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1976-09-30 第78回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十一年九月十六日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 正示啓次郎君    理事 山村治郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 松本 善明君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小澤 太郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    北澤 直吉君       倉成  正君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    田中 正巳君       谷垣 專一君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    根本龍太郎君       野田 卯一君    福田  一君       藤井 勝志君    保利  茂君       森山 欽司君    安宅 常彦君       阿部 昭吾君    阿部 助哉君       石野 久男君    岡田 春夫君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       堀  昌雄君    安井 吉典君       湯山  勇君    中島 武敏君       不破 哲三君    正森 成二君       正木 良明君    矢野 絢也君       河村  勝君    小平  忠君       田川 誠一君     ――――――――――――― 九月十六日  白浜仁吉君が議院において、委員長補欠選任  された。 ――――――――――――――――――――― 昭和五十一年九月三十日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 白浜 仁吉君    理事 井原 岸高君 理事 小山 長規君    理事 塩谷 一夫君 理事 澁谷 直藏君    理事 正示啓次郎君 理事 小林  進君    理事 楢崎弥之助君 理事 寺前  巖君    理事 山田 太郎君       伊東 正義君    上村千一郎君       小澤 太郎君    大野 市郎君       奥野 誠亮君    金子 一平君       北澤 直吉君    倉成  正君       笹山茂太郎君    田中 龍夫君       田中 正巳君    谷垣 專一君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    藤井 勝志君       保利  茂君    安宅 常彦君       阿部 助哉君    石野 久男君       岡田 春夫君    田中 武夫君       多賀谷真稔君    堀  昌雄君       安井 吉典君    湯山  勇君       横路 孝弘君    中島 武敏君       正森 成二君    松本 善明君       石田幸四郎君    松尾 信人君       河村  勝君    小平  忠君       田川 誠一君  出席国務大臣         内閣総理大臣         外務大臣臨時代         理       三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 早川  崇君         農 林 大 臣 大石 武一君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 石田 博英君         郵 政 大 臣 福田 篤泰君         労 働 大 臣 浦野 幸男君         建 設 大 臣 中馬 辰猪君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       天野 公義君         国 務 大 臣         (内閣官房長官井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      西村 尚治君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田 正男君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 丸茂 重貞君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 天野 光晴君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         警察庁長官官房         長       鈴木 貞敏君         防衛庁長官官房         長       亘理  彰君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      竹岡 勝美君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 石原 一彦君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         大蔵省主計局長 吉瀬 維哉君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省銀行局長 後藤 達太君         国税庁長官   田辺 博通君         国税庁次長   山橋敬一郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省援護局長 出原 孝夫君         農林大臣官房長 森  整治君         農林省農林経済         局長      吉岡  裕君         農林省構造改善         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      澤邊  守君         食糧庁長官  大河原太一郎君         林野庁長官   松形 祐堯君         通商産業省貿易         局長      森山 信吾君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  松井 清武君         郵政大臣官房電         気通信監理官  佐野 芳男君         労働省労政局長 青木勇之助君         労働省労働基準         局長      藤繩 正勝君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省河川局長 栂野 康行君         建設省住宅局長 山岡 一男君  委員外出席者         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   大島 隆夫君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 九月十六日  辞任         補欠選任   森山 欽司君     白浜 仁吉君   松本 善明君     寺前  巖君 同月二十日  辞任         補欠選任   山村治郎君     澁谷 直藏君 同月二十二日  辞任         補欠選任   河村  勝君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     河村  勝君 同月二十八日  辞任         補欠選任   黒金 泰美君     金子 一平君 同月三十日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     横路 孝弘君   不破 哲三君     松本 善明君   正木 良明君     松尾 信人君   矢野 絢也君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     阿部 昭吾君   松本 善明君     不破 哲三君   石田幸四郎君     矢野 絢也君   松尾 信人君     正木 良明君 同日  理事松本善明君同月十六日委員辞任につき、そ  の補欠として寺前巖君が理事に当選した。 同日  理事山村治郎君同月二十日委員辞任につき、  その補欠として澁谷直藏君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 白浜仁吉

    白浜委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  このたびはからずも予算委員長に選任せられまして、まことに光栄に存ずる次第であります。はなはだ微力ではございますが、誠意をもって円満なる委員会運営に努力し、もって国政の審議に遺憾なきを期してまいる所存でございます。  何とぞ、練達堪能なる委員各位の御協力、御鞭撻を賜りますよう切にお願い申し上げまして、就任のごあいさつといたします。(拍手)      ――――◇―――――
  3. 白浜仁吉

    白浜委員長 理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  山村治郎君及び松本善明君の委員辞任に伴い、現在理事が二名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 白浜仁吉

    白浜委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、       澁谷 直藏君    寺前  厳君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 白浜仁吉

    白浜委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、予算実施状況に関する事項につきまして、議長に対し承認を求めることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 白浜仁吉

    白浜委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに、委員長において所要の手続をとることといたします。      ――――◇―――――
  7. 白浜仁吉

    白浜委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  8. 小林進

    小林(進)委員 三木総理大臣にお伺いいたしますが、九月二十七日の本会議場におけるわが党の石橋政嗣氏質問に答え、総理は、野党国民の納得するようないわゆる政権担当の用意を示しておったならば、日本政党政治の事態はもう少し変わっていたかもしれぬが、しかし現在も野党政権を渡せという世論の高まりは見られない、こういうふうに答弁をしておられるのでありますが、これは野党第一党の存在を無視し、自民党永久政権を正当化するファッショに通ずる思想と思うが、どうか。社会党は現在衆議院百十二名であります。参議院六十二名であります。自民党に続く第二党であります。第一党の自民党が重大な失敗を犯し、政権担当能力を失った今日、かわって野党第一党の社会党政権を担当するのが憲政常道であると私は思うのであります。国民の御支持を得て第二党の地位にある社会党に向かって、国民支持を得ていないという、そういうふうなきめ方は私は暴論ではないかと思うのでありまして、これはお取り消しを願わなければならないと思います。  現在の三木首相は、田中内閣の後に、これは椎名悦三郎副総裁という産婆役があって、密室の中で生まれた内閣であります。国民審判を受けておりません。これをまずひとつ自覚をしていただきたいと思います。  そこで、ロッキード汚職の問題でありまするが、この問題は主として田中内閣時代に生じておるのであります。昭和四十七年の七月から昭和四十九年十二月まで二年有余田中内閣は存続いたしました。そのときにあなたはその田中内閣の副総理でいらっしゃいました。そしてそこにいらっしゃる福田大平両氏もまた内閣の重要な地位に列しておられたのであります。そして田中内閣のときに、四十七年の十月九日でありまするが、PXL、これのいわゆる国産化を白紙還元するという、このロッキード問題でもって最も中心たる議題が決められているその重要な閣議です、その閣議の中にもこのお三方は参列をして、こういう重大な変更にも賛意を表していたのでありまするから、ロッキード問題には重要な役割りを演じておられたと解釈をしなければならぬのであります。  そういう責任地位におられるあなたたちが、いまこの田中内閣に対する責任を感じているという御答弁一言もございません。これは政党政治のたてまえから見て、あるいは新憲法のたてまえから見て大変矛盾をしているのではないか。新憲法の第六十六条には「内閣は、行政権の行使について、國會に對し連帶して責任を負ふ。」こういうふうに規定してあります。内閣一体性共同責任を規定しているのであります。この共同責任論から言えば、その田中内閣時代にロッキード問題が起きたとすれば、当然あなたは連帯責任を負って責任をとるべきだ、責任をとって辞職し、もって野党第一党の社会党政権を譲り渡すというのが理論的にも憲法学説の上においても政党政治の正しいあり方ではないかと私は思うのでありまするけれども、この点いかが考えるか、承っておきたいのであります。
  9. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君の御質問は――私は社会党政権担当能力がないとは申したわけではない。世論盛り上がりがない、こういうロッキード事件というものがあったけれども、しかし自民党にかわって社会党政権を渡すべきだという、新聞の世論調査、社説などを見てもそういう盛り上がったものはない、こう申しておるので、野党第一党、常に野党第一党の地位を保持されておる社会党には、背後に国民支持があればこそ、これは野党第一党の地位を維持してこられたので、野党第一党の重みを踏まえて、私は将来の期待を込めて言ったわけでございまして、現在の社会党というものを非常に誹謗するようなことは私には毛頭ない。私は、やはり政権交代ルール日本にでき上がることが政党政治の健全な姿であるということは、もうしばしば申しておるわけでございまして、私の言葉期待言葉である、社会党に対する期待言葉であるとお受け取りを願いたいのでございます。それでお答えといたします。
  10. 小林進

    小林(進)委員 世論盛り上がりがあるとかないとかというそういうことは、主観的な物の見方でありまして、確実に世論をキャッチし得るものは、世論支持を証明し得るものは、選挙を通じて与えられたこの百十二なり、六十二の議席が、私は正しく世論支持を証明しているものだと思うのであります。それをあなたは、その支持をおいて、あなただけの主観に基づいて盛り上がりがあるとかないとか、そういう抽象的な言葉政権担当能力がないなどと言われることは、私は民主政治の根幹を誤る、大変誤解を生む言葉だと思いますので、特に本会議場等公式の場合にこういう言葉をおっしゃるときには、厳重に注意をしていただきたいと私は思います。  特に、田中内閣には、繰り返して言いまするけれども、福田さんも大平さんもいられたんです。いいですか、その重要な閣僚は、席を連ねていた者は、私は、先ほども言うように、当然連帯責任を負うべきであるにもかかわらず、自後このロッキード問題が起き上がるや、ロッキード隠し三木引きおろし、政権たらい回し、これに狂奔をして、まさに国民不在政治を六カ月、正確に言えば二月六日のロッキード事件が発生して以来、寧日なきこういう争いに終始をしていられる。これこそが、あなたの言われる議会民主主義の最大の危機を醸し出しているものと言わなければならぬと私は思うのであります。  これは、あなたはうなずいていられますから、私の言うことを了承されたものと理解いたしまして、当然、憲政常道にのっとって、第一党が失敗をすれば野党第一党の社会党政権は譲られるべきだ。しかし、社会党は、政権を譲り受けましても、現在の勢力では社会党の多年の政策を実行するまでの力はありません。ただし、当面する重大な問題あるいはロッキード問題の真相は追及する、あるいは国民生活のいま当面している財政特例法だとかあるいは値上げ二法案等も、わが党の政策であるわが党の主張どおりに、これはやはり責任を持ってやります。そして、当面する災害の問題や冷害の問題も、これはどの政党でもやらなければならない問題だ。こういう問題は処置いたしまして、直ちにわが党の手で解散を実行いたします。解散いたしました暁には、最も厳正かつ民主的に選挙を行います。その結果、国民審判が行われて、社会党政策世論が集まって比較第一党を与えられれば、その時限においてわれわれは改めて野党連合政権なり革新連合政権をつくりますが、しかし、国民審判が残念ながら社会党比較第一党を許さない、あなた方の方へ比較第一党が行ったとすれば、その時限にはわれわれは潔くまた陣を退いて、野党地位に立ちます。  これが私は、新憲法下における一番正しい政治運営ではないかと思っております。ルールでございましょう。それをあなたはおやりにならないで、いわゆるあなた方だけが世論支持を受けているかのような思い上がった考え方にいられまして、社会党世論支持を受けていない。自民党の中でも反主流などというのができ上がっている、三木おろしが行われて、二百七十有余名議員が、みんなあなたの反対に立っている。二十一名の閣僚の十五名が三木反対の声を挙げても、おれは世論支持を受けているから断じて私の方が民主政治の、議会の子だなどと言われる。ここにこそ私は大変危険な思い上がりとファッショ的な思想が根底に流れているのではなかろうかということを疑わざるを得ないのであります。こういう点はひとつ国民の前に明らかにしていただいて、新憲法下政党政治はいかにあるべきかをひとつお答えいただきたいと思うのであります。
  11. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、小林君の御指摘のように、憲政常道と言われるルール日本議会政治にこれが健全に働くようなことになることを願うものであります。しかし、やはり前提には、それにはそれだけの政治環境というものが生まれなければいけない。憲政常道が健全に動くためには、それを可能にする政治環境が生まれることが前提条件である、そういう点で、これは与野党ともに大問題であります。健全な政権交代ルールが健全に働くような日本政党政治にするために、これは与野党ともに考えるべき大きな課題ではある。しかし、ただ憲政常道だけでは現実政治が解決できないものがあるから、そういう常道が健全に動いていくだけの政治環境をつくり上げることに与野党の皆さんがこれから取り組まなければならぬ課題である、こういうことに申し上げておきたいのでございます。
  12. 小林進

    小林(進)委員 若干首相答弁には憲法学者等も加えてまだまだ論議をしなければならぬ問題があると思いますので、それはそれとしておきまして、ただ一言厳重に御注意を申し上げておきたいことは、くどいようでありますけれども、野党の第一党というのは、第一党の与党が間違えばあすにでもそれに成りかわって政権を担当する責任と義務を持っておるのであります。そういう政党に対して本会議場において国民世論支持していないとか、そういうようなことは断じておっしゃらないように厳重にひとつ御注意していただきたいと思うのでありまして、これで私は第一問を終わり、第二問に移ります。  第二問といたしましては、指揮権発動の問題でございますが、これも三木内閣は、反主流派との話し合いで、あるいはロッキード隠しをおやりになるのではないか、こういう疑点が静かに深くいま国民の間に潜行し始めているのであります。  そこで、私は申し上げますが、汚職疑獄について、この事件隠しというものについて最も悪い先鞭をつけたのが、昭和二十九年の吉田内閣における造船疑獄指揮権発動でありました。これはもう世論が全部知っておりますから繰り返しません。いま一つあるのであります。それは昭和四十一年のいわゆる共和製糖事件等に行われた俗に言う黒い霧解散でございまして、黒い霧解散、あの解散という名のもとの指揮権がまかり通って、選挙と同時にあのもやもやの黒い霧が全部、道義、正義的ないわゆる追及の範囲から逃れてしまった。そこで、なお昭和四十一年の吹原産業事件等も、当時あれだけ政界との結びつきが叫ばれたにもかかわらず、結果はごくあたりまえの詐欺事件という名分に終わっていて、これはまた国民の間に捜査当局に対する深い疑いがいまなお残っておるのであります。  そこで、今度もまたこの前例にならって、ロッキード隠しのためにいずれかの方法が行われるのではないか。特に児玉、小佐野、中曾根議員等ルートは、国会解散をもって、また共和製糖等のごとく雲散霧消されてしまうのではないかという、こういう疑点が非常に濃いのであります。こういう国民の疑惑に答えるためには、この国会解散の前であります、あるいは満期終了の前に、いま申し上げましたルートを何としてもその真相を追及し、国民の前に明らかにするという、こういう作業をしていただかなければならぬと思います。もはや理屈ではない。これをおやりになるかどうか、総理大臣にひとつ御決意のほどを承っておきたいのであります。
  13. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初に申し上げておきたいことは、ロッキード隠しと申しますか、ロッキード事件を中途半端でうやむやにして、私は政権を生き延びようとは考えていないのであります。私はそんなに政権亡者でない。これは断じてそういうことのないことは明らかにしておきます。国民に対しても誤解を与えます。そういうことはない。そういうことをしてまで政権を生き延びようという、そんな政権亡者では私はないということです。  ただしかし、児玉ルートの解明ということは、御承知のように、児玉自身がああいう病状にあることは事実であります。予定よりも捜査が非常におくれておる。しかし、ロッキード事件というものは、児玉ルートの解明なくして全容は明らかにならない。やはり一番ロッキードから渡された金というのが多額であるのは児玉ルートでありますから、どういう困難があっても、私はロッキード事件の全容を明らかにするためには児玉ルートの解明が必要である。あらゆる困難を排してこれを解明したいと思いますが、それはその時期について法務大臣からお答えをすると思いますが、小林君の言われること、私は理想だと思いますね。やはり総選挙前にこういうことが解明されて国民に判断の材料を与えることが適当だと思いますが、これはやはりこちらとしては、われわれもそう望むのですが、いろいろな捜査、本人にいろいろな障害もあるわけでございますから、でき得べくんばそうありたいものだと願いますが、これは法務大臣から、そのいまの状態については御報告をいたします。したがって、最初の点はこれは明白にしておきます。
  14. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 児玉ルート捜査はただいま続行中でありますから、一日も早くこれを解明して後に選挙をやった方がいいことは、それはもう常識上当然でございます。おっしゃるとおりでございます。ただ、その一生懸命に解明しつつある今日の段階で、私はいつごろまでに終わりそうだとか、終わらしてほしいとか、法務大臣の立場でこういう公の席上で申し上げますことは、間接的な指揮権の発動にもなりかねないというようなことも言われますので、時期についてここでお答えすることは差し控えますが、とにかく一生懸命にやっています。  それから、ロッキード事件というのは、従来の疑獄事件、あなたはたくさん挙げられましたけれども、これは国内の事件でありましたから比較的よかったのですけれども、今度のは、遠く遠く海を隔てた向こうの方に震源地があるむずかしい問題ですから、しかもこの第三の山と称せられる児玉ルートは一番向こうに関係の深い事件で、何しろ逃げる方も国際協力で一生懸命なものですから、究明の方も一生懸命ですけれども、せいぜい一生懸命にやって国民期待、あなたの期待に沿いたい。一生懸命にやっているところでありますから、しばらく御猶予を賜りたいと存じます。
  15. 小林進

    小林(進)委員 私は、法務大臣の真意を疑う者ではございませんけれども、あなたは郷里の村上等に行かれて児玉ルートも十月中には問題の解決をしたいという、こういう予測を発表せられた。しかるに、きのうきょうの新聞を見ますと、これはあなたではないが、捜査当局の意向でございましょうか、小佐野氏、児玉ルートは、これはどうも来年まで捜査を継続しなければならぬだろう、こういうことの予想の記事が発表せられておるのでありまして、来年まで継続することになれば、いまあなたたちがここで力んでどう言われたって、一たん解散してしまえばもはやあなた方は責任地位にいられないのだから、おまえ、あのときにあんな約束をしたじゃないかと言ったところで、もう何にもならない。それがロッキード隠しに通ずるということを私は言っているのだから、解散の前に何としても問題の処置をしていただきたい。  なお、国民の側から見れば、この児玉問題における重大な問題点は、全日空の購入をしたエアバスではないのです。自衛隊で使用するP3Cの購入の問題に国民の一番大きな疑点がある。いわゆる対潜哨戒機を国内産でやるという方針を一九七二年の十月九日の国防会議でこれをやめて、それからロッキードもP3C購入の方向へいわゆる道がつけられていく。その問題に対してどうも捜査当局の見解の進展が少しも出てこない。だから国民は、あの一番重要な点はどうも打ち切られたのではないか、こういう一点の疑点があるのでございます。P3C購入の問題については、久保前防衛事務次官の発言があったり、相沢元大蔵事務次官、後藤田元警察庁長官等の高級の官僚がこれに癒着をしているということも国民は全部承知をしておるのです。その中で、どうもあなたは否定されましたけれども、何か防衛庁はまだロッキードのこの問題のP3Cを購入するかのごとき行動をおやりになっているのではないかというような疑惑も出ておるのでありますが、そういうもろもろの問題が絡んでおりますから、捜査当局の御事情もありましょうけれども、ひとつ精力的にやっていただいて、何としても国会解散前にこの問題を処置するように行動を起こしていただきたいということを厳重に希望いたしておきます。御答弁がなければ次へ移りますが、よろしゅうございますか。(「PXLはどうなる」と呼ぶ者あり)
  16. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いまのPXL等も含んだ事態の究明に関する小林委員の御希望に沿うように、一生懸命にやります。
  17. 小林進

    小林(進)委員 明快な御答弁がありましたから、第三問に移りまして、私は灰色高官に関する三木首相の御回答について御質問をいたしたいと思うのであります。  結論から申し上げますと、灰色高官は、私は行政府の最高長官たる総理大臣と政府の責任においてそれは判断を行うべきであるというのが私の主張であります。あなたはこの灰色高官その他の問題について、ロッキードの解明について、十月の十五日までに稻葉法務大臣に丸紅、全日空のルートについての中間報告はさせる、この報告では金品の授受はあったが起訴に至らぬ者は、捜査結果も含めるが一般的概要にとどめ、具体的氏名の発表はしない、灰色高官の範囲については国会の意思が統一された後資料提供を行うが、刑事訴訟法の立法の趣旨に照らして当該委員会は秘密会とする、現職議員の証人喚問についても当然委員会が慎重に検討すべきであるという、こういう回答をお出しになっております。この中には総理大臣としてのリーダーシップもなければ、あなたの所見も指導性も一つも入っておりません。何も入っていない。一切国会に任せる。私をして言わしむれば、これはていのいいロッキード隠しである、こう思わざるを得ないのです。  それで、その具体的な理由は、いま具体的に私は問題を指摘してまいりますが、まず第一問といたしまして、あなたはかつて、刑事訴訟法の第四十七条、すなわち「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」というこの規定を、われわれが問わないうちにあなたが率先をして引用されました。あなたが引用された。そしてみずから、このただし書きに従って、国民の知る権利に私はこたえますとあなたは明確に言われたのです。その前言を一体いまどうされたのですか。私は、これは総理大臣として驚くべき公約違反ではないかと断ぜざるを得ないのでありますけれども、明確にお答えをいただきたいと思うのであります。
  18. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林君から、私のいわゆる灰色高官というものに対しての取り扱いにつき、いろんな疑問点がいま提起されたわけでございますが、これについて私の見解も述べておきたい。  一つには、私は、この四月二十一日の国会正常化に関する衆参両院議長裁定というものを重視するものであります。これは小林君御承知のように、各党の党首会談が初めて行われたものであって、各党の党首立会のもとにこの裁定というものが下されて国会が正常化されたわけです。これは誠実に守る義務を私は持っておる。この第四項の中にこういうことを指摘されておるわけです。ロッキード問題に関しての政治的、道義的責任があるなしの調査国会がやるものとして、国会国政調査権を行使するに当たっては、政府は事態の成り行きを見て事件の解明に最善の協力を行うようにしてもらいたい、もちろん刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえてそうやってもらいたいというのが議長裁定でございます。そうなってくると、そういういろいろな最善の協力というものは、政府としていままで捜査の経過に基づいて得ておるいろんな参考になる資料を提供するということが最善の協力の内容だと私は思う。だから、国会自身がそれを要求をされて、これを私は承諾をいたしますということでございますから、これは議長裁定の線に沿うた処置である。  また、いわゆる灰色高官というものは、結局刑事上の責任は追及されなかったけれども、政治的、道義的責任があると見られる者を灰色高官と言っておるものだと私は思うのですね。そういう者に対して、御承知のようにいまこれは捜査の過程にあるわけですね。丸紅あるいはまた全日空のルートがほとんど解明された、終結に近づきつつあるといっても、児玉ルートと関連なしとは言えないですね。これは関連なしとは言えない。そういう捜査過程にあるという制約のもとにおいても、稻葉法務大臣から事件の全容について総括的な報告をいたします。これは日にちを切ったわけですが、私はできるだけ早くこの報告を稻葉法務大臣が国会において行ってもらいたい。十五日というのはもう遅くともと言ったのでありまして、それを、日にちをもう少し早めて報告をしてもらいたい。しかし、いま捜査途中であって、しかも、だれを灰色でだれを灰色でないという仕分けを政府自身がすることには非常に無理があると私は思いますね。国会調査権に基づいて皆さんが国会の意思として、われわれの意思は、灰色というものはこういう範囲のものを言うのだというふうに決めていただくならば、その意思に従って、氏名も含めて国会にひとつその資料を提供いたしましょうというわけです。政府自身が、灰色か灰色でないかという仕分けをするということは、政府の権限としてそういうことをしますると非常に政治的な配慮を加える誤解国民に与えますので、やはり議員の規律に関するものでございますから、道義的、政治責任というものの有無については国会の場でおやりを願うことが適当であろうということです。まあ政府とすれば、この捜査がまだ全部終了してない途中において、しかも個人名を含めていままでの捜査の結果に基づいての資料を提供するということはぎりぎりの協力である。このことで私が何も全部責任国会に転嫁してロッキード隠しだというふうなことは、私はそういう御判断には従いかねるわけでございます。できるだけの協力をいたしておるわけで、しかもその資料に対して、それを提供せよということを私に要請されたのは議長自身の裁定であるということも御承知願いたいのでございます。
  19. 小林進

    小林(進)委員 これはこのたびの重大なひとつポイントですから、ポイントを外さないように私は御答弁をしていただきたいと思います。  これはポイントですからいま一度繰り返しますが、この首相答弁で灰色高官の問題については、一つは与野党の要求の範囲が、これは与野党でひとつ合致する、それから政府もそれを妥当と認める、第三にはさらに外部にその内容を漏らさぬ秘密会を設ける、この三条件を整えることが必要だと総理は言っている。いいですか、これが問題なんです。一体、このロッキード問題の灰色高官を明らかにすることで、この三つの条件が国会の現状の中で整うとお考えになりますか。これは明らかにロッキード隠しです。これは明らかにしないということをあなたは巧みに言われているだけの話です。何をもって言うかといえば、今日まで議会内で、ロッキードの真相を明らかにするため国民の声にこたえて野党は全部努力をいたしております。その前に立ちはだかってこのロッキードの真相究明を一番妨害している者はだれですか。自民党じゃありませんか。  私は具体的に言いますよ。その自民党野党とが一緒になって灰色高官の範囲を決めるその意思などが初めから一致しようはずがないじゃありませんか、あなた。ないです。  したがって学者もこう言っております。国会が生の資料の提出を要求し、検察当局から提出された資料を、国会が独自の判断と責任で決定し、公開するという方法が唱えられている。これは一見耳ざわりのよい響きを持っているが、国会政治の場としての現実を見誤った大変残念な考え方である。国会は、ロッキード事件に関しそれぞれ利害の相反する代表のパワーが衝突の場となり、交錯する場となっている。その中で政治の介入が排除せられ、党派性を抜きにして本件のような複雑な事件の処理が可能だなどということを考えていること自体、総理の発想としては実にまずいし、知らぬで言っているならば幼稚だし、知っているならばまことにずるい答弁である。こういうふうに学者は批判をしているのであります。  そこで私は、政治家の政治道義の責任を追及するためには、それが灰色高官であるか否かの決定は、国の施策実施の最高の責任を負っている内閣の判断によってそれができ上がらなければ問題の処理にはならない。もちろんこれは検察官の法的判断ではありませんよ。政府の政治レベルの判断である。国民はそれを、それをこそあなたに期待している。  時間もありませんから具体的に申し上げまするけれども、いま私は、ロッキード問題の真相追及に一番妨害しているのは自民党であるということを申し上げました。具体的に申し上げましょうか。私の方の意見は申し上げた。一体この国会の中で、与野党この混乱の中で、あなたの言われるような、国会の意思が合致して見出されるとあなた考えていらっしゃいますかどうか、それをまずひとつ答弁をしていただきたいと思います。
  20. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、小林君、ロッキード隠しの張本人は自民党だと言う、これは私は承服することはできない。自民党の党議においても、ロッキード事件の徹底的真相解明というのが一致した見解でございます。その解明の方法についていろいろ意見の相違はあるけれども、究極において自民党ロッキード隠しのために狂奔しておるという批評は独断にすぎない、われわれは党議として決めておるわけですから。方法論について必ずしも小林君と一致しない点はありますよ。しかし、この真相を徹底的に解明したいということが自民党の方針であることは明らかにしておきますよ。  しかも、そういうことですから、これは与野党が一致するはずはないじゃないかと言いますが、自民党自身でもいわゆる灰色高官というものの範囲について相当覚悟を決めた決定をしておるわけですね。それでも野党との間に開きがあることは事実ですよ。それを国会がやはり国会の意思としてこの問題が解決できぬとは私は思わない。国権の最高機関として、各党が真相を解明したいということが各党の方針であるならば、多少の歩み寄りは必要でしょうよ。自分の主張が皆通らなければ承知しないというようなことでは、それはなかなか妥結しないかもしれぬが、皆が真相を解明したいという、道義的、政治責任も解明したいということに熱意を持っておることは事実ですから、私は、この話がつかぬというほど日本国会のレベルを低く見たくないのです。そういうことですから、どうか初めから投げないで、これはもう皆さんがよく決めていただければ、政府は政府の見解は加えませんよ。国会で範囲を決めていただければそれに沿うて、その国会の意思に沿うて資料はお出しいたしますということで、国会の意思を決めたら、また政府が妥当かどうかということを判断はいたしません。国会が決めた意思に従って政府は資料を提供いたします。
  21. 小林進

    小林(進)委員 まことにこういう重大問題について首相答弁は本当に山吹色で中身は何にもない。抽象論だけ言われているから聞く方もはなはだ迷惑。いま少し国民に具体的な例を示してお話し願いたいと思います。  私は申し上げます。ロッキードの真相追及の今日までのこの問題の成果は、国会先行型なんですよ。議会が先行いたしました。それを世論支持いたしました。それはそうですよ。二月五日に直ちにこの予算委員会で引き上げて、ロッキード問題をすべてに最優先してやろうじゃないか、それから始まった。世論支持した。そのときはまだ捜査当局も検察庁も資料が何にもなかった。この国会の先行について捜査当局も動いてきたというのが真相であります。  それはそれだが、この真相追及に対して一番邪魔をしているのは私は自民党であるということをいま申し上げた。具体的な例を申し上げますよ。いいですか。二月四日にこのロッキード問題が初めてアメリカの上院でコーチャン証言に基づいてはっきりせられた。わが日本のいわゆる財閥や企業やあるいは政府高官の名前が具体的にアメリカの議会の中で出てきた。翌日の二月五日、われわれはこの予算委員会で総括質疑をしていた。あなたもそこにいられた。予算の審議も重要だが、国の恥を世界に漏らしたこのロッキード問題の真相追及は、何物にも優先をして問題の処理をしていかなければならないという私の発言によって、直ちにロッキード問題の真相追及に突入をいたしました。理事会を開きました。そのときに野党が全員、社会党を中心にして要求いたしましたことは、アメリカの議会の中で暴露せられた全日空の若狭とか渡辺とか、あるいは児玉譽士夫とか小佐野賢治とか、丸紅の檜山だとか大久保だとか伊藤というものを直ちに国会に証人として喚問をして、そうして国民の前に徹底的に真相を追及しようじゃありませんかとわれわれは要求いたしました。それを拒否したのはだれですか。与党じゃありませんか。自民党じゃありませんか。そこでわれわれは一週間余、じんぜんとして、証人で呼べ。自民党の方はだめだ、参考人だ、参考人でなければ呼べない。証人で呼びなさい。血の出るような論争をしているときに、後ろからジャーナリスト以下世論支持をしてまいりまして、これほどの重大な問題は証人として呼ぶべきであるという世論の声に支えられて、ようやく自民党は屈服いたしました。それで呼ぶことに決定をいたしましたのが、二月五日から十一日間過ぎて二月の十六日と十七日になった。あのときに、われわれの要求するとおり直ちに証人喚問が行われていたら、児玉などをいまごろ病床に置いて、こんなにして寝せておかなくたって、ちゃんと私はここで証人として呼び得たのではないか。いまでも顧みて残念にたえない。これが第一です。  第二番目の具体的な例を申し上げましょう。いよいよ二月十六、十七、三月一日、いま申し上げました諸君がいわゆる宣誓をして証言台に出ました。そのときの証言は全部国民も聞いておりました。何を言ったか。中心にいけば、私はわかりません、私は知りません、私は存じませんという、実に国会の最高機関を侮辱した答弁に終始をした。そこで、その中で一番偽証が明らかである全日空の若狭得治を、国会の名誉にかけても偽証罪で告発すべきであるということをわれわれ野党は全員一致で要求いたしました。そのときにそれを拒否したのはだれですか。自民党じゃありませんか。断じて若狭得治を偽証で告発すべきであるというわれわれの要求です。あれくらい明らかに偽証しているのだから、偽証罪で国会で告発すべきであると言ったときに、終始一貫反対したのは自民党じゃありませんか。そのためにわれわれは毎日毎日理事会を開いて、野党は苦労いたしました。世論はわれわれを支持いたしました。支持いたしましたから、五月の二十四日、ようやく自民党の荒船委員長以下を説得して、そして若狭を告発するための委員会を開くことを了承したわけです。  そのときの委員会の状況はどういう状況でありました。あなたは総裁ですから御存じでしょう。どんな委員会が開かれたか、ここで証言してください。――わかりませんか。わからぬならわからぬと言ってください、私が御説明しましょう。わかりませんな。――あなた、が教えてくださいとおっしゃるならば、私はあえてあなたにお教えいたしますが、この予算委員会のレギュラーメンバーは五十名です。いいですか。五十名の中で自民党は二十八名おります。その中でいよいよ若狭得治君を偽証罪で告発しようという委員会を開くときになって、終始自民党は内紛に内紛を続けた。断じて偽証で呼ぶべきじゃないと言ったじゃないですか。そしてもみ抜いてもみ抜いて、最後になってこの委員会に出席した者の名前はわずかに七名。いいですか。荒船委員長以下小山長規君、塩谷一夫君、正示啓次郎君、笹山茂太郎君、野田卯一君、藤井勝志君の計七名であります。辛うじて過半数を通じて若狭得治の偽証告発が成立したという状況だ。あこの諸君は狂暴に等しいような行動で反対をいたしましたよ、この予算委員会にまでどなり込んで、こういう告発をすべきじゃないと。そのときの理事である井原岸高君なんか、理事会で決めているにもかかわらず委員会に出席しないで逃亡してしまった。自来いかに自民党ロッキード隠しのために妨害をしているかという、これは歴史的事実でありまするから、私はここで、レギュラーにして出席しなかった委員の名前を、これは記録にとどめるために申し上げます。理事では井原岸高君、委員では伊藤正義君、植木庚子郎君、小澤太郎君、奥野誠亮君――奥野君等はここらあたりへ来て狂奔して、これをやるべきじゃないと言って騒いでおりました。北澤直吉君、田中龍夫君、谷垣専一君、西村直己君、上村千一郎君、江崎真澄君、大野市郎君、倉成正君、瀬戸山三男君、橋本龍太郎君、櫻内義雄君、前田正男君、黒金泰美君。こういうような、積極的にロッキード隠しのために狂奔したという具体的な例じゃありませんか。あなたはこれを総裁として何と考えられる。これが第二の例です。  まだ、第三の例を申し上げましょう。一番問題であるといわれる小佐野賢治です。小佐野君も二月十六日、ここへ来て、実に傍若無人な証言をして帰りました。明らかに偽証の被疑がありますから、われわれは小佐野賢治を偽証罪で告発すべきであるという、予算理事会で何回も要求をいたしました。これに対しては検察当局の――これは安原刑事局長もおられましょう。この国会の中で安原君の発言もあります。時間がありませんから簡単に申し上げまするけれども、「検察当局は、国会の告発を待たずに偽証罪で逮捕したという事例がございますが、これはあくまでもやむを得ざる手段でございまして、原則はやはり国会の告発を待って処理するのが最も望ましいと考えておる関係もございますが、それはそれといたしまして、告発が訴訟条件であることにもかんがみまして、国会御当局においてもひとつ御考案を願いたいと思います。」と、検察当局としては、最大限に捜査当局協力を得るためにも小佐野の偽証の告発をやってもらいたいと言わんばかりの答弁をしておる。これは事務当局としては精いっぱいの発言です。こういう発言をしていることに対しましても、われわれは理事会で何回要求いたしましたか。毎日のように小佐野の告発をこの委員会で決めようと言ったにもかかわらず、一カ月たち、二カ月たち、じんぜんとしてやらない。そこでわれわれ野党四党は、ついに衆議院規則六十七条の規定に基づき、三分の一の署名があれば委員会を開くことができるというので、われわれは全部署名をいたしました。そして九月一日を期してこの予算委員会を開いてくれという要求書を荒船委員長を通じて国会に出しました。ここには全部署名が書いてあります。小林進君以下二十一名の名簿を出しました。それに対しても応じないじゃないですか。ついに小佐野賢治の偽証の告発に与党は応じないじゃないですか。これで一体、与党自民党がロッキードの真相究明に協力していると言えますか。これがロッキード隠しでないとあなたは言われますか。ロッキードの真相究明を一番妨害しているものは与党自民党であるという私の主張に間違いがありますか。あるとおっしゃるならば、あなたからひとつ答弁をしていただきたい。これはない。こういう現状の中で与野党一致で灰色高官など出てくるわけがないじゃありませんか、あなた。答弁をしてください。
  22. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 委員会の経過等を一々私は承知はしていないが、結論だけは報告を聞いているわけです。しかし、このことだけははっきり申し上げておきたい。自民党は党議としてロッキード事件真相を徹底的に解明するということを決めてある。だから、ロッキード隠し自民党が狂奔するということは党議の決定に違反するものであります。したがって、ロッキード隠しのためにいろいろこういう経過をたどっておるんだということは、自民党員にそういうことがあるわけではないわけでございまして、そういう誤解を与えたとしたならば、その誤解はまことに遺憾なことであり、国民に疑惑を与えないような行動を自民党はとらなければならぬということは私もよく反省はいたします。
  23. 小林進

    小林(進)委員 総理答弁は、私の質問に答えていられません。私は一つも誤解をいたしておりません。事実を事実のまま、一分の差異もなく私は申し上げた。もしあなたがこれに答えられるとすれば、自分が率いている自民党の姿勢がやはりこれでいいのか、今後これを改めさせるか、そこにあなたの答えがなくちゃいけない。何もないで、そういう空々寂々たる答弁でこの国会をごまかしてやろうとしたところで国民は承知いたしません。改めさせますか。せめて小佐野の偽証告発だけでも、あなたは総裁として、この予算委員会で野党の取り上げているのをやらせますか。それだけを国民の前でぜひお約束をしてください。
  24. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が申し上げておるのは、自民党の姿勢というものを申しておるわけでございまして、昨日も党に対して、証人喚問には国民の疑惑を招くことのないように、証人喚問の場合に厳正に検討をするように伝えてほしいということをきのう幹事長にも申したわけでございまして、国民の疑惑を招くようなことのないように注意はいたしますが、個々のいろいろな具体的な問題については、自民党が多数党でございますから、党員にそういう注意はいたしますけれども、委員会の決定を私が支配するというわけにはいかない。しかし、自民党が多数であるという点にかんがみて、自民党員がいやしくも国民の疑惑を受けることのないような、厳正公平な処置をとるような注意は十分いたします。
  25. 小林進

    小林(進)委員 ともかく、くどいようでありますが、野党が全員一致で、署名で、国会法に基づいて、小佐野をいわゆる偽証で告発するという委員会を開いてくれという、このわれわれの要求をあなたは総裁として実行されるかどうか。この一点だけをお聞かせいただけばよろしいのであります。
  26. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国会法の規定によって国会運営されなければならぬことは当然でございます。
  27. 小林進

    小林(進)委員 それでは、国会法に基づいてわれわれの出した要求ですから、総裁としてあなたは責任をお持ちになると私は解釈いたしましょう。  次に申し上げます。あなたはなおかつこの問題については、現職議員の証人喚問に出頭する問題については、先ほど申し上げましたように、当該委員会の慎重な審議に任せるとおっしゃいましたが、これもやる気がないということの裏づけなんですよ。いいですか。なぜかならば、ロッキード特別委員会でわれわれは田中角榮、中曽根康弘君をこの委員会に証人として出頭してくれという要求を出したけれども、否決されたじゃありませんか。  三木さん、お伺いしますが、この新憲法下において、わが日本の国会議員の中に現職議員で出頭した議員が延べ何人いるとお考えになりますか。そんなことぐらいお知りになっておりましょうから、どうぞお答え願いたい。
  28. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 現職議員として証人に喚問された例は私は数件知っておりますが、全部と言えるかどうか。私は昭電事件のような場合には承知いたしております。
  29. 小林進

    小林(進)委員 私が申し上げますが、延べ六十七人いるのですよ。その中には、皆さん方の先輩の、輝ける自民党の元老級の方々が公然と委員会に出頭し、宣誓をして証言台に立っていられる。  時間が惜しいのでありますが、参考までにひとつ申し上げましょう。  まず、辻嘉六をめぐる政治資金の問題から始まって、これは昭和二十三年六月二十三日でありまするが、大野伴睦先生が証人台に立って宣誓をしながら証言をしていらっしゃる。これを初めといたしまして、齋藤隆夫、幣原喜重郎、北村徳太郎、川崎秀二、加藤勘十、鈴木茂三郎、吉田茂、星島二郎、西尾末廣、春日正一、徳田球一等々の諸先生を初めといたしまして小澤佐重喜、倉石忠雄、こういう人たちが議会の尊厳を守り、国民の知る権利にこたえようとして全部証人台に出ていられる。  特に、ここであなたに銘記していただきたいのは、ロッキードとグラマンの戦闘機購入の問題で、われわれの言ういわゆる黒い空中戦の第一回戦と称している問題がありましたときに、時の自民党の総務会長の河野一郎先生、時の幹事長の川島正次郎先生が、昭和三十三年の九月二日、九月九日と二回にわたってちゃんと決算委員会のいわゆる証人喚問に応じて、そして宣誓をして証言をしておられるのであります。  特に、私がおもしろいと思うのは、当時のわが社会党の松平忠久委員の川島正次郎幹事長に対する質問の一節でありまするけれども、本日の新聞によると、グラマン社がその飛行機売り込みのために運動費約二億円を使った、そして川島幹事長のところへ二千万円くらい持っていった、こういううわさがあると報道しているが、これはどうか、こういう質問に対して川島幹事長は、幹事長としても、党としても、個人としても、一銭ももらっておりません、ちゃんとこういうふうに答えている。  私は、同じ自民党でもさかのぼれば、やはり先人はりっぱだと思う。かくのごとく証人台に立って、そして国民のために正しく答えられている。これあればこそ、これが民主政治の原則を保ち、国会をして国民の信頼にこたえている姿なんです。何ですか、いまは一体。中曾根幹事長などは、国会の証人に対して逃げ回っているじゃないですか。そして与党の諸君はといえば、過半数でもって一生懸命にその証人喚問を否定している。寧日そのために苦労している。こういう議会の尊厳を冒涜し、国民の知る権利にこたえず、あくまでも国会を密室の中に押し込もうとするこの行為は、これをロッキード隠しと言わずして一体何なんですか。これが正しい行為ですか。総理大臣としてじゃなくて自民党の総裁として、かくも輝けるこの実績をながめながら、現在のロッキード隠し、証人喚問に応ぜざるこの姿は、あなたは一体正しいとお考えになっておるか。委員会の自主性に任せるなどと、そういうきれいごとではなくて、いま少し国民期待にこたえるような腹のすわった返事をしていただきたいと私は思うのであります。
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういういろいろ御批判もあるわけでございますから、私が特に幹事長に対して、国民の疑惑を受けるようなことのないように、証人喚問に対しては公党として厳正公平な態度で対処してもらいたいという注意をいたしたわけでございます。
  31. 小林進

    小林(進)委員 いままでその御注意のあったことは寡聞にして知りませんでしたけれども、御注意されたとすれば、私は一歩前進だと思いますが、もう一歩前進されまして、こういう川島先輩や河野先輩の例にならって、どうかひとつ、われわれ特別委員会で証人喚問の要求をいたしましたときには、もはや与党諸君は反対することなしに欣然として参加すべきであるという、そういう指導をしていただくことを私は三木総裁に強く要望いたしまして、次に第五問に移りたいと思うのであります。  それは、ロッキード問題が今日起こるに至ったにはもろもろの理由がありましょう。私はその中で、行政と政治の癒着もまた大きな原因の一つであると考えております。それは、もう私が申し上げませんでも、運輸省あるいは建設省その他が絡みついて世論の批判を受けていることは、先刻国民諸君の明らかに知っているところであります。でありまするから、そっちの方は省略いたしますが、特にこのロッキード問題について国民の強い怒りを受けているものは国税庁であります。なぜかならば、児玉譽士夫がこのロッキード問題で騒がれて、初めて国税庁は児玉の脱税に手をつけました。で、手をつけたその結果が、昭和四十七年一年間だけでも八億五千三百七十四万円の脱税があったということで、五十一年三月十三日に告発をいたしておるのであります。  私が言いたいことは、その前に何をやったかということだ。児玉譽士夫の脱税は昭和四十七年だけではないのだ。四十六、四十五、四十四、四十三、四十二、年代においてずっとつながっている。その間、一体国税庁は何をしたのだ。  もっと申し上げまするならば、児玉がフィクサーとして四十四年から四十五年にかけて大きな企業その他から取ったいわゆる仲介料その他は、何億というか、十数億にも達しているというのが世間のもっぱらの常識であります。その期間、警視庁が手入れをされて調べられた事件だけでも、製鋼会社の内紛事件、児玉はこれに入ってまとめて、億単位の金を受け取ったという疑いがある。第二番目、大手化粧品会社、これは三十七年で少し古いのでありますけれども、外国製ポマード使用の問題に関連して三千万円の仲介料をもらった。特殊製鋼会社の総会をめぐる妨害工作で数百万円もらった。大手都市銀行の不良融資の問題で五千万円もらった。都市銀行の株の分割の不当要求の問題で五千万円もらった。私立大学の付属施設建設の問題で五千万円もらった。大手製鉄会社の関連企業の紛争の問題で二千万円もらった。大手商社の株の分割をめぐるトラブルで五百万円もらったという。この中の七つは全部児玉が暗躍し、しかも火消しに回って莫大な手数料をもらっているということは、警視庁の捜査の中にも浮かんでいるはずであります。それが国税庁の中でそれに一つも手をつけないでじんぜんと見逃していられるということは、一体どういうわけですか。私どもはここに、国民の大変納得できない一つの大きな行政に対する不信があるわけであります。  いいですか、時間がありませんから私はいま一つ例を申し上げますから、三木さん聞いてくださいよ。児玉の屋敷のあの増築は、ここにもありまするが、昭和四十九年の一月に完成をしているのです。ところが、これは国税ではありません、地方税の固定資産税ですが、驚くなかれ、五十一年の三月十三日まで二年有余にわたって一銭も固定資産税をかけてないのです。(「どういうわけだ」と呼ぶ者あり)いや、どういうわけだと言ったって、それは中央の国税庁がこれほどの大きな金を全部見逃しているのに、東京都あたりの地方の税務署が入っていったら大蔵大臣に申しわけないと思うからやらないのだ。だから上に準じて、中央に準じて地方もやらないのだ。中小企業やわれわれ一般の庶民に対しては、豚小屋でも、建てないうちにもはや税務署は来て、固定資産税をかけていく。所得税や法人税については、中小企業のおやじなんか、忙しいさなかでも毎日毎日税務署に引っ張られて痛めつけられ、悲しめられているでしょう。その中に、これほど明々確々たる脱税でありますよ。それも政界の、総理大臣だとか総裁につながっている右翼の巨頭ということになれば、これを二年間も見逃している。さかのぼって税金一つかけようとしない。こういう行政が一体正しいとあなたはお考えになるのでありまするか。これで国民に、まじめになって税金を払えとあなたは一体言われますか。  私は参考までに申し上げまするが、ようやくこの児玉に対して捜査当局の手入れが入ったら、のこのこと国税庁は出かけていらっしゃいました。そうして捜査をされたその結果、四十七年だけで、いま申し上げましたように、八億五千三百七十四万円の税金があるからといってこれを課税された。いいですか。この八億五千三百万円という課税は、庶民の税金に比較してどれだけかといいますると、わが日本には納税人員は大体三千万人いらっしゃいますが、その納税者の平均の納税額は十一万九千百五十九円です。こっちは四十七年ですから、こっちも四十七年で比較する。この比較をいたしますと、四十七年一年間でも、税務署が取るべき税金を見逃していたその量は、実に国民、納税者七千百六十五人の分なんですよ。七千人の分に値するこの一年間の税金を、こういう偉い権力者には、全部税務署は承知をしながら税金を取らぬでいるということなんです。これで一体いいんですか、総理大臣。これを一体あなたは何と国民に答えられますか。
  32. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 徴税について、人によってこれを区別するということはあってはならぬし、そういうことはいたしておらないわけでございますけれども、こういうロッキード事件というものが発覚して、その間、いま税務当局においてはロッキード事件に絡まる脱税行為というものは、全般的に捜査を進めておるわけでございますが、こういうものが非常にわかりにくい問題であるという点もございますが、やはり税務当局としても、ロッキード事件からくる反省というものは、今後徴税の、何と申しますか、こういうものに対する性格といいますか、こういうものに対しては、やはりいろいろと教訓になる点があると思います。しかし、小林君の言うように、権力者であるから手心を加えるというようなことは税務当局には断じてないことだけは、税務当局の名誉のために申し上げておきたいのでございます。今後、そういうことについては十分な注意をいたさせることにいたします。
  33. 小林進

    小林(進)委員 これは、私は事実をもって申し上げている。なおかつ総理大臣は、絶対にそんなことはない。ないと言ったって、事実じゃありませんか。(「あるから言っているんだ」と呼ぶ者あり)あるから言っているんだ。なおかつ、きょうあたりの新聞によりますると、まだ児玉は、四十八年と四十九年で十億円の脱税をさらに大蔵省は追徴したと言っている。四十七年だけで八億、それに八、九と十億ならば、もう十八億以上ですね。それを、まあロッキード問題が出なければ、これを全部見逃している。国民の高い税金で飼っておく国税庁の役人が、庶民を痛めつける材料になって、中小企業や庶民を痛めつけて泣かしておいて、こういう児玉邸などには一つも手をつけない。いいですか。この大きな邸宅は、新築してでき上がったときに、一体国税庁はその児玉邸にその建築費の調査においでになったという実績がありますか。私は時間がないから後でも書面で出していただきたいと思います。地方税の固定資産税も取りにいかなければ、国税はその新しい邸宅にかけもしないというのが国税の状態です。  次いで私は、この税と政治の癒着の問題で申し上げますが、田中角榮が金脈問題で倒れたときに、四十九年から春にかけて金脈問題が国会で追及になった。そして大蔵省、国税庁に対してその疑点をすべからく調査するようにと命ぜられたときに、調査をいたしましたでしょう。その結果について、大蔵大臣、あなたは一体何と答弁していますか。昭和五十年の一月二十三日の参議院の決算委員会において、ベテラン調査官二十人を動員し、五カ月にわたって調査をいたしましたその結果は、田中氏の税務申告に大きな誤りは発見されなかった、ただ税法解釈に食い違いや計算の間違いから来るミスが若干認められただけであります、あなた、こう言っている。なおかつわれわれは細部にわたって一それならば一体、ベテラン調査官二十人でどんな調査をした、本人にも調査したのかと言ったら、いや秘書を呼んで調査をいたしました。それから何をやったと言ったら、ヘリコプターで田中邸の後ろをぐるぐると回ってみまして、それで調査は万全でございますと。これで一体総理大臣調査の仕方が、課税の仕方があなたは公平であると、いまの言葉をいま一回繰り返すことができますか。このようにりっぱにやりましたと言って、五カ月もたたないうちに五億の金がロッキード会社から渡されているという事実が明らかになった。これは一体どうしたことでありますか。責任ある答弁を私はお願いしたいと思います。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 田中首相の財産に絡まる課税問題でございますが、これは国会で御報告申し上げましたように、すでに申告がございましたのでございますけれども、新たな情報を入手いたしましたので、国税関係の職員を動員いたしまして再調査をいたしたわけでございます。その結果は、いまお話がございましたように、国会に御報告申し上げたわけでございます。  国税庁の態度といたしましては、総理のお話もございましたように、その納税者の地位、身分等によって態度を二つにすべきでないことは当然でございまして、法の前に平等であるということをたてまえといたしまして努力いたしておることは御理解をいただきたいと思うのでございます。ただ、定められた徴税費と定められた定員の中で多くの納税者を扱っておりまするので、すべての納税者の財産形成、財産の移動を正確に掌握するということは非常に困難なことでございまして、多くの掌握できない事実があることも御理解はいただけると思うのでございます。したがって、一たん調査、決定いたしましたことにつきましても、新たな情報が出てまいりますと、再調査をするということによって課税の充実を図る、適正を図るということにいたしているわけでございます。田中氏の場合も同様にいたしたわけでございます。  そこで問題は、今度のロッキード事件に関連いたしまして、いわゆる五億円授受の問題でございます。この授受につきまして税務当局が掌握しておったかといいますと、残念ながらこれは掌握いたしておりませんでした。しかし、これがこのロッキード事件調査の過程で問題になっていることは承知いたしているわけでございまして、この五億円というものの授受があったかどうか、そしてそれが課税所得につながるかどうかということが明らかになってまいりますなれば、適実な処理をしなければならぬことは当然と心得ておるわけでございますけれども、ただいままだ問題が捜査究明中でございますので、税務上の処理はまだいたしておりません。
  35. 天野公義

    天野(公)国務大臣 不動産取得税及び固定資産税につきましては、もとより課税権は地方団体にあります。児玉の場合には東京都にあるわけでございます。課税上の資料もすべて東京都にあります。児玉邸の増改築に関する固定資産税につきましては、調査に時間も要したため、課税時期が若干おくれたようでありますが、適正に課税したとの報告を東京都から受けております。なお、具体的な評価額、税額等につきましては、地方税法第二十二条の関係もあり、東京都からの報告はございません。  以上でございます。
  36. 小林進

    小林(進)委員 まあ自治大臣もなられたばかりの新米ですから、総理大臣に対するような厳しい質問もしませんけれども、私の方は資料を持って言っているんですよ。児玉邸の増築完成の年月日が四十九年の一月です。課税の告知が五十一年の三月十三日だ。何しているのだと私らは言ったら、その答申が、建築確認申請が出たので、それに基づいて申告するように求めていたが、返事が来ないからかけなかったのだ。五十一年の三月十日付の申告書かようやく――いいですか、五十一年の三月十日というのは、これはロッキードで国会で騒ぎ出した後です。一カ月も後だ。ようやく児玉邸から申告が出てきたからかけました。それをいま言っているのです。役人の書いた文章を見ている。そんなことで一体われわれは承知できますか、あなた。それが二年間も固定資産税をサボタージュしたときの言いわけになりますか、あなた。自治大臣にもなりましたら、そういう紙を書いてあなたに読ませるその役人をもっときちっと監視をいたしなさい。それから自治大臣の仕事が始まるのでありますから。あなた、少しなめられていますよ。  そこで、私は申し上げますが、時間も予定を食い過ぎましたが、私は検察行政についても、実は政治との癒着について御質問をしたかったのであります。現在のロッキードの真相追及については、確かに検察庁は全力投球をしている。また国民からも正義の味方のごとく思われている。私はこれは非常に結構だと思います。私も国民の一人として感謝にたえません。けれども、どうも前半戦、後半戦を分けてみると、前半戦は三木、稻葉、布施総長を頂点として、実にすばらしい捜査能力を発揮したけれども、後半戦に至ってはやや。ピッチが落ちている。それが児玉ルート、小佐野ルートになると杳としてその活動の姿が見えない。残念にたえない。まあ病気などという理由もございましょうが、残念にたえない。ここに国民の一点の疑惑が出てきている。何の疑惑が出るかというと、いわゆる検察と政治の癒着と思わせるような過去の幾つかの実績があるからであります。  いいですか。戦後においては十以上の汚職事件がわが日本にありました。昭和電工事件、石炭国管事件、造船疑獄事件、保全経済事件、武州鉄道事件、売春汚職事件、吹原・大橋産業事件あるいは田中彰治事件、共和製糖事件、タクシー汚職事件、日通事件というように、みんなこれは政府の高官や政治家が介在してかもし出された汚職であり、汚職の疑いのあるものであります。こういう中でも、あえて言えば昭和四十年の共和製糖事件でも、これは農林漁業公庫とか農林中金等から政府の金に準ずべきものを、八十億円もこれを引き出した。それを引き出すための見返りとは言わぬけれども、約二億円の金が五十人近くの国会議員にみんなばらまかれた。昭和四十三年の日通事件でも、三十九年から四十年にかけて約三億の金が五十人近い国会議員に全部ばらまかれた。森脇将光事件などでも、あれは政界への波及が必ず行くとみんなが見ていたにもかかわらず、結局政界に関係なしということでこれは幕を閉じられた。こういう幾多の問題を見て、まだまだ国民はどうしても納得しない。こういう灰色の高官の問題をその都度国会が正しく処理をしていたら、ロッキード問題も起きなかったであろうというのが国民の声であります。  そこで私は、ここで申し上げたい。ロッキード問題の真相を追及するためには、さかのぼってこういう問題もいま一度これの真実を国民がつかんでおく必要があると思いますので、捜査当局は、いま私が申し上げました事犯について資料をこの国会に提出してくれる意思があるかどうか。もはや問題は過去だ。もはや時効も成立している。捜査の必要もないのでありますから、当然私は資料を出していただけると思うのでありますけれども、この問題について法務大臣から簡単に御答弁をいただきたいと思います。
  37. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いろいろ事件を挙げられた中で、目下まだ裁判が係属中のものもありますから、これは裁判の進行を妨げますからだめですな。共和製糖とかまだありますからね。それ以外のものは結構でしょう。
  38. 小林進

    小林(進)委員 それ以外のものは出してくれる……。
  39. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 結構でしょう。
  40. 小林進

    小林(進)委員 なかなか明快な回答をいただきまして、私ども精力的にそれを調べ上げて、みんな歴史的な事実である、今日のわが国を悪くした一つのみんな原因のステップでありますので、ぜひひとつ勉強させていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、昭和三十年保守合同が成立して以来、検察当局も、犬養法務大臣によって指揮権が発動された、あのときには彼らは血の涙を流して残念がつたけれども、法規に基づくルールであればやむを得ないということで剣をおさめたのでありますけれども、それ以後検察当局は汚職に対する、いわゆる政府高官の介在をする汚職事件については、これは日々指揮権が発動されていると国民は見ているのだ。一党独裁ができ上がってから、政治汚職に対してはいつも有形無形の指揮権が発動されているから、もはや政界人の入っているこういう贈賄事件には手をつけるのはやめようというふうな消極的な考えに立ちつつあると国民は考えているのです。したがいまして、いま民間の中に、国民の中には、汚職事件は政界に波及をしないという、こういう神話がまかり通っているのです。私は非常に残念にたえないと思うのであります。そういう国民の疑惑を解くためにも、今度こそはひとつロッキード問題を徹底的に最後までこれを明確に仕上げていただいて、このいわゆる多年の検察当局に残っている一分の疑いを晴らしていただきたい。これを私はお願いを申し上げたいのであります。いかがでございましょう。
  41. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 小林さんに言われるまでもなく、そんな政治捜査当局の癒着などあってたまるべきものではないから、また、そういうことがいままであったように言われますけれども、従来もそんなことはないと私は思いますよ。しかし、それはあなた、確定訴訟記録は出しますから、それでごらんください。それでないものは、訴訟書類ですから出せませんよ。確定したものは出しますよ。それでもってごらんくだすって御判断ください。  それから、ロッキード事件に関しては、そういう萎縮は全然ありません。絶対にありません。あってたまるべきものじゃない。  それからあなた、いろいろ、だんだん後半何かなえてきたような印象を国民に与えるような御発言ですが、私は非常に不満です。これから、一生懸命にやっている最中に、やる意思がないようなことを言われてははなはだ困る。きっと最後を――いま捜査中のことだから私ここで言ってみてもしょうがないけれども、この前にも言ったように、君子は行いをもって言い、小人は舌をもって言うとあるから、舌をもっては申し上げません。
  42. 小林進

    小林(進)委員 それは、過去のこういう疑惑に包まれた贈収賄事件に捜査当局が省みて一片も恥ずるところがない、神に誓って正しいとおっしゃることは、これは国民の疑惑に対して正しく答えているものではありません。正しければ正しいほどもっと反省の弁が出てこなければいかぬ。のこのこ出てきてあなたにささやいているから、どうせこんなことが出てくるのだろうと思ったら、やはり出てきた。けれども、国民の前に出て、捜査当局や裁判がそういういいかげんなことをやったということは、これは確かに将来に影響がありますから、まあ泣いてもそれぐらいの答えは出さなければならぬおまえさんの心境もわかるから了承いたしますけれども、その点は捜査当局も、時代によって捜査の重点が変わってくることだけは事実なんですから、反省をしてもらわなければいけません。けさもテレビで、あなたも聞かれたように、私の後輩のあの大阪検事長が切々として言っている中に、過去の歴史を語っていたが、河井信太郎君が、彼は真実を語っておりましたが、それも含めて、まだまだ捜査当局は反省しなければいかぬ。いま一つのロッキード問題に対して、後半ピッチが落ちたということは、そういう疑念を国民は持っているぞということを言ったのです。国民の偽らざる心境を私はあなたにぶつけた。だから、なおさらその点を、国民期待に沿うように努力をしてもらいたい。  なお一点言わせていただくならば、あなた中曾根派でしょう。中曾根派閥じゃないですか。幹部じゃないですか。隣におる三光汽船の社長の株の買い占めの問題について、あなた、児玉に依頼を受けて口ききしたでしょう。そういう問題も含めて、国民は、あの厳正な法務大臣もやはり政党の法務大臣として限度があるのではないかと一応の疑惑を持っておりますから、なお姿勢を正し、厳正、正確にやっていただきたいという希望を私は申し上げたのでありますからよろしゅうございますか。――ではこの問題について、次は、関連がありますから、田中君から関連質問をしていただきます。
  43. 白浜仁吉

    白浜委員長 田中武夫君より関連質疑の申し出があります。小林君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中武夫君。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの小林質問に対して、これは率直に、反論を加えるということでなく、そういうような疑いを持たれないように、総理も法務大臣も、また自民党を初め各閣僚もやっていただきたい、それだけを申し上げておきます。  私は、実は今回の災害地を見て回ったわけなんですが、現地は実に物すごいといいますか、生々しいつめ跡を残しております。  そこで、私は災害対策についてお伺いをいたしたいのですが、その前に、災害の犠牲となられて亡くなられました多くの方々、あるいはいまだに行方不明でその遺体すら見つかっていない方々の御冥福を心からお祈りをいたします。さらに、大きな被害を受けられた方々に対し、心からお見舞いを申し上げたいと存じます。  そこで、総理、今回の災害は日本列島のほとんどを覆っており、各地で被害が起きております。その総額、これはまだまだふえると思いますが、現時点においてどのぐらいか、その復旧に対する財源についてどのように考えておられるか、お伺いいたします。
  45. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 ただいま台風十七号に基づく災害につきましては、なお計数が移動するかもしれませんが、全体で七千五百十七億円ほどに及んでおります。そのうちに大きなものは公共土木施設関係で、とれが三千四百六十億、それから農地農業用施設等につきましては千二百六十九億。この公共土木と農地農業用施設等だけで四千七百三十億円に及んでいるわけでございます。これにつきましては、現在鋭意査定を急ぎまして、その被害額の報告を待ちまして、早期に災害復旧事業費をつける予定でございますが、既定の災害と合わせまして、全体で当年災の災害復旧事業費が一千六百億円ほどに上るのではなかろうか、こう考えております。これにつきましては、既定の予備費等を流用いたしまして対処するつもりでございます。  なお、地方公共団体等のいろいろな負担に対しましては、特別交付税を活用するとか、あるいは一般交付税を繰り上げ支出するとか、あらゆる点を用意していきたいと思っております。  なお、文教とか厚生の施設関係につきましては、所要の災害復旧措置をとりたいと思っておりますし、中小企業の施設等の被害につきましても、融資等をもちまして対処いたしたい、こう考えております。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、総理、この財源ですね。既定の予備費と言っておりますが、本予算審議のときに問題となった公共事業等予備費一千五百億ですが、これは若干出ていると思うのですが、それを充てる、こういうことですか。はっきり言ってください。
  47. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういうことでございます。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 本予算審議のときに、あなたなりお隣の大平大蔵大臣ともいろいろと論議いたしました。この公共事業等予備費は、大きな疑問を残したまま予算は成立したといういきさつがあります。しかもこれは、法律上の疑義は別といたしましても、いわゆる景気調整のための、あるいは景気浮揚のための、刺激のための予算として、特に公共事業費に云々という説明であったと思うのです。それをたまたま大きな被害が出たからといって、それに回すということについては疑義がございます。これは大体最初の説明とは違う。しかも、予算総則十五条及び七条において、農林省あるいは運輸省等の事業の中に若干災害復旧云々がありますが、これはきわめて厳格な制限をしております。したがって、これをこのまま災害に使うことは、予算のたてまえから言っておかしいです。当然ほかの、たとえば人事院勧告に基づく給与の完全実施、あるいは仲裁裁定の問題、これの完全実施等々も含めて、これは、この予備費を一たん本予算から削って、別の財源として補正予算を立てるのが筋じゃございませんか。補正予算を出さないと言っているそうですが、これはたてまえはそうであっても、これだけの被害が出ておる。しかも法というか予算総則等々の規定を曲げて、あるいは国会における予算の審議の答弁等々を曲げてその方法を使うということでなくて、あっさりと補正予算を出しなさい。それは本予算からいまの公共事業等予備費を削ってこちらへその財源として入れる。そしてほかに財源を入れて十分な対策を立てる必要があると思いますが、いかがです。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 田中さん仰せのように、予算編成の段階におきまして、公共事業等予備費を本年度予算に計上いたしましたゆえんは、経済情勢が流動的でございまして、この経費を景気対策といたしまして機動的に使わしていただきたい、そのために使途は、予備費といたしますけれども、公共事業費に特定するというようにいたしたいという趣旨を申し述べたことは御指摘のとおりでございます。つまり、この費目が設定されるに至りました縁由を尋ねれば、仰せのことはごもっともだと思うのであります。ただ、これは田中さん法律家で御承知のとおり、この公共事業等予備費、これは予備費に間違いはないということでございます。そして、公共事業等予備費でございますので、つまり費目を特定した予備費であるということも間違いございません。それからまた災害復旧費というのは隠れもない公共事業でございまするので、公共事業等予備費を災害復旧に使わしていただきましてもこれは法律上支障はない、間違いはない財政の処理であると考えております。  ただあなたが仰せになるように、一つの補正予算という方法によりまして予算を組み替えてまいるということも一つの方法かと思います。けれども、補正予算を考えるということになりますと、第一、歳入歳出につきましてどういう追加の財源が見込まれるかということ、それからどういう財源がわれわれは期待できるかという点をもっと精細に掌握しなければならぬと思うのでございますし、それよりも何よりも、現在の予算で起こってきた事態に対応できるのでございますならば、そしてそれが合法的でございますならば、それでやらしていただいて一つも差し支えないのではないかと考えるのでございまして、いまの段階におきまして補正予算を考えるというような材料を私どもまだ十分持っていないわけでございまするし、補正予算という方法によって組み替えてやる方がすっきりするじゃないかという御意見、わからないわけじゃございませんけれども、いま補正予算を考えるというデータが十分そろっておるわけではございませんし、先ほど申しましたように、いまの予算でいま起こっておる災害につきまして、また冷害につきまして、必要にして十分な対応ができる、そしてこれはいま総理が仰せになりましたように、公共事業等予備費を充当することによって可能である、そしてそれは間違った財政処理でないといたしますならば、その限度におきまして私は御理解をいただきたいものと思うのであります。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 十分な災害対策――まあ冷害その他あります。それをやるためには、これは補正予算が必要なんですよ。あなたは法律上違反でないと言ったが、きょう私は関連でもあり、時間の制約がありますから申しませんが、自信を持って言われますか。第一、予算総則の十五条、それで七条を援用してますね。七条に何と書いてあるか。これは私は、災害ですからいち早く対策を立てるべきである、したがって、ただ単に形式あるいは法律的に云々するだけが能ではないと思います。しかしながら、金はあるのです。それでは足らぬけれども、公共事業等予備費というのがある。これは前から疑問を持って、審議の途中で論議をした。しかも、あなた方の説明とはまるっきり違うのです。違うことに使おうとしておるのですよ。これはあなた、そういう便宜主義では困るんだ。(「国会が開かれておる」と呼ぶ者あり)国会が開かれておるという声もあります。はっきりと、補正予算を出すべきです。総理どうです。総理責任を持って答弁しなさい。
  51. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、大蔵大臣の説明で、この場合景気の浮揚ということも頭に入れたことは事実でございますが、景気は回復の基調にあるわけでございますから、やはり緊急に予測しがたいような事態が起こった場合に公共事業として使えるということでございまして、この場合に災害の救済のために出すことが非常に違法なものだというふうには考えておらないわけでございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 これは法律的にもあるいは予算総則からいってもおかしいし、私は違法だと断定します。だがしかし、被害を受けた方々は、そういう論議よりか、早く何とかしてくれという気持ちであろうと思いますので、法律的論議は後に回す。だが、大平さん、あなたの頼りない説明で納得したのではありませんよ。それだけははっきり言っておきます。  そこで、各地を回りまして一番強く要望せられたことは、早く激甚地災害の指定をしてもらいたい、こういう声です。もちろんこれは一般指定です。それは復旧計画にも関係もあるし、いろいろの点から、国からの補助その他も違いますから、そういう声が強いのです。そこで、どうなんでしょう、一体いつになるとこの指定ができるのか。さらに、いろいろと適用条件が決められておりますが、できるだけ法の拡張解釈というか、できるだけ緩和な措置が望ましいと思います。いかがでしょうか。
  53. 天野光晴

    天野(光)国務大臣 きょう災害特別委員会が衆議院で行われておりますので、きょうの席上で発表したいと思ったのですが、通産省関係の方の調査がちょっと手おくれになりましたので、来週中には発表できると思います。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 来週中には指定を行う、そういうことですね。  それから、私は見てまいりまして特に感じたのは、かつて災害を受けた、そこを復旧工事をやっておる。ところが、その周辺というか、そこがまた大きな被害を出しておる。これはいわゆる形式的な原状復帰という上に立って災害復旧をやっておるからだめなんです。根本的な、いわば地質の調査あるいは将来の展望に立った改良工事、これが必要だと思います。これには予算も相当必要だと思いますが、でないと、たとえば骨を折ったところは、そこは折れないのです。その周りがその次はまた折れるというのと同じような現象が起きておる。これは政治的な問題として総理答弁を伺いたい。
  55. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も田中君の言うとおりに考えています。単なる災害復旧だけではまた災害を繰り返すことになりますから、その個々のケースについて改良工事をする方が適当な場合には改良工事をやるべきだという御意見に同感でございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係で、質問だけを次々と続けていきます。  そこで次は、これは通産大臣あるいは大蔵大臣かと思いますが、被災中小企業に対する災害の特別融資等について、まず額の増大といいますか、三百万円を三千万円とかいう希望もありますが、枠の拡大をしてもらいたい。  さらに、たとえば四十九年災で被害を受けた、それで融資を受けた、だがそれがまだ十分に払い切れていないのにまた次に大きな災害を受けて売る、そういう人が多いのです。そうするならば、支払い条件あるいは利率等についても十分な配慮が必要である。そうでなければ中小企業は立っていかない、こういうように思うのですが、いかがでしょうか。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 融資の限度の拡大の問題でございますけれども、これは田中さんも御承知のように去年倍にしたばかりでございますので、いまのところ政府としてこれの限度をさらに広げるということは考えておりません。ただ、通産省初め各省から被害の実情が御報告に相なりまして、私どもとしてはその実情を踏まえた上で、融資枠につきましては御要望に沿うように可能な限りの最大限の努力をしなければならぬと考えておりますが、いまのところ、まだ金額が全体としてどれだけのものになりますかは調査中でございますので、この段階でまだ御報告、御答弁ができませんけれども、政府としては非常に急いで調査をいたしておるところでございます。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 支払い条件と利率。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 制度一般は私は現行制度で十分対応できると思うのでございまして、早く被害状況を掌握いたしまして、お金の用意をいたしまして、これを被害地に措置してまいるということを急ぐべきだと考えておるんで、制度自体についていま改変を政府としては考えておりません。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 まず、物価が上がっておる、そういう点からまず上限を上げる必要があるということを再度要望します。  さらに、先ほど言ったように、前の災害で融資を受けた、まだ払い切っていない、また今度災害でより大きな融資を受けなければやっていけない、そういう方々については、これは支払い条件を緩和してやる、それが政治じゃないですか。利率も考えるというのが政治じゃないですか。それはどうなんです、総理
  61. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業関係のお話でございますから私から答弁をいたしますが、災害が発生をいたしましてから調査をいたしておりましたが、大体調査はほぼ完了いたしました。激甚災指定の条件を大体備えておりますので、近く激甚災指定の手続をしていただくつもりでおります。そういたしますと貸し出し資金の枠も拡大をいたしますし、同時に、場合によりましては返済猶予あるいはまた金利の面でも特別の金利を適用する、こういうことが可能でありますし、すべての面で災害の実情に合ったような対策をとるつもりでございます。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしないと――あなたの地元ですよ、これは。  そこで、時間の関係がありますので続けて数問を質問します。したがって、それぞれの担当あるいは総理から御答弁を願いたい。  その第一は、災害の後は食料品を初め復旧資材というか、そういうものが値上がりします。ことに今度は畳が物すごく上がったと聞いております。そういう点についてどのような対策を持っておるのか。  さらに、今回の水害を見た場合に、いわゆる新興住宅地というかそういうところが多いわけなんです。これはやはり土地造成等に私は手抜かり等があるんじゃないか、そういう点についてどのように思うか。これは十分に厳しい条件と監視、監督が必要であろうと思う。また、このような住宅に入っておられる方々は、頭金だけを何とかして工面をした、そうして家具から電気製品までこれまたローンで買っておる。住宅のローンもある。それを夫婦共かせぎで何とか払っておる。そこへこれにいかれたということならば、これは大変なことである。これに対してどのような救済の手を考えておられるか。いつも個人災害については問題になりますが、そういうことに十分に温かい手を差し伸べるのが政治だと思います。三木さん自体が胸を張って議会の子であり民主政治を守るとおっしゃるなら、こういう点にこそ十分に考えるべきじゃないかと思います。  また、工業地帯では、私が行ったときにはもちろん水は引いていましたが、道路がぎらぎら光っておる。というのは、水と一緒に油が流れておる。したがって、単なる水につかったというだけでないのです、被害は。一々挙げませんが、たとえば材木なんかでも、これは油がしみ込んで使いものにならぬ。あるいは洗たく屋等の企業の生業に必要な機械等もこれは全部だめになっている、こういう実態があります。これもひとつ十分考えてもらいたい。  それから、これは文部大臣かと思いますが、文化財の災害についてどういうことになっておるのか。聞くところによると、若干予算はあるようだが何もしてもらえないということもあります。私が見てきたのは、実は赤穂浪士で有名な赤穂城の石がきが崩れております。これらを――文化財はそのほかにもあると思います。このような重要な文化財が災害に遭ったときにはどのような措置あるいはどのような方法を考えておるのか、これも承っておきたいと思います。  それから、先ほどちょっと話が、政府委員からの答弁にありましたが、これはどこの地方自治体でも特別交付金をぜひいただきたいというか配慮願いたいと、こういうことを言っております。  まだありますが、時間の関係でこの程度の質問を続けて行いました。それぞれ答弁を願います。
  63. 天野光晴

    天野(光)国務大臣 私の方で、私は総責任者でやっておるのですが、全部の調査がまだまとまっておりません。いま田中先生の御意見の中にあった個人災害の問題等は、早速いまの法の範囲内ではちょっと扱いかねます。ただ、いつものことでございますが、災害が起きますと物が不足します。それについての手配はいたさせておるつもりでございます。  その程度のことで私の方はお許しを願いたいと思います。
  64. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、石がきが崩壊しているところのみならず、樹木が倒壊しているところなどを合わせまして三十一件にわたる被害がございます。これに対して文部省がとっております措置は、これらの文化財関係のそれぞれの規模、財政規模に応じまして、復旧整備に要する経費の百分の六十から百分の七十の範囲で補助を行うという考えで臨んでいるわけでございます。
  65. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 十七号台風災害に伴う復旧物資の供給につきまして、十幾のいろいろな物資の連合会等に対しまして、供給の責任を強く認識するように、かつ便乗値上げ等を行わないように厳重通達を出し、指導しております。  それから、先ほど具体的に品名を出してのお話がございましたが、特にセメント、ブロック、かわら、畳等の災害復旧物資等につきましては、需給の状況、価格の動向等を十分監視指導するように地方の通産局及び生産者団体、これは約二十団体でございますが、これに対しまして十分指導しておるところでございます。
  66. 大石武一

    ○大石国務大臣 いろいろな直接の生活物資につきましては十分の配慮を行いまして、被災、罹災者に対してできるだけの手当てをさせるようにしたいと考えております。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいまのそれぞれの御答弁には私は満足はいたしておりません。また、補助率等についても意見があります。しかし、関連でもあり、もう時間が来ましたから、これから先のことは災害特別委員会で細かくやろうと思っています。しかし、すべての点についてこれは本当に誠意のある温かい政治が行われるように希望します。  もう一つは、何といっても第二予備費というか公共事業費を流用するなんということでなくて、補正予算をつくって思い切った対策を抜本的に立てるべきである、これを重ねて要望して、関連質問を終わります。
  68. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて田中君の関連質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  69. 白浜仁吉

    白浜委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する件について、本日、海外経済協力基金理事大島隆夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 白浜仁吉

    白浜委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ――――◇―――――    午後一時一分開議
  71. 白浜仁吉

    白浜委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林進君。
  72. 小林進

    小林(進)委員 私は、午前中の質問に続いて、例の行政と政治の癒着に対する若干の国民の疑惑があるということを申し上げましたが、その国民の疑惑を解くという立場において、国政調査権と国税庁等行政庁における守秘義務との関係について簡単に御質問申し上げて、総理の御所見を承っておきたいと思うのであります。  いままでの質問にも明らかになりましたとおり、国税庁、捜査当局は若干別にいたしましても、何か行政に不公正があるのではないか、こういう疑点が常に国民につきまとっておるわけであります。こうした国民の疑惑、行政に対する不信を取り除いて真実を追及する機関は日本のどこにあるかと言えば、それは国政調査権以外にはないのであります。いわゆる憲法六十二条に定められておりますその国政調査権でありまして、憲法の第六十二条には「兩議院は、各々國政に閲する調査を行ひ、これに閲して、誰人の出頭及び謹言並びに記録の提出を要求することができる。」、こういう規定によりましてわれわれは疑惑のある関係各官庁に出頭を求め、あるいは必要書類の提出を要求することができる。ところが、それをやりまするというと、現実の面においては国税庁を初め各省は応じないのであります。その応じない理由は何かというと、たとえば国税庁で言えば所得税法第二百四十三条、すなわち「所得税に関する調査に関する事務に従事している者又は従事していた者が、その事務に関して知ることのできた秘密を漏らし又は盗用したときは、これを二年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」というこの条文をたてまえにして、国会の一切の調査権に応じないというのが実際であります。それでこの形がある限りは、断じて私が午前中に申し上げました行政の不公正その他を、いわゆる国権の最高機関たる国会が是正することができない。国民の前にもその疑惑を明らかにするわけにはいかない。  これに対して、私は政府からどうしても立法的処置を講じていただかなければならぬと思うのでありまするが、その最も的確な例として、アメリカでありまするが、アメリカはそれを法律的に定めておりまして、アメリカにおける上院の財務委員会あるいは下院の歳入委員会等において税務署に対しちゃんと資料の要求をする権利を持っております。そして税務署はこれに従わなければならぬように定められております。すなわち、アメリカ合衆国の内国税法第七千二百十三条がそれでありまして、こうして国会の要求に応じて提出したその税務署の書類については、主として、国会は秘密に処理することを原則とし、委員以外は一般にこれを公開しないことになっている、こういう規定はありまするけれども、国権の最高機関に対していわゆる国税庁がその要求書類を提出するということを義務づけられている。これが私は正しい姿だと思うのでありまして、こういう立法処置を、一体、総理大臣はおやりになりまして、この行政と政治の癒着に対する国民の疑惑を進んで解くという、そういうお考えがおありなのかどうか、承っておきたいのであります。
  73. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 申すまでもなく、小林君御承知のように、守秘義務と国政調査権はともに憲法の規定ですから、ときにやはり国会と政府の見解が異なる場合があるわけですが、そのときには、両方が守らるべき公益の比較考量をするという、いわゆる国政調査権によって得られる公益と、また守秘義務によって得られる公益とを、個個のケースごとに比較考量するということが、これはたてまえになっておるわけですが、私としては、できる限り、この国政調査権というものに対して最大限度の協力をいたしたいという方針のもとに、しかし、やはり守秘義務というものは否定することはできません。守秘義務を否定することはできない、これは憲法の規定ですから。小林君のいま御提案になったことは、私はこれはいま初めて承ることでございますから、直ちに私が、日本でこうするああするということを申し上げることも適当ではございませんが、これは国会においても、十分われわれとしても研究をいたしますが、ひとつ御研究を賜りたいと思います。
  74. 小林進

    小林(進)委員 行政の面において、その国政調査権と守秘義務の関係はむしろ日本の官僚政治の生態そのままで、最高機関たる国会調査権をも彼らは平気で拒否する。行政がむしろ強さを発揮しているというのが実情であります。これでは本当の民主主義的な運営もできないのでありますが、そこで私は、もう行政じゃだめだ、立法処置にゆだねなければならない。いま総理は、国会も考えてくれ、政府も前向きに考えるとおっしゃいましたが、いま一歩進んで、せめてこのアメリカの立法処置に準じてこれを可能にするというふうに、前向きで一体お考えになることができないものか、ちょっとお尋ねをしたいのであります。
  75. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国政調査権というものが十分に機能を発揮できるというために、守秘義務と国政調査権とがときに対立することがあるわけですから、そういうものに対して国政調査権というものがなるべく機能を発揮できるようにするというために、しかし、一方において守秘義務というものは、守らるべき公益が確かにあるわけでありますから、そういう点で、そういう前提のもとで研究はいたしますけれども、いますぐに結論的なことを示唆することは私はできないと思います。少し研究をしてみないとわからない。
  76. 小林進

    小林(進)委員 総理の御答弁はどうも満足いきませんけれども、ここだけで足踏みをしているわけにはいきませんが、ただ、憲法学者やわれわれの中には、やはり憲法に定められた、国民に直接責任を持っている最高機関の国会だ、この国会に対しては行政の守秘義務も、これは一般には及ばないという広義の解釈もあるのです。これはやはり民主政治の本義、新憲法のたてまえからいけば、それくらいの解釈があってもいいのです。ところが、日本の実情は逆なんだ。行政はむしろこの憲法国政調査権も全部守秘義務で拒否して、あえてこれに従わない。それで、官僚独自の閉鎖社会を持って、彼らの権力の温存を図っている。これは憲法の基本に関する重大問題でもありまするから、いますぐとは言いませんけれども、本当にひとつ総理、前向きにお考えいただきたいと思う。あなた、議会の子だなんとおっしゃるけれども、その答弁じゃ議会の子らしい風格のある回答にはなっていないのであります。  特に最近は役人というか、あなたの守秘義務の一つの、いわゆる刑事訴訟法の四十七条の問題もこれなんです。あなたは、国会調査権は、むしろそれは公益だから、これに基づいて公開します、国民の知る権利に答えますと、あのただし書きを言ってりっぱだったけれども、だんだんただし書きを忘れて、いま本文の方だけ頭に入ってきて、どうも守秘義務だから秘密にする、人権を守る。  私は時間がありませんから言いますけれども、人権尊重も、一般の人権と公職にある国家公務員、特別公務員との人権はおのずから違うはずです。われわれ公職についている者は、一般人の人権よりはもっと激しく国民に服さなければならない、奉仕しなければならないのでありますから、ある程度は国会の要請にも応じて、常に公開の底上で一切の調査、喚問に応ずるという、これくらいの義務は国家公務員にはあるべきであるという、こういう一般の解釈もまたあるのでありますから、私はこういう解釈をとる方であります。  それをいま行政の抵抗に遭ってできかねておりますから、法律でこの国会の正当なる当調査権をいま少し確定したものに位置づける必要がある、それを考えてください、こういうことを言っているのであります。どうか総理、本当に前向きにひとつ御善処いただくという点で御理解を得たことにいたしまして、次に私は、財政特例法と社会的不公正という経済生活に関連する問題について御質問をいたしたいと思います。  いま、この第七十八臨時国会に提出されている法案の中で特に重要なのは、赤字公債三兆七千五百億円の発行を承認を求めるという財特法の成立、不成立が今国会の一番重要問題であります。ところが、三木内閣は、このほかに、ことしはまだ建設公債三兆五千二百五十億円を発行されておりまするから、今年度における借金は七兆二千七百五十億円。これをあなたは借金をされているわけであります。昨年度はというと、建設、赤字両借金を合わせて五兆三千億円。でありまするから、国民の側から見れば、三木さんは総理大臣になられて二年もたたないうちに、実に十二兆七千億円も国民に借金を背負わされた、こういう勘定になるわけでございます。この借金は一体いつまで続くのかといったら、まだ数年間こうやって毎年七兆円、八兆円、十兆円の借金をしていかなければだめだ。  その将来の結果を大蔵省が試算をしたものがいわゆる中期財政展望というのであります。これによると、この借金政策昭和五十五年まで続きますと、こう言う。五十五年の末に、何とか五十六年から赤字公債に依存するのをやめたいというのでありますから、これをやめたとしても、その五十五年の末に公債発行の残高は一体幾らになるかというと、五十一兆四千億円の巨額に上る。これは借金ですから国民がみんなこれを背負うのでありますから、国民一人一人に割り当てると利息も加えてざっと五十万円ずつなんです。これは四人家族だと二百万円。最近わが日本にもあの五つ子が生まれました。めでたいが、あの五つ子も、生まれたばかりにあなたの借金二百五十万円、背負わされるという勘定でございます。こういう巨額な借金を国民が背負わされるという、これが財政特例法の内容でありまするから、われわれはそう簡単に賛成をするわけにはいきませんよ。  でありまするから、こういう借金を一体何でつくったかというその原因だ、その原因をまず国民の前に明らかにしなさいと要求するのは、これはあたりまえでございましょう。私どもをして言わせれば、こんな大きな借金を知らないうちに国民に背負わせているのは、これはいわゆる三木内閣自民党内閣の最大の失敗ではないか。個人の家においても国家においても同じであります。計画もなしにめちゃくちゃに金をつくれば借金が出るのはあたりまえだ。ちょうどわが日本三木さんという無計画な放漫なおやじを迎えたために、日本人という家族が一人一人莫大な借金を背負わされて苦しんでいるというのが今日のこの実情なんです。  そこで、次には、この借金を一体どうして返すのですかという、これをわれわれはやはり明らかにしてもらわなければ、背負わされている国民の代表として、われわれは黙ってこれに賛成するわけにはいきません。そこで、この借金をどうして返すのか、その計画を示せということを口を酸っぱくして要求しているのにもかかわらず、政府はこれに対して、いわゆる償還計画というものをわれわれの前に提出したが、その内容は何かといえば、十年後に現金でお返しいたしますというだけの話で、あとは何もない。こんな人を小ばかにした償還計画が一体ありますか。個人で言えば、金は借りた、出世払いだ、出世をしたら返しますという借金の仕方と同じだ。そういうような財政特例法を出しておいて、社会党は賛成をしないから困るなどという無責任な放言をやられたんじゃ、われわれの方では了承はできないのでありまして、そこで、あなたに言うのだ。この借金計画をいま少しつまびらかにして、国民には政府のずさんなやり方で五十五年までには、これほどの大きな借金をいたしますけれども、返すためには年次計画でこうしてこうして返しますという、その計画をここでお示しをいただきたい、こう言うのであります。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたびこの問題につきましては本委員会におきましてもお聞き取りをいただいたわけでございますけれども、小林委員も御承知のように、一昨々年の石油危機を契機といたしまして、世界的に経済が大変な動揺を来し、わが国内におきましても経済に狂乱状態が起きまして、政府が総需要抑制策をとらざるを得ないような状況になりまして、そのため、四十九年度におきましては予定いたしました税収入は八千億の減収、五十年度におきましては実に三兆八千億の減収を来すということになったことは御案内のとおりでございます。したがって、このような状況になりました以上、歳出を削減するかあるいは増税をお願いするか、それ以外に道はないのでございますけれども、当時の経済の状況から申しまして、国民の生活の現状から申しまして、それは耐えられるところじゃございませんので、しばらく公債財政に依存する道を選択さしていただいたのが、この公債財政を選択するに至りました理由でございます。  しかしながら、御指摘のようにこういう不正常な財政運営はいつまでも続けてはいけないことは申すまでもないわけでございます。したがって、前の通常国会におきまして、五十年代前半にはこの減債状況をつくり出さなければならない、少なくとも特例債から脱却する財政に持っていかなければならない、そのために歳入歳出のもくろみを立ててみますとこういう一応の試算になります、ということを御提示申し上げて御審議をいただいた経緯がありますことは、御指摘のとおりでございます。  問題は償還の問題でございます。もちろん、償還計画が立って、国民にそういう公債財政からの脱却の展望が年次別に明らかになることが望ましいことは、御指摘のとおりでございます。しかしながら、その段階におきましてもたびたび御説明申し上げましたとおり、公債は十年の利付債で発行いたしておるわけでございますが、これから先十年間の年々の財政計画というものをいまの段階で提示せよと言われましても、これは難きを政府に強いるものであることは、予算の専門家であられまする小林さんよく御理解いただけることと思うのであります。明年度の予算の規模をどうするかについてさえ、いろいろな不確定要素がございまして、なおわれわれは掌握しかねているような実情でございますので、十年先までの展望を的確に掌握しまして、その中で公債償還財源をこのように割り出してまいりますということを提示することができれば非常に幸いでございますけれども、それは不可能なことでございます。  そこで、政府は、国会に対しまして、特例債の減債方針といたしまして、従来の建設国債の場合と違った方針を立てまして、前年度剰余金は全額特別会計に繰り入れる、あるいは借りかえによって償還財源をつくらないこと等、厳しい償還方針を申し上げまして、政府の誠意のあるところを御理解いただくように努めたわけでございます。  もとより、政府は国の内外を通じまして一番高い信用をいただいておる主体でございます。日本の国内におきましても、銀行にいたしましても会社にいたしましても多くの債券を出しておるわけでございますが、その場合に、一つ一つの債券についてその発行会社、発行法人の年次的な事業のもくろみがついておるかというと、そうではないわけでございます。そうではなくて、その会社の信用、その銀行の信用によって償還についての信頼を得てそれが発行され消化されておるのが実情でございます。最高の信用を享受しておる国債でございますので、仰せのような償還計画があれば望ましいことでございますけれども、それは不可能なことでございますので、償還方針について非常に厳しい態度をとっておるということでございますならば、政府の減債についての方針を御理解いただいて、国債の信用に動揺はないということの確信がいただけるのではないかと私は思うのでございます。  さような意味におきまして、償還計画を数字的に年次別に提出せよという御注文に対しましては、これはお願いでございますけれども、不可能なことでございますので、それはひとつ御理解をいただきたいということでございます。
  78. 小林進

    小林(進)委員 われわれはもう定められた時間がないのでありますから、あんまりだらだらした御答弁をいただくと質問ができませんので、要領よくお願いしたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、こういう膨大な借金を国民に押しつけておいて、これを国民から取り上げる。その取り上げる方法は、いみじくもあなたがおっしゃったように増税しかないでしょう。増税しかない。それは全く私も同感です。その増税が間接税でやるか、直接税でやるか、所得税でやるか、法人税でやるか、特別税でやるか、富裕税でやるか、あるいはまあ付加価値税でやるか、いずれにしても国民一人一人に税金をぶっかけて、それでこれを解決する以外にはないのであります。そういう重要な問題でありますから、もっと緻密に、あなたにはこういう形で返していただきますという、その計画、見通しを出すのがあたりまえでありますけれども、あなたはそれをお出しにならないと言うのでありますから、これはやはり永久に、長く議論の残る問題として私はおいておきます。  そこでひとつ、いまの政府に要求しておきたいことは、これは総理も本会議場でおっしゃった、まあ富裕税だとか財産増加税という個々の問題にもいろいろ問題がありまするから、政府全般としては所得税法それ自体を総括的にひとつ見直しをして、増税方向に、増税方向とはおっしゃいませんでしたけれども、増税しかないでしょう、持っていきたいと思う、こういうことをおっしゃった。  そこで、われわれは、いまここであなたに申し上げておきたいことは、その増税を庶民に持っていくのか、金持ちの方へ持っていくのか、資産家の方へ持っていくのか、土地持ちの方へ持っていくのか、問題はそれなのです。わが日本ほど資産家や大企業や財閥に軽い、恩典を浴さしている国はない。働く庶民にこれほど残酷な政治を与えている国はない。時間がありませんから、私は午前中のように具体的に申し上げませんけれども。そこでぜひこれを改めるとして、増税の方向へ進めていくとするならば、大企業、資産家、土地持ちにやっていただきたい。利子配当税の分離課税はやめて、そして総合課税とする。富裕税も設ける。大企業に対しては六種類の引当金、これは税金のかからない金だ。二十三種類にも上る準備金制度、これも税金がほとんどかかっていない。こういう恩典を与えているもろもろの問題をこれを整理統合して、これをやるだけでもわれわれの試算では一兆五千億円の税収ができるという勘定ができております。交際費なども四十九年度で約二兆円。二兆円です。こういうものはアメリカでもイギリスでも扱いは非常に厳格であります。こういうものは廃止するという方向へひとつ税制の改正をやっていただく。まあいろいろ申し上げてありますが、そういう税制改正の姿勢を続けていただきたいということをお願いいたしますとともに、これは本会議でも言われました景気浮揚には消費力ですね、購買力を高めなければならない。その購買力を高めるには、景気浮揚の一〇〇%の中の六〇%近くを占めている個人の購買力、個人の所得、勤労大衆だ。わが日本のいわゆる三千万人の納税者の中に勤労大衆、サラリーマン生活で税金を納めている人たちは二千四百万人、いや二千三百万人、三百万人か四百万人の間とすれば――まあ忙しいから数字は後で申し上げますけれども、それくらいの人たちに、あなたたちは去年から実質的な増税をやっておいて、減税は一つもしない。だから八・八%なんかの賃金を上げてもらったけれども、税金を計算してみるとむしろ取られ分。取られ分ですよ。それにインフレでありますから、二重の重税をかけられている。ところが、政府は五十二年度、来年度もまたこういう勤労所得税に対しては何にも税金の減税をしない、調整減税はやらないと言っていらっしゃるのでありますから、いまの政府の姿勢はあくまでも働く者に重税プラス重税プラスインフレという、二重三重の苦しみを与えようという政策をお出しになっている。断固としてこれは改めてもらわなければならぬと思いますが、いかがでございますか。明快にひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 お説でございますけれども、日本の税負担は、私は先進諸国に比較いたしまして相当低目にあるわけでございまして、また日本の税制は、諸外国に比較いたしまして、決して遜色があるものとは思わないことをまずもってお断り申し上げておきます。  それから、国債依存財政から脱却いたしまして、財政の正常化を図ってまいる必要は小林君と同様に私も痛感いたしております。そのためには、相当程度税制に対して期待をかけなければならぬことは申すまでもないことでございまして、この前の御検討いただきました試算におきましても、いまの経済計画に盛り込まれた行財政水準を維持しながら、五十年代前半に国債、特例債から脱却するといたしますならば、現在の税負担よりは中央において二%、地方において一%程度負担を重くお願いするという試算が出ておりますことも御案内のとおりでございます。そういった場合、それを所得課税でお願いするか、あるいは資産課税でお願いするか、あるいは消費課税でお願いするか、これは確かに国民の負担にかかわる問題でございまして重大でございます。  したがって、政府はいまどういう領域でお願いするかについては予断を持っていないわけでございまして、税制調査会で真剣にいま御検討をいただいておる段階でございます。しかし、仰せのように、租税負担の公平を図らなければならぬ見地から、租税特別措置の整理、合理化というものに精力的でなければならぬという御指摘は仰せのとおりでございまして、現に前の国会におきましても、相当思い切った整理案を御審議いただいて御承認をちょうだいいたしたわけでございますが、この問題は年々歳々新たな眼で見直しまして、整理、合理化を進めてまいることは当然でございます。  ただ、あなたが言われる引当金でございますとか、準備金でございますとか、つまり、われわれの観念で申しますと、租税特別措置ではなく、会計経理上どこまでを課税の対象と見るかという問題、どの線にするかという問題につきましては、いろいろな見解があろうかと思いますが、私どももその合理的な限界をどのように設定してまいるかということにつきましては、今後なお慎重に検討してまいるつもりでございます。  富裕税でございますとか、土地増価税、その他社会党からもいろいろな御指摘がございますことは承知いたしておるわけでございますが、それは先ほど申しましたように、所得課税、資産課税、消費課税全体の領域につきまして、税制改正全般の問題といたしましていま鋭意検討中である、成案を得られれば御審議をいただくべく用意をいたしておるということを御了承いただきたいと思います。
  80. 白浜仁吉

    白浜委員長 安宅常彦君より関連質疑の申し出があります。小林君の持ち時間の範囲内でこれを許します。安宅常彦君。
  81. 安宅常彦

    安宅委員 小林先生が、恐らく韓国の問題や何かがあって、その後私がということに予定はなっておったと思うのですが、大蔵大臣の答弁が余り長いものですから、木に竹を継いだみたいな質問になるかもしれませんけれども、いまロッキードがらみで非常に問題になっているいわゆる日韓大陸棚協定、日韓の関係というのはいま非常に焦点になっているわけです。しかもアメリカの証券駒引委員会、ここで調査を始めたのはガルフ社が一番最初なんです。ロッキードは最後なんですね。まだ喚問の段階です。この状態の中で、ガルフからは証券取引委員会なり裁判所に対して正式な報告書が出ておるわけです。その中で、こういう状態の中で日韓大陸棚協定というものが国会にまた上程される、継続審議になっておったわけですが、これは私から言わせれば非常に臭気ふんぷんたる協定です。こういうのを本国会でどうしても批准をするつもりなのか。これは時間がありませんから、私は理由を述べます。最後に総理から答弁していただきたいのです。  この協定は、韓国ロビーといわれる諸君だけがはしゃぎ過ぎて、そしてなぜか熱を上げている、そういう協定ですよ。この協定はそういう意味で非常におかしいのです。日韓協力委員会だとか、いろんな会がございますが、あの人たちが韓国に渡ったり、東京で芸術家の養成という名目で来てとんでもない芸術をやっている秘苑なんというところがありますね。そこでごちそうになったり、いろんな長い歴史の中で積弊が日々につのるみたいな、そういう中でこの協定というのは突如一九七四年一月三十日、これは結ばれた。しかも、その当時の閣僚だってその内容は何にも知った人がいなかった。自民党の関係機関に諮らないで、急にこれは出てきた問題です。大変問題になったわけです。恐らくあのとき三木さんが外務大臣でなかったですか。間違いだったら訂正いたしますが――大平さんですか。だから、自民党の中でも相当大きな反対があったわけですよ。まるで奇怪な環境の中で結ばれた、こういう協定です。  第二番目に問題にしたいのは、当時の韓国の情勢は何かといいますと、ベトナム情勢の急転換がありまして、もう日韓経済協力委員会なんというものをやって、企業の連中なんか集まらなくなったような非常に際どい情勢。もう韓国は見込みないじゃないか、日本の資本家でさえもそう考えた時代。それに加うるに金大中さんの事件であるとか、いろんなことがあって、日韓の関係は冷えに冷えておったですね。こういうときに結ばれた。こういうことはどうも常識外れだと私は判断しておるのです。     〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 それを裏づけるように、当時はもう韓国の経済というものは危機に瀕しておって、日韓条約のときの金はもう使い果たしかけておったし、それでどういうことをやっておったかというと、外貨の赤字を埋めるためにプロジェクトのないつかみ金を商品援助として堂々とやってみたり、それから農業援助、これも農機具を売るだけの話ですね。日本の農業というものを破壊に導いておいてなぜやるんだと三木さんに私言ったことがあるでしょう。このことは検討しなければならないとあなたはあのとき答えた。こういう情勢の中で結ばれた。これは非常におかしな事件で、結局朴政権を助けるためにやられた、こういうものとしか私ども判断しておりません。したがって、これは石油の資源を開発するのが本命じゃなくて、言うならば韓国の資金繰りに必要なためにこの協定は結ばれた、みんなそう言っています。三木さんの頼りにしている宇都宮さんなんか堂々と論文を発表していますからね。こういう状態です。自民党の中でも心ある人はみんなそう思っています、汚い協定だと。  それからどういうことでしょう、もっと証拠を挙げれば、たとえば岸信介さんを会長とする日韓協力委員会であるとか、植村さんの日韓経済協力委員会であるとかいうのは頻繁にこのころ往復をやっていますね。そうして、たとえばそのころ事務局長だったと思いますが、矢次一夫さんという人が「わが戦後記」というのを雑誌に発表していますよ。そこの中でおれがやったんだということを堂々と記事にして書いていますから間違いないのですが、こういう韓国ロビーと言われる人々が何らかのつながりによって、そうしてうごめいておったということがはっきりしているのです。  こういう時期は一体どういう時期かといいますと、この間マックロイ報告というのが出ました。私この前の予算委員会でそれを質問して、調査をしてくださいということを言っておいたはずですが、後でそれは触れます。ちょうどガルフ社が韓国に進出をして、そして韓国政府が仁川沖から日本の鹿児島の南まで、奄美大島の付近まで勝手に鉱区を設定して――総理、見てください。閣僚の人、見てくださいませんか。ここまで韓国の鉱区があると言うんです。九州はここですよ。いいですか。これは奄美大島です。こんなばかなことをやって、その後韓国政府はいち早くほかの会社に鉱区権を売り払ってしまったのですよ。この鉱区を合法化するために韓国政府が海底鉱物資源開発法というものを成立させた。その後みんなに売るのです。ところが、ガルフだけは、この法律ができたのは一九七〇年、一九六九年にもうすでに売り払っているのですね。そういう汚い法律なんです。そのときはどうかといいますと、大統領選挙のためにマックロイ報告に示すとおり、ガルフ社は三百万ドルの政治献金をしていますね。ドーシーという会長は、これだけの金を出したから金大中さんが負けたんじゃないか、それを出さなかったらあの人は勝ったんじゃないかと思わないかと言ったら、思うと言っているんですよ、アメリカの公聴会で。こういうことがあったときに、日本の資本が、もうすでに共同開発区域になっている分は分担が決まっておりますね。たとえば日本石油開発株式会社、西日本石油開発株式会社それから帝国石油、こういう会社の中で、西日本石油開発と日本石油開発はこういう事態を迎えてから急遽でっち上げた会社ですよ。設立年月日を見たらすぐわかる。一九六九年です。いままでなかったのを外国資本を入れて、そうしてあわ食って権利を取った。そうして韓国と政府の間で――二百海里経済水域説がもはや世界の慣例になっているでしょう。それを二百海里以上のところまで、それよりも南のところまで韓国に譲って、この辺なんか八鉱区、九鉱区というところがあるのです。ここなんか二百海里以上ですよ。そこまで韓国と共同開発に踏み切っているのです。本来ならば共同開発どころかこれは日本でやるべきものであって――あれは中国と協議をしなければだめですよ。けれども日本の開発区域であって、韓国がなんだかんだ言う筋合いのないところまで共同開発をしているのですね。こういうやり方をした。ここでガルフ社が政治献金をした。日本の方はそういう会社を新しくつくってやった、利権に入ろうとした。そのときに政治献金なりそういうことがないなどという証拠はどこにもないのです。  この前の国会で、外務省が派遣した韓国第三次経済開発五カ年計画調査団、これはその調査団の政府に対する正式の報告ですよ。役人が言っておるのですよ。そこではどういうことが書いてあるかというと、この国は、外貨割り当てや商業借款供与枠を受けるためには、すべて有力者の口添えが必要だ、それから銀行は商業ベースで資金を貸す例は皆無だ、こういうことを報告されている国ですから、ただで日本の企業にどうぞいらっしゃいなんと言うはずがない。これは私はきょうは言いませんが、今度一つ一つ追及をしていきますよ。このことははっきりしておかなければならない、こういう協定だということです。  それから、本当に日本人としてとても考えられないこと、いま地図で示したとおり、奄美大島の近くまでなぜ韓国に譲ったかという国民感情。あなた、いまの内閣はどういうふうに弁解するのでしょうか。なぜ韓国の言うとおりになって折れなければならなかったのでしょうか。汚いところ、暗いところ、しりを握られているんだ、こう国民が思うに違いないのです。日本が折れて、韓国と共同開発という妥協を行って調印した、この国辱的な協定というものは批准すべきでないと私は思います。  時間がないので、ずっと言います。  また、日韓共同開発と言うけれども、韓国は鉱区権をメジャーに売ってしまったわけですから、掘る方は関係ないのですよ。売ってしまったのです。ぽんと入れちゃったのです。シェルであるとかテキサコであるとかガルフだとか、そういうところへ売ってしまったわけですね。そうすると日韓共同じゃないでしょう。日韓共同じゃない。日米共同でしなう、これは完全に。売ったんだもの。(小林(進)委員「金をもらってしまったのだからね」と呼ぶ)そうしたら今度どうですか。五月五日の新聞をごらんください。各紙書いてありますが、沖縄沖で帝石とガルフが共同で試掘しておった石油は失敗したのです。そのときの約束はどういう約束かといいますと、帝石は何にもしないのです。ガルフが掘ったのですよ、四つの井戸を。そして四つの井戸が掘られたならば鉱区権の半分、三万八千平方キロメートル、この鉱区権を半分アメリカにやる、ガルフにやるという約束だったのですよ。つまり非常に深いところの採掘は韓国はもちろんその力がない。日本の最大の開発会社である帝石でさえ、こういう深いところは力がないからガルフに半分鉱区権をやるというやり方だ。結局同じじゃないでしょうか、みんな。この果実ができたならば五〇%韓国政府にやる。石油公団法の改正が去年あった。そのときにはちゃんと外国のそういう政府機関にも融資ができるように法改正したでしょう。韓国は全然金を出さないのですよ。日本の融資でアメリカに売り払った、そういう鉱区権でまた一もうけするという、ひどい、まるでどろぼうに追い銭みたいなそういう協定なんですね。これは私はとても許すことができない。しかも、この協定は五十年間拘束しますね。だから日米じゃなくて米だけですよ、残るのは。日本の帝石でさえその状態ですから。アメリカが勝手に開発するという地域になってしまいますね、実質上。こんな売国的な協定はありませんよ。しかも、そういう主張ができる区域で、中間線をとってお互いに話し合ってやった協定は世界で二十三ほどあります。そのうち二十四番目が、日本が中国とも協議しないで韓国とだけやって、しかも自分の主張し得るところをずっと奄美大島まで譲ってやったなどという、本当にでたらめな(小林(進)委員「国を売ったものだな」と呼ぶ)国を売った協定だと思わなければなりませんね。そのほかに漁業権の問題がある。漁民の生活問題がある。台風の常襲地帯でしょう。何百メートルという下を掘るのですから。カリフォルニアで一遍ありましたね、ものすごい被害が。設備が壊れて真っ黒な海になったでしょう。もし海がそういうふうになったならば一体どうするのでしょうか。そういう対策が全然ないじゃありませんか。しかも中華人民共和国の揚子江や黄河から流れた大陸だなと言われている。その発言権を無視したままやる。アメリカは非常に利口ですから、これらの会社にもうやめろという勧告を出しておるのです。これはニューヨーク・タイムズも前から報道しています。最近やめました。これはカルテックス、テキサコも掘る気はありません。ガルフもみんな権利を返還しました。せっかく買ったのだけれども返還したのです。だから仁川沖の黄海の部分は、つまり日本との共同区域を除いた韓国だけでやれる部分はもうすでに掘らないということになっておるのです。これは中国との関係があるからと言われています。  なぜ日本だけが韓国と一緒になって紛争のもとになるような協定を批准しなければならないのでしょうか。私は外務委員会その他で詳しくやりますが、そういう理由を挙げまして、そういうことを私が言っても、総理どうでしょうか。日韓癒着という問題が非常に喧伝されている。ガルフが、日本の会社と組んで、韓国においてどんなことをしておるかということがだんだんいま暴露されようとしている時期に(小林(進)委員「ロッキードの山だよ、最後の山だ」と呼ぶ)ロッキード以上です、ガルフの汚職は。だから、日韓両国の国民は何の利益もない。一部の政商や一部の政権やアメリカ系のメジャーや国際石油資本だけがもうかる。こういうことをわかっておって批准をしなければならないのでしょうか。聞くところによると、外務委員会の理事会で、これだけはぜひ衆議院を通してくれなどと言っておるそうです。どうですか、総理総理答弁を願います。
  82. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 やはりこの条約は、国益を踏まえて石油の供給安定ということを中心にして考えたわけでございまして、それが地図の上で見れば奄美大島の付近まで接近しておるということでございますが、大陸だなの権益というものについて国際的な解釈もございますので、これが日本の国益を害するものでないということを少し簡単に条約局長から説明をさすことにいたします。
  83. 安宅常彦

    安宅委員 いや答弁要らぬ。これは政治論です。役人が答弁する筋合いのものではありません。  国益とあなた言ったけれども、これはあなたのグループに所属している人は、塩谷君だってみんな反対だったのですよ。あなたのグループでそのころ決めたんではないですか。宇都宮さん初めみんな論文まで出しておられる。あなたが総理になったら君子豹変をしたのですか。今度は反三木派の方に行ったのですか、この問題に関する限りは。それはおかしいじゃありませんか。そういう答弁は一国の宰相としてよほど考えて答弁していただきたい。宇都宮さんの論文を見たことがありますか。
  84. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、この条約は国会の御承認をできるだけ速やかに受けたいという立場で国会に提出し、継続審議になっておるわけでございまして、いろいろな角度から外務当局、通産当局の話を聞きまして、やはり日本の国益を害するものではない、石油の供給を確保するために必要である。私は韓国と……。
  85. 安宅常彦

    安宅委員 いやいや、そんなことを聞いているんじゃないです。宇都宮さんの論文を見たことがあるかと聞いている。
  86. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題については宇都宮君も反対の意見であるということは承知しております。
  87. 安宅常彦

    安宅委員 それは総理、アメリカがやめているという現実は見なければなりません。そのためにアメリカのメジャー系の各資本が権利を返還しているということ、それをはっきりした上であなたは答弁したとするならば、非常に国益の問題だの調子のいいことを言うけれども、大変に間違った答弁になるということだけは警告しておきます。これはほかの委員会で今度やります。  総理、このガルフの政治献金の問題で日本に関する部分というのはたくさんあるのです。もちろん韓国の部分もたくさんございまして、マックロイ報告にそれは明快に書いてあります。たとえば大体二百六十万ドルくらいの金を日本の石油会社の要請でバミューダのペーパーカンパニー、在外法人、そこを通じて支払わせられた。そのほか用船の問題だとか、それから日本興業銀行の債券まで買わされたとか、いろいろなことが調査の結果判明した。これは政治献金として証券取引委員会はいま調べているのですから。政治献金として悪用される危険が大である、こう書いてある。それは日本の総合商社だけではありません。多国籍企業は皆全部バハマであるとかバミューダであるとかそういうところにペーパーカンパニーを持っています。この連中ははっきり言って、税金の天国あるいは税金保養地だとか勝手な名前をつけて、そして人数ゼロなんという会社をたくさんつくっているのです。日本だってありますよ。ガルフと関係のない会社もありますけれども、たとえばここに東洋経済新報社というのが発行した「海外進出企業総覧」に、ジャパンラインなんというのはおくめんもなく二つの現地法人を持って、どういうことをやっているかというと、海運業のほかに投融資業をやっているとちゃんと書いてあるのです。何のためにこんなところに持ってきたかという理由は、税制面で有利だとちゃんと書いてある。堂々たるものですよ。それから今度は、アラビア石油なんというのはケイマン島に自分の原油を輸出するんだというのです。輸入するくせに輸出することを業として、設立目的は税金免除が目的だと堂々とこれに書いてありますよ。三井物産とブリヂストン液化ガスの両社で経営している会社なんかは、英領バハマで中東の石油、アブダビ国営石油の石油を輸入して、そして今度東京電力に輸出すると書いてあるのです。どうしてバハマにそんな会社が要るのですか。もっと心臓の強いのは三菱商事です。これは神戸製鋼等と共同でやっているのですけれども、バハマにおいてその会社はどういう任務を持っているかというと、アフリカの象牙海岸の鉄鉱山の調査開発をして日本に輸出する会社だ。何を言っているんだと言うのですよ。こんなばかなことがありますか。堂々たるもの。それを皆さんの方は全部調査をしてください。ガルフに関係した分に限りますと、それぞれの大臣は答弁されましたね。  きょう私は質問に立つために全部あなた方の下僚の人々を、責任ある人々を呼びました。さっきここまで言いわけに来た人もおります。たとえば、出光興産はバミューダ島を経由して、そしてマネークリーニングをやったかなにか、とにかく不正な手段で金を送ったか、または日本に送らずじまいにしたか、おかしいというので、それを発表されたのですよ。そういう在外法人を出光が持っているということを発表しておきながら、ほかの会社の分はまだ発表できないと言っているのですよ、通産省は。大蔵省の権限だと言っていますから、大蔵省は、その件については調査いたしますと大平さんちゃんと言いましたよ。何にも調査していません。この前の調査と同じやり方です。  私は、最後ですから要求いたします、時間がありませんので。どうですか、ガルフと取引のある――私は限定しますよ、全部なんて言いません。そういう在外法人、いわゆる。ペーパーカンパニー、たとえばID社みたいな、シグ・片山なんという、ああいうみたいな役割りを果たすことになっているのですから。これは世界の常識ですよ。他国に船の籍をかりるのは商取引の常道であって、他国、ほかの会社ではみんなやっていますと通産大臣言うみたいなもので、一つの商取引の慣行なんです。だから、ガルフ社と取引のある石油会社で、そういう在外法人を持っている会社、その内容、これを調査し、報告すること。それから、証券取引業によってリベートが入ってくる。大蔵省の国際金融局のある課長さんなんかは、一日何万件とあるんだから、そんなものは調べようがないと言うのですよ。さっき小林さん言いましたね、豚小屋を建てても税金が来ると言った。この人たちは莫大な金、日本は三億キロリットル石油を消費するでしょう。リベートは一〇%にしたら幾らですか。大きな企業が全部それをやっているから、日本予算の赤字欠陥が何兆円と出るのですよ。そうでしょう。あの連中がやっているのでしょう。脱税もやれるのですから、これは自国の政府の目が届かないのだから。そういうところのリベートが本当に返ってきているのか。リベートをやっているのですから。こういうものを報告すること。それで私は、その他議事録に載っている分は全部後で調査をして、あなたの方から報告させていただく、これを要求します。  最後に、どうしてもあなたの方で調査しかねてわからなかったというならば、一つ私は申し上げますけれども、富士石油はバミューダとバハマに二つの在外法人を持っています。それで、このリベートはやはり一〇%から一三%ぐらいだと会社の人は言っています。返ってきたためしはない。これはどこの口座に入っているかというと、人の名前を言っていいかどうか、私ちょっといま考えがまとまりませんけれども、こういうふうになっているのです。――私は、これは重大なことですから申し上げます。これは、水野惣平という人の個人口座に入っていたはずだということがわかっております。そして在外法人はRESOURCESというのです。二万ドルの出資金で四十八年度設立しています。一〇〇%投資。グレート・ヒル・カンパニー、これも一〇〇%投資、三万ドルで四十八年から五十一年までの間出ています。それが、そのリベートはちゃんとやっているのだけれども、返ってきた形跡はありません。こういうことがはっきり、富士石油の分は私ら調査がついている。もっともっとあるのですよ。だけれども、一つだけ言っておきますが、そういうことを調査すると言ったのですからね。調査した資料を全部私要求をいたします。これで私の質問を終わります。どうですか、できますか。出しますか。総理大臣、代表して答弁してください。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 御要求の資料につきましては、企業の秘密等との関連もございまして、差し支えのない限り通産省とも相談の上、提出いたします。
  89. 安宅常彦

    安宅委員 出光のものは暴露して、あとのものは差し支えあるからということはないでしょう、出しなさいよ。
  90. 小林進

    小林(進)委員 ちょうど時間が参りましたが、私は、日中、日ソ、ミグの関係では総理大臣質問の通告を出しておきました。通産大臣には円の問題と輸出の問題で質問を出しておきました。農林大臣には冷害の問題で質問を出しておきました。厚生大臣には福祉行政、特に民間医療保険の問題について出しておきましたが、時間が参りましたから、各閣僚にはまことに申しわけありませんけれども、私の質問は本日は割愛をさしていただきますが、いずれまた改めて質問をいたしたいと思います。  総理は、先ほどの黒いロッキードの問題で、午前中の答弁に対しては方々から私のところに苦情が参りました。総理答弁の中には何ら得るべきものはなかった、いわゆる灰色高官の問題でも議員証人の問題でも、何も的確な御答弁がなかった、聞いている大衆としては残念にたえないという批判がございましたが、もしそれに対し御意見があるならば一言承って、私の質問を終わりたいと思います。いかがでございますか。
  91. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はかなり明快にこれからの政府の手順を御説明を申し上げたつもりでおりますが、御理解がいただけ得なかったとすればまことに残念で、また後に質問もございましょうから、なお十分説明をさしていただくことにいたします。
  92. 小林進

    小林(進)委員 終わります。
  93. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、小山長規君。
  94. 小山長規

    小山(長)委員 最初に災害の問題から入りたいと思いますが、今回襲いました台風十七号、それから六月下旬には梅雨前線による集中豪雨がありました。またそのほか北海道や東北地方を襲った冷害があったのでありますが、この被災者に対し、私は自由民主党を代表して心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早く立ち直りを期待するものであります。また、災害によって亡くなられ、あるいは行方不明となられました方々の御遺族に対しましては、謹んで哀悼の意を表したいと思います。  なお、被災者対策については、後ほど時間がありましたらお伺いすることにいたしまして、次の質問に入りたいと思うのであります。  そこで、その前に財政上の問題でありますが、今回の災害復旧費に充てるため、先ほど社会党委員の方々の質問に答えて大蔵大臣は、一般予備費のほかに公共事業等予備費千五百億円をその財源に充てる、こういうふうにおっしゃったのであります。そうしますと、野党の諸君の主張は、これで十分ではないんじゃないか、したがって、補正予算を組んでほかの財源を求めて十分な対策をやるべきじゃないかという主張であったように聞いたわけでありますが、この千五百億円とそれから予備費を使えば、今度の災害あるいは冷害、六月の梅雨前線による集中豪雨による災害、これに対する対策は十分にして必要な対策費を全部賄える、こういう前提でございますか。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 きょうの午前中、主計局長から御報告申し上げましたように、公共施設の被害、農業施設の被害、文教施設の被害等みんな合わせまして、ただいままで私どもが把握しておる限りにおきましては七千三百億見当になるということでございます。これは若干これから被害がふえこそすれ、この数字は減少を見るようなことはないと私は思います。それから、これから先、今年度におきましてさらに災害が予想されないわけじゃないのです。したがって、先ほど主計局長が、今年度災の災害に伴う国庫負担分は千六百億見当をいま予想いたしておりますということの根拠は、そういった数字を踏まえた上で、今後予想される災害について、これまでの経験律からはじき出したものを加えたものをベースにいたしまして予想去れる国庫負担は一応千六百億見当ではなかろうかということを申し上げたわけでございます。それだけの国費を手当ていたしますならば、今年度災に対する手当てといたしましては必要にして十分でなかろうかという判断を財政当局としては持っております。
  96. 小山長規

    小山(長)委員 そうしますと、公共事業等予備費の千五百億円はこの機会に全額を災害復旧費に充てる、こうなりますね。ところが、前通常国会における説明では、この公共事業等予備費は、景気の落ち込みが生じたような際に、特に農業基盤等、農業の設備投資が非常におくれておるので、農業基盤等の整備費などに追加投資して、そして景気の落ち込みを防ぐ、あるいは景気浮揚を図る、こういう趣旨の答弁があったのです。そうしますと、その必要はもう今年度はなくなったというような趣旨なんでありますか。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように予算の編成過程におきまして、景気の回復のためにこの予備費の機動的な活用ということを考えたことは事実でございます。しかしながら、御承知のようにことしの春から景気が急速に回復をいたしました。最近になりまして輸出の伸長の鈍化等もございまして、景気の回復の足取りは必ずしも順調ではない、いわば足踏み状態にあることは御案内のとおりでございます。しかし、政府の判断といたしましては、この事態はただいまの財政経済政策を着実に実行することによって景気の着実な回復を図り得るわけでございまして、公共事業費等予備費を活用しなければならぬというような事態とは判断しておりません。
  98. 小山長規

    小山(長)委員 いまの大蔵大臣の御答弁は、この公共事業等予備費を災害費に充当することによって、いわゆる公共事業に投資するのであるから、したがって景気の落ち込みを支える力もあるんだ、こういう趣旨に受け取るわけですけれども、そうしますと、日本全国で災害を受けたところと受けないところ、冷害を受けたところと受けないところ、いろいろ差が出てくるわけですね。その谷を埋めるためには若干やはり公共事業等予備費なるものを残しておいて、そしてそれを取り崩してしかるべく対応策をとるのが財政当局として当然じゃないか、こう思いますが、その点はいかがですか。
  99. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、仰せのように災害、冷害、地域的に態様が違っておりますことは御指摘のとおりでございます。したがって、災害復旧費、冷害対策費の景気対策的効果というものに地域的なニュアンスの差異があることは御指摘のとおりと思います。けれども、いま御指摘のように、地域的な跛行性と申しますか、それからまた業種間の跛行性も相当顕著に見られる今日の状況でございますが、こういったことに対応するのは、財政ばかりでなく金融政策もあることでございまして、特に公共事業等予備費の活用に依存しなければこの事態に対応できないものだとは考えていないわけでございます。
  100. 小山長規

    小山(長)委員 この点については若干の意見の相違もありますけれども、これはこの程度でおきます。  次に、ロッキード事件について、総理にお伺いしたいと思うのであります。  ロッキード事件の中で丸紅並びに全日空ルートの解明についてはほとんど済んだ、こういうお話でありますが、それで児玉ルートだけが残っておる。法務大臣のどこかにおける発言によれば、児玉ルートの解明は十月中には解明できるというふうな御言明がありましたが、これはいまでも有効なのでしょうか。
  101. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 これは新聞に出ていた記事でおっしゃるんじゃないかと思います。去る二十六日郷里へ帰りまして、村上市で自民党の大会がありまして、そこへ出てあいさつをして、ロッキード事件に触れて、一生懸命にやっているのだけれども、児玉ルートは病気等の関係もあっておくれてまことに申しわけないが、一生懸命にやっている、そして国際的なこういう事件ですから、ようやく二つの山を越したけれども、もう一つを越すに一生懸命だ、八月いっぱいにはいけるんじゃないか、三月ごろはわれわれ検察庁皆そう言っておったんだけれども、とうとうこういうふうにずれ込んで、九月ももうおしまいです、せめて十月いっぱいにはこういう事件をすっかりおしまいにして一杯やりたいもんだがなという、こういう演説をしたのを、ああいうふうにあれには出ておるわけです。したがって、検察庁から報告を受けて、十月いっぱいには終わる可能性が強いですというような報告を受けてああいう発言をしたのではありません。相当やっているそうでございますから、私の感触として、それから大きな希望を持ってそういうことを申したものと受け取っていただきたいと思います。
  102. 小山長規

    小山(長)委員 感触とおっしゃる以上は、そこに何らかの根拠があるはずだと思うのであります。  そこで、児玉ルートの解明は一体どの程度いっているのか。たとえば、いま児玉は臨床尋問もできないような重症患者でしょう。幽明境を異にすることはあり得るわけですね、あるいは突如として。そういうような場合に、本人にこういうような事態が起こったときにも解明できますか。
  103. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 児玉本人からはいままで四十数回臨床尋問を行ったわけですけれども、なかなか本人の頭がはっきりしませんで、それからだんだん病気が悪い方向に行っておるそうです。最近行ってきた検事の報告を聞いたんですが、間接的に聞いたのですが、だんだん悪い方向に行っている。しかし、コーチャンやクラッター、ああいうアメリカの材料がもし入るとすれば、解明が全然できないで終わる、解明が全然できないでうやむやになってしまうことは私はないということを申し上げたわけであります。
  104. 小山長規

    小山(長)委員 いまコーチャン、クラッターのお話が出ましたが、コーチャン、クラッターの一証言なるものは、恐らくは、アメリカから日本に来てだれに渡ったとか、何月何日にだれに幾らということまではわかるだろうと思うのですよ。しかし、児玉から日本政治家なりあるいはいずれかのルートに幾ら行ったかということを向こうの人が知っておりますか。ですからこの問題は、太刀川秘書とかその他関係者を厳重に調べていかないと私は解明できないのではないかと思うのですが、その点どうですか。
  105. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 関係者が多いわけでして、それから向こうの証言の中にはそういう、児玉氏にどういうわけで渡したか、だれにやると言ったから渡したのだとかいう、いろいろそういうことが想像されますね、そういうことから手がかりを得て、全然解明不明に終わるということは万々なかろうという私の感触でございます。
  106. 小山長規

    小山(長)委員 わかりました。  次には、灰色高官のことについて、これは総理にお伺いします。  刑事訴訟法の四十七条は、本来は人権擁護にその趣旨があるはずであります。いかなる被疑者といえどもその人権は守らなければならぬ、こういうのが法解釈の通説だと思うのです。そこで、灰色高官の問題を論議する場合にも、法治国家である以上、この点は無視できない、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  107. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりでございます。やはり議長裁定の場合にも、刑事訴訟法の立法の趣旨と――それは人権ばかりでありません、公益というものもある、公共の利益もある、第一条にはそういうことを書いてあるわけですから、そういう両面があるということでございます。
  108. 小山長規

    小山(長)委員 しかしながら、ロッキード事件において国民世論は灰色高官名の公表を強く求めておる、これは事実です。政府はこの国民世論にこたえる責務を負うことは当然だと思いますが、その点はどうですか。
  109. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま捜査過程にあるわけですけれども、国会国政調査権に対して最善の協力をしようということで、国会に対して政府は公表というのでなくして、国会を通じて、国民には国会において御審議を願った結果を公表をしていただく。やはり政府が出しますのは直接国民でなくして、国会国政調査権という場において、そして当該の委員会にその資料を提供しようということでございます。いまの段階で、捜査が全部終了していない段階で政府がこれを公表するということは適当でない。国会国政調査権に最善の協力をいたしたいということで資料を提供しようということでございます。
  110. 小山長規

    小山(長)委員 いわゆる灰色というのは、これは法律上の言葉じゃございませんね。これは政治的基準だと思うのです。捜査の結果は法的にはシロに属する者の中に政治的、道義的に責任を追及すべきものがあるかどうか、これが灰色高官の問題でしょう。そうですね。その判断を下すのは国会か行政府かいずれかであって、司法府じゃないですね。国会か行政府であって、裁判所じゃない。これだけはそのとおりですね。
  111. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりだと思います。
  112. 小山長規

    小山(長)委員 総理がかねてから灰色高官名公表と、こう国会でおっしゃったのは、これは私が先ほど申しました行政府か国会かというときに、総理は頭の中には、行政府の判断でこの基準と範囲を定めて、そして刑事訴訟法第四十七条の精神にのっとって一般に公表するのだ、こういうふうに一般は受け取っていると思いますが、どうですか。
  113. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私もよく自分の発言を調べてみますが、灰色高官を私が公表するという発言は記憶にないのです。第一、そういう発言というものを私はどうも自分はしたことがないのじゃないかと思うのは、灰色高官ということがこれは実になかなか人によって範囲が違いますから、やはり世に言われておる灰色高官というものの範囲というものは行政府が決めるということは私は弊害があると思う。政党内閣のもとにおいて、行政府が、政府が灰色の仕分けをするということになりますと、やはりどうもそこに政治的な配慮が加わるということになって適当なのではないのではないか。やはり、そういう世に言われておる灰色高官というものの範囲はこれだけの範囲を言うのだということは、国政の最高の機関である国会においてこの範囲をお決め願うことが適当で、行政府がこれを仕分けをするということには私は非常な弊害が起こってくる。そういうことで、やはりこれは国会の場であるということが私の考え方でございます。
  114. 小山長規

    小山(長)委員 先ほど申しましたように、これは政治的判断の基準なんですから、国会だけが判断できるとか、行政府だけが判断できるというものではないと思うのですよ。行政府も国会もそれぞれ判断の基準があってしかるべきだと思うのですよ。その判断の基準を、先ほど来の総理の御答弁によると、全部国会に任せた、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  115. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 任せると申しますと行政府がやらねばならぬことを国会にゆだねるということですが、本来、そういう世に言われておるような灰色高官というようなものの範囲というものは、政治的な、道義的な責任を追及するわけですから、だから行政府が仕分けをするのでなくして、本来やはり国会においてその範囲を決めていただくことが適当なのではないか。それは小山君御承知のように、議長裁定というものを私は重く見るわけですね。それは党首会談を伴っておるわけです。その中で、道義的責任あるいは政治責任の追及の場は国会であるという前提の上に両院の議長裁定がなされておる。私はそれは妥当だと思って、その国政調査権に対して政府が最善の協力をしたい。それは議長裁定の政府に対しての要請ですからね。それに対して御協力をいたしたいということでございます。
  116. 小山長規

    小山(長)委員 いや、総理のおっしゃることはわかるのです。わかりますが、ただ行政府にも判断の基準はある程度お持ちにならぬと、四十七条の関係で、国会が決めた基準に対して行政府として発表できない、そういったようなものがそれはやがて出てきますよ。ですから、全部国会に任せっきりじゃなくて、やはり行政府としても判断の基準を――政治的判断の基準は何だ、そして捜査当局が出し得る範囲はこうだ、これをお持ちになっていないと、国会と今度は行政府との間の摩擦が起こることを懸念して申し上げたわけであります。御答弁があれば伺います。
  117. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、行政府が灰色高官の区分けはしないつもりでございます。国会国会の意思として、一党の意思ではありませんよ、国会の意思としてお決めになった、その範囲に従って資料は提供したい、こういうことであります。
  118. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 総理の言われたとおりなんですが、国会が道義的、政治責任の範囲をお決めになったものに対して、行政府としてこれに必要な資料を提供するというだけではなくて、政治的、道義的責任の範囲、基準等を国会が決める過程においても、必要とあればその段階においても資料提供等これに御協力を申し上げる。したがって、国会与野党意見がうんと違うから煮詰まらないんだ、不可能なことを総理は言っている、こう言われますけれども、そういうものではなかろうかと思います。
  119. 小山長規

    小山(長)委員 いや、私はいま法務大臣のお話の方が本当だと思うのですよ。要するに、ある判断を持ってないと国会に対する協力もできないはずなんですよ。ですから、その判断だけはやはり行政府で持っていらっしゃらなければいかぬ。全部国会任せだ、そういう態度ではいけないのではないか、こう申し上げたわけです。
  120. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小山君の御注意、もっともな点がございまして、私が稻葉法務大臣になるべく中間報告、これはやはり総括的な、できるだけ詳細な報告を国会に行ってもらいたい。私は十五日というのは、あれは遅くともということで、こういう問題でまた期限を切ってそれを延ばすということは非常によくない。期限が早まることには、ここにおられる野党の諸君も御異存はなかろう、こういうことでございますから、そういうことで、私はできるだけ法務大臣の国会に対する御報告を早く準備ができればいたしますことが、そういう範囲をお決めになる場合の御参考にもなる。政府はそういう点においても協力することは間違いないですよ。
  121. 小山長規

    小山(長)委員 わかりました。  それから、ロッキード事件はこれを解明したらもうこれで全部でございます、徹底的に解明しましたから三木内閣の使命は完全に果たしましたという性質のものではないと思うのですね。そうではなくて、やはりこの事件を教訓として今後施策にどういうことをやるのか、これは私は今後における三木内閣の一番大きな任務ではないかと思うのです。  そもそもロッキード事件が起こったということは、政治に金がかかる、そうするとそれに対して誘惑が生じた場合に、その誘惑に陥りやすい、そういうところに背景があることもやはりまた間違いがないのではないだろうか、こう思われる。そうしますと、やはり金の――政治には金がかかりますよ。かかりますけれども、その金のかかり方のより少ない、そういう制度を模索していって進んでいくことが、ロッキードの教訓に最も必要なことではないだろうか。たとえば、いま全国区参議院制度というものがありますね。これはどの党でも候補者が選挙運動から当選までには莫大な金がかかっているわけですね。有権者に対する手紙の発送から書類の発送、ポスターの作成、それの配布、貼付、これだけでも一回についておそらく一億近い金がかかるのではないかと思うのです。三回やれば三億ですよ。そういったような制度が現にあるわけですね。こういう制度を改めるというようなこと。それから、私どもは衆議院選挙でよく――われわれのところは田舎ですから非常に困るのですが、農協長の選挙があったり漁協長の選挙がありますと、これは公職選挙法ではないのですよ。飲ませ食わせ、勝手ほうだいなのですわ。そういう人たちの後で選挙をやりますと、右権者の方は、飲ませ食わせするのがあたりまえだという気風が残ってしまいますよ。ですから、たとえば農協の選挙のごときも、漁協の選挙のごときも、そういうものは公職選挙法に準じた方法で取り締まるとか、そういったようなところに制度改正をやられるべきではないだろうかと思いますが、いかがですか。
  122. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ロッキード事件真相は、これは解明されることは必要ですが、それで終わりというのではなくして、むしろ問題は、日本民主政治の粛正という面においてこのロッキード事件の教訓というものが生かされなければならぬ。それは小山君の御指摘のように、非常に多方面な教訓が含まれておる。精神面から言えば、金の受け渡しに対して厳しい倫理観を持たなければいかぬ、これが根本ですよ。金の受け渡しというものに対して、やはり道義的な観念が麻痺してはこういう問題が起こりますから、これに対する厳しい一つの道義観念というものが根本的に必要である。また、小山君の御指摘になったように、日本政治あるいは選挙にも金がかかり過ぎる。これはこの際は打破しないと、小山君の御指摘のような地方選挙に至って、それはもう末端の選挙まで言語道断の姿が繰り広げられているわけですから、そのために私は一番必要なことは、国会議員の選挙というものがまずお手本を示す。国会選挙というものは非常に影響力を持ちますよ。そうしていま御指摘のような地方の末端の選挙が飲めよ食えよというような、こういうことは許されてはならぬわけですから、そういう点の一つの再検討も必要でしょう。また、今回の公職選挙法の改正あるいは政治資金規正法の改正というものは、何とか金のかかる政治、金のかかる選挙というものの弊害を打破したいという目的であれは改正されたわけですから、ああいう両法案が国会で成立したこれが初めての選挙でございますから、そういう経過等も見て、必要があったならば公職選挙法というものももう一遍改正するような必要があるかもしれない、この結果を見て。ことに、全国区参議院という制度は、私も小山君と同じような考えを持つのです。これは私は単に自民党ばかりでないと思うのです。野党の諸君も経費はかかるのですから、この選挙費用というものは野党の諸君といえどもいろいろ同じような御苦労があると思うのです。この全国区の制度というものは世界にも類例を見ない選挙でありますから、これは各党とも御相談の結果、私もいろいろな意見も持っておって、こういうこともお話をする機会もあるわけでございますから、ぜひとも近いうちに全国区の問題というものは取り上げなければ、こういう選挙を繰り返しておっては、この面からも金のかかる選挙というものがほかの選挙にも非常に大きな影響を与えますからね。  こういう点があるとか、あるいはまた行政という面についても、やはり余り安易な行政指導が行われてはいけない。それが行政指導の名のもとに政策決定に影響を与えるようなことはいけないですから、やはり政党政治である以上は、政党自体の政策立案能力というもの、あるいは政府の持っておる政策に対しての立案能力、こういうものもしっかりしてないと、行政指導というものが行き過ぎる場合もある。あるいはまた政、官、財、こういう癒着というような問題も世間の批判にあるわけですから、いわゆる高級官僚と言われる人々の民間企業への天下りと言われておることに対しても、人事院のいろいろな規制はありますけれども、これはやはり厳しく考える必要があるのではないか。そのことがまた行政が乱れるもとになりますから、今回のいろいろな事件の反省からそういうことも考えられる。  だから、小山君の言われるように、ただこの真相解明ということだけでは目的を達成することはできないので、これを教訓として日本政治の粛正のためにどうして生かすかということが、ロッキード問題というもののこれは非常に建設的な一面であるということは、私は御指摘のとおりに考えて、われわれ自身でも検討をいたして、すでに指示した問題もあるわけでございます。
  123. 小山長規

    小山(長)委員 制度改正をある程度やらないと、本当に金のかかり方の少ない政治というものは実現しない。そこで、私、先ほど申しましたように、末端の農協とか漁協組合などの、これは協同組合ですから、本当は自主的な選挙であって、公職選挙法の公職というものには値しないのですよ。公職じゃない。しかし、選挙のやり方自体は公職選挙法に準じてやるくらいのことは、そういうような制度改正はやる必要があるのではないか。それから先ほどの全国区の制度、こういうものは急を要するんですよ。今国会で全国区制度の制度改正の提案をされますか。される御決心ですか。今国会やらないと、次の参議院選挙には間に合いませんよ。おっしゃった以上はやはり今国会にそれを出す、次の選挙から実施させる、これが言行一致の政治だと思うのですが、いかがですか。
  124. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この国会は、小山君御承知のように、どうしても消化しなければならぬ法案を抱えておりますから、この国会でというわけには私はまいらぬ。また各党間の話し合いも要るわけですから、選挙法というものはある意味においてスポーツのルールみたいな点もございますから、自民党がやはり多数決だけで押し切るというわけにはいきません。そういうことで、この国会というのは無理ですが、次のできるだけ早い機会に、この全国区の問題というものは急を要しますから、取り上げるべき私は考え方でございます。
  125. 小山長規

    小山(長)委員 くどいようですが、公職に準ずる選挙制度はいかがですか。
  126. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この問題も、このことがまた国会議員にも影響しますから、この問題も検討をいたしまして、そしてその結果法律の改正の必要があるならば、この国会ではないにしても、できるだけ早い機会にこれは取り上げることにいたします。
  127. 小山長規

    小山(長)委員 次には、ミグ25事件についてお伺いしたいと思います。  わが国の外交の基本はいかなる国とも友好関係を維持していくということにあることは、世界周知の事実であります。日ソ関係もまたその例外ではない。日ソの国交回復以来、日ソの間では、政治、経済、文化、学術などあらゆる分野で着実に友好増進への努力がまじめに続けられて成果を上げてきたのであります。このことは田中・ブレジネフ会談での共同声明にもうたわれており、ソ連側が発表した各種の声明、談話などでソ連自身も認めてきたところであると、私はそう理解しますが、総理の御理解はいかがですか。
  128. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ミグ25の問題は、何も日本の国とかあるいは国民の立場からああいう問題が起こったわけではないのですから、ソ連の軍用機が強行着陸を函館空港にいたした事件でございますから、そのことによって日ソ間のいま小山君の御指摘になったような基本的関係を損ねることがあってはならない、こういう点で、やはり小坂・グロムイコ会談においても、そういう日本の立場は明らかにいたした次第でございます。
  129. 小山長規

    小山(長)委員 ところが、今回のミグ25事件をきっかけにして、ソ連側は手のひらを返したように、その基本にまで疑問を差しはさむような言動を繰り返しておるように思うのです。そればかりか、先般の小坂外相とグロムイコ外相との会談を見ますと、これまで日ソ間の合意事項であった日ソ間の未解決の諸問題の中には領土問題が含まれているということ、これを否定されたような、これは新聞で見たわけでありますが、そういう談話が出ておる。さらに、ソ連三首脳の訪日約束も取りやめますというようなことを言っておられるように聞こえる。これでは外交の基本である信義というものがソ連側によって踏みにじられつつあると言っても過言ではないんではないでしょうか。今回のソ連の対日姿勢を首相はどういうふうに受けとめて、今後の日ソ外交にどう生かしていこうとされるのか。その基本的な認識を伺っておきたいわけであります。
  130. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この小坂・グロムイコ会談には、いろいろな誤解も先方にあったわけで、立場は違っても、日本の立場を説明して、そういう点で理解というものに対して一つの深める意味はあったと思いますが、領土問題などに対しては、小山君御承知のように、非常に厳しい態度をいままで持ってきておるわけですから、急にこの問題で、領土問題という日ソ間の一番大きな懸案でございますが、これが急変したとは思っていないわけです。従来からも態度は厳しいわけでございまして、ただ墓参などに対しては、従来ビザが要らなかったものを法律によってというようなことを言ったことは従来と違っておるわけですが、これはやはり日本側が、今後外交交渉を通じて、従来のやはり慣行、長い間続けてきた慣行ですから、これに対してソ連政府の理解を求めるつもりでございます。  しかし、実際に向こうの方から日本の上空に侵入して強行着陸したのですから、そのことで、しかも日本は、必要なその背景、強行着陸をしたそのソ連の背景というものを、実際に飛行機についてその必要な調査をすればこれは返還をしたいと言っているわけですから、ほかの意図はないわけですから、そういう意味で、やはりソ連の態度というものは、この日本の真意をもう少しよく理解してもらいたい、その理解が少しどうも、いろんな先入観があり過ぎるのではないかというふうに、残念に思っている次第でございます。
  131. 小山長規

    小山(長)委員 このミグ25事件を論ずる基本は、この同機の函館空港への強行着陸、これがソ連側の言うように単なる不時着なのか、あるいは本人の自由意思による亡命なのか、この一点の食い違いだと思うのですよ。     〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると、不時着であるとするならば、機体の損傷、計器の故障、あるいは悪天候、燃料不足、合理的な理由がなければいけないでしょうし、また亡命であるとすれば、何よりも本人の意思の確認ということが先決問題であるはずですね。  政府はこれらの点を踏まえて、亡命と確信するに至った具体的理由、これはたしかきょう新聞で概要だけは発表されたようでありますが、その具体的理由をいま一度整理して明らかにしてもらいたい。とりわけ、すでに公表されたベレンコ中尉の供述書が強制力によらないで本人の自発的意思に基づいて書かれたものである、われわれはそう思うのですが、これを立証するに足る、第三者も納得させ得る何かの説明をひとついただきたい。
  132. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは外務省から説明をいたさせますが、私は、この点は日本はもう本人の意思というものを一番重視するのですから、本人が函館に着いた翌日ごろからのこの本人の陳述によって明らかになりました。私、外務省に指示したのは、そればかりではいけない、ソ連の大使館との間にやはり面会の機会を与えて、直接ソ連大使館員に対して本人からいろいろ話し合って、いろいろな質問にも答えるような機会をつくるようにしてもらいたいということで、それもいたしたわけでございますから、ソ連大使館員が会ったわけですから、そういう意味で、本人の陳述プラスソ連の大使館員も直接本人に会って話し合ったわけでございますから、亡命の意思というものは明白である、こう考えておるわけでございます。日本は何も本人が亡命したくないと言う者に対して亡命を勧める必要は少しもないわけですから。しかし、それを裏づけるもう少し詳細な説明をというお話でございますから、外務省の欧亜局長から説明をいたさせることにいたします。
  133. 橘正忠

    ○橘政府委員 ベレンコ中尉は、函館におきましてすでに全く自発的に自分が米国へ亡命したいのであるということを言い、かつ、そういう声明書をみずからの手で書きました。この声明書につきましては、外務省において在京のソ連の大使にもこれを提示してございます。  それからさらに、ただいま総理からお話ございましたように、九月九日に日本を出ますその前に、ソ連の大使館員とも面会いたしまして、これは実は、本人はソ連の大使館員等には会いたくないとかねて言っておったのでございますが、総理からの御指示もあり、日ソ関係も考えまして、ソ連の大使館員と面接する機会を本人を説得して設けました。その際にもベレンコ中尉は、自分の気持ちはあの声明書に書いてあるとおりということをソ連の大使館員に明白に申し伝えてございます。なお、現在ベレンコ中尉は米国におりますが、私ども聞いたところでは、二十八日にワシントンで本人とそれからアメリカのワシントンにおりますソ連の大使館員とがやはり面会をしておりまして、その機会にベレンコ中尉本人から、米国へ亡命するという意思が全く変わっていないということをさらに重ねて確認したという連絡も受けております。
  134. 小山長規

    小山(長)委員 日本の外務省でソ連の大使館とそれだけの連絡をとっておりながら、小坂外務大臣とグロムイコ外務大臣とが会ったときに、その事実を向こう側では信用しなかったのですか。その間の事情はどういうふうにごらんになっておるのですか。信用しないからこそああいう発言があったのだろうと思うのですが、だからこちらの努力が足らぬのか、それとも向こうがわざとああいうふうにわからぬようなふりをしておるのか、その辺の判断は実際どうなんです。
  135. 橘正忠

    ○橘政府委員 過去におきまして、ソ連から他の第三国への亡命を求めて日本に亡命の形で来たケースもございます。あるいはヨーロッパその他においてソ連の軍人その他の者が亡命を求めてきたケースは、幾つか、相当の数ございますが、ソ連政府はその多くの場合において、それが亡命であるということを正面から認めたことはまずない、常に亡命ではないという立場をいかなるケースでもなかなか変えてはいないというのが実態でございます。
  136. 小山長規

    小山(長)委員 そうしますと、わからなかったのじゃなくて、ソ連のたてまえ上、亡命しても亡命じゃないと言うのがソ連の国是である、こういうふうに理解するわけですね。  それから、グロムイコ外相は小坂外相との会談で、ミグ25に関して、人も機体も返さなければ友好とは言えない、こういうふうに言っていますね。総理はこれに対してどういうふうに思われるのですか。われわれは、それ以外の面でいろいろな友好関係を持続しておると思っておるのですが。  それからもう一つは、さらにわが国にとってはソ連の軍用機によって一方的に領空が侵犯されたわけでしょう。これは歴然たる事実なんです。このような事態の場合、国際法上あるいは国際慣行上としてどのような措置をとるのが通例であるのか、これを国会を通じて明らかにしていただきたい。
  137. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この調査の目的は、先ほどもちょっと触れましたけれども、領空侵犯、強行着陸の背景の状態、わが国の安全を侵害する意図が事実か、そういう事実があったのかどうかを調査する。具体的には、レーダーにつかまらないような低空で侵入ができた事情を解明する。また、機体に装置された、たとえば自動的な写真撮影等の機械、器具、まあ機器ですね……(小山(長)委員「それを聞いているのじゃなくて、国際慣行はどうなっているかを聞いているのだ。」と呼ぶ)機器によるわが国のいろいろ国益にかかわる記録がないかどうかを調べるということが目的で、軍事的な機密を持ち出すことは目的ではないわけでございます。それで、そのことが軍事的機密というものを何か捜し出すために、取り出すということを目的にして調査をしておるのではないので、国際的にもそういう場合には、やはりその国において直ちに返すというような例は少ない。みなやはり調査をして、期間はそんなに長期間にはわたっていないようですけれども、調査をするということが国際慣行であると承知しております。
  138. 小山長規

    小山(長)委員 防衛庁にちょっとお伺いしたいのですが、防衛庁、いますか、いませんか……。
  139. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 先ほどお話があった亡命について、ソ連の国是であると申したのではないわけで、そういうことが例であるということでございまして、他国の意図を日本が国是であるというふうに言うことはちょっといかがかと思いますので……。
  140. 小山長規

    小山(長)委員 それでは国是ということは訂正いたします。それが例であるというふうに訂正いたします。  さて、防衛庁が進めている、ミグ25の機体調査は、一体どういう点に重点が置かれ、また、現在の進行状況は一体どうなっておるのですか。  また、一遍に申し上げますが、他国の軍用機によって領空侵犯が行われた場合に、わが国は、第二、第三の事件を未然に防ぐためにも日米安保条約の精神にのっとって防空体制を米側と協議する、これは当然だと思うのでありますが、この点をどう考えるのか、防衛庁長官首相の見解を一緒に伺ってみたいわけであります。
  141. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 まず、本件の調査は、ミグ25型機のわが国に対する領空侵犯及び強行着陸の背景、状況を解明するために、自衛隊が独自の立場から行うものでございます。  この調査の進行状況につきましては、防衛局長からお答えを申し上げたいと思います。
  142. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 九月六日に強行着陸いたしましてから最初の一週間、すなわちベレンコがたった後十日までの間は警察と検察庁が出入国管理令違反の疑いで捜査をいたしておりました。防衛庁は技術的立場で補助者としてこの調査に当たりました。十一日以降、防衛庁が調査に当たることになったわけでございますが、函館におきましては調査がほとんどできません。それで解体をいたしまして百里に持ってまいりまして調査を始めております。まだ具体的には一ある程度進んでおりますけれども、大体のめどもついたというような状況でございます。  調査の内容につきましては、先ほど総理が具体的にお述べになりましたようなことについて、個個に調査いたしておるわけでございます。
  143. 小山長規

    小山(長)委員 ミグ25事件が発生以来、北方水域以外でも日本漁船の拿捕事件があったり、漁民が非常な不安を覚えておるわけですね。ですから、このミグ25事件を契機として日ソ関係が悪化するということは、これは漁民の立場から言っても大変なことだろうと思うのであります。ですから、日本は主張すべきことは堂々と主張して、ソ連側を納得させて、そうしていたずらに日本の漁民に対して不安を与えないような措置を政府全体として速やかにとっていただくことを希望しまして、この問題は終わります。  それから、最後に日中問題。日中問題について小坂外相は国連総会の演説で、天は国の上に国をつくらない、こういう趣旨の発言をして、いかなる国の覇権にも反対だ、こういう立場を表明したと新聞紙上に伝えられておりますが、日中友好平和条約の中にこの外相の考えを明記するならば、日中友好平和条約は日ならずしてできるのではないかと思うのでありますが、この点、総理はどうお考えになるのですか。
  144. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この点は、日本は、私もしばしば言っておるように、世界のどこに対しても日本が覇権を求めない、日本みずからが覇権を求めない、第三国の力による覇権の確立をしようということに対しても反対であるということは、日本の平和外交の一つの柱でございますから、したがって、このことが条約の中に、これは日中の共同声明の中にも入っておることでございまして、条約の中にこういう精神が取り入れられることに何も異存はないわけでございまして、日中の平和友好条約の締結に対して、日中の間に基本的な考え方の大きな差はないと思っておりますから、小坂外務大臣も今後この問題に対して鋭意努力をする決意でございますので、日中平和友好条約の早期な解決をしたいと考えておる次第でございます。
  145. 小山長規

    小山(長)委員 日中友好平和条約をつくることについては、国民自民党も全然異論ないのですよ。(「そうかね」と呼ぶ者あり)ないんだよ。そこで、友好平和条約をつくるのに、しかも、いま総理が言われているように、覇権条項についても日中の間にそう大きな開きがあるように思えない。一体どこでこれはいつまでも停滞しておるのだろう、この間の十七号台風みたいに。それがわれわれはわからぬわけだ。ひとつ御見解を伺いたい。
  146. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 何かこう両方の間に誤解を与えたのですね。誤解というのは、日本が何か日中の共同声明を後退さそうとしておるのではないか、後退をさせているのではないかというような誤解を与えたことは非常に残念に思うわけです。日中の国交正常化をなし遂げた日中共同声明を後退さそうという意図は全然持ってないのです。むしろあれを基礎として日中関係を発展さそうということですからね。その間いろいろな誤解を生じて揣摩憶測を呼んだことは、これは非常に残念に思う。日本の外交のいろいろな進め方、また中国自身のいろいろな受け取り方に対してもどこか少しかみ合わなかったところがあったことは残念だと思いますが、基本的には、この問題は根本的な認識の差はないわけですから、私は、この機会に日中の平和友好条約は促進をしたいという考え方でございます。
  147. 小山長規

    小山(長)委員 日中友好平和条約はできるだけ早くその実行に移されるように希望しまして、私の質問はこれで終わりたいと思いますが、先ほど来、災害の対策についてそれぞれの大臣に対策をお聞きするつもりでおりましたけれども、一時間という時間でそれができませんので大変失礼いたしますが、これで私の質問を終わります。
  148. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて小山君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  149. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ロッキード事件が二月四日のアメリカのチャーチ委員会で明らかになって以降、引き続いて、たとえば日本が予定をしておる早期警戒機AEWの購入に関する疑惑の問題、あるいはインドネシアのLNG輸送のタンカー建造に絡む疑惑の問題等が同じくチャーチ委員会で明らかにされようとしておるわけです。それで、私はきょうは限られた時間が一時間ですから、そのうち日本とインドネシアの関係、日本のインドネシアに対する経済援助の問題等を取り上げてみたいと思うのです。この種の問題がアメリカの方から出てこないとなかなか日本において問題にならないということでは、日本国会としても問題がありますので、日本国会でも独自の調査で問題を明らかにする、そういう意味もあって取り上げてみたいと思うのであります。  ちょうど四十七年から四十八年にかけて日本にロッキード商法の黒い旋風が起こっておったころ、実は日本の企業がインドネシアにおいてもロッキード商法と同じような形で問題のある商法を展開しておった。私はそのうち特にインドネシアから日本に購入しようという低サルファオイルの問題とLNG問題を集中的にやろうと思うわけです。  御案内のとおり、インドネシアのプルタミナは経営の乱脈から昨年来ことしにかけて事実上の破産状態になってきた。そしてことしの三月三日にはプルタミナのストー総裁も解任をさせられるという事態が起こっておるわけですね。ところが、実はそのプルタミナにかかわる日本の政府借款が二十数億ドルになっている。これは日本国民の税金にかかわる政府借款の問題ですから、一体この借款は返済の保証があるのかどうか、あるいはプルタミナは立ち直る保証があるのか、一体プルタミナの経営乱脈はどういうところから来ておるのか。そのうちの相当の部分はやはり日本企業のプルタミナとの商法のあり方、リベートその他コミッションあるいはプレミアム、そういったことも影響しておる部分があるのです。  そこで、たとえば私は特にまず低硫黄原油の問題から入りますけれども、これは四十七年と四十八年に私は予算委員会と外務委員会で問題を提起している。そのとき私が心配しておったのが実は現実の問題として出てきた。私はどういう点を懸念し疑問を呈しておったかといいますと、一つは、四十七年の五月十四日にいままで民間の関係で進められておったこのインドネシア原油の取引の問題が事務担当者の頭越しでいきなり佐藤・スハルトという首脳の共同声明となってあらわれてきた。つまりその内容は、御承知のとおり二億ドルのアンタイド・プロジェクト・エード。六百二十億円ですね。これの、石油開発関係のためにアンタイドで援助する、そしてそれの見返りのような形で十年間で五千八百万キロリットルの低サルファの原油を入れる、こういう共同声明が四十七年五月十四日に結ばれた。そこでその問題と絡んで、私が四十七年、四十八年の質問で問題を提起したのは、実はこの二億ドルの政府借款ですね、これの返済能力の問題はどうなのか。果たしてインドネシア側にあるのかどうか。それから十年間の五千八百万キロリットル低サルファ原油の安定供給というのは可能なのかどうか。  それから三番目に、いままですでに低サルファ原油を入れておったのですね。その入れておったのはファーイーストオイル、極東石油というのですか、これがあったのに、五千八百万キロリットルについては別の会社を、別ルートをつくる。これの必然性は一体何なのか。繁雑になってもう値段が上がることは当然なんです、後で詳しく言いますけれども。  それから四番目に、それに絡んで必ず黒い霧が起こる、それも警告しておったのです。黒い霧と言えば、たとえば二億ドルの借款について三%のプレミアム、そうすると、年間で言えば六百万ドル、十八億円、あるいはまた、一バーレルについて二ドル九十六セント、それに十セント上乗せしてやりますよという、十セント上乗せすれば、五千八百万キロリットルだと百十八億円というプレミアムになりますね。大変な金額です。これはロッキード事件の金額どころじゃない。  それから、その二億ドルの使われ方が一体どうなのか。せっかく日本国民の税金であるのに、これが文章はうまいことできておるけれども、実際は積算根拠がない。つかみ金である。アンタイドですから、日韓経済援助のとき問題になったとおり、ひもつきでないから、どういう形で、つまり商品援助ということになってくれば、日本がねらっておる日本の石油資源を確保するという一つのねらいは達成せられずに、資材とか商品援助ですから、そうすると、日本の企業を潤すだけにすぎない。そしてそこに、じゃ日本のどの企業を指定しようかというときに政治家が絡むわけです。現に絡んでおる。そういう問題がこの二億ドルの使われ方の中にある。それから、実は佐藤内閣から田中内閣に移行する直前からの話で、例によって当時の田中通産大臣がこれに絡んでおる。そして田中総理になって、いよいよLNG問題でさらに深くかかわり合いが出てくるという問題の懸念を、私はすでに言っておったのです。非常に現実化の可能性がある。  それで、これは無関係と思われたらいけないのでありまして、実はこれは佐藤内閣田中内閣三木内閣、三代にかかわる政府の責任問題がある。そういう倒産しかかったプルタミナに三十億ドル近い援助をやっておる。一番最後のLNGに対する追加援助のごときは、河本通産大臣がことしの六月に行かれてそういう約束をされた。だから三木内閣にもかかわり合いがあるから、ひとつこれは十分お耳に入れたいわけです。  そこで、まずこの佐藤・スハルト共同声明で言う日本政府借款二億ドル、六百二十億円、これのほかに民間の借款として毎年一億ドル、これがついているわけですね。この一億ドルというのは、実は五千八百万キロリットルを十年間で入れる。そうすると、一年間で五百八十万キロリットルですね。ドルで計算すれば一億ドルとちょっとです。だから先払いですね。この民間の一億ドルというのは、平均して五百八十万キロリットルの先払い。この一億ドルの民間借款の先払いについて、福田総理にお伺いしますが、この点についてスハルト大統領から説明または相談を受けられた事実がありますか。
  150. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 どうもそういうことについて具体的な相談を受けた記憶はございませんです。
  151. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に、政府は、この五千八百万キロリットルの石油が、約束された期日に確実に日本の手に入ることを保証する新しいルートの設立の立案方を、財界人のだれかに委嘱された事実がありますか。通産大臣どうでしょうか。
  152. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 正確を期するために、資料に基づきまして事務当局から答弁をさせます。
  153. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 委嘱したと申せますかどうか。本件は、当初、円借等を含め、政府間で話し合いを進めたわけでございますが、現実には民間がこの油を引き取るという問題でございまして、民間のまとめ役、幹事役といたしまして、興業銀行がこれに当たっております。その関係で、中山素平氏が本件の推進について活躍したと承知いたしております。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうことを依頼されたのは、当時の田中通産大臣ですか。
  155. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 依頼という形をとっておりませんで、ただいま申し上げましたように、民間としてこれを引き取る関係もございまして、その体制を固めるために自発的に行ったものと理解いたしております。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、中山氏は、政府とあらかじめいろいろな打ち合わせをやった上で交渉されておったのですか。
  157. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまデータを持ち合わせておりませんが、政府借款にも関連する問題でございますので、当然前後において打ち合わせをして、参ったものと考えております。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 四十七年五月六日に、中山氏がスハルト大統領と会談をした事実がありますか。
  159. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 お二人が会談なさったということは聞いております。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このとき現地の大使館は同席したでしょうか。外務大臣は、当時どなたになっていますか。
  161. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私でございます。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの点どうでしょうか。
  163. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 全然承知しておりません。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 八木大使がその会談に同席したのではないのですか。
  165. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、中山さんがインドネシアに行かれたということも承知しておりませんです。
  166. 菊地清明

    ○菊地政府委員 その際、八木大使が同席しております。
  167. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのときのメモがございますか。
  168. 菊地清明

    ○菊地政府委員 その際、八木大使がオブザーバーのような形で同席したわけでございますけれども、その後のメモのようなものは用意したというふうに聞いております。
  169. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 メモがある。――それは出せますか。
  170. 菊地清明

    ○菊地政府委員 そのメモは、どうも大使館の執務用としてつくられたものでございますので、ちょっと出しかねるのではないかと思います。それからもう一つは、会談の相手が大統領という一国の首脳でございますので、その点も考慮いたしまして、公表をはばかるべきものと考えております。
  171. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとそこにおってください。  それは外務省にあるのですね、ここに。
  172. 菊地清明

    ○菊地政府委員 そのメモの写しのようなものは、送ってきております。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、ちょっと待ってください。ちょっと資料を見せたいですから。
  174. 菊地清明

    ○菊地政府委員 いま拝見いたしましたところ、それのまたフォトコピーではないかと存じます。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま確認をいただいたのは、「スハルト大統領と中山素平氏との会談要領 (於大統領私邸)昭和四十七年五月六日 八木記」となっておりますね。これがそうであれば、ちょっとお帰りになっておって結構です。  これによりますと、その五千万キロリットルの石油が約束された期日に確実に日本の手に入ることを保証するルートの設立を立案するよう中山氏は日本政府から委嘱された。そうなんですね。だから、はっきりと委嘱されておるのですね。それから、日本政府と相談をしてスハルト大統領に会ったという点については、出発前に田中通産大臣、両角通産次官と会談をされておりますね。これにはラディウス中央銀行総裁、いまの貿易相ですが、も同席されておる。  それから、事実だけを指摘しておきます。これはスハルト大統領の発言になっておりますが、民間一億ドル借款の点は、スハルト大統領「自分も嘗て福田大臣に説明したところであるが、その際に一億弗先払いの話が出来た。」福田大臣とお話をした結果この一億ドルができたとスハルト大統領はおっしゃっておるわけです。福田総理は記憶にないということですから偽証にはなりませんけれども、こう相手の大統領がおっしゃっているのですから一これを悪いと言っているのじゃないのです、事実を確かめているのです。  こういう事柄が含まれておって、これはたくさんありますけれども、なぜこれが問題かというと、一番最後に中山素平氏はこういうふうに言っておるのです。「日本では国会が煩い。新規に五千万屯の低硫油が入ることを判っきりさせることが国会対策上も必要である。」、というのは、国会対策上非常にまずい内容のやり方をやっておる。つまり、新会社をつくれば値段が高くなる、繁雑にもなる、利権も絡んでくる。だからインドネシア側は、スハルト大統領もそれから当時のプルタミナ・ストー総裁もこの新会社設立に反対であった。それを日本側が押し切ったということがここに載っておる。だから非常に問題があるのです。一体いままで低サルファの油がどのくらい入っていますか。
  176. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 契約数量と引き取り実績について申し上げますと、四十八年度の契約数量二百九十万キロリッターに対しまして実績は二百四十三万三千キロリッター、四十九年度は四百三十四万キロリッターに対して二百七十九万九千キロリッター、五十年度は四百二十四万キロリッターに対しまして百九十八万二千キロリッター、必ずしも契約どおりにいっておりませんが、これは、御承知のオイルショック以降の景気の沈滞に伴いまして、エネルギー需要がその分だけ減っておる関係からの落ち込みと理解いたしております。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が懸念をしておった安定供給について、五千八百万キロリットル、十年ですから一年で割ると五百八十万キロリットル、三年間でいけば、まあこれはなべてのあれですけれども、千七百四十万キロリットル入ってこなくちゃならない。それに対して実績は、いまおっしゃったことを合計してみると七百十五万キロリットルです。半分以下です。約束どおりいってない。二億ドル何のために出したか、そういう問題も起こってくる。二億ドルの見返りとして五千八百万キロリットルを入れることになっておるのですから。だから私が懸念した安定供給の点も、これは非常に疑念がある。  さらに、今度は、ジャパン・インドネシア石油はこの入れたものを現在どこに卸していますか。それともう一つは、ファーイーストオイルも同じように入れている。その販売価格との対比はどうですか。
  178. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、ジャパン・インドネシアオイルの購入先でございますが、主として精製会社、電力会社でございまして、約二十社程度になっております。  次に価格でございますが、インドネシアからの引き取り価格、これはFOBベースでございますが、五十年の九月三十日までは油種間の価格差はなく、四十七年十月の二ドル九十六セントから順次上がりまして、四十九年の七月には十二ドル六十セントになっております。五十年の十月以降は油種別に価格差ができましてミナス、アルジュナ、アタカ等の代表的な油につきましては、バレル当たり十二ドル八十セントでございます。インドネシア原油の引き取り価格は、JIOとプルタミナの間で定期的に交渉することになっておりますが、現実の問題といたしまして、プルタミナはすべての輸出先、これは国、企業を問わず共通の価格で販売していると承知いたしております。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それも新会社設立の理由に挙げている公約と違うのです。それだったら何も新会社をつくる必要はない。新会社をつくるときの公約の一つは、ファーイーストの卸価格よりもなるたけ安くやる、いろいろ途中経費を省いてコミッションも少なくしてというのが公約の一つであったが、いま聞いたら同じだというのでしょう。何もそれだったら新会社をつくる必要はないのだ。それから輸入業務なんかも全部任せているんじゃないですか、ファーイーストに。だから総理、これは全然別会社をつくる理由がないのです。理由がもしあるとしたら、これは利権です。それ以外に何にもない。だからインドネシア側も反対したのだ、そういうことは。いままでの既定のルートがあるじゃないか、同じものを入れるんだから別につくるのはおかしい。  そこで、もう私の持ち時間がなくなりましたが、つまりこれは、先ほど言ったとおり当初の公約どおりになってないし、新会社をつくったことがやっぱりネックになってきている。もう一遍いままであったファーイーストオイルと新会社のジャパン・インドネシア石油を、窓口を一本化しようという話が出ているのです。あたりまえの話ですよ、これは。だから、そういう会社をなぜつくるのかといったわれわれの疑問が証明されてきた。  それで、私はもう時間がありませんけれども、今度LNGに移りますが、いま挙げた石油問題とこのLNG問題の共通点があるんです。実は問題は違うけれども、非常に共通点がある。どこかというと、最初、どちらも民間ベースで始めておった。  たとえば石油の方は、まず田中清玄氏、そして亡くなられた佐藤元総理の長男、佐藤竜太郎さんですか、そしてトヨタの社長の神谷さん、こういうところから始まってきた。それでそれが頭越しで、さっき言ったとおり佐藤・スハルト共同声明へ一気に行った。  それからLNGの方は日商岩井、これが中心でやっていった。まあ海部氏等が出てきますけれども。それがまた政府借款にずっとなっていく。ここが非常に似ておるのですね。  それから、石油もLNGもどっちもファーイーストオイルトレーディングがかんでいるのですね。これも非常に共通点がある。それでどっちも、石油もLNGも新会社をつくりながら、やはりそのファーイーストが絡んでいるのですね、同じような性質の会社が別にできながら。それで、そういう点でこれは非常に問題があるし、これはいわゆる日韓もそうですけれども、日本・インドネシアも非常に構造的な癒着が過去から現在までずっとある。これは言うならば利権共同体と言ってもいい。それでこの際、ロッキード事件もそうですけれども、ロッキード事件の解明に熱意を持たれ、そして日本議会制民主主義を守るという立場の三木総理は、このポスト田中における日本・インドネシアのこういった利権共同体あるいは構造的な癒着の状態をクリーンアップする意欲をお持ちかどうか、それだけ聞いておきたいと思うのです。
  180. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまロッキードの解明というものに全力を挙げておるわけですが、不正行為があれば、それはロッキードに限るわけではないわけで、不正行為があればそれは究明されなければならぬということです。
  181. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この種の問題がずっとこれからも向こうから出てくるかもしれぬ、われわれも相当調査していますから。そうすると、ロッキード特別委員会は解明が終わるまでずっと続きますね。将来、こういう多国籍企業なり、あるいはこの種の腐敗、政治の腐敗を防止するための常設の委員会的なものをこのわが国会は持つ必要があると思いますが、総理のお考えをちょっと聞いておきます。
  182. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いまはこのロッキード問題ということで、これを解明をしておるわけでございますから、いますぐ将来の委員会の問題について私が発言するのは適当な機会ではないと思いすすが、常に国政調査というものは腐敗行為に対してメスを入れなければならぬことは当然の職務だと考えております。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員会はどうなんです。
  184. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 委員会について、委員会は、私がいま特別のそういうものの委員会を置くことは適当だとかどうとか言うことは、私の発言がこの段階で一それは各党間において十分な検討をすべき問題だと思います。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 理事会でお諮りいただきたいのですが、この問題の解明のために、参考人か証人として田中清玄氏、中山素平氏をぜひ喚問いただきたい、あるいはお呼びいただきたいという問題を理事会でひとつ懸案事項にしておいていただきたいと思います。  では、関連質問、LNGについて、さらに横路委員から関連質問をお願いします。
  186. 白浜仁吉

    白浜委員長 それでは、ただいまの楢崎弥之助君からの申し出は理事会で相談をして処理したいと思いますので、御了承をお願いします。  横路孝弘君から関連質疑の申し出があります。楢崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。横路孝弘君。
  187. 横路孝弘

    横路委員 いま石油の問題についてプルタミナの話がありましたが、私がお尋ねしたいのはLNGの問題です。  これは日商岩井が中心になりまして、北スマトラにある――東カリマンタン・バタクということで、日本政府の円借款を含めて全部で総額十四億二千万ドルという多額な融資を日本側でしているわけです。十四億二千万ドルということになりますと、まあ四千億とちょっとぐらいですね。これは大変大きなプロジェクトであります。このプロジェクトについて、若干最初に経過を申し上げながら通産大臣に主にお尋ねをしていきたいというふうに思いますけれども、日商岩井が中心となって、ユーザーは関西電力。現実の問題としては通産省が、当時の両角さんですね、事務次官、その後やめられて顧問になられたようでありますが、彼が中心になりましてこの話を進めてきたわけです。  四十七年の初めごろからこの話は表に出てまいりまして、関西電力などのユーザーがレター・オブ・インデントを出したのが四十八年の二月ごろだというようにユーザーの方では言っております。  その後突然、四十八年の四月二十日に両角・ラディウス会談というのが行われて、ここでメモが交わされているわけです。この内容が非常に問題だというように後で指摘をしたいと思います。  この四十八年の四月二十日のこのメモが中心になりまして、その後さまざまな調査団がインドネシアを訪れるというようなことがありまして、結局は四十八年の十一月三十日に両角、ラディウス両氏の間で合意議事録ができ、十二月三日にプルタミナとユーザー五社との間に輸入の調印が行われております。  この間、四十八年の八月十八日には木村武雄代議士が、四十八年の十一月十七日には根本代議士が、いずれも田中親書を携えてインドネシアを訪れております。  四十九年の一月十六日にインドネシアにおいて田中・スハルト会談を踏まえて共同声明が出されて、その第九項目で、LNG開発協力の方向が打ち出されております。これはその前年四十八年の十二月二十七日に総理官邸におきまして、当時の大平外務大臣、二階堂官房長官、鶴見外務審議官、いずれも例のロッキード事件田中・ニクソン・ハワイ会談というのが行われましたけれども、あのあたりに登場するメンバーばかりでありますが、この人たちが参加した席上で、当時事務当局のレベルでは円借款が一億五千万ドルという話であったのに、この席上で田中当時総理大臣のツルの一声で五千万ドル上乗せになっておりまして、円借款二億ドルということに決まっているわけです。  その後四十九年の二月二十八日にJILCOという会社が設立をされまして、これがいわば融資そのほかの業務に当たる日本側の受け入れ会社ということになるわけです。四十九年の三月十六日の日に交換公文が交わされて、円借款五百六十億円、これは九月の二十日ですか、契約されております。一方、民間ベースでは、四十九年の五月十七日に、合計八億九千八百万ドルの輸銀と市中含めた融資が契約を結ばれている。  ところが、この四十九年の五月十七日に契約が結ばれて半年たった――半年よりちょっとたちますが、翌五十年の二月、三月には、もうプルタミナが破産状態になりまして、早速再び融資をしてくれという申し出がこの五月十七日の一年たつかたたないかといううちに出されまして、これはことしになってから三億二千二百万ドルの追加という形で決められているわけです。  これは日本の海外の資源関係のプロジェクトでも最大のプロジェクトでありまして、しかも四千億を超えるお金が出されているということを総理大臣、まず頭に置いておいていただいて、以下私の質問に答えていただきたいと思います。  問題点は二つあります。一つは何かというと、価格の問題です。もう一つは何かといいますと、追加融資の点であります。追加融資の点は逆に言いますと、来年からこれは入ることになっているわけですね。バダクの方が来年から、それからアルンの方は一九七八年からということになっております。一体日本側が融資したお金がきちんと向こう側で使われているのかどうか、来年の三月までにLNGが入ってくることになるのかどうかという点がもう一つの問題です。  そこで、通産大臣にお尋ねしますが、日商岩井が軸になって進められてきて、突然四十八年の四月二十日になって当時の通産事務次官、田中派と言われているこの両角通産事務次官とラディウスとの間に覚書が交わされたこのいきさつというのは一体どういうことになっているのでしょうか。時間がありませんので簡単にひとつお答え願いたい。
  188. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 覚書は確かにあるように私も聞いております。その覚書の内容につきましては、相手がインドネシアのラディウス大臣であるというふうなこと等もありまして、内容の発表につきましては相手の了解を得ませんと発表できませんので、ここで差し控えたいと思います。
  189. 横路孝弘

    横路委員 内容のことはまだ私は触れてないのでありまして、日商岩井が軸になって進めてきたプロジェクトに突然この両角・ラディウスの覚書という形で、これは全然新聞にも出ていません、いきなりこの四月の二十日になって結ばれたその経過はどういうことなのかということです。内容はこれからお尋ねします。
  190. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 本件は、ただいま御指摘のように、初めは日商岩井あるいはユーザーとしての関西系の電力会社あるいはガス会社でいろいろと検討いたしておったわけでございますが、その後、日本側といたしましてもクリーンエネルギーとしてのLNGを大量に確保したいということと、それからこれにはきわめて多額の資金を必要とし、かつはインドネシア側の方から資金協力、経済協力といったような形で進めてもらいたいという要請もございまして、いわゆるナショナルプロジェクトとして本件を推進することになった。そういう関連から当時の両角次官がラディウス商業大臣と会見したものと承知いたしております。
  191. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、この交わした覚書というのは、いわば政府を代表した行為だということでよろしいわけですね。
  192. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 この問題は、まだきわめて当初の段階における話し合いでございまして、当時の両角次官は事務次官としての立場で会談に入ったわけでございますが、LNGプロジェクトを推進するに当たって、いろいろな基本的な考え方について相互に意見を交換いたしまして、それをメモにした、いわば今後の交渉のためのたたき台といったような性格のものと理解いたしております。
  193. 横路孝弘

    横路委員 その後、この四月から半年たちまして、十一月三十日に両角・ラディウス合意議事録、そして十二月三日、ユーザーとプルタミナとの間のそれを受けた形での調印ということになっておりますね。これも経過としてよろしいですね。
  194. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘の時点において会談いたしております。その時点では、両角氏は通産省及び外務省の顧問として会談いたしておりまして、その意味では実質的に日本側の意見を代表するものと考えてよかろうかと思います。
  195. 横路孝弘

    横路委員 それはもう当然、当時の田中総理大臣、中曾根通産大臣の了解のもとにいろいろ行動しているわけでしょう。そうですね。  そこで、私がここで問題にしたいのは、価格の問題なわけです。で、LNGに関して、アラスカ、それからブルネイ、アブダビとプロジェクトがございます。契約の価格は、百万BTUで計算しますと、アラスカ関係が五十二・二セント、ブルネイが四十八・六セント、アブダビが一ドル、インドネシアが一ドル二十九セント、これは契約時であります。これを、たとえば五十一年一月-三月のCIF価格、大蔵省の貿易月報によりますと、アラスカが一ドル六十五セント、ブルネイが一ドル八十五セント、アブダビが一ドル九十セント、インドネシアが、五十年四月くらいでもって計算をしていくと、大体二ドル三十セントから四十セントぐらいになりまして、非常に高いわけです。  なぜ高いのかということで、この両角・ラディウスのメモランダム、覚書なんですが、四十八年の四月二十日というこの時点で、このメモの中にこういう項目があるわけですね。日本におけるLNGのCIF価格は一ドル三百八円を前提として百万BTU当たり九十五セントとする、ただし為替変動による価格調整はあり得る、こういうことなんであります。ところが、これはまだこれから建設に取りかかるというはるか前の段階で、原価計算なんか全然できない段階において一ドル当たり三百八円を前提としてCIF価格を九十五セントとする。当時としては周辺のこれらに比べて高い価格を、しかも政府を代表して両角氏がインドネシア側と結んだというのは一体どういうことなんですか。ここに、これが田中金脈の一環として存在をしておると言われる最大の点があるわけですよ。どうしてこんな段階で価格の交渉を相手とできるのですか。全然まだ設備そのほかの原価計算が全くできない段階で、いきなりインドネシアとの交渉をこんな高い価格でもってメモを交わすというのは一体どういうことなんでしょうか。皆さん方は承知だったのですか。これは両角さんがおやりになったことですか。あなた方も役所として当時これを承知だったのですか。
  196. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 四月時点におきます会談の記録の中に、百万BTU当たり九十五セントという数字があったと御指摘があったわけでございますが、この数字について私たちは否定いたしません。ただ、この根拠として考えられますのは、当時LNGの価格につきまして、イランでLNGプロジェクトを進めようとして検討しておった事態がございますが、当時、やはり三百八円ベースで九十五セントということであれば日本に引き取っても経済的であるという判断であったわけでございますが、そのプロジェクトがうまくいかないということでギブアップした経験がございます。その当時の数字を一つ頭に置いておるということでございます。  それから、先ほど先生が御指摘になりました、ユーザーからインドネシア側に出しました買い付け申込書の価格も、大体そういった数字を前提としておったと承知いたしております。
  197. 横路孝弘

    横路委員 関西電力に聞きましたら、レター・オブ・インデントのときには別に価格表示はしていない、こういう話でしたので、いまの答弁ちょっと違います。しかも、このときは一ドルが二百六十五円なんですね。何でこれは三百八円で計算したのですか。三百八円というのはスミソニアンのときですが、これは四十八年の四月ですから、大分昔の話なんでありまして、二百六十五円ベースでいきますと、百万BTUにこれを直せば一ドル十セントですね。つまり、三百八円じゃなくて二百六十五円で計算をすれば、この価格はどれだけになるかというと、九十五セントじゃなくて一ドル十セントですよ。非常に高いわけですよ。これは皆さん方も承知だったんですか。両角さんがおやりになったことなんですか。皆さんが部内で検討されて、これならいけるという形で出した価格なんですか。どうなんですか。
  198. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 部内で検討した結果かどうかという点につきましては、調査した上でお答えいたしたいと思います。  それから、三百八円の問題でございますが、御指摘のとおり当時すでにフロートに入っておりまして、ドル当たり二百六十五円というのが当時の相場だったと思います。そういうフロートに入っておる段階におきまして基準となるべき円レートといたしましては、いわゆるスミソニアンレートである三百八円を採用するよりいたし方がなかったのではなかろうか。先ほども申し上げましたように、この四月時点のメモは、あくまでたたき台としての、その時点における両当事者の話し合いの結果をまとめたものでございまして、それを直ちに契約に持ち込むという性格のものでないということは御了承いただきたいと思います。
  199. 横路孝弘

    横路委員 それはわかっていますが、大体この基本方針を決めて何が出ていますか。融資の話と価格の話が何でここに出てこなければならぬのですか。このメモの一番最後には、本プロジェクトの最終プログラム及びLNG会社の資本金は、フィージビリティースタディーの完成後さらに詰めることとする、つまり開発研究をもうちょっとちゃんとやった後で詰めますよという話になっていますね。価格なんというものは、ある程度の見通しはあるにしても、詰めなければ出てこない性質のものでしょう。それが何でこの段階で出てきたのか。しかも、これはいまここで御答弁いただけないようだったら、やはり両角さんがかなり政治的レベルの話としてやっているわけでしょう。しかもこの相手はだれか。相手はラディウスでしょう。インドネシアの人脈を知っている方だったら、何でここでラディウスなのか。ストーグループとこちらの方のグループと二つあるわけでありますから、その辺のところは問題として非常に大きいわけですよ。  だから、高いという比較はあるでしょう。たとえば同じプロジェクトから購入すると予定されているアメリカのパシフィックライティング社との仮契約、価格は大体日本の二分の一じゃないかという報道がありますね。それで、今度の価格改定であわててこの辺のところを皆さん方の方で直したのでしょう。アメリカのSECで例のタンカーの問題が出てから、価格の改定交渉をやって、その辺のところを直しているでしょう。どうですか。同じところから持ってきて、投資をしたのは、日本が全部お金を出しているわけでしょう。ところが、開発されたLNGはアメリカの方にも持っていくわけですね。そのアメリカの方に持っていく価格が日本の半分だというようなばかな話がありますか。
  200. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま御指摘のアメリカ向けの価格につきまして、当時新聞報道がなされたという事実がございますが、ただ、その内容につきましては、インドネシアとアメリカ企業との私契約でございますので、そういったものが正しい数字であるかどうかということについては判断しかねるわけでございます。ただ、私たち承知いたしておるところでは、まだアメリカの連邦動力委員会で許可がおりておりませんので、仮契約という形になっておるように承知いたしております。  それから、アメリカ向けに将来LNGが供給される段階になりました場合には、インドネシア側といたしましても共用設備についてはアメリカ側から資金を出させる。それをもって日本からの借入金に対して期限前償還をするというようなことも言っておるわけでございまして、かたがた業界といたしましては、そういう新聞報道がなされたがゆえに、そういったことのないようにということで、アメリカに将来輸出される場合にはそれとの価格の均衡を図るようにということで話し合いをしたと報告を受けております。
  201. 横路孝弘

    横路委員 どうも十分じゃないのですね。つまり、そういう価格の問題が報道されたということで、全然調べていないわけでしょう。それはインドネシアとアメリカとの契約であって、日本は関与する余地はない。しかしこのバダクとアルンの開発そのものは日本が総額四千億近いお金を投資しているわけですよ。そうでしょう。そうするとやはりその辺のところは、これは少なくともプルタミナに確かめてみて、確認する必要があるんじゃありませんか。そしてその上でどうするかという――もともと十二月三日のユーザーとプルタミナとの契約そのものがきわめて政治的に決められている。したがって、こういうようなことになったわけですよ。どんどん上がっていくわけでしょう。とめるところはないですよ、ああいう契約内容だったら。そうじゃありませんか。だからその辺のところをまずきちんと調べて、先ほどの点を含めて御報告を願いたいという点が一つと、それから、やはりこの辺を明らかにするためには両角・ラディウスの覚書と、それから十一月三十日の合意議事録、これはやはり国会に提出をしていただきたいというように思います。これはどうですか。
  202. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 アメリカの契約等につきましては調査をいたしまして報告をいたしますし、それから今般LNGの契約を、確かに仰せのとおり幾つかの不合理な点がありますので、それを修正するように指導をいたしまして修正をさせましたが、そういう内容等についても差し支えない限度におきまして報告をいたします。  ただ、ラディウス大臣との議事録等につきましては、先ほど申し上げましたように、相手のあることでございますから、相手の了解を得次第提出する、そういうことで御了解願いたいと思います。
  203. 横路孝弘

    横路委員 じゃ、そういうことで了解をとってこれは出していただきたいというように思います。  もう一つは、追加融資の点なんですけれども、四十九年の五月十七日にこれはJILCOとプルタミナとの間で契約が結ばれるということですね。ところが、これはもう去年の段階から追加融資の話が来ているわけでしょう。向こう側の要求は四億ドルとか四億五千万ドルとかいうことで、結局最後には詰めて、日本側が三億二千二百万ドルということでことし追加融資になったわけですけれども、これはどうなんですか。一年たつかたたないかうちに、こんなに大きく見積もりが違うということというのはちょっと考えられないので、確かに当時四十九年の五月から五十年にかけてですか、資材の高騰というのは四十八年のオイルショック以後あったことは事実だと思いますけれども、しかしそれがこんな金額になる。最初きちんと、五月十七日に契約したときも全部これはチェックして契約を結んでいるわけでしょう。それが一年たつかたたないかうちにこんなに追加融資が必要だ。来年はインドネシア大統領選挙がまたありますからね。日本でもことしは衆議院選挙だなんて、選挙が近いとどうもこんなような話が出てくるのはまことに不明朗きわまりないわけですよ。これは一体どうなっているんですか。これは大丈夫なんですか。あとまた追加融資なんということになるのじゃないですか、これは。
  204. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かにボルネオとスマトラの生産設備に対しまして、いま仰せのように、当初いろいろな資金を含めまして十一億ドルの融資をすることを決定いたしまして、それから間もなく、いまおっしゃったような金額の追加融資の要請がございました。日本側といたしましても、第一回の十一億ドルの融資を決めました直後のことでございますから、実情を十分調べる必要があるというので、先方からの追加融資申し込みがございましてから結論を出すまでの間、約一年以上の時間がかかったわけでございますが、今度の追加融資を出すにつきましてインドネシア側との協定によりまして、今後は幾らこの工事費等がふえても一切日本に対しては迷惑をかけない、追加融資はしない、こういう確約をいたしまして、その上で追加融資を認めたわけでございます。  なお、合計約十四億ドルの融資につきましては、来年から日本に輸入されますLNGの代金の中から順次支払われることになっております。
  205. 横路孝弘

    横路委員 私たちの調査では、バダクとアルン。アルンの方は一九七八年からだということで、これは工事がかなりおくれています。バダクの方もプラントが二つありますね、ナンバー1とナンバー2と。ナンバー1のプラントの方は大体工事が六〇%くらいできているようでありますが、ナンバー2はおくれているということで、大体これは契約どおり間違いなく送れるだろう、こう言われているわけでありますけれども、皆さん方、そういう工事の状況なんかもきちんとこれは掌握されておられるのですか。どうも、通産省だとかなんとかといろいろ調べてみますと、全部その進捗率みたいなものは違っているわけですよ。このバダクについても、プラントは、進んでいるナンバー1の方が六〇%程度、ナンバー2の方はかなりおくれている、こういうことですが、御承知ですか。
  206. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 現在私たちの方でバダク基地についての工事の進捗状況を調査しましたところでは、主要設備につきましては九二%、配管工事につきましては六八%、計装工事については二〇%ということになっておりますが、さらにこれを現実にチェックするために、来月JILCO側から調査団を派遣する予定をいたしております。  それから、もう一言追加させていただきますが、七百五十万トンの年間輸入というのは平常ベースになった段階でございまして、立ち上がりである初年度においては百数十万トン程度であるということも御理解いただきたいと思います。
  207. 横路孝弘

    横路委員 そのプラントはどういうあれですか、いまおっしゃった話は。バダクとアルンのその平均の数字ですか。平均ということにはならぬでしょう。工事の進捗はどのプラントがそういうぐあいに進んでいるのかという話じゃないと、正確な答弁ではないんじゃないですか。
  208. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま申し上げましたのは、バダク基地における二つのプラントの平均値でございます。
  209. 横路孝弘

    横路委員 これは平均値で、私言っているのは、ナンバー1はある程度進んでいるけれども、ナンバー2はおくれているという指摘をしたわけです。  来月出すということですけれども、本来は、追加融資をやるときにちゃんと調べるのが普通でしょう。追加融資をやるときにちゃんと現地を見て、どういう状況かというのを見てからお金を出すのが普通のやり方じゃないんですか。出しちゃってからあわてて来月あたり行って、これどうなんですか。そういうところに――こんな大きなプロジェクトないですよ。しかも、どうも最初から高い価格でもって決まっちゃっていて、しかもこれが四十八年でしょう。四十九年には参議院選挙もあるということで、いろいろこれは言われているわけですよ。  この点に関しで、実はこのプルタミナという会社は、アーサー・ヤング会計事務所、ロッキードを会計監査した会社がありますね、あの資料が今度のロッキード事件の一番の発端になっているわけですけれども、これがやはりプルタミナに入りまして、全部資料をアメリカに持っていっちゃったのですよ。その点の、つまりいろいろな、本当に金庫にあった領収証から何からみんなアメリカのアーサー・ヤング会計事務所で持っていって、債務の確定やらいろいろな点をやっているわけですね。いずれまたこれは出てきますよ、アメリカの証券取引委員会で同じ問題が。金額はロッキードより大きいですよ。出てくる人物はどうも余り変わったメンバーじゃなくて同じようなメンバーのようでありますけれども。そうですよ、これ。だから、先ほど幾つか資料を要求した点とあわせて、私はこのLNGについてはっきりさせるためには、いま電源開発の総裁をやっている両角さん、それから日商岩井の、これは中心的な役割りを果たしました副社長の海部さん、この二人を証人として本委員会に呼んで、これはやはり解明を進めなければいけないというように思うのですが、委員長いかがですか。
  210. 白浜仁吉

    白浜委員長 ただいま横路孝弘君の申し出に対しましては、理事会において相談の上、処理したいと思いますので、御了承をお願いいたします。
  211. 横路孝弘

    横路委員 これは資源に関する問題でありまして、こういう問題がいつもいろいろと調べていくと疑惑に包まれるという点がやはり問題なわけですね。したがって、いつも輸銀を通しての融資、海外経済協力基金の融資といっても、これは国会として現実にどうなっているかというチェックが――もう今回も調べてみてもすぐそれは秘密ですということで、これは特に大蔵あたりの壁というのは大変厚いのですよね。これは総理大臣、こういう問題は一度わが国の経済援助と、あるいは経済協力と言われるものも徹底的にやはり調べてみるということでないと、どうも事務レベルではわからない。政治的なところでもって決められるという要素が非常に強いように思いますね。どうですか総理大臣、こういう石油といまLNG、インドネシアのプルタミナの話を聞いて。
  212. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 石油問題に限らず、発展途上国に対する経済協力が利権問題で毒されるということは、これは絶対許されないことですよ。発展途上国に対する援助が利権が絡むなどということは許されないことですから、今後こういう海外援助に対しては一段とそういう不正行為のないように、これは厳重にいろいろの指導をしていく必要があるということを感じました。
  213. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、時間が限られておりましたから、石油問題といまのLNG問題の経過ですね、新会社設立の経過等について、ひとつ綿密な報告を当委員会に出していただきたい。  そしてこのどろ沼のようにどんどん追加融資をしていく――いま総額、石油の方は三億トル、それからLNGは十五億ドル、それからアサハン・アルミは九億ドル、総額三十億ドル近い、一兆円近いのですよ。こういう借款をしているのですから、これは国民の税金なんだから、だからこれの追跡調査をするということは重大ですよ、返済問題と絡んで。問題をあと理事会でどう取り扱うかはひとつお諮りをいただきたい。  これで終わります。
  214. 白浜仁吉

    白浜委員長 ただいまの申し出の問題についても理事会で検討して処理したいと思いますので、御了承をお願いいたします。  次に、正森成二君。
  215. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、これから総理並びに関係大臣に質問いたしたいと思います。  今国会は、言うまでもなくロッキード追及と国民生活防衛に関連する問題についての国会だと承知しております。しかしながら、非常に残念なことに今国会において、公明党、民社党から、わが党の宮本委員長に関連する問題について攻撃が加えられました。そこでやむなく私も、必要な限度内でこれに対して関係閣僚にお聞きいたしたいと思います。  申し上げておきたいことは、これらの皆さん方がああいうような戦前の暗黒政治のもとにおける裁判の問題をお取り上げになりましたのは、結局暗黒戦犯政治を事実上肯定していることを示すものにほかなりません。そしてロッキード事件とその戦犯性において根は一つであり、かつ、事実上ロッキード事件の幕引きに加担するものであると私どもは考えております。  そこで、第一に総理大臣にお伺いいたしたいと思いますが、日中共同声明におきましては、その前文におきまして、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」と記載されております。これはなぜこういう文言が入ったのでしょうか。
  216. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日中国交正常化に際して、戦争中、中国に対して多大な損害を与えたことは事実でございますから、道義的に相済まないという気持ちを日本人は持っておる。それを端的に前文の中に表示したものだと考えます。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  217. 正森成二

    ○正森委員 戦争が双方にとって責任のあるものであれば、日本国民の戦死者を生じたわけでありますから、中国側も遺憾の意が表明されるのが五分と五分でありますが、共同声明を読んでみますと、そうではなしに、一方的に日本国が中国国民に対して反省をし、そして責任を痛感するとなっております。これはあの戦争において、中国国民に対して日本国民が侵略を行い、それによって非常な損害を与えたことについての責任を痛感したものではありませんか。
  218. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 道義的責任を痛感した結果であります。
  219. 正森成二

    ○正森委員 前国会でわが党の不破議員が伺いましたときにも、総理は道義的責任、二度と繰り返さないということは言われましたが、侵略戦争であるということは認められませんでした。しかし、私どもは、こういう文言が日中共同声明に入っているということ自体が、政府が侵略戦争であり、あってならないものであるということを心の奥底で認めているから、こういう表現になったものであると考えております。  そこで、伺いたいと思いますが、こういう戦争で損害をこうむったのは中国国民だけであったでございましょうか。日本国民もまた、そのことによって、生命においても財産においてもあるいは精神的にも非常に大きい損害を受けたということは、いまNHKのドラマで放映されている「雲のじゅうたん」一つを見ても明らかであります。  そこで私は厚生省に伺いたいと思いますが、あの戦争における戦死者は何人ありましたか。
  220. 出原孝夫

    ○出原政府委員 お答えいたします。  第二次大戦中の戦災者の数等についての正確な把握はむずかしゅうございますが、そのうちで死亡いたした者は、軍人軍属等につきましては約二百三十万人、また一般の戦災者は内地で約五十万人、外地で亡くなられた方が三十万人、合計で三百十万人というように推計いたしております。
  221. 正森成二

    ○正森委員 三百十万人という日本国民のとうとい生命が失われたということ、つまり、戦争こそが最大の大がかりな殺人であるということはこのことによっても明らかであります。それだけでなしに大きな財産が失われておりますが、あの戦争中空襲によってどれぐらいの家が倒壊し失われましたか。
  222. 出原孝夫

    ○出原政府委員 戦災で家屋等の損失につきましては厚生省としては把握をいたしておりません。
  223. 正森成二

    ○正森委員 私どもが調べたところによりますと、たとえば家永三郎氏の「太平洋戦争」という本を見ますと、全建築物で倒壊したものあるいは焼失したものは六千二百五万五千坪であり、個人住宅では四千百七十万五千坪であります。一戸当たり二十坪と平均いたしますと、約二百八万五千戸がこれによって倒壊したことになります。あるいは焼失したことになります。これは世上伝えられている、あの戦争によって家を失った人が八百万ないし九百万と言われていることに合致するわけであります。こういうように大きな損害を受けましたが、広島、長崎における原爆空襲による死傷者というのは一体どのくらいありますか。
  224. 出原孝夫

    ○出原政府委員 原子爆弾によります死傷者の数は、広島においては十万千五百六十一人、長崎においては四万九千二十二人という調べが出ております。
  225. 正森成二

    ○正森委員 いま原爆被災者手帳を持っている人は何人ですか。
  226. 出原孝夫

    ○出原政府委員 原爆の被爆者手帳を保持しております者は、五十一年三月末現在で三十六万四千二百六十一人でございます。
  227. 正森成二

    ○正森委員 総理、いま私がわざわざああいう数字を挙げましたのは、この戦争は、中国国民だけでなしに、日本国民にも大きな損害を与えたということを改めて知っていただきたいからであります。私の先ほどの発言中、日本国民が中国国民に損害を与えたと言いましたが、そうではなしに、日本国がという意味であります。つまり、日本国民は同様に被害者であったのであります。  そこで、私は伺いたいと思いますけれども、このような日中両国人民に、またアジアの国民に、あるいはアメリカ国民に大きな被害を与えるような無謀な戦争を遂行するためには、それに対する反対勢力、政党を一切弾圧しなければなりません。そのためにまさに存在したのが治安維持法であります。このことは広く認められているところであります。  そこで、私は法務省当局に伺いたいと思いますが、治安維持法によって検挙された人数というのは、概略何名ですか。
  228. 安原美穂

    ○安原政府委員 終戦時までを包含した統計資料が見当たりませんけれども、司法大臣官房保護課作成にかかります昭和十一年度司法保護統計集によりますと、昭和三年から昭和十一年九月までの検挙人員は、合わせて六万三百九十五人となっております。
  229. 正森成二

    ○正森委員 このように大ぜいの方が検挙されました。そしてこの検挙されたのは、ただに日本共産党員だけでなしに、たとえば故鈴木茂三郎氏あるいは現在の東京都知事の美濃部亮吉氏、大本教の指導者約二十名。そして当時は創価教育学会といっておりましたが、その初代会長の牧口氏も逮捕され、獄中で死亡されております。つまり、これは日本国民全体を弾圧する法律だったのであります。  国家公安委員長関係に伺いたいと思いますが、わが党の指導者であり、あるいは作家であった小林多喜二、岩田義道氏が治安維持法で逮捕されて死亡しておりますが、何年何月に逮捕され、そして死亡したのは何日、どこの警察であるか、資料がございますか。
  230. 天野公義

    天野(公)国務大臣 当時の資料は一切ないので御質問にはお答えできないわけでございます。なお、当時の資料はすべて廃棄されたものと聞いております。
  231. 正森成二

    ○正森委員 私は、ここにも当時の政府や終戦直後の政府の姿勢があらわれていると思います。わが党の宮本委員長は、この治安維持法によって弾圧され、その後完全に復権した人物であります。しかし、その関係の資料は美文調であるとかなんとかいうようなことを言って、これを問題にする人物がおります。ところが、日本国民に対して大きな被害を与えた治安維持法で虐殺された民主主義者については、一体どこでいつ逮捕されて、いつ死亡したのかさえ、資料がないと言って平然としているのが現在の政府であります。私は、こういう態度は本末を転倒していると思います。  そこで、私は手元にある資料でお話を申し上げたいと思います。  その資料はここに持ってまいりましたが、あの有名な河上肇博士の自叙伝の第二巻、あるいは当時同じように治安維持法で弾圧された医師である安田徳太郎氏、そういった方々の書物であります。それを見ますと、たとえば岩田義道は、昭和七年の十一月三日朝に警視庁から、警察病院で岩田義道の遺体を引き渡すから引き取りに来い。これは逮捕されてからわずか四日足らずの日数時であります。  そして文章を見ますと、こう書いてあります。「口のまわりに、六つも大きな釘の痕があって、血がにじんでいた。これは鉄のサルぐつわをグッと押しこんだ痕であった。」。手ぬぐいを押し込むようなんじゃないのです。鉄のついたさるぐつわを口へそのまま押しつけたから、その跡に「釘の痕があって、血がにじんでいた。これは鉄のサルぐつわをグッと押しこんだ痕であった。首すじには鎖で縛った痕があった。両太ももは竹刀か木刀で連続的に殴ったためか、暗紫色に腫れ上って、恐ろしいほどであった。」。解剖の結果、「いよいよ胸腔が開かれた。胸腔内には恐ろしいほど大量の出血があった。助手がヒシャクで血液をシリンダーに汲み上げたところ、ちょうど一リットル、すなわち一〇〇〇立方センチもあった。これは拷問具の窄衣で胸部をグッとしめ上げたための内出血と解してもよかった。」、こう書いてあります。これが当時の特高警察のやったことであります。  さらに、小林多喜二は昭和八年二月二十日に死亡いたしました。これは逮捕されてからわずか七時間であるということがわかっております。小林多喜二に至っては、解剖してもらいたいと思って慶応の病理学教室へ電話をかけましたが、小林多喜二だということで断られた。その後、慈恵医大の病理学教室へ電話をして、一たんは了承を得たけれども、解剖の届けを出したら警察から電話があって、真っ青にぶるぶるとふるえて解剖さえしてくれなかった。しかし、外見的事実は見ることができるから、その記録が残っております。「岩田君のばあいと同じに、両太ももは、皮下出血で暗紫色に腫れ上っていた。これは道場で正座させて、竹刀か木刀で、これでもか、これでもかと、たて続けに、殴った痕であった。蹴りあげたと見えて、睾丸が裂けていた。」「門歯が二本折れていて、頸部にナワの痕があった。よほど強く締めあげたとみえて、甲状軟骨(ノドボトケ)が折れていた。築地署は心臓マヒと発表したが、わたくしは窒息死だと睨んだ。」。これは安田博士が言っていることであります。「お母さんが」――小林多喜二の母が「息子の傷痕をなでながら、「タキ痛かっただろう」と、おーおー泣く姿は、目もあてられないほど悲惨であった。」、こう書いてあります。  これが治安維持法のもとにおける特高警察がやったことであります。裁判にかけて死刑の判決があって絞首刑に処せられるなら、どんなむちゃな法律であっても一応裁判にかけられたということができます。しかし、これこそまさに警察の行ったリンチではありませんか。当時の警察官は、共産党員は殺してもいいんだ、こう言って暴行を加えております。そして、警察がこういうことをやったときに、裁判所も決して現在のような裁判所ではございませんでした。  そこで伺いますが、治安維持法は二回にわたって改悪されておりますが、昭和十六年の治安維持法の改悪によって、治安維持法の被告は三審制度が認められたでしょうか、それともそれは奪われたでしょうか。
  232. 安原美穂

    ○安原政府委員 治安維持法は、昭和十六年の改正によりまして控訴の制限をされまして、二審制になりました。
  233. 正森成二

    ○正森委員 総理、現在三審制であります。二審がどれだけ大事であるかということは、裁判所も人間であるから間違うから、三審制がとられておるのです。上告裁判所は普通法律裁判所であって、事実関係についてはよく調べてくれないのです。その控訴審を昭和十六年以降治安維持法の被告は奪われたのです。わが党の宮本顕治氏も病気で昭和十九年に裁判になりましたから、当然控訴審では審理をしてもらえなかったのです。  そこで、法務大臣に伺いたいと思いますが、現在、戦後はもちろん三審制です。昭和三十九年から四十八年の十年間に一審は有罪であったが、二審でいろいろ訴えたために無罪になった件数はどれだけありますか。
  234. 安原美穂

    ○安原政府委員 統計数字のことでございますので私から答弁をさせていただきます。  昭和三十九年から四十八年までの統計表によりますと、控訴審で判決のありました者が――少々時間がかかりますがよろしゅうございますか。
  235. 正森成二

    ○正森委員 無罪になった人員だけ言ってください。
  236. 安原美穂

    ○安原政府委員 それでは、大体一万人から一万二千人につきまして控訴審の終局判決がございまして、三十九年から四十八年を見ますと、多いときには百二人、少ないときには五十二人というような範囲におきまして無罪が出ております。
  237. 正森成二

    ○正森委員 つまり、一審だけだったら有罪になっていた人が毎年少ないときで五十名以上、多いときには百六名になっております。そういうように無罪になっているのです。つまり、それだけ裁判というものは間違うものなんです。それが治安維持法の被告については控訴審が奪われたのです。当時、治安維持法の被告については弁護人は二名以下とされ、司法大臣の指定した者の中からしか選ばなかったのではありませんか。もう一つ、治安維持法の被告については、刑を受け終わっても予防拘禁ということで半永久的に拘禁されるということが行われたのではありませんか。法律上根拠があったのではありませんか。
  238. 安原美穂

    ○安原政府委員 昭和十六年の治安維持法の改正によりまして、御指摘のとおり、弁護人については数の制限並びに司法大臣の指名した者から選任する、それからいわゆる予防拘禁制度というものができたわけでございます。
  239. 正森成二

    ○正森委員 そこで、総理並びに法務大臣にお答え願いたいと思います。  これが治安維持法下の裁判です。治安維持法の被告は裁判にかかる前に、まず警察で虐殺される可能性がありました。裁判をすれば、そもそも一審から現在なら弁護人をだれでも選ぶことができる。私も弁護士です。正森成二に頼みたいと思えば頼むことができる。自民党の人がいいと思えば、自民党の中にも弁護士がおられますから頼むことができる。だが、司法大臣が指定した者の中からしか選べない。それも人数の制限がある。そして控訴権は奪われております。刑が出て、刑を務め終わっても、いつまでも出てこられない可能性があります。そういうような条件のもとで、治安維持法でつかまった人が本当に自由な意思で自分の真実を述べるでしょうか。少しでも気に入られることを言って、そのことによって死刑を免れたい、予防拘禁という名で事実上無期懲役になることを免れたい、そう思うのが人間の弱さから見て当然であり、そうして仮に本当のことを言っても、有罪になった場合にそれを救ってくれる二審はない、こういう状況は法務大臣どう思われますか。あなたは法務委員会で私の質問に対して、徳川時代に比べれば明朗だが、現在の裁判制度から見れば暗黒である、暗黒裁判と言えば言える、こうおっしゃいました。その御見解はいまでも変わっていないと思いますが、いかがです。
  240. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 法務委員会であなたの質問に対して、あなたはいまから考えて、いまの非常に完備された三審制度のもとにおける新憲法下、民主憲法下における裁判と比較して暗黒だと思わないか、こう言うから、いまから比較すれば暗黒と言えば暗黒だねと。しかし、徳川時代のあのテレビ、映画なんかに出てくるやり方から見ると、まだ明治憲法下という、憲法がとにかくしかれて、そして裁判制度というものがあって、その中で行われた裁判というものは、徳川時代から見れば明朗裁判だろうがなと、こういうことを申し上げた。
  241. 正森成二

    ○正森委員 総理、いまお聞きになりましたように、徳川時代、つまりちょんまげを結っておって、士農工商の区別があって、土下座をしなければ無礼討ちで切られても仕方がない、検察官と裁判官もまだ分かれておらない、被告はお白州に座らなければならない、そういう時代に比べれば明朗だ、しかし現在の法律制度から見れば暗黒だった、こう言っているんです。そういう時代の裁判の、いま言ったような制度のもとにおける認定を持ち出して云々するということは、結局こういう暗黒裁判を肯定することにほかなりません。暗黒時代を肯定することにほかなりません。  しかも、当時の裁判官がどういう認識を持っておったかを私は一、二だけ申し上げたいと思います。ここに当時の思想実務家会同の議事速記録があります。これは昭和九年、昭和十年ごろの速記録を示したものであります。その中には、当時の裁判官はこんなことを考えておったんだなあということが書いてあります。東京地方裁判所に潮判事という人がおりましたが、昭和十年の十一月の会同でこう言っているんです。  私は公判に来てまだ経験のない時分には露骨に 検事局に対して、固より裁判所独自の考がある が、出来るだけ公判廷に於て率直に此思想犯人に対する量定科刑に付ては少しも掛引のないこ とを言って呉れるやうに、執行猶予にして宜いか悪いかと云ふことまでも検事の意見を述べて 貰ひたい、言葉が甚だ悪いのでありますが、裁判所で分らない時は検事の意見に従ふ方が寧ろ正しいと思ふから十分有の儘を述べて貰ひたい。 こう言っているんです。およそ近代の裁判において、疑わしきは被告人の利益にというのは絶対的な原則であります。ところが、治安維持法の時代には、昭和九年、十年と言えば宮本顕治氏の事件が起こったころであります。裁判官が、疑わしい場合には、よくわからない場合には検事に従う。検事は起訴した人物であります。よくわからないときには検事に従うというのでは被告人はたまったものではありません。これは裁判ではありません。  総理、私は前提をいろいろ申し上げましたが、そういうようなもとで、しかも宮本顕治氏の場合には鑑定人も証人も一名も採用してもらえませんでした。現在の刑事訴訟法のもとでは、それだけで控訴審で破棄される理由であります。  そこで、私は総理に伺いたいと思いますが、私は戦前の裁判でも裁判すべてを批判したり、いけないと言っているのではありません。治安維持法に関係する裁判についてこういうような状況だったとすれば、その裁判の判決を現在の憲法のもとにおける、三審制における、自分の好む弁護人が依頼できて反対尋問にさらすことができる、そういうもとにおける裁判と同じように考えて、その判決内容を云々することができると思われますか、総理の明確な御見解を承りたいと思います。
  242. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 治安維持法につきましてはすでにそのときでも批判があり、今日から考えれば、こういう民主憲法のもとに考えれば、これはやはりわれわれとしても非常な批判をすべき法律であることは申すまでもないわけですが、当時としてはこれは一つの法体系でして、やはり有効な機能が働いておったわけでございますから、無論いまから考えてみれば、いま御指摘のようにいろいろな批判があることは当然でございますが、当時の法律として法律が有効でなかったと否定することは私は無理だ。これに対して、いまの尺度であるいは謝罪をしたり補償をしたりということにもしお話が進展するならば、それはできないということでございます。
  243. 正森成二

    ○正森委員 いま総理が、当時の憲法のもとでは、法体系のもとでは法律として成立しておった――その点についても、治安維持法というのは、憲法前文の人類普遍の原理に反する、まさに排除された法律であり、当時においてもあるべからざる法律であったと思っております。しかし、きょうはその点について論争する時間がありませんけれども、いま伺っておるのは、現在国会において論議になっておるのは、新憲法のもとの一九七六年から見てあのような判決をどう思うかということであります。その場合に、私が聞いておりますのは、戦後の判決と同列に見られないのではないか。当時の法律においては合法的であったとかなんとかいうことを聞いているのではなしに、戦後の判決と同列に見られないのではないか。現在から見てです。いかがですか。
  244. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その当時においては、やはり一つの法体系としての機能をしておったわけで、今日というものを基準にして、その当時の法律として機能しておったものを、これをどう思うかと言って、今日の事態と比較して法律自体の存在を否定することには無理があると私は思います。
  245. 正森成二

    ○正森委員 いま総理はそういうことをおっしゃいましたが、私は日中共同声明を最初に出しました。それは、あの戦争について多大の損害を与えたことについて反省する。あの日中戦争というのは、あるいは第二次大戦というのは日本国が国家の意思として行ったもので、別に国家の法律に反したわけではありません。太平洋戦争に至っては「天佑ヲ保有シ、萬世一系ノ皇祚ヲ践メル大日本帝國天皇ハ、昭ニ忠誠勇武ナル汝有衆ニ示ス。験、茲ニ米國及英國ニ封シテ戦ヲ宣ス。」、こういって宣戦の詔書を下したものであります。それでもやはり反省する、悪かったと日中声明で言っているじゃありませんか。  そうだとすれば、当時の治安維持法下の裁判というのは、当時の法体系では認められたことかもしれないけれども、現在の法体系から見てはあってはならないことであり、その判決の内容というのも現在の判決の内容と同列には論じられない。私は、無効だとか否定すると言っているのではないのです。それぐらいのことが言えませんか。答弁してください。
  246. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 正森さん、あなたこういうことをいろいろ問われるのは、要するに、前国会の民社党春日委員長質問に端を発して、共産党リンチ事件のことについて御論議になった結果、やはりあなたも共産党防衛のためにこういう質問をされるわけで、あるいは宮本委員長擁護のためにこういうことを言われるのですね。(発言する者あり)
  247. 澁谷直藏

    澁谷委員長代理 静粛に願います。
  248. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そこで、そういうことを言われますけれども、要するに春日質問というのは、リンチがあったのかないのか、それから共産党のリンチ的性格について非常に疑問を持つ、そういうことなんですから。あなたが、あの治安維持法下においてリンチだなどと言われたって問題にならぬと。現在においてはどうなんだというと、治安維持法下にない現在のこの管理した民主法制下において、憲法下において、なおかつリンチ事件というものはこういうふうにあるのですから、そういう点について……(正森委員「聞いていることに答えないで、何を言っているのですか」と呼ぶ)そういう過去のことについて、関連があるから言う。そうでしょう。治安維持法下がだめだとか、治安維持法下でないからいいとか、そういう区別はないのです。あなた方のところには、そういう区別はない。(発言する者あり)
  249. 正森成二

    ○正森委員 私が質問していないことに、あなたの質問はこういう趣旨だろうというようなことを勝手に前提して、しかも聞いていることに答えないで、自分の言いたいことだけを答える。答えるのじゃない、演説しているのです。これが選挙の立会演説か何かなら、何でもおっしゃってください。だけれども、国会に対して連帯して責任を負う内閣の一員として答えているんじゃないですか。そういうことをやられるなら、私も、総理はこういうぐあいに答えるのだろうけれどもと言って、勝手にあなたのことについて演説したらどうですか。  私が質問しているのは、事実を一つ一つ聞いているのです。また、いま私が宮本委員長を擁護するとかなんとか言いましたが、私は、治安維持法で弾圧された日本国民、そしてあの戦争で被害をこうむった中国国民日本国民、そういう人たちの気持ちを思って、なぜああいうことが起こったのか、そういうことを二度と繰り返さないためには国会として何をなすべきかという気持ちから聞いているのです。そのうちの一部の中に宮本顕治氏が入っていたとしても、それは一部として、結果として、治安維持法と闘った人物として入っているのです。それを宮本顕治のためにだけ聞いているのだというように矮小化して、聞かれもしないことを答えるとは、一体何事です。私はまことにけしからぬ答弁であるということを指摘しておきたいと思います。総理、答えてください。
  250. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は繰り返して正森君に言っておることは、いまはもう新しい憲法のもとで、主権在民という憲法日本政治の骨組みというものがすっかり変わったわけですね。その大変革があったいまの時点に立って、昔の法律というものをいろいろ比較して批判をすれば、単に治安維持法ばかりに限らないと思うのですね、いろいろな不合理な法律ができるので、これを現在の尺度で、当時有効に機能しておった法律を否定はできない。われわれは心しなければならぬのは、日本はそういう一つの時代もあったということで、再びそのようなことがこれからの日本政治体制の中に、そういうことはあり得ないことですけれども、そういうことのないような民主主義の道を日本は歩んでいかなければならぬ。教訓にはなりますけれども、その過去にあった法律の有効性を否定することはできない、こう言っておるわけであります。
  251. 正森成二

    ○正森委員 いま総理がお答えになりましたけれども、その中で問わず語りに、そういうことがあってはならないということで道を歩んでいかなければならないということを言われました。また、いまの法体系から見たら比較にならないようなそういうときのことであるということも言われました。しかし、当時では有効であると。私は、その前段の二項目について総理と見解を同じくするものであります。ですから、いまの法体系から見て考えられないようなこと、あってはならないときの時代のことを現在になってとやかく言う、同列に論じるということは、私は根本的に誤っておるということを指摘して、次の問題に移りたいと思います。  総理、私は、ポツダム宣言を受諾することによって旧憲法はその限りにおいて効力を停止され、ポツダム宣言の民主化条項に反する限りにおいて、法令もまたその効力を停止され、そして連合軍の指令というのは、降伏文書に基づいてポツダム宣言を実施するためには、その限りにおいて当時の憲法や法令に対して超憲法的な、超法規的な効力を持っておったということは、ポツダム宣言受諾に伴って当然のことであったと思いますが、いかがですか。
  252. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 占領中は、ポツダム宣言受諾によって、最高司令官というものの占領政策のもとに日本が置かれたということでございます。
  253. 正森成二

    ○正森委員 ということは、私のいまの主張を認められたことにほかならないというように考えます。  そこで、法務大臣に伺いたいと思いますが、あなたはきのう、おとといのいろいろの論議の中で、わが党の宮本委員長が結果として連合軍に助けてもらったという意味のことを言われました。そして、勅令七百三十号に該当しないのだけれども、連合軍の指令によって復権したんだという意味のことを言っておられる個所があります。しかとさようですか。
  254. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 しかとさようで、法的根拠に厳として基づいて、そういうふうに自信を持って申しておるわけであります。
  255. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、あなたは別の個所で、勅令七百三十号に該当するものとして扱うということで、該当しないとは言っていないのですね。該当しないのを扱うについては、連合軍司令部の権力といいますか、指示ということを言っておられます。そうすると、結果としては、あの判決のただし書きに書いてありますように、七百三十号に該当するとして、そして「将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」ということになったのではありませんか。
  256. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 昭和二十二年の四月の末になって、司令部から司法省に対し特別の指示があったために、ああいう付記が行われたのです。その指示がなければ付記が行われない。付記が行われなければ、刑法犯については除外してあるんですから、資格の回復はなかった、こういうことになるわけです。
  257. 正森成二

    ○正森委員 刑法犯については除外してある、ないという問題については、後ほど論じたいと思います。しかし、簡単に申しますと、もし連合国の権力によって、あるいは指示によって資格が回復したり、あるいは何らかの権利を獲得したということになれば、それは全部連合国に助けてもらった、こういうことになるわけですね。
  258. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 その七百三十号には、政治犯については資格回復のことを命じてありますけれども、不法監禁致死だとか死体遺棄だとか、それからピストルを持っている罪だとか、そういう刑法犯は除外してあるのです。そういうものを犯した者については資格は回復しないとなっているのです。そうなっている。それを二十二年の四月末に、連合軍のある係官からわが司法省の刑事局長へ特別の指示が来たのですから。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕 そうして、それに基づいて刑事局長から検事正に通牒を出して、そういう付記を書かせたことによって初めて資格を回復する、こういうことになったのですから、連合軍の特別指示が来なければそういう付記はなされないのであり、したがって資格回復はなされていなかったのだから、いわば連合軍のおかげで助かったと言っても過言ではない、こういうことです。
  259. 正森成二

    ○正森委員 速記録を調べていただいたらわかるのですけれども、私はそういうことを聞いているのではありません。連合軍司令部の指示によって権利を回復するとか、あるいは失われた権利がもとに戻ったというような人は、全部連合軍から助けてもらったということになるのですか、こう聞いているのです。何もこのことを聞いているのではないのです。
  260. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 連合軍の一連の民主化に関する覚書、その覚書に基づいてわが国で出した勅令、そういうものに基づいてやったのなら、法制のもとに行われたあれですから、それはいいのです。ところが、宮本顕治氏と袴田里見氏については、この二人については特別に該当したものとみなす、そういうふうな取り扱いをせいという特別な指示が来たのだから、この二人については連合軍の指示によって助かったのだ、こう言って差し支えないのです。
  261. 正森成二

    ○正森委員 どうも稻葉法務大臣は偏執的にそこへ行こう行こうとされるようですけれども、そんなことを聞いているのじゃないのです。連合軍司令部の指示に基づいて何らかの権利を回復した場合には、連合軍のおかげで助かったということになるのかと聞いているのです。  そこで私は、いまあなたがそういうぐあいに続けてそこばかりお答えになりますから、あえて伺いたいと思いますけれども、昭和二十年十月四日の政治的自由の回復に関するメモランダムがなければ、連合軍のそういう特別の指示がなければ、政治犯は全く解放されなかったのです。あなたの論法をもってすれば、連合軍司令部の指示があったから、そのおかげで助かったということになるわけです。私は、その関連について一言申し上げたいと思います。  昭和二十年十月三日に、当時の山崎内相の談話があります。それを見ますと、ロイター通信の東京特派員のロバート・リュベン氏と会談して、アメリカ軍の機関紙のスターズ・アンド・ストライプスに報じたものであります。彼は、共産党員である者は拘禁を続けると断言。「内相は政府形体の変革とくに、天皇制廃止を主張するものはすべて共産主義者と考へ、治安維持法によって逮捕されると語った。」。いいですか。戦争が終わった十月三日ですよ。岩田法相談。これは同日、中国の中央通訊社特派員の宋徳和氏に語ったものですが、「司法当局としては現在のところ政治犯人の釈放の如きは考慮してみない。かかる犯罪人を刑期より前に釈放することは裁判を無効にすることであり、我々にはかかる権限は与へられてるない。」。予防拘禁者について「大臣の権限をもって釈放できる。しかし現在の事態の下では彼等を依然拘置所に留めておく必要ありと考へ、従ってこれまた釈放の如きは考へてるない。」、こう言っているのですね。昭和二十年の十月三日。八月十五日に戦争が終わっているのですよ。それでもなおかつ、連合軍司令部の十月四日のメモランダムという特別の指示がなければまだ治安維持法で逮捕する、刑を終了した者もまだ予防拘禁で入れておく、こう言っていたのです。そういう立場にあった人は、この連合軍司令部の、あなたの表現によればメモランダムによって助かったということになります。  そして、もう一つ私は聞きたいと思いますけれども、当時、三木清氏は治安維持法で逮捕されていたはずであります。三木清氏はいつ死亡し、その刑務所名と病名とをお聞かせ願いたいと思います。
  262. 石原一彦

    ○石原政府委員 お尋ねの三木清氏は、治安維持法違反刑事被告人といたしまして東京拘置所に収容中、昭和二十年九月二十六日、腎臓炎のため死亡いたしております。
  263. 正森成二

    ○正森委員 総理に伺いたいと思いますが、昭和二十年九月二十六日といえば戦争が終わってから一カ月以上たっております。十月三日に、政治犯の自由回復について――政治犯だけではない、日本国民すべてについて。そして十月十日ごろに相次いで出てまいりました。三木清氏は共産主義者でも何でもありません。自由主義者、民主主義者であり、西田哲学の高弟であります。私らも学生時分には本を読んだものです。その人が、戦争が終わっているのに、日本憲法とその法令においては、三木首相が、いややっぱりその時分は有効だったというものについては依然として拘禁されて、とうとう死亡している。連合軍司令部が指示を出すまでは助からなかったのです。助かったんだ、助かったんだということをおっしゃる稻葉法務大臣は、結局日本国の法令のもとにおいては三木清氏のように治安維持法で獄中で死ぬのが当然であったんだ、連合軍司令部のああいう政治犯の釈放や、あるいは政治的自由が出て、そのおかげで助かったんだ、日本国民は全部助かったんだ、こういう見解ですね。そういうことに論理的にならざるを得ません。そういう考え方というものは、治安維持法体制を、時の法令だったんだからということで、結局は是とするような考え方にほかならない、私はそう言わざるを得ないと思います。
  264. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 昭和二十年十月四日であるとか昭和二十年十月十九日であるとか、二十九日のそういう覚書であるとか、それは治安維持法みたいなああいう法律で処罰されている者は、これは政治犯として民主化の妨げになるから、民主化しようというのですから、ポツダム宣言に基づいてやってきた司令部というのは日本を民主化する任務を持っていますから、それでいろいろなメモランダムを出したのです。政治犯は釈放しよう、こういうんだけれども、刑法犯は除外する、こうなっているんだ。そこで、刑法犯は除外することになっているんだから、宮本氏と袴田氏はこれに該当しないというので、これを特に該当させるために……(正森委員「そんなことは聞いてないですよ。三木清氏のことを聞いているんですよ。日本国民全体のことを聞いているんですよ」と呼び、その他発言する者あり)ですから政治犯一般については――ちょっとそこら辺やかましいな。(正森委員委員長質問に答えさせてください」と呼ぶ)
  265. 白浜仁吉

    白浜委員長 静かにしてください。お静かに。
  266. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 こうやって、この事件の質問になるとこうやってぞろっとみんな来て大きな声出すけれども、そういうことはよくないですよ。いいですか。一般的政治犯については……(発言する者あり)
  267. 白浜仁吉

    白浜委員長 お静かに願います。
  268. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ああいうメモランダムでみんな助かったんです。いいですか。それだから、その助かったことをあのメモランダムのおかげだと言えばそのとおりだ。しかしこれでも助からなかったのが二人いたけれども、特別の指示によって助かったと、これだけ言っているんだろうが。事実をそのまま私は言うているだけの話ですよ。誤解しないようにしてくれ。
  269. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、あなたは助かったというような言葉を使われましたけれども、結局あなたの表現によると、ポツダム宣言や、あるいはそれに基づく民主化措置によって日本国民は全部助かったんだ、それがなければもっとひどい目がずっと続いていたんだ、その後で宮本顕治氏と袴田里見氏はもう一つ特別の指示でまた助かったんだ、そういうわけですね。だから、あなたの考え方から言えば、つまり連合軍司令部の指示がなければ日本国民は全部助からなかったのだ、そういうことですね。そう言ったじゃないですか、いま。
  270. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 治安維持法などで引っくくられて牢屋へ入れられておった日本人は――国民全般を言っているのじゃない、そういう日本人は政治犯人釈放というメモランダムによって助かった、それでも助からないのがあって、それは特別の指示によって助かったのだ、こう言っているのです。
  271. 正森成二

    ○正森委員 私は、国民の権利にかかわる問題についてでありますから、私は理論的に聞いていると思いますから、稻葉法務大臣もなるべく私の質問の趣旨を正確に理解して、時間がどんどんたっていきますから、同じようなつぼを外したことを何回も答えるということのないようにしていただきたい。  それから、私はもう一つ言いますと、たとえば岩田司法大臣やあるいは山崎内相の言葉によりますと、治安維持法で取っつかまった者を解放するということになるだけでなしに、十月三日になっても、天皇制の否定とか治安維持法に違反する者があればまた引っくくると言うているのです。つまり日本国民で天皇制について批判するような人がおれは日本国民全部をまた引っくくると――全部かどうかわかりませんよ、そう言うているのですから、だからいままで逮捕されていた人だけでなしに、逮捕されていない人についても、これから引っくくられないという意味では、十月四日のあの政治的自由に関するメモランダムが出たおかげで助かったということが言えるじゃないかということも言っているのです。だから、それについては、あなたが基本的には二人だけが助かったという意味じゃないということを認められましたから、私は次の問題に移りたいと思います。  そこで、私はあなたに伺いたいと思いますが、政治犯として釈放された四百三十九名が、当時の中央連絡事務所から連合軍司令部に対して氏名が報告されておりますが、宮本顕治氏が政治犯として釈放された四百三十九名の中に記載されている。いいですか。政治犯として釈放された。その事実はお認めになりますか。
  272. 安原美穂

    ○安原政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、私どもは、政治犯として一〇・四覚書に該当するかどうかということの解釈は別といたしまして、この覚書により釈放された政治犯のリストを出せという連合国最高司令部の指令によりまして、終戦連絡事務局から一〇・四覚書に際して釈放された政治犯人のリスト四百三十九人を出しておりまするが、その政治犯人四百三十九人の中には宮本顕治氏の名前が記載されております。
  273. 正森成二

    ○正森委員 私はそのことでも非常にはっきりしていると思います。連合軍の指示によって当時の中央連絡事務所、政府が政治犯として釈放された四百三十九名の氏名を報告した。その中に宮本顕治氏が含まれているのです。そうして、このことは、日本政府が宮本顕治氏を政治犯として報告をし、釈放の中に入れたということを物語っているものにほかならないと思います。そうして、このことは、きのう、おととい、一部の党から、アメリカの公文書館へ行って資料を見れば経過がよくわかるというようなことが出ましたが、わが党の内藤議員も行って調査をしてまいりました。また、一部の新聞にもその調査の結果が出ております。私は英文では申すわけにまいりませんので、訳はわが党の訳と多少食い違っておるかもしれませんが、その関係についてどういうぐあいな経過になっておったかということをここで読み上げて、あなたの御見解を伺いたいと思います。  こう書いているのです。当時の連合軍の司令部にマイヤーズという法律顧問がおりました。そのマイヤーズが一九四七年の三月二十六日付及び一九四七年五月十五日付で次のようなことを言っております。その結果釈放されているわけであります。全文は読むと非常に長くなりますから一部を読みますが、こう言っております。「最後に、日本政府はこの事件を一般犯罪というより、むしろ政治犯罪とみなしているということを強調しておきたい。この犯罪の本質は政治的なものであり、政治的行動の結果としてのみ一般犯罪の性格を伴うに至ったのであると感じられる。二人が政治犯罪と一般犯罪の両方で罪に問われたこと、また一般犯罪の故にさらに刑務所に拘禁され続けたかもしれないという事実を、日本の司法省は二人の釈放前に行われたGHQ担当官の調査のさい認めた。それにも拘らず、二人はSCAPIN93号」、十月四日のメモランダムのことです。「に基づいて、政治犯として釈放された。従って日本政府は、この事件を基本的には政治犯罪であり、一般犯罪はたまたま付随したものであるとみなしたことになる。」。十月四日のメモランダムによれば、治安維持法で投獄されておった者、何ら罪名なしに投獄されておった者、付随的な罪がついておった者すべてについて釈放せよ、こうなっております。これは当時の一九四七年三月二十六日付の一部です。  さらに、一九四七年五月十五日付の一部にはこう書いてあります。それはあなた方も御承知のとおりであろうと思います。「本官は佐藤氏に対し」、当時の佐藤藤佐刑事局長であります。「前に説明した通り、これら二人の復権を民政局が決定した理由は、本件が恩赦法の条項に該当するからではなく、次のようなものである、と述べた。すなわち日本政府は、SCAPIN93号が出された直後に、この指令に基づいて釈放された二人を逮捕しなかったが、このことによって二人が単に政治犯罪のみで有罪であり、同時に問われていた一般刑法犯については無罪だということになったのである。日本政府が連合国軍最高司令官に対し、二人を再逮捕しない旨伝えたことにより、二人は政治犯の故にとらえられていた、という意味が成立する。二人は単なる政治犯として釈放されたのであるから、その公民権はSCAPIN458号によって回復されねばならない。」、つまり資格回復の問題であります。「かくて本件は、恩赦適用の問題ではまったくなく、SCAPIN458号に基づき発布された勅令(730号)によって処理されるべき問題である。」、こう言って、当時日本政府が右翼七名などと一緒に特赦でやったらどうでしょうかと、日本政府も資格回復させようと思っておった、特赦でやったらどうでしょうかと言ったのを否定して、七百三十号を適用しなければならない。「将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看倣ス」、恩赦法にない規定、そういうものを書いて宮本顕治氏に復権を認めた、こういうことになっているのです。  さらに続けてこう言っております。「佐藤氏は、司法省がただちに、二人に判決を下した法廷の当該検察庁に対して、この件については連合国軍最高司令官の解釈に基づいて勅令(730号)を適用し、二人の公民権を当然回復させるよう通告する、と述べた。ハワード・マイヤーズ」、こうなっております。  したがって、連合軍司令部は七百三十号の勅令についてもこういうように解釈せよ、こういうことで指示をしているわけであります。そして私が法務委員会の論戦でも言いましたように、当時連合軍司令部は、自分が出したメモランダムの解釈権を持っているだけでなしに、それに基づいて出された日本政府の通達やあるいは法令についても解釈権を持っておった。それはポツダム宣言に基づいてわが国の国家権力が制限されておったからであります。これがいろいろ出ている経過であります。  そうだとするならば、宮本顕治氏が刑法犯を伴っておったとしても、それは法律上のむずかしい言葉で言えば、観念的競合と言って、その行為が同時に刑法犯にも触れれば治安維持法にも触れるということで分かちがたいものであるから、しかも最も重い罪である治安維持法によって処断されているのですから、だから政治犯だということで日本政府が扱ったというように連合軍司令部が判断しているという経過がアメリカの公文書館の文書で明らかになっているわけであります。  そうだといたしますと、法務大臣がいろいろ言われましたけれども、宮本顕治氏は、あなたの表現によれば、政治犯として拘禁されておった人とすべて同じように、あるいは岩田司法大臣や山崎内相の言葉によれば、天皇制反対と言えば日本国民であっても新たにひっくくると言っているのですから、そういう災厄を免れたすべての日本国民と同じように、あなたがそう言いたければ、連合軍司令部によって助かった、全世界の民主勢力の力によって助かったということになるであろうというように私は思うわけであります。  そこで法務大臣に私は伺いたいと思いますが、法務大臣は、国会外における言論の自由と国会内で裁判の当否の判断を求めるということとを混同しておられませんか。そういうことは絶対にございませんか。日本共産党は、国会の外で裁判について、それは真実に合致しない、こう言って批判はいたします。しかし、国会の内において日本共産党は、国会があるいは行政当局があの裁判が間違っておると認めよというような主張をしたことは一度もありません。私がここでこういうように言っておりますのも、公明党や民社党が、真実は一つだ、春日委員長に至っては、国はその問題について明らかにせよ。司法部は明らかにするわけがありませんから、国がと言えば、国会か行政府に決まっております。そういうことを言っておることに対して批判をしているのです。あなたは、前の国会では、わが党のいろいろの質問にあってその点がおわかりになっていたようでありますが、今度の国会では、社会常識では判決の事実はあったと見るのが常識ではないでしょうかということで、社会常識ではという言葉をかりて、自分の判決に対する当否の当の方の評価をしておられます。そういうことをなさっていいのでしょうか。前国会答弁とは大いに違うと思いますが、いかがです。
  274. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 まず、最初の方の、七百三十号に該当しておったという司令部の当時特別指令をしてきた係官の言葉を引用されました。どう七百三十号の勅令の条文を見ましても、これは政治犯だけなんです。一般刑法犯については除くと明瞭になっているのですからね。それはあなた無理だ。あなたの解釈は無理だよ。  それからマイヤーズの言い分というのは、わが国の勅令の解釈を正当に解釈しないとわれわれは解釈しますし、従来のわが国の司法省もそういう解釈のもとにずっとやってきた、そこへ特別の指令が来たから、超憲法的な指令だから、これに従って付記をした、そういうのですよ。だからあなたのは少し無理です。  それからもう一つは、裁判の批判を院外においてしたことはあるけれども、院内においてはしたことはないようなお話でしたけれども、ずいぶん私やられましたよ。あなたの党の参議院の上田耕一郎さんなどには、えらいこんなでたらめな裁判はあるもんか云々云々と言って、あの裁判の内容に立ち至ってその当否をずいぶん論議をさせられた。だからそれに答えた。それに答えただけです。そういうことでございますから、誤解のないように言います。
  275. 正森成二

    ○正森委員 私がわざわざ丁寧に、国会外と国会内を分けて、国会内においても私どもは判決の当否を自分から言うのじゃない、よそから言われるからやむなくそれに必要な限度で言わざるを得ないのだということを申し上げたことがよくおわかりになっていないようでありますが、時間がどんどんたっていきますから、次の論点に移らしていただきたい。  それから、あなたの見解は無理ですよと言われましたが、私は、私の見解を言ったのではなしに、連合軍司令部のマイヤーズ氏がこう言っているということを言ったのですから、あなたの、法務大臣のいまの答えは、マイヤーズの見解が無理だよということを言っているというように解さなければなりません。しかし、そのマイヤーズの見解がまさに連合軍司令部の当時の最高権力的な有権的な解釈であり、それに従って事が処理され、しかもそれは当時の法体系では、完全に法的には有効だったのだということを私は改めて指摘しておきたい、こういうように思います。  そこで私は申したいと思いますが、あなたは、他の党の議員質問に対して、わが党の立木議員質問の中であなたを答弁者に必ずしも指定していなくて総理に聞いたことがよほどお気に入らないと見えて、いろいろなことを言うが、読みますが、「そうしておいて、答弁は要らぬと。おれは言う、おまえは聞け、おれは食うが、おまえは食うな、人の物はおれの物、おれの物はおれの物という、そういう体質はまことに、そういう態度で言論の自由とか三つの自由とか国民に訴えても、国民は信用しないでしょう。」、こう言っている。  そこで私は伺いますが、本会議質問をする場合に、この問題は総理に答えてほしいということにしてどこがいけないのです。あなたはあたかも超総理大臣のように、何でも自分が答えなければいけない、それを除外されたら、おれの物はおれの物、人の物もおれの物、そういうようにおっしゃるのですか。そしてその上で、言論の自由とか三つの自由とか国民に訴えても国民は信用しないでしょうというような、立会演説会で言うようなことをおっしゃる。それは法務大臣としてはなはだ不謹慎ではありませんか。私はそう思います。そこで一つ聞きますが、ここまで公党を誹謗される以上、あなたは三つの自由とは何と何と何であるかぐらいは少なくとも知った上で言っておられるのでしょうね。ここで答えてください。
  276. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 それは参議院の立木さんの総理に対する質問なのですけれども、前の日までは答弁要求大臣の中に法務大臣とあったのですね。その後、朝になってから法務大臣は除くと、こうなったのです。ああ、これはおれに対する質問はないのだな、こう思っておったら、そうしたら、前の日の衆議院の本会議における私の答弁のことを引用して、こういうばかなことを言っている、こういうことも言っている、でたらめなことを言っていると言って、一方的に私の答弁を中傷するから、それだから、そんなことを一方的に言わしておいて、こっちに答弁もさせない、わざわざ仕組んで、きのうまでは答弁要求大臣の中へ入れておいて、急に外して安心させておいて、だまし討ちみたいなことをするから、そういうことは明朗濶達なあり方ではない、フェアではない。余りフェアでないから、がつんときたから一発かましたので……(発言する者あり)
  277. 正森成二

    ○正森委員 何ですか、総理、いまお聞きになったことでもわかるでしょう。法務大臣やあるいは大蔵大臣やあるいは場合によっては福田総理でも、これでは答弁として満足できないな、やはり内閣総理大臣に聞いておかなければいけないな、こういうように本会議質問に対して思うのは質問者の当然の権利であります。それを言うたからと言って、一発がちんとかましておかなければいかぬ、そんな国務大臣がどこにありますか。  そして、いま見ますと、どうやら三つの自由について御存じなかったと見えて、自民党議員からメモが行ったようでありますが、さっきは答弁をしなかったじゃありませんか。そういうように、質問されたときには答えないで、まるで小学校の生徒が何かこう横から教えてもらうようになさるというような、そういう自分はフェアでない態度をとって、自分が答弁させてもらえない、当然に上級の――まあ上級と言ったらぐあい悪いですけれども、内閣総理大臣に聞くということであれば腹が立ってがちんとかます。そんなものは、いいですか、自民党の衆議院議員ならそれで結構です。あなたは国民全体から法務を任されている法務大臣なんです。あなたがそういう調子だったら、何か気に入らぬことを言われたら、ロッキード事件でも何でもがちんと言わしてやるあるいは言わさないということを当然なさる性質を持っておる、というようにわれわれとしては思わざるを得ないということを指摘して、時間がどんどん参りますから、次の問題に移りたいと思います。
  278. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 あなたは私の性格などについて勝手にそういうふうに一方的にしゃべって、国民に稻葉というやつは何かしゃくにさわるとがつんとやるやつだ……(正森委員「言ったじゃないですか」と呼ぶ)そんなふうに思わせる、そういうやり方はいけませんと言うのさ。この間も、わざわざ答弁者から除いておいて、そうして前日の私の衆議院における質問に対する答弁を全部とらえてきて、これはだめだ、これはだめだ、これはだめだと。そして答弁者の中へ入っていないから議長はすぐ次の質問者を呼び出しますわな。そうすると、私の発言の機会はないのです。そういうふうに仕組むやり方はよくないじゃないですかと言うのです。フェアじゃないじゃないですかと言うのです。そういうことを言っているのです、私は。
  279. 正森成二

    ○正森委員 時間がたちますので、私は次の質問に移りますけれども、総理に申し上げておきたい。自分が前日と違ってその日には外された、しかし、総理には聞くとなっておるのに、それに腹を立ててがちんとやるというような態度はやはり改めていただかなければならぬと思います。  そこで私は次の問題に移りたいと思います。  現在、ロッキード事件で金権体質を一掃するということが非常に大切でありますが、まさに政治選挙を金で買収するということは絶対にあってはなりません。しかし、昭和四十九年に大橋和孝氏が京都府知事選挙で二千万円の菓子折り事件というものが起こりました。この問題については、竹入氏が、問題の菓子箱入りの二千万円を後に返したと九カ月後に発表されましたが、しかし、心情的に大橋氏を支持したということで、大橋氏の当初の意図は効果を上げたというように考えられる事件であります。  そこで伺いたいと思いますが、大橋氏は、自分のてんまつ書で、金を渡した日は四十九年の三月九日と書いておったのに、三月四日と変更しております。これは、結局三月五日に正式に立候補を表明しているので、それより後であると買収が成立するということが動かしがたいというので変更したというふうに疑惑が持たれておりますが、この点はいかがです。なぜ変更したのですか。
  280. 安原美穂

    ○安原政府委員 お尋ねの件は、昭和四十九年の十二月二十四日に京都地検に対しまして、自治労京都府職員労働組合、京都教職員組合から告発があった案件でございまして、被告発人は御指摘の大橋和孝氏でございますが、罪名は公職選挙法違反、御指摘の事前運動と買収だという告発でございました。その告発の要旨は、いま御指摘のように、京都府知事選挙に関する事前運動であり買収であるということで、当時の、現在もそうでございますが、公明党委員長の竹入義勝氏に取りまとめの選挙連動を依頼することの報酬として現金二千万円の供与を申し込んだということでございますが、京都地検で鋭意捜査をいたしました結果、不起訴、嫌疑不十分ということになったものでございまして、御指摘の点が一つの問題でございましたが、京都地検の捜査の結果によりますると、現金二千万円を持参したのは三月四日である、そして、現金と知った竹入委員長が直ちにこれを返却したということは明らかでございますが、大橋和孝氏は、この金員を持参した当時いまだみずから立候補する意思がなかったということを認定いたしました結果、事前の買収ではないという判断になったわけでございます。
  281. 正森成二

    ○正森委員 われわれの調査によれば、参議院議員の大橋氏は、すでに二月十四日に立候補のための供託を行っております。そして社会党の中央は蜷川氏を推したにもかかわらず、蜷川氏に反対して立候補することを二月十五日に表明しました。二月十七日には、民社、自民はいずれも、大橋氏が立候補すれば支持すると表明しております。  そうなりますと、たとえ三月九日が四日であっても、自分の立候補の意思がほぼあらわれているというように見なければならない、私どもはそういうように考えております。そして、最高裁判所の昭和三十九年(あ)第一五六一号の事件によりますと、立候補するという確定的決意がなくても、本人に立候補したいもしくは立候補するかもしれない程度の意思であっても買収罪は成立するとしております。立候補について供託までした人物、しかも三月五日の正式の立候補の前日であるにもかかわらず、この最高裁判例書の解釈に反してなおかつ買収でないというように認定したのはなぜでしょうか。そうして、検察審査会でも、こういう買収にならないと言って起訴にしなかった措置というのは不相当であるというのが出ていると思いますが、それについて再度お答えを願います。
  282. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘の点でございますが、その立候補の意思があったかどうかということが問題となりまして、不起訴処分の結果につきまして、検察審査会で審議がなされまして、不起訴は不相当である、立候補の意思はあったのではないかということで、不起訴不相当の決議がなされましたが、重ねてその議決を待って京都地検で捜査いたしました結果、この金銭を持っていった趣旨は、立候補、選挙運動のためではなくて、蜷川候補に対抗し得る候補者の選考方を依頼して、その選考のための費用であり、選考された候補者の選挙資金に充てるためであったという認定をいたしたわけでありまして、理由はあくまでも事実としてそういう判断をしたということでございます。
  283. 正森成二

    ○正森委員 私は、ロッキード事件について、中島議員に関連して質問をしていただきたいと思いますが、一言申し上げたいと思います。  ロッキード事件は、御承知のように、ロッキードから丸紅を通じて六億二千万円、全日空を通じて一億六千万円、右翼戦犯の児玉譽士夫を通じて約十八億円、合計二十六億円のお金が賄賂として自民党の国会議員、運輸大臣、果ては内閣総理大臣に贈られた、こういう事件であります。二十六億円と言いますと、月収が十五万円でボーナスを四カ月もらっておるわが国の平均的サラリーマンの家庭がかせぐには何と千年と八十年かかる。ツルは千年カメは万年と言いますが、人間がツルより以上に長生きをしなければかせぎ終わらないぐらいのお金であります。  そこで、内閣総理大臣に伺いたいと思いますが、当時、田中角榮氏は、「知恵太りの徳やせ」などと昭和四十九年ごろ言って、全国で一生懸命道徳を教えている教師やあるいは子供たちに対する、言ってみれば中傷に近い発言を行いました。ところが、結局自分が逮捕されております。そこで、学校の先生方が、幾ら自分のことだけではなしに社会全般のことを考えなさいと言いましても、うそをついてはいけないと言いましても、一国の内閣総理大臣が、外国から五億円も賄賂をもらっているようなことで、そのために逮捕、起訴されるようなことで、また社会的地位があると考えられている大企業の社長や重役がこの国会で、テレビで全国民が見ておるにもかかわらず、私はうそはつきませんと言いながら偽証を行って、そして二カ月も刑務所へほうり込まれるようなことで、子供たちは、学校の先生が幾らそういうことを言っても、心からそれが日本の社会で守らなければならない道徳律であると考えるでしょうか。そうじゃなしに、外国から賄賂をもらうぐらい厚かましくなければ、内閣総理大臣のような偉い人にはなれないんだ、国会で幾ら証言をしていてもうそをつくような人でなければ、大企業の偉い人にはなれないんだ、うちのお父ちゃんやお母ちゃんは場合によっては正直過ぎるから社長になれないのじゃないか、子供はそういうぐあいに考えても決して不思議ではありません。本当に教育をよくしようと思えば、政治を正さなければなりません。そういう点について、内閣総理大臣ロッキード事件と教育の関係についてどう思っておられるかをお伺いして、関連質問とかわらしていただきます。
  284. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この事件をいま正森君の言うように私は受け取らないと思いますね。事の善悪に対する判断、こういうものをそういう人たちが持ってこの事件というものに対してこれを受けとめておる。それが、こういうまねをしなければ人間はやっていけないのだというふうに私はこの教訓を受け取るようなことはない。大いに社会に対する批判の目を高めるに違いないというふうに考えております。
  285. 白浜仁吉

    白浜委員長 中島武敏君より関連質疑の申し出があります。正森君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中島武敏君。
  286. 中島武敏

    中島委員 私は、最初にいまのロッキード事件の問題について総理にお尋ねしたいと思います。ロッキード事件真相解明、政治的な道義的な責任の追及、そうして再発防止、このためには、金をもらった政府高官、政治家の氏名を明らかにするというだけではなくて、やはり全日空に対するトライスターの売り込みになぜ政府高官への賄賂が必要であるのか、政府高官は何をしたのか、どんな職務権限に基づいて何をやったのか、それによって行政はどういうふうにゆがめられたのか、こういう問題を明らかにしなければなりません。これは刑事責任の追及とは異なるものでありまして、国会が丸紅やあるいは全日空の関係者や灰色の政府高官、政治家や国会議員を含む証人としてこれらを喚問して尋問することがどうしても必要であることは言うまでもありません。  そこで総理にお尋ねしたいのですが、総理は、七月七日の本院のロッキード特別委員会におきまして、捜査が重要な段階にあるからということで、国会に対して政府として証人喚問の延期を要請されました。現在、総理は、証人喚問は委員会で決めていただきたいと、みずからの責任にはほおかぶりをされておられますけれども、政府として国会に延期要請をした以上、政府として国会に対してその締めくくりをする責任があると思います。国会に対する政府の証人喚問の延期要請は現在もまだ続いているのかどうか。それとも、政府としては現在は延期を要請するという必要はなくなったのか。この問題について総理の見解を承りたい。
  287. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 あの当時は、やはり当分の間と――御承知のように、いよいよ丸紅、全日空のルート捜査が非常に最終段階にあったわけでございますから、そういうことを配慮して、自民党の場合も当分の間とついておったように思いますが、今日ではそういう事情とは変化があることは事実でございます。
  288. 中島武敏

    中島委員 つまり、現在はその必要はなくなったということですか。
  289. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その当時に比べれば、やはり非常に事件があのときは最終段階でございましたから、証人喚問というものは捜査の遂行上しばらく延期をしてもらいたいと言ったわけですが、そのときの事情と今日とでは変化があることは事実でございます。
  290. 中島武敏

    中島委員 近く中間報告を発表するということを言っておられるのですから、丸紅、全日空の関係に関しては、これについてはもうその延期を国会に対して要請する時期ではないと、こういうふうにいまの総理の発言を受け取ってよろしゅうございますね。
  291. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 捜査上、丸紅、全日空についてはそういう当分の間延期をしてほしいという要請は変化が生じました。証人をだれを呼ぶかという問題は委員会において御決定を願いたいですが、あの当時と今日は丸紅あるいは全日空のルートに対しては捜査の段階が非常に違った変化が起こっておることは事実でございます。
  292. 中島武敏

    中島委員 じゃ、重ねてお伺いいたしますが、状況が変われば、山を越せば、証人喚問をやってしかるべきであるという見解を当時総理は述べておられました。現在もやはりそういうふうに証人喚問については当然行うべきものであるというように考えておられるかどうか、この点を重ねてお伺いしたいと思います。
  293. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 証人喚問については何人も例外はないのが原則でございますから。しかし、だれを一体証人として呼ぶか、そういう必要性というようなものに対しても十分な御検討は国会においてひとつ決定してもらいたいということを申しておるわけでございます。
  294. 中島武敏

    中島委員 総理のいまの見解は、総理自身としては、だれを呼ぶかということについてはこれは当然委員会で検討するけれども、証人喚問はやってしかるべきである、そういう見解である、こういうように受け取ってよろしいですね。
  295. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 必要があれば、証人の喚問は何人にも例外がないと考えておるということです。
  296. 中島武敏

    中島委員 では、次の問題について伺いますが、児玉・小佐野ルートの解明の問題について伺いたいと思います。  児玉・小佐野ルートは、十七億ないし十八億、全体の賄賂総額の六割、七割という非常に大きな部分を占めておりますが、これの解明がおくれていることは、すでに言われているとおりであります。小佐野賢治に関しては、すでに偽証の疑いであるとか、あるいは証人喚問を拒否するということについて不出頭罪の疑いもかけられております。  そこで、児玉譽士夫に関してでありますけれども、これの解明がおくれている主な理由は、これは児玉の病状が思わしくないということであるというふうに法務大臣はいままで言っておられる。現在、児玉は自宅で療養しているわけです。そこでお尋ねしたいのですけれども、やはり医師や看護の体制がある病監に収容するという方法もありますし、場合によっては、近代的な医療の体制を整えている大学病院、ここに収容して取り調べるということもできると思うのです。その点でお尋ねしたいのは、病監に収容するとか、あるいは場合によっては近代的な大学病院にも収容するという意思をお持ちかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  297. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 どうも、喜多村主治医の診断ですが、これを間違っているとか間違ってないとかいう批判ではないのです。ないのですが、ただそれだけで、病状が悪いから困難だ困難だと検察庁が言っているというと、やはり国民的な批判というものはありますから、やはりお説のようなことも考えたり、また検察庁独自の選んだ医者に診てもらうとか、そういうことも行われなければ、どうも国民一般が承知しないようなこともあるというようなことを、いま検察当局では話し合っているところであります。
  298. 中島武敏

    中島委員 いまお話のあった、検察庁として医師を派遣して病状を調べるということは、すでにおやりになりましたか。
  299. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 まだやっておりませんのです。
  300. 中島武敏

    中島委員 これはずいぶん検察の怠慢じゃないでしょうか。これだけ長い期間、この事件が発覚してからもう八カ月になるわけですけれども、一体児玉はどうしているのだ、自分の家に寝ているじゃないかということを、大変怒りに燃えて全国民が見ている。それに対して、いまの法務大臣のお話では、医師を派遣して調べることも必要である、しかしまだやっていない。ところが、閉会中の審査において法務大臣が言われるには、逃亡のおそれはないけれども、罪証隠滅のおそれはあるということを答弁されていらっしゃる。そうすると、これは、病状についてもちゃんと調べるということをやらないままにほうっておくということになりますと、児玉が罪証隠滅をやることをも検察として手助けすることになりはしないかということにも疑いが持たれるのですけれども、いかがでございますか。
  301. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そういう疑いを持たれては検察としてもはなはだ悪い立場になるだろうと私も心配しまして、そしていろいろ聞いてみたんです。刑事局長を通じて聞いてみましたところ、あの喜多村医師という人は非常な権威者で……(「あれは権威者じゃない」と呼ぶ者あり)そう言うんです。そして、衆議院から予算委員会で派遣した医師がありましたね、この人たちも、なかなか喜多村さんの、その医師の説明を聞いて皆納得するそうですものなあ、これらの三人の別の医師も。そういうことで、しかも非常な研究家で、取り調べに参りますと、ときどき上がってきて病状は診ますけれども、下にいて論文を見たり、しょっちゅう勉強をして、なかなかの人だと、こういうことであったんです、いままでね。そういうことはそれでいいと、それはそれでいいが、しかしわれわれの立場からすると、やっぱり国民一般からすると、あの一人の主治医だけのことをまるのみにしてやっているというようなあれはやっぱり誤解を生ずるおそれがあるから、検察庁としてもやったらどうかと、こういうことをいま話して、やると言っていますから、いままでやらなかったことについて怠慢のそしりがあると言えば、その御批判は甘んじて私も受けますが、一生懸命にやっているんです、それは。ただ、こういうふうにおくれたのは、何といっても病状が重いということと、もう一つは、あの震源地が向こうにあって、これとの、これがなかなか抵抗が強くて、とうとうアメリカもイミュニティーを適用するようなことにもやっとなって、証言もようやく少しは得られるかなあと、こういうことになったものですから、こういうふうに十月にもずれてしまったということについては、努力はしたのですけれども、そういう間の事情については少し御同情もいただきたいと、こういうことを申し上げたい、泣き言を言うんじゃないですけれどもね。そんなものはどうしたって突破して、どうしても真相を究明したい、こういうふうには思っていますけれども、そういう事情も御了解を願いたいとお願いする次第です。
  302. 中島武敏

    中島委員 いまのお話で明らかになっておりますように、やはり自宅は病院じゃないんですから、ですから、自宅の療養が一番いい療養方法だということはとうてい考えられません。そういう点からいえば、いま法務大臣が言われたように、検察として医師を派遣をして病状を調べる、また、入院をさせる、あるいは病監に収容する、しかもそのための逮捕状も請求するというようにして、全力を挙げてやっていることがわかるようにならなければ国民の怒りは消えないと思いますね。そういう点でこの点を重ねて要求をするわけであります。何か答弁ありますか。
  303. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 お説のようなことは十分説得力はありますな。国民の疑惑を放置するわけにいかぬという点については、私もそういう点については同感。ただ、この前に最後に行ってきた検察官が調べたときの様子、これを刑事局長を通じて聞きますと、非常に重いと言うのですね。もし病院へ移す途中で死んだりなにしたら、やっぱり検察がまたこれ非難を受けるというようなことがあったりして、いま思案投げ首、とつおいつ、非常に苦悩しておるということを御了察願いたいと思います。
  304. 中島武敏

    中島委員 検察側が余り勝手な判断をされるのではなくて、やはり体のことは医者の判断を待つというようなことが必要であると思うのです。このことを重ねて申し上げておきます。  次に、丸紅、全日空ルートについてお尋ねしたいと思いますが、ほぼ捜査は終了しているというように伺っております。そこで、この丸紅、全日空のルートに関係した政府高官、政治家の政治的、道義的責任の追及、それから灰色高官、政治家の問題についてお尋ねしたいと思うのです。ことに全日空のルートにつきましては、ロッキード社のトライスターの売り込みと全日空の権益拡大工作が非常に複雑に絡み合って進んで、そして航空行政がゆがめられてきたということは、すでに橋本元運輸大臣、佐藤孝行元運輸政務次官の逮捕及び起訴によって大分明らかになってきたと思います。若狭全日空社長が、賄賂工作を含めて非常に強引な手段で航空行政の変更を迫るということをやってきたことも明らかになっております。すでに橋本登美三郎は、請託を受けて、二月にエアバスの導入延期を国会における答弁で実行いたしております。また佐藤孝行は、五月に試案を作成することによってこれを実行いたしております。この全日空の請託の主な内容、これは何かと言えば、やはりエアバスの四十九年度導入と、将来近距離国際定期便へ進出することを含みとして、当面近距離国際不定期便の充実を行うということが柱であったことは、これもまたはっきりしている問題であります。昭和四十七年七月一日、運輸大臣通達によりまして、近距離国際チャーター便を制約なしに拡大できる地歩を築いた全日空は、国際線に不定期便から定期便に対する拡大を目指して動いたことも、これもまた周知の事実であります。  ところが、この時期に日中路線の協定交渉の開始がある。そして、この時期に合わせたかのように、四十八年一月には、わが党の調査によりますと、「わが国の航空事業運営体制の今後のあり方について」という。パンフレット――このパンフレットです。つまり社報ですけれども、この中では国際線進出問題が非常に強調されている。党の調査によりますと、これを藤原亨一経営管理室長らが、いわゆる運輸族議員や運輸委員の間に配って歩いております。このことについて御承知になっておられますか。
  305. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私、よく知りませんでしたけれども、刑事局長がそのとおりだと言っておりますから、そのとおりでございます。
  306. 中島武敏

    中島委員 法務大臣並びに刑事局長がお認めになったように、これは事実であります。当然これは捜査されているとは思いますが、ここで問題なのは、全日空の日中路線進出を中心として国際線に進出をするという工作が四十七年の日中国交回復前後からなされておりまして、四十九年の春にかけて非常に執拗に行われておる。これもまた周知の事実です。問題は、なぜ全日空はこういうことをやったのかという問題であります。単にそれは全日空の権益拡大、こういうだけのことではなくて、ロッキード社からのトライスターの売り込み、この問題が非常に大きな要因になっていたということが考えられるわけであります。  そこで、運輸大臣にお尋ねしたいのです。いま全日空のトライスターの契約機数は何機で、そして、オプションしている数は何機かということについてお尋ねしたいと思います。
  307. 石田博英

    石田国務大臣 これは航空局長から。数字のことでございますので……。
  308. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 お答え申し上げます。  全日空がオプションいたしました全部の数は二十一機でございます。そして、現に使っております機材は十六機でございます。その差の五機でありますけれども、二機はすでに全日空が取得いたしまして、いま需要が少し低くなっておるものですから、アメリカの工場に預けてございます。それから三機は、まだ輸入承認が出ておりませんので、オプションのままでございます。(中島委員「八機のオプションは」と呼ぶ)いま使っている十六機、それからアメリカに預けてある二機、それからまだ輸入承認がなくてオプションのままになっている三機、これで合計二十一機でございます。
  309. 中島武敏

    中島委員 契約機数は二十一機です。そこで、チャーチ委員会においてコーチャンの証言にあります追加八機というのがあるのです。これは二十一機にプラス八機、こういう意味ではないでしょうか。運輸省の方ではすでにつかんでおられると思いますが、念のためお尋ねしておきます。
  310. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 お答え申し上げますが、先ほどの答弁をちょっと訂正させていただきます。  最後の三機でございますが、これはオプションだけじゃなくてすでに契約をいたしております。ただ輸入承認が出ておりませんので、入っておりません。  いまのお尋ねでございますけれども、コーチャン証言にあると言われておりますところの八機の追加の問題でございますが、これは全日空としてはそういうプロポーザルを受けたことはある、しかしながらそれについては何らアクションをとってないというふうに私どもに報告が来ておるわけでございます。したがいまして、二十九機というのは私どもは承知してない数字でございます。
  311. 中島武敏

    中島委員 いまの航空局長答弁ですが、これもわが党の調査によりますと、全日空の方では四十八年の暮れから四十九年の初めごろ、このころに八機のオプションをしている。このことは全日空の内部においては公然たることだというように言われているのであります。この点、航空局長答弁と私どもの調査は食い違っております。これは全日空の内部では非常に公然とした問題であるというように言われております。  ところで、四十九年の六月から八月にかけてロッキード社から全日空に対して一億六千万円の裏金が入っております。このうち三千万円については、すでにコーチャンがチャーチ委員会において追加八機の購入をまとめるために全日空に支払ったということを証言しておるのであります。そこでお尋ねしたいのですが、この裏金の一億六千万円、これについてはすでに捜査は終了していると思いますが、念のためお尋ねしたいと思いますのと、それからこれは一体何のためにこの裏金をつくって、どう使ったのか、その目的、もくろみは一体何だったのかということについてお尋ねしたいと思います。
  312. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私も多少聞いていますけれども、報告を受けていますけれども、正確な答えは、やはり直接聞いておる刑事局長答弁させたいと思います。
  313. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘の一億六千万円が裏金としてロッキード社から全日空に入ったということは事実でございますが、その使途につきましては、まだ捜査が終了しておりませんので、いま捜査中でございますので、いまの段階で申し上げるわけにはまいりません。
  314. 中島武敏

    中島委員 いまの段階でもまだ刑事局長捜査進行中ということでありますが、しかしこれは、もっとはっきりさせれば、追加八機のオプションをやって国際線進出ということは全日空にとってはもう至上命令であった、これは容易に想像される問題であります。この一億六千万円は国際線進出を進めるための賄賂資金だったということは、これはもう非常にはっきりしている問題じゃないか。まさにロッキード社とそれから全日空のトライスター売り込み、権益拡大、これは非常に利害相一致している問題である、そしてそのことによって航空行政の変更が行われるという、こういうことであったと見なければならないと思うのです。その点で一億六千万円は徹底的に究明されなければならない、これは法務大臣当然だと思いますけれども、いかがです。
  315. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 これは当然なことでありますね。そしてそう遠くない、もうやがて終了しますから、なるべく早くその段階で中間報告をすると申しているのは、そのことでございます。
  316. 中島武敏

    中島委員 重ねてお伺いします、法務大臣。  この時期に、全日空の日中路線を獲得するための発言、これが関係委員会においていろいろとやられております。そしてまた、全日空から政府高官、国会議員に対して金がこのときに渡されていたとするならば、これはたとえ少額であっても賄賂ではないかという問題が一つ。それからまた報道で言われておりますように、仮にこれが盆、暮れのつけ届けであったとか、あるいはまた政治家本人が政治資金として受け取ったと主張していたとしても、この時期、つまり全日空とロッキード社が結託をして一貫して権益拡大ということで工作をしている期間に渡された金というのは、これは賄賂とみなければならないのじゃないでしょうか、どうでしょう。
  317. 安原美穂

    ○安原政府委員 一般論でございますが、いま御指摘のような事柄で金銭が渡され、それが国会議員の職務と対価関係があれば、たとえ政治献金という名前であっても賄賂性を否定するわけにはいかないと思いまするが、具体的な問題でございますので、これ以上は答弁を差し控えたいと思います。
  318. 中島武敏

    中島委員 いまの刑事局長答弁で、そのとおりだったと思うのですが、ですから、この問題を徹底的にはっきりさせるということが必要であります。そしてこの中にいわゆる灰色というようなものが含まれているとしましても、これら全部、金を受け取った者ははっきりさせる、明らかにするということがなければ話にならないと思うのです。  そこで、総理に聞きたいと思う。総理はこれらの問題についていままでいろんな発言をされてきておりますが、やはりロッキード社から受け取った金、それが全日空の権益拡大工作と利害が一致しているというような場合に、そういうお金について受け取った者、これを全部公表すべきであるという見解かどうか、総理の見解を伺いたいと思います。
  319. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 刑事上の責任捜査当局がやるわけですね。刑事上の責任がないという場合においてもやはり公人として政治的、道義的責任がありというようなことは、いま言われたようないわゆる灰色という中に入るわけでしょうから、私が言っておるのは政府自身がそれを仕分けをすることは適当でない。国会調査という国政調査の場において、みんな各党においていわゆる灰色と言われておりますが、その範囲というものが各党においていろいろと判断が違うわけですから、国会の方でひとつ、いわゆる灰色というものはこういう一つの範囲のものを言うのだという、国会の意思を決めていただくならば、それに従って資料を国会に提出をいたします、こういうことを申しておるのです。
  320. 中島武敏

    中島委員 もともとこの問題については、総理答弁は後退してきている。これはもうかねてから私どもは指摘をしているところであります。もともとの発想は、院の決議によって氏名を含めて一切の資料は日本国会へということが決められたのであり、かつまた三木総理自身がフォード大統領に対する親書の中においてもこの趣旨のことを述べておられる。いろいろ紆余曲折を経て国会任せというところにいま返ってきている。それについては国会に任せるというだけではなくて、自民党総裁、総理としての見解を持たなければならないと思いますが、このことについてはここで論争をすることはやめますけれども、しかし、そういう点で後退してきているということを指摘をさせていただきます。  同時に、私はもう一つ重ねて聞きたいのですが、丸紅の政治献金、ことしの三、四月という時期はどういう時期であったか。これは申すまでもありませんけれども、ロッキード疑獄事件で中心的な犯罪行為を行った丸紅、これに対して捜査当局捜査をする、国会は証人喚問を行う、非常に丸紅に対する疑惑が深まっているという時期であります。ところが、この時期に自民党政治資金収集団体である国民政治協会から四、五千万円政治献金をお願いしたいということを申し入れている。そして丸紅もこれを受け入れたのであります。申し入れる方も申し入れる方なら、受け入れる方も受け入れる方だと思うのです。この事実について総理は知っておられますか。
  321. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は存じません。それは聞いていないわけでございまして、いまここでその御指摘になった事実に対して私はお答えするだけの知識はないわけであります。
  322. 中島武敏

    中島委員 この問題は、九月九日、ロッキード問題調査特別委員会におきましてわが党の諌山議員が問題にし、そしてそこに出席をされておった河本通産大臣が総理に伝えておくということを答弁されているのであります。まだ河本さんは総理、総裁である三木さんにこの話をしておられなかったのでしょうか。総理はいま知らないということを言っておられる。これは河本さん、私は伝えているものだとばかり思っておった。
  323. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まことに申しわけありません。ここで改めて伝えます。
  324. 中島武敏

    中島委員 これは丸紅からは事実としては二千万円が国民政治協会にすでに入れられております。これは丸紅の小島常務がすでにわが党の調査に対して答えているところであります。  さて総理総理にお伺いしたいのですが、こういう丸紅から自民党がお金を受け取って、それで平然としておれるどいうわけのものじゃないとこれは思うのです。これは、私は率直に言わせていただきますが、即刻返すべきじゃないかと思うのです。総裁としての見解を承りたいと思います。
  325. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま国民協会というお話でございましたが、国民協会はいろいろな政治資金を集めておる団体でございますが、よく事情を、どういう事情でそういうことになったのか調べてみることにいたします。
  326. 中島武敏

    中島委員 これでは、総理真相究明のために政治生命をかけるというふうに言ってきた、政治的、道義的責任の追及は必要だと何度も繰り返しておられる、その陰であなたが総裁をしている自民党が、丸紅に銭を下さいと言って申し入れていき、政治協会を通じてもらいにいき、そしてそれを受け取ってきておる、こういう姿勢では本当に政治的な、道義的な責任究明というのはできないのじゃないかと思う。  その点では私は重ねて総理に言いますが、こういうことをすっぱりきれいにする、つまりお金は受け取らない、もし受け取っておるということがわかったら返す、こういかなくちゃ政治的、道義的責任究明とか真相究明などと言っても、一体それは本気で言っておることなのかと思うのであります。総理の見解をもう一度承りたい。
  327. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、自民党から丸紅に献金を依頼しに行ったというような事実はないと思いますよ。だから、私がよく事情を調べてみるというのは、初めて私もこの席で聞くことですから、よく調べてみて、これはやはり国民に疑惑のないようなことであるべきことはもう当然でございます。そのことによってロッキード問題に対する真相の究明が、これは根底から信用できぬとかできるとかいう問題とは、これは別個の問題であります。しかし、そういう誤解を与えないような処置を公党としてとることは必要であることは認めます。
  328. 中島武敏

    中島委員 次に、災害の問題に関してお尋ねしたいと思います。  台風十七号に伴う今回の被害は伊勢湾台風に次ぐ非常に甚大な被害をもたらしております。百数十名の犠牲者に対しまして哀悼の意を表し、四十万の被災者にお見舞いを申し上げて、質問に入りたいと思います。  今回の災害は千ミリを超える記録的な雨量によるものではありますけれども、異常な気象による天災であった、こう言って済まされる問題では決してありません。日本列島改造的な大企業本位の国土政策がやられる、そして開発が行われ、災害にもろい国土がつくられてきた。一方、治山治水対策、これはどうであったかと言えば、大河川でも整備率は五〇%程度です。中小河川に至りましては十三%程度という低い整備率であります。政府が責任を負う一級河川につきましても、長良川だけでなくていつ決壊するかわからない、こういう状態であります。こういう危険な状態になっている日本列島の状態から台風によっていつやられるかわからない、こういう状態を改善していかなければならないことはもう言うまでもありません。  まず、総理に伺いたいのですが、明治以来日本の政府は一体どれだけのお金を治山治水につぎ込んできたか、御存じでございましょうか。
  329. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 明治以来の治山治水費をいまここで言えということでございますので、これは事務当局からお答えするということでお許し願いたい。
  330. 栂野康行

    ○栂野政府委員 お答えいたします。  手元に資料がありませんけれども、記憶でいきますと、現在の治水施設の資産が約二十兆だと記憶しております。
  331. 中島武敏

    中島委員 いま新しい建設白書によりますと、五十年価格に直して十二兆円、こういうふうに書いてあります。ほんのわずかなものなんです。明治以来百年で十二兆円。ところが道路投資はどうか。道路投資は四十八年から五十二年、この五年間で十九兆円。これはいま内閣がとっておられる姿勢をいかにも端的に表現していると私は思うのです。これでは災害は防げませんよ。  そこで私は、この災害問題の責任を負っておられる国土庁長官にお尋ねしたいのですが、やはり今度の災害の一つの大きな特徴は、どこでもそうですが、また災害を受けねばならなかった、こういふうに言われているわけであります。つまり、一回災害を受けたときに原形復旧するのではなくて、もっと大丈夫なように工事を広げてほしいということをずいぶんと被災者の人たちは要求されているのです。ところが、原形復旧が原則である、こういうふうにしてやってきているものですから、一体国は何やつているんだ、こう言って怒っておられるわけであります。私はそういう点から言って、原形復旧を原則とするんじゃなくて、やはり改良復旧を行うということに踏み切らなければいけないんじゃないかという点が第一点であります。  それから第二の問題は、やはり災害救助法を発動するときにも非常に条件が厳しいんですね。たとえば私の住んでいる板橋の場合には、大都市のど真ん中、東京のど真ん中ですけれども、それでも千五百戸の床上浸水、これで災害救助法が適用された。お隣の練馬区はどうかと言えば、結構あったのですけれども、それでも適用されない。練馬の人は怒っている。こういう状態なんです。ですから、こういう条件を緩和することが必要ではないか。  それからさらに言わしていただけば、炊き出しが一日に四百円です。一日四百円の炊き出しで何ができるというのでしょうね、この物価が上がっているという時期に。この問題もある。あるいはまた、この住宅の応急修理費にしましても、一世帯十四万八百円以内ということになっているわけです。家が半壊をして、それで出されるお金が十四万八百円、これで一体どういう修理ができるというのでしょう。私はこういうことを考えますと、こういういろいろな救助の改善ということをやらなければなりませんし、またそのための国庫補助率の引き上げということも当然のこととして、地方自治体なんかも困っておるわけですから、これをやる必要があると思うのです。この点について長官の責任ある答弁をお願いしたいと思います。
  332. 天野光晴

    天野(光)国務大臣 具体的な問題ですから、本来なら担当大臣が説明すべきですが、この災害を締めくくって扱っておりますから、以上私の方から中島君の御意見に対する答弁をいたします。  災害のあるたびに原形復旧ではどうにもならないのじゃないかという声が大きく出まして、これはずいぶん大きく改良復旧にかわってきております。これは完全改良復旧をするようにしなければいけないと思います。そういう観点で、今度の災害に照らして総理大臣は、新五カ年計画、来年度から発足するのですが、来国会から審議してもらいますが、これに重点を置きたいと言っておられますから、私たち大きく期待をいたしております。そういう点で、災害の根本的な対策として幾つかの問題がございますが、特にいま中島君から質問のあったのは、原形復旧ではなく改良復旧、これは当然のことでございます。いまどき木橋が落ちて木橋をかけるなんというあほはありませんから、そういう点で、これは強力にやらしめるようにいたします。  それからもう一つの問題、災害救助法の問題、これも厚生大臣所管でございます。ただいまおっしゃいましたように、炊き出し一日四百円じゃ何が食えるかという問題でございます。これは今年度の場合、今度の災害では特に扱いをしたようでございまして、四百円ではあるが、その他の措置をして大体賄えるように扱ったと事務当局から聞いておりますが、災害救助法それ自体が大幅に改正をしなければならない点が数多くございます。私も長年災害に関係をしてきた者の一人といたしまして、この問題につきましては十二分に検討をいたしたいと思います。  きょうの答弁は、両大臣から任されておりますから、責任を負ってやるようにいたします。
  333. 中島武敏

    中島委員 私は、時間が許せば実はこの後中小企業の諸問題について通産大臣にお伺いしたいと思っておりましたし、それからまた労働大臣には高齢者の雇用率制度の問題についてもお伺いをいたしたいと思っておりました。さらにまた、スペインかぜの予防対策の問題について厚生大臣に伺いたいと思っておりました。また、東北、北海道、さらに千葉にも及んでおります冷害の問題、非常に深刻な冷害ですが、この問題についてもお伺いしたいと思っておりました。ところが、残念ながら、御答弁も御用意いただいたと思いますが、しかし時間がありませんので、ここで私の関連質問は終わりにさせていただきます。――まだ時間が幾らかあるようでございますから、それでは続けて質問をさせていただきます。  それでは順にお尋ねをしますが、いま非常に不況やインフレが激しいということの中で労働者はもちろんですが、農民から中小企業家から大変な苦しみなわけであります。そういう点では、これについての緊急対策をいろいろと必要としているというのが現状だと思うのですね。そういう点で、最初に中小企業の問題について幾つかお尋ねしたいと思います。  非常に不況が続く、一千件以上の倒産がこれで十二カ月も続いている、こういう状況です。そういう中で、百貨店とか大スーパーが非常に進出をしてくる。このために中小零細業者はもちろん消費者の利益も脅かされている。これを野放しにしくおりますのは大規模小売店舗法でありますが、これが制定されるときには私たち共産党が反対しただけであります。それで、中小零細の商工業者をこのスーパーの進出から防衛するために、通産大臣は次のようなことをおやりになる気はないか、伺いたいと思います。  まず一つは、権限を知事に与える、そして許可制にして関係地域の業者の意見を十分に聞く、また、基準面積ですね、これも大都市では三千平米、それ以外では千五百平米ということになっておりますが、これも一千平米というように基準を下げて厳しくするということが必要だと思うのです。そういう気がないかどうかという問題。  それからさらにもう一つこの問題に関して言わせていただきますと、現行法で言いますと、大きなスーパーが進出を予定されるという場合には商調協でいろいろ協議がされることになっています。ところが、たとえば尼崎市の外れで伊丹市との隣接地に進出する――これは西武百貨店が進出しようとしているのですけれども、ところが肝心の伊丹市の業者の意見が聞かれない、こういう仕掛けになっているのですね。こういう問題も、やはり広域商調協というふうにして隣接の都市の業者の意見も聞ける、こういうふうに改善をする必要はないだろうかということであります。  この点について、通産大臣の見解を承りたいと思います。
  334. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 第一点は、知事に権限を委譲するという問題でありますが、もともとこの法律は全国的な規模におきまして流通業の近代化を図っていく、こういうたてまえでできた法律でございますので、これを地方に委譲するということは適当ではない、私はこう思います。ただしかし、地方の実情は十分聞かなければならぬことは当然でありますので、各地の商調協におきましては県庁のそれぞれの担当者あるいはまた市の係官、こういう方々が商調協に入っておりまして、それぞれの地域の立場からの意見を十分申し述べることになっておりますので、その点で私は十分ではないか、こういうふうに思います。  それから広域商調協のお話がございますが、この点につきましては、周辺の市町村の小売業に対して影響がある場合にはその周辺の商工会議所を通じて意見を聞くことになっておりまして、実質は、いま御指摘のように単にその市だけではなく、周辺の意見を十分聴取する、こういうことになっておりまして、現に行われておると思います。  それから届け出の規模を小さくするという問題でございますが、これは大都市では三千平米、それ以下の都市では千五百平米以下、こういうことになっておりますが、現在は私はそれで十分だと思うのです。それ以下のものについてはほかの法律等がございまして、必要とあらばそのほかの法律で調整できる、こういうことになっております。
  335. 中島武敏

    中島委員 実際には法の網をくぐってといいましょうか、千五百平米あるいは三千平米、それ以下のところでどんどんやっているわけなんですね。そういう点から言って、いま通産大臣は、それ以下に基準を下げる必要はないということを言われましたが、これは私は再検討してもらわなければいかぬ。実際には法で決めている基準よりも以下のものがどんどん進出しているのです。これによっていろいろな被害が生まれているのですから、この点は重ねて通産大臣に検討を要請したいと思います。  それから、あわせてもう一つ通産大臣に伺いたいのは、先ほど申しましたように非常に不況が長く続いているという中で、やはり政府系の金融機関からお金を借りているけれども、これの返済を猶予してもらえないかという非常に切実な要望が実にたくさんたくさん私どもは聞くわけであります。この点は、現在のこういう情勢にかんがみて、やはり緊急対策として返済猶予ということをやるということを政府の姿勢としてはっきり通達を出すということが私は必要じゃないかというように思うのです。非常に強い要求でありますから、この返済猶予の通達を出していただきたい、はっきり明言していただきたいと思うのです。  それから、中小企業向けの三金融機関だけではありませんで、中小企業振興事業団であるとか、あるいは環境衛生金融公庫など、ほかの政府系の金融機関を通じてのお金についても同様な措置をやはりとる必要があるのじゃないかと思いますね。とにかくいまは十二カ月も一千件以上の倒産がどんどん続いているという中で四苦八苦しているのですから、それに対していま申し上げたような措置をとる気がないかどうか伺いたいと思います。
  336. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 第一点の小規模のスーパーの問題でありますが、これは必要とあらば小売商業特別措置法というふうな法律がございまして、それで調整できることになっておりますけれども、しかし、なお御指摘の点につきましては今後十分検討さしていただきます。  それから中小企業に対する貸付金を返済猶予するという問題につきましては、これはもうすでに必要な分野におきましては実行しております。相当な件数になっておりますし、また相当な金額にもなっております。ただ、一律に通達を出しまして、返済可能なものに対しても猶予するというのは、これは行き過ぎではないかと思いますので、全部の中小企業に対して一律返済猶予、延期、こういうことはいたしませんが、実情に応じまして十分配慮するつもりでございます。  それから同時に、今回の災害で中小企業関係もずいぶん被害を受けておりますので、これに対しましては貸付限度の拡大であるとか、あるいは条件の緩和、それからすでに期限の来つつあるものの支払い猶予、そういうことに対しましては十分機動的に処置してまいりたいと存じます。
  337. 中島武敏

    中島委員 労働大臣に伺います。  明日、十月一日ですね、明日から高齢者雇用率制度を発足させるということになっていると思います。ここで企業から雇用率達成計画書を提出させるということをされておられるようですが、この高齢者の雇用問題、これは非常に深刻なまた大事な問題でありまして、六%以上の雇用ということがうたわれる。ところが、これは私が聞いている点で言いますと、努力義務になっているわけです。その点では努力義務であるということをいいことにして、大企業がこの問題を非常に軽視しようとしている。私はそこでこういう問題を解決するためには、単に計画書を提出させる、努力義務だというだけにとどめないで、六%未満という企業については六カ月に一回その氏名を公表するというようにして、そしてまた余り熱心じゃないような企業に対してはもう中高校卒業者の就職あっせんなどもやめるというような措置をとるというようなふうにして、この高年齢者の雇用問題というものにもっと具体性を持たせていく必要があるのではないかというように私は考えるわけでありますが、いかがなものかということであります。それからもう一つ、重ねてお尋ねしますが、五百人以上の企業の中では五十五歳定年制をしている割合が三八%ぐらいというふうであります。そこで、まだまだ五十五歳と申しますのは、これはもうわが国の場合には働き盛りであります。この点、労働省としても、もっと定年の延長をするということを行政指導を行っていくべきではないかというふうに考えるわけですが、この点もあわせてお答えいただきたいと思います。
  338. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 お答えいたします。  御指摘のように、いま就職の非常に不利な立場にある方々は、身体障害者とそれから高年齢層の方々でございます。労働省といたしましては、こうした方々の就職あるいは定年の延、長とかいろいろと考えておりますが、御承知のように、いま御指摘になったように、身体障害者雇用促進及び中高年齢者の雇用の促進に関する法律が先国会通ったわけでございます。そこで、ことし十月一日からこれが施行されることになるわけでございまするが、特に、いま、五十五歳以上に定年を延長せよ、まあ努力目標で、少しまだパンチがきかぬじゃないかという御指摘でございまするが、いまのところは行政指導で五十五歳を六十歳まで延長するように努力をしていきたい、こういうことでいませっかく努力をいたしておるわけでございます。あるいは、いま御指摘のあったように、こういうのは半年ごとに公表したらどうだ、こういうこともありますが、いまのところではまだ公表という段階には入っておりませんが、しかし、余り手ぬるいといろいろ言を左右にして採用しないようなことがあってはいけないので、極力努力をして御趣旨に沿うようにいたしたいと思いますが、それでもいかないときには、また一遍そこで考えてみたい、かように考えております。
  339. 中島武敏

    中島委員 それじゃ厚生大臣と大蔵大臣に伺いたいのですけれども、ことしの二月にアメリカでスペインかぜのビールスが六十年ぶりに見つかったと言われております。それで、しかも世界的に大流行するのではないか、そういう心配が非常に大きいわけであります。WHOの勧告によりまして、日本でも伝染病予防調査会のインフルエンザ小委員会、ここで最小限の措置として百万人分のワクチンをつくらなければならないということが決められております。本当に流行するかどうかという点については、はっきりはわからないわけでありますけれども、しかし、アメリカの方ではすでに全国民を対象にしてワクチンの接種の準備がされていると私どもは聞いております。そういう点では、日本ではわずか百万人分のワクチン、これの準備ということも、財源がないからということで、何か決まらないというふうに聞いておるわけでありますが、しかし、いまから準備しても間に合うかどうかというような非常に大事な時期でもあります。そういう時期でありますから、厚生大臣としてはこの問題についてどういうふうにされるおつもりであるか、まずこれを伺いたい。
  340. 早川崇

    ○早川国務大臣 御指摘のように、アメリカのニュージャージー州フォート・ディックスでまたインフルエンザの流行がありまして、その後流行はいたしておりませんが、スペインかぜのインフルエンザは非常に悪質でございますので、万一の流行に備える意味から、今春すでに米国より当該ウイルス菌を取り寄せ、国立予防衛生研究所において培養、増殖しておりまして、すでに製造用菌株の準備を完了し、いつでも製造に着手できる体制になっております。さらに、国内のインフルエンザ関係の委員会の勧告もありますので、この流行に備えまして、すでに製造を開始することにいたしております。(中島委員「開始されますか」と呼ぶ)開始いたします。そして流行した場合には、有料で配付するわけですから、いま問題は、流行しなかった場合に百万人分であれば三億円赤字になるわけです。それを大蔵省でどうするかという問題が残っておりますが、国民衛生の責任を預かっておる厚生大臣といたしましては、製造に着手するつもりでいま進めておるわけでございます。
  341. 中島武敏

    中島委員 いま厚生大臣のお話では、製造を開始するということになっておるそうであります。しかし不幸にしてこれが流行するということになって、百万人分じゃとても足りないというような場合には、ぜひひとつ緊急な措置をお願いしたい。大蔵省の方もその点は財源云々なんて渋ったことを言っておらないで、やるというふうに、ぜひしてもらいたいと思います。大蔵大臣の答弁をお聞きしておきましょう。
  342. 大平正芳

    大平国務大臣 スペインかぜのワクチンの問題につきましては、厚生省といま協議中でございまして、可能な限り御協力するように配慮します。
  343. 中島武敏

    中島委員 それでは最後に冷害問題について、東北、北海道それに関東では千葉を加えて非常に大きな冷害に見舞われているわけでありますが、まだ冷害の被害の額がはっきりしないからということで法の発動をやらない、大変のんびり構えておられるのです。これは非常に深刻な問題でありますから、天災融資法、それから激甚災害法、これをすぐに発動するというようにやるべきではないかと思います。  それから、大量に等外米だとか規格外米が出るおそれが非常に大きいわけでありますが、これについても全量を買い上げるべきではないかと思うのです。そして買い上げの基準を急いで農民に示す必要があるのではないか。いまもう農民はいらいらしておりますよ。その点で早くこの基準を農民に明示する必要があると思います。  さらに、今度の冷害が非常にひどいために、この点は自治体の方では援農土木事業、これを幾つもの自治体がやっておられますが、国が独自にこれを計画する必要があるのではないか。すでに東北やあるいは北海道、新潟、こういうところの県知事からも強い要請が出ているところであります。この点について政府の方としてどういうかっこうで、どういう規模で、いつからやるかという問題についてもここでお答えをいただきたいと思います。
  344. 大石武一

    ○大石国務大臣 お答えをいたします。  北日本の冷害はまことに深刻でございます。私も先日視察に出てまいりまして、その余りのひどさに非常に心を痛めてまいりました。何とかしてこれらに対してできる限りの救済の方法を講じたいと考えております。御承知のように、まず応急の対策が一番大事でございますが、それには、これから一年間、来年の収穫時期までの生活を余り落とさないようにしてこれを維持させるということと、それから来年以降の再生産に対して十分な備えをしてあげるということが一番大事だと考えております。いままで数々の災害がございまして、いろいろの立法制度がつくられてまいりました。これらは非常にりっぱなものでございます。これをあたたかい気持ちで総合的に実施いたしますと相当の効果は上げ得ると信じまして、まず、そのような方向で努力してまいりたいと思います。おっしゃるとおり、天災融資法の発動、それから激甚災害の指定、これは当然いたすことになります。これはできるだけ早くいたしたいと思いますけれども、御承知のように、どのような被害があってどのような補償をしなければならないか、どのような金を貸さなければならないかということになりますから、やはり正確な災害の実態を把握することが何より大事でございます。ことに、後から申し上げますが、第一に災害の共済金を年内に支払うことが一番現金収入のもとになります。それにはやはり各町村における農業委員の評価が済まなければなりませんから、こういうことで多少時間がかかります。どうしても十一月の末から十二月に入ることになりますが、それまでには万全の準備を整えたいと思います。そういうことで、対策としては第一番にいままでの共済金の支払いを年内に完了いたしたいと考えます。  それから、先ほどお話がありましたような激甚災害の指定並びに天災融資法の発動をいたしますと、さらにこれに対してたとえば自作農維持資金というようなものもこれに付随して借りることができますし、相当の現金を融資することができると考えます。また、すでにいろいろの災害によりまして制度資金の借り入れが行われております。このような方々に対しましては、やはり借入条件の緩和をいたしまして、できるだけこれを延納を認めるようにするとか、そういう処置を講じてまいりたいと思います。  さらに、お話のように、等外米、規格外米につきましては、これを全量農林省において責任をもって処理するようにはっきりいたします。もちろん買い入れもいろいろな方法がございますが、それを処理いたすようにいたします。  それから、いろいろありますが、最後のいわゆる救農土木事業でございますが、これはその規模で申しますと、余り大規模なものは適当でないと思います。と申しますのは、大規模の工事になりますと、どうしても機械力、そういうものを使うことになります。今度の場合は、やはりそのような被害農民に現金収入を得させることが一番大事なことだと思いますので、できるだけ余り大きくない、できるだけ人手を使うような、たとえば豊道をつくるとか、川の整備をするとか、林道をつくるとか、あるいはたとえば林野の間伐をする、そのようなできるだけ現金収入が多く農民に入るような工事を中心に進めてまいりたいと思います。これに対しましては各県でも財源をつくっておりますが、農林省でもできるだけの補助、そういうものを出しましてその工事を進めたいと考えております。  以上が大体の考え方の骨子でございます。
  345. 正森成二

    ○正森委員 最後に、私は私の質問を一問だけお伺いして締めくくりたいと思います。  きのう参議院本会議でわが党の立木議員が職場の自由と暴力の問題について日立武蔵の問題を取り上げました。これに対して浦野労相は、労基法三条に違反するものである、そういう事実があれば厳正に取り締まらなければならない、こうお答えになりましたが、こういう問題は至るところに起こっております。たとえば民社党一党支持をしている同盟傘下の北辰電機、日産自動車で起こっておりますが、御承知のように民社党の方針は同盟傘下の組合と運命共同体というように言っておるのでございますが、たとえば北辰電機では、休憩時間や退社時間に、アカ、ゴキブリ、会社をやめろ、と一人の第一組合員を十数人で取り囲んでなぐる、けるの暴力をふるうことが日常に行われ、驚くべきことは、赤旗はおろか、朝日、毎日などの一般新聞も偏った新聞だから読むなというようなことを言っております。あるいは日産追浜工場では一人の労働者を職制がよってたかってこづく、首を締めるなどの暴行を行い、仕事を取り上げて直立させるというようなことを行っております。  そこで、こういう事実について労相はどういうように把握しておられるか、どういう措置をとられるか、調査をされるかどうかについてお答え願いたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  346. 浦野幸男

    ○浦野国務大臣 北辰の問題については、私まだよく承知いたしておりません。担当の局長がおりますから担当の局長から答弁をさせます。ただ、そうした事実があるならば、十分それに対処するような方法をとりたいと思います。
  347. 藤繩正勝

    藤繩政府委員 いまお挙げになりました事案のうちで、必ずしも全部を監督署の方で承知いたしておりませんが、北辰電機につきましては昨年の五月に申告がございまして、年休の問題とかあるいは公民権の保障の問題とかいう事案でございました。監督署でいろいろ指導をいたしました結果、改善をされております。その後なお休憩時間の自由利用だとかその他の問題も引き続いて申告が出ておりますが、それぞれ実態に即しまして、法違反があるような場合には、これはもう適切な指導をしていかなければならぬというふうに思っております。
  348. 白浜仁吉

    白浜委員長 これにて正森成二君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十月一日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十七分散会