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1976-10-12 第78回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月七日(木曜日)委員長の指名で、 次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  恩給に関する小委員       大石 千八君    加藤 陽三君       木野 晴夫君    竹中 修一君       林  大幹君    三塚  博君       吉永 治市君    上原 康助君       大出  俊君    和田 貞夫君       中路 雅弘君    鬼木 勝利君       受田 新吉君  恩給に関する小委員長     加藤 陽三君 ————————————————————— 昭和五十一年十月十二日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 渡辺美智雄君    理事 加藤 陽三君 理事 木野 晴夫君    理事 藤尾 正行君 理事 松本 十郎君    理事 上原 康助君 理事 大出  俊君    理事 中路 雅弘君       旗野 進一君    三塚  博君       山本 政弘君    和田 貞夫君       瀬長亀次郎君    鬼木 勝利君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         行政管理政務次         官       増田  盛君         防衛施設庁長官 斎藤 一郎君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         防衛施設庁労務         部長      古賀 速雄君         外務大臣官房長 松永 信雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   渡邊 伊助君         法務大臣官房審         議官      竹村 照雄君         大蔵省理財局国         有財産第二課長 秋山 雅保君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 十月八日  辞任         補欠選任   吉永 治市君     丹羽喬四郎君 同日  辞任         補欠選任   丹羽喬四郎君     吉永 治市君     ————————————— 十月八日  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一号) 同月七日  旧満州国政府職員公務傷害者の処遇に関する  請願和田耕作紹介)(第三六二号)  傷病恩給等の改善に関する請願外一件(地崎宇  三郎君紹介)(第四三四号)  同(松本十郎紹介)(第四三五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 渡辺美智雄

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。小坂外務大臣。     —————————————  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案     —————————————
  3. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案におきましては、先般、ベトナム社会主義共和国成立に伴い、緊急の措置として政令により在ベトナム日本国大使館を設置いたしましたが、これを法律に規定する必要がありますので、この法律案において在ベトナム共和国及び在ベトナム民主共和国の各日本国大使館を廃止し、在ベトナム日本国大使館を設置するとともに同大使館勤務する外務公務員在勤基本手当基準額を定めることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 渡辺美智雄

    渡辺委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  6. 大出俊

    大出委員 本会議の時間もあるようでありまして時間を詰めましたので、論争しておりますと時間がなくなりますから、きょうは主として、外務省考えておられる考え方を聞かせていただきたいと思っております。  小坂さん、大変しばらくでございました。幾つも問題があるんですけれども、最初に提案されました法律について二、三承っておきたいと思いますが、ベトナム社会主義共和国日本国大使館規模あるいは派遣人員等、どのくらいのものになっておりますか。
  7. 松永信雄

    松永政府委員 現在ベトナム大使館人員は六名でございます。六名と申しますのは、私どもは少し足りないと思っておりますけれども、現地におきます収容能力その他を勘案いたしまして六名にとどめておりますけれども、そういう状況が改善されるに従いまして増強してまいりたいと考えているわけでございます。
  8. 大出俊

    大出委員 これは政令によってとりあえず承認をした、したがってということになったように思うのでありますが、私も議席を得て以来外国歩きを余りしておりませんけれども、それ以前に九回も外国を長く歩いておりますのでいろいろと御厄介もかけておりますが、なかなかこういう新しく成立をした国につくられた大使館というのは意外にいろいろな仕事があるように聞いておりまして、六名で果たしてまともなことができるのかという気がするのでありますが、政令でおやりになって以後の状況というのはどんなことになっておりますか。
  9. 松永信雄

    松永政府委員 先ほど申しましたように、ベトナム側におきます物理的な受け入れ体制が現在実はほとんどゆとりがございませんで、私どもの方としましては大使館事務所、それから官邸につきましても現在は仮住まい的な形で執務いたしておりますけれども、そういう状況が整備されるに応じましてもっと増強してまいりたいと思っているわけであります。御指摘がありましたように、ベトナムとの間では経済協力も着実に進展いたしておりますし、逐次大使館規模及びその内容を充実してまいらなければならないとは考えているわけであります。
  10. 大出俊

    大出委員 もう一つ承っておきたいのですが、たとえば、私がかつてユーゴスラビアのベオグラードでございましたか、あそこの日本大使と懇談をしているときに、そこにおられる職員方々の御子息さん、子供さん等の教育なんという面で非常に苦労しておられて、しようがないからそれなり相談をして、奥さん方が順番を決めたりして一生懸命自前で教えているなどという、ずいぶん苦労されているのを見てきまして、どうもちょいちょいそういうことが行われているわけですが、在勤手当を合わせております法律でございますから、金の面なんかにいたしましても一本調子でいかぬ面があるのですね。したがって、意外に経済交流その他の面で忙しくなるであろう地域だし・旧来のいきさつもございますから、六名で始められたのはいいのですけれども家族の方を含めて、将来よほど考えていきませんというと、金銭的な面を含めて大変じゃないかという気がするわけです。提案をなさる以上、やはり先行きのことを展望をお持ちになっていただかなければ困るわけでありますが、そこらについては、外務省としてどうお考えでございますか。
  11. 松永信雄

    松永政府委員 在外公館職員が同伴いたします家族、なかんずく子弟教育問題については、場所によりましては大変に状況が厳しい、いろいろな制約のもとに置かれているところが多いわけでありまして、私どもは後顧の憂えなく職員がその職務に邁進し得るようにすることが非常に大きな急務の一つであると認識しております。  御質問がありましたベトナム、ハノイももちろんその一つでありまして、私どもは、したがって子弟教育の問題につきましては、いわゆる日本人学校の増設、整備強化ということと、それから経済面での子弟教育に関する経費の増額というようなことから逐次手当てしてまいりまして、子弟教育についても遺憾のない状態をできるだけ早く整備してまいりたいという考えでいるわけであります。
  12. 大出俊

    大出委員 どうも国会など終わりますと国会筋の諸君もたくさん行きましたり、まあどこの大使館でも少し骨を折らせ過ぎているなという気がいつもするわけでありまして、私は四期十三年、衆議院でやっていますが、一遍しか行ったことがないですから余り御迷惑かけない方ですけれども、身に覚えのある人は笑っていますけれども、したがって余り外務省法律に四の五の言えない方もいるのではないかと思うぐらいでございまして、いろいろな注文を出したりする方々おいでになるようであります。したがって、これはぜひ——笑っている方は皆賛成するのですから、ちょっとは経済的な面でも遠慮なく出したらいいのじゃないか、大変な数じゃないのですから。まあ為替変動もありまして、上限下限を決めて動かせるようにしたり、この委員会ではいろんなことを議論をしてきました。したがって、そこらも無理なものは無理なんだから、家族が一生懸命部屋をつくって子弟を交代で教えているなんというのは大変ですよ。聞いてみましても、専門的に教えることを習った人じゃないのですから。だからそこらも含めまして、そういった諸経費等についてやはりどこかで皆さんが国会相談をするという場所が欲しいと私は思っているわけで、これは私の要望でございますけれども、お願いをしておきたいと思います。  そこで、関連をして幾つか問題を承りたいのですが、ミグ25の問題をめぐりまして、純軍事的な問題につきましては私の専門分野でもありますので、この間防衛庁長官相手に長い議論をいたしましたが、きょうは少し、この間外務大臣おいででございませんでしたから、改めて小坂さんに聞かせていただきたいということにした問題がございます。  けさも新聞等幾つか取り上げておりますけれども、この間私は冒頭に、外務大臣おいでにならぬので、今回のベレンコ中尉亡命等をめぐって国際相場という話まで二面出てきておりまして、防衛庁など、私に言わせるといささかはしゃぎ過ぎだったなと思うわけでありますけれども、法的根拠ありとおっしゃるのならばその法的根拠なるべきものを資料で出していただきたい、こう申し上げておいたのであります。  そこで承りたいのですけれども、まず一つは、亡命条約なるものをめぐりまして、これは長い懸案がございます。したがいまして、やがて国際会議も来年一月にはジュネーブ等でも開かれるわけでありまして、ここで難民あるいは亡命者保護ということを盛り込んで領土的庇護に関する条約というふうなものを議論をする、討議をする、こういう予定もあるわけであります。今回のベレンコ中尉アメリカへの亡命ということを前提とするこの事件、再び亡命条約加盟問題等考えてみなければならぬ時期だという気がするわけでありまして、この件に関する外務省の基本的な考え方というのを、これは法務省関係もございますが、まずもってひとつ大臣に承りたいわけでございます。
  13. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 亡命といい難民といいまして、この問題はなかなかむずかしい問題だと思うのでございますが、要するに現在おる国に対して不満を持って、そこでどこかへ行きたいという者に対しまして、こちらの方といたしましては出入国管理令とかその他国内法関係があるわけでございます。それに適合するかどうかという問題を審議するわけでございますけれども難民わが国に入りたい、こう言ってまいります場合に、やはり難民が今後入国後に教育の問題あるいは社会保障問題、そういう面での内国民待遇を受けるその際の人権保護の問題についてどう扱うかということは、外務省だけではなかなか決められない問題でございますので、関係各省との間にいろいろお話し合いをしておるようなわけでございます。私の聞いておりますところでは、稻葉法務大臣は、そういう問題はひとつ解決する時期に来ておるんじゃないかということを仰せになったようにも聞いておるものですから、またそう言われただけでまだ実質的な討議はなされていませんものですから、今後さらにこの問題を詰めてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  14. 大出俊

    大出委員 そこで法務省の御見解をちょっと聞かしておいていただきたいのです。連絡が遅くなって申しわけなかったのでありますが、うっかりきのう連絡をしたら、きのうはたまたま休みだったわけでございます。しかしこれはいまに始まったことじゃございませんし、出入国管理令等を抱えておられる立場の法務省でございます。この件について旧来議論経過なり今日的考え方なり、あわせて承っておきたいのであります。
  15. 竹村照雄

    竹村説明員 お答えいたします。  私どもといたしましては、結局こういういろいろな情勢に対応して入管令の中に政治亡命者という範疇を設けて、それに応ずる在留資格、それに応ずる在留期間、あるいは保護というものをなすべきかどうかという点、なすとすればどういう点に配慮しなければならないかということにつきまして鋭意検討を進めております。もちろん諸外国、特に難民条約に加盟しておる四十七カ国からも、単に法制がどうなっているかということだけではなくて、その運用実態がどういう背景のもとにどういうふうに運用されておるかということにつきましても検討を進めておるというのが現状でございます。  なお、当面してわれわれがいま感じておることは、現実にわれわれはいわゆる亡命申し出事案というものをいつも経験しておりますけれども、その中にはベレンコ中尉のように第三国への亡命を希望するという事案、これがわが国で圧倒的に多いのです。これらにつきましては、われわれとしては、退去強制手続を進めて、退去強制の執行の場合の一方法で自由出国という形で本人の希望する地域に送り出すということで解決してまいりました。日本におりたいという例は余りございませんけれども、そういった第三国へ行きたいという例でも、たとえば最近非常に大きな問題はベトナム難民がございまして、昨年以来今日まで上陸を許可した者が三百十一名、現にいま港に来ているのが十名、それからさらに日本へ向かつつあるのが四十九名ございます。  これらの問題を考えた場合に、いわゆる政治亡命ないし難民定義を、たとえば難民条約に言っておりますような非常に厳格な意味定義づけますと、従来の例はほとんどそれに当たらないのではなかろうか。漠然と体制がいやだということでございますから、そういうようなことですと、こういったものはいわゆる難民とかなんとかいう在留資格では保護できない対象になる。一方、今度はそれではちょっと不都合ではないかというような観点で難民というような定義を広げてやりますと、いわゆる経済的な難民みたいなものも含めた意味に理解されるとなれば、われわれが一番困っておる韓国からの不法入国、密入国というものも一緒になる。またそういうふうな看板を掲げますと、その看板に向かって流入傾向が顕著になる。そういった場合のことも一つ論点として十分検討したいということでございます。  なお、われわれとしましては、従来は、日本に在留すべき者には特別在留許可制度があって、それから第三国向け送還する場合は迫害を受けるおそれのない地域送還するという原則にのっとった運用をしておりました。御承知と思いますが四十八年の法案では、在留特別許可制度をいまみたいに三つの段階を経てやらなくても済むように、いつでも在留許可を与えるようなことで救う、それから送還先につきましても、いまは明文がございませんけれども法案では明文に、迫害を受けるおそれのない地域への送還ということを明文化するということによって、法律的な歯どめをかけるというようなことも考えておったわけでございます。そういった考え方もなおございます。  現実アジア情勢の中でわれわれ一番恐れるのは、この者が政治亡命者だとか迫害を受けた者だといって受け入れると、ほとんど友好的な外交関係を結んでいる相手国に対して、あんたのところの体制はこういう体制だというふうなレッテルを張る結果にもなりかねない。そうすると、亡命者を受け入れたり受け入れられたりする国際的な経験を積んでいないアジアの中においては、また一つの混乱も起きるのではなかろうかというようなことも一つ論点となって、種々検討しておるということでございます。
  16. 大出俊

    大出委員 亡命条約、これは加入国はいまどのくらいございますか。
  17. 竹村照雄

    竹村説明員 私の方では、六十五カ国と承知しております。
  18. 大出俊

    大出委員 私のところにあるこの資料からしますと、これは私どもが常識でわかっておる国々はほとんど加入しておるのですね。欧州なんかではほとんど全部。あれは地続きですからね。だから日本とは条件が違って数が非常に多いのですね。しかし、やはり人道上の問題が先行しますから、それなり処理をしてきておるわけです。先ほどの難民条約の問題も、その国に主権があるとするといささかおかしな解釈になったりする場合でも、書いてあるものによりますと、それなり処理をされているわけですね。したがって日本のような、経済大国ということになるわけでございましょうか、まあ確かに領土が狭い云々ということはありますが、そんなことを言えば、欧州なんというのは、人口密度領土関係からいけば日本のような国はたくさんあるわけであります。だから、そういうことが理由でどうもはっきりできないという、これはやはり国際的な責任を回避している形になるという気が私はするのです。  したがいまして、やはりそれだけの理由で、どうもちょっとぐあい悪い——相手国レッテルを張るというお話がいまございましたが、たとえば台湾から日本に逃げてきた方々があって、救出運動に私も署名したこともありますけれども、これは帰れば命がないというわけです、体制が違う、思想が違う、反体制運動をやってきたなどということですから。そうすると、当時、外務省等の言い分もそうでしたが、そのことについて認めれば国交関係がおかしくなると言うのですね。強硬な向こうの主張があると言う。だからといって人道上、帰れば命がないという人間を帰すというわけにいかぬと私は思うのです。そのときに出てくるのが、条約加盟が行われていないからということなんですね。こういう形のままで本当の意味外交というのは成り立つのかという気が私はするわけであります。  したがいまして、もう一遍外務大臣に承りたいのですが、事の経過はそういうことなんですけれども、しかしいまお話がございましたように、主要国六十五カ国が加盟している、にもかかわらず日本は、ということになるわけでありまして、アジア情勢がと言うのですけれども、それじゃ欧州各国には東西に分かれている国もあり、同じような状況は至るところにあるわけであります。そのことを理由にどうもこの件は法務省のことだからというわけにはまいらぬと私は思うわけでありますが、外務大臣、いまの法務省答弁等を踏まえて、外務省当局としてはどうお考えでございますか。
  19. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 非常によく事実を御研究いただいた上での大出さんの御質問でございますが、法務省からも申し上げましたように、わりあいにアジア各国は感情的な要素が強いということも、現実の問題としてあるわけです。ことにベトナムの問題なんかにしても体制上の相違からの激しい争いがあって、その結果の難民、あるいは台湾の問題を御指摘になりましたが、韓国においても若干そういう問題がなきにしもあらずです。そういうふうになりますと、ほかの国よりも非常にむずかしい。難民というのは非常に人道的な見地で受け入れるあるいは亡命もさようなことでするわけでございますけれども、それがそのままにすんなりとした形で理解されないで、かえって争いの種になるという点は、やはり考えていなければならぬことだと思うわけでございます。  しかし、いま仰せのように、他の国においてできることは日本でできぬわけがないじゃないかということも確かに理屈でございますので、十分実態とあわせて考えさせていただきたいと思います。  ただ受け入れた後の内国民待遇をどうするか、これまたなかなかむずかしい問題でございまして、そういう点もあわせてよく検討させていただき、また御内意も伺っていきたいというふうに思っているわけでございます。
  20. 大出俊

    大出委員 来年一月にジュネーブ領土的庇護に関する条約、これは難民なり亡命者保護なりということを相当突っ込んで議論した結果できておるわけでありまして、これは国連の難民高等弁務官事務所中心になりまして、昨年の五月に新しい草案をおつくりになったわけですね。この九条から成る草案中心は何かというと、人種宗教信条政治的理由によって迫害を受けたという場合あるいは迫害を受けるおそれがある場合、この人が保護を求めたら、この人を亡命者とみなすかどうかということは一時たな上げにして、ともかく保護をする必要があるというのが趣旨なんですね、簡単に申し上げれば。この人種であるとかあるいは宗教であるとか信条であるとか政治的理由であるとかいうことが問題になって、個人がその国の主権者やあるいはその関係者によって迫害をされるあるいは迫害を受けるおそれがある、だからということでその国を離れたい、どこどこの国に行きたい、こういった場合に、これはおそれがあるという場合を含めて、その人を亡命者と認めるかどうかあるいは亡命者とみなすかどうかという問題の以前に、ともかく一時的に保護しなければならぬ、こういうところが中心なんですね。先ほど竹村さんからお話がありましたように、果たして難民とは何ぞや、難民条約等から見まして適法であるのかないのか、あるいは亡命条約等から見て適法かどうかというこの点不明確であっても、つまり迫害を受けるあるいは受けるおそれがあるということであれば、とりあえず相手国は一時的に保護をする、その義務を明らかにしようというわけですね。今度の議論というのはそこまでいった。つまり、その手前の方にすでにたくさんの国が批准をしていて受け入れている、あるいはそういう問題で、それぞれ苦労はあるのですけれども、やってきている、だが、先ほどお話があったような問題が残る、だからそのことを国際的な条約でカバーをしよう、こういうわけですね。そこまで進んでいるわけですね。それをどうもちょっとめんどうくさいからとか、あるいはややこしい外交関係が起こるからとか、まあアジア特殊性と言ったって、これはそれぞれの地域にはそれぞれの特殊性があるわけでありますから、そういうことを理由にして全く後ろ向きだという、どうもちょっとこれはそうでございますかといって納得いたしかねるのであります。  法務省にもう一遍承りたいのですけれども先ほどお話があったことは、今回の来年一月のジュネーブ会議では、だからここまでいこうということなんですね。そうすると、四十八年のお話は私知らぬわけじゃありませんけれども、私はそれだけでは済まないんじゃないかという気がする。なぜ一体もう一歩前に出ないのか。日本は、もう一歩前に出たって、国際関係からすれば大変におくれているわけでありますからね。後ろ向きの議論のほとんどは、隣に朝鮮半島がある、北と南と二つの国がある、一つ間違ったら、これは海を渡ってやたら入ってきてしまうのじゃないか、大量に入ってこられたらどうするんだ、そういう議論がすぐ出てくるわけですよ。私も小坂大臣ともかつて討論会で御一緒したこともありますが、江崎さんと防衛、外交議論国会討論会でやっている席上で、そんなことを言ったって朝鮮半島で火が噴いた、三十八度線から釜山まで追い詰められちゃった、船で何千あるいは何万という人間が日本にどんどん入ってきたらどうするのだ、これは受け入れぬわけにいかぬと言うのだな。そうすると、自衛隊が揚陸艇なんかつくるという議論なんですが、これは何とかしなければならぬという議論が出てくるわけですね。この議論の中では法律論というのはどこかへいっちゃっているわけですよね。ともかく来てしまったらしようがないじゃないかという議論。だから、そこらのいろいろなことがあるからややこしいから、それが特殊事情だから、どうも前向きにこの問題に取り組めないというのは、私は筋が通らぬという気がするのですが、いかがですか、竹村さん。
  21. 竹村照雄

    竹村説明員 私ども決して後ろ向きという意味ではございません。こういった踏み越えるべき問題点というものを十分に整理していきたい、こういうふうに思っております。  ところで、いままでにある難民の地位に関する条約、これは第二次大戦後の、言うならば後始末的な要素がまことに多い。だから、アジアではどこも加盟していないけれどもヨーロッパで加盟しておるというそこには、そういった背景、事情もあると思います。ところが、領土的庇護に関する条約がこの時期に検討され始めたというものを、私ども一体世界情勢の中でどういうふうに把握したらいいだろうかということは、もちろんわれわれは考えております。  それからもう一つ、先生は、そんなややこしいことを言わずに、とりあえず保護をするということを前提にしているのじゃないかというお言葉でございましたけれども、私どもこの条文を見た限りでは、受け入れる場合——受け入れるというか、それぞれの国において難民にどういう保護を与えるかという前提となるべき難民定義は、やはり非常に厳格な定義である。「次に掲げる十分に根拠のある恐れにより」云々とありまして、そういった意味では従来と余り変わらない基本的な立場に立っておるのではなかろうかとも思われます。しかし、社会的な背景という意味では、先生御指摘のような背景があるのではなかろうかということも十分考えられますので、そういった点も踏まえたいと思います。  なお、これは実際問題として、ベトナム難民なんかにつきましても、私どもは、期間は短いのですけれども特別上陸を許してとりあえずの処置は講じておる。ですから、われわれの実際にやっておることの中にも、そういう前向きの姿勢があるということはひとつ御理解いただきたいと思います。
  22. 大出俊

    大出委員 壱岐、対馬をこの内閣委員会で視察をいたしました。これはもうひどいのですね。警察署長さん等の話を聞いても、それこそ村民に頼んで監視に立ってもらうとか、あれだけの海岸線ですから、年百年じゅう入ってきて戦争しているようなものだと言うわけですね。第七管区ですか、海上保安庁の方々に聞いてみても、砲を一門乗っけているけちな船なんだけれども、大変な苦労がこの方々の口から自然に出てくるのですね。苦労をしておられるのだなという気がしみじみするのですね。  これが入ってきた後の処理は今度はどうなるかというと、私は選挙区が横浜ですから、これは決定的に多いわけです。だから、事務所長の高木さんが当面麻布の方へ行かれて最近亡くなられましたが、高木さんなどともこれはずいぶん話したことがあるのですよ。そのたびにわれわれ苦労させられ続けて今日に至っておるわけですね。ことごとに大村まで持っていかれた、何とかしてやらなければならぬ、気の毒な事情を聞いてみるといたし方ないから法務省に物を言わざるを得ぬ、あるいはこういうところで質問せざるを得ぬという問題が出てくる。何とかかんとか人道というものを根底に置いて議論を進めて、何とかそこらで納得をしてもらって、生命の危険を訴える方々についてはそれがないようにという気もあって、実は苦労してきておるわけですよ。だからそこらも含めて、やはりこの問題というのは一番大きな問題を抱えているだけに、根底に触れた議論が必要だという気がして私は物を言う気になったということなんです。  ですから大臣、私もいま条文をここに持っていまして知らぬわけじゃないのですけれども、実は方々の国々にクーデターが起こる、軍事政権はできる、そのたびに逃げ出すのが出てくる、繰り返しでしょう。ビルマなんかだってネ・ウィン政権ができたときは大変なんだ。ウ・ヌーがほうり込まれちゃったり、ウ・チョウ・ニエンがほうり込まれた。ウ・バ・スエというビルマ賠償のときの総理が軟禁されているという世の中なんだから。だからその周辺の人は、みんなどこかに逃げようとするわけです。そういう問題が至るところに起こっているから、各国に関心は高まり、この時期にじゃどうするかということを議論しようというわけですね。問題がないから議論するのじゃないのです。日本と性格が違うかもしらぬが、似たような問題をたくさん抱えているから議論しようというわけですから。そうだとすると、日本は抱えているから横向いているというわけにはいかぬわけであります。そういう意味外務大臣、これは国際的な外交上のつき合いだってあるわけですから、やはり前向きでこの問題に取り組む姿勢がまず必要だという気が私はするわけであります。隣に二つの国があるものですから、われわれは日常大変なことをやってきているわけです。そういう意味でひとつ大臣、この問題は一月という問題もあるわけでありますから、外務省としても法務省任せでなしに、もう少し前向きで一つの方向づけをするという気持ちはございませんか。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 段々のお話、よく承っておきまするが、やはり関係各省とこの問題をよく精力的に詰めてみよう、こう考えておりますので、しばらく御猶予をいただきたいと思います。
  24. 大出俊

    大出委員 時間のないところでこの問題ばかりやっているわけにまいりませんが、関係各省ということになりますと、どことどことどこですか。事と次第によっては端から全部聞きたいのですけれども
  25. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の方は外交の窓口という意味関係をいたします。それから法務省、これは出入国管理令関係でございます。それから厚生省が社会保障の関係で、文部省が教育関係であると思います。その他いろいろあると思いますが、主なものはそんなところかと思います。
  26. 大出俊

    大出委員 いままで関係各省間で合同して会議をやったとか、議題を決めてどうしたとかということはございますか。
  27. 大川美雄

    ○大川政府委員 いまの難民条約という問題にしぼって、この問題で関係各省と最近協議したというようなことはございませんけれども、もう少し広い意味で国際人権規約というのがございます。その国際人権規約のA規約、B規約の批准ができるかどうかという、難民よりはもう少し広い観点から関係各省と最近しばしば、いろいろ協議をやっております。
  28. 大出俊

    大出委員 それは批准をしようという意思があっておやりになっているのですか。
  29. 大川美雄

    ○大川政府委員 まだ批准するという意思を決定したわけではございませんけれども、批准できないかどうかということで、いわば前向きの方向に考えながら外務省としては関係各省と御相談申し上げております。
  30. 大出俊

    大出委員 では局長にもう一遍聞きたいのですが、来年一月のジュネーブ会議というのは、この国際連合の難民高等弁務官事務所なるところが検討してきている問題ですね。そうだとすると、これは局長の所管になるわけですか、来年一月の問題は。いかがですか。
  31. 大川美雄

    ○大川政府委員 国連の難民高等弁務官事務所に関しまする限り、私の国連局の主管になると思います。
  32. 大出俊

    大出委員 そうすると、もう一つ聞きたいのですが、先ほど法務省竹村さんからああいう答弁がありましたが、この一月の討議というのは、その背景としてどういうことを中心討議が行われることになるのですか。
  33. 大川美雄

    ○大川政府委員 私、申しわけございませんけれども、きょうちょっと用意をしてまいっておりませんので、後日また機会がございましたらお答え申し上げたいと思います。
  34. 大出俊

    大出委員 問題は、まだいまの問題に絡んで細かいことを申し上げると幾つもございますが、せっかくのそういう御答弁ですから、この次のときにでもひとつ改めて聞かしていただきます。御検討おきいただきたいと思います。  そこで、もう一つここで承っておきたいのですが、これは竹村さんに承りたいのですが、ベレンコさんが日本に飛び込んできた。この方が足かけ四日ですかまる三日ですか、おいでになったわけですが、扱いとしてはどういう扱いをなさったわけですか。
  35. 竹村照雄

    竹村説明員 入管の立場から言いますと、有効な旅券を持たずに本邦に不法に入国したということで、これは退去強制事由に該当いたしますので、退去強制手続を進める。そして、一番初めの入国審査官の審査の段階で不法入国であることを認定したのに対して、本人がこれをそのとおりだと認定に服しましたので、そこで、東京入管の主任審査官が退去強制令書を発付し、本人は今度は自費出国を申し出て、これを許可して、自費出国の形でアメリカへ向けて出国した、こういうことになっております。
  36. 大出俊

    大出委員 どうも竹村さんありがとうございました。済みません。また別な場所で少し詳しく聞かしていただきます。  大臣に承りたいのですけれども、外務委員会等ですでにいろいろ議論が続けられてきた問題だとは思いますが、私どもの方は防衛との絡みもございます。したがって、そういう立場で少し承っておきたいわけであります。  大局的に見て、どうも今回のこの件で、対ソビエトという意味でいろいろ問題がある、あるいは将来また起こる、こういう気がするのであります。国連総会においでになった大臣でございますし、幾つか書かれているものを読みますというと、キッシンジャー国務長官でございましたかね、大臣に、今回のこのソビエトの問題、いうのはミグの問題を指しているのだと思うのでありますが、ナーバスにおなりになるなという意味のことを言ったという記事がここにございますが、ナーバスというのは、これは神経質ということでございましょうから、まあ余り弱気でなく強気でいけという意味なのかもしらぬという気がするわけであります。一体これは、アメリカからもいろいろなことがこのミグ25をめぐっては日本に対して、特に防衛当局に対しても、この問いろいろ承りましたが、調査させろ、調べたい、いろいろな意思表示があったように承っておりますが、アメリカ側というのはこれを一体どういうふうに見ているわけですか。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アメリカ側としてこれをどう思うかということについてキッシンジャーとは直接ミグという名前を出して話したことはございませんです。まあ、私キッシンジャーと話しましたのは、日米友好というのは日本外交の基調であって、前任者もそうであったが、私もさような方針でいくということを話しました。これをどう見ているかということは、キッシンジャーとの話の中では出ておりません。ただ、根本的に私は、これはやはり日本の問題であって、日本の法令に従って適正にこれを処置するということが基本線だ、こう思っております。その基本線とは何かというと、御承知のように完全に排他的な主権を有している領空権を侵犯されたのでございますから、それに対して調査をする、調査が終わったら返すという基本線で、この問題は日本がむしろ積極的にそういうものを誘致したわけでもない。これは日本政府も日本国民も知らない間にソ連の方が一方的にそういうことをしたのだから、日本は法令に従ってやるけれども、日ソ友好というのは非常に大事なことなんで、この日ソの友好の枠組みの中で、一つ事案としてできるだけ早期に解決したい、こういう基本線で対処しているわけでございます。
  38. 大出俊

    大出委員 これはアメリカとのかかわり合いというのがやはり一つの今度の問題のポイントだという気が私はするのですよ。たとえば、ミグ25の調査をしたいという、つまり知りたいという強い意思を持っているのはむしろ、それは日本の防衛当局もさることながらアメリカだろうと私は思うのですね。欧州の例からいきまして——フォックスバットという言葉がついておりますけれども、フォックスバットなんという言葉をつけたのも当時の事情からいって西側でございまして、したがって、このえたいの知れぬ速度の速い飛行機を調べたいというのは戦略上、戦術上、軍事的にアメリカ側に大きな希望があったに違いないわけであります。時間がありませんから一々ここで、こういうことがあった、ああいうことがあったと取り上げる気はありませんけれども、したがいまして、いろいろこの書かれている憶測も含めた書き方でございましょうけれども、ミグ屋などと言われるのが七、八人入ってきて、いち早く日本側に意思表示をしていた。だから、これを百里に持っていった、C5Aを使った、その結果として一番ポイントになっているブラックボックスなんと言われている電子機器の部門、私も飛行機はよく調べて知っておりますけれども、これが日本にないのではないか。この大型アメリカの飛行機に載っけてアメリカに持っていっちゃっているんじゃないか。なぜならば、日本で調べたって、日本の自衛隊の能力でこの機器の中身というのは調査する能力を持っていない。だから小坂さんがグロムイコ外相と話をされたいきさつ、まあはなもひっかけぬような応対だったと書いてありますけれども、そのときには返還までの話を二週間とか三週間とか期間を切った。それはアメリカに持っていってアメリカで調査をする予定時間がその中に含まれているのじゃないかという書き方をする専門家もいる。つまりアメリカの役割りが非常に大きくそこにクローズアップされるから、なおのことどうも外交上日ソ関係がおかしくなるという、そういう気配も見られるわけでありますけれどもそこら一体、先ほどお話しの勝手に飛び込んできたんだからと言うのだが、結果的には大きな日ソ関係外交問題になるわけでありまして、その将来の展望も持って、今日までやってきた中で、防衛庁の言い方も、ずいぶん極端なことを言う方々の記事が新聞に載りましたし、アメリカ側の意向と称するものが新聞にも幾つも載りましたが、どうもこれじゃちょっと日ソ関係、妙なことになりはせぬかという危惧をずいぶん私どもも持ったわけでありますけれどもそこらのところを振り返って、一体どういうふうにこれは——ちょっと不納得な点が私どもからするとたくさんあるのですけれどもね。基本線はわかりましたが、日ソ関係という面、アメリカとの関係ということで、そこらをどういうふうにわれわれは、外務省説明を聞いてこれは納得したいわけでありますけれども、どういう理解をすればいいのかという、不思議な点がたくさんあるのでありますけれどもね。せっかくの機会でございますから、大臣から答えておいていただきたい。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては私どもこういうふうな理解をしておるわけでございます。ある日突然にミグ25というものが領空権を侵して入ってきた。そして民間航空飛行場に強行著陣した。そこでわれわれはこれを調べた結果、民間航空飛行場には民航機が発着しているわけですね、函館には。そこで、これは調べるにも非常に邪魔になるし、場所を移さねばならぬ。そこでいろいろ防衛当局にも聞いてみますと、C1というような輸送機があることはあるけれども、とても大きくて持っていかれない。そこでアメリカの持っているギャラクシーというC5ですが、これならば持っていけるということで、輸送をまずアメリカに頼もう。ところが、大変性能のいいといいますか、日本にはないようなことでございますので、これを調べるにつきましても、あれはがらがらに壊してしまって後で使い物にならぬというようなことを言われてもこれは大変問題でございますから、アメリカと話をいたしまして、たとえばレントゲンみたいなものを持ってきて壊さないで中を見られる、そういうようなことがアメリカによってはできるということでございますので、それじゃそれをひとつやってもらおう。ただ、このやるについては、あくまでこれは日本がやることだということで、幕僚長と先方の在日米軍司令官との間に約束をいたしまして、たとえば、ギャラクシーは借りる、その借り代は日本が払う、いろいろな米軍の人をハイヤーするけれども、その給料は日本が払う、あくまで日本が金を払って、日本の足らざるところを補ってもらうのであるから、それによって得た知見は日本に所属する、そういうたてまえをはっきりいたしまして、しかも、安保条約によるものではない、こういう点をはっきりして、先ほど申し上げましたように、できるだけ早く返すという方針で、この方針を、私、先月二十九日にニューヨークでグロムイコ外務大臣に伝えました。その後だんだん話が詰まりまして、十五日以降ならいつでもお返しできる、こういうことになっておるわけなんでございます。  アメリカが関与をしたということでいろいろな議論が出るわけでございましょうけれども、残念ながら、そう言ってはなんですが、日本の自衛隊にはあれを調べる能力がないということで、これはやむを得ないことである。しかし、これを一々アメリカに通報してソ連のいやがることをやっているわけではないので、全くこれは日本が持っている知識として外へ出しません、こういうたてまえをとっているわけでございます。ですから、それについていろいろな言い分もあることは聞いてはおりますけれども、ソ連側は了解してくれていると私は思うのでございます。  今後いろいろ問題はございましょうけれども、いわゆる報復措置などということが出る場合もございましょうけれども、これは、こっちが悪いことをしたのなら報復もしようがない、しかし、いま申し上げたように、国際法上も許されていることを私どもの法の範囲内においてやっているのだから、これについての報復ということは了解できない、こういう立場でおりますので、ソ連側もどうもそういう気持ちは持っていないように考えまして、これは一日も早く、こういう悪夢のようなことは両方で忘れ去って、日ソ友好に進んでまいりたいものだ、こう考えておるのが外務省の立場でございます。
  40. 大出俊

    大出委員 これが入ってきたのは六日でございますか、当初、外務省のソビエト担当の方々なんかは、外交問題等も心配をして早く返したいという気持ちが強かった。ところが、一夜明けてみたら、アメリカ側からもいろいろ物を言ってくるということで、山崎さんお見えになっていますが、アメリカ局側はそういうわけにはいかないと言う。これは徹底調査の方でしょうね。どうも大分にぎやかな内部事情があったという書き方がいろいろなものに出てくるわけでありまして、防衛庁の側も、どうも内局の方はやはり対ソビエトを考えて慎重論でございます。ところが、制服の関係方々は何でもかんでも調べるのだという話になって、いきなり七日の日には調査団が現地に出かけていき、当面は道警がこれをけったというようなことが出てくる。大分内部的にはこれまたエスカレートしていった。結果的に今日このようなことになっているという経過が至るところからオープンで出てくるわけですね。おまけにアメリカの輸送機を使った。説明は確かに、これは設置法五条四項、ここらを使って役務調達をしたのだ、こういう理屈はついています。しかも、片一方では、どうも機器そのものは日本にないのじゃないか、アメリカに持っていったのじゃないか。アメリカの新聞に、ちょうどそのときにこの中身等が詳しく報ぜられたりした。知見は日本に帰属すると言いながら、実際には日本にはわからないのだから、日本がわかる範囲のことしか日本には与えないで、本当のところはアメリカが握っちゃっているのじゃないか、こういうことになってくるところにやはり問題が出てくるわけでありまして、ここで承っておきたいのですが、どうもそういう外務省内部のいきさつ、防衛庁内部のいきさつ、それぞれたくさん報ぜられておりますが、やはりそういうジグザグがあったわけでございますか。
  41. 橘正忠

    ○橘政府委員 事件発生は九月六日午後一時五十分ごろでございますけれども、何分こういう件は日本でも初めてでございます。したがいまして、事件の性格というのは、すぐその直後でははっきりいたしませんでしたけれども、やがてこれが飛行士ベレンコさんによる亡命事件であるということが次第に明確になりました。したがいまして、当初からこの事件の性格そのものを、事実を、関係各省それぞれ連絡をいたしまして確かめる。本件には人の面と機体の面と両面ございますが、人につきましては、本人の意思の関係もございましょう、それから国内法令の違反の関係の事実もございましょう。したがいまして、当初から、これは外務省のみならず、当然現地の警察であるとか、防衛庁であるとか、あるいは法律問題であれば法務省であるとかというところから、相互に連絡を密にいたしまして、総理府といいますか、政府全体として常に連絡をとりながら、本件の処理に終始当たってまいったわけでございます。もちろん、それぞれ関係省庁の立場といいますか、担当正面といいますか、それがございますので、それを常に政府全体として総合して考えていく。当然外務省といたしましては、対外関係も重要な要素として常に念頭にある。  特に外務省といたしましては、本件の基本的な性格が明確になりますれば、こういう事件が国際的にもどういうふうに扱われているかということ、これを常に基本的な一つの枠組みとして念頭に置いておりました。もちろん、他国の類似の事例なんかを見ますと、こういう亡命の場合には、各国が必要な保管と調査を行って終局的には、相当の期間を経てから返還をしておる、そういう枠組みの中で考える。そういうことであれば、国際的にも当然日本として正しい措置ができるわけでございますし、そういう枠組みの中であれば、本来こういう偶発的な事件で日ソ関係が悪くなるというべき性質のものではない。そういうことの中で、国内官庁それぞれ共同して本件の処理に当たった次第でございます。特に、いま先生お話がございましたように、官庁間の意見がそれぞれ対立したとか、そういう事実はございません。常に連絡をとって処理してまいりました。
  42. 大出俊

    大出委員 念のためにもう一つ承っておきますが、防衛庁の方なんでしょうか外務省の方なんでしょうかわかりませんが、C5Aギャラクシーを使ういきさつをめぐりまして、知見は日本に帰属するとかいろいろ約束されたというのですが、これはメモか何かなんですね。どんな中身なのか、表に出すことについて差し支えがありますか。差し支えがなければ、これは将来の問題がございますから、いただけるものなら資料として出していただきたいのです。  それともう一つは、ブラックボックス、つまり電子機器の中心部分というのは日本にないのじゃないかという書き方をしている新聞その他幾つかありますけれども現実にこれは百里か何かにあるのですか。向こうから来て、さっきのレントゲン照射だ云々だという話がありましたが、アメリカ側が専門的にこれを日本で調べているのですか。そこのところはどうなんですか。アメリカの新聞に大分細かい調査結果みたいな中間的なものが載っかっている事情がありますけれどもそこらは一体何で載っかったのか、気になるのでちょっと答えておいていただきたい。
  43. 渡邊伊助

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  ギャラクシーを米側の方から提供を受けるということにつきまして、航空幕僚長と在日米軍司令官との間で話し合いをいたしました。その話し合いの中身そのものを確認をする意味でメモをつくってはございますが、これは単なるメモでございまして、中身は先ほど外務大臣からもちょっとお話がございましたけれども、米軍の技術要員及び機器は自衛隊の指令監督のもとに置く。それから、作業の過程や関連で得られる知見は自衛隊に帰属する。それから、自衛隊は、作業に関連してかかった費用、実費でございますが、それは自衛隊が負担をする、こういう内容のメモをつくっておるということでございます。単なる内部的なメモでございますので、中身はいま申し上げたとおりでございますので、提出はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。  それからブラックボックスのお話がございましたけれども、私、技術屋ではございませんけれども、私の聞いているところでは、あのミグ25に搭載されている電子機器でございますけれども、こういうものは全体として中に置かれたまま、いわゆるシステムチェックと申しますか、電源を通して全体の作動する状況を調査するということに意味があって、これを取り外すということになりますと、いわば死に体と申しますか、単なる物の調査ということで余り意味がないということでございますので、向こうに持っていったということは全く事実無根でございますし、そういうことはあり得ないというふうに考えております。
  44. 大出俊

    大出委員 では、防衛庁の方ですか、五条云々でやったんですから、C5Aギャラクシーの役務調達というのは、取り決めの中身というのは、何か書いたものがあるのですか。
  45. 渡邊伊助

    ○渡邊説明員 ギャラクシーを借りることにつきましては、先ほど申しましたように空幕長とガリガンとの間のメモでございますけれども、それに基づきまして現在もう少し下のレベルで中身そのものについて実務的な話を進めております。米側の方も、実は何分初めてのことでございますので、費用がどのくらいになるかということはまだはっきりわかっておらないということでございますので、現在話を進めております。
  46. 大出俊

    大出委員 時間の関係もございますから、またの機会にさせていただきます。  大臣、最後に申し上げておきたいのですが、北方領土の問題であるとか、あるいはサケ・マスその他を含めての漁業交渉であるとか、北方領土、漁業の数々の難問を抱えさせられている日本側でございまして、それなりにシベリア開発であるとか、土光さんがおいでになったときに具体的プロジェクト案を出さなかったというようなことで相手方が失望したなんという記事まであったわけですから、ただ単に今回の問題でない日本とソビエトとのかかわり合いは外交上たくさんあるはずであります。それにもかかわらず、日航の方々入国手続がとられているものについて拒否をするとか、あるいは囲碁の集団がおいでになることについてもうまくいかないとか、あるいは漁船の拿捕がふえるとか、報復なんということはあり得ないと大臣は言うが、現実的にそれらの問題が出てきているわけでありますが、そこらは将来の懸念というものはないというふうにお考えでございますか。
  47. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日ソの両国は地理的に動かすべからざる隣国でございます。これはどんなことがありましてもこの関係は変わりません。したがいまして、できるだけこの両国は仲よくやっていくということに努力しなければならぬと思っておるわけでございます。ただ、不幸にいたしまして領土の問題がございまして平和条約の締結を見ておりませんけれども、この領土の問題については、私は、わが国固有の領土はいかなることがあっても返還を求めていかなければならぬと考えまして、これは粘り強く話をしておるわけでございます。私どもがソ連に求めるところは領土問題でありまして、これさえ解決すれば平和条約ができるわけなんです。他にもそのことから生ずる漁船の拿捕の問題等もございますが、私、この前にやっておりましたときにミコヤン副首相との間に非常に激しい論争をした結果、かえってよくなりまして、例の貝殻島のコンブ漁の有料入漁の問題もその後において解決しておるのでございまして、こちらも理屈のあることはあくまで言うたらいいと思うのです。ソ連のことわざには、よく議論するほど仲よくなるということわざがあるということをミコヤン氏からも後ほど聞いたようなわけでございまして、私は今度の問題はあくまで——われわれは悪いことをしているんではない、向こうが飛び込んできたんで、これは国際慣例上、国際法上せざるを得ないことをやっているんだという点を強く主張していくべきだと思っておるのでございます。ただ、新聞に、入国査証がありながら入国拒否された日航員の話なども出ましたけれども、後ほど、あれは手続上のミスで事務上のおくれがああいうことを生じたんであるということになりまして、その問題は解決いたしました。漁船の拿捕の問題も、領海を侵犯をするということになりますとこれはいけませんので、その点をよく守っていただきたい、こう思っております。従来までの拿捕件数は、昨年に比べて特にふえているということはございませんので、どうかひとつこの問題ができるだけ早期に解決されて、いやな感情のしこりを残さぬようにいたしたい、努力したい、こう思っております。
  48. 大出俊

    大出委員 時間の関係がございますから、別な問題をもう二、三点承りたいのでありますが、今度の国連総会でやはり一つの焦点になるかもしらぬという見方が方々でされていた朝鮮決議案の撤回問題がございますね。これは外務委員会等で議論をさんざんされたんだと思うのでありますが、論点をしぼって一、二点承っておきたいのであります。  なぜ一体撤回をされたかというその背景でございますが、いろんなことがいろいろ書かれておりますが、やはり朝鮮民主主義人民共和国の側に大きな影響力を持つ中国の存在がございます。あるいはスリランカで行われましたが、リマに続いて行われております非同盟諸国の会議なんかも、ユーゴのチトー大統領等の影響力も相当強いわけでありますし、ソビエトのこれまた大きな影響力があるわけであります。また、アメリカと中国の最近における関係もございます。したがって、そこらを総体的に考えてみて、この朝鮮決議案撤回の、まあ仲介をルーマニア大使がとったということもございますが、何かなければならぬはずでありまして、何となく取りざたされているようなことではなく、もう少し奥深いものがなければならぬという気が私はするわけであります。まず外務大臣から、この間の事情を御存じの大臣でございますから、簡単で結構でございますが、どう見ておられるのかという点を承っておきたい。
  49. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この両方の支持決議案が両方とも通ったという昨年の国連総会の事実は、まさに不毛の努力でございまして、ことしはもっと実りあることをしなければならないというふうに考えておりましたところ、決議案が両方とも撤回になった。これは私は大変喜ぶべきことだと存じております。  なぜ北側があれを撤回したかという点は、まあ情報程度でございますが、コロンボにおきまする非同盟会議におきまして、朝鮮民主主義人民共和国が余り共鳴を得なかった。ことしは昨年ほどの票が集まらぬじゃないかと判断したんではないかというような話もございます。また経済的にいま非常に困難がある。わが国につきましても二億五千万ドルぐらいのこげつきのようなものになっておりまして、民間で非常に困っておるようなわけでございますが、そういうことからして、相当経済的な困難があるんじゃないか。あるいはまた、最近権力闘争のごときものがあるんではないかというような情報もございます。ただ、どうもその辺はよくわかりませんのでございますが、私の知っている範囲を率直に申し上げますと、さような状態でございます。
  50. 大出俊

    大出委員 不思議なことが一、二点あるんで、これまた御見解だけ承っておいて、別な機会に細かく詰めた質問をどっかでしたいのでありますが、七二年の南北和解声明などと言われた共同声明がございましたね。なぜあそこまで行ったのかという実はその背景が当時なかなか明確でなかった。ところが、やはり米中接近という形におけるアメリカ、中国の影響力が相当大きく左右していた。こういうことがその後ほぼ明らかになってきた時期がありました。したがいまして、今度の件が、やれ経済的な問題だとか、あるいは権力争いが内部にあるからとか、あるいはスリランカにおける非同盟諸国の中でユーゴあたりも首を振るとか、非同盟諸国の会議というのは経済問題なんだ、政治的な問題を大きく持ち込まれることに不賛成だという意見があったとか、だから二十六カ国が賛成しないとかいろいろなことが流れておりますが、あるいはアメリカ側が、キッシンジャー氏がしばらく大統領選挙の関係で物を言わないことになっていたにもかかわらず、七月二十二日でございましたか、朝鮮問題に触れた四カ国の話し合いという問題を提起をされたわけでありますが、かつての米中接近にも大きな役割りを果たしたのはルーマニアのチャウシェスク氏でありますが、今回の取り下げの仲介をルーマニアの方々がしておったり、つまり、背景となるべきものの中にアメリカと中国の影響力というものもなくはない。つまり、そこらのところがある意味の政策転換につながるのかつながらぬのかという問題を含みますから、いまお話にありましたようなことのみならず、もっと突っ込んだものがあるのじゃないかという気が一つするわけであります。恐らくポプラの木事件、板門店事件なんかも、これは直接のアメリカと北のやりとりですから、そういう物の見方を少しどっか頭の中に置いておかなければいかぬのじゃないかという気がするのでありますが、そこらのところはどういうふうにお考えになりますか。
  51. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 南北朝鮮の問題は、アメリカ、中国、ソ連というものの影響が微妙に絡み合って、そこに均衡、安定、平和状況があるというふうな見方ができると思うのでございます。そういうことをいろいろ考えてみますと、基本的には両方の、韓国と北朝鮮が話し合って解決していくというのが一番いいことでございます。キッシンジャー提案のように、そこに時期を置いてアメリカと中国が加わっていく、さらにそれを拡大して話し合っていくということは確かにりっぱな構想だと思いますが、ただ、北朝鮮側が韓国を飛び越えてアメリカと交渉したいというような態度でございますと、これはなかなか解決せぬのじゃないか。韓国はもとより三千数百万人という人口を有効に統治している国家でございますので、それをないものと考えるという見方そのものがやはり適当でないのではないかというふうに、これは私個人の考えでございますが、さように思っております。大出さんだから率直に申し上げました。
  52. 大出俊

    大出委員 そこから先、日本外交というのは、隣の国ですから、朝鮮半農におけるいろいろな問題について、どこの国に対するよりも深い関心がなければならぬのは当然であります。  しからば、近い将来に向かって頭越しというようなことが出てこないように日本の役割りというものが顕在化されていていいという気がするのであります。木村外務大臣の時代に私が質問をしまして、大きな新聞記事になったりいろいろしましたが、少しそこらがあっていい気がするのでありますけれども、もう一点、こういう国連決議撤回後における情報を外務省が分析をされて、朝鮮問題というのはどういうふうに考えるかという日本外交の方針が一つ基本的なものがあっていい気がするのです。プリンシプルがあっていいと思うのです。どうもそこらがくらっくらっとするところに、私どもから見ていると納得しかねる問題があるのですが、これまた簡単で結構でございますから、どうとらえてどうお考えになるかという点、一点だけ聞いておきたいのです。
  53. 中江要介

    ○中江政府委員 大出先生御指摘のように、一九七二年七月四日の共同声明というのは国際的に非常に歓迎された姿勢であったわけです。そのこと自身がその後の三年あるいは四年の間に大きく変わらなければならない理由というのは、実は私どもは余り認めない。それがどうしてことしになって、国連の議題要請及び決議案の撤回になったかということを考えますと、やはり非常に現象的な面といたしまして、先ほど言及されましたような非同盟会議の問題とかあるいは板門店事件にあらわれたような問題とか、そういったものが短期的には一つの契機になったり何かしているかと思いますけれども、大きな流れは、やはり七二年以来のアジアにおける、特に極東における国際情勢というのは、南北間に政治的な問題についても対話が行われなければならないという国際情勢になっているように私どもは思います。ただ、それがなかなかむずかしい。  そういうときに、日本の朝鮮半島政策としてはどういうふうに対処すべきかという点は、これも何度か話題になっておりますけれども、まず、いま大臣もおっしゃいましたように、韓国との間には一九六五年以来友好な関係がある。これを阻害する必要もなければ、そういうことは全然考える必要のないことだし、これはますます維持増進しなければならない。しかし、そのころから注意深く白紙のままに残してありました北朝鮮に存在する当局との関係というのは、これは日本政府は御承知のように政府間の関係というところまでに一挙に進むことはできないけれども、貿易、スポーツ、文化あるいは人事交流、そういう面では特に七二年の共同声明以降、人事交流というのは非常に急上昇して活発になっております。そういうところから、北朝鮮はいつも日本政府が北朝鮮を敵視しているというふうに言っておりますけれども、それが誤解であるということについて、やはり相互理解を深めなければならない。相互理解が深まった段階で、日本としても、朝鮮半島の平和のために南北対話が再開されて、そして話し合いによる平和統一に向かっていけばいい。こういうことで、急に即効薬のようなことはなかなかできませんけれども、方向としてはいま申し上げたような方向で従来とも対処しているというのが、一口で言いました朝鮮半島政策ということになろうかと思います。
  54. 大出俊

    大出委員 時間のないところでありますから議論は避けて進めてまいりましたが、ここで一つ承っておきたいのです。  中国の毛沢東主席が亡くなられた後の状況というのが一つ方々議論をされたり書かれたりしておりますが、ここ一日、二日の新聞によりますと、李先念氏が首相になるのではないかとか、主席が新しく任命されそうだが、まだ首相の名前で外国の賓宮を迎えているとか、いろいろございまして、承認手続にいろいろな問題がある、あるいは内紛があるのではないかとか、いろいろな新聞がきのう、きょう見られるわけであります。デーリー・テレグラフあるいはフィナンシャル・タイムズなどが伝えているのは、これは十二日でありますが、毛沢東氏の夫人である江青女史であるとかあるいはその他の数名の方々が逮捕されたのではないかとか、外務省筋はいち早くこのことを知っているなどとか、いま申し上げたデーリー・テレグラフ等の報道によると、工場の政治委員会における特別講話の中でこの種のことが述べられたとか、そんなふうなことがちらっとございますが、おととい、きのう、きょうの日本の新聞で、本来ならもう少し早くそこらのところがはっきりするのじゃないかとか、少しおくれているには何か事情があるのじゃないか、ある旅行客が直接中国の要人に聞いてみたら、テレビその他の報道を注視してくれというようなことを言っただけで、あと答えなかったとか、いろいろあるのでありますが、これまた隣の国のことでありますし、特に関係の深い日中関係でございますから気になるところでございまして、きょうは外務省の持っておられるものを承っておきたいと思って質問しておりますから、そういう意味で、このかかわりに関する外務省側の見方といいますか情報と申しますか、そこらについて少し触れていただきたいのでありますが、いかがでございますか。
  55. 中江要介

    ○中江政府委員 結論のようなものを先に申し上げて恐縮でございますけれども、現在外務省が持っております情報では、これぞという断定的なものというのはまだ得られておりません。毛主席が亡くなられましてから約一カ月の喪に服する期間があった。この喪が明けると何かあるのではないかというようなこともいろいろ言われまして、したがって、いまいろいろの情報が出てきて不思議でないタイミングではあるわけです。その数多いさまざまの情報の中には、あるいは確度の高いものもあるかもしれませんし、ただ単なるうわさにすぎないものもあるかもしれません。そういう雑情報の中には、いま先生御指摘の江青夫人ほか三人が逮捕されたというふうな情報も外務省としては二日ほど前にすでに承知しておりましたけれども、それが信憑性のあるものかどうかについてはきわめて疑わしい。いずれにいたしましても、中国の国内情勢というのは非常に把握がしにくい。正しい、的確な情報の非常に得にくい体制の国でございますので、うわさのようなものといろいろまざって出てくる情報の中からこれが恐らく筋だろうというものはなかなか得がたい。  ただ一つ外務省としてはいま臨んでおります大きな筋は、毛主席が亡くなりましても、毛、周両首脳の指導者のもとで築かれてきたいままでの路線というものは堅持されていくだろうということについては相当方々で確認されておりますので、それはそういうふうに考えていっていいのではないか、ただ、それを執行するに当たっての執行機関としての党なり政府の主要人事、これは中国の内政の問題でございますので静観して結果を待つ、こういう考えでございます。
  56. 大出俊

    大出委員 こういう席で表立って取り上げにくい問題なんですけれども外務省でございますから、いやそれは誤報であるとか、そういう心配はないとか、あさっりそういう話になるのならそれでいいわけでございますので、ちょっと触れさせていただいたわけでございまして、深い意味はないのですが、この江青女史だとかあるいは王洪文副主席であるとか、張春橋副首相であるとか姚文元政治局員だとか、そういうような名前が挙げられたり、クーデターがどうのこうのという情報が流されたり、あるいは自宅監禁だ何だという話だという話があったり、軍との関係がこうだというのが流れたり、日中平和友好条約を目標にして進んでいる日本外交政策ですから、そこらとの関連で非常に心配になるものですから、それで、たまたま大臣に御出席いただいた機会でございましたから、外務省情報で的確なものがあればぜひ承っておきたいという気持ちでちょっと触れさせていただいたにすぎないのでありますけれども、いまのお答えからいたしますと、そんな幾つかのことが流れているけれども、的確であるというふうな情報の持ち合わせば外務省にはない、こういうことになりますか。
  57. 中江要介

    ○中江政府委員 そのとおりでございます。
  58. 大出俊

    大出委員 念のためにちょっと触れさせていただいて確かめたわけでございまして、他意はないわけであります。    [木野委員長代理退席、委員長着席]     そこで最後に、申し上げておきましたが、駐留軍の基地で働かれる方々の賃金の問題につきまして、どうしても気の毒過ぎまして見ていられぬ気が私はするわけでございます。特に宮澤外務大臣のときに私は大臣と直接お話し合いをしたこともございまして、大変に御理解をいただいて、これは何とかしようということでお取り組みを願った時期がございます。これは足かけ三年ばかり特にひどいわけでありまして、この点をきょうは小坂大臣にぜひひとつ前向きで解決を賜りたいと思います。  そこで、ひとつ最初に大臣に承っておきたいのですが、たしか私が官公労の事務局長をやっておおるころだと思うのでありますが、小坂さんが労働大臣をおやりになったことがございましたね。昭和二十八年、九年ごろだと思うのですが、ちょうどこの時期に、占領下におけるつまりPW方式なんといいましてプリベーリング・ウエージといった賃金システムなどがありましたし、そういう古い形のものを労務基本契約の方式に変えるということで、当時私、官公労の事務局長をやっておりました関係で——山田節男さんが全駐労を率いておられた、参議院議員をやっておられましてね。後に広島の市長さんをおやりになった。実はあのときにできたわけで、ちょうど労働大臣をおやりのころでございまして、だからあるいは私どもよりも実際には小坂大臣の方が御存じなんではないかという気がしたりもしていたわけでありますけれども、この当時のいわく因縁がある基本契約に基づいて今日まで過ぎてきているのであります。つまり、格差給などと言われるものは当時の形を基本契約にするときにすでにあったわけでありまして、それを認めて切りかえたわけでありますから、これは本当に長い既得権であり慣行なんでありまして、米軍基地という特殊な職場で働いている皆さんであり、当時は人が少なくて逆に方々から募集をするので個人個人をくどいて来てもらったいきさつまである特殊の状況であります。それを、アメリカ国内の予算事情その他から向こうさんの都合で、既得権は認めないとか、これは切り払うとか、首は次々に切るとか、かつて見かねて私どもの書記長の石橋が臨時措置法というものを提起をしてお認めいただいた時期がありました。これは期限が切れまして、改めてもう一遍私の時代に議員立法で出させていただきましてこの委員会で通過させていただきました。まあやれやれと思って、首切り通告は何カ月前に、給付金はこれこれ払うというようなことでようやく片づいた時期があったわけであります。せっかく雇用状況の安定を図ったわけなんでありますけれども、最近これが本当の生活費に絡むだけに見かねる状況になっているのでありまして、何としてもこれは大臣に前向きで取り組んでいただいて、アメリカ関係でございますから、解決を図りたいと思っているわけでありますけれども、お聞きになっておられると思うのですが、いかがでございましょうか。
  59. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 多年本問題に御腐心をいただいている大出さんのお話でございますが、私もいま御指摘のように労働大臣をやっておりますときに、米軍に雇用される諸君にいわゆる労働三法の適用がございませんで、どうしても労務基本契約というのをつくりたいということで、当時ハンロン少将だったと思いますが、話し合いまして、大出さん方の非常な御助力をいただきました結果ああいう形になっているわけでございます。その後大変年数がたっておるわけでございますけれども、いまの大出さんのお話につきましては、非常に貴重な御示唆であると存じまして、この点は十分ただいま御指摘の点を含めて前向きに検討させていただきたい、かように思っております。
  60. 大出俊

    大出委員 いまの労務の基本になっておりますものをおつくりいただくときのその担当の大臣をおやりいただいて大変御尽力をいただきました小坂さんでございますから、その意味で余り申し上げることがないのでありますが、現状をちょっとひっかかる問題がありますので承りたいのです。これは施設庁の皆さんの方に。  昨年来米軍との交渉が続いているわけでありますが、先般は合同委員会でというところまで来ているわけでありますけれども、いまここに私が持っておりますのは一九七五年のMLC、IHAの給与改定のときの案件なのでありますが、これは格差給を固定して、新規採用者には支給しない。向こうの提案から始まりまして、これは(6)の(a)(b)(c)などというのがございまして、これは退職手当、いまだに問題点でございまして、これは(1)のものもいまだに問題点なのです。それでこの種の問題につきまして、その後の対米交渉の経過と申しますか、時間がございませんから簡単で結構でございますが、きょうは古賀さんもお見えのようでございますから、その衝にお当たりになっているわけでありますし、どう理解をしたらいいかという問題もありますので、簡単に経過をお知らせいただきたいのであります。
  61. 古賀速雄

    ○古賀政府委員 先生のお尋ねの件でございますが、これは七月の末から現在も日米間で、AB間で討議と申しますか検討を続けておる問題でございまして、アメリカ側の提案というのは、先ほどお話のありましたように、格差給を現状固定するというような問題、あるいは退職金を公務員並みに少し切り下げろというふうな問題を提案しておりますが、これにつきましては、まだ経過途中でございますので結論を得ておりませんけれども、私どもとしては、格差給にいたしましても退職金にいたしましても、単に労務費の増高ということだけで、いまおっしゃいましたような二十数年の経過を経てできました制度を改正するということは当を得ていない、合理的でないということで、終始反論を続けておるというふうな状況でございます。
  62. 大出俊

    大出委員 格差給を切るという向こうの主張があるわけです。これに対して、なぜ切るかという主張の中に、いま外国の商社だってそこらじゅあるじゃないかとか、だから別に違った環境にはないのではないかとか、いろいろあるのだろうと思うのです。にもかかわらず、軍事基地でございますから、基地をめぐるいろいろなトラブルも起こっているさなかでございまして、働いている方はまさに日本主権下にある日本人でございますから商社とは明らかに違う状況にございまして、たとえば戦車闘争などというものもありまして、ずいぶん外務省の松田安保課長さん、さっき橘さんおいでになりましたが、吉野さんがおられぬときで、橘さんが参事官で、いまだから申し上げるのだが、橘さんや松田安保課長と私の間で、私の選挙区が横浜の方ですから、その板ばさみで苦労して、後になって、選挙のときに大分ビラを流されたりしましたが、結果的に市民一人にけが人が出ても、相模原であっても横浜であっても大変大きな問題になる。そういうふうに思って解決に努力をしたわけなのでありますが、このときの基地に働く皆さんの立場というたら大変なことなのです。それは、そこらの商社に勤めているからいいやなどという問題じゃないのです。ずいぶんこれは苦労されているわけであります。そういう特殊な事情にありまして、横須賀も私の選挙区の目の先にある基地でございますが、年百年じゅうあらゆるデモがあらわれて、基地の外からぎゃあぎゃあ言っているわけでありますから、そこで働いている方々なのですから、これは普通の状況じゃないところに勤務されている方々でありまして、商社並みに格差給要らぬじゃないかと言われてみたって、長い歴史であり既得権ですからそうはいかない。しかし、なぜそういう理屈をつけてくるかというところに問題があるわけで、なぜこういう理屈をつけてくるのか。つまり、アメリカの側で予算の枠を決めてくる。舌出すのもいやだくらいのけちな財政事情でございます。沖繩復帰問題等をめぐって、私も苦労しまして、当時いろいろアメリカ側ともやりとりいたしましたが、ここまで何も切らぬでもいいじゃないかと思うようなことがある。そういうことでございましたから、したがって、理屈は、表面上の理屈はともかく、本当のところは金だろうと私は思うのでありますが、ここらは一体施設庁の皆さんはどういうふうにお受けとりでございましょうか。
  63. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまお話しの点については、米側はいろいろな主張をしておりますが、私どもの見るところでは、最近国際的に日本人の給与ベースというのが非常に高くなってまいりまして、先生も御案内のように、米国、西独、その次に日本である。かつて日本が非常に低賃金であった時代に、銭金に糸目をつけずに日本人従業員に払うつもりであった給与水準が、それを基礎にだんだんとベース改定をやってまいりますと、いまや大変な額になっている。それが米国の予算に衝撃を与えておる。米国は、一方において軍事予算というものはむしろそう伸びておりませんから、そういう意味日本の従業員の給与が非常に重大な重荷になってきているだろう。私もそういうぐあいに見ております。口ではいろいろなかなか理詰めな説明がございますが、実体はそういうことであろうかと私は観察しております。
  64. 大出俊

    大出委員 とは言いながら、これまたずいぶんその都度苦労いたしましたが、次々に首切りを出してきた。いまなお沖繩あたりについてはまだ出す気配さえあるという。だが大臣、それにもかかわらずこれは通称OMA経費と言っているのでしょうか、アメリカ側の非戦闘員の方々経費、これも向こう側にとっては大変に大きなものになっているのです。だから、では維持部門あるいは修理部門等について人員を減らそう、いま二万五千人くらいですかね、こうやると、今度はOMA経費の方にはね返るのです。しかもその部門の今度労働条件にはね返るわけです。だからぎりぎりのところに来ているというのが、私も神奈川の横浜ですから、全国一の基地県でございましてよく知っておりますが、もうこれは無理だというところです。もう無理だということまで現実は来ている。だとすると、いろいろ言うけれども、そうそう向こうも首は切れぬ、ここまで来ているという現実をお互いに見れば、一番何が大事かというと、つまりそこで働く方々の雇用関係の安定ということだと私は思っているのです。安定させるためにはしからば何かと言えば、いろいろな理屈はつくけれども、結果的に金だ、予算だということになると思うのです。その場合に、日本の場合には、これは基本契約をおつくりになったわけですから大臣が一番御存じなんですけれども、つまりここで間接雇用の形をとっているということ、雇い主は日本だということです。そうすると、働く皆さんの側からすれば、雇い主は日本なんだから、使われているのは米軍だけれども、では雇い主なりのことをなぜしてくれないかという問題にはね返るわけです。したがいまして、その意味では雇い主なりのことをしてもらいたいという気が私もする。  そこで、いろいろな経費、直接経費あるいは間接的な経費等ありますけれども、この間防衛庁の皆さんに数字を出していただきましたら、社会保険関係に類する健康保険の保険料だとか、厚生年金の保険料だとか、雇用保険の保険料だとか、あるいは労働者災害補償保険の保険料だとか、あるいは保険料以外の経費だとか、あるいは児童手当の拠出金だとかいうふうなもの、これは四十五億六千四百万くらいあるということですね。つまり使用者が事業主負担の形で通常ならば見ている金であります。だから、地位協定の解釈だ云々だありますけれども、本来雇用主は日本なんですから、そういう意味でこの雇用主負担に類するようなものは日本側で持ったっておかしくはないのではないかという気が私はするわけでありまして、ここらの理屈は、法律との関連は別として、理屈は筋が通らぬものではないと私は思っているのですけれども、山崎アメリカ局長お見えになっておりますが、ちょっと御意見をいただきたい。
  65. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 確かに駐留軍に働いておられる方々の雇用主は日本政府でございますから、そういう点についても日本政府が配慮することも考えられると思います。ただ、この問題は地位協定の解釈の問題、あるいは実際の財政負担を伴う問題でございますので、われわれとしても関係当局と十分相談しなければならないと考えます。  ただいずれにいたしましても、この一、二年基地従業員の方々給与問題、給与に関する改定交渉が非常に難航しているようでございまして、外務省といたしましても、この問題に関しては大変関心を持っております。やはり基地が安定した形で運用されるためには、この従業員の方々の生活の問題というものは非常に重視していかなければならないと思っておりますので、われわれとしましても、御指摘の点を含めましてアメリカ側と話し合いをしてまいりたい、その点について防衛施設庁の折衝の御努力にできるだけの協力をしてまいりたいと考えております。
  66. 大出俊

    大出委員 二つだけ承って終わりたいのですが、政策意思を国が決める、つまり事業主負担のようなものを負担をしてもこれはおかしくはない、雇い主なんですから。この論理が通るとすれば、あと問題は方法論になる、手続論になる。一つは、地位協定がちょっとどうも解釈上とおっしゃるなら、これは改正することだってできなくはない。あるいは特別立法を臨時措置法みたいにつくることだってやってできなくはない。あるいは解釈運用ということでやれるかどうかという問題が残る。三つくらいあるわけですね。ほかにはないと私は思う。  そこで、地位協定に手を入れるとすれば、これは大変な影響が出てくることになる。これまた間違いない。特別立法で言えば、臨時措置法のときも、私は大蔵大臣に七回も会いましたが、苦労し抜いたわけでありまして、なかなかそう簡単でない。すると、私も従来、地位協定二十四条なりあるいは十二条四項、五項なりというものについての解釈はさんざんいろいろ議論をしてまいりました。知らぬわけではない。しかし、地位協定というものは、私が歴史的に調べてみた限りでは、例の安保国会その他でほとんど議論しないで通っちゃっているんです。岡田春夫さんがたまたま路線権問題の質問をしていますが、そのくらいしかない、国会図書館で私が調べてみても。そうすると、立法府の確定解釈は何もないんですね、この地位協定というものは。  そうだとすると、いま仮にこう解釈しているんだというのがあるとすれば、国会で、立法府で意思決定をするときに、これはこういう立法の趣旨だというものはないんだけれども、今日までの長い慣行の中で、外務省なら外務省防衛庁なら防衛庁がそう解釈してやってきたということが残っておるということなんですね。そうすると、これはやはり知恵を出し合って、どういう解釈、運用を図るかということを、法律条文、協定条文とあわせ考えてみる必要がある、こういうふうに考えるわけですよ。したがいまして、つまり雇い主が負担してもおかしくはないということである限りは、じゃあ、それをどういうふうに実行するかということについて、いま私が申し上げたような枠で少しこれは検討してみたいというふうに思っている。また御検討いただきたいと思っている。これが一つなんです。  もう一つの問題は、時間がありませんから詳しく申し上げませんが、やはり予算当局その他の関係もございますので、あるいは米側との関係もございますので、ひとつこれは大臣に承りたいのですけれども、政治的にこれを解決する、つまり外務大臣御自身の御努力をいただきたいという気がする。この間坂田防衛庁長官に承りましたら、これは私どもと全く立場は違いますけれども、長官も、基地の安定的使用を米側にしきりに私は言っている、その基地の安定的使用の一番根底は何かと言うと、従業員の安定だというわけですね。そうしなきゃ安定使用はできないというわけです。だから、立場は違うけれども、私は一生懸命やりますよというお話が、実はこの間の御答弁でありました。  どうも、本当ならば話は逆なんですけれども、私の方から申し上げているわけですから。だから、これはまともに——大臣とは安保論争などをNHKのテレビ討論で長いことやったこともありますけれども、立場が違うのははっきりしているけれども、これは奥さん、子供さんにかかわる生活問題でございまして、年末までに片づかない。やっとこさっとこ片づけた年がある。それが今度は三月までやって片づかない、年度末まで来て。とうとう五月までかかる。そういうことじゃ、一般の公務員はとっくの昔に、忘れたころ片づいているのに、それで、その上にストライキだ云々だじゃ、これはたまったものじゃないという気がするわけでございまして、したがいまして、二点目の方は大臣に、これぜひひとつ前向きで、もう基本契約をおつくりになられるときからのいきさつでございますからくどいことを申し上げませんが、ぜひひとつ、これは二度目の解決になるかもしれませんけれども、御尽力を賜りたい、こう思っておるわけでございますが、この二点ひとつお答えいただきたいと思います。
  67. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどからのお話、私も坂田防衛庁長官と同じように考えます。十分検討させていただきたいと思います。
  68. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほども申し上げましたように、この問題は地位協定の解釈の問題もございますし、財政負担の問題もございますので、いますぐどうこうということは申し上げかねますけれども、先生もおっしゃいますように、これは従業員の方々の生活にかかわる問題でございますので、われわれとしてもこの問題は本格的に取り組んで、防衛施設庁とともに米軍と折衝してまいり、妥当な解決を見出したいと考えております。
  69. 大出俊

    大出委員 これは大臣から——御存じの大臣でございますから、前向きにお答えいただいておりますので、これは大変ありがたいわけでありますけれども、私どもも微力でございますけれども、できるだけこれはしたいと思っておりますので、ぜひひとつ御尽力賜りますようお願いいたしまして終わらせていただきます。
  70. 渡辺美智雄

  71. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最初に、いま出されております在勤法について一言お伺いしたいと思います。  この内容は、今度ホーチミン市、サイゴンにある大使館とハノイにある大使館を統合してハノイに置くという内容でありますが、これを契機にして日本政府の対ベトナム外交政策の基本姿勢、これについて一言お伺いしたいと思います。
  72. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ベトナムにつきましては御承知のようなことで、われわれとしましては国交を持つわけで、したがって、大使館の設置につきましては先般決めましたようなわけでございますが、これは国会において御決定をいただかなければならぬ問題、そこで本案を提出しておるようなわけでございます。  われわれとしては友好関係を持ってまいりたい。ことに、あれだけの戦禍を受けた後でございますので、この再建復興には当然いろいろなむずかしい問題があるわけでございまして、私どもの方といたしましては、できる限り経済協力その他を通して友好を深めてまいりたい。  それから、先般国連でアメラシンゲ、これはスリランカから出ておられる国連総会の議長でございますが、アメラシンゲさんとお会いしたときにも、われわれとしてはベトナムが国連に加盟を申請されればこれを承認する考えであるということを申しました。これは先般来そういう方針でおりますわけでございますが、改めてそういうことを言っております。さような関係になると思います。
  73. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に大臣にお伺いしたいと思いますのは、日中戦争、太平洋戦争をどう見るかという問題ですね。すなわち、日本の侵略戦争と見るのか見ないのか、もし、日本の侵略戦争と見ないのであれば、その理由は何か、お伺いします。
  74. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 当時とすればそれだけの理由があったわけでございますが、それをどう見るかということよりも、私どもは政治家でございますから、過去のことをいろいろあげつらうよりも将来の関係が大事である、将来日本と中国との間に本当の友好信頼関係を持ってまいりたい、こう考えておりますようなわけでございます。  覇権というようなことも問題になっておるわけでございますが、日本はとにかく、覇権を求めない、こういうかたい決意でおるわけでございますのは、やはりそういう反省に立っておるわけです。しかし、何といいましても、いま申し上げたように今後のことが大事でございます。今後の日本という国はあくまでも平和国家として世界の中の信頼を集めていきたい。畏敬され、信頼される国になってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  75. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私がいまお聞き申し上げましたのは、現在及び将来にわたって本当に自主的外交を進める場合でも、過去に犯した外交政策その他の誤りを誤りとして正しく反省し、その上に立って初めて現在及び将来にわたる外交もできるのではないかというふうな観点で聞いておりますが、たとえば、これを侵略と見る場合と侵略と見ない場合との違いは非常に違ってきます。時の日本政府はポツダム宣言を受諾しました。そのポツダム宣言の第八項は「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と、こうなっております。カイロ宣言は明確に「日本国ノ侵略」というふうに規定しておるわけなんです。いま私がるる説明するまでもなく、カイロ宣言はやはり日本国の侵略に対してこういうことをするということをはっきりうたい、そのポツダム宣言の第八項は「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と書いてある以上、無条件にこのポツダム宣言を受諾することによって降伏した日本は、やはりこの戦争を侵略戦争と認めた上でポツダム宣言を受諾したということが当然の理解として国民は理解していると思うわけなんですが、それについて過去は問わない、将来だと言われても、基本的な問題は解決しません。これからいろいろ後でその他の問題についても触れますが、そういう意味で、ポツダム宣言を無条件に受諾した日本が、この去った戦争を侵略戦争と見るのか見ないのか、この問題を、きわめて重大であるので私は聞いているのですよ。もう一遍大臣、御答弁をお願いします。
  76. 中江要介

    ○中江政府委員 いわゆる大東亜戦争と言われたものが侵略であったかどうかということはよく議論になったわけでございますけれども、先ほど外務大臣が御答弁になりましたように、私どもの立場として、過去の戦争は侵略であったかどうかというようなことはあえて論ずる必要をまず認めておらない。といいますのは、戦争にはそれぞれの、先ほども言われましたように非常に複雑な関係があってそういう不幸な事態が起きたわけでございまして、日中間の問題について申しますならば、一九七二年九月二十九日の日中共同声明の中ではっきり言われておりますように「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」ということで、日本国の気持ちというものはここに尽きておる、こういうふうに了解しております。  いま先生の御指摘のカイロ宣言あるいはポツダム宣言、こういったものは、御承知のように連合国側が当時の政治的な状況のもとで発出した宣言でありまして、日本日本政府の意思というものはもちろん関係ございませんし、その後の日本の戦争の後始末といいますのは、日本国との平和条約、サンフランシスコ条約及び関連の諸文書によって明らかにされている、こういう立場でございます。
  77. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 日中問題についてのことで遺憾の意を表明した。中国はそういった表明をしていないことについては、この前の参議院における上田質問説明がありましたが、それに触れません。  ところで、私がいま申し上げておるのは、ポツダム宣言を無条件に受諾したこの日本が、そうすると、ポツダム宣言の第八項、これは除いて受諾しているのか、その項も含めてもちろんポツダム宣言は全体として無条件に受諾しての降伏をやっているわけだから、そうなりますと、「カイロ宣言」とここにはっきり書かれているわけなんだ。私、それを言っているわけなんです。もし無条件にポツダム宣言を受諾したのであれば、このポツダム宣言の第八項は、「「カイロ宣言」ノ条項ハ履行セラルベク」と書いてあり、カイロ宣言は日本の侵略をはっきりうたっておる。実に明らかなんだ。何も日中復交条約の問題どうのこうのという問題ではなくて、あれだけの戦争を起こし、そして、三百十万人の犠牲者を出したということまで言っておるのです。この戦争を正義の戦争であったのか侵略戦争であったのか、こういうことをはっきりさせないで将来の外交などと言ってみたところで、問題の基本的な解決はできない。これからいろいろ具体的に質問いたしますが、基本は、日本の政府が本当にその当時犯したあの侵略戦争への誤りをはっきり認め、反省し、その上に立って初めて正しい外交もできるということで、私が真っ先にそれを聞いているわけなんです。これは総理にしてもそうなんです。外務大臣は、新しく今度外務大臣になられた、そういった立場で、今度のあの太平洋戦争というものを、カイロ宣言ではっきり書かれているように侵略戦争と認めるか認めないか。それはもう全然歴史のくずかごに投げ込まれたのだ、触れぬでもよろしいといったような態度をとるのか。重要であるので、改めてまた外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  78. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本が無条件に受諾いたしましたポツダム宣言、これは「「カイロ宣言」ノ条項ハ履行セラルベク」というふうになっておるわけでございます。カイロ宣言においては、日本が戦争によって略取したあるいは盗取した、そういうものは放棄するのだ、こう言っておるわけでございます。  われわれは、戦争というものに対しては、これは二度と再び起こさないということをかたく決意しているわけでございます。したがいまして、戦争をしたということに対しては深い反省の上に立っておる、さように申し上げておるわけでございます。しかし、そのときの情勢によってああいうことが起きたということに対して、いまの私どもがいろいろ批判するということよりも、いま申し上げましたように、われわれはとにかく非常に悪かったのだ、もうああいう悪いことを二度とすまい、こういうことを言っているのでございまして、そういう反省の上に立って、将来に平和国家日本を築いていく努力をしたい、こう言っておるわけでございますので、さよう御了承いただきたいと思います。
  79. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 じゃ局長でよろしゅうございますから、カイロ宣言の中における日本の侵略について書かれている条項を読んでください。
  80. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お読みいたします。  カイロ宣言の先生の御関心の条項は三項目でございますか、「三大同盟国ハ日本国ノ侵略ヲ制止シ且之ヲ罰スル為今次ノ戦争ヲ為シツツアルモノナリ右同盟国ハ自国ノ為ニ何等ノ利得ヲモ欲求スルモノニ非ズ又領土拡張ノ何等ノ念ヲモ有スルモノニ非ズ」「右同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国ガ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満州、台湾及澎湖島ノ如キ日本国が清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」そこらあたりだろうと思いますが、この条文に照らす限りは、この連合国の意図は、日本国が太平洋戦争の結果として占領し、盗取した太平洋における一切の島嶼を返す、日本国から剥奪すること、この言葉を使えば「満州、台湾及澎湖島ノ如キ日本国が清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」その目的として、いま「日本国ノ侵略ヲ制止シ」云々という条項が含まれておる、こういう関係でございます。
  81. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま局長お読みになったように、真っ先に日本国の侵略を書いてあるのですよ。だから大臣が言われた後の方は、そういった行為によって日本が奪取した島々、朝鮮にしても台湾にしてももとどおりに返すということなんです。したがって、大臣は後の方は力を入れられたが、前の方は力を入れられてない。問題は前の方なんです。侵略、その侵略によって奪取した国はこうするということ、これは後の方なんです。だから、それがポツダム宣言の中のいわゆる八項にはっきりと書かれているから、いわゆる「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」となっているので、はっきりポツダム宣言の無条件受諾は、日本が過去において侵略を犯した、そういったことを受諾した、これをただ、いまから批判するとか評価するとかいうことはとらないんだということではなくて、現在の日本政府があの太平洋戦争を侵略と見ているのか見ていないのかということで非常に大きいかかわりがあるから私そう申し上げておるのですよ。はっきりそう書いてある。日本政府は無条件受諾されたんでしょう。そういう意味で、一体どういうふうに考えるのかというわけなんです。侵略ではなかったというのかあったというのか、これだけなんです。それ以外にありません。それ以外に聞いておりません。どうです、大臣
  82. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま私御説明さしていただきましたところをもう一度敷衍させていただきますと、ポツダム宣言において「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と書いてあることは、先生のおっしゃられるとおりでございます。ただ、その場合に、カイロ宣言を「履行セラルベク」ということの意味は、実体的な意味は、いま私が読みました後段にありますように、日本から太平洋の一切の島嶼を放す、それから満州、台湾、澎湖島のごとき島を中華民国に返還すること、それからさらには、その後に「日本国ハ又暴力及食慾ニ依リ日本国が略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルベシ」こういうのがございますが、いずれにしろ日本国の領土をこのような形で処理をするという連合国の方針を述べたこのくだりを受諾した、こういうことでございまして、先生の御引用の、先生もともと問題にしておられる「日本国ノ侵略ヲ制止シ」云々ということは、連合国として日本国の領土政策をいま申し上げましたようなことで処理をするということの連合国としての目的ということ、その観点から述べられているということでございまして、先ほどアジア局長から説明がありましたように、日本の中国に対する感情の問題、遺憾の意の表明の問題につきましては共同声明において処理せられておる、こういう関係になっておるわけでございます。
  83. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま局長が述べたのは、どういう日本政府の行為によってこの島々、この国が日本のものになったか。侵略に基づいて行われたから、こういった国々や島は当然返せということなんですね。だから、最初になぜ返さなくちゃいかぬのかという問題は、侵略であった、侵略してこういうふうになったので、その侵略の結果はこういうふうに処分すべきだ、「履行セラルベク」それは当然です。何も法解釈をあなた方に聞かぬでも、だれでもわかるような、はっきり明確に「履行セラルベク」と書かれてある。だから、侵略と認めるのかどうかという問題は、実に基本的な問題、いわゆる触れないで通れるような問題じゃないから聞いているわけなんです。  私は、今後の外交政策を進めていく場合にも、こういう過去において犯したあの日本の侵略戦争をはっきり認めるかどうか。もちろん中国に対して遺憾の意を表明した。中国は表明していない。これは何を意味するか。日本が中国に対してよからぬこと、いや悪いこと、虐殺もやったでしょう。そういうことを再びやっちゃいかぬという、外交文書として書かれているのがあれなんです。遺憾の意を表する。したがって、もう一遍くどいようだが、外務大臣はこの日中戦争あるいは太平洋戦争、これを侵略戦争であると認めるのか認めぬのか、これには大体触れたくないのかどうか、これだけはっきりさしてください。
  84. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本が中国大陸に攻め入ったというようなことは非常によからぬことであって、さようなことはもう二度としないということを誓っておるわけでございます。それ以上のことは、これ言葉のあやのようになりますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  85. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 日本の政府がああいった中国を侵しした、言葉のあやですが、事実侵して、あれだけの人的物的被害を及ぼし、そして南京事件などという虐殺もした。こういったものは、普通日本語で表現するのであれば、侵略なんですよね。これをあえて言えないというのは、何かわけがありますか、大臣
  86. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 特にございませんが、先ほども説明を聞いていただいたと思いますが、このカイロ宣言では、日本の侵略を制止する、これを罰するためにということを連合国側が言ったわけでございまして、これは連合国側のそういう意思に対して日本はこれを受諾した、こういうことですね。いま申し上げておるのは、われわれも中国との関係で、中国の主権を侵して攻め込んでいろいろなことをしたことはまことにどうも残念なことであって、こういうことは二度とすまいと考えておるということを申し上げているわけでございます。
  87. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは中国だけじゃないですね、外務大臣。いま議題になっておる在勤法にしても、ベトナムでしょう。ベトナムも侵しましたね、インドシナ半島。こういったことに対しても、どんなにベトナム人民を、ベトナムの惨禍を、日本のあの侵略軍がどういう行為をやったかということの反省、その反省の上に立って初めて日本ベトナムに対する外交の基本も実にすっきりした基本になるのじゃないかということなんですよ。これはただ単に中国だけの問題じゃなしに、現在ホーチミン市になっておりますサイゴン、これがハノイに統合されて、新しい大使館が置かれる。この場合の基本姿勢は、いま最初に大臣がお答えになりましたが、いま言ったようなベトナム人民に対する侵略行為についてもまじめに反省したい、そしてその反省の上に立って真の友好外交が成り立つという観点で私聞いている点をひとつ理解してもらって、この関連で前に進めます。  この侵略戦争の責任者として極東裁判所で裁かれた戦争犯罪人に対しては、今日もその責任を追及すべきであると思うかどうかという問題なんです。極東裁判がありましたね、そのときにこれは侵略戦争の責任者として極東裁判所で裁かれたわけなんです。そして、その戦争犯罪人に対しては今日もその責任を追及すべきであると思うかどうか、これについて大臣のお答えをしてほしいのですが、太平洋戦争を侵略と見ないという考え方は、極東裁判を否定するもの、これにつながるわけなんです。したがって、現在でもこの戦争犯罪人の責任は追及すべきであるのかどうか、これはもう不問に付した方がいい、こんなのは過去の問題で、あえて問題にならぬという考え方を持っているかどうかについて、大臣どうお考えですか。
  88. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 戦争犯罪の問題につきましては、先生御承知のようにサンフランシスコ平和条約の第十一条で、条文をそのまま読みますと「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」云々という規定がございまして、要するに極東裁判所の裁判を平和条約で受諾した、こういう関係になっております。
  89. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それで、大臣に聞いているのは、繰り返しますが、その場合に、裁かれた戦争犯罪人、今日もこういった者の責任を追及すべきであると思うのかどうかという問題なんです。
  90. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま御説明申しましたように、サンフランシスコ平和条約でその裁判を日本国は受諾しておりまして、裁判の問題はこれで処理済みであるというふうに考えております。
  91. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 裁判の問題は処理済みであるが、いまでも戦犯人、これは日本だけですね、戦争犯罪人、裁かれた者がうようよ、と言うと語弊がありますが、事実いるのです。こういったのを、今日もその戦争犯罪人の戦犯責任を追及すべきであると思うのか、もうこれは全部片がついたというふうなことになっているのか、それを聞いているわけなんです。
  92. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生が戦争犯罪人とおっしゃっておられるその意味が必ずしも私によくわからないのでございますが、連合国が行ったところの戦争犯罪の裁判は、この平和条約処理がなされておるということでございます。
  93. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 極東裁判が、すでに御承知のように戦勝国の裁判として、原爆投下を不問に付した。これは日本国民に対する犯罪を取り上げなかったという多くの欠陥を持っています。私はそれを知っております。だが、平和に対する罪、侵略戦争の共同謀議として東条英機以下を裁いたことは正当である。いま局長も言われたが、サ条約第十一条は、極東裁判など戦犯に対する裁判を受諾することを規定している。これは否定することはできないんですね、受諾していますから。どうですか。
  94. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 まさに、十一条で受諾いたしました限りで、否定することはできないという関係になります。
  95. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま局長が読まれたこととも関連しますが、サンフランシスコ平和条約第十一条は「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」ここで、第十二回国会、これは昭和二十六年十一月十三日、これに対して大橋法務総裁が答弁しております。十一条により裁判を受諾するということは、被告人に対して申し渡された裁判を合法的かつ最終的なものとして日本国政府が承認するという意味を含んでいる、したがって、確認している裁判について日本政府がその手続、内容についての適当でないという点を指摘して修正を求めるという方法は原則的には閉ざされている、という答弁をしております。いまでもその考え方に間違いございませんか。
  96. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 外務省に属します私がその問題、裁判の内容についてとやかく申し上げるのはどうかという気はいたしますが、当時の法務大臣がそういう御答弁をされたのであれば、そのとおりであろうと考えております。
  97. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 本会議の時間が迫っておりますので、私のいまの質問は、引き続きまた午後このことにつきましてやることにして、終わります。
  98. 渡辺美智雄

    渡辺委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、この際、暫時休憩をいたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時三十四分開議
  99. 渡辺美智雄

    渡辺委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  増田行政管理政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。増田行政管理政務次官。
  100. 増田盛

    ○増田政府委員 行政管理政務次官を拝命いたしました増田盛でございます。今後とも何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  101. 渡辺美智雄

    渡辺委員長 在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題として、質疑を続行します。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。瀬長亀次郎君。
  102. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 午前中に引き続き、戦犯関係についてお尋ね申し上げます。  正式の名称は、戦争犯罪及び人道に対する罪に対する法令上時効の不適用に関する条約、いわゆる戦犯時効不適用条約、これについて外務省はいままでどういう態度をとられたか、これを批准する意思はないか、この点についてお答え願いたいと思います。
  103. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 突然のお尋ねで、実は私詳細心得ておりませんけれども、いずれにしろ当面その条約を批准するという考え方は特にとっておりません。
  104. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 おわかりにならないで批准するつもりはないというふうなことになると、ちょっと困るのですよ。いまあなた、事実持っていると思うのだが、これは一九七〇年十一月十一日に効力を発生している。もし批准ができないとすれば、どういう意味でできないのか。これは戦犯という特別な——再び侵略戦争を起こしてはならぬ、平和への罪、人道に対する罪ということで極東裁判が行われたことは当然であります。これに対して、いまの戦争犯罪への時効不適用のための国際条約について賛成であるのか、賛成であるが何らかの関係で棄権したのか、あるいは批准していないのはどういう意味で批准していないのか、そこら辺を明らかにできるんじゃないですか。
  105. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私の記憶にございます限りは、その条約は、主としてヨーロッパにおけるこの前の世界大戦の最中に生じた事態、具体的に言えば、ナチの政権下の行為に対して戦争犯罪として追及されている人たちがまだあり得るということで、その人たちの戦争犯罪の時効が停止されないのだということを条約によって律しようというような趣旨でつくられたものではなかったかというふうに記憶しておりまして、主としてそこで考えられておりますのは、ヨーロッパにおける事態の処理ということであったかと記憶しております。そういう意味で、基本的にわが国といたしましては、戦争犯罪の問題は、少なくとも政府に関する限りは平和条約の第十一条によって処理済みであるということで、特にいまのような条約の適用ということを考える性格が現在のところない、そういう意味を申し上げたわけでございます。
  106. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま条約局長さんは、余りよくわからないでの答弁であるように聞いております。実際わかっておりませんので、これについての質疑は保留します。  次に国際人権規約がありますね。これは世界人権宣言を補完する国際人権規約であるのですが、三十年近い曲折を経てやっとことし発効した。で、日本はこの国際人権規約に対して、どのような方針で臨んでおるのか。一つは、賛成か反対かどうか。そしてこの件はすでに日本人権協会あるいは有権者同盟など、日本の国民の間でも早目にこれは批准してほしいという世論が高まっているわけです。そういった意味で、この人権規約についてどういう姿勢を外務省はとっておるのか、賛成か反対か、賛成であれば批准するかどうか、その点を明らかにしてほしいと思います。
  107. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 主管局長がただいまちょっと席に見えておりませんので、とりあえず私からお答え申し上げさせていただきますが、この問題につきましては幾多の機会に御質問がありまして、その都度政府側からいろいろなお答えをしているわけでございますが、基本的な趣旨を申し上げれば、これらの条約、二つ、A規約とB規約とあったと思いますが、その条約の目的とするところ、趣旨とするところについては日本国として何ら異議はない、むしろ賛成でございます。  問題は、これらの条約日本の国内において外国人に対する一定の待遇を規定しておる。たとえば、外国人にも教育の権利を認めるとか、それから社会保障上のいろいろな利益を均てんさせるとか、そのような問題がありまして、わが国の従来の国内体制外国人に対する待遇ということを当然には想定していないでできておるという事態がございまして、そういう状態のもとにいわゆる外国人の待遇を与える条約を締結するとなれば、その国内体制そのものを相当抜本的に見直して、それに対する十分な手当てをする必要がある、そういうようなことがありまして、関係各省においていろいろ御検討を願っておるという状況でございます。
  108. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、この批准については別に基本的に異議があるんではなくて、いまのようないろいろな事情で各省で検討した上で、近い将来国会に出して批准するというお考えはあるわけなんですね。
  109. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま申し上げましたように、これらの条約趣旨とするところについて基本的な反対があろうはずがないわけでございます。問題は、ある条約に入るとなれば当然にそれに対する国内法上の準備、国内体制の準備というものを整えなければ入れないわけでございます。そういう準備が早急にできるものかどうかという点をいろいろ関係各省に御検討願っている。ただ、いま申し上げましたように、問題の性質が非常に広範かつ相当むずかしい問題を含んでおるものですから、それらの各省における検討がそう簡単に済むかという点になりますと、必ずしも楽観は持っておらないわけでございます。いつごろになればどういう手続がとれるかという点につきましては、外務省といたしまして当面特定のめどを持っているわけではない。ただ、これらの条約趣旨には賛成であるということで各省の御検討をいただいておる、こういうことでございます。
  110. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この人権の問題は、現在憲法にも基本的人権の原則がありますし、法的にも基本的には憲法が保障している問題で、進んでこういった国際人権規約のようなものには賛成するだけではなくて、むしろ日本が率先して批准を求めるような前向きの検討をやる必要があるんじゃないか、私、そういった意見を持っていますが、どんなものですか。
  111. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま申し上げましたように、私どもといたしましては、関係各省の御検討を鋭意お願いをしているわけでございます。そういうことで、ただいま現在、いつその条約の締結の手続をとり得るか、その点についての具体的なめどを持っているわけではございませんけれども、鋭意御検討を願っておるということで御了承をいただきたいと思います。
  112. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、核の先制使用の問題、さらに安保条約あるいは在朝鮮米軍の問題などについて質問したいと思いますが、これは大臣が来られてからやった方がいいと思いますので、最初に、これはアメリカ局長にお尋ねした方がいいのじゃないかと思うのです。  最近、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、それから出砂島、これも地位協定に基づく共同使用というのが何か決まったように聞いておりますが、このいきさつと目的ですね、これなど、御回答をお願いしたいと思います。
  113. 銅崎富司

    銅崎政府委員 いきさつと目的についてお答え申し上げますが、キャンプ・シュワブとキャンプ・ハンセンは、沖繩で出ます廃弾、この処理をやるということで、自衛隊が県の委託を受けて廃弾処理を実施することになっておるわけでございますが、この廃弾処理をする場所が米軍演習場でないとできないということでいろいろ米側と折衝しまして、キャンプ・シュワブにつきましては五十年の十二月四日、ハンセンも同日でございますが、この演習場を、沖繩県から、県内で見つけられました廃弾を処理するという目的で、二4(a)に基づく共同使用をいたしております。  それから出砂島訓練射爆撃場でございますが、これは五十年の十一月の六日でございますけれども、自衛隊の標的を回収するために、出砂の地域に落として回収するということで、米側との共同使用が認められております。  目的と経緯はそういう状況でございます。
  114. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この出砂島の共同使用はいつからですか。
  115. 銅崎富司

    銅崎政府委員 五十年の十一月六日からでございます。
  116. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 現在、航空自衛隊が標的の投下及びその回収のために共同使用しておる。現在使用中ですか。
  117. 銅崎富司

    銅崎政府委員 現在も使用いたしております。
  118. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま、演習、投下訓練をやっていますか、自衛隊。
  119. 銅崎富司

    銅崎政府委員 御質問意味がよくわからなかったのでございますが、自衛隊では、この標的というのは、航空機で引っ張りまして、それに向かって別の飛行機が射撃練習をするわけですが、その標的をこの出砂の射爆撃訓練場で投下して回収する。ですから、これは自衛隊で現在もやっておるわけでございます。
  120. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私がこれを聞きますのは、伊江島の射爆場と出砂島の射爆場は、ともにアメリカの嘉手納基地にいる第一八戦術戦闘航空団、これが核模擬弾を投下訓練した。この事実は、投下された核模擬弾の実体を回収し、さらにこれは実物をもって証明されているものであるわけなんです。それで、出砂島も伊江島と同じように、核模擬爆弾の投下訓練が行われておるわけなんです。そういったような射爆場を共同使用して、そして何か聞くところによると、伊江島は代替地が決まれば解放するといったようなこともあるわけなんですが、それとの関連性があるのですか、ないのですか。いわゆる出砂島、これを重視して共同使用も認める、それで伊江島がもし解放されたならば、そこをむしろ強化するといったような前提に基づいて共同使用の中に入れたのか、そこら辺ははっきりしていますか。
  121. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまお尋ねのような両者の関連というものは全然考えておりませんし、ございません。
  122. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはアメリカ局長にお答えしてもらいたいのですが、伊江島の射爆場の解放の問題は、何か代替地ができたら解放するといったようなことが日米協議委員会ですか、そこで決まったように聞いておりますが、それは決まってから現在はどうなっているか、そしていきさつを説明してください。
  123. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ことしの七月八日に開かれました第十六回日米安保協議会におきまして、沖繩の施設区域の整理統合について合意を見たわけでございます。その一つとして、伊江島補助飛行場の返還の問題が取り上げられておるわけですが、これに関しましては、いま仰せのとおり、これの代替施設の建設を条件として返還されることになっております。ただ、その代替施設をどこにつくるか、その代替の射爆場をどこにするかということにつきましてはまだ具体的に決まっておりませんし、現在この問題に関して日米双方の専門家の間で技術的検討を重ねておる段階でございます。
  124. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大臣がお見えになりましたので、最初に核の先制使用問題について大臣質問します。  第一番目に、九月二十八日に本会議で共産党・革新共同の金子議員が質問しました。その中で、韓国での核の先制使用問題、三木総理は「シュレジンジャー氏も朝鮮半島に核兵器使用はまず考えられないというような発言になっております」という答弁をしております。外務大臣として、これはいつどこでシュレジンジャーがそういったような発言をしたのか、シュレジンジャー自身は先制攻撃をするという発言をした人なんですが、それについてお答え願いたいと思います。
  125. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ベトナム情勢が急変しました直後、朝鮮半島に一時緊張が見られたことは事実でございますが、その際に、シュレジンジャー前国防長官が一般的な問題として、核の先制使用の可能性は排除されないということを言ったわけでございます。それが朝鮮半島における核の先制使用の問題としていろいろ報道されたことは承知いたしております。ただその後、朝鮮半島の情勢も大分変わりまして、そういう後の段階において、たしかシュレジンジャー国防長官が日本に参りましたときに、去年の八月の終わりでございましたが、その参りましたときに、朝鮮半島において核の先制使用が行われるようなことはまず考えられない、たしかアンライクリーというふうなことを言ったと記憶しております。
  126. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 シュレジンジャーは前言を取り消して、核の先制使用をしないと言っているのじゃないんですね。表現は、朝鮮半島には核を使う状況にはいまないと言っているだけで、前の先制使用の発言を取り消して、核の先制使用をこれからしないんだというふうなことは言っておらぬわけなんです。ところが三木総理は、それに逆のことを言っているわけだ。私はそのことを聞いているのですよ。これは総理が言っていることですから非常に重視しなくてはいかぬし、後でいろいろ問題を出しますが、核問題は大変なことになっておる。
  127. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ちょっと御質問趣旨を十分理解し得なかったのでございますが、もう一回おっしゃっていただけませんか。
  128. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 シュレジンジャーの言っていることは、朝鮮半島には核を使う状況にはいまないということを言っているのであって、核の先制使用をするといったような発言を取り消したのではないんだということなんですよ。
  129. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 核の先制使用という問題に関しましては、普通、戦争が始まった後に、通常兵力による大規模侵攻を防ぎ得ないような場合に、敵味方を通じて初めて戦術核兵器を使用するというふうに一般的に考えられております。    〔委員長退席、加藤(陽)委員長代理着席〕 そういう問題としての先制使用の可能性は一般論としては排除されないということをシュレジンジャーは言っておるわけでございます。
  130. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ことしの三月二十五日、米国による核兵器先制使用に反対する決議案を審議する下院国際関係委員会の国際安全保障・科学問題小委員会で、米国務省のベストという政治軍事問題局長は次のように発言しております。核の先制使用を否定したことはないと。日本政府はアメリカのこのような危険な考え、唯一の被爆国民である日本国民の立場に立って、そういう核先制使用政策をやめさせるために、アメリカにむしろ申し込む必要があると私は思うのですが、大臣、どうお考えですか。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 核兵器のこと、戦争抑止力というものはやはり存在しているわけです。ただ、核兵器というものが使われました場合の惨禍というものはわが国は身をもって体験しておるわけです。でございますからして、わが国としては核兵器を全廃に持っていくためにやはり核実験の反対をやっておるわけです。しかしながら、全体の抑止力との関係において、SALTその他の問題は一方において米ソの間で話し合われておりますけれども、核保有国においてこれをやめるという形にはなっておらないわけですね。そういうことでございまするので、ただいまの御質問に対してわが方はどういうことかと言われると、わが方としては核兵器は全廃されることを望む、そういう考えを持っておるというふうにお答えをするわけであります。
  132. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま申し上げました局長の証言ですが「核兵器の戦術的使用を原則的に排除できない」これを強調した上で「限定的な政治、軍事目的達成のため、限定的な核兵器使用の選択を維持する必要がある」と言明し、さらにベスト局長は「米国が核兵器使用の能力と意思を持つことこそ戦争のぼっ発を防ぎ、また戦争が核破滅といわれる段階にまで進むことを抑制するうえで、基本的な要素となるもの」ということを核の先制使用の問題に関して言明しております。  これと関連いたしまして、きょうの新聞、もう各紙に出ておりますが、これは「米で原爆投下ショー 当時の操縦士が出演 B29飛ばし広島再現  模擬爆弾キノコ雲まで」というふうに報道している。これはテキサス、ハーリンゲン発APで、ほとんど全紙に大々的に報じられています。それで、この操縦した人、すなわち広島に原爆を投下した男は退役のティベッツという人だが、こんなことまで言っておる。「原爆投下当時と比べると、きょうは、あまり心配はなかった。四五年の原爆初投下のときには、特別感慨も抱かなかった。私にとっては軍人としての任務だったから、成功したので、ほっとした。原爆投下を指揮したことを気に病んで眠れなかったことは一晩もなかった。白髪があるのは、仕事のストレスのため」と、これこそ挑戦的な言葉を述べております。しかも、日本は原爆の洗礼を広島、長崎で受けている被爆国なのです。このような形でいわゆる原爆投下ショーがやられている。これに対しましてどうお考えになるのか。まず第一にこの点について外務大臣のお気持ちをお聞きしたいのです。
  133. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も実はけさから忙しくて余り新聞を詳細に読んでおりませんが、わが方にとりましては原爆とキノコ雲というものはまさに悪夢のごときものであります。そういうものを淡々とやられてはかなわぬ、二度と原爆は困るという非常に強い気持ちを持っております。私の気持ちを聞かれても、よく新聞を読んでおりませんものですから、読んだ上でまた感想等を申し上げることにしたいと思います。
  134. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これを見てください。これは各紙に出ている、こんな大きい見出しで。大臣はお忙しいことはわかりますが、核問題についてこのような大々的な報道がある場合に見逃すということ自体、核兵器の完全禁止を求めている国民の気持ちが全然わかっていない。さらに国会でも決議しているわけです。  いま私、その話をしましたが、三十一年前と同じB29なのです。広島に原子爆弾を投下した米軍の退役将校が、実際にB29を操縦して模擬原爆を投下しておる。当時を再現する、この問題なのです。そして三十一年前の広島、長崎に投下された原爆でいまなお三十数万の日本国民、被爆者が本当にむしばまれて苦しんでおる。いまごらんになったと思うのだが、これはごらんになるならぬは別として大変な原爆投下ショーなのですよ。これは日本国民だけではなくて、世界の平和と安全を求めておる世界の国民に対する挑戦だと思うのです。このような挑戦的なことを、しかも模擬の原爆を使い、B29を使ってやっておる。これは常識では考えられぬようなことでしょう。このようなことはやっては困ると、アメリカ大統領に申し出る必要があると私は思うのだが、大臣どうお考えですか。
  135. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私、実はこの催しが政府の主催のものであるかどうかという点ではっきり見ておりませんでしたので、先ほどのように申し上げたわけでございますが、これは民間の航空ショーだということであります。しかし、いかに民間の航空ショーであるにしても余りに無神経過ぎる、人の気持ちを知らないにもほどがある、はなはだ不快の念を禁じ得ないということを申し上げておきます。
  136. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの大臣の言葉を了としますが、さらに進んで、いかに民間であってもこのような挑戦的なことはやってもらいたくないというぐらいはアメリカ申し出る必要があると思うのだが、どんなものですか。
  137. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 われわれに与えた原爆の惨禍というものについてわれわれはあらゆる機会に言っておるわけでございますから、この事柄自体ははなはだ無神経であり、どうもはなはだ不愉快なことでありますけれども、政府としての行動ということでございますから、これはよく実情を調べた上でまた考えたい、適当なることをいたしたいと考えております。
  138. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この点については、特に核の先制使用の問題とも関連して、アメリカ政府が核の先制使用の問題を含めていかに核戦争の準備を怠っていないかということを証言するものであると思うので、大臣、積極的にこの点を早目に調査して、アメリカに強硬に申し出るということを希望しまして、次に進みます。  日米安保条約と日韓条約との関係でありますが、これは、在韓米軍撤退問題に関する米国務省の報告が公表されておって、フォード大統領が九月二十九日に議会に提出したものですが、この中で注目されるのは、いわゆる在韓米軍の撤退問題について、特に日本との関係を重視して、日本政府が駐留継続に賛成しており、すなわち在韓米軍の駐留に賛成しており、早期の重大な削減は日本の安全保障と日米安保条約の信頼性についての日本国内の懸念を高めると、在韓米軍の撤退と日本安保条約との絡みを具体的に指摘している。これは初めてなんですね。大統領は、安保条約の問題、これとの関係を言っておりますが、とりわけ日米安保条約の信頼性について報告したのは初めてなんですね。これは米韓条約、この問題は米韓条約でいいでしょう。それで日米安保条約との関連でその信頼性について触れたのは初めてなんですが、これは一体どういうことになっているのか。いわゆる日米韓軍事一体化の具体的なあらわれであるというふうに受け取れないこともないわけなんです。これは初めての、報告の中での問題なんです。
  139. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 われわれといたしましては、このフォード大統領の報告書の内容を特別に新しいものとしては受け取っておりません。日米安保条約も、その前文におきまして「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」というふうに書いておるわけでございまして、日米両国ともに極東における平和と安全というものについては共通の関心があるわけでございます。したがいまして、日本としてももちろん朝鮮半島における米軍の駐留問題に関心を持っているということはあるわけでございまして、その点、アメリカもその問題について日本といろいろ相談していくということは当然あることであろうと思います。
  140. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの信頼性の問題に触れて質問したいと思うのですが、在韓米軍を削減する場合には日本政府に相談してやってくれといったようなことを、日本政府はアメリカに何か要求したことがあるのですか。
  141. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 そういうふうな明示的な形でアメリカと話し合ったということは私は承知しておりませんが、昨年の八月、三木総理がワシントンを訪問されてフォード大統領と話し合われましたときに、その後のナショナル・プレス・クラブにおける演説で、朝鮮半島における米軍の駐留は必要であると考えるというふうなことはおっしゃっておられます。
  142. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの大統領の報告は、それに関連して、日米安保条約の信頼性、これに関するのでということになったのか、それと別個な形で、切り離されておるのか、そこら辺はどう判断しますか。
  143. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 いま申し上げましたように、総理がナショナル・プレス・クラブにおける演説で、現在の情勢のもとにおいては朝鮮半島に米軍が駐留することは必要であると思うというふうに言っておられるわけでございまして、その意味において日本側が韓国における米軍の駐留について関心を持っておるということは事実でございます。その意味でフォード大統領の言っておることと関連はあると思います。
  144. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 結局結論として言えることは、日米安保条約日本の安全のため、アジアの平和のためとだんだん拡大されておりますが、とりわけベトナム後は、安保条約に基づいて提供された日本の基地は、むしろ朝鮮にその照準が向けられ、日米韓軍事同盟が次第次第に一体化の方向で強まりつつあるということの実態をさらけ出しておるというふうに私は考えます。  そこで最後に、日本政府は、進んで在韓米軍はずっといてほしいということを申し入れたのか、あるいはこれからもまだ申し入れようとするのか、そこら辺は外務大臣いかがですか。
  145. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 平和を保つためには、すべての関係者が心から平和を望んでいるということも非常に必要でございますが、それと同時に、平和が保たれるように防衛力が整備されておって戦争ができない状態になっているということも非常に必要な点であろうと思うのであります。いま朝鮮半島の状態を見ますと、戦争の起きないような力の均衡関係がある、かように思うのでございまして、そういうことは平和を保つために必要である、こう考えております。
  146. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、きょうの閣議で、現在沖繩だけに適用されている公用地等暫定使用法が来年の五月十四日に期限が切れ、その穴ができるといけないので埋めるために、新しい——土地強奪法とわれわれは呼んでおりますが、これがきょうの閣議で決まったと聞いておりますが、正式の名前はどうなっておりますか。
  147. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまお尋ねの法案は、正式には沖繩県の区域内の駐留軍用地等に関する特別措置法案ということになっております。
  148. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはきょうの閣議で決定しましたか。
  149. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 決定いたしました。
  150. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これについて、概略でいいと思いますが、とりわけこれは安保条約に基づく問題もあり、自衛隊の問題もありますので、閣僚としての外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  151. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 大臣からお答えがあるかと思いますが、担当の役所として一応本法案考え方を申し述べますと、防衛施設庁は従来から施設の境界の明確化ということについて努力してまいりまして、早期かつ適正に行われるように、施設内の土地について境界が明確になるようにいろいろな施策をやってきております。今般、この法案において国が行う施策を明らかにされ、境界の明確化の一層の推進を図るようにということでこの法案が閣議決定されたのでございまして、私どもとしては関係機関といろいろ協議の上、努力をいたしたい。同時に、先ほど来お話がございましたが、日米安保条約の関連でこれを有効に機能させ、日本の安全を確保するために必要な駐留軍などの施設を推持することは、どうしても日本にとって必要なことでございます。この法案は、を明らかにするということとともに、施設の安定的な使用を確保しようということをあわせ考えておりますので、そういった性質のものとして、今後私どもは、この法案の御審議がいただけるようになることを願っておるわけでございます。
  152. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いま防衛施設庁長官からお答えがありましたとおりでございます。私どもとしては、一日も早くこの法案が十分御審議をされて可決されるようにお願いをいたしたいと思っておるわけであります。
  153. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私、この前の委員会でも、この法律は現在の日本国憲法にも違反し、さらに、とりわけ沖繩県民を初めとする日本国民の安全をむしろ脅かし、戦争のための基地を一段と強化するということで、平和を願っている国民は断固反対しております。  私、この前の内閣委員会で、アメリカ日本が沖繩の現在の基地を接収した段階を四段階に分けて申し上げました。一段階の問題もまだ質疑は済んでおりません。それをこれからやりますが、一段階は外務省は、民法に基づいて行ったということであるが、民法ではなくて、その当時の国家総動員法に基づいて、地主の土地を軍事権力でもって接収し、さらに強奪した、これが第一段階である。  二段階は、一九四五年、アメリカ占領軍が沖繩を制圧するに至った段階で、本当にアメリカの占領軍の軍事権力をバックにして、武力をもって土地を強奪し、日本軍が強奪した土地に馬乗りをして、さらにそれを押し広げた、これが第二段階。  第三段階は、祖国復帰が実現する段階で、現行法が七一年に強行採決されて現在に至っておる。  四段階が、きょうの閣議で決定されたという強奪法である。沖繩県民を挙げて反対しているし、私も断固反対します。  これは中身がまだ明らかでない。資料も渡されていない。私はこの前委員会資料を要求したのでありますが、渡されていないので、第一段階の継続として、この前の委員会で、たしか大蔵省は、日本軍が使用した土地は国有地になっており、これは民法に基づいての売買契約で行われておるといったような答弁がなされておりました。民法に基づいて国有地になっておると言われましたが、市町村別の問題は抜きにしまして、民法で売買契約が成立して国有地になったとすれば、やはり地主との談合に基づく契約があったと考えます。とりわけ読谷村、宮古の飛行場の跡地、もっとたくさんありますが、この二カ所についてどのような取り決めをし、契約をし、さらに土地代は現金で払われたのか払われなかったのか、払われなかったとすればどうするか、この実務的ないきさつから明らかにしてもらいたいと思います。
  154. 秋山雅保

    ○秋山説明員 ただいまの御質問でございますけれども、実は先ほど至急調べてみたのですが、ちょっと間に合いませんので、恐れ入りますが、次の機会に答弁させていただきたいと思います。
  155. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 間に合わなかったというのは、あなた方に資料がないのですよ。事実は、全部あなた方の民法に基づくものであるということを反証するものが出ているわけです。おととい読谷村の地主会長に会い、その当時の実情を聞き、さらにこの前持ち出しましたのはこれなんですよ。これにも明らかに第三十二軍参謀長、これが出したのがあるのですよ。これの中にも、軍事権力でやった、しかも総動員法に基づく勅令第九百二号に基づいて行ったということが明らかになっているのですね。そして債券が出ていますよ。「大東亜戦争」と書きまして、戦時債券、十五円とか五円五十銭とかいうふうなのが出ている。これが現実なんですね。これをいままで大蔵省は国有地と言っていたわけなんです。ところが、その当時の参謀長から命ぜられた神参謀も釜井参謀も八原参謀、これは高級参謀なんです。その当時の大佐です。この証言も、戦争が済んだら地主にお返しすることを約束しており、厚生省の当時の援護局長がまた認めているわけなんです。これはその当時金を払っていないというのが現実なんですよ。そうなった場合に、この前防衛施設庁長官に聞いたら、いま提案しようとする土地法案と関連がないと言っておりましたが、関連があるのは、いまこれから始まるわけなんだが、万一国有地であったものが私有地になった場合に関連してきますよ。国有地として現に米軍あるいは自衛隊で使っておるものがあるかどうかは別として、とにかくこれが国有地から私有地になる場合には関連してくる。そこで、民法に基づいてこれが登録されているということは、大蔵省がはっきりこの前の委員会で言っているのですよ。民法というのは大体売買契約でしょう。国なら国を甲として、これと地主とで、畑であれば坪当たりの単価幾ら、原野であれば幾らというふうに相談し合って、そして合意したときに民法の手続で登録するのでしょう、手続は。それはいかがですか。
  156. 秋山雅保

    ○秋山説明員 仰せのとおりでございます。
  157. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そのような手続が行われているという証拠、いわゆる当時の書類をお持ちですか。
  158. 秋山雅保

    ○秋山説明員 実は沖繩につきましては、大部分が戦火でもって焼かれてしまいまして、資料の大部分がなくなっているわけでございますが、私どもで調べた範囲、ごく一部でございますけれども調べた範囲では、登記簿上取得原因が売買と書いてあるというふうなものが見つかっております。領収証も一部見つかっております。その辺から通常の売買であったであろう、このように考えておるわけでございます。
  159. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 政府は、都合のいいのは集めて、都合の悪いのは集めていないというのが現状だ。ちょうどピンポン玉のようで、防衛庁に聞いたら、防衛庁そんなことはわからぬと言うし、大蔵省に聞いたら、大蔵省は実務的に登録されておることはわかっておるがその当時はわからぬ。法制局に聞いたら、法制局は法解釈をするのがわれわれの任務であってその当時のことはわからぬ。だんだん調べたらこういった本まで出てきて、これは防衛庁が出した本です。正式にはこれは「戦史叢書沖繩方面陸軍作戦」防衛庁が出しております。この中で全部作戦の実態が書かれています。だれが読谷飛行場に行って、いわゆる北飛行場、中飛行場、それから宮古飛行場、八重山飛行場へ行って、どの参謀がやったかということもちゃんとここに書かれている。そして、そういった人々が実はそういった時代——十九年なんですね。もう二十年にはアメリカの占領軍が上陸して制圧されたというふうな段階なんです。そういった段階で、売買どころの騒ぎじゃないんだということもはっきりし、それでこの前厚生省の係がはっきり読んだわけなんです。そういった実情がはっきりしておるわけなんです。問題はきょう提起したのじゃないのですよ。ずっと前に提起した。当然伊江島飛行場もそうなんだな。それから、いまの嘉手納飛行場の周辺である読谷飛行場、またアメリカが勝手にアンテナを構築しようとしていまあの飛行場の地主が二百名余り座り込みをやっているのですよ。そういうあなた方が民法に基づいてやったと言うのであれば、その証拠をそろえてやってくれ。あなた方と討論しておるのじゃないですよ。実務的に調べると何百人の地主が読谷でおり、それで収用された土地は七十町歩とはっきり出ておるわけです。そうなると、地主が何名おり、どういう契約を結ばれて民法に基づいて国の所有になったかということを追求するのは政府の責任じゃないのですか。その当時地代を払われていないということも私は言いました。債券も手にある。債券というのは御承知のように名前が書いてありません。そういうことも言ったにかかわらず、いままでこれはほとんど具体的には説明ができない段階なんです。説明できるのは、いま言ったようにアメリカ占領軍のこれは高等弁務官の土地諮問委員会なんですが、諮問委員会ですら——この諮問委員会アメリカ委員三名、以前は琉球と言っていたのですが、琉球政府時代の法務局長を含めて三名、六名で構成されて、その委員会ではっきり、これは日本の総動員法に基づく勅令九百二号、これに基づいて行われたものであり、土地代も払われていない、だから西原飛行場とかあるいは宮古飛行場は早く返すべきだ。それに基づいて西原は返されました。宮古は依然として返されていない。読谷村も同じケースである。ほとんどそういうケースなんです。したがいまして、これははっきりけじめをつけないと、この公用地は日本の軍事権力をもって略奪した土地なんです。その土地をさらに今度は拡大して米占領軍がやってきた。占領軍は当時あの陸戦法規、とりわけヘーグ陸戦条約、これを守って略奪を禁止されている。あれはほとんどが略奪したんだ。私この目で見て体で知っております。これは後で証言しますが、はっきり言えば、あの那覇飛行場があるでしょう。それの具志部落、これはもう二個中隊、三個中隊が来て毒ガスまでまいてやったんですよ。さらに、いまの那覇上ノ屋にある米軍住宅地、これは銘刈です。銘刈部落の墓地までブルドーザーで引き飛ばしてつくられたのがあのいまの土地なんです。さらに伊佐浜、あの土地はいまアメリカの海兵隊のモータープールに使われている。読谷がしかり、嘉手納がしかり。全部と言ってもいいほど、伊江島を含めて全部、アメリカの占領軍の軍事権力に基づき、戦車を動員し、機関銃が火を噴こうとするような威圧のもとで行われた。これはアメリカ占領軍が、国際法規ですら禁じている略奪をやった。  次は、この土地を七一年にいわゆる公用地等暫定使用法なる名前で引き続きそれを合理化し合法化していったというのが現在である。そうして、本年五月十四日これが期限切れになるので、引き継ごうとしてきょうの閣議で決定する。まさにこれは、布告でもってアメリカ占領軍は沖繩県民の土地を略奪した、今度は布告以上の過酷な、地籍を明確にするといったような衣をつけて、実際は自衛隊、米軍が安全に基地を確保できるような方法をいま進めている。  もちろん断固としてこれに反対しますが、時間が切れているそうでありますので質問はこのぐらいでやめます。そういった意味日本共産党は反対をしますが、この反対する場合に、いま言ったような日本軍が強奪した姿をはっきりさせなくちゃいけません。それで地代も払っていない。払わなくちゃいけません。米軍のあの不法な占領時代における請求権を放棄した。この請求権を放棄したのは日本政府だ。日本政府またそれに償うべきものを出さなくちゃいかぬといったようなことで、これは断固として今国会に出してはいかぬ。こんなような不法不当な、占領軍が出した布告、布令以上に過酷な土地強奪法だということを指摘して、私の質問を終わりたいと思います。
  160. 加藤陽三

    加藤(陽)委員長代理 鬼木勝利君。
  161. 鬼木勝利

    鬼木委員 これはちょっと緊急にお尋ねしたいのですが、先ほどのニュースによりますと、中国においてクーデターの未遂ですか、が起こった。毛沢東の夫人江青女史、それから王漢文、これはもう御承知の党副主席ですね、それから張春橋、これは次の首相だという候補にみなされておった方だと存じまするが、挑文元、こういうそうそうたる方々が皆軟禁をされた、こういう重大ニュースがいまさっきありましたが、外務省当局には何らかの情報あるいは事実が参っておりますか、その点を。
  162. 中江要介

    ○中江政府委員 いま先生がおっしゃいましたような情報は、未確認の情報として、たしか二日ぐらい前でしたか、北京の大使館から報告が来ておりますが、はっきりした確認された情報としてはただいままでのところ私どもの手元には参っておりません。
  163. 鬼木勝利

    鬼木委員 その背景とかあるいは事実関係というようなことは、詳細はおわかりにならないだろうと思いますが、その内容あるいは背景、事実関係について、北京の大使館あてに何か詳細わかっている範囲内において即刻報告せよとか、訓令か何かお出しになりましたか。
  164. 中江要介

    ○中江政府委員 これは先ほど申し上げましたように、むしろ北京の大使館の方からこういう情報を送ってきておりまして、そのことがけさロンドンからの外電として同じような情報が出てきたということでございますので、私どもも北京に、国際的に非常に注目を集めているということで、それの確認というと何か事実があるみたいでございますけれども、どの程度の確度の高いものであるかということについては、この情報に限らず、毛沢東が亡くなった後の中国の党及び政府の主要幹部人事がどうなるかということは、いろいろな情報が入り乱れておるのが現状でございますので、それを整理して、確度の高いものは逐次報告してくるという体制になっておるわけでございます。
  165. 鬼木勝利

    鬼木委員 了解しました。  そこで、これは小坂先生にお尋ねしたいのです。先生は非常に積極的におやりになっておりますので、先生の方にちょっとお尋ねしたいのです。  いずれにいたしましても、毛沢東の亡き以後、中国に何らかの政治的動揺の兆しがあるのかないのか、どのように大臣御自身お考えいただいておるのか、それをちょっとお尋ねしたいのです。
  166. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいまアジア局長が申し上げましたようなことでございまして、未確認情報といたしましては二日ぐらい前からさようなことを北京の当方大使館から言ってきておるわけでございますが、こちらと違いまして何分にも非常に情報がとりにくい社会でございます。われわれといたしましては事態がもう少し明瞭になるのを待っておるということでございまして、何分にも他の国のことでございますので、われわれとしては非常に慎重にこの成り行きを見守ってまいると申し上げる以外ちょっと方法はないように存じます。
  167. 鬼木勝利

    鬼木委員 大臣のおっしゃるとおりまだその全貌が全然わかりませんし、どういう事態になっておるのか、いま大臣のおっしゃるとおりと私もそう思いますが、これもまた仮定問題ですからどうかと思いますが、仮に毛沢東以後において、今日の中国の情勢がいかなる政治的情勢、事態に立ち至っても日中関係には影響がない、このように御判断なさっておりまするか、これも将来どうなるかわからぬ、これはおれは言われぬとおっしゃるか、その点ひとつ大臣にちょっとお伺いしたいと思います。
  168. 中江要介

    ○中江政府委員 先生も御記憶と思いますが、周恩来国務院総理が亡くなった後で、中国側は、周総理が亡くなっても毛主席及び党中央が中国の内政、外交の路線を決めていくんだから変わりがない、こういうことを言っておりました。その毛主席が今度亡くなったわけですが、この毛主席の死去といいますのは、この七月ごろから外国のお客様にも会わないというようなことで、だんだんと第一線からは遠のいていくという状況のもとでついに亡くなられたということでございますので、一般には、中国といたしましてもそう突然の毛主席の死去ということではなくて、ある程度の準備といいますか、心構えというものはできていただろうと思うのが常識的だろう、こういうふうに考えておったわけです。毛主席が亡くなりました後も絶えず中国側が公式に、公式の場で言いますことは、毛路線を継承していく、毛主席の遺志を継いで自分たちは中国の建設に邁進するんだ、こういう路線でございます。  そういたしますと、日中間の将来を見ましたときに、その出発点になりました日中共同声明というのは、これは毛主席と周恩来国務院総理のこの二人の偉大な指導者によって中国が決意、決断をしてできたものでございますので、日中共同声明の精神、またその規定に沿って日中関係を発展させていくというこの路線には、毛主席あるいは周総理が亡くなられても変わりがない、こういうふうに私どもの方は受けとめるべきでありましょうし、またそう信じていくのが正しい考え方ではないかと、こういうふうに思っております。
  169. 鬼木勝利

    鬼木委員 それでは、結局周恩来が亡くなった後も、それから毛沢東が亡くなった後も、日中共同声明には変わりがないんだから、日中友好条約に特別どうだこうだという変わった事態はないものだ、かように理解する、こういうことですね。そういうふうにわれわれ理解してようございますね。
  170. 中江要介

    ○中江政府委員 大筋はそのとおりのことだと思います。しかし具体的には交渉の問題でございますので、お互いに、日本側にも中国側にもそのときそのときの事情というのはございますし、現に周恩来国務院総理が亡くなった後は、中国側は、当然のことですけれども、新たな華国鋒総理が出るまでは、やはり国務院総理の地位がない状況というのがあったわけでございますし、そういった意味で個々の交渉の段階を見ますと、当然のことながら内外の情勢がこれに影響を及ぼしていると思いますが、大きな方向づけとしてはこれは変わりがないという姿勢で臨むべきではないか、こういうふうに認識しております。
  171. 鬼木勝利

    鬼木委員 まさにそのとおりだと私らも考えております。これは変わるべきじゃない。大筋においては、その方向においては変わらない。個々の部分的なあるいは技術的な面においては、あるいは変わることも、それはいじりようによってあるかもしれぬ、そのようにわれわれも解釈いたしておりますが、後でまたお尋ねする場合にもそういう点は出てくると思うのです。  そこで、大臣にお尋ねしたいのですが、大臣が国連総会に御出席なさってお帰りになって、去る衆参両院の外務委員会等で答弁されておる。日中平和友好条約の締結については非常に積極的で前向きで、非常に御努力なさっておるということに対しましては、私どもも非常に好意を持って、しかも非常な期待を小坂大臣には寄せておるわけでございますが、これは本委員会におきましても私はたびたび総理にもお尋ねしました、三木さんにも。それから宮澤前外務大臣にも相当突っ込んでお尋ねしましたが、議事録にもはっきり載っておりますけれども、数カ月のうちには必ず締結するというようなことまでおっしゃった、宮澤さんが。何回も私は念を押した。それから三木総理も、これはもう絶対早急にやる、必ずやると何回も確約されて、非常にきれいごとはおっしゃったけれども、いずれもお二人とも何ら締めくくりもしないでそのままに消えてしまった。そのときに、日ごろから私非常に尊敬している小坂先生が外務大臣になられて、席暖まる暇もなく積極的に御活躍なさっておる。お世辞抜きにして非常に期待を申し上げております、今度こそ小坂外務大臣はやられるんだと。  そこで大臣にお尋ねしたいのですが、三木内閣の手によってこの日中平和友好条約が締結されるか。これはまあ三木内閣はまことに気息えんえんとして危篤状態じゃないかというようなことがたびたび、まあいまようやくまた息を吹き返して蘇生しておられるようですが、数回に及んで臨終じゃないかというような、親戚があったら早く知らせておいた方がいいじゃないかというような状態もたびたびあったようでしたが、しかし小坂外務大臣に限ってはますます私は御健在であると思いますので、大臣の御決意をこの際お聞きしたいと思うのですが、いかがでございますか。
  172. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 鬼木先生より私に対しまして数々の好意あるお言葉をいただきまして、心から感謝を申し上げます。私、はなはだ魯鈍の者でございますけれども、この役につきましたる以上は、何としても日本の平和のために尽瘁をいたしたいと考えております。  やはり日本アジアの国でございまして、アジアの平和を考え、そして日本アジアにおける平和と繁栄のための貢献を考えまする場合には、何としてもこの日中両国が手を携えていく必要があると存じておりまするので、その意味におきまして、日中共同宣言ができまして、それに盛り込んである四つの協定もできましたわけでございまするので、この上はできる限り早く日中平和友好条約を結んで、将来の日中両国が子々孫々にわたる平和と協力を誓い合うということが必要であると考えておるわけでございます。  前任者の宮澤君におかれましても非常に御努力をされたわけでございまして、三木総理におかれても非常な熱意を持っておられるのでございます。私に対しましてしばしばその御熱意を吐露されておりますわけでございまして、私も一生懸命さような方向で努力したいと思っておりまするけれども、また、その方向と申しますのは条約の早期締結ということでございまするけれども、何せいろいろな事情がございまするので、その状況を見ながら最善を尽くしたいと、こう申し上げる以外目下のところございませんわけでございます。  しかし、よろしくどうぞ御支援、御叱正をお願いいたしたいと思います。
  173. 鬼木勝利

    鬼木委員 いま大臣のおっしゃるとおり、私も宮澤さんとは参議院でも一緒でございましたから多年の知己でございますが、あの人のやられたことが決して私はいいかげんなものであったと申し上げておるのではない。非常に意欲的で、しかも御承知のとおり非常に頭脳明晰な方で、外交的手腕も抜群でございましたが、結果的においては何ら得るところがなかったと、非常に私遺憾に思っておる。  先ほどもお話がありましたように、大綱においては変わりはない、しかし部分的にはいじりようによって変わることもあり得ると先ほどの御答弁にあっておりましたが、何といいましても日中平和友好条約締結のネックは反覇権問題だと思うのです。ところが、前外務大臣の宮澤さんの示されたところの四条項が、小坂外務大臣におなりになって、必ずしもあれにこだわるものじゃないと、新聞なんかは白紙還元だというようなことを書いてありましたけれども、そうまでは大臣はおっしゃらなかったと思うが、必ずしもこだわらない、まあ結局おれはおれとしての道を行くというお気持ちであろうと思いますが、それでは四条項にかわるものはどのようにお岩見になっておるのか。もうこれは申し上げるまでもなく宮澤さんの四条項は十分御承知の上と思いますので読み上げませんが、それにかわる条項はどのようにお考えになっておるのか、その点を大臣にちょっとお伺いしたいと思う。
  174. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 宮澤君の言われました反覇権についてのいわゆる四条項、これはわが方の理解を整理して述べたという性格のものではないかと思っておりますわけでございます。これ自体を条件として中国側に言うというような、そうした性格のものではなかったと存じますわけでございますが、われわれといたしまして、それじゃ小坂、おまえどうするのだというただいまの鬼木さんの御質問に対しましては、やはりわが国は共同声明の原則と精神、これを忠実に考えながら先方と理解を深めていって、そして先ほど申し上げたような日中永遠の平和にふさわしいような、双方において満足と理解を得るようなものをつくりたいと、こうはなはだ抽象的で恐縮でございまするが、さように申し上げる以外にないように思います。
  175. 鬼木勝利

    鬼木委員 それでは、まだこれからこれにかわるべきものを——全面的に変わる変わらぬは第二として、十分慎重に考えておると、こうおっしゃるわけですね。  そうしますと、結局、反覇権問題が日中友好条約のネックになっておるということになりますと、中国側は非常に友好的であるから、むろんわが方もそうなんであるから、精力的に取り組めば日中条約問題の打開は可能である。もっとこれを突き進めて申しますれば、精力的に取り組むに当たっての具体策の一つとして、覇権四原則を引っ込めてしまうことが必要だというふうに私らは受け取りやすくなりますが、そういうふうにわれわれは判断せざるを得ないような気持ちになるのですが、そういうお考えでございますか。何もそんなに四原則なんか出さなくても、中国は非常に積極的だ、だから精力的にぶつかって話し合えば、そんなものをことさら出さなくてもいいじゃないかというふうなお考えじゃないか、かように考えますが、いかがですか。
  176. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 共同声明といい、平和条約といい、これが異質のものであってはもちろんならないわけでございますし、何か条約を結ぶ際になっていろいろ条件がましいことが出てくるということは、これは誤解のもとになると思うのでございます。しかしながら、後でまた具体的な問題で誤解を生ずるようなことがあってはならないと思いますので、そういう点で、双方胸襟を開いて語り合うということが一番重要なことであろうかと思います。その前にこちらから、こういうふうに思うとかいろいろ申しますと、言葉だけでございますと、やはり誤解を生ずるもとになるというふうに懸念をいたします。私といたしましては、やはり双方の責任者が相互に会っていろいろ話をし合って、しかも小手先細工を排して、胸襟を開いて話し合うことによって問題を解決し得るものである、かように思っておるわけでございます。前大臣においても、平和友好条約をつくることにもちろん反対ではなかった。しかも、早期妥結の方針も持っておったわけです。しかし、不幸にしてその間にいろいろ時間がたったということは、これは事実の問題としてさようであるわけでございます。そこに何か遠くからいろいろ申しますと、その間に誤解も生ずるということもあろうかと思いますので、やはりできるだけしばしば相互に会って、直接に話をし合うという機会が必要なのではないか、私といたしましてはさように考えておるわけでございます。
  177. 鬼木勝利

    鬼木委員 具体的にいまどうこうという四条項にかわるものは持っていないけれども、互いに胸襟を開いて話し合えば解決の道が得られる、その方面に向かってわが輩は努力するのだ——それは私もよく理解できますが、外相は、中国の喬外相と話し合うことによって、会見することによって日中友好条約の締結の糸口が見つかるんだ、このようにおっしゃっておりましたが、喬外相とお会いになって何か糸口が見つかりましたか、その点をひとつ。
  178. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は何回も中国へ参りましたが、どういうものでございますか、喬外相とお目にかかる機会がございません。前に参りましたときは、外務大臣は姫鵬飛さんでございましたし、昨年参りましたときは、ちょうど喬外相はニューヨークにあられて、私がお会いした中国要人は——喬外相は北京におられなかったわけでございます。したがいまして、今度は初めてでございますので、まずお互いに、非常に友好的な話し合いではございましたけれども条約に関する糸口をどうこうというような点は、残念ながら時間の関係もございまして、そこまでは至っておらないと存じます。残念でございますが、どうも、先方も着かれた翌日でございますし、私は国会関係で、お目にかかるのに二日帰国を延ばしておりましたので、それ以上お待ちすることもいかがかということで、さような時間の問題等もございまして、いま仰せられるような糸口発見というところまではいっておりません。
  179. 鬼木勝利

    鬼木委員 まだ、これからの締結に対する糸口が遺憾ながら見つかっていない。そうしますと、前の宮澤さんの四条項に対しまして、これに必ずしもこだわらないということは、三木総理ともよくお話し合いの上、そのように意見がまとまっておることでございますか、それとも、外相御自身のお考えでこれで進めていこうというお気持ちであるのか。これは大変愚問でございますけれども、三木さんとはよくお打ち合わせの結果、それがよかろうというふうにお話し合いができておりますのかどうか、それについてちょっと……。
  180. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、宮澤君のは、四条件というより、こちらの考え方をいろいろ整理してみるとそういうようなことになるではないかということのようでございますし、    〔加藤(陽)委員長代理退席、木野委員長代理着席〕 まあ私も従来からの経緯をいろいろ見ておりますと、私が外務大臣になって中国側といろいろ話をするに際しては、私のカラーのようなものも多少出ることはやむを得ないかというふうに思っております。しかし、それが非常に異質のものであるかというと、やはり同じ自民党でございますし、そう異質のものとは存じないわけでございますが、しかし、平和友好条約をつくろうというその目的からいたしますと、さようなものはつくりいいような話になっていくことだと思います。その点につきましては、私も三木総理大臣のもとにおける閣僚でございますから、総理大臣と特に意見が違うということはございませんわけです。
  181. 鬼木勝利

    鬼木委員 そうすると、三木総理大臣とは打ち合わせていない……(小坂国務大臣「いや、あります」と呼ぶ)打ち合わせていらっしゃるのですか。そうしますと、日中友好条約の締結がいますぐにもできるのじゃないかというような——先ほどから何回も申しましたように、前国会で宮澤さんも非常に御自身の確信のほどを述べていらっしゃった。ところが、いろいろうわさによりますと、三木さんを中国にやって、そして締結させて、花道をつくって引退させるという動きがあるんだというような風説が飛んでおりましたが、いますぐにでも締結ができるんだというようなお話があったにもかかわらず、一とんざを来していま日中友好条約というものが挫折しておる。一体その原因、その理由はどこにあるのか。それは直接責任者である外務大臣はおわかりになっておると思いますが、これはちょっと漏らすわけにはいかぬぞとおっしゃればやむを得ぬですが、一体どういうところに理由があるのか、その点ちょっとお尋ねしたいと思います。
  182. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 三木総理大臣におかれましてもできるだけ早く条約をつくりたいというお考えでございまして、私もその命を受けてできるだけさようにしたい、かように考えておりますが、それについてはいろいろ外務省としていままで分析しておるところもございますし、私も私なりの理解はございます。しかし、それについていまの段階で、どこでどうということを申し上げることはひとつ御勘弁をいただきたいと思います。全力を尽くすということでひとつ御了承いただきたいと思います。
  183. 鬼木勝利

    鬼木委員 それではまたそういう時期が至って、時来たればお尋ねしたいと思いますが、喬外相に訪日の招請をなさったとお話を聞いておりますが、喬外相がわが方に参りましょうというお約束をしたのか、まだ返事していないのか。外相がぜひ来てくれというような御招請をなさったというお話を聞いておりますから、その点をひとつお尋ねしたい。
  184. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 喬外相においでを願いたいという考えを申したのでございますが、それに対してお断りということはございません。ただ適当な時期を見られるということであろうかと思いますが、さような程度にひとつ御了承を賜りたいと存じます。あの方は学生時代を東京高師におられまして、その後、東京大学の文学部哲学科におられました。桑木厳翼先生の高弟でございます。その当時のお話もいたしました。非常に当時を思い出として持っておられるようでございますが、向こうにも事情がございましょうから、先方の事情の許すときに御返事があり、それと同時にお見えになるということはあろうかと考えております。
  185. 鬼木勝利

    鬼木委員 そうすると今度は逆のことをお尋ねしたいのですが、先生が中国においでになったのは昨年でしたね。先生が日中友好条約締結を速やかならしめるために、これは先生に限らずどなたでもいいですが、その政治日程といいますか、これからの行動といいますかスケジュールといいますか、計画を何かお立てになっておりますか、まだ何もそういうことは考えていないのか。外相御自身が昨年はおいでになったことは私も承知しておりますが、また近く訪中なさるのか、そういう点について、今度はこちらから向こうへ行く方、それをちょっとお尋ねしたいのです。
  186. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先生御承知のように、いまこの九日まで中国は喪に服しておるわけでございます。したがいまして、私が仮に参るといたしましても、しばらく先方の喪明けと申しますか忌中が取れて、そういうような話ができるという段階になるまでは、これは不可能なことかと存じておるわけでございます。
  187. 鬼木勝利

    鬼木委員 こういうことはなかなかそう簡単にはいかぬと思いますが、いずれにしましても、いまたびたび小坂外務大臣から御答弁がありましたように、精力的に取り組んで、これを速やかに締結したいという考えには変わりはない、このようにおっしゃっております。これは先日も先生にお話し申し上げましたように、私の古い先輩ですが、先生のお話をよくしておりまして、あれは中国あたりにも非常に知人が多いから、必ずやるぞというようなお話も私は聞いたのですが、日中友好条約を締結するということは国益を増進する上からもひとしく皆望んでおることでございますから、ぜひひとつ先生の手で、この際速やかに締結をしていただくように重ねて私要望いたしておきます。  まあ、今日ただいままでのところでは、外務大臣になって日も浅いし、また中国の情勢も、いま急に自分が行くわけにもいかぬかもしれぬし、また向こうから喬外相が来るというはっきりとした確約もないという状態でございますから、これを締結するための足がかりになるようなものはことごとく小坂外相の手によって解決していただきたい、これを私はひたすら外相に御要望申し上げます。最後に御決意をひとつ。
  188. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 鬼木先生より非常に温かい、また熱のこもったお励ましのお言葉をたびたびにわたりましていただきまして、深く感謝をいたします。いずれその時が参りましたら、ひとつまた何かと御叱正を賜りながらこの大問題に取り組む時期もあろうかと思うわけでございますが、何とぞ御叱正のほどをお願いいたします。
  189. 鬼木勝利

    鬼木委員 それでは時間が限られておりますので、日中問題はこの程度で切り上げまして、今度は外題を変えましてお尋ねしたいと思います。  海洋法の問題ですが、今会期の海洋法会議においてまたもや結論が持ち越された、こういうことを私どもは承っております。これにはいろいろな理由もあったと思うのですが、私らの素人の考えでは、結局その主たる理由は、深海海底の開発問題とか、あるいは経済水域問題あるいは大陸だな問題というような問題について結論を見出せなかったのが主な原因じゃないかと思いますが、一体どういうわけで海洋法会議において話がまとまらなかったのか、そういう点についてひとつお尋ねをしたいと思います。
  190. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私から簡単に申し上げまして、また詳細な点につきましては政府委員から申し上げさせていただきますが、私ども承知しておりまするこの第五会期におきまする問題点は、どうも準備不足にあったのではないかと言われております。それは、御承知のように先進国と発展途上国を初めとしまして、ある国は沿岸国であり、ある国は海洋先進国であり、その他内陸国、地理的に不利だけに、あるいは沿岸国との間におきまして最終的な利害の調整が得られないというようなことでございまして、結局、第六会期を明年の五月二十三日から七週間ないし八週間の予定で開くということになりまして閉会をいたしたようなわけでございます。何と申しましても、今後主要国間におきまして、来会期に至るまでの間、精力的に非公式な会談をしていく、そして、意見調整作業をやっていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。他は政府委員から補足させていただきます。
  191. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま大臣からお話がありましたように、今度の会期が所期の進展を見ませんでした最大の問題は、いま先生からも御指摘がありましたように、深海海底の開発の問題、まあその他にも幾つかございますけれども、でございまして、深海海底の開発の問題につきましては、御承知のようにマンガンとかニッケルとかクロムとか銅とか豊富な資源を深海海底に持っておりまして、この鉱物資源をだれがどういうふうにして開発するかということが問題の核心でございます。後進国は、これは条約で設立することになりますところの国際機関がもっぱら開発すべきであるというのが基本的な後進国の立場でございます。それに対しまして、先進国側は、国際機関もさりながら、加盟各国またはそれの私企業も開発に従事することができるようにすべきである、いわば両方ともやるべきである、こういう主張がありまして、わが国といたしましては、当然にこれらの重要な資源に対して重要な関心を持っておりまして、先進国各国と同じ立場をとっているわけでございます。  そこで問題は、この前の春のニューヨークの会期の最後に廃案になりました単一草案の改定版がわりあいに先進国側に有利な規定にできておりまして、これに対して後進国側が相当感情的な反発をしたということ。それからいま小坂外務大臣からもお話がありましたように、会期間の、春会期と夏の会期の間がわりあいに短かったものですから、後進国は当然のことながら少数の人間でその会議の代表を組んでおりまして、なかなか十分な準備をする暇がなかったというようなこともありまして、この深海海底の開発の問題が一種の南北問題というような形で取り上げられまして、先進国側から有利な条件が出てこない限りは、その問題についての妥協の色を見せないというようなことになりまして、これが先生も御承知のとおり、第一委員会と称するところで扱っているわけでございます。この第一委員会でのこの問題でのデッドロックが、結局ほかの委員会の進展の足を引っ張りまして、ほかの委員会にもいろいろ問題はないわけではないわけでございますけれども、基本的にはこの問題がネックになりまして所期の進展を見なかった、こういうことでございます。これに対しまして、アメリカのキッシンジャー国務長官はみずからニューヨークに二度ほど乗り込みまして、このデッドロックを打開するということで、その国際機関を技術的にも財政的にも援助するという提案をいたしましたが、これは会期末でございまして、全般的なぶつかり合いを打開するまでに至らないというような状況がありました。  いま申しましたような状況が主たる原因となりまして、今度の会期が遺憾ながら所期の目的を達しなかった、こういうことでございます。
  192. 鬼木勝利

    鬼木委員 大体そういうことであろうと私は思っておったのです。そこで、次期会期は来年だと思いますが、わが国の、領海十二海里、この宣言を一体いつするのか。現在の三海里なんというのはもうずいぶん古い話で、明治時代に決まったことで、それにいつまでも固執しておる。ところが今日、十二海里ということは世界各国も、国際的にも異論のないところだとわれわれは解釈しておる。現在では二百海里というようなことも言っておることは御承知のとおりと思う。これは有力な意見として出ておる。この十二海里を宣言する宣言すると言いながら一体いつやるのか。何をそのように右顧左べんしておるのだ、私はそのように考えておりますが、領海十二海里という宣言を一体いつやられるのか、それをはっきりしたところをひとつ伺いたい。大田でなければ、だれか専門家で結構だが、それをひとついいかげんなことを言わないで、はっきりしたことを言ってもらいたい。
  193. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま先生からもまさに御指摘がありましたように、発展途上国の中には、領海を二百海里まで広げるべきだという主張をしていた国も多いわけでございます。そこで、今次海洋法会議の最大の眼目は、領海を二百海里にするというようなことは、これは公海が大変狭くなってしまうわけでございまして、これは幾ら何でも問題である、他方、いままでの伝統的な国際法上確立された法規としての領海三海里というものも、そういう発展途上国の主張に照らせば、これは狭きに失するであろう、そこで領海といたしましては十二海里まで、そのかわり経済水域を二百海里まで、それから領海を十二海里にすることによって公海部分が消滅いたしますところの国際的な交通の要衝にあるところ、いわゆる国際海峡においては、自由な船舶の通航の制度をつくる、こういう三つの問題がいわばちょうど一括の解決という形で組み合わされまして、この三つの問題の一括解決をこの会期でなし遂げようというのが一応会議の大方のコンセンサスでございました。この三つの問題をパッケージで片づけようという大体のコンセンサスはあるわけでございまして、会議そのものはその方魚で進んではいるわけでございますが、先ほど申しましたような状況で、今度の会期では最終的な決着を得なかったということになっているわけであります。  わが国といたしましては、もう何度も政府側から答弁を申し上げておりますので、繰り返しになりまして恐縮でございますけれどもわが国といたしましては、海の自由、海洋の自由、公海の使用の自由に依存するところが世界の中でも最も大きな国でございます。わが国にとりましては、海運立国、貿易立国、そして資源の大半を海外に仰ぐという立場から、何としても海運の自由というものを確保することが日本の死活的な利益であるということで、十二海里になります場合に、その公海部分が消滅するような、いわゆる国際海峡におけるより自由な、通常の領海におけるよりも自由な通航制度ができ上がることがわが国の利益に合致するゆえんであるということで、何とかこの海洋の諸制度が一括して条約の形で処理される、解決に到達することを目指していままでやってきておるわけでございます。  そういう意味で、今度の会期は実質的な決着には至りませんでしたけれども、まだこれからも非公式な協議その他が続きまして来年の会期につながるわけでございますので、海洋法会議状況を見守りながら、わが国としてはいずれにせよ領海を十二海里にするという一応の方針そのものは決めてあるわけでございますが、具体的な時期、態様はもう少し海洋法会議状況その他を考えながら進めていきたいというのが趣旨でございまして、その旨の御答弁が総理からされてまいった、こういうことでございます。
  194. 鬼木勝利

    鬼木委員 それはいろいろな条件もあるでしょうし、いまあなたがおっしゃった三つのことを組み合わせて話をしなければならぬ、そういうことで今日そういうふうな会議の結果まとまらなかったということもあるかもしれぬと思いますけれども、いやしくも領海十二海里はもうすでに日本の既定事実で、決定事項なんですよ。こうすることによって国民の非常な国益になるのだから、十二海里宣言はいまするのだ、いまするのだと言いながら、じんぜん今日まで解決していない。それで、そういう考え方は常識的に考えても、明治二年か三年ごろできたところの三海里なんというのをいつまでも金科玉条のように守っていては時代に即応しないのです。十二海里はもう国民総意によって日本の決定事項なんです。だから、来年の次期会合においては、ぜひ十二海里を宣言してもらいたいと私は思う。  なぜあなた方は十二海里を逡巡していらっしゃるか。それはほかに原因があるのでしょう。結局十二海里にした場合には、国際海峡となるところのわが方の津軽海峡とかあるいは対馬海峡というようなところが、十二海里になった場合には全部わが方の領海になるから、そこは自由航行とするか、あるいは無害航行とするか——自由航行にすると非核三原則にひっかかる。そういうようなことで十二海里宣言をためらっているのではないのですか。そういう問題は、いまあなた方が御答弁なさったようなことはつけたりであって、十二海里にした場合に、世界各国のあれに負けて自由航行なんというようなものをつくる、そうすればこれは大変な問題になるのですよ、あくまで無害航行にしなければ。その点どうですか。それにひっかかっているのじゃないですか。そんなことは簡単じゃないですか。非核三原則は日本の絶対の国是だ、国会で決議しているのだ。そうじゃないですか、あなた方の本音は。
  195. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 多少お答えが長くなりまして恐縮でございますが、説明させていただきます。  まず第一に、先生からお話がありました三海里と十二海里の問題でございますが、まさに先生御指摘のように領海十二海里を採用している国がわりあいに数として少ないわけではないということは事実でございます。ただ、現在までの確立された国際法規として問題のないのは三海里ということでございまして、さればこそ先ほど申し上げましたように今度の会議によって領海を十二海里までという国際法をつくろうということがいまの一括解決の一つとして論議せられているわけでございます。  それで、私具体的な数字を持っているわけではございませんけれども、まだ三海里を守っている国々の数は十二海里の国々よりは少ないとはいえ、いわゆる船舶の保有量とか海洋の利用度という点からいけば、アメリカとかイギリスとか、そういう主な先進国が依然として三海里を国際法の確立された限度ということで守っておりまして、国の数そのものは十二海里の国よりも少のうございますけれども、しかしそういう意味では、三海里というものは依然として国際法上の制度としてまだ維持されておるということが一つございます。  それからこれも細かい問題でございますが、先ほど先生から十二海里の宣言をなぜしないか、こういうお話がございましたが、この点は前国会でもいろいろ政府側から、法制局長官などから御答弁がありましたように、十二海里にするには、いまの国際法が三海里ということでございますから、それを変えるということになると、それはわが国としてその三海里の法規範を広げるということになりますので、単に政府が宣言するということでは処理をなし得ない、そのためには法律の制定が必要である、こういう結論が一応法制局において出ております。  それから実体の問題になりますが、国際海峡の問題、これは私が何か隠しておるというような御指摘もございましたけれども、まず具体的な例として、たとえばマラッカ海峡におけるわが巨大タンカーの通航という点をお考えいただけばおわかりいただけるのではないかと思いますけれども、沿岸国によっては、巨大タンカーの通航が非常に沿岸国にとって問題であるという考え方を持っておる国はまだ相当あるわけでございまして、わが国としては、その巨大タンカーが世界各地における国際海峡を通過します場合のその通過が、沿岸国の恣意的な判断によって妨げられることのないようにということを海運の自由という観点から一つの至上命令ということで、何とかその国際海峡における自由な通航を確保したいということで臨んでおるわけでございます。  そこで問題は、そのような立場をとります場合に、わが方の船舶が通りますところの他国の海峡においては自由な通航制度をつくらせる、そしてわが国の周辺における海峡においては別の制度をつくらせるということは、国際的な主張といたしましてはなかなか容易ではない、一般的な一括した制度ということでいきませんと、下手をやりますと、それじゃその巨大タンカーの方が危険だからそれもひとつ取り締まらしてもらおうというような主張を誘発するという問題も出てまいるわけでございます。  いずれにいたしましても、非核三原則の問題は、先生おっしゃられるようにわが国の非常に重要な政策でございます。従来、総理も外務大臣からもお答えがありますように、わが国としてはわが権限の及ぶ限りにおいて非核三原則は堅持するということを何度も申しておるわけでございます。したがいまして、この非核三原則の問題は、いま海洋法会議議論されておりますところのいわゆる国際海峡における通航制度がどういうふうに決まるかということを見まして、海洋法会議を通じてでき上がるところの国際的な制度成立を待って、非核三原則の問題をどうするかという点を御論議が行われる、そのときに対策をどう考えるということになるのではないか。ただいまは、いま申しましたような状況で海洋法条約成立に全力を挙げている、こういうことでございます。
  196. 鬼木勝利

    鬼木委員 どうもあなたの説明では私は納得いかないんだな。十二海里を、これは世界各国ほとんど異論のないところですよ。ところがあなた、アメリカとかイギリスのことをおっしゃっているけれども、これは事情が違うじゃないですか。アメリカなんかは遠く遠洋漁業なんかやっていませんよ。魚なんかとっていませんよ。日本は漁業で立っているんですよ。そんな特別な、その国だけを挙げてアメリカがどうだなんて、そんなことは関係ない。世界各国としては十二海里ということはもう異論がないんですよ。ことに経済水域なんというのはもう二百海里だと、こう言っている。それを、明治三年の三海里をいつまでもいつまでも固執して、しかも国際海峡でも他国は自由航海をやっている、日本だけ無害航行ということはそれはちょっとぐあいが悪い——そんなことはありませんよ。非核三原則ということを日本が声明しておるということは、これは全世界皆周知の事実ですよ。持たない、持ち込まない、つくらないということを日本は声明していることは、もう全世界これは周知の事実ですよ。特別の事情があるのですよ、日本には。だから、十二海里にしたからといってそこに自由航行なんかをやらしたんじゃ、国の非核三原則は何の意味にもならない。これは法制局長官が何と言ったか知らぬけれども、そういうことは国会では許されませんよ。むろん国会の議決を経てそういうことも承認すれば別ですけれども国会の承認なくしてそんな勝手に核載した船をどんどん通すという、シーレーンでもつくるというつもりですか。とんでもないことですよ、これは。だから、それはもう日本の対馬海峡とか津軽海峡というものも十二海里にすると同時に、これは無害航行にすべきである。シーレーンなんかつくったらこれは同じことですよ。これは自由航行と同じことですよ。結論的にはそうなる。だから、いつまでたったってこれが解決しない。十二海里にせよということは国民総意だ。もうすぐ宣言する。これは宣言すればいいんですからね。何も右顧左べんする必要はない。宣言やらない。だから、来年海洋法会議が必ずあると思いますが、大臣いかがでございますか。来年の海洋法会議においてはどのようにお考えになっておりますか。だったら、永久にできませんよ。ただ口で十二海里にするんだ、十二海里にするんだ、間もなく宣言するんだ、やるんだと青いながら、一体いつできるんです。
  197. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 たびたびお言業を返すようで気がひけるのでございますが、一、二細かな点で補足説明させていただきます。  三海里を守っているのがアメリカ、イギリスだから、わが国がそれと一緒に同調しておるというような意味で申し上げたわけではありません。要するに現在の確立された国際法規として認められているものは、純法律的に申せば三海里になるであろう、ただ、それを十二海里にした場合に、御指摘のように十二海里にすでにしている国がわりあいに多いことにかんがみれば、恐らく十二海里とすること自体に対して外国から抗議を食うというようなことはないであろう、しかし純法律的に申せば、現在の確立された国際法規としては三海里が依然としてスタンドしておるのだということで実は申し上げたわけでございます。  それからもう一つ、海峡の問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、国際交通の要衝という地位にあるところの国際海峡においては、少しでも自由な通航制度が確立されることが世界全体にとって、またことにわが国のような先進海洋国にとっては非常に重要であるということで、そういう制度の確立に向かって話し合いが進んでいるわけでございますが、一つここで申し上げられることは、現在の状況ではこれは公海なわけでございます。先生の御指摘のございました津軽海峡だとか対馬海峡につきましても現在は公海で、そしていかなる船舶も自由に通航しているわけでございます。その事態が、私が申し上げましたような国際海峡におけるより自由な通航制度というものができましても、現在自由であったものがそのまま——そのままと申しますかそれに制限が加わりますけれども、その事態が変わらないというだけで、いままで自由に通航できていなかったところが憩に自由に通航させなければならないようなことになる、そういう意味ではないわけでございまして、ちょっと補足させていただきます。
  198. 鬼木勝利

    鬼木委員 いや、それ全然話が違う。いままでは三海里だったから、だから自由に航海しておったかもしれぬ。これも大体許されないのだよ。大体、航行は三原則には違反しないかと、われわれは違反する、こう言っている。だけれどもそれは三海里までだから、あとは公海だ、こう言えばそれで済む。ところが、今度は十二海里になった場合にはわが方の領海になるのだから、いままでは自由に通しておったのを今度は通さぬというようなことは困ります、いけませんよとあなた言われるけれども、いままでと事情が違うのだ。今度は十二海里になればわが方の領海になるから、今度はわが方勝手に通すわけにはいかない。だからそこでチェックする。無害航行にするというのだから、当然の筋の通った話なんだ。あなたの言われるようにいままでは自由に通っておりました——それは公海だから自由に通っておったと言えばそれで済むけれども、今度はわが方の領海になるのだから、領海、領空になるのだから、いままではこれは公だから公の道をどんどん通っておった。それが自分の土地になったらそれは私有地だから、通すわけにいかぬ。これ、全然あなたの言うことは子供が言うみたいなことを言っているな。子供でも言わぬぞ、そんなことば。そんなふざけた論があるわけはない。それは何も関係ない、領海問題は。何言っているの。だから、そういうことで十二海里の宣言ができないのですか。これは宣言すればいいのだから何も問題ない。いまは国際法によって三海里ということになっておるのだけれども、おれのところは十二海里にするんだという宣言でこれは終わるのです。今日これは一般的に、日本だけじゃありませんよ、全世界の国際海峡で無害通航、無害航行ということに賛成をしている国、反対している国、それから態度を保留している国というのはどのくらいありますか、わかっていますか。はっきり言わなければだめだよ、いいかげんなことを言ったのでは。
  199. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 具体的にどことどことどこと申せという御質問でございますが、まことに申しわけございませんけれども、具体的な名前及び数がいま幾つということを正確に資料を持っておりません。ただ、そのようないわゆる国際海峡に面した一部の沿岸国がいま先生のおっしゃられるような無害通航の制度でいいのだという主張をしていることは事実でございます。ただ、一般的に申しまして、先生御承知のように、いま海洋法会議討議の基礎としておりますところの非公式単一草案、これは去年ジュネーブ会議の後で配付されたものでありますけれども、それからことしの春の会期の後に配付されました改訂版におきまして、いずれの国のテキストにおきましてもいわゆる国際海峡については無害通航という制度をとっておりませんで、いわゆる通過通航、妨げられざる通過通航ということで、普通の領海における無害通航よりももっと自由な船舶の通航制度を確立した条文が盛り込まれておるという状況でございます。
  200. 鬼木勝利

    鬼木委員 それを具体的にはっきり調査してくださいよ。ここでわからなければいいから、後で調査して資料を出してください。だけれども、そんないいかげんな答弁では、来年また海洋法会議もあるのに世界の情勢を把握しないで、いままで自由に通っておったところを今度は領海になったら通せぬなんというのはちょっと困るなんて、冗談じゃない、そんな論議は子供とやってくれ。大臣資料を調査した結果出していただけますか、ようございますか。大臣のお許しを得ているから、それを出してもらう。
  201. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 資料の点はまた後で申し上げますが、ただ一つ、先生こういうことがあるのです。パッケージで、領海十二海里というのと経済水域二百海里、それから国際海峡の通航の問題、これを制度化したい。この三つを一緒にして考えたいというのがわが方の主張なんでございますが、たとえばマラッカ海峡、こういうものを沿岸国が通してくれるという、通航を制度化させてくれるということでございませんと、わが国の産業上にも大変な影響があるわけでございます。そういう点は、やはり制度化するという何らかの交渉をして成果を得たいと考えておるわけなんでございます。今般のこの第五フレーズの会議を休会するに際しまして、議長がこの三つの問題についてはそれぞれ先取りしないことにしようじゃないか、こういうことを言ったわけでございます。たとえば、アメリカでは御承知のように、もう二百海里を経済水域にしてそういう宣言を法律でやってしまうとこう言う。そうすると、私どもアメリカの沿岸、たとえばアラスカ等におきましては相当の漁獲を期待しておるものでございますから、先般も国務長官に対しましてそういうことはわが国として非常に困るんだ、やはり日本人はたん白資源を海から得ているんだから、そういう点についてはひとつ特別の考慮をしてもらいたいということを申しまして、先方も理解は示しているわけでございます。しかし、いろんな利害が錯綜しておりまして、ただいま御指摘の無害航行権もさようでございます。いままで自由に通航できた公海を、今度はたとえば宗谷、根室、対馬、それぞれ海峡が十海里とか二十海里とか、両方足せば二十四海里以下のところがたくさんあるわけでございます。そういうものについて無害航行を主張する場合、どういう形のものがいいだろうかというような点をひとつもう少し詰めてみませんといけない問題があるわけでございます。しかし、ただいま非常に重要な御指摘がございました。先生の御意見も十分考え資料の作成等につきましても協力させていただきたい、こう考えております。
  202. 鬼木勝利

    鬼木委員 さすがに大臣の御答弁は明快だ。よくそういう点をにらみ合わせて、二百海里の経済水域の問題とかあるいは無害航行の問題だとか、そういう点をよく検討した上において十二海里の実現を図る、そういうことを煮詰めなければいけないという点では私そうだと思う。ただ問題は、十二海里にした場合に、さしあたってわが方の対馬海峡だとか津軽海峡の場合に無害航行の線を壊すということになりますと、国会において議決した国是であるところの非核三原則をなし崩しにするということは、当然国会の承認を得なければならぬ。だから、そうなりました場合にはこれはまた大問題になると思うのですが、当然海洋法会議において無害航行の問題に対して非核三原則を壊すような態度は大臣としておとりいただくわけにはいかぬと思いますが、その点はいかがでございますか。その点を切り離してお尋ねいたします。
  203. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 非核三原則はわが国の不動の方針でございます。これについてはわが国の権限の及ぶ限りにおいて堅持する、かたく持するという政府の方針に変更はないということを申し上げておきます。
  204. 鬼木勝利

    鬼木委員 そうすると、先ほどちょっとあなたからお話はなかったが、海帯といいますかシーレーンと言ってますね、直訳すれば海帯というのですか、ああいうようなものはあなた方は考えていらっしゃらないのですか。もうこれだってそういう点を考えられるということになれば、これはやはり自由航行と同じようなことになると私は思うのですがね。これはもう頭から非核三原則を否定したものだと思う。そういう海洋法会議なんかにおいてどこからかそういうような意見でも出たことがありますか、またこちらで考えたことがありますか。
  205. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 非核三原則に対するわが国の態度そのものについては、大臣のいまお答えがありましたとおりでございますが、私は技術的な意味で、いまの海洋法会議でいま先生がおっしゃられたシーレーンというものがどういうことになっておるかという点について御説明させていただきますが、ただいま海洋法会議討議の基礎としておりますところの非公式単一草案改訂版におきましては、先ほど申し上げましたいわゆる国際海峡については、妨げられざる通過通航制度という規定ができておりまして、その規定の中に、国際海峡における航路帯——いまシーレーンとおっしゃられたものだろうと思いますが、航路帯及び通航分離方式を沿岸国が設定することができるということになっております。これはもう少し御説明申し上げますと、海峡の沿岸国は、航行の安全のために一般的に受諾されている国際規則に合致した航路帯及び通航分離方式を設定することができる、そういう趣旨の規定が入っているわけでございます。
  206. 鬼木勝利

    鬼木委員 これはもう蛇足ですけれども、もしそういう無害航行というようなことを考えないことに立ち至った場合には、領海の侵犯は無論のこと、領空の侵犯ということになると私は思いますが、領空ということになると、これはまた大きな問題ですが……。
  207. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 再び、海洋法会議におきまして討議の基礎となっておりますところの非公式単一草案の規定を御説明させていただきますが、ただいま申し上げました単一車案に盛られておるところの国際海峡における通過通航制度は船舶の問題だけではなくて、その国際海峡における上空の飛行の自由をも含んでおります。
  208. 鬼木勝利

    鬼木委員 時間があと五、六分しかありませんので、最後にもう一点お尋ねしてお別れしたいと思いますが、大臣にちょっとお尋ねしたいのです。  最近、北方領土周辺で日本漁船が拿捕されたという事件が相次いで起こっておりますが、これらは明らかにミグ25の報復処置ではないか——処置だとは申しませんが、ではないかと私は思うのです。まあ、そうではないとおっしゃるのは御自由でございますが、やはり今回政府のとった処置に対する報復手段ではないか、私はこう思いますが、従来の拿捕事件なんかにつきましては、その救済とか補償の手当ては保険その他いろいろなことでおやりいただいたかもしれぬと思いますが、今回のはミグ25の報復事件じゃないかと思いますので、特別なケースだと思います。そういう気の毒な方々に対して一刻も早く無事帰還するように、何らかの交渉、措置、手段をとっていただく。そして補償の点におきましても特別の処置をやっていただきたい。非常に温情家として知られておる外務大臣だから、特別お考えいただくと思いますが、どのように大臣はお考えになっておるのか。いや、漁船の拿捕の問題だから水産庁にも関係があるから打ち合わせなければいかぬとおっしゃるかもしれぬけれども、しかし政府の方針として、外務大臣のお考えとして何かおありではないかと思うのですが、どのように救済をしていただくか、またどのように手を打っていただいておるか。ミグ25の直後に相次いで二回あったと私は思っておりますが、そういう不幸な拿捕事件があった事実と経過をここで御説明いただいて、最後の締めくくりは、ひとつ大臣にお願いしたい。
  209. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このミグの問題につきましては先ほども申し上げたのでございますけれども、私どもこういう考えを持っております。  要するに、日本の政府も日本の国民も全く望まざることをソ連のベレンコ中尉という者がやってきたわけでございます。領空侵犯、そして民間飛行場に強行着陸、こういうことをやって領空権を侵犯されたわが方としては、やはり国際法規並びに国際慣例にのっとりましてこの背後関係を調査する、これはもう当然のことだと思うのでございますね。それから本人については、本人の希望に従って、アメリカ亡命することを希望しておりましたので、そのようにいたしました。  しかし、調査も終わりました段階でできるだけ早くこれを返すということを、私先月の二十九日ソ連のグロムイコ外務大臣に伝えたわけでございます。ソ連は、なかなか先方としては言い分がございまして、日本は友好国ならば機体も乗員もすぐに返すべきである、それを引っ張って、しかもいろいろなことをして、どうも本人の意思を十分に聞かないでアメリカへやってしまったのじゃないか、私に直接言ったわけではありませんが、麻薬か何かかがして、そして本人にわからないように精神錯乱状態にして、それで連れていってしまった。こういうふうな誤解を持っておった時期もあるようでございます。  ところがその後、この誤解は私は解けたと思いますし、わが方の言うところの返還の問題については、ソ連はこれに応諾するということを言ってまいりました。どういう形で、いつ返すかということにつきましては、いま外交ルートを通じてやっておるわけでございます。これを要するに、わが方としては好まざるちん入者に対して国際法上、国際慣例上許されることをやっておるので、正しいことをやっておるのに何の報復される理由があるかということを考えておりまして、その旨をグロムイコ外務大臣にも申したのであります。  いまの拿捕事件でございますけれども、これは実はミグ事件が起きて以来、九月に五件、十月に二件起きております。すなわち七件起きておるわけでございます。昨年の九月には三件、十月には八件でございますから、この九、十月でございますと十一件でございます。昨年の十一件に対して本年は七件でございますから、まあ特に多くなったということも言えないわけでございます。こんなことが多くなっては困るわけでございまして、漁業をされる方々にも何とかひとつ領海を守っていただいて、こういう不幸なことが起きないようにできるだけ考えてもらいたいというふうに、私ども水産庁の方から指導してもらっております。一方、不幸にして拿捕された方々に対しましては、水産庁では従来から救済の措置をとっておりますので、今年特にこれに対して特別の措置をとるという考えは持っておらぬわけでございます。こいねがわくは、こういう昨年に比べてふえていないという状況が今後も続くように切望している次第でございます。
  210. 鬼木勝利

    鬼木委員 これはまた繰り返すようなことになりますけれども、いま大臣のおっしゃっていらっしゃることは、わが方としてはそういうお考えであったかもしれぬけれども、ソ連のやはり誤解だとおっしゃいますが、誤解をするようなことを——先般私はここで坂田防衛庁長官に相当突っ込んでお尋ねしたのですが、領空侵犯という違法の名のもとに調査するんだ、表は領空侵犯だ、これは明らかに違法だというので調査した、これは大臣のおっしゃるとおり当然だと思うのです。ところが、調査がやや行き過ぎじゃないか。細かく解体した。そうすると、ようございますか大臣大臣がおっしゃったのじゃありませんよ、防衛庁が、これは運搬するために解体したんだとふざけた答弁をやるわけです。何を言っているんだ。あんな大きなものだからあのまま運搬できないから、運搬するのには解体して壊していかぬと運搬できない、荷づくり用のために解体したのだなんて、そんなふざけた答弁をしたのです。運搬するために解体する、荷づくりするために解体するのだったら、アメリカから専門家の軍人なんかを何で呼ぶのだ。だから、領空侵犯の調査だということに名をかりて、事実は軍事機密を探るのじゃないか、それが目的じゃないかということを、これはここで大臣に申し上げてもいかぬけれども、この前私やったことをちょっと……。だから、そういういかにも誤解を招くようなことをやったからこそ、ソ連もこういう報復手段をとったのじゃないかということを、国民皆そう思っているのですよ。ですから、今度は特別のケースだから、大臣の温かい御処置をお願いをしたいがどうでしょうか、こういうことを御相談申したので、私が冒頭に申し上げましたように、それは水産庁の方で遺憾なくやっておる、そういう罹災者の方が満足されるような処置をやっていただいておれば結構だと思いますが、なおまたその点につきましては、大臣として水産庁の方にも十分御連絡いただきまして、遺憾なくやれよ、皆が満足するように特別に処置をとれよと一声かけていただけばなお結構だと思いまして実は申し上げたわけでございます。大変これは蛇足かもしれませんけれども、その点特に大臣に御要望申し上げますが、いかがでございますか。最後にもう一青お言葉を賜りたいと思います。
  211. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御要望の点はできるだけの努力をいたしたいと思います。  ただ、ちょっと一言だけ申し上げますが、実は領事条約違反ではないかということをソ連側は申しましたのですけれども、これはそんなことをしておりませんで、ちゃんと本人とソ連の大使館員と会わせております。何しろ軍人でございますし戦闘機乗りでございますから、その人が亡命をしたということになると命にかかわるものじゃないか。本人が非常に恐怖を感じておる。会いたくないということを言っておったようでございますが、後で問題になるといけませんので、わが方でも強く申しまして、ソ連の大使館員とそのベレンコ中尉なるものは面会をして、そして本人の意思をちゃんと申しておるようでございますから、この点はソ連側は誤解をしておった時期がありますようですけれども、いまはないと思いますが、申し添えておきます。
  212. 鬼木勝利

    鬼木委員 朝来長時間にわたって大変お疲れであったと思いますが、まことにありがとうございました。  では、委員長、これで終わります。
  213. 木野晴夫

    木野委員長代理 受田新吉君。
  214. 受田新吉

    受田委員 大臣六時までということでございますから四十五分しかありませんが、急ぎ質問をいたします。  まず日中問題について質問をしたいと思いますが、さっきの報道によると、中国に文革派の四人の人が逮捕された事件が起こっておるようでございます。ポスト毛沢東の中国においてこうして政治的動揺あるいは政治的混乱が発生するかもしれないという予測をする向きがあったわけでございますが、こうした状態をながめたときに、政府としては中国の将来についてどういう認識を持っておられるか、お答えを願いたいと思います。
  215. 中江要介

    ○中江政府委員 中国の将来ということでございますが、本年に入りましてから周恩来国務院総理、毛沢東党主席と相次いで中国の指導者が亡くなられましたけれども、私どもの見ておりまするところ、中国の大きな国の進む路線というのは毛、周両巨頭によってしかれておる。日中間につきましても日中共同声明という基本的な合意の規定と精神があるわけでございますので、これを実施する段階で中国の指導層なり党あるいは政府幹部の中に異動がございましても、二千年の交流の歴史があり、また子々孫々を踏まえて日中平和友好条約考えようという長期的な日中関係から見ますときには、大きな変化といいますか変動というものはまずないということで臨んでいくべきではないか、こういうふうに思っております。
  216. 受田新吉

    受田委員 小坂大臣は御就任以来非常に意欲的な熱意を持ってこの日中平和友好条約の締結へ努力を続けておられる。ただ、いま御答弁ではありますが、中国にもいろいろな国内事情があることはきょうの事件報道によってもわかるとおりですし、また、国内的にも、三木総理に対決する勢力が二倍に及んでおる。この三十一日に大会をなさるのが平穏無事であるかどうかの予測もむずかしいという状態の中に小坂先住は外務大臣になられたわけです。かつて名外相として誉れ高かりし実績を積まれた小坂先先でありますし、外相就任後直ちにアメリカへ飛んで行かれた。国連総会もあるというようなことでありますが、とにかく日本の国内政情というのも大変波乱を含んでおる。日中双方とも国内事情というものがあるわけです。その中で小坂先生は三木内閣が継承するものとしての外務大臣の任にあられるのかどうかということです。
  217. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 十数年ぶりに受田先生から外務大臣としてまたいろいろお教えをいただくわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  ただいまの中国問題でございますが、夕刊でイギリスのデーリー・テレグラフ紙の通信として出ておるようでございますが、私ども外務省も実は二日ばかり前からそういう情報を入手はいたしております。しかしながら非常に微妙な問題でございますので、真偽のほどは十分確かめなければならず、その上でないと批評がましいことは言えないというように考えております。実は先ほど共同通信の方から聞いてもらったニュースによりますと、そのような質問に留意するということを中国の外務省スポークスマンは答えているようです。そのような質問があったことに留意する、こういうのが答えのようでございます。さようなことで、わが方と違って情報関係の非常に少ないところでございますから、わが方も十分慎重に考えてみなければならぬと考えるわけでございます。  ところで、御設問の私の立場でございますが、何せ私は任命されている立場でございまして、三木総理から外務大臣をやってもらいたいというお話をいただきましてお受けしているわけで、実際それ以上のことは私として申し上げる立場にございませんので、ひとつ御想像にお任せを申し上げるということでございます。
  218. 受田新吉

    受田委員 私は小坂先生が外務大臣になられたら、外務大庫というものをある程度長期展望で任にあるという意欲をもってやられないと、いつ首になるかわからぬ——首になるという意味は、総理がかわっても引き続き小坂先生に御苦労してください、もし仮に三木さんがかわられたとしても小坂さんに二、三カ月でやめていただくのでなしに、経験豊かな礼儀正しい英国型紳士としてだれが見てもりっぱな小坂先生にやっていただくというかっこうでないと、日中平和条約を締結するのにも私大変不安があると思うのです。  ただ、ここで私が指摘して御答弁願いたいことは、実は宮澤先生が外務大臣として在任された昨年、中国側に表明した覇権に関する四項目があるわけです。この覇権という問題は、他国に敵対するものではない、一般的な平和原則であるという主張でございます。中国の哲学思想の中で、いつも私指摘するのですが王覇の弁という興味深き言葉がある。王道とは徳をもって化することであり、覇道とは力をもって制する。したがって覇権という言葉は、私まなじりを決するような問題でなくて、そうした力で対決するということをやめていこうという素直な意味に解釈すれば、そうむずかしく考えなくてもいいのだという感じでおるのです。これはどうでしょうか。宮澤先住が提示された四項目というものは中国側から何かの形の返事がないように思うのですけれども、これは黙殺されておるのかどうかですね。どうでしょうか。これは提案されたのが昨年でございますから一年たっておる。
  219. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その点に関しまして私も実は従来からいろいろフォローアップしておるものでございますから、ただいま先生のおっしゃったようなそういう問題についていろいろ工夫も要るかというふうにも考えておるわけでございますが、しかしあの四項目というものは、やはり日本の憲法上あるいはこちらの日本側として考えてみれば、ああいうようなことも必要であるというふうに考えられる点でもございますものですから、私としては、その条件として提示したということでもないようでございますから、余りこれをいろいろあげつらうこともどうかというふうに思っておるわけです。  要は、やはり一九七二年九月二十九日につくりましたあの共同声明の原則と精神というものを忠実に考えてどうしたらいいか、日中両国は今後アジアにおいてお互いに友好の関係を保っていかなければなりませんわけですが、その関係から見てどうしたらいいかということを中心相談をしてみるのがよろしいのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  220. 受田新吉

    受田委員 これは大臣、宮澤先生の提案はあちら側の不同意で時間がかかっておる、そういうふうに解釈せざるを得ない面もあると思うのですけれども小坂大臣としては覇権という言葉、条項に対してどういう御見解を大臣になられてお持ちになっておられるか。この覇権の解釈について、法律の法文解釈という意味だけではなくして、むしろ中国、日本双方が幅広い解釈で、おおらかな気持ちで臨むという解釈になるべきだ。私、王覇の弁を感じながら、まあ王覇の弁は孟子の中に出ておることでもございますが、孔孟の教えというものは、いま現在の中国はこれは曲学阿世の徒である、むしろ秦の始皇帝が書を焼いたこの馬力の方が正しいのだという見方をしておる。そうすると孔孟の考え方からくる覇権の解釈というものは、中国が曲学阿世の徒である孔孟の考えを採用したと見るかどうか、そういう思想背景も考えていくべきものだと私は思うのです。  いずれにしても覇権という言葉は、日本ではもう制覇という言葉でも力で抑えるというような考えです。風が旅人のマントを脱がすために強くするほど旅人はマントを身につけておる。太陽がにこにこ笑ってマントを着た旅人を照らしたら旅人はマントを脱いだので、イソップ物語の太陽と風の勝負は太陽に凱歌が上がった。これは見方によれば太陽が王道であり風が覇道をやったということで、中国思想史の上にくる流れを見ると、中国といえども孔孟の教えの中にある王覇の弁というものは継承しなければならない、それを素直にとっていたものだと私は判断するわけですから、法文解釈を厳しくするよりも、あちらだこちらだというのじゃなくて、大きな気持ちでもっとゆとりのある考え方に立つべきだと思うのです。そういう意味大臣がこの覇権問題を処理される必要がある。  そこで問題を日ソと日中へ持っていきたいのですが、ソ連との関係は後ほど質問しますけれども、いまなかなか厳しい状態になっておる。すでに二十年の日月をけみしながら中立宣言以後の進捗が領土問題がややこしいものだからおくれておる。そうすると、むしろ領土問題のややこしいものがない日中の平和条約締結の方が先に片づけられる筋のものではないかと思うのです。日ソと日中の両方をてんびんにかけて右往左往するうちに、日本外交の失点をかせぐ危険があると思うのですが、まず手のつけやすいところから道を開いていくという意味で、日中、日ソ両平和条約の締結について、条件の厳しくないと判断できる日中平和条約の方へ先に手をつける。前の橋から渡る。日ソは二十年の歴史が重なってもなかなかむずかしいところがあるから、それを一々ながめておったらせっかくの日中の問題がむずかしくなる。覇権という言葉そのものを、もっと道義的な、風と太陽の関係から見た見方だという軽い気持ちでいけば、ソ連だってそうまなじりを決する問題ではないと思うのです。日本外交一つの大きな柱をそうした力で解決するのではなくて、太陽の光をもって、それぞれの国と思想的にいろいろな対立があろうとも、日本外交は、アジアの太陽の国家であるというおおらかな気持ちを持って処理されれば自然に解決する問題だと思うのです。就任ほどない大臣とはいえ、すでに実績を積まれた、いま顧みてなつかしさにたえない小坂先生、その点について決断をされる時期が来ておると思うのです。
  221. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 王道、覇道に対しまするお考え、私、全く受田先生と同様に考えます。覇権という言葉が出てきたのは、御承知のように一九七二年二月の上海コミュニケでございます。キッシンジャー国務長官自身がどうも火元ではないかなどと言われておるわけでございまして、非常に突き詰めて法律論議をしますと、いろいろな問題があるのでございましょうけれども、先生の言われたような力を用い、権力を用いて他を圧迫する、そういうことでないという意味に解すれば、私はおのずから道が開けるように考えておるわけでございますが、何分にも相手のあることでございますから、十分に話し合いをしてみたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、ソ連との関係でございますが、これはもう二十年の歳月をけみしまして、共同宣言以来、逐次経済協力その他で友好は深まっておりますけれども、何といっても領土問題がネックになっておるわけでございます。われわれは、四つの島、これは日本の固有の領土であって、何としても返還を見なければ平和条約が結べないという立場をとっておりまして、私はどなたが政権をとってもこれは変えられないことだと思っております。  実は先般、参議院でちょっと申し上げたのでございますが、日本の国内で四つの島の返還につきまして、二島をまずもらって、それからあとの方を解決するとか、あるいは千島とか樺太までこれは今後の問題になるとかいろいろな意見もございますので、先般の国会決議もいただいたのでございますが、四島等の「等」を取りまして、四島ということにはっきり決めていただいて御交渉を願うことはどうかというふうに考えておるわけでございます。各党のコンセンサスをいただきまして、私どもに強い交渉の立場をお与えいただくことはいかがなものであろうかというふうにも考えております。これは私見でございますから、いろいろと御相談に上がらせていただきたいと考えております。  いずれにしても、そういう領土問題は日中間にはございません。尖閣列島の問題がいろいろ言われますけれども、これはわが方が主権を現にあそこに行使しているところでございます。問題は非常にその点はなだらかな道があるように存じておるわけでございまして、ぜひともこの日中についてできるところからという意味で進めたい。これは決して、早くやった方とより友好的だとか等距離でないとかそういう意味でなくて、あるいはアジアの将来を考えます場合に、日中の平和友好条約を早く結んでしかもそれに非常に具体的な困難がないならば、これはぜひ進むべきであろうというぐあいに考えておる次第でございます。
  222. 受田新吉

    受田委員 いま私があえて指摘した日中と日ソと困難度を見たときに、領土問題がないだけに日中の関係は手がつけやすい。  それで、日中の平和条約締結へのガンは覇権条項ということですか。
  223. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さようでございます。
  224. 受田新吉

    受田委員 そうあれば、いま私が解釈したようなところでこれを結ぶことによって、この日中の覇権問題を了解した上で結んだそのことは、何か軍事同盟、不可侵条約のような裏づけの条約であって、他の国、たとえばやがて中国とソ連が戦うようなときにわれわれが中国に加担するようなひものついた条約という意味の束縛や義務がある条項じゃないと私は思うのです。そうじゃないですかね。
  225. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、日本は平和憲法のもとにおきまして他国と軍事同盟などはやってみようのないことになっておるわけでございますから、そういう軍事同盟的なものではないかと考えるようなこと自体あり得ないことであると考えております。
  226. 受田新吉

    受田委員 それだから、したがっていずれを選ぶかとなれば、日中の方が非常に安易である、こういう感じが私はするのですが、大臣、先般御就任間もなくしてアメリカへ飛ばれ、ニューヨークにおいて国連総会に臨まれた。グロムイコ外務大臣小坂外務大臣が会談をされたときに水さえ出なかった、あれは本当ですか。ちょっと言うてください、これはやはり礼の問題ですから。
  227. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 水も出ませんでございました。
  228. 受田新吉

    受田委員 水も出ない会談というもの、これは水よりも冷たいことになるのですが、私は非常にさびしいですね、外務大臣同士がそういう大事な国際間の会談をされるときに、そういうさびしい状態があったということは。  そこで、まず日中の間では留学生の交換などはすぐやっていい話じゃないですかね。勉強したいのが日本に来たい、向こうへも行きたい。留学生交換はどうなっておるのですか。
  229. 中江要介

    ○中江政府委員 現在日中間で交換されております留学生の数は、中国から日本に来ております者、政府派遣の者が十三名、民間からの者が十四名、合計二十七名、日本から向こうに行っておりますのは、政府留学生七名、民間から約二十名、こういう数で、お互いに留学生が交流しておるわけでございます。こういう留学生の交換を文化協定その他何らかの取り決めによって制度化することはいかがなものかという考えは、昔から——昔からというか国交正常化後からいろいろの方面から考えられておりまして、政府でも機会を見て中国側の意向を打診したことがございます。ただ、中国側の最近の態度は、文化協定を締結することはいまのところは考えていない、こういうことでございまして、一九七三年の四月にメキシコとの間に交換公文を結びましてそれ以降は、中国はいずれの国とも文化協定を締結することによって留学生の交換を制度化するという考え方をとっておらない。これは相手のあることでございますので、日本側としては、中国側がそういう考え方でなくて、やはり文化協定でこういったものを制度化していこうということになればいつでもこの話し合いには応じたい、こういう考えですが、御承知のように、日本と中国とでは制度が非常に違っておりまして、留学生の選考の問題から始まりまして、宿舎の問題、留学する学校の試験制度の問題、そういった問題で多くの難点はございます。しかし、これは日中の友好関係にかんがみますれば、その困難を克服して、できれば制度化することの方が望ましい、こういう態度でございます。
  230. 受田新吉

    受田委員 そうした留学生の交換というものは、政治経済だけでなくして、もっと自然科学とかその他あらゆる面に交流、いまごく少数ですね、交換学生というのはまことにタケノコのはしりぐらいの程度しか行っていないということで、文化交流を基本とした文化協定のようなものを結ぶ。こちらから申し出た、まだ向こうから答えがない。これは日中の関係を促進するのに、この方面からいくことも非常に大事なことで、これは強力に進めてもらいたい。  日ソの関係にはすでに文化交流の協定ができておりましたね。
  231. 橘正忠

    ○橘政府委員 日ソ間の文化的交流に関する取り決めは六年くらい前から存続しております。交換公文の形式による取り決めができております。
  232. 受田新吉

    受田委員 これはぜひ進めるべきである。  そこで、日ソ関係一つのガンがどうもいまの時点で領土問題、北方領土がこういう状態になった時点で、静かに原点に返って考えるべきだと思うのです。ポツダム宣言、ポツダム宣言の前のカイロ宣言、それを通じてわれわれが理解していることは、領土不拡大方針、こういう方針が一応この宣言に決められておる。ところが、あのサンフランシスコ平和条約によって千島という日本の固有の領土、特に四つの島など昔から伝統的に日本領土であるものまで含んで、また千島の中、北の千島でさえも、これは明らかに明治八年の千島横太の交換条約で、正規の手続で交換したのですからね。そういう形のものでございまするから、カイロ宣言という立場、ポツダム宣言という立場を尊重して、特にポツダム宣言は受諾したのでございますから、領土不拡大方針という立場のその宣言に基づいてこれを受諾した日本が、日本の固有の領土までも取り上げられるということは、受諾したポツダム宣言違反である、そういうことになりませんか。
  233. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ポツダム宣言を受諾して平和条約を結んだわけでございますが、あの受諾演説の中で、吉田全権が千島を放棄するということで、入れたわけでございます。ところが、その千島とは何ぞやということでありますが、一八五五年の日魯通好条約、そこに日本とロシアとの境界は択捉島と得撫島の間の海峡であるということが書いてあるわけです。それで、先生いま御指摘のように千島はソ連のものでありましたが、その後、一八七五年の千島樺太交換条約によりましてこれが交換された。そのとき以来、日本は暴力によって奪取したのでもなく、盗取したのでもなく、千島を領有しているわけです。しかし、これは放棄したのでございますから、これははなはだ残念なことでございます。われわれに二言はないと言わざるを得ないと思うのです。ただ、歯舞、色丹、国後、択捉、この四つの島は、もういまだかつて外国と交換したわけでもない。とにかく日本古来の固有の領土でございまして、何か植物学的に見ましても、この四つの島に生えている植物と千島の得撫から占守に至る十八の島に生えている植物とははっきりと違うそうでございまして、私どもそういう根拠に基づいて、あくまでこれは返還すべきもの、おっしゃるように、ポツダム宣言違反であるというふうに思っているわけでございます。
  234. 受田新吉

    受田委員 そこで、わが国のある政党のお考えの中に一つの、私、問題があると思うのですけれども条約論で意見が出ておるわけですが、例のサンフランシスコ平和条約の第二条の(c)項、つまり千島放棄の条項です。この条項を廃棄して、これを捨てて、そして新たなる問題として四島の返還を求めるという見解を持っているある政党がある。これは条約論として可能かどうか、つまりサンフランシスコ平和条約の第二条の(c)項を廃棄するということが可能であるかどうか。可能だとすれば条約を改正するのか、あるいは各参加国のそれぞれの了解をとるのか、あるいは日、米、ソの三国の合意で廃棄できるのか、これは条約論として大変大事な問題と思いますので、わが国にこういう見解を表明している政党があることは、外務省御存じだと思います。
  235. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 サンフランシスコ平和条約の特定の条項を一方的に廃棄することは認められないと思います。
  236. 受田新吉

    受田委員 そうすると、一方的に廃棄できないということであるので、この政党の見解は不可能なことである、こういう解釈に立つ。  もう一つ、このポツダム宣言にうたわれてあるところの四つの大きな島とその近くにある小さな島という中には、千島の四島が入っておるのかどうか、お答え願います。
  237. 橘正忠

    ○橘政府委員 ポツダム宣言の第八項にございます「「カイロ宣言」ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等」——つまりポツダム宣言の当事者「ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」という宣言でございますが、したがいまして、この宣言それ自体は、まず第一に、それのみによって領土問題を国際法的に確定する性質のものではございません。別途にそういう領土の処分に関しての国際的な合憲というものがあって初めて領土というものは確定していくと考えてよろしいかと存じます。
  238. 受田新吉

    受田委員 私、非常に残念なんですが、もともと日本の固有の、特に四島は千島樺太交換条約以前からの、もう日本にひっついている祖先伝来の土地がもぎ取られた。カイロ宣言からの、ポツダム宣言からの意図から見てもおかしなかっこうで領土不拡大方針の違反をやっている。これに対して外務大臣たちは歴代、あの四島を、カイロ宣言あるいはポツダム宣言のどこから見ても、領土不拡大のあの原則に忠実にわれわれが従った立場から見ても、われわれの固有の領地で、手をつけていただくところじゃないということを強くやってきたのかどうかです。法律論の立場からと現実の立場と両方から見ても、だれが見ても、周恩来前首相でさえも、これは日本の固有の領土と言うてくれておる。それに対して、その日本の働き方というのは大変な働きをしておるのですか、どうですか。
  239. 橘正忠

    ○橘政府委員 この問題につきましては、直接日ソ間では、御存じのとおり二十年前の日ソ共同宣言、これを交渉してまとめます過程において、法律論から、実際論から、歴史的な話から、すべてまず皮切りに議論をやって、その結果、日ソ共同宣言においても、領土問題を含む平和条約の問題がいわば一種の継続審議という形で残ったわけでございます。自来ソ連との間では、実に多くの先達が累次、法的にも歴史的にもこの四島が日本の固有の領土であるということをソ連には説き続けてまいりました。一九七三年、当時の田中総理が御存じのとおりモスクワに行かれて首脳会談をして、さらに四つの島について、これが戦後の未解決の問題であるということを確認をされて今日に至っているという状況でございます。
  240. 受田新吉

    受田委員 全体に残念なことですが、最近また浜吉丸がソ連の例のピョートル大帝湾でつかまった。これは向こうから言えば、ピョートル大帝湾は豆満江のすそから何とかいうみさきまでは一直線に自分の方の内海であるという宣言をしておるわけですが、逮捕された船というものには日本政府として、ピョートル大帝湾は自分の内海である、こういうソ連の宣言があるから危いぞということを警告しておったんですか、どうですか。領海十二海里説でいったら十二海里まで行けると思いますよ。それを向こうは、ピョートル大帝湾は自分の方の湾である、ここでパバロートヌィみさきまで一直線に結んだ線の内側は内海である。このことは、こういう船がつかまったときは本当に悲しいことなんですが、日本政府が十分そこを理解さしておるのかどうか。理解さしておるなら危険を冒してまで入るはずはないはずです。お答えいただきたい。
  241. 橘正忠

    ○橘政府委員 ピョートル大帝湾に関しましての日ソの立場の相違は従来からもずっと続いておるわけでございます。現実の問題として、この付近で最近つかまりましたのは本年に入って三件目でございます。昨年もそれより若干多い件数が起こっております。したがいまして、あの方面に出漁なさる向きについては、かねてから関係方面を通じて、問題が起こりやすい地域であるということの御注意は行き届くように措置をとっておりまして、最近も、ことしもすでに二件起こっておりますので、そういう機会にはまた改めてそういう点を関係方面にはよく周知していただくような措置を農林省等を通じてやっております。九月にもその措置をとっております。
  242. 受田新吉

    受田委員 措置をとっていてもなおかっこういうことが起こっているのです。起こってから措置をとったと言っても措置のとりようが悪いんじゃないですか。こういう事件を頻発させ、政府が行政措置をとりながら、指導をしながらもなおこういう事件を起こしている。残念ですよ。  それからもう一つは、海洋法の規定から言うても、短い距離の場合は湾であるが、こんなに長い距離は湾じゃないのですから、国際司法裁判所に訴えてでもこれを処理する道はあるんじゃないですか。外務省としてはどう考えておるか。
  243. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生のおっしゃられるお気持ちはわかっておるつもりでございますが、法律的には、ソ連はいわゆる国際司法裁判所の強制管轄権を受諾しておりませんので、特定の合意が成立しない限り自動的には国際司法裁判所に持っていくことができないという状況にございます。
  244. 受田新吉

    受田委員 そういうことであるならば、泣き寝入りなんだから、あそこに行く船に注意をして——何回もそういう悲劇を繰り返すような外務省、農林省、これは大変な過ちを犯していると思うのですよ。そうしてつかまったらソ連に対して即時釈放を要求している、これを繰り返している。これはまずいですね。外交の指導の大欠陥ではないですか。外務大臣、あなたの時間が短くなったから、御答弁を願いたい。これこそあなたのサイドで考えなければいかぬ。
  245. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはいま局長の方から御答弁したように、国際法上認められないが、実際問題として拿捕が生じているということであります。そこでわが方は周知徹底方を指導しておりまして、最近においても九月二十九日、再度海上保安庁から注意を喚起したところでございます。どうもはなはだ遺憾でございますが、今後もさらに注意を喚起してまいりたいと思います。  それからなお墓参の問題等についても同様でございまして、われわれはそのお墓があるということは先祖から住んでおるということで、でございますから墓参があるのだというわけで従来そういうことが許されておったのですが、ことしになりましてからビザを要求するということになっております。ビザを持っていくということになれば、これは外国であるということをこちらが認めることになりますので、実際問題としてできないということになってきて非常に遺憾なことであるというふうに思っておるわけでございます。
  246. 受田新吉

    受田委員 遺憾で片づかない国民の感情もありますので、外交の努力というものはもっと徹底するように。不正の外交は最後には正義の前に軍門に下る、これが覇権者の常であります。正義の戦は常に最後は勝利にならなければいかぬです。正しい方が負けて不正が勝つというような外交はいかぬわけですから、太陽の外交によってひとつ、それからもう一方は、国内で十分な行政指導をされて間違いを二度と繰り返さない。  最後に大臣おいでになる間に、大臣が行かれた後は事務当局に聞かしてもらうことにして、私は日朝関係にちょっと触れてみたいのです。  現在南北の双方を承認している国は何カ国あるか、または南もしくは北のみを承認しておる国は幾らあるか、それぞれ数字をお示し願いたい。
  247. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 双方を承認している国が四十八ヵ国でございます。それから北の方を承認している国が九十一、南を承認しているのは九十六でございます。
  248. 受田新吉

    受田委員 まさに伯仲のところへ来ておるわけです。もう双方に対して国際世論は公平にいっておる。それから、国連総会でこそついに日の目を見なくて済んだようなものですが、南北両朝鮮の国連加盟に一応日本政府としても努力をして問題の解決に当たりたいというお気持ちがあった。そこまで来ておるなら、日本は現に韓国を承認して国交を進めておる、国際世論も南北に公平にいっておる、そうしてわれわれと同じ西欧の諸国家でもそういう措置をとっておる、承認しておるのがもうほとんど伯仲しておるという時点で、朝鮮民主主義人民共和国に対して、別に思想はどうだということは抜きにして、これは当然追っかけて承認をして、そして国連総会等に両方を承認した日本の立場からあっせんの労をとるならば、より効果があると思うのですがね。これはどうしてそういう方向へ行けないのか。また今後行くように努力しようとするのか。  国際世論にこたえるにおいても、隣国の一番近い日本、しかも日本国内には朝鮮民族は六十何万もおる。その民族の側から見ても、やがて平和統一して朝鮮半島に幸せな国ができることをわれわれは祈りたいですよ。国際世論がそこまで来ておるのに、あえて北へ手をつけないのはどこに原因があるのか。これは小坂大臣、このあたりでひとつ追っかけて北を承認して、国際場裏で日本が南北の平和的な統一に深い願いを持っておるんだということを示す必要があるのではないですか。国際世論はそこまで来たのです。かつては北はオーソリティーという意味で単なる場当たり的な安保理事会などで答えを出したことがありますが、いまやもう独立国家として九十何カ国がそれぞれ南北を承認しておるという、そこまで来たんです。これは日本外交の大英断をふるうときが来ておると思うのです。
  249. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 朝鮮民族の幸せを祈る気持ちは私は全く受田先生と同じでございますが、ただ日本としまして、御承知のように実は非常に微妙な問題があるわけです。われわれとしましては韓国との間に友好親善を進めておりますが、やはりわれわれとすれば何としてもその韓国日本に対する信頼感、これを損なうことがあってはならないというふうに思っております。実は、朝鮮半島の実情というものは、御承知のようにアメリカと中国とソ連と、その三巨大国の利害関係が複雑にからみ、利害関係のみならずその勢力関係が複雑にからみ合ってそこに均衡を得ているような状況でございまして、その均衡を破るというようなことをわが国からいたしますことは非常に問題があるというように考えております。ことに北の朝鮮民主主義人民共和国の側においては、韓国を認めていないわけです。今度、御承知のようにやはり韓国を頭越しにアメリカと交渉したいというようなことを言っておりまするのでございまして、その段階で私どもの立場から、これを両方同じように見て問題が解決できるであろうかという点が非常に問題だと思うのでございます。私どもは、何としても韓国わが国に対する信頼感を損なってはならないと思います。しかし、それと同時に、北の側に関しましても、人の往来その他は一ころと比べものにならないほど往来もふえておりますし、したがっていろいろな意味における交流も進んでおるわけでございまするから、その立場の中から両方の問題について、日本という国は畏敬すべき国であるという信頼感をかち得て、さらに行く行くはこの双方の間に平和な関係が樹立できるようなことを望んでおるわけです。さしあたりは、国連において双方が希望するならば、双方が同時に国連に加盟することも結構じゃないかというようなことを申しておるわけでございますが、一ころはそういうことを申しますと、いまの南北の地位を固定化するものだというような非常な反発があったわけでございますが、その点は若干変わりつつあるように感じておるわけでございます。いずれにいたしましても、われわれとしては、本当の近い隣国である韓国並びに朝鮮民主主義人民共和国が仲よく一つの民族として統一されて、わが国との友好関係を持つことを望むわけでございますが、なかなかそれには過程がある、プロセスがあるというふうな感じを持っております。
  250. 受田新吉

    受田委員 大臣にこういう質問を終わりまして、お立ちいただいていいことにしますが、私は韓国へも参りました。また朝鮮民主主義人民共和国へも参りまして、両方の国家の最高責任者たちとお話ししながら、この隣国の両国が同じ民族が三十八度線、政治路線で分断されている悲劇、肉親にそれそれ交流したい、手紙を出したい——何か四年前の七月四日のあの協定などは本当にいい協定だと思っておったわけですが、韓国の立場も私はわかる、北朝鮮の立場もよく知っておりますだけに、これはやはり日本外交において韓国との従来の友好を続けながら、同時に国際世論はもう九十一と九十六というように接近しておる。五十近く双方を認めておる国もあるんですから、その中において両方を認める一番隣国として、この両国の平和的な統一を招く、むしろ北朝鮮も承認してやった方が韓国との関係も理解させながらやる手は幾らでも私はあると思うのです。  だから、私が非常にさびしく思うのは、韓国だけ行った人は、北朝鮮を見ない人は、もう韓国サイドに物を判断する。それから北だけ行った人は、南へ全然行かないで悪者のように思ってこれを判断しておる。しかも日本の政党はそういうところで、自民党は韓国サイド、他の野党は北朝鮮サイド。両方とも、それぞれの国を両方行って国情を見ていこうというような気持ちはない。一方だけ見たら一方は行かぬ、こういうような態度でおるものだから、そこにこの両国の統一に、一番隣国で一番近い国が手がつけられないのですよ。私はこれはひとつ思い切った手だてをされる時期が来ておると思うのです。私はそれだけに、両国をよく知っておるだけに、この二つの国が一本になって——どこから見ても政治路線で分けられたという悲劇の国なんですからね、これは一本になる、民主主義の国として一本になっていくべきだと思っておるわけですが、小坂先生は北へ行かれたことがないですかね。
  251. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まだございません。
  252. 受田新吉

    受田委員 それは個人、代議士としても私は行っていただくべきだ。私たちも、韓国もよく理解し、北朝鮮も理解する、こういう立場で物を考えてきておるだけに、一方だけ見て、一方の方は全然目が見えぬようなにらみ合いが続いておるわけですよ。非常に悲劇です、これは。  そこで私最後に、大臣、私がいま提案したことを進めていただくことを要求すると同時に、北朝鮮側で漁船が拿捕されている。何回もやられている。こういうことをひとつ何とか手を打って、あの北の国とも漁業協定のようなものは、たとえ国交が回復しなくても漁業協定のようなものを結んで双方の漁業振興を図るような手だては、これはもうしてもいいんじゃないですか。国交が開けておらないから協定が結ばれないという外交はないと思うのです。どうですか。民間だけでもいいんですよ。
  253. 中江要介

    ○中江政府委員 これは一年前の松生丸事件のときに一部の日本の漁業界で非常に必要が痛感されて、民間漁業取り決めが結べないものだろうかというアプローチはあったわけでございますけれども、その場合に、北朝鮮の方では政府の保証が必要だというような抽象的な話は聞きましたけれども、具体的にどういう協定に基づいて、それについて政府がどの程度の保証をしなければならないのかという点についてはまだ具体化した話はございませんものですから検討ができないというのが正直なところの現状でございまして、政府といたしましては、民間でちょうど日中正常化前に日中間に民間漁業協定がありましたように、もし日朝間で民間の漁業協定が締結されて、それについて政府として何らかその実施が円滑にいくようにできる範囲のことがあるならば、これは前向きに検討しようという姿勢でおるわけでございます。
  254. 受田新吉

    受田委員 前向きの姿勢でおる、これは前向きの姿勢をなるべく強い姿勢に切りかえるようにやってもらいたいと要求します。  大臣がいなくても私お話を進めなければならぬのです、まだ与えられた時間が七分ありますから。  ベトナムの件に触れます。この法案、統一ベトナムに対して新しい大使館を置くわけです。統一ベトナムを承認している国は何国ございますか。
  255. 中江要介

    ○中江政府委員 私は、手元に来ておると思っておりましたが、ちょっと数字があれしまして……。
  256. 受田新吉

    受田委員 大まかでいいです。
  257. 中江要介

    ○中江政府委員 はい。調べまして、すぐにお答えします。
  258. 受田新吉

    受田委員 この法律案そのものが統一ベトナムに対して大使館を置くわけです。その在勤俸を決めるわけです。したがって、その統一ベトナムを——アメリカはまだ承認していないんですね。
  259. 中江要介

    ○中江政府委員 アメリカは承認しておりません。
  260. 受田新吉

    受田委員 そうでしょう。アメリカは承認していない。それを日本は承認して、大使館を置いて、そして在勤俸を相当の金額を上げよう。これを見ると在勤俸の最初の一番高い分を六万も引き上げるような在勤俸をやられるわけです。そういう法案を出されておる。そのベトナムというのは国際的にいまどのぐらいの地位にあるのか、これは外務省でも当然用意しておかなければいけないことなんですね。だから、どのぐらい承認して、その承認した国はどこどこであって、それで日本がそこに大使館を置くんだ、こういう問題になる以上は、これは法案に直接つながる基本的な問題なんです。われわれがベトナムを知るのに一番大事な問題なんです。アメリカは承認してないがほかに一体何国承認した国があるか、そしてその承認した国家はどういう彩りであるか、西欧民主主義国、共産圏、いろいろあるでしょう。それはもう一番基本の問題で、私は質疑通告していませんでしたが、これはわかると思うから、韓国の方は質問したけれども、これは法案に直結するから当然用意されておると思うたわけです。——ありましたか。
  261. 中江要介

    ○中江政府委員 ありました。どうも失礼いたしました。外交関係を樹立している国が九十七カ国でございます。
  262. 受田新吉

    受田委員 そこまで進んでアメリカがどうしてこれを承認してないのかということです。
  263. 中江要介

    ○中江政府委員 これはアメリカの事情でございまして、私がここで申し上げることがアメリカ考えをすべて代表しているかどうかについてはちょっと問題があろうかと思いますが、一般的に考えられますことは、ベトナムにおける紛争を終結いたしました一九七三年のパリ協定の実施をめぐりまして、北ベトナムアメリカとの間で必ずしも認識が同じでないということがございまして、他方アメリカといたしましては、ベトナム紛争中に行方不明になりました人たちについての情報が誠意をもってアメリカ側にベトナムから提供されていないということに必ずしも満足していない、そういうような事情があって、承認といいますか外交関係の設定といいますか、国交正常化がおくれているのではないか、こういうふうに一般的に見られている、こう見ております。
  264. 受田新吉

    受田委員 従来北ベトナムに対して日本は経済援助を約束していますね。幾ら約束しましたか。
  265. 中江要介

    ○中江政府委員 ベトナムが統一前の北ベトナム時代に約束いたしました無償援助取り決め、これは昨年の十月十一日に調印されましたもの、これが八十五億円でございます。それでことしになりまして継続して交渉しております間にベトナムが統一されましたので、いまは統一ベトナムとの間で去る九月十四日に五十億円の無償援助取り決めを締結して、合計百三十五億円ということで、ベトナムに対する無償援助の取り決めは一応ここで一段落ということになっておるわけでございます。
  266. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、北ベトナム時代の八十五億はそのまま認めて、さらに統一されたベトナムに五十億を追加した、こういうことですね。
  267. 中江要介

    ○中江政府委員 そういうことでございます。
  268. 受田新吉

    受田委員 そこで、南ベトナムにあった日本人の財産、これはどういうふうな形になるのですか。それから援助されてまだ処理のできていない対象、それはどういう扱いになっておるか。統一された今日、これをどう判断したらいいのか。
  269. 菊地清明

    ○菊地政府委員 まず、民間の方の資産でございますけれども、御承知のように統一前に南ベトナムの方に、サイゴンを中心としまして日本から民間投資がございました。これにつきましては、去年の五月のサイゴン陥落の段階で邦人は大体日本に帰ってきている。で、その後その一部は現地雇いといいますか、現地の人の管理に任されているというところもありますし、事実上放棄といいますか、全然だれも管理していないという状況になっております。  それで、これの今後の問題でございますけれども、これは実は第一義的には民間の問題でございますが、今後民間からどういうふうな処理をしたいということがあれば、もちろん政府として、これはハノイにある日本大使館を通ずることになると思いますけれども、この話は今後の日程に上ってくるものと思います。  それから、政府関係の分でございますけれども、御承知のように南ベトナム時代に日本からいろいろな形で無償、有償の援助をしておりますけれども……(受田委員「総額」と呼ぶ)総額は現在、残高で申し上げますと百六十二億一千六百万円ということになっております。これはお答えするたびに数字が違っていると思いますけれども、これは利息がかさんでいきますので、残高はそうなっております。
  270. 受田新吉

    受田委員 これは消えていった国ですから、そこにある日本の財産というものは新しく統一された国家が補償してくれなければいけないわけですね。そういう外交努力をされるのかどうか。  それから、あそこにおる日本人がいま就職その他で困っている、路頭に迷うておる、こういう問題に対して、統一ベトナム大使館を置いた場合に、悲劇の対象になった人々をどう守ってもらうように統一ベトナムの国に大使が行って外交官が活躍するのか。私は、こういう問題は常に外交の基本に考えて、人を大切にするということを考えてもらわなければいかぬと思うが、どうですか。
  271. 菊地清明

    ○菊地政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、つい最近、先月だったと思いますが、ハノイ駐在の長谷川大使が初めて昔の南ベトナムを訪問することを許されまして、その際に私の方から訓令しまして、特に邦人の状況、それから邦人の財産の状況、それから日本がいろいろな援助で建てたりつくったりしました病院とか孤児職業訓練所とか、そういうのがどうなっているかということを視察してもらいましたけれども、実はこれが初めて与えられた機会でございますので、これを端緒といたしまして、今後南における現実情勢の把握ということに努めていきたいと思っております。
  272. 受田新吉

    受田委員 私、かつてカントの職業訓練所、それからチョウライ病院を訪問しました。あそこに日本のお医者さんが行って、頭を割られた患者をずらりと並べて治療しているところをながめてきたのですが、長谷川大使が行かれて、日本がせっかく愛情をもってそういう犠牲者を救おうとしたところがどうなっておるか、報告を受けられましたか。
  273. 菊地清明

    ○菊地政府委員 受けております。
  274. 受田新吉

    受田委員 どういうふうになっていますか。
  275. 菊地清明

    ○菊地政府委員 チョウライ病院の方は、最初は、去年の四月の末か五月の初めにかけましては兵士のバラックに使われたという情報もございましたけれども、先月長谷川大使が行ったところによりますと、病院として機能しておる。それで、はっきりした数字はいまちょっと持っておりませんけれども、かなりの患者が入っておりまして、実際にお医者さんもおりますし、薬その他が若干足りないという事情はあるようでございますけれども、病院として十分に機能しておるという報告でございます。
  276. 受田新吉

    受田委員 時間が迫っておりますし、皆さん帰路を急いでおられるから、私これで質問を終わりますが、私は、アジアの国々にこうした悲劇の国がある、これはひとつ日本の温かい愛の光を差し込めて、これらの民族に不幸な人をつくらないような心遣い——この間のタイのあの騒動のときに、むちでたたき上げられて首つりをされて、さらに死体にむち打っているという現状などを思うとき、同じアジア人として本当に胸が迫ります。日本外交はそういうところへおおらかな心を向けていく。それはイデオロギーの問題じゃないのだ。同じアジア人としてみんなで温かく進んでいきましょうという形をとるべきです。それは余りへ理屈で言うべきじゃないのだ。私は、その意味では南北朝鮮に対しても、その悲劇解消のための外交努力をきょうはあえて外務大臣に要望したわけです。  最後にもう一言。日本外交の努力がどうなっておるか。今度のミグ25が入ったときに外交の努力としては、ソ連の感情を害さないような方法で速やかにこれは返すとかなんとかいう日本外交の側から見た配慮があったのかないのか。徹底的にやっていけというような防衛当局の意思があったのかないのか。外務省として、組んで徹底的に調べるという態度で初めから臨んでおったのかどうか。このミグ25が入ってきたときのその処理に対して、外務省は平和外交の立場で日ソ間の関係をどう打開したらいいかを配慮しながらやったか。いや、もうこれは一応飛び込んできたものは徹底的にやりまくるべきだという形をとったか。ソ連の関係というのは、はっきりわれわれ——中立条約を侵犯して最後に秘密のうちにポツダム宣言を組んだような国でありますし、火事場どろぼうのようにして日本の終戦当時に日本に対処した国でございますので、信頼において、領土問題等を含んでも私非常に疑義があるのでございます。しかし、できるだけ友好親善を図りながら今回のような不幸な事件を処理するという態度が日本外交にあったのかどうか。これは当然局長で御答弁できると思うのです。外務大臣よりも局長の御答弁で、日本外交の基本姿勢がどうであったかをあえてここで私はお尋ねをいたしまして、早期返還を考えたのかどうかというような問題等をもう一度ここで、内幕を暴露するという意味でなくして、外務省としてはこう考えたんだ、しかし結論としてはこうなったという答えをいただきたいのです。
  277. 橘正忠

    ○橘政府委員 今回のミグの事件が起こりまして、先生御指摘のとおり、外務省といたしましては広く言えば二つの面に特に顧慮いたしました。一つは、今回の件が飛行士本人の亡命意思というものはございましたが、同時に、わが国の領空を侵犯しているという事実もございます。したがいまして、それについての必要な調査は当然わが国として行うべきものである。ただ同時に、わが国処理の仕方というのは、国際的に見ても、法的にも、あるいは過去の類似の事例に照らしても、必要かつ合理的であり許容されたものであると認められるもの、そういう態様、範囲において行うべきものである。一般的にそういうものでなければならぬ。かつ、国際的な面で言えば、先生御指摘のとおり、ソ連との関係についても、日ソ双方は別に戦争をやっておるわけではございませんので、こういう偶発的な事件によって基本的な関係というものが損ねられてはならない。国際的な法的に、あるいは慣行から言うても、事例がら言うても、正しい処置をしておるのであれば、究極的にはソ連は、いろいろな立場はあると思いますが、わが国考え方を理解してくれるべきものである、そういう大きく言えば二つ、細かく言えば三つの柱を基準にして本件の処理考えました。したがいまして、必要な保管とか調査はする、しかし、それは合理的な範囲で行う、そしてなるべく早い時期に、返還し得る時期にこれを最終的にはソ連に返還するという想定のもとに本件の処理に当たってまいったわけでございます。現実に事件は九月六日に起こりましたが、九月二十八日ニューヨーク時間、二十九日日本時間でございますが、小坂外務大臣からグロムイコ外務大臣に対して、ニューヨークでの会談に際して返還の方針も明確に向こうへ伝えたという運びになっております。
  278. 受田新吉

    受田委員 終わります。
  279. 渡辺美智雄

    渡辺委員長 次回は明後十四日木曜、午後一時三十分理事会、二時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十四分散会      ————◇—————