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1976-10-20 第78回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 藤本 孝雄君    理事 石井  一君 理事 塩崎  潤君    理事 水野  清君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君 理事 津金 佑近君       粕谷  茂君    塩川正十郎君       正示啓次郎君    深谷 隆司君       山田 久就君    山村治郎君       川崎 寛治君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務政務次官 小此木彦三郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局長 本野 盛幸君         外務省条約局長 中島敏次郎君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     村上  勇君   坂本三十次君     水田三喜男君 同日  辞任         補欠選任   水田三喜男君     坂本三十次君   村上  勇君     粕谷  茂君 同月二十日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     山村治郎君   原 健三郎君     深谷 隆司君   福永 一臣君     塩川正十郎君 同日  辞任         補欠選任   塩川正十郎君     福永 一臣君   深谷 隆司君     原 健三郎君   山村治郎君     坂本三十次君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 藤本孝雄

    藤本委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 いま外務大臣がお見えになりましたのでお尋ねをしたいと思うのでございますが、昨日参議院で大石農林大臣が、懸案になっておりますいわゆる領海十二海里の問題につきまして委員の質問に答えて、これはどうしても早くやらなければいかぬ。特に北海道の漁民日本近海漁業に従事しております日本漁民立場を守るためにも一日も早くしなければいけない。従来は国連における海洋法会議結論を待ってということであったけれども国連の方の会議結論が出ないので、国連海洋法会議結論を待たずに、国内法として次の通常国会領海十二海里を法案として提出したい、こういう意見を述べておられるのでありますが、これは非常に重大なことでございますので、これは結局外務省が最終的に取り扱うことと思いますけれども外務大臣としてはこの問題にどういうふうな御意見を持っておられますか、伺いたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 河上さんも御承知のとおり、領海十二海里の問題につきましては、政府としましては内閣官房長官中心検討を行いまして、閣議了解を経まして具体的な実施時期、態様の問題は別として、領海幅員を十二海里とすることが適当であると考えること。また具体的な実施の時期、態様については海洋法会議推移等、この問題をめぐる諸般の情勢を勘案しながら検討を続けていくべきことというふうなことを基本的な方針にしておるわけでございます。  そこで、そのような方針のもとに、政府といたしましてもこの国会三木総理大臣から何回も表明しておりまするとおり、海洋に対しまする世界的秩序は、全体として海洋法会議の結果決まることが最も望ましいので、今年じゅうに海洋法会議結論が出るという見通しは変わってきたわけでございますけれども、しかし海洋法会議は決裂したわけでなくて、来年の五月にまた新しく会期が予定されまするので、関係機関でその期間に至るまでの間にも実質的な協議を進めようということでありまして、政府としての考え方領海十二海里問題については、なお今後の海洋法会議推移、成り行きを見守っていこう、こういう考え方でございます。
  5. 河上民雄

    河上委員 いま政府としては、基本的に領海十二海里で将来いきたい、こういうことは決まっているけれども、その実施の時期その他については関係各省意見をすり合わせて出したい、こういうようなことでございましたが、すでに農林大臣がいまこのような積極的な意見姿勢を示された以上、農林大臣の見解といいますか、それは当然背後に日本漁民の要望があるわけですけれども、こういう新しい事実が出てきた段階において、この新しい要素をどういうように受けとめていくか。農林大臣農林大臣通常国会国内法でやるんだ、こう言い、外務大臣の方は、いやもう少し国際的な合意ができるまで、こういうようなことでありますけれども、そういうことではちょっと内閣不統一ということになると思うのです。これは直ちに農林大臣を交えてしかるべき機関で相談されるわけでございますか。相談すべきだと思いますけれども、いかがでございますか。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 農林大臣のおっしゃいましたことに私からこの場所でコメントすることは適当でないと思いますが、要するにソ連船日本近海において操業する、それによって沿岸漁民がいろいろな困難に逢着しておられる、こういう事実につきましては私もいろいろな話を受けておりまして、その困難については十分理解し、また心から同情を禁じ得ない次第でございます。  私としては、この問題の解決については従来から日夜非常に心痛いたし、また心を砕いておるわけでございまして、さきにニューヨークでグロムイコ・ソ連外相に会いました際にも、ソ連漁船日本沿岸十二海里以内で操業することを自粛してもらいたいということを強く申し入れておるわけでございまして、今後も政治的な努力を粘り強く続けてまいりたい、こう思っておるわけでございます。  領海十二海里設定の問題につきましては、わが国漁業、そのほかに貿易、資源等わが国固有経済に基本的な影響を与える非常に複雑かつ困難な入り組んだ関係がございまするので、われわれ苦慮しているわけなんでございますが、全般の国益見地から十分お話し合いをしていかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。農林大臣から直接のお話はございませんし、私も新聞を見て知ったので、今後話し合いをしなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  7. 河上民雄

    河上委員 外務大臣はどういう場で、農林大臣とこの問題でお話をされるわけでございますか。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 けさ国防会議がございまして、八時半からやっておりまして、ついさっきまでやっておりましたものですから、まだお会いする機会はございませんが、いずれ適当な場所で適当な機会にお会いしよう、こう思っております。
  9. 河上民雄

    河上委員 ちょっと細かいことになりますけれども、そういうような調整はどこでおやりになるのですか。やはり外務省が責任を持っておやりになりますか。
  10. 中島敏次郎

    中島政府委員 お尋ねの点につきましては、昨年来たびたび御答弁があったかと思いますが、内閣官房長官のもとで関係各省が集まりましてこの問題を検討しておる、こういうことでございます。
  11. 河上民雄

    河上委員 外務大臣に伺いますけれども、いま十二海里の問題、また経済水域二百海里の問題、こういうようなことが次々起きているわけです。これはそれぞれのセクションで論ずべきものではなくて、やはりこれは一つの大きな外交問題として、単に日本のある部分の切実な利害を代表して各省が何か意見を言うのではなく、もう少し、漁業の問題なら漁業外交と名づけてもいいような、そうした一つの骨の太い線というものを外務省が出さなければいかぬ時期に来ているのではないかと思うのですが、外務大臣はその点どのようにお考えになるか。この二百海里の問題につきましても、きょうの朝刊などによりますと、すでに経済水域二百海里につきましてオーストラリアも一方的に設定する用意がある、こういうように公表しているわけです。アメリカではすでに国会を通過しておる。こういうような状況で、しかも二百海里につきまして、これがどういう内容を含んでいるか、それぞれ国によって若干違いがありますけれども、先般私が質問いたしましたように、アメリカの来年春から実施される法律によれば、海洋法会議のいま出ております草案よりももっと厳しい、つまり日本漁民がそこで違反を犯した場合に体罰を加える、海洋法会議の場合は体罰は加えないということになっておるのに、今度のアメリカ法律では体罰を加えるというようなことまで決めておる。これはもう来年の春からすぐ起こってくる問題なんですね。こういう点、いつも国際的な合意が成り立つのを見てということで果たしていいのかどうか。現実に二百海里の経済水域設定各国がどんどんやっていく。国の数が多い少ないの問題だけでなしに、日本関係している国はもうほとんどそれの実施に踏み切っておる。十二海里の領海の問題については、もう五十数カ国がこれを実際にやっておる。こういうような状況で、私はやはりこれは一つ外交の問題として取り扱うべきではないか、こんなふうに思うのでありますが、外務大臣、十二海里の問題とあわせて経済水域二百海里の設定の問題につきましても、そろそろこのあたり外務省としてといいますか、日本外交として一日も早く対応すべきではないか、私はそういうように思うのですが、外務大臣の御意見を承りたい。
  12. 中島敏次郎

    中島政府委員 大臣の御答弁の前に、事務的なことを一、二申し上げさせていただきます。  まず第一に、領海の拡張の問題自身につきましては、先生よく御了解いただけると思いますように、これは外務省だけの問題というよりは、むしろわが国領海が拡張することに伴っていかなる問題が生ずるかということでありまして、これは水産庁のみならず、運輸省とかその他あらゆる省庁に関係する問題でございます。したがいまして先ほどもお答え申し上げましたように、内閣官房長官のところでお取りまとめをいただいておるという事態があるわけでございます。  それからこれは細かい点でございますが、豪州が二百海里をやるだろうというお話がございました点は、実は最近南太平洋フォーラム諸国という国々南太平洋オーストラリアだとかニュージーランドだとかサモアだとかトンガだとかそういう国々が集まりまして協議を行いまして、当面は、次回の海洋法会議の開催前には二百海里の経済水域をやることはしないということに意見の一致を見たというふうに理解いたしておりまして、豪州自体につきましても、来年の会議模様待ちであるというのが、私どもが最近得ている情報でございます。  ただ先生御指摘の、しかしいずれにせよ二百海里の経済水域の問題を含め、海洋の新秩序の問題は本当にグローバルな、日本にとって総合的な国益の問題なんだから、外務省としても真剣に考えるべきじゃないかとおっしゃられる点は、まことにおっしゃられるとおりでございまして、さればこそ私どもといたしましては、海洋法会議で一日も早くそういう海洋の新秩序が確立されるようにということで努力をやっている次第でございます。また各国との漁業交渉につきましても、実績の確保のために鋭意努力しているということでございまして、その気持ちは御了解をいただければというふうに存ずる次第でございます。
  13. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まさに仰せのとおりでございまして、外交というのは非常に包括的に日本国益を踏まえてやるべきものでございますので、各省のばらばらな折衝というようなことよりも、外務省が前面に出て、単なる窓口の場合もございますし、事柄によっては中心になってやらなければならぬこともある、かように思っておるわけでございます。
  14. 河上民雄

    河上委員 いまそういうような、どうしても踏み切れないという理由をいろいろ挙げられたのですけれども現実にもう日米漁業協定の期限が切れるわけでして、そういう形で差し迫った問題になっているのです。先ほど来いろいろ各省意見調整してということでありますけれども、たとえば領海十二海里の問題などにつきましては、これを設定すると直ちに日本漁民の利害安全を保障するには役に立つけれども、しかし、津軽海峡が完全に領海の中にすっぽり入ってしまう、そうすると外国艦船の通航の問題が出てくるとか、そういうような形で配慮しておるのではないかと思うのですけれども、そういう配慮をしておりますということは、結局一番弱い立場に立つ漁民を犠牲にしていわゆる日米安保条約体制を守るのだという形になるのではないかと思うのです。そういう形で漁民がいつまでも捨ておかれていくという形になりますことは、もうわれわれとしてはこれは承服いたしかねますので、これは一日も早く決断をし、対応していかなければいけない、こんなふうに思うのですが、外務大臣、単にお説はごもっともと言うだけでなくて、具体的に、日米漁業交渉も近いわけですから、その点二百海里の問題、十二海里の問題、実はもう去年から海洋法会議結論を持ってということでだんだん延びているわけです。だからこそ、オーストラリアもこの海洋法会議結論が出ない場合には、今度は一方的に設定する用意がある、こういうふうに言っているわけでして、やはりそういう姿勢を示さない限り、ただのんべんだらりと待っているということではいけないのではないか、このことを私は強く申し上げているわけで、ひとつ外務大臣、単に条約局長答弁に補足するようなそういう答弁でなしに、もう少し外務大臣として漁業外交というものをこの際はっきり確立したい、そういう姿勢を示していただきたいと思います。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この領海問題は、漁業だけではございません。国際海峡を通るという問題が日本国益にとって非常に大きな問題でございまして、マラッカ海峡に、日本領海十二海里を宣言したから、それじゃそこはもう無条件で通さぬぞというような問題も考えられるわけでございまして、これこそ大変な国益に大きな影響がある。その他、領海十二海里を日本が言うことによってソ連がどう反応するか、これも十分考えていかなければならぬ問題でございまして、それこれいろいろ考えなければならぬ問題がございますけれども、おっしゃるように、やはりのんべんだらりんとやっておる、しかも外務省がワン・オブ・ゼムでいろいろごちゃごちゃ言っておるというだけでは私はいかぬと思います。私も外務大臣といたしまして、外務省の諸君とともに、海洋国日本として非常に重要なこの問題について精力的に真剣に取り組んでまいりたい、こう思っております。
  16. 河上民雄

    河上委員 まあひとつ、農林大臣が何かこう発言すると外務大臣慎重論を展開するというような、そういういままでのパターンの繰り返しをこのあたりでもうやめていただかないと、これは国民はもとより、特にその日その日の生活をかけている日本漁民にとって、こんな不安なことはないと思うのです。その点十分考えていただきたいと思います。  きのう法務省の方で、安原刑事局長でありますけれどもロッキード事件捜査活動の経験から、日米犯罪人引き渡し条約改定をやらなくてはいかぬ、そしてそれに、いろいろ犯人引き渡し犯罪類型について、いままで述べられておりますものに加えて贈収賄、多国籍企業犯罪テロなど、あるいはハイジャックとかそういうようなものを加える必要があるというようなことを述べておられるのでありますが、その中に外務省とも調整を急ぐというように書いてありますけれども、この点につきまして、すでに外務省法務省と打ち合わせを始めておられるのか。
  17. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 現行日米間にございます犯罪人引き渡し条約、これは明治十九年に締結されたものでございまして、引き渡し対象となっております犯罪も伝統的に定着したものに限られているのでありますが、最近の犯罪種類が非常に多様化している状況にかんがみまして、十分適合したものでないとわれわれには思われるわけでございます。とりわけ近年増加しております麻薬犯罪とかハイジャック、そうしたものに対しまして、国際犯罪の取り締まり、逃亡犯人引き渡し協力を強化する見地から、かねてから当局及び関係当局においていろいろ話し合っておるわけでございまして、法務省当局とはもちろん話しておるわけでございますが、改定必要性についてはつとに認識されておるところでございます。  すでに改定交渉日本アメリカ双方都合のよい時期に開始しようではないかと考えているわけでございます。  なおこれは日米だけの問題でございますが、やはりこういうふうにグローバルな問題が多くなってまいりますから、他の国とも適当な国があればこれと交渉をして、そういう条約を持つことは必要であると私は考えております。
  18. 河上民雄

    河上委員 適当な時期というようなお話で、積極的に取り組まれるということでございますが、新聞報道によりますと、法務省では年内にも改定交渉を始めたいというような答弁をしておられるのですが、適当な時期という中には外務省においてもそのような意味を含めておられるかどうか。また日本で始めるのかアメリカでやるのか。つまり東京でやるのかワシントンでやるのか、そういうようなこともあわせてお願いいたします。
  19. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 大臣からただいま御答弁がございましたように、われわれとしてはこの交渉を適当な時期に始めたいと思って目下鋭意準備いたしております。先方の方でも準備をいたしておりまして、双方準備が整いました時期に始めようということでございます。  それから、もちろんわれわれとしてはできるだけ早く始めたいということで準備はいたしておりますが、何分にも明治十九年につくりました古い条約でございますし、戦後初めてこういう種類条約をいわばつくり直すわけでございますので、かなり準備が要ります。したがいまして、法務省側はできるだけ早く始めたい、あるいはできれば年内にも始めたいという御希望があることは承知しておりますが、先方都合もございますのでまだ年内に始めるかということははっきりとは申し上げかねます。  それから場所につきましても、東京またはワシントンということになっておりまして、この点についてもまだ最終的に合意はいたしておりません。
  20. 河上民雄

    河上委員 いまアメリカ局長からお話がありましたが、新しいタイプの国際犯罪に対応するためにということでありますけれども、いま考えられておりますことは、どういう類型が挙げられておって、いまの交渉の過程で大体こういうものはもちろん問題なく合意されておる、しかしこの点がまだお互いに検討中であるというようなこともあろうと思うのでありますけれども、特にいま問題になっております多国籍企業犯罪とかあるいは贈収賄について日米間でかなり意見合意方向に向かっておるのか、どうもその辺はうまくいってないというようなことなのか、その辺のことは、まだ交渉準備段階ではございましょうけれども、大体交渉に入る以上はある程度問題点というのは出てきていると思いますので、その点をあわせて伺いたいと思います。
  21. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 先ほど大臣から御答弁もありましたように、伝統的な犯罪に加えて新しい型の犯罪も加えるという方向は、大体日米両国とも予備的な話し合い考え方は一致しております。したがいまして、先ほどお話がありましたように、ハイジャックとか国際的なテロ事件なんかをカバーするというふうな方向については話し合っております。ただ、その他の問題、いまお話のありましたような贈収賄とかそういうふうな経済犯罪ということになってまいりますと、問題はさらにちょっと複雑になってまいりますので、そういう問題も含めてやるかどうかということについても、当方も検討しており、先方検討しておる状況でございまして、その点についてまだはっきりしたことをちょっと申し上げかねる次第でございます。また犯罪書き方についても、非常に包括的な書き方をするか、あるいは特定犯罪を挙げていくかというふうなことについてもいろいろと検討すべき点がございますので、この点は法務省外務省とでいまお話し合っておる最中でございます。
  22. 河上民雄

    河上委員 大体いまのお話である程度輪郭がつかめるように思うのでありますけれども、具体的にいま、たとえばコーチャン氏がロッキード事件共犯者であるということが明らかであるけれども日本のいまの状況ではこれを逮捕したりすることはできないわけですが、こういうような条約改定ができますとそういうような方向に、もちろんこの経済犯罪を加えないということになれば別でありますけれども、もし類型がそこに加えられるということになった場合には逮捕するようなことができるのかどうか。基本的な、アメリカならアメリカに、人権を守るというようなことでいろいろな制約は向こうには向こうであるのではないかというような気はしますけれども、その辺はいかがでございますか。
  23. 中島敏次郎

    中島政府委員 具体的な問題になりますと、私ども専門でございませんので、明確な御答弁はいたしかねるかと思いますが、要は、現在の条約によりますれば、いまアメリカ局長からお話がありましたように、そのような犯罪引き渡し犯罪として列挙せられておらない。しかしこれを改正して、それが引き渡すべき犯罪に当たるということになった場合に、問題は、恐らくこのたてまえは現行条約と変わらないと思いますが、現行条約でも、締約国一方の管轄内においてその特定犯罪につき有罪の宣告を受けたとか、それから刑事手続が開始されたとかいう人間が逃亡して他方の管轄内において発見せられたときというその場合には、その人間逃亡犯罪人として引き渡しを請求することができるということになっております。いまのような要件に該当すれば、そしていま申されたような犯罪が、今後新たな改正によって引き渡し犯罪の中に含められるのであれば、おっしゃるようなことになるであろうということだと思います。
  24. 河上民雄

    河上委員 それでございますと、これはたとえば日本側容疑者アメリカに亡命というか逃げたような場合に、犯人引き渡し、そういうようなことでコーチャン氏のような、共犯者であることが明らかであっても日本の検察がアメリカでこれを逮捕する——日本で起こった犯罪であってもそうすることは非常に困難である、こういうことでございますか。
  25. 中島敏次郎

    中島政府委員 いずれにせよ、ただいま申し上げましたように刑事手続が開始されたものでないと、いまの場合であればわが方においてでございますが、逮捕状が出るというような刑事手続が開始されたものでなければ、普通は逃亡犯罪人引き渡しの問題にはならないわけでございます。したがいまして、捜査当局捜査の結果、そのような犯罪容疑ありということで逮捕状が出るというような段階にまで至るかどうかという点が決め手であろうと思います。  一つ先ほどの御答弁に私申し忘れましたので補足させていただきますが、先ほどのようなことで犯罪人引き渡し対象になることがあるとしても、現行条約におきましては自国民引き渡しについて一項を設けておりまして、「締約国ハ条約条款ニ因リ互ニ其臣民引渡スノ義務ナキモノトス但其引渡ヲ至当ト認ムルトキハヲ引渡スコトヲ得ヘシ」という形になっておりまして、自国民であれば当然には引き渡すことはない、至当と認める場合には引き渡し得るという形になっております。この条項を新しい条約でどういうふうにするかという問題は一つございますので、先ほどコーチャンとおっしゃられましたものですから、御引用の例の場合に、それがアメリカにとって自国民である場合にこの条項がそのまま生きるか生きないか、それによって生きるとしても至当と認めるかどうかという問題はあろうというふうに考えますので、ちょっと補足させていただきます。
  26. 河上民雄

    河上委員 安原刑事局長がそういう日米の司法協力の限界を非常に感じて、そしてそれを打開するために、この日米犯罪人引き渡し条約改定を思い立っている、そういうような御答弁がありましたので、いまちょっと伺ったわけでございますが、そういうような経済犯罪の問題につきまして若干まだ煮詰めなければならない、しかし、ハイジャックとかテロとかそういうような新しい国際的な刑事犯罪についてはこの条約改定にともかく進んでいく、現在の状況を言えばそういうことになるわけでございますか。
  27. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 大体先生のおっしゃられたとおりだと思います。従来のような伝統的な、殺人とか放火とかいうだけでは非常に限定されておりまして、現在のこの複雑な国際社会における司法協力としては不十分であるという認識が日米両国の間にございまして、国際的な犯罪であります麻薬だとかハイジャックというようなものについてはやはり関係国が協力して、こういう犯罪が起こったときに防止する努力をしなければならぬという認識に立っております。  ただ、先ほども申し上げましたように、贈収賄とかその他の経済的な要素を含んだ犯罪になってまいりますと、いろいろな複雑な問題もございますので、その点についてはさらに内部でも検討いたしまして、またアメリカ側とも話し合ってまいりたいと考えております。
  28. 河上民雄

    河上委員 じゃ、この問題はもうこの程度にいたしますけれども、もう一つ、ちょっとだけですが、日米以外にもというお話がちょっとありましたけれども、具体的にアメリカ以外にこういう犯罪人引き渡し条約、つまり国際犯罪という点から言いますと日米だけやっても意味がないわけですから、それ以外にいま現に話があるかどうか、それをちょっと伺ってこの話を終わりたいと思います。
  29. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は一般論として申し上げたのでございまして、具体的にそういう話がある国があるかということになると、ございませんわけでございます。
  30. 河上民雄

    河上委員 それでは次に移りますけれども、先般、日米防衛協力小委員会を十月十八日ですかに行っておるわけでありますけれども、その中で、日米の事前協議の問題は対象としない。憲法上の問題、たとえば交戦権、海外派兵、非核三原則などというような問題についても触れない。安保協議委員会にはこの小委員会での結論を報告するというようなことが決まったというように新聞には報道せられておりますが、なおもう一つ言いますと、立法上、予算上、行政上の措置を伴うような結論は避けるというようなことでございますが、大体そのとおりでございますか。
  31. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 今月の十八日に日米防衛協力小委員会の第二回会合が開かれたわけでございます。この点に関しましてはいま河上委員からもお話がございましたが、その点ちょっともう一回こちらの方で取りまとめて申し上げさせていただきます。  今回の会合では、この委員会が研究協議を行っていく上での前提条件を含めて、今後の研究協議対象となるべき事項について意見の交換が行われたわけでございます。その研究協議を進めていく上での前提につきましては、わが方から次の提案を行いまして、米側はこれを検討して次回会合までに回答する旨を述べました。  第一の点は、次の事項は研究協議対象としない。その第一点は、事前協議に関する問題でございます。その第二点は、わが国の憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則でございます。さらに、この研究協議結論は安全保障協議委員会に報告し、その取り扱いは日米両国政府のそれぞれの判断にゆだねられるものとするということになっております。この結論は、また両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないということにいたしております。  最後に、今後の研究協議対象となるべき具体的事項につきましては、今回の会合でも若干触れましたが、次回の会合において引き続き討議をし、結論を得ることとした次第でございます。
  32. 河上民雄

    河上委員 わかりました。  ちょっといまの御報告を聞いて疑問を感ずる点が幾つかあるのでありますけれども、その一つは、行政上の措置を伴わないそういう協議事項というのは一体あり得るのかどうかというような疑問も起きますけれども、いろいろやらぬことをここに公表したわけです。それは実際にやらぬかどうか、一応やらないと信頼いたしまして、では一体何をやるのか、やる項目については協議しなかったのかどうか。
  33. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 先ほど御説明申し上げました最後に触れましたように、今後研究協議を進めていく上での具体的な項目については先日の会合でも若干取り上げたわけでございます。この点に関しましてはまだ双方の考えを述べ合っただけでございまして、その項目をまたどういう順序で取上げていくかということについて具体的に何ら決まりませんでしたので、この点については具体的に申し上げることは差し控えさせていただいたわけでございます。ただ、先ほど御説明いたしましたように、前提条件については日本側としてはいずれにしてもこれは一つの枠組みでありまた土俵でございますので、この点だけはアメリカ側に誤解のないようにしておく必要があると考えまして、われわれはその点をアメリカ側にはっきりと申したわけでございまして、また一般の方々にも政府立場をはっきりしていただくために、私たちとしてもその内容を具体的に御説明申し上げたわけでございまして、われわれとしてはこれは当然の前提であって、そうアメリカ側においても大きな異論はあろうはずはないと考えております。
  34. 河上民雄

    河上委員 それでは、当然十八日ですから日米双方から時の話題というものも出てきていると思うのでありますけれども、たとえばミグ25の調査結果というのはこういうところで、日米間の協力のあり方について研究協議するということになっているわけですけれども、ミグの調査結果というようなものは素材として取り扱っていくのですか、どうですか。
  35. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 ミグ25の調査結果をこういう場で取り扱うということは考えておりません。われわれが考えておりますのはもう少し基本的な日米防衛協力のあり方ということでございます。
  36. 河上民雄

    河上委員 せっかく調べたんですが、そういうものを日米間でどこかでやる機関はあるわけですか。
  37. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 ただいまアメリカ局長から申し上げましたように、この日米防衛協力小委員会という場ではそういうものはございません。ただ、日米安保体制のもとにあります自衛隊と米軍との関係におきましては随時必要な情報交換というものは行っているわけでございますから、必要があれば国益に照らしてそういうようなことがあり得るというふうに考えております。
  38. 河上民雄

    河上委員 あり得るわけですね。  リードというアメリカの軍人さんがこの前、坂田長官のところに表敬訪問されたというような新聞報道でございまして、その際坂田長官から米軍の協力に謝意を表しておるわけです。それは事実だと思いますが、それは逆にリードさんから坂田さんにまた謝意が述べられてもしかるべきじゃないかと思うのですけれども、こういう高いレベルでも現実にもうそういう話があるわけですね。そういう点はいかがでございますか。坂田長官より米軍の協力に謝意を表明したという事実はあるわけですね。
  39. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 空軍長官が参られまして、おととい坂田長官のところに表敬訪問されました。そのときその謝意を表したというのは、御承知のように防衛庁が領空侵犯措置にかかわる調査をやりますときに、ギャラクシーの協力を得たり、あるいは機材、技術要員についての協力を得たりいたしました。そのことについて坂田長官から謝意を表されたわけでございます。いまおっしゃいますように、米側の方から謝意というようなものはございませんでした。
  40. 河上民雄

    河上委員 いまのお話ですと、リード空軍長官というのは、これは地位協定に言うところの在日米軍に対して直接的な指揮系統下にあるわけですか、それとも漠然とアメリカのお世話になりましたということであったわけですか。
  41. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 空軍長官でございますから、第五空軍はその監督下にあるわけでございます。坂田大臣からの謝意というのは、そういう協力をしていただいて感謝しているというような内容でございました。
  42. 河上民雄

    河上委員 この前私が質問いたしましたときに、ミグ25の調査に当たって米軍のスタッフの協力を仰いだ、その米軍のスタッフの身分というものは何であったかということをお尋ねしたわけでありますけれども、それに対して、ミグ調査中は米軍人でない、そういうようなニュアンスで御答弁がありました。いま、リード空軍長官に対して坂田長官が、いろいろ協力してくれてありがとう、こう言われたというのでありますけれども、そうであればあるほど、このミグ調査中の米軍人の身分というものをもう少しここで確認をしておく必要があると思うのです。  いろいろ細かいことを言う時間が余りありませんけれども、いわゆる地位協定の第一条の(a)によると、「「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。」となっております。そういうことでございますけれども、たとえば地位協定第九条によりますと、旅券とか査証、外国人登録の必要はないということにアメリカ軍人の場合はなっているのですけれども、もしミグ調査中は米軍人でないという場合に、こういう人はどういう立場に置かれておったのか、米軍人に伴ういろいろな特権とかそういうようなものを失ったとすれば、そういう旅券とか外国人登録の問題などが出てくるわけですし、一体どういう状況にあったのかということを私はここでもう一度確認をしておきたいと思うのです。
  43. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 前回河上委員から御質問がありましたときにお答えいたしました点について、若干正確でないように伝えられておる面もございますので、もう一回改めて申し上げますが、前回私が申し上げましたのは、このミグ25の輸送や調査という作業に従事しているアメリカの軍人は、自衛隊の指令、監督のもとにおいてこういう作業に従事することになりますので、その期間中は地位協定の適用は受けないということでございます。しかしながら、この技術要員は依然としてアメリカ軍人としての身分は持っておるわけでございます。いわば一般国際法上のアメリカ軍人としての身分は有しておるというふうに御理解願いたいと思うわけでございます。
  44. 河上民雄

    河上委員 そうなりますとこれは非常に微妙な、平均台の上を歩くような法解釈で、地位協定にいう米軍人ではない、しかしアメリカ軍人としての身分と特権とは依然として保有しておる、こういうことになるわけですね。そして、この人たちは当然合衆国の軍法に服するわけですね。私は、いまおっしゃった解釈はいろいろな意味で、むずかしい点を一生懸命、平均台の上を歩くようにやっておられるのですけれども、法的解釈、法的根拠については非常に無理をしておられる、これは常識的にもだれもがお感じになっていると思うのでありまして、どうしてそういうことを言わなければならないかというと、これは日米合同調査をやっているにもかかわらず、いや、実はそうではないのだ、自衛隊がやっておって、そこらの大工さんや何かを役務の調達をするような意味でたまたまそういう人を使ったのだ、そういう立論をしているところにこういう問題があるのではないかと私は思うのでありまして、何かそういう無理をされることが——これはミグ25の強行着陸といいますか亡命事件というのは全く青天のへきれきであったかもしれないのですけれども、それを何とかごまかそうとするために将来えらい禍根を残すことになりはせぬか、私はそのことを強くここで指摘して、外務省あるいは防衛庁も余りへ理屈を言わずにありのままを認めた方が——はっきり言うと私ども日米合同調査に反対でございますけれども、しかし、余り無理をされずに率直に認められた方が、将来、日米安保条約その他の運営において間違いを犯すことを少なくするのじゃないかと思うのでありまして、これは私の方ももう少し研究させていただきますけれども、非常に無理をしておられる、その無理はやめた方がいいのじゃないかということだけ申し上げて、時間が参りましたのできょうの質問を終わりたいと思います。外務省の方もよく御検討いただきまして、私の方もよく検討させていただき、次回に改めて議論させていただきたいと思います。
  45. 藤本孝雄

    藤本委員長 次に、山田久就君
  46. 山田久就

    ○山田(久)委員 ミグ25戦闘機事件に関連いたしまして、ここのところ日ソ関係に少しぎくしゃくしたような状況が起こっておりますことは御承知のとおりでございます。この亡命事件が、日本側の暴力、自由の拘束、あるいは薬物までも用いた疑いがある等、非常に捏造したことをもとにいたしましていろいろな抗議を逆に日本にしてきておる。おまけに国内においていろいろな新聞記者会見というような演出などもやってきておりますが、一つは、こういう事実は一体どのようなソ連側の事情に基づくものというふうにお考えになっておられるか。  私の見るところでは、ベレンコ中尉というのは、私の経験から言っても、何しろソ連の中ではエリート中のエリート。このエリートをもってしても、国内の問題、政治の状況その他に失望して外へ行くというこの事実、こういうものを国民にそのまま知られたくない。というのは、これはソ連に限らず、共産圏の中においては、インテリの若い層にそういう意味においてのかなり批判的な空気が出ているというような、国内的な家庭の事情というものを反映してああいう態度をとっているんじゃないかと推測されるのでございますけれども、この点について外務大臣はどのような判断を持っておられるか、まず御質問いたしたいと思います。
  47. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  まさに山田さんのおっしゃるとおり私は感じておるわけでございます。ソ連の飛行機乗りの中でも最新鋭のミグ25の戦闘機乗りが亡命した、しかもソ連には自由がないので自由を求めているんだということを言われたことはソ連にとって非常に痛いところであると思うのでございます。私どもはその痛い傷口になるたけ触れないようにしたい、こう考えまして今後日立港からミグが返還されることになると思いますけれども、これについてもできるだけパブリシティーを与えないようにいたしてまいりたいと思っておるわけなのでございます。ただ、もう山田さんは専門家中のソ連専門家でいらっしゃいますので、私どもは申し上げることもいかがかと思いますが、どうも私の理解では、こういうことがあってそれをソ連が頭から日本けしからぬというようなことを言われたのに対しては、われわれはわれわれで理由があることでございますから、国際法上あるいは国際慣例上に従って理由のあることをやっておるということは強く言っておいた方がいい、この点では反発することになり言い合うことになりますが、これを言うことによって、私は本当の将来の長い日ソ友好関係を築く上にむしろいいのではないか、かように思っておる次第でございます。
  48. 山田久就

    ○山田(久)委員 いまこれに対する態度というような点、外務大臣お話もございましたが、私もその点は全く同感でございます。ソ連のいろいろなやり方、外交、これは内外非常な利害関係、どこでもむろんそうではありますけれども、特にそういう面を反映してやっておる。したがってわが方としてはわが方の一つ立場、正しい点、これは強いてけんかする必要ないことはもういまお話のとおりでございますけれども、毅然とした態度をもって対処される。これがより日ソ関係というものを安定した基礎に乗せていくということで非常に大事な点じゃないかと私も考えておりますので、ひとつ大臣もそういうことでやっていただきたいと思います。  この前国連会議のときに、グロムイコ外務大臣とこういう点も含めてかなりのやりとりがあったように承っているわけであります。この問題に関連して今後の日ソ関係ソ連が一体どこまでこの問題についていやがらせというか、あるいはいやがらせの範囲を越えてもう一歩余り好ましくないようなところまで出てくる可能性があるのかないのか、私は私なりの意見を持っておりますけれども外務大臣とのやりとりあたりから、特に外務大臣が今後の出方というようなことで印象を得られた点がございますればここでひとつお漏らしいただきたいと思います。
  49. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 グロムイコ外務大臣との会見では私の方から挑発したような、あるいはこちらから何か言い合いをいどんだというようなことはなかったのでございまして、こちらは終始日ソ友好を希望する、しかしそれにはやはり四つの島の返還というものが平和条約を結ぶためには前提となっておるので、早くこの問題を解決して平和条約を結びたいという趣旨の話をしたわけでございます。しかしミグの問題等もございましてかなり激しいやりとりになったというわけでございますが、別れ際には、何か握手したときに私も余り大きな声を出したものですから苦笑いをしたわけですが、先方もまたちょっと苦笑いをしているような感じでございまして、言うだけ言ったからいいじゃないかというふうなことになるのじゃないかというふうに思うのです。やはり長い日ソ友好の歴史の中のほんの一こまである。しかもそれはやがて忘却のかなたへ行くものである、こういうふうにぜひしたいというふうに思っておるわけでございます。ただ、国内にはいろいろ御心配する向きもございますわけで、何かきょうの新聞で見ますと経済関係には影響はないだろうというような話も出ておるわけでございまして、それはそれで結構ではないかというふうに思います。われわれ挑発する必要は全くありませんが、正しい言い分だけはあくまで言っていきたい、それが友好なんだ、こう思っておるわけでございます。
  50. 山田久就

    ○山田(久)委員 そういうようなラインでひとつ冷静に構えて対処していただきたいと思います。  いまお話がございましたけれども、恐らく経済関係というようなことについてはこれまたけろっとしてと言っては語弊があるかもしれませんけれども、わが道を行くで出かけてくるのではないか、そういう点についてはそれなりに受けとめて、それで善処していかれんことを希望いたします。  きょうは余り時間がございませんので問題点だけ飛び飛びに二、三さらに触れさせていただきたいと思います。  一つはいまの中国の問題でございます。この問題について権力闘争の持つ意味とか見通しというような点、これは現段階においては非常に不確定な要素も多いし、またいろいろな意味においてそう率直な見解をいろいろ申し述べられるのも外務大臣としてのお立場もあろうかと思いますから、あえていまの段階でそのことをお尋ねいたしません。しかしながら中国に関係を持っているかなり権威筋の判断として、この際やはり今後のこの見通しというようなことで、特に何かお聞かせいただけるような新しい問題があるかないか、あるならばひとつ聞かしていただきたい、こう思うことが一つ。  もう一つは、いずれにしても毛沢東死亡ということによって、共産圏の中の出来事として、やはり一つの大きな変化が起こる兆しという基本的な要因があると私も考えておったのが、たまたまこういうことにまで発展してまいったわけでございますけれども、日中間の安定ということは基本線は変わらないとしても、動きというものは冷静に見守りながら今後の日中関係をあわてないで見きわめて対処していくべきだ、こういうふうに考えておりますが、これらの点について特にお示しいただけるような点がございますればひとつお聞きいたしたいと思います。
  51. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 中国問題につきましても山田さんは非常に御専門家でいらっしゃいますし、いまお尋ねのような新しいことがあるかとおっしゃられますと特に申し上げるようなことはございませんわけでございます。しかし全般的に申しまして、周恩来首相が亡くなりさらにまた毛沢東主席が亡くなったということで、ことしになりましてから大きなバキュームができているわけでございます。そこへいろいろな風が吹き込んでいくわけだと思うのでございます。毛沢東思想というものについてはだれしも中国の人はこれを金科玉条としておるわけでございますが、それをどのように解していくかという点でいろいろニュアンスのようなものがあろうかと思うのでございます。いずれにいたしましても私どもはこの事態を冷静に見ましてそしてわが国益を踏まえて、日中友好というのは非常に大切なことと思いますので、その見地に立ちまして善処してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  52. 山田久就

    ○山田(久)委員 わが国に隣接する軍事的に見てもあるいは経済的に見ても非常な二大強国と言われる国が、残念ながら共産主義、全体主義の体制においてその指導者の中にあるために、明日は何が起こるかということについて、なかなか窺知推測を許さないというような関係にあるという事実というものは、やはりわれわれが日本の平和とか安全というものを考えていく場合において、相手の意図いかんにかかわらず非常にむずかしい要素をわれわれは持っていて、十分これについては冷静にいつも対処し得る状況を備えておらなければならないというような点について、やはり国民の認識というものをこういうような機会にひとつ十分啓蒙しておいていただくというような点は必要があるんじゃないかと思いまするので、いまこの点についての御答弁を特に私は求めているわけじゃございませんけれども、国内のやはり一般的な冷静な認識、自覚というようなものを深めるという点については、一段と関係方面においての御努力を私は切望してやまない次第でございます。  次に、世界の経済を揺すぶった石油の値上げの問題でございます。まだ私もその確報というようなものを聞いているわけじゃありませんけれども、いろいろ伝えられるところによりますと、OPECが再び二〇%か二五%かとにかく値上げというものを考えているというような情報がございます。まだ内々のいろいろな話し合いということの段階じゃないかと思いまするけれども、しかしながらこれは世界の経済に及ぼす影響非常に重大であるし、特に日本については非常に重大であります。この点について持っておられる情報、そしてこの点についての今後の見通しというような点についてどのような判断を持っておられるか、この機会にちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  53. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 石油の問題はわが国にとりまして死活的とも言っていいような非常に重要な問題でございます。そこで、われわれとしても注意深くこの動向を見詰める必要があるわけでございまするが、一九七三年以降あの値上げ以来、非常に需要が減ったわけでございます。またそのことによりまして世界が非常な不況になったわけでございますが、最近また景気がやや持ち直してきたというような関係もありまして、どうもいまの情報では、十二月に予定されているOPECのカタール総会を控えていろんなことが言われておるわけでございます。われわれとしてはそろそろ冬になるわけでございます。石油の需要期を控えましてこれが値上げにでもなるようなことになりますと、非常な大きな打撃を受けるわけでございます。産業問題だけではなく、すぐ家庭生活に響く問題でございます。しかもこれは石油の出る国はよろしいのでございますが、石油の値段が上がりますれば、工業製品も値段がどうしても上がらざるを得ない。そうすると、出る国に対しては上がった工業製品を買う力はありますけれども、石油の出ないLDCの諸国、開発途上国につきましては、これまた大変な打撃を受けるわけでございまして、こういう点も踏まえまして、この二月からパリで国際経済協力会議、通称CIECというのが開かれておるわけでございますが、われわれとしましては、この会議等で大いに世界経済に及ぼす石油価格の影響等を強調しながら、エネルギー情勢の安定のために産油国と消費国がよく話し合って、無理のないことにしてまいるようにする必要がある、そういう観点から努力をしたいと考えておる次第でございます。
  54. 山田久就

    ○山田(久)委員 この産油国との対話というような問題、いままでいろんな形で試みられたわけでございまするけれども、こういう情報等にも関連いたしまして、何か近い将来にそういうような意味での産油国と先進国との話し合いと申しますか、あるいはその他の国も含めての何か公式あるいは非公式な話し合い、そんなもので何か計画されているようなものがあるんでしょうかどうでしょうか、ちょっとその情報をお知らせをお願いします。
  55. 本野盛幸

    ○本野政府委員 ただいまの山田先生の御質問の趣旨は、現在行われております南北間の国際経済協力会議以外に、何か対話というものは計画されているかどうかという御趣旨かと存じます。  これにつきまして、いま新しいような対話を計画しているということはございませんので、御承知のようにことしの二月以来毎月パリにおきまして、途上国の代表の九カ国と先進国の八カ国の間でエネルギー、一次産品、開発、金融という四つのセクターにつきまして対話が継続されているわけでございます。これはいろいろ紆余曲折を経ましていよいよ終盤戦に入ってきた。この十月の会期はまさにきょう開かれているわけでございますけれども、十一月になりまして今後の南北関係の分析から、より行動志向の何かを出したいということで、十二月に閣僚会議を迎えるわけでございます。私どもとしまして、やはりこの南北の対話がなるべく実りがあるように、また先ほど御質問がございました石油エネルギーの安定的な供給にも貢献するような形で何らかの成果を上げるように極力努力をいたしておるわけでございます。この会議の成否はどうなりますか、この点はまだなかなか予断を許さない問題がございますけれども、私どもとしましてはなるべく年内に一応のけりをつけたい。そこから、それじゃ来年にずれ込むかどうかというような問題については、まだこの段階では予測することはむずかしいわけでございますけれども、もしそういう意味で続くというようなことがあるとすれば、このCIECの一つの流れとしてエネルギーについての対話の場を設けていきたいという気持ちは、私ども含めた先進国側においては非常に強い気持ちがございますので、そういう意味で来年引き続き何らかの対話が続けられるというふうに御理解いただいてよいかと思います。
  56. 山田久就

    ○山田(久)委員 次にちょっと北鮮、これまたわが国といろいろな意味において、政治的な関係がいろいろ重要なわけでございますけれども一つは金日成主席の動静ということについて、しばらくブラックアウトされていたことがあったようです。その後また何か情報も出てきたようでもありまするけれども、何か変化が起きているというような点の情報があるのかどうか、そういう点もしもお持ちでございましたらひとつお知らせいただきたいと思うのです。  なお一遍に御質問いたしますけれども、いわば有史上まれに見る全体主義の国家、こういうふうな批評をこうむっているようでございますけれども、これに関連して、日本人妻の問題でございます。この日本人妻というのは、大体もともとが人間の基本的人権ということで移転の自由は認めようじゃないかということで実施に移されたわけでございます。それで北鮮帰還ということをやっているのに、日本人妻はいろいろな意味でいろいろな情報が来ているにかかわらず、わが方でこれを帰すということについていろいろ努力しているけれども、一向実らない。私はこれは非常に残念なことだと思います。さらにこの問題について努力すべきだと思うが、この点についてどのようにお考えになっておられるか。  また、例の松生丸事件で、結局損害賠償もいいかげんな形になっているし、それから、いろいろな状況から明らかに公海上で行われているにもかかわらず、それを否定しているということで、とどのつまりは船長が船を売って、えらい目にあっているというような、こういう非常に不当な事態が起こっていると思うのです。こういう問題は、相手がなかなか対応してこないというところにむずかしさがありますけれども、しかしながら、この問題はもっと執拗に善処するようにやっていただきたい、こう思うのでございます。この点について外務当局がどのような用意を持っておられるか。関心を持っている向きも非常に多いようでございますので、お答えいただきたいと思います。
  57. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 詳細な点はアジア局長からお答え申し上げますが、全般的に申しまして、私もいまの北鮮の事態というものは非常にいろいろな問題があるように思っております。  まず、非常にミリタントでアロガントであるということが、コロンボにおきます非同盟会議で非常に問題になりまして、その点から北鮮に対する諸国の考え方がかなり変わったのじゃないかというようなことが言われておりまして、私も実は国連で、二、三の人からそういう話を、こちらが言わないのに先方から話を聞くような状況で、隣国としてのわれわれとしては非常に残念なことで、こういう態度を何とか改めるようにならぬものかというような気がいたしておるわけでございます。  経済的な非常な困難がある。これは現に先方に品物を売っておる会社等において非常に困っておる問題でございます。こういう点も、朝鮮民主主義人民共和国との間に何かの連絡があった方がいいのではないか。それには、人の往来とか経済の交流とかそういうものを通じてだんだん理解を深めていったらいいのではないかという気持ちであったわけでございますけれども、どうもいま山田さんの仰せのように、先方はさっぱり乗ってこない、かえって逆に裏目に出ておるということがあろうかと思うのです。そういう認識を持っておりまして、私はまことに山田さんと憂えをともにするという立場でございます。  なお詳しいことは事務当局に……。
  58. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問の三点について簡潔にお答え申し上げます。  まず、金日成主席の身辺に何かがあったのではないかといううわさは私ども耳にいたしましたけれども、最近は北朝鮮の党大会にも出席して報告をしたという情報もございまして、金日成主席の身辺そのものについて何か異変があったというようなことはないように思っております。ただ、その路線について変化らしきものがあるかどうかという点でございますけれども、これは、八月のコロンボの非同盟会議のとき、あるいは板門店事件の処理、さらには国連総会に対する対策、そういうところで一般に予測されていたところとは違った動きというものが散見されたためにいろいろ憶測が行われております。しかし、これがどういう背景で、どちらに向こうとしているのかということをまだ断定するといいますか、明確に申し述べところまでは情報はございませんが、最近板門店で開かれました休戦協定に基づく軍事委員会の席上で北朝鮮側が、いままでは冒頭に激しく非難しておりました在韓米軍の撤退要求というものについて、今回は言及がなかったというような徴候もまた最近あらわれておりますし、私どもは少し注意深く見詰めていかなければならぬ、こう思っております。何分、閉鎖された社会でございますので情報が足りませんので、なかなか的確な判断がしにくいのが私ども一つの悩みでございます。  第二点の日本人妻の問題は、これは当委員会でも何度か取り上げられまして、私ども日本赤十字社とも情報を交換しながら、人道的な問題ですので、何とかいい方向に発展すればいいがと思っておりますが、現在までのところ調査の依頼件数は三百八十四件ございまして、その中でこれは理由がある、根拠があると思われるものについて、いろいろ日赤を通じて北朝鮮の赤十字社にあてて消息の確認の問い合わせをしておりますのが現在までのところ百六十三名になっておりますけれども、残念ながらどの一つについても日本側で満足し得るような回答は寄せられていない。したがって、向こうに渡っている日本人妻がいろいろ苦しい生活に悩んでいるという断片的な情報はございますけれども、それをそれじゃ赤十字社を通じてでも何とか人道的に配慮できないかという私どもの期待はまだ満たされていないという状況で、はなはだ遺憾なことだと思っておりますが、これは赤十字社ともさらに協議をいたしまして、何とか実現の方向に持っていきたいということしか申し上げられないのは遺憾なことだと思っております。  第三番目の松生丸の事件は、これは山田先生がかねがね御関心をお持ちいただいておりますが、私どももあの事件が日本関係当局調査によれば、明らかな国際法違反の行為であるということで厳重に抗議を申し入れ、またこれに伴う損害賠償につきましては、ある程度個人的な見舞い金その他の措置は先方はとりましたけれども、なおあり得べき損害の補償については権利を留保しているという段階でございまして、これが国際的に補償を要求することになるのかあるいは国内的に補償されることになるのか、その辺のところは被害者の船長さんからもいろいろお話を伺っておりますけれども、まだ具体的な形では上がってきていないということで、国際法的には厳重な抗議をし、先方が一人二万ドルでしたか何でしたか見舞い金を出したとか、あるいは完全に治癒するまで負傷者については手当てをしたということはそれなりに評価しておりますけれども、あり得べき損害補償の権利は留保したままで日朝関係推移を見守るというのが現状でございます。
  59. 山田久就

    ○山田(久)委員 そういう点大いに善処していただきたいと思いますけれども、こういう違法事件がまかり通っているということは非常に残念なことでございます。  これに関連して一つだけ、朝鮮民主主義人民共和国の外交官が麻薬の公然たる行為で違反しているというようなことは、これなんかも非常に驚くべきことなんでございますけれども、このことだけについて御質問したいと思いますので、ちょっと真相をお知らせいただきたいと思います。
  60. 中江要介

    ○中江政府委員 新聞報道その他で私どもが承知しております情報につきましては、その確認方をわが方の在外公館を通じていま調査しておりますが、ほぼ間違いなかろうと思われますのは、最近デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、この北ヨーロッパの三国に駐在しております北朝鮮の外交官が、デンマークに関しましては十月十五日に、麻薬及び酒、たばこの密売ということで、デンマークの国内法に重大な侵犯があったということで、全員国外退去を要求したということをデンマーク政府が発表しております。これには密輸麻薬の売りさばき、そのほかに無税の酒、たばこの横流しということもあったということでございますが、大使ほか二名はとりあえず十五日、その日の夜コペンハーゲンを出発して帰国の途についた。これがデンマークのケースでございます。ノルウェーにつきましては、十月十八日にペルソナ・ノン・グラータということで、大使館の館員が六日以内に国外退去をしてもらいたいということの要請を受けているということでございます。そのペルソナ・ノン・グラータは通常理由を公開いたさないことになっておりますが、伝えられているところによりますと、やはり同じような免税の酒、たばこのやみ取引とか麻薬の取り扱いというようなことではないか、これは未確認として報道されておるわけでございます。スウェーデンにつきましては、ストックホルムの警察当局がやはり十月十八日に免税の酒、たばこ類の密輸入の疑いで、これは大使館がやったというんではなくて、北鮮の大使館を通じてそういうことをしていたスウェーデン人を逮捕したという発表があった。こういうことで、どうも北欧における北朝鮮の大使並びに大使館員についてそういった情報が急に目立ってきている、こういうことでございます。
  61. 山田久就

    ○山田(久)委員 わが国内における北鮮系の法秩序違反というようなことがいろいろな意味において関心を持たれておるようなことでもございますので、いろいろなそういう情報を十分とって万遺漏なきを期していただきたい、こう思います。  以上をもって私の質問を終わります。
  62. 藤本孝雄

    藤本委員長 次に津金佑近君。
  63. 津金佑近

    ○津金委員 午後の多国籍企業小委員会の時間が大分迫ってきておりますので、私は、日米防衛協力小委員会の問題について若干の質問を行いたいと思います。  十八日に小委員会が開かれたわけでありますが、この出席メンバーはどういうメンバーでありましたか。また、先ほどの外務当局答弁の中で、いわゆる三点、研究協議対象にしないという三点を提起されたという御説明がありましたが、全体として何が議題とされ、そして何が結論として合意決定されたか、この点もう一度総合的な説明を受けたいと思います。
  64. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 この十月十八日に行われました日米防衛協力小委員会に出席いたしました者は、日本側は、私、山崎外務省アメリカ局長それから伊藤防衛庁防衛局長及び松尾統合幕僚会議事務局長等でございます。米側は、シュースミス在京米大使館公使及びリン在日米軍参謀長等でございます。  何が話されたかということでございますが、この点に関しましては、先ほど申し上げましたように、まずこの研究協議を進めていくに当たっての前提条件について話し合ったわけでございます。この点に関しましては、日本側から先ほど申し上げましたような諸点についてわが方の立場を明らかにし、アメリカ側も検討を約したわけでございますが、これはいわば日本側としてはこの研究協議を進めるに当たっての当然の前提と考えておるものでございまして、アメリカの方でもそう大きな異論はないものと承知いたしております。それから次にわれわれとしましては、その研究協議対象となるべき事項について若干触れたわけでございますが、これはまだごく予備的な意見交換に終わりましたので、その内容についてはきょうは申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  65. 津金佑近

    ○津金委員 そうすると、正式に合意決定された事項というのはあったのですか。おおむね賛成してくれるものと思うというような意見だったと思うのですが、正式な合意決定事項というのはあったのですか。あったとすれば何なんですか。
  66. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 正式に合意決定したものはございません。先ほど申し上げましたように、前提条件については日本側立場を明らかにし、先方も十分これは聞いておりましたのでそう大きな異論はないとわれわれは考えておりますが、この点についても一応、正式には先方は次回の会合で回答をしたいということを言っております。
  67. 津金佑近

    ○津金委員 小委員会の運営の問題でありますが、七月十五日の参議院内閣委員会において、丸山前防衛局長が、小委員会の運営は隔月で開催したいという希望を述べておりますが、この問題については協議されましたですか。
  68. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 この小委員会の第一回会合が八月三十日に行われたわけでございます。その際に小委員会の運営について話し合ったわけでございますが、その会合におきまして、おおむね二カ月に一回の頻度で小委員会を開いていきたいというふうに合意を見ております。したがいまして、われわれとしてもこの八月三十日の会合に続きまして十月十八日に第二回会合を開いたような次第でございます。
  69. 津金佑近

    ○津金委員 先ほどアメリカ局長答弁の中でも、日本側が提起した問題の中で、わが国の防衛政策に関する憲法上の制約の問題について提起されたという意味のお話がありましたが、どういう説明をされたのですか。また伝えられるところによると、米側は自衛隊に交戦権が認められないというふうな問題について、強い不満を述べたというふうなことも報道その他によって伝えられておりますが、アメリカ側は何を日本に求め、どういう不満を表明したのか、お答えいただきたい。
  70. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 憲法上の制約の問題といたしましては、私から、わが国の自衛隊というものは、各国の軍隊と違っている点は、必要最小限の自衛力を行使する実力部隊であるという説明をいたしました。その場合に、一般の国でもやはり軍備というものは自衛のために必要なものを持っているわけでございますが、しかしながら、わが国においては憲法の解釈上特にその点をシビアに考えておりまして、交戦権を持っていないということで、特にこの自衛力の行使というものについては本当に必要最小限のものをやるのだという説明をいたしました。  また兵器体系につきましては、攻撃的な兵器を持てないということから、いわゆる攻撃が主の兵器でございますたとえば大陸間弾道弾あるいは戦略爆撃機、こういうものはわが国の憲法上兵器として持つことはできないのであるというふうに解釈をしているという説明をいたしました。     〔委員長退席、石井委員長代理着席〕  さらに、海外派兵というものができないというのは、これは自衛のための最小限のものであるから、通常の軍隊であれば自衛という名のもとにかなり広範囲にわたって行動できるのだけれども、自衛隊はそういうものはできないのだというようなことを説明いたしました。こういった問題。  さらに個別的自衛権に基づいて自衛隊は実力を行使するのであって、集団的自衛権としてはこれを行使できないのだというようなことも説明いたしました。これは、御承知のように、日本人の中でもやはりそういう具体的なことにつきましては、なかなか御説明しても理解しにくい点がございます。したがいまして、アメリカの軍人が、その説明をいたします段階におきましていろいろ質問もありました。しかし、不満を述べたということはないのであって、私どもが、憲法解釈上制約として考えており、それを守っていくということについては、完全に理解を示してくれたものと思っております。
  71. 津金佑近

    ○津金委員 そうすると、これに大きな不満を述べ、また憲法上の解釈その他についての食い違いというふうなことは全くなかった、こういう御判断ですか。
  72. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 私どもその会議に出席しました日本側の者は、全く向こうが文句をつけるとかいうことじゃなくて、完全に理解してくれたものというふうに承知いたしております。
  73. 津金佑近

    ○津金委員 従来、政府は、憲法上の制約の問題についてはいろいろな機会アメリカ側に対して説明をしてきたということで、いまのお話ですと、そういうものは一切なかったというふうなことであったわけでありますが、私どもは、その辺の問題について、一部にはそういう問題について大きな論点あるいは憲法上の解釈にかかわるような問題についての論点の食い違いというふうなものが出され、そうしたことの中で、米側が最終的な態度について、次回の委員会までに、態度を留保して述べるという結果になった。その意味では、先ほどお話のように、正式の合意決定というものはなかったという状況であったというふうに思えるわけなんですね。これは、あなた方しかその間の論議の模様はわからぬわけでありますがね。そういう点から見て、アメリカが自衛隊に対する防衛分担を強く要求してきたという従来の経過、それからこの小委員会の設置というものに当たって、こうした問題についての危惧というものが国民の中に存在し、われわれもその点を指摘しておったわけでありますが、そういう危惧がやはり依然として残るわけでありますが、その点は絶対にそういうものがなかったというふうに断定できますか。そうだとすれば、なぜ向こうが次回の会議まで正式な回答を留保されたというふうな形が出たのか、どうもちょっと釈然としないのですが、率直なところどうでしょうか。
  74. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の研究協議のこの前提条件につきましては、われわれとしては当然の前提と考えておるわけでございまして、また津金委員もおっしゃいますように、従来からもアメリカ側には、日本側はこういう立場をとっておるということは随時明らかにしておるわけでございます。  ただ、今回の研究協議が防衛協力というものについて広く話し合うことでもございますから、その土俵といいますか、枠組みはきちっとしておく必要があろうと考えて、念のためにそのことをまとめて説明したわけでございます。したがって、原則としてアメリカ側にも異論のあろうはずはないわけでございます。ただ、何分にもこちらは政府の一員としてやっておるわけでございますけれども先方アメリカ政府の代表として行動はいたしておりますが出先でございますから、一応日本側の説明を聞いて、それを本国に報告するという手続もございますので、その場ではそれで結構ですということを最終的には言わなかったというだけのことでございます。
  75. 津金佑近

    ○津金委員 どうもその問題については釈然としませんが、時間の関係がありますので、先に進みたいというふうに思います。  前国会まで、この小委員会のもとに輸送、医療あるいは科学技術などの分科会を設置していくということについて、政府はそういう方向を従来明らかにされてきたと思うわけでありますが、こうした分科会設置という問題について、具体的にどういう分科会をいつからどのような段取りで設置するという方向になっているのですか。また、この問題について米軍との間で何らかの協議が進められておるのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  76. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 本年の七月八日にこの日米安保協議委員会の十六回会合が開かれたわけでございますが、そのときの新聞発表におきまして、「防衛協力小委員会は、必要と認めるときは、その補助機関として部会を設置することができる」ということになっております。したがいまして、この小委員会が必要であれば部会をつくることができるわけでございますが、実はその部会をつくるべきかどうか、つくるとすればどういう部会をつくるべきかということについてはまだ話し合っておりません。先ほどから申し上げたように、まだその研究協議の前提条件及び今後研究協議対象とすべき事項ということについて意見を交換しておるわけでございまして、そういう討議が進みました上で、将来この部会の設置をどうするかあるいは設置しないかもしれないわけでありますが、その点も含めて話し合ってまいりたいと考えております。     〔石井委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 津金佑近

    ○津金委員 日本側としては、その問題についてこういう方向でいきたいというふうな、そういう腹案のようなものもまだ検討されてはいないのですか。
  78. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 まだその点についての腹案も検討するに至っておりません。
  79. 津金佑近

    ○津金委員 この小委員会の性格の問題について、アメリカ側はいわゆる安保条約六条に関する協議というものを強調していることは、伝えられるところからも明らかであります。これに対して日本側は、前国会における丸山前防衛局長答弁からも、日本側としては安保条約の第五条における対処の指針を研究協議するという問題、先ほどの伊藤防衛局長のお答えの中にもこういう趣旨があったというふうに思うわけです。そういうものを協議するが、当然緊急時においてとるべき措置については、段階的にその準備をしていく、その準備については現実の問題として当然研究協議対象になる、こういう趣旨の答弁を七月十四日の衆議院決算委員会においてわが党の正森議員の質問に対して答弁をされておるわけでありますが、この段階準備というのはどういうことを指すのか、そしてそれが安保六条との関係において朝鮮半島での事態紛糾、こういうもののかかわり合いも含めて解釈されておられるのかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  80. 山崎敏夫

    山崎(敏)政府委員 この日米防衛協力というものは安保条約に基づいて話し合われるわけでございますから、安保条約のあらゆる条項を含むということは当然のことでございますが、この問題を言い出されました坂田長官の御発想からしても、日本が武力攻撃を受けた場合の日米の防衛協力というものがまず話し合われ、そしてそれが中心になっていくということは当然のことでございます。
  81. 津金佑近

    ○津金委員 私の質問のポイントについてどうも明らかでありませんが、私が言っているのは、前防衛局長答弁された中で言っている、現実の問題として協議対象になり得る段階的な準備、この問題と朝鮮半島における事態とのかかわり合いの問題、この点はどうですか。どうもいまのお答えでははっきりしなかった。
  82. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 丸山前局長が、その段階準備というのをどういう意味合いで申し上げたのか、ちょっと私もはっきり聞いてはおりません。しかし過去二回の日米協力小委員会を通じまして私どもが具体的に話し合いを進めるに当たっては、いわゆる第五条の関係、これはすなわち米軍とそれから自衛隊とが協力し合える非常にはっきりした場面でございます。したがいまして、その研究協議を始めるというような考え方で私どもは話をしているわけでございます。
  83. 津金佑近

    ○津金委員 どうもはっきりしないわけでありますが、先ほど言ったように、きょうは後がつかえておりますから、この点についてはひとつ政府側もその間の経過、その真意について十分明らかにしていただいて、またの機会にこれはさらに続けてやりたいというふうに思います。きょうは後のあれがありますからこれで終わります。
  84. 藤本孝雄

    藤本委員長 次に渡部一郎君。
  85. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは私は、きょう同僚委員からもお話が出たかもしれませんが、領海十二海里の問題につきまして、通常国会に法案を出す旨農林大臣が積極姿勢をおとりになったということでございますが、これは外務当局と御相談なさったのかなさらないのか、これは農林大臣の思いつきなのかどうなのか、その辺のところをちょっと具体的にお伺いしたい。
  86. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府立場は、御承知のように官房長官が主宰いたしまして、海洋法会議等との見合いで、この結論を待って善処しようということでございます。ただ領海を十二海里にしようということは決めているわけで、ただ時期と方法等についていま申し上げたようなことを決めているわけでございます。その立場はその後も変わっておりません。しかし昨日の農林大臣の御答弁は、私がコメントする立場にありませんけれどもソ連船によりまする北海道の漁民の救助、そういうものについての非常に切実なる訴えを聞かれて、何とか自分の立場からしたい、こう思われたのだろうと思うのであります。私どもまだそれについて話し合いをいたしているわけではございません。
  87. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このような御答弁農林大臣になられてからわずかな方ですから、多少フライングぎみに御答弁になったというか気を持たせるような言い方をなさったのかもしれませんけれども外務省当局との密接な——ミグの事件でも痛感いたしたわけでありますが、他省庁との密接な打ち合わせをやっていくという姿勢があってしかるべきだろうと思うわけでありまして、その辺、今後農林省側と十分なお打ち合わせをなさるおつもりがあるだろうと思いますが、どういう機関でどういうふうにしてお打ち合わせをなさるのか、その辺今後のことを承りたい。
  88. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私、国連へ行っておる留守中でございますが、予算委員会等における答弁はちょっと昨日の答弁とは違うようでございますが、これはいずれにしても言われたことでございまして、お立場もわかるわけでございます。そこで、やはり内閣官房で従来やっておられたのですから、それを中心として話をしたらどうか、かように思っておるわけでございます。  これはもう私から専門家の渡部さんに申し上げるまでもないことですが、この問題についてはいろいろな関係がございまして、海峡の通航権の問題がございます。非核三原則の問題ももちろんございますけれども、海峡の航行権といいますとこれはなかなか厄介でございまして、マラッカ海峡の航行について、もう日本は十二海里を領海と認めたんだからそれに沿うて、というようなことになりますと、この電気ですらつかなくなってしまうということもあるわけでございまして、これは大変なことになる可能性があります。まあ、ないと思いますけれども、そういうことがないことを希望いたしますけれども、そういうことでこれはよほど慎重にやりませんと、いろいろな問題を派生いたしますので、漁民を何とかということはもちろん私も政治家としてわかるわけでございますけれども、それならそれにはどうしたらいいか、私ども立場ではソ連に対して、先般の申し合わせの趣旨もあるからそれを守ってくれというような言い方もあるわけでございますが、いろいろやってみなければならぬことでございまして、そういう点でよく話し合ってみたいと思っております。
  89. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、これに対して統一的なこの問題の処理の仕方についての御見解を次回に、何かのチャンスにお伺いすることにしたい。沖繩特別委員会も来週予定されておりまして大臣御出席のようですから、そのときもまた問題になるかと思いますし、あるいは当委員会における御質疑において御返事を賜っても結構でありますし、その点農林省とお話しなさってまとまったところをお伺いしたい。特に、非核三原則を堅持なさるのかどうか、国際海峡通航の自由の問題についてどう考えるか、その辺のところも次回には御相談の済んだところを改めて伺いたいと思うのです。  ソ連の漁船拿捕の問題について、今年北方水域で捕獲された漁船は二十九隻百四十一人で、ミグ事件以降は急増して七隻目に当たるような報道を承っているわけでありますが、現在の北方水域におけるソビエト関係わが国漁船捕獲の問題についてはどういう状況であるか、御報告をいただきたい。
  90. 橘正忠

    ○橘政府委員 本日現在で、本年ソ連がわが方の漁船を拿捕いたしました件数は三十五隻でございます。漁夫百九十八名でございます。なお、九月六日にミグ事件が起こりまして以降の拿捕の件数は、九月中に五隻二十五名、十月中に三隻十六名、計八隻四十一名でございます。なお、補足的に申し上げますと、年によって拿捕漁船のケースにでこぼこがございますが、たとえば昨年の同じ時期を比較いたしますと、昨年の九月に三隻二十五名、昨年の十月には八隻五十七名、したがいまして、九月、十月を通じまして十一隻八十二名が拿捕されております。したがいまして、数字的には特に本年九月以降著しく増加しているということはございません。ただし、これには、わが方において拿捕が起こるおそれのある地域には出漁を差し控える、注意して出漁しておるというような事情もあるかと存じております。  なお、こういう拿捕という不幸な事件をなくすためには、従来からソ連との間でいわゆる安全操業の問題を含めて話し合いをしておりますが、領土問題というものに絡む問題はございますが、それを別にして、今後とも安全操業についての話し合いは続けていきたいと考えております。
  91. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 九月、十月期において先年と比べて別に増大したわけでないという点については安堵をいたしたわけでありますが、この三十五隻、百九十八名に上る膨大な逮捕者ということはとうてい容認しがたいことでありますし、耐えられないことでありますが、これに対する取り扱いとして、わが方は、これらの船がソビエト側の主張するように領海を侵犯したもの、逮捕されてやむを得ないもの、あるいは民事事件の範疇というふうな考え方に立っておられるのか、これはソビエト船による不当逮捕によるものであると認識されておるのか、その辺、捕獲原因をどう分析しておられるのか、御説明をしていただきたい。
  92. 橘正忠

    ○橘政府委員 これらの拿捕されました漁船のケースの過半は、いわゆる北方水域で起こっております。したがいまして、これには日ソ双方のその地域についてのいわば立場の相違がぶつかり合っておるわけでございます。したがいまして、日本側といたしましてはソ連側の立場は認められないわけでございますので、拿捕そのものが日本としては不当である、不法であるという基本的な立場には立っております。しかしながら、現実の問題としてソ連側がこれらを拿捕しておるということでございますので、わが方としては、基本的な立場を常にソ連側に対してはそういうケースが起こりますと申し述べており、かつ即時釈放、返還するようにということを常に申し入れておるという立場を従来からとっております。
  93. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま原則的にはお答えになりましたが、もう少し原因別にきちっとしたデータにされて当委員会に御提出をいただきたい。特に、私は、その件数については過半が北方水域で、拿捕そのものが不当であるという見解を述べられましたが、当委員会でその見解を述べられたのは高く評価するわけでありますが、今度は、つかまった人々に対して、ある者は裁判が先方で行われている、ある者は船を没収されておる、ある者は帰されておる、いろいろなケースがあるわけですね。それについて御報告が明瞭でないのは余りよくないんではないか、こう思うわけであります。特に地元漁船員からはもう叫ぶようにして、こういう事故をなくしてもらいたい、また向こうにつかまった人たちの安否を気づかう声が殺到しているわけでありますから、これに対して明快な意思表示をしていただきたいと思うわけです。
  94. 橘正忠

    ○橘政府委員 こういう北方水域における拿捕問題というのが起こりましたのは、戦後昭和二十一年以来でございます。したがいまして、二十一年以来現在までに至ります拿捕の件数は千五百三十四隻、一万二千七百四十二名に上っております。そのうち九百三十六隻が日本にいままで返還といいますか帰還しております。いろいろ船がぶつかったりして事故が起こって帰ってこないもの、あるいは失われたもの、これが二十五隻でございます。したがいまして、船がそういうなくなっておらないにもかかわらず帰っていない、未帰還の船が五百七十三隻ございます。  なお、漁夫については、一万二千七百四十二名のうち三十七名が死亡しております。現在までに帰還した者は一万二千六百三十九名でございます。したがいまして、現在なお抑留されておる漁夫が六十六名、これが現状でございます。  ほとんどの場合、先方では裁判にかけております。裁判は主として船長あるいは漁労長というものを抑留し、他の船員は比較的早く日本に帰還させ、その船長、漁労長を対象として裁判が行われている。裁判の結果、いままで最高四年という刑がございましたけれども、平均いたしますと一年ないし二年の間で、そうやって向こうに置かれました船長とか漁労長も、平均一、二年の間には帰還を許されているというのが実態でございます。  先ほど申し上げましたように、常にわが方としては、そもそもの向こうの拿捕した理由が特に北方水域にかかわるものであればたてまえ上の衝突もございます。向こうに抗議は申し入れております。  また、御存じのとおり、北方水域と別にピョートル大帝湾地域においても本年もすでに三件起こっております。ここの水域についても、ソ連側はソ連の内水だと主張し、わが国はそれを認めておりません。そうした立場の相違がぶつかり合っております。これについても拿捕が起こりますと、わが方としてはソ連のそういう内水であるという立場は認めない、したがって拿捕も不法であり不当であるということで、返還を常に要求をしております。ただ、向こう側の扱いは、一般の拿捕案件と同様な扱いをしておるようでございます。
  95. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このような事件が起こるたびのわが国の基本的立場に関する申し入れはどういう形式で行われておるのですか。それは公文書をもって行っておるのか、大使館から大使館に対する申し入れのような形で行われているのか、あるいは現地で抗議されておるのか、あるいは日ソ漁業操業協定に基づく事故処理委員会という形でスタートされておるのか。聞くところによると、日ソ漁業協定の締結の後、かえって事故件数が増大し、漁網その他の寸断事故というものが急増しておるというように承っておりますが、その辺はどうですか。
  96. 橘正忠

    ○橘政府委員 ほとんどの場合、こういう拿捕の件が起こりますと、水産庁からの御連絡を受けて確認の上、わが方のモスクワにある大使館からソ連政府に対して申し入れを行っております。口頭の場合もあり、文書で行う場合もございます。  なお、日ソの漁業操業協定に伴います件は、実はこれはケースがやや違いまして、日本沿岸におけるソ連漁船の操業、それに伴って起こった事故、これの問題でございます。したがいまして、先生御指摘の漁業損害賠償の請求処理委員会は、このような日本の近海におけるソ連の漁船の操業によって日本側が受けた漁具等の被害についての損害賠償の処理を促進していく委員会でございますので、ただいま最初にお話がございました拿捕のケースとは性質を異にしたケースでございます。したがいまして、そういう意味では全く別個の問題でございますが、ソ連側の日本沿岸における操業、特にそれに伴う事故は、昨年十月、この協定が発効いたします前とその後の状況とを比較すれば、事故件数あるいは損害件数において著しく減少はいたしております。四分の一ないし五分の一程度に減少しておりますが、なおそうした事故が根絶していないということは非常に遺憾に存じております。
  97. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 持ち時間が終了したようでございますので、最後に、こうしたソビエトの日本漁船捕獲問題に関しましては、まさに北方漁民の二十年に余る悩みであります。こうした問題につきまして、正規のルートを通して交渉ができるのは水産庁並びに外務当局であろうかと思いますが、こうした事故が根絶するよう適切な交渉をされ、現地漁民の不幸というものを取り除くための特段の施策をお願いしたい。また逮捕されてからしばらくの間、情報量が非常に局限され、現地漁民の家族の不安というものは言うこともできないような状態であるようでありますから、これらに対する情報提供というものに関しましては、外務省におかれても水産庁におかれても、どこが行われるかは存じませんが、適当な所管局をつくった上、時々刻々とその漁民家族の相談に応じられるような体制をつくっていただきたい。  二点お願いいたしまして、私の質問を終わります。
  98. 橘正忠

    ○橘政府委員 拿捕されました方の状況について、残された方が大変な不安を持っておられることはきわめて当然でございまして、私どもも水産庁あるいは残された家族の方から御依頼を受けて、本人の実情をこちらに情報を送るように、ソ連政府を通じて年じゅうプレスしております。それから大使館員が面会をするということを常にソ連側に要求をし、ソ連側も、多少の時間のおくれはありますが、面会を許しているケースが多いようでございます。それからなお郵便物等も、こちらから向こうへ出す、あるいは向こうからこちらへ来るというものは大使館員の手を通じて行っております。ただ検閲もございますのと、ソ連側が必ずしも常に迅速にそういうことを許してくれないという事情はございますが、今後とも本人の実情等について常に情報をなるべく多く相互に交換できるように努めていきたいと思っております。
  99. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 最後に大臣にお願いします。
  100. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お聞きのとおりでございますが、問題の所在はやはり北方四島、これにあると思うのでございます。われわれはこれは固有の領土であると考えておりまして、しかもあの地帯で漁労する諸君は、これは徳川時代からそこで漁労をしておる諸君、したがって墓があるわけでございますから、墓参もしておる。でございますから、漁労をする諸君は自分のところで従来からやっていることだからというのでやるわけでございますが、ソ連がそれを認めないというところから問題が生じているんだと私は思うのでございます。したがいまして、この漁労をしておる諸君は非常に小さい船を操っていく、いわばプロレタリアでございますね。プロレタリアートの国のソ連がどうしてこういうのをいじめるんだということで、私もミコヤン氏が来たころ大げんかをやったことがあるのでございますけれども、まさに私どもの言い分はそうだと思うのです。根本は北方領土を解決する、それで日ソ友好の将来の輝かしい実績を築き上げていく、もう根本はそれである。しかし、それに至らないまでの間にも、われわれとしては貝殻島周辺で入漁料を払ってコンブの操業をやるというような方法もやっておるわけでございますから、あらゆる可能なることを考えていきまして、北方の漁民の皆様方がもっと安んじてなりわいに励んでいただけるような、そういう環境をつくるのは私どもの任務である、こう考えておるのでございまして、どうぞよろしく御支援を賜りたいと存じます。
  101. 藤本孝雄

    藤本委員長 次回は、明後二十二日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十五分散会