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中江政府委員 まず北
朝鮮との
関係でございますけれども、いま渡部
先生がおっしゃいましたように、北
朝鮮側のスポークスマンの声明の中には、この
協定が
日本の軍国主義者との間で結ばれた
協定であるというような部分がございますが、私どもは軍国主義者だとは思っておらないわけでございまして、北
朝鮮側のそういう
日本政府に対する認識、そういうものが、いつも
大臣も言っておられます
日本と北
朝鮮との間の信頼感がまだ確立されていないということの
一つの証拠でもあるかと思います。一年前に松生丸事件が起きましたときに、私どもが善意を持って北
朝鮮の当局との間で本件についての話し合いをしたいという誠意のある話し合いに対しても、北
朝鮮側はこれに応じなかった。そういうことも、北
朝鮮側には
日本政府に対する何らかの誤解なり認識不足なりそういったものがまだあるんではないか、そういう感じがいたします。この
協定については、
外務大臣が言われましたように、北
朝鮮が実効支配している
地域とは何ら
関係のないところで、実際に実効支配している、しかも
日本が
承認している国との間で
国際約束を
締結しているわけで、これについては、いまの現状にかんがみれば北
朝鮮当局が何らかの批判をする、批評をする、そういうものでないということを誠意を持って
説明したいわけでございますけれども、相手側との間に信頼感がないためにそういうことができないというのが実情であることを申し上げておきます。
中国との
関係につきましては、これは、この
協定が大きな
意味で中国、
朝鮮半島から張り出している
大陸だなに関連する問題ですので、最も理想を言えば
関係諸国の間であらゆる境界について円満妥結するというのが望ましい姿であることは私どもも認識しているわけでございますが、この
協定の論争が
韓国との間で始まりました時点では日中間にはまだ国交が正常化されておらなかったという
事情がございましたので、
日本は、将来、日中間が正常化されたときには日中間で話し合わなければ決められない部分については慎重にこれを除外いたしまして、いかような
立場からしても
日本と
韓国との間で話し合って済む部分、大きな
大陸だなの
日韓間で話し合えば済む部分に限定をして
締結したのがこの
協定であるわけで、そのことを日中国交正常化後、
日本の
外務大臣が北京を訪れましたときに、
日韓大陸棚協定の
締結のゆえんを、これは異例のことでありますが、
署名前に中国側にその
説明をいたしまして、また
署名の前日、
署名直後、それから
国会に提案いたしますたびごとに、中国側に
日本の
立場とこの
協定の持つ
意味というものを
説明しております。しかしながら、中国側がそれを全く理解し、了解しているかといいますと、中国側の
立場は御
承知のとおり、この
大陸だなは複数の国によって占められている
大陸だなであるので、
関係諸国全部が集まって
合意の上で境界を決めるべきであるというのが中国の
原則的
立場であるということを繰り返しておるわけでございます。ところがこれを現実に即して見ますと、この
大陸だなに臨んでいる、この
大陸だなに接している
関係諸国といいますと、
日本と中国と
韓国と、さらにその北の方に上れば北
朝鮮、こういう国々がこの
大陸だなに臨んでおるわけですので、これらの国が一堂に会して、円満に境界線の画定の
合意ができるようなそういう
国際的雰囲気があれば最も望ましいわけですが、現実はそれにまで到達していない。それではそういう
状況になるまで待つかという問題があるわけです。
そこで、これはオイルクライシスと言われました
石油危機の一年か一年半前からでございますけれども、エカフェのこの
地域の調査の結果、有望な
石油油田がある
可能性が大きいということで、長期的な資源政策から沿岸諸国がそれぞれ関心を示し始めた。その中で特に
石油に依存度の多い
日本とか
韓国などがこの
地域の
石油開発を具体的に
考え始めるとしてもこれは不自然なことではないわけでございますので、
日本は
日本の
立場からその
関係諸国の
権利を害さないように、細心の注意を払った上で
締結したのがこの
協定で、その辺の趣旨は中国側に機会あるごとに話しております。
なお参考までに、中国が
最初に
大陸だな
開発について
意見があるといってきましたときは、
韓国が
国内法によってこの東シナ海の
大陸だなの
開発に着手しようとした時点であったわけです。そのときに
韓国側は、翌日に中国外務省に対して正式に、中国がもしこの境界線について話し合う用意があるならば、
韓国政府としてはいつでも境界線の話し合いをするということをいち早く反応いたしましたけれども、中国側からは、それではそれに対して話し合おうという話はいまだに来ていない。したがって、韓中中間線については
両国間ではまだ話し合える
段階にはなっていない。これは韓中間の問題ですが、
日韓間の
大陸だなの問題についても、
日本はいまのようなことを中国側に
説明しますたびごとに、
日本としてはこの延長線上にある大きな
大陸だなについては、中国側と話し合わなければならないということは認識しているので、中国側においてその用意があるのであれば、
日本側はいつでも日中の境界線の話をする用意があるということをそのたびごとに申し入れておりますけれども、中国側からは、いまのところ残念ながらその話をしようという返答がないわけでございまして、そういう
状況のもとで、
他方日本のエネルギー政策上、天然資源の
開発が急務であるということにかんがみますれば、こういう形での
日韓大陸棚協定によって、この部分に限って
共同開発を始めるということには
相当の
理由があるというのが私どもの
立場であります。