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1976-10-26 第78回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十六日(火曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  十月二十三日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     山田 徹一君  十月二十五日     辞任         補欠選任      山田 徹一君     塩出 啓典君     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長          高橋雄之助君    理 事                 秦野  章君                 増原 恵吉君                 戸叶  武君    委 員                 伊藤 五郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 亘  四郎君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  小坂善太郎君    政府委員        外務大臣官房長  松永 信雄君        外務省アジア局        次長       大森 誠一君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        人事院職員局審        議官       浦中冨士夫君        外務大臣官房領        事移住部長    越智 啓介君        外務省経済協力        局外務参事官   大鷹  正君        外務省情報文化        局文化事業部長  西宮  一君        文部省学術国際        局国際教育文化        課長       川村 恒明君        通商産業省通商        政策局北アジア        課長       照山 正夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第三次  延長に関する議定書締結について承認を求め  るの件(内閣提出) ○千九百七十六年の国際コーヒー協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出) ○在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第三次延長に関する議定書締結について承認を求めるの件  及び、千九百七十六年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(いずれも本院先議)  両件を便宜一括して議題といたします。  両件はすでに質疑を終局しておりますが、羽生君から質疑の申し出がありますので、この際これを許します。羽生君。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 国際小麦協定に関連をして一つだけお尋ねしたいことがあるんですが、それは、アメリカさきバッツ農務長官日本の前安倍農林大臣との間で穀物協定とも言うべきものがさきに結ばれております。それは七五年秋以降三年間、日本は毎年千四百万トン、小麦、大豆各三百万トン、飼料穀物八百万トン、計千四百万トン以上米国から輸入し、米国はその供給を保証する、こういうものであります。両大臣ともやめられたわけであります。つまり、アメリカ長官日本農林大臣もやめられたわけでありますが、これはいまでも有効なのかどうか、この一点だけをお伺いいたします。
  4. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答え申し上げます。  これは両国政府間の問題でございますから、この話し合いは当然有効でございます。
  5. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。−別に御意見もないようですから討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の第三次延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  6. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百七十六年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  7. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  9. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題とし、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 田英夫

    田英夫君 最初に、大変つかぬことを伺いますがという感じなんですけれども、今回の一部改正で、従来在ベトナム共和国日本国大使館、そして在ベトナム民主共和国日本国大使館とあったのを、在ベトナム日本国大使館にするというふうになったわけですけれども、これは本来ならば相手国の正式の名称大使館の前に冠するべきではないかという、常識論としてそういう気がいたしますが、そうだとすれば、「ベトナム社会主義共和国日本国大使館」とすべきではないかという気がいたしますが、これはどういう理由なんでしょうか。
  11. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の立て方でございますけれども、この法律をお開きいただきますと別表がついておりますところ、そこに掲げます国名は、いずれも各国それぞれの正式の国名を必ずしも正確に書いてございませんで、その国がその名称によって確認されればよいという、いわば便宜的な考え方に基づいて掲げております。この在ベトナム大使館につきましても同じような考え方によって整理いたしたものでございますから、ベトナムと言うことによってほかに誤解が生ずるおそれがないということから、簡略化した名称を用いたものでございます。
  12. 田英夫

    田英夫君 大体ほかのところもそのようになっているということもわかりますが、いわゆる発展途上国、新しく独立をかち取ったという国々の国民感情というものは大変微妙だと思います。そういう意味で、ベトナムの場合に限りませんで、やはり正式の国名を冠するという方がそうした国民感情に合致するんじゃないだろうか、そういう気持ちがしたものですからお聞きしたわけですけれども、この点を改めるとなるとこの法律の名前をすべて再検討しなければならなくなると思いますが、外務省として、そういう発展途上国国民感情というようなものを配慮されるおつもりはありませんか。
  13. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 一つの立法の政策の問題としては検討すべき御意見だと思います。ただ、この法律のみならず、ほかの外務省関係を含みまして非常に多くの法律において国名に言及いたします場合に、その正式の国名を全部正確に書くということになりますと、大変、非常に大きな膨大な作業を必要とするということでもございますし、また、非常に条文その他が長くなるというようなこともありますものですから、間違いが起こらない、誤解が生じないという場合には簡略化するというやり方をいろいろたくさんの法律でとっているわけでございます。ただ、御指摘のありました点は私どもも十分理解できますし、今後全般的な問題としては考えていくべき問題ではないかと思います。
  14. 田英夫

    田英夫君 次に、ベトナム情勢といいますか、あるいはインドシナ半島状況というふうに拡大してもいいと思うんですけれども、これもやや杞憂であれば幸いなんですけれども、先日、これインドシナ三国でありませんが、タイで御存じのとおりのクーデターがあって政変が起こりました。その性格というものをどういうふうに判断するかということにも関係をすると思いますけれども、あれによって従来のインドシナ、新しく独立をかち取った新生インドシナ三国とタイとの関係は好転しつつあるというふうに見られましたし、それを一つ接点にしてASEAN諸国インドシナ三国というものも好転するのではないかという期待を持たれていた。それが逆転をしたというふうに考えざるを得ないと思います。同時に、インドシナ三国のうちカンボジア中国と非常に密接であるということは言うまでもありません。  そこで、ベトナムラオスに対してソ連の非常なてこ入れがあるというふうに言われておりますし、現に中国は、そうしたソ連の出方に対して、これはソ連覇権主義のあらわれであるという表現でそれに対して警戒をしていることを隠しません。こういう状況になりますと、あの地域アメリカ中国ソ連というものの一つ接点というか、好ましくない状況が生まれるおそれがなきにしもあらずという感じもいたしますが、こうしたいまのインドシナ情勢外務大臣どういうふうにお考えになりますか。
  15. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) インドシナ三国に関しまする分析は仰せのようなことが一般的だと思います。ただ、われわれの立場から申し上げますと、やはりインドシナ三国については、それぞれ長い混乱の状態から脱しまして建設に向かっておる。その建設方法手段等につきましては、やはりそれぞれの自主性によって国をつくっていこうという機運が非常に顕著に出てきておると思うんでございます。仰せのように中ソ米という影は、投影はございますけれども、それにもかかわらず、自分らの力で自分らの国をつくっていこうという新しい息吹が感ぜられるのでございまして、私どもはそういう方向にいくことは非常に望ましいことである、アジアの平和のために非常に望ましいことであるというふうに考えておるわけでございます。
  16. 田英夫

    田英夫君 おっしゃるとおり、そういう状況の中で日本が果たすべき役割りというのは実は大変大きいんじゃないかという気がいたします。後からお尋ねしたいと思いますが、ベトナムに対する経済協力というものを通じてベトナムとの関係もこれからますます好転できるだろうというふうにも考えます。そのことは、ひいてはラオスともよくなる可能性がある。それから中国との関係もこれからよくなるし、それを通じてカンボジアとの関係も好転できるのではないかという気がいたします。それからASEAN諸国とはきわめて密接だというふうに、密接になるであろうというふうに考えてもいいんじゃないでしょうか。  そこで、もしそういう前提に立つとすれば、非常にいい意味日本がこの懸念される問題をひとつ懸念に終わらせる、むしろ好転させるという役割りを果たせるのではないかという気もいたしますが、そこで積極的な役割りを果たすようなお気持ちがあるかどうか、この点はいかがでしょう。
  17. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ベトナムは、特にあの三国の中で非常に力を持った国であるというふうに言われております。このベトナムが、いま田さんの仰せのように非常に建設を必要としている。そこで、私どももその気持ちについてできるだけの同情を持って協力をしていきたいと考えておるわけでございます。何といいましても日本野心を持たない、経済協力をしてもそれによって副次的なものを得ようとしているわけじゃないというその気持ちをよく理解させねばなりませんが、幸いにして、そういうような方向わが国の意図は理解されつつあるように思うわけでございます。  ベトナムにつきましても、旧北越との間に御承知のように昨年の十月に八十五億円の無償協力をしたわけでございますが、このほどまた九月十四日に五十億円の無償供与をいたしました。そういうことで、われわれといたしましては、外交ルートを通じまして、さらに技術協力等を具体的な要請があればこれに応じていこう、そういう気持ちでおるわけでございます。ASEANの方も、いまお話しのように日本に対して非常によい姿勢に向かいつつございます。われわれは、やはりそういうものの協力を通じてアジアに平和をもたらしたいという、できるだけの努力をしたいと考えておる次第でございます。
  18. 田英夫

    田英夫君 一つ方法は、それぞれの国との間の経済協力ということで関係を密接にするということが最も具体的だろうと思いますけれども、もし態度を誤ると、逆に、ただでさえ米中ソというものの争いの場になるのではないかと懸念されているところに、日本がそこに割って入るというような印象を与えかねない。そこのところに非常にむずかしさがあるだろうと思うんですけれども、ただ単にそれぞれの国と、ASEANを含めましてそれぞれの国に対する経済協力ということで日本との関係を良化させるというだけなのか、いま申し上げた争いになりかねないようなことを氷解さしていく、たとえばベトナムなりラオスカンボジア、あるいはタイとの関係を良化させるという上で日本役割りを果たすということがあり得るのか、そこの違いは非常に大きいと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  19. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わが国の力というものをみずからはかりながら、力以上のことをしないということが必要ではないかと考えておるわけでございます。何か超大国の間に日本が割って入るということではなくて、日本独自の可能な限りの協力善意を持ってやっていく。その結果において友好的な雰囲気が生まれてくれば非常に望ましいという気持ちでやってまいりたいと思うんでございますが、とにかくといたしまして、戦後三十年にわたって戦乱のちまたでございましたベトナムが一応平静になったわけでございますから、この戦乱の後の建設について、われわれは何も押しつけがましい気持ちでなくて、頼まれれば本当に善意を持って協力するということでいきたいと思うのでございます。ただ、ASEANと旧仏印三国との間には、やはり何といいましてもベトナム戦争中のいろいろなこだわりみたいなものがあるわけでございますから、これらについてもわれわれの立場からできるだけそういうこだわりは氷解できるような、そういう機会がございますれば、これを敏感にとらえて協力していくという態度をとってまいりたいと思っております。
  20. 田英夫

    田英夫君 そのベトナムの問題で一つ意見を伺いたいのは、昨年四月三十日にサイゴンが解放されましたが、大方の予想ではベトナムの南半分、いわゆる南ベトナムは当分の間いわゆる民主連合政権という形で別の政権をつくって、その上で北と将来統一するであろうということが従来の予想であったと思いますし、私自身南ベトナム臨時革命政府の人に会うたびにそういう構想を聞かされてきたわけであります。ところが、実際にはサイゴン解放後急速に現在の統一というものに向かって進んで、ついにベトナム社会主義共和国という形で統一をなし遂げたということは大変いいことでありますけれども、なぜ予想に反してというか、予想よりも早く統一ができたのか、この辺の事情をどういうふうにお考えになっておられるか、いかがでしょうか。
  21. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはもう本当に想像でしかございませんけれども、私は、やはりベトナム人自身が、これはやはり一つに早く統一した方がいいと、こう考えた結果であろうかというふうに考えております。
  22. 田英夫

    田英夫君 従来の実情からすると、特に南ベトナム実情からすると予想以上に早過ぎたという、いいことは過ぎて悪いことありませんけれども非常に早かった、そこに何らかの外部からの力が加わったのではないかという懸念する向きもあるわけであります。そこで伺ったわけですけれども、もっとはっきり申し上げれば、それはベトナムが早く統一できた方が自分にとって都合がいいという外部の圧力が加わったんじゃないだろうか。それももっとはっきり言えば、中国に参りますと、中国の人の意見として、これはソ連ベトナム地域自分影響下に置くために統一を急がせたのではないか、そして、その結果としてソ連軍事力ベトナムの中に基地を持つことになるのではないかという、そういう懸念をはっきりと表明をいたしますが、そうした問題についてのお考えはいかがでしょうか。
  23. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろな見解があろうかと思いますが、私の立場からいたしますと、これはやはりベトナム人自身がそう考えたんであろうと申し上げることが一番適当ではないかと思っておるわけでございます。ただ、今後の関係といたしまして、やはりあの長い戦乱を経ました後で、できるだけ建設にいそしみたいということが一番強く出てくるんではないか。何かこう超大国争いに、特定の一つのものに偏して争いの深みに入るよりも、やはり何と申しますか、等距離とでも申しますか、それぞれとの間に距離を置きながら自分の国の問題は自分国自身の問題として解決するというふうな方向に行くような傾向を持っているんではないか、私はそんなように考えております。
  24. 田英夫

    田英夫君 大変しつこいようですけれども、私はいま申し上げたような懸念をやはり捨て去るわけにいきませんので、そうだとすると、せっかく独立をかち取ったインドシナ三国というものが非常に再び不幸な状態に陥ってしまう。最近のタイ政変というようなものの背後に、やはりこれも外部の力が加わっているという情報もあるわけでありまして、そうなりますと、その外部というのは当然アメリカでありますから、冒頭申し上げたように、米中ソというものの影がインドシナ半島周辺に落ちるということになってくると、まことに残念な事態になってくる。そこで日本がいわゆる平和外交基本姿勢をもっと明快に打ち出していくときがあるのではないかという、そういう気持ちからお聞きをしたわけであります。  そこで、ひとつ具体的な問題として、そういうことを踏まえて、やはりベトナムに対する経済協力というものは大変重要だと思いますが、まず、その問題に触れるに当たって大臣にお聞きしたいのは、昔のことをほじくるようでありますが、明らかに自民党政府は数年前まできわめて誤った対ベトナム政策姿勢を持っていたと考えざるを得ないわけであります。つまりグエン・バン・チュー政権ベトナム唯一政権であるという基本の上に立って経済協力その他一切の政策を打ち出してきた、こういうふうに考えざるを得ないと思いますが、それに対しての反省をお持ちかどうか、まずお伺いいたします。
  25. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本サンフランシスコ講和条約調印いたしましたわけでございますが、ベトナムの代表として南越がおったわけなので、そうした関係からこれに対する賠償にも応じたという経緯でありますことはもうすでに田さんも御承知のとおりで、そういういきさつであるわけでございます。その後、しかし、そういう関係もございまして、そのままの状態が続いたというふうに御理解をいただきたいと思います。  なお、技術的な経過等については事務当局から補足いたさせます。
  26. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ただいま大臣からの御発言にもありましたように、わが国サンフランシスコ平和条約におきまして幾つかの国に対して賠償義務を負っていたわけでございますが、その義務を果たす一環として、ベトナムにつきましてはサンフランシスコ条約調印者である、いわゆる旧南越ベトナム政府に対しまして賠償を支払うという決定を行ったわけでございます。これは、当時わが国国際社会に復帰することのできたサンフランシスコ平和条約上の義務を履行する、こういう見地から当時の南ベトナムに対しての賠償ということを、サンフランシスコ条約経緯から見まして、また、その後のインドシナにおける状況から見まして、当時全ベトナムを代表する正統政府であるという見地から当時の南ベトナム政府に対しまして賠償を支払ったと、こういう経緯でございます。  その後、わが国としてはいわゆる統一前の北ベトナムとの間に外交関係を樹立いたしまして、先方との話し合いを通じまして、わが国としてはベトナム戦争によって疲弊した国について、社会体制のいかんを問わずその復興協力するという趣旨から、先ほど大臣が申されました旧北越、それが現在統一ベトナムに引き継がれているわけでございますけれども、これに対しまして計百三十五億円の無償援助を行った、こういうことでございます。  私どもといたしましては、当時の情勢から、賠償という見地からの処理と、それからその後の政治情勢の変化に応じて長期的な視野に立ってこの地域との友好協力関係を発展きせるという見地から、いわゆる旧ベトナム、それに引き継がれた統一ベトナムに対して無償協力ということを行うことに決定したわけでございます。  以上が全体の経緯でございます。
  27. 田英夫

    田英夫君 経緯は私もよくわかりますけれども、問題は基本的な姿勢にあると思うんです。つまり、ベトナムに限らず、すでに中国の問題で同じように、あの台湾が中国全土を含めた唯一政府であるという態度をとってきた。これは大臣の言われるサンフランシスコ体制のなせるわざでしょうけれども、いまここで改めて独単講和全面講和かという議論をするつもりはありませんけれども、明らかにその延長線上にあったことは事実であって、現在それがまだ朝鮮の問題では今後の課題として残っているわけです。ですから、私はその経過をお聞きしたんではなくて、反省がありますかということをお聞きしているわけです。この委員会でも、何度か私は、ベトナム戦争さなかに、いまのような態度では将来に禍根を残しますということを警告したつもりですけれども、いまそのことははっきりいたしましたから、それで反省がありますかということをお聞きしているわけです。
  28. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ反省と申しますれば、日本無条件降伏をいたしましたものでございますから占領下にあった、なるたけ早く占領から脱してわが国自身の持つ力を発揮できるようにしたい、世界に対しても戦後の日本復興というものについてわれわれ自身の力でもって訴えたいという気持ちから、あの当時全面講和単独講和かというような議論があったわけでございますけれども、いわゆる多数国講和に踏み切ったわけでございます。その結果、私ども今日の繁栄を来したということができると思うのでございますが、一方、いま田さんの御指摘のようないろいろな問題があるわけなんでございます。しかし、やはり日本のその後のとっておる政策善意によりまして、いろいろなことはあっても、日本はとにかく善意でやるということによりまして誤解もだんだん氷解しつつあるんじゃないかと思いますし、私ども何としても氷解させねばならぬと考えております。  ただいま御指摘ベトナムの問題にいたしましても、われわれはサンフランシスコ講和条約調印をした、こういう立場からずっと続いていた事態ではございますけれども、今日になりましては、このベトナムの戦後の復興について協力するという態度をとっておりますし、これは何らの野心がないものであるということも先方にも通じておるわけでございまするので、ベトナム関係におきましても漸次この関係は好転しておる。過去のことを言えばいろいろのことがございますけれども、やはり政治というものは将来のことが大事でございますので、将来両国の平和的な関係を打ち立てたい、かように思っておる次第でございます。
  29. 田英夫

    田英夫君 そういたしますと、ベトナムに対するあの戦争の賠償というものは、南ベトナムのグエン・バン・チュー政権に払いました三千九百万ドル、およそ百四十億円というもの、これは昭和四十年に終わっていると思いますが、それで終わったというふうに、日本政府としてはそういう態度でおられるわけですか。
  30. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 法律的な見地で申し上げますとさようなことでございます。しかし、北におきましてもいろいろな関係がございますので、これは無償協力をいたそうということで、数字で申し上げますと百四十億円を南に支払い、さらに百三十五億円を北に支払ったと、そういうようなことになると存じます。
  31. 田英夫

    田英夫君 つまり、もとの姿勢が狂っていたものだから、賠償はもう南に払った百四十億円で終わったということにせざるを得ないんで、それに見合う数字を二回に分けて五十年と五十一年、八十五億と五十億という形で北に支払ってつじつまを合わしたといいますか、これは経済協力することはいいことですけれども、結果的には賠償に相当するものを払ったということでつじつまを合わしたんだと思いますが、大臣は、日本軍の手によってベトナムで犯された罪ですね、この実態をどの程度御存じだろうかという気がいたします。それはその全部を知っていてくださいとは申しませんから、私は恐らくベトナムにおける戦争当時の日本軍による多大な迷惑というものの実態を政府の皆さんがそう御存じだとは思いませんし、それは期待いたしませんけれども、現地へ行ってみますと、むしろ北で非常にひどいことが行われていて、終戦の年、一九四五年に二百万人が餓死をした。その原因は日本軍が——当時まだ日本軍がベトナム全域にいるまま敗戦を迎えたわけで、そのときに日本軍が食うためにベトナム人の食糧を取り上げてしまったのがその大きな原因だったということを現地で聞かされています。  こういうことを考えますと、賠償という名前のつかない百三十五億円というもの、その経済協力で事を済ますということは心情的に私は許されないという気がしてなりません。しかも、現在における百三十五億円というものは、つまり五十年、五十一年の時点で支払われたこの金額というものは、むしろベトナムの人たちにとってはベトナム戦争の戦後復興のための協力というふうに考えざるを得ないと思います。この辺は外務省が、政府が当時のベトナム民主共和国と交渉をされてきた段階ではどういう経過があったのか。賠償という性格だということがはっきりしているのかどうか。むしろベトナム戦争に対する戦後復興協力という要素が内容的には非常に強いんじゃないかと思いますが、その辺はいかがですか。
  32. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 旧北ベトナム、いわゆるベトナム民主共和国との間に外交関係設定後にこの経済協力の問題についての話し合いが行われました。この話し合いの過程におきまして、当時、統一前の北ベトナムでございますが、先方は戦時中の日本の行為に対するいわば賠償といったようなことを持ち出してまいりました経緯はございます。しかしながら、私どもとしては、先方に対してわが方の法的立場からする賠償問題についてはすでに解決済みであるということを十分先方に説明いたしまして、両国間においては将来に向けての新しい関係を進めていくという、そういう展望のもとにこの問題を処理しようということで双方で意見が一致いたしまして、先般取り決められたような形での日本無償援助協力ということが成立した次第でございます。
  33. 田英夫

    田英夫君 繰り返して申し上げますけれども中国の場合には、亡くなった周恩来総理の非常な政治的配慮といいますか、そういうことでいわゆる賠償というものを免除してもらった形になりました。ベトナムの場合も、いま大森さんから言われたように、向こうは当然賠償的性格を要求したわけですけれども、いろいろな状況というものを勘案をしてベトナム側もむしろ実質的な方をとってくれた。名を捨てて実をとってくれたということで乗り切れた形になっていると思います。残る朝鮮がどういうことになるのか、私は再び警告を発しておいた方がいいという気がしてならないのでありますが、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮というものと将来国交を樹立し、そして朝鮮が統一されることが望ましいわけでありますから、そういう状況の中で、韓国との間で事が済まされていたから賠償的なものは終わってしまっているというふうに果たして押し通せるかどうか、今度もうまくいくとは限らないという気がしてならないのでありまして、こういうもとが間違っていたところを、大臣としては反省をするという言葉はなかなかおっしゃりにくいと思いますけれども、やはり大もとが間違っているとつじつまを合わせるのに事務当局の方は大変苦労されたろうという気がいたします。この辺が自民党のとってこられた外交の基本政策の間違いだったということを改めてやはりこの際に指摘をせざるを得ないわけであります。  そこで、もう一つの問題として、ベトナム統一をされました結果、旧サイゴン政権わが国に対して負っている債務、大体百六十二億あると思いますが、この点は七月のこの委員会羽生さんが質問をされたのに対して、当時の宮澤外務大臣が、正確な記録はここにありませんけれども、引き継ぐという意味のことを期待しているということを言っておられるわけですけれども、この点はどういうふうにお考なんですか。
  34. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま御指摘の点は、いわゆる旧南越に対する政府借款について、新しい統一社会主義ベトナムがどのような態度をとるであろうかということを見きわめながらわが方としての態度を決めていきたい、そういうふうに考えておるわけでございますけれども、なお技術的な点については事務当局からお答えさせます。
  35. 大鷹正

    説明員大鷹正君) 御質問の点でございますけれども南ベトナムが当時日本に負っておりました債務は、現在の統一ベトナム社会主義共和国によって承継されるべきものであるというふうに政府としては考えております。
  36. 田英夫

    田英夫君 これはある意味では当然なんでしょうけれども、事実、統一ベトナムアジア開銀だとかIMFに対してサイゴン政権が負っていた債務を引き継いでいるという事実がありますけれども、たしかそのうちアジア開銀の分は相殺するとゼロになるような数字だと思いますが、その点はいかがですか。
  37. 大鷹正

    説明員大鷹正君) いま田先生がおっしゃいましたとおり、ベトナムのアジ銀に対する出資額は千百万ドルばかりございまして、他方、融資の残高は約五百六十万ドルということで、差し引きしますと確かにベトナム側が出資している金の方が多いということでございます。
  38. 田英夫

    田英夫君 しかも、日本の場合、確かに国際慣行やあるいは論理的に言って、今度の統一ベトナム政府がこの債務を継承するということを日本側は期待する、これは当然と言えるかもしれませんけれども、その債務の内容を考えてみると、どうもこれはそういうことが果たして強く主張できるのかどうか。私が言いたいのは、あの円借款というものを供与したのはむしろアメリカの戦争に協力するというそういう意味、つまりアメリカとグエン・バン・チュー政権ベトナム戦争協力をするという意味が非常に強かったんじゃないかという気がいたします。特に初めのうちのを見ますと、最初の三カ年、七〇年あたりのところ、七〇年当初ですね、これは大体発電所建設資金という形になっておるようでありますからこの辺はいいんですけれども、七四年、七五年あたりのところになりますと、金額にして八十二億円あるいは九十億円ということですが、商品援助といいますか、これはどうも内容は戦争協力というふうに考えざるを得ないんですけれども、この内容は、商品援助というのは一体これは具体的にはどんなことですか。
  39. 大鷹正

    説明員大鷹正君) いま田先生がおっしゃいました商品援助のうち、後の七四年度分の九十億円は結局使われないままで終わりました。それから前の方の八十二億円の方は、購入対象品目としては食料品とか繊維品とかそういうものでございまして、そのほかもございますけれども、あくまでも民生安定、経済社会の発展という趣旨から与えられたものでございます。
  40. 田英夫

    田英夫君 いま大鷹さん言われたとおり、七五年の三月二十八日の閣議で決定されたんじゃなかったか、たしか三月も末の閣議で決定されたという記憶があるんですが、それからちょうど一カ月後にサイゴンが陥落をしているという、あのときに私もこの委員会で、幾ら何でもひどいではないかということを申し上げた記憶があります。結局あれは使われなかったということになると、日本政府の中の処理は一体どういうことになるんですか、相手がいなくなっちゃったわけですからね。これは政府の中の処理はどういうことになるんですか。
  41. 大鷹正

    説明員大鷹正君) この九十億円の方は、結局使用期限も切れましたので、実際上使われないままで終わったということになります。
  42. 田英夫

    田英夫君 これは財政の処理上は一体どういうことになるんですか。政府としては決定をしたわけですね、これを使うという。未使用という形になるんですか。あれは年度としては七五年度の分になるんですか、七六年度の分になるんですか。
  43. 大鷹正

    説明員大鷹正君) これは、実際には交換公文が締結されたのが七五年の三月でございまして、結局、一九七五年分のことになりますけれども、実際にはこの交換公文ができましても使用されなかったので、債権債務としてはもちろん成立しませんでしたし、結局その額だけ基金の金を使わないで済んだということになります。
  44. 田英夫

    田英夫君 結局、先ほど引き継ぐことを期待すると言われる数字の中で、当然この九十億円というものは入りませんね。
  45. 大鷹正

    説明員大鷹正君) そのとおりでございます。
  46. 田英夫

    田英夫君 大臣、いまお聞きのように、サイゴン政権わが国に対して負っていた債務というものを日本政府としては引き継ぐことを期待するという原則はそのとおりでしょうけれども、実態を見ますと、そういうことを言えた義理ではないという感じがする。同時に、いま戦後復興のために立ち上がっているベトナム実情ということを考えたときに、これはそれなりの政治的な配慮があっていいんじゃないだろうか。さらに、つまり数字上の計算は債務ということになって処理せざるを得ないにしても、継承したというふうになっても、実際はプラスアルファ、はるかに上回る経済協力をやるという中でこれを免除をするというような配慮をされる気はありませんか、政治的に。
  47. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 対日債務の継承問題についての話し合いにつきましては、双方とも満足するということが前提となると思うのでございます。その点で政治的配慮ということもいろいろ議題になるかと思いまするけれども、先ほど申し上げたようなことが政府の一応の態度でございます。さらに、先方の出方等も勘案する必要があるという田さんのお話につきましては、十分テークノートいたしております。
  48. 田英夫

    田英夫君 この問題を含めまして、現在ベトナム復興のための経済協力という問題については、今後も非常に一つの課題になっていくことは間違いないわけでありますけれども、そうした交渉は長谷川大使のもとでやっていかれるのか、あるいはより多く民間を含めまして経済協力を推進していくという姿勢をとるとすれば、しかるべき使節団あるいは代表団を政府の代表団という形で派遣をするということも考えなければならないと思いますが、そういう計画はお持ちでしょうか。
  49. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 長谷川大使は先方で非常に一生懸命やっておられますし、御承知のように非常に有能なる人物でございますので、まず、長谷川大使においていろいろと先方とも話し合ってもらって、また状況によりましては、いまのようなお話についても考える場合もあるかもしれませんが、一応現在のところは長谷川大使に十分話し合ってもらうという気持ちでございます。
  50. 田英夫

    田英夫君 そうしますと、いままでのところは五十年度と五十一年度合計百三十五億という先ほどから問題になっている賠償に相当するというものは完了したわけですけれども、完了というか、話し合いは終わっているわけですけれども、さらに、いままでの分が賠償的な性格のものであるとすればなおさらのこと、今後は、日本政府からの無償協力という形の経済協力が行われてしかるべきだと思うし、さらに、相手側の要請によっては借款というような形のものも考慮されていいと思いますけれども、そういう計画は具体的には進んでいるんでしょうか。
  51. 大鷹正

    説明員大鷹正君) その点につきましては、先ほど申し上げましたように、南ベトナム日本に負っていた債務は現在のベトナム社会主義共和国が承継すべきであるというのがわが方の立場でございまして、この問題の解決が今後のわが国ベトナムに対する経済協力を進める上での前提となるというふうに考えております。
  52. 田英夫

    田英夫君 そうすると、やはりその点は外務省としては、まず継承してくれという交渉から始めようということなのか。そうなってきますと、私がさっき申し上げた、そして大臣が比較的前向きに答えられたことと大変違ってきてしまうわけですよ。だからこそ、私は、その問題をたな上げするという前提の上に立てば非常に経済協力というものは前向きに進展をすると思いますが、まずその債務を継承してくれという交渉から始めるということになると、どうも姿勢としてきわめて消極的なことになってしまうんで、これは事務的な処理という意味ではわかりますよ、しかし、だからこそ大臣にお聞きしたんで、積極的に乙の債務はたな上げしようじゃないか、それで結構だと、ほぼ百六十億ぐらいでしょう、それだけですでに賠償無償協力をやった分を上回るような数字のものが事実上向こうにとってはゼロになってくるわけですから、その上でさらに経済協力をという形になれば非常に積極的な戦後復興に対する協力ということが言えるんで、そこのところはどうなんですか。
  53. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お気持ちは十分承りましたが、いまここで直ちに申し上げることを遠慮さしていただきまして、よく検討をさせていただくというふうに申し上げたいと思います。
  54. 田英夫

    田英夫君 最後にもう一つ、あとの時間は寺田さんが関連質問されますから、最後に伺いたいのは、ベトナム沖の石油の開発の問題、これは以前から日本に対して協力を求めてきているというふうな報道もあります。ただ、西沙群島あたりの問題が出てくると中国との関係などで非常に微妙ですから、そういう配慮は当然行われなければならないとは思いますけれども、むしろ旧南ベトナム沖の石油の開発については、以前から日本の技術協力を求めるという動きがあったように記憶しておりますが、現在、統一ベトナムとの間にはこの問題はどういうふうになっておるんですか。
  55. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 旧南越政権時代にわが国の企業が有しておりました鉱区につきましての探査ないしは発掘という問題につきましては、わが国よりはことしの三月に官民合同の石油関係訪越ミッションというものを派遣いたしまして、先方との話し合いに入っているという状況でございます。このミッションが訪問いたしました結果、ベトナムの石油開発事業につきまして、日本側の関係企業がこれに参加するということについて先方は原則的には同意いたしておりまして、その後、日本ベトナムとの両当事者間で協議が続けられて今日に至っている次第でございます。
  56. 田英夫

    田英夫君 そうしますと、その交渉というのはハノイで接触が行われていて、具体化の方向に進んでいるというふうに理解してよろしいですか。
  57. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 主としてハノイにおいてわが方の関係者との間で具体的な取り進め方について話し合いが継続されていると、こういう状況でございます。
  58. 田英夫

    田英夫君 詳しい内容はあれですけれども、それは技術的な協力なのか、あるいは日本との間の開発協力なのか、つまり石油がとれるようになった段階では日本に対してもそれなりの、たとえば例はちょっと当てはまりませんけれども日本と韓国との間の大陸だな協定のように、ああいう形で資源の供給を受けられるということを前提にしているのか、その辺はいかがですか。
  59. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 大筋といたしましては、先ほどの田先生のお言葉を使えば開発協力という形での話でございまして、この協力関係が具体化していきます暁には、わが方としても石油資源が入手し得る、そういう方向での話し合いが進められているわけでございます。
  60. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま田委員から、ベトナムに対するわが国の関与の問題で大臣反省を求めたわけですけれども大臣は率直に反省という御答弁はなかったわけですね。  この反省というのは二つの点について言われると思うんですが、一つは、やはりアメリカがああいう世界観を持って他国の内政に軍事的な干渉もあえてすることが世界政策、外交政策として適当かどうかという点の問題がありますし、もう一つは、ベトナムの戦争でグエン・バン・チュー政権がいかに民心から離れた存在であったかという点の見通しなり認識を欠いていたかということですね。そういう二つの点についての反省は、アメリカでも深刻に知識人の間で行われておるわけです。大統領の軍事的な権限にある程度制約を加えようというような動きもいままでに何回かなされたわけで、アメリカでも深刻な反省がなされておるのに、日本がそれに協力してきたことについていささかの反省もないということはこれは問題だと思うんですよ。  まあ世界観からする他国の内政に対する軍事的介入の問題はさておいて、日本の外交官が、あのグエン・バン・チュー政権があんなにも早く崩壊するほど民心から見捨てられた存在だということについて見通しを誤ったこと、つまり的確な現状認識がなかったという点についてもいささかの反省もございませんか、どうですか。
  61. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 反省と申しますれば、戦争をやったということに対する反省、これはまず第一に行わなければならぬと思うんですね。そういうことはもう再びすまいということをかたく決意しておるわけでございます。ただ、戦争の結果として無条件に降伏して、そうしてサンフランシスコの講和会議に臨んでこれを受諾した、提案を受諾した、全面降伏をしたということでございまして、その結果といたしまして、南ベトナムベトナムの代表として登場したわけでございます。したがいまして、われわれとしてはその関係を忠実にフォローしなければならぬという立場に置かれたわけでございます。それに対しまして、どうもアメリカが非常に介入したのに日本は追随したという御批判ございますが、これは私は実は御言葉でございますが、若干見解を異にするんでございまして、アメリカはあそこに最終的には五十万の大軍を出したわけでございます。日本はもちろん軍隊などを出す立場にはございませんし、われわれが外交関係を持っている国としての南越にそれぞれの接近をし、それぞれの交渉を持ったというわけでございまして、日本があの戦争に介入したというふうに、私はアメリカと同じような立場で介入したとは実は考えていないわけでございます。  しかし、そういう経過はございまするけれども、われわれの方としては、先ほど申し上げたように北越との間にも外交関係を持っている。統一された後におきましては、従来の関係もいろいろございますけれども、そういうことにつきましてはそれといたしまして、今後のベトナム建設復興に対してできるだけの協力をしてまいろう、こういう立場であるということを申し上げているわけです。もちろん、とりょうによっていろんな迷惑をかけているということについては考えるところがございます。しかし、一番反省というのは戦争をやったということ、これはもう深く反省をしている。その結果について政府のやり方がよかったか悪かったということは、これは見方でございまして、講和条約をやったことについても、あの多数国講和というものを早くやったことによって日本は今日のような非常な国力の伸びをいたしたわけでございます。いいところもあるし悪いところもあるというのは世の中のことでございまして、いいところが多ければまあいいというふうに御判断を願って、問題は将来のことを大切にするということで私ども一生懸命やってまいろうと思っておりますので、そういうことに御了解いただきたい。
  62. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 グエン・バン・チューの軍事政権がいかに民心を離れたものであったかという点の当時の認識ですよ。それを日本の外交官が的確に把握していたかどうかという問題はどうですか。
  63. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は当時その立場におりませんので、若干事実に暗い点もございますけれども、やはり非常に深く分析をしておったと思うのでございます。日本立場といいますか、日本人というものは非常に信義誠実を重んずる国民でございますものですから、やはり日本の外交官も形勢が悪いからといって手のひらを返すようなこともできないという、そういうような立場をとったのだと思うのでございまして、全然事情に暗かったとは私は思っておらないわけでございます。
  64. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大変事実と違う御答弁で遺憾千万なんですよ。アメリカ自身もあんなにグエン・バン・チュー政権が早く崩壊するとは考えていなかったようですし、まして日本の外交官が的確に認識していたと思うなんていうことは、もう外務大臣としていかに認識が不足かということを証明するもので非常に残念ですけれども、私がきょう質問することは、趣旨はほかにあるのです。  それは、在外公館をずっと回って何回か当たってみて、日本の外交官は勉強が足らないとか何とかいわれていますけれども、確かに勉強しているところと勉強していないところがはっきりわかるのですよ。ことに、全然相手方の要人に接触し得ないで、何にも情報もとれないという大使館もある、一生懸命勉強しているところもある。これはやはり日本の外交政策に関連するのだけれども、相手方の体制とかあるいは外交政策に頭から反発的な意識を持った外交官が行ったのでは、それでは相手のふところに飛び込めないので、情報がとれないのはあたりまえなんで、そういう人事行政について外務省はもうちょっと根本的に考え直す必要があるのじゃないだろうか、それがまず一つ。  それからもう一つは、任期が三年だという点も考えなきゃいかぬと思うのだけれども、ようやく事情がわかってきたときに転任してしまう、これはジェトロなんかの、いろいろ海外の半官半民の組織に出向する場合でもそうだけども、職員に聞いてみると惜しいと言うんですね。三年ぐらいでちょうど事情がわかったときに国へ帰らなきゃいかぬ、そういう点も人事行政について見直す必要があるんじゃないか、それが一つ。  それから、大使あるいは公使の能力とか人柄とかによって職員がいきいきと働いているところと、何か非常に高圧的でいや気を差しているところと、そういうところがやっぱりあるんですね。これはまあどこの官庁でもあるからしようがないけれども、そういう点も配慮しなければいかないのと、もう一つはやっぱり全般的にいろいろ仕事がふえてきた。まあ外国に居留する日本人もふえたし、通商関係も拡大したし、仕事の量は非常にふえたけれども職員が非常に足らないという面が確かにあるんで、それを補充するために現地の雇いというのを雇っているわけですね。雇いというのが言葉もわかるし、非常に一生懸命に、たとえば領事館関係の事務なんか非常にふえたから一生懸命やっているんだけれども、それが待遇が非常に悪いんですね。たとえばボーナスなんか一ヵ月なんです。ところが一緒にいる自分より余り働いてない正規の職員はたくさんもらって、一生懸命働いている下層の現地雇いというのは一カ月しかもらってない、非常に不満があるわけだ。夜遅くまで働かされたのに、たとえば女性なんかは働かした大使館員がはいさようならと行ってしまう。夜はその職員はタクシーで帰らなければいかぬ、食事もとらなければいかぬ。ところが、はいさようなら言われたらみんなそれは自費で賄わなければいけない。そういう点は大使館員の常識の問題なんだけど、あるいは思いやり、人間性もあるだろうけども、そういう点で人事行政が何か生き生きと動いてないんですね、外務省の場合は。そういう点を最後にひとつ明確な答弁をしていただきたいと思う、どうしたらいいかということ。
  65. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ただいま委員が御指摘になられました諸点は、私どもも十分問題意識は持っているつもりでございます。たとえば任国に駐在しておりまして、相手国の事情を十分理解するということが外交官としては前提条件の非常に基本的な一つであろうと思います。日本を理解させるということと相手国を十分理解するという、その心がけが常時なければならないということは、私どもも十分踏まえているつもりでございます。また、内部でいろんな研修をしたり、お互いに勉強し合ったりするときにも、そういう趣旨をできるだけ生かすように心がけの問題としては目標にしているわけでございます。  それから、任期三年内外という点が短過ぎるという御指摘、これもまことにもっともな面があるわけでございます、なかんずく、人的関係を樹立するのにかなりの時間がかかるわけで、その人的関係一つの蓄積として外交活動には不可欠の問題でございます。したがいまして、私どもは任地を離れます場合には、交代する者にその人的な関係の蓄積をできるだけ十分に引き継ぎをするというふうに心がけているわけでございます。ただ、任期一律三年というわけではございませんが、任地には非常な不健康地、勤務条件の環境が悪いところも非常に多いわけでございまして、人事行政上そういう悪条件の任地に長く在勤させるということも、また人道的な考慮もございましてむずかしいものでございますから、そういう観点からきます年限の制約というのもあるわけでございます。ただいま御指摘にもありましたような要請の点については、人事行政上できる限り生かしていくようにしたいというふうに考えてはおります。  また、大公使の能力という、御指摘もございましたけれども、これも私どもは主として人的な関係あるいは管理能力の問題だろうと思っております。十分、館員がそれぞれ所を得て実力を十分発揮し得るように館内を統率していくよう心がけていくべきことは当然であろうと考えている次第でございます。  また、現地補助員の待遇の問題につきまして、いま各地域におきます現地補助員の待遇は、それぞれの国における法令なり労働条件の慣行なりを十分勘案しなければならない。その意味では、東京から派遣されます職員とは違う状況にありますけれども、しかし、現地補助員の待遇が往々にして余りよくないという話は私どもも十分聞いております。この待遇の改善については、年々改善する方向で常時努力はしているわけでございます。ただ、現状がなお不満足なものであるという点も承知しておりますので、今後ともできる限り努力してまいりたいと考えております。
  66. 秦野章

    ○秦野章君 昨年、クアラルンプール事件のあった後、外務省に提案して、在外公館の生命身体に対する危害に備えるような意味で、いわゆる災害の補償について特例を設けるというようなことを考えたらどうかと、その後、昨年の秋の予算委員会でもそのことを質問の形で提案をしておったのですけれども、当時の外務大臣も人事院総裁も善処を約しておったのです。  ベトナム戦争カンボジア、最近ではレバノンとか、幸いいわゆる災害的な事故がなくて経過してきておるわけですが、大使館によっては爆弾が投げられたとかいったようなことも続いておるわけですね。日本の外交官の場合、そういった事故がまだ起きていなくて大変結構なんだけれども、外国の出先外交官の受難はかなりあるようですね。そんなこともあるから、これはやっぱりこういうことがちゃんとしておいた方がいいんだろうと。この制度がなければ外交官の士気が上がるとか上がらぬとかいう問題でもないと思うのですけれども、やっぱり最悪に備えるということは必要なことではないかという趣旨で言ってきたんですけれども、なかなかこれが現実化しない。どうしてこれがひまがかかるのかと私も思っているんですけれども、その経過をお尋ねする前に、大ざっぱでいいですから、やはりいま世界的に見てそういうような状況戦乱、治安の悪化、それからハイジャックみたいなものもたまには起きるし、人質みたいなこともやらなければならぬという立場に追い込まれる場面もある。今後はそれは全然ないという保証はなさそうに思うのです。したがって、そのことをまずお尋ねする前に、最近の状況を、資料があったらちょっと説明してくれませんか。官房長で結構です。
  67. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 官房長から説明する前に、私から一言お礼を申し上げたいと思うんでございます。大変ありがたい御配慮であると思いまして、外務省を所管する私といたしまして御配慮に感謝をしたいと思います。まあ制度のことでございますので、人事院その他いろいろ関係がございますわけですが、そうした温かいお心持ちを持って在外勤務者に本院において御発言をいただくということは大変私としてありがたいことであるということをまず申し上げておきたいと思います。
  68. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 最近の諸外国の外交官の場合に発生しておりますいろいろな災害の具体的な例といたしましては、私どももできる限り調査いたして資料を整えております。私ども手持ちの調査資料によりましても、過去数年間で数十件のいろいろな災害でございますけれども、例がございます。それから、わが国の外交官につきましては、御承知のようにベトナム戦乱状況下あるいはカンボジア状態、それからさらに最近はレバノンといったような地域における状況ということで、いろいろの事態が発生しているわけでございます。統計資料としては六八年から七六年までの九年間で合計六十六件という災害件数が数としては上っております。
  69. 秦野章

    ○秦野章君 ベトナムの場合もカンボジア、レバノン、さっと引き揚げてうまくいったという感じがする。実際問題として、この引き揚げの時期なんかずいぶん苦慮されると思うんですね、在留邦人の保護、その他任務があるでしょうから。だからやっぱりこれはいま大臣がおっしゃったように私はぜひやってもらった方がいいと思います。ただ、これもう一年かかっていて、外務省の手を離れたのはいつですか。人事院規則改正するという問題だけですね、さしあたって。これは実際は外務省の手を離れて人事院に行っているんですか。
  70. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 昨年あの御指摘がございましてから、私どもといたしましても戦乱等の危険な状況での勤務についての公務災害補償の改善につきましては、外務省といたしましても職員が安んじて勤務するための措置を講ずる必要があるという観点から、公務災害補償の特例措置について人事院に検討をお願いいたしてきているわけでございます。人事院の方におかれても、積極的な考え方を持ってこの制度を鋭意御検討中であるというふうに了解いたしております。
  71. 秦野章

    ○秦野章君 公式的にはそうおっしゃればそれで済んじゃうんだけれども、積極的にやろうやろうと言って一年たって、あれ法律には書いてあるんだからね、在外公館の職員にはそういうことができると。人事院規則変えりゃいいんだから、これ三日もかかりゃできるわけだ、はっきり言えば。だから何でそんなことができない。ここで、私が委員会でそんなこと言う必要はないんだけど、事務当局に幾ら言ってもなかなかやらぬ、きょう、あすやらなきゃならぬという問題ではないけれども、むしろこうなってくると役所の事務能率という、今度は別の問題として、何か実にこれ、人事院どうなんだね、何でこんなに慎重に一年もかからなければいけないのかね。
  72. 浦中冨士夫

    説明員浦中冨士夫君) お答え申し上げます。  先生御指摘の件につきましては、すでに昨年の予算委員会で総裁も答えておるところでございます。したがいまして、われわれとしては事務的に精力的に検討いたしてございますし、その間、外務省とも密接な連絡をとって作業を進めているわけでございますけれども、すでに警察官については特例がございますけれども、それとの関係で見た場合に、そのまま同じケースとして扱っていいかどうかということ、及びケースの限定という問題もございますし、いろいろわれわれサイドで申し上げますとまだ詰めなければならない点がございまして、今日の段階では結論を得てない次第でございますが、今後精力的に検討を進めまして、できるだけ早く結論を得たいと、かように存じております。
  73. 秦野章

    ○秦野章君 できるだけ早くって、いつごろできるの。
  74. 浦中冨士夫

    説明員浦中冨士夫君) 今日の段階では、私ども姿勢だけでお許しいただきたいと存じますが、いま申し上げましたような姿勢で作業に取り組む。
  75. 秦野章

    ○秦野章君 いや、役所というのは姿勢だけじゃだめなんだよ、やらなくちゃ。これはもう文化大革命でも日本はやらないとだめかな、役所は。これは総裁も前向きに善処すると、こう言ってるんだから、事務屋がもう後はさっとやりゃいいわけだ。要するに、法律に書いてあって人事院規則つくる。外交官の災害は警察官と同じかどうか、同じでなくたっていいわけだ。そんなことはある程度判断の問題でしょう、法律新しくつくるわけでもなんでもないんだから。いつのことやら、まだやっぱりあと一年ぐらいかかるのかね。
  76. 浦中冨士夫

    説明員浦中冨士夫君) 時間的な長さについては現段階で申し上げられるところではございませんけれども、心づもりといたしましては、いま先生がおっしゃいましたほどはかからないで仕上げたいものだと考えております。
  77. 秦野章

    ○秦野章君 もうばかばかしくて、質問やめるけど、だめだよ、そんなぐずぐずしていたんじゃ。外務大臣も迎賓館へ行かれるようですから、もうやめますけどね、外務省もひとつけつたたいて、これ大したことないんですよ。予算が要るわけじゃない、予算が要るようになったら大変悲しいことですな。ぼくはなるべく、そういうことにはならぬと思うけども、備えだけはしておくという、それたけのことなんたから、しかもそれは規則をちょっといじくりゃいいんだよ。私にやってくれと言えば半日でつくるよ。ひとつ急速に、あなたの上の人もおるだろうから、よく話して、姿勢だけじゃだめだ。簡単にさっとやってくださいよ。
  78. 浦中冨士夫

    説明員浦中冨士夫君) 承りました。
  79. 秦野章

    ○秦野章君 終わります。
  80. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 本案に対する午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時二十八分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  81. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、休憩前に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  82. 塩出啓典

    塩出啓典君 まず最初に、去る七月五日、ベトナム社会主義共和国のグエン・ズイ・チン外相は、東南アジア諸国と友好協力関係を樹立するに当たりまして四原則というものを発表をしております。そうして同国は、フィリピン及びタイとの外交関係樹立の際においてもこの四原則が共同声明に盛り込まれておるわけでありますが、わが国ベトナム社会主義共和国との間にはこのように合意された原則はあるのかどうか、これをお伺いいたします。
  83. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) わが国ベトナムとの間の国交樹立に際しまして、特に原則といったようなものは書き物としてはございません。しかしながら、わが国の方といたしましては、従来から政治社会体制の相違にかかわりなく、あらゆる国との間で友好的な関係を発展させるということを基本的な外交姿勢としてまいりました。ベトナムに対しましても、従来からこのような立場で臨んできた次第でございまして、統一ベトナムに対しても同様な立場で臨んでいるわけでございます。
  84. 塩出啓典

    塩出啓典君 わが国は、このベトナム社会主義共和国のいう四原則を認めるのかどうか、この点どうですか。
  85. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ベトナムが東南アジア諸国と国交関係を樹立するに際しましての四原則につきましては、そのうちでわが国としても認め得る原則もございますけれども、必ずしもすべての事項にわたってわが国ベトナム社会主義共和国との間を律する原則とは考えられないものも含んでいるというふうに考えております。
  86. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、問題はこの四原則の第一番、相互の独立、主権、領土保全の相互尊重、不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存、こういうものは問題ないと思うんであります。二番目に、この地域における他の国家、他の諸国に対する直接または間接の侵略と干渉のための基地として、いかなる外国にも領土の使用を許さないこと、これが二番目であります。三番目は、平等互恵を原則とした経済協力、文化交流の確立。四番目は、独立、平和、真の中立のための域内諸国間の協力を発展させると、こういうことでありますが、一番問題は二番目の問題になると思うのでありますが、わが国米国との日米安保条約に基づいて米軍基地が日本にあるわけでありますが、この問題についてはベトナム社会主義共和国はどういうように評価しているんでございますか。
  87. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ベトナム、いわゆる旧北越とでございますけれども、まず、旧北越との間で国交を樹立してその後外交関係を設定するに至ります間、経済援助の問題につきまして先方話し合いを行ったわけでございますが、先方はその話し合いの過程で、一時は日米安保条約というようなことに触れた発言もごく最初の時期にございましたけれども、その後は、先方はこの問題を特に提起するということはなくて話し合いが進んだと、こういう経緯でございます。
  88. 塩出啓典

    塩出啓典君 午前中の審議でも多少問題が出ましたが、最近ソ連アジア集団安保構想を提唱し、それを一つの材料として東南アジアヘの進出を試みようとしているわけであります。そのような点で私たちが憂慮することは、ベトナム社会主義共和国の外交姿勢が今日までむしろソ連に非常に近かった、そういう点から、このベトナム社会主義共和国ソ連に対する姿勢がどういうものであるか、私たちも非常に関心を持っておるわけでありますが、政府はどのように認識をしておるのか、これを伺っておきたいと思います。
  89. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ベトナムは、その外交の基本方針といたしまして、非同盟路線に基づき自主的な立場でその外交を展開していくという基本的な姿勢を明らかにしております。また、具体的にはソ連中国というような社会主義圏、あるいはいわゆる第三世界の諸国、さらには日本を含む体制の異なる西欧諸国とも友好協力関係を深めていきたい、こういう基本的方針をとっていると了解いたしております。
  90. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは外務大臣にお尋ねしたいわけでありますが、いわゆるソ連の言っておる中国を抜きにしたアジア集団安保構想は余り意味がない。むしろ中ソの対立を東南アジアに巻き込むことになるのではないか。わが国ASEAN諸国と定期的に協議する対話の場が近く設立される方向にあると聞いておるわけでありますが、ベトナムに対しても、またASEAN諸国に対しても、このような姿勢わが国は臨むべきであると、このように考えるわけでありますが、外務大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  91. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も塩出さんの仰せのように考えておりまして、われわれアジアの国でございまするから、アジアの各国とはできるだけ相互理解に努めて友好親善を深めていきたい、それが日本の進路の中で非常に重要な部分であるというふうに思っておるわけでございます。ソ連の提唱いたします集団安保構想というものは、どうもその構想自体が余りよくわからないというようなことから、余りこれに賛意を表している国は現在のところないわけでございます。国によっては、モンゴルだけではないかというような話もございますし、その他にも非同盟諸国のうち若干のものが賛意を表しているということを言うものもございますけれども、どうも実態はそれほど進んでいないというふうなことであるようでございます。私は、やはりこのアジアにおきまする超大国の対立というものが激化いたしまして、アジアがその犠牲になるというようなことは絶対避けなければならぬという考えで、日本としてはあくまで平和主義に基づいて相互理解を各国との間に進めていくという方針でもってしかるべしと考えておる次第でございます。
  92. 塩出啓典

    塩出啓典君 ベトナム社会主義共和国の対米関係の現状と今後の見通しについて、簡単に政府の見解をお聞きしたいと思います。
  93. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ベトナム社会主義共和国米国との関係の調整を望んではいる、しかしながら、パリ和平協定に基づく米国によるベトナムに対する経済協力の問題、この規定の実施が先決である、こういう態度をとっております。  他方、米国は、このパリ和平協定というものは、その後の情勢の発展によってすでにその部分については有効ではないという考えをとるとともに、ベトナム戦争中に行方不明となった米軍要員のその後の動向といいますか、情報についての提供を受けるということが、米国ベトナムとの間の関係調整の話し合いを進めるについての前提の問題である、このような態度をとっておると了解しており、したがって、米国とのベトナムとの間の関係は、ただいまのところその基本的な立場に食い違いがあるために話し合いは進展していないと、このように理解いたしております。
  94. 塩出啓典

    塩出啓典君 日本ベトナム社会主義共和国との間には、特に文書になったそういう原則のようなものがないというお話でございましたが、長い今後の両国の友好のために、正式な友好条約という名前がいいのか知りませんが、そういうようなものをちゃんとつくる必要があるんではないか、その点はどうでしょうか。
  95. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 統一されたベトナムわが国との関係は、まだ始まったばかりの段階と申せる状況にあるわけでございまして、私どもといたしましては、たとえばことしの二月に事務レベルのミッションを派遣するなどということを通じまして、わが国の外交の基本方針あるいはベトナムに対する友好協力関係を発展させたいという気持ち先方によく説明いたすとともに、また、統一後のベトナムとの間でもその協力関係を積み重ねていく、こういう過程で日本ベトナムとの関係というものを安定したものに置いていきたいと願っている次第でございます。ただいまのところは、そのような友好協力関係を律する新たな協定といったものを議すると、そういうことはまだ検討するに至っていない次第でございます。
  96. 塩出啓典

    塩出啓典君 外務大臣にお尋ねしますが、ベトナム戦争における米軍の北爆等について、わが国の歴代の外務大臣は大筋において支持をしてきたと思うわけであります。  振り返ってみれば、ベトナム戦争により米軍が五万人、さらに南北両ベトナムの軍人あるいは民間人の死亡を加えれば実に二百万人になんなんとする人が失われておるわけであります。そして結果的には、アメリカの力による政策は結果において失敗をしたわけでありまして、それらを総括して、アメリカのこのような姿勢はよろしくなかったんではないか、もっとほかにとるべき道があったと考えるわけでありますが、外相の見解を聞いておきたい。
  97. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アメリカ自身が五十万の兵を投入して、しかも得るところがなかったということで、非常に苦い経験をしたというふうに思うんでございますが、それと同時に、力によって他民族を支配といいますか、この場合はアメリカは条約上の義務によって南のベトナムに依頼されたことをやったというわけでございましょうけれども、そういうように見られる行為は成功しないということが明らかになったわけでございまして、その意味で私どもか批評をいたしまするよりも、アメリカ自身アメリカの政治家自身が深くいろいろと考えておられることだと思いまするので、私はそれ以上にいろいろ申し述べることを差し控えさせていただきたいと存じます。
  98. 塩出啓典

    塩出啓典君 この問題は午前中にもありましたし、時間の関係で次に移りたいと思いますが、わが国は、今後ベトナム政府のみならず発展途上国に対する経済援助の姿勢等においても、企業本位ではなしに、相手の国本位の立場に立っていかなければならないと思います。そういう意味で、ベトナム社会主義共和国の一番大きな問題は、戦争の廃墟から復興するという点にあると理解をしておるわけでありますが、そういう点はひとつ外務省としても十分心得て経済援助にも対してもらいたい、このことを要望しておきます。これは別に異存はないですね。  そこで、昨年五月サイゴンが陥落した当時、旧南ベトナム出身の日本への留学生は六百八十七人いたと聞いておりますが、これは国費留学生と私費留学生に分かれると思いますが、この内訳はどうなっているのか。また、その人たちは現在どうなっておるのか、これはわかりますでしょうか。
  99. 西宮一

    説明員(西宮一君) 私どもが文部省から得ております数字によりますと、昨年の混乱の当時のわが国の大学に在学しておりましたベトナム人留学生の数は六百六十名というふうになっております。この中で国外へ渡航した方もございまして、現在は約五百人のベトナム人留学生が日本の大学に入学いたしております。
  100. 塩出啓典

    塩出啓典君 私が報告いただいた資料では、国費留学生が六十一人、私費留学生が六百二十六人、これは昨年の五月一日現在の数でありますが、現在国費留学生は五十名に減っております。すべて旧南ベトナムからの留学生でありますが、国費留学生は御存じのように日本政府がいろいろ、研究生の場合は十二万一千円、学部学生の場合は八万八千円の月額のお金を支給しておりますので比較的問題はないと思うわけでありますが、問題はやはり私費留学生がどうなるか、どうなっておるのか、これが一番心配であります。私は当委員会においても、こういうときこそこういう若い青年のことを人道的立場からめんどう見ることが今後の長い東南アジア諸国との平和交流の上に大きく貢献していくんではないか、このことを申し上げたことがあったわけでありますが、その後いまどうなっておるのか。この人たちは私費留学生ですから、ふるさとからの送金がちゃんとあるのかどうか、恐らくないんじゃないかと思うのですが、その点はつかんでおりますか。
  101. 西宮一

    説明員(西宮一君) ただいま申し上げました留学生の数につきまして、まず訂正させていただきますが、昨年の七月一日現在のベトナム人留学生の総数は七百十九名でございまして、そのうち国費留学生が六十五名という数字でございます。  それで、塩出先生のおっしゃいましたベトナム人留学生の処遇の問題でございますが、法務省の方針といたしましては、人道的な見地から日本滞在問題につきましては努めて弾力的な取り扱いをするということでございます。  第二に、文部省関係でございますが、昨年の六月二十四日に閣議了解を得まして、これらのベトナム人留学生に対します授業料の猶予、減免、アルバイトのあっせん、後援資金の臨時貸し付けというような措置をとりました。なお、この後援資金の臨時貸し付けの方は、本年の三月末日をもって終了いたしました。
  102. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは総額一億五千万円という金額をカンボジアベトナム救援金より出したと、このことなんですね。
  103. 西宮一

    説明員(西宮一君) そうでございます。
  104. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、私が日本国際教育協会駒場留学生会館から聞いたお話では、四百六十名の対象者があって一人四万五千円でその後は切れておる、だから非常に苦しい立場ではないかということを、この駒場留学生会館は国費留学生のところですからそこは心配ないわけですけれども、そのように私費留学生のことを非常に心配をしているわけでありますが、確かに四万五千円もらったんでは、これは余り長持ちはしないと思うんですけれども、その後はどうなのか、このあたりはわかりますか。
  105. 西宮一

    説明員(西宮一君) ただいま先生おっしゃいましたように、一億五千万という目標で、いわば資金的な裏づけと申しますか、これは確保したわけでございますが、実際の貸付者の数が四百六十五名でございまして、貸付金額の総額が一億一千万円強と相なっております。その後、ただいま申し上げましたように、本年の三月末日をもちましてこの救援資金の支給は打ち切りになったわけでございますが、最近私どもの耳には、いま先生おっしゃいましたようなベトナム人留学生がはなはだしく困窮して困っておるというような話は、私どもの方にはまだ入ってきておりません。
  106. 塩出啓典

    塩出啓典君 耳には入ってこなくても、常識から考えても大変じゃないかと思うわけで、これは外務大臣にお願いしたいわけでありますが、細かいことはもうきょうやりませんけれども外務省も来年度予算の中で、特にこういう留学生の問題についても力を入れていくやに聞いているわけでありますが、日本に来ている青年たちは、やがて国へ帰ってその国の将来を担う人たちでございますので、やっぱりそういう人たちには日本に対する好印象を持って帰るようにしていかなければ留学生の意味もないんじゃないか。特に人間というのは困ったときに本当にめんどうを見てくれるということは生涯忘れられないんじゃないかと思うわけであります。そういう打算でやるのはよくありませんが、結果そうなるわけでありまして、もうちょっとベトナムの留学生等の実態も外務省なり文部省で調査をして、困っているという声がこないからといってこれでいいんじゃないかと言うわけにはいかぬと思いますし、その点についてのひとつ処置をとってもらいたい。この点はどうでしょうか。
  107. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 塩出さんのおっしゃるとおりのことだと思います。私も全く御意見は重要な御指摘であると考えるものであります。  ただ、予算の措置があるかということでございますが、残念ながらこれに対するものは要求してないように聞いておりますので、何か方法があるかどうか、これからよく検討してみたいと考えております。やるべきことであるという点は全く同感でございます。
  108. 塩出啓典

    塩出啓典君 金額としてもそう大した金額じゃありませんし、予備費の中から出すなり、その点はひとつ御検討いただきたいと思います。  それから、今年の五月二十日の当委員会で海外子女の教育問題について若干質問をさしていただいたわけでありますが、それに関係をいたしまして二、三お尋ねします。  最近、日本在外企業協会の報告によりますと、大体海外に勤務しております外交官あるいは商社、そういう人たちの子女の義務教育年齢の人が約一万八千人。日本人学校等で学んでいる人は三分の一で、他の三分の二の大半は現地校で勉強しておる、このように言っております。そして、日本人学校の、これはまあ補習を含めて設置希望の都市は非常に多い。現在私立も含めて四十八校ぐらいあるわけでありますが、近い将来にはこれを倍にし、教員も現在四百名余が千名も必要である、こういうことをアンケート調査の結果、日本在外企業協会が報告を出しておるわけでありますが、この現状はどうなのか、また今後の日本人学校の設置の見通し等について御説明いただきたいと思います。
  109. 越智啓介

    説明員(越智啓介君) 先生御指摘のとおり、五十年の十月現在、在外におります日本人十三万七千人、同伴子女数は約一万八千人でございます。したがって、これらの在外邦人にとってその子女教育はきわめて切実かつ緊急の問題でございます。  先生再三御指摘いただきまして、われわれ非常に感謝しておるのですが、おかげさまで本年の予算で全日制の日本人学校の新設が北京、ロンドン、ミラノ、ベレーンで認められまして、十月一日にロンドンが開設されまして、あとはすべて順調に開いております。それから教職員の増員は三百六十名が四百四十八名、八十八名増員していただきました。派遣教員の待遇改善も基本手当一二%引き上げ、住居手当三三%引き上げ、こういう方向で予算を認めていただいておるわけです。  なお本年度になりまして、さらにまたわれわれは引き続きこれを最重点事項の一つとしてお考え願いたいとお願いするわけでございますが、一層充実強化を図っていきたい。  全日制日本人学校、来年度われわれとしてはアルジェ、バグダード、ボゴタ、ブカレスト、グアテマラ、この五校を目下お願いしております。派遣教員の増員は六十五名増お願いしております。この内訳は、児童生徒数増に伴う自然増が三十七名、充足率の改善が国内基準の八〇%から八五%、これが二十八名、合計六十五名の増員をお願いしております。派遣教員の待遇改善も昨年度より基本手当で七・九%引き上げ、住宅手当で二八・五%引き上げ。  それから新しいものとしては子女教育手当の新設、管理職手当の新設、校舎借料の増額、これは校舎新築がソウル、マニラ、テヘランの三校、借料の増額が十四校でございます。それから補習授業校が専任教員増員が二名、講師謝金が対象人員増が七十名でございまして、これは二百五十七名から三百二十七名になります。月額単価の二〇%引き上げ。したがって、要求の総額は、五十一年度予算総額が二十八億四千四百万円でございまして、本年度は三十九億三千三百万円要求しておるところでございます。
  110. 塩出啓典

    塩出啓典君 わかりました。  それで、けさの朝刊にワシントンからのある特派員の報告が載っておりますが、これは三木首相殿と書いて、ワシントンには日本人の補習学校があるようであります。ここはやはり日本人学校よりも補習学校の方が効果があるという現地の要望のようでありますが、建物がない。非常に最近はインフレで校舎の借用料がウナギ登りになって、授業料大幅値上げをしないことにはやりくりがつかなくなった。田中前総理が数年前、ハーバードあるいはコロンビアなどの全米一流大学の日本研究援助に一千万ドルを寄付し、かっこうよいところを見せたけれども、実際に現地の日本人の子女は非常に苦労しておる。そういう点からこの特派員の提案は、ワシントンの日本人補習学校兼日本文化センターという建物をつくってもらいたい、こういう要望がこの記事に載っておるわけでありますが、きょうの午前中のお話にもありましたように、これは外務省といたしましても、商社としても、海外勤務の期間もどうしても長期化の方向に進まざるを得ない。その方が現地にもなれるわけで人の関係もうまくいく、そういう点から考えれば、これは非常に大事な問題であります。しかし、多いにこしたことないわけですけれども、お金が要るわけで、なかなかむずかしい問題だと思うのですけれども外務省としても中期計画のような、ことしの予算で四カ所、来年の予算で五カ所ということですけれども、もうちょっと長期計画を立てて、やっぱり一つの外交政策の重要な柱としてこれを推進していく考えはどうか、もうちょっと長期計画をつくるべきではないか、この点はどうでしょう、外務大臣
  111. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは予算のすべてについて言えることでございますが、どうも場当たり主義であると、これは外務省のいま御指摘の問題ももちろんそうでございますが、全般にそういう傾向があるわけでございます。ただいまの御注意は、はなはだ私も同感でございますので、できるだけ、ことし二つふえる、あるいは四つふえると言っても、全体を十幾つふやす中の三つであるとか四つであるとか、そういうふうな観点で取り上げてまいりたいというふうに思うわけでございます。外務省もそういうつもりでおりますわけでございますけれども、どうも折衝の過程でばらばらになりますのをできるだけ御趣旨のような線で行いたいと思います。
  112. 塩出啓典

    塩出啓典君 五月二十日の質問のときに、ことしの教育派遣の定員が四百四十八名だけれども二十四名不足をしているというお話でありました。これは旅費と在勤手当のみ国が出し、実際は地方自治体が本俸を出して、研修出張という名目でやっておるわけでありまして、最近の都道府県の財政難から、こういう形での出張は非常に困難になってきておる。そういう点から、外務省としても文部省と協議をして、こういう都道府県が本俸を出して研修出張で派遣をするような制度を改善をしていく。やはり当然国家公務員の形で国が支給をしていかなければ、今後のこの派遣教員の増加にも対応できないんではないかと思うわけでありますが、この問題についてはその後どういうことになっておるのか。
  113. 越智啓介

    説明員(越智啓介君) 詳しくは文部省からお答えすると思いますが、現在、日本人学校の教員は外務大臣の委嘱に基づいて派遣されております。国内的義務としては、各教員は各都道府県の教員としての身分のまま派遣される。したがって、先生御指摘のような研修出張、職務専念義務免除などいろいろな身分の扱いを受けており、国内給与も都道府県で異っておる。したがって、いま文部省と鋭意審議会などを通じて相談しておるんでありますが、海外へ派遣される都道府県教員は国家公務員として文部教官に併任の上に、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律、これの派遣職員として外務大臣の委嘱によって派遣される、身分及び国内給与の取り扱いは一元化する、こういう方向で目下外務省、大蔵省、文部省、人事院、行政管理庁、これらの当局間で協議を行っております。また、各省庁が予算要求など所要の措置を行っておる次第でございます。
  114. 川村恒明

    説明員(川村恒明君) ただいま越智部長からお話がございましたとおりでございます。私どもといたしましては、海外におります子供もわが日本国民でございますし、日本国民にふさわしい教育をするためにはいい先生を送りたいというふうに思っているわけでございます。御指摘のような現在の仕組みでございますと、派遣される先生の数が足らないという大変遺憾な事態になっておりますので、ただいまの国家公務員に身分を切りかえるという点につきまして、現在大蔵省に予算要求をいたしておりますし、また、人事院に対しましては、この派遣される先生方が国家公務員派遣法の対象になるようにということで折衝をいたしておるわけでございます。私どもとしては、現在派遣されておられる先生方を大体三年計画で国家公務員に切りかえてまいりたい。そのために初年度分として来年度約八億円ほどの予算要求をさせていただいておるという現状でございます。
  115. 塩出啓典

    塩出啓典君 時間もございませんので、特に外務大臣には三木内閣の閣僚として、いまお話しになった提案も、大蔵省がお金を出してくれないとこれはできないわけでありまして、そういう点は外務大臣として、また閣僚として、これらのひとつ着実な前進に努力をしていただきたい。  さらに、きょうは時間の点があって次回に譲りますが、帰国した子女の受け入れ体制の問題、どうしても外地で日本人学校へ行っている場合は日本語はしょっちゅう使っているわけでありますが、現地人学校に行った場合はなかなか日本語がうまくないということで、日本に帰ってからの教育にも支障を来たす問題。それから、最近中国とかあるいは韓国あるいは中南米等からの日本への引き揚げ者と申しますか、そういう人たち、その中には子供さんもおれば年とった人もいるわけでありますが、そういう人たちが日本の社会に適応していくにはどうしても日本語の勉強をしなければならない。そういう施設がないために、東京等においては夜間中学があるわけであります。夜間中学なんかに日本語学級をつくってやっておる。それぞれなつかしい祖国に大きなる期待を持って帰ってきても、最初から言葉の難関があると、それでは大きな幻滅を感ずるわけでありまして、そういう外国から帰ってきた人たちにやはり日本語の教育、ある程度、社会で生活していくのに必要な程度の教育まではもうちょっと国が責任を持ってやっていけるような体制が欲しいんじゃないか、こういうような問題もありますので、これはさらにこの次の機会に譲ります。そういう点も含めて、外務大臣としてはひとつ責任を持って推進してもらいたい。
  116. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わが国の海外における活動が非常に幅が広くなり、また奥行きも広く深くなってまいりますに従いまして、どうしてもいま御指摘のような子女の教育問題というのは非常にいままでより一層重要になっていくわけだと思うのでございまして、そういう点では私もこの役所をおあずかりしている者といたしまして、ただいまの御指摘の線に沿うてひとつ極力努力してまいりたい、こう思う次第でございます。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 ベトナムとの関係の問題でございますが、午前中いろいろ質疑がなされまして、大臣も、いままでの不幸な問題についてはそういう事態を再び繰り返さないと、今後友好的な関係を発展させるために一層努力をしたいという趣旨のお話がございました。  最初に、今後ベトナムとの友好的な関係を一層発展させるために特にどういう点で努力をなさるおつもりなのか、基本的な問題、どういう問題をお考えになっておられるのか、その点を最初にお尋ねしておきたいと思います。
  118. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 幸いにいたしまして、ベトナム側におきまして、体制の異なる国との間にも友好関係を持っていこうという非常に幅の広い気持ちを持っておられるようでございます。その方針をわれわれもそのまま受けて友好親善の道を進めていこう、それじゃなくても三十年に上る戦禍の跡というのがございます。その傷をいやすために、われわれの持っている力で役に立つことがあれば先方の希望に沿うてできるだけ協力していきたい、こう思っておるわけであります。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 それからASEANタイで御承知のようなクーデターがあって、ベトナムとの国交樹立という方向で、タイとの関係もうまくいきそうな状態にあったわけですけれども、実際には今度のクーデターで好ましくない事態に逆戻りした。そういうようなASEANでの状況があったにしても、ベトナムとのいま大臣がお述べになったような基本的な方向はいささかも変わりがないというふうに受けとっておいてよいでしょうか。
  120. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) タイの問題は、これはまあタイ国自身の問題でございまして、漸次落ちつきを見せておりますわけです。新しい憲法が制定される、ただこれは暫定憲法であって、四年後には民政中心の民主憲法になるであろうというふうなことが言われておるわけです。その間にベトナムとの間にどういうことがございましょうとも、これは両国の間の問題でございまして、われわれの方とすればベトナムあるいはタイ、それぞれ友好国としての関係を進めてまいりたいと思っております。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 友好的な関係を発展させる上で、その国の国名を正式に呼ぶということが非常に大切であるという点でひとつお考えいただきたいという、午前中、田委員からの御指摘もあって、松永さんもその趣旨には賛成だというふうなお話があったわけですね。  それで、やはり大臣も御承知のように、中国国名をどうするかという問題、それから朝鮮の国名をどう呼ぶかというふうな問題、これは国際的にも大変議論、問題になってきたところであって、そういう国名をどう呼ぶかということは非常に大切であるということは大臣十分に御認識なさっておると思うのですけれども、けさほど田委員が質問されたときに、ASEAN諸国インドシナ三国との関係の問題についての質問の際に、大臣仏印という言葉を使われたわけですね、つまり仏領インドシナという。これはきわめて私は日本外務大臣としては適切な表現ではないというふうに思うのです。これ以上私は追及いたしませんけれども、やはり外交上国名の問題というのは非常に大切な、呼び方という問題は本当にその国の主権にかかわる問題でありますから、そういう点はひとつ御注意していただきたいというふうに思いますが、よろしいですか。
  122. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 旧仏印三国というのは、はなはだ穏当を欠いた呼び方でございまして、インドシナ三国と言うべきでございまして、これは訂正させていただきます。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 それで、ベトナムの国連加盟の問題で、昨年南北がまだ統一されていない時点でそれぞれ国連の加盟を申請して、日本政府としてはそれに対して賛成態度をとったということですが、今回の国連総会においては延期されておるというふうな状況にありますけれども、これが提出された場合には、当然日本政府としては同じように賛成態度をとるものだというふうに考えますけれども、そういうことでしょうか。
  124. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございますが、ちょうど国連局長おりますから、詳しく申し上げたいと思います。
  125. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ただいま大臣がお答え申し上げたとおりでございますけれども、ことしの夏に安保理事会でベトナムの加盟問題が審議されかかったのでございますけれども関係国の協議の結果、その審議は十一月まで延期された形になっております。でございますので、具体的に十一月の何日に討議されるか、まだわかりませんけれども、その際には、わが国としましては、従来どおりベトナムとの国交もございますし、大使も交換しておりますし、それから国連自体の普遍性を達成するという見地からも、もちろんベトナム社会主義共和国の国連加盟につきまして積極的な支持をいたす所存でございます。
  126. 立木洋

    ○立木洋君 そこで大臣にお尋ねしたいわけですが、昨年はアメリカが拒否権を使って反対したわけですが、これは去年の理由では南北がまだ統一していない、韓国との関連、いわゆる分断しておる朝鮮との関連でこの問題について反対であるとの趣旨を述べて拒否権を使った。ことしの場合も再び拒否権を使うのではないかというふうなことがいろいろ報道されておりますし、こういうアメリかの拒否権、つまりほとんどの国がすべてベトナムの国連加盟というのを支持しておる状況の中でアメリカがやはり拒否権を使っておる。こういう問題についてはどのように大臣考えでしょうか。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アメリカ態度アメリカ自身の決定すべき問題でございまするが、わが国が従来国連のユニバーサリティーというものから考えまして、わが国自身外交関係を有しており、また友好関係にある点からも、わが国としてはベトナム社会主義共和国の国連加盟を歓迎し支持をする、こういう態度アメリカに従来からよく伝えてございます。
  128. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカアメリカ自身態度アメリカ自身によって決めるということはもちろんそのとおりでありますけれども、やはりこういう新しく統一されたベトナム、それの発展、友好関係を一層願うという観点から言うならば、国際的にもしかるべき地位が認められ与えられるということは当然のことであって、アメリカ単独でこういう拒否権を使うというようなことは好ましいことではないというふうにはお考えになれるんじゃないでしょうか。日本として積極的に国連加盟を支持するという立場であるならば、当然そういう考え方になるのではないかと思うのですが。
  129. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アメリカに対しまして、日本は加盟を支持しているんですよ、これが日本はいいと思っているんですよということは、それで十分意を通ずるに適当な態度ではなかろうかと思います。
  130. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆるベトナムに関するパリ協定が結ばれて、いろいろその中に盛り込まれてきた問題というのはずっと解決されてきているわけですが、残されている問題点といいますと、一つは二十一条の戦争賠償に関する問題、これがまだ未解決である。もう一つは、八条B項のいわゆる行方不明になったアメリカの将兵の調査の問題、この二つが解決されていないというふうに私は理解しているわけですが、この問題について、アメリカ側が最近行方不明になった米将兵の調査の問題に関して、これを国連に提起するというふうな行動を見ているわけですけれども、こういう問題が国連に提起された場合は、日本政府としてはどういうふうな態度をとるおつもりでしょうか。
  131. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 米国ベトナムとの間には、立木先生御指摘のように、米国からすればベトナム戦争中の米軍要員の行方不明者のその後の消息の問題、ベトナムからすればパリ和平協定二十一条の履行の問題、この二つについて基本的な立場が対立したまま関係調整が行われずに今日に至っているわけでございます。ただいま先生がお述べになりました、この問題を国連の場に持ち出すという点につきましては、私どもはまだ承知していないところでございます。
  132. 立木洋

    ○立木洋君 報道などではそういうふうに報じられているわけですが、そういうふうに提起されたという事実はまだないわけですね。
  133. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 私どもはまだ承知いたしておりません。
  134. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど国連局長も言われましたように、積極的にベトナムの国連加盟を支持する、積極的というふうに特に強調されたように私は聞いたわけですが、先ほど言いましたように、アメリカが拒否権を使って、正当な国際舞台における地位がいつまでも与えられないような状態にならないように、日本政府としても特に努力をしていただきたいということ、このことについて大臣に要望しておきたいと思うのです。  次の問題ですが、先ほど大臣一番最初にお答えになりました、つまり戦後の復興に関して可能な限り協力し、努力していきたいという趣旨の発言がありましたけれども経済協力の問題でも、御承知のようにベトナム側としては積極的に平等互恵の立場協力を受けるというふうな趣旨のことが繰り返し述べられておりますし、特に、この間のコロンボで開かれました非同盟諸国首脳会議の席上でファン・バン・ドン首相が、先進資本主義国との経済関係を強化するという指摘があるわけです。この点で無償援助の問題に関しては、この解釈については賠償の問題というふうな考え方、私たちはベトナムとの関係においてそういう考え方をするわけですが、正式にはそういう言葉を政府としては使っていませんが、この無償援助の問題に関しては百三十五億円で一応実行された。今後のあらゆる経済協力等々に関してはどういうふうにお考えになっているのか。
  135. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まず、技術協力の問題があると思うのでございますが、これは外交ルートを通じて具体的な要請がございますれば、個別に検討してやってまいりたいと思います。  次に、無償協力については、これはもう百三十五億円でもって当分考えられないと思うんでございますが、外交ルートを通じまして正式な要請があれば、対日債務継承問題も含めまして、いろいろな問題の解決と見通しとの関連を勘案して検討する用意を持っております。また、これは必要なことであると思っておるわけでございます。  それから、政府借款を検討するためには、対日債務の承継問題につきましての話し合いによる双方の満足する解決策を前提として考えていこうというようなことでございます。なお、詳しくは専門の方から申し上げます。
  136. 大鷹正

    説明員大鷹正君) いま大臣がおっしゃられたとおりでございまして、最後の政府借款につきましては、債権債務の承継問題が双方の満足のいくような形で解決することが前提でございまして、われわれといたしましては、話し合いが行われて、双方の満足のいくようなかっこうで解決されることを期待し望んでおる次第でございます。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 通産省の方お見えになっているかと思いますが、ベトナムがああいう戦火がおさまって南ベトナムが解放されて、ベトナムとの貿易量というのも急速に伸びたというふうに理解しておるわけですが、現在のベトナムとの貿易の状態がどういうふうになっているか。それから、これを今後一層拡大し広げていくという立場に立つならばどういう解決しなければならない問題があるのか、その二点について説明していただきたいと思います。
  138. 照山正夫

    説明員(照山正夫君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。  ベトナムとの貿易は、昨年七月の統一までは北と南それぞれの地域に分けて貿易が行われていたわけでございますが、いま仮に南北合わせましてトータルで数字的に若干申し上げますと、わが国の輸出の方でございますが、輸出は七三年に九千百万ドルが七四年に一億二千五百万ドルと上りまして、七五年には南ベトナム向けの輸出が減少いたしました結果、八千二百万ドルと一たん落ち込んだわけでございますが、本年一月から七月までの数字を見ますと昨年同期で二・四倍、金額で一億ドルということで再び上昇傾向にございます。したがいまして、傾向として申しますと、輸出の方は順調に伸びつつあるというふうに考えております。  それから、問題は輸入でございますが、七三年に三千七百万ドルでございましたが、七四年にはそれが六千百万ドルと増加いたしまして、七五年には四千百万ドル、本年七月では昨年の同期に比べまして約一五%減の二千六百万ドルということで、実は減少いたしております。これは内容的には南の地域からの輸入の減少というものが主たる減少でございます。  貿易が今後拡大していくということを私どもも念願しているわけでございますが、そのネックと申しますか、御指摘の点でございますが、わが国ベトナムとの貿易というものは、いま申し上げましたように、統一前後の若干の起伏はございますけれども、趨勢的に考えますと今後輸出入ともそれぞれ伸びていくということが期待されるわけでございます。問題は、輸出と輸入の規模が現在すでに大きく開いておる、今後それぞれ伸びると思いますけれども、その開きが依然として大きいものがあるのではないかという点が実は心配でございます。やはりわが国として、今後は輸出だけではなくて、ベトナムから何を買うか、輸入の拡大を図るということが、やはり長期的に見ればわが国ベトナムとの貿易関係を健全に発展させるという点ではまずもって重要ではなかろうか、このように判断するわけでございます。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 いまお話がありましたように、日本からの輸出とベトナムからの輸入と考えてみますと、もう四倍ぐらい輸出の方が多い。実際にいま通産省の方が言われましたけれども、今後やはり輸入を拡大していく方向での努力というのが一つの問題点であるという指摘があったわけですが、御承知のように、ベトナムの場合には輸出産業というのは、歴史的に言えば長期にわたる戦争状態にありましたし、その前までの植民地状態というふうなことで、ほとんど輸出産業というのが発展しておらない。ですから、コンスタントに向こうからの商品を輸出するにしても、それを継続的に輸送する輸送設備が十分でないですとか、いわゆる鉱石類を採掘する上においてもいろいろ問題がある等々、技術的な面あるいは経済開発の面での協力ということも非常に重要になってくる。これは早晩結局資金面での援助、輸出産業を伸ばしていくような面での協力というのがどうしてもやはり必要になってくるだろう。技術的に発達したあれを持っておる日本としては、そういう面もやはり十分に考えていかなければならないというふうに思うわけですが、特にベトナムの場合には、日本にないような鉱石類の資源というのが豊富にあるというふうなことも言われていますし、そういう意味での協力関係を発展させることが非常に重要だと思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  140. 大鷹正

    説明員大鷹正君) いまの立木先生のお話のとおり、先方の輸出力をつけるための技術協力とか、そういうことも必要でありましょうし、先ほど大臣がおっしゃいましたように、先方の要請があれば個別的にそれを検討いたしたいという考えでおります。現に、先般メーズの開発の問題についての調査団が、これは国際協力事業団ベースで、すなわち技術協力の一環としてベトナムに派遣されております。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 これも新聞報道でなされておったわけですが、日本からベトナムに経済視察団を派遣したいということで、経団連の方としてはそういう意向があったけれども政府はまだ時期が早いということでこれを抑えたというふうなことが新聞に出されておったんですが、これは一体どういうことなんですか。
  142. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ベトナムに対して経団連が中心になってのミッションの派遣ということは、経団連において従来から検討されてきているところと承知いたしております。私どもの方の考え方といたしましては、一つは、先ほど来述べられております今後のわが国ベトナムに対する経済協力、経済関係の全般のあり方について考えていく。その一つの問題としては、やはり債権債務の問題というものの円満な話し合いによる解決ということがございます。そういう全体のベトナムに対する基本的な考え方というものが固まっていくという状況を見る必要があろうかということが一つございます。  もう一つの問題といたしましては、この十二月にベトナムにおいて労働党の大会が開かれて、そこで外国からの援助の受け入れについての基本的な政策についても決められるというような見通しがございます。そのような双方にわたっての状況の進行ぐあいというものを見た上で、そのようなミッションの派遣が行われることが、話し合いを真に実りあるものにするためには有益であろうというような考え方をとっておる次第でございます。経団連の方からわれわれにベトナム状況について意見を求められたことがありましたので、ただいま申し上げましたような趣旨で説明をしたという経緯はございます。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 よりよくそういう協力の効果が上がるようにということで、若干推移を見てという御説明だったと思うので、大森さんの言われたことを信じてそのまま受け取っておきます。  もう一つ、これも新聞等で見たわけですが、先ほど来問題になっておりますかつてのいわゆる旧サイゴン政権との債権債務の処理の問題ですね。これについてもすでにハノイあるいは東京での話し合いが進みつつあるというふうな報道があるわけですが、そういう問題についてはすでに話し合いを行っているのですか、まだ全然行っていないのか、もしか行っているとしたらどういうふうな向こうが問題提起をし、日本側としてはどういうふうな態度で、どういうふうな状況になっているのかという点についてお答えいただきたいと思います。
  144. 大鷹正

    説明員大鷹正君) わが方といたしましては、先方との話し合いを近く開始いたしたいというふうに思っております。しかし、場所、時期等についてはまだ最終的に決まっておりません。したがって、話し合いの場において先方がどのような態度をとるかということについても、われわれまだわかりませんので、この席では申し上げられません。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 午前中大鷹さんが言われましたいわゆる債権債務の処理、これが前提になるという答弁なさった。大臣がその後、田委員の言われたこともよくわかるので、この場ですぐ答弁はできないが、検討してみようという趣旨のことを言われて、午後の答弁では、いわゆる両方の満足のいく解決になるようにというふうな答弁の変化があったと思うんですが、これは大臣、田委員が言われた点について、当然そういう点も理解できるので検討したいということは、前向きに検討するというふうに理解してよろしいですか。
  146. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、ベトナムとの友好というものは非常に大切だと思っているわけでございまして、その関係を前向きに進めることはアジアの平和のためにいいことだと思っているわけでございます。ただ、南ベトナムとの債権債務の継承問題があるわけでございますので、これがやはり解決しませんと後の問題に進みませんですから、やはりその円満な継承、そして双方の満足いく話し合い、これを前提として考えていきたいと申し上げたわけでございます。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 午前中のお話の趣旨では、いわゆるたな上げにする、これは事実上日本政府としては政府としての考え方で旧サイゴン政権に援助をした、その債権債務の処理ということであるけれども、しかしそれを前提とするということでは、事実上先ほど来大臣が言われた、積極的に戦後の復興のために協力していきたいということがなかなかうまく解決できないので、やはりたな上げにするというふうなことも含めて考えるべきではないか。また、ベトナム側としてはこの問題について言いますと、事実上やはりベトナム統一していきたい、そういう民族の悲願を強く持っておる状況の中で、実際上は直接軍事的な兵器が日本から出されたわけではないにしても、実際にはそれがいわゆるベトナムのかいらい軍が使われた物資も結局ないわけではない。それは食べ物にしたって飲み物にしたって着る衣類にしたって、これは兵隊さんが使えば直接戦争に役立つという形になってしまうわけですから、そういうことを考えてみると、やはりベトナム統一を妨げる側面もある。とするならば、この問題についてはよく考えてやらないといけない。だからそういう意味では、これをやはり前提とするということに固執しないで考えられてはどうかという趣旨の私は午前中の質疑だと思うんですね。だからそういう意味では、前提としないでという点で、ここでは直接答えられないので検討したいという御答弁があったわけですから、またいまのお話では、円満な解決を前提とするということになると、どうも午前中の御答弁とは違うように思うんですけれども、そこらあたりもうちょっとはっきりさしていただきたい。
  148. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いま私は、双方の満足するという言葉を使っているわけでございまして、要するに双方、当方も満足するし先方も満足するということでございますから、全部そのままということでもないし、あるいは廃棄ということが前提でもないし、要するに双方が満足する解決というものがあって初めて後が進んでいくということを申し上げておるわけでございます。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 この問題に関してはもう繰り返しませんけれども、一番最初に大臣が言われた戦後の復興という問題に協力をしなければならない、そういう考え方であるということも述べられましたし、かつての不幸な事態というのは繰り返すべきではない、そういう考え方ということとやはり結びついて長期にわたる友好関係を発展さしていこうという、そういう点をより前向きに、積極的に推し進めていただきたい。  それで、先ほど言われたような問題を前向きに進めていくためにいろいろ解決しなければならない問題がありますけれども、そういう点も、過去における日本政府がああいう戦争をした、そして多大の被害をベトナムの人々に与えてきたということの反省の上に立って前向きに処理していくように、今後一層努力をしていただきたいということを最後に要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  150. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  151. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 御異議ないと認め、よう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十分散会