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1976-10-28 第78回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十八日(木曜日)    午後一時四分開会     —————————————    委員異動  十月二十七日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     山田 徹一君  十月二十八日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     野口 忠夫君      山田 徹一君     矢追 秀彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 増原 恵吉君     委 員                 稲嶺 一郎君                 亘  四郎君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君    国務大臣        外 務 大 臣  小坂善太郎君    政府委員        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省経済局長  本野 盛幸君        外務省条約局長  中島敏次郎君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      大高 時男君        防衛庁長官官房        審議官      渡辺 伊助君        法務省入国管理        局登録課長    山下 善興君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (ソ連共産党中央委員会総会におけるブレジネ  フ演説ソ連外交政策に関する件)  (国連総会における武力行使に関するグロム  イコ提案に関する件)  (魚塘事件に関する件)  (トランスカイ独立問題に関する件)  (ソ連国防費の趨勢に関する件)  (日中平和友好条約締結問題に関する件)  (ECに対する輸出自主規制問題に関する件)  (日米防衛協力小委員会に関する件)  (米国上院外交委員会におけるダレス証言に関  する件)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十七日、塩出啓典君が委員辞任され、その補欠として山田徹一君が選任されました。  また本日、和田静夫君及び山田徹一君が委員辞任され、その補欠として野口忠夫君及び矢追秀彦君が選任されました。     —————————————
  3. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 国際情勢等に関する調査議題とし、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 羽生三七

    羽生三七君 先日、ソ連共産党ブレジネフ書記長ミグ25問題に関連をして、陰うつになった日ソ関係と、日本に対する批判を行っておりますが、このことによって日ソ関係に何らかの影響が起こるのかどうか、外相としてはどのようにお考えになっているか、承りたいと思います。
  5. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ブレジネフ演説の全文を承知しておりませんので詳細なコメントはできませんけれども、一般的に申し上げまして、まず第一に、内政関係については特に本年の農業の好調ぶりを強調している点が注目されまするが、対外関係中、いま御質問のございました対日関係、特にミグ25以後の問題について私ども理解を申し上げますと、まず、アジア大国たる日本という言葉を初めて使っておられるわけでございます。その関係は、相互尊重と互恵の原則に基づく日ソ関係の発展が可能であり、かつ望ましいと言っておられるわけでございます。私はこういうソ連政府考え方というものは、対ソ問題を解決して善隣友好関係を真に安定的な基礎の上に置きたいというわが方の希望と基本的には合致するものであるというふうに心得て歓迎をいたしたいと思うのであります。  ミグ25につきましての政府考えというものは、累次ここの席で申し上げているとおりでございまするが、ブレジネフ書記長演説本件に関しまして、日ソ関係を大いに曇らせたと言及しているわけでございますが、いま申し上げましたような点を含めまして、日ソ関係全般の調子から見て、ソ連側指導部としてこの事件本質ミグ事件本質というものについては理解を示しておるというふうに思われるわけでございます。特に、土光経団連会長の名を挙げて、この会談が有効であったというふうな批評があるようでございますので、さような判断をしておるわけでございます。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 ソビエトは、中国に対して関係改善を呼びかけておるようでありますが、早急に和解が成立するとも思えませんが、さりとて、いつまでもこのような状態が続くかどうか、きわめて疑問だと思います。だから、このソ連中国に対する関係改善の呼びかけと両国関係の将来をどのように展望されておるか、外相所見をお伺いいたします。
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 中国に対して言及されております分は、中ソ関係の回復は中国側出方いかんにかかっておるというふうに言っておるわけでございまして、この点は、本年三月の党大会の報告と路線上には変化がないというふうに見ておるわけでございます。  一方、中国の側におきましては、新しい華国鋒体制というものができたわけでございますが、基本的には対ソ連関係は変わりないというふうに見ております。したがって、この両者の関係は変わりないのではないか、従来のとおりの関係が推移するのではないかというふうに見ております。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、将来においても、見通し得る将来のことは別として、ずっと先になってもこの両国間の関係改善が行われる兆しはないと、そういう御判断でしょうか。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 近い将来、私ども考えます限りにおきましては、やはり従来のいろいろないきさつもございまするし、そのいきさつが清算され新たな関係ができるというのには相当の時日を要するのではないかというふうに考えます。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 次に、日中平和条約についての日本中国との折衡は、政局現状から判断すると、これは結局来年になるような気がするんですが、まあ総選挙後の新内閣ができた際、外相が留任されるとした場合でも、なおかつ日中間接触は来年になるような気がするんですが、その辺のお見通しはいかがでございますか。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日中平和友好条約を早く結びたいという希望は従前から持っておるわけでございまして、前大臣においてもいろいろ御苦労されたところでございますが、その間にいろいろないきさつ等もできておりまして、なかなか進まないことは御承知のとおりでございます。ただいまのこの政局から見ますと、われわれ選挙をやるわけでございますので、そういう際の日本政局に対する見方、先方がどう見るかということは、これ私ども判断以外のものでございますけれども、やはり新しい内閣ができるのを見るという考え方通常考え方ではないかというふうに存じます。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 次に、小坂外相国連総会演説で、「国際紛争解決に当たつてはもっぱら平和的手段によることとし、軍事的手段に訴えることを断乎として排除」する立場を鮮明にして、また、核兵器の不拡散条約の不平等性に触れて、核兵器を持つ国が誠意をもって核軍縮努力を行うよう希望し、さらに、このような努力を怠るならば核兵器拡散条約有名無実となることを指摘し、「わが国核兵器拡散条約締約国として核軍縮及び核兵器拡散防止のための国際協力に今後一層積極的な貢献を行って参る決意」を表明されたことは、私もこれは大いに賛成であるし、歓迎をいたします。  私は、核兵器拡散条約審議の過程において、終局的にはこの条約に賛成しながらも、核兵器を持つ国が核を持たない国の安全をどう保障するか、さらに武力行使国際条約、あるいは二国間条約締結必要性を強く主張してきたものであります。また、ソ連ポリャンスキー駐日大使と二、三カ月前私が会談をした際に同様の見解を述べましたが、同大使は、この提案を早速本国に伝達すると約束されました。  その後九月二十八日、ソ連グロムイコ外相国連総会において武力行便条約提案する演説を行いましたが、これは大臣承知のとおりであります。その中で、「大量破壊兵器開発と貯蔵、絶え間ない通常兵器高性能化など「史上前例のない軍備拡張競争」の危険を指摘し、ソ連外交政策の目標が、軍備競争にブレーキをかけ、流れを変え、軍縮に進むことであると宣明、国際関係において武力行使を諸国間で合意することが今、「決定的に重要」である、と主張した。」と伝えられております、これは私は新聞報道だけで読んだのでありますが、伝えられております。そして具体的には、「核軍備競争の停止と核兵器の廃棄、核実験禁止核兵器拡散防止機構の整備、化学戦争禁止大量破壊兵器開発禁止軍縮軍事予算の削減など」をうたい、さらに、「厳しく、効果的な国際管理のもとに全面完全軍縮実現のため締約国があらゆる努力を払うことを決め」るという、そういう条約のようであります。このグロムイコ提案に対して、中国はこれはごまかしであると厳しい批判をしているようでありますけれども、この提案を一片の宣伝に終わらせないようにすることが私はきわめて重要であると思います。このグロムイコ提案小坂外相としてはどのようにお考えになるか、まずこの点をお伺いいたします。
  13. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ソ連のようないわゆる超大国核保有国にして、しかも強力なる軍事的な実力を持つ国が、いろいろ世界平和の問題について考え、私どもの、羽生先生もおっしゃっているような、武力を不行使して、日本国憲法の精神に沿う、国祭紛争を平和的な手段解決する、そういうことに耳を傾けようとしていることは歓迎したいと思うわけでございます。しかし、核軍縮を含めてこの軍縮を実りあるものにしまするためには、何といってもそうした核兵器を含む軍備拡大のための競争というものを停止して、そして核を持っている国においては、まずその核軍備を削減していくというアプローチが最も現実的ではないかというふうに思っているわけでございます。  ただいまの武力行使条約を提出したと言われておるこのソ連に対する対応策といたしまして、私どもといたしましてもこれを受けて、その取り扱いぶりを目下検討中でございます。現在国連総会の第一委員会本件審議が行われているところでございまして、二、三の国の対応ぶりについてはただいまお述べいただきましたのでございますが、この審議進展ぶりも踏まえながら、わが方の態度を検討してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 国連総会における各国代表演説は、ある意味において一種のセレモニーのような感じを持たざるを得ないのであります。これを毎年の年中行事として片づけるようなことをしないで、重要な提案はそれを成功させ現実化するために、各国が最善の努力を傾けなければならないと思います。  私は、核兵器廃絶とか完全軍縮武力行使という問題については、一貫してこれを久しく主張してきた一人でありますけれども核兵器拡散が、核拡散防止条約があるにもかかわらず、水平的にも拡散状況にあるし、さらに垂直的にも拡大している今日、この主張を一層強めなければならぬと思うのです。このような時期において、恐るべきことは、力の均衡による平和という虚構の理論になれて、核兵器廃絶完全軍縮という問題をただお題目として唱えれば足りるというのではなく、これをぜひ成功させる必要があると思います。  グロムイコ提案が、いま御検討中のようでありますが、すぐ実現するとは思いませんけれども、しかし、条約草案が示されたのでありますから、これを実現させるために、ソ連真意を確かめて、二国間でも話し合いの場を持つべきであると思うんであります。率直に言って、日本日米安保条約を持っておりますので、非常に説得力に乏しいとは思います。しかし、平和憲法を持ち、また、非核三原則を内外に明らかにしておるのでありますから、話し合い余地は十分あると信ずるのであります。この問題について、ソ連側と話し合うことは私は十分意義のあることだと思いますけれども外相としてはいかがお考えになるでしょうか。
  15. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わが国NPT条約を批准したということは非常に大きな意味を持つものでございまして、ただいま仰せのような軍縮問題に日本が真正面から取り組んでいける素地ができたというふうに理解いたしておるわけでございます。この考え方の上に立って、核兵器を含む一般軍縮問題に精力的にいかなきゃならぬと思いますし、私自身の言ったことでございますが、通常兵器の輸送の余りに野方図なやり方、これに対して何か問題を国際的規模考えようじゃないかという提案についても、その後フォローアップをやってもらっておるわけでございます。  ただいま仰せの核の問題は最もそのうちで重要でございますが、私どもはまずその第一段階といたしまして、核実験の包括的な禁止の呼びかけ、これは非常に第一段階として必要だと思うんです。この問題の解決のかぎとなる地下の核実験の検証問題について、地震学的探知による国際協力に積極的に貢献していきたいと思うのでございます。われわれ地震国でございまして、地震探知には非常に熟達していると申しますか、研究を積んでおると思うのでございます。大体核実験の探査につきましては、その国へ入っていって検査するということはなかなか許されない、それはスパイ行為であるというふうな言い方をされる国もあるわけでございますが、それを遠くから地震学的に探査する、それに何か国際的な合意を得るということも考えなければならぬと思っているわけでございます。  それから、これはインドで現実にあったわけでございますが、核実験平和目的のためだと、ダムをつくったり運河をつくったりする、そういうための使用なんだということで核実験が行われた、これはまさに抜け穴的なものになりますので、こういうことを何とか抑えていかなきゃならぬというふうに思っておりまするわけでございます。  いずれにいたしましても、ソ連提案については十分また研究をいたすように考えておるわけでございますが、ああいう核を持った非常に強い国が、やはりただいま仰せのような今日のいわゆる恐怖の均衡、そういうものの実態を認識して自分からそういうことを言ってくれるならば、ぜひひとつ核実験禁止ぐらいのところから踏み込んでもらいたいというふうな気持ちを持つわけでございます。ただ、最後に仰せになりましたソ連との間にこの問題をもっと話し合ってはどうかという御提案は、非常に示唆に富んだ御提案でございまして、よく検討させていただきたいと思います。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 この問題について国際条約ができればそれに越したことはありませんが、現状では容易に実現できるとは思いません。しかし、そうであればこそ、国連やあるいはジュネーブ軍縮委員会等を通じて国際条約の成立に努力するとともに、二国間条約を成功させるための努力が一層要求されるのではないかと思います。武力行使という形がよいのか、あるいは核兵器を持つ国が核を持たない国の安全をどう保障するかという核拡散防止条約に実を盛り込むような形がいいのか、その辺はわかりませんが、とにかく話し合いの場を持つことが肝要だと思います。ですから、機会を見てそういう話し合いの場を持つことにやぶさかでないと考えてよろしいのかどうか、お伺いいたします。
  17. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) やはりこれは、世界の平和とわが国自身の安全と非常に大きなかかわり合いを持つ問題でございまして、そのためには国連の場も十分利用せにゃならぬわけでございます。しかし、国連の枠の内においても、あるいは国連の枠の外においても、できるだけそういう機会を探し求めるということは必要であると私ども考えておるわけでございます。ただ、今日の国際社会におきましては、核というもの、核兵器というものが相互抑止力を持っておる、そして国際的な安全保障の枠組みがそうした上にあるという、これもまた現実でございまするので、そういう現実を踏まえながら、核兵器使用しないという国際協定締結考えていくというこの趣旨はよくわかるし、そういうことにならなきゃならぬと思うのでございますけれども核兵器を一方持っておる国が、自分の方は核兵器をどんどん優秀なものに変えていっている、変えていっていながらこれを使用しないということに私どもは非常にわかりにくさを感じておるわけでございまして、そういう点はひとつ羽生さんの貴重な御意見もございまするので、この一見矛盾する超大国の論理をどう解決していったらいいのかということを、今後の重要な研究課題にさせていただきたいと思います。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 日ソ間の問題としては、北方領土の問題も重要であることはこれは言うまでもありませんけれども、この問題が片づかなければ他の問題は第二義的という姿勢ではなしに、核軍縮武力行使国際条約、あるいは二国間条約を実現させるために、このグロムイコ提案について、たまたま小坂外相国連総会における演説も、内容的には同じような性格のものだと思うのです。したがって、そのグロムイコ提案について具体的に話し合いの場を持つことが私は重要ではないかと思うのです。ですから、いま外相の御答弁の中にもあったように、自分の国は核兵器を持っておって、それではその条約武力行使提案をした場合に具体的には一体どうするつもりなのか。そういうことを詰めて話し合いをするために、日本が、外相ソ連を訪問するなり、あるいはソ連外挿なりあるいけ要人を日本に迎えるなり、北方領土の問題でならそういう接触はするけれども、他の問題は第二義的だということでなしに、もっと率直に話し合いを、たまたまグロムイコ外相がそういう提案国連でやったんでありますから、その真意確めるためにももっと具体的な折衝があっていいと思うし、そうしなければ結局これお題目になってしまって実現性は乏しいと思うので、もう一度所見をお伺いいたします。
  19. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非常に理論的であり、かつ実際的な御意見と承りますが、この問題についてさらに専門的にやっております国連局長から少し申し上げたいと思います。
  20. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) 大臣がいま御説明申し上げたとおりでございますが、国連総会の第一委員会で現にこのソ連提案について審議が始まっております。この議題を要求する際に、ソ連は非常に緊急議題として議題の掲上を要請したのでありますけれども、出してみますとなかなかいろいろ問題点があるんではないかというようなことで、各国の反応がなかなか慎重であるということもだんだんわかってきまして、本日現在の段階では、もちろん今次の総会でこれについて具体的な進展を期待するものではなくて、ひとつこれから来総会にかけての期間にいろいろ各国から意見を求めて、事務総長に取りまとめてもらって、それを来年の通常総会でもう一遍よくながめてみるというような方向に審議の経過がいっておるところでございます。ですから、もちろん今次の総会におきましても、機会があればソ連をも含めまして関係各国といろいろ意見を交換いたしたいと思いますし、それから来年の総会にかけての期間にいろいろ機会があろうかと思いますので、十分話し合い機会があれば大いにこれを活用して検討していきたいというふうに思っております。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 これは少し古い話になりますが、ソ連コスイギン首相は一九六六年にジュネーブ軍縮委員会にメッセージを送って、核兵器を持たない国にソ連核兵器を使ったりおどしたりはしないことを声明いたしました、私は先年訪ソした際に、ポドゴルヌイ・ソ連最高会議幹部会議長会談した際に、このコスイギン声明は今日もなお生きているかどうかをただしましたが、これに対して同議長は、その声明は今日もなお生きているという肯定的な答弁をされた経緯があります。  さきにも述べましたように、核兵器廃絶軍縮について、これだれしもお題目としては唱えますが、一体どれだけ本気なのか疑いたくなるのが今日の世界の実情だと思います。先ほども申し上げましたように、力の均衡論になれて、核兵器が人類にもたらす恐るべき脅威についてだんだん不感症になることもまた恐るべき問題かと思います。だから、この問題を理想論として片づけるんではなしに、この今日の状況を打破していくことがきわめて緊要な問題だと思います。力の均衡論に基づく限り、結局拡大均衡になる、際限のないこれは拡大均衡になることは当然でありますから、いよいよこの問題の解決はむずかしくなると思います。そのためには、可能と思われるあらゆる方途を真剣に追求すべきであると思っております。そういう問題についての話し合いソ連側が拒否する理由はないと思います。だから、国連総会の第一委員会等接触日本側としてはあるでしょうが、そうでなしに、日本として直接ソ連接触することをお考えになってはどうか。それからまた、小坂外相国連総会における平和演説を生かす意味においても、当然その主張を具体化することが要求されると思いますので、重ねてそういう国連総会のような場だけでなしに、二国間の関係として話し合いをするようなお考えはございませんか。もう一度、くどいようですがお伺いいたします。
  22. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまのコスイギン演説につきまして、さらにこれを会ってお確かめになったというような御熱意に対しては非常に敬意を表するところでございます。しかし、この演説の出ました後で、中国側といたしましては、核不使用ソ連が言うのは欺瞞だと言っておるのでありますが、それはどういう点かと言うと、結局自衛の場合を除外しているじゃないか、何でも自衛の名のもとにやればやれるという余地を残しておって、何と申しますか、いかなる場合でもいかなる状況のもとでも核兵器を最初に使用しないと約束することが先決であるという演説を、一九七一年に国連中国はまた演説しているわけでありまして、なかなか核をめぐる問題というのは、核を一度持ってしまうと、持った国がそれについていろんなことを申しますけれども、なかなかその真意が捕捉しがたいというような点があるわけでございまして、何と申しますか、今日の世界というのは、そういう相手方の出方欺瞞の上にただいま仰せのような拡大均衡を求めて不安を増勢しているということが言えるのじゃないかと思うんでございます。そういう点から言うと、わが国は全くいまのそうした傾向と別の立場に立っておるものでございまするから、そういう点をできるだけ各国理解せしめる努力をしなきゃならぬと思うんであります。ことにソ連との関係におきましては、これはできるだけあらゆる機会をとらえてその理解を深める必要があると思うんでございます。  非常に誤解が多いのでございまして、先般のミグベレンコ中尉亡命一つについても非常な誤解がある。いわんや領土問題等についても、これは何か復讐主義者復讐欲の表現であるというような理解もあるようでございますし、そういう誤解を解く上からも、いま仰せのような日本の平和的な意図を十分理解させるということが非常に意義があると思いますので、十分考えさせていただきたいと存じます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 国連総会の第一委員会というお話ありましたが、ジュネーブ軍縮委員会における日本代表もそれなりの活動をしているとは思いますが、核拡散防止条約の批准の際に問題になったような諸点について、具体的に何らかの活動をされておるのかどうか。私どもとしては一層積極的、効果的な活動を期待しておるわけであります。  これも古い話になりますけれども、かつて参議院議長だった佐藤尚武さんと私は、ともに外務省に軍縮の部局を、機構をつくるように、もう古い話ですがしきりと要請してきた一人であります。御承知のように、軍縮担当室、軍縮室ですが、これが設置されていることは結構でありますが、この軍縮担当の機構をもっと強化して、そして平和憲法を持つ日本の特殊的な地位を生かすような積極的な活動を期待したいんであります。そういう努力を通じて核拡散防止条約の欠落を埋めていくと、そういうことにしなければ、種々問題があった中にわれわれが同条約を批准した目的が達成されないわけです。したがって、核防条約批准後のジュネーブ軍縮委員会で何らかの活動をされておるのかどうか、今後とも外相としてこれを督励されて、核防条約の欠落を是正するような働きをジュネーブ軍縮委員会の担当者がやってくれることを期待しておるわけですが、これをお伺いいたします。
  24. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先般、皆様方の御努力軍縮室というものができまして、非常に有能なる室長を置いておるわけでございます。最近、その室長が国連に立ちましたわけでございます。国連で小木曽大使等とも連絡をとりまして、ただいまのようなラインでできるだけの活動をするものと心得ておるわけでございます。実際の活動その他につきまして、私もできるだけ督励して、これは何と言っても国連局と一体になってやっていくのがいいと思いますので、督励しておるわけでございますが、局長からお聞きとりいただきますれば大変幸いだと思います。
  25. 大川美雄

    政府委員大川美雄君) わが国が六月に核防条約の批准書を寄託いたしました日に、御承知かと存じますけれども日本政府声明を発表いたしました。その中に、核防条約締結国としての今後の日本立場をはっきり鮮明にしたつもりでございますけれども、それを現実にジュネーブの軍縮委員会におきましても、国連総会におきましても、今後着々と進めてまいりたいと思っております。  先ほど大臣からもお話がございましたけれども、まず一番基本的な問題は核の軍縮でございますけれども核軍縮につきましては、まず核兵器国の間での核軍備競争を抑える、その上で、次に核軍備を減らしていく方向に持っていくことをわれわれは当然強く期待する次第であります。その見地から、ただいま進行中の米ソ間におきますSALT交渉にわれわれは深い関心を抱いているわけでございます。ただ、これは米ソ間の問題でございまして、しかも国連の枠外で話が進められていることでありますので、日本が声を大にして両当事国の努力を呼びかけることはできますけれども、それ以上のことはなかなか現実にはむずかしい次第でございます。  それから、そういった核兵器国間の核軍備競争の制限あるいは核兵器の縮減という問題のほかに、なお一つ最も緊急であります課題は、言うまでもなく核実験禁止でございます。この問題につきましては、従来からジュネーブの軍縮委員会におきましていろいろと検討が進められておりますけれども、ことしの六月の終わりから八月の初めにかけまして、ジュネーブの軍縮委員会におきまして、地下核実験の検証のためのアドホック専門家委員会というのが正式に発足して、いままでもそういう話がいろいろございましたけれども、正式のそういう機関が核軍縮委員会のもとに設けられまして作業を進めております。それを受けまして、今度の国連総会におきましても、その問題を今後どういうふうにさらに推進していくべきかについて各国と話し合っている次第でございます。具体的には、たとえば専門家委員会に専門家を派遣してない国に対して、おたくからもひとつ専門家を派遣してこの核地下実験の検証問題についてお知恵をお出しくださいというようなことを言ったりしている次第でございます。  それからいま一つ、大臣からもお話がございましたけれども、平和核爆発の規制の問題がございますけれども、これは言うまでもなく大きな抜け穴になり得るわけです。そこで、この問題につきましては、これもことしの初めごろからだったと思いますけれども、ウィーンにございます国際原子力機関の場におきまして、平和核爆発につきまして、それの法制面、経済面、それから環境に与えます影響の面といったいろいろの面から、きわめて専門的な話し合いでございますけれども、平和核爆発についての専門家同士の話し合いが進んでおります。その目標は、平和核爆発を規制するための国際的な仕組みをつくっていこうというねらいでございます。そういったような面でも日本として努力いたしております。  なお、先ほど申しました六月八日の日本政府政府声明におきましても、その他の機関におきましても、日本政府としては核防条約に参加していない中国とフランスに対して、ぜひともこの条約に入ってもらいたいということを申しておりますし、それからジュネーブの軍縮委員会の作業にもひとつ参加してくださいということを機会あるごとに申しております。これも、核軍縮進展のためにはすべての核兵器国が参加して議論を進めないとなかなか具体的な成果が得られないという見地から、中、仏にも呼びかけている次第でございます。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 ただいまの問題について、外相初め外務省が積極的な努力を展開されることを希望しまして、質問を終わります。
  27. 田英夫

    ○田英夫君 前々回の委員会で、韓国問題について警察庁の御答弁をお願いをしておきましたので、引き続きこの問題についてお尋ねをいたします。  警察庁おいでになっていると思いますが、前々回質問いたしましたのは、例の魚塘氏の問題に関連をしてのことでありますが、まずお尋ねしたいのは、この魚塘氏の事件というものはどういう性質の事件なのか。一般に誘拐未遂事件というふうに報道されているわけでありますけれども、警察としてはどういうふうに受け取っておられるわけですか。
  28. 大高時男

    説明員(大高時男君) ただいま先生御質問の魚塘事件でございますけれども、これは時代社という雑誌社がございまして、これの副社長の魚塘氏が本年の九月十九日に港区高輪所在の韓国料亭梨花園という前から連れ去られた事案でございます。  実は、警察の方では九月の十九日の午後十時三十分ごろに、魚塘氏が連れ去られたという旨の一一〇番によりまして警察官が現場に急行する。そこで、現場におられました駐日韓国大使館の朴参事官、それから朝民連という在日朝鮮人の団体がございますけれども、この朝民連の委員長でございます呉正泰氏、このあたりの方々から事情を聞きましたところ、一緒に会食をしておりました魚塘氏が会食を終わって外へ出たところで四、五人の男女に連れていかれた。その際に、強引に車に押し込まれて連れていかれた、こういう状況が判明をいたしたわけでございます。  警察では、直ちに緊急配備を行いまして誘拐容疑事案ということで捜査をしておったわけでございますが、翌日の二十日の午前一時二十分ごろになりまして、魚塘氏が立川の自宅に帰っておるということがわかりまして、自宅へ行って様子を聞きましたところ、妻と娘と一緒に帰ってきただけだということで、当時の状況についての詳細なお話は一切聞けないというような状況であったわけでございます。  同じ日に、魚塘氏は一方朝総連の本部におきまして、韓国渡航の準備をしたことはない、朴参事官の指示を受けた呉正泰朝民連委員長らによってホテルに事実上監禁状態になった、危うく韓国に連れていかれるところであったと、こういうような話を発表をされたわけでございます。これに対して朝民連側の方は、逆に朝総連の方がむしろ魚塘氏を自宅に軟禁しておるんだということで、その後十月二十六日に至りまして、魚塘氏は呉正泰氏らの名誉を棄損しておるということで告訴が出ておるというような状況にあるわけでございます。  警察としては、いま申し上げましたように、それぞれの関係者の申し立てというものが根本的に食い違っておる。なかんずく、かぎを握るのは魚塘氏である、だから魚塘氏に警察に来ていただいてぜひ事情を聞いて、誘拐であるのかないのか、あるいはまた実際に軟禁の被害者であるのかどうか、そういった点を一切明らかにしたいということで、現在なお努力をいたしておるという状況でございます。
  29. 田英夫

    ○田英夫君 そのとおり私どもも聞いているわけで、両者の言い分が食い違っているわけですけれども、はっきり申し上げれば、そのときに魚塘氏を事実上軟禁していたといわれる朴載京という人物は、私がこの委員会で何回も名前を出しているKCIAであるといわれている人物だということが一つ。それから呉正泰氏が会長をしている朝民連というのは、これはKCIAがつくっている謀略団体であるというふうに理解を私はしています。このことは念のために申し上げておきます。  そこで、この朴載京という参事官と呉正泰という人物を警察はお調べになったかどうか、伺いたいと思います。
  30. 大高時男

    説明員(大高時男君) 朴載京参事官、これは現場から直接一一〇番された方でございます。その一一〇番された事情につきまして、私の方では事情をお伺いいたしております。また呉正泰氏につきましても、これは詳しい事情を伺う必要があるということで、すでに事情はお聞きいたしております。
  31. 田英夫

    ○田英夫君 この問題、非常に実は根が深い問題で、日本と韓国との友好関係という意味からも放置できない問題だと思います。私どももこの問題を今後とも引き続き調査しなければならない。これはわれわれに与えられた国政調査権という責任の中でやらなければならないと思います。  それは、現にアメリカでもこれに類似する問題を議会の中で調査をしておりますが、たとえばことしの三月二十五日、下院の国際関係委員会、いわゆるフレーザー委員会の中で、元の国務省韓国副長であったレイナード氏が証言をしている秘密会の議事録がここにあります。その中でも、これに関係するようなKCIAのアメリカにおける活動というものを非常に厳しく追求をしている。残念ながら私が入手いたしましたこの秘密会の議事録は、秘密会の議事録でありながらさらに重要な部分を削除している。秘密のための削除というふうになって関係者の間に配られているわけで、重要な人名などの出てくる部分は削除されておりますので知り得ませんけれども、アメリカの議会でもアメリカにおけるKCIAの活動というものについて非常に厳しく調査を進め、また最近報道されているところでも、ついにFBIもアメリカにおけるKCIAの活動を調査して、その結果、朴大統領自身がアメリカの国会議員など政治家に対して賄路を贈るように指示した、贈賄を指示したということがアメリカの謀報機関によって判明をしたということが、けさの新聞にも各紙に出ているわけでありまして、こういうことが日本でも行われている疑いがきわめて濃厚である、こういう感じが非常にいたします。  レイナード証言で一番特徴的なことは、すでに報道されているとおり、金大中氏が拉致されたのもKCIAのしわざであるということをはっきり言っているわけでありまして、この問題はすでに事件が起きてから、金大中事件は三年以上たつわけでありますが、いまだに朴載京というようなKCIAの疑いのきわめて濃厚な人物がそのまま放置されている。これは許されないことだと思いますが、ずばり伺いますが、外務大臣はこの朴載京という人物はKCIAであるとお認めになりますか。
  32. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そのことは私もよく存じません。この人は韓国大使館一等書記官といたしまして昭和四十六年一月二十七日に来日いたしまして、昭和五十年三月二十日付で参事官に昇任し、現在に至っておるという報告をもらっております。
  33. 田英夫

    ○田英夫君 このことは引き続きさらにお伺いすることにして、次の問題に移ります。  これも十月四日の予算委員会で法務省にお伺いをしたことでありますが、五十人の弁護士さんたちを中心にして金大中事件関係をしたといわれる三人の人物を告発をしている。これについて東京地検が受理をされて担当検事も決定をしたというお答えがあったわけでありますが、それからさらにそのときに私は金在権こと金基完という人物がその一人でありますが、これがロサンゼルスに在住をしているということを御存じかということを伺いましたが、政府はまだつかんでいないということでありました。その後お調べになって、この住所その他わかっているでしょうか。これは法務省ではおわかりになりませんか。——警察庁もつかんでおられませんね。
  34. 大高時男

    説明員(大高時男君) 把握いたしておりません。
  35. 田英夫

    ○田英夫君 そのときにもすでに申し上げたんですが、告発を受理して捜査を開始したと言われながら、全く政府はこの問題を取り上げる姿勢にないということでありますから、この際はっきり私ども調査で判明をしている金在権こと金基完のロサンゼルスの住所を申し上げます。  三〇〇八の、日本読みにいたしますが、トラダコルダ通りという、これは後でお書きしてお渡ししてもよろしいのですが、そこにジュンウォン・キム、キム・ジュンウォンですね。これは大体いま韓国人、朝鮮の人の名前は漢字を使いませんから、どの字が当てはまるか、これは韓国の人に聞いてもわかりませんので、漢字は当てはまりませんが、キム・ジュンウォンという偽名で住んでいる。アンリステッドナンバーの電話番号もわかりましたが、ここに住んでいることはまず間違いないということでありますが、これはきょう法務省の担当の方がおられないんですが、これだけの住所がわかれば当然そこに対して接触をされると思いますが、そういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  36. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 法務省の方がおられないので、外務省の立場から、いまの御質問について一般論として考えられるであろうことは、捜査活動と思われるようなことはいきなり外国に対してはすることはむずかしかろうと、こう思います。
  37. 田英夫

    ○田英夫君 これは金大中事件そのものの解釈の仕方にもかかわる問題でありますから、これも時間をかけて政府のお考えをいずれ伺いたいと思います。  一つだけ、外務省でお答えできることをひとつ伺いたいのですが、この金在権という人物は金大中事件のときに参事官として駐日大使館にいた人物であるということは間違いなくて、この外交官リストにもあります。しかも金在権という名前で載っております。しかし、実際の名前は金基完であって金在権というのは偽名であるということになると、これは外交官としてどういうことになりますか。国際的な慣例、儀礼上、偽名で外交官として入国をしているという問題については一体どういうことになりますか。
  38. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 私どもは、いまの段階ではこれは偽名であるということについて確信はないわけでございますので、そのときにはどうなるかということには大変答えにくいと、こういうふうに思います。
  39. 田英夫

    ○田英夫君 先ほど申しましたアメリカに在住しているのも偽名でありますね。すると、アメリカではもう偽名で入国をした、入国手続も偽名で入ってきたという場合には国外へ追放する。これは国外追放になれば彼はアメリカにいられなくなるわけでありますから、韓国へ戻るかどうか、その他の第三国へ行くかどうかするわけですね。ますますこれは金大中事件の犯人、容疑者の一人であると考えられる人物が捕捉しにくくなってくるわけです。だから、先ほどのお答えにもかかわらず、私は金大中事件についての捜査をおやりになる気は全くないというふうに理解をせざるを得ないんです。にもかかわらず、この委員会で先日お聞きしたところが、金大中事件は政治的には解決した、しかし捜査は続いていると警察庁はおっしゃるという矛盾が依然として続くと思います。これもいずれ時間をかけて伺います。  次に入管にお聞きしますが、すでに新聞などで御存じだと思いますし、アメリカでいまワシントン・ポストなどが連日報道して非常に大きな問題になっている在米韓国人のパク・トンスンという人物、これも日本語では朴東宣と新聞で書いておりますが、これも当て字でありますから、パク・トンスンという人物、この人物が日本に出入りしたことがあるかどうか、おわかりになるでしょうか。
  40. 山下善興

    説明員(山下善興君) お答えいたします。  法務省入国管理局保管の出入国記録を調査いたしましたところ、御質問のパク・トンスンというこの人物は、一九三五年の三月十六日生まれの韓国人だというふうに思われるわけでございますが、昭和三十九年以前に二回、昭和四十年から四十九年までの間十二回、それから昨年、昭和五十年でございますが、六回、それから本年は一月以降十回、合計三十回わが国に入出国しております。いずれもごく短期間でございまして、ほとんどが、一件を除きましてトランジットの非常にごく短期間の滞在をしております。最も新しい出入国の事実は、本年の八月十二日に入国いたしまして翌十三日に出国しておると、こういう状況でございます。
  41. 田英夫

    ○田英夫君 いま御答弁があったとおりでありますが、たとえば、先ほどの三月二十五日のフレーザー委員会におけるやり取りの中にこんな部分があります。フレーザー委員長がレイナード氏に対して質問をしているのですが、あなたはトンスン・パクがKCIAのために働いているという結論をどこから引き出しますか、こういう質問をしているのに対してレイナード氏は答えているのですが、冒頭のところに秘密のため削除という部分があります。残念ながらそこはわかりませんが、言うならば私はトンスン・パクが多大の資金を持っている点から判断いたしますというのが続いています。そして要するに、トンスン・パクはKCIAのために働いている人物だということを引き出している。そして大臣も御存じのとおり、この人物は現在アメリカではワシントン・ポストのトップ記事を連日埋めているような騒ぎを起こしている人物、つまり、アメリカの政治家に朴大統領の命令によって賄賂を贈った男ということになっているわけでありまして、その人物がことしになってからも十回日本に来ている。前後三十回も日本を訪問している、こういうことは一つの状況として、私はこの際この場でひとつ申し上げておかなければならないと思う。そしてこれについて私ども調査を進める義務があるし、当然日本政府はこの人物に注目をしていただかなければならない、このことを警告を込めて申し上げて、寺田委員から関連の質問がありますので、私の質問はここで終わります。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 関連。  大臣にお尋ねしますが、いま田委員から話のありましたワシントン・ポストの、朴大統領がみずから指揮してアメリカの国会議員や政府高官に毎年五十万ドルから百万ドルの範囲で金品を贈っていたという問題、これは非常にショッキングな出来事でありますし、ワシントン・ポストはウオーターゲート事件などでも大変な功名を立てたかなり信頼できる新聞ですね。そしてエドワーズ・ルイジアナ州知事もすでに一万ドルでしたか、もらったことがあるということを認めておるわけですね。こういう一国の大統領がみずから指揮して、これは政治献金かあるいはもう贈賄のような、コラプションの行為かは別として、そういういかがわしいことをしているという報道について、大臣どういうふうに受けとめていらっしゃいますか。大臣の御所見を伺いたいと思います。
  43. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本の新聞にもそのルイジアナ州の知事の金をもらったという話が出ておりまして、どうもえらいこっちゃなと思ったわけです。どうも外国のことですから、私の立場で余りコメントすることは差し控えたいと存じます。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それが、外国のこととおっしゃるけれど、いまの田さんの御質問にもありましたけれども、レイナード証言に出てくるといわれるように、金大中事件の問題で田中前総理に三億円の金が朴大統領から贈られたというような情報もあるわけですね。そういうこととにらみ合わせますと、このワシントン・ポストの報道というのはかなり信憑性があるし、また、三億円田中前総理に贈られたという問題も、やっぱりわれわれとしてはかなり信憑性があるような印象を受けるわけですよ。ですから、大変なことだということだけで済ませられないように思いますが、これ相当深刻に受けとめて、十分調査をしていただかなきゃいけないと思いますよ。いかがでしょう、大臣
  45. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の調査をすべきだという、その調査の対象が、アメリカの国内で外国人たる韓国人がアメリカの政治家との間で何かがあったんではないかという報道について日本政府調査をするというのは、これはまあ直接できないことであることは先生も先刻御承知のことだろうと思います。ただ、これについて関心を持ってないかというと、これは関心は持っておりまして、一新聞報道ではありますけれども、その真相については政府としてもどういうものであるかということは、これはまじめにながめていかなきゃならぬと、こういう感じでおります。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ワシントン・ポストに照会するということはできないでしょうが、たとえばアメリカの国務省に照会して回答を求めるというようなことはできると思いますよ。ですから、私は関心を持っていただくだけでなくて、もっと積極的に、何しろ隣国のしばしば問題となる大統領、ことに金大中事件で非常な関係を持った、関連しますから、関心を持つだけでなく、そういう点も十分調査して今後の外交政策に役立てていただきたいというのが私どもの願いですよ。まあこれは希望として申し上げておきましょう。  それから最後に一つだけ大臣にお尋ねしたいのは、南アフリカ共和国の人種差別問題ではしばしば世界から悪評を受けているところですが、今度二十六日にトランスカイという新しい独立国がでっち上げられましたね。これはワルトハイム事務総長ども各国に承認しないようにという呼びかけをしておりますが、これは南アの人種差別政策を一層促進すること以外には何ら役立つものではないものだと思いますけれども、これに対してはわが国としてはどういう対応の仕方をなさいますか。これはっきりおっしゃっていただきたい。
  47. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) トランスカイ問題は、これはただいま仰せのような趣旨でございますので、われわれとしては終始反対でございます。そういうものは好ましくないから反対であるという態度をきわめて明白にとっております。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 終わります。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 委員長一言。  ちょっととっぴのようなんですけれども、金大中事件のことを先ほど申し上げましたが、けさの朝日新聞に、いま問題の人物である鬼頭判事補が朝日新聞の記者にしゃべった内容がいろいろ出ておりますが、その中に、「金大中事件で金東雲の名前が割れたのは指紋からではないんですよ。ある日本人があの事件には介在していて、金大中を車、で関西へ運ぶのを手伝った。そしてその男が公安にタレ込んだため初めて「金東雲」の名が出たのです。」と、私は公安の問題について詳しいということを、彼はそのしゃべった中でこういうことを言っているというわけですね。この点は警察のお調べは、もう金大中事件についてはある程度明確になっているはずでありますから、それと照らし合わしていかがですか。
  50. 大高時男

    説明員(大高時男君) ただいま先生がおっしゃいました報道につきましては、私どもの方でもけさ見たわけでございますが、これについては、わが方は全くこれに該当する事実を把握してないわけでございます。御承知のように、金東雲につきましては、事件発生の当日エレベーター等におりました目撃者、並びにあと現場に遺留されました指紋によってわが方は金東雲を割り出したわけでございまして、きょうの新聞報道は文字どおり初耳ということでございます。
  51. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最初に、日中問題を一言お伺いをいたします。  すでに衆参両院の外務委員会でも議論されておると思いますので、あるいはダブるかもしれませんが、中国の新しい体制のもとでの今後の日中平和友好条約に関する交渉でございますが、当分静観をするというふうに政府は言ってきておられますが、かなり新体制の形といいますか、もう中国において華国鋒氏が党主席にも就任しておりますので、大体の様子はつかめてきたと思うんですが、今後の交渉の日程は大体どういうふうな目安をお考えになっておるのかどうか、さらに、まあ総選挙がございますので、この辺とも兼ね合わせてこれからどういうふうな計画をされておるか、お伺いしたい。
  52. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 中国の政情につきましては、ただいま矢追さん仰せられましたように、華国鋒主席を中心といたしまして大体安定してきておるということでございますし、それから貿易面におきましても、鉄鋼あるいは肥料等の受注もだんだん緒についてくるという状況で、非常に平静に推移してまいったわけだと思うんでございます。この際に、私どもも懸案である日中平和友好条約をできるだけ早期に締結したいという希望はございまするが、御指摘のように、目下総選挙を迎えねばならぬ段階でございますので、まあ相手の方がこの事態をどう見るか、総選挙が終わってからでなきゃ話はできぬと見るか、あるいはその間にも何かやることがあると見るか、これは正直のところわからないのでございます。先方の出方等も見ながら、懸案の解決にできるだけ進みたいと、こう思っているわけでございます。
  53. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 昨年の参議院の予算委員会で宮澤外務大臣が私の質問に答えられて、まあ反覇権についての外務省の統一見解とは言いませんが、ある程度整理をされて答弁がございました。あの線というのは現在でも変わっていないのかどうか、新しい体制のもとでもあの考え方が貫かれておるのかどうか、その点はいかがですか。
  54. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 覇権に反対であるということは共同声明でも申しておるわけでございますし、それに対して平和友好条約の中においてどういう扱いにしていくかということについては、目下のところ、非常に抽象的なことでございますが、双方の満足するようなものをできるだけ早期につくるにはどうしたらいいかと、そういう線で検討しているとしかただいまのところ申し上げる段階でございません。
  55. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまの問題、結局ソ連というものが絡んでおることは御承知のとおりですけれども、最近中ソの関係が改善される可能性がゼロでないような報道も一部にございますし、ソ連側の方も中国に対してある程度そういった手を差し伸べてきておる。中国の反応というのはまだよく私たちもわかりませんけれども、やはり中ソのこれからの関係をある程度にらみながら反覇権問題についても処理をされていくのか、またソ連中国の間は関係なしに、あくまでも日中間でこの問題は詰めていかれるのか、その辺はいかがですか。
  56. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日中共同声明が発出せられましてからもう四年近くになるわけでございます。あの当時考えておったこと、またあの共同声明なり、今後の平和友好条約が共同声明の精神と原則に沿うたものであるというものである限りにおきましては、問題は日中間のものであるという考えでおるわけでございます。ただ、あの共同声明の第七項に、これは第三国に関するものでないということも書いてあるわけでございますし、当然に日中間の平和友好条約である限りにおいて、日中間考え方であるというふうに思っておるわけでございます。
  57. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、ソ連の問題に入りますが、ソ連の最高会議で第十次五カ年計画案が報告されたわけですけれども、この中で国防費が前年度より下がってきておりますが、これを政府としてはデタントのあらわれであると見られるのか、ソ連国防費はいろいろ言われておりますように、単に表に出ておるだけが国防費ではない、その他の研究開発費等でかなり入っておる。一説によると一千億ドル以上もある、すでにもうアメリカは七一年にソ連に追い抜かれておるんだと、そういうようなことも言われておりますので、数字が減ったからすべて減ったのではないという見方も出てくるかと思いますけれども、今回のこの報告についてのまず外務省の見解、それから、特にデタントがさらに進められるという方向と受けとっておられるのか、この点はいかがですか。
  58. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 今回のソ連最高幹部会議でガルブゾフ大蔵大臣ソ連の予算の説明をいたしましたが、その中で、国防費に関しましては一九七七年百七十二億ルーブルということで、七六年に比べますと二億ルーブル削減という形になっております。これにつきまして、実は先生御指摘のとおり、ソ連国防費については、その実態の把握が非常にむずかしゅうございまして、いろいろの推定が行われております。お話のとおり、単に国防費として予算上計上されたもののみならず、科学研究費であるとか重工業開発費であるとかいうところに、重工業関係の費目のところに相当組み込まれておる、見込まれてと推算がなされている向きもございまして、その実態が非常に把握しにくいこと、それから二番目にルーブルとドルとか、その他ルーブル貨そのものをどう評価するかという問題もあります。したがいまして、なかなか実態についてはつかみにくいわけでございますが、これもまた先生御指摘のように、そうした推計を合わせますと、千億ドルあるいは千二百億ドルというような実態の推定もあって、アメリカの国防費をすでに上回っておるのではないか、あるいはGNPにおける比率も、御存じの国際戦略研究所あたりでは一一%ないし一三%に上るのではないかという推定も行われております。  そうした実態の問題と、もう一つは、先生御指摘のいわゆるデタントというものとの関連の問題もございますが、確かに今回のソ連国防費の予算上の形は二億ルーブル減っております。ただ他方において、今回の最高幹部会議に先立って開かれました中央委員会総会、あるいは二月に開かれました第二十五回ソ連共産党大会において、ブレジネフ書記長が国防の充実ということを述べておりまして、今回においても、ソ連の軍事力を今後も高い水準に維持していくということをはっきり述べております。これはまあソ連の外交の姿勢そのものにかかわる、あるいは国策、国防政策あるいは外交政策そのものにかかわる問題で、ソ連のいわゆるデタント政策をどう評価するかという問題とも関連するんでございますけれども、今回の国防費の二億ルーブルの削減をもって直ちに非常に何か政策の変更が行われた、あるいはこれをもって特にデタントの政策の展開が実証されているというふうににわかに即断もできない面があろうかと考えております。
  59. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大臣もいまの局長答弁と同じお考えですか。  というのは、農業生産も少し伸びてきておりますし、また実質所得の増、あるいはこの間のブレジネフ書記長演説における日本に対する経済協力については、ミグの問題は別としてやっていこうというふうな向きもあるわけでして、いまの局長答弁であると、依然として国防には力を入れてそのままであると、まあデタントとは評価しがたいようなニュアンスの御発言ですけれども、その点外務大臣はいかがですか。
  60. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ブレジネフ書記長演説の中に、帝国主義者が留意せざるを得ないような最も近代的な兵器を有し、わが国の軍事力を今後も高い水準に維持していくということを言っておるわけでございまして、帝国主義者ということを片一方に言っているとはいいながら、彼ら自身の国防力強化の方針を明確にしておるわけでございまして、この点でどうもデタントとは言いがたいように思うわけでございます。  さらにまた、米ソ間のSALT交渉が停滞しているという点もございますし、一体この公表資料の数字のみによりまして、すなわち、公表資料は国家予算に占むる軍事費の割合が一九七六年の七・八%に比して七七年には七・二%になるだろうということであるようでございますけれども、この数字をもってソ連軍縮努力があり、これのあらわれであるというふうに即断できるかどうかは疑問視せざるを得ないと思うんであります。
  61. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そうしますと、政府としては、特に最近ソ連は極東海軍を中心として、かなりアジアにおける戦略というか軍事強化ということもよく言われておるわけですが、やはりその方向はそのまま続けられると、こういうふうな判断でございますか。
  62. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあソ連の言っておりますシーパワー、海軍力のほかにいろいろな海に関連するパワーをまとめていくという考え方は、非常な大きな伸びを示しているようでございます。私どものところへいろいろ外国の大臣が参りますと、一様にその点の脅威を訴えておるということでございまして、隣国である日本といたしましては、ソ連ができるだけそういう脅威を与えるような政策をとらないようにしてもらいたいという気持ちを強く持つわけでございます。
  63. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大臣のお気持ちはよくわかりますし、当然だと思いますが、そういった面を対ソ外交の中でどういうふうな形でこれから展開をされようとするのか。そういった点で、経済協力ということは向こうも言っているわけですから、それに全力投球をやっていくのか。しかし、ソ連との経済協力の面ではかなり日本の場合向こうに対する、まあ金を貸しておる面もだんだんふえてきておりますし、そういった点で対等、平等ということになるといろいろ問題も出てくる可能性も最近では私も感じておりますので、その点をどう、経済外交の問題を含めて、ミグの問題もありましたし、漁船拿捕の問題もあります、北方領土もあります、その中でいかにして日ソ間の平和外交を貫かれようとされておるのか。方向と、できたら具体的に、順序をつけるというのもちょっとむずかしいかと思いますけれども、その点の所信がおありでしたら承っておきたい。
  64. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非常にむずかしい問題でございまして、何しろ軍事力、防衛力という点から見ますと、もう格段の相違であるわけでございまして、わが国は専守防衛、何かございますればこれを防衛するが、あとは集団自衛権の発動を期待するということで安保条約を持っているわけでございますが、片方は、いま矢追さんがよく御承知のような非常な強力なものを持っているわけでございます。しかし、われわれシベリアを中心としての従来のソ連になかった開発について協力しているというわけでございますが、本来からすると、日本の経済力というのはそんなにあるわけじゃないのでございますが、その中から相当長いタームの金利の安い金を出して、それによって十数年後の品物の供与を期待するという形の協力をやっているわけでございます。ソ連の方は、日本からそういうふうにしておりまするが、他の国にまた金を貸して、そしてその国の援助に力をいたしておる、こういう関係をいかに理解すべきかという問題が一つあるように思うのでございます。しかし、われわれといたしましては、極力平和的な話し合いを通じて物事を解決するという立場でございますから、できる限り善隣友好の姿勢をソ連に対して持っていく。それにはやはりいろいろな話し合いを通じて理解をしていくということであると思うんですが、残念ながらミグ事件というようなものについても、矢追さん御承知のように非常に理解が異なっておるわけで、非常にわれわれとしてもいやな思いをいたしますし、こういういやな思いはハプニングとしてできるだけ早く去ってもらいたいと思うんでございますが、また、いまは北方漁民の問題もございます。いろいろむずかしい問題がございまして、あれこれ非常に苦慮をいたしているわけでございます。  要は、やはり日本の平和的意図というものを十分理解させる。それから、なお落としましたが、北方領土の問題もございます。そういうものに対する理解を、もっと両方が同じ理解に立つような、そういう環境をどうしてつくるかという非常にむずかしい問題があると思うんでございます。こうしたら一遍によくなるということも、どうも私の手ではなかなかむずかしいように思いますけれども、しかし、ねばり強く、誠意を尽くしてわが方の真意を話しながら、その間に理解を求めていくということ以外にどうもないようなふうに思っておるわけでございます。
  65. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間の問題で、ソ連問題はこの程度にしまして、あと経済協力の問題です。  特にこの二十六日、ベルギーのブリュッセルで経団連会長が輸出自主規制の問題を取り上げたわけでして、これが大きな波紋をいま呼んでおるわけですが、ECに対してこういう輸出規制を日本が仮にやった場合、アメリカも今度はこれに便乗して自主規制を迫ってくるという可能性が十分考えられるわけでして、この自主規制の問題を今後こういうふうな形でやっていった場合どうなるか、非常に私もやむを得ない面もあるかと思いますが、またやり方もあるんじゃないかと思いますので、このECに対する経団連会長の発言を外務省としてはどう受けとめておられるか、それをまずお伺いしておきたいと思います。
  66. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私から概括的な話を申し上げまして、あと経済局長がおりますから少し詳しく申し上げさせていただきたいと思います。  わが国の最近の輸出が各国に対して非常に伸びまして、その面でインバランスを生じている、ことに品物によりましては、フラッドという言葉か使われておりますように、非常に洪水のごとく出ていると先方は言うわけでございます。それに対してどうするか。わが方にいたしますと、いわゆる景気の落ち込みでございますね、そういう点がございますので、やはり輸出にドライブがかかったんじゃないかというふうにも思うわけでございます。国内景気がよくなれば輸出の点がもう少しスローダウンするかというような問題もございますけれども、現に向こうとの問題ではいろいろアキュートな問題が生じていることは仰せのとおり、また御理解のとおりでございます。  土光経団連会長が帰られましたら、ECの問題もそうでございますし、その中のイギリス、フランス等についてもいろいろな問題があるようでございますので、よくその話も伺いまして、適切な今後の対策をとる参考にいたしたい、こう思っておる次第でございます。
  67. 本野盛幸

    政府委員(本野盛幸君) ただいま矢追先生がおっしゃいました土光経団連会長の発言の具体的な点が正確にまだ入ってきておりませんので、こういう問題は、えてして、円問題もさようでございましたけれども、やや針小棒大になってくるという点もございますので、ここら辺よく踏まえて考えてまいりたいと思うんですけれども、私どもで見ておりますと、自主規制をやるということを経団連会長はおっしゃられるはずはないので、そういうことの必要もあるかもしれないという程度のことを言われたんではないかと推測しております。  そこで、より基本的なことを申し上げたいと思いますけれども、近年、欧州それからアメリカとの間、先進国との間の貿易の赤字の幅の増大でございますけれども、これは、御承知のように、欧州の方では一九六八年までは日本が入超でありましたものが六八年から出超ペースに変わりまして、当時六千八百万ドルぐらいの六八年の入超ベースがほぼ七三年を除きまして毎年倍増していくということで、欧州から見ればこれは大変な一つの構造的な問題があるんじゃないかということで、随時、ベアリングの問題とかテレビの問題とか自動車の問題についていろいろ言っております。その間、まあ業界同士でいろいろ話し合ったりしておりますけれども、私ども考えておりますのは、やはり日本の物が売れるということは、日本人がそれだけ努力をして、いい物をつくって、それだけ向こうの消費者に需要があるから伸びるんであって、決して不公平なことをやっているわけではない。ですから、基本的には輸出というものは自由に伸びるべきものであるというふうに考えております。その欧州との関係で、七四年から七五年に入りますと、やはり不況の関係がありまして若干輸出が減ったわけでございますけれども、ことしに入りましてやはり一−七でまた伸びて、この赤字幅が十七億ドル近くになった。これは年間に延ばすとあるいは四十億ぐらいになるんではないかというふうに見られておるわけですけれども、そういう状況で、全体として非常にその幅が大きいということから来る一つのイメージがございますし、欧州ではいま景気の回復過程もようやく昨年の第二・四半期あたりから立ち直ってまいりましたけれども、やはり強い国と弱い国があって、御承知のように、イギリスとかイタリアはインフレ率も高い、賃金の上昇率も高いというようなことで非常に国際収支上も苦しい状況にある。そういうことを背景にして、従来は、たとえば企業の収益が上がらないときに、その企業が中心になって何とか助けてくれということで政府に駆け込むというパターンから、最近では労働組合も立ち上がりまして何とか輸入を制限してほしい、これは非常に実は新しい傾向かと思います。この点につきましては、サンフアンの首脳国会議でも社会的な各層との、ソーシャルパートナーズとの協力が必要であるということが指摘されましたように、一つの新しい現象でございます。イギリスの場合一つ挙げてみますというと、やはりあすこのTUCはかなり前から輸入制限なしでは本当の英国の立ち直りはあり得ないんだ、そういう選択的な輸入制限をやるべきであるということをECの組合の協会の会議でございますね、その連盟に行って吹聴してきたわけで、このTUCとの協力を得てやっとイギリスでは所得政策が実現できるという状況がございますから、ですから、どうしてもキャラハン首相としてはある程度組合の見解を尊重をしなければならないということで、今度ECの場にそういう問題を取り上げていく。この十一月の末に欧州理事会で各国の首相が集まります、そのときに、いまの輸入制限の問題が脚光を浴びるんではないかと私ども思っております。どうもこういう状況のもとでなかなかむずかしいんですが、赤字幅の問題、やはり日本の景気が立ち直って輸入がふえるということによって解決されるべきであるというふうに考えております。この点欧州側におきましても、やはり基本的には拡大均衡の形で解決すべきである。それからEC側の人たちも基本的にはそういうことであり、せっかくこの不況下苦しいところをいままで輸入制限的な措置をとらないことでがんばってきたのに、ここで保護的な動きが出ることは非常に思わしくない。これはまた、さらに景気の沈滞とか国際経済の拡大に阻害要因があるので、これは何とかしたいということでわりと前向きの姿勢で対処しておりますけれども、事態はかなり苦しいというふうに欧州との関係では見ておるわけでございます。  それから、第二のアメリカに対する波及の点でございますけれども、確かに最近鉄鋼の問題で、これは非常に量は少ないんでございますけれども、なお、わが方の輸出カルテルが昨年末に結成されて対欧輸出が大体予想されたものよりも少し伸びてきた、それから若干形鋼とか棒鋼とか、高炉六社以外の側から出ておるものが欧州側において問題になっておる、これは弱いイギリスだけでなくて、ベルギーとかドイツとかそういうところでも鉄鋼輸出というのはやはり問題にされております。そういうことがあって、今後EC側と話し合いを続けるということでございますけれども、それに対して今度アメリカの方は、要するにECに対して押えられたものはアメリカの市場の方に流れ込んでくるんじゃないかというような懸念もございまして、通商法の三百一条ということで、あそこの特別通商代表に対しまして問題を提起いたしまして調査をするということになったわけでございますけれども、私どもの方として、この推移はいまアメリカの政府としても冷静に受けとめて公正な解決が出るように期待しておるわけでございまして、私どもの言い分についても十分先方に言っておるわけでございます。
  68. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間ですから、最後にまとめて簡単にお伺いしますが、いま言われたような非常に厳しい状況もこれから予想されるわけで、これに対して政府としてどうするかということについて大臣に二、三点お伺いしたいと思うんです。  一つは、日本がすぐ黒字になればたたかれる。しかし、国民一人当たりの外貨保有高というのは西ドイツと比べればもう問題なく少ないわけでして、またOECDの予想を見ましても、そう黒字がこれからふえるということは出ておりません。しかもまた、最近のレートを見ましても一時ほどの円高基調はなくなりつつある。あるいはまた、下手をすると円安になる可能性もゼロではない。そういった中ですから、決して黒字黒字で非常にたたかれておる、そういうことじゃないんだという、ひとつ特に先進国に対する理解といいますか、そういった点をもう少し私は外務省としてはPRと言っては変ですけれども、実情をもう少しわかってもらわなくちゃいけない。これが一つ。  もう一つは、その理解をさせる場合、日本の製品が出る場合、品物で出ていきますから、さっきも少しお話ありましたけれども、非常に目立つわけでして、しかもテレビであるとか自動車というのは日常の必需品、そういったものが非常に出回りますから目につくわけですね。すべて日本製品が洪水のごとく来ておる、こういうことになっておりまして、それは先ほど言われたように、品物がよくて値段が安ければ売れるのはあたりまえでして、そういった点の理解もやらせながら、ただそういう品物ばかりではない方向の輸出ですね、そういったものをもう少し考える、この点が私は二番目に必要じゃないかと思います。  もう一つは、先ほどお話もありましたわが国の輸入の問題、これはやはりいろんな国内の問題があるかと思いますが、それをひとつ克服しながら輸入の拡大を図らないと、将来先進国に輸入規制の処置をやられてしまう。その場合一番大事なのうことが重要になってまいりまして、すでに新聞等によりますと景気回復のためにいろんな処置が打たれようとしております。また、通産省からはかなり強い要望も出ておりますので、これからいろいろ発動、政府としての処置をしていただかなければいかぬわけですけれども、そういった意味でも景気の回復を急がなきゃならぬ。そして輸入の拡大、それに対してはしかし国内のいろんな問題があります。繊維にしても何にしても国内産業との問題がありますので、なかなかこれは大変ですけれども、私は大体その三点ぐらいはまずきちんとしないとだめじゃないか。そういった意味において、最後の問題は外務省直接の本題じゃありませんけれども、前の二つはひとつ外務省としても大いに理解をさせる努力をしなきゃならぬと思うんですが、その点も含めてお伺いして私の質問を終わります。
  69. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま御指摘の三点は、まことに正鵠を得た御指摘だと私ども思うわけでございまして、役所が実はいろいろ考えましても、わが国の体制というのは、これを経済民間主導型でございますので、実際その経済の担当者がどのように外国で思っているかということを自分で行ってはだに感じてもらうことは大変いいことだと思うんでございますが、その意味で、行った方には多少お気の毒だったような気がするくらい、いいところへ来てくれたというので言いたい放題言われたという感じがしているわけでございます。しかし、それに対してはそれぞれ十分の受けとめ方があると思いますので、こういう点も先ほど申し上げましたように、よく実際先方であった話等も実情聞きまして、そして今後の参考にしたいと思います。これはもう外務省ばかりでなくて、通産省、大蔵省みんな関係する問題でございますんで、そうしたことにどう対応したらいいかということを検討いたしたいと思います。  それから第二の問題も、まさに御指摘のようなことで、非常に一部の製品に偏在しているわけでございますね。自動車であるとかテレビであるとかあるいはオーディオ関係の問題だとか、他のものは非常にあっぷあっぷしている。また不況の影が色濃いという状態で、やはりそういう点を何といいますか、政府としても一つの傾向を馴致するような政策が必要なんじゃないか。やはり一部に余り景気が破行しているという問題をどうしたらもっと一般的な景気の問題にできるかということを考えにゃいかぬと思うんでございます。それは第三点とも関連いたしますが、幸いに財特法も御議了いただきましたわけでございますし、値上げの法案等も、あれ値上げだけ考えますといろいろな議論がありますけれども、あれによって非常に中小企業に多く波及効果がございますものですから、これなども審議の結果通していただきますことができますれば相当景気の支えにはなるかと思います。それだけでなくて、いろいろ考えたいと存じております次第でございますが、ただいまの御指摘は非常に中心のポイントをついていただいたという意味で傾聴いたす次第でございます。
  70. 立木洋

    ○立木洋君 去る十八日に日米防衛協力小委員会の第二回の会議が開かれたということですが、これに出席された山崎局長の方から、日本側としてどういうふうな話をされたのか、日本側が述べた点について御説明いただきたいと思います。
  71. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先日、日米防衛協力小委員会の第二回の会合が行われたわけでございますが、この会合におきましては、この小委員会が今後の研究協議を行っていく上での前提条件を含めて、今後の研究協議の対象となるべき事項について意見の交換が行われたわけでございます。  この研究協議を進めていく上での前提につきましては、わが方から次のような点につきまして提案をいたしまして、米側としては特にそう強い異論があるわけではございませんけれども、出先でもございますので、一応本国に報告の上、次回の会合までに回答するということを申し述べたわけでございます。  その前提条件について、わが方から申しましたのはこういう点でございます。つまり、事前協議に関する諸問題とわが国の憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原剛については研究協議の対象としないという点でございます。次に、研究協議の結論は、その親委員会であります安全保障協議委員会に報告し、その取り扱いは日米両国政府のそれぞれの判断にゆだねられるものとする、この結論は両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないということでございます。これはいわば前提条件でございまして、当然のことを言っておるつもりでございますけれども、念のためにこれを確認して、いわば土俵づくりをしたと言えるかと思います。  さらに引き続きまして、今後の研究協議の対象となるべき事項について協議いたしたわけでございますが、この点については結論を得るに至りませんでした。したがいまして、第三回の会合においてこの点に関する討議を続けまして、何らかの結論を得たいと考えております。
  72. 立木洋

    ○立木洋君 防衛庁の方で特に前提条件となる点について述べた点、特にあったら……。
  73. 渡辺伊助

    説明員(渡辺伊助君) ただいまアメリカ局長の方から御答弁申し上げたことに尽きるわけでございますけれども、特に防衛庁の方からは、憲法上の制約の問題について一応内容を説明したというところでございます。
  74. 立木洋

    ○立木洋君 その内容について、ちょっと、どういうふうに説明したのですか。
  75. 渡辺伊助

    説明員(渡辺伊助君) 日米防衛協力小委員会において、今後米側との間で研究協議を進めていくことになるわけでございますけれども、その研究協議の内容といたしましては、私どもとしてはこれは当然なことながら、憲法の制約のもとに、憲法の枠の中で行われるべきことである、したがって、そのことは米側の方も当然承知していることでございますけれども、この防衛協力小委員会で具体的に研究協議を進めていく冒頭において、念のために米側の方に、特に私どもの方から憲法上の制約ということがあるということを御説明申し上げたわけでございますけれども、その内容といたしましては、たとえば自衛隊としては海外派兵はしない、あるいは集団的自衛権の行使はしないというような点を米側の方に説明をしたわけでございます。
  76. 立木洋

    ○立木洋君 その小委員会でアメリカ側はどういうふうな話をされたんですか。意見の交換をされたと言うんですが、アメリカ側としてはどういうふうな意見の表明があったのか。
  77. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) まず、その前提条件に関しましては、アメリカ側は日本側のこの意見の表明についていろいろクオーリフィケーションは求めました。その内容の意味するところは何かということを聞きました。特に憲法上の制約というものは従来わかっているようでわかっていない点もありますので、アメリカ側としてもいろいろとクオーリフィケーションを求めたということは事実でございます。事前協議に関する問題につきましては、これはもう従来から外交ルートを通じてやることになっており、また、事前協議制度そのものについてもこういう場ではやらないということは最初からアメリカ側も了解しておりましたので、特に論議はありませんでした。したがいまして、その前提条件については、先ほど申し上げましたように、アメリカ側としてもそう強い異論があろうはずはないわけでございますが、事務的な問題として一応本国に報告した上、次回にアメリカ側の最終的な回答をしたいということを言ったわけでございます。  それから、続きまして、今後研究協議の対象となるべき事項については、非常に一般的な意見交換をいたしました。この点については、かなり意見の交換が行われましたが、まとまったものはございませんでしたので、その内容については申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  78. 立木洋

    ○立木洋君 憲法上の制約とは何かという質問ですね。これは先ほど例として防衛庁の方が出された点など、どういう形でどういう質問が出されたんですか。アメリカ側としては。どういう点をどういう形で特に質問されたのか。その質問の内容について、もう少し説明していただきたいと思います。
  79. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 質問というよりは、私が先ほど申し上げたようにクオーリフィケーションを求めたわけでございます。たとえば集団的自衛権というものを日本行使しないんだという点でございますが、御承知のとおり、安保条約の前文は「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」というふうなことが書いてございます。したがいまして、日本も個別的自衛権のみならず集団的自衛権も有しておるということは書いてあるわけでございますが、この安保条約そのものの本文その他の立て方において、日本としては個別的自衛権のみを行使するんだということを言う立場に立っておるわけでございます。そういうふうな点を、日本が従来考えておる点を確認する意味で先方に説明した、いわばわが方の説明が主でございました。
  80. 立木洋

    ○立木洋君 新聞の報道によりますと、アメリカ制服組といいますか、が、特に強い疑念と不満を表明したというふうな新聞報道があるわけですが、この点については、後の方でもう少しお尋ねしたいと思うんです。  もう一点は、去る二十四日の日にアメリカの上院外交委員会で、いわゆる五二年の同委員会での秘密聴聞会の議事録が公表されたというダレス証言の問題が報道されておりますが、その内容を新聞報道で見ますと、「交渉の過程でいくつかの困難はあったが、われわれは日本に対し、国際平和と安全の見地から、米国が重要とみなす地域に日本の駐留米軍を使うことができることを認めさせた。駐留米軍はわれわれが欲すれば、共産中国に対してもウラジオストクに対しても使用できる」というふうにダレスの証言の内容を報道していますが、当時の交渉の内容としてはこれは事実相違ないのかどうなのか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  81. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この一九五二年二月四日の米国上院外交委員会での秘密聴聞会の記録は最近に至って初めて公表されたわけでございまして、われわれとしては初めてその内容を承知するわけでございます。このテキストはまだわれわれとしては入手いたしておりませんが、新聞報道によっていまおっしゃったようなことをダレスが言っておるということは承知しております。ただ、当時の交渉経緯に関しましては、政府としてはこれを、いまそれらすべてについて公表することは考えておりません。
  82. 立木洋

    ○立木洋君 六〇年に安保が改定されましたですね。それで現在の時点に立って、このダレスの証言について、いまこういうふうに公表されたダレスの証言についてどういうふうに外務省としてはコメントされるのか。一部一般新聞等でも政府筋の見解というふうなことが報道されていますけれども、どういうふうにコメントされるのか、その点お伺いしたい。
  83. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) まあ旧安保条約については、その内容に関して片務的であるとか、いろんな議論があったことは事実でございまして、そういう当時の日本における議論を踏まえて日本側が安保条約の改定を提案し、アメリカ側もこれを受け入れて一九六〇年に現行の安保条約が結ばれたわけでございます。それによっていろんな点について大いに改善を見たとわれわれは信じております。したがいまして、この旧安保条約はその意味においてはすでに歴史に属する問題でございますし、その内容あるいはこれの解釈に関する米側の証言その他について一々コメントすることは差し控えたいと存じます。
  84. 立木洋

    ○立木洋君 まだこれが入手されてないというお話ですが、これはもちろんアメリカでは公表されたわけですから、当然外務省としては近いうちに入手できるだろうと思うんですが、入手できた際には、ぜひそれを資料として提出していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  85. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 入手いたしました上は、資料として提出いたします。
  86. 立木洋

    ○立木洋君 この内容というのは非常に重要な点が私は指摘されていると思うんですが、特にここでは、つまり日本に駐留する米軍の機能といいますか、性格といいますか、そういう点から言うならば、ここでは米軍が重要とみなす地域に日本の駐留米軍を使うことができる、これを日本側に認めさせた、そういう趣旨ですね。ですから、これは新聞の記事などによりますと、「米は日本を守る責任ない」というふうな見出しをつけて報道された内容もありますけれども、そういう点が今度の新安保で変わってきたというふうに言われると思うんですが、しかし、実際にはこの基本的なダレスが述べた見解というのは、現在でもアメリカが引き続いてそういう見解を持っておるんではないかというふうに考えられる点が多々あるわけですが、その点についてはどのように考えておられますか。
  87. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 旧安保は、先ほど局長申しましたように、もはや歴史の中の出来事と言っていいわけでございまして、あれは日本が講和会議に参りまして無条件降伏を受諾して、その後始末にあの講和条約ができたわけでございます。その日を同じゅうしてできたものでございまして、その内容というものは、まだ独立していない日本に対して独立後どういう扱いをするかということでございますので、いろいろこの安保条約についても申すべき点がたくさんあったわけでございます。そういう点を改正するということで、一九六〇年の新安保になったわけでございまして、内容は繰り返し申し上げるまでもないことでございますが、安全保障体制と国連との関係を明らかにした。国連の集団安全保障との関係が明らかになっておるわけでございます。それからアメリカによる日本防衛の義務を明記した。さらに事前協議制度というものができた。さらに日米安保体制というものを広範な政治経済上の協力関係の基礎の上に置いた。すなわち、従来なかった経済上の協力、経済繁栄について双方努力しようというふうな、そういう点も入っているわけでございます。それから無期限でございましたのを期限についての明確な規定を置いたというような点。それから内乱の際に出動というような条項があった、これも削除したというような六つの点が大きいかと思うわけでございますが、その前のいわゆる旧安保をいろいろ研究いたしましても、現在のアメリカと日本との関係というのは新安保の上に立っておるものだと、こう考えまするので、先ほど申し上げましたように、旧安保というのはもう歴史上の出来事というふうにわれわれは見ているわけでございます。
  88. 立木洋

    ○立木洋君 大臣述べられた点については、それは大臣がおっしゃらなくてもわかるわけですけれども、ただ問題は、つまり駐留米軍ですね、日本にいる米軍の性格、機能の問題については、六〇年に改定されたというふうに言われますが、いわゆる七〇年の一月に行われたサイミントン小委員会、つまり在日基地の性格に関するこの委員会で述べられたことを見ると、これは非常に問題があると思うんです。つまりこれはジョンソン国務次官が言っている言葉ですが、ここで述べられた証言で、「われわれは、通常兵力による日本の直接の防衛に直接に関係する兵力は、陸軍にしろ空軍にしろ、日本に持っていない。」と、こういうふうに言っている。つまり、日本を直接防衛する軍隊なんというのは米軍としては日本にはないんだと、こういうふうな言い方を明確にしておりますし、また、同じ中でもジョンソン国務次官が言っているのでは、「われわれが現在、そこに有しているものは、日本の直接的防衛とただちに結びつくものではない」、さらに、その一日後に述べた同じジョンソン国務次官の発言では、「駐留米軍の多くは、直接日本の安全と結びついていない。それは日本周辺の地域の安全と結びついているのである」、「われわれは、第一義的には日本の直接的防衛のためではなく、その周辺地域のために日本にいるのである」と、これはまさにダレスが述べた証言と同じ性質、同じ趣旨の考え方だろうというふうに判断されるわけですが、この点どうですか。
  89. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 大臣から御答弁がありましたように、現行の安保の第五条においては、日本を防衛する義務というものは明確に規定されたわけでございます。また、この点に関しましては昨年の八月の三木・フォード共同声明の際にもさらに明確に確認されております。したがいまして、アメリカが日本を防衛する義務を負っておるということは一点の疑いもないと思います。しかし、アメリカが日本を防衛する場合に、日本におる軍隊だけで防衛するわけではないわけでございまして、アメリカの全兵力を挙げて日本を防衛し、また日本を防衛する抑止力となっておるわけでございます。したがいまして、ジョンソン次官のそういう証言があったことは承知しておりますけれども日本におる軍隊はアメリカの全兵力の一部であるということを言っておるわけでございまして、日本におる軍隊が日本以外のところだけを守るためにいるということを言っておるのではないと考えます。
  90. 立木洋

    ○立木洋君 だって、直接日本の防衛の軍隊というのは日本にいないんだと言っているんですよ。これは勝手な人が勝手に述べた発言ではなくて、アメリカ政府の責任ある人が述べた発言ですよ。そうして、第一義的に日本を防衛するんじゃないと、日本にいる米軍というのは——はっきり言っているんですよ。局長そんなふうに言いますけれども、沖繩に来ておる海兵隊の司令官ウィルソン大将もアメリカの下院で証言しておりますけれども、われわれの任務というのは、太平洋地域とインド洋地域における支援、そのための緊急出動をするのが目的である、あるいはNATOとも連動するだろうというふうに言っていますし、あるいは沖繩の第一八戦術戦闘航空団の任務に関しても、航空団は上級司令部の指示に従って西太平洋地域の全連合国及び自由国家の支援を任務としておる、こういうふうに述べているわけですね。ですから、いま局長が言われたように、それならば、日本を防衛するために日本に駐留している米軍の任務があるんだということを米軍の高官が述べている証言なり記録なり何なりありますか。
  91. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) これは安保条約の規定からしても当然なことでありますが、先ほど私がちょっと申し上げましたけれども、昨年八月の、三木総理大臣がアメリカを訪問されましたときに、フォード大統領との間で発表されました日米共同新聞発表というのがございますが、その第四項に次のような一節がございます。すなわち、「大統領は、総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。」と、こういうことでございまして、アメリカは安保条約に基づく義務を守るために、その核兵力及び通常兵力のすべてを挙げて日本を守るということを確言しておるわけでございます。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 それはこの条約に、いわゆる新安保条約第六条のところに書いてある「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」というふうになっていますから、しかし第一義的には、在留米軍がどういう任務を持っているのか、在留米軍と三木総理のあれには書いてないですよ。そうして、サイミントン小委員会でのジョンソン国務次官の発言が行われたときに、これに対して何らかの日本側としての立場を説明するなり、あるいはアメリカ側の意向を聞くなり、何らかの折衝を行いましたか、七〇年の一月。
  93. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 私は、御趣旨が必ずしもよくわからないのでありますが、いずれにいたしましても、安保条約の第六条において米軍の日本における駐留目的が明記されておるわけでございまして、それには「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に米軍が日本に駐留するということが書いてあるので、米軍が日本にいる目的が日本国の安全に寄与するということは明らかでありまして、しかもその第五条において、アメリカ側は日本を防衛する義務を明確に述べておるわけでございます。したがいまして、ジョンソン次官がサイミントン小委員会において行いました証言の趣旨が何であったか、われわれは必ずしも明らかにいたしませんけれども、この日本とアメリカとの間の厳粛な約束によって、米軍が日本を防衛するということを主要な目的の一つとして日本に駐留していることは明らかであると存じます。
  94. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆる駐留米軍が第一義的に日本を防衛する目的を持っているなんていうようなことは、アメリカの公式文書や高官の発言見たって一切ありませんよ。そういう証拠があるんだったら、私は出していただきたい。サイミントン小委員会で明確に言っているんですよ、そうじゃないと。これは一般的な言い方では、さっき三木さんと大統領のいわゆる新聞発表ですか、そういう表現はあります。しかし、在日米軍の性格、機能の問題についてそういうふうに明確に述べた文書というのはないですよ。いわゆるそういう発言、いまあなたが言われたように、主に任務としておるなんていうようなことを述べたのは一つもない。これはよくアメリカ側の考え方というのをやっぱり考えておく必要がある。  特に、いま言いましたように、サイミントン小委員会でそういうふうに述べられた内容について、何ら日本側立場も説明していないようでありますし、また向こうの意向も聞いていない、これは重要な問題だと思うんですよ。われわれは、何もアメリカに日本を守ってもらうというふうなことを言っているわけじゃない。しかし、いままで日本に来ているアメリカ軍というのは日本を守るために来ているんだというふうに言ったのは、実際はそうじゃないんだということをはっきりさせるために私は主張したいわけです。これは特に——これは増原さんおいでになるからおわかりでしょうけれども、一九七〇年でしたか、レアード国防長官が日本を訪問して、日本自衛隊の質の向上、整備、そして日本日本で守れるような、そういう整備の増強という方向が四次防を目指していろいろと進められてきた。アメリカ側としては、日本日本で国を守れるように自衛隊を強化せよ、兵器も整備せよという方向が打ち出されてきているわけです。  実際にそれならば、日本の国を日本自衛隊が守れるようにアメリカがどんどん増強していくという方向を出しながら、日本におる米軍というのは主な任務は一体何なのか。これはことしのアメリカ軍の、いわゆる国防省が提出した国防報告ですか、この対日安全保障の問題、いやアメリカの軍事情勢報告ですね、この中でも、日本の基地の問題については、前進基地戦略を維持すること、つまり、日本におる米軍というのは攻撃的なことを目的として日本に来ている、日本を防衛するためを主な任務として来ているのではなくて、攻撃的なことを目的として日本に駐留しておるということがアメリカのあらゆる証言、発言、文書等々から私は見ることができると思うのですが、その点はいかがですか。
  95. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 日本を守るためには、第一義的には自衛隊が存在しておるわけでございます。まず日本がみずからを守るという態勢をとることは当然でありまして、それをアメリカ側が援助するというのが、いわば日米安保体制の仕組みでございます。そして日本の本当の安全を守るためには日本だけの防衛体制では不十分である、極東の平和と安全というものについても守っていく必要があるわけでございます。アメリカ側としては、日本の防衛を全うするために、極東の平和と安全というものを守るための軍隊の展開をするというということも当然のことでありますし、また、そうすることによって戦争の発生を抑止する力が出てくるものとわれわれは考えております。そういう意味において米軍の展開がなされておるというふうにわれわれは考えておるわけであります。
  96. 立木洋

    ○立木洋君 時間が来ましたけれども、ちょっと済みませんが、もうすぐ終わりますから。  つまり局長、第一義的な任務、日本に駐留している米軍の性格、機能という問題に関してアメリカのもっと公式な発表、どういう性格を持ちどういう機能を持っているのかということをもっと御認識をいただきたいと私は思うのです。その問題がなぜ重要かという点については、これは過去にダレスがそう述べたということに問題があるだけではなくして、今日的に重要なんです。今度の日米防衛協力小委員会で、アメリカ側は第六条の問題を繰り返し討議の内容にするように要求された。そうして前回私がここで質問した場合、七月でしたか、質問したときに、防衛庁の方でしたか、たしか浅尾さんとか言われた方が、これは討議される内容というものは五条と六条ですということを述べている。局長も記者会見で述べたのは、主に五条が対象となりますと、第六条というのは排除していないんです。なぜ第六条を入れることを重視しているかと言えば、ここには五条だけ、日本を守るためにだけどうするかという問題だけではアメリカとしては困ると言うのです。ですから、この間のシュースミスがあなたと一緒に記者会見されたときでも、第六条の問題について非常に固執された記者会見をされた。この防衛協力小委員会で行われる問題というのは、アメリカの意図としては在日米軍の攻撃的な性格を維持できるように、その場合に日本側と協力ができるということを考えてこの日米防衛協力小委員会に問題を持ち込もうとしているということは明らかなんです。第六条の問題に関しては、この防衛協力小委員会では今後どうなりますか。
  97. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この防衛協力小委員会につきましては、安保条約の許します抑止効果を高めて、わが国の安全及び極東の平和と安全を一層効果的に維持するということを目的として日米間の防衛協力のあり方について研究協議するものだということになっております。その際に、私もかねて御説明申し上げましたように、安保条約第五条の事態、すなわち、わが国に対する武力攻撃が行われた事態に対処する問題が研究協議の中心となるということは当然のことでございます。しかし、安保条約に基づく防衛協力に関する研究協議でございますから、この安保条約全体の仕組みの上に立ってやっていかなければならないことは当然であります。その際に、安保条約の前文にもうたわれておりますように、日米両国は極東の平和と安全の維持に共通の関心を有しておるわけでありまして、したがいまして、安保条約の第六条に基づいて、日本の安全並びに極東の平和と安全を維持するために、米軍が在日施設及び区域を使用することに関連する諸問題についても研究協議するということはいわば当然のことであると考えております。したがいまして、研究協議の中心課題は第五条における事態でございますけれども、それ以外の問題この安保条約全体に関連する問題、そういう意味においては六条も含まれますが、そういう問題についても研究協議が今後行われるということは、われわれとしては当然のことであると考えております。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 最後に。  私は、いま局長の言われた答弁で大変不満足でありますけれども、もう時間がありませんので、最後に大臣に一言お尋ねしたいんですが、非常に重要な問題だと思うのです、この日米防衛協力小委員会。これはいろいろな意味で重要である。私たちだって日本の国をきちっと守るという点については、それは大臣立場が違うかもしれませんけれども、これは日本のために考えておる、十分に考えておるつもりであります。その点でこの日米防衛協力小委員会の問題に関しては、常に協議が行われた内容については公開していく、やはり国民にきちっと知らせていくということが私は大切だろうと思うんですが、その点について最後に大臣の見解を述べていただいて、私は質問を終わりたいと思います。
  99. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ立場が違うが国を守ることが必要であるという御意見は私も賛成でございます。ぜひそういう点では一致してお願いしたいと思うんですが、ただまもる方法等について随時、常に事あるごとに全部内容を公開しろという御意見は私は賛成できませんです。その点はひとつ見解の相違と申し上げておきます。
  100. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本調査についての質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時十六分散会