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1976-10-19 第78回国会 参議院 建設委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十九日(火曜日)    午前十時七分開会     —————————————   委員の異動  十月十二日     辞任         補欠選任      遠藤  要君     川野辺 静君  十月十三日     辞任         補欠選任      川野辺 静君     遠藤  要君  十月十四日     辞任         補欠選任      矢原 秀男君     鈴木 一弘君  十月十五日     辞任         補欠選任      鈴木 一弘君     矢原 秀男君  十月十六日     辞任         補欠選任      中村 波男君     前川  旦君  十月十八日     辞任         補欠選任      前川  旦君     中村 波男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 坂野 重信君                 沢田 政治君     委 員                 遠藤  要君                 上條 勝久君                 堀内 俊夫君                 望月 邦夫君                 中村 波男君                 二宮 文造君                 矢原 秀男君                 上田耕一郎君                 春日 正一君                 三治 重信君    国務大臣        建 設 大 臣  中馬 辰猪君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  天野 光晴君    政府委員        国土庁長官官房        長        河野 正三君        国土庁長官官房        審議官      紀埜 孝典君        国土庁計画・調        整局長      下河辺 淳君        国土庁土地局長  松本 作衛君        国土庁水資源局        長        飯塚 敏夫君        建設政務次官   梶山 静六君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省都市局長  中村  清君        建設省河川局長  栂野 康行君        建設省道路局長  浅井新一郎君        建設省住宅局長  山岡 一男君        建設省住宅局参        事官       救仁郷 斉君        消防庁長官    林  忠雄君    事務局側        常任委員会専門        員        森  一衞君    説明員        行政管理庁行政        管理局管理官   山本 貞雄君        科学技術庁長官        官房参事官    佐伯 宗治君        建設省国土地理        院地殻調査部長  原田 健久君        建設省国土地理        院地殻調査課長  佐藤  裕君    参考人        地震予知連絡会        会長       萩原 尊礼君        日本道路公団総        裁        前田 光嘉君        日本道路公団理        事        吉田 喜市君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (派遣委員報告)  (地震予知及び地震対策に関する件)  (長良川災害対策に関する件)  (河川事業及び河川管理に関する件)  (内水排除及びゼロメートル地帯対策に関する   件)  (建設行政基本姿勢に関する件)  (信濃川の廃川敷の処分に関する件)  (国土総合開発計画防災対策に関する件)  (宅地開発中小河川対策に関する件) ○建築基準法の一部を改正する法律案(第七十二  回国会内閣提出、第七十七回国会衆議院送付)  (継続案件)     —————————————
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  建設事業並びに建設計画に関する調査のため、本日、参考人として地震予知連絡会会長萩原尊礼君、日本道路公団総裁前田光嘉君及び同公団理事吉田喜市君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     —————————————
  4. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 建設事業並びに建設計画に関する調査を議題とし、まず先般当委員会が行いました台風第十七号による長良川などの被災状況及び河川事業等実情調査につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。坂野君。
  5. 坂野重信

    坂野重信君 御報告いたします。  十月十二日から十三日までの二日間、竹田委員長中村委員矢原委員春日委員三治委員及び私坂野は、台風十七号による豪雨災害からちょうど一ヵ月を経過した長良揖斐両川被災状況等をつぶさに見て、これからの河川行政の審査に資するため調査してまいりました。以下その調査の概要につき御報告いたします。  まず、岐阜県下に異常な豪雨をもたらした気象状況でありますが、九州南西海上発生した台風十七号は日本列島に上陸する以前、九月八日から九州南海上に数日間停滞し、各地に厚い雨雲をもたらすとともに、日本海西部から九州にまで延びていた寒冷前線を刺激し各地に驚異的な雨を降らせたのであります。九月八日から十二日までの五日間、ほとんど間断なく降り続いた雨は、岐阜県下において猛威の限りを尽くしたのであります。県内いたるところで一時間当たりの雨量が七十から八十ミリにも達し、特に長良川水系では連続降雨量千ミリを超える歴史的な記録となったのであります。長良川忠節地点より上流流域平均においても総雨量八百五十五ミリに達しているのであリます。ちなみに、昭和三十四年九月の伊勢湾台風当時の同地点での雨量は二百七十三ミリ、昭和三十六年六月の梅雨前線豪雨雨量は五百八十八ミリでありました。  このため県内の河川道路中心にして随所ではんらんやがけ崩れ、交通遮断などの災害発生が相次いだのであります。その被害状況は、九月三十日午後三時現在、死者、行方不明七名、家屋の全半壊及び床上浸水等被災世帯七万六千百二十五世帯被災人員は実に二十八万六百四十四人にも達したのであります。これは県全体の人口の一五%に当たる大変な数でありまして、その被害総額は約千四十二億円に達する未曽有被害となったのであります。このうち住家等個人財産被害が約三百二億円と被害全体の三分の一を占めているのが今次災害の大きな特色であります。県においては、九日夜半いち早く災害対策本部を設置し、岐阜市を初めとして四市十二町一村に災害救助法を適用し、県当局地元水防団消防団県警機動隊及び自衛隊が一丸となり、夜を徹して被災住民救出保護救援物資輸送等応急対策に万全を期しておりましたが、九日の未明から警戒水位の二メートルを超えていた長良川では、岐阜忠節地点において最高水位五・五メートルにも達し、警戒水位を超えていた継続時間も七十八時間に及び、伊勢湾台風時の十二時間をはるかにしのぐ流量や水位を記録したのであります。  その中で、関係者の懸命な補強活動にもかかわらず、九月十二日午前十時二十八分、ついに安八安八大森地内の右岸堤防が五十メートルにわたり一瞬のうちに破れ、毎秒二千トンの濁流が同町一帯流れ込むという大惨事を招いたのであります。堤内に流入した水量は約四千数百万トンに達し、安八町と墨俣町のほぼ全域にわたって最大水深四メートル余りという湛水状況を生じたのであります。この破堤現場東海道新幹線橋梁下流約三百メートルのところであり、破堤時には長さ約五十メートルであったのが、最大八十メートルの破堤に達し、森部輪中内約四平方キロメートルの湛水に続き、北川は旧国道二十一号線から犀川右岸堤まで、南側は安八町と輪之内町の境界、東側は長良川堤防、西側は牧輪中堤にまで湛水し、その被害状況床上浸水三千六百四十三戸、床下浸水四百六十六戸にも達したのであります。  その復旧対策としましては、早速現地に対策本部を設置し、破堤個所調査を初めとして早速復旧作業に取りかかりました。応急締め切り工事として、破堤個所盛り土高八・五メートルで締め切り、前面にコンクリートブロックを据えつけました。さらにこの応急締め切り工に並行して、仮本堤として鋼矢板による二重締め切りを行い、九月二十六日に完成したのであります。さらに本堤防についてもすでに入札を終え、今月中にも着工予定であるとのことであります。一方、湛水排水についても既存排水樋門四門よりの自然排水、破堤口よりの自然排水促進既存排水機場ポンプによる強制排水移動式ポンプによる強制排水等総力を挙げることにより、九月十七日にはほぼ湛水状況から脱することができたのであります。  今度の決壊個所復旧については、原形復旧はもとより、激甚災害対策特別緊急事業を適用して補強工事を施し、二度とこの悲劇を繰り返さないことが肝要であります。さらに原因調査についても建設省土木研究所中心にしてその究明が進められているとのことでありますが、その成果がこれからの治水対策に生かされることを切望いたします。  次に、視察しました主な被災地状況と今後の対策について順次報告します。  岐阜県庁での概況説明聴取を終え、長良川の支流である伊自良川の石谷破堤現場に参りました。この伊自良川堤防が軟弱なところが多く、破堤一ヵ所と堤防のり崩れ随所に見られました。これらについては緊急復旧を急ぐとともに、一連の区間については激特事業の採択が強く要望されました。  次に、高富町のしびり川破堤及び斧田洞砂防現場を視察しました。当町では千六十七ミリの集中豪雨により、町道及び河川決壊、山林の崩壊、耕地の埋没流失等甚大な被害をこうむっており、被害総額は十月八日現在約四十八億円とのことでありました。これは被害を受けた各市町村とも共通なことでありますが、ただでさえ逼迫している地方財政の中で今回の災害復旧費は相当な額に上るものと思われます。県、国による手厚い財政援助の措置が望まれるところであります。斧田洞では、十二キロメートルの砂防河川のうち八キロにわたり大量の土砂の堆積が見られました。河底土砂排除はもちろんのこと、秋の取り入れ期を控え、橋の架設を急いでほしいとのことでありました。また、五十一年度から緊急砂防事業として着手の砂防ダム早期完成が望まれるところであります。同町柏野の東川の災害関連現場では、土地改良により従来あった遊水地がなくなり、水が一時に流れ災害を引き起こしたとの説明がありました。土地改良を含めた土地利用計画河川改修適確整合性が強く望まれると痛感いたしました。  岐阜市においては末洞川及び武儀川の護岸決壊現場長良川の世保、芥見の護岸災害現場調査し、生々しい災害現場に触れて今回の洪水のすさまじさがまざまざとうかがわれました。これらの現場については五十一年度中に復旧を完了する予定であるとのことであります。  翌日は、まず穂積町に参りました。当町は長良川揖斐川にはさまれた狭隘の低地であり、本巣郡全域の雨水が天王川、糸貫川、中川、新堤川、犀川に集まり、それが当町に流入し、全域にわたって溢水、湛水するという多大な被害をこうむったのであります。罹災者は町内の七〇%余に当たる一万四千六百六十人にも及び、商工業生産物は言うに及ばず、農畜産物についてもちょうど水稲の出穂期に当たっていましたので冠水による被害は甚大なものがありました。頼みの排水機糸貫天王両川において計画台数七台のうち三台しか完成しておらず、犀川排水機の増設の早期着工犀川水系中小河川河道改修、築堤の増強、排水機管理運転技術者適正配置等の強い要望が出されました。  次いで、安八大森のは堤現場に参りました。決壊した個所長良川流れが緩く右へカーブしている盛り土堤で、流れが最も強く当たる最深部から崩れたとのことであります。地元からは危険個所早期完全補強長良川本堤のコンクリート護岸漏水通称ガマについての調査研究と、それに対する対策確立等が強く要望されました。なお、県道一の宮大垣線に架橋されている羽島、大垣両大橋について、救済の一部として無料期間を延期してもらいたい旨の要望もありました。  杭瀬川牧田川等河川改修状況、根古地ののり崩れ現場状況を視察し、次いで揖斐長良両川を下り、水資源開発公団が建設予定している河口きの建設現場に参りました。途中、海津町、平田町においては六万三千俵もの土俵で、町じゅう全員の協力による水防活動により堤防を死守し破堤を免れたとのことであります。長期にわたる洪水のために堤防はほとんどうみ、さらに水位が高ければ数十ヵ所にわたり破堤したであろうとのことには慄然とさせられ、堤防強化必要性が痛感させられたのであります。  長良川河口ぜき建設事業昭和四十八年に事業実施計画が認可されましたが、同年に事業差しめ請求訴訟が提起され、その後漏水対策工事ブランケット工等実施し、しゅんせつその他の本来工事は中止しております。今回の類を見ない異常な出水による災害にかんがみましても、関係機関の慎重な態度、判断のもとで有効な治水対策推進されることを期待します。  次に、今回の災害現場の視察を終え、感じました所見を幾つか申し上げます。  まず、今次災害の速やかな完全復旧長良川を含む大小河川危険個所の総点検を行い、その危険個所早期補強を図ることが急務であると痛感いたしました。また、今次災害を契機として災害因果関係を究明し、再度災害発生防止、とりわけ人的被害発生防止に最善を尽くし、地域住民が安心して生活できるよう、治水計画の全面的な見直し等を含め抜本的な災害対策を講ずるとともに、必要な施策を強力に推進すべきであります。  次に、長良川治水事業促進を図ることであります。昭和三十四年の伊勢湾台風、三十六年の梅雨前線豪雨の相次ぐ大出水から十数年を経て、この間上流狭窄部引き堤を初め弱小堤補強等実施してきましたが、今回の豪雨により安八大森地先で破堤したほか、全川にわたってのり崩れのり亀裂堤防根固め洗掘、漏水などの被害を生じました。このため災害復旧はもとより、今回規模の洪水を安全に流下させるために早急に緊急計画を策定し、漏水対策及び弱小堤補強伊自良川を初めとした支川全面改修内水対策を強力に実施するとともに、中流部では狭窄部大幅引き堤河道掘削による河積の増大、これらに対応した大きな支川改修下流部での大幅しゅんせつによる所要河積確保等促進する必要があります。これらの事業の円滑な推進が望まれるのでありますが、今年度の予算はおよそ六十億円前後でありまして、来年度からの第五次治水五カ年計画においては事業の円滑な推進のため重点的な配分が期待されるところであります。  以上が調査の概略でありますが、最後に今回の災害により被害を受けられました方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、今回の調査に御協力いただきました県当局及び地元関係者方々に深く感謝いたしまして、報告を終わります。
  6. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 以上で派遣委員報告は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 中村波男

    中村波男君 本日は、政府に対しまして地震予知及び防災対策、並びに先般当委員会から岐阜県下の水害の災害調査に派遣された一員といたしまして、木曽三川の今後の治水対策等について質問を申し上げる予定を立てておるところでありますが、その前に、本日は萩原地震予知連絡会長さんが時間のやりくりをしていただきまして、私の求めに応じていただきましたことをまずもってお礼を申し上げたいと思います。  そういう関係もございまして、最初に萩原参考人にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、申し上げますまでもなく、地震予知連絡会というのは研究者レベルで構成をされております地震連絡会でございまして、その連絡会なるものは権限も責任も明確ではない。しかも予算も全くないに等しいとお聞きをしておるわけであります。で、会長以下パートタイマーというような中で、いろいろと苦労をしながら研究を続けておっていただくことを多といたすものでありますが、その中で東海地方地震観測強化地域に一昨年指定をされまして、この地震予知連絡会がいろいろと今日まで予知等について研究を続けておっていただくのであります。その経過といいますか、研究状況等についてまずもって御報告を承れば幸いだと存じます。
  8. 萩原尊礼

    参考人萩原尊礼君) 東海地方安政元年、一八五四年に非常に大きな被害を受けた地震が起こっております。そういうことと、それからまた、こういう大きい地震は太平洋の沿岸に起こるわけでございますが、かなり規則正しい繰り返し周期を持っている。まあ百年ないし百五十年といったような周期でございますが、そういう過去の経験に基づきまして、東海地方昭和四十四年だと思いますが、連絡会が発足いたしましたときに特定地域の一つといたしたわけでございます。そのときも、御承知のように昭和十九年に東南海地震というのがございまして、これは戦争の真っ最中でございましたので余り御存じない方も多いかと思いますが、名古屋地方に非常に大きな被害をもたらした地震でございます。この東南海地震によって御前崎方面のひずみが解消したからもういいのではないかというような考えもございましたが、東海地方重要性にかんがみて特定地域にいたして、他の地域に比べて重点的に測量繰り返し等を行うことに決めたわけでございます。ところが、その後のいろいろの調査によりまして、どうもやはりこの辺はひずみの蓄積が進行しているということがわかりましたので、昭和四十九年の二月にあの辺を観測強化地域といたしたのでございます。これは特にこの地震発生が迫ったというようなデータがあらわれたわけではありませんが、東海地域重要性にかんがみても加味いたしまして、あの地域強化地域といたしたのでございます。そして今日に及んでおるわけでございます。
  9. 中村波男

    中村波男君 全くこういう問題に対する知識がないに等しい私でありますだけに、質問することも適当を欠くかもわかりませんが、地震国と言われておるわが国が、地震予知体制、ましてや防災対策等が大変立ちおくれておるということは否定できない事実であろうと思うわけであります。したがって、予知体制を早急に確立せよという声は、各界は言うまでもなく多くの国民の中から強く望まれ、その声が最近とみに活発に出てきておることは御承知のとおりでありますし、政府もそれにこたえようといまいろいろと検討中であることも承知をいたしておるのでありますが、体制を整えて、それにはもちろん人的な整備、機構を整えることももちろんでありますが、裏づけとしての予算、そういうものが両々相またなければならぬと存じまするけれども、そういう体制がもろもろの面で整えば精度の高い予知というのはできるものだと、こういうふうに理解をいたしてよろしいかと思うのでありますが、それらの点について御見解を承りたいと思います。
  10. 萩原尊礼

    参考人萩原尊礼君) 地震予知はまず長期的な予報が必要だと思います。これは実用という見地からいたしまして、数年前にこの地域にこのくらいの大きさの地震が起こる可能性が強いといったような予報でございます。まずこういう長期的な予報に成功いたしますと、この地域に今度はいろいろな観測を集中いたしまして、さらに差し迫った予報、数カ月前あるいは数日前、あるいは、できれば数時間前といったような短期的な予報が可能になってくるものと思います。ただ、長期的な予報だけではどうしても実用的とは言えないのでありまして、五年先に起こるかもしれないし、またあす起こるかもしれないというようなことではやはり人心の不安を起こすことになるわけでございますので、どうしても短期的な予報が約束されなければならないわけで、もう少し差し迫ったらさらに詳しい情報を伝えることができるであろうというような前提がないと、長期的な予報もいたずらに社会的な不安を起こすおそれがあるわけでございます。  このように長期的な予報と短期的な予報と両方必要なわけでございますが、現在のところ長期的な予報につきましては大体の見通しがついておりまして、これは日本全国測量を頻繁に行って、地殻に蓄えられつつあるひずみを検知していく。一方また地震観測——これは微小地震と称します非常に小さい地震までも含めた地震観測経過を絶えず監視していく。こういったようなことで長期的な予報は可能であるという見通しと申しますか、めどが立っているということができるわけでございます。ただ、それだけではいま現在十分なそういう測量繰り返し等が行われているかというと、それは残念ながらまだ十分というわけにはまいらないのでございます。  短期的な予報につきましてはいろいろな可能性考えられます。こういう観測をしておけばこういう前兆があらわれるであろうと。これは日本ばかりではありませんし、アメリカ、ソ連、それから中国等においてもいろいろと研究が続けられておりますけれども、どうも万能薬といいますか、これだけをしっかり見詰めていればいいというものはまだ見つかっていないのでございまして、ある場合にはこういうものが、こういうような前兆があらわれた、ある地域ではこういう前兆があらわれたというようなことで、やはりケース・バイ・ケースに違ってくるのだと思います。したがって、長期的な予報が出た場所にいろいろな種類の観測を行って短期的予報の成功に持っていくべきであろう。こういうのが現在私どものとっている方策でございます。
  11. 中村波男

    中村波男君 そこで問題は、予知体制はどうあるべきかということでありますが、申し上げますまでもなく、地震予知研究の結果を行政面実施に移す機構として今日ありますのは、地震予知研究推進連絡会議があるわけでありますが、これも各省庁の縦割り行政組織を反映いたしまして、研究計画などの立案実施総合性を欠いておることは否定できない現実だと思うのであります。たとえ重大な地震前兆現象をつかんでいただいても、効果的な予防対策をとるということは、今日の体制ではできないのではないかという批判が強く出ていることも否定できない今日の状況であります。したがいまして、地震予知体制を早急に確立する最も重要な政策課題が今日あるわけでありまして、そこで政府にこの対策をお尋ねするわけでありますが、その前に、専門家としての萩原地震予知連絡会長さんに、常時集中監視体制確立のためには、参考人は、気象台に見合うような国土庁地震台といったような専門組織をつくったらいいのじゃないかということを強調なすったというようなことも新聞で伺っておるわけであります。また、東大の石橋助手地震学会で、東海地区地震予知防災センターの設置を提唱されたとも聞くわけであります。したがって、体制と申しますか、組織としてそういうものが必要だとお考えになっておると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  12. 萩原尊礼

    参考人萩原尊礼君) この地震予知というものは、いま研究段階から実用段階に一歩足を踏み入れたか、あるいは入れようとしているか、そういう非常に微妙な状態でございます。で、私ども最後の究極としては、地震台とかあるいは地震庁、つまり全くいま別個の機関が行っておりますことの一元化、こういうものの考えを持っておるわけでございますが、これは一つのビジョンでございまして、いま直ちに一元化した場合に果たして現在よりも効果的であるかということにおいては疑問でございまして、いま申し上げましたように研究実用の境にありますもので、いますぐ一元化ということではなく、その間に一段階か二段階というものを置くべきであるかもしれません。それは私ども研究者にははっきりしたことを申し上げる力もございませんで、行政に携わる皆様にいろいろと御検討を願って、積極的な前向きな姿勢でいいものをつくっていただきたいと、そう考えておる次第でございます。
  13. 中村波男

    中村波男君 いまのお話を聞きますと、基本的には一元化の方向というものが望ましいけれども、いま直ちにそういういわゆる予知機関というのを統合することについては問題があるのじゃないかという御発言でございますが、ある時期を置いてというそのお考えの中に、具体的には時期を置かなければならぬということの内容についてお聞かせいただけるならば幸いだと思います。
  14. 萩原尊礼

    参考人萩原尊礼君) それはつまり地震予知というものが、こういうことをすればもういいんだ、これで予知が、長期予報も短期予報もできるのだと決まってしまえば、これは官庁の業務として行えるのでありまして、つまり気象、気象庁の天気予報のために予報官というのがおりまして、その人がどんどんやる、そういうような非常にかなりはっきりしたことがわかるようになった段階では、これはもう業務として一元化して行えるわけでございますが、まだ研究すべきことが非常に多いということでございまして、いまたとえばそういう地震予報官というものができましても、なかなか現在の気象予報官のように事は簡単に判断もできません。そういうことを申し上げておるわけであります。
  15. 中村波男

    中村波男君 萩原参考人には次のお仕事といいますか、時間が切迫しておるようでありますので、また別な機会にいろいろとお教えを受ける機会もあろうかと思いますが、本日はお忙しいところありがとうございました。  それでは、政府にお尋ねをいたしたいと思うんでありますが、地震予知体制組織と申しますか、そういうものをどのように考えておられるかという質問の前に、昭和五十年の十月に土地法学会は国及び地方公共団体に対しまして、「本格的な震災対策実行のための立法措置を急げ」「住民の安全権確立のために震災対策をすべてに優先する公益事業として位置づけよ」等のアピールを行っておることは御承知のところであります。震災対策に関する国、自治体の責任、責務を明確にいたしまして、その具体策について住民の協力を得るためにも震災基本法のような立法措置を講じて、そのもとに諸施策を一元的、効率的に整備する体制づくりが必要と私は考えるのでありますが、これに対して国土庁は関心を持ってこういう問題に前向きで検討をしておられるのかどうか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  16. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) なわ張り的に言うと、私の方は予知以後の措置をする事務を扱っているようでございます。そういう点で、予知の問題で最近非常に問題がクローズアップされてまいりまして、けさも閣議の席上で科学技術庁長官から、予知に対する措置を講ずるために中央防災会議の中に特別委員会を一つつくって、これを常時活動できるようにしてほしいという、どうだろうという話があったんでございますが、これについては、常置するということについてはいまの段階でちょっとまだ問題ではないかと。ただ、形だけの問題でなしに、予知よりもその地震そのものが起きた以後の措置というものの方がこれはもう何といっても一番大切なことでございまして、これは予知できたからこれを事前に解消するとか抑えてしまうことができるなんていうものではなくて、あくまでも問題はその地震が起きた以後の措置の問題でございますから、それを私の役所で扱っているとすれば、いまの段階ではとても人数的にいっても、そう言っては失礼ですが、いまの状態ではどうにもなりません。  それで、ちょうど予算編成要求の時期でもございます関係から、私の方の国土庁といたしましては災害対策部という部をつくりまして、地震対策課という課を一つつくって、この措置を講じたいという考え方で、予知は科学技術庁の方で全力を尽くしてやるとけさも言っておりましたから、その対策については私の方で始末をしょう。それについてはきょう科学技術庁の長官のところに各関係の官房長等皆招集されまして、一応事後対策についての話し合いをきょう行っておるところでございまして、私たちといたしましても、この予知以後の対策につきましては十二分に国民の期待に沿えるような措置を講ずる体制をまず整えたいと考えております。
  17. 中村波男

    中村波男君 その具体的な予知体制、あるいは予知体制が確立されてそれを受けて防災体制防災と言いましてもこれは私は限界がまずないのではないかとさえ思うわけであります。地震の起きたときの人間の心理状況とか、あるいはいろいろな想定される問題があるわけでありますから、これは大変な作業量であり、またあらゆる知能を集めた対策を行わないと、よきものは生まれてこないのではないかと思うわけでありますが、その前に、いまお尋ねしたのは、いわゆる基本法とも言うべき震災に関する法律を、基本法をつくりまして、それからいろいろ具体的な対策というのを何と申しまするか肉づけをしていくと、こういうことが必要でないかという、御承知のように土地法学会等からアピールが行われているわけでありますから、これについては全く政府はわれ関せず、そういう考えは全くないということなのか、検討に値するということなのか、まだ検討はしておらぬが耳を傾けて一遍検討してみたいということなのか、その点を明らかにされたいと思います。
  18. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) それは検討中だそうです。というのは、そうですって、私もどうも申しわけございませんですが、私が命じたわけではございませんから。災害対策基本法との関連性をにらみながら、その措置を講ずる法律が必要だというので現在検討中だそうでございますから、これはこの機会に前向きでひとつ進めてまいりたいと考えております。
  19. 中村波男

    中村波男君 震災基本法をいま検討中だということででありますので、できるだけ早い時期に結論を出し、これが立法をされることを強く要求をし、またその結果に期待をいたすものであります。  そこで、去る四日の本院の予算委員会におきまして、参考人として出席をされました浅田敏東大教授は研究者の立場から、東海地震はあす起こっても不思議ではないと、こういうようなショッキングな見解を明らかにされまして、また、去る七日から三日間開かれました福岡市での地震学会におきましても深刻な論議を呼んだとお聞きいたしておるのであります。  そこで、地震研究者たちの指摘を待つまでもなく、行政の側に地震対策と総合的に取り組む体制が整っていないだけに  去る四日の参議院予算委員会における三木総理の、予知研究を行政にのせる仕組みを考えたいと述べられた。それを受けて荒舩行政管理庁長官並びに前田科学技術庁長官が検討を約束されたことに対しまして国民の多くが期待を寄せ、政府の今後の取り組みを見守っておると思うんであります。今度は珍しく——そういう言い方は失礼でありますが、これに対する対応の動きはいろいろあるようであります。十月八日付の新聞によりますと、前田科学技術庁長官は、来週にも総合計画をいわゆる決定したいという意味の発言があるわけであります。したがって、来週というのはこの今日でありますが、その後これを受けて科学技術庁あるいは国土庁等々でどのような検討、またどういう方向で結論を出そうとされておるのか、具体的に御報告をいただきたいと思います。
  20. 佐伯宗治

    説明員(佐伯宗治君) 地震予知につきましては、先ほど先生御指摘の総理府に設置されました地震予知研究推進連絡会議におきまして、関係各省庁密接な連携と協力によりまして予知研究推進を図ってまいりました。幾つかの実績も上げてまいりましたが、前田長官の御指示もあり、これをさらに強力に推進するための具体策につきまして、現在関係省庁で協議を重ねながら早急にまとめるように検討を進めておる段階でございます。
  21. 中村波男

    中村波男君 検討しておられることは承知しておるのであって、その程度の御答弁ならば何もお尋ねしなくとも承知しておるわけでありますが、もう少し具体的に、新聞等によれば一定の方向というのを長官は打ち出しておられるのでありますから、長官に御出席を要請したのでありますが、御都合が悪いということで、その長官の意を体してそういう点まで御答弁いただけるということで参事官に御出席をいただいておると思いますので、もう少し内容のある御答弁はできないものでしょうか。
  22. 佐伯宗治

    説明員(佐伯宗治君) ただいまの研究推進連絡会議のメンバーと言いますのは、科学技術庁事務次官の主宰のもとで各省局長クラスの方々にお集まりいただいて実施しておるものでございますけれども、現在検討しておりますのは、科学技術庁長官を本部長とする、各関係省庁事務次官をメンバーとする推進本部構想で進めております。それで、各省庁の協議が一致いたしますならば、今週の閣議ででも決定していただきたいということで進めてまいっております。
  23. 中村波男

    中村波男君 そこで、今度国土庁の長官にお尋ねをしたいんでありますが、私、先般の水害のときにつくづくと感じたわけでありますが、国土庁のいわゆる災害対策室というのは人員から言いましても全く弱い組織であり、十七号台風に伴う大災害が起きますと、すべてがそちらに、対策に振り向けなければならない。したがって、本来の仕事であったと思うんでありますが、震災対策などというのはお預けだと、これではいけない。したがって、震災だけは専門に当たれる相当数の人員というのを機構的にも組織的にも確立する必要がある。こういうことを痛切に感じまして、機会があれば提起いたしたいと考えていたのでありますが、私の提起する前に五十二年度の組織改正要求としていわゆる今度は災害対策部というのを新設する。その対策部には防災企画課と震災対策課を新設すると、こういうことが要求になっておるようでありますが、その内容をお聞きしますと、ご承知のように防災企画課は定員十二人、しかし新規の増はわずか二人である。それから震災対策課は定員十一人、新規増は六人である、合計八人が要求されておるわけであります。これは事実問題として総定員法に縛られて、いまいわゆる定員削減が行われておる中でありますから、要求してもとても認められないであろうというこういう現実的な面から、こういう要求になったのではないかと思いますが、これでは部に昇格をしましても体をあらわさないのではないか。名前だけ部になって課が二つになりまするけれども、いまの機構に毛が生えた程度で、本来のいわゆる機能を発揮するには余りにも貧弱な人員構成ではないか、こう思うのでありますが、この間のいきさつをひとつ具体的に御説明賜りたいと思います。
  24. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) それは中村先生のおっしゃるとおりであろうと思います。これは実は私の企画ではございませんで、前長官の引き継ぎを受けたものでございます。これだけを実現するのにも恐らく並み尋常の手段では困難ではないかという予測すらしているわけでございますが、先ほど来お話のあったように、いざ鎌倉というときに何の役にも立たない機構であってはどうにもなりませんので、一応は形だけというお説にもなるかもしれませんが、これだけのものを一応は獲得することが先ではないか。そうして客観的な情勢、いま予知関係その他対策関係等を中心に一挙に充実するということは非常に困難でしょうから、一応これだけの形をつくり上げれば何とか二、三年の間には一人前のものには持っていけるのではないかという感じがいたしますし、私のところでは一応強力に予算の折衝になれば折衝をいたしまして、これ以上のものを要求するつもりでございます。それまでの段階には、いま先ほど来お話のあったように、地震をどうしても予知しなければいけないということになる。その対策はとても膨大なものでございますから、それをいま各省庁と連絡をとりまして、どうしてもこれではだめだということで増員をするように、いまここで予算の書きかえは困難でありますから、その段階でどのようにできますか、総理の予算委員会の答弁等もございますのですから、それを基本にして鋭意努力をいたしたいと、こう申し上げる以外何ともいまのところはございませんので御了承願いたいと思います。
  25. 中村波男

    中村波男君 行管から御出席いただいておりますか。これは行管にも強く要請を申し上げておきたいと思うのであります。いまいろいろ議論をいたしました内容は御承知いただいたと思うのでありますが、大変な不安と、また一たん震災に見舞われますならば大変なことになることは明らかであります。  きょうの朝日新聞の「天声人語」にもこの問題が取り上げられておるのでありますが、東大の浅田教授が静岡で講演された中に、「地震の長期予知はむずかしいが、直前の前兆なら観測網を整備すれば十分とらえられる、それもカネをかければかけるほどいい、という。だが、わが国の地震予知に関する行政はお寒い限りで、責任体制の一本化すら満足にできていない」。こういうことを書きまして、さらに東大の石橋助手の話として、百億円もあれば一応の観測体制は整備できるという。したがって、ロッキード事件で騒がれておる次期対潜しょう戒機PXL一機ほどの額にすぎないではないか、こういうことを書きまして、したがって、敵潜水艦と大地震とどっちがやってくる確率が高いのだろうか、潜水艦がどんなに攻撃をしかけても大地震のもたらす被害には及ばぬであろうと、こう書いているわけです。私が言いたいのは、ただ国土庁が今回五十二年度に要求しております災害対策部の人員増を満たすばかりでなく、やはり総合的な体制をつくるためには、つくるということになれば、それに伴う人員を配置されなければ機能はしないわけであります。また、それを裏づける予算も当然配当されなければならないわけであります。これは大蔵省はきょう出席いただいておりませんけれども、行管としては、そういう面における人的配置というのは最大なひとつ関心と重点主義を貫いてもらいたい。こういう立場で、これも行管の長官に御出席をいただきたかったんでありますが、御都合悪いということでありますから、ひとつ私の申し上げたことを長官にもぜひ伝えていただきたいし、今日の行管の立場を御説明いただきたいと存じます。
  26. 山本貞雄

    説明員(山本貞雄君) お答えいたします。  地震予知防災対策重要性については十分認識しておりまして、また常日ごろから関心を抱いているところでございます。地震予知防災対策に関連した組織、定員につきましては、各省庁の要求に基づきまして現在鋭意作業を進めているところでございまして、具体的な意見を申し上上げる段階には至っておりませんが、先生の御趣旨は十分検討してまいりたいと思っております。
  27. 中村波男

    中村波男君 今度の災害対策部の人員は長官のこれは腕の見せどころだと思いますから、ひとつ閣僚会議その他で強調されまして、完全な人的配置と予算の裏づけをされますように強く要望を申し上げたいと思います。  この機会に、国土地理院の調査部長さんに御出席をいただいておると思うのでありますが、お尋ねをいたしておきたいと思いますのは、十三日から岩手県の水沢市で開かれました日本測地学会のシンポジュウムで佐藤裕地殻調査調査課長さんが、さきに福岡市で開かれた地震学会で東大理学部の石橋克彦助手が発表して関心を呼びました駿河湾地震説の根拠の一つとなる測定結果を発表されたようであります。これについて新聞には短い記事でありますから、もう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
  28. 原田健久

    説明員(原田健久君) ここに現実に発表いたしました佐藤調査課長が参っておりますので、佐藤調査課長から答弁させたいと思います。
  29. 佐藤裕

    説明員(佐藤裕君) お答えいたします。  国土地理院では、明治二十八年ごろから駿河湾のみならず全国一帯について測量しているわけでございますが、駿河湾一帯については五回ないし六回の測量がございます。その結果を解析しますと、興津から御前崎にかけての駿河湾西岸は、大体最近八十年間に四十センチぐらい沈降しているということが判明いたしました。それから一等三角測量というのがございまして、それが明治と戦後に改測されているわけでございますが、その測量結果を解析しますと、伊豆半島と駿河湾の距離約四十キロないし五十キロの距離でございますが、その間の距離が六十センチから七十センチぐらいの縮みを示しているということに結果が得られております。この変動はかなり日本の他の地域と比較しまして大きいということは言えると思います。ただ、この変動は最近になって生じたものではなくて、明治時代から測量の結果を見る限りにおいてはほぼ一様に進行しているというものと判断されます。  以上が、私が水沢の測地学会で講演した内容でございます。
  30. 中村波男

    中村波男君 そういう問題について知識の乏しい私にはわからない点がたくさんあるわけでありますが、御前崎での非常なひずみに対して、地震学会で気象庁から報告が行われたことに対しまして、先刻参考人として御出席をいただきました萩原地震予知連絡会関係では、計器を新設すると当初はぼけたデータを示すものと慎重な態度で、たとえ機械は狂っていないにしても埋め込んだ場所の問題があるとも考えられるので、御前崎周辺に別の地震計を埋めてデータを比較すべきだ、こういうようなことも言っているわけでございます。したがって、あたら不安をまき散らす結果になってはいけないと思いますから、疑問があれば徹底的にやはり調査を繰り返す、また、ありとあらゆる研究者、学者を集めて検討する、そういうまとめの仕事をしていただくといいますか、そういうことをどこかでやらなければ、それぞれが見解を述べ合っておっては、これまたどちらを信用したらいいのかということになって国民は迷うのでありますから、そういう問題について政府機関における見解の相違等もあるわけでありますので、こういう点をひとつ調整するといいますか、さらに掘り下げる必要を痛感いたすものであります。これについて国土庁長官からお考えを明らかにしていただけたらと思います。
  31. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) これはいろいろ問題があるようでございまして、各方面とも相当の権威のある方たちばかりのようでございますから、それを、科学技術庁長官前田君のけさの話では、そういう関係者の意見を、起きた場合には取りまとめをするというような処置を講ずることが必要ではないかという意見を、けさ私お聞きしております。そういう点でそのことには私も賛成だから、それはどこにつくるか。これはいま言った中央防災会議の中につくるべきものか、それとも国土庁の私の方の役所の中にそうした連絡協議会的なものをつくった方がいいのか、科学技術庁につくった方が予知ですからいいのかという問題については、よく話し合いをして、そのグループ——グループと申し上げるとはなはだ恐縮ですが、たとえば学者なら学者関係、地理院なら地理院関係で出したものを独自に出すことによっていろいろな問題が起きてくるということが予知されますので、そういう点ではそれを全部でコントロールできるような場所をつくりたいと考えております。これは前向きで検討いたしたいと思います。
  32. 中村波男

    中村波男君 最後に、地震問題に対する最後でありますが、建設省にお伺いしておきたいと思いますのは、大都市震災対策推進要綱に基づきまして、建設省においても所管施設の耐震点検を行われてきたと思うんでありますが、現在までに完了しております施設の範囲、点検の方法、点検の結果等について、この機会に説明を求めておきたいと思います。
  33. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 建設省におきましては、昭和四十六年に都市施設、河川道路、公営住宅、それから官庁建物につきまして耐震性に関する点検を実施したわけでございます。その方法でございますけれども、これは対象施設によりましてもいろいろ異なっております。それで、最大的な公約数で言いますと、そういう施設の亀裂、それから傾斜、あるいは老朽度、そういうものの調査を現地におきまして実施したわけでございます。そのほか官庁の建物などにおきましては、図面による検査をあわせ実施しました。その点検しました総数は約三万八千ヵ所でございまして、そのうち対策を要すると認定された施設は約四千八百ヵ所でございます。  大体以上でございます。
  34. 中村波男

    中村波男君 まだいろいろお尋ねしたい問題があるわけでありますが、時間が参りましたのでまた別の機会にお尋ねをいたすことにいたしまして、長良川決壊に伴いまする問題について若干お尋ねをいたしておきたいと存じます。  御承知のように、決壊場所の岐阜安八安八町、その上流被害を大きく受けました墨俣町では、今度の決壊に伴う災害というのはこれは人災である。したがって、国に被害補償を要求するというこういう動きが活発にいま出てきておるのであります。したがいまして、この二つの町におきまして、なぜ人災だときめつけておるかと言いますと、大きく分けますと四つぐらいにその理由を挙げておるようであります。堤防の草刈りなど日常管理に手落ちがあった。それから四十五年度から五カ年計画長良川堤防補強工事がおくれていた。それから決壊現場には建設省の職員がいたにもかかわらず適切な指示がなかった。それから以前から指摘をいたしてまいったが、ガマの問題が放置したままであったと。こういう欠陥から決壊という大災害か起きたんだと、こういうふうに言っておるのでありますが、これについて建設省の態度といいますか、お考えといいますか、今後どう対応されるかについてこの機会にお聞きをしておきたいと存じます。
  35. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 今回の水害というものは非常に異常な豪雨によって破堤したというふうに私たちは考えてございます。その点本当に地元の方にはお気の毒でございますけれども、天災によるものというふうに考えてございます。  先ほど先生おっしゃいましたいろいろな問題点でございますけれども、草刈りの問題につきましては、現在も二回刈りあるいは一回刈りというふうに定期的にやってございまして、今後ともそういうふうに日常の管理に遺憾のないように期してまいりたいというふうに考えてございます。その他堤防工事の問題あるいは水防の問題等いろいろとございますけれども、いわゆる水防の問題にしましても、やはり地元の水防管理者と一体となって堤防を守っていくということでございます。ガマの問題にしましても、今後ともそういうことをさらに調査し検討してまいりたいというふうに考えてございます。
  36. 中村波男

    中村波男君 草刈りの問題ですが、これはなかなか予算が不足をしておるのかと思いますが、実際には年に一回刈り、二回刈りとおっしゃいますけれども、そのようには実行されておらない。したがって、決壊場所等は実に草が長く伸びほうだいに伸びましていわゆる亀裂が起きた、あるいは水が漏れかけたというのに発見が困難であった。この実態というのは、これは現実の問題でありますから無視されては困りますし、否定をされてはいけないと思うのであります。したがって、私も二、三日後に現地に行ったわけでありますが、事実大変な草が生い茂っておったわけであります。  それからもう一つこの機会にお尋ねしておきたいと思いますのは、堤外地におけるいわゆる雑木が生い茂っておるという実態であります。これは地域の住民の皆さんが、どこへ参りましても、こういう状態に放置してあるから、それがいわゆる水を阻んで決壊の一つの原因になるのだと、だからもっともっと堤外にあります雑木等は切り払うべきだ、こういう点に管理の手抜きがある。私も各地を回ってその感を強くするのでありますが、もちろん堤外地の民有地については、その規制等について一定の制約があることはよくわかります。以前でありますならば、養蚕のために桑を植えていたのでありますから、毎年一回ずつ桑を切りますので、そんなに五メートルも八メートルもという桑の木にはならないわけでありますが、今日ではもう桑を採取しませんから、放置してありますから、いわゆる桑の木と言っていいような状態が何ヘクタールと続いておる実態があるわけであります。こういうこと。また、柳等が生い茂っておると、こういう点について全く手をつけない。これはまあこれを切ったらどれだけ流水をよくするかということは議論のあるところであろうと思いますが、しかし、切れば切っただけは水が速く流れて流下しやすくなるということは否定できぬと思うのであります。そういう点について建設省のお考えはどうなっておるのか、お尋ねします。
  37. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) まず、堤外地に生えております柳あるいは桑の木ということでございますけれども、まず官地におきますそういう雑木でございますが、流心部に近いものにつきましてはすでに除去したりしておりますが、なお今後とも治水上支障のあるものにつきましては伐採を促進していきたいというふうに考えてございます。それから先生おっしゃいました民有地にあるものでございますけれども、これは所有者の了解を得ること、さらに伐採にはやはり補償を含めまして多くの費用が要るということで、いままでもいろいろ検討してきたところでございますけれども、今後影響の程度が非常に大きいところから、積極的に地主さんともいろいろ協議しながら、その伐採について努力していきたいというふうに考えます。
  38. 中村波男

    中村波男君 私、ちょっと勉強してみたんですが、河川法の八条で、そういう河川内の何といいますか障害になるようなものについて除去する道はあると思いますが、しかし、実際問題これは運用されておらない。したがって、川には県の管理の川もあるわけでありますから、河川法の改正を行うなり、あるいは私が考えますのに、県の条例等において、たとえば桑なら桑というのは、そんな八メートルも五メートルも大きくすることはあり得ないわけでありますから、いわゆる作物として使うという場合はそういうことはでき得ないわけでありますから、したがって、そういうものについてはみずからが切らなければならぬというような、そういうことを義務づけるようなことも一つの方法ではないかというふうにもまあ考えるのでありまして、時間もありませんから、検討をいただきたいと思います。  それから無数にあるガマですね、これはまあ大変な不安動揺を与えておりますし、危険限りないことだと思うわけであります。したがって、これを当然今度の災害復旧の中に入れまして、完全にこれをひとつ科学的な究明を行いますと同時に、ガマの被害を食いとめるようないわゆる措置をぜひ考えなければいけないのじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
  39. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) なかなかガマにつきましては、昔から、故老の話によりましても、方々でふえておったという事実がございまして、改修に伴いまして水位の低下に伴ってガマが減ってきたという事実はございます。しかしながら、ガマの問題につきましては学問的にも非常にむずかしい問題でございますけれども、大きなガマが発生する地区からまずいろいろ重点的に手当てしてまいりたい、いろいろ勉強して手当てしてまいりたいというふうに考えます。
  40. 坂野重信

    坂野重信君 本日は、治水対策にしぼりまして、建設省国土庁にお願いいたしたいと思うんです。  災害以来、両大臣初め建設省の皆さん、それから出先の皆さん、県庁の皆さん、非常に日夜苦労されて、先般も岐阜県に災害視察に行きましたときも、土木部の皆さん等本当に日夜苦労されているという姿をよく拝見したわけであります。  まず河川局長に、今度の災害の経験にかんがみて点検をやるということですが、点検の要領、いつごろまでにこれを終わるのか、まずそれをお聞きしたい。
  41. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 今回の洪水にかんがみまして、直轄河川堤防の総点検を行いたいということでございます。その点検の実施要領、どういうふうに点検をやっていくかということにつきましては、現在その内容を検討中でございます。しかし、これは土木研究所などともいろいろ話し合っておりますが、早急にまとめていきたいというふうに考えます。点検の時限といいますか時点、いつまでに点検を完了するかという問題でございますが、明年の出水期までに一応の取りまとめを行いたい。それからさらに調査検討を要する事項、たとえば堤防の設計基準に関する問題とか、そういう基本的な問題につきましては、一、二年のうちにできるだけ早く取りまとめを行いたいというふうに考えてございます。
  42. 坂野重信

    坂野重信君 できるだけ早くひとつがんばっていただいて、そこで点検の結果は一体公表するのかしないのか。それをお伺いしたいのと、点検の結果をどういうぐあいにこう反映していくのか、その辺の考え方を御説明願いたいと思います。
  43. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 点検の結果につきましては、毎年県が水防計画書をつくってございます。その中に反映させていきたいというふうに考えてございます。  それから、どのようにその点検結果を生かすかという問題でございますが、早急に対策を必要とする個所につきましては来年度からでも着手いたしたいと。その他対策を必要とする個所につきましては、第五次五カ年計画で必要に応じて実施してまいりたいというふうに考えてございます。
  44. 坂野重信

    坂野重信君 公表はどういうぐあいな方法でやるのですか。
  45. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 公に公表するということじゃなくて、水防計画書ですね、各県で水防計画書をつくると義務づけられておりますので、水防計画書の中にそれを反映さして明らかにしていくと、そういうふうにしていきたいというふうに考えてございます。
  46. 坂野重信

    坂野重信君 次に、堤防の設計基準の問題なんですが、今度の出水で、いままでに経験しないような非常に長い洪水が続いた。しかも雨が長期的にわたって降り続いたということで、いままでの堤防のつくり方ではどうも不安じゃないかという声が非常に大きくなっているけれども、その辺についてこの際やっぱり見直しを行うべきじゃないか。  先般現地を見たときに、牧田川の養老の根古地地先ですか、改良復旧で、裏護岸に、道路兼用だと思いますが舗装をして、その水抜きをうまく堤防流れないようにやっているというようなこと。今後、いままでは堤防というのは、どうも余り舗装しては悪いというような観念があって、神様ということで、堤防の上は道路まかりならぬという思想が長い間続いたわけですけれども、その辺の問題等についても、今度の経験にかんがみてやはり考え直す時期に来たんじゃないかと思いますけれども、その辺をどういうぐあいに考えておるのか。
  47. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 今回の長良川災害でございますけれども、いわゆる長時間の連続降雨と、長時間の高い水位が続いたという異常な外的条件が重なったわけでございます。それで、全川にわたりまして堤防が、いま先生おっしゃいましたように、のり崩れ等その他いろいろ危険な状態になったということでございます。したがいまして、そういう場合にもどういうふうな堤防の構造にすれば安全であるかという問題、あるいは堤防を大きくしない場合にはどういう対策があるかとか、そういう面につきまして現在土木研究所中心建設省の総力を挙げて実施中でございます。  それから先ほど、堤防道路との関連でございますけれども、やはり裏護岸を道路に使うとか、いわゆる堤防の効用とあわせまして道路の利用ということも考えてまいりたいというふうに考えます。
  48. 坂野重信

    坂野重信君 現地を私ども各党の皆さんと一緒に見たわけですけれども、いろんなことを地元の皆さんはおっしゃっております。ガマを放置しておったじゃないかとか、堤防のどうも管理が悪いじゃないかと、いろいろございますけれども、総合的な観点から言うと治水施設のやっぱり立ちおくれだということは指摘せざるを得ないと思います。そこら辺が私は一番の根本じゃないかと思っております。歴代の建設大臣初め事務当局、非常に苦労して予算の獲得をしているにもかかわらず、やはり治水予算というものが伸び悩んでいるというために治水施設が不十分だと。水防の話を聞いてみましても、自衛隊を初め県の皆様が不眠不休になって水防作業をやっておる。しかし、とうとう幾つかのピークを過ぎた後に堤防が持ち切れないで決壊したと、非常に残念でございますけれども。特に中小河川や砂防に至りますと、もうずたずたにやられている。直轄でさえも決壊したというようなことでございますから、やはり根本的にはひとつ治山治水事業というものを推進する以外にはないということを痛感したわけでございます。  いろいろ批判はあろうかと思いますし、長良川決壊の問題についても、責任論があるいは出てくるかと思いますけれども、何といっても治水治山事業というものを抜本的にひとつ推進するしかないと思うわけでございますが、その辺についての建設大臣の所見をお願いいたしたいと思います。
  49. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) ただいまの坂野委員の御質問、御要望は、私も実はしばしば委員会等において言明をいたしておるわけでありますが、あなたも御承知のとおり、従来治水計画についてはなかなか予算が取れないという悩みをあなた自身が痛感されたと思うんですよ。そこで、三木総理も、思い切ってひとつ治水計画を練り直して抜本的な対策を講じてほしい、こういう強い指示が私にもありまして、いま当局と鋭意詰めておる段階でございまして、なかなか容易ではないと思いますけれども、決死の覚悟でひとつ大蔵省と当たりたい、こういう気持ちですから、ぜひひとつ御協力を願いたいと思っております。
  50. 坂野重信

    坂野重信君 きょうはちょっと大蔵省の都合が悪いようで、大蔵省にはまた改めてこういう問題いろいろ追及したいと思うんですが……。  そこで、前々からこれは言われておりますし、非常にむずかしい問題だと思いますけれども、財源問題。受益者負担、ダム等はそういうことが行われておるわけですけれども、もう一遍この辺で治水事業についても受益者負担原則といいますか、そういうものによって財源、特定財源というものをやはりもう確保するようなことをこの際検討すべきじゃないか。新聞紙上等でも河川局で水利用税というような構想もあるようですし、また先般の予算委員会でも佐藤隆委員から治水公債、防災公債というような話も出てまいりましたし、河川の使用料の問題等についてもこの際やはり特定できるものについては、河川をやっぱり使用する、下水道は下水管を使うように、河川についても何かそういうようなものを特定し得るものについては、この際ひとつ考えてみる必要があるんじゃないか。いろんな障害はあろうかと思いますけれども、ひとつその辺をこの際検討すべき時期に来たんじゃないかと思うわけでございますが、建設大臣と河川局長のひとつ見解をお願いいたしたいと思います。
  51. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 治水事業というのは、その性格上受益者負担というのがなかなかなじみがたい性格を持ってございます。しかしながら、今回の災害とかにかんがみますと、やはりどうしても治水事業の飛躍的な発展が必要でございます。そのためにはどうしても新しい何らかの財源が必要になってまいります。それで、現在建設省におきましてはいろいろプロジェクトチームをつくりましてその財源問題につきまして検討中でございます。ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
  52. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 大臣、何かありますか。
  53. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) この間の予算委員会で天野長官からも、治水事業については特に特別の公債を発行したらどうだという御意見が出まして、いま二人で相談をいたしておる最中でございまして、極力財政当局ともこの点で折衝してみたい、こう考えております。
  54. 坂野重信

    坂野重信君 官房長になるのか総務審議官になるのか担当はよくわかりませんが、建設省治水に限らず公共事業全般についてひとつこの際財源問題を見直していく必要があるんじゃないか。たとえば道路につきましても、いま天野大臣初め非常に苦労されまして道路財源をつくって、つくったはいいけれども道路に使うべきものをほかの一般の公共事業以外のものまで持っていくという、まことにこれは不可解な話でございまして、各事業ごとにできるだけそういう特定財源というものを考えて、それでそれに該当する事業に原則として振り向ける、それで多少余裕でもあるという場合には、少なくとも公共事業の中にこれを流用するとか持っていくというようなことを考えるべきだと思うわけでございます。下水道等その他についても、もう少し特定財源というものをこの際大蔵省と一緒になってひとつ御検討願って、できるだけそういうことによって一般財源を浮かす、浮いた一般財源を、治水なんていうのはなかなかむずかしいと思います、そういうむずかしいような事業に持っていく。たとえば道路の問題にしても、道路関係の深い公共事業なら話がわかるわけですけれども関係のないところへ持っていくなんてとんでもない、これは国民から不信を買うような問題でございますから、そういうことを含めてひとつこの際やっぱり洗い直して検討し直す必要があるんじゃないかと思いますけれども、その辺のひとつお考え方を聞きたいと思います。
  55. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 先生御指摘のように、今後安定成長に向かうにつれまして財源の制約ということが問題になってまいります。その中で立ちおくれた社会資本施設の整備を進めるためには、一般財源のほかあらゆる手段を講じて特定財源について検討することは当然であろうと考えております。道路整備につきましては、おかげさまで道路特定財源によりましていままで進捗を図ってきたわけでございますが、五十一年度予算につきましては、その一部を他の用途に振り向けたことは財政一般の問題とのかね合いでなされたことでございまして、そういう点ではきわめて遺憾に思っております。今後は一般財源につきまして、一般会計の予算につきまして予算編成を通じまして強力に大蔵省と折衝をいたしますほか、特定財源についても検討を進めたいと考えておる次第でございます。  先ほど来御議論になっております受益者負担金につきましては、現在下水道で総事業費の約一・二%を受益者負担金で徴収をしております。また、有料道路につきまして料金を徴収をしておる、これもある種の受益者負担金でございますが、その受益者負担金、公債その他の問題を含めまして今後財源確保に努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  56. 坂野重信

    坂野重信君 これは非常に重要な問題でございますし、非常に困難な問題と思いますけれども建設省の大方針として建設大臣もぜひがんばっていただきたいと思います。  そこで、治水の五ヵ年計画の問題でございます。総理も本会議で答弁されて、治水の五カ年計画はぜひ策定したいとおっしゃっていますが、八兆円という要求が出されておりますし、果たしてこれで十分であるかどうかと、これでもって一体治水に責任が持てるというぐあいに思っておられるかどうか、この辺をひとつまずお伺いしたいと思います。
  57. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 一応八兆円ということで内部の意見を調整いたしておりますが、まだ最終的に決まったわけじゃございません。まだ現在個々別の問題もありますから内容を詰めておる段階でございます。
  58. 坂野重信

    坂野重信君 八兆円で十分かどうか問題あろうかと思いますけれども、ぜひひとつ建設大臣がんばっていただきたい。  もう一つの問題は、予備費でもってよくかっこうつけられるわけですよ、道路にしてもその他の予算にしても予備費でもって。あとこの問題は大蔵省に機会改めて追及したいと思っていますけれども、予備費を多くして上げ底のような計画をつくったんでは全く意味がないわけでございまして、その辺が簡単に納得されないようにひとつぜひ責任者としてがんばっていただきたいと思うわけでございます。早くこの治水が八兆円でいいかどうか中身等についても検討されなければならぬと思いますけれども、ぜひひとつこれはがんばっていただきたいと思います。  それから次は、時間の関係もありますので余り長く質問できませんが、流域開発と治水とのバランスの問題、これは先般災害視察団が参りましたときに大分この話が出てまいりました。現地の皆さんからも出ましたのは、土地改良が先行しておって全部河川にしわ寄せがきている、そのために今度の災害が起きたのだということを住民の皆さんからも強い指摘があったわけでございます。従来はそういった農業の問題だけじゃなくて、都市周辺の土地開発、宅地開発等によってとかく治水施設に重圧がかかってくるという傾向が非常に多くなっておりまして、そういう問題のために、また開発自体が進めようと思っても難航している。住宅団地等もそういう傾向が随所に見られるわけでございますけれども国土庁が非常に苦労されて調整費もだんだんふえてまいりましてやっているわけですけれども、あるいはまた個別的に開発者に一部負担させるというようなこともやっているのですが、どうもやはり流域開発と治水とのバランスという問題が、先般も望月委員からも質問ございましたけれども、非常にこれは重要な問題でございますし、制度的にこの辺でひとつ思い切って総合的な施策を考えるべきじゃないか。これは一建設省だけではできないと思いますし、国土庁中心になられて、その辺のやはり開発問題と保全、特に治水というような問題とのバランスというものをひとつ制度的にこの際考えていただく必要が出てきたのじゃないかと思いますけれども、その辺のお考え方を国土庁の方から、長官なり局長からお願いいたしたいと思います。
  59. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 予算の需要供給のバランスの問題、いまどうなっているのか、その調整について、具体的なことばよく承知しておりません。それは局長が見えておりますから答弁させますが、十二分にいまの状態で賄い得るものとすれば、河川とたとえば土地改良、あるいは基盤整備と道路というような関連性の一方手おくれになる方に対して調整費を用いて同時に完工、仕上げをするというやり方でございますが、それだけのいままでの経験からいって、そうした何といいますか独立したものを、機関をつくってやらなければいけないかどうかという問題、いままでの経緯について局長から答弁させます。
  60. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) いまお話がございました事業調整費でございますけれども、昨今では御指摘のように、事業調整費の主要な課題は、土地改良治水事業との調整という課題が非常に多くなってきておりますから、御指摘のような実態が非常にふえてきているということは、われわれとしても非常に憂慮しているところでございますから、事業調整費の運用に当たってそういった方向をさらに強化してまいりたいと思いますが、御指摘のとおりに、それだけではどうも十分ではないのではないかという御指摘をいただいたわけでありますが、一方で河川の流域の開発が野放しでは困るということがございますから、それにつきましては建設省の都市計画法あるいは農林省の農振法、森林法などで開発行為の規制の取り締まりを実は始めたわけでございまして、開発の側から治水に対する十分な配慮ということで仕事を始めておりますけれども、昨今では建設省でもうすでに始められておると伺っておりますが、治水の側から河川の流域の開発についてしかるべき措置を講ずる必要があるのではないか。両者からの規制が総合化することによって河川というものの適正な維持ができるということが言えるだろうと思いますので、そういった意味で、いま御指摘いただきました総合的な施策を講ずる必要があると考えておりますが、果たしてどういう制度になるか、あるいは大臣からお答えいたしましたように、必ずしも機械的に全部統合してしまうことがいいのか、あるいはそれぞれの部局において治水との関係を明確に規制していただく、あるいは事業推進していただくのがよろしいのかというところは、もう少し検討させていただきます。
  61. 坂野重信

    坂野重信君 新聞報道に先般出ておりましたが、建設省では総合治水というようなことで計画されているようでございますが、その辺をひとつ簡単に御説明願いたいと思います。
  62. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 災害を防ぐには治水施設を整備するということが第一でございますけれども、それとあわせて、流域と川との関連がどうあるべきかということを検討するいわゆる総合治水対策といいますか、総合河川対策といいますか、そういう計画が必要だということで、建設大臣の指示によりまして現在建設省で検討中でございます。  その内容につきましては、まず一つは、降った雨ができるだけゆっくり川に入ってくるにはどうあるべきか。これにはいわゆる土地の利用計画も関連してまいります。それから第二点としまして、土地の適正な利用あるいは水に強い建築様式あるいは町づくりとかこういう問題、さらにはいわゆる洪水がはんらんする区域、あるいは土石流による危険区域と、そういうものを調査して、各住民によく自分の土地がどういう土地であるか知ってもらって避難体制に万全を期してもらうと。あるいは、そういうものがまた土地利用の規制あるいは適正な土地利用に役に立つとか、そういうふうに総合的な面、流域を踏まえた河川改修、あるいは河川改修を見詰めた流域開発のあり方と、そういうものを検討してまいりたいということで、現在河川審議会の中に小委員会を設けて検討するべく準備中でございます。  それから、ちょっと話は前に戻りますが、先ほど先生が八兆円の中に予備費の上げ底じゃ困るというお話ありましたけれども建設省としましては今回の災害にかんがみまして、八兆円というのはネットの八兆円でございまして、予備費は八兆円の枠外であるということでございますので、絶対にネット八兆円を確保すると、最低八兆円を確保するということでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  63. 坂野重信

    坂野重信君 そこで、そういう流域等の問題をやるためには、やっぱり地域の住民の皆さんやら関係者の皆さんにこの治水施設の実情というものを十分認識させるような方法を考えておきませんと、いたずらに災害起きた後、何でもかんでも治水当局の全責任だというぐあいにされましても、これまあ非常にむずかしい問題でございますし、そうかといって、そういうものを十分予知するような方途をとっても責任論は免れないかもしれませんけれども、やはり後手後手で、一生懸命やっておいて、災害起きたら、これ責任だということになってきますと、幾ら体があっても足らぬわけでございます。そういうことでございますから、そういうことを十分考慮して、やはりそういう治水施設の実情というものをアピールするような方法を検討すべきだと思いますけれども、その辺どうでしょうか。
  64. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 現在の建設省では各地域の安全度といいますか、いわゆる洪水はんらんの予想区域、あるいは山津波といいますか土石流の危険区域、そういうものを現在調査中でございます。また一方、現在大河川におきましては、既往の洪水でここまで浸水したというものを町に表示したりやってございます。今後そういう自分の地域の安全度というものを地域住民に十分知ってもらっていきたいというふうに考えてございます。それで現在、昭和五十一年度、本年度からでございますが、いわゆる洪水はんらん予想区域あるいは土石流危険区域の調査を行っております。これらの成果を待ちまして地域住民と一体となって治水対策に向かってまいりたいというふうに考えてございます。
  65. 坂野重信

    坂野重信君 さっきの下河辺局長の答弁に関連したことですが、先般現地を見た中で、牧田川水系の杭瀬川支川の大谷川がやっぱり水害の常襲地帯というようなことで、少し雨が降るとすぐ浸水する。いまのうちならば家がまだ立て込んでない。しかし、将来開発の可能性が非常に強いというようなところ、こういうところを住宅行政の立場ではっきり遊水区域であるとか、あるいは制限区域というようなものを設けて、その中ではもう一般の住宅は制限する、あるいは建てる場合に構造設計という面で制限を加える、一定の注文をつけるというようなことをこの際考えるべきだと思うんですけれども、その辺はどうでしょうか、住宅局長、河川局長。
  66. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) まあ自然遊水地的な地域でございます、現在内水がたまっておると、そういう地域でございますけれども、そういうところにつきましては、湛水による災害発生が当然予想されます。したがいまして、都市計画の定めがある場合には市街化調整区域としまして、市街化が抑制されておるところでございます。しかし、都市計画の定めがない場合でございますけれども、今後適正な土地利用の充実が必要であろうかということでございます。したがいまして、先ほどの総合治水対策の中におきましても考えてまいりたい。と同時に、治水対策計画的な遊水地をつくっていく。たとえば都市付近におきましては多目的遊水地とかそういうものをつくっていく、そうしまして水害を防いでまいりたいというふうに、上流におきましてはダム、中流あるいは下流におきますそういう湛水地域におきましては、いわゆる洪水調節池と遊水地を活用する、あわせまして河川改修の万全を期してまいりたいというふうに考えます。
  67. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 基本的にはただいま河川局長から御答弁あったとおりでございますが、特に土地利用の問題といたしまして、先生御指摘の場所は現在調整区域ということになっておると思います。そういう調整区域の開発許可制度の活用によりまして当面いろんな建築の制限等行われると思いますけれども、なお建築基準法には三十九条というのがございまして、災害危険区域を定めております。「地方公共団体は条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。」というのがございまして、災害危険区域に指定をいたしますと、建築物の建築の禁止、その他家をつくる場合にはこういう構造にしなければならないというふうな必要な規制ができることになっております。現地の状況等によりまして、そういう必要があれば災害危険区域の指定等もできるというふうに考えておる次第でございます。
  68. 坂野重信

    坂野重信君 余り例はないと思いますけれども、そういう制度的に現行制度を活用できるものはひとつ勇気を持ってやっていただきたい。  それで、長良河口ぜきの話が先ほども出ましたが、地元の事情でちょっと本格的な着工がおくれているようでございますが、ちょうど公団事務所に行きましたら、PRの映画がりっぱなのができ上がっておりまして、参議院の視察団がきょう来るためにやっと間に合ったのだというようなことで、りっぱなPR映画をつくっておりました。なぜ長良河口ぜきが治水上必要であるか、非常にりっぱな映画ができておりまして、非常に敬意を表したわけですか、こういうPRを——長良河口ぜきができれば川底も掘削、しゅんせつできる、そうすれば水位も相当上まで下がってくれるのだというようなことをもう少し思い切ってPRされて、私も岐阜の知事さんに会ったら、この水害を契機として長良河口ぜきに対するムードがかなり変わってきたというようなことも知事さん言っておられましたので、この機を逸せずひとつ徹底的なPR努力というものをお願いいたしたい。  もう一つは、下流の地盤沈下の問題もあるわけでございますし、これまた地盤沈下したために今度の降雨によって水害が、内水が相当ふえておると思いますし、そういう意味においてもひとつこの際格段の努力をぜひ望みたいわけでございます。建設大臣あるいは国土庁の水資源局長から御答弁願いたいと思います。
  69. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 長良川河口ぜきについては、私も現場で知事と会見をしたわけでありますが、知事の話次第で私としてはいつでも本体工事着工したいということを強く言明をいたしておるし、知事自体も、一人反対があったからもう絶対にしないとかというのじゃなくて、県内の大勢を見て大体これでいけるというときは建設省に対して上申したいと、こう言っておりますから、知事だけに責任をかぶしたようで恐縮なんですけれども、知事が腹を決めればこっちは間髪を入れずサインを出すということは、もう当地でも言明いたしておるわけであります。今回の災害で県内のムードが大分変わって積極的な勢いが出てきたということは私もしばしば聞いておりますから、そのムードがもっと高まるようにひとつ具体的に私どもとしても手を打ってみたいと、こう考えております。
  70. 飯塚敏夫

    政府委員(飯塚敏夫君) 長良川河口ぜきでございますが、先ほど先生御指摘のとおり治水、利水の両目的がございますが、その河口ぜきを設置することによりまして、河床の低下を図りまして流下能力を大いに増大できる施設でございますので、私どもといたしましては、今回の出水にかんがみまして一刻も早く治水対策が緊急に推進できますように、この河口ぜきの建設に一生懸命で邁進してまいりたいと思います。御指摘のとおり、地元関係者のいろいろな諸問題があるようでございますので、私どもといたしましては大いに関係者の理解と協力を得るように努力してまいりまして、早急に実施をしてまいりたいと思っております。  それから地盤沈下の問題がございましたが、全国的にも地下水のくみ上げによりましていろいろ地盤沈下が進行していますが、これらにつきましては災害対策上放置できない状況でございます。このため、地盤沈下を防止するために適切な地下水採取の規制措置を講じますとともに、代替水の確保等推進する必要がございます。これに対しまして国土庁といたしましては、現在議員立法として御検討なさっております地下水の保全及び地盤沈下の防止に関する法律案というものがございますが、これらの早期成立が図られますように私どもといたしましても協力してまいりたいと思っておる次第でございます。  なお、当長良川下流地域につきましては、その代替水につきましては一刻も早く木曽川水系水資源開発基本計画に基づきます水資源開発事業推進を図りまして、その代替水の確保に努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  71. 坂野重信

    坂野重信君 私は、先般参りましたときに、岐阜の市長さんも来ておられましたから、長良の問題はこれは岐阜市にも関係あることだ、市長さんひとつ先頭に立って促進の方向に向かいなさいということを強く主張したわけです。それで、長良河口ぜきができた場合に、この水位の低下が一体どの辺まで及ぶのか、PRをされておると思いますけれども、その辺をひとつ計算されて、相当かなり上の方まで水位が下がってくると、その辺のところがもう少し的確にPRされて、私はこれは岐阜市長の責任じゃないかということを言ったわけです。上の方で反対反対と言っていたんじゃどうにもこれしょうがないじゃないか、地域の直接の皆さんのいろいろ意見があるようですけれども上流側から自分の方のやっぱり洪水の疎通に関係あることですから、ひとつがんばってもらいたいということを市長にも要望しておきました。  最後に、もう時間ございませんから、三全総の関連でお伺いいたしたいと思いますが、いま国土庁で三全総計画を鋭意策定中のようでございますが、この中で国土保全に一体どの程度力点を置いておられるのか、まずその辺をお伺いいたしたいと思います。
  72. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 第三次全国総合開発計画は現在作業中でございますから、結論的に申し上げるわけにまいりませんけれども、過密過疎を解消するという基本的な課題に対応しまして、その過密過疎を解消するための基本的な前提としては、生活の基盤である国土が安定的でなければならないことは当然でありますから、その意味で、第三次全国総合開発計画の中で国土全体というものに非常に大きな力点を置いて策定したいと考えております。
  73. 坂野重信

    坂野重信君 それで、そういうことによって三全総がまだ固まっていないようですが、これから最終的に長官の方で固めると思いますが、固まり方の内容いかんによっては、先般策定されたこの新経済計画の中にも百兆円、シェアまである程度決めておられるようでございますが、場合によっては、三全総のまとまり方いかんによっては経済計画の見直しといいますか、あるいはさらにその中身のシェアの問題も果たしてあのとおりでいいかどうかというような問題まで入っていくんじゃないかと思いますが、その辺のお考えがどうなっていますか。まず新経済計画を大体策定するときに、むしろ三全総の方が先に策定されて、それに乗っかって経済計画というものはやるべきなんで、経済の方が先行しまして、とかく私ども公共事業というものを経済に引き回されて、景気のいいときにはスローダウンして、景気が悪くなったらまた公共事業伸ばす、千五百億の問題にしてもせっかく当てにしておったものが、今度大分景気がよくなったから、災害が起きたからあれはちょっと考え直しましょうというようなことはまことに不可解なことでございまして、これは国土庁長官なり国土庁の皆さんは、やはりこういうことはまことに不都合なことだと思います。やはり三全総というものが先行したその上で、経済計画とマッチしてすべての計画というものが私は行われてしかるべきだと思います。その辺の考え方を含めてひとつ局長から御答弁願って最後国土庁長官のこの辺の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  74. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 第三次全国総合開発計画をできるだけ早く策定したいと考えて現在鋭意努力しているところでございますが、その検討につきましては現在昭和六十年度を目標にして十カ年計画として作業をしておりますが、御承知のように経済計画昭和五十年代前期経済計画は五十五年までの五ヵ年計画でございますから、十年計画と五年計画の相違はございます。そして私どもの十年計画ができました際には、経済企画庁の方でこの十年計画に沿って経済の運営をしていただくということは当然ではないかというふうに考えておりますので、私ども計画の決定を待って、しかるべく経済企画庁ともよく連絡をしたいと考えておるところでございますが、現在経済企画庁としては、現在の段階では先ほど閣議決定いたしました昭和五十年代前期経済計画を変えるという予定はしておりません。ただし、この経済計画については社会資本だけの問題ではなくて、経済あるいは物価、エネルギーその他総合的な観点で絶えずフォローアップといいますか、ローリングをしようということになっておりまして、企画庁におきまして、審議会を通じて絶えずフォローアップをしておりますので、必要に応じてはやはり社会資本についても再検討していただくという必要が出てくるのではないだろうかというふうに考えております。
  75. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) これは国土庁ができたために二つの役所で扱うことになったものでございます。そうですから、経済企画庁で両方やっておりゃ大変都合よくいったんだろうと思いますが、別々になったというところで相前後する問題が起きてきたようでございます。で、いま一番指摘されている重大問題は、経済計画のために公共事業が制約されまして、いま当面せるこの治山治水の大きな問題を期待どおりに仕上げるのには、とても前期五カ年計画の五兆五千億というようなものではどうにもならないのではないかという私もこれ心配をしておるわけでございまして、幸いこちらは十年計画でございますし、向こうは五年計画、ちょうど行ったり来たりというようなかっこうになるわけでございますが、この当面せる災害復旧に関連いたします、いわゆる全国の治山治水計画というものの新五カ年計画を発足する来年度の予算に当たりまして、まあ変則的な形の上で処理をできるような措置を講ずるように努力をいたしたいと考えております。調整はなるたけ、ソ連とアメリカでありませんから、日本の内閣の一つのもとでありますから、よく調整がとれて、こういうでこぼこのかっこうの起きないように自後するように注意はいたしたいと思います。
  76. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後零時四十五分まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      —————・—————    午後零時五十八分開会
  77. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  78. 矢原秀男

    矢原秀男君 私も委員会の一員といたしまして、十二日から十三日までの二日間、長良揖斐両川被災状況を視察をして帰ったところでございます。ただいまも御報告があったように、私も十何年間にわたって災害現場を走り回ったことがあるわけでございますが、長良に行きまして一番びっくりしましたことは、木曽川を含めて木曽三川と言われるそうでございますが、これだけ巨大な川が、平素のときは結構でございますけれども、もし洪水時になれば本当にふん土のような河川になっていく。恐らく日本でも洪水状態になれば一番恐ろしいところではないかということを私は感じ得たわけでございますが、それを考えるたびに、非常にここだけは何とかして多くの予算をつぎ込んで河川改修等とにかく復旧をしていかないことには大変なことになる。こういうふうにしていまなお私の命の中に刻まれておるわけでございますが、そういう意味から見ておりましても、一時間当たりの雨量が七十から八十ミリにも達し、特に長良川水系では連続降雨量千ミリを超える歴史的な記録となっております。  そういう中で、三十四年九月の伊勢湾台風当時の同地点での雨量というものは二百七十三ミリ、昭和三十六年六月の梅雨前線豪雨雨量は五百八十八ミリであった。こういうふうなことですから、県内の河川道路中心にして随所ではんらんやがけ崩れ、交通 断などの災害というものが相次いだわけでございます。被害状況も、九月三十日午後三時現在では死者・行方不明七名、家屋の全半壊及び床上浸水等被災世帯が七万六千百二十五世帯被災人員は実に二十八万六百四十四人にも達しているわけでございます。これは県全体の人口の一五%に当たる大変な数でございます。被災総額も約千四十二億円に達する未曽有被害になっております。こういう中で住家等個人財産被害が約三百二億円と被害全体の三分の一を占めているのが大きな特色でございます。いま私が重複しながらこれを申し述べましたのは、最初に申し上げましたように、全国で私はこれは第一だと思いますけれども木曽三川の巨大なこの流域を見たときに、やはり相当力を入れて対処していかなくてはいけない、こういうことを非常に感じております。  この木曽三川は、すでに御承知のとおりでございますが、木曽川、長良川揖斐川の主要幹川から成る木曽川水系でございまして、長野県、岐阜県、滋賀県、愛知県及び三重県の五県にわたって、その流域面積は九千百キロ平米、関連区域の人口は名古屋市を初めとして約五百万人で、わが国でも有数の大河川であることはこれは当然のことでございます。  そういうことでございますので、まず大臣にお伺いをいたしたいわけでございますが、先ほどからも何回も申し上げておりますけれども、この木曽三川洪水時には全国有数というよりも、私は第一級の本当に、どう表現をいたしますか、洪水が出るともう大変な状態になってくるところである。こういう木曽三川についての基本的な治水に対する御見解というものをまずお伺いいたしたいと思います。
  79. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 全くおっしゃるとおりでございまして、三つの川は日本でも最も大きな川でもあるし、また今回の災害を見ても危険な状態があると思います。そこで、建設省におきましても、以前からも心配いたしておりましたが、今回の災害にかんがみ、いろいろ工夫して、いま検討を加えておる最中でございまして、たとえばダムをつくるとか、遊水地をつくるとか、あるいは堤防を築くとか、また河口ぜきの問題もありまして、河口ぜきがもし完成すればかなりの水位の低下が現実に計画されておるわけでありまして、総合的な問題でないとなかなか解決がむずかしいというので、そういうものを含めて一体となって解決を図りたい、こういうふうに考えております。
  80. 矢原秀男

    矢原秀男君 そこで、木曽三川は先ほど申し上げました流域面積が九千百キロ平米、総延長にいたしますと二千七百キロメートル、総流出量といたしましては百八十六億トン、灌漑面積も七万七千百ヘクタール、こういうことでございますけれども、いずれにいたしましても、関連区域の人口が五百万人と言われておりますし、流域内の人口にいたしましても百三十万人になんなんとするわけでございます。  ですから、私はここでまず第一の質問申し上げたいのは、こういう大きな被害の中で、被害後一ヵ月過ぎるんですけれども、私たちが行きましても、またいつ雨になって洪水になるか、そうすれば必ずわれわれのところは被害を受けるということで非常に毎日が安心できない。ということは、逆に考えますと、行政面でどうしても力を入れていただきたいということになるわけでございますが、まず第一の質問は、予算面についてお伺いをしたいと思うのでございますが、私はここは特殊な河川地域でございますという意味で、日本全国平均的な考え方である河川道路における予算面のそういうふうなパーセンテージはここでは通用したらいけない。逆に河川の方を重要にして、道路の負担分というものを小さくしていくか、それとも逆転をしていくか、こういうことは過去何百年前からの治水関係の歴史を見ても明らかでございますけれども、そういう観点の中でお伺いをしたいわけです。四十七年のときのこの関係における河川予算、そうして道路予算との対比、四十八年、四十九年、五十年、五十一年という最近五カ年の河川道路のこの面に関するまず予算面というものを明らかにしていただきたいと思います。
  81. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 手元には全体の治水事業費と道路整備事業費の表を持っておりますが、木曽関係については持っておりませんので、全体のことを申し上げまして御判断をお願いいたしたいと思っております。  四十七年は、治水事業費が二千六百九十五億五千四百万円でございます、それに対しまして道路が八千五百七億三千四百万円。四十八年、治水が三千三百九十一億三千七百万円、道路が一兆三百八十五億七千万円。四十九年、治水事業が三千三百九十五億九千七百万円、道路が一兆三百億七千六百万円。五十年が、治水が三千四百九十億九千七百万円、道路が九千五百六十八億。五十一年は、治水が四千二百五十一億三千七百万円、道路が一兆九百五十八億四千八百万円。最近の趨勢はそういうことでございます。
  82. 矢原秀男

    矢原秀男君 それは全国的な趨勢でよくわかったわけでございますが、私がいま質問を申し上げております一つは木曽三川に対するいわゆる中部地方建設局管内について五カ年間の河川道路関係、それはいまわかりますか。
  83. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) ちょっと手元に持っておりませんので、後ほど調製をいたしまして御報告申し上げたいと思います。
  84. 矢原秀男

    矢原秀男君 私も何百万円というところの端数まではいま把握をしていないわけでございますが、私の手元にある関係から見てまいりますと、四十七年が大体百八十億程度の河川ですね、河川予算。そうしてそのときには道路関係は四百億を少し超えておりますね。四十八年度の河川に対する予算というものが二百億ちょっと出ておりますが、道路関係では約五百億円になっております。四十九年のときにも河川関係が二百億少しでございますが、道路関係が五百億ちょっとオーバーしておりますね、四十億ぐらいですか。それから五十年度が、河川関係については大体二百億、そうして道路関係が四百八十億近くでございます。五十一年度が河川関係が二百五十億、約ですね、道路関係が六百億に近い。まあこういう最近五カ年の中部地方建設局管内の予算の状態でございますが、私はもう先ほどから申し上げておりますように、ここにあれだけの巨大な川が三つも、あるところでは堤防一つだけを隔てて大河が続いておる。それに全国的な平均ベースの中で予算配分が道路河川でなされておる。災害になっていつも泣いているのは被害住民である。なぜこういうところにケース・バイ・ケースというのか、思い切った斬新的な予算配分というものが建設省でできないのか。そうしない限りこれは毎年洪水時には大被害を受けて、そうして被害方々が御苦労されていかなくちゃならない。この点について私いま質問いたしておりますように、ここのところだけは全国的なそういういまお話がございましたように、道路河川の平均的な予算配分という流れからではなしに逆にしていくのか、それとももっと道路河川予算というものをつけていくのか。いま私がここで申し上げておりますのは、災害といえども何といえどもお金がついて回るからいままでのような全国的な同じような例ではここはいけない。これは私が十数年の経験の上から深刻な立場でやっているわけなんですが、そういう予算面の考え方を御答弁いただきたいと思います。
  85. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 先ほど申し上げましたように、全体といたしまして治水事業費と道路事業費では絶対的な差があるわけでございます。それで、河川事業の範囲内においては、この木曽三川を初めとして、被害を受けやすい大河川につきましては重点的に配分をしておると思うわけでございますが、何分全体的な道路事業費が多いものでございますから、中部地建をとりましても道路事業費の方が上回っていることはやむを得ないのではないかと考えるわけでございます。ただ、先生ご指摘のとおりに治水事業費全体をやはり伸ばす必要があると考えまして、治水事業五カ年計画につきましては従来の五カ年計画の倍に達する額を要求いたしまして、治水事業全体を伸ばし、ひいては木曽三川治水事業に今後重点を入れていきたいと考えておるところでございます。
  86. 矢原秀男

    矢原秀男君 建設大臣、中部地方建設局管内だけは道路予算と同じぐらいにまで河川のそういう予算面での配慮ができないかということを私希望したいわけなんですが、大臣、どういうようにお考えでございますか。
  87. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 具体的なことのお答えはなかなか困難でございますけれども、木曽川が重大な川であることばよくわかっておりますから、その方向でひとつ検討さしてください。
  88. 矢原秀男

    矢原秀男君 ひとつその面で力を入れていただきたいと思います。  台風十七号水害から約一ヵ月以上もたったわけでございますが、これは長良周辺だけではなしに全国的に被害を受けられた被災者の方々は復興に非常に懸命な努力を続けていらっしゃるわけでございます。いずれにいたしましても、非常にかなりの時間と多額の資金を必要とすることは言を待たないわけでございますが、どうしてもここで問題になりますのは、前の災害委員会建設委員会でも議題になっているわけでございますが、不十分な災害救済制度というものが非常に問題になっております。現地を訪れましても中小、特に零細企業の方々の機械設備やいろんなものが水につかってもうすでに使用不能である。そういうふうなことで行政の手厚い救済というものを被災者の方々が多く望んでいらっしゃるわけでございます。  それからまた、現行の個人災害制度もまだまだ、先般も一部は改正をされましたけれども、十分に被災者の切実な声が生かされておらない。こういうことでございますけれども、これら個人の災害救済制度の抜本的な改善というものは今後とももっと大きく窓口を広げてやはり改正をしていかなくちゃいけない。そうしてまた、零細企業等のそういう設備等の被害につきましても、あわせてやはりもっと大きく手厚いものにしていかなくちゃいけない、こういうふうに感じるわけでございます。こういうふうな不十分な災害救済制度の抜本的な改善というものが、先般の国会で一部だけは大きく上げ幅が上がったわけでございますけれども、そうではなくして、もっともっとすべてにおいて見直しをしていかなくちゃいけない、そういうめどをいつにつけていくかということを具体的にお願いをいたしたいと思います。
  89. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) いま先生からお話ございました個人に対する救済を含む災害対策諸制度の再検討につきましては、これは本来国土庁が窓口となりまして関係各省と相談をしてやっているわけでございます。先般国土庁長官もきわめて前向きの姿勢で答弁をされましたので、そういうことで御検討になると思っております。なお、国土庁いまおりませんが、先生の御質問の趣旨は国土庁にもよく伝えることといたします。
  90. 矢原秀男

    矢原秀男君 災害についてはどうしても建設省中心になりますから、国土庁並びに厚生省へも十分常に働きかけをして、抜本的な改正、そういう面に努力をしていただきたいと思います。いずれにいたしましても、被災者の救済に全力を挙げていかないことにはどうしようもない、こういうことになります。  次に、現場を視察いたしまして、現在仮堤防ができて二重の矢板でがっちりとできているわけでございます。そのときに私は堤防の断面を安八町でじっと見ておりましたのですけれども堤防の断面を見ておりますと砂になっているわけですね。一番やわらかい砂になっているわけです。ですから私、堤防断面を見ておりまして、果たしてこれでいいのかどうか、技術的な問題としてこれは本当に検討されなくちゃいけないというふうなことを非常に感じて帰ったわけでございます。さっきも堤防断面についての御質問もあったわけでございますが、そういう意味で技術的に、堤防断面が長良川、そうして揖斐川、木曽川と明示されておりますけれども、こういう断面の中の土壌というものは技術的にどうなくてはならないかということをまずお伺いしたいと思います。
  91. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 堤防をつくる場合に大量の土を使うものですから、できるだけ手近な場所から土を採取して堤防をつくるというのがいままでの堤防をつくる実態でございました。それで、中には近くに砂が多い場合には砂を利用するということで、既往の高水位を経験しながらいろいろ断面を検討してきた次第でございます。それで、土としましては砂とか粘土とかそういうものが総合的にうまくミックスしているというのが一番ようございますけれども、川としましては非常に多く大量の土を使うということで、それは断面でカバーしてきたということでございます。  それで、今度の洪水にかんがみまして、あれだけの大量の雨がいわゆる堤防があるところでも降った。また、上流におきましても千ミリ以上の雨が降って長時間非常に高い水位が続いたという経験を踏まえまして、だから、ああいう場合に堤防断面がどうあるべきかというものを、土質とあわせまして土木研究所中心となってこれから鋭意研究を進めてまいりたい。そうしまして早期に結論を得たいというふうに考えてございます。
  92. 矢原秀男

    矢原秀男君 いま私が質問をいたしておりますのは、現場決壊の断面を見まして身ぶるいをしたわけでございますが、堤防の定規断面が木曽川の場合も天端で七メーター、それからのり面で内水関係の方で八メーター、勾配が一対二になっているわけでございますね。そして五メーターの高水敷等があって、いわゆるハイウォーターレベルと低水面と、こういうふうになっておりますけれども長良川も七メーター、揖斐川も七メーターになっていますね。しかし、下流にいきますともう堤防一つで支えている、そうして高水敷すらも十分でない。そうしてまた中流の地点に行きましても、いわゆるそういう高水敷等もえぐられた形で最初から全然ない、まともに堤防に当たってきている。こういうふうなことがあるわけでございますが、やはりそうなってくると、堤防の質というものが懸念されるわけです、技術的には。いまもお話を伺ったわけでございますが、そういうふうに昔からの土砂中心とする粘土面、粘土というのは非常に少ないわけですけれども、そういうふうなことになってくると、相当これ力を入れていかないと、この木曽三川においては大変な様相が来るんではないかということで、いま安八の破壊現場を見ながら心配をして質問したわけでございますが、堤防断面も現地の方々にお伺いをしますと、その周辺のヘドロというか、砂が中心でございますけれども、とにかくそういうことで昔につくった、そういうふうな説明も聞いたわけですけれども、この堤防の再診断というものが、技術的な面から流量関係とか力の関係とかいろんなことを含めてやはり再検討されなくちゃいけない、こういうように思うわけです。そういう点で堤防の断面、強度の総点検をこの関係でするかどうか、そういう面をもし計画があれば、いまから計画するのであればそういう面をお伺いしたいと思います。
  93. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 堤防の診断といいますか、総点検といいますか、それにつきましては、うちの建設大臣からそういう点検を命令されております、指示されておりますし、現在土木研究所中心といたしまして、どういう堤防断面であったらいいかという問題が一つと、それからもう一つは、そういうふうに非常に大きな断面になった場合に、じゃそれにかわるものはどうすればいいかとか、そういう面を含めまして堤防を診断すると同時に、また堤防のあるべき姿というものを現在鋭意検討中でございます。したがいまして、これにはやはりいろいろ実験をしたり、あるいは土と水との関係、いろいろ複雑な要素がございますので、できるだけ早急に結論を得たいと思っておりますが、やはりこの一、二年ぐらいはかかるんじゃなかろうかというふうに考えております。
  94. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) いまと関連いたしますけれども、私も就任早々直ちに、あり余った金があるわけじゃないものですから、限定された予算を全国の川に重点的に配分しなきゃいかぬ。しかし、その中でもちょっとした工夫があれば災害は多少防げるという地区があるような気がするものですから、直ちに総点検を命じまして、限定された予算を重点的、かつ効率的に使うにはどうすればいいかということで、いま局長が申したとおり総点検を命じたわけであります。
  95. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ、その点よろしくお願いをいたします。  それから伊勢湾に流れていくわけでございますが、流量配分については基本の高水流量と合流量というものが秒間に何トンというそういう流量計算の中から出てくると思うのですが、建設省で、現在の木曽三川についての流量配分というものは大体計画どおりでいいのかどうか、その点お伺いします。
  96. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 木曽三川とも現在の流量配分で一応いまのところいいと思っております。しかしながら、揖斐川につきましては去年の大きな洪水、またことしも揖斐川につきましても計画水位以上の水が出ております。また、長良川につきましても今般の大洪水ということで、現在一応はいいと思っておりますが、今後十分見直していきたいというふうに考えてございます。
  97. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ、次に木曽三川改修関係について具体的に質問いたしますけれども、一つは、伊自良川全面改修の進行状況がいまどういうようになっているかということが一つ。第二点目は、杭瀬川引き堤については大体進行状況が何%であるか。続いて、牧田川の狭窄部対策についてはどうなっているか。第四点は、高須輪中の内水対策は大体もう完全なのか、それともパーセント的にはどの程度であるか。新堤川の内水対策ですね、この点についてはどの程度進んでおるか。それから堤防補強についてでございますけれども、これは大体木曽三川として重点的にどういう進捗伏見であるかをお伺いしたいと思います。
  98. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) いま手元に詳しいデータがございませんので、まことに恐れ入りますが概括的なことでお答えいたしたいと思います。  まず、伊自良川改修のテンポでございますけれども、これは中小河川で現在やってございまして、今般の水害におきましては非常な被害を受けた川でございます。したがいまして、いろいろな事業を活用しまして今後積極的にこの改修促進していきたいというふうに考えてございます。  それから杭瀬川引き堤の問題でございますけれども、これはいわゆる上流からの大谷川とかそういう辺の、大垣市周辺の洪水が入ってくる上におきまして一番ネックになっておる地点でございます。これは一度前の計画では改修が済んだところでございますけれども、今般のこういう大洪水、あるいは現在の計画におきましても引き堤計画でございますのでできるだけ早急にやりたいということで、ことしあたりからそういう引き堤の用地買収の話に入っていきたいというふうに考えてございます。  それから牧田川の引き堤でございますけれども、ここ牧田川は杭瀬川と一緒に流れておる区間でございまして非常にネックになっている地区でございます。また、今般の水害におきまして非常に裏が崩れて、水防によって辛うじて破堤を免れたという地域でございまして、この引き堤につきましてもできるだけ早急に着工したいというふうに考えてございます。  それから高須輪中の内水の問題でございますけれども、これは現在本格的なポンプ場を着工してございまして、もう少しこれは今後の様子を見まして、さらに補強すべきかどうかというものを検討してまいりたいというふうに考えます。  それから新堤川の内水対策でございますけれども、この付近は河川改修が第一義でございまして、まず川からあふれることを防ぐということで、いわゆる伊自良川などの改修を急いでおるわけでございますが、それでこの新堤川の内水対策につきましては現在着工しておりまして、現在の計画をできるだけ早く竣工させたいというふうに考えてございます。  それから木曽三川堤防補強の問題でございますけれども、先ほどの健康診断、堤防の健康診断または堤防のあるべき姿の決定というものによりまして、今後できれば五ヵ年内にそういう特に危険な個所につきましては手当てをしてまいりたいと、そういうふうに努力していきたいというふうに考えてございます。
  99. 矢原秀男

    矢原秀男君 いま一部だけ名前を挙げたわけでございますけれども、全面的に万全の対策を早急に進めていただきたいと思います。  私、ここでちょっとひとつお伺いしたいわけでございますが、明治のときに大改修が行われたわけでございます。そのときに長良川の場合であれば桑原輪中から高須輪中にはみ込んでくるそういうふうな河川の湾曲を河川改修されてストレートにされている。高須輪中についても今度は逆に湾曲を木曽川立田輪中の方にするのをストレートに河川改修をされている。立田輪中の方はまた下流の方でストレートな改修が明治にされているわけですね。そういうふうに長島輪中から、よしがす輪中、そういうふうに下流について明治時代に改修がされているわけでございますけれども、こういうときの流量計算とかそういうふうなあれは、現時点の皆さんの非常に最高の技術面の計算から見て百点満点であったのか、それとも自然の流量の流れに対して河川改修がストレートであったがために、ストレートで当たってくるそういう下流面の堤防等が逆に補強されてないために最近の降雨時に被害を受けたのか。そういう点のいろいろな問題点というものを私も疑点を持つわけでございますけれども、現在の最高の皆さんの技術で百点満点の改修であったのか。だから、いままで余り手がつけられてなかったのか。手は少しずつつけていらっしゃるようでございますけれども、そういう立場から私お伺いをしたいんでございますが、明治改修はそれは行われなかったよりも私はよかったと思うんですけれども、現時点から見て百点満点であったのかどうか、そういうことをお伺いしたいと思います。
  100. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 明治改修のときのいわゆる流量の決め方、あるいは河川改修計画の決め方の問題でございますけれども、当時におきましてはやはりベストを尽くしておったというふうに考えます。それで、特にこの木曽三川につきましては、明治の初期にオランダからデレーケという人が来まして、いわゆる水源から河口に至るまで十分歩きまして、いろいろの英知を尽くしてつくったわけでございます。現時点におきましては、当時としてはやはりベストを尽くしておった計画だというふうに考えます。
  101. 矢原秀男

    矢原秀男君 しかし、あれでしょうか、伊勢湾台風であるとかいろんな台風災害が来て、では明治改修時のような物すごいエネルギーと予算というものをそこへ傾注したかどうかということが、現時点の土木工学でやはり問題になる点だと思うわけです。そういう点については、現時点においては明治改修にまさるとも劣らないだけの木曽三川にはずっと力を入れてきたというのかどうか。私はその点では少し欠けているんではないかと思うわけなんですけれども、皆さんのこれに、いわゆる復旧に対する度合いですね、力の度合い、明治改修に負けないだけいま入れているのかどうか。
  102. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) この木曽三川につきましては、いわゆる先ほど先生おっしゃいましたように特に長良川でございますが、三十四年の伊勢湾台風、それから三十五年、これは長良川計画を改定した大洪水でございましたけれども、三十五年の大水害、また三十六年の大水害というふうに三ヵ年連続して大きな洪水があったわけでございます。また、揖斐川につきましても四十年あるいは最近というふうに連続して非常に危険な状態であったわけでございます。したがいまして、そういう洪水にかんがみまして建設省としましても、木曽三川につきましては全国の中におきましても非常に重点を置いて予算をつぎ込んで改修した川でございます。ちなみに本年度について言いますと、これは木曽川上流の管内でございますけれども、三十五億何がしの予算を盛ってございますけれども、これはいわゆる淀川、利根川に次ぐ三番目の予算でございます。こういう連年起きました大洪水、また木曽三川の流域の開発状況、その重要性等見まして、今後ともこの木曽三川につきましては鋭意重点的に改修促進してまいりたいというふうに考えます。
  103. 矢原秀男

    矢原秀男君 ちょうど現場へ参りましたときに、当日の地元新聞でも、長良川決壊については「住民が国家賠償訴訟へ」という大きな見出しの中で、これは明らかに人災であると、墨俣被災者同盟の方々委員の私たちのところで陳情もされたわけでございます。そういう中で、輪中の締め切り上流のわれわれは被害を受けた、こういうことでお話をされたわけでございますが、この墨俣町が十二日の長良川決壊で全戸数千四百六十一戸のうち千三百四十六戸が床上、床下浸水、総額五十五億円の大体被害を受けておられるわけでございます。  この問題について、安八町より上流にある同町が浸水したのは、下流の同郡輪之内町の福束輪中堤を自衛隊が出動して締め切ったために水が逆流したのが原因であると、こういうふうなことで、平野県知事とか県議会の議長とか建設省、自衛隊関係者出席を求められて、いろいろ住民大会を開くことにされておられるそうでございますが、その中で墨俣町の被災者の方々が言われております一つは、墨俣町水害の原因究明と責任の所在、二番目には当面の補償、三番目は将来対策の三点にしぼられて、国や県の責任を追及すると言われているわけでございますが、ここでお見えになった奥村さんという委員長になられている方ですが、やはりどの調査をしても福束輪中堤を締め切ったのが自衛隊であることは明らかであるけれども、その自衛隊さんにだれが命じたのか建設省や県に問い合わせてもはっきりしない、こういうふうなことで実は困っているんだというお話があったわけでございます。私もお話を聞きながら、こういう天災に近い非常に大きな降雨量のときでございましたので、上から下までもう大変な指揮系統も乱れがちになったり、もういろいろな状態でとにかく大変であったなということは、私たちも被災現場に走っていっておりまして方々へ行っておりましたが、わかっているわけでございますが、こういうふうに国家賠償訴訟へというような形のものが出て、そうして委員長からわれわれに陳情されているというふうなことになっておりますと、やはりどういう形の中で輪中の締め切りが行われたのかということだけ、きょうは一点だけをお伺いしたいと思うんです。
  104. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) この輪中を一体だれが命令して、だれが締め切ったかということでございまして、建設省としましてもその辺の経過をつかみたくていろいろ調査しておる次第でございます。まだはっきりしないものでございますので、また地建の方にもっと何かその真実がわからないかということで、現在またその調査を命令しておる次第でございます。
  105. 矢原秀男

    矢原秀男君 まあこの問題も、今度の災害では実際に自衛隊や何かは方々で非常に出動して一生懸命隊員の人たちゃっておりました。しかし、こういう問題が出るとですね、自衛隊に指揮をしたのは建設省であるのか県であるのかという問題点が出てくるのはやはり当然だと思うんですね、指揮系統の問題ね。まあそういう意味で、とにかく被災者の方々というのは、訴訟にして勝った負けたというよりも、やはり二度と被害を受けてはいけない、そういうためには原因というものを究明してきちっとしていきたい、そういう非常に心配心からいろいろとこういう一つのものが出てきたと思うわけです。ですから、そういう点については建設省もまたよく実態等を把握して、そしてやはり善処をしていただきたいと思います。  それから木曽三川についてでございますが、水防活動個所ですね、ここはまあ特異でございまして、水防活動個所というところは必ず、午前中も質問が出ましたけれども漏水とかいろんな面の非常にこういうところは多いわけで、水防活動個所即手を打たなくてはいけない、まあこういうことになるわけです。水防活動個所はこの木曽幹川では大体何カ所建設省としては把握をされていらっしゃいますか。
  106. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 木曽三川全体でございませんけれども長良川につきましては大体百ヵ所をちょっと超えているというふうに記憶しております。揖斐川につきましても長良川と同様に各所で堤防がすべりまして、水防やってございますので、やはりその程度は水防個所をやっておるのじゃなかろうかと思います。それはいずれまた十分調査しまして先生のお手元に資料を提出いたしたいと思います。
  107. 矢原秀男

    矢原秀男君 水防活動個所、まあ長良川百カ所、揖斐川もそのぐらいではないかという御説明があったわけですが、この点につきましても防災の立場からきちっと具体的な対策というものを立てていただきたいと思います。こういう面についてはどういう具体的な現在までは手を打たれたのか、それをお願いします。
  108. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) まず、一番の破堤個所でございますけれども、あれは直ちに緊急復旧やりまして、すでに本復旧着工し、来年の二月末には全部を完成さしたいというふうに考えてございます。その他の水防をやりまして、のりが崩れたとか、そういう個所でございますけれども、特に緊急なものはすでに緊急復旧といいますか応急復旧で手当をしてございまして、本復旧につきましては、特に急ぐものにつきましては本年度じゅうに、来年の出水期前には完成さしたいというふうに考えてございます。全体で災害につきましては二ヵ年でそれを復旧するということでございますので、特に緊急なやつにつきましては本年度じゅうぐらいに、あるいは遅くとも来年の水前には完成さしたいというふうに考えてございます。
  109. 矢原秀男

    矢原秀男君 湛水排水計画でございますけれども、当局では最大湛水量というものが四千二現在既存排水門が四門というふうに伺っているわけでございますが、そういう自然排水はもちろんでございますけれども長良川筋の森部の排水、中の排水、それから揖斐川筋では中須川の排水、そして牧の排水ですね、そういう関係は今回の状況においてはどういう活躍がなされたのか。それに準ずる排水の——これはちょっとあと具体的に質問しますけれども
  110. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 早く答弁してください。
  111. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) この排水門につきましては、本川の水位が下がると同時にオープン、開きまして、内水排除に努めたわけでございます。中にはポンプ場などもございますけれども、これらにつきましては水没して動かなかったというのが実情でございます。
  112. 矢原秀男

    矢原秀男君 内水排水各地で問題になりますのは、兵庫県の赤穂でもそうでございましたが、浸水でポンプが稼働できないわけです。今度の視察に行っても、現場で一時間近くでございますが、電気設備の不備で稼働できなかったということで非常に水害が多くなったということはこれは通例でございますけれども、ここで問題になりますのは、電力を送るところ、そうして排水ポンプを設置するところ、そういうところはせめて伊勢湾台風よりも、これは長良川の場合ですが、そうして全国各地でも最高の危険水域よりも排水ポンプだけ高くするのではなしに、電気を送るところも、やはり何か東京であれば東京電力でしょう、関西でいえば関西電力、中部であれば中部電力でしょうけれども、そういう排水ポンプに連係をするこういう電気関係というのは、そういう浸水が来ても何とか十分安全であるというふうなことをしないと、一基五億円でしょう、いま排水ポンプの設備が、値が上がっていますから。そんなのが全部四基や五基を据えつけなくちゃいけない、お金はかけるけれども十分動かない。そういうことで逆に被害が起きるということになるわけですが、一連の排水ポンプ作動までにおける、そういう安全というのか、そういう面の具体策というものは行政官庁からそういう企業に対してもどういう連係プレーをされていらっしゃるのか。今回の台風十七号でもどういう手を打たれたのかということをお伺いしたい。
  113. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 木曽三川におきまして直轄で大きなポンプ場をつくっております。そのポンプ場につきましては、いわゆるポンプは浸水しないように非常に床を高くしてポンプを備えつけております。と同時に、電源につきましては、いわゆる電気系統と、それから電気が故障した場合に備えましてディーゼルという二重の系統で、直轄のポンプにつきましては万全を期しておる次第でございます。しかしながら、こういう先生おっしゃいましたいわゆる電気を送るところもできるだけ高いところにということでございますので、この点につきましては、やはりできればそういうことであった方が望ましいと思います。したがいまして、こういう関係省庁と十分協議していきたいというふうに考えております。
  114. 矢原秀男

    矢原秀男君 その点を特によろしくお願いしたいと思います。  じゃあ時間がございませんので、あと一点だけを質問をいたしますが、現地へ参りまして私心配をいたしておりますのは地盤沈下の問題でございます。午前中も質問があったわけでございますが、それを申し上げますのは、私も尼崎でございますので、年に一メートル以上も地盤沈下をしていく、防潮堤の堤防すらも一メーターも一年間に下がっていく。工場やなんかでも一メーター近くも下がってまいりますから起重機やなんかもすぐに使いものにならない。そういうふうな中でいろいろな対策に従事しました一人といたしまして、木曽三川という非常に巨大な河川を持っているこの長良の周辺が、地盤沈下で追い打ちを受けていく可能性が逆に高潮の場合にあるわけでございます。  五十年十一月現在の状況を見ておりますと、木曽川の左岸で平均一メーター四十一沈下をしている、右岸で一メーター二十六。最大が一メーター九十二、右岸が一メートル七十二。揖斐川と長良川では左岸で平均的に一メートル八、右岸で一メートル四十七。最大で左岸で二メートル八、右岸で二メートル二十二。こういうふうに三十七年から五十年の累計というものが出ているわけでございます。こういうふうになりますと、伊勢湾台風ではございませんけれども堤防がやはり低くなってくれば、ゼロメーター地帯が非常に多いわけでございますから、これはもう大変なことになるなと私も思うわけです。これに対する緊急的な沈下対策というものがどうしても必要になってくる。  最近の四十九年の十一月から五十年十一月の地盤沈下の概況を見ておりますと、非常に沈下は少なくなりまして、伊勢湾の近くでは十センチ、六センチ、八センチ、一宮とか岐阜の方では二センチと、こういうふうに少なくなっているので喜んでいるわけでございますが、いずれにいたしましても、地盤沈下の地域が九百キロ平米に及んでおりますし、ゼロメートル以下の地域が二百四十キロ平米もあるわけでございます。そういうふうな中で、地盤沈下によって高潮堤防治水の機能の低下、内水の自然排水の不能、構造物の破損等の問題が深刻化することは明らかでございます。そこへこういうふうな台風等の雨を伴う災害が来れば、現在の河川の改良の状態においては、私は二度打ちのもう物すごい被害というものが今後もたらされると思うわけでございます。ですから、そういうふうな面で当局の具体的な対策はどうされているのか、そういうふうなことをまずお伺いしたいと思います。
  115. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 直轄河川の木曽川の下流部の地盤沈下に対しましては、あそこはかって伊勢湾高潮に際して冠水した地区でございますが、昭和五十年度より緊急計画を樹立しまして堤防をかさ上げる工事促進してございます。また、木曽川左岸の日光川水系、ここも非常に地盤沈下の大きい地域でございますけれども、ここにつきましては昭和四十八年度から地盤沈下対策事業というものをやってございます。そうしまして蟹江川の排水機場に着手した次第でございます。それからまた昭和四十九年の七月の豪雨を契機としまして、昭和五十年度から高潮対策事業というものを新しく起こしまして、日光川のポンプ場、排水機場に着手したわけでございます。また、日光川水系は堤防が全川的にやっぱり下がってございますので、日光川下流部につきましては中小河川改修で緊急的にその堤防補強を進めてきたわけでございます。それで、昭和五十一年度には、この日光川下流部につきましては激特事業の対象としまして、その促進を図っておる次第でございます。また、木曽川左岸の鍋田川流域につきましては、昭和五十一年度から地盤沈下対策事業、補助でございますけれども、で排水機場の新設等の事業を進めておる次第でございます。
  116. 矢原秀男

    矢原秀男君 時間ございませんので、あと一言。  どうか地盤沈下に対する対策、手を打っていただきたいと思うのです。私がこれで一番懸念をしておりますのは、長良川下流部の土層図というものが、地下十五メーターから五十五メーターぐらいまで沖積層と言いますけれども、よく言えば粘土です、悪く言えばヘドロです。ですから、地下水のくみ上げが問題になるわけです。ですから、地下水のくみ上げの規制というものについて、それとか上水の問題とかいろいろありますが、きょうは時間がございませんので私も質問はしませんけれども、こういうものを含めてやはりきめの細かい対策、これを早急にさらに追い打ちをかけてやらないといけないと思います。
  117. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 全く先生のおっしゃるとおりでございまして、幾ら施設をかさ上げしたり、あるいはポンプをつくりましても、地盤沈下が進行すれば、またもとのもくあみということでございまして、結局地盤沈下をとめるというのがまず必要じゃなかろうかと思います。そのために地下水の過剰くみ上げというものが関連してきます。建設省としましては地下水法案というものを提案しておる次第でございます。現在におきましては、国土庁中心となりまして、こういう地盤沈下のための地下水関連の法案というものを検討中でございまして、建設省としましてはこれに協力しまして、地下水、表流水を含めたいわゆる水の管理というものに向かってまいりたいと考えております。  それから木曽三川のこの地帯におきます地盤沈下でございますけれども、地下水の過剰くみ上げをやめるためには、どうしても表流水との代替用水の転換が必要になってまいります。これにつきましては、長良川河口ぜき、あれが長良川改修と相待って、いわゆるしゅんせつをするのと相まって河口ぜきをつくるわけでございますけれども、あれが木曽三川下流部における代替用水としまして大きな役目を果たすようになるのではなかろうかというふうに考えてございます。  それから先ほどの水防活動状況の資料が手元に参りましたので御報告いたしたいと思います。木曽川が、水防個所が五十一ヵ所でございます。長良川が、先ほど百ヵ所少しと申し上げましたけれども百二十八ヵ所、それから揖斐川が八十八ヵ所、計二百六十七カ所が台風十七号によります木曽三川の水防個所でございます。
  118. 矢原秀男

    矢原秀男君 もう時間でやめるつもりにしておったんですが、ちょっと答弁の中でありましたので一言だけ。  地盤沈下と表流水のいろいろな問題等の中から、解決として、しゅんせつの問題と河口ぜきの問題がございましたが、この点については次回に私も申し述べるつもりでございますけれども、技術的に私の立場でいろいろとただしていきたい点もございますので、その点だけをつけ加えておきます。
  119. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 中馬さんが建設大臣になられて一般質問の機会、最初ですので、まず建設大臣の政治姿勢の問題についてお伺いしたいと思います。  ロッキード疑獄、それから金権政治、田中前首相の逮捕、起訴などで建設行政にも世論の批判が向けられています。建設省昭和四十六年七月以来五カ年にわたって、西村英一、木村武雄、金丸信、亀岡高夫、小沢辰男、仮谷忠男、竹下登と七代にわたって田中派に大臣が独占されてきている。官僚も田中派だというふうに言われて多くの疑惑が新聞、雑誌で指摘されております。自民党の大橋武夫代議士は、建設省の田中派の行政まる抱えについて、「上から政治献金を入れると、下から利権が出てくる自動販売機のような仕組みが出来上がっていた」と、そう東京新聞で書いているところであります。大臣は、こういう批判や疑惑にどういう姿勢と方針でおこたえになるつもりか、それをまずお聞かせ願いたい。
  120. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 私は、建設省のことは全くいままで関係ありませんでしたので、実は任命されたときはそういう感じは持っておりませんでした。翌朝の新聞見たら一斉にそういう記事が載っておるものだから、ああそうかなと、私も実は元佐藤派だったものですから、別段そう田中派とか佐藤派とかそういう感じは持っておりませんでした。そう言えばみんなそうだったなという、新聞見てからの感じでございまして、特に就任直後はそういうことは全然感じておりませんでした。ただ、その後本省の人たちとの接触をしてみて勉強したわけですが、そういう感じは全くありません。十分私の言うことを聞いてもらって、私も事務当局を信頼しているし、事務当局もまた私のことを全面的に協力してくれるということで、現在は全くそういうことは感じておりません。ただ、非常に投書がたくさん来ます。末端といいますか、本省でないことですけれども、第一線のいろんな事務所等についてかなりないろんな投書が来ておりますが、本省については全く私は何派だとかそういうことは全然感じたことはありません。
  121. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 サンデー毎日の十月二十四日号で、大臣は、いろんな指摘がある、この事例について調査報告させているところだ、省内は敵中横断三百里だという感じだと、ちょっと穏やかでない言葉ですよね。局長さんや課長さん、聞いてください。敵中横断三百里、本省はともかく、出先は相当ひどいようだ、証拠のある事例も出始めているので断固処置する、必ずやります、という強い決意をサンデー毎日では述べられておりますが、その後、現状調査した結果、どうですか。出先も含めて報告してください。
  122. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 敵中横断というのは、私は言った覚えはありません。いま全く安住しているわけですから、それは全くありません。ただ、末端の方からはいろんな具体的な投書その他が来ておるものですから、私としてはできるだけ調べております。
  123. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まだ事例は出ませんか。
  124. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) それは、いま軽々にじゃなくて、もうちょっと待ってください。
  125. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 はい。その事実ははっきりしたら、やっぱり本委員会でも報告してほしいと思うんです。  それから同じサンデー毎日でも、建設省は三年ごとに参議院全国区に二人ずつOBを立てているが、よく考えてみるとおかしな話だと、そう書いてある。東京新聞も、建設省出身の国会議員が八人いるけれども、うち六人が田中派だと書いてある。退職された増岡前河川局長も来年度の参議院選挙に全国区、恐らく田中派からだろうと報道されておりますが、立候補されるということです。私は、四十九年十二月二十三日の予算委員会の総括質問で、建設省の官庁ぐるみ選挙の疑惑をただしたことがあります。今度のこの立候補について、直接間接を問わず、建設省が官庁ぐるみの選挙と疑われるような行為は一切しないということを、ここで改めて明確にお約束願いたいと思います。
  126. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 立候補者のことは党の問題でございますから、役所の方で私があれこれ言うことはちょっとないと思います。みんな良識を持った日本人でありますから、良識の線で進んでおるものだというふうに思います。
  127. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 われわれも国民とともにこの問題、さらに監視をしていきたいと思います。  もう一つ、いろいろ建設行政の中で疑惑が生まれるのに入札問題がある。五十年の二月に、亡くなられた仮谷建設相が、疑惑を生みやすい指名入札制度を根本的に見直したい、省内に検討機関を設置すると述べられた。新聞報道によりますと、予定価格を公表するかどうかということも検討しているし、また、大きな事業を細分化して中小企業、地方企業にも契約チャンスを与えたい、また、ランクづけを緩めて中小企業にも受注範囲を広げたいということを検討したいというふうに述べられておりましたが、その後この入札制度の改善問題についてどういう経緯が、また結論が出ておりますか。
  128. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) いま先生お話しのように、仮谷大臣の指示を受けまして、省内に事務次官を長といたします公共工事契約業務改善委員会を設置をいたしまして、契約業務の改善策の検討を行っておるわけでございます。  その中で、基本的な制度に触れる問題と、それから運用の問題とあるわけでございますけれども、当面直ちに措置すべき運用上の問題といたしましては、第一番に予定価格の作成に関与した職員が建設省を退職し、建設業者に再就職した場合には、その関与した工事については絶対指名を行わない。二番目に、指名業者の選定に当たりましては、その公正を確保するため、地方建設局の中に指名運営委員会を設けましてチェックシステムをとって審査を行うというようなこと。さらに、発注工事に関連する予定価格書等の秘密文書の管理の厳正を図り、かつ機密保持に必要な限度で、部外者の設計積算の執務室への出入りを制限する等、職場における規律の保持を図る。この三点につきましては当面直ちに措置できる事項でございますので、その趣旨を管下職員に令達をいたしております。  なお、基本的な問題といたしましては、予定価格の漏洩の疑惑がないように、また建設業者の談合等についてもいろいろ御批判がありますので、予定価格の事前公表制度の問題でございますとか、談合の問題でございますとか、そういう点につきまして当委員会でもアメリカの事前公表制度を検討してはどうかという御意見もございましたので、それをも含めて根本的な制度についてはいま勉強しておる段階でございます。
  129. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私の質問の第二点の、中小企業への受注範囲の問題ですね。官公需の五〇%目標ということを首相も言われましたので、この点どうですか。
  130. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) いまの中小企業の受注範囲の拡大につきましては、本年の初頭に事務次官通達を出しまして、地方建設局長に対して指示をいたしております。で、優秀な業者に対してはランクづけを二段階上げることができますとか、あるいは分割発注を推進するとか、そういうことで、できる限り中小企業に対する受注範囲の拡大を図る措置をとっておるところでございます。
  131. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 その問題、さらに前進させていただきたいと思います。  次に、私は建設行政の中で、この田中角榮と越山会による新潟三区の公共事業の幾つかの具体的な問題をお伺いをしたいと思います。  新潟の公共事業については、もう無数に新聞で報道されておりますけれども、たとえば朝日新聞に「灰色の土壌」という連載が七月二十日から九月十五日に載りましたが、その中で、たとえば新潟三区の市町村の公共事業予算は目白の田中邸で決められ、また発表されているということが九月四日の四十一回目に報道されております。この目白の田中さんの屋敷に、新潟三区の市町村長、議会の役員、県の土木事務所長を初め、県の出先機関、県の機関、越山会の支部長、土建業者などが、田中、山田泰司秘書などと集まる。そこでいろいろな問題を決めてしまう。国の補助金なども山田秘書が建設省その他に行って取ってきて、これは一〇〇%成功しているということです。それで最終案を田中角榮案としてプリントができている。そして新潟三区の市町村の公共事業については、田中角榮案というプリントまでできて、これで決まってしまうという驚くべき事実が報道されております。こういうプリントがもし存在していたとしたら、建設省としても無関心でいられないと思いますけれども、調べたでしょうか。大臣どうですか、官房長でもいいです。
  132. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 新聞記事は私も読みましたけれども、省内においてそういうプリントがあるということは存じておりません。
  133. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう一つ、朝日新聞、九月八日に、これも驚くべきことが報道されている。いまの問題に関係しています。「公共事業の元締めである建設省は七日、これまで毎年、新潟県内の公共事業予算の配分(個所づけ)は、同省幹部が山田氏と相談して決めていた、という事実を明らかにした」、これはフィクサーによる舞台裏の取引だと、そう述べられている。わが国の最も大きな新聞の一つである朝日新聞に、建設省の幹部がこの事実を認めたと、こう報道されております。いまの問題とも関係ありますが、いかがでしょうか。
  134. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) その記事も拝見いたしましたけれども、山田氏が地元市町村長を集めて、市町村の要望を聞く会合を持たれておることは、そのようなことがあるということは聞いておりますが、いま先生御指摘の建設省幹部が山田氏と相談をして予算の配分額を決めるということは絶対にないと思います。
  135. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大臣、こういうのが敵中横断三百里なんですよ。なかなか報道され、私はいま挙げませんけれども、毎年こういうことをやっているんだ。それをもう恬として否定するじゃありませんか。こういうところを徹底的に調査しなきゃならぬ。  もう一つ、「灰色の土壌」にはさらにこういうことも書かれておる。九月七日の四十三回に、河川改修で新潟の人が——町長です——目白に頼んだ。建設省の幹部が料亭で会うという、行ってみたら河川局長以下担当課の課長補佐まで来ておるという、で、田中角榮と並んで、芸者まで来た、二次会まで行くと。この結果ちゃんと予算がついたというんです。料亭は「千代新」「木村屋」「永福」などがおなじみだと。建設省河川局長、担当課長、田中角榮と並んで酒飲んで、芸者呼んで、それで予算が出たというんです。事実調べましたか。どうですか、建設大臣、こういう問題。
  136. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) いま初めて実は聞きました。
  137. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう少し新聞を読んでほしいですね。これは事実なんだから、少なくともこう報道されている。こういうことはやっぱり氷山の一角だと思うんですね。大臣は非常な抱負を持って建設省に乗り込んで、五年間七代、田中派の大臣がずっと独占してきたところに乗り込んで、多くの疑惑が集中しておるところで、これから国民のための公共事業をやろうという決意をお持ちだと思う。こういう無数の疑惑を持たれている事実についてやっぱり明確に調査し、国会にも報告を求めたいと思います。決意をお伺いしたい。
  138. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 実は本当に知りません、その新聞というのは。前のやつは見ました。山田秘書が何回も会ったというのは、後のやつは全然……。
  139. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だれが、この河川局長だれか、これも調べてください。
  140. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) はい。
  141. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やはり私は腐り切っていると思うんですね。こういうことが平気で行われている、長年にわたって。これを直さないと国民のための建設行政できないですよ。  私はさらにこういうことの一つの例として、さらに具体的な例として北陸自動車道の問題を取り上げたい。北陸自動車道、長岡−柏崎ルートが決定されまして、いま工事中ですけれども、まずこの北陸自動車道のルート図がここにありますけれども、この中で最も湾曲しているところが一カ所ある。大体自動車道路ですから真っすぐ行くんですよ。一番湾曲している。どこで湾曲しているかというと、田中角榮の御殿のところです。そこにぐうっと湾曲して、西山部落のところのそばを通りまして、インターチェンジが田中角榮の御殿からわずか一キロのところにできている。何でこういうことになるのか。このルートはよく目白邸で決められるという話さえ言われているんですけれども。私はこの田中角榮の家の一キロのところにインターチェンジができ、こういうふうに湾曲するというふうなことは、これはとやかく言われるわけだから、絶対遠くを真っすぐ通んなきゃいかぬと思うんですけれども道路公団総裁いかがですか。
  142. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 高速道路のルートにつきましては、整備計画に基づきまして、地形、地質、用地等を考えまして、高速道路の基準に合うように、最も技術的に可能であり、最適のルートを選んでおりまして、特別のことで曲げることはございません。
  143. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 偶然なんですか、田中角榮宅の一キロのところにインターチェンジができて、大きく湾曲したのは。
  144. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 田中氏のところに近いということにつきましては、私も別に偶然といいますか、ただ、たまたまそこに田中氏の家があったということでございまして、技術的に最適のルートを選んだわけでございます。
  145. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そんなことはないですよ。たまたまそこに田中角榮宅があったと、新潟三区のところへ通るのに。いままで新幹線のルートでも、長距離高速道路のルートでも、常にこういうことが政治家の間で問題になっているのですから。これを決定されたのは四十八年四月ルート決定で、田中角榮総理大臣のときでしょう。こういう問題についても、総裁なかなか認めやしないでしょうけれども、非常に大きな疑惑があるということを国民は疑うということを指摘しておきたい。平然とこういうことをやって、もうすでに終わっちゃったと、ルートはできて工事は進んでいると。損害を受けるのは国民ですよ。  この建設工事でも、長岡では田中の側近グループの田中ファミリーのいろいろな土建業者がある。長鉄工業、中越興業、大石組、植木組、吉原組、山崎組、こういうところがずっと工事を独占するわけであります。この北陸自動車道でも付帯工事二件、たとえば柏崎の工事事務所の新築、これも大石組が取っている。大石社長というのは長岡越山会の会長であります。それから油田の道路工事、これも大石組、長鉄工業、この二つがやっぱり取っている。業者はもう入札に行きますと、五人ぐらいの業者が言うそうです。天の声が聞こえてくると、そういう感触があるというのですね。押しつけられはしないけれども、目白の声が聞こえてくるのでどうしてもここへ落ちちゃうというんですね。道路公団の中村新潟建設局長が、大石、長鉄にやらせるよう天の声があったと、そう漏らしているという話もあるのですね。地元建設業界の間では言われているのであります。こういうことの中で、私は信濃川河川敷と同じような、農民をだまして、田中ファミリーの一つの企業がやはり大もうけをしているという疑惑のある一つの問題を取り上げたいと思います。  道路公団にお伺いしますけれども、こういう場合の土砂採取で、業者が介入して不当な利益を得ることを防止し、公正なやり方を保障するために、公団が責任を持って土砂を取る山を選定し、地主と直接契約するようにしていると聞いているが、方針はどうですか。
  146. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 高速道路に多量の土砂が必要な場合がございますが、そういう場合にはなるべく良質で必要な土砂の、しかもそれが経済的に最も有利に採取、購入できるような措置をとっておりまして、個々の場合にはいろいろ差がございますが、地主と直接契約を結んでいる場合もございますし、また一団の土地で、土地の分量から申しまして多数の所有者あるいは土砂採掘権者がおる場合がございます。そういう場合には個々の所有者等と契約するよりも一括して契約した方が、土地の境界あるいは土砂の分量等の計算等もございまして便利な点もございますので、あるいは組合等をつくって、そこでその組合と契約しているという場合がございます。それは必要な土砂の分量と、それに関連する土地所有者等の人数の問題でございます。
  147. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 業者が不当に介入して、不正だとか、あるいは虚偽に等しい内容のいろいろな契約その他を結んでいる場合、それがわかったら公団としてどういう責任をとり、どういう方針で臨んでおりますか。
  148. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) われわれは最も公正な方法で仕事をするのは当然でございまして、組合の代表の方と契約いたしますけれども、その場合に、その当該組合はもちろん有効に、合法的に、円滑に運営しておるということで、その組合と契約しているということでございます。
  149. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それに不正があった場合、それが判明したらどういうふうにするかということであります。どう責任をとるか。
  150. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 不正という言葉でございますが、違法なことがあれば、もちろんわれわれは違法のもとにした組合とは契約できませんけれども、内部関係の問題につきましては、組合の中でいろいろ御意見のあることは間々あるように聞いております。
  151. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 長岡市の大積土取り場の場合、どうなっていますか。相手の組合、それからこの組合との契約内容、これについて御説明ください。
  152. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 当該地区の土砂につきましては、土地所有者と土砂の採掘権を持っておる者とが合計たしか十一人おりまして、それらが組合をつくっております。われわれのところでは、その組合も有効であり、内部について特別に問題がないと思っておりましたが、先般新聞で若干地元の中で意見があるように聞いておりますが、まだわれわれの調査では違法であるとか、あるいは不正であるというふうには承知しておりません。
  153. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 契約高、それから土砂の採取量、言ってください。
  154. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 土砂は百六十万立方メートルを契約いたしましたが、その価格は一億六千八百万円でございます。
  155. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 組合長はどういう方ですか。
  156. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 組合長は細川一という人でございまして、中越興業の社長と聞いております。
  157. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 組合長は細川一氏で、長岡市の越山会の副会長、中越興業、田中ファミリーの社長であります。この組合は、先ほど十一人組合員がいると言われましたけれども、この十一人の組合員は実は名前だけで、すべてこの中越興業に山あるいは土砂をすべて売り渡している農民、地主ばかりであるというふうに思いますが、事実、御存じですか。
  158. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) われわれのところで知っている限りにおきましては、土地の売り渡しはしておりません。ただ、内部の組合の関係でしょうか、土地の、土砂の売買等について委任をしておるように聞いております。
  159. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは違います。この組合員の委任状十二通、ここにあります。公団から私どもいただきました。これは土地の売買その他契約交渉、契約締結に関する一切の件、請求及び受領に関する一切の件、跡地整備その他一切の件、その他土砂採取に関する一切の件を中越の社長の細川一さんに十二人の地主が委任したものです。しかし、この十二人の地主はすでに中越興業に全部土地あるいは土砂をもう売っちゃっているんです。  ここに十二人の一人、この中の幹部である太田文善氏の土砂売買契約書、私どもこれ持っております。これは本人の太田さんから見せてもらいました。これによりますと、この太田さんは七千二十六平方メートルの山を七十万二千六百円で土砂採取料、全部売っちゃっているんです、土砂を。だから、全部これ売り渡している人ばかりなんです。そうすると、十二人組合員がいても、すべての委任状をもらって、しかし委任状を渡す人は何の権利もないんですから、土砂をこの中越興業に売っちゃっている。結局、この細川一氏一人であるという事実が明白であります。この細川一中越興業が、この地域の当該のところを一体どのぐらいで土砂あるいは土地を買っているか御存じですか。
  160. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) それはわれわれ承知しておりません。
  161. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この太田さんの契約でも明白なんですが、山を一平方メートル当たり百円で買っている。山を面積で買うわけですね。大体これ十ヘクタールから十三ヘクタールぐらいありますから、約一千万円で彼は買った。先ほど申しましたように、公団は約一千万円で中越興業が買ったところに一億六千八百万円払う契約を結んでいるのであります。差額は、たとえ銀行から一千万円借りるのの金利その他数えたとしても十五倍、十六倍で中越興業が買ってしまったと、物すごい暴利をここで彼らが得ようとしている。こういう事実、御存じですか。
  162. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) 一千万円という額は私初めて聞きましたが、われわれといたしましては組合の内部のことはよく承知いたしませんでして、ただ、当該土砂でございますが、わが高速道路のために使う場合に妥当な価格として一億六千八百万円支払ったわけでございます。
  163. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、あなた方の価格が高過ぎるということを言っているのじゃないのです。いつ、この土取り場大積の場所を決めましたか。
  164. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) 最終的に決定いたしましたのは五十年の三月でございます。
  165. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 最終的にそうでしょうが、現地の柏崎の建設局が大体ここに決めたのはいつごろですか。
  166. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) 土取り場を決めましたのは五十年三月でございまして、その前に私たちは長岡−柏崎間の必要土量のための土質調査を行っております。客土のための土質調査を行っております。この間、長岡−柏崎間で約二十六カ所について候補地を探す。そのうちさらにそれを厳選して約七ヶ所の土質調査、それでさらにそこで土質調査、いわゆるボーリングを行っている。全部で二十六本ばかりボーリングを行っている。その中にたまたまいま先生御指摘の大積という個所がございます。ここでは六本のボーリング。ボーリングをやった時点は四十九年の十月から五十年の一月、こういう時点にボーリングをやった。そのときにはいまの七ヵ所のものを同時に調査をした。その土質調査の結果に基づきまして、やはり一番適当であろうと思われるのがこの大積だということで、大積を大体私たちが決めましたのは五十年の二月の末から三月の初めにかけてでございます。その時点で土地の関係者方々にお集まり願って、これは町内会長あるいは農家組合長、こういうふうな方々、それからその中にもいま一部、その中で中越興業がかなりの土地を持っております。選定した中の約四一%程度というものが中越興業すでに地主でございまして、それで地主も集まっていただいて、そこで土取りの計画説明した、それが三月でございます。
  167. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 四十九年の八月末にこの中越興業の佐藤常務が先ほど挙げた太田さんのところへ飛び込んできた。三島谷がだめになったと、大積頼むと言って土地の買い占めを始めた。中越興業は最初三島谷というところでそこを買い占めた、そこが当たるだろうと。それが違って大積になるということになって、だめだと、大積頼むといってここへ来て、八月末から九月、十月、翌年の五月に最後の一人が売りましたけれども、この間に約二十人の地主から、公団が土を要るのだ、だから全部売ってくれということで、まるで公団の代表者のような顔をして山の面積、平米当たり百円で買っていったわけです。ですから、いま四一%と言われましたけれども、実際にこの契約書を全部そろえてごらんなさいよ。全部中越興業の物になっているのです。農民はこれもやっぱり河川敷の場合と同じなんですが、本当に純朴でこういうふうにだまされると毛頭思っていないのです。公団が要るんだから、じゃ公団の代表なんだろうというので、恐らく。で、先ほどの説明会、これは三月に三ッ郷屋という温泉場でやったのですね。この温泉でやはり中越興業の人も公団の人も来て説明会があるというので、大体そう思って売っちゃうわけですね。  それで、山の値段としても一平方メートル百円というのは非常に安いのです。いま長岡ニュータウンであの近くの山が買われておりますけれども、これ大体六百三十円なんですね、最低のところで。山の面積で買って、実際には公団は土砂で買うのだから、それで一平方メートル百円で買ってもそこから土砂が物すごく取られるし、一億六千八百万円という値段がつくわけです。いまやはり農民は非常にだまされたと口々に言い始めている。これは驚くべき事実だと私は思うのですね。それでこれは、こういう方法は、たとえば同じ北陸自動車道でも油田の場合ね、この場合にはこういう業者の介入がなくて、ちゃんと土地利用組合で地主がみんな公団に売って、三百万立方メートルの土砂を売って三億八千万円の契約で進んでるわけですね。その三億八千万円を、過疎の自分たちのふるさとをよくするために道路を引いたりいろんなことをやっている。ところが、同じ公団が、この土取り場で大積の場合には農民は何の権利もない。あなた方が払う一億六千八百万円はそっくり田中ファミリーのこの中越興業のふところに入ってしまう、土砂運搬も全部この中越興業がやっているんですよ。これは全く私はとんでもないやり方だと、そう思わざるを得ませんが、そういう問題についてはっきり再調査されますか。
  168. 吉田喜市

    参考人吉田喜市君) ただいま先生から御指摘がありました、いまの大積の土取りの問題でございますが、ここでは百六十万の土を使うと、こういうふうな予定でわれわれは土取り場として選定をしたわけでございます。現在までそのうちの約三十三万という土を使っておりますが、その単価の、いま一億六千八百万というのは全部の百六十万の土を搬出したときの値段でございまして、その中には当然単価としまして、土砂代それから地山の物件の上物の補償代、それから将来いわゆる何といいましょうか、一切の損失補償と申しましょうか、そういうもの。あるいは将来の整地した、土取りの跡の整地、それからのり面の始末あるいは排水溝、こういうものが全部その単価の中に含まれております。そういうものをいま大積馬平地区土地利用組合というものをつくって、その組合長がたまたま御指摘の細川一さんでございますが、そこでその利用組合があとは全部そういうものを整正をするという姿でございまして、いま油田の場合でも全く同じ姿になっております。
  169. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、そういうことを言われているんだからだめだと私は言うんです。現地の農民に行って聞いてごらんなさい。この土地利用組合を結成したというけれども、いつつくられたのかも知りません。だれも。組合長がだれかも知りません。組合の規約、私ここに持ってきておりますけれども、いまだに一度も総会も開かれていない。会計報告も行われていない。全部判をついて、十二枚の委任状を取っている。取っちゃったわけです。だから、法律上あなた方に委任状がありますといって出すでしょうけれども、実体は何もないんですよ。これは中越興業の細川さんが組合長で、たった一人でしょう。中越興業がやっているんです。事務所も中越興業に置かれている。この中越興業という会社は、例の室町産業と大体ほぼ同じメンバーでやっている田中ファミリーの一社であります。重役風祭康彦、田中角榮氏の義弟です。片岡甚松、越後交通の社長であります。先ほどの大石組の大石三男次氏ですね、これがやっぱり長岡の越山会の副会長。そういうメンバーが中越興業というのをやっていて、それで公団が大積に決めそうだと。これは私も地位利用で大体これもおかしいと思うなあ。早くニュースを聞くわけですよ。それで、さっと行ってそこを全部買い占めるわけです、農民、地主をだまして。それで、みんな買ったと、みんな売ってくれたと、おまえだけ残っているという形で、札束を見せて追い詰めていくわけです。最後までがんばった一人の人は翌年の五月にとうとう売ってしまった。約二十人の農民が全部土地あるいは土砂を売らされる。  そして、あなた方公団に対してはこういう委任状を出して、あたかも土地利用組合があるかのような顔をして約一千万円で買って、それで上物のようなことや何かおっしゃいますけれども、そういうものを全部入れても恐らく一千万円足らぬでしょう。そうすると、少なくとも一億円以上の金、暴利がこの手に入るということになっておる。これはあなた方が本当に土地利用組合をつくって、その地元のためにもなるようにというふうな方式をつくっても、決定のニュースが早く田中派のルートを通じて業者に行き、それで全く信濃川河川敷と同じように、ほとんど詐欺同然のやり方で農民や地主をだまして莫大な利権を入れるということになっているんですね。私は、きょうの御答弁はどうも事態をよく御存じない、現地へ入って調査してくれることを求めたいと思う。  現地を調べて、私たち共産党、これは現地を徹底的に調べて、その根拠に基づいてきょう質問しているんですけども、私たちの言ったとおりの事実があった場合には、これについてやっぱり地元にたとえば道路をつくってあげるとかいうことを中越興業にやらせるとか、こういう不正な不公正なやり方を責任をとらせる責任が道路公団にもあると思いますけども、この点再調査、事実が明らかになった場合、そういう措置をとらせるという決意、方針をぜひお伺いしたいと思います。これは総裁にお願いします。
  170. 前田光嘉

    参考人前田光嘉君) われわれは土地利用組合と話を進めてまいりましたが、ただいまお話しのように利用組合の内部関係で問題があるといたしますならば、今後さらに調査を進めまして、適切な措置をとるように組合に対しましても指導したいと思います。
  171. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 建設大臣、お聞きのとおりです。この土地利用組合は全く幽霊組合です。田中金脈問題で幽霊会社いっぱい出てきましたけども、今度また幽霊組合が出てくる。これは関係農民二十名ぐらいで総額も一億数千万ですから、意外にいわゆる田中金脈の中では小さいものかもしれませんけれども、新潟三区での公共事業建設事業での彼らのやり方の私は氷山の一角がここに示されていると思います。私は監督官庁として建設省がいまのような具体的な事例に対して、やっぱり公団に対しても適切な指導をなされるよう監視も怠らないようお願いしたいと思います。
  172. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 聞くところでは、不正な行為ではないけれども、もし事実であれば多少行き過ぎであるという感じがいたしますから、直ちに公団に対しましては調査を要求します。
  173. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは、厳重な調査をしていただいて、この委員会報告していただきたいと思います。  次に、私は最後に、先ほども触れました信濃川河川敷問題、これを取り上げてお伺いしたいと思います。私自身、一昨年の十一月八日に決算委員会でこの問題を取り上げ、同僚議員も取り上げて、その後田中金脈の中でも最大の問題として国会でもずっと問題になってまいりました。その中にはたとえば堤防建設をめぐる疑惑、長岡大橋や国道八号線バイパスの建設計画を前もって田中角榮が知っていて、あの土地を買い占めたという疑惑、それから当時の橋本登美三郎建設大臣が国会で、あれはかすみ堤で本堤にしないという、後でうそになった答弁をしたという疑惑の問題、さらに建設省計画変更をめぐる経過だとか文書の決裁、保管、こういう問題についての疑惑が生まれ、いま衆議院の予算委員会の小委員会がつくられて問題を追及していることは御存じのとおりであります。これはやはり建設省の姿勢が問われている大きな問題だと思いますが、私はこれまで国会で取り上げられていなかったもう一つの新しい疑惑として、河川法改正をめぐる問題をお伺いしたいと思います。  まず、河川局長にお伺いしますが、河川法の改正作業はいつごろから始まったでしょうか。
  174. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) はっきり記憶しておりませんけれども、大体三十七年ごろから改正の検討が始まったというふうに思います。
  175. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 三十七年の九月末ごろ改正作業が始まったと言われております。田中角榮が大蔵大臣に就任したのは同じ三十七年の七月であります。大体彼が大蔵大臣になったころ河川法の改正作業が始まった。河川法は三十九年六月に改正成立いたしますけれども、御存じのように抜本的な大改正でした。この改正作業に当たって政府部内でもかなりいろんな論議が行われた。大蔵省、自治省、建設省の間で国の管理権、廃川敷地の処分権限、帰属問題などについていろいろ論議があったと言われております。そこで、廃川敷の処分権限、廃川敷地の帰属などについて旧河川法と新河川法の相違点、それからまたこの中で自治省、大蔵省、建設省の間で論議があったか、どういう論議があったか、こういうことについてお伺いします。
  176. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 廃川処分の権限につきましては、旧河川法におきましてはすべて都道府県知事でございましたけれども、新河川法におきましてはいわゆる河川管理者というふうになったわけでございます。旧河川法におきましては、いわゆる河川敷地は私権の対象とされていなかったわけでございます。したがいまして、廃川処分をするに当たりましても敷地の権利の帰属を定める必要があったわけでございます。河川の管理は原則としまして都道府県知事が行っていたというところから、廃川敷地の帰属は原則として都道府県というふうにされていたわけでございます。ただ私人に下付すべき場合、あるいは御料地、国有地とする必要がある場合を除いておりますが、一般的に都道府県というふうに廃川敷地の帰属はなっていたわけでございます。それが現在の河川法におきましては、河川敷も私権の対象とされているところから、いわゆる国有地である廃川敷地、これは私人に下付する場合を除きますけれども、国有地である廃川敷地につきましては国に帰属するということにされたわけでございます。しかしながら、都道府県知事が河川管理者である二級河川につきましては、原則として都道府県知事に譲渡することができるというふうにされております。一級河川におきましても、都道府県が維持保存の費用を負担している場合におきましては、いわゆる国有財産法の規定により都道府県に贈与されることがあるわけでございます。それで、この河川法の改正におきまして、いわゆる廃川敷地の帰属を旧河川法と同様にすべて原則として都道府県とすべきであるという意見もあったわけでございますけれども、一、二級河川の区分による河川の性格づけ、すなわち一級河川は国で管理すると、二級河川は都道府県が管理するという河川の性格づけ等の関連性もありまして、いわゆる現状のように定められたわけでございます。
  177. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 御存じのように、信濃川河川敷問題というのは、民有地、九条地を停止条件つきの契約で室町産業が農民から買い占めると。堤防ができ、ああいうふうになって廃川敷処分が行われると、停止条件つきが解除されて自動的に室町産業の手に入るという事件であったことは御存じと思いますけれども、旧河川法のままだったらこういうやり方は不可能であったと思いますが、いかがでしょうか。
  178. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 旧河川法におきましても、あるいは九条地の場合につきましては、現在と同じようにいわゆる旧地主に廃川処分されるということでございます。
  179. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 先ほど河川局長言われたように、私権の設定が旧河川法においては第三条で流水並びに河川敷でできないということになった。今度は新河川法で流水の部分だけ私権設定できないということになって、河川敷について民有地——大蔵省のこれは強い要求で私権の設定かできるようになったということですから、九条地以外の民有地のああいう買収ですね、そういうことば旧河川法のままではそれを室町産業が取り入れるということはできなかっただろうと思いますが、いかがですか。
  180. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 旧河川法におきましては、九条地と、いわゆる国に帰属した河川敷地の認定ですね、これは民有地の場合を認定した場合の九条地になって、その九条地がいわゆる廃川処分になった場合には旧地主に返るということでございまして、河川敷地内における民有地というものは河川敷認定してなかったということでございます、それは。
  181. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり、この新河川法への改正で、まず第一に廃川敷処分の権限が知事から国に移ったわけですね、建設大臣に一級河川として移った。それから国有地の払い下げも可能になり、また民有地の買収が可能になった。また、九条地もこれは前と引き続き同じようだ。で、もとの所有者への処分ということは認められるということになった。そういうことで、新河川法の改正によって室町産業のあの膨大な農地を買い占め、しかもうまくいけば国有地の払い下げ処分までねらうというようなプランが可能になったということは私は法律上もう明白だと思う。この新河川法が三十九年六月に成立しました。衆議院を通ったのがたしか四月であります。この新河川法の成立が大体見通しのついたころ、三十九年の夏ごろから室町産業の土地買い占めが始まるのであります。こういう点を見ても、この室町産業、またそのバックにある田中角榮の信濃川河川敷の買い占めについての大蔵大臣としての地位利用、私は新たに疑惑が加わったということをここに指摘せざるを得ません。  もう時間がなくなりましたので、建設大臣にあと二点この問題に関連してお伺いしておきたいと思います。信濃川河川敷問題について仮谷建設大臣は、小林長岡市長、入内島室町産業取締役、田中角榮の三者で公共利用について合意した、その方向に沿って行政指導してきたという答弁をしたことがあります。   〔委員長退席、理事沢田政治君着席〕  建設大臣にお聞きをしますけれども、この行政指導について、その後仮谷建設大臣以後の、あるいは竹下大臣から引き継ぎを受けているかどうかお伺いいたします。
  182. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 全く引き継ぎもないし、聞いておりません。
  183. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 御存じと思いますけれども、この衆議院の小委員会の答弁で、あの膨大な土地を公共利用するというけれども、長岡市に渡してもいいと言っているのは、長岡市が必要な土地ということになっていて、竹下建設大臣も、全部じゃないんだ、だから残りは室町産業が普通の民事上の手続で処理できるという答弁をされております。そうなりますと、問題の廃川敷処分をもし建設省が行ったならば、そのうちの一部は公共利用になるかもしれないけれども、残りの部分については室町産業の手にそのまま渡ってしまうと。それで、国民があれだけ大きな疑惑を持ったこの信濃川河川敷の膨大な土地とその利権が、田中ファミリーの一つである室町産業の手に移ってしまう疑惑があるわけであります。大臣はいま何らの引き継ぎも受けてないと言われましたけれども、この問題について新しい建設大臣としてどういう処置をお考えになっておりますか、お伺いしたい。
  184. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 私は、就任以来災害その件非常に多忙なものですから、まだこの問題については検討したことありません。ただ、こういう感じは持っております。本来行政庁が専決処分すべき問題、また専決処分できる問題を衆議院の予算委員会にわざわざ小委員会を設けられた、また参議院におきましても、決算委員会が満場一致、新建設大臣に対して慎重に対処せられたいという文書による申し込みを受けておるわけであります。でありますから、事はきわめて重大でありますから、軽々にはなかなか処理はしないという気持ちを持っております。
  185. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 軽々に処理をされないという方針を聞いて、私はそれを評価したいと思いますが、大臣御存じと思いますけれども、この問題については二人の農民が室町産業にだまされたということで、越山会のあらゆる圧力に抗してですね、あの契約はやはり詐欺に基づくものだ、公序良俗に反するものだ、あの土地は私たち農民の手に返してほしいというので行政裁判を起こしております。まあかなり長い訴状がありますけれども、この中にもこの問題の経過のすべてが書かれておりますので、大臣はこの問題を検討されるとき、この二人の農民が起こした行政訴訟の訴状そのものもぜひ検討していただきたい、こうお願いしたいと思います。
  186. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) いまの治水五カ年計画災害復旧がありまして、検討する時間が果たしてあるかどうかという気持ちでございます。時間的になかなか多忙でございます。
  187. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いま軽々に取り上げるつもりもないし、時間的に非常に多忙だとおっしゃいますけれども、だからそういう時間的な余裕ができて、この問題を訴状も含めて新しい立場でよく調査して、その上で建設省の方針を決めていただきたい、世論に沿って決めていただきたい、そういう要望であります。
  188. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 私もそういたします。
  189. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題は、大臣よく御存じのように国会でも決算委員会建設委員会予算委員会などで何回も取り上げられた問題であり、三木首相が御自分の決裁の形でこれを処理するという答弁があった問題であります。そのために衆議院予算委員会の小委員会が持たれまして、その論議もいまだに続いているわけであります。さらに当参議院においても、参議院決算委員会でこの問題の疑惑を解明すべきだという全党一致の要求があります。そこで、昨年六月の参議院本会議における警告にもこの問題が入っていることもよく御存じだと思います。そういう点を踏まえて、院の決議、そういうものを踏まえ、それから国民がこの信濃川河川敷に対して持っている大きな疑惑と批判の世論、こういうものをよく受けとめて処理することが私は大前提だと思います。  これだけ大きな問題になった金脈事件なので、この問題について悔いを千載に残すような処理をもし建設省が行うとすると大問題になる。これは一度新聞で報道されまして、その後国会で追及されて、竹下前建設大臣は取り消しましたけれども、   〔理事沢田政治君退席、委員長着席〕 竹下氏はことしの中ごろ、専決処分で廃川敷処分を行おうとするという報道が新聞に載ったことさえあるわけであります。これまで建設省は、この室町産業の買い占め問題が取り上げられると、民間の売買問題で建設省は関知しないというような態度をとったこともありました。しかし、この公共利用問題になりますと、先ほどの、仮谷大臣のように、行政指導だというようなことを言い、非常に矛盾した、あるグループに都合のいいような答弁が行われておりました。私は、こういう疑惑を絶対起こさずに、この問題を、すべての疑惑が解明された後に廃川敷処分に手をつけるべきだ、それまでには悔いを千載に残すような処分は絶対すべきでないということを考えておりますが、最後建設大臣のこの問題についての決意を重ねてお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  190. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 私もたまたま選ばれて建設大臣という重職を仰せつかっておりますから、悔いを千載に残すことはしないと、こういう決意を持っております。
  191. 春日正一

    春日正一君 今度の水害、非常に大規模で、根本的に議論しなければならぬ問題たくさんあるわけですけれども、限られた時間の中で、この間、長良川も見てきましたから、そういうものを主にしながら幾つか質問をしたいと思います。  最初に長良川治水対策の問題ですけれども、一級河川で、その中でも特に安全と見られておった長良川の本川の堤防計画水位以下で切れたということで、これについての批判というものは非常に強いものがあります。だから、それについて建設省はどう考えておいでか、ここを聞かしていただきたいと思うのですが。
  192. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 今回の長良川の破堤でございますけれども、いわゆる水源、上流域に千ミリ以上の雨が降った。そのためにいわゆる計画水位に近い高い水位が三回にわたって長時間続いたということが一つあります。それからもう一つは、岐阜地先におきましてやっぱり八百ミリ以上の雨が降った。そういうふうな異常な気象現象が重なりまして、長良川全川が、揖斐川も含めまして、非常に危険な状態になったわけでございます。そしてたまたま、本当に気の毒なことでございますけれども安八地先が破堤したということでございまして、これは洪水の大きさからすれば、計画水位よりか小さい洪水でございましたけれども、いわゆるそういう洪水のパターンといいますか、雨の降り方、あるいは洪水継続のパターンでございます。そういうものを含めますと、やはり数百年に一回の洪水のパターンになるのじゃなかろうかというふうに考えられます。
  193. 春日正一

    春日正一君 それで、数百年に一遍の洪水だからということで、外的要因でだけ片づけていいものかどうか。私、一つ問題を出したいと思うのですけれども河川改修の基本計画の中で計画流量とか計画水位とかいうようなものがきちっと決められますね。高水位が決められたら、そこまでは水が来るもの、水が来ても堤防はもつものと、これが前提でしょうが。ところが、それ以下の水で切れたということになると、一体どういうことになるのか。長い時間、たとえばいままでかってない七十八時間ですか、長い時間水が続いたという。しかし、そういうことは基本計画には書いてないですね。八十時間続こうが、百時間続こうが、とにかくここまではもつのだというのがたてまえでしょう。そこに盲点があったのじゃないですか。
  194. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) いわゆる堤防の強さというものは、普通の正常な洪水流れにおきまして、いわゆるハイウォーターまでは確保するということでございます。しかもそれは堤防が完成した場合におきます——堤防か完成と言いますのは、護岸もでき、すべてできた場合におきます一つのめどでございます。それで、今回のような洪水のパターンというものは特に異常な現象でございまして、また新しくこういう実例を踏まえまして、また堤防の断面がどうあるべきであるか、その点もまた検討してまいりたいというふうに考えております。
  195. 春日正一

    春日正一君 この堤防が護岸もしていない、それから高さはあったけれども、厚さが五メーターほど足りなかったというような不十分な堤防だったという面が一つあります。  この問題は後で私は問題にしますけれども、その前にもう一つ、やはり先ほど来ほかの委員からも意見が出ていますけれども、砂の堤防であって、もろかったのじゃないかとか、いろいろ言われておるのですね。そうしますと、やはりこれから基本計画をつくっていきます場合、単に堤防断面がどれだけで、高さがどれだけというだけではなくて、やはり水が何時間続いてももつというような、あるいは何時間——せめて予想し得る時間ですね、今度の場合みたいに、そのくらい続いてももつ程度の施工をしなければならぬというような、やはり水にもつ時間の規定もきちっと計画に入れて、それに沿うようなものをつくらせなければ、高さだけできたって、水が百時間つきましたから崩れましたというようなことを言っておったら切りがないです。だから、そういう点をやはり改善していく考えがあるのかどうか、ぼくは必要だと思うのだけれどもね。
  196. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 先生がおっしゃいましたように、ああいうふうなパターンの洪水におきましても堤防がもつようにいろいろ検討してまいりたい。その場合に、堤防のもつ大きさから言えば、土堰堤みたいな物すごい、いまの堤防の何倍もの堤防をつくらなければならなくなるおそれもあるわけです。ですから、そういう場合、また別の方策でそれに対応できるかどうか、その辺も含めまして、水と土の関連というのは非常にむずかしい問題でございますので、土木研究所を主体としまして、また実験なども踏まえて、慎重に鋭意検討を進めてまいりたいというふうに考えます。
  197. 春日正一

    春日正一君 私が言いたいのは、そこがいま一つの盲点になっているし、議論の重点になっているわけですな。建設省の方では、確かに水は計画水位までいかなかったけれども、しかし長い時間、しかも三波も四波もピークのあるような出方をしたから崩れたんだと言っているけれども、そうすると、そういうものに耐え得るというような堤防の強度、構造自体について考えてなかったのか、高さだけあればよかったのかという批判が出ておるわけです、現に。だから私は、そういうものにこたえるためにも、基本計画をつくるときに、やはり堤防の、その河川に予想される出水なり状況なりについて、今度のような新しいタイプが出たわけですから、耐えられるようなものをつくるというようなものを入れませんと、やはりそこが盲点になる。規定どおりつくっても壊れたということになるわけですから、それを言っているわけです。その点は十分検討して、そういう盲点をなくすようにしてほしい、これを希望しておきたいと思います。  それからもう一つは、治水対策のおくれという問題ですね、さっき出た。確かに安八決壊個所は、先ほど来も指摘があったように、暫定堤防でもって毎秒七千五百トンに耐える堤防よりも五メートル厚さが薄かったという問題があるわけですね。ですから、五メートル厚くしておけばもったんじゃないかという意見もあるわけですよ。確かに、もったかもたぬか別として、そうなってないんだから、あるべきものが——そういう批判がある。そこへもってきて護岸がしてないという問題があるんですね。だから、これは護岸をしなきゃならぬし、厚くしなきゃならぬということはもうわかっておってできなかったということは、結局あれでしょう、長良川の直轄河川計画が遅々として進んでないということの証明でしょう。  たとえば明治以来の投資額三百億、戦後最大洪水対応として残高が千二百四十億、年間事業費が五十一年度で二十四億、これで割っていくと五十年かかるんですね。五十年の間には河川の流況また変わりますから、それじゃ追っつかないということになるというようなことになると、見込みがつかぬというほど実際おくれておる、整備率一九%、護岸の率が三十数%というような。そうすると、一番大事な問題だけれども、やはり事業費を思い切ってつける、予算をふやすということをやらなければ、いろいろ議論してみてもそれを生かしていくということにならないんじゃないか。そういう問題があるんですけれども、その点、今度の災害を踏まえて、本当はこれ大臣に聞きたいんですがね、一体建設省としてどう考えておるのか。特に来年度予算に対してどうするのか。その辺をはっきりさしていただきたいんですがね。
  198. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 長良川につきましては、いわゆる三十四年、三十五年あるいは昭和三十六年と三年続きまして大きな水害があって被害を受けたわけでございます。したがいまして、建設省としましても、この長良川につきましては予算を集中してつけておった次第でございます。しかしながら、今回の水害でああいうふうに本堤が切れたということにかんがみまして、さらに長良川の——揖斐川も含めまして、この改修促進を図ってまいりたいと、鋭意努力してまいりたいというふうに考えます。
  199. 春日正一

    春日正一君 この問題、後でまた国土庁長官にもお聞きしますけれども、次に、あの破堤した個所の外側というか、あれは内側になるわけですね、堤防の。内側でもって例のガマというのがたくさん出るというので、私現場を見てきましたけれども水位が上がったときに噴き出す一つの漏水現象だと思うんですけれども、ああいうものについて、地元の新聞なんかでは、ああいうガマがずっと下から浸透していって、そういう結果、一定の限界に来ると堤防をゆすぶるようなそういう変化も起こすんじゃないかという議論もしておる。  そこで、ガマというものが一体どういう現象なのか、あるいはどういうふうにしてそれを防ぐことができるのか、あるいは堤防との関係でどういうものなのかというような点、建設省いままでのところどういうふうに理解しておいでですか。
  200. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) ガマの現象でございますけれども、これは長良川水系の非常に多い現象でございます。この現象につきましては、堤防基礎地盤の漏水というものが原因と考えられます。それで、いままでもその機構につきましていろいろ調査を行ってきたわけでございますけれども、そのガマの現象がいわゆる地下で生じておるということ、また地形、地質、地下水等関連する要素が非常に多いため、現在のところ完全にその現象を把握することがなかなか困難でございます。しかし、今後ともこのガマの現象につきましてさらに調査を進めていきたいというふうに考えます。それで、漏水のこういう機構、ガマの機構につきましてまだ完全には把握されておりませんけれども漏水を減少させる対策でございますが、いままでに高水敷の造成とか、あるいは矢板の打ち込み、堤防裏側の押さえ盛り土というもので対処してきた次第でございます。
  201. 春日正一

    春日正一君 この間行ってみた時点でも、まだ原因とかその仕組みははっきりしていないというようなことで、地元では何とかしてくれという要望が非常に強い。あそこへ鋼矢板を打ち込んでみようというような話もあったけれども、しかし、とにかくこの仕組みがわかって、それと堤防との関係がはっきりしませんと、いま締め切って、また本堤工事をやると言っているけれども、やはりそこにそういう弱点が残ってしまう。そういう意味では、これはやはり早急に解明して、堤防との関係をはっきりさせて解決していくという努力をしてほしいと思います。  そこで、もう一つ感じた問題ですが、一つは、木曽川の維持管理問題というのですか、この点にかなり問題があるのじゃないかという感じをしてきたわけです。たとえば今度の決壊でも、あそこの切れた個所というのはA、B、Cという危険度の順位のCというところですね。やや危険な個所ということで、建設省報告を見ても、中部地建の。もっと上流の方に自衛隊も警察も行っておって、下流は民間の防衛でやっておった。まさかここが切れるとは思わなんだというような状況のところが切れたというのですね。それについて、やはりもっと除草をきちんとやって、冬になる前に除草をして根を張らせる、で、堤防を強くする。それからまた出水期前に除草をして、亀裂とか漏水とかいうものを早くわかるようにするというようなことをやっておけばという声が地元で非常に強いわけです。安八町の助役なんかは土地の新聞でこう言っていますね。建設省は、土砂を取るな、ごみを捨てるなということは盛んにうるさく言うけれども、しかし、堤防の草刈りやのり面を芝生で張るというような大切なことを忘れておる。出水のときにも連絡しなければ職員が来ない、これでは不安だというようなことを、あそこの助役さんは地元の新聞に意見を発表しているのですね。だから、そういう意味でも、やはり本当にちょっと考えれば常識的な堤防の草を刈り、そして堤防を監視して、そしてそういう欠陥があるかどうかを絶えず見て回るというようなことがやられていないという点で、これは一体どういうことなのかというふうに疑問に思うわけです。何でそれがやられていないのか、一体予算がないのか、そこらの辺を聞かしてほしいのですが。
  202. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 堤防の草刈りにつきましては、建設省におきましても重点を置いてやっておるところでございます。それで、直轄河川におきましては年に二回あるいは年に一回というふうにできるだけ出水期の前に一回刈るということで、堤防の管理につきまして手当てしておるわけでございます。それでまた出水期直前におきましては、いわゆる堤防の問題とか、あるいは水門とか、そういうふうな点検をやはり県と一体となってやっておりまして、河川管理施設の維持管理の万全に努めておるという次第でございます。
  203. 春日正一

    春日正一君 まあその点が、草刈りという問題でも現地の人はよく見ておるのですから、一番そこをやはり問題にしておる、非常にできていないということで。私はあそこを見せてもらった限りで、そのほかにもやはり管理上絶えず巡回し、見て、手直ししていく必要があるというものが幾つかあるという感じがしてきたわけです。たとえば武儀川と長良川の合流点で堤防の基礎がえぐられておりますけれども、ああいうところとか、もっと下流になりますか、芥見というところでやはり堤防の基礎かえぐられて——えぐられる寸前までいっている。ああいうところへ行って土地の人に聞きますと、やはり流れがこう変わってきているんですね、だんだん。変わってきておっかない、おっかないと思っておったら、大水が来てがっとえぐられたと、そう言うんですよ。だから、ああいう河川ですから、当然まあ大水出なくても、ある程度水が出れば土砂が流されて流路が変わってくる。少しずつ変わっていくのを事前に、早期に気がついて、そういうところのしゅんせつでもやって、流路を一番安全なところにしておけば、大水が出たときにやはり一定の防護の役割りは果たすと思うんですね。ところが、それが自然に任せておいて、流路がもうずっとこっちへ来ておったところへ大水が出たものだから、えぐられるというようなそういうことが起こっておるわけでして、そのほかにもまあ河川敷内に木が茂ったりなんかして、それがやはり流れをせきとめるような役割りをするというような面もある。だから、そういう意味で言えば、さっきの草刈りの問題もありますし、同時に河川のそういう流況を絶えず見ているとか、それからそういう木が大きくなっているようなところは、私は全部切れとは言いませんよ、切らないでおいた方がいいところもあるから。しかし、治水上必要なところは切るとか、そういうような手当てをどうしてもする必要があるんじゃないかというふうに思うんですけどね、そこらの点どうなんですか。
  204. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) まず、急流河川におきますいわゆる水当たりの問題でございますけれども、これは非常に洪水によって水当たりの個所が変わったり、非常にむずかしい問題でございます。しいしながら、先生おっしゃいますように、いわゆる出水期前にはその点も十分見て、手当てできるところは手当てするというふうに今後とも持っていきたいと思います。また、いわゆる高水敷の中の立木の問題でございますけれども、いわゆる官地などにおきましては、流心ぶといいますか、特に必要な個所から切っていきたいと、民地におきましてはいわゆる補償の問題とかまたいろいろのことが絡んできます。しかしながら、今後はやはり水上の特に急ぐところにつきましては、できるだけ地主さんと一体となってそういうものに対処してまいりたいというふうに考えます。
  205. 春日正一

    春日正一君 いろいろ具体的には問題はあると思いますがね。たとえば民地でも、行ってみたところで、河川敷の中に桑畑があって、養蚕やらなくなったせいか桑の木がぱっと大きくなっていますよ。こんなものは養蚕に使ってないに決まっているんだから、それはよく話せば切るということに同意するだろうと思うし、そういう問題あると思うんです。  そこで問題は、さっき安八町の助役が言ったように連絡しなきゃ来てくれぬと、なかなか回ってくれぬという問題ですね。これはやはり監視の人員が足りないんじゃないかなと。一体建設省としては、その一定キロについて監視の巡回の人間が何人というようなことは決めておいでなんですか。
  206. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) まあ何キロに何人と、巡視員が何人ということは決めておりませんけれども、出張所が川筋に——まあそうですね、事務所によって違いますけれども、二十キロあるいは十キロ置きに出張所というものはできておるわけでございます。それで、出張所の職員が絶えず日常巡視しておりますので、そうしまして堤防の管理の、あるいは河川管理の万全を期しておるという次第でございます。
  207. 春日正一

    春日正一君 その点で、いまの出張所の問題ですけれども長良川の第二出張所というところの例をとってみますと、四十二年には十九人いたんですよ、職員が。ところが、四十六年には十六人になり、五十一年は十三人なんですね。それで、所長とか運転手とか、そういう人たちを引いてしまいますと、実際に巡回できるのは二、三人しかないと。だから、とてもじゃないけれども、きめ細かく回ってなんかおれないというのが実情だというふうに聞いております。  それから全国的に見ても、建設省関係の職員定数を削減ずっとしていくわけですけれども、その中で治水関係の削減が圧倒的に多いのですね。これは考えてほしいと思うのですけれども、たとえば予算定員の十年間の対比で見ますと、道路特会の方は四十一年の一方三千一人から一万一千三百九十四人、千六百七人減ということで、これは一二%の減なんですよ。ところが、治水の方は一万六千十人が一万二千四百七人、三千六百三人、これは二二%の減なんです。全体の減は一七%ですから、河川関係の人員の減というのは特に著しいということが数字上明らかなんですね。こういう状態にしておいて、それで河川の巡回、そうして監視というようなことが不十分だったということになれば、これは建設省の責任問題じゃないですか。やはりこれはもっと私は——人間でなければできないことですから、これは。それで本当に気をつけて、親切に見ていかなければ、なかなか亀裂だとか漏水だとかというようなことを見つけることはできないわけですから、だからこれはもっと人員をふやして、やはり十分に回ると。その方か職員の給料よりも——一つ災害が十年に一度でも起きたときの被害の額よりもはるかに少なくて済むわけですから、そういう点について、どうですか、少なくとも河川の維持管理に関する人員をふやすという方向をお考えになれませんか。その点、大臣どうですか。
  208. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) 人員の問題は内閣全体の問題ですので、ちょっと御勘弁くださいませ。
  209. 春日正一

    春日正一君 これね、内閣全体の問題ですけれども、これだけ水害が起こって、総理大臣も水害対策しっかりやれと言っているときですから、これは国土庁長官も口を添えていただいて、何としてもこの災害を防ぐためにはそういう人間が必要なんだと。これを下請しているところがあるんですね。そうすると、まるで下請の報告書をまるのみにして建設省は責任をとっていくということになってしまう。そういうことじゃなくて、やっぱり建設省が責任を持って、自分が直轄河川ぐらいは見るという体制はぜひとってほしいし、とらなけりゃやっぱり後で裁判でも起こされますよ、これは。ぜひそうしてほしいと思います。これは大臣にもお願いしておきます。  そこで、その次に当面の改修問題ですけれども、まああの安八だけではなくて、長良川揖斐川の支川も含めて、今度の場合非常にたくさんの個所堤防決壊とか、それからがけ崩れとかいろいろあったわけですけれども、それを早急に復旧するために、やはり自治体あたりから出ておる陳情書を見ても、一致して言っていることは、復旧に当たって改良復旧、それから激特事業の採択をぜひやってほしいと、一致して出てきておるのですね。  そこで、お聞きしたいのですけれども建設省として、いままでのところ災害復旧地に対して、災害関連が一対一というような形でやってこられたのですけれども、こういう地方自治体の要望を入れていくということになれば、やはり災害関連の改良というものをもっとたくさん認めるということにならざるを得ないだろうと思うのですけれども、その辺はどういうふうに考えておいでですか。
  210. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 災害関連の原則は先生おっしゃいます一対一だということでございます。しかしながら、建設省といたしましては、いわゆる災害の実態、あるいは荒廃地の問題というものをよく見まして、一対一を一対四とか、そういうふうにできるだけ災害の実態に応じまして上げていくというふうにいままでもやっておりますし、今後ともその線に沿って努力していきたいというふうに考えます。
  211. 春日正一

    春日正一君 ぜひそういうふうにして、災害の早急な復旧、復興のためにひとつ力を入れていただきたいというふうに思います。  それから具体的な問題でお聞きしますけれども、この伊自良川、板屋川、岩戸川、それから先ほども話に出ました杭瀬川と大谷川の問題ですけれども、この伊自良川の場合ですね、県は高富町の北洞というところから岐阜市の上城田寺までこれ改修をやっておる、それから上城田寺から大臣の管理区間までの間が改修されてない、こういう状況があるのですね。それで、この城田寺一帯はいつでも災害の常襲地帯で、今回も県の公社の分譲団地が浸水しておるというような状況があるわけです。だから、改修してないその地域で絶えず水が出ておる。ところが、国の方は未改修でも、その地域河積が広いからといってほうってあるし、県の方へいけば、そのうち国がやってくれるでしょうというようなことで、おっつけっこみたいになっているんですね。やっぱりこれじゃぐあいが悪い。やっぱり上が直って、下が直って、間があいておって、そこから水が出るということになるとぐあいが悪いわけです。それから板屋川の場合も同じで、県は秋沢というところから黒野まで改修、黒野から伊自良川合流点は未改修、ここまで大臣の管理区間。これから下ですね、その区間が黒野、古市場というところで浸水している。岐阜大の用地、相当水のつくところだそうですけれども、三メーター半、住宅が一メーター八、このくらい水がついているんですね、そういうところ。だから、これも前と同じケースです。真ん中が抜けている。それから岩戸川の場合には、都市小河川事業として採択して一部着工しておるようですけれども予算が少なくていつまでかかるかわからぬというような状態になっている、何とかしてもらえないかというあれがあるんですね。  それから大谷川、杭瀬川の方は先ほども質問がありましたけれども、私、去年行ってあそこ見てきまして、それであそこは洗いぜきができて、水がいっぱいになったら右岸の方へ流して遊水地にするような計画になっておったところへ、だんだん家ができたり事務所ができたりというような形で出てきて、問題が大分うるさくなっているところで、私、去年建設省の方へもどうしてここうまく解決つくかというような話も、相談もしてみたんですけれども、結局杭瀬川改修をやって、そして下流の水はけをよくするということが先決だろうということで、それに期待をしておったわけですけれども、今度この水でまたえらいいっぱいになっちゃったわけですね。そこで、これを促進してもらえないかということが地元での希望ですね。そういうことになっているわけですけれども杭瀬川改修、あれを促進してもらえないか、この四つについてまとめてお答え願いたいと思います。
  212. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) まず、伊自良川と板屋川も同じようなケースでございまして、上が改修やっておって下が直轄でその間が抜けておるということでございます。それで、この抜けておる区間につきましては、これは現在河積、川幅が広いということで、建設省としましてはいわゆる直轄補助ということでなしに水系と見まして同じような安全度に持っていくというのを基本にいたしております。したがいまして、いわゆるこの安全度が、現在上流に比べて安全度が多いというということで抜けておるような次第でございます。  岩戸川につきましては、これは都市小河川岐阜市内の川でございます。それでなかなか金は集中的に、去年に比べてことしも大いに投じておりますけれども、さらにその促進を図ってまいりたいと思います。  それから大谷川でございますけれども、これはいわゆる右の方に溢流堤がございまして洪水があふれるというふうな状況でございまして、現在調整区域になっておるわけでございます。それで河川改修としましては、上流でダムをつくってできるだけ川に入ってくるのを抑える、一方川底を掘ってできるだけ速く流すと。同時に、こういう中流部あるいは下流部におきましては、こういうのは遊水地としましてやっぱり有効に使って下流の負担を軽くするとか、そういうこともあわせてこの大谷川につきましては多目的遊水地とかそういうものを含めましてどうあるべきかと、どういうふうに改修すべきかということを今後検討してまいりたいと思います。  杭瀬川につきましては、やはり一番直轄区域におきましては非常に川幅の狭いところ、ネックがございますので、その点の用地、まあ引き堤といいますか、ことしも三億程度ここにつぎ込んでございますけれども、重点的に今後とも推進していきたいというふうに考えてございます。
  213. 春日正一

    春日正一君 もうこれ以上細かく言いませんけれども、あそこの問題は、あの川の両側の何か意見が違って非常にむずかしい問題になっている。私は両方の自治会長から話を聞かされたのですけれども、やはり深刻な問題になっていますから、ぜひ早く解決するようにしていただきたいと思います。  そこで、木曽川の長良川、あの水系の治水の問題ですけれども、今度行ってみて、やはり未曽有の大雨が降ったと、そのわりに河川水位が上がらなんだということですね、計画水位を超していないのだから。しかし、岐阜県の平野の約二分の一近いものが水浸しになっている。あれをいまわれわれがいろいろやってほしいと言ってお願いしたように、中小河川を全部きちっと護岸して、よそへ出ないようにして全部長良川にあれ入れちゃったらどうなるか。あの長良川はもたぬと思いますよ。揖斐川だって、あれまさに壊れようとするところで、安八が切れたからだと言われているけれども水位が引いたからあれ助かった、あの根古地のところですね。そういう状況ですから、あの水が出なかったらまだ方々で破れているということになる。ということになると、いままでのようにとにかく堤防を高くして河川に入れて、早く海に流すという方式はもう考え直さなきゃならぬ。だから、あそこの治水の問題もそういう意味でもっと新しい立場で見直して、そしてそういう方向づけの上に立って、いま求められておる問題から着手していくというようなふうにしていく、そのことが必要じゃないかというふうに感じるわけです。  そこで、流況がずいぶん変わっているんですね。ゴルフ場がたくさんできて、岐阜の県内で既設のゴルフ場三十二カ所、造成中のもの十一カ所、申請中のもの八ヵ所というような形ですね。そうしてその中でも岐阜の北カントリークラブというのは、去年十二月に造成が始まって百三十二・八ヘクタールというかなりなものですけれども、本巣、木知原から岐阜市の伊洞へかけて山林を切った。そして今回は土砂が一万五千立米流出、それで農地を十何ヘクタールか埋めているというようなことが出ておるのですね、これ一つの例ですけれども。それで砂防堰堤をつくらしたけれども、それを乗り越えて流れてしまった。こういうふうなものがいまたくさんできてきておるわけです。そして全体として見てみますと、長良川の流域の企業でもって取得した土地というのが総面積が四千百九十二ヘクタール、ゴルフ場用地が千八百八十九ヘクタール、住宅用地が千四十一、レジャー観光用が六百八十五ヘクタール、工場用地が三百三十一ヘクタールというような形ですね。しかも取得した地目は山林が三千二百九十九で一番多い。そういうふうな形で用地が取得されて開発されるものですから、流出係数といいますか、とにかく水の流れがどんどん速くなって一気に川へ出てくる。だから、中小河川でも破堤するという状態にあるわけですね。  そこで、全体の問題は後として、このゴルフ場の問題ですけれども、こういう場合、やはりゴルフ場だとか何だとか水の当然出ることが予想されるようなかなりの規模の仕事をやるという場合には、当然そこで新たにつくり出される水についてはセーブするようなたとえば貯水施設といいますか遊水施設といいますか、そういうものを企業に設置することを義務づけるというようなことを、これは河川法でやればできることになっているんですね。だから、義務づけるというふうにして、事前に一応、新しくこういうものができたから思わぬ水がふえたというのじゃなくて、できてもふえない仕組みになっておるというようなことを、まずやるべきじゃないだろうかと思うんですけれども、そこらはどうですか。
  214. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) いま先生がゴルフ場をたとえてお話しされました。上流のたとえばゴルフ場でございますけれども、ゴルフ場をつくることによっていわゆるいままでよりも洪水といいますか流出が多くなるという問題でございます。これにつきましては、建設省の所管の地域におきましては、いわゆる防災調整池といいまして池でございますけれども、貯水池をつくらして多く出てくるのを防ぐということを現在やらしております。それで、こういう開発の問題でございますけれども、総合治水対策ということで適正な土地利用の問題、あるいは流域の水に強い町づくりとか国づくりとかそういう問題、あるいは流域に降った雨をゆっくり川に持ってくるとか、そういうことをあわせました総合的なソフトな面の治水対策というものを建設大臣の指示を受けまして、現在それを検討すべく準備中でございます。  それから長良川について一言だけ申し上げますと、ああいうふうに内水問題が非常に多うございます。あれは結局河川水位が高くて、はけないわけでございますけれども、どうしても長良川に対しまして、いわゆる八千とかいうふうな洪水を流すにはしゅんせつしかほかにないと思います。したがいまして、今後ともそういう面につきましても鋭意努力してまいりたいというふうに考えます。
  215. 春日正一

    春日正一君 そういう意味で必要なことは、防災を重視した土地利用の方向、だから当然防災を無視した開発は規制する。それから遊水的な機能をこれを開発すると。もちろんこれは大きなものを平地にたくさんつくるわけにはいきませんから、やはり地形を利用して小さなものでも随所につくって水がたまるようにするというようなこと。それから浸透性の舗装というような方式ですね。そういうような点をやるとか、特に治山治水事業ですね。これは岐阜県のあれを聞いてみましても、切るのはたくさん切っているんだけれども、植林計画というのは二〇%しか進んでないんですね。これは機械で切り、手で植えるんですから無理はないと思うけれども、これはやっぱり治山治水の方をもっと……。建設省のこれはあれじゃないと思いますけれども国土庁長官、ぜひ聞いていただきたいと思うんですけれども、治山治水の方に力を入れていただきたいというように思います。  それからついでに、これは一言だけ言っておきますけれども、ここでも問題になったようですから、河道を掘削して河積を広くするということは私どもも反対じゃないし、必要と地形に応じてやるべきだというふうに思いますけれども、それをイコール河口ぜきにくっつけて、掘るから河口ぜきだという形に持っていくのは早計だと。地元の新聞見ても、被災者の中から河口せきを促進という声は一言も出てこないということをはっきり書いていますから、だからそういう点では裁判も起こっていることですし、十分住民の意見も聞き、いろいろさっきから言ったガマの問題その他の問題も検討して、住民が納得できるという状況ならおやりになるのもいいけれども、これは慎重にやるべきものだということだけをこの際指摘しておきたいと思います。  そこで、国土庁長官の方ですけれども、こういうことで全国的に大きな被害を出しましたけれども、一級河川のはんらん、都市河川のはんらん、山崩れ、地すべり、がけ崩れ、あらゆる形の災害が全国的に出そろったような形になっておるわけです。だから、この際こういう災害のメカニズムを科学的に解明して、具体的な対策を立てることが大事だと思います。だから、そういう意味で全国的な危険個所の総点検というようなものをおやりになる必要があると思うんですけれども、その点どうですか。
  216. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) もちろんそれは必要ですし、いまの段階、私の方で直接やるのではなくて、河川あるいは治山等については、一部は農林省、また一部は建設省ということでやっております。それで今度の場合、たびたび委員会等でも大臣並びに局長からの答弁で、一級河川の総点検、これはやる、新たに追加してやるわけでございます。それから山崩れといいますか、いわゆる危険個所、地崩れしやすいという個所建設省で調べたのでは大体六万カ所ぐらい、林野庁で調べた方が十二万カ所ぐらいあると言う。ところが、その個所に入っていないところに今度兵庫県のあの大崩壊があったということでございますから、言うなれば日本全国皆一応これ対象にして調査を進めなきゃいけないと思います。この問題は今度の災害を契機として、反省材料といたしまして関係各省に呼びかけまして、できるだけの処置は講じたいと思っておりますが、問題は予算です。  それで、この機会に、どうせあれですから、もうちょっと予算の問題について、所管事項は建設大臣ですが、私の方でも協力しているたてまえから、私の考えていることを申し上げたいと思うんですが、いわゆる治山治水対策で五十年度上期五ヵ年計画で百兆円に公共事業がしほられまして、御承知のように河川が五兆五千億です。そうして山の方は、治山の方は八千億でございます。とてもそんな程度で、これ五ヵ年ですから、八千億の予算で一体いま危険個所と言われる十八万カ所の始末をどうしますか、どうにもなりません。そこで、いま一応何らかの措置を講じて、今度の災害を契機としてこれを上げたいというので、治水の方は八兆五百億ぐらいにしたい。それから治山の方は一兆四千億ぐらいにして、とりあえずこれぐらいふやして、とりあえずの処置を講じたいという考え方で努力をしておりますが、これは与野党を通してこれ問題のあることではございません。要するに挙党一致でございますから、それを踏まえて十二分に期待に沿えるように責任ある立場の者として努力をいたします。
  217. 春日正一

    春日正一君 予算は後で聞くつもりでいたんですが、そこで国土計画における防災問題について、政府は現在第三次全国総合開発計画というのを策定しておいでになるんですけれども、その前提として作業中の新全総の総点検ということをやっておいでになる。だが、この項目の中には防災問題が欠けているんですね。現在やられておるのを見ますと、一が経済計画との調整問題、二が自然環境の保全問題、三が巨大都市問題、四が工業基地問題、五が農林水産業問題、六が地方都市問題、七が土地問題、八が開発法制問題と、こういうことになっているわけですね。もう発表されたのがありますけれども、これの中にどうしても防災問題一本入れませんと、仏つくって魂入れずになっちまうんじゃないか、その点どうですか。
  218. 天野光晴

    ○国務大臣(天野光晴君) 実は、先生から質問があるというんで、けさ私にわか勉強してきたのでございますから、具体的なものは局長から答弁させますが、先生おっしゃるとおり、八項目の中にこの重要な災害関係の柱を一本入れるべきでないかという主張を私したんですが、何か全部の項目の中に皆含んでいて差し支えないような事務当局の説明でございますから、私、旧大臣と引き継ぎをやるとき、あなたのやったとおりにやりますという引き継ぎをしておいたものですから、一応事務当局から答弁をさせていただいて、私あとできるようでしたら処置をいたしたいと考えております。まだ時間は相当あるつもりですから、その始末はいたすつもりでおります。
  219. 下河辺淳

    政府委員(下河辺淳君) 新全総の総点検は八項目ございますけれども、なぜ総点検するかということを御議論いただきました際に、公害問題と防災問題の観点から新全総全体を総点検すべきであるという御意見をいただきまして、公害問題と総点検に焦点を合わせて総点検をすることになりまして、そのときに項目としてどうしようかというときに八つに分けましたので、私どもといたしましては、大都市問題の中でも、あるいは地方都市問題の中でも、防災の問題と公害の問題についてはできるだけ触れたつもりでおりまして、項目としては、そういう意味で八項目通じて防災、公害問題と絡んでいるということを大臣に申し上げたわけでございますが、ただそれだけで十分であるというふうに思っているわけではありませんで、第三次全国総合開発計画をつくります際に基礎的な作業として二つの系列で作業しておりますが、その一つはやはり人口の関係の作業であって、もう一つの関係は国土の関係で、人口と国土のかかわり合いをつくることが第三次全国総合開発計画中心でございますから、その国土問題の中でいま数々先生から御指摘いただいた点については、建設省等の各地の点検作業も入れながら一つの作業報告をまとめて、第三次全国総合開発計画の策定の基礎にしたいというふうに考えております。
  220. 春日正一

    春日正一君 締めくくりに一言だけ。  もう時間切れましたからこれ以上の質問にはしませんけれど、先ほどの財政問題ですね、八兆一千億ということですけれども、それでも改定できる整備率というのは五二%から六三%に進むだけということで、だからこれは私どもうんと応援しますから、うんとがんばって、この治水治山の予算というものはぜひ取っていただきたいということ。  それからもう一つは、全部に入っていますと言うけれども、全部に入っているから影が薄くなる、全部に入っているものをやっぱりまとめてどかっと出すようにぜひしてほしいと、これだけ申し上げて私の質問を終わります。
  221. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  222. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) では、速記をつけてください。  建設大臣が暫時退席されるので、この際建築基準法の一部を改正する法律案に関連して、既存の特殊建築物等の防災対策について建設大臣の所見を承りたいと思います。  今回の政府提案による改正法案の主要点の一つは、既存不適格の特殊建築物等に対する防災規定の遡及適用であったと思いますが、衆議院において当該既定は修正削除されております。しかしながら、最近のデパート火災の例に見るように、一たん火災が発生した場合の被害は大きく、人命尊重の見地からの既存不適格建築物に対する防災避難対策の強化は焦眉の急だと考えられますが、政府としては次期国会に必要な法律案について提案する用意があるのか。また、当面どのような対策を講ずるつもりか。決意のほどを承りたいと思います。
  223. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) ただいまの委員長の御発言でございますが、すでに経過については皆さん御承知のとおりであります。遡及適用の条項が前回削除されましたので、新たにまたこれを基準法に入れるのか入れないのかという議論がございましたが、私どもとしては、この際修正削除を機にさらに内容に検討を加えまして、建築基準法とは別に既存特殊建築物等の避難施設等の強化のための法律案をまとめまして、次の国会に必ず提案いたしたいと考えております。  なお、それまでの間における建築物の防災対策については、人命尊重という立場から防災対策を一日もゆるがせにできませんので、消防当局とも連絡協調して、改正法案に盛り込まれている建築工事中の災害の防止措置等を含め、現行法を十分活用して災害が未然に防止できますように努力いたしたいと考えております。
  224. 三治重信

    三治重信君 三つの問題点をきょうは質問したいと思います。  まず最初は、先日の災害とも関連いたしますが、最近の中小河川のはんらんによる災害が、公共事業としての災害被害はそれほどでないかもしれませんけれども、やはり住民に及ぼす、住民の個々の被害がだんだんひどくなる。しかもそれが一回だけでなくして、集中豪雨が来るたびに毎年歳々と言ってもいいぐらい何回となく個人が被害を受ける。まあこういう状態が強くなっているわけなんです。一昨年の災害においても、愛知や三重や岐阜なんかにおいても、都市の開発の周辺における河川のはんらんによってたくさんの人々が被害を受けているわけです。  そこで、ひとつ御質問するわけなんですが、こういう都市の近辺の開発が進んでいったときに、いままでの中小河川といいますか、本当の小川をそのままにして都市が開発される、いわゆる家屋や工場がたくさんできる、そこへ従来にもましての集中豪雨が出る。ここが当然従来山林や田畑であったときはまだ山林や田畑で水が吸収されるためにその河川がもったわけなんです。今度はそういうのを伐採したり、農地を宅地開発して住宅を建てる。それが集中豪雨によって流れれば直接にこの河川に注入する。したがって、すべてそれがはんらんに導くと、こういうことなんですが、今度のこういう問題は見に行っても岐阜市郊外、周辺、あるいは入垣市の周辺でも皆それが同じパターンだと思うんです。こういう問題について、単に中小河川のはんらんということでなくして、新しくこの都市の開発をやる、そういったときの河川対策、いわゆる水の排水対策というものを都市計画の中に新しく入れないことには、これは同じことを繰り返し、さらに被害が大きくなっていくと思うんですが、そういうことについての検討が進んでいるのかどうか。
  225. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 都市におきますいわゆる中小河川対策でございますけれども、現在におきましてもいわゆる都市計画区域内に設定いたしまして改修をやっておるわけでございます。それで、先生おっしゃいますいわゆる流域が開発されて流量がふえてくると、その対策はどうあるべきかという問題でございますけれども、できれば川幅を広げる、それから川底を掘るということでできるだけ対処してまいりたい。しかしながら、それでもまだ十分でございませんので、いわゆる低湿地におきましては遊水地を活用して洪水調節池にしまして、あるいは都市におきましては多目的遊水地ということで都市施設との併用を図っていきたい。また、あるいはポンプによる内水排除対策と、そういうものを含めまして総合的に河川改修促進していきたいと考えてございます。と同時に、もう一つやはり川に入ってくる洪水の量をできるだけ少なくするという対策もあわせて、ソフトの面におきましてあわせてやっていきたいというふうに考えてございます。
  226. 三治重信

    三治重信君 いまおっしゃるその対策はそのとおりなんですが、ぼくが聞いているのは、そういうことが現実の都市の開発計画、いわゆる都市開発といいますか都市計画の中に、そういう河川道路ばっかしじゃなくて、川も広げたり遊水地をつくるという計画が、建設省の中で、基準として、そういう都市の開発の中に十分河川局が発言して入れられているのかどうか、こういうことです。
  227. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 河川局としましては、その必要な個所につきましてはどしどし発言しまして、その都市計画の中に組み込んでもらっております。
  228. 三治重信

    三治重信君 いま河川局の方からそういう答弁がありましたのですが、ひとつ都市計画の中にぜひ——団地やそのほか見に行っても、団地の中はきちんと整備されて排水溝もできているけれども、その排水溝から出たところの河川やそれから遊水地とかいうようなものについての計画というのは、私がいままで団地やそのほか見に行ったときには余りないし、現に今度災害が起きたときでも、そういう問題に手がつかないために災害が起きているのが非常にあると思う。ことにそれ一つを見ても、一つの例を申し上げますと、たとえばそこに団地ができる、そこから排水溝ができていても、その付近を流れている川は非常な狭い天井川になっている。従来のままだったらそれでもつのだけれども、今度は非常に団地ができて一度に水が流れるために、そういう団地の排水流れる天井川の方なんかは一遍で今度は溢水をしたり、三重県の四日市では一昨年はずたずたに切られて大洪水になった。今度は岐阜の方へ、大垣市の方へ見に行ったときには、やっとは助かったけれどと、これは全面的に堤防から何から全部それをやり直さぬことには、もうその付近はこの次は完全な災害が起きる。やっと助かったものの、大改修といいますか、やらなくちゃならぬ、こういうことになるわけです。  そうならば、そういうふうに郊外に団地開発、都市計画をやる場合に、そういう道路だけでなくして、河川も天井川なら直す、それから新しい放水路をつくる、こういう計画を取り込んでその団地の開発をやっていく。その団地の開発というのは、そこまで計画の設計の中へ入れていくということをぜひやってもらいたいと思うのですが、現実においてそういうことを余り行われてないのじゃないかと思うのでございますが、どこか具体的にそういうことが行われているモデルのところがあるのか、実際こういうふうにしてやっているところがあるかどうか。
  229. 大富宏

    政府委員(大富宏君) 河川流域に関する市街地の開発というのは、ただいま河川局長が基本的にお答えしましたとおりでございますが、都市計画法の中では、湛水とか溢水とかいうおそれのあるところは、本来御承知のように都市計画区域は市街化区域、調整区域に分けるわけでございますが、その市街化区域の中には含めない、溢水とか湛水のおそれのあるところは含めないという基本の制度の仕組みになっているわけでございます。  それから流域を今度はいよいよ団地開発なりしようという場合には、現在原則といたしまして千平方メートル以上につきましては開発許可という制度があるわけでございますが、この開発許可の申請を出す前に団地の開発施行者は河川管理者と事前に協議をする必要があるわけでございます。その場合に協議なり同意なりというのが必要になるわけでございますが、その場合に、団地内から排水します量というものが既存排水施設の基準に合わないという場合には、その団地の中に緊急の調整池等をつくって下流に湛水が生じないような処置もとられる。こういうのが開発許可を申請する事前の段階河川管理者と協議して同意がなった際に、初めて開発許可権者がそういう河川管理者の同意があるかどうかを見て開発許可をする、こういう仕組みになってございます。
  230. 三治重信

    三治重信君 その仕組みで、都市局ではその開発区域の中の設計だけしか見ていない。私の言っているのは、そこから出て——そのときには事前に河川局なり河川管理者にちゃんと協議をして、それでオーケーをとって許可をする、法体系はそういうぐあいになっているだろうと思うのだけれども、したがって、そこで河川の方にひとつぜひ注意していただきたいと思うのは、この災害の最近の集中豪雨の実例からいけば、これは従来よりかよけいたくさん集中豪雨が降る。集中豪雨がなぜこういうふうに毎年歳々一定のところへ、従来その地域に降ったことのないような五〇%も一〇〇%増も——今度の岐阜の近くや、私のところの半田とかいうところでは二倍以上も一定時間にバーッと降る。だから、それは自然災害だということもあるけれども、しかし、現実にこういう集中豪雨というのですか、短時間に集中的に降る雨が、所構わずあっちこっち動いて降り出すわけですから、今度はひとつ河川局の方も、その協議する、オーケーする河川の流量についての見当を高めぬことには、これは同じ従来の基準でいくというと、もうみんな出先や県や市ではオーケー、河川関係の当事者はオーケーしちゃうのじゃないか。そこに従来からそういう集中豪雨のことを考えて、今後河川の流量を計算する場合には、そこへ団地をつくり、そこに都市計画をした場合には、そこへ集中豪雨が来たときにはそれだけのいままでの流量では足らぬから、河川洪水量をもっと増加するような計画をもって同時に開発計画を進める、その基準を高めるという作業をぜひやってもらいたいと思います。  それをしないと、従来の降雨量からいって、河川洪水に対する見解からいけば、それだけ開発されても河川のいわゆる許容量は大丈夫だというオーケーであれば、これは災害がこれからも同じように繰り返すと思うのです。たとえそれがすぐ工事ができなくても、そういうおそれがある、またそういうふうにここを開発すると、そこには洪水が出ますよ、またそういうことについて、工事がそこへ行われるまでにはどういう洪水対策をしなくちゃならぬかということについて、やはり河川担当者が十分、その地域にいざ雨が降った場合にはその先に避難命令を出すとか、そういうものについての基準というものをよほどしっかりつくってもらわないと、同じ災害を起こすことになる。ここ三年ほど私回って見てつくずくそういうふうに——一方は開発されてりっぱな家か建つ、道路がつく。しかしながら、一たん雨が降れば、その付近はがっちゃがちゃになってしまう。それで従来の部落や住民が被害を受ける。したがって、ますます新開発地と従来の部落や町というものは非常な疎外感、被害感を受けると、こういうことになるわけなんです。そこで、順序をもって、そういう問題について、いわゆる防水対策といいますか、について河川担当者は、やはり都市計画区域外に行ういろいろな関連の施設についてのオーケーをもっとしっかりしてもらいたい、再検討して基準を高めてもらいたいと思うのですが、どうですか。
  231. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 先生のおっしゃる意味はよくわかります。  それで、先ほどの説明をちょっと補足さしていただきたいと思います。先ほどは、治水の方では、必要な遊水地とか川幅とかいうのは都市計画に入れてもらっておるとお答えいたしましたけれども、実際いろいろ問題になっておるのは、そういう土地の開発に対して河川改修のおくれ、実際面のおくれ、事業のおくれでございますね、これがいろいろ下流に被害を与えておる。特に先ほど半田につきましてお話ありましたけれども、あそこにおきましても丘陵の開発、そういうものがこういうふうないろいろな水害を起こしておるのじゃなかろうかと思います。それで、先生おっしゃいましたような基準を高める作業とか、こういうものも今後進めていきたいというふうに考えます。  また、それでもやはりどうしても改修はおくれがちでございます。その場合の避難体制の問題でございますけれども、現在建設省としましては、いわゆる中小河川などにつきまして、その安全度の点検を現在やっております。すなわち、各住民が住んでいる土地が出水に対してどの程度の危険度があるか。たとえば五十ミリ降ったらこの川があふれてどの程度つかるか、そういうものを現在鋭意検討中でございまして、いまのところ、ことしを含めまして三カ年ぐらいで主要都市は終わらしたいというふうに考えてございます。そうしまして、いわゆる地域住民方々と一緒になって避難体制の問題、そういう面をやりまして、一般被害をできるだけ少なくしていく。と同時に、またそういう土地というものを地方自治団体によく知ってもらって、いわゆる土地利用の適正化にも使ってもらえれば非常にありがたいというふうに考えてございます。  以上でございます。
  232. 三治重信

    三治重信君 その点ひとつぜひ、やはりできないからやるように努力するとか、そうなっているというだけじゃなくて、そういう今度の水害、災害になった場合を見ますと、予防的に付近の住民の人にいつでも警告できるようなやはり当局として出先が準備をしてやっていただくと、災害に対するああいう避難とか、非常な災害の程度ももっと事前に——現実に災害が起きても個人の被害かもっと少なくなるんじゃないかと思うんです。ひとつお願いいたします。  それから、それと関連してちょうど今度の災害視察に行ったところの長良川地域におきましても、また愛知県の方の濃尾平野の中におきましても、いわゆるゼロメートル地帯による、これは集中豪雨による水害とは別個にひとつ考えていただかなければならぬと思うんですけれども、またそういう集中豪雨になればゼロメートル地帯だから、またさらに同じように水をかぶるわけなんです。これに対して従来ゼロメートル地帯、いわゆる地盤沈下を防ぐ方法として地下水のくみ上げを非常に規制しなくちゃならぬ。ところが、現実に地下水をくみ上げている、飲料水はとにかくとして工業用水はどうにもならぬ。こういうことによって、ある程度の地下水の規制はやったものの、一番中心となる工業用水についてのやつはいまもってどうもなかなか結論ができていないようなんですが、この長良川河口せきをやって二十二・五トンの水が取れていけば、濃尾平野のいわゆるゼロメートル地帯のくみ上げ対策としての工業用水なり飲料水なり、そういうものの水がないからあそこ仕方がないということのやつが、完全に解消するような量なんですか。また、そういうことができるように、この河口ぜきをつくるからには一面計画をされているわけなんですか。
  233. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 濃尾平野を含めまして、あの付近のゼロメートル地帯の地下水の現在の利用状況でございますけれども、これにつきまして現在ちょっと手持ちがございませんけれども長良川河口ぜきにおきまして二十二トン何がしの水を生み出せば十分それに対応できるというふうに考えております。と同時に、いわゆる地下水を利用しております工業用水にしましても農業用水にしましても、やはりその使い方を合理的な使い方、いわゆるむだのない使い方をすれば、現在便っておる量にしましても三分の二程度には減っていくんじゃなかろうかという見通しも持ってございます。そういうふうにしまして、総合的に地下水の代替用水の確保と同時に、いわゆる現在使っておる水の合理的な利用というふうな多面的なことで、あの地盤沈下なんかもできるだけ抑えていきたいというふうに考えます。
  234. 三治重信

    三治重信君 従来、河口ぜきの場合に反対——いま裁判までになっている、重大問題になっているんですけれども、これがやはり、ここからの取り水が単に工業用水あるいは企業の利益のためだけに水を無理して取るんだ、こういうような認識も一部に確かにあるんじゃないかと思うんですが、ここはもう一つゼロメートル対策としてこういうことをやれば、地盤沈下が本当にこれだけ毎年十センチ以上になるやつがとまるんだと。また、そうすれば木曽三川の下流域のいわゆる水対策もゼロメートル対策工事のめどがつくのだとか、まあそういうものについての説明がわりあいに少ないのじゃないか。むしろいろいろ裁判の問題になってから、そういう工業用水の問題のやつがかえってまた今度は、一番初めの河口ぜきの目的から逆転したみたいなかっこうになっているのですけれども、そこを全体の——また後で河口せきの問題で洪水防止の問題をちょっとお聞きしますけれども、そういう何というのですか、建設省の一河川局ということだけでなくして、あの地域木曽三川洪水も防ぐ、それからあそこのゼロメートル地帯をどうして防ぐ、そうしてまたゼロメートル地帯のいわゆる内水の排水やそういう問題を総合的にどういうぐあいにするか、その中の河口ぜきの地位というものをもう少しはっきり説明してほしいと思う。  私もあそこの地帯なものですから、今度の河口ぜきのやつは若干は聞いていたのですが、現実に行ってスライドを見せていただき、資料をたくさんいただいて一応検討してみたのですけれども、何かそこの間に——住民の側からいろいろの問題を言われるとそれに対する対応策だけ一応案を出す。また事態が変わると、また新しい問題になってくると、またそれを強調していく。そこに何かどうも役所側の方の重点の主義主張が、初めは工業用水の水を取るのだ、それが今度は洪水になってくると急に洪水対策だ、こういうふうなことになったりということは、まあ当局の方では知らないと言われるかもしれないけれども、若干そこにそういう問題があるし、一応全般的なことが見られているみたいなんだけれども、さらに地盤沈下対策になるという問題に、さらに内水対策をどうしていくかという問題もこの河口ぜきとの関連でやはりはっきりしていく必要があるのじゃないか、こう思います。  それで、ことにゼロメートル対策として、ひとつ大体どれぐらい、いまから目標を立てて、ゼロメートルの地盤沈下を停止させるのをどれぐらいのめどを置いていま計画を立てておられるのか、そういうようなゼロメートル地帯の対策として今度の治水五ヵ年計画の案の中にどの程度は入っているのですか。
  235. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) ゼロメートル地帯におきます治水施設の補強、いわゆる堤防を高くしたり、あるいはポンプ排水をしたり、そういうことの治水事業費でございますけれども、五ヵ年計画にどの程度入っているか、現在ちょっと手持ちがないのでわかりません。しかしながら、やはりどうしても建設省としましては、いわゆる地盤沈下を防ぐことがまず先決じゃなかろうか、地盤沈下を防ぐことが、あわせて考えてございます。  そこで、先ほどもちょっと御説明いたしましたけれども、いわゆる地下水法案的なものによりまして地下水の過剰くみ上げをできるだけ防いでいく。現在におきましても愛知県あるいは名古屋市におきまして条例でいろいろやってございまして、それなりに効果は上がっておりますけれども、いわゆる国が法律的なものをつくりまして、現在国土庁中心になってそれをまとめておりますけれども、そういうものにおきまして地盤沈下地域の地盤沈下を防ぐということをやっていきたいというふうに考えてございます。
  236. 三治重信

    三治重信君 だから、地盤沈下対策のゼロメートル地帯がいまどんどん下がっているわけでしょう。それを下がらないようにするのに、どれぐらいの年月をかけて地盤沈下がなくなるようなふうにやるという計画は、まだできるだけ地盤沈下を下げるという目標は別にないのだということなのか。いや、もうゼロメートル地帯対策をいまから今度の五カ年計画で、大体において五カ年計画の中でゼロメートル地帯というものを、もう地盤沈下というものはなくなるように対策は盛り込んであるというのか、まあ細かい数字はとにかくとして。しかし、そこでは何も自信がないのだ、やはり改めてどれぐらい、まだ何年ぐらいかかるか、一遍やってみなければわからぬというのか。
  237. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 治水事業におきましては、いわゆる地盤沈下をとめるという面におきまして、五カ年計画に組み入れている問題としましては、いわゆる地下水の代替用水を確保するという意味におきまして治水事業はそれに参加できるということでございます。それで、この長良川河口ぜきでございますけれども、できれば早急に着手しまして、五年ではちょっと無理かと思いますけれども、できるだけ早い機会にこの地下水の代替用水を確保していきたいというふうに考えます。全体的ないわゆる地盤沈下をとめるめどにつきまして、やはりその法律をできるだけ早くつくって、いわゆるそれに基づいて地下水の代替の計画を立ててやっていく必要があるんじゃなかろうかと思います。これにつきましては国土庁の主管となろうかと思いますけれども建設省としましては、焦眉の急だと思いますので、できるだけ協力していきたいと思います。
  238. 三治重信

    三治重信君 そこで、河口ぜきをつくる効用として非常にたくさんの効用が書いてあるわけなんですが、その中で非常に川床を掘り下げることによっていわゆる洪水計画水量を倍増させることができると、こう書いてあるわけですが、これができれば、従来河川は私も洪水対策というと、いわゆる堤防つくることだというふうな感情を一般に持っているんだけれども、まあ現場に行ってみても、あれだけ高い堤防をつくってやってみても、あれ以上かさ上げしてもこれはまあ確かに雨が降ればまた土手が崩れるとか、川が非常に流量が上がれば、堤防に対する、川の流れの変わることによって堤防流れがぶち当たれば、どんなりっぱな堤防でも高さが高ければそれはぶっ倒れる。したがって、川の底を掘れということは、これはもう原理だと思うのだがね、天然原理だと思う。河口ぜきのところに、これさえやれば洪水は防げますと書いてあるわけなんだが、これはもう昔の中国の一番初めの禹の時代から川は掘れ掘れと書いてあるわけなんで、日本でどうしてそういうことをやらぬかと思ってぼくは思っていたんだが、この河口ぜきの説明を見ると詳細に書いてあるんだが、ほかの河川についても、河口ぜきまでいかなくても、洪水を防ぐ対策として、いわゆる河床を掘って、ことに私はこれ見た上の中で、いわゆるブランケットつくって、そうして川床を真ん中へ持っていくと、河川流れてきて、洪水が起きた場合でも堤防で非常に防げる。それからいわゆる下流地だとかも防げるというようなことが——いままで堤防ばっかしに注意をしておったんですが、ほかの河川もこういうふうないわゆる洪水防止のため、ことに私が先ほど言った中小河川の都市近くの河川でも、みんないわゆる天井川であるために洪水が非常に倍加される。水が流れ、その上に砂が流れる。これは川床を掘っていけば、それだけでもやはり川の流れる、洪水時に流れる水の量が倍加されるし、そうして土砂流れも少なくなるしと、こういうことになれば、やはり河川洪水対策の第一は、まず川の河床を掘って、そうして堤防の真ん中へ、こう川の流れを、中心流れを置くようにまあ護岸工事を、ブランケットをつくっていくことだと思うのだが、こういうことについて、これ河口ぜきだけ書いてあるんだけれども、ほかの河川もみんなそういう洪水対策としてやっているのか、今度の治水五カ年計画でそういう河川を、いわゆる河口ぜきをつくる河川だけそういうことやるのかどうなのか。
  239. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 中小河川対策としまして、できるだけ建設省としましては掘削方式、いわゆる堤防を余りつくらないで、掘ることによって洪水を流すという掘削方式を主体としてやってございます。それで、掘削方式ですと、たとえ川の水があふれましても、じわっとあふれるということで一般被害も少ない、その他いろんなメリットございます。それから天井川につきましても、現在建設省の方針としましては、できるだけ天井川を解消して——解消というと語弊ありますけれども、まあ天井川じゃなく普通の河川に持っていく改修を現在天井川についてやってございます。それから大河川におきましても、長良川だけじゃなくて利根川におきましても、しゅんせつによって、いわゆる川底を掘ることによって大きな流量を流すということで昔からやってございまして、ところが利根川におきましては、それがいわゆる塩害につながってきて利根川の河口ぜきなどが出てきたといういきさつもございます。今後とも、大河川におきましてもできるだけ掘削、下を掘ることによって洪水を流すという方向で進んでいきたいと思いますし、また中小河川においても、その立地条件によって違いますけれども、できるだけ掘削方式をとっていきたいというふうに考えてございます。
  240. 三治重信

    三治重信君 わかりました。ぜひ何と申しますか、やはり川は堤防をかさ上げするよりか川床を、川の土砂の堆積を掘る方向の方が、どちらが金が余分にかかるかわかりませんけれども、そちらの方が非常にああいう洪水現場を見に行くと合理的だなと、こういうふうに感ずる次第でございます。  それから、このゼロメートル地帯の問題、また返りますけれども、揚水機の計画があちこち非常にたくさん出て、今度の新しく災害排水やなんかだと、そういう施設をやるのにまあ新しい水量で計算をしてやっていくと、ここ二十年も三十年も建設省予算ではかかるし、そういうふうな計画でもそうだというふうなことで、何とかならなければ、また同じような雨が降れば同じように水がつかるんだと。まあこういうことを今度の災害地の各地で聞いたわけなんですが、こういう排水機の設備をするのは、やはりいままでのやり方からいくとそういうぐあいになるかもしれないけれども洪水対策としてやったらもっと早くできるような計画はお持ちでないですか。揚水機の要望に対して、二十分の一とか三十分の一ですか、二十年もかかるとか三十年もかかるというようなことでなくて、揚水機の設置を、もっと安心できるような設置計画を各市町村に示すような方法、方策。
  241. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 河川の水を排水する、たとえば小さな河川の水を日光川に注ぐと、排水するというふうなポンプにつきましては、現在建設省でやっているわけでございます。それで、いわゆる低地部のおきましては最近内水被害というものが大きくなってございますので、建設省としては現在内水対策、いわゆるポンプ排水につきましても重点を置いておる次第でございます。しかしながら、やはりどうしても第一義的には河川から洪水のはんらんを防ぐというのが基本でございまして、それとの進捗状況との見合いにおきまして、排水機につきましても重点を置いてまいりたいというふうに考えてございます。
  242. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  243. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、すでに第七十七回国会において趣旨説明及び衆議院の修正点の説明をそれぞれ聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  244. 遠藤要

    遠藤要君 建築基準法の一部を改正する法案の審議を始めるに当たって、先ほど建設大臣から、次期国会に危険の多い施設のデパート、地下街等に対する既存特殊建築物等の避難施設等の強化のための法律案を必ず提案する、建築物の防災強化に努めるとの強い決意の表明がございましたので、これに私は御期待を申し上げ、それを前提として質問いたしたいと思うのでございます。  まず最初に、私は住宅局長にお尋ねしたいのですが、この改正案を提案するに当たって、消防庁と十分緊密な連絡をとって提案されたかどうかという点をお尋ねしたいと思います。
  245. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 原案の段階から十分打ち合わせをいたしたつもりでございます。
  246. 遠藤要

    遠藤要君 それでは、消防庁長官にお尋ねしたいと思うのですが、ただいま住宅局長から十分連絡をして提案したというお話でございますが、私はきょうは五十分の持ち時間でございますけれども、できる限り短縮して委員各位に余り苦労をかけたくない、こう思いますので、簡明率直にひとつお答え願いたいと思うのです。私が長官にお尋ねしたいことは、きょうこの委員会で長官に質問いたしたいと言ったところ、長官は出席をできるならば回避したいというような姿勢をとっておられる、そういうふうな点で私は、本改正案に対して何か積極的な姿勢をとっておらないのではないかと、こういうふうな点があるのですが、その点についてお尋ねしておきたいと思います。
  247. 林忠雄

    政府委員(林忠雄君) そのようなことは毛頭ございません。私、この六月に消防庁に参りましたのですが、この提案はそれ以前の段階でございますので、私は詳しくは折衝の段階その他からはタッチしておりませんけれども、少なくとも建設省と消防庁の間ではいろいろな意見の交換はあったように聞いておりますけれども、十分打ち合わせ済みで提案をしているということでございますし、したがって、私がこれに対して消極的な気持ちを持つということは毛頭ございませんので、その点は御安心いただきたいと思います。
  248. 遠藤要

    遠藤要君 そのお話を聞いて私も当然だと思うんです。特に今度の改正法案の中においては、一部修正されておりますけれども、住民の人命尊重、日照権問題、いろいろの問題が消防庁としても非常に関係の深い法案だと、こう思うのでありますが、それにしては、私はこの法案を一日も早く成立させたいというのが消防庁のやはり願いでもなければならないのではないかと。それにはやはり長官自身が当委員会にも積極的に出向いて説明をするというような姿勢をとるのが私は正しいあり方でないかとこう思うので、かような点をお尋ねしたわけでございます。  ところで、先ほど建設大臣から、次期国会には先ほど申し上げたとおり既存の特殊建築物等の避難施設の強化のための法律案を必ず提案するということを言明されておりますが、消防庁長官としては、この建設大臣の言明に対していかようなお考えを持っておられますか。
  249. 林忠雄

    政府委員(林忠雄君) 建設大臣がそのような御決意であれば、いずれその詳しい法案の内容について御協議があるはずだと存じております。それに対しては消防、防災の立場から十分に意見を述べ、それを反映さしていただくようお願いするつもりでございます。
  250. 遠藤要

    遠藤要君 続いて、住宅局長にお尋ねいたしますが、本改正案はあえて私から申し上げるまでもなく、四十九年の三月に国会に提出されて、二年余にわたって衆議院で慎重審議を重ねられ、そして前国会の会期末になって大幅な修正がされました。そして本院に送付されたのでございますが、衆議院におけるその間の審議の経過の概要をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  251. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) まず、委員会の審議の状況、回数等について申し上げてみますと、その間におきまして正規の委員会が六回開かれております。そのうち一回は参考人による意見の聴取とそれに対する質疑でございました。それから大部分は遡及適用関係のものでございますが、現地視察を五回やっております。たとえば大阪の地下街、東京のデパート等でございます。それから理事懇談会を八回開いておられます。その中の二回は業界からの意見聴取の機会がつくられておりました。  以上が審議の回数等における経過でございますが、内容といたしましては、御案内のとおり、建築基準法の今回提案いたしました改正法案の中には、基本的な事項といたしまして、従来の特定行政庁、建築主事等の多年の問題としておりました点の解明というグループと、それから建物の防災対策の強化というグループと、それから日影を考えました新しい都市づくりという意味の日照の規定と、いわば三つの主な点がございました。そのうちの基本的な事項につきまして、これは全会一致で可決をされております。  それから二番目の建築物のうち防災関係につきましては、工事中の取り扱い等につきます二、三の点につきましては可決されておりますけれども、遡及の適用につきましては、いまだ究明する問題があるということで修正の上削除されております。ただ、その後建築防災対策委員会というのが衆議院の建設委員会の中に設けられておりまして、引き続き検討が行われておりますが、いままでに三回開かれております。  それから日影の規制の問題につきましては、これにつきましては、原案では、全国に、ある日法案が通りますと、真ん中の基準が一律に適用になりまして、条例でその前後上げ下げできるというような規定でございましたけれども、地方公共団体の自主性尊重という意味から、そういうふうなものを設ける、法律で定める基準の中からどれを選ぶか、または定めるか否かということまで地方公共団体にゆだねるという意味の修正が行われておりまして、この点につきましても、この修正案は全会一致ということで修正可決をされております。  以上が審議の経過でございます。
  252. 遠藤要

    遠藤要君 この改正案の主たる改正点の一つである、建築物の防災強化のための既存不適格建築物に対する防火避難に関する規定の遡及適用関係の規定が衆議院において全面的に削除されておりますが、この主たる理由が何であるかということを明らかにしてほしいと思います。なお、今後とも検討しなければならない技術上の問題が残されていると聞きますが、どのような問題が残されておりますか。また、この技術的な解決が急速に可能であるかどうかというその見通し等もお聞かせ願いたいと思います。
  253. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 建築基準法はその目的に、「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資する」ということを目的として掲げております。いわばオールジャパンにわたります状態を最低の基準として決めまして守ろうという法律でございます。  今回提案いたしました建築物の防災対策は、そのうち特に人命尊重の立場から非常に重要な問題であるという見地から、その中のうちから特に規模の大きいもの、不特定多数の方が常時多数集合されるもの等を選びまして、特に二千二百棟ぐらいが対象になると思いますが、そういうものを抜き出してやるということが一点でございます。そのためには多大の工事費を負担させることにもなるので、その制限内容については十二分に検討をすべきだというのが基本的立場でございます。  遡及適用に関する法案の中で特に問題になりました点は、将来の政令改正によりましてまた基準が変わることがございます。その場合に何回となく改修工事の遡及が義務づけられるのではないかという問題でございます。この点は、現行の提案いたしました法案の中では、新しく政令で基準を決めます際に遡及するかどうかを政令で定めるという趣旨になっておりましたので、その点が非常に問題になっております。  それからさらに、代替措置の適用範囲ということが問題になっております。こういうものにつきましては既存のものの改修でございますので、やはりいろんな代替措置が必要だということでございますけれども、提案いたしました現行法案では構造上同等というふうに言っておりまして、構造上の問題でなければ代替が認められないという厳しい規定になっておりまして、その点がひとつ問題だということになっております。  さらに、改修工事の結果、道路内の建築制限等の規定に抵触することとなるものが出るわけでございますが、そういうものに対する対策をもっと明らかにすべきだ。  さらに、防災のために今回遡及適用しようとします防火避難施設と、消防法によりその措置がすでに義務づけられましたスプリンクラーの効用との関係をもっと明らかにすべきだ。  さらに、煙感知器の非火災報の問題これは煙感知器が鋭敏でございまして、火事でないときにもいろいろと非常ベルを鳴らしたり、シャッターをおろすというような問題が最近ございますけれども、そういうものについての技術的な解明をさらに進める必要があるんじゃないか。さらにシャッターの改正の問題等につきまして技術的に検討する必要があるんじゃないかというような点が非常に問題になったわけでございます。  特に、最後におっしゃいました技術的に進めなきゃならない問題といたしましては、煙感知器の先ほど申し上げました非火災報の対策、それから既存の防火シャッターの改修方法の開発が特に技術的に大きな問題になっておりますけれども、煙感知器の非火災報対策につきましては、現在学識経験者、それから関係業界、関係省庁から成る煙感知器非火災報研究会というのをつくりまして、間もなく結論を出し得るものと考えております。  それからシャッターでございますけれども、これも既存のシャッターは乙種から甲種、それから防火というふうにだんだん進んでまいりまして、最近では煙を遮断する防煙シャッターというのが大規模の特殊建築物には使われております。既存の防火シャッターを防煙シャッターに改修いたします方法につきまして、すでに相当の実用といいますか改修方法が適用されておりますけれども、なお多様化するいろんな要望にこたえまして、もっと安くて現実的な技術を開発する必要があるのではないかということで、これにつきましても財団法人日本特殊建築安全センターに学識経験者等から成ります委員会を設置して、鋭意継続的に検討しておるところでございます。
  254. 遠藤要

    遠藤要君 次に、建設省並びに消防庁長官にお尋ねしておきたいんですが、建築物の防災関係の施設や設備は、建築技術の進歩による大型化や複雑化に対応して絶えず改善される必要がございます。これと同時に、これらの防災関係の施設が非常の場合に直ちに有効適切に稼働するような整備が必要であります。御承知のとおり、大洋デパートの火災では階段に商品が積まれていたためにシャッターがおりなかったというような点で被害を大きくいたしており、かつまた千日デパート火災でも避難口がふさがれていたので多くの死者を出したという結果になっております。  そこで、消防庁長官にお伺いをいたしたいのですが、不特定多数の出入りするデパート、地下街、雑居ビル等の特殊建物に対する防火査察はどの程度実施されておりますか。また、査察結果に基づき指示がどの程度実行されておるかという点をお尋ねしておきたいと思います。
  255. 林忠雄

    政府委員(林忠雄君) 現在、五十年中の実績が数字となって手元に来ておりますが、これを申し上げますと、百貨店等に対して五十年中に査察を行ったのが五万二千四百二十七件。それから特定の雑居ビル、いろいろなものが入っているこの雑居ビルに対して八万五百二十三件。それから地下街に対しては、これは地下街等の数がまだ少ないもので、百五十九件でございます。それから、これらを全部ひっくるめまして、おおよそすべての予防査察が九十六万七千七百十件、これだけが五十年中の査察の実績でございます。  そして、この査察の結果に基づきまして、消防法五条の規定により改修命令を出したのが五百九十一件。このうち是正されたものが三百十四件。半分ちょっとが命令に従って一応改修済みでございます。いずれ残りも当然これは改修してもらうことになると思います。それから、消防用設備等がたとえば不備だということで、もっとそろえろというような意味の消防法の十七条の四の規定による措置命令、これは一万二千六百七十七件でございます。そしてこの措置命令によって是正されたものが五千三百三十四件と、これは半分ちょっとまだ欠けております。五十年中の数字は大体そのようでございますから、十分な数字とは思いませんけれども、現在数字をとった段階でまだ是正されていないもの、あるいは改修されていないものも逐次改修されておると思いますので、いずれはこの命令ないしは改修命令は実施していただくようさらに強い指導をしてまいりたいと思います。
  256. 遠藤要

    遠藤要君 建設省にお伺いいたしたいんですが、特殊建築物に関する建築基準法第十二条の建築設備等に対する定期検査及び定期報告状況はどのようになっておりますか。また、その結果どのような改善指導、指示をされているか。その指示が実行されているかどうかを、十分認識されているかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  257. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 定期調査報告の対象といたします特殊建築物につきましては、都道府県別に見ますと、現在準備中というのが山梨県一県でございますが、それ以外の、全国で指定済みでございます。法第十二条第二項の規定に基づき定期検査報告の対象とします昇降機、それから建築設備の指定状況は、都道府県別に見た場合には、昇降機につきましてはやはり準備中の山梨県を除く全国で指定済みでございます。また、建築設備につきましては東京、大阪を初めとしますほぼ半数の都道府県について指定済みでございます。  ただ、これらの調査及び検査の報告状況でございますが、東京都について見ますと、特殊建築物につきましては、昭和四十八年度から五十年度の実績では、防災上特に重要だと思います建築物でございます百貨店につきましても約七割、集会場、映画館については約六割の報告ということになっております。昇降機につきましては、昭和五十年度の実績では設置されている昇降機の約八割に当たります三万四千件の報告を得ております。この報告状況が余り芳しくないというのは大変遺憾に思っておりますけれども、中小規模の建築物の報告状況が悪いということでございます。したがいまして、この報告の徹底を図るということが災害防止にもつながるものでございますので、特定行政庁を指導しまして、自主体制の整備、建築物の所有者、管理者に対する制度の認識の徹底等に努め実効を上げたいと考えております。この報告の結果、改善を必要とするものが発見された場合には、軽微なものにつきましては行政指導を行いますし、重大なものにつきましては建築基準法の九条または十条の措置をとるということにいたしております。  さらに、これらの指示による改善措置の実施状況について確認をしておるかというお問いがございましたけれども、当然それぞれの担当者が事ごとに当たりまして確認をするというのが一点でございますが、それと同時に、春秋二回、建築物防災指導週間というのを行っておりますが、その際に特にそういうものを重点に置きまして確認をするというようなことを現在行っておる次第でございます。
  258. 遠藤要

    遠藤要君 まあ確認され、そうして十分効果が上がっているというお話でございますので、それは信用しておきたいと思いますが、たまたまいろいろの事故があったときに、未確認だというような事件か時たま——新聞が間違っておるかどうかわかりませんけれども、そういうふうな点が出ているので特段のひとつ強化をしていただきたいということを要請しておきたいと思います。  さらに、私は消防庁にお尋ねしておきたいと思うんですが、今回の建築基準法改正と同時に提出され、すでに施行されている四十九年の消防法の改正でデパート、地下街、ホテル、病院等の特殊建築物について、既存のものにもスプリンクラー等の消防設備の設置が義務づけられております。デパート等については五十二年の三月末までに、またホテル等については五十四年の三月末までに設置を完了することになっておりますが、意外にこれは金がかかるようです。また、御承知のような経済不況の影響を受けて消防施設の設置がはかどっていないと聞いておりますが、現在までの設置の状況及び今後の見通し等について明らかにしていただきたい。  また、今後さらに強力に消防施設の設置を推進していくためには、開発銀行等政府関係金融機関にも強力に呼びかけていただき、低利の防災改修融資をひとつ拡充する必要があると考えておりますけれども、消防施設の設置に関連する政府関係機関の融資の概要等について御承知ならばお聞かせ願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  259. 林忠雄

    政府委員(林忠雄君) 御説のように、すでに義務づけられておりながら、経済界の不況と申しますか、こういう防災設備はなかなか利潤を生まないために、設備、それに金をかける意欲というのがどうもいまひとつ上がらないという事実はそのとおりでございます。これ、数字を申し上げますと、五十一年の四月一日、ことしの四月一日現在で十大都市、この十大都市における設備の設置状況が一応手元に上がってきておりますが、それによりますと、屋内消火栓設備はわりあいと進んでおりまして、デパートが八八・四%、九割近く、それから特定複合雑居ビルみたいなものですが、これは九六・一%、地下街が九五・八%、これは延べ面積にいたしましてここまで進んできておりますが、ただ、さっきの御指摘のスプリンクラー、これは後からつけるのが大変手間がかかるということで、これがややおくれております。デパートで、延べ面積で言いまして七七・六%。ところが、複合雑居ビルごときは六三・五と、やはりおくれております。地下街は、これはわりと進んでおりまして、できましたのが、工事が最近だということもありまして九二・六%進んでおります。それから水噴霧消化設備等はデパートで七〇%、雑居ビルで八九・九%、地下街八八・五%という数字になっております。いま申し上げたのは大体五十二年の、来年の三月いっぱいでございますか、これまでしか猶予期間がないので、法的な意味で言えばこれは来年の四月一日には一〇〇%になっていなければいけない数字でございますが、その進行度合いについては私たちも憂慮しておりますけれども、これはちゃんと成立いたしました法律でございますし、いろいろな事情はあろうけれども、できるだけ法規どおりにやっていただきたいという態度で今後も各消防機関を通じて督促をしてまいりたいと思っております。  それから、そのためにはいまも先生御指摘になりました低利の融資ということでございますが、これは相当程度やっておりまして、五十年度の融資実績を申し上げますと、開発銀行が八十億、中小企業金融公庫二十三億、国民金融公庫二億、環境衛生金融公庫二十一億、百二十六億という実績が出ております。まあこのほかに医療金融公庫からの融資も別にございます。五十一年度については、さらに開発銀行の国民生活改善資金というような資金の中にその安全対策の枠を別に新設してもらうようお願いをしておりまして、その充実を図っていこうと、さらに五十二年度以降についても一層の充実を図るということに努力を引き続き傾けたいと思っております。
  260. 遠藤要

    遠藤要君 さらには、衆議院で御承知のように防災規定の遡及適用に関する規定が全面的に削除された結果、これらの防災改修の融資にどのような影響を与えているかという点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  261. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 防災改修融資につきましては、消防関係の分と別に、建築基準法関係につきましても各行におきまして予定をしていただいておるわけでございますが、建築基準法の第十条の規定に基づきます是正命令、改修命令に基づきます改修工事の本年度分の融資につきましては、日本開発銀行の融資につきましては、消防法に基づく改修とあわせて行うものに対してその融資が行われるということになっており、まあいまの消防法に基づく改修とあわせないものには貸さないというふうなことになっております。ただ、その他の政府関係金融機関による融資につきましては、遡及適用に関する規定の削除に関係なく、従来どおり行われることとなっております。
  262. 遠藤要

    遠藤要君 本年度予算に約五億円に上る特殊建築物等の防災改修事業に対する国庫補助金が計上されております。その制度の概要をひとつ御説明願いたい。また、国庫補助金が、衆議院修正の結果、使用不能になったと聞きますが、いかなる理由で使用不能になったのか説明をされたいということを、お尋ねしておきたいと思います。
  263. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 昭和五十一年度予算に計上しております特殊建築物等防災改修促進事業の金でございますが、五億四千五百七十一万九千円を計上いたしております。この補助事業の内容といたしましては、特殊建築物等の台帳整備などにつきまして——などと申しますのは、防災診断、改修計画書の作成等でございますが、を含めまして、都道府県に対しまして二分の一の補助を行うということでございます。その金はそのうちで六千九百三十万円でございます。それ以外には、防火避難施設の緊急整備を行います際に、建築基準法の改正法案の成立に伴いまして、猶予期間内にそういうふうな義務づけられた既存の特殊建築物等の改修工事を行う場合には、改修設計費及び出店者等対策費につきまして補助金を交付する都道府県及び政令指定都市に対しまして二分の一の補助を行うということにいたしておりまして、その金額が四億七千六百四十一万九千円でございます。ただ、この経費につきましては、五十年度予算から措置されておりますけれども、これは遡及適用が実施された場合には一定期間内に大量の改修工事発生しまして、工期的にも短期間に完成することが要求されるということ等から、改修工事を義務づけられた者に対しまして適切な助成が行われなければ円滑な改修実施が期しがたいという点にかんがみて予算を計上されたものでございます。これは財政当局に対する予算要求から決定に至る経緯や積算の根拠を示した歳出予算説明書等にも載っておる点でございまして、遡及適用を前提として財政当局も合意しまして予算措置をされたものと理解しております。  予算のいろいろな処理の中には、改正法案等を含めます場合には、何々法に基づくということは書かないというのが前例になっております。したがいまして、予算書には書いてございませんが、予算計上の含み等から申しまして、義務づけられた者に対する応援という趣旨でございますので、本年度も予算的にも若干無理があろうと思いますし、なお遡及適用に関する規定が削除されたことに伴いまして、今年度内に大量の改修工事発生されるというようなことにつきまして、若干予想されない点もございますので、現在のところ経費の執行はしなくてもいいんじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  264. 遠藤要

    遠藤要君 私は、ここで、本来なら大臣ですが、大臣以上に政務次官が、地位も力もあるという政務次官でございますので、その政務次官にひとつぜひお願いを申し上げたいと思うのですが、この補助金というのは、改正法による防災規定の遡及適用の規定が存在しなければ使用できないというものでは私はないと思います。それに先ほど大臣が、次の国会では必ず提案すると、こう決意を披瀝されて、そういうふうな点で私はこの予算減額、使用不能であるというようなことでなく、この補助金が有効に使えるように政務次官として大蔵省なり何かと強くひとつ折衝されて、これにこの補助金が円滑に動くというような方法に努力を願いたいと思いますが、政務次官のひとつ所見を伺いたい。
  265. 梶山静六

    政府委員(梶山静六君) 補助金の性格は、この法案が遡及適用がなされた場合に使用できるという前提になっておりますので、この遡及適用の部門の成立を見ませんと事務的には大変むずかしい問題だと思います。ただ、そういう状況もありますので、よく大蔵当局とも打ち合わせをして、できるだけ御期待にこたえられるようなことをこれから検討してみたいと思います。
  266. 遠藤要

    遠藤要君 大変政務次官慎重な御答弁ですが、私ども建設委員会には遡及適用の問題を説明されて予算を審議したのではないのです。これはあなた方が財政当局との話の中でそういうふうな問題に触れたということだけであって、われわれの審議にはそういうふうな点が全然説明されておらない。そういうふうな点で私どもはこの予算補助金が使用不能だということはとうてい考えられないと、こう思うのであります。そういうふうな点でひとつ政務次官に大いに奮起していただきたいということと、このような修正案が、政務次官も衆議院でございますが、衆議院で修正されたのでございますけれども、その責任の一半も大きくある、こういうことでございますので、その点をひとつ十分御配慮願い、そしてまた先ほどの、繰り返して申し上げるようだが、大臣からもあのような決意があったので、とにかくあなたの努力をひとつ要請しておきたいと重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。
  267. 梶山静六

    政府委員(梶山静六君) 微力でございますが、大臣とよく打ち合わせをし、御報告を申し上げ、御期待にこたえるように精いっぱいの努力を払ってまいりたいと思います。
  268. 遠藤要

    遠藤要君 それから、大きな社会問題となっている日照問題の解決のために建築行政がいかに対応する、対処するかは、今日の日照問題の内容が複雑多岐にわたっているためにきわめてむずかしい問題である。いろいろの方策が検討されるべきでありますが、今回日影規制を実施するに当たって、都市計画の用途地域制度にリンクさせた理由は何かを御説明願いたいと思います。  また、今回の日影規制が都市計画による用途地域制度にリンクして実施される結果、現在の用途地域の指定が合理的になされているかどうかが問題となります。建設省は、この日影規制の実施を機会に、現在の用途地域の指定状況を総点検して見直しするような指導をする用意がありますかどうかという点をお尋ねしておきたいと思います。
  269. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 建築物の規制にはいろいろな規制がございます。用途の規制、高さ等に対する規制等もございますけれども、土地利用のあるべき姿を確保しようとする良好な町づくりのルールでございますので、これは現行法上もすべて用途地域とリンクして定めております。これは用途地域制が都市におきます生活空間のあるべき姿を示す最も基本的な制度であるということからきておるものでございまして、しかも用途地域の指定には、地方公共団体が、都市計画の決定手続にのっとりまして、民意を反映させつつ行うものであるというようなことでございます。本改正法案は良好な居住環境を備えた町づくりのルールを定めようとするものでございますから、住居系の用途地域を対象といたしまして、その基準は、このような性格を持った用途地域とリンクさせることが一番いいと考えた次第でございます。  後段につきましては、都市局長から答弁させます。
  270. 中村清

    政府委員中村清君) お答え申し上げます。  先生御存じのように、用途地域に関します都市計画、これは都市の快適性とかあるいは利便性、あるいは機動性、こういったことを総合的に考慮いたしました土地利用の計画といたしまして、都道府県知事なりあるいは市町村長が、公聴会とかあるいは案の縦覧、あるいはそれに基づく意見書の提出、こういったいろいろな手続を経まして、要するに住民の意見を十分反映するようにしてつくった計画でございます。したがいまして、ただいま問題になっております住生活の環境、その確保、こういった点につきましては、住民の意向が十分反映されておるというふうに私ども理解しておりまして、日影規制の実施に伴って、特に用途地域の変更をする必要はなかろうというふうに考えております。
  271. 遠藤要

    遠藤要君 日照問題を解決する方法として、一定時間の日照を直接保障するという方法をとらずに、当該建築物によって生じる日影時間を規制することによって、結果的に日照の確保を図るという方法をとった理由はどうかという点について御説明を願いたいと思います。一般に今回の改正案による日影時間を基準とする建築規制は、相隣関係の調整基準としての性格もありますが、長期的な市街地形成上の指標としての要素が強いと言われておりますが、一定量の日照量を直接確保する方法と、日影を規制することによって日照を反射的に保障する方法との相違を明らかにしていただきたいと思います。  また、日影規制の前提となる日影図の作成を簡単に行うための技術開発はどのようになっているかという点を御説明願いたいと思います。
  272. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 今回のこの規制につきましては、建築審議会におきまして特別の専門委員会を設けまして約二年の検討を経て決定したものでございますが、周囲の建築物に一定時間の日照を直接保障するという方法は、既存建築物との相互関係によって左右されるものでございます。新たに建てようとする個々の建築物に対する公法上の規制といたしましては、基準が定めにくいという点がございます。また、先に建築した方が後から建築するものよりも有利となるという不公平がございます。それらの点を勘案いたしまして、公法による公平な規制にいたしますには、今回のような自分の敷地から出す日影の規制をするのが適当だと考えた次第でございます。  日影規制の前提となる日影図の作成等につきまして、簡便に行う方法があるのかという御質問であったと思いますが、現在は日影チャートというようなのが考案されております。(図表を示す)こういうふうな何か非常に簡単ななものでございまして、実は私も事務屋でございますけれども、早速これを応用して自分でやってみましたけれども、私でも十分いろいろなことの検討ができるという程度のものが現在できております。したがいまして、そういうふうな日影の問題を規制いたしましても、どなたでもこれを実行できるというふうに私考えております。
  273. 遠藤要

    遠藤要君 次に、商業地域について日影規制を実施しない理由は何かということについて御説明を願いたいと思います。  商業地域内での日照問題の訴訟事件が比較的多いと言われておりますが、このことは商業地域でもやはり日照問題が深刻であるということを意味しているものである、こう思いますが、この日照問題の解決に今回の改正案は悪い影響を与えるのではないかと心配されている向きもありますが、そのようなことはどうかという点についてお尋ねしておきたいと思います。
  274. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 日照保護の対象地域に商業地域を加えていないがどうかという点でございますが、これは商業地域が「主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」というふうに都市計画法上なっておりまして、建築基準法におきましても、住居系の用途地域に比べまして、高い建蔽率、高い容積率等を認めている地域でございます。むしろ日照保護のための公法上の規制を直ちに行うことは現在まだ適当ではないという判断をしたものでございます。  今回の対象といたしました住居系の地域は、主として良好な「住居の環境を保護するため定める地域」というふうに都市計画法上定める地域でございます。当面一番問題の多いこういうところに公法上の規制をまず行うということに決心をしたわけでございますが、しかし、このことにつきましては、商業地域におきまして日照関係が必要でないという判断をしたこととは違いまして、この地域におきます日照の確保は個々のケースに応じた私法上の相隣関係の問題として、最終的には判例の積み重ねということによりまして解決されるべき問題であると現在考えておる次第でございます。
  275. 遠藤要

    遠藤要君 今回の改正による日影規制は、第一種住居専用地域で七メートル以上、その他の住居系の用途地域で十メートル以上の中高層建築物を対象に実施されることになっておりますが、都市における宅地の細分化が進んだ今日、七メートルまたは十メートル以下の低層建築物による日照阻害が多く発生しており、日照問題の解決のためには今回の日照規制の対象とならない低層建築物による日照問題の解決策が講じられる必要があると考えますが、これについて建設省はどのような解決策を用意しておられますか、お聞かせ願いたいと思います。  これらの低層建築物による日照問題の解決は、私法上の相隣関係にまつとの態度では都市の日照問題は解決いたしません。建築行政上からも宅地細分化の防止、街区ごとの建築詳細計画の導入、高さを制限する高度地区制度の活用等、各種の方策が検討されなければならないと考えますけれども、その御検討の用意がありますかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  276. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) 低層建築物にかかわります日照阻害の対策といたしましては、現行の制度といたしまして道路の幅員による斜線制限による規制、北側斜線制限による規制、高度地区建築協定の活用等々の方策を基準法上も準備いたしております。これらによりましてある程度対処できるものと考えておりますが、今回の改正によります日影規制の対象を中高層建築物にいたしましたのは、住宅地における中高層建築物による日照阻害はその影響範囲が非常に大きいこと等によりまして、その地域全体の住環境として重大な問題でございますので、特に公法上の規制を加える必要があると判断したからでございます。これに対しまして、低層建築物にかかわります日照阻害につきましては、その影響範囲から見まして、地域全体の住環境に中高層建築物ほど大きな影響を与えないものでございます。また、現在の市街地形成の状況から判断いたしますと、低層建築物を従来の規制以上にことさら厳しく規制するということになりますと、実質的には低層建築物も建築禁止につながりかねないというようなおそれも出てまいります。そのために今回は公法的な規制からは新しく規制することをやめまして、従来の制度の活用で対処したいと考えた次第でございます。  なお、低層建築物にかかわります環境阻害の問題は、主として宅地規模が過小であるというようなことに起因しておると考えられます。この解決のためには長期的視野に立った対策が必要であると考えております。先生からもそういう検討の用意があるかという御質問でございましたけれども昭和四十九年の一月に、この建築基準法の改正案の答申と同時に、今後の検討課題ということで、建築審議会からも答申をいただいております。その中には、ただいま御指摘になりました建築詳細計画制度等が挙げられておりまして、宅地細分化対策等とあわせまして今後早急に検討を続けてまいりたいと考えておるのが現状でございます。
  277. 遠藤要

    遠藤要君 最後に、建設大臣にお伺いし、かつまた要望しておきたいと思います。  先ほども政務次官に要請いたした次第でございますけれども、このたびの衆議院の修正の結果、五億円余の予算補助金が使用不能だと、このような感じを与えておりますけれども、私ども議会において執行部からの説明には、この方途に使う金だというような説明はなかったわけです。そういうふうな点で私はこの補助金は当然活用されるものだ、こう確信しておりますけれども、いろいろだだいま住宅局長のお話を聞いておりますと、多少疑義があるような御説明でございますけれども、私は大臣に特にお願いを申し上げておきたいのは、特に先ほども大臣から、とうとい生命、人間尊重という立場から次期国会には必ず成立させる、提案するという決意もあったことでございますので、その成立してからは問題がありませんけれども、暫定的にもその成立前も使用ができるように財政当局と十分ひとつお話し合いをお願い申し上げておきたいと、こう思います。そして大臣の考えられているような、本法案が成立して人命が尊重され、よき環境、町づくりができるような点を期待いたしておりますけれども、大臣のひとつ決意を重ねてお尋ねいたしておきます。
  278. 中馬辰猪

    ○国務大臣(中馬辰猪君) ただいまの五億円の御要求につきましては、その趣旨が実現できますように事務当局に検討させるつもりであります。
  279. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五分散会