運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1976-10-19 第78回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十九日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 稻村佐近四郎君    理事 近藤 鉄雄君 理事 松永  光君    理事 武藤 嘉文君 理事 綿貫 民輔君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 神崎 敏雄君       海部 俊樹君    粕谷  茂君       木部 佳昭君    志賀  節君       塩川正十郎君    田中 榮一君       萩原 幸雄君    林  義郎君       深谷 隆司君    板川 正吾君       岡田 哲児君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    竹村 幸雄君       中村 重光君    渡辺 三郎君       荒木  宏君    野間 友一君       近江巳記夫君    松尾 信人君       宮田 早苗君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    藤井 直樹君         通商産業政務次         官       山下 徳夫君         通商産業大臣官         房審議官    織田 季明君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁計画         部長      児玉 清隆君  委員外出席者         大蔵省銀行局特         別金融課長   藤田 恒郎君         運輸省海運局監         督課長     棚橋  泰君         運輸省船舶局造         船課長     間野  忠君         労働省職業安定         局雇用政策課長 小粥 義朗君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   八田 貞義君     志賀  節君   米原  昶君     荒木  宏君   宮田 早苗君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   志賀  節君     八田 貞義君   荒木  宏君     米原  昶君   塚本 三郎君     宮田 早苗君     ————————————— 十月十八日  中小業者経営安定に関する請願(平田藤吉君  紹介)(第六一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業事業転換対策臨時措置法案内閣提出、  第七十七回国会閣法第四六号)  通商産業基本施策に関する件  資源エネルギーに関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占の禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 これより会議を開きます。  第七十七回国会内閣提出中小企業事業転換対策臨時措置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮田早苗君。
  3. 宮田早苗

    宮田委員 中小企業事業転換対策臨時措置法案の制定を急ぐべきであるということは、今日の中小企業を取り巻く内外の経済環境が日増しに悪化していることからして当然と思います。本法成立に賛成の立場から、中小企業庁に若干の質問をしたいと思います。  まず、政府は、この法律によって低生産性分野と目される業種を半強制的に転換させる意図があるのではないかという指摘があるのですが、この点についていかがですか、お聞きします。
  4. 岸田文武

    岸田政府委員 これからの中小企業考えてみますと、対外的には発展途上国の追い上げであるとか、また国内的には新しい技術開発、また新しい法制の導入、さまざまな環境変化が予想されるわけでございます。こういう新しい環境変化にいかに適応し、その中で中小企業が持っております本来の力をフルに発揮させるようにするということは、日本経済にとっても非常に大きな課題でございますし、私ども中小企業政策を担当する者にとりましても重大な課題であるというふうに受けとめておるところでございます。こういった新しい情勢に対して、中小企業がいままでの分野にいたずらにしがみついているということではなくて、新しい分野に新しい展開を求めるという方向で積極的に取り組んでいくというように私どもは指導してまいりたいと思っておるところでございます。  お話の中に、一部の中小企業を切り捨てることになるのではないかというような御懸念のお話もございましたが、私どもの気持ちは決してそういうところにあるわけではございません。新しい情勢に前向きにということを念願して、この法案を提案した次第でございます。
  5. 宮田早苗

    宮田委員 これまで幾度かの経済危機経営努力で乗り越えてきたわけでございますが、過去、中小企業事業転換を実施した事例幾つかあると思います。そうして、成功要因失敗要因、こういうことがございますれば、例でひとつ示していただきたい。
  6. 岸田文武

    岸田政府委員 私どもも、この法案を提案いたす前に、従来の転換事例がどういうふうになっていたのか、いろいろの資料で調べてみました。過去の事例から判断いたしまして、成功するための要件というものを整理をしてみますと、幾つかございます。  一つは、どういうところへ転換をしていくか、転換先の問題でございまして、こういう転換先がいわば新しい国民需要に即応したような将来性のある分野をうまく選んでいったという場合には、非常によく成功しておるように思います。  二つ目には、いままで持っております技術なりあるいは従業員なり、これをうまく活用するということが、成功のための大きな要素になっておるように思っておるところでございます。  三番目に申し上げたいのは、いままでの経営から新しい分野転換するときに、いわば思いつきでぽんと飛び込んだというような形ではなくて、やはり事前によく、いままでの業種の将来はどうか、それから転換しようとする先の状況はどうか、こういうことについてじっくり勉強をして、その勉強の上に立って計画的に、また段階的に転換を進めていくという場合が、非常に成功率が高いように思うわけでございます。  それから、いまの問題にも関係があるわけですが、第四番目に挙げられると思いますのは、事前調査の際に、やはり自分だけで考えている、あるいは身近の人に相談するというだけではなくて、外部のいろいろの機関に相談に行き、知恵をかりるということが非常に役に立っているのではないかという気がするわけでございます。  さらに申し上げますと、新しい分野転換するときに、とかくつくることだけを考えるわけでございますが、大事な要素としては、できたものをどう売っていくか、この辺の見きわめなり体制づくりなりを相当慎重にやることが、成効に結びつく要因ではないかという感じがいたしておるところでございます。  いままでの事例を見てみますと、一般的には成功事例が多いわけでござますが、やはり失敗事例も率直に申してございます。私どもは、やはり失敗失敗として、その失敗から何かをくみ取って、次の転換をさらに円滑にするための知恵に結びつけていきたいと思っておるところでございます。  失敗した事例は、いまの成功例といわば逆の形でございますが、たとえて申しますと、転換先分野がどうも需要が思わしく伸びていかないというようなケースがやはり非常に多うございます。それに加えまして、調査が不十分であって、最初はよかったけれども二年目ぐらいからどうも息が切れそうになったとか、販売力が弱体であるとか、それからもう一つケースとしましては、安易に入っていったけれども転出先競争思いのほか熾烈でございまして、どうもこれは思ったほどの成果が上げられない、やはり前の方に戻った方がよかったななどと迷っておる、こんな事例もあるわけでございまして、こういう失敗失敗として、私どもとしてはこれを有益な教訓としてくみ取っていきたいと思っておるところでございます。
  7. 宮田早苗

    宮田委員 ただいまの答弁関連をするわけでございますが、いまおっしゃいましたように、事業転換にとって最もポイントになりますのは、転換先選択ということになるわけでございます。そこで、これから先有望な転換先、どういうところがよいかという研究もなさっておるのじゃないかと思っておりますので、そういうところをちょっと示していただいて、さらに強調いたしますのは、誘導といいますか、指導といいますか、そういうことも考えていかなければならぬと思いますが、その点についてはどうですか。
  8. 岸田文武

    岸田政府委員 いま、成功要因として事業先選択ということがかなり大きな役割りをしておるということを申し上げました。少し具体的な例でお話をいたしますと、たとえば新たに手がけようとする分野生活環境改善に資するというようなものであるとか、あるいは健康なり福祉充実に役に立つような分野であるとか、それからいままでと違って非常に資源節約的な新しい分野であるとか、こういったいわば環境変化の中で長い目で見て将来性のある分野ということが転換先として大切になってくるのじゃないかという気がするわけでございます。これからの日本経済は、いままでのような高度成長から、いわば安定成長時代に移っていくというふうに言われております。こういう安定成長時代になりますと、いままでのように量的な拡大というよりは、質の向上ということが、生産する側にとっても、また消費をする側にとっても大きなファクターになってくるだろう、こういった質の充実というところに着目をして、これからの国民のニーズがどう動いていくのか、これを敏感にキャッチすることが大切なのではないかと思っておるところでございます。  いま申し上げました幾つかのケースにつきましてさらに具体的に申し上げますと、たとえば従来の転換でうまくいった事例の中に、生活環境改善に役立つものということで、単なる、プラスチックの雑貨をやっておったという分野から、新しい家づくりの一環として組み入れられるような分野へ転向した事例、それから健康、福祉充実と申し上げました具体的事例といたしましては、金属洋食器をやっておった、これがなかなか輸出の方が思わしく伸びていかない、何か新しい分野へということで、いままでの金属加工技術を生かして医療用の機器へ転換していった事例であるとか、それからいままでは輸出縫製品を扱っておったのが、消費生活充実という方向を頭に置いて国内向け高級衣料品高級婦人服という分野へ行って思いもかけない成功を遂げた事例とか、こういった事例幾つかあるわけでございます。いわば時代を先取りした企業者自身の意欲のある態度ということが成功に結びついていったのではないかと思っておるところでございます。
  9. 宮田早苗

    宮田委員 関連をいたしまして運輸省にお聞きしたいと思いますが、おいでになっておりますか。——昭和四十八年の石油危機に端を発しました造船不況実態につきましては、業界はもとより造船産業への依存度のきわめて高い地方自治体等からの窮状を訴える要望とか陳情書に言い尽くされておりますので、ここで改めて取り上げるまでもないことだとは思いますが、私ども民社党は、さきに中小造船業対策中心にしまして政府に申し入れをした経過がございます。業界本法早期成立を強く望んでいますので、この際、運輸省に二、三質問をいたします。  まず、中小造船業受注操業度低下から、一時帰休の手段では切り抜けることができず、深刻な雇用問題が発生をし、今後さらに増大する傾向にあると思います。造船関連下請企業経営難を救済するためには政府はどのような施策を講じようとされておるか、その点についてまずお聞きをいたします。
  10. 間野忠

    間野説明員 御指摘のとおり、四十八年の石油危機を契機といたしまして、造船業需要は非常に減退いたしまして、工事量低下に悩んでおるというのが実態でございます。加えまして、中小造船業におきましては、兼業部門といいますか、造船以外の部門の比重が非常に少のうございますので、いろいろそのしわ寄せと申しますか、ますます深刻な影響をこうむっておるわけでございます。  それで、本年度の予算におきまして、一応中小造船業でございますとか造船下請業が他に転換する有望な分野があるかないか、あるとすればどういう施策を講ずればよいかというようなことをまず検討する必要があると思いまして、私どもの方に学識経験者あるいは元請企業の代表の方、そういった方にもお集まり願いまして調査研究委員会を設けまして、転換先、それから従来は余り考えておりませんでした開発途上国向け輸出振興といったようなことについて種々検討いたしております。  また、造船下請業につきましては、その持っておる技能技術というものはわりに限られておりまして、その転換先というのも非常に限られておる状態でございますが、現在のところ、下請業自身も、その持っておる技術から判断しまして、船舶解体業あたり考えてはどうだろうかということを言っておりまして、われわれとしても真剣にこれを検討いたしております。  目下考えておりますところは、ざっと以上のようなことでございます。
  11. 宮田早苗

    宮田委員 関連いたしますが、転換法早期成立と、対象業種として造船業を指定することは当然と思うわけでございますが、運輸省はいま解体業というようなことをおっしゃいましたが、これだけでなしに、石油危機のときから相当日数もたっておるわけでございますから、転換先をどう指導なさるか、すでに研究もされておると思いますが、どのような分野考えられておりますか、わかっておりますならば、ひとつお願いを申し上げたいということです。
  12. 間野忠

    間野説明員 先ほども申し上げましたように、造船下請業につきましてはその技能がかなり限られておりますので、目下のところ検討しておりますのは、先ほど申しました船舶解体業のほかに、船舶清掃業、それから船舶沖修理業、こういったものを考えております。  それから、造船関連工業につきましては、これはかなり幅広い技術を持っておりますので、海洋開発関係仕事でございますとか、公害防止関係、特に海洋汚染防止関係仕事、それから液化天然ガスの運搬船というようなものを考えておりますが、それに関連いたしまして、断熱であるとか、冷凍関係仕事であるとか、新しい分野考えられますので、そういった分野についての転換可能性というものを検討いたしております。現在、一応可能性のある分野としてはこういった問題が具体的に検討されておる段階でございます。     〔委員長退席近藤委員長代理着席
  13. 宮田早苗

    宮田委員 転換先のことにつきまして四、五お挙げになったわけでございますが、苦境にあります業界救済策として、さっきも言われました老朽船のスクラップの事業があるわけでございますが、いま申されましたようなこの事業に対する実効ある助成が当然必要と思いますが、そのためには予算というものが当然に必要になるわけでございまして、来年度の予算でこの種の関係についてどの程度考えになっておるか、それも聞かせていただきます。
  14. 間野忠

    間野説明員 来年度の予算におきましては、細かい問題から申しますと、現在検討をいたしております中小造船業下請業関連工業といったものの転換先というものが具体化してまいりますと、これを実際に転換させるためにどういう問題があるかとか、どういう措置を講ずればいいかというようなことをさらに検討したいということで、そのために予算的には大した金額ではございませんが調査研究費のようなものをまず一つ要求しております。  それから、先ほどの御質問でお答えしましたように、私どもといたしましては、現在のところ船舶解体業と申しますものが下請技術といったものから考えましても非常に有望な分野であろうかと考えます。ただ、その船舶解体業を始めます場合に、初年度におきましては解体工事というものが主になりまして売り上げに立ってまいりませんので、解体用船舶購入資金にかかわる金利負担でございますとか、そういった資金上の負担が非常に経営を圧迫するというようなことになりますので、とりあえず初年度船舶解体業を開始するに伴いまして必要な船舶購入資金につきまして政府系金融機関からの融資というものと、先ほど申しました金利負担を軽減するための助成措置、そういったものを現在財政当局の方へ要求して折衝しておる段階でございます。
  15. 宮田早苗

    宮田委員 もう一つお聞きをするわけでございますが、いま申し上げましたことは石油ショックということが大きな原因になっておるわけでございますが、将来造船業そのものがこのままの状態というふうには考えられないわけでございます。また相当大きく受注もありましょうし、あるいはまた産業そのものが活発になれば、前のようにというふうにはまいらぬかもしれませんけれども相当に活発になった場合、せっかく事業転換をした、転換をしたために後戻りができないという関係が起こり得る可能性というものはあるのじゃないかと思いますが、その点、いまここで答弁というのはなかなかむずかしいと思いますけれども、お考えになっておりましたらちょっと聞かせておいていただきたいと思います。
  16. 間野忠

    間野説明員 大変むずかしい問題でございますが、御指摘のとおり今回の不況は構造的なものでございまして、かなり長期化すると思っております。ただ、長期化するとは思っておりますが、そのままの状態で推移するということはなくて、貿易が進みますればやはりその荷動きというものは海上に依存する面が多うございますので、いまのような状態が続くわけではなくて、いずれは回復するものと思っております。  ただ、かなり長期化するということと、それから特に先ほど申しました解体業を例にとりますと、これは資源の再利用というような面からやはり長期的に考えていかなければならない分野でございますので、現在のところは余り設備投資を行わないで、どちらかと言えば雇用対策的な意味も含めまして、それほど効率のいい解体業というものは考えておらないわけでございますけれども、いずれ造船業が回復するというようなこともございますので、長期的には解体業というものは解体業で余り人員を食わなくてもやっていけるというような長期的な解体業についても考えながら、おっしゃいましたように何年かたったらまた戻りたい、戻れないというような状態は避けてやっていきたいと思いますし、解体分野というものはそういうことができる分野であると私は思っております。
  17. 宮田早苗

    宮田委員 運輸省に対します質問はこれで終わりましたので、結構です。  またもとに返りますが、転換に関する助成をもっと手厚くすべきだという意見があるわけでございまして、これまでの質疑でも出ております。本法による助成によって、従来からもその事業努力をしている中小企業に対する助成がアンバランスを生じないように配慮する必要があるのじゃないかと思いますが、その点についてはどういうお考えですか。
  18. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほど申し上げました転換重要性にかんがみまして、私ども転換を円滑に推進するためには金融税制等中心にできるだけの助成を講じていきたいという考え方でございます。たとえば信用保険の特例につきましては、今度提案いたしております考え方として、従来の災害ないし倒産関連とほぼバランスをとった程度までの助成考えていく。それから振興事業団融資につきましては、ドルショック対策を念頭に置きながらほぼそれと均衡をとっていく。さらにまた中小公庫等特別貸付につきましては、構造改善の前例がございます。こういった従来の先例を頭に置きながら、できるだけの手厚い助成をという考え方で提案をした次第でございます。  ただ、そうは申しましても、確かにいま御指摘がございましたように、従来からその分野努力をしております中小企業方々とのバランスということはやはり頭に置かなければいけないわけでございまして、無制限に条件さえよければというような考え方ではなくて、従来の助成措置とのバランス等を頭に置き、また従来から企業をやっておられる方々とのバランスを頭に置いた一応の助成ということになろうかと思っておるところでございます。  もとより、従来から仕事をしておられる方々につきましては、今後とも近代化合理化ということが大切な課題でございまして、この面につきましては従来からもいろいろ対策を講じておりまして、今後ともこのような努力を支援するために金融上、税制上の助成は続けていきたいと思っておるところでございます。
  19. 宮田早苗

    宮田委員 転換に当たっては従業員対策が重要な問題であることは言うまでもありませんが、都道府県知事転換計画認定をするに当たって、離職者ができるだけ生じないような配慮をすること、これを十分に指導すべきであると思いますが、もちろん労働省関係にも入ると思いますけれども、通産省としてこの点についての考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  20. 岸田文武

    岸田政府委員 御指摘がございましたように、転換ということで新しい分野へ進出をする、この場合にはいわば経営者従業員とが一体になって、力を合わせて仕事を進めていくということが基本的には一番大切なことではないかと思っておるところでございます。転換に伴って離職者が出るというような事態は極力避けていくという考え方で今後とも指導してまいりたいと思っておるところでございます。  具体的には、都道府県知事が、お話がございましたように計画認定をするわけでございます。その際に、内容を見ましていまのような配慮が十分行われているかどうかというところを一つのチェックポイントにしまして、離職者発生を極力防止し、さらにまた経営者従業員とが一体になって新しい分野へ進出できるというような構えを応援をしたいと思うわけでございます。
  21. 宮田早苗

    宮田委員 最後質問ないし要望でございますが、ただいま離職者ができるだけないようにということを言いましたが、これは労働省関係するわけでございますが、処遇の問題についても十分な御配慮というのが必要じゃないか、この点も特に要望しておきます。  せっかく大臣がお見えでございますので、いまの状況の中で一番打撃を受けておりますのが造船業界じゃないか、こう思っているわけでございますが、大臣造船業界の将来といいますか、造船業界そのもの経済全体のいわば動脈的な立場にあるわけでございますので、そういう点についてのお考えをひとつ最後にお聞かせ願いたいと思います。
  22. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど運輸省との間に造船業不況対策ということについて若干の質疑応答がございまして、私も拝聴しておりましたが、私は、日本造船業というものは世界のどこの国の造船業よりも非常に強い競争力を持っておりますし、それから現在はここ一両年不況でありますけれども、必ずしも現在のような状態が続くとは思いません。将来は明るいと考えております。でありますから、いましばらくの間しんぼうして、先ほど運輸省がお述べになりましたようないろいろな対策を立てながら、ここ若干の期間をしのげば、将来はまた開けていくであろう、かように考えます。  ただしかし、その間、お話のように、関連中小企業が非常に多いものですから、それに対する万般の対策というものは怠ってはいけない、十分配慮しなければいけない、かように考えます。
  23. 宮田早苗

    宮田委員 終わります。
  24. 近藤鉄雄

  25. 荒木宏

    荒木委員 初めに、大臣にお尋ねいたしますが、不況が長期に続いて、中小企業経営が大変であります。大臣もよく御承知のとおりと思います。私も産地を歩いてみまして、特に繊維の業者の声を聞いてみたのでありますが、いままで生業的な零細な業者が非常に粘り強く苦しみに耐えて営業を続けてきておったのですが、この粘り強さといいますか、表現はいろいろあると思うのですが、ある言い方をしますと、雑草のようなたくましさといいますか、続けてきておったのですが、とうとう秋を過ぎましてからどうにも持ちこたえられないというので機械をとめたという人に間々会いました。そういう人たちが希望が持てるような救済の対策といいますか、大臣の決意のほどをお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  26. 河本敏夫

    河本国務大臣 繊維産業は御案内のように設備が過剰でございますので、やはり構造的な問題が根本に横たわっておると思います。そういうことがありますので、通産省といたしましては、いま有識者の意見等を聞きまして抜本的な対策を立てますと同時に、新しい繊維の構造改善事業に取り組むべく着々準備をしておるところでございます。ただしかし、いまお説のように、ことしの上半期までは比較的順調に回復するかに見えました業界が、夏以降また再び経営が悪化しておりますので、緊急の対策といたしましては、政府系三機関による融資の返済猶予であるとか、あるいはまた担保の見直しによる再融資とか、そういう緊急の金融対策等もあわせて考慮していかなければならぬと考えております。抜本的な対策とあわせて緊急の対策を並行して進めていく、こういうことが肝要ではなかろうかと思います。
  27. 荒木宏

    荒木委員 いま提出されておりますこの事業転換対策法について少しお尋ねしたいと思います。  今度の法律の十条と、それから前の新構改法の中にもやはり十条で同じような指導、援助の条項があったと思いますが、これはどういうふうに違っておるのか、ごく簡単に、もし違いがあればその特徴を御説明いただきたいと思います。
  28. 岸田文武

    岸田政府委員 従来の転換事例をいろいろ調べてみますと、転換の中で成功した事例におきましては、事前によく調査をし、しっかりとした計画のもとに進めるということが非常に成功要因になっておるように思っておるところでございます。調査と申しましてもいろいろございまして、いままでやってきた業種がこれからどうなっていくであろうかということだけではなくて、転換する先の業種におきましてその需要の見通しはどうであるか、販売ルートというのは一体どうなっておるのか、どういう技術が大切であるか、資金はどの程度要るか、さまざまな要因についてなるべく入念に勉強をし、その上で計画的に踏み切っていくということが大切のように思うわけであります。  こういった情報につきましては、個々の企業では入手の限界がございますので、外部にしっかりした相談相手があることが大切ではないかと思っておるところでございます。その相談相手といたしましては、一つは、中小企業振興事業団中小企業情報センターという組織がございまして、ここでいろいろの情報を集めて、都道府県なりあるいは商工会、商工会議所、これらに適宜情報を提供いたしております。この仕事の中で、最近転換に関するいろいろの問い合わせが多いものですから、特に転換の問題についての特別の室を先般発足させまして、ここで各種の業界の事情だけではなくて、従来の転換事例調査をし、その情報を提供するようにいたしたいと思っておるところでございます。  さらにまた、都道府県の窓口におきましても、中小企業に関するいろいろの相談を受けております。これらの活動におきましても、いま申し上げましたような転換のこれからの重要性にかんがみまして、特に親切に相談に乗ってあげるようにしたいと思っております。中小企業の中でも特に零細な方々にとりましては、転換はしたいけれども一体どうやっていいのか迷っておられる方も多いと思います。そこで、こういった小さい方々には特に親切に相談に乗ってあげられるように気をつけていきたいと思っております。  なお、お話の中で繊維の構造改善臨時措置法と転換法とどういうふうに違うのかという点でございますが、繊維の場合におきましては通産大臣が指導、助言に当たるということになっておりますのに対して、転換法の場合は「国及び都道府県は」という形になっておることが相違点かと思います。しかし、やはりいずれの場合にも親切に相談に乗ってやり、助言をしてあげるという意味合いでは趣旨は似ておるのではないかと思っておるところでございます。
  29. 荒木宏

    荒木委員 そうしますと、具体的にはどうなんでしょうか。産地を歩いて聞きますと、いままで続けてきていた生業的零細業者が、工賃一つ見ても全然そろばんに合わない。いま長官も言われたのですが、さりとてなかなか従来の能力を生かした新しい仕事も産地の一つの特性もあって見出しにくい。私が聞きました例はたまたま、いまの機械を動かしておれば赤字が続くという状態よりも、野菜を仕入れて、そして住宅の前で露店で販売をする方がまだ生活のたつきになるというので、八百屋を始めたい、こういう話なんです。転換仕事は八百屋に限りませんけれども、そういったような性質の話が間々相談があるわけですが、これは、たとえばいま一つの例として言いましたのは大阪南部ですけれども、具体的にどこへ出向いてどなたに御相談をすればよろしいでしょうか。
  30. 岸田文武

    岸田政府委員 零細な中小企業方々でも、転換成功した事例はかなり多うございます。たとえば通産省の中に一昨年発足いたしました小規模企業相談室にも、自営でやってこられた方が何か新しい分野へ進出したいのだがという御相談に見えまして、その相談の結果がまとまって新しい分野へ転出された事例を私も承知しておりますし、それから他の事例といたしましては、フランチャイズチェーンの実態調査の中で、いままでやってきた業種から新しい分野転換して成功された自営業主、あるいは従業員一人、二人といった方々事例もたくさんあるわけでございます。これらの例を見るにつけましても、やはり中小の中で特に零細な方々といえども、うまく相談に乗ってあげ、また応援をして差し上げれば、新しい道が十分開け得るチャンスはあるだろうと思っておるところでございます。  いまお話の中で、繊維の機屋さんの中には露店を開いておるというケースお話がございましたが、私はやはりそこへ行く前に手を打って、もっとしっかりした転業のチャンスがあったらもっといい答えが出るのではないかという感じがいたします。本当に押し迫ってきてカンフル剤を打つよりは、少しでも体力の元気なうちに滋養剤を飲んで転身を図るということの方がより望ましい状況でございます。そのためにも、やはり何といっても早目に助言、指導するという体制が必要かと思います。  どこへ行ったらいいのかというお尋ねでございますが、私どもはいろいろな窓口でできるだけの御相談に乗るつもりでございます。数え上げてみますと、商工会、商工会議所には小規模企業に対する経営指導員が配置されておりますし、それから中小企業庁及び通産局には小規模企業に対する相談室が用意をされております。さらにまた都道府県の総合指導所はまさにこういったことが本来の仕事であるべきでございまして、個々の中小企業方々が自分で考えられ、また知人に相談されることに加えまして、いま申し上げましたような各種の窓口を積極的に早目に利用していただけるようになってほしいものだと思っておるところでございます。
  31. 荒木宏

    荒木委員 相談に行きまして、そこまで行く前にという話ですが、いままで制度融資なんかもずいぶんと受けて、そしてなかなか返し切れないままでここへ来た。転換しようにもずいぶん重荷をしょっている人も少なくないのですね。そういった指導だとか助言だとか援助の中で、そういう政府系の制度融資その他の借金の肩の荷が軽くなるような、当面どんな事業にしろ転換して車が回り出すまででも少し楽になるような、そういった援助も具体的に期待できるのかどうか。もちろん借りたものは返さなければならぬというのは、これはだれしも承知しておることですけれども、時期の問題もあり、そういう点にもひとつ親切にというお話がありましたので、長官のお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  32. 岸田文武

    岸田政府委員 転換がうまくまいりますためには、一つはいま話に出ております指導、助言のようないわば知恵が大切でございます。また第二番目としましては、お話に出ておりました金融その他の資金的な対応策、いわば金の面、それから三番目には従業員との関係における人の和、この三つがうまく組み合わさって応援ができる、こういう体制になることが必要であろうと思っておるところでございます。  そこで、資金の面につきましてですが、今回の法律の制定を機会に、金融面でも一般の金融助成に加えて新しい応援をするべき準備を進めておるところでございます。具体的に申しますと、中小企業金融公庫なりあるいは国民金融公庫において事業転換貸付という制度がございます。これが法律の制定によって活用できることになること、それから二つ目中小企業振興事業団事業転換合同事業あるいは共同転換事業、さらにまた設備共同廃棄事業等の制度がございます。これがこの転換法の成立に伴って活用の道が開かれることになろうかと思います。  さらにまた、信用保険の面におきましても、一般の保険と同額、別枠ということで、市中からもこの制度を活用することによってお金が借りやすくなるという道も開く予定でございます。この信用保険の特例におきましては、てん補率も普通保険の場合一般であれば七〇%であるものを八〇%に引き上げるとか、保険料率につきましても大体一般の三分の二程度の保険料率で保険が引き受けられるように予定をいたしておるところでございます。私どもはいま申し上げましたような各種の助成措置を一番うまく組み合わせて、転換に関する金融上の心配というものを少しでも減らせるように努力をしてまいりたいと思います。  お話の中で、助成措置はともかくとして、本当に困って従来からたくさんの借金があるし、制度があってもなかなか使えない場合があり得るのではないかという御懸念がございましたが、私どもはこれらの制度的な条件整備と並びまして、運用の面でも、担保の取り方とかいう面ではなお工夫をしてまいりたいと思いますし、また担保力が不足するというようなときには協同組合で連帯保証をするというような補強手段も活用できるかとも思いますし、さらにまた考えてみれば、場合によってはリース方式というようなものを活用して、余り金融上の負担を多くしない形で新しい設備を導入する、こういう工夫もケースによっては必要になってくるのではないか、こういうことを頭に置いておるところでございます。
  33. 荒木宏

    荒木委員 ここで少し構造要因について関連してお尋ねしておきたいのですが、いま安定事業として行われてきました繊維関係の登録制度の存廃について意見が出ておるように聞いておりますが、これはすでに昭和二十九年以来二十年以上にわたって続いてきております。  生活産業局長、お見えになっていますね。——改まってお尋ねするのもなんですけれども、団体法でこういった登録制度を認めてきた趣旨といいますか、二十年続いてきたゆえんといいますか、これを簡単に初めに御説明いただきたいと思います。
  34. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  いまお話のございました登録制度でございますが、御承知のように昭和二十九年からずっと一年ごとの制度を延長して二十一年になるわけでございますが、中小企業の安定という観点を主にいたしまして、特に設備の過剰ということからするところの業界の混乱というものを防ぐために、主として設備登録制というものをとってきた、このように理解しております。
  35. 荒木宏

    荒木委員 これは法律で認める要件というのが規定されておりますね。正常な程度を超えて競争が行われておる、そのことが取引の円滑な運行を阻害する、経営の安定に重大な悪影響がある、あるいは著しい支障が生ずるとか、いろいろな要件がありますけれども、従来認定してこられたのはそういう要件をやはりきちっと満たしておる、つまり、そうしなければ経営の安定に非常に重要な悪影響を受けるし、また経済の発展に著しい支障が生ずるということを認定し、そして二十一年に及んだ、こういうふうに伺ってよろしゅうございますか。
  36. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 毎年の安定審議会で、いま先生のお話しのような条件につきまして一々議論をいたしまして今日まで延長してきたという意味合いから言いまして、その条件を確認したということが言えるわけでございます。ただ、その過程におきましては、毎年果たして十分にその条件を満たしているかどうかというふうな点につきましては、相当に議論を重ねてまいったわけでございます。結論としては一応そういうことを認めて延長してきたということであろうかと思います。
  37. 荒木宏

    荒木委員 局長、これについては業界の方はどういう意見ですか。川上、川中、川下、いろいろありますけれども、特にいろいろ言われておる川中の紡織、なかんずく織布関係ですね、これはどういうふうな意向だというふうに承知しておられますか。
  38. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 各段階でいろいろ御意見があるようでございます。いま先生御承知の繊工審の方で基本的な問題を検討しているわけでございますが、私どもいま承知いたしております限りにおきましては、織布段階におきましてはどちらかといいますとさらに延長というふうな議論の方が多いように承知しております。
  39. 荒木宏

    荒木委員 そうしますと、一応従来から二十一年間その都度論議をされて、この存続が重大な悪影響だとかあるいは著しい支障を避けるためにも必要であったということでこういった措置をとり続けてこられたし、業界もそういった存続の意向が強いということであれば、混乱を避けるためにも、よく実情に即して、特に当事者である業界の意見を十分聞いて、慎重に納得のいくようなあり方で行政を進められるのが基本的なあり方ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  40. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いま御説明いたしましたようなことでずっと延長してきたわけでございますが、本年につきましても十月に一応一年の期限が切れるわけでございまして、最近のうちに安定審議会に来年度の問題を諮問するという形になるわけでございますが、私どもといたしまして、とりあえず本年の審議会にはさらに一年延長ということでお願いをしたい、このように考えておるわけでございます。  なお、現在、先ほども申し上げましたように、登録制度自体につきましては、繊維の構造改善問題と絡みまして基本的な論議がいろいろとあるわけでございまして、それは繊工審の政策小委員会で基本的に検討中でございまして、その検討結果を待ちまして、将来少し長いタイミングの問題としては考えてまいりたい、一応現在としてはそのように考えております。
  41. 荒木宏

    荒木委員 そうでしょうけれども、心構えというか、基本的な考え方というか、業界の実情に即して慎重に混乱を避けるように処置をすべきではないか、これを伺っておるのですが、それはそのとおりじゃないですか。
  42. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 急激な変化を避け、混乱を避けることが必要であるという御趣旨においては、先生のおっしゃるとおりでございます。
  43. 荒木宏

    荒木委員 おととしでしたか、議員立法で、納付金を納めてこの権利を認めるという措置がとられましたね。あのときに当時の大臣がしきりに言われたのは、正直者が損をしないように、こういうことを言っておられたのですけれども、納付金の措置がまだ始まって間がない。ついこの間ですからね。それで、いま急激な変化を避けるにしても、にわかに方向としてやめるということを言い出せば、逆に納付をした者がばかをみるというふうなことも一面あるのではないですか。金を出してそれで権利をつける、今度は論議の方向としてそれはやめだというようなことが出るとすれば、その点の混乱というものがかえって生ずるのではないか、こういう意見がありますが、いかがですか。
  44. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いまお話しの特例法でございますが、期限が五十三年の六月まででございまして、これまでには全部片がつくわけでございまして、それまでにそう急激な変更が行われるということは確かに望ましくないというふうに考えております。
  45. 荒木宏

    荒木委員 いまの特例法で、はっきり今度の構造改善の所期の目的を一〇〇%達するというめどは立っておるのですか。いまで大体二十件ぐらいでしょう。繊維の旧法、新法、それから前の特繊法、法律はいろいろあったわけですけれども、いずれも大体不発に終わったというのが大方の評価なんですね。今度の分は、いまおっしゃるようにあと三年ですか、たてば、目的どおりきちっといく、これは間違いないというふうに言えますでしょうか。
  46. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いま申し上げました特例法といいますのは、織機の買い上げの特例法でございまして、五十三年六月までと、先生いまお話しの構造改善の方の繊維の新法でございますが、これは五十四年の六月まででございまして、現在、それまでに構造改善が完了すべく鋭意取り進めておるわけでございます。  おっしゃいましたとおり、いままでのところ確かに構造改善の案件というものは当初予想したより少ないわけでございますが、こういう制度は大体におきまして発足当時はなじみがなかなかできませんので、初め件数が少ないわけでございますが、本年度あたりから非常に進歩をする傾向が見えておるわけでございまして、現在政策小委員会で論議いたしておりますのも、何とか繊維新法の期限内に構造改善を達成できるような方策を考えたいということで鋭意御検討を願っておるというふうな次第でございまして、私どもといたしましては、繊維新法の期限内に構造改善をやり遂げたいというふうに考えておる次第でございます。
  47. 荒木宏

    荒木委員 願望はともかくとして、これは業界の納得と協力といいますか、協力なしにできることじゃありませんね。いまさっきも局長がおっしゃったように、いまのままで廃止という方向を出すのは関係のところに反対だという意見が強いわけでしょう。そのままでやってうまくいくというのは、ちょっと考えられぬのですけれどもね。混乱が生ずるか、あるいは別の矛盾が起こってくるか、当事者がやはりそれをやりましょうということでなければ物事はうまくいかぬと思うのです、幾ら願望が強くても。従来の経過をごらんになってもよく反省されておると思うのですけれども業界が、よし、やろうというふうになるまでは、軽々にそういう方向を出すのは好ましくないと私は思いますが、いかがですか。
  48. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お説のとおり、業界の自発的な努力というものがありませんければ、まず構造改善といってもなかなか進まないということは全く同感でございます。したがいまして、全くその意に反したことを強行するというふうなことができるはずもないと思っております。     〔近藤委員長代理退席、松永委員長代理着席〕 したがいまして、設備登録問題に関しましては、現在私どもとしてはむしろ白紙でございまして、繊工審の方の御意見がどういうふうに出るかということを待っておるという状況でございます。したがいまして、来年度につきましては一応延長ということで本年度の安全審議会に提案をする、こういう段取りと御了解願いたいと思います。
  49. 荒木宏

    荒木委員 業界の納得がなければうまくいくはずがないということを確認された。私はその意味では一つ実態に即したお考えの表明だと思いますし、それから、いまは白紙だとおっしゃったのですが、いろいろな報道によりますと、審議会の論議はいろいろありますよ、承知しておりますが、通産省の方も、筋としては廃止の方向というような報道が出たりもするものですから、なおのこといろいろな論議がまた派生的に起こってくる。ですから、いまの段階では白紙ということなんですが、むしろその中に、当事者である業界、それから業者の人たち、この納得こそやはり大事だということをもう一度確認をしていただきたいと思います。生業的な業者のいまの救済、そして本当に自分で自力も強めつつ進めていこうという意欲をひとつ盛り立てるためにも、いまの当事者の意思尊重ということ、これはもう一度確認をしていただきたいと思います。
  50. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 当事者の意思に反したことを強行するということは、先ほど申し上げましたとおり、私どもやるつもりもございません。ただ、当事者の意思といいますものも相当多岐にわたっているような感じはいたしております。
  51. 荒木宏

    荒木委員 そうしますと、一口に川中と言ったっていろいろな業者がありますし、それから川下の方へ行くともう一ついろいろ分かれている面もありますから、やはりそこのところは実情に即して、それこそきめ細かな対策という意味からも個々に十分意向をくんでいく、このことをひとつしっかり踏まえていただきたいと思うのです。中には、もしいまそういう方向が出るのなら審議会の委員をやめることも辞さぬぞというような声もあるというふうにも聞いておりますし、これは通産省としても好ましくないことだと思うのですね。ですから、いま私の申しましたいろいろな声はあるでしょう、しかし、その大きな声、それから特に個々の実情、業界実態とその意見を原則にする、これは局長、よろしゅうございますね。  大臣にもいまの点はひとつ御確認いただきたいと思うのです。当事者の意向を十分尊重して、納得のいくようなお取り扱いをお願いしたいと思います。一言だけ御意見をいただきたい。
  52. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのような方針で進めていきます。
  53. 荒木宏

    荒木委員 公正取引委員会の方が見えていただいていると思いますから、事務局長にお伺いしたいのですが、昨年の二月二十四日の衆議院の予算委員会で、総合商社と繊維業者の間の不公正取引について、ガイドラインの設定、それから認定基準の問題、これについて実情をよく調査をしたい、そしてガイドライン設定についての検討を進めたい、こういう答弁をいただいたわけであります。基本は、強い者が弱い者いじめをするというのは好ましくない、こういったところからいまのようなお約束をいただいて、一年半たつわけですけれども、その後の調査の進行状況実態の概況、それに、認定基準といいますか、ガイドラインの検討の到達点といいますか、これを簡単に御報告いただきたいと思います。
  54. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 ただいま御質問のありました点、その後、実態の把握に努めますとともに、そのガイドラインあるいは認定基準というところに向けて検討を依然として進めておりますが、まだ商社の優越的な地位を乱用しておるという具体的なケースについての実態把握が十分にできておりませんので、いましばらく時間をおかしいただきたいというふうに考えております。
  55. 荒木宏

    荒木委員 十分調査をしていただければいいのですが、ちょっと時間がかかり過ぎているのじゃないでしょうか。もちろんかなり複雑な、しかも広範囲な調査ですし、人員の方、機構の方、予算の面、いろんな制約があると思うのです。  ただ、別途行政サイドで取引改善委員会ができ、それが取引近代化推進協議会でしたか、その準備会発足ということになっておるのですが、これが普通列車というよりもむしろ鈍行列車みたいだ、そういう声なんかもしておるものですから、私は、やはり公取の方でそういった別の観点で調査をいただいたことが、一つはそういった行政サイドのいま進められておる方向を促進をし、適正なものにしていくという点もあろうかと思うのですね。両方が遅さを競い合うということではあれだと思いますし、むしろ行政の方ではいろんな構想なんかも出ておるようでして、それなりのいろんな意見も出ておるようですけれども、大体いつごろ、どういう形でという見通しの方を少しお聞かせいただきたいのです。
  56. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 非常に広範な調査になりますし、また具体的なケースにつきましては、独禁法との関係におきまして認定が非常にむずかしい問題が絡んでおります。そういうことでございますので、いまいつまでにガイドラインあるいは認定基準というようなことの設定が可能であるかということは、ちょっと申し上げかねるわけでございます。しかしながら、できるだけ早い機会に実態の究明をいたしまして、そのガイドラインの設定ができるかどうか、こういうような点につきましてはっきりした見通しをつけたいと思っております。
  57. 荒木宏

    荒木委員 一層努力していただくことを希望して、終わります。
  58. 松永光

    ○松永委員長代理 近江巳記夫君。
  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 現在この指定を予定しておられます業種につきましてはどういうものをお考えになっておられるか、まず初めにお伺いしたいと思います。
  60. 岸田文武

    岸田政府委員 業種を指定いたします場合には、まず事業を所管する大臣業界の実情及び意見を把握し、その上で近代化審議会に諮って決める、特に産地業種については、加えて都道府県知事の意見を聞いた上で指定をする、こういうたてまえになっておるわけでございます。したがって、いまの段階では、具体的な業種の数であるとか例であるとかということを申し上げることは困難でございます。  ただ、従来の、先例としてございます国際経済調整臨時措置法の場合でございますと、全国の業種が百二十一、それから産地業種が八十三指定されております。今回の法律では業種を少しふんわりと指定するというようなことも考えておりますが、仕上がりとしては、いま申し上げました国際経済調整臨時措置法の場合とほぼ似たような姿になるのではないかというふうに考えております。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 これまでの事業転換というのは非常に暗いイメージというものが常につきまとっておったように思うわけでございます。その点、どういうふうに配慮をしていかれるわけですか。
  62. 岸田文武

    岸田政府委員 この法律の趣旨は、新しい環境変化に伴って新たな分野で発展を図るというものでございますので、私どもの気持ちとしましてはむしろ明るい法律であるという受けとめ方をいたしておるところでございます。  ただ、そうは申しましても、一部の人の中に、この法律の適用を受けるということになると一種の衰退産業としてのレッテルを張られることになり、そのことの結果として、市中の金融機関からの融資が受けにくくなりはしないか、また従業員が士気阻喪するようなことはないか、また同業の方々からもどうもちょっと取引を遠慮するというようなことにつながりはしないかという御懸念を持たれる向きもないわけではないと思います。私どもはそういう懸念を極力なくするように努力をしてまいりたいと思います。  具体的には、一つは、業種を余り狭く指定しますととかく誤解を招きやすくなりますので、先ほどちょっと答弁の中にも触れましたように、少し包括的な業種の指定の仕方をすれば懸念が少なくなるのではないかと思っております。それから、指定をいたします場合にも、一方的にやる前に業界ともよく相談をしながら指定をするというようなやり方をすれば、誤解が解け得るのではないか、こうも考えておるところでございます。  いずれにせよ、業種の指定によって暗いイメージでもって見られるというようなことは、この法律のそもそもの趣旨からして本意ではございませんので、この立法が制定されました暁におきましては、この立法の趣旨なり適用につきまして広くPRをし、誤解を避けるように努力をしたいと思います。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 本法の趣旨からいきますと、いわゆる企業の自主的な転換、こういうことが本旨ではないかと思うのです。そういう点からいきますと、この中小企業者への指導に当たりまして、いたずらにこういう事業転換を促進して、そうした産業分野の縮小を招くことがないように十分配慮しなければならぬと思うわけでございますが、その点についてはいかがでございますか。
  64. 岸田文武

    岸田政府委員 転換が円滑にいきますためには、中小企業方々が自分でよく勉強して納得をし、これならやれるぞということで転身を図られることが何よりも必要でございます。その意味におきまして、この法律においても、あくまでも基本は中小企業方々の自主性ということをベースにして転換が進められるように考えておるわけでございます。この法律ができたからといって、中小企業がその意思によらない転換を促進していくというような考え方は毛頭持っておりません。中小企業方々が本当に、よし、これならやるぞという気持ちで取り組んでいただくことを何とか応援をしていきたいというのが、この法律の気持ちでございます。こういった法律の趣旨なりあるいは考え方というものにつきましても広く周知徹底を図りまして、この法律を機会に、中小企業方々が自主的なこれからの経営の持っていき方について考えていただく機会にしていきたいと思っておるところでございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど答弁にもありましたけれども、そうした業者あるいは従業員の意向をこの指定に当たっては十分に反映させなければならぬと思うのです。  そこで、いわゆる継続していく業者がこの指定をされたからということで金融の問題あるいは雇用問題等におきまして非常に心配な点が出てくるというようなことになりますと、これは本当に何のための転換法であるかわからないわけですね。そういう点はどういうように十分な指導徹底をなさるわけですか。
  66. 岸田文武

    岸田政府委員 これからの経済情勢変化に対応しまして、中小企業方々としては、それならばひとつこの際思い切って合理化をしてこの業界の中で生き延びてみせるぞということで将来の設計を立てられる方もありましょうし、いまのままでやるよりはむしろ新しい分野で自分の力を発揮したいというふうに考えられる方もあろうと思います。この辺はまさに中小企業方々がそれぞれの持っております独自性なり個性なりというものを生かして将来の設計図を考えられることになろうかと思いますが、残って合理化を進める、それによって十分なる国際競争力を備え、あるいは新しい環境に耐えていけるだけの力を備えていこうということであるならば、これは従来の中小企業施策として進めてまいりましたいわば近代化合理化の線に沿うものでございますから、金融面、税制面等で従来からやっておりました施策を十分活用していただけるのではないかと思います。  新しい分野へ転向するということになりますと、やはりそれだけに新人としての悩みがいろいろございます。この悩みを少しでも少なくして、新しい分野で早く実力を発揮していただくようにするために、今回の法律におきまして、金融上、税制上あるいは労務面、指導、助言の面、これらの各般の面における応援体制を整えた次第でございます。なお、転換した先における既存の業者との関係、これもやはり頭に置いておかなければいけませんので、転換計画認定に当たっては、その辺の配慮も頭に置きながら認定をするということにいたしたいと思います。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 ドル対法あるいは特恵対策に基づいていわゆる転換を図った企業も数多くあると思うのですけれども、現在までどのくらいあったのか、またこれらの企業に対してその後どういう追跡調査をやってきたか、その問題、それからもう一つは、こうした企業融資状況及び返済状況はどうなっておるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  68. 岸田文武

    岸田政府委員 従来この転換関連した特別な立法としては、御承知のとおり特恵対策法と、それから国際経済調整臨時措置法と二つございます。この二つの実績について御報告さしていただきますと、まず特恵対策法につきましては、実績はゼロでございます。と申しますのも、この特恵対策法が制定されまして、すぐ引き続きましていわゆるドルショックが起こり、それに関連をして国際経済調整臨時措置法が制定されたということから、問題のあります業種がほぼこの新しい法律の適用対象に組み入れられることになったという経緯がこの背景にあるわけでございます。  そこで、国際経済調整臨時措置法の適用実績でございますが、この法律によりましていわゆるドルショックの影響を受けたという認定を受けました企業がネットで約二万企業ございます。その中で、このショックを一つのきっかけとしまして事業転換を図ろうということでこの法律に基づく六条の認定を受けましたケースが、合計六十五件になっておるわけでございます。これは思ったより少ないのではないかという印象をお持ちかもしれませんが、この国際経済調整臨時措置法は、いわゆるドルショックに伴うショック緩和というところに一つの大きな柱がございまして、その面では約二万企業が対象になってきたわけでございます。一応それで当面の苦しい局面を切り抜けられたという企業もございましょうし、また転換をするという場合にも、この法律に基づく正規の手続を経ずにやられたケースもいろいろあるのではないかと察しておるところでございます。  いま申し上げました中で、現実に転換計画を持ち出しました六十五件のケースにつきまして、いろいろ内容を調べてみました。この転換計画認定を受けたものに対する融資実績でございますが、五十年十二月末現在で見ますと、中小企業金融公庫で五十一件、金額にいたしまして十一億三千八百万円が適用されております。それから国民金融公庫関係では二十一件、金額で一億二千九百万円が実績として報告されております。さらにまた、この法律に基づいて用意されました中小企業振興事業団の設備共同廃棄事業を実際行いましたケースが三件、金融の実績で十三億三千百万円と報告をされております。  これらの転換計画関連をして追跡調査も実施をしたわけでございますが、その結果をあらまし御披露いたしますと、トータル六十五件の計画提出の中で、結局計画だけで実際に踏み出すに至らなかったケースが二件ございます。実施したケースがしたがって六十三件あるわけでございますが、その中で、予定のとおり転換が行われ、一応成功したという答えが返ってまいりましたのが四十七件で、全体の七五%になっております。逆に、いろいろ計画したけれどもどうも思うようにいかなかったという答えが返ってまいりましたのが十六件になっております。やはり新しい分野をよく見きわめて、十分なる計画のもとに転換が行われたという場合に成功する事例が多いのではないかという感じがしておるところでございます。  お尋ねの中に、融資の返済状況という点がございましたが、実はこれはまだ調査をしておりませんので、別途調べてみたいと思います。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 国際経済上の調整措置が実施されて、いま報告があったわけですが、そういう対象以外の企業の中で転換した企業というのは、中小企業庁では大体どのくらいつかんでいるわけですか。
  70. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業は、新しい経済情勢に応じて何をこれからの仕事としていくか、絶えず研究もし、その研究に従って新しい分野転換も逐次行われてきております。この辺の実態が全体としてどうなっているのかということを、実は中小企業庁でも調べてみました。その結果を見ますと、四十二年から四十六年にかけての間で、製造業全体として見ますと、一二%の事業所が何らかの意味での転換を行っておるということが報告をされております。それから商業の場合で見ますと、四十六年から四十八年にかけて卸売業で一五%、小売業で一七%が商品分野転換を行っておるという報告も出されておるところでございます。
  71. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう把握ということは非常にむずかしいと思いますが、大体いま御報告いただいたのはちょっと古過ぎると思いますね。やはり高度成長時代から低成長の時代に入っておるわけですから、状況相当変わってきておると思うのです。中小企業庁政府の指導というものは、常に時代におくれたそういう掌握の仕方ではいかぬわけですね。先取りをして指導性を発揮していく、そのためには実態をいかに把握をしていくか、こういう点、これ以上突っ込んでもお答えが出ないと思いますから、ひとつ今後十分実態を把握していただくように強く要望いたしておきます。  それから、成功したパーセント、七五%というお話があったわけですが、転換成功した企業のポイントはどこにあったわけですか。
  72. 岸田文武

    岸田政府委員 これはいろいろな要因があろうかと思いますが、一番大事なのは、どういう業種転換をしていくか、その辺の選択の問題ではないかという気がいたします。新しい分野転換を図って、その分野がいわば新しい国民のニーズにうまく適合していくということであれば、需要も拡大いたしますし、新天地も開けてくる、こういう関係になるわけでございます。  従来の事例を見ますと、成功した場合の背景といたしましては、これからの新しい生活環境が変わっていくことに適合していくような業種を選んだケースであるとか、それから次第に健康ないしは福祉ということが重視されるようになってきておりますので、その辺の動向を見きわめて業種を選んでいったというケースであるとか、それから次第に省資源、省エネルギーということが定着をしてきておりますが、このような新しい動きをキャッチしたような分野を選んでいったとか、いわばいま申し上げましたようなことは新しい国民ニーズにうまく適合した場合ということを総括的に申し上げられるのではないかと思っておるところでございます。  こういった新しい分野をうまくつかんでいくためには、何と申しましてもその前にじっくりと勉強して、そしてしっかりとした計画をつくっていくことが大切でございまして、その意味におけるこれからの情報提供と申しますか、中小企業方々転換に際してどういう情報が必要かということをよく見きわめながら、その需要に応ずるような情報提供を行うことを、中小企業庁としても、また関係機関としても心がけてまいりたいと思っておるところでございます。
  73. 近江巳記夫

    ○近江委員 どっちかといいますと、高度成長時代におきましては比較的状況としてはやりやすいと思うのですが、先ほど申し上げましたように、低成長の時代に入っておる。時代的な背景は、非常にむずかしい状態に入っておるのですね。そうなってまいりますと、いま長官もおっしゃったように、じっくり勉強して計画をつくっていく、そのためには情報提供が必要である、確かにそうだと思うのです。その点、政府といたしましても、また府県におきましても、これは具体策を、やはり十分なものを練り上げておかなければならぬと思うのですね。どういうことを練っているのですか。
  74. 岸田文武

    岸田政府委員 御指摘になりましたように、高度成長から安定成長に変わってまいりますと、転換をめぐる環境は厳しくなっていくのではないか、そういう感じがするわけでございます。ただ、高度成長の場合には、ある面では、どの新しい分野へ行っても何とかなるという態勢にあったような感じがする反面、いまのままでも十分経営が成り立っていくので、新しく転換などということを余り考えずに済ませる向きも同時に多かったのではないかという気がいたします。ところが、これから安定成長になってまいりますと、環境が変わっていく、いまのままではなかなか先の明るさが見えてこない、やはり真剣にこれからの企業をどう持っていくかということを考えざるを得ない状況もいろいろ出てくるように感ずるところでございます。  そこで、こういう中小企業方々の悩みを受けまして、新しい分野へ何とかうまく転換できるようにお手伝いをしようというのがこの法律の趣旨でございます。この転換を円滑にいかせるようにするための助成策としては、金融面の対策税制面の対策、労務面の対策、さらにまた指導、助言の対策、これらの対策一体となって推進されることが必要でございます。  特に、いまのお話の中で指導、助言について強調をされたわけでございますが、この指導、助言につきましては、たとえば商工会、商工会議所に置かれております経営指導員を活用するとか、あるいは中小企業庁、通産局に置かれております小規模企業の相談員を活用するとか、さらにまた都道府県の総合指導所がその機能を発揮するとか、いろいろの窓口で中小企業方々の悩みに対して親切にこたえられるように今後とも気をつけてまいりたいと思います。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 いわゆる成功したポイントの最大のものは、どういう業種転換していくか、この新分野選択を誤らなかったということをおっしゃっておるのですね。これは非常に大事なことだと思うのですよ。そうすると、あなたがいま言われた商工会議所の指導員からよく指導さすとか、そういう人は、いわゆる方向といいますか、そういうことを明確にそこまでつかんでやっていけるのですか。別に指導員の方の能力なり、情報を把握している、してない、そういうことを疑うわけではないのですが、こういう大きな点についてはやはり政府が強力なリーダーシップを発揮すべきではないのですか。非常に薄弱な感じがしますよ、その点は。  あなたはそういう制度の活用のことばかりを強調されておるようですが、政府として確とした、こういう方向がいいのじゃないかというものを示してあげなければいけないのと違いますか。非常に弱いですよ。成功の最大のポイントはそこにあるとおっしゃっておる。ところが、その一番のポイントのところが薄いですよ。そんなことではうまくいきませんよ。何ぼ金融上、税制上と言っても、あなた方がどういう方向に誘導していけばいいかということも考えなくて、場当たり的に思いつきで、まあいいだろう、それでは打つ手が実らぬじゃないですか。この点は大臣はどのようにお考えですか。
  76. 河本敏夫

    河本国務大臣 やはり転換の参考には、いまお話しのように政府としてもいろいろ積極的なアドバイスをするということが必要だと思います。
  77. 岸田文武

    岸田政府委員 私は、中小企業方々というのは本当に自分の経営というものを日々考えておられ、そしてその経営の反省の中であしたの経営をどうするかということについて絶えず知恵をこらしておられるのではないかと思っております。そういったいままでの努力がいわば積み重なって、今日製造業の出荷額の半数以上を占めるというような中小企業の地位ができ上がったのではないか。ある意味からしますと、中小企業方々というのは非常にたくましい力を持っておられるような感じがしておるところでございます。  そこで、いまお話の中に新しい経済情勢転換が起こったときにどこへ行くかということについてもっと積極的にこれこれというような指導の仕方まで考えてはどうかという御意見でございますが、私どもとしてはポジティブリストで特定の業種を挙げるというよりは、むしろ企業方々の自主的な体制のもとに、おれはこうやってこう行くのだという腹を決めていただいた上でそれを指導し応援をするという方が、やはり実際としてはうまくいくのではないかという気がいたします。一つ一つ企業の方に、あなたはこちらへということを言おうと思いましても、これはもうおのずから限界があることでございます。したがって、私どもとしては、中小企業方々がいままで持っておられる資本なり技術なり経験なり、あるいは従業員というものを頭に置いて、そしてこういう道があるかもしれない、ああいう道があるかもしれないというような幾つかの具体的な相談がありましたときに、そこへ行けばこういう問題がありますよというようなことでお話し相手になりながら、結果としてその企業方々の決断をお手伝いする、そしてその決断をされたことについて金融面等での応援をする、こういうようなやり方を念頭に置いてこの法律を考えた次第でございます。
  78. 近江巳記夫

    ○近江委員 立場もわかるわけですが、何回も繰り返しますけれども中小業者にじっくりと勉強して計画をつくってもらうということをおっしゃっておるわけですが、そのためには情報提供というのはものすごく大事でしょう。中小業者もあなたがおっしゃったようにたくましい力を持っておられる。確かにそうですよ。施策はあるけれども中身が薄いような、そういう政府中小企業対策であった。その中で皆がんばってきているわけですよ。たくましい力は確かに持っています。それによってどうにか今日まで来たように思うわけですが、そればかりに頼っておったのではだめですね。ですから、情報をでき得る限り、政府機関、都道府県、商工会も結構です、あらゆる情報を提供していく、これがもう一番大事なんです。それをやはり本腰を入れてもらわなければ、じっくり勉強しろと言ったって、そういうあなた方の情報の提供が薄ければ勉強する素材がありませんよ。現場だけのそういう感覚的なことだけではやはりだめなんです。あなた方が提供するそういうきちっとした資料に基づいて、そして現場のそうしたものとかみ合わして業者が決断をする、それが大事だと言っているのです。情報提供をうんとがんばってくださいよ。それはやれますか。
  79. 岸田文武

    岸田政府委員 私自身もこの転換の従来の事例をいろいろ見ておりまして、情報提供の重要性ということを身にしみて感じておるところでございます。  ある調査によりますと、中小企業方々の中にも、どうもいままでのままでやっていくことでは先が見えておるような気がするし、何か新しい仕事はないものだろうかと思いながら、なかなか踏み切れないでおられる方々がたくさんおいでになるようであります。こういった方々が、実は気楽に相談に乗ってもらえる相手があればと恐らく思っておられるのではないかと思います。先ほどいろいろな窓口があるというふうに申し上げましたが、単に窓口があるというだけではいけません。そこの窓口へ気楽に行って、やはり行っただけのことはあったと思えるようになることが大切であろうと思います。  転換の問題につきましては、従来とかく資料が不足をいたしておりましたが、昨今転換の問題について特にいろいろの勉強をいたしておりますし、さらにまた、経営指導員等の方々について、転換の問題を中心とした特別の研修を行うというようなことも考えております。次第に親身に相談に乗れる体制ができていくことになるだろうと思っておるところでございます。
  80. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後の政府努力を待つわけでございますが、その相談に行った、そういう人が自信がないことでは困るわけですよ。皆さん自信をお持ちだと思いますが、そういう担当の人については十分ひとつまた今後もしっかり勉強していただくように、政府としては十分研修等をやっていただきたい。また、政府自身が積極的に中小業者等にそうした資料を提供してもらう、これをひとつ強く要望いたしておきたいと思います。  それから、今回の法案は、従来のいわゆるドル対法、特恵法、こういうものを発展的拡大して一体化されたわけでありますが、これまでのこうした転換対策と比べて評価される点というのはどこにあるわけですか。
  81. 岸田文武

    岸田政府委員 特恵対策法は、昭和四十六年にわが国を含む先進諸国が発展途上国に対し特恵関税を供与することになったことを契機としまして、大きな影響を受ける中小企業に対し緊急に転換対策を講じようということで設けられた法律でございます。  さらに、続いて出ました国際経済調整措置法、これは昭和四十六年八月のアメリカにおける輸入課徴金制度の実施及び昭和四十八年二月の円の変動相場制への移行、こういった国際的なショックを受けまして、こういうショックを何とか緩和しよう、そして場合によっては新しい分野転換することを応援しよう、こういう趣旨で設けられた法律でございます。いずれの場合にも、いわば外から大きなショックが与えられたということを契機として、緊急避難的な転換対策であったということが言えるのではないかと思います。  これに対しまして御審議を願っております転換法は、いわば今後予想されるいろいろな事態を頭に置きまして、一般的に転換というものを対象とし、そしてこれらの予想される事態に対して機動的に受け皿を用意しておこうという意味合いでございます。  助成の中身としましては、従来の各種の法律とほぼ同等、あるいは若干それにプラスアルファの助成措置が裏づけとして用意をされておる次第でございます。
  82. 近江巳記夫

    ○近江委員 本法案を十年間の時限立法になぜしたのですか、その理由についてお聞きしたいと思います。
  83. 岸田文武

    岸田政府委員 御承知のとおり、従来高度成長を続けてまいった日本経済が、石油ショックを契機として非常に大きな混乱を経験したわけでございます。そして、その混乱からようやくいま立ち直りかけまして、これからは新しい日本経済の姿を描いていかなければならない時期に来ておるように思います。言うなれば、従来の高度成長から安定成長経済というものに移行し、その中で量から質へ日本経済を変えていくということが課題であろうかと思います。こういった意味合いで、各種の経済計画もこの十年ということを非常に重要視し、それに対応するビジョンづくりを進めておるところでございます。  提案をいたしました転換法は、いま申し上げましたことを背景にいたしまして、この十年間が日本経済のかじ取りの一つの転機であるという意味合いで、とりあえず十年間というものを転換助成の対象期間とし、それが一応過ぎましたところで次の新しい対応策を考えるという考え方をとった次第でございます。
  84. 近江巳記夫

    ○近江委員 本法金融措置を見ますと、事業転換特別貸付におきましては、中小企業金融公庫の貸付限度が一億五千万、国民金融公庫は千五百万、金利は双方とも八%になっていますね。貸付期間が十年、据え置き二年とするという予定を聞いておるわけですが、金利について申し上げてみますと、これは小規模経営改善金融資制度とは目的は違うと思うのですけれども、この制度におきましては七%になっておるわけですね。そうしますと、転換に伴う大きなリスクを考えた場合、少なくともこの制度と同じ七%あるいはそれ以下の金利であっていいのじゃないか、このように思うわけですが、金利の引き下げということは考えてないのですか。
  85. 岸田文武

    岸田政府委員 現在、中小企業金融公庫及び国民金融公庫の基準金利は、御承知のとおり八・九%になっておるわけでございます。これに対しましてこの法律に基づく転換は、やはり転換というのは新しい分野へ進出するのでそれなりのいろいろな苦労があるであろう、これを少しでも激励したいという趣旨から八・〇%の特利というものを適用すべく五十一年度予算において決定をしておるところでございます。ただ、実は来年度の予算要求におきましては、この八・〇%という金利を七・五%に下げることはできないものだろうかどうだろうか、こういったことを一応検討課題にいたしておるところでございます。  転換を実際に行います中小企業としましては、やはりいろいろな困難が予想されることから、少しでも金利を低くしてほしい、また期間も長くしてほしいというように考えられることはいわば自然のことのような気がいたしますが、ただ、そうは申しましても、全般的にながめてみますと、逆に新しい進出分野で従来から仕事をやってきた人とのバランス考えてみなければいけませんし、また従来この転換関連をして立法されておりました諸措置とのバランスというものを考えておかなければなりませんので、いわば常識的にできるだけの助成を図るという意味合いから、先ほどのような金利が出てきておるところでございます。  なお、貸付期間等につきましては、一般の貸付の場合と比べまして期間も長くいたしましたし、また据え置き期間も一般よりは長くするという措置を予定いたしておるところでございます。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした金利の引き下げ、あるいは貸付限度額、あるいは貸付期間、据え置き期間、そうした貸付条件というものを今後さらに改善をしていく必要があるのじゃないか、こう思うのです。あなたに前向きなそういう気持ちはあるわけですか、どうですか。
  87. 岸田文武

    岸田政府委員 貸付条件につきましては、私どももこの法律の趣旨が生かされるように今後ともいろいろ気をつけてまいりたいと思っておるところでございます。現に金利につきましては、いま御説明の中で申し上げましたように、ひとつ新しい工夫ができないかというようなことも寄り寄り研究いたしておる次第でございます。
  88. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした施策はわかったわけですけれども、いままでのいわゆる借金、これは同じペースで返済させていくのですか。いままで借りている分については、たとえば猶予してあげるとか——あなたは貸すことについてばかり言っていますが、いままで借りている分というのは非常に大きなおもしになるわけです。足を引っ張るのですよ。そういうことをきちっと適切にやらなければ、これから前へ進みませんよ。その点についてはどうですか。
  89. 岸田文武

    岸田政府委員 この法律が施行になりますと、中小企業金融公庫または国民金融公庫における事業転換貸付という制度が適用になることになります。この事業転換貸付が適用になりますと、一般の場合と比べまして貸付限度が引き上げられることになりまして、その分だけ新しい融資の道が開かれるということになるわけでございます。従来からの返済につきましては、これは企業経営が順調であれば、普通の場合であればそのまま進めながらさらに新しい転換をあわせて行うということが可能であろうと思います。  ただ、ケースによりましてはそういきにくい場合も確かにあろうかと思います。そういった場合には個々の企業の内容をよく窓口で聞きまして、そして機動的にその貸付条件等を考えていきたいというふうに思っております。
  90. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはよく事情を聴取して、そして返済猶予もする、こういうことですな。そしてまた、各機関にはその旨をよく徹底するわけですね。もう一度確認します。
  91. 岸田文武

    岸田政府委員 いまのような点につきましては、やはり転換が円滑に行われるようにということが基本であろうと思いますので、この辺は返済期間等につきましても弾力的に行うように金融機関にもいろいろ指示をしていきたいと思います。
  92. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのことは、いわゆる政府系三公庫あるいは信用保証協会、いろいろあるわけですが、そうした各種機関、また民間等にも、できる限り協力するように、こういうことも言ってもらう必要があると思うのです。これはやりますか。
  93. 岸田文武

    岸田政府委員 いま申し上げました趣旨につきましては、この実施の要領について現実に都道府県に通達を出します際には、一つのポイントとして書き込んでおくようにいたしたいと思います。  一般金融機関の問題につきましては、いまのような御趣旨を体しまして少し関係の各省とも相談をいたしたいと思います。
  94. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、私がちょっとお聞きしたいと思いますのは、中小企業の倒産ですが、九月は史上二番目で千三百五十七件、これでいきますと年間一万四千件台にほぼ達するのじゃないか、こういう大変な記録が出てきておるわけです。これはもうゆゆしき問題であろうと私は思います。こういう倒産問題についてこれからどうするのですか。このままほっておいていいのですか。  それからまた、いよいよ年末も迫ってきているわけですが、対策の中の重要な柱として、年末融資についてはどのように考えていますか。二点お答えください。
  95. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業の景気の動向につきましては、私どもとしても非常に気にしながら見ておるところでございます。生産水準は確かにことしになりましてから逐次回復をいたしておりますものの、まだ業種別にもかなりの格差がございますし、その中にあって倒産件数が非常に高い水準で推移をしておることは、中小企業政策としてもかなり重要なことではないかと思っておるところでございます。過去の不況のときにも倒産の後遺症というのはかなり続く例がございましたが、今回の不況におきましては、従来の不況のときと比べましても、どうもこの後遺症の期間がかなり長いし、しかも引き締めを緩和してからかなりたっているにもかかわらず、件数が逆に増加しておるというような点が一つの特色でございます。  確かに統計のとり方が負債一千万円以上というような切り方をしておりますために、物価の上昇等もありまして数値同士を単純に比較できない面もあることは事実でございますが、傾向として減らずにむしろこの数カ月ふえておるという点は、やはり気になるところでございます。原因も、調べてみますと、四十七年とか四十八年当時は販売不振というのが原因の中で大体二割程度を占めておりましたのが、ごく最近では四割から五割ぐらいが販売不振ということを理由に挙げております。やはり不況の影響というものが非常に厳しかったのだなあということを痛感いたしております。  私どもとしては、これからしばらくたてばもう少し状況がよくなり、本当に中小企業の景気が立ち直るという時期が来るかと思いますので、その間を何とかうまくしのいでいくということに特に力を入れていきたいと思っておるところでございます。せっかく長い不況の間を持ちこたえて今日まで来たわけで、もう一息というところにあるような感じがしますので、この倒産を極力防いでいくということでできるだけのことをやっていきたいと思っておるところでございます。  政策としては、申すまでもないことでございますが、金融対策というものが当然の柱になってまいると思いますし、また関連倒産を防ぐための信用保証ないし信用保険措置、これも機動的に進めてまいりたいと思っておるところでございます。もうできるだけの手を打っておるつもりでございますが、なお件数が減らないということであれば、なお一層これはがんばってやらなければいけないと思っておるところでございます。  お尋ねの第二点としまして、年末金融対策について御質問がございました。ただいまの状況は、第三・四半期の枠を設定したばかりでございます。資金量としてはかなり余裕があるわけでございますが、これから年末にかけてが中小企業にとっては一番お金の必要な時期でございます。私どもはこの辺の動きをよく見ておりまして、しかるべき時期に年末の金融対策を実行に移していくということで、いま内々関係のところで御相談をしておるところでございます。
  96. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう十月の中旬を越えておるのですよ。そういう点からいきますと、大体どういう腹組みを政府としては持って、具体的にはこのくらいのことを用意しておりますということは、やはり自信を持って言ってもらわないと、これだけ倒産も出ておるし、そういう政府計画を聞いてそれぞれ中小業者というものは計画も立てるわけですよ。いまの時点になってそんな具体的なことも言えないというような、そんなことでいいのですか。大臣は常々、中小企業というものについては特別に力を入れていくという答弁をなさっているのですが、大臣はこの年末融資等についてはいかがお考えですか。
  97. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの上半期は比較的景気が順調に回復しておりましたが、夏ごろからややテンポがおくれております。そういうこと等もございまして、倒産なども大分ふえておるわけでございます。したがいまして、この第三・四半期、十月から十二月までの間の中小企業金融対策につきましては万全を期さなければならぬと考えておりまして、必要な資金政府系の機関におきまして全部手配をするつもりでおります。
  98. 近江巳記夫

    ○近江委員 具体的に金額的なことはいまの段階で言えない、これ以上突っ込んでも言えなければ、もうこれは繰り返しになるわけですからこれ以上は言いませんけれども、これはもう一度認識してもらいたいことは、もう十月中旬を越えているわけですから、早急に政府として本当にこの厳しい現状にかんがみて万全の対策をひとつ組んでいただきたい、これを特に要望いたしておきます。  それから、先般の十七号台風によりまして、被害地の中小零細企業は大変な打撃を受けておるわけであります。これに対してどういう手を打つか。また、特に地域で申し上げますと、愛知、岐阜両県におきましては、繊維産業が非常に大きな被害を受けておるわけですが、関連業界にも非常な波及を起こしておるわけであります。そこで、こういう地域の特に繊維産業に対してはどういう手を打つか、きょうは局長もおいでになっておりますから、以上、全般的なそういう台風で被害を受けたところに対する対策、またいま申し上げた繊維地帯におきます被害に対してどうするか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  99. 岸田文武

    岸田政府委員 今回の災害は、いわば中小企業不況の苦労からまだ十分立ち直らないまでのところに追い打ちをかけるような形で、非常に広範な範囲で災害を起こしましたので、私どもとしても、この問題についてはできるだけの努力を払って、被災地の中小企業方々が一日も早く立ち直っていただけるようにお手伝いをしなければならないと思っておるところでございます。  被害は、報告によりますと二十二都道府県にまたがり、被害事業所が六万件を超え、被害金額も中小企業関係だけで六百七十四億円と報告をされております。私どもは、この被害の状況を聞きまして、早速政府系の三金融機関に対しまして指示をいたしまして、金融の面で特段の応援を図るように、しかもそれを機動的に行うように措置をいたしました。御承知のとおり、政府系三機関におきましては災害の特別融資制度というものを用意をいたしております。いまの災害を受けました中小企業方々は、すぐこの三機関へ行っていただければ金融の面では機動的にお手伝いができるようにいたしております。  さらにまた、御承知のとおり先般激甚災害の指定がございましたので、この激甚災害の指定がございますと、特別の場合には特に安い金利が適用になる道が開けますし、さらにまた中小企業信用保険でも、特例措置によりまして枠が大幅に拡大される道が開けることになります。これらの措置を組み合わせまして、できるだけのお手伝いをするつもりでございます。  なお、被災地の方々から私どものところにも、次から次へと実情の報告及びこれからの金融対策についての助力を依頼に見えております。私自身も、なるべくこの災害の関係方々につきましては直接お目にかかって実情を聞き、その実情を受けて各金融機関が円滑に動けるようにやってまいったつもりでございますし、また今後ともやってまいる所存でございます。
  100. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 繊維関係の被害でございますが、主として愛知県、岐阜県にわたりまして広範な被害をこうむっております。特に知多の綿・スフ織物関係、あるいは岐阜の安八地区の綿織物、毛織物関係というふうに、中小企業といたしましては織機関係相当な被害が出ておりまして、いま中小企業庁長官からお話し申し上げました一般的な金融的な措置のほかに、私どもといたしましては、織機の復旧といいますか、入れかえその他も含めまして、早急の復興措置というものに努力をいたしております。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 ひとつそうした地域の実情をよく掌握をしていただいて、できる限りの手を打っていただきたいということを要望いたしておきます。  それから、中小企業分野調整法の問題ですが、これは前国会におきましても決議をいたしております。そういう点でこれは国民注視の問題でありまして、これができる、できないは、国会の信頼度といいますか、これはもうきわめて重要な問題であります。いま政府としてはこういう国会決議を受けてどういう努力をやっているのですか。会期はいつまであると思いますか、十一月四日ですよ。どう考えているのですか。
  102. 岸田文武

    岸田政府委員 大企業中小企業の間の分野の調整の問題は、やはり最近不況を背景にしてか、非常にケースが多くなってきております。私どもとしては、国会であのような決議をいただきました以上、なるべく早く具体的な成案を得るようにいま精いっぱいの努力を払っておるところでございます。  御承知のとおり、御決議をいただきましてからすぐ中小企業政策審議会の中に分野調整小委員会というものを新たに発足させまして、関係のエキスパートの方々にお集まりをいただき、月に二回、場合によっては三回ということで、従来に例のないような熱意でこの問題に取り組んでおるところでございます。  審議の経過としましては、かれこれすでに八回の議論を行っておりまして、これで主要な問題点については一わたり自由な御討議をいただいたところまで来ております。私どもはその御審議の経過を受けまして、これからいわば取りまとめの段階に入るところでございます。あと一回か二回で大体の方向を出せるのではないかと期待をいたしておるところでございまして、精いっぱいやっておりますということだけ御了解をいただきたいと思います。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 精いっぱいやっておるとおっしゃっていましても、結果を早くちゃんと出さなければ、国民の目には、やっておる、やっておると言うことだけではだめなんですよ。そういう点、政府として一段と努力をしなければいかぬと思いますね。  この分野調整法については財界あたりからもいろいろな異論が出ておるようでございますが、そうした問題を踏まえて、公正取引委員会は、この分野調整法の問題について通産省からはどういう相談を受けておりますか、またどういう見解を持っておりますか。
  104. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 中小企業分野調整法の問題につきましては、ただいま通産省におきまして審議会を設けて検討が行われておりまして、公正取引委員会の方からも、オブザーバーではございますけれども担当官を派遣をいたしまして、その推移を見守っておる段階でございます。  それで、この法案の内容がどういうふうになるかまだ最終的にはわかりませんが、私どもの基本的な考え方といたしましては、中小企業と大企業との間の事業分野の調和を図っていくということは必要であろうと思いますが、ただ問題は、その場合に、規制のあり方によりましては中小企業合理化をかえっておくらせるような結果にもなりかねない、それはひいては消費者の利益にならない場合も考えられるわけでございまして、そういうような点から、究極的には消費者の利益につながるような方向で法律案がつくられるようにということを期待をいたしておるわけでございます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 中小企業分野というのは激烈な競争なんですよ。独占というようなことはあり得ない。いわゆる寡占企業においてこれが結局独占になるのです。これはうんと公正な競争をさせなければならない。ところが、国会でもいつも問題になっておりますように、やみカルテル等の実例をごらんになってもおわかりのように、ここにもっと競争政策を取り入れさせなければいかぬわけですよ。そういうことで、中小企業分野というものは本来は激烈な競争分野であるということを、これは私の考えでありますが、御参考に申し上げておきたいと思います。  いずれにしましても、政府の態度は遅々として、これはまことに遺憾であります。われわれがこの国会で決議したということは、一億一千万国民の代表として決議しているわけです。十一月四日までの会期において、努力しています、その努力だけは認めてほしい、それでは責任を果たしたということは言えませんよ。可及的速やかにやるべきですよ。政府は国会の意思を全く無視していますよ。大臣はこういうような状況をごらんになって、これでいいと思われますか。どのようにお考えですか。
  106. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律は、通産省にとりましても非常に重大な法律でございまして、いわば大法典である、こういうふうに考えております。そういうことで、先ほど長官が申し述べましたように、七月以降各方面の権威者の意見をずっと聞いておりまして、もうすでに八回、夏休みを返上して作業を続けておるわけです。あと一、二回で大体結論が出るのではないかというところまで来ておるわけでございますから、決してサボっておるわけではございませんで、懸命に努力をしておるということでございます。一刻も早くまとめまして、何とか会期に間に合わせたいということで努力をしておるところでございます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 まあ努力しておるところを厳しく言われる、こういうことになってきますと、われわれの努力もわかってくれないのかという政府の気持ち、反発も出るかと思いますが、これは国民全体から見て、前の通常国会が終わってからもう五カ月ですよ、八回会合されたかどうか知りませんが、五カ月の余裕があったのです。本当に国民の皆さんにおこたえしていこう、中小企業、零細企業の皆さんにもおこたえしていこうということであれば、五カ月、百五十日もあるわけですよ、なぜもっと早くできなかったか。会期はもうここまで来ているわけです。いま大臣から何とか今国会に間に合わせたいという御決意の表明があったわけですから、ひとつそのお約束を果たしていただきたい、これを重ねて要望いたしておきます。  きょうはもう時間もありませんから、一応これで終わります。
  108. 松永光

    ○松永委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  109. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君。
  110. 佐野進

    ○佐野(進)委員 中小企業事業転換対策臨時措置法案質疑も大変進んでおりまして、私の質問最後のようでありますので、重複する点はできるだけ避けながら、重要な点について質問をしてみたいと思います。  この大臣の提案説明の中で、このように書いてあるわけですね。「最近の中小企業を取り巻く内外の経済環境変化は、発展途上国の追い上げ等による輸出の減少及び輸入の増大、技術革新等による需要構造の変化、原材料の入手難、公害防止に係る企業の社会的責任の増大などきわめて厳しいものがありますが、加えてわが国経済は従来の高度成長から安定成長へと大きく転換しようとしており」、こういうぐあいに書いて、この法律の提案の一つの重要な要件としておるわけでありますけれども、こういうような認識に基づいて出された法案としてはちょっと迫力が違うというのか、あるいは認識がずれているというのか、提案理由の説明の中におけるところの基本的な考え方とこの内容とが若干そぐわないような感じもするわけです。  こういう点については、この法案を提案した時期と今日の時間的なずれによってそういうように感ずるのかどうか、それはわかりませんが、原則的な問題、基本的な問題でありますので、中小企業庁長官よりむしろ大臣に、この転換法が前国会に提案された時期と今日の情勢との差といいますか、情勢変化といいますか、そういうものとの関連の中で、現段階においてこの法律が必要だという認識はどのように変わってきておられるか、あるいは同じだと認識されておるか、その点について大臣の見解をまず聞いておきたいと思います。
  111. 河本敏夫

    河本国務大臣 今度この法律をお願いをいたしますにつきまして、中小企業を取り巻く内外の環境、客観情勢はどういう状態になっておるかということについて書いておるのは、いまお述べになりました幾つかの項目でございます。すなわち、発展途上国の追い上げ、貿易構造の変化、それから技術革新、公害、こういう幾つかの前提条件、さらに加えて高度成長から安定成長期に向かっておる、こういうことを背景として中小企業というものが大きく転換をしていこうとするのでこういう法律をお願いいたしますという趣旨でございますので、数件にわたる幾つかの前提条件というものは基本的にはいささかも変わっていない。  ただ、中小企業経営のむずかしさということにつきましては、御案内のように、ここ二、三カ月景気が中だるみ状態でございますし、大冷害、大水害、あるいはまた電電、国鉄のおくれ、こういうふうなこと等からやや苦しい状態になっておる、そういう当面の経営問題はございますけれども、基本的な環境そのものは法案をお願いしました当時とは変わっていない、かように考えております。
  112. 佐野進

    ○佐野(進)委員 中小企業問題についてこの機会に議論し始めれば何時間あっても足りないわけでありますし、きょうはそこに目的があるわけではございませんので、原則的に大臣から法案提出時期と今日の状態との比較の中で法案が必要であるかどうかということについてお聞きしたわけであります。  以下、具体的な問題でありますので、後でまた大臣に総括的な面については数点にわたって質問してみたいと思いますが、中小企業庁長官に内容についての質問をしてみたいと思います。  まず第一に、いま大臣がお答えになられたように、法案を提案された時期と今日の段階とにおいては、幾つかの小波動はあるが大局においては変わりはないのだ、そういうような認識であります。これから先行きこの法律が施行されて、その後の情勢の中で果たしてこの法律の果たす役割りがどうなのか、こういうことを考えたとき、この法律そのものが、中小企業特恵対策臨時措置法、あるいはまた国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律、この二つの法律をまとめて一つにし、一つが時間切れになったことを契機にして、この際事業転換対策臨時措置法、まあ大変大きな転換対策という名に果たしてふさわしいのかどうかわからないほど、内容については掲げられている名称のようなことでない点が多くあるわけでありますが、ただしかし、そういう言葉があるだけに、その内容はいわゆる中小企業切り捨て、行き詰まった企業についてはほかの業種転換しなさい、それについてはできるだけの骨を折ります、こういうように受け取られるような法案の名称になっておるわけであります。  こういう法案が、いまの段階、いわゆる提案してから今日の数カ月たった中で、変わりがないと言いながら、相当大きく変化しておる幾つかの問題もあるわけでありますけれども、十年以内という時限立法にしたわけですね。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  時限立法にしたということの持つ意味は、十年が最高ですから、せいぜいここ数年の間であろう、こういうような認識に基づいて出されたのではないか、あるいはまた、前の法律が時間切れになったから、それを埋め合わせるある程度の時間でいいのではないか、それが終われば、この中小企業事業転換対策臨時措置というようなことはそれほど大きく必要でなくなっていくのじゃないか、こういうぐあいにも受けとめられるわけでありますが、この点について長官の見解をただしておきたいと思います。
  113. 岸田文武

    岸田政府委員 日本経済にとりましては、これからの十年というのは非常に大切な期間になるのではないかと思っておるところでございます。従来高度成長日本経済がぐんぐん伸びてきた、そのあげくに石油ショックという一つの大きな洗礼を受けたわけでございますが、その石油ショックの混乱の次に続くこれからの十年というのは、従来のような高度成長時代と違いまして、いわばいろいろの制約のもとにおける安定成長ということを目指していくことが課題になってくるのではないかと思っておるところでございます。  言いかえますと、いままでのように量の拡大というようなことに一生懸命になっている時期から、いかにして質を高めていくか、これは企業の質もありますし、また消費の内容の質の問題もございます。やはり質が大事な時期になろうかと思います。こういうことを頭に置きながら、御承知のとおり、各種の経済計画におきましても一つの目標として六十年というようなことが掲げられておりまして、その間における日本経済のあり方ということをいろいろ議論をしておるわけでございます。  これからの十年という間におきまして、経済を取り巻く環境、特に中小企業を取り巻く環境というものはいろいろ変わってくることが予想されるわけでございます。先ほどのお話にも出ておりましたように、国際的な環境も変わってまいりましょうし、国内的にも新しい要因が出てくるであろうと思います。これらの要因を前にして、一部の中小企業方々は、いままでの仕事をより高めていくということによってこれを乗り切ろうと考えられるでありましょうが、他の一部の方々は、こういう情勢に応じて、いままでの仕事のやり方から別の分野へ転身を図り、そこで新たなる発展を期したいと考えられる向きもあるのではないかと思うわけでございます。  この法律は、いま申し上げました後のグループの方々、すなわち新しい情勢に応じて新しい分野で発展を図ろうという人たちをいわば激励するための法律でございまして、お話の中に出ておりましたように、落ちこぼれる中小企業を切り捨てるというような消極的な意味合いでは決してないわけでございます。むしろ、全体としての中小企業の発展をいかに支えていくかということが問題意識の中心にあることを御理解いただきたいと思います。
  114. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長官、私の聞いているのは、そういうこともあるけれども、十年という時限を切った形の中で一体いつごろまでを目標にしているのか、こういうことを聞いているわけです。
  115. 岸田文武

    岸田政府委員 失礼いたしました。  いま申し上げましたように、これからの十年が大事なときであり、その中においていろいろ環境変化が予想される。いわばこの法律は、そのような背景のもとに転換を促進する意味合いで立案をいたしたものでございます。十年がたちました場合には、恐らくこの新しい安定成長という体制に日本経済もなじむでありましょうし、中小企業もある程度なじんでくる面があろうと思います。その十年たった後の状況にどう対応すべきかということは、一応この法律を十年やりました後において、さらに新しい局面に対応して考えていくというような考え方で、とりあえず十年の限時立法にいたした次第でございます。
  116. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長官は就任してまだ日が浅いので、私も突っ込んだ質問をするよりもむしろ総括的な質問をした方がいいと思いますから、そういう点で配慮いたしますが、ひとつ答弁は聞きたいということについてできるだけ答えていただきたいと思います。  それでは、十年ということは、それで十年たったら見直す。しかし、十年以内にこの用務が終わるのじゃないかと私どもは思っているわけで、そうした方がいいのか悪いのかということを実は聞きたかったわけであります。  そこで、その意味は結局、この提案説明にもありますように、わが国経済安定成長へ移行する形の中で、さらに国の内外の情勢の中で非常に苦境に陥った中小企業者に一つ対策としてこの法律を適用するのだ、こういうことでありますが、いま一番問題になっていることは、経済状況が悪化して安定成長路線へ入っていったという形の中で、大企業中小企業分野の中にどんどん進出してくる、その進出してくる分野をどう防ぎとめるのかということが、けさの大臣答弁の中でも、今日的最大の課題である、こういう答弁がなされておるわけでありますが、大企業中小企業分野へどんどん入っていくということに対してこれを防ぎとめようとしているとき、中小企業中小企業のその既存の分野へ入っていくということは構わないのだということにもならないような気がする。  そうすると、大企業がみずから進出しないでいわゆるダミーを使って進出させれば同じことになっていくという議論もあるわけでありますけれども、こういうような形の中で果たして中小企業転換する新しい分野というものをどういうところに想定していくのか、これは選択の幅が非常に狭められているという形の中で非常にむずかしい問題になっていこうと思うのですが、中小企業庁当局の、この分野はぜひ行ってもらいたいものだと思うようなものがあればここで示してもらいたい。
  117. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業が新しい分野転換してまいるとして、一体どういう分野が一番望ましい分野であり、可能性のある分野であるか、私どもとしてもこの辺はよく情勢を見きわめる必要があるだろうと思っておるところでございます。  ただ、少なくとも申し上げられるのは、従来からのいろいろの転換事例の中で成功した事例を見ますと、この選択がうまくいった事例が非常に多いということが言えるわけでございまして、中小企業としてこれから新しい分野を選ぶときに、転換先として将来のその業種の伸びというものをよく見きわめておく必要があるだろうと思っておるところでございます。  過去の成功事例から一般的に言えますことは、国民のニーズのおもむくところをよく見きわめるということが大切でございまして、さらに具体的に申し上げれば、たとえば生活環境改善ということが非常に重視されてきております。こういう動向を見きわめて業種選択するとか、あるいは健康なり福祉に対する需要が非常に高まってきております。この辺にねらいをつけて転換先をしぼっていくとか、さらにまた省資源の動きというものが非常に活発になってきておりますので、そういった流れの中で新しい分野を見つける、こういったことが大切なように思うわけでございます。これらの分野についてはいわば有望な転換先というふうに申し上げていいのではないかと思います。
  118. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そう言われますけれども、実はいまこの転換対策の対象になっている業種幾つかあるわけですね。そういうような対象と想定される業種の中でも、数カ月前といまとでは大変事情の異なっている業種があるわけです。当時は転換しなければなかなかやっていけないだろう、こういうぐあいに必死になって運動していた業種が、わずか半年足らずの間に、人手が足りなくて、もう転換しなくてもいいわい、こういうような形の中に置かれている業種も存在しているわけです、私もずっと調べてきたのですが。相当の時間的経過の中で非常に事情が変化してくるわけですね。だから、あなた方が、いま抽象的な答弁しかなされませんでしたけれども、こういうところは中小企業転換していくのに非常にいい業種だと想定されても、その想定された業種がいまはよくても、いまの経済情勢変化の中で半年たったらこれはそぐわないのだという業種になっていく場合があるわけです。  それはしばらくおくといたしまして、この法律が施行された場合、あなた方がいろいろ業種を指定していくわけでありますけれども、具体的に現段階において転換を必要とする業種一体どういう業種であると判断なされておるのか、わかっている範囲で結構ですからお示しをいただきたい。
  119. 岸田文武

    岸田政府委員 私どものところにもいろいろな業種から転換の問題についての相談に見えております。それらの業種は、先ほど来のお話にございましたように、国際的な環境変化するとか、あるいは国内的な要因が新たに発生したというようなことに伴いまして、長期的にその業界をどう持っていくかということについていわば悩みを持っておられる業界でございます。  具体的な例といたしましては、たとえば貿易構造の変化によって輸出がなかなか思うように伸びなくなったということを理由といたしまして、金属洋食器業界などは非常に真剣にこれからのあり方を考えておられるようでございます。また、造船も、しばらくの間輸出中心として需給のアンバランスが続くであろうということから、新たな展開を考えておられるように私どもも拝見をいたしておるところでございます。  それから、他の事例といたしましては、技術革新といいますか、たとえばライターが非常に普及したということに伴って、マッチ業界がこれからのあり方を研究しておられるのは、一つの例に挙げられるかもしれません。いままで持っております紙の加工というような技術をもっと新しい分野で生かす工夫はないかということが研究課題になっているように思います。  さらに、次の事例といたしましては、公害規制の強化に関係をいたしまして、銑鉄鋳物の業界などは、いままでのようなやり方でない別の仕事考えようということで、組合の中でもいろいろの相談が行われておるように聞いております。金属メッキ業界も恐らくこれと同じような立場におると理解できるのではないかと思います。  以上申し上げましたように、いわば少し長い目で見てその業界をさらに発展させるためにはどうしたらいいのかということで、幾つかの業種がすでに検討を始めておられますし、また前向きの取り組みをしておられますので、これらを何とか激励をしていくためにこの法律がお役に立てばと思っておるところでございます。なおそのほかにいろいろの業界が今後出てくることも予想されますので、それらについても内容をよく見ながら、できるだけのお手伝いをしたいと思うわけでございます。
  120. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、いま言われたような形の中でいわゆる業種を指定する、指定された業種というのは、その時点の中ですでに転換対象業種になる、こういう印象を全国的に位置づけるというか、表明するというか、この業種は国内外の情勢ないし当面する経済情勢の中で転換に必要な業種でありますよ、こういうことになると、ああ、その業種はもう転換の必要な業種だとすると危いのだな、こういうような心配点が指摘されていくようなことになる可能性があるのではないか、そういう心配が当然のように出てくると思うのでありますが、そういう心配をなくする配慮はどのように考えられておるか、この点をひとつ説明をしていただきたい。
  121. 岸田文武

    岸田政府委員 ただいま幾つかの業種について具体的な例を申し上げましたが、これらの業種につきましては、確かに対外的あるいは対内的に新しい要因を迎えまして、そして新しい対応を迫られているということは事実でございます。その新しい対応として、ある人たちは、いままでの仕事のやり方の中でさらに合理化し、近代化し、国際競争力をつけてこれを乗り切っていこうというふうにお考えの方もかなり多いという感じがしますが、同時に、一部には、別の分野で展開を図った方がよりその企業としても有益であると考えられるグループも当然あるわけでございます。私どもは決して、その業種を指定したから、これでもって暗いイメージを与えるというようなことは考えているわけではございません。むしろ一つの転機を迎えたということでございまして、その転機をどう生かしていくかということで前向きに考えていきたいと思っておるところでございます。  ただ、率直に申せば、一部には御指摘のような懸念を持つ向きもあり得るわけでございます。しかし、そういうことを何とか少しでもなくしていくように、こちらも気をつけていくように考えております。具体的には、業種を指定いたしますときに、余り限定的に狭く指定をしますと、とかく暗い印象に結びつきがちでございますので、少しふんわりした業種の指定の仕方をしていきたいと考えております。さらにまた、業種を指定しますときには、その業界方々ともよく想談をして、納得ずくで指定をする、一方的に業種を指定することによって、業界として逆に恨まれるというようなことのないように、事前によく気をつけてまいりたいと思っております。  法律の趣旨は先ほど来申し上げておりますとおりでございますので、法律ができました暁には、この趣旨を少しでも多くの人に理解していただくように周知徹底を図りたいと思います。
  122. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それはそういうことになるということであればどうかと思うのですが、しかし、そういう私が言ったようなことの心配がないようにひとつ十分配慮をしてもらいたい、こう思うわけです。  それでは、次に、転換計画認定に当たっては、いま言ったように衰退業種だという印象を全国的に与えたということになると、そこの経営者は当然その事業内容についてはよくわかっておりまするけれども、そこに働いている人たちにとっては大変大きなショックになっていく可能性もあるわけです。したがって、こういうような業種に対していわゆる転換計画認定するに当たっては、その業種従業員、働いている人たちの承認を得て、そして認定をするというようなことも当然必要になってくるのじゃないか、こういうように考えるわけでありまするが、この点についてはどう考えるか、ひとつ聞いておきたいと思います。
  123. 岸田文武

    岸田政府委員 転換といいますのは、いわばいままでその中小企業が持っておりました知識なり経験なり技術なりあるいは従業員というものを、新しい分野でもっとよりよく生かしていくということが大切であろうと思います。その意味からしますと、転換に際しましては、やはり経営者の方と、それからそこで働いておられる従業員方々がお互いによく理解しながら一致して新しい局面に乗り出していこうという決意を固められる、これがいわば基本になるのではないかと思っておるところでございます。したがいまして、この法律ができました後の運用におきましても、この辺については特に気をつけてまいりたいと思います。  具体的に申しますと、事業転換に関する指導の段階、あるいは転換計画認定段階、これらの諸段階におきましては、関係の当局から従業員の理解と協力を得ることが特に大切であるということをくれぐれも申しますし、また、その辺のところを見きわめて進めてまいるように今後とも指導してまいりたいと思います。
  124. 佐野進

    ○佐野(進)委員 一つ一つもう少し確認をとってから質問をしてみたいのですが、時間の関係がありますから、次へ進んでみたいと思います。  次に、いまのような措置をするということにしましても、計画段階認定段階、それぞれにおいて相当慎重を要する必要があるわけでありまするが、その様式はどのような形になっているのか。その計画は「中小企業者の能力を有効かつ適切に発揮することができるものであることその他の政令で定める基準」、こういうような形の中でこの事項について一応明確にその措置をしていただきたい、こう考えるわけでありまするけれども、この点についてどう考えておられるか、この際明らかにしておいていただきたいと思います。     〔綿貫委員長代理退席、近藤委員長代理着席
  125. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業の方が具体的に転換の構想を固められますと、まず計画認定の申請を行うということが必要になってまいります。この認定の申請の手続はなるべく簡素なものにしていきたいと思っておるところでございます。内容として書いていただくべき事項としては、いま考えておりまするのは転換の内容であり、また実施時期、それから転換に伴って設備の設置ないし廃棄、これがどういう内容であるか、さらにまた、労務の関係をどういうふうに計画の中に織り込んでいるか、さらにまた資金の問題、こういったところがポイントになろうかと思います。いずれも事実を記載していただければ、その内容を見て具体的な認定に入るということになろうかと思っておるところでございます。  そこで、次の段階として計画認定に入るわけでございますが、認定の基準といたしましては、いまお話がございましたように、一つは、中小企業者の能力を有効かつ適切に発揮することができるものであること、それから他の一つとしては、転換を円滑に行うため適切な記載内容になっていること、この二つが認定の基準になろうかと思います。  前段の中小企業者の能力を有効かつ適切に発揮するという点につきましては、設備なり技術なりといった既存の経営資源ができるだけ有効に活用し得るという点がチェックポイントでございまして、さらにこの計画で構想されております転換先が本当にその中小企業にとってふさわしいかどうかというようなこともあわせて見ていきたいと思います。それから後段につきましては、転換期間が適切であるかどうか、それから設備なり資金なり労務面で無理な計画になっているようなことはないか、こういった点を見てまいりたいと思っております。
  126. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そういうような形の中でいろいろ転換対策をされていくわけでありますが、いま中小企業庁考えておられる対象業種の中で、一番問題になるのは造船造船といえば下請、こういうような形がもう必然的に出てくるわけです。その下請というものは、これはその下請の孫請というような形にもなってくるし、現実の問題として、ある地方の業種の中においては親会社からの受注が激減した、したがってこれは大変だというので人員整理を行った、ところが今度は中小の仕事が出てきて、結果的に人が足りない、親会社からは仕事が出てこないけれども、他のところから仕事が出てきて、一度やめさせた人をもう一度雇用しようとしても、もうどこかへ散ってだめだ、いわんや孫請の会社に至ってはそれ以上深刻な状況になっているというようなことも聞かれるわけでありまして、下請企業対策というものは、単に造船だけでなく、一般的にも非常に大きな問題になっておるわけであります。  そういうような下請企業について、その実態から見て、転換期間中に相当部門転換を図ることは大変困難な場合があると思うのでありますが、こういう下請企業に対する取り扱い等についてはどう対応せられようとしておるか、この際明確にしておいていただきたいと思います。
  127. 岸田文武

    岸田政府委員 今度の不況を通じまして、下請の問題が中小企業対策としても非常に重要であるということが改めて認識された次第でございます。  その意味におきまして、下請対策につきましては、一つ資金的な面でできるだけの応援をすること、それから下請との間の手形条件その他の支払い条件が悪化しないように気をつけること、さらにまた下請企業振興協会を通じて仕事のあっせんを図ること、これらの手を逐次打ってまいったわけでございます。  転換に伴う下請対策といいますと、これらの一般的な問題に加えまして、やはり小さい企業である場合が多いので、情報等も不足していることが多いと思います。したがって、長い目で見てその業界をどう持っていったらいいのか、あるいはその企業をどう持っていったらいいのか、この辺については親身に相談に乗ってあげながら、その下請企業の新しい展開をお手伝いするように気をつけてまいりたいと思います。
  128. 佐野進

    ○佐野(進)委員 次は、この中小企業事業転換対策臨時措置法案という名前、これが冒頭に申し上げましたとおり大変オーバーな表現だと思うのでありますけれども、これはしばらくおくといたしまして、それでは何をどうするのかということになりますと、結局金融その他という形の中において、金融が特に大きな柱になっておるわけであります。この金融の部面におきましても、中小公庫、国民公庫の転換貸付の金利が八%だということになっておるわけでありますが、八%の金利で転換対策資金の貸付だということになったのでは、大変どうも、いわゆる看板と内容が大分違うじゃないか、こういうような気がするわけであります。これらの金利を引き下げる等、助成内容をもっと強化していくべきではないか、こう考えるわけでありますが、この点について見解を明らかにしておいていただきたいと思います。
  129. 岸田文武

    岸田政府委員 御承知のとおり、現在の中小企業金融公庫及び国民金融公庫の基準金利は八・九%でございます。この法律の実施に伴う転換金融としましては、お話の中にございましたように八%を考えております。これは、転換ということが新しい分野への展開であるだけに、やはり一般の場合と違って手厚い助成が必要であろう、こういう配慮から、一般の金利より引き下げまして八%にいたした次第でございます。  この八%と申しますのは、五十一年度予算においても一応裏づけられておるわけでございますが、お話の中にもっと助成を強化できないかというようなことが出ておりましたし、また業界からもそういうような要望がございますので、実は来年度の予算要求におきましてはこの八%を七・五%まで引き下げることができないかどうか、いま中でもいろいろ検討をしておるところでございます。  もちろん、転換をする当事者としましては、少しでも金利が安く、期間が長い、そういった金融が欲しいと思うのは当然でございますが、ただ、少し翻って考えてみますと、転換先で従来からその仕事をやってきておられた方々とのバランス考えておく必要もございますし、また、従来いろいろ転換に関してとってまいりました措置との均衡を考える必要があるというようなことで、一応先ほど申し上げましたような条件を設定いたした次第でございます。
  130. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ここらをもう少し突っ込んで詰めればいいのでしょうけれども、次に進みます。いずれいまの問題等については強い要望を出したいと思います。  労働省から課長さんが来ておりますので質問しますが、今回のこの転換法の審議に当たって最も配慮しなければならないのは、労働問題だと思うのです。いわゆる事業経営者は、先ほど来質疑が続けられているように、転換したい、業種を指定してもらった、じゃやめましょう、こっちへ行きます。金は貸してもらいます、いろいろ指導は受けます。しかし、そこに働いている労働者は二十年、三十年と勤めて、いま急に転換しろと言われても、なかなかそう簡単にはいかないわけですね。業種が違うのですから、仕事の内容が違ってくる。旋盤をいじっていた人が一気にセールスマンになれと言われたって、そんなことはできるわけじゃない。そういうことになりますと、労働者がこの転換法を非常に警戒すると同時に、これは反対してくれ、こんな法律は通さないでくれという、内容を見ればそれほどじゃないのですけれども、表面から見ると、転換は労働者切り捨てであり、中小企業切り捨てである、こういう形の中において一種の恐怖感というか、不安感というか、そういうものを持って、われわれのところへもこの法律を反対してくれという強い要請が来ておるわけであります。  したがって、これらの問題についてそれぞれ具体的に、そうではない、そうしなくとも済む対策をとっていかなければいけない。しかし、その企業はもはや存立することが客観的にもあるいは実際上の問題としても不可能だというのに、倒産しても構わないからそれをやれということはなかなかでき得ない状況等もあるわけでありまするから、そういう場合どうするかということでいま議論をしておるわけでありまするけれども、この場合、労働省として、雇用保険法の基本手当の個別延長を行うこと、また雇用安定基金というものをつくってみる構想等が当然あってしかるべきだ、こう思うわけでありまするが、それらに対してはどう考えるか。  さらにまた、転換に伴う離職者の優先雇用対策、中高年齢失業者の雇用安定措置、こういうものは、当然この法律を提案するに際して、労働省当局と通産当局とが話し合われた上でこういう法律が提案されてきておると私どもは思うわけでありまするが、その話し合いの上で、労働省としては当然これらの問題については万全を期した上に法律提案を賛成せられてきたと思うわけでありますけれども、どう措置をされてきているか、この際明確にお答えをしていただきたい。
  131. 小粥義朗

    ○小粥説明員 お答えいたします。  事業転換に伴う雇用不安につきましては、当然まず私どもとしても第一に考えなければならない問題であるというふうに思っております。それで、実は昨年四月から雇用保険法が新しく実施されておりまして、その中で事業転換に伴う労働者の職業転換をスムーズにやるための手だても各種給付金として用意されております。したがって、この事業転換促進法案が実施の段階には、そうした雇用保険法に基づくところの事業転換に応ずる職業転換のための給付金を活用できると思っておりますが、ただ、今後の経済情勢を見てまいりますと、従来のような高度成長期とは大分様子が変わってまいります。したがって、そうした雇用不安というものもより深刻になってくるのではないかということから、お話がございました雇用安定基金、仮称でございますけれども、私どもの方で現在検討を進めております。それによりまして、景気変動時あるいは産業構造の変化に対応する事業転換をスムーズにやるための手だてをさらに充実していきたいと考えております。  なお、雇用保険法の中には、従来失業保険法時代はいわゆる給付延長制度も単純なものしかございませんでしたが、雇用保険になりましてから個別延長制度もつけ加えまして、これは不況業種からの離職者であるとかあるいは中高年齢者であるとかいう人々に対して個別延長の制度もございますし、さらには従来からもございますが訓練延長制度等もございます。そうしたものを活用しまして、本来事業転換の際はできるだけ失業の形が出ないように、雇用する労働者をその企業内でスムーズに職業転換をしていただくことが一番望ましいわけでございますので、その方向でまずはやりますが、それによってもなおかつ失業として出ざるを得ない場合があろうかと思います。そうした場合には、いま申し上げました雇用保険の延長制度を十分に活用しまして、その生活面の配慮をしてまいりたい、かように考えております。  同時に、転換等に伴ってある程度の失業が出る場合、たとえば産地を形成しているようなところでこれが出るとなりますと、その地域にとっては雇用情勢の面からも相当大きな影響を持つことになるわけでございますから、その地域の職業安定機関、それから職業訓練機関一緒になって、その優先再就職のための体制は、たとえば臨時職業相談所を設けるとかいう形で従来もやってきておりますし、今後もそうした対応の仕方は十分考えてまいりたいと思っております。  最後に、中高年齢者への問題の御指摘がございました。この十月から高齢者の雇用率も新しく実施されております。こうした雇用率を背景に、さらには各種再就職奨励金の活用を図りまして、特に中高年には若年者にないハンディキャップがございますので、力を入れて再就職を進めてまいる所存でございます。
  132. 佐野進

    ○佐野(進)委員 次の質問に移ります。  中小企業庁長官近代化審議会に事業転換部会を設けて、そのメンバーに労組代表を加える必要があると思うわけです。この理由を説明すればいろいろあるわけでありまするけれども、時間の関係がありまするから理由は余り長く申し述べませんが、結果的に、この近代化審議会といいまするか、あるいはここの中に設けられるそれぞれの機関の中に、いろいろな意見、特に働いている人たちの意見が反映されるということは必要ではないか、こう思うわけであります。この点について中小企業庁長官の見解、労働省の方は直接的に見解の発表は必要ないと思いまするが、もしあればつけ加えて答弁をしていただきたいと思います。
  133. 岸田文武

    岸田政府委員 御意見もっともなことではないかと私、思います。先ほども申し上げましたように、転換が円滑に行われるためには従業員の理解と協力ということが必要でございまして、この意味からしますと、従業員への配慮ということは、この法律を円滑に進めていく上の一つの大きなファクターであろうと思っておるところでございます。中小企業近代化審議会の中にこの転換問題を特別に扱う部会を設けるということにつきましては、実は事務局でも前々から考えておりまして、今年の三月十六日、総合部会政策小委員会を開きました際に、こういうことで御了解を願っておるところでございます。もしこの転換法が成立しました暁には、正式に審議会に諮りまして事業転換部会を発足させるようにいたしたいと思います。そうして、その転換部会にはやはり労働界の代表の方にも参加していただくというようなことが有益なのではないかと考えておるところでございます。
  134. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その次は、事業転換に伴って、結果的に、先ほどお話し申し上げたように、同業種間における転換でなくして異業種間における転換ということになるわけですから、既存の設備というものはほとんど廃棄されるという状況になるわけです。そういうことになりますると、これのために投じた資金がほとんどむだになるし、新しい設備に対しては新資金を投入しなければならない、こういうことになるとすると、転換業種にとっては大変大きな負担になっていくわけであります。かつて本委員会において決定した織機の買い上げ廃棄という措置もあるわけでありまするが、これをそのまま当てはめるということはでき得ないにしても、これに準じたような措置をとることができるのではないかと考えますが、その点について見解をひとつ聞いておきたいと思います。
  135. 岸田文武

    岸田政府委員 転換に伴いまして、従来持っておる設備が不要になるというケースがいろいろ出てくるかと思います。こういった場合に対応いたしまして、今回の法律に伴う措置として、一つ税制面の対策考えております。具体的には、転換計画に従って古い事業用の資産を処分する場合には、転換計画期間中に繰り上げ償却をする道を開くということがその内容になるわけでございます。  それから第二番目には、事業協同組合なりあるいは商工組合等で、いわば組合ぐるみの不要設備の廃棄をする、こういうケースもあろうかと思います。そのような場合には、中小企業振興事業団の高度化事業の中で設備共同廃棄事業という制度がございます。この制度の対象とすることによりまして、いま申し上げました組合ぐるみの設備の処理ということを応援をしていきたいと思っております。参考まででございますが、この設備共同廃棄事業の対象となりますと、この助成比率九〇%、金利は無利子でございまして、償還期間も十六年以内というかなり長い融資が行われることになるわけでございます。
  136. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣に聞く原則的な質問が若干残っておりますので、具体的な質問についてはあと二点ばかりで終わりたいと思います。  事業転換後、その事業転換する、先ほどの造船の話ではございませんが、整理してしまったら急に仕事が出てきた、こういうような形の中で、新しく人を求め、機械をまた購入し始める、こういうような事業が実際上存在しておるわけでございます。転換した、しかし前の事業の方がよくなってきた、いろいろな恩典は受けた、しかしその恩典によるところの成果は余り上がらない。結果的に、ああ、もとの仕事をやればよかったという中小企業者が出てくることは当然です。そうしたとき、その当然な業者の取り扱いをどういうぐあいにするのか。これは非常に具体的な問題になってまいりますが、そのことについて一点、聞いておきたいと思います。  さらに、時間がございませんから、次の問題を聞いて一括して答弁してください。中小企業庁所管の技術改善費補助金というものがあるわけでございますが、特に事業転換企業のために別枠予算として確保することがこの種補助金としては必要ではないか、こういうぐあいに考えますが、これはどう判断されるか、この二点を一括してお答えを願いたい。
  137. 岸田文武

    岸田政府委員 一度転換計画の認可を受けまして、その転換計画の期間中にもう一度もとの業種にUターンする、いわば転換計画が途中で打ち切られたようなかっこうになるわけでございます。こういう場合でございますと、本来目的としておりました事業転換は結果としては実施されないということになるわけでございまして、もとの認定は取り消さざるを得ないのではないかという感じがいたします。そうなりますと、それ以降は助成が受けられないということが結果として言えるように思うわけでございます。  さらに進みまして、一度転換をして新しい業種仕事をするところまでこぎつけた、ところがまた事情が変わって戻ってくる、こういう場合もあり得るわけでございます。この場合に、もう一度戻ることについて新たなる認定が受けられるかどうか、この辺は、具体的なケースを見、またそのときの経済情勢を見て個別に判断をする必要があるのではないか、こう思っておるところでございます。  それから、お尋ねの第二番目に、技術開発の問題についてお触れになられました。御承知のとおり、中小企業技術開発を応援する制度として、技術改善費補助金という制度がございます。これは、中小企業者みずからが新技術、新製品を開発することを応援するために設けられた補助金制度でございます。事業転換を行う際に、新しい技術を身につけて、それを裏打ちにして転換をしようという場合も出てまいろうと思います。そういう場合にはこの制度を活用するということはいわば転換を応援することにもなるわけでございまして、うまく活用していただければと思っておるところでございます。  さらにまた、新しい技術をみずから開発するという場合のほかに、いままである技術をほかから譲り受けまして、そして自分なりに改良、工夫することによって新技術を身につける場合も出てまいります。こういう場合に、やはりある程度の応援を考えてしかるべきではないかということをいま実は部内でいろいろ検討しておるところでございまして、そうすればもっと幅広く中小企業技術レベルの向上に応援する道が開けるような気がいたしますので、何とかこれを実現してみたいと思っておるところでございます。     〔近藤委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 佐野進

    ○佐野(進)委員 では、大臣、時間が来ましたので、いままで質問をいたしました事項をまとめて大臣に確認の意味で質問いたしますので、お答えをいただきたいと思います。  第一点は、事業転換が大企業中小企業事業分野に進出することによって発生しない、こういう措置を明確にすることが必要だと思います。そのことの意味はもう先ほど来質問を続けております事柄でおわかりだと思うのでありますが、結局事業分野法案の提出は一体いつにするのか、こういうことになるわけでございますので、午前中の質問もございましたけれども、いま少しく明確にお答えをいただきたい。  第二点は、業種指定をする場合は、近代化審議会に部会を設け、そのメンバーに労働者代表を入れる、これは長官がいまお答えになっておりますけれども大臣から確認の意味で御返事をいただきたい。  第三点は、第三条第一項の政令内容を明確にすること、これは先ほど来いろいろ質問をいたしておりますその中でもあるわけでありますけれども、これについてお答えをいただきたい。  第四点は、事業転換に伴って協同組合等で設備を共同廃棄する場合は、中小企業振興事業団の設備共同廃棄事業に対する助成措置の対象とすること。  これは先ほど質問をいたしました件についてそれぞれ長官からお答えがあるわけでありますが、大臣から以上四点にわたって一括御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  139. 河本敏夫

    河本国務大臣 事業分野の調整に関する法律につきましては、前国会の委員会における御決議を受けまして、自来精力的に作業を進めております。先般も御答弁いたしましたが、夏休み等も返上いたしまして懸命の努力を続けておりまして、いまや最終段階に来ておるわけでございます。一刻も早くまとめまして、できるだけ今国会には間に合わしたいということを目標といたしまして、いま最終の作業を続けておるところでございます。  あと引き続きまして第二点、第三点、第四点についての御質問がございましたが、これはいずれも長官が答弁したとおりでございまして、確認をいたします。
  140. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 中村重光君。
  141. 中村重光

    ○中村(重)委員 通産大臣に見解をお伺いしますが、この事業転換は現在の造船不況中心とするもろもろの不況業種があるのだからこれはやらなければいけないと思っているのだけれども転換をしましても、新しい事業の方へ移っていくので、なまやさしいことじゃないだろうと思っているのです。したがって、不況対策というのを強力に推進をして、そして多少の縮小をやるということがあっても、企業の合併であるとか、その他近代化あるいは管理部門合理化であるとか、ありとあらゆる対策を講じていく必要が優先されなければならないと思っているのですが、それらの点についての考え方、具体的な不況対策として講じておられる事項、また講じているけれどもなかなかうまくいかないということで壁にぶつかっている問題、それらに対する打開策といったようなことを一応通産大臣からお伺いをいたしまして、運輸省も見えていますから、それぞれお尋ねをしていきたいと思いますが、いかがですか。
  142. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業事業転換を図るということは、私は創業以上のむずかしい仕事だと思います。中小企業が初めて仕事を起こします場合ももちろんむずかしい困難な事業でありますが、転換をする場合はそれにも増してむずかしい仕事ではないかと思います。それから同時に、不況の場合には、理屈の上ではわかっておりましてもなかなか転換がしにくい、やはり経済にある程度の活力があるというときでないと転換しにくいですし、転換後もなかなかうまくいかないのではないか、こう思います。  そういう意味におきまして、経済に活力を持たせる、つまり景気回復を順調に進めていくということが何よりも肝心でございますが、現在のところ、ことしの一月から七月ごろまでは比較的順調に回復しておりましたが、八月、九月、十月と、やや足踏み状態になっておりまして、その点、私どもも心配をしておるわけでございますが、この中旬におきまして広範な景気動向の調査をいたしました。八つの通産局を総動員いたしまして調査をいたしまして、目下その結果を集計をしております。二十六、七日ごろには大体の結論は出るのではないかと思いますが、その結論を見ました上で、必要とあらば今後適当な景気対策というものを積極的に進めていく必要があろうかと考えておるところでございます。
  143. 中村重光

    ○中村(重)委員 長官からでいいのだけれども中小企業に対する官公需は何%になっているのか。そして、これは三木総理が本会議答弁をしたこともあるのだけれども、これをどの程度まで上げていこうとお考えになっていらっしゃるのか、大臣からお答えいただけますか。
  144. 河本敏夫

    河本国務大臣 官公需の中小企業に対する発注の割合は、昨年は三二・四%でございましたか、それをことしは三四%まで引き上げようというのが一応目標になっております。しかし、総理大臣はかねがねこの問題に非常に熱心でございまして、将来は五〇%までぐらいいかないか、工夫をするようにということをたびたび聞いておりますので、一遍にそこまで持っていくというのは不可能でございますが、順を追いまして、順次毎年引き上げていきたい、かように考えておるところでございます。
  145. 中村重光

    ○中村(重)委員 総理は、お答えのとおり五〇%まで持っていきたいと言ったのだけれども、一遍にそこまでいくことはむずかしい、徐々に引き上げていきたい、こう大臣はお答えになったのだけれども、どういった点が総理が言う五〇%まで引き上げることについての隘路と申しますか、障害となっているのですか。
  146. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま申し上げましたのは中央の仕事でございまして、地方の仕事につきましては約七〇%ぐらいは中小企業に出ておりまして、その全平均をとりますと四九%強、約五〇%弱までいっておるのです。  なぜ中央の仕事が比較的むずかしいかといいますと、やはり大規模な仕事が多いということが一つと、それから高度の技術を要する仕事が多いということ等でやりにくい点が地方よりも多い、こういうことでございますが、しかし、それとても中小企業技術もだんだんと進歩しておりますし、大規模の仕事といえども、場合によれば分割して中小企業に発注する可能性等もあるわけでございますから、そういう点を、各省、各庁におきましていろんな意見もありますけれども、極力説得いたしまして、先ほど申し上げましたような目標にできるだけ早く引き上げていきたいというのがいまの考え方でございます。
  147. 中村重光

    ○中村(重)委員 高度の技術ということをおっしゃったのだけれども、また各省、各庁のいろんな考え方というものもある、大企業からのいわゆる受注要求というものがあって、なかなかそれを抑えるということもむずかしい、それも一つの壁だということもわかるわけですね。やはりそれを排除して、総理が言われた一応五〇%まで引き上げていくということをしなければならない。一つの例証としてお挙げになった、高度の技術が必要である。だけれども中小企業はその点について若干劣っておる。そういう高度の技術中小企業に持たせるための施策、総理が言った五〇%まで引き上げるために講じていらっしゃる対策といいますか、政策と申しますか、それはどういうことなんですか。
  148. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業に対する官公需の確保の問題につきましては、国会でもしばしば御議論をいただきましたし、私どももそのような御議論を受けまして、今度の不況の際、できるだけその機会をふやすように努力をしてまいりました。関係各省におきましても、私の見ておりますところでは、今回の不況を契機として、この問題に対する理解はかなり深まってきたような気がいたしておるところでございます。  具体的にどういうことを考えておるかということでございますが、たとえば指名競争入札制度を一層活用することであるとか、あるいは地方支分部局の発注限度といいますか、契約限度額を引き上げることであるとか、あるいは一つのプロジェクトについて分割発注をして、中小企業にも入札の機会が得られるようにするとか、さまざまなことがございますが、特にいま私どもで力を入れておりますのは、協同組合に対する発注を促進するという点でございます。  御承知のとおり、官公需適格組合というものを指定いたしまして、それらになるべく注文が当たるように応援をしてまいったわけでございますが、正直に申しますと、まだ組合の方の体制が十分でないために、本当に責任を持ってその仕事を仕上げられるかどうか、あるいは本当に資金的あるいは技術的な能力があるのだろうか、こういった点をいろいろ懸念される向きが多いようでございます。私どもは、こういった事業協同組合を育ててまいりまして、そうして相当まとまったものでも注文ができるようにしたいということで、いまいろいろの工夫を考えておる最中でございます。  さらにまた、いま御指摘がございました技術能力向上の問題につきましては、これは一般の技術施策の一環として、中小企業でも大企業に負けないだけの小粒でもぴりっとした技術を備えられるように、これも非常に大事なポイントであると思いまして、できるだけ今後とも気をつけてまいりたいと思います。
  149. 中村重光

    ○中村(重)委員 不況対策ということで、私どもは当委員会においてもいろいろな角度から、こういうことをやった方がいいじゃないか、ああいう方法もあるじゃないかという問題提起もしてきたのです。また、いろいろ各省の答弁も聞いてきた。いま長官がお答えになったようなことをいつも私どもは聞いてきているのだ。ところが、考え方はわかるのですよ。おっしゃるとおり、それはそういう方法というものが当然だと私は思うのだ。しかし、実行が伴ってないと思うのですよ。それで、その考え方は幾らあっても、それを強力に推進をしていく行政努力というものがなされなければいけない。その点が考え方にとどまっておる。そうして、そういう指導はするのだけれども、なかなか業界の方でその指導についてこない、ついてこないのはどういう点にあるのかということをまた吸い上げる、そうしてそれを解決していく、そういう点が私は不足しているような感じがしてならないのだ。  だから、分割発注の問題、あるいは共同発注の問題、それから技術の面において中小企業が欠けているということになってくると、ジョイントなんかするとそういう問題も解決される、そういう具体的な、講じられた施策を聞かしてもらいたいし、また、いままではここまで来たのだけれども、今度こういうことをやっているのだ、そういう方法というものがいつごろをめどに、こういう具体的な例が実を結んでくることになるのだというようなことをお聞かせ願わないと、本当に私どもは期待を持つことができないというように思うのです。それらの点、いかがですか。
  150. 岸田文武

    岸田政府委員 官公需の発注を少しでも多くするということにつきましては、中小企業庁としてはかなり力を入れてやってきたつもりでございます。現にこの一年間を振り返ってみましても、地方支分部局の契約限度を引き上げた例は十指に余るものがあると思います。それから、事業協同組合による発注を促進するという意味で官公需適格組合を育ててまいりましたが、組合の数もことしの三月末で百三十二に到達いたしておりまして、年々数がふえております。さらに、その発注の数量もこれまた年々増大をしておるところでございます。  こういう問題は、いわば一朝一夕に世の中が変わるというよりは、やはりじみちな努力の積み上げということが特に大切のように思っておるところでございます。幸い、先ほども申し上げましたように、関係各省でもこの問題に関する関心がごく最近高まってまいったように思っておりますので、いわばそういうことを一つの機会として、一層関係各省間の連絡を密にし、そしていろいろの注文があるならばその注文を受けて、それに合うように中小企業の方の体制づくりも進めていくということでやってまいりたいと思っておるところでございます。
  151. 中村重光

    ○中村(重)委員 共同化であるとか協業化に対する税制上の措置というものもあったのだけれども不況対策としてさらに強力に推進をしていくためには、金融税制に対して抜本的な優遇措置を講じていくということでないといけないのだが、その点、特に改められた点はどういうことなんですか。
  152. 岸田文武

    岸田政府委員 今度の不況はいままでに例のないほど期間も長く、また非常に厳しい不況でもあったわけでございます。この不況を何とか乗り切るということのために中小企業としても全力をふるってまいったわけですし、中小企業政策としてもできるだけの応援をやってまいりました。これだけの長い不況を何とか今日までしのぎ切って、もう一息というところに来ておりますので、いわば最後努力を払っていきたいと思っておるところでございます。  具体的な施策としましては、いまお話がございましたように金融対策がやはり大切でございます。その意味におきまして、中小企業機関資金量の確保をするとか、あるいは信用保険についても逐次手直しをするなどの措置で今日までやってまいりました。官公需対策は、いわばそういった広い意味の中小企業対策の一環として、個々の中小企業なりあるいは協同組合が不況によっていろいろな影響を受けたときに、これを少しでも救うといった意味合いで、一般対策の中に込めまして推進をしておるところでございます。
  153. 中村重光

    ○中村(重)委員 その協業組合等に対して、特別に税率の引き下げといったようなことをおやりになっていないでしょう、どうですか。
  154. 岸田文武

    岸田政府委員 協業組合に関する税制の問題はかねてから御指摘をいただいていたところでございまして、実は私どもの部内でも、やはり御意見もっとものような気がするから、ひとつこの際何とか具体化の方向考えられないものだろうか、こういったことで相談をいたしております最中でございます。何とか前進を図りたいと思います。
  155. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えになったような点なんですよ。後ろ向きと言えば言えないこともないのだけれども、税の繰り延べとかなんとか、そういったものは考えてあげましょうというようなことでなく、もっと前向きに、共同化であるとか協業化というものが中小企業近代化、さらにまた強力な不況対策を推進することに役立つのだという確信をお持ちになって、やはり税率の引き下げなんというようなことをおやりになると、それは進んで共同化をやったり協業化をやったりするのですよ。ところが、そういう前向きの金利の大幅引き下げであるとかあるいは税率の引き下げとかいうことをおやりにならないのだ。そこが問題なんですよ。だから、もたもたして少しも効果が上がらないと言うのだ。そういうことはやはり大蔵省とも十分話し合いをし、各省とも話し合いをやって、もっと活力のある不況対策を講じていく必要があるということなんだ。そういう点が欠けているということを私は指摘をしておきたいと思うのですよ。大臣、どうお考えになりますか。
  156. 河本敏夫

    河本国務大臣 御意見ごもっともでございますから、積極的に検討いたします。
  157. 中村重光

    ○中村(重)委員 運輸省がお見えだけれども造船不況対策ということで——これは造船ばかりではなくてすべての場合に当てはまるのだけれども、親企業の発注先の変更ということ。たとえば長崎なら長崎ということになってくると三菱造船というものに大きく依存をして、そしてそういう親企業がたくさんないものだから下請企業が親企業を選別することができなくて、親企業が一方的に選別をするという形のものになっている。だから、不況対策というものを考えるならば、そういう局地的な不況というものが長崎その他特定のところにあるのだから、そういう場合は下請企業に対する発注を県外発注をやっているのを変更してしまって、それをぐっと減して、技術的に問題点があるならば、それを解決をするような施策を通産省等とも話し合いをやって、そういう問題点を解決をすることにして、そして個々の企業でできなければ共同発注という方法だってあるわけだから、そういうことで発注先の変更ということを強力に推進する必要があると私は思うのだけれども、私が実態調査する限り、そういった本当に不況対策として強力に推進しているなということを感じ取ることがないのだ。そこらをどうお考えになっていらっしゃいますか。
  158. 間野忠

    間野説明員 先生ただいまおっしゃいましたように、不況対策といいましても今年度から、また本格的には来年度からというふうに考えておりますものですから、確かに不況対策が浸透しているという感じがまだ末端まで行き渡っていない点があるかと思います。ただ、特に下請という問題につきましては非常につかみにくい点もありまして、いま鋭意元請を通じていろいろ調査をする、あるいは下請の団体でございます日本造船協力事業団体連合会というものができましたので、それを通じていろいろ調査するなどして、現在どういうことになっているか、どこに問題があるかというようなことを調査いたしております。  ただ、ただいままで私ども聞いております範囲では、先生がおっしゃいましたように、元請の方もどちらかと言えば県外に発注をしておったものをやめて、県内と申しますか、従来から関係の深かったところにはなるべく仕事を確保するということでやっておるようでございまして、私どもの方でも、操業の低下はいたし方ございませんけれども、基準年度と申しますか、能力相応に操業しておりましたときに比べて加工外注比率が極端に減るようなことはやめるように指導いたしております。
  159. 中村重光

    ○中村(重)委員 ともかく徹底をしてないから、強力に指導をして、非常に急激な影響を来したところに対してはできるだけ緩和するような、そういう施策を講ずるようにしてもらいたいと私は思うのですね。  もう一つ指摘しておきたいのだけれども、長崎県で中小企業造船所が協業化をやってドックをつくった。ところが、今度は林兼が神戸かどこかで新鋭の設備をやってしまったから古い設備が出たわけだ。当然スクラップ・アンド・ビルドという形になってくるわけだから、やはりその場合はスクラップにしなければならぬ。それを修理して、そしてまた長崎の方へ林兼がそれをやろうという計画を立てた。それはずいぶん混乱をしたのだ。ぼくらも下関の方に話をしたり、あるいは門司の海運局に話をしたり、長崎の支局の方に話をしたりいろいろしたのだけれども、林兼の方も強引にやろうとはしない。しないから、一応解決をしたことになっている。しかし、あなたの方の指導がもっと徹底をしておるならば、そういうむだな精力を消耗するようなことはないわけなんだ。ところが、指導というものがあいまいなのかどうか、あえて私は、あいまいであろうと、こう指摘をしたい。そういうのは一切認めないのだというような基本方針をぴしっと確立をするならば、林兼もそういうことをしようかなんという考え方を起こさなかったと思う。  そのために、そんなことはやめてもらいたい、造船不況の中において中小の造船がせっかく国の指導に従って協業化をやっているのに対して、そういう大資本が一たん新しい設備をし、それが余ったからそれをまた別のところに回送してやるなんということはけしからぬじゃないかと、あっちこっちに陳情したり、大変苦労したわけだ。そういったようなことで林兼の問題は一応解決をしたから、別にそのことを改めて調査をしたりなんかされる必要はありません。林兼の方も、私も会ったのだけれども、非常に物わかりがよくて、そういう無理はしませんということで引っ込んだのだけれども、やはりあなたの方がもっと強力に推進して基本方針をきちっと確立をしておるならば、そういうような考え方なんか起こさなかったであろうと私は思う。そういう点において指導上あなたの方に欠けているところがあるから、今後はそういったような混乱を起こさせることのないような指導をしてもらいたいと思うのだけれども、いかがですか。
  160. 間野忠

    間野説明員 確かに先生の御指摘のようなことがあったとのことでございます。私どもの方といたしましては、原則的に施設の新設につきましてはスクラップ・アンド・ビルドという原則を強く堅持しておるつもりでおったわけでございますけれども、そういう不都合があったとすれば、まことに御迷惑をかけたと思っておりますが、今後とも、特に不況でございますので、スクラップ・アンド・ビルドという政策は強く堅持してまいりたいと思っております。
  161. 中村重光

    ○中村(重)委員 長崎の問題はそれで解決をしたのだからいいです。ほかにそういうようなことが起こらないように、むだな精力を消耗させるといったようなことがないようにしてもらわぬと、非常に経営上阻害要因になってくるということを指摘しておきます。  それから、船舶解体を新しい不況対策としていま取り入れようというような動きが中小造船の中に非常に高まってきているのだけれども、かといって、古い船を買わなければならぬ、その費用、それから解体の費用、こういうことになってくると、採算上なかなかうまくいかないのじゃないか、したがって、国が補助をしてやる必要があるのじゃないか。それから、運転資金というものも長期低利でもって貸付をしていく。それから、組合が共同で購入をする、そして今度はその解体をしていく、それからまた売らなければいけません、そのためにはやはり運転資金というものも必要になってくる。そうした点について、採算がとれるように国の補助をする用意があるのかどうか。それから、いま申し上げたように、解体をするに伴って、個々の企業にしてもあるいは組合にしても長期低利の運転資金が必要だが、そういう融資に応ずる用意があるのかどうか、いかがですか。
  162. 間野忠

    間野説明員 確かにいまおっしゃいましたように、船舶解体業と申しますのは、そのコストの大半を占めます解体用船舶の値段が非常に変動いたしますし、それに応じまして製品でございますスクラップ価格というものも非常に変動いたします。そういったことがございまして、採算の見通しを立てることは非常にむずかしい面がございまして、かつ利幅も現状では恐らく非常に薄いのではなかろうかと予想されます。  特に、新たに解体業を開始するということでございますものですから、これが定常状態になっておるときですとよろしいのですが、初年度におきましてはとにかく解体用の船舶を買わなければならない。その資金負担に見合う収入がないという状態初年度でございますので、初年度船舶解体用の資金につきましては、政府系の金融機関から長期の金を融資していただき、そしてその金利がわりに高うございますので、その金利負担を軽減すべく、利子補給と申しますか、何らかの助成措置を講じたいと思いまして、来年度に予算を要求いたしております。
  163. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまのはよく聞き取れなかったのだけれども、やはりそうした非能率の船舶であるとかあるいは老朽船舶というものを買い入れて、そうして解体をしてそれを売りさばくということは、働いている労働者は首を切らないようにしていかなければならぬという考え方が先行するわけなんだ。そうすると、これは失対事業類似の事業だと私は思っているので、当然国からの助成というものはなければいけないと思う。いまのお答えは、来年度予算の中において、そうした助成をするための予算を要求をしているのだということだったのですか、もう一度お答えください。
  164. 間野忠

    間野説明員 どの部分に助成する予算を要求しておるかという点をちょっとくどく申し上げましたので、おわかりにくかったかと思いますが、船舶解体業が採算に乗るようにするために国からの助成を検討いたしておりまして、その助成は、解体用船舶購入資金の金利の一部を補助するということで助成金を交付したいと思っております。
  165. 中村重光

    ○中村(重)委員 これは金利の一部負担なんて、そうけちったことじゃなくて、助成をするための予算措置というものは当然講ずる必要があるということだと私は思うのです。もっと積極的な対応策を講じてもらいたいですね。  それから、私が申し上げた個々の企業あるいは組合にしても、購入、それからこれを売りさばく、そのためにはあなたの方では利子の一部負担なんていうような非常にけちったことでは余り大きくこれも期待できないじゃないかと思うので、長期低利で相当大幅な資金の準備が必要だろうと思うのだけれども、その点いかがですか。
  166. 間野忠

    間野説明員 初年度の規模でございますけれども、百二十万総トン程度船舶を購入して初年度解体したいという計画でございまして、これは実現可能性があると思っております。  それで、その実施の主体でございますけれども、先生のおっしゃいましたように、造船下請中心にいたしまして、恐らく協業組合といったようなものをつくって実施するということになると思います。そうして、これを実施していく上に国からの助成も確かに必要でございますけれども、設備とか技術とかそういった面で元請の企業も不可欠であると思いまして、そういったことについて元請もできるだけの援助をするよう、私どもの方から話を持ちかけております。  それから、金利保証程度では非常にけちな話であるという御指摘でございますけれども、できることならば自立していけるのが一番いいわけでございまして、解体業というのは当面雇用ということでわれわれ考えておりますことはもちろんでございますけれども、いずれは資源の再利用といったようなことから当然見直されるべき新しい事業でございますので、余り直接補助というようなことは考えないで、初年度資金負担さえ乗り切れば後は自立できるというようなかっこうで持っていきたいとわれわれは考えております。
  167. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうもそれじゃ物足りないと私は思うのだが、通産大臣、いかがでしょう。あなたは海運、造船の権威者なんだけれども、いま議論されたようなことについても当然関心を持っていらっしゃることだと思うのです。いま運輸省から答えられたような消極的なことではだめだと私は思うのだけれども、いかがですか。
  168. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま造船業が非常な不況に陥っておりまして、ここしばらくは続くと思います。直接の労働者は約二十万というふうに承知しておりますし、関連事業あるいは下請事業を入れますと数十万の労働者ということになりますので、非常に大きな雇用問題だと思います。そういうことでございますので、新しい仕事分野としていまお話しの解体業造船事業の中に取り入れまして、しばらくの間それを継続するというアイデアは私は非常にいいと思います。業界からも強い要請が出ておりますので、それを受けて、運輸省の方ではいま課長が言われましたような対策をお立てになっておるのだと思います。しかし、いまお聞きしますとやや小規模である。百二十万総トンということでございますが、初年度でありますから試験的にということであるかもわかりませんが、やはり雇用問題を解決するという立場から、もう少し大規模にしましても日本の現在の経済規模からいいますと軽く吸収できる、こういうふうに思いますから、通産省といたしましても、運輸省の積極的な態度ということを期待をいたしますと同時に、そういう場合には協力しまして政策を進めていきたいと思います。
  169. 中村重光

    ○中村(重)委員 不況対策との関連もあって、むしろいまから申し上げるように、不況対策ということよりも振興策ということで検討されてきておった問題は、船舶の安全性を向上させるためにタンカーの二重底の設置の問題であるとか、LNG船の受注の推進であるとか、その他対策が講じられてきたのだけれども、最近のこれらの点に対する状況はどういうことなんですか。
  170. 間野忠

    間野説明員 LNG船につきましては、何分にも新しい技術を使いました船でございますし、それから非常に多額の資本を要する船でございますので、その建造、運航に伴いましてどういった問題があるか、そういう問題を詰めてまいりたいというふうに考えております。  それから、先生御指摘のタンカーの二重底の問題でございますけれども、これは二重底という問題が一つあり、それからもう一つ、分離バラストタンクと申しまして、タンカーに積むバラスト水は油タンクには積まないで全く別のタンクに積みまして、油と水が混合することを避けるというアイデアでございますが、これは一九七三年の海洋汚染防止条約に取り入れられまして、七五年以降建造されるタンカーについてはこれが強制されることになっております。ただ、最近の不況との関連におきまして、条約によって適用になる船以外の船についてもこれを適用したらどうかというような話が起こっておりまして、これはロンドンにございます政府間海事協議機構というので検討いたしております。こういった問題は、船舶というのが世界各地を回るものでございますだけに規則は統一されたものでなければ困りますので、加盟各国一堂に会しまして、どういった対策をとるかというような点をあわせて検討いたしております。
  171. 中村重光

    ○中村(重)委員 このLNG船はまだ国内で建造してない。全部輸入なんですね。ところが、日本造船技術というものは私は相当高度なものがあるのだろうと思うのだけれども、現在の輸入というのは二百四十万トン、十年先には何か四千二百万トンの輸入というのが見込まれているというようにも伺っている。この現在の輸入量と見通し、それから、日本造船技術が非常に高度であるのにかかわらず日本の船を認めないという点は、まだ技術的に問題があるというように考えられているのかどうか、その点をもう一度詳しくお聞かせ願います。
  172. 間野忠

    間野説明員 LNG船につきましてはわが国の造船業は確かに出おくれまして、まだ建造した実積はございませんが、川崎重工の方でノルウェー向けに三隻ほど受注しておりますので、いずれこれを建造する段階になると思います。そういった意味で、建造技術につきましてはおおむね問題は解消したと思っておりますが、先ほども申しましたように、何分多額の資本を要するものでございますし、その運航についてリスクが経済的なリスクも含めましていろいろございますので、国内船主がLNG船を持ち運航するについてはどういう問題があるかというような点を中心に、現在検討をしておる段階でございます。  それから、LNGの輸入の見通しにつきましては、これは私どもは通産省の資源エネルギー庁の方からちょうだいした資料でございますので、あるいは少し古くて最近は変わっておるかと思いますが、いただいてわれわれ了解しております資料では、五十年に五百万トン、五十五年には千九百六十万トンぐらいになるのではないかというような見通しをいただいております。
  173. 中村重光

    ○中村(重)委員 この問題が国会で議論されるようになってからもう二年以上になる。いまあなたがお答えになったような、検討をしてみるということであった。二年間も検討しているのだから、ある程度の見通しは立っていると思うのだけれども、いかがです。
  174. 間野忠

    間野説明員 先ほども申しましたように、安全基準も含めまして建造技術ということについてはほぼ解決しておりまして、もうおおむね問題はなくなったと理解しております。ただ、再々繰り返しますように、一隻当たり四百億円とか四百五十億円とかするような船になりますので、万一これが動かなくなったときの不稼働保険と申しますか、そういった手当てをどうするかとか、そういった運航上の問題は非常に多うございまして、果たしてそれを無理してつくってまで日本にそれだけの国益があるか、持っている船主の船を使えばいいではないかというような極論をなす人もおりますし、現在の段階では運航上の問題に煮詰まってきまして、その問題について検討しておるという段階でございます。
  175. 中村重光

    ○中村(重)委員 内航船とか漁船等の中小型船の代替船の建造というのはどういう状況ですか。
  176. 間野忠

    間野説明員 内航船につきましては、運輸大臣の諮問機関でございます海運造船合理化審議会というのがございまして、特に内航と限らずに、今後の造船需要ということで種々検討いたしまして、ことしの六月に答申をいただいたわけでございますが、それによりますと、漁船等を含む内航船につきまして、大体現在の水準であります五十万トンから六十万トン、そういった需要が毎年出てくるであろう、これが一九八〇年と申しますから昭和五十五年ぐらいまで、大体建造需要はこういった程度であろうという予測になっております。
  177. 中村重光

    ○中村(重)委員 私はいつも感じることなんだけれども、密漁船が非常に横行している。沿岸漁業の場合、韓国の密漁船というものが目に余るような行動をやっているわけだ。ところが、監視船というのが非常に少ない。それから非常に老朽船がある。むしろ漁船の方が速力だって早いわけだ。だから、これはやはり造船振興あるいは不況対策という面から、もっと優秀な船をつくる必要があると思うのです。地方自治体に対しても特別な助成措置を講じてつくらせる必要があるのではないか、そういったような点の検討をやっているのですか、どうなんですか。
  178. 間野忠

    間野説明員 この問題につきましては、恐らく農林省の水産庁の方でいろいろ御検討になっておると思うのですが、確かに御指摘のようなことも個人的にはときどき伺うことがあるのですが、恐らく担当の水産庁の方で種々御検討になっておると思います。
  179. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、そういった答弁が、お役人答弁というのか、全くいやなんだ。なるほどそれは私だって密漁船というのが水産庁の所管であるということはわかっておりますよ。しかし、造船不況というもの、いかにこの不況を打開をしていくかということは、あなたの方の所管なんだろう。そういった点から、いま言ったような二重底の問題にしても、あるいはLNG船の問題にしても、あるいは老朽あるいは非能率船の解体の問題だって、これはやはり不況対策造船業振興対策という点から考える。だったら、この密漁船の問題だって、密漁船がはびこってしようがない、韓国の漁船がやって来てどんどんどんどん侵犯をして、そして長崎県の対島の漁民はこれで苦しめられているのだ。そして、監視船が不足している。だから、そういう点をなくするというような面からだけでなくて、造船振興対策という面からしてそういう監視船をつくる必要があるのではないかというような、各省間の話し合いというものにおいて問題を解決していくということが必要なんじゃないですか。  それは農林省の所管でございますというようなことで積極的な答弁がなされないというのは、どうもぼくは満足できない。だから、検討していないならいない、私の指摘に対して参考になるというふうにお考えになるならば、やはり農林省とも十分話し合いをやって、それらを一連の対策として考えていきましょうということが常識じゃないのですかね、いかがですか。
  180. 間野忠

    間野説明員 私の申しましたのは、監視船の性能、それからそれを代替するかどうかというようなことにつきましては、最終的にはその当事者の方が判断されることであると思いましたので、そこまで私が口をはさむのは越権かと思いましてそう申したわけでございますけれども造船不況対策というものを考える上におきましては、おっしゃるように農林省であれ運輸省であれ、あらゆるところに接触いたしまして、不況対策の一助となるようなことであれば何でもいたす所存でございます。
  181. 中村重光

    ○中村(重)委員 岸田長官にお尋ねいたしますが、事業転換については同僚諸君から質問がなされているので、私は科学技術の特別委員会委員長でありますためにその方の委員会に行って、同僚諸君の質疑を聞く機会が非常に少なかった、重複をする点があるのだろうと思って質問もちょっとやりにくいのだけれども、いま佐野君から質問をしておったことと関連をしてお尋ねをするのですが、事業転換をする企業の数、これはどの程度を予想されますか。
  182. 岸田文武

    岸田政府委員 これからの経済情勢変化に伴いまして、中小企業方々の中でやはりかなりの者が新しい分野へ転向しようという希望を持たれるのではないかと思います。ただ、いまどの程度の数であるかということにつきましては、これから起こってくる国際的あるいは国内的な環境変化程度にもよりますし、またそれを受ける中小企業の側の体制にもよるかと思います。私どもとしては、これを何件というような目標を立てて実施すべきものではなく、本当に意欲に燃えて出てきた人を一人一人取り上げて、その人たちの希望なり、あるいはその企業の展望なりというものをよく相談に乗って仕上げていくというような取り組み方でまいりたいと思っておるところでございます。
  183. 中村重光

    ○中村(重)委員 少なくともあなたの方では前国会からこれをお出しになって、継続審議になっていたわけだ。だから、高度化事業の中からやはり資金枠というようなものもお考えにならなければいけないのだから、転換企業相当多いということになってくると、これは別枠の資金手当て等をしていくということでなければいけないわけだ。そうせぬで、いま予定している資金枠の中からやっていくのだというようなことになってくると問題なんだから、大体どういう業種転換が見込まれる、そして不況業種として指定をして、その業種の中からどの程度転換をしていくであろうというような予想というもの、それからどういう業種に大体行くのじゃないか、今度行った先に、その業界転換企業が非常に多かったために混乱をするという事態が起こってこないかどうか、その可能性ということについてもやはり検討していくということでなければ、少なくとも事業転換法という法律案をお出しになって、そしてぜひこれを成立さしてくれというような点については、何かいまのような答弁ではおぼつかないような気がするのだけれども、どうですか。
  184. 岸田文武

    岸田政府委員 これから業種の選定ということになるわけでございますが、具体的には主務大臣が選定するにいたしましても、私どもとして大体頭の中に置いております業種としましては、国際経済調整法のときに全国業種で百二十一、それから産地業種で八十三を指定しました。大体あの程度のことを頭に置いておけばいいのではないかと思っておるところでございます。  その中で、個々の業種ごとにどの程度出てくるかというところが、見通しとしては一番むずかしいところでございます。現に、国際経済調整臨時措置法のときにも影響を受けた人は非常に多かったわけですが、その中で具体的に転換に踏み切ったというケースはかなり限られておったわけでございます。ただ、その当時と比べますと、今後の経済環境というのは一層厳しいものがあるというふうに予想されますので、その当時のケースをもって将来を律するわけにはいきません。ある程度ゆとりを持って資金量を確保しながら、そして個々のケースが出てきたときに機動的に応援できるようにしたいと思っておるところでございます。
  185. 中村重光

    ○中村(重)委員 指定業種はこれから選定をするというのだが、指定に当たっては広く包括的に指定をすることになってくるのか、あるいは狭く限定をするということになるのか、基本的な考え方はいかがですか。
  186. 岸田文武

    岸田政府委員 実を申しますと、国際経済調整臨時措置法の場合には業種はわりあいに限定的に指定をしておりまして、その数が先ほど申しましたように全国業種で百二十一ということになったわけでございます。ただ、今度転換法ができまして業種を指定いたしますときには、国際経済調整法に比べますと少し包括的な指定をした方がいいのではないかと思っておるところでございます。と申しますのも、余り限定的に書きますと、これがかえって衰退業種を定義づけたというような印象を与えることにもなりかねません。むしろ少しふんわりしておいて、そういうような包括的な業種の中から新しい転換の芽を育てていくというようなやり方の方が実際的であるし、また印象としてもいいのではないかと思っておるところでございます。
  187. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、認定申請の要件として、炭鉱閉山なんかの場合は労働組合との団体交渉でその承認を受けることになるのだけれども、この場合には労働組合の承認というのは必須条件ということにしますか。
  188. 岸田文武

    岸田政府委員 転換が円滑に行われるためには、やはり転換に必要な情報が的確に得られ、その情報をもとに入念な計画づくりをし、そしてそれを推進するための必要な資金が確保される、こういった条件のほかに、やはり従来からその職場で働いていた従業員方々の理解と協力ということが特に大切なのではないかと思っておるところでございます。経営者の方、従業員の方が、従来仕事をしてこられて、どうもいまのままでいったのでは余り先の楽しみがない、むしろ新しい分野転換することによって中小企業がさらに発展できる道がある、こういった場合に何とかこれを手助けしようというのがこの法律の趣旨でございます。そうであるとすれば、やはりこの立法の基本的精神において、何とか従業員の理解と協力が裏打ちになるような形で運営をしていきたいものだと思っておるところでございます。  具体的に申しますと、いろいろ計画の相談にあずかるとき、あるいは都道府県知事計画認定をいたします際に、事情をよく聞きまして、従業員等の態勢はどうなっておるか、ひとつやろうというような態勢まで来ておるかどうか、この辺のところをチェックして計画を推進するように指導してまいりたいと思います。
  189. 中村重光

    ○中村(重)委員 おっしゃるように、働いている従業員は、そこで自分の生計を立てていくという願望を持って働いているのだ。それを経営者の一方的なことで、労働者が何の発言もないということは困る。ましてや、法的な労働組合というものがある場合は、やはり法的な面からの保護というものも当然尊重されなければならぬということですね。ですから、いまお答えになりましたように、混乱が起こらないように円滑に転換ができるように、これはやはり必須要件という形にして対処してもらいたいというように希望しておきます。  それから、転換先についての指導というのは、まず具体的にどういう指導をしていくつもりですか。これはあなたの方は、今度は業界業種全体が付くのではなく、構造政策といったようなものではないので、あくまで個々の企業の意思によって決めるのだからということから、その融資の要件というものも金利は八%だなんというような、私はまことに内容不十分な点が多々あるというように考えているのだけれども、何かさわらぬ神にたたりなしといったような感じを持っているような気がしてしようがないのだ。だから、強力に指導するつもりなのか、あなた任せといったような考え方で掛やりになるつもりなのか、その点いかがですか。
  190. 岸田文武

    岸田政府委員 転換先にどういう業種を選ぶかというところは、まさに中小企業方々が一番知恵をこらし、その中小企業の独自性というか、自主性を発揮される重大な局面になるだろうと思っておるところでございます。ただ、その場合に、役所としてどこへ行きなさい、ここへ行きなさいというようなことを具体的に指示するのは事実問題として不可能でございますし、むしろ中小企業方々の持っておられる本当のバイタリティーを生かすゆえんでもないような気がするわけでございます。したがって、転換先については、一応幅広く自主的に選べるようにしていきたいと思います。  ただ、そうは申しましても、逆にこういう業種はぐあいが悪いという業種幾つかございます。と申しますのは、たとえば転換先業種におきまして団体法に基づく安定命令のうちの数量制限、設備制限などをやっておるというような業種では、いま、いわば業界ぐるみ一生懸命になって体制の立て直しをしておる最中でございますから、こういうところは転換先として適当でないように思います。そこまでいきませんでも、風俗営業の取り締まりの対象になるような業種というのも、特に積極的に推進するのはいかがかというような気もいたします。さらにまた、安定命令まで至らない段階で、安定事業あるいは合理化事業をやっておるというような業種もございます。こういった場合には、業種の内容をよく見まして、本当にこれの転換を進めていいかどうかということを申請の認定をする段階でよく見きわめた上で進めていくように指導していきたいと思っております。
  191. 中村重光

    ○中村(重)委員 あっちに行きなさい、こっちに行きなさいというような強制に近いようなことをやるということは適当ではない、わかるのです。まあしかし、それもやみくもじゃ困るのだ。ある程度、こういったような業種はこういう状況にあるのだとか、やはり広い意味のコンサルタント的な役割りを通産省が示していくという親切心、親切な行政というものが私は好ましいと思います。ですから、その点は、おたくはあくまで個人の意思だということで、あなたの方の法律案の中身を見ても、提案理由の説明——これは大臣が読むのだから悪いのだけれども、提案理由の説明を見ても、いただいておる資料を見ても、逃げばかりを打っているような気がしてしようがないのだ。そういうことではなくて、もっと積極的に取り組んでほしいというように思います。  それから、先ほど佐野君からも質問しておりましたが、事業転換に伴っての既往の債務、それから土地、建物、機械器具等、これをどうするかということが厄介なんです。せっかく転換をしても、既往の債務というものをしょっている。それをなくし、土地、建物というようなものが直ちに資金として新しい企業の中で生かされていくということにならぬと、いいところへ行ったのだけれども、既往の借金のために身動きができなくなって、そしてつぶれてしまう、失敗するということがある。だから、工場再配置法の場合にもこれは買い上げの道が開かれているわけですし、それから対米繊維輸出自主規制、それから臨時繊維産業特別対策にかかる特別措置といったようなもの等々いろいろあるでしょう、これらのものの既存の法律に基づくところの行政措置というようなこととあわせて、何か余りむずかしい条件をつけるのではなくて、やはりせっかく転換したならばその転換先成功するように、できるだけ身軽くしてやるというようなことでないといけないと思うのだけれども、その点いかがですか。
  192. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほどのお尋ねの中で、やはり親切に相談に乗ってやることが大切だという御指摘がございました。私、まさにそのとおりだと思います。企業方々が、自分はいまこういう経験を持ち、こういう従業員を抱え、こういう状態であるけれども、これを前提にして考えると、こういう業種がいいかとも思うし、ああいう業種がいいかとも思う、そういうことで御相談に見えたときには、やはりそれぞれの業種について私どもの持っております知識を十分に提供しまして、それではこれでいきましょううというところまで計画づくりのお手伝いをするような気持ちで相談に乗るようにしたいと思うわけでございます。  それから、転換に伴う金融の問題でございますが、従来の事例をいろいろ見ておりますと、計画も十分練らずに新しい分野へ飛び出して行ったということでは、一年はいいけれども二年目から苦しくなってしまうというようなケースも多いわけでございます。むしろ計画事前に十分慎重に練った上で、計画自体の進め方も段階的にやるということが一番実際的でもありますし、手がたい方法になるのではないかと思っておるところでございます。  それでも、当然転換に伴って新しい資金が必要でございます。こういう新しい資金需要に対応いたしまして事業転換貸付制度が用意をされ、これによって普通の貸出限度を超えた新しい貸出ができるようになっておりますし、また保証の面でも特別の別枠を用意して、市中金融機関から新しい追加融資の道が開けるようにお手伝いをしておるところでございます。これらの資金的な対策によりまして、従来の仕事を逐次後退させながら新しい分野へ前進を図るということが大体計画的に進められるのではないかと思っておるところでございます。金融の問題については、なおよく気をつけて指導していきたいと思うわけでございます。
  193. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは慎重の上にも慎重を期していかなければいけないのだけれども、私が質問したことにずばりお答えをいただくとすると、旧債務については買い上げをやるのですか、やらないのですか、どうするのですか。
  194. 岸田文武

    岸田政府委員 買い上げということになりますと、この法律のように非常に一般的な法律ではちょっと手が及びかねるのではないかという感じがいたします。ただ、そうは申しましても、転換の場合に、いままで使っておりました主要な設備がこれからは使わなくて済むというようなケースが当然出てまいるわけでございまして、これに対する手当てが必要であろうということは御指摘のとおりかと思います。  こういった場合に対応いたしまして、用意しましたのは、一つ税制上の措置でございまして、転換計画に従っていままで使っておりました設備を処分をするというような場合には、残っております耐用年数期間が相当長くあります場合でも、この転換計画期間中に償却を終われるように、税制上の特例を用意をいたした次第でございます。  それと同時に、事業協同組合であるとかあるいは商工組合等の組合ぐるみで不要設備を廃棄をする、こういった場合もケースとしてはあり得るかと思います。このような場合には、中小企業振興事業団の高度化事業の中で用意されております設備共同廃棄事業の対象とすることによって、助成比率も非常に高く、また金利の面でも無利子の融資が受けられる道を開くよう予定をいたしております。
  195. 中村重光

    ○中村(重)委員 転換をするというときには、もうどうにもならなくなって転換するわけですよ。にもかかわらず、慎重におやりなさいよ、十分段階的にやらなければだめですよ、いま持っている既存の機械とかあるいは建物とか、そういうものはできるだけ償却を早くするようにしてあげますよ、そういうようなことで、転換を本当に計画的にしていけるような企業が数多くあると考えますか。いまあなたが言われるような形で転換をやるのだったら、そうではなくて、やはり現在の企業の中でもできるだけ事業を続けていくというようなことになるだろうという気が私はするのです、結果的にどうなるかわからないけれども。  それは慎重にはやらなければならぬけれども、工場再配置法というようなものもあって、国が買い上げの道を開いた、これは野心的な政策とも言われてきたのだけれども、そういうことをやっているのだから、現にそういう法律があるのだから、こういう事業転換法というようなものをお出しになって、そしてもっと不況対策というか、低成長時代における経営健全化を図っていくというように、私はこういう政策というものは両面がなければいけないと思うのですよ。しかし、あなたのいまの答弁は、何かしら逃げを打っているような感じがしてならないのだ。そういうようなことでは、この法律に何が期待できますか。転換をしていかなければならぬような中小企業というものは、そういう余裕はもうないのだ。私は、もっと強力な施策が講じられなければいけないと思うのです。大臣、そうは思いませんか、いかがですか。
  196. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま議論になっておりますようなことのほかに、金融面なんかでもずいぶん思い切った援助をするということになっております。でありますから、全体を総合的にお考えいただければ、相当積極的に取り組んでおるわけでございます。しかし、せっかくの御提案でございますから、今後の大きな課題として引き続き検討させていただきます。
  197. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、岸田長官のお答えの中から、いまの中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫の構造政策資金融資枠から貸し出しをするのです、そういうことになったのだと思うのだけれども、この資金枠というものは、この事業転換法案が成立をする、そして転換を推進するという考え方の上に立って用意されているのじゃないのですよ。そうすると、この法律案が通って制定されて、そして今度はそれに呼応して転換企業が出てきた、そういう場合に、この資金枠をもって足りるという考え方、これはまあ今年度は大したことはないから五十二年度あるいは五十三年度というようなことで手当てをしていけばよろしいのだという考え方の上に立っているのですか、いかがですか。
  198. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業金融公庫及び国民金融公庫の融資につきましては、私ども構造改善枠というところから現実に問題が起こったときには使っていく予定にいたしております。構造改善枠はいろいろの目的のためにかなりある程度ゆとりを持って組んでございまして、もし進行してまいります過程でそれでもまだ不十分であるというときには、これをさらに追加することによって、大体この転換に関する現実の需要にこたえていけるようにしたいと思っておるところでございます。  先ほどのお話の中で、本当にせっぱ詰まっておるというところで転換になったらどうするのだろうかというお尋ねがございましたが、私どもは、やはりこういった問題については、本当にどうしようもなくなってから転換をするということではなくて、ある程度体力の余裕のあるときにこのいろいろな助成策を背景に具体的な転換が行われるようになるということの方が、はるかによい転換ができるように思います。その意味からいたしますと、なるべく早目に相談に来ていただき、また的確な指導を早目に行うことによって、いまのような問題を解決できるのではないかと思っておるところでございます。現に私どものところにもいろいろな業種から相談に見えておりまして、それらの具体的なケースについての相談を積み上げながら、それがひいて個々の中小企業のいい意味の転換につながるように指導してまいりたいと思っておるところでございます。
  199. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは私は何もせっかちに転換をしなければならぬ、そうさせなければならぬとも言ってないのです。しかし、一千万円以上の負債によって倒産をしている企業というものが、御承知のとおり年間一万件を超えるという状態にあるのですよ。だから、いまあなたが期待をしているような形の転換というものもそれはあるだろう。そうではなくて、もう現在の構造不況の中でどうにもできなくなって、政府の特別な保護措置もない、こういうことで倒産をしていっている企業というものがあるのだという現実の上に立って、そういう状態を回避するために、いまあなたが期待するようなその方向転換、あるいはいま倒産をしているそういうような企業救済をしていくための転換、そういう両面が当然考えられなければいけないということを私は指摘するわけだ。  私が指摘するようなことが現実だということをお考えになって、それに対応し得るような対策を講じていかれるということが私は当然でなければならぬと考える。あなたは、転換の方法はどういう方法がいいのかという面だけを強調されているが、現実に置かれている構造不況の中の中小企業が非常にあえいでいるその実態というものに目をつむるというような、そういう考え方であっては私はいけないと思う。だから、そういう場合に対応し得る施策というものを十分講じられる必要があるということを私は指摘をしているということを理解をされる必要があるだろうと私は思います。  もう一つ、その融資条件として利率は八%、それから償還期間は十年ということですね。団地であるとか、あるいは高度化資金融資によってその設備ができるような場合は御承知のとおり二銭六厘、償還期限も十五年といったような形になってきているわけだ。この場合に償還期限が恐らく二年据え置きで十年だろうと私は思っているのだけれども、八年で支払いをしなければならぬということ、それからその利率も八%というのは、これは条件として私は不十分だというように思う。やはりこの法律案の中に一貫して流れている思想、政府は別に強力に推進するわけじゃありませんよ、業種全体を転換をしろというのじゃありませんよ、そういう構造政策じゃないのですよ、どうぞお好みだったらばこういうことにいたしますから転換なさいというような、そういうきわめて消極的な思想がこの法律案の中に貫かれているというところに問題があるということ、それが償還期限であるとか利率の中にあらわれてきているということを私は指摘しなければならぬと思います。  だから、いまこれを修正しようというようなことをいたしませんけれども、やはりもっと再検討されて、利率を引き下げる、償還期限は延ばしていく、そうして先ほど私がるる申し上げましたような点についても、これを改善する点は改善していくことが必要であると考えますが、その点に対しての大臣のお答えを伺ってみたいと思う。
  200. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、私どもは一応これでスタートさしていただきたいと、かように考えておりますが、いろいろ建設的な御意見が出ましたので、将来の課題として引き続き検討さしていただきます。
  201. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、これは三割現在やっている業種と違った仕事をする場合に指定転換企業として扱われるということになるのですね。長官、それは間違いないですな。
  202. 岸田文武

    岸田政府委員 転換の判断については、相当部分が変わっていくということで、特に厳密な定義は用意をいたしておりません。常識的に申しますと、半分以上が変われば当然相当部分が変わったということになろうかと思いますが、単にいままでの売上高、取引高、こういったことを目標とするだけではなくて、やはり新しい分野へ進出したことに伴って主要設備の相当部分が変わるというような場合にも、実態として転換としてとらえることが必要な場合も出てこようかと思います。この意味からしますと、具体的な申請がありまして、その内容を見て、いわば弾力的に決めていくというようなやり方が、一番実情に即するのではないかと思っておるところでございます。
  203. 中村重光

    ○中村(重)委員 事業転換をして、全部やるのじゃないのだけれども、あなたの方の条件にかなう形の一部転換ということがある場合、転換をすると、なれない仕事なので、したがって能率がぐっと落ち込んできて、経営が苦しくなってくる。だから、そのための運転資金というようなものもやはり考えていかなければならない。もう一つは、工場なんか転換をすると一時ストップしなければならぬという部面が出てくる。労働者は抱えているわけだ。だから、レイオフというものがあるわけなんですね。それから先ほど来申し上げている設備等の変更というものが出てくるわけなんで、そのためには相当な設備資金だけではなくて運転資金というようなものも考えてやらなければいけないと思うのだけれども、その点はどうお考えになっていらっしゃるか。
  204. 岸田文武

    岸田政府委員 御指摘のように、転換に伴いましてやはり新しい運転資金需要が出てくるというケースがかなり出てくるだろうと思っておるところでございます。したがいまして、今度の法律ができまして適用になります際の金融対策として、一つには中小企業金融公庫で貸し付けます際に、運転資金につきましては六千万円まで貸せるということで、一般の場合よりも優遇をいたしておるところでございます。それから、国民金融公庫の場合には千五百万円まで貸し出し得るという道を開きまして、これまた一般の場合よりも優遇をいたしております。なお、この限度につきましては、もし可能であればさらに引き上げを図ることも検討してみたいと私は思っておるところでございます。
  205. 中村重光

    ○中村(重)委員 これで終わりますが、大臣に私は申し上げたいのですけれども、私が御提案申し上げたことに対して、十分それらの点を配慮して、そうした線に沿って講ぜられる点は策を講じていきたいというお答えもあったわけでありますけれども、何と申しましても未経験な分野に移行することになる、ましてや減速経済の中ですから、これはなまやさしいことじゃないだろう、そう思うのです。そういったような点からいたしますと、融資の額にいたしましても、あるいは融資条件にいたしましても、きわめて不十分だということを指摘をしたい、私はこう思っております。  それで、附帯決議をつけて賛成をすることにいたしますけれども、やはり大臣も、不十分なんだ、もっと積極的に、本当に転換企業というものが一つの確信を持って転換する、そして努力をしたならば転換先において安定した経営ができるのだというようなことで、経営者も労働者も一体となって健全経営を行う、そういう体制をつくる、そのためには通産省が強力に誘導施策も講じていきましょうし、指導行政も講じていく、こういうことにしまして、せっかくこの法律を制定して、事業転換についてそうした強力な法に基づく行政をやってよかったということで喜び合うことができるようにひとつ対処してもらいたいということを強く要望して、大臣最後のお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  206. 河本敏夫

    河本国務大臣 政府といたしましては、通産行政の中で中小企業対策というものを最大の課題であると心得まして、これまでもできる限りの対策を進めてきたわけでございますが、いまこの法律に関連をいたしまして、積極的な御意見がございましたので、政府の基本的な線に沿いまして、さらに将来の大きな課題として検討を続けてまいります。
  207. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  208. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 次に、通商産業基本施策に関する件、中小企業に関する件、資源エネルギーに関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎敏雄君。
  209. 神崎敏雄

    ○神崎委員 前回に引き続き、インドネシアLNGの問題について、特に輸送権に焦点を合わせて質問をいたしたいと思います。  去る八日、当委員会で、私は輸送権をインドネシア側に与えることを日本が認めたのはいつのことかと質問いたしました。長官は、四十八年十一月末、ラディウス・両角両氏の話し合いで認めた、こう答弁をされました。これに相違ありませんか。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕
  210. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 そのとおりでございます。
  211. 神崎敏雄

    ○神崎委員 日本が輸送権をインドネシアに与えた理由は何ですか。
  212. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 前回もお答えいたしましたように、日本側と申しますか、特に通産省といたしましては、四十八年三月にナショナルプロジェクトとしてこれを実現しようと決定した時点から、FOBで購入いたしまして日本側のリスクで輸送したいということでいろいろ検討しておったわけでございます。関係のユーザーなりあるいは輸送会社ともいろいろ検討いたしておったわけでございますが、日本側のユーザーといたしましては、いままでそういった経験がない、あるいは日本においてLNG船をつくった経験がないというようなことも含めまして、きわめて消極的であったということでございます。その結果、インドネシア側といたしましても船台を早く手当てしなくてはいけないといったような事情もありまして、十月一日には船を発注しておる。こういう事態になりましたので、われわれといたしましてもやむなくそれをのんだ、こういうことでございます。
  213. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで伺いますが、このプロジェクトの中心商社である日商岩井は、当初、輸送も自分の手でやろうとしていたわけです。私どもの独自の調査で、日商岩井もそのことを認めています。事実、四十八年三月には、日商岩井は海運業に本格的に進出するという計画を発表しています。こうした動きを通産当局も承知していたはずだと思います。この点、どうですか。知っておられなかったのか、知っておられたのか。
  214. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 承知いたしておったようでございます。
  215. 神崎敏雄

    ○神崎委員 知っておられたということをお認めになりました。  そこで、私どもの独自の調査によれば、日商岩井東京本社広報課長は、このプロジェクトについて日商岩井は逐一通産省に報告をしていたと語っています。重ねて伺いますが、当局は、日商岩井が輸送も引き受けたいと考えていたことは御存じであったのかどうか。
  216. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 承知しておったようでございます。
  217. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、さらに伺いますが、四十八年の春には、日商岩井、通産省、その他の関係者でワーキンググループをつくって輸送問題を検討したことはありませんでしたか。あれば、そのグループの参加者と、検討した内容を明らかにしていただきたい。
  218. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 そういった事実はなかったようでございます。ただ、当時本件をナショナルプロジェクトとして取り上げるということに決定いたしました段階におきまして、日商岩井に対して口頭でその旨を伝えてはおりますが、いま御指摘のようなワーキンググループをつくったということはないようでございます。
  219. 神崎敏雄

    ○神崎委員 次に、運輸省に伺います。  川崎重工がLNG船用のタンク製造工場の建設に着手したのは、何年何月でしたか。
  220. 間野忠

    間野説明員 川崎重工の方へ問い合わせましたところ、昭和四十八年十月十二日、既設の播磨工場にLNG船用のタンク製造工場の建設を開始したとのことでございます。
  221. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そのとおりであります。そこで、川崎重工がゴタース・ラーセン社からLNG船の受注をしたのは四十八年五月でしたか。
  222. 間野忠

    間野説明員 ゴタース・ラーセン向けにLNG船二隻、四十八年五月二十一日に建造契約いたしております。
  223. 神崎敏雄

    ○神崎委員 その川崎重工は、さらに四十八年十二月にノルウェーからLNG船を受注していますか。
  224. 間野忠

    間野説明員 おっしゃるとおり、十二月にノルウェー向けにさらに一隻受注いたしております。
  225. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、日立造船は四十七年十二月六日、LNG船用のタンクなどの製造販売の合弁会社設立の申請をしていますか、その内容はどういうものですか。
  226. 間野忠

    間野説明員 日立造船と、CBIと略称いたしておりますシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン・カンパニー、その合弁会社であります日立造船シー・ビー・アイ株式会社というものの設立、新株の取得についての申請が、四十七年十二月に日銀を経由して提出されました。この株式取得認可は四十八年一月二十二日付でなされております。
  227. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それは両社の持ち分は各五〇%ずつで、そしてその申請先は全部御存じですか。
  228. 間野忠

    間野説明員 おっしゃるとおり、持ち分はおのおの五〇%でございまして、申請書の提出先は、運輸大臣のほかに、大蔵、通産、建設各大臣になされたと聞いております。
  229. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そこで、以上で明らかになったように、四十七年から四十八年、つまりインドネシアLNGの開発輸入プロジェクトの交渉が行われているこの時期に、日商岩井、日立造船、川崎重工など各社が、LNG船の建造のために活発な動きを示しています。一般新聞にも当時報道されている。当然通産当局もこのような動きは十分承知しておられたわけですね。
  230. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 知っておりました。
  231. 神崎敏雄

    ○神崎委員 さて、再び運輸省に伺いますが、運輸省は四十七年九月、今後の外航海運対策のあり方について海運造船合理化審議会に諮問しています。この諮問理由の中には、無公害エネルギー源としてのLNGの重要性にかんがみ、LNG船の建造問題も検討すべき事項となっていると聞きますが、相違ございませんか。
  232. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 そのとおりでございます。
  233. 神崎敏雄

    ○神崎委員 ところで、四十八年当時、この海運造船合理化審議会委員の中には、日本興業銀行頭取の正宗猪早夫氏や通産省事務次官の両角氏が含まれておりましたかどうか。
  234. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先生の御質問は、海運造船合理化審議会そのものの中でございますか。——それでございましたら、多分含まれておったと思います。
  235. 神崎敏雄

    ○神崎委員 この審議会は、四十八年七月、審議会海運対策部会にLNG船の小委員会を設置いたしましたか。
  236. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先生のおっしゃるとおり、昭和四十八年七月十八日に設置をすることを決めております。
  237. 神崎敏雄

    ○神崎委員 この小委員会には、海運、石油、金融等の関係産業とともに、造船、電力、ガスの各産業界からも委員が参加していたのではないでしょうか。
  238. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 おっしゃいますように、東京瓦斯の会長、電気事業連合会、石油連盟等の方が含まれております。
  239. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、この小委員会はその後どうなりましたか。
  240. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 同小委員会は、第一回を四十八年八月、第二回を四十八年十月に開きましたが、その後は開催されておりません。
  241. 神崎敏雄

    ○神崎委員 私の調査と全く一致しておりますが、なぜこの小委員会の検討を中断したのですか。
  242. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 同小委員会は、四十八年八月と十月の会議におきまして、それぞれ今後のLNGの見通し、LNG船の輸送方式、LNG船の運航体制、LNG船を運航いたします場合の留意事項、そういったものの事務的な説明をいたしまして、それをもって中断をいたしておるわけでございます。  御承知のように、四十八年十月で終わっておりますが、その直後にいわゆる石油危機が起こりまして、石油タンカー等におきましては運賃の高騰の後の大暴落という非常な激しい変動があったわけでございまして、また同時に、エネルギー消費量と申しますものも従来の予想と大きく違った動きを示してまいったわけでございます。  そういう意味で、LNG船の必要性という問題について疑問と申しますか、不確定な点が大分多くなってきたこと、それから、当時予想されておりましたわが国へのLNGの輸送のプロジェクトと申しますものが、その時期を境に一部分は延期等、不確定になってまいりましたこと、またそのときに具体的に予想されておりました幾つかのプロジェクトの中には、明らかに日本船を利用する可能性がないというような点等がございまして、当面、わが国のLNG船をわが国の海運会社が保有するということについての意欲と申しますか、そういうものが著しく減退をいたしまして、そういうような非常に変動の大きかった時期でございまして、いましばらく様子を見た方がいいだろうということで審議を中断したというふうに聞いております。
  243. 神崎敏雄

    ○神崎委員 さて、四十八年度の運輸白書は、「造船工業」の各論の中で、LNG船の建造について次のように述べています。「我が国においてもLNG船の建造体制が整備されつつあり、五十二年に十二万八千六百立方メートルの大型LNG船が我が国初のLNG船として竣工する予定である。」と。この運輸白書は、四十八年十一月に国会に提出されているのであります。つまり、四十八年十一月、両角氏がインドネシアに輸送権を正式に認めたちょうどそのころ、運輸省は、わが国のLNG船建造体制は整備されつつあり、五十二年には日本の大型LNG船利用が可能だ、こういう見通しをしていたということです。そういうことですね、運輸白書から見て。それといまの御答弁とは大いに違うのじゃないですか。
  244. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先ほど先生の御質問にございましたLNG船小委員会と申しますものは、海運造船合理化審議会の海運対策部会の中に設置をされたわけでございまして、海運対策部会の中に設置をされました主たる理由といたしましては、LNG船をわが国の海運業が自社船として建造し運航するということのためにどのような措置を講じたらよいか、そういうことを最終的な目的として設立されたというふうに考えております。したがいまして、造船対策部会ではなくて海運対策部会の中に設立されたわけでございます。と申しますのは、御承知のようにLNG船というのは二十年というような非常に長いプロジェクトでございまして、現在の計画造船等の十年というものを対象といたしております財政金融措置というようなものではなかなか建造がむずかしいのではないかというような観点がございまして、そこらの諸点を検討するためにここに小委員会が設けられたというふうに考えております。  ちょっと私、いま手元に海運白書がございませんので、先生がお読み上げになりました部分がどういう部分であったかということについてはつまびらかでございませんが、恐らくそこに書かれておりますのは、技術的に日本造船所においてLNG船を建造することが五十二年までには可能になるということを申し述べておるのだと思いますけれども、それと実際のわが国の海運会社にLNG船を保有させるために財政とか金融措置を講ずるという問題とはいささか食い違うと申しますか、いささか次元、ディメンションが違うのじゃないかというふうに考えます。  先ほど申し上げましたLNG船小委員会が中断をいたしましたのは、先ほど私が申し上げましたようなそういう意味で、わが国の海運業が自己で保有をする船を建造をするという時期というものについてはまだしばらく様子を見た方がいいのではないかというような感覚で、この小委員会の審議が中断されたというふうに考えております。
  245. 神崎敏雄

    ○神崎委員 つまり、昭和四十八年十一月に両角氏がインドネシアに輸送権を正式に認めたちょうどそのころ、運輸省は、わが国のLNG船建造体制は整備されつつあり、五十二年には日本の大型LNG船利用が可能だ、こういう見通しがあるということを運輸白書で国会に出しているのです。そこが、先ほどからずっと質問を追ってきたら、なかなかむずかしくて、技術的にもむずかしいし、いろいろな形でできなかったというのも通産当局の答弁の中にありましたね。そうしたらこの運輸白書との矛盾はどうなるかということをいま聞いているのですが、事実でないものをそういうことになるだろうという形で運輸白書の中にお書きになって、本になっている間に、これはもう先の見通しが暗いというので途中でおやめになったのですか、小委員会そのものは。
  246. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先生がお読み上げになりました白書は恐らく四十八年だと思いますが、先ほど申し上げましたように、その直後にオイルショック等の問題が起きまして、情勢が非常に変わりまして審議が中断をしておるわけでございまして、ただ、LNG船そのものを造船能力的につくってそれを持つということは五十二年ごろには可能になろうというふうには推測をしておったと考えますけれども、それとその小委員会が中断いたしましたこととの間には、直接関係はなかったと考えております。
  247. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いよいよ本論に入りますが、以上の事実経過から私は数々の疑惑を感じざるを得ない。まず第一に、輸送権をインドネシア側に与えた理由についてです。技術的にも自信がなかったというだけでは、少し説得力に欠けると思います。運輸白書でも、いま指摘したように、わが国のLNG船の建造体制は整備されつつあったことが明らかにされております。加えて、私どもの独自の調査では、日商岩井の東京本社広報課は、通産省も加わってワーキンググループで検討したと証言をしているのです。したがって、出発点から通産当局は輸送権を完全に放棄していたとは考えられない。放棄していたとは考えがたいと言った方が正確かもわかりませんね。  きょうまでの国会答弁で、日本が輸送権を持つべきだという意見もあったということも明らかにされております。私は、そういう意見がむしろ多数派であったのではないか、こういうふうに思います。なぜなら、プルタミナがバーマと輸送契約を結ぶ前に、ユーザーに事前に通告したことがある。しかし、そのときには待ってほしいという返事をしている。さらに、通産省もプルタミナに対してオーケーのサインは出していない。また、四十八年八月三日付の朝日新聞の報道によりますと、LNG船の運航については共同運航方式、つまり複数企業で行う方式、これが有力だ、通産省や需要業界運輸省に体制確立を急ぐように求めていると書いてあります。もし輸送権を日本が持つべきだという意見が少数意見であったならば、もっと早く結論が出ていたはずだと思うわけです。  輸送権をインドネシアに与えるという正式回答がおくれ、事後承認となったという経過は、当初方針が輸送権は日本が持つという方針であったことを意味しておる、私はそう思うのであります。そこで、真相はどうなのか、どちらの意見が当局内で強かったのか、この点を明確にしていただきたい。
  248. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 何度かお答えいたしておりますように、日本側と申しますか、特に通産省としてはFOB契約でやりたいということで努力してまいったわけでございますが、先ほど先生、造船関係についてお話もございましたが、当時日本側のユーザーあるいは輸送業者といたしましては、自信がない、いままで全く経験がないということで終始消極的であったわけでございます。若干待ってくれといったような話も、通産省がFOB契約に持っていこうという努力をしておる、あるいはそれを説得をしておる過程においてそういう発言もあったのだろうと思いますが、多数派と先生は言われましたが、FOB案を考えておったのはむしろ少数派であったと申しますか、通産省が一生懸命やっておったということでございまして、結果として十月一日にはインドネシア側がアメリカのゼネラル・ダイナミックスに発注をするというようなことになったというのが、われわれの承知しておる限りの事実でございます。
  249. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そのときにそういう意見が少数派であったということは、長官、私が後でお尋ねしますが、客観情勢から見てもそれは当たっておらないことであるということを後で立証します。  第二の疑問は、審議会小委員会の検討が先ほどおっしゃったように四十八年八月と十月の二回開かれただけで中断して、そして今日に至っているという奇怪な事実なんです。この小委員会は、四十七年九月に運輸省が海運造船合理化審議会に諮問したことが出発点になっているのです。にもかかわらず、答申もせずに中断して四年もそのままになっているというのは、どういうことですか。
  250. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 先ほども申し上げましたように、二回小委員会を開きました後に非常に大きな変動がございまして、一つは、わが国海運業そのものがタンカーの運賃の暴落によりまして非常な不況の中に落とされてきたということ、それからもう一つは、当時予想されておりましたLNGのプロジェクトというものがいずれも不確実ないしは延期されるというような形になってきて、直接わが国の海運が分担すべきプロジェクトというものが非常に遠のいたというようなこともございまして、海運業界そのものにもLNG船の運航に対して意欲が非常に減退したというようなこともございまして、しばらく様子を見よう、こういうことでございます。  なお、念のために申し上げておきますと、LNGの海運での輸送は非常に膨大なコストのかかる船を建造し、そしてその船が二十年間というような長い時期、継続的、安定的に運航がされませんと、ユーザーのサイドもこれが利用できないという、非常にむずかしいプロジェクトでございまして、当時のわが国海運業界としましても、当初は意欲はございましたけれども、非常にむずかしい問題だとして取り組んでいたということは事実でございます。
  251. 神崎敏雄

    ○神崎委員 だから、先ほどの白書が問題になるのです。五十二年には利用する可能性の見通しが大きくなったと運輸白書で言い、そして小委員会をつくり、小委員会は二回しか開かないでそれはなくなった。今度は海運造船合理化審議会に諮問したのですね。こういう諮問をするような委員会が何の答申もなしに四年もほったらかしにしてそのままになっているのに対して、諮問した側は、何も返事はとらないとか、やめてくれとか、続けてやってくださいとか、客観情勢が変わったのでもうそのままにほっておいてよろしいとかなんとか、意思表示をするでしょう、諮問するのだから。そういう委員会がいつや知らぬ間に消えてなくなってしまうというような状態の中に、いま状況判断とか推測という立場からあなたが答弁をされている。実際あなたは、四十八年のこの八月と十月のときにはタッチされていたのですか。
  252. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 まず、先生の最初のお尋ねの諮問しておいて答申がないという問題でございますが、先ほど先生からお話もございましたように、四十七年九月の諮問は今後の外航海運対策のあり方でございまして、その諮問の理由の中の一つとして、無公害エネルギー源としてのLNGの重要性にかんがみLNG船の建造問題を検討するということになっておったわけでございまして、その諮問そのものに対しましては、四十八年の一月に海運造船合理化審議会が、このLNG船の問題には触れておりませんけれども、今後の外航海運対策のあり方につきましては一応の答申をしておるわけです。それで、LNG船の問題につきましては、先ほど申し上げましたように小委員会を設けるということになったわけでございまして、その部分が現在までまだペンディングになっておるという状態でございます。  なお、もう一つのお尋ねの四十八年当時は私の前の課長の時代でございまして、私は当時の関係者から事情を聞きましてお答えを申し上げておるわけでございます。
  253. 神崎敏雄

    ○神崎委員 長官、先ほどの少数派、多数派の問題に関連があるのですが、中断した理由も全く理解できない。というのは、石油危機という事態は石油以外のエネルギー獲得の必要性が一層高まり、したがってLNGの開発輸入の重要性もますます強まっているわけです。だから、石油危機でそれにかわるものの検討作業をさらに急ぐというのが本筋だ。ところが、それが、やめてしまうという方が多数派になっておった、これはLNG輸入が日本船でなければならない理由がない、こういうことを運輸省が言われて、そして日本船でやってはならない理由が何であったのかということになるのですね。  運輸省は、自信がないからとかいろいろなことで、答申ももらわずに委員会もやめてしまったのですね。そしてそのまま四年間ずっと来ている。そのとき石油危機があった。そうすると、その石油にかわるべきもの、この場合であったらいわゆるLNGですが、これを早くその見返り的に国内へ入れることがより積極的になっていくのが常識だと思うのです。それを入れることの方が少数意見で、やめておけという方が多数意見であったのかということになると、これは常識的にもおかしい。これは何か強い指示などが背景的作業という形であったのか、そういう形から中断されたのではないかという疑問が起こってくるのは私は当然だと思うのです。そうでなかったら話の筋が通らない、その当時の客観情勢とも主体的条件とも。そして、それまでにずっと積み重ねてこられた計画も、こういうところに突然こういう形で消えてなくなってしまうということは、もう一回言いますが客観情勢とも相入れない。それは行政当局としてはそのことについてはやはり相当強力に主張されたと私は思うのです。  だから、そのことが常識的に多数派であると思うのです。それが少数派であってそのまま消えてなくなってしまったというなら、それを進めている作業の中で中断されたということは、何か背後か横か知りませんが大きな作用が動いた、こういうふうに疑わざるを得ないのですが、これについてどう思いますか。
  254. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 海運造船合理化審議会の小委員会がどのような理由で二回で終わったかということは、運輸当局でお答えになっているわけでございますが、私の方の立場といたしましては、いまの先生の御質問の点につきまして二つあると思います。一つは、LNGをできるだけ多く開発輸入したいという問題と、それからそれをFOBで持ってくるのかCIFで持ってくるかは別問題だと思います。  まさに御指摘のとおり、LNGを大量に開発輸入したいというのは、当時からもいまも変わらないわれわれの考え方でございます。一つには石油依存度を下げていくという意味と、一つには公害対策として言われるところのクリーンエネルギーを確保したい、こういう立場でございまして、LNGを大量に引き取りたい、開発輸入したいという立場においてはまさに御指摘のとおりでございます。  次に、FOBでいくかCIFでいくかという問題でございますが、これにつきましては、通産省の従来の考え方からしますと、できるならばFOBで買いまして、自国船があれば自国船で持ってくる、自国船がない場合にはチャーターしてでも持ってくるというのが、われわれの貿易を預かる立場からの伝統的な考え方でもあるわけです。  ただ、その場合に、先ほど来申し上げておりますように、日本側のユーザーなりあるいは輸送業者が、当時ようやく川重が受注したようでございますが、それまでに一回もそういった経験がない。一隻も日本で持っているLNG船がない。現にアラスカとかブルネイから持ってきておるものはCIF契約で持ってきておったわけでございます。そういった経験がないというところから、ユーザーなり輸送業者が非常に心配しておったということも事実だろうかと思います。そのために、最終的にはFOB契約という線が入れられずに、結果としてCIF契約で入れざるを得なくなった、こういうことではなかろうかと思います。
  255. 神崎敏雄

    ○神崎委員 第三の疑問は、通産当局の当初方針がどうであったにせよ、インドネシアに正式に輸送権を認めるのが事実の追認になっていく、その点です。四十八年十一月に認めたのですね。これより二カ月早く、四十八年九月にプルタミナはバーマと輸送契約を結んでいるのです。したがって、両角・ラディウス会談では、インドネシア側が日本側に事後承認を求めてきたことになります。そこで、これを日本側が認めるには何かの見返り条件をつけたのではないか、そう思わざるを得ません。何ら抗議もせずに、格別の条件もなしに、日本側の正式承認を得ないでインドネシアがバーマと運送契約を結んだことを認めたとは考えがたい。どうして見返り条件をつけて事後承認に応じたのか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  256. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 結果として日本側はおりざるを得なかったわけでございますが、それは先ほど申し上げましたように、日本側でなかなか意見調整がつかなかったと申しますか、むしろCIF契約の方をよしとするユーザーなりあるいは輸送業者の考え方があったということで、こういう交渉事というものは相手のあることでございますので、結果としてさようなことになった。  それからもう一つは、当時の情勢をお考えいただきたいと思うのでございますが、その直後にいわゆる石油危機発生しておるわけでございまして、非常に石油需給がタイト化しつつあった。しかも、きわめて売り手市場的な性格を持ってきておったといったような情勢も踏まえまして、インドネシア側に、ある意味においては向こうの意見を入れざるを得なかった、こういうことになろうかと思います。  ただ、交換条件という意味ではございませんが、官民の調査団が当時九月三十日から十月十三日まで現地に行っております。その時点で相手側からこういう話が出ております。「輸送は、プルタミナとバーマスト・イースト・シッピング社との間の輸送契約に基づいて、プルタミナが行い、LNGはCIFベースで最終ユーザーに売る。しかし、プルタミナ、バーマスト、日本側は、最終ユーザーへのLNG供給を継続的、安定的、平常に行うためのタンカー操作のシミュレーションを行うことは合意する。」ということでございまして、当方としては、もちろんコストの問題もございますが、安定供給を確保するということも当然考えなくちゃいけませんので、こういった時点におきましても、どういうふうに運航していくかというシミュレーションの作業を関係者でやろうという話にはなっております。
  257. 神崎敏雄

    ○神崎委員 日本とプルタミナとの商取引が、肝心の日本よりも二カ月前にバーマと輸送契約を結んで、そしてそのことは一つ日本には相談なしで、日本には両角・ラディウス会談でこういうことになったのだというような形を二月後で事後承認させられる。しかし、それでもこちらは欲しいから、それでも結構だ、こういうふうな形でやってこられたのですか。これは少し納得できないですね。
  258. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 九月三十日から十月十三日までの調査団派遣期間中に、ただいま申し上げたような概要について説明を受けておりますが、事前にこちらが内容をチェックできなかったということは、一つには、まだセールスコントラクトができ上がっておらなかったということと、いま一つは、早く船台を確保しないと工期もおくれますし、船価、船の建造費も上がるであろうというところから、やむを得ずインドネシア側としても踏み切ったのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  259. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それは無責任ですね。運び賃というものは全部のコストに影響のあるものでしょう。あなた任せ、よそ任せ、とにかく何でもよろしいという形で当局はおって、そうして横では会談がやられて、二カ月後でそれを事後承認して、何も条件もつけないで、何もかもうのみにしてしまった。これでは一般的に言う商取引の常識から見ても非常に疑惑が出てくる。この関係はおかしいじゃないか、こう言わざるを得ないですね。  さらに、この点に関連して伺いますが、四十八年八月二十九日に、興業銀行の中山氏が、ユーザー五社の代表、日商岩井、それに東京電力の木川田氏、東京瓦斯の安西氏、これらを経団連会館に招いて会合を持ったことは事実ですか。
  260. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず初めの方の御質問でございますが、われわれといたしましては結局CIF契約でやることになったわけでございます。その時点での問題は、船が確実に確保されて安定供給を期待できるかどうかということと、それからCIF価格と申しますか、フレートが他類似のケースに比べて妥当なものであるかどうかといったような点から、十分チェックはいたしておるわけでございます。  二つ目の八月二十九日の件でございますが、インドネシアLNG委員会が経団連の場で持たれております。
  261. 神崎敏雄

    ○神崎委員 この会合には通産省も参加しましたね。
  262. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 通産省側もオブザーバーとして出席しております。
  263. 神崎敏雄

    ○神崎委員 認められたら結構です。この八月二十九日の会合は日本側の意見調整を図るものであった、こういうふうに私は見ておりますが、この時点でプルタミナに輸送権を与えることが決まったのでしょう、違うのですか。
  264. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 八月二十九日の会合では、輸送権の問題は出ておりません。
  265. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、どんな話があったのですか。
  266. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 もともとこのインドネシアLNG委員会と申しますのは、このLNGプロジェクトをナショナルベースで進めるに当たりまして、民間側の体制を決めるための委員会として持たれたわけでございます。それに、先ほど申し上げましたように、通産省もオブザーバーとして参加しておるというふうに承知しております。  それで、当日の議事内容でございますが、一つはプロジェクトの概要、それから日本側引き取り数量と対日供給可能量、日本側の受け入れ新会社、こういった話が出ておりますが、その時点でアメリカがインドネシアのLNGを日本が独占しようとするのではないかという心配をしておるということも話に出まして、特にこれは前回もお答えいたしたと思いますが、バダクあるいはアルンという鉱区につきましてはモビールあるいはハフィントンが持っておるというようなこともこれあり、そういった点も十分に配慮すべきではないか、こういう話が出ておったようでございます。それから、先ほど来申し上げております合同調査団を九月末から派遣することにその場で決まったようでございます。
  267. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そうすると、輸送権が日本かインドネシアかどちらにあるのか不明確な時期があったわけですか。
  268. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 不明確と申しますか、検討の段階は当然あったわけでございます。
  269. 神崎敏雄

    ○神崎委員 輸送権はどちらにあるかが明確でない時期に、プルタミナがバーマストと輸送契約を結んだ。形の上ではそうですか、実際にはプルタミナがバーマストと契約した四十八年九月以前に、どこかでだれかがけりをつけていたのでしょう。プルタミナとバーマに輸送させた方が有利だと判断させる何かがあったのではないのか。私ども調査で、日商岩井はプルタミナに輸送権を与えることを決めたのは四十八年の夏だったと証言しています。この点、当局も承知しておられますか。
  270. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 その間にけりをつけておったといったような事実はございませんし、私たちそういったことは承知いたしておりません。  それから、これもはっきりした情報ではございませんが、四十八年の八、九月ごろには日商岩井も大体あきらめかかってきておったというふうな情報はとっております。
  271. 神崎敏雄

    ○神崎委員 いまの答弁との関連で、いままでに言った経過から、四十八年七月ごろから四十八年九月までのこのころに通産と運輸の方針を変更させる密約があったのではないか、この疑惑は深まるばかりです、これを追っていくと。そういうような形で何か約束があったのですか。
  272. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 そういった点については承知いたしておりません。
  273. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そういうときは、長官は当時のことを受け継いでおりませんか。そういうことは全然知らないということは、それに関連したようなことを先輩からか聞いておりませんか。
  274. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 当時の資料を検討した結果、さような事実がないということでございます。
  275. 神崎敏雄

    ○神崎委員 それは、そちらに残している資料が根拠になっているということですね、そうですね。資料というようなものは、都合の悪い資料はほってしまったらいいので、都合のいいものは置いておいたらいいわけですから、事実がどうであったかということが問題なんです。  輸送権をめぐる疑惑が生じるのは、以上のような経過からだけではございません。ことしの八月、九月のいわゆる東京交渉と言われるアメリカ、イギリス、インドネシア、日本の四者交渉が持たれたこと、これ自体にきわめて不自然な感じがするわけですが、もし円満に輸送問題が解決していたのであれば、日本が介入することは不自然ではないか。過去の経過の中に、インドネシア側は日本に対する何らかの負い目のようなものがあるからこそ東京交渉が実現したのではないのか、そのようにも考えざるを得ません。しかし、この点は推測の域を出ませんから、続けて伺いますが、輸送権に関する第四の疑問です。  ことし一月六日付の日本経済新聞に、奇妙な広告が出ています。IUインターナショナルという会社、すでに知られておりますように、バーマ・オイルと輸送権獲得をめぐって激しく競争したと言われている会社が、日経新聞に大きな広告を載せています。「IU子会社ゴタース・ラーセンのLNGタンカーは、二十年間液化天然ガス日本に運びつづけます。」と、こういう大宣伝ですね。大臣、この広告を御承知ですか。
  276. 河本敏夫

    河本国務大臣 私は、その広告は見ておりません。
  277. 神崎敏雄

    ○神崎委員 見ておりませんか、認めませんのか。
  278. 河本敏夫

    河本国務大臣 見ておりません。
  279. 神崎敏雄

    ○神崎委員 何だったら、ここにコピーしていますから、後でひとつ大臣に見てもらって——そちらにありますか、これと同じもの。いま見てください。  大臣、見ながら考えていただいたら結構ですが、この広告の中で次のように書かれているのです。「LNG輸送における優位を保つためゴタース・ラーセン社は、さらに同型LNGタンカーを発注しています。そのうち二隻は日本の川崎重工」です。この「LNGタンカーは、インドネシアから日本への液化天然ガス輸送に採用してもらうため交渉がすすめられています。」こう書いてあります。この交渉とはだれに対する交渉なのか、どこのだれとこれを交渉しているのか、これは大臣、御承知ですかどうか。また、ゴタース・ラーセンあるいはIU社のこうした動きについて、大臣は何か感じられるものがありますかどうか、お伺いしたい。
  280. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいまお示しになりましたことし一月の、IUが新聞紙上に広告を出したり、あるいはIUの会長が新聞のインタビューに応じておるという、こういった記事は承知しております。  ただ、輸送契約の当事者といたしましては、プルタミナとバーマストの関係でございますので、これがどういう経緯で出たかということは私たちとしては承知しておらないわけでございますが、少なくともIU社は通産省に接触を図ってきておりません。それから、聞くところによりますと、当時日本側ユーザーにも接触を図ってきたという事実はないようでございます。したがいまして、交渉の相手はだれかとおっしゃっても、私の方としては答えかねるわけではございますが、未確認情報で申し上げますと、昨年の暮れ、十二月ごろに、バーマ社側がゴタース・ラーセンに対してオファーをとったというような話は聞いております。そういったところから、御指摘のような記事あるいは広告になったのじゃなかろうかと思いますが、少なくとも日本側として、通産省あるいはユーザーサイドとしては関知しておらないことでございます。
  281. 神崎敏雄

    ○神崎委員 大臣、どうですか、ごらんになって。
  282. 河本敏夫

    河本国務大臣 私もその間の事情は知りませんが、いま長官が答弁いたしましたが、あるいはそうであったかもわかりません。
  283. 神崎敏雄

    ○神崎委員 どうも不鮮明、不明朗で、これではますますこの問題について重ねて追及していかなければならぬと思いますが、ことしの一月二十一日付の日経新聞の報道によりますと、IUインターナショナルの会長は次のように述べている。川崎重工で建造中のLNGタンカー二隻について、「インドネシアから日本へのLNG輸送に採用してもらうよう交渉している」「この交渉はインドネシアの石油会社、プルタミナからの要請で始まったものだが、既契約の英国のバーマ石油関連の海運会社よりも輸送コストが割安なので、日本にとっても多大な利益となる」こう述べたと書かれています。これは何を意味するのでしょうか。  輸送権を握っているのはプルタミナのはずです。したがって、IU社と契約するのか、バーマ社と契約するのかは、プルタミナの権限に属することです。にもかかわらず、プルタミナの要請に基づいて交渉していると言うのです。この交渉相手とは日本側のこととしか考えられません。日本の新聞に広告を出すのもその意図に基づいていることと思います。そうでしょう。これも日本の何者かを説得しなければプルタミナとの契約ができないことになっているということを意味し、裏づけておる。別の表現で言えば、そもそもプルタミナがバーマと契約したのも日本の何者かの力が働いたことで、バーマの輸送相手のIU社はそれを知っている、だから日本に来て交渉している、こういう実態が真相ではないかと私は判断するのですが、この点、大臣、私の判断は間違っていますか。
  284. 河本敏夫

    河本国務大臣 この八月の追加融資の際に、LNGの購入の幾つかの条件、たとえば価格、数量、それから輸送方法等、日本側にとって不利な点がたくさんあったわけでありますが、それを追加融資の際にワンパッケージとして修正をいたしまして、不利な点が除去された事実がございます。そのうち、輸送問題につきましては、つい先般のことでありますから、まだここに記録も残っておりますけれども、アメリカの造船所が当初の建造の価格をむちゃくちゃにつり上げる、そしてそのコストアップしたものを全部日本側に運賃を上げるように法外な要求をしておる、こういうことがございまして、それではLNGの価格がもともと高いところへもってきましてさらに高くなる、大変不利になるということで、一連の数カ条にわたる修正がなされたわけでありますが、その船の建造価格の引き上げというものはずっと前からの交渉のようでありますから、あるいはその間においてインドネシア側においていろいろ他との引き合い等を参考に行ったのではないか、こういうふうに、いま私はいろいろお話をお聞きいたしまして想定をしたわけでございます。
  285. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、バーマと契約する際も、事前にバーマから日本側に働きかけがあったということも事実になってきますね。
  286. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 プルタミナとバーマストが交渉しておると申しますが、契約に到達する段階において、バーマストの方から日本側にコンタクトをとってきたことはございません。
  287. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、プルタミナとバーマはちゃんと四十八年九月に契約を結んでいるのです。にもかかわらず、バーマよりもわが社の方が日本のためにもなると、いわば契約変更、そこへまた割り込みの攻勢をかけてくるということです。IU社も国際的大企業です。その会長がわざわざ日本に来て新聞広告まで出して割り込みを図っている。これは大変な力の入れようです。つまり、IU社は割り込みが可能であると判断しているからこそここまでやるのだと私は思いますよ。割り込めるというふうに判断している、そういう見通しを持っている、割り込めると確信している、この確信の根拠となる何かがある、そういうものなしにこのような国際的契約の撤回や変更を求めて簡単に行動することなどはできない、こういうふうに考えるのが常識ではないかと思うのです。  輸送権に関する疑惑は、IU社の動きから十分に推察できることです。しかも、IU社が輸送権を持ったインドネシアに対して交渉するのではなくて、日本に来て交渉するということは、輸送利権の疑惑の一つのポイントが日本にあることを裏づけている、こういうことにはなりませんか。  大臣、あなたはことしの一月十九日に、川崎重工の一号タンク完成祝賀会に出席されました。そこでIU社の会長とお会いになったでしょう。大臣はIU社の動きにどのように対応されたのか、お伺いしたい。
  288. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、この会長の発言の中にも「プルタミナからの要請で」とございます。これは、私が先ほど申し上げました昨年の十二月に第六船、第七船の発注がおくれておった関係から、未確認情報でございますが、プルタミナがゴタース・ラーセンから見積もりをとったと申しますか、オファーをとったということを意味しておるのだと思いますし、かたがた通産省といたしましても、あるいは当時日本側のユーザーとしても、コンタクトをとっておりません。向こうの方からも当然コンタクトは来ておりません。そういったことからいたしまして、交渉と言ったのは本人に聞くより私としてはだれに交渉したのか申し上げられないわけでございますが、少なくとも当時の通産省あるいはユーザーサイドに対してコンタクトをとってきておりません。したがいまして、どういう意図でこの会長が来日したのかということも、これも本人に聞くよりわからない、こういうことでございます。
  289. 河本敏夫

    河本国務大臣 一月でありましたか、二月でありましたか、日にちは忘れましたが、川崎重工とIU社主催のレセプションに私が出席したことは事実であります。それはLNGタンクの完成のレセプションということでありまして、LNG船はタンク完成が一番のキーポイントだそうでありまして、そういう意味でレセプションがあるというので招待を受けまして、出席をしたわけであります。
  290. 神崎敏雄

    ○神崎委員 そのとき、IU社の会長は大臣に何か言いませんでしたか。
  291. 河本敏夫

    河本国務大臣 それは数百人の人が出席しておりまして、会場も大変混雑しておりましたし、私も一言あいさつだけをしてすぐ出たものですから、そういう話は一切ありません。
  292. 神崎敏雄

    ○神崎委員 では、最後大臣に重ねてお伺いしますが、私はインドネシアLNG問題をやはりきちんと解明すべきだと考えます。そのためには、三木内閣、とりわけ河本通産大臣が誠心誠意そのための努力をされるべきだと思います。通常公表できない資料もやはり公表するとか、特別の努力をされるべきだと思うのであります。外務省としても改めて協議して、国際的疑惑を解明するための特別の外交交渉も行うとか、とにかく疑惑を解明する、その特別の努力をする手だてもやはり尽くすということが必要だと思います。  また、いまもその人に会って聞かぬとわからぬと長官がおっしゃったように、ではその人を委員会に証人として、あるいは参考人として来てもらって、その間の話を聞かなければならぬということにもなりますが、やはり当時の通産事務次官の両角氏や、興業銀行の中山氏など当事者を直接国会に、いま申しましたように証人として、あるいは参考人とするかにして、やはり本人からこの間のところを聞かなければならぬ。そうでなかったらいつまでもこれは疑惑は残り、予算委員会などでも証人喚問の必要性を強調しておるのは以上の点からでもあるわけなんです。これがいろいろとマスコミをにぎわし、いろんな形で報道される、こういうような形になっている段階ですから、私は強く通産当局が国民の前にこの問題についてきわめて明確に、ガラス張りにいまこそしなければならないし、国民の疑惑を、もし疑惑に値するようなものがないならばそれを立証するようなもの、反証するようなもの、そういうものをやはりここで公開すべきだと思うのです。大臣、これに対する努力はしていただけますか。
  293. 河本敏夫

    河本国務大臣 このLNGの輸入は、御案内のように来年から二十年間七百五十万トンずつですから、非常に膨大な数量を長期間にわたって輸入するわけでありますし、かつまた、その使用者が製鉄会社、電力会社あるいはまたガス会社というふうに、わが国の基幹産業並びに国民生活に直接影響のあるところが全部使うことになっておりまして、非常に大きな影響力を持っております。そういう意味におきまして、先ほどもちょっと触れましたが、私は本契約の幾つかの不利な点を今度の追加融資の際に徹底的に修正をするようにという指示をいたしまして、おおむね修正されたと思いますが、この問題はいろいろ議論等もございますので、事務当局に対しましても、できるだけ真相を明らかにして誤解を解くように、こういうことを強く指示しておりますので、外交案件等で相手方の了承の得られないものは別といたしまして、できるだけ文書等は公表いたしまして、全貌を明らかにするようにしていきたいと思います。
  294. 神崎敏雄

    ○神崎委員 結構です。
  295. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 近江巳記夫君。
  296. 近江巳記夫

    ○近江委員 この前の一般質問のところで、LNG問題につきまして質問したわけであります。  まず、初めにお伺いしたいと思うのですが、そのときにもお聞きいたしましたが、いわゆるバーマスト社の問題でございます。アメリカの方のいわゆる融資につきましてふさわしくない、こういうことでこの新会社がまたできたのだ、エネルギー庁長官のそういう御答弁があったわけでございますが、ふさわしくないと向こうが判断したというのはどういう中身だったのですか。
  297. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 アメリカで海運に対していろいろな助成策をとっておりますが、その中にマラドのタイトルイレブンというのがございまして、これによって融資保証が受けられるわけでございますが、その際の要件といたしまして、造船所、それから船主、それから実質オペレーターと申します輸送業者、こういった人たちがすべてアメリカ法人である必要がある、こういうことになっております。そういったところから、バーマストはその線に該当いたしませんので、バーマ・オイル・タンカーズの一〇〇%子会社としてバーマ・ガス・トランスポーテーションなるものを新設いたしまして、これを通じて輸送体系を組み立てよう、こういうことになったと理解いたしております。
  298. 近江巳記夫

    ○近江委員 理由はそれだけですか、あなたが判断なさっておられるのは。バーマストという会社自体がもっと複雑な目的でつくられた会社じゃないかということが世間ではよく言われておるわけでございますが、このバーマストの株主というのはどことどこですか。
  299. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ユーザーからの情報でございますが、バーマスト・イースト・シッピングなるものは一九七三年に設立されておりまして、株主がアメリカのバーマ・オイル・タンカーズが八四・三七五%、オーバーシーズ・ナチュラル・ガス、これも米国法人でございますが一〇・六二五%、それからファー・イースト・オイル、これは日本国籍でございますが五%と、こういう構成になっております。
  300. 近江巳記夫

    ○近江委員 ここはだめだということで、この新会社ができておるわけですね。この輸送につきましてプルタミナが全責任を持つ。ここにおきまして恐らくアメリカ側が、ただ融資の対象としてふさわしくない。それは先ほど理由もおっしゃったわけですが、ここに国民は、こういう会社がつくられ、またいとも簡単にこの新会社ができておる、非常に不自然じゃないかという見方をしておるわけであります。あなた方は政府として、監督の立場として、もちろんこれはプルタミナが決める問題であるとお思いであるとは思いますけれども、不自然さは感じませんか、どうですか。
  301. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私たちの立場といたしましては、適正な運賃で契約どおりに確実に継続してLNGが供給されるというところにポイントを置いて考えておるわけでございまして、バーマスト自体がどうのこうのという問題よりも、むしろプルタミナサイドの問題であり、われわれとしてはプルタミナに対して安定供給を確保するようにという保証を取りつければ、事実上われわれの目的は達せられるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  302. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、結局この新会社が発注しておる船の建造というものが来年度からの輸送には間に合わない、こういうような状態になってきておるわけですね。そうしますと、わが国の当初計画は挫折をすることになるわけです。この用船の問題についてはうまくいくのですか。どういうふうになっているのですか。
  303. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のように、ゼネラル・ダイナミックスにおける建造が若干おくれております。この夏の輸送交渉の段階で、二隻を短期間チャーターすることによって確実に来年の三月の第一船を確保するというふうに決まったと承知いたしております。
  304. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはどこから持ってくるのですか。
  305. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ゴタース・ラーセンとライフ・ヘーグそれぞれ一隻ずつと聞いております。
  306. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、このゴタース・ラーセン社が日本の川崎重工に四十八年の五月にLNGの大型タンカー二隻を発注しておるということを聞いておるのですが、これは事実ですか。
  307. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 事実と承知しております。
  308. 近江巳記夫

    ○近江委員 このゴタース・ラーセン社が二隻を注文しておるわけですが、LNG運搬船は普通貨物船の約五倍と言われておるわけですね。そうすると、二隻といいますと建造費は大体どのくらいの額になるのですか。
  309. 間野忠

    間野説明員 ちょっと正確な金額を覚えておりませんが、大体二隻で八百億円程度と記憶しております。
  310. 近江巳記夫

    ○近江委員 八百億円と一口に言いましても、これは巨額なものですね。そうしますと、これは建造しても、LNGを具体的に運ぶというめどがなければ、八百億の投資ということになってきますと利子だけでもなかなか莫大なものですよね。それのめどはきちっとつけてやっているのですか。それはどういうふうに報告を聞いていますか。
  311. 間野忠

    間野説明員 現在、私どもの方でこういった巨額の投資を要しますLNG船の建造とか運航がどういった形態で行われておるかということを調査しておる段階でございますが、現実の問題といたしまして、いわゆる積み荷保証のないフリー船というものは世界各国でかなりの量発注されておるようでございます。それで、川崎重工のものも、少なくとも当初はフリー船として発注されたものと了解しております。
  312. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはいまもそういうフリー船ということなんですか。そういう情報は得てないのですか。どこかにめどをつけたとか、そういう話は入っていませんか。
  313. 間野忠

    間野説明員 まことに申しわけありませんが、実は、船価につきまして少し高過ぎるのではないかというお話がありまして、ちょっと議論しておりましたので、質問を聞き漏らして、まことに申しわけありませんでした。
  314. 近江巳記夫

    ○近江委員 高過ぎるというと、訂正しなさいよ、幾らぐらいですか。
  315. 間野忠

    間野説明員 正確に調べましてから御回答申し上げたいと思います。実は、きょう先生から御質問があるということを知らずにおりましたものですから、用意しておりませんでしたので、早速調べまして御回答申し上げます。
  316. 近江巳記夫

    ○近江委員 これだけのタンカーですから、大体常識という線があると思うのですが、運輸省の皆さんが、そういう常識の線も出ないのですか。大体推定どのくらいなんですか、八百億円が高いとおっしゃるなら。
  317. 棚橋泰

    ○棚橋説明員 常識的には、ただいま川重に発注されておりますのはかなり以前に発注されておりまして、それ以後LNG船の船価が非常に上がっておるということでございまして、造船課長がお答え申し上げましたのは恐らくただいまの船価だと思いますが、川重に発注されておりますのはかなり以前でございますので、その当時としては大体一隻二百五十億ぐらいだったのではないかというふうに推測をしておりますが、詳しくは調べましてお答え申し上げます。
  318. 近江巳記夫

    ○近江委員 この二隻の船は、大体予定ではいつごろできるのですか。
  319. 間野忠

    間野説明員 現在、造船不況仕事がございませんものですから、LNG船に限りませんで一般的に工程をおくらせるというようなことをやっております。それで、特にこの船につきましてはフリー船でございますので、再び納期が変更になるというようなことがあり得るわけでございますけれども、一応来年早々には着工したいというふうに川崎重工の方は言っております。
  320. 近江巳記夫

    ○近江委員 この川崎重工には三光汽船がどのくらいの株のパーセントを持っておられるか、また大臣はいま三光汽船の何をやっておられるわけですか、ちょっとそういう関係を聞いてみたいと思いますが……。
  321. 河本敏夫

    河本国務大臣 三光汽船が川崎重工の株を持っておることは事実でありますが、私は、現時点で株数が幾らになっておるか、はっきりいま記憶しておりません。相当数の株を持っておると思います。  それから、私と三光汽船との関係ということについての御質問でありますが、私は現在三光汽船と何らの関係もありません。ただ若干の株を持っておるだけであります。
  322. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣になられて、前はたしか社長となっていましたですね。いまは関係はないわけですね、若干の株を持っておられる。  それで、私は率直にいろいろお聞きしておりますので、大臣もそういう気持ちでお答えいただきたいのですが、大臣は昨年の初頭、オーストラリア、ニュージーランド等公式訪問されまして、その帰途インドネシアのジャカルタに寄られた、そのとき向こうのいわゆる首脳、プルタミナの人とか、そういう人たちと会われましたか。また、もしそこで会ったとした場合、どういう話が行われたわけですか、ちょっと経過報告を聞きたいと思います。
  323. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨年の四月末にバンコクで日タイ閣僚会議がございまして、それから引き続いて五月の初めにキャンベラで日豪閣僚会議がありまして、その二つに出席をしたわけでありますが、そのバンコクから豪州へ行きます途中、インドネシアを一日だけ公式訪問をいたしました。四月の末であったと思います。一日のことでありますから、行程はきわめて強行軍でありまして、わずか一日の間にインドネシア大統領そのほか六、七名の閣僚等、重要人物とそれぞれ相当長時間にわたって会談をいたしまして、会談が終わるやいなやキャンベラの会議に間に合うために飛んでいったわけでありますが、そのときは三木総理大臣の親書をまず大統領に対して手渡しまして、それから大統領並びに各大臣とは、懸案の一連の経済協力関係の問題、あるいは貿易を促進するという問題そういう諸問題について話し合いをしたわけであります。
  324. 近江巳記夫

    ○近江委員 一連の経済協力、貿易関係ということになってきますと、LNGの問題はナショナルプロジェクトでございますから非常に大きいわけですが、そこではLNGの開発問題また輸送問題等が話し合われましたですか。
  325. 河本敏夫

    河本国務大臣 その席には、日本の須之部大使、それからここにおります橋本長官以下数名の幹部も、皆いずれの会談にも同席をしておりましたが、LNGに関する話は一切出ません。
  326. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、六月にインドネシアに対する追加の緊急融資三億七千二百万ドルをなさったわけでございますが、これはあなたが最高責任者としてなさったと思うのですけれども、このときにはプルタミナが倒産するのじゃないかというようなうわさも流れておりましたし、インドネシアがそうした負債を抱えておるという中でこういうことが行われておるわけですが、それについての懸念はなかったわけですか。どういう分析をなさってこういう融資を決定されたわけですか。
  327. 河本敏夫

    河本国務大臣 このインドネシアへの追加融資につきましては、昨年の春、インドネシア側から約五億ドルの追加融資の話が出たわけであります。その理由は、一昨年着工いたしましたボルネオとスマトラのLNGの積み出し基地等に対する設備がインフレのために非常に上がった、十一億ドルという融資では間に合わないので、五億ドルの追加融資をお願いしたい、こういう申し入れが、昨年の春ごろであったかと思いますが、ありました。しかし、一昨年十一億ドルという融資が始まったばかりでありますし、しかも着工の直後にまた五億ドルという巨額の追加融資をしなければならぬということに対しましては、日本側といたしましてはいささか腑に落ちぬ点等もございまして、十分調査をしておったわけであります。そういう関係で結論が延び延びになりまして、最終的に決まりましたのはことしの八月の末でありますから、一年数カ月かかったわけであります。最終の金額は約三億七千万ドルであったと思います。それは民間の融資等も入れまして三億七千万ドルでありますから、輸銀その他からの融資は三億二千万ドルほどであったと思います。  なお、そのときはすでにインドネシアのプルタミナは経営者がかわっておりまして、政府がみずから直接経営に乗り出すということで、この交渉も政府の担当大臣が何回もやってまいりまして、形はプルタミナであっても実質は向こうの政府との交渉である、こういうことでありましたので、追加融資については心配はない、こういう判断のもとに決定をしたわけであります。     〔綿貫委員長代理退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕  なお、その際に、先ほどもちょっと申し上げましたが、日本側の契約に、価格、引き取り数量、引き取り条件及び輸送条件等につきまして非常に不利な条件が山積をしておりましたので、そういう不利なすべての条件について、追加融資とともにワンパッケージとして根本的に修正するように、こういう指示を事務当局にいたしまして、そのワンパッケージの交渉もでき上がりましたので、最終段階として追加融資を認めることにしたわけであります。
  328. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一度先ほどの質問に戻りたいと思いますが、経済協力あるいは貿易の問題で話があった、LNGについてはなかった。そうすると、経済協力という点についてはどういう話があったのですか。
  329. 河本敏夫

    河本国務大臣 やはり最大の課題は、スマトラ島のアサハンというところに大規模なアルミニウム工場、発電所を建設するという、いわゆるアサハンプロジェクトという問題について一番の時間を割いたわけであります。それから第二は、CTSの問題。インドネシア国内にCTSを協力してつくっていこうという問題についての話し合い。それから第三は、そのほか幾つかの細かい経済協力関係が山積しておりましたが、そういう幾つかの案件についての話し合い。さらにまた、オイルショック以前に比べましてインドネシアの貿易が激減をいたしまして、特にインドネシア側から日本に対する輸出が三分の一以上減少をいたしましたために、インドネシアの経済が非常な圧迫を受けておるということについての対策、そういうことについての一連の話し合いをしたわけであります。
  330. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどのゴタース・ラーセンの二隻の建造の問題でありますが、何のめどもなく、現時点においては八百億ぐらいになるだろうという運輸省からの話があったわけですが、これはそのまま何も運べないということになってきますと、大変な資金を寝かすということになってきまして、幾ら大きい会社であっても相当負担になるわけですね。そういうことで、このLNGの問題については、これはナショナルプロジェクトということで、もちろんこの輸送権はプルタミナが持っておるわけでございますが、少なくともわが国がこのLNGを今後年間七百五十万トンずつ買うわけですね、だから、このユーザー、受け入れ側として、やはりプルタミナ等に対しても相当強力な発言権を持っておるのじゃないかと私は思うのですが、そういう点で、ゴタース・ラーセン社の方から大臣初め政府のそうした首脳部に対して、ぜひともインドネシア側に話をしてもらって輸送さしてくれないかと、こういうような話はなかったですか。
  331. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほど長官が答弁をしておりましたように、輸送の全責任はプルタミナ、インドネシア側が持っております。その契約のいきさつについては長官からるる申し述べたとおりでございますが、ところがそのプルタミナ側が第一義的に責任を持っておる輸送のLNG船につきまして、アメリカのゼネラル・ダイナミックスというところに発注されておるのだそうでありますが、その建造が非常におくれておるということであります。来年の三月から日本へのLNGの輸出は始まるわけでございますが、それには間に合わない、一体それではどうするのかというような問題があったわけでありますが、それは八月の交渉の際に、ゼネラル・ダイナミックスの建造はおくれて間に合わないけれども、プルタミナ側が全責任を持って短期の用船をして、日本側に対して迷惑はかけません、こういうことになったということは、先ほど長官が申し述べたとおりであります。そのために、ノルウェーの業者がドイツでつくっておるLNG船を短期に用船をするという話が、ついたか、交渉中であるか、いずれかでありましょうが、いずれにいたしましてもドイツでつくりつつある船について交渉が始まっておる、こういうふうに承知しております。
  332. 近江巳記夫

    ○近江委員 その二隻の短期用船の中でも、ゴタース・ラーセン社からも一隻というお話がございましたですね。そうすると、これを契機に、日本でつくっております二隻の船というものは引き続いてこのLNG輸送に持っていくと、こういうような考えがあるわけですか。その辺の話は伝わっておるのですか、どうなんでしょう。
  333. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま運輸省からお答えがございましたように、ラーセンの日本でつくっております船は何か来年の初めに着工するというふうな状態だそうでありまして、非常におくれるのだそうであります。したがって、このプルタミナ側が短期用船をする船につきましても、日本でつくっておるものは間に合わない。そこで、ドイツでつくっておる船を短期用船して、アメリカのゼネラル・ダイナミックスで船ができるまでの間のつなぎ用船にする、こういうふうに聞いておるということを申し上げたわけでありますが、果たして交渉がそのまま成立したのか、あるいは目下交渉中であるのか、そこらあたりにつきましては定かではございません。
  334. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この輸人価格が非常に高いということは前の委員会でも私が指摘したわけでありますが、わが国には確かにこのLNGの輸送船というものはないわけですね。だけれども、これは川崎重工が今後つくろうといたしておるわけです。わが国の造船能力からいきまして、このLNG運搬船の製造ということは技術的には非常にむずかしいわけですか、どうなんですか。運輸省にちょっとお伺いしたいと思います。
  335. 間野忠

    間野説明員 液化天然ガスと申しますと、これは非常に沸点が低いと申しますか、液化するのに非常に温度を下げなければなりませんで、液化しましてマイナス百五十度ぐらいにそれを保って持ってくるということで、タンク全体を遮蔽いたしまして断熱するというような工程、それからタンク自体も普通の鋼材ではいけませんで、特殊な合金を使わなければならないというようなことがございますので、確かに一般の船に比べますと非常にむずかしい船でございますし、またそれを建設するための設備、それから工数も非常に食うという船でございます。  ただ、長い間準備してまいりまして、川崎重工の方では別途、問題のタンクをつくる工場もすでにできておりますし、川崎重工に関する限りはこれを建造する体制が十分にあるということでございます。
  336. 近江巳記夫

    ○近江委員 わが国で川崎重工がこういうふうにやっておるわけでありますが、ほかの造船会社も力を入れればそれだけの技術は持っておるのではないか、私はこのように思うのです。しかし、これは何せインドネシアのプルタミナがそういう輸送権を持っておるということから、やはりわが国の造船界としてもなかなかそこまでは力を入れるということに二の足を踏んでいるのではないか、こう思うのですが、この価格の問題にしても、非常に高いじゃないかと言ったときに、日本の場合はCIFになっておるわけですが、アメリカの場合と違うということで高いのだというような話もあったわけでございますが、わが国でそういう輸送権というものを何とか獲得するというような話し合いはできないものですか、それについては交渉したことはないわけですか。
  337. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 日本側と申しますか、通産省といたしましては、極力FOBで契約をしたい、ということは輸送は日本側の責任でやりたいということで、四十八年三月、本プロジェクトをナショナルプロジェクトで推進しようというふうに方針を決めた時点から、精力的にその方向努力いたしたわけでございますが、当時、日本側のユーザーあるいは輸送業者が全くそういった経験がないということからいたしまして、きわめて消極的であったというようなことがございまして、当方としては御指摘のような方向でFOB契約を主導しようとしたわけでございますが、結果として輸送をプルタミナの方に任せるということになったわけでございます。
  338. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはプルタミナといっても、アメリカに建造させたりするわけですね。やはりそういう輸送を向こうに一方的にやらせる、しかもそういう当初予定しておったものが消えて、新会社にしなければならぬというような、そこにいろいろな疑問というものが非常に生まれてくるのじゃないかと私は思うわけです。わが国としてもそれだけの建造能力もあるのじゃないかと思いますし、これはその時点ではそうであったかもしれませんけれども、さらに一遍ユーザーなり何なり、運送業者とも詰めて、輸送等の問題につきましてはやはり再交渉なりそうしたことを考えていく必要があるのじゃないでしょうか、その点についてはどのようにお考えですか。
  339. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 プルタミナは、本件の輸送体系といたしまして、バーマ・ガス・トランスポート社を輸送業者としてゼネラル・ダイナミックス社に発注しておるという形で契約が行われておりますので、いまの段階で、少なくとも本件につきましてFOB契約に改めるということは事実上困難ではなかろうかと思います。  ただ、ことしの夏の輸送に関する当事者間の交渉の中におきまして、日本側といたしましては、一つは安全性の問題、一つはコストの問題がございます。そのために、バーマ側とプルタミナ側で、ゼネラル・ダイナミックス社で用船を建造中の過程におきましても、日本側が立入検査をして安全性をチェックするということについても意見の一致を見ておりますし、それからコスト的な問題といたしましては、エスカレーションクローズをつけまして、そのエスカレーションクローズの中身といたしましては、人件費だとか燃料費だとかいわゆる直接運航に要する経費と、それから政府による仕様変更によりまして船を改造するその際の必要最小限のコストしか織り込まない、こういう形でエスカレーションクローズを限定的に運用するというふうになっておりますので、その限りにおいて日本側としてもかなり目的を達成したものというふうに理解していいかと思っておるわけでございます。
  340. 近江巳記夫

    ○近江委員 この輸入価格の問題については是正の契約があったということを聞いたわけでありますが、こういうことが問題になってこなければこういう是正もできなかったわけですね。そういう点からいきまして、これだけの膨大なプロジェクトをやっていくわけでございますから、問題にならなければそういうことが推進できない、その点につきまして非常に不安を感じるわけであります。  それから、この外務省の円借款の供与に関する日本政府とインドネシア共和国政府との間の交換公文を見てみますと「インドネシア共和国政府は、要請に応じ、日本政府及び基金に対し、項目の実施の進捗状況を含むインドネシアにおける液化天然ガス開発事業の実施の進捗状況に関する情報及び資料を提供する。」と、こうなっておりますけれども、こういうことはいままでしょっちゅうやっていたのですか。何回ぐらいインドネシアに要求して、こういう情報なり資料を提出させたのですか。
  341. 青木慎三

    ○青木(慎)政府委員 交換公文に基づきます向こうの事業の進捗状況でございますが、基金とインドネシア政府間の契約に基づきまして、基金は向こうの対象事業の進捗状況に応じて借款を与えることになっておりますので、進捗状況についてはその都度大体把握をしていることになっておるわけでございます。
  342. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、この前も長官に、どれだけの機関からどれだけの金が出ておるかということを質問しまして、はっきりしたことじゃありませんが大体このくらいだと思うという御答弁があったのですが、きょうは関係各省皆来ているわけですから、経済協力基金あるいは輸銀、いろいろあろうかと思うのですが、その内訳を全部言ってください。
  343. 青木慎三

    ○青木(慎)政府委員 まず、経済協力基金分について申し上げます。  本年の九月末現在でございますが、バダク地区に対するディスバースが二百十六億円でございます。アルン地区に対するディスバースは九十一億でございまして、トータルで三百七億がディスバースされております。
  344. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 輸銀協融分についてでございますが、これはすでに十月八日の商工委員会におきまして通産省の方からお答えがございましたように、第一次分について五億六千七百七十万ドル、追加分につきまして八千七百九十万ドル、合計六億五千五百六十万ドルがディスバースされております。
  345. 近江巳記夫

    ○近江委員 民間はどうなっていますか。
  346. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 いま申し上げました数字は、輸銀及び市中銀行を含みました輸銀とその協調融資分ということでございます。
  347. 近江巳記夫

    ○近江委員 このプルタミナの財政危機といいますか、倒産寸前という情報が流れているわけです。たとえばプルタミナのタンカー三十一隻が世界じゅうにカタとして係留されておるというようなことも一部情報として出ておるのですけれども、プルタミナのそういう状態については政府としてはどのように把握しておりますか。これだけの膨大な——あとまた追加投資もやるわけでしょう。追加投資というのはあとどのくらいやるのですか。また、こういうプルタミナの状態について政府としてはどういうように認識しておりますか。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕
  348. 河本敏夫

    河本国務大臣 追加融資の分も含めまして、総融資額は、先ほど申し上げましたように、総計で約十四億ドルでありますので、まだ相当残っておるわけであります。  それから、プルタミナの財政危機についてはいろいろな情報が流れておりますが、インドネシア政府側は、プルタミナは今後はすべて政府の責任において経営をするのだ、過去のことに対しても政府が全責任を持つ、そういうことを言っておりまして、この件についての交渉は全部インドネシア側の担当大臣が行ってまいったわけであります。したがいまして、プルタミナの経営についてはいろいろ情報はありますけれども、私どもはインドネシア政府を信用いたしまして、インドネシア政府との取引である、プロジェクトである、こういう判断のもとに仕事を進めておるわけであります。
  349. 近江巳記夫

    ○近江委員 こうした輸入価格の問題であるとかあるいは輸送の問題等々、国民は何かすっきりしない、そういうものを皆持っておるわけであります。この前にも申し上げたように、こういうことはやはりナショナルプロジェクトとして、国民の前に変な疑惑がないような、いつでもそういう中身については報告もできるというようなすっきりした進め方をしていただきたいと思うのです。  それから、聞くところによりますと、マレーシアにおきましてもLNGの開発計画されておる。日本に対しては年間六百万トンを今後出すというようなことも言われておるわけですが、こういう計画についてはいまどういう話し合いが行われておるのですか。
  350. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 マレーシアにつきましては、いま商社段階で話し合いを進めておるというふうに承知いたしております。
  351. 近江巳記夫

    ○近江委員 最初インドネシアにつきましても商社の段階でやっておったのでしょう。ところが、政府が食い込んできた。マレーシアについては、あなた方は基本的にどういう考えを持っておるのですか。
  352. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御承知のとおり、昭和六十年におきましてはLNGを四千二百万トンまで開発輸入したいという総合エネルギー調査会の答申があるわけでございます。現在入ってきておりますのが大体千四、五百万トン程度でございまして、今後まだ大いに官民で努力しなくちゃいけない立場にあるわけでございます。ただ、このLNGのプロジェクトと申しますのは非常に多額の投資を必要といたしますので、需要単位がある程度まとまってこないとなかなかこれが実行に移しがたいという面もあるわけでございます。したがいまして、マレーシアにかかわらず、そういった交渉中の案件がどのように進展するかということをわれわれとしてはいまの段階では注視しておるということでございます。なお、現在、御指摘のマレーシアについてはそういう段階でございますので、これをナショナルプロジェクトとして取り上げるかどうかといったようなことについては、いまの段階ではまだ検討はいたしておりません。
  353. 近江巳記夫

    ○近江委員 このインドネシアのLNGにつきまして、これだけ問題になってきているわけですね。ですから、こういう新たな問題も出かかってきておるわけでありますし、そういう疑惑を持たれないように政府として姿勢を正して今後やっていただきたい、これを特に要望しておきます。  それから次に、訪問販売等に関する法律について伺いたいわけですが、この中の三章におきましていわゆるマルチ商法が規制されることになっておるわけですが、この商法につきましては本委員会におきましても社会問題化した大変悪質な商法であるということで問題にしてきたわけです。いままたそれによる被害が非常に多発してきておるわけでございますが、被害者数はすでに二百万人とも言われておるわけです。衰えるどころか、業者側が最後の駆け込みというようなことで巧妙、悪質になってきておる。被害の発生地域も、最近は都市よりも地方に多い。被害者層は、高校生を含む未成年者、大学生、主婦といった、事業知識経験のない層であるとか、社会的に弱者と言われるような人々が食い物にされておる、そういう実に悲惨な状況にあるということを聞いておるわけですが、こうした事態を関係当局としてはどのように把握しておられるか、お伺いしたいと思うのです。これは通産省と公取、また経企庁の三者からお伺いしたいと思います。
  354. 織田季明

    ○織田政府委員 お答えいたします。  最近の事情について数字的には正確につかみにくいのでございますが、警察当局に伺いましたところでは、法律が公布になりましてからの状況はかなり少なくなったというのが一点と、私のところで消費者相談室というのがございますが、そこに四月から六月までに訪問販売関係で相談のあった件数は十一件でございますが、その中身は訪問販売についての苦情が多うございました。第二・四半期、七月から九月につきましては同じく十一件でございますが、中身は苦情ではなくてマルチでございまして、マルチの勧誘を受けたけれどもどうしたものかということで相談があったような次第でございます。相談の件数は同じでございますが、内容が違ってまいりましたので、その二つのことから、私の方といたしましては法律公布後次第に被害が少なくなってきているかというふうに推測している次第でございます。
  355. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 公正取引委員会といたしましては、御承知のように昨年六月にホリデイマジックに対しまして勧告、さらに審決を行いまして、また本年の六月にはエー・ピー・オー・ジャパンに対しまして警告を発しました。こういうこともございましたし、加えまして訪問販売等に関する法律が成立をいたしまして、それによりまして最近では全国的な大々的なマルチ商法というのは減ってきておるのではなかろうかというふうに考えておりますが、ただ、エー・ピー・オー・ジャパンの関係者が別の企業をつくりまして地域的に行っておるというようなものがございます。現在でも公正取引委員会の大阪あるいは広島の地方事務所において調査をいたしておるものがございます。また、本局の取引課におきまして二つの会社について指導を行っておるというようなケースもございまして、私どもはできるだけマルチ商法の根絶に向かって独禁法を厳正に実施をしてまいりたいというふうに考えております。
  356. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 企画庁の関係でございますが、国民生活センターにおきまして特にそういうような具体的な案件についての情報はございません。それから、県段階でございますと、長野県の一部にそういう動きがあるように聞いております。
  357. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府の掌握の仕方というものにつきまして、これはひとつもっと認識を新たにしていただきまして、被害者対策委員会とかいろいろあるわけですが、先日も大阪では、いま公取事務局長がおっしゃったように、名前を変えたエー・ピー・オーの系列のそこに対して告発をしておるわけです。そういうことも起きておりますし、全国的には非常に地域的にそういうように拡大してきているわけです。ですから、まずそれを皆さん方よく認識されて、もっと実態というものを強く把握していただきたい、これを特に要望いたしておきます。そういう少なくなってきたという考えは間違いです。それを申し上げておきます。  それから二番目に、これは六月四日に公布されまして、十二月四日まで、いわゆる六カ月以内に施行しなければいかぬ、こうなっておるのですが、十二月四日の期限までもう幾ばくもないわけでしょう。一日も早いこの施行を消費者、国民は皆望んでおるわけです。その点、六カ月以内ということであれば六カ月いっぱい、そういう遅々とした態度でいいかどうかということなんですね。一日も早くこれは施行すべきですよ。その点、いま政府としてはどういうように作業を進めていますか。一日も早くやろう、そういうめどでやっているのですか。
  358. 織田季明

    ○織田政府委員 お話のありましたように一日も早く施行したいと思って努力しておりますし、お話もありましたことでございますから、なお一層努力したいと思っております。  ただ、現在の状況を御説明申し上げますと、現在当省で政省令を検討している段階でございまして、この後各省折衝、その後審議会に付議するというような手続が残っておりますので、そういう手続も含めまして、御趣旨に沿いましてできるだけ早く施行したいと思っております。  以上でございます。
  359. 近江巳記夫

    ○近江委員 できるだけ早くということにつきまして、それなら今月中にやりますか、どうなんですか。
  360. 織田季明

    ○織田政府委員 今月中は無理でございまして、なるべく早くということで御勘弁いただきたいと思います。
  361. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま十月ですから、そうすると十一月いっぱいまでにできますか、どうですか。
  362. 織田季明

    ○織田政府委員 十一月いっぱいをめどにやりたいと思っております。
  363. 近江巳記夫

    ○近江委員 一日も早くやっていただきたいと思います。  それから、本法の施行までの間、施行ができてないからということでただ手をこまねいて見ておる、そういう態度であってはならぬと思うのですね。とりあえずそれにかわるものとして、公取委として独禁法第十九条違反でびしびしと摘発すべきである、このように思うわけです。いろいろいま問題になっておりますそういう会社もたくさん出てきておるわけですが、いわゆる申告が出されておるこういうところについて摘発等の考えを持っておられるのかどうか。また、審査をなさっておられる状況についてはどのようになっているか。断固とした処置をとるべきであると思うのですが、この点につきまして公取事務局長にお伺いしたいと思います。
  364. 熊田淳一郎

    ○熊田政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、申告も参っておりますし、現に地方事務所におきまして調査をいたしておるものもございます。また、全国的な規模のものにつきまして、本局におきまして指導して是正をさせる、こういう案件もございます。私どもは、地方事務所を中心に苦情が相当件数参っておりますので、できるだけその苦情のなくなるように、すべての案件につきましてできるだけ速やかな処理をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  365. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、もうこれで最後にしたいと思いますが、われわれとしましては、この法律の審議成立過程で、与野党一致で附帯決議をつけたわけですが、その中で国民への周知徹底ということをうたったわけです。そういう点で、今日さらに被害者が激増しておるということを考えてまいりますと、まだまだこういうPRが足らないのじゃないかと思うわけですが、このPRの今後の態様につきましてお答えをいただきたい。その答弁を聞きまして、それによって質問を終わるかどうかを考えたいと思います。
  366. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 訪問販売法等の内容の周知徹底と、それからこれらの商法の危険性というものを一般に知らせるということが、被害防止の上から一番重要だと思います。そこで、決議の趣旨も体しまして従来消費者啓発に努めてまいりまして、テレビでは国民生活センターの関係予算、それから通産省の関係の広報予算、それから出版物につきましては国民生活センターの出版物並びに通産省のその関係の情報資料、こういうことで従来からやってまいりました。これからも、テレビ、それからパンフレット、そういうものをつくりまして、強力にその趣旨を徹底してまいりたいと思っております。
  367. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは最後に、大臣に、このマルチの問題につきまして一日も早く施行するように、また、いわゆる強力な対策をしていただきたいということ等について申し上げたわけでございますが、決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  368. 河本敏夫

    河本国務大臣 御意見のように取り計らっていきたいと思います。
  369. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 次回は、明二十日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十一分散会