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1976-10-07 第78回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月七日(木曜日)    午前十時二十三分開会     —————————————   委員氏名     委員長         高橋雄之助君     理 事         亀井 久興君     理 事         秦野  章君     理 事         増原 恵吉君     理 事         戸叶  武君                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 吉田忠三郎君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 野坂 参三君                 田渕 哲也君     —————————————    委員異動  九月二十四日     辞任         補欠選任      田中寿美子君     寺田 熊雄君      吉田忠三郎君     和田 静夫君  九月二十七日     辞任         補欠選任      糸山英太郎君     矢野  登君  十月六日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     玉置 和郎君      田渕 哲也君     向井 長年君 十月七日     辞任         補欠選任      塩出 啓典君     宮崎 正義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高橋雄之助君     理 事                 亀井 久興君                 秦野  章君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 大鷹 淑子君                 木内 四郎君                 玉置 和郎君                 矢野  登君                 亘  四郎君                 寺田 熊雄君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 和田 静夫君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 向井 長年君    国務大臣        外 務 大 臣  小坂善太郎君    政府委員        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        防衛政務次官   中村 弘海君        外務政務次官  小此木彦三郎君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省欧亜局長  橘  正忠君        外務省経済局長  本野 盛幸君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  中島敏次郎君        水産庁次長    佐々木輝夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      大高 時男君        防衛庁長官官房        防衛審議官    渡辺 伊助君        防衛庁長官官房        防衛審議官    夏目 晴雄君        法務大臣官房審        議官       竹村 照雄君        法務省民事局第        五課長      宮崎 直見君        法務省刑事局刑        事課長      吉田 淳一君        大蔵省銀行局中        小金融課長    吉田 正輝君        厚生省年金局年        金課長      高峯 一世君        通商産業省貿易        局輸出保険企画        課長       新井 市彦君        海上保安庁警備        救難監      山本 了三君        建設省住宅局住        宅総務課長    吉田 公二君        自治省税務局固        定資産税課長   栗田 幸雄君        会計検査院第二        局長       高橋 保司君     —————————————   本日の会議に付した案件調査承認要求に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (我が国と軍事クーデター後のタイとの関係に  関する件)  (三木内閣外交方針に関する件)  (朝鮮総連系人による在日韓国人強制連行事  件に関する件)  (北朝鮮韓国との境界線下に掘られたトンネ  ルに関する件)  (朝鮮総連に対する課税免除問題に関する件)  (北朝鮮輸入代金の未払い問題に関する件)  (日中関係に関する件)  (外務大臣国連演説に関する件)  (ミグ25事件に関する件)  (北方領土問題に関する件)  (世界情勢、特にデタント及び南北朝鮮国連  加盟問題に関する件)  (不法入国韓国人強制退去に関する件)  (ロッキード事件及びグラマン社E2Cに関す  る件)     —————————————
  2. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る九月二十四日、田中寿美子君及び吉田忠三郎君が委員辞任され、その補欠として寺田熊雄君及び和田静夫君がそれぞれ選任されました。  また、去る九月二十七日、糸山英太郎君が委員辞任され、その補欠として矢野登君が選任されました。  また、昨十月六日、稲嶺一郎君及び田渕哲也君が委員辞任され、その補欠として玉置和郎君及び向井長年君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) まず、調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行うこととし、その旨の調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) この際、小坂外務大臣及び小此木外務政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。小坂外務大臣
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私、このたび外務大臣を拝命いたしました。もとより、はなはだ魯鈍の者でございまするが、皆様の御支援、御鞭撻、また御叱正をいただきまして、大過なくこの大役を務めさしていただきたいと考えておりまするので、どうぞよろしくお願いを申します。(拍手)  これから、小此木政務次官のごあいさつの前に、委員長の御命令でございますので、私の考えをお聞き取りいただきたいと思いますが、それに先立ちまして、就任早々国連総会がございまして、国会開会中であり、皆様に何かと申し上げて御理解あるいは御叱正をいただくべきところを、時日もないままにニューヨークに参りましたわけでございまするが、にもかかわりませず、皆様におかれましては、この間の事情を御了察いただきまして、心よく請暇を御許可いただきまして、まことにありがとう存じます。厚くまずお礼を申し上げます。  この際、現下国際情勢につきまして若干の御説明をさしていただきます。  私は、ただいまもごあいさつ申し上げましたように、就任後直ちに日本国政府代表といたしまして国連総会に出席し、一般演説を行うとともに、米中ソ国外相を初め各国外務大臣代表等会談する機会を得ましたので、これを中心にして申し上げることにいたしたいと存じます。  まず国連外交につきましてでございますが、第三十一回国連総会は九月二十一日に開会し、十二月二十一日までの予定で開催されておりますが、私は九月二十五日より十月五日まで日本政府代表として出席し、九月二十七日午後、四番目に一般討論演説を行いました。演説の要旨は次のとおりでございます。  まず国連加盟以来二十年間、わが国が一貫してとってまいりました平和外交の一層の推進の決意を表明することに力点を置きながら、そのための各国間の対話と協調の重要性を訴え、とりわけ諸問題解決に当たりましての大国の責任について言及いたしました。  次いで、わが国核拡散防止条約批准を踏まえまして、核大国核軍縮への努力必要性のみならず、通常兵器軍縮重要性及び兵器移転の自粛の必要性についてわが国考え方を述べまして、今後も核軍縮及び核兵器拡散防止のための国際協力に積極的に貢献していく決意を明らかにいたしました。  南北問題に関しましては、開発途上国におきまする技術教育水準の向上のための国際的協力わが国が貢献する決意を述べました。  朝鮮半島、中東、南部アフリカ地域等の問題につきましては、早急に話し合いによる平和的解決を図るように慫慂をいたしました。  最後に、国連のあり方につきましては、国連平和維持活動国連の機構及び行財政、国連憲章の再検討を含む国連機能強化につきましてわが国考え方を明らかにいたしました。  次に、演説の後にワルトハイム事務総長アメラシンゲ総会議長キッシンジャーアメリカ国務長官グロムイコソ連外相喬冠華中国外相ギランゴーフランス外相ジェミソン・カナダ外相、ピーコック・オーストラリア外相朴韓国外務部長官チャバン・インド外務大臣モロッコ外相トルコ外相などと会談いたし、国務情勢及び二国間問題につきまして意見交換を行いました。  また、私が主催するレセプション等に、事務総長主要国代表のほか、アジア太平洋諸国代表アラブ諸国代表アフリカ諸国代表等をそれぞれ招きまして意見交換を行いました。  次に、日ソ関係についてでございますが、ニューヨークにおきまするグロムイコ外相との会談は、ミグ事件との関連で全体として厳しい雰囲気の中で行われました。私より、平和条約交渉を初め北方墓参安全操業等日ソ間の諸問題につきましての日本側立場説明し、問題の早期解決方を申し入れたのに対しまして、先方は、いずれについてもかたい態度を示しました。また、ミグ事件につきましては、私より、本事件のような問題が多岐にわたる日ソ間の大きな関係に悪影響を与えるようなことがあってはならない旨を述べまして、先方理解を求めたのでありますが、グロムイコ外務大臣は、本件に対する日本側処理ぶりに強い不満を示しました。会談概要は次のとおりであります。  平和条約交渉に関しまして、私より、早期に四島の一括返還を実現して平和条約を締結するよう申し入れたのに対しまして、グロムイコ外相は、平和条約締結交渉を継続することについては日ソ間に合意があるけれども、四島の返還問題というものはあり得ないとの態度を示しました。よって、私より、日ソ間には第二次大戦後の未解決の問題を解決して平和条約を締結するとの合意があり、この未解決の問題の中には領土問題、すなわち四島の問題が含まれている旨を反論いたしましたが、先方はこの問題につきましてはそれ以上話し合うことを希望しなかったのであります。  私より、ブレジネフ書記長等ソ連首脳訪日を実現して日ソ友好関係強化を図りたい旨を述べましたるところ、先方は、この問題は友好関係があって初めて考慮されることであるとの態度を示しました。  私より、北方墓参安全操業の問題を提起し、ソ連側善処を要望いたしましたるところ、グロムイコ外相は、これについてはソ連国内法に従う必要があると述べ、また近海操業につきましては、ソ連側国際法に従って操業しているので問題はない旨を述べたのであります。  よって、私より、これらの諸問題に関するわが方の基本的立場を繰り返し明らかにするとともに、ソ連側善処を強く申し入れておきました。  ミグ事件につきまして、私より、本件基本的性格とわが方の処理ぶり先方説明するとともに、日ソ関係をも考慮して、わが方としては迅速に所要の措置をとった上で近く機体ソ連側に返還するとの方針ソ連側に伝達をいたしました。これに対してグロムイコ外相は、事件の発生後飛行士機体を即時返還するのが当然であるとして、日本側処理ぶりに対して、強い不満を表明いたしました。私より、ソ連側発言は本事件基本的性格について全くの誤解に基づくものであることを述べまして、ソ連側理解を求めました。  以上のように、総じてグロムイコ外相のわが方に対する態度はきわめて厳しいものがありました。私としては、ミグ事件は本来日ソ間の基本的関係影響を及ぼすべき性格のものではないと確信しておりまして、今後とも、日ソ友好関係維持発展に努めるとともに、領土問題を初めとする日ソ間の諸懸案の解決に向かって粘り強い努力を払ってまいる所存であります。  次に、日中関係でありますが、ニューヨークにおきまする喬冠華外交部長との会談は、同部長との初めての会談でもあり、種々の問題につきまして深く議論するというよりも、両国間の友好的雰囲気を相互に確認し、またはつくり合ったというところに意義があると思います。  この会談におきましては、日中共同声明が発出されて以来、この共同声明に明記された四つの実務協定が締結され、日中関係は全体として良好であること、日中双方とも日中平和友好条約交渉早期締結の熱意を有していることにつきまして意見の一致を見たのであります。  政府といたしましては、今後とも日中共同声明基軸として、一衣帯水の間柄にある中国との善隣友好関係をより一層確固たるものにしていくために努力を惜しまない決意であります。  日中平和友好条約交渉につきましても、日中永遠平和友好関係の基礎とするにふさわしい条約が、日中双方努力によりまして、両国民に真に納得のいく形で早期に締結されるよう、引き続き努力してまいる所存であります。  次に、日米関係について申し上げます。  キッシンジャー国務長官との会談におきましては、両国共通関心事項につきまして率直な意見交換を行い、今後とも米国各層との対話を増進し、もって日米関係強化のため引き続き努力していくことを確認した次第であります。  言うまでもなく、自由と民主主義共通基本理念とする日米両国友好協力関係は、わが国外交基軸をなすものでありまして、両国間の政治安全保障経済科学技術、文化等広範な分野にわたりまする緊密なパートナーシップは、単に日米両国の国益に合致しているのみならず、広く国際関係の安定と国際社会発展に貢献するものであります。特に日米安保条約につきましては、わが国安全保障にとって重要であるのみならず、東アジアにおける国際政治基本的枠組みの一つとしてこの地域の安定にも貢献しております。その意味日米安保条約の持つ抑止的効果を維持増進することは重要であり、先般日米防衛協力小委員会が設置されたのもこのような趣旨に沿うものであります。  現在、日米間で検討を要する案件といたしましては、漁業問題及び航空の問題がありますが、漁業問題につきましては、わが国としては、米国国連海洋法会議の結論をまたずして、一方的に二百海里漁業保存水域を設定することを認めることはできないとの立場をとっておりまして、日米友好大局的見地から今後アメリカ側十分話し合いを行いまして、わが国関係水域で伝統的に行ってきた漁業の実績をできる限り確保しまするとともに、双方にとって受け入れ可能な形で問題を解決いたしまするように最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。  また、航空問題につきましても、現在話し合いが続けられておりますが、日米航空関係の不均衡是正という見地から公正な解決が図られまするよう努力していく所存であります。  以上、現下わが国外交主要課題に関しまして概要の御説明を申し上げました。御清聴いただきましてありがとうございました。
  8. 高橋雄之助

  9. 小此木彦三郎

    政府委員小此木彦三郎君) 私、このたびはからずも外務政務次官を拝命いたしました小此木彦三郎でございます。  時局重大な折から、微力ではございますが、奮励努力いたす所存でございますので、よろしく御指導のほどをお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  10. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) それでは、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 玉置和郎

    玉置和郎君 お許しをいただいて少しく聞きたいことと、それから新任されました小坂外務大臣政務次官の私はむしろ蒙を開きたいという考え方を持っております。これは従来から私の持論でありまして、国会議員というのは、これは立法を通じて国家最高意思を創造するメンバーである、こう考えておりますだけに、行政権を持っておる政府国務大臣をしてむしろ蒙を開くというのが国会議員の私は責務である、こう考えておりますだけに、あるいは失礼にわたる点があるかもわかりませんが、お許しをいただいて、ただいまから話さしていただきたい。  冒頭に、さっき戸叶先生が申されましたが、まさしく私は至言だと思っております。さすが尊敬する戸叶先生の御発言だけあると、こう思っておりますが、戸叶先生にも聞いていただきたいのですが、個性豊かな議員がたくさんおるのがわが自由民主党でありますだけに幅が広い。それだけにいろんな見解があります。なれ合いだとかそういうことはわが党におきましてはまずないということ、これをひとつ御了承いただきたいと思います。  そこで、冒頭に、きのう実はタイクーデターが起こりまして、そうしてサガット氏が議長として全権を掌握したという声明がありました。この新しい軍事政権とも言うべきサガット議長のもとにおけるタイとこれから日本はどういうふうにしていくのか、これについて外務大臣の所見を伺いたいと思います。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お言葉のように、昨日タイクーデターがあったわけでございますが、伝えられておりますところは、セニ内閣が優柔不断であって、憲法上の規定に沿うた政治を行えないということが理由であると言われておるわけでございます。  このクーデターわが国との関係でございますが、このクーデター憲法上の手続に即したものでございませんので、新政府承認問題が生じてくるというふうに思うのでございます。この点に関しましては、タイ側からまだアプローチがございませんが、今後新政府が成立してその通報があると思われまするが、それを待ってわが方としては対処いたしたいというふうに存じております。  新政権基本的性格はいまだ不明な点が多いわけでございますが、国連憲章の尊重、各国その他友好国との関係をうたっておりまして、従来の日本タイ関係に直接影響を与えることはあるまいと思われております。貿易投資等経済関係も問題は生じないのではないかといまのところは思われておるわけでございます。約八千人に上ると思われまする在留邦人も、今回のクーデターとの関係で不祥事を伝えられる者は現在のところございません。なお、十月二十四日に予定されておりまするピチャイ外務大臣訪日は取りやめになったわけでございます。  以上、かいつまんで申し上げました。
  13. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、いま憲法言々というように言われましたけれども、これは憲法は今度停止されたわけです、そうでしょう。タイ憲法は停止されていますよ。それだけにいまのあなたの発言はおかしい。いますでに王制民主主義を重視してというこの声明、これを読めば一目瞭然なんです。  私はことしタイに行きましたときに、タイでいろいろと日本大使館人たちにも教えてもらったし、私は友人にタイ人がたくさんおりますが、いろいろ聞いてみましたら、タイでは何といったってやっぱりタイ皇室というものが中心になっておる。それだけにこのタイ皇室が健在な限り大丈夫なんだという、いろいろ私に対する示唆がありました。その背景にはやっぱり軍がしっかりしておるということでありまして、いわゆるベトナムの影響だとか、大きな国の共産主義勢力影響というものに対しては必ず軍部が反発をしてクーデターが起こるであろうということを言っておりましたが、いみじくも当たった。この基本の姿勢というもの、基本体質というもの、これはやっぱり日本の国がこれからの新政権承認について考えていかなきゃならぬ問題じゃないですか。タイ国家というものの基本のものは何か、その根底に横たわるところの体質というのは一体何なのかということを考えたときに、新政権承認というのはこれは当然じゃないですか。どうですか。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 憲法上の手続と申しましたのは、いま玉置さんのおっしゃるような意味においては問題があるかと思います。しかし、クーデターという形は、その承認を改めてするかしないかという問題を生ずるわけでございまして、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  15. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣世界各国の革命の歴史を見て、日本がかつて承認をしてきたいろんな国を見て、軍事クーデターが起こった国をたくさん日本承認していますよ。その意味とあなたの言うのとちょっと違うんじゃないですか。それだけに、ここき書いているように、事件の発端は何かといったら、不敬罪だということでやり出したんですよ。これちゃんと新聞にも書いてある。「委員会国王をもっとも尊敬し、何人も侵すことはできない。委員会が権力を掌握したことは、国王が永久に存在するためである。国王及び王家は安全な保護を受けている。」結局、タイ皇室というものを中心にして物を考えて言っておるということです。これはいろんな政権が出てきてもずっとそうですよ。特に、ラオスの王室が倒れてからのタイの人民の間に横たわっている感情というものをわれわれ無視するわけにいかない。やっぱりタイわが国経済関係においても東南アジアで最も重視すべき国であることは外務大臣も知っておるはずです。きょうのような答弁では、恐らく田中前総理の二の舞をするんじゃないですか。どうなんですか。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の申し上げた点がさような感じを与えておりますとすれば、これは訂正しなきゃならぬと思います。私は、後段に申し上げたように、新しい政府の成立の通報が来ると思われるから、その場合に承認することになるであろうというような意味を申し上げたんでありますが、ちょっとこう文辞章句の末にこだわりましてぎごちない感じを与えたとすれば私の言葉足らずでございます。訂正をいたしたいと思います。
  17. 玉置和郎

    玉置和郎君 結構です。  それで、この問題はやっぱり要請があるとないにかかわらず、事前の受けざらとして、あしたの閣議ぐらいで御相談なすってください。これはやっぱり必要です。タイ日本という関係から見たならば、当然やっぱり閣議で相談すべきです。  それからもう一つ申し上げておきますけど、さっき戸叶先生が言われましたが、日中間の問題にしても、三木政権下における宮澤外務大臣とそうして小坂外務大臣ということになれば、きのうのような発言は、三木内閣という一貫した政府のもとにおける外務大臣意見の相違というか、見解の相違というか、そういうものがわれわれ見受けられる。そのことについて三木内閣で意思の統一をしたのかしないのか、これをまずお聞きをします。そしてこの問題については後でやります。きょう何か警察の方が法務委員会の方に呼ばれておるというんで、韓国問題を先やります。  いま日中問題でもって、宮澤さんの言ってきた四つの問題、日中平和友好条約を結ぶについて四つの問題、あなたのきのうの衆議院外務委員会における見解、そういったものについて、新聞の報ずるところによりますと大分考え方の違いがある。これについては後でやりますが、私の聞きたいのは、新しい三木内閣、今度の新閣僚というものの中でこの問題についての見解、話し合ったことあるんですか、閣議で。あるんですか、ないんですか、それを聞きたい。何か新聞の報ずるところによるとあしたやるんだとかいう。あしたやるんなら、きのうのあなたの見解はおかしいということになる。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 十分話し合っております。
  19. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは宮澤さんとも話し合っておるんですか。外交というのは、宮澤さんからあなたに変わったらすぐ方針が変わるというようなものじゃないですよ。それは個々のニュアンスはありますよ。ニュアンスはありますが、基本の流れというものは私は変わるもんじゃない。それだけにいま聞いておるわけです。
  20. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 総理大臣とも前外務大臣とも話し合っております。事務引き継ぎを十分受けております。
  21. 玉置和郎

    玉置和郎君 いまの問題、また後でやりましょう。  韓国の問題、警察、来ていますか。どれぐらい時間あるの、ここでは。
  22. 大高時男

    説明員(大高時男君) 法務委員会の方で別の質問がございまして、できるだけ早くということでございます。
  23. 玉置和郎

    玉置和郎君 最近、在日朝鮮人が朝鮮総連系の人たちによって強制連行されるという事件が起こっております。これは私が先に言いましょう。  本年九月二日に、韓国訪問のため、両親と羽田空港に赴いた西山英子さん十四歳が拉致、監禁されていま裁判になっているでしょう。それと、九月十九日に高輪署管内において起きた魚塘氏の強制連行事件、こういう問題ですね。私たちはいずれも本人の自由を束縛して強制された疑いがあるのじゃないかと見ています。日本に在住する外国人の基本的な人権が損なわれた問題として私たちは重視をしておるわけです。  幸いに、いろいろ私たちも聞いてみましたら、治安関係当局は非常に事態を重視をして、そしてなかなかしっかりしたことをやっておられる。この点は高く評価しますが、この際、あなたがここで報告できる範囲のことを報告してもらいたい。
  24. 大高時男

    説明員(大高時男君) 最初にお尋ねの西山英子事件でございますけれども、これは九月二日、埼玉の朝鮮初中級学校中級部の二年生の西山英子十四歳が、両親その他の兄弟と五人でございますけれども、秋夕墓参団という形で韓国へ向け出発するために羽田空港に到着したわけでございます。学友らと話しております間に、三時十五分ごろ行方不明になった、こういうことがございまして、両親が朝鮮総連に誘拐されたという形で空港署に届け出た事案でございます。  警察は、三時二十分ごろ両親からの届け出で事件を認知したわけでございますが、直ちに捜査を開始いたしまして、現場に居合わせました埼玉県の朝鮮初中級学校の先生、あるいはまた両親、民団の関係者から事情を聴取するとともに、本人がどこへ行ったかということで所在の確認に当たったわけでございます。  午後五時ごろになりまして、西山英子が自分の学校の先生、それから生徒数名とともに学校に帰りまして、両親が経営しておる、料理店でございますけれども、そこにいることが判明したわけでございます。  警察では、直ちに捜査員を埼玉の方に派遣いたしまして本人から事情を聴取したわけでございますが、本人はかなりしっかりしておりまして、韓国に行きたくなったので先生や友だちと一緒に自分で帰ってきたものであると、自分は韓国へは行きたくないんだと、こういうようなことを派出所で言っておったわけでございます。本人もかなりはっきり申しておりますし、当夜はひとまず家の方に帰した。  その後、この西山英子は友人の家に泊まりまして、九月三日の日に、実兄でございます西山博司という人が学校側と話し合って本人をとりあえず学校に預けると、その後、九月八日には西山博司が引き取りまして、十一日には父母と一緒に韓国へ赴いたと、こういう事案になっておるわけでございます。  警察としましては、目撃者をとりあえず発見する、それからまた、関係者から事情を聴取するということで、両親あるいは本人が訪韓中いろいろ周辺の事情を聞いておったわけでございますが、本人が韓国から帰りましてからさらに詳細な事情を聴取いたしておると。九月二十一日には、両親の方から埼玉の朝鮮人学校の本人の先生でございますけれども、これを被告訴人にする告訴がございまして、現在、慎重に捜査を進めておるという状況でございます。  それから、いま一つの魚塘事件でございますけれども、これは本年の九月十九日に時代社という、雑誌を出しております会社の副社長でございますけれども、魚塘という人が港区高輪所在の韓国料理店前から連れ去られた事案でございます。十九日の午後十時三十分ごろに魚塘氏が韓国料理店の梨花園前から連れ去られたという一一〇番がございまして、警察官が現場に急行して事情聴取をやったわけでございます。そうしたところ、この魚塘氏は、駐日韓国大使館の朴参事官、それから朝民連という団体の委員長をやっております呉正泰という人と料理店で会食後外へ出たところ、四、五人の男女に車に押し込められていずれかに連れ去られた、こういう状況が判明したわけでございます。  警察では、直ちに緊急配備を行いまして、誘拐容疑事案として捜査しておりましたところ、翌日二十日の午前一時二十分ごろになりまして魚塘氏が自宅に帰っておるのを発見したわけでございます。同氏に事情聴取をしたいということで申し入れたわけでございますけれども、本人は妻と娘と一緒に帰ってきただけであるということで、それ以外の事情聴取には応じないというような状況であったわけでございます。  一方、魚塘氏は、同じ二十日でございますけれども、朝鮮総連の中央本部で記者会見を行いまして、韓国旅券、韓国へ渡る準備はしてない、朝民連の呉正泰氏らによってホテルで事実上監禁状態に置かれた、韓国に連れていかれるところであったというような話をしたわけでございますけれども、朝民連側の方では、逆に朝鮮総連が魚塘氏を自宅に監禁していると、こういうふうに言っておるわけでございます。  警察としては、現在のところ関係者の申し立てにかなりの食い違いがある。私どもである程度調べましたところ、魚塘氏が朝民連側に監禁されておったというような様子は余りございませんし、また、魚塘氏が自宅に監禁されておるということもいまのところないということでございまして、いずれにしても、この事件中心人物でございます魚塘氏が、警察で事情聴取を持ちたいといいましても出てこられないような状況でございますので、警察としても、今後とも魚塘氏から直接事情聴取することによって事案の真相を明らかにしたい、また、これに伴うような紛争についで防止をしていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  25. 玉置和郎

    玉置和郎君 魚塘氏がこの事件の起きる前、九月十三日に朝総連の中央委員と時代社の副社長を辞任をいたしておりますね、これは確認しておりますか。
  26. 大高時男

    説明員(大高時男君) 確認いたしておりません。
  27. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは重大なことです。確認してください。九月十三日に朝総連中央委員と時代社の副社長の辞任届を出しています。そして、十五日に毎日新聞の記者に北朝鮮を批判をして、韓国にも行ってみたいということの対談をしております。この事実はつかんでいますか。
  28. 大高時男

    説明員(大高時男君) それは承知いたしております。ただ、この事件につきましては、先ほど申し上げましたように、私どもとしても関係者にはいろいろ事情を聞いておりますが、かぎを握りますのは何といっても魚塘氏でございますので、やはり魚塘氏から事情をお伺いするのがまず先決であろうかと、こういうふうに考えております。
  29. 玉置和郎

    玉置和郎君 もう一つ聞きますけれども、魚塘氏が北朝鮮からもらった金日成大学の副教授章を、あそこで一緒に食事をしていた呉委員長に預けておるということは、もうその副教授としての肩書きは要らないという意思表示だと思いますが、そのことの確認はしていますか。
  30. 大高時男

    説明員(大高時男君) 現在、まだ私どもの方としてもいろいろ周辺の事情を聴取しましてその上で真相を把握いたしたいと思っておりますので、細かにこの席で申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思います。
  31. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは結構ですけれども、いまの私のそういう質問があったということで、ぜひその辺の確認をしていただきたい。  そして、最後に言っておきますが、私はきょうここで質問に立つために魚塘氏に会いたいと思った。そして彼からも真実を聞きたいと、真実はただ一つです。いま自由に物が言えるのか言えないのかという立場です。いまの立場というのは自由に物の言える環境にあるのかないのかということです。自分の自由な発言というのは拘束されておるのか拘束されていないのかということなんです。私をして言わしめれば、自由な発言ができる環境にあるなら、私はやっぱり国政調査権を持った一人です。これは本人の意思があって会いたくないということもあるでしょうが、私はやっぱりこれだけ大きな問題になったんですから、私が訪ねると言った場合に、彼はやっぱり何らかの、電話へ出るとか何かするはずです。電話口にも出ない。電話口に出てくるのはほかの人です。これは何を物語るのか。そうして弟さんが、魚塘氏のところへ実弟がわざわざ、これはバンカー、銀行マンですが、韓国から来て彼の家を訪ねておる。そのときに、彼の周りにおったのは朝総連系の、はっきり名前もわかっておりますが、男八人、女一人か二人に取り巻かれておる。その中で自由な発言ができるはずはない。ああいう人たちが全部出ていってしまって、他人が全部出ていってしまって、そうして本人と国政調査権を持ったわれわれとが自由に会える環境、それをつくっていただけるか、あるいはまた、あなた方が、魚塘氏が自由に出てきて自由な場所で意見の述べられる、自分の考え方を述べられる、そして過去のいろんないきさつを述べられる、こういう環境を確保してあげることが、自由社会を持つ日本の当局の私は姿だと思う。ぜひひとつその点さらに努力をしていただきたい。もうあなた方が最善の努力をしておることは高く評価します。日本の警察というのはしっかりしていますからね。しっかりしておるのは警察、検察だ。一番頼りないのは政治家だ。それだけに、あなた方のこれからの一層の高い中立性と固有の法則性を持ってこの問題に対処していただきたい。これだけ要望しておきます。答弁要りません。  そこで、大臣にお聞きします。北朝鮮から韓国に向けて掘っておるトンネル、軍事分界線の中にあるトンネルですね、これはあなたは見たこと恐らくまだないと思います、行ったことないんだから。それだけに、これについて報告は受けていますか。
  32. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろ聞いております。まだ見たことはございません。
  33. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは私なんかは第一トンネル、第二トンネル、どっちも見ておるわけです。第二トンネルに入ってはっきりわかることは、これは削岩機の跡がはっきり入っておるのです。削岩機の跡はどういうふうに入っておるかといったら、北から南に向けて入っておるのです。こっちから掘るんだったら南から北に向けて削岩機は入らにゃいかぬです。だから、これは北から掘ったということはもうはっきりわかる。それなのにこの日本の国会において、あれは南から北に向けて掘ったんだとかなんとかいう会議録がまだ依然として残っておる。だれが言ったとは言いません。事実も確認しないで、現場も見ないでそういうことが平気でまかり通る日本の国会というのは摩訶不思議であるということを言いたい。  それで、第一トンネルでは、これはアメリカ軍の将校と韓国軍の将校、いわゆる国連軍の将校と韓国軍の将校がその第一トンネルの視察に行って、そこで地雷にひっかかって、トンネルのところで地雷にひっかかって死んでおる。自分が掘ったところだったらちゃんと地雷のあること知ってますよ。そうじゃないですか。これ常識じゃないですか。この二つの私のいまの所見に対して、どっちが正当なのか、あなたの判断を聞きたい。
  34. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま玉置先生の御指摘になられたような事実については私どもも聞いております。多くの人の、特に見てきた人の話によりますと、これは北が掘ったものだということになっているということも承知しておりますが、日本政府立場からいたしますと、どちらが掘ったものであるからどうだということで南北の対決に深く入っていくことが果たして賢明であるかどうかという判断がございますので、日本政府として第三者の裁くような立場でこれがどうだこうだということは、むしろ言わない方が賢明ではないか。むしろこの両者の間の緊張状態が緩和していくことを望みたい。ただ、事実としてはいまおっしゃったような情報を私どもたくさん聞いております。
  35. 玉置和郎

    玉置和郎君 中江君、あんたらしくないよ、そんなこと言うたら。おかしいです、それは。事実は事実としてやっぱり認めるべきです。あなたのところの一等書記官が見に行っておるじゃないか、アヌッシェが。防衛庁から出ておる一等書記官が見ておるじゃないか。見てないのか。はっきりしてくれ。
  36. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは先ほど申し上げましたように、在韓日本大使館の館員も見ておりますし、そのほかにも報道関係者の方で見てきた方もありますし、そういう人たちの話は、私が先ほど申し上げましたように、これはやはりどう見ても北が掘ったものだと思うという報告は受けております。
  37. 玉置和郎

    玉置和郎君 あれだけのものを掘るとするなら、何の目的のために掘ったのか、その背景というのは一体何なのか当然調査しておるはずです。調査の結果はどうですか。
  38. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 特に軍事専門的になぜ掘ったであろうかということを調査してはおりません。
  39. 玉置和郎

    玉置和郎君 それはおかしい。ぼくはソウルに行って関係者に会った。だれということは言わないが、しっかりした人ですよ。地位のある人です。その人の話とさきのこの青瓦台事件、いわゆる朴大統領の大統領官邸の襲撃事件、ゲリラ事件あったでしょう。あれと関連すれば事は明白じゃないですか。あれだけのものを掘って、そして韓国軍の正規軍の服を着せて、軍事分界線を越えて後方に回らして、そこでゲリラが韓国軍のいわゆるクーデター部隊だとして立ち上がらすという、この意図ははっきりしておるじゃないですか。その報告をあなたが受けてないというのはおかしい。もし受けてないというのならだれが言ったということまで私は言わなきゃいかぬ。そういう報告が、ある程度のものは受けておるのか受けてないのか。これが北と南の緊張を激化をさすとかそんな問題じゃないです。真実です。真実は何かということなんです。真実を明らかにしないと変なことになってしまうから私は言うのですよ。どうなんですか。
  40. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま言われたような報告、ある程度の報告を受けているかと言われれば、それはもちろん受けておるわけですが、私が先ほど申し上げましたのは、日本政府が権威のある調査団を派遣して軍事的にこれをつまびらかに調べて、そしてその結果としてこうであるというような判断をするようなことはしていないということを申し上げたわけで、この現地を見た人がいろいろの観測をしておられることは、これはもちろん私どもも承知しております。
  41. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣、非常に重大な発言ですよ。これはね、私たちは、後で申し上げますが、韓半島の脅威というものは、直接これは日本の脅威につながるという見方をしておるわけです。日米安保の中に極東の範囲があるでしょう、その極東の範囲の中に入っておるわけですよ。それであるなら、北の脅威というものは日本の脅威であるという、これは亡くなった元佐藤総理も言っておった。私たちも現実を見てましてそう思いますよ。それだけに、権威ある調査団を送るべきです。それで黒白をはっきりさすべきです。そして共産主義者というものは一体こうまでやるのかということを日本国民に教えるのが政府の責任じゃないですか。特に自由社会を守っていこうとしておる現在の自由民主党の内閣というものの当然の責務じゃないですか。これは中江君よりも外務大臣に聞きたい。どうなんですか。
  42. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 玉置さんのお考え、それは私もよくわかりますし、非常に同感するところが多いわけであります。しかし、まあ日本政府立場として考えてみますると、あの三十八度線というものは休戦協定の結果できました線でございまして、そこに責任を持っているのは国連軍であるわけでございます。そこで、日本政府としてその中へ割って入って、公式の調査団を出して、このトンネルというものはどういうふうにしていかなる意図でつくられたかということを、国連軍に先立ってといいますか、あるいは国連軍を押し分けてといいますか、調査をするということは一つの問題であるというふうに思うのであります。要するに、ミリタントな行動というものに対しては私ども極力それを抑制していかなければならない。そのために日米安保条約もあるわけでございます。その抑止力というものを十分に使い、かつまた、われわれ自身として、わが日本憲法立場から言いますと専守防衛でございますけれども、この防衛力をできるだけ充実していく、そうしながらアジアの平和を確保していく、日本立場からそれを考えていくということで考えておるわけでございますので、お考えはよくわかりますし、大体あれだけのトンネルが、日当を払ってやっていけばもう大変な費用のものになる。あそこの岩盤の性格がどういうものであるかというようなことは私ども大体見ておりませんのですけれども、いろんな方の話を伺って承知はしております。しかし、それを公式に日本政府として言うことがいいのであるかどうかという点は、いま私が申し述べたようなことでちょっといかがなものか、かように思っていることを申し上げておきます。中江君はそういう意味で申し上げておると存じております。
  43. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣日本外交方針というものの第一にやっぱり国連中心主義というのがある。これは御承知のとおりでしょう。その国連が出した国連軍が守っておる、そして国連軍があれは北の方から掘ってきたんだと、私たちは国連軍の将校からもその説明を受けた。そして現に国連軍が死んでおる、第一トンネルのところで。それに対していまのような答弁では私は納得できぬですよ。それだけに、国連軍がたくさんの犠牲を払っておるときに、日本国連中心主義を貫くのなら当然これを確認することがあたりまえじゃないですか。そうじゃないですか。  それからもう一点。日本が専守防衛に徹底できるというのは、一体どういうこの日本の周辺を取り巻く国の関係がなっているかということを考えればいい。これは何としたって北の脅威というものを韓国があそこでやっぱり防いでおるということですよ。韓国の指導者はそのことを皆言いますよ。日本が今日平和を享受して、そして繁栄の一途をたどっておるのはだれのおかげかということを韓国の指導者は言う。韓国の一般の人たちも言う。われわれがこれだけ高い税金を払ってやっておるのは一体何のためか。かつて朝鮮動乱によって共産主義者からたたきつけられた、そうして惨殺をされた、もう再びあれを繰り返さないということでわれわれは高い税金を払って韓国の軍事分界線に展開をしたあの防衛体制を支えておるのだ、そのおかげで日本が平和で繁栄を続けておるんじゃないかというのが韓国人民のほとんどの意見です。それに対していまの答弁では納得できないですよ。答えてください。
  44. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 韓国が非常にわが国にとって大切な国であるということは、私も深くさように思っております。御承知と存じますが、一九六〇年に日本外務大臣として初めて韓国を訪問したのは私でございます。それ以来、私は日韓の関係が非常によくなってきたことについて、はなはだ微力ではございますけれども喜んでおる一人でございます。さような観点から、韓国が繁栄し、そしてあの国の人たちが非常に生活向上がなされていくという姿は私どもも同じ喜びを感ずる者として、同じ責任を感ずる者として考えていかなければならぬと思っております。  ただ、あそこの休戦ラインの問題は、御承知のように国連軍が厳として存在しておるわけです。先般も板門店で事件ございました。その事件に対するアクションが非常に早くて非常に適切であったということを私は考えておるのでございますが、それに対しまして北側から、金日成氏から遺憾の意を表したということもございますし、それから、最近若干こう情勢が変わってきてるんではないかと思われますことは、御承知のように、昨年の国連総会におきましては、北鮮側も決議を出し韓国側も決議を出して、両方通過するというようなことがあったわけでございます。ああいうことをやっても全く何の意味もないというので、ああいう不毛な決議は私は何とかやめたいものだと思っておりましたるところ、北側においてはまた八月に出してきたわけです。それではというので、また決議案のぶつけ合いになるかと思っておりましたら、北側の方はこれを取り下げまして、したがって韓国側もこれ取り下げたということで、何かこう少し従来と変わった動きが感ぜられておるわけでございまして、例のスリランカ・コロンボにおきまする非同盟の会議においての北朝鮮側のとった態度というのはいろんな批判を浴びているというような話もございますし、まあ玉置さんのおっしゃるように、この問題非常に重要であるということは私よく承知しておりますが、そのやり方については、まあいろいろいま中江局長も申しておりましたような専門家の意見も聞きながら、ひとつ十分に、また玉置さんの御意見も承りながら、十分に大過なくやってまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  45. 玉置和郎

    玉置和郎君 わが国の革新自治体の中で朝総連——朝総連というのは御承知のとおり北鮮の支配下にあると、こう思っておりますが、朝総連に対して課税を差し控えておる等、特別扱いをしているところがあります。政府はその実態を承知でしょうか。
  46. 栗田幸雄

    説明員(栗田幸雄君) お答えいたします。  朝鮮総連につきましては、東京都で課税を免除しているという事実があるということを聞いているわけでございまして、この点につきましては、その根拠なりあるいは状況を外務省の方から文書で回答するように現在求めているところでございます。
  47. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、これは非常に重大な問題なんですよ。さっき言ったように、自分たちの税金を払って、そして軍事分界地点で一生懸命に共産主義の脅威というものを排除しておるんだというときに、その韓国の存在を認めないと言っておるこの北朝鮮の支配下にある日本の朝総連、朝総連はこれはきょうは時間がありませんから言いませんが、この前私は外務委員会で木村さんのとき読み上げました。あの朝総連の議長の新年のあいさつ見たら、日本の体制をひっくり返すということをちゃんと演説していますよ。輝ける金日成様、われわれの親様は金日成様で大変なものだ、そういう朝総連に対して国民の義務である、また市民、都民の義務である納税の義務を免除さすということは一体いかなるものかということでありまして、ここでもう一回聞いておきますが、東京都における固定資産税、不動産取得税の地方税を免除されておると聞くが、そのことについてはもう一回確認します。自治省来てますか。
  48. 栗田幸雄

    説明員(栗田幸雄君) 東京都におきましては、朝鮮総連につきまして固定資産税、不動産取得税を課税をいたしまして、その申請に基づいて免除しているということを聞いております。
  49. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは閣議で自治大臣と相談してください。おかしなことです。朝鮮総連だけが革新自治体の首長のあるところで免税になるなんというばかなことはないですよ。これは改めるべきです。  そこで、私はもう一つ言っておきますが、現在わが国に在留しておる韓国人、これは戦前からの人がたくさんおります。その生活の基盤もここに定着しておる。韓国日本は国交がある。その子孫もまだずっと日本に定着しようとしておるときに、やっぱりこの辺で公営住宅への入居だとかあるいは児童手当の問題だとか、それから国民年金に加入さすということだとか、こういうことを考えてあげたらどうかということ。これは韓国に行ってみればよくわかるんで、日本に居住しておる韓国人の親戚がやっぱり韓国でたくさんの納税義務を果たしておるんですよ。そういうことを考えれば、しかも日本にずっと定着していくという、かつて日本の国籍を持った人たちです。こういう配慮はやっぱりしかるべきだと。  それから、大蔵省来てますか。韓国信用組合の問題について、ぼくは金融問題調査会の副会長をしておるからよくわかるが、朝鮮銀行、これは信用組合ですね。これは銀行と名乗っているけれども、朝鮮信用組合でしょう、朝総連系の。この朝総連系の信用組合のあすこから、多額の預金をしたものの中から、金集めた中から貸して、その金を貸したところから朝総連に献金をさしておる事実がある。ひもつき融資です。それについての実態をあんた知ってますか。一人ずつ答えてもらいたい。
  50. 吉田公二

    説明員吉田公二君) 公営住宅の入居につきましては、私ども従来から国と地方公共団体が共同いたしまして低所得者に対します低廉の住宅を供給しているわけでございますので、これは当然には外国人の入居にこたえるというたてまえにはないわけでございますが、昨今の事情にかんがみまして、事業主体におきまして地域の実情に即応して総合的に考えた上で入居を認めるという方針をとる場合には差し支えないんだという方向を出しまして、昨年公共団体側に例規の形で流しておるわけでございます。したがいまして、各事業主体におきましても、そうした趣旨におきまして、昨年以降方針といたしましては、外国人の入居も必要の場合には差し支えないという方針で運営しております。
  51. 高峯一世

    説明員(高峯一世君) 在日韓国人の国民年金の適用につきましては、国民年金法が日本国籍を有し日本国内に住所を有する者ということになっておりますので、現在は適用しておりません。それから、昭和四十年に法的地位協定を結びました際に韓国合意いたしまして、国民年金については適用しないということになっておるわけでございますが、いまの御質問にございましたような趣旨もございまして、国民年金につきましては、わが国の年金制度をこれから大幅に直していこうということを現在検討中でございます。その検討の過程におきまして御質問の趣旨につきましても配慮してまいりたい。児童手当につきましても同様の趣旨でまいりたいと存じます。
  52. 吉田正輝

    説明員吉田正輝君) 朝鮮銀行というのはございませんのですが、原則として北鮮の方でおつくりになっておる信用組合は、たとえば和歌山にございますので和歌山朝銀とか、そういう言い方でやっております。  先生の御指摘の信用組合というのはそういうことだと思いますが、実は県に監督をさせておりますので、詳細存じておりません。大変恐縮でございますが。
  53. 玉置和郎

    玉置和郎君 吉田君、それやっぱり一回検討しておいてくれ。事実あるんだ。  それから通産省来てますね。北鮮の輸出代金の支払いが遅延しておるが、この問題について、もう時間がないから一括して聞きますけれども、現在輸出して払ってくれない金が八百億くらいあるね。八百億ぐらいあって、払ってくれないんで、その輸出した中小企業者が金利負担で非常に経営困難になってきておる。この問題についてこれからいろいろと交渉なさると思いまするが、一口だけでいいから、この北朝鮮のやっておるこういうことについて、あんた方は、まあ国交がなくても、民間の経済交流だと言っても国際通念から見て理不尽なことかどうかということ。その理不尽かどうかということだけ答えてください。
  54. 新井市彦

    説明員(新井市彦君) 現在北鮮に対しまして日本が輸出いたしましたプラント代金、これが支払い遅延になっておるということがございまして、これははなはだ遺憾なことだというふうに考えております。しかし、先生もおっしゃいましたように、両国間には国交がございませんので、政府がみずから交渉に乗り出すということはできないわけでございます。現在日本側は民間ベースでこの問題の解決に当たろうというふうにしておりますので、北朝鮮日本側の主張に十分耳を傾けて誠意を持って交渉に臨むように強く希望している次第でございます。
  55. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、これはもうここで詳しく言いません、あなたもお聞きになっておりますですから。これは前の貿易局長の岸田君のときからわれわれやかましく言っておった。  それで、私の調査によったら支払い能力ないですよ、ここ当分の間。権力闘争で混乱状態が続いておる。それから無理した重工業というものをやっていかにゃいかぬという経済投資の誤り、軍事分界線に沿ったところの軍備の強化、輸出の停とん、いろんな問題がある。それだけに、きょうの朝日新聞、きのうの朝日新聞読んでみてもあのとおりですよ。私たちは早くから情報をつかんでおる。こういう北朝鮮の実態、日本の国民の中小企業者が多く泣いておる実態、その北朝鮮韓国と同列に並べて考えるということはやめなきゃいかぬということ。これはやっぱりはっきりしておかなきゃいかぬと思いますので、いままでのようなきれいごとだけでいくのかいかないのか、この辺だけ聞かしてください。
  56. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうも北朝鮮に対・する債務が焦げついておる、この実態は私も実は非常に前から言っておるんでございますが、今日になりましてにっちもさっちもいかぬ状態になってきている、非常に遺憾であります。しかし、これはあくまで民間ベースでやっておる仕事でございまするので、その間で交渉をなされておるということであります。しかし、いま玉置さん御指摘のように、何かあちら側の方の実情といいますか、それが非常に国民に知らされていないということは確かでございまして、最近それがだんだん明るみに出てきたということであると思います。やはり相手側の実情もよく知りながらそれに対処するということは、外交として非常に気をつけるべき点であると考えておるということを申し上げさせていただきます。
  57. 玉置和郎

    玉置和郎君 次に、日中平和友好条約の問題に触れて聞きます。  私は、あなたとずいぶん日中国交、あなたが回復と言い私は開始と言う。あのときは当時ずいぶんやり合ったから、もうそのときの議論の蒸し返しはしない。あのときにも私は言いましたが、あれは日中国交回復じゃありません。中華人民共和国というものは継承国家論をとっていない。中華民国という以前の主権国家であったものから継承をしていないということで、新生中国ということで中華人民共和国が発足した。それだけに国交回復でないということを言い続けてきました。あれは国交開始であるということを言い続けてきました。  それから、一つの中国ということには、中国という国家があるのかないのかという議論をしました。中国という国家があるなら教えてもらいたい。中国というのは、これは昔私が北京に学んだときに、一番最初に北京の駅に着いたときに先輩から言われたのは、おまえここでシナと言うなよ、シナ人と言ったりシナと言うな。これは中国人、中国と言えと言われたんでありまして、中国という地名の中に三つの現実政権があるということ、ここからやっぱり確認していかにゃいかぬのですね。きょうあなたと、もうあと七分か八分しかないから議論はできません。そういう議論をしたということだけあなたは記憶にあるかないかだけ聞いておきます。どうですか。私を含めてですよ。
  58. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は、私自民党の日中国交正常化委員会委員長を仰せつかりまして、いろいろ党内の各種の意見がございました。非常に傾聴すべき御意見が幾多交わされたわけでございますが、最終的にはコンセンサスを得まして、これは中国との国交を正常化すべきである。しかしながら、私は当時台湾という言葉を使ったんですが、それはいかぬから中華民国というふうに直せと言われまして、そうしまして、それとの関係について大いに留意すべきである、こういうので党議をまとめました。総務会にもかけまして党議をまとめました。それを携えて私中国に参りました。その後、田中前総理が行かれまして正常化の共同宣言に調印されたという経緯でございまして、あの当時の記憶は十分に持っております。
  59. 玉置和郎

    玉置和郎君 あのときが椎名さんの持っていった田中書簡の内容は知ってますか。
  60. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは総理の内閣総理大臣としての親書でございますので、私はその内容を当時は知っておりません。これが椎名特使によってもたらされて厳副総統に渡されたということは聞いております。中身は知りません。
  61. 玉置和郎

    玉置和郎君 あれは椎名さんの方からも聞いてもらったらわかると思いますが……
  62. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いまはわかっております。いまは知ってます。
  63. 玉置和郎

    玉置和郎君 いま知っとったらもう言うことはないわ。あれは外交を含めて関係は切らないということだったんだ。結局、椎名さんが蒋経国さんに会ったときに蒋経国さんから言われたんだ。あなたはそんなことを言ったって日本は切らざるを得ないですよと、北京に行ったらそういうふうにしてやらなかったら向こうは承知しないですよと言われて、椎名さんもびっくりした。そのとおりになっちゃったんだ。だから、私たちはそういうできもせぬことを何で言うのかということなんだ。椎名さんのあの台北での演説の内容の中にもそのことは触れておられる。だから、中華民国という、これやっぱり依然として日本が国交を切ろうが切るまいが、この地球上に存在する主権国家であることは間違いがない。そして、あなたとあのときには議論はしなかったが、領土というのは一体何なのか、領土という定義は一体何なのか、ここを一回聞きたい。領土というのは一体何ですか。中国の問題に触れなくて領土という……。
  64. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その前に、田中親書でございますが、ちょっといまおっしゃったのと内容は違うように私は見ておりますが、そのことだけ申し上げておきます。  とにかく、中国は一つであるということを中華人民共和国の方も言い、中華民国の方も言っておりまして、これは非常に重要な問題だからということで国連憲章十八条による重要問題指定事項ということになって、三分の二の多数の表決が要るということにいたしまして、これは一九六二年の国連総会からそういうことにいたしました。十年間続いたわけでございますが、とうとうそれは通らないということになって、両方とも国家は一つであると言っておりますので、表決の結果、代表権は中華人民共和国にあるということになったわけでございます。したがいまして、中国というものは中華人民共和国によって代表されるものであるということになった、こういうことだと思います。
  65. 玉置和郎

    玉置和郎君 中江君、こういうことなんだ。あのときは、従来の関係を継続するという言葉があるんですよ、田中親書の中に。従来の関係は継続するというのがね。従来の関係は継続するということだから、従来の関係というのは一体何かと蒋経国さんに椎名さん聞かれたわけだ。そのときに従来の関係は継続するという中に外交関係も含むということだった。椎名さんはそう答えた。そうしたら蒋経国さんは、そんなことは、あんたたち会うたらだめだと言われた。私はおったんだから、椎名さんちゃんとしゃべっているよ。それだけに、中華人民共和国というものに対するわれわれの考え、中華人民共和国と日本が国交正常化するのにあのとき反対してなかったんですよ。外務大臣の言うとおりだ。しかし、そういうふうな、うそを言うというふうなことをやってきて、それだけにこれからの日本外交というものは、平気で道義を破ったりうそを言ったりするから、田中さんがタイ国行ったり、インドネシアへ行ってえらい目に遭うんですよ。これからも考えなければならぬ、そのことはやっぱり十分考えていかなきゃならぬ。これを今日あなたに言いたい。  それからもう一つ最後に、この覇権の問題であなたと宮澤さんとの見解がやっぱり大分違う。私は、前に宮澤さんにも言ったし、防衛長官にも外務委員会、予算委員会の分科会で申し上げたんですが、これがソ連中国の軍事力、それからソ連中国日本に対する軍事的脅威というもののどちらにウエートを置くのか。それから、この中ソの間で結ばれておる友好同盟、友好何とかいったか、一九五〇年の友好同盟相互援助条約です、八〇年まで効力のある。この第二条と第三条をやっぱり外務大臣一回よく読み直して、そのもたらす影響というものは一体どう出てくるのか、ソ連影響がどう出てくるのかということ。  私はこの前も言ったのは、タイムリミットを決めて、そうしてそこに何とかかんとかひっつけようという日本外交のいままでやってきた方途というのは間違っておる。やっぱり待つべきところは待つ、こういう考えでなきゃだめだということを言ってきた。余り急いで日中平和友好条約わんわんやってみるよりも、ソ連の脅威というものは一体どう考えるのか。一番最初に北方領土の問題それから二番目には漁業交渉の問題あるいはソ連が軍事的に威嚇をしてくるであろうということ。たとえばことしの七月、沖繩周辺海域においてソ連が新しい巡洋艦を持って演習をやったとか、六月から七月にかけて日本の海域あたりでいろんなことをやりました。示威行為をやりました。こういうことについてはやっぱり十分配慮せにゃいかぬ。あなたは日中正常化の委員長であったということだけで、自分の外務大臣のときにしゃにむににという考えがもしありとするならば、もう一回五十年の三月に私たちが言い続けてきたこと、それから過去に言い続けてきたこと、アジア全体、世界全体を見てこの日中平和友好条約というものを考え直してみるという一方の意見というものも十分組み入れてやってもらいたい。あなたのかつてやったことは私たちは高く評価していません。いろいろな後遺症を残してきておる、こういうふうに評価をしておる自民党内の意見が多数にあるということ、これも十分考慮されたい。あなたは恐らくそう長いこと大臣やらぬだろうと思うが、やめた後いろいろなことを考えておられる、政治的に。そのことを考えたときも、やっぱり党内のコンセンサスというのはとりもなおさず国民のコンセンサスであるという、あなたのよって立つ基盤のコンセンサスでもあるということなんで、特に私から申し上げておきます。
  66. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、非常に道義ということを中心に物を考えておりますので、おつき合いをいただいている方はさように認識していただいておると思います。  日中共同声明発するまでの間のいろいろな御意見については十分承知しておりまするが、一つの国に対して二つの地点と外交を持つということはこれはできないことなんですね。中華民国との関係について考慮すべきであるというのは、外交関係を含むかどうかという議論はあのときにありました。しかし、そのことは、いま言うことからいって明らかなことであるのでありますから、私はあのとき、賀屋さんかの質問に対して答えたのを覚えておりますが、その関係というのはどういうことだ、よい関係だということを申し上げたと思います。外交関係、そういうことを申し上げた覚えはない。よい関係と。今日、台湾との関係におきましてはよい関係が持たれておると考えております。そのことだけ申し上げておきます。  同時に、アジアと世界全体のことを考えて、これは日本は世界の中の日本でございますから、日本アジアの中において世界の中において最も尊敬され信頼をされる、そういう国になって平和を日本の周りに招来できるようなそういう外交をやっていかなきゃならぬ、そういうふうに考えておることを申し上げます。
  67. 玉置和郎

    玉置和郎君 これが最後です。  大臣、きょうは本当は初めに外交戦略という問題をやってみたいと思ったんです。時間の都合でこういうことになりましたが、外交戦略というものは、安全保障戦略がなかったら外交戦略は立てられない、これはもう当然のことです。安全保障戦略というものについてはどうしても周辺国家の軍事情勢というものについてかなり明るくなけりゃいかぬということ。  そこで、一言だけ聞きますが、いま中ソ国境に展開されておる中ソの軍事力というもの、これについてあなたは詳細知っておるのか知っていないのか。そういう知識があるのかないのか。それだけ聞いておきます。
  68. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 人並みの知識は持っておるつもりでございます。
  69. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは最後だからね、大臣どういうことになっておるの。ソ連はどのくらいなの。
  70. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 他の国の兵備の状況についてこの委員会でいろいろ申し上げることは私は不適当だと思います。御容赦いただきたいと思います。
  71. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは、この際他の国の軍備力と言うけれども、やっぱり国民にはっきり知らせる必要があるんです。それは言い逃れです。ソ連という大変な軍事国家の軍事力というものに対して、やっぱり国会の場所を通じて国務大臣がこれは知らしておくという必要が当然あります。これだけ開かれた日本において、オープンソサエティーをとっておる日本においては、こういう国権の最高機関の場所でもって国民に知らせるというのはむしろ私は妥当だと思う。あなたの見解と異なりますが、恐らく私は、これは中江君、もう時間でこれで終わるから、やっぱり大臣によく聞かして、恐らく余り知りませんよ、これは。中国の問題も軍事力は知らない。実際知らないよ。知らないところに問題がある。だから、このソ連の極東軍というものはどういうふうな戦略を持っているのか、それをよく教えて、そうして判断を過たないようにせなけりゃいかぬ。それを言っておきます。終わり。
  72. 戸叶武

    戸叶武君 いまの御意見を拝聴しておって、私は別に批判しょうとは思わないんだが、いまのような御議論なら自民党内部で十分やってきてもらいたいと思います。国民の聞かんとするところを国民の代表者であるところのわれわれはやるんであって、人民主権の国において、国民が主権者です、国民に伝えるような外交論議を責任を持って党の代表的な人は党内てまとめてから——雑然とした雑音はここに持ち込まないようにしてもらいたいと、こう思います。  そこで、私は小坂さんには一つの期待を持っております。いっでも、三木さんにも田中さんにも期待してむなしきものを感ぜざるを得ない場合もあると思いますが、しかし、やはりいま、日本外交防衛の問題はきわめて重大な局面にきております。私は別に三木さんから何らの魅力は与えられないが、しかし、彼には一貫した理想主義的なものが貫かれてあります。概論だけで各論がないという批判もありますけれども、外交防衛の問題はその国におけるところの政府の経綸の中において重要な問題であって、一貫性を必要とすると思います。そういう意味において、きょうの小坂さんと前の宮澤さんとの間には若干のニュアンスの違いがあります。細かいところを私は言挙げしてけちをつけようとするのではありませんけれども、やはり三木さんなり小坂さんたちは、日中、日ソ関係をいまのようなぎくしゃくした関係に置いては進むべきものも進まない。もっと柔軟にお互いに話し合い、場合によっては譲り合って問題をまとめ上げなければならないという配慮の上に立って私はその責任を果たそうとしているんだと思います。  私は、やはり一国の運命を決するのは、その国の政治家が長い人類の歴史の上に立っての現代的な役割り、その文明史観を持ち、政治は一個の総合の哲学としてそれを調整し、実践しなければならないものであると思うのであります。それを持たないで、現象面にだけこだわって、おれはこれを知っている、これはおれがかたく信じているという、相手あっての外交においてかたくなな態度を堅持している限りにおいては、まとまるものもまとまらないと思います。私は、政治の中においてはやはりユニティーが必要である。初めから妥協というのでなくて、問題を出し合って話し合って煮詰めて、どの線で問題をまとめたらよいかという歩み寄りというものが政治であって、イデオロギーや、こういう考え方以外にないというような押しつけは一種のファシズムであります。  私は、いまの自民党の三木さんにすら言いたい。これは外交と重要な関係のある政治のあり方の問題でありますが、吉田さんですらも、言葉だけではなく、イギリスで大使も務めたので、やはり議会民主主義は運営の面において重点を置かなければならない。政権は反対党に譲らなければならない。その政策論争を通じての国民の審判によって政権を反対党に譲る場合においては、日本の社会党も育て上げなければならないと言ったのは、育て上げるという表現は吉田さんの傲慢無礼のいたすところであるが、今日における三木さんは何と言っているか。社会党は——社会党とは言わないが、自民党以外の他の政党は政権担当能力がない、国民もそれを認めているというふうな放言を平気で言っておりますが、われわれ社会党も反省しなければならない点が多々あります。しかし、今日のような保革伯仲の中につばぜり合いの闘いが行われようとするときに、保革逆転も、自民党みずからの腐敗政治によって音を立てて混乱と崩壊を急ぐときに、なきにしもあらずというときに、そういう放言の上に立っていろいろな手品を使って政権たらい回しをやっても、そういう政治のやり方というものが正しい民主政治のやり方と思ったら思い上がりもはなはだしいのであります。  吉田内閣の末期に、あなたは吉田さんの側近でよく知っているでしょうが、私は吉田さんに、イギリスの内閣制度を確立したウォルポールが二十年政権を維持したが、その間に、権力を握っていれば金が集まる、金を集めれば金でほっぺたをたたけば多くのものが自由になる。名誉も地位も金も与えて、人間の弱点を抑えて、それを利用して政権を持続しようとして腐敗が極端になってきた。そのときに、ナポレオンと対峙したピットのお父さんの大ピットが、あのキャビネットの責任内閣制をつくったウォルポールに一撃を加えてウォルポール政権を倒したんです。これよりイギリスの責任内閣制というもののえりが正されていった。その後におけるグラッドストンにしてもディズレーリにしても、一個の見識を持って、政権を壟断するのは間違いである、政権交代のルールをつくり上げなければならない。それと同時に、やはり外交、財政の問題が一番重要な問題であるが、特に外交防衛の問題においては与野党とも、あるところまでにおいて、完全一致といかないにしても、歩み寄りをして合意を求めていかなければならないという努力が払われたところに、イギリスの議会政治の運営の面における発達があったんです。一党独裁的な思い上がった考え方で、三木もまたかというと、私はこれがひとつの、三十九年の年輪をどこで過ごしたのか。民主政治というものは謙虚な態度が必要なのであります。イギリスの帝国主義は間違いであったが、しかし、長い間世界を統治した秘訣というのは、弱き者、支配されている者の言葉を聞く、このことに対しては謙虚だったです、必ずしもそれを実行はしないけれども。そこに寛容の精神が生まれ、反対党の意見を尊重するというイギリスの民主主義の骨格ができたんです。いまの紛雑した政治を見ると、権謀術策の小またすくいのやり方で、毎日毎日国会にいるのが、ちまたに出るのが恥ずかしいような状態が醸し出されているのです。内閣が倒れるだけならいいけれども、政治全体が不信のるつぼの中に国民によってたたきつけられるんじゃないかという危惧を私は受けている。  そこで、改めて言いますが、とにかく三木さんやあなたのラインというものは、宮澤さんは相当私は努力したと思うのですが、ああいう関係で、善意で放言したにしても大分荒っぽい不用意な表現や何かがあって、要らざるごたごたを中国との間にもつくった。ソ連との間にもつくった。このところ、吉田内閣以来の理想主義者であり苦労人であって、円転滑脱の光をいつも頭にいただいているあなたによって新しい光を見出そうという私は企てがなされているのだと思いますが、そういう違いを、特に大切なときでありますから、正直に、淡々として、私は玉置さんのように怒りませんから、そこいらを滑らかにひとつ表現していただきたいと思います。
  73. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 尊敬する戸叶さんから大変ありがたいお言葉をいただきまして、ぜひ円満にこの大役を遂行してまいりたいと考えておるのでございますが、それには、やはり外交というものは対立よりも共存、あるいは話し合いによる理解、そういう形で、平和をいかにしたら招来できるかということを考えていかなければならぬのではないかというように思っております。もちろん理論は必要でございます。しかし、理論ばかり言っておりましても一致点はなかなか得られませんので、ある程度の妥協は当然いたし方ないことだと思います。問題は、そのことによって戦争になったり国民が不幸になったり、あるいはどこかの国の下敷きになる、愛する日本をそういうような目に遭わせることだけは絶対にやってはいけないことなんで、そうなるようなことについてはコンセンサスは持っちゃいけないと思うんです。いま申し上げたように平和で国民を繁栄させていく、そういう点についてはいろいろな観点がございましょうから、その中の話し合いによってよいものをとってまいる、そういう方向で進みたいと考えておるわけでございます。いろいろと御叱正をいただきたく思います。
  74. 戸叶武

    戸叶武君 宮澤さんとあなたの、新聞では具体的にいろいろ書かれていますが、宮澤さんの四つの条件と、あなたのそれを滑らかにした行き方はどういうところが具体的には違うんですか。
  75. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 基本的には違わないと私は思うんでございますが、いわゆる丸い大根も切りようで四角でございますか、角ができたらそれをまた落としていかねばならないというふうに思うのでございまして、基本的には、外務大臣宮澤氏が大変御苦労になったということに対して深く敬意を表しております。しかし、私も外務大臣として大役を受けましたる以上、その目的遂行のためには、そのことを一歩も動かしてはいけないというものであってはならないと思うんです。お話しのように、相手のあることでございますから、相手の気持ちもくみながら進めていかなければならない、かように思います。
  76. 戸叶武

    戸叶武君 いま国内、国際的ないろんなトラブルを見ますと、自民党の例を見ても社会党の中の例を見ても、これは相互不信というものが不必要な摩擦を醸し出しているのが事実であります。この相互不信というものをなくさせるということが政治の中において第一の条件でありますが、それにはいまの政党以前の派閥というのがこれは一番原始的なげすばった一つの存在です。これが幅をきかせている日本政治においては、不必要なほどそこに感情が入って、利害打算が入って、そこに権楳術策の小人の躍動する余地を与えるのであります。これは近代政党以前の原始的な形態がいま存在しているというのは、アメリカからくる政治学者、主に国際関係学者も、日本の派閥というものをつかまえられないから実証的にそれを説明してくれと言うんで、私はエ−ル大学の若い教授にも、日本のだけでなく派閥の問題を話しました。本人自身は知らないでいるけれども、いつの間にかやはり派閥のやっこになっている者が多いんです。やはり政治は天下、公の問題を論ずべきであって、そういう点において、個性豊かであるというけれども、原始的な派閥の存在の最も悪いのは、政権たらい回しによって、そのときどきの利害打算において得をしたり損をしたりする、やくざ集団的なものが一つの政権を回し回っていたところに自民党の罪悪というものがきわめて大きいと思うんです。これは率直に言わないと物はわからないから、玉置君ぐらいに率直に物を言う習慣をわれわれもつけようと思うんですが、個性豊かどころじゃないんです。派閥は古来からやくざ集団です。仁義というんで、やくざ転じて仁義というけれども本当は信義です。国際的な信義というのが、中国に行ってもどこへ行っても聞いてごらんなさい、モラルの中心外交においては信義です。お互いに相手の善意をくみ取り、そうしてお互いに信じ合うということがなければ話し合いもくそもないんです。  三木さんは話し合いというけれども本当の話し合いをやっていない。自分でしゃべってあとは居眠りしているだけです。それじゃ全くおもしろくない。それになかなか話術はうまいけれども魅力がない。それを官僚の聡明さで助けていったり、政党の苦労人が何とかかんとかやっているんでしょうが、政治というものは芸術です。欠点があっても魅力のあるやつが人心を把握するんです。時に間違うのは、スタンドプレーのはったりが魅力に見えてきて、ナポレオンやヒトラーや田中さんなんかが続々と出てきたりして世の中の歴史を混乱させるおそれがあるんです。  いまの、私は一番当面の問題としてこわいのはやっぱりタイのことです。大変なことはないと言うかしれないけれども大変心配です。韓国のまねじゃないですか、前の軍事クーデター軍事政権でなければタイの安全が保てないという。韓国日本の尻押しで、アメリカのまたバックで、何とかかんとかあれだけ悪評さくさくとしても、あんなファッショ的な軍事政権が自由主義国の中に存在するというのを認めると、ひとつおれもあの手でいこうかという考えが起きるのは当然じゃないですか。あれ以外にはいまの韓国の不安を抑えられないのだというのがファシスト諸君の物の考え方のようです。軍事政権はファシズムです、民主主義ではありません。そういう形がいつまで続きますか。帝政ロシアにおいてあれだけ軍部が誇ってもまたたく間に崩壊したじゃないですか。殷鑑遠からずです。あのイランの王室に対して前の幹事長の何と言いましたか、中曽根君といまの法務大臣の稻葉さんと二人は大変あれを礼賛した。私は、衆議院の内閣委員会なら許されるかしれないけれども参議院の外務委員会では断じて許さない。日本の皇室とイランの皇室と一緒にして物を考えるような要らぬ浅知恵は要らぬというのが私の見解でした。そのとおりじゃないですか。イランの不安定を見てごらんなさい。ラオスも倒れたじゃないですか。あの議論があってから世界各国の王室は四つ、五つ倒れています。タイの王室あるいはエチオピアの王室と日本の王室と混同して見るような政治観念に立って近代民主政治をともに論ずるというのは何という悲しいことか。私はちょんまげをつけなければとてもこの議席には出られなくなるのじゃないかということを憂えるのであります。  私は、明治維新のえらさというものは、あれほど攘夷論の中に身を投じたやつでも、世界の情勢に触れて、長髪賊の乱、アヘン戦争、上海のあの動乱の中に立って長州の青年は百八十度的な旋回をやったじゃないですか。コンクリートな頭、石垣にぶつけても頭がへこまないでしょうが、もっと柔軟な外交というものが出てこないと、そういう点においては、私は円転滑脱な外交を小坂さんに期待するのですが、あなたはどういう形で日中平和条約を具体的に進めようとされるのか、まだプログラムが設定されてないというのなら、大まかな一つの方向づけを承りたい。
  77. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 戸叶さんのお言葉の中にございました不信感の問題、これはもう非常に重要な問題だと存じます。しかし、その不信感を払拭するためにはやはり当時者があくまで相手をペテンにかけるというようなことを絶対にしないという信頼感を相手に持たせ、また、当方も相手に対して持つということによって、そこに問題打開の雰囲気が出てくる、かように思っておりますわけでございます。  ただいまの日中間の問題につきましては、やはり過去の歴史も考えてみなければいかぬと思うんでございます。私ども大変不幸なことでございましたが、あの戦争をやって中国大陸に攻め入っております。しかし、そういう過去のことは過去のこととして、そういうものを問題としない。すなわち、賠償等については触れないということであの共同宣言において日中の国交は正常化されましたわけでございますから、私ども過去において日本がとった覇権主義といいますか、これについてはもう十分な反省をしているということをみずから考えにゃいかぬというふうに思うのでございます。みずから覇権を求めないのは当然でございます。しかし、日本とつき合ったらひどい目に遭というような、力を持って日本がほかの国を不安ならしめるということがないという、そういう姿勢を日本はとらなきゃいかぬのじゃないか。そういうことから、覇権の問題について共同声明に触れておりまするが、あの共同声明は御承知のように問題は第三国に対するものじゃないんです。日中両国はみずから覇権を求めないし、第三国の覇権には反対であるんだと、こういうことを言っておりますわけで、私どもは自分がそういう経験をしただけに、この点について何かいろいろ理屈を言うような感じを与えてはいけないんじゃないか、さように思っておりますわけでございます。  いろいろなプログラム等は、またいろいろな御叱正をいただきながら考えまするが、基本的にはそういうことであるというふうに思っております。
  78. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣がいまお答えになったように、覇権主義というのはまずみずからが清算し、それと苦い経験をわれわれも持ち、またよその国にも迷惑を与えたのだから、その上に立ってやはり覇権主義というものを清算の方向にいかなければならぬ。このことは私はやはり基本的な態度だと思います。  一九六〇年の安保闘争の前年、あなたも御承知のように、私の友人浅沼稻次郎書記長が前年春北京に行きまして、アメリカ帝国主義は日中共同の敵だと言ったときに、ソ連との関係が悪化した中国では、中国の機関であるところのあの新華社によっていち早くこの演説概要を世界に打電した。世界がびっくりしたのは、中国共産党と日本の社会党は——日本の社会党は社会民主主義の党で共産党じゃないんじゃないか、それがアメリカ帝国主義は共同の敵だといって共同戦線を張るというのは世にも不町議な社会党だ、西洋に類がないと言ってびっくりしたようであります。私はそれを受けて、安保闘争のときに、安保条約改定阻止国民会議訪中代表団の団長として北京にちょうどいまごろ行っておりました、十六年前です。しかし、よく全体のあの記録を読んでみると、浅沼にはそう間違った点はないんです。日本でみんなが、マスコミでもって、浅沼が帰ってきたときには、飛行機を降りたときに中国帽なんかかぶってきたというようなことでいろいろ騒がれて、ずいぶん浅沼君も窮地に立ちました。しかし、冷静にいま皆さんが受けとってくれれば、アメリカが敵だというんじゃないんです。アメリカ帝国主義は日中共同の敵だというこの声明は、いま見ても正しいんじゃありませんか。その十六年の経過の発展の上に立って、今日、米ソ覇権主義には反対だと言っても何ら差し支えないと思います。覇権主義は民族全体を代表するものでない、国民全体の意思を代表するものじゃない、そういう気持を持っているのは全世界の人だと思うんです。ソ連とアメリカは巨大な軍事力を持っています。また資源も持っております。しかしながら、世界の人々の心をかち取ることはできないと思うんです。  戦後において、勝っている国が敗れた国の領土なりその他を分割して、それを戦時中の軍事秘密協定、ヤルタ協定のごときをいつまでも押しつけておくというようなばかげたことはベルサイユ会議以後においても世界に余り類例がない。あってもそれが悲劇の種を持ったのであって、総明なその国による一国の指導者があったならば、たとえばウッドロー・ウィルソン級の人でもあったならば、あのようなアメリカ、イギリス、ソ連——ルーズベルト、チャーチル、スターリン、巨頭における戦時中の他国の主権を無視して領土をも変更するような軍事謀略協定というものは、当然ベルサイユ体制が無理をしても崩壊したように、崩壊とかなんとかじゃなくて、みずからやっぱり清算していくような空気をつくり上げることが、外からだけじゃない、アメリカの中からも私は出てくると思うのです。  日本が、いまわれわれが、あなたが国連で主張したように、われわれの平和憲法、非核三原則、全体積み上げの上に核拡散防止条約にわれわれが批准した、踏み切ったのは、自民党の核に対するフリーハンド論者も社会党における反対論者も、論議を尽くしている中にわかってきたと思うのです。アメリカやソ連のように核を持っても人命を破滅するような核戦争に突入できないということは明らかになっているじゃありませんか。いまアメリカだってソ連だって、こんなことをやっていれば自分も自滅するということを、意地でやっているけれども、世界の世論が国連において高まり、日本決意が明らかになり、この間の小坂さんのタイムリーなあれは発言です。やはり日本平和外交に徹していくという態度で核の廃止を説き、その上に立ってあなたが一つの新しい平和への道を行こうとする、このことは日本にもアメリカにも、特に核を持たない国々にも、ソ連とアメリカの支配だけに動いちゃかなわぬと思ってヤルタ協定から除外された核を持ったフランスでも中国でも共鳴しているところだと思います。世界の人々は、三木さんは世論を背景にと言うが、百幾つかに余る国連傘下の国々の人々が言わんとして言うことができず、言ってもそれが通らないようなときに、核を持てば持つことのできる日本が核を持たぬで、真っ裸になって、お釈迦さんが悟りを開いたように、キリストが十字架に上がって行ったように、世界の平和と繁栄のために、ばかげた戦争と暴力革命を繰り返すような、極地戦争に武器を輸出するようないまのやり方に反対だとあなた堂々と述べて、日本も顧みてずいぶん恥ずかしい面があるんだと思いますが、恥ずかしいことなんか遠慮していちゃ天下のことは論ぜられない。自分のことは自分で後で直せばいいので、やはり堂々と、アメリカであろうがソ連であろうが、物を言わなけりゃわからないやつには言ってやるんだ、そういう気概がなけりゃ日本の自主外交——あなたもずいぶん忍従強く、アメリカベースで吉田さんの股肱の臣として尽くしてきたかしれぬが、そのざんげのためにも、やはりこれから自主外交を、三木さんがしゃっちょこばっているのだから、あの三木さんのしゃっちょこばったところへあなたのふくらみを持ってやると、相当これは効かない薬でも効くようになるのではないかと思うので、そこで小坂さん、どうです、あの国連演説の反応は。それから中国ソ連に対する反応は。
  79. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国連の、自分でやった演説についていろいろ言いますことは何か宣伝がましくて気がひけるんでございますけれども、客観的なことだけ申し上げさしていただきますが、演説につきまして、実は昨年たとえばキッシンジャー演説なんといいますと、終わるとみんなよかったよかったと周りに集まりまして、非常に、列をつくっちゃって握手の順番を待つんで議場が混乱するということで、ことしからそれをやめようじゃないかということで議長の通達が出ておるわけでございます。しかし、私演説を終わりまして議席に戻りましたら、アジアの国を初めアフリカの国あたりから十カ国以上、自分はダオメーだとかアッパーボルタであるとかいうようなことを言うんで、何を言われたか余り覚えてませんけれども、まああっちこっちから来まして握手してくれ、非常に私は日本の地位が——私じゃなくて、日本の地位が上がったんだということを深く感銘いたしました。それだけに責任も重いように思ったわけでございます。  それから、ニューヨークタイムズで三回にわたりまして私の演説をコートされました。一つは通常兵器の軍縮に関連して、兵器の輸出を自粛すべきであるという点に触れたこと、これはベルギーその他の国が後でまたこれを、同じようなことを私の演説を引用していたしましたりいたしました。  それからもう一つは、日本の職員が余り優遇されていないので、そういう名指しでは申しませんでしたけれども、ある特定国に対して非常に多く偏重されるきらいがあるという意味のことを言ったわけです。その拠出金に対して、国連に対する貢献に対して、その国の職員が非常にアンバランスになっておるということを言いましたのに対して、それもニューヨークタイムズで取り上げたようなわけでございます。  ソ連の方は、私の演説を非常に評価いたしまして、タス通信がさようなことを言っておりましたわけでございまして、実はソ連は例のミグの問題がございますのでどうかと思っておりましたが、評価されたのであったというわけでございます。  以上簡単でございますが。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 関連でありますから一つだけ簡単にお伺いしますが、いま戸叶委員が触れられた日中平和友好条約についてですが、その中の覇権条項、この問題についてはいま外務大臣も言われましたように、日本中国に与えた不幸な歴史を繰り返すことなく、日中の親善友好の関係というものがいまの世代に限らず恒久的な善隣友好、平和の関係に立たなければならぬことは、これは当然だと思います。それからまた、いかなる国、世界、いかなる国の覇権も認めないというのも当然だと思います。日本自身はもとより、世界のいかなる国の覇権もこれを認めないということをこれを条約の中に明記しても一向差し支えないと思います。  ただ、私がここで危惧することは、その条約の中の覇権という問題がある特定の国を指すがごとき表現を用いるのはいかがかと思う。それは客観情勢、国際情勢が変わったからといって平和条約の修正ができるものではありません。そうでありますからいまた、ある特定の第三国と平和条約を結ぶような場合に、同じような問題を中国に対して、第三国と日本との平和条約の中に中国問題を持ち込むことを要求されたらこれを拒否することもできなくなる。でありますから、先ほども申し上げたとおり、平和条約国際情勢や客観情勢の変化によって簡単に修正できるものでないという事実を踏まえて、世界いかなる国の覇権も求めないということはこれは結構です。結構ですが、ある特定の国と思われるがごとき表現を用いるのはいかがかと思う。これは将来のために私は危惧しておる一つの問題でありますので、この点に関する大臣の御見解だけを承っておきます。
  81. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 同感でございます。  覇権を求めるということがなくなりますれば、今日の世界はもっと平和が近くなる、平和に対して近い世界になるという感じがするんでございます。やはり一国が他国に対してこれを支配しようというようなこと、あるいは一つの民族が他の民族を隷属下に置こうというようなことを考えることは、それ自体もう私は間違っておる、そういうことをなくすことによって世界は平和になってくる。こう思いますので、そうした高度の哲学的な思惟からいたしまして、そういうことが覇権であるとするならば、覇権は自分らも求めないし、これは求めちゃいかぬものだと心得ると、そういうことであるべきだと思うんでございます。これはあくまでそういう考えであるべきでございまして、何かひとつ日中が仲よくなった、だからそれで今度ほかの国と仲悪くなるんだと、そういうような趣旨のものであってはならないし、共同声明におきましても、この声明は第三国に対するものでないということを言っておるわけでございますから、羽生さんの御意見というものは私も傾聴いたしております。そういうように考えておるということを申し上げておきます。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 これは浅沼発言のときも選挙の前で、社会党の、私も河上門下として一緒に執行委員の席に連なっておりましたが、浅沼にあの発言を取り消さしたらどうかという意見と、浅沼にもっとあれを消すような発言をさせたらどうかというような意見が出ましたが、私は政治家というものには一貫性がなくちゃいけない。こだわるんじゃないけれども、われわれはまだ政府をとってないんだし、いま中国ソ連に突き放されて、兄弟党として一枚岩の上で手を結んでいた国から突き放されて途方に暮れているときに、恐らくは近代化を遂げなくちゃならない段階に、西ドイツか日本に頼らなけりゃならないが西ドイツは遠い、隣の日本に頼ろうという、頼るという言葉は表現しないけれども、やはり中国の窮状がわかってくれるだろうなという悲願を込めて浅沼君のような熱血児を説いたもんだから、浅沼君は素朴な大アジア主義的な考え方もあったんで、やはり日本中国というものがしっかりしていかなけりゃアジアはなかなか救えないと思って、恐らくは浅沼君は、当時アメリカ帝国主義は日中共同の敵だという表現も使うようになったんだと思いますが、あの後に使いして私が主張したのは、日本がアメリカとの軍事同盟をつくるという想定のもとに朝鮮事変の前に中国ソ連との軍事同盟を事実上つくっているじゃないか、われわれは安保条約廃棄の闘いをやっていることをほめてもらうために来たんじゃないんだと、まだならないが、安保条約廃棄というときには、それと同時に自動的に中国ソ連との軍事同盟を解消するということを明記しなけりゃわれわれは日中共同声明にはしないといって、十三団体のカンパニアンの中で私が一番がんばった。一つの団体だけは、それではわが党の意思に反するからというのでおりたけれども、私はこれが入れられなけりゃ、対等の立場で使いができないようでは与野党を問わず外交使節としての役割りはできないと思って悲願を込めました。そのときに中国の周恩来と四回私は、周恩来は二時間ずつ以上とって、若き日のことから考えて当面の窮状打開の問題も親しく、さっきあなたが言ったように、日本中国との相互不信の深さを何とか打開しなけりゃならない。それにはブリッジが必要だと、そのブリッジのような役割りを戦後において村田省蔵さんが完全にした。村田省蔵さんのどういうところがよかったのかといったら、あの人はがんこなナショナリストだ。事日本の利害の問題で日本に不利と思うことにはがんとして応じない。しかし、どんなむずかしい問題でもお互いに話し合ったときには体を張って信義を守ってくれた。ぼくは中国はマルクス・レーニン主義の国で、イデオロギー的に武装されていると思ったら、四千年の文化道統のモラルの中心が、お互いの立場理解し合って信義によって結ばれることが、人間的な信用というものがいかに大切かということを感じて、その後で、向こうではとにかく満州重工業の引き揚げるときのりっぱさ、バンドン会議における会議の代表としての高碕さんのりっぱさを高くたたえて、高碕さんをして友好商社貿易なんという形じゃなくて、国と国との対等の貿易を開くためにひとつ高碕さんにでもブリッジの役割りをしてもらえないかという考え方を周恩来と廖承志氏から説かれ、特に私はそれだけでは、あなたの国はいま北鮮との問題もあるが、社会主義国家というものは資本の蓄積が足りない。結局、財力なり何かあっても信用というものの上に立って、あなたたちの社会主義的な国家計画経済の上に立って貿易もやらなくちゃならないだろうから、結局は延べ払い方式でやらざるを得ないが、それには金融のエキスパートというものが入らないとうまくいきませんよ。あなたたちが戦争の中で上海にあって華興銀行にいても、岡崎嘉平太だけは日本人の中で最も信用のおける人間だというのは確認しているじゃないか。ああいう人と結びつけて日中の間を開かなければ日中の間は開けませんよといって、私は後まで、高碕さん来るまで待っていてくれというけれども、私は商人じゃない、私は野党の政治家で、外交に全責任を負うものじゃない、思ったことを言ってお互いの心通ずるものを、地下三千尺の心、惻隠の情をくみ取ることのできるような使節に来たんだから言うことは必要ないといって別れたんでしたが、ちょうどきょうでしたでしょう、周恩来さんとパーティーが終わって最後の送別会があって、そうしてわれわれのために通訳の労をとってくれた東大や京大や外語を出た青年たち十幾人を北海道公園に私は船遊びに誘って、酒を食らって詩を吟じてやりました。大橋訥菴の離騒の詩を吟じて今様にやりました。そのときに中国の青年が、戸叶先生、戦争が終わって北京に来て、日本人て北京に来てけつをまくったのは——けつという言葉を使いました、余り上品な言葉じゃないようですが——あなたたけでした。私は感激でした。よそのうちの座敷に来て、国賓待遇で呼ばれてけつをまくるというのはまさに雲助のやるようなことだけれども、けつでもまくらなければいられないような必情に打たれて、私は率直に日本国民と中国国民とが心と心の通ずるものができ、日本中国のベースに全部はまらなくても、議論をし、お互いに反省し、今後の毛沢東、周恩来の生きている間に日中平和友好条約を結びたいと思ったが、亡くなったときにかの人たちの心が那辺にあったかということは、私は伝統の中にあると思うんです。どうぞそういう意味において、文字なんかにこだわらず心をかち取るような、お互いにやはり腕取り合って泣くことができるような、憂いも悲しみもともにすることができるような、国境とイデオロギーが違ってもできるだけの腹を持たなければ、このグローバルな時代に、世界に右か左か、あっちかこっちか、人足じゃあるまいし、方々の戦争の火消しの役割りのようなことをやってうろちょろしていたら、日本の国というものは空中分解してしまうのです。  どうぞそういう意味において、三木さんや小坂さんは人柄がいいから殺されるようなことはないかもしれないが、三木さんに私はあの拡散防止条約の代表質問を五月十日にやったとき、若き日に、一九二三年、大正十二年五月十日に反軍国主義運動をやって浅沼と一緒に半殺しの目に遭ったときと同じような気持ちで、三木さん、あなたは死んでもいいという覚悟が顔ににじみ出ていると言いましたよ。あなたはそういう激を用いる必要はないが。一国の運命を、一国じゃなく世界の運命を、アジアの運命を日本中国が今後、胸ぐらとってけんかし合ってもいいから、世界の波動がなくなるような抽象的な文字でなく、当たりさわりは少しあってもいいか知らないけれども、なるたけ滑らかでわかるんならこれにこしたことはないから、あなたが仕上げればきっと滑らかになるのに相違ないから、少なくともその根本は、憂いは全世界の人が持っているんです。その憂いがソ連でも中国の良識者でもわからないはずはないんです。日本あたりが本当にアメリカと仲よく、ソ連とも仲よく今後もすべきです。ミグのやり方なんか下手です。両方が下手です。やっぱりソ連にも本当の謙虚な政治家がいないということを暴露し、日本においてもお粗末の限りです。日露戦争に負けたときのウィッチの外交を見てごらんなさい。どれだけ李鴻章の人となりや外交を彼が研究したかわからないです。そうして小村寿太郎をポーツマス条約において事実上手玉にとっていったじゃないですか。負けた国の、フランスのタレーランの外交でも、日露戦争に負けたウィッチの外交でも、もっとつらい目に遭ってもみごとに民衆を把握したがゆえに、外交の相手に世界の心を持ったがゆえに窮地から脱出することができたじゃないですか。私は、とにかく顔を見ただけでも小坂さんは悪相じゃないし、変な悪相が出てきて舞台回しをすると、成るものでも壊れてしまう。やっぱりいまの自民党の悲劇はそれです。あるときには人がよ過ぎる、坊ちゃん過ぎると言われるか知れないけれども、これだけの年輪を経てもなお人のいいと言われるほどのお方はやはり天然記念物的な存在です。やはり悪いやつよりはいいやつがいいのに決まっているんですから、そういう見識と気力を持って私は今度の日中、日ソの打開をやってもらいたい。  きょうは時間がオーバーしちゃいけないから、さっき玉置君にも注意したぐらいだからみずからも注意しないと、また玉置君にしっぺ返しされるとこわい人だからこの辺で私はおさめたいと思いますけれども、いまアメリカの様子、ソ連の様子、中国の様子をよくつかまえることは必要ですが、一番大切なのは自分です。自分の姿勢がなくて人を口説くなんていうのは不良少年のやることです。ラブレターじゃ人は説けないんです。おさすりさんでは説けないんです。やはり真心が相手に通じてのみ心通ずるものがあるんです。そういう意味において、日本がいま外交の一番むずかしいターニングポイントに立って、私は予言者、私の郷里の田中正造が、私の生まれた翌日に牢獄から出てきて、明治三十六年二月の十二日に叫んだ最初の叫びが、戦争は反対、全世界の軍備を撤廃しなければ野獣が滅びるがごとく人類は滅びるであろうと、予言者ヨハネのように野に叫んだんです。そうして、いまから六十三年前の九月四日に渡良瀬河畔で瞑目するときに、あるがままを救い、現在を救い、問題は具体的な回答を持って問題を処理しなければならないんで、抽象的な観念的なイデオロギーや権謀術策なんかというのはへのようなものです。そんなもので国会がいざこざやっているやつは雲散霧消して消えてうせろと、必ず地震がくるに決まっております。地震を避けるのは民族みずからが自信を持つことです。そして世界を揺り動かすことです。危による者は危うからず、一番むずかしいところにあなたは置かれている。余り本当のことを言うと当たりさわりもできるが、しかし、心の中ではあなたは信念は曲げないと思う。  ついでに、三木さんにも言ってもらいたいのは、対話というものを自民党の中からもっとやって、頑迷不霊のやつもいると思うけれども——他党に言っちゃいけないけれども、わが党にでもおります。どこでもいいから、あたり構わずやっぱり話せばわかるんです。玉置君なんかは、私は非常にいい親友です。ざっくばらんに物を言うから少し荒削りで困るけれども、こういうやはり草莽の志士と語りあっていくだけのものがなければ、草莽の志士というのはしかばねを原野にさらすんです。この言葉を聞いて、伊藤博文は、あの小梅の寮でびっくり仰天して隅田川の土手からすべり落ちたそうだ。関東の野に叫ぶ志士は原野にしかばねをさらすんだ、公爵なんかもらおうとしているんではないんだ、そんなこしゃくなまねをしちゃ困る。だから日本において天皇も迷惑したんだ。天皇をかさに着て統帥権なんか入れて、カイゼルに誘惑されて、そうしてばかげた世界にない憲法をつくったから動きのとれないような立ち往生して、しかしながら、天皇みずから人間となり、戦争は再びしまいというふうに誓い、再軍備はしないと誓った以上は、民族象徴としての天皇も、うっかり世界に誓った言葉をほごにしたら信義は土台から崩れる。日本憲法の基礎は、敗戦でもなけりゃ頭に穴をあけてもわからないやつに近代的な民主国家はつくり上げられないんです。天は災いしたけれども、この災いを転じてわれわれは福となしたので、この平和憲法、非核三原則、核拡散防止条約の批准、この上に立って、いま三木さん、小坂さん、これは日本の民族を代表して世界に一つの平和共存の道を説くんです。成る、成らない場合があります。成らなくても、日本民族があったがゆえに世界の危機が救えたという、感謝されなくてもいいじゃないですか。勲章なんかもらわなくてもいい。あっちこっち行って、変な者が台湾や韓国をうろちょろして変なうわさを説いて回っていちゃ日本の恥です。タイだってそうです。鎮静を待ちなさい。あわてる必要はないです。ベトナムをごらんなさい。アメリカも単純だからおだてられて力んだ結果が朝鮮でもベトナムでも失敗したじゃないですか。殷鑑遠からず。韓国タイまたしかりと司馬遷が生きていたならば史記に書くでしょう。  どうぞこういうことを速記にも残して、これをもって私の質問を結びます。     —————————————
  83. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、塩出啓典君が委員辞任され、その補欠として宮崎正義君が選任されました。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  84. 高橋雄之助

    委員長高橋雄之助君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  85. 秦野章

    秦野章君 最初に、ミグの問題に関連して二、三お伺いをいたしますけれども、防衛庁の方で、まずミグ機体調査というのはどういう権限でやったんでしたか。調査権の根拠だけでいい、法律上の根拠。
  86. 渡辺伊助

    説明員(渡辺伊助君) 直接の根拠は、防衛庁設置法の中に領空侵犯に対処するという任務がございます。もう一つは、所掌事務の遂行に必要な調査を行うという権限の行使が認められております。この二つによって行っておるものでございます。
  87. 秦野章

    秦野章君 私は、ちょっと立法論が要るんじゃないかという気がするのですよ。設置法とか何とかの権限というものは抽象的権限で、具体的権限ではないということになってくると、将来の問題もあるから、たとえば刑事訴訟法上現場検証をやるというような、つまり捜査上の手段として調査をするということだと、ある程度刑訴法に根拠があるわけだね。防衛庁の場合にやや無理があるような感じがするんで、これは将来立法が必要ではなかろうか、こんなことはめったにあるわけじゃないけれども、いわゆる防衛庁というのは、国内の問題なんだ。警察権と防衛庁の国内で権限行使する場合にぶつかる面もあるわけですよ、今度の場合でも。そこらを調整する意味を含めて、私は立法論が必要ではないかという感じがするんだけれども、きょうは政務次官出ておられますから、そういう論議が防衛庁でありましたか。
  88. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 私たちも、それを踏まえまして今後検討する必要があるんじゃないかという議論をいたしております。
  89. 秦野章

    秦野章君 そうですか。  そこで、あのミグの戦闘機を、とにかく防衛庁が調査するということになったときに、どのくらいの期間があれば調査できると最初思われたですか。やみくもに、まあとにかく調査するということでただ出発しただけなのか。これは私は、技術者というものは調査するんだということになったら調査することは半年でも一年でもあるわけですよ、正直に言ってあると思うんですよ。これは技術者が技術に忠実なるゆえんなわけです。ところが、外交とか政治とかいうものは、そういう技術者の意見だけでいく筋合いのものではないから、調査をするというのは結構だけれども、いつまでするのかという、あるいは調査した結果没収してしまうのか返すのかということもわからない。とにかく調査する、そして返すんだということのようだったんだけれども、その調査の期間にめどというものをぴしっと最初につけるというのが、私は非常に大事なことのような感じがするんですよ。  それで、これ外務大臣もお聞き取りいただきたいんですけれども、今度のミグの問題というものは、やはり外交の問題でもあるし、それから安全保障の問題、国防と言いますか、そういう角度もあるし、外交と言えば日ソ友好という柱も大事な柱でございます。それから日本国家の独立という立場もある。いろんな角度が、私はこのミグ調査の期間をぴしっと最初に決めることによって集約的に何か決まってくるような感じがするんです。国民の方から見ていても、いつまでやっているんだろうというようなことが、意外と変な、何といいますか、不安めいたものを感じる人もあっただろうし、戸惑いみたいなものもあると思うんです。だから三木さんは、新聞見ると、慎重に冷静に対処するよう指示したと出ているけれども、こういう問題に慎重に冷静に対処するなんということは実は指示にならないんで、本当の指示というものは、こういう安全保障にも絡んだ外交姿勢だから、私はやっぱりある程度決断、実行が伴った指示をなさらぬと、意外と外交上にもよけいな心配なりよけいな波紋なりをむしろもたらすという危険もある。安全保障に関連した外交の場合には、やはり時に、すべてそういう決断をすることがいいかどうかということになるとこれは問題があるけれども、問題によっちゃやっぱり決断しないことがかえって外交上非常にまずいという問題があるんじゃないか。  今度のミグの場合、私は端的に言うならば、やっぱり期間を初めに三日でも五日でも一週間でも、とにかく専門家の意見を聞きながら、政治とか外交立場でぴしっと決めるということがシビリアンコントロールでもあるし、また、外交とか政治というものはそういうものだろう。そこがさっぱりもたもたしているところに、何かこの問題がもたついているような感じがするんですが、これは外務大臣だけのお立場じゃ決められない問題かもしれませんが、しかし、少なくとも政府としては外交立場が一番でしょうから、安全保障というものに絡んだ外交姿勢というものの中にはそういう決断を伴うことがやっぱりあるんじゃなかろうか、今度の場合、一つは期間の問題が非常に典型的に集約できるような、そういう感じがするんですがいかがでしょうか。
  90. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お言葉のように、初体験でもあるということで若干もたついた点はあろうかと思うのでございます。こういうことが何回もあっちゃ困りますけれども、やはり仰せのようなわが国の領空権というものは完全に排他的な主権を持っているわけでございますから、それを侵された場合に一体どういうふうにするかということと、それからいまの場合は、ミグソ連ですけれども、日ソ友好という外交基本姿勢、これとどう調和させるかということはやっぱり政治的に判断しなければいかぬじゃないかと思うわけでございます。  私、外務大臣を拝命いたしましてからすぐそういう問題に取り組んだわけでございますが、結局、私とグロムイコ外務大臣とお会いするときにその方針を話すのがよかろうと、こう決断をしたわけでございますが、若干もたつきと誤解があったことは否めないというように思うわけでございます。  ただ幸いに、その後には特別のこともなくて、だんだん、それこそソ連側も冷静にわれわれの主張を聞いてくれているような気がいたしております。願わくはそういうふうに終わりたいものだと思っておるわけでございます。
  91. 秦野章

    秦野章君 これは防衛庁の方がウエートを置いて判断すべき問題だと私は思うんだけれども、やっぱりいち早く時間限定をやるという、これは意外と私は効果的だろうと思うんですよ。効果的というのか、まあ結果論として、結果としてもいいんじゃなかろうか、そういう感じが、あの問題を見ながらつくづく私はそう思ったわけです。これはやっぱり防衛庁の技術者がやるんですから、技術というものは、技術に忠実になると政治とか外交という観点がおろそかになってはこれは困るので、やっぱり技術の上に政治外交が存在するというところに意味があるんで、そういうものだと私は思いますので、これは防衛庁の方でひとつ、ミグという問題は一つの例ですが、防衛問題なんかではそういう決断をしなきゃならぬという場面があるという意味で、これは答弁要りませんけれども、ちょっと意見を申し上げておきます。  それから、このミグの取り扱いで私ども外から見ておって、やっぱり外交態度として、私はソ連のモスクワにおる日本の大使なんかがもっと向こうの政府に事実をとにかく説明する、あるいはソ連だけじゃないかもしれません、ほかの国に対しても、こういう問題が、国際の紛争というものははからざるものから出てくる危険もあるから、やっぱり在外公館をフルに使ってできるだけ早く説明をするという点が、東京のソ連大使館の方とやっておったからそれでいいという話もあるけれども、ダブっていいんで、やっぱり向こうの政府に早くそういうことを言ってやって、そうして向こうの顔も見るということもやっぱり外交じゃなかろうか、じっと顔を見る。そういう点について、外務省としては、大臣かわった間際で大変お気の毒なような状況にあったわけですけれども、外から見ているとその感じを深くして、欧亜局長にもぼくは電話でちょっと話したことがあるんだけれども、私はいろいろその後も考えてみると、そこらがやっぱり大事な点ではなかろうか。積極的な外交というものは相手方に真実を知らせ、理解をしてもらい、そうして顔を見る、その後でまたこっちのいろいろなやり方もあるでしょう。そういうことが大事だと、こう思うんですがいかがですか。
  92. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 本件につきましては、御存じのとおり、東京では在京のソ連大使館と、大使以下館員と私どももほとんど毎日のように接触しておりますし、特にニューヨークでは小坂大臣から本件についてグロムイコ大臣にもお話をいただいて、その間、モスコーにございますわが方大使館とは常時こちらから連絡もし、それからモスコーの大使館もまたソ連の外務省とも話を時に応じてやっております。ただいままでのところ、ソ連側も、主として向こうの言い分を東京の彼らの大使館を通じて言ってくるという筋にしぼってまいりましておりますので、わが方としても、東京での接触が主な接触にはなっておりますが、モスコーの大使館においても時に応じて先方と会っております。  また、先生おっしゃるとおり、東京、モスコーだけではなく、他の在外公館に対しても、常時私どもこの状況を連絡し、特にわが方のポジション、立場とか事実というものについてはよく出先にも承知してもらって、ソ連側大使館員のみならず、関係の国も皆興味を持っておりますので、わが方の立場本件に関する事実というものを、よくそういう多角的に知り、またソ連側とも接触するように努めてはおりますが、今後ともさらに努力はしていきたいと思っております。
  93. 秦野章

    秦野章君 まあ正直に言って、やっぱりソ連当局も時間的に事実を知ることが非常におくれたということもあるようだから、私はこれはもっとダブルで、こっちの現地もそう、出先もそう、そういう点についてやっぱり積極的な態度が必要だと思うんですよ。これはあなた方専門家だけれども、専門家というのはときどきエラーをするんだから、やっぱり素人の意見も聞いた方がいいと思う。確かに、今度は私は外に対するそれがおくれておったという感じをぬぐい切れない。まあこれはこれでいいと思います。  それから、今度は領土問題で、外務大臣国連の方でいろいろお話しになった、先ほどのお話もありましたけれども、結論的に言えば、北方領土問題というのは一歩も後退はしていない、日本側では土俵の上に乗っかっていると解釈しているわけですね、いままでの経過では。本当に乗っているのかどうかということに私も多少疑問の念がないではないんですけれども、国民も多少そういう不安、危惧みたいなものがあると思うんですけれども、これは田中総理時代のあの共同声明、さらに古くは鳩山、河野さんあたりが訪ソしたときの問題にまでさかのぼっていろいろな歴史というものがあると思うんですけれども、戦争の後の未解決の問題を平和条約で片づけようと、その未解決の問題の中に領土問題が入っているというのは、口頭の問題になっているものだから、これはいまさらそんなことを言ってもしようがないけれども、少なくとも今度のような問題に関連して、プラウダなり、向こうの要人なりが雑誌に書いたり言ったりしていることを見ると、領土問題というものはいかにも日本が不当なことを言っているということをやっぱり言っているんですね。領土問題というものは一体土俵に本当に乗っているのか。いま一歩ふんどし締めてこれは考えてみなければいかぬということが一つと、それから、かすかに乗っているなら乗っているのだが、今度のミグの問題なんかでも全然後退していないということが外務大臣の感触から果たして言えるのかどうか、そこらはどうでしょう。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 秦野さんよく御承知のように、重光外相当時の交渉で、その他の問題は継続審議ということになっている。われわれはその他の問題の中に領土も入っているんだと、こういうふうに考えているわけでございますね。  それから一九七三年の田中首相の訪ソの際の共同声明にも、双方は、第二次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を結ぶということになって、その未解決の諸問題の中には領土が含まれているとこちらは解釈している。先方もそう言っている、そう思っている、こういうふうに確認をしているわけでございます。この未解決の諸問題の中に北方四島の返還問題が含まれているということについては、日ソ首脳会談において明確に確認している、こういうふうに了解しているわけでございます。ただそういう文書はないわけでございます。そこで先生言われるようなことの問題があるわけです。  しかし、私なり立てで何でございますが、ひそかに、これは野におるときから考えておることなんですが、どうも四島だけの返還ということを日本の国会が一致して決めるともっとこれが強い主張になるんじゃないかという感じがするんでございます。固有の領土を奪わないからという話になっているんだから、日本固有の領土は返せということになりますと、やっぱり千島、得撫以北占守に至る十八の島々も、これ実はどん欲により戦争によって奪った土地じゃないものでございますから、その問題が入ってくるのじゃないか、日本は千島を返せというのじゃないかという問題もあるやに聞くわけでございますね。だから、一部の軍国復興主義者が領土問題を持ち出していろいろ騒いでおるというふうな言い方も一部にあるわけでございますから、千島は放棄しているんだからこれはもう要らない。ただこの四つの島は本当に日本の、どこの人も住んだことのない日本人が住んでいた島なんだからという、元来混住の地であった千島とか樺太というのと違うんだということを超党派で決めていただくことがやはり問題を一つ進めるんじゃないかという感じを持っておるのでございます。だから領土問題、領土問題と、一体領土問題は何であるかということをもう少し明確に、国会の意思として決めていただいたらいかがなものかという気持ちを持っております。
  95. 秦野章

    秦野章君 それは一つの確かに検討問題だと思いますが、さしあたっての北方領土四島の返還という問題については一歩も後退してはいないというふうに、感触はいかがでございますか。
  96. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の方はそうなんでございます。ただ、グロムイコ外務大臣の方におかれましては、平和条約を結ぶことは賛成だ、しかし領土の問題というのは聞いていないと、こういう言い方をするわけでございます。それは違うんだと、未解決の問題を解決して平和条約を結ぼうじゃないか、そういうことに双方合意している。その中に領土が入っているんだということをまた私の方から強く押し返し、その領土とは北方の四島であるということを強く押し返して、そのまま別れておるわけでございます。
  97. 秦野章

    秦野章君 いまのお話で、平和問題にはそれは別だ、入ってないということになると後退じゃないですか、いままでの土俵に上がってきた経過からいけば。後退したということになっちゃうんじゃないですか、少なくとも向こう側が。相手のあることだから、こっちは後退してないと言ったって向こうが後退するとやっぱり後退になる、そういう感じがするんですが、それはいかがでしょう。
  98. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それはいかがでございましょう。いままでも、向こうもそれじゃ領土問題をやりましょうと、こういったわけじゃなく、こっちは領土問題は入っていますよと、向こうは黙っておると、そういうことであって、やはり同じ状況ではないかというふうに私は思うのでございますが。
  99. 秦野章

    秦野章君 しかし、いわゆる戦争後の未解決の問題に領土問題が入っているというふうに政府は確認をしているというのだから、確認をしているということなら、やっぱりそれは平和問題と関係ないとは言えないはずですね。
  100. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ですから、私はその点を強調いたしました。
  101. 秦野章

    秦野章君 そこで、大臣の方が強調されるのは当然のこととして、要するに平和問題の未解決の中には領土問題も入っているのだということを日本政府は確認しているのでしょう。確認しているというのなら、今度はグロムイコ外務大臣が、いや領土問題は別なんだと、こう言うのだったら、確認していたのが間違っていたのか、できてないのに確認していたと言ったのか、そこらがやっぱりちょっと矛盾するのですよ、どうですか。
  102. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) いま大臣からお話ございましたように、この戦後の未解決の諸問題に四島が含まれるということは、七三年、当時の田中総理が向こうへ行かれて、直接ブレジネフに対して、これは書きものとしては未解決でございますが、その中に四つの島が含まれているなということを、これまた口頭でございますけれども、二度だめ押しをし念を押されております。ただそのときも、向こう側は自分からどうもその領土問題という言葉は、その過程においてもみずからは使わない、もっぱらわが方が領土問題がある、四つの島があるということにうなづいたというかっこうで、向こうの話し方というのは、みずから四つの島、領土問題ということは出さない、そのときでもそうでございまして、その後も、たとえばことしの一月にもグロムイコ外務大臣日本に参りまして、平和条約交渉と外相定期協議をされたのでございますが、わが方から当然この平和条約問題というのは四つの島の領土問題を含んで、それを解決して平和条約である、こういうことを申しました。そうしますとやはり向こうは、あえて自分からそういうことの内容をみずから確認することは避けて、それについては立場は違うというような言い方をして逃げておるということが、ある意味ではソ連側がみずからそういうものを口に出さないという点ではやや一貫しているところもあろうかと思います。
  103. 秦野章

    秦野章君 そうすると外務省はいささかうそを言っていたのだな。日ソ首脳部が確認していると言っていたわけだ。日ソ首脳部がこの第二次大戦のときの未解決の問題に北方領土問題が入っているということを、日ソ首脳部が確認していたとこう言うのだから、こっちだけ幾ら言ったって、向こうが全然認めないという状況なら確認とは言えないね。それからいまの、向こうで言葉として出さなかったというのだけれども、首振ったというのか何というか、そこらはきわめて物理的な問題みたいなことになるけれども、少なくとも認識として確認という以上は、日ソ首脳部が確認という以上は、向こうがとにかくこっちの主張を、主張というのは、要するに交渉の問題に入るのだというそういう主張を認めたということが確認なんで、何だかあいまいになってきちゃったな。いままで言ってきた、外務省の言っていることは、日ソ双方の首脳部が確認したということは撤回しなきゃいかぬな。
  104. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) 七三年の首脳会談におきまして、実は二度にわたって向こうがわが方の四つの島は含まれるという点についてはっきりうなずいておるのでございまして、ソ連のやり方から言えば、非常に異議があれば当然正面から反駁をしてくる。しかし自分の口からは、みずからその言葉を口に出さない。しかし、実質は二度そこで念押しをし、はっきりそれはうなずいておるということでございます。
  105. 秦野章

    秦野章君 うなずいたんなら、それは確認したと認めるのもまあ一つの見方だと思うけれども、今度はうなずかないんでしょう、違うって言うんでしょう。だから私は後退じゃないかと感じるんだ。今度はうなずかない、逆にそれは入っていませんよと積極行動がある、アクションがあるわけです。これは矛盾、やっぱり前後の関係が違うな。だから、土俵に乗った乗ったというのは、私もかねがねややおかしくはないかという感じがしないではなかったけれども、はからずも今度のグロムイコ外相と小坂さんの話し合いの中で、うなずくどころではなく入ってないというんだ。領土問題というのは大変むずかしい問題だ。ますますむずかしい。よほど政府は、また角度を変えて格段の努力をしていかぬということには、これ全く日本民族の主張というものが片っ方でぎゃあぎゃあ言っているだけの話であったということだけで、これまでの痛烈な反省とともに、今後やっぱりふんどしを締め直さなきゃいかぬ、具体策も考えなきゃならぬという感じもするんです。何せ領土問題というものは、歴史上しばしば戦争にもなるような問題だったから、ただ刺激すればいいというものじゃないけれども、やはりこれは日本民族の主張としてはおりられない問題ですからね、いかがでしょうな、私はどうも後退と見ますね、見ざるを得ない、いままでの話を聞いておっても、残念なことに。
  106. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先方の言い分は、そういう話は考えておらぬが、平和条約は賛成であると、こういう言い方ですからね、これはいままでと違うじゃないですか、いままではあなたの方はそう言っていたんじゃないか、こういうふうに私は弁駁しているわけでございます。ですから、ステータスとしては向こうはうなずいたわけなんでしょうけれども、はっきり書き物にいっているわけじゃないから、それを出したり引っ込めたりすることは向こうはできるわけですが、こちらは一貫してこれは国有の領土であって返還を要求すると、こう言っているわけです。このステータスはやはり同じであると私は思うんですよ。ただ、秦野さんおっしゃるように、これはなかなか容易ならざる問題です。そう簡単に解決できる問題じゃないということであって、いろいろな工夫をしなきゃならぬ、これは全くおっしゃるとおりだと思います。
  107. 秦野章

    秦野章君 これ以上は言いませんけれども、容易ならざる問題であることがますます容易ならざる問題に今回から一段となったという感じがぬぐえないですよ。聞いてる者はだれでもわかると思うんです。だから、日ソ首脳が確認したという過去のことの点検もさることながら、外交問題というものはいい加減に確認しちゃうと、やっぱりかえってそのこと自体がいろいろ後で尾を引くと思うんですよ。これはいまの内閣だけの問題じゃなくなってくるんだけれども、どうもそういう点がしばしば……、もうこれ以上はやめておきますけれども。
  108. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ちょっと補足させていただきますけれども、うなずいたと申し上げましたが、正確に申し上げますと、実は声を相手方は出しております。
  109. 秦野章

    秦野章君 どういう声、なんて言って、叫んだんですか。
  110. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ロシア語でございますけれども、要するにはいという、肯定する……。
  111. 秦野章

    秦野章君 それ私は確認と見ていいと思いますよ。いいと思いますが、とにかくますますそうなると、そっちの方は確認ということでいいということになれば、継続延長線上にある領土の問題がいささか後退したような印象を受けるのですね。グロムイコ・小坂さんの会談の向こうの態度がね。これはミグ影響したのか何がしたのか、向こうに言わせればもともとそうだったのかわからぬですけれども。  今後定期会合とか何か、この次の外相会談か何か見通し持っておられますか、ソ連と定期協議というのはありますね、どういうことになりますか。
  112. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 毎年一回交互に外相が訪問し合おうということになっております。昨年ソ連が、外相が来るところであったわけですが、この一月になりまして来たわけでございまして、今度はわが方から行くわけでございますが、その辺についてどういうふうにするかという段取り等はまだいたしておりません。
  113. 秦野章

    秦野章君 後、日本安全保障にとってやはりひとつ頭に置かざるを得ない中ソの問題というのがあるわけですけれども、このごろソ連側が和解の呼びかけを、文書その他いろいろな形で中国側にしているわけですね。これはソ連側が変わったのか、中国側に変わった徴候があるからそういうことが出てきたのか、その辺のところはどうでしょう。これは対中外交を進められる上においても頭に置かなければならぬ問題だと思うのですけれども、とにかく毛沢東主席の亡くなった後、いろいろ和解の呼びかけがあることは事実ですね。それはソ連側が変わったのか中国側が変わったのか、どっちも変わらないけれども、そういうアクションがただ毛沢東が亡くなったということで出てきたのか、そこらの読みはどうでしょう。
  114. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ最後におっしゃったようなことじゃないかというように思いますですね。これももう少し様子を見ないと何でございますけれども、中国側は毛路線を踏襲するということを非常に強く主張しておりまするし、現状では特に変化は見られないのじゃないかというふうに思われます。
  115. 秦野章

    秦野章君 やっぱり歴史というものは時間がたつと変わるものだから、確かに当面そう変わることはないという見方が一般的なようですけれども、変わる要素というものがやはり中国の中にもあるだろう、変わっていく要素というものが。ただし、変えていく力がなければ変わらないだろう。やっぱりそういう感じもせぬではありませんので、これは私は要望なんですけれども、よくひとつ分析をしてもらって、また機会があったら教えていただきたいと思います。  これでおきます。
  116. 田英夫

    ○田英夫君 小坂外務大臣が新しく就任されましたので、本来ならばここで外務大臣としての世界情勢全般に対する御判断、あるいは個々の中国あるいは朝鮮などの問題についての基本的なお考えを時間をかけてお聞きするような、そういう委員会を開いていただけるといいわけですが、時間が大変制限をされておりますので、そのことを詳しくきょうは伺えないかと思いますが、ただ、大臣がアメリカに行っておられる間の予算委員会で三木総理に伺いましたけれども、すでに伺っているわけですけれども、外交の責任者としての外務大臣に一、二基本的な問題を最初に伺っておきたいと思います。  それは、三木総理にも伺ったことでありますけれども、現在の世界情勢をどう判断をするかという大変まあ大きな、あるいは非常に抽象的なことのようでありますけれども、質問なんですが、そういう行き方ではどうもちょっと焦点がないので、最初に伺いたいのは、いわゆるデタントというものを大臣はお認めになるのかどうか、世界はデタントの方向にあるというふうにお考えになるかどうか、このことをまず伺いたい。
  117. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 直接のお答えにならないかもしれませんですけれども、デタントと  いうものを一般的に言いますと、東西両陣営がはっきりと対立しておって、その間に融和政策が行われるということであると思うんですが、象徴的な米ソというもののほかに、東西がそれぞれ多極化してまいっておる。そしてそのほかに南北の問題が非常に大きなウエートを占めてきたというのがいまの世界の特徴だろうと思うんでございまして、そういう意味で、デタントということはいいんだけれども、その言葉の裏に今度は局部的なデタントといいますか、局部的な軍備拡張といいますか、ある国に対してはデタント、ある国に対しては非常に力の政策というような面が見られまして、全般的な意味で多極化している、あるいはそれは軍事的な対立であり、あるいはそれは経済的な対立であり、非常な多極化した流動的な世界であるというような認識を持ちますわけであります。
  118. 田英夫

    ○田英夫君 その点は全く私も同感でありまして、三木総理の御答弁はやや私は不満であったんですが、今回の国連における外務大臣演説も詳細に読ませていただきましたが、そうしたニュアンスを含めて、大変生意気な言い方でありますが、私は大変評価をしているところであります。  そこで、もう一つ基本的な問題として朝鮮の問題についての基本的なお考えを伺いたいんですが、朝鮮は一つであるべきなのか、現在二つに分かれたままであっていいのか、こういう聞き方をいたしますと、それは一つになるべきだろうというふうに三木さんも答えられたわけですけれども、現実の問題として、大臣国連演説の中にも、あるいは総理の所信表明の中にも、南北それぞれ同時に国連に加盟すべきではないかという御提案をされているわけで、これは北側が従来から南北の固定化だと言って反対をしてきていた問題ですから、それをあえてこの時点で御提案になったということは、あるいは南北二つのままでも現在仕方がないんだというお考えが根底にあるんではないかという疑問を持ったので伺うわけですが、いかがでしょうか。
  119. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そのお答えを申し上げる前に、ただいまの私の申し上げた中で、米ソの対立がもう氷解しているというような、そういう印象を与えたとすれば、それは私は対立はあると、こう思っていることをつけ加えさせていただきたいと思います。  それから朝鮮の問題でございます。田さんよく御承知のようなことで、昨年非常な決議案のぶつけ合いをやったわけです。両方とも通ってみても何にもならない、国連というのは一体何なのだというような問題、疑問すら起きまして、全く不毛のことであったというわけでございますが、ことしも北側は決議を出してきて、また昨年のような状況になるんじゃないかと思っておりましたら、御承知のようにこれを引っ込めましたわけでございますね。国連においてもう昨年のような南北の票集めの問題はなくなってしまったわけで、これはどういうことが原因であるのかよくわかりませんけれども、いずれにしても話し合いの機運ができるきっかけになるとすればこれは結構なことじゃないかというふうに私ども思っております。  しかし、この話し合いというものはやはり仲介者が要るわけでございまして、キッシンジャー提案のように米中と南北、韓国と朝鮮民主主義人民共和国がそれぞれ話をする。こういうこともいいでしょうし、まあその前に両方が下話をする、そして最終的には関係国がみんな寄って話をする。そういうようなことも私は非常に評価できると思うんでございますが、何か中国側はそれはだめだということを言っているようでございます。この南北の現状は経済的にもいろいろ問題があるようでございますし、私ども近い国でございますので、両方ができるだけ融和して、あそこから火を噴くようなことがないように心から望んでおるわけでございます。  そこで、対話のきっかけでございますが、やはり国連という場において、両方が加盟をして話し合いの場を持つということになれば、これは非常にいいことなんじゃないかというふうな感じがしているわけでございます。従来は、国連加盟を言いますと、それじゃ南北の現状固定化ということを考えているのじゃないかという非常に強い反発があったわけでございますが、今度はどういうものでございましょうか、それはまだいまのところわかりません。そこでわれわれとしては、南北双方が希望するならばという条件をつけて国連に入ることも歓迎しよう、こう言っておるわけでございます。
  120. 田英夫

    ○田英夫君 今度の国連総会へおいでになった印象でいいんですけれども、あるいはアジア局長も来られましたが、どうでしょう。朝鮮問題というのは決議案としては撤回をされたわけですけれども、国連の舞台で朝鮮問題が取り上げられることになりそうですが、なるすれば、日本の提案された問題というのが一つの問題として論議の的になるというようなことがあり得るでしょうか、南北の同時加盟の提案。
  121. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 所管で言いますと本当は国連局長の方が適当かと思いますが、まだニューヨークヘ出張中ですので、私の方で考えていることを申し上げます。  理論的には、国連でもう一度朝鮮問題というものを取り上げるという手続その他の可能性は残されているようですが、今度の両方が議題を取り下げたということが多くの国で歓迎されているというところから見まして、よほど朝鮮半島で新しい安保理の管轄下に入るような事件でも起きない限り、国連でこのもの自身を取り上げるということは非常に可能性は少ないと私どもは見ております。しかし、朝鮮半島の平和と安全の問題というのは、特にアジアの国々にとっては非常な関心事ですので、直接朝鮮問題というアイテムのもとでなくても、場合によって言及されることはあるかと思いますが、いま話題になっております同時加盟の問題というのは、これはもうあくまでも、いまも外務大臣もおっしゃったと思いますが、その国がまず加盟申請する気持ちを持つか持たないかということの方が先決なわけですので、それはもっぱら私どもとしては、希望が出るならばこれは大いに歓迎するのだということを表明して、それが南北両当事者にとって何らかの示唆になれば幸いではないか、こういう考え方でおります。
  122. 田英夫

    ○田英夫君 朝鮮の問題が出ましたところでひとつ具体的に伺いたいのですが、これは十月六日の新聞が報道しておりますけれども、先月、日本の船が公海上で韓国の警備艇の臨検を受けて、ピストルを持った警備員と言いますか、兵隊が乗り込んで来て船内を捜索したという事実がありまして、これは外務省。海上保安庁あるいは運輸省に当該船会社から報告が出され、船会社としては、これは重大な主権の侵害であるので、韓国政府に陳謝を求めるべきであるという態度をとっているということでありますが、この点の事実関係を海上保安庁あるいは外務省からお話しいただきたい。
  123. 山本了三

    説明員(山本了三君) ただいまの先生からの御質問の点でございますが、東海船舶株式会社所属の第二東海号、総トン数三百十九トンでありますが、これはわが国北朝鮮との間の貿易貨物の輸送に従事するものでありますけれども、ことしの九月二十六日午後一時十分、生のハマグリ約七十トンを積みまして北朝鮮の南浦を出港、四日市に向かう途中、九月二十七日午前九時三十分ごろ、接近してまいりました韓国の軍盤「九十二号」から発光信号で要目等を尋ねられております。その通信をまだ了解することができない間に、十時ごろになりまして停船をスピーカーで命ぜられております。その位置は、北緯三十五度四十八分、東経百二十五度三十六分、これは韓国の群山港の沖の領海基線から約二十三海里ほど離れた公海上であります。  当時、新聞でも報ぜられましたとおり、同艦の上には銃を構えました兵隊が三十名ぐらい並んでおりまして、拡声器で日本語で乗組員の国籍、発航地、行き先、積み荷等について問い合わせがあり、それを答えたところ、乗組員全員を甲板上に並べさせまして、向こうのいわゆる艦上から写真を撮った。さらに、船内の検査の同意を求められたので、まあ船長は状況やむを得ないと考えてこれに同意したところ、十時二十分ごろ、拳銃で武装しました兵隊二名が同船に乗り込みまして船内の各室を点検し、十一時ごろ点検が終了しまして、口頭で離れてもいいということで、第二東海号は韓国軍艦を離れております。離れますときに、韓国軍艦のいかりが救命いかだと接触しまして、同船の船尾に若干の凹損を生じた。しかし、人命、航行には異常、支障はなかったというのがこの事件概要であります。
  124. 田英夫

    ○田英夫君 これに対して外務省として、この船会社の要求は陳謝を求めるべきだということですけれども、何らかの処置をとられたのですか。
  125. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま海上保安庁の方から御説明になりましたようなお話を、外務省も直接船長さんから伺いました。  それで、外務省としてどういう措置をとるかということになりますと、これは外交上の問題ですので慎重でなければなりませんので、海上保安庁の本庁の方でこの報告について十分な調査をされた結果に基づきまして、抗議すべき分は抗議するということになろうかと思いますが、いまはその海上保安庁の公式の調査結果を待っている、こういう状況でございます。
  126. 田英夫

    ○田英夫君 いまの海上保安庁のお話、私どもが調査したところと全くもちろん一致しているわけですけれども、それによると、公海上で、しかも武装した兵隊が乗り込んでくるというような、そして臨検をするというようなことは、これはもうとうてい許されるべきことではないわけですから、抗議をし、陳謝を求めるのが筋と思いますが、大臣いかがでしょうか。調査をしている最中でしょうけれども、現在までわかったところではそういうことだと思いますが。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いまアジア局長の方からお答えを申し上げましたように、たとえば同意があったのかどうかとか、さような問題についてもさらに調査をして、その上に決断をした方がよろしいかというふうに考えております。
  128. 田英夫

    ○田英夫君 この点は、言われるとおり外交的措置をとることは慎重でなければなりませんけれども、十分調査をして対処をしていただきたいと思います。  次に、板門店事件に関連をしてお尋ねをしたいんですが、実は、板門店事件が起きた直後の八月二十四日のこの委員会でやはり同じようなことをお聞きしたんですが、アメリカ局長から、いわゆる事前協議はなかった。ミッドウェーが出航することについては電話の連絡があった、こういうお答えがあったわけですけれども、同じように、実はアメリカの上院でもこの事件の直後にマクガバン上院議員が、これは本会議演説の中で、板門店事件の直後に沖繩のファントム、それから本土からFIIIが一個中隊、それにミッドウェー、さらにはエンタープライズまで出ていったという問題を取り上げまして、これが議会に報告されなかったことはけしからぬという意味演説をしているわけであります。アメリカでも、危険なかけではないかという態度で議会で問題になっているわけでありますけれども、私もその直後の委員会で指摘いたしましたが、事前協議なしにこれだけのものが日本の基地から出ていって、そしてあそこで、まさに北朝鮮側の遺憾の意という意味の、これは謝罪ではありませんけれども、遺憾の意ということがあったのをきっかけに戦闘状態にならずに済んだわけですけれども、あそこで戦闘状態になれば、当然出かけていったファントムやミッドウェーは戦闘状態に参加をするということになるわけで、これは日本の基地から出ていったものが直接戦争に参加をするということに結果的にならざるを得ない。そうなれば、日米安保条約の事前協議というのはきわめて危険だと、実は事前協議制度そのものについて以前から私どもは疑問を投げかけてきたわけですけれども、全くこれは空文にすぎない。そして、発展いかんによっては、相手側は日本の基地を発進したということを口実にして、日本の基地を攻撃するということも起こり得ることでありますから、きわめて危険な状態ではないか、こういうふうに考えて、安保条約そのものの体制にもわれわれの批判したとおり非常な危険があるということを感ずるのでありますが、この点外務大臣いかがでしょうか。
  129. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 所管の局長がおりませんので、とりあえず私から事務的なことは御答弁さしていただきたいと思いますが、アメリカ局長がこの前お答え申し上げました、ミッドウェーがわが国を出ていった、朝鮮海域に出動していったということが事前協議の対象ではなかったということはそのとおりでございまして、それは先生よく御存じのとおりに、安保条約の第六条の実施に関する交換公文で定められますところの事前協議、そこにありますように、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」ということになっておりまして、当該軍艦がわが国の港を出ていきますときの行動それ自体が戦闘作戦行動、直接戦闘作戦行動として出動するということであれば当然に事前協議にかかるわけでございますが、本件の場合には、ああいう事態が生じて、たまたま日本におりましたミッドウェーその他が朝鮮海域にともあれ駆けつけて、状況によって必要に応じてそこから新たな命令を受けて行動をとる、こういうことであっただろうというふうに思われるわけでございます。したがいまして、いずれにしろ安保条約上の事前協議の対象という問題にはならなかったということです。  それから、先生のもう一つおっしゃられましたアメリカの上院でのお話、これは私事実は存じませんけれども、恐らくこれはいま先生もおっしゃったように、アメリカの本土から出ていった部隊の展開もあるわけでございまして、そういう全般の、あの板門店事件に関連する全般の兵力配置についてアメリカの議会として承知しておきたい、そういう希望があったというお話ではなかろうかというふうに推測いたします。とりあえずお答えいたします。
  130. 田英夫

    ○田英夫君 これも時間がないので十分論議できませんが、要するに私が申し上げているのは、事前協議の対象にすべきだということを言う以前の問題なんです。その事前協議を決めているということ自体意味がない。つまり、安保体制というものが非常に危険だということをむしろ私が申し上げているので、事前協議の対象にすべきだということ以前の、ああいう規定をつくったって全然意味がないじゃないか、こういうことを申し上げたわけです。  次に、ミグの問題に移りたいと思います。ミグの問題についても予算委員会でいろいろ論議がありましたけれども、全く入り口だけで終わっておりまして、この問題も一口で言えば、秦野委員も言われたように、突然のことではありましたけれども、警察、検察の対処の仕方、あるいは防衛庁の調査に乗り出したやり方、さらには外務省の対応というものにやはり混乱があったと言わざるを得ないと思います。それを一つ一つ実は取り上げていくと大変時間がかかるわけなんで、きょうはいたしません。  一つは、ベレンコ中尉という人間を亡命をさしたという結論は私も賛成なのです。つまり、日本の法律によれば出入国管理令違反というものを含めて六つの容疑で書類送検という形になっているわけですけれども、特に出入国管理令違反という問題がある以上は、これは当時の状況からすれば現行犯逮捕をしなければならない状況、ピストルを撃ったんですから、そういう状況であったにもかかわらず現行犯逮捕をしなかったというところも問題ですけれども、そうした日本国内法にもかかわらず、そうした違反にもかかわらず人道上の立場からこれを亡命さしたということは、国際慣行からいっても正しい処置であると思います。  ところが、これは法務省に伺いたいのですが、まさにけさの新聞に出ているんですけれども、ベトナム戦争に派兵されそうになった韓国の人が、いわゆる良心的参戦拒否ということで脱走をして日本に逃げてきた、そして保護を求めるというか、日本に在留したいということを申し出て、これが裁判になりまして、ところが東京地裁はこれに対して訴えを退けてしまっているわけですね、これは夫妻ですけれども。こういう場合には、本人は強制送還になれば本国で、現在の韓国の実情ですからひどいことになるのはわかり切っている。そういう場合には強制送還をさせないというのが、先ほどのべレンコ中尉の処置の場合と同じように、人道上の立場から法律違反、密入国、出入国管理令違反というにもかかわらず送り返さないという処置が正しいはずでありますが、政府はそうなさらないし、日本の裁判所は法律に照らして強制送還してしまう、これは大変おかしいと思います。これはもう法律自体がおかしいんじゃないだろうか。なぜ日本は亡命の法律をつくらないのか、そして条約、国際的ないわゆる難民の地位に関する条約に加わっておりません。こういう形で亡命という問題から日本は逃げている。そういうところに問題があるんじゃないかと思うんですけれども、まず、なぜこの韓国人の場合は出入国管理令違反で強制退去をさせるのか、この根拠を伺いたいと思います。
  131. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) お答えいたします。ちょっとベレンコ中尉のことも出ましたので両方。  いまお話のありました韓国人の件というのは金理石という人にかかわる事件でございますが、ベレンコ中尉の場合は日本への在留を希望して亡命を申し出たのではなくて、アメリカ向け出国を希望しての亡命申し出事案でございます。したがって、私どもとしましては、一般にこういう場合は政治的な迫害の根拠があるかどうかということについては余り厳格な審査は行わずに、有効な旅券を持たずに本邦に不法入国した、いわゆる不法入国事件として出入国管理令所定の退去強制手続を進め、入国審査官の審理の結果、本人は不法入国の事実を認めて口頭審理を請求しないものですから、その段階で主任審査官は退去強制令書を発布する。ところが、本人は自分の費用で、自分の意思で第三国向けに出国を希望するという場合は、強制送還の一方法といたしまして自費出国の道が開いてありますが、それを許可した。したがって、ベレンコ中尉の場合も入国管理令所定の手続から言いますと、強制退去手続が進められて、強制退去の一方法として米国向けに出国を許可したという形になっております。昭和四十五年以来、日本を経由地とする第三国向けのいわゆる亡命申し出事案というのは、ベレンコ中尉の事件を含めて三十一名ございますけれども、ほとんどこういう形で処理しております。  ところが、いま金理石の問題は、これはまさに日本に在留を希望するという意味では、われわれといたしましては、まともに、その主張というものがまさにこの政治亡命と言われておる、そしてまあ保護ということを念頭におかなければならない事件かどうかということで対処すべき事案でございました。ところが、この金理石という人は昭和三十九年に不法入国いたしましてしばらく潜在しておりまして、昭和四十七年ですか、に至って検挙された事件でございます。難民条約なんかでも、難民としての保護を申し出る場合は、不法に入国をした場合遅滞なく申し出る、申告するということが要件になっておりますけれども、この人はそうやって、判決でも言っておりますが、八年を経過した後検挙された際に、初めて不法入国の動機としてベトナム参戦拒否の事実を話した経緯でございます。  私どもとしては全般的な状況からいたしまして、この判決も言っておりますけれども、この参戦拒否自体が唯一の理由とは認められないということ、それからなお、徴兵の義務を免がれた者が一体政治亡命として保護の対象となっているかどうかという点につきましても疑問を持ちますし、そういった観点でわれわれはこの事件政治亡命事案としては取り扱っていない、そういうふうな事実認定には立たずに、不法入国事案として処理をいたしております。この判決自体も、そういった点もやはりこの事実認定の場合にも、良心的参戦拒否を唯一の動機とする不法入国事案とは認められないということ、それから、こういった参戦拒否をどのように処遇するかは本来その者の属する国において、その国内法により決せられべき事柄であって、まあ日本国の憲法の趣旨から言ってもこういった者を排除することは憲法違反にはならないというようなことというような事情も全部踏まえまして、われわれの処分を支持する判決をしておる次第でございます。  なお、ただ私どもとしましては、仮に退去強制させる場合にも迫害を受けるおそれのない地域に送還するということは念頭に置いた実際上の処遇をしております。したがって、朝鮮半島から日本にいろんな形でやってくる中で、政治的なことを事情に挙げた人たちがおりますけれども、それらの出国先を見ますと、南から来て北へ行った者あるいは北から来て南へ行った者、あるいはそれぞれのところから来て米国へ行った者などもございます。それから、日時の経過とともにわれわれとしても実情をくんで特別在留を認めたケースもございます。  以上でございます。
  132. 田英夫

    ○田英夫君 なぜ日本が亡命を認めないのか、そういう法律をつくってないのかという点、それから条約になぜ参加をしないのかという点、これいかがですか。これが根本にあると思うのです、いまの法務省の言われた扱いというのも。人道的な立場から言えば認めるのが当然ですからね。
  133. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いま先生のお話にありました第一点、なぜ亡命に関する法律を日本がつくらないのか、これを私がお答えするのはちょっと所管外かとも思いますが、とりあえず国際法の問題だけ申し上げさせていただきますと、国際法上、先生よく御存じのとおりに、いわゆる領土的庇護という問題がございまして、何らかの理由で通常迫害のおそれがあってその国を去って他国への入国、滞在を希望する、その外国の庇護を求めるという問題でございますが、国際法の観点から申しますと、国家はそのような領土的庇護を与える義務はない、それから当該個人がその行きたい国に対して領土的庇護を与えよと言う権利はないというのが通説になっております。そこで、国家は領土的庇護を与える義務はない、入国、滞在を認めるか認めないかはそれぞれの国のいわば自由裁量の問題である、こういうたてまえになっておりまして、そこで、あと施策の問題として、自由裁量であるとしても、そのような亡命の立法をすべきか否かという点は国内立法の問題でございますので、これは私からお答えすべき問題ではなかろうかというふうに思っております。  それから亡命、難民の条約、第二点の点でございますが、これにつきましては、関係省庁において問題点を鋭意詰めておるというふうに理解いたしております。従来の御答弁でもしばしば出ておりますが、いろいろ問題がないわけではない。たとえば、難民に対して初等教育を与えろというような規定がありまして、現在の日本の国内体制がそのようになっておらないとか、それから出入国管理命上の問題も一つあるというふうに伺っております。なお、とにかくできる限り前向きにこれに入るという方向で検討したいということで、私どもといたしましては各省の御協力をいろいろお願いをしておるところでございます。  ただ、一つ御理解おきいただきたいのは、この難民条約と称しますのは、これも先生よく御存じのとおりに、迫害のおそれがあるために国外にあってそのもともとの自国の保護を得られない者、それから例の無国籍者というような、要するに何らかの事情で、主としてこれは戦後のヨーロッパにおけるいろいろな動乱を通じてその国を追いやられた者、国から逃げ出した者、みずから国を捨てた者、いろいろな人たちがいるわけですが、そういう人たちが何らかの理由でほかの国にいて、そこで必ずしも十分な保護が与えられないで気の毒な状態にある、そういう人たちに対していろいろな厚い保護を与えろ、待遇を与えろというのが条約の趣旨でございまして、入国をさせるとかさせないとかいう問題とは違う問題でございます。したがいまして、今回のベレンコの問題だとか、先ほど先生のお話もありましたようなケースとはちょっと次元が違うといいますか、手当てをしている問題点が違うというふうに理解いたしております。  なお、詳しくは法務省から……。
  134. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) 入国管理局の立場から申し上げますと、政治亡命者というものをこの出入国管理令の中にどういうふうな形で取り入れるかというふうな問題になると思います。それはちょうど社会党が政治亡命者保護法案をお出しになっておられるように、ああいう政治亡命者という範疇をつくってその範疇に当たるかどうかの認定をして、その認定をした者にどういう在留資格を与えるか、在留を認めるかというような形に具体的にはなっていくと思うんです。そういったことにつきまして、私どもは現在非常にいろんな角度から検討しております。  ただ、現在当面しておる具体的な問題の中でわれわれがいろいろ苦慮しておる点を率直に申し上げますと、実は、昨年来御承知のようにベトナムの難民が日本にやってきておりまして、現在、十月五日現在で三百十一名上陸を許可しておりますけれども、さらに、現にこの時点でも日本に向かっておる難民が二つの船で五十九名おります。特にこれは、ことしベトナムの統一が達成した後の脱出が多いんです。こういった場合に、われわれがこういったものを入管令の規定の中で規定する場合には、どうしても難民とはどういうものを言うかというふうな定義づけが必要になると思いますけれども、まあ難民条約で言っているように種族、宗教、国籍、特定の社会的団体員であること、または政治意見が原因で迫害を受けるおそれがある十分な根拠があるというようなことを範疇づけますと、いまわれわれが現に抱え込んでおる人たちは別にこういう具体的な迫害を受けたおそれがあるわけじゃないんですね。本人の話を聞いてみますと、現在の体制がいやだからといって来ているわけです。そういった意味ではこういう厳格な範疇に入らない。じゃそういう入らないのは不都合だといってこの範疇を広げた解釈をしますと、いわゆる経済的な困窮を理由とする脱出者をも含めるようなことになりますと、いまわれわれが当面している一番大きな韓国からの密入国者の問題も同じような範疇に入って抱え込まなければならないじゃないだろうか。これは相当大きな問題になる。そこで、現実に起きましたこういうアジア情勢の中で、一体われわれ基本的にはどういう立場に立つべきかということも相当慎重に検討しなければいけないのではないか。それからわれわれは四十七カ国の難民条約加盟国に対しまして、いろんな運用の実態も資料を取り寄せていま検討を続けておる、そういうような段階であることを御理解いただきたいと思います。
  135. 田英夫

    ○田英夫君 これはいま検討しているというお答えがありましたけれども、日本の国益ということを考えなければならないのは当然でありますけれども、アジア韓国とか台湾というような、あるいは今回タイがああいう状態になりましたから、そうしたファッショ的な非人道的な政治が行われている国が身近にあるわけでして、そういうものに、それが体制がいやだからという表現もありますけれども、そこで迫害を受ける。現に台湾では、比較的台湾のことを最近われわれは注目しておりませんけれども、韓国と同じような事態が起こっているわけですね。蒋介石、蒋経国政権に反対をする気持ちを持っている人たち、それは統一を望む人も、あるいは独立を望む人もいろいろいるわけですけれども、そういう人たちに対して迫害がある。現に私自身を訪ねてくれた人が、交通事故を装って重傷を負っています。そういうことが台湾の中で起こっているわけですね。したがって、非常に重要な問題じゃないかという気がします。  一つ具体的に伺いたいんですが、これはプライバシーの問題ですから名前を言いませんけれども、竹村さん御存じのはずですが、昨年の七月に帰化を申請した台湾の人の問題です。日本の女性と結婚をして日本に住んでいる留学生が、そのまま帰化をして日本に住みたいということで申請を出しました。ところが一年以上たつわけですけれども、通常帰化は一年ぐらいの間で認められるはずでありますけれども、認められない。本人は来年は大学院を出るので、そうなると在留の資格を失いますから帰らなければならぬ、しかし帰化を求めているということで、なぜ帰化がなかなか認められないのかということですが、どうやら台湾の政権が青年を外国に出してしまう、つまり帰化されてしまうということを非常にいやがっているということが一つの原因だというふうに言われているわけですね。そうなると、日本政府はそうした台湾や韓国政府の言い分によって個人の、しかも結婚しているという事態があるにもかかわらず、人道上の立場を二の次にして、そうした政府の言うことを言いなりになって聞いているという結果になるわけで、非常におかしいんじゃないかと思うんですが、この点いかがですか。名前はふせておいた方がいいと思います。
  136. 宮崎直見

    説明員宮崎直見君) ただいま質問がございました件でございますけれども、わが国の帰化行政については国籍法がございまして、国籍法にいろいろ帰化の要件がございます。ただいま質問のあった件は学生で留学で来ているわけでございます。国籍法には帰化の要件の一つとして、独立の生計を営むに足りる資産並びに技能を有することが要件になっているわけです。留学生で来ておりまして、独立に生活ができるような生活をしておればともかくとして、たまたま本件のような場合は、これは本国におる父親からの仕送りを受けて、それでもって生活しているという状態でございまして、そういう状態では国籍法所見にいう要件には該当しないということで、現在のままでは許可できないということです。しかしながら、ただいまの事件の本人でございますが、本人の申し立てによりますれば、大学を卒業すれば生計を営めるような仕事につく予定があるということを申し立てているということですから、その点、その可能性があるのかどうかについて現在調査中であるということでございます。以上です。
  137. 田英夫

    ○田英夫君 時間が来たそうですから、終わります。
  138. 黒柳明

    黒柳明君 問題いろいろありまして、時間ありません。まくらを省きまして、外務大臣、九月十七日ミグ25の解体にかかる日米間の確認事項、こういうものがあるんですが、これ御存じですか。ちょっとあわただしいときのあれなものでね。防衛庁、簡単な文章、これ読んでくれますか。ミグ25の解体にかかる、これ全部、簡単だから。
  139. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 「九月十九日以降、次のラインで行われることになっている」ということでございまして……、
  140. 黒柳明

    黒柳明君 いやいや、初めから読みなさいよ、簡単な文章だから。
  141. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 「ミグ25型機の輸送、調査に際し、米軍の技術要員及び輸送機その他機器の使用に関しては、航空幕僚長と在日米軍司令官との間の連絡の結果、九月十九日以降次のラインで行われることとなっている。  (一)本件作業に関して、米軍の技術要員及び機器は、自衛隊の指令、監督の下におく。  (二)本件作業の過程で及びその作業の関連で得られる知見は、自衛隊のみに帰属する。  (三)自衛隊は、本件作業に関連して要した費用を支弁する。」  以上であります。
  142. 黒柳明

    黒柳明君 「輸送作業」、「輸送」が抜けているんじゃないの。本来抜けているものですか。「輸送作業」で「輸送」が入っているんでしょう。どうなんですか。私の方は「輸送」と書いてある。
  143. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 「輸送、調査に際し」でございます。
  144. 黒柳明

    黒柳明君 間違いありませんか。「輸送作業」ですね、この文書。まあ同じようなものだ、いいや、  「輸送作業」でも「作業」でも。この文書知っていますか、外務大臣
  145. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 存じております。
  146. 黒柳明

    黒柳明君 知ってますね。この内容について、外務大臣は同意してますね。
  147. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 同意しております。同意といいますか、これは本来防衛庁のやられることでございまして、全般の問題として全体のオブザーべーションとしてはそういうものである、あくまでこれは日本調査する、そういう見解でございます。
  148. 黒柳明

    黒柳明君 承知しておりますね。
  149. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  150. 黒柳明

    黒柳明君 防衛庁、いままくらを省くと言ったのは、時間ありませんので、いろんな見解を述べてからやった方がいいんですけれども、具体的な問題で詰めたいものですからまくらを省くんですけれども、これ以外に秘密と言っちゃ語弊があるかと思うんですが、いわゆる米軍のミグ屋さんですな。第三国の介入、私はそうとりたいんですけれども、はだ身で外務大臣ソ連外務大臣と会って、非常に向こうの強硬姿勢というものを感じ外務大臣ですから、アメリカが介入したことが一つの大きな原因だと思いますね、ソ連外交姿勢の硬化というのが。これ以外にはこういう内容のものがありますか、日米両国間で合意したというか確認したというか。
  151. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) ございません。   〔委員長退席、理事秦野章君着席〕
  152. 黒柳明

    黒柳明君 ありませんね。——  その前に、これは外務大臣ちょうど国会のときいらっしゃらなかった、本会議、予算で。まあ国連のお仕事があったので、その方面で御苦労なされた。ある意味ではなかったことも幸せでもあったというふうにも言えるんですけれども、それはともかく、国会におきましても、答弁では、これは日米合同作業——まあ作業じゃないんですけれども、政府が言っていることは。日米安保条約に基づいたものじゃないと、こう言っているんですが、これは確認の意味ですけれども、そうですね、この日米の作業は。
  153. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  154. 黒柳明

    黒柳明君 日米安保条約に基づいたものじゃないと、こういうことですね。
  155. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) はい。
  156. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、防衛庁、これは何によってこういう取り決めをしたわけですか、空幕長とアメリカ空軍の基地司令官と何に基づいて、どの法律に基づいて、条約に基づいて。
  157. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) お答えします。  本件につきましては、函館にミグ25が強行着陸をいたしまして、私どもの防衛庁の手に保管をゆだねられているわけでございますが、私どもとしては、あの函館の民間航空の飛行場にこのミグをいつまでも置いておくこと……
  158. 黒柳明

    黒柳明君 いや、何に基づいたかということだけ聞けばいい。
  159. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 防衛庁め設置法によって、物品、役務の調達ということでやったわけでございます。
  160. 黒柳明

    黒柳明君 何条何項。
  161. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 第五条第四号でございます。
  162. 黒柳明

    黒柳明君 ちょっと読んでごらんなさい。外務大臣よく聞いててね。設置法の五条四項はどういう文言があるんですか。
  163. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 第五条から読み上げますと、「防衛庁は、この法律に規定する所掌事務を遂行するため、次に掲げる権限を有する。」と、四といたしまして、「所掌事務の遂行に直接必要な装備品、船舶、航空機及び食糧その他の需品並びに役務を調達すること。」
  164. 黒柳明

    黒柳明君 その役務を調達する。この米軍の技術要員——機器はともかくとして、これはたしか少佐以下十一名、こんなふうなことが報道されて、間違いありませんか。
  165. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) おおむね十人前後でございます。
  166. 黒柳明

    黒柳明君 それから当然米軍の軍人ですな。少佐がキャップとか何とか新聞では報道されている、そうですね。  どうなんですか。設置法でここに書いてあるように「自衛隊の指令、監督の下に」米軍が動く、こんなことを設置法でできますか、政務次官日米安保条約というのは、緊急やむを得ざる場合の日米の軍事協力を、私たち国会において詰めて詰めて、必要最大限——まあ最小限とも言えるでしょう、立場が違えば。設置法で自衛隊が米軍をコントロールできますか。
  167. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 私どもは、先ほども申し上げたとおり、自衛隊の能力に欠けている部分、不十分な部分について米側に協力をお願いして、所要の機材と人員の提供をいただいたということでございまして、私どもはできるというふうに解釈いたしております。
  168. 黒柳明

    黒柳明君 もうこれができるとなったら大変ですわな。法制局、設置法で自衛隊が第三国の軍隊を指揮下に置けるか。
  169. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 指揮下に置くと申しましても、先ほど政府委員から答弁がありましたように、これはあくまでも自衛隊の任務、所掌事務の遂行という面で足らざるところを米軍の能力によって補ってもらう、そのいわば取り決めの一つの条件としてそういう形をとっておるわけでございまして、いわゆる日米共同作業というものには当たらないわけでございます。あくまでも技術的な役務の提供をお願いしておるという意味でございます。
  170. 黒柳明

    黒柳明君 もう一回いま読んだ文書を見てください、そう書いてあるかどうか。法制局部長さん、読んでください。「自衛隊の指令、監督の下におく。」と書いてあるんじゃないですか。指令、監督のもとに置くんだ。足らざる面を補うなんて書いてませんよ。自衛隊の指令、監督のもとに置くんですよ。
  171. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 指令、監督と申しますが、この場合の確認事項にありますところの「指令、監督の下におく。」という意味は、あくまでも本件輸送作業あるいは調査の面におきましての技術的な面での指令、監督、いわば自衛隊が主体となってそのような調査を行うという場合に役務の提供という形でいろいろ協力を仰ぐわけでございますが、その場合の作業、純粋のその作業の工程におきまして、いわば自衛隊の指令、監督のもとに置かれるというふうに考えているわけでございます。
  172. 黒柳明

    黒柳明君 そういう役務の提供というならば、逆に言いましょう。自衛隊は第三国の軍隊を監督下、指令下に置くことできますな、今後とも、設置法で。どうですか。今後とも第三国の軍隊、役務提供、これは技術指導かわかりません。あるいは技術の補助的な作業かわかりません。内容はわからない。私たちはそう取りたくない。第三国の軍隊を指揮下に置けますね、自衛隊は、この設置法で。そんなことを言ったら安保条約の拡大解釈。安保条約日米協力のできないところを全部自衛隊は設置法でできることになりますよ。そんなことできる、第三国の軍隊を。法制局がとんでもないことを言ったら大変な論議になりますよ、国会で。注意して発言してくださいよ。法制局が設置法の役務提供で第三国の軍隊を自衛隊が指令、監督できるなんていうことをもし是認したら大変なことになるよ、憲法上大問題だよ、これは。注意して発言してくれよ。まだ内容まで行ってませんよ、内容がどういう内容であったか。内容まで行ったら、これ大変よ。
  173. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 役務の調達と申しますのは、先ほど申し上げましたように、防衛庁設置法五条四号の規程を根拠として行っておることは先ほど申し上げたとおりでございますが、これによってあらゆるものについての調達が行い得るというのではございませんで、防衛庁設置法とかあるいは自衛隊法その他の関係法令の趣旨から見まして、本来的にもっぱら自衛隊員が担当すべき性格を有する業務については、もとよりこれは他の者の役務によりこれを行うことはできないということでございます。
  174. 黒柳明

    黒柳明君 ちょっとわからない。何だって、最後、役務提供できない……。
  175. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) いま申し上げましたことをもう一遍申し上げますと、防衛庁設置法とか自衛隊法とかその他の関係法令の趣旨から見まして、本来的にもっぱら自衛隊員が担当すべき性格を有する業務につきましては、もとより他の者の役務によりこれを行うことはできないという意味でございますが、本件の場合には、このような性格を有する業務ではないということでございます。
  176. 黒柳明

    黒柳明君 私が聞いているのは、自衛隊の指揮、指令のもとにと、だからこの文章を前提にしたんです、空幕長と司令部の。法制局の部長さん、答弁しなさい。質問したから答弁。
  177. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 繰り返しになりますけれども、本件の作業と申しますのは、いわば機体輸送の……
  178. 黒柳明

    黒柳明君 いやいや、もう一回言います。第三国の軍隊、それをこの文章では指令、監督のもとに置くことができる、こういうことが設置法で可能かと、こう私は尋ねているんですよ、指令、監督。
  179. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 設置法で可能かどうかという点ではございません。設置法に規定してございますのは、あくまでも役務の提供を受けることができると、そういう意味でございます。その役務の提供の仕方の問題でございます。そしてその場合に、いま申し上げましたように、本来的にもっぱら自衛隊員が担当すべき性格を有するもの、たとえば武器の使用とかあるいはその他の人の生命、身体、財産に対して強制力を及ぼすような権限の行使にかかわるような業務は、あるいはこれに密接に関連する業務も含むわけでございますが、それはもとより役務の調達の対象とすることはできないわけでございます。
  180. 黒柳明

    黒柳明君 本来自衛隊がやることは役務の対象にならない。だけど、これは自衛隊の技術を補うための補助作業だからできるんだと、こういう見解でしょう。だから私はそうじゃなくて、それであるならば、第三国の軍隊を今後とも、これに類似した行為で今後とも役務提供だ、まあ内容は言っていない、内容は補助作業でもいいですよ。内容はこれから論議しよう。第三国の役務提供ということで、これが自衛隊が監督、指令のもとに置けますか。外人部隊、役務提供ということで置けますか、この設置法で。そんなばかなことできないでしょう。百歩譲ったってこれは特殊と、こういうことがまくらにつくんじゃないですか、防衛庁、百歩譲ったとしたって、これは特殊だからということがまくらにつくんじゃないんですか。今度は防衛庁から。
  181. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 私、先ほど答弁しましたとおり、自衛隊の能力で足らざる米軍の機材と人員の支援をいただいたということを申し上げたわけでございますが、軍隊として、部隊としての米軍に協力を依頼したんではなくて、いわゆる個人としての能力、機材を提供いただいた。
  182. 黒柳明

    黒柳明君 それじゃなぜ空幕長と基地の空軍司令官と合意しているんですか。当然軍が、しかもこの中将は十六日来て、外務省や防衛庁と合議しているじゃないですか。東郷大使だってアメリカ政府に呼ばれているじゃないですか。完全に政府はこれは合意した中で行われているじゃないですか。個人の少佐が、いいですよ、私あいていますから、それじゃ出て行きましょう、そんなばかなこと考えられない。何言うんですか。だから司令官と空幕長と合意しているんじゃないですか。この合意だって口頭でしょう。文書なんかないでしょう。うんじゃわからない、議事録に残さないと。口頭ですか。
  183. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 別に取り決めというようなものはありません。
  184. 黒柳明

    黒柳明君 ないでしょう。空幕長と基地の司令官が合意している。米軍の少佐以下技術者——軍人ですよ、米軍の司令官が持っているアメリカの国有財産、これを派遣するのに、個人の資格でなんてそんなばかなこと考えられますか。政務次官どう。明らかに米軍として来たんじゃないですか。個人として来たんじゃないじゃないですか。そんなことできますか。そうしたら、日本の自衛隊の設置法において、さっきも言うように、第三国の軍隊を役務提供だと言って使いますよ。そんなことできるはずないじゃないか。政務次官政治的な立場だ。さあがんばれ。
  185. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) そういったことでは、先生のおっしゃるとおりできないと思います。
  186. 黒柳明

    黒柳明君 できないだろう。できないよ、そんなことは。できるわけないじゃないか。  そこで、設置法で第三国の軍隊を、いま防衛庁の方は補助作業だとか、法制局そんなこと言わなくたっていいんだけれども、補助作業だなんてこうおっしゃっていますが、内容についてはこれから触れましょう。設置法でできるならば、日米安保条約なんか要りはしないじゃないですか。自衛隊は米軍に対して設置法で何でもできるということになるんじゃないですか。それをやっちゃいけないから安保条約地位協定があるんでしょう、厳重な取り決めが。  それで、私はこういう問題は外交問題だと思うんですが、外務大臣どうですか。だから私はまくらを省くと言うたけれども、本当はこれはシビリアンコントロールの問題なんです。こんなことやっておる時間ないんだけれども、これは外交問題じゃないですか、本来ならば。両国政府間が、少なくとも手続を踏んで、段階を踏んで合意すべきものでしょう。これが簡単に司令官と空幕長で口頭でやられる。どうですか、そういうのは、外務大臣
  187. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この事件は全く特殊な事件でございまして、まあこういうことは余りあっちゃ困るわけです。そこでしかし、現実にこういうことがございましたので、これは何とかせにやならぬ。ところが、わが自衛隊には、残念ながらあの民間航空飛行場に着陸をいたしましたる飛行機を自衛隊の基地へ持って行って調査をするその運ぶ方法すらないわけでございます。そこで米軍に相談いたしましたるところ、防衛庁と米軍との間で、いまのお話しのような特別の関係による調達行為がなされたと、かように理解しているわけでございます。
  188. 黒柳明

    黒柳明君 だから、設置法ではこういうことは許されない、本来ならば外交ルートを通じて正式な文書で両国間で取り決めてやる問題じゃないでしょうか、あるいは安保条約日米協力体制、どっちかですよ。安保条約と言うと日米軍事作業だと言われるから、そうじゃないということが先行して出ているんでしょう。日本が主体的にやったということにカモフラージュするために、アメリカの技術員は自衛隊の指令、監督下に置くと、こうやったんですよ。主体的に自衛隊がやっているんだということを正当づけるために文書をやったんですよ。ところが、これは正当づけられないでしょう。設置法でこんなことが許されるわけないじゃないですか。それは政務次官が許されないと言った。本来私は、これは外交ルートで両政府間が正式なやっぱりメモランダムなり何なり交わしての問題だと思いますよ、軍隊が動くんだから、個人じゃありませんよ。どうですか外務大臣。緊急やむを得ざるものだ、侵犯した飛行機に対してどう手をつけるか。私たちは別に不思議だと思っていない、あたり前だと思っている。だけど当然日ソ間の問題というものは言うまでもなく微妙ですから、その配慮ということもあたり前ですよ、やらなきやならない。結果的に向こうが強硬姿勢に出たことは、いろんな要件があるでしょう。その一つはやっぱりミグ屋さんが来たということ、第三国が介入したと、まあ介入したとは政府は言わなかった、本会議でも予算でも、それにある。それが空幕長と司令官の簡単な合意。これは本来ならば外交ルートで正式に合意されて、日米安保に基づかない、それでお互いに技術がないんだから頼むよと、こう政府がやるべきものでしょう。基地の司令官同士でやる、だからシビリアンコントロールという問題が本会議でも予算委員会でも取り上げられた。三木さんはそれをうまくごまかした。どうですか。そうじゃなかったら、この第三国の軍隊なんか自衛隊指揮下に置けるとなったら大変よ。今後自衛隊は何でもやっちゃいますよ、基地の司令官が。どうですか。
  189. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は予算委員会の答弁を実はよく調べておりませんので、あるいは食い違いがあるかもしれませんが、私の気持ちを申し上げますと、この事件については、これはいま黒柳さん抑せられたように、わが方にはその技術がないから頼むということで……
  190. 黒柳明

    黒柳明君 ないと言ったって、それは聞いたから、本来外交ルートで接触いたします……
  191. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外交ルートにいたしますると、これはまた非常に厄介な問題を派生する。そこで、その頼んだ在日米軍が実戦に参加するような、いわゆるドンパチをやるような人ではなくて技術者である。たまたま米軍に所属しているが、本来技術者であって、輸送やその他の調査のできる人である。そこでそれを頼もうということで、これは防衛庁の長官シビリアンでございますから、そのコントロールのもとにおいて、私もいつごろ返すかというような話には実は出発前に加わりました。そこで、シビリアンコントロールにおいて幕僚長と米軍司令官で合意してやるのがよかろう。あんまり全体の問題にしますと、それこそ共同作業であるとか、第三国介入であるとかという問題になりますものでございますから、私はさような方法がいいかと、かように思っているわけです。
  192. 黒柳明

    黒柳明君 もう一つ指摘しましょう。  三項目に、自衛隊は、本件輸送作業に関連して要した費用を支弁する。自衛隊が全部、来た十名内外の技術者に日当を払う、ギャラクシーの輸送代も払う、こういうふうになっているんですか、防衛庁これは。
  193. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) そういうことにしております。
  194. 黒柳明

    黒柳明君 これについての細かい契約を見せてください、ありますか。
  195. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) ございません。
  196. 黒柳明

    黒柳明君 会計検査院、国費を使うに当たって、全く契約も取り決めもなくて、聞くところによると、米軍から請求が来たら払えばいいんだということらしいんだ、防衛庁の考えは。こんなでたらめな国費の使い方はありますか。
  197. 高橋保司

    説明員高橋保司君) 原則としてはそういうことは……
  198. 黒柳明

    黒柳明君 ないでしょう。
  199. 高橋保司

    説明員高橋保司君) ただし……
  200. 黒柳明

    黒柳明君 ただしなんて、こんな事件起こったことがないんだから、ただしなんてつけない方がいいよ。  外務大臣、また一つ出てきた。自衛隊が費用を払うというんです。十数名、これはお食事も賄った、宿舎も賄った、当然日当もということになるでしょう、当然国費ですよ。しかも、これは私個人は調べることに対してそんなに抵抗はないんです。ですけれども、結果的には外務大臣苦労されたじゃないですか、一番はだに感じて。ミグの問題からでしょう。そのミグの問題を今度さらにもう一つ掘り下げればミグ屋さんが来たからですよ、そうでしょう。その来たことに関してこういう簡単な合意ですよ。しかも、設置法じゃできないことをやっちゃった。緊急やむを得ない、技術がない、そんなことは言わせません。大変だ、将来設置法でこんなことができるというのは。それに費用を払うと言ってアメリカに約束しながら全く契約も予算も何にも出てない。  次官どうですか、こんなでたらめなやり方。防衛庁はただでさえもロッキードの問題でP3Cで姿勢を正さなきゃと長官が言っている最中じゃないですか、どうですか。聞いたってあんまりいい知恵を入れてくれないぞ、自分で判断した方がいいぞ。いまちょっと防衛庁政務次官晴れの舞台だから。
  201. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 事柄は大変私は重要な意味を含んでいると思います。そこで、これはいずれにいたしましても防衛庁長官の御了解のもとにこれを行ったわけでございますから、私はここで答弁差し控えさせていただきまして、機会あるときに大臣の方から責任を持った答弁をしていただくようにお願いしたいと思います。
  202. 黒柳明

    黒柳明君 それじゃ政務次管答弁すんな。長官のかわりに来ているんだろう。これだけの重要問題だろう。これだけの自衛隊との問題でいま指摘され、十七日に出た問題でしょう。国際的に大問題だ。費用を払う、原則としてはこういうことはあり得ない、検査院の答弁も出ている。これに対してどう思うかというのに、長官は知っているんだ、おれは知らないからというわけにいかない。おかしいでしょうということについて、おかしいと思わないのか思うのか、それだけでいいじゃないですか。
  203. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) それはおかしいと思います。
  204. 黒柳明

    黒柳明君 おかしい、あたりまえだ、そんなこと。
  205. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 現在のところ私はここに来て初めて指摘されて、そして理解いたしました、わかったものですから……
  206. 黒柳明

    黒柳明君 そういうこともあるでしょう、選挙があるから忙しいから、こんなことにまで構っちゃいられない。  大臣、こんなこともある。国費ですよ。何回も言うように、日ソ関係は三年間冷却だろうなんという重大問題ですよ。それが国費を使うのに幾ら払うかわかりません。契約もやっていません。これも私から言わせると、百歩譲ったって緊急やむを得ないから、こう言うのかね。六日に起こったことが十七日に合意されているんですよ、当然米軍も含めて。なぜこんなものを出したか。出さないのです、出したくないのですよ。私がどんどん言ったから出してきた。そのたてまえは自衛隊主体にやっていますよということが一つ。決してアメリカが主体じゃない。だからアメリカの技術者は自衛隊の指令、監督のもとに置く、かかった費用は全部自衛隊が払う。アメリカが持ったいろんな費用は自衛隊がこれを持つ。この三条件なんです。自衛隊が主体的にやっている。安保条約でやると日米共同作業だから設置法でやっている。ここで抜け穴をつくったみたいだけれども、とんでもない抜け穴、これは抜け穴じゃないですよ。設置法で第三国の軍隊なんか使うわけにはいかない。これもうまくない。しかも、ここで費用を自衛隊が払うと言ったって自衛隊何にも契約ないじゃないですか。できますか、こんなもの。だから私は大臣に、こういうことは基地の司令官と空幕長が決めて、総理はあのときにはどんどんこれを防衛庁長官おまえに任せる、外務省おまえに任せる、あるいは外務省と防衛庁で意見の相違もあって調節もした、いろいろ過程があったらしい。だから当然国対国の問題できちっとした取り決めにしなければならぬでしょうと、こういうふうにさっき言った。またこれもうまくない、どうですか。
  207. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ひとつ黒柳さんに背景をちょっと聞いていただきたいと思うんですが、今度のミグ事件は……
  208. 黒柳明

    黒柳明君 その前に、時間がないから……
  209. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 簡単にいたします。  政府も国民も知らぬうちに、何らそういうことも希望ももちろんしていないうちに、ある日突然にベレンコなる者が舞い込んできた。そこでわが方は領空を侵犯された、民間空港に強行着陸された。これを移して調べにやならぬ。領空権を侵犯されますと、スクランブルをやったり調査する権限を防衛庁は持っているわけでございます。それに基づいてやろうとするにも、何せ函館の空港に飛行機が発着する、早く出さなきゃならない。しかしその手がない。わが方の輸送機のCIとかいうのじゃとてもだめで、やっぱりギャラクシーだということになりまして、これは主体はわが国であって、やるのは防衛庁である。  そこで、どうも米軍のその方の専門家の力をかりた方がいいのだけれども、先生おっしゃるように、余り大きくしてしまうとこれこそ日本の主体性がないとか、第三国と共同だなんという話になるものですから、自衛隊、防衛庁の調達行為としてやってもらおうじゃないか。これのコントロールは防衛庁の長官である坂田道太氏がやっておられるのでございますから、シビリアンコントロールの中こおいてやろう、こういうことなんであります。  その費用については、調達行為の費用をどうするかという防衛庁内部の問題でございまして、この点は大丈夫、だから自信を持ってやっておられるのだと私は……
  210. 黒柳明

    黒柳明君 私はそれを聞いているんじゃなくて、こういう問題はやっぱり外交ルートを通じて日米政府間できちっとやる。  さらに私言いましょう。これは安保体制の相互信頼の中で行われているんですよ。安保条約の中で行われているというと日米軍事共同作業だと言われるから、安保の枠外だ枠外だと言っているのだけれども、基地の司令官が電話一本で空幕長と話し合ってツーツーとまとまっちゃうのは相互信頼があるからでしょう。何にも信頼関係がなかったならば両政府で軍隊を使うなんということは、駐留している軍隊にせよ、その軍隊を他国の軍隊の指揮下に置くなんということは、両国政府間の重要なやはり接触がなかったらないことは常識なんですよ、こんなこと外務大臣として、そうでしょう。その常識を踏まえて、緊急やむを得ない、いろいろな問題もあった。だけれどもこんなことは許されませんよ、会計検査院も原則はこんなことを許されない。だから、本来はこういうことは外交ルートできちっとやれる時間だって十日もあった。接触あった。いま大臣がおっしゃったようなことを私は聞いているんじゃないですよ。またここに問題が起こった、問題はまだあるんですよ、今度は内容です。外交ルートでやるべきですよ、こういうことは。どうです、問題あるんじゃないですか、この費用について。
  211. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外交ルートにいたしますと問題が非常に大きくなりまして、なかなかこの程度で済まぬというふうに私は認識するんでございます。  まあグロムイコ外相との間にはいろいろございましたけれども、私は、結果はこれ返すということを言いましてからは非常によくなっているように考えております。しばらく見ぬとわかりませんか。
  212. 黒柳明

    黒柳明君 外交ルート、日米政府間に乗っけないのは、ソ連に対して、要するに対日外交姿勢、日ソ外交関係が悪くならないようにひそかにやらしたんだと、こういうことに裏を返しゃ通じるんじゃないですか。それがあくまでもまたソ連の対日政策、外交姿勢が悪くなったことは現実じゃないですか。両政府間の問題に乗っけりゃ外交ルートがうまくない、日ソ関係うまくない。だから、ひそかに空幕長と司令官にやらしたんだと。それだって結果としてうまくないじゃないですか。  さらに、結果としてはこんな費用を契約も何にもなくて使うなんて、会計検査院だったらとんでもない。しかも、これ請求があればということなんですよ。なきゃこれネグるんですよ。  さらにこの第二条、作業の関連で得た知見は自衛隊のみに帰属する、輸送作業ということを本来の目的にして。ところが、坂田防衛庁長官は十二日に性能調査は自衛隊の技術者が行うが、場合によっては民間あるいは米軍の技術援助を仰ぐこともある。これは十七日以前です。もう侵略の背景じゃないんです、性能調査なんです。アメリカの技術をもって性能調査をする。その場合にはアメリカの技術者の援助も頼むと、防衛庁長官は十二日発言しているんです。性能調査やるんですよ。それについてアメリカが知見した分は自衛隊に帰属する。もうアメリカが完全に軍事機密を知るという前提。だけど、この知ったものは自衛隊に帰属する。どう帰属するんですか、自衛隊にこんなもの帰属しようがないと思うんです。ただ、自衛隊が主体的にやっているよというたてまえをここで述べただけじゃないですか。アメリカが頭に秘めてみんな帰っちゃうんじゃないですか。自衛隊に帰属するのは、それこそ日ソ関係がうまくなくなった。その前提は自衛隊先行型だったと。これしかアメリカは置いていきませんよ、そうでしょう。外務大臣、常識的にやっぱりソ連と苦労して帰られた。何も遠慮することないじゃないですか。うまくないんですよ いまの事態というものは。それについてこういう現場同士で取り決めをした。会計検査院指摘したとおり、政務次官が指摘したとおり、設置法で第三国の軍隊なんか使うわけにいかない。あるいは国費を使うのに契約も何にもなくて使うわけにいかない。この点は認めますでしょうな、外務大臣
  213. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は契約の内容存じませんが……
  214. 黒柳明

    黒柳明君 ないんですよ、契約が。
  215. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ここにありますのは、私ども承知しておるのは、作業の調達に関して米側が要した実費を米国側に支払うと、こういうことになっているというふうに存じております。
  216. 黒柳明

    黒柳明君 だから、契約がないことはうまくないと会計検査院がいま発言している。大臣、国会で何十年お暮らしになったんです。契約なんかないんですよ。あるわけないですよ、こんなもの。
  217. 夏目晴雄

    説明員(夏目晴雄君) 先ほど私申したとおり、現在契約があるわけではございませんが、今後この支払いに当たっては当然のことながら国内法規に従って支出されることになるというものでございます。
  218. 黒柳明

    黒柳明君 いまぼくが指摘したから、そう詭弁でごまかしているんじゃないですか。何言うんですか。当然契約というのは事前にやるのが契約なんです。作業が終わっちゃって、ミグが向こうに行っちゃって、ベレンコさんがどこか行っちゃってからやるのは契約じゃない。そんなでたらめな言いわけしちゃってだめだ。外務大臣、私の言っていることが全く常識じゃないですか。
  219. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) よくお調べになっていると感心します。
  220. 黒柳明

    黒柳明君 お調べじゃない、この一枚のペーパーでやっているんだ。アメリカが性能を調べるとプッシュがかかった、圧力がかかったから、プレッシャーがかかったから、だから調べざるを得なくなったんだとか、そういううわさをもって私言っていんじゃないんですよ。防衛庁が出してきたこの根拠に基づいて問題点を指摘しているだけ。調べたんじゃない。私調べる能力なんかないんだ。  今度の問題に関心は持っています。うまくないと思っています。ですけれども、調べたんじゃなくて、防衛庁が出したこの書類の中においてうまくない点を指摘いるだけなんです。常識的範囲において。外務大臣、だから結果的には日ソ外交がうまくなくなったじゃないですか。その原因はここから発生していると言っても私過言じゃないと、こう断定しますよ。関心持ってください、外務大臣。これに対して外務省も、当然これからは防衛庁じゃない、外務省が外交のルート、窓口になるんですから。それについてはっきりこれ分析して、これから払うときには契約とる、払うときとるのは契約じゃない、そんなものは。しかも六日に来て十七日までいろいろ合議して、そんなものは幾らも事前において作業はできたんです、この文書をつくるまで、そうでしょう。外務大臣窓口ですから、ソ連との外交の。十二分にこれ検討して、まずいことだらけだ。これについて常識的に、外務大臣ももう納得していると思いますよ。すぐ手を打ちなさいよ、打てる手があったら。
  221. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあこの件は先ほど申し上げたことで、長くなりますからやめますけれども、とにかく災難を受けているのはわが方ですから、その災難に対してどういうものか調べにゃならぬわけです。調べる方法といたしまして、外交ルートだの日米の安保だなんて言いますと、これは本当に共同調査になってしまう。私が考えましたことは、まあ私の前任者等からやっておられるその考え方がいいだろうということなんです。その考え方とはどういうことかというと、これは防衛庁の問題としてその設置法に従いまして調査をする。この調査の権限というものは防衛庁が持っているわけだから、それでやったらよかろう。その結果、米軍との間にいろいろ話をして、そこは黒柳さんが御指摘のようないろいろな問題があるようでございますから、そういう点はこれ防衛庁の方で、政務次官もおられますし、いろいろ今後御研究になると思います。  ただ、外務省といたしましては、これは飛び込んできたのはソ連の戦闘機であって、それに対してわれわれの方は国際法上許されることをしておって、しかもそれをお返ししますということで、この問題は大きな日ソ関係の中に余り将来問題を起こさぬようにしたい、われわれは日ソ友好ということを非常に強く希望しているということを言っているわけでございます。外交的にやることはそのことが非常に必要だと、かように思っているわけでございます。
  222. 黒柳明

    黒柳明君 外務大臣同じ答弁している。  もう一回指摘しましょう。外交関係日ソ、うまくなくなった、これからもいかなくなる、これはもう認識していると思います。その原因はミグの問題、その中心はやっぱりこの米軍の関与、こういうことにあること間違いない。その問題がこの三項目で合意されている。その合意されているうちに費用を全く契約もなしでやることはうまくない。設置法で第三国の軍隊を使うことはうまくない。この結論は出たですな。これはこれでいいですよ。そのうまくない外交問題をこれからいい方向に持っていく最大の責任者は外務大臣でしょう。その根底は、国内法中心にしてこういううまくない取り決めが行われたミグ屋さんの介入であった、こういうことですよ。もう聞いたってまるで失望ですな、小坂さんには。それから、最後に法務省、これはベレンコさんが帰りましたね。そのときは全部、まあいろいろな罪名がありましたな、違法入国とか銃砲所持とか火薬云々だとか、これは全部不起訴になった、それで国外退去、そのときの条件がありますね。国外退去は全部自弁ですか。
  223. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) 入管令の規定によりますと、みずからの費用とみずからの意思に基づいて出国する場合に、自由出国を許可する制度がございます。たてまえはそうでございます。この場合、具体的には恐らく米国側か負担したと思います。
  224. 黒柳明

    黒柳明君 米国負担ですね。小坂さん、どこが負担したと思います、米国の。米国のどこがこの費用を負担したのですか。外務大臣に聞いているんだよ。そんなの常識でしょう。
  225. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私に御質問でございますが、これ入管令上の手続に従ってやっておることです。
  226. 黒柳明

    黒柳明君 いやいや、米国が費用を負担したというの。だから、米国のどこが費用を負担したと思いますかと、こう聞いているのです。
  227. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) これは大臣がいま仰せになりましたように、入管令の手続として自費出国したものと了承しております。自己負担したものと私も理解しております。
  228. 黒柳明

    黒柳明君 だから、法務省は自己負担してないから米国が負担したんだと思うと、こう言った。だから、米国が負担したんだと思うと法務省が言ったから、どこが負担したと思いますかと大臣に聞いたの。
  229. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) その段階においてベレンコが航空運賃を出したかどうかということはわれわれとしては確かめておりませんが、仮にベレンコがその段階に出してないとしても、それは米国政府がいわば立てかえたものであろうと推測いたします。
  230. 黒柳明

    黒柳明君 CIAですよ、CIA。あなた方の口からそんなことを言えるのか言えないのか、CAIの資金でこれが出ているじゃないですか。しかも、この米軍の費用支給、これだってどこから費用出てくるんですか。アメリカの会計検査院だって全然メリットがないものを日本に対して役務の提供なんかしませんよ、向こうの会計検査院だって。日本と同じですよ。全く無償で役務提供なんて向こうの会計検査院がチェックしたらおこられますよ。こんなことは一〇〇%わかりますよ。だから、法務省がアメリカが負担したろうと思うと、こう言ったことに対して、どこですか、わかんないでしょう。わかんないですよ、外務省。CIA。まあ外務大臣、そういうことも想像される。私はここにあること、ほかにはこんなものは出ていませんな、CIAが出しましたなんて言いっこない。ほかに出すところないでしょう。全部いままでの過程はそういうルートでいっていたわけですよ。それについても、ちょっと私たちは、不起訴になったのですから、機体の返還等を含めてそういう問題についておかしいなという点がある。これは私も調査したわけじゃない。こういううわさですな。だけど、こういうことを踏まえまして日ソ関係がうまくなくなっていることは間違いないでしょう、外務大臣。そのうまくなくなったそれをよくする方向について外務大臣やるんですから、努力日本政府として。そのことは、こういうことを十二分に非は非として認識しないで、それで改善はできないんじゃないですか。時間きましたから最後に一言。
  231. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまいろいろ御指摘をいただきましたのですが、その中で私どもの考えと少し違うところもございます。しかし、おおむね非常に正確な御指摘もございましたように思いますので、よくひとつ今後調査をいたすようにいたします。
  232. 立木洋

    立木洋君 最初に大臣にお尋ねしたいわけですが、いま御承知のように国会の中でロッキードの問題というのが大変な問題になっておりますが、このロッキードの疑獄事件に関して大臣がどのような御認識をお持ちなのか、またその基本的な政治姿勢といいますか、これに対して閣僚とされてどういう態度をとっていくおつもりなのか、その点を最初にお聞かせ願いたいと思います。
  233. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まことに遺憾千万なことでございまして、あのような事件は二度と起こしてはならないというふうに考えます。私も自民党員の一人として深くこのことを恥じ、深く反省をしておる次第でございます。
  234. 立木洋

    立木洋君 それで、山崎さんにお尋ねするのですが、九月十三日にアメリカのチャーチ委員会でチーザム氏が証言した点に関して、この間予算委員会で若干局長答弁されておりました。  十三日にあの証言が起こってからいろいろ調べられた内容を予算委員会でお述べになったんだろうと思いますけれども、外務省としてはあの証言が起こってからどのような措置、あるいはアメリカ側への問い合わせとか、いつどういうふうな資料の要求やあるいは措置をとられたのか、その経過を具体的に述べていただきたいと思います。
  235. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 九月十三日のアメリカの上院の外交委員会の多国籍企業小委員会でグラマン社の問題が取り上げられたわけでございます。そのときに特に問題になりましたのは、グラマン社のイラン向けのF14の輸出に関する問題であったわけでございます。ただその際に、グラマン社のE2Cの日本に対する売り込みに関連しまして選挙資金の献金問題が少し取り上げられまして、その際に、チーザム前グラマン・インターナショナル社長が一つの証言をいたしました。  その内容は、ほかの委員会でも御説明申し上げましたけれども、グラマン社としては、ニクソン大統領と田中総理との会談でこのE2Cの対日売り込み問題を取り上げてほしかったので、当時大統領副補佐官をしておりましたアレン氏に対してこの問題につき一般的な説明を行った。その際にこの副補佐官は、本件は百万ドルぐらいの価値があると思うというふうなことをほのめかしたということを証言しております。さらに、ニクソン大統領が実際に田中総理との間でこのE2Cについて話し合ったかどうかということは自分は知らないということを言っておるわけでございます。  そういうわけで、このグラマン社の米国内における政治献金問題という形で問題になっておるわけでございますが、この点につきましては、当のアレン氏が直ちにこれを否定するような声明を出しまして、早く会を開いて自分の潔白を証明したいということを言いまして、その翌々日の九月十五日の多国籍企業小委員会の公聴会におきまして、アレン氏はこれを全面的に否定いたしたわけでございます。  そこで、この問題に関しましては、外務省といたしましては、早速その十三日及び十五日の議事録を取り寄せまして、御関心のある向きの議員の方にもお送りいたしたわけでございます。  ただ、このチーザム氏が言っております一九七二年の春には田中総理はまだ就任していないということでございまして、その時点で田中・ニクソン会談の予定というものは想定し得たかどうかはなはだ疑問に思いますし、アレン氏もその旨のことを言っております。ただ、もっともアレン氏は、いや、あれは春ではなくて七月だったというようなこともちょっとその後新聞記者会見なんかでは言っておるようでございますが、いずれにしても田中・ニクソン会談の前であったことは事実でございます。  それから、チーザム氏はその際に、いわゆるサンクレメンテ小委員会なるものがあって、そこでこの問題が討議されたというようなことも言っておりますけれども、われわれはアメリカ側に照会いたしましたところ、サンクレメンテ小委員会なるものは存在していないということを申しておるわけでございます。そういう点からいたしまして、このチーザム氏の証言がどこまで事実に即したものであるかということについては、われわれとしても確信を持てない次第でございます。
  236. 立木洋

    立木洋君 じゃ、外務省としては議事録を取り寄せただけですか。
  237. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この問題に関しましては、まあ議事録を取り寄せましたが、事は要するに日本に対する売り込みということには関連しておりますが、金の動きとしては米国内における選挙資金の献金問題ということでございまして、その金が日本に流れたとか流れないという話は一切出ていないわけでございます。したがいまして、それ以上のことはわれわれとしても別に調べる必要は感じておりません。
  238. 立木洋

    立木洋君 いや、日本に金が流れたかどうかということを前もってあなたが言う必要はないんですよ。そういうことを私は聞いているわけではなくて、しかし問題は、あなたは政治献金というふうに言われましたけれども、ここで明確に出されているのは、つまりAEWですか、いわゆる早期警戒機の売り込みに関して、田中・ニクソン会談でそれを取り上げてもらうように要請をしたという問題に絡んでの政治献金なわけですね。アレン氏がそれを否定したというのはどういう点を否定したんですか。あなたは全面的に否定したと言うが、全面的に否定してないでしょう。
  239. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) アレン氏は、その公聴会において言ったことは大体こういうことであります。  一九七一年の十月から一九七二年の八月までの間にグラマン関係者と五回ぐらい自分のオフィスあるいはレストラン等で会った。右の会合において確かにE2Cの話は出たが、金の話は全く出なかった。次に、自分は七二年の七月末にホワイトハウスをやめており、したがって、同年八月グラマン関係者と会った時点ではホワイトハウスの人間ではないし、ましてや、もうじきやめる者がニクソン再選運動の資金集めを担当するわけがない。それから最後に、チーザム氏の証言によれば自分が七二年四、五月ごろにニクソン・田中会談を想定して話をしていたということであるが、田中氏が日本の首相になられたのは同年七月であり、ニクソン・田中会談を当時予想できるはずがない、こういうふうな言い方をしておりまして、全体として見れば、グラマン社との接触のあったことは認めておりますけれども、選挙資金を出せと言ったことはないし、ましてや、田中・ニクソン会談に絡めて話したことはない、というふうに本人は言っておるわけでございます。
  240. 立木洋

    立木洋君 この政治献金を要請したということについてはアレン氏は全面的に否定をした。しかし、E2Cの売り込み、輸出の問題に関して要請は受けたと、これは明確に肯定しているわけでしょう、その点までは否定していない。しかし、この田中・ニクソン会談の問題に関しては、四月、五月にそのようなことを想定して話し合ったことはない、ということは言っておりますけれども、現実にその後六月、七月、八月まで会っているんですよ、八月にもその話は出ていないということは否定していないんですよ、アレン氏は。四月、五月に田中・ニクソン会談を想定してそういう話し合いをやったことはないということは否定している。それは四月、五月に話し合ったこ〜がないということを否定したんであって、その後も一切そういう話はなかったということを否定したわけじゃない。輸出の売り込みがあったということを、輸出促進に関しての要請があったということを明確にアレン氏は認めているわけだから、これは全面的な否定ではないですよ。政治献金を要請したということに関する否定であっても、いわゆるE2Cを売り込んでくれという話はあったんだし、その時期については、八月まで田中・ニクソン会談の問題に関しては一切話が出なかったと言っているわけじゃないんですから、四月、五月の時点ではそういう話はなかったと、時期的にいえばそういうことになる。だけど、チーザム氏自身は、それは間違いであった、四月、五月と私が言ったのは記憶違いであって、ニクソン・田中会談の一カ月あるいは三週間前であったということを後で彼は新聞記者に対しては訂正の発言をしているわけですね。だから、これは全面的な否定ではないじゃないですか。
  241. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) ですから、私も先ほどから申し上げておりますように、アレン氏がチーザム氏その他と五回ぐらい会ってこのE2Cの話をしているということは確かに否定しておりません。それについてどういう話をしたかということはこの証言からはわれわれとしてはわからないわけであります。
  242. 立木洋

    立木洋君 それが重要なんですよ。そして、グラマン社の幹部はこの売り込みの問題に関してどういうふうな発言をしていますか。現在のグラマン社の幹部は、このチーザムの証言があった後。
  243. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 御質問の趣旨が必ずしもはっきりいたしてないわけでございますが、現在の社長のたしかオラムという人が言った、新聞に対して語ったことでございますか。
  244. 立木洋

    立木洋君 時間を取るからぼくの方からしゃべりますよ。  外務省はこの問題に対して余り関心がないようでおるので、後でこの問題に対する態度、姿勢については指摘をしたいと思うのですが、グラマン社の幹部が述べたことについては、一つは政治献金を直接要請したという事実については否定した。しかしアレン氏と会ったときに、他社もこの問題に関しては政治献金をしておる、外国への輸出については政治献金をしておる、輸出を要請した場合に、ということで、他社の例を引き合いに出されて、グラマン社の幹部はいわゆる圧力を感じた、直接的には政治献金をせよという要請はな、かったけれども、そういう意味合いの圧力を感じたという発言もありますし、現在のオラム社長は九月十五日に田中・ニクソン会談の作業部会で、グラマン社のE2Cの問題が取り上げられたことを示す文書がグラマン社にあるということを明確に述べてある。この点についてはどうですか。この事実をお確かめになったのかどうなのか。
  245. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) そういうふうな報道があることは承知しております。
  246. 立木洋

    立木洋君 事実をお確かめになったのかどうか。
  247. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) このグラマン・インターナショナルのオラム現社長の九月十五日の記者会見で、七二年夏のホノルルでの田中・ニクソン会談の作業部会で早期警戒機E2C問題が取り上げられたことを示す文書がグラマン社にあることを認めたというふうな報道があります。この問題については、われわれとしてはグラマン社にまだそういう照会をしたことはございません。
  248. 立木洋

    立木洋君 日本政府としては、これは外務省も法務省も、この問題でチーザム氏本人に事情を聞いたのかどうなのか、あるいは先ほど局長が言われたサンクレメンテ小委員会の問題を最初にこのチャーチ委員会で持ち出したのはパーシー上院議員です。このパーシー上院議員やチーザム氏に、彼らの発言、証言の問題等々の内容についてお確かめになったのかどうか。外務省でも法務省でも結構ですが、日本政府として。
  249. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) このグラマンの問題は、現在判明いたしております限りは、先ほどから申し上げておりますように、米国内におけるいわば選挙資金の問題でありまして、それがただ、たまたまグラマン社のイランや日本へのE2Cの売り込みに関連しているというだけのことでもございますから、国内のそういう一種のスキャンダルに関する一つ一つの報道に関して、全部外務省が国務省やらそれぞれの会社に対してその内容を照会するということはいたしておりません。
  250. 立木洋

    立木洋君 これは局長、重要な問題だと思うんですよ。いまの国会における論議を十分お聞きになっているだろうと思いますけれども、ロッキード社のP3Cの売り込みの問題に関して疑惑があるということについては、これは稻葉法務大臣も言われているわけで、これは犯罪があるとかいうことでなしに、いろいろ確かめてみなければならない点がある、疑惑があるということは明確に述べられている。これは御承知のように、一九七一年の四月二十六日、当時の防衛庁長官であった中曽根さんが、この対潜哨戒機と早期警戒機については国産にするという方針を出しておったんでしょう。これは明確に中曽根私案があるんですよ、防衛庁としての原案が。これが突如として、いわゆる田中角榮の鶴の一声でひっくり返ったわけでしょう、アメリカから輸入すると。これはP3Cだけじゃないんですよ。このE2Cもそうなんですよ。このことを、そういう動きが国内にあるという問題とアメリカの動きは無関係じゃないんですよ。日本の税金を使って外国から飛行機を買う、こういう重大な問題で外国のそういう多国籍企業がいろいろと動く、こういう動く問題に関していろいろ疑惑があるから調べなければならないということで、ロッキードの問題についても各党がいろいろ問題点をただし、それを明らかにすべきではないか、そういうことを解明しなければならないんだということも、三木さんも言われたし、先ほど外務大臣もこの問題については今後こういうことがないようにしなければならない、そういう基本姿勢だということを述べられた。しかし述べておきながら、P3Cの問題で新たにこのE2Cの問題が起こってきた。これはただ単にアメリカの国内問題とかスキャンダル問題とか、政治献金だけの問題じゃないんですよ。いろいろな疑惑が寄せられている田中・ニクソン会談でこの問題が事実上問題になったのかどうなのか。そこでつくられたというふうにアメリカで報道されている小委員会というのが事実上存在したのかどうなのか、そういう問題として、事態を解明するために重要な問題があのチャーチ委員会でチーザム氏の証言となって出てきているわけですから、これについてはもっと明確な態度をとる必要があるんじゃないでしょうか。そういうことをやると、いわゆる疑惑の問題を覆い隠してしまう、そういう外務省が姿勢にあるということになりますけれども、どうなんですか。
  251. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) いままで報道されております限りにおきまして、また、われわれが議事録等を取り寄せて調べました限りにおきましては、日本人が直接関係して、まあロッキードのような贈収賄的な容疑のあるような問題があるということは出てきておりません。外務省は検察庁でもございませんし、われわれとしてはそういう報道から判断して、必要な議事録はとって関係方面にはお配りはいたしてはおりますが、それ以上のことは調査する立場にはないわけでございます。
  252. 立木洋

    立木洋君 法務省はこのチーザム氏の証言に関心を持たれておりますか、全く無関心ですか。
  253. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 御指摘の点については、外務省からもどういうことであるかということの情報は得ておりますけれども、この点について法務、検察当局として、現在の段階において何らかの日本の国内において犯罪捜査なり犯罪の容疑というものとの関連があるというような資料なり知識は全く現在持ち合わせておりません。
  254. 立木洋

    立木洋君 いや、犯罪の事実があるかどうかということでなくて、この問題についても今後ともやはり関心を持っていく、そういうものとして考えておられるのか、全く無関心なのかどうなのか。関心があるのかないのかという点を聞いている。
  255. 吉田淳一

    説明員吉田淳一君) 私どもといたしましては、やはりロッキード事件のように、その中に贈収賄その他外為等々の犯罪の容疑がある、そういう疑惑があるということで、それについてはその真相を明らかにする責務を持っておるというふうに考えておりますけれども、ただいまの、本件についてはどういう事態であるか、私どもとしては正確につかんでおりませんので、これについて私どもが関心を持っている、あるいはどうするかということをいまの段階で申し上げることができる材料は持っていないのでございます。
  256. 立木洋

    立木洋君 あくまで無関心であるという御答弁ではないというふうに私は理解しますが、問題は、この点については先ほど局長がいろいろ言われましたけれども、やはり重要な問題があると思うんですよ。  これはアメリカの日本に対するいわゆるトライスターの問題でも売り込みですよ。それからP3Cもそうですよ。E2Cもそうですよ。そういう売り込みの問題に関連して、大変な疑惑という問題でロッキード社のああいう疑獄事件ということで大変な事態になってきた。当初いろいろ議論があった、ロッキードの問題が起こったときに。これはアメリカが言っているのが本当か日本人が本当か、どちらを信頼するか。アメリカ人が言っているのが全部本当だというふうには思えないとかというふうなことで、あのコーチャン氏の証言がいろいろ賛否両論があって、議論になった時期もあったと思うんです。しかし、現実にはあれがどんどん発展して今日の事態になったら、元総理を含む三人の国会議員が逮捕されたでしょう。そういう事態にまでなったわけですよ。  あのときにロッキード社の問題がアメリカで発表されて、コーチャン証言があって一カ月後この外務委員会を開いたときに、私は外務大臣に質問したわけですよ。あなたはこのロッキードの問題についてどういうふうにお考えになるか、疑惑があると思うかどうか。いわゆる疑惑があるというふうな点について、私もそのように考えておるということをあのとき宮澤外相は言われた。まだだれも逮捕されていないときですよ。三月四日の議事録を読んでいただけばわかりますけれども。そういう問題に関して、これは日本とは関係がないと言うけれども、日本関係があるんですよ。田中角榮というのは日本人でしょう。いま疑惑の焦点でいろいろ問題になっている人物ですよ。これが田中・ニクソン会談で問題になったのかならないのか、どういう形で問題になったのか。P3Cの問題についてもいろいろ問題にされて追及されている状態の中で、このE2Cだけが全く正常に取引がされる、あるいは話し合いがなされた、あるいはなされない、そういうことは問題にしなかったということではないんですよ。  そういうふうに考えてくると、この問題は非常に疑惑の絡んだ問題だというふうに見ざるを得ないし、現に政府としてはチーザム氏にも会っていないしパーシー上院議院にも何ら聞いてもいない。あのとき、ロッキード疑獄事件が起こったときに、外務省のとった措置というのはきわめて適切ではない。何でもっと早急に外交措置をとらなかったのかという批判が当外務委員会でも行われたことはあなたも御存じだろうと思うのですよ。まさに第二のロッキード事件になるかならないかという問題として存在しておるこのグラマンのE2Cの問題について、外務省がそんな姿勢で、議事録とって、ああこれは日本には関係ありません……。田中角榮、日本人でしょう。関係ないですか。
  257. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 私が申し上げたいのは、ロッキードの場合にはコーチャン証言というのがありまして、これは明らかに日本政府職員——ガバメント・オフィシャルズに金が流れたということを言っておるわけであります。したがいまして、これは確かに日本人が関係しておると疑うに足る証言でございますので、それをもとにしてわれわれとしてもできるだけの資料をアメリカから取り寄せ、法務当局にも差し上げて捜査をしていたわけであります。しかし、今回の場合はそういうことではなくて、ただ日本に——日本のみならずイランとかそういうところにも関係しているわけでありますが、そういうところにグラマン社が飛行機の売り込みをやっておった。その関係でアメリカの国内で選挙資金の献金問題があったという報道でありまして、またそういう証言でありまして、それ以上のことは出ておらないわけであります。それを現在の段階においてそれ以上調べるということは、われわれの立場としては特にいたしておらないわけであります。
  258. 立木洋

    立木洋君 ロッキードの問題が問題になって、直接ああいう形で発覚したのは二月の四日と六日のチャーチ委員会です。しかし、その前から、半年前の九月の段階でいろいろな問題があり得るということを察知していろいろやられたわけでしょう。これは三月四日の外務委員会でちゃんと局長自身が述べたですよ。九月の段階でロッキード社の問題にまつわる疑惑という点で、日本の問題は何もチャーチ委員会出ていないですよ。出ていないにもかかわらず、前の年の九月の段階でそういう問題については外務省としては感心を持ち、その問題についていろいろと調べる手だてをあなた自身とったということを三月四日の外務委員会であなた述べられたですね。これは後で、いわゆるチャーチ委員会で、アメリカの手で再びこの問題が、グラマン社の売り込みの問題に関して疑惑の問題が出てきたらあなたどうします。
  259. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) ロッキードの問題に関しましては、ちょっといまはっきり記憶しておりませんが、八月の二十五日か六日に、上院の銀行委員会において取り上げられまして、そのときに総額としてたしか二千二百万ドルぐらいの金が外国の政府関係者に流れたという証言がありました。たしかこれはホートン会長の証言であったと記憶しておりますが、その際に、銀行委員会委員長は、各国別に、ことにロッキードの売り込み先である各国別に、この国はどうかこの国はどうかということを聞いたわけでありますが、これに対してはホートン会長は、国別についていろんな具体的なことを言うことは一切差し控えたいということで終わりまして、それ以上の発展はなかったわけであります。しかし、その後九月の十二日でありましたか、チャーチ委員会におきましてロッキード社の問題が取り上げられたわけです。ただし、そのときは日本の問題は一切出なかったわけであります。しかし、そういうふうなアメリカの上院における一連の調査というものについては、われわれもそういう観点から注意をいたしまして、そのときどきの議事録というものは取り寄せていた。したがって、二月四日、六日のチャーチ委員会における公聴会についても、われわれとしてはその点は十分フォローしていたということは申し上げた次第でございまして、そういう公聴会の議事のフォロー以上にわれわれが、何と言いますか、インベストゲーションというか、そういうことをやっておったわけではもちろんございません。
  260. 立木洋

    立木洋君 大臣、いろいろいま私がお尋ねしたこと、また政府委員の方が御答弁なさった経過についてはもうお聞きになったと思いますけれども、九月の十三日に御承知のチャーチ委員会で、グラマン社が日本へのE2Cの売り込みの問題に関して、田中・ニクソン会談でそういう問題を取り上げてほしいという要請をした、アレン氏に対して。だから、その要請があったという時期、四月、五月については否定したけども、しかし、そういう要請が一切なかったと否定はしていない。同時に、そういう売り込みに関して促進をしてほしいという要請はあったという問題がある。しかし、政治献金の問題については否定しておる。グラマン社の幹部、さっき言ったオラム氏が言ったんでは、いわゆる田中・ニクソン会談の作業部会でグラマンのE2C問題が取り上げられたことを示す文書がグラマン社にありますということを明確に記者に述べているわけですね。そしてこれは、御承知のようにP3Cは国産化でやると言っとった。これが白紙還元されてアメリカからの輸入になった。E2Cもこの同じ時期なんです。これも国産化で、早期警戒機は国産化でやるという方向だったのが白紙還元されて、同じようにアメリカから輸入されるようになった。  こういう経過を踏まえると、いままでロッキードの問題が起こってからいろいろ議論がありましたけれども、ずっと突き詰めていけば、いわゆる疑惑が犯罪事実として国会議員が三名逮捕されるという事態にまでなって、ここまできてある程度明確にされてきたわけですけれども、この同じ時期に起こったグラマン社の日本へのE2Cの売り込みの問題に関する疑惑という問題は、私はどうしてもあるんではないか、正しい形でそれが行われたのかどうなのか、それがいわゆる賄賂だとか等々という犯罪事実に結びつくかどうかという問題は別として。この問題は、ただすべきはただしておく必要があるんではないかというふうに感じるわけですけれども、いままでの質疑をお聞きになってどのようにお感じですか。
  261. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 山崎局長からいろいろ申し上げましたとおりでございまして、先ほど法務省の吉田事課長からも御答弁がありまして、私もそういうもんじゃないかというふうに思います。すなわち、まだそういう事案というようなものが考えられない現在において、私どもの立場としてそれがいいとか悪いとか、そういうことを言う立場にないというふうに思っております。
  262. 立木洋

    立木洋君 いや、いいとか悪いとかでなくて、このP3Cとの関連で考えるならば、やはりおかしなことがあるんではないかというふうなお感じはしませんか。こういう内容というのが全く正常で、ヂーザム氏が言ったのは一切合財でたらめで、日本とは全く関係がないというふうにお考えなのか、それは多少なりとも確かめておく必要がある問題だというふうにお感じなのか、よいとか悪いとかではなくて、そういうお気持ちはお持ちにならないかどうかということです。
  263. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはアメリカの関係でございますので、山崎アメリカ局長がいろいろ、この点について先般も上田耕一郎議員からもお話があったようでございますし、その点についていろいろ先方と話をしておりますが、ただいま御答弁申し上げたとおりのことでございますので、私としてはそれ以上言うことはございません。
  264. 立木洋

    立木洋君 このチーザム氏が証言したときに、防衛庁の方にお尋ねしたいんですが、いわゆるサンクレメンテ小委員会だとか作業委員会だとかというふうな表現がされておりますけれども、あの佐藤総理がアメリカの大統領と会談したときに随行された防衛庁の次官クラスの方はどなたでしょうか。同行していませんかどうか。
  265. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 防衛庁からは随行していないと思います。
  266. 立木洋

    立木洋君 その前後に、アメリカのマーシャル・グリーン国務次官補と防衛庁の次官とが話し合ったことはありませんか。
  267. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) それもないと思います。
  268. 立木洋

    立木洋君 結局、アメリカ側が述べていることは一切でたらめだと、そういう事実はないというふうに防衛庁はおっしゃるわけですね。
  269. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) でたらめとは言っておりませんが、防衛庁は一切関知していないということでございます。
  270. 立木洋

    立木洋君 この問題を、私はP3Cだけの問題との関連でこのグラマンのE2Cの問題が疑惑があるというだけではなくて、この間のアメリカとの外交交渉、折衝等々の経過、これについてはいろいろとまた外務省当局としては否定される面があるかもしれませんけれども、見てみますと、このE2Cの問題やあるいはP3Cの売り込みの問題が進められた状況というのはどういう時期かと言えば、これは御承知のようにアメリカがドル危機でドルの防衛をしなければならないし輸出を促進しなければならないという時代だった。特に兵器の売り込みという点では、アメリカとしては強力な兵器輸出の促進を図るという状態にあった時期だということが言えると思う。これは一九七二年の十月に、四次防を日本で作成する前に、その四次防の作成と絡んで、いわゆる質の高い装備を整えるというふうな考え方に、日米両国首脳間でそういう考え方で一致点があったということも、これは事実としていろいろ報道されていると思うんですね。この点については、もう一九七一年の八月三十一日ですか、佐藤総理自身がニューヨークタイムズの記者に対して、日本は高度な軍事物資をもっと買い付けることができるようにしたいというふうに言われた。その後、当時の外務大臣であった福田さん自身も四次防の期間に米国の兵器をできるだけ購入するという意向を固めたと、これは新聞報道ですから福田さんがそういうことを言われたのかどうかは、これは本人に聞いてないからわかりませんけども。そしてその前に七月の段階では来日しておったレアード・アメリカ国防長官が当時の増原防衛庁長官と会われたときに、いわゆる三つの点、日本の防衛の整備に対する協力として兵器の質の改善と有効な装備の促進というふうなことについて話し合われた、そういう状況にあった時期だと思うんですね、この時期というのは。そしてこういう時期というのは、ロッキード社が積極的に売り込みをやるとか、そのためにいろいろと汚い手段を使ったという問題として今日のロッキード事件というのが問題になっておるわけです。グラマン社が、いわゆるロッキード社が、他社が政治献金をしておるという圧力を感じたということをグラマン社の幹部自身が述べておる。そして田中・ニクソン会談で輸出を取り上げてほしい、輸出の促進を取り上げてほしいという要請があったという事実は、これはチーザム氏が述べているだけではなくて、それを受けたアレン氏も否定していないわけだし、グラマン社の幹部に至っては、取り上げてもらったという文書がグラマン社にあるということまで明確に述べているわけですから、この事実というのはやはり明確にしておくことが私は必要だろうと思うんです。  今後そういうふうな事態を、外国の手をかりて日本外交上に起こるいろいろな疑惑にまつわるような事態を、外国の手をかりなければ解明できないというふうなことではなくて、やはり日本政府自身がロッキード事件を徹底究明して再びそういう事態を起こさないと、外相そう言われたわけですから、そのためにもこういう問題についてはやはり適切な措置をとる。何もわれわれは犯罪があった方がいいということを言っているのではなくて、ない方がいいんです。だけど、疑惑についてはきちっと解明をして明らかにしておくということが必要ではないだろうか。そういう点に関してはやはりP3Cとの関係もあるわけですから、法務省も私は当然この問題については関心を持ってしかるべきだと思う。  そういう点で、私は次の点を外務省に要請をしたいと思うわけですが、先ほど言われたチャーチ委員会での議事録は取られたということですから、この問題に関していわゆるグラマン社にあると言われる文書、これを日本側政府の交渉において入手してほしい。それから、アメリカの政府がチャーチ委員会に提出したと言われる田中・ニクソン会談に関する一部のメモ、これについても入手するようにしてほしい。それから、日本側田中・ニクソン会談会議録があれば、それも提出してほしいと、こういう点を要望したいと思いますが、いかがですか。
  271. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 第一点の、グラマン社にあると言われる文書、これは新聞報道によりますと、田中・ニクソン会談の作業部会でこのE2Cの問題が取り上げられたことを示す文書ということでありまして、田中・ニクソン会談それ事態の問題ではないわけでありますが、そういう文書があるということをオラム社長が言っておることは事実のようであります。この点につきましては、まあ私企業の内部文書でございましょうから、果たしてくれるかどうかわかりませんけれども、われわれとしてはそういうことを新聞に彼らが語っておるのであれば、一応これは照会してみたいと思います。  それから第二の点につきましては、先日参議院の予算委員会におきましても他の委員からお話があったわけでございますが、この問題に関しましては、われわれはすでにアメリカ側に照会しております。これは国防省がチャーチ委員会に出したと言われる文書でございますが、これは機密表示が秘となっておるということでございまして、また、チャーチ小委員会もこの秘密性は守るという条件で受け取っているようでありまして、したがいまして、この資料を入手して公表するということは私たちとしてはできないと考えます。ただ、その際われわれとしても問い合わせた結果としては、この資料はいずれにせよグラマンのE2Cのイラン向け輸出に関するものであって日本に関するものではありません、ということを国防省筋は述べております。その意味でこの資料は入手は不可能のようでございますし、また、仮に入手しても日本には関係ないということをアメリカ側は言っておるわけでございます。  それから三番目に、田中・ニクソン会談関係の資料を出せということでございますが、この種の首脳会談等につきましては、その内容に係る資料を公表いたしますことは、相手国に対する信義の上からも従来一切行われておりませんので、本件について資料を出すことは差し控えさしていただきたいと思います。
  272. 立木洋

    立木洋君 大臣に最後にお尋ねしておきたいんですが、まあ照会した結果はまたお知らせいただきたいと思います。  先ほど一番最初にお尋ねしましたように、こういう事態が再び起こらないように努力したいし、閣僚の一員としても努力される趣旨のお話があったと思います。この問題については、やはり犯罪事実があるとかどうとかいう問題ではなくて、いろいろと疑惑にまつわる問題があるわけですから、こういう問題については、いわゆる犯罪事実をあばけとかどうとかというふうな問題ではなくて、必要最小限のやはり外交的な措置をとって、アメリカ側でそういう報道をされてる、しかし、日本側としては確かめた結果その事実はこうであるというふうな、しかるべき措置を私はやはりとっていただきたい。ただ議事録だけを取り寄せて、全く関係がない、関知しません、アメリカのスキャンダルですというふうな態度ではなくて、現に田中角榮の名前が出てきてるわけですから、そういう問題に関してはやはりしかるべき外交措置はとるような姿勢を大臣にとっていただきたい、そういうことを最後に要望しておきますが、一言それについての御見解を述べていただきたい。
  273. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 疑惑が現にあるという二とになりますれば、外国で起きたことでございますから、その調査のできるような措置を外交的にとるということは私の責務かと思いますが、ないものについて、あるんだろうというような形でいろいろ言いますことは、これまたわが国の信用にも関することでございますので、その辺はよく勘案いたしてまいりたいと、こう思っております。
  274. 向井長年

    向井長年君 外務大臣、短時間でございますからもうしばらくごしんぼうお願いします。  言うまでもなく、政治の根幹というのは内政、外交、防衛と、まあこうなっておると思います。内政の場合においては経済、財政という問題が中心であろうと思いますが、そういうことで考えてみたときに、今回の第二次三木内閣改造、これに対しまして、御承知のごとく経済を担当しておるというか福田副総理、あるいは財政担当と申しますか大蔵大臣、それから防衛の坂田長官、これ三人皆留任しとるんです。ところが外務大臣だけがこういう非常に多端な折に更迭され、また小坂外務大臣就任された。われわれは小坂外務大臣就任歓迎しておりますよ。先ほどもごあいさつございましたが、われわれは大いにお祝いしたいという感じでございますが、これは私は内政干渉、自民党の内部の干渉はしませんけれども、これは三木内閣外交路線が宮澤前外務大臣では違ったのか、あるいはまた場合によれば派閥均衡の上からこういうように更迭されたのか、それとも宮澤前外相が、私は今度は何としてもやめさしてもらいたいという形でやめられたのか、この点どうなんですか。  なぜ私がこういうことを言うかというと、小坂外務大臣の先ほど言った覇権問題一つにしても、考え方が宮澤さんとはやはり違うんですよ。一国の内閣が、同じ内閣が、外務大臣がかわることによってこういうものが変わってくるということも、これはまた重大な問題だと思う。そういう意味から、覇権問題はわれわれも反対でございますからこれはいいんでございますが、そういう点、ちょっと外務大臣に聞くのおかしいかしらぬけれども、先ほど言ったその他の大臣は全部留任しておるが、外務大臣がなぜこういう形になったのか、この点ちょっとお答えいただきたい。
  275. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは実は三木総理に聞いていただいた方がいいんじゃないかと思うんでございまして、私は任命された方でございますので、どうも私の方からいろんなことを申し上げる立場にないわけでございますけれども、事外交につきましては、私は宮澤君とそう違ってるとは思っておらないのです。現に、引き継ぎを受けた後で外務省へ参りまして、宮澤君は非常によくおやりになったんで、その継続をやっていくというあいさつをいたしました。ただ、人の顔が違うように多少のニュアンスの違いがあるかと思いますが、根本的に自由民主党の外交路線というものが宮澤から小坂になって変わるということはない、さように考えていただいてよろしいかと思います。
  276. 向井長年

    向井長年君 しかし、国民はそう受け取ってないんですよ、幾らどう言われても。それは言葉のあやとか若干のニュアンス、あるいは今後の外交に対するいろんな検討の仕方、いろいろこれはあると思います。しかし、重要な日中平和友好条約の問題一つ見ましても国際的に根本論が一つある。これがやはり違うことは、これは大きな、ニュアンスじゃないのですよ、そういう意味から私はいま質問しておるわけですが、この点いかがですか。   〔理事秦野章君退席、理事戸叶武君着席〕
  277. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は、そういう非常な際立った違いは私はないと思っておるんです。私も自民党の外交調査会長もいたしましたし政務調査会長もいたしました。私自身外交問題の基本線を自分で書いたりしたこともございますので、根本論は変わりません。ただ、そのいまの日中問題について仰せられますと、これはどうも本当のところ、まだこういうふうにした方がいいということが決まっているわけじゃないのでございまするけれども、ただ、先ほどちょっと昼の食事のときに下へ参りましてある新聞を見ました。その新聞は、私けさ見てこなかったので見ましたら、覇権問題について第三国をはずすということが出ておりました。私はそういうつもりは実はないのでございまして、何か第三国、特定第三国に対して何かいやみを述べるようなそういうことがあったんではまずいと思っておりますものですから、何か私の言葉足らずであるいは誤解を生じているのかなあというふうな反省もいたしておるわけでございます。  ただ、結論から申しますと、宮澤大臣におかれても私におきましても、日中友好平和条約は早くつくりたい、こういうことを考えておりまする点は同じだと思います。それは宮澤君にいろいろ御苦心を願いましたので、それのフォローアップをする者として、またいろいろそこにさらに工夫を加えていくということもどうであろうかと、先方との忍耐も、大臣自身は年年の九月の国連総会の際に行われただけでございまして、私はもう少し責任者がしばしば会う形にして、その間に了解し合うということが必要なんではないか、こんなふうに思っておりますので、そういう点は多少タッチの仕方が違うかもしれませんけれども、根本的に日中平和条約をつくらぬ方がいいと、つくる方がいいと、あるいは遅くやる方がいい、早くやる方がいい、そういう違いはございませんわけでございます。
  278. 向井長年

    向井長年君 先ほどからもいろいろ論議がございますが、日ソ問題でソビエトの外相と国連で会われた。新聞報道では非常に冷淡だったというような報道が国内で流されておる。これはそういうことであると思いますよ。  そこで、先ほどもいろいろ論議があるミグ25の問題については、これは本当にわが国にとっては大きな災難ですよ、御承知のように。災難が降りかかって、そしてその災難に対してわが国ソ連に対して本来抗議でしょう。しかし、逆に抗議をいま受けておるですよ。まことにこれはいかぬ、国民感情としてこれは非常に疑惑を持っておるんです。この点について私たち考えた場合に、確かにその後の措置という問題も適切であったかどうかというものは疑問を持つのです、国内のいろいろな措置、先ほどから論議されている問題。それが証拠に、報復手段というか、あのミグが飛んできてから御承知のごとくこれまた日本の領海において七隻漁船が拿捕され、しかも三十六人が逮捕されておるんです、拿捕されておるんですね。外務大臣御承知でしよう。これは予算委員会でこの間答弁されたことですよ。それくらい報復的な、しかもわが国の領海内でやられておるんです。これは少なくとも主権国家としては堂々と抗議を言い、それに対する対処をすべきだと思うんですよ。  ところが、何かミグから今日非常に受け身になり、そして早く機体は返しますというような形で、若干ソ連側も好意を示したとか何とか言っておりますけれども、まことにこれは一方においては本当にわが国としてはけしからぬ話だと思うんです。それと同時に、先ほどからも黒柳君の論議の中で言われておりましたが、これはアメリカのいわゆる役務提供か何か知りませんが、予算委員会でこれは私も質問したときに防衛庁長官は、たとえば輸送一つにしてもわが国の力ではできないんだ、したがって、輸送関係はアメリカに依頼するんだ、こういう答弁があった、どちらがこれ本務なんですか。輸送のためにアメリカに協力を願うのか、あるいはまた機能調査のために願うのか。たとえば機能調査は国内、言うならば自衛隊あるいは民間技術者含めてできないものか、できないからアメリカの技術をかりるのか、この点どちらが本務になっているのか。予算委員会では輸送ということだけを言いましたよ。この点はどうなんですか。
  279. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まずソ連との関係ですが、おっしゃるとおりはなはだ迷惑をしておるわけです。迷惑をこうむっているのはわが国でございます。   〔理事戸叶武君退席、理事奏野章君着席〕 したがいまして、私はグロムイコ外務大臣に対しましても、この事案の処理の仕方は正当である、あなたの言うのは言いがかりであるということを申しました。とにかく友好国であるならば、すぐに機体も人も返すべきであるにかかわらず、それをしないで、そして何か精神錯乱のようなものをさせて、そうしてソ連の人とも会わせないでアメリカへ送っちまったというような、非常に事実に対して違うことを言うもんでありますから、それはよくただしました。さらに、機体についてもよく先生御承知のようなことでございまして、わが方は正当なことをやっているわけです。正当なことをやっているのに一体報復とはどういうことであるかということであります。この点は先方は報復措置のごとき話は一言も出ておりません。私との会談では全くそれは出ておらない。ただ、御承知のようないろんな領土問題その他についての意見はございましたけれども、これはまあ私は根本的にこれで状況が変わったとは思っておりませんわけでございます。むしろ向こうは日本をおどかせば日本政府のやり方がまずくて拿捕が起きた、報復措置が起きた、政府が非常に窮境に立つのじゃないか、だから強く行けというような気持ちがあるんじゃないかというふうに私は察しまして、正しいことはどうなにそれは大国であり力があろうとも、われわれとしては正しいことをやっていることはあくまでそれを主張すべきであるということで非常に粘り強く話したわけでございます。  幸いに、この拿捕事件は先生はわが方の領海とおっしゃいましたが、それは七件でございまして、一件が沿海州でございまして、他の六件は北方領土の水域でございます。これは九月に五件、十月に二件起きておりますが、昨年の同期には九月三件、十月八件でございまして、昨年同期に比べて特にふえているわけでもございません。だからといって、もうこれでいいんだというわけじゃございません。先方のやっていることについて十分こちらとしては目を光らせていなければならぬわけでございますけれども、さらに、日航の乗務員の無査証入国トラブルの問題についても、これはソ連側の内部の取り扱いミスであるということを言ってまいりました。そのいわゆる報復措置というようなことはこっちから言うのはもうどんなものか、向こうが報復措置を言っていないのに、こっちが報復措置を受けるかもしれぬというようなことを言うことはむしろ逆でございまして、こちらがまさに向井さんおっしゃるように、向こうのやっていることが非常にこっちに迷惑を及ぼしているじゃないかという態度でいって初めて正当な結論が得られるというふうに思っております。  それから防衛庁のやられたことは防衛庁の方からお答えいただきたいと存じます。
  280. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) 先ほど先生のお話に、一体輸送に対して技術員が必要であったのか、それからまた調査に対して必要であったのか、私どもは両方必要であったと考えておるわけでございます。御存じのように、形から見ただけでもわかると思いますが、あのミグを運ぶためにはどうしてもギャラクシーというアメリカの飛行機を持ってこなければ、とてもわれわれは運べなかったという背景にございます。乞ういうことで、輸送とそれから調査と両方に必要であったということでございます。  ただ、先ほど公明党の黒柳先生からの御質問の中に、自衛隊の指揮下に……
  281. 向井長年

    向井長年君 そんなことは、質問してないことを言う必要ないじゃない。質問のことだけでいいじゃないですか。  先ほどもちょっと立木君からもありましたが、日本が、それは性能は違うでしょう、違うけれどもPXLなんか国産化やろうと、これくらい熱意を持って研究もし、やっておられるんでしょう。そういう中で、もちろんこれはミグとは性能は違うでしょう。そういう能力は日本技術関係ではないのか、民間も含めて。アメリカにお手伝いをしてもらわなければ機能に対する調査はできないんですか。国民は非常にこういうことに疑問を持っているんだ。
  282. 中村弘海

    政府委員(中村弘海君) できないと思います。  詳しいことは審議官の方から。
  283. 渡辺伊助

    説明員(渡辺伊助君) お答えいたします。  まず、輸送につきましては、対ソ関係のこともございましたので、解体の程度の問題との絡みでギャラクシーで運ばなければならないという事情がございました。  それから本来の調査のための援助でございますけれども、これは主として機材の提供でございまして、具体的に申しますと、たとえば胴体部あるいはエンジン部、そういうものを破壊しないで、非破壊的な方法で、レントゲン等の装置で透視して調べるというものがございましたけれども、これは自衛隊では持っておりません。したがいましてそういう機材の提供を受ける。機材の提供を受けると同時にその機材の操作に必要な要員の援助を受ける、こういうことでございます。
  284. 向井長年

    向井長年君 それともう一つ、ベレンコ中尉の亡命問題ですが、これも確かに国内法においては不起訴になったと、速やかにやられましたね。これも、言うならばもうわが国は大変な人が日本へ飛び込んできたと、早く本人が亡命したいんだからやっちゃえと、こういう形に恐らくなったんでしょう。ところがソ連では、このベレンコの母親、奥さん、そんな亡命みたいなことは全然考えないという形で、えらい国際的に報道しておりますね。そういうこともされておるんだから、日本としては、こんなことは事実できるかできぬかしりませんが、電話でも直接奥さんやあるいはまた母親にベレンコからさして、そういう手続もやれぬじゃなかったかと、もう何にも、あれは勝手に言っておるだけだと、こっちが調べたら本人はこういうふうにして亡命したいと言っている、ソ連の大使館の職員にもこう見せた、こういう形で何だか手続だけはそういうことをさっさと済まして、そしてアメリカの方に頼んで向こうへ持っていってもらった。どうもこの点が国民感情として素朴に考えて疑問が残るんですよ。そういうことも大きな刺激じゃないか、今日、ソ連に対する。だから一方は災難でありけしからぬという考え方を国民が持つと同時に、日本政府の、あるいはまた防衛庁も含めてとった措置が余りにも単純というか機械的というか事務的というか、そういう形で手を尽くしてない、こういう感じを国民は持つんですよ。この点外務大臣どうなんですか。そういう電話とか、いろんなことで、場合によればベレンコ中尉に、直接奥さんに電話さしてくれ、あるいは母親にも言いたいという形で、大使館を通じて言わしてもよかったんですよ。そんなことできませんか。
  285. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の就任の前のことでよく実は実情存じませんけれども、聞いております範囲では、非常に恐怖に駆られまして、とにかく軍律厳しい中に戦闘機を持って亡命したんだということで、非常に恐怖に駆られておる。一刻も早くというようなことであのような措置をとったように聞いておるわけでございます。しかし仰せのように、やはり何か本人が自書しておりますけれども、こういう際ですから、書く物もさることながら、声を録音するとか、いろいろやり方があったのじゃないかというのは、後になってみると仰せのとおりだと思うんでございますけれども、何せ初めてのことで、しかも本人は生命の危険を感じているというような状況で、大変その点で早くということになったんじゃないかと、さようなような話を聞いておるわけでございます。
  286. 向井長年

    向井長年君 そういう意味で、私はソ連のとる態度もけしからぬし、わが国のこれに対する一連のとった態度も不十分、適切でなかったということは外務大臣認めますか。
  287. 橘正忠

    政府委員(橘正忠君) ベレンコ中尉の件につきましては、ただいま大臣からお話しあったとおりでございますが、事実関係で多少補足させていただきますと、実はこちらに着きましてからすぐ、一つは大臣おっしゃったとおり、一種の大変な決意をして飛んで来ただけに、それに伴う緊張というのもございましょう。それからソ連側には一切自分は話したくもないし会いたくもないということを非常に強硬に主張し続けておりました。私ども、日ソ関係もございますので、そういう本人の意志の確認については、ソ連側と全く会わせないままで出国させては、これはまたソ連側関係もあろうかと考えまして、いやがる本人を説得して、とにかくソ連側とも会わせるという手順も踏んだ次第でございます。仰せのとおり、もうちょっと時間もかけてということも考えられますが、他方そういう本人の気持ち、人道上の問題とか、また警備等の問題ということもございまして、人の処理については比較的早い時期にわが方としての処置をとったということでございます。事実関係の補足説明でございますが……。
  288. 向井長年

    向井長年君 不適切ですね。適切でなかったということ言えますな、外務大臣。  最後に、時間がないようでございますから、大臣がアメリカで記者会見したときに、わが国国連安全保障理事会の常任理事国に入りたいということを希望したようですね。これに対して各国の動向はどうだったですか。
  289. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 共同記者会見でそれを申しましたところが、非常にもっともであるという意見が強うございました。  具体的に申し上げますと、豪州その他でございますが、その根拠は、日本がもう相当に国連に財政寄与していると、分担金から申しますと三番目、アメリカ、ソ連に次いで日本でございます。それから四位、五位に関しましては、もうイギリスの倍も出しておるというようなことで、非常な寄与をあらゆる面でしておって、日本の穏健な主張というものもよく各国にわかっているし、いいじゃないかということなんでございますけれども、ただこれをいたしますには、やはり憲章を改正しなければならぬという大問題がございまして、なかなかそう一朝一夕にはいかないというふうなことであろうかと思うんでございまして、ただ声を上げていることに意味があるのじゃないか。そのことによりまして非常に日本に対する待遇も、早速ワルトハイム事務総長も、どうも日本人の待遇をもう少し重要ポストにつけるようにしなければいかぬと思って事務局にそう言いましたというような話もございましたりいたしまして、実現性から言いますとすぐ急にどうこうというのじゃございませんけれども、やはり全体の国連の中における日本の活動をもっと強化するための何か支えにはなろうかというふうに考えております。
  290. 秦野章

    ○理事(秦野章君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十分散会