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1976-10-13 第78回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十三日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 稻村佐近四郎君    理事 近藤 鉄雄君 理事 前田治一郎君    理事 松永  光君 理事 武藤 嘉文君    理事 綿貫 民輔君 理事 上坂  昇君    理事 佐野  進君 理事 神崎 敏雄君       越智 伊平君    片岡 清一君       木部 佳昭君    田中 榮一君       八田 貞義君    林  義郎君       深谷 隆司君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    竹村 幸雄君       中村 重光君    渡辺 三郎君       野間 友一君    近江巳記夫君       松尾 信人君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     澤田  悌君         公正取引委員会         事務局経済部長 吉野 秀雄君         通商産業政務次         官       山下 徳夫君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁計画         部長      児玉 清隆君  委員外出席者         運輸省船舶局造         船課長     間野  忠君         労働省職業安定         局雇用保険課長 北村 孝生君         労働省職業訓練         局管理課長   中野 光秋君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十月十三日  辞任         補欠選任   島村 一郎君     片岡 清一君   中村 寅太君     越智 伊平君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     中村 寅太君   片岡 清一君     島村 一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業事業転換対策臨時措置法案内閣提出、  第七十七回国会閣法第四六号)      ————◇—————
  2. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 これより会議を開きます。  第七十七回国会内閣提出中小企業事業転換対策臨時措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤清政君。
  3. 加藤清政

    加藤清政委員 河本通産大臣にお尋ねしたいと思いますが、中小企業事業転換法相関関係を持つ分野法について最初にお尋ねしたいと思います。  大企業進出によってその存在基盤を脅かされ、中小企業分野を確保したいというこの願いが中小企業の中からほうはいとして起こって、各党ともこのことに非常に熱意を持ちまして、過般の七十七国会最終日におきまして当委員会におきましてこれが決議されました。河本通産大臣は当委員会所信表明の中で、国会における決議を尊重し、中小企業政策審議会分野調整小委員会を本年七月以降設け、精力的に審議を進め、答申が得られた段階でこれに基づき可及的速やかに法案を作成したいということの御発言があったわけでありますが、具体的に、その小委員会は今日まで何回開かれ、具体的な作業はどの程度まで進んでおられるか、お尋ねしたいと思います。なお重ねて、答申が得られる時期は一体いつごろであるか、その点の見通しと見込みについてお尋ねしたいと思います。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話がございましたように、前国会最終日分野調整についての当委員会の御決議がございましたので、それを受けまして通産省では立法化作業を精力的に進めております。これに関する審議会を設けまして、去る七月以降、これまで七回委員会を開いております。問題点をずっと議論してきたわけでございますが、何分にも中小企業問題の中では最大課題でございますので、なお今後数回委員会を開く必要があろうかと考えておりますが、これまでの委員会において議論になりました問題点、それから今後のスケジュール等につきましては、中小企業庁長官から答弁をいたします。
  5. 岸田文武

    岸田政府委員 いま大臣から七回にわたって審議を行ったという旨御報告いたしましたが、正確には、つい先般さらに一回行いましたので、都合八回の審議を重ねておるところでございます。  従来の経緯を振り返ってみますと、最初の四回ほどはこの分野調整の問題の実態がどうであるかということの実態の究明に当たりました。その間、過去のいろいろなデータを集めるとか、あるいは関係中小企業の方、または大企業の方、さらに消費者の方、それぞれの方々から、この問題についての実態なり考え方意見聴取もあわせて行った次第であります。第五回以降、実質的な審議に入っております。実質審議に入りましてから後は、規制態様をどうするか、それから対象業種をどうとらえるか、それから対象企業をどう考えるか、それから問題となるべき紛争態様はどう考えるべきであるか、さらにまた中小企業自身自助努力をどう評価するか、また消費者との関係はどうであるか、こういった問題につきまして一わたり各委員の自由な意見表明をいただいたわけでございます。  主な問題につきましては以上の審議で大体一巡いたしたかと思っておりますので、これからはいわば取りまとめ段階に入るわけでございます。私どもとしては、さらに一回ないし二回の審議によって大体の方向を明らかにするということに努めたいと思っておるところでございます。
  6. 加藤清政

    加藤清政委員 いま八回小委員会において十分審議したということでありますが、いま取りまとめ段階で、あと二回ぐらい会議を開いてその中で大要が決まるのではないかというお話ですが、大体法案の提出される見通しはこれからどのくらいになるか、その点についての見通しについてお尋ねしたいと思います。
  7. 岸田文武

    岸田政府委員 取りまとめ段階におきましては、従来審議会でいただきました各種の議論を踏まえて、事務当局でいろいろいま方向づけ等の部内の検討を行っておる段階でございます。実はこれは中小企業自身の重大な問題であるというだけではなくて、日本経済のこれからの進め方、あるいは消費者利益等々、非常に広範な角度からこれに対する正しい答えを出していくということに努めなければならない問題であるというふうに考えておりますので、私どもこれからの審議におきまして、一回で御了承いただけるものか、二回かかるものか、ちょっと私どもとしてはいまの段階では判断がつきかねておる実情でございます。  ただ、いずれにいたしましても、従来から国会におきましてなるべく早く法案をまとめ提出するようにという御要望を受けたことは、私ども重々身にしみてわかっておるつもりでございますので、いずれにせよ、できるだけ早くということで今後とも努力をさしていただきたいと思います。
  8. 加藤清政

    加藤清政委員 この前、この分野法の問題については次期国会に成立させたいということで、今度も河本通産大臣から可及的速やかに法案を提案したいというお話でありましたが、次期国会というとこの七十八国会で出されるものと、中小企業十三業種の促進したいという方々が大きな希望を持っておるのですが、七十八国会にこの分野法閣法が間に合うかどうか、この点についてひとつもう一度お尋ねしたいと思います。
  9. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま長官から御答弁いたしましたように、ずっと引き続いて精力的な作業を進めておるわけでございます。何分にも大法典でございますので、若干の時間がかかっておりますが、できるだけ早くまとめたいというのが私どもの期待でございまして、この国会中には間に合わすべく努力をしておるわけでございますが、今後も引き続きまして努力を続けたいと思っております。
  10. 加藤清政

    加藤清政委員 最大努力をして、今国会中に間に合わせられるような努力をしたいという通産大臣からの御答弁があったのですが、待望久しい中小企業者分野法制定に向かって、ひとつ意のあるところをおくみ取り願って、今国会に間に合うように最大努力をお願いしたいと思います。  次いで、紙器だとか段ボール業界進出実態について通産省はどのように指導しておられるか、また、その他の問題についてもいまどう指導されておるか、ひとつお尋ねしたいと思うのです。紙器だとか段ボール業界でありますけれども、この業界に対しては製紙会社進出しております。この業界は、紙器だとか段ボールそれ自身商品として流通するのではなく、個々の需要者からの受注生産であるために、あくまでも地域需要に密着した小回り性を必要とする中小企業性業種でありますが、この業界への大企業進出によって、全国紙器工業組合連合会の昨年末の調査によりますと、わずか三千四百五十七組合員のうち、約三分の一の一千百五社が被害を受けております。この現況をどう見ておられるか、また、これに対してどのような行政指導を行っておるか、この点についてお尋ねしたいと思います。  なお、そのほかに、クリーニング業界豆腐業界青写真業界理化医ガラス業界めがね業界もやし業界、その他貴金属、装飾品業界、書店の業界、軽印刷業界葬祭業業界タイヤ業界、これらが一日も早く分野確保法をお願いしたいということで再三通産省にもまた各党にも陳情しておるわけでありますが、これらの業種実態が現在どうなっておるか、またどのように行政指導をされてこれに対応しておるか、その点についてあわせてお尋ねしたいと思います。
  11. 藤原一郎

    藤原政府委員 生活産業局長でございますが、お尋ねのございました段ボール紙器業界に関します点について御答弁申し上げます。  段ボール紙器産業は、大企業中小企業大体大企業四割、中小企業六割ぐらいの比率で領域を分けておりまして、現在のところ、大ロットのもの、あるいは特に高度の技術を要するものを大企業がやっておりまして、中小企業ロットの小さいものを各地で先生がおっしゃいましたような状態で生産をいたしておる次第でございます。これまでのところ、段ボール紙器産業におきまして、大企業営業分野の拡大が中小企業営業を非常に圧迫したというケースは余りございません。一つの例といたしましては、新潟におきまして本州ニューパックという例がございますが、当事者間の話し合い行政指導であっせんいたしまして、現在のところ円満に解決する方向にあるようでございます。  なお、製紙メーカー段ボール紙器業界へ新しく進出するというケースはいまのところないように承知いたしております。
  12. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業と大企業との間の分野をめぐる争いというのは、考えてみますと大分古くからあった問題でございますが、いま御指摘のございましたように、ごく最近、特に不況を背景にして非常に問題が次から次に起こっておるという感じがいたします。私どももこういった問題については、いままで一生懸命まじめに仕事をしてきた中小企業方々の中に突如として大企業があらわれてきて、そのためにあしたからの生活に困るというようなことになりましては、その企業としても非常に大変なことでございますし、また、日本経済全体にとりましてもやはり一種の混乱を巻き起こすということを考えまして、何とかこれを円満におさめるように、従来からも一生懸命努力をしてまいったつもりでございますし、また今後ともやってまいりたいと思っておるところでございます。いろいろの問題が起こりますたびに、通産省、特に中小企業庁には生の声がいろいろ伝わってまいります。私どもはそういう声を極力くみ取りながら、それを何とか円満におさめるということで努力をしてまいりました。  いまいろいろの業種についてお触れになりましたが、それらの中におきまして、たとえばクリーニングであるとか、ヤクルトの進出による豆腐であるとか、軽印刷の問題、理化医ガラスの問題、もやしの問題等々につきましては、両当事者話し合いを積極的に進め、その間に立って通産省ないしは関係の各省がいろいろあっせんの努力をいたしまして、一応問題が解決できたのではないかと思っておるところでございます。しかしながら、なお残された問題もござますし、また新しい問題も次々に出てくるという実情でございますので、私どもも今後とも一生懸命努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。  この問題につきましては、分野の問題についての専門の担当官も設けておりますし、また、各商工会及び商工会議所におきまして、こういった紛争の実例を調査して私どもになるべく早く情報をいただくような組織も別途用意をいたしております。今後とも積極的に対応してまいりたいと思っております。     〔委員長退席近藤委員長代理着席
  13. 加藤清政

    加藤清政委員 次に、公取委員長にお尋ねいたしますが、大企業独禁の問題あるいは構造規制の問題、これはきわめて複雑多様化しておりますので、ともすると見逃しがちでありますけれども中小企業の場合には、俗に中小企業者は目じりのしわと言って、経済の目がインフレになろうともデフレになろうとも、絶えずしわ寄せだけは中小企業に来るという実態であるわけでありますので、大企業はえてして見逃されやすいけれども中小企業には風当たりが強いというのが現状であるわけであります。公取委員長は、さきに中小企業事業分野に関する問題について独禁政策上問題があるとして、きわめて批判的ではないかというようなことが云々されましたけれども、これほどの問題になっておる中小企業分野法について、公取委員長はこれに対してどう考えておられるか、その真意のほどをお尋ねしたいと思います。
  14. 澤田悌

    澤田政府委員 この問題に関連しまして、当初、一般論と申しますか、原則的に独禁政策との調和という観点から問題の所在を指摘したことは事実でございます。しかし、私ども中小企業問題の重要性ということは十分承知いたしております。  私ども考え方は、大企業中小企業調和を図るということが大切であることは申すまでもないところでございます。独禁政策観点から申しますと、そのほかに、それと同じくらい重大な消費者問題というのがございます。したがいまして、大企業中小企業調和を図ると同時に、消費者との調和を図る方向でお考えを願いたいというのが基本的な考え方でございまして、すでに院議を尊重して、政府におきまして立法措置検討を進めておる段階でございますので、消費者を含めた三者の調和という方向立法についての御考慮を願いたいという要望をいたしておる段階と御承知願えればありがたいのでありまして、その際に、大企業はもちろんでありますが、中小企業でも消費者に対しては商品なりサービスを提供する事業者でございます。それで、その三者の調和というのが非常に大事である。大企業中小企業調和という観点から、それが競争制限的になったり、あるいは企業努力を萎縮させたり、ひいては消費者利益を阻害するというようなことにならないように、そういう御配慮を願いたい、こういうのが私ども真意でございます。御了承願いたいと存じます。
  15. 加藤清政

    加藤清政委員 事業転換法について質問をしていきたいと思いますが、最初に、事業転換法中小企業にとって果たして実態に沿うか、あるいはともすると中小企業切り捨てではなかろうかというようなことがすでに新聞紙上にも囲みとして指摘されておるわけでありますけれども、これは大変な大きい問題でありますから、お尋ねしたいと思いますが、開発途上国からの追い上げや、あるいは公害規制強化等経営環境変化によってその存続が危殆に瀕している中小零細企業の窮状を打開するために、その企業事業転換を推進するということは大変必要であるわけでありますけれども、そのことが反面、中小零細企業切り捨てに通ずるのではなかろうかというようなことも考えられるわけであります。  なぜかと申しますると、助成を受けて転換できる企業は内部に力を持っている企業が多いわけであります。現在の中小企業の大部分は経営を維持することがやっとであり、転換までは手が回らないという実態であるわけでありまして、力のある者は転換し、力のない者はその業界に残らざるを得ない。それでは本当の中小企業政策ではないのではないかという点であります。  中小企業者が現在の業種を安定的に続けられるようにするためにはどうしたらいいかという問題も当然伴って起こってくる問題であります。たとえばビッグストアの無制限的な進出などによってその立地環境が急変して、閉店や転廃業に追いやられている中小小売店については、中小小売商店立地転換をすることを助成するのではなくして、大規模小売店舗法運用強化によってその中小小売商店営業生活を守り、地域小売商業の安定と振興を図るというようなことが先に起こってくると思うのです。ところが、本案では中小企業者はその業種から転換させてしまうということでありますので、事業転換も必ず成功するというものではなく、失敗例も数多くあります。つきましては、中小企業者転換という名目で切り捨てることだと考えざるを得ないことにも通じてくることでありますが、この問題については中小企業庁長官はどう考えておられるか。
  16. 岸田文武

    岸田政府委員 いま日本中小企業者が約五百万ございます。そこに働いております従業者の数が三千万人という大きな数に上っておるわけでございます。この数字を見ましても、やはり中小企業というものが日本経済のいわば底力になっておるということが実証されておるように思うわけでございます。戦後だけを振り返ってみましても、この中小企業にはいろいろの波がかかってまいりました。しかし、そういう波を何とか乗り越えながら新しい情勢に適応していって、今日の姿になったのではないかというふうに思っておるところでございます。  私どもとしても、これから先を考えてみまして、やはりいろいろなことが予想されるわけでございます。国際経済環境がどう変わっていくか、また国内的にもいろいろの規制立法ができてまいったり、あるいは資源なり環境なりの制約が加わってきたり、こういったことが今後とも予想されるわけでございまして、こういった将来予想される波をいかに円滑に乗り越えていくようにするかということは、中小企業政策としても大変重大な課題であると思っておるところでございます。  この転換法の基本的な考え方といたしましては、こういう今後予想される新しい環境変化に対応して、自分の力で何とかこれをうまく乗り越えていける、ひとつ新しい分野自分の持っている力を発揮したい、こういう中小企業方々を激励する法律であるというふうに理解をしておるところでございまして、決していまお話のございましたような切り捨てを目的とするものではないわけでございます。  この法律の中におきましても、この適用を受けるのは、やはり基本的には中小企業者自身が自主的にこれを行うのを援助するという体制になっておるわけでございまして、中小企業自身がいままで持っております経験なり、あるいはいろいろの知識を活用し、さらにその従業員をうまく生かして、次の新しい発展につなげるということに最大の力点を置いてこの法律運用してまいりたいと思っておるところでございます。
  17. 加藤清政

    加藤清政委員 事業転換中小企業切り捨てでないという御答弁がいま中小企業庁長官からあったのですが、事業転換するということは、企業にとっては存立にかかわる非常に大きな問題なんです。その企業の持っているすべての力を投入しなければならないわけですが、しかしこのことは過去の事業転換の例から見ましても、現在の中小企業実態では経営を継続するということがやっとでありまして、とても転換のために力を割くということは容易でないわけであります。仮にできたとしても、それは力のある企業でありまして、その企業自力転換を進めることができるのでありますが、このように自力転換できる企業は、この法案によって転換をすればそれだけ、その反面、小零細企業はその対象から外されるわけであります。つまり、本当にその方途に迷っている中小零細企業転換のための法案であるかどうかということが、きわめて疑問になってくるわけでありますが、もう一度長官からこの点について御答弁願いたいと思います。
  18. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほど、従来もいろいろ工夫をしながら新しい事態に対応するというふうに申してまいりました。これが高度成長の時代でございますと、その中にあってうまく新しい分野を見つけるということがわりあいに容易でございますが、低成長になりますと、その環境は多少苦しくなるということは否めない事実かと思います。しかしながら、逆に申しますと、高度成長のときにはとかく従来の企業姿勢に安住するという傾きがございますが、これから新しい環境に対応して、安定成長の中でどう生かしていくか、むしろいまが中小企業方々としては将来の進路を一生懸命考えておられる時期になっているのではないかという気がいたしておるところでございます。  従来の転換事例を見ましても、かなりうまくいっておる事例がたくさんございます。しかし、お話のございますように、なかなか思うようにいかないで苦労した事例もございます。私どもはそういう従来の経験を生かして、この法律をうまく運用していくということが大切なのではないかと思っておるところでございます。  お話の中に、零細企業がこれによって取り残されるのではないかという御懸念がございましたが、私は、もちろんこの法律自身中小企業の中で零細のものとそうでないものと区別しようという意思は毛頭ないわけでございますが、もし零細方々が、転換したいのだけれどもなかなかそこまで力が及ばないというときには、私どもとしてもそれを一層激励するように応援の手段を考えていかなければならないと思うわけでございます。たとえば新しい情報が欲しい、あるいは具体的な指導が欲しい、さまざまな要望があろうと思います。私、これから法律ができました後、運用していくに際しましては、こういった零細方々に対して親身に相談に乗ってやり、新しい道への転換を円滑にいけるようにするということに特に力を注いでいきたい。その意味におきまして、国もそうでございますが、都道府県の指導所を活用するとか、あるいは商工会なり商工会議所経営指導員を活用するとか、さまざまの手段があると思います。これらの運用において、特に零細企業の方がおくれないように力を入れていきたいと思います。  余談でございますが、私、ごく最近経験した例でございますが、たった一人で仕事をしておられた方が、たまたま最近仕事が余り順調でない、何かいい知恵はないものだろうかということで、中小企業庁に御相談に見えた事例がございます。その方の相談に乗りまして、いろいろ私どももお手伝いをしました結果、その方が自転車の小売業といういままで全然経験しなかった新しい分野でまず人並み以上の成績を上げておられるという事例を、私自身経験として持っているわけでございまして、御懸念のようなことのないように今後とも一生懸命やってまいりたいと思います。
  19. 加藤清政

    加藤清政委員 次いで、業種指定の態度について長官にお尋ねしたいと思うのですが、転換業種指定に当たっては十分な注意が必要であります。転換業種指定されたために衰退業種として見られたり、関連業者からの取引が悪化したり、市中銀行からの融資を断られたり、従業員企業の先行きを心配して勤労意欲をなくしたりすることが大変懸念されるわけであります。  特に、一昨日大きな問題として指摘されました中小企業に対する市中銀行拘束預金、この問題が大変大きな社会問題になっております。特に歩積み両建てあるいはにらみ預金、こういう問題が中小企業の金融の円滑を根底から覆しておるという実態も、大きな社会問題として一昨日取り上げられてまいりました。  こういう実態でありますから、事業業種転換をするということは、即信用の問題あるいは取引の問題、そういう問題から大きく影響を受けるわけであります。それを防ぐには、業種を狭く限定するということだけではなくして、広範囲に包括的な指定をしていくことが大変望ましいのではなかろうか、こういう点について通産当局は業種指定に当たってどのような態度をもってこれに対処していくか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  20. 岸田文武

    岸田政府委員 私どもの気持ちとしましては、むしろ業種指定を機会に次の新しい飛躍が期待できるという前向きのとらえ方をしておるわけでございますが、とり方によってはいまのような懸念を持つ向きもあり得るわけでございます。たとえば、銀行の方が心配をいたしましたり、あるいは関連業種が心配をいたしましたり、あるいは従業員が士気阻喪したり、こういうことを懸念する向きもあろうかと思います。私どもはそういうことのないようにいたしたいと思います。  そこで、業種指定に当たりましては、いまお話にございましたようになるべく広い範囲で指定をするというやり方をやっていきたいと思っております。さらにそれに加えまして、業種指定するに際しましては、中小企業近代化審議会意見を聞きましたり、さらにまた業界方々自身にも率直な気持ちを話してほしいということで御相談をした上でこれを指定するというようなやり方が、一番実情に即したやり方になるのではないかというふうに思っております。また、産地の場合には地元の都道府県知事の方々意見も聞くというようなやり方をこの法律では予定しておるわけでございます。  いまお話しのような御懸念のないように、この法律の趣旨なり考え方、こういったことをなるべく広く徹底を図りたいと思っておるところでございます。
  21. 加藤清政

    加藤清政委員 いま業種指定の態度についての問題については、かなりきめ細かな配慮をしておりますし、でき得べくんば広範囲の包括的な指定を行いたいというような御答弁がありましたので、その線に沿って、鋭意転換業種に対する態度をひとつ堅持していただきたいと思います。  次に、中小企業近代化審議会転換部会を新設すべきではないか、この点について通産大臣の御答弁をひとつお願いしたいと思います。  転換業種指定に当たっては、主務大臣中小企業近代化審議会意見を聞くことになっておりますが、現在中小企業近代化審議会には総合、大蔵、厚生など十六の部会がありますが、転換のための一番必要な部会はありません。そこで、審議会の中に事業転換のための部会を設けるべきであると考えられますが、大臣はこの点についてどのようにお考えになっておられますか、お尋ねしたいと思います。
  22. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのような方向でいま準備をしておるところでございます。
  23. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業近代化審議会にいまございます部会の中で、国際部会というのがございます。これを改組して事業転換部会を設置するという考え方でおるわけでございまして、この考え方につきましては、今年三月十六日の総合部会政策小委員会で御了解を得ております。正式には法律ができました後に審議会を開催して決定をしていくような運びを考えておるところでございます。
  24. 加藤清政

    加藤清政委員 転換部会を設けるということで大変大英断であろうと思いますが、そのように中小企業事業転換をするためには転換部会を設けて、実際にこの事業転換に寄せる諸問題の態様をひとつお考え願いたいと思います。その点、いま転換部会を設けるというお話でございましたので、わが意を得た思いであります。  また、現在の中小企業近代化審議会の構成メンバーは、学識経験者が六名、金融機関の代表が十名、産業界中小企業団体の代表が十七名、労働者の代表が二名、消費者の代表が一名、地方自治体からは二名の構成メンバーでありますけれども、労働者、消費者の代表がこの比率に比してきわめて少ないと思うわけであります。そこで、審議会委員に労働者、消費者の代表をもっと入れていくべきではなかろうか、そうして、特に転換のための部会には労働者の代表を入れて、転換に伴う重大な雇用不安に対応する問題等を考えていくべきではなかろうか、この点について大臣の所信をお伺いいたします。
  25. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話しのように、審議会には各界の代表が入っていただいておりますが、労働界、それから消費者の代表も入っていただいております。人数の点についてお話がございましたが、ただいまのところは人数を変更する計画はございませんが、せっかくの御提案でございますから、今後の課題として検討させていただきます。
  26. 加藤清政

    加藤清政委員 ひとつぜひ労働者、消費者の人数をふやして、単に人数をふやすということだけでなくして、転換に伴う労働不安の問題に対応していかなければならないと思いますので、その点、ひとつ十分御考慮のほどをお願いしたいと思います。  次いで、転換先の業務との摩擦の問題、あるいは転換に当たって労働者との関係の問題、これをお尋ねしたいと思います。  まず、転換先の業種でありますが、すべての中小企業は不況とインフレの波をもろにかぶり、景気のしわ寄せを常に受けてきたわけであります。しかし、その中で中小企業は、みずからの努力と、その中に占めたバイタリティーと申しますか、そういったようなことで克服してきたのでありますけれども中小企業は自己を犠牲にした大きな経営努力をして自分たちの業界を守り続けてきたわけであります。そこへ転換対策によって新規参入者が入ってくることになりますると、新規参入者は金融、税制で優遇されておるわけでありますから、既存の業者は大変不利となることは火を見るより明らかであるわけであります。既存業者との間に当然摩擦を生じると思いますが、これに対してはどのような調整と対応を考えておられるか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  27. 岸田文武

    岸田政府委員 これから転換を図るという企業にとりましては、なるべく有利な業種を探して、そこで新しい活動をしようというふうに考えるのではないか、そういう意味からすれば、やはり将来性のある業種というものを選ぶのが普通ではないかと思います。しかし、事業転換には考えてみますと本当にさまざまな態様があるわけでありまして、そういう分野だけというわけにはまいりません。いろいろな分野があり得るだろうという感じがいたします。そこで、出かけていった先で既存の企業とのトラブルが起こるということになりますと、やはりまた新しい問題ができてくることになるわけでございまして、そこは何とかうまく工夫をしていかなければならない課題であると思っておるところでございます。  そこで、これから転換を進めます場合のいわば一つの物差しというか、目安として、次のようなことを考えております。  たとえば団体法に基づきましてアウトサイダー命令が発動されている業種、こういった業種が代表的な事例になると思いますが、いわば転換先において既存企業がすでに著しく過当競争にあるということが明らかになっている場合には、これはもう転換先として認めない、こういうルールをつくってはどうかなと思っております。  それから、それに準ずるいろいろな事態でございますが、たとえば近代化促進法に基づいて構造改善事業をやっておるとか、あるいは新分野進出事業をやっておる、これはいわば業界ぐるみで新しいあり方を模索しておるという段階でそれが進行しておる、あるいはそれがようやくできた、こういった業種の場合には、何らかの調整措置を考えた上で転入を認める、こういった工夫が必要なのではないかと思っておるところでございます。さらにまた、他の特別の振興法があるという場合もこれに準じて考える必要がございましょうし、さらに広げてみますと、団体法に基づく自主調整事業をやっておる、先ほどのようにアウトサイダー命令が出ていなくても、自主調整事業をやっておるというようなときには、やはり従来の団体の中のいろいろの調整問題というものを考えていかなければならないわけでございまして、こういった各般の課題を抱えているときには、従来の事業の妨げにならないということに配慮して指導してまいりたいと思っておるところでございます。  それから、もし入りましても、その業界のいままでの業界ぐるみの事業に参加をして一緒にやっていけるような形で転換をしていく、こういう指導も必要なのではないかと思っておるところでございます。これはなるべく個々のケースごとに実情に即して相談に乗り、計画を認めていく、この辺を特に気をつけてまいりたいと思います。
  28. 加藤清政

    加藤清政委員 次に、転換に当たって、従業員との関係、特に労働組合との調整の問題、こういう問題についてお尋ねしたいと思います。  企業事業転換をするということは、その企業で働く労働者にとってはその将来を大きく左右する非常に重要なことでありますから、転換計画の認定を申請するに当たっては、雇用保険法による雇用調整給付金と同じように、当該企業の労働組合の承認を必要とすべきであると考えられます。たとえば雇用調整給付金を受けるためには、雇用保険法施行規則第百十三条によって、労働組合との間に、一、休業の期間、二、対象となる労働者の範囲、三、手当の支払い基準等について協定が必要であると法定されておりますけれども、このことからいたしまして、当該企業の労働組合の承認を必要とすることが最も円滑かつ協調的、妥当であろうと思いますが、この点についての見解をお尋ねいたします。
  29. 岸田文武

    岸田政府委員 転換の役割りといたしましては、従来その中小企業が持っておりました資本なり知識なりあるいは従業員をいかにうまく活用するかということが課題になるかと思いますので、その意味からいたしますと、従業員の理解と協力なくしてはこの転換が円滑に進まないという御意見はまことにごもっともではないかと思います。したがって、転換計画を作成するに当たっては、やはり従業員、もし組合があるときには組合と十分相談をして、企業ぐるみとして一体となって新しい分野で活躍できる、こういうようなことができますように十分指導してまいりたいと思います。
  30. 加藤清政

    加藤清政委員 転換計画の作成に当たっては、十分従業員、特に労働組合等があればその組合等の意見を聞きながら転換計画の作成に当たっていくといういま長官の御答弁があったわけですが、特に転換に当たってはそういう問題が大きな問題になろうと思います。雇用の不安を醸し出す転換の中身というものは何といっても一掃していくための行政的な配慮というものがきわめて重要になるわけでありますので、その点についてはひとつ十分御考慮のほどをお願いしたいと思います。  次いで、定期報告の義務の問題についてお尋ねいたします。  商工組合中央金庫の調査によりますると、事業転換をした企業のうち三六・三%は実は失敗しておるわけであります。そこで、認定計画の実施状況について定期的に報告をさせるべきであろうと考えられます。今回の法案では、「報告を求めることができる。」いわゆる「できる」ということになっておるわけでありまして、転換の失敗などによる事例が商工組合中央金庫の調査にも挙げられておるわけでありますが、特に雇用の悪化を防止するために、またその対策を直ちに対応できるようにするためにも、定期的な報告を義務づけることが最も妥当ではなかろうかと考えられますが、それに対する見解についてお尋ねしたいと思います。
  31. 岸田文武

    岸田政府委員 私どもといたしましても、この法律ができまして、中小企業方々がそれを機会に新しい分野で活躍されるということにつきましては、やはり後々までも気になることでございまして、何とかこれがうまくいってほしい、その状況も知っておきたいと思っておるところでございます。また、それが仮にうまくいきませんでも、やはりそのうまくいかなかったことの経験というものをくみ取って、次の転換に際してその知恵を活用するということ、あるいはまたその反省を活用するということも大切なことではないかと思っておるところでございます。  したがいまして、私どもは、この法律ができました後も、転換をしたという事例につきましては、自後も追跡調査をなるべくやっていきたいというふうに思っております。どういうやり方をやるかというようなことにつきましては、これから部内でいろいろ相談をいたしますが、御趣旨はごもっともと思いますので、できるだけやってまいりたいと思います。
  32. 加藤清政

    加藤清政委員 河本通産大臣から、また中小企業庁長官から、きわめて前向きな姿勢で御答弁があったわけであります。ひとつその方向に沿って、いま言われました国民の三分の一を占める中小企業従業員実態を踏まえて、むしろ日本産業構造を抱えておるのは中小企業あるいは零細企業の人たちであるということをお考え願いまして、いままでの質問についての御答弁はきわめて前向きでありましたので、その方向に沿ってひとつ事業転換に対応していただくよう要望しておきます。  最後に、労働省にお尋ねしたいと思います。  雇用保険法の関係ですが、事業転換をする企業に働いていた労働者が事業転換のためにやむを得ず失業した場合には、失業給付の基本手当の給付を雇用保険法第二十三条の個別延長給付の対象とすべきであると考えられます。所定給付日数は、言うまでもなく九十日から三百日以上、再就職の職業紹介訓練ということになるとさらに一年が加えられまして、五十五歳以上の者には六百六十日という訓練中給付があるわけでありますけれども、これは政令で定められておるわけでありまして、この個別延長給付の対象、これを事業転換の場合に起こった失業に対して適用する意思があるかどうか、それから適用できるかどうか、この点についてお尋ねしたいと思います。  また、職業訓練を受ける場合には、同じく第二十四条の訓練延長給付の対象とすべきであると考えられますが、この点どうお考えになっておるか。  また、雇用保険法の第二十三条、第二十四条の法解釈の中では、あるいは所定給付の問題、再就職の問題がいわゆる法の範疇にいま入っていないにしても、これは早晩拡大解釈してこれを適用すべきではなかろうか。中小企業事業転換という大前提の前に、そういう拡大解釈をして対応できるかどうか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  33. 北村孝生

    ○北村説明員 中小企業事業転換に伴います雇用対策につきましては、私どもは基本的にはその事業転換に伴ってなるべく離職者を発生させないことが望ましいという考え方に基づきまして、雇用保険では現在事業転換のための公共職業訓練について奨励金を支給するというような措置を講じておるところでございます。今後はさらにこれらの失業予防措置というようなものを拡充強化するように、現在鋭意検討中でございます。  万一、事業転換に伴いまして離職者が発生いたしました場合には、もちろん公共職業安定所は所定給付日数内に再就職ができますように、職業相談、職業紹介というようなことで最大努力をしているところでございます。その中で、特に再就職のために職業訓練を受ける必要があるというふうに認定いたしました者については、公共職業安定所の指示した公共職業訓練を受ける期間、一年を限度といたしまして給付日数を延長することができることになっております。したがいまして、訓練延長につきましては中小企業事業転換の場合も適用されるわけでございます。  また、個別延長につきましては、所定給付日数内に再就職する見込みがなくて、特に職業指導等の援助をする必要があるというふうに安定所長が認定をした場合に、一定の要件のもとで行うものでございますので、いわば個別に認定をいたして行うという制度になっております。したがいまして、この中小企業事業転換に伴う離職者を一律に直ちにその対象とすることは制度的にはできかねますけれども、個々の受給者の実情に応じまして制度の円滑な運用を図ってまいりたい、このように考えております。
  34. 加藤清政

    加藤清政委員 法律というものは、時々刻々の変化、しかも内外情勢の激変の中で、従来ある法律をそのまま適用するということは当然なことでありますけれども、その時代に合った問題に対応していかなければならぬと思うのです。特に、高度経済成長政策がずっと続けられたメリットとして、賃金の問題、労働の問題、環境の問題、外貨の問題が、高度経済成長政策のパターンとして従来産業構造を維持してきたわけですが、特に石油ショック以来低成長に移行して、不況とインフレの同時に進行するスタグフレーションという、かってない経済にぶつかったわけであります。したがって、特に発展途上国の追い上げはすさまじいものがあるわけでありまして、これに伴う事業転換というものは、好むと好まざるにかかわらず、今後大きく揺れ動いてくると思うわけであります。したがって、企業ぐるみの転換ということがこれから多様化してくると思うわけでありますが、この企業ぐるみの転換に対して抜本的な対策が立てられていかなければならないと思います。  たとえば、雇用を安定するためにはどのようにしたらいいか、基金でも積み立てて、政府資金を導入して、それに対応していくかどうか、こういう問題も当然考えられておらなければならないわけであります。しかも、明年度の予算はすでに各省とも組まれておると思いますが、今後起こり得る企業ぐるみの転換、こういう問題に対応して、労働省はどのような立場をとり、どのように大蔵省と折衝しておるか。これは労働大臣から聞けば一番いいのですが、ひとつおたくからこの点について御答弁をお願いし、また個別延長給付やあるいは訓練延長給付も行政指導の中で拡大解釈してできるように対応し得る、このような措置も考えてしかるべきではなかろうか、こういう点についてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  35. 北村孝生

    ○北村説明員 事業転換に伴います離職者の発生は、先ほども申し上げましたように、私どもとしてはできるだけ防止をしたいという考え方に基づきまして、失業の予防のために、事業主の方ができるだけ従業員を雇用したまま事業転換ができるようにという形の諸種の援助措置を雇用保険の事業の中で何とかしたいということで現在検討中であり、事務的には関係各省と折衝を進めておるところでございます。そういう方向で前向きに検討いたしております。  それから、個別延長給付なり訓練延長給付の運用の問題につきましては、法律制度の許す限りの範囲内で前向きに運営をいたしておるところでありますし、今後ともそのような方向で円滑な運営をいたしてまいりたいと思っております。
  36. 加藤清政

    加藤清政委員 いままで私は、雇用安定に対する抜本的な対策について、労働省は明年度予算の中にどのように大蔵当局との折衝をしておるか、この点について質問したわけであります。特に雇用安定に対する対策というものは、これから基金の上においても何らかの措置をしなければならないと思いますが、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
  37. 北村孝生

    ○北村説明員 私の所掌範囲でお答えすることを許していただきたいと思いますが、雇用保険事業の中で、保険料は現在千分の十三という料率になっておりますが、そのうちの千分の八は事業主の負担であり、千分の五は労働者の負担でございます。その千分の八の事業主の負担の中の千分の三というものを使いまして、先ほど申し上げました事業転換の際の公共職業訓練受講のための給付金であるとか、あるいは訓練に派遣するための奨励金であるとかというような事業をその一環としてやりまして、そのことによって離職者を発生させないで、企業従業員を抱えたままで事業転換がスムーズにいけるようにということのお手伝いをさせていただいておるわけでございます。  この雇用保険料の千分の三の部分を使いました事業を、今後さらにこういうふうな中小企業事業転換のための雇用安定のために活用してまいりたいということで現在いろいろ構想を練っておりますので、そういう方向で雇用安定のためのもろもろの施策を検討中であるというふうなことで御了解をいただきたいと思います。
  38. 加藤清政

    加藤清政委員 大変くどいようですが、重ねてお尋ねしますが、事業転換のための雇用安定に対応するためにいまいろいろ検討中だというお話があったのですが、五十二年度の予算の中に労働省としては雇用安定基金を設定して、事業転換に対する雇用安定対応策として考えておられるというようなことを私は仄聞したのです。この点について、労働省としては強い信念を持って事業転換に対する雇用対策に対応する、そのためには雇用安定基金を設定してこれに対応するということが現在考えられ、大蔵当局と鋭意折衝中であるやに聞いておるのですが、この点いかがでしょう。
  39. 北村孝生

    ○北村説明員 雇用安定基金という名前がまだ最終的に決まったわけではございませんけれども事業転換、それから景気変動の場合の雇用安定対策を含めまして、比較的好況なときにいまの千分の三の保険料の中で資金をためておきまして、事業転換が盛んになったとき、あるいは不況のときにそれを弾力的に使用できるという形の構想を現在考えております。それがただいま先生のおっしゃられた雇用安定基金と言われるものであろうと思います。
  40. 加藤清政

    加藤清政委員 大体質問時間が過ぎましたので、雇用安定については十分なる配慮を払うということでありますので、私はまた予算委員会でこの問題を追及してまいりたいと思います。終わります。
  41. 近藤鉄雄

    近藤委員長代理 次に、上坂昇君。
  42. 上坂昇

    ○上坂委員 中小企業事業転換対策臨時措置法案について質問をいたしますが、初めに、昭和五十年度の倒産件数について、どのぐらいあるか、これをお知らせしていただきたいと思います。
  43. 岸田文武

    岸田政府委員 五十年度の倒産件数は、東京商工リサーチ調べによりまして、負債金額一千万円以上のものを数えてみますと、合計で一万三千二百二十四件になっております。
  44. 上坂昇

    ○上坂委員 倒産件数の多い業種を発表してください。
  45. 岸田文武

    岸田政府委員 ただいま手元に正確な数字を持っておりませんが、記憶によりますと、業種といたしましては不動産及び建設、こういった関係業種が多いこと、それから繊維業がかなり多いこと、それから一般機械がかなりの数に上っておるというようなことが記憶に残っております。
  46. 上坂昇

    ○上坂委員 これらの中小企業倒産のよって来る原因、これをどういうふうにお考えになっている。か。倒産のいわゆる特徴といいますか、そういうものはどういうものですか。
  47. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほど五十年度の倒産件数についてのお尋ねがございましたが、私どもとしても、倒産の状況については非常に強い関心を持って見ておるところでございます。五十一年度になりましても、九月までで合計しますと、七千四百八十件という数でございます。月別に見ますと、昨年九月以降毎月千件以上の水準が続いておる、こういう状況でございまして、さらにごく最近、千二百件ないし千三百件というような高い水準にまで達しておるところでございます。    〔近藤委員長代理退席、前田(治)委員長    代理着席〕  従来の不況のときにも、金融の引き締めが緩和されて後なお倒産件数が非常に高い水準で尾を引くというようなことは、経験上もあったわけでございますが、今回の不況の場合には、従来と比べましても非常にその尾の引き方が長い。しかも、金融を緩和し出してからある程度たっているにもかかわらず、逆にふえてきておるというようなところは、今度の不況がいかに長く、また厳しいものであったかということを物語っておるような感じがしております。  原因につきましては、いろいろな調査がございます。ただ、それらの調査に共通して言えますことは、やはり主力が販売不振ということが一番大きなウエートを占めておること、それに加えまして、関連企業がうまくいかなくなったからというようなことでつまずいておる事例も若干ございます。これらのケースはいわば景気の動向に左右される要因でございまして、別に設備が過大であったからとか、どうも放漫経営であったからというような事情もございますけれども、どうもやはり今回の倒産状況の特色としては、景気の影響というものが非常に強くあらわれているということが言えるのではないかと思っております。長い不況の期間を通じまして、企業としても何とか生き延びるような最大限の努力を払ってきたと思いますし、そのためにいままでの資産をできるだけつぎ込んでこの乗り越え策を図っていきたい。その間にあって、金融機関からも極力応援を仰ぎ、関係のところからも金融をつけて、何とかかんとかしのいできておったのがどうも余り長くなり過ぎて、もう一歩、もう一歩と思っていたのが、なかなか明るいところまで到達しない、いわば信用がかなり限度に来ておるというようなことがその背景にあるのではないかという感じがいたします。私どもとしては、こういった実情の中から、もうしばらくたてば景気が本当に安定をして向上する時期が来るので、その間を何とか倒産を極力防いでいくというためにいろいろな手を打っていきたいと思っておるところでございます。  当面の対策といたしましては、政府系三金融機関を通じまして機動的に金融をつけていくということでございますとか、信用保険制度を活用いたしまして倒産関連企業への波及を防止するとか、こういった手を組み合わせまして、極力倒産をふやさないように最大限の努力を払ってまいりたいと思っております。  ただ、やはり基本的には、景気が輸出のようなものだけに支えられているのではなくて、消費も伸び、投資も伸び、公共事業も伸び、広範な需要に支えられて回復をしていくということが大切なのではないかと思っております。
  48. 上坂昇

    ○上坂委員 いまおっしゃったように、石油ショック以来、高度成長路線といいますか、その高度成長路線から安定成長路線に変わってきている、そうした条件の変化によって景気が非常に下降線をたどってきた、そういうところから非常に大きな影響を受けている、こういうふうにおっしゃったわけですが、いままでの倒産を見ますと、五十年度だけでも一万三千二百二十四件、このうち資本金が一千万円以下の企業がほとんどであるというふうになっているわけでありますが、その割りにやはり大企業というのは安定路線、不景気にもかかわらず利益率にしましてもそんなに下向いていない。自動車産業なんか見ますと、かえってものすごくもうかっているという状況すら出てきている。こうなりますと、結局大企業を中心としたいわゆる安定路線の政策というものがむしろ中小企業の方にしわ寄せになってきているというのが一番大きな原因ではないかというふうに私は見るわけでありますが、そうした私のような考え方というのは政府としては違うのかどうか、その点について御意見をいただきたいのです。
  49. 岸田文武

    岸田政府委員 最近の生産指数の動きを見ますと、ことしになりましてから逐次向上しつつあるということが全般的な姿として言えるかと思いますが、これを大企業中小企業と分けて見ますと、中小企業の場合には、今回の不況で落ち込んだ谷を約六割程度埋めたというところまで回復したと言えるのではないかと思います。これに対して、大企業の方は八割程度まで回復しておるという感じでございますので、総体としては中小企業の回復がややおくれておるという感じがいたします。  ただ、そうは申しますものの、これは業種によって非常に違いがございまして、輸出が非常に活況であるというような業種に関連する中小企業の場合にはまずまずのところまで来ておりますが、そうでない業種も非常にたくさんあるということが問題ではないかと思っておるところでございます。  この間、大企業中小企業との関係でございますが、大企業中小企業とは、多くの場合、原材料の供給あるいはそれの購入という関係で結ばれておったり、あるいは製品の加工という関係で結ばれておったり、いわば持ちつ持たれつの関係にある場合が非常に多うございます。もちろん、中小企業が独自の個性を発揮し、能力を発揮する分野も多々あるわけでございますが、大企業とやはり密接不可分の関係にある業種もかなり多いことは御承知のとおりでございます。したがって、業者が切り離してどうこうというよりは、両方が一体になって何とかこの不況を克服していき、次の新しい発展につながるようにということを私どもも考えておるところでございます。
  50. 上坂昇

    ○上坂委員 いまお話を承ったのですが、現在のこの不況下では、経済危機というようなものに藉口して、巨大企業が合理化を強行するわけですね。いつも言われるような安全弁としての中小企業がその犠牲になってくる。いまおっしゃったように、関連中小企業がその一番犠牲に入るわけであります。そうして、関連企業を再編するとか、あるいは切り捨てていくとかという形で巨大企業はこの苦境を乗り切っていくというようなところがら、かなりいまの倒産のような状況というものが促進をされてきているのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  もう一つは、こういう時代になりますと、大企業から下請のたとえば関連事業に対する取引条件といいますか、そういうものは非常にシビアになってくる、そういう条件を押しつけてくるというようなことが、倒産に非常に大きな原因になってきているのじゃないか、こういうふうに私は思っているわけですが、その点はいかがですか。
  51. 岸田文武

    岸田政府委員 下請中小企業の状況につきましては、私どもも定期的な報告をとってその状況を監視をいたしております。ごく最近出ました報告を見ておりますと、下請中小企業は、注文の量としては一時に比べてかなりよくなったという答えが多いように思います。ただ、値段の方は思うほど回復していない、こういった姿が全般的な姿ではないかと思うわけでございます。  今度の不況を乗り切るべく、下請企業としても一生懸命やってきておりますが、しかしやはり下請企業なりのいろいろの悩みもあるわけでございまして、私どもはそういう悩みにこたえながら適切な手を打っていくということが非常に大事なことのように思っておるところでございます。  下請企業対策としては、まず親企業が下請のことをよく考えて、長い目でそれを育てていくということが特に大切でございまして、この面での指導をいろいろの業種にわたって行っておりますが、それに加えまして、いまお話にございました下請代金の支払い遅延の問題、私どもとしても、今度の不況を通じまして特に国会から非常にいろいろの強い要望があったことは十分承知をいたしておりまして、この面での対応策も十分やっていきたいと思っておるところでございます。下請企業に対してかなりの数の調査をし、その中で問題があるものにつきましては、すぐ是正措置を講ずるとか、あるいは公取へ通報してしかるべき措置を講じていただくとか、こういったことも積極的にやってまいりました。その件数も非常にふえてきております。  それから、下請企業の場合にはやはり金融が非常に大きな問題でございます。そこで、中小企業三機関におきまして貸し出しをする場合に、経営基盤の弱い中小企業に配慮をするようにということはかねがね言ってきておりますが、これらの企業の貸し出しの中で、どうしても期限が来て返せないというようなときには、それはケースを聞いて機動的に対応するように、こういうこともあわせて三機関の方には申しておるところでございます。  さらに、それらの措置を補完するための中小企業信用保険法に基づく措置といたしましては、不況業種指定を行うとか、その他資金繰りがつかないために倒れてしまうというようなことが極力ないようにということで配慮してまいっておるつもりでございます。
  52. 上坂昇

    ○上坂委員 たとえば繊維産業なんか見ても問題があります。それから、伝統的工芸品なんかの問題を見てもそうですが、発展途上国の製品の追い上げというものによって中小企業の輸出製品の市場が縮小したり、あるいはそうした製品の輸入増によって内需面が停滞をしてくる、その結果中小企業の倒産というものが起こってくるというような問題が非常に多くなってきているのじゃないかということが見られると思うのです。こういうことについてひとつ御意見をいただきたいのと、もう一つは、これに関連をいたしまして、大資本がいわゆる経済協力と称して資本の輸出を図って、海外にいろいろな企業を、合弁であるとか、あるいは直接に経営するとかという形で配置をしていく。そうした海外における生産基地の配置というようなものの中から、それが日本のいまの中小企業経営というものを非常に大きく圧迫をしているというふうに考えられるわけであります。こうした面についての所見をひとつ承りたいと思います。
  53. 岸田文武

    岸田政府委員 発展途上国の工業化の動向というのは、これからの中小企業にとって非常に注目しておかなければならない重要な要素であるというふうに考えております。従来の事例をいろいろ尋ねてみましても、単純に労働だけに頼っておるような商品の場合には、いま御指摘がございましたように、やはり発展途上国の工業化が進展するに伴って、わが国の輸出は次第に発展途上国に置きかえられていくというような傾向が見えております。たとえば合板であるとか、あるいは綿織物であるとか、こういった事例の場合には、かつてはアメリカの輸入の大部分を日本が占めておったわけでございますが、最近ではほかの工業国、特に発展途上国の製品のウエートが次第に増しておるということが数字にもあらわれておるところでございます。さらにそれに加えまして、単に輸出だけではなくて、日本の国内市場におきましても、発展途上国産品が次第にそのシェアを増してきておる商品も幾つかございます。  こういった状況に対して中小企業としてどう対処していくか、ここはじっくり考えておく必要があるのではないかというふうに思っております。いたずらにそういうことはけしからぬというふうに申しても、これはいつまでも続くわけのものでもございません。また、かつて日本も一生懸命それでもって輸出を伸ばしてきたという経験もございます。これらのことを考えてみますと、やはり長期的にはこれらの新しい情勢に適応するように中小企業自体の体質を変えていくということが基本になるのではないかというふうに思っておるところでございまして、いままでやっていた商品について、発展途上国ではまねのできないような何か新しい工夫というものを考え、それを製品化していくための努力というものが特に重要になってきているのではないかと思うわけでございます。  しかし、そうは申しましても、それは一朝一夕にできることではございません。しかし、そうかといって発展途上国からの輸入を抑えるというようなこともできかねるわけでございまして、そこは、一方では秩序ある輸入を輸入業者に呼びかけながら、やはり急速に体質を改善していくというために最大限の努力を払い、政府としてもそれを応援していくという姿勢が大切なのではないかと思っておるところでございます。  それから第二番目に、いまの問題に関連しまして、海外投資についてどう考えるかという点のお尋ねがございました。いま日本企業が幾つか海外に進出して、そこで日本に必要な原材料を製造したり、あるいはそこを基地として第三国へ輸出したりというようなことが次第に活発になってまいりました。日本のように土地が狭い、また環境についての制約の大きいところでは、やはり日本の中だけですべてを賄おうといいましてもおのずから限界があるわけでございまして、海外においてそういった新天地を開拓するというようなことも、今後の日本経済の戦略にとっては大きなファクターであろうというふうに考えるわけでございます。  その間にありまして、中小企業自身の海外投資でございますが、これもかなりの数出ておりますし、また、地域もいままでのように東南アジアを中心とした限られた地域だけではなくて、かなり世界的に広く進出をしておるということが言えるかと思います。これは、本当に活力のある中小企業方々がそこで新しい機会を見つけ、それが日本経済のためにもなり、世界経済のためにもなるというようなことであれば、積極的に応援をしていきたいというふうに思っておるところでございます。  ただ、それの反面として、海外でできた製品が日本へ逆流することにより日本経済に打撃を与えるおそれはないか、あるいはその製品が海外で日本自体から直接輸出される商品と競合関係になって、日本経済を混乱に陥れる心配があるのではないか、こういった点の御懸念が先ほどちょっと触れられたような気がいたしますが、私どもといたしましては、そうだからといって投資をストップするとか制約するというようなこと、これは場合によっては必要な場合もあろうかと思いますが、それであるよりは、やはりそういった大きな流れの中でどうやって日本中小企業を守り育てていくかというような積極的な対応をできるだけやってみたい、それをやれるだけやってみた上で次の対応を考える、こういったことが大切なのではないかと思っておるところでございます。
  54. 上坂昇

    ○上坂委員 いまおっしゃったようなことから、労働力を主体にした製品というものではなくて、体質改善をして、いわゆる構造改善をやるとか、あるいは知識集約をするとかというようなところへ進めていって競争力をつけていくというふうにいままで政策が出てきたのだろうと思います。と同時にまた、現在の状態では海外に新天地を求めて進出をすることはやむを得ない、したがってそういうもののはね返りもまたやむを得ないというふうな形にずっと時代が進んでいる、こういうお考えだろうというふうに思うわけでありますが、そこで中小零細企業としてはそういう状態の中で生きる道を見つけていかなければならないという御意見だと、こういうふうに思ったわけであります。  そこで、問題なのは、いまおっしゃったように、日本自体の産業構造の再検討であるとか、あるいは合理化、再編成というようなものがやはり中心になってきて、そしてそれに対応するような中小企業対策として浮かび上がってきているというのがいまの転換事業に対する考え方ではないかと、私はこういうふうに思うのですね。いままで通産省として、事業転換という言葉についてはむしろ禁句だったような気がするのです。なるべくそういう言葉は使わないようにして、中小企業事業転換をさせたり、あるいはそれは倒産とかなんかにいろいろつながってきますから、そういう形のものを出すということはなるべく避けてきたというふうに思うのですね。それが最近、この七、八年来こういう言葉を言わざるを得ないような状況になってきたというところに、高度経済成長の時代と、そこを経過したいまの安定成長時代の問題があると、こういうふうに私はとらえているわけであります。  そこで、いま盛んに今度は転換転換というような言葉をどんどん言い始めている。われわれから言うと、少しキャンペーンを張り過ぎているのじゃないか、こういうような感じもするわけでありますが、中小零細企業の対策を進めるというイメージを中小企業の方にいま言ったキャンペーンによって植えつけていって、おまえたち自身何とかしなければだめだよというような形での政策をとってきているのじゃないか、こういうふうに私は感ずるわけですよ。その点はどうでしょうか。
  55. 岸田文武

    岸田政府委員 いままで中小企業方々が非常にいろいろの苦労を重ねながら、今日のりっぱな中小企業日本経済のいわば底力と言うべき中小企業に育っていったわけでございますが、やはりその背景には、日本中小企業というものが、ほかの国と比べて恐らく言えるのだろうと思いますけれども、一番機敏に情勢を判断し、そして自分の力を絶えず新しい情勢に適応するように変えていく、こういうことが積み重なって今日に至ったのではないかというふうに思っております。  転換という言葉が一部には暗いイメージを持って迎えられておるかもしれませんが、私自身の考えております転換というのは、やはりこういった新しい情勢に対する適応力というものを指し示しているのではないか、こういう適応力がいかに発揮されるかということが、これから日本経済がたくましく伸びていき、その中で中小企業がりっぱに育っていくためには今後とも特に大切なことなのではないかというふうに思っておるわけでございます。転換というものを何か一種の衰退産業の安楽死というふうなイメージでとらえるのは間違いでございまして、中小企業の持っております本来の活力を新天地で発揮させる、こういう意味合いで理解すべきものではないか、こう思っておるところでございます。
  56. 上坂昇

    ○上坂委員 いままでも中小企業近代化促進法あるいはドル対法、特恵法というようなものによって事業転換の助成措置がとられてきたわけですね。しかし、現在までの施策というものが中小企業が直面している事業転換について適応していないというところから、もっと幅広く総合的にこれに対処しよう、こういうふうに言われているわけですが、ここのところは非常にのみ込みにくいのですね。  まずお聞きしたいのは、いままでの形で、いま言いました近促法であるとかドル対法とかいうようなものによって事業転換のいわゆる助成をした業種、それをひとつ挙げてもらいたいのです。それから、特にその成功した例を挙げてもらいたいというふうに思うのです。  もう一つは、それと関連をいたしまして、近促法の新分野進出計画制度というものが出たわけです。この計画制度というのはどういう効果を上げてきているのか、この辺のところをひとつ具体的に話をしてもらいたい。   〔前田(治)委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 岸田文武

    岸田政府委員 需要構造の変化等によりまして積極的に事業転換を図り、それによって中小企業が次の新しい発展へつないでいく、こういったことは中小企業基本法でもうたわれている精神でございますが、こういった精神を頭に置きながら、従来特定の局面におきまして転換の円滑を図るためにいろいろの対策を講じてまいりました。  それらの実績についてのお尋ねでございますが、主なものを申し上げますと、まず一つは中小企業特恵対策臨時措置法というものがございました。これは日本が特恵を供与するということになりましたのを機会に、中小企業方々がどうこれに対応するかということを頭に置いてできました法律でございますが、これは後に述べるような事情によりまして認定実績はゼロでございます。と申しますのは、すぐ引き続きまして国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置法というものが追っかけて出ましたために、適用する時間が非常に限られていたことから、次の法律対象に乗り移っていったという経緯があるわけでございます。  この国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置法でございますが、ドルショックによる影響を受けたものとしての認定を受けましたのが、業種の数で百二十一、それから産地の数で八十三ございまして、その中で私はそういう要件に該当しますということで手を挙げられた方々が、これは途中で改正しておりますから、改正前の認定を受けた方が一万三千四百二、それから改正後の適用を受けた方が一万八百七十五、合計で二万四千二百七十七、これは重複している方もございますから、純粋にネットの数で申しますと約二万企業方々が、この影響を受けたということで認定をいたしております。  それから、その中で、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置法では転換計画の認定という制度が用意されておりまして、この転換計画の認定をいたしましたケースが六十五件ございます。これは影響を受けたという人数が多いのに比べて転換計画の数が少ないではないかという御疑念もあろうかと思いますが、やはり当時といたしましてはドルショックを受けたということに伴っていかにして企業を守っていくかということが一番最大課題でございまして、ドルショックの認定を受けて、それによって金融を、特別の措置をつけてもらいたい、それによって一応経営危機を免れるというようなことによってしのいできた方が非常に多かった。その中で、転換までというのが当時は景気も多少よかったし踏み切りができにくかった、こういうことが背景にあったのではないかと思います。  それからさらに、第三の法律といたしましては中小企業近代化促進法という法律がございまして、構造改善計画の中で事業転換を行うという場合がございます。これの適用になりましたケースが八百七十五件ございます。それから、御承知のとおり、この近代化促進法では先般の法律の改正によりまして新分野進出計画という制度が発足しまして、その中で新しい分野への事業転換を行うという道が開かれたわけでございますが、これはまだ発足早々でございまして、各方面にPRをしておる段階で、いままでのところは認定実績はまだゼロという形になっております。  それからさらに、第四の法律といたしまして中小企業近代化資金等助成法がございまして、この中で構造改善準備金制度というものがありますことはお耳に入っておるかと思いますが、これを活用しまして事業転換の促進を図ったケースが三件ございます。  以上のようなことが大体従来とってまいりました転換に関連をする法制の適用実績でございますが、これらの例でもおわかりになりますとおり、従来の転換に関する法制というのは、いわば特別に突発的な事件が起こったということに対する緊急避難としての立法でありましたり、あるいは近代化に関連をした、いわば目的をしぼった、あるいは業種を特定した場合における対応策ということでございまして、今回の法律のように一般的に機動的に動けるというような法律になっておりません点がその相違ではないかと思います。  さらに、いまお尋ねの中でいろいろの従来の実績をもう少し細かく事例を挙げてということでございますが、私どもも今回の法律を出すに際しまして従来の事例をいろいろ勉強しまして、成功した例、失敗した例等を内容を調査してそれを今後この転換法を動かしていく上の参考にしてみようと思いまして、事例調査等もいろいろ行っております。  一般的に申しますと、成功した事例といたしましては、新しく転出する分野生活環境の改善に資するものであるとか、あるいは健康、福祉の充実に資するもの、あるいは省資源の要請にこたえるもの、こういった例に見られるように、いわば国民の新しいニーズにうまくミートした転換計画をつくった場合はかなりうまくいっているということが言えるかと思います。  それから第二番目には、やはり事前の調査というものが非常に大切である。自分の置かれておる状況、それからこれから転出していこうとしている行き先の実情、こういったものについて入念に調べ、また相談に乗ってもらう、こういうことを積み重ねたケースでかなりうまくいっているということが言えるかと思っておるわけでございます。
  58. 上坂昇

    ○上坂委員 いまいろいろ具体的にお話を聞いたわけですが、実際問題としては、現実にはなかなか転換というものには取りかかれないのですね。踏み切るのが非常にむずかしいわけであります。踏み切ろうと思っても、特に企業がまいりそうになってからやったって間に合わないし、いま長官お話しのように、事前調査というのがかなり必要なんだが、事前調査をしていたのではもう間に合わないというようなところから、いわゆる転換ではなくて結局倒産につながってしまうというような業種がやはりかなり多かったのではないかというふうに私は思っているわけであります。  それからもう一つは、助成をやる場合に、そういう政策があってもそれを受け入れる能力の問題になってくるわけですね。先ほど加藤委員の方からもお話がありましたけれども、いわゆる受容能力というのですか、そういうものを持っている中小企業はこれに対応できるわけです。しかし、そういう企業になると、今度はわざわざこうしためんどうくさい手続とかなんかやらなくて、自分の力で転換をしていってしまう、そういうものがあったのじゃないかというふうに思うのです。問題なのは、こうしたいろいろな助成の施策を受け入れる能力に欠けているいわゆる小企業といいますか、零細企業といいますか、そういうものに対する助成を特に進めていかなければ、せっかくいままでのいろいろな転換関係法律を集約をしてもっと実のあるものにするという趣旨が生きてこないのではないか、こういうふうに思います。この点についての御意見をひとつ伺いたい。  もう一つは、ことしの中小企業対策の予算というのは千四百八十四億円ですね。私はこれは非常に少ないと思っているのです。というのは、防衛費は一兆五千百億円になるわけですね。人を殺す方が一兆五千百億で、五百万の中小企業を救う対策面が千四百八十四億円しかないのですね。やはりこういうところに中小企業が救われない原因があると私は思っているわけなんです。そこで、問題なのは、いわゆる中小企業対策費の中でいまやられようとしている事業転換政策についてはどのくらいの予算を充当させるのか、この辺も含めて答弁をいただきたいと思います。
  59. 岸田文武

    岸田政府委員 私どもがこの事業転換に関する法律を手がけるようになりましてから、いろいろの業種から相談に見えております。たとえば造船関係でございますと、これからの船腹需給の予想を前提にして、しばらくの間不況は続くのではないか、そうすると関連の中小企業としては何かやはりいままで持っておる技術なりを生かしたような新しい分野はないだろうか、こういったことをいろいろ考えておられるようでございますし、また他の例を申しますと、マッチなどの業界では、ライターが普及したとか自動点火が普及したとかいうようなことから、マッチだけではなくて、もっと別の分野でいままで持っておる紙の加工に関する技術を生かす工夫はないだろうか、こういったようなことで私どものところに相談に見えておる事例がございます。  私どもは、やはりこういうような方々が本当に新しい分野で能力を発揮されるということであれば、その企業としても非常に結構なことでありますし、日本経済としても有益なことであると思いますので、何とかこれを激励していきたいと思っております。  お話にもございましたように、瀕死の重傷になってからカンフル注射を打っても限界がございます。やはり元気なうちに滋養剤を与えるということが本当に意味があることではないかと思いまして、でき得ることなら一日も早くこの法律が成立するように私自身期待をしておるところでございます。中小企業方々が今度の不況で非常に苦しい状況に遭ってきたことから、とかく弱気になったり、受け身の姿勢で物を考えたりするような傾向が多少見えておりますが、日本中小企業というのは本当に力を出せば相当の力があるはずでございまして、こういった前向きの力をいかにフルに発揮させるようにするかということを中小企業庁としても特に気をつけていく必要があるのではないかと思っておるところでございます。  その中で、本当にそういう転換する力のある人だけが転換をして、後に残された人はだまったものではないということをあるいは懸念されるかもしれませんが、私、先ほども答弁申し上げましたように、本当にいろいろと考えて新しい分野転換をしていきたいという方があるならば、それは中企業の方であろうと、小企業の方であろうと、零細企業方々であろうと、やはりそれのお手伝いをすることが大切でございまして、そこに差を設けるべきではないというふうに思います。  ただ、お話にもございましたように、小さい人は小さい人なりに、相談する相手もいままでは少なかったでしょうし、資金的な面でも制約があったでございましょう。考えてはいながら踏み切れないという面もあったかもしれませんが、そこを補うために、今度の法律によりまして助言及び指導という点は特に力を入れて、府県の指導所あるいは商工会商工会議所経営指導員、あるいは私ども中小企業庁とそれから通産局に設けております小規模企業相談室、これらの各般の機能を総動員いたしまして、やはりいい意味での転換零細な人でもできるようにお手伝いをしていきたいと思っておるところでございます。  最後に、これに関連をしまして中小企業予算についてのお話がございました。私どもも、これだけ中小企業日本経済の中で大きな地位を占めており、また役割りを果たしておるということからいたしますと、この中小企業方々が、先ほど申しましたように本当に前向きで取り組んでいただけるようにするということは、国の財政の中でも相当ウエートを置いていく必要があるテーマではないかと思っておるところでございます。千四百億という数字をお示しでございましたが、これは来年度の予算要求として大蔵省に提出をいたしておる数字でございます。前年度、すなわち五十一年度に比べますと約一八%の増に相なっております。通産省自身も予算のいろいろの制約がございまして、伸び率がかなり窮屈になっておりますが、その中では中小企業対策の予算はまず一番力を入れて組んでもらった。私どもとしてもそういう形でまとまるように努力をしたつもりでございます。  これから予算編成に入るわけでございますが、私どもとしては、与えられた予算を少しでも多くという気持ちのほかに、なおそれをいかにうまく使うか、効率よく使っていき、お役に立つような使い方をするかという点にも特に配慮をしていきたいと思っております。
  60. 上坂昇

    ○上坂委員 私は予算は非常に少な過ぎると思っていますが、それはそれとして、いまこの法律をつくるために、社会経済環境変化というものを挙げておられるのです。第一番に国際競争力の低下などによる輸出の減少、または輸入の増加、二番目には技術革新の進展などによる従来の製品に対する需要の減退、三番目は資源の枯渇その他輸出国の事情による原材料の入手難、四番目に公害防止、安全対策の強化、こういうものを挙げておられる。しかし、中小企業がいま一番困難な条件に置かれている、あるいは非常な脅威にさらされているというのは、私はむしろ大企業やそのダミーが中小零細企業分野へ無差別に進出をしていることが一番大きな脅威ではないかというふうに思うのですね。ビックストアがチェーンを展開して、特に中小商工業分野への圧迫をしている。  このことについては、この前の委員会の一般質問で申しましたように、郡山市の西武郡山デパートの書籍部開設というものが、郡山市における書店だけではなくて、近郊の都市、あるいは大変離れているのですが会津地区の方にまで影響を及ぼして、これはもう倒産、閉鎖をしなければならない、あるいはまさに事業転換を図らなければならない、こういう状況に追い込まれてきている。したがって、事業転換をやる、そういう助成はやります、こう言っておりますけれども、こういういわゆる分野調整あるいは分野確保というものをやっていかない限り、これは私は実効がないのではないかというふうに思うのです。したがって、この事業転換法を制定するとするならば、やはり一緒に事業分野法も制定をしていくということに努力をしていかなければならない、こういうふうに私は思うわけであります。この点についてひとつ御意見をいただきたいと思うのです。
  61. 岸田文武

    岸田政府委員 事業分野の問題につきましては、先ほどもお答えをいたしましたとおり、私どもとしてはなるべく早くこれについての基本的な取り組みの方向を固めていきたいというふうに思っておるところでございます。現にまじめに一生懸命仕事をしておる中小企業方々が、突如として大企業が出てきたためにあしたからの生活に困るというようなことは、やはり中小企業としても非常に大きな問題でございますし、それだけではなくて、日本経済全体あるいは日本の社会全体の中で大きな混乱のもとになるかと思うわけでございます。したがって、私どもといたしましては、なるべく早くこれに対する法律を用意をいたしまして、ある程度の法律の裏づけのもとにこの問題を円満に解決するということのために、最大限の努力をいたしたいと思っておるところでございます。こういう分野の問題についてうまく解決の道を探すことができますれば、いままでの経営を続け、さらにそれに各自の努力を加えることによって、そう混乱もなしにやっていける道が開けるわけでございまして、そういった意味でも、私どもとしてはこの分野問題の取りまとめを急ぎたいと考えておるところでございます。  いまのお話の中で転換法との関係についてお触れになりましたが、単に同じ技術で少量乗り込んできたという場合にはその問題ないのでしょうが、やはり新しい技術を持って、いままでの商品とは非常に違った革新的な商品で入ってきたというようなときには、中小企業としては簡単にそれに対抗して同じような商品を生み出すというようなことは容易でない場合もたくさんございましょう。そういった場合には新しい技術の進出に伴う事業転換問題というのが起こり得るわけでございまして、こういったことについては転換法でもやはり頭に置いておかなければならないのではないかなと思っておるところでございます。
  62. 上坂昇

    ○上坂委員 いまの具体的な例として挙げた郡山の問題ですが、この前、通産省の織田審議官からお話があったわけでありますが、おとといですか、県下の書店が大会を開いたのですね。そしてストライキもやる、こう言っているのですよ。店を全部閉めてしまう、そこまで発展してきているわけです。大変な問題になっているので、私は、この問題については中小企業庁としても特に取り上げて対策を立てて、西武の方にもこうした分野についての進出というものをできるだけ避けていくというような方向で主として御指導いただきたい、これは要望しておきます。  そこで、もう一つですが、ここにある助成措置で情報及び調査という問題がありますね。これは中小企業振興事業団がこれを取り扱う、こういうことになっておりますが、これは転換をしたいという申し入れをしてからこの調査に入るのか。それからもう一つは、そういうものがなくても、これこれの分野はいわゆる事業転換をするにふさわしい分野であるという形で、もう先に調査をしておくような形になるのか、ここのところが二つ。それからもう一つは、窓口があって、そこへ申し込みをしてから一体どのぐらいの期間でこうした助成措置というものはとられるようになるのか、ここのところを明らかにしていただきたいのであります。
  63. 岸田文武

    岸田政府委員 事業転換に関連をしてやはり情報が大事であることは、まさに御指摘のとおりでございます。新しい経済情勢が起こってきた、このままでいくよりは別の分野へ出ていきたいというふうに考えましても、転換を行う先の業種が、一体需給動向はどうなっているのか、技術はどのくらいあればやっていけるのか、それからできた商品の販売についてどういう点が問題なんだろうか、こういった知識なしにはやはり踏み切れるものではございません。こういうような情報を的確に提供するということが、転換を円滑にする上では非常に大きな要素になるだろうというふうに思っておるところでございます。  お話の中に中小企業振興事業団のことが出てまいりましたが、この中小企業振興事業団にございます中小企業情報センターは、官庁、関係業界あるいはジェトロその他各方面から情報を収集いたしますとともに、みずからも調査を実施しまして、その結果を都道府県の総合指導所であるとか、あるいは公設試験研究機関であるとか、商工会商工会議所等を通じまして中小企業に積極的に提供をいたしておるところでございます。特にこの転換の問題が大きな話題になりましてから後は、この転換に関連する情報について特に力を入れてやっていこうという考え方のもとに、特別に臨時事業転換情報室というものを設置をいたしまして、いま人数は限られておりますが、逐次増強してまいりまして、転換に関連をするいろいろな情報について的確にこたえていきたいというふうに思っておるところでございます。  それから、転換事例調査につきましても、中小企業庁及び振興事業団それぞれで集められるだけ集めまして、参考に供していきたいというふうに思っておるところでございます。これらの情報の提供につきましては、正式に転換計画を出してからというようなことではなくて、むしろこういうことで相談に乗ってもらいたいというような段階から早目に来ていただいた方が、私どもとしてもあれこれ御相談に乗ったり、あるいは知恵を出したりするのに便宜かというふうに思っておりまして、これはむしろ積極的にこういうことをやっておりますということをPRいたしまして、早目に利用していただけるようにしたいものだと思っておるところでございます。  それから、各種の助成措置の適用でございますが、これは事の当然でございまして、ある程度計画が固まってまいりまして、資金がほしい、あるいは税制上の手当てを適用してほしいということになりましたら、これは迅速に処理するように私どもとして気をつけてまいるつもりでございます。
  64. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一点だけ。先ほど雇用対策の問題が出ましたけれども、たとえば炭鉱とか、それから繊維というような部面になりますと、奨励金とか訓練費とか、かなりいろいろな手当があります。これを今度の中小企業転換事業に対しては、いわゆる炭鉱とか、あるいは繊維、あるいは駐留軍とか、そこら並みにまで適用できるように通産省の方でも考えてもらいたいと思うのです。  ここに資料がありますが、たとえば炭鉱ですと、訓練手当がもちろん出ます。それから住宅の移転資金が出ます。求職活動費あるいは再就職の奨励金、支度金、こういったものが事業団の中から適用されています。そのほかに住宅確保の奨励金、雇用奨励金、ここまで出ているわけですね。繊維になりますと、これは国の施策としてやられるのがほとんどでありますが、あるいは保険から出るわけでありますが、繊維の場合には、いま言った中から六件これに適用になる。こういう形のものに、この事業転換については労働者が非常に不安に思うわけでありますから、ぜひこれを適用するように、ひとつ配慮してもらいたい、こういうふうに思いますが、その件についてお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  65. 岸田文武

    岸田政府委員 私ども、この事業転換ということを円滑に進めていくためには、やはり労働者の方々の理解と協力ということが特に大切であると考えておるところでございます。むしろ、いままで一緒に仕事をしてきた労働者とそれから経営者とが一緒に知恵を出して、新しい分野でがんばってやろうではないか、こういう雰囲気で転換が進んでいくというのが一番好ましい姿ではないかというふうに思っておるところでございます。その意味からいたしますと、それを機会に大量の離職者が出るとかいうようなことはむしろ余り好ましいことではございませんで、いままであった労働資源というものをいかにうまく新しい分野で活用するかということのために知恵をこらすというのが本筋ではないかと思います。とは申しましても、多少の摩擦ができる場合がございましょう。そういった場合につきましては、労働省ともよく打ち合わせいたしまして、適切な手を打っていくように私どもも気をつけてまいりたいと思います。
  66. 上坂昇

    ○上坂委員 終わります。
  67. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  68. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君。
  69. 野間友一

    ○野間委員 大変出席者が少なくて遺憾ですけれども、質問を始めたいと思います。  まず最初に、通産大臣にお伺いをしたいと思います。  事業転換法についての質問でございますが、直接の関係はございませんけれども、いまの灯油等を中心とする石油製品、これの値上げをどうしても抑えろ、下げてくれということが中小企業者の切実な要求でもございます。そこで、あえて最初にお聞きしたいのは、去る十月一日の衆議院の予算委員会で、河本通産大臣は、円高による二百九十五億円の為替差益で石油会社の経営に余裕が出てきているので、灯油の価格を引き下げるように指導する、こういう答弁をされております。それ以来すでに十日余を過ぎておるわけでありますが、その指導の具体的な中身はもうすでに決まっておるというふうに私は考えるわけであります。そこで、この灯油価格の引き下げについて、いつ、どのような指導をされるのか、まずこの点について大臣にお伺いをします。
  70. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般の予算委員会で私が答弁いたしました内容は、第一に、灯油の値上げはこの際抑えたい、それから将来さらに条件が整えば値下げを考えていきたい、指導していきたい、言葉は若干違いますが、そういう二段構えの答弁をしたわけであります。  値上げをしないように行政指導するという理由は、先ほどお話がございましたように、本年の初めに標準価格制が実現いたしまして、さらにその後円高傾向がずっと続いております。標準価格制を昨年の十二月一日に設定をいたしましたときには、為替レートは三百二円、こういうふうに想定をいたしまして計算をいたしております。一円違いますと一月に十七億円、一年間で二百億円違うというふうに言われておりますので、三百二円から比べますと現在は相当な円高でございますから、非常に大きな金額になるわけでございます。二百九十五億円というのは、これは何か新聞の誤報じゃないかと思います。そういう金額は言わなかったのですけれども、とにかく相当大きな金額になることは事実でございます。そういうことで、石油業界の体質も大分改善されてきましたので、この際はとにかく灯油の値段の引き上げをしないようにしなければならぬ、そういう方向行政指導をしたい。  できれば引き下げ云々と言いましたのは、石油業界になお流動的な事情が残っておりまして、たとえばこの十二月にOPECの総会が開かれますが、その総会では値上げ機運が非常に濃厚になりつつあります。軽々には言えませんけれども、慎重論であったサウジなども、若干の値上げは万やむを得ないのではないかという方向に傾いておる、こういう報道等もありまして、この値上げ問題がどうなるかという大きな課題が残っております。それから同時に、上半期は円高傾向でずっと終始いたしましたが、下半期になりますと経済事情も若干違ってまいりますので、果たして上半期の円高傾向がこのまま続くかどうか、ここにも若干の問題が残っております。  さらにまた、御案内のように中間留分として軽油、A重油あるいはまた工業用の灯油などが挙げられるわけでありますが、家庭用の灯油が余り安い水準に抑えられますと、その方面にどんどん流れていってしまう、絶対量が足らない、こういう問題が起こりかねないという課題もございます。さらにまた、石油業界の体質は改善の方向に進んでおりますけれども、なお流動的である、こういうふうな一連の問題がありますので、もう二、三カ月様子を見た上で、条件が整えば第二段階としての値下げの方向行政指導を持っていきたい、こういう答弁をしたわけでございまして、ただいまのところ、先般の答弁考え方は変わっておりません。
  71. 野間友一

    ○野間委員 種々多弁を弄されましたけれども、結局どのように弁解されても、私が当時お聞きしたのは、価格を引き下げるように指導するというふうに明確にあなたは言われたと思うのです。いまの答弁を聞いておりますと、もう大変それは後退しておる、これは事実であろうと思うのです。その点を強く私は指摘すると同時に、それでは、いま大臣答弁されたことについて、具体的にこの灯油の価格を、いつ、どの価格で凍結をされるのか、この点についてはどうなんでしょうか。具体的にもうそういうめどを立てておられるかどうか。
  72. 古田徳昌

    ○古田政府委員 家庭用灯油の元売仕切り価格につきましては、ただいま大臣が御説明いたしましたように、現行水準を上限として新たな値上げをこれ以上させないということで検討を急いでおります。すでに需要期にも入っておりますので、私どもとしましてはどういう形の指導をすれば最も効果的であるかということで、一両日中にでも結論を出したいというふうに考えております。
  73. 野間友一

    ○野間委員 その結論というのは、具体的には何に対する、どういう結論でしょう。
  74. 古田徳昌

    ○古田政府委員 家庭用灯油の元売仕切り価格の現行水準以上への引き上げにつきましてこれを抑えるということでございます。
  75. 野間友一

    ○野間委員 私は、どうも大臣が十月一日に予算委員会答弁されてから、きょうの答弁を聞きますと、非常に後退をされておる、そのことから考えまして、何かやはり石油元売会社からの圧力があったのではなかろうか、こう言わざるを得ないと思うわけです。  そこで、その点について少しお聞きをしたいわけですけれども、私の聞いたところによりますと、昨日の午前八時半ごろ、石連あるいは石油元売会社の代表者にお会いになったというふうに聞いておりますけれども、それが事実であるかどうか。
  76. 河本敏夫

    河本国務大臣 そのとおりであります。
  77. 野間友一

    ○野間委員 そのときの話の中身ですけれども、恐らく十月一日の大臣答弁を踏まえて、それじゃ困るというようなことで強い元売会社からの働きかけがあったのではないでしょうか。
  78. 河本敏夫

    河本国務大臣 そういう働きかけとか話はございませんで、一つは、来年の石油石炭特別会計の財源対策としての重油関税をどうするかという問題についての陳情が一つございました。その陳情を聞きました後、私の方から灯油の問題について、業界の代表に対して通産省としての考え方の説明をいたしました。その説明の内容は、石油業界経営も相当改善されておる、したがって、とりあえずはこれ以上は値上げをしないように通産省としては行政指導をしたいと考えておる、なおもう少し流動的な条件が二つ三つあるが、この条件が見当つき次第に、第二段階としては引き下げの方向行政指導を持っていきたいと考えておる、ついては石油業界も協力してもらいたい、そういう趣旨の通産省としての、また私としての今後の灯油の行政指導についての考え方を述べまして協力を求めたわけでございまして、業界から灯油の問題についての陳情があったわけではありません。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  なお、いまの私の話は、三、四日前のこの委員会で同じような趣旨を数回にわたって繰り返し答弁をしておるところでございまして、本日改めて新しいことを言ったわけではございません。三人の方々から委員会での質問がございましたので、同じようなことを繰り返し言っておるわけでございます。なお、予算委員会における答弁も、とにかく値上げはさせない、できることならば値下げの方向に持っていきたいという二段構えの答弁をしておるわけでございまして、その点はひとつ御理解を賜りたいと思います。
  79. 野間友一

    ○野間委員 その点について予算委員会の正確な議事録をまだ見ておりませんので、私は食言だろうと思いますけれども、それができ次第さらにその点についての質疑を行いたいということで、次に進みたいと思います。  もともと今回の石油製品の値上げについては、多くの国民が疑惑を持っておりました。政府の標準価格の設定によりまして、石油会社がコストの上昇分を完全に吸収し、五十年度の決算を見ましても、後半期は黒字に転じておるということはすでに御案内のとおりであります。それにもかかわらず、政府は標準価格を撤廃される。そうすると直ちに、待ってましたとばかりに各社が一斉に全油種平均約一千円余の値上げを行ったのであります。その上に先ほど申し上げたような円高で、大臣も認められたように、多額の為替の差益を積み上げておるわけでございます。したがって、少なくとも灯油の価格についてはもとの値段に戻すように強力な指導をする、これはやってしかるべきであるということを再度私は要求しておきたいと思います。  このほどある市中銀行が発表した企業の五十一年度下期の見通しでも、石油各社の増益率、これの前期比伸び率を見てみますと、これは三和銀行の調べでございますが、五十一年度の上期が八・九倍、五十一年度の下期が七七%増、また石油ショック前の四十八年の上期を一〇〇とした利益水準も五十一年度の上期が一二一、さらに下期が二一四、このようになっておるわけであります。今回の値上げのつり上げをそのまま認めるとするなら、石油会社が需要増、操業度の上昇、それから円高に加えて一方的に国民に負担を押しつける、こういうことになりまして、三重にも四重にもぼろもうけをすることが明らかだと私は考えざるを得ないと思うのです。  しかも、ことしは不幸にして冷害、災害、多くの国民がいま困難に悩まされておりますし、灯油の価格問題は特に東北や北海道に行きましてもすでに米とまで言われておりますように非常に重大な関心事でもございます。すでに需要期に入っておる北海道とかあるいは東北だけでなくて、水害で大きな被害を受けたところの高知県を初め各地から、灯油の急騰を抑えてくれという切実な訴えが、私のところにも連日寄せられております。こういうような国民の切実な願いにこたえまして、先ほど申し上げたような実態も踏まえまして、再度大臣のこの灯油価格についての明確な答弁をひとつ求めておきたいと思います。
  80. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことしの春以降石油会社の経営内容が非常に改善されておるということは、御指摘のとおりでございます。その理由といたしましては、標準価格制の実現と円高傾向、この二つによるものでございます。そういう背景がございますので、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、とりあえずは灯油の値段はこれ以上上げさせない、同時に、あと二、三カ月のOPECの値上げ問題、それから円高傾向が続くかどうか、こういう問題と、中間留分との関係とをよく見まして、できることならば値下げの方向に持っていきたい、かように考えておるところでございます。
  81. 野間友一

    ○野間委員 それでは、中小企業事業転換法についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、長官にお伺いしたいのは、中小企業実態、位置づけ、これを日本産業構造の中でどのように認識されておるのか、その点からお伺いします。
  82. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業の数がトータルで大体五百万ございます。そのうち約四百五十万が、製造業で申せば従業員二十人以下という小規模企業になっております。全体の従業者数が約三千万人でございまして、日本経済の中でも非常に大きな地位を持っておるということが言えると思います。ちなみに、製造業の出荷額の中で中小企業の占める割合が五二%、それから全国の小売売上高の中で中小企業の占める比重が約八〇%ということになっておるわけでございます。これらの中小企業は製造業、販売業、さらにサービス業、各般の分野にわたりましてそれぞれ仕事をし、それによって経営を維持するだけでなくて、結果としては日本経済の発展にも大きなる貢献をしておるということが言えるかと思うわけでございます。  ただ、そうは申しましても、大企業中小企業と比べますと、やはり幾つかの不利な点がまだ残されておるということも事実でございます。たとえば同じ製造業をとりまして、従業員の平均賃金はどうであるか、あるいは一人当たりの付加価値生産性はどうなっておるかということを見てまいりますと、やはり大企業中小企業との間にかなりの格差が残されておるということは、統計の上から裏づけられるわけでございます。こういった原因といたしましては、かつて労働力がかなり余っていた時代からの遺産であるというような見方もできるかもしれませんが、その後日本経済も非常に活況を呈した時期があったわけでございます。それにもかかわらずなお残っておるというような点につきましては、もっと業種別に実態を掘り下げていって、本当に同じ仕事をしている人の賃金格差はどうなんだろうかというような点まで勉強していきませんと、正しい答えが出ないのではないかというふうに思っております。  ただ、いずれにしても、まだ格差が残っておりますし、しかも、欧米の場合と比べますとまだその格差がかなり広いというような点は、私どもとしてはやはり中小企業政策を進める上で気をつけていかなければならないことではないかと思っておるところでございます。ただ、そうは申しますものの、私は、日本中小企業はそれだからといって弱い存在であるというふうに決めてかかることはいかがなものかという気がいたします。戦後の日本経済のすばらしい発展を支えてきた力の相当の部分を中小企業が果たしてきたわけですし、それから、高度成長の中にあって大企業も確かに伸びましたが、結果としてはそれに劣らないピッチで中小企業もついていった、それだけの力を中小企業は持っていたということが言えると思います。したがって、私どもとしては中小企業の持っておるそういう潜在的な能力というものをこれからの新しい環境の中でいかに生かしていくかということに特に力を入れていきたいと思っておるところでございます。
  83. 野間友一

    ○野間委員 いま中小企業の位置づけについての幾つかの指標の指摘がありましたけれども、そのとおりであります。ところが、午前中にも同僚議員の方からも指摘がありましたように、たとえば軍事予算、防衛庁予算には年間一兆五千億円を超えるような膨大な予算を組みながら、中小企業対策費は当初予算のわずか〇・六%、千四百億円程度ということで、この点について言いましても、日本経済の中核部隊である中小企業に対する施策、これはまさに涙金である、こう指摘をせざるを得ないと思うのですね。特に、高度経済成長の中では企業の系列化、あるいは系列外のものをインサイダーとして組み込んで、そして大企業が大きなもうけを展開する。確かに反射的な利益として中小企業も若干潤ったかもわかりません。その点については私も否定はしません。逆にまた不況になりますと、不況のしわ寄せがもろに中小企業、そこに働く労働者にかぶさってくる。いま確かに輸出産業を中心として不況の回復が若干進んでおります。しかし、それも、たとえば回復の度合いを見ましても、大企業がすでにもう八〇%から八五%の操業度、これに比べて中小企業は六〇%から六五%程度、しかも業種間の格差など非常に大きな深刻な問題を抱えておるということについては、長官も否定できない事実であると思うのです。  そこでお聞きしますけれども中小企業事業転換対策臨時措置法案を立案するに至った背景あるいは目的、さらにこれによって救済される業種、特徴的なものはどういうものがあるのかということを簡潔にまず述べていただきたいと思います。
  84. 岸田文武

    岸田政府委員 日本中小企業は、戦後いろいろの経済変動の中でたくましく今日まで育ってまいりました。その間にありまして、やはり時代時代の要請に応じて中小企業なりの努力とそれから中小企業施策相まちまして、ほかの国と比べますとかなりの適応力を示してきたということが言えるのではないかと思っておるところでございます。しかしながら、今後を考えてみますと、従来のような高度成長の時代と違いまして安定成長の時代に入ってくる、しかもその中にあって国際的にも新しい環境が次から次へと発生することが予想されますし、また国内的にも、資源エネルギーの制約であるとか、あるいは環境問題に対する配慮であるとか、さらにまた新しい規制立法も予想されるなど、国内的にも環境変化ということを頭に入れて中小企業が対応を考えていかなければならない時期であるというふうに思っておるところでございます。  こういう環境変化をいかに安定成長の中で受けとめていくか、こういったことを中小企業がこの際しっかり考えて、今後の方向づけをそれなりに勉強していただくことは非常に意味のあることではないかと思っておるところでございます。そういった勉強の結果によりまして、いままでの分野にそのまましがみついているよりは、新しい分野自分の持っておる資本なり経験なり、あるいは従業員をうまく組み合わせて新たな展開を図る方が、中小企業として非常によい道が開けるのではないか、こう思う中小企業があった場合には、大いに激励をし、また応援をするということが、中小企業政策としても大切なことなのではないかと思っておるところでございます。したがって、この法律は、これから予想される国際的な、あるいは国内的な環境変化の中で、個々の企業の力としてはなかなかこなし切れないというような事態を想定いたしまして、そういう事態に対応して新しい転換を遂げようという中小企業を激励するための法律であるというふうに理解をしておるところでございます。  予想される事態といたしましては、たとえば、国際的な問題といたしまして、発展途上国の追い上げによって輸出が伸びなくなる、あるいは相手国たる発展途上国から日本商品が流入してくる、こういったことが発展途上国の工業化に伴って予想されます。これが第一のケース。  それから第二のケースとしては、これから技術革新が急速に進んでいって、中小企業として敏速に対応できにくい、こういった場合において、新しい分野への転換を図る場合も当然予想されるわけでございます……(野間委員「途中ですけれども、それはわかっておりますので、予測される業種を」と呼ぶ)  業種は、いまお話をいたしかけましたような事態に対応して選定をするということになっておりますが、従来の例で申しますと、ドルショックのときの対応策を打ち出しましたときに、業種の数として百二十一が取り上げられまして、産地として八十二でございましたか八十一でございましたかが対象になっております。大体ああいったことを頭に置きながら業種を選定していくことになるのではないかと思っておるところでございます。
  85. 野間友一

    ○野間委員 八日の経済関係閣僚協議会が了承しました十月の月例経済報告ですが、これでは、企業収益の改善が続くなど順調な回復をたどっておる、こういうコメントがあります。そこで、お聞きしたいのは、現在の中小企業あるいは特に小零細業者の今日の状況をどのように把握されておるのか、その点はいかがですか。
  86. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業に関しましては、私ども、毎四半期いわゆる景況調査というものを実施いたしております。それを見ておりますと、一番苦しかったのがやはり去年の初めごろでございまして、当時のアンケート調査の結果では、これから先どうなるのかわからぬ、余り見通しがないので、というような非常に悲観的な意見が圧倒的に多かったわけでございますが、ごく最近になりますと、次第に環境がよくなってまいりまして、これからよくなるだろうという答えが、これから悪くなるという答えを上回っております。  それから、同じように下請企業に関する調査をいたしておりますが、その新しいリポートを見ますと、下請の注文も量としてはかなりふえてきたということが言われております。ただ値段の方が余り回復していない、何とかならないものだろうかというようなアンケート調査が来ております。総じて見ますと、一時のように非常に苦しい時期を通り過ぎてきたものの、なかなか思うように回復してきていない。少しでも早く景気が本格的に軌道に乗ってくれることを待ち望んでおるというのが、いまの状況ではないかと思っております。
  87. 野間友一

    ○野間委員 五十年あるいは五十一年度、それぞれ一月から九月まで、負債総額一千万円以上の倒産件数を調べてみますと、五十年度が八千五百十八件、五十一年度が一万八百六十九件と、このような膨大な数に上っておると思います。そうしますと、去年に比べてことしは史上最高、一万四千件を超えるのではなかろうかということが予測をされておりますが、いま挙げましたこの数字、これは間違いないと思いますけれども、これを確認しておいてください。
  88. 岸田文武

    岸田政府委員 いま月別の集計がとっさにできませんものですから、正確なお答えにならないかもしれませんが、ごく最近の倒産件数が月に千三百件を超えておるという実情からいたしますと、ほぼ御指摘の数字が正しいのではないかと思います。
  89. 野間友一

    ○野間委員 さらに、銀行から取引停止処分を受けた企業、これもずいぶんふえております。私の方で、これは全銀協の調べから数字を拾い出したわけでございますけれども、たとえば最近の六、七、八の数字はどうなっておるのか、そこでお持ちならお答え願いたい、もしなければ私の方から申し上げますけれども
  90. 岸田文武

    岸田政府委員 不渡りの発生率で申しますと、ごく最近の状況が大体〇・一二から〇・一四%程度で推移いたしております。それから、取引停止処分が最近の数カ月、大体五千件台で推移しております。
  91. 野間友一

    ○野間委員 ですから、先ほどのいわゆる景気の回復の問題とうらはらに、史上最高の倒産、あるいは毎月五千件台という指摘がいまありましたけれども、かなり多くの業者が取引停止処分、そういうふうな深刻な事態をいま迎えておるわけであります。景気回復をいろいろと言われておりますけれども、こういう状態がいまの中小企業の置かれた実態だという認識を改めて私たちはかみしめなければならないというふうに思うわけです。輸出関連中心の景気回復というふうに言われておりますけれども、これによる特に業種間の格差、それとまた大企業中小企業、下請企業、この中の企業の格差が一層拡大しておるというのが現在の一つの大きな特徴ではなかろうかと思うのです。そういう点を踏まえまして、これからは年末の資金需要期に入るわけでありますが、これら中小企業あるいは小零細企業の倒産が史上最高の汚名、一万四千件を超えるかどうかというような非常に深刻な事態、こういう点を踏まえまして、これを未然にどう防止していくかということは、政府の責任も大変重大だというふうに思います。一そこで、お伺いしますが、中小企業に対する政府の年末資金対策はどのようになっておるのか、これは通産大臣あるいは長官、いずれでも結構ですから……。
  92. 河本敏夫

    河本国務大臣 第三・四半期の中小企業金融は、政府関係の三機関で約九千四百億円を用意しております。しかし、もう少し様子を見まして、なおこれで不足するようでございましたならば、必要な金額は大蔵省と交渉いたしまして増額をするつもりでございます。
  93. 野間友一

    ○野間委員 ただ、申し上げたいのは、九千三百七十四億のようですが、これは昨年の十月から十二月のときには一兆二百八十億になっておるわけですね。去年よりもいま申し上げた倒産やあるいは取引停止処分が多いにもかかわらず、いまの貸し出しの枠が少ない、これはどうもおかしいと思うのですね。これは去年に比べてどうしてこんなに少ないのか、いかがでしょう。
  94. 岸田文武

    岸田政府委員 昨年の場合でございますと、九月に不況対策を打ち出しまして、いわば年度末の融資に当たる部分を事前に第三・四半期の枠へ含めまして決定をいたしましたために、そのような数字になっておるわけでございます。今年の場合は、九千三百七十億というのは当初の計画でございまして、今後年度末対策を加えるとすれば、昨年以下ということにはならないのではないかと思っております。  なお、最近の資金需給の状況でございますが、かなり後ろ向き資金は減ってきた。しかしながら、同時に、新しい設備投資をしようとかいうような意味での前向き資金の需要も必ずしもまだ活発になってきていないという意味からしますと、資金需給の面では一時に比べればかなり改善をしてきたということが言えると思います。しかしながら、これから年末にかけまして、中小企業としてはやはり一番気になる時期でございまして、そういったときに資金的な不安を抱かせないように、私どもは事態の推移をよく見て必要な金融対策を追加して打っていきたいというふうに考えております。
  95. 野間友一

    ○野間委員 いや、本当に私は政府の責任は重大だと思うのです。そうすると、私は聞きますけれども、いまの時点ではこれだけの資金需要で間に合う、そういう認識でおられるのですか。一万四千件を超えて史上最高になるというような倒産に対する見通し、あるいは銀行の取引停止処分、こういうようなことを前提にして、これでいいのかどうか、これでもう間に合うというふうにお考えですか。それとも、当面このような形にして、あと要求があれば当然そのときには適切に、迷惑をかけないように、そうして必要な人に対しては十分な資金の手だてをするというようなことを思っておられるのかどうか、そういう方針かどうか、再度確認を求めたいと思います。
  96. 岸田文武

    岸田政府委員 私ども中小企業庁は、中小企業をお預かりして、中小企業方々が何とか安心をして仕事をしていただけるようにするのが使命でございます。したがいまして、いまお話の中に出ておりましたような倒産の状況、あるいは業種別の格差の状況を非常に重大な関心を持って見守り、そしてそういうような事態に対していかにして中小企業を守っていくかということについては、できるだけの努力を払っていきたいと思っておるところでございます。資金的な面につきましても、先ほどお話し申しましたように、絶えず事態を注目しながら必要な資金は確保する、それからまた倒産に関連をして、ほかの中小企業が共倒れになるというようなことのないように、信用保険法でも特例を設けて機動的に対処する、さらにまたどうしても金が返せないというような特殊の事情がある場合には、個別に親切に相談に乗る、こういった点については従来からも気をつけてまいったつもりでございますし、今後とも特に年末にかけて気をつけていきたいと思っております。
  97. 野間友一

    ○野間委員 その中で特に業者からいろいろな切実な要求が私どものところに寄せられておりますが、いまの枠を大幅にふやすという要求と同時に、いわゆる低利のつなぎ融資、あるいは緊急融資、これらの手厚い措置をぜひとってくれという要求が強く寄せられておりますが、そういう構想はありませんか。ぜひつくってほしいと思います。
  98. 岸田文武

    岸田政府委員 私ども従来の金融対策といたしましては、特に政府系金融三機関をうまく活用していくということに一生懸命心がけてまいりましたが、それだけでは不十分な場合は当然あるわけでございまして、それを補完するために信用保証ないしその裏づけとなる信用保険につきましても逐次制度の改善を図ってまいりまして、さらに零細企業に対する特別の制度といたしまして、小規模企業経営改善資金の制度があるということも御承知のとおりでございます。私どもは、それらの各種の施策の中には、また災害とかあるいは特殊の事態に対応する特別の制度も用意されておるわけでございますので、これらの各種の制度をいかにうまく組み合わせて、そのときそのときの需要に一番適合するような、また一番有利な条件を見出していくかということで対処してまいっておるわけでございます。今後ともその意味での配慮は十分やっていきたいと思います。
  99. 野間友一

    ○野間委員 特に小規模企業経営改善資金は、あるいは六カ月間の指導とか、あるいは商工会議所会頭の推薦とかいろいろありますが、私たちはそれを取っ払えという要求をずっとやっておるわけでありますけれども、そういう性格のものですね。私が申し上げたいのは低利のつなぎ融資で、これだけ倒産がどんどんふえていく、しかもいまここで直ちに緊急のつなぎがほしいというような場合に備えて、低利のつなぎ融資とそういうものを新たにつくる必要があるというふうに思うわけです。そういうことを検討する用意があるのかどうか、いかがですか。
  100. 岸田文武

    岸田政府委員 各種の金融において貸付条件を少しでも有利にするようにということでは、従来からもいろいろの工夫をいたしましたし、またその都度大蔵省ともいろいろ打ち合わせをしてまいってきておるわけでございまして、今後とも一般的に貸付条件を少しでも改善するような努力というものは一生懸命やっていきたいと思っております。  ただ、とっさの問題といたしましては、そういう制度を議論しておるよりは、当面の案件をどう処理するかということが差し迫った課題である場合が非常に多うございます。私どももよくいろいろの相談を持ちかけられます。そういったケースを受けまして、一つ一つ何とかこれの倒産を防いでいくということのために、従来からもいろいろのケース努力してまいってきております。今後とも恐らくいろいろなケースが出てまいると思いますが、金融がもう一息がんばれば先の明るさが見えるというときに、金融だけのためにその企業をつぶしてしまうということのないように努力してまいりたいと思います。
  101. 野間友一

    ○野間委員 いや、その努力の中身についていま具体的にこういう制度をつくるべきじゃないかという指摘を私はしておるわけです。私がいまここで申し上げたそういう制度を検討する用意があるのかないのか、その点のお答えを求めておるわけです。
  102. 岸田文武

    岸田政府委員 いま新しい制度を起こすということは、いろいろむずかしい問題があるような感じがいたします。それよりは、保証協会の保証等において弾力的に対処するということの方が、もっと実質的に問題を解決するのに役に立つのではないかというふうな感じがいたします。
  103. 野間友一

    ○野間委員 その点の論議を始めますと時間をとりますので、改めてまたそういう切実な要求に基づいて新たな制度をつくるように申し上げたいと思いますけれども、ここでは強くそれを検討するように要求して、問題を次に進めたいと思います。  この事業転換法という法律が施行されてこれが効力を生ずるようになった場合に、中小企業者がどのようなメリットを受けるのか、これは中身は承知しておりますから、簡潔に幾つかの点を指摘してひとつお答え願いたいと思います。
  104. 岸田文武

    岸田政府委員 金融の面につきましては、中小企業金融公庫、国民金融公庫等におきまして設けられております事業転換貸し付けの制度を活用していくという道が開けることになろうかと思います。さらにまた、中小企業振興事業団におきましては、事業転換合同であるとか、共同転換事業であるとか、設備共同廃棄事業、特殊の目的のための制度が制度としては設けられておりますが、事業転換に伴って高度化を推進しようというケースには、こういう制度が活用できる道が開けるかと思っております。  さらにまた、信用保険の面におきましては、付保限度を引き上げるとか、あるいはてん補率を一般の場合よりも引き上げるとか、保険料率を通常よりも三分の二程度で済ますようにする道がこの法律に伴って実現できるわけでございます。さらにまた、税制の面では、償却の特例といたしまして、不要になる資産につきましてもっと有利な償却ができるようになりますし、また転換に際しまして企業の合併を行うとかあるいは現物出資を行うというようなときに、課税の特例の道が開けることになっておるわけでございます。  なお、以上のような金融、税制面のほかに、雇用面につきましても、事業転換に伴いまして、従業員が新しい職場に必要な技術なり経験を習得するために研修、訓練が必要でございます。こういったことに対しまして、雇用保険法に基づく各種の助成措置を適用し得る道がこれによって開かれるかと思っております。なお、助言なりあるいは指導なりという面で万全を期するということは当然かと考えております。
  105. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、事業転換をする場合に、十分この法律で対応できるというふうにお考えですか。
  106. 岸田文武

    岸田政府委員 この法律ができることによりまして、新しい分野でひとつ積極的に展開を図っていこうという中小企業については、大体所要の応援が実現できるようになるのではないかと期待をいたしておりまして、少しでも早くこの法律を実現したいものだと思っておるところでございます。
  107. 野間友一

    ○野間委員 これまでの事業転換の幾つかのケース実態があるわけですが、円滑に転換するための大きな障害、これは今日まで勉強された中でどういうものがあったのか、特徴的に簡潔にひとつお答え願いたいと思うのです、時間の節約の意味もありますので。
  108. 岸田文武

    岸田政府委員 やはり転換先の選び方というのが第一の重要なファクターであろうと思います。これから先非常に楽しみの多い業種というものをじっくり勉強して選んでいくということが大切でございます。そのほかに当然資金的な手当て等も必要でございまして、これは今度の法律ができれば助成が強化されるということになると思います。  それから、従業員の面でも、やはり企業主と従業員とが一体になって新しい分野へ転向していこう、こういった気組みがありますと、一層強力な転換が図れるのではないかと考えます。
  109. 野間友一

    ○野間委員 商工中金が去年の十二月に中小企業事業転換追跡調査というものをやっておりますね。これによりますと、事業転換に失敗した企業が、その要因として何を挙げておるのか。転換分野需要不振が五二・五%、それから転換分野調査不十分が五二・五%、同じですね。それから販売力の弱体が三七・五%、それから競争が激しいというのが同じく三七・五%、これから見てみましても、転換先の情報不足、需要販売見通しの誤りというのが最も大きな特徴としてここでは指摘されておると私は思うのです。しかも、これらの点にこそ、中小企業の場合比較的不得意と申しますか、不得手と申しますか、最も大きな一つの問題があるのじゃないかと思います。したがって、転換先の需要あるいは販売見通し、こういう点について国あるいは都道府県、相談所、こういうものなどの指導事業転換を円滑に進めるために非常に重要であるというふうに私は指摘をするわけですが、この点についてはどうなんでしょうか。
  110. 岸田文武

    岸田政府委員 いまの点はまさにおっしゃったとおりじゃないかと私は思います。いままで私もいろいろなケースを聞いてまいりましたが、成功した場合には、共通して事前によく調べて、そして自分のものになって転換へ踏み出していったという場合が成功しておるわけでございまして、事前の調査なり指導なりということの重要性を私自身も痛感をしておるところでございます。  その意味からいたしますと、中小企業振興事業団の中に転換を特別に扱う室が今度設けられましたし、そこでたくさんのケースを集めて個々の指導に当たるほか、やはり各種の業界実情というものをよく整理をして相談に乗ってやれるということが、重要な役割りをするのではないかと思っております。もちろんそのほかに、商工会なり商工会議所なり、さらにまた中小企業庁自身、またその出先である通産局、それらのところでやはりいろいろのケースについて親身に相談に乗ってやり、指導し、助言するということに心がけてまいりたいと思います。
  111. 野間友一

    ○野間委員 そこでお伺いしたいのは、実際に指導に当たるのは都道府県ということに大体なるわけですが、国はどれだけの補助をする予定になっておるのか。
  112. 岸田文武

    岸田政府委員 都道府県の転換計画認定事務に関する補助という形では、六百六十四万円が用意されております。ただ、これは直接の補助費目でございますが、そのほかに都道府県の指導所につきましては各般の助成を行っておりまして、いま申し上げましたような仕事が一体として円滑に遂行できるように配慮しておるところでございます。
  113. 野間友一

    ○野間委員 いま挙げられた金額ですが、五十二年度の概算要求の中ではどうなっていますか。
  114. 岸田文武

    岸田政府委員 五十二年度の概算要求で転換に関連のある部門を拾って御報告いたしますと、まず法律施行費として一千百九十六万五千円、それからいま申し上げました都道府県の認定事務に関する補助として六百六十四万円、それから産地転換に関する診断費用としまして二千八百八十万円、それから個別転換指導としまして二千七百万円、それから巡回技術指導として八百九十七万六千円、特定産業競争力調査という項目で四千百八十五万九千円、それから中小企業事業転換追跡調査という項目で九百五十万四千円、それから事業転換事例分析費一千六百三十八万二千円、これらが転換に直接関連する予算項目でございます。
  115. 野間友一

    ○野間委員 合計幾らになりますか。——それじゃまた後で計算してください。
  116. 岸田文武

    岸田政府委員 なおそのほかに中小企業振興事業団の出資金が相当額ありまして、これらも転換に関連する助成に充てられるということになっております。
  117. 野間友一

    ○野間委員 ただ、その中で都道府県に対する事務費補助、これは六百六十二万七千円というふうになっておると思うのです。これは間違いがあればまた指摘していただきたいと思いますが、六百六十二万七千円、これはよろしいですね。ちょっとうなずいてもらったらいいのです。——いまうなずかれたので、そのとおり間違いないと思うのですけれども、そうしますと一都道府県当たりわずか十四万円になるのです、計算しますと。これで一体何ができるか。知事の計画認定に関する事務費にも満たないというふうに言わざるを得ないと思うのですね、十四万円ですから。  そもそも知事が計画を認定するようになっているのも、いま長官の言われたとおりきめ細かく対応して相談に乗るというためのものであるわけです。そのために国としても事務費補助の引き上げはもちろんのこと、この体制を強化するために人件費補助を行ってしかるべきじゃないでしょうか。先ほど、転換工場診断とかあるいは産地診断等々、金額も言われました。これら全部合わせましても、一都道府県百万ちょっとにしかならないわけですね。これは各県の診断費に当たると思いますけれども、ここで私が要求したいのは、この法律をつくってその法律を実際に効力のあるものにするためでありますから、この人件費の補助をぜひ予算化する必要があるのじゃないか、それがしかるべきじゃないかというふうに思うのです。いかがですか。
  118. 岸田文武

    岸田政府委員 府県に設けております総合指導所における診断指導員につきましては、五十年度は一千九十七人でございますが、五十一年度は一千百三十一人を予定いたしまして、これに必要な補助を予算の要求の中に組み込んでございます。
  119. 野間友一

    ○野間委員 いや、人件費補助についてお聞きしておるわけですよ。
  120. 岸田文武

    岸田政府委員 ちょっと補助の内容について手元に資料がございませんので、的確なお答えができませんけれども、診断指導員の役割りはこれから一層重要になってくると思います。府県もいろいろ財政が苦しいでしょうが、地元の中小企業が本当に繁栄してこそ府県の発展もあるわけでございまして、こういった面については府県も一生懸命力を入れていただきたいと思いますし、私どもとしてもどういう応援の仕方をやっているか、もう一度よく調べてから、改めてお答えさせていただきたいと思います。
  121. 野間友一

    ○野間委員 それでは、その点については改めてひとつ答弁を求めてその点についての質問をすることにして、その点は保留します。  次の問題に移りますけれども、余儀なく転換せざるを得ないという人があります。だれでも本法に基づいて助成を受けられるのが当然だと思いますが、あらかじめ業種指定ということになっていますね。業種指定をする理由は一体どこにあるのか。私は、この業種指定を外して、そしてだれでも事業転換を望む者は受けられるというふうにするべきではなかろうか、こう思っております。これは時間がありませんので、ひとつ簡単に答弁願いたいと思います。
  122. 岸田文武

    岸田政府委員 転換もいろいろな態様がございまして、いままでの仕事が非常に順調にいったからもう一つ次の分野へという場合もございましょうし、どうも事業がうまくいかなくなったために余儀なくよそへ行く場合もございましょう。こういった通常の場合は普通のルールで処理すれば足りると私は思いますが、私どもが今度の法律でねらいといたしておりますのは、なかなか個々の企業の力では処理できない、いわば大きな流れの変更というものに対処しまして新しい分野転換しよう、こういった場合を助成する考え方でございます。  その中で業種指定する趣旨といたしましては、個々に一々認定をいたしますのも大変でございますから、要因として一くくりできるものを業種指定という形で処理をいたしまして、認定を便宜にするという意味合いが非常に強いわけでございます。もちろんその業種に乗らない場合でも個別に認定する道が開かれていることは、法案の内容をごらんいただければおわかりいただけるかと思います。
  123. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、業種指定を受けていない業種の業者が転換を希望した場合、この法律では恐らく三条の一項の三号ですか、これでということにあなたの方では考えておるのと違いますか。
  124. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほどの御質問の中で、府県の診断指導員に対する補助の件でございますが、いま聞いてみますと、人件費、指導費の二分の一補助ということになっておるそうでございます。  それから、次のお尋ねがございました個別の企業業種指定にかかわらず認定する道が開かれておることは、いまの御指摘にございました第三号に規定されておるわけでございます。こういう個別の企業でありましても、一号の事態と同様の事態であってそれとのバランスから見て転換を応援してしかるべしという場合には、この三号を活用できることになっておるわけでございます。
  125. 野間友一

    ○野間委員 いまの答弁、前段の答弁は、この法律とかかわりのないものなんですよね。私がいまここで論議しておるのは、わざわざこの法律をつくる最も大切なものは何かということで、商工中金の例も挙げながら、この点について国が当然この法律を施行する際の人件費を補助するべきじゃないかという点の指摘なんです。その点、えらいごまかされますけれども、私はごまかされませんから、それをぜひ補助するべきであるという点をつけ加えておきます。  いまの三条一項三号の問題でありますけれども、よくこれを吟味してみますと、この三条一項一号と要件としてはそう変わらないわけですよ。まず聞きますけれども、ここでは「同一の業種に属する相当数の中小企業者につき」云々、こうありますけれども、「相当数」というのは大体私もわかっておりますが、これはどういうふうにあなたの方では考えておりますか。
  126. 岸田文武

    岸田政府委員 相当数と言いますと、常識的に半分以上じゃないかというふうにお感じになるかもしれませんし、またそういう場合は当然こういう転換対象として取り上げてしかるべきだというふうに考えますが、私どもは必ずしもこういったことを数字で、比率でとらえるということではなくて、やはりこの法律の目的に照らしまして、大きな波が出てきたときに転換を助成してしかるべしというような中小企業政策上の判断をして、そしてこの対象を考えていくというのが妥当な方法じゃないかと思っております。
  127. 野間友一

    ○野間委員 長官、そう言われますが、立法の趣旨、目的あるいはその指定制度——いま私は指定制度を取っ払えと言いましたね、指定制度に固執される限り、これは指定外の場合には要件が大変厳しくなる。ところが、いま長官答弁によりますと、業種指定を受けない業種の業者の場合には三条一項三号で救済される、こう言われます。そうなると、立法趣旨との間で一つの乖離が出てくるわけですね。  ただ、私が申し上げたいのは、一つの立法趣旨としては、確かに業種指定という立場を取っ払えと言いましても、あなたはいまの答弁でも、いやそれは勘弁してくれ、こうなるわけです。ただ、そうであるとすれば、もし業種指定がいまの時点で取っ払いができないとした場合でも、この三条一項三号の「相当数」を最も弾力的に運用していく。特にいま私がここで指摘したいのは、いまの時点で一つの特徴として同業種間の中での格差が非常に特徴的に出ておりますね、ですから、一つの業種の中でも、景気が回復して業種自体は指定しなくてもよいけれども、しかしながら同じ業種の中でも転換を余儀なくされるという、ずいぶん深刻な事態が出てくると思うのです。ですから、そういう場合には三号を最も弾力的に運用して、そしてこういう方々の願いにこたえるというのが筋じゃないかという点から質問しているわけです。  そういう点で、いま過半数については常識的には半分以上云々という話がありましたけれども、これはやはり弾力的に運用して、そして本当に切実に転換を望む人に対しては、個別にその人を救済するという点から、これはやはり弾力的な指導をする必要があるのじゃないか、、こう思うわけであります。したがって、その点についての答弁と、同時に、これは都道府県知事の権限になりますから、もし通達なりあるいは行政方針を出される場合には、そういう点も含めて、懇切丁寧な中小企業に対する救済という点からの通達なり何なりを出すべきじゃないかというふうに思います。いかがですか。
  128. 岸田文武

    岸田政府委員 相当数の判断と言いますときには、やはり中小企業の数がどういうふうになっておるか、兼業者がどうなっておるか、その態様はどうか、規模別の分布はどうか、これらのことを総合的に判断をして決めることにいたしたいと思います。いまのお話の中で、特定の市場に輸出しているたくさんのグループがある、その市場がだめになった、こういうようなときに、なかなかほかの市場へも転換できない、こういった場合もケースとしてはあり得るわけでございまして、こういったときにはやはり機動的に考えるということが必要になってくるのではないかというふうに思います。  それから、たとえば上位企業零細企業とが非常にグループとして分かれているときに、零細企業だけをとって相当数を判断せざるを得ない、その方が実情に合うという場合もあろうかと思います。そういった意味では、御指摘のようにこの面では弾力性を持って考えることが必要であろうと思います。  なお、お話にございましたように、もしこの法律が通りまして府県に通達を出す場合には、いまのような点も十分考えて懇切な通達にいたしたいと思います。
  129. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ角度を変えてお伺いしますが、業種指定要件、これは政令で定めるということになっておりますね。この政令の具体的な中身をどのようにお考えになっておるのか、これまた簡潔にひとつお答え願いたいと思います、答弁が長いと、私の方もまだずいぶん質問がございますので。
  130. 岸田文武

    岸田政府委員 法律第三条第一項第百万で政令で事態を指定するということになっておりますが、いまこの内容として考えておりますのは幾つかございまして、一つは、輸出が貿易構造の著しい変化によって減少した場合、それから、輸入が貿易構造の著しい変化によって増加する場合、それから三番目に、主要な原材料の供給が著しく減少したことによって生産が困難になった場合、それから四番目といたしまして、公害規制その他法令の規制によることによっていままでの仕事が困難になる場合、それから五番目が、新しい技術が導入されたり、あるいは事業活動の方式が著しく変更したということに伴う場合、それから輸送構造が著しく変化した場合、こういったことを政令で指定してはいかがと思っておるところでございます。
  131. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、これは事業転換について指定をして、そして認定をする、認定に応じてそれぞれの法律効果、助成とか融資とか、こういうものを円滑に、迅速にやるという保証手だて、これをぜひ私は真剣に考えてほしいと思うのです。例の伝統的工芸品産業振興法の中でも幾つか、計画の中身が繁雑過ぎるとか、あるいは実際に効果が出てくるまでに長期間かかるということでいろいろと問題が出ておるわけですね。その点についてどうなんでしょうか、指定から具体的な法律の効果を受けるまでの間、これを迅速かつ正確にやるということについての保証はあるのかないのか、あるとすればどういう保証をされるのか。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 岸田文武

    岸田政府委員 保証と言われますと戸惑うわけですが、まさに私が一生懸命やるということが保証になるのだろうと思います。法律ができましたら、いま言われましたような御趣旨を生かすように一生懸命やってまいりたいと思います。  それから、お話の中で転換計画をつくるのはなかなかむずかしくて大変な場合もあるのじゃないかという点でございますが、転換計画自体は、事実を列挙してもらえばいいような、なるべく簡素な形にいたしますし、またそれをつくることにつきましても、事前の指導等には万全を期したいと思います。
  133. 野間友一

    ○野間委員 次にお聞きしたいのは、先ほど幾つか要件を挙げられましたが、大企業進出によって事業転換を余儀なくされるという場合にはこの法律で救済されるのかどうか、それともこれは救済の対象にならぬのかどうか、これをイエス、ノーでお答え願いたいと思います。
  134. 岸田文武

    岸田政府委員 大企業が出てきたからというだけでこれを適用できるかどうか、なおまだ勉強してみなければならないと思いますが、少なくとも大企業が出てきましたときに、普通は新しい技術ができて、あるいは新しい製品で、そのことによって中小企業業界が混乱をするという場合が多いように思いますので、そういった場合には、先ほど申しました新技術の開発によるケースというのに当たる場合もかなり多いのではないかと思います。
  135. 野間友一

    ○野間委員 いや、私が聞いておるのは、いままでずっと大企業中小企業分野に対する進出の問題がありますね。豆腐から、いろいろありますが、こういう場合にこの法律が適用されるのかどうかということ。私は、基本的には中小企業のいままでの業種はもちろん守らなければならない。しかし、余儀なくその人が希望してもっと利益のある仕事にというような場合がやはりあるわけですね。だから、分野確保法は当然約束ですし、つくらなければなりませんけれども、このようなケースの場合に事業転換法は使えるのかどうか、その点、これは基本的には使えないということでしょう。
  136. 岸田文武

    岸田政府委員 分野法の趣旨は、いままで一生懸命仕事をしてきた中小企業方々の中に突如として大企業が出たために継続が困難になるということに対して、何らか適当な対応策を講じていこう、こういうことがねらいであろうかと思います。したがって、やはり分野の問題については、問題が起こりましたときに、何とかこれを円満におさめていって中小企業に衝撃を与えないようにするということを基本にして考えていきたいと思うわけでございます。たとえば、いままでのケースをいろいろ振り返ってみましても、何とかかんとか言って大企業に対して調整を要請し、それが受け入れられることによって大きな転換問題には至らずに処理できてきたのではないかと思っております。
  137. 野間友一

    ○野間委員 ひとつ調査をぜひお願いしたいケースがありますので、それをお願いしたいと思うのです。  一つは、実は和歌山県の問題ですが、大阪に二宮無線といいまして、資本金が四千万円の家庭電化製品の小売商があるのです。これが和歌山に進出をする。十月の末に仮オープンして、来年の二月にオープンする。五階建ての大きな店舗なんです。売り場面積が千二十七平米ですから、大店法にはかからぬわけですね。これは調べてみますと、和歌山市内で家庭電化製品の小売商が約四百店なんです。年収が五十九億円。ところが、二宮無線の和歌山市に対する進出、これは年収約六億円、一割弱になるわけですね。これは業界では大体十億ぐらい持っていかれるのと違うやろかというような、非常にいま不安にかられておるわけです。  よく調べてみますと、和歌山市の場合には大体電気小売店が三百七十五世帯に一店なんですね。ちなみに、大阪では六百六十一世帯に一店、兵庫は六百世帯に一店、京都は六百十三世帯に一店、こういう点からしても、この二宮無線の進出業界全体の非常に大きな脅威になっておるわけです。これは四百店あります。しかも、たとえば電子レンジですが、いま出しておりますチラシによりますと、九万円の定価のものを四万七、八千円の価格で売り出すというようなチラシも出ております。大体市価の三割引きで売るのではなかろうか。この点について、和歌山市も入りまして、商工課も入ってはおります。しかしながら、もしこれがこういう本当に安い価格で三割も四割も値引きされたり、あるいはいま申し上げた電子レンジ九万円のものが四万七、八千円で売られるということになりますと、たちまちにして電気の小売商の皆さんが打撃を受けるというのは必至なんです。そこで、具体的に、その計画なりあるいは価格の問題等々も含めて、ぜひ検討した上で御回答願いたい、それが一つです。これは家庭電化製品、それからオーディオパーツ、こういうものも全部含まれております。  それからもう一つ、この法律関係でお聞きしたい。これも調査をお願いしたいのですけれども、和歌山県でオークワというスーパーがあります。資本金が四千五百万円ですから、これは大企業であります。これが、問題は橋本市と新宮市の二つの店舗において、スーパーの一階を自動車の整備工場に手を出す、こういうようなことが計画されまして、いま和歌山の陸運事務所に申請が出ておる。さすがの陸運事務所もこれにはいま手を焼いておる、難色を示しておるというような事態があります。  これも、たとえば分野規制分野調整、私たちの言う中小企業分野確保ですね、この点の問題や、あるいは大店法の問題とも絡んでくるわけであります。したがって、これは公取にも私はお願いをするつもりでおりますけれども、具体的に、たとえば自動車の整備工場は全部中小企業です。あるいはいまの二宮無線の関係で言いますと、電化製品の小売商、これらが圧迫を受けないような行政指導を、当然いまの時点で、これはどういう法律にどうだということはともかくとしても、強力にやる必要があるのじゃないか。ですから、これらについてもぜひひとつ調査してもらって、その結果を御報告していただきたい、こうお願いしますが、どうですか。
  138. 岸田文武

    岸田政府委員 いまの点はとっさのお尋ねですから、早速関係方面へ連絡して調査をするようにいたしたいと思います。
  139. 野間友一

    ○野間委員 調査がありましたら、調査に基づいて、いまある法律、あるいはそれで規制できない場合には、さらに私たちは強力な措置をぜひ要求したいと思います。  最後になりますけれども、いま法制化を進めておられます中小企業事業分野確保法、これはいろいろ名称は違いますが、私ども共産党はすでに分野確保法という法案をつくりまして提出をしております。これは非常に重要なものでありますし、政府もこれについては提出するという約束をしております。問題は、もしつくるとしても、これは中身の問題であります。法制定までは行政指導で行うというのは当然であると思いますけれども、しかし行政指導では間に合わないから、私どもは当委員会でもやりましたし、またさらに決議に基づいて政府も約束した。もし政府がやらない場合には議員立法でというようなところまて、私たちは強力にいま進めてきておるわけであります。  私ども共産党の法案についてはすでに御案内のとおりで、中小企業固有の事業分野指定して、その指定業種への資本金三十億円以上の巨大企業進出を禁止すると同時に、一億円以上三十億円未満の大企業については許可制にいたしまして、中小企業事業分野審議会というものを新たにつくって民主的に規制できるというふうな手だてをしております。また、都道府県知事は全国指定以外の業種についても地域を限定して同様の規制措置をとれるということにしております。一部で言われておりますように、単なる調整法では、大規模小売店舗法がそうであったように、事実上大企業進出が野放しにされる、ざる法となるということは明らかだろうと私は思うのです。  そういう意味で、大企業の横暴な進出から中小企業の存立分野を確保して、経済民主主義というものを確立するために、ぜひ共産党がいま出しておる法案を十分吟味してもらって、これに即した、そしてまた本当に中小企業分野が確保できるような法案をぜひ今国会に速やかに提出するべきである、こう考えます。この点について最後に、わが党の出しております法案の中身を踏まえて、そしてぜひこの国会でこれを出すようにというふうに要求をするわけでありますが、この点についての大臣の所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  140. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業分野調整についての立法化作業は、いま通産省が懸命に進めておりまして、何とか今国会に間に合わしたいということを目標にいたしまして立案中でございます。  なお、共産党のおつくりになった案につきましては、参考にさせていただきます。
  141. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  142. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 松尾信人君。
  143. 松尾信人

    ○松尾委員 この法案質疑に入る前に、いろいろ中小企業の問題について、新しく長官となられたあなたのお考えもよく聞いておきたい、このように思うのであります。  わが国が戦後三十年、幾多の試練を経ながらも大きく成長をしてまいりました。そして、特に三十年代、それから四十年代の半ばをピークといたしまして高度成長を遂げたわけでございますけれども、そうした中で、中小企業者もわが国経済の担い手といたしまして大きな役割りを果たしてまいっておる、これは間違いのない事実であります。また、そういう中でも、経済の二重構造であるとか、大企業の緩衝地帯、クッションとしての大きな苦労、矛盾という中できょうまで中小企業ががんばってきたのも、これは事実であります。  特に、最近におけるわが国経済環境は、低成長経済への移行、いまその過渡期である。また、長期不況の中で、従来と違った一段と厳しい環境にあるわけであります。われわれはかねてからこの事業転換対策の必要性を主張してまいりましたし、五十年の七月四日、当委員会における中小企業政策の確立に関する決議の中で一つの項目を設けまして、政府にその施策の実施を促してまいったのであります。いまこのような苦しい経済環境の中で事業転換法政府が提出しておる、これはむしろ遅きに過ぎたのではないか、このように私は認識いたします。  そこで聞くわけでありますけれども、あなたはいま中小企業の置かれているこれらの立場をどのように認識しておられるのか。また、今後ともに中小企業のあるべき姿につきましてどのようにあなたは考えておられるのか。そして、そのような自分の考えのもとで中小企業をどのように今後リードしていこうと考えておられるのか、まずそのような基本的な考え方について御意見を伺っておきたいのであります。
  144. 岸田文武

    岸田政府委員 いまのお話にもございましたように、日本中小企業に戦後幾つかの大きな波を乗り越えながら、みごとに今日までがんばってやってきたということが言えるのではないかと思っておるところでございます。特に今次不況のようにいままで経験のないような不況も、もう一息で乗り切るというところまで来ておるところでございまして、やはりその間の中小企業のある意味でのたくましさというものは、私自身も敬意を持って見ておるところでございます。  これを振り返ってみて痛感いたしますことは、やはり企業自身の力というものが大切である、そして不況にも耐えるような一種のゆとりのある経営ができるようになるということが、これからを考えると非常に大きな問題ではないかと思います。それと同時に、そういう力を背景にして、これからの事態の変化に対応して機敏に適応できるような適応力というものが、同時にこれから大きな役割りをするのではないかという感じがいたしておるところでございます。   〔委員長退席、前田(治)委員長代理着席〕 将来のことを考えてみますと、国内的には、安定成長の時代になってまいりますと、いままでのように量を追うという時代から、むしろ質が大切な時代になってまいります。こういったことは、ある意味では中小企業がその個性を発揮できるような新しい分野ができるという前向きの受けとめ方もできるのではないかという感じがいたします。それと同時に、国際的にもいろいろな変化が予想されるわけでございます。特にその中でも、発展途上国の工業化が進んでいくということの中にあって、中小企業がどうこれに対応していくかというようなことは、中小企業政策にとっても大きな課題であるように思います。  これからの環境変化の中で、本当に中小企業がたくましく育っていくようにするということを中小企業政策としても特に力を入れて考えていきたいと思っております。審議をお願いしております事業転換法もそういった意味での前向きのものとしてとらえていき、これをうまく活用していきたい、こう考えておるところでございます。
  145. 松尾信人

    ○松尾委員 中小企業企業庁ですから、本当に中小企業庁だけがいわば頼りと言えるものでありますし、あなたが意欲に燃えて、今後どのように取り組むのかというのが、今後大きく日本中小企業をいい方にもまた悪い方にも向けていくであろう、私はこう思いますので、重ねてそういう点は要望しておきます。  それから、現在中小企業者の間からでありますけれども分野調整法の制定について強い要望が出されております。この転換法の必要性というものも、おくれておると言われるように、当然でありますけれども、現在中小企業政策の中で、大企業による中小企業分野への進出によって起こっておる混乱、非常な中小企業の苦労、これを解決しないで転換法というものを先行させることは本末転倒ではないかという感じが強いのでありますが、この点はいかがですか、大臣、お答えください。
  146. 河本敏夫

    河本国務大臣 事業分野立法化作業は、いま中小企業庁が中心になりまして、この七月以降ずっと進めております。大分作業は進んでおりますが、何分にも非常に大きな大法典でございますので、各方面の意見を十分聞きながら作業をしておるところでございます。なお最終段階には若干の時間がかかろうかと思いますけれども、できるだけ今国会に間に合わしたいということを目標といたしまして、鋭意立案中でございます。
  147. 松尾信人

    ○松尾委員 この法案の中には、貿易構造の変化と、このようにございます。この数年の間で、このような貿易構造の変化中小企業のどういう業種にどのように変化を与えておるか、この点はいかがですか。
  148. 岸田文武

    岸田政府委員 六五年から七五年に至る十年間の推移を商品別に調べてみました。かつて日本の輸出の主力部隊でありました繊維が、六五年当時は輸出の中で一八・七%を占めておりましたが、ごく最近の状況では六・七%というふうに落ち込んできております。中で綿織物をとってみますと、三・六%から〇・五%という形で非常に減ってきております。  ただ、その反面で、船舶であるとか、自動車であるとか、家庭電化製品等を中心とした機械器具は逆に非常に伸びておりまして、かつて三五・二%を占めていたものが最近では三五・八%というような形で増加を示しております。全般としては重化学工業化が進んできたということが言えるのではないかと思います。  その背景には、世界のそういうものへの需要が伸びつつあるという面が一面ではございますし、また他面では、発展途上国の工業化が次第に進んでまいりまして、軽工業品の競争力がついてきたということもその背景にあるような感じがいたします。  さらにまた、個々の商品に若干入りますが、船舶等につきまして、ごく最近タンカーの需要が急激に減ったということによって契約が伸び悩んでおるというような問題であるとか、それから輸入国でいろいろの貿易政策の変更がございまして、金属洋食器の関税割り当てがアメリカで廃止されたというような問題等々、いわば国際的にもいろいろな新しい環境変化が起こりつつあるということも言えるような感じがいたします。なおまた、輸入の面に目を転じますと、軽工業品の輸入が次第に伸びており、特に発展途上国からの輸入が伸びつつあるというようなことも、一つの最近の傾向ではないかと思っておるところでございます。
  149. 松尾信人

    ○松尾委員 抽象的なお答えが多かったと思うのでありますけれども、貿易構造の変化という点からまいりますれば、やはり発展途上国からの非常な追い上げというもの、また原材料のいろいろの入手の困難さとかというものを的確に今後は掌握されていないと、この貿易構造の変化という観点から、事業転換というものをどのように進めていくかという具体策がなかなかむずかしいのではないか。いまあなたの方では抽象的な、そういうこともあるであろうとか、こういう程度であろうというお考えではなかろうかという気がいたしますので、これはあえて答弁を求めませんけれども、これは要請をしておくわけであります。  それから次は、この事業転換の定義でございます。異なった業種への産業分野進出する、これは事業転換としてはよくわかるのであります。しかし、同じ業種内でどの程度の経営内容の変化というようなものを転換というのか、いかがですか。
  150. 岸田文武

    岸田政府委員 一般的に事業転換と申しますと、ある業種に属する事業から他の業種に属する事業へかわっていくということを指すかと思いますが、この場合の業種の判断というのは必ずしも標準産業分類等による分類にこだわる必要はそれほどないのではないか、実態として、主な設備を相当かえていかなければならないというような実態を見て判断するのが適当なのではないかというふうに思っております。整理をして申しますと、いまやっております仕事を一方で縮小しながら、他方で新しい仕事が全事業の中で相当部分を占めるようになるということがその実態になろうかと思います。そのときの相当部分という意味におきましては、生産額であるとか、取引額であるとか、それから主要な設備の内容であるとか、こういったことを総合的に判断をしていきたいというふうに考えております。  なお、標準産業分類の四けた分類に同じく属している中でも転換をするという場合があるわけでございますが、そういったわりあいに似た分類の場合の取り扱いが今後の運用としては一つ問題になろうかと思います。ただ、そういう場合には新しくできる製品が従来の製品と比べますと非常に高級なものである。そのために新しい設備を相当入れていかなければならない。それから、原材料なり加工技術なり用途なり販路なり機能なり、こういったものがかなり変わっておる。例を申しますと、たとえば同じ運動用具、これは標準分類で四けたでございますが、その中で一生懸命スキー用具をやっていた者がほかの運動用具にかわっていく、そのために設備が相当かわっていく、こういった場合にはある程度機動的に考えることも必要なのではないかと思っております。
  151. 松尾信人

    ○松尾委員 私の方から具体的に一つ一つ聞いてまいりましょう。まず、同一業種内で原材料の利用変更、それによりまして生産品種の転換を行う場合、いまお話がありましたが、これは該当するかどうか、いかがです。
  152. 岸田文武

    岸田政府委員 同じ設備に原料だけ違えて生産をするというようなときには、いままでの延長のように考えるのが常識的なのではないかと思いますが、新しい原料を入れて新製品を出していく、そのために新しい設備が必要だ、これが従来の仕事とかなり実態として変わってきておるのだ、こういうような実情にある場合には、これは前向きに考える方が常識的なのじゃないかと思います。
  153. 松尾信人

    ○松尾委員 次は関連の下請企業がいままで半製品の加工業的な生産方式をやっていた、今度はこれを完成品まで、または独自の製品の生産へ移行する場合、これもお答えがさっきあったと思いますけれども、念を押しておきます。
  154. 岸田文武

    岸田政府委員 これも大体いまのと同じような考え方でいいのではないかと思います。ひとつこの際完成品まで手がけて新しい販路を開拓しよう、そのためには相当の設備も要る、新しい技術も要る、従業員の再訓練も必要だ、いままでの経営とはかなり趣が変わってくる、こういうようなときにはこの法律対象になり得ることもかなり可能性があるのではないかと思います。
  155. 松尾信人

    ○松尾委員 過去の転換ケースを見てみますと、一面では多角経営を行う、そういう中で結果的にいつの間にやら転換をしたというケースも少なくないわけであります。一般的に見まして、転換をやろう、そうしていろいろそのような計画を立てて実行してきたという、転換するまでの期間、転換ができ上がるまで、これはどのくらいを見ておりますか。
  156. 岸田文武

    岸田政府委員 過去のいろいろのケースを調べてみまして、大体最長五年ぐらいあれば目的を達成できるのではないかというふうに考えております。これはむしろ新しい分野へぱっと飛びつくというような態度よりは、自分業種の将来を見詰め、さらにまた転換先についてもよく勉強して、そうして新しい分野にどうやって転換していくか、その過程もよく考えて計画的に転換をするということの方がむしろ実りの多い場合もたくさんあろうかと思います。その意味におきまして、いま申し上げました計画期間の中で逐次多角化を進めていく場合もありましょうし、いろいろなやり方を進めながら最終的に新しい分野へかわっていく、こういうようなものであれば対象としてしかるべきじゃないかと思っておるわけでございます。
  157. 松尾信人

    ○松尾委員 転換の認定をする場合でありますけれども、申請されてきた計画は、当然当初は多角経営的な内容となるのが多いのではなかろうかと思います。その場合、経営内容がだんだんウエートが移りまして、そうして計画の中に記載されておるウエートが将来だんだん移行していく、それがだんだんこのように移行しますということがはっきり計画の中に記載されておれば、転換として十分認められるのではないか、こう思うのですけれども、この点はいかがですか。
  158. 岸田文武

    岸田政府委員 中小企業の方が将来の業種への転換を頭に置きながら、こう変えていって、さらにこう変えていって、最後にこういうふうにいく、こういったいわば将来の長期設計図がその計画の中に書いてあって、最後には新しい分野へ移っていったという姿になるのであれば、これは計画として取り上げて差し支えないのではないかと思っております。
  159. 松尾信人

    ○松尾委員 ある業から他の産業分野進出する場合でありますけれども、その製品の機能だとか、またはデザインだとか、消費者のいろいろの要望、ニーズというものを把握する、それに合わせて生産技術等を改善する必要があるわけであります。その技術の改善は、各種の試験所だとか県または通産省関係機関に相談に行って、問題の解決の可能性はあるわけであります。しかし、このデザインだとか消費者のいろいろのニーズの把握は非常にむずかしい問題であろうと思われます。さらにそれ以上に、未開拓市場の確保が転換に伴う企業の成功するかしないかを左右する問題であります。こうした点につきまして、中小企業者の能力とかそういう可能性をいまの現状からどのように判断されていますか。
  160. 岸田文武

    岸田政府委員 ただいまお話がございましたように、事業転換と一口に申しますけれども、実際中小企業当事者の立場に立ってみれば、やはり将来の自分の運命がかかっておる非常に大きな仕事でございまして、こういった大きな決断をするに必要な情報がどうしても欲しいと思うのが当然だろうと思います。私どもは、県の指導所に直接いろいろ相談相手になってもらうとか、あるいは中小企業振興事業団に過去の転換事例をたくさん集めておいていただいて、それを知りたいということであればいろいろな窓口を通じて利用していただくことであるとか、あるいは国なり商工会商工会議所にあります相談窓口に来ていただきまして、いまお話のございました各種の情報が気軽に利用できるようにすることが、この転換対策を進める上において非常に大切なことではないかと思います。  特に、ある程度の大きさの企業であれば、その人専門でこの問題に当たる余力もございますが、本当に小さい企業方々にとりましては、意欲があってもなかなかそこまで手が回らないという場合もあろうかと思います。やはりそういうような層に一番親切に情報を提供してあげられるようにすることが大切であると私どもも考えておりますし、できるだけ今後とも努力してまいりたいと考えております。
  161. 松尾信人

    ○松尾委員 それはしっかり努力を払っていただきます。  いままでの転換対策法によりまして転換計画の認定を受けたもの、これは中小企業近代化資金等の助成法で三件、中小企業近代化促進法はゼロ、中小企業特恵対策臨時措置法もゼロ、それから国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置法、ドル対法、これが六十二件、合計六十五件ということになっておるわけですね。そこまで転換計画の認定をしたわけであります。認定したのはそれだけでありますが、もともとの申請はどれぐらいあったですか。
  162. 岸田文武

    岸田政府委員 いま手元に的確な資料がございませんが、転換計画を申請してもらって、それをだめですよと言ったような記憶はあまりございませんので、大体この程度に近い数字で申請があったし、それを認定してきたということが言えるのではないかと思います。
  163. 松尾信人

    ○松尾委員 また、これは中小企業白書でございますけれども、四十二年から四十六年の五年間に製造業のうちで何らかの形で転換したものが一二%、卸売業が一五%、小売業が一七%、このようになっております。この数字は中小企業転換の必要性を非常に強調される点からいえば何か少ないような感じがするのですがね。それとも、こういうパーセンテージを土台にして、非常に大事である、このような認識ですか。
  164. 岸田文武

    岸田政府委員 いまお話がございました中小企業白書の資料は、転換問題に関連をして一体実態がどうなっているのだろうか、ひとつ網羅的に調べてみようという調査の結果から出てきたものでございます。いま思ったより少ないという御指摘でございますが、私は思ったより多いという個人的な印象を持っておるところでございます。やはりそれなりに新しい事態に適応して業種転換を従来とも図ってきた。ただし、従来の場合の転換は、いわば高度成長の時期でございまして、あそこへ行けばおもしろい仕事があるぞというような機会もたくさんあって転換が行われる場合も多かったのではないかと思いますが、これからの時期になりますと、やはり転換をめぐる環境も実際問題としては厳しくなってきておる面もございましょう。そういった環境の中でもやはり的確に転換を進めてまいることが、日本経済のためにも、またその中小企業のためにも意味のあることでございまして、こういった面を何とか応援をしていきたいというのがこの法律の趣旨であろうかと思っております。
  165. 松尾信人

    ○松尾委員 そうしますと、過去の四法の転換策と今回出されておりますこの事業転換法の基本的な相違は、一言でどういう点にございますか。
  166. 岸田文武

    岸田政府委員 従来、転換のために用意しておりました法律は、たとえば特恵が供与されることになったとか、あるいはドルショックが発生したとか、こういった突発的事態に対しまして何とか緊急の対応策を講じていかなければならないというような発想に基づくものが幾つかございますし、他のものとしては、積極的に近代化を進める過程で特定の業種をどう持っていくかというような形に伴う法律があった。こういったことで目的が限られておりましたりあるいは対象が限られておったりという形になっておりましたのをもう一度振り返ってみまして、今後いろいろの事態がどういうふうに起こってくるかわからない、そういった事態に対応して機動的に動けるような、もう少し一般的な法律を用意しておこうというのがこの法律の趣旨ではないかと理解しております。
  167. 松尾信人

    ○松尾委員 いままでの転換計画を認証したという実例を言われたわけでありますけれども、その後の転換した企業の追跡調査と申しますか、うまくいったものまたは失敗したものがあると思うのでありますけれども、その結果はどのようにあなたの方ではつかんでおられますか。
  168. 岸田文武

    岸田政府委員 たまたま先ほどお話の中に出ておりました国際経済調整法に基づいて認定した転換計画、手元にあります数字で合計六十五件あるわけでございますが、それが一体どういうふうに実施されたか、ちょっと追跡調査をいたしてみました。その中で、二つは結局計画をつくっただけで実行に移りませんで、六十三件が実行に移っております。その中で、成功したという答えが返ってまいりましたのが四十七件、どうも思ったようにうまくいかなかったというのが十六件でございます。  この四十七件についていろいろ実情を聞いてみますと、やはり先ほど来お話がございましたように、よく研究をして、また準備も整えて、いい業種を選んで計画的に推進していった、こういう業種がまず成功しているのではないかと思います。
  169. 松尾信人

    ○松尾委員 まあいろいろの調査がございますけれども転換した企業の中で四割近くが失敗であったというような調査の実績もあります。しかし、これはいまの説明で六十五件に限ってのお答えでありますから、やめておきますけれども。  現在、低成長経済に移行しておる、そういう過渡期でございます。また低成長経済になった場合に、過去の高度成長期でさえも転換の成功例が少ない、相当失敗もしておるということであります。この転換の希望の問題でありますけれども、今後のあなたの方の見込みですね、現在このような過渡期であり、長期に非常に景気が停滞しておる時代ですから、相当これはやりがいがあるのだ、このように思っていらっしゃるか。過去この転換の成功例が、まあ見てもいろいろ問題が多い、こういう点をどのようにあなたの方では掌握しておりますか。
  170. 岸田文武

    岸田政府委員 いままでと比べますと、これからの経済環境転換という問題についてはやはり厳しくなりつつあるのではないかという感じがいたします。やはりこれからの経済情勢の中で転換が円滑にいくためには、相当の準備をし、また政府の助成とうまくマッチしながら進めていくということが大切ではないかと思います。過去のいろいろな失敗例お話お話の中に出ておりますが、私どもはやはり失敗は失敗としてそれを次の反省材料に生かしていくということによって、これからむずかしくなる環境の中でうまく転換を図っていけるようにしていきたいと思います。  私は、中小企業方々というのは私ども役人と違った本当にある意味でのバイタリティーを持っておられる方々で、本当にその気になって体当たりでいくということで活路を開かれた事例もたくさん知っておりますし、私どもはそういう活力をいかに生かしていくかということを、政策の上でも気をつけていきたいという感じがいたしております。  これでどのくらいのケースが出てくるかということでございますが、私どもは、業種は少し弾力的に拾っていきまして、余り要件をぎしぎし詰めるというようなことよりは、やはり前向きに行けるものは拾っていくということでやっていきたいと思っておりますので、ちょっといまのところ、どの程度の申請があるかということは申し上げられませんが、しかしこの立法の趣旨が趣旨でございますから、なるべくうまくこの法律を生かして活用していきたいと思います。
  171. 松尾信人

    ○松尾委員 この業種指定の要件でございますけれども法案では、貿易構造の著しい変化だとかその他の経済事情の変化によって生ずる事態であって政令で定めるもの、このようになっております。これは政令ということでありますが、どのように考えておられますか。
  172. 岸田文武

    岸田政府委員 いまお話のございました政令の案につきましては、いま事務的に中で調整をしておりまして、さらに関係のところとも打ち合わせて最終的に固めていきたいと思っておりますが、いま頭の中にありますことを申し上げさせていただきますと、一つは、法律の中にもございますように、貿易構造が変わっていく、それによって輸出が減っていったり、あるいは輸入がふえていったり、こういった事態が第一のケースであろうかと思います。  さらにまた、競争関係にある物品が技術革新をしまして非常に需要を伸ばしていった、そのために影響を受けるという場合も予想されるわけでございます。さらにまた、輸出国で事情が変わってまいりまして原材料の手当てが非常にむずかしくなってきた、そのことのためにいままでの仕事が続けられなくなる、こういうケースも予想されるわけでございます。さらにまた、今後公害規制強化されたために、いままでのような仕事ではいけないということで新しい分野転換するという場合もあろうかと思います。これらのことを頭に置きながら政令をまとめていきたいと思います。
  173. 松尾信人

    ○松尾委員 この業種指定でありますけれども、ある業種指定された、これは危ないのじゃないかというような感じを金融界その他が持ってはいけない。いい印象を与えるのか与えないのか問題でありますけれども、金融措置というものが伴う以上は、やはりそこは業種指定があった、指定がなされる、こういういろいろのものが具体的に出てまいりますると、次には助成措置が出てまいりますので、当然強力な助成の措置がなされなければいけない。ところが、片一方がそういうことをいやがるというような傾向があっては大変でありますが、その指定の問題と、この金融界その他の援助の関係というものをどのように積極的にきちっとおさめていく考えですか。
  174. 岸田文武

    岸田政府委員 この法律の趣旨は、繰り返し申すようでございますが、新しい経済環境の中で新天地に発展をしていく、こういった中小企業を激励し、応援をするというところにねらいがあるわけでございまして、決してこれで衰退産業と決めつけるというような性格のものではないわけでございます。  ただ、一部には、こういった指定を受けると金融機関から色目をもって見られるのではないかとか、あるいは従業員が意欲をなくしてしまうのではないかとか、あるいは同業の仲間でちょっとぐあいが悪いというような懸念をされる向きもあろうかとも思います。そういうことのないように私ども十分気をつけていかなければならないわけでございまして、具体的には、業種指定するときに少しふんわりした指定の仕方をしまして、妙な色目で見られにくいような工夫をしていくとか、また指定をするときにはあらかじめその業界の方と御相談をして、納得ずくで指定するようなやり方を考えていくとか、またもう少し客観的な見方をしてもらえる中小企業近代化審議会に一遍相談をして、その上で指定をするというようなやり方をやるとか、いろいろな工夫をしてまいりたいと思います。  そのほかに、この制度の趣旨、目的というものを少しでも多くの人にわかってもらうということが一番基本でございますので、その面にも努力をしてまいりたいと思います。
  175. 松尾信人

    ○松尾委員 そうしますと、結局、転換を希望する業界に、金融の点については心配のないように、うまくそこは——あなたの方で自信があればいいのですよ。ところが、認定になって金が出ないとか、いろいろそこでごたごたするとか長引くとかいう問題があると困るわけですから念を入れて聞いておるわけでありますけれども、その後のいろいろな資金的な手当ての問題は任しておけ、このように言われるわけですね。
  176. 岸田文武

    岸田政府委員 転換を円滑に進めてまいりますためにはやはり知恵が必要であり、金が必要であり、また人の和が必要であるという感じがいたします。なかんずくやはり金の問題というのは中小企業にとってはいっときも頭のすみから離れない問題でございまして、これをいかに円滑につけていくかということが転換を円滑に進めていく上で大切なことであろうかと思います。そのために、今度の法律におきましては、この計画認定を受けた者に対し中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫で金融上の助成を上積みして行うとか、さらにまた信用保険におきましても別枠で一定の金額を保証するという制度を設けるとか、金融の面では従来のいろいろな実績に照らしましてまず必要な手当てをしたのではないかと思っております。
  177. 松尾信人

    ○松尾委員 政府の役割りという点でございますけれども、要するに情報を提供したり、診断をしたり、指導をするわけですね。非常に政府の役割りと責任は重大であります。  まず第一に、情報の提供でございますけれども、いかにして中小企業者に的確な情報を提供することができるか、これは転換の対策の実施が成功するか否かの大きな決め手となるわけでありますが、この情報の提供機関は一体どこかということ。  それから、従来から各都道府県にあります中小企業総合指導所中小企業者相談に応じておるわけでありますけれども、どちらかといいますると、現在の企業経営についてその分析だとか指導、それから現在の企業経営をいかに合理化するか、近代化するかという点にいままでは重点がありました。しかし、この法案に伴う情報提供だとか指導というものは、そうしたこととは相当性格を異にしております。どういう方向事業の内容を持っていけばいいのか、きわめて経営方針の根本に立ち至った相談を受けるわけであります。それに対しての的確な指導がなければならなのであります。その点の情報提供、指導力というものについては、いまどうでありますか。
  178. 岸田文武

    岸田政府委員 まず、情報の提供についてでございますが、やはり転換をするということを考えている中小企業自身にとりましては、いまのままでいったら一体これからこの業種はどうなるだろうということをよく見きわめてみる、これが必要でございます。それと同時に、これから仮に転換するとすればその転換先の将来性はどうだろうか、またそこで商品を売るときに販売の問題は大体うまくいくだろうか、いろいろ心配事がたくさんあるだろうと思います。そういった心配事に的確に答え得るような情報の提供ということがこの法律を円滑に進める上で大切なことであることは御指摘のとおりでございます。  御承知のとおり、中小企業振興事業団の中に中小企業情報センターというものが設けられております。ここでは広く関係のところから資料を集めまして、それを中小企業向けに整理をして、そして都道府県なり各種の商工会商工会議所等の出先に流しまして、企業の役に立つ情報を提供するということを役目といたしておりますが、最近転換に関する関心が非常に高まってまいりましたので、その情報センターの中に特別の室を設けまして、転換に関する情報を集めてそれを提供するということをもっぱらやるような体制をようやくつくりました。ここでいま申し上げました各業種の状況だとか、さらにまた転換事例、それから日本の競争力がこれからどうなるか、いろいろな情報を集めまして提供できるようにしていきたいというふうに思っております。  それから、指導分野でございますが、いまお話の中にもございましたように、府県の総合指導所が従来いろいろの活躍をしてまいりました。私も大阪府におりましたときに、この指導所の活動については非常に関心を持っていろいろ話も聞いた覚えがございます。  ただ、これからは新しい課題を迎えるるわけでございまして、この転換という問題については中小企業総合指導所の力を挙げて取り組んでいけるように私ども指導してまいりたいと思います。特に、転換の前の状況だけではなくて、転換後の指導ということも大切でございましょう。それから、やはりいままでの指導と違った新しい勉強も必要であろうと思います。こういった面では研修をやって、この転換問題の需要にこたえられるような体制をつくるというようなことも考えておりますし、また必要に応じて診断指導員の増員を考えるということであれば、それをまた応援をするということも必要なことではないか、あれこれ手を考えまして、積極的に応援をしてまいりたいと思います。
  179. 松尾信人

    ○松尾委員 職業訓練の問題でありますが、この職業訓練は非常に欠かすことのできない大切な点であります。  そこで、職業訓練校の現状でございますけれども、いままで勉強したい、訓練を受けたい、こういう希望者を全員収容することができたかどうか。また、本法律が施行されますといろいろの問題が出てきまして、職業訓練もまた一つの大きな役割りを担うわけでありますけれども、そういう余力といいますか、受け入れ体制というものは十分であるかどうか、これをお尋ねいたします。
  180. 中野光秋

    ○中野説明員 公共で実施しております職業訓練所は全国で約四百五十カ所程度ございますが、最近はこの不況の関係で非常に入校率も上昇してまいりまして、大体八割ぐらいの入校率で実施しておるような状況でございます。また最近、産業構造の変化とかあるいは不況産業等で離職、転職を余儀なくされる人たちに対しましては、できるだけ希望者全員を入校させるように、これは主として都道府県知事が実施しております事業でございまして、これに補助金を私どもは出しておる次第でございます。たとえば最近造船関係で長崎地区が非常に不況になっておりますので、先般からも長崎県とも相談をいたしまして定員をふやすというような措置もやっております。今後もそういうことで希望者に対しましてはできるだけひとつ全員入校できるようなことを考えていきたいというふうに思っております。
  181. 松尾信人

    ○松尾委員 いまお話が出ました造船関係でございますけれども、現在造船業界というものはかつてない不況でございます。そしてこれは地域に与える影響が非常に甚大である。それで、長崎県でももう早くから造船関連の下請企業事業転換に関する一つの考察というものをまとめ上げまして、積極的な姿勢でこの事業転換に取り組んでおります。しかしながら、長崎県という立地環境からいたしまして、近くに大きなマーケットがない、その確保がむずかしい、それから多くの下請が転換するにいたしましても、たくさんの問題をかかえておりますので市場をできるだけ広く探し出す、それで転換方向を定めなければならないわけであります。非常に広い地域にわたっての転換の必要があるので、その情報提供も必要であるわけでありますけれども、この点はどのように通産省は考えておりますか。
  182. 岸田文武

    岸田政府委員 先ほども触れましたように、いま造船業は大変むずかしい状況に置かれておるように私どもも判断をいたしております。特にタンカー関係がオイルショック以降新しい情勢を迎えまして、なかなか注文が来ない。小型船等でようやくつないでおるというような状況にございます。そのような状況は当然関連の中小企業に影響を及ぼすわけでございまして、造船業のように非常にすそ野の広い、関連業界の広い分野では一種の地域問題にも発展をする様相を呈しております。私どもも、こういった状況についてはやはり的確に手を打っていくということが大切なのではないかというふうに思っておるところでございます。現に、いまお話にもございましたように、造船関連の下請の方々からひとつ新しい分野で新しい仕事を見つけていきたいというような希望もございまして、いろいろ研究しておられることを私どもも耳にいたしております。こういったことであるならば、私どももできるだけの応援をしてしかるべきではないかと思っております。その中で、地元だけでは問題が処理し切れない、もう少し広い範囲で仕事を見つけていく、新しい仕事を探していく、こういったことは当然必要なことでございまして、そういった考え方の一環としてでございますが、実は福岡通産局が中心になりまして造船下請不況対策懇談会というものをことしの七月からスタートさせまして、すでに三回ほど議論をいたしております。ここの懇談会の主な仕事は、下請の実情をよくキャッチをいたしまして、何とかその人たちに広域的な視野から見て新しい仕事はないだろうか、あるいは公共事業等にそれらの人がうまく結びつくような機会がないだろうか、こういったようなことをいろいろ研究し、知恵を出す、こういう仕事をやつてきておるわけでございます。なお私ども今後特に気をつけてやってまいりたいと思います。   〔前田(治)委員長代理退席、委員長着席〕
  183. 松尾信人

    ○松尾委員 長崎におきましては、現在老朽船舶の解体という新しい分野のテストの事業が行われているわけでありますが、これは最近着手したということを聞いておりますけれども、この新分野のテスト解体作業というものはいまどのような進捗状況でありますか、これをお答え願いたい。
  184. 間野忠

    ○間野説明員 三菱重工の長崎造船所の方で、七月から日興丸という二万トン程度のタンカーを試験的に解体してみるという作業をやっております。ただいま工事中でございますが、大体十二月中には解体が完了するということで、そこからいろいろデータが得られることを私どもは期待しております。
  185. 松尾信人

    ○松尾委員 いま日興丸の解体作業お話が出ましたけれども、これは一つのテストケースとしての新分野事業でありますから、今後ともにこれは大きく広げて積極的に推進されていくのだろうと思うのです。ですから、あなたの方では、要解体船舶の隻数だとかトン数、それからそういうものを世界的ににらみ合わせてこの日本でどのくらいやるかという一つの大きな計画もお立てになって、これを新しく事業転換分野に寄与させていきたい、このような考えはあるのですか。
  186. 間野忠

    ○間野説明員 ただいま先生がおっしゃいましたように、タンカーを中心とします不況で、俗に一億トンほどタンカーは余っておると言われております。そういうことでございますので、私どもの統計を調べました限りでは、世界で約三千万総トンの船が二十年以上の船齢を持っております。二十年以上たちます 解体するにふさわしいものでございまして、需要はあるとわれわれは判断しております。また、おっしゃいますように造船業不況で特に下請が非常に大きな被害をこうむっておりますし、かつまた、造船下請の持っております技術というものは非常に解撤に向いたものでございますので、私どもといたしましてはなるべくこれを解撤業の方へ転換させまして、ある意味ではこれは資源のリサイクルというような効果もあると思いますし、過剰船腹の解消というような効果もあるかと思われますので、計画的にやってまいりたいと思っております。  そういうことでございますので、長崎はもちろん試験解体でございますけれども、そのデータを利用しましていまのところ全国で十カ所程度やれるのではなかろうかということで、その操業に当たっては若干の助成をするというようなことが必要であればそれもいたすということで検討いたしております。
  187. 松尾信人

    ○松尾委員 これは下請関係といたしましては起死回生策とも言えるような非常に大きな期待を持っておるものでありますので、今後ともにうんと推進していただきたいのであります。  ところで、この新しい仕事分野でありますけれども、これには元請がおりまして、この元請と下請が解体の下請をやるわけでありますが、そこがうまくいきませんとなかなか調子が悪い。元請というものがおる以上は、長崎は長崎でそれぞれの下請の分野拡張ができていくでありましょうけれども、そういう元請と下請の関係をきちっと調整していく、スムーズにこの事業を進めていく、こういうことが必要だと思うのです。あなたの方の御指導を本当にしっかりやっていただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  188. 間野忠

    ○間野説明員 本年度に、下請ばかりじゃございませんで、中小造船業も含めまして下請等の転換先の研究というような調査研究をいたすことになりまして、学識経験者の方々にも集まっていただきまして委員会をつくりまして、転換先等を考えておるわけです。その一環としてこの解決も考えておるわけでございますけれども、おっしゃるように下請は非常に零細でございますので、いろいろな意味での元請のバックアップがなければ非常にむずかしい点が多々ございます。そういうことがございますので、私どもも、下請の団体でございます日本造船協力事業者団体連合会というのが東京にございますし、それから元請の集まりとしましては日本造船工業会というようなものがございますので、両者よく協議いたしましてスムーズに転換ができるようにいたしたいと思っております。
  189. 松尾信人

    ○松尾委員 これは大臣に御意見を伺うわけでありますけれども、造船不況、それに関連する下請というものがいまどんどん落ち込んでおる。そして離職者も多い。このような転換というものの第一線にいま追いやられているわけであります。  これは先般も私は大臣に質問したのでありますけれども、液化天然ガスの輸送の問題であります。いま全部用船でありますから、今後六十年までに相当の液化天然ガスを日本は輸入するという計画をこの前あなたの方でお示しになったばかりでありますが、そうしますと用船の隻数もふえてくるし、運ぶ油の量もうんとふえてくる。そこで、あなたの方でひとつ推進してもらいたいのは、日本の船会社、そういうところで積極的にLNGの輸送船をおのおの建造する、そしてタンカーで落ち込んで苦しんでおる造船界に大きく活を入れる。日本でない、いままで用船ばかりでやっておったそういうものをやめて、日本でもそういう船を持つということは、非常にいろいろの面からこれを推進していくべき政策だと思うのでありますが、その道のベテランである大臣のお考えはどういう考えでいらっしゃるか、これを聞きまして、私はきょうの質問を終わりたいと思うのであります。
  190. 河本敏夫

    河本国務大臣 液化天然ガス、LNGを運ぶための船は、日本ではまだ一隻もできておりません。川崎重工が来年の暮れに一隻ようやく建造するというような状態でございまして、 ヨーロッパ、アメリカに比べますとこの分野では大変おくれておるわけであります。世界一の造船国であります日本におきまして、この新しい分野での開発が最もおくれておるということは大変遺憾に思います。いま仰せのように、今後十年の間には世界各地でこの方面の需要がふえるわけでありますから、日本の造船業界ももっと努力しなければならぬと思います。私どもも運輸省とよく協議をいたしまして、この方面の開発が進むように努力をしていきたいと考えております。
  191. 松尾信人

    ○松尾委員 それで、運輸省の姿勢も大事であります。また、海運業界もそういう船を持とうという意欲がなければいかぬのでありますが、海運業界に対する指導はする必要がありますから、大臣から運輸省の方とよく折衝していただきたいと思うのです。  それから、そのような段階になりまして、運輸省としても液化天燃ガスの輸送船の建造の問題は今後ともに力を入れていくべきだと思うのでありますが、あなたの考え方だけを聞いて、終わりたいと思います。
  192. 間野忠

    ○間野説明員 私どもの方でも、今年度からいわゆるLNGの運搬船を国内船主が持つのにどういう問題点があるかということを、通産省資源エネルギー庁の担当官の方にも加わっていただきまして協議会をつくりまして、学識経験者の方にも入っていただきまして検討いたしております。今年じゅうには必ずしも結論が出ないかもしれませんが、明年までかけて、どういう問題があり、どういう措置をとれば日本の船主さんもLNG船を持てるかというような問題について検討してまいりたいと思っております。
  193. 稻村佐近四郎

    ○稻村委員長 次回は、来る十五日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会