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二階堂議員 私に関するこの問題につきまして、私は言われておるような金銭の授受がなされたというような事実は全くないということを明確にいたすために、与えられた時間内で
反論をいたしたいと思います。
去る二日の衆議院のロッキード
調査特別
委員会の秘密会で、
ロッキード社の
航空機売り込みに関し、いわゆる三十
ユニットの関係で、
丸紅株式会社の伊藤宏から私が金銭を受け取ったとし、私の名前が
公表されたことが報道されました。
また、本日は、私ども四人がいわゆる
灰色高官というような、言うならば一方的
資料に基づく、暴力にも等しい断罪が下されるようなことになったと私は受け取っております。これは許しがたいことであり、私は限りない憤激を覚えるものであります。
私は、天地神明に誓って、
ロッキード社の
航空機売り込みに関し金銭を受け取った事実は全くありません。明確にいたしておきます。また、私の関係者についても、厳重に
調査をいたしましたが、
丸紅や
全日空の関係者から金銭を受け取った事実も全くありません。
私は今日まで、伊藤宏とは一回も会ったこともありません。私並びに私の関係者は、何びとからも
ロッキード社の
航空機売り込みに関し、尽力されたい旨の
依頼を受けたことも全くありません。
私は在官中、あるいは退官後も、そういう事実は全くないということを、この正式の
委員会の
皆様方に明確にいたしておきたいと思うのであります。
私が
ロッキード社の
航空機売り込みに関し金銭を受け取ったと言うなら、本日のこの
委員長が
読み上げられました文章の中を見ましても、「十一月初旬ころ、
東京都内」こういうことでは、明確な
判断の
資料があるのかないのか。私が受け取ったと言うならば、何月何日、
東京都内のどこで、だれが——いままでの
新聞報道を見ますと、あるいは官邸で、あるいは公邸で、あるいは
議員会館でというようなことがうわさされております。そういうような具体的な事実の
資料の提供がなされておりますか。私は、こういうことでは納得のできないことばかりであります。
私がこの
ロッキード社の
航空機売り込みに関しまして金銭を受け取ったと言うなら、いつ、どこで、だれから金銭を受け取ったというのか。法務省当局は全
資料を直ちに公開すべきであると思います。私に金銭を渡したという者がいるなら、私はいつでも対決する用意があります。
政府がかかることを
公表することは、政治家にとってはまさに死刑の判決にも等しいことであります。私が金銭を受け取ったということを
公表する以上、
政府は当然
資料を公開しなければ片手落ちであり、その義務があると私は確信いたします。もし私の利益のために
資料の公開をしないと言うならば、私は私に与えられている権利を放棄いたしますから、即時、一切の
資料を公開していただきたい。
もう
一つは、去る二日の秘密会において、法務省の安原
刑事局長の
報告によれば、私が
丸紅から金銭を受け取った旨を
認定したのは、
全日空関係者、
丸紅関係者の
供述、
米国における
嘱託証人尋問の結果であるとのことでありますが、これはすべて、金を渡した側の一方的
資料であります。そうじゃありませんか。私や、私の関係者はこれまで、
捜査当局に対し、
全日空や
丸紅から金銭を受け取った事実は全くないことを指摘してまいりました。私どもの言い分を全く無視し、渡したという側の一方的
資料によって、いかにも金銭の授受の事実が確定されたかのように
公表する態度は、私は、
国会議員としても一
国民としても、断じて許すことばできません。
私に金銭を渡したと
供述する者が、それは確かに
新聞の報道によれば伊藤宏と言われております。その金銭を、真実は自己のためもしくは別の使途に使ったにもかかわらず、自己弁護のために苦し紛れに私に渡したと
供述した疑いもありますので、この点について徹底した
調査がなされるべきだと私は思います。検察当局も徹底した
調査をなすべきだと私は思います。
ある法律専門家は、ないということの証明は、悪魔の証明と言われ不可能であると教えてくれました。刑事訴追されれば、法廷で無実の主張、立証もでき、無罪の判決を得て、身のあかしを立てることもできます。しかし、本日はわずか十分以内の
反論の
機会を得ましたが、
反論を尽くすことは不可能でございます。
私は、
丸紅の伊藤宏なる人物は全く知りません。会ったこともありません。伊藤宏は、保釈後、読売
新聞社の記者に対し、私に金銭を渡した旨の全く虚偽の
発言をし、その旨の
新聞報道が九月十三日の読売
新聞に報道されております。私は、弁護士とも相談の上、名誉棄損による民事上、刑事上の
責任を追及する所存であります。近くその手続をとります。それ以外に私の
立場を救済する
方法はありません。
また、去る八月二十六日、私が検察当局から全く
事情聴取を受けていない時点で、報道関係者に対し、私ら四人が
事情聴取を済ませた旨の
発言がされております。またこれを
発言した
東京地検の検事もおるわけであります。かかる検察官の態度は、
捜査の公正を疑わしめるものがあります。その動機が
一体何であったのか、あるいはその政治的背景があったとするならば、その政治的背景は何であるのかを明らかにするために、私は徹底した断固たる措置をとる所存であります。
許されないことではありませんか、皆さん。調べも済んでいないのに、調べが済みました。書いていいかという記者の
質問に対して、書いていい。ある雑誌には、名誉棄損にはならないよ、と言ったと書かれております。こういう検察官の態度が、
一体法治国の今日許されていいものかどうか。
その翌朝の八月二十七日の
新聞には、われわれ四人は、テレビ、
新聞に大々的に
灰色高官と宣伝された。以来私は限りなく人権と名誉をじゅうりんされてしまっております。私の家内も
東京におることができなくなりました。私の選挙区では、共産党の党員がありとあらゆる悪口を宣伝し、ビラを張っております。
憲法に保障され、
刑事訴訟法に保障されておりまする
国民の人権と名誉を、
一体だれが守ってくれるのですか。
最高の権威である
国会の諸君が、こういうことこそ真剣に取り上げて、
国民の人権や名誉を守るために真剣な追及と努力をされるべきが至当だと
考えています。私にはその救済の手段、
方法が全くありません。切り捨て御免の措置であります。
したがって、私は、こういう検察官の八月二十六日、七日にとった態度については許しがたいものを覚えます。一
国民の人権と名誉を守るためにも、断固たる措置を私はとる
考えでございます。
私は、
ロッキード事件の真相
究明について、これまでの
捜査当局の努力は十分評価するものであります。日本の民主主義のためにも、このたびの
事件の真相は徹底的に解明されなければならないと
考えております。
しかし、このたびの
政府の措置は、
憲法、
刑事訴訟法の精神を全く無視したものでありまして、法治国家では
考えられない蛮行であると私は断言いたします。前例もなければ法的
根拠もない、そういうものは、この
国会において、よき前例ならいいけれども、悪い前例を残したことになりはしませんか。
昨日の毎日
新聞は、このたびの措置は「三木流の瀬戸際作戦」であり、法務当局が「法的
根拠に乏しく前例がない」と激しく抵抗したと書いてあります。そのとおりであってしかるべきだと思います。しかし、三木さんは「逆指揮権の発動ともいえる強引な早ワザ」で自分の主張を通したもので、「三木流の政治臭はぬぐい切れない」と昨日の毎日
新聞は報道いたしております。
私は、このたびの三木首相のとられた措置は、政治的意図に基づくきわめて不当きわまりない措置だと
考えざるを得ません。
私は、真相の
究明は徹底的にやってもらいたいが、いわれなき無実の
責任を一方的に暴力的に断定されて、そして
憲法や
刑事訴訟法の精神を貫く人権と
個人の名誉が著しくじゅうりんされておるようなこの状態は、黙視するわけにはまいりませんので、今後、先ほど申し上げましたような措置をとりまして、自分の人権と名誉の回復と、広く一般
国民の人権と名誉を守るために、私は敢然と今後も闘っていく決意を表明いたしておきたい。
ありがとうございました。