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1976-10-27 第78回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十七日(水曜日)    午後一時二十四分開議  出席委員    委員長 中村 重光君    理事 小沢 一郎君 理事 加藤 陽三君    理事 佐々木義武君 理事 佐藤 文生君    理事 宮崎 茂一君 理事 石野 久男君    理事 八木  昇君 理事 瀬崎 博義君       木野 晴夫君    勝澤 芳雄君       近江巳記夫君    北側 義一君       小宮 武喜君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      前田 正男君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     小山  実君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   伊原 義徳君         科学技術庁原子         力安全局次長  佐藤 兼二君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君  委員外出席者         原子力委員会委         員       井上 五郎君         文部省学術国際         局学術課長   七田 基弘君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  高橋  宏君         国土地理院地殻         調査部長    原田 健久君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団専務         理事)     倉本 昌昭君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団技術         部参事役)   佐藤  祥君         参  考  人         (資源調査会委         員)      高橋浩一郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十月二十七日  辞任         補欠選任   堂森 芳夫君     勝澤 芳雄君 同日  辞任         補欠選任   勝澤 芳雄君     堂森 芳夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出、第七十七回国会閣法第四号)  科学技術振興対策に関する件(地震予知原子  力の安全性確保及び環境科学技術に関する問  題)      ————◇—————
  2. 中村重光

    中村委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。勝澤芳雄君。
  3. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は、最近話題になっております駿河湾地震に限って質問をいたしたいと存じます。時間もございませんので、ずばり質問いたしますので、できるだけ答弁の方もひとつ簡潔にお願いいたしたいと存じます。  最初に、駿河湾地震の発生を警告した東大理学部石橋克彦助手研究発表、いわゆる石橋学説について政府はどのようにお考えになられておるかという点について、御説明いただきたいと存じます。
  4. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘石橋先生学説でございますけれども、御承知のように地震予知の問題はまだ確立された技術になっておりませんので、国土地理院にございます地震予知連絡会におきまして、学者専門家方々がお集まりになって御判断をされるということになっております。したがいまして、私どもは、この地震予知連絡会におきましてどのような御結論が出されるかということをまず承りたいと考えておるところでございます。
  5. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 地震予知連絡会委員である東大浅田教授は、駿河湾地震はあす起こっても不思議はないと言われ、しかもこの地震が起こることは間違いはない、九〇%以上の地震学者意見は一致していると思うと発言をいたしておるわけでありますけれども政府はどのような対策というものを考えられているのかという点について御答弁いただきます。
  6. 園山重道

    園山政府委員 先生指摘のように、浅田教授もこの東海地震につきまして起こる可能性があるということをおっしゃっておられるように承っております。  この東海地震につきましては、すでに昭和四十八年ないし九年のころに地震予知連絡会におきましてその可能性指摘されまして、地震予知連絡会において観測強化地域というものに指定されたわけでございます。その時点におきまして科学技術庁といたしましては、この東海地域に対する観測を強化いたしますために、科学技術庁に計上されております特別研究促進調整費支出いたしまして、東海地方における地殻活動に関する特別研究というものを実施したわけでございます。これによりまして気象庁地震計あるいは国土地理院測地測量のための施設等が設置されまして、その後その観測が継続されているところでございます。  また、御承知のように科学技術事務次官が主宰いたしますところの地震予知研究推進連絡会議というのが昭和四十九年十一月に設けられておりますけれども、この会議におきまして、各省庁の観測につきましての実行の方法等について御相談をいたしているところでございまして、来年度におきましても観測を強化していくということを申し合わせておるところでございます。  なお、先生指摘のように、最近におきまして非常に東海地区地震に対するいろいろな問題が新聞紙上等で報道されますので、この地震予知研究推進連絡会議はことし九月二十日に会合を催しまして、この東海地域への対応を協議したわけでございますけれども、この時点におきましては、先ほど申し上げましたように、学者専門家の方方のお集まりである地震予知連絡会あるいは測地学審議会といったところでの御判断専門的な見解が出るのを待つという結論になったわけでございます。  しかし、その後地震学会におきましての石橋先生の御発表あるいは国会におきますところの種々の御質疑等にかんがみまして、私どもとしましては、この東海地域に対して何らかの観測強化対応が必要であろうということで、現在その地震予知研究推進連絡会議のメンバーにおきまして技術専門委員会等を招集いたしまして、当面どのような観測体制強化をすべきかということの検討をいたしておるところでございます。
  7. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 大臣少し所用があるようですから、大臣にちょっとお尋ねいたしますけれども、この駿河湾地震に対しては、いま御答弁ですと、予知連絡会というところで今後また議論をされて、その予知連絡会としての統一した意見といいますか、そういうものを集約されるようでありますけれども、しかし、現実にはあす起きても不思議はない、なお九〇%この地震は起きると言われておるわけでありまして、そういう関係からいいますと、やはりこの対策というものは緊急なことではないだろうか。緊急にやれることは何だろう、それはやはり地震予知観測を強化することではないだろうか。そのためには、やはり予備費支出をしてもいまの国民の不安、こういうものにこたえるべきではないだろうか、こういうふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  8. 前田正男

    前田国務大臣 政府といたしましては、一日も早く対策を強化する必要があるということは御同感の至りでございまして、したがいまして学者専門家方たち意見をなるべく早くまとめていただきまして、そしてそれに基づいて観測を強化するし、また従来の第三次計画等もございますけれども、それもひとつ繰り上げることを考えたらどうかと思っております。それについていろいろと行政的な統一を図る必要がございまして、さきのこの委員会答弁いたしましたとおり、それらをとりまとめる推進機構というものを近く設ける予定をしておりますけれども、それに伴いましていま申し上げましたような対策推進していかなければならぬと思います。  そこで、必要な経費等についていろいろと関係各省にいま本年度内でどれだけやれるのか、繰り上げていけるのか、あるいは本年度内にどういうところを実施しなければならぬのか。また五十二年度にすでに概算要求しておりますけれども、それにまた計画を繰り上げたり、あるいは重点的にやりますのにはどのくらいまたさらに概算要求追加しなければならぬのか、そういうふうなことを取り調べ中でございますが、いまお話のようなことでわれわれも重点的にこの地域を一日も早く繰り上げる必要があると思っております。したがいまして、もしそういうものが各省庁から意見がまとまってきたり、学者先生方の御意見に従ってまとまってくるようになりましたならば、必要な経費についてはすでに各省庁が既定予算を持っておりますけれども、まだ科学技術庁特別研究調整費が幾分残っておりますから、まずそれはすぐにでも支出できると思いますけれども、これは各省相談し、大蔵省と相談すれば支出できる、そういうことでございますので、これをぜひ急いで支出するようにいたしたいと考えておるわけでございます。続いてさらにそれでもまだ五十一年度内にこういうものが足りないということでありますならば、いま先生がおっしゃったような予備費支出という問題についても考慮していかなければならぬのではないか。こういうことは実際に実務を担当いたします官庁に実施できる計画を立ててもらいまして、それを総合して進めていきたい、こう思っておるわけでございます。
  9. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この地震予知がばらばらな行政体制になっておって、何とか一本化しなければならぬという意見は出されておるし、科学技術庁としてもいろいろお考えになっておるようでありますけれども、これらの問題についてはどういうことでしょうか。それから、それは具体的にいつからどういうふうに実施していくということについてお伺いしたいと思うのです。
  10. 前田正男

    前田国務大臣 この問題につきましては、さき委員会におきまして、おそくとも今会期中にというお約束をしたのでございますけれども、まあ大体いまのところ今月中、多分二十九日の閣議で決められるのではないかと思っております。まだ最終的に決まっておりませんけれども。  それで、大体私たち考え方としては、中央といたしましては二つに大きく分かれまして、一つはすでに法律がございまして、防災基本法がありましてそれに基づいて防災会議というのがございます。したがいまして、その防災会議の中に大都市地震対策専門部会がございまして、そこで検討しておりまして、東海地方もその中に入って検討しておるわけでございます。したがいまして、実際に予知がある程度わかってきました段階警報を発したりあるいはそれに伴いますいろんな防災対策を講ずるというのは、これは中央防災会議、すでに国会でできました法律に基づいてできておりますその法体系の方でやっていただくことになると思うわけでございます。それから今度やろうとしておりますのは、同じく法体系でできております各省研究とか観測をまとめようということで、内閣にいままで研究推進会議はあったのですけれども研究と実際の観測をしております部分地理院だとかあるいは気象庁とかそういう観測をしております実務研究と一緒にいたしました地震予知推進機構内閣に設ける、そして地震予知研究と実際の観測実務を強力に推進して、従来の計画も繰り上げて、あるいはまた必要なものはそれに加えて推進していく。しかし、そこでわかりましたことについては情報の伝達のシステムだとかあるいはわかった場合にこういうことを緊急に防災研究をしなければいかぬじゃないか。そういうことはいまの新しくできます機構でやりますけれども、対社会的にそのわかりました結果を警報を出したり防災対策をしたりするのは防災会議の方でやっていただく、こう二本立てになると思っております。すでに防災会議ができておりますから、また専門部会が動いておりますので、これを活発に、東海地方に対しましてはしっかりやってもらいまして、推進本部の方はなるべく今月中に発足いたしまして、早急に対策を講じて、いま先生お話がありましたように、なるべく実際の実務促進できるように対応策考えていきたい、こう思っておる次第でございます。     〔委員長退席八木委員長代理着席
  11. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それで大臣、ことしは調整費をやり、なおかつ不足ならば予備費もと考えになっているようですが、来年度予算に対する要求なんですけれども、五十年度二十億、五十一年度二十三億、それから来年度が三十五億というふうに出されておるわけですけれども、災害が起きてからということを考えてみたらば大変なことだと思うんです。地震予知というものは、まだ未知の研究部分がたくさんあるわけですね。私は思い切った——いまほど地震に対する関心といいますか、あるいは地震対策というものを当然やらなければならなかったにかかわらず、おくれているということからいって、やはりいままでの予算要求というものをもう一段考えて、週刊誌なんか見ますとPXL二機分で十分だというようなことまで出ているわけでありますが、比較がどうかは問題があるとしても、地震対策のために、今年は二十三億しかなかったけれども、来年はひとつ百億もつぎ込もうじゃないかというぐらいの思い切った対策をやるようなことをして、地震に対してなるほど国は積極的に考えているのだ、それと同時に、予知問題もともかく、それからやはり防災問題もと、こう含めて、もう一回来年度予算要求というものを見直して、新しい問題について検討すべきだと思うのですが、いかがですか。
  12. 前田正男

    前田国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。先ほどもちょっと御答弁しましたとおり、現在予算概算要求をしております三十五億、ある程度これは実際の実務を担当する方たちの実際にや、れる金額でなければいけませんが、そういう金額がもし繰り上げたり重点的に使えるということならば、追加概算要求を出さなければいかぬ。この新しい促進機構ができましたならば、そこで結論を得まして、そして従来各省が出しています三十五億はもちろん全額もらわなければいけませんけれども、そのほかにさらに追加概算要求をする。しかし、これもただ金ばかりもらっても実際できなければ仕方がありませんが、人手の関係とか施設関係とかいろんな制約があると思いますけれども、できる範囲でひとつ概算要求をしたい。また人の方もできるだけ、政府は一般には行政を減らしておる段階ですけれども、特別に最低限のものは、ある程度必要なものは考慮してもらう。そういうこともあわせて概算要求の中へ追加したらどうか、こう思っておるようなわけでございます。
  13. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 文部省の水沢の緯度観測所坪川所長見解によりますと、駿河湾地震説というのは否定された見解発表されているようであります。それから、萩原地震予知連絡会長の場合は、石橋学説について、非常に興味深い研究である、しかし今後の調査で確かめていく必要がある、ただし現代ではまだ前兆が出ていないので、差し迫った徴候はない、こういう見方をされているようであります。言うならば、予知連絡会の中でもいろいろまだ意見が十分出尽くしていないといいますか、こういうように思うのですけれども、こういう問題はこれからどういうふうに扱われていくのでしょうか。
  14. 原田健久

    原田説明員 坪川先生の御発表は、地震学会ではなくて測地学会で初めて発表されまして、坪川先生地震予知連絡会委員の一員でございますが、まだ地震予知連絡会の場ではお話を伺っていないわけであります。地震予知連絡会下部機構といたしまして、特定地域部会というのがございまして、ここで新たに地震の危険が感じられるような地域というものがあれば、その地域特定地域に格上げするというような、いわば審査に当たるような仕事をいたしておりますので、当然のことながら坪川教授の御意見地震予知連絡会を通じまして反映され、多くの委員先生方の御意見、御批判を得て、しかるべく多数の意見に従って対応策がとられるものと思われます。  また、石橋先生の、駿河湾に大地震が来るかもしれないという意見に対しましては、石橋先生自身が、いつ来るかという時期のことについては物を言っておられません状態でございまして、それに関する限りにおきましては、昭和四十九年二月に地震予知連絡会地震活動地殻変動その他のものから推定しまして、この地域観測強化地域といたしましたときと現在とで、本質的な面においては変わりはないわけであります。で、萩原尊礼予知連会長の御意見もそのことを言っているのでありまして、いまわれわれが手元に集めております情報では、地震がいつ——差し迫ってのいつでありますが、起こりそうだという情報は得ておりません。で、その時期というものを追い詰めるのが最も肝要だということで、今後の強化された観測の集積を待たねばならないという意見とわれわれは解釈しております。
  15. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、石橋学説が出て、それについていろいろ意見が出てくるというのは当然だと思うのですけれども、そういう中で、やはり統一的な見解というのはなかなか無理でしょうけれども、いろいろな意見、学術的な議論をもう少し積み重ねたものがやはり世間的に——われわれはあす来ても不思議がない、これは大変だ、それじゃ一体何をしょうかと個人個人考えるわけですね。ですから、そういう点の対応の仕方というのが、外から見ていると、一体国は何をしているのだろうと。けれども、下の方に行けば、静岡県なんかはやはりもっと積極的な対策を何かやらなければならぬということで、あわてているといいますか、一生懸命考えながらやっているわけですね。そういう点の予知連絡会の動きというものが、どうもわれわれから見ていると少しなまぬるいといいますか、緊急性だと言われながらも、何かおっとりしているという点で理解ができないのですけれども、その辺はどういうふうに理解したらいいんでしょうかね。
  16. 原田健久

    原田説明員 予知連絡会といたしましては、石橋先生の御意見を非常に微細な点にわたって拝聴し、かつ皆さんの委員が勉強いたしましたのは、ことしの五月の予知連絡会石橋先生浅田委員を通じまして提出した相当分厚い駿河湾に関する報告書を読んだときに始まります。その後八月の地震予知連絡会及びその中間で数回にわたって開かれました東海地域特別部会、そこで石橋先生にも御出席を願いまして、先生自身の口から篤といろいろな御意見を伺っているわけでございます。  しかしながら、東海地震が来るであろうということは、これはすでに大方の委員の賛同を得ておりまして、なるがゆえに昭和四十九年二月に東海地域地震予知連絡会観測強化地域に指定したのでございます。しかしながら、石橋先生お話を伺いまして、いわゆる観測強化地域指定後の二年間に予知連絡会として得ました情報は、四十九年当時につけ加えるべきものは多少はありましたが、本質的な面において、時期というものが何ら煮詰まらないということについては少しも変わりないわけでございます。したがいまして、予知連絡会石橋先生の御意見も十分に拝聴した上で対応策をとっておるわけでございます。
  17. 七田基弘

    ○七田説明員 実は、先生からいま御質問のございました点が現在地震予知の一番基本的な問題でございます。それで石橋助手理論が出、あるいはそれに対しまして坪川所長の反論といいますか、それと異なる意見が出たということは、ある意味では地震予知がある程度やってきた成果になるわけでございますが、同時に、それだけに今度はまたわからないところがかなりあるということがわかってきたわけでございます。  そこで、今後やってまいりますことの非常に重要なことば、地震予知理論をどう確立するかということであろうかと思っております。それで、これは全体として地震予知研究につきまして科学技術庁はまとめておられるわけでございますが、純粋に学問的な見地からまいりまして、測地学審議会で現在いろいろ御議論いただいておりますところでは、やはりそういう新しい地震予知理論というものを確立するためには、じみな現在の調査あるいは観測というものをさらに進めていくということが必要であろうかというような御意見が多いわけでございます。一応、測地学審議会といたしましても、そういう観点から、さらに今後何をしなければならないか、何ができるのかということを考えていきたいということで現在作業を進めております。
  18. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 次に、地震に対する総合的な行政機関の確立というのは緊急な課題だと思うわけでありますが、十月四日の参議院の予算委員会三木総理は、まあこれから研究するとか、あるいは行政管理庁長官荒舩大臣答弁などを見てみましても、なかなかむずかしいなんというようなのんきなことを言っているようですけれども、私はこの際、駿河湾地震というものだけを取り上げて、これについて駿河湾地震対策本部ですか、こういうものをつくって、その中から、いまの行政的にもばらばらになっているとか、いろいろの資料の集め方がどうとかというものを一括して、これは法律に何もこだわらずにやって、そういう中から抜本的な総合計画を立てる、こういうやり方というのはできないのでしょうか。
  19. 園山重道

    園山政府委員 先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、地震に対する対策というものには、大きく分けまして、地震予知するということの推進と、それから地震予知されました場合のこれの警報でございますとかそういった問題、さらに地震が起きても大丈夫なようにいろいろな防災対策を講ずる、こういうことに分かれるかと思うわけでございます。  先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、いわゆる防災という立場につきましては、中央防災会議におかれまして大都市震災対策連絡会議というのが四十六年の六月に設けられておりまして、これは例の川崎地区が危ないといった時期だったと記憶いたしておりますけれども大都市震災対策ということで十八省庁集まりまして、いろいろと対策の協議をしておられるところでございます。  ただいま私どもは、地震予知ということの推進について全力を挙げなければならないと思っておるわけでございますけれども、この予知につきましては、先ほどからの御質疑の中でもございますように、まだいわゆる確立された手法というものが見出されてないわけでございます。これに対しまして、たとえば一つセンターをつくるというようなことにつきましては、学者専門家方々にも御異論があるようでございまして、私どもはいまこの予知に対して、先ほど文部省あるいは国土地理院の御答弁にもありますように、一番大事なことは観測を強化することであるということでございますので、当面この予知推進という立場におきましては観測を充実するということで、観測関係いたします省庁と御相談をしまして、これを強力に推進していこうと考えておるところでございまして、一本化されたセンターということにつきましてはいろいろ御異論もあるようでございますし、私どもはこの予知進展、あるいは防災会議等におきますところの対策に関します審議進展といったものを見て考えるべきことかと思っておるわけでございます。
  20. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 会議をやっているうちに地震が来てしまうような気がして仕方がないのですけれども、しかしそれもわからない。そこで、この地震予知に伴う地震情報とか地震予報というのですか、こういうものをどういうふうに取り扱いをなさろうと考えているのですか。たとえば、いま出ているのは一つ学会学説として発表された。それについても、それはこうじゃないだろうか、こういうかっこうで、言うならば学者研究過程として出ているわけですね。それに基づいて全体的に、あす来るかもしれない、いや必ず来るであろう、それは何年先かわからぬということで、何とかしなければならぬ、こうなっているわけですね。ですから、こういうものが、まだ確定されたものがないとしても、統一的に地震予知というものが確立されない間でも、この地震に対する情報とか、地震に対する予報というものは何か一元的に行われるということにならないだろうかな、そういう点はいかがでしょうか。
  21. 園山重道

    園山政府委員 御指摘のように、まだ予知というものが確立されておりませんので、いわゆる行政機関行政的責任を持って、いつ起こるであろうというような予報なり警報なりが出せる段階にはないと私ども考えておるわけでございます。したがいまして、先ほど答弁もありましたように、地震予知連絡会という場におきまして、学術的に学者の方あるいは専門家の方が集まって、その御判断というものを統一的に出されるというように伺っておるわけでございまして、そのほかに実際にいろいろな地震が起きましたときに、その地震情報といったようなものは気象庁でお出しになっていると承っておりますけれども、いわゆる地震予報警報というものをまだ出せる段階ではないと考えておるわけでございます。
  22. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、当分の間はいまのような形で出されてきて、それについて学者研究者の間でまとまらない限り、政府としてはその過程もその状態もなかなか言うわけにいかない、こういうような状態になっているのですね。  それでは、余り時間がありませんから、最後に防災対策についてはどういうふうにお進めになっておるのですか。
  23. 園山重道

    園山政府委員 防災対策につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、災害対策基本法に基づきましての中央防災会議というのが設置されておりまして、先ほど申し上げましたように、その事務局に大都市震災対策連絡会議というものがございます。それから、防災会議といたしまして大都市震災対策要綱というものも出されておりまして、ここにおいての御検討が進められておるところでございまして、私ども予知推進いたしておりますところと若干場が違いますので、私からはっきりと何が行われているということは御答弁できないのでございますが、伺っておるところではそういう状態であると聞いております。
  24. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 国民の受ける立場から言えば、駿河湾地震に関する問題は緊急課題だと感じておるわけでありますけれども、それに対応する政府の態度を見ておりますと、何か慎重で、依然として緊急性がないような気がいたすわけでありまして、大変不安に思っているわけでありますけれども、そういう点について、国民の不安を解消するために一体政府はどういうことをやっているのかという点を総括的に御説明いただきたいと思うのです。
  25. 園山重道

    園山政府委員 先ほど大臣の御答弁にもございましたように、いわゆる防災対策というものと予知推進、この二本立ての推進が必要であるということでございまして、地震予知に関しましては、大臣が毎回この委員会においても御答弁いたしておりますように、また先ほども御答弁いたしましたように、今週中にも閣議におきましてその推進の体制をつくりたいということで進んでおるわけでございます。この予知推進体制の確立ということで、防災の方につきましても恐らく一層の推進が図られるものと考えておる次第でございます。
  26. 八木昇

    八木委員長代理 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  27. 八木昇

    八木委員長代理 速記を始めてください。  引き続いて、勝澤君。
  28. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 先ほど大臣からもちょっと予算についてお話があったのですが、各省の皆さんが参っているようでありますけれども、いま地震に対する不安、そして予知というものがどこまで正確なものかどうかという点からいって不安が多いわけでありますから、私は、この観測の強化ということについては当然急がなければならないと思うのですが、そういう点で、先ほどもちょっと大臣に申し上げましたけれども予算の状態を見てみましても、もっと積極的な地震予知を進める方法があるのではないだろうか、こう私は思うのですけれども予算に関連して、もっと積極的な対策をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  29. 園山重道

    園山政府委員 わが国の地震予知に対します計画というのは、御承知と思いますが、文部省に置かれております測地学審議会の第三次建議、これは四十八年六月に出されまして、五十年に一部の見直しが行われておりますけれども、これに従いまして、関係各省庁がいま設置されております地震予知研究推進連絡会議等におきまして御相談をしながら進めているわけでございます。  先ほどお話にもございましたように、近年急速に地震予知理論等が進歩、進展していると伺っておりますけれども、何が決め手であるかというようなことが確実に確定されているという問題でもございませんので、やはり非常に関係があると思われております測地、測量でございますとか、地震計による観測でございますとか、あるいは地震波速度とか地下水の問題でございますとか、こういったものの研究観測推進していかなければならないわけでございます。したがいまして、現在の予算によってどの程度予知計画推進されているかということにつきましては寸測地学審議会においても常に検討されておるところでございまして、近々、測地学審議会におかれましても、最近の情勢にかんがみて何らかの建議等がなされるやに伺っておりますけれども、やはりそういった専門家方々の御意見によりまして、どういう地域にどういうものが必要であるかということが出てまいりますならば、私どもはこれにできるだけの対応をしなければならぬと考えておるところでございます。
  30. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 役所の方は何か受け身のような感じがするのですね。地震予知というものについて、審議会、予知連絡会に任せておって、そこから出てきたらやりましょう。だからその辺が、私たちから見てみますと、一体それでいいだろうかな。役所自体がわからないからそうなんでしょうけれども、何かもっと現実的に、積極性というのがどうも見られないような気がいたすのですけれども、そういう点で、予知連絡会意見、要望というものはやはり一〇〇%予算的にも見ていく、そして、特にいま一番おくれているのは観測でしようから、その強化については漏れなくやっていく、こういうことでなければならないのじゃないだろうかと思うのです。  そういう点で、いままでの与えられたデータの中で石橋学説というのは出てきているわけですから、その石橋学説の出たものについての補強といいますか、あるいは不十分さといいますか、私たちが外に出てくる意見を見てみますと、そういうものについての議論がいままでの中にないような気がして、いままでと変わりがないんだ、いや、そうじゃない、石橋学説の中で、ここについてはこういう資料が不足なんだ、ここについてはこうなんだということをやはり連絡会で言わなければだめだ、だれかがまた記者会見で言わなければ出てこないのですか。その辺の総合的な議論というものをもう少し一般に公表していくということにはならないのでしょうか。
  31. 園山重道

    園山政府委員 御指摘のように、石橋先生の御発表以来、いろいろな御議論がございまして、当委員会におきましても、萩原先生、浅田先生等の参考人としての御意見があったわけでございます。いずれも、先ほど国土地理院あるいは文部省からお話ございましたように、地震が起こるかどうかということにつきましての具体的判断ということは、いろいろなニュアンス、角度があるようでございますけれども、各先生ともやはり観測データが必要であるということは異口同音におっしゃっているところでございまして、また、萩原先生は当委員会におかれまして、駿河湾に対する観測の必要な、たしか七つか八つの項目というのを挙げておられるわけでございます。したがいまして、私どもは、従来のやり方で申しますと、予知連絡会において結論、御判断が出されました場合に、これに早急に対応いたしまして、特調費等の支出をやるわけでございますけれども、現在、予知連の会長でいらっしゃる萩原先生のそういった国会における御意見もございますので、いま研究推進連絡会議におきまして、関係省庁集まりまして、どういった対応ができるかということを御相談しているところでございまして、この結果につきましては、先ほど大臣の御答弁もございましたように、積極的に推進をしていきたいと考えておるところでございます。
  32. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 終わります。      ————◇—————
  33. 八木昇

    八木委員長代理 次に、日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  34. 石野久男

    ○石野委員 大臣は、二十四日に青森で、「むつ」は実験船だから故障は当然だ、わずかの放射線漏れで大騒ぎするのはおかしいとか、あるいはまた、原子力船の場合も実験船の段階で故障が起こらない方がおかしいんだというようなことを言われて、物議を醸したそうですか、これはどういうつもりでこういう演説をなさったのですか。
  35. 前田正男

    前田国務大臣 原子力の講演会をやったわけですけれども、まあ講演会のことでございますから、言葉足らずのところもありまして、あくる日、知事初め新聞の方たちその他にもお話をいたしまして、一部の方を除きましては皆さん御了解していただいたと思いますが、私の言わんとしておりましたことは、われわれは誠心誠意、安全なものだと思って出港したわけですけれども、やはり実験のことで人のやることでありますので、故障も起こり得るということを申し上げたわけです。そして、そのときに備えまして警報というものがあって、人体とか一般の環境とかそういうものに汚染を与えないようにするということであります。同時にまた、一遍に実用船というものにいくわけにいきませんから、そういうことを経験を積みまして、改良したものをつくり、そして将来実用船に持っていく段階を踏まなければならぬということを申し上げた次第でございます。
  36. 石野久男

    ○石野委員 後で大臣は訂正もなさったようですし、本意はそうでないんだということを言われているようです。ただいまもそういうお話ですが、しかし、この「むつ」問題は本委員会で、あの事故が起きる前にもしばしば論議をしておりまして、「むつ」についてはまだ実験段階であるということを私たちは強く主張いたしました。結果的にはそうなっているのですが、大臣が言葉足らずといえども、現実に「むつ」がこの状態におるときにこういうような発言をするということの真意は、やはり開発優先、もう少し安全性を点検しようという着意に欠けている、これは大臣だけではなしに、政府自体がそういうような考え方であるのではないかということを疑わざるを得ないのですが、率直に申しまして、大臣は安全性問題については口ほどに考えていないということになりやせぬのか、こう思いますが、いかがですか。
  37. 前田正男

    前田国務大臣 原子力全体の安全性についてはもう最優先にしなければならぬということを考えて、局もできましたけれども、今度も委員会をつくる、予算もふやすということでございます。ただ、これはなかなかいろいろとむずかしい問題もございますから、いま私たちも最善の努力をして、国会の了解を得られるようにいたしまして、大体五十二年度の予算要求を決定していきたい、こう思っておるわけでございますが、この原子力船につきましては、われわれもこれを安全にしなければいけないということでございますので、長崎県佐世保に修理もお願いしておるわけでございます。  そして、これにつきましては、安全最優先で修理をしなければいけませんから、修理の時間を約三年ほどかけまして、そして完全に安全になるまで修理を徹底的に検討してやっていきたいと思いますし、またそのために、修理をいたしますについて長崎県、佐世保に御迷惑をかけてはいけませんから、現在この炉は水につけまして冷却したままで放射線は出ておりませんけれども、そのままの状態で佐世保に入港いたしまして、佐世保を出港するまでそのまま出力の上昇をしないで出港をするということで、修理をしていただく方たちに対しましての安全、佐世保港に対する安全、長崎県に対する安全を最優先にしなければいかぬ。一部の学者の中には、それでは修理ができたかどうか確認できぬじゃないかとか、修理にならぬじゃないかといろいろ御批判をされる方もありますけれども、そこで私たちは、しかし修理される佐世保とか長崎県に御迷惑をかけたらいけませんので、安全を第一にいたしまして、炉は冷却したままで入港して、冷却したままで出港する。したがって、安全に修理できたかどうかということにつきましては、約三年間という時間をかけてその修理の内容その他を徹底的に検討して、そして安全を確認してから修理を終わる、こういうことにしておりまして、安全を優先にするような修理の仕方をいたして佐世保、長崎県には一切放射線については御迷惑をかけない、こういう態度で修理に臨むことにいたしているわけであります。
  38. 石野久男

    ○石野委員 いま炉を水浸しにしてという話がありましたが、遮蔽のふたを取りかえるとかいろいろなこともやるんだということだし、水浸しで実際に仕事ができるのかどうかという問題も一つ出てまいりますね。問題は、どういうようなやり方をするにしろ、それを推進しようという考え方の中に少しばかりでもそういう安全性軽視の気持ちがあれば事故は何倍かになって出てくるわけですから、大臣のこういう発言は、不用意であったというだけでは済まされない。特にやはり原子力を総括しておられる立場にいてこういうようなことでは、先般来行政懇等でいろいろな意見が出たものもほとんど魂の入らないものになってしまうだろう、こういう危惧を持ちます。私は、大臣はこういうようなことを厳に慎むべきだ、こう思います。実質的にこういうようなことが言葉として出ているということについての取り返しはなかなかできないのじゃないかと思うので、やはり大臣はこういうような問題、一言であれは間違ったのだと言うだけで済むとお考えなのですか、どうなんでしょうか。
  39. 前田正男

    前田国務大臣 皆さん方にいろいろと誤解を与えてはいけないと思いましたので、それは早速翌日、知事を初めその他の方あるいは新聞の方たちに私の真意を釈明してお伝えして御了解を得たようなわけでございますが、先ほど申しましたとおり、今後こういう問題についていろいろな問題が起こらないように、したがいまして出力上昇をしないで、佐世保では修理して安全というものを第一に考えていこう、こういうことで、そのこともあわせてむつで御説明したような次第でございます。
  40. 石野久男

    ○石野委員 これは大臣考え方が言葉にあらわれているのだと思いますから、いまの大臣の御答弁だけで安心して、安全性の問題には十分体制をとっているというふうにはなかなか考えられないという情勢があることだけを申し上げておきます。  それで、いま青森でも約束の期日までには長崎県佐世保市に修理を引き受けてもらうように持っていきたいということをお話しなさったようですけれども、きょうわれわれはやはり理事会に長崎県の漁連の方からの陳情を受けました。どんなことか、絶対に引き受けない、こういうお話であります。大臣もいま恐らく同じような陳情を受けたのだと思いますが、長崎に持ち込むということについての確信はあるのですか。
  41. 前田正男

    前田国務大臣 長崎県と佐世保にお願いをしていることでありまして、われわれとしては全力をふるってやらなければなりません。ただいまお話しのように、漁連の方からもいろいろの抗議の陳情を受けましたけれども、そこでもお話ししましたように、われわれは佐世保におきましては出力上昇をしない、放射線を出さない、こういう修理をするのだからということで御了解をしてくれというお話をいたしました。しかし、政府がそういうようなことを言っても、学者先生方の中にいろいろ言う人がおるから、そういう人たちが全部賛成するようにしなければいかぬのじゃないかというようなさらに抗議がございました。私たちといたしましては、出力上昇をしないでいまのままで入港して出港するということをよく関係学者方たちにもさらに伝えて、そして御了解を得るようにいたしたい、こう思っております。  実は私は、この話はもう国会でも私が前に委員でおりましたときに聞いておりましたし、政府の方からも十分に長崎県、佐世保の方にもお話ししてあるものと思っておったのでございますけれども、むつでその話をしましたところ、新聞社の諸君の方は記事にされ、中央まで送られまして、中央の新聞にも、出力しないということが記事になるというようなことで、やはり私たちの御了解を得る努力がまだ足りなかったのじゃないか。こういうことがいまごろまだ記事になるというようなことでは、やはりわれわれは努力が足りなかったのじゃないか。私は、国会でも何遍も議論され、何遍も聞いていることだと思ったのですけれども、新聞が現地だけでなしに中央でも取り上げるということでは、やはりよく理解を得るような努力が足りなかったのじゃないかと思います。したがいまして、これは、佐世保のきょうの漁連の方たちがおっしゃるように、そういう実情を、出力上昇をしないで修理する、したがいまして、佐世保に入港してから佐世保を出るまでは安全船である、こういうことについての御理解をひとつよく得るように、現地の佐世保の方、長崎県の人はもちろん、これに対していろいろと批判しておられる学者その他の方たちにももっとよく理解を得るようにしなければならない、こう思っておる次第であります。
  42. 八木昇

    八木委員長代理 ちょっと私からも大臣に二点、いま委員長席に座っておりますから簡潔に二点お伺いしておきたいのです。  九州でこれは私一部の新聞だけ切り抜いてきたのですけれども、相当大々的に青森発言が報道されておりまして、「「むつ」の放射線漏れ 「実験船だから当然前田科学技術庁長官が発言 大騒ぎおかしい」」という相当大きな見出しでして、それで一点確かめておきたいのですけれども大臣がおっしゃったことそれ自体は、本当のことをおっしゃっていると思うのです。そういうように実験船だから故障は当然起こり得るわけなんで、だからやはり修理をする場合あるいはテストをする場合、ちゃんとした原子炉に対するいろいろな設備等が整っておる母港でやるべきですし、あるいはもっと慎重にまず陸上でテストをしてから船に積み込むなら積み込む、こういうふうにすべきであるということが言われてきたと思うのです。それで修理の場合も燃料体を入れたまま修理をなさろうという今度の御計画ですから、修理の場合も故障が起こり得る。したがってやはり、普通のドックとか岸壁でやるべきではないのではないか。そういう問題と絡みますので、前田長官の発言が非常に重大発言というふうに言われておると思うのですけれども、その点についての大臣のお考えをちょっと簡潔で結構ですから……。
  43. 前田正男

    前田国務大臣 先ほど答弁しましたとおり、現地のむつでもお話ししたのですけれども、出力上昇試験をやりませんので放射線は出ない、こういうことでございます。したがいまして、炉に燃料が入っておりますけれども、上昇しませんから、皆さん方に放射線による御迷惑をかけることはない、こういうことでございます。
  44. 八木昇

    八木委員長代理 もう一点伺っておきますが、青森の漁協やその他関係者の皆さんと政府がお約束になった事柄の中身ですけれども、これは昭和五十二年の四月十五日までにむつ市の母港を撤去する、こういうお約束であったのだと私理解するのですが、何かそれをすりかえておられる感じで、約束した期日までには長崎県佐世保市に修理を引き受けてもらうように持っていきたい、こういうふうな政府の態度に変わっておるようです。この約束した期日というのは五十二年の四月十五日を指しておられるようですけれども、五十二年の四月十五日までに母港撤去を約束なさっておるということは、その前提としてそのときまでに新母港を決定するという意味をも含めておる、あるいはそういう含みというふうにも考えられるわけですが、修理港云々なんという問題は青森との間の約束の中では一切出ていない。これはもう出ていないはずです。だから政府がお約束になっておるのは、五十二年四月十五日までにむつ市の母港を撤去するという、こういう約束をなさっておるのじゃないですか。
  45. 前田正男

    前田国務大臣 文章で言えばおっしゃるとおりでございますけれども、現に母港としても機能は停止しておるわけでございます。約束どおり池を埋めたり、その容器を県外に運びましたから。したがいまして、停止しておりますが、修理港じゃなしに母港を見つけて出ていくというのは、文章的にはそうだと思いますけれども、現実問題としてやはり修理をしなければ母港の問題がむずかしいわけでございます。したがいまして、現地にも行ってお願いしているはずでございますけれども、われわれは修理にかかりまして、修理のめどがついてから母港の選定をしたいと思いますので、しかし原子力船がむつの港から出ていくということが四者協定の精神にかなうことじゃないか、こう思いまして、文章等は違いますけれども、四者協定の精神はむつの港から原子力船が出ていくということであると思いますので、その点でひとつ御理解を賜りたい、こういうお話をしておいたわけでございます。
  46. 八木昇

    八木委員長代理 もう一点だけで終わります。  それじゃ五十二年の四月十五日までにむつ市の母港の撤去という約束をなさっておるのですが、その約束はそのとおり履行なさるのかどうか。青森県のむつ市の母港の撤去は四月十五日までになさるのかどうか。
  47. 前田正男

    前田国務大臣 撤去と言いまして施設全部取ってしまうということになると、まだ跡は跡地利用とかいろんなことでまた現地の方とも御相談したりしなければならぬ問題もありますので、全部取ってしまうというわけにはいかない問題もあると思いますが、やはり機能を停止するということがまず問題だと思いまして、その点はすでに機能を停止しておりますし、それから、原子力船「むつ」があそこを出ていくということによりまして約束の趣旨が生かされる、精神が生かされる、こういうふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  48. 八木昇

    八木委員長代理 実質的な撤去はするということですね、四月十五日までに。
  49. 前田正男

    前田国務大臣 実際上機能は停止されておりまして、ただいろいろな施設全部を持っていってもまた問題がございますし、また現地で利用できるものもございますし、その辺のことはやはりむつ市だとかあるいは青森県とも御相談しなければなりませんから、いわゆる定係港としての機能は停止してしまう、それで船は出ていく、こういうことだと思うわけでございます。
  50. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの八木委員とのお話の中での答弁では、修理のめどがついてから母港の選定に移ると、こういうお話をしておりますが、これはただいまの母港選定の問題との絡み合いで修理のめどがつかないとなかなか母港へ目が向けない、こういうふうにも聞こえるのですが、そういう意味ですか。
  51. 前田正男

    前田国務大臣 本当に修理ができるめどということは、修理港が決まり修理を引き受けてやる、こういうことだと思うのでございますけれども、修理を引き受けてやるということを認めてもらわないと新しい母港の選定に入るのはむずかしいのじゃないか。結局、修理をしてから新母港に持っていくわけですから、修理港が決まらなければ、ちょっと新母港の選定というのはむずかしいのじゃないか、こういうことでございます。
  52. 石野久男

    ○石野委員 これはいつ修理ができるのかさっぱりわかりませんが、佐世保にとっては大変なことだろうと思いますよ。修理ができなければ今度は新しい母港へ手がつかないというようなことになりますと、私は非常に問題があるような気がします。  それから、先ほど大臣は、出力上昇をしないで入港するということが記事になってびっくりしたんだ、こんなことじゃPRが足りないんだというようなお話でございますが、あの原子力船が佐世保なりどこなり修理港へ入るために新たに出力を上昇させて入るなんということは、恐らくだれも考えてないと思うのですよ。大臣があそこへ行ってことさらにそんなことを言うから、これはおかしいなということで記事になったんだ、私はそう思いますよ。青森からあそこへ引っ張っていくのは、曳航船か何かで引っ張っていくのでしょうし、補助エンジンを使うのかどうか知りませんが、とにかく出力上昇なんかやるはずはないんだし、したがって、なぜこの時期に出力上昇をしないなんというようなことをことさらに大臣が言うのかということを私はむしろ疑問に思うんだが、なぜそんなことを大臣は言うのですか。
  53. 前田正男

    前田国務大臣 入港するときに出力上昇するということはないのですけれども、修理が終わりまして、そして出力上昇試験をしてから出港するんじゃないか、それで佐世保に放射線の心配があるんじゃないかということですから、修理が終わってからでも佐世保に入ってから出るまでの間は出力上昇をしませんと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  54. 石野久男

    ○石野委員 そうなると、また今度は新しい問題が出る。私はさき委員会のときにもそのことを質問した。修理が完全にできているのかできてないのかは、一応炉に手を加えて稼働しなければ、果たして目的どおりに作業が進んでいるかどうかわからない。前に二%でこういうストリームが起きたということなどは、設計の上からいきましても、あるいは工作の上からいっても、あの時点ではだれも予想してなかった。それどころか、われわれがこれはまだ実験船の段階だと言ったときに、事業団の理事長は、もう実験段階は過ぎておって商業用の船になっているんだ、こういうことを言い切って、原子力船はいまやそれの運営についての経済的な問題だけが残っておるのだということを言い切っておったのですよ。それでもああいう事故が起きたのです。だから、いま佐世保かどこか知りませんけれども修理を行って、それの出力上昇試験もやらないままに修理が完了したということは言い切れないのですから、結局修理完了の時点というのは、その出力上昇をやって設計どおりに修理がうまくいったという時点で修理完了ということになるんだろうと常識的に私たちは思っておるのですが、政府の方ではその修理作業の完了というのは、請負者が仕事を終わったらもうそれで点検も何もしないでも修理が完了したと、こういうふうに見られるのですか、どうですか。そこは非常に微妙ですが……。
  55. 前田正男

    前田国務大臣 それは契約条件にもよりますけれども、私たちは修理に入るまでにすでに実験等を行いまして、こういう方法でやれば安全であるということを考え、また時間をかけて修理をしておりますから、その間にも点検をし、また、この前からも話がありましたようないろいろと計算方式も新しくできておりますから、そういうもので計算方式を整えまして、これでまあ出力上昇しなくても安全の修理はできた、こう思っておるわけでございます。しかし、業者との間の契約につきましては、それをどういうふうに表現していくかということはちょっと問題があります。その点は局長からひとつ答弁させます。
  56. 山野正登

    ○山野政府委員 修理作業をいたしました後の検査の手順がどうなるかという御趣旨の質問だと拝察いたしますが、まず遮蔽改修及び総点検の後、補修すべき個所について修理作業に入るわけでございますが、修理港で修理作業が完了いたしますと、当然その時点で契約いたしました仕様に基づいて、正しい材料が使われたかどうか、あるいはまた規定の寸法に合っておるかどうか、仕上がりぐあいはよろしいかどうかといった静的な意味における検査というものは行われると思っております。  それからさらに、御指摘の出力上昇段階における検査と申しますのは、当然新しい定係港に参りまして出力上昇をするわけでございますから、低出力上昇試験以降の検査とかいうものは新定係港あるいは洋上で行われるということになろうかと思います。そういう意味で最終的に船舶安全法の検査に合格するまでにはかなり長期の検査を要するわけでございますので、もし先生の御質問がそういう法律上最終の確認はいつかという御趣旨であれば、これはかなり先になるわけでございます。  しかしながら、私どもが従来修理港でできるだけ安全性を向上した上でという表現を申し上げておりますのは、現在の「むつ」の姿のままではこれは明らかにトラブルを起こしまして修復改善すべき点があるわけでございますので、その点を直しまして、出力上昇試験をしないまでも、一応この修理計画等につきましては事業団内外の専門家が十分に審査しておるものでございますので、それに従って行われた作業が終了いたしますれば少なくとも現状の姿よりも安全性という観点から改善されたということは言えるであろうということを申し上げておるわけでございまして、そういう意味で端的に申し上げれば、現状との相対的な形において御説明を申し上げておるものでございます。
  57. 石野久男

    ○石野委員 国民にこの問題の理解と、それに対して皆さんの意見を支持させるようにするためには、常識から言ってちょっと無理な感じがしますね。特に仕事を注文をして支払いをするという段階の商行為の上からいきますと、欠落条件が非常にたくさんあり過ぎて、これはどうにも納得できないということになるように思われます。出力上昇試験も何も行わないで、内外の専門屋が頭をひねって考えた修理をやったんだからいいじゃないか、あるいはまた静的な試験として検査を行った、材料はうまく使っているか、規定どおりに仕事をしたか、そんなことを言ってみたって、現にそういうことを厳密にやった結果の原子力船が最初の試運転でああいう事故を起こしているのだから、それだけひどい目に遭っているのにまだそんなのんびりしたことを考えておるということ自体がおかしい。これは実際に出力上昇試験をやって、理屈の上からも工作の上からいっても完璧であったものが、なお具体的に稼働した上でそれが実証されるということでなければ、少なくとも原子力船「むつ」に対する安全性の確認ということは一般には取りつけることはできないだろうと思います。これは、何遍も同じようなことを言っておりますが、当局側に既成の原子力船を何とかそのままずっと持っていこうという若干の無理があるからだと思うのです。これではなかなか納得しないものがあると思いますから、いまの御答弁については私はやはり納得いたしません。  同時に、最終確認がいつごろになるかということも大体目安がつかないわけですね。実際に科学技術庁としてはあるいは運輸省あたりとの話し合いで大体どの程度のところで最終確認ができるというめどをつけておるのですか。佐世保なりどこなり修理港へ持ち込んでいってから何カ月間で修理をして、母港を選定して最終確認をいつにやるのだというおおよその目安があるのかどうか、それをちょっと聞かしてください。
  58. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま私ども考えておりますスケジュールでは、遮蔽改修並びに総点検で約三年間を予定いたしておりまして、それ以降の出力上昇試験につきましては大体半年程度を予定しておりますので、大ざっぱに申し上げまして四年間程度で最終的な確認ができるというふうに考えております。
  59. 石野久男

    ○石野委員 その間、大体いつごろまでに停泊港といいますか、母港を決めるつもりでおりますか。
  60. 山野正登

    ○山野政府委員 先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、修理港が決まりますれば、私どもは早速定係港の選定作業に入りたいと考えておるわけでございまして、これは一日も早い方がよろしいと考えております。
  61. 石野久男

    ○石野委員 問題は長崎にそういう修理港が設定されるかどうかにもたついておるわけですから、皆さんの御答弁の中で、現地で絶対反対だと言っておる諸君に納得のいけるようなものになるかどうか、私は疑問に思います。ことに学者の了解が得られるようなということを言ったって、実際に反対する学者の了解を得さしめることが大事なんじゃなくて、学者が反対しようとも、実際にやったものがそういう問題を残さない、放射能漏れも何もないのだということになれば、反対しておる学者は間違ったことを言ったことになるのだと思うのです。賛成する学者が非常に多くても、実際にはストリーミングによって放射能が漏れてきたのだということになれば、少数の学者意見の方が正しいのだから、もう少しそれを科学的に客観的に取り上げるような政府の態度でなかったらこの問題に対する正しい対処の仕方というものが出てこないと思うのです。これは静かに大臣考えるべき問題だと思いますね。  現在事業団は予算的にはどういうふうに運営されておるのですか。事業団法が三月三十一日でなくなっている。そして現在継続すべきだという法案の提出が行われているのだが、この延長法案が出ておるということは、三月三十一日以降、法案がなくなっておるから継続すべきだという法案が出ておるものと理解しておるのですけれども、事業団法がない段階原子力船事業団というものは現実には存在しているのか、そしてそれに対する予算の実行というものが行われておるのかどうか、そういう点どうなんですか。
  62. 山野正登

    ○山野政府委員 日本原子力船開発事業団が法的に現在も適法に存在しておると私どもが御説明申し上げておりますのは、現在改正法案を出しておるからという理由ではございませんで、改正法案は本年の一月でございましたか、御指摘の五十一年三月三十一日以前にすでに国会に御提案申し上げておるわけでございまして、私どもが原船事業団が有効に存在しておると申し上げておりますのは、いまの事業団法の附則二条の解釈について申し上げておるわけでございまして、かねて申し上げておりますとおり、「昭和五十一年三月三十一日までに廃止するものとする。」という条文の意味しますものは、この法律が制定されました当時、その時点までにはこの法律は目的を達成し得るであろうという予見に基づきまして、その時期が到来すれば改めてこの国会の場でこの法律をどうするか再検討しょうという御意思のあらわれと思っておるわけでございます。したがいまして、現在私どもが改正法案を提案申し上げて御審議いただいておるわけでございまして、この御審議が済まないうちは、また国会とされまして、団法を存続されるか廃止されるかという御意思は決まっていないわけでございまして、そういう時点におきましては、引き続きこの事業団法は有効でございますし、したがって、事業団は法的に存在しておるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。  そこで、五十一年度予算につきましては、以上申し上げましたような趣旨に従いまして、事業団は法的に存在する、したがって、事業団に計上されております予算は執行し得るというふうに理解しております。
  63. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、事業団は存在しているんだから、この延長法案というものはもう必要ない、こういうことですね。
  64. 山野正登

    ○山野政府委員 私どもはやはり、この事業団というもの、あるいは事業団法というものを今後延長されるかどうされるかという国会の御意思というものは早くお決めいただきたいと思っておるわけでございます。法的に有効に存在しておるからというだけで、国会の御意思の決定のないままに延々と日を送るということは妥当でないと考えております。
  65. 石野久男

    ○石野委員 国会で意思のないままに法的に存在するという、そういう法律はあるのですか。
  66. 山野正登

    ○山野政府委員 この附則のように、いついつまでに「廃止するものとする。」と申し上げましたのは、そのような実体でもって本法を考える場合の表現形式でございまして、このような形式をとっておりますものは、先ほど御説明申し上げましたように理解するというのが政府見解でございます。
  67. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、何遍も同じことを言うのですけれども、改正法案はこういうふうに「六十一年三月三十一日までに廃止する」と出ているのですが、現実に「五十一年三月三十一日までに」という期限は過ぎちゃったわけですよ。過ぎちゃったんだが、そして新しい法案が提案されているものは、まだ国会の意思は決まっていないけれども、事業団はそのまま残っておって予算執行も行われていると、こういうことであるならば、この状態でずっと行ったって予算は執行できることになるし、法律も残っているのだから改めて新しいものをつくらなくてもいい、こういう理屈になりますね。この新法、改正法案というものを出さなくてもいいという理屈になるわけですね。この事業団法の一部を改正する法律案というのは、われわれはこんなことをあれこれ論議する必要がない、局長答弁ではそういうことになりますね。
  68. 山野正登

    ○山野政府委員 「五十一年三月三十一日までに廃止するものとする。」というのは、先ほど申し上げましたように、その時点になって改めて国会の場でどうするかということを検討しようという意向をあらかじめ表明されておると私ども考えておるわけでございまして、そういう意味で五十一年三月三十一日は参ったわけでございますので、ぜひ国会の方でこの延長の可否について御審議し、決定されたいというふうに考えておるわけでございます。
  69. 石野久男

    ○石野委員 検討しようという意味で書かれているものだという、その検討しようということは、何を検討するのです。
  70. 山野正登

    ○山野政府委員 その時期までにこの法律が目的を達成したか否かという御判断と、もし達成していないとすればこれを延長する必要があるかどうかといったふうなことがその主な内容になろうかと考えております。
  71. 石野久男

    ○石野委員 延長しようかどうかというようなことを検討するという必要は、何であるのですか。
  72. 山野正登

    ○山野政府委員 これは「廃止するものとする。」という表現形式のものは、いま申し上げておりますように、その時点になったらもう一度検討してその扱いを決めましょうという国会の意思をあらかじめ法律の条文の上で表現されておるというふうに考えておるわけでございますので、そういう形式の法律である。したがって、その時点が参ったわけでございますので、延長されるかどうかということを御審議いただきたいということで、私どもも延長法案を提案申し上げておるものでございます。
  73. 石野久男

    ○石野委員 これは大体無理な御説明をなさっておると思うのですよ。「廃止するものとする。」という時日が来たので——来たのじゃなくて、もう来過ぎちゃったんだよ。五十一年三月二十一日というその期日はもうすでになくなっちゃっているんだ。ですから、どうも政府の提案している理由がおかしい。特に、事業団はあるのだ、それから予算は執行しているのだ、法律があって、しかも予算の執行が行われておるのに、何も改めて同じものを国会審議する必要もないということに理屈としてはなる。だけれども、ここで改正する法律案を出しているというゆえんのものは、やはりその法律が法的には存在し得なくなっているからだと私は思うのですよ。だからこそ、またわれわれは討議するということになっているのだ。そういう意味からすると、もう三月三十一日を過ぎた法案がこういうふうに論議をされていること自体、議会におけるところの審議のルールに外れている。たまたま院内において与党が多数を占めておるからこういうことをごり押ししているけれども、だれが考えてみたってこんなことは成立するはずのものじゃないと私は思う。法律案で「ものとする。」というのは、私たちの理解では、その期限までの間に局長が言うようにこれを廃止するか、今後延長するかということを決めようじゃないか、そういうことを言っていることは間違いないと思うのです。しかし、その期日までの間にその行為が行われなければ、その期日以後にまでも及ぶだけの法律効果を持っているとはわれわれは思っていない。もし、その後までも法律的効果があるとするなら、こんな期限を明示する必要はないのですよね。それなら恒久法でいいのですから。法律の解釈が間違っているのじゃないですか。  きょうは法制局の前田第三部長に来ていただこうと思ったけれども、ちょっと手はずの関係でおいでになっておりませんが、法制局の第三部長は、こういうような法案に対して廃止法案が出なければ法律はそのまま続くのだということを先般の委員会でわが党の坂本委員答弁しておるのですよ。それであるとするならば、この廃止法案が出なければこれから何百年でもそのまま法律は残るということになってしまうので、だから恒久法ですよ。なぜ「ものとする。」というふうに日限を切っているかということについて、これは法的解釈として法制局も非常に無理な解釈を示しているのじゃないかと思います。私は、もし局長がいま言うように、現在この事業団法がりっぱに存続して、そして予算面においても予算を執行するだけの効力を持っておるとするなら、延長法案を審議する必要はない、こういうふうに思いますので、いま一度、私が言ったようなそういう見方でいいかどうかをひとつ御答弁ください。
  74. 山野正登

    ○山野政府委員 先生がおっしゃいますように、この何月何日までという日限が切ってございまして、その日限が来れば当然失効する、法律として効力を失うという場合の表現形式といたしましては、施行の日から何年以内に「失効する。」とかあるいは「効力を失う。」といったふうな表現がとられている場合でございまして、そのような法律の場合には、その日限が参りますれば当然に法律としての効力を失うというものでございます。しかしながら、そのような明らかな時限法と異なりまして、あえていついつまでに「廃止するものとする。」という違う表現形式をとったものにつきましては、おのずから「効力を失う。」あるいは「失効する。」という表現のものと違う意図に基づいてそのような表現形式がとられておるわけでございまして、その表現形式のとられておるゆえんと申しますものは、先ほど来るる申し上げておりますとおり、その時点になったときに改めてその法律の扱いを国会の場でどうするか意思決定をいたしましょうということをこのような表現形式であらわしておるものというふうに考えておるのが、私ども並びに法制局の見解でございます。  そういう意味におきまして、私どもは、先般この改正法案というものを御提案申し上げまして、できるだけ早く国会の御意思をお決めくださいというお願いをしておるわけでございます。
  75. 石野久男

    ○石野委員 時間がございませんから最後にしておきますが、「ものとする。」ということは、明示された時日までの間に、前もって法律を存続するとかあるいは廃止するとかいうことの選択権をそこで行使しょうということを予見しながら期日を規定したものだ、私はそう思います。いつ幾日までに「効力を失う。」というふうに期日を規定してぴしっと書いたものはその時点で失う。しかし、その場合だって院の方針によって継続する場合もあるだろうけれども、それはもう百のうち一つとかいうようなものであって、予見的にはそういうことを継続させるというふうになっていないものだ、こういうふうに私どもは理解しておる。  だから、立法の立場からすれば、その時点において目的が一定程度達成されたかどうかということの判定をやり、法律の期限設定の上においては抱え込んでいこう、その判定を受けとめていこうということを院は予想してこういう文言を使っていると思う。しかし、だからといってその期日を過ぎた後にまでそういうようなことを許すということになるならば、この期日の意味がなくなってくるのですよ。それなら恒久法にしてしまえばいい。三月三十一日とか昭和五十一年五月三十一日とかという日にちが切ってあるということは、その間にはそういうことをいろいろやってもよろしいよということを立法のときにお互いに論議し合ってこういう設定をしている、こういうように思います。その期日が過ぎた後でも依然としてそういうことがあるならば、こういう期日を入れる必要はないのですよ。だから、この期日をちゃんと明記しているということの意味は、立法府の責任を、この期日までに継続するか、あるいは廃止するかということを示させようとしている。両方の意思表示がなければこの文言のとおりにその時点で効力は失われるもの、こう理解するのが普通の人の物の考え方だ。政府や法制局のような考え方は一般の通常社会では通用しないと私は思うのですよ。そんな無理をしない方がいいと思うのです。もしあなた方のそういうような意見であるならば、こういう延長法案なんか審議しなくたって、あなた方はそのとおり目的を達成していくわけですから審議する必要はないのです。本委員会はこの延長法案、改正法案というものを審議しなくたっていいということになってくるので、非常に大きな矛盾を含んでいるということを指摘しておきます。
  76. 八木昇

    八木委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として、日本原子力船開発事業団専務理事倉本昌昭君及び同技術部参事役佐藤祥君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 八木昇

    八木委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行いますので、さよう御了承願います。     —————————————
  78. 八木昇

    八木委員長代理 質疑を続行いたします。瀬崎博義君。
  79. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まず大臣にお伺いをしたいわけでありますが、先般、青森県に行かれまして県漁連の代表に会っていらっしゃいますが、そこではどのような要請を受けられていますか。
  80. 前田正男

    前田国務大臣 県漁連の代表の方とは知事と同席してお会いさせていただいたわけでございます。それで私からごあいさつに来た旨を申し上げまして、県漁連の方たちは、自分たちは四者協定を確実に守っていただきたい、こういう御意見がありました。
  81. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 本日は長崎県の漁連の会長にも会っていらっしゃるわけですが、ここではどんな要請を受けて、どういう見解を示されているのかお聞きしておきたいと思います。
  82. 前田正男

    前田国務大臣 きょうのあれは、私たちは絶対に原子力船「むつ」については反対であるということと、それから、二十四日におきます私の発言に対しまして抗議をするというお話でございました。それに対しまして私から、二十四日のことについての釈明的な説明をさせていただきまして、それからあと佐世保に対しましては、先ほど申し上げましたとおり入港から出港するまで出力上昇をしない、したがって放射線についての御迷惑をかけない、こういうことでわれわれは修理をお願いしたいと思っておるのだということでひとつ御理解を賜りたいということを申し上げたわけであります。
  83. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 青森の場合は、四者協定を守ってほしいという要望に対して大臣は、四月十五日をめどにして母港撤去に努力する、このように答えられているわけですね。
  84. 前田正男

    前田国務大臣 四者協定の精神に沿うて最善の努力をしたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  85. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その四月十五日をめどに母港の撤去に努力するということは、佐世保修理港問題が解決しようとしまいとそれは実行するというふうにお約束をしていらっしゃるのですか。
  86. 前田正男

    前田国務大臣 四者協定の精神でいきますならば、原子力船「むつ」がむつの港から出ていくということであると思いますから、それができるようにひとつ佐世保の御了解を得て最善の努力をしたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  87. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では現在では、政府の方針としてはあくまで青森の問題と長崎の問題は連動している、このように考えざるを得ないわけですね。
  88. 前田正男

    前田国務大臣 佐世保で修理を引き受けていただくということで四者協定の原子力船「むつ」がむつの港から出ていくことはできる、こういうことでございます。
  89. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 四者協定時点では、佐世保修理港問題というのは予定されておったのですか。
  90. 山野正登

    ○山野政府委員 四者協定の時点で修理港問題を先に決めるということは予定いたしておりませんでした。
  91. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 物事の論理から言えば、佐世保修理港問題があろうとなかろうと、本来四者協定は実行されるべきものである、こういうことになるのじゃないですか。
  92. 山野正登

    ○山野政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  93. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣にお聞きしたいのですが、政治家の良心として、青森の漁民それから長崎の漁民、変わりはないと思うのです。どちらも表現は違っても「むつ」は受け入れがたい、出ていってほしい、こう言っているわけですね。片方には、じゃ出ていくように努力しようと約束し、片方には受け入れてくれ、この矛盾を感じませんか。
  94. 前田正男

    前田国務大臣 政府といたしましては、そういうふうな四者協定というものができておる以上それを尊重するのがわれわれの仕事でございますから、それを尊重してやらなければならぬわけでございます。しかし、実際問題として原子力船「むつ」というものは修理が必要なわけでございますので、修理のできる可能性のある佐世保に修理をお願いしたい、こういうことでございます。
  95. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それは、もともとその佐世保港で修理するという予定が前提になっておればその大臣の論理もある程度は納得もできるし、受け入れられるだろうと思う。先ほど局長の話では、はっきりと政府側はそういうことは前提になっていなかった、こう言っているわけでしょう。こういう点で佐世保あるいは長崎の人々、漁民が矛盾を感じるのは私当然だと思うのです。だから、政治家としてそういう矛盾を冒していていいのかどうか、この点改めて聞いておきたいと思います。
  96. 前田正男

    前田国務大臣 御承知のとおり、原子力船「むつ」が修理を必要とするという状態になりましたので、この際、修理ができる可能性のある佐世保に修理をお願いしたい、こういうことでございます。
  97. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、四者協定の時点では修理の可能性があるかないかわからなかった、そういうことなのですか。
  98. 前田正男

    前田国務大臣 四者協定のときには、もちろん修理をしなければならぬ段階になっておったわけでございますけれども、しかし、修理をする港というものについてまだ決めておりませんでした。四者協定を結ぶときには、すでに原子力船「むつ」に事故は起こっておったわけですから、これは修理しなければならなかったわけで、四者協定のときにはわかっておったわけでございます。
  99. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、修理しなければならないということがわかっていて、しかも修理をするのはどこであるかわからないまま四者協定をしたという、このことがそもそも政府の態度としては、あるいは自民党としてやったことかもしれませんが、結論としては無責任であった、こういうことなのですか。
  100. 前田正男

    前田国務大臣 無責任ということはないと思いますが、修理する、そして新しく定係港を見つけて出ていくというのが四者協定でございます。その精神として原子力船「むつ」が出ていくということでありますから、修理のためでありますけれども出ていこう、こういうことでありまして、別に無責任ということではないと私は思います。
  101. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局行く所なしに、出て行く方だけ決めた、その行く先を、日限を迫られていま佐世保と長崎に押しつけている、こういう論理が非常に明らかになったと思うのですね。  そこで、結局仮定の話でありますが、佐世保にいろいろお願いをしていらっしゃるようでありますけれども、今度はいよいよ佐世保で修理を終わって出て行くときの線引きは一体どのように話をしていらっしゃいますか。
  102. 前田正男

    前田国務大臣 先ほど言いましたとおり、修理港が決まりまして修理ができるということになりましたならば、定係港の話をいたしたい、こう思っておるわけでございます。
  103. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が言っているのは、たとえば三年とかあるいは四年とかこういうふうな日限を切って、この問お世話になります、なりたい、こういうふうに佐世保に要請しているのですか、こう聞いているのです。
  104. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいま長崎県並びに佐世保市にお願いしておりますのは、日限を切っておりませんけれども、作業内容というのを詳しく御説明申し上げておりまして、その内容によれば、おおむねこの遮蔽改修、総点検には三年間を要すると思っておりますと言っておりますので、自動的に大体期間としては三年程度という御理解はいただいておると思っております。
  105. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その三年たったときに結局よく言われる定係港が見つからない場合は、結果的には行く所がなくなる、このことだけは確かなのですね。
  106. 山野正登

    ○山野政府委員 三年たっても定係港が決まらないという事態というのはないとは私ども考えておりますが、全く仮定の問題としまして、そういう状況になれば定係港がないわけでございますので、定係港に回航することは不可能になります。
  107. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 定係港がない場合の「むつ」の所在はどこなのですか。
  108. 山野正登

    ○山野政府委員 三年、四年先の全くの仮定の前提に立っていろいろ議論するということはまたいろいろ誤解を招くとも考えられますので、そのようなことはこの際御答弁を御遠慮さしていただきたいと思っております。
  109. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 日本で最初の原子力船の開発並びに建造をやる場合に、一体いつ、どこで、どこまでの作業を進め、どこでどのようなテストを行い、どの時点でこの建造が終わった、こういうふうなスケジュールなしに、そのときそのときで考える、こんな研究の仕方はあるものでしょうか。
  110. 山野正登

    ○山野政府委員 私どもは、実はスケジュールが全くなしでやっておるというふうには考えていないのでございまして、遮蔽改修、総点検につきましては、三年間でもってこれを終了し、修理港が選定されました時点で、すぐに定係港の選定に入っておりますので、その遮蔽改修が済むまでには定係港は当然決まっておるであろうということで、三年たちました後は、定係港に回航して、ここで約一年間を費やしまして出力上昇試験等を行い、その後実験航海その一、その二というのを合計五年間を費やして行い、さらに最後の一年間で成果の取りまとめを行おうというふうに、全体のマスタースケジュールというものは立ててこれを行っておるつもりでございます。
  111. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 全く架空の定係港を当てにしてそういうスケジュールがある、そういうことなんですね。基礎なしですね。  そこで、大臣に再びお伺いしたいのですが、青森発言で、一つは、実験船だから事故が起こるのは当然だ、この部分であります。これはまず第一に、乗組員といいますか人間をモルモット扱いにするものではないか、まさに人間軽視につながっている発言ではないかと思うのですが、どうですか。
  112. 前田正男

    前田国務大臣 われわれは最善だと思って出港するわけですけれども、実験船ですから事故も起こり得るということであります。したがいまして、そういう場合に人体とか環境に影響を与えないように警報装置というものがついておりまして、そして警報で乗組員とかあるいは一般の環境に影響を与えないようにする、こういうことでございます。
  113. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、起こった事故そのものについての評価なんですが、大臣はあの二年前の放射線漏れ事故を重大だと思っているのですか、小さなトラブルだと思っているのですか、いかがです。
  114. 前田正男

    前田国務大臣 原子力におきまして放射線漏れというのは、一番安全に関係のある重大な事故だと思っております。
  115. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 あの当時は、出力一・四%で〇・二ミリレントゲンの放射線漏れが起こっている。もしこれを一〇〇%に出力を上げた場合には、大体計算上規定値の千倍程度の放射線漏れになるであろう、こういうように言われているわけでしょう。その場合、あの上甲板上に人間は一体おれるのかおれないのか、大臣いかがです。
  116. 前田正男

    前田国務大臣 もちろんそういうことには危険があるわけでありますから、それがために警報装置というものをつけてあるわけでございます。
  117. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 絶対大丈夫だと思っていた船が、そのような大きな放射線漏れを起こしている。これは遮蔽の重大な欠陥だ、ちょっとした手直しで済むようなものではない、こういう理解を大臣は持っているのですか。
  118. 前田正男

    前田国務大臣 持っておりますから、今度慎重にやろうということで、三年ほどかけまして修理をしなければいかぬ。時間を十分にかけて修理しなければいかぬし、また修理にかかる前にも十分な実験等もすでに終わっているようでございますけれども、十分に検討し、修理実施についても時間をかけて検討しなければいかぬ、こう思っております。
  119. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次に問題になってくるのは、ではそういう慎重な配慮が、実験船と呼ばれたその実験の過程で果たして行われてきたかどうか、これが問題になってくると思うのです。洋上試験に移る前に当然やっておかなければならない陸上実験あるいは各部分部分の実験あるいは各段階段階の実験、こういうものが果たして十分であったのかどうか、こういうことが改めて問題になってくると思うのです。そうでないと、実験船の扱いをしていたのかどうか、乗組員の安全を優先していたのかどうか、放射線漏れを重大だと思っていたのかどうか、こういうことの結論は私は出ないと思います。  三菱原子力工業の藤永氏が、舶用機関学会誌の七二年の十二月号でありますが、そこで「建造に先立って、陸上炉における改良のいくつかは採用したいという意見も出たが、時間的な制約と、特に根本的な改良設計に必要な設計費が非常に高価なものにつくために断念した」こう述べているわけですね。それから、同じようなことについては、同じく三菱原子力工業の豊田行雄氏も、これは解析に参加した人でありますが、JNSレポート構で、「時間的および技術上の制約から残された不満足な問題点も多い。」いずれも研究者は時間的な制約を訴えているわけです。なぜ事業団としては——事業団に一言言っておきますが、謹慎の身であるということだけば十分心得て答えていただきたいんで、現地長崎、佐世保でやっているような既成事実の積み重ねはわれわれは厳重に抗議しておきたいのであります。なぜ事業団はそのような時間的制約を押しつけたのか、これを聞きたいのです。
  120. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 その当時の細かい状況につきましては私もはっきり存じませんが、時間的制約というのは果たしてどういうようなものであったかということにつきましては、その著者がどういうぐあいに感じておったか、その辺については私もはかりかねるということでございます。
  121. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、きょう事業団からの出席者に対して、人は指定しなかったのです。過去がわかる人と言ってあるのですね。いまのお答えは答えになっておらぬのですがね。じゃ、もう一人の佐藤さんは、そのつもりで来られたのじゃないですか。いかがですか。
  122. 佐藤祥

    佐藤参考人 いま瀬崎先生からお話がありましたけれども、私は昔から事業団におりました。確かにおりましたけれども、一職員としてやっておりまして、それぞれポストがございますので、いまの御質問にお答えできる部分とできない部分があるかと思います。(瀬崎委員「できる部分は」と呼ぶ)  ただいまのできる部分はという御指摘でございますが、時間的制約というのは、かなり主観的なものがお互いにあると思います。それで、私、実際中におりまして、そういう時間的制約のために仕事をはしょっていくことはなかった、こういうふうに考えております。
  123. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、実験船だという限りは、少なくともそれに加わっている研究者がまだ不十分だと言っている部分について、急ぐ必要はないはずではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  124. 前田正男

    前田国務大臣 私もその当時のことはよくわかりませんけれども、それがために、こういう問題に対して政府でいろいろ調査された委員会等が報告を出しておられるのじゃないかと思いますけれども、私自身はその辺の事情は、またどういうことでそういうことを言っておられるのか、内容のこともよくわかりません。
  125. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一般的に言って、少なくとも全く初めてのものを実験していこうという場合に、一体急ぐべきなのか、それともゆっくり時間をかけていくべきなのか、この点はどうですか。
  126. 前田正男

    前田国務大臣 一般的に言っておっしゃるとおりで、十分な検討をし、また必要な研究をし、また時間をかけていくことも必要だと私は思います。しかし、ただ実験の目的というものがあるでしょうから、その実験の目的というものにも合わせていかなければならぬ、こういうこともあり得ると思います。したがいまして、一般的な話としてはなるべくそれは慎重にやるのにこしたことはないと思います。
  127. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、事業団が十年延長したいとかなんとか言ってくるけれども、それは少なくとも過去のこういった建造に、開発に参加した学者のいろいろな意見をまじめに検討して初めて出直しを決意していることになるんで、いまのように学者指摘に対して、私はそうは思いませんとか、いや過去のことはわからないとか、こういう現状では再出発にも何にもならないと私は思うのですね。結局、現状維持で延長しようとしているだけじゃないか。いまの一言で私は非常によくわかった。  藤永氏が「根本的な改良設計に必要な設計費が非常に高価なものにつくために断念した」と指摘しているのですが、もし根本的な改良設計をこういう技術者、研究者の主張どおりやったとしたら、どの程度の費用がかかると推定されるのですか、事業団の方は。
  128. 佐藤祥

    佐藤参考人 三菱原子力ですか、いまの藤永氏の論文につきましては私は存じておりません。したがいまして、どれだけかかるかということについてはお答え申し上げられません。
  129. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 倉本さん、どうですか。
  130. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 藤永氏の言われる、その改良設計というのがどういうものであったかということにつきまして、私も知見がございませんので、それにどの程度費用がかかるかということについては、私としても数字を持っておりません。
  131. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これからいろいろやり直そうというのに、過去のこのような貴重な、かつ重要な提案を全然検討しない、こういうわけですね、大臣
  132. 前田正男

    前田国務大臣 私は、政府調査会がそういうことを検討したかどうか知りませんけれども、そういういろいろな事実があるからこそ、政府で慎重に検討して、そしてその政府が検討しました意見に従って今度修理をしよう、こういうことじゃないかと思います。
  133. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 しかし、当の事業団の、少なくともこの問題について過去について一番よく知っている人に出頭願って、知らないと言うわけですね。検討していないという事実があるわけですよ。いかに政府が検討したって、いま事業団にやらせようとしている、その事業団が知らないと言うわけです。これで、そういう指摘にこたえたと言えるでしょうか。——いや、これはいいです。  同じような意味で、昭和四十二年の日本原子学会では、日本鋼管、日立製作所それから三菱原子力工業、船舶技研の関係技術たちが、「原子力船一次遮蔽モックアップ実験」という題で「炉心に対して斜上方向へのガンマ線および中性子の遮蔽体中での減衰は、遮蔽体が複雑な形状になるため、現在の理論計算の技術では信頼できる値を得ることは困難である。一方実験的にも単純な小規模の装置から類推することはむつかしく、結局実規模の大きさのモックアップ実験が必要である」こう述べた。この実規模大のモックアップ実験をやっていなかったことは、すでに国会でも証明された。  そこで、この前のこの委員会で船舶技研の中田原子力船部長においでをいただいて、その中田さんの御発言からきわめて重要な問題が新しく出てきたわけです。船舶技研では、昭和四十一年から四十八年にかけて遮蔽の計算方法については、当時の計算方法、つまり計算コードが非常に粗雑で細かいところには間に合わない、そのための改善の研究を進めていた、こう答えられたわけですね。事業団は、当時このことについては知っていたのですか、注目していたのですか。
  134. 佐藤祥

    佐藤参考人 これは先生お読みになったと思いますが、大山委員会の報告にもございますように、それからいま先生がおっしゃいましたように、船研で開発しておりましたのは四十八年ごろまでとおっしゃったと思います。そのようにコードの開発をやっておったということは承知しておりますが、その開発の結果が使えるようになりましたのは、いまおっしゃいました四十八年で初めて一応のめどが立ったということでございまして、そのとき、私もよく記憶しておりますが、私どもは船を運転するという立場におりまして、技術者をほとんどその運転の方に使っておりましたので、これは大山委員会指摘されたとおり、そこまで新しい遮蔽のコードを使って計算をし直すというための遮蔽の設計者がおらなかったということは事実でございます。そういうことで、知ってはおりましたが使わなかったということであります。
  135. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、これは科技庁の方に聞きたいのでありますが、少なくとも「むつ」というのは、原子力船の開発研究全体の中に位置づけられておったのですか。原子力開発研究の基礎研究その他、他の部分と全く切り離して「むつ」だけつくろう、そういう形になっておったのですか。どうですか。
  136. 山野正登

    ○山野政府委員 原子力船事業団におきます「むつ」の開発と申しますのは、もちろんお説のとおり、全体の原子力船開発の一環として取り上げておりましたし、それからまた、その研究開発を進めるに当たっての姿勢と申しますのは、できるだけ関連の原子研究所あるいは船舶技術研究所というものとの技術情報の交換は十分にやっていくべきであるという姿勢であったと考えております。  したがいまして、いま先生指摘の船研で行っております計算コードの研究成果につきましても、今般の遮蔽改修に当たりましては、十分参考資料として取り入れまして、これを使ってやっていこうというふうに考えているわけでございます。
  137. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣にお尋ねしたいんですが、実験船だとおっしゃいましたね。そして先ほど申し上げましたように、この「むつ」の遮蔽に関与した、一人じゃないですね、何人かの技術者が、現在の理論計算の技術では信頼できるような結果を得られない、本来実規模大実験が必要なくらいだ、こういうことも言っているわけですね。これは実験もしなかったわけです。それなら当然不安を伴っているんだから、しかも船研がやっていることを知っているんなら、その開発したコードで、洋上試験の前に改めて計算し直してみる、あるいは設計をチェックしてみる、あるいはでき上がった遮蔽の点検を行ってみる、これが普通の、つまり実験に臨む態度、研究開発の態度じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  138. 前田正男

    前田国務大臣 その辺の事情については、先ほど答弁のありました大山調査会で何か調べておられるようですが、私もその辺のことはよくわかりませんけれども、現在のところ、いま局長答弁しましたとおり、われわれは今度の改修に当たりましては、十分にそういう問題を取り入れまして、モックアップ試験もするし、またそういう船研の理論も取り上げまして、そして十分に時間をかけて改修をしよう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  139. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、少なくとも大臣は実験船だと思っていたけれども、本来実験船がとらなければならないような手順は過去省かれておった、こういうことはお認めになるわけですね。
  140. 前田正男

    前田国務大臣 その辺のことは私が調べておりませんからよくわかりません。しかし、大山調査会が指摘されている点があればそのとおりだと思います。
  141. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、佐世保にいろんなことをお願いしていらっしゃるのに、そういう重大なことを、調べていません、これで果たして大臣の職責を果たせますか。
  142. 前田正男

    前田国務大臣 したがいまして、私は現実に起こりました問題に対しまして、万全を期して修理をしていかなければならぬ。したがいまして、いまお話しのように、瀬崎さんの御指摘になっているような船研で考えられました理論の計算をし直す、あるいはモックアップ試験もする、しかも十分に修理の時間をかける、こういうことでやろうということでありますし、また、佐世保自身に対しましては、放射線に対して御迷惑をかけないように、入港してから出港するまでの間出力試験をしない、こういうことで、佐世保の方には御迷惑をかけないようにする、こういう方針をとっておるわけでございます。
  143. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この間船研の中田さんにお伺いしたら、米国から来た遮蔽のチェック・アンド・レビューについても、そういう資料は見せてもらってない、今日も見ていない、こういうお話だったんですね。少なくともこういう新しい遮蔽の理論研究あるいは計算方法の開発を一生懸命やっているところにこういう貴重な資料をなぜ提供しないんですか。政府が全体として原子力船の開発に取り組んでいるというなら、こういう横の連絡も私はあってしかるべきだと思うのです。なぜでしょう。事業団の方に。
  144. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 現在私どもの方で改修計画あるいは総点検等の作業を進めておりますけれども、この段階におきまして、遮蔽の改修につきましては私ども技術委員会の中に遮蔽専門部会をつくりまして、また、ここにはそれぞれ船研の方々の御意見も伺いつつその改修計画をいたしておるわけでございますが、その過程におきまして、また、その以前におきましても、チェック・アンド・レビューその他いわゆる情報につきましての交換等は十分行われていると思いますので、ただいまの中田さんのおっしゃいましたのはどういう点の情報であったのかという点につきまして、これは私も推測しかねる点でございますが、少なくともこの遮蔽改修、現在検討を進めております問題につきましては、船研の頭脳、船研の持っておられる情報、もちろん原研、それから各メーカー等の方方の間の情報交換というのは十分に行われておると私どもは思っております。
  145. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、一体この船研がやっている原子力船関係研究、費用にして二十年間でわずか十億円だということを、この間中田さんはおっしゃった。来年一年間で事業団が修理につぎ込もうとする金が十億円で、二十年分と一年分と匹敵するわけですね、片方はしかも修理のために。そういう点でもこの基礎研究をいかに軽視されておったか、わかったわけでありますが、その船研での研究というのは、一体「むつ」を含めて原子力船の開発に必要なことをやっているのだろうか、全く必要のないようなことを勝手に向こうは向こうで研究をやっているのだろうか、どっちなんですか。事業団、どう思っていたんです。
  146. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 もちろん船研でやっておられます研究開発は、「むつ」を含めまして日本の将来の原子力船開発のために役に立つ研究を進めておられる、こういうぐあいに考えます。また、私どもの方で行っております「むつ」の設計あるいは建造の過程においても、いろいろな試験研究を船研あるいは原研等々、共同あるいはまた委託等によりましても研究開発を行ってきて、それらの成果を「むつ」に反映もしておりますし、また、現在私どもの遮蔽改修等には、この船研の開発されました遮蔽の計算コードというものも、この放射線漏れの原因究明のための解析につきましても、船研の力をお借りして船研で開発もしていただいておりますし、また、現在、その後原研でやりましたモックアップ実験等の解析についても船研のコード、また船研の方々との共同という形をとって研究をいたしております。これはやはり将来の原子力船開発の基盤の一つになることを信じております。
  147. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、船研で開発されたこの計算コードを事前に適用しておれば、何も洋上で実験して漏れるのを発見するまでもなくこれはわかったことなんでしょう。しかも、その新しい計算コードは船研でも開発されているけれども、その前にアメリカでも開発されておったわけでしょう。しかも、この遮蔽工事を行ったりあるいは設計を行った三菱原子力工業の社長は、この国会に来て、それを最近まで知らなかった、こう言っている。こんな大事なものを建造しているところがそういうことを知らない、そうしてこの事業主体である事業団にはこういうものを適用する技術者もいなかった、そういうことについてなぜ監督官庁の科技庁がわからなかったのかというのが不思議でならないわけですね。なぜそういうことを事前に発見することができなかったか、この点をきちっと反省してますか。原子行政の欠陥と言われているのはこういうところなんですよ。大臣……。
  148. 前田正男

    前田国務大臣 そのときのことは、先ほど申しましたとおり、私もよくあれですけれども、それがために政府では調査会をつくりまして厳重に調べて、そうしてそういう調査に基づいて今度の新しい体制を整えていく、そういうことになっておるのだろうと思います。
  149. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、大臣でも満足な答弁ができないというんなら、現在の政府部内で、当時、なぜ初めての原子力船をつくるに当たって少なくとも必要な技術陣が肝心なところになかったのか、なぜアメリカでもあるいは日本でも開発されている計算コードが実験船に適用されなかったのか、そういう日本の欠陥原子行政の体制についてなぜ科技庁がそれを事前に発見できなかったのか、こういうことがいまきちっと原因究明されていなかったら、何を改めるということになるのですか。一体だれが答えるのか知りませんが、もう少し責任ある答弁を求めたいと思います。
  150. 前田正男

    前田国務大臣 それでありますから、そういう問題を含めまして調査会ができて、政府としては検討して、そしてその欠点を改めて、この修理をしよう、こういうことじゃないかと思います。
  151. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、当時科技庁の行政の中で一体どこにその欠陥があったのですか。何が欠陥だったのですか、調査会の結論は。
  152. 山野正登

    ○山野政府委員 「むつ」の放射線漏れ事故につきましては、先生承知のとおり、放射線漏れ問題調査委員会がしさいにこの原因究明等を行って、今後の改善すべき点というのを指摘しておるわけでございまして、単なる技術的な原因究明のみならず、事業団の体制につきましても、また、政府行政につきましてもいろいろ指摘があるわけでございます。私どもはこれを受けまして、一つは、原子行政、特に安全規制面におきまして、この安全規制についての責任の所在が不明になりがちであるといったふうな御指摘もあったわけでございますので、これはことしの一月に行政府レベルでは原子力安全局というものをつくりまして、安全規制面での体制の強化並びに開発からの分離ということをいたしましたし、また、この放射線漏れ問題を契機にいたしましてつくられました内閣原子行政懇談会におきましても、本年七月末に御提言がありましたので、この御提言を受けまして私どもいま所要の措置を講じようとしておるわけでございます。  総じて申し上げられますことは、私ども並びに事業団とも、その当時は一生懸命に最善を尽くしてやったと考えておったわけでございますが、このような放射線漏れ問題調査委員会等の結論等を拝見しまして、結果的に反省すべき点が多々あったということはよく自覚しておりますので、そのようなことを今後繰り返さないためにも、とりあえずは例のわが方と運輸省でつくりました総点検・改修技術検討委員会といった第三者機関的な場で今後のすべての計画作業を洗っていただくというふうにも配慮して進めておるわけでございまして、いま先生の御指摘の重要な問題というのは、今後の私どもの監督行政あるいは事業団の開発業務というものにできるだけ生かしていきたいというふうに考えております。
  153. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 舶用炉の基礎研究の現段階については、事業団としてはどう考えておるのですか。
  154. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 この舶用炉自身につきましては、基本的には原子炉、これはもう発電炉と共通した問題であるわけでございまして、この舶用炉としての特徴は、動揺の問題、振動問題等がございます。舶用炉としての基礎研究につきましては、主として船舶技術研究所あるいは原研等で過去十数年にわたって進められてきておるわけでございます。また一方、海外におきましても、アメリカは「サバンナ」あるいはドイツの「オットー・ハーン」を中心といたしました研究開発、またアメリカ、フランス等もいろいろ設計研究等もやっております。また設計研究につきましては、日本も共同研究等、情報交換等を進めておりまして、あと、最も残されたところといいますのは、この基礎に立って原子炉をつくり、それを運転をする、運転をして、いろいろその過程においてなお陸上炉と違う点あるいは舶用炉としての問題点というものを解明をしていく必要が残されておるというぐあいに思っております。
  155. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると、あなたの論理からいけば、いきなり現実に八千トンからの船を動かす舶用炉の製造が可能なレベルの基礎研究やあるいは実験等々についてはもう済んでおったと、こういう理解の上に立っておるわけですね。
  156. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 「むつ」の建造、開発に着手いたします時点におきましては、その当時、その陸上においての設計、建造に必要な試験研究というものはどういうものをやるべきであるか、また、この船が、炉が一応形を整えた段階で、これを出力上昇をやりながらいわゆる一〇〇%出力になりました段階でいわゆる完成ということになるわけでございますが、完成をするまでにどういう手順、どういう開発をやるべきかということについては、専門部会あるいは技術検討委員会等におきまして専門方々の御意見を承りながら項目を出し、それらについての検討を行ってきたということでございます。
  157. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 要らぬことを答える必要は全くありませんから、もっと短い言葉で端的に……。  問題は、「むつ」に舶用炉を載せるに当たって、少なくともいきなりこういう大きな船を動かし得る船専用の原子炉の基礎的研究は基本的には終わっているという理解でやったことなのかと、こういうことを聞いているわけです。
  158. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 その当時におきまして、技術者は、関係者は、これはできるという確信を持っておったと思います。
  159. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 四十一年九月七日の原産会議理事会ではこういうことを言っていますね。「わが国における原子力船の研究開発は、昭和三十年以降原子力船調査会および原子力船研究協会を中心として進められてきたが、舶用炉に関しては、調査研究の域を越えず、その他原子研究所、運輸省運輸技術研究所等において部分的な実験研究が行われているに過きず、これは今日においても同様である。」あなたの認識と、少なくとも原産会議、産業界の代表ですね、と大分違っているわけですよ。しかも、船舶技研が本格的に舶用炉を研究しだしたのはいつごろか御存じですか。
  160. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 私ども手元に資料がございませんけれども、記憶にいたしますと、船研は当初は舶用炉についてのいろいろな勉強を比較的初期から一緒にやっておられたと思いますが、科技庁の方から委託研究あるいは造船研究協会等でも舶用炉の研究というものを進められましたのは、三十四、五年じゃなかったかと思いましたけれども……。三十四、五年ごろから舶用炉の研究開発、その前にいろいろ動揺の問題とか振動の問題とかの検討等もやっておられたと思います。
  161. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 原産会議指摘は、先ほど読み上げましたように、四十一年の段階でまだ試験研究の域を出ず、こう言っているわけです。それからここに、当時の運輸技研、現在の船舶技研等も部分的に手がけているが、これが本格的にやりかけたのは、この間中田さんも来てわかったわけですが、昭和四十六年からなんです。現状では舶用炉についてこれが果たして実用化の可能なものであるのかどうか、評価の方法すらまだ見きわめられていない、また資料等についても集積はできるけれども分類が十分できない、こういう段階で遅々として作業が進まない、こういうことをおっしゃっているわけです。だから「むつ」に積み込んだ原子炉が果たしてそのまま研究開発としても役に立つものなのかどうか、専門家に言わせれば現状では科学的に判断できないということではないかと思うのですよ。  そういうわけで、私は、科技庁の現在とっている、とにかく「むつ」を修理することだけが原子力船研究開発のすべてである、ここに問題があると思うのです。もっとほかにしなければならないことがたくさんあるし、基礎研究としての舶用炉などは遅々として研究が進まない、こう言われているのです。  したがって、これは大臣として検討いただかなければいかぬ問題ですが、このおくれている、遅遅として進まない部分を大いに積極的にやって、しばらく「むつ」の問題というものは慎重に考えられたらどうなんですか。これが手順じゃないですか。
  162. 前田正男

    前田国務大臣 「むつ」は現実にできておりまして、そして修理を要する状態になっておるわけでございますから、これはこれで修理をしてまたその目的であります実験を達しなければならぬと思いますが、舶用炉自身につきましては、この原子力船というものにかかわりましたいきさつから見まして、当然日本は将来原子力船時代が来ましたときに実用的な原子力船を世界に伍して運営していかなければならぬ、そういうために原子力船というものに日本国家として取り組んだわけでございますから、「むつ」でもってすぐに実用船になるわけではありませんで、お話のとおりもっと基礎的に、これから舶用炉を原子力船全体に対しまして並行して研究を進めていく必要があるんじゃないか、またそういう体制も考えていかなければならぬのではないか、こう思っておる次第でございます。
  163. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その基礎的な研究を大いに進め、また、そのために必要な研究開発体制を考えていかれるならば、そういう研究の過程で恐らく「むつ」そのものについても、これを今後どのような方法で活用することが原子力船開発全体に役立つのか、あるいはまた「むつ」そのものに対する科学的評価というものも現在相当まちまちですが、これもある程度一致してくるであろうと思われるわけですね。だから、現在政府のやっていることを優先順位を逆にして、しばらく「むつ」の修理問題というものについてはお預けにして、いま大臣が言われたようなおくれている基礎研究部分推進される、こういうことが、言うならば、青森の漁民に対しては出ていきますと約束し、そして長崎へ行っては受け入れてくださいと言うこういう矛盾を冒さなくて済む、つまり国民的合意が原子力船開発研究について打ち立てられる道ではないかと思うのです。そういう道を採用していくようになさいませんか。
  164. 前田正男

    前田国務大臣 それは、現実に原子力船というものができておりまして、そこに乗組員も乗っておりまして、そして過去のいきさつがありまして、四者協定その他の政府としても尊重しなければならぬ義務もあるわけでございますから、原子力船「むつ」自身につきましては、これを修理をいたしまして、そして目標である実験を終わるということを進めざるを得ません。しかしながら、原子力船の問題を基本的にどうしていくかということについては、すでに原子力船懇談会というものができまして、各界からの意見が集約されておるようでございますけれども、こういうようなものをもとにいたしまして、政府といたしましては、今後原子力船の基礎的な研究開発からこれをさらに実用化するということにつきまして十分に取り組んでいって、日本の国家として将来おくれをとらないような体制を整えていかなければならぬじゃないか、こう思っておるわけでございます。
  165. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 また気になることを言われるのですね。四者協定の尊重はいいですよ。しかし「むつ」の修理は四者協定尊重のためにやるのか、それとも本当に科学の進歩のために莫大な費用をかけて修理をしようとするのか、一体基本はどっちなんですか。
  166. 前田正男

    前田国務大臣 両方でございます。先ほど私が説明しましたとおり、原子力船というものについて多額の国費を投じまして現在できておるわけでございますから、これを修理して、目標であります原子力船の実験をする、こういうことと、同時に、私たちは四者協定というものを結んでおります。そういうものに対しましては政府は尊重しなければならぬ義務がありますから、いま御説明しましたのは両方あわせて御答弁したわけでございます。
  167. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局ここではっきりしてきたことは、実験船、実験船とおっしゃいますけれども、まず第一に、各部分部分について、あるいはまた洋上試験に至る前に陸上でやらなければならない試験について、また各段階ごとの必要な実験が行われていなかった。それから二つ目には、初めての原子力船建造に必要な基礎的研究が全くと言っていいほど日本では行われていなかった。第三に、わずかな基礎研究の成果すらもこの「むつ」には残念ながら生かされなかった、こういうことは明白になった。しかも、先ほど来の事業団関係者の話では、そういう過去の結果について、現在よく教訓を学び教訓を蓄積し、これからに生かそうというどころか、過去を知らないというふうな状況もまたここで暴露されてくる。このまま事業団を延長しようとすることが、結局国民の目から見るならば欠陥原子力船のさらに延長線をやろうとしておるというふうに映ってくるわけだ。こういう点から言っても、先ほど長官も触れられた、改めて基礎研究を含めた新しい開発研究体制に移行する、こういうことがあればまた違った局面も展開されるということになってくると思うのです。  そういう点でも、ひとつこの際、この事業団の延長というものは政府みずから撤回して、そのような新しい研究開発体制に移行していく。そういう中で、われわれは「むつ」をつぶせとか何とか言っておるのじゃなくて、「むつ」の活用をいかにしたらいいのか、「むつ」についても今後どういう研究開発に役立てる方法があるのか、これはおのずから国民的合意が得られるような意見が出てくるであろう、こう思うわけなんであります。  時間がありませんから、こういう私ども見解を述べて、終わっておきたいと思います。
  168. 八木昇

    八木委員長代理 次に近江巳記夫君。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 まず初めに、二十四日、青森市での長官の原子力講演会の発言の問題についてお伺いしたいと思っております。  先ほど長官は、他の委員質問に対しまして、本意でなかった、こうしたお話があったわけでございますが、少なくとも前田長官につきましては、本委員会でわれわれ同僚議員として長年やってまいりました。科学に対する理解、そうした点におきまして非常に深く理解しておる人である、このように思っておったわけですが、後で本意でなかったという訂正をなさったにしても、そういう考えを持っておられたのかなと非常に残念な思いがするわけであります。  それで、いわゆる「むつ」の事故、これは一体なぜ起きたかというような問題、いろいろ論議されておるわけですが、たとえば三菱原子力工業の藤永一氏は日本造船学会誌の五百二十一号、昭和四十七年十一月に、「「むつ」の基礎設計が行われて、いよいよ建造が確定するまでには種々の事情で相当な日時を要し、その間陸上炉においては大きな技術革新が行われ、建造着手決定時には「むつ」炉心は非常に旧式なものとなっていた。しかし、主としてソフトウェアが高価なために、改良設計は断念した。」このように述べておられるわけですね。また、「むつ」放射線漏れの原因について調査しました大山委員会報告書、これは十一ページでございますが、「これらの計算の不備などを補うため一般に行われているモックアップによる遮蔽実験が計画、実行されたが、そのときすでに問題のストリーミングを予測し得る明らかな現象が観測されている。また、米国ウエスチングハウス社による設計のチェックアンドレビューの結果もストリーミングの可能性指摘し、一つ対策を勧告している。」こういうようにあるわけですね。要するに、「むつ」の放射線漏れ事故というものは起こるべくして起こったことが明らかではないか、このように思うわけです。また、この大山委員会の報告によりますと、今回の問題は「単なる偶発的な事象とみるよりも、むしろ、そこに内在する本質的な諸問題を検討する一つの契機と考えた。」このようにしているわけです。  こういうように、やはり今回のこうした放射線漏れ事故というものは起こるべくして起こったわけですね。そういうことを長官が深く認識なさっておられるなら、しかも、あれだけ迷惑をかけた現地における発言であるわけですからね。実験だから、そんな事故が起きるのは当然だということは、きわめて軽率ではなかったかと私は思うのですね。これは本意でなかったという、ただそういう補足だけで、国民としては納得できないのではないかと思うのですね。やはりそういう発言をされたことについて、本当に心から遺憾と思い、反省なさっておられるのかどうか。この辺、率直な長官のそういう気持ちがないと、ちょっと納得しにくいと思うのですが、いかがでございますか。
  170. 前田正男

    前田国務大臣 そのことにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、知事とかその他の新聞の方、皆さんおられるところで、演説、講演のために言葉が足りなかったので、その点について私から釈明をさせていただいたわけでございます。  それで、私といたしましては、最善だと思って出航したのだけれども、やはり人間のやることでありますから、実験をすれば故障は起こり得る、起こり得る可能性がある、こういうことを申し上げたいと思ったわけでございます。しかし、それに対して、そういう場合に備えて警報装置があって、人体とか環境汚染とか、そういうことに対して十分の対策を講じておる、こういうお話をして、そしてまた、実用船に至るまでの間には、やはり何回か実験あるいはまた改良ということを行わなければ実用船に至らないのではないか、こういうお話をいたしたわけでございます。したがって、いまお話しのように、私の言葉が足りなかった点に対しましては釈明をいたさせてもらったわけでございますけれども、実験であるからそういうことが起こり得る可能性がある、こういうような趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 あれだけ問題になり、いわゆる「むつ」が原子行政を象徴しているんだという、国民から非常にそういう不信で見られたわけですね。ですから、少なくともわれわれとしては万全の準備をするべきであった、いままでそういうようなストリーミング現象であるとかいろいろなことを言われておりながらやらなかった、そういうことでこういう放射線漏れ事故が起きたということはまことに申しわけない。長官はやはり平謝りに、現地に行かれたときには、これは政府の手落ちで、もちろん実験上いろいろなことは、そればどういうことが起きるかもわからないけれども、しかし、石橋をたたいてそして臨むべきであったのが、それが本当にしておれなかった、まことに申しわけなかった、だからこういう事故が起きたという、そういう心からのやはり現地に対するわびであり、この長官の決意というものは当然出てもあたりまえじゃないかとぼくは思うのですね。この点はただ、もう釈明というだけでなく、やはりこうした発言については遺憾である、申しわけなかったという率直な長官のそういう反省というのは必要と違いますか。
  172. 前田正男

    前田国務大臣 その点につきましては実は記事の方で不十分なんですけれども、私が一番先に行きまして講演の席でもあるいはその他の席でも申し上げましたことは、実は私は長官に就任して、大変いろいろなことで御迷惑をかけておる、そういうことと、また現に「むつ」を預かってもらっておる、こういうことについて——私はいろいろな会合の席には、ほかで大阪なんかに出ましたけれども大臣としての視察は一番先にむつへやってきて、そしてこういう十分でなかったためにいろいろな点、御迷惑をかけたということに対して一番先にやってきたんだ、そういうことを一番先に申し上げて、講演の場合もそれから知事のお話のときも話を申し上げてあるわけです。だから、いま近江委員のおっしゃるとおりに、われわれといたしましては出航する前に安全と信頼性等十分に検討して迷惑をかけないようにするのが当然であったのですけれども、そのとおりにいかなかった、大変御迷惑をかけたのであいさつにやってきたということを一番先に、冒頭に申し上げてからああいう発言をしたわけでございまして、その点はひとつ近江委員のおっしゃるとおりに、私は皆さんに、青森県の人にもあるいは佐世保の人に対しましても、大臣に就任して、そういうことの遺憾の意を表するために、御迷惑をかけたというために、あいさつにやってきたんだ、そういうことを一番先に申し上げてお話をしておる、そういうことでございます。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 その冒頭の、いわゆる科学技術庁長官として、最高責任者として、そういう発言をなさった、これは非常に結構だと思うのですね。しかし、やはりその姿勢は、言葉の一言、一言、最後まで貫かないといかぬと思うのですね。冒頭は長官として立場上そうおっしゃる。しかし、中間の段階では本音がやはりちらりと出る。これでは、初めにそういう非常に低姿勢の大臣の姿勢というものは評価しても、何だ、また本音が出たじゃないか、これではどうにもならぬわけですね。ですから、この釈明をしなければならなかったというような、そういうこと自体、やはりこれは反省なさって、遺憾であった、申しわけなかったという率直な−いま釈明したということだけですよ。本当に反省をなさって、今後やはり言葉には気をつけなければならぬし、やはり言葉ということは心のあらわれですから、最高の科学技術庁長官が、やはりそれは気持ちというものはぱっと言葉に出る。言葉というのは非常に厳しいものですよ。これは消しゴムでは消えないです。だから、釈明をなさったということは、これはやはりまずかったことなんですから、それは遺憾である、申しわけないということは率直にやはり表明なさった方がいいのじゃないかと思うのですが、釈明なさったことについては、その遺憾であるとか申しわけないというような気持ちはないわけですか。
  174. 前田正男

    前田国務大臣 言葉が足りなかったので、釈明したということは遺憾であったということで釈明したわけでございますから、言葉が足りなかったということについては遺憾である、こう思いますから、釈明をしたわけでございます。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても長官、森山さんのときにはかなり強硬にこうした出航ということをされ、またこういう事故も起きた。それから佐々木さん、そして前田さんと、やはり国民がこの問題については非常にぴりぴりしているわけですから、ひとつ国民と同じ気持ちでやっていただく、その気持ちというものがありますと、そういう釈明をしなければならぬというような、そういう場面にはならぬと思うのですね。だから、十分そうしたことをひとつ心して、今後いろいろとまた指示等も出していただきたいと思いますね。  それから、国民のいわゆる合意を得ておらない現在の原子行政のあり方、とりわけその象徴とも言うべき原子力船「むつ」は、放射線漏れ事故とその対策及び修理港、母港選定のみに非常に政府が眼を奪われておるのじゃないかと思うのです。やはり何といいましても、原子行政の根本的な見直し、確立とともに政府としてこの際広く「むつ」についての国民の意見を求める必要があるんじゃないか、このように思うのですが、その点についてはいかがお考えでございますか。これは原子力局長、あるいは倉本さん、大臣とお三人からひとつ御意見を聞きたいと思います。
  176. 山野正登

    ○山野政府委員 「むつ」の問題につきまして、私ども修理港、定係港問題のみに専念しておるというだけではございませんで、先ほど大臣答弁申し上げましたように、今後わが国の原子力船の開発というものはいかにあるべきかということにつきまして、原子委員会原子力船懇談会でいろいろ御審議いただきましてその結論をちょうだいしておるわけでございまして、これは今後のわが国の原子力船の開発に当たっては、原子力船「むつ」の完成という問題と基礎研究、特に舶用炉並びに遮蔽についての研究というものも並行して官民協力して進めるべきであるという御提言をいただいておるわけでございまして、この全体につきまして鋭意努力しておるつもりでございます。  この原子力船問題全体の姿につきましては、そのように各界の有識者の方々の御意見をちょうだいしておりまして、単に政府部内だけ、あるいは事業団部内のみの狭い範囲での検討結果に基づいての行動と申しますよりも、幅広く国民各層の御意見も反映された場でいろいろ御意見をちょうだいしてこれを実行に移しておると思っておりますので、先生のおっしゃいます方向で私ども考えておると思っております。
  177. 倉本昌昭

    ○倉本参考人 事業団といたしましては、この放射線漏れという非常に深刻な事態を引き起こした、問題を起こしまして、事業団としては大いに現在も反省をいたし、この「むつ」の遮蔽改修及び「むつ」を完成させますために現在安全性の総点検等をいたしておりますけれども、なおさらに引き続きこれを完成させ、試験、実験を行っていくその過程におきましては、過去においていろいろやはり問題として御指摘を受けました点、またみずからも反省をしてそういうことのないように体制を整えるとともに、やはり必要な研究開発等等も積み重ねて、二度とこういうことを繰り返さないようにいたしたい。  また、当然遮蔽改修に当たりましても、「むつ」自身ももちろん直すために研究開発を現在進めておるわけでございますが、これらの成果はとりもなおさず次の時代の原子力船への研究開発としてむしろ自信を持った将来の基盤となるような研究をいたしながら進んでいきたい、そういう覚悟で事業団全体でいま当たっておるところでございます。
  178. 前田正男

    前田国務大臣 「むつ」の問題及び原子力船についてはいま答弁がありましたとおりでございまして、それらを含めまして、この問題以来政府としては安全を第一に考えようということでございまして、政府に皆さんの御協力を得まして安全局ができまして、安全研究予算をふやしておりますし、来年度からは原子委員会を安全委員会と二つに分けて、安全を最優先にして考えていく。そういうふうに反省をして、それを実行していかなければならぬ、こう考えておるわけであります。     〔八木委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府のいわゆる開発優先の姿勢というものは、国民からは非常に反発を受けているわけですね。たとえば放射線廃棄物の問題、安全性の問題、環境問題、いろいろあるわけですけれども、そういうことでたとえば中央シンポジウム等につきましても、やはり政府の開発優先というそういう姿勢に対して反発があるんではないかとも言われておりますし、こういうふうなことでは国民の納得のいく「むつ」の再出発というものは考えられないんじゃないか、このように思うんですね。先ほども御答弁があったわけですが、率直に大臣がいまお考えになっておられる——国民みんながそういうように思っておるわけですから、「むつ」の再出発というのはどのようにしてお考えになるのですか、どうですか。
  180. 前田正男

    前田国務大臣 原子力船につきましては、先ほど答弁もいたしましたし、原子力船懇談会等の議論を聞きまして、そうしてそれをまとめた御意見等尊重いたしまして、基本的に十分な研究対策として将来の原子力船の実用に間に合うように日本としてもこれを開発していかなければならぬかと、こう思っておりますけれども、「むつ」というもの自身は現在もうすでにできておりまして、そこに現在乗組員も乗っておりまして、また「むつ」の港で御厄介になっておるわけでございますから、これはこれとしてやはり四者協定のこともございますし、これを尊重する義務もあるわけでございますから、まず何といたしましても修理をしなければならぬ、こういうことでございます。しかし、修理をするに当たりまして修理港に御迷惑をかけてはいけませんので、入港してから出港するまでの間に出力上昇を行わないということで放射線の御迷惑をかけない、こういう態度で修理をやりたい、こう思っておるわけでございまして、修理を慎重に今度は時間をかけて行いまして、その後新しい定係港に移しまして、そしてこの所期の目的である実験の終わるまでこの「むつ」を、目的を達成するように利用していきたい、こう思っておる次第でございます。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうも理事会の席上、長崎県の漁協の組合の連合会から十万五千名の署名をとって陳情を受けたわけです。そして佐世保としては受けるわけにはいかない、このように言ってきているのですね。長官が率直にそれを受けとめられて佐世保にしないということになってきた場合、ほかにどういうところに修理港を考えていますか。
  182. 前田正男

    前田国務大臣 修理港は長崎県佐世保にお願いする、こういうことで政府としては最善の努力をしておるわけでございますが、きょうも陳情及び抗議がございましたのでその席でも申し上げましたとおり、できるだけひとつ御理解を賜りたいし、そのかわりにまたわれわれは佐世保に入港して出港するまでの間には出力上昇をやらないで放射線による御迷惑をかけない、こういう線でやりたいと思っておりますので、ぜひ御理解を賜りたい、こういうことをお願いしておるわけです。
  183. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど長官は、佐世保以外にないんだと。それで、佐世保において「むつ」の修理をして、そうして出力試験はそこではしない、そうすると洋上ということでしょうね。この安全性について確認した上で母港を決めるとおっしゃるわけですが、この原子炉はどこでこれを動かして安全性というものを確認するのですか。
  184. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいまのこの出力上昇試験を済ませまして、安全性を確認した上で定係港を決めるという御指摘は、私どもの意図しておるところと相違いたしておりまして、私どもは、修理港が決定し次第、定係港の選定に入ろうと考えておるわけでございまして、修理が済んで、これの性能が確認されるまでしないという趣旨ではないわけでございます。したがいまして、修理港が決まり次第、この定係港の選定に入り、定係港が決まれば、この定係港で出力上昇試験をやっていく。もちろん岸壁においては低出力しか予定いたしておりませんが、そのような方向で考えております。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 この二十五日に青森県知事あるいは県漁連理事長らと四者協定について話し合われた際、来年四月十五日までに原子力船「むつ」を出港させるよう努力をしたい、このように長官は語っておられるわけですが、この「むつ」を出港させるまでのプロセスにつきましてはどのように考えておられますか、具体的にお伺いしたいと思います。
  186. 前田正男

    前田国務大臣 これにつきましては、まず第一に、何といいましても長崎県、佐世保、この両方の御理解を得まして、修理港として受け入れをお願いしなければならぬ、こういうことでございます。また、その受け入れができるということになりましたならば、それに必要な処置を講じていかなければならぬ、こう思っているわけです。
  187. 近江巳記夫

    ○近江委員 ところが、佐世保はきょうも、先ほど申し上げたように十万五千名の署名を添えて、もう絶対にこれは反対であるということを言ってきているわけですよね。これはもう、どういう反対があっても、四月十五日ということになっておるわけですから、政府としてはどこまでも佐世保に決めて、それを貫徹する、こういうことですか。
  188. 前田正男

    前田国務大臣 いま長崎県と佐世保市にお願いをしておるわけでございまして、長崎県の方も何か検討の委員会をおつくりになるということでございます。ぜひひとつ御理解を得たいと思って、最大の努力をしておるところでございます。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府は佐世保に決めて、またその気持ちというものは非常に強い。あらゆる努力をして、それをお願いしていくというお話がいまあったわけですが、これはひとつ慎重に、やはり住民がこれだけ反対もし、不信感も持っているわけですから、これは決してひとつ強行なさらないように強く申し上げておきたいと思うのです。強行はなさりませんか。
  190. 前田正男

    前田国務大臣 これは、あくまでひとつ御理解を得るようにしていきたいと思いますし、それがために、先ほども申しておりますとおりに、これは佐世保におきましては、入港から出港まで放射線の御迷惑をかけない、そういう放射線に対しまして安全船である、こういうことで御理解を賜りたいと思っているわけでございます。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 この新定係港、母港に関して二、三の引き受け希望もあると記者会見でお述べになったようでございますが、それは具体的に大体どういうところから来ているのですか。
  192. 前田正男

    前田国務大臣 引き受けるという話ではありませんけれども、定係港についていろいろと話し合いがあるようでございますが、これは現在のところ、まだ選定に入っておりませんので、これはひとつ、ここで申し上げるのは無理じゃないかと思っておるわけでございます。われわれは、修理のめどということです。修理港が決まりましてからひとつ選定の作業に入りたいと思っておる次第でございます。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、そういう二、三の希望を長官の方に申し込んでいるのは大体どういうクラスの人ですか。たとえば知事であるとか市長であるとか、あるいは政治家であるとか、どういう人からですか。
  194. 前田正男

    前田国務大臣 公共的な立場の方はまだ正式なお話はないようでございまして、まあ、任意団体とかあるいはまた一部の方たちの御意見、こういうようなことでございます。したがいまして、われわれが選定に入るということになりますならば、公共的な立場の御意見をまず第一に聞いていくということになるのじゃないかと思っておるわけでございます。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 四月十五日まで「むつ」を出港させるように約束を守りたい、このようにおっしゃっておるわけですが、そういう新定係港が非常に困難な場合は、もう一度むつを母港に、いわゆる候補地の中に入れたいという考えも非常に濃厚である、そういうことも一部伝えられておるわけですが、その候補地の中に再度お願いをするというような考えは、政府にやはりあるわけですか。
  196. 前田正男

    前田国務大臣 私たちは、四者協定の精神からいってそういうことは考えておりませんけれども、しかしながら、現地におきまして、前の大臣にも、また今度私たち行きました中にも、一応新しく定係港として検討してもらいたいというふうな任意団体等の御希望がございます。この問題につきましては、やはり先ほど申したとおり、修理のめどがつきまして新定係港を選定するに当たりましては、もちろんそういうふうな御希望は全然検討しないというわけにいきませんから、そういうことに対しまして、青森県あるいはむつ市あるいは漁連とか、この四者協定の方たちの御意見を承るという程度の検討はしなければならぬのじゃないか、こう思っておるわけであります。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう話がかなり強いものになってくれば政府としては検討する、わかりました。むつも再度そういう候補地の中に、やはり政府としてもそういう意見が強くなれば考える、こういうことですね。こういうことは今後現地の方々から、われわれも一度、そうした党のサイドで一遍意見も聞いてみたい、このように思っております。  いずれにしても、これは四者協定で出るということも決まっておりますし、これは本当に一部の声じゃないかと私は思うのですね。十分ひとつ、現地の住民の意思というものを一また力で押し切って、無理やりでも、どうしてもほかが決まらぬからもう一度というような、そういう押しつけるということが絶対ないように、これはひとつ申し上げておきたいと思います。  それから、昨年私は、八月十一日の委員会におきまして、「むつ」の点検、改修にかかわる費用につきましてお聞きしたことがあるのですが、契約期限は切れたとしても、企業の社会的責任という観点から、一切関知しないということは許されない、これは生田前原子力局長が答えておられるわけですが、この三菱原子力工業に対して当然そうした負担というものはさせなければいけないんじゃないか、このように思うわけですが、もう一度ひとつ確認をしておきたいと思います。これは局長なり参考人からお伺いしたいと思います。
  198. 山野正登

    ○山野政府委員 この「むつ」建造に絡む契約上の責任の問題でございますが、これは御指摘のようにすでに保証期間を過ぎておりまして、契約上請負業者にこの責任を追及するということは不可能でございますが、相手業者においても十分道義的な責任というものは自覚しておるわけでございまして、その後におきまして、具体的に申し上げれば、この遮蔽改修の基本計画等をつくる段階等におきましても、先方が人員を派遣する等の協力の姿勢を示しておりまして、先方の責任をできるだけ果たしていきたいという姿勢というものは十分読み取れると考えております。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしたことにつきましては、責任ということをうやむやにせずに、やはりきちっとさすべきはさせる、ひとつこういう筋を通していただきたい、このように思います。  きょうはこれで一応終わりたいと思います。
  200. 中村重光

    中村委員長 それでは、私から四点にわたって大臣にお尋ねをします。  当初は青森大湊湾にそのまま定係港として置いてもらいたいというので、鈴木善幸さんが代表として交渉に当たられた。それで来年四月までということで大湊港から出港する、こういうことに決まったわけです。御承知のとおり大湊港にはドックがない、修理設備がないわけです。にもかかわらず、大湊港に相当固執される。その次に長崎県対馬の三浦湾を選定なさった。三浦湾にももちろんドックもないし、修理施設もありません。この交渉を進められた経過から考えてみますと、当初は定係港を選定することに努力をされた。今回は、佐世保を選ばれたのは定係港ではなくて修理港である。そしてその後に定係港を決めるんだというお答えでありますが、当初の方針を変更された理由は何かということを一点、経過を含めてお答えをいただきたい。  それから、定係港の見通しがあるのかどうか。定係港の見通しがないとすると、それが決まるまで佐世保で、仮に佐世保に修理港として受け入れられたとして、修理が三年で終わる。終わっても定係港が決まらなければ、決まるまで佐世保にそのまま係留をするということになるのか。  第三点としては、修理港から補助エンジンで出港して、洋上で出力上昇試験をされるんだが、そこでまた放射線漏れがあったとします場合に、再びその修理港に入って修理をするということになるのかどうかという点。  次に、きょうも長崎県漁連の会長から、この炉を製作した三菱重工において修理をさせるということが常識ではないかという指摘がありましたし、当委員会においてもそのことは強くなぜにそうしないのかということの質疑が行われたわけでありますが、それを神戸の三菱重工のいわゆる製作した工場で修理をしないのはなぜか。それを修理をするために三菱重工に当初交渉したやにも伝えられているのですが、それはしたとしたらば、三菱重工はこれを受け入れなかったのかどうか。受け入れなかったとするならば、その理由は何か等、そういった点についてお答えをいただきたい。
  201. 前田正男

    前田国務大臣 こういうふうな事故が起こりまして修理をしなければなりませんので、修理能力のある佐世保にお願いをしたいというのが第一点でございまして、そうして修理のめどが立ちましたならば新定係港の選定に入りたいと、こう考えておるわけでございます。  それで、新定係港につきまして、二、三そういうような意向のあるところもございますので、修理の終わるまでの間には一これはもちろん修理が終わりまして安全になりますということが条件でありますけれども、修理が終わりまして安全になるということでひとつ新定係港を選定いたしたい、こう思っておりますので、新定係港は選定できるように最善の努力をしなければならぬと考えておるわけでございます。新定係港ができましたならば、出力程度の上昇試験はそこでやりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  第四番目の三菱重工の神戸の問題につきましては、ちょっと私、経過が十分にわかりませんので、局長からひとつ説明させていただきます。
  202. 山野正登

    ○山野政府委員 ただいまの大臣の御答弁を補足申し上げますが、第三点の御質問、つまり修理港から出港しまして出力上昇試験の結果再度トラブルがあった場合にまた修理港に帰ってくるのかという御質問でございます。  これは、そのような事態というのは私どもは万万起こさないように最善の努力をするわけでございますが、全く仮定の問題といたしまして、もしそのような事態が起こったらどうなるだろうかということを考えてみますと、起こりましたトラブルの内容によっていろいろ対応は変わってくると思います。もしトラブルが洋上で修理可能な程度のものであればそのまま洋上で修理をいたしますし、またしかるべき港、あるいは港の中でもさらに造船所のあるような港が必要といったふうなことになりました場合には、その船の位置等によっても変わると思いますが、もし九州一円、佐世保港に近いというふうなケースを想定しますと、改めてその時点で、佐世保港が最適であるという結論が出れば地元に検討方をお願いしまして、もう一度受け入れの御了承をいただいた上で入港するといったふうなことも考えられますが、すべてこれらは仮定の議論でございます。  それから最後の、三菱重工業において修理をするように交渉したかどうかという点でございますが、これはそのようなことはしていないと私は聞いております。  で、修理をするに際しまして、私どもは放射線漏れのような事故あるいは放射能が漏れる事故といったふうなことは起こり得ないと考えておりますけれども、しかし、やはり修理を行います地元の方々に十分安全ということを確認していただく趣旨から申しましても、モニタリング設備というものがあり、かつ、相当の期間にわたって過去のデータが蓄積されておるということが確認上非常に有利であり有効であると考えられますので、この修理港選定の一つの条件にモニタリング設備があるということを加えましたようなわけでございまして、そういう意味で佐世保港を選んだということでございます。
  203. 中村重光

    中村委員長 委員長席でございますから、再質問はいたしません。      ————◇—————
  204. 中村重光

    中村委員長 引き続き科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  205. 近江巳記夫

    ○近江委員 少々お時間をいただきまして、ちょっと地震の問題でお聞きしたいと思います。  前回の委員会におきまして前田長官から、地震予知の問題につきまして今国会中にいわゆる体制を固めたい、発足させたい、まあ事務レベルにおいて進捗しないようであれば政治的決断もする、非常に頼もしい御発言があったわけでございます。その点もう固まったのかどうか、地震予知推進本部ですか、その構想につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  206. 前田正男

    前田国務大臣 大体構想が固まりまして、この国会中というお約束でございますので、なるべく早くということでやっておりまして、いままだ最高のところ、その他の御了解は得ておりませんけれども、できましたならばこの二十九日の閣議ででも決めたい、こう思っておるような段階でございますが、何といたしましても、前にお約束しましたとおりこの国会中にはひとつぜひ決めたい、こう思っておるわけでございます。  構想につきましては、けさ新聞にちょっと出ておるようでございますけれども、いまのところ法律をもってやる余裕がありませんので、とりあえず閣議決定で内閣関係各省の取りまとめました推進の新しい体制をつくるという方針でございます。そして、これはこの前も御説明しましたとおり、従来研究推進を取りまとめてまいりましたけれども研究推進だけではなくて、実際に観測をしております地理院であるとか、あるいは気象庁であるとか水路部であるとか、そういった方の実際の観測研究も含めました一つの体制として地震予知研究と業務をあわせました推進の体制にしたいと思っておるわけでございます。  ただ、これもこの前説明いたしましたとおり、現在防災に対しましては、法体系がございまして、中央防災会議におきまして防災問題を取り扱うことになっておりまして、大都市の震災対策専門部会もございまして、ここで東海の問題も含めて検討しておりますので、いわゆる予知が出ましてからの、予知に伴う情報の伝達とシステム等は新しい体制で研究いたしますけれども、そういう予知情報ができまして、政府として防災の体制を起こすために警報を発するとか、あるいはいろいろな対策を具体的に講じる、また特に防災に伴いまして、避難の問題でありますとか、その他消火の問題であるとか、いろいろな問題についての具体的の処置を講ずるのは、これはあくまで防災会議の方でやっていただきます。特に大都市の震災対策専門部会の方で検討して、そして防災会議としてこれを取り扱う。  こういうふうに、中央におきましては二本立ての線でやることになりまして、すでに防災会議の方は法的にでき上がっておりますので、片一方の観測研究の方を合わせましたものはとりあえず閣議決定でやりたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 大体方向はわかったわけですが、研究と業務の推進ということをおっしゃったわけですが、具体的には大体どういうような構想になるわけですか。
  208. 前田正男

    前田国務大臣 これは観測研究とその業務をやっております予知の仕事というものをなるべく総合的に調整をいたしまして、計画的に推進をするということが第一でございます。同時に、相互の連絡調整を十分にやっていこうということでありまして、そのために必要ならばデータの収集等もやっていきたい、こういうことでございます。また、緊急に問題が起こってきました場合に対しては緊急な処置がとれるような、そういう対策も進めていきたい。  それから、先ほどちょっと申しました予知に伴う情報伝達のシステムはどういうようにしたらいいのか、あるいはまた予知のための技術を緊急に研究しなければならぬ、こういうような問題が起こりました場合、これは防災技術各省とも平常研究をしておりますけれども、緊急に予知に伴う防災技術研究をしなければならぬ、こういう事態が起こりました場合には、この新しい推進体制でもってお互いに調整をいたしまして強力に進めていくということでございます。  そこで、具体的な内容は、実は第三次五カ年計画が出ておりまして、この計画をなるべく繰り上げていくとか、あるいはその計画だけでは足りないというようなことがありますならばそれを追加していく、こういうようなことをやりたいと思っておりまして、先ほどの御質問にお答えしましたとおり、五十一年度として追加して現在予算を執行しておりますけれども、さらに緊急に追加してやるべき仕事があるようでございますので、そういった問題については予算措置を講じていかなければならぬし、五十二年度に対しましては、すでに概算要求しておりますけれども、繰り上げとか、新しい処置をするに伴いまして概算要求しております三十五億は全額認めてもらうと同時に、それに不足する分はこの推進本部で調整をいたしまして、そしてさらに概算要求追加をお願いする。また、同じくこれに伴います所要の人員につきましても、現に概算要求しておりますけれども、さらに追加して概算要求をお願いする、こういうことになるんじゃないかと思っておるような次第でございます。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 この地震予知推進本部というのは、そうすると、前田長官を本部長として、それから梅本官房副長官をまとめ役として、あとは関係各省省庁ですか、次官クラスで構成されるわけですか。それから事務局というのはどういうようになるのですか。
  210. 前田正男

    前田国務大臣 これはまだ最終的に政府で決まっておりませんし、科学技術庁長官の権限の範囲を越えるところもございますので、最終的には閣議で決定をすることになると思いますけれども、従来のいきさつから、私が各大臣からおまえがまとめ役をやれと言って頼まれて原案を書きました関係もありまして、多分私がこの本部ができました場合の本部長をやるということに、いずれにいたしましても国務大臣が本部長をやるということでございまして、経過から見ると、私が引き受けさせられるのではないかと思います。そうしますと、この本部といたしましては、科学技術庁の権限の範囲を越えまして関係各省の総合調整ができるということになると思います。  また、これに対しまして幹事会を設けまして、関係各省の人たち相談をしてやっていただきまして、それらの事務は幹事会等で取りまとめますけれども、最終的な取りまとめ庶務は本部長が出ましたところが取り扱うことになると思いますし、また本部長が用事があるときとか、その他本部長のかわりに事務的に取りまとめるのは、多分本部長が出ましたところの次官がやる、それからまた本部長が出ましたところの役所が最終的な庶務的な事務の取りまとめをする、こういうことになるんじゃないかと思っておる次第でございます。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 いわゆる幹事会というのは事務次官クラスですか。
  212. 前田正男

    前田国務大臣 事務次官クラスは本部員ということで、幹事会はその次のクラスで、現在実は科学技術庁の事務次官が中心になりまして、地震予知研究推進連絡会議というものがございますけれども、そのメンバーに大体そのまま幹事になってもらいたいと考えておるようなわけでございますが、これらの問題は、実は本部ができましてから本部の意見で最終的に決めるということになると思っておるわけです。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、今後この行政権限ということが問題になるんじゃないかと思うのですが、こういう行政権限という点につきまして今後の運営方法が非常に問題点の一つじゃないかと思いますが、長官としては大体どういうようにお考えでございますか。
  214. 前田正男

    前田国務大臣 その点はいろいろと権限の問題がございますので、実はこれを内閣に閣議決定で設けるということにいたしまして、内閣の一員である国務大臣が本部長をやる、関係各省の次官がその本部員になる、こういうことで行政権限にわたる問題についての総合調整をやるということでございます。しかしながら、各省各省がおのおの業務をしておるわけでございますから、その業務については従来同様の権限を行使してやっていただくわけでございます。たとえばデータにつきましても、文部省文部省東大に取りまとめようという考えのようですし、地理院地理院でまとめておりますし、気象庁気象庁気象庁の権限に基づいて情報を取りまとめておりますから、そういうことは従来のままでやっていただきまして、それをまたどういうふうにして一ヵ所に集めてくるか、こういうことについて検討いたします。検討いたしますけれども、検討いたしまして新しくセンターみたいなものを設けることになりましても、それはこの本部にはそういう行政権の機関を設置する権利はございませんから、これはどこかの役所にそのセンターを置いていただきまして、従来の情報を集めております仕事と、それからこの新しくできました推進本部のデータの集中の仕事を兼ねてやっていただく、こういうふうなことでやっていかなければならぬのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、各省庁にそうしたいわゆるデータ等集積しておりますね、そういうようなところというのはおのずとわかってくると思うのですが、そうしますとやはり中心というのは気象庁あたりがなるわけですか、データの集積という点で。
  216. 前田正男

    前田国務大臣 これは本部を設置しましてから皆さんと相談すると思いますけれども、ただやはり、こういうものは二十四時間常に観測をしていなければならぬという仕事でありまして、二十四時間とも観測体制をしいているところでないと——特にいまの地震予知技術からいきますと、先のことば、いつかは起こる可能性はあるということはわかっておりますけれども、これからもっと測量点等ふやしていけばもっと詳細に、時間的にもある程度わかってくるかと思いますけれども、なかなかむずかしい問題であります。ただ、観測点をふやしていきますと、実際に地震が起こるという可能性が出ましたときに、数時間前かあるいは二、三日前かその辺はちょっとはっきりしませんけれども、そのときの地震の規模にもよりますけれども、ある程度わかってくるのじゃないか。先のことはよっぽど技術をふやさないと、なかなか何年先かということはちょっとわかりにくいかと思いますけれども地震が起こる可能性があるというような事態になりました場合には、観測点をふやしますと何時間か前にはわかる可能性が出てきまして、それに対しましてすぐの対応策を講じなければなりませんし、そういうことがわかっても実際はそういう地震が起こらないこともありますから、そういうことの判断をしなければなりませんので、可能性はありまして、それからそれに対しましてどういうふうな評価をするかということも必要でございますので、やはりこれは二十四時間勤務をして観測を続けておられるようなところに各省で集めましたデータが一応集中してくる、それをもとにして評価をしてもらう組織が必要じゃないか、こう思っておるわけでございます。これらの問題は、いま私が申しましたのは大体そういう程度じゃないかと私が考えておる程度でございます。詳細については、いずれにいたしましてもこういう新しい推進機構ができまして、そこで最終的に検討して決めていかなければならぬのじゃないか、こう思っておる次第でございます。
  217. 近江巳記夫

    ○近江委員 この間開かれました審議会等でも、気象庁さんにどうかということで意見が大体一致したということをちょっと聞いておるのですが、いま長官がおっしゃったように、二十四時間常時監視をしておるようなところといえば、全国のいわゆるネットワーク、観測点を持っておるところというのは気象庁ということになっておりますね。そうすると、そういういろいろな前提条件を考えていきますと、やはり気象庁が中心になっていく。長官としてはどのようにお考えでございますか。
  218. 前田正男

    前田国務大臣 これはどこの役所にするかということはちょっとまだ、実際にできましてから皆の意見をまとめなければなりませんけれども、ただ一応いまのところ聞いてみますと、一大体大学関係東大に集める、それから気象庁気象庁でデータを集める、それから地理院地理院で測量したデータを集める、それに水路部が少し持っております。水路部がデータを集めておるというふうに、おのおのデータを集めるような体制には現在のところなっておるようですが、それをまた一カ所に集中するというのはどこがいいかということはもう一遍検討しなければなりませんけれども、その前提条件としてはやはり二十四時間体制をしいていないと、もし数時間前にそういうことがわかるという可能性があった場合に一わからない場合もありますけれども、あるいはわかり得る場合もあり得るわけですから、そういうときのことも考えまして、やはりデータの集中のことにつきましてはひとつ慎重に検討する必要があるのじゃないかと思いまして、このデータ集中の方策を検討するということは新しい推進体制の中へ明記をしようと思っております。
  219. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間がありませんからもうやめますが、局長に聞きますが、審議会でそういうような話は出たわけですか。その場合はどこに集中した方がいいという話が出たのですか。
  220. 園山重道

    園山政府委員 測地学審議会におかれましてどのような検討がなされたか、まだ詳細に承っておりません。ただ、ただいま大臣も御答弁されましたように、この地震のデータにはいろいろな種類がございます。たとえば地震計のデータというようなものはまさに二十四時間観測のところに集まるのが適当でございますし、また気象庁がやっておられますひずみ計といったようなもののデータも、これはそういうところへ集まってくるのが適当かと思います。ただ、そのほかにいわゆる測地測量の結果でございますとか、あるいは地下水のデータでございますとか、地震波速度がどう転換したかというようなものもいろいろございますので、これらにつきましては、ただいま大臣答弁のように、どういった形でこれが集中されてきて、どういつだところで判断されたらいいかということについては、これからよく相談していくべきものかと思っております。
  221. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、時間ですので、やめます。     —————————————
  222. 中村重光

    中村委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  環境科学技術に関する問題調査のため、本日、参考人として資源調査会委高橋浩一郎君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 中村重光

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  224. 中村重光

    中村委員長 この際、高橋参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  まず初めに、先般提出されました資源調査会報告第七十三号「我が国におけるエネルギー消費と気象に関する調査報告」につきまして、概要説明を聴取することといたします。高橋参考人。
  225. 高橋浩一郎

    高橋参考人 御説明申し上げます。  この問題は、たしか一昨年あたりからこの資源調査会で取り上げまして調べるようにということでございまして、その中に環境エネルギー小委員会をつくりまして、私が委員長になって調べたものでございます。  御承知のように、いろいろな燃料を燃やしますと、大気の中に大気汚染、たとえば二酸化硫黄が出ます。また熱が出るわけでございますから、その辺の温度が上がるわけでございます。そのために、大気汚染でございますと健康に害がある、熱が出ますと温度は上がりますので、そのために周りにいろいろな影響を及ぼすわけでございます。それが小さい場合には余り問題がございませんけれども、大きくなってまいりますとわれわれの生活にいろいろな影響を及ぼしますので、どれくらいのエネルギーを使ったならばどの程度の影響があらわれるだろうかということを見積もっておくことは、将来のエネルギーや何かを考える場合にも重要な問題であろうかと思うわけでございます。  これをやりますのにはいろいろなやり方がございます。できれば毎日毎日の状況を正確に調べて、それを積み上げて出すのが一番理想的でございますけれども、ここではもうちょっとマクロに見まして、平均的な状態を調べて、それで大体の数字を出したわけでございます。  話の内容は、たとえば煙突から二酸化硫黄が出るわけでございます。それが風によって流されて広がっていくわけでございますが、その模様を個個の日でございますと風に乗って流れていく状況で調べるわけです。しかし、一年を平均いたしますと、風は南の風も吹けば北の風も吹くということで、それが周りに広がっていくわけであります。それを拡散という概念で取り上げてみます。それからまた、上がりました二酸化硫黄は大気の上空まで行くわけでございませんで、大体下層の千メートルぐらいの間にたまるわけでございます。また二酸化硫黄で出ましたものは、太陽の光あるいは雨などによりまして減っていく、こういったようなことがございます。これを一つの式にまとめまして、どれくらいの二酸化硫黄が出たならばどの程度の濃度に達するか、そういうのを式で計算したわけでございます。  まず初めに、一点の状況について調べてみたわけでございます。これを調べるためには拡散の係数だとかあるいはどれくらいの割合で減るとか、そういう係数を知る必要がございますが、これにつきましては従来の研究をもとにして調べたわけでございます。熱につきましても大体同じようなやり方をするわけでございます。  次に、ここで問題になりますことは、どれくらいの二酸化硫黄の濃度になったならば健康に害があるか、そういうようなこと、また温度の場合に何度ぐらい上がったならばいろいろな影響が出てくるだろうか、こういう問題がございます。  二酸化硫黄につきましては、環境庁の一応の基準がございまして、一日平均で〇・〇四PPm、これぐらいになりますと健康に害が出るので、その程度が環境の基準、そういうことになっております。ここではマクロに取り扱っておりますので、年平均を問題にするわけです。それで勘定をいたしますと、これははっきりした数字がまだ出ているわけではございませんけれども、大体において日々の場合に比べてよりもう少しきつくなりまして、〇・〇二PPm、この程度が一応の基準であろうか、そういう数字が出ております。それをもとにいたします。  それから気温につきましては、実は余りはっきりしたことがわかっていないのでございますが、ただ年平均で気温が一度上がりますとある程度の影響が出てくることは考えられるわけでございます。これにつきましてははっきりしたことは私もちょっと申し上げかねるのですけれども、ただ一度温度が変わりますと、毎日毎日でありますと一度ならばそう大したことはないのでございますが、年平均で一度上がりますと、ちょっといい例はございませんけれども、たとえば米の生産などを見てみますと、月平均で一度変わりますと米の収量が二〇%ぐらい変わるといったような数字もございます。そこで一応一度という条件をつけます。その場合、一カ所で熱を出しますと熱が四方に広がってまいりますので、熱源にごく近いところでは非常に温度が上がりあるいは汚染が強くなりますけれども、真ん中のところは一応目をつぶりまして中心から一キロぐらいのところでは、いま言ったような汚染の、あるいは環境基準と申しましょうか、そういうものを超えないという条件をつけて勘定するわけでございます。そうしますと、どれくらいの熱を使ったならば環境基準がそれくらいになるかということが計算できるわけでございます。それをもとにしてまず計算したわけでございます。  そして、これを計算しましたものは、理論的に出したものでございますけれども、一応これを観測のデータからチェックしたいということがございます。それにつきましては、二酸化硫黄につきましてはある程度観測が行われておりますので、それをもとにいたしまして関東南部の状況を調べたわけでございます。そして先ほどのような仮定で計算したものと比較してみたわけでございます。その場合、先ほどのは熱源を点としたわけでございますが、関東南部の場合には一カ所にあるわけでなくて何カ所かに分散しているわけでございます。そういうことを考えに入れて比較してみますと、おおむね計算値とけたは合うわけでございます。  熱につきましては、余りはっきりしたデータはございませんけれども、都市でありますとエネルギーをたくさん使いますので温度は上がるわけでございます。その状況につきましてはある程度わかっておりますので、そういうようなことと比較してみますと、熱の場合につきましてもそうけた外れではないということがわかります。  そこで、一点の場合がわかりましたので、今度はそれをもとにいたしまして全国に何カ所かそういった熱を出すところを置いてみるわけでございます。そうしてその場合、点がエネルギーを出す熱源と申しましょうか、この距離をいろいろ変えてみるわけでございます。そうしますと、距離を遠くして、したがって日本全国でのエネルギーの発生点を少なくいたしますと、先ほどの一キロでの環境基準が効きまして使えるエネルギーというのはそれほど大きくはなりません。それを小さくしてまいりますとだんだん大きくなりまして、あるところにだんだんまとまっていくわけです。それで計算してみますと、熱の場合と汚染の場合では違うのでございます。  汚染の場合でございますと、大体昭和四十八年の材料をもとにして計算したのでございますが、それで申しますと、平均いたしまして四十八年度ころにおける日本のエネルギーの消費の約二・七倍程度たきますと先ほど申しましたような環境基準に達するという結果になったわけでございます。  次に熱について調べてみますと、それよりは少し条件がよいと申しましょうか、三倍から四倍、四程度くらいという結果が出たわけでございます。この結果はある意味で申しますとマクロに見たものでございまして、いろいろの点でまだ不十分な点がございます。  その一つの点は、先ほど温度に関しましては一度までは許すという条件をつけましたが、これが一度でなければならないという制限は特にはっきりとした理由がございません。あるいは二度でもよろしいかと思います。ただ一度ととりましたのは、一度がいわばラウンドナンバーと申しましょうか、その程度上がりますと影響が出てくることが考えられますので、わりあいシビアな条件で勘定したものでございます。  また熱の場合につきましては、確かに温度が上がったりいたしますといろいろな影響が出てまいりまして、温度が上がれば米の生産なんかはむしろいい方向に向かうというようなこともございますが、冷たい寒流にすんでおりますような魚でございますと悪い影響が出るというようなところで、これはいいか悪いかにつきましてはなかなかいろいろ問題がございましてその辺はっきりしておりませんけれども、一応ここで勘定いたしましたのは周りへの影響は余り変えないという考え方でこういう数字を設定したものでございます。  二酸化硫黄につきましては、大体環境庁で決められた基準をもとにしておりますので、そう大きな違いはないかとは思いますけれども、アメリカあたりでございますと〇…〇三PPm、五割ぐらい大きく見ておりますので、こういった点も考え方によってはまだ問題が残っているのではないかというような感じもいたします。それからもう一つは、二酸化硫黄の場合でございますと、脱硫装置をつけますと減ってまいりますので、それによっても変わってくる可能性はございます。  しかし、ともかくも、こうして勘定してみますと、案外現在の日本のエネルギーというものは環境汚染から見ますとかなり多量に使っている傾向がございますので、やはり一応この際、こういつた問題を注意しておく必要があるだろう、そういうことで、資源調査会でこれをとりまとめて報告を出したわけでございます。  ただ、この数字につきましては、いまも申しましたように、まだまだいろいろ検討すべき点がございます。また、私はその辺専門でございませんから素人考えで申しますが、これをエネルギー政策の面に応用するにつきましては、やはりもうちょっといろいろ検討しまして、いろいろの面から考えてみる必要があるかとは思いますけれども、しかしやはり、こういった問題は、将来の日本の経済や何かのことも考えまして、ぜひ調べておく必要があるのではないかと思っているわけでございます。  なお、これを調べるにつきましては、ある程度観測網もできてきてはおりますけれども、まだいろいろ不十分な点がございます。たとえば、この問題を考えてくる場合に、混合層と申しましょうか、先ほど千メートルくらいまでまじると申しましたが、それが気象条件によって実はいろいろ違ってくるわけでございます。その高層観測というものは気象庁で十何カ所かございますけれども、それは主に海岸地方でございまして、内陸地方にはまだ不十分である、そういう点もございます。それから、汚染の観測につきましても、いろいろ環境が問題になっておりますので大都会の周りなどにはかなりございますけれども、むしろ汚染の少ないところには余りない状態でございます。しかし、こういう問題をやっていく場合には、汚染の強いところではなくて、汚染の少ないところの状態もよくつかまえていかないといけないということで、やはりそういった方面の観測も何カ所か増していく必要があって、それをもとにして今後調査していく必要があるのではないか、そう考えているわけでございます。  簡単でございますが、調査報告の概要でございます。
  226. 中村重光

    中村委員長 以上で説明は終わりました。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石野久男君。
  227. 石野久男

    ○石野委員 参考人にお尋ねいたしますが、非常にマクロな立場からですけれども、エネルギー消費にかかわる重大な研究といいますか、調査報告だと思います。参考人のお話の中にも、エネルギーの将来について多方面から考えなければならぬいろいろな問題があるように思われる、こういうお話がございましたが、私はきょうは時間の都合もありますので多くをお聞きすることはできませんけれども、参考人はこの調査の報告をなさるに当たりまして、究極の場合、エネルギー消費については、資源があるとかないとかいうのではなしに、環境の保全と申しますかそういう立場から見て、一定の使用限度といいますかそういうものを設定しなければならないというようなお感じなのでございましょうか、そういう必要はないというお感じでございましょうか、そこのところをひとつ。
  228. 高橋浩一郎

    高橋参考人 ただいまの点につきましては、私もやはりある程度の限度があるというふうに見るべきであろうかと思います。ただ、その限度をどういうところに設けるかということにつきましてはいろいろ議論のあるところでございまして、また、その限度というものは人間の対応によってもいろいろ違ってくるわけでございまして、その数字を正確に決めるのには、やはり十分検討してからでないとはっきりした数字は申し上げかねると思うのでございます。  ただ、たとえば先日ドイツからフローンという学者が参りましたけれども、その方の話によりますと、エネルギー消費が現在の五倍以上になってまいりますと、やはりかなり大きな変化が起きてくるのではないかというようなことも申しております。  また、ある説によりますと、太陽放射の一%ぐらいになってまいりますと、異常気象がいろいろ起こりやすくなってやはり問題である、そういうようなことを申しております。一%くらいと申しますと、大体において現在のエネルギー消費の十倍程度ではないかというように思いますけれども、やはりその辺に一つの大きな限界があるような感じがいたしますけれども、これはまだそういった考え方があるというだけで、はっきりしたことは申し上げかねるわけでございますけれども、どこかに限界があることは確かだろうと思っております。
  229. 石野久男

    ○石野委員 報告書の中には、そのために幾つかの対策を講ずべきであろうという提言がなされておりますが、これは緊急にそういう対策をとるべきだとお考えでございましょうか、できればそうした方がいいだろうというようなお考えでございましょうか。そこのところを……。
  230. 高橋浩一郎

    高橋参考人 この対策の期間の問題でございますが、これは緊急と申しましてもどの程度を緊急と言うのかによっていろいろ違ってまいりますので、余りはっきりしたことは申し上げかねるのでございますけれども、これを決めるとするとやはりいろいろなことを考えまして、本当に決めるのには数年くらいはかかるのではないかと思うわけでございます。そして、エネルギー消費の増加なんかのことはよくわかりませんけれども、いまの段階ですと、仮に二倍といたしましても十数年後に大体二倍になる程度ではなかろうかと思いますので、数年かかってやってもまあ差し支えないのではないかというような感じは持っております。
  231. 石野久男

    ○石野委員 いろいろなこれに対応すべき調査研究なり、測候所設置とかいうようなものが必要なんだろうと思いますけれども調査会が調査いたしますことと、エネルギー消費という問題との関係、それは同時にまた生産並びに生産設備、そういうようなものとの諸関係がずっと出てくると思われます。そういう問題について積極的に何か対策を講じなければならないような感覚を、調査会の皆さん、お持ちなのでございましょうかどうか。
  232. 高橋浩一郎

    高橋参考人 その問題につきましては、私は具体的なことはちょっとよくわからないのでございますけれども、やはりいろいろな方面で共同いたしまして、いろいろ検討していく必要はあるように感じております。
  233. 石野久男

    ○石野委員 大臣にお尋ねしますが、先般の予算委員会のときにも、この問題について総理の御意見も承ったわけでございます。閣内で、政府ではこの問題についての対応考えるというようなことをお話がありました。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕 で、参考人に対する質問は、細かいこといろいろありますけれども、きょうはちょっと時間がありませんので、大臣に、いまこの報告書に対してどのような処置をなさっておられるか、長官はこれを受けたわけですから、この際ひとつ所見を聞かせていただきたい。
  234. 前田正男

    前田国務大臣 この計算の結果を検討する調査研究を、関係各省と協力を得て進めるように目下話し合いをしておるところでございまして、またこれの観測所の整備等についても、気象庁とか環境庁とともに、諸問題について検討を進めるよう努力しておるところでございまして、関係各省と、せっかくのこういう御指摘でございますから、ひとつ適当な措置を講ずるように努力したい、こう思っておるところでございます。
  235. 石野久男

    ○石野委員 この問題は、当然のこととして、このための予算措置などもしなくてはいけないと思いますけれども、そういう段取りはすでになさっておるのですか。
  236. 前田正男

    前田国務大臣 これは、必要な観測所の整備等については、どっちかというと環境関係調査になるものですから、環境庁にもそういう特別調査の費用がございますので、そういうところとひとつよく相談をして対策考えていかなければならぬのではないか、こういうふうに考えているわけです。
  237. 石野久男

    ○石野委員 科学技術庁の資源調査会の方の報告でございますから、いろいろ対策をするについても他省庁との関係はもとより考えなくちゃなりませんが、長官自身としてはこの報告を受けて決意をどういうふうになさっておるかということが非常に大事だろうと思うのです。そういう点では、単に他省庁との連携ということにとどまらず、科学技術庁自身としてはこの問題をどのように受けとめるかという決意をひとつ聞かしてください。
  238. 前田正男

    前田国務大臣 これは重大な警告でありますから、われわれとしてはぜひこれを取り上げて検討していかなければならぬし、また、これはいろいろな仮定によって成り立っておりますから、その仮定についても十分な対策をして正確度を期していかなければならぬのじゃないかと思っているのですが、ただ科学技術庁だけの研究対策というよりか、重点が環境の問題が多いものですから、科学技術庁だけでこの問題を処理するわけにはいかないので、関係各省とよく連絡をとらなければやっていけないのじゃないか。しかし、お話のとおり重大な警告でございますから、いろいろと観測網を整備したり、いろいろの仮定等をだんだんと正確なものにしていく必要があるのじゃないか、こういうふうに考えておるわけです。
  239. 石野久男

    ○石野委員 参考人に最後に一つだけお尋ねしておきたいのですが、この提起されておる問題は、とにかく「基準観測所を全国的に整備すること。」が必要であろうということが言われております。その第二項の方には、「エネルギー消費と気象との関連を十分調査研究すること。」と、こうなっておるのです。この問題は単に提起しているだけなのか、それともこのためには何か特別な委員会とか何かつくらなきゃならないというような感覚で書かれておる問題提起なのかどうか、その点だけちょっと聞かしていただきたい。
  240. 高橋浩一郎

    高橋参考人 いまの点につきましては、まだ十分検討はしてございませんけれども、普通のエネルギーと気象だけの問題でございますと、科学技術庁が中心になりまして資源調査会の中の委員会のようなところでもかなりの程度の研究はできるかと思います。ただ、いろいろな問題になってまいりますと、場合によればほかの関係の方も集まっていただいてやる必要が出てくるかもわかりませんけれども、実はその辺につきましては、私自身まだ余りはっきりとした考えは持っておりません、残念でございますけれども。ある程度は必要じゃないかという感じは持っております。
  241. 石野久男

    ○石野委員 もう一度ちょっとお聞きしますけれども、いまの調査研究をせよということについて、これは政府機関の中でやるのか、あるいは大学等のそうした教育機関等も含めての必要性があるのか、ただ政府官庁だけでやっていいというふうにお考えなのかどうか、その点をもう一遍ちょっとお尋ねしたい。
  242. 高橋浩一郎

    高橋参考人 これは実は両方の面があると思います。やはりエネルギー政策に反映するということになってまいりますと、これはある程度官庁べースでやっていく必要があろうかと思います。ただ、この基礎のいろいろな仮定がございます。先ほどたとえば二酸化硫黄が雨やなんかに流されたりなんかするというようなことを申し上げましたけれども、実はこの問題につきましては、ある程度研究はされているようでございますが、その基礎の数字につきましては、まだまだいろいろ問題がございまして、こういった点をはっきり決めてまいりませんと、正確な結論は出ないわけでございます。こういったようなことをやるためには、どうしても大学なり研究所、そういったところでやっていただく必要があるわけでございまして、やはりこれは非常に重大な問題でございますので、両面から研究あるいは調査を進めていく必要があるというふうに私自身考えております。
  243. 宮崎茂一

    ○宮崎委員長代理 高橋参考人には貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
  244. 宮崎茂一

    ○宮崎委員長代理 それでは質疑を続行いたします。石野久男君。
  245. 石野久男

    ○石野委員 大臣にお尋ねしますが、いま高橋参考人からの調査研究等についての意見もありました。この点はぜひひとつ積極的に対応の策を立てていただきたい、こういうふうに思います。その点について……。
  246. 前田正男

    前田国務大臣 重大な警告とわれわれは受けとめまして、これに対しまして、ひとつ関係各省と十分に対策を検討したい、こう思っております。
  247. 石野久男

    ○石野委員 私は、先般御質問しました美浜の第一号炉の燃料棒問題について、引き続いて科学技術庁から出されました資料で質問したいのですが、その前に大臣に、実はきのうきょうと福井で社会党、総評、原水禁等が共同主催で原子力問題の全国討論集会をやっておるのですが、この集会に出ておる諸君が美浜の原子炉の見学を申し出たところが、関西電力はこれを拒否されたそうなんですね。それで一般のPR館だけならいいけれども、中に入ることは困るとか、あるいは排水口のところを見るのはよくないとか技術的な質問には応じられないからというようなことで断られたというのです。これは原子力公開の原則からいたしましてもちょっと解せないし、やはり監督官庁としてはそういうことを許しておいてはまずいと思いますが、どういうようにお考えでございましょうか。
  248. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 ただいま先生の御指摘の問題につきましては、私ども並びに通産省に対しましても、福井県の社会党の関係方々から御連絡がございました。私どもといたしましては、原子力発電所の実態を十分御承知いただくということは必要なことだと思っております。そういう観点からいたしまして、関西電力の方に対しまして、そのお申し出を十分検討して、前向きでひとつ見ていただくというふうなことはどうかというお話もしたわけでございます。ただし、非常に大勢の方がおいでになるというふうなことでいろいろ混乱があるということがあっては困るという会社の懸念も理解されますので、そういうことがないようにということでいろいろ会社と地元の社会党の方々とのお話し合いがあったと承知いたしております。会社側といたしましては、そういう不測の事態がないという前提のもとにごらんいただこうということで、いろいろ具体的な案をお示しいたしたそうでございますけれども、どうもそれではやや不満であるというふうなことで、結局十分話し合いがつかなかったというふうなことをお聞きいたしております。  私どもといたしましては、基本的な姿勢といたしましては、ぜひ皆様の御理解をいただくために施設をごらんいただくという考え方は変わらないわけでございます。
  249. 石野久男

    ○石野委員 地元でいろいろ原子力に関心を持っておる諸君が、安全性の問題を通じてその現場を見たいという希望が非常に大きく出てくるが、どの発電所もいつでも見学を拒否されるような態度をとられるということは心外です。私は、今度の場合、もっと詳しい事情がわかりませんけれども、聞くところによると、PR館だけならいいけれども、排水口のところに行ってもらうのは困るとか、あるいはいろいろな技術的な質問をされるのだと困るのだ、こういうようなことで、いま局長からお話があったようなそういう厳しく非常にむずかしいことを言っているのじゃない。にもかかわらず、混乱がくるとかなんとかいうことで断られたそうでございまして、これは、監督官庁としては可能な限り見せるようにした方がいいと思うのです。ことに放射能などが危ないところでございますから、ああいうところへ行って暴れれば、自分で放射能を浴びたりなんかして被害を受けるわけですから、行く人だって混乱を生ずるような見学の仕方をするようなことは絶対にないわけなんですから、むしろみんな心配して入っているのですから、私は監督官庁は各発電所に対してもっとおおように、余り警戒だけして何だか変に閉鎖的にならないで、原子力基本法の民主、公開の原則はぜひこの場合守って、そしてできるだけ、あなた方が常に言っているように、安全なんだから心配するなよということをみんなにわかるようにさした方がいいと思うのですよ。そういう指導をひとつこれは大臣、とるようにしてもらわないと困るので、せっかく全国から集まっておる諸君が現場を見たいのに、その現場を見せないで帰したらますますこれは疑義を深くするだけであって、決して原子力政策に対して協力体制なんて出てこないですよ。これは大臣のはっきりした答弁を聞いておきたい。
  250. 前田正男

    前田国務大臣 できるだけ御希望にかなうように、善処するように、いま私たちの方からも、また、これは通産省にも関係あることですけれども、両省からひとつ御希望にかなうように善処するようにさせますけれども、ただ、やはり一応の会社側の立場もあることでしょうから、その辺はひとつよく話し合いをしていただきまして、なるべく御希望がかなえられるようにお願いいたしたい、こう思っておるわけでございます。
  251. 石野久男

    ○石野委員 会社側の事情もあるだろうからという大臣の言葉ですが、しかし、会社側がいろいろな意味において事実を率直に外へ知ってもらおうということをしないで、できるだけふたをした上で、大丈夫だ、安全だというようなことを言う態度はまずいと思うのですよ。これはひとつ改めるようにしてもらわなければ困る。  田原総一郎氏の報告にかかわる美浜第一号炉の燃料棒に溶融事故があるのではないかという、こういう疑義が「原子力戦争」という彼の本の中にありまして、私はそのことについて再三お尋ねしております。この事故があったかなかったかということを一番端的に、私たちにすぐわからすようにしてもらうのには、使用済み燃料としてピットの中に入っております燃料棒を私たちに見せてもらえばいいのです。見せるといっても、アクティビティーが高いからだめだというような話ですが、現物をそのまま見なくたって、写真をちゃんと見せてもらえればわかるのだから、写真を示した方がいいだろうということを私は要求しておりますが、まだ二カ月間もかかるのだというような話です。私が最初に要請したのは八月二十五日ですから、それからすでに二ヵ月たっているのですよ。これから年の暮れまで二カ月、写真を一つ見せるのに四ヵ月もかかるようだと、ちょっとこれは疑義を持たざるを得ないのだが、やはり写真を見せるということについても、この国会中に見せてくださるような用意が通産省の方でもできておるのですか。どうですか。
  252. 武田康

    ○武田政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますけれども、八月に御指摘がございまして、早速関西電力を招致いたしまして、その事実の有無をただして、そのときには、否定的な答弁をわれわれ聞いたわけでございますが、同時に私どもといたしましても、当時、その事実を確認するために調査を進めることにいたしまして、考え方といたしましては、仮にあの「原子力戦争」というドキュメンタリー・ノベルに書かれておりますような急激な燃料棒溶融事故という表現だったかと思いますが、そういうものがあったといたしますと、少なくとも原子炉の冷却水の中の放射能レベルが高くなるであろう。あるいは、使用済み燃料プール、この中に納まっておるわけでございますが、その放射能レベルが高くなるのではないだろうか。さらに、燃料体を取り出しますときに、シッピングといいまして、燃料体のリークのテストをして異常の有無を確かめるわけでございますが、それをやりましたときに異常が認められたはずであるというようなことで、当時の記録を整理いたしまして、調べたわけでございます。  いままでそういうデータ調べの段階では「原子力戦争」に記述されていますような燃料棒溶融事故があったという判断はできないというようなデータでございますが、さらに調査を継続することにいたしておりまして、現在のところ、実は使用済み燃料プールの中でもございますので、作業条件の制限、それから調査のために必要な機材の手配なりあるいは据えつけなり、また必要な用品の確保、それから、実はかなり熟練した作業員が必要でございまして、特殊な作業のせいでございますけれども、その確保なり被曝対策というようなことも考慮しながら、調査をする方向でいろいろ段取りなり調査方法なりを詰めてきたところでございます。  ただ、実際には、いま申しましたように、使用済み燃料プールの中での調べでございますので、放射能環境下の特殊作業、それから調査のための機材なり材料、あるいは照明等もまた余分な手配をしなければいけないかということでございまして、そういった据えつけそのものにつきましても、なかなかむずかしい仕事でございます。  そういったことを全部総合いたしますと、実は二週間ほど前に、これから一カ月、二カ月かかってしまうかな、断定的な段取り、いつというようなことをちょっと申し上げかねるということを申し上げたわけでございますが、前回の御指摘もございまして、先生の御趣旨に沿うような方向で調査促進方を督促したところでございますけれども、いま申し上げましたような、いわば機械的なというのか、物理的なというか、ちょっと表現はいい表現が見つかりませんけれども、そういった制約もあるようでございまして、専門屋さんもいますぐというふうにはとても言えないというのが現状でございます。ただ、私どもとしましては誠心誠意努力しているつもりでございますし、また、調べる以上的確な調べができて的確な評価ができるような調べ方にしたいというふうに考えている次第でございます。
  253. 石野久男

    ○石野委員 写真を示すことはそんなに私はむずかしいように思わないのだけれども、そうしてまた、ことに事故でも何でもなければむずかしくはなかろうと思うのですが、どうも四ヵ月、まだこれはことしのうちに示されるのかどうかわからないような状態です。疑義が深まるばかりで、残念なことだと思うのですよ。  あなたの方から資料として一、二、三の、美浜の冷却材放射能濃度、それからシッビングの漏洩検査報告、使用済み燃料の貯蔵プールにおけるところのピット放射能濃度という三つの資料をいただいております。私はこの三つの資料について、私自身はわかりませんが、これに関係する専門方々といろいろ調査いたしました。そのことについてきょうは若干、どうもやはり疑義の状態が深まるだけなものですから、質問したいと思います。  まず最初に、資料三にある使用済み燃料貯蔵ピットの放射能濃度の問題についてですが、これは使用済み燃料ピットの水の放射能レベルについては、燃料棒事故とは直接関係がないという考え方なんです。なぜならば、事故を起こしたと考えられる燃料棒は、ピットに納められる前にすでに冷却水でほとんど完全に洗われていると思いますから、この資料第三についてはお答えになっていただいてももうほとんどお答えだと見ることができない、こういうように私どもは思っております。  それで資料第一の冷却材放射能濃度の問題でございますが、通産省は、調べた結果、田原氏の指摘しているような異常は認められないようだ、こういうふうに言っておるわけでございますが、しかし、私ども先般、橋本政府委員の方から十月一日の予算委員会のときに、少なくとも溶融事故が発生しているとするならば、その冷却水の問題なり、いま言われたような三つのようなものが出てくるだろう、こう言われたんですけれども、関西電力から異常は認められないんだというように報告を受けられたのはいつなんですか。
  254. 武田康

    ○武田政府委員 先ほど関西電力から事情を聴取したと申し上げましたのは、八月、先生から御指摘がありましたので、早速「原子力戦争」という本に出ていますような急激な溶融事故があったということであるかどうかということを聴取したわけでございまして、それに対する答えがあそこに書かれているようなものはなかったという否定的な答えだったわけでございます。  それで、そのタイミングはその直後でございましたが、ちょっといま記憶しておりません。
  255. 石野久男

    ○石野委員 資料一につきまして、われわれの分析では、炉内の水の濃度が異常に高いというふうに見受けられるのです。昭和四十一年六月に美浜の原発原子炉設置許可申請書が出ておりますが、それの九、五、三、液体廃棄物処理の項のところにこういうように書いてあるのです。「一次冷却系よりの廃液の比放射能は、かりに一%の燃料被覆に欠陥がある場合を想定すると核分裂生成物によるものが約二十マイクロキュリcc程度である。放射化腐食生成物によるものは、これよりもさらに少いものと考えられる」こう書かれておる。  これをずっと見てまいりますと、このデータによる全放射能濃度は七ないし八マイクロキュリーcc、約十マイクロキュリccのところへずっと行くのじゃないか。この資料のグラフからずっと見て私たちはそう見るわけです。これは、この申請書による一%燃料被覆に欠陥がある場合から見るとそれの半分の〇・五%、いわゆる十マイクロキュリーccの状態で、こういうように非常に高い、何といいますか一%の欠陥を持った状態でという、そういうようなものの半分といいますと燃料棒にしましたら約百本が欠陥を持った状態で日常運転が行われている、これが平然と行われているということを意味しているように見受けられるのです。言いかえますと、燃料棒の破損という事故状態を放置したままで運転しているということを意味している。安全性重視という観点からすると非常にゆゆしい状態でないかというふうに、この資料一のグラフの状態から見てわれわれは感じるのですが、通産省なり科学技術庁はそれをどういうふうにごらんになっていますか。
  256. 武田康

    ○武田政府委員 いま御指摘のデータは美浜一号の冷却材放射能濃度のデータでございますが、美浜一号が運転を始めましてから数カ月の間、立ち上がるというとおかしいのでございますが、飽和水準の方まですっと伸びてきまして、そしてその後、似たようなレベル——といっても数字でいきますと何割かの幅がございますが、そういったレベルを続けているものでございます。  ところで、かなりのレベルのものでという御指摘がございましたが、実は美浜一号のこういった放射能レベル、特に実際にはピンホールその他がございますとヨード131のレベルというのにすぐ響いてくるというふうに判断されるわけでございますけれども、そういった最初の立ち上がりぐあい、それから現在のレベルをヨード131に着目してながめますと、ほかの発電所に比べてやや高いのではないかというような感じは持っているわけでございます。ただ外国の例等も含めまして、はるかに高いとかそういうことではございませんで、外国の幾つかの例等と比較いたしますと、この程度のものもございます。  それでもう一つ先ほど、こういうデータから判断すると百本ぐらい損傷だかなんかがあるというような計算になるのではないかというような御指摘がございましたが、それにつきましては、実はこのヨード131のレベルも、ある時期以降大体横ばいとはいいながら、ある幅で動いているわけでございます。そこで、先ほど指摘のような、どんなようなことになっているのかな、こういう意味でいろんな計算をする考え方があるわけでございますが、実は安全審査の評価におきます計算は、ちょっと飛び出したピークではなくて平衡状態に達した値でやっておりますので、そういうやり方にならいまして計算するとどうなるかというようなことで勘定をしてみましたところ、これも幾つかの仮定がございますが、小さいピンホールのようなものにつきましては、炉内の炉水の放射能レベルと、ピンホールの数といいますか大きさといいますか、まあ大きさを仮定しますと数ということになるかと思いますけれども、統計的に比例関係みたいなものがある、こんなような考え方に立ちまして、それでかつ平衡値をベースにいたしまして勘定いたしますと十五本ぐらいかな、こういうような計算も成り立つわけでございます。そこで、こういう点で考えますと、御指摘の百本、これは全体が二万一千本でございますので〇・五%ぐらいの数字かと思いますが、というのはやや過大な計算かもしれぬな、そういうふうに思われるわけでございます。  ところで、実はいま申し上げましたように、その炉水レベルをベースにいたしましてある仮定をしまして、それでピンホールみたいなものから放射能を持つようなものが外に出てくるというような勘案をして、先ほどの比例関係等も考えに入れましてやりますと、いま申し上げましたような計算が成り立つわけでございますけれども、ただ、実際に発電所を運転いたしますときには、一次冷却水の放射能レベル、これを沃素131のレベルで見ますと、保安規定の中でこれ以下に抑えて運転する、それを超えそうな場合にはしかるべき処置をとるというような数字が決まっておりまして、それに比較いたしますと、この美浜の、少しづつ幅があり、変動しておりますが、このデータの数字から判断いたしますと、安全確保上あるいは周辺環境保全上、運転を続けても差し支えないというふうに判断され、そしてそういうプラクティスでやっている幅と言いますとおかしいのですけれども、そういうレベルの範囲内にとどまっているとは言えるわけでございます。  いま、いろいろな計算等も申し上げましたけれども、私どもといたしましては、いま御説明申し上げました冷却材の放射能濃度データ、そのほか幾つかのデータから「原子力戦争」というドキュメンタリー・ノベルに書かれておりますような急激な燃料棒溶融事故があったとすれば、もう少し変わったデータがここに入っているのではないかということから否定的なことを申し上げたわけでございます。ただし、燃料棒につきましては、すでにピンホールと判定されて、それを含む燃料体を取りかえたというようなケースが幾つか、この美浜第一に限りませず、あるわけでございますし、そういうピンホールなのかほかのものかわかりませんが、いろいろな起こり方というのは各種各様の想定ができるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、危なっかしいものを運転したという考え方を持っておりませんで、管理された限界内、その管理の基準の範囲内で、十分注意しながら運転していれば、それはそれで安全という考え方でございますが、ありとあらゆる、燃料がどうなったかというような可能性を全部否定するというのがこのデータであるということとはちょっと違ったことと考えております。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕  そういう角度もございまして、御指摘のようなお疑いがすでに指摘されておるわけでございますし、それから私どもも何度か申し上げましたように、誠心誠意調べる、冷却水プールの中を調べるというような方向で努力をしているところでございます。
  257. 石野久男

    ○石野委員 冷却水の炉内の濃度が、申請書の一%の場合はこうだということから見ると、大体〇・五%程度の燃料被覆に欠陥があるというような数字になってくるであろうということは、およそ御答弁の中でも確認されるように思いますが、こういうような情勢でありますと、とにかく燃料棒の一本や五、六本、少しぐらい破損しても、とても検出のできないほど、もう炉内の水が汚染されているということを意味しますから、ちょっとやそっとで事故の事実を見出すことさえできない状態だというふうに思われます。こういう点、やはり安全管理の上からいきましても、関西電力、この美浜一号炉の炉内の実情というものは問題があるのではないか、こういうふうに私どもは思っておるのです。  通産省の方で、この炉の疑惑の事故はなかったということを言う。その中にもピンホールの事実はあるのだからということが言われておりますが、先にひとつ聞いておきますけれども、ピンホール、ピンホールと言うのだけれども、どういうような規定でピンホールというものを言っているのか、そこのところを少し私どもにわかるように、どの程度までのところがピンホールで、どれから破損だ、こう言うのか、そこをはっきり教えてください。
  258. 武田康

    ○武田政府委員 いまのピンホールの言葉がどういう言葉か、こういうことでございますけれども原子炉を離れまして通常の場合でも、あるパイプなりまたは板でもいいのでございますが、そういうものにピンホールがあるという表現がよく使われております。それで、それは非常に大きなもので目にすぐ見えるかどうかという点については問題でございますが、コンマ何ミリあるいはコンマ・ゼロ何ミリとか、そういう微細なものが、穴というとおかしいのですけれども、血管みたいなものがあるという俗語であろうかと思います。  実は私ども法律上ピンホールという言葉を定義しておるわけでございませんで、燃料体の中の燃料棒、それは被覆管におおわれておるわけでございますが、そこから中のヨード131その他がにじみ出してくるような感じのもの、そういったものが一般的な意味でのピンホールということでそういう言葉を使い出したわけでございますが、それは明確な定義づけのないまま、現在においても使っているわけでございます。
  259. 石野久男

    ○石野委員 ピンホールという言葉はしばしば出てくるので、どの程度の破損状態がピンホールと言われるのかということについて、これはやはり明確にしてほしいと思うのです。
  260. 高橋宏

    高橋説明員 ピンホールの定義でございますけれども先生先ほど安全審査のときの数字をちょっとお挙げになりましたけれども、要するに安全審査で何%ピンホールということを前提にして審査しますけれども、そのときのピンホールと申しますのは直径〇・一二七ミリメートルの穴をもって一つのピンホールと考えるわけでございます。
  261. 石野久男

    ○石野委員 そこで、先ほどお話では、事故があった場合には、沃素がどういう状態で出てくるかということ、そういうようなことが見受けられない、こういうことなんですが、実は私どもいただいた資料をお手元になにしましたが、五つのグループに分けてみました。上にI、II、IIIと丸で囲んでありますが、この五つに分けた中の、これは昭和四十七年の十二月から四十八年の三、四月ごろにかけてのIVのグループになりますが、このIVのグループで、この期間の出力に比べて非常に異常な濃度になっていることがわかるのです。この時期に何かかなり大きな燃料破損があるのではないか、こういうふうに実は思っております。燃料棒破損の状態を沃素価が一番よくあらわすということですから、このIVのところでごらんになっていただくと、大体沃素131が〇・〇七ないし〇・〇八マイクロキュリーという濃度になっておりますが、これは二十本ないし二十五本の燃料棒がピンホール破損を起こしておる状態ではないだろうか。一月にこのヨード131が〇・三マイクロキュリーという状態に、大体一番ずっと上に飛び出ているところですね、これがその程度になる。この時期にはさらに一挙に何倍かの沃素が放出されたことを示しておる、こういうふうに見受けられます。いずれにせよ、大事故が起こったのではないだろうか。こういう状況というのは、一本の燃料棒が一%程度まるまる溶融してしまったという結果になっているのではないか、こういうふうに私たちは見ているわけです。この状態について通産省ないし科学技術庁はどういうふうに説明されますか。大体これは一月の中旬ごろでございますかな。この当時の出力は二十三万キロワットですから、したがってここでは対数表を用いているから非常に数は小さく見えますけれども、これはふえましたらずつど大きいものになっちゃうわけですから、ここのところに一つの事故があるんじゃないかというふうに見ますけれども、どうですか。
  262. 武田康

    ○武田政府委員 ただいまの御指摘でございますけれども昭和四十七年の十二月から三月にかけまして運転していた期間が、先生指摘の第四区域とこういうようなことでございまして、ヨード131のデータは、御指摘のように大体〇・〇七から〇・〇八ぐらいの間で小幅な変動をその三、四カ月間続けてきております。同時に、御指摘のように一月の前半のようでございますが、ピークみたいな短時間の山が出ておりまして、それは大体〇・三マイクロキュリー・パー・cc、こういうふうに読み取れるわけでございます。  そういうことで、どういうときにこんなピークが出るのかな、こういうようなことでございますけれども、それはたとえばピンホールができたときとか、あるいは出力変動をやりますと、わりにこういうことが出たりというような現象は実はあるわけでございます。ですから、ここでピンホールなどみたいなものが起こったのかなという想像はできるわけでございますが、先ほどのような計算をいたしますと、これはその。ヒータが減衰して平衡状態になった後で判断すべきものと考えられまして、それでその平衡値でいきますと、このピークの起こりました前も後も、先ほど申しましたような〇・〇七とか〇・〇八ぐらいの小さな幅で動いているわけでございます。  実は、同時にヨード131にいま着目していると申し上げましたけれども、全放射能のレベルもずっと測定いたしているところでございますけれども、これにつきましては、レベルの絶対値はともかくといたしまして、ピークが出るとか非常に大きな変動ということでなくて、それ以前の時期あるいはそれ以後の時期で起こっておりますようなある幅で動いておりまして、その幅はそれほど変化が見られないわけでございます。  そういうようなことでございますので、私どもといたしましては、このデータから見ます限りでは、先ほど申し上げましたように「原子力戦争」というノベルに書かれたような急激な溶融ということは、どうもこのデータからは読み取れないというふうに判断したわけでございます。ただし、ピンホールの大きさにつきまして、先ほど安全審査上ではピンホール一つの大きさが直径〇・一二七ということをベースに勘定するということを原子力発電課長から御答弁申し上げましたけれども、その〇・一二七というのが、ピンホールというのはすべてそれだけであるということでは決してなく、もっと小さいものもあろうかと思いますし、もう少し大きいものもあり得るわけでございますし、また「原子力戦争」という本では、ある急激な燃料棒溶融というようなことを書いてございますけれども、燃料が破損と言ったらいいのかあるいは傷と言ったらいいのか、そこのところちょっと表現がはっきりしませんが、そういった傷の起こり方につきましてはいろいろな起こり方がございますので、このピークが必ず、さっき申し上げました安全審査等でベースの数値に使っております〇・一二七ミリのピンホールの範囲内であるというふうに断定することは、もちろんできないわけでございます。
  263. 石野久男

    ○石野委員 余り長くやらないで、もう少し簡潔にしてください。  いずれにしましても、ここで一月段階で急にこれだけピークが突然に出てきている、後はもう平準化したんだから何でもない。じゃ、なぜこんなにここで突然にこういうのが出てくるのだ。しかも、ここでこれだけのものが急に飛び上がった形で出てくるというのには、一本や二本のピンホールでこんな量が出るはずはないんですよ、どう考えてみたって。これは数十分の事故でもあれば別ですが、そうでなければ一つの燃料棒に何らかの溶融事故か何かあって。ぱっと出る。沃素は、半減期がそんなに長いわけじゃないでしょう、せいぜい四日か五日でしょう。だから、ずっと後ならされていくのはあたりまえのことなんで、だからいまの答弁ではちょっとおかしいと思うんだ。  四十八年一月の変更申請書に対する原子力安全審査会第九十四部会の資料の「一次冷却材喪失事故時の被曝線量計算について」の中にある放射性沃素の炉内蓄積量の記述と、それから四十一年十一月の同じく二十四部会資料の記述から、燃料棒に破損があって沃素131が出てくる量は、平均的に燃料棒一本当たり約四キュリーだというふうに書かれておる。この資料が誤りでないとするならば、沃素131の炉内水濃度ピーク時の〇・三マイクロキュリーというのは、冷却材総量が百トンと考えたとき、全体では三十キュリーということになっている。ですから、このとき一挙に約三十キュリーの沃素が炉内に放出されるということになるので、燃料棒の一本のピンホールではとても説明がつかないんですよね。何本かの燃料棒が立て続けにピンホールしたか、あるいは合理的に考えるならば、これはどうしても一つの燃料棒か何かに大破損が起きてこういう状態になったんだというふうに見られるので、むしろこのことは田原氏の書いておる一つの燃料溶融事故の裏づけになるんだとわれわれは見るわけなんですよね。だから、そういうふうに見ると、ここに一つの事故がある、こう見ざるを得ないので、そういう立場からひとつ検討を加えてほしいんだ。
  264. 高橋宏

    高橋説明員 先ほど審議官からお答えいたしましたように、今後の調査は継続するつもりでございます。ただし、いまの第四領域でございますが、そのときのピークのそれがそのことを示しているんじゃなかろうかという御指摘につきましては、私どもは次のように考えております。  おっしゃったように、一本ないし数本に非常に大きな損傷があるといたしますと、ピークが出ると同時に当然その後の平衡値、平均値でございますけれども、その値が前と比べて上がるということが起きるということが理論的に考えられます。もう一つは、次に炉をとめたときの追加放出量、これが当然うんとふえるということが物理的に考えられる。それからもう一つは、全放射能レベルがそこで当然上がっておるはずである。その三つの点から、恐らくここのピークについてのみ議論しますと、そこではおっしゃったような急激なディフェクトがあったということを想像するのは非常に困難であるということでございます。むしろ一番当初、先生のメモでIと書いてございましたけれども、そういうところでレベルが少しずつ上がっているということは、やはりこの辺でピンホールが実際あいておったわけでございますけれども、そういうことを示すということは言えるかと思いますが、御指摘の四十八年の一月のピークだけに着目して言いますと、いま言ったようなことからおっしゃったような大幅なディフェクトがそこであったということを想像するのは非常にむずかしいのではなかろうか、そういう見解でございます。
  265. 石野久男

    ○石野委員 ここはもう少し細かく実際について検討していただきたいと思うのです。この段階で全放射能が下がったわけではなくて、やはり上がったわけですね。このときにも、前段から見ればずっと上がってきている。そしてしばらくそういう状態がずっと続いていきますが、沃素は減っていますけれども、全放射能は必ずしも急に下がっているわけではないので、ずっと横に、徐々に下がっていくという状態をしておりますから、あなたがいまおっしゃるようなことは具体的にここには出ていると思いますよ。  ですから、私はやはりこういうような問題を含めて、ピーク値〇・三マイクロキュリーというのは、出力二百三十万キロワットということから計算すると、大体燃料棒の破損が最大で九十二本分ぐらいになる。つまり、四十八年一月のピーク値はこの時点で少なくとも約六、七十本前後の燃料棒から沃素131が一挙に放出された量に等しくなるのです。こういうことから、一本、二本の燃料棒が、いうところのピンホールを起こしたとは信じられないので、どうしてもこれは田原氏の指摘しているように、この時期に何か燃料棒の溶融事故があって、内部のペレットが落ち、炉内に流れ出したのではないか、そういうふうに見られるし、また、その田原氏の説明の方が非常にわかりやすいわけです。いまあなた方の説明の方がよっぽどわかりにくくなってしまう。だから、これはもう少し皆さんの方で現場をよく見てもらわなければいかぬし、またこういう理由からも、私はこの使用済み燃料がこの部分についてどうなっているかをひとつ見ていただく必要がある、こういうように思います。  このことは、シッピングの方で今度はもう一つ裏づけされるように思うのですよ。資料の中から、あなた方からいただいておるこのシッピングの状況をずっと見てまいりますと、いわゆる田原氏の言っておる溶け落ちた燃料集合体が第三領域であると考えられるわけなんで、そのことをお聞きする前に、このシッピングの出された日付は何年の何月何日ですか。
  266. 武田康

    ○武田政府委員 ただいまのシッピングの問題でございますけれども、シッピングを実施いたしましたのは、定検に入りまして燃料を取り出した後でございまして、四月から五月にかけてでございます。正確に申し上げますと、四月の十六日から五月十日にかけて約一ヵ月の間に、リーク等をテストいたしますシッピングをいたしております。  以上でございます。
  267. 石野久男

    ○石野委員 この表はその期間の平均値なんですか何なんですか、この第一領域、第二領域というのは。
  268. 武田康

    ○武田政府委員 シッピングと申しますのは、実は燃料体が美浜のこの炉の場合には全部で百二十一集合体がございます。一体ごとにやることでございまして、それは一つずつ順番にやるわけでございます。個別に、一つの燃料体ごとにどうかというようなチェックをして、百二十一回のテストといいますか検査といいますか、それを行った。そのために最初から最後までの全部の期間が、先ほど申し上げましたように一ヵ月近くかかっている、こういうことでございます。
  269. 石野久男

    ○石野委員 この資料の中にリークというのが幾つか備考欄に書いてありますが、これはリークとそうでないものとの見分け方の基準はどういうところにあるのですか。
  270. 武田康

    ○武田政府委員 このシッビングテストをいたしましたのは、先ほど申し上げましたように四十八年の四月から五月にかけてでございますが、いまここでリークと判定したものが百二十一集合体のうち四体ございます。ほかはリークの判定をしなかったわけでございますが、実はどんな考え方かと申し上げますと、シッピングというのはあるキャスクの中に燃料体を入れまして、その中に窒素等の気体を送り込みます。そういたしますと、その圧力でと言ったらいいのかと思いますけれども、燃料体の中の燃料棒の中に入っている分裂生成物等が引っ張り出されてくる、こういうようなことになっているわけでございます。そこで、主にチェックしておりますデータは、そのシッピングの期間中に何カウントあるか、最初のころはどうで途中はどうで最後の時間になるとどのぐらいふえるか、あるいは横ばいで進行するかというような、CPM比と言っておりますけれども、いわば全放射能レベルがシッピングをやっている時間の間どう変化していくかというようなデータでございます。  それで、そのデータの中で一番最初の数分間と最後の数分間でその比が何倍になったのか、あるいは減ってきたのかというような値を一つ考えているわけでございます。もう一つは、いろいろな核種が中にまざっているわけでございますが、その核種の中でキセノン133というようなものがございまして、そのレベルがどういうレベルかというような測定をいたしております。この二つが中心で、キセノンのレベルが、ほかのものに比べてでございますが、どんなピーク値を持っているかというような二つの数字に着目いたしております。先ほど申し上げましたシッピング時間の間の一番最後の数分問と最初の数分間の比率が高いほど、リークの疑いが濃厚というのが一つ考え方でございまして、それから同時に、いま申しましたキセノンピークが高いほど疑いが濃厚というような考え方でございます。  なお、それだけでなくて、実は測定いたしますときにいろいろカウントするわけですが、ノイズ等もございますし、それからバックグラウンドも、同じ入れ物の中に順次燃料体を出し入れして測定いたしますので、そういう意味ではバックグラウンドの変動もございます。それから先ほど、カウントの比率というのは一番最初の数分間と最後の数分間の比率と申し上げましたが、実際には途中でふえて最後に減ったとか、あるいは初めから終わりまでどんどんふえているとか、あるいはふえたけれども途中で飽和して、その飽和状態が保たれているとか、いろいろな状況がございまして、微妙なものにつきましてはそういうことも含めて総合的に判断するというのが、実は四十八年当時のプラクティスでございました。  ただ、現在は、この美浜の例もそうでございますし、その後もこういうようなシッピングのテストといいますかチェックを、ほかの発電所、この発電所についてもそうでございますが、定検のたびにいろいろやっております。そういうプラクティスを踏まえまして、実績等を含め、現在はやや機械的な判断をしようかということで、機械的な判断をやる方向で現在のプラクティスをつくっておりますので、この時点と現在とは少し変わってきております。基本的な考え方としては余り変わってないわけでございます。  以上がシッピング基準でございます。
  271. 石野久男

    ○石野委員 いまのようなCPMの比とそれからキセノンピークと両方にらみ合わせてリークだということであるならば、私たちもそうだと思っておるのです。それで見ますると、皆さんの方ではリークを四本しか出しておりませんが、たとえば一領域のナンバー五あるいはナンバー二十六、三十、ここらも同じような事情になるし、第二領域のナンバー三、四、五、七、八、これもやはり同じような状況であろうと思う。それから第三領域のあなたの方ではナンバー三十三だけを出しておりますけれども、ここではやはりナンバー六も同じようにそういうリークの状態にあった、こういうふうに見受けられる。特にこの中で第一領域にリークがあるということについては、若干やはり問題があると思うのです。  実は、この第一領域は燃料棒のつぶれという変型事故で全部交換されたものですね。その中に三体もの、皆さんの方でいってもこれは三体ですが、われわれがいまの説明を聞いてもあと三体、六体になる、こういう穴あきがあったということは重大問題だ、こう思っておるのです。美浜の第二号炉では、燃料棒の曲がりの事故で燃料棒の相互の接触、溶融が問題になりましたが、一号炉でもつぶれ事故と報ぜられてはいたが、二号炉と同じように接触、溶融の可能性があったんだということがこれを見て感じられます。非常にわれわれとしてはこわいなという気がする。  そういうように私たちは見ますけれども、第一領域のリークという問題については、私たちがいまそう考えるような問題点の危惧はございませんですか。
  272. 武田康

    ○武田政府委員 四十八年定検時のデータで私どものその時点判断は、第一領域につきましては、全体で四十一体のうち三体について燃料棒にリークの疑いがあるのではないかという判断でございました。ただ先ほど、いまではいろいろな発電所の定検でのこういう経験を踏まえてやや機械的に判断をしようというような要素も含めまして、少し判断の基準が変わったということを申し上げましたが、そういうようなことはございますけれども、実は……(石野委員「簡単にやってください」と呼ぶ)  この第一領域全部取りかえたわけでございますけれども、それはリークのために取りかえた、あるいは先ほど先生指摘のございましたBORAX……
  273. 中村重光

    中村委員長 武田審議官、簡潔にとこう言っているんだから、簡潔に答弁しなさい。
  274. 武田康

    ○武田政府委員 失礼いたしました。  第一領域ではリークの疑いのあった燃料三体でございますけれども、それも含めまして第一領域はその時点、取りかえの時期になっておりました。それで取りかえたわけでございまして、それまでの運転状況等考えてみますと、これは管理限界の中で運転していたわけでございますので、ここで問題があったので取りかえた。もちろんリーク等の疑いがあったものもございますけれども、というよりもむしろその時期なので全部取りかえた、こういうふうに私ども考えております。
  275. 石野久男

    ○石野委員 第一領域に問題がありますが、特に大臣が早く帰られるそうですから、大臣答弁をいただく前に、第三領域のナンバー三十三、このリークでのCPM比にしましてもキセノンピークにしましても非常に高いですね。私どもはやはり田原氏の指摘しているもの、この第三領域のナンバー三十三というところに問題があるように思われるのです、この表から見まして。これは通常じゃありませんですよ。そこで、これは明らかに大破損であると思われますし、田原氏の指摘しているように放射能濃度のデータ等も軌を一にしておりますから、もしここで溶融事故がないというなら——こういう数字の上で、表の上では確かに問題があるとこう見られる、指摘すべき内容を持っているとわれわれは思いますが、そうでないとするならば、やはり写真を見せてもらうよりしようがないのですよ。ですからやはり一日も早く、これだけ疑惑を受けている事故ですし、また、それからあなた方から出された資料についてもそれを裏づけるような内容を持っておることですから、これはいまいろいろ手だてをしているそうですか、臨時国会閉会までの間に何としてでも方法を講じて、具体的に通産省はそうじゃないんだということを私たちにわからすような写真での解明、明示をしてほしい、こういうように思うのですが、その点についていま一度あなたの意見を聞いておきたいと思います。
  276. 武田康

    ○武田政府委員 先生から御指摘ございましたように、第三領域のナンバー三十三という集合体のカウント比が実は一番高いわけでございます。そういうようなことでこれが一番高いということは言えますので、ピンホールの大きさその他あるいはほかのことであるかもしれませんけれども、いずれにいたしましても着目すべきものの一つであるという先生お話はごもっともな点があると私どもは思っております。それで、ただこういうデータで判断というのでは、御指摘のような疑いが出されているとしますと、これでは私どもとしても満足できませんので、先ほど申し上げましたように使用済みプール内の調査を誠心誠意早く促進してやるというつもりでございます。なお、このデータそのものは、データの分析をする専門屋さんに言わせますと、ナンバ三十三の燃料体のシッピングデータそのものが、ピンホールタイプのリークの典型的な傾向には乗っているもののようではございます。
  277. 石野久男

    ○石野委員 大臣にお尋ねしますが、実は美浜一号炉の燃料棒溶融の疑惑というものが田原総一郎氏の「原子力戦争」というものの中で出されて、それについてこういう事実があるとするならばこれは大変だということで私は先般来質問をしておるところです。通産省は、この問題については大したことはないというような御答弁でございましたけれども、いまいただいた資料の検討をしていきますると、先ほどやはり疑惑を持たれるような内容であるということも答弁の中にありました。私は、燃料棒の溶融事故というものは非常に重大だと思います。それを善処するための対処の仕方というのもよろしゅうございますが、この種の事故がありましても現場から監督官庁である通産省への報告もなければ、科学技術庁もこういうことがほかから何か言われないとわからないというようなことでは、炉の安全管理という問題についてわれわれとしては非常に危惧を持たざるを得ない。こういう問題の実態の調査というものはもう少し早急にやるべきでなかろうか、こういうように思うのです。大臣のひとつ所見を聞かしてもらいたい。
  278. 前田正男

    前田国務大臣 そういう疑惑を持たれるということははなはだ残念なことでございますけれども、いま説明をしておるのを聞いておりますと、これの監督官庁の通産省としては、そういう心配はないというようなことでございますけれども、しかし、石野委員が御指摘のとおり、いろいろと問題もあるようでございますから、ひとつなるべく早く実態を調査して、そして先ほど使用済み燃料の貯蔵のところもなるべく早く調査するということでありますから、調査してお答えできるようにするのがいいんじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございますし、また、私たち科学技術庁の方も、それについてはできるだけ通産省とよく協力して善処していきたい、こういうふうに思っておる次第であります。
  279. 石野久男

    ○石野委員 大臣はほかに用があるようですが、いまの御答弁はここだけの答弁にしないで、ひとつ具体的にそれが実行できるようにしてもらいたい。  井上さんにきょうおいでいただいておりますことは、原子委員会の実際の仕事をなさっておられまして、安全管理なり審査の問題について非常に熱心な御努力をなさっていらっしゃること、よくわかっておりますが、原子委員会立場からしまして、いまのような事態が——通産省の方では異常はないと認められると言いながらも、提出された資料には解明もできない問題が非常に多うございます。この種の問題について原子委員会としては、これから機構の改革等も含めていろいろ問題もあるところでございますが、安全審査並びに安全管理という問題について無関心であってはいけないのではないだろうか、もう少し積極的に実務官庁に対して物を申すべきではないか、こういうように私は思います。いままでの質疑の中で井上委員がお感じになられておることをひとつお聞かせ願いたい。
  280. 井上五郎

    ○井上説明員 大変ごもっともな御指摘でございまして、実は先般、八月二十五日であったかと思いますが、同様の御質疑があったそうで、吹田委員が出てお答えをいたしております。そのときにも私ども考えを申し述べておるわけでございまして、原子委員としては、もちろんこうした安全の問題につきまして大きな関心を持っておるし、また、御指摘のような点についてはより一層関心を持つべきであると思います。先般、行政懇談会で御指摘がありました点も、こうしたことについて十分ではないんじゃないかという意味で一つの勧告案が出たものと考えておりますが、それを受けまして、たとえ法律改正前でありましても、より十分な関係を持ちたいということで、通産当局等とも打ち合わせをすることにいたしております。  この問題につきましては、私自身はフィクションと申しますか、ドキュメンタリーを読んでございませんが、関係の問題につきましては、その部分は読んでおります。いま審議官からお話がありましたような点につきましても検討を加えております。しかし、これはやはり実証の上で調べてみなければならないので、通産当局としてもわかり次第私どもの方に連絡をするということの報告を受けております。残念ながら、ただいま武田審議官からお話がありましたように、若干の時日がかかる由でございますが、わかり次第私どもとしても検討を加えたいと思います。  御指摘の安全について十分原子委員会も慎重に審議をしろという御趣旨については、全く同感でございます。
  281. 石野久男

    ○石野委員 私は最後に、これは通産省の方へ資料要求をしておきたいのですが、炉水内の放射性核種の分析データをずっと出してもらいたい。それから、そのデータの中にはぜひひとつガンマ核種も入れてもらいたい、これだけを要求しておきたいと思います。よろしゅうございますか。
  282. 中村重光

    中村委員長 武田審議官、いいですか。
  283. 武田康

    ○武田政府委員 ただいまの先生の核種分析の結果でございますけれども、これについては事務局に命じまして検討させていただきます。  それで、ただ一つだけこの際申し上げさせていただきたいのですけれども先ほど申し上げましたことは、いままでわかっておるデータから「原子力戦争」という本に書かれたような急激な溶融事故はなかったと思われるということを申し上げましたので、トラブルのピンホールその他の態様というのは各種各様でございますので、あらゆる損傷形態が全くなかったと断定しているわけではございませんで、だからこそ私どもも燃料プールの中のものを調べたい、こういうふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、私どももこういうような御指摘がありながら、これは何も問題がないんだといってぼんやりしているのではございませんで、安全確保、それから中身、どんなようなものであるのかを明確にするということに誠心誠意努力しているのでございますので、これだけつけ加えさせていただきたいと思います。
  284. 石野久男

    ○石野委員 最後に、私は委員長にお願いしておきたいのですが、この問題は、先ほども、委員長はちょうどおいでになりませんでしたが、全国の社会党、総評、原水禁の諸君が集まって会議をやりまして、美浜の発電炉を見学させてくれと言ったんですが、見せてくれない、断られておるわけです。私は、こういう事情がもしあったとすれば、これは大変なことだと思っておりますので、いまこういう情勢のときですからなかなか容易じゃありませんが、他日、委員会でもし調査団が出せるようであれば調査団を出すようなことを諮っていただきたい、これをひとつお願いしておきたいと思います。
  285. 中村重光

    中村委員長 理事会に諮って対処したいと思います。
  286. 石野久男

    ○石野委員 終わります。
  287. 中村重光

    中村委員長 次回は、来る十一月四日木曜日、午前十時理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会