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1976-10-20 第78回国会 衆議院 ロッキード問題に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十一年十月二十日(水曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 塩崎  潤君 理事 瀬戸山三男君    理事 松永  光君 理事 森  美秀君    理事 山下 元利君 理事 田中 武夫君    理事 横路 孝弘君 理事 松本 善明君    理事 坂井 弘一君       上村千一郎君    内海 英男君       奧田 敬和君    木野 晴夫君       小山 長規君    近藤 鉄雄君       佐藤 文生君    古屋  亨君       綿貫 民輔君    稲葉 誠一君       大出  俊君    斉藤 正男君       楢崎弥之助君    松浦 利尚君       庄司 幸助君    中島 武敏君       三浦  久君    鈴切 康雄君       河村  勝君    永末 英一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         法務省刑事局長 安原 美穂君  委員外出席者         ロッキード問題         に関する調査特         別委員会調査室         長       中里  煥君     ————————————— 委員の異動 十月二十日  辞任         補欠選任   三浦  久君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     三浦  久君     ————————————— 十月十八日  ロッキード事件真相徹底究明に関する請願(  米田東吾紹介)(第五五三号)  同(三谷秀治紹介)(第五九八号)  同(米田東吾紹介)(第六五四号)  ロッキード事件真相究明に関する請願(竹村  幸雄君紹介)(第六五五号)  同(井岡大治紹介)(第六八三号)  同(田中武夫紹介)(第六八四号)  同(広瀬秀吉紹介)(第六八五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  ロッキード問題に関する件      ————◇—————
  2. 田中伊三次

    田中委員長 これより会議を開きます。  ロッキード問題に関する調査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。まず、瀬戸山三男君。
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 私は、短い時間をいただいて、ロッキード事件に関して三木総理に若干の質疑をいたしますが、その間、総理の気にさわるようなこともあるかもしれませんが、私は決して総理を非難する意味でお尋ねするのではありませんから、あらかじめ御了解を願っておきます。  私がこれからお尋ねすることは、国民理解を深めるためであります。総理が常に言われておりますように、国民理解なきところに国民信頼協力は得られないのでありまして、このことは民主政治根本をなすものだと思うからであります。  そこで、このロッキード事件は、事件発覚以来約九カ月いろいろ議論されましたけれども、先般中間報告がなされました段階で、改めて明確にしておきたいという考えであります。  総理ロッキード事件に非常に真剣に立ち向かっておられると私は見ておりますが、このロッキード事件に対しての総理姿勢、これについて改めてお尋ねするわけであります。総理ロッキード事件を一体どう受けとめておられるのか。中間報告が出た段階でさらにひとつ明確にしていただきたい、こういうことでございます。
  4. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、いろいろな政治の形態があるけれども、議会制民主主義が一番いいと思う。この議会制民主主義というものを健全に維持、発展さすことに努力することが私に与えられた一つの使命である。その議会制民主主義というのは腐敗と両立しないのですね。根底腐敗というものが進行していくということでは議会制民主主義というものは健全に発達しません。ロッキード事件のような、こういう非常な政治的不信原因になっておるものは、非常な不正が行われたということでありますから、この事件というものが明らかになって、そこからこういう民主主義の健全な発達というものを阻害するような不幸な事件が再び起こらない一つの大きな転機にしなければならぬ。そのためにはやはり真相というものが明らかにされなければならぬ。私がロッキード問題というものに真剣に取り組む姿勢根底には、議会制民主主義の擁護というものがあるということでございます。
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 民主政治腐敗、これはとんでもないことであります。とんでもないことでありますが、ロッキード事件というものについてどこがどう腐敗しておるのか。これは、ただ民主主義政治腐敗はけしからぬと言うだけではいけませんので、なぜにロッキード事件というものがこれだけ国を挙げて非常な緊張と申しますか、騒ぎと申しますか、先ほど申し上げましたように、九カ月にわたって毎日論議されておる、毎日報道されておる。これほど重要だというのを、単に腐敗というだけの言葉ではちょっと国民理解ができないと思いますが、時間がありませんから長い答弁は要りませんけれども、どういうわけでロッキード社の金が動いて、どういう点が民主政治を危胎に瀕するようなかっこうにさせておるか、その点ひとつ総理考えを伺いたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全体とすれば、なぜこういう腐敗事件というものが起こるかといえば、やはりその根底には倫理観といいますか、目的のためには手段を選ばぬのだという考え方で、正しい手段によろう、こういうものがないと民主主義倫理というものは生まれてこないのです。そういう意味からして、やはりその根底にあるものは一つ倫理観政治家で言えば、あるいはまた民間にしても、経済人が金もうけのためには手段を選ばぬのだ、政治家が金というものに対して倫理性というものを余り重要視しないという、こういうところから不正というもの、世の中、このロッキード事件に限らず、いろいろな金銭にまつわる不正というものが起こってくる、こういうように思います。
  7. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 ちょっとわかりにくいのですよ。私は、この事件をこういうふうに見る。簡単に申し上げますが、外国の資本によって日本政治なり行政が左右されかねない、あるいは左右されておるかもしれない、こういうところにこの問題の重大性を私は見ておるのですが、そういう認識ですか。ただ倫理観、それは根本にはそういうことがありますけれども、具体的な問題で、アメリカ資本によって日本政治なり行政が左右される、これは大変なことです。極端に言うと、売国であります。そういう点で私はこの問題を非常におろそかにしてはならないという考えで立ち向かっておるのです。それはもちろん、その根底には倫理観があるわけであります。その点はまた後で時間があればお尋ねするつもりでありますが、私は具体的に国民説明してもらいたい。なぜこれほど騒ぐのか、なぜこれほど国会政府国民も重大視しておるかというところを明確にしていただきたい、これだけであります。
  8. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 アメリカ指導といいますか、ロッキード社が商売というもの、自分の販路を拡張するために、賄賂でも何でも目的のためには手段を選ばぬということで利益を追求したというところに問題がありますね。こちらの方がそういうふうなことに対して、そういう誘惑にかかったという疑いを、ロッキード事件というのは持たれてきたわけですね。だから私は、それをアメリカ指導とかなんとかいうよりかは、やはり経済に携わる者、政治に携わる者、やはりこのしっかりした倫理観というものの欠如が、アメリカに限らず、また、よその国でもこういうことをしでかして、そういう金によって政治が左右されるということになれば、これはやはり倫理の問題ばかりでなしに、一国の政治に対する信頼は失われますからね。根本は、やはり実業家にしても政治家にしても一般の人にしても、自分目的を達成するために、正しい手段によらないで、手段を選ばないんだということでこういう事件を発生していくのじゃないでしょうか、私はそう思います。
  9. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 今年の二月二十四日、これは古い話でありますが、総理アメリカフォード大統領親書を出された。その中の一節にこういうことが書いてある。ロッキード社から金を受け取ったという「関係者名前が明らかにされず、この事件がうやむやに葬られることは、かえって、日本民主政治致命傷になりかねないとの深い憂い」を持っておる、こういうふうに言われております。だが、どういうわけで致命傷になるんだということを国民説明されておらない。もう時間がありませんから、簡単でよろしゅうございます。これほど総理は重大視して、アメリカフォード大統領親書を出されておる。この事件がうやむやに葬られ、関係者名前が明らかにされなければ、日本民主政治致命傷になるということは、日本が滅びるということです。そこまで深刻に考えておられるのは、なぜにそうだということを、簡単でいいです、時間がありませんから。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そうでしょう、アメリカチャーチ委員会においてあれだけの証言ができて、この真相というものが解明されないで、うやむやにこれにふたすることがあれば、信頼しないです。瀬戸山さんも言われたように、民主政治というものは国民信頼の上に成り立っているというのに、あれだけの問題を海外から提起されて、この真相というものが究明されないで、ふたをされたのでは、それはもう民主主義というのは育つわけがないですよ。信頼も何もあったわけじゃない。そういうことで、私は額面どおりそう考えているわけです。
  11. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 もう一つ、今度の中間報告冒頭に「政府基本的姿勢」というのが書いてあります。その一節にこういうことが書いてある。「政府としては、事件真相を徹底的に解明することが、本件に関する国民疑惑に応え、政治行政に対する国民信頼を回復する唯一の道である」と書いてある。これを文字どおり読みますと、ほかに方法はないんだ、政治行政に対する国民信頼を回復するただ一つの道である、それは事件を徹底的に解明することだ、こういうふうに冒頭に書いてあります。これは簡単に真意を、次がまだありますから、時間がなくなると困りますので、もう一遍総理考え方を。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま、これだけの国民的な不信疑惑というものが巻き起こっているのですから、これは最近にないですね、いろいろな疑獄事件があったけれども。やはりこれだけ広範な国民が長期にわたって、人のうわさも七十五日というんじゃないんですね、これだけの関心を持っておる、この真相究明することが政治行政に対する信頼を回復する。いまこれをうやむやにして、ほかのいろいろないいことをやっても、不信というものは払拭できないでしょうね。だから、いまはこの問題を解決、究明をすることが、日本政治行政に対する信頼を取り戻す道であるという認識は、私は誤っていないと思う。
  13. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 こういう前提について、総理はしばしば今日までいろいろな場面でそういう決意を表明されておりますが、総理も耳に入っておると思いますけれども、総理姿勢はだんだん後退を続けておる、後退しておるということが……(「そうだ、そのとおり」と呼ぶ者あり)静かにしてください。これは野党諸君ももちろんでありますけれども、新聞その他、ほとんどがそういう意見を出しておる。また、国民の多くの人もそういう感じを持っておるのじゃないかと思います。総理自身はそういう考えを持っておられないと思うのです。そういう意識をしておられない。そこに問題がある。国民信頼協力を得るためには理解がなければならないという意味で私は聞いておるのですけれども、理解されておらないということが、いま、野党諸君はもちろんでありますが、一般に、総理後退後退を重ねておる。私がいままで総理決意を改めて聞きましたのは、そうおっしゃるけれども、たとえば私がいま中間報告を一々引いて聞いておるのですから、中間報告を見て——もちろん、これはまだ児玉ルート云々とありますから、それはわからないものはいま一生懸命やっておられますが、この中間報告では、いわゆる丸紅ルート全日空ルートというものは解明されましたという報告です。そこまではそうなっておるのに、それにしては、いまおっしゃった唯一の道であるとか、こういうことを言われたのと余りにギャップが多過ぎるという感じを持っております。そういうところに後退という意味国民の間にあるのじゃないかということです。私も、総理の気持ちは後退しているとは思いませんよ。また、総理自身後退しておるなんという意識はないと思うけれども、そういう感じを受けておること、これは信頼を受けておらないということにつながると私は思います。  そこで、私はこう思うのです。現代というものはムードフィーリングで動く時代のように思います。このムードフィーリングだけでやっておったら、事を非常に誤る、こういうことを私は感じておるのです。言葉を使いますけれども、言葉意味がよくわからない、また説明をしない。でありますから、ムードに合わせるような言葉を言っておると、後で具体的な問題になったときに非常に違った結果が出てくる。たとえを引いては恐縮ですけれども、東京都の美濃部さんが知事選挙に立つとき、その後も、物価美濃部物価美濃部。何か、物価美濃部と言うと、物価が全部鎮静する……(「話が違うよ」と呼び、その他発言する者あり)ちょっと静かに。そういうふうに、都民はほとんど何か物価が下がってしまうような、そのムードというものをつくった。それで下がらなかった。東京都政が非常に問題になった。これは一つ例を出しておる。  だから、三木総理言葉はきれいなんです。いま申し上げましたような非常な決意を表明されておりますけれども、そのとおりに出てきておらないというところに国民不信感がある。そこで、私は最初から、民主政治云々ということを総理がしばしば言われたのを引き合いに出して改めて聞いているのは、そこなんです。そういうふうに受け取れるような——これが唯一の道だ、日本致命傷になるとおっしゃるけれども、だんだん出てくるものは国民には一向よくわからないというようなかっこうになっておるところに、信頼せいと言ってもなかなか信頼できないという、これは民主政治にとってはゆゆしいことであると思いますから、改めて聞いておくわけであります。  そこでもう一つ総理はよく言われておるのでありますが、徹底的解明、これは衆議院の議決でもそうなっております。また、議長裁定各党申し合わせもそうなっております。徹底解明徹底究明、こういうことも各方面でしばしば繰り返されておる。この言葉を、これは普通使うのですよ。使うのですが、徹底解明というものはとことんまで解き明かすということです。徹底究明とことんまできわめて明かす、こういうことだと思うのです。それはだれに明かすということですか。それを一つだけ聞いておきたい。
  14. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初の、後退ですが、私はいささかも後退していないのです。私自身はそんな後退する意思はないのです。これは初めから私が、要するに、国会決議を受けたにしても、大統領への書簡、あの書簡というものがアメリカから資料が入ってきた大きな原因一つですね。それはその後のいろいろな報道を見てもそうですよ。そんなに中途半端でこれをしようというのだったら、あんな手紙は書きませんよ。国会決議をそのまま送り届けたらいいのですよ。そして、資料をして、検察に対しても何らの、稻葉法務大臣も私も政治的介入はしない、検察はやはり厳正にやれということで、やることはやっているじゃないですか。  そこで、いわゆる後退と言われる原因はこうだと私は思うのです。後で瀬戸山君から御質問があると思うけれども、いわゆる国会の言う灰色高官の氏名を皆国民の前に中間報告で明らかにしなかった。それまでは何も後退ということは言われなかったわけです。あれから後退というふうな声が出たわけだと思うのです。それは後で説明をいたしますが、私はいささかもこれを後退して——何のために後退する必要があるのですか。それはそういう必要はないのですよ。しかし、私自身としても、やはり総理大臣といえども、これはひとつの日本の諸法規を踏まえて総理大臣としての権限を行使しなければならぬという限界を持っている。その限界の中においてできるだけのことは、やはり真相を明らかにしたいと私は願っておるのですよ。私自身国民理解協力がなければ民主主義は成り立たないことも承知していますから、そういうことで私は隠すような意識は全然ありませんよ。しかし、私自身にも限界がある。その限界ぎりぎりの点で、私自身として国民真相を知りたいという要望にこたえたい。これは事件が起こってから今日までいささかも変化はないということでございます。
  15. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 私は後退しておる意識はないとさつき言っておるのです。しかし、ずっと前言われたことといま言われておることと、出ておることがややギャップがあるという感じ世間が持っておる。これではいけないのじゃないかということを言っておる。  もう時間がありませんから、本来ならば……(「やれよ」と呼ぶ者あり)ちょっと待ってください。もう一つ、いまも言われましたけれども、政治的責任あるいは道義的責任、これもしばしば各方面で使われておる。総理は一体どういうものを道義的責任、あるいは政治家なり公務員というものがどういうことが道義的責任政治的責任に当たるのか。総理のは少し長過ぎる、言葉だけでなくて、明確に言ってみてください。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 世間考えておる一つの常識があります。そういうものを超えて、政治家の言動というものが、何か自分目的のためには手段を選ばないという行為は、それは道義的にやはり批判を呼ぶでしょう。それからまた、政治的には、そういう正常な手段ではなしに、何か不正なことで政治が動かされたのじゃないか、こういうふうな疑惑を持たれるということは、やはり政治的な道義的な責任ということでしょうね。とにかく、政治家というものは刑事上の責任ということではないのですから、国民から疑惑を受けるということに対して、やはりそれば責任感じなければならぬと思います。
  17. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 一点だけ。たくさんありますけれども、あと塩崎君に譲ります。  そういう抽象的なことではなかなか国民理解ができないのですよ。  具体的に聞きましょう。この中間報告に、十三名とか数がどうだこうだと言っております。盆暮れにあいさつをもらった、あるいはせんべつをもらった、政治献金、ちょっと私も理解がまだできないのですけれども、そういう人々の中で合わせて二十八回、それから最低百万、最高千五百五十万、それを明らかにすると何かぐあいが悪いというのはどういうことですか。これは政治的責任道義的責任があるかないかという判断に大きな材料になりますから。これは稻葉法務大臣で結構です。
  18. 稻葉修

    稻葉国務大臣 政治的道義的責任判定者皆さんですけれども、私どもの方は法務、検察ですけれども、せっかくのお問い合わせですから、私は法務大臣立場をしばらく離れて、一国会議員として、政治家として、皆さん方と同じような立場に立って常識的に申し上げれば、私の中間報告にも出ているとおり、「ロッキード社から流入した金員そのもの授受はあるが、証拠上職務に関する対価であることが認定できない」それで収賄罪成立は認められないけれども、「右金員授受趣旨ロッキード社航空機売り込みと関連があると認められるもの」こういうのはやはり道義的政治的責任があるのではないかな、同じ政治家立場として、自分もこんなことをやってはいかぬな、こういうように思いますね。  次は、「ロッキード社から流入した金員そのもの授受はあるが、請託の事実が認められないため単純収賄罪となり、三年の公訴時効が完成している」こういうものも、これは刑事責任はないけれども、政治的道義的責任はありそうなものじゃないか、こんなふうに思いますね。  それから、さっきあなたがお挙げになった、九十ユニットが簿外資金に入って「そのうち合計五千七百五十万円を同四十七年十一月から同五十年九月までの間前後二十八回にわたり合計十三名の国会議員に贈っていたことが認められた。この点について右金員授受趣旨を捜査した結果、国会議員職務に関する対価であることが認定できないため収賄罪成立は認められない。」これはどういう趣旨かと言えば、政治献金海外出張せんべつ、中元、歳暮、そういうものですから、これまで道義的政治的責任があるということになりますと、ふだんのそういうものにみんな広がっていっちゃって限りがないように私は思います。
  19. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 報告書だけ見ると、ちょっとわかりにくいところがある。というのは、あれは全日空若狭云々らが丸紅と相談して、アメリカロッキード社コーチャンに相談して、コーチャンはクラッターに指示をして、そして金を出しておる。これは全部ではありませんが、その金の中から十三人か何人かの人にやった。いま言ったような項目で、最高一千五百五十万。その十三人に、何のかかわりがあって、こういう人にそれだけのものをやらなければならぬのか、ロッキード社丸紅全日空と相談してもらった金をこういう人にやらなければならぬのかが、この報告書だけでは率直に言って理解できないのです。  そしてもう一つ。もう時間がありません、少しオーバーしましたが、十三人に仮にせんべつ幾ら云々というものを出して——よくいま法務省法務省検察当局と言われましたけれども、きょうは検察当局の問題をわれわれは議論しているのではありません。政府中間報告政府姿勢考え方をいまただしておるのです。政治の問題なんです。  そこで、これを仮に公にすると、人権とか捜査の機密とかよく言われますけれども、一体人権に害があるのですか。この人は幾らせんべつをもらいました、あるいは旅費をもらっておりました、応援してもらった、政治献金がありました、これは人権関係があるかどうか、この点だけ聞いておきます。
  20. 稻葉修

    稻葉国務大臣 人権関係があると私は思います。
  21. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 それでは、あと塩崎君に。
  22. 田中伊三次

  23. 塩崎潤

    塩崎委員 ただいま瀬戸山理事から、大変次元の高い政治、道義的な観点からの御質問がございました。いわゆる灰色高官の問題にまで及んだわけでございますが、私は少し角度を変えまして、具体的な事例から、中間報告の焦点でございます灰色高官の問題について触れてみたいと思うわけでございます。  その具体的な事例と申しますのは、中間報告の発表された十月十五日の翌日の十六日、山形ホテル稻葉法務大臣が記者会見されましたあの記事でございます。総理、これは灰色高官をどう考えるかという問題ですから、眠らないでよく聞いていただきたいと思います。そしてこれは真意をぜひともお伺いしたいのです。こんなことが書いてあります。稻葉法務大臣は、ロッキード特別委員会の「中間報告質疑で明らかにされた灰色高官十四人」、十四人と言っておりますね。「十四人について、正確には十三人だと三十分の間に三回繰り返した。」「法相が灰色高官の実数を示したのはこれが初めてである。灰色高官十三人の内訳は検察当局が取り調べた国会議員十七人のうち、逮捕、起訴した三人と金銭授受のなかった一人を除く十三人だと説明している。」新聞記事でございますから、多分に法務大臣真意を伝えてないと私は思うのです。先ほど、全日空ルートはどうもいわゆる灰色高官でないような御発言がございましたので、この新聞記事は、よほど法務大臣真意を聞かないと、世の中の人に誤解を与えるのじゃないでしょうか。  そこで、まずその前に、議論の前提となる数字なんです。このことは中間報告信頼性の問題に関係します。それからもう一つは、まだまだ中間報告に対する議論が不十分なんです。そして三木総理は、灰色高官の基準は国会に任すと言っておられるわけですから、もう少しこの問題はここで議論すべきだと私は思いますから御質問するのです。  そこで、まずいわゆる——いわゆるなんです。いわゆる灰色高官の数の問題でございます。当初は、法務大臣御指摘のように、取り調べた国会議員の数、十七人、こういう中間報告がありますね。したがって、そのうちから起訴された三人を除きますと十四人、これがいわゆる——いわゆるですよ、灰色高官という言葉は問題でございますが、十四人が灰色高官と私も思った。しかし、いま金銭授受のない人が一人いたから十三人だと言われたのですが、金銭授受がなかった人を取り調べたなんということは、私は一つ報告で聞かなかったのです。この間の報告にありませんでしたね。中間報告の中にないのです。しかし、法務大臣は、法律解釈はさすがに法学者だから大したものだと私は思うのです。私は、法律解釈は法務大臣の足元にとても及びませんけれども、もう一遍この数字を私は検算してみたら、どうも十三人じゃなくて十二人じゃないかというふうに私の算術ではなるのですが、この点をどう考えるか。つまり、この間の論議では、三十ユニットが五人、全日空ルートが十三人、計十八人、こういう報告がありますね。ところが、口頭で安原刑事局長が、そのうちにオーバーラップした、重複した者が三人あると言われる。そうすると、差し引き十五人になる。ところが、起訴された者が三人おりますから十二人ということになるのですがね、私の計算では。しかし、きょうの朝日新聞になると、もう法務大臣の方が偉いものですから、いまだに十三人となっている。この数字は、人数を出し、これを類型的に考えていくというようなことを言われておりますから、これは大変なことなんですよ。ひとつこれは法務大臣から御説明をいただきたいのです。
  24. 稻葉修

    稻葉国務大臣 結論から申し上げます。あなたはさすがに計算の大家で、そのとおりです。  十七名を調べました。そのうち起訴された者三名、あと十四名、これ全部灰色高官なんて新聞に書いてあるけれども、それはだめなんです。十四名について一部の新聞がすべて灰色高官扱いされておることを知って、その中には金の授受とは関係のない事項について取り調べた国会議員も含まれていることを明らかにしたのです。そしてそれは、なお検察当局が参考人として取り調べた十四名の国会議員のうち二名は、金の授受関係ない背景事情等の参考人として事情聴取をしたものでありますから、残りの十二名の国会議員が金の授受関係があるということに相なります。しかし、それがすべて灰色だとは、新聞はそう書くかもしれぬけれども、こっちはそうは思っていない。
  25. 塩崎潤

    塩崎委員 いまの御説明で私もわかりました。恐らく山形ホテルでは、新聞にもありましたが、資料を持っていなかったから、たしか一人であったというふうに少し条件をつけながら、さすが法学博士ですからうまい説明はついておるのです。しかし、その中に金銭を受け取らなかったのは一人か二人か、大変なことなんだと思うのですね。そうでしょう、総理大臣。これはやはり灰色という霧がすぱっとかぶせられるのですから、金銭授受関係なかったのは、一人じゃなくて、二人なんですね。もう一遍念を押したい。
  26. 稻葉修

    稻葉国務大臣 新聞記者会見の前に、刑事局長から電話がありまして、十四人というのは間違いなんだ、こういうことですな。そして、十三人かと言ったら、まあ十三人というような、聞き間違いか知らぬけれども、そういうようなことだったものですから、十四人は灰色ということではないけれども、十四人という数字は新聞の間違いで、十三人だということだけちょっと言ったのです。あとは、こっちは灰色を決めるのじゃないんだということを強調して、三遍も四回も繰り返しました。十四人が間違いで十三人だということば、一回しか言っていないんだね。それも、いまあなたの質問で明らかになったように、十二というふうに訂正いたします。
  27. 塩崎潤

    塩崎委員 中間報告の中に、金銭授受がなくて取り調べを受けた人の報告一つもありませんから、大変大事な発言でございますし、私どもは、これから中間報告についての類型についても時間をかけて本当に真剣に研究しなければいかぬと思うのです。そして基準の問題に触れなければならぬと思うのですが、そこで、総理大臣、どうなんですかね、この大事ないわゆる灰色高官、しかし、この基準は何が灰色高官であり、どの人たちが国会の秘密会で報告さるべきかということは、大変大事なことなんでしょう。ところが、法務大臣中間報告でしゃべられないようなことを旅先でしゃべられておるのはどうなんですかね。これはやはりここで論議していただく。もう政府は、いわゆる灰色高官の基準をやる気持ちは全然ないのでしょう。総理大臣、どうなんですか。
  28. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私がここでしゃべられないようなことを旅先でしゃべっているという御発言ですが、そういうことはございません。
  29. 塩崎潤

    塩崎委員 総理大臣、どうなんですか、この灰色高官の定義なんというのは政府で決める気持ちはないのでしょう。ですから、ここで議論を願うことにして、政府は本当に慎重に取り扱い、余り発言されない方がいいのじゃないでしょうか。どうなんです、もう政府は、刑訴法四十七条ただし書きの適用は国会に任しておるのでしょう。まだ、総理大臣の権限で自分で決めるのだ、こう言われるのですか。そんなことはやれるはずがないと思う。刑訴法四十七条の適用は大変な新判例なんです。これは三木総理にして初めてやられたことなんですから、国会に全部任したらどうですか。総理大臣、どうですか。
  30. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私がしばしば言っているのは、だれが灰色でどうだ、そういう問題の仕分けを政府自身がすることは、できもしませんし、またすることは将来に非常な弊害を残しますね。政治的にこれをもし利用しようというような者が出たら大変なことになりますから、議長裁定にもあるように、政治的道義的責任調査はやはり国会でやることとして、それで国会政府は最善の協力をせよというあの線が政府協力としては妥当である、こういうことで、資料は出しますと私は申しておるわけでございます。
  31. 塩崎潤

    塩崎委員 時間がございませんので、最後の質問総理大臣にいたしたいと思います。  今度は灰色の問題、大変大事な問題でございますが、同時に、灰色という霧をばさっとかぶされる、しかし、それは全然身に覚えがない、このシロの証明、これをどうするかという問題なんです。私はロッキード事件ぐらいマスコミに取り上げられた問題はないと思うのです。それがその過程においていろいろと憶測の記事を生んできた。それがまた総選挙の前であるがために、対立候補あたりから実名まで出されていわゆる灰色高官であると言われて大変いま困惑されておる。この事例御存じでしょう、総理大臣。しかし、総理大臣議会制民主主義という言葉を盛んに乱発されておる。ときどきわからぬことがある。しかし、確かに総理大臣は議会の子だと私は思うのですが、議会制民主主義というのはやはり選挙によって成り立っておるのです。それが、このような憶測記事、そしてそれを利用した選挙妨害的な記事によって大変困っておられる方がおる。灰色高官の公表前に何らかの形でそのことを考えられないかどうか。刑訴四十七条は、御承知のように、公表する場合は、被疑者の名誉に関する場合には進んで検察庁は公表しておるのですよ。それを推し進めて、確かに被疑者ではないのだけれども、こういった問題は、この刑訴四十七条の趣旨検察庁が進んで被疑者の名誉のために必要な場合には公表していったこれまでの先例から見たら、灰色高官の基準とかあるいは範囲を明らかにする前にひとつ救うのが、議会の子である三木総理考え方じゃないでしょうか。私は、これはぜひとも三木総理に勇断を持って片づけていただきたいのです。ここで刑事局長を呼んでやったところで、だれを調べたかだれを調べなかったかを言えないということで、かえってこの間は紛議を招いたわけでございます。そして調べられなかった人なら調べられなかったことを言ったらいいじゃないか、それを信頼するかしないかは別の問題ですと言ったものですから、かえってこんがらがってきた。これはひとつ勇断を持って、中間報告というような勇敢な、本当に新しい事例を開いた三木総理でしょう、新しい事例として白色の証明を何らかの形で考えられるかどうかを、ひとつこの際大きな気持ちで御決意を聞きたいのです。
  32. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はこういうふうに思うのですね。国政調査権というものは、これはやっぱり健全に育てていくことが必要ですね。これで妙などろ仕合いみたいになってきて国政調査権の権威というのが失われることはまことに残念だ。そういう意味で、いま言われたような選挙区でいろいろな妨害行為がやられるということに対して、これは各政党が自制すべきだと思いますね。そういう意味から、国政調査権を権威のあるものとして育てていくためには、やはりその間この問題に対して非常な節度のある行動というものが要求されるでしょうね。  ただ、しかし、いま御指摘のように、皆一人一人に対してこれは全然関係がなかったということを私の方から言うということは、それは適当でないと私は思います。いろいろいま責任をこの問題で追及されておる方はごくわずかな方でしょう。だから、国会の中で——いま刑事的な責任というものはもう政治的配慮というものは一切加えないでやれるだけのことはやっているですよね。問題は政治的道義的責任ということになるわけですから、それを国会において一つの範囲とか基準とかいうものをお決め願う、そうすればその資料は出しましょうと言っているのですからね。そうすれば、そこにおいてほかの者は何らロッキード事件関係がないということは明らかでございますから、そういう点でそういう問題をひとつ促進をさせていただきたいと私は思うのです。
  33. 塩崎潤

    塩崎委員 もう最後でございますが、総理、各党の自粛なんという問題じゃないのです。もうすでに起こった問題をどう救済するかの問題。わずか十二人のいわゆる灰色高官法務大臣に言わすと、十二人は灰色高官じゃないのだ、四人、五人ぐらいが灰色高官というぐらいのことを言っておられる。それならそれでひとつ白色の証明で困っておる人を秘密会で真っ先に救うようなことを考えてください。もう抽象論はいいのですから、何かひとつ灰色高官の基準とか氏名の前に白色の証明の問題を考えていただきたいと思います。
  34. 稻葉修

    稻葉国務大臣 いまの問題です。重要なことですからね。そのことである新聞社が法務大臣室へ来られました。これはシロなんですかクロなんですか、こういうことを言いますから、法務大臣として、そんなことは困る、一々議員についてこれはシロだかクロだかと言うことは困る、しかし、私のところでは煙も、においも、気もないね、こういうことだけは言うておきました。
  35. 田中伊三次

  36. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、去る十五日にここで報告せられたいわゆる中間報告、これは政府が、すなわち三木総理責任のもとで出されたものであると思います。ところが、先ほども話がありましたように、総理事件当初から国民に、政治生命をかけて真相徹底究明に当たるといったようなこと、あるいは民主主義政治を守るためにといったようなことを言ってこられました。しかし、その後総理の言動を見ておりますと、先ほども指摘があったように、やっぱり一歩一歩後退の感を受けておるのは私だけではない。  そこで、総理、先日のこの報告国民が果たして納得をしておると考えられますか、また、政治に対する国民不信感を除くことがこれでできると考えておられますか、まずそれからお伺いいたします。
  37. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 最初の点は、私はもう後退はあり得ないし、また、私が後退をするということは、これは政治家としてのやはり大変な大きな背信行為でございますから、私には後退はないのだ。ただ、しかし、私自身にもやれることには一応の限界があるということだけでしょうね。だから、そういう点がいろいろな点で私を後退だという印象を与えることの結果になったのかもしれぬが、これは説明の足らない点もありますからね、今後十分に説明をしてまいりたいと思います。私自身にはもういささかも後退はないんだということでございます。  それから、その中間報告は、私自身も法務省の中間報告の内容というのは、説明を受けて了承を与えたわけでございますから、私自身責任を持つべきものでございますが、しかし、それがその後、中間報告によって国民の間からいろんな不満が起こっておることは私もよく承知しておるのです。それは端的に言えば、いわゆる氏名ですね、人数だけは言ったけれども、それは具体的にだれなんだということのやはり氏名を知りたいということでしょうね。これに対してこたえてないという、ほかにもありますけれども、国民から見れば最大の、不満というものの一番の中心点だと思います。これに対してはいろいろ説明をしておるのですが、まだ十分な御納得をいただいてないのは、あらゆる場面に私も十分説明をして、御納得のいくように努めなければならぬ。どうも説明というものが十分理解を得るまでに至ってないということについては、私自身も反省をいたしておる次第でございます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 総理が、私は後退していないとあんたが言ったってしょうがないんだ。国民がそのように感じておることは事実です。ずばり言うなら、言行不一致。口では適当なことを言っておるが何もやらぬじゃないか、こういうことなんですよ。しかもこの報告書、これは十五日に横路委員も指摘いたしておりますが、これは結局は捜査処理報告ですよ。何ら政府として政治報告というか、行政府から立法府に対する報告ではありませんよ、これは。しかも腐敗した金銭の流れ、それによって行政がどのようにゆがめられてきたのか、そういうことに対しては一言も触れられていない。これで政治報告と言えますか。どうでしょう。
  39. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 稻葉法務大臣報告は、この事件が起こってきて、いままで政府はどういうことをやってきたのかという経過を報告して、そして金の流れというものを追及しましたらこういう結果でございましたという、法務当局としていままでの捜査の活動というものを報告したわけでございますから、そういう意味で、私は報告としてはぎりぎりの基準だと思います。田中君は非常に法律にお詳しい方ですが、こういう不起訴の捜査の内容について一応明らかにしたわけです、こういうことであった。いままでこんなことがあったでしょうか。異例のことであります。いままでないことなんです。それは、いままではお考えになってもこういうことはないことですよ。これは異例の、一つ政府としてはできるだけの、ぎりぎりいっぱいの一われわれは議長の裁定にもあるように刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえてという制約を受けておるわけです。その中でこういうことは従来にかつてないんですから。やはりかつてこういうことはない。こういうぎりぎりの、政府として一つの、刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえてやったわけですからね。それはいろいろな御不満はあろうけれども、それだけの——これを中途半ばに終わろうというならば、こんなことはしませんよ。こんな、いままで異例のことだもの。そういうことはないでしょう、いままで。そういうことまでしてしようということは、この中に政府姿勢というものがあらわれておるという点は、これは私は御理解を願いたいと思うわけでございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 盛んに異例、異例とおっしゃるが、何が異例なんです。この事件自体が異例なんですよ。したがって、あなたは何とかかんとかおっしゃいましたが、この報告は捜査経過の報告にすぎないんですよ。政府として政治的な報告国会にしたものではありません。  そこで、具体的に二、三お伺いいたしますが、総理は、さきに参議院の外務委員会で、五月二十一日ですか、解散は事件解明の後に行う。これは捜査が被疑者の病気等々でおくれておることもわかります。しかし、まず全貌を明らかにする、その時点において。さようならきょうのこの時点において。そうして国民が主権者たる立場で投票するときの参考資料というか、意思決定の資料政府はすべてを出す義務があると思います。また、あなたもそういうようなことを言ってきた。どうですか。
  41. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、その速記録も読んでおりませんが、何もかももういままで捜査したものを全部国民の前に明らかにするという発言は、私はどこにもしてないわけでございます。これは繰り返し、議長裁定の、ということをもうあらゆる場面で言いまして、そうして裁定の線に沿うて最大の協力をしたいということを述べてきたわけで、そういうものを全然枠も何もなしに全部、捜査をした内容を国民の前に明らかにするということは、私は考えてもいませんし、そういうことはすべきでもないと思っておりますから、言ったことはないのです。  これは私はこういうふうに考えておるわけです。まあ、行政府としてはやはり検察というものがある。準司法的な機関でありますけれども、これは何ら手心を加えることなく、徹底的にこの事件の解明をしておるのですね。そうして、児玉の線というものがまだ解明されてないということですね。こういうふうな児玉の線も解明されれば、総理大臣としてやはり報告責任は、田中君の言われるようにあると思いますよ。これは全部の捜査が終了したときにそういうふうな報告はあってしかるべきだと私は思っておるわけです。ところが、やはりそれは事件の全容というものが明らかにされないと、この事件全体というものに対して、いろいろと私自身この問題に対して、真相はこうだった、こういう性格のものだったということを言うことは私はできません、だから、いまどうしても政府とすれば、捜査の過程、捜査の結果、そういうふうなものを御報告するということより仕方がないですね。  ただしかし、それではいま田中君の御指摘のような政治的道義的な責任の追及という問題があるわけですから、この問題はもう個人名も含めて資料はお出しをいたしますから、どうか国会において、一つのいわゆる灰色と国会が言われておる、その国会の言う灰色というものはこういう基準、こういう範囲のものを言うんだということをお決めいただければ、これに対して協力をいたします、こう言っているんですから、政府としては最大限度——いままでそんなことはないですから、いままでそんなことありませんよ。そういうことのないこともして国政調査権に協力をいたしますよと言うんですから。それはいろいろと次々にこのこと、このことというような御不満もあるかもしれませんが、やはり一つの法治国家として、われわれとしても法律を超えた存在ではあり得ないわけですから、御理解のある国会の方々の御理解を得たいと思うわけでございます。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、あなたはいつも同じようなことを繰り返しておりますが、中心というか、要点はぼけておるのですよ。わざとぼかしておる。国会がお決めになれば云々と、そういうことでむしろあなたは両院議長裁定の陰に隠れて、この裁定をあなたは逆に利用して、そういうことを言っておる。しかし、この裁定のどこに行政府が、たとえば氏名の公表をしちゃいけないという個所が出てきますか。出てくる余地がありますか。  そこで、続けてお伺いしますが、これもひとつ答弁願いますよ。  あなたはきのう、衆議院決算委員会で、いわゆる灰色というか、問題の人の氏名は知っておると、こう言った。そこで、その氏名をあなたはいつ法務当局あるいは法務大臣から報告を受けられたのか。それから、十七名を調べた、こういうことですが、この十七名をしぼって十二名というようなことにもなっておるようですけれども、これらの人は、起訴された人は三名、これは起訴事実を認めたのかどうか。あるいは、その他の人はそういう容疑というか、そういう事実行為を認めたのかどうか。さらに、この十七名のうち、いま十二名とか十三名とか言われておるが、これらの人たちはすべて検察庁で事情聴取というか、取り調べを受けたのかどうか。全員、いまあの人であろうと言われておる人も含めて、そういうことを否定しておるんですよ。そういう点について、はっきりとした御答弁をいただいて、明らかにしていただきたいと思います。
  43. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私に対しての前段のお答えをいたしますが、この議長裁定というものは私はかなり重く見るわけです。これは両院の議長がそろって、そして各党首が党首会談を伴ったものでありまして、全党が参加したわけですから、これを私は軽く見るわけにはいかない。そして、四十日にわたる国会の紛糾が正常化したのですから、これはやはり今後国会を運営する上において一つのわれわれが守るべきルールであると考えておるわけです。その議長裁定の中においても政治的道義的責任の有無については国会がこれは調査するものとしてと書いてあるわけですから、私はそれは国会政治的道義的責任というものがあると思うものを政府が出せということは非常にわかりやすい話ですけれども、政府はやはり捜査当局というものを指揮監督しておるわけですね。その資料というものを基礎にして、国会議員道義的責任があるとかないとかいうことを政府が言いますことは適当でないので、やはり国会議員の規律に関係することですから、これは国会の方でお決めを願えれば、これに対して氏名までも含めて資料を出しますと言うんですから、政府としては最大限度の協力であって、議長の裁定を盾にして私が隠れておるということは、少し独断に過ぎるのでないでしょうか。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 具体的な点……。
  45. 稻葉修

    稻葉国務大臣 十七名を取り調べました。そのうちダブっている者がいろいろありますね。延べじゃないです、実数十七名でございますね。そうしていろいろやったが、金銭授受があったけれども、その趣旨はこうであったとか、こうであったとかいうことをこの間分類上申し上げました。  そして、本人が否認しているのか、認めているのかというようなお尋ねですが、そういうことを申し上げるのは、やっぱり公訴の維持上支障がありますので、配慮すべきことでありますから、申し上げかねるのでございます。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、あなたはいろいろとこう長い長い答弁でごまかそうとしていますが、端的にお答え願いたいのですよ。氏名を知っておるとあなたは言ったのでしょう。その氏名をいつ、だれから聞いたのか。
  47. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは稻葉法務大臣から中間報告の前に、私は何も書類で受けたわけじゃないのですが、口頭の説明を受けたわけでございますが、そういう報告はございます。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 いつですか。
  49. 稻葉修

    稻葉国務大臣 何月何日という日にちははっきり覚えておりませんけれども、中間報告をする前、二、三日前だというふうに記憶しております。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、これはむしろ自民党総裁としての総理と言った方がいいと思うのですが、あなたは国会で合意ができたならばそれに従って氏名を含む資料を公表すると言っている。秘密会とかどうとかおっしゃっているが、それは別としても。だが、いわゆる灰色の範囲について各党案が出ております。野党案と自民党案には大きな隔たりがある。そのまず第一点は、自民党案には「依頼を受け」云々とあるのですね。それからもう一つは、いわゆる献金は含まないとあるのですね。これがある限り、合意できたらと言うが、合意はできないのですよ。それとも、この二点について自民党自体が軌道修正するように、あなた、総裁として指導するのかどうか。そうでなければ、これは結局は数で押し通す、国会で云々ということは、総理、とりもなおさず自民党任せということじゃないでしょうか。自民党任せ、そういうことになりませんか。  さらに、もう一つ一緒にお伺いしますが、あなたはこの二月二十四日にフォード大統領親書を出した。その中で「私は、関係者の氏名があればそれを含めて、すべての関係資料を明らかにすることの方が、日本政治のためにも、ひいては、永い将来にわたる日米関係のためにもよいと考える。」と書いておられるのですよ。氏名を公表することが、永い将来にわたって日米間のことも含めて日本政治をよくすることに大きな関係というか、あなたの文章をもってすれば、これはもうぜひ必要だ、こういうことになるのですが、その点はどうですか。
  51. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 前段の方、これはもう特別委員会田中委員長を中心として各党が、これはやはり国会の意思とするためには一本にまとめる必要がございますから、十分御相談を願いたいわけでございます。国会の意思をまとめるということで、自民党も協力をいたす所存でございます。  また、第二番目の方は、フォード大統領はそれだからこそ、あれはもう部外へ出してはいけないという書類でございますが、全部くれたわけですから、これは何ら隠していないわけですよ。ああいう制限はつきましたけれども、日本の捜査当局に全部そのまま——あれは何にも隠していないのですよ、公にする方がいい。その公は、田中君の場合はやはり国民の前に全部明らかにということでしょうけれども、向こうからすれば第三者に渡るということはある意味において公にもなるわけですからね、捜査当局であっても。第三者に渡してはいかぬというのが地方裁判所の一つの決定だったのですよ。それを、日本ですから、よその国にこれを渡したわけだ。しかし、それは国民に全部明らかにせよという御希望には沿うてないけれども、あの資料を何らの修正を加えないで日本にそのまま渡されたということは、私の意図も、それは一〇〇%でないにしても、相当に聞き入れられた結果ああいうことになったものだと私は評価をするわけでございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 ならば、さしあたり、取り調べたという十七名を明らかにしなさい。それは国会が合意した場合は云々——それは、先ほど言ったように、与党と野党との間に大きな隔たりがあるのです、灰色高官の範囲について。あなた自体がそれをもっと軌道を修正するように指導しない限り、一致することはないわけですよ。それを、国会が一致して要求があればと言うことは、先ほども言ったように、自民党任せであり、数の力でロッキードを押し隠そうとする態度である。それが一点。  さらに、もう一つ進めますが、この報告によると、九十ユニット、全日空関係、それで十三人ということになっていますね。この人たちには政治的道義的の責任があると思われますか、ないと思われますか。総理の見解を伺います。
  53. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、いま言ったように、政府といいますか、行政府政治的道義的責任というものの仕分けをすること、これはこの権限を乱用したら大変なことになると思いますから、政治的道義的責任というものは国会でお決めを願いたいと言うのですから、あの法務大臣報告は恐らく、政治的道義的責任がありと見てああいう一つの人数を出したのではなくして、金の流れをずっと追跡しましたらこういうことでしたということで、それはあくまでも捜査当局が刑事上の責任を追及する意味において捜査した過程に出た名前であって、政治的道義的責任というものはこういうものだということを頭に入れて、そしてああいう報告を行ったものでは私はないと思います。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長からも注意をしていただきたいのですよ。もうばあっと窓口を広げるというか、そういうことで、抽象論で、一つも焦点が定まっていない答弁です。  そこで、それではお伺いしますが、このいわゆる十三名は政治的道義的責任があるとして報告したのではない、こういうことですね。あなたはそう思っているのですね、あなた自体は。その点はどうなんです。
  55. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 個人としていろいろな考えはありましょうけれども、やはりこの問題は私は国会で基準をお決めになって、(「おかしいよ」と呼び、その他発言する者あり)そしてこれによって報告をするということが適当で、それは十三人の名前をいろいろ説明を聞いてみても、単なるお中元であるとかあるいはまたいろいろなせんべつとかいうものに対して、これが政治的道義的という社会的な関心にもなっておりますから、そういうことに対しては疑問があると私は思っております。     〔「法務大臣の答弁は求めてない」と呼び、その他発言する者多し〕
  56. 田中伊三次

    田中委員長 まあ、まあ、政府が発言を求めておるんだから……。稻葉大臣。——稻葉大臣から一口。
  57. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私どもは、この灰色という文字が私どもの辞書にはないのです。ですからそれを灰色と思うかどうかということを法務大臣、それを監督する総理大臣立場で言うことは非常に越権じゃないですか、(「何が越権だ」と呼び、その他発言する者あり)政治的道義的責任の判断者は国会であるにもかかわらず、行政府がやるということは。そうして、個人としての意見はどうかと言えば、個人としては言いたくないと言うておる。おっしゃろうとおっしゃるまいと、それは自由じゃないでしょうか。どうでしょうか。(発言する者あり)行政府としては、道義裁判所じゃありませんからね、そんなことを判断したり、発表したりするわけにはいきません。これが道義責任者だということを発表するわけにはいきません。それは国会が判断権者だから国会がおやりなさい。それに対する協力はいたします。協力意味において、中間報告の中には……(発言する者あり)ちょっと中間報告をよく読んでください。あの中には政治的道義的責任の判断の足がかりになる材料が相当ありますよ。相当あるのです。     〔発言する者多し〕
  58. 田中伊三次

    田中委員長 ちょっとお静かに。  田中君に申し上げます。内閣総理大臣は、政治的道義的責任という問題は、議長裁定の条項に基づいて国会でおやりになるべきことであるということをおっしゃっているのですね。そこのところのどこがわからぬかを、もう一口重ねて御質問願います。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 もっと委員長らしい発言だと思ったら、そんなことですか。  灰色、いわゆる灰色の範囲、定義は国会が決めます。しかし、さしあたって、調べたという者十七名、起訴者が三名、あとが五名というようにしぼってくるわけですが、そうなってきて、その名前をなぜ言わないか。そういうことで、何もそのこと自体が灰色の範囲、定義を政府に決めろとは言っておりませんよ。自民党総裁として一体どうなんだ、国会で決めろ、決めろと言ったって、いまの自民党の態度では決まるはずがないのですよ。そういうことを含めて聞いているわけですよ。
  60. 田中伊三次

    田中委員長 三木総理、答えはずばりそのものを答えてくださいね。
  61. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 つまり、私がいろいろ捜査当局から報告を受けたことを一々全部、ここで知っておるものはみんな言えということは、私は無理である。ここはやはり総理大臣としてこのロッキード特別委員会に出席をしておるのですから、聞いたものはみんな言えと、まあ十三人の名前報告を受けたならば、十二名ですか、それを全部言えということは、それはやはり——そういうことは全部知っておることを言えということはやはり無理な注文だと思います。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 この十三名——きょうは十二名にしぼられましたが、この十二名の名前をとりあえず聞け、発表しろ、そういうことは五党国対委員長会談の合意であります。そのときに井出官房長官は、きょうここで総理に聞いてくれと言った。そういう官房長官の発言は、総理がここで明らかにするであろうということの期待の上に立って答えたものだと思うのですよ。それをなぜあなたはここで言えないのか。灰色高官は、定義は、こちらが決めます。では官房長官に来てもらいましょうか。委員長、官房長官に来てもらいましょう。
  63. 田中伊三次

    田中委員長 一応、大臣。     〔「法務大臣関係ないよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  64. 稻葉修

    稻葉国務大臣 ちょっと済みませんが、私に発言さしてください。(「十二名でなくて、十三名だと言うのでしょう」と呼ぶ者あり)それはいいのでしょう。それでなくて、いま総理が自由民主党と野党の方で基準に開きがあるから、それを歩み寄って縮めさせるために総裁としてリーダーシップをとって説得したらどうかという御趣旨の発言がありましたから、だから、それはこの中間報告をして、この中から、たくさん足がかりが私はあると思います。そこで、これを足がかりにして歩み寄って、そしてこれが基準だ、これが灰色だとわれわれは定義する、あるいは政治的道義的責任者はこういう範囲だ、その名前を出せ、こう言ってこられれば出しますと総理は言っておられるのですね。全然出さないとは言っておられないのですよ。ですから、相当な足がかりをこの中から取り出し得ると私は思います。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 足がかりを出しておると言われるが、これは足がかりにならないのだ。足がかりになるようなものを出してもらいたいということ。  それから、先ほど言ったように、官房長官は五党国対委員長会談のときに、きょうここで総理が明らかにするかのような、期待を持たせたのですよ。したがって、官房長官の出席を要求し、それまではちょっと質問を留保したいと思います。
  66. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 恐らく官房長官は、私が……(発言する者多し)ちょっと静かにしてくださいよ。そういうことで……(発言する者多し)恐らく官房長官は……(「恐らくじゃだめだ」と呼び、その他発言する者多し)官房長官は、その問題については総理が答えますと、こう言ったのでしょう。だから、それは私は、政府自身灰色高官というものをみずからこう仕分けをして発表すべきものではないと思っておりますから、国会の方でそれをお決め願えれば、政府資料を提供いたします。井出官房長官が来ても、それ以上のことは私は言えぬと思います。国会の方でお決め願えれば、その資料は提供をいたします。また、自民党に対しては、これはできるだけ与野党の間で一致点を見出すように、自民党自身協力をすることは申すまでもございません。
  67. 田中伊三次

    田中委員長 田中君、質問……(「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多し)委員長に方針をお任せ願います。——続行、続行。(発言する者多し)  それでは、暫時休憩をいたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後七時四十三分開議
  68. 田中伊三次

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中武夫君。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、委員会休憩後の国対委員長会談の結果を受け、先ほどの理事会の決定によって質問を続けます。  そこでまず第一にお伺いしたいことは、午前中の答弁で稻葉法務大臣は、全日空の九十ユニット関係者政治的道義的責任はないと言ったが、総理も同じように考えておられるのかどうか、お伺いします。
  70. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、こういうこの席で総理大臣として個人的見解を述べることは適当でないと思います。(「適当でないというのはどういうことだ」と呼ぶ者あり)いや、私はきょうは総理大臣として出席しておるわけですから……(「いや、だから法務大臣が言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)法務大臣のは、あの法務大臣の答弁は政府の見解ではありません。やはり個人の見解でございます。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、法務大臣の答弁したことは政府の見解ではない。そうすると、法務大臣の午前中の答弁は一体どういう意味なんです。と同時に、それを取り消すとか何かは別として、そうすると、明らかに閣内不統一じゃないですか。いや、個人としての見解を聞いておるのじゃないです。ここではあなたはあくまでも法務大臣ですよ。
  72. 稻葉修

    稻葉国務大臣 午前中、私は特にお断りして、個人的見解だけでもいいから述べろという質疑者の要求でしたから、私、それならば法務大臣として申し上げるのじゃありませんよというお断りをしつつ、皆さん方と同じ立場で個人的見解を述べるならば、どうもこういうところまで政治道義的責任をあれするのは、それは結局、決められるのは国会です、それは最初からそう言っているのです。それは結局そちらでお決めになることですけれども、あなた方と同じような一国会議員としての立場で判断を、私の判断を強いて言えと仰せられるならば申し上げますが、あれはどうも政治的道義的責任を追及するには少し他との公平も考えて適当じゃないんじゃないでしょうかね、こう申し上げたのでございまして、政府の見解を申し上げたわけではありませんから、総理大臣の言う、政府の見解ではない、あれはいわば個人の見解であるというのと合致しておると思うのでございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、しかし、それは質問者が個人の見解でもいいからと言ったからといって、ここで言われたことがあくまで個人だということなら、やはりおかしいのですよ。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)なぜですか。やはり法務大臣として答弁したことになるのですよ。しかも、総理の方針と法務大臣の方針が違っておれば、これは閣内不統一です。はっきりしてます。(稻葉国務大臣委員長、もう一度」と呼ぶ)いや。だから、あなたが午前中の見解を引っ込めるなら結構です。そうでなければ、あくまで追及します。
  74. 田中伊三次

    田中委員長 法務大臣、ちょっと御発言になるまでに……。  これは重要な場面ですから、なるべく取り消しておかれたら……。
  75. 稻葉修

    稻葉国務大臣 田中さん、特に御注意があるんですから、引っ込めますよ、それは。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 取り消しというか、引っ込めたので、これ以上深追いはいたしません。  そこで総理、お伺いしますが、総理の午前中の御答弁を聞いておると、結局、中間報告政府責任は終わった、あとはすべて国会次第というように受け取れる。したがって、公表の責任はすべて国会にあるのだといったような発言であって、それは責任国会に転嫁するものである。国会次第と言っても、午前中私が申しましたように、結局は、自民党が多数ですから、数の力で押し隠す、言うならば、やはり自民党任せだということになるわけでございますので、これは総理というよりか、総裁としてやはり自民党内の説得をしていただいて、そうして国会において合意に達するように努力を願いたいと思いますが、いかがですか。
  77. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この機会に、午前中の質疑応答で少し私の言葉の足りなかった点もあって誤解を与えましたから申し上げたいと思いますが、井出官房長官から四党の合意というものは私はよく承ったわけでございます。その中で一番重点を置かれておるのは、中間報告で人数については言ったけれども、名前を公表せよということ、また、マスコミの一部に名前を出されている議員の疑惑を晴らすためにも、この際名前を公表せよという強い意見もあることもよく承知しておるわけでございます。いま田中さんの御指摘のように、政党内閣でございますから、私は総理大臣であると同時に自民党総裁であるわけですから、ごもっともな点でございまして、自民党の総裁として、いわゆる灰色高官の範囲を国会で合意されることを私は願っておるわけで、そうすれば国会において道義的責任を追及される場合の調査の重要な資料になるわけですから、これが一日も早く合意が達成できることを願っておるのですから、自民党総裁として党内をまとめるために、私、誠心誠意努力をいたします。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 努力はせられたが、結局は説得が不調になったというか、合意ができなかった場合、その場合は結局、俗に言う灰色高官は全然明らかにならないまま終わるということなのか。また、総裁としてそのようなときにはどういうように考えておられるのか。おれは説得したのだがどうもうまくいかなかったから仕方がないのだということなのか、あるいは総理として、ある段階において公表に踏み切ることもあるのかどうか、お伺いします。
  79. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はただ、説得したけれどもだめだったということを言いたくはないと思っております。この場合に世間からこれだけの注目を浴びておる灰色高官というものが全然——国会一つの国政調査権の名のもとに名前を、国民はその人は一体だれなんだということを知りたがっているのですから、政府からも資料を出すし、それを一つの参考として国会で御調査を願わなければならぬわけですから、そういうことで国会の国政調査権のもとにおいて、そういう疑惑を持たれておる灰色高官というものが——資料ばかりでないですね、国会の国政調査権によって調査をされて、その結果を明らかにしないで総選挙に入ることはよくないと私は思っているのですよ。だから、そういうことで、私自身もただこの場のことの取りつくろいというのでなしに、そういうことが解明されることが望ましいと思っておりますから、実際に努力をしたいと思っておるわけでございます。ただしかし、与野党間で、どうか自分の主張が通らなければだめだということでなしに、これが大事な国政調査権というものが一つの大きな目的を達成して、これで国政調査権というものが一つ国会の機能として将来において非常に物を言うようにしたいものだと願うものですから、そういう点は各党の方で歩み寄って、どうか一本化をしていただきたいと願うわけでございます。自民党の方は、私も総裁として誠心誠意、皆の合意ができれば自民党を説得いたします。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 総裁として党内を説得して、できるだけ国会で各党が合意できるように努力をする。だが、その結果、不幸にして合意に達しなかった場合、あなたはいま選挙までに云々と言われました。したがって、その時期において合意が立たなかったときには、政府独自の見解で決断をすることもあるのかどうか、お伺いします。  なお、ここで言っておりますのは、われわれは二つに分けていますから、とりあえず中間報告で出た人ということと、それから灰色の点というか範囲というか、これは別ですから、それもお含みの上で。
  81. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 田中君はできなかった場合と言いますが、この場面が大事な国政調査権の一番大きな場面でしょうね。だから、どうか各党間でこの問題というものは一つにまとめる努力をしていただいたら——どうしてもこれがまとまらぬという場合、その仮定の場合を田中君御心配になるのはごもっともな点もございますが、どうかこの問題は、戦後最大の課題でもございますし、国政調査権として大いにこれが権威を示さなければならぬわけですから、最後まで御努力を願いたいわけでございます。  また、政府が公表せよということを言われますけれども、これはいままでにないことでしょう。弁護士の方もいらっしゃるけれども、不起訴の者に対して、これのある程度内容というものに対して国政調査権のもとで——いままでないですからね。これは将来において一つの先例になる可能性もありますから、私はこれは一つの立法府の長というものが、これがやはり捜査の——検察行政の一部であることは事実ですからね、その材料をもって代議士を皆クロだとかシロだとか言って行政府の長がやることは、非常にそれは将来においてそれを悪用する者が出てきたときに、私は悪用する気持ちはありませんよ、これは大変な、非常な弊害を伴いますから、政府自身がそういう区分けはしたくないわけです。だから、国会の方でしていただければ、個人名を含めて資料を出しますと言っているのですから、どうか国会の方で一それは議員の規律に関係——どこの国を見ても、イギリスでもアメリカでも皆議員のそういう問題については国会でやっているのですよ、国会で……(田中(武)委員「つまらぬことを言わずにきちっと答えてください」と呼ぶ)そういうことです。だから、いま私は、要するに、まとまらぬという前提でなしに、まとめるように御努力を願いたいということが私の努力でございます。私もできるだけの協力をいたします。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 イエスかノーかだけでいいのです。余り哲学は聞きたくないのです。  そこで、先ほど来言っているように、合意するように各党が努力する。だが、不幸にして合意ができなかった場合、ある段階では選挙前に政府が公表するという必要があるとあなたは言っておるのですから、それを決断するのかどうか。そうでなければいわゆる灰色高官というものが全然国民の前に出ずして終わってしまうということにはならないか、それをわれわれは恐れると同時に、国民はそれで承知するだろうかということなんです。もうイエスかノーかだけでよろしい。
  83. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 何にも出ないでは承知しないですよ。そこで、われわれとしては皆さんがそういう国民の要望にこたえて、国会がやはりきちんと決めてもらいたいと願うわけでございます。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもこれはいかぬですな。  そこで、もうはっきり言いますが、これをはっきりしなければ、これはすべての人が灰色だということも考えられるのですよ。きのうの日刊紙の川柳のところで「国会は灰一色にいろどられ」という川柳が出ておる。このことを申し上げておきます。  と同時に、あなたは、私は知っている、だが言えない、言わないと言って、何だかちょっとちらちらさせながらこれを党内向けに牽制しておる。言うならば……(「けしからぬ」と呼ぶ者あり)けしからぬ。そのとおり。(「党大会乗り切りじゃないか」と呼ぶ者あり)党大会乗り切りというか、三木内閣の延命策にこれを利用しておると言われても仕方がないのではないかと思うのですが、いかがですか。
  85. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 もうロッキード事件を利用して延命なんというのは小指の先も考えてはいない。そんなことはない。田中君も長いことおつき合いを願っておりますが、私がそんなにこのロッキード事件を利用して内閣の延命をはかるような政治家でしょうか。私はそういうひきょうなことはいたしません。それはいたしません。だから、これで党内を何とか、そんなことは、私はロッキード問題を国内政治に利用しようという考えは全然ないですよ。そんな次元でないのです、私がとらえているのは。これから将来の日本民主政治が健全にやはり育ってほしいと願う以外にないのですよ。このことを利用してということはもう全然、それは皆やはりつき合ってみたらわかるですよ。そういう政治家じゃない。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 総理はそうおっしゃるが、しかし、多くの人というか、一般国民はそう感じておるということを申し上げておきます。  そこで、もう時間もありませんから一点だけお伺いしますが、もう自民党は公認候補を発表しました。その公認候補の中にもし灰色があった場合はどうするのか。(「灰色いるんだよ」と呼ぶ者あり)いろいろ入っておることは当然ですが、どうするのか。  それからもう一つは、総理、いわゆるクロとなった人、三名起訴をされておるが、この人が立候補宣言をしておる。時間があれば、これも読んでもらいたいと思うのですが、これは田中さんのものなんですがね。自民党員ではない、だからどうにもできないと言うだろうとは思うのだが、しかし、そういうことについて一体、国民の顔を逆なでするようなというか、そういうクロと一応起訴せられた人が立候補宣言をする、しかも、われわれはそんなことには関係ないのだと堂々とやっていることについて、総理はどう考えるか。
  87. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういうことについては、やはり人間、政治家個々の良心とか良識というものが働くわけですからね。いろいろな人がおりますよ、これは。おって、しかし、これはやはり最後のよりどころは政治家個人の良心ということによるよりほかないですね。何人もそれは強制することはできないですね。最後に決定をする者は自己の、やはり個人個人の良心であるということであります。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 法務大臣としての見解はないですか、いまの問題で。
  89. 稻葉修

    稻葉国務大臣 法務大臣といたしましては、こういう事件がまた再発するようなことがあってはならないということは、皆そう思っていますな。それが、そういう将来の歯どめのためにも、何かこういうことではいけぬのじゃないか。一般職の公務員なら収賄で起訴されれば休職、ひどいのには懲戒免職です。ところが、国会議員の場合は何にもない。こういう制度は国会議員に関する限り余りに均衡が失するくらいに優遇され過ぎているのじゃないかとさえ、そういう疑いを持ちます。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 これで終わります。しかし、委員長にお願いしたいのですが、これはまだ相当皆さん、まあ野党全員、もう一遍来てもらいたいと思うのですよ、総理に。そういうことも考えていただくよう要請して、終わります。
  91. 田中伊三次

  92. 中島武敏

    中島委員 一昨日五党国対委員長会談をやりまして、井出官房長官を通じて、四党の国対委員長は、とりあえず疑惑のある灰色高官の氏名は政府並びに総理責任において公表すべきであるということを申し入れたわけであります。けさほど来の総理の答弁は、相変わらず国会で基準を決めてくれというような式の答弁であって、はなはだ誠意のある答弁とは思えません。  そこで、私はまず聞きたいのですが、灰色高官の公表問題を含めて、事件の内容、真相、これを発表することは政治責任であり、そしてまたその権限を持っているのは政府であり、政府責任であると思いますが、いかがですか。
  93. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、こういう大事件でございますから、捜査が全部完了したときにやはり総理大臣としてこの事件に対して国民に、まあ国会を通じて国民に、こういう事件のものであったというようなことは、やはりそういうことを述べる一つの機会があった方がいいと思っておるわけでございます。しかし、それは捜査が全部完了した後でないと、たとえば児玉の線というものは残っておるのですからね。丸紅全日空というものはほぼ完了したといっても、児玉との相関関係というものはまだ残っておりますからね、このロッキード事件という大きな事件の中ですから。だから、事件の捜査が完了して、事件というものの全体が明らかになった段階でないと、そういうことは、全体のロッキード事件真相、性格というものを言うのには適当でないと思うのです。しかし、完了した後にはそういう場面があってしかるべきだと私は思っておることは事実でございます。
  94. 中島武敏

    中島委員 どうもおかしな答弁が返ってくるのですが、もう少ししぼってお尋ねしたい。  総理灰色高官名を公表する権限を持っていると思いますが、総理はそういうふうにお考えですか。
  95. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 行政の長としてそういう権限があると言えばあるのでしょうけれども、私自身のそれは判断ですから、私はやはり行政府の長が、いわゆる灰色というものはこれはまあわかったようでわからない点がございますが、こういう灰色というものに対して行政府の長が仕分けをして、これはいわゆる灰色でございますとか灰色でないとか、こういうようなことを公表することは私は非常なやはり行き過ぎである。これは将来において、これは一つの、ここでやっていることは新しいことを、いままでにないことをやるわけですから、これはしかし非常な先例になる可能性もあるわけでございますから、私自身として権力を乱用するようなことを、再びそういうような禍根を残すことはよくない。そういうことで、中島君も御承知のように、あの議長裁定というものは単なる裁定でありませんよ。党首会談で、共産党から宮本君も出てこられて、政治的道義的責任のこの追及は国会の場として、そしてそれに対して政府協力せよということを決めたのも、私はそういう配慮があったのだと思うのですよ。その中には、刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえてとまで書いて、しかも事件の推移を見てと言って、あの議長裁定というのはいろんなことの配慮を加えてああいう裁定が出たと思いますから、この裁定というものを私は余り軽く見たくはないのです。そういう意味で、やはり政治的道義的責任の追及の場というものは、国会としてこの問題を取り扱うことが適当である。これはよその国の例を言っちゃいけないのかもしらぬが、私は外国をずいぶん回る方で、どこの国へ行っても、みんな議員の規律に関することは議員自身責任の追及をやって、最近ではアメリカもイギリスでもそうです。そういうことでございますから、やはりこの問題は行政府の長がやるということは適当なものではない。やはり議員としての道義、規律というものに影響するものですから、国会議員による国政調査権ということでおやりを願うことが、将来のことを考えてもやはり好ましいと考えておりますから、私自身が皆こうでございますと言って私自身責任において灰色の範囲を決めて公表するということは、こういう例を残せば乱用する者が出てきたら大変なことになると私は思って、非常に慎重なわけでございます。これは隠そうとする意図でないのですよ。
  96. 中島武敏

    中島委員 総理、私の聞いていることに答えていただきたい。聞いていないことにずいぶん長い時間をかけていて、聞いていることについてははっきりした答弁をされない。私が聞いているのは、総理灰色高官名の公表をやる権限を持っているか。私どもはいると思っているが、あなたは持っていると思っているか、こう聞いているのです。これに端的に答えてください。
  97. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 灰色という名前で、灰色というような一つの漠然たる分け方によって政府がこれを公表することは、適当ではないと考えています。
  98. 中島武敏

    中島委員 私は適当であるかどうかということを聞いているのではないのです。権限を持っているかいないかということを聞いている。総理は九月三十日の衆議院予算委員会におきましても、高官名の公表が原則だとかねて言っていたのですけれども、そんなことを私は言ったことがあるかどうか記憶にありませんなんて、小佐野賢治氏が言うようなことを言っておられる。大体いままでのことを振り返ってみても、私は非常にはっきりしていると思うのですよ。国会決議が二月二十三日に行われた。そして、この国会決議を受けてフォード大統領書簡を出された。そのときに、この中に何と書かれましたか。「その関係者名前が明らかにされず、この事件がうやむやに葬られることは、かえって、日本民主政治致命傷になりかねない」はっきり言っているじゃありませんか。「関係者の氏名があればそれを含めて、すべての関係資料を明らかにすることの方が、日本政治のためにも、ひいては、永い将来にわたる日米関係のためにもよいと考える。」こう言っている。いま言っていることは、この発言から見れば非常に大きな後退です。いや、それだけじゃありませんよ。私の言っていることは、国会における答弁でも総理は、これは四月二十七日の国会における答弁です。「捜査当局から報告を受けたことに対して、四十七条の立法の趣旨を踏まえて、総理大臣がこれを発表することの権限は持っておると思う。」とはっきり言っているじゃありませんか。「まさに刑事訴訟法はその判断」——その判断というのは公表の判断です。「判断を政府に求めておるわけです。」はっきり言っているじゃありませんか。いまもう変わったのですか。総理大臣は権限を持っているのかいないのか、このことについてはっきり答えていただきたい。
  99. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 中島君が前のことを言われておりますから、私は長いと言われても答えざるを得ない。  フォードへの手紙を第一番に言われたのですが、私はいまでもその考えは変わらないのですよ。この関係をした人間の名前が明らかにされないでうやむやにこれを葬り去られることは、民主主義のためにも日米関係のためにもよくない、それだから、それだけの手紙を書いたのですよ。これはアメリカで起こった事件ですから、やはり事件というものの起こったもとというものを一番知っているのはアメリカですから、国会決議もあったけれども、フォード大統領が地方裁判所でこれは第三者に渡してはいけないという書類を渡したのは、私の手紙というものが大きな動機だと思いますよ。ワシントンでもそういうことを伝えておるわけです。そしてこれは、日本の捜査当局ではありますけれども、条件はついたけれども明らかにされて、その結果としてこれが捜査というものに非常な参考になったことは事実ですからね。だから、そのことによって、私の考え方というものがこの捜査というものに対してアメリカ大統領を動かす大きな原因になり、その資料がそのままですからね。あれは少しも隠してないのですから、全部渡したのですからね。そして捜査の有力な資料になったということは、私の事件解明に対する熱意の表示である、これだけのことはやはり皆さんもお認め願いたいのであります。  灰色高官という名前を私自身が使ったというのですけれども、中島君、私は実際に記憶ないのですよ。灰色というものは法律用語として——私が答弁した中で記憶しているのは、灰色ということは文学的な表現であっても法律的用語として不確定でありまして、このことは私にはよくわからぬというような答弁はしたけれども、灰色高官を全部公表しなければいかぬという答弁を——私は調べてみますけれども、私はどうも灰色高官という名前政府自身が言うことは適当なことでない。それだから、いつも私が言うときには、いわゆるという言葉をつけてないときはないですね。だから、そういう意味で私は後退はしてないのですよ。やはりこういうものは国民の前に明らかにして、そして主権者たる国民の判断を求むべきだと思っているのです。  そういうことですから、いま中島君が前段に引用されたことは、私はどうも中島君は私の真意を誤解しておると思いますので、長くなりまして申しましたが、四十七条というものは、いわゆる一つの裁判の訴訟記録というものは出してはいけないという非公開の原則と、一方において公共の福祉といいますか、そういう公益上と比較計擁して判断する、この判断の余地を四十七条というものが与えておることは事実でございまして、それは権限を持っておるでしょう。しかし、私は、行政府の長として私が判断をする場合に、適当ではない、行政府の長がそれを公表するのは適当でないというのが私の判断でございます。そういう意味で、やはり国会でそういう一つの範囲を決めていただければ個人名も含めて資料を出しますということがいわゆる議長裁定に言う最善の協力で、私はもうぎりぎりの協力だと思っておるわけでございます。
  100. 中島武敏

    中島委員 いまもずいぶん長い答弁がありましたけれども、要するに、総理は、いわゆる——いわゆるがつかないとどうもぐあいが悪いらしいから、いわゆるをつけましょう、いわゆる灰色高官の氏名について発表する権限を持っているということを認められたわけですね。しかし、そのことについて総理が公表することは適当でない、こういう見解なんですね。将来乱用されるのもぐあいが悪い、こういうことをいま言われている。私はこれは全くおかしいと思う。一体、将来乱用されるかどうか、将来を予測してものを言っておられるようだけれども、後から出てくる総理大臣は乱用するなんて、そんなことを何で言う必要があるのですか。私たちがここで要求していることは、特に五党国対委員長会談の中で四党が要求したことは、三十ユニット関係の五名、また九十ユニットを含む全日空関係の十三名、これの氏名の公表を総理の権限において、責任においてやれということを要求したのです。なぜこれができないのですか。もう政府は人数は発表している、権限も持っているということを認めていて、なぜ発表できないのか。発表するべきじゃありませんか。
  101. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは、政府がああいう中間報告を行いましたのは、皆さんの言ういわゆる灰色高官というものを出すということで発表したのではなしに、丸紅全日空の金というものを追及しましたならば、こういうところに金が流れておりましたということでございまして、そういうことが基礎に、いろいろの参考にはなるでしょう。そこで、やはり国会が言われるいわゆる灰色高官というものはどれだけの政治的道義的責任を追及されるのか、こういう範囲を決めていただければ、それは資料を出しますと言っておるので、どうも行政府というものが議員の道義的責任あるいはまた政治的責任を裁く立場にはないと思うのですよね、行政府の長が。政治的道義的責任ですからね。刑事的な責任であれば検察がやるわけですけれども、どうも行政府の長が個々の議員について、道義的責任あるいは政治的責任を裁く立場というものにはない。(「裁けと言っていない、公表しろと言っている」と呼ぶ者あり)やはり公表というのは、政府自身がそれを裁くことになりますわね。これはいわゆる灰色の範囲に属するというようなことを政府自身が仕分けをするということは、これは非常に行き過ぎなのではないか。ただ、そこは国権の最高機関である国会が、これだけのものはいわゆる灰色の中に入って、政治的道義的責任を追及しなければならぬということで範囲をお決め願えれば、これに対しては個人名も含めて出します、こう言っているのですから。
  102. 中島武敏

    中島委員 だれも仕分けを政府にやれということを要求してないですよ。私がお尋ねしているのは、五党国対委員長会談の席上、四党国対委員長が要求したのは何か、もう一回繰り返しますけれども、それはいわゆる五名と十三名ですよ、これの氏名を明らかにせよということを要求しておるのですよ。そしてもう一つ言っておきますよ。総理はいろいろ言っていますけれども、四党は全部そろってこのことを要求しているのです。自民党の中にも、総理の権限でやるべきだということを発言されておられる方もいるのです。何で、これだけそろって要求していることについてここまで言われるのですか。氏名はわかっている。総理は氏名を知っている。四党が要求している。自民党の中にもそれを要求する者がいる。なぜそれを総理が発表できないのか。一向にわからない。
  103. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはやはり国会の中で——裁くということが適当でないならば仕分けと言ってもいい、政府自身が仕分けをするということは適当でないということが私の判断の基礎にあるわけですから、国会の方で、いわゆる国会の言われるところの灰色高官というものはこういう範囲であるということを決めていただければ、できるだけ速やかに出そうというのですから、国会の方でひとつ話し合いをしていただいて、そして早急にその範囲を決めていただくことが問題を進展さす一つのもとだ。この間の政府中間報告は、国会の求めておる灰色高官というものを、こういう名前を出すということでやったのでなしに、金の流れというものを追及したらこういう結果になっておったということでございますから、そういうことも御参考にはなるでしょうけれども、国会の方でその範囲というものをひとつお決め願いたいというわけでございます。
  104. 中島武敏

    中島委員 総理に対して仕分けをせよなんということをわれわれはちっとも要求してないですよ。総理の答弁を聞いていると、仕分けはできない、それは国会がやったらよろしい、こういうことを言っておる。そうじゃないのだ。われわれは仕分けをちっとも要求してないのです。この間政府中間報告をやった。これについては五名プラス十三名、延べ十八名、この人数は政府が根拠があって発表したんですよ。総理はこれを発表する権限を持っている。総理が認めておられるとおりなんです。四党はこれを要求している。自民党の中にも、総理の権限においてやれということを言っておる人もいる。それにもかかわらず、なぜそれだけ発表できないか。国会でということを言うのですか。みんなが要求しておることなんです。この要求に対してなぜこたえられないか、はっきりしてもらいたい。
  105. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国会が追及しているのは政治的道義的責任でしょう。そういう場面において国会の要求、政治的道義的責任あり、こういうことで、政府の判断においてこれを公表するということは、私は政府の行き方として適当でない。やはり国会の方でお決めになって、そして秘密会で資料を提供して、そしてそれを基礎にして国会調査をおやりになって、そしてそれを公表されるということならば、これはやはりしかるべきものでしょうね。検察からの材料を、これを道義的責任あり、政治的責任ありということで、政府がこういう断定するような形で公表をするということは、行政府としては行き過ぎでないか。だから、それを提供いたします、それを基礎にして国会は国政調査権に基づいて御調査を願いたいのですよ。そしてこれは道義的責任あり、政治的責任ありということならば、国会責任において公表されるでしょうね、そういう場合は。これはやはり国政調査権として当然のことである、こう考えるわけです。
  106. 中島武敏

    中島委員 国会は国政調査権に基づいて政治的道義的責任追及をやることはあたりまえであります。それはもう議長裁定でも言われておることです。この議長裁定は、刑訴法の立法の趣旨を踏まえて協力するということを言っておるのです。だからこそ、氏名を知っていて、一番権限を持っているあなたがこれを国会に対して発表するということは、最も適切な方法ではありませんか。そうすれば、そのいわゆる灰色高官、それも材料の一つとして、もっと政治的道義的責任の追及をわれわれはやりますよ。これはあたりまえなことだ。政治的道義的責任追及といえば当然のことでありますけれども、灰色高官、黒色高官を生んだ政党はどの政党なのか、その政党は何を一体いままでやってきておるのか、その政策や行動はどうだったのか、体質はどうだったのかという問題は、当然政治的道義的責任追及の中に入りますよ。われわれはそれをやろうと言っておる。だから、そのためにも総理が権限を持っているその権限を行使して、総理責任において発表せよということを言っているのです。間違ってくれちゃ困る。しかも、繰り返しますけれども、四党国対委員長がそろって、野党四党がそろって要求しているものは何かと言えば、これから灰色の仕分けをいろいろとやってくれというようなことを一言も要求しておるのじゃないのです。そうじゃないのです。繰り返しますけれども、五名と十三名の十八名、これは政府が根拠を持ってその人数を言ったのですから、その氏名を発表すべきだということを要求しておるのです。(「それを自民党だけが反対しておるのだ」と呼ぶ者あり)自民党も全部が反対しておるとは思えない。このことをもう少しはっきりしてくれなければいけない。
  107. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 総理が権限を持っていると言っても、私は独裁者じゃございませんから、刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえて、これが私の判断を決める場合の一つの大きな背景になることは当然でございます。何でもできるというものではないわけです。やはり立法府の議長の裁定にも書いてあるわけですから、そういうことを踏まえて、政府政治的道義的責任ありという断定のもとに、そういうことでいわゆる灰色高官というものの名前として政府が発表するということは、刑事訴訟法の一つの立法の趣旨からしてみて適当だとは私は思わないということでございます。  そういうことでございまして、したがって、皆さんの言うのは道義的政治的責任でしょう、追及しようとするのは。そういう一つ国会が追及しようとする、そういうものありとして政府名前を出すということに対しては、これはやはり行政府として行き過ぎた行為であると思うので、それは中島君、皆さんがこれだけは政治的責任がある、道義的責任があるとその範囲を決められて、私も自民党総裁としてそれに協力しますと言っているんですから、この問題はその場限りでありませんよ。私が後で、この問題については皆さんの言うことがごもっともなことであって、そのことで自民党が協力しないということならば、これは自民党が批判を受けるでしょうし、総裁の私としてもやはり非難を受けることは当然でございますから、どうか早く、こうやって入り口でいろいろな議論をするよりも、だれが見てもこれだけは政治的道義的責任があるというものを決められて、そうして政府協力せよということの方が、問題の政治的道義的責任の追及にはその方がずっと国政調査権というものが機能してくるのじゃないかと思うのです。どうかそういうことで、もう自民党は何もかも隠すのだという前提でなしにやっていただきたい。
  108. 中島武敏

    中島委員 もう総理はだらだら答弁しておって、時間つぶしのために答弁やっているんじゃないですか。全くめちゃくちゃな話だと思うのだ。大体、議長裁定が決まった後でも、総理は権限がある、判断、まさにそれは総理がやるんだというふうに言ってきたんですよ。いまの答弁聞いていると、国会でやれ。どこからそんなことが出てくるのですか、どこから。私はいまの話は、時間だからやめますけれども、全く総理後退し、しかも国会にそのすべての責任をなすりつけ、みずからの責任については放棄をするというきわめてひきょうな態度をとっておられる。だから、三木派の中に所属しておられた人でさえも言っているじゃありませんか。きのうだって新聞で、政府の解明の仕方が田中逮捕の前後から変わってきている、十五日の中間報告を聞いても実際に解明をやる姿勢ではない、こう言っておるじゃありませんか。政権延命のために反三木派に妥協してここでロッキードの幕引きだ、灰色隠しだ、こういうふうに出てきている態度は許されませんよ。私たちはもっとさらにこの問題を追及していきます。時間ですから質問は終わりますけれども。
  109. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 中島君に一言言っておきますが、ロッキード事件を私が利用して政権の延命、断じてない。そんなことはない。しかも、中間報告ロッキード事件の幕を引こうという考えはないのです。このことは、あなたがそういうことでいろいろいま言われるから、私は声を大にして言っておきたい。
  110. 田中伊三次

    田中委員長 坂井弘一君。
  111. 坂井弘一

    ○坂井委員 公人である政治家、つまり権力者であります。その権力者が公的な情報を私有化するということは、これは許されない。もし国民が共有すべき情報というものを私有化するというようなことに政治家がなったならば、まさにそこにいわゆる権力腐敗というものが起こる。したがって、今度の事件を見ますと、この特異性、しかも政治的道義的責任究明、そのためにはいわゆる灰色の政府高官を氏名を含めて公表いたします、つまり国民の知る権利には最大限こたえなければならぬ、こういう認識がまず大前提になければならぬと思うのです。そういう観点に立ちまして、総理はうなずいていらっしゃいますが、そこで、単刀直入にお伺いしますから、総理も明確に簡明にひとつお答えいただきたい。  今度のロッキード事件に関しまして、総理、あなた御自身はシロですか、灰色ですか。
  112. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 ロッキード事件には私がクロだと考える材料は一つもない。
  113. 坂井弘一

    ○坂井委員 灰色ですか。
  114. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そういうことを坂井君、私自身が何でそんなことを言わなければならぬですか。何か、あなたあるのですか。ロッキード事件について私がこういう疑いがあるがどうだということならともかく、シロかクロかというようなことは幾ら何でも、それはおっしゃることは自由ですけれども、何かこういうことがあるがどうだという御質問はともかく、シロかクロかというのはどうでしょうかね、あなたの御質問として。だけれども、ロッキード事件というものは何も私自身は関連はございません。
  115. 坂井弘一

    ○坂井委員 潔白ですか。潔白——いわゆる十四人の名前をあなたはお聞きになったんですよね。知っていらっしゃる。ありましたか、中に。
  116. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は書類で報告を受けたのじゃないんですよ。法務大臣から一応の……(「三木武夫があったかなかったかは覚えているだろう」と呼ぶ者あり)そういう、三木武夫があるはずはないじゃないですか。
  117. 坂井弘一

    ○坂井委員 あなたの潔白は証明されましたね。なかった。そうしますと、ほかの人はどうなんでしょうかね。灰色ともシロともつかない。名前を聞いた人、知っている人はだれだれですか、総理法務大臣のほかに。
  118. 稻葉修

    稻葉国務大臣 刑事局長は知っている。政治家では二人。(「官房長官は」と呼ぶ者あり)官房長官には報告していません。
  119. 坂井弘一

    ○坂井委員 じゃあ、いまのことについて後で詰めるとしまして、総理が予算委員会におきまして、不起訴になった高官名を公表するかどうかの判断、つまり刑訴法四十七条の立法趣旨を踏まえた公益の判断は政府がいたします。つまり、あなたは高度な公益判断をなし得る立場にもありますし、また、しなければならぬ立場だ。先ほどの議論の経緯を踏まえてお尋ねをいたしますが、総理、あなたが氏名を公表する権限をお持ちになることは当然なんです。むしろその判断をし得る立場にあるし、判断しなければならぬ立場があなたのお立場じゃありませんか。
  120. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 判断というものは、やはり私自身刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえた判断でなければならぬということです。
  121. 坂井弘一

    ○坂井委員 それでは真田長官に伺いましょう。長官、頼みます。  あなたにお尋ねしますけれども、氏名につきましては、その氏名を握っている者か知っている者がその判断の主体になる。今度は総理大臣なり法務大臣がその氏名を知っているわけですから、そうすると、その氏名を公表するかどうかという場合の四十七条のただし書きの適用の有無の判断につきましても、その四十七条の精神をよく踏まえて、そして法務大臣なり総理大臣が御判断になる、こういうことになろうかと思います。そのとおりですね。
  122. 真田秀夫

    ○真田政府委員 刑訴法四十七条の一般論としてお答えをするわけですが、四十七条は訴訟に関する書類の公判期日前の公開を禁止していますね、本文は。ただし書きがその例外として、公益上の必要その他の事由があって、相当と認めるときにはこの限りでないということで、例外的に本文による公開の禁止の解除をしております。では、これはだれが判断をするかと言えば、第一義的には、本来的には、訴訟に関する書類ですから、検察官とか警察官とか裁判官とか、そういう保管者でございますが、ところが捜査当局から法務大臣なり総理報告を受けられて、その書類の中身にわたる事項を知ったその場合には、なるほど四十七条には本来的には訴訟関係人に関する規定でございますけれども、法務大臣総理がそのお知りになったことを発表することがいいかどうかということを判断されるときには、刑事訴訟法四十七条の趣旨を踏まえてやってもらわなければ困るという趣旨のことをかつて私ここで御説明したことがあると思うのですが、それはいまおっしゃったことと大体似ていると思いますが、そこにもやはり公益判断をされて、そして四十七条本文が押さえている、ねらっている、つまり公表しないことによる利益よりもまさる公益があればただし書きが働いて禁止が解除される、こういうことになります。これが原則でございます。
  123. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理、法制局長官の答弁どおりだと思います。これでよろしいのです。つまり、総理自身がいまや氏名を聞いたわけですね。あなたは知っているわけだ。その氏名を公表するかしないかの判断の主体者はあなたなんです。あなた御自身なんです。そこでその場合に、刑訴法四十七条全文の立法の趣旨を踏まえなければならぬ。これは議長裁定のとおりです。その議長裁定はただし書きの適用を含む。これも明確なんです。そこで、ただし書きにいう、いわゆる名前を公表する場合の公益、これが大きいとあなたが判断された場合には、氏名を公表する主体者はあなたなんです。ここまでいいですか。あなたなんですよ。国会じゃないのですよ。あなた御自身が判断できる立場にあるし、また、あなた自身がただし書きの適用をすべきであるという判断に立つならば、氏名は公表できるのですよ。そこまでどうですか。
  124. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはやはり、その場合の判断というものは刑事訴訟法の立法の趣旨を、議長の裁定にあるとおりだと私は思います、踏まえてそして判断をしなければならぬ。何でもオールマイティーということじゃないですよ。やはり刑事訴訟法の立法の趣旨を踏まえてやるということでございます。
  125. 坂井弘一

    ○坂井委員 じゃ、総理自身のお考えを聞きたい。あなたは四十七条ただし書きによって公表する方の公益が大きい——先般委員長はただし書きの適用につきまして公共の福祉、これが優先すべきである、こういう見解を言われたわけでありますけれども、総理自身はどう思われますか。公表しない方がよろしいのですか。つまり本文によった方がいいのか、ただし書きによるその公益の判断の方が重い、大事だという認識にあるのかないのか、その点について伺いたい。
  126. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういうことでありませんか。議長裁定にあるのは、政治的道義的追及の場は国会でこれをやるから、一つの国政調査権を通じて最善の協力をせよということですね。それにこたえて、いままでの捜査の資料に基づいて、国会でこういう範囲のものを出せと言えば——このこともいままで余り例のないことですね。しかし、やっぱりこれで協力をして、政治的あるいは道義的責任というものの追及を国会を通じてそれに協力し、促進したいということで、これはいままでにないことをするわけでございますから、だから、それを、しかも秘密会と言うてお願いしているのは、いま言った国会が追及しようというのは政治的道義的責任の追及でしょうからね。それの範囲にこういう人たちが入るということでこれを公表するということは、行政府の長としては行き過ぎである、こう言っておるわけです。
  127. 坂井弘一

    ○坂井委員 答えになっておらぬですよ。そういう答えは求めてないのですよ。私はそういうことを聞いておるのじゃないのです。いいですか。委員長、聞いてくださいね。四十七条に本文とただし書きがあるのです。いまあなたは氏名も聞いて知っているのです。この氏名を公表するかどうかの判断の主体者はあなたなんです。その場合に、ただし書き適用の判断に立つのかどうなのかということを聞いているわけなんです。
  128. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはただし書きだけでありませんね。四十七条の全文を踏まえてということでございます。
  129. 坂井弘一

    ○坂井委員 じゃ、総理にあなたの本当の気持ちを聞きたいのですよ。かわらぬ。わからぬから聞きたいので、あえてお尋ねしますが、刑事訴訟法四十七条の全文と、こうおっしゃいましたね。そうしますと、全文といいますと、いわゆる本文は秘密の方ですね。出さない。ただし書きは出す方ですね。ところが、全文だと言う。その全文という意味は、だから秘密会であれば出しますと、こういうことなんですか。
  130. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が言っておるのは、やっぱり立法の趣旨というのは刑事訴訟法の第一条にあるわけですね。そういうものを全部、四十七条もそうだし、また刑事訴訟法の第一条にもやはり刑事訴訟法の一つの立法の精神というものは端的にあらわれていますからね。刑事訴訟法の立法の精神というのはそういうことも言っているわけです。その中にはいま言ったような、あるいは捜査とか裁判に対して障害を与えないとか、個人的人権というようなこともその中にあることは事実でございます。そういう議長裁定にもあるような、刑事訴訟法上の立法の趣旨というものを踏まえてということが私は適当だと思いますね、総理大臣が判断をするときに。そういうことで、私が言っておるのは、こういう異例のことであるけれども、国会でそういう範囲というものをお決め願えれば、国会が追及しようとする政治的責任あるいは道義的責任というものは一体どういうものを追及しようとしておるのか、こういうことをお決め願えれば、そうすれば——これは異例のことですよ。それはいままでないですよ。こんなこと、したことないじゃないですか。秘密会ならば提供いたしますから、その公表というものはやはり国会の判断と責任においてやってもらいたい、こう言っておるわけだ。
  131. 田中伊三次

    田中委員長 坂井君。法制局長官から大事なことを言い落としてあるそうですから、ちょっと一口。
  132. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほど坂井委員の御質問に対しまして私お答えしましたのは、刑事訴訟法四十七条の適用関係解釈を一般論として申し上げまして、特にロッキードの本件の公表問題というようなことは全然念頭に置かないで素直にお答えしているわけでございます。  そこで、ロッキードの本件のいまの公表問題につきましては、法律的に整理いたしますと、刑事訴訟法四十七条の本文ただし書きの絡みと、そのほかに先ほど来総理がおっしゃっておりますように、いわゆる灰色高官というのは刑事上の責任は免れたけれども政治的道義的な責任の追及に値するものというものであろうと私も想像するわけですし、いままでの御論議でもそういうお言葉が盛んに出ているわけなんで、そこで、そのいわゆる灰色高官というものは、この前の中間報告を読みますと、五人にしろ十三人にしろみんな国会議員なんですね。国会議員政治的道義的責任を追及するというその場に、行政府がまず判断をして、そしてこうでございますと言って氏名を出すことは、行政と立法府との関係からいって、行政権の行き過ぎであろうというふうに考えるわけでございます。そこで、まず国会の方で範囲をお決めいただいて、そしてそれに御協力するというのが政府立場でございます。     〔発言する者、離席する者多し〕
  133. 田中伊三次

    田中委員長 三木総理大臣に申し上げます。坂井君の御質疑に対してはそうものずばりの答弁をしてください。
  134. 坂井弘一

    ○坂井委員 もし仮に国会が、秘密会で結構、五プラス十三は十八だ。十四名でもいいです。いわゆる十四名の名前国会に出してもらいたいと言った場合に、あなた応じますか。
  135. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はこれは国会の方で、与野党でよく御相談をしていただきたいと思うのです。政府が出したのは灰色というんで出したんじゃないのですから。そういうことで、灰色高官というのは国会が言われるのはどういうものだということを各党でよく御相談を願いたいと思うわけでございます。
  136. 坂井弘一

    ○坂井委員 答弁になってないのです。言いましょう。あえて言いましょう。いわゆる十四名、その名前を秘密会で結構ですからお出しなさいと言ったら、出しますか出しませんか、こう聞いている。     〔発言する者あり〕
  137. 田中伊三次

    田中委員長 ちょっと皆さんお静かに。——法務大臣、そのものずばり、ほかのことを言わぬように。
  138. 稻葉修

    稻葉国務大臣 権限を持っておられる国会が、基準や範囲はこういうものだというふうにして、この範囲のものは秘密会だから出せと言えば、秘密会ならば出します、こう言っているんです。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 またこれ、定義に戻ったら結局出ずじまいになりますよという心配があるわけです。だから聞いたのです。あなたの判断、あなたの決断次第なんですよ。まさに名前を聞いた、いまや知っておる。いまこの問題は総理の決断にかかっておるのです。ですから、あえて秘密会であれば、われわれはそれなりの定義とかどうとか、それはそれなりの定義がここに備えているとみなすのに、その場合にいわゆる十四名の名前を出しますか出しませんか、こう聞いたのです。出せるのか出せないのか、それだけ聞きたい。
  140. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国会で灰色の一つの範囲、基準というものを決めていただくことが先決です。そうしたら、それは出します。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 あなたは総理、総裁として、自民党の皆さんに対して、野党四党は一致しておりますから、せめて——公表したわけです、員数は。員数自体も灰色なんですね。十四から十三になってまた十二になるのです。ほんとうにこれは奇妙きてれつですよ。それはそれとしましても、野党四党はそういうことで一致しておりますから、むしろあなたは自民党の総裁として、自民党の理事皆さんに、応じなさい。そう言えませんか。後は国会の判断と責任でちゃんとやります。あなた御自身ができないと言うんだから。
  142. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どうしてなんですかね。灰色の範囲はこういうものだ、こういうものを出せということで協力してくれと言えば、協力すると言っておるのですからね。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 お話にならないです。あなた御自身だけはシロなんですよ、いまや。ほかはみんな灰色だ。(「灰色じゃない」と呼ぶ者あり)そうなんですよ。そうなるのですよ。これは全くかみ合いません。まことに遺憾であります。  もう一つ聞いておきますけれども、いわゆる灰色高官、あなたが総裁として公認された、それは取り消しますか、公認を。
  144. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、国会においていろいろ政治的道義的責任というものはこれから追及されていくでしょうから、そういう時点で自民党として判断をいたします。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が経過しておりますからやめますけれども、ただ、総理認識としては、きわめて言葉ではよろしいけれども、本気になって、あなたが政治生命を賭して真相を解明するのだということにはきわめて欠けておりますよ。後退後退も大後退ですよ。言葉ばかりなんですよ。われわれがなぜこのいわゆる灰色について言うかというと、まさに政治的道義的責任が問われておるのですよ、公人なるがゆえに。このシロ、灰色、クロを全部はっきりするのが国民に対する政治家としての当然の責務なんですよ。その認識があなたの出発点にあったと思うからこそ、私はあえてこう聞いておるわけです。それに対して全く実のない、うつろな答弁に終始した。きわめて残念であります。
  146. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それでは私は言っておきますが、私が言っておるのは、国会責任を追及しようとする道義的責任あるいは政治的責任というものは、ロッキード事件に関してこういうものは政治的責任道義的責任を追及しなければならぬ、こういうことの範囲をお決め願えれば、これに対して資料を出すというのですからね。これはいままでこんなことはありませんよ。起訴されてない者を出すというのですから。私は逃げるようなことならこんなことは言いませんよ。こういう機会に国民疑惑にこたえることがいいと思うから、あえていままでやったことのないことまで、秘密会であっても、資料を出してやろうというのですからね。いままでやったことがないのですよ。やっておることを私がやらぬというのじゃないのです。いままでやらぬことをやろうというのですからね。何かあなたは次々にいろいろなことをやれやれと言われますけれども、しかし、範囲を決めて国会が追及しようとするものは何だ、その範囲をこうだといって資料を出してもらいたいと言ったら、出しますと言っておるのですからね。これは起訴されてないのですよ。起訴されてない人の氏名まで、秘密会という前提ではあるけれども、出しますということは、これは大変ないままでにないことであります。弁護士なんかの関係をしておる人もおられるけれども、これは大変なことであります。これは大変なことですよ。それを、私はあなたのいまの最後の言葉は気に入らぬです、これは。私自身も、解明した方がいい。だけれども、何も道義的責任政治的責任というものの一つの基準もなしにみんな名前を出せということは、私はどうかと思いますね。これはやはり、国会がきちんと決められたらそれに従って出します、こう言っておるのですからね。この熱意だけは買ってもらわないと。それだから今晩でも理事委員長を交えてその範囲をお決め願えれば、問題はずっと、この調査、国政調査権というものは進展していくわけですよ。こういう入口でいろいろ議論でなしに、具体的に国会が皆追及しようとする政治的責任道義的責任はこういうものにある、ロッキード事件で。この資料を出してもらいたいと決められれば、国政調査権はもっともっと活発に機能するわけですからね。入口でなしに、もっと問題を具体化して、委員長もその気持ちですから、野党理事との間にひとつ話を詰めてくださいよ。そうしたら私の熱意もわかるわけです。これは逃げるわけじゃないのですよ。
  147. 坂井弘一

    ○坂井委員 一言だけ言って終わりますが、気に入る、気に入らぬの問題と違うのですよ。国民は絶対に納得しないと思いますよ、あなたのいまの、きょうのこの一日のあなたの答弁を聞いて。そう思います。まさに今度は三木さん、あなた自身政治的道義的責任究明されると思いますよ、そういう姿勢では。  終わります。きわめて遺憾であります。
  148. 田中伊三次

    田中委員長 永末英一君。
  149. 永末英一

    ○永末委員 今回の中間報告は、言うならば検事総長が法務大臣報告をしたようなものを、三木さんはあなたの責任報告をされた。いわゆるロッキード資金の縦割りの流れについて解明してございますが、それら相互の相関関係についてはほとんど触れるところがない。いわゆる構造汚職と言われておるにかかわらず、それが欠けているわけであります。あなたは、したがって、その欠陥をお認めになりますか。
  150. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは御承知のように、児玉の線というのは私は重視するのですよ。これは金額が多いばかりでなしに、いわゆる政治の黒幕と言われて、永末君のいま御指摘になったような、何か政治と利権との絡みというようなものが、いまいろいろ構造汚職だとかいう言葉を使われましたけれども、こういう問題の一つ疑惑が含まれておると思いますから、やはり児玉の線というのは追及されなければいかぬということで、今後は、いろいろな困難はあるでしょうけれども、ぜひともこの問題の真相を解明するためには児玉の線というものを中途半端に終わらせてはいけぬ。こういうことで捜査当局にもいろいろなやはり、捜査当局もそのつもりですけれども、この問題に対して困難を克服してひとつ捜査を進めてもらいたいと私は日ごろ願っておるわけでございます。
  151. 永末英一

    ○永末委員 児玉の捜査というのは、来るべき総選挙には間に合わぬというのが一般の判断である。であるとするならば、あなたは総選挙前に、それまでに入手したる資料をもって国民報告をしなければならぬとお考えですか。
  152. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、正直に申しますと、捜査のスケジュールはおくれたわけですよね。八月終わりごろまでに捜査が大体完了すれば、総選挙前にもこれの全容を明らかにして、総選挙で判断を願うことが一番いいなと思っておったわけですが、捜査がいろいろな障害があって思うようにいっていないわけですから、児玉の線が全部捜査が完了していくという場合、いままだこれはだれびともいつまでということは言えないでしょうが、できればそれが総選挙前であることは一番好ましいですね。そして、捜査が全部完了しておるならば、私はやっぱり私自身国民報告する義務があると思いますが、児玉の捜査がそれまでに完了しないという場合については、これはなかなかそういう報告というのは私自身がやることばやりにくいですからね。しかし、ある程度進捗しておるということならば、また中間報告ということも考えていいのかもしれない。いままだ、しかし、それをしようという考えではございませんが、しかし、なるべく、総選挙に入るというような場合には、その前に何かのやはり、捜査の進捗状態にもよりますけれども、そうすれば、できるだけ国民にそういうふうなロッキード事件というものの内容や性格について理解を求める努力は必要だとは考えております。
  153. 永末英一

    ○永末委員 児玉の進捗状況によりまするがということではなくて、この総選挙というのは、やはり自民党政権がやってきたこのロッキード事件に対する一つの評価を国民にしてもらう、あなたの言葉をかりれば、自民党再生のチャンスでしょう、あなたの方から言えば。だとすれば、児玉の進捗状況がどうあろうと、その時点においてやはりあなたは報告するのが、このロッキード事件政治的生命をかけたと言われるあなたのやるべきことじゃないか。はっきりお約束されたらいかがですか。
  154. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それはやっぱり一つの問題は、政府のやることはやっておるですよね。一つの刑法上の責任というものは突き詰めますわね。やることはやっているということは、国民も皆考えておられる。問題は政治的道義的責任の追及にあるわけだと思うのですね、この問題は。刑法上の責任というのは、やることはやっているじゃないですか。それはお認めになるでしょう。政治的道義的責任というものは、それだから、私は今夜でもやってもらいたいというのは、この問題というものは、やはり議員に関係することですね。皆名前、いろいろ中間報告の中でも、あれは議員ですからね。そういうことで、どうか国会においてひとつ皆さん灰色高官というものは、これから責任を追及せんならぬというもののいわゆる灰色高官というものは、こういうことの事実のあったものは灰色高官の中に入れるのだということをお決め願えれば、私は自民党総裁として協力しますと言っているのですからね。そういうことでお決め願えれば、これは選挙前に国政の調査権で政治的道義的責任の追及が進んでいくということは、選挙民の判断に非常にやっぱり有力な判断の資料を与えることになると思いますから、どうかそういう点で、そういう各党の開きのある一つ灰色高官というものに対しての範囲これを一本化にひとつ協力してもらいたいと実に私は切に願うものでございます。
  155. 永末英一

    ○永末委員 私はあなたに求めたのは、総選挙が迫っておるのだから、したがって、あなたは三十七年間の議員の経歴からいって、この際はっきり問題のありかを国民報告して総選挙に国民をして向かわしめるというのがあなたの政治家としての責任じゃないかと問うた。にもかかわらず、国会においてお決め願えれば……。刑事訴訟法四十七条のただし書きは、これは法制局長官が申したように、一般的に言えば、あなたにその公益の判定権があるはずだ。しかし、あなたは、幾らだれが問いましても、国会のお決め願った基準に従ってと言うから、あなたはその公益の判定権を放棄したわけですね。
  156. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、国会が追及しようとしておる政治的道義的責任というものの範囲というものも何も、そういうものを全然抜きにして、ただ政府が捜査によって知った名前を皆公表してしまうということが、行政府の行為として適当だとは思わないのですよ。そういうことでございますから、いま、それならどうするかと言えば、国会でひとつ範囲を決めてもらいたい、こう言っておるので、逃げておるわけではないのですよ。それはやはり政府がいわゆる灰色というものはどういうものかということを、そういうふうな追及しようとする政治的道義的責任というもののそういうものを何も抜きにして、捜査で得た資料を全部公表してしまうことが適当だとは思わないというわけですから、逃げているわけではないのですよ。逃げてない証拠には、お決め願えれば、個人名も含めて出しますと言っているのです。
  157. 永末英一

    ○永末委員 あなたがその力をお持ちであるけれども、責任感じ政治家としてはその力を法律によって持たされておるんなら、それはお使いになるのが当然だとわれわれは思う。しかし、それを国会がお決め願えればと言って、あなたみずからその自分のとうとい権限を放棄されているわけだ。だから、放棄されたんですねと聞いている。そこだけお答え願いたい。
  158. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 放棄というよりか、私は行政府の長がいわゆる灰色というようなことで捜査の資料を公表することが適当だとは思わない。だから、放棄とかなんとかいうんじゃなしに、その行使はやはり不適当である。
  159. 永末英一

    ○永末委員 あなたはこのロッキード資金を受けた者の名前は知っておるということをこの委員会で言われた。いわゆる三十ユニットの二千三百万円について受領した者が五名という中間報告がございますが、この中には起訴者は含まれますか。
  160. 安原美穂

    ○安原政府委員 含まれております。
  161. 永末英一

    ○永末委員 三十ユニットの中ですでに二人の起訴者は七百万円で起訴されておるわけだから、それ以外の者ということになれば、ピーナツ資金を受領したゆえをもって起訴された者、こうなりますね。
  162. 安原美穂

    ○安原政府委員 私は終始一貫、公訴を提起しなかった者につきましての名前を言うということは控えさしていただきましたので、御推察にお任せいたします。
  163. 永末英一

    ○永末委員 では、私の言うようになっておるんだと推察いたします。  さて、全日空ルート十三名について先ほど稲葉法務大臣はへっ込めたと言いましたが、何をへっ込めたのか少しもわからぬのですね。午前中に発言したことはへっ込めた、どこをへっ込めたのですか。
  164. 稻葉修

    稻葉国務大臣 午前中あなたもお聞きになっておったでしょう。どなたかの質問——瀬戸山さんが、いわゆる九十ユニットが簿外資金の中に入って、そこから五千七百五十万円が国会議員十三名に流れた、それについてそれは政治的道義的責任があると判断するかどうかと言うから、それは国会が御判断なさるべきことで法務大臣としてはお答えできませんな、こう申し上げたんです。政府としては、それを判断するのは国会がおやりになること、越権だからそういうことはできませんなと言ったら、個人的な見解でもいいから述べてみろ、こう言うんだ。だから、やむを得ぬ、そうやって質問者が、国会質問されるので。これは誤解されても困るんだけれども、それは普通せんべつとかそういうものですから、そうして国会議員としての職務とその対価という関係にないから不起訴になったんですから、それについても政治的道義的責任をかけていくのはちょっと疑問がありますな、こう申し上げたんです。それがお気に召さぬ、田中さんがお気に召さない。そんなことはないだろう、引っ込めろ、そういう不謹慎な発言は引っ込めろ、総理大臣のように慎重にやれ。(「そんなこと言わないよ」と呼ぶ者あり)いや、総理大臣はちゃんと個人的見解は述べられないと言うておるように、おまえも個人的見解は引っ込めろ、こう言うから、それは引っ込めましょうと、こう言ったわけです。
  165. 永末英一

    ○永末委員 法務大臣はこの十三名を一色に扱っておられるが、この十三名の中には起訴者三名並びに三十ユニットにかかわる者三名が含まれておる。だといたしますと、あとの七名とはそれぞれ色合いが違う者が含まれておる、これは事実ですね。
  166. 安原美穂

    ○安原政府委員 十三名というのが全日空の裏資金からの金銭授受があった人、それから五名というのがユニット関係、いわゆる三千万円から起訴者を除いて、職務関係なし、時効というようなことであったのが五名、合わせて十八名の中に六名のダブりがあるということでございます。
  167. 永末英一

    ○永末委員 六名のダブりがあるから、それをのければ十三名の残りは七名である、それぞれ色合いが違う。  ところで、そこまで来ますと、やはり氏名を発表してもらわなければその色合いの違いがわからぬということになりますが、あなた方の方は、まだ国会としてまとまって要求が来ないからそれはまだ発表しないと言う。ところで、発表しないためにわが党においてはきわめて迷惑な関係に置かれている者がおります。日刊新聞が、これは取材の自由でございますから、取材をされて推測の記事を書く。ところが、日本共産党の機関紙のごときは、この推測の記事をあたかも確定であるかのように紙面をつくって、わが党の所属の議員の選挙区にまく。これは大変なんだ。だからこそ、三木総理国会に判定を任すということであるならば、先ほどからあなたがお約束しておられるが、今度はうまくいくと思いますが、自民党はいち早く野党の要求に従い——灰色とかなんとかの判定を言っておるんじゃないのだよ、ロッキード資金を受領した者の名前を言えということだけ言っておるわけだから、それをはっきりやるべきである。にもかかわらず、そこまでいかないうちに事態は進行しつつある。  法務大臣、わが党が迷惑をこうむっている事件について、あなた、この際発言を願いたい。
  168. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私、あなたのおっしゃることはよくわかるのです。事実もよく知っているつもりです。それで恐らくその新聞社と民社党の間で問題になったのでしょう。謝るとか謝らないとか、何とかかんとかいろいろ問題はあったらしい。そこで、新聞社がやってきましたから、さあ私が報告を受けた中にはにおいもないね、気もない、こういうことを言うておいたのですから、それでその新聞社は善処すべきものだというふうに私は思っているのです。それ以上は、何とも私、お気の毒には思いますけれども、はなはだ御迷惑な話でしょうけれども、それと、この十三名を皆名前を言わなければだめだからそっちをやってくれと言われても、政治的道義的責任の判断者である国会が基準を決めてくる前にさっと出すというわけにはまいらないのです。
  169. 永末英一

    ○永末委員 いずれ国会が、自民党がこの事態の重大さを認識すれば全貌の資料を要求することになろうと思いますが、私がいま言うておりますのは、あなたはわが党の議員に関する件について、においもなく、気もない。まあ、火のないところに煙は立たぬと申しますが、火がないのだから煙もない。火はありませんな。
  170. 稻葉修

    稻葉国務大臣 そうでした、一つ忘れました。煙も、においも、気もない、こういうことです。
  171. 永末英一

    ○永末委員 だから、火はないということでよろしいですね、もう一度。火はないということで。
  172. 稻葉修

    稻葉国務大臣 私が報告を受けている中に煙も、においも、気もないと言えば、それで十分じゃないでしょうか。御了解願いたいと思います。
  173. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  174. 田中伊三次

    田中委員長 次回は、明二十一日、特に午前十一時理事会、午後一時より委員会を開くことにいたします。  本日は、これにて散会します。     午後九時二十分散会