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1976-10-07 第78回国会 衆議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月七日(木曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 中川 一郎君    理事 加藤 六月君 理事 佐藤 守良君    理事 三枝 三郎君 理事 浜田 幸一君    理事 増岡 博之君 理事 斉藤 正男君    理事 坂本 恭一君 理事 梅田  勝君       關谷 勝利君    丹羽喬四郎君       葉梨 信行君    細田 吉藏君       太田 一夫君    久保 三郎君       兒玉 末男君    米田 東吾君       紺野与次郎君    三浦  久君       石田幸四郎君    松本 忠助君       河村  勝君  出席公述人         交通評論家   高橋 秀雄君         日本労働組合総         評議会議長  安恒 良一君         早稲田大学商学         部教授     中西  睦君         桃山学院大学講         師       高屋 定國君         地方公務員   森  玲子君         全国消費者団体         連絡会代表幹事 工藤 芳郎君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案内閣提出、第七十七回国会閣法  第一六号)      ————◇—————
  2. 中川一郎

    中川委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案について公聴会に入ります。  本日御出席願いました公述人は、交通評論家高橋秀雄君、日本労働組合総評議会議長安恒良一君、早稲田大学商学部教授中西睦君、桃山学院大学講師高屋定國君、地方公務員森玲子君、全国消費者団体連絡会代表幹事工藤芳郎君、以上六名の方々でございます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  申すまでもなく本案は重要な法律案でありまして、本委員会といたしましても慎重なる審議を続けているところであります。この機会に、広く各界からの御意見を拝聴いたしまして、審査の参考にいたしたいと存ずる次第であります。  何とぞ、公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序について申し上げます。  まず、公述人各位からお一人十五分程度御意見を順次お述べいただきまして、その後委員から公述人各位に対して質疑を行うことになっております。  なお、念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  御意見をお述べいただく順序は、高橋公述人安恒公述人中西公述人高屋公述人森公述人工藤公述人順序でお願いいたしたいと存じます。  それでは、高橋公述人にお願いいたします。
  3. 高橋秀雄

    高橋公述人 私は、ただいま御紹介いただきました高橋秀雄であります。本日は、国有鉄道運賃改正に関する法律案につきまして私の所見を申し上げたいと思います。  国有鉄道運賃問題は、運賃法定主義制度改正の問題、それから地方赤字線運賃など運賃政策上の問題、それから鉄道経営上の立場から運賃水準決定につきまして考慮すべき事項、その他運賃水準の問題及びその運賃水準をどんな制度によって運賃を回収していくかということ、換言すれば運賃をだれが負担するかということなどの問題がありまして、非常に問題がたくさんあります。したがって、私は、ここでは一般論は省略いたしまして、重要な項目だけまとめて、要点を申し上げることにいたしたいと思います。  まず、本年度改定案中次の三項目について原則として賛成であります。  第一に、過去の累積欠損額の一部の二兆五千四百億円を特定債務として、別途特別勘定を設けて、運賃原価に算入しないようにするためにたな上げし、国の負担として処理することになったのでありますが、これは政治上の理由運賃調整がおくれていたことにより発生した欠損でありますから、国の負担とすることが適切かと考えます。  次は、第二に、地方赤字線欠損額の問題で、その欠損に対して一部百七十二億円の補助が認められたことは適切な措置と思いますが、欠損はなお約二千億円ほど残るのであります。地方赤字線は、地方開発あるいはナショナルミニマムとしてのサービス確保を国の政治上の立場から適切と考えて経営されているのでありますから、当然、そのことによって生ずる欠損補助の増額として措置されることが適切ではないかと思うのであります。  それから、第三は、運賃水準を一律に調整し、引き上げる問題でありますが、国鉄現状はいまやまさに倒産状態にあります。工事代金の支払いを延期せねばならないというようなことはまさに破局そのものでありますから、一日も早く運賃水準調整して健全な経営ができるようにすることが必要であります。公共料金だからといって安いだけがよいというのではなく、適切な価格でなければ結局国民のだれかが負担しなければならないのであります。現在の運賃昭和四十七年に計画され、四十八年に国会に提案されて改正されたものでありまして、その間石油ショック関係もありましたので、ようやく今回五十一年春に調整法案が提出されておるものでありまして、その間四年間も現在のものは据え置かれております。でありますから、巨額の欠損を生ずることになっておるのであります。そこで、今回は一日も早く改正実施すべきものと考えます。そして五十二年度改正案はいまから十分検討されまして、平均的な一律の引き上げでなく、制度的にも必要な調整を考えていく必要があると考えます。     〔委員長退席浜田委員長代理着席〕  そこで、次の年度制度改正に関連して私の意見を申し上げたいと思うのであります。  運賃制度運賃法定制度などを考えます場合に、最も重要な点といたしましては、自動車飛行機などの発達により交通革命が進み、国鉄独占経営前提とする諸制度を改めることが必要だということであります。したがって、今回の国鉄法改正案の五十四条二項によりまして、国鉄は速やかに収支の均衡を図るように規定しております。その趣旨はまことに結構でありますが、それを実現しますためには、国鉄経営能力を与えるということ、すなわち自主性を認めて責任ある経営ができるようにすることが必要であります。手かせ足かせでは何もできません。  経営上の重要な最高の意思決定国会にあります。国鉄責任を持てるような経営とするためには、運賃法定主義改正、あるいは予算制度の修正、あるいは鉄道営業法など関連法規について検討を加えまして改正することが条件となりますが、ここでは運賃制度について基本的なことを二、三つけ加えて、今後の改正についての参考に供したいと思うのであります。  第一は、運賃水準の問題でありまして、国鉄全線幹線区地方線区に分けまして、幹線系につきましては国の補助を考えないで、原則として市場メカニズムの機能を働かせて、売り手と買い手の取引を考えて、売り手が自主的に原案を決定し、中立的な運輸審議会または運輸省の認可によって決定するという方法によったらどうかと思うのであります。そして運輸審議会の構成は、現在よりももう少し権限を強化して独立の委員会とするとともに、民主的にするために国会の推薦する委員を加えるというようなことを考え、民主的な審議ということも考えるべきであろうと思います。  それから、幹線区貨物運賃の問題でありますが、これは非常に競争の多い現状にかんがみまして、企業的に改め、特別運賃を適切に設定することが必要だと思います。そしてその貨物運賃水準は、回避可能原価すなわち個別費基礎にして決定するということにし、旅客貨物共通費はしたがって運賃で回収できないものができてくると思いますが、もしできればそれも一部は回収し、残ったものは旅客負担とするということはやむを得ないと思うのであります。  もし貨物運輸がなければ、その共通費というものは当然旅客負担になるのであります。でありますから、原則としては回避可能原価基礎にした運賃を考え、できれば多少でも共通費負担できるというものがあれば負担させるというような形で運賃水準を決めていったらどうかと思うのであります。  それから、地方線区運賃問題でありますが、これは幹線系運賃参考にして地方事情に応じて決定するということにいたしまして、この場合に欠損を生ずることが多いと思うのでありますが、しかし、その欠損全額を国の負担とするか、あるいは一部を地方自治体負担とするかという点も検討する必要があると思うのであります。現在、過疎バス地帯につきましては、バス欠損に対して国と地方自治体とが分け合って負担しておるという例もあります。  要するに、地方線区において欠損が出た場合に、その補助基準はどこに置くかということでありますが、単に経営のまずいことによって生じた欠損はすべて補助するというのではなくて、補助基準としましては、計画原価収入との差額ということを基準にして考えたらどうかと思うのであります。その計画原価というのは、静的能力原価すなわちトラックキャパシティーに対する計画列車回数、いわゆる操業度、その操業度における客車の利用率を考えた原価、それを計画原価とし、その原価と実際の収入との差額補助基準としたらどうかと思うのであります。  それから、第二は、遠距離逓減制の確立であります。これは現在は過去の遠距離逓減制距離比例制にむしろ改めるという方向に変わりつつあるのでありますが、しかし、最近の社会事情あるいは所得水準の向上、あるいは観光旅行の増加というようなことを考え、また、飛行機自動車競争関係も考えまして、遠距離逓減制を再検討して導入することが必要であると思うのであります。単純なるフラットインクリースということによっては、現在の運賃でも他の交通機関運賃と比較してすでに高いものができるというようなことで、もうすでに壁にぶつかっておるのでありますから、そういう関係も考慮しながら、しかも、わが国の地形を考えて遠距離逓減制をもう少し強化していくということで制度を考えて、収入を確保するような方法を考えなければならぬと思うのであります。  それから、次は、定期運賃割引率をもう少し縮小して私鉄並みにしたらどうかということも考えられます。ということは、大都市の交通網としましては、国鉄私鉄と含めて一つ交通網というふうに考えるべきでありまして、国鉄だけ特に割引率を多くしておくという理由は別にないように考えられるのであります。やはり、私鉄とのバランスということも考え、交通の全体の調和ということも考えながら割引率調整していくということが必要だと思うのであります。  それから、次は、運賃法定制の問題でありますが、運賃法律で決めるという現在の行き方につきましてはなお検討を要すると思うのであります。というのは、非常に硬直的になりますから、できるならば、どういう基準運賃は決めるべきかという運賃決定する基準につきまして法律でお決め願うということにして、それを実行する実行運賃経営者にお任せ願って、それに対して政治上の立場からいろいろ調整をする必要があればそこで調整を加えるというふうにして、原則国会でお決め願って、実施上の運賃経営者に任せるというふうなことにしたらどうかというふうに考えるわけであります。  以上、簡単でありますが、私の意見を申し上げた次第であります。(拍手
  4. 浜田幸一

    浜田委員長代理 ありがとうございました。  次に、安恒公述人にお願いいたします。
  5. 安恒良一

    安恒公述人 御紹介がありました総評の副議長安恒であります。私は、総評に結集いたします労働者立場から見解を申し上げてみたいと考えます。  まず、私は、今回政府国会に提出し、現在当運輸委員会において審議をされておりますところの国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に対しまして反対であるということを明確にしておきたいと思います。  と申しますのは、昨年十二月三十一日の閣議了解事項でありますところの日本国有鉄道再建対策要綱は主として運賃値上げを柱としたものでありまして、これはさきに挫折をいたしました四十四年並びに四十八年の国鉄再建計画と本質的に変わりがないと私は考えるからであります。  まず、最初に、申し上げるまでもなく、国鉄旅客輸送の約半分と陸上貨物でも半分に近い分野を担うところの、国民生活産業にとっても非常に重要なものであります。また、エネルギーの節約、それからコミュニティーの維持、それから公害問題の解決のためにも、さらに、将来にわたっての公平、平等な交通体系をつくるためにも、国鉄国民生活にとって不可欠で、つぶしてはならない重要な産業だと考えます。ところが、御承知のように、今日国鉄は三兆一千億の累積赤字と七兆に近い負債を抱え、倒産寸前だと言われております。このような状態になりました責任は、国有鉄道でありながら政府国鉄にふさわしい財政負担をし、援助をしなかったところに主要な原因があるということを私は指摘を申し上げたいのであります。  国鉄への政府支出を見ますと、昭和二十六年から四十五年までの二十年間びた一文も支出をされておりません。新幹線建設も全部自己資金と借金で賄われているものであります。四十六年度以降年々政府支出がふえておりますが、たとえば四十八年度出資額を見ましても、同じ運輸省の所管でありますところの道路、港湾、航空その他の交通機関に比べ、二分の一から五分の一という僅少なものであります。  また、多くの先進諸国におきましても、国有鉄道事業わが国と同じように軒並みに赤字状態にあります。イギリス補償金西ドイツ欠損補てん金フランス総括交付金という形で毎年その赤字の穴埋めをしております。各国とも政府国鉄への援助金を出しているのでありますが、たとえば七四年で比較いたしますと、フランス西ドイツ日本の五倍以上となっているのであります。  政府は、国鉄財政が今日のような赤字になりました主要原因運賃値上げ予定どおりに行われないからだというふうに主張されているのでありますが、その主要な原因は、諸外国に比べて政府国鉄にふさわしい支出援助をしなかったところにあるということを私は第一に指摘をしたいのであります。  第二に指摘したいことは、貨物に端的にあらわれているように、国鉄のシェアが極端に低下したのは、政府高速道路を急速に造成して自動車優先政策をとったからであります。政府に総合的な交通政策が全くなかったからであります。たとえば、今日マイカーの急増を主要な原因といたしますところの都市交通における混乱はそのことを端的にあらわしていると私は思うものであります。一方、赤字政治路線と申しますか、政治家の皆さんの主張によって続々といわゆる赤字路線が今日においても誕生しております。そして国鉄はそのしりぬぐいをさせられていることを私はここで改めて指摘をしたいのであります。  第三に、今回の政府案によりますと、ことし五〇%、来年度五〇%と、計一二五%の値上げ計画されておりますが、政府はまともにこのような計画実施されるというふうにお考えになっているのでしょうか。ことしの一月末に運輸省運輸審議会におきまして運賃値上げに対する公聴会がありましたが、反対立場公述人はもちろんでありますが、値上げ賛成立場の人々も、このような大幅な値上げをするならば旅客貨物がますます国鉄から逃げてしまう、果たして再建ができるのかというふうに疑問を投げかけておったことからいたしましても、私は政府の真意を疑いたいのであります。不況とインフレの同時進行の中で減税なしの実質増税社会保険料引き上げがあり、その上に電気、ガス、消費者米価を初め公共料金が軒並みに上げられております。国民がこのような膨大な国鉄運賃値上げ反対するのは当然であります。このことは三木内閣国民生活の安定に熱意が足りないことを示していると言っても過言ではないと私は考えます。  第四に、私は特に労働者立場から国鉄労働者のことについて一言触れておきたいと思いますが、政府国鉄再建計画は、常に合理化の名のもとで、国鉄労働者の首切り、労働強化労働組合への抑圧と一体となったものであります。四十四年の再建計画は、あの悲惨なマル生運動一体でありました。また、四十八年の再建計画は十一万の人員削減を内容としたものであります。それに対して国鉄労働者が反撃をしたのは当然であります。また、最近では、労働基本権であるスト権奪還に対して国鉄経営論を持ち出してすりかえをしようとしており、また、今回の仲裁裁定実施につきましても、運賃値上げ前提として、議決案件として国会に提出するなど、常に国民国鉄労働者を分断させようとするものであります。公式の統計を見ましても、国鉄労働者生産性は、日本を一〇〇とした場合、西ドイツは四二・四、フランスは六七・二、イギリスは三三・九であります。日本国鉄労働者生産性は圧倒的に高いにもかかわらず、今回の再建案に当たって五万人の削減が打ち出されているのであります。まことにけしからない態度だと言わなければなりません。  以上のように、今回並びにいままでの政府のとってきた態度に私は激しい批判と反対態度を持つものでありますが、しかし、国鉄財政現状のような深刻な状態に立ち至って、国民国鉄労働者合意のもとで速やかに国鉄の真の再建を図らなければならないと私は考えます。  私たち主張する国鉄再建の柱は、第一は公共輸送機関としての国鉄役割りを明確にすること、第二は政府国鉄にふさわしい財政負担をすること、第三は国民生活経済立場から総合的な交通政策を確立すること、第四は国鉄労働者労働条件改善及びスト権を回復することでありますが、時間の関係もありまして、私は、特に、国鉄財政の抜本的な改革について私たち主張を述べてみたいと思います。  第一に、過去債務については政府原則として全額責任を持って処理することでありまして、第二に、経費に関する負担原則を明確にするため、一、新幹線、新線建設改良工事のうち通路施設部分全額政府支出とし、その他の工事費は利子補給すること、二、公共負担制度化を図るため政策的な運賃割引についてはそれぞれ実行部門負担とすること、三、地方支線区の運営欠損に相当する額を地方支線交付金として交付することであります。以上のような措置を完全に実行した上で損益勘定に係る資金について利用者負担することにはやぶさかでありません。つまり、過去の負債を含めて、通路施設建設政策的な部分については政府財政負担をすることがあくまでも大前提であり、それを政府が完全に実行して、なお出てくる運行上の損益については利用者負担をするという負担区分をこの際明確にしようということであります。さらに、運賃法定主義は当然存置し、他の交通機関を含めまして運賃制度民主化を図るために、利用者代表を含めた新たな審議会が必要であると考えられます。また、ダイヤの編成に当たっては広く利用者意見を聞くなど、国鉄経営民主化を図らなければなりません。そのためにも、国鉄への過度の政府の介入を排除し、国鉄自主性を与えるよう予算業務改正を行うことが必要であります。また、人事制度改善経営と経理の公開がさらに必要であります。  現在すべての国民公共輸送機関としての国鉄は必要であると考えています。しかし、政府の提出している、運賃を二年間に二倍以上値上げすることを骨子とした国鉄再建案には多くの国民賛成ではありません。私たちは、この際国鉄国民合意のもとに真に再建したいと考え、いままでも何回となく国鉄再建総合政策について政府に要求を続けてまいりましたが、この際ぜひ各党の先生方にお願いしたいのでありますが、さきに述べましたとおり、過去の債務のたな上げ、通路部分の国の支出地方線赤字政策割引についての国の負担原則をぜひ合意をしていただきたいと考えるものであります。私は、このような負担原則が確立しますならば、そのために生じました運行上の赤字については今後利用者負担することについて否定をしないものであります。  私は、今回の国鉄問題についてこのように真剣に考え、そして私どもは全国各地でこのような問題が実現をするように運動に取り組んでおるということを申し上げまして、私の見解表明といたしたいと思います。  以上であります。(拍手
  6. 浜田幸一

    浜田委員長代理 ありがとうございました。  次に、中西公述人にお願いいたします。
  7. 中西睦

    中西公述人 御紹介を受けました早稲田大学中西でございます。  まず、最初に、私は、このたびの国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に対しまして原則的に賛成であるということを申し述べたいと思います。しかしながら、特に赤字一つの大きな原因である貨物を中心に私の公述をさせていただきたいと考えております。  現在、四十一年度から五十年度までの赤字累積額は約三兆一千四百億円と言われておりますが、それを鉄道部門赤字、いわゆる国有鉄道自動車、船舶というものを除いて考えますと二兆九千三百億円と大体推定できると考えます。ただし、この赤字額は、五十年度推定額でございますけれども、これを旅客部門貨物部門というものに分けて考えてみますと、旅客部門につきましては約六千四百億円、貨物部門につきましては二兆二千九百億円の累積赤字を四十一年度から五十年度まで持つことになるわけでございます。すなわち、鉄道部門赤字に占めるいわゆる貨物輸送赤字はパーセンテージで実に七八%を占めているわけでございます。すなわち、国鉄再建に関しましては、旅客はもちろんではございますけれども、この貨物部門をいかに今後取り扱うべきであるかという問題が非常に大きな問題であると私は考えている次第でございます。  その点から考えてまいりますと、国鉄貨物輸送が今日に至った経緯におきましては、まず第一に通路建設維持費負担というものが、他交通機関に比べましてこれは全部自分で賄わなければならないということになっております。空と海は通路費はただでございますし、道路は大体においてオーナードライバーがその大部分負担しているのが現状でございます。そういう意味から考えましても、この負担旅客貨物を問わず国鉄財政再建にとって重要な課題であり、さきほどの公述人も申されておりましたが、これを国家的見地でどのように考えるかという問題は各先生方におかれましても非常に慎重に考えていただきたい問題であると思います。  それから、第二番目の問題は、これは鉄道輸送のいわば弱点とも言えるものでございますけれども、ヤード作業その他も含めまして、中間作業量が非常に多い輸送形態が生まれているわけでございます。これは本質的な国鉄貨物輸送形態でございまして、これをどのように今後省略するような体系に持っていくかという問題が出てくると考えております。さらに、時間の正確性につきましては、いま申し上げましたいわゆる中間作業量の多さ並びにそのコストアップというものが非常に大きく国鉄貨物経営に影響を与えているというように私は考えております。  また、もう一つの問題として、国鉄が今日に至った過程の中においては、経済構造の変化というものを考えざるを得ないわけでございます。これはもうたびたび言われたことでございますけれども、わが国におけるところの産業立地工業化過程におきまして、第一次産品が著しく減少し、臨海工業地帯の発達による輸送距離の短縮が行われたこと、第二次製品の増加がそれに対して非常に増加していったこと、そういう、いわば、産業構造、立地の体系関係と他輸送機関の発達との相関係におきまして、国鉄はいまや貨物輸送においては完全輸送市場の中に置かれているわけでございます。  さらに、国鉄の今日におけるところの貨物輸送に対する国民の信頼におきましては、これは種々の事情があり、否定するものではないのでございますけれども、ストによるところの荷主の信頼性の喪失というものがいわば国鉄離れという言葉も起こしている今日の現状をわれわれは考えてみなければならないと考える次第でございます。  すなわち、貨物輸送だけを取り上げて考えますならば、国鉄はいまや貨物輸送市場においては完全な競争市場におけるところの一輸送手段にしかすぎないと私は断ぜざるを得ないのであります。その意味では、今後の総合交通体系、輸送体系のあり方について、私どもも含めまして国民全体で種々考えていかなければならない緊急かつ重要な課題であると考えております。  では、このように二兆数千億円を抱えている国鉄貨物輸送に対しまして、国鉄貨物輸送の今後のあり方というものについてどうあるべきかということを考えますと、現在におけるわが国産業構造を急激に変更することが不可能である、非常にむずかしいという考え方から立ちまして、外的な条件を急激に改善することの余地はほとんどないというふうに私は考えております。ということは、今後におきましても、当分の間いわゆる国鉄貨物輸送競争市場の中で激しい戦いを演じなければならないのであるという認識に立つわけでございます。  第二番目に、先ほども申しました中間作業をできるだけ省略できるような輸送方式というものをこれから重点的に行うべきであり、その意味では国鉄貨物輸送役割りというものはまだいささかも消えるものではないと考えている次第でございます。そのためにはいわゆる大量、定形で、しかし低速であるが正確な時間をもって輸送できる輸送体系をどのようにこれから考えていくか。私個人、物資別に考えてまいりますと、石油だとか、石灰石だとか、セメントだとか、飼料だとか、化学薬品だとかいうようなものにおける国鉄の輸送分担の割合というものは今後も特性を生かしつつ役割りを果たせるものと考えております。  また、高速長距離の輸送、いわばフレートライナーのような問題につきましても、これは慎重に OD、発着の貨物の均衡を図りつつ適正な体系をつくることにおいて国鉄役割りは果たせ得るものと私は考えております。  しかしながら、現在イギリスではすでにとられておりますけれども、現在の現状におきまして、国鉄貨物の固有経費を国鉄貨物輸送部門で分担しつつ収支の均衡を図るということは不可能に近いのではないかと私は考えているわけでございます。すなわち、共通部分の分担をどのようにするかという問題にも今後非常に大きな問題を持っていると考えております。  また、さらに、旅客貨物との内部補助問題について少し触れてみたいと思いますが、いわゆる現在の総合原価主義に基づきまして旅客からの内部補助を受けるということにつきましては、その旅客輸送利用者からの反発はますます激しくなるものと考えられますし、また、旅客運賃値上げにつきましても物価政策上種々の問題点を抱えていることは間違いのないことでございます。  そういう意味で考えてまいりますと、国鉄貨物需要というものを私は私なりに判定してまいりますと、国鉄が言っておられますけれども、現在一日の収入は大体八億円というふうに考えておられますが、これを一年、三百六十倍いたしますと二千八百八十億円の収入しかございません。国鉄貨物職員十四万人と呼ばれておりますけれども、その中で特に直接に貨物輸送に従事している方方、すなわち営業部門、ヤード、運転手、車掌、それから車両保守というようなものに大体七万五千人が従事しているのですが、これをその方たちで割ってまいりますと、一人当たりの売り上げは三百八十四万円になります。十四万人で割りますと二百五万円になります。これは現在においてもいわば四百万円の生産性は必要とされるわけでございます。現在一億四千万トンの貨物を運んでおりますが、今回の値上げ実施された場合、二割前後は国鉄貨物は減少するものと考えます。そして、そのような考え方に立って考えて、いわゆる五十五年の種々の状況を考えてまいりますと、一人当たり六百五十万円の収入を持たなければならないような形を持ちませんと国鉄労働者の方々の生活安定は成り立たないのではないかと考えます。  そういう意味から、先ほどからの話のように、どれほど国家としてこれを分担するかということを考えてまいりますと、私は、国鉄は公社といえども原則的には受益者負担の理念に立って経営が行われるべきであり、また再建されるべきであると思います。その点、今後の労働の問題も含めまして、現在の年齢構造その他を考えますと、私は、努力次第によりましては、国鉄は、そういう視点を常に考えていくときに初めて財政再建の可能性を生んでくるのだと思います。一言で言うならば、ここ当分の間はいわば縮少均衡の貨物経営であるべきであろうというのが私の意見でございます。  そういう点を考え、また、国民負担のできる限度を私なりに考えてまいりますと、今回のいわゆる運賃値上げにつきましては、私の主義から考えまして、また、いままで申し述べました内容から考えましても妥当であると私は考えているわけでございます。今日一トンキロ当たり五円と一般的に考えられますけれども、これは非常に安いものでございまして、諸外国との比較、また、交通費の生活費の中における割合というものから考えましても、今回の値上げだけにつきましては、私はある程度了解することができるわけでございます。しかし、値上げと需要量は完全に相関関係を持ちます。それで、今回の値上げを行いましても二割は縮減します。それに対しまして、いわゆる労働対策をどのようにとられるのかという問題を考えてまいりますと種々の疑点もまた生まれてくるわけでございますが、しかしながら、そのような問題は別にいたしましても、現段階におきましては、いわゆる国鉄貨物運賃値上げというものにつきましては賛成せざるを得ないわけでございます。  しかしながら、今後におきましては、この完全競争市場に入りました国鉄貨物輸送を法定主義によって今後も維持していくのかということにつきましては私は非常に疑問を持っておりますし、率直に申し上げますならば、徐々にこれを解除していくべきであるという意見を私は持っている次第でございます。すなわち、国有鉄道でありながら、西ドイツ連邦鉄道並びにイギリス国有鉄道は、貨物輸送におきましては、いわゆる列車別原価計算制度をすでに確立しておりまして、それに基づいて運賃を契約しながら決定しているのが現状でございます。そのような問題を考えましても、旅客部門におきましては、確かに、今日のわが国輸送体系におきまして、旅客のいわば独占的な位置づけというものはまだありますし、また、赤字の幅を先ほど申し上げたような点から考えましても、その点を考慮しながら考えていただきたいと思うわけでございます。  しかしながら、二年連続で考えられることにつきましては私も反対でございまして、その意味では条件つき賛成論であるというふうに申し上げたいと思います。  また後で御質問があるかと思いますが、私は、そのような考え方に立ちまして、しかも国鉄貨物輸送部門というものをどうあるべきかという観点から考え、そしていわゆる受益者負担思想をできるだけ生かし、しかしながら、国民ナショナルミニマムや福祉に関連するものや場合におけるところの補助のあり方というような視点に立って考える場合に、今回の国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に対しまして原則的に賛成でございます。  これをもちまして私は公述を終わります。(拍手
  8. 浜田幸一

    浜田委員長代理 ありがとうございました。  次に、高屋公述人にお願いいたします。
  9. 高屋定國

    高屋公述人 ただいま御紹介にあずかりました高屋でございます。  今回、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして私の意見を述べさせていただきたいと思います。この法案が私の手もとへ参りましたときに一緒に着きました運輸省の資料も見させていただきまして、簡単に私の意見を述べさせていただきたいと思います。  国鉄運賃を考えますときには、運賃だけを考えるのではなくて、ここまで来た日本国鉄というものをどういうふうに考えるかという観点、まず私はこれを条件と申しますが、それから当面の運賃問題と、この二つに分けて考える必要があるのじゃないかと私は思います。この条件につきましても、第一点と第二点に考えてみたいと思います。  第一点は、国鉄の対外的条件と対内的条件の、この二つに分けて考えてみてはいかがかと思いますが、対外的条件と申しますのは、交通機関としての国鉄日本全体の交通機関の中でいかなる位置づけをすべきかということがまず第一じゃないかと思います。これについて政府の方はまだ出されておりませんが、ここまで来た以上は日本国鉄をどう見るかという、このことが第一じゃないかと思います。  私は、日本の鉄道の全体の役割りといたしましては、国鉄はやはり基幹的な交通手段と考えるべきであると思います。この資料を見ますと、過去十五年間において国鉄交通全体におけるシェアがだんだんと減っております。ことに過去十年間非常に激しくなっております。これはいろいろ条件もありましょうが、モータリゼーションとの関係があります。道路については、先ほどの公述人の方もおっしゃいましたように税金とかいろいろあるが、ところが、鉄道の場合は自己資本でやらなければならないという不公平もあります。飛行機の場合も、空港の問題については税金でやるとかいうふうに、建設における不平等もありますが、問題はそれだけではなくして、やはり大きくモータリゼーションの問題ということがあると思います。このことが野放しにされた結果、トラックとか自動車の問題というのは、エネルギーの問題あるいはまた道路の問題、公害の問題、あるいは都市の問題という形の複雑な問題を醸し出してきた。そのことをただ経済的な競争概念だけでは考えられない段階に来たのではないかというように思います。  日本においてはエネルギーの問題は非常に大切なことでございますけれども、このエネルギーと交通、運搬する関係を見ますとトラック、自動車がエネルギーを一番多量に浪費するものです。その点については船舶とか鉄道の方がいいわけなのです。そういう観点をまず考えなければいけない。それから、都市の中においてもいろいろな自動車がふえたことによって大きな問題点が出てきているわけです。それについての費用もかかっているので、そういうことも考えなければいけない。それから公害問題もある。公害問題を考えました場合は、鉄道とか船舶というものは自動車に比べれば非常に少ないものですから、そういう総合的な観点から見る必要があるのじゃないかと思います。そういう意味で見ますと、国民全体あるいは国家全体から国鉄を保護すべきで、それで、その他たくさんのエネルギーを使ったり、あるいはまた公害問題、都市問題の観点からそういう交通手段については少し負担していただいて、そういうものを国鉄の方に持っていくという考えも持っていいのじゃないかと考えます。すなわち総合的な交通体系の中でこの問題も考えてはいかがかというように思います。  二番目の対内的条件というのは、国鉄もやはり公共企業体で、企業体でございますから、企業努力の観点からもう少し見る必要があるのじゃないかと思います。  そして、第一は労使関係であります。これは再再行われますストの問題、その内容について私は立ち入るわけではございませんが、国鉄関係者の労使においてそういうことのないようによく考えていただきたい。このことは国民としても望んでいることでございます。  二番目は、国鉄は膨大な資産を持っております。ことに不動産でございますが、この資産がいわゆる有効に利用されているかどうかということでございます。言いますと、一番大きな問題は、これはもちろん国鉄法の改正がなければできないことでございましょうけれども、この際いままでの国鉄のあり方というものを抜本的に考えて、国鉄の持っている空地、空間、地下あるいは情報、その他持っている有利な条件を総合的に利用できるような方向に考えてはいかがでしょうか。これについてはさっき申しましたように国鉄法の改正が必要でございますけれども、これは改正が必要ならば改正していただけばいいわけです。  それから、第三番目に、これほどの赤字にかかわらず、現在、この資料で見ますと新線の建設があります。ちょっと私が見てみますと、未開業で三十一線、千三百五十三キロというふうな膨大な建設がございます。恐らくこれもでき上がったら赤字になるでしょう。それはいろいろ必要があるとは思いますけれども、この際ストップして、一度国鉄のあり方というものを抜本的に考えた上で、負担をどうするかということを考えた上でまた考えなければいけないのではないか。にもかかわらず、そのまま延長線上に新線建設をやられるということは、国鉄当局は企業努力をなさっていないのじゃないかというように疑われても仕方がないのじゃないかと私は思います。  それから、企業体としての国鉄の近代化ですが、これはいろいろな面において近代化をすべきものがまだまだあるのじゃないかと思います。その努力については時間がございませんので細かくは私も申しませんけれども、ずいぶんとやっていただかなければいけない。これは、公共企業体と言っても企業体でございますから、企業の観点でやっていただかなければ困ります。どの点までいいのかということは、これはいろいろ限度がありますけれども、わが国における平均的な生産性あるいは平均的な企業近代化というものはやっていただきたいと思います。  以上の対外的条件、対内的条件というものを考えた上で、なおかつ運賃問題についてはまた考え方もあるのじゃないかと思います。  運賃問題については、現在運賃体系の中でいわゆる政策運賃がなされております。それは非常に結構なことでございます。たとえば生鮮食料品の問題、これは物価安定上大切なことだと思います。あるいは学割があります。これも奨学といいますか、育英という意味において非常に結構なことでございます。あるいは身体障害者に対する割引とか、いろいろございます。非常に結構なことでございます。これは維持していただきたい。しかし、これを全部一企業体としての国鉄に負わすのは酷じゃないだろうか。それは、物価問題でございましたら経済企画庁でございましょう。学割、育英でございましたら文部省でございましょう。あるいは身体障害者の問題でございましたら厚生省でございましょう。それぞれ政策の担当当局においてそれぞれのものを考え、それに応じたものだけを国鉄に出すべきが当然の考えじゃないでしょうか。もし公共企業体も独立採算制だとおっしゃるならば、いままでに当然すべきものじゃないか、過去にそういうことを行わなかったことが累積赤字の大きな原因になっているのではないかというふうに私は思います。  次に、国鉄運賃がこれだけ上がりますと、貨物を中心として相当の減収になると思います。そういうことも考えまして、上げ方もいろいろありましょうけれども、いまの原案にあるような上げ方ではなくして、国鉄は前のようなシェアが得られるように大いに努力をすべきじゃないかと思います。  それに付随いたしまして運賃問題でありますが、老人の国鉄運賃を半額にしてはどうかということです。こんな赤字のときに何を言っているのだという御意見もあるかもしれませんが、そうじゃないのでございまして、やはり、これによって国鉄収入がふえるのじゃないかと私は思うのです。いままで利用しない方が利用する。しかも、国鉄を利用してみますと、ある一定の時間帯においては満員でございますけれども、それを外しますとがらがらなんです。そういうことも考えますと、やはり福祉の面もいいでございましょう。たまにはお孫さんの顔を見に遠いところに行くというのもずいぶんと金がかかるわけですから、そういうことも考えて老人の半額ということを考えてはどうかと私は考えているわけでございます。  簡単でございますけれども、そういうふうなことを考えますと、総合的な交通政策もない段階で、運賃だけを見ても、いわゆる企業体として国鉄だけにすべてしわ寄せをしている。過去を見ますと、政府も、いろいろな企業体あるいは関係者も全部含めて国鉄をいじめてきている。これではだめだ。そういうことの延長線上にある現在の案については、以上のことを見直してない上にこういうことをなされるということについては反対でございます。  以上の理由をもちまして、私は現在の法案については反対でございます。(拍手
  10. 浜田幸一

    浜田委員長代理 ありがとうございました。  次に、森公述人にお願いいたします。
  11. 森玲子

    森公述人 私は、日ごろ国鉄を利用する者といたしまして、国鉄のサービスと、またその経営について深い関心を持っておりますが、本日は、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして、条件つき賛成立場から公述したいと思います。  今回の運賃改定は五〇%という高いもので、これは地方から働きに来ている人たちとか勤労の学生などを含めて、私ども利用者にとって決して好ましいものとは言えません。しかし、現在の国鉄は累積した赤字が三兆円を超えており、しかも毎日三十億もの赤字がふえ続けるという大変な状態であると伺っております。新聞などによりますと、駅の照明を暗くするとか、駅舎の修繕を延ばすとか、トイレの水を節約するとか、そんなことがあったり、また、国鉄に関連するたくさんの会社に対して工事費の支払いを延ばすとかいうお話も伺いますし、このまま放置しますとますます印象の暗い国鉄になってしまうのではないか、また、国鉄関係で働く人たちの給料も遅配になり、列車の運転にも差し支えることになるのではないか、と、そんなことも考えます。  先日週刊誌で国鉄総裁と加藤慶応大学教授との国鉄再建についての対談を読みましたが、そのすべてについて感心したわけではありませんが、高木総裁がもっと国民国鉄のことを知ってもらいたいと言った、次のようなことが目にとまりました。国鉄は他の職場と大層異なっております、そして一番典型的なのは運転手さんです、あの人たちは毎日信号が赤か青か黄色かということを見ながら一生過ごしている、その人たちの心境に対してもっと考えてあげてもいいのではないか、と、そういうような意味の記事を読みました。一たん事故が起こりますと重い責任を問われるこれらの現場の人が、当然払われると思っている賃金が遅配だとかいうふうなことを新聞で読みますと、働く希望や意欲の減退につながり、ひいては事故を誘発しないとも限りません。そしてそれは結局私たちの生活に影響を与え、大切な足が保障されなくなるのではないかと思いますので、一日も早く抜本的な国鉄再建策を実施していただきたいと思っております。  私は、この夏ヨーロッパの旅行に行ってまいりました。そして向こうの国鉄に何回か乗ってみましたが、ちょうど観光シーズン中であり、日本での混雑ぶりを知っている者にとってはさぞ込むのであろうと想像して行きましたが、案に相違して非常にすいております。六人がけの個室に三人でゆったりと腰かけて旅行することができました。これはマイカーであるとか飛行機を使っての旅行が多い外国の現状であるかもしれませんが、しかし、私ども庶民はマイカーなどはもちろん持っておりませんし、飛行機はやむなく乗ったようなもので、常々の旅行はやはり地について走る安定感のある国鉄が好きですし、また、頼りにもしているわけでございます。  日本国鉄は列車本数も欧米と比較できないくらい多く、分厚い時刻表にいっぱい載っているくらいでございますが、それではいつでも座れるかというと、そうはいきません。暮れとかシーズンには指定券を手に入れるのもなかなかできないことでございます。また、駅の中に敷物を敷いて順番をとっているありさまは新宿駅などでは常に目にする光景です。また、朝夕の国電、特に山手であるとか中央線などの混雑ぶりはお話にもなりません。こんなに列車を多く出し、そしてこのように詰め込むのだからさぞもうかっているのだろうと常々私は思っておりましたが、その国鉄がこのようにひどい赤字を出すのは、一体どうしてそうなるのだろうかとだれしも不思議に思わずにはいられません。  そこで、いろいろパンフレットなどを読んだり聞いたりしてみますと、その結果、赤字の第一の原因は、国鉄運賃が他の物価と比較した点では安いということがやはり言えると思います。私ども利用者にとっては、運賃は安いにこしたことはありませんが、しかし、昭和の初期と比べると、たとえば新聞代は千七百倍、はがきは一千三百倍、消費者物価の平均で見ても一千倍でございます。ところが、いまの国鉄旅客運賃は三百倍にとどまっております。この二、三年を見ましても、四十八年のオイルショックと諸物価の高騰、そして人件費が大幅に上がるという中で、国鉄運賃は、国の物価政策のもとに抑えられ、延期されております。そのような延び延びのものがさらに赤字を生み、相当額の収入不足になっているということでございます。これでは国鉄の職員に幾らがんばれと言っても、やはり限度があるのではないかと思います。  赤字の第二の原因は、これはローカル線の問題だと思います。せっかく新線を敷いて列車を走らせても大して乗る人がいないとか、線路は敷いたが列車は走らせないで草が伸びほうだいだとか、そういうことを聞くと、私どもは税金がむだに使われているという気がしてなりません。地方の人にとってはこれらの線も必要かもしれませんが、みすみす赤字になることがわかる鉄道をたくさん敷かれて、それらの帳じり、ツケが赤字となってそのたびに示されるのでは国民はたまったものではありません。政府国鉄も、これらローカル線についてのもっと具体的な方策をこの際示していただきたいと思います。  それから、昭和三十年以来自動車や航空機の発達が目覚ましく、これに対抗して国鉄も近代化を進め、設備を改良したり、新幹線という便利なものもでき、国民生活にとっての潤いというか、欠くことのできないものとはなっております。この新幹線経営状態も黒字のようですが、他の線、特に貨物の部門の赤字はひどいと聞いております。  いままで述べてまいりましたもろもろの原因から赤字がふえてきていると思いますが、この赤字を借り入れのお金でしのいできたために、利子の支払いだけでも年間五千億、一日十四億という、私どもとするとまるで気の遠くなるような実情です。今回の運賃改定は、一に国鉄みずからの経営全般にわたる刷新、二に国の補助、三に利用者負担という、この三本の柱から成る国鉄再建計画の一環として実施されるもので、これにより国鉄再建の足がかりができ、将来にわたって私ども利用者によいサービスを提供していただけるならば法案が成立することを希望いたします。  最後に、今回の法案成立に当たりましては、特に次の四項目について要望したいと思います。一番、政府国鉄に対する助成措置を今後さらに拡大していただきたいと思います。二番、来年度以降このような大幅な運賃改定をもうしないでいただきたいと思います。三番、国鉄自身もさらに企業内で努力し、増収を図り、一方で騒音公害などをまき散らす新幹線のスピードばかりやたらに上げず、安全輸送とサービスの改善に努めていただきたいと思います。四番、国鉄の労使関係改善して、労使が一体となって明るい職場をつくり、私どもが大層迷惑しているストなどをなくすよう、国民の信頼と協力が得られるような国鉄になるよう、関係者が一層の努力をしていただきたいと思います。  以上をもちまして私の公述を終わります。(拍手
  12. 浜田幸一

    浜田委員長代理 ありがとうございました。  次に、工藤公述人にお願いいたします。
  13. 工藤芳郎

    工藤公述人 全国消費者団体連絡会代表幹事工藤でございます。  私は、国鉄運賃値上げ反対する公述を行います。  第一は、この値上げ国民生活にどのように圧迫をもたらすかということであります。二番目は、国鉄が非常に不当に赤字宣伝をやっておりますので、この赤字宣伝の不当性について申し上げたい。三番目は、値上げをするというのでありますが、何ゆえにするのかという点であります。いわば財政危機を理由にして値上げをするのでありますが、それでは財政危機をつくり出した原因はどこにあるのか、原因を解明することなくして対策は立てられないという観点から、財政危機をつくり出した原因をはっきりさせたいと思います。その上で、われわれはこの運賃値上げをやらないで国鉄財政再建をどのようにできるかというような提案をしてみたいと思います。  ことしの一月七日に国鉄は運輸大臣に運賃、料金の値上げ申請をしたわけであります。値上げ率は、普通旅客運賃では基本賃率を五五%引き上げる。つまり、六百キロまで一キロ当たり五円十銭を七円九十銭にするということで、五四・九%の値上げでありまして、また、六百一キロ以上を同様に二円五十銭を三円九十銭に五六%値上げするというわけでありますが、しかし、最低運賃は現行の三十円が六十円に、四十円が八十円になるわけでありますから、これは一〇〇%の値上げであります。また、定期旅客運賃では、平均して通勤定期五六%、通学定期五五・八%と言いますけれども、近距離区間では非常に高い値上げであります。東京−御茶ノ水間などは倍の値上げであります。また、東京−浦和、東京−船橋、東京−三鷹間でも五八%というふうに高い値上げになるわけであります。ですから、平均して何%ということについては当たらないわけでありまして、具体的に見ますと非常に高い値上げをこうむるわけで、特に都市通勤者は大変な打撃を受けるということが現実の問題としてあります。また、特急料金、急行料金なども昨年の暮れに上げたばかりでありますが、また値上げをするということであります。  今回の値上げの特徴点ないし国民生活に及ぼす効果を見てみますと、旅客運賃では昭和二十四年六月一日以来今回を含めて九回目の値上げになるわけでありますが、その中で旅客では最高の値上げ率になります。貨物運賃では七回の値上げになりますが、二番目に高いということで、大変高額な値上げになるわけであります。また、四十九年の値上げから引き続いて五十二年、五十三年までやるといたしますと連続五回ということで、これも従来に例のない特徴であり、大変困ったことでございます。  国民生活に影響を及ぼす点では、直接的にはたとえば東京−浦和、三鷹、船橋間といったような通勤定期代の値上げで見ると、現行が三千六百円でありますが、これが五千七百円と、五八%の値上げになりますから、一カ月の負担増が二千百円で、年間では二万五千二百円になります。企業負担にしろ、結局企業製品の値上がりを誘発いたしますから国民負担になります。  新幹線値上げを見ますと、東京−新大阪間は、現行五千五百円が二千八百円上がりますから八千三百円、博多まででありますと、現行九千十円が四千九百九十円上がりまして一万四千円です。さらにグリーン料金を入れると、東京−新大阪間では、航空運賃が現在一万四百円でありますから、それを三千九百円も上回って一万四千三百円になるわけであります。東京−仙台間では特急A寝台を利用すると、これまた航空運賃の八千百円を八百円も上回るということになります。私は九州の出身でありますが、仮に一家四人で九州まで子供二人を連れて帰るといたしますと、交通費だけで大体八万四千円で、普通のサラリーマンの給料の半分は九州まで里帰りしただけで——これは新幹線料金だけでありますから、私大分でありますが、なかなか大分までは帰り着かないのですね。博多どまりでありまして、それから先はまた弁当代も要りますし、ちょっと十万円は軽く見ておかなければならない。大変なことであります。  これによってまた歳費の値上げ交通費の値上げなどに関連してくるのではないかというふうに考えておるわけであります。さらに、これが上がりますと私鉄、航空運賃が待ちかまえておるわけであります。このように、すべての物価値上げの引き金になるということは従来の例を見ても明らかであります。こういう大幅な集中値上げを強行するということは、政府が公共的な大衆輸送機関としての国鉄に対する位置づけ、政策を放棄したのではないかというふうに私は思うわけであります。先生方の顔色を見てみても、どうも真剣にこの問題を取り上げてやっていこうという——委員会の皆さん方も必ずしも余り御出席がよくないことも残念に思いますけれども、それを放棄したのじゃないかと思っておるわけでございます。  国有鉄道法の第一条には、設立目的として、「公共の福祉を増進することを目的として、」となっておりまして、そしてこれで設立をするのだということになっております。また、運賃法の一条には、運賃や料金は公正妥当なものでなければならぬ、賃金及び物価の安定に寄与するものでなければならぬということがうたわれておるのですが、今日の状況はこの運賃法や日鉄法とはおよそかけ離れてしまっておる。こういう意味からも残念でございます。  次に、赤字の宣伝の問題でございます。国鉄さんは昨年から新聞などの意見広告欄などを使って大々的な宣伝活動をやられてきたわけでございますけれども、一つは、一般の庶民の家計簿などの赤字、黒字の問題と国鉄企業における赤字、黒字の問題とは非常に違うわけでありますから、この辺をもっとわかりやすく言わなければならぬと思います。  第一に違う点は、一般には収入支出関係でアンバランスが生ずればこれが赤字になるというわけでありますが、国鉄の場合は御存じのように実質上の赤字は——運輸省の資料にもございますように、運輸省は三十九年度から赤字になったと言っておりますが、実際上の収支差が出たのは四十六年度からであります。つまり、減価償却前の赤字は四十六年度から出たということでありまして、この減価償却のあり方が一つ問題になるわけです。  それから、もう一つは支払い利息のことが問題になる。企業会計で言いますと、この両者をあわせて資本費と言っているわけでありますが、資本費を入れて勘定した場合と入れないで勘定した場合とは大きく異なるわけであります。最近、電力、大手ガスが値上げをしております。この資本費を見ますと、九電力の値上げが行われましたが、資本費は減価償却費と事業報酬、事業報酬の中には予定配当額と利息が入っておるわけでありますが、これを合わせた場合でも九電力で資本費は一六%であります。また、最近値上げをいたしました東京ガスの場合は二一%です。ところが、国鉄の五十年度運賃原価を見ますと、資本費は二五・六%であります。一方の電力やガスの場合の資本費も高いと私たちはいつも指摘しておる。しかもその中には予定配当額まで入っておるわけですから、いわゆる利潤まで入っておるわけですから、不当ではあるし、また高いと指摘しておるのでありますが、国鉄の場合はこれを入れなくても資本費で二五・六%です。つまり、利子が一五・三、減価償却費が一〇・三でありますから、合わせて二五・六と非常に高いわけでございます。  ですから、これを差っ引いて考えてみますと、赤字赤字と言いますけれども、国鉄赤字は減価償却と利息を取ってしまいますと、五十年度で見ますと六千九百九十一億円も違ってくるわけです。ですから、これは後で申し上げますが、費用負担のあり方などとの関連で、この減価償却費や支払い利息というのは当然国がめんどうを見るものだという考え方に立つならば、国鉄は決して大幅な赤字ではない。さらに、累積したいままでの減価償却費も二兆円を超えておるわけであります。  さらに、資産でございます。借金借金と言いますが、膨大な資産を借金財政でつくり上げてきたというわけであります。長期借入金が六兆八千億だと言いますけれども、大体六兆八千億に見合う資産があるわけであります。固定資産と投資資産と積立金と入れますと大体六兆八千億資産があるわけでありますから、この赤字宣伝は、余り国民に対して脅迫的に赤字赤字だ、大変だ、あしたにでも鉄道がとまるんじゃないかと——先ほどの公述人の御婦人の方も心配されておりましたが、そういうふうに国民を惑わすということは大変よくない。運賃法にも言うように、公共の福祉に寄与しなければならぬし、物価だけでなくて心理的な安定をもたらさなければ行政当局としては責任を果たしたことにはならぬのでありますから、そういう点が私は問題だと思います。  さて、こういった財政危機をつくり出した原因の第一は借金政策であります。これは独立採算制によって新幹線などの莫大な設備投資をされたことは御存じのとおりであります。政府は二十四年に、国鉄が当時の鉄道省から独立して発足した当時に御存じのように四十九億一千八百万出した。また、二十五年には米軍の対日見返り資金特別会計から四十億を出している。合わせて八十九億余りでスタートしてきた。それで、四十六年に至るまでびた一文追加出資をしなかった。先ほどの安恒公述人が言われたとおりであります。言うまでもなく、三十五年の池田内閣以来の高度経済成長政策のもとで国鉄が東海道新幹線建設に取り組みました。建設費が三千八百億、キロ当たりが七億三千八百万、一センチが七万八千円でありますが、こういったようなことをやり始めて、借金政策でずっと進んできたわけであります。しかも、三十二年から五十年の投資総額は六兆四千八百九十八億です。  特に、列島改造論が出てまいりますと、これに悪乗りをいたしまして、四十四年から五十年には総投資額の五八%に当たる三兆七千百六十六億を投資したのであります。このうち新幹線への投資は三八%に上っております。しかも借金政策でやったわけでありますが、長期借入金の六兆八千億のうち四兆四千億というのはだれから借りたかというと、財投資金から借りておるわけでありますから、親元である国から借りた。だれから借りたのかということを考えてみると、六兆八千億も長期借入金があるじゃないかと言うかもしれませんが、本来国が出資をしなければならぬもので、その出資をしなければならぬはずの政府が出資をせぬで貸したという関係でありますから、この点も国民がよくよく事情を聞くと、ああそうだったのかというふうにうなずけるわけでございます。  その二は減価償却の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、減価償却の累計で二兆二千三百八十八億ございます。こういうことでございますが、これは本来国がこういうものは負担をしてもいいのではないかという意見を私は持っておりますが、そうでなくても、減価償却の方法についても、たとえば客車の耐用年数を二十五年から三十年に変えたり——これは三十六年以降やりましたし、固定資産の再評価を三十年にはいたしましたし、償却対象資産に三十九年から電線や線路も入れるなどという形でやるとか、つまり、償却が多くなるように仕向けた。ですから、昭和三十年代の後半から減価償却が非常にふえておるわけでございます。これは専門家の意見によりますと、三十六年以降だけで八千四百八十一億くらいの過大償却が行われるというふうに見ておるわけでございます。  三番目は、長年にわたって大企業貨物原価を割って運んできたということにやはり問題があると思います。これは出荷トン数契約ということでありますが、運賃法の八条に基づいて総裁がやる。これは総原価に対して軽微な変更であるならばいいというのでありますが、御存じのように、貨物赤字というものは、昭和四十一年から四十七年度の間だけでも、旅客が三百六十四億の黒字を出しておるのに対して貨物が一兆四百七十八億の赤字を出しているのですから、これは総収入に対して軽微な変更であるかどうか、これは運賃法上も大変な問題になるわけでありますから、出荷トン数契約の割引契約は洗い直す必要があるのではないかと思います。磯崎前国鉄総裁も、自動車や冷蔵庫や工作機械など平均して一二・七%の割引をしていると当時私どもに言われたわけでありますが、こういうことはもっと早く改めるべきであったのではないかといまにして思うわけでございます。  そういうことが赤字原因でございまして、結局、国鉄に対して政府が適時適切に出資をしなかったということが今日の大きな財政危機を招いた原因ではないだろうかと思いますが、おもしろいことに、昭和三十九年度に設立されました鉄道建設公団が今日で設立後十二年になりますが、鉄道建設公団に出した金というのは、十二年間で一兆一千九百億ございます。国鉄昭和二十四年から今日まで二十五年間でありまして、鉄建公団の倍以上の年を食っているのでありますが、これに対して出したのが一兆三千五百五十億で、ほぼ匹敵するわけであります。鉄建公団の方にはどんどんお金を出すが国鉄の方には出さない。鉄建公団が今日果たしている役割りというものは——設備投資をするのに、本当の財政の運用といいますか、日常的な運用をやっている国鉄意見とか、あるいは国会の御意見であるとか国民の意向ということはほぼ無視して勝手にどんどん投資をされておるということでは赤字が出てくるのもやむを得ないと思います。  政府の方も、鉄建公団の方にはどんどんお金をつぎ込んでいく、いわば、本妻の方にはお金を出さないでめかけの方にはうんとお金を出す、そうして出てきた放蕩息子の赤字路線は本妻である国鉄が引き受けてこれを育てなければならぬ、そのしりぬぐいは国民がするといったようなぐあいで、まことにたとえがよくないのでありますけれども、よくあることでありますが、めかけの方にうんと出すということでは本当にわれわれはやりきれない感じを持つわけでございます。  鉄建公団のあり方ということは、つまり設備投資のあり方です。われわれは、原価がどういうふうに高くなったか、どこの要素が高いかということを見るわけでありますが、さらに、原価を生み出す発生源といいますか、原価は何によってつくられるかということ、つまり、基本的には青写真、設備投資計画があるわけでありますがこの設備投資計画が本当に国民本位に行われておるかどうかということで、国鉄関連企業がたくさんありますけれども、その特定の企業のための景気浮揚策としてだけやられていはせぬかと今日大変心配をするわけであります。これは電力などでも同じであります。こういうことがあったのではせっかくの新線建設等の設備投資計画国民本位になりません。そういうことです。そしてどら息子を抱えた国鉄さん、本妻の方は大変御迷惑になるということでございますから、この点はぜひ改めていただかなければならぬと思います。  このように見ますと、国鉄が今日ぶっ倒れてしまうのではないかというような御意見に私はくみすることができないわけでございます。そして、今回の運賃値上げの本当のねらいというものは那辺にあるのかということを改めて考えなければならないと思います。  ここに四十八年三月八日の本会議で当時の田中総理が答えた部分がございます。国鉄運賃をなぜ上げるかということのくだりであります。これは石田幸四郎議員が質問された部分に対する答えなどでございます。中略いたしますが、「そういうような状態でございまして、」というのは国鉄現状でありますが、「政府は、今度の対策で赤字解消だけをやろうとしておるのではありません。赤字解消も一つの目標ではございますが、長期の視野に立って、国有鉄道国民生活確保のために果たさなければならない公益性を確保するために、ぜひとも必要な施策として今次提案を行なっておることを理解していただきたいと思う」ということで、赤字解消というのは一つの目的だということを当時の総理は言っておるわけです。では国鉄は将来どうなるのかということで、これは兒玉議員に対する答弁のくだりでございますけれども、列島改造論で想定したわけですね。「昭和六十年度における国民が必要とする貨物の量は一兆億トンキロをはるかにこえると思います。そうすれば、いま国鉄でもって運び得るものは、わずか六百億トンキロしかないではありませんか。ですから、先ほども述べましたように、内国海運のシェア四〇%を五〇%にしても、残りの五千億トンキロは何によって運ばなければならないか。それは国民生活維持するために、最低に必要なのであります。そうすると、それをいま概算をいたしてみますと、陸運だけで運ぶとすれば二千万台の車を必要といたします。」と言っています。二千万人のトラックの運転手が必要だということになりますね。そして、「しかし、昭和六十年度における交通労働者で確保できるものはわずかに三百五十万人であります。」と言っているわけで、こういう想定をして、そして列島改造論に沿って莫大な貨物輸送量を想定したのであります。したがって、その代替手段として、既存の路線は貨物輸送で、そして人間は新幹線で運ぼうという計画をされたのが列島改造論の国鉄版であったことは明確であります。  その列島改造論が国鉄版として今日通用するのかしないのか、これは国会でぜひとも明らかにしてもらいたい。そして国民の前に、今日の低成長経済に入るというお言葉はあるけれども、実態として国鉄の場合はどうするのか。この辺が将来の設備計画になってあらわれると思う。ここのところをきちんと議論いたしませんと将来どれだけの金が要るのかさっぱりわからぬ。このままでいきますと、どうも列島改造論の延長線上をいまなお国鉄が歩いているのではないかという気がする。特に鉄建公団にはその具体的な事例として新線建設などが顕著に見られるわけであります。ですから、地方線を云々するということは、そういった問題を抜きにしては論じられないのだと思うわけであります。  最後になりますが、この運賃法案の問題については、まさかきょうあすの段階で強行されるというようなことを私は夢にも思っておりませんでした。というのは、二十二日に私は国鉄総裁にお会いいたしました。国鉄総裁と今後の国鉄のあり方について話しました。これは運賃問題だけじゃないが、総裁の方から工藤さんぜひ会いたいと言って私のところに来たのですから、それはお会いしましょうということで、全国消団連でちゃんと会いました。そして一つ一つ各論について、貨物のあり方はどうしよう、新線建設はどうしよう、これは新線建設計画段階で国会審議をすべきじゃないか、なるほどそう思うというようなやりとりがあって、国鉄総裁、あなたは大蔵次官をやられていて、長年の間道路整備五カ年計画高速道路に十九兆もお金をつぎ込んだのはあなたじゃないか、国鉄貨物を今日苦しめることにしたのはあなたじゃないかと言ったら、いまにして思えばそういうことも考えられるということを言ったばかりなんですよ。これが二十二日ですよ。各論について話をして、この前のは第一回だが、今後第二回、第三回として、広範な国民合意が得られるように話をしよう、国鉄を殺しちゃならぬよ、だから話をしましょうというふうに言ったばかりでございますから、まさか運輸委員会の皆さん方が国鉄総裁の意向を無視して値上げをするなどということは夢にも考えておりませんので、どうかひとつその点は……。(発言する者あり)  国鉄総裁が運輸大臣に対して値上げ申請をしたことから考えて、その辺も、私は国鉄総裁とそういう話をしましたので、経過的に御報告を申し上げまして私の陳述を終わりたいと思います。(拍手
  14. 浜田幸一

    浜田委員長代理 ありがとうございました。  以上をもちまして公述人各位の御意見の開陳は終了いたしました。     —————————————
  15. 浜田幸一

    浜田委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  なお、質疑の際は公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  なお、質疑時間については、理事会において申し合わせのとおりお願いいたします。加藤六月君。
  16. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 公述人各位におかせられましては、大変貴重な御意見をありがとうございました。われわれも平素国鉄問題、運輸行政に取っ組んでおる立場から、皆さん方の貴重な意見は身にしみてうなずける点が多々あったわけでございます。  時間の制限もございますので、お伺いする問題を最初に一通り申し上げて、各公述人の方々から御意見を承りたいと思います。  高橋公述人からは主として国鉄の内容に立ち入られましていろいろ貴重な御意見をありがたく承りましたのですが、その際運賃法定主義の問題等に触れられました。これは原則基準を決めて、実行運賃は当局経営者に任せろという、非常に示唆に富んだ御意見を承りました。安恒公述人からは、この運賃法定は存置して運輸審議会の改良その他に取っ組め、あるいは予算、業務に自主性を持たせろという問題等も出てきたわけでございますが、まず高橋公述人にお伺いし、また安恒公述人にもお伺いしておきたいと思いますが、実は、この運賃法定主義問題につきましては、わが自由民主党といたしましても過去一年間真剣に取っ組んできております。そして非常な矛盾を感ずるのは、旅客において国鉄のシェアが三〇%、貨物において一二%というシェアである。独占体系というものはすでに完全に失われておる。その国鉄が法定で、他の電気とかガスとか、あるいはまた米というようなものは法定ではない。そこら辺との関係をどう見るかという立場と、そしてまた国鉄財政再建立場等から取っ組んできておるわけでございますが、より正確にこの運賃法定主義をどう扱うべきかという問題について御意見を承りたいと思うわけでございます。  次は、高屋公述人にお伺いいたしたいと思うのでございますが、いろいろ示唆に富んだお話をいただきました。私たち自動車というものと国鉄というものとのいろいろな総合交通立場に立っての規制、その他政策を打ち出すべく努力いたしておりますが、今日自動車にかかる税金というのは、お詳しいと思うのですが、重量税、自動車税、自動車取得税、物品税と、これだけを合わせて、国並びに地方公共団体全体の税収入の、昨年が九・二%を占めております。ことしはいろいろ上げまして、国、地方公共団体全体の税収入の一一%を超しておるのじゃないかと思うのです。自動車だけから取る税金が、です。もちろんこれには燃料税も入るのです。  そこで、さらにこれ以上自動車から税金を取っていいのか悪いのかという問題が一つ出てくるわけでございます。総合交通体系実施するのは、施設の問題、運賃、料金の問題と、そして燃料、資源といった問題等いろいろな問題を考慮しながらやっていくわけでございますけれども、こういうところから自動車の普及台数二千九百万台と言われておる。四人に一人はもうすでに自動車を持っておる。ここからさらにこれ以上の膨大なる税金を取っていって、国、地方公共団体全体を通ずる税金の一五%以上を超すようにしていいのか悪いのかという問題が出てまいります。ここら辺についての御意見を承りたいと思います。  その次は、安恒公述人にまたお伺いしますが、私たちは、国鉄に対する当事者能力の問題について、あるいは先ほど触れられました総合交通政策の問題あるいは公共負担の問題についていろいろ議論したのですが、その前提として、今回の日本国有鉄道法の一部改正並びに運賃改正がもし通らなかった場合に一体どうなるのだろうかという問題があるわけです。いわゆる極限状態に置かれた国鉄において、賃金も払えない、列車のダイヤもいまの三分の一か五分の一にしてしまわなくちゃならない、あるいは新線建設だとか新幹線建設だとかいう問題があるが、そういうものを通り越してしまった状態になってしまった場合に一体国民生活はどうなるのだろうか。安恒公述人もおっしゃいました。国鉄は、これを国民のために守っていかなくてはならないとおっしゃる。私たちももちろんその立場でございますけれども、国が赤字公債を三兆数千億も発行しなくてはならない、しかもその財特法はまだ成立の目鼻がついていないという状態のときに、一体国民の税金をこれ以上国鉄に幾らどういう方法で入れたらいいのか。それができないならば、いっそのこと、先ほど申し上げた極限状態に一たん国鉄を陥れて、そこから徹底的に再建を考えなくてはいけないのじゃないかと、今回の両法案に絡む問題について昨年の暮れからずいぶんわが党内においては議論してきたわけであります。  そういう点から考えまして私たちが申し上げたいのは、きょうの午前中の連合審査会においても民社党の和田先生からいろいろ質問が出たのですが、電気料金値上げのときに電力労組は賛成されたし、私鉄運賃値上げのときに私鉄総連は私鉄運賃値上げ反対を一言も言われないという中で、今回の総評のおとりになっておる公共料金値上げ反対ということとこれはどういうようになるかということ、これを総評の副議長としてどうお考えになるかということでございます。  その次に、中西公述人にお伺いいたしたいのでございますが、貨物の問題についていろいろ示唆に富んだお話をしていただきまして大変ありがとうございました。今回運賃改定をやると二割貨物が減るだろうというお話でございましたが、一体、この二割減るもののうちの主なものは車扱いが減るのだろうか、フレートライナーが減るのだろうか、物資別輸送が減るのだろうか、あるいは品目別に見たらこれはどういうものが減るのだろうかという、そういった点についてお教えいただきたいと思うわけでございます。  その次に、森さんからは、非常に貴重な、国鉄を愛し国鉄を利用していただいておる庶民の立場からいい御意見をお教えいただいたわけでございますが、一番冒頭にちょっと触れられましたが、国鉄を利用されて、便所とか階段とかプラットホームとかいうものの設備状況が完全であると思わわれるかどうか。こういう点とこういう点がもう少し改善されるならいいとお思いになるような点をお教えいただきたいと思います。  以上、個々にせずに総括的にお尋ねいたした次第でございます。
  17. 浜田幸一

    浜田委員長代理 それでは、まず、高橋公述人からお願いいたします。
  18. 高橋秀雄

    高橋公述人 私、高橋でございますが、先ほど御質問がありました運賃法定主義の問題についてお答えをいたしたいと思います。  現在は国有鉄道運賃法によって運賃基準を決めることになっておりますが、その運賃政治上の関係その他によって決定がおくれておって、そのことによって赤字がふえていくというようなことは、まあふえるのはやむを得ませんが、しかし、そういうことによって経営が不健全になり、しかも今回のような行き詰まりが生ずるというようなことでは困るのであって、やはり、運賃の問題は、動態的なダイナミックな社会を対象にする運賃であります。  その運賃の中には二通りありまして、一つは市場の取引可能性、マーケッタビリティーと申しますか、市場性を持った貨物輸送あるいは旅客輸送というものと、もう一つは市場性を持たないけれども国の立場からその輸送をやった方がいいという意味の、いわゆる間接的な利益を評価したところの輸送というものが国有鉄道輸送の中にあるわけであります。後から申し上げました方はいわゆる赤字線の問題であります。初めの方の問題は幹線の問題であります。幹線の輸送サービスというのはマーケッタビリティーを持っておる輸送であり、したがって売り手と買い手の間に取引が行われまして、その取引によって値段が決まるというのが、一般の商品の価格と同じような原則がそこに行われる可能性を持っておるわけであります。  そこで、そういう幹線地帯の輸送につきましては、輸送そのものに商品性を持たせるように経営者の方、いわゆる供給者の方で努力するとともに、需要者側、利用者側がどのくらいそれを評価されるかということを考えながら運賃を決めていくということによっているのでありますが、それが電力料金のような場合は独占でありますが、国鉄の場合には、前に運賃法をお決め願った当時は独占でありまして、まさに現在のような運賃法定主義で行われてもまだやれたのでありますが、現在はかなり競争状態になっております。それでもまだ旅客輸送の中には、新幹線とかあるいは大都市の通勤線のごときはかなり独占に近い部分があります。しかも、貨物輸送と違って、旅客輸送の特徴としましては、表定賃率、賃率表をつくって取引しなければならないのであって、個人ごとに運賃を幾らにするかということを決めることはできないような状態でありますから、どうしても賃率表を決めなければならない。しかし、決める賃率表そのものが、いわゆる賃率表の基準となる運賃水準そのものが社会の景気その他いろいろな条件で変更する。いわゆる交通量も変化するし、コストも変わります。その変化に応じて運賃も変えていかなければ健全経営はできないわけであります。でありますから、そういう幹線における運賃水準をどうすべきかということを運賃法でお決め願って、そしてその原則に従って行政の方で適当に判断されて認可されるというような形をとっていったらいいと思うのであります。  それから、もう一つ赤字線の運賃でありますが、赤字線の運賃につきましては、先ほど報告いたしましたように、赤字線の計画原価と、それから赤字線は幹線と違って列車回数も少ないしサービスも悪いのでありますから幹線よりもコストは高いけれども、運賃はその割りに高くできないと思うのであります。しかし、その地域の状態によっては多少まだ上げる余地がある部分もあります。でありますから、大体幹線の運賃水準基準にして、そして地方線の状況に応じて調節をしていく。しかし、それにしてもその運賃収入だけではとても原価は回収できない。いわゆる運賃は直接の利益を評価する人たちだけの払う運賃でありますから、直接的な利用者の便益を基準とする運賃収入でもってはとても計画原価は回収できない。したがって、間接利益を対象にして輸送サービスがなされるわけでありますから、それに対しては補助をするということより仕方がないと思うのであります。でありますから、赤字線につきましては補助をする、その補助基準をやはり国会でお決め願う、そして行政当局の方でそれに応じて順次認可をしていただくという方法でいいとぼくは思います。  ただ、もう一つは、念のために申し上げますが、その場合に認可がおくれますと欠損はいまの状態と同じ状態が繰り返されることになるのでありますから、認可はおくれないようにしていただく、もしおくらさなければならぬ政情の理由があった場合には、そのおくれたことによる損失は補助金を出していただくということにして、損失を翌年度に持ち越さないという原則をやはりお立て願う必要があると思うのです。これは外国の国有鉄道でも採用されている方法であります。  以上、簡単でありますが……。
  19. 浜田幸一

    浜田委員長代理 次に、安恒公述人にお願いします。  質問点は二点だと思いますが、時間の制限がございますので、御簡潔にお願いいたします。
  20. 安恒良一

    安恒公述人 簡単に答えたいと思います。  第一は、運賃法定主義を存続するのかどうかということで、私は存続するという主張でありますが、私は、きょう公述を申し上げましたように、国鉄国民国鉄として必要だ、そして今後国家の負担分と国鉄自主努力分と運賃負担分とに分けてやるべきであると思っておりますが、現在はそれがすべてどんぶり勘定になっている。だから、まず、私は、国家が出すべきものは出して、国鉄自身が努力するものは努力した中で、さらに必要な運賃については利用者負担を考えましょうと申し上げているわけでありますから、それが一つの大きい前提になっています。  そして、私は、国鉄経営民主化のあり方について、たとえば国鉄監査委員会のあり方なり、さらに国鉄経営委員会のあり方等についても申し上げましたのでそれは省きますが、それと同時に、運賃、料金の決定については、利用者の声が反映できるような民主的な運賃審議会をつくってほしい、その上においていわゆる現行運賃法定主義を存続してほしいと言っているわけであります。  それと同時に、いま一つは、国鉄みずからが判断でき、有機的な業務ができるような自主性国鉄に与えるための予算とか業務の制度改正というものを一貫して申し上げておりますから、その角度で御理解を願いたいと思います。  その次は、この法案が通らなかったらどうなるのだ、極限状態にしたらどうだろうかといろいろなことをかなり言われましたが、まず一つ断っておきますが、私鉄総連は運賃値上げ反対をしていないとおっしゃいますが、私は私鉄総連の書記長を十一年もやって総評に出ておりまして、そういうことはございません。これは私鉄総連の名誉のために申し上げておきます。  さらに、いま先生から御質問がございました点につきまして私どもはこう考えているのでありますが、私は、参議院の赤字特例公債発行の場合の公述人に出たときも、私たちは無原則赤字公債発行を反対しているわけではありません。問題はそれがどのように使われるのかということと、また、赤字公債というのは御承知のように後代に負担をかけることですから、それが公平に償還されるのかという、その二つの前提の上に立って賛成でもあるし、反対でもあるということを申し上げておるのです。ですから、私は、今回いま申し上げました国鉄再建、再出発のために国家負担分として国家が出す部分について、ここで細かい金額を挙げる時間がありませんが、全部持っています。そして、そういうものは国民に納得のできるものであります。でありますから、今日国家財政が三分の一赤字公債によっておりますが、なお、私は、国家がそういうものを当然出すべきであると言いたい。そしていま申し上げたように、そのように国民にわかる赤字公債というものは国民は理解をいたします。あとはそれは税制を改正して、公平に後代において返還をしていけば国民的コンセンサスは得られるものだというふうに考えています。  以上です。
  21. 浜田幸一

    浜田委員長代理 それでは、時間の関係がありますので、せっかくの加藤六月議員の質問でございますが、あとは中西公述人の御答弁をいただいて加藤六月君の質疑を打ち切らせていただきます。中西公述人
  22. 中西睦

    中西公述人 お答えいたします。  国鉄としては、今度の運賃値上げが完全に行われるとしますと、一応一〇%減というふうに考えております。この予測は非常にむずかしいのでございますけれども、御質問のように、車扱いと、その中に一般コンテナも一応含めさせていただきます。そしてフレートライナー、物資別というように考えてまいりますと、私どもは、車扱い、一般コンテナの割合が一番減少するものというように考えております。そして十という割合で申しますと、これが大体六ぐらいではないか、フレートライナーが二ぐらいではないか、それから物資別輸送も二ぐらいではないかというように考えております。そして、そういうような形の中で考えてまいりまして、非常にサンプル数も少ないのでございますけれども、弾性値という国鉄の過去の実績に基づくものとは違った形からいわば荷主サイドの意向を聞きながら、少数のサンプルをとりながら予測をしてまいりますと、大体二〇%減るのではないかという予測に立っております。
  23. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 どうもありがとうございました。
  24. 浜田幸一

    浜田委員長代理 これをもちまして加藤六月君の質疑を終了いたします。  次に、久保三郎君。
  25. 久保三郎

    ○久保(三)委員 高橋公述人並びに中西公述人のお二人に共通してお尋ねしたいのですが、お話の中で特に国鉄貨物について言及されまして、先生方のお話は基本的に完全競争の原理を前提にして御判断をなさっているように伺いました。現実にいまそうでありますが、そういうことを前提にしたのではなるほどおっしゃるように——これは中西先生がおっしゃったと思うのですが、二〇%貨物は減っていくだろう。というよりは、昨年の暮れに政府が決めました御承知再建対策要綱は、固定経費を大体二割減らして五十五年度までに収支均衡を図ろうというのが対策要綱の貨物のところであります。そういうことを考えますと、完全競争の市場原理というか、そういうものを前提にしていまのような対策要綱でいくとすると、世に言うところの安楽死というものに通ずると私は心配しているのでありますが、いかがなものでしょうか。  それから、もう一つは、この国鉄再建というのは、単に国鉄貨物などを赤字から黒字に転化するということだけではなく——これはもちろん大事かもしれませんが、それだけではなくて、言うならば総合的な新しい交通体系の中で国鉄を改めて位置づけるということですが、国鉄を改めて位置づけるということは他の交通機関とともにということに相なろうかと思うのです。  御承知のように、いままで政府が策定しました総合交通体系のあり方の中では、先生方も御関係なさったかもしれませんが、言うならば競争の原理を中心にして、利用者の選好に任せて体系をつくるということが基本でありました。しかし、どなたも御承知のようにいまや新しいエネルギー時代に向かってそういうことでいいのかどうか。最も大事なエネルギーの節約あるいは省資源、さらには輸送につきものの安全の問題と、それから省労働力の問題もございますし、もう一つは環境保全というような問題もありますね。そういう五つの枠の中で国民経済にとって有効な必要な輸送体系をつくっていく。いままで野方図に選好に任せ、あるいは高度成長の列島改造という間違った方針でやられてきた。その結果として国鉄が一番犠牲になっているのかもしれませんが、犠牲になっているのは国鉄だけじゃなくて、陸上のトラックもいま犠牲になっています。内航の海運も同様であります。外航においては御案内のとおりであります。  そういうことを考えますれば、やはり競争の原理を中心にしたものでなくて考えていく必要がある。政策の介入ですね。もっとも、経済の原理というか、原則を大きく曲げることはなかなかむずかしいと思うのですが、しかし、政策が介入しなければこれらの問題を解決することは不可能だろうと思うのですが、そういうものについてのお考えはいかがでしょうか。この二点は高橋先生と中西先生に特にお伺いしたいのであります。  それから、続けて申し上げますが、高橋先生の御主張の中に遠距離逓減制の復活ということがありましたが、ちょっと音響の関係が悪いせいでよく聞き取れませんでしたが、われわれからするとこれは大変奇異に感ずることでもあります。私自身だけがそうだというのではなくて大勢としてそうですが、御承知のように距離比例制に移行しつつある昨今、先生の御主張は、国鉄というものができた当初の歴史に大体さかのぼるような気持ちがしますので、その辺の理論づけはどんなふうになさっていらっしゃるのか、それが高橋先生に対する二問であります。  次に、中西先生にこれはお伺いしたいのでありますが、いまも加藤委員からお話があったようでありますが、先生のねらいというか、国鉄貨物のこれからの展望は大体いままでの構想の延長のようにお話を伺ったわけです。それは言うならば物資別適合輸送あるいはフレートライナーを中心にお考えのようにも見受けられました。あるいは間違いかもしれませんが、しかし、いまの御答弁の中でも、国鉄貨物の比重は両方合わせて四くらいだということですね。だから、そこにいかに力点を置いても、全体としての向上には余りメリットがないというふうにも思います。しかし、私は、そのメリットばかりじゃなくて、国鉄が持っている貨物の特性というものを考えました場合に、無理に特性を殺して他の輸送機関とあえて競争をしようという方向での近代化や合理化は無意味だと思っているんです。むしろこれは国鉄の特性と他の輸送機関との結合こそ最も大事だと思っているんです。  そういうことから考えれば、高度成長の波に乗り、他の交通機関、特にトラックとの競争から発想したいわゆる物資別適合輸送並びにフレートライナーにかけた国鉄貨物の勝負は誤りであった、誤りであったばかりじゃなくて、国鉄本来の貨物である一般車扱い貨物を殺してしまった、あるいは国民生活にとって最も大事な少量荷物の輸送から離脱しようということで、いわゆる国民に背を向けた形が出てきている、こういうふうに思うのです。この反省がなければ国鉄貨物の有用性はなくなってしまうだろうというふうに私は思うのでありまして、国鉄を再生させるためにはいま申し上げたものを重点的に考えていく必要があると思うのです。それにはいままでの近代化、合理化も誤りであります。  先生お話しのように、なるほど時間の短縮あるいは定時制も最も大事でありますが、私は、それよりはむしろ荷物をどれだけたくさん運べるかということが大事だと思うのですね。だから、言うならばいままでのヤードパス方式は誤りだ、集約の方式も誤りだ、全部とは言いませんけれども半ば誤りである、このように思うのですが、そういうものについてどういうふうにお考えになっているか、伺いたい。  時間の制約がありますので、大体このくらいで……。
  26. 浜田幸一

    浜田委員長代理 どちらから先に……。(久保(三)委員「それじゃ高橋先生から」と呼ぶ)  それでは、最初高橋公述人。(中西公述人「二つありますので、私が先に。高橋先生は、また私の恩師でもありますので……」と呼ぶ)  よろしいですか、久保先生。(久保(三)委員「はい」と呼ぶ)  それでは、中西公述人
  27. 中西睦

    中西公述人 最初の点についてお答えします。  私は、政策が無用であると言っているわけではございません。ただ、現在のわが国のような経済体制の中におきまして、貨物の輸送において利用する各種輸送機関の相互関係においては、完全とは私は申しておりませんが、ほぼ競争市場の中に入っている。これは先生もお認めになったところだと思います。私は、そういう問題を考える場合には、コストと運賃、料金による収入、その相関においてまた量が決まるものだと考えております。だから、種々の交通機関貨物を輸送するわけでございますが、現在の経済体制の中におきましては、どのような形で政策が介入されるべきかという問題は確かに非常に重要でございますけれども、政策の介入については非常にむずかしい問題が種々あるだろうと思います。  私が自分でいままで諸外国におけるところの、たとえばレーバープランその他のものを種々考えてみましても、政策の介入が市場を曲げてしまってかえってマイナスになった場合が相当ある。だからといって、私は、政策が必要でないといって、ただ純粋市場原理に任せてしまえと言っているわけではございません。それで第一の問題はよろしゅうございましょうか。  それから、第二番目の問題でございますが、加藤先生から質問されましたときに、車扱いとコンテナ、フレートライナーなどと物資別輸送についてどのような割合で減るのかという問いでございましたので、その三つを少つ修正いたしまして、車扱い及び一般コンテナ、フレートライナー並びに物資別輸送というふうに分けて、私どもが想定したものを申し述べた次第でございます。しかし、予測というものは非常にむずかしゅうございますので、私もはっきり当たるとは考えておりません。  しかしながら、貨物輸送の近代化の中で、国鉄の特性として、いわゆる中間作業量、すなわちヤード経由とか、貨物駅千六百駅で行われるいろいろな問題とか、そういうものが国鉄貨物輸送においては非常に弱点になっているということを私は申し上げているわけです。だからといって、それが必要ないとは私は申し上げません。私は、物流と申しますものは、輸送と保管とは一体であると考えている人間でございます。遅くともそれが正確性を持つものであるならば、輸送中も保管であると考えても結構なわけでございますから、非常に重要なことは、定時、確実性の問題が一番重要だと考えているものでございます。だから、それができ上がりましたならば、それに適合する貨物は載るものだと私は考えております。  さらに、確かに先生の御指摘のように、これは先生方並びに私ども勉強している者も責任があると思いますが、国鉄の限られた貨物分野に対する投資の中から収入改善する方法として、ある意味で先生はそれを知っておられて言われるんだろうと思いますが、フレートライナー方式とか物資別輸送とかというものが考え出されたのであって、それだけが最善の輸送方式だというふうには考えておりません。車扱い方式における改善というものは今後非常に重要な課題であると私は考えております。事実、国鉄貨物輸送の半分は専用線を利用するものであります。しかしながら、先ほど申し上げました時間の正確性と、それから総合的なコストと他の輸送機関のコストとの比較において——ここでコスト言う意味は、入手サイドから見た輸送コストというように考えていただきたいと思いますが、そういう関係から現在の状況を生み出した問題であると考えているわけでございます。そういう意味では、今後は車扱い貨物のあり方というものを考え直す問題は非常にたくさんあると考えております。それでお答えになりましたでしょうか。  それから、もう一つ、小口貨物の問題で申しますけれども、これは国鉄におけるコストと皆様がお決めになる運賃というものの相関関係で、非常に重要な国鉄ナショナルミニマムであり、福祉上重要であると考えるならば、この点につきましてはできるだけ安い方がいいということになりますならば、これはすべて受益者負担に頼るべきであるとは考えておりませんで、何らかの形で国民全体で負担すること、すなわち補助政策を取り入れることも必要であろうというように考えております。  しかし、国鉄が小口貨物を全部運ばなければならないのかということにつきましては、私はそのとおりには考えておりません。トラックもまたやがて考えられるであろう、これは相当な年月がかかるかもしれないが、あらゆる交通機関が分担し、ナショナルミニマムである小口貨物輸送を保持するべきである、そういう考え方に立っております。
  28. 高橋秀雄

    高橋公述人 最初に遠距離逓減法の復活の問題をお答えいたします。  御意見のように遠距離逓減法は国鉄始まって以来ずっとやってきた方法でありまして、それを前前回あたりの改正からぼつぼつ距離比例の方向に転換しておるわけであります。しかし、日本の国はやはり非常に細長い国でありまして、長距離輸送の負担が現在のような比例法によっていきますと非常に負担がかかる。しかも、中央集権制をとっておりますから中央に出てくる必要はあるのでありますが、また、文化が東京に集中しているとかあるいは関西に集中しているというような関係から、地方の人もその文化に浴するというためには相当長距離の輸送、旅行ということをしなければならない。それに対して、できるだけそれに応じ得るように遠距離逓減制をとることがむしろ望ましいと思うのであります。  私は、この距離比例制をとることになりましたときに、実は、ここでは距離比例に賛成していなかったのです。私の書いている書物にも距離比例よりも遠距離逓成法がいいということを書いております。そしてまた各国は距離比例を皆とっておるというふうにそのころ伝えられておりましたが、よく調べてみると、各国とも旅客において事実上遠距離逓減に近いような形の賃率政策がやはりとられておるのであります。これは長距離の旅行を奨励するというか、あるいは政策的に旅行し得るようにするためには遠距離逓減制がいいと思うのであります。実際、また、コストの関係から見ましても、距離とともに費用は増加するのじゃないのでありまして、キャパシティーコスト、いわゆる能力原価的な性格をやはり持っておりますから、少し距離が長くなったからといってコストが必ずしも多くなるわけじゃないのですから、むしろ遠距離逓減制がコストの面から見ても正しいというふうに私は考えるのであります。また、負担関係から見ましても、距離が長くなればなるほど利用価値が多くなるかというと、必ずしもそうでもない。貨物においてもそういうことが言えるわけであります。ですから、旅客貨物ともに基本的にはむしろ遠距離逓減制が正当であると私は考えるのであります。  それから、もう一つは、最初の、貨物は安楽死かという問題でありますが、私は、現在のような行き方でいくと安楽死のようなことになりはしないかという懸念があるのであります。しかし、国鉄は恐らくそういうことにはならぬとぼくは思うのは、今度の改定案の中にも、貨物輸送について企業性を発揮するという点について相当関心を持たれておるようでありますから、経営者国鉄労働者もともに自分たちの職場を守らなければならぬという考えをだんだんお持ちであると思います。したがって、また、この前国鉄経営者に対して労働組合の方から貨物輸送をやめるのかというような質問があったようなことを新聞で伝えておると思いますが、そのときも必ずしもそうでもないというような意味のお答えがあったが、いま貨物がだんだん減りつつあるというのは、先ほど中西先生もお話しのように、国鉄に対する不信感がある。輸送が正確でない、国鉄を頼りにしておってもいつストをやられるかわからぬというようないろいろな不安があるために国鉄離れになる可能性があるし、また、事実国鉄離れになっておるということであります。  ですから、これに対して経営者労働者ともにサービス改善に努力される、サービスの質をよくされる、そしてできるだけ信頼できる輸送である、信頼できる国鉄であるというふうになれば必ずしも安楽死ではなくて——いま貨物輸送のウエートは少ないとはいいながら一億二千万トンから三千万トンあり、相当大きい絶対数が残っているわけであります。われわれはそれを維持していくということは必要であろうと思いますし、維持し得ると思います。  それから、第二は、総合交通政策立場から、自由競争よりも政府の公的な介入によって統制したらどうかというお話でありますが、これも中西先生がおっしゃったように各国とも統制には必ずしも成功しておらないのであります。ことに、自家用車に対する制約というものは非常にむずかしい。そういうことになりますれば統制はむずかしい。自家用車までもすべて統制して国が持つとか、あるいは何か全面的にほかの制約を加えるということになれば別ですけれども、自由経済を体制とする現在の状況におきましてそこまで介入するということは行き過ぎであろうと思いますし、そこまでやっている国は、ソ連のような社会主義の国におきましてはあるかもしれませんけれども、それ以外にはないわけです。自由主義の国の日本現状としてそこまで介入することは無理だし、中途半端な介入をしても統制の目的を達することはなかなか不可能であろうと思います。ですから、ある程度制約を加えることはいいが、しかし、原則はやはり荷主の選好によってどっちを選ぶかということをたてまえとし、また、輸送を担当する側では、なるべく自分が選ばれるようにサービスの改善に努力するということによって正しい市場のあり方に行くように、市場機構に頼っていく方がむしろいいと私は思うのです。  簡単でありますが……。
  29. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間でありますから、ほかの公述人先生方には大変失礼ですが、質問を省略させていただきます。
  30. 浜田幸一

    浜田委員長代理 梅田勝君。
  31. 梅田勝

    ○梅田委員 私は、日本共産党・革新共同の梅田勝でございます。  本日は各公述人から御意見を承ったのでありますが、賛成立場の人も条件をつけられるなど、今回の値上げ法案というものがきわめて重大な影響を与えるものであると拝聴したわけでございますが、先ほど、本委員会におきましてこの法案を慎重審議しているというように言っておりましたが、理事会等でしばしば私ども日本共産党・革新共同の反対があるにもかかわらず強行されてきたという事態につきましても御理解を願いたいのでございます。われわれはあくまでも慎重に進めたい決意でございます。
  32. 浜田幸一

    浜田委員長代理 質問者は発言に注意してください。
  33. 梅田勝

    ○梅田委員 そこで、公述人の二、三の方に御質問を申し上げたいと思います。  まず、工藤さんにつきましては、国鉄財政破綻の原因につきましてはかなり詳細に御意見を承りましたが、しからば、その政治責任はどうなるかといった問題につきまして御意見を承りたいと思います。  また、今日の国鉄財政の危機につきましては、これの真の再建策を示すことがきわめて重要でございます。問題は、いかにして再建するかということでございます。私どもは、従来から、たとえば昭和四十八年には国鉄財政再建のための五項目提案をいたしてまいりましたが、今回も「国鉄を民主的に再建する道」という新しい政策を本日発表いたしました。これを取り入れて、本当に国鉄再建していくということで力を入れるべきだと思うのでありますが、具体的に工藤さんの御意見を承りたいわけであります。     〔浜田委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕  つまり、一つ国鉄財政の民主的な転換を進めるという問題でございます。この点では、大幅運賃値上げというような暴挙をやるのではなく、公共交通機関にふさわしい国と大企業による負担を適正にするということと、あるいは過去債務に対しましても国による適切な処置が必要でございます。また、大企業奉仕の運賃体系改善しなければなりません。また、第二に大きな問題といたしましては、従来の輸送力増強政策を大企業本位でなくて国民本位に転換することも必要であります。そして、陸上貨物輸送におきましても国鉄役割りを高めるということが重要であろうと思います。そして、第三には、国鉄の管理運営を民主化し、国鉄財政経営国民の声を反映させることが必要であります。この三つの新しい政策を打ち出しておるわけでありますが、これにつきまして工藤公述人の御意見を承りたいのであります。  続きまして、安恒公述人からも同様の問題を承りたいのでありますが、安恒さんは、先ほど諸外国の例などを示されまして、主として国の補助を中心にして国鉄財政再建を考えるべきだとして、そして四本柱の緊急対策というものを打ち出されたわけでありますけれども、この国鉄財政破綻の原因ですね。また、その政治責任の問題につきましてももう一つ突っ込んだ御意見を承りたいのであります。  今日の国鉄の危機は、言うまでもありませんが、長く続きました自民党政府のインフレ政策だとか、あるいは独占価格の野放しだとか、モータリゼーション政策だとかいうような悪政が前提にありますが、一つは大企業奉仕の過大な設備投資の問題があります。五十年度までの十カ年間に四兆八千五百八十三億円の投資がございます。十カ年間に支払った利息が一兆二千九百十八億円で、今日の累積赤字の約四一%でございます。  それから、もう一つ赤字の大きな原因といたしまして、大企業奉仕の貨物運賃がございます。旅客は三十五年以来今日まで三・六倍の値上げをしておりますが、貨物の方は一・六倍で、非常に大きな差がついております。五十年度までの十カ年間に貨物がつくり出しました赤字は、先ほど中西公述人もおっしゃいましたように約二兆三千億で、累積赤字の七割八分というように非常に大きなものでございまして、先ほど申し上げました利子負担貨物関係を合わせますと今日の累積赤字をはるかに上回るわけでございますが、こういった問題につきまして安恒さんの御意見を承りたいわけであります。  そして、若干再建策の問題について伺いたいのでありますが、先ほど言われました四つの柱の中で国の負担という問題がございます。私どもの新しい政策の中には、公共交通機関にふさわしい国と大企業による負担を適正にするということで、大企業の負担という問題を出しておるわけでありまして、たとえば大企業は貨物にいたしましても非常に安い運賃であったし、また、いろいろな投資効果で利益を得ておるという点におきまして、その点でどういう政策を打ち出したらいいのかという問題につきましても御意見を承りたいと思います。  それから、総評傘下には全自運のトラック関係労働者の組織もあるわけでございますが、下請トラック運輸業者が大企業荷主から非常に安い運賃を押しつけられており、そして労働者が過酷な労働条件で仕事をさせられるという問題がございますが、これに対してどういう対処をすればいいか。私どもは厳しく行政指導で規制をすべきじゃないかと思うのですが、その点につきまして御意見を承りたいと思います。  最後に、中西公述人にお伺いいたしますが、貨物は大変であるということが強調されたわけでありますけれども、しかし、先ほど先生がおっしゃいましたように、石油とか石灰石、飼料あるいは化学薬品というようなものは輸送の分野におきましては国鉄のシェアは余り減らない。先日も質問したのでありますが、石油関係は内陸工業地帯あるいは大都市の辺は石油がふえているという事実がございます。ところが、過去十カ年で四百六億円の営業割引をしておるのはきわめて不当だと私は思うのでありますが、その点中西さんの御意見を承りたいと思います。  以上です。
  34. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 ただいま梅田君からお尋ねがありました三公述人には、時間がございませんので極力簡単にお答え願いたいと思います。工藤公述人
  35. 工藤芳郎

    工藤公述人 一つは、財政危機の責任の所在といいますか、今後の再建策とあわせての問題でございますが、国鉄政府とに分けて考えてみたいと思うのです。  国鉄については、財政危機が確かにあります。しかし、この内容については先ほど申し上げましたように、一般の企業に比べて国鉄というのは特殊な法人でありますから、赤字の内容というものは、減価償却だとか利子の負担だとかといったようなものを国が負担をしていくことによって財政負担が非常に軽くなっていくわけであります。  そこで、国鉄に対して申し上げたいことは、一つには、経理の内容面について国民の前にもっと公開をしてほしいと思っています。私たち原価の公開を各大企業に要求しておりますけれども、肝心の国鉄さんにもう一歩踏み出してもらいたいと思います。たとえばいま東北新幹線をやっておられますし、同様に鉄建公団では上越新幹線をやっておられるわけでありますが、新幹線で必要な土地の購入費用を明らかにしてほしいという要求をかねがねしてあるわけでありますが、それについては勘弁をしてほしいということでありますし、あるいは鉄道債券の大口引受人を上位十社でも二十社でも明らかにしてほしいと言っても、これも勘弁してほしいというような形で、そういう点が明らかになりませんと国鉄さんについても私たちの不信感がまだとれないわけであります。わが国最大の公営事業でありますから、そういう点をぜひはっきりしてもらいたいと思います。  それから、当事者能力の問題が労働組合との関係などでいろいろ言われておりますが、国鉄は先ほど申し上げました鉄建公団との関係で見ました場合に、新線を建設するような場合には、運営については国鉄が後でしりぬぐいを負わされるわけですから、仕組みから言ってもみずから参加できるようにしてもらいたいと思いますし、その点ができることによって国鉄にもうちょっと当事者能力の実質的なものが備わっていくのじゃないかと思っているわけであります。鉄道をつくる方とできたものを運営する者と、その費用を負担する者とがばらばらになっているような現在の状況を改める必要があるだろうと思います。  それから、政府について御要望申し上げたいことは、やはり一貫した国鉄の生みの親でございますから、どうぞひとつ育ての親になってほしいと思うわけであります。財政面での負担をしてもらいたいと思います。  財政再建策の問題といたしましては、一つは過去債務の処理の方法が問題になろうかと思います。これは長期的に累積されたものでございますから、一挙に解決するということではなくて、長期間にわたって段階的に解決していく必要があると思います。  それから、今後の負担を少なくするために、前提計画といいますか、基本計画といいますか、設備投資がやはり中身になりますが、こういう点で原価の発生源を国民本位にコントロールしていき、利用者にとってどうしても必要な部分については新線を建設していかなければならないと思いますけれども、その点について十分に国が責任を持っていくように、やはり国会審議をぜひお願いしたいと思います。  それから費用の負担の問題でございますが、これは、私は、基本的な施設についての費用負担とランニングコストについての費用負担というふうに分けまして、後者については利用者によってこれが負担をされていくべきであろうと思います。ですから、受益者負担ということも、この段階では中身を分けて、すべてのものが利用者によって負担をされるというふうな形のものではなくて、基本的な施設についての費用負担はやはり国が責任を持つというふうにしていけば、今後の問題については運賃値上げというような形を必ずしもとらなくて進んでいけるのではないかと思います。  それから、運賃体系の問題でありますが、貨物のあり方はやはり総合交通体系の中で論じていかなければならないと思います。いろいろな先生方が言われましたように、国鉄を主要な貨物輸送の基軸にしつつ、その国鉄にもっと機動的な態勢を持たせるように工夫をしていく必要があると思います。モータリゼーションの問題は大変むずかしい問題でありますけれども、やはり一定の規制をしていかなければならない状態に来ているのではないかと思っておるわけであります。  大体以上でございます。
  36. 安恒良一

    安恒公述人 梅田先生からの御質問にお答えしたいのですが、公述人公述時間が十五分に制限をされておりましたから細かく答えることができませんでしたけれども、御質問の御趣旨、お考えに基本的に私は余り食い違いがありません。  ただ、少し正確を期す意味でまず申し上げておきたいのですが、私は、今日の国鉄赤字の最大の原因は、何回も申し上げましたように、戦後三十年担当されました自民党政府の総合的な交通政策の欠如、むしろもっと極端に言わせていただきますならば、放任的な交通政策の結果だと思います。私は、国鉄私鉄都市交通と、それから貨物におけるところのいわゆるトラック輸送、船舶輸送、それからモータリゼーションの問題等々について総合的な体系を立てられるべきだと思う。それが放任になっています。それが最大の原因だろうと私は思います。  第二の問題は、いまも御指摘がありましたような、わが国における財政金融政策を含めたインフレ政策の問題があると思います。そういう中の一つの問題として、先生が御指摘されたような、たとえば貨物運賃におけるところの大企業に必要な貨物といいますか、そういう特定の貨物の割引制の問題があります。ですから、それは一つの問題としてとらえるべきことだろうと私は思います。そういう中で貨物運賃をどう適正化するかということについては、やはり、これは、総合交通体系との関係を考えないまま、ただ単に大企業のものであるから上げればいいというだけにはならない。そうなればトラックに逃げたときどうするかという問題があります。ですから、私は、大企業に奉仕する貨物運賃のあり方というものはやはり再検討しなければならぬ、しかし、それは総合交通体系の中で考えていったらどうだろうかというふうに思っております。  それから、国と大企業の負担は何で負担をさせるかということは大変なことで、一つは、私は、国家財政の投資ということを言っています。国家財政というのはやはり国民全体の税金の問題になってまいりますから、いまの税制の中において、私は税制調査会の委員をしていますが、もっともっと大企業等からの収入源を取るべきだという意見を税調の中でひとり言っているものであります。そういうようなことで、これも総合的に大企業に対する負担増ということを考えていかなければならないのではないかと思います。  それから、いわゆる下請運賃の問題がありますが、これもやはりトラック行政における放任だと私は思うのですね。運賃を認可制度にしておきながら、いわゆるダンピングがものすごく繰り返されている。また、いわゆる白トラというものがたくさんある。そういう問題の中にいま先生の御指摘のような問題が起こっておりますから、私は、やはり、運輸行政におきましても、国としてのきちっとした総合的な交通政策体系、トラック運送政策というものを持つ中でやっていかなければならない問題だというふうにその点は考えています。  以上です。
  37. 中西睦

    中西公述人 簡単にお答えいたします。  現在の法定主義で貨物運賃が決められている場合には、利用者の公正さという点から考えますと、営業割引というのは原則的に公正さに欠けるものなので、反対しなければならないものだと考えております。しかし、コストと収入との関係で考えていけない分野がございます。鉄道は大量定形輸送を特色とするものでございます。その点から考えますと、私が先ほど公述のときに申し上げましたように、現在の市場原理を生かしながら、いわゆる列車別原価計算管理というようなものや商品別原価管理制度が確立された場合には、現在の割引が行われているものが全部本当に不当に安くされているのかどうかということになりますと、適正な原価を支払っている割引もあるのではないかということを考えております。しかし、現在の法定主義のもとでは、公正さという意味から申しまして、これはやってはいけないものだというふうに考えております。しかし、収入がなければ困るわけでございますから、その辺が一つの戦略であったという考え方もとられると思います。
  38. 梅田勝

    ○梅田委員 原価を割って貨物赤字が非常に大きいというときでございますので、ああいう割引につきましては検討が必要じゃないかというように私は申し上げているわけでございます。  公述人の皆様の貴重な御意見をありがとうございました。  時間がございませんので、ほかの方には失礼をいたしました。
  39. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 石田幸四郎君。
  40. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 最初に、高屋先生と工藤公述人にお伺いをするわけでございますが、今回の値上げは、いわゆる二カ年間の財政再建計画に基づいて五〇%の値上げ案が出ているわけでございます。四十八年度にはいわゆる再建十カ年計画が出たわけですが、ちょうど石油ショックという大きな事件がありましたためにたちまちに瓦解をしてしまったわけでございます。そういったことにこりて、長期計画ではもうだめだ、経済変動がしばしば起こるかもしれないというので、一挙に二カ年間の財政再建計画というふうになったんだと思うんですね。まるであつものにこりてなますを吹くというような感が私はするわけでございます。  累積赤字は三兆円をはるかに超えているという現状の中にありまして、二カ年間で財政再建計画をやり切ろうというのは、やはり、基本的にここに無理があるのではないかというふうに私は思うんですね。また、十カ年計画と言いましても、経済の動向というものはそんなに安定的に推移するとも考えられませんし、したがってこれは中期の財政再建計画でなければならないのではないかと私は思うわけでございます。  それについて、中期と言いますと、政府ではいま大体五カ年計画ぐらいのところが行われております。しかも、その程度のことであれば、一たん立てた計画は途中で修正を要すべき点も出てくるでありましょうけれども、これは修正をしながらでもぜひ完遂をするという計画でなければだめだと思うんですね。この二カ年間の財政再建計画にいたしましても、すでに値上げ実施時期がずれているわけでございますので、これすらも崩壊ではないかと私は実は思っているわけです。  そういった意味におきまして、この件についての御意見高屋公述人工藤公述人のお二人からまずお伺いいたしたいわけでございます。
  41. 高屋定國

    高屋公述人 ただいまの石田委員の御意見賛成でございます。大体において、累積赤字にいたしましても二年でできたわけではないのですから、長期にかかってやっているわけなんですから、やはりそれだけのことを考えなければいけないのではないか、しかし、その計画ということは、先ほども申しましたように総合交通政策との上にやらなければいけないんじゃないかというふうに思います。
  42. 工藤芳郎

    工藤公述人 これまでの財政再建計画あるいは輸送力増強計画というのは、最初は第一次五カ年計画昭和三十二年からとられました。それから第二次五カ年計画が三十六年から、第三次が四十年から、そして財政再建十カ年計画が四十四年からでありました。しかし、いずれも五年単位でありますと中期と言えば中期でありますけれども、第一次は五カ年、第二次も五カ年で、第三次は七カ年、そして財政再建は十カ年となるわけです。短期、中期の計画がとられてきたわけでありますが、これを一貫して流れておるものは三方一両損の考え方でございます。三方一両損、つまり、国鉄負担をしなさい、合理化をやりなさい、政府もお金を出そう、国民負担をしなさいという、この考え方は脈々として今日まで流れておるわけですが、一貫して実行できたのは運賃値上げだけだということで、私どもはこの点についてはまさにこりごりしているわけでございます。  今回を見ましても、国鉄自身の経営全般にわたる刷新と、政府の過去債務負担軽減のための財政措置と、三番目が運賃値上げと、こういうふうになっているわけでありますが、どうもこの一と二はついぞ実現されたことがないわけでありますから、これはまたうまいこといくのか——たとえ一年になっても二年になっても、運賃値上げだけはうまくいっているわけです。ですから、その他の問題が本当にうまくいくかどうか。だから、計画を立てられたらそれを点検していくという過程が今日重要なんじゃないだろうかと思います。  やってやりっ放しということはないと思いますけれども、運賃値上げだけはその場限りでできていくわけですが、後の場合の実行が本当にできるように、言葉はよくないですが国民的な監視をするというような機関が必要ですね。また、国会でも随時それを取り上げられていくというふうにしなければ、どういう計画を立てても肝心のところができないんじゃないかと思うわけです。  ただ年数だけで何年がいいかということはあながち言えない問題でございまして、肝心な国の財政支出などということが、今回でございましても二千四百四十一億の一般会計からの支出があるということで、これはかつてないことだというふうに言われておるわけでございます。しかし、よくよく見ますと、これは一般会計から支出をされたものが国鉄に一たん渡って、国鉄を経由して財投に流れ込むという、これはまさにかつてない仕組みなんです。ですから、財投資金がどう使われているかというと、われわれはよく言うのですが、生活基盤と産業基盤とにしますと、財投の場合は三対一ぐらいの比重で産業基盤に優先的に使われている。そこへ国鉄をパイプにして財投に流れ込むような仕組みは大変新たな仕組みであって、われわれも大変注目しているわけです。  その点で、国が本当に支出をするということは、どういうことを何のためにどういう効果をねらって支出をされるのかということをお考えいただきませんと、今回の一般会計からの支出というのはかつてない大きな金額だと言われておりますけれども、お金が還流をしてしまう。そして財投に流れた金が産業基盤へ優先的に使われていくということになると、何のために一般会計から出すのかということが大変疑問に思うわけでございます。
  43. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 今回の各公述人先生方の御意見は、反対であれ賛成であれ、いろいろと政策的な条件を厳しくつけられておるわけでございます。これについては私も午前中、物価との連合審査の中におきまして運輸大臣に相当厳しく申し上げたつもりでございますが、そういった前提に立っての計画というものが大事であると私は思っておるわけでございます。  次にお伺いをいたしますのは貨物運賃の問題なんですが、この問題については安恒公述人高橋公述人にお伺いをしたいと思うわけでございます。  先ほど来貨物の問題につきましてはいろいろな意見が交わされておるわけでございますが、そういった意見が交換されていることは私も十分承知をいたしております。いわゆるトラックとの競合等をどういうふうに規制をするかとか、いろいろな問題があるのでございますが、ただ、やはり、直接的な他の輸送機関との競争ということになりますと、現在の自由経済というメカニズムの中におきましては、貨物運賃というものはトラック等の他の輸送機関との競争になることはやむを得ないのじゃないか、いろいろな政策的な要因を絡ましたとしても現実問題としてやむを得ないのじゃないか、このように思います。  今回もこれが値上げになるわけでございますけれども、値上げになりましても、いまの他の輸送機関との競争等を考えますと値上げした分の収入は得られないであろうというふうに考えております。それをさらに来年また値上げをするなんということになりましても、これはどっちみち競争でございますから値上げをしてみても実効は疑わしいと思うわけです。あるいはもう一つの角度の、いわゆる貨物輸送量を拡大するということを考えてみましても、やはり、貨物運賃の問題については法定主義を外してでも、一応競争に耐え得る価格でやった方が貨物量の拡大ができるのではないか、そうなれば赤字分が多少なりとも減ってくるというようなことも考えられるのではないかと思うわけでございまして、普通の旅客運賃についての法定主義を貫かなければならないということは、私どももそう思いますけれども、貨物の問題については、もうやめるとかやめないとかいうのではなくて、そういう法定主義に耐え得ないところに来ているのではないかというふうに考えておるわけでございますが、この点について両公述人から御意見を承りたいと思います。
  44. 安恒良一

    安恒公述人 私は、結論から言いますと、陸上輸送の中の約半分に近いものをまだ国鉄が運んでいるわけで、でありますから、法定主義をいま直ちに外すということについては賛成できかねます。  ただし、貨物運賃のあり方について私は詳しく申し上げる時間がありませんでしたから、ちょっと一、二点触れたいと思うのですが、たとえば貨物と言いましても、国鉄貨物は、国民生活に直接必要なものというふうに段階的に三つの段階で運賃が設定をされているわけであります。でありますから、たとえば割引の場合においても、国民生活に直接必要なもの——たとえば一つの例を挙げますならば、お米ならお米というようなものですね。こういうものについて割引制度がとられていることは国鉄という性格から言って当然だと私は思うのですが、ただ、その場合に、そういうものから出てくる赤字のあり方、負担のあり方はもう前段で申し上げたから申し上げませんが、そうでなくて、いわゆる大企業に非常に奉仕的な貨物があるのです。にもかかわらず、それも割引して量の拡大をやった方がいいのかどうかというところになりますと、これは十分に検討しなければならぬ問題だということです。というのは、私が何回も申し上げましたように、これは一つ運賃制度にもかかわりますが、物流の過程の問題でありますから、やはり総合的な交通体系のあり方にかかわるわけですね。  そういう問題から考えまして、簡単に、この際貨物運賃というものは法定主義を外して、いわば自由競争に基づいて、競争の原理に基づいてやらせればいいじゃないかという、そのお考え方には賛成をしかねます。  以上です。
  45. 高橋秀雄

    高橋公述人 いまの貨物運賃の法定主義の問題は、これは競争と非常に密接な関連があるのでありまして、現在、国鉄貨物輸送は、数量的には全数量の三%です。半分なり、そんな大きな数字はとても持っていないで、数量的にはわずかの三%です。それから、トンキロにして一三%でありまして、非常にわずかな数量しか残っていないのです。もう大部分はみんなトラックや海運に移ってしまっているのです。その残りの三%についてと言っても、絶対数は一億二、三千万トンあるわけですが、その貨物について現在すでに競争が行われておるのでありまして、それをより競争に耐え得るように、少なくも受け身の競争であってもそれに耐え得るようにしないことにはますます貨物が減っていくということになります。でありますから、どこの国でもやっておりますように、貨物については自由運賃にしていくとか、あるいは認可をするにしても、国鉄で決めた運賃運輸省の認可を得て実行に移すとか、とにかく法定制からは少なくも貨物については外した方がいいと私は思うのであります。  旅客の場合は、先ほど申しましたように表定賃率ですから、認可運賃あるいは公表する運賃という運賃制度でいいと思いますけれども、貨物については、少なくもできるだけ早く法定制を外していただきたいというふうに考えます。
  46. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう少し貨物の問題でお伺いをしたいのでありますが、高橋公述人にもう一度お伺いします。  貨物の場合、鉄道は中距離、長距離に見合う条件を備えた運輸機関であるわけでございますが、いまでも北海道から九州あたりまでトラックでいろいろなものを運んでいるというようなことをよく聞きます。そういうことを考えてみますと、現実に着く時間も明確であるし、それから目的地まで的確に送り届けられるという利便性もありますし、いろいろなことがあって現実的に使われているのだと思うのですけれども、中距離、長距離を国鉄貨物責任を負わせるためには、そういった長距離のトラック輸送等についてはある程度規制する法律をつくらなければ、これは実際問題としてはできないわけでございますが、そういうようなことが必要とお考えでしょうかどうか、その点高橋公述人にお伺いをしたいのです。
  47. 高橋秀雄

    高橋公述人 お答えいたします。  トラックの運賃、ことに長距離について規制した例としては、外国ではドイツでその例があるのですが、ドイツでも必ずしも成功しなかったわけです。  自動車で運ぶ貨物のうちの相当大きな量が自家用車であります。その自家用車までも規制するということはほとんどできない。自然、鉄道と営業用のトラックあるいは白トラというか、自家用トラックとの競争というものは残るわけです。これを機械的に規制するとしても非常にむずかしいと思うのです。ということは、御承知であろうと思いますが、トラック業者は非常に小規模経営なんです。これが大規模な会社が二つなり三つなりあって、それが鉄道と競争するということになればわりあいに統制することもできると思いますが、二台、三台持ちの経営が圧倒的に多いという現状におきましてこれを統制するということは非常にむずかしい。まあ、比較的可能性があるのは路線トラックでありますが、その量は全体から見れば余り多くないわけです。  それから、また、競争関係はひとり運賃関係だけではなくて、サービスその他実際の取り扱いから見てトラックに適するものはトラックに行く。鉄道に適するものは鉄道に行く。同じ区間を機織り運転して大量に運ぶ原料品の輸送のような場合はやはり鉄道の方が便利なんですね。コストも安いわけです。それはもう適切な割引運賃をつくってでも鉄道に確保することが国民経済的にも望ましいと思うのです。しかし、一般の中距離、長距離にわたるたまに出る貨物とか特殊な完成品の輸送であるとかいうようなものにつきましては、相手の輸送する機関が比較的大規模の場合は先ほど申しましたように可能でありますが、小規模の非常に多数の経営者を対象にした統制というのは、やっても事実上不可能ではないかと思うし、成功した例を私は聞いておらないのであります。
  48. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう少しお伺いしたいのですが、時間がありませんので最後に中西公述人にお伺いをいたしたいと思います。  先ほども話が出ておりましたが、鉄道を今後建設していく場合、これを一種の道路とみなしていいのじゃないかという議論がございますね。道路の方は目的財源があって、それによって大変なお金をつぎ込んで今日まで来た。そのために非常に自動車が多くなっていろいろな人的公害も出ておるわけなんでございますけれども、国の財政面から見ましてそういったことが適当と思われるかどうか。いわゆる線路も道路とみなすのだというような考え方は、これは細かく言えばいろいろな議論があると思うのですが、その大筋においてこの問題を先生はどうお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  49. 中西睦

    中西公述人 お答えいたします。  私は、道路とみなすべきだ、同じようなものだというふうに考える立場はまだとっておりませんけれども、しかしながら、先ほどから申し上げますように、通路建設維持、保守等のために大変な金が投じられております。理論的にはイコールフッティング論というのがかつてあったわけでございますけれども、これはどちらにどのように負担するか、事実非常に困難でございました。しかしながら、私は、道路と同じようにやるべきであるとは基本的に考えておりませんけれども、この通路としての建設、保守、それから維持というものに対してさらに国家的に——これはまた国家財政の問題もございますけれども、国鉄再建のときに補助対象として考慮することが妥当であるかどうか、この辺を非常に慎重に御検討いただきたいのですが、私個人としては、やはりこの問題は補助である程度考えなくてはならないと思います。  その通路建設のときの、ことに新線建設の問題ですが、これなんかは地域住民にとって本当に代替輸送手段がないのかどうかとかいろいろなことを考えてお考えになっていただく必要があります。その辺では幹線とローカル線と分けて考えないといけないと思いますが、この問題に対しては、私は、やはり補助対象としてはお考えいただくことがよろしいのではないか、しかし、その限度についてはやはり輸送体系全体から考えていかなければならない問題があるのではないかというように答えさせていただきます。
  50. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 終わります。  どうもありがとうございました。
  51. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 河村勝君。
  52. 河村勝

    ○河村委員 高橋さんにお尋ねをいたします。  先ほどの公述で、今度の再建案に入っております過去債務の二兆四千億のたな上げ、それから地方交通線区に対する補助、それから運賃水準、この三つについては賛成であるというお話でございましたが、そこで、ことしで結論が出る問題ではありませんが、一体、この程度の政府財政的な援助前提として今後他の交通機関とバランスのとれた運賃が——今後上げるにしてもそういうものが出なければならぬはずですね。これが著しくアンバランスであれば、これは経営的に成り立たないわけですから、この程度の政府援助で、今後そういうバランスのとれた運賃を持つことによって収支均衡していくことが可能であるというふうにお考えですか。ことし程度の政府援助規模で、ですね。
  53. 高橋秀雄

    高橋公述人 お答えいたしますが、過去の累積債務につきましては、原案では二兆四千五百億で、それを一定期間分割して政府援助するということです。それから、これはそのままで私は賛成なんでありますが、第二の地方線区に対する問題で、これは百七十二億を予定してあったように思いますが、それはもう少し多くしてやり、少なくも二千二、三百億ぐらいは補助すべきであり、今後ともその問題は通じていく必要があると思うのです。もし赤字線を通じてやるならばその程度の補助はやらなければならぬ。それ以外の問題はできるだけ国鉄責任を持って経営ができるようにしていくべきでありますが、ことしの約五〇%の値上げだけでは、やはりこの運賃値上げによる旅客貨物の減少がありますから、恐らくまだ相当赤字が残ると思うのです。  そこで、来年また五〇%前後の値上げが一応予定してありましたが、私はそれは無理だと思うのです。来年度の問題はもう少しよく検討していただきまして、賃率制度その他いろいろ交通機関の発達状況も考えまして、そしてその補助の額なり何かを考えていかなければならぬと思いますが、原則としては幹線だけは少なくもペイしていけるようにする可能性があると私は思うのです。  その関係が、運賃水準は他の物価水準あるいは賃金の水準なんかとも比較もしなければなりませんが、しかし、運賃水準を決める基準としましては、事業の経営という面から見まして、幹線区につきましてはコストを回収できるような程度の賃率水準を適当なものと一応考えます。そうでないと経営が続けていけないわけですから、少なくも賃率制度をいろいろ考えて、そして来年度は黒字にはならなくても、少なくも償却前には黒字になるように、それができれば減価償却も相当できるようにということぐらいはできる可能性があるのではないかと私は考えております。  細かいことはまだ計算しておりませんからわかりませんので、お答えにならないかもしれませんが……。
  54. 河村勝

    ○河村委員 そうすると、過去債務の方のたな上げはいままでの赤字分の三兆円の三分の二ですが、そのくらいを肩がわりしてもらえばよろしいということと、それから地方交通線区の方は、二千二、三百億というと全額ということですが、それでいけば、後の運賃値上げというものはそんな無理な運賃値上げでなくとも何とかやれる、それでペイをしていく、そういうお考えですか。
  55. 高橋秀雄

    高橋公述人 来年度運賃水準をどの程度まで上げていいか、私は、運賃水準という言葉についてこういう定義を持っているのです。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕  ほかの交通機関運賃あるいは物価水準とかいうものとの比較をした意味の水準ではなくて、運賃水準基準としては、事業経営には可能なコスト、費用を回収し得るものが一つ運賃水準として決められる。ということは、事業がゴーイングコンサーンして、通じていかなければならぬのですから、通じていくためにはそういう水準運賃値上げでなければならないというふうに考えるわけです。  ですから、それを期待し得るのは幹線のような交通量の多いところでなければ期待できないわけですから、幹線については、私鉄もやっていますように、相当交通量も多いところですから、これはペイするように考えていく。それ以外のところは、いわゆる赤字線の問題につきましては、その赤字線の経営をやめるか、あるいは続けるならば国で負担してもらうということによって水準を決めていくということ以外に、来年どのくらいそれをやったらペイするようになるかということまでは計算しておりませんので、わかりません。
  56. 河村勝

    ○河村委員 来年五〇%値上げは無理だというのは常識だと思いますが、少なくとも政府のいまの構想によると来年も五〇%上げようということですね。これは旅客でも大問題があるわけですが、観光旅客なんというものは恐らく皆観光バスに乗ってしまって国鉄に乗らぬようになるだろうと私は思いますがね。貨物が特にひどいと思いますが、貨物で仮にことし五〇%上げて来年五〇%上げたらいかなる状態になるとお考えですか。
  57. 高橋秀雄

    高橋公述人 貨物をことし五〇%上げて、また割引が全然ないということであり、しかも来年また五〇%も上げるということになれば、それは貨物も非常に減ってしまうだろうと思うのです。しかし、恐らく国鉄経営者も考えておられると思いますが、もっと企業的に経営すべきであるということがたびたび言われておるし、閣議了解にもそうなっております。そうすると、企業的に経営するとすれば、実質的には競争機関の運賃との関係から見て、あるいはサービスの関係から見て、もう少しノミナルには上げても実施運賃はもう少し割引するなり何かして、実際必要なものについては確保する政策がとられると思うのです。そうしますれば減ることは減っても、そんなに大きな減り方はない。しかも来年またすぐ続いて五〇%要るかと言えば、これはむずかしいと私は思います。
  58. 河村勝

    ○河村委員 先ほど高橋さんは、地方線区に対する運賃はその地方地方で決定するような方式をとったらいいだろうと言われた。差のある運賃ですが、この地方線区という意味は、いわゆる赤字ローカル線というごく支線区を指しているのか。そして、地方地方で差のついた運賃をつくれるとお考えですか。案としてはともかくとして、ですね。
  59. 高橋秀雄

    高橋公述人 地方線区幹線区との限界がどこにあるかという問題ですが、それは線区の通過人トンキロによって一応判別するより仕方がないと思うのです。というのは、結局計画原価経営費というものは能力原価で、設備がある以上一定の費用はかかるのですから、そのかかる費用は、どのくらいの列車回数が想定されるか、あるいは利用率がどの程度かということによってコストがいろいろ変わるわけです。  そこで、赤字になってもなお続けなければならぬかどうかということですが、いわゆる赤字線と考えられるものと、それから黒字線というか、幹線との限界というのはもう少し詳しく調査して、そして国会ではっきり限界の基準を決めていただくということが必要だとぼくは思うのです。一応の目安としては国鉄の諮問委員会の答申もありますが、そういうような通過人トンキロを基準にして一応の限界を設けて、その限界以上の交通量のあるところは黒字線としてペイするように、その限界よりも運輸量の少ない線区は赤字が出るわけですから、その赤字線に対しては——一応は線区別に運賃を決めるということがよく言われるのですが、それはもう事実上言うべくして行われないし、また、閑散線区は幹線よりもサービスも悪いのに、また車も悪いのに運賃を高くするということは事実上むずかしいと思うのです。  しかし、地方によっては、バス運賃なりローカルの私鉄運賃なんかとの関係から、余り安過ぎてはかえって交通の流れを乱すということにもなるわけです。また、現在も国鉄運賃が非常に安いのでそうなっているわけですね。そういうことは不当競争ということにもなるわけですから、やはりその点のある程度の調整ということは考えなければいけない。しかし、それを線区別にすべてつくることができるかというと、これはなかなかむずかしいと思うのです。ですから、一応の基準を決めて、そして大体適切な幅の中で決めていくということにする以外にはないと思います。  どういう程度のものをどういう方法によってやるかということにつきましては、これから後もう少し細かく詰めていかないと結論は出ないと思います。
  60. 河村勝

    ○河村委員 それから運賃法定主義について、法律では基準とか原則だけを決めて、あとは自主的な決め方に任せるというお話がさっきありましたが、基準とか原則というのは、何かそんなものが考えられますか。実際の運賃決定は自主的にやることにして、基準とか原則だけを法律に残すということでありますが、そんなものが何か考えられるものがあるのかどうか、それに疑問を持つのですが、何か具体的なお考えはおありですか。
  61. 高橋秀雄

    高橋公述人 法定主義の場合に、運賃基準を法定して具体的な賃率は経営者に任せるという方法で、その基準は何かというお話でございますが、これは結局運賃水準を何によって決めるかということを法律で決めていただけばわかるわけです。  運賃水準とは何かと言えば、経営者としては経営に要する費用でありますから、それが一つの目安になる。現在の運賃法にも原価をカバーするということが書いてあるわけです。ただ、現在の運賃法では、それと同列に物価に対する寄与とかあるいはほかの公共の福祉云々というようなことが書いてあって、どの程度かというウエートがわからないわけです。それをはっきりさせて、一応幹線における経営に要する費用を基準として運賃水準を考える、それを政策の上において、あるいは制度の上において具体的に水準運賃で回収していく制度としてはどうするかというのは、これはまた別の問題です。  水準を決めるのはどういうことかというと、これは四つか五つ項目があると思うのですが、第一には、いわゆる供給者側の関係から見ましてコストが基準になる。そのコストも、一定の操業度と利用度と、この二つの条件を考えながら、コストはどういう場合にどういうふうに考えるかというような計算の方法ができると思うのです。それによって供給者価格というものは決まると思います。  それから、もう一つ、その供給者価格を需要者が果たして評価するかどうかということですが、この場合の評価の方法というか、考え方として、人口とか交通量とかあるいはその地域の産業分布とか、いろいろな関係からどのくらいの交通量があるかということを想定することも可能であります。それもどういうふうにしてやるかということは、ある程度需要条件を考えるような要素を並べて、そしてこういう点を考慮してやる。そうすると需要者の評価基準というものが出てくるわけです。その供給者価格と需要者価格とを考えながら、経営維持するのにどういう程度を、それからまたコストだけでなくてそれに必要な生産費用というものも電力料金のように何%か見込むべきであるかどうかというようなことを検討してお決め願うということにすれば、少なくとも運賃水準の決め方というものは決められるわけです。そして、その決まったものを基準にして現実の行政機関の方で実情にアプライして運賃決定してやるということは可能だと思うのです。
  62. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  63. 中川一郎

    中川委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、御多用のところ長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。  以上をもちまして、公聴会は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会