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1976-10-15 第78回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月十五日(金曜日)     午後一時八分開議  出席委員    委員長 藤本 孝雄君    理事 石井  一君 理事 塩崎  潤君    理事 竹内 黎一君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 津金 佑近君       木村 俊夫君    坂本三十次君       正示啓次郎君    長谷川 峻君       三池  信君    山田 久就君       川崎 寛治君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官 小此木彦三郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       箕輪  哲君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 十月十三日  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書外  五件(第二一  号)  朝鮮自主的平和統一促進に関する陳情書外十  件(第二二  号)  世界連邦樹立に関する陳情書  (第二三号)  核兵器完全禁止国際協定締結促進に関する陳  情書外三件  (第二四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚(だな)の南部共同開発に関する協定の締  結について承認を求めるの件(第七十五回国会  条約第六号)      ――――◇―――――
  2. 藤本孝雄

    藤本委員長 これより会議を開きます。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸(だな)棚の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  3. 石井一

    石井委員 きょうは私は、日韓大陸棚協定の問題につきまして、外交的な条約批准過程の問題、それから朝鮮半島に関連したいろいろな防衛上の問題、それからエネルギー資源開発の問題さらに漁業安全操業等漁業資源の問題、こういう問題についてお伺いをしたいと思うのでございますが、それに先立ちまして最初に政治的な朝鮮半島の問題について、せっかく大臣もお見えでございますのでお伺いをしたいと思います。     〔委員長退席水野委員長代理着席〕  そこで、まず私お伺いさしていただきたいのは、署名が行われましてからかなりの日数が経過しておるわけでございますが、その後いろいろ情勢変化しておるのですけれども、政府はその後の情勢変化を踏まえてもなお基本的にこの批准を急いでおるのか、なぜそういう基本的な考え方を持っておるのかということ、さらにこの問題に関して韓国政府からの公式、非公式の要請が日本政府にどういう形でなされておるのかどうか、この点について大臣の御答弁をちょうだいしたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 石井さんにお答えいたしますが、御承知のように、この協定昭和四十九年の一月三十日に署名されましてから三年になんなんとしておるわけでございます。韓国側はすでに昭和四十九年十二月に国会承認手続を終了いたしております。わが方といたしまして、調印をいたしましてから国会承認が三年にわたって行われないというケースはいまだかつてございません。御承知のように、NPT条約はもっとそれよりかかったわけでございますが、これは多国間の条約でございます。相対の条約でこういうことをやったことはないというので、韓国側におきましては、わが方の国会承認手続が延び延びになっておることについて、速やかに国会承認を了するように、屡次にわたりましてわが方に申し越しておる次第でございます。なお、これ以上国会承認が遷延いたしましたような場合には、韓国日本政府やり方に対する不満、不信というものが高まりまして、日韓の間に好ましからざる影響を及ぼす可能性を否定できないのであります。特に、今後韓国内において単独開発を強行するというようなことも一部に言われておるようでございますが、もしそういう動きが可能であると韓国判断し、国際法相当根拠があるというふうに主張してきました場合、わが国としてはきわめて困難なる立場に置かれるというふうに思うのでございます。また、わが国署名したこの条約は二国間条約で、先ほど申しましたように、三年という期間がたつことはほとんどないのでありますが、国会にいたしますと数国会、数国会を経たという先例はなく、このまま放置いたしますことは、どうも国際信義上許されぬことのように思うのでございます。かつまた、現在のエネルギー情勢を見ますと、エネルギー供給源多様化安定的確保というものは喫緊のことでございまして、共同開発区域には有望な海底油田があるとも言われておりますので、できるだけ速やかに開発することがわが国益に合致しておると思うのでございます。  なお、海洋法会議が行われておるわけでございますが、この動向を見ますと、いわゆる自然延長論というのがますます優勢になっておりまして、日韓大陸だな問題との関連では待てば待つほどわが国にとって不利になる、待っておれば何か有利な状況が出てくるかというと、そういうものはないというところにもう一つの問題があると思うのでございます。仮に海洋法が成立いたしましても、結局は日韓間で話し合うことになりまして、その結果といたしますと、どうも話し合う際に延ばしたのは日本側ではないかというようなことになりまして、それだけ不利になるというふうにも考えられるわけでございます。  その後、国際情勢は三年の間でございますからいろいろの変化があるわけでございますが、しかしその変化にもかかわらず、この大陸だなの関係というものは別にそれによって何かの影響を受けるというようなことはございませんで、趨勢といたしましては、いま申し上げたように海洋法会議が開催されてその間に自然延長論というものがますます強い立場を持っておる。その関係わが国主張というものは、この問題についてはできるだけ早く決着をつける方が有利である、こう判断せざるを得ない、さような状況でございます。
  5. 石井一

    石井委員 大臣、いまいろいろな観点から日本政府立場を御説明になりまして、その点は了とするのですが、ただ一点、署名は行われたけれども批准に手間取っておる、これにはそれなりの事情当事国の一方にあるということでございますが、だからといって、時間がかかっておるからそれではそこに盛り込まれておる内容単独で一方的に進めていく、これは国際法上そういう慣例があるのだろうか、これはやはり少しそういうおそれがあるから早くやらねばいかぬのだと言われることであれば、それではそうやってもいいということをいかにも国会で肯定されておるようなことにもなりまして、ややそこには論理の飛躍というようなものがあるような気持ちも私いま聞いておりましていたしたのでございます。過去いろいろな協定世界の多数の国々の間にあると思うのでございますけれども、署名はしたけれども批准がなされないということによって、一方的にそういう行為がなされてこれが国際慣行上問題にならなかったとか、あるいは問題になって提訴をされたとか、これはいろいろなものがあると思うのですが、そういう実例を挙げつつこの問題に対する見解をもう少し御説明いただきたい、こう思うのです。
  6. 村田良平

    村田政府委員 お答え申し上げます。  国家間の条約関係は、本来信義誠実の原則というものを基本としておりまして、二国間で条約を……(石井委員信義誠実……」と呼ぶ)はい。信義則というふうにも言われておりますが、ラテン語で「ボナフィデ」という、国際法等でも使われておる言葉でございますが、したがいまして二国間で条約をつくりまして署名を行って、双方がそれぞれその発効のために国内手続をとるという段階におきまして、二国間条約の場合で申しますと、一方の国がその条約に関して批准その他の国内的な手続をすでに終わりまして、もう一方の国が同様の手続を進めておる。まさに日韓の現在の状況がそれに当たると思うのでございますけれども、他方の、つまりこの日韓の場合で言いますと、わが国手続がおくれているというだけの理由でもって、その条約発効するまでの間に条約目的を不可能にするような行為をすでにその批准等手続を終わった国がするということは一般に慎むべきである。これは先ほどの信義原則からいって慎むべきであるというふうに考えられております。これは国際法原則でございまして、条約法条約条約法に関するウィーン条約という条約がございますけれども、その第十八条におきまして実はこの点に関する国際条約規定もあるわけでございます。その点をちょっと読み上げてみますと、「国は次の期間条約対象目的を阻害するような行為を慎しむ義務を有する」。それで二つございますが、現在のこのケースに当たりますのは、「条約によって拘束されることに対する同意を表明したときは、その条約効力発生が不当に遅延しない限り、その条約効力を生ずるまでの間」という規定になっております。他方、しかしながらその条約目的趣旨等から照らしまして不当に長い期間その条約効力発生がおくれるというふうな場合に、すでに署名あるいは批准をしております国がいかなる場合でも待たなければいけないということは、これは公平の観点から見まして必ずしも妥当とは思われないわけでございます。しかしながら具体的に何年ぐらい遅延したら、一方的な措置あるいは条約目的に反する措置をとってもいいかというふうな原則は特にございませんで、また従来こういつた具体的なケースが非常に問題になったというふうなこともございませんので、先ほどの先生の御質問に対して具体的な先例を挙げて答えろということでございましたが、必ずしも適当な例というものはないわけでございます。したがいまして、どの程度遅延すれば一方的な行為をとり得るかというふうなことは、それぞれの個々の条約の具体的なケースに即しまして判断しなければいけないというふうに思いますが、その場合に、一方の国の政府条約締結手続を行う主観的な意思があるかどうかというようなことが当然一つ問題点になると思われますし、この条約の場合には、わが国はいまこの条約批准のための手続ということで、まさにこの国会で御承認のための審議をお願いしているわけでございます。また客観的に見まして、その条約発効が果たして可能であるかどうかというふうな客観条件の問題も、条約の種類によってはあるかというふうに考えます。
  7. 石井一

    石井委員 いまの御答弁で、あらゆる国際間の信義原則というふうな面からもこれは当然慎むべき行為である、また実例を挙げて答えるほどのそういう実例も存在しておるわけでない、こういうことになりますと、大臣のおっしゃるのは、そういうおそれがあるのでできるだけ信義上、向こう信義もあればこっちの信義もある、こういうふうな意味ですから、早い方がいいという気持ちはわかるのですが、それにしてもいまの条約局参事官の御答弁は、大臣最初の基本的な見解をやや否定しておるということにもなりはしないかと思うのですが、大臣、いかがですか。やはりそれは韓国側にとって非常に重要な発言になろうかと思いますので、お答えをいただきたいと思うのです。
  8. 中江要介

    中江政府委員 いま条約局の方から一般国際法に照らして、こういった場合の考え方というものの説明があったわけですが、この日韓大陸棚協定の持っている意味から見ますと、新たな権利義務の設定、あるいは一つ紛争解決というような問題についてのクリアカット条約と多少実質的に内容の特殊な面がありますので、その点をちょっと補足的に説明することによっていまの石井先生の御疑問にお答えできるんじゃないかと思いますのは、この協定対象としております特に共同開発区域、この共同開発区域に対するこの協定のもとに横たわっております国際法上の大陸だな主権限界あるいは定義といいますか、それが全く日韓合意によってそこに大陸だな主権が設定されるというものではなくて、そもそも韓国韓国立場で、この地域に対してはだれの介入も妨げることのできない本来的な主権があるという主張をしておるわけで、この韓国主張には国際法相当理由がある。他方日本日本でこの同じ地域に対して、日本として何ものにも妨げられない主権的な権利がある、こういう主張をしておって、この日本主張にも国際法相当理由がある。そういうことになりますと、本来ならば自分の方の、つまり韓国韓国日本日本国際法上の立場だけに準拠いたしますと、こういう協定がなくても開発できるはずであるし、それに対して文句を言ってくるのは国際法根拠がないと言って相手の立場を否定することができる。そういう意味で仮に韓国立場に立ちますと、韓国の言う自然延長論に基づく大陸だな主権主張という立場に立ちますと、この協定があるにもかかわらずこの共同開発区域大陸だな開発を行っても、そのことが全く国際法根拠がないということではなくて、むしろ逆に、韓国がそもそも自国の国内法によってのみこの地域開発しようとした最初立場に立ち返りますと、それはそれで根拠のあることである。したがって、約束をしておきながら、それがまだ最終的に発効するまで待つことなく、何かをすることが信義誠実の原則に反するかどうかという観点のほかに、仮にこの協定によらずに一方的に開発しても、これは日本についても同じですけれども、どちらにも国際法上それ相応の理由があるというところが、そもそもこの共同開発協定にこぎつけられたゆえんのものでありますので、いまの一般論のほかに、この協定についていえば、この協定発効を待つことなく一方的に開発に着手することは日本側にも韓国側にも十分の理由がある。そういう国際法上未熟な、未発達の分野の紛争であるということであったわけでありまして、したがって、一方的にそういうことをどちらかがやることによって紛争区域になる、その紛争について両国間がいろいろ紛争解決の話をする、そういう手間取っていることが賢明なのか、それとも両方の立場立場としてそれぞれ根拠があるのであるから、それはたな上げにして、この地域石油天然ガス資源というものを早く有効利用することの方が双方の国の利益になるのかという判断からこの共同開発の構想が協定に持ち込まれた。そういうことがこの協定一般条約効力発生に伴う、いま御指摘のような疑問を解明する上で特殊な事情にあるということをやはりわれわれとしても考えなければならぬのじゃないか、こういうことを申し上げたかったわけでございます。
  9. 石井一

    石井委員 非常に中江さんらしくない答弁だと私思ったのですが、もし仮にそういうことであれば別に協定批准をする必要もないし、向こう主張国際法上に認められるものであれば、向こうはどんどんやったらいいことである。一たんここで協定両国が結ぶということになった限りにおいては、やはりそこらにいろいろな疑問があり、共同開発をしなければいかぬ、自分の方が一方的にできないという理由向こうも認め協定署名した、こういうことになっているのですから、署名した限りにおいては国際間なり両国間の信義の法則を守っていくのが当然であって、こっちがおくれておるから、それじゃもう一遍もとへ戻って署名した事実というものを否定して、わが方の権利がもともとあったのだからやるというわけにはとてもいかぬ議論である。これは大陸だなに主権限界がどう及ぶかという別の観点はあることはわかるけれども、両国がそういう形で合意に達した限りにおいては、前例もないことでもあるし、そういう国際信義条約に反するようなことは向こうにもさせてはならないし、またこちらも信義上できるだけ早く批准してやらなければいかぬ、こういうことにならざるを得ぬだろうと思うのです。したがって、いま大臣が御答弁になったのと条約局の御答弁になったのとアジア局の御答弁になったのを三つ足して、そこのいいところをとったら正確な答弁になるのじゃないかな、私はそういうふうに解釈をいたすわけでございますが、政府の基本的な考え方というのはよくわかりましたから、この点に関しましてはこの程度にいたします。  そこで、政治論をやろうと思ったのがどうも各論に入って恐縮ですが、もう一つ聞きたいのは、韓国では四十九年十二月に批准手続を完了した。ちょうど私がこの国を訪問したりしておった前後で、そのときの光景を向こう新聞を見ておぼろげに覚えておるのですが、一体どういうやり方韓国国会において批准手続が完了したのか、御報告いただきたい。
  10. 中江要介

    中江政府委員 私どもも、外国国会審議について細かいところまで全部フォローしておるわけではございませんけれども、伝えられているところによりますと、日本流に言いますれば与党単独採決という形で採決されたというふうに聞いております。
  11. 石井一

    石井委員 そうすると、わが国のように、与党野党意見が違っても、お互いに政府に対する見解を述べ、それに対する疑問点を解明し、その結果多数決の原理等々によって批准されたということじゃなく、審議は行われず、与党単独採決によってこれは批准された、こういうことですか。
  12. 中江要介

    中江政府委員 私が先ほど申し上げましたように、日本流に申しますると単独採決——日本単独採決でも、与野党とも意見を闘わし、いろいろ審議をしたあげく最後の採決段階単独採決という形でなされておりますのと同じように、審議は尽くされておりまして、その内容については新聞などで、賛否両論がいろいろあったということは承知しております。
  13. 石井一

    石井委員 参考までにお伺いしますが、どれくらい審議をされたのか、単独採決をしなければいかぬということであれば、野党側はこぞって反対であったのか、この点はどうですか。
  14. 中江要介

    中江政府委員 国会審議過程与野党がどういう意見を述べ合ったかということについては、資料がちょっといま手元にございませんが、単独採決が行われました経緯は、聞いておりますところでは、たまたまほかの案件野党が欠席しているときに本件も含めて採決が行われたというふうに聞いておりますが、これはなお確認を要する問題かと思います。
  15. 石井一

    石井委員 他の国には他の国の政治情勢があるわけですから、ここでこれを問題にする必要はないと思うのでございますけれども、そういう状態であったということも、政府としては考えに入れられるべき一つの問題ではないかなと思います。  私が、記憶が定かではございませんが、そのとき向こうの原語による新聞を読んで感じたのですけれども——日本でも、多少はあったと思いますが、余り詳しい報告がなかったんじゃないかなと思いますが、審議はほとんど行われておらなかったように思いますし、国会が終わる間際にかなりの法案が一挙にまとめて成立された中にこれが一つ入っておった、こういうふうに——私の記憶は間違いかもわかりませんが、そういう形で上程されるともうすぐに批准された、こういうふうな経過ではなかったのかなというふうに私は記憶をいたしておるわけですけれども、そのことについて何か御答弁ありますか。
  16. 中江要介

    中江政府委員 当時の韓国議会における審議の模様を一応概略的にメモにしたものがいまございましたので、それによって補足いたしますと、一九七四年の十二月十三日に韓国議会外務委員会提案理由説明が行われて、その後審議が行われましたが、野党立場はこの協定反対というのではなくて、日本国会承認様子を見ながら審議をしていった方がいいんじゃないか、つまり、日本がこの協定国会審議にかけて果たしてどういうふうに一と言いますのは、その前に一度廃案になっておったわけでございますので、日本国会審議様子を見るために翌年の臨時国会まで延ばそう、そういう意味での消極的な意見が表明されたということであったようです。  ところが、その十二月十四日に、これは全く別の問題で、韓国議会の本会議で多少乱れるような事態になりまして、そのためにその十六日の外務委員会では、前回は出席して審議に参加していた野党が欠席をしておった。そのときに、韓国政府与党考え方としては、これは日本国会審議様子を待つというようなことではなくて、また日本がぐずぐずしておっても、ここは韓国として毅然たる賛成の態度を出すべきであるという御判断だったと思いますが、野党が他の案件に基づく本会議での集団乱闘事件の結果欠席している会期ぎりぎりのところで、韓国韓国独自の判断で可決すべきであるということで、与党単独で可決をした、こういうふうに聞いております。
  17. 石井一

    石井委員 ここで数点大臣に、朝鮮半島に関する政治的な問題について御所見をお述べいただきたい、こう思いますので、恐縮ですが御答弁をいただきたいと思います。  本委員会におきましても、多少論議がなされておったようでございますが、前回にも、まだ就任早々であるのでというふうなことで、答弁が少し留保されておるようなこともあるというふうに伺っておるわけでございますが、この朝鮮半島というものに危機があるということは世界の認識であり、現に最近、不幸なことに、三十八度線においてもアメリカ人将兵のいわゆる殺傷事件ということも起こっておる、こういうことでございます。したがって、このままの形で両当事者において平和な解決方法を見出していくということは非常に厳しい、これはもう何十年間もこういう状態が続いておるのでございますからこういうことが言えるだろう、こう思うのでございます。  それに対応して、国連において、いわゆるキッシンジャー長官の演説の中にも盛られておるように、両者の話し合いの機会を推進しようという動き外国にあるわけですけれども、当事者同士意見が合わないということでなかなかまとまらない、こういうこともあるわけです。  結局は、南北両朝鮮の建設的な対話の環境づくりムードづくり、こういうこと以外に現実的な解決の道はない、こう思うのですが、この見通しというものは大臣、非常にむずかしいというふうにお考えなのか、いやこれは今後の持続的な努力でできるのだ、近いうちにできるのだ、こういうお考えなのか。また、遠いアメリカがやらなくても、一番近い日本がこれに対してもう少し積極的に取り組むということが考えられないのだろうか、中国なりソ連なりいろいろカレントな問題がありますが、ある意味におきまして、日本の平和なり安全ということを考えましたら、これくらい日本の国民にとって重大な関心事はないと思うのでございます。日本の外交の中でも一番重要だと申し上げてもいいんじゃないかと思うのですが、これに対して、日本が独自に積極的に踏み出そうというふうな御決意が伺えないものだろうかなと思って、そういう期待を込めて御質問をしておるわけでございますが、いかがですか。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お話のように日本に一番近い国は韓国でございます。しこうして北朝鮮でございます。ところが韓国におきましては、まず終戦後、李承晩大統領による反日侮日政策というものが続いておりまして、私は一九六〇年に日本外務大臣として初めて韓国へ参りまして、李承晩内閣が倒れた後の張勉内閣、また当時の尹フ善大統領、その人たちいろいろ話をいたしたのでございますが、彼らはそれによって初めて日本に対して目を開いたと言ってくれたわけでございます。彼らは、日本というのはきょうだいだと思っているけれども、非常に恐ろしい兄貴であるという認識を持っておったが、ここで初めて日本の方から手を差し伸べられて和解する気分になった、こう言っておるわけでございます。その後、張都暎のクーデターがあり、そして朴正煕のクーデターということになって、それがいまの朴政権になっているわけでございますが、根本にはやはり三十六年間にわたる日本の統治、いまはそうではございませんが、当時は彼らは圧政と言っておったわけでございますが、それに対する不信といいますか不満といいますか、それがあることはもう疑えないところでございます。われわれとしては、何としてもこの不信感を解消するということが、一番近い国である韓国に対するわれわれのとるべき態度であるというように考えておるわけです。私どもの先輩のいろいろな御努力によりまして、この日韓関係というのは非常によくなってまいりました。しかし、まだいろいろな問題がございますし、また韓国の政情に対するいろいろな批判もあるわけでございます。  ところで、三十八度線の北側の朝鮮民主主義人民共和国、これは日本は従来北のオーソリティーと言っておったわけでございますが、その後いろいろな方の御努力で貿易が進み、人的交流も比較にならぬほど進んでおるわけでございます。しかし、その間に一九七二年に双方が話し合おうということが出まして、非常に両方が見た結果でございましょうか、北朝鮮の側においても日本との間の貿易が非常に進みました。一九七二年までは北側の鉱物、タングステンであるとか銅であるとか、あるいは石炭であるとか、そういうものを日本が非常に買っておりましたので日本側の入超であったわけでございますが、その後から今度日本の出超に変わりました。それがいま焦げついているというような問題が出ておるわけでございます。しかし、そういう貿易とか人的往来というものを通して理解は非常に進んでいるわけでございますが、やはり双方日本に対してのいろいろな不信感がぬぐえないと思う。これは、われわれお互いの世代よりももっと前の世代からの問題であるわけでございますが、これは何としてもわれわれとしてはぬぐっていかなければならぬという点でございます。  ところで、北側は韓国というものを認めていないわけです。そういう国はないんだという認識でございます。したがいまして、このキッシンジャー氏の提案は非常に現実的だと私は思うのでございますが、北側はこれを拒否している。しかし、韓国と話し合うということを七二年に決めたのでございますから、これをもっともっとやってもらわなければならぬと思います。しかし、現状におきましてはこの関係は非常にむずかしいと思わざるを得ない。  ところで、今度の板門店のあの事件で、私は一つの進歩と見ていいと思うのは、いままで北側は米軍と言っておった。それが国連軍との間に交渉したということになったわけでございまして、その点は非常な変化でございますわけで、私どもはその情勢をよくとらえて、できるだけ日本としても話ができるような、そして双方が話し合いができるような、そういう情勢をつくりたいと考えておるわけでございます。
  19. 石井一

    石井委員 いま御指摘ございましたように、北側が多少柔軟な姿勢になってきた、こういう徴候はいろいろな面でも指摘できるだろうと私は思うのです。それからまた、大臣は非常に豊富な外交経験を持っておられて、一九六〇年に最初に訪韓されたのが大臣であったというのもいまお伺いして、私この事実を知らなかったわけでございますけれども、要は日本に対する不信感というものがございますけれども、その反面、日韓はいまこういう協定を結んでおりますように、新しい日韓両国関係というものは、経済的な側面を見ましても、そのほかいろいろな面を見ましても、昔とは全然違った感じが起こってきておるわけですね。さらに朝鮮民主主義人民共和国でございますが、私も一週間ほど逗留をしまして、各界の人々といろいろ意見を交換したわけでございますが、アメリカに対する憎しみというものは物すごく厳しいものがございます。しかし日本人に対しましては、不信感がありますと同時に、やはり一種の尊敬の念と申しますか親しみの念というふうなものもどこかには確実に存在をいたしております。したがって、アメリカの長官が提案をしても、北朝鮮としてはそれににわかに応じかねるということは当然なんでございますけれども、日本の場合に、もう少し積極的に物を申される。南にばかり遠慮をせずに、北に対してもいろいろの積極的な姿勢を出しつつ物を申されていく。今度のキッシンジャー提案にいたしましても、反対をしましたのは要するに北朝鮮と中国なんですが、中国に対してもわれわれはある程度友好関係を持っておる。最近北朝鮮の態度が多少緩やかになってきたというふうなことを考えましても、この辺でこういう問題に少し積極的に取り組んでいただく姿勢というものが、即過去の不信感ばかり思い出すということでなく、いわゆる日本の自主的外交というものに結びついてくるであろう、こういうふうに思うのですが、大臣朝鮮半島に対する何か新しい御提案なりそういう御決意がありましたら、お伺いしたいと思うのです。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、石井さんが非常に精力的に双方の地区に足を運ばれている、また双方の地区の指導者と話し合われておるということに対して敬意を表しておる一人でございます。ただ、先ほども申し上げたように、日本が過去にやったことというのは、戦後三十年たちましたので、これはずっと薄れているとは思います。しかも政治というものは、過去ということばかりにこだわっておったのでは新しい未来が開けぬわけでございますから、われわれは新しい未来を開くために、平和な朝鮮半島の環境、そして日本との親善の関係をつくるために努力をしてまいらなければならぬと思うのでございます。     〔水野委員長代理退席、委員長着席〕  ところでこの関係は、韓国側においては日本に対する信頼を大変高めてきていただいております。おりますけれども、何といっても朝鮮半島状況一つの均衡状態になっている。いまのお話にあったような韓国日本アメリカ、そして中国と朝鮮民主主義人民共和国、こういう一つの力の均衡状態になっている。そこで日本が動くということが、全体の均衡から来る平和の状況に非常に大きな影響があるということは考えていなければならぬ、かように思う次第でございます。こういう状況をよく見ながら、何といっても私ども国交のある韓国の信頼を得るようにまず努力して、しこうしてさらに全体のことを考えるということではなかろうかといまのところ考えております。ただ新米ですから、これから勉強してまいりたい、いまのところはさように考えております。
  21. 石井一

    石井委員 さきの本会議における三木総理の演説の中に、南北両朝鮮に関して積極的な発言がございました。国連の同時加盟を推進したい、これは日本の外交の南北朝鮮に対する何らかの前進的な、積極的な姿勢のあらわれを示唆したのではないかなと私は思うのですが、大臣はどういう評価をされておりますか。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点は、従来は、そう言いますと北側は現状の固定化だということで非常に強く反発をしておったわけです。しかし、今度はその反発はないようでございます。私も、もし双方においてそれを希望するのであれば、われわれは同時加盟を認め、そして将来国連の枠内でもいいし枠外でもいいが、双方が話し合って平和を招来する方途を考えるのがよかろう、こういうことを国連でも同じように申したわけでございます。ただ、双方が希望するならば、こういうことを言っておるわけでございます。
  23. 石井一

    石井委員 国連の大臣の演説の中でもそういうことを提唱され、またわが国国会においても総理が提唱されておるということであれば、言うなれば正式には受け入れ体制が少しでもあれば日本は積極的に取り組んでいく。しかし、わが方から具体的なものを提示するということは、過去のいろいろの経過等々もあって少し差し出がましいのではないか、こういうふうに受け取れるわけでございますが、気持ちの上では前向きなんだということなんだろうと思うのです。しからば、いわゆるフォーマルなアプローチができなくても、インフォーマルな形で何らかのアプローチというふうなものが進めていけないだろうか。それからまた、たとえば民間レベルを中心にした交流をもう少しこの時点において推進させていくというふうなことが考えられないだろうか。民間の貿易事務所といいますか、こういうふうなものの設置ということも現実の問題として必要な問題であろうと思います。それからまたわれわれが一年に一回か何か行くとか、あるいは赤十字を通じて何らかの情報を得るとかということでなく、できれば新聞記者諸氏に恒久的に、たとえわずかでもいいから滞在をすることを認めてくれということを政府が働きかけるとか、あるいはその反対向こうの記者をわが方が迎え入れるとか、こういうふうな背景づくりというものを、いまの総理なり外務大臣のそういう御所信を伺っておった場合には、何らかのそういうインフォーマルなアプローチというふうなものが必要な時期が来ておると私は思うのでございますが、この点いかがですか。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本の北側に対するアプローチというものは、今日南北の対立、その状況に非常に鋭敏に影響を与える、非常に敏感に向こうも反応するだろうという点から見まして、相当慎重にやらなければならぬというふうに思うわけです。しかも先方は、いままでのところはわが政府に対して非常に敵意、反感を持っておるというふうに表明されておるわけでございます。こういう点ももう一つの問題だろうかと思うのでございます。  それから、いま最後におっしゃいました人の交流の問題でございますが、何でも大分貿易上の焦げつきの問題があるわけでございまして、それの解決のために、月末に何か貿易団のようなものが北朝鮮側へ行くというふうに伝えられておりまするので、そういう点でどういうふうに今後なりますでしょうか、われわれとしても貿易は民間のレベルで大いにやった方がいい、こう言っておったのが、大きく焦げついておるという状況は非常に困ったものであると考えておるわけでございます。貿易事務所のようなものを設置したらいいんではないかというような点でございますが、それはさような申し出でもありましたら、その段階において考慮したい、判断いたしたいと思っておるわけでございます。(石井委員新聞記者の交換はどうですか」と呼ぶ)落としまして失礼しました。新聞記者交換も同様でございます。先方からそういう申し出があった段階でさような判断をいたしたいと思っております。
  25. 石井一

    石井委員 これからぼつぼつ条約論に入ろうと思いまして、私、いろいろ準備しております問題としては、いま大臣の御指摘のございました貿易支払いの債権の問題、それから防衛問題、漁業問題、エネルギー問題等々あるのでございますが、私の質問はきょうはこの程度で打ち切らしていただきたいと思います。  なお、お呼び出しをいたしまして、御出席をいただいた皆様方に対しまして少し御迷惑をおかけしたかもわかりませんが、次の機会に譲ることをひとつお許しいただきたいと思います。
  26. 藤本孝雄

    藤本委員長 次に、渡部一郎君。
  27. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の北部境界画定に関する協定及び日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定を一括して、またまたこの第七十八回国会に対し一括案件として提出された理由につきまして改めてお伺いをいたしたい。  私は、前国会においても、前々国会におきましても、これら二協定を一括して提出することに対し反対をし、当委員会で意向を表明したものでありますが、またまたその過ちを踏襲されるのはどういうわけであるか、伺いたい。
  28. 村田良平

    村田政府委員 本件、北部境界画定に関する協定及び南部共同開発に関する協定は、それぞれ日韓両国に隣接する大陸だなに関しまして、日韓両国政府間で行われました一連の交渉の結果、最終的に合意を見たものでございます。ただ、北部大陸だなに関しましては、その間に境界を画定するということで合意が成立いたしましたけれども、南部大陸だなに関しましてはそのような解決は不可能でございましたので、共同開発という形の解決を見たわけでございます。また、そういうことで最終的に得られました合意期間も、北部に関しましては無期限、南部に関しましては五十年の有効期間協定ということでありましたので、形式上は二つの協定ということで処理をいたしたわけでございます。  しかしながら、本来この両方の協定は、日韓両国に隣接する大陸だなに関しましては、全体としてこの大陸だなに関する日韓間の問題を処理するということで行いました交渉の結果として生まれたものでございますので、政府といたしましては、この両協定が一括して承認されることを強く希望する次第でございまして、そういうことで密接な関連を持っておる二つの条約ということで、一括して国会に御提出して御承認をお願いしておるということでございます。
  29. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまも御答弁になりましたけれども、この二つの協定について共通する点と言えば、一緒に交渉したという一点があるのみでありまして、また両方とも大陸だなに関係するものであるというだけの話であって、実際には協定の期限も、一方は無期限、一方は五十年である。一方は境界画定協定であるに対して、一方は共同開発という全く種類の違う、内容の違うものの協定であります。それをなぜ一括して承認すべきことを強制するのか。これは国会に対する行政権の侵害であると言うしかない。分けて出しても一向に差し支えないものをわざわざ一緒にする。これは強行採決の手順を簡略にするための方式としか考えられない、こんなやり方は。こういう不当な提出の仕方それ自体に憲法違反の疑いさえ濃厚に感じられる。私はそのことも前回申し述べましたけれども、さっぱりまともな御回答がないじゃないですか。いまの御回答も、ふだんの御秀才ぶり、御勉強ぶりとは打って変わった訥々たる御見解であって、私は聞くに忍びない。  ここに、昭和五十年三月の二十五日、わが方に提出された関連する諸協定を一括して採決した例を外務省が述べられたものがありますが、それを拝見いたしましても、日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の通商、居住及び航海条約、関連議定書の締結について国会承認を求めるの件の例が引いてあります。この第一議定書、第二議定書ともに貿易関係に関する議定書であって、種類はまさに同じである。また、その後ビルマ連邦との間の経済技術協力に関するものが取り上げられておりますけれども、これも全く同趣旨のものである。いま取り上げられたような全く違うものを一緒くたにして並べられたという例はここにないわけであります。  前回はいろいろな事情があってああいう出し方をされたことも理解できないではないが、かかる国会法の観点から言って、あるいは国会関係の議論を展開するに当たって問題のあり過ぎるものを、なおかつ二協定一緒にしてまた出してくるというこの相当の強心臓というのは一体どこから発せられておるのか、私は非常に疑うものであります。そうでなければ、明らかに二つの協定に対する国会の意思決定を、実質的にこうしたやり方で制限しようとする作為さえうかがわれるのでありまして、私はきわめて不穏当な提出であると依然として思うのでありますが、御説明を承りたい。
  30. 村田良平

    村田政府委員 先ほど先生、この今回提出いたしました二つの協定は根本的に性格の違うものである、しかるになぜこれを一括して提出したのかという御指摘でございますけれども、先ほど申し上げましたように、これはやはり日韓間にまたがる大陸だなに関しまして、これを全体としていかに処理するかということで交渉をした結果生まれた協定でございますので、相互に非常に密接に関連しておるというふうに考える次第でございます。  なおかつ、当然のことながら、政府といたしましては、この両協定に関しまして一括して御承認をお願いをしておるということではございませんで、両協定のそれぞれについての御承認を一括してお願いしておるということでございまして、決して国会審議権に対して云々というふうなことはないと考えております。
  31. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 二つの協定のそれぞれの承認を一括してお願いするとは、すばらしい見解をお述べになりましたけれども、これまた新見解でございまして、それほどばらばらに承認することがお好きならば、何も一括することはないわけでありますね。全くない。  そうすると、村田参事官の前の方々がおやりになったことが失敗なのであって、村田参事官以降においては、かかる協定の出し方については十分再検討する、こういう含みのある御答弁と理解してよろしゅうございますか。
  32. 村田良平

    村田政府委員 そのような趣旨ではございませんで、従来から、複数の条約を一括して提出して国会の御承認を求めておるという場合には、それぞれの協定についての御承認をまとめてお願いしておるということであろうと考えております。
  33. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたは、いままで押し問答しているわけでありますが、この協定の出し方は、少なくとも多少疑義を生じそうなケースだということはお認めになりますか。二つの協定を一本にくっつけて出して何も問題ない、天下晴れて大丈夫だというものでなくて、多少こう言われても仕方のないケースであり、今後は検討しなければならないケースの代表となるであろうというような多少の御反省はございますか、それとも全然ないですか。
  34. 村田良平

    村田政府委員 私といたしましては、従来の先例等から見まして、今回この非常に密接に関連する条約を二つ一括して御提出したということは妥当なことであるというふうに考えます。
  35. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういう言い方をされれば、こちらももう一回蒸し返しをしなければならぬことがたくさん出てくるわけですが、協定本文が一体承認対象になっているのか、協定本文について承認を求めるの件という紙切れが対象になっているのか、これをもう一回議論しなければなりません。あなたはどちらだと思われておるのですか。
  36. 村田良平

    村田政府委員 この点に関しましては、従来国会で、一枚のぴらぴら紙について承認を求めるのかどうかというふうな議論があったということは私も承知しておりますけれども、承認を求めておるのは、やはりそれぞれの条約自体についてであろうと思います。  ただ、条約承認を求めるの件という形で国会に御承認をいただいておるわけでございますので、条約のテキスト自体は、いわばその承認を求めるの件というものに付属して出された書類であるというふうに考えております。ただ、その条約そのものの規定を御検討いただいて御承認をいただかなければ、そもそも承認をいただくという意味がございませんので、その条約自体の御承認をいただくというふうに考えても差し支えないものであると考えております。
  37. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もし協定の本文が承認の実質的な対象だと考えることができるならば、いまの御答弁は、内容的には承認対象であることをお認めになったものと私は理解しているわけでありますが、そうすると、国会は、国権の最高機関として、この条約について修正する権限あるいは一部留保する権限があってしかるべきものと思われるのでありますが、いままでの御見解では、条約何々を承認するの件という形で提出されたから、国会にはイエスかノーかの表決権しかないのであるというような弁明がしばしば行われたわけであります。ところが、最近のアメリカ国会における質疑を拝見いたしますと、相当のものに対しても国会がこれを否決しあるいは留保を遂げ、再交渉を政府に命じたケースが幾つも幾つもあるわけであります。したがいまして、何々するの件という形で出すということは、そのような議会の修正権あるいは一部留保権あるいは再交渉指令権というものを実質的に剥奪するものになるのではないかと私は考えるものであり、この辺については、何々するの件というこうした形の議案提出の方式というものは再検討するべき時期に来ているのではないかと思いますが、いかがですか。
  38. 村田良平

    村田政府委員 条約締結権そのものは政府にございまして、それについて国会の御承認をいただくというのが大原則でございます。したがいまして、従来の政府見解で申し述べておりますように、条約というのは、相手国がありまして交渉の結果まとまったものでございますから、これについてその御承認をいただく、あるいは不承認の決議があるということももちろんあり得るわけでございますけれども、国会によって条約が修正されるということは不承認に等しいことであって、したがって、国会による修正ということはあり得ないというのが従来の政府立場でございます。
  39. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 御答弁、余りよくないですな、それは。よろしゅうございますか。私どもは、ここで過去の先例にさかのぼってだけ議論しているのだったら、公害問題などというものは今国会において発展的な法案の作成には至らなかっただろうと思うのです。議論の間に進歩発展するところがなければならない。いま皆さんは締結権があると言いましたが、条約締結権があっても、それを国会に提出するかどうかについて、政府側は提出の権限を左右することによって、締結したものに対する実質的な不承認自分でなすことができる、条約を不承認させるための手続を持っておるという形になっております。これも問題ですね、国権の最高機関である国会にすべての判断をゆだねていないという点で。そうでございましょう。そこへもってきて、今度は承認、不承認のちょうど境目である場合が大いにある。これは承認したい、だけど、この部分は一部留保しなければならぬという問題が起こってくる。  たとえば日米原子力協定に関する諸取り決めが当委員会において問題になったことがある。その日米原子力協定に関する諸取り決め、ウラニウム燃料の確保に対する諸取り決めについては内容が不十分であるというので当委員会の指摘が行われ、付随して再交渉が行われた事実があるじゃありませんか。審議の途中において付随して再交渉が行われ、それを前提として承認が行われたケースがあるではありませんか。それはすでに条約の取り扱いに対する大きな一歩前進と評価されたはずであります。条約局参事官としては御存じないわけはないと私は思うわけです。したがって、私が申し上げているのは、この部分に関して幾つかの欠陥の中で、再交渉すれば何とかなりそうな部分がある。そうしたら、そういうものについては謙虚にそれを聞き、再交渉あるいは修正あるいは一部留保等の方式をあるものについては積極的に取り入れ、当委員会条約に対する審査権をより強固なものにしていくということは、政府として十分検討に値する問題だと思いますが、いかがですか。
  40. 村田良平

    村田政府委員 留保の問題に関しましては、多数国間条約と二国間条約では当然異なると思いますけれども、二国間条約の場合には留保を行うということは、本来その部分について再交渉するというのと同じことでございますので、多数国間条約の留保に関して、国会の御審議の間に出たいろんな意見というものを政府が考慮に入れまして、留保する、しないということは十分あり得ると思いますけれども、二国間条約に関しましては、その条約を御承認をいただくかあるいは承認をいただけないか、法律的にはそのいずれか、二つの一つであろうと思うわけでございます。ただ、御審議の中でいろんな国会の御意見が出まして、それによって政治的に政府が別途取り扱いを考えるということは十分あり得ることではないか。たとえば再交渉をした方がいいという判断に達するというふうなことは理論的にはあり得ることだろうと考えます。
  41. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 かなり前進してこられましたので、それだけ言われても大変な前進であろうと私は思うのです。最近の外務省の前向きの気風があらわれていて非常に結構な御答弁であろうと、私はきょうはほめておきたいと思うのでありますが、もう一息がんばらなければならぬ。それだけでは、まだこの国会条約に対する修正権がないと言わぬばかりの解釈というものは、憲法に対する解釈上問題がある。これは最高裁判所が違憲審査権を実質的に持っているか持っていないかという問題と同じように、外交問題における重大な問題になる。条約修正権は国会なんかにあるものかという考え方が明快になっているのは、旧憲法下における条約締結権というものが天皇の大権であった、その天皇の大権であった当時には、そうした考え方はまさにそのものずばりそうでなければならなかったのだろうと思いますが、それは明らかに、現在の行政府が立法府の権限を一方的に行政府の手でこういう解釈なのだと押しつけることはもうあり得ないことであるし、そういう解釈をいつまでも強固に堅持し続けるということは異常なことである。憲法に対する解釈さえも行政府が恣意的に条約締結権に関してしたと言われてもこれはどうしようもない問題になると私は思うわけですね。ですから、この辺、政府条約締結権に関するさまざまな慣行の洗い直し、また条約国会審査する際に、不足な協定の再交渉、これは明らかにできるはずだ。議論している間にこれでは不十分な協定じゃないかと言われたら、その前の条約にさわらないで交渉することは可能だ。穴があいていた、穴を埋めるための交渉をしろ、これも可能なはずですね。また、本協定そのものに重大なエラーがある、しかし重大なエラーがあるけれども、全部葬ってしまうには一部非常にいい点があるから、それをどうしても審査しなければならない、審査したい。そしてその穴のあいている部分は、向こうと交渉して何とかなるのではないかという見通しがある場合すらある。そうすると、こうした実質的な条約の修正権——実質的な修正権という言葉が妥当かどうかは問題があるにしても、実質的な修正あるいは再検討、再交渉というような道を開いていく方式がないと、条約はイエスかノーの二者択一、間違いは正されない。そして国会における条約審査権に対する重大なブレーキになるのじゃないか。その辺はひとつ御研究いただいたらどうかと思いますが、どうでしょうか。
  42. 村田良平

    村田政府委員 ただいま先生御指摘の諸点につきましては、従来におきましてもこの外務委員会その他の場において議論をされておるところと思いますが、本日の御指摘の点も踏まえまして、さらに検討をさせていただきたいと思います。
  43. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この大陸棚協定について韓国政府側の意向として、本協定をわれわれは批准したにもかかわらず日本側批准がおくれているというので、しばしば恫喝の対象になっているかのごとき御説明が当委員会に対して行われておりますけれども、わが国の対韓政策というものが、伝統的にそうした韓国側の意思を無制約に受け入れるという形で行われていることはどうかという大きな憂いを感じているわけであります。さてそこで、私どもは、韓国日本との関係は、したがってもう少しバランスのとれた、安定したものでなければならぬのではないかと思うわけでありますが、政府は、金大中事件についても、譲歩に譲歩に譲歩を重ねて後ろに下がるだけであった。外交交渉として、前へ進むときも後ろへ下がるときも、向こうの要求を聞くときも聞かないときもあってしかるべきでありますのに、韓国についてのみこうやって一方的な譲歩、後退を続け、しかも韓国政府によるところの日本国会に対する干渉すら許すがごとき発言を行われているというのはどういうことであるか、その点しかと承りたい。
  44. 中江要介

    中江政府委員 ただいま先生が用いられた言葉の中には、私どもの認識とは少し違うものが幾つかありますので、まずはっきり私どもの立場を申し上げたいのは、韓国政府がこの日韓大陸棚協定日本側批准がおくれていることについて恫喝をしてきた、恫喝めいたことがあった。そういうことは一度もございませんし、またそういうことは独立国同士ではできようはずのないことでありますし、万一そういうことがあれば、私どもがそんなものに屈することは絶対にないということは、これははっきり申し上げておかなければならぬと思います。  もう一つ日本国会審議に介入してくる、口出しをしているという印象をもしお持ちだとすれば、これも正確ではなくて、私どもが韓国政府から機会あるごとに聞いておりますことあるいは向こうが述べております内容は、この協定韓国の方でも批准されたことであるから、日本側でも早期批准が行われて、共同開発に早く着手できることが両国のエネルギー問題解決の上からも有益なことなのだから、日本側批准の早いことを期待する、そういう期待と希望の表明は何度もあるということを申し上げておる次第でございます。
  45. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと局長、この審議が早かろうと遅かろうと韓国側の意向というものはしんしゃくする必要はない、何年延びようと構わない、こういう意味ですね。
  46. 中江要介

    中江政府委員 日本日本の利益のためにこの協定締結しておるわけで、日本国民がこの協定が国益に沿うと思えば、韓国側の意向がいかようであれ批准を急ぐべきものである、そういう独自の立場から、政府としてはこの協定は国益に沿うという確信を持っておりますので、早期批准をお願いしている、こういうことでございます。
  47. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この協定は、海洋法会議で目下取り扱われている問題との関連において大きな問題点があるようでありますが、今次の海洋法会議におきまして、大陸だなに関する部分、接触する部分についてはどのような見通しであられるのか御説明をいただきたい。特に現在大陸棚条約の水深二百メートルという地形条件によって境界線を決めるのではなく、各二百海里の距離によって境界を決めるというような考え方とが両方相克しているように思うわけでありますが、その辺はどう見られておられるのか。特に、大陸だなの自然延長論というものに対して政府の御見解はどういうものであり、かっこの大陸棚協定に関する部分というものはどういうふうになっておるのか。また、五島列島付近の二百海里以遠の大陸だな自然延長というものをわが国主張する根拠があるのではないかとそれに関しても思うわけでありますが、その点はどうお考えであるか。とりあえずこのことを……。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  48. 井口武夫

    ○井口説明員 お答え申し上げます。  実は、海洋法会議夏会期がございまして、ちょうど九月十七日に終わったのでございますが、前会期に御報告申し上げましたように、すでに春会期、第四会期の際には、二百海里以遠の自然延長というものの外縁をどういうふうにとらえるかということで議論が進行いたしまして、もはや二百メートル水深というような基準は海洋法会議では全く議論されていないわけでございます。  それで、二百海里の距離基準でいくかあるいは二百海里以遠の自然延長でいくかという場合に、二百海里以遠の自然延長がむしろ本来の大陸だなであるという考えが優勢でございまして、この夏会期にも、その場合に外縁をどうとらえるか、すなわち二百海里のコンチネンタルマージンの外縁というもの、たとえば地形でいくのか地質学的な基準でいくのか、あるいは堆積層の厚さというような考え方もございまして、いろいろな議論が出たのでございますけれども、この夏会期には外縁の客観的基準に関しては実ははっきりした結論が出なかったわけでございます。  しかしながら、自然延長そのものがより有力になっているということは非常にはっきりしておりまして、この夏会期に大陸だなでもう一つ重要な議論が行われましたのは、二百海里以遠の自然延長の場合に、そこで開発の収益が出た場合にどういうふうにそれを分配するかということでございまして、沿岸国だけでなくて、国際機関を通して後進国にも分配するということで議論が行われまして、その場合の配分の比率とか配分の手続とか、こういうものについても議論が行われました。  しかし、七週間の会期でございましたので、これについても実は時間切れに終わったわけでございます。したがって、さらに来年第六会期が五月二十三日から開かれまして、そこで結論が出ることを期待したいわけでございますが、自然延長が有力であるという点はますます定着しているということが申し上げられると思います。  それから、日本韓国のように相対している国相互の大陸だなの境界線をどういうふうに画定するかという問題に関連いたしましてもやはり議論が行われまして、中間線を主張する国というものもかなりありましたけれども、これに対して、公平の原則ということで、中間線以外のその他のいろいろな問題を考慮する、地形とか地質とか海岸の長さとか、いろいろな関連のある状況を考慮するという主張が出まして、この点についても実はまだ結論が出なかったわけでございます。  しかしながら、現在の相対している国相互の場合の基準に関します条約の非公式草案では、これは相対している国の場合にやはり合意によって解決する、その場合の原則は公平の原則でいく、そして公平の原則に合致している場合、適当な場合には中間線、しかしその他のあらゆる状況も考慮する、こういう形になっておるわけでございまして、日本韓国大陸だなの境界画定の場合に、条約から直ちに自動的に一律に決められるというような形の案文にはならないというふうに考えております。現にかなり多くの国が大陸だなに関して二国間の協定を結んでおりまして、あくまでもこの海洋法会議において日韓関係について客観的、自動的に適用されるような基準が合意されるという見込みは全くないわけでございます。やはりこれは二国間の合意によるということでございますから、その場合に双方の公平の原則、中間線の原則というものがいろいろ対立して議論されるということでございます。
  49. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、ちょっと原則的に伺いますが、この海洋法会議の討議の進行と並べて考えまして、本日御提案になっております日韓案件を急いで討議することは、わが国にとって何らかの意味のメリットがあるのかどうか。その点はどう評価されますか。
  50. 中江要介

    中江政府委員 海洋法会議の趨勢といいますか、動向、見通しについては、いま海洋法関係の担当者から説明があったとおりでございます。あの説明のような現状にかんがみますと、仮に海洋法会議で何らかの結論を得ても、結局日韓間で話し合うことになる。そうすると、話し合った結果、何らかの協定なり合意に達しない限り、この水域の大陸だなの開発ができないということで、同じことの繰り返し。またその同じことを繰り返す話し合いの場合の国際法上の根拠については、趨勢としては自然延長論の方が有利になっているという状況もあることも忘れてはならない点であろうと思います。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  そういうこともございますけれども、そういうことでございますので、この協定締結いたしまして、この地域石油、天然ガスエネルギー資源開発に着手することが一日早ければ早いだけ、わが国の利益に資するものであるというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  51. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日韓関係だけをとらえるだけでなくて、その御答弁にはもう一つ付加しなければならないのは、日中関係あるいは韓国と中国との関係、あるいは北朝鮮と中国との関係、あるいは北朝鮮日本との関係、北朝鮮韓国との関係等が考えられなければならない会議だろうと思われます。そうしますと、本条約締結によって、日本とそれらの諸国との関係をますます紛糾させるおそれというものはないものかどうか、私は非常に疑っているわけでありまして、現に幾つかの資料はその辺がきわめて問題を含んでいることを示しているわけであります。  たとえば昭和五十一年五月の外務省のペーパーによりますと、日韓大陸棚協定と中国、北朝鮮、ソ連との関連について、次のごとく述べられております。たとえば「対北朝鮮 一九七四年二月二日の北朝鮮外交部スポークスマン声明によれば、日韓大陸棚協定により朝鮮南海の大陸棚開発権が日本軍国主義者の手に渡されるが、これは朝鮮人民の利益に反しその自主権を侵害するもので、北朝鮮はこの協定を認めず、無効であると主張している。」こういう立場である。それに対して「わが方としては、北朝鮮は本件協定対象となっている区域及び問題について国際法権利主張しうる立場にはないとの立場である。」と、ここに記されておりますが、近年の南北朝鮮におけるさまざまな問題から見れば、北朝鮮における朝鮮民主主義人民共和国に対する説明あるいは了解を求める工作は、当然もう少し丁寧に行われてしかるべきだと思うわけでありますが、それを放置したままでもしこうした協定批准を急がれるとしたら、一つの禍根を残されるのではなかろうかと思うわけであります。  また中国においては、現在政変の途上でありますので恐らくはわからないかとも思いますけれども、一九七四年二月四日の外交部スポークスマン声明において、この問題についての中国側の立場が表示され、しかもその後、中国側との接触においてわれわれが了知したところによれば、中国側は当協定審議に当たって日本側説明がきわめて不十分であることを数次にわたって問題にいたしているようであります。こうした問題点は当然十分な配慮があってしかるべきだし、その成果というものは、この委員会審議の冒頭において御説明があってしかるべきだと私は思うわけでありますが、その辺いかがでございますか。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは大変重要な点だと思いますので私からお答えいたしますが、この協定は北緯三十六度十分以南の日韓両国に近接する大陸だなについて取り決めたものでございまして、北朝鮮とは何ら関係はないと考えるのであります。また中国との関連で申し上げますと、韓国と中国とは一つ大陸だなに乗っておるのでありまして、境界画定が中間線によるであろうことは間違いないところでありまして、西側境界線はこの韓中中間線の東側に限定しております。さらにこの西側境界線は、日本が慎重に測定いたしました日中中間線の日本側寄りに限定してございます。このように本協定は、どちらから見ましても中国の国際法上の権利を何ら損なわないように配慮してございまして、将来予想される日中間の大陸だな境界画定交渉に悪影響を及ぼすものはないと考えておる次第でございます。
  53. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは短い御説明ですから何とも御批評のしようがないわけでありますが、それは交渉の途上で言われるべき御説明というか、日本側立場としては私は理解ができますが、少なくとも相手側を説得した上で進めなければ火種の一つになるということは当然予想できると思います。たとえば日中国交正常化の問題、日中平和友好条約の問題、あるいは南北朝鮮との交流の問題等につき、わが国の周辺諸国との安定あるいは平和の維持という観点から考えますと、そういう立場主張するだけでなく実質交渉することが重要ではなかろうかと考えるわけであります。その辺、アジア局長はどうお考えでございますか。
  54. 中江要介

    中江政府委員 まず北朝鮮との関係でございますけれども、いま渡部先生がおっしゃいましたように、北朝鮮側のスポークスマンの声明の中には、この協定日本の軍国主義者との間で結ばれた協定であるというような部分がございますが、私どもは軍国主義者だとは思っておらないわけでございまして、北朝鮮側のそういう日本政府に対する認識、そういうものが、いつも大臣も言っておられます日本と北朝鮮との間の信頼感がまだ確立されていないということの一つの証拠でもあるかと思います。一年前に松生丸事件が起きましたときに、私どもが善意を持って北朝鮮の当局との間で本件についての話し合いをしたいという誠意のある話し合いに対しても、北朝鮮側はこれに応じなかった。そういうことも、北朝鮮側には日本政府に対する何らかの誤解なり認識不足なりそういったものがまだあるんではないか、そういう感じがいたします。この協定については、外務大臣が言われましたように、北朝鮮が実効支配している地域とは何ら関係のないところで、実際に実効支配している、しかも日本承認している国との間で国際約束を締結しているわけで、これについては、いまの現状にかんがみれば北朝鮮当局が何らかの批判をする、批評をする、そういうものでないということを誠意を持って説明したいわけでございますけれども、相手側との間に信頼感がないためにそういうことができないというのが実情であることを申し上げておきます。  中国との関係につきましては、これは、この協定が大きな意味で中国、朝鮮半島から張り出している大陸だなに関連する問題ですので、最も理想を言えば関係諸国の間であらゆる境界について円満妥結するというのが望ましい姿であることは私どもも認識しているわけでございますが、この協定の論争が韓国との間で始まりました時点では日中間にはまだ国交が正常化されておらなかったという事情がございましたので、日本は、将来、日中間が正常化されたときには日中間で話し合わなければ決められない部分については慎重にこれを除外いたしまして、いかような立場からしても日本韓国との間で話し合って済む部分、大きな大陸だなの日韓間で話し合えば済む部分に限定をして締結したのがこの協定であるわけで、そのことを日中国交正常化後、日本外務大臣が北京を訪れましたときに、日韓大陸棚協定締結のゆえんを、これは異例のことでありますが、署名前に中国側にその説明をいたしまして、また署名の前日、署名直後、それから国会に提案いたしますたびごとに、中国側に日本立場とこの協定の持つ意味というものを説明しております。しかしながら、中国側がそれを全く理解し、了解しているかといいますと、中国側の立場は御承知のとおり、この大陸だなは複数の国によって占められている大陸だなであるので、関係諸国全部が集まって合意の上で境界を決めるべきであるというのが中国の原則立場であるということを繰り返しておるわけでございます。ところがこれを現実に即して見ますと、この大陸だなに臨んでいる、この大陸だなに接している関係諸国といいますと、日本と中国と韓国と、さらにその北の方に上れば北朝鮮、こういう国々がこの大陸だなに臨んでおるわけですので、これらの国が一堂に会して、円満に境界線の画定の合意ができるようなそういう国際的雰囲気があれば最も望ましいわけですが、現実はそれにまで到達していない。それではそういう状況になるまで待つかという問題があるわけです。  そこで、これはオイルクライシスと言われました石油危機の一年か一年半前からでございますけれども、エカフェのこの地域の調査の結果、有望な石油油田がある可能性が大きいということで、長期的な資源政策から沿岸諸国がそれぞれ関心を示し始めた。その中で特に石油に依存度の多い日本とか韓国などがこの地域石油開発を具体的に考え始めるとしてもこれは不自然なことではないわけでございますので、日本日本立場からその関係諸国の権利を害さないように、細心の注意を払った上で締結したのがこの協定で、その辺の趣旨は中国側に機会あるごとに話しております。  なお参考までに、中国が最初大陸だな開発について意見があるといってきましたときは、韓国国内法によってこの東シナ海の大陸だなの開発に着手しようとした時点であったわけです。そのときに韓国側は、翌日に中国外務省に対して正式に、中国がもしこの境界線について話し合う用意があるならば、韓国政府としてはいつでも境界線の話し合いをするということをいち早く反応いたしましたけれども、中国側からは、それではそれに対して話し合おうという話はいまだに来ていない。したがって、韓中中間線については両国間ではまだ話し合える段階にはなっていない。これは韓中間の問題ですが、日韓間の大陸だなの問題についても、日本はいまのようなことを中国側に説明しますたびごとに、日本としてはこの延長線上にある大きな大陸だなについては、中国側と話し合わなければならないということは認識しているので、中国側においてその用意があるのであれば、日本側はいつでも日中の境界線の話をする用意があるということをそのたびごとに申し入れておりますけれども、中国側からは、いまのところ残念ながらその話をしようという返答がないわけでございまして、そういう状況のもとで、他方日本のエネルギー政策上、天然資源の開発が急務であるということにかんがみますれば、こういう形での日韓大陸棚協定によって、この部分に限って共同開発を始めるということには相当理由があるというのが私どもの立場であります。
  55. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 御丁寧な御説明をいただいているわけですから、あと簡単に言いますが、朝鮮民主主義人民共和国との間で信頼関係が結ばれていないので接触ができていないといま言われました。わが国におきましては、従来から、朝鮮半島の南側との間の交渉というのは非常に多いわけでありますが、政府は、朝鮮半島の平和と安定はわが国の安全保障にとって重要であるという認識を持っておられるようでありますから、それであるならば、韓国側とのみ接触するんじゃなくて、朝鮮民主主義人民共和国側との関係改善も当然力を入れてしかるべきだし、そのための必要な接触等を行うべきであるし、特にこうした問題については、わが方の立場立場として接触し、了解を求めることは始めていかがなものか、こう思っているわけであります。向こう側との手だてがないとおっしゃられるようでありますが、世界各国には相互が大使館を持っておるところもありますし、相互の交渉をするのに決して場所がないわけではなかろうと思いますが、その点はいかがお考えになっておられますか。
  56. 中江要介

    中江政府委員 先生がおっしゃいますように、公式のあるいは政府間の関係は樹立されていないけれども、事実上の関係日本と北朝鮮との間にいろいろあるということはいつも指摘されていることでございますし、外国において北朝鮮側の公館とわが方公館が同じ場所にある。いろいろのオケージョンに、その間に接触が全くないかというと、ないわけではございません。そういうところでじみちに関係改善の努力をするという姿勢で臨んでおりますけれども、日本の国民にとって最も深い関心事であった日本人二人の命が失われた松生丸事件、これについて全く誠心誠意をもって北朝鮮に働きかけるというか話しかけた、そのときのリアクションから見まして、まだまだこれは日本と北朝鮮との間で、政府間の問題を非政府間のレベルで話をするというような雰囲気にはほど遠い。しかし、これは、御指摘のように、朝鮮半島全体の平和と安定のためには努力を怠ってはならないということで私どもは臨んでいるというのが現状でございまして、そういう雰囲気が醸成されて、日本韓国との関係がますます強化されるのと並行して、北朝鮮との関係もよくなって、そして朝鮮半島の二つの政権の間で平和統一への話し合いができるような雰囲気になる、その過程においていい機会があれば、こういう問題も含めまして、日本と北朝鮮との話し合いというのは、これは忘れてはならぬ問題だ、こういうふうに認識しておるわけでございます。
  57. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 なるべく今後の決意のところに重点を置いてお話しいただくようにちょっとお願いしておきます。  この南部共同開発に関する協定の第二十八条に、「この協定のいかなる規定も、共同開発区域の全部若しくは一部に対する主権権利の問題を決定し又は大陸棚(だな)の境界画定に関する各締約国の立場を害するものとみなしてはならない。」こうなっておりますが、この規定があるということは、結局南部地域において日韓間の境界を画定しないということを公然と言っておるわけなんですね。そうすると、日韓間の境界はどういう形で画定なさるおつもりなのであるか、それは海洋法会議の結論を待って画定する交渉をなさるおつもりなのであるか、あるいはこの協定の再交渉という形でそうした問題に決着をおつけにになるおつもりであるか、その辺非常にあいまいでありますし、少なくとも南部海域の境界が画定しないという状況は、今後の、お魚をとったりあるいは海運事故が起こったり、いろいろな問題が起こるたびに問題になろうかと思いますし、二百海里経済水域の問題とも絡めまして、相互の主権の及ぶ範囲についての紛争を惹起するものになるのではないか。今度は逆に境界を画定しないことのマイナスがある。大きく問題になるのではないかと思われますが、その辺はどうお考えですか、また、どう処理されるおつもりですか。
  58. 中江要介

    中江政府委員 条文の解釈としては、条約局の方から御説明があった方がいいかもしれませんが、基本的な考え方としては、これが境界画定合意ができないそういう国際法の未熟な、未発達な分野であるということが、この解決に導かれた主要な原因であった。その未熟、未発達な国際法が、いま海洋法会議でいろいろ努力はされておりますけれども、先ほど来の説明のように、これという決め手はついに出る可能性もない、そういう中で、法律的に画定するために、国際司法裁判所に提訴してはっきりした判決をもらうというような方法も理論的には可能であったわけですが、そこのところを法律上の立場を留保して、むしろ資源の有効利用という方に着目して締結されたのがこの協定であるわけです。したがいまして、その結果として、先生御指摘のように、境界があいまいである、まさしくあいまいにすることによってのみ解決できるような状況であったということでありますし、では将来どうするか、それは、将来日韓両国の間で新たな発想によって何らかの解決をするということは理論的には全く妨げられておりませんし、また、実際上もそのときの情勢及び国際法の発展の度合いによっては、いかなる解決合意によって可能である、そのために両締約国の法律的な立場を害しないということをこの際はっきり言ってある、こういうことでございます。
  59. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 第三十条に「両締約国は、この協定を実施するため、すべての必要な国内的措置をとる。」とありますが、こういうあいまいなことでは必要な国内的措置でもとれない部分が当然出てくるわけでしょう。たとえば、そこを走っている漁船の問題一つとったとしても、これはもう規制を加えられる部分と加えられない部分が当然出てくる。したがって、この第三十条を見ても私は問題が残り過ぎるなあという感じがしてしようがない。だから、北部の方の境界画定協定南部の境界未画定協定とくっつけて、一方は画定して一方は画定しないものをくっつけて、一括御審議というのがまさにうなずけないというのは、そういう点からも私は言えると思うのです。御自分でもあいまいなことは認められておられるわけですから、これは幾ら申し上げてもお気の毒なだけですから言いませんけれども、必要な国内的措置かなりあいまいな部分が出てくるということはお認めになりますか。
  60. 中江要介

    中江政府委員 私があいまいだと申し上げましたのは、法律的立場を留保してこういう実際的解決を図ったという意味で、国際法上の立場についてはあいまいに残してある、しかし、合意された内容はきわめて明確に区域及びその区域における共同開発の仕方、その場合の規制の仕方、公害防止の施策、漁業への影響を最大限度に考慮して間違いのないようにする、そういった点についてはきわめてしさいに規定してある、その点では全くあいまいな点はない、こういうふうに信じております。
  61. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 しからば必要な国内的措置というのは、この協定を結ぶ際において、この協定に関するどういう国内的措置がとられたのか、それをお述べいただきたい。わからなければ、リストにして御提出をいただきたいと思います。
  62. 箕輪哲

    ○箕輪説明員 お答えいたします。  ただいまアジア局長の方から御答弁ありましたように、日韓大陸棚の南部協定に即しまして、この協定内容はただいま御説明がありましたけれども、そこへ存在いたします共同開発区域の中での鉱物資源の採掘に関するいろいろな取り決めが主要な内容になっております。したがいまして、いま先生御指摘ございました協定第三十条の国内措置と申しますのは、私どもの守備範囲で申しますと、日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)の南部共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法という法律案が現在商工委員会の方に提出されております。いま三十条で具体的に考えられております国内措置と申しますのは、いま申し上げました特別措置法のことであるというふうに私どもは考えております。
  63. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この「必要な国内的措置」、私は非常に妙な感じがいたしておるのでありますが、いま鉱物資源の採掘に関してのみ御説明をちょうだいしました。しかし海洋というものはわが国のある意味主権が及ぶ海域でありますし、それらについての法的なあるいは国内的なさまざまな措置というものはもっとあっていいのではないかというふうに考えるわけです。これはどうお考えになっているのですか。
  64. 中江要介

    中江政府委員 その個々の具体的な法制そのものについてはそれぞれ専門の立場の方から御説明があっていいと思いますが、すべての措置というのは、共同開発区域における資源開発だけにはもちろん限らないことは先生の御指摘のとおりでございまして、この水域における水上、水中、海底、すべてについて間違いのないようにということで、先ほどは例示として資源開発のほかに漁業の問題というようなことも申し上げたわけですが、その他あらゆる日本主権権利の行使について必要な措置をとる、こういう趣旨でございます。
  65. 村田良平

    村田政府委員 この共同開発区域に関しましてさらに日韓双方国内法令が当然適用されますので、どのように適用されるかということを補足して申し上げたいと思います。  この協定におきましては、国内法令を適用するに当たりまして、日韓両国の管轄権が抵触するという事態を回避する必要がございますので、次のようなことになっております。  まず第一に、協定上特に規定のある問題につきましては、その規定するところに従いまして日韓双方国内法令を適用するということになっております。次に、協定に特に定めのない場合には、第十九条の規定に従いまして、わが国が認可いたしました開発権者が操業管理者と指定される小区域におきましては、日本国内法令が適用されるということになっており、またその逆に、韓国が認可いたしました開発権者が操業管理者と指定されている小区域におきましては韓国国内法令を適用するという方式、これを操業管理者方式と呼んでおりますけれども、そういう方式に従いまして日韓双方がそれぞれの国内法令を適用するということで、相互にこれを認め合うことになっております。
  66. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 たとえばここの地域の海洋の汚染の防止及び除去に関する交換公文がここに記されているわけでございますが、海洋の汚染が鉱物資源の発掘のために起こるものならわかるわけでありますが、この海域を航行する船によるところの汚染、特に掘削と関係のない両国漁船その他の海洋汚染の問題に対しては、どういう規定をもって行うわけですか。国内法措置はどういうふうにとられるわけでありますか。
  67. 村田良平

    村田政府委員 この協定はあくまでその海底の資源の開発のための協定でございまして、その他の問題につきまして、特にその上部水域を航行する船舶による一般的な汚染というふうな問題に関しましては、この協定自体は特に何ら定めておりません。したがいまして、一般国際法あるいは沿岸国の国内法令がそれぞれの態様によって適用されるということになると考えます。
  68. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 わが国としては、この共同開発区域に関する協定にもかかわらず、わが国として主張する境界線というのが当然あり得るはずであると思いますけれども、わが国主張する境界線は南部地域においてはどのようなものであるか、ここで明示していただきたい。
  69. 中江要介

    中江政府委員 この海域は、御承知のように公海部分がほとんどでございますので、その部分について日本国内法で境界を画定して、ここまでが大陸だなに対する日本主権権利の及ぶ範囲であるということを国内法で明定いたしますことは、即国際法上の意味を持つわけでございます。日本の従来の立場は、国際法上の権利主張するときには、そのときの国際法に照らして主張根拠が十分であるというものに限って主張してきておりまして、この部分について一方的にいまこの中間線まで主張することが、先ほど来申しておりますように国際法上十分な根拠があって、いかなる国もこれに異議を差しはさむ余地のないほど明確なものであるかについては疑問があるということでありますので、その主権権利の範囲を留保した上で、実際的解決として、現実に主権の重なる結果となっております部分を、主権主張している日韓両国の間で解決したというのがこの協定でございまして、国内法的に国際法上の十分な根拠のあるものとして、この地域に境界を明らかにするということは、まだそういうことのできる段階ではない、こういうことだと認識しております。
  70. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、日韓間の南部境界に関しては画定していない、わが国主張主張としてあるけれども、国内法的には整備していない、こういうことでございますか。
  71. 中江要介

    中江政府委員 この部分について一方的にそういうことを設定することができない結果として、韓国との間で実際的解決合意を見た部分については、これはいかなる国もこの部分についてはもはや異議を差しはさみ得ない部分でありますので、この協定に基づいて設定された区域に基づいて、日本国内法を改めて制定していく、こういう考え方でございます。
  72. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、わが国の領海に関する主張は、いまのところ従前どおり三海里である。そして二百海里の問題が従来から出ておりますけれども、まだわが国としてはそれは認めていない。それから日韓間の共同開発区域はこれで決まったけれども、日韓間のおのおのの境界を定めるという観点からするところの南部境界というものは画定していない、こういうことなんですね。
  73. 中江要介

    中江政府委員 そのとおりでございます。
  74. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、わが国南部境界については交渉の途上持っておられた立場わが国側の境界線の主張は当然あったろうと思います。現在もまたその主張韓国に対して変えておられないまま留保されておるものと理解するわけですね。だから、どういう主張であったか、いまどういう主張であり続けておられるのか、それを伺っておるわけです。
  75. 中江要介

    中江政府委員 これは中間線理論であります。
  76. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると共同開発区域の、この地図で言う東側の線に一致するわけでございますね。
  77. 中江要介

    中江政府委員 東部の中間線の延長がずっと南下しております。それにつながってくるわけでございます。
  78. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 共同開発区域の西側の線でしょう。私が東方と言い間違えた。西側ですね。
  79. 中江要介

    中江政府委員 共同開発区域について言えば、西側の線でございます。
  80. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ、私が不満に思っておりますのは、この北部協定の方の、略称して申しますが、竹島の問題についてであります。竹島の問題をほったまま北部協定などというものを結ばれて、まさに日韓間の北の方の境界というのはこれで決まったかのごとき印象を与えるというのは非常にけしからぬことではないか。北部協定のうちの一部境界を画定する条約とかなんとかいうならまだわかる。けれども、竹島の部分は北部については事実決まっていない。だから線は中途半端なところで終わっておる。日韓基本条約締結された後今日まで、竹島の帰属問題については日韓間でどういう交渉が行われたのか。また紛争解決に関する交換公文の中で、「両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかった場合は、両国政府合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」こう言っているとおり、両国はどういう合意する手続をつくられたのか、またどういう調停手続をつくり、交渉され、調停されたのか、その辺が明確でありませんからお伺いするわけです。このとおり努力されているのかどうか。
  81. 中江要介

    中江政府委員 竹島については、御指摘のとおり、日韓間に領土的主張について意見の対立がございまして、これは解決しなければならない懸案事項である。最近もわが方の海上保安庁の巡視船その他の知見しておりますところでは、日本古来の領土であるにもかかわらず韓国側の監視所があるということが認められたという報告もございまして、そういう事実のありますたびに、わが国立場に基づいて韓国側に対して抗議を繰り返している、こういうことでございます。  それでは、いつ、どのようにして解決するのか、これは日本の外交の基本政策で、紛争は話し合いによってのみ解決するという基本的立場がございますので、韓国との間でこの島の所属について、話し合いによって解決し得るような雰囲気になりましたならば、いつでもこれは話し合いによって解決しなければならぬということを忘れているわけではないわけであります。  この協定との関係で申し上げますと、これは大陸だなの開発協定で、その大陸だな開発目的に資する限度において境界を画定すれば足りるのでありまして、不必要な、特に竹島のように紛争対象になっている地域についてまでを含めて境界を画定する、資源あるいは地勢的な理由があるのであればともかくといたしまして、いままだ、紛争解決の話し合いのできる雰囲気の醸成を待っているというところをわざわざ取り込まなければならないような資源開発の現実的可能性がないということで、いまの点でとまっている、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  82. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 せっかくの御答弁ですが、それはちょっとおかしいと私は思います。アジア局長はいつの間にアジア資源開発局長におなりになったのかと私は聞きたいのです。それは資源開発観点からいったら、要らぬところまで紛争を拡大して協定を決めることはナンセンスだという御議論はわかります。しかし、あなたはアジア局長であり、韓国日本との関係の問題について、あなたは当事者でおられる。その間の重大な紛争があるのをほうり出しておいてお決めになるというのは決して納得できない。しかも「北部境界画定に関する協定」などと、あたかも日韓間の境界は全部北方に関しては決まったかのごとき印象を与えられるような名称を付されて当委員会に持ち出されるというのは、当委員会のメンバーはそれほどだまされやすくはないとしても、ちょっとオーバーではなかろうかと私は思うのですね。北部境界の一部を画定する条約とか、もうちょっと控え目にできないのですか。何でこんなオーバーなことをしちゃったのか。もうちょっと丁寧に言えば、両国との間の北北部の境界不画定につき、それを除外して、北部境界画定に関する協定とかなんとか丁寧に言うのがあたりまえじゃないですか、どうせ長い客前なんですから。
  83. 村田良平

    村田政府委員 ただいま御指摘の北部南部の問題でございますけれども、これはこの両協定のタイトルにございますように、「日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚(だな)」の北部ないし南部という趣旨でございます。  大陸だなの定義に関しましては、現行の大陸棚条約では、水深二百メートルあるいは開発可能の限度までということになっておりますし、またさらに、その範囲を距離基準あるいは自然の延長をもって定めるという可能性が現在海洋法会議で議論をされておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、わが国大韓民国との間に隣接する大陸だなという点から申しますと、この境界を画定した部分がその北部に当たるというふうに考えまして、北部協定というふうに名づけたわけでございます。
  84. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日韓間の大きな紛争の将来の要因となりそうなこの竹島の問題を、韓国側紛争解決に関する交換公文がありながら、交渉もしないで放置しておくということは、これはもうもってのほかである。怠慢のそしりを免れない。間が抜けておる。何か意図的にそういうようにやっておられるのじゃないかとまで見えるわけですね。どういう意図でそういう問題が放置されておって、監視所があるのを遠くの方からのぞいて黙って帰ってこられるのか、解決しないでじっとしておられるのか、それは大問題ですね。どうしてそういうようになさるのですか。何か特殊な御事情があるのでしょうか。これはどうも説明のつかない行動でありまして、こういう状況を放置していくということは決していいことじゃない。金大中事件も放置した、竹島のことも放置した、何でも韓国の言うなりにする、一方的に下がる、わが国の対韓政策というのはそういうものなのか。韓国側が少しぐらいわがまま言っても耐えるしかないのか。耐えて後ろへ下がるだけで良好な関係をつくるというふうに理解されておられるのか、それを愛情ある立場と思っておられるのか、あるいはそういうような特殊な方針がおありなのか、その辺はちょっと承っておいた方がいいと思いますね。
  85. 中江要介

    中江政府委員 先生がおっしゃいますように、日本の対韓政策が後退ばかりしているというふうにもし御認識になっておられるといたしますと、はなはだ私どもとしては遺憾に思うわけでございまして、日本韓国との間は、お互いに独立国同士として主権を尊重し、内政には干渉せず、紛争は平和的に話し合うというような国際連合憲章及び日韓基本関係条約の条項に従って、国際社会に通常行われている礼節を守りながら筋の通った処理をしているというつもりで私どもはやっておるわけです。もちろん、そうかといってすべてが御満足いただいておるとは私ども認識しておりませんけれども、努力はそういう方向でやっておる。竹島の問題につきましても、話し合いによって解決する方が、解決しないでほっておくよりも日韓間のわだかまりがなくなっていいということについては疑いの余地はございませんけれども、実際に外交交渉をいたしますときには、どういうたぐいの外交交渉でありましても、ある程度のめどなりあるいはそれの持つ意味というものを、全般的な見地から検討した上で政治的に決断をして行われていくという筋合いのものだと思いまして、いままでのところはわが方の抗議を配慮していくということで権利主張を続け、そしてその雰囲気、見通しの明らかになりましたときに本件は解決していくという道が通常とられる道であろう。私どもも、そういう通常国際社会で行われているような方法で外交交渉をやっていきたい、こういうふうに考えております。
  86. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣にお伺いしますが、こうやって応酬していたのをごらんいただければ、この問題、こじれた問題であるという御認識はもう過去にも十分いただいておりますでしょうし、韓国との関係の問題が決してうまい解決ではない、金大中事件もそのままであるというふんまんはわが国に非常に多い。そこへもってきてこの竹島の問題のように、一方的な占拠が向こうにおいて行われ、紛争解決するための交換公文まであるのに交渉すらできないでいる、交渉する気力もわが外務当局にはどうやらないらしい。声出した形跡もない。口上書とかなんとかというものを昔ちょこっとどっかでお出しになった。忘れるほど遠い昔にお出しになったことがある。これでは交渉にならない。私は、韓国との間の友好は大事に考えなければならぬとは思いますけれども、こういう不合理を黙認することで友好というのは長く続かないということについては明快な意思表示を行い、しかるべく交渉をすべきだと思いますが、その点の基礎的な問題について大臣の御見解を承りたい。
  87. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 竹島がわが領土であることについては毫末も疑いのないところでありまして、これは私ども強く主張しているわけでございます。最近では、昨年の九月に行われました海上巡視の結果に基づきまして、十一月十九日、韓国の竹島不法占拠に対して抗議をしております。即時撤退の口上書を提出しておるわけでございます。これに対して韓国側からも口上書をもって、これは韓国側であるという主張を言ってきておるわけでございますが、これはわれわれ、わが方の主張を譲るわけにいきませんので、今後も強く抗議してまいりたいと思うのであります。  さて、そういう問題は、これは実はわが国が占領下にあり、李承晩大統領が大統領であった時代に起きたことでございまして、そのわが国主権を回復した後、韓国との間に友好親善関係を結んでおりまするので、今後はさようなことがあってはいけないわけでございますが、その意味からも、ことに両国の間に存在する大陸だなに石油が存在するということになってまいりますと、これは両国の間で協定を結んでおきませんと、不測の紛争の起きる余地があるのではないか、私はさように思うのです。これは前任者、前々任者のやられたことでございまして、私もこの職につきましてからいろいろ説明を聞いておる段階でございますが、ただ根本的に、かつては工ーゲ海でもってトルコ、ギリシャの紛争があったように、国が近いと、そこに利益をめぐりまして紛争の起きるおそれが多分にあるわけでございます。やはりそういうことのないようにしておくことが外交上非常に必要なことではないか、私どもはこう思いまして、先ほどから渡部さんの非常に鋭い御指摘をよく伺っておるわけでございまするが、それじゃどうしたらいいのか、これはやはり何かのものが必要だと私は思うのです。  それで、どうしたらいいのだろうかという点を御指摘いただきますと、私も、先ほど村田参事官が答弁申し上げましたように、もう国会の御議論なんかどうでもいいんで、条約なんというのは神聖不可侵のものだからというような考えも実は持っていないといいますか、これはちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、条約というものは条約として通していただきたいのですが、国会の御意思というものを尊重しまして、どうにかして生かしていくということを考えるのが政府だと思うのでございます。法律というものは国会の御意思を尊重して変えられます。しかし、これは国内の問題だから変えられる。それから財政上の予算の問題も、これは従来の予算審議では予算の修正権というのは議会になかったわけでございますが、このごろは議会で増額修正でなければできるというのですか、そういうことになってきているようなわけでございます。やはり条約についても、こんなに長い間たなざらしになっておる条約でございますから、これは何か野党の各位が、もう全然われわれとイデオロギーが違ってどうしようもないというものなら、これは別でございますけれども、やはり同じく自由社会を愛して一緒にやっていこうとするようなお考えの方々の中から、三年にわたりましてもまだどうにもならぬ、こういうような問題については、その御主張根拠をよく承って、そしてまた私どもの方からもよく御説明を申し上げて、何らかの結論を出していかないといけない。これはやはり国益の問題だというふうに考えておるわけでございますので、どうぞよろしく御審議を賜りたいと思います。
  88. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま大臣はいろいろ非常に示唆に富むお話をされましたが、私どももこの日韓関係の問題、こじれている問題の中で交渉なさることの非常に困難さというのを感じておるわけであります。当外務委員会理事会におきましても幾つかの御提案がございまして、たとえば金大中事件についてはアメリカの上院外交委員会ですら意思表示をしたような程度のことを、わが国において意思表示ができないのはどういうわけだ、その程度のことを少なくとも隣国、民主国家としての日本として意思表示することは当然ではないかというような御提案が行われておりまして、決議その他の形でそうした問題が出る可能性もあると思いますし、私はそうした形では一歩前進が行われるだろうと思います。また韓国問題について、竹島問題とかその他こじれた諸懸案問題についての国会の意思というものが表明されたことは近年ありませんけれども、そうしたことで何らかの意味の修正あるいは決議その他のいろいろのやり方で、この問題はもう少し討議するべき可能性のある問題だろうと思っておるわけであります。  その意味で、いまの大臣の示唆ある発言に対し、私はその方向がますます前進されることを——特に条約についての修正的なお取り扱いについての大臣の御見識というものは、国政審査権の充実という点において今後大きく発展する可能性のある御発言だったろうと私は思うわけでありまして、貴重な御意見だろうと思います。  きょうはいろいろ伺いましたけれども、まだとうてい納得のしがたい問題が多数ございますので、残余の質問は留保させていただくということで終わらしていただきます。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 大変私の申し上げたことに御理解いただきまして感謝をいたしますが、ただ一言、条約でございますから相手との交渉というものがございますので、必ずそういうふうになるということをここで申し上げるのは、相手に対しはなはだ冒涜であると言っても差し支えないのですが、相手の意思も十分尊重しなければならぬことは前提にございますので、その点だけつけ加えさせていただきます。
  90. 藤本孝雄

    藤本委員長 次回は、来たる二十日水曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十七分散会