるという形になっておるのだと私どもは承知をいたしておるわけでございます。  したがってこの十年は、いままでの経済体制から新しい経済体制へ移るための一区切りであり、また、その間にいろいろなことが予測される、そういった予測される範囲における事業転換対応策を考えようという意味から十年の限時立法にいたした次第でございます。
  109. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、いまは日本経済の非常に重大な転換期である。この十年間はさらに重要であるというような意味のお話がございました。それと同時に、今回のこの臨時措置法の中の第一条で「最近における貿易構造その他の経済的事情の著しい変化にかんがみ、」とこういうふうに載っているわけですが、この「貿易構造変化」ということをどういうふうにとらえられているわけですか。
  110. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 「貿易構造その他の経済的事情の著しい変化」ということがこの法律の中にうたわれておるわけでございますが、これは、これからの十年の中にいわば構造的に新しい要因が加わっていく、中小企業としてはそれを受けて、新しい対応を考えざるを得ない幾つかの要因をこの表現でくくったわけでございます。  具体的にどういうことを頭に描いているかということを順次申し上げますと、一つは、貿易構造変化によって輸出がいままでのように出なくなっていく、こういった過程を第一に頭に描いております。これは、その要因としては、たとえば発展途上国の工業化が進展をいたしまして、輸出競争先で新しい競争が生じ、結果としてやはり日本の従来のような商品では、輸出が継続することが非常に困難になるというような事情、あるいは輸入相手国で新しい輸入制限体制がしかれて、それに対応することが必要である、こういった場合が具体的ケースになろうかと思います。  それと似たような事情でございますが、同じく発展途上国の工業化が進んだために、相手国においての競争だけではなくて、日本自体に発展途上国の製品が入ってくるようになってくる、こういったことに伴って日本の産業も新しい適用を考えざるを得なくなる場合というのが第二のケースとして挙げられるかと思います。  さらにまた、第三のケースといたしましては、技術革新によりまして競争商品の方が需要に適合するようになり、いままでの生産方法では需要にうまくミートできなくなってくる、これも一つの構造的な変化として取り上げることができるのではないかと思います。  また第四のケースといたしましては、いままでつくっておりました製品の原材料がそもそも天然資源等のために使えなくなって、量的に制約を受けるようになってくる。したがって、いままでの製品をこのまま続けるということには限界が生じてくる場合というのもケースの四番目に掲げられるのではないかと思います。  さらにまた申し上げますと、たとえば、公害規制等のように新しい法律制度が導入され、それによって従来の経営方針を根本的に考え直さなければならないケースというのもこれから十年の中に予想されるわけでございまして、いわばいま申し上げましたような構造的な変革というものに対応する企業の対応として、一つは、いままでの仕事をもっと合理化し、あるいはもっと高級化して、新しい環境に立ち向かっていこうという対応もあろうかと思いますが、中には従来のままのやり方ではなくて、別の分野へ行った方がわれわれの持っておる知識、経験、能力というものがもっと生かせるのではないかと考えられる向きもあろうと思います。こういった後者の方々を支援するのがまさにこの法律の趣旨であろうかと考えておる次第でございます。
  111. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの御説明の中では一番主体、重点になっているのがいわゆる開発途上国の追い上げ、いわゆるいままで外に出しておったのが逆に向こうから入ってくる、そのためにこういうような転換が必要になるんだ、あるいは国内の競争力の問題、あるいは公害規制の問題、ここら辺が一番中心になっているんではないかと思いますが、こういうふうに考えますと、私は、従来のわが国企業政策、いわゆる大企業中心で、中小企業に対して国民のニーズに適応するだけの質的転換、これを政府が怠ってきたのが最大の原因ではなかったかと、こういうふうに考えざるを得ないわけでございます。  開発国からの追い上げという問題は、これは当然起こるべくして起こった問題でもございますし、あるいはまた国内競争のいわゆる厳しい局面を迎えたということも、これもいま急激に起こった問題ではなく、いわゆるいままでの政府の経済政策の中にこの要因が一切含まれておったんだ、いまになってこのようないわゆる事業転換対策、こういう法律を持ち出すということは、これは政府が怠ってきたのが最大の原因だと、こういうふうにわれわれは認識をしておるわけでありますが、その点について大臣はどのようにお考えになりますか。
  112. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) おっしゃるように、この開発途上国が非常な低賃金でございまして、しかも技術の水準が相当上がっておる、ある分野では日本の製品よりも安くてむしろよい品物ができる、こういうことになりましたので、勢いわが国もその面から産業構造の転換貿易構造転換を強いられておるわけでございますが、また同時に、先般のオイルショック以降、高度成長から安定成長へ移りまして、それによりましてやはり産業構造全体の転換が必要になってきておるわけでございます。  そういうことから今回の法律をお願いしておるわけでございますが、私は必ずしも政府が怠慢であったとか、そういうふうには思いません。やはり、一番当初に長官から御説明をいたしましたように、昭和三十八年以降ずっとここ十数年間、そのつど適切な法律を次から次に制定し、あるいはまた内容改正いたしまして、精いっぱい適用してきておる、こういうふうに思います。決して怠慢であったとか、そういうふうには思いませんが、しかし、今後とも世界の情勢は目まぐるしく転換をいたしますので、そういう事態を十分認識をいたしまして、後手にならないように先手先手といろいろな手をさらに積極的に打っていかなければならぬ、かように考えます。
  113. 桑名義治

    ○桑名義治君 この時限立法にした、十年に年限を切ったというその理由はどういう理由ですか、それをお答えになっていないようですが……。
  114. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先ほど申し上げましたように、ここ十年というものを対象として各種の経済計画もつくられておりますし、また、それに対応するいろいろな対応策を研究しておるという実情にあることは頭に置きながら、とりあえず十年間に予想される各種の変化をいかにうまくこなしていくかという観点から、この法律を十年の限時立法にした次第でございます。これは、やはり性質から言いまして、十年たちましたときに、その情勢に応じて新しい考え方をどうするかということを考える必要があるのではないかと思っておるところでございます。
  115. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどから議論を交わしておりますように、昭和四十六年のドルショックのときの国際経済上の輸入措置あるいは特恵法、こういういろいろな法律が制定をされたわけでございますが、これは最後までめんどうを見なかったというか、この法がただ制定をされたというだけにとどまっているような感がするわけです。そういったところにも一つの実効が上がらなかったという一面が出ているんではないかと思います。そういった立場から考えましても、今回のこの転換法は、ただ転換法ができたからといって急激に事業転換ができるわけではございません。そういう意味で、国民のいろいろなニーズを考えながら指導体制というものを強化し、強力に指導をしていかなければ、またこの法律は実効上がらないで終わっちゃったというような結果になるんではないかというおそれを十分に含んでいるということもお考えになって、今後運用について配慮いただきたいというふうに思うわけでございます。  そこで、本法適用の対象となる業種については政令により主務大臣が指定する、こういうふうになっているわけでございますが、どのような業種が指定されるというふうにお考えになっていらっしゃるか、まずお述べ願いたいと思います。
  116. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先ほど、これから予想される経済環境変化、特に構造的に要因について御説明をいたしました。そこに出ておりますように、貿易環境が変わる、あるいは技術革新が進む、さらには新しい法制が用意される、原材料が枯渇する、これらの要因を受けて、いままでやってきた事業にやはりいろいろ考えていかなければならない要因が業種として出てぐる、こういった場合に、その業種を主務大臣が指定する、こういう形になっておるわけでございます。  具体的にはこれから各種、主務大臣内容を詰めてまいるわけでございますが、一応、従来国際経済関係調整臨時措置法でやっておりました当時の業種が全国業種で百二十一、それから産地業種で八十三ございました。ああいったことが一つの参考になるのではないかと思っておるところでございます。現に私どものところにもいろいろの業種から、事業転換法ができたら私どももひとつ考えなければならないので、実情を教えてほしいという相談がいろいろまいっております。たとえて申しますと、輸出の問題を一つの契機として造船業がこれからどう自分たちの経営を考えていったらいいのであろうか、こういう相談がまいっておりますし、それからライターが普及したことによって、マッチ業界が前途の経営のために別の分野でひとついままでの知識、経験を生かす工夫はないか、ひとつ相談に乗ってほしいというような相談もまいっております。それから、公害関係業種でも、いままでのやり方ではどうもぐあいが悪いので、何かひとつ工夫が必要だと、ぜひ知恵を貸してほしいという相談も見えております。  私どもはやはり、そういう一つ一つの生の声を受けながら最後の業種指定の詰めを行っていきたいと思っておるところでございます。
  117. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、事業転換認定申請要件の問題について一言述べたいと思いますが、今日では労働者の企業経営への参加が非常に進んでいると思われるわけです。特に中小企業、零細企業の中にはそういった姿勢を含んだ会社が相当あるわけでございますが、今回のこの事業転換法の認定申請要件として、当該企業の労働者の代表が承認をするということを加える必要があるんではなかろうかというふうに私は思うわけでございます。何となれば、せっかく事業転換をやった、やるときにもこれ労働者のいうならば協力がなければ、当局と労働者との間の一体性がなければこういう一つの冒険的な転換というのはなかなか成功に導くわけにはいかない、そういう立場から考えた場合に、ぜひこれは必要であろうというふうに考えるわけでございますが、その点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  118. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 事業転換がうまくいくためには、経営者の十分なる事前の勉強に加えまして、その経営者自身も一つの決断が必要でございます。しかし、それと同時に、いまお話ございましたように、やはり従業員の人々がその決断を受けて、おれたちもひとつやろうではないかというふうに気をそろえることが非常に大きなファクターではないかと思っておるところでございます。こういう形で経営者と労働者とが新しい経済環境の中でお互いに力を合わせることによって新分野でもっとよりよい経営をし、また働く機会を得るというような形に持って行くことが、本来非常に望ましいことであるということは御指摘のとおりでございます。  私どもは、こういった意味合いから、事業計画認定を都道府県で行いますが、その際にはやはり労働者との協力というものがどういうふうになっているんだというようなことをよくチェックするような指導をしていきたいと思っておりますし、また転換指導を行う際にもこの辺が非常に大きなファクターであるということを頭に置きながら指導をしてまいりたいと思います。
  119. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで事業転換を行う場合、従業員対策が大切であるということ、これはいま長官もお述べになったとおりであります。たとえば、経営者は新しい事業転換するにしても、それによって従来の従業員が整理をされるというようなことが起これば、これは彼らに及ぼす影響というものは甚大であり、こういう転換法ができたことによって、失業という大きな代償を労働者が受けたと、こういうことになると、これは重大な問題にかえってなっていくのではないかと、こういうふうに考えるわけでございます。そのために、対象業種の指定に当たっては、近代化審議会に専門部会を設ける、さらにそのメンバーには労働組合の代表をさらに充実をしていくということがまた重要な要件一つではなかろうかと、こういうふうに考えるわけでございますが、その点に対する配慮はどのようになっていますか。
  120. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 私どもは、この転換というものは、いままで持っております経営者のいわゆる経営資源というものをいかにうまく新しい分野で活用するかということが一つのポイントになるだろうと思っております。したがいまして、新しい分野に移行することでございますから、いままでの労働者の訓練と違った新しい仕事に適応するための訓練というものが当然必要であろうかと思います。そして、そういう訓練を経ることによって、従業員の方々が新天地で伸び伸びと仕事ができるようにしたいと考えておりまして、決してこれを機会に労働者の整理をするというようなことは望ましいことではないと思っておるわけでございます。  いまのようなことも頭に置きながら、御指摘ございました近代化審議会の構成でございますが、私ども実は近代化審議会の中に事業転換部会というものを設けることを計画をいたしておりまして、先般も総合部会でこのようなことについての下相談もいたした次第でございます。法律がスタートをいたしましたら、事業転換部会というものを近代化審議会の中に設けまして、その構成員として労働者代表の方も加わっていただく、こういうふうにすれば、私どもの考えておりますことがより一層生きてくるのではないかと、こう考えておるところでございます。
  121. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま私の考え方を述べさしていただいたわけでございますが、その点について、前半の方でございますがね、決してこの法律ができたから、——できた理由の中に、労働者を失業させるためじゃないんだということは、これは当然わかっているわけです。もし仮に転換することによってそういう失業者を出すというような事態が起これば、むしろこの法律ができたことによって社会の混乱を招く一因にもなりかねない、したがって、この点については十分な配慮が必要である。そしてそのためには、さらにこういう近代化審議会の中にも小委員会を設けて、その中には労働組合の代表を入れて、そして審議をすることが最も好ましいことであるということを主張したわけでございますので、その点についてはそういう意向があるようでございますので、ぜひともそういう形でもってこの法律の推進については努力を続けていっていただきたいと、このように思います。  で、さらに、知識集約型が現在の企業の中では最も求められているわけでございます。そういった場合に、今日の中小企業事業転換を行う場合には情報ということが命綱になる。一番最初、冒頭に長官からもお話ございました。その中のいわゆる成功した事例、これは国民のニーズに合うか合わないか、これは一つのやっぱり情報でございます。それがいわゆる成不成功に大きないわゆる結果をあらわしてきたといっても決して過言ではないわけでございますが、中小企業事業転換追跡調査結果によりますと、必要な情報が少なかったために事前調査が不十分となり、先行きの見通しが立たなかった。そして事業転換に踏み切れなかったり、あるいはまた転換した後に、必要となる情報が不足したために転換に失敗をした、こういった事例はきわめて多いようにこの資料の中からはうかがわれるわけでございます。  この点大手企業にあっては、市場情報を効果的に把握するための、国内外を問わず商社におきましては代理店を通す方法がある、あるいは自社の直販か販売会社を通す方法に切りかえて、より新しい豊富な情報を求めるまでになってきているわけです。そういうふうに大企業はいわゆる情報収集体制が整備はしておりますけれども、中小企業にはその情報をなかなか収集する力がない、方法を持たない、ここにも大きなまた問題点があり、隘路があると思うんですが、その情報を収集するのに必要になる体制というものは、政府は今回どのような体制を考えられておられるのか、その点について伺っておきたいと思います。
  122. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換に際しましてやはり当事者たる中小企業の考えますことは、これからいままでの仕事を続けていって一体どうなるだろうか、また、ひとつ転換を考えるにいたしましても、その転換先の企業というのが将来性がどうであろうか、また仮に入った場合に一体どういう設備が必要で、どういう技術が必要で、どういう従業員の訓練が必要であり、さらにまた販路等はどうなっているのか、こういったことについていろいろ知りたいことが多いのではないかと私どもも推察をしておるところでございます。それらの悩みというか、希望にうまくこたえられるような体制をつくることは、この転換法を生かして使うという上での大切なポイントになるであろうという感じがいたします。  窓口といたしましては、中小企業庁あるいは通産局、さらには府県、また各種の中小企業団体、いろいろな窓口が相談に乗り得るようになっておりますが、そのもとになる情報をいかにしてうまく集め、そして利用できるような体制まで持っていくかということにつきまして、実はきょうもお見えになっておりますが、中小企業振興事業団の方でひとつ格段の体制整備をお願いしようと思っておるところでございます。現に中小企業振興事業団の中には情報センターという組織がございまして、ここで各種の産業に関するデータを集めておられますが、それをさらに充実したものにすると同時に、これを各窓口にうまくつないでいって利用しやすくするということについても、特に気をつけてまいりたいと思います。  転換につきましては、単にいま申し上げましたように各種の産業の状況だけではなくて、従来の転換事例でどういう悩みがあり、それをどう乗り越えていったか、どういう問題に遭遇してどういうふうに困ったか、こういった経験が大切でございますので、こういった転換の事例に関する各種の資料もあわせて、特に力を注いで収集し、利用できるようにしていきたいと思っているところでございます。実は先般中小企業振興事業団の情報センターの中にこの転換の問題を特別に扱うグループを発足していただきまして、こういった需要にこたえられるように一歩前進を図った次第でございます。
  123. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、このいわゆる体制というものは縦の線で結ぶと大体どういうふうな形になるわけですか。中小企業あるいは零細企業というものは直接政府機関の中に尋ねにいくとか、あるいはいろいろなそういう情報の本を見るとか、そのほかに具体的に相談をする窓口、そこに情報がずっと上から流れてくる、その一つの体制というものを縦の線に結ぶと、こういうところからこういうところに流れ、こういうところに流れる、そういう縦の線というのはどういうふうになっているわけですか。
  124. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 中小企業、特に小規模企業の方々にとりましては、まず身近な相談相手として、商工会及び商工会議所に配置されております経営指導員がございます。そこでいろいろの相談に乗ってもらっております間に、だんだん話が進んでまいりますと、次は、やはり府県の総合指導所へ行きまして具体的な認定の問題等の相談に入る、一歩進むような過程があろうかと思います。また別の窓口としましては、中小企業庁及び通産局に小規模企業の相談室がございます。ここもこれとは違った意味での相談の窓口になろうかと思います。  いま申し上げましたのが、直接中小企業の方々にお目にかかり、相談に乗り知恵をかすという窓口になるわけでございますが、それぞれの窓口において十分なる資料が用意をされ、そして親切に相談に乗せられるような、いわば補給基地として中小企業振興事業団が活躍をする、こういう形になろうかと思うわけでございます。
  125. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうすると、機構は従来の機構と全然変わりはない。ただ問題はその中身を濃くするのだ、その中身を濃くするセンターとして中小企業振興事業団の中に、いわゆる中小企業データバンク的なものをつくる、こういうことになるわけですね、どうでしょうか。
  126. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 大筋としてそのように理解していただいて結構かと思います。
  127. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、中小企業振興事業団にお尋ねをいたしますが、先ほどからもちょっと出ておりましたが、中小企業データバンクづくりに乗り出しておりますが、その事業概要と今後の計画、それと新聞によりますと技術移転促進センターを設立するというような情報が新聞の中には出ておるわけでございますが、この二つについての概要の説明と、今後の方針についてお尋ねしておきたいと思います。
  128. 佐々木学

    参考人佐々木学君) 中小企業振興事業団におきましては、従来から中小企業指導の参考に資するために、各方面から資料を収集いたしましてこれを分析、整理をいたしております。なお、これ以外にも中小企業振興事業団独自に各種の需要動向調査であるとか、あるいは中小企業の成長条件の調査であるとか、各種の調査を実施いたしまして、これを指導団体である都道府県の商工部あるいは都道府県の総合指導所、商工会議所、商工会、中央会等のネットワークを通じまして中小企業者に間接的にこれを提供しているような状況でございます。  で、今回特にデータバンクということで内容を充実するわけでございますが、一つには、従来のデータのとり方が比較的マクロに調査しておったというふうなことでございますけれども、だんだん問題となっております事業転換指導の資料にするには、もう少し細かな資料でないと不便を感ずる面もございますので、産業分類の四けたまで落としまして、大体製造業、建設業、運輸業、卸小売業、通信業、サービス業等を網羅いたします四けた分類、約千の業種がございますけれども、千の業種のうち三百業種について細かなデータを三年間で収集しようというものでございます。  とりあえず五十一年度につきましては、その準備のために業種別情報の所在調査を、約千八百五十機関から情報を収集して所在調査をいたします。次に収集いたしました資料を業種別、項目別等にあるいは地域別等に四けたでさらに分類してこれを再編成いたしましてファイル化するのでございます。  次に、三百業種のうち五十一年度は約四十業種について細かなデータファイルをつくるということにしております。このデータファイルの中身は大変詳細な中身にする予定でございまして、たとえば企業の特徴といたしましては、その業種がどういう立地要因を必要とするか、あるいは業界の構造としてはどういう規模別の分布になっておるか、その業界についてはどういう都道府県なり国の施策があるか、制度があるか、あるいは生産構造について生産工程はどういうふうな工程になっておる、製造設備の主要なものはこういうものである。あるいは商品知識としてこの程度のことは知っておかなければいけない。さらに、経済動向としては当該業種の原価の指標であるとか、あるいは取引条件、たとえば、ほとんど注文生産が主であるとか、あるいは見込み生産であるとか、あるいは問屋にほとんどの人が依存しているとか、あるいは問屋でなくて商社に依存しておるとか、そういったような状況。それから、海外関係では輸出入の状況とか、あるいは発展途上国が当該業種についてはどういう状態になっておるのか。あるいは先進国における市場はどういう状況であるか。それから、原料の入手状況はどういうふうになっているかといったような細かいデータをつくっておきます。そしてこれを事業団にファイルいたして、これをストックいたしまして、指導機関の問い合わせに応じまして、これを差し上げるということにしておるわけでございます。  なお、この資料の数が数万件に上る非常に莫大なものでございますから、これをすべて指導機関に提供するということは事実上困難でございますので、事業団で各種の情報紙を発行いたしております。たとえば「中小企業情報」といったような、月三回に情報を発行いたしておりますけれども、こういうものを利用して緊急なものから逐次提供してまいりまして、その提供できないものにつきましてはリストを別途指導機関に送っておりますので、その事態に応じましてそのリストを見ていただいて問い合わしていただくと、こういうふうなことを考えておるわけでございます。対象業種として選ばれる三百業種は主として近代化促進法指定業種であるとか、あるいは機電法の指定業種、その他中小企業性の高い業種中心に選んでまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  で、なお、私どもの方でやっております情報提供事業につきまして指導機関から約百六名のモニターを依頼いたしまして、その情報提供の方式であるとか、中身であるとか、そういったことについて客観的に批判していただきまして、それに基づいて情報提供の進め方を逐次充実、整備、改善していきたいと、こういうふうに考えております。  次に、技術提供の問題でございますけれども、これは先ほども長官からの説明もあったかと思うんでありますけれども、技術問題が中小企業の今後の付加価値生産を高めていく上で非常に大きな柱となりますので、事業団におきましても各種の技術対策事業を行っておりますが、そのうちの主要な一環といたしまして技術移転の促進を考えておるわけでございます。これはすでに五十年度から開始いたしておりまして、五十年度は主として関東地区、関西地区の技術提供希望と技術導入希望両方を調査いたします。と同時に、中小企業者に対しましては技術導入についてどういうふうな問題点があったのかといったような意識調査もいたしております。その結果によりますと、中小企業においては過去において技術導入を全然行ったことがないというのが大体七〇%ぐらい占めております。しかしながら、今後できるだけ早くあるいは近い将来において技術導入を行いたいという方が約五〇%を占めております。  それから、技術導入についてのいろいろなむずかしさ、問題点、どういうところにあるかといいますと、一番多くの集中した項目はやはり情報不足ということが第一でございます。それから第二には、その技術を導入した場合の成功するか不成功かの不安が残るという、あるいは資金面の欠如といったようないろいろな欠点が、いろいろな問題点が意識としてあるようでございます。そこで、五十一年度におきましては、関東、関西地区以外の全地域につきまして技術の提供希望、技術導入希望、全部を調査いたしまして、そしてこれを、都道府県の総合指導所に配布いたしまして、それから、当事業団におきまして三十人の登録専門指導員を置きまして、これをもって技術移転業務を促進しようということでございます。
  129. 桑名義治

    ○桑名義治君 技術開発が急務になっている中小企業にとって独自の技術開発が困難である、調査によれば現在の大企業等の、外部で開発された技術導入が当面重要な対策一つとなっていると、こういうように考えられるわけですが、しかし、技術導入を図り近代化したいという希望を持っている中小企業が多数になっているわけです。ところが反面、技術導入に踏み切った例はごく少ないと、こういうふうに言われている。しかも、技術導入を受けた先は親企業や取引企業が大体中心になっている、こういうふうに聞いているわけですが、実態はどうなっているか。今後この技術指導の面については、どういうふうないわゆる転換方法を政府としては考えておられるのか、御説明願いたいと思います。
  130. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 御指摘ございました中小企業の技術導入の問題につきましては、先般実態調査をいたしまして、その中身を見ますと、いまお話ございましたように、技術導入実績は大企業と比べるとややまだ少のうございますものの、私が当初思っておりましたよりは高い数字であったような気がいたします。やはり意欲はかなりあるんだという感じで私は受け取ったわけでございます。ただ、意欲がありながらまだ具体化していないという潜在的な需要もまだかなりあるわけでございまして、そこをいかにして本物まで育てていくかということを、政策的な課題にしていきたい。こういった意味合いから、実は来年の一つの構想でございますが、この技術移転に関する新しい補助金を用意をする、あるいは技術移転に伴って必要な資金が出てまいります場合に、特別の融資制度を用意する、こういったことが考えられないかどうか、いまいろいろ調整をいたしておる最中でございます。
  131. 桑名義治

    ○桑名義治君 いわゆる技術の導入ということもまた一つの大事な事柄でございますが、先ほどからの答弁の中にもございましたように、いわゆる事業転換に関して、成巧するかどうかというその要件一つとして、資金確保ということがまたこれは重要な要素であることには間違いはないわけです。そこで、政府事業転換に必要な資金確保についてはどういうふうなあっせんを考えておられるのか、その点について。
  132. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換に必要な資金としましては、まず第一に政府金融機関から応援をするということを考えておりまして、中小企業金融公庫及び国民金融公庫に用意されております構造改善等貸付枠、これを活用することを予定をいたしております。ただ、さらに資金が欲しいという場合に対応いたしまして、市中のお金をうまく活用するための一つの手段として、中小企業信用保険に新しい制度を用意をし、これによりまして一般の場合よりも補償の枠が広げられ、それだけ市中から借りやすくするという応援手段も別途用意しておる次第でございます。  さらにまた特定の場合には、中小企業振興事業団の高度化資金を活用して、この転換を応援する場合も考え得るかと思います。私どもはいろいろの金融手段をうまく組み合わせて、資金的な面では安心をして転換に踏み切っていただけるように、これからも気をつけてまいりたいと思います。
  133. 桑名義治

    ○桑名義治君 資金の導入につきましては、政府金融機関等を使うというようなお話がございました。  そこでおたくの方からこういうふうな資料が出ているわけでございますが、この中では中小企業金融公庫からの貸付金、これは金利が八%、国民金融公庫からの分も八%、これは約〇・九%ばかり普通の資金より下がっているわけでございますけれども、その反面に中小企業振興事業団、この事業転換合同事業の場合にはこれは二・七%になっておるわけですね。しかもこの中に特定高度化に該当する場合は無利子と、こういうふうになっている。そうしますと、このいわゆる資金とそれから中小企業金融公庫、国民金融公庫の場合の資金と利率が余りにもこれは離れているんじゃないかというふうに思うわけです。考えてみますと、先ほどの答弁にございましたように、事業転換する場合には余力を持って転換をする場合には成功した、ところがこういう不況下にありまして、たとえば造船の下請業が今回転換をしたいと、というのはもうぎりぎりの接点まで来て、この企業としては、わが企業としてはどうしようもないところまで追い詰められて転換をするという、こういう実例が今回は非常に大きな比重を占めているんじゃないかと、こういうふうに考えるわけでございますが、これがいわゆる合同の形で行われた場合には二・七%、ところが単独の場合には八%というように個人とこの合同の場合に余りにも格差が激しい、もう少しこの個人的な企業中小企業金融公庫やあるいは国民金融公庫から貸し付けを受ける場合に金利を下げられないものだろうかと、こういうふうに思うわけですが、その点をお伺いしたいのが一つです。  それから、特定高度化に該当する場合は無利子と、こういうふうになっておりますが、これはどのような業種を予定をしているんですか。
  134. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 振興事業団の助成は非常に限られた目的、限られた態様についての特例でございまして、一般的には政府関係金融機関の金利水準というものが当面の問題であろうかと思います。私どもも転換重要性、これは個々の企業にとっても大切でございますが、日本経済としても重要な課題でございますので、一般の通利に対してやはりある程度低い水準でこれを支援することが必要と考えまして、いまお話にもございましたように通利八・九%に対して今回のケースは八%という水準を設定したわけでございます。まあ転換をする当事者にとりましては、少しでも金利を低い水準でと考えられるのがいわば当然でございますが、さりとて転換先で従来から仕事をしておった方との均衡も考えなければなりません。そういった均衡を頭に置きながら、その範囲内でできるだけ有利な条件を実現するように、今後とも私ども気をつけてまいりたいと思っておるところでございます。  まあ余談でございますが、来年度の予算要求におきましてもいまのようなことを頭に置きまして、この金利を引き下げられないものかどうかということを大蔵省と相談をいたしております最中でございます。
  135. 桑名義治

    ○桑名義治君 答弁抜けていますよ、特定高度化に該当する場合という企業業種
  136. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 失礼をいたしました。  特定高度化として取り上げられるケースといたしましては、中小企業振興事業団高度化事業の中で工場共同化事業、それから共同公害防止事業、それから知識集約化共同事業、こういったものが特定高度化として取り上げられ得るのではないかと思います。
  137. 桑名義治

    ○桑名義治君 特定高度化事業の貸し金についてはいわゆる無利子、ところが先ほども申し上げましたように中小企業金融公庫、国民金融公庫から借りる場合には八%、これちょっと余りにも格差が激し過ぎると思うんですがね。これは来年度考えるということですか。ただいまは考えられないけれども来年度は考えなければならないと、こういうふうに考えられておるわけですか。
  138. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いま申し上げました特定高度化事業は、いわば本当に関係の方々が一体になって進めるという形が前提になっておりまして、それはそれなりにずいぶん苦労の多い話でございますので、特別の応援手段を用意をしたわけでございます。ただ、一般的に金利の条件について少しでも改善してほしいという声は私どももよく気持ちがわかるわけでございますので、ことしはとりあえず八%でスタートいたしますが、状況の許す限りでこれを改善していくという努力は怠らないようにいたしたいと思います。
  139. 桑名義治

    ○桑名義治君 ここに改善事業というふうに、いま合同してやる場合と、それから個人的にやる場合というふうに分けられておられるわけですが、逆に同種であっても、同じ企業であってもぼつぼつ個人的に転換をする場合には利子が高い、ところが同一業種でも合併した場合には利子が無利子である、これは一つの大きな矛盾があるようにわれわれは考えるわけですが、これは早急に、利子の面についてはこんな激しい格差がないように考えるべきではないかというふうに考えるんですが、どうでしょうかね。
  140. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いま申し上げましたケースは合併というのではなくて、組合として共同して一体になって一つの仕事を進めるという場合を考えたわけでございます。ただ、そういうような特殊の場合と一般の場合と差があり過ぎるのではないかということでございます。高度化事業というのはやはりそれなりの特殊の使命を持ち、また役割りを果たしておるということから、従来から特にこれを推進するために金利の面では特別の優遇を図ってきたということの結果として、アンバランス問題が出てきたような経過であろうかと思います。  金利体系全般のあり方というのは、議論しますとずいぶんいろいろな分野で考えなければならない要素がございますが、いまおっしゃったような点も頭に置きながら、今後金利水準の問題については私どももいろいろ勉強してみたいと思います。
  141. 桑名義治

    ○桑名義治君 この点について、大臣意見を伺っておきたいと思います。
  142. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは長官が答弁いたしましたように、今後下げるように努力をいたします。
  143. 桑名義治

    ○桑名義治君 次の問題で、減価償却の特例措置が第六条でうたわれておるわけでございますが、具体的にはどのようになるのか。  また第七条「合併等の場合の課税特例」というのがございますが、この場合、それ自体は中小企業であるといっても、大企業からの出資あるいは役員の構成比等並列的企業の場合はどういうふうになるのか、その点について伺っておきたいと思います。
  144. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 税制では二つの対応策を用意しておるわけでございます。一つが減価償却の特例でございます。その中身といたしましては、従来事業を続けておりましたが転換を契機として、従来使っておりました設備が不用になる、こういった場合に仮に耐用年数が長く残っておりましても、認定を受けたということを一つのきっかけといたしまして計画期間内に償却を終えることができるようにする道を開くというのがその趣旨でございます。それによりましてある程度損金に立つ金額がふえるわけでございますし、税制面での優遇になり得るかと考えております。  第二番目の合併等の場合における課税特例でございますが、これは被合併会社が資産を持っており、それが合併会社に吸収されるときに、普通でございますと時価で評価をし、従来の簿価との間に差額ができる部分は、一種の益金として課税をされることになる。これを転換の特殊事情にかんがみまして、そういう税がかけられないで済むようにするというのがその趣旨でございます。  お尋ねの点で、系列化に悪用されはしないかという点でございますが、この制度の適用を受けますのは中小企業同士の合併の場合に限るという運用によりまして、いまのような御懸念を除きたいと思っております。
  145. 桑名義治

    ○桑名義治君 次の問題に移りたいと思いますが、職業訓練についてでございますが、若年層はまだよいとしましても、高齢者あるいは専門技術等の場合、具体的な受け入れ体制が十分にあるかどうか、これは非常に心配なわけです。  それから、この法が施行されたと仮定しまして、果たして完全な各県にこういう訓練所の受け入れ体制が十分整っているかどうか、あるいは仮にこの法が成功しますと、県としては当然訓練所を大きく拡大をしていかなければならない点、あるいは機械を導入をしなければならない点、あるいは新しい優秀な技術者を入れなければならないという、いろいろなファクターが出てくると思うんです。それには労働省としてはどういうふうに対応しようというふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点について。
  146. 中谷滋

    説明員(中谷滋君) ただいま先生の御指摘の点についてでございますが、事業転換に伴いまして労働者が職業転換を必要とする、その場合に職業訓練が必要になる場合があるわけでございます。  そこで現在の制度といたしましては、事業主がそういう職業転換を必要とする従業員に対しまして、自主的に訓練を行うという場合にも助成金を出しておりますけれども、そのほか、中小企業でございますから、なかなか事業内では職業訓練を行うことがむずかしいという場合には、公共職業訓練校等に訓練を委託するという場合がございます。先生いま御指摘の点で、将来そういうものがふえてきた場合に一体対応できるのかというお話でございますが、現在職業訓練行政で運営しております公共訓練校が全国に四百四十ばかりございます。定員が約二十二万人で運営しておりますが、その中で職業転換する者にふさわしい訓練といいますと、能力再開発訓練という訓練の種目でやっておりますが、これが約いま八万人ばかりの規模でやっております。現在は定員に対しまして約八割くらいの入校率でございますので、まだ十分余裕がございますけれども、将来急激にそういう方々がふえまして、訓練施設を拡充しなければならないという事態になりますれば、それは県営の場合ですと国が二分の一の施設費、運営費の補助金を出しておりますので、国、県よく相談いたしまして訓練科目のあるいは新設ですとか転換、その他施設、設備費の補助というものを拡充いたしまして、そういう事態に対処していきたいと思っております。  現在五十一年度予算で申しますと、そういう施設、設備費は約六十億円を計上しておりますけれども、将来ともこういう訓練校の体制づくりには拡充に努力してまいりたいと、こういうふうに思っております。
  147. 桑名義治

    ○桑名義治君 十分間に合うということですか。
  148. 中谷滋

    説明員(中谷滋君) そういう緊急事態が生じましたらば、また財政当局とも話しまして必要な措置をとりたいと思っております。
  149. 桑名義治

    ○桑名義治君 お約束の時間がもうほとんどなくなってしまいました。まだずいぶんと質疑をしたい面が残っておりますが、とりあえずこれと事業分野との問題は、これはどうしても逃げることのできない重要な問題でございますので、二、三お聞きをしておきたいと思いますので委員長よろしくお願いいたします。  先日の委員会で、通産大臣にこの事業分野調整法についてお尋ねをしたときに、でき得れば今国会に提出をしたいと、こういうような御答弁をいただいているわけでございますが、会期もいよいよ切迫をしてまいったわけですが、この点見通しはどうでございますか。
  150. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 分野調整法につきましては、一刻も早く成案を得ますようにいま懸命の作業をしておりますが、作業の現状につきましては長官から答弁させます。
  151. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先回も御報告いたしましたように、私どもとしては鋭意この取りまとめを急いでおるところでございまして、いままでの経過からいたしますと、大体一わたり問題点についての議論を一巡し、いわばこれから取りまとめに入るというところまできておるわけでございます。私どもとしてはあと一回、場合によっては二回で大体の方向を固めてしまうという段取りで進めております。私どもとしては、なるべく早く法案をまとめろという各界の要望は十分承知いたしておりますわけでございまして、何とか今国会に間に合わしたいと先回申し上げた気持ちは、依然として持っておるところでございます。
  152. 桑名義治

    ○桑名義治君 いよいよ取りまとめの段階に入ったということでございます。そこで、中小企業庁は立法化をめぐる問題点について、いわゆる主管行政庁としてどのような意見審議会において表明したのか、その点について御説明いただきたい。  それと同時に、一括して御質問しておきたいと思いますが、審議会の答申を得て立法化する場合、どういう姿勢で臨むのかという、この問題点、このいわゆる考え方が、一番今後の分野調整法については大事なことだろう、こういうふうに思うわけでございますが、その点についての政府基本的な方針ですね、それをお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  153. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 先ほど主要な問題について一わたり議論を願ったということを申し上げましたが、そこに出てまいりました問題点といたしましては、規制の態容をどういう形でやるのか、対象業種をどの範囲までとらえるのか、それから対象となる紛争の範囲はどうか、それから消費者利益との関係をどうするか、調整の方法をどうするか、これらが主要な問題でございます。これらの問題につきましては、いままでの経緯がこういう形になっておる、そしてそれらについて考えられる問題はこうだというようなことを事務局から提示をいたしまして、そしてそれについての議論をいただいたわけでございます。したがいまして、事務局からこうすべきであるというような問題の出し方はいたしておりません。その辺は御理解をいただきたいと思います。  それから、これから取りまとめに入る場合の基本的姿勢の問題でございますが、私どもとしては、ごく最近不況を背景に、大企業中小企業との間で分野をめぐるいろいろの問題が次から次へ出ておるということは、中小企業政策として無視できない大きな問題であると思っておるところでございます。いままで一生懸命まじめに仕事をしてきた中小企業が、突如として大企業があらわれたために、あしたからの生計に困る、しかも、それが相当大きな範囲に広がるということは、ある意味では社会問題でもございますが、経済的に見ましても、いままでの設備等がむだになる等々の経済的なロスがございます。やはりそういうことをいかに円滑におさめていくかということは重大な課題として考えておるところでございます。もちろん、その間にありまして、消費者利益を損なわないように、あるいは技術進歩を損なわないように総合的な観点が必要であることは当然でございますが、それらのことを頭に置きながら、いかにこの問題について円滑なルールをつくっていくか、こういうことを私どもの課題と考えておるところでございます。
  154. 桑名義治

    ○桑名義治君 もう一回だけ……いまの御答弁は非常に抽象的な御答弁で、中身には全然触れておられないわけですが、別にここで法案が出てきたわけではございませんので、その程度しかお答えできないのかもしれません。しかしながら、そういった趣旨を踏まえながら、この事業分野調整法の最後の立法化のときには配慮を十二分にしていただきたいことを要望して、質問を終わりたいと思います。
  155. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 速記をちょっととめてください。   〔速記中止〕
  156. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) それじゃ速記を起こしてください。
  157. 安武洋子

    ○安武洋子君 中小企業事業転換をする場合は二つあると思うのです。その第一点といいますのは、これは新しい事業分野への意欲を燃やして、経営能力をさらに発展させるというふうな前向きの転換があろうかと思うわけです。それからもう一つといいますのは、これは外的ないろんな要因で現在の仕事ができない、将来の見通しもつかない、こういうことで、不安ではあるが転業しなくてはならない、生きる道がないという追い詰められたケースなわけです。問題はこの第二点の方で、これに対応する立場というのも私は二つあろうかと思うわけです。  まずその一点といいますのは、転業に追い詰められて中小企業が立ち行かなくなる、こういうふうな外的な要因というのを何としてでも取り除かなければならない、こういう努力をするというのが一点だろうと思うわけです。  それからもう一点は、やむなく転業する際、この不安をどう取り除いて助成、指導するかというふうなこと、これを業者の立場から考える、このことが私は重要ではなかろうかと思うわけで、大変基本的なことでございますけれども、御異論はないと思うんですけれども、こういう点についてどうお考えか、お伺いいたします。
  158. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) お話がございましたように、これからいろいろの構造変化が予想されるわけでございます。特に景気がよくなったとか悪くなったとかという問題ではない、いわば構造的な問題がこれから出てくることが予想されております。国際的にもあるいは国内的にも、新しい環境が次から次へ起こってくる。その中でいかにして中小企業がその経営を安定させ、また発展させていくかということを考えることは、中小企業政策としても大きな課題でございます。私どもは外から来る波、あるいは国内的にも新しく起こってきた要因、これが余り急激に起こったために、対応するいとまもないような形で中小企業に襲いかかる、こういったことはやはり考え方としては少しでも緩和していくように心がけていかなければならないことだと思います。ただ、そうは申しましても、先ほど申し上げましたような要因はいわば構造的なものでございまして、大きな流れとしては日本経済の中の新しい環境として受け入れざるを得ない事態があろうかと思います。こういった場合において、中小企業の方々はひとつこういう新しい波の中から自分自身の経営合理化し、あるいは高級品を生み出していって、自分の力で乗り切っていこうと考えられる向きも多かろうと思います。もちろん、私どもはそういう方々に対しまして中小企業施策を総動員してお手伝いをするつもりでございますが、中には、いまの経営状況あるいは業界の状況から見ると、ここでいたずらにしがみついておるよりは、別の分野へ転身を図った方がもっといい経営ができる、こう考えられる向きもあり得るわけでございます。  この事業転換法はまさにこのような後の考え方の方を応援をする手段として用意されたわけでございますが、いずれの場合にもやはり業者の方々が本当に何を悩み、何を求めておられるのか、この辺の気持ちをよく察しながら、いい処方せんづくりをお手伝いをするという心構えが大切かと考えております。
  159. 安武洋子

    ○安武洋子君 まあ本法の転換背景として、最近における貿易構造その他の著しい変化、こういうのを挙げておられます。そしてその要因といたしまして、本法でも、また中小企業近代化審議会事業転換対策についての意見具申でも、国際競争力の低下等による輸出減少または輸入の増加、それから技術革新の進展や代替品の出現による需要の趨勢的減少、それからまた、資源の枯渇その他輸出国の事情による原材料の入手難、あるいは公害防止、安全対策の強化等企業の社会的な責任の増大と、おおむねこういうことを挙げていらっしゃると思うわけです。いま中小企業転換を余儀なくしている要因というのはこれ以外にあるのかないのか、これだけだとお考えかどうか、そこら辺をお伺いいたします。
  160. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 企業がその経営をやってまいります際に、新しい分野転換するというのはさまざまなケースで考えられることでございます。せっかく非常に順調にいったからこの勢いでひとつ他の分野へ手を広げて、そこでも一層収益を上げられるようにしようというようなケースから、また逆に、どうにもならなくなって、いわば転身を図らざるを得なくなるというような環境に至る場合まで、さまざまなケースがあり得るわけでございます。  私どもここで、この法律対象として考えております要因は、それらの中でいわば構造的な要因という形で取り上げられるものを私どもなりに整理をいたしまして、四つないし五つの要因にくくってみたわけでございます。大体考えられるケースとしては、先ほど来申し上げておりますようなケースが対象になるのではないかと思います。
  161. 安武洋子

    ○安武洋子君 これはまた後でお伺いいたします。この要因については広い視野で現実に即して私はお考えをいただきたいということで、業種指定に当たってもできるだけ幅広く業者が該当するようにと、こういう運用について弾力性を持たせてほしいということを御要望いたしておきます。  本法案につきまして私は地元業者の御意見を聞いてみたわけです。私は兵庫県ですので、ここで本法の提案趣旨に該当するだろうという職種ですが、これはたくさんございます。先ほどからお話に出ておりますようなマッチとか、造船下請とか、そのほかにもゴム、ケミカル、そろばん、金属プレス、メッキいろいろあるわけですけれども、こういう業者の方の御要求、一致した要求というのは、まず何よりも、転業しないでこのまま仕事が続けていけるような、そういうふうでありたいというのが切実な要求なんです。でもまたもう一面、追い詰められて転業を考えざるを得ないと、こういう立場に立たされているということもまたあるわけなんです。ですから、本法案に対しても、他のいろんな措置と合わせて使えるものは全部使ってでも、何とかいまの事態を切り抜けたい、そしてうまく転業して何とかやっていきたいと、こういうことなんです。で、非常に不安も大きいわけですけれども、その中でもぜひこれだけはと要求されている。  これは再三先ほどからも審議になっております金融的な措置の強化でございます。一つ例を挙げますと、非常にいま転業を迫られているという業界は厳しい状態にあるわけなんです。神戸のケミカル業者なんかも、いままでに特恵対策法とか、それから国際経済調整法、こういう関連でいろいろとやってこられたわけですけれども、輸出減少したとか、それから多くの業者は輸出から内需に転換されているわけですけれども、これが施設には非常にお金がかかるわりになかなか販路も開拓できない、それで技術上も既存の大手業者に押されてなかなか太刀打ちできない、採算ベースに乗るまでには非常な御苦労があるわけなんです。中にはだから再転業する方も出ておられるというふうな状態があるわけです。ですから、私は一般的な金利の問題として、要求としてお聞きいただいては困ると思うのです。これは同列にしないで、やはり事業転換する場合の金利については特段の御配慮をお願いしたいというふうに思うわけです。いままでの事業を締めくくらなければならない、その事業は決してうまくいっていないからこそ転換するわけなんです。そして、新規事業を採算ベースに乗せていくということになれば、これはある一定の期間が必要なわけです。四年ないし五年は費やさざるを得ないだろうというふうに思うわけですから、私はこの実情に合わせて金利の問題をお考えいただきたい、金融の問題をお考えいただきたいと思うわけです。  そこで金利の問題ですけれども、抑える方向で考えているんだというふうな御答弁をなさっていらっしゃいましたけれども、私はここで思い切って一般金融問題として考えないで、特段の配慮をする、こういう立場から通利は八・九%でございますけれども、中小公庫、それから国金等もこれを利用する場合は通利の二分の一に抑えてほしいと、こういうことを申し上げとうございますが、いかがでございましょうか。
  162. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 前段でお話ありましたいままでのままでやれたらやりたいという気持ちを持たれる向きもあろうかと思いますが、過去の実例を見ますと、やはり中小企業の方々は経済の流れを非常に敏感にキャッチされ、その新しい流れにうまく適応するという意味で発展を遂げられた場合が非常に多いような感じがいたします。そこで、いずれにせよ転換を行う場合に、金利の面で特別の優遇を図れという点につきましては、趣旨は私どももよく理解できるわけでございますが、   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕 先ほども少し申し上げましたように、従来からその転換先で仕事を続けておられる方とのバランスという問題がございまして、どの程度にすべきかということをやはりいろいろ考えておく必要があろうと思います。ただ、八%という現行の水準については、もう一度見直しをしてみる必要があるという御要望につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、私どもとしてももう少し引き下げることができないかどうか、十分研究いたしたいと思います。
  163. 安武洋子

    ○安武洋子君 既存業者との格差の問題をお話でございますが、この既存の業者も不況、インフレで大変苦しんでいるわけなんです。だからこそ、私どもの党が中小企業向けの金融を、現在ほとんど大企業しか利用できない開銀、輸銀並み、こういうふうに引き下げるべきだというふうに申し上げているわけです。この点については私は検討を続けていただきたいというふうに思うわけです。  先ほど私、ケミカル業の問題を出しましたけれども、きょうの審議の中でも再三出てきます造船の実情についても少しお話してみたいと思うわけです。造船については、大臣が大変お詳しいわけですけれども、兵庫の造船の実情も大変深刻なわけです。いま船台に船がないという状態ではないわけですけれども、今後の見通しが立たない。業界としても大変不安を持っておられるわけです。ですから、先ほどお話に出ておりましたように、既存業者の少ない解撤業への転換、これは考えておられるわけです。先ほど御答弁にもありましたけれども、私自身も運輸省にお聞きをいたしました。この中で造船下請の解撤業への転換については、来年度の予算要求として当初の船舶購入資金ということで商工中金に特別枠を設けた上で、五年間の見通しで一般金利の二分の一、四・六%を助成すると。そして、事業が単年度予算化されるらしいというふうなことで、利子補給にかわる補助金、こういうふうな形で借り入れ企業に助成をすると御説明を受けたわけなんです。  一方、先ほどからも再三出ておりますマッチ業界、兵庫県にもたくさんございます。ここでも本法の施行がされますと、これに該当する代表的な業種じゃなかろうかというふうに思うわけですけれども、非常な深刻さです。先ほど長官のお答えの中に、ライターの普及によりというふうなことがございましたけれども、それ以外にも自動点火とか、韓国からの逆輸入、こういうもので値崩れがしているというふうなことで、業界の方は関連の印刷業などへ進出したい、転換したいというふうなことなんですが、ここも既存の業者が大変多いということで、並み大抵の苦労じゃなかろうというふうに思うわけなんです。また造船は運輸省の所管だと、マッチは通産省の所管だと、こういうふうなことで、私は通産省にお願いしたいわけですけれども、運輸省が考えておられる解撤業ですね、ここの貸し付けの金利、これを運輸省考えておられるわけです。通産省としても、マッチ業界だけではなくって、やっぱり所轄のこういう業種に対して運輸省並みに考えるべきではないかというふうに思うわけですけれども、大臣にお伺いいたしますが、大臣、これはいかがでございましようか。
  164. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 通産省といたしましても金利はできるだけ下げたいと、こういう強い意向は持っておるんですけれども、しかし一定限度以下に下げます場合には、利子補給というふうな問題が起こってまいりまして、利子補給するということになりますと国民の税金で一部の業界を補助すると、こういう形にもなりますので、その判断をするのはなかなかやはり総合的に考えていかなければならぬ、こういう問題がありまして、なかなかむつかしい問題だと思います。しかし、利子補給をするということは仮にむつかしい場合でも、できるだけ金利水準を下げるように、今後とも努力をするということは、これは先ほど来繰り返し申し上げておるとおりでございます。
  165. 安武洋子

    ○安武洋子君 長官は先ほどの私の質問に対してどういうふうにお考えでございましょう。運輸省とそれから通産省との取り扱いの格差についてはどういうふうなお考えでございますか。
  166. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 運輸省のいろいろの御計画、私まだ全貌を細かく聞いておるわけではございませんので、的確にお答えができるかどうかわかりませんが、造船業がいずれにせよこのしばらくの間相当の不況に悩んでおり、そしていわばこれが構造的な問題として何らかの対応を迫られておる。この事情は一応私どもも承知をいたしております。その対応策の一つとして船舶解撤ですか、解体ですかの計画が取り上げられ、この分野はいわばいままで日本としては余りなじみのない分野としてであるけれども、しかし長期的に見ると大変おもしろい業種である、何とかこういうものを根づかせる工夫はないかというようなところから、特別の助成を考えられたというふうに承知をいたしておるわけでございます。  そのために特別の応援手段が用意されているようでございますが、私どもの場合にはいわば一般法でございまして、いろいろ起こり得る事態に対する機動的な対応策として一般的に用意されたものであるということから、やはりその差ができたのではないかというふうに考えるわけでございます。
  167. 安武洋子

    ○安武洋子君 造船の場合はその危機が構造的なものであるというふうなことをおっしゃいましたけれども、じゃあ私がいま例に挙げましたマッチ業界の危機というのは構造的でないわけなんでしょうか。それと非常に解撤業というのはおもしろい分野だ、ここに進出したからということで助成を考えられておるんでしょう。ということになれば、マッチが非常におもしろい分野進出された場合にはお考えになるんでしょうか。いまのお答えは私は大変不満足ですが。
  168. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) お話の中でマッチが構造的な問題に直面しているのではないかという点は、まさに私どもも御意見のとおりだと思っております。やはり新しい事態に対応する新しい方策というものを考えるべき時期に来ておると思います。それと、じゃあ造船とどうして違うんだろうかという点ですが、私はまだ造船の方よく勉強しておりませんのでわかりませんが、聞いております範囲では、船舶解撤作業というものが仕事として未開拓の分野である、新規の分野であるということで、それをいかにして定着させるかというかなり実験的な意味合いが込められているのではないか。したがって、資金の需要におきましても、テストとしてスクラップ船を一隻買ってきて、そしてそれをどういうふうにやったらうまく手際よくいくかというようなところから問題を解きほぐさなければならない特殊性を持っていることが、その背景にあるのではないかと思っておるところでございます。  もちろんそれだからといってマッチの業界をほうっておいて済まされる問題ではないということはよく承知しております。現に私どものところにもマッチの業界からいろいろと御相談に見えて、これからどうしたものだろうかという話も聞いております。私どもはそれをくみ取りまして、いかにうまい転換先へ結びつけていくかということについては、今後とも心がけてまいりたいと思います。
  169. 安武洋子

    ○安武洋子君 私はマッチは一つの例として挙げただけでございます。なぜ運輸省並みに考えていただけないのかということを言っているだけで、それについての御答弁ということでは、実験的な分野であるから、未開拓の分野であるからというふうなことですけれども、じゃあ通産省所管の業種が実験的な分野、未開拓の分野に出ると運輸省並みのお考えになりますか。
  170. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) やはり、一般的に制度を用意します場合には、一般的に妥当するおのずからの限界があるように思います。ただ、特殊の場合において特殊の用途に応じた特別の助成が必要なケースというものは、将来あり得るわけでございまして、その場合にはやはりその実情に応じたような応援策を考えていくことが、やはりケース・バイ・ケースに必要になってくる場合は当然あり得るだろうと思います。特に造船の場合には、いわばもう業種ぐるみでどうするかというようなところまで問題が来ておりますことが背景にあるのではないかという感想がいたします。
  171. 安武洋子

    ○安武洋子君 何とお答えになっても、造船とそれからそのほかの業種とのそういう大きな差異は私はないと思うわけです。ここで御要望したいのは、だから、通産省の所轄の業種であっても、ひとつ運輸省並みに考えてみようと、そういうふうな適用をしていこうというふうな、私は漸進的な姿勢を御要望したいと思います。ぜひそのことはやっていただきとうございます。  次に移りますが、転換のときの貸し付けの限度額、それから期間の問題なんです。本法案の限度額、こういうものは、施設を全部変更するというふうなことだってあり得るわけなんです。そういう資金には現実問題として対応しないわけです。経営が軌道に乗ると、こういう期間も、私は先ほど一つの実例を挙げて申し上げましたけれども、三年なり四年なり、やはり採算ベースが合うまでには期間はかかるというふうなことで、限度額それから期間もいまの実情に合っていないというふうに思うわけです。  そこで御質問しますので、かためますが、一つは、限度額を引き上げていただきたいということなんです。一つは返済期間を延長していただきたいということです。それからいま一つ、これは据え置き期間です。これを三年なり四年なり、こういうことにしていただきたい。この私の御要望の根底にあるのは、現在の実情に合わせていただきたい、本法は実情に合わないのではないかと、こういうことで御質問いたします。
  172. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 貸し付け限度につきましては、この制度背景になっております転換貸し付けとしまして、中小企業金融公庫の場合でございますと一億五千万円、それから国民金融公庫の場合であると千五百万円というふうになっております。これは五十年度に引き上げております。従来の転換事例を私どもいろいろ見てみましたけれども、たとえばドルショックに伴う事業転換のケースで見ますと、大体一件当たり千三百万円程度の所要資金が貸し出されております。それから第二次ドルショックのケースの場合で約千四百六十万円という実績でございます。こういった過去の実績から比べますと、その後多少物価が上がりましたにしても、先ほどの限度であれば一応必要な資金が手当てできるのではないかと思っております。もちろんそのほかに民間からの資金を導入すべく信用保険特例が設けられておりますので、さらに資金的には補強し得るのではないかと思います。ただ、そうは申しましても、この限度額につきましては、経済情勢変化に伴いまして絶えず見直しが必要でございまして、もっとこれを増額が必要であるというような情勢が見受けられましたならば、これを増額するよう私どもも心がけてまいりたいと思います。  それから返済期間につきましては、これは従来に余り例のない、返済期間が十年という制度をスタートさせたわけでございまして、これはやはり転換問題の重要性とそれからその特殊性を頭に入れたものでございます。据え置き期間についても同様でございまして、これらの点につきましてもあわせて将来ともいろいろ実情に即したような考え方で処理していきたいと思います。
  173. 安武洋子

    ○安武洋子君 例として第一次のドルショック、それから第二次のドルシッョクの例をお出しになったわけですけれども、そのときからいまは情勢が違っている。情勢発展しているからこそ私は本法をお出しになったんだろう、過去のそういう施策で間に合ったからということでなくて、いま私は実情を申し上げたわけですけれども、実情に合わない、見直しをしていくと、そういうことではなくて、それも必要なんですけれども、いま現在本法の施行前に、実情に合わないところはお直しにならなければいけないと、こういうふうに思うわけです。ですから、私はいまの実情から見れば、限度額の引き上げ、それから返済期間の延長、据え置き期間の三年、四年というのは、これは最低の要求ではなかろうかというふうに思うわけですが、いかがでございましょう。
  174. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) ドルショックの起こりました当時から比べますと何年かたっておりますし、もちろん経済環境変化いたしております。ただ私どものところへ具体的にいろいろ相談に見える中小企業の方々のお話を承っておりましても、第一次的に政府関係金融機関でこの程度の資金を用意し、さらにそれを補強するために信用保険で別枠約五千八百万円ぐらいまで可能になるわけですから、これらの措置をあわせていけば、ほぼいまのところは実情に沿ったような応援ができるのではないかと思っておるところでございます。もちろん運用実績を見まして、これではいかぬというようなケースがもし出てきました場合には、当然これは改めてこの増額を考えなければならない、その辺は機敏にやっていきたいと思います。
  175. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、実情をごらんになって機敏に対応すると、こういうふうにおっしゃっておりますので、私はその時期が早く来るだろうと思いますけれども、そのときには機敏にひとつ対応していただきたい、こういうふうに御要望いたしておきます。  次に、転換に際しましての指導の問題についてお伺いしたいと思うわけです。けさほどからの審議を聞いておりまして、まあきめ細かな指導がこれは非常に重要なわけですけれども、指導の中で中心になる情報の収集なんです。この情報の収集につきましても、よくお伺いしておりますと、何のことはない、中小企業振興事業団任せだと。窓口を別に新しく設けるわけでもない、こういう機構的な一つのポストを設けるわけでもないというふうなことになってしまっていると思うのです。私は情報収集等についても、結局この指導全般ですけれども、個人とか、それから出先機関、これでは限界があるというふうに思うわけです。最終的にはこれは通産省、中小企業庁、これら全機構を挙げてフルに機能を発揮して当たっていただかなければ、中小業者の転業などということは成功しない、こういうふうに思うわけです。それで指導とか、それから相談、情報収集ですね、こういうことも全部含めて本当にきめ細かな、実際に実績の上がる指導、そういうものをやる用意があるのかどうか、もう少し機構的にもお考えになる余地はないのかどうかということを第一点お伺いします。  それからまた転換に当たって、これも審議の中で出ておりましたけれども、労働者の問題が大きな問題でございます。そこの転換業種に働く労働者の意思を無視して事業転換、これがあってはいけないというふうに思うわけですので、そこの労働者の意思を尊重する、それからさらに労働条件の切り下げがないように配慮をするということは欠かせない条件だと思うわけです。それでこういう点についても十分御配慮を願いたい、この二つを御質問申し上げます。
  176. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換に際しまして情報が非常に重要であるということは繰り返しお話をいたしておりますが、この情報をうまく中小企業の方々につなぐために、いろいろの窓口が現に用意されております。ただ、私はやはりそれらの窓口の間の連携ということが、非常に大事じゃないかと思います。現に先般中小企業転換の問題で相談に見えたときにも、法令等については通産省は非常によくわかっておるけれども、たとえば立地条件等については東京都へ行っていろいろ情報を得る。それから業界の販路等につきましては業界団体と連絡をする。私どもはいわばそういう連絡役をしながら、全体としての情報が浮かび上がってくるようにということで指導をし、それが非常にうまくいったというケースを経験いたしておるところでございます。したがいまして、私どもは各機関それぞれの持ち味を生かしながら、全体としていい情報提供ができるようにというふうに考えていきたいと思います。  なお、このために特別の機構を用意すべきではないかという点でございますが、先ほどの質疑の中に出てまいりました中小企業の情報センターの中に、特別に転換問題についての室がスタートいたしまして、これを整備していくことによって転換に関する情報は一層豊富になっていき、またお役に立つのではないかと思っております。さらにまた、各種の経営指導員の方々について転換問題を特別のテーマにした研修を実施しまして、そしていろいろの相談のときに、親身に相談に乗ってやれるような制度も別途考えておるところでございます。  それから、第二にお尋ねございました労働者の意思を極力生かして転換を円滑にするようにという点は、まさに御指摘のとおりでございます。そしてその中にあって労働条件の問題につきましても、いままでのままでいったのではなかなか労働条件の改善もままにならぬというのを、新しい分野に転出することによって一層経営が安定し、その中で労働条件も改善する可能性ができてくるわけでございまして、私どもはやはりこういったことも頭に置きながら、認定指導あるいは認定自体を行うように、都道府県によく指導してまいりたいと思います。
  177. 安武洋子

    ○安武洋子君 いろいろなところの持ち味を生かしながらと、御表現なさいましたけれども、やっぱり業者にしたら、あちらこちらうろうろするんじゃなくて、一カ所に行けばちゃんと相談に乗ってもらい、指導が受けられるというふうになるのが私は一番親切だろうというふうに思うわけなんです。ですからもっと通産省としても責任を持つ分野、責任を持つところというものを私はお決めにならなければならない。そういうふうな責任を負う体制をおつくりになるということが必要じゃなかろうかというふうに思うわけです。  次に移りますけれども、手続問題、これについての簡素化を御要望申し上げます。非常にいままでの例でも特恵対策とかそれから国際経済調整法、これに基づいて業者が申請を出すというふうなことをいたしましても、審査が非常に繁雑だ、手続がもうかなわないという声が上がっているわけです。本法の施行に当たっても、この手続を簡素化していただきたい、こういうふうに御要望いたしますが、いかがでございますか。
  178. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 中小企業の方々が転換計画されて、大体それが構想としてまとまりますと、転換計画認定に入るわけでございますが、転換計画の中身としましては、転換内容はどうか。それをどういう時期に実施するか。それに伴って設備等はどういうふうに変わっていくか。また、労務に関する状況はどうであるのか。さらにまた必要な資金はどうかというようなことを事実として書いていただければ、それをもとに都道府県の方で認定を行うということを考えております。御指摘になりますように、これが余りにも繁雑でございますと、中小企業としては手が出せないということになりますので、この手続はなるべく簡易なものにしながら、その内容を見て事実上の相談に乗っていくという形で処理していきたいと思います。
  179. 安武洋子

    ○安武洋子君 転業を迫られるような中小業者の方といいますのは、いまでもそのことだけを専門にやっているわけではありませんから、中金とか国金、この手続ですら大変だと、こうおっしゃっているわけなんです。ですからいろいろな繁雑な手続がありますと、せっかく本法を施行いたしましても、この本法の恩恵に浴さない業者というのがたくさん出てくるわけですから、ぜひ手続というのはもっと簡略にしていただきたい、こういうことを御要望申し上げます。よろしゅうございますでしょうか。
  180. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 申請をします中小企業の方の負担はなるべく軽減するようにいたしたいと思いますが、しかしやはりある程度具体的な内容まで書いてございませんと、本当にこれがうまく転換できるかどうかということが都道府県としても判断がつきかねると思います。したがって、そういうことをうまくやるためには中小企業経営指導員等が間に立ちまして、そこを、転換計画にまとめるまでの過程を親切に相談に乗り、お手伝いをするというようなことが一審役に立つのではないかと思います。
  181. 安武洋子

    ○安武洋子君 最初にもお伺いした問題ですが、中小企業転換を迫られる要因というふうなのは、これは私は防ぎ切れないものではないと思うわけです。最初に四点ないしは五点お挙げになったわけですけれども、やはり私はこういう点につきましては高度成長政策のこれは犠牲である、また大企業が海外に進出をすると、それによって中小企業が海外市場も奪われるし、またいわゆる逆輸入によって国内市場も圧迫される、こういう状態もあると思いますし、また不況のしわ寄せというのはこれは下請工賃の切り下げとか、支払い条件の悪化とか、こういうふうな面にもあらわれているわけです。さらに数え挙げればきりがありません。賃金を抑えられて国民のふところが豊かでない、こういうふうなこともいろいろ条件にあるわけですけれども、当面、私はここで問題にしたいのは、大企業の横暴な中小企業分野への進出の問題なんです。中小企業転換を迫られる、これは大きな原因になっていると思うわけです。  先ほど大臣の、御答弁の中で政府はいままでいろんな施策を怠ってきたのではないと、その都度適切な法案なり対策を講じてきたんだ、またそれよりも先手先手に手を打っていたんだ、さらに対応しなければならない部面については先手先手とやっていくんだというふうな趣旨のことを御答弁なさったと思うわけですけれども、それにしては私は事業分野確保法、今国会に提出をなさるということがおくれておりますし、鋭意何かいま努力中という御答弁がありましたけれども、こういうのがおくれているということは事実なわけです。それから大臣の御答弁の趣旨を生かすならば、私はいま現状に合わない法案というものはこれは改正をすべきだというふうに思うわけですけれども、何よりもいま改正を急がなければならないその法案一つとしてはこれは大店法、これがあるんじゃなかろうか、大店法そのものを見直すべき時期に来ているのではなかろうかというふうに思うわけなんです。いずれにしても、いま中小企業転換を迫られるというのは、政府の施策の立ちおくれという面が大きく原因しているというふうに思うわけです。私そこで思い出していただきたいのは、中小企業基本法の第十九条なんですけれども、この精神に立ち戻って中小企業が転業しないでも繁栄すると、こういう環境づくりを最優先に考えていくべきではないかというふうに思います。  そこで、関連をした質問をさせていただきますけれども、私ども共産党はこの二十二日に大店法の改正案を院に提出いたしました。その中心となりますのは、第一点は、現行が政令都市で三千平米です。それからその他の都市では千五百平米というふうな基準店舗面積、これを私どもは一律に千平米にいたしました。それから第二点といたしましては、大規模小売店の新増設、これを都道府県の知事の許可にすると、こういうことでございますけれども、私はこれはまさにいまの現状に合った法案ではなかろうかというふうに思うわけです。  現在各地を見てみますと、大企業の野放しに近い進出、これが中型店も含めまして大変な状態を各地で巻き起こしているわけです。スーパーの進出とか大型店の進出、これがいまどういう状態になっているかということを少し具体的にお話をしたいと思いますけれども、中都市では大型店の売り場面積のシェア、これが五〇%以上を占めているところが少なくないわけです。販売額で見てみましても、昭和四十七年、スーパーと百貨店のシェアというのが一七%だったわけです。しかし現在このデパートとそれから従業員五十人以上の大型店ですね、ここだけで企業数ではわずか〇・一%、これに満たないわけです。しかしシェアで何と二五%も占めている。さらにコンビニエンスストアの問題、これもあるわけです。それから大店法の届け出は要らないこういう千五百平米以下の店舗の申請というのは急増しておりまして、中には千四百九十数平米、こういう店すら進出をしている。これは中小業者だけの問題ではありません。いままさに各地の都市問題にまで発展していると、こういう状況なんです。  こういう実情から見まして、やはり各自治体が何らかの対策をせなければならないという状態に迫られているわけなんです。ですから、御存じのように全国の知事会ですら基準面積の引き下げ、それから知事への権限を一部譲渡してほしい、こういう要望をされておりますし、また条例を制定する自治体もふえているわけです。それとともに意見書を提出する、それから現行法の強化の要望をする、調査を実施する、こういう自治体が全国で二十から三十に及んでいると聞いているわけです。中小企業団体中央会、それから全国商店街振興組合連合会、それから中小企業の八団体、相次いで法改正を求めているわけです。現行法が実態に合わないという、ここに一つの私は実証があるだろうというふうに思うわけで、現行法がいまの実情に合わないと考えるのが常識ではなかろうかというふうに思うわけです。ですから、私は現行法の見直しを検討することが必要ではないかと思いますが、大臣これはいかがお考えでございましょうか、大臣の御答弁を求めます。
  182. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いまの大規模店舗法は、法律ができましてからまだ二年半ばかりしかたっておりません。おっしゃるように各地で若干の紛争が起きておりますが、しかし数多くの案件が解決したのも事実でございます。そこで、紛争中のものはそれぞれの所定の手続に従いまして調整を続けておりますし、かつまた一定限度以下の小規模なものにつきましては、これももし紛争を生じますときには小売商業調整特別措置法等によりまして知事にその調整を委任する、こういうことも可能でありますし、しますから、現行法の大規模店舗法と小売商業調整特別措置法、この二つの法律を適当に運用することによりまして、私は当分の間は法改正は必要ではないと、もうしばらくの間様子を見守りたい、こういうふうに考えております。
  183. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、私が先ほど申し上げましたように、各自治体がいま対策を迫られている、それから意見書も出してくる、それから現行法の強化も要請する、調査も実施する、それから中小企業の各団体がいろんな意見を上げてくる。こういうことは、じゃあなぜ起こっているんだというふうにお考えなんでしょうか。
  184. 織田季明

    政府委員(織田季明君) 御承知のように大規模店舗法は、流通の合理化消費者の保護と、それと中小商業者の事業機会の確保を目的としておりますから、いろいろな利害が相反するといいますか、利害が錯綜することがしばしばあるわけでございまして、したがっていろんな方面から改正意見が出てきております。いまお話のありました中小商業者からの御意見もありますし、また消費者からの意見もありますし、あるいは地方自治体からの意見もあります。そういうものを謙虚に耳を傾けて聞きながら検討しておりますが、現在の段階では、先ほど大臣が答弁いたしましたように、もうしばらくは現行法のままで見守りたいというふうに考えております。
  185. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃあ私は現行のいまのままで、静かに見守っておられると、そういう状態の中でどんなことが起きているかということを少し具体的にお尋ねいたします。  一つは、姫路市の問題です。これは大臣の選挙区でございますので、大臣はとくと御承知のとおりでございますけれども、姫路市では現在大店法、千五百平米以上ですね、これが十二店ございます。小売業全体の売り上げのシェアの二八%を占めているわけです。これは現在です。そして、ここに何と五十三年の三月営業ということで二万三千平米のニチイ北姫路店、それから五十二年六月営業の一万四千平米を持つジャスコ岩端店、この二店の進出計画があるわけなんです。ジャスコというのはすでに通産省への届け出を出している、こういうことを聞いておりますけれども、こういう進出が行われますとどういうことになるか、大型店の売り場が二店だけで四五%もふえるわけです。しかも、売り場面積一平米当たり消費者人口、これが三・六人になるわけです。一般的には一平米当たり十人ぐらいが適正だとこういうふうに言われているのは御存じだろうと思います。五人以下になるとこれは超競合地帯、こういうことで圧倒的な一店以外の店の採算は不可能だと、こういうふうに言われるわけです。そして、今度進出を企画しているこの二つのお店の距離というのは三キロなんです。この両店にはさまれた商店街がどういうふうになるかということは、これはもう御想像もつこうというものです。姫路市には、しかも昭和四十九年の二月にダイエー姫路が進出をいたしております。これは開店した際に商調協で売り場面積の四〇%、これを凍結しておりますけれども、これがこの九月の一日から一部解除をされたわけです。さらに、来年の三月になりますと九〇%解除をされるわけなんです。  それだけではないんです。地元の人たちがこういうことは困る、これは東洋紡の跡地なんですけれども、ここは文教地帯にしてほしいと、こういう要望が非常に強いわけなんです。ですから、中小企業の死活問題だけではなしに、まさに公害問題である、交通公害も出るわけです。それから、非行の問題もあるわけです。私は、ここで非行の問題少し申し上げたいと思いますけれども、一つ例をとりますと、千葉県の柏市ですけれども、これは昨年一年間に刑法に触れる行為、こういうのが百七十八件あります。この百七十八件中に万引き等が大型店で発生した行為、これが百六十七件九三・八%なんです。しかも小中学生が七八・一%をその中で占めている。兵庫県で調べてみますと、兵庫県でも小中学生の万引きが七三%とほぼ同数、こういう傾向があるわけなんです。ですから、こういう大型店舗が進出することは、その付近のお母さんたちが子供の非行の問題につながると、こういう面でも心配をされているわけなんです。  で、ここの地元の業者の方たちは、あす二十七日には姫路市の商店街連合会、これが閉店ストをしてデモをする。ここまで追い詰めておられるわけです。ですから、こういう状態が起きているということは、私は大臣も御存じだろうと思いますけれども、こういう状態を大臣いかがお考えでございますか。
  186. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 事情はよく知っております。やはり商調協という機関がございますので、そこで十分検討していただこうと思っております。
  187. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣、十月の十七日の読売新聞でございますが、これに十月の十六日に大臣は商店街連合会から陳情をお受けになった。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕 そして、「陳情の趣旨は十分承知した。地元商店との事前調整がつくまで同法三条申請に基づく届け出書類は受理しないよう大阪通産局に申し渡す」、そういうふうに確約したという報道がございますけれども、この報道は違うんでしょうか、大臣にお伺いします。
  188. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 商店街連合会から陳情を受けまして、事情は十分承知したということを申し上げ、そして同時に十分調査してみようと、そういう話はいたしました。
  189. 織田季明

    政府委員(織田季明君) ただいまお話のありました件につきましては、通産局の方にも事情を十分伝えておりますし、また通産局の方も承知しておりまして、両者すなわちニチイ、ジャスコに対しまして、地元の小売商店街と十分話をするようにということで連絡もしております。
  190. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまのお答え、もう一度済みませんがおっしゃってください。
  191. 織田季明

    政府委員(織田季明君) まず初めに、地元の小売商の方々とジャスコとニチイ、両スーパーでございますが、こういう両当事者が話し合うのが先決ではないかということで、私の方からジャスコ、ニチイに対しまして地元の小売商店街の方々と十分お話しをするようにということを伝えてあります。
  192. 安武洋子

    ○安武洋子君 ではこの読売で報道されました、調整がつくまでこの同法三条申請に基づく届け出は受理しないようにという、この個所はいかがなんですか。
  193. 織田季明

    政府委員(織田季明君) 調整がつくまでという限定はしばらくおくといたしまして、現在通産局の方に出ております届け出は保留したままになっております。
  194. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ重ねて伺います。調整がつくまで申請は受理しないというふうに受け取っていいわけですか。
  195. 織田季明

    政府委員(織田季明君) そこまでは明言できませんです。
  196. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ大臣は新聞でうそをおっしゃったんですか。
  197. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私は新聞記者に会って発表したわけじゃございませんで、私が商店街の代表に言ったのは、事情はよくわかったと、したがって通産省としては十二分に調査をすると、それから同時に、相手方とよく話し合ってもらいたいと、こういう趣旨のことを言ったわけであります。
  198. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ読売新聞が、大臣がそのように確約をしたというのは、これは読売の報道の誤りでございますね。
  199. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 新聞の記事は私は承知しませんが、どういう記事になっておりますか、一回よく読んでみたいと思いますが。それから同時に、私はそこまでは言わなかったと思うんですがね。はっきりそんなことを言ったという記憶がありませんし、そこまでは言わないで、さっき申し上げましたようなことを代表の方には言ったと記憶しておりますが。
  200. 安武洋子

    ○安武洋子君 ではこの読売の報道が正しくないというふうなことなんですが、しかしなぜ読売で報道されたそこまでおっしゃれないんですか。私は改めて御要求しとうございます。こういう、やはりあす閉店ストですね、それでデモまでしようと、ここまで追い詰められてなさる。で、大体スーパーといいますのは消費者にとっても決していい影響を与えるもんじゃございません。先ほど私は非行の問題を言いましたけれども、そのほかに商法としても一・六・三商法、もう常識です。一割が目玉商品で安くしてあると、六は普通だと、三は高いと、全体として高収益が上がるようになっている。これはもういままさに常識なんです。ですから御要求を申し上げますけれども、ニチイについては、これは地元小売業者、地域住民、この合意があるまでは届け出は受け付けないでいただきたい、これが一点です。  それからジャスコにつきましては、ジャスコだけで先ほど言ったようにもうすでに七店のうち六店まで千五百平米以上なんです。この七月に一店開店したんです。この上にまださらにジャスコがなぜ進出をする必要があるか。それをお許しになることはないと思うんです。ですから再検討を私は要求申し上げます。いかがでございますか。
  201. 織田季明

    政府委員(織田季明君) 届け出を受け付けるなという点でございますが、まず、第一前提として地元との話し合いということは私の方も心がけているところでございますし、スーパーにも言ったと申し上げましたが、もしその場合に話し合いがつかなければ届け出を認めないということになりますと、法の精神にも合いませんし、加えて話し合いがつくべき話がつかない場合も出てくるんではないかというふうに考えますし、加えてこの問題には消費者が利害関係を持っているわけでございますから、商調協の場において、消費者を加えて議論することもまた法律の認めた手続でございますので、いまのようなお話で、話し合いがつくまでは届け出を認めるなということはここではちょっと断言いたしかねるのでございます。
  202. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣もそうでございますか。
  203. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いずれにいたしましても、利害関係が非常に対立をしておりまして、地元で小売業者とそれからスーパー側が十分話し合いをしていただきたいと、こういうことを強く期待をしたいと思います。手続その他につきましては、法の定めるところによって運用するわけでございますから、ここで私が法律を曲げて云々することはできませんけれども、しかし現実問題といたしまして、あれだけ激しい対立がありましたならば、商調協を開きましてもなかなかそう簡単には進まないと、こう思いますので、法律で認められた商調協の場で、消費者等も加えまして十二分に時間をかけて話し合いをすることが必要であろうと思います。
  204. 安武洋子

    ○安武洋子君 利害が対立しているのは消費者とそれから小売店じゃございません。もう申し上げなくてもおわかりのように、先ほどから言っておりますけれども、この場合は地元の利用についてはこういうジャスコとかそういうものでなくって、この人たちは文教地帯にしてほしいんだというふうに住民はこぞって要求しているわけです。中小業者も反対なんです。だから利害が対立しているのは大型店とそうしてそういう人たちなんです。だから私は、法の精神法の精神とおっしゃいますけれども、現状に法が合わないですよと、見直しをすべき時期じゃないですかと、このことを強調しているわけなんです。ですからいま大臣もおっしゃったように、商調協の場に出したってなかなかこんなもの調整つかない。やはりこういうものは地元の合意もちゃんとできて、本当にみんなが納得するというまで大型店の進出を進めるべきでない、こういうふうに思いますけれども、その趣旨には大臣いかがでしょう、御賛成いただけますでしょうか。
  205. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まあ法律で定めておる手続をするなと、こう言うわけにはまいりませんが、現実の問題といたしましても、商調協を開いても利害が対立して話が進まないと、こういうことであれば手続をしても無意味でありますから、現実問題としてやはりまず第一には、小売商側とそれからスーパー側が何回も何回も十二分に意見を交換をすると、姫路市の将来の発展の方向はどうあるべきかと、こういう立場から検討をしていく。御案内のように今度スーパーができようとするところは、姫路市の副都心といいますか、副都心をつくろうという計画も進められておりまして、その副都心に置こうという計画でありますが、そういうふうな将来の姫路の発展計画に即して、小売店側とスーパー側が胸襟を開いて何回も意見を交換する、そうしてある程度の見通しがついたところで、消費者側を加えてさらにまた意見を交換すると、そういうふうなことをしませんと、商調協を開きましても前進をしない、こういうことであれば結局解決しないということでありますから、双方が現実問題として処理されることを期待をいたします。
  206. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま一つ私は例を申し上げたいと思います。尼崎の西武関西百貨店、これがグンゼ跡地に、塚口というところですけれども、一万一千——いや十一万です、十一万二千平米、東洋一になるんです。私が言い間違えたの無理なくて、十一万なんです。この売り場面積を持つこういう西武百貨店が進出しようとしているわけです。これは広さといいますと、神戸ぐらいの百貨店ですと三つ分に当たるというふうなわけで、自動車は日曜日には八千三百台を予定して駐車場を設ける。平日は二千七百台を計画している。自動車中心の来客、こういう人たちを対象にもするというふうなことなんです。この尼崎市のシェアの問題申し上げますと、四十九年に五十人以上の大型店四十店、これが四六%の売り上げです。それ以外の七千百店、これが五四%に満たないわけなんです。こういうところに進出してくるわけですからこれも大変な問題なんです。ですから尼崎市も反対の態度をはっきりとされている。業者だけの問題じゃなくて、尼崎は御存じのように公害指定都市なんです。ここに日曜日に八千三百台の自動車を集める計画を持つこういう店舗ができれば、どんなことになるかということはこれは私がもう申し上げるまでもないと思うわけです。平日ですら二千七百台、尼崎市は公害だけではなくって、交通問題も深刻なんです。ここにこういう店舗を進出させるということは、まさにこれはむちゃだと言わなければならないと、こういうふうに思います。ですから地元の中小業者の方も、市も、地元が合意するまでは私はこういうものを、計画を受理すべきではないというふうに思うわけです。  ですから私はここで御要望申し上げたいのは、西武百貨店に対して計画は中止する、再検討すると、こういう指導をなさっていただきたい。これについてはいかがでしょうか。
  207. 織田季明

    政府委員(織田季明君) 本件につきましても、大阪通産局が中心になって事情を聴取しておりますが、私の方にも地元の小売商の方が陳情に参られまして、実情を十分知っているつもりでございます。また、西武百貨店に対しましても私の方からいろいろ話をいたしまして、地元の小売商の方々と十分話をいたしながら解決するということを言っておりますので、円満に平穏裏に解決することを期待しております。
  208. 安武洋子

    ○安武洋子君 円満に平穏裏に解決するというのは、西武ですね、ここが進出をやめる以外には私は平穏な解決はないと思うわけです。  一例を申し上げます。尼崎のこの塚口の駅前には小売市場があるわけなんです。これは専門大店と申します。昭和の初期からずっとありまして三十二店ですけれども、途中、昭和十一年に増設をいたしておりまして三十二店、大変よく繁盛をしていたわけなんです。ところがここにいかりスーパー、それから灘神戸生協店、こういうものが進出してきたわけです。それでどういう変化が起こったか。この四、五年の間に店主が変わった店が三十二店中七店なんです。店員のいるお店が半分に減ってしまった。しかも、その店員のいるところでも店員の数が半減しているわけです。そして、お客の数ですけれども、これが一日に最大七千人から八千人あったわけです。それがいまでは三千人に減っている、こういうふうな状態です。それから、すぐ隣に隣接して栄楽商店街というのがあるわけなんです。ここでも似たり寄ったりの現象なんです。二十軒ございます。ここの二十軒中、閉店したのが一店、それから店主が変わったのが三軒、で、店主が勤めに出られて奥さんがお店をする、こういうことで細々と営業を続けておられるのが二店、ここに進出をするわけなんです。こういうところに進出をしてきて、中小業者は脅かされないとでもお考えなのか。しかも公害尼崎の中に、八千三百台も日曜日に自動車を駐車するというふうなことを想定する、こういう大型店舗の進出を許していて、公害を本当になくそうというふうな政府の御趣旨に沿えるのかどうか、こういうことも大臣にお伺いいたします。
  209. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私もその計画があるということは知っておりますが、市長初め市の有力者や、それから関係者がこの紛争を解決をするためにいろいろ積極的に話し合っておる、そしてその話し合いは前向きに進行しつつあると、こういうふうに聞いておりますので、さらにその話し合いが進みまして何らかの解決点、何らかの妥結点が見出されることを期待をしておるわけでございます。
  210. 安武洋子

    ○安武洋子君 ここでも、先日市民ぐるみのデモがあったということは御存じだろうと思います。こういうふうな全市民的な問題と、まさに尼崎市の都市問題にかかわる問題、ここまで発展しているわけです。ですから、私は円満な解決とか、それから漸進的な解決とかおっしゃいますけれども、西武百貨店に対して私は再検討を求める、これ以外にいまの通産省のおとりになる立場はないと思うわけです。再検討をぜひ指導していただきたい、重ねて御要望いたしますが、いかがでございますか。
  211. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 西武自身も再検討すると言っておるそうです。ですから、やはり現実問題を踏まえてやりませんと解決しませんからね。西武自身が何とか再検討するという話だそうですから、私は、その上に立って地元の関係者、それから小売店ですね、そういう関係者の方々が寄って十分話し合いをされれば、新しい妥結の道は開けてくると、こういうふうに考えております。さっきの姫路の問題でも、とにかく話し合いの場を積極的に持つということが大事だと思うんです。だから、双方が十分相手の立場に立って話し合えば、私は解決の道は必ずつくと思いますので、いついかなる場合でもひとつ積極的に話し合っていただくということを強く期待をするものでございます。
  212. 安武洋子

    ○安武洋子君 中小業者が本当に転業しないように、立ち行くすべを考えるのが私は通産省じゃなかろうかというふうに思うわけです。ですから、平穏に話し合いをといっても、いつも大型店に押されるのが中小業者の立場、その立場を守るというふうな立場に通産大臣はお立ちいただきたい、そういうことで今後いろいろ紛争が起こるというふうなことに対処をしていただきたいということを御要望申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思いますので、その趣旨はぜひ大臣踏まえていただきとうございます。
  213. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど審議官が法の精神のことについて三点を挙げて説明をしておりましたが、流通の近代化消費者利益の保護、こういうことを図ることも当然必要でありますが、既得権を持っておる小売業者の利益、生活の擁護を図っていくということもこれまた当然必要なことでございますので、いろんな立場を総合的に考えまして、現実問題として関係者が話し合いによって前向きの解決方法が見つかりますように、私どももそういう方向で指導していきたいと考えます。
  214. 安武洋子

    ○安武洋子君 申し上げるまでもなく、中小企業基本法第十九条の「事業活動の機会の適正な確保」、私はこの精神をしっかりと踏まえて問題解決に当たっていただきたい、こう御要望して質問を終わらせていただきます。
  215. 藤井恒男

    藤井恒男君 大方の質問が出尽くしておりますので、関連することを外しまして簡単に質問いたしたいと思います。  まず最初に、繊維工業構造改善臨時措置法第十条は、通産大臣は、繊維事業者から事業転換の申し出があったときは、必要な指導、助成を行うことと規定しておるわけですが、この構造改善法第十条と、いわゆるいま提案されております転換法案との関連は一体どうなるのか、最初にこれをお聞きしたい。
  216. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  現在、議題になっております転換法でございますが、これはいわば一般法でございまして、特定の業界を対象としたものではないことは御承知のとおりでございます。もちろん、繊維産業に属する中小企業はこれを利用し得るものであるということも言うまでもないことでございますが、他方、いまお示しの繊維の構造改善法におきまして、地域集約化を目指す構造改善一環として、繊維産業の内外にわたっての転換というものが考えられておるわけでございますが、繊維産業の中での転換につきまして、構造改善法の第三条に基づいて基本的な指針が示されておるわけでございます。その必要に応じまして同法八条の指導及び助言を行うことになっておりまして、要件に該当する場合は、同法第四条によりまして特段の助成措置というものが講ぜられることになっておりますことは御承知のとおりでございます。また、いまお話ございました第十条でございますが、第十条は、まさに繊維産業外への転換について指導助言等を行うという規定になっておるわけでございます。したがいまして、いま議題になっております転換法を含みます一般的な助成を含めた、所要助言と援助というものを繊維法の十条でもって、また繊維の立場で行うということになろうかと思います。  したがいまして、繊維の中での転換と、それから繊維から外への転換と、まあ二種類あるわけでございますが、繊維の外への転換につきましては、繊維法の十条と、それからいま御審議中の転換法に基づいて措置をすると、こういうことになろうかと思います。
  217. 藤井恒男

    藤井恒男君 そうしますと、いま提案されておる法案一般法である。そして、先ほど私が申し上げたところの構造改善法は繊維にかかわる法案である。で、繊維にかかわる法案一般的事例は、繊維対繊維への知識集約化を目指したいわゆるある意味の高度化の転換の助成である。十条が繊維から繊維の外に対する転換、当然これに対してはそれなりの構造改善法に基づくところの助成あるいは指導があるわけですね。さらに本法によってやはり繊維の適用を除外するものではないわけですから、同じような繊維が、繊維から繊維外へ転換する場合、これによっての助成もありますね。その助成が私内容において違うと思うんですよ。  この辺の整合性というものをどこでどういうふうに判定していくか。これはやっぱり当事者の届け出——当事者の主体的な意思によってこれが決まっていくのかどうかですね、この辺具体的に一体どうなりましょうか。その内容がどっちがいいとか悪いとかという意味じゃないですよ。判定種別する主体は一体どこにあるか、あるいはどういうふうに基準をしていくことであろうか。
  218. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) いまお示しの繊維から繊維外への転換でございますが、構造改善法は主として繊維内の転換について非常に詳細な規定を設けておるわけでございまして、繊維外の転換につきましては、まあ一条だけ指導助言という規定を設けておるだけでございます。したがいまして、その繊維外の転換につきましての助成とか税制その他の問題、あるいは情報提供とか、そういうふうな問題につきましては、主としていま御審議中の転換法に基づいてやっていくと、こういうことになろうかと思います。
  219. 藤井恒男

    藤井恒男君 この構造改善法の立法趣旨ですが、まあ主体は繊維産業それ自体を育成助長していこうというものにほかならないと思うんです。しかし、まあざっくばらんに申し上げて、構造改善というものを進めていこうとすれば、その産業が零細過多性にあるがゆえに国際競争力を失墜しておる。しかも内外環境の激しい追い上げによって、しかも需要の減退しておる中で構造改善を進めていこうとすれば、好むと好まざるとにかかわらず中小過多性の繊維産業にあっては転廃業を余儀なくするわけですね。したがって、繊維から繊維へ高度に伸びていこう、あるいは協業化を図っていこうという面は、これは非常にラッキーだけれども、そうじゃなくはみ出ていく分、そいつを拾わなきゃいかぬわけですから、それが十条によって受けざらとして受けられておると私は思うんですよ。そういったときにこれたまたままたこの法案が出てきたわけですね、これは一般の問題として。したがって、私は厳密に言えばこれは少し趣旨が違う、趣旨といったらこれは言葉が少し不適切かもわからぬけど、事繊維産業というもの、しかも構造改善を現在進めておるという状況の中でながめた場合、ちょっとこれ異質なもののような感じがするんだけど、その辺どうでしょう。いまおっしゃる範囲ですと、一般的に言えば繊維から繊維外にいくときはいま審議中の法案で受けざらがあるんだということになると、構造改善法の十条は一体どうなるんだろうか、こういうことになりますね。
  220. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) おっしゃいますとおり、繊維の構造改善を進めるに当たりまして転廃業問題というものが非常に大きな問題になりますことは申し上げるまでもないわけでございまして、現在実は繊維工業審議会の政策小委員会におきまして、繊維の構造改善を進めるに当たりまして、いろいろな障害といいますか、いろんな問題点をどう解決するかということの議論をしている最中でございまして、その中で転廃業問題もどうするかという非常に大きな問題になっておるわけでございます。目下そういう意味合いで、その結論をある程度待っておる状態ではございますが、いまおっしゃいましたように、構造改善法ができましたときに、やはり十条のような配慮は当然あったわけでございますが、その手当てというものにつきましては、実はそれほど十分でなかったんではなかろうか。したがいまして、このたび提案されております転換法におきまして、その部分をある意味で補完するといいますか、手厚くいろいろな施策を充実させていく、こういうふうな考え方になっておると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  221. 藤井恒男

    藤井恒男君 そうしますと、本法が施行されますと、構造改善法の十条の適用というものは本法によってカバーするというふうに理解していいですか。
  222. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 一応実質的にはそういうことになろうかと思います。
  223. 藤井恒男

    藤井恒男君 そうすると中小企業庁長官として、この法のいわゆる整合性という意味において、これは所管の部門としてどういうふうにします、これ。
  224. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 生活産業局長からお答えいたしましたとおり、この御審議願っております法案は、いわばいろいろな事態に対応する一般法として用意されたものでございます。したがいまして、仮に繊維の関係で、従来繊維をやっていたのがほかの業種転換をしたいというときには、この法律を適用していただくことになるわけでございます。先例として国際経済関係調整法の場合にも、繊維関係業種について転換計画を組み、それを助成した実例がございます。  そうなると、従来の法律の条文との関係いかんということでございますが、やはり繊維は繊維なりに一つ体系のもとに転換問題を取り上げまして、その一環として指導助言が必要であるという旨を繊維関係構造改善法の中にうたってあるわけでございますが、その中身をどうするかというような点につきましては触れておりません。その中身のところに当たるのがこの法律であるというふうな結びつけ方が可能なのではないかと思います。
  225. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは非常に私混乱すると思うんですよ。いま長官がおっしゃったようなことじゃないと思う。これは繊維というのは非常に多岐にわたっておるし、しかも御存じのような膨大な企業群でございますから、それぞれの企業の、あるいはそれぞれの産地が軌を一にして構造改善に取り組み、その中から他業種転換を余儀なくされてはみ出ていくというような整理された形じゃないわけです。もう個々にばらばらに先々を思い、あるいは輸出入の状況をながめ、需要の状況をながめて、毎日にでもこれ転換というものはあるわけですよ。そういう中でぼっとこの法案が出てくるわけですからね。しかも、構造改善というものは時限立法で五十四年の六月末で切れちまうぞというようなことで、どんどん後押しされておる。こういう錯綜した状態ですから、私はよほど使い分けといいますか、これははっきりしておかなければ、まあ皆さん方は頭の中で整理されておるとは思いますけれども、一般業者にしてみれば私は非常に混乱すると思うんだ。しかも、その扱う内容が、具体的な助成というものが異なるということになりますと、これはトラブルを起こすもとだと思いますので、この辺は十分生活産業局と中小企業庁の間で意思の疎通を図っていただきたいと思います。何かございましたら……。
  226. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) いま申し上げましたように、繊維工業審議会の政策委員会の方でも、実は先生が御心配になったような点につきましていろいろ議論があるようでございます。で、いまお示しのような趣旨で中小企業庁とも密接な連絡をとりました上で、万遺憾ないように、法律ができましたならば取り進めてまいりたい、かように考えております。
  227. 藤井恒男

    藤井恒男君 じゃ、藤原局長おられますから、先にちょっといまのに関連する問題を質問しておきたいと思うんですが、いま局長おっしゃったように、繊維工業審議会の政策小委員会で繊維対策を検討しておるさなかですが、まあ大きな問題点というのは設備登録の問題、それから輸入規制の問題、さらには取引所の問題、まあこの三つぐらいが現在爼上に上っており、これをめぐって学識経験者と業界側、あるいは業界内部でさまざまな意見が出ておるさなかだと私は思います。まあ取引所の問題あるいは輸入規制の問題は、答申案作成の過程でさらに煮詰まっていくことと思いますが、私、産地をいろいろ回ってみて、非常に中小業界で動揺をしておる問題は、この設備登録制の存廃の問題です。この制度は団体法に基づくアウトサイダー規制策としてずっとこれ構造改善対策の実効性を確保してきた、あるいは設備カルテルというような問題からいまにわかに議論が大きくなっておるけど、とにもかくにも過去二十年近くこの実効性を確保する上で効果を及ぼしてきたと私は思うのですよ。  これが今後構造改善事業を進めるに当たって、ここに至って構造改善のネックになっておるんだと。したがって、自由競争の原則に照らして、これを廃止する方が好ましいと大きく意見が頭を上げてきた。これは実際問題としてわが国における零細過多性、しかも全国に産地を形成し、文字どおり北海道から沖繩まで、どこに至るも繊維産業なきところなしという状況の中で非常に私は問題を大きくする。しかも中小零細企業が動揺する。そしていまこのような厳しい環境下にさらされておるさなかに、こういう気がしてならないのです。この点について通産省として、まあ学者諸君の意見はともかくとして、通産省としてこの存廃問題について当面どう考えておるのか。目の前の問題ですから、一年ずつの更新なんだから、ぴしっとした信念をお持ちか、あるいは何らかのアクションを起こしておるのか、この辺のところを聞いておきたいと思います。
  228. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 繊維産業、特に織布業におきますところの設備登録制についての御質問でございますが、もうよく先生御承知のとおり、非常に二十年間、いわば毎年議論を重ねながら一年一年延長をしてまいりました設備登録制度でございまして、繊維が非常に構造改善を、特に縦型の構造改善をしなければ国際競争力に打ちかてないという時代になりまして、これについての議論が非常に大きくなってまいったというところでございます。  で、設備登録制度自体につきましては、私ども功罪いろいろあるように思います。確かに中立的な学者先生方のおっしゃいますようなデメリットというものもたくさんあると思います。またいま先生からお話ございましたような戦後二十年、中小企業の織布業関係を安定させてまいったというメリットというものも当然あるわけでございまして、そのメリット、デメリット、双方あるように思います。ただ現在は、実はその問題を踏まえまして、繊維工業審議会の政策小委員会で議論をされておる最中でございまして、私どもとしては長期的な方向として、設備登録制をどういうふうに持っていくかということにつきましては、実は態度としてはまだ白紙の状態でございまして、政策小委員会の結論待ちというところでございます。  ただこういうことが一般に流布されましたところ、直ちに廃止をされるというふうな空気になりまして、非常に反対運動が強いわけでございますが、私どもも、功罪いずれといたしましても、二十年間ともかく続けてまいりました制度でございまして、それに伴ういろいろな関係が錯綜いたしておりますので、これを直ちに廃止するというふうな急激な変化というものはやはり好ましくないんではないかと思います。で、実は本年度も十月末でいまの設備登録制は切れて、さらに一年延長するかどうかということになっておるわけでございますが、実は昨日安定審議会が開かれまして、その方へ私どもはともかく一年間延長をお願いしたいというふうに提出をいたしまして、昨日の安定審議会でともかく一年間は延長をすると、その間さらに詰めるというふうな結論に相なっておりますので、現在のところとりあえずはもう一年このままで進める。その先のことにつきましては、政策小委員会の結論を待ちたい、こういうところでございます。
  229. 藤井恒男

    藤井恒男君 局長、まあ当面この一年間はいまの登録制というものを継続するということを明確におっしゃったと理解していいですね。  私さらにお願いしたいことだけど、ざっくばらんに申し上げて、綿工連一つ取り上げても、全国に六十四産地ですね。これは莫大な数だと思うのです。一万八千機業、所有台数が三十六万台ですから、ざっと一機業当たり二十台ですよね。いかに零細であるか。まあ十万人の人間がこれで飯を食っているわけだけど。そういったことを考えていくと、私はもう未来永劫にこの登録制というものを存続せしめるべきという論は私は成り立たないだろうと思います。しかし、せめて繊維産業が自立できるような状態になるまでは、私はこれ出で続けてきたこの登録制というもの、このメリットを生かすように行政指導していくべきじゃないかと私は思うんです。まあデメリットももちろんありましょう。しかしメリットも非常に大きいし、いま言ったところの零細過多性であるがゆえにあえてその点をお願いしておきたいと思います。  じゃ、次に移りますが、この法案について長官にお願いするんですが、事業転換には、いまここでもお話があったように、繊維で言うなら織布業から、あるいは織布というか毛織物から綿織りにかわる、これもある意味の転換ですわね。しかしこれは同業における転換。ところが、第十条でいま私挙げましたように、織布業から他の業種転換する、これも転換です。したがって、転換という場合には非常に私範囲が広いと思います。この辺のところをどの辺までをここでいう転換という基準になっていくのか、ちょっとその辺のところ聞かしてもらいたいと思うんです。
  230. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換ということは、文字どおり解釈すれば、いままでやっていた業種の仕事を漸次整理をしまして、新しい業種で仕事をするようになるということでございますが、その新しい仕事の分量がどの程度になればいいかということについては、必ずしもまだ明確な物差しというものはございません。まあ大体半分ぐらい新しい分野に移っていけば転換と言うて差し支えないだろうというふうに思っておるところでございます。このような比率はともかくといたしまして、その中身としては、単に生産量なり販売量という物差しだけではなくて、むしろもっと実態をよく見まして、そのためにはいままで使っていた設備の大部分が不用になり、新しい設備が必要になる、こういった中身に立ち入って転換を定義づけていくようにいたしたいと思っておるわけでございます。これらの具体的な内容につきましてはいろいろのケースを私どもで整理をいたしまして、この法律実施いたします際の解釈は通達で一般の人にわかりやすく整理をいたしたいと思います。
  231. 藤井恒男

    藤井恒男君 この中小企業の場合には文字どおりおやじさん——社長さん、この人の資質というものが、大企業の組織で動くという問題と違って非常に大きなウエートを持っておる。そういう意味で転廃、転業ということはすなわち廃止ということもありますね。あるいはその廃止と同時に、中小企業を動かしておった文字どおりそのおやじさんが、みずから事業をやめて就職する。単なる従業員の問題じゃなく、おのれが就職するという問題もありましょう。したがって、これは単なる事業動かしていくという形じゃない、廃業あるいは他の産業への就職という問題まで範囲が広がっていくわけですが、こういった点の誘導措置というものをどのように考えておるのか。
  232. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) この転換を助成します趣旨としましては、いままで持っております設備なり、あるいはいままで抱えております従業員なり、あるいは従来から持っております販路なり、これを生かして新しい中小企業分野発展をするということを応援する、まさにこれがこの法律を用意した基本的な考え方でございます。いまお話ございましたように、いままでやっておった仕事をやめてサラリーマンになるというようなケースでございますと、いま申し上げましたような経営資源を生かすという趣旨が生きてまいりませんので、どうもこの法律対象とすることは適当でないと考えておるところでございます。
  233. 藤井恒男

    藤井恒男君 きょうお経読みの終わったガソリンスタンド法案があるわけだけど、これはある意味で、ちょうど繊維産業と同じように零細過多性である、したがって競業しておるわけですね。それがゆえに新規参入をある程度規制していこうという趣旨のものだと私は思うんだけれども、このような過当競争により経営基盤が脆弱化していく、そのために転廃業を余儀なくするという問題も私あろうと思うんです。個々の企業は、これはまじめにやっているわけですからね。たまたま何らかの形でもうけもいいし、イージーに経営ができるということでたくさん集まってくることでしょうから、あるとき突然過当競争に陥った。そのために経営基盤が脆弱になって転廃業を余儀なくするということだと思うんだけれども、この種の問題についても本法はこれをカバーしていくことになるのかどうか。
  234. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 本法の対象として考えておりますのは、いわば構造的な要因によっていままでの分野から他の分野に転出をするというケースを頭に置いて助成を用意したわけでございます。単に、景気が悪い、いわば好況、不況の波によるものであるとか、あるいは一般的な過当競争があるということだけでは、この法律の適用に至らないのではないかと思っておるところでございます。それまで入れますと、あらゆるものが全部入ってくるわけでございますが、私どもはやはりその中で、企業の力を越えたいわゆる構造的な要因によるものだけを、特にこの措置によって特別の助成を図る、こういう考え方でございます。
  235. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは非常に私むずかしいと思うんですよ。構造的要因による不況、その構造的な不況とは何ぞやといえば、それは国際環境というものなどなら、これは別かわからぬけれども、概して言えることは、私は過当競争であろうと思うんです。ことに中小企業の場合にはそうだと思う。先ほど問題になった大型店の出店問題、これも大と小、あるいは小と小などのからみ合いにおける過当競争を危惧する私は動きだと思うんだけど、だから転廃業、それが構造問題と言えば、おおむねそれは過当競争に入る。だから、過当競争というものはだめだということになれば、一体どこに線引きするのかという、これは非常に私はむずかしい問題だと思うんですがね。どうです、その辺の線引きは。
  236. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) むしろ問題は、過当競争に至った背景は何かということが問題なのではないかと思います。その背景として国際的要因があったり、あるいは国内の特別の規制ができたために生じた場合には、当然この法律の適用対象になるわけでございます。そういうことなしに、従来からいろいろの企業がやってきた、そしていろいろな参入が重ねられた、そういった歴史的過程のもとに仮にいま過当競争が起こっているということだけでこの法律対象にするということは、少しその守備範囲が広くなり過ぎるのではないかという感じがいたします。
  237. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは議論の分かれるところだと思いますが、マッチ業界という話も出ておったけれども、ライターが出たり、自動着火の装置が普及したから、だからマッチ業界が構造的に成り立ちにくくなった。非常にこれははっきりするわけだけど、たとえば、私はこの間産地に入って、現に見てきたのだけど、岡山県の児島地区に、細幅織物と言って畳のへりをつくる産地があるわけです。この児島地区では、大体全国シェアの七〇数%を占めておる。これが、新しい機械を導入したがゆえに、大体一カ月間フル稼働したら三カ月くらいの需要を織り上げてしまうんですよ。そうすると、これは一体どうなるのか。万年操短ですわな。だからそこは自由競争で、倒れるところをゆさぶって倒していけということになるのか。ここで構造改善というものを図っていこうと思えば、結局そこは間引きして転廃業を促進せざるを得ない。これは外的要因でも何でもない。オイルショックでもなければ、韓国からの追い上げでも何でもないんですよ。みずからの努力によって、自助努力によって設備を近代化した。結局、そのことが過当競争を呼び起こしておる、こういうものは対象にならぬと、こうなったら、これは一体、本法というのは何を対象にするのか。非常にむずかしいと思うんですけど、どうでしょう。
  238. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) いまお示しのケースは、私どもなりに解釈しますと、やはり一種の技術革新に伴う業界で新しいやり方を求める契機だろうと思います。その場合に全国業種としてなり得るのか、あるいは特定の産地の問題というふうな扱いをした方がいいのか、これは少し中身をよく調べた上で検討いたしたいと思います。  いずれにせよ、どういう業種を選んでいくかということにつきましては、よくその問題の起こった背景あるいは問題の実情というものを踏まえまして、この法律の趣旨に照らして、適当なものについては積極的に応援できるように慎重に考えてまいりたいと思います。
  239. 藤井恒男

    藤井恒男君 まあこれ以上論議しても余り意味ないし、私は非常にその辺のところが問題点だと思います。これは、これからも施行に当たっていろいろ煮詰めていかれることと思いますから、こういった問題があるということをひとつ長官も事務方の方も頭に入れて御承知願いたいと思います。  これはどなたがお答えになったらいいかわからぬから、大臣に失礼かもわからぬけれども、大臣に一遍聞かしてもらいたいんです。  この分野調整法ですね。分野調整法を政府も急いでおられるようですが、この中で小売商を業種指定するという動きがあるやに聞いておるんです。商業を対象業種に入れる。そうなってまいりますと、既存の大規模店舗法というものもあるし、あるいは中小小売商それ自体のいろいろ調整法なども厳存しておるわけですから、分野調整法とその面における法体系上の整合性というものは非常にむずかしくなるというふうに私は思っておるんだけど、いずれこれは法案が出た時点で論議しなければならないと思いますが、いま審議会で審議中だからにわかにこの問題について深く立ち入ることはむつかしいかもわからぬけど、大臣のその辺についての感触をお聞きしておきたい。
  240. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 審議会はもうすでに八回開きまして、あともう一、二回開けば大体答申はいただけると思っておるんですが、そういう段階でございますので、まだ、その内容をどうするか、対象をどうするか、そこらあたりまでの結論が出ておりませんで、もうしばらくしませんと具体的な内容については申し上げる段階が参らぬと思いますので、しばらくの間お答えを差し控えさしていただきたい、かように思っております。
  241. 藤井恒男

    藤井恒男君 私はいま申し上げた点、大臣は御理解いただいておると思うけど、法体系における整合性というのは十分考えてもらわなきゃいかぬというふうに思っておるわけですから、その辺のところも十分配慮しておいてもらいたいと思うんです。  最後に、少し時間が余り過ぎるかもわからぬけど一つ伺って、私の質問終わりたいと思いますが、長官、これは先ほどからたくさん質問が出ておったから私は避けたわけですが、雇用問題について、やはり転廃業は最も大切な雇用問題というのが引き起こされると思います。これを避けて通るわけにはいかないし、当然これに最優先的な配慮が必要だと思うんです。その意味において、私は退職を余儀なくした人たちに対して優先雇用措置を明確にすべきである。とりわけ中高年齢層の雇用の機会を確保する道を開くべきである。これは私予算委員会でも労働大臣にも質問して、労働大臣も、人生における最大の悲劇は失業でありますというふうに明確におっしゃって、そのためのあらゆる施策を前向きにこれからも取り組んでいきたいというふうにおっしゃっておるわけです。したがって、中小企業庁としても当然この点は最重点にお考えのことと思いますが、それについての見解がありましたら聞かしていただきたい。  以上をもって私の質問を終わります。
  242. 岸田文武

    政府委員岸田文武君) 転換がうまくいくかどうかということは、いわば、その企業においての人の和が働いているかどうかということが大きな要素になると思います。その意味におきまして、労働雇用問題については私ども十分気をつけてまいりたいと思います。  新しい分野で仕事をするために必要な職業訓練等につきましては、この法律の施行に伴って雇用保険法等の手段を通じて応援することにいたしております。仮にそれで失業が出たらということで——私どもはそういうことがないように、できるだけ手伝ってまいりたいと思いますが、仮に出た場合にも、労働省の方はこういう事情をよく心得ていただきまして、できるだけの応援をしようという答えをいただいております。たとえば、職業安定所の窓口で優先的に就職のあっせんをするとか、あるいはその他いろいろ知恵をこらしてみようという答えをいただいておりますので、今後とも労働省とよく密接な連絡をとってまいりたいと思います。
  243. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 御異議ないと認めます。よって、本案に対する質疑は終局いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会      —————・—————